れでぃ×ばと? (ガラフ)
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第一話之一

今日が編入初日かぁ

 

緊張するっていうか何か萎縮しちまうな

 

何だってこんなバカでかい正門があるんだ……

 

こんだけでかいのに門衛がいないってのも管理的にどうなのよ?

 

とりあえずわきにある通用門から入ればいいんだよな?

 

これ……金属検知器と液体検知器だよな?

 

空港かよっていうか無人でこんなもん置いてて壊されねーのか?

 

この分だと物資の搬入車両とかも逐一チェックしてそうだな

 

しっかし、案内人がいないのは道なりに進めばいいってことなのか?

 

だとしたら正面に見えるアレが校舎なのか……

 

編入試験会場がここだったら間違いなく遅刻してたな

 

あの遠さ、門入ってから何分歩かせる気だよ

 

編入のあいさつしたら外出用自転車使用の許可貰わなきゃな

 

あーでも自転車は校風にそぐわないとか言って却下されそうだな

 

上育科は自前で車と運転手用意してるだろうし、従育科はお付きとして同行させてもらえる相手を得なさいとか言われそうだ

 

こりゃ休日でも外に出ずに大人しくしてた方が平和か

 

うーん、それにしても……

 

右を見れば噴水の見事な庭園があり、左を見れば立派な時計塔があり、と

 

世界観がめちゃくちゃだなこりゃ

 

さっきまでは見えてなかったけど何かいかにも教会の屋根ですって感じの屋根も見えて来てるし

 

つーか、今時一つの建物として独立した時計塔とかあるんだな

 

それなりに大きな建物の上に帽子みたいに乗っかってる時計塔なら地元にもあったけど

 

何か休日は敷地内を探索するだけで半年くらい潰せそうな気がしてきたな

 

道の脇にはちょいちょいベンチが設置してあるみたいだから休憩の心配もなさそうだし

 

でも喉が渇いたとき用の水は持ち歩いた方がよさそうだな

 

自販機とか絶対置いてないし

 

あーそんなこと考えてたら喉渇いてきたな

 

確かカフェテラスか食堂に行けばタダでお茶なりジュースなりが飲めるんだったな

 

挨拶終わったら早速一服しに行こう

 

学園案内図みたいなの貰っとかないとな

 

あれ?誰かこっち来てるな

 

この時間に外に出るってことはないだろうし、案内人かな?

 

案内人がいるんだったら門の近くで待ってりゃよかったかな

 

いやでもどうせ校舎までは歩くんだしマイナスではないよな

 

赤いってことは制服着た上育科の生徒か

 

ならどこぞのお嬢様なのは確定だな

 

問題は庶民を見下すタイプか否か

 

流石に案内人に見下すタイプが使われることはないかな?

 

でもなぁ……従育科の学費その他諸々の費用って上育科の親の寄付金で賄われてるって話だからなぁ

 

一般庶民は見下さなくても従育科に対しては親の七光り的なアレで『私たちが貴方の学費その他を負担しているのよ?』とかいうやつもいるだろうしなぁ

 

うーん、やっぱりバイトで学費やら生活費やら捻出するのが難しいからってここに来るべきじゃなかったかな

 

よく探せば他にも学費・寮費免除の学校あったかもしれんし、早まったかなぁ

 

「初めまして。私、彩京朋美と申します。貴方が編入生の藤原さんですね?」

 

うお!?全然前見てなかったわ

 

「は、初め、まっ、して!」

 

落ち着け俺!深呼吸、深呼吸だ

 

「すぅー…はぁー…」

 

くすくす笑ってるよコイツ

 

いやまぁこの状況は笑われて当然ではあるけども

 

「初めまして。編入生の藤原です。案内の方でしょうか?」

 

こんなわかりきった質問をする俺って……

 

「ええそうです。理事長から貴方の案内を仰せつかっています。職員室に4時までに顔を出すようにとのことですが、それまでは自由に行きたいところへ案内いたします」

 

まだ昼食ったばかりだし、それなりに時間はあるのな

 

っていうかこの丁寧な言葉遣い嫌だな

 

何か尻がむずむずして落ち着かねえわ

 

「あー、その、できればもっと砕けた言葉遣いにしてもらいたいんですけど」

 

「構いませんけれど、理由を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

構わないならすぐさまやめてくれよ

 

無性に掻き毟りたいけど流石にそんな真似できん

 

「どうにも慣れないもので、むず痒く感じてしまうのですよ」

 

丁寧な口調は疲れるから俺からも砕けた感じで喋りたいんだけどな!

 

「それは仕方ないですね。でも、ここでやっていくならそのうち慣れないとダメよ?」

 

ちょっとちょっと彩京さん?さっきとは別な感じにむず痒いんですけど?

