【創造と破壊】の力で暴れまくる〜リメイク版すげ替え進行中〜 (しのしのおしるこ)
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第1話〜龍を統べる者〜【リメイク済】
ではどうぞ、お楽しみ下さい。
↓
初めましての方も以前からの読者の方もご無沙汰しております。
しのしのおしるこです。
考えた結果、この様なリメイクを選ばせていただきました。
13話までは少しづつにはなりますが、一から書き直したリメイク済に話を挿げ替えていく予定です。
追いつくまでは多少違和感が有るかと思いますが以前よりは読みやすくなっているはず!
ご意見、ご感想お待ちしております。
第1話
ーーーーっーーーー眩しっーーーここ何処だ?ーーーーーー
長い眠りから起こされた様な気だるい感覚。重い身体を起こし、瞼を擦りつつ男の景色は次第に現実を映し出す。
横になった感覚から分かってはいたが、辺りは緑に囲まれていた。
近くに人の気配は無いが人の手は入っている様で、聳え立つ大樹の中腹に書かれた数字がソレを証明していた。射し込む光の一つはピンポイントに男の体全体を包み込んでいる。
ーーーーー成る程、眩しい訳だ……
ゆっくりと立ち上がった男の身長は180センチを超えている。
上下・黒一色で統一された服装。体格は細身と言うより引き締まっている。
インナーから覗く肉体は誰が見ても一般人のソレでは無い。
切れ長で鋭い眼をしているが、非常に整った容姿は何処か楽観的な印象も抱かせる。
だが何よりも目を引くのは、腰まで伸びた美しい銀色の髪であろう。
風に靡く状は光の直射も相まり宛ら芸術品を思わせる。
「フゥー……空気が美味いと煙草も美味い……さて」
上着を拾い上げ、地に挿さる"長刀"を抜き取り腰のベルトへと据え直す。
ーー【
男は深呼吸を幾度か繰り返すと、凝り固まった身体をほぐす様に動かしつつ辺りを見回し、一つの結論に至った。
見上げるも首が痛くなるほどに聳え立つ大木、いやーー巨木の数々。
その周りに浮かぶ、大小様々なシャボン玉っぽい球体物。そして、先程も確認したが一つの巨木には大きく数字の様なものが彫ってある。
「……やっぱこれ…ヤルキマングローブだろ………あの女神が言ってた事がマジなら此処はシャボンディ諸島か?」
思わず男の口元は弧を描く。
生前、幾度と無く"妄想"したのだ。まさかその夢がこんな形で叶うとは思いもしなかった。
「第二の人生ってか? この世界なら……力を自由に使って良いんだよな?」
ククククッーーー何せ漫画のーーーONE PIECEの世界、生前のつまらない世界とは違う。
此処は様々な強者が欲望のままに犇めく異能の巣窟なんだろ?
これまでのつまらない人生を振り返り、同時にこれからの人生を想像する。
ーーー歓喜の感情が表情に出るのは仕方がないと言うものだ。
「それにしても、漫画で読んだ雰囲気とは全然違うな。まるで本物の木…って当然か。つぅかよ、何で人っ子一人いねぇの? 誰も居ない区画とかあったっけ?」
男は誰に問いかける訳でもなく独りごちる。そして一本の巨木へと歩み寄り、木の強度を確かめる様に軽くノックする。
「まぁ人が居ねぇなら……丁度良い、試してみるか」
男は不敵な笑みを浮かべると半身になり両脚を広げながら腰を落とす。そして、左手の掌を目の前の巨木にヒタリと添えつつ右手は拳をつくり腰に絞る。俗に言う正拳突きに似た様な構えをとった。
龍門ーー木・火・土・金・水・風・空の氣を司る七龍ーーー加えて第八の元素と成る『十二匹』の龍……全ての龍門は既に覚醒、開くのは呼吸をするのと同義に容易い。
「ーー昇龍と成りて天を駆け、黒龍と化して地を鳴り動かす。だったか」
瞬間ーーーーーー大気が爆ぜ、振るった拳は龍を纏いーー音を置き去りにした。
「ーーーーー
男を力点場に大気が震え、"龍に喰われた"破壊痕はその威力を物語る。
男が立つ巨木の裏側には、内部から爆散した様なーーー直径200メートル程の爪痕が残されていた。
「おお。結構加減したんだけどな〜、ふふ。黒龍ーーー
男は満足したのか、大きく息を吸い込む。空気は澄んでおり、風が運ぶ植物の香りは男の生前居た環境を思い出させてくれる。
ーーーそれと同時に男が迎えた理不尽極まりない最期も。
♦︎
時は少しばかり遡りーーー
天界。此処はあの世とこの世の境目にて、様々なーーー俗に言う【神】が暮らす神秘に溢れた世界。その中でも神格の高い"全能神"、ゼウス・ヘラと、その娘が住う神殿である。
「へべ〜、いるんでしょ? 開けなさいよ。お母様そろそろ看過出来ないんですけど〜?」
ヘラの愛娘ーーー慈愛の女神[へべ]ーーーが神殿の一角にある自室に篭ってしまって今日で丁度二十年の時が経とうとしていた。
「へべったら、居るはずよね? 居るなら返事して? お母様怒らないから〜」
「……居ない」
消え入る様な声で聴こえてくる娘の声ーーかなり掠れている様だーー久し振りに声を出すと上手く言葉が出てこない、ニート特有の"あるある"だろう、とヘラは予測する。
「ーーーオラァ!!!」
母の愛の前に、薄っぺらい防御結界など紙切れ同然なのだ。問答無用!と、片側68トンも有る扉を、結界諸共蹴り飛ばすヘラ。
「きゃぁぁぁぁああ!! お母様!? 私居ないって言いましたよね!?居ないって言ったのに無理矢理入ってくるなんてぇ!!」
「いや、おるやん」
「笑顔が怖い!? お母様酷いです! 扉の破壊は辞めてって言ってるじゃ無いですか!これで何枚目だとーーー」
「良いじゃ無いの、すぐ治るんだし〜。それよりもアンタどうしちゃったの? あれだけ真面目だったのに…此処二十年ずーっと引きこもっちゃって。一人前の女神になったから仕事あげたのに……いい歳こいた娘がニートなんてお母様ショックだわ〜超ショック」
「に、ニートじゃ無いもん!! 地、地球にちょっと気になる人が居て、その人危なっかしいからストー、じゃなくて監視!監視してたの!!」
「うわぁ……ちょっとってアンタ二十年よ?まさか目を離した隙に愛娘が……ストーカーとか笑えないんですけど。青春の女神がニートでストーカー……お母さんちょっと3億年程引きこもってくる」
「待って待って!!ちゃんと青春してるもん!!すっごいカッコいいんだよ!?銀色でキラキラしてて……何より魂が凄いの!」
「はぁ? 一個人に肩入れしちゃダメだってあれだけ言ったじゃ無い。況してや人間に[恋]なんて論外よ、私達[神]は同じ[神]以外と結ばれる事は無いわ。残念だけど諦めなさい」
「この人、多分…だけど……人間じゃ無いよ、私達と同じだと思うの!だって魂が虹色だもん!ーーーお母様お願い、初めての恋なの!! 」
「地球の担当はへべでしょ?他の神が現界してるなんて話は聞いてないし……ってアンタ今何て? た、魂の色が何だって??」
「だーかーらぁ!虹色なの!!すっごく綺麗なのよ?お母様も見てみてよ!!」
可哀想に……全能神の両親を持つサラブレッドの筈がどうしてこんな残念な子に……バグか?バグなのか??
人間の魂は等しく[青]だ。こんな事、猿でも知ってる常識である。虹色の魂?聞いた事ないわ!
「はぁー、猿以下の頭に視覚異常…前途多難だわ…………ん?……はぁぁぁぁあああああ??に、虹色……虹色だわ!何よこれ!」
あり得ないあり得ないあり得ない!! 確かに虹色に見える…嫌、コレは……二つの魂が衝突しあってる!?こんな不安定な状態で何で生きてーーーそれに…この子の力、私達と同じ神の力!?な、何でーーーイケない!!暴走してるわ!このままじゃ世界が滅んでしまうーーー
「あははははっ! お母様何その顔〜おもしろ〜い!!って!お母様!?何してるの!?死んじゃう!!そんなの当てたらあの子が死んじゃーーーダメぇぇぇぇええええ!!」
「ーーー御免なさい。でも、こうするしか無い」
♦︎
ーーー事後・天界〜転生の泉〜
「あ!お母様! 目が覚めたみたい!」
「いっつぅ……あんだぁ? 俺……確か降って来た隕石に直撃してーーーどこだ此処」
「あー、はいはい。ややこしくなるからへべは引っ込んでなさい」
「お母様!?ーーーんにゃむ!ーームーーーー!!」
「女?……おい、誰だあんたら。俺は確か死んだ筈だが……てか何してんの?」
眼が覚めると目の前で金ピカのロープに縛られ口を塞がれる羽が生えたパツ金美少女風の女の子。
手慣れた様子でその子をぐるぐる巻きにする角の生えた妙齢の女性。
視界には森のような空間が広がり、中央にある巨大な湖は、差し込んだ光により神聖な空気が満ちている。
推察するに、此処は天国ってやつか?地獄には見えねぇな。あの魔王みたいな女以外は。
「ご明察通り此処は天界よ。いらっしゃい、棗君ーーー突然の事で理解出来ないと思うけど、先ずは謝っておくわ。貴方は私が殺しましたぁ! メンゴメンゴォ!!ーーーテヘペロッ」
「………は?……はぁぁぁぁあああああ??」
な、何で!?てか天界って事はこの女は神かなんかだろ!?え?何で俺が殺されなきゃなんねぇの!? しかも人一人殺してメンゴメンゴって……何だこれ、ワケガワカラナイヨ。
「ふふっ、これだけ驚いてくれたら殺した甲斐があったってもんよ。光栄に思いなさい!全能神であるヘラ様直々に召されるなんて経験したくても出来ないんだから。べ、別にあんたの事何て何とも思ってないんだからねっ!? か、勘違いしないでよね?」
「お前、頭がイカれてんのか!? ツンデレとかいらねぇから!! どういう事か説明しろよ!! あの隕石落としたのテメーだな!?」
「はいはい落ち着いて。本当の所アンタは死んで無いわよ。てか一度殺して肉体を再構築したの。こうでもしないと地球が無くなってたから仕方ないでしょ? 」
「……どういう事だ」
ーーーーーーヘラって神の話を聴くと、俺は普通の人間とは違うバグの様な存在なんだそうだ。確かに幼少から不思議な力に振り回されて生きて来た。村人達から化け物、鬼の子と蔑まれ、迫害され………一度、力が暴走してからは一人でヒッソリと暮らしていたわけだが。
閉鎖された環境で唯一の娯楽は時折棄てられる漫画やアニメくらいの物で。
ある日、好きになった漫画の技を真似してみたらば漫画のキャラと同じ事が出来た。"俺は特別な力を持った特別な存在だ"と、その時は歓喜に震えたものだったが……
それからは独り山の中で派手に力を試しては自己満足する日々。
