運命の人~結ばれるの?この恋~ (氷野心雫)
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これが運命の始まりなのか…。それとも…。

 初めまして、氷野心雫です。初投稿なので、文も拙く、又、短いですが、このお話が面白くなるように頑張ります。

 プロローグと思って頂ければ幸いです。


 これが運命の始まりなのか…。それとも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命の出逢いなんて、時に残酷だ。俺の所属するチームメンバーが、よく口にする。俺も、ずっとそう思っていた…。彼女に出逢うまでは…。

 

 

 

 

 東京某所。深夜、人通りのない住宅街の公園の横道を、数人の男女が走り抜ける。女性は二人。同じ制服を身に付けている事から、高校生であろう。一方、男性は五人。皆、私服の様で、大学生か若しくは、成人だ。

???「…はぁ、はぁ、希、大丈夫?」

 金髪の女子高生が、隣で一緒に走る友に話し掛ける。希と呼ばれたその女子高生は、返事をする余裕がないのか、大量の汗をにじませつつも、しっかりと頷いた。彼女達と男達の間には、数メートルの間隔があったが、その距離が徐々に縮まり。手の届く所まで迫っている。

 男達の突き動かすモノは何か、それは、男の性と呼べるのであろうか。

(犯したい)

 それが、男達の今の原動力である。二人の女子高生を襲うというのは、恥ずべき事ではあるが、自然の摂理かも知れない。種を残す事が、本来の姿でもある。

 しかし、理性と知性を持った生物が、人なのだ。彼らがしようとしている事は、獣以下の発想だ。

 

 

男A「捕まえた!」

 男の魔の手が、彼女達を捕らえる。一瞬で彼女達は男達に囲まれ、茂みの中に引きずり込まれた。

男B「すげぇ、本物の絢瀬絵里と東条希だぜ。」

男C「俺、絢瀬が良い」

男D「あ、俺も!」

男A「俺は、東条」

男E「俺は両方」

男B「お前、タフだね!」

 男達が、ゲスな笑いをする。

絵里「あなた達、最低よ!こんな事して、許されると思っているの?」

 俺達に服を破かれながらも、彼女達は抵抗。だか、男の力には勝てる筈もなく。無惨にも胸元が露になっていく。彼女達は、絶望的な状況に、抵抗を諦め、ただ涙を流す。男達の荒い息遣いが辺りに吸い込まれる。一瞬、何か、気配を感じた。その気配は、男達も感じたようだ。彼女達をそのままに、ゆっくりと立ち上がる。

男C「おい、何かいるよな?」

男D「ああ、いる。野犬か?」

男E「…わかんねぇよ、とにかく、気味が悪いぜ。」

 声を潜め、男達は話す。突如、何の前触れもなく、足音が男達の目の前で止まった。

???「……」

 全身を真っ黒い服で身を包んだ人?が、こちらを見ている。月の無い闇夜に、金色の目が光った。恐怖に戦く男達。まるで、蜘蛛の子を散らす様に、その場を離れた。

 一方、彼女達は動けず、互いの身体を抱き合いながら、その者を見た。ゆっくりと彼女達に近付く金色の目のその者。その者は、彼女達の傍らに膝を付くと、身に付けていた服を半分に破き、彼女達差し出す。どうやら、黒いローブらしい。彼女達は、おずおずとそれを受け取り、ボロボロに破かれた服と、露になった胸元をそれで隠した。

絵里「……ありがとう」

 震える身体を隠し、その者に言った。だか、その者からは何も返答がない。暫く彼女を見つめ、その場を後にした。




 次回は、もう少し長く書けるように頑張ります。皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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闇に生きる金色の目

 何とか書き進めていけてます。が、まだまだ機能を理解出来ていない状況です。誤字、脱字は今のところ最小限。頑張ります。


 では、続きをどうぞ


 音ノ木坂学院~生徒会室~

 

 

 

 

 下校後の廊下を、絵里と希は無言で歩く。向かう先は、生徒会室。扉の隙間から、灯りが漏れ、三人の女子高生の声が聞こえる。絵里は、小さくノックすると、中に入った。

???「あれ?絵里ちゃんと希ちゃん、まだいたの?」

 中に入って来た絵里達に気付き、三人が視線を向けた。

絵里「ええ、穂乃果達もまだ帰らないの?」

穂乃果「えへへ、仕事が溜まっちゃって」

 絵里の言葉に、舌を出していたずらっ子の様な笑顔を見せる穂乃果。

???「毎日、コツコツやらないから、溜まるのです。」

穂乃果「ええ~!穂乃果だって頑張ってるよ!毎日じゃないけど…」

???「毎日、毎日。生徒の要望やしなければいけない事あるのに、貴女は、生徒会長としての自覚があるのですか?」

???「まぁまぁ、海未ちゃん。穂乃果ちゃんだって頑張ってるから」

海未「そんな事を言って、ことりは穂乃果に甘過ぎです。私達だって、暇じゃないのですよ!」

 三人のやり取りを微笑ましく見つめる絵里。そんな絵里を希は黙って見つめる。

穂乃果「ところで、絵里ちゃんたちは、何しにここへ?」

絵里「……それは」

海未「あまり遅くなると、ご家族が心配なさるのでは?それに、不審者が出るそうですよ。」

穂乃果「不審者?ドラキュラじゃなくて?」

 海未の言葉に、穂乃果が素早く反応。

ことり「ドラキュラさんか~。ことり、会ってみたいなぁ」

海未「ことり、そんな非現実的な。いる訳ないでしょ」

穂乃果「本当だよ!見た人がいたって」

絵里「その話、詳しく聞かせて!!」

 穂乃果の話に、いつも冷静な絵里が、机を叩き、穂乃果達の顔が触れる位、前のめりになった。そんな絵里を希は背中を優しく叩く。

希「絵里ち、穂乃果ちゃん達が怖がってるで」

絵里「ごめんなさい。そんな積もりはなかったの。穂乃果、その話、詳しく聞かせてもらえないかしら」

 荒くなった息を整え、絵里は話した。

穂乃果「うん、良いよ。私が聞いた話だと、夜、人通りが少ない道を歩いていたら、足音も無く現れるんだって。」

ことり「それが、ドラキュラさんとどう結び付くの?」

海未「そうですね。それだけだと、やはり不審者です。穂乃果、何故、ドラキュラに?」

穂乃果「私が見た訳じゃないから、よく分からないけど、その人の話だと、黒いマントに金色の目が光って、不気味だったって」

 

絵里(やっぱり、あの時の!)

 

 絵里は、話を聞いて、思案する。

絵里「穂乃果、ありがとう。希、私行ってくるわ」

 そう言って、踵を返す絵里。すぐに希は絵里の肩を掴んだ。

希「待って、絵里ち。一人で行くの?」

 いつものいたずらっ子の笑みを消し、真剣な表情で絵里を止める。

絵里「ええ、行くつもりよ。希は無理しなくて良いから」

希「私は無理してへんよ。それより、絵里ちは大丈夫なん?暗いの駄目やん」

 それは、μ,Sのメンバー全員、周知している。それでも、絵里は本気の様だ。

絵里「……行くわ」

 二人の会話がいまいち飲み込めない穂乃果達三人。会話に入り込めない状況も感じ取った。そんな三人を余所に絵里達は無言で見つめ合う。そこに、ことりの母で、この学院の理事長が部屋の入り口に立ち。

理事長「もう遅いから、みんな帰りなさい。」

ことり「…お母さん」

絵里「理事長……。分かりました。みんな、帰りましょ」

 絵里の一言に、その場にいたみんなが頷いた。

 

 

 

 

 その日、深夜。絵里は一人、人通りが無い道を歩いていた。所々、街灯が灯ってはいるが、ほとんど真っ暗な夜道。しかも、月明かり全く無い新月だった。

 

絵里(今日も現れないのかしら)

 

 金色の目の者に出会ってから、絵里はほぼ毎日、夜出歩き、その者を探していた。得体の知れないその者に、何故か心を惹かれ、本当なら怖くて外に出られない筈なのに、絵里は夜道を歩き始める。

 

絵里(どうしてかしら?暗いのは怖い筈なのに、会いたい気持ちが溢れるなんて)

 

 絵里が、一人物思いに更け歩くと、反対側から数人の人影が見えた。一瞬、身構える絵里。嫌な予感がしたのだ。その予感は的中する。四人組の男達が、絵里の周りを囲むように近付き、ニヤニヤと笑っていた。

男A「最近、夜中に絢瀬絵里が出歩いてるって話、本当だったんだ。」

男D「男でも漁りに来てんのか?」

男B・C「俺達が相手してやるよ」

 絵里は男達に捕まる。声を出そうにも、捕まってからすぐに口を塞がれて、手も後ろ手に組まれて、逃げ場は最早無い。状況は最悪である。

 しかし、男達の動きは、それ以上なかった。否、出来なかった方が正しい。それは、突然上から降ってきた。黒い何か。絵里は、一瞬でその黒い何かに包まれ、お姫様抱っこをされていた。目の前には、金色の目。良く見れば、その者は男性だった。

 

絵里(ようやく、逢えた)

 

 絵里は嬉しさのあまり、無意識にその者を抱き締める。男は戸惑いの表情を見せた。そして、絵里の顔を見つめ、ゆっくりと男達の方を振り向く。振り向く瞬間、風が吹き、ローブに付いていたフードが外れる。目鼻立ちがはっきりして、鼻筋もシャープなその男性は、まだ少し少年のあどけなさが残っている。絵里と年頃は同じ位であろう。

???「…夜の楽しみを邪魔するな」

 耳が恋しそうなその低音ボイスに、絵里の心臓が高鳴った。




 ようやく、二人の接点が強くなる場面にいきました。これから、二人の結び付きは、これを気に増えていきます。

 お気に入り登録して下さった狼牙竜さん。ありがとうございます。飽きさせない話を作って行きます。宜しくお願いします。

 皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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繋がる接点

 続け様で頑張ってます。内容もなのですが、いかんせん、なかなか長く書けないのが悪いところ…。書く度に、長く書けるようになれば、面白くなるのかな?っと、自問自答しております。

 では、続きをどうぞ


???「…夜の楽しみを邪魔するな」

 彼はそう言った。絵里は、抱かれたまま彼を見る。男達も、その言葉が聞こえていた。

男B「何だ。同じかよ!」

男D「んじゃ、お前も混ざるか?」

 吐き気がしそうな気持ち悪い笑い方に、絵里の背筋が凍り付く。だが、彼は小さく溜め息を付いた。

???「…猿以下の発想力だな、ヘドが出る。」

 その言葉に、男達は明らかに怒りを示した。彼はその場に絵里を降ろす。いや、落とす。

絵里「きゃっ!…ちょっと!痛いじゃない!」

 絵里の抗議を彼は一瞥し、視線を男達に向ける。男達は、彼の行動に怪訝の表情でその場に立ち尽くすだけだ。

???「あんたらが何をどうしようが、俺には知った事じゃない」

絵里「え?ちょっと、何を言っていっているの?助けてくれたじゃない」

???「別に助けた訳じゃない。俺の着地地点にあんたらがいただけだし、ローブが汚れそうだから、ちょっと避けただけだ。まぁ、その時、すっぽりあんたが収まったみたいだが」

絵里「……う…そ、でしょ」

 彼の言葉で、絵里の表情が曇る。会話を聞いていた男達は、再び笑い。

男C「へぇー、じゃあ。俺達の邪魔する訳じゃないんだな?」

???「ああ」

男D「物分かり良いな。なら、連れて行こうぜ!」

 言って、男達が絵里に近付き、腕を取る。絵里は、咄嗟に彼の腕にしがみついた。

???「離せよ。」

絵里「嫌よ。助けてくれたら、この手を離すわ!」

???「は?何で、俺がそんな事しないといけない。俺に何のメリットもないだろ」

絵里「…確かにそうだけど、困っている人を貴方は見捨てるの?」

 言っている絵里の目には涙が滲んでいる。彼はガシガシと頭を掻き、天を仰いだ。

???「今回だけだ。良いな?」

 絵里は小さく頷く。それを確認すると、絵里の腕を掴んでいた男達を殴る。反論も抵抗も出来ない男達。気が付けば、ものの数秒で四人組を彼は倒した。

 

 

 

 

 数分後、ヨロヨロとふらつきながら、男達が逃げていく。その後ろ姿を絵里は黙って見つめた。

???「約束通り、助けたぞ。もう、俺に用はないだろ。」

絵里「待って、名前。教えて」

 絵里の手が、彼の手を掴む。絵里の華奢な手を、するりと振りほどき。

???「あんたに教える名など無い。」

絵里「なら、また貴方に会いに来るから」

 絵里の真っ直ぐな瞳に、彼は視線を反らし。

???「俺の唯一の楽しみを、あんた。邪魔するつもりか?」

 ぼそりと口にする。絵里は、何かを閃いたようだ。

絵里「貴方の楽しみって、もしかして…。なら、やっぱり会いに来るわ。」

 微笑む絵里に対して、彼は溜め息を付き、ゲンナリした表情を見せた。




 短い文章力で、申し訳ありません。もっと、表現力を付けないと、今後の課題ですね。

 どなたか、厳しくも優しいご指導を~!宜しくお願いします。


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戸惑いの彼

 今回は、絵里が彼にグイグイ迫ります。っとは、言うものの、まだ彼の名前すら知りません。絵里は、どう動くのか。自分も分かりませんが、頑張ります。

 では、続きをどうぞ


 音ノ木坂学院~アイドル研究部部室~

 

 

 

 

希「絵里ち、最近、寝不足ちゃうん?」

 希の言う通り、絵里の目の下には、くっきりとクマが出来ていた。

絵里「…ああ、気付いた?ちょっと、ね?」

 どことなく、いつもの覇気がない絵里に、希は心配顔。

絵里「心配しないで」

穂乃果「絵里ちゃん、本当に大丈夫?練習もミスが多かったよ?」

海未「少し練習をお休みしては、どうですか?今のところ、ライブの予定もありませんし」

 他のメンバーも頷く。絵里は、小さく溜め息を付いた。

絵里「みんなに迷惑を掛けるなんて、私らしくないわね……。でも、もう少しだけ」

 一人言を呟く絵里。メンバーはその姿に声を掛けられなかった。

 

 

 

 

 真夜中の公園

 

 

 

 

 誰もいない公園に、一人佇む絵里。待っているのは、金色の目の彼。月の無い真っ暗な公園は、全てを隠す闇。そんな暗闇の中、恐怖に震えながらも、絵里は彼を待っていた。背後から足音がする。絵里の背筋が震えた。

???「お前、また来たのか。」

 その声に絵里は安堵する。後ろを振り向くと、黒いローブに身を包み、いつもの様にフードを目深に被った彼がそこにいた。

絵里「言ったでしょ?会いに来るって」

 微笑む絵里。彼はフードを取り、絵里に近付いた。

???「確かに言ってたな。まさか、本当に実行するとは思わなかったが」

 呆れた表情を見せる。そんな彼の表情も絵里とっては、心が踊るだけだった。

絵里「ねぇ?名前、そろそろ教えてくれない?」

 上目遣いで彼にすり寄る。彼は、一瞬ドキリとした。月明かりがないのに、絵里のその妖艶な表情が、胸を締め付ける。

???「……冗談だろ。何度聞かれても教える訳ないだろ」

 彼は視線を反らした。それは、絵里の質問が面倒臭いのではなく、絵里の顔がまともに見れなかったから。

絵里「ふぅ~ん。なら、どうしたら教えてくれるの?」

 彼とのやり取りを楽しんでいる絵里。

???「俺の楽しみを邪魔しないでくれ」

 彼の懇願が溜め息と共にこぼれた。その言葉で、絵里の表情が一瞬悲しみに変わった。しかし、彼はそんな事など気付く筈もなく。そんなやり取りが明け方まで続いたのだった。

 

 

 

 

 秋葉原の通りにて

 

 

 

 

 相変わらず、絵里の睡眠不足にメンバーは心配が募る。今日の練習は見ていられない位酷かった。本当なら、すでに解散して、帰宅する予定だったが、少しでも疲れさせて、夜出歩かないよう、絵里以外のメンバーは話し合い、遊びに連れて行こうと秋葉原に来ていた。

凛「絵里ちゃん、見てみて!これ、面白いにゃ~」

 おじさんストラップを片手に話し掛ける。

花陽「凛ちゃん、あんまり引っ張ると絵里ちゃんが」

 暴走気味の凛に花陽が止める。後ろでは、穂乃果の暴走を海未が制止する状態だった。

真姫「どうするのよ。この状況」

 希に真姫が言う。その質問に、希は。

希「別にええんちゃうん?」

 どこか飄々としていた。その後も、みんなでワイワイ言い合い、楽しみながら、時間が過ぎていく。ふと、絵里の横を一人の男性が横切った。咄嗟に、絵里はその男性を掴む。掴まれた男性は、驚きの表情を見せた。良く見ると、金色の目じゃない。でも、何かを感じた。男性は苦虫を噛み潰した様な表情。

絵里「……貴方」

 二人の間に、他のメンバーや通り過ぎる人は見えていない。まるで、今、この瞬間だけ二人だけになったみたいに……。




 何とか話が続いています。この後、どうなるのやら。文章力不足で上手く書けるのか、心配です。


お気に入り登録をして下さいましたmakidatさん、忍者小僧さん、はたるさん、ありがとうございます。これからも頑張りますので、宜しくお願いします。


皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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絢瀬絵里という女

 今回は、侑視点でお送りします。


 では、続きをどうぞ


 多くの人通りの中、俺はいきなり腕を掴まれた。掴んだ相手は、最近、俺にしつこく付きまとう絢瀬絵里という女だ。彼女は、俺の変幻した姿しか知らない筈なのに、俺だと気付いたようだ。

絵里「……貴方」

 彼女の口がそう告げる。俺は、平静を装いながら、辺りを見渡した。どうやら、組織のメンバーは近くにいない。そして、彼女の手を振りほどく。

侑「人違いではないですか?」

 内心、ドキドキだが、至って冷静にそう答えた。それでも、彼女は首を横に振り、雑音で聞こえないが、口の形は。

絵里『人違いじゃないわ。』

 そう言っていた。目の下にクマを作り、虚ろな目で、はっきりと。俺は、ドキリとした。

 

侑(……この女、一体何者なんだ)

 

 俺の心は荒れた。すると、彼女の友人達であろう。数人の女性達が、彼女を囲む。

???「絵里、いきなりどうしたのです?」

???「もう、何してるのよ。絵里は」

???「絵里ちゃん、ナンパかにゃ~?」

???「いきなり引き留めて、ごめんなさい。」

 立て続けに友人達は言う。俺は、あまりの事に、少し圧倒してしまった。

侑「気にしていませんので、それでは」

 軽く会釈して、俺はその場を後にしようとしたが、彼女が再び俺の手を掴んだ。

絵里「待って!……貴方よね?名前知らないから、呼べないけど、絶対」

 揺るぎ無いその目で俺を見る。俺を、何も言わず、逃げるようにその場を後にした。

 

 

 

 

 とある田舎の山奥

 

 

 

 

 俺は、洞窟の中にいた。目の前にそびえ立つ扉を、俺は開ける。中は、ここが洞窟だと分からない程、周りをコンクリートで固められ、所々に監視カメラやガラス張りの部屋が幾つもあり、俺はその中を歩く。数ヵ所には、セキュリティチェックの為に、指紋や声帯認証、手の静脈認証をし、ようやく最深部であるフロアーにたどり着いた。

???「よう、堕天使。遅い出勤だね~」

組織メンバーの一人が声を掛けてきた。

侑「サンダー、五月蝿い」

サンダー「ちぇ、ノリが悪いな」

 拗ねたサンダーを尻目に、俺は自分の席に着く。ここは、俺が所属する組織の一室である。組織のメンバーは、普段外の世界に出てこない。もちろん、俺も本来は外に出る事は禁止されているが、そんな事、俺にはどうでもいい。上層部は、俺が外の世界に出ている事はすでに知っているようだ。しかし、特に何も言って来ない。俺は、ただ夜の散歩を楽しんでいるだけ。それだけだ。

サンダー「ところで、例の彼女、まだお前の事待ってんの?」

 彼女とは、あの絢瀬絵里の事だ。俺は溜め息を付いた。

侑「今日、街中で俺に気付いた。」

サンダー「それって、変幻してないお前が分かってるって事か?」

侑「ああ、はっきりそう言われたよ。」

 それを聞いて、口笛を吹くサンダー。

サンダー「よっぽど、お前にご執心って事だよな」

 その言葉に、俺は顔を伏せた。俺の唯一の楽しみである夜の散歩を、絢瀬絵里は邪魔をする。俺にとっては、夜の散歩は、大事な日課だ。それはどうしてか?