 

っていうかアレだ、これは計算の上でやってるタイプのやつだ

 

だとするとあんまり関わり合いにならない方がいいな

 

こういう手合いは素っ気なくするとムキになったりするし、徐々にフェードアウトしていくべきだな

 

「聞き入れていただいてありがとうございます」

 

「時と相手と状況に合わせて仕草や言葉を使い分けるのは当たり前のことよ。貴方も話難かったら普通に話していいわよ?」

 

マジで?

 

後半部分は素直にありがたいけど、前半部分が地味に怖い

 

俺もできるようにならなきゃならないのかな?

 

「それは助かる。正直ちゃんと丁寧な言葉になってるかも自信ないし、かなり精神的にきつかったんだ」

 

「ふふっ、でもわたし以外の上育科の生徒にはそれなりに丁寧な言葉遣いをしないとダメよ?」

 

ですよねー

 

「それでもそれなりでいいのか」

 

「それなりでいいわよ。卒業して執事として雇われたら流石に完璧な言葉遣いじゃないとダメだけどね」

 

うへぇ……

 

いやいや、俺はあくまでもただで高校の授業ができるからここに来たわけであって、別に執事になりたいわけじゃないんだよ

 

だいたい、日本に執事の就職先とかあるわけ……ここの生徒の家があるか

 

え?じゃあ何か?従育科って日常が就活みたいなもんなの?

 

やっぱりもっとよく考えるべきだったか……




続く?


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第一話之二

え?いやいやいや、ここが食堂?

 

コンクリート打ちっぱなしとは言わないまでも、もっとこう、安っぽいというか飾り気がないというか……

 

上手く言えないけど、食堂といえば何かそんなイメージがあったんだけど?

 

「ここが学校の食堂?」

 

天井高すぎでしょこれ

 

三階の天井くらい高さあるんじゃないか?

 

しかも光源がシャンデリアてお前、いくら何でもやりすぎでしょう

 

「そうよ。あと、少し人がいるから口調に注意なさい」

 

ああ、ほんとだ、人いるわ

 

高そうなテーブルに意識がいってて気付かなかったわ

 

「申し訳ございません」

 

っていうか場所によってテーブルが違うって無駄じゃね?

 

何で同じ部屋の中で違うテーマの空間作ってるの?

 

あ、メニューがある……分厚くね?

 

うわ、パンで1ページ埋まるとか意味わかんねえ

 

「ここって家庭的な料理ってあるのか?」

 

「家庭的かどうかはともかく、和食も豊富だから安心なさいな」

 

独り言に答えてくれてありがとう

 

でもそれ微妙に安心できないよ

 

鯱ばった料理なんか食べても安らげないだろ

 

それにしても、

 

「これほど種類が多いと用意するのも苦労するのでは?」

 

厨房っていうか食糧庫の広さが真剣に心配になるレベル

 

あと毎日どれだけの食材が使われないまま捨てられてるのかも

 

「そうですね。なので手間のかかるメニューは曜日限定になっています」

 

そうなのか

 

「……ああ、メニューの後ろに付いてるこの火とかって曜日表記か」

 

それにしてもやっぱり多いし

 

いやまあ、庶民感覚じゃわからないこだわりか何かがあるんだろうな

 

しかしあれだな

 

食堂とかはただで利用できるって聞いてたけど、これ本当にただなのかな?

 

高級料理に縁のない俺でもわかる名前がちょいちょいあるんだけど……

 

「食堂は原則無料で利用できると伺っているのですが、本当なのでしょうか?」

 

「ええ、本当ですよ。値段が書かれていないでしょう?」

 

あ、値段がないのってそれでなのか

 

いやいや、そのくらい気付よ俺

 

思ってた以上にあっぷあっぷしてるな……

 

周りを見て落ち着け俺

 

「……んん?」

 

何か変なものが見えたような?

 

……あれ?本格的にヤバくなっちゃったのかな?

 

「あのー、あれは?」

 

おう、独り言でもないのに敬語じゃなくなってるじゃねえか

 

「従育科の生徒ですよ。土日は事前申告をすることで、ああして訓練がてら給仕役をできるようになっています。希望者が足りない場合は本職の方が入られますが、本日は従育科生のみのようですね」

 

なるほど、休日に登校して教室で勉強するようなものってことだな

 

確かにそういうやつはいるよな

 

しかし俺が聞きたいのはそういうことじゃなくてだな

 

「あの服装はいったいどういうことなのでしょうか?」

 

どう見てもあれはメイド服じゃん

 

手首まである長袖に踝まであるロングスカート、深い藍色の服に真っ白なエプロンって

 

世の中にはメイド喫茶なるものが存在するらしいけど、ここそういう場所じゃないよね?

 

「あれが従育科の女子用制服ですよ?ご存じなかったのですか?」

 

あら吃驚!みたいな顔で言うな!

 

そんな奇天烈な制服なんて予想できるか!