「そうーーー貴方の力は厳密に言えば【創造と破壊】私達と同じ、神の力よ。それにしても変わってるわよねアンタ。その力があれば好き放題なんでも出来たでしょうに」
「ある日……気が付いたんだよ、だから何だ。ってな。こんな力が有っても無くても独りなのは変わらない。外の世界では力なんか必要とされて無かった。俺はただの化け物だ。だから思ったんだ、最後に有りっ丈の一撃を打って、この呪われた力は封印しようってな」
「ふーん、使い方次第でどうとでもなったんだけどねぇ。ま、その[最後の一撃]ってのがアンタを殺した理由ね……アレは星を砕く一撃だった。オーバーキルってヤツ? 地球は娘の担当地区だし、ニートにするわけにはいかないでしょ?」
「そうか、星を……なら仕方ねぇなーーーっておい!その言い方だと地球が無くなんの自体はどうでもいい様に聴こえるんだが?」
「ぶっちゃけどうでもいいわね〜、神なんていい加減なもんよ。勝手に創って勝手に破壊する、星の寿命なんかも気分で決めてるし?っとまぁ冗談は置いといてーーーーーーアンタは生まれる世界を間違えたーーー 言ってる意味わかるかしら」
「わからねぇな。人間でも無く、神でも無いチグハグな存在。んなめんどクセェ奴を何で蘇らせた?」
「うわぁ、何かもぉ……その、拗らせちゃってるわね。自分で言ってて悲しくならないの?」
「ーーーっぷはっ!! お母様!? これ以上、棗さんに酷い事言わないで下さい!!だ、誰にも理解されなくたって私は棗さんの味方ですから!! そ、その…凄王でしたっけ……か、かっこ良かったですよ?」
「ふぁっ!? なんかやめて!? 恥ずかしいから!!てか何で知ってんの!?」
「ったく、そういう事よ。アンタを復活させたのは私の娘ーーへべって言うんだけど、この子アンタに惚れちゃったの……はぁぁあ、全く何処までポンコツなんだか……二十年よ二十年!ずーっと見てたんですって」
「ええ……嘘だろ?な、何で俺なんかを……」
「自分を卑下するのはやめて下さい! 棗さんは素敵ですよ? カッコいいです!だ、だから私と…その……」
「はいはいストップストップ〜、で、アンタさ。転生しなさい。彼処に湖あるでしょ?行きたい世界を思い浮かべて飛び込んだら転生出来るから」
ーーーーーーヘラが言うには俺の魂は二つに分離しており、どっち付かずの状態で非常に不安定らしい。中途半端に力を使って来たせいで人間性の部分と神の部分が衝突し合い、上手く混ざらないらしい。有るはずだった寿命を消化し、自由に生きて来い!と言われた。
「ふふっ……我慢なんかしちゃダメよ? 創造だろうが破壊だろうが、何方に偏ってもいいわ。兎に角、自らの心に嘘を付かない、そして常に純粋で有る事。それさえ守れば本来の寿命を全うした時ーーーアンタは【神】になってる」
「へぇ、良いのか? "確かに清く正しく"なんざ柄じゃねぇし、糞食らえだが。全能神なら俺の性格だって知ってんだろ? 自分から死神なんぞにはなりたくねぇな」
「だからアンタ次第って言ってるでしょ? それこそ神の種類なんで無数に有るんだからーーーーーーさっさと行きなさい。私も暇じゃ無いのよ」
「棗さん!私、応援してますから!!貴方がどんな神様になっても気持ちは変わりません!!ずーっと待ってます!大好きです!」
「あ、あはは。なんて言えば良いのか……あ、ありがとう? まぁどうなるか分からねぇが、取り敢えず行きたい世界は決まってる。精々楽しんでくるよ!」
棗はそう言い残し、湖へと飛び込んだ。生前、愛読していたONE PIECEの世界を思い浮かべて。
「聞きましたかお母様!!? "ありがとう"ですって!! キャァ!婚約しちゃったぁ!!さーて、未来の旦那様を監視しなくちゃ!!」
「へべ!!アンタの担当は地球でしょーが! ーーーそれにしても……ふふふ、どちらの神になるのか楽しみだわ。私の予想じゃ恐らく……」
♦︎
こうして、話は冒頭へと戻る。
「ククククッ! 知らしめる……誰にも理解されなかった俺の力を!存在を! 楽しみだ…ああ、楽しみだ!なぁ、お前らもそう思うだろ?」
「ひっ、ヒイぃぃ!! わ、悪かったよ!こんな所を独りで歩いてるもんだからつい!」
「良いからジャンプしろほら、腹減ってんだよ」
「す、すいやせんでした……」
「飯屋は確か2グローブ先だったなーーーん?まだ居たのか、さっさと消えろ」
「はいぃぃぃい!!行くぞお前ら!!」
不幸にも棗にカツアゲをかました海賊はどうやら幸運にも下っ端だったようで。
下っ端の雑魚……敵意が無いのなら殺すまでは無いーーーそう判断された三人組は駆け足でその場を去って行った。
少々の金を手にした棗も飯屋を目指して歩を進める。
まだ見ぬ好敵手に期待を膨らませながら。
♦︎♢♦︎
【
刃渡り180センチ超ーーーオリ主愛用の刀。この刀で人を1人殺める度に、乱れ波紋が増えると言われている呪われた長刀。
龍眼の能力を向上させる効果を持つが、実際の能力は[全ての異能を無効化する]というもの。実体が無かろうが硬かろうが、異能である限り等しく両断する。
原作では五十以上の異能を持つチートキャラを一刀両断している。
プロローグにつきONE PIECE成分少な目………
次回はキャラ紹介です。オリ主の能力を詳しく書いてます。
※一応ネタバレ注意
ここまで読んでいただきありがとうございます!
リメイクって大変ですね〜(他人事
変更点・へべの性格、ナツメの反応等
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キャラ紹介
オリ主の能力を作中公開とともに更新していきます。《ネタバレ注意》
キャラ紹介
主人公(オリ主)
御神楽 棗(ミカグラ・ナツメ)
性別・男
外見・漫画、天上天下の原作後半の棗槙をイメージしていただければ。
※ 眼帯はしてません。笑い方も慎をイメージです。生まれ付きこの容姿の設定です。
性格・仲間、家族思い。好戦的。厨二病(戦闘時は特にかなーりイタイ子。スグ格好つける)
※一般常識ありません。若干オラオラかな?多分ムッツリってか耐性がない。勿論童貞。
好き・仲間。戦闘。へべ。漫画、アニメ。オパーイは憧れ(死亡フラグ
嫌い・仲間や家族を傷つけられる事。うじうじした自分。弱い自分。
身長.188センチ
体重.190キロ(骨密度、筋繊維密度が異常な為。見た目は細っそりしてるが身体能力が桁外れ)
※皮膚は薄皮一枚普通に切れたり怪我もするが、筋繊維に阻まれて弾丸や斬撃は通りにくい。黒龍発動時、凄王モード時は最上大業物ですら切断不可能。
年齢・死亡時、冒険開始時、20歳
握力・測定不能
素の腕力.脚力・約50%で海軍軍艦が大破するくらいを目安。
※凄王モード時はチョイ強めに殴ったら正義の門が吹っ飛ぶくらい?
オリ主の能力
【創造と破壊】
神と同じ能力なので、基本的には何でもできます。但し、ゼウスやヘラなどの身体スペックなどは勿論知りません。自分の想像を超えるものは生み出せないのです。
なのでオリ主の前世で創造した厨二病能力をそのまま引き継いでます。
身体能力も前世をそのまま引き継いでます。
充分化け物ですが、神に比べたらスペック劣ってるってだけです。
《赤羽六宗家シリーズ》
【龍拳】【黒龍】【凄王モード(我王紀士猛速凄乃男身命)別名、真の武】
今作でのオリ主は天上天下の《凪家》の龍拳を使います。
能力は、[あらゆる異能を喰らい、自身の能力にする]です。
原作と違い、悪魔の実の能力を喰らいます。喰らわれた方は一時的に無能力者になってしまいます。
パターンは原作と同じで黒龍発動時か凄王モード時です。凄王モードはオンオフをコントロール出来ます。
冒険開始時点でオリ主は天上天下全ての異能[全ての龍門]を使えます。(使いこなせるとは言ってない
【龍眼】
上記能力だけでも相当チートなのですが、オリ主のお気に入りである《棗家》の龍眼も普通に使えます。
原作をご存知ない方用に説明しますと、龍眼発動時は現在.過去.未来が見えるという能力です。
今回のオリ主が使うのは未来のみになります。
尚、オリ主が式刀零毀(ちょくとう れいき)と合わせて龍眼を使った時は若干ハイになります。
ブンシチニゲテ
【式刀零毀】
主人公愛用の刀。人を切るたびに波紋が増えると言われている呪われた長刀。
だが本当の能力は《あらゆる異能を無効化する》という超チート能力を持つ。
身体が硬かろうが実態がなかろうが例外はない。
この力は龍眼発動時にしか効果は出てこないが、原作では50以上の異能を持つ最強キャラを一刀両断している。
【龍掌】
《螢家》の力。殆どの怪我も一瞬で治してしまう能力。氣の当て方を変えると体力まで回復します。
時間はかかりますが。異能の中でも特に便利な能力ですよね。螢の婆さん曰く水虫は治せないとの事でしたがオリ主は水虫も治せます。
【屍の力】
原作でも最強の異能の一つ。《屍家》の力。自然の物質、大気中の塵や埃、微粒子に至るまで自在に分解生成出来る。原作では亜夜に命をかけても勝てない相手と言わせた程。本作でも無数の刀を創り出す技も健在です。お楽しみに。
【龍砲】
赤羽集ではないが此方もかなりのチート。原作では犬江が使用していた能力で、舌に掘られた紋を通して言葉を発すると、逆らえなくなる。人を言葉で操る異能の力だ。実は己に術を掛け身体能力を引き上げる禁じ手も存在する。対象に『重力負荷〇〇倍』等の発言で修行に使うことも可能。
《七龍シリーズ》
【水龍】
水を自在に操る力。原作では自分で生み出す事は出来ていませんでしたが、龍拳により大氣から自在に水を創り出すこともできます。能力者にとことん強いですね。因みに己の血も同様に操れます。
【火龍】
火を操る力。此方も水同様、創り出すことが出来ます。但し、メラメラの様に自分自身が炎になる事は出来ません。オリ主は今の所煙草に火をつける時くらいしか使っていませんが(笑
上記【龍】の力はまだまだあるので、随時更新していきます。
※悪魔の実は食べません。黒龍で能力だけ喰います。なので海楼石、海などの弱点はありません。体重が重くても筋力ヤバいので溺れません。
※覇気三種、六式はオリ主が使うかは分かりません。ぶっちゃけ凄王モード時は見た目が全身武装色みたいになるので、そのまま武装色使ってる程で行くかもです。原作の技はバリバリ使います(水龍海水でも使います)が、六式もソルと月歩くらいは見よう見まねで使わせるかも。つかちゃっていいよ!ってお声があれば普通に使います。
ヒロイン?
