BASEBALL AGENT (五瀬尊)
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Act1 新たなる環境

※広島弁が多めです。読み辛いと思ったらコメント下さい。お返しします。広島弁は無くしませんが。


 4月―桜咲きまた、舞い散り出会いの季節とも呼ばれるこの季節、中高生ならばその多くが仲間との別れを惜しみ、新たなる環境への期待と不安の入り交じった複雑な胸中でいるものが大半だろう。

 この話は、ある青年が高等学校へ入学したそんな時期から始めることにしよう。

 

 *-*-*

 

 ―広島〈私立東洋工業高等学校〉―

 全くの新しい環境、か・・・。しかし東洋“工業”ねえ、工業高校を名乗っている割りには工業科3クラス普通科3クラスと随分標準化したもんだな。工業科を作る為の工業高校なのか工業高校を名乗る為の工業科なのか分かりゃしねえ。ま、その中途半端な設定のお陰で登校日数がギリギリでも受け入れて貰えた訳だから有難い話なんだがな。俺の希望で本州内とは言ったけど、それでも丁度良くこんな遠くの学校探し出して来て、出来るったけ暮らしやすいようにって色々面倒見てくれたんだから、中学の先生にも親にも感謝しなくちゃな。

 ・・・流石に7時じゃ早く来すぎたか?誰もいねえな。そう言えば、入学式は2,3年は参加しねえんだっけか。ま、良いか。教室の場所は分かってるし行けば何かしらあるだろ。

 

 ***

 

 教室に着くと定番の様に黒板アートと言うのか、入学おめでとう!と言う文字と動物を模したようなイラストで装飾が施されていた。・・・で、結局する事無し、か。

「お?早!。」

 と、思ったら誰か来たな。服装的に新入生だけど・・・。

「おう、このクラスか?早いのはお互い様だろ。」

 同じクラスなら声を掛けておいて損は無いだろう。

「ああ、(はよ)うに来たら野球部の先輩等が練習しよるか思うたんじゃけど、忘れとった、先輩等は今日休みじゃわ。」

 ん!?い、いや、方言か・・・。そりゃ広島だもんな。聞き慣れなくて当然か。

「ん?どした?」

 一瞬ちんぷんかんぷんな顔をしたからか、やや不審気な顔をされてしまった。

「いや、悪い聞き慣れない話し方だったからさ。俺、神奈川から来たんだよ。」

 弁明しなければと思い、慌てて自分の出身地まで口走ってしまう。ま、良いか後の手間が省けたと考えようもある。

「へぇ、そうなんじゃ。じゃけど、何で神奈川からこっちに?」

 前の話は納得してくれた様だが、その先を聞かれるとは思わず、ぐっ、と喉に空気が詰まる。

「いや、無理に話さんでええよ。珍しいけん、ちょっと気になっただけじゃけえ。」

 話しにくそうにする俺に軽い調子で話をはぐらかそうとしてくれている。

「ああ、いや気にすんな。親の仕事だよ。ちょっと、まあ、ゴチャゴチャあってな。」

 だが、ここで話を無かった事にしてしまっては、後に禍根が残ると言うか、話しづらくなってしまうと考え、それっぽく理由付けをする。しかし、最後はぐらかしたのは失敗だったか?