 

……すぐに分かる。

 

 とにかく、夜の散歩が絢瀬絵里のお陰で、ここ数日、満足に出来ていないのだ。そして、今日も絢瀬絵里に邪魔をされるのであろう。俺は、深い、深い溜め息を付いた。

 

侑(着地地点を変えるか?)

 

 そう考えたが、やっぱりあの場所がしっくり来る。俺は、またあの女に邪魔される事を考え、痛む頭を押さえた。

 




 ああ、やっぱり短い文章になってしまう~!っと言うことで、侑視点でした。今後も、侑視点がありますので、宜しくお願いします。

 あぁ、どなたか上手く長い文章を書く方法を教えて下さい……(切望)


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揺れ動く二つの心

 毎日、書けている…。出先で表現力を付けるために、不可解な行動。若干怪しい人になりつつあります。

 今回は、二人の視点が織り混ざっています。もしかしたら、読み辛いかと思いますが、ご了承下さい。

 では、続きをどうぞ


 深夜の公園

 

 

 あの女に出会って、そろそろ1週間を過ぎようとしていた。相変わらず、あの女はあの公園で俺を待っている。今日も、大きな木横に置かれているベンチに座っていた。俺が近付くより先に、数人の男達が彼女を取り囲んでいる。

 

侑(毎回、よくもまぁ、襲われるな)

 

 半ば感心しながら、男達の動向を観察する俺。そして、いつもの様に、彼女の腕を掴んで、無理やり連れて行こうとしている。俺は面倒臭い気持ちで傍観していたが、あの女と目が合い、また見て見ぬふりが出来なかった。

 

侑(仕方ない。助けなかったら、後が恐そうだしな…。)

 

 そう自分に言い聞かせ、男達の側に歩み寄る。一人、また一人と殴り倒し、俺は彼女の前に立った。

絵里「……助けるの。遅かったわね。」

侑「別に、いつも通りだろ?」

 俺の言葉に、頬を膨らませる彼女。

絵里「嘘、私と目が合わなかったら、絶対逃げていたでしょ!」

 少しヒステリック気味なのか、それとも元々感情の起伏が激しいのか。彼女は、俺に詰め寄った。

絵里「もう…。そろそろ名前、教えて……くれても……」

 その後の言葉は続かない。彼女は、プツリと糸が切れたように倒れ込み、意識を失った。

 

侑(嘘だろ!)

 

 俺は無意識に彼女を抱き抱え、耳を胸に当てた。心臓は動いている。安堵する俺。どうやら、寝ているらしい。規則正しい息遣いが聞え、特に問題無いようだった。

 

侑(……ちょっと待てよ?この女、どうすれば良いんだ?家、知らねぇぞ!)

 

 俺は、彼女を抱えたまま、呆然と立ち尽くした。

 

 

 

 

 

 とあるマンションの一室

 

 

 

 絵里はふと目を覚ます。知らない天井。ここがどこなのか、今、何時なのか。まだ、はっきりしない意識の中、懸命に考えた。扉が開く音がする。ボヤけた目でそちらを見た。彼が立っている。

???「ようやくお目覚めか、お前。寝てないのか?」

 言いながら、絵里の枕元に歩み寄る。絵里はゆっくりと身体を起こした。

絵里「……そうね。最近、貴方に会うために夜、起きてるから」

???「学校、行ってんだろ?」

絵里「もちろん、ちゃんと行っているわよ。これでも、元、生徒会長だもの……」

 その言葉に、呆れた表情で溜め息を付く彼。何か、考えているのか、仕切りに頭を掻いたり、溜め息を付いたりと落ち着きが無い。

???「そこまでして、どうして俺に興味を示す」

 真っ直ぐと絵里を見据え、彼は言った。その質問に、今度は絵里が天を仰いだ。

絵里「……そうね。強いて言えば、一目惚れって事かしら」

 予想しなかった告白に、彼の表情がみるみる変わる。先程まで、普通だった顔が、熟れたトマトの様に赤くなり、口が金魚の様にパクパク。それだけでなく、挙動不審な動きで、後ろに転けた。そんな彼を目の当たりにして、絵里はクスクス笑う。

 

 

 

 

 彼女のいきなりの告白に、俺は驚いた。否、一瞬意識がぶっ飛んだ。生まれてから一度も女との免疫がない俺にとって、この告白は予想外だった。告白だけでも、重大なのに、その告白相手は、誰がどう見ても美少女。

 金色の髪を一つに束ね、肌は色白で、目もクリクリして、可愛い。初めて出会った時から、スタイルも良い事に、すぐに俺は気付いていた。破かれた服から見える胸元はふくよかで、括れた腰もしっかり目に焼き付いている。

 

侑(そんな彼女が、俺に一目惚れ!?)

 

 動揺してしまった俺。派手に転けた。彼女が笑う。その笑顔はまさに天使、そのものだ。真っ赤に染まった顔を俺は隠す。

侑「俺をバカにしてんのか?」

絵里「バカになんて、していないわよ。私は正直に答えただけ」

 顔を見られないように、彼女に背を向け話す。ニヤけた顔を見られたくなかったからだ。

絵里「貴方の名前、教えて。私の名前は……」

侑「絢瀬絵里だろ?」

絵里「どうして、私の名前」

 彼女が言葉を濁す。俺は、彼女に向き直った。

侑「最初に会った時、そう呼ばれているのが聞こえたから」

 彼女は俺を見つめる。俺は、息を軽く吐くと。

侑「俺の名は、階堂侑だ」

 




 ようやく、彼の名前が聞けましたね。っと言うことで、二人の繋がりが深くなり始めました。
 サブタイトルに若干沿えていない事に今気付きました……(泣)

お気に入り登録して下さいました名状しがたい人さん、ありがとうございます。

少しずつ、長く書けてます。この調子で頑張りますので、皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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夏だ!海だ!美少女だ!~前編~

 まず、始めに謝罪を…。
 お気に入り登録して下さいました名状しがたい人さんの名前を一部間違えてしまいました。お詫びして、訂正させて頂きます。大変申し訳ありませんでした。今後は、きちんと管理していきますので、今後も宜しくお願いします。

 今回は、海です。そのまんまです。

 では、続きをどうぞ



 侑が住むマンションの一室

 

 

 ようやく、彼の名前が聞けた絵里は、嬉しさのあまり涙が溢れる。嬉し涙を流す絵里に、侑は指で拭った。指が触れた瞬間、絵里の動きが止まる。それにつられるように、侑も動きを止めた。

 しばらく、無言で見つめ合う二人。侑の今の行動は、無意識でした事だった。

侑「……わ、…悪ぃ……。つい手が動いて」

 懸命に弁解する侑。絵里は首を横に振った。

絵里「ううん、気にしないで」

 言って、少し頬を染める絵里。顔を少し反らしながらも、侑を横目で見た。ふと、絵里はある事に気付く。それは、侑の姿だ。先程まで、金色の目だったのに、普通の黒い瞳になっている。そればかりか、黒いローブもふわりと消えた。絵里は、侑をじっと見る。

侑「あまり驚かないな」

 苦笑しながら侑は言う。

絵里「今の、」

侑「変幻だよ。俺は、普通の人間じゃないんだ。」

絵里「変幻って、どういう事?」

 絵里の質問に、侑は小さな溜め息を付き、絵里の横に腰掛ける。

侑「本来なら見られてはいけない事なんだ。知ってしまったら、あんたの身に危険が迫る。だから、これ以上は聞かないでくれ」

 そう言う侑の瞳には憂いを帯びていた。

絵里「……分かった。なら聞かないわ」

そんな彼に、絵里は優しく微笑み、彼の手に触れた。触れられ、ドキドキしている侑。

 

侑(……柔らかい。女の子の手って、こんなに柔らかいのか)

 

 侑の頬がピンク色に染まる。心なしか、耳も熱い。一方、絵里も侑の手に触れ、ドキドキしていた。

 

絵里(……男の人の手って、ゴツゴツしてて、私……。この手に何度も助けられてるのね)

 

 しばらく、この状態で二人は過ごした。

 

 

 

 

 どこかの海辺

 

 

 

 

 絵里達、μ,sのメンバーは海辺に来ていた。事の発端は、数日前。希の一言で始まる。

 

希『みんなで、夏合宿しよ~!』

 

 っと、言う事で、今、海の家でバイトしている。

にこ「何が夏合宿よ!バイトが不足してるから、かり出されただけじゃない!」

 朝から、長い道のりを電車で乗り継ぎ、ようやくたどり着いた海辺。これから、泳ごうとした時、またもや希が。

 

希『合宿する前に、バイト手伝って』

 

 笑顔で言われたのだ。メンバーは、みな憤慨している。穂乃果と凛は楽しんでいるようだ。

凛「穂乃果ちゃん、上手にゃ~!」

 コテを素早くさばき、焼きそばを手際よく作っている。隣では、冷たい飲み物を拗ねた様子で売る真姫。ことり、花陽、絵里はウェイトレスをしていた。海未はというと、店の隅で。

 

海未『恥ずかしい』

 

 肝心の希は、お客さんを呼び込む仕事をしていた。

希「まぁまぁ、にこっち!これが終わったらちゃんとバイト代も入るし、ジュースもくれるゆうてんやから」

 呑気な希である。絵里は苦笑した。μ,sのメンバーとこうして過ごすのは、絵里にとって至福の一つ。

 

希(最近の絵里ち、少し大人っぽくなったなぁ。例の彼の影響か。寝不足も解消されたみたいやし)

 

 絵里の寝不足は解消されていた。侑との関係が深まるにつれて、夜会わなくても、夕方や時には日中会う様になったからだ。その事は、μ,sのメンバーは知らない。

男A「なぁ、あれって。μ,sだよな」

男B「東條と絢瀬の胸、ヤバくね?」

 男達がひそひそ話をしている事に、希も絵里も気付いていなかった。μ,sのメンバーの格好は、水着にパーカーを羽織っただけ。もちろん、ビキニ姿の希と絵里は、男達の目の保養になっている。ただ、それだけなら無害なのだが、有らぬ事を企む輩もいるのだ。まさか、あんな事になる事など、絵里達は知らない。




 今回は、前編、後編に分かれています。後編では、二人の進展があるのか、ないのか…。


 皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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夏だ!海だ!美少女だ!~後編~

 前回の続きです。後編では、ある人が出てきます。お楽しみ!


 では、続きをどうぞ


 どこかの海辺~海の家~

 

 

 

 

 バイトが終わったμ,sのメンバー。海の家で、遅めの昼食を食べていた。今日は、練習を中止にし、折角海に来たので、遊ぶ事にした。

穂乃果「行くよ~!えいっ!」

凛「任せるにゃ~!」

 穂乃果のナイストスに、凛の稲妻アタックが炸裂する。

にこ「っく~!やるわね!」

希「にこっち、諦めたらあかんよ!」

にこ「当たり前でしょ!」

 ビーチバレーを楽しむ四人。一方、打ち寄せる波の側では、花陽とことり、海未の三人が砂でお城を作っている。

海未「もう少しで開通しますよ。」

ことり「私は、可愛くデザインするね」

花陽「……うぅ…、もう少しです」

 他のメンバーを少し離れた場所で見つめる真姫と絵里。二人はパラソルの下で涼んでいた。

絵里「真姫は、みんなと遊ばないの?」

真姫「私は別に…。絵里こそ。行かなくて良いの?」

 絵里の質問に、質問で返す真姫。二人は顔を見合わせ笑う。

真姫「元気になったみたいで、安心した。」

絵里「……え?」

 視線を、浜辺で遊ぶ七人に向けながら、真姫は言葉を続けた。

真姫「最近の絵里、ちょっと様子がおかしかったから」

 言われた絵里は、一瞬ドキリとする。真姫は視線を絵里に戻し。

真姫「あんまり、みんなに心配掛けちゃダメよ」

絵里「真姫も心配してくれたの?」

 イタズラっぽく微笑む絵里。真姫は、少し頬を染め、視線を外した。

真姫「私の事は良いの!」

絵里「あはは!ごめん、ちょっとからかってみたの」

真姫「……でも、心配はしたわ。何かあったら、ちゃんと相談してよね?」

絵里「うん、心配掛けてごめんね」

 二人はお互い頷いた。すると、周りが騒がしい事に気付く。先程までいたメンバー六人が沖を見て悲鳴を上げている。そして、それを取り囲むように、人だかりも出来ていた。

絵里「メンバーが一人いないわ!」

真姫「絵里!花陽が!」

 真姫の指差す方を見る。すると、花陽が物凄い勢いで沖に流されていく姿が見えた。

花陽「……だ…誰か……、助け…て」

 離岸流だ。絵里は、無意識に海に飛び込む。無我夢中だった。絵里は、すぐに花陽の側まで辿り着いたが、絵里自身も流されている事に、今更気付く。大量の海水を飲んで、絵里の意識が遠退く。誰かが取り巻きを押し退け海に飛び込んでくる。少し離れた場所から、小型の船が絵里達の場所に向かっているのが見えた。しかし、今の絵里に、その事に気付く余裕などない。

 最初に救出されたのは、花陽だった。絵里は、力尽きたのか、姿が見えない。海の底に沈んでいく絵里。絵里の意識が少しずつ薄れていく。そんな中、絵里の目には、ここにはいる筈のない侑の姿が見えた。

 

絵里(私……、このまま死ぬのかなぁ…。)

 

 絵里の身体を抱き締めるガッシリとした手。この手を絵里は知っている。絵里の目がその相手を映した。それは侑だった。真剣な侑の表情。しかし、そこで絵里の意識が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どのくらい時間が経ったのだろう。絵里は目を覚ました。波の音が聞こえる事から、海の近くなのはすぐに理解出来た。木造の天井が目に入った。襖の開く音がする。誰かが中に入ってきた。

???「お?目が覚めたみたいじゃん」

 男の声がそう言った。絵里は視線を向ける。そこにいたのは、見知らぬ男性。髪を一部金髪に染めた、歳は絵里と同じ位の青年。その青年が後ろの誰かに声を掛けた。

???「お~い、堕天使。お姫様が目を覚ましたぞ!」

 その言葉を聞いて、誰かが部屋の中に入ってきた。絵里は驚く。そこにいたのは、侑だった。

侑「サンダー。少し静かにしろよ。」

絵里「侑!……痛っ!」

侑「すぐに起きるな…。休んでろ」

 そう言った侑の表情は、明らかに怒っていた。

 




 さて、出てきました。サンダーさん。ここで重要なのは、サンダーさんの立ち位置ですね。少し話しますと、サンダーさんの立ち位置は、とても重要ポジションだと言う事です。これ以上はお話出来ませんが、サンダーさんの動向にも、目が離せません。

 お気に入り登録して下さいましたキース・シルバーさんありがとうございます。
 小説を投稿してまだ数日なのですが、お気に入り登録して下さる方々が増え、とても嬉しく。又、自分のモチベーションも上がっていく今日この頃。これからも、頑張りますので、宜しくお願いします。

 皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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彼の心の変化

 今日は、ハプニングがありまして、投稿が遅くなりました…。気を取り直して。

 前回の続きです。どうぞ


 俺は、怒りで我を忘れていた。

侑「お前、何考えてんだ!」

 突然の大声で、彼女の肩がビクリと動く。そして、俺の顔を見た。

侑「一歩遅れてたら、死んでたんだぞ!」

 その言葉で、目に涙を滲ませる彼女。俺の横では、サンダーが俺の胸を軽く叩いた。『少し落ち着け』と、いう意味で。それでも俺は、怒りが収まらない。俺の怒鳴り声で、彼女の友人達が部屋に物凄い勢いで入ってきた。

穂乃果「絵里ちゃん、起きたの!」

凛「心配したんだにゃ~!」

海未「無事なのですか!」

ことり「絵里ちゃ~ん、心配したんだよ。」

にこ「全く!心配したわよ!」

花陽「絵里ちゃん、ごめんなさい…。私」

 みな、自分の気持ちを思い思いに話す。そんな中、二人だけ、彼女ではなく、俺を睨んでいた。

希「絵里ちを助けてくれたことには、感謝してる。でも」

真姫「貴方にそこまで怒られる理由は?」

 彼女達の言い分は分かる。彼女達からしてみれば、俺はほぼ初対面なのだから。

侑「……そこの女とは、色々あって。顔見知り以上だ。」

 俺は、顎で彼女を指す。すると、睨んでいた二人の表情が、少し和らいだ。

希「そうやったんや。うち、てっきり」

 ニヤリと笑うエセ関西弁を話す女性。先程から、自分の髪を弄る女性は、まだ怪訝な表情が見え隠れしている。そして、他の友人達は俺を取り囲み。

穂乃果「絵里ちゃんとどこで知り合ったの?」

海未「穂乃果、不躾ですよ!」

凛「ええ!気になるにゃ~!」

ことり「私も」

花陽「その前に、自己紹介した方が…。」

にこ「もぅ~、あんた達は何やってんのよ。」

 言葉の散弾銃に俺は尻込みし、身体ごと後退する。

絵里「みんな、待って。彼、女性に対してあまり免疫が無いから、いきなり同時に質問しないで」

 彼女からのナイスフォロー。だったのだが。

穂乃果「ええ!そうなの?全然見えない!イケメンだし!彼女いそう!」

ことり「彼女いるんですか?」

海未「穂乃果、ことり、不躾ですよ!こう言う話は、もっと」

凛「何だか面白い事になってきたにゃ~。」

花陽「……みんな、待って。最初に自己紹介を」

にこ「まさか、二人付き合ってるんじゃないでしょうね?」

 今の言葉で、その場にいた全員が俺と彼女を見る。俺はどう返したら良いか分からず黙り。彼女の方は、俺を横目でチラリと見ると、頬を染めた。

 

侑(おいおい、今のは、勘違いを生むだろ!)