青春の女神へべ
性別・乙女
外見・金髪美少女、ポニテ至高、読者様のイメージでドウゾ。(但しドリル、テメーは駄目だ
性格・温厚、慈愛に溢れてる、ポンコツ、メンへゲフンゲフン
好き・オリ主.オリ主24時間監視。お母様。
嫌い・オリ主に過剰に接触してくる雌。
身長・読者様基準
体重・滅ぼします♪
年齢・時間の概念が存在しませんので………
身体能力・女神様スペック
神なので普通にオリ主より強いですよ?色々滅ぼせます(真顔
お母様
神界の女王ヘラ
性別・女
外見・読者様の妄想にお任せします。
職業・神。ゼウスの嫁。
お父様
全能神ゼウス
ヒロイン
募集します(小声
展開次第ではポンコツがこっそり降臨するかもしれませんね
出来たらシリーズで書いていきたいなんて恐れ多い目標もあったりします。
駄文ですが何卒宜しくお願い致します。
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第2話〜〜アースジェット!!!アースジェットはよ!!!!!!〜〜
プロローグはプロローグと言う名の第1話でございます。
今回あの人が登場
8番グローブ〜飯屋〜
店主「いらっしゃい」
「なんでもいいから何か作ってくれ」
取り敢えず腹拵えと情報収集だ。棗が入ったのは海賊達しか客がいないような酒場だった。
昼飯時だからか店内はボチボチ盛況だ。
棗は正面のカウンター席に座ると客用に置いてあった新聞を手に取り広げた。
(んー、目立ったニュース。というか俺が知ってるような事件は載ってねぇな。今は海円歴1516年……原作開始の6年前ってトコか。これからどうする。船は適当に海賊から頂くとして航海術なんか持ってねぇし、新世界にはまだ興味ねぇ。いきなりシャボンディ諸島ってのが微妙な所だな。まずは腕慣らしに海賊狩りでもしながら少し金貯めるか…)
飯を食いながらこれからの予定を考えていると、隣に座った海賊が話しかけてきた。
海賊A「オゥ兄ちゃん見ない顔だな。どこの海賊だ?」
「ん?ククク、俺は海賊じゃねぇよ。善良なただの一般人だぜ」
海賊A「はあ?んな馬鹿長い刀提げて善良な一般人にゃ見えねぇな。一般人はまずこんな無法地帯の区画にゃ近寄らねぇ。兄ちゃんどっから来たんだ?見た所相当ヤルようだしよ。賞金稼ぎにしても見たことねぇ」
「無法地帯ねー、適当に歩いたらここに出たんだよ。何処から来た…うーん、あそこから?」
そう言うと棗は天井を指差した。空から来たとでも言いたいのだろうか。
海賊A「おもしれー兄ちゃんだな。精々気をつけるんだな。」
そう言って海賊は店を出て行った。
腹拵えも済んで新聞に挟んである賞金首の手配書が目に入る。
(目立った海賊はやっぱり居ないか…これだけじゃ情報が少なすぎるな。てかこの椅子見た目はボロいが俺の体重にびくともしねぇ。漫画補正か?)
「おっちゃん、海軍の駐屯地何番グローブか分かるかい?」
店主「海軍の駐屯地なら60番代だ。」
店主に情報をもらい棗は店を後にした。しばらく歩くと海軍本部の駐屯地に到着する。
海兵「何か御用ですか?」
「ああ、賞金稼ぎになりてーんだが。別に資格とか要らねーんだろ?手配書くれよ」
棗は海兵から手配書の束を受け取ると駐屯地を後にする。
(んー、つけられてるな。数は20やそこらってトコか)
どうやらさっきの飯屋からつけられていたようだ。人気のない場所へ移動する。
すると、そこへ現れたのは先程飯屋で声をかけて来た海賊だった。
海賊A「いよう兄ちゃん、さっき振りだな。ゲハハハハ」
「ククク…何の用だよ。海賊」(暗黒微笑)
海賊A「何の用ダァ?ゲハハハ!うちのもんが世話になったらしいじゃねーか、自称一般人さんよー。こちとら一般人にやられたとあっちゃあメンツが立たねえんだ。大人しく腰のモン渡せ!そうすりゃ手脚の2本くらいで勘弁してやる。おい!野郎共!!!」
オオぉぉぉぉぉおお!!!
Aの掛け声と共にぞろぞろと20人程の海賊達が姿を現した。
「あー、さっきカツアゲした海賊の一味かよ。てかアンタ船長だったのか。イヤイヤ…ごちそーさま」ニヤ
海賊A「クソ野郎が!舐めやがって!!!海賊の恐ろしさ教えてやる!!!やっちまえ!!!」
船長の掛け声が上がると、戦闘員が一斉に此方に向かって来た。全員武器を持っている。殺意バリバリだ。殺すつもりらしい。
「カカカカカッ!!!いいなこの空気!殺気!肌がピリピリして気持ちいいぜ」
船長以外の戦闘員が迫っているにもかかわらず、棗は刀も抜かず棒立ちしたままだ。
海賊A(何故武器をぬかねぇ!!!諦めたのか⁈いや、こいつの表情はそういう顔じゃねぇ)
戦闘員「死ねぇ!」オオぉぉぉぉぉおお
棗の首に戦闘員の剣が迫る。
パァァン!!!
何かが弾けるような音が響いた。棗の前方に迫ったはずの男は居なくなっていた。
代わりにトマトを壁にぶち当てたような真っ赤な花が地面に咲いた。
棗を除く全ての戦闘員が呆けた表情を晒しながらその場に立ち尽くした。
海賊A(な、何が起きた!破裂したのか!?人間が!?悪魔の実の能力者か!!!)
皆が呆ける中、棗の姿に変化が起きる。
ズズズズズッ
先程まで透き通るような銀色の髪が次第に漆黒へ染まっていく。
更に両腕を這うように龍の入れ墨のような何かが棗の腕に巻きついていく。
【黒龍】発動
時間にして数秒?10秒くらいだろうか。
その場に居た人間は棗と船長らしき男を除き、唯の肉片になり血の海と化した。
目の前の光景が信じられない。受け入れられるはずもなく…
かつて誇り高かったであろう海賊の男はその場に膝をつき、虚ろな目で現実から逃避する。
「カカカッ!ツマンネーなぁ。海賊サマの誇りとやらはどうした?さっき迄のお前はどこにいったんだァ?」
棗は煽りながらかつて船長だった男の頭をわしずかみ、体重100キロ以上あろう巨漢の船長を片手でズイッと自分の目線の高さまで引き上げる。
男は光の無い魚のような目でどこか別の世界をブツブツ言いながら見つめていた。
「とんだ期待外れだ。死ね」
棗は船長に興味を無くし、そのまま空いた拳を振り抜こうと構えた時、ふと顔に見覚えを感じた。
黒龍を解除し、元の姿に戻る。手を離された男は力無く地面に倒れ込む。
棗は先程貰った手配書の束をペラペラめくると、目の前で戦意喪失した男と同じ顔を手配書に見つけた。
wanted クロル海賊団船長 クロルルップ 懸賞金6千万ベリー
「あ?お前賞金首だったのか……コレが6千万………マァいい。こずかい稼ぎだ。命拾いしたな船長。」
棗は再度クロルルップの頭を掴むとズルズル引きずりながら先程の海軍本部駐屯地へ歩み始める。
クロルルップは抵抗する事なく何かうわ言を言いながらされるがままに引きずられて行った。
その後、海軍本部駐屯地の海兵はクロルルップを受け渡された後の彼の様子をこう語っている。
海兵「何を見たらあんなに怯えるんだ?まるで猛獣に喰われる前のウサギみたいだったぞ」
〜〜半年後〜〜
棗がONE PIECEの世界へやって来て半年後の時が経った。
アレから手配書にある海賊団を壊滅させながら船長を捕まえては海軍に引き渡すを繰り返していた棗はちょっとした有名人になっていた。
暇潰し感覚で海賊団を壊滅。船長以外は全て殺された為、【狂鬼】なんて二つ名も付いてしまった。
(少なくとも原作開始までは派手に目立つつもりは無かったんだけどなー。なんかプチプチを潰す感覚と似てるからか止まらないんだよ。そろそろ億越えとも一戦やってみたいな。ってか弱すぎるんですけど!本当にプチプチ潰してるみたいだわ)
その日棗は47番グローブを歩いて居た。
複数の海賊船が造船所へ入ったり、コーティングを終えた海賊船が出港したりと忙しない。
そんな中一つの海賊船へ棗の目が止まる。
「ガレオン船か…デケェな。ここ半年見なかったクラスだ。コーティングを終えてるところを見ると…出港待ちみたいだな。海賊旗はーどれどれ?」
手持ちの手配書と海賊旗、目に見える船員などを照らし合わせていく。
ドグマ海賊団 船長 【黒光のドグマチール】懸賞金3億8千万ベリー
「億越えじゃねーか!!!初めての大物だな!来た来たぁ!こりゃヤルしか無いだろ」
この世界に来て初めての大物賞金首。棗は歓喜しながら船の甲板目掛けて飛ぼうと両脚を踏み込んだ。
その時。
???「俺の船に何か用か?」
棗の背後から声がした。そして…
「っつ!オラァ!!!」
その気配に全く気づけなかった棗は背後に向かって蹴りを放つ。しかし背後には既に何者も無く。
???「こっちだ小僧」
ドゴォォオ
鈍い音とともに何をされたかも分からず、棗は船の甲板まで吹き飛ばされてしまった。
???(あの小僧なんて重さだ。鉛でも食ってんのか⁈)
棗の体重に驚きつつも、自分の船へ蹴り飛ばした棗の元へ飛び上がった。
「っち!イキナリだな畜生が!まあ油断してた俺が悪りぃんだが……ご丁寧に船まで飛ばしてくださって御苦労さん」
(なんて速さだよ。全く見えなかったぞ。ダメージはねぇけど流石は3億越えってトコか。ククク!期待できそうだな)
???「ようこそ俺の船へ。俺はドグマ海賊団船長、黒光のドグマチールだ。小僧何の能力者だ?冗談みてぇに頑丈な身体だな。その細身でその体重は能力者じゃなきゃありえねぇ。まあどんな能力者だろうが俺の姿は捉えられん。クルーが1人戻って来てねーんだが、それまでに殺してやるから楽しく処されろ小僧」
ドグマと名乗る男は奇妙な体型をしていた。
身長は3メートル位だろうか…
身体のどの部位も丸太のように膨れ上がり、タンクトップから覗く両腕の関節が何やらオカシイ。
昆虫のような……台所によく居たそれに似ていた。
(球体関節ってヤツか?能力者なのは間違いないが…妙に肌が黒光してんな。通常時で能力の片鱗が見て取れる。覚醒能力者か)
「昆虫人間ってヤツか?ゴキブリみてぇに黒光してるが…お前さん……覚醒してんだろ。」
ドグマ「ほう…まさかこの状態で見抜くとはな。御名答!俺はムシムシの実を食った。モデル[ゴキブリ]。虫人間だよ。ご褒美に完全体でお相手しよう。」
ドグマはその姿に誇りを持っているのか自慢げにサムズアップする。
するとドグマの筋肉が更に盛り上がり、服は破れ、ッテッカテカに黒光し、巨大な羽を展開。
ブブブブブブブと不快な音が響き渡る。全長4メートル。完全なゴキブリがそこに居た。
そしていつの間に集まったのか、気付けば周りはドグマ海賊団のクルー達で溢れていた。
おぉぉぉぉぉお
お頭〜やっちまえぇ!!!