「はあ、そりゃ大変だったんじゃね。・・・そういや、お前名前は?」

 何か引っ掛かることはあったようだが、敢えて聞かないでくれたらしい。馴染んできたと判断したのか、少し声の調子が軽くなった。

「俺は(みず)() (れい)()だ。そっちは?」

「俺は、喜岡(よしおか) (たく)()言うんじゃけど、あー・・・と、零亜でええ?」

 何が?と聞こうと思ったが、呼び方だと思い当たって、考え直す。

「呼び方は何でも良い。そう言えば、最初に野球部がどうとか言ってたけど、琢馬は野球部なのか?」

「まだ入った訳じゃ無いけどね。坊主が強制じゃないけん、髪も剃っとらん。」

 へえ、それは珍しいな。それはそうとして・・・広島弁聞き取り辛い。住むには良い所だけど、言葉は慣れなきゃ難しいかな。

「あー、そう言うことか。野球部のわりには普通の髪型だなと思ってたんだ。珍しい制度だな。」

「そうよねぇ。野球部っぽくない()うか・・・。零亜は部活はどうするん。」

 あ、やっぱりそれは聞くか。

「部活は特に決めてないな。まあ、何かしら興味が湧いたらどこかしら入るつもりだよ。」

 まあ、文化系はあんまり入る気しないけどな。口には出さないが、俺は体動かしてる方が性に合ってるらしい。

「中学の部活は?中学の時は何もしよらんかったん?」

 中学の時、と言われてまた少し嫌なことを思い出す。

「中学の時・・・一応、軟式テニス部だった。」

 だから、そう言葉を濁すように答えることしかできなかった。

「何か、聞きにくいんじゃけど、テニスはもうせんのん?」

 その俺の状態に何か察したのだろう、口調が神妙になった。

「まあ、もう良いかな。テニスはあんまり・・・。」

 特に意図した訳では無いが、言葉の切りどころが良かったらしい。俺が言おうとした事とは別の意味に捉えたようで琢馬の表情が少し明るくなる。

「じゃあ、野球部入らん?テニスやっとったんなら何となく出来るんじゃない?言うか、そんな話を聞いた気がするんじゃけど。」

 何となくってそんな雑な・・・その話もどこで聞いたよ、せいぜい参考程度の話だろ。

「まあ、考えては見るけど、野球・・・野球かぁ。」

 そう言えば、昔に一時野球やらされてたな。Tボールとかって言ったっけ?一緒にやってた奴が野球であって野球じゃないみたいな事を言ってたけど。

「お?琢馬、早くね?」

 考え込みかけた所で新たに誰か登校して来た。それで何となしに時計を見やると、時刻は8時前程を指していた。

「おう広也。いや、今日先輩等居らんの忘れとってさぁ。」

 口ぶりからして琢馬の中学時代以前からの知り合いらしいな。

「あー、練習しよるか思うてはよに来たんじゃ。阿呆(あほ)じゃの。ほんで・・・そっちのは?そっちのって言うと失礼じゃけど。」

「まあ、それは方言だから仕方が無いだろ。俺は、水城 零亜だ。神奈川出身だよ。」

 出来るだけ詮索されないよう、最後はおどけるような調子で言ってみる。しかし、慣れって凄いな。コイツら見てると良く分かるけど。

「ほう、そりゃ遠くから来たな。珍しい。あ、俺は梶河(かじかわ) (ひろ)()な。よろしく。」

 あ、意外と神奈川の部分には反応しないんだな。と言うか、地味に標準臭い。

「ああ、よろしく。広島弁は聞き慣れてないから手柔らかに頼むよ。」

「ははっ、善処するよ。出来るとは言わんけど。」

 面白い奴だな。声の緩急の付け方が上手い。

「コイツ冗談と話術はセンスがあるんだよな。スポーツは出来ない癖に。」

 話術・・・?いや、それでいいのか。所で、琢馬って一言余計だとか言われるタイプじゃ無かろうか。

「うるせえよ琢馬。俺はサッカー一筋なだけだ。」

 後半だけ、キランッとかって擬音がつきそうな調子でそれ言ってるけどさあ・・・。

「サッカー出来れば大体の事は出来る印象あるんだが。そうでもないのか?」

「いや、コイツの場合サッカー“やっとる”ってだけで、そんなに上手くねえし。」

「やかましい。お前だって野球は楽しんでやるだけとか言ってるだろうが。」

 何つーか、不毛な言い合いになって来てんな。しかも、広也の争点がずれてきてる気がするんだが。

「2人ともそろそろ俺をのけ者にしかねない言い合いは止めないか?いい加減他のクラスメイトも来るだろ。」

 俺をのけ者に云々はオマケだが、外は少しずつ騒がしくなってきている。聞こえるのは主に女子の声。まあ、大方中学の知り合いで集まってふざけてるんだろうが。

「ああ、そうじゃね。8時半集合完了だっけ?所で、どうだよ零亜、大分標準に近付いたろ。」

 そう言えば、確かに最初と比べれば大分聞き取りやすい。ホント最初(特に琢馬)は異世界みたいだったが。