 

「一応確認しておきますが、男性は確かモーニングコートですよ?」

 

それは何の確認なのでせう?

 

まさか俺が男子制服もアレだというありえない発想をしていないかどうかの確認じゃないよね?

 

「きちんと着用できますか?」

 

あー、そういうことね

 

うん、そうだよね、知ってた知ってた

 

「あいにくとモーニングコートなるものがどのような衣服なのかも存じておりません」

 

モーニングっていうからには朝が関係してるのかな?

 

「そうですね、タキシードのようなもの、といえばわかりますか?」

 

それならまあわかる

 

……わかるんだけど、

 

「結婚式や舞踏会で着る上等な衣服だったと記憶しておりますが」

 

「ええそうですね。もともと執事というのは貴族の三男坊などしか就けない仕事でしたので、その名残なのでしょう」

 

マジで?

 

そんなん初耳だわ

 

その辺の庶民は就けない仕事だったのか

 

「一つ伺いたいのですが、貴方は編入に際して制服のことは調べなかったのですか?」

 

「どこかで買うならいざ知らず、支給されるという制服のことなど意識の外でしたね」

 

いやぁ、これはとんだ落とし穴があったもんだ

 

本格的に転校を考えるべきかしら……

 

まだ初日だし授業一個も受けてないのになぁ……

 

「ところで、こちらも一つ伺いたいのですが」

 

「何でしょうか?」

 

「いやに耳目を集めているようなのですが、これは一体?」

 

ここに来たときはもっと話声とか聞こえてたし、こっち見てる人もいなかったと思うんだよね

 

なのに今は話声なんて聞こえないしみんなこっち見てるし……

 

音楽が流れてるのに何か緊張で汗が出るくらい静かっておかしくない?

 

「そうですね。しかし、仕方のないことですわ」

 

仕方ないことなのか?

 

「ここは昨年まで男子禁制の学校でした」

 

それは知ってる

 

「生徒数も少なく、高等部は三学年合わせても150名程度です」

 

それは知らんかった

 

しかしまあ、敷居の高さを考えればそんなもんかなって気もするな

 

「その中で今年新設された従育科は当然一年生しかいません」

 

まあそうだわな

 

ただの普通科ならともかく、職業養成所の側面があるんだからいきなり高学年の生徒が入るとかありえんわな

 

「その人数は20人程度です」

 

またえらく少ないな

 

ただなんだから応募はそれなりにあっただろうに

 

「その中で男子はたったの3人しかいません」

 

……は?

 

いやいやいや、おかしいでしょ

 

何でそんなに偏ってるの?

 

「上育科の男子はもっと少なく、たったの1人しかいません」

 

そっちはまあ、わからんでもないかな

 

理由があってるかどうかは自信ないけど

 

「つまりですね、貴方を含めても全校合わせて男子は5人しかいないんです」

 

そりゃ確かに耳目を集めるな

 

単純計算で30人に1人しかいないんだもの

 

「おまけに、ここの敷地内には中等部もあります」

 

中学生には専門コースなんて用意できんわな

 

ってことは男女比はもっと酷いことになってるのか

 

「その人数だと男子寮は……」

 

「上育科の男子寮は用意されていますが、従育科の男子寮は同女子寮と共用です」

 

何で1人しかいない上育科用があって従育科用はないんだよ!

 

いや、学校に金払ってるのは上育科だけだから、まあ、妥当な判断ではあるんだろうけどさ

 

「もしかしなくても男子って立場弱い?」

 

「ええ、非常に弱いですね。ただでさえ共学化には反対が大きかったのですが、ここ最近生徒の盗撮写真が出回っているという噂があったり、私物がなくなったという報告があったりもしますので」

 

何それタイミング最悪じゃん

 

校門の物々しさ考えたら内部犯しかありえないって気がするし

 

「ですので、上育科の生徒と接する際には十分な注意を怠らないようにしてくださいね」

 

それが自分の身を守ることになるってことか

 

早く捕まれ盗撮犯!




続いた!


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第一話之三

「さて、次はどこを案内してほしい?」

 

食堂がわかって昼飯は心配なくなったわけだし、授業に関係ないところは休日に自分でぶらぶら探せばいいよな

 

あ、朝晩の飯って食堂なのかな?

 

「朝と夜もあの食堂で食べるのか?」

 

何処を案内してほしいか聞かれて答える内容じゃないけど、一応聞いておかないとだよな

 

「あそこはお昼から夕方までしか開いてないわ。朝と夜は寮にある食堂で決まったメニューのものを食べるの」

 

そうなのか

 

やっぱり三食好き勝手に食べさせるのは無理があるってことなのかな?