 

 内心、突っ込みを入れる俺。部屋がシンと静まり返り、間を置いて、友人達の黄色い悲鳴が響いた。

穂乃果「絵里ちゃん、本当に付き合ってるの!」

ことり「ほわぁ~」

海未「……は、破廉恥です!」

凛「凄いにゃ~!」

花陽「はわわわ……」

にこ「ま…負けた」

真姫「イミワカンナイ」

希「これは面白い事になってきたで~!」

 部屋の中が一気に騒がしくなり、俺は、ブチキレた。

侑「……お前ら!うるさい!お前も、変な態度取るな!誤解されるだろ!」

 言って、部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 数時間後、畳の上に布団を敷き、俺は、寝る準備をしていた。俺がいるこの家は、彼女の友人の持ち家らしく、部屋数だけでも多い上に、家自体もかなりの広さがある。その友人は、何でもお金持ちだと、他の友人達が言っていた。別荘も日本全国にあるらしい。今日は、彼女を助けたお礼にと、俺とサンダーは一晩泊めさせてくれる事になった。ふと、彼女に言った言葉を思い出し、俺は、彼女の寝ている部屋を訪ねた。

 布団の中で、スヤスヤ寝息をたてる彼女。起きている時とは違い、少し幼い少女のあどけなさが見えた気がした。薄暗い部屋で、月明かりだけが、彼女を照らしている。俺は、無意識に彼女の唇を見つめた。プックリと膨らんだ彼女の唇。艶やかな唇が俺を誘惑する。息をする度に上下する胸元に視線が奪われた。気が付けば、生唾を飲み込んでいる俺。手が彼女の方に吸い寄せられた瞬間、彼女が目を覚ます。俺は、素早く手を引っ込めた。

絵里「いつからいたの?」

侑「……今、来た。その…、あのさ」

絵里「何?」

侑「昼間、じゃなくて。夕方の事なんだけど…。」

絵里「…うん」

 彼女は真っ直ぐ俺を見る。

侑「あの時は、ちょっと言い過ぎた。」

 その言葉に彼女は首を横に振る。

絵里「良いの。本当の事だもの。私、メンバーの事になると、向こう見ずのところがあるから、侑が言った事は間違ってないわ」

 絵里は言って微笑む。俺は、赤くなる顔を見られないよう隠した。

絵里「そう言えば」

 振り向く俺。

絵里「さっき、寝顔見てたでしょ?」

侑「…え」

絵里「あと、胸も」

侑「…み、見てない!断じて、絶対に」

 声が裏返る俺。

絵里「…………エッチ」

 

 絵里の一言に、俺は、耳まで真っ赤に染めた。




 やっと、侑が絵里に意識しました。それまでは、まぁ~、気になる程度だったので、ここまでくるのに、大変でした!さてさて、これからどうなる?書いてる自分がドキドキしております!


 皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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意識する彼

 毎日、暑さでバテそうです。大量の汗をかいているのに、一向に痩せる兆し無し…。

 やっと、絵里を女性として見るようになりました。侑さんの言動が見物です。

 では、続きをどうぞ


 侑の住むマンションにて

 

 

 

 

 絵里との関係に進展があってから、数日後。侑は、組織に秘密にしているマンションの部屋の中に、いる筈のない人物がいて驚いていた。その人物は、ここ数ヶ月前から、何かと絡んできていた絢瀬絵里。その人だった。

侑「……なんで、あんたがここにいるんだ…。」

 俺の問い掛けに、何故か可愛い水色のチェック柄のエプロンを身に付けて、台所に立つ絵里。

絵里「ここの管理人さんに、開けてもらったの」

 そう笑顔で答える。対面式のキッチンに、自分以外の人間が立っている事に、侑は戸惑った。

侑「いや、だから何で俺の家に来る。」

絵里「……ダメかしら?」

 上目遣いでそう言うと、侑は顔を真っ赤にして、黙り混む。その日は、それ以上言えず、絵里の作った手料理を堪能した。

 

 数日後。

 

侑「だから、何でほぼ毎日、俺の家に来るんだ?」

 呆れた表情の侑。最初の日から、絵里は頻繁に侑の家に来ていた。絵里の事を、異性として認識してから、侑の心中は穏やかではない。キッチンの前に立つ絵里を見れば、ドキドキし、飲み物を取りに冷蔵庫に向かうと、後ろ姿の絵里に、見惚れ。髪を後ろで上げていると、そこから見えるうなじに何とも言えない興奮が侑を悩ませる。その事に、絵里は知ってか知らずか。

絵里「管理人さんが、スペアくれたの。」

 言って、手にこの部屋の鍵を見せてきた。

 

侑(……な、何考えてんだ!あの管理人~!)

 

 悶絶する侑。そんな様子を見て、絵里は苦笑する。出来上がった料理をテーブルに置き。

絵里「今日は、とりあえずカレーにしたの。嫌だった?」

 またも、上目遣いで聞いてくる。侑の反応を見て、少し面白がっているようにも見えた。

侑「あんた、俺の反応見て、面白がっているだろ……」

 半ば恨み目で言ってみる。すると、絵里の目に涙。

絵里「…酷い。そんな事、私はしないわ」

 侑は慌て、絵里の作ったカレーを口一杯頬張ると。

侑「う、美味い。美味しいぞ!このカレー」

絵里「本当?」

侑「本当だ!初めて、こんなに美味しいカレーを食べた!」

絵里「そう、なら良かったわ」

 満面の笑顔でそう言われ、侑は口をあんぐり。その間に、絵里が腕を伸ばし、侑の頬についていたカレーのルーを、指で拭う。そして、そのまま自分の口に持っていくと舌でペロリと舐め取った。その仕草があまりにも妖艶で、侑の心は鷲掴みされた様に、胸が締め付けられる。その日は、絵里の話の内容が頭に入って来ず、絵里の唇だけを見続けていた。

 

 

 

 

 次の日

 

 

 

 

 

 やっぱり、絵里は侑の家に来ていた。もう、家にいる事が当たり前になりつつある。侑は、絵里のエプロン姿をじっと眺めていた。

絵里「何?」

 侑の視線に気付いた絵里が、料理の下ごしらえをしながら、侑に聞いた。侑はテーブルに片肘を付き。

侑「いや、あんた。良い奥さんになりそうだなって」

 侑の言葉に、手を止める絵里。

絵里「……今、なんて?」

侑「うん?良い奥さんになれるって」

絵里「その前よ」

 言われて、侑は思案し。

侑「あんた?」

 絵里が包丁をまな板の上に置いた。急に、手を止めた絵里に、不思議そうに見つめる侑。ツカツカと侑の側に歩み寄る絵里。

絵里「……って言って。」

侑「ん?聞こえなかった」

 あまりにも小さく呟いた絵里に、侑は質問する。絵里は侑の耳元で、もう一度言う。

絵里「ちゃんと、絵里って言って」

 甘く囁く絵里の声に、侑の耳が真っ赤に染まった。その後…。

 

 

 絵里の名前が、侑の口から出るまで絵里は帰らなかった。




 今、とてもヤバいです。書いてる自分が悶絶しそうになりました。

 お気に入り登録して下さいましたkazv716さん、ピポサルさん、ありがとうございます。まだまだ未熟な自分の小説を、登録して下さる方々がいる事に感激しています!まだまだ文章力不足ですが、これからも頑張りますので、宜しくお願いします。


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見え隠れする闇

 気が付けば、投稿してから1週間になっていました。早いものですね。自分でも、驚いています。

 さて、今回はちょっとシリアスな回になります。

 では、続きをどうぞ


 とある田舎の山奥

 

 

 

 

 サンダーは、ある部屋に呼ばれた。この施設の最深部よりさらに下の階層。厳重なセキュリティを通過し、一番奥の部屋に入る。そこに、真っ黒なローブを身に纏い、フードを目深に被った者達が五人。サンダーより少し高めの位置に座り、見下ろしている。

幹部A「サンダーよ。報告を」

 サンダーは、手に持っていた資料を、幹部達の横に控えているボディーガードに渡す。その資料に目を通す幹部達。大きな壁掛けのモニターにある人物が映し出される。そこに、映っていたのは、絵里だった。

幹部B「この女性は?」

サンダー「彼女が、絢瀬絵里です。」

幹部C「例の女か」

サンダー「はい、そうです。」

 サンダーの言葉に、幹部達は唸る。

幹部A「それで?どうなのだ。この女、堕天使の正体を知っているのか?」

 その質問に、サンダーは首を横に振る。

サンダー「その事に関しては、まだ調査中です。」

幹部D「今のところ、危険性はないのだな?」

サンダー「はい、現段階では」

幹部E「何にせよ。その者が危険因子となりうる場合は、サンダー。分かっているな?」

サンダー「はい、お任せ下さい。」

 サンダーの言葉で、幹部達は席を立ち、部屋を退出する。サンダーは一人部屋に残り、溜め息を付き、天井を見つめた。

 

サンダー(……堕天使、悪く思うな)

 

 

 

 

 侑の住むマンションにて

 

 

 

 

侑「本当に、毎日来るなよ」

 溜め息混じりの言葉に、絵里がキッチンからニッコリと微笑む。

絵里「お帰りなさい」

 スリッパをパタパタと音をさせながら、近付いてくる絵里。その姿に、侑の脳裏にある単語と妄想が出てくる。

 

侑(裸エプロン)

 

 侑は鼻血を吹いた。絵里が慌てる。

絵里「ちょっと!侑、大丈夫?」

 慌てふためく絵里を、手で制し。侑は、鼻を押さえた。そのまま、洗面所に向かう侑。一人っきりになると、汚れた手と顔を洗い、鏡に映る自分の姿を見る。

 

侑(最近、振り回されっぱなしだな)

 

 しばらくして、洗面所から出てくると、絵里が心配そうに近付いてきた。

絵里「侑、もう大丈夫なの?」

侑「ああ、大丈夫だ」

絵里「どこか、調子が悪いなら、私と病院へ行く?」

 首を横に振る侑。

侑「どこも悪くないから、心配するな。」

絵里「……もしかして侑、エッチな妄想したんでしょ」

 絵里の的を射た言葉に、真っ赤に染まる侑。

絵里「侑になら、しても良いよ。」

 耳元でそう告げる絵里。侑の鼻から再度鼻血が吹き出た事は、言うまでもない。

 

 

 

 

 秋葉原周辺にて

 

 

 

 

 いつもの様に出歩く。誰かから背中を叩かれた。振り向くと、サンダーだった。侑は背筋が凍り付く。

侑「どうして、お前が……。」

サンダー「堕天使、忠告だ。今後、行動には気を付けろ。」

侑「……な…に」

 侑の問いに、サンダーは悲しげに見つめ、首を縦に動かす。

侑「まさか、あいつに何か。」

サンダー「大丈夫だ。今のところ、彼女に危険はないよ。ただし、お前の行動次第で、彼女は消させるかも知れない。俺は、幹部の命令に逆らえない。けど、お前の事は、大事な仲間だと思っている。」

侑「どうにかならないのか」

 サンダーは、横に首を振る。

サンダー「俺にそんな権限はないよ。でも俺は、お前の監視役を引き受けた。分かるだろ?時間は少しは稼げるが、それ以外は無理だ。」

 侑は天を仰いだ。

侑「分かった。サンダー、悪ぃな。」

サンダー「仲間の為だ。一肌脱ぐよ。それより、彼女はお前の事、何か知ってんの?」

侑「いや、俺の正体は知らない。」

 侑の言葉に、サンダーは少し安堵する。

サンダー「なら、何でお前にご執心なんだ?」

 サンダーの問いに、侑は頬を少し赤くする。

侑「俺に一目惚れしたらしい。」

 侑の意外な告白に、サンダーは軽く転けた。侑も、苦笑する。

 

侑(……そろそろ、潮時かもな)

 

 ふと、そう思った侑だった。




 今回は、ドキドキ少々。ハラハラ多めでした。今後、侑と絵里の関係がどうなるのか。心配です……。(作者なのに)

 お気に入り登録して下さいました四条博也さん、ありがとうございます。そして、評価を付けて下さいましたピポサルさん、ありがとうございます!


 欲を申しますと、ダメ出しを頂きたいです。自分の欠点を知りたいので、皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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離れたくないの…

 今回も、シリアスな話です。文はいつもより短めですが、大事な布石ですので、ご了承下さい。


 では、続きをどうぞ


 音ノ木坂学院~アイドル研究部部室~

 

 

 

 

 絵里は、魂の抜けた表情で、窓の外を見つめる。メンバーのみんなは、声を掛けるべきか、悩んでいた。溜め息を付く絵里。その度に、メンバーは顔を見合わせた。

穂乃果「……絵里ちゃん、どうしたのかなぁ」

海未「そうですね。先程から、溜め息ばかりで心配です。」

花陽「もしかして、この間の彼氏さんとケンカしたのかなぁ」

にこ「有りうるわね!」

 何故か、少し喜んでいるにこ。

希「……人の不幸を喜ぶ、悪い子ちゃんには、ワシワシMAXやで~!」

 にこの後ろで、両手を高く上げ、指先を器用に動かす希の姿。にこは小さく悲鳴を上げた。

真姫「そんな事より、どうするの?絵里があの調子じゃ、練習も出来ないわよ?」

凛「困ったにゃ」

 ヒソヒソ話すメンバーに、ことりはゆっくり絵里の側に歩み寄った。それに気付いたメンバーは、固唾を飲む。

ことり「絵里ちゃん」

 名前を呼ばれ、絵里は振り向いた。すると、ことりは絵里の頬っぺたを軽く摘まみ。

ことり「絵里ちゃん、何があったのか、ことりには分からないけど、練習しよ?」

 いつも穏やかな表情のことりが、少し拗ねている。良く考えてみれば、侑の所にばかり行って、あまり練習が出来ていない。絵里は小さく頷いた。

 

 

 

 

 侑の住むマンションにて

 

 

 

 

 絵里は合鍵で部屋の扉を開ける。部屋の中に灯りが点いていた。絵里は急いで、灯りが点いている部屋に向かう。見慣れた後ろ姿が目に入る。絵里は無我夢中で、その背中に抱き付いた。

侑「……あんたか」

 抱き付いてきた絵里を引き剥がし、侑は言う。ここ数日、侑はマンションにいなかった。絵里はその理由を知らない。その反動か、侑の表情が冷たく感じた。

絵里「どうしたの?最近、いなかったじゃない。心配したのよ」

 その言葉で、侑の表情が歪む。まるで、何かを堪えるように。

侑「もう、ここには来るな」

絵里「……何、言っているの?」

 侑の言葉を、脳が理解出来ない。

侑「この部屋に来るな。そう言った。」

 絵里の手が震える。侑の腕を掴むが、振り払われた。

絵里「どうして?理由は?私、何かいけない事したの?」

 言っても、侑は背を向け。

侑「この部屋にもう用はない。それだけだ。あんたも、俺の事は忘れろ。部屋の合鍵、渡せ」

 侑は鍵を渡すよう手を差し出した。絵里は正気を失った目で、合鍵を取り出す。奪い取るように鍵を掴み、侑は部屋を後に出ていこうとする。

絵里「待ってよ!」

 絵里の声が上擦る。

絵里「私……。侑の事が好きなの!貴方が何者とか、何をしているかなんて、どうでも良いの!貴方の側にいたいの!……侑の側に」

侑「……さよなら、絵里」

 そう言って、侑は部屋を出ていった。絵里はその場に崩れ、座り込む。

絵里「…………どうして?」

 問い掛ける人は、出ていった。絵里の瞳には止めどなく涙が流れ、嗚咽が部屋に響き渡る。

 

絵里(初めて、名前呼んでくれたのに…。)




 あぁ~!どうなるんだ!書いてる自分が、気になる~!っと、言うことで、今回はここまでです。

 お気に入り登録して下さいました黒絵の具さん、ありがとうございます。そして、評価を下さいましたはたるさん、ありがとうございます。良い作品になるよう、精進します。

 皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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募る思い

 今日は、続けての投稿になります。自分が続きが気になって仕方ないからですが…。

 今回は…。とりあえず、続きをどうぞ


 音ノ木坂学院~屋上~

 

 

 

 

絵里「花陽、テンポ遅れているわ!凛は、飛ばし過ぎ、真姫、もう少し笑顔で……」

 練習を終え、ヘトヘトに座り込むメンバー。

にこ「ちょっと絵里!練習がハード過ぎよ!」

凛「そうだにゃー!」

花陽「……はぁはぁ…。もう無理です~」

絵里「……そう?このくらい普通よ」

 みんなの抗議に、絵里は汗を拭いながら言う。ここ数日、何かに取り憑かれたかの様に、練習に打ち込む絵里。メンバーは、心配していた。練習終了後、絵里が帰ってからメンバーは部室に集まる。

海未「ここ数日の絵里の様子は、とても良くありませんね。」

真姫「そうね。例の彼と何かあったのかも知れないわね」

穂乃果「希ちゃん、知ってる?」

希「ごめんな~。うちにも分からんのよ。」

凛「凛、今の絵里ちゃん。嫌だにゃ~。」

花陽「凛ちゃん、そんな事言わないの。きっと、絵里ちゃんに何か事情があるんだよ」

ことり「希ちゃん、タロットで占ってみたら?」

希「よっしゃ!うちに任せとき~。」

 いつから持っていたのか、手にはタロットが。素早いカード捌きで、占い始める希。そして、何枚かのカード捲り、希の表情が強張った。

にこ「結果、出たの?」

 にこの質問に、神妙な面持ちで頷く希。

希「最悪な結果が出た…。」

 言って、1枚のカードをメンバーに見せる。

希以外「これは?」

希「……別れのカードや…。」

 その言葉で、部室内はしんと静まり返った。

 

 

 

 

 絵里の住むマンションにて

 

 

 

 

亜里沙「お姉ちゃん、最近帰りが早いね。」

 キッチンで料理を作っている絵里に、妹の亜里沙が声を掛ける。絵里はただ小さく微笑むだけ。その夜、亜里沙は、仲の良い雪穂に話す。

雪穂『そう言えば、うちのお姉ちゃんも、その話してた。』

亜里沙「穂乃果さんは、何か知ってるの?」

雪穂『多分、知ってると思う。』

亜里沙「本当?明日、会って話せるかな?」

雪穂『お姉ちゃんに伝えとくよ。』

亜里沙「ありがとう、雪穂」

 そう言って、電話を切った。

 

 

 

 

 次の日…。

 

 

 

 