「ああ、大分な。結構気使ってくれてたんだな。」

「ま、これから結構(つる)む事もあるだろうからな。合わせられるようになっといて損はないだろ。」

 有難いな。会って数十分なのに余所者(よそもの)の俺に気遣ってくれるなんて。

「・・・広島来て良かったな。」

 何気なしにぼそりと呟いた言葉に、2人が振り向く。

「何言ってんだ。それは、もっと(なご)う住んでから言え。どうせついこの間来たばっかだろ。」

 く、コイツ痛いトコ突きやがって。やっぱ一言余計だ。

「まあ、そうだけどな。でも、お前等見てると良い街だなって思うよ。面白い奴も多そうだし。」

 そう言いつつ、ちらりと周りを見渡すと、大方全員集まって来ているようで、彼方此方で友人らしき生徒と話す姿が見受けられた。

 と、此処で担任教師かは分からないが、教員らしき人物が教室に入ってきた。

「おう、大体揃ってるな。じゃあ、席着けよー。」

 その言葉に、周りの生徒達は特に慌てた様子もなく友人と挨拶をして席に戻っていく。教室には既に全員が登校していたようで、クラスの全員が着席したところで、教師が口を開いた。

「えー、まず皆さん入学おめでとうございます。これから、1年間このクラスで過ごしていく訳ですが、私は担任ではなくて、副担任を務めさせて頂きます、(はま)() (ひろ)()と言います。よろしくお願いします。」

 浜井先生が一通りの挨拶を終えたところで、一同が頭を下げる。

「えー、この後入学式の為、体育館に移動するんですが、私語の無いようにお願いします。」

 そう言うと、一度教壇を降り、外で控えていた教員に何か確認を取り、また戻ってきた。

「では、移動するので皆さん立って下さい。体育館までは私が先導します。その後は、担任の先生が指示をして下さるので、そちらについて行って下さい。」

 浜井先生の言葉を聞き終えると全員が一斉に立ち上がった。その後、廊下で2列に並ばせられ、体育館へ移動し始めた。

 




零亜の圧倒的順応力の高さ・・・。従兄弟にすら伝わらなかったのに何故こんなキャラを作ってしまったか・・・。ま、良いか一々躓いてたら話も進みやしない。


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Act2 この手に・・・限る?

甲子園開幕からはや一週間ほど・・・やっぱり高校野球は何が起こるか分かりませんねえ・・・。


 さてさて、これと言った出来事も無く、ごくごく普通に体育館にたどり着いた訳だが、2、3年生がいない代わりに、保護者がいるのが当然というものであって、ただの入学式だと決め込んでいる人と、おっかなびっくり緊張しかけている人もいるらしい。現在いるのは体育館横の、武道場のような場所である(と言うかまさしく武道場である)。体育館まで誘導すると言ったのは嘘か。そんな俺の心境など知ったことではない先生方は、各々自クラスの前に立ち、挨拶を始めている。

「えー、皆さん。まずは入学おめでとうございます。私は、1年1組の担任で、学年主任の天野(あまや) (かおる)と言います。学年主任で、数学を担当しているので1組の生徒以外の生徒さんにも関わることもあると思います。1年間よろしくお願いします。」

 最初の先生が挨拶を終えると、次の先生が自己紹介を始めた。まあ、あまり聞く気は無いけど。結局の所、担当教科だけ分かればいいんだ。

 

 ***

 

 で、結果要約すれば、(敬称略)1組の担任・副担任は、天野(数学)・西田(にしだ)(現代文)、2組は柚木(ゆき)(英語)・志波(しわ)(古文)、3組は小谷(こたに)(数学)・浜井(はまい)(現代社会)、4組は増見(ますみ)(生物)・(おき)(体育)、5組は猪上(いのうえ)(物理)・野本(のもと)(音楽)、6組は白居(しらい)(書道)・安治(あわじ)(情報社会)と言った所である。数学やら英語やらはクラス分けがあるため、1学年に何人か控えているらしいが、それは授業時に紹介されるとの事だ(その他の副教科担当も同様)。・・・聞く気が無いからってうっかり自分のクラスの担任まで聞き逃してしまった。まあ、良いか。←無気力

「はい、じゃあこれから体育館の方に移動しますが、保護者の方が既に集まって居られるので、私語の無いようにお願いします。」

 私語するなって話はさっきも聞いた。って、言っても仕方が無いか。念を押すって事もあるからな。

「じゃ、1組の方から体育館へ移動始めてください。えー、後は担任の先生方にお任せします。」

 そう言うと、天野先生は1組を先導して武道場を出て行く。1組の後尾が前まで出てくると、今度は2組担任が自分のクラスを立たせ、そのまま1組の後尾に着いて移動を始めた。後は全クラス同じように動くだけだ。