 

いや、健康管理的な視点で決まってるって考えた方がいいか

 

「だったら授業で使う施設かな」

 

ここだと体育館とかプールとかパッと見じゃ気付かない可能性あるし

 

美術室とか音楽室とかが単独の建物として独立してるかもしれないし

 

……普通の学校だったらこんなこと気にする必要ないのになぁ

 

「何遠い目してるのよ。まあ、いいけど。授業で使う施設となると――」

 

「あっ、彩京さんっ!」

 

ん?あ、ジャージだ

 

いや、上育科の制服は奇天烈じゃないんだから運動着がジャージなのは何もおかしくないよな

 

ちょっとお高い可能性はあるけど

 

ちょっとどころじゃなくお高い可能性もあるけど

 

「よかった、見つかって……ちょっと大変なの!」

 

運動着で息が上がった女の子って妙に色っぽいよな

 

活発そうな外見がまた何とも……

 

「――まあ、吉住さん駄目ですよ。慌てて走るだなんて、先生に見られたら怒られてしまいますもの」

 

走っただけで?

 

廊下じゃなくて外だよ?

 

「それは重々承知していますけど、それどころではなくて」

 

わりと真剣に緊急事態なのかな?

 

「何か問題でも起きました?」

 

うわ……うわ、何その笑顔

 

何か凄い頼りになりそう

 

いや、実際頼りになるんだろうけどさ

 

「……あの、彩京さん。そちらは……」

 

ああ、見知らぬ男だもんね

 

そりゃ気になるよね

 

「彼ですか?従育科の編入生で、藤原清衡くんです。彼に学内の施設案内をしていたところなんですよ」

 

「編入してきた藤原です」

 

下手によろしくとか言わんほうがいいよな

 

「あっ、吉住です!」

 

そんなに慌てんでもいいでしょう

 

「それで、吉住さん?何か大事な用があるのではないのですか?」

 

「あっ、そうなの!講堂の前で四季鏡先輩とエストーさんが激しく口論していて――」

 

取っ組み合いじゃなくて口喧嘩なのにそんな深刻そうにするのか

 

流石はお嬢様ってところか

 

あ、いや、家の格的に口論すること自体が拙い組み合わせって線もあるのか

 

「……つまり、いつものようにエストーさんが四季鏡先輩に?」

 

いつものことなのかよ

 

心配して損したわ

 

「そう、一方的に。今にも飛び掛かりそうな雰囲気だったわ!」

 

どうでもいいけど落ち着きがないな、吉住さん

 

「ふぅ……彼女も仕方ないですね」

 

そのやれやれって仕草を見るにいつも仲裁してるんだろうな

 

「藤原君、申し訳ありません。急な所用が出来てしまいましたので、少しお待ちいただけますか?それともお一人で構内を歩いてみますか?」

 

一人歩きはいつでもできるだろうけど、授業で使う施設は明日すぐにって可能性もあるんだよな

 

ここは待っておくのが正解か

 

いや、待たずについて行けばいいか

 

「邪魔はしませんので、ご一緒させていただけますか?そうすれば所用が終わってすぐに案内をお願いできますよね?」

 

時間と手間を考えたらこれがベストだよね

 

「構いませんわ。吉住さん?」

 

「あっ、こっちです!」

 

あれ?走らないのか?

 

何かじれったいな

 

あと吉住さん?チラチラ見られると結構気になるんだよ?

 

女子はエロい視線に敏感とか言うけど、こんな気分なのかな……

 

「あっ、見えました!」

 

ん?あれか

 

見えましたってもう結構近いじゃん

 

下向いてたから気付かんかったわ

 

「制服が微妙に違う?」

 

胸元の飾りがスカーフみたいなやつじゃなくてただのリボンになってるな

 

「あの子が中等部のエストーさんですよ」

 

ああ、やっぱり中等部の制服なのか

 

じゃあ向かいの凄い美人が四季鏡先輩とやらか

 

「ごきげんよう、エストーさん。……と言っても、またご機嫌斜めのようですね?」

 

おぉ、何の躊躇いもなく割り込めるって凄ぇな

 

「ぬうう、またそなたか。相変わらずお節介にも程があるのじゃ」

 

え?そなた?のじゃ?

 

あからさまに外国人な見た目でその口調ってどうよ?

 

「はい、まだ校風に馴染んでいないエストーさんのことを心配していますから。それで、今日はどうしたんですか?」

 

馴染めてないってことは編入生か新入生なのか

 

どっちにしろあの喋り方じゃ周りと距離ができるだろうな

 

「どうもこうもないわっ!こやつがいつも妾を悲惨な目に合わせるのが我慢ならんのじゃ!」

 

悲惨な目って何だろう?

 

見た目はあんな美人だけど中身は真っ黒とか?