新世界前の景気ずけダァ!!!
お頭カッケーっす!!!
ムシキングだーーーー!!!
ジョージ!!!
船員はざっと見て100人はくだらない。棗は巨大なゴキブリを目の前にし何故か寒気を覚えた。
(はあ!?ここのクルー頭おかしいんじゃね!!!?アレがカッコいいとか正気か!?折角の億越えファーストアタックがゴキブリとか!!……マジかよ!………てか政府が危険視したの別の意味じゃね!?キモすぎて触れたく無いんだが!?…てかゴキブリを刀で切りたく無いんだがぁぁぁぁあああ!!!?変な汁とか変な匂いとか変な汁とか変な汁汁汁汁汁…………………)
ブチっ
棗の頭の中で何かが音を立てて切れた。
ドグマ「どうした?掛かってこないのか?折角の完全体だ!簡単に終わってくれるなよ!」チキチキ
「クっ……ククク…クカカカカカッ!!!」
ゴァッ
突如。暴風と共に、俯いて力無く両腕をブランと垂らした棗を中心に強烈な殺気が振りまかれた。
先程迄の棗の姿は見る見る禍々しく変貌していく。
透き通るような銀色の髪は更に、更に白く白く白く変色していき…
美しかった肌色が禍々しくドス黒く変色していった。
まるで武装色を纏った肌色のようだったが、それは全身に及んでいるであろう為、武装色では無いだろう。
ゆらりと棗は顔を起こす。
その顔面には見たこともない幾何学模様が顔を走らせており、身体の周りを…例えるなら魔法陣のようなものがグルグル回っている。
余りの存在感。異常な重圧に巨大なガレオン船の周りの海は荒れ、船体を左右に揺らしていた。
そして棗はゆっくりとその双眸を開く。その瞳は禍々しきドス黒い赤。
瞳孔は縦に割れ、その双眼は御伽噺の龍の瞳を彷彿とさせた。
そして更に双眼の上部、額には縦に開く第3の目があった。
リィィィィィィィィーーーーン
何処からか鈴の音のような…でも違う。もっと重苦しいようなそんな…………
ドグマは目の前のソレに対し最早戦闘どころではなく、思考を完全に停止。
無意識に完全体を解き、ガチガチと歯をうるさく鳴らし震えているだけだった。
船員…ドグマ海賊団クルー達は既に意識を手放しており、泡を吹いて痙攣している。
ゴッ
先程まで棗であったソレは右脚を一歩前に進める。ただ歩いただけ。その一歩で棗の脚元はバキバキィと鈍い音を立て、円形に沈む。
ドグマ(コレは…コレはこの世に………この世界にいていいものじゃ無い…俺はなんでこんな悍ましい者と向かい合っている…………海賊としての地位を確立した。力も手に入れた。これから新世界で好きな様に蹂躙、略奪、戦闘、冒険、素晴らしい我が覇道が待っているはずだったのに!)
腐っても億越え。その矜持がドグマを奮い立たせた。
ドグマ「化け物が!!!ココは俺の船だ!!!俺の世界だ!貴様の様な化け物が俺の前に立っていい訳があるかぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
瞬時にドグマは完全体へと姿を変え、6本ある腕全てに武装色を纏い、人生最高の速度で目の前の異形に飛びかかった。
「糞虫が……我の神龍に砕かれるだけ光栄に思え………死ね」
【真の武】我王紀士猛速凄乃男身命。凄王がそこに覚醒した。
「はーぁ……全然記憶がねぇ。見た所【凄王】が覚醒したな…零毀が疼いてんの見ると…龍眼まで使っちまったらしい。まああの状態でもアレを切るのを躊躇った俺は偉いだろ。」
全てが終わったその光景を前に、誰も口を開ける者は居ない。
先程迄この海賊船の船長、クルーだった肉の塊は甲板に積み上げられ、ちょっとした小山になってしまった。
頂上には無駄に格好付けて海風にあたりながらタバコをふかすミカグラ・ナツメ
ふぅーと遠くを意味もなく見つめ黄昏て居た。と、そこに
???「なっ!何これ!!!何があったの!?あっ………貴方がこれを…この人達を殺したの?」
「あん?」
急に声をかけられた。
折角格好付けて黄昏ていたのに邪魔が入った事に不快感を覚えながら、恐らくは女?
であろう者に、思わずドスの効いた返事をしてしまう。
身長は190センチ近く。
デカイな…だが見事な胸元の双丘は全身をスッポリとローブで包んでいても隠しきれていない。
「あぁ、ここの糞虫が言ってたのお前か。あと1人クルーが居るだのナンダの。すまねーな、船見上げてただけで蹴り上げられたもんで、カッとなって殺った。後悔はしていない」
ズンっと甲板に降りた棗はドグマ海賊団最後のクルーの正面へ歩み寄る。
???「そ…そう………なら酷いことするわ…とは言えないわね………気に…しなくていいわ…お、お取り込み中にごめんなさい、出直して「待て」ヒッ!!!」
ソソクサとその場を去ろうとする女の肩をつい強めに掴んでしまい、振り向かせた為ローブがはだける。
「別に取って食いは[パサッ]っつ!!!まっ!!!………あ、お前……名前は?」
???「あ…あぁ………わ、わた、ワルツよ……この一味に入ったのも最近の事だったし、本当に気にしなくてい………………………ど、どうしたの?」
目を見開いて固まってる棗にワルツと名乗る女性は微かに震えながら問いかけた。
そして棗は…
(え?ワルツって。え?マジ?)
「イヤ……お前……………どう見てもニコ・ロビンじゃん。若ぇけど。」
次回からマイペース投稿です。
様子見ながら頑張ります!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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第3話〜〜危険因子〜〜
今回少し少な目です。
もう低評価が付いてしまった……
でも読んだ貰えただけでも嬉しいです。
ヒロインに関しましては活動報告をご覧ください。
平日は少し更新にばらつきが出ますが、最後まで書き上げますのでよろしくお願いします。
シャボンディ諸島〜ドグマ海賊船.甲板〜
「イヤ……お前……………どう見てもニコ・ロビンじゃん。若ぇけど。」
棗は素っ頓狂な声で思わず心の声を口に出してしまう。
ロビン「………」
ナツメ「…………」
ロビン「あら…人違いじゃなくて?私はワルツ。えぇ。上から読んでも下から読んでもワルツよ?」
ファサッと美しい黒髪を払いながらの自己紹介。
棗の呆けた様子に、取り敢えず殺すつもりは無い事を感じ取ったのか、気丈に振る舞ってみせるロビン。
しかし緊張が無意識に溶けてないのか実は心の中ではアワアワしながら意味不明な自己紹介となってしまった。
「は?下から読んだらツルワだろ!ツルワって言いにくいわ!舌がつるわ!!ってそうじゃなくてよ。お前さん手配書で見た事あんぞ(原作でだけど)。確か子ども姿だったが面影が有りすぎんだよ。どう見たってニコ・ロビンだわ。」
ロビン「ちょっと何を言っているのか分からないわ。ふふっ……可笑しな人ね。」スタスタ
(ロビンこんなキャラだったっけ?こんなおかしな言動するキャラじゃなかったはず……イヤ、してたかも………あー、そんな事どうでもいいんだよ!確か原作では色々裏切りながら転々としてたんだっけ。そんで時期的には今年か来年辺りにバロックワークス入りするんだったよな)
自己紹介が終わり、棗が考え事をしている間に肉塊の側に行き何やら死体を観察している様子のロビン。
時期的にクロコダイルからの勧誘を受けるはず。何故新世界に入ろうとしていたのか。
(ふむ、ロビンの旅の目的は空白の100年…歴史の真実を解き明かすだったか?原作ではポーネグリフを唯一解読出来る為、世界政府に危険視されていた人物。アラバスタ王国を支配下に置き古代兵器を手にする野望を持つクロコダイルに取り入り、アラバスタ王国でバロックワークスの副社長として活動していた。現時点で新世界に入るところだった状況を考えるとクロコダイルからの接触はまだ来ていないと見ていい。)
ロビン「……の………あの!」
「おわっ!」
(ビックリしたわ!あぁ、ほったらかしにし過ぎた……って!ち、近い近い!)
ムムム…と、思考の海に浸っていた為にロビンの呼びかけに気付かなかった棗。ロビンがこちらの顔を覗き込んでいた。
「あ、ああ。スマンスマン。俺はナツメ。ミカグラ・ナツメだ。取り敢えず金のために海賊狩って賞金稼ぎなんてやってるわけだが……この通り、ドグマ海賊団は皆殺しにした。アンタにゃ悪いが糞虫(船長)の死体は海軍に持っていく。害虫駆除料金は別途請求だな。」
棗はいくつか船に張られた海賊旗から手頃な大きさのモノを剥ぎ取り甲板の上に広げると、船長の死体を海賊旗の上にドチャっと投げ捨てる。
ロビン(賞金稼ぎだったのね。ナツメ・ミカグラ…聞いたことがある。確か二つ名は『狂鬼』)
ロビン「あら、物騒ね。海賊旗は分かるけれど、その死体だと誰のモノだか分からないと思うわよ?損傷が激しすぎるもの」
「ああ、心配すんな。ほぃっと」ドスッ
棗は『屍』の力《微粒子やホコリ、チリなどに気を通し様々なものを創り出す力》を使う。
龍門を解放し、グチャグチャになった船長に氣を叩き込む。
するとみるみる形を取り戻した死体は生きていた時の姿のドグマに戻ったしまった。
しかし生気は感じられず、間違いなくそれは死体だった。
そしてドグマの死体を風呂敷のように海賊旗で包む。
ロビンはその光景に驚愕の表情を浮かべ、口元に両手を当て唖然としていた。
屍のドス黒い氣にあてられ若干身体が震えて来る。
ロビン(!!!……どういう事なの?死体が巻き戻されるように損傷を!……悪魔の実の能力!?こんな能力聞いたことがない)
ロビン「その禍々しい力……貴方の力は何?」
「言っても理解出来ねぇよ。まぁ、悪魔の実とかじゃない。生まれ持った力だ」
ロビン「そう……」
棗は風呂敷を担いでロビンに振り返ると問いかけた。
「ロビ、いや、ワルツだったか?これからどうすんだ?アテがあんなら余計な世話だが」
ロビン「ロビンでいいわ。私が賞金首って知ってるんでしょ?捕まえないの?『狂鬼』さん」
「あー、その二つ名あんまり好きじゃ無いんだよ。ガキの頃から鬼の子だの色々言われてきたからな。名前で呼んでくれるとありがたい。てか知ってるなら何故さっき逃げなかった?充分時間はあった筈だけどな。別に俺はアンタを捕まえるつもりは無いし、お前さんの目的を邪魔するつもりもないよ。金も今回で充分溜まったからな」
ロビン(私の目的を知っているような言い方ね。それに…鬼の子……この人もずっと独りで生きてきたのかしら……こんな不思議な力を持っていたらそうなるのも無理はないわね)
ニコ・ロビンは幼少期、悪魔の実を口にした事によって周囲に「化け物」と迫害されてきたり、故郷であるオハラがバスターコールによって世界政府に消滅させられ、唯一の生存者として生き残り、ポーネグリフを解読出来る為に「悪魔の子」として賞金をかけられ、世界に嫌われ、ひとりぼっちになってしまった過去を持つ。だからなのか、それとも知識欲、興味本位なのか。棗に対してよく分からない感情が生まれていた。
ロビン「ふふっ。警戒してないわけじゃ無いのだけれど。何だかそんな感じがしたから……じゃダメ?それに、当てなんかないわ。………そうね、商業船にでも乗せてもらおうかしら」
「そうか商業船!その手があったか!それなら」
(海賊船だと向かう先は新世界ばかり。海軍の軍艦はマリンフォードを往復する船しか無かったからな。能力で船を作っても良かったが航海術も無いし手詰まりだった。正直金はこれ以上は必要ないからな。害虫換金したら所持金は15億くらいか……充分だ。出れるならサッサとこの島を出たい。取り敢えずは東の海だな。ローグタウンとか見てみたいし、原作キャラにも会ってみてぇ)
ロビン「?」
「あー、商業船ってのは思いつかなくてなー。サッサと島を出たいと思ってたんだ。ロビンは新世界行きだろ?俺は行きたい場所があっから東行きを探さねーと」
ロビン「新世界にこだわりは無いわよ?アテもない旅だったから。貴方がよければだけど……少しの間、貴方に付いて行ってもいいかしら。行き先はどこでも構わないから」
「あぁ?俺と?何故だ?」
ロビン「貴方に少し興味があるのよ。(その力の正体も知りたいし)…………ダメかしら?」ニコッ
無意識なのか意図的なのか。ロビンに女神様スマイルを向けられ
(なん……だと………)
ロビンからの予想外の不意打ちを受け、女性の笑顔、友好的な態度に耐性の無い童貞は、カッコいい対応の仕方なぞ知るはずもなく。思わず反射的に目線がロビンの双丘に固定される。
「あっハイ。ボクタチトモダチ」(ナンっつーけしからんオパーイだ!)