「はい、3組立って。」

 小谷先生の号令で前からバラバラと立ち上がる。そのまま、2組の後尾に着いていく先生の後を追って、俺たちも移動を始めた。

 

 ***

 

 体育館の中には、当然の如く緑のシートが敷かれていて、ロフトの上では吹奏楽部がスウィングの定番曲を演奏していた。やはり何人かは緊張しているのか歩き方が不自然なのだが、本人は気付いてるんだろうか・・・。席は1クラスにつき通路を(はさ)んで2つに分けてあり、前半が向かって右側、後半が向かって左側の席に座るようになっている。俺は後半なので左側、所謂“地域の方々”が並んでいる側に近い方の席になっている。どうだ、3つ向こうは名前も知らないおっさんおばさんがズラッと並んでるんだぜ。何が楽しくてこんな状況にいなけりゃならないんだ。

『新入生、起立。』

 全員が入場したのを確認し、司会が号令を掛ける。1クラス36名、総勢216名が一斉に立ち上がり、パイプ椅子のぶつかり合う音が大きく響いた。

『学校長式辞。』

 

 ***

 

 校長の式辞あたりから完全に意識を切らしていたが、入学式は滞(とどこお)りなく終了した。後は教室でHRを受けて帰るだけだな。人によっては明日から部活やら体験入部やらに行くと言う事もあるようだが、まあ今日は殆ど関係ないだろ。土日挟んで月曜日には部活紹介もあるし。そんなこんな考えながら教室に戻って自席で待っていると、担任の小谷先生が前から、副担の浜井先生が後ろのドアから教室に入ってきた。

「えーっと、全員戻って来てるね。それじゃあHR始めます。取りあえず出席番号1番の阿品(あじな)さん号令お願いします。・・・あ、起立からお願いしますね。」

 突然指名されて、どう号令を掛けたら良いのか分からなかったらしく、阿品さんがおどおどしているのを見て、先生が優しく声を掛ける。ま、最初の内だろうが。

「あ、はい。起立、気をつけ、礼。」

 優しく言われても、やはり緊張するのかその号令はテンポが速く、ぎこちないものだが、みんな昔からやっている事だと言わんばかりに号令通りに動いていく。ただ、そこから勝手に座る人と着席を待つ人は分かれたが、俺はつられて座ってしまった。その後にあれ?と言うような顔をしながら立っている人がバラバラと着席すると言う格好になった。

「ああ、ごめんなさい。次から着席は号令を掛けましょうかね。今は良いですけど。」

 忘れてただけか。若そうだし、担任を持つのは初めてなのか?・・・それを聞くのは不躾が過ぎる気がするので聞きはしないが。

「え、と、自己紹介ですかね。先程も一応しましたが、私の名前は小谷 詠歌(えいか)といいます。数学を担当しています。分けられた2つのクラスのどちらでお会いできるか分かりませんが、ええっと、1年間よろしくおねがいします。」

 小谷先生が一通り挨拶を終えると、ぱらぱらと拍手が起こった。それ以上のリアクションなど有りはしないが。

「浜井先生、自己紹介は・・・。」

 やや遠慮がちに放たれた小谷先生の言葉は、浜井先生のいや結構と言うようなジェスチャーで止められた。

「あ、すいません。もうされてましたね。あ、じゃあ1番の人から簡単に自己紹介お願いします。」

 再度指名され、またも遠慮がちに立ち上がる阿品さん。まだ、緊張しつつおどおどと全体を振り返ると、自己紹介を始めた。

 

 ***

 

 俺の自己紹介は適当に流す程度に聞いて貰って、残り2人も自己紹介を終わらせた。俺が神奈川出身だって事は一応だけ紹介しておいた。キツイ方言ばかり聞かされちゃ身が持たない。特に反応が無かったのは驚かせる間もなく座って次に回したからだろう。後ろの人がさっさとやってくれて助かった。

「はい。じゃあ、自己紹介も終わったので、今日はこれで解散ですね。月曜日の予定を書いたプリントを前に置いておくので、帰る前に取って帰って下さいね。それでは、出席番号2番の石本(いしもと)君号令をお願いします。」

 出席番号順に当番が回ってくるのか?て、言ってもあれか。クラス委員とか全く決めてないからこうなってんのか。

「起立、気をつけ、礼。」

 お、今度はしっかりした号令だな。運動部系の声の張りがある気がする。

『ありがとうございました!』

 

 ***

 

「零亜ー、帰ろうぜ。」

 肩に鞄ひっさげて琢磨と広也が声を掛けてくる。こいつら、部活も無いのにエナメルバッグなんか持ってきたのか?