亜里沙「穂乃果さん、μ,sの皆さん」

 学校の帰り、ファーストフード店で穂乃果と亜里沙達は待ち合わせをした。みな、それぞれの注文を済ませ、席に座る。

亜里沙「最近のお姉ちゃん、元気がないの。亜里沙、あんなに元気がないの初めてで。皆さんは、何かご存知ですか?」

穂乃果「……知ってるって言うか~」

海未「そうですね。どう言えば宜しいでしょうか」

ことり「はっきりした事じゃないから」

花陽「……うぅう…。」

凛「凛には、良く分からないにぁ…」

にこ「………」

真姫「もう、ちょっと。誰か、言いなさいよ。」

希「…………亜里沙ちゃん」

 いつになく、希が真剣な表情で亜里沙を見つめた。

亜里沙「はい、何でしょう」

 亜里沙も姿勢を正す。

希「正直、本人の口から聞いたわけやないから、こんな事、言うべきやないのは、うち達も分かってはいるや。」

 一つ深呼吸し、希は話した。

希「絵里ちな、気になってる人がおったんや。それで、恐らく、その人にフラレてる」

 亜里沙の顔が驚きに変わる。あまりの話の内容に、理解出来ないのだろうと、その場にいたみんなが思った。

亜里沙「分かりました。今からその人に会いに行ってきます!」

 そう言って、いきなり席を立つ亜里沙。急な出来事に、みんなワンテンポ遅れ、店の外に飛び出した亜里沙を追う。

穂乃果「……待って、亜里沙ちゃん。会いに行くって」

 亜里沙の腕を掴み、穂乃果は言う。亜里沙は真っ直ぐ前を見つめ。

亜里沙「その人に会って、お姉ちゃんの素敵なところを話すんです!」

 興奮気味に言う亜里沙。

真姫「どこに行くって言うの?場所、知らないでしょ?」

亜里沙「知りません。でも、会える気がするんです。」

 揺るぎない亜里沙の目。そこに、男性が横切った。

凛「あ!彼にゃ!」

 凛が、その男性に指を指す。侑だった。指を指された侑は、いきなりの事に驚きの表情。その場を急ぎ離れようとしたが、にこと希、海未、ことりに阻止される。

侑「あんた達は」

 観念した侑が言う。亜里沙は、侑の前に立った。

亜里沙「私のお姉ちゃんは、美人で頭も良くて、優しくて。歌もダンスも上手で。お料理だって、美味しいだよ」

 言葉を返す隙間も無く喋る亜里沙。その目には涙が滲み、荒く肩で息をしていた。

侑「……そうか、お前。絵里の妹か」

 侑の問いに、頷く亜里沙。

侑「似てるな、絵里に」

 侑はそんな亜里沙を見て、頷く。

侑「確かに、お前のお姉ちゃんは、俺に勿体ない位、素敵だよ…………」

 天を仰ぎながら、侑は目を閉じる。目蓋の裏には、絵里のいろんな表情が浮かぶ。怒っている顔。泣いている顔。そして、優しく微笑む絵里。

侑「……絵里に、逢いたい」

 侑の口から、思いが溢れた。




 くぅ~。亜里沙、なんて良い子だ!こんな妹欲しい!何でも許せるよ!っと言うことで、今回は、妹様中心の話でした。

 非公開ではありますが、お気に入り登録して下さいました方、ありがとうございます。

皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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絡み合う二つの思い

 昨日、遅くに投稿して、若干寝不足です。が、しかし。今回も、頑張って書きます!


 では、続きをどうぞ


 秋葉原~カラオケ店にて~

 

 

 

 

凛「絵里ちゃん、遅いにゃ~。」

 凛が、呟いたと同時に、メンバー達がいるカラオケ店の入り口から、小走りする音が聞こえてくる。目の前の扉が、勢い良く開かれた。

絵里「……いきなりどうしたの!問題が発生したって!」

 息を切らし、絵里は慌てて部屋に入ってきた。メンバーは、ニッコリ微笑んで、絵里を取り囲む。そこには、何故か、ここにいない筈の亜里沙の姿もあった。

絵里「亜里沙、貴女がどうして、ここにいるの?」

 絵里の問いに、無言の笑顔で見つめるメンバーと亜里沙。その後ろで、誰かが立ち上がる音が聞こえ、視線をそちらに向けようと顔を上げた瞬間。

亜里沙「お姉ちゃん」

 亜里沙に声を掛けられ、亜里沙を見た。

絵里「どうしたの?亜里沙」

亜里沙「お姉ちゃん、好きな人いるの?」

 唐突に質問される絵里。絵里は固まった。

絵里「……どうして?」

亜里沙「亜里沙、知っているの。お姉ちゃん、その人の事、今も好き?」

 メンバーが見守る中、絵里はどう答えたら良いか悩む。しかし、その答えはずっと決まっていた。

絵里「好きよ。ずっと好き。でも、もう逢えないわ」

亜里沙「どうして?どうして、逢えないの?」

絵里「……だって、侑にそう言われたから、私はただ側にいたい、それだけ。でも、彼はそんな風に思っていないの。」

 絵里の言葉を聞いて、亜里沙は首を横に振る。

亜里沙「そんな事ないよ。お姉ちゃん。だって、侑さんもお姉ちゃんに逢いたいって言ってたもん!」

 亜里沙の発言に、絵里はふと、後ろで立ち上がった人物を確認する。一瞬、絵里の呼吸が止まった。そして、目に涙が滲み出す。侑がそこにいた。

絵里「……す…侑な…の?」

 涙が絵里の頬を伝う。侑は、真っ直ぐ絵里を見つめた。メンバーが、左右に別れ、花道の様に前を開ける。亜里沙も同じように、メンバーと道を作る。絵里は、無我夢中で、侑の胸に飛び込み。その勢いで、侑は後ろに倒れた。絵里の唇が、侑の唇を塞ぐ。

侑「……ん!」

 絵里はただ夢中で、侑の唇にキスをする。どのくらい、そうしていたのだろう。誰かが、咳払いする。絵里は、我に返り、自分が侑にキスをしている事に気付いた。

絵里「……ひゃあ~!わ…、私!」

 耳まで真っ赤な絵里の顔。あたふたする絵里を見て、侑もメンバーも、亜里沙も笑っていた。

侑「心配掛けて悪かったな。」

絵里「……逢いたかった」

侑「俺も、逢いたかった」

 お互い見つめ合う。そして、侑は絵里を抱き締める。

侑「ずっと、絵里の事考えてた。」

絵里「本当?」

侑「本当だ。もう、離さない」

 二人の世界に、メンバーは少しうんざりする。にこが、咳払いした。

にこ「あんた達、二人で盛り上がるのは良いけど、こっちの身にもなってよね。」

 絵里と侑は、瞬時に離れた。

侑「そろそろ、俺はここから離れるよ。」

絵里「……どうして?」

 絵里の問いに、侑の表情が曇った。

侑「……俺は、一つの場所に留まれないんだ。」

絵里「でも…。」

侑「あそこは、俺の唯一の場所だったけど」

絵里「私のせいで」

 絵里の言葉に首を横に振る。

侑「遅かれ早かれ、あそこにいられなかったんだ」

 言って、侑は絵里から離れ、メンバーを見渡した。

真姫「貴方、何者なの?」

侑「悪いが、その質問に答えられない。絵里にも、話していない。」

 みんな、侑の今の言葉に驚きを表す。

希「本当なん?絵里ち」

 絵里は頷いた。

絵里「彼の事は名前以外知らないの。」

 その言葉に、さらに驚くメンバー達。

侑「俺の事を知れば、絵里も君達にも危険が及ぶ。それだけは、どうしても避けたい。いずれ、時期が来たとき、話す。だから、今は聞かないで欲しい。」

 侑は扉に向かう。しかし、すぐに絵里の側に戻って来た。

絵里「?」

 侑は、絵里の耳元に口を寄せる。

侑「また逢いに来るよ。その時は、俺の誠意をみせるから、覚悟してくれ」

絵里「!!」

 そう言って、去っていく侑。絵里の顔が真っ赤なまま硬直していたのは、言うまでもない。




 書いていて、少し違和感を感じるかも知れません。ちょっと、表現不足ですね…。勉強します。さて、侑と絵里の思いが通じたところで。ちょっと話の話題を変えます。

 本編とは別に、ちょっと別の話を1話書きたいと思っています。お楽しみに~。

 お気に入り登録して下さいました吉良吉輝さん、雲輝煌めきさん、魔王の炎さん、フユキさん、ありがとうございます。また、評価を付けて下さいました吉良吉輝さん、ありがとうございます。

 皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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彼女の葛藤

 二日続けての連チャン二話目です!もう、妄想が止まらないんです!睡眠不足なのに、書く手を止められません!

 では、続きをどうぞ


 侑が去ったカラオケ店にて

 

 

 

 

穂乃果「絵里ちゃん、絵里ちゃ~ん!」

 名前を呼ばれて、我に返る絵里。

絵里「……な、何?」

 声が裏返る絵里に、メンバーは『はは~ん、何かあったわね!』と、表情で語る。

亜里沙「?お姉ちゃん、どうしたの?顔が赤いよ!もしかして、風邪引いたの?」

 この状況の中、亜里沙だけが一人?マークを出していた。

 

 

 

 

 絵里の住むマンションにて

 

 

 

 

 絵里は、亜里沙と一緒に帰宅する。

亜里沙「お姉ちゃん、良かったね!」

 帰るなり、そう言って亜里沙が絵里に、抱き付いた。絵里は、柔らかい亜里沙の髪を撫でながら。

絵里「亜里沙、今日はありがとう。なんだか、亜里沙に助けられたわね。あと、メンバーにも」

 亜里沙は、絵里の笑顔を見て、とても嬉しそうだ。

亜里沙「お姉ちゃん。亜里沙、お腹空いちゃった」

絵里「そうね。そろそろ、夕食の準備しましょうか。亜里沙、手伝ってくれる?」

亜里沙「うん!」

 絵里と亜里沙は、キッチンへ向かった。

 

 

 

 

 その日の夜

 

 

 

 

 夕食、お風呂を済ませた絵里は、布団の中に入る。今まで暗いのが苦手だった絵里。今は、侑のお陰で暗い部屋でも眠れるようになっていた。

 しかし、今日ばかりはなかなか寝付けずにいた。理由は、カラオケ店での侑の言葉だ。

侑『また、逢いに来るよ。その時は、俺の誠意を見せるから、覚悟……』

 絵里は身悶える。頭から、顔から蒸気が出そうな程真っ赤になり、布団の中でバタバタと悶絶した。

 

絵里(誠意って何?もしかして……)

 

 ある単語を思い出し、声にならない悲鳴を上げた。

 

絵里(待って!私達、まだちゃんとお互いの事、知らないじゃない!でも……)

 

 少し落ち着き、布団の中に頭をすっぽり被る。

 

絵里(侑にキス、しちゃった。)

 

 自分の唇に、指をなぞってみる。侑の顔が間近にあって、侑の体温を直に触れた。今、冷静に考えると、大胆な事をしたのだ。

 

絵里(あの時は、嬉しかったから、侑に触れたいって思った。)

 

 そして、お互いの気持ちが通じて、絵里は嬉しかった。

 

絵里(……もっと、侑に触れたい)

 

 絵里の心の中は、侑一色に染まっている。本当は、今すぐにでも逢いたかった。

 

絵里(早く逢いたい。逢って、触れて、抱き締めたい)

 

 また、侑の言葉が頭を過る。

 

絵里(……どうしよう!誠意って事は、やっぱりそういう事よね?待って!心の準備が出来てないわ!)

 

 絵里は、スマホに手を伸ばす。

 

絵里(この場合、誰に相談すべき?希?……待って、にこかしら?真姫とか?)

 

 絵里の思考は混乱している。スマホの前に正座したまま、固まってしまった。

 

絵里(……どうしよう…。誰に相談すれば良いの~?)

 

 絵里の長い、長い夜が始まったのだった。




 申し訳ないです。睡眠不足で、思考力低下してます。もう少し、長く書く予定でしたが、このまま投稿します!

 別のお話は、いつ投稿しようか、まだ悩み中です…。ご意見がありましたら、お知らせ下さい。善処します。

 皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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大切な人

 間違えて、データを消してしまい、書き直し…。

 嵐の前の静けさ、台風が来るよ!

 気を取り直して、続きをどうぞ


 音ノ木坂学院~アイドル研究部部室~

 

 

 

 

希「ただのノロケやん」

 絵里の悩みは、希に一刀両断された。隣では、にこも不貞腐れている。海未は『破廉恥です。』と、部屋の隅で膝を抱え、穂乃果と凛は、意味が分かっていないようで。

穂乃果「何の話?」

凛「何の話かにゃ?」

 花陽とことりは、顔を赤くしながらも、興味津々で見つめ。真姫は『イミワカンナイ』と、赤面顔で視線を反らした。絵里は、何の問題も解決出来ぬまま、彼女達に相談した事に後悔した。

 

 

 

 

 絵里の住むマンションにて

 

 

 

 

 マンションのエントランス前に、何度か会った事のある人物が立っている。その人物は、侑にサンダーと呼ばれた人だった。サンダーは絵里を睨んだまま、見つめる。絵里は、サンダーの前を通り過ぎようとすると、腕を掴まれた。絵里は、サンダーを真っ直ぐ見据え、無言。絵里の腕を掴んだまま、サンダーが口を開く。

サンダー「君は、堕天使が何者か分かっているのか?」

絵里「何、堕天使って?」

 サンダーの問いに、絵里は聞き返す。サンダーは、片眉を吊り上げた。

サンダー「何も聞かされていないのか?」

絵里「だから、堕天使って誰の事よ!」

 絵里の剣幕に、少し圧倒されるサンダー。

サンダー「悪かった。今のは無しにしてくれないか?勿論、すぐには無理かもしれないが」

 絵里の前で拝むような仕草をし、謝るサンダー。絵里は、小さく溜め息を付いた。

絵里「……それで?私に何か用なの?」

サンダー「……アイツ元気?」

 サンダーは絵里にそう言った。

絵里「侑?元気だと思うわ。」

サンダー「堕天使の奴、本名名乗ったのか。」

 絵里の言葉に、サンダーはボソボソと一人言を言っている。絵里は怪訝な表情をした。

サンダー「最近、侑に会ったか?」

絵里「……貴方、侑の何を探っているの?」

 サンダーの怪しい言動に、絵里は不快感を募らせる。苦虫を噛み潰した様な表情を見せるサンダー。

絵里「貴方が何者か気になるけど、これだけは言わせてもらうわ。」

 絵里は一呼吸してから、口を開く。

絵里「私にとって、侑は大事な人よ」

 揺るぎないその眼差しで、サンダーの表情がさらに変わる。それは、先程の表情ではなく、まるで晴れやかな表情。

サンダー「そうか、君は本当に侑の事が好きなんだな。侑が羨ましいよ。さっきは本当に、悪かった。君に不愉快な思いをさせて」

絵里「……貴方、本当は良い人なのね」

サンダー「はは……、良い人か。……参ったな、そんな風に言われると……」

 照れるサンダー。

 

サンダー(……堕天使、俺はお前を見直したよ。本当に彼女の事が好きなんだな……。相思相愛、俺には真似できない)

 

サンダー「君と侑が幸せになれるよう、応援してるよ」

 そう言って、サンダーは去って行った。絵里は、その後ろ姿を見守る。




 とても短くなりました…。上手く表現出来ないもどかしさ。悔しい!
 次回は、侑と絵里の…。ムフムフ!ネタばれしそうなので、この辺にしておきます。

 お気に入り登録して下さいましたゆいさん、黒っぽい猫さん、ありがとうございます。

皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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貴方に触れたい

 台風は去りましたが、吹き返しの風が凄い、凄い!

 さて、今回は二人のイチャイチャ…。

 とりあえず、続きをどうぞ


 帰宅路にて

 

 

 

 

 学校から帰宅している絵里に、背後から近付く足音。絵里の背筋がゾクリとした。絵里は歩く速度を速める。足音は、それに合わせるように速めた。怖くなった絵里は、走り出す。足音も、同じ様に走り出す。

 

絵里(……誰なの?……怖いよ!侑助けて!)

 

 涙目で、絵里は祈るように叫んだ。足音がどんどん近くなる。そして、肩を掴まれた。絵里は、咄嗟に右手を振りかざし、相手の顔目掛けて、平手打ちしようとした。

侑「うわぁ!」

 絵里の右手が、侑の顔面に当たりそうになる。絵里は動きを止めた。

絵里「……侑?」

侑「ああ、俺だ」

 涙目のまま、絵里は呆けた。侑は指先で絵里の涙を拭う。それでも、絵里の目から涙が溢れ出す。

絵里「侑ぅ~!逢いたかったよ…。」

 侑に抱き付く絵里。侑はそんな絵里を抱き締めた。

侑「寂しかった?」

 わざとらしく絵里に聞く侑に、絵里は頬を膨らませ、拗ねた表情を見せた。

絵里「分かっているくせに、そんな事聞くのね。」

侑「はは、悪かった。……俺も逢いたかった。」

 二人は見つめ合い、次第に互いの顔が近付く。すると、いくつもの視線を感じる。二人は、ここが公衆の面前である事に、今頃気付いた。赤面顔の二人。その場を、真っ赤な顔のまま、手を繋いでスタスタと足早に去ったのだった。

 

 

 

 

絵里の住むマンション前にて

 

 

 

 

絵里「ここが、私が住むマンションなの」

 マンションの前でそう言う絵里。侑はマンションを見上げた。

絵里「部屋に来る?」

 そう言って、微笑む絵里は、綺麗だった。侑は少しずつ、自分が興奮している事に気付く。

侑「……いや、その。」

絵里「ダメかしら?」

 上目遣いでねだるように絵里は言った。侑は、生唾をゴクリと飲み込む。無意識に頷き、絵里に手を引かれ侑は、マンションの中に入っていく。エレベーターに乗り込み、絵里は自分の階のボタンを押す。無言の二人。階に着くまで、絵里は侑にぴったりと寄り添い、時折、横目でチラリと侑を見る。その度に侑の胸が締め付けられ、今にも襲いたくなる衝動に、侑は理性を総動員した。階に着き、二人は降りる。そのまま廊下を歩き、玄関の扉の前に立った。

侑「本当に良いのか?」

 侑は部屋に入る前にそう聞く。絵里は頷き、玄関の鍵を開ける。カチャリと解除の音がし、絵里は扉を開けた。

絵里「……侑、入って」

 妖艶に微笑む絵里。促されるまま侑は中に入った。

 

 

 

 

 リビングにて

 

 

 

 

 侑は、絵里に指示され、ソファーに腰掛ける。キッチンでは、絵里がお湯を沸かし、お気に入りの紅茶を淹れていた。心臓の音が、いつもより速く大きく鳴っている。あまりの鼓動の速さに、侑は眩暈を覚えた。

絵里「侑。紅茶、ここに置いておくわね。」

 目の前に置かれたティーカップから、ユラユラと湯気が立ち上っている。侑は一口飲んでみた。甘く、スッキリとした味に、少し心が落ち着く。

 すると、絵里が侑の横に座った。その事で、一気に侑の鼓動が速くなる。そればかりか、絵里は侑の手に、自分の手を重ねて、身体も侑に預けた。

侑「……そのさ、絵里。あまり引っ付かれると」

絵里「なぁ~に?」

 顔を赤くし、潤んだ瞳で見つめる絵里。吸い寄せられる侑。絵里もゆっくり目蓋を閉じ、二人の唇が重なる。静かな部屋の中、互いの心臓の音が聞こえそうで、二人は口付けをしたま、抱き締め合う。

絵里「今日、妹帰って来ないの……」

侑「……へ!?」

 すっとんきょうな声を上げる侑。

 

侑(確かにこの間、誠意をみせるからって言ったけど!)