ロビン「ふふっ本当に面白い人。宜しくね、ナツメ」
右手を差し出してくるロビン。
「あっハイ」
こうしてニコ・ロビンとミカグラ・ナツメは共に握手を交わし、ドグマ海賊団の船を後にした。
東行きの商業船はすぐに見つかり、翌日の出港だったのでお互い一旦別れて各々の準備をする事になった。
翌日商業船で直接合流すよう約束した棗は海軍本部駐屯地に向かい、ロビンは「本を買いたいわ。長旅になりそうだから。」と本を買いに行った。
シャボンディ諸島〜海軍本部駐屯地〜
海兵「ですから……ココでは換金しかねるんですよナツメさん」
いつもの海兵に海賊旗と共にドグマに死体を渡した棗だったが、億越えの賞金首は本部に直接行かなければ換金出来ないそうだ。
「チッ。本部までなんか行ってられるか!……んな時間ねーんだよ。金はいらねーからあんたらで勝手に処分しといてくれ。急いでるんで。じゃっ」
そう言うと棗はとっとと何処かへ行ってしまった。
海兵「っちょ!ナツメさん!?困ります!……ったく…なんて人だ」
???「ん〜〜?何かあったのかぁい?」
海兵「き、黄猿大将!!」
駐屯地の中から出てきたのは長身細身で将校の証である《正義》の文字が書かれた白いコートを肩にかけた男。サングラスをかけ、薄黄色に黄色のストライプが入った特徴的なスーツを着こなす。
海軍最高戦力3大将の一角。"大将黄猿"ボルサリーノだ。
海兵「は!それが……先程、ドグマ海賊団船長、黒光のドグマの遺体と海賊旗を賞金稼ぎに引き渡されたのですが………億越えは本部の方に。とお願いしたのですが、メンドくさいから金は要らないと…どこかへ行ってしまいました」
黄猿「ふむ。コレは間違いなく黒光の死体だねぇ。どう殺したのか聞いたかぁい?」
海兵「い、いえ…申し訳ありません!しかし…外傷もないのにどうやって…自分はこういった死体を見るのは初めてです」
黄猿もやはりそこに引っかかっていた。億越え。しかも4億近い実力者を何の外傷も無く仕留めるなど何の冗談だと。
黄猿「ん〜気になるねぇ〜。ちょ〜っと本人に聞いて来るよォ」ピュン
一瞬ピカッと黄猿が光ると、海兵の視界に大将の姿は無くなっていた。
どうやら先程の賞金稼ぎを追いかけたようだ。
全く……あのお方も大概だな。と少し呆れながら海兵は建物の中に戻っていった。
「よぉ海軍大将。俺になんか用か?」
黄猿「あれぇ?何でバレたのかなぁ」
「俺の周りで気配を消しても無駄だ。とだけ言っておこうか」
(何でこんな所に大将が?)
宿に向かおうと歩いていた棗を付けていたのか、背後の木の陰からスッと黄猿がエンカウントしてきた。
黄猿「お〜〜怖いねェ〜。初対面であっし個人まで特定されるたぁ…見聞色じゃ無いみたいだねェ」
(やっとこの島を出れるって時に。面倒だが今はまだ海軍と敵対する気は無い。まぁ今回戦闘にならないのは龍眼で確認済みだが。用事は"キレイな死体"を不審に思ったからか……失敗だな。致命傷になる傷を残しておくべきだった)
つけられていたのも、隠れている人物が大将黄猿と知っていたのも少し先の『未来』を見ることが出来る龍眼の力である。
この力は視えた未来と違う行動を取る事で未来を変える事も可能だが、棗は今回その未来に従うことにした。
「で?何の用だ?余計な詮索は控えて欲しいんだが。海軍に不利益な事をしたつもりはねぇんだがな」
黄猿「仰々しいねェ〜。〝今は〟敵対するつもりはないよぉ〜〜ちょぉっとさっきの死体の事で気になってねェ。どうやったんだい?アレ」
「(やっぱりか)別に……やり過ぎてグチャグチャになっちまったから判別出来るように[ナオシタ]だけだ。」
黄猿「治したぁ?何の実の能力かなぁ聞いた事がないねぇ〜」
(下手に誤魔化すと後々面倒だな)
「詳しくは言いたくねぇが、造ったり壊したり出来る能力。とだけ言っとくよ。ああ、ドグマの死体はちゃんと本人だぞ。彼奴らの船に行ってみろ。ちゃんと纏めて害虫駆除しといたからよ」
黄猿「……………ご協力、感謝するよォーーー」ピュン
少し考える様子を見せたが、満足したのか黄猿は何処かへ消えてしまった。
棗もその場を後にし、後日ロビンと合流。やっとシャボンディ諸島を出たのであった。
黄猿はドグマ海賊団の船を発見後、戦闘の痕跡、破壊痕、甲板に積み上げられた死体を確認し、その余にも異常な惨状を見て海軍本部元帥センゴクにミカグラ・ナツメの危険性を報告した。
〜〜ドグマ海賊船甲板〜〜
黄猿(……………この力。放置するには危険過ぎるねぇ〜〜)
危険因子(オパーイ)
やっとシャボンディ諸島出ました。展開が遅いかなーと思ったので最後辺りガッツリカットしちゃってます。
ちなみにずっと商業船で旅するわけではありません。スグに降りちゃいます。
次回もよろしくお願いします。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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第4話〜〜初めてのもぐもぐ〜〜
駄文ですみません………(特に戦闘描写)
でもこんな駄文にお気に入りが60件も!!!
読んでくれる人が居るなら何とか頑張れます。
商業船〜〜食堂〜〜
シャボンディ諸島を出て7日目の朝。
ナツメとロビンは予定通り商業船に"紛れ込み"朝食をとっていた。
少し早い時間なのか、50人は入れそうな食堂に今は2人しかいない。
ロビン「おはよう…ナツメ」
「ああ。今日も早いなロビン」
ロビン「食後はコーヒーで良かったかしら」
「悪りぃな。あ、砂糖とミルク取ってくれ」
ロビンから受け取ると大匙5杯ずつコーヒーにぶちこむ。
そこにデザートのショートケーキの生クリームを突っ込んでかき混ぜ始めた。
朝から胸焼けがしそうな光景だ。
ここ7日の付き合いだが何処と無く疲れた表情、寂しげな表情を見せるロビン。
2人とも特に会話するわけでもなく、ナツメは船内をウロウロ、ロビンは買った本を読んでいるだけだ。
ただ彼女もこの光景には少し眼を見開いていた。
「何だ?眠れてないのか?」
ロビン「そういうわけでは無いけど……以外ね。そこまで甘い物好きには見えなかったものだから」
「こう見えて色々考え事してんだよ。糖分が足りてねぇ」
ロビン「あら……皮肉?味覚異常者にしてしまったのなら謝るわ」
ふふふ。と皮肉で皮肉に返すつもりで言ったのだが、実は今回ナツメに同行したのはロビンの賭けでもあった。
シャボンディ諸島は海軍本部に最も近い島。
本来の計画であれば例の海賊船を隠れ蓑に新世界へ行く予定だったのだが、ナツメに壊滅させられた為それも不可能になった。
あの異常な死体(ドグマ)を海軍支部に渡せば何かしらの問題がナツメに起きる可能性はあったのだが、1人でシャボンディに残るのは更にリスクが高すぎるし、ナツメは賞金稼ぎをやめると言っていた為、何のトラブルもなく待ち合わせに現れれば……連れとして同行できれば用心棒としても"使える"。
勿論あの力の正体も気になっていたが。
この賭けには勝ったのだろう……
いつもと同じように利用できるまでの付き合い。これまでと何も変わらない。
これがロビンの考え方だった。
そしてナツメは何の問題もなく船の待ち合わせに現れた。
(実際は海軍の警戒対象になってしまったのだが)
だがロビンは気が付いていない。自然と彼の名前を呼んでいる事に。
少しだけ安らぎを感じてしまっている事に。
「今日3つ目の島に着くんだったか?」
ロビン「ええ。シャボンディ諸島を出てからは1番大きな島よ。ちょっとした町もあるみたい。名前は確か太陽が昇らない島『ナイトアイランド』今回は降りるの?」
「………そのつもりだ。小せぇ海軍支部があるらしいが必要以上にコソコソするつもりは無ぇ。ここで適当なエターナルポースかログポースを手に入れたら商業船にはもう戻らんだろうな」
ロビン「そう」
「一応聞くがロビンはこれからどうする」
ロビン「あら、寂しい事言うのね。勿論一緒に行くわ。"オトモダチ"でしょ?」ニコッ
「あっハイ」
(ここ最近のロビンの表情……やっぱアイツが接触してきたか……)
マリンフォード〜〜海軍本部〜〜
センゴク「珍しいな。お前が自主的に動くなど」
???「黄猿は天竜人の管轄で動けんのでしょう?それに今回は個人的にも気になる事がありましてね……」
センゴク「助かる。奴は今商業船に乗っているらしい。次の島がナイトアイランド。あそこの支部には警戒を強めるように言ってある。まだ様子見の段階だ。軽率に手を出すなよ。青雉」
青雉「分かってますよ。」
センゴク「お前の目で確認してこい」
ナイトアイランド〜〜宿屋〜〜
予定通り目的の島に着いたナツメとロビン。
時間的にはまだ昼過ぎだったが、島の特性でか空は暗く星も見えている。
島の中だけが夜という幻想的な光景が広がっていた。
先にナツメが宿を取りに行き、街の入り口でロビンと合流。