 

「私はただ可愛いエストーさんを愛でたいだけですよ?」

 

悲惨な目に合うって聞いた後だと可愛がるの意味が不穏に感じられる不思議

 

「何より許せんのはその体じゃ!そのたわわに実った乳をこれ見よがしに押し付けおってからに……許せぬ!」

 

どんだけ胸に恨みがあるんだよ

 

確かに見た目の格差は悲惨なくらいあるけどさ

 

「む?そなた、名は何という?」

 

え?何で俺に飛び火したの?

 

「藤原清衡と申します」

 

何かヤバい人だったらアレだし、できれば関わりたくないんだけど

 

「よし、キヨヒラよ!今日から妾の『ぼでーがーど』になるのじゃ!」

 

「は?」

 

いやいやいや、ぼでーがーどって何だよ

 

何でその見た目で片言英語?

 

英語圏じゃなくてロシア語圏なの?

 

違う違う、そうじゃなくて、何から守るの?

 

そこの美人な先輩から守るの?

 

「エストーさん、それに四季鏡先輩も、一度落ち着ける場所に移動して話しましょう?」

 

あ、仮面が剥がれかけてる

 

やっぱりこの学校入ったのは間違いだった気がするなぁ……




セルニアキャンセルからのピナ&沙織先出しという流れに……

案内図貰ってれば一人でうろうろしてもよかったんだけどね


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第一話之四

「ここはカフェテラス……か?」

 

もっとこう、安っぽい落ち着きを求めてたんだけど

 

何このやたら高級感溢れる落ち着き空間

 

ここにいる間は落ち着けるけど後で備品とかの値段が気になって悶々としそうだ……

 

「はい。ここがカフェテラスですよ。食堂でもお茶会はできますが、純粋にお茶会をする場合はここか燕翠楼を利用する方が多いですね」

 

えんすいろう?

 

名前的に中華な感じのカフェなのかな?

 

「なんじゃ、見ん顔じゃと思うたらそなた編入生か」

 

今のやり取り聞いてりゃまあわかるよね

 

何だろう?何か知られちゃまずいことを知られたような気がしてきた

 

「ええ。彼は本日入寮の編入生です」

 

「あら~、編入生さんでしたか~」

 

何だと思ってたんだよ

 

アレか、会ったことないだけの下級生か

 

まあ、まだ5月だしその可能性はあるか

 

「明日からの授業で困らないように、こちらの彩京さんに施設案内をしていただいていたのですよ」

 

まだ食堂しか行けてないからさっさと解散になってほしいんだけど……

 

話ならまた今度でよくね?

 

今日は解散しよう?

 

「ふむ、編入生であるなら自己紹介をせねばならんか」

 

いやいや、編入生じゃなくても初対面なら自己紹介いるでしょ

 

何?知られてて当然とか思ってるの?

 

「妾の名はピナ・スフォルムクラン・エストー。スフォル王国の第一王女にして王位継承権第四位にある者じゃ」

 

あ、はい

 

王族なら確かに学校中に知れ渡ってますね

 

っていうかスフォル王国ってどこ?

 

第一王女なのに第四位ってことはお兄ちゃんが3人いるってことか?

 

いや、弟の方が継承権が高い可能性もあるけど

 

あ、王弟がいればそっちにも継承権あるか

 

「日本ではあまり知られておらぬが、スフォル王国は北欧にある小さな島国じゃ」

 

北欧って言われてもイマイチピンと来ないけど、ヨーロッパの北の方だよな?

 

そうすると北極圏に近い国ってことになるのか

 

ひょっとすると圏内かもだけど

 

どっちにしろ寒そうな国だな

 

「一年の半分以上が雪に覆われておるし、これといって産出される資源があるわけでもない」

 

そりゃまた過酷な……

 

どうやって生計たててるんだ?

 

「じゃから家でも楽しめる娯楽というのは重要でな」

 

まあ一年の半分が雪に覆われてるならそうだろうな

 

でもその前に飯の種確保しなきゃだろ

 

「日本の漫画やアニメ、ゲームといったサブカルチャーが大人気なのじゃ」

 

……まあ、それはわかる

 

「そして妾はそこに着目しておる」

 

どういうこと?

 

「サブカルチャーは室内で楽しめる一方、生み出すのも室内じゃ。つまり、日本に学び、サブカルチャーを作り出す側に回れたならば雪に覆われたわが国でも強力な輸出産業を獲得できるというわけじゃ」

 

なるほど

 

確かにそうかもしれないな

 

日本は工業製品の加工貿易で結構儲けてるけど、雪に覆われてたらそういう大規模な輸送が必要なことはできないもんな

 

そうなればパソコン一つで受け取りも送りつけもできるってのは大きいわな

 

「国興しのために留学しているというわけですか」

 

「そういうことじゃ」

 

こんなお子様丸出しな外見に仕草でも立派な王女様ってわけだ

 

これはちょっと尊敬するわ

 

「あら?エストーさんは趣味でそういうものを嗜んでいて、その影響で留学しているのではなかったでしょうか?」

 

それ本当ですか四季鏡先輩?