 

 絵里の不安そうな顔。身体が小刻みに震えている。

侑「絵里、怖いんだろ?」

絵里「……怖いわよ。でも、侑ともっと一緒にいたいもの。それに」

 顔を赤くしたまま、上目遣いに侑を見る絵里。

絵里「貴方を感じたいの。触れたいの。」

 絵里は徐に、侑の手を掴み、自分の胸に当てた。

絵里「……貴方を感じさせて…。」

 その言葉で、侑は吹っ切れた。絵里の身体を抱き抱え、寝室へ向かう。

侑「ごめん、俺自身もちょっと抑えられないから、初めてだけど、手加減出来ないかも知れない。」

 侑の背中に腕を回し、絵里は無言で頷いた。




 かぁ~!めちゃくちゃ興奮しとります!本当なら、ベッドシーンまで行きたいところ、一応、R指定なんで敢えて、濁させて頂きました…。自分的に書きたいけど…。

 皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします!


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平穏な一日

 ようやく、身も心も結ばれた二人ですね。今回は、あまり見所としてはないような…。

 では、続きをどうぞ


 少しずつ、空が明るくなり、鳥の囀りが聞こえてくる。静かな街が、目覚める朝。侑は、重たい目蓋をゆっくりと開けた。見慣れない天井に、少し違和感を覚えるも、左手が少し重く、また、温もりを感じて、視線をそちらに向ける。

 目に入ったのは、金色の髪。その意味するものは、すぐに理解出来た。

 

侑(ああ、そうだった。やっと、絵里と結ばれたんだ)

 

 穏やかな寝息をたて、侑に寄り添うように眠る絵里。布団から、少し素肌が見えて、絵里の身体が昨日のままなのを思い出す。

絵里「……ん~」

 絵里が寝惚けて身体を密着させてきた。侑の胸に絵里の柔らかな胸が当たる。侑は再び興奮しそうな気持ちを抑え、布団から出た。

 

侑(初めてゆっくり眠れた…。)

 

 常に疲労感と睡魔に襲われていた侑にとって、こんなにスッキリとした朝は、生まれて初めてだった。寝室を出て、リビングのカーテンを開ける。眩しい程の朝日が、街全体を照らし出し、侑は大きく伸びをした。

 一度、寝室に戻る侑。絵里はまだ眠っていた。カーテン越しの和かな朝日が絵里を照らす。白い素肌がとても綺麗で、金色の髪も朝日で、キラキラ輝いている。絵里に近付く侑。顔を近付け、絵里の寝顔をマジマジと見ていた。ふと、目蓋を開ける絵里。侑の顔が近くにある事に、寝惚けたまま。

絵里「侑…。大好き」

 そう呟いた。同時に、絵里の腕が侑の首に回され、引き寄せられる侑。侑は、絵里の上に覆い被さる形になり、自然と唇が触れる。

侑「絵里、起きてるだろ?」

絵里「だって侑ったら、私を置いてリビングに行ったから、寂しかったの」

 微笑む絵里。まだ少し寝惚けているようで、キスをねだる。絵里の希望通り、キスをする侑。絵里が身体をゆっくり起こした。布団が落ち、胸まで露になり、侑の理性が一度吹っ飛んだのだった。

 

 

 

 

 近くの公園にて

 

 

 

 

絵里「…………」

 絵里は怒っていた。朝、寝惚けて侑に抱き付いたり、キスをねだったりしたのは、絵里自身、悪いと思っている。しかし、その後の侑の行動が、絵里の機嫌を損ねた。

侑「俺が悪かった。だから、機嫌を直してくれないか?」

絵里「……侑のバカァ!もう知らない!」

侑「だって、絵里のその……なんだ、胸とか裸見たら…。俺だって男だし!我慢出来なかったんだよ!」

 白昼堂々の告白に、絵里は真っ赤に顔を染めた。

絵里「悪いと思っているなら、今日一日。私の我が儘に付き合ってくれる?そしたら、許してあげる」

侑「……分かった。一日デートだな」

 そう言って、手を差し出す侑。絵里は笑顔でその手を取り、恋人繋ぎで歩き出した。

 

 

 

 

 デートは、色々な場所を沢山巡った。水族館、動物園、遊園地その他色々。時間はあっという間に過ぎていく。最後は海辺に来て、夕陽を二人で眺める。

絵里「今度は、いつ逢えるのかしら」

侑「……分からない。」

絵里「……そう」

 無言の二人。お互い肩を寄り添い、手を重ねる。しばらく、二人は沈む夕陽を見つめ、時間を過ごした。辺りが薄暗くなり、ゆっくりと歩き出す二人。来た道を戻り、絵里の住むマンションの前で、立ち止まる。

侑「絵里」

絵里「どうしたの?」

侑「いや、何でもない。」

絵里「…………」

 何か言いたそうに、侑は絵里を見つめ、視線を反らした。絵里は聞き返さない。侑の気持ちが分かっているからだ。侑は、絵里を抱き締めた。

侑「絵里、大好きだ。」

絵里「うん、私も大好き」

 お互いを力強く抱き締め合った。




 今回は、穏やかな二人の一日になりました。これから先、二人に訪れる試練は、二人の今後にどう結び付くのか、見物です。

 昨日、今まで投稿した話を総点検しましたが、誤字が多々ありまして、読んでくださっている皆さまに、不快感を与えてしまいました。次の投稿前に、修正していきますので、もし見つけた方がいましたら。
『ここにも誤字あるぞ~!』っと、お知らせ下さい。ご迷惑お掛けしますが、宜しくお願いします。


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消される記憶

 いよいよ、闇の組織が動き出す、今回のお話。侑はどうなってしまうのか見物です。

 では、続きをどうぞ


 とある田舎の山奥

 

 

 

 

 手錠を後ろで掛けられ、侑は組織の重罪裁判にかけられていた。

幹部A「堕天使よ、この裁判にかけられる理由、分かるな?」

侑「…………」

幹部C「答えろ!」

幹部D「お前は、施設の外に出てはならないと言う規則を破り」

幹部B「人間との関わりを持った。」

幹部A「重罪は避けられぬ」

 無言を貫く侑。真っ直ぐ幹部達を見据え、その目には強い意志を感じさせる。真ん中の席に、他の幹部とは違う、真っ白なローブを身に纏った者。

幹部D「では、長。判決を」

 長と呼ばれたその者が立ち上がる。

長「堕天使は、幽閉。調整室でこれまでの記憶を消去。記憶を再構築し直せ」

 判決が出て、一斉に立ち上がる幹部達。

幹部達「すべては組織の為に!」

 

 

 

 

 幽閉させれいる侑の部屋に、近付く足音。侑はそれが誰の足音かすぐに分かる。

侑「サンダーか」

サンダー「堕天使。すまなかった。時間を稼げなくて」

侑「仕方ない。いずれ捕まるのは時間の問題だったからな」

サンダー「…………」

 無言で侑を見つめるサンダー。悲しみの瞳が侑を映し出す。

侑「俺に何かあったら、その時は頼む。」

サンダー「嫌だ。俺には……」

侑「冗談だ。でも、その時は」

 サンダーは戸惑いながら小さく頷いた。

 

 

 

 

 調整室

 

 

 

 

 拘束椅子に座らされる侑。頭にはヘルメットの様な形の機械を被らされる。ヘルメットの様な形の機械には、無数の配線が、天井に繋がり、別室のモニターに繋がっていた。手や足は、暴れないよう手錠、拘束具で繋がられている。

 

侑(……俺は)

 

幹部D「始めろ」

 その一言で、侑の全身を電流が流れる。

侑「ぐあああ!」

 電流が流れるのと同時に、頭を覆う機械には、脳に直接映像が流れていた。

 

侑(絶対に、俺は負けない!)

 

 電流が流れ続ける。映像は組織に関するモノばかりだ。侑は、耐え続けた。

幹部A「映像を変えろ」

 侑の脳に流れる映像が、ある人に切り替わる。それは、絵里だった。

 

侑(!!)

 

 侑の身体が反応する。それを幹部達は見逃さない。

幹部B「次だ」

 映像は、絵里と色々な殺害映像を交互に流していく。

 

侑(止めろ!止めろ~!)

 

 侑が気を失うまで、映像と電流は流れ続けた。

 

 一週間。侑は寝る時間も与えられず、電流と映像を流され続けられた。しっかりした体格は、痩せ細り、目も虚ろになっていた。

 

侑(……耐えてみせる)

 

 そんな極限状態でも、侑の意思は強かった。その意思の強さに、幹部達は少し焦り出す。

幹部C「電流を上げろ」

研究者「これ以上は、堕天使が使えなくなる可能性が」

幹部A「代わりはいくらでも作れる。それに、お前達も新たなデータが取れるだろう」

 幹部達の言葉に、研究者は恐る恐る上げていく。

侑「があぁぁ!」

 侑の口から泡が出てくる、目には涙が流れ、断末魔が施設に響き渡る。

 

サンダー(堕天使……)

 

 侑の断末魔を聞いたサンダーも涙が流れ、奥歯を噛み締めた。

 

 

 

 

 2ヶ月後

 

 

 

 

 幹部達が一人の男に近付く。

幹部D「気分はどうだ?」

???「モンダイアリマセン」

幹部C「最終確認だ。」

 幹部達は頷き合う。

幹部A「さぁ、お前の守るべきものは何だ」

???「ソシキデス」

幹部B「お前のやるべきことは?」

???「ソシキヲキケンカラマモル」

長「お前の敵は?」

 頭の機械を取られ、男の目が光る。それは真っ赤な目をした侑。

堕天使「アヤセエリノマッサツ」

 

 




 とうとう、侑が組織の手に堕ちました。これから、侑はどうなってしまうのか?侑に命を狙われる絵里の思いは?

 お気に入り登録して下さいましたshelling 2638さん、ありがとうございます。

 さて、いよいよ大詰めですね。活動報告にも上げましたが、完全オリジナルの作品を近いうちにあげようと思っています。お楽しみに!因みに、番外編も上げます!まぁ、順番的には番外編が先です。

 皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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侑の本当の姿

 夏風邪引きました。皆さまも体調にはくれぐれも気を付けて下さい……

 頭痛と微熱ですが、張り切って書きます!

 では、続きをどうぞ


 侑と離れてから2ヶ月

 

 

 

 

 絵里は忙しい毎日を送っていた。ラブライブでの優勝、卒業式。そして、海外でのライブ。慌ただしい日常の中、侑の事を思い出す。これから先の生活や、何をしたいのか。様々な事に、絵里は悩んでいた。

 

希「最近、夜出歩くのはやめた方がええよ」

 

 昨日の希の言葉を思い出す。絵里は、侑と離れてから、夜の散歩を日課にしていた。そうすれば、侑と逢えるかも知れないっという思いだったから。

 

絵里「どうして?」

希「なんや、物騒らしいで。夜、出歩く人が襲われて、ケガしたらしいわ」

 

 そんな内容だった。絵里は一瞬思い悩むも、やはり日課をやめる事は出来ずにいた。

男A「女一人で、夜出歩くのは危ないよ」

 背後から、男達が声を掛けてくる。いつもの絵里なら、走って逃げるか、携帯電話で助けを呼ぶか。何かしらの行動をしていたが、一瞬。

 

絵里(侑が助けに来てくれるかも。)

 

 そんな甘い考えが頭を過る。考えている間に、絵里の回りを男達は取り囲んでいた。すでに退路は塞がれ、いつかの絶体絶命のピンチ。

???「モクヒョウヲカクニン」

 聞き慣れた声が絵里の耳に入る。絵里は声の方を見た。そこにいたのは、漆黒の翼をはためかせ、真っ赤な目をした侑だった。

絵里「…………侑な……の?」

 絵里は近付く事を躊躇った。禍々しい程の殺意を絵里に向ける侑。絵里は本能的に一歩下がった。その度に、ゆっくりと近付く侑。

堕天使「アヤセエリ、マッサツスル」

 そう放たれた言葉。絵里はガクガクと身体を震わせ、下がって行く。

男B「何だ?てめぇ」

 男達が、絵里と侑の間に割って入った。

男C「俺らの邪魔すんなよ!」

 口々に言い、殴り掛かる男達。しかし、男の一人から、骨が折れる音が静かな夜の道に響いた。その音は、別の男からも聞こえ、男達は道端に転がった。

堕天使「ジャマスルナ」

 冷たく、冷酷な視線。その目が絵里を捉える。

絵里「……侑……」

 涙を流す絵里を見ても、侑の動きは止まらない。そして、絵里の首を掴んだら、ギリギリと締まる首。

絵里「……すぅ……ぅ」

 絵里は抵抗しなかった。ただ、真っ直ぐ侑を見つめ、涙を流す。

 

 急に、首を締めていた侑の手が離れる。誰かが、絵里と侑の間に入り、侑を殴っていたからだ。

絵里「……げほっ」

サンダー「絵里さん、今のうちに離れて!」

 サンダーが言う。絵里はサンダーを見た。白金色の髪に雷がバチバチ鳴って、手は獣の様に毛が生え、爪も鋭い。そう、サンダーも変幻していた。

サンダー「早く、俺が押さえている間に!」

 言われて、絵里は下がった。それを確認し。サンダーは間合いを取る。

堕天使「サンダー、ソシキヲウラギルノカ」

サンダー「裏切る?違うだろ!お前こそ、絵里さんへの気持ちはどうした!」

堕天使「アヤセエリハ、マッサツタイショウ」

 奥歯を噛み締めるサンダー。

サンダー「お前!愛する人を忘れるのか!」

堕天使「アイスルヒト?アヤセエリガ?チガウ、アヤセエリハ、テキダ」

 それを聞いて、サンダーは苦笑した。

堕天使「ナニガオカシイ」

サンダー「侑、お前にも見えているだろ?」

堕天使「オレハ……、ダテンシダ。ススムデハナイ。」

サンダー「自分の本当の名前すら忘れたのか」

 サンダーは変幻を解く。

堕天使「……?」

サンダー「なぁ、侑。俺達は、普通の人間とは違う。だから、見えるだろ?絵里さんのお腹に新たな命が」

 絵里には、二人の会話は聞こえない。

サンダー「まだ、小さい命だ。絵里さんもまだ気付いていないよ」

 サンダーは絵里を見た後、再び侑を見る。

サンダー「お前と絵里さんの」

 動きが止まる堕天使。絵里をじっと見つめ、その命に気付いた。一瞬、堕天使の目が変化する。赤から金色に。それには、サンダーも絵里も気付いた。

サンダー「侑、俺もお前と同じ様に、人として生きる事に決めたんだ。佐東昂として」

 堕天使が苦しみ出す。

堕天使「ガアァァァ!」

侑「……昂!…今のうちに………」

 侑の声。見れば、侑の目の色が左右違う。左は真っ赤な色のまま、右だけが、金色に変化していた。

昂「侑か?」

侑「ああ、俺だ!早く俺を打て!俺がコイツを押さえている間に!」

 

 侑の言葉に、昂は最大限の雷を撃ち込んだ。




 さて、今回で20話になりました!次回は、番外編を御送りします!お楽しみに~!

 皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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番外編 絢瀬絵里に地元の方言で喋ってもらいたい

 前々から告知していました番外編です。今回は、作者が日頃話している方言で、絵里さんに話してもろらうっという、自己満足のお話です。作者の感化されやすい性格上、他県の方言も含まれますので、ご了承下さい。

 日頃、自分のお話を読んで下さっている皆さまには、不快な気持ちにしてしまうかも知れませんが、どうぞお付き合い下さい。

 また、設定としましては、絵里と侑はごく普通の高校生。補足として、絵里以外は、標準語。希は除く。

 では、番外編どうぞ


 街角から離れた裏路地に、学ランの高校生達が、一人の少年を囲んで、殴っている。殴られている少年は、学ランの高校生達とは違う他校の生徒。

高校生1「何だ?その目は!早く金よこせよ!」

高校生2「これ以上殴られたくないだろ?」

 ゲラゲラ笑い、殴る手を止めない。

???「ちょっと、あんた達。何しよるん!」

 彼らの背後で女性の声。学ランの高校生達は後ろを振り返った。そこには、金髪の髪の女子生徒が立っている。

???「侑もやられっぱなしで、少しは、やり返しよ!」

 侑と呼ばれた男子高校生は、ちょっと涙目。

侑「でもさ、俺は暴力苦手なの知ってるだろ?絵里」

 絵里と呼ばれた女子生徒は、腕組みし、溜め息を付いた。

絵里「そんなんやけん、やられるんよ。男やろ?がんばりよ」

 絵里にそう言われた侑は、仕方なく、学ランの高校生達を殴り倒す。

侑「先に手を出したのは、君達だから。一応、正当防衛でお願いします。」

 何故か丁寧にお辞儀をして、侑は絵里に側に駆け寄った。

侑「それじゃ、行こうか。」

絵里「うん」

 手を繋ぎ、二人はその場を去った。

 

 

 

 

 絵里の住むマンション

 

 

 

 

 キッチンで絵里が紅茶を淹れる。侑は、亜里沙とトランプゲームをしていた。二人の前にティーカップを置いていく。

侑「絵里もトランプする?」

絵里「う~ん、まだ片付けが終わってないけん、遠慮しちょく」

亜里沙「お姉ちゃん、たまには私がするよ。」

 亜里沙の言葉に、考える絵里。

絵里「じゃ、お願いね」

 絵里言われた亜里沙は、満面な笑顔でキッチンに向かった。侑と絵里は、大富豪を始めた。しばらくして……

 

侑「また、絵里に負けた……」

絵里「もうやめよう。侑、負けてばっかりやと、面白くないやろ?」

侑「そんな事ない。絵里とする事は何でも楽しいよ」

絵里「本当?」

侑「ああ、本当だ」

 絵里は侑にぴったりと寄り添い、頬に口付けをした。侑は、絵里の頬に優しく触れると、今度は唇に口付けをする。それを、キッチンで見ていた亜里沙。頬を染めて、静かにその場を離れたが、二人はその事に全く気付かず、二人の世界に浸ったのだった。

 

 

 

 

 数日後

 

 

 

 

希「絵里ち、毎日侑君とラブラブやて?亜里沙ちゃんに聞いたで」

絵里「秘密にしちょって、って言ったんに、亜里沙のお喋り」

 赤面した顔を両手で隠す絵里。希はそんな絵里を指先でつつく。

絵里「もう、希。そんな事せんで!」

希「ええやん!」

 しばらく希に弄られた絵里。メンバーも、二人のやり取りを笑って見ていた。急に絵里の携帯が鳴る。どうやら、メールだったようだ。メールの内容を確認する絵里。笑顔だった表情が、怒っていた。

絵里「ええ、なして?約束が違うやん!」

希「どしたん?」

 絵里の言葉に、希は絵里の携帯を覗き込む。そこには、メールの内容が。侑からだった。

 

侑『ごめん、今日一緒に帰れないから、先に帰って』

 

 希は絵里の顔を確認する。涙目の絵里。希は黙って、絵里の背中を撫でた。

 帰り道、侑からまたメールが来る。絵里はメールを見た。そこには。

 

侑『神田明神に来て』

 

 その一行のみ。絵里は足早に神田明神へ向かった。息を切らし、階段を駆け上がる絵里。登りきると、侑がこちらを向いて立っている。乱れた呼吸を整え、絵里は侑の方へ歩を進めた。

絵里「侑、どしたん?急に呼び出して。何かあったん?」

侑「絵里、話がある」

 神妙な面持ちの侑。絵里は固唾を飲んだ。

 

絵里(……もしかして、別れ話?)