街の中心部に海軍の支部がある為、大通りは避けて小道を選んで散策し、無事エターナルポースをゲットした。
その後、これからの予定を話し合うために1度宿に戻ったところだ。
街の外れにある海に面したコテージで、少し洒落た離れを2部屋借りた。
島の外の日も落ち、時刻は完全な夜。
ロビン「次の行き先が無事に決まってよかったわね。所で……この先の航海。船はどうするの?」
「心配すんな。ちゃんと考えてある。ロビンは能力者が使うソイツ専用の船って見たことあるか?」
ロビン「………見た事がないわ」
「例えば煙人間や雷人間、炎人間の能力者ってのは能力を動力にした船を作って乗り回してたりする。俺は能力者じゃねぇんだが似たようなことはできるからな。」
ロビン「!………貴方にもそういった力があるの?」
「商業船に乗ってる時、深夜に色々試してたんだが。とりあえず航海術が無くても航路さえ分かれば何とかなりそうだ。そういえばロビン。お前も何らかの能力者なのか?」
ロビン「ええ。でも船の動力にはならないわね。エネルギーは生み出せないもの」
「そぉか」(まー知ってんだけど…こう言うフリも大事だろ)
そこでナツメはソファーから立ち上がる。
ホットミルクを2つ手に取りテラスへ足を運ぶとロビンを来るように促す。
南国風の離れですぐ側には砂浜が広がり海に面していた。
秋島だからか若干夜風に冷えるがナツメの銀色の髪がキラキラと靡いていた。
お互い向かい合うように腰掛ける。
ロビン「どうしたの?改まって……(綺麗な銀髪………お母さんみたいに……)」
「これからは本格的な2人旅だ。そろそろ腹割って話したいと思ってな」
ロビン「………………」
返事はない。
「ぶっちゃけると…お前の旅の目的と"敵"について俺はある程度知ってる。」
ロビン「え!?」
「お前が抱えてる闇…オハラの真実。そのたった1人の生き残り。空白の100年を知るためにポーネグリフを探している事。それを唯一解読出来る事。オハラでお前を逃したサウロって海兵がいた事。裏切りを重ねて生きてきたこと。そして全てを1人で「ちょ!ちょっと待って!!!」ん?」
ゴトッ。相当焦ったのかティーカップを落とし両手で口を塞ぎ驚愕の表情を浮かべるロビン。
まるで初めて出会った時の再現のようだった。
ロビン「何故……何故貴方がそこまで知っているの?私は貴方に会ったことはないし誰にも話した事はない…………貴方は……一体何者なの?」
ゆっくりと瞬きをする
リィィィィィィィィン
説明するより見せたほうが早い。そういう意図でナツメは初めてロビンの前で龍眼を発動した。
「これが……俺が[化け物][鬼の子]と言われてきた理由だ」
ロビン「…………その目は……」
不思議な感覚だった。どこまでも深い深く深く飲み込まれそうになる。
何処までも見透かされているような感覚。
「今お前が感じているそのままの能力だ……龍眼。この世全てのものを見通す目」
ロビン「龍眼…全てを………」
「ロビン……お前と居た7日間で…この目は幾度か発動しお前の過去を写した」
(本当は原作読んで知ってたからだが…こう言わないと説明がつかん。実際見ることが出来るのは未来だけなんだけどな。正直この1週間のロビンの様子は見てられなかった。こいつを独りぼっちにしたくない。こんな感情が俺にあったのが驚きだが)
「今日お前が俺に渡してくれたエターナルポース。いつ手に入れたモンだ?」
ロビン「…っ!……ナツメは………」
「ああ。クロコダイルから接触があったんだろ。アラバスタのエターナルポースとかこの島で手に入る物じゃ無いからな。【招待状】にポーネグリフの事でも書かれてたのか」
ロビン「本当に……全部お見通しなのね。そうよ。クロコダイルに誘われたわ。詳しい話はまだ聞かされてないけれど。それで…全てを知ってどうするつもり?私の敵は世界政府。強大過ぎる闇。アラバスタ迄の護衛になればって考えてたけど。お終いの様ね。短い間だったけど…………楽しい旅だった。」
そう言って席を立とうとするロビン。表情は何故か笑顔だった。苦笑いといった感じだったが。
「苦しい時こそ笑え……だったか?」
ロビン「…………………」
「お前の望みを言ってみろ。ニコ・ロビン」
ロビン「………無理よ……」
唇を噛み締めている
「ロビン」
ロビン「世界が相手なのよ。貴方1人に何が出来るの」
「さぁな…俺もずっと1人で生きてきた。俺は両親なんぞ知らんし、生まれてからずっと世界で独りだった。人との付き合い方もよく分かんねぇし、洒落た慰め方なんかも知らん。戦闘しか能が無い。この先出来るかも分からん友達だって…お前が初めてだ」
ロビン「…………ナツメ…」
「だから思った事しか言えねぇ。お前の敵を。半分俺に寄越せ!」
ロビン「……!」
予想打にしなかった答えに思わず目尻に涙が溜まる
「誰かの為にってのは考えたこともなかったが……お前の為に力を振るうのは悪く無い……と思った。力を振るうのは俺に任せろ。お前は俺のトモダチだからな……命くらいは掛けてやる。」
ナツメはロビンを優しく抱き寄せた………
ロビン「私の……望みは………『ゴイィィイイィィン』っ!!!ナツメ!!!!!!」
ドサッ
思わぬ不意打ちにその場にぶっ倒れるナツメ。
ダメージは無いがシリアスぶち壊しである。
ナツメの脳天に金ダライが落ちてきた……………
ロビン「いったい誰が!ナツメ!しっかりしてっ!」
「ってぇなぁ!!!誰だゴラァ!!!」
勢いよく立ち上がると其処には見覚えのある長身の男が居た。
???「あららら。コリャいい女になったなー。ニコ・ロビン」
ロビン「⁉︎……え?…た、大将!青雉!!??」
突然の来訪者。何故ここにこの男が!ハァハァとロビンの呼吸が荒くなる。
この怯え方は普通ではない。
青雉「あーあー。めんどくせえ。嫌な予感ってのは何でこう当たっちゃうかね〜」
「おい犬っころ」
青雉「はあー。あらら…殺気立っちゃって……別にやり合うつもりで来た訳じゃ無かったんだがなぁ…」
ロビン「……どういう事?」
「んなこたどーでもいい。このムカつくもん落としてきたのお前か?」
先程落ちてきた金ダライを青雉に放り投げる。
青雉「あー?何だこりゃ。ーー俺じゃねぇが………」
どうやら違った様だ。
「チッ!そうかよ(龍眼でも探知出来なかった……だと?こんな巫山戯た真似しやがって!いつでも殺れますってかぁ?何処のどいつだ)…んで大将シリーズってのはどいつもこいつも暇人の集まりなのか」
青雉「要件は分かってるだろうよ。上に言われてきたんだ……ミカグラ・ナツメを。お前を。自分の目で確かめて来いってな……だが事情が変わった。ニコ・ロビン。今回の隠れ蓑はえらく変わった奴を選んだもんだ……お前が賞金稼ぎとつるむとはなぁーー。何企んでんだ……?」
ロビン「……違う……私はもう………」
青雉「裏切って裏切って………今更本当の仲間と出会えたってか?」
ロビン「………!!」
青雉「【狂鬼】…その女と一緒にいるってのがどういう事か分かってんのか?」
「カカカッ!わかんねぇな。何が言いたいんだよ」
青雉「あーー……お前は世界政府の敵になるのかって聞いてるんだが」
青雉から凄まじい殺気が振りまかれる。ロビンはたまらず尻餅を付いてしまうが……
ロビン「ナツメ!やっぱり戦ってはダメ……!大将には「ロビン」っえ?////」
ナツメはロビンを抱き抱えると部屋のソファーへそっと寝かせる。
「お前はここにいろ」と、ナツメはテラスに戻って行く。
「さて……海軍とやり合うのはナンダカンダ初めてだな。」
バキリと首を鳴らし、黒龍を発動する。
ロビン「髪が……!黒く………!」
青雉(っちょ!っ!…………コイツァ……とんでもねぇな。覇気じゃねぇみたいだが。なんて殺気だよ)
棗は両脚を思い切り踏み込むと地面に直径3メートル程のクレーターをつくりながら一瞬で青雉の背後に回り込み脇腹に膝蹴りを叩き込む。
青雉「(速い!っくっ!!)アイスタイムカプセル!!!」
蹴りをモロに食らってしまうも、ヒエヒエの実氷結人間ロギアの能力者である青雉に唯の物理攻撃は通用しない。氷の塊を蹴り壊した様に手応えが無く、棗はその右脚をいつの間にか両手で捕まれ凍らされていく。
しかし…
バチィ‼︎
青雉「か!雷だと⁉︎(黄猿の報告と随分違うじゃないの…!壊したり造ったりじゃ無かったのか⁉︎)」
第一の龍門。赤龍の門(土)電熱を帯び、雷を脚に纏った両脚により瞬時に凍りを蒸発させ……ゴカッ!
そのまま右脚を地に踏み込む棗。白光した雷撃を纏う回し蹴りにより数メートル吹き飛ばされる青雉。
そのままの流れで地面に両手を付け周り一帯を氷河に変える
青雉「アイスエイジ」
見渡す限り氷の世界に変えられる。しかし、棗の足元だけが凍っていなかった。
「へぇ。やっぱりロギアってのはすげぇ能力だな。規模が違う」
青雉「あらら…………自信無くすねぇー…全然手応えがないじゃないの」
「カカカッ!そうでもねぇさ……俺が欲しくなるくらいにはスゲェ能力だよ……………喰らえ黒龍…」
ドンッ!