 

それが本当だったらさっきの感動を返せと言いたいところなんですけど?

 

「それは否定せん。否定せんが、自分が楽しめんモノで国興しなどできるわけなかろう?娯楽文化なのじゃぞ?」

 

そりゃそうだ

 

娯楽文化なんだから楽しんでなんぼだわな

 

しっかし国興しかぁ……

 

将来総理大臣になりたいとかそういう次元じゃないんだよな

 

具体的に国を引っ張っていくための勉強ってことになるわけだし

 

で、何でそんな人が俺みたいなパンピーをボディーガードにするとかいうわけ?




真面目な話、ピナってすごい子だよな

中三でもう国を引っ張っていく覚悟して具体的にどうするか考えてるんだもん


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第一話之五

「そなたにぼでーがーどを頼んだのは実に単純な理由じゃ」

 

わかりやすいのはいいことだな

 

で?その理由って?

 

「そなたはこの環境にあってなお『普通』であるように見えたのじゃ」

 

「……は?」

 

いやいやいや、意味が分からないよ?

 

普通って当たり前じゃん

 

「それは彼には上流階級特有の家格に対する隔意のようなものがない……ということでよろしいでしょうか?」

 

あ、そういうことか

 

確かに下手に家格差の恐ろしさ知ってると口きくのも躊躇うとかありそうだしな

 

「そういうことじゃ。妾が何と言おうともそういう部分はなかなか変わらんのでな」

 

最初からそういう意識がない俺をそばに置けば緩衝材として使えるってことか

 

でもさっきの状況と合わなくね?

 

「ボディーガードというのは建前で、実際は緩衝材になってほしい……ということでしょうか?」

 

さっきの状況で何でそんな方向に転がるんだって疑問はあるが……

 

「ぼでーがーどもしてもらうぞ。主にサオリを近づかせんという方向でな」

 

どうやって止めろと?

 

変なところ触ったとかいちゃもんつけられたら嫌だから物理的に止めるのはちょっと……

 

「障害は大きい方が燃えますね?」

 

いやいや四季鏡先輩、こっちに振られても答えようがないっす

 

この人はこの人でやっぱ関わらない方がいい種類の人っぽいな

 

「どうしますか、藤原君?話を聞く限りでは今後の学院生活に大きな影を落とすようなことはないと思いますが」

 

受けても影が落ちないってことなんだろうけどさ

 

断ったら影落ちるよね?

 

間違いなく居心地悪くなるよね?

 

最悪この学院追い出されるまであるよね?

 

「一つ確かめたいことがあります」

 

ぶっちゃけ俺以外でお願いしたい

 

「何じゃ?」

 

「家格の違いに頓着しないという条件なら他の従育科生でもよいのではないでしょうか?」

 

従育科は一般人から公募したんだろ?

 

公的には難しくても私的には友達付き合いできるんじゃないの?

 

「うむ。妾もそう思うておったのじゃがな」

 

駄目だったのか……

 

まあ、華族とか貴族とか言われてもイマイチ凄い気はしないって人でも、王族となると話は別だよな

 

でもその辺は俺もあんまり変わらんと思うんだが

 

「何やら不思議そうにしておるが、そういうところも他の者とは違うぞ?」

 

そうなのか?

 

「藤原君はエストーさんとあまり関わりたくないようですが、その理由というか起因する感情が他の方とは違うということですよ」

 

あー、萎縮して避けるか面倒がって避けるかの違いな

 

「嫌がる相手に無理強いするつもりはないが、妾と仲良くしておればイロイロとお得じゃぞ?」

 

まあそりゃお得だろうな、いろいろと

 

「私も仲良くしてもらいたいですね」

 

「ええい寄るな!キヨヒラ!早速仕事じゃぞ!」

 

えー

 

俺を盾にするの止めてもらえませんかねー

 

二人とも大人しく座ってお茶飲めよ

 

「こんな状況でお茶が飲めるなんて、随分肝が据わっているようですね」

 

何笑ってんだこの野郎

 

こんなんどうしょうもないだろう

 

「何をしてのんびりおるか!」

 

「あらー、見放されてしまいましたねー」

 

これはウザい

 

編入の挨拶前に問題起こすのもどうかと思うが、ここはガツンといっとくか

 

「痛たたた!こら何をするか!」

 

「やかましい!耳元でわーきゃー騒ぐな!」

 

掴みやすい髪形してたからつい掴んじゃったけど、胸倉掴むのとどっちがマシだったかねぇ?

 

「あら、強引なのも嫌いじゃないですよ?」

 

こっちは掴めるものがないから問答無用で胸倉だな

 

胸がでかくて掴みにくいけど……

 

「……アンタも、無駄な面倒を振りまくな」

 

っていうか胸倉掴まれてその反応ってどうなんだ?