 

 侑が絵里に近付く。絵里は、緊張した。

侑「絵里」

絵里「別れたいとか言わんよな?嘘っち言ってよ。」

侑「??絵里、いきなり何の話か、分からないけど」

絵里「ええ!別れ話じゃない?だって、侑が難しい顔しちょるから、てっきり」

侑「違うよ。いつも絵里の事しか考えられないのに、別れるなんてあり得ないだろ!」

 真っ赤な顔で侑は言う。絵里は安堵した。すると、侑は手に持っていた小包を差し出す。

絵里「何これ?」

侑「ペアリング、開けてみて」

 侑に言われ、箱を開ける。中には、同じデザインのシルバーリング。内側には、ハートマークに絵里のEと侑のSが彫られていた。

侑「絵里、これからも一緒にいて下さい」

絵里「はい」

 夕陽で赤く染まる神田明神に、二人の影が一つに重なる。

 

 

 

 

 次の日

 

 

 

 

侑「絵里は、俺のどこか好き?」

 唐突に質問してくる侑。絵里は頬を染めて。

絵里「そんなん、聞かんで。」

侑「いや、気になる。教えて」

絵里「……本当は喧嘩強いのに、優しいとことか、時折男になるところ」

侑「ふぅ~ん」

絵里「侑の事、全部好きやけん、もう、いいやろ?これ以上聞かんで。恥ずかしいけん」

侑「もっと、聞きたい」

絵里「もう言わんけん!絶対、言わんけんな!」

 二人のやり取りは続く。




 今回は、ただひたすら、暴走する絵里、先走る絵里等作者の見てみたかった絵里を書いてみました。本当は、もう少しイチャイチャさせたかったのですが、なかなか、方言での表現が難しい。次回は本編に戻ります。

 活動報告にも上げましたが、最終話をアンケートで募集しています。ハッピーエンドorアンハッピーです。皆さまのご意見をお待ちしております。


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二つの心

 さて、今回はちょっと際どいイチャイチャが出てきます!何故、このタイミングで?っと、思われるかも知れません。なんと言いますか、書きたかったんです。ただそれだけです。

 では、続きをどうぞ


 真っ暗な公園が、昂の放つ雷で明るくなる。衝撃波で、侑の身体は吹き飛び、木にぶつかる。

堕天使「グアアァ!」

侑「ぐぅっ!!」

 侑の口から二つのうめき声が出る。そして、その場にぐったりと崩れ落ちた。

絵里「侑!!」

昂「絵里さん、駄目だ!」

 絵里は、昂の制止を振り切り、侑の元へ駆け寄る。苦痛で顔が歪む侑。絵里は侑の頬に触れ、頭を優しく胸元に引き寄せる。いきなりの出来事に侑と堕天使は絵里を見上げた。

侑「絵里、何してる!俺から離れろ!」

堕天使「……オレハ、オマエヲコロス」

 左手が絵里の首を掴む。それでも絵里は侑を離さない。右手が絵里の首を掴んでいる左手を掴み、引き剥がそうとする。そんな状況の中、絵里は左手を優しく撫でる。びくりと反応する侑の左手。掴んでいた首を離し、絵里の頬に手を伸ばした。

 次の瞬間、周りが騒がしくなる。どうやら、昂が放った雷を、爆発物と勘違いしたようだ。消防車やパトカーのサイレンが聞こえてくる。

昂「侑、このままだとマズイ!一先ず、場所を変えよう!」

侑「どこへ行くつもりだ?場所を変えても、また周りが騒ぎ出すぞ!それに組織に見つかったら」

 二人が悩んでいると、絵里がどこかに電話していた。

絵里「私について来て」

侑「どこに行くんだ。」

絵里「私が通っていた学校よ。良いから早く」

 絵里に促され、侑と昂は絵里と一緒に走った。

 

 

 

 

 音ノ木坂学院~アイドル研究部部室~

 

 

 

 

絵里「ここなら、誰も来ないわ。」

 そう言って絵里は部室の中に入る。侑はゆっくりと同じ様に入り、昂も入った。

侑「絵里、コイツに命を狙われているのが、分からないのか」

 侑の目は左右違う。右側は金色、本来の侑の色だ。しかし、左側は真っ赤な色をしている。その目は、ずっと絵里だけを捉えて、他に見向きもしない。

侑「今、コイツは俺が何とか抑えているが、いつ動き出すか分からないんだぞ。」

 そんな事を聞いても絵里は普通に侑に触れた。しかも左側に。

絵里「どうして私を殺そうとするの?」

 絵里は問い掛ける。侑の中にいるもう一人の侑に。

堕天使「オマエハキケンジンブツ。ダカラ、コロス」

 話を聞いて、絵里はクスクス笑う。堕天使は戸惑った。

堕天使「ナニガオカシイ」

絵里「だって、私が危険人物なんて言うから」

侑「絵里、コイツに何を言っても駄目だ。」

 侑は絵里から離れようとする。それでも、絵里は侑の中にいる彼に話し掛けた。

絵里「私は、危険人物じゃないわ。貴方だって、本当は気付いているんでしょ?」

 微笑み掛ける絵里。真っ赤な目が揺らぐ。絵里が話をしようとした時、部室の中に入る数人の人影。それは、元μ,sのメンバー達だった。

絵里「あら、みんな。来たのね」

 にこやかに絵里は言った。

海未「こんな夜更けに電話してくるなんて、何か問題があったのですか?」

穂乃果「う~ん、眠いよ~」

ことり「穂乃果ちゃん、起きて~」

凛「あれ?絵里ちゃんの彼氏さんと、誰かにゃ~?」

花陽「ちょっと凛ちゃん。失礼だよ」

にこ「って言うか、絵里の彼氏。見た目が変じゃない?」

真姫「変じゃない?じゃなくて、変なのよ!」

希「絵里ち、説明してくれへん?」

 希の言葉に絵里は頷く。

絵里「ちょっと話が長くなるけど」

そう言って、絵里は今までの経緯を話したのだった。

 

 

 

 

海未「つまり、侑さんの中にもう一人の人格があるっと言うことですね?」

侑「……まぁ、そんなところだ。」

 金色の目が、メンバーを見た。その間も赤い目は絵里を見続けている。絵里はずっと左側の手に優しく触れていた。

ことり「お名前は?」

 ことりの質問に、ようやく左側の目が反応する。

堕天使「オレニ、ナナドナイ。タダ、ソシキニツケラレタ、ダテンシトイウナダケ」

 それだけ言うと、また絵里を見つめる。

侑「コイツは、組織の命令で絵里を殺そうとしている。だから」

 侑は立ち上がろうとしたが、左側が動かない。絵里の腕を掴んでいる。

堕天使「エリ」

 そう言った。そして、絵里を見つめたまま。

堕天使「エリガホシイ。エリヲダキタイ。」

絵里「っえ?」

侑「はぁ?」

 二つの反応が重なる。昂もメンバーも、一瞬何が起こったのか分からずにいた。

侑「お前、何言って」

堕天使「エリガホシイ。ツナガリタイ」

 言いながら、絵里の首筋にすり寄り、徐々に絵里の身体を押し倒そうとしていた。絵里は抵抗しない。

侑「ちょっと、絵里」

絵里「ごめん、侑。ちょっと黙って。昂さん、悪いんだけど、お願い出来るかしら?」

 絵里の言いたい事が理解出来た昂は、メンバーにその外に出るよう促す。

昂「二時間くらいで大丈夫かな?」

絵里「そうね……。多分、大丈夫よ。」

 早々に会話を終わらせ、昂は部屋を出ていった。絵里の身体は、床の上で横になっている。

侑「絵里、まさかコイツに抱かれるなんて言うなよ?」

 絵里の上に覆い被さったまま、侑は問う。

絵里「いけないかしら?」

侑「正気か?絵里を殺そうとしているヤツだぞ!」

絵里「そうね。でも、今は違うわ。」

侑「どうして、そんな事が言える」

 右側の顔が歪む。

絵里「だって、今の彼には殺意が無いもの。その証拠に、こんなに優しく触れてくれてる。」

 侑の左手は、絵里の頬を撫でている。

侑「……分かった。絵里がそこまで言うなら黙って引き下がるけど、でも、何か異変が出てきたら、分かっているな?」

絵里「ええ」

 そして、二人の唇が重なった。

 

 

 

 

 二時間後

 

 

 

 

 侑に呼ばれ、昂とメンバーが、部室に戻ってきた。部屋に入ると、乱れた髪と服を直している絵里の姿に、みんな顔を真っ赤に染め、視線を反らす。侑が床に座り込んだままの絵里に手を差し出した。

侑「立てるか?」

絵里「ちょっと力が入らないけど、多分。」

 足をガクガク震わせ、何とか立ち上がろうとしたが、力が入らず、侑に抱き抱えられ、そのまま侑の膝の上に座る絵里。その様子をメンバーはチラチラ見ながら、直視出来ずにいた。左手が絵里の胸元に向かう。それを絵里は優しく平手打ちした。

絵里「今はダ~メ。」

 そう言って微笑む絵里は美しかった。

 




 書いていて、とてもムフムフしていました。危うく、詳細を書きそうになり、危ない!危ない!さて、堕天使が絵里にゾッコンになったところで、次回は組織の目的が分かります。お楽しみに!

 お気に入り登録をして下さいましたgootyさん、ミロカロスとその少年さん、ユウキチさん、ありがとうございます。

 皆さまの叱咤激励を宜しくお願いします。


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組織の目的

 さて、いよいよ最終話が近付いてきました。侑と昂は、組織と決別出来るのか、それとも……。ラストまでお付き合い下さい。

 では、続きをどうぞ


 音ノ木坂学院~アイドル研究部部室~

 

 

 

 

 侑の膝の上に座っている絵里に、左手が何度も近付いて、その度に絵里が優しく。

絵里「もう、ダメって言っているでしょ?」

堕天使「モウスコシ、ツナガリタカッタ。ススムガジャマヲシタ。ダカラ」

侑「一回で良いだろ。」

堕天使「ススムハ、タクサンシテタ」

 今の言葉に、固まる侑。絵里も笑顔が凍り付く。昂とメンバーも顔を真っ赤に染める。

侑「してない!」

堕天使「イヤ、シテタ。オレガオモテニデテクルマエダ。シテナイナンテ、イワセナイ」

 二ヶ月前の話だった。初めて絵里と身も心も結ばれたあの日の事を、堕天使は言っている。

堕天使「ススムガタクサンスルノハ、ズルイ。オレモタクサンシタイ。」

侑「はぁ?俺と絵里は愛し合ってんだ。」

堕天使「オレダッテ、エリガスキダ。」

 二人の言い合いは続く。

侑「絵里は俺の事が好きなんだ!お前じゃない。」

堕天使「ソンナコトナイ。エリ、オレノコトモスキ」

侑「絵里がお前の事を好き?そんな訳!」

絵里「いい加減にしなさい!」

 絵里の声に二人は黙る。見れば、絵里の顔は笑顔。しかし、『視線を合わせれば殺される。』と錯覚させれる程、怒りが見える。

絵里「みんなが見てるのに、そんな話しないで。それから侑」

 絵里の視線は右目を見た。

絵里「私は、どっちが好きとかじゃないわ。彼を含めて侑が好きなの。だから、そんな風に彼に言わないで」

 真剣な表情の絵里。侑の目が、絵里のその表情を見つめている。一方の堕天使は、目を輝かせ、絵里の身体に触れた。絵里は、今度は左目を見つめ。

絵里「貴方も、もう少し考えて話す事。分かった?」

堕天使「エリ、オコッテイル?」

絵里「そうね、怒っているわよ。」

 その言葉で、しゅんと小さくなる。絵里は、左手に触れ。

絵里「でも、だからって、貴方の事が嫌いになった訳じゃないわ。ただ、侑と仲良くしてくれないかしら?」

堕天使「……ワカッタ。」

 絵里は堕天使に微笑む。ようやく、静かになった二人を見て昂は。

 

昂(……やっぱり、絵里さんは凄い。侑だけじゃなく、堕天使まで手懐けた。)

 

 昂が感心していると、絵里が昂に向かってこう話した。

 

絵里「正直に話して。侑も貴方も、何者なの?」

 その言葉で、部屋に一瞬、緊張感に包まれる。昂は侑を見た。侑も昂を見て、小さく頷く。意を決して、昂の口から明かされる侑と昂の秘密。

昂「元々、俺達は普通の人間だった。生まれた時は、両親もいて、ごく普通の家庭で育っていたそうだ。」

真姫「いたそうだ。って、どういう事よ」

 ずっと黙っていた真姫が口を開く。昂は真姫をチラリと見ると。

昂「知らないんだ。」

海未「知らないとは?」

侑「覚えていない。と、言った方が正しいかも知れない。俺と昂の両親は、事故で死んでいる。俺達がまだ幼い時に」

 絵里やメンバー達は一様に顔を見合せ、視線を落とした。

侑「気にしないでくれ。俺達自身、実感がないんだ。物心付いた時から組織にいたから」

 絵里が侑の手を握る。侑も握り返した。

侑「俺達は、生体実験され、ある細胞を移植されたんだ。それが、絵里やみんなが見た。あの姿だ」

堕天使「オレハ、ソノトキススムノナカデ、ウマレタ」

 絵里の腕に触れながら、堕天使は言う。

絵里「昂さんもそうなの?」

 絵里の質問に、昂は首を横に振り。

昂「俺は、生体実験だけなんだ。細胞を移植されたのは、侑一人だけ」

穂乃果「え?どうして侑さんだけなの?」

侑「俺は、他の奴らより、タフだったからかな」

 冗談混じりに侑は言った。冗談では笑えない。絵里の心は悲しみに染まる。

花陽「それは、悲しすぎます……」

 静かに聞いていた花陽は泣いた。

希「それで?その組織さんは、侑君達をどうするつもりなん?目的は?」

侑「…………組織の本当の目的は、殺戮兵器を造る事。つまり、殺人兵器を。俺は、その最初の一人だ」

 

 侑の発言に、その場にいた全員が、息を止めた。




 時間が遅くなりました……。お盆は忙しいです。やる事が多すぎて……。さて、組織の目的が分かったところで、何の為に、生体実験、殺人兵器を組織は造っているのか。侑と堕天使はこのままなのか。気になるところは多々ありますが、次回まで。

 作者の思い付き。
 絵里と侑のベッドシーン、知りたい。っと思い立ちまして、自己満足で申し訳ありませんが、官能を書きたいと思います。
 タイトルは
『絵里と侑、二人はあの時ナニをしていたか?』
 こちらの方は、完全に官能小説になりますので、ご了承下さい。因みに、数話だけの短編です。興味のある方は、是非ご覧下さい。


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対峙する思い

 さあ、今回は自分にも予測出来ません。侑と昂の覚悟次第で決まると思います。

 では、続きをどうぞ


 侑の告白に、絵里を含めμ,sのメンバーは息を止めた。絵里が愕然とした表情を見せる。

侑「今まで黙っていて、すまなかった」

絵里「…ほ…本当……なの?」

 震える声を抑え、絵里が聞く。侑はただ、無言で頷いた。泣き崩れる絵里。侑は絵里を抱き締めるしか出来ず、悔しかった。

絵里「……だから、1つの場所にとどまれないのね」

 泣きながら絵里が呟く。そして、疑問を口にする。

絵里「その手は、誰かの血で染まってしまったの?」

 その質問には横に振った侑。

侑「いや、まだ誰の命も奪ってはいない。俺はまだ、実験の途中なんだ」

絵里「どういう事?」

堕天使「ホンライ、ススムノジンカクハ、オレニキュウシュウサレルハズダッタ」

侑「人としての人格がある以上、人が人を殺す事は、道理に反するからだ。」

希「つまり、侑君がおる以上、殺人兵器としては、欠陥品ちゅうこと?」

 頷く侑。

凛「でも、それっておかしくないかにゃ?」

花陽「凛ちゃん、何がおかしいの?」

凛「だって、殺人兵器を造る時点で、道理に反してるにゃ」

海未「それは言えています。恐らく、違うのではないでしょうか。」

昂「なら、組織の目的は違うって事か?」

海未「あくまで、可能性を言っているのです。」

 そこまで話を聞いて、侑と昂は顔を見合わせた。

昂「俺達は、ずっとそう教えられてきた。殺人兵器として。でも、本来の目的が違うなら、俺達は何の為に産み出されたんだ?」

侑「分からない。でも、それを解決するには」

侑・昂「組織の長に直接会うしかない」

 力強く頷く二人。絵里が侑の頬に触れる。侑が絵里の

身体を抱き締めた。

昂「俺も彼女作ろうかな」

 羨ましい顔をして昂が愚痴る。そんな彼を見つめる一人のメンバー。昂は気付かずにいた。

 

 

 

 

絵里の住むマンションにて

 

 

 

 

亜里沙「侑さん、お久しぶりです。」

 天使の様な笑顔で、絵里と侑を出迎える亜里沙。

侑「久しぶりだな。」

亜里沙「ちゃんと、お姉ちゃんと仲良くしてますか?」

侑「ああ、仲良くして」

 亜里沙と話すと、絵里が後ろから背中を叩いた。振り向く侑。絵里は不貞腐れた顔でキッチンへ向かう。

亜里沙「お姉ちゃん、ヤキモチかな」

 そんな事を、言いながら亜里沙は自分の部屋に入っていった。玄関に立ち尽くす侑。しばらくして、侑はそろりとキッチンへ向かった。

 キッチンでは、不機嫌そうに朝食を作る絵里。

 

侑(寝ずに朝になったから、疲れているのか?)

 

 そう思い、絵里の側に近付く。絵里はくるりと振り向き、侑に包丁を突き付けた。驚く侑。

絵里「さっき、亜里沙と仲良く話してたわね」

侑「ん?ああ、久しぶりだったからな。挨拶しただけだぞ?」

絵里「ふ~ん、そのわりに、ちょっと鼻の下が伸びてたわよね?」

 侑は、絵里が何を言いたいのか分からない。

堕天使「エリ、オレハエリノコトダケミテル」

絵里「うん、ありがとう。貴方は私の事よく見てくれてるものね」

 堕天使の時だけ、微笑む絵里。侑は訳が分からない。

侑「絵里、どうして怒っているんだ?」

絵里「知らないわよ。もう一人の貴方に聞いたら?」

 そう言って、絵里は侑に背を向け、朝食作りを再開する。

 

堕天使『侑はもっと絵里の気持ちを考えた方が良い』

 

 そう話しかけられる侑。侑は溜め息を付いた。

 

侑(考えているさ)

堕天使『考えているなら、絵里がどうしてあんな態度を取るのか分かっているんだな?』

侑(……)

堕天使『絵里は、俺だけじゃなくて、お前にもちゃんと自分を見て!って、思っている』

侑(我が儘か)

堕天使『侑、女はな。好きな人の前だと我が儘になるんだ。それがどういう事か、分かるか?』

侑(分かんねぇよ……)

堕天使『それはな。本当の自分を。全てをさらけ出した自分を、好きな人には知ってもらいたいって。お前だって、同じだろ?』

侑(……分かったよ。)

 

侑「絵里、俺は絵里しか愛せない。絵里だけがいれば、それだけで」

絵里「なら、約束して。私だけを見て」

 絵里の言葉に侑は頷いた。




 次回は、組織の長に会いに行きます。組織の目的は他にあるのか?お楽しみに!