視覚できない速度での踏み込み。棗は雷の速度で青雉の懐に潜り込み、拳を腹にブチ込む。
ミシミシと鈍い音が聴こえると10メートル程吹き飛ばされる。
青雉「ガハァッ‼︎……な!能力が!!!」
血を吐きつつも身体の異変に気付き、棗を睨みつける青雉。
青雉「何を……何をしやがった……!!」
「喰らったんだよ。お前の悪魔の実の力を。【龍拳】っつってな。あらゆる悪魔の実の能力を喰らい己のモノとする力だ。つまりお前は今無能力者って事」
青雉・ロビン「「!!!」」
能力を喰らう……だと⁉︎そんな馬鹿げた力が……青雉は驚愕していた。そんな力が存在するなら誰もこいつに勝てない。
「クククっ。心配しなくても暫くしたらお前の能力はまた使える様になる。無能力者になんのは一時的なもんだ。だが………」
片膝をつく青雉の首筋に式刀零毀を突き付ける。
「今のお前は何も出来ない。ここいらで引いとくか?それとも首を跳ね飛ばされるか……」
青雉「……俺は…まだお前の答えを聞いてない………。このまま海軍の…世界政府の敵になるのか」
棗はロビンに目線を送り、はぁー。とため息をつくと零毀を鞘に納める。
「ロビンに構うな。条件が飲めるならお前らから突っかかってこない限り"今は"敵対はしねぇでやる。別にこいつは古代兵器を復活させたいわけじゃない。世界を滅ぼしたい訳でもない。んなもんがもし復活したら俺がぶっ壊してやるよ」
ロビン「ナツメ……」
「そもそもこの世界ってのは女1人にぶっ壊せる程小っぽけなのか?政府は何をそんなにビビってんのか理解しかねるな」
青雉「お前には…出来そうだけどな【狂鬼】……分かった。"今は"ニコ・ロビンからは手を引こう………」
ロビン「!!!」
「その2つ名で呼ぶなよ。後俺はもう賞金稼ぎは辞めたんだよ。ナツメ。ミカグラ・ナツメだ」
青雉「………ああ。俺ぁクザンだ」
その後暫くしてクザンに能力が戻り、例の自転車で海軍本部へと帰って行った。
ロビン「ありがとう…ありがとうナツメ………」
その場にへたり込みロビンは涙を流した。ニコリと安心した様な笑顔を浮かべながら。
ナツメも隣の壁を背もたれに腰掛ける。
「ああ。お前はトモダチだからな」
(原作ぶっ壊しちゃったけど遅かれ早かれってトコだな。暫くは下手な接触はしてこんだろ)
ロビン「………ねぇナツメ……私の願いは……私を海へ連れていって。貴方と一緒に居たい。それが私の願い」
スッとナツメの肩に寄り掛かかるロビン。
ナツメはロビンの頭を撫でながら答えた。
「お前は1人じゃないし、これからきっと心を許せる仲間も出来る。自分の好きな様に生きろ。それまでは俺がお前の仲間として守ってやるよ」
(そして、いつかはルフィ達と何とか合流させよう。それまでの間は…)
ロビン「ええ…改めて宜しくね」///
その日はそのまま朝まで眠ってしまい、起床後。目の前の海に小型船ほどの船を創った。
材料は目立たない様に周りの木々を屍の氣で分解、再構築し出来た木製の船だ。
大きさは原作のゴーイングメリー号を一回り小さくした位のサイズ。
寝室、キッチン、風呂も完備してある。動力は水龍を使った水動力。
赤龍を使った電動力なのでメインマストはぶっちゃけ飾りだ。
ロビン「ふふ。本当に何でもありなのね…」
「しかし…クククッ。こう……船造っちまうと仲間が欲しくなるもんだなー。海賊の気持ちが分かった気がする」
ロビン「私は2人で充分なのだけど……」ボソッ
その呟きはナツメには聴こえなかった。
二手に分かれて街で食料や本、必要な物を買い込み船に乗り込む。
ナツメが別に買っておいたエターナルポースを確認しつつ本来行く予定だった島へ向けて出港した。
〜〜海軍本部〜〜
クザン「あー、以上が報告です。ぶっちゃけアレとは戦わんほうが賢いでしょう。無駄に能力を与えるだけだ。」
センゴク「なんという事だ…その能力が本当なら奴はお前の能力も既に使えるという事だな⁉︎」
クザン「………ええ。確認済みです」
センゴク「これはとんでもない事態だぞ。少なくとも敵対だけは極力避けるべきだろう。何とか此方側に引き込まねば勢力が大きく傾いてしまう。七武海の枠が余っていたが……」
クザン「ありゃそんなのに収まってくれるタマじゃあ無いでしょう。そもそも海賊でも無い」
センゴク「だろうな……五老星に何と言われるか……クソッ!!とんでも無い奴が現れてくれたな!能力を吸収するだと!?反則だろう!」
やめてあげて⁉︎センゴクゲンス胃のライフはもうゼロよ⁉︎
はい。ポンコツ女神がアップを始めましたね。
ヒロイン途中経過です。
ナミ8
ハンコック4
アイン3
ビビ2
ロビンとたしぎ以外の上位3名を先ずは絡ませようかと思います。
新世界組の登場はまだ先になります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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第5話〜〜ほんの出来心だったんです…〜〜
我が家にデカイ蜘蛛が出ました。夜も眠れません。
遂にお気に入りが100件突破してました!評価も頂けて本当に嬉しく思います……
今回は少し長くなってしまいました。後、原作崩壊まっしぐらです。先に謝らせて下さい。
申し訳ありません。
それでもいいよと言う方は……是非お楽しみいただければと!
ナツメ達がナイトアイランドを出て5日目の朝。
ぼんやりとした意識の中、最初に感じたものは臭いだった。
何かが燃え尽きた様な、そんな焦げ臭い香りにあてられ瞼を開けようとするが中々開いてくれない。
まるで目覚めるのを拒否している様な……妙な危機感にモゾモゾと身体を動かしてみる。
ロビン「おはよう。目が覚めたのね」
声をかけられてやっと意識が覚醒した。
瞼を開くと視界には椅子に座って安心した様な優しい表情で自分を見つめるロビンの姿。
パタンと先程まで読んでいたであろう本を閉じる。
「ん…俺は……寝てたのか……」
寝室にいるという事はそういう事なのだろう。
ナツメがムクリと身体を起こすと同時にフイっと顔を背けるロビン。何やら顔が赤いが
(おかしいな……いつ寝たんだ?記憶が霧がかかったみたいにはっきりしないな)
「いつの間に眠ってたんだ?なんか胃がムカムカするし……ん?ロビン?どうした」
ロビンは地べたに散らばった服をハナハナの実の能力で素早く回収するとポフっとナツメに投げつける。
「おー、ロビンの能力初めて見た。本当に手を咲かせるのか。便利な能力だな」
ロビン「感心してないで、先ずは服を着てちょうだい」////
「は?……んなっ!何で俺パンイチになってんの⁉︎……ま……まさか………ロビンさん?」
ロビン「貴方が想像してる様な事は何も無かったから安心して」
急いで服を着てベットに腰掛ける。
うーん、と前髪を掬いながら額に手を当てて改めて思い出そうとしてみるものの…
やはり記憶がハッキリとしない。
「なぁ、何があったんだ?何かぼんやりしてて思い出せないんだが」
ロビン「……3日前のことよ」
そう言うとロビンは何があったのか語り出した。
どうやらナイトアイランドを出て半日程で急に天候が悪化し、大嵐に揉まれて船が転覆しそうになったり、巨大なイルカが飛び出してきて船が転覆しそうになったり、シーモンキーとかいう生物に船が転覆させられそうになったり……それ以外にも色々な事が2日ほど続き、俺は重い船酔い状態に。体調を崩しダウンしたそうだ。海舐めててごめんなさい。
ああ、そうか……そうだった。色々思い出して来たよ……
「そうだった………ぶっ倒れて……ロビンが俺に……」
ロビン「………………ごめんなさい」
〜〜回想〜〜《寝室》
『気持ち悪ぃ……何も食ってないから吐きそうで吐けないぃ。海舐めてたぁ……』
ガチャ。ロビンが寝室に入ってくる。
ロビン『外の様子も随分安定してきたわ。お疲れ様。気分は……ふふ。最悪って顔ね』
『ああ……体調最悪だ……商業船の時は落ち着いてたじゃねぇか……何だって急に』
ロビン『私もこの海に出て間もないから余り詳しくはないけれど……この海の海流や風には恒常性が無い。一切の常識が通用しない。"グランドライン"では異常が通常なのよ』
『航海士が居ないと此処まで違うのか……まあ……何とか生きてるみたいで良かった。船も無事みたいだし』
(そうだった……ここはONE PIECEの世界だ。海に関して素人2人……ちょっと適当すぎたかなー)
ロビン『ええ。所々暗黒丸が痛んじゃったけど。それと……はいこれ』スッ
(暗黒丸ってなんだよ!まさかこの船の名前じゃナイデスヨネ)
『ん?』
ロビン『ここ数日何も食べてなかったでしょ?作ってみたの。口に合うといいけど』
『マジか!あ、ありがとな!気使わせてっ!うわぁ!めっちゃ元気出そう!』(棒)
ロビンに手渡された皿には何やら黒い物体が……ちょっと待て!
ロビンが料理してる描写なんか原作にあったか!?
イヤない。無かったはずだ。
生まれて初めての女性からの手料理。涙が出るほど嬉しいはずのサプライズイベント。
しかし待って欲しい。この黒い物体は何なのだろう。
もう一度よく観察してみる。この細い物は……おそらく麺だ!
多分パスタ……なのだろう。フォークで巻き取り掬い上げてみる。
麺からふわりと湯気が……わーい出来立てだぁ。
全てを見通す眼をもつナツメにはその湯気が踊っている悪魔の姿に見えたという。
チラリと目線をロビンに向けるとニコニコ微笑みながら此方を見ていた。
うん。流石は"ニコ"のロビンさん。いい笑顔だ。どうやら感想を待っているらしい。
自分の手がプルプルと震えているのに気がついたナツメは震えを無理やり抑え込み、覚悟を決めた。
(折角ロビンがつくってくれたんだ。それに世話かけといて見た目だけで不味いって決めつけるなんてのはナンセンスなんだよ!こういうのは味がいいのがお約束だろ?!そうだ、これはイカスミパスタとかそういうやつだ。えぇい男ならいったらんかいぃぃ!!)
『いただきます!』パクッ
回想終了
「………………」
ロビン「料理なんて初めてだったから……アレから何度か作り直したけど上手くいかないの。……慣れない事するものじゃ無いわね……ごめんなさい」
寂しそうな顔で頭を下げるロビン。だが…
「ぷっ!くはっ!はははははは!」
唐突に笑い出すナツメに、怒られると思っていたロビンは一瞬呆けるも、顔を赤らめムスッとしかめっ面になった。
ロビン「そんなに笑わなくてもいいじゃ無い!料理なんて似合わないって言いたいの?もう2度と作らないわ」
くっくっく。と子どものように無邪気に笑うナツメは、違う違う、そうじゃ無ねぇよ。
と、ロビンの頭に手を置いて撫でた。
「ふぅー。いや、笑って悪かったな、ロビンがあんまり可愛かったもんだから。いーじゃねぇか、最初から美味く作れるヤツなんかいないんだ。何度でも挑戦すればいい!手料理作ってもらったのなんか初めてだったぞ?俺はすげー嬉しかった!また作ってくれよ、ごちそーさん」
"可愛い"のところでロビンの顔は更に赤くなったが、そんな事には気付かないナツメ。
機嫌は治ったようだ。良かった。また作ってくれそうだな。
そういやそろそろ進路を戻さねーと。舵を取る為立ち上がる。
その時だった。
ドォォオン
少し離れた位置から突如砲撃のような音が聴こえてきた。2人は直ぐに寝室を後に外へ出る。
晴天の下に何やら遠くの方で煙が上がっていた。
「距離は2キロってとこか?ロビン、頼む」
ロビン「ええ。直ぐに」
腕を交差させたポーズで眼を瞑り、現場の状況を分析する。
ロビン「海賊ね、数は20ほど。襲われているのは客船みたい。乗客は斬られたり縛られたり…ダメね、抵抗出来る戦力がまるで居ないわ」
「一般人居んのか。無茶は出来ねぇな……」
ロビン「助けに行くの?」
別にナツメは正義の味方を目指しているわけでも力無き者に率先して手を差し伸べる性格でも無い。
敵意を持った相手には容赦しないし、仲間に危害を加える者は叩き潰すといった真っ直ぐで自由な性格。
短い付き合いだがロビンがナツメに対して分かっている事はまだまだ少ない。
別にココで客船を見捨てたとしてもナツメに対して軽蔑や疑問なども持ったりはしないだろう。
この海は弱者に優しくは無い。都合よく正義の味方が現れたりはしない。
独りでこの世界を生き抜いてきたロビンはそういった現実を身を以て経験してきたのだから。
勿論これから護られ続けるつもりなど毛頭無い。私も強くなりたい。ロビンもそう思っている。
大海賊時代。客船なども海賊などの格好の的だ。海に出るのであればそれなりの覚悟がいる。
全てを失うなんて事になる前に、海軍や護衛を付ける等の対処の仕方もあったはずだ。
「ああ。先に行ってるからロビンはあの客船まで舵を頼む。巻き込まれないように少し距離を置いて待機しててくれ」
(あの客船は見覚えがある。龍眼で観たものと同じ。"あいつ"が乗ってるって事だ。)
ロビン「分かったわ。気をつけて」
ロビン(選択を迫られた時のナツメの決断は早い。何か理由があるのは分かるけれど……それが何なのかは分からない。今回も貴方の眼には何かが見えているの?)