 

「ちょっ何をやっているんですか!」

 

まあ止めるよね

 

反応が遅かったのは予想外過ぎてついてこれなかったとかかな?

 

「物わかりの悪い人間は多少の脅しがないと話を聞きませんからね」

 

これは退学コースかな?まあ止めないけど

 

ちょっと勢いつけて突き放して、と

 

「おいピナ、髪引っ張られて怒鳴られた気分はどうだ?」

 

我ながらアホな質問だよな

 

「どうもこうもないわ!妾自慢の髪を粗末に扱いおって!」

 

え、そこ?

 

気にするとこそこなの?

 

「確かに先程の妾の行動は非難されても仕方ないやもしねぬ。しかし、しかしじゃ。髪は女の命!しかもこの長さでこのボリューム!ウィッグではなく地毛なのじゃぞ!」

 

何か語りだしたぞコイツ

 

「アニメキャラによくあるこの髪形じゃが、現実でこれをやるのは大変なんじゃぞ!」

 

知らんわ

 

何なのコイツ

 

思ってた方向とはだいぶ違う方に転がっちゃってるんだけど

 

「いや、もっとこう、……無いの?ねえ?」

 

思わず顔を見合わせちゃうよ

 

やっぱり彩京も同じような顔してるな

 

「髪を掴まれたのは許せんが、ようは友達を怒らせて小突かれたようなものじゃろう?」

 

おいおい、それでいいのか王女様

 

「おーけーわかった。お前はこれからただの友達だ。髪を掴んだりして悪かったな」

 

全然OKじゃないけども

 

「むふっただの友達か。まあ髪は次から気をつけてくれればそれでよい」

 

むふっって何だよむふって

 

彩京が凄い顔になってるぞ

 

まあいいか、もうどうにでもなれだ

 

……だいぶ放置しちゃったけどこっちはどうなっt

 

「何してんだアンタ」

 

俺の見間違いかな?

 

「こりゃサオリ!何をしておるか!」

 

「ボタンが飛んでしまいましたので―」

 

俺のせいか?俺のせいなのか!?

 

でもボタン飛んだだけで下着姿になるのはおかしいよな!?

 

「藤原君、少し外に出ていていただけますか?」

 

あ、はい

 

「そうさせていただきます」

 

そのまま逃げちゃ駄目ですかね?




そこは怒れよ!と思うけど、ピナってこういうのかなり寛容っぽいんだよね

そして沙織は平常運転……


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第一話之六

はあ、逃げたい

 

このまま職員室に行って挨拶済ませて寮部屋に引きこもる……

 

あ、寮は相部屋とか言ってたっけ?

 

じゃあルームメイト次第じゃ部屋でも安らげない可能性があるのか

 

「ちょっとそこの貴方」

 

静かな相手じゃなかったらどこで休めばいいんだ?

 

「ちょっと、聞こえてませんの?貴方!」

 

こういう感じのやつがルームメイトだったら泣けるな

 

「私を無視するとはいい度胸ですわね!」

 

誰だか知らんが早く相手してやれよ

 

「貴方ですわよ!あ・な・た!」

 

「イタタタタタ?!」

 

何?!何なの?!

 

「貴方何者ですの?視たところここの生徒ではないようですけど、どこから入ってきましたの?」

 

人の耳引っ張りながら聞くことがそれか?!

 

「俺はここの編入生だよ!耳離せ!」

 

ったく

 

耳から嫌な音したじゃねぇか

 

「おー痛ぇ。凶暴なやつも居たもんだな」

 

「私のことを無視するからですわ」

 

それだけで耳引っ張るやつは間違いなく凶暴だよ馬鹿野郎

 

「何ですの?その目は。今の時期に見知らぬ男がいたとなれば警戒して当然ではなくて?」

 

当然ではなくて?

 

いやいやねーから

 

「あら?貴方もしかして最近の不審者騒動についてまだご存知ないのかしら?」

 

そういえばそんなこと言ってたな

 

それで男子の肩身が狭いんだとかなんとか

 

「確かに一人でいたら不審者か。迂闊だったな」

 

とはいえあの中から付いてきてもらうとしたら消去法でピナ一択だろ?

 

それはそれで不審者っぽくね?

 

「納得したなら早く職員室にお行きなさいな。場所がわからないなら連れていってさしあげてもよろしくてよ?」

 

何だろう、この微妙な感じ

 

親切で言ってるみたいだけど、耳の事があるから嫌味にしか聞こえねぇや

 

「人を待ってるんでね。後でそいつに案内してもらうから大丈夫だよ」

 

しかしまぁ、改めて見るとえらい別嬪さんだな

 

「つーか、何でドレス?」

 

パーティーでもあるのか?

 

「あら、外へ出るときに着飾るのは当然ではなくて?」

 

確かに女ってそういう生き物かもしれんが、限度があるだろ

 

その言い種だとドレス=私服ってことだろ?