 さて、昨日お話した官能小説『絵里と侑、あの時二人はナニをしていたか』を投稿しました。興味がありましたら、是非ご覧下さい!本編の書ききれなかった絵里の気持ちが分かります。さらに、堕天使とのムフムフも書くので、宜しくお願いします。


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組織の狙いは……

 いよいよ、あと2話くらい?で、ラスト……
 
 では、続きをどうぞ


 とある田舎の山奥

 

 

 

 

 侑と昂は、組織の幹部達を含め、同僚のメンバーに囲まれていた。二人の周囲は、ネズミ一匹すら逃げられない。

幹部B「わざわざ、殺される為に帰ってきて、お前達には呆れる」

侑「あんた達に話はない。聞きたくもない。」

昂「組織の長に話がある。そこを退けよ」

幹部C「そんな事を聞かされて、『はい、どうぞ。』と、簡単に通すと思うか?」

 そう言って、指を鳴らす幹部。すると、侑と昂の様に、組織の人間達がみな、変幻していく。あるものは、頭が蛇の様な姿。あるものは、鮫の様な身体を。また中には、侑と同じ様に、翼をはためかせ、空に浮く者。

 侑と昂も変幻し、臨戦態勢をとる。

幹部A「今なら、まだ許してやるぞ。ただし、二度と陽の目は見れないがな!」

侑「……冗談、誰が許しを乞うか!昂、行くぞ!」

昂「ああ!侑、背中は任せたぞ!」

 そして、二人の真実を知る為の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 三時間後

 

 

 

 

 二人の身体はボロボロだった。全身はいくつもの傷があり、流血も所々ある。満身創痍でも二人は立ち続けた。

幹部A「そろそろ諦めろ。我々の元に戻れば、命の保証はしてやる」

 幹部達が含みをもたせ言う。侑は苛立った。

侑「……長に会わせろ!」

昂「俺達は、長に話があるんだ!」

 組織に捕らえられる二人。すると、部屋の奥から歩く足音がこちらへ向かってくる。それは、組織の長だった。

幹部B「長、ようやく二人を確保出来ました」

組織の長「うむ、ご苦労」

 侑はもがき、拘束を解こうとするが、身体ごと押さえ付けられ動けない。昂も同様だった。

侑「あんた達の本当の目的は何だ!」

組織の長「お前達を殺人兵器にし、この国を我々の手に」

昂「本当に、それが目的か?本当は、別の狙いがあるんじゃないのか!」

 二人の剣幕に、長は無言。

侑「俺達を生体実験して、この国を自分達の手にするのが、本当の目的とは、俺は思えない。本当の目的は何だ!答えろ!」

組織の長「……なら、堕天使よ。お前は分かるか?私の目的が」

 長の目が侑を見据えた。侑は無言で睨む。

組織の長「この国は、いや。この世界は、最早長続きはしない。互いに殺し合い、世界を壊し、行き着く先は、自らの破滅のみ。そんな世界に私はうんざりしているのだ。」

 長は、二人の拘束を解くよう指示を出す。拘束を解かれ、侑と昂はゆっくりと身体を起こし、ふらつきながらも立ち上がる。

組織の長「堕天使、サンダーよ。新たな世界を我々と共に築く意志はあるか?」

侑「どういう意味だ」

 その質問に、長は薄ら笑いを浮かべ、言葉を続ける。

組織の長「全ての人間を殺し、新たな世界を創る。我々の新たな世界を。その為に、お前達を造ったのだ」

 侑の目の前が暗くなる。昂も、同じ様に意識が落ちそうになっていた。

侑「全ての人間を殺す?絵里も、絵里も消すと言うのか?」

組織の長「堕天使よ。お前は、毒されてしまったのだ。その女を探して、殺せ」

 長は、幹部達に命を下す。幹部達が一斉に動いた。侑の横を数人の組織の人間が通り過ぎる。無言で立ち尽くす侑。

 

堕天使・侑「絵里はコロサセはしない!オレガ、俺達が!絶対ニマモル」

 

 その言葉と同時に、侑の姿に新たな変化が起きた。




 さて、侑と堕天使の様子に変化が起きたようです。この後、どうなるのかは、次回をお楽しみに!


 お気に入り登録して下さいましたぬしまちさん、ネギさん、ありがとうございます。


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最終話 ~新たな未来、繋がる命~

 最終話です。あっという間でしたが、なんとか形に出来ました。

 では、続きをどうぞ


 侑と堕天使の言葉が重なる。互いの思いは、たった一つ。絵里を愛し、守り抜く事。その思いが二つの意思を一つへと結び付ける。そして、それは姿すらも変化させていた。真っ赤な瞳と金色の瞳は、混ざり合い、絵里のカラーである水色へと変化し。漆黒の翼は、真っ白な雲の様に純白へ。

侑・堕天使「エリには、指一本フレサセナイ。」

 翼をはためかせ、跳躍する侑。空気を切る音が部屋に響いた。昂の目に、侑の姿が映らない。残像だけの侑が、組織の幹部達の首を切り裂く。

昂「侑、そんな事しては駄目だ!絵里さんとの約束を忘れたのか!」

 昂の声は侑の耳に届いていた。絵里との約束それは。

 

 

 

 

 ヤキモチをやいたあの日の事だ。絵里は、二つの約束を侑と堕天使にさせていた。一つは『私だけを見て』と言ったあの約束。もう一つは『その手を誰かの血で染めないで』。侑と堕天使は、その約束に『分かった』と、頷いた。昂も、その約束の事を知っている。だが、絵里の約束は守れない。

侑・堕天使「ワカッテイル。でも、ダメなんだ。昂、分かるダロ?オレタチニとって、絵里はなくてはならないソンザイなんだ。だから」

 次々に組織の人間を殺し、部屋中に幾つもの死体が転がる。

侑・堕天使「キレイ事では、大切なヒトハ守れないんだ。絵里、ごめん。」

 侑と堕天使は、墓場まで持っていくと決めた。昂も侑達の覚悟を感じ取る。自らも力を使い、侑の援護をしていく。組織の長が悲鳴を上げ、逃げ惑う。その逃げ道を、昂は塞ぎ、侑は背後に立つ。

組織の長「お前達、分かっているのか。私を殺せば、お前達の身体は元には戻せないぞ!それでも良いのか?」

昂「……本当は戻せないだろ?」

侑・堕天使「例え、戻る事がデキタとしても、オレタチハお前ヲコロス。」

 侑が飛び上がり、組織の長の肩に飛び乗ると、そのまま首をへし折った。長の身体がビクビクと痙攣を起こす。眼球もグルリと左右違う動きをして、絶命した。

昂「侑、本当にこれで良かったのか?」

侑・堕天使「アア、これでヨカッタんだ」

 二人は幾つもの死体を見渡し、その場を後にした。

 

 

 

 

 五年後

 

 

 

 

 緑が生い茂る草原を、金色の髪に、金色の瞳の男の子が走り回っている。男の子と同じ金色の髪の女性が、ベビーカーを押しながら、男の子を見守っていた。

???「真、あまり遠くに行くなよ!」

 金色の髪の女性の横に、左右の瞳の違う男性が、男の子に声を掛けた。

???「……あ、今。お腹が動いたわ」

 金色の髪の女性が、そう言ってお腹を触る。そのお腹は、ふっくらとしていた。

???「絵里、本当か?」

絵里「ええ、ほら。侑触って」

 そう言って、侑の手を自分のお腹に当てた。トントンと叩いているような感覚が手に伝わる。

侑「本当だ。元気そうだな」

絵里「そうね。……ねぇ、侑」

侑「ん?どうした?」

絵里「……次は男の子と女の子、どちらだと思う?」

 そう言って微笑む絵里。侑は考える仕草をして。

侑「ん~、そうだな……。元気な子なら、どっちでも良いな」

絵里「貴方はどっちが良いの?」

堕天使「オレモ、ススムトオナジダナ」

 絵里の質問に、真っ赤な瞳の彼もそう言う。

絵里「……なんだか、面白くないわね。」

 絵里は不貞腐れながら、ベビーカーの子を抱き上げた。まだ、髪が生え揃っていない髪は金色の赤ん坊。目蓋を少し開ける。真っ赤な瞳が、絵里を見つめ、笑った。絵里と侑、そしてもう一人の彼は微笑み合う。穏やかな日差しの中、三人は幸せな時間を過ごした。

 

          ~終わり~




 さて、本編は一先ず終わりました。どうでしたか?自分的には、もう少し、考えたかったのですが……。表現力が乏しい。まだまだですね。とりあえず、次回はアンハッピーの方を書きます。

 お気に入り登録して下さった方々の名前を書きそびれてしまいました。次回の方に上げさせて頂きます。ご了承下さい。


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番外編 ~もう一つの終わり~

 前回からのもう一つの終わりです。アンハッピーの方です。

 では、続きをどうぞ


 侑と堕天使の言葉が重なる。互いの思いは、たった一つ。絵里を愛し、守り抜く事。その思いが二つの意思を一つへと結び付ける。そして、それは姿すらも変化させていた。真っ赤な瞳と金色の瞳は、混ざり合い、絵里のカラーである水色へと変化し。漆黒の翼は、真っ白な雲の様に純白へ。

侑・堕天使「エリには、指一本フレサセナイ。」

 翼をはためかせ、跳躍する侑。空気を切る音が部屋に響いた。昂の目に、侑の姿が映らない。残像だけの侑が、組織の幹部達をなぎ倒していく。

侑・堕天使「お前タチヲ殺したいトコロダガ、エリの為に、イノチだけは取らない」

 侑と堕天使が言っている絵里との約束それは。

 

 

 

 

 ヤキモチをやいたあの日の事だ。絵里は、二つの約束を侑と堕天使にさせていた。一つは『私だけを見て』と言ったあの約束。もう一つは『その手を誰かの血で染めないで』。侑と堕天使は、その約束に『分かった』と、頷いた。部屋を縦横無尽に飛び回り、侑と堕天使は次々に組織の人間を、急所を外し倒していき、数分後。部屋には負傷した者達で埋め尽くされた。その光景を、侑と昂は見渡し、部屋を出ていった。

 

 

 

 

 絵里の住むマンションにて

 

 

 

 

 侑と昂が絵里達が待っているマンションの前に立つ。

昂「これで終わったのか」

侑「ああ、終わった」

 呆然に立ち尽くす二人。すると、マンションから絵里が、二人の元に駆け寄ってきた。

絵里「お帰りなさい」

 微笑む絵里。侑が腕を広げ、絵里を抱き締めようとした。その時。

絵里「……ぁぁ」

 絵里の腹部から、真っ赤な血で染まった手が生えて、絵里の内臓を引き抜く。一瞬、何が起こったのか。侑と昂は分からず、絵里は二人を見つめたまま、その場に崩れ落ちた。

絵里「……す…侑…」

 手を差し出す絵里に、侑はそのまま立ち尽くしていた。侑の左手が絵里の手を掴む。

堕天使「エリ、ダメ。オレヲヒトリニシナイデ」

 堕天使の言葉で、侑もようやく絵里の手を取った。

侑「どうして、約束を守ったのに!」

絵里「……ありがとう、約束……守って…く…れて」

 次第に声が小さくなる絵里。侑と堕天使は涙を流す。

絵里「……ご…めん…なさい。………私…」

 絵里の手が二人の手から零れ落ちた。刹那、絵里の命を奪った者を、侑達は掴んだ。

侑・堕天使「エリの約束をヤブッテでも、お前タチヲ殺せばヨカッタ」

 それだけ言うと、侑達は相手を絶命させる。首を引きちぎり、ズタズタに切り裂いた。そして、無言のまま去っていく。昂はそんな侑に声すら掛けれず、絵里の側に居続けた。

 

 次の日

 

 絵里の葬儀がしめやかに執り行われた。参列者の中に、元μ,sのメンバーと昂の姿があったが、侑の姿はなかった。

真姫「侑さんは、絵里の葬儀に来ないの?」

 昂にそう話す真姫。昂は首を横に振り。

昂「分からない。ただ、あいつらにとって、絵里さんが全てだった。それだけは言えるよ」

 数日後、風の噂で田舎の山奥で無数の切り裂かれた死体が出た。という話が、昂達の耳に届いた。

 

 

 

 

 樹海の中

 

 

 

 

侑・堕天使「エリ、どこにカクレテいるんだ?」

 精神崩壊した侑と堕天使。二人は幻覚を見続ける。そこにはいる筈のない絵里が、微笑みながら二人から離れていく。二人は、その幻覚を追いかけながら、その身が朽ち果てるまでさ迷い続けた。

侑・堕天使「……絵り…」

 

 

          ~終わり~




 さて、アンハッピーの方も終わりました。書いてて悲しいです……。

 お気に入り登録して下さいました神崎焔さん、ラピスラズリさん、ありがとうございます。
 ラピスラズリさんのお名前が、なかなか出ず、片仮名表記で申し訳ありません。自分の脳ミソじゃ出てこない。本当にごめんなさい!

 本来なら、ここで完結なのですが、実はアクセス数が結構あったので、次回は特別編をお送りします。


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特別編~昂の運命の人は~

 昨日、お知らせしましたが、UAが3000を越えていまして、びっくりしたので、特別編をいきなりですが、お送りします!

では、特別編をどうぞ


 組織を壊滅させてから、二年後。昂はある大学の廊下を歩いていた。華やかな私服を着た学生達の間を、薄緑の作業服に身を包んだ昂。普段見慣れない作業服を着た人物に、学生達はみな、注目する。ただ、それだけはない。その作業服を着た人物がイケメンだった事で、さらに注目の的だった。昂がある扉の前に立つ。『第23号 研究室』と書かれたプレートの付いている扉。その扉を昂はノックする。研究室の中から。

???「どうぞ」

 女性の声が返事をした。

昂「失礼します」

 その一言だけ言うと、昂は部屋の中に入った。部屋の中には、幾つもの棚や研究に使用する道具。また、鍵付きの棚には、持ち出し禁止の薬品が沢山置かれていた。昂はそれらを見る事なく。

昂「……すみません。空調の修理に来ました。佐階電機の者ですが」

 目の前で電子顕微鏡を覗いている白衣姿の赤い髪の女性に声を掛けた。

???「っあ、ご苦労様です」

 そう言って振り向く赤い髪の女性。昂はその女性と目を合わせると、固まってしまった。

昂「……あれ?君は…」

???「貴方、絵里の旦那さんのお友達の」

昂「佐東昂だ。自己紹介した事なかったよな」

 赤い髪の女性は大きな目を見開いて。

???「ええ……、そうね。私は西木野真姫よ」

 

 

 

 

 

 彼女との出逢いは、今から二年前。侑が絵里さんと出逢った頃に遡る。最初に逢ったのは、海の家での事だった。絵里さんが、当時活動していたスクールアイドルのμ,sのメンバーが溺れて、それを助けた時。侑と介抱する家を貸してくれたのが彼女である。彼女の家は、裕福らしく、別荘を幾つも所有していた。その時の昂は、彼女の事を特に気にも留めていない。

 次に出逢ったのは、侑が堕天使に身体を乗っ取られて、絵里さんを殺そうとし、昂の雷の打撃で、弱ったところ、周りが騒がしくなった為に、当時絵里さんが通っていた高校の部室で、彼女と逢った。あの時は、堕天使と絵里さんが、急にエッチな状況になったのには、正直昂は狼狽えたが、何とか上手くμ,sのメンバーを部室から遠ざけた。しかし、静かな校舎だ。絵里の甘い声が、時折聞こえて、恥ずかしい思いをした。その時の昂は無意識に反応する身体を隠すのに必至だったが、それを彼女に見られて、痛い程の冷たい視線を向けられたのを覚えている。

 

 

 

 

真姫「……ちょ…、…ちょっと、聞いてるの?」

 言われて我に帰る昂。

昂「ああ、ごめん。考え事してて聞いてなかった。」

真姫「もう、しっかりしなさいよ」

昂「ははは…」

 真姫の言葉に、作り笑いをする昂。真姫は溜め息をつく。

真姫「それで?直せるの?」

昂「そうだな、まずどこが悪いのか、確認してからじゃないと。あの空調?」

 言いながら指を、一基の空調を指す。真姫は無言のまま頷いた。それを確認すると、素早く作業に取り掛かる昂。初夏の気温は、夏本番に比べると、高くはないが、締め切った部屋の中だと、やはり暑い。作業を開始してから数分で昂の額は汗が滲み、首筋を伝う。真姫はそんな昂の姿を後ろからじっと見つめていた。

昂「そんなにじろじろ見られると、やりにくいんだけど……」

 昂はタオルで汗を拭いながら、振り返る。

真姫「……べ!別に、そんなつもりじゃないわよ!」

 真っ赤な顔で視線を反らす真姫。昂は不思議そうに真姫を見ると、作業を再開した。

 

 それから数分後

 

昂「直ったぞ」

 作業を終えて、真姫に声を掛ける昂。真姫は電子顕微鏡を覗いていた。研究に集中する真姫。昂の声が聞こえていない。昂は仕方なく、真姫の耳元で声を掛けた。

昂「空調、直ったぞ」

真姫「…うぇっ!?」

 いきなり声を掛けられて、声が上ずる真姫を、昂はクスクス笑う。

真姫「……ちょっと!笑わないでよ!急に声を掛けられてびっくりしただけなんだから!」

 真っ赤な顔で、何故か弁解する真姫。

昂「悪かったよ。……空調、直ったから俺は帰るから」

 そう言って昂は部屋を出た。しばらく、来た道を戻っていると、後ろから走ってくる足音が聞こえた。

真姫「待って……、えっと佐東さん」

昂「昂で良いよ」

真姫「…………の、昂」

 口ごもる真姫。真っ赤なトマトより、さらに真っ赤な顔で、白い紙切れを渡す。

昂「……何これ?」

 受け取り、中を見ると携帯の番号が書かれていた。

真姫「…………私の携帯番号」

昂「っえ?」

 いきなりの事に、昂は反応出来なかった。真姫は真っ赤な顔で、昂を睨み付け。

真姫「……電話しなさいよ!」

 そう言って走り去っていった。

 