「カバンがでかいのは気にすんなよ。この後ゲーセン行こうやって話してんだ。」

「いや、だからってそんなにでかくなくて良いだろ。何する気だよ。」

 ただのゲーセンだよなあ。この辺りでゲーセンって言ったら最近オープンしたばっかりって言うショッピングモールしか無いけど、あそこでそんなに金落とす気か?

「え?クレーンゲーム以外無いだろ?都会の人間ならでかいの2、3個は普通に落とすもんじゃないん?」

 いやいや、どんな勘違いだよ。つーか、何時の時代の田舎もんだお前等。

「馬鹿、ちったあ考えろ。そんなに上手い奴なんかそうそういねえよ。」

「分かってる分かってる。ちょっとした冗談だよ。でも、千円あれば1個は落とせる。・・・ちっこいのは。」

 ちっこいのかよ!一瞬期待した俺が馬鹿だったよ!

「結局そのバッグは要らねえんじゃねえか。」

「だから言っただろ。気にするなって。癖みたいなモンなんだよ。でかいのを持ち歩くのは。」

 気にするなってそう言うことか。後の話がアレだからゲーセンの為にでかいカバン持って来てんのかと思ったじゃん。

「癖、癖ねえ。何故にそんな癖がついたんだか。」

 まあ、俺も癖は幾つかあるにはあるんだが、そんなでかいモンを持ち歩く癖は無いな。十人十色と言うから当然なんだが。

「まあ、色々ある。大体、中学の部活のせいだけど、毎日でかいカバン背負(しょ)って行ってたからな。これじゃないと返って落ち着かん。」

 ああ、成る程分からんでも無いな。俺も前まではテニスラケットとか持ってないと不安だったし。アレは一種の病気と言ってよかったな。←何故か得意げ

「ふーん。で、それよりどこ行くんだ?あの海沿いにあるショッピングモールか?」

 て言うか、どう考えてもあそこ意外思いつかないんだが。

「ま、そこ以外無いな。最近、あの手のショッピングモールが乱立しだしたからどっか行こうと思えば行けるし、ちょっと足を伸ばせば昔からあって規模もでかい所あるけど、やっぱりこの前出来たのが近場で規模がでかいからな。あそこが1番良い。」

 ショッピングモールが乱立しだしたって、そんなに建ててどうする気だよ広島・・・。

「何でそんなに建ちだしたかねえ。」

「ま、それはあれだ。周りの地域から広島“市”が人材を巻き上げてるからな。これだけ人口がいれば需要があると本社が判断したんだろ。実際あそこもオープンした日なんか相当の人が集まってたからな。」

 市を強調するって事は周辺地域は減ってるって事か。それより、本社って事は殆どあれか?同じグループのショッピングモールなのか?

「その相当の具体数が知りたいんだが・・・ま、それは良いや。さっさと行くんなら行こうぜ。」

 こう言う時は切替えが重要だ。やると決まったら早めに行動に移すのが俺の流儀だからな。・・・もう手遅れか。

「おう、そうだな。で、移動は・・・。」

おい、何故そこで口ごもる。

「どうやって行くんだ?まあ、歩きで行ける距離っぽいけど。」

 窓から覗けばショッピングモールのやたら存在感のでかい看板が見える。看板じゃなくて屋根の文字か。やばい、ボケってる。・・・ボケってるってなんだ?

「ま、当然歩きだな。交友を深めるのにはだらだら喋りながら歩くのが一番良い。」

 確かにそうなんだが・・・その地味に年寄り臭い言い方はどうにかならんのか?

「だな。んじゃ、行きますかぁ。」

「俺は土地勘無いから2人とも頼むぜ?」

 来たばっかりだし、特にこの周辺は歩き回るって言う程は歩いてないからなあ。

「「分かってる(って)」」

 息ピッタリだなあ。さてはて、ゲーセンで俺が何を出来るやら。アーケードはからっきしだからなぁ・・・。




次話は・・・何か中身の無い物(元から無い)になりそうですね・・・。


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