 

「目のやり場に困るんだが」

 

不審者ってお前のせいで発生したんじゃね?

 

いやまあ、こいつとは関係ない所で被害出てるし、流石にそれはないか

 

「あらあら?サマードレス程度で目のやり場に困るようでは執事は務まりませんわよ?」

 

何その小馬鹿にしたかんじ

 

あとその然り気無く肢体を魅せるのやめろ

 

「襲ってやろうかこの野郎」

 

「そうなったら死罪ですわよ?」

 

にっこり笑顔で恐ろしいこと言うな

 

あとその素振りさ、どう見てもお嬢様のへなちょこパンチじゃないんだけど

 

格闘家並みにガッツリ腰の入ったパンチなんだけど

 

「えらく本格的なパンチだな。ドレスよりレスラーのリング衣装の方が似合うんじゃないか?」

 

お色気路線の衣装にネタじゃ済まないパンチ

 

それなりに固定客取れそうじゃん

 

いやでもレスリングは格闘技じゃなくて見世物だからパフォーマンスができないとダメなんだったか

 

「貴方、私のことを馬鹿にしていますの?」

 

その怖い笑顔やめーや

 

「悪かったって。耳の分だ、許せ」

 

「わかっていますわ。そうでなかったらその言葉遣いに文句をつけているところでしてよ」

 

言われてみれば言葉遣いには文句を言われてなかったか

 

そういうの煩そうなのにな

 

「これは失礼いたしました、お嬢様。ワタクシ、藤原清衡と申します。以後お見知りおきを」

 

「セルニア・伊織・フレイムハートですわ。好きにお呼びなさい」




出番キャンセルされたはずが、散歩の休憩に来たらしい


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第一話之七

「終わりましたよ。って、あら?フレイムハートさんではありませんか。ごきげんよう」

 

どうでもいいけど飛んだボタンどうしたんだろ?

 

今縫ったってことはないだろうし……

 

「ごきげんよう、彩京さん。貴女がこちらの殿方の案内を?」

 

何か空気悪くない?

 

「そうですが、それが何かありましたか?」

 

嫌な笑顔対露骨な敵意とか、これ明らかに対立してるやつじゃん!

 

そういう面倒なのは解散して俺がいなくなってからにしてくれよ……

 

「見慣れぬ殿方を一人で立たせていては不審者のようですし、昨今の事情を鑑みれば避けるべき事態なのは明白。何故そのようなことを?」

 

俺を対立のネタにするのやめーや

 

「申し訳ありません。エストーさんと彼を二人きりにするか、エストーさんと四季鏡先輩を二人きりにするか、彼を一人にするか、という状況でしたので」

 

二番目の選択肢はどう考えてもナシだな

 

最初の選択肢だって良いとは思えないし

 

「またいつもの、ですの?」

 

「ええ、いつもの、です」

 

あ、やっぱりそういう認識なのね

 

「お二人には困ったものですわね」

 

「聞こえますよ?」

 

ずっと扉開いてるしね

 

いつもの呼ばわりも聞こえてるよね

 

「うむ、聞こえておるぞ」

 

出てきちゃったよ

 

「困りましたねー?」

 

困ってる原因は主にアンタだよ!

 

「あら、失礼。ごきげんよう」

 

「うむ」

 

「ごきげんよう~」

 

デフォルトの挨拶がごきげんようなんだよな

 

何か背中がムズムズするぞオイ

 

「ところで、四季鏡先輩?少しお話しよろしくて?」

 

お?引きはがしてくれるのか?

 

「構いませんよ~」

 

ナイス!

 

これで耳のことはチャラにしようじゃないか

 

「それでは私たちはこれで」

 

「はい~」

 

よーしよし、面倒なのが減った!

 

ぼでーがーども必要なくなったわけだし実質居なくなったと見てもいいのでは?

 

「時に、おぬし等はどこへ行くのじゃ?」

 

「授業で使う施設を一通り案内してから第二職員室ですね」

 

ついてくるのは、まぁ、諦めるか

 

「ならば、妾が案内しようではないか」

 

お断りさせていただきたい

 

「私が理事長に言いつかっているのですが」

 

「せっかく友となれたのじゃ、ここは譲ってくれんか?」

 

何でそんなにグイグイ来るんですかねー

 

「そう、ですね。では夕方4時までに第二職員室へ行くのを忘れないようにお願いします」

 

おーい

 

結局コイツと二人にするんかーい

 

「うむ、では行こうではないか!」

 

テンション高いなー

 

ついて行きたくねー

 

いや、ありがたいんだけどさ

 

「仰せのままに」

 

「せっかく友となったのじゃ、いろいろと話しながら行こうぞ」

 

これ以上の面倒は勘弁してくれ




一年ぶりという事実に言葉が出ねぇ……


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