 昂と真姫のお話でした。このお話、実は続きがありまして、次回も特別編でお送りします!宜しくお願いします。


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特別編~昂の恋の行方~

 今回は、昂が真姫への恋心を自覚するか?です。

 では、続きをどうぞ


 真姫は、両親が経営する病院へ行く事が多い。今日もいつもの様に、病院へ向かった。向かう先は、大体院長室である。真姫が扉をノックすると。

???「は~い」

 少し脱力感のある女性の声が聞こえ、真姫は中へ入った。院長が座る椅子に誰が座っている。その横では、先程の声の主、真姫の母親が立ったまま、パソコンのモニターを覗き、手を叩いている。

真姫母「まぁ~、凄~い!そんな事も出来るのね」

 パソコンの前には、院長用の椅子があるが、誰か分からない。真姫母は、その誰かの肩を優しく叩き、嬉しそうに笑っている。真姫は怪訝な表情で母を見た。

真姫母「あら、真姫ちゃん。来てたのね。」

 にこやかに微笑む真姫母。そして、さらに続ける。

真姫母「ちょっと見て!病院のホームページを作ってもらったの。凄いのよ!」

 そう言って、真姫の手を取ると、パソコンの前に連れて行く。モニターの前に、座っていたのは、昂だった。

真姫「あ、貴方…」

 真姫の驚きの表情に、真姫母は真姫と昂を交互に見て。

真姫母「あら、真姫ちゃん。知り合い?それとも、ボーイフレンド?」

 母の言葉に、真姫は少し頬を染め。

真姫「…べ…別に、そんなんじゃないわよ!」

 顔を真っ赤に言う。

真姫「って言うか、どうして貴方がここにいるの?」

昂「俺は仕事の依頼でここにいるんだけど?」

真姫「ママ、本当なの?」

 真姫は母を見る。母は不思議そうに頷いた。

真姫「……どうして、電話してくれないの?」

 真っ直ぐ昂を見つめる真姫。昂は少し考えてから。

昂「……いや、特に用事とかないし。それに、俺達そこまで親密だっけ?」

真姫「……それはそうだけど、電話してくれても良いじゃない」

昂「そう言われてもなぁ…」

 頬を軽く掻く昂。真姫も言葉が続かない。そんな二人を交互に見た母。

真姫母「なら、こうしましょ。今から二人で、デートしてきたら?」

昂「……はぁ?」

真姫「……うぇ!?」

 母の言葉に、二つの反応。真姫は真っ赤な顔に口をぱくぱくし、昂は頭を掻いた。

昂「……分かりました。とりあえず、この作業が終了してからで宜しいですか?」

真姫母「ええ、構いませんよ。お願いします。」

 そう返事して、母は真姫の耳元に口を近付ける。

真姫母「……真姫ちゃん、彼の事好きでしょ。」

 母の言葉に狼狽える真姫。母はウィンクして。

真姫母「真姫ちゃん、頑張ってね」

 エールを贈る母。真姫は挙動不審だった。

 

 

 

 

 どこかの遊歩道

 

 

 

 

 仕事を一段落させて、昂は真姫と歩道を歩いていた。真姫は、昂の一歩後ろを同じ速度で歩いている。ここに来るまで、二人に会話はなく、沈黙のままだった。突然、立ち止まる昂。真姫はそれに気付かず、昂の後ろにぶつかった。

真姫「……どうしたの?」

 真姫の質問に、昂は反応しない。ただ、ずっと立ち止まっている。昂を視線を追って見ると、前から絵里と侑が歩いてこちらに向かって来ていた。真姫は咄嗟に隠れる。すると、前から来ていた侑が気付いた。

侑「おう、昂。仕事お疲れ」

昂「ああ、侑も終わったのか」

侑「終わって、今から買い物だ」

 言うと、絵里がまだ幼い真を抱っこしていた。

絵里「昂さんも、、今からデートかしら?」

 そう言って、微笑む絵里。すると、昂が真姫の手を取り、前に引っ張った。

絵里「あら、誰かと思ったら真姫じゃない!……え?もしかして、デートの相手は真姫なの?」

真姫「……ち、違うわよ!」

 何度目の赤面顔をしているのか、真姫の顔から蒸気が見えそうだった。あたふたしている真姫を、昂の手が頭を撫でる。真姫は硬直して、動かない。

昂「俺達、結婚を前提に付き合い始めたんだ」

 その言葉に、昂以外の侑、絵里、真姫が一瞬、固まった。

真姫「……な、何言ってるの!?そんな訳」

昂「照れなくて良いから」

 真姫の手を繋ぎ、真姫に笑顔を向ける昂。しかし、その表情はどこか違和感を感じる。

真姫「……貴方」

昂「それじゃ、俺達これから行く所があるから」

侑「そうか、デート楽しんで来いよ」

 真姫を引っ張って、昂はその場を後にする。真姫はただ無言で付いて行くしかなかった。

 

 

 

 

真姫「ねぇ。、さっきのはどういう事よ?結婚を前提に付き合いしてるとか。」

 昂の手を振り払い、真姫は昂に詰め寄る。昂は真姫を見ない。

真姫「答えなさいよ!」

昂「……別にどうでも良いだろ?」

真姫「良くないわよ!」

昂「五月蝿いな、あんたに関係ないだろ」

 言葉を聞いた瞬間、真姫が昂を平手打ちする。

真姫「……貴方、最低ね」

 そう言って、去っていく真姫。その時、真姫の目に涙が流れていた事に、昂は気付いていた。




 何やら昂には、問題があるようです。

 お気に入り登録して下さいました木村りょうまさん、plastrayさん、ルインローさんありがとうございます!


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特別編~昂の想いは~

 今回、どうなるのでしょうか……

 では、続きをどうぞ


 真姫とあのまま別れてから、自宅のあるアパートに帰る昂。玄関に入ると、溜め息と共に疲労感が襲う。昂はベッドに向かう気力もない。そのまま、床で寝ていた。

 

 数時間後

 

 携帯の着信音で目を覚ます昂。ディスプレイには、侑の名が出て、昂は脱力した手で、携帯を取り、電話に出た。

侑『昂』

昂「……何?」

侑『お前、寝てたのか』

昂「ああ、んで?何?用件は?」

 昂の対応が冷たく感じたのか、侑の声のトーンが一つ下がる。

侑『お前、絵里の友達泣かせたろ』

昂「泣かせてないよ。何?彼女が言ってきたの?」

侑『いや、絵里も友達も何も言ってきてないが』

昂「んじゃ、何?」

侑『……いなくなったんだよ』

 侑の言葉に、一瞬思考が止まる昂。

昂「……は?え?いなくなったって、誰が?」

 電話の向こうでは、侑が溜め息を付いている。

侑『真姫ちゃんだよ。家に帰ってないって、絵里の友達が、絵里に連絡してきたんだ。最後に会ったのお前だろ』

 その後の侑の言葉が、頭に入ってこない。昂は、無意識に携帯片手に外に出た。闇雲に探したところで、見つかる訳がないのに、昂はがむしゃらに走り探す。

 

 

 

 

 ふと、街外れに見える小高い丘が目に入った。昂はその丘へ向かう。標高は数百メートル位か、小さな丘。昂はその丘の頂上へ続く道を歩く。丘の頂上には、街並みが一望出来る場所がポツリとあり、ベンチが一つあった。そこに一人の女性が座っている。街の灯りが逆光になって、顔がよく見えない。それでも、昂はその女性が誰なのか分かっている。ゆっくりと近付く昂。気配を感じて、女性は少し振り返った。その女性は、目尻に涙を浮かべた真姫だった。昂は息を飲む。

真姫「……何しに来たのよ」

昂「…………」

 上手く言葉が出ない昂。真姫は視線を街並みに向けた。ただその場に立ち尽くす昂に、真姫は背を向けたまま話す。

真姫「綺麗でしょ。」

昂「……え?」

真姫「ここの景色、綺麗でしょ。私のお気に入りの場所なの。誰にも教えた事ないの」

昂「……あぁ…」

真姫「どうして、ここだって分かったの?」

 言われて、昂は困惑する。昂自身も、何故ここに来たのか分からない。

昂「……正直、俺にも分からないんだ。ただ、何となく君がいるんじゃないかって」

 それを言って、初めて昂は自分の気持ちに気付く。真姫の側に歩み寄り、真姫の横に座った。真姫はゆっくりと昂の方へ視線を向ける。昂は真っ直ぐ街並みを見つめ。

昂「俺、怖かったんだ」

真姫「怖い?」

昂「……あぁ、人を好きになる事が」

 無言で昂を見つめる真姫。

昂「俺と侑は、普通の人間とは違うから」

 

昂(組織の人間を殺して、好きな人の為に手を汚す侑を見て。その事を侑は死ぬまで隠す覚悟も出来ているのに。俺は……)

 

昂「……俺はなんて小さい」

 手に力が入る昂。

真姫「別に、そんな事ないんじゃない」

 真姫が昂の手を取り、血が滲んでいるその手をハンカチで覆う。

真姫「普通の人間でも、人を好きになるのが怖いって思う人はいるわ。貴方が、何に悩んで、怯えているのかは、分からないけど」

 微笑む真姫。その微笑みが綺麗だった。昂の手が、真姫の頬に添えられる。真姫は狼狽えた。その姿に昂の心がざわつく。顔をゆっくり近付け、唇を塞いだ。真姫の身体がピクリと動き、固まる。昂はすぐに唇を離すと、今度は真姫を抱き締めた。

昂「俺、君の事が好きだ」

 そう昂は告げたのだった。

 

 




 ようやく、本心が言えました!良かった、良かった!

 お気に入り登録して下さいましたGON@絵里推しさん、ありがとうございます!


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特別編~昂と真姫~

 今回は、まぁまったり感が強いですね。

 では、続きをどうぞ


 自分の気持ちに気付き、想いを伝えた昂。いきなり、唇を奪われ、狼狽える真姫。二人の反応は対称的だった。真姫は、昂に想いを伝えられていない。そればかりか、唇を重ねた事で、思考が止まり、その後の事を覚えていなかった。

 

 

 

 

 数日後~大学構内~

 

 

 

 

 最近の真姫は、研究室に籠る日々だった。今、研究しているのは、新たな腎臓病に効果がある新薬の検証だ。色々な細胞を採取し、それらで試している。

???「それ、いつ終わる?」

真姫「ふぇ!?」

 突如、背後から聞き慣れた声が、真姫の耳元で話し掛けられた。あまりの驚きに、真姫は狼狽え、その場から一瞬で扉の前に移動。声の主を見た。声の主はやはり、昂だった。作業服を着たままの昂。どうやら、仕事終わりにここへ来たようだった。

真姫「貴方、どうやって中に入ったの?」

昂「別に、普通にそのドアから入ったけど?」

 そう言って、真姫の後ろの扉を指す。

真姫「……え?そんな筈…この扉はロックが」

昂「ああ、電子ロックとか、セキュリティー機能が付いた物とか、俺にはそんなの関係ないから」

 真姫は愕然とする。

昂「それで?いつ終わる?」

 目を輝かせ、昂は言った。真姫は溜め息をつく。

真姫「ちょっと待って、私、今忙しいの。だから、帰るのは遅くなるわ」

昂「……分かった」

 それだけ言うと、昂はスタスタと扉に向かい、そのまま部屋を出ていく。真姫は呆然と立ち尽くした。

真姫「イミワカンナイ」

 

 

 

 

 日も暮れて、もうすぐ日付が変わる。真姫は、大学の警備員さんに『あんまり遅くまでいてもらっても困るんだよね』と、小言を言われ、仕方無く帰る。大学の正門を抜けると、街灯の灯りに照らされ、人影がこちらに向かってくるのが見えた。真姫に緊張が走る。人影は真っ直ぐ真姫に向かって来ていた。

???「今帰り?」

真姫「……貴方、もしかして」

昂「はは、ずっと待ってた。これって、ストーカーだよな。」

真姫「そうね、立派なストーカーね。自覚あるなら、やめたら?」

昂「ん~、やめても良いけど。君の事が心配で寿命が縮むな」

真姫「……それはそれで困るわね」

 呆れながら、苦笑する真姫。そんな真姫に優しく微笑む昂。

昂「とりあえず、家まで送るよ」

 ごく自然に二人は肩を並べて歩き出す。真姫はチラリと昂を見た。真っ直ぐ前を見つめる昂。真姫の横には触れそうな程近い昂の腕がある。お互いの手が触れた。昂は真姫の手を、自分の手と絡めた。真っ赤な顔に染まる真姫。

昂「そう言えば、告白の返事くれるの?」

 手を繋いだまま、昂は真姫に質問をした。真姫は視線を落として黙り、表情が見えない。

昂「無理なら、別に無理して答えなくても良いけどさ」

 真姫の手を離す昂。そのまま歩き出した。真姫が昂の手を掴む。

真姫「………き…」

昂「はい?」

 真姫の口元に耳を近付ける昂。真姫の息遣いが聞こえる。懸命に深呼吸を繰り返し、何かを落ち着けているようだ。真姫が顔を上げる。暗がりなのに、真っ赤に染まった顔が見えた。昂はじっと真姫を見つめる。

真姫「……好き」

昂「もう一回言って」

真姫「……貴方が好きって言ったの!もう、良いでしょ!」

 昂は真姫を抱き締めた。昂の腕の中で身動ぎする真姫。昂はさらに強く抱き締める。

真姫「……く、苦しい」

昂「っあ、ごめん。」

 抱き締めていた手を離す。そして、真姫の頬に撫でるように手が動く。そのまま顎を持ち上げ、唇を塞ぐ。真姫の身体が固まった。どのくらい、唇を重ねていたのだろう。一瞬だったのか、長かったのか。真姫の思考は働かない。ただ、唇を重ねて、昂の体温を唇から感じている。それだけだった。昂が唇を離すと、ふやけた様な真姫の表情。目が催促している。昂は再度唇を重ねた。今度は口角を変え、舌を使い、真姫の舌を絡めとる。すると、真姫の体温が上がるのを昂は感じた。一旦、唇を離し。

昂「今から俺の家に行く?」

 冗談半分で聞いてみた。熱に浮かされた真姫。

真姫「……行く」

 その一言だけだった。昂は思考がふわふわしている真姫を連れ、自分のアパートに向かうのだった。




 次回は、二人の結婚前の話です。

 お気に入り登録して下さいました虫食いでないさん、早苗愛したい隊長さん、ありがとうございます!


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特別編~ハッピーウェディング~

 今日は、昂と真姫が交際を始めて、ちょうど一年である。今日は、知り合いが経営しているホテルで、結婚披露宴の準備をしている二人。一日の流れはあっという間だった。お互いの気持ちを確かめたあの後。昂の住むアパートで二人は初めての朝を迎えた。最初は、真姫の狼狽える姿に昂は面白がって、しばらくの間、真姫は昂から距離を取ったりもしたが。何度か朝を迎える頃には、真姫が可愛らしく昂にすり寄り、昂の方が狼狽えたりした。そして、三ヶ月前。

 

 

 

 

昂『真姫、俺と結婚して欲しい。俺には、両親や過去の事なんて、何一つないけど』

真姫『……過去の事なんて、別に気にしてないわ。昂こそ、私なんかで良いの?』

昂『なんで、私なんかって言うかな。俺は真姫が好き過ぎて、死ぬまで一緒にいたいって思ってんのに』

 昂の言葉にクスリと笑う真姫。

真姫『冗談よ。私だって、昂の事が好き過ぎて困ってる。』

昂『ツンデレだもんな。天の邪鬼だし』

真姫『五月蝿いわね!』

昂『プロポーズの返事は?』

真姫『…………仕方無いから結婚して上げるわよ』

 ゆっくりと唇を重ねる二人。街の灯りが二人を照らす。プロポーズの場所は、真姫のお気に入りのあの丘だった。

 

 

 

 

 今日は、二人にとって待ちに待った結婚披露宴だ。新婦側の招待客は、真姫の両親の関係者が多く、病院関係者や資産家達である。新郎側の招待客は、侑と。侑の奥さんで、真姫の友人である絵里と元μ,sのメンバーだった。最初は滞りなく披露宴は進んでいたが、次第にお酒が入り出すと、新婦側の招待客から、こそこそ陰口が出始める。

客1「おいおい、新郎側の関係者は子供の集まりかよ」

客2「両親どころか、親族もいないらしいぞ」

客3「素性の分からない奴と結婚すんのかよ。西木野家も落ちたな」

 そんな内容だった。その言葉に二人は怒りと、友人達に対して申し訳ない気持ちでどうにかなりそうだ。

 

真姫母「あら、それは私達の娘に対する侮辱かしらぁ」

 柔らかな声で真姫の母が、進行役からマイクを取り上げ言った言葉。表情は穏やかなまま。

真姫母「招待客の皆様は、相手の素性が分からないとお祝い出来ないの?」

客2「そんな訳では」

真姫母「なら、どうしてそんな事が言えるの?」

 無言で俯く招待客達。

真姫母「私達の娘、真姫は。天の邪鬼だけど、人を見る目はちゃんとある子よ。その証拠に、こんなに素晴らしい友人達と伴侶を見つけられたんですもの。」

 そう言って二人に微笑み掛ける真姫母。二人の目には涙が滲む。

真姫母「二人がお互いを尊重し、心から愛し合っているのに、お祝いしないとバチが当たるわ。それに、昂君はお婿さんですものぉ。立派な西木野家よねぇ」

 緩みに緩んだ微笑みを向ける真姫母に、二人は苦笑するのだった。

 

 

 

 

 昂の住むアパートにて

 

 

 

 

 二次会が終わり、ようやく家に帰ったのは、朝方近くだった。二人はゆるゆるの部屋着に着替え、真姫は化粧を落とす為にお風呂に入っている。昂は襲い来る眠気と懸命に戦っていた。しばらくして、真姫がお風呂から上がる。

真姫「昂、上がったわよ。」

 返事がない。リビングに向かい昂が、ソファーに腰掛けているのを見つけ、安堵する真姫。

真姫「昂、寝てるの?」

 肩を揺すると、間抜けな表情で真姫を見る昂。

昂「あぁ……、お風呂上がったのか」

 そう言って目蓋を擦る昂が、なんとも小動物っぽく。真姫はクスクス笑う。

真姫「今日は、昨日でもあるか。お疲れ様」

 言って昂の頬にキスをする。すると、昂の目がギラつき、真姫をソファーに押し倒した。

真姫「ぅえ!?」

昂「真姫、今からスるぞ!」

 昂の言葉に、真姫は反応出来ない。覆い被さる昂を何とか止め。

真姫「い、いきなり何?」

昂「お義母さんから、許可貰ったから、子作りするんだよ」

真姫「許可って何よ!私、聞いてないけど!」

 昂の言葉に狼狽える真姫。

昂「なら、お義母さんから伝言『病院継ぐのはゆっくりで良いから、早く孫の顔見せてね!』だそうだ」

真姫「……な、なんで!そんな事になる訳?イミワカンナイ!」

 真姫の心の叫びと共に、二人は子作りに勤しむのであった。

 

 

           終わり




 特別編、終わりました!真姫のお話は、絵里の時と違って面白かった~!

 次回は書く予定はありませんが、今後、絵里と真姫のその後の話が書ければな。と、思っています。

 また、サイドストーリもありますので、そちらも宜しくお願いします。

 追記、オリジナルの方も宜しくお願いします。


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