ナツメは船から飛び降りる。
海面に着水すると同時に、ヒエヒエの能力で直径5メートル程の氷で出来た円型の足場を創った。
「おー。じゃ、行ってくる」
バコォ
踏み込みと同時に耐え切れずに足場は吹き飛び、その後姿は最早見えなくなっていた。
あの跳躍であれば一息で海賊船まで付いてしまうのだろう。
数秒後。
着地の衝撃に海賊船が耐えられなかったのか、破壊音と共に海賊船が粉砕されたのが確認できた。
ロビン「本当に…圧倒的な力……」
その光景を見て安心したものの、余りに早い決着に少し呆れた声で呟くロビンは、つい最近起きたばかりの青雉との戦闘時のナツメの表情、先程の笑っている時の表情を思い出していた。
どうやら彼は好戦的で戦闘狂らしい。でも楽しい時は子どもの様に無邪気に笑う。
その様子がとても可愛らしい。
新たに知ることができたナツメの一面を記憶のメモ帳に書き込むとロビンは船の舵を切った。
ナツメが助けに来る少し前の客船〜船内〜
突如海賊に襲われた客船。行き先はナイトアイランドであった。
海賊船長「野郎どもぉ!金品、食料全て奪い取れぇ!!身につけてる装飾品も全てだぁ!!抵抗する奴は殺してもかまわねぇ!」
戦闘員「「「「おおおおぉぉぉお!」」」」
何の抵抗もできない一般人はされるがままに殺され剥ぎ取られ蹂躙されていく。
その一般人の中に1人刀を抜き海賊に立ち向かう少女の姿があった。
もしかして助かるのか?
縄で縛られた乗客達は一瞬期待を込めた目線をその少女に向けるが……
よく見れば少女の身体は恐怖から震えており、震えが伝わって握り締めた刀はカチャカチャ音を立ている。
ああ、これは無理だ……乗客達は直ぐに絶望の表情に戻ってしまう。
少女の美しい黒髪は顎の辺りで切り揃えられており真ん中分けのボブカット。
眼鏡をかけているところを見ると視力はよく無いのが見て取れる。
まだ幼さの抜け切って居ない姿から、歳は15に届くかどうか。
綺麗な黒い瞳は涙に潤んでおり怯えと悔しさを感じさせる。
海賊船長「へっ!こりゃおもしれぇ!嬢ちゃんみたいなガキが一端に剣士やってますってか?」
ギャハハハハ
海賊船長と船員達の下品な笑い声が耳障りに響く。
そして海賊船長の一振りの攻撃で少女の刀は呆気なく弾き飛ばされ……
甲板にトスッと虚しく突き刺さった。
そのまま腹を蹴り飛ばされ、地に伏せた少女は船長に頭をグリグリ踏みつけられてしまう。
少女「うぐぅ‼︎」
戦闘員「お頭、こいつの刀中々の逸品でさぁ」
海賊船長「ほぉ!こんなガキに持たせるにゃぁすぎた刀だな!」
少女「か…えせ……!」
海賊船長「あぁ?ガハハハ!何寝ぼけてやがる!この海は強い奴が正義だ!ましてやカスみてぇに弱ぇえ女ごときが俺に意見してんじゃねぇ!」
そして再度蹴り飛ばされる少女。悔しい。少女はこれまでの人生で何もしてこなかったわけでは無い。
小さい頃から剣を振るい、道場に通いながら力を付けてきたつもりだった。
だが悪を目の前に体が震えてしまった。何も出来なかった。
力が無いから大事な刀を取られてしまった。
力が無いから女ごときと馬鹿にされてしまった。
悔しい。悔しい。悔しい!
これからナイトアイランドの海軍支部に行き、海兵に志願するつもりだった。
女だからと馬鹿にされない様に力をつけるつもりだった。
薄れる意識の中、涙で顔をクシャクシャにしながら海賊達を睨みつける。
海賊船長「ガハハハ!弱えってのは惨めなもんだ!慈悲だ。俺ぁ優しいからなぁ。最後はてめぇの刀であの世に送ってやる」
ああ…こんな所で死んでしまうのか……何も出来なかったな……
少女が意識を手放し海賊船長が刀を振り上げたその時だった。
バゴオォォォオオ!!!
巨大な衝撃と共に海賊達の船が真っ二つに粉砕された。
突然の出来事に客船内はパニックになる。海賊達は
海軍か⁉︎
どこから砲撃された⁉︎
お頭ぁぁ‼︎
なんだぁぁあ何が起こったぁ!!!
と叫び立てていた。
海賊船に乗っていた船員は海に投げ出され、気絶しているのか動く気配はない。
「よぉ糞共。お勤めご苦労さん」
海賊達が声がした方を振り向くと客船の船首に立つ1人の男の姿。
ゴミを見る様な目でタバコをふかしながら海賊達を見下ろしていた。
海賊船長「なんだてメェ!どこからAaラぁ!?………」ブリュリュリュリュ
ナツメは海賊達に目視出来ないスピードで船長の横を通り過ぎると同時に、その顔面を掴み背骨ごと頭を引き抜いた。
船長の身体はビクビク痙攣しながら噴水の様に首から血を噴き出し、そのあり得ない光景を目にした海賊達は悲鳴をあげながら船から飛び降りる。
残された客船の乗客達は悲鳴をあげることも出来ずにガタガタと震えていた。
「チッ!相変わらずプチプチだな。加減の仕方がいまいち分からん」
船長の死体を海へ投げ捨てると、気絶している少女を抱き抱え、刀も回収する。
(良かった。ちゃんと生きてるな。まだ幼いが……この顔、この刀も間違いない。)
「たしぎ……」
その少女はナツメも知っている原作登場人物"たしぎ"だった。
その後、ロビンにたしぎを預けて客船に戻り乗客達を解放する。
あっけにとられていた乗客達だったが、敵意が無い。
自分達は助かったと分かり、ナツメに感謝を示すのだった。
客船の船長らしき人物も息があったので龍掌を使い怪我を治し、来る時に通りかかった近くの島へ戻る事になった。
ナツメ達も護衛も兼ねて同行する事に。何事も無く島に戻ることが出来た。
あまり大きく無い島の中に小さな町が1つあるだけの島だったが
「軽々しく命を預かるな。あんな糞連中に殺されたく無かったら護衛くらい付けとけ」
客船の船長にそう言うとナツメは自分の船へ戻っていった。
ロビン「どう言うことか説明してもらえる?」
たしぎは今寝室に寝かせてある。龍掌で傷は回復したが1日たった今もまだ目を覚まさない。
何故あの少女だけこの船に乗せたのか。ロビンは気になった事をそのまま聞いてみた。
「助けに入った瞬間あいつは心を折られてた。俺の前であんな諦めた顔されたらほっとけなくてな………ってのは嘘。ただの気まぐれだ」
(本当はたしぎをこんなつまらん事で死なせなく無かったからなんだが……どうも様子がおかしい。何故あの客船は襲われた?たしぎの過去は原作で読んだ覚えはないが……あのままだと確実に死んでいた。俺がこの世界に来たからあんな事が起きたのか?あのまま放置してたら助かってたのか?)
考え込んでいる間もどこか不安そうな表情でこちらを見るロビン。
ロビン「そう。それで……あの子はどうするの?このまま船に置いておくの?」
「それなんだがな……『失礼します!』っと……目が覚めたのか」
コンコンとノックを鳴らすと同時にたしぎが部屋に入って来るが……その場で膝と手を地に付けて頭を下げて来た。
たしぎ「私の名前はたしぎと言います。助けて頂き!ありがとうございました!」ドゲザァ
ナツメ・ロビン「………………」
頭を下げたまま微動だにしないたしぎ。暫しの沈黙。
「クルシュウナイ。オモテヲアゲヨ」
たしぎ「は、はい!」
ロビン「!?」
「いやいや冗談だよ。楽にしろよ。体調はもういいのか?」
一回言ってみたかったんだよね〜と、ケラケラ笑うナツメにぽかーんと呆けるたしぎ。
ロビン「酷いことするわ」
お決まりのセリフが出て来たところで改めて3人は椅子に座りなおす。
たしぎ「どこにも痛いところはありません…それどころか怪我が全て治ってて……最初は夢だったのかと……」
「ふーん。そりゃ良かった」
たしぎ「ところでお二人はどういった……海賊でも海軍でも無いようですし」
ロビン「ふふ。別に何者でも無いわよ。彼は元賞金稼ぎのナツメ。私はロビン。考古学者よ」
「客船が襲われたのを"偶然"見かけて"偶然"助けただけだ。しかし、よく護衛も無い船に乗ってたもんだ。自殺行為だな」
たしぎ「……っく…確かにその通りです……本来であれば死んでいたかもしれません」
「何が"かも"だ。間違いなく殺されてたろ。お前は運が良かっただけだ」
たしぎ「………はい」
何があったのかハッキリと思い出したのか、唇を噛み締め涙を堪える。
「悔しいのか?」
たしぎ「悔しいですよ…」
「そりゃそうだろうな。立ち向かったらボロ雑巾みてぇに倒されて自分の半身に殺されそうになったんだ。そして無様に生き残っちまった」
ナツメの言葉に俯いてポロポロと涙を流すたしぎ。
ロビン「ナツメ、言い過「黙ってろ」……」
「剣士にとって刀は自分自身。心が折れれば刀も簡単に折れる。そして弱いままじゃ死に方も選べねぇ」
たしぎ「悔しいですよっ!強くなりたい!女だからと馬鹿にされたく無い!誰にも負けないくらい!強い剣士になりたい!!!」
涙を流しながら叫ぶ。その瞳には強い光が宿っていた。
「クククっ誰にも負けない剣士。か。そりゃ世界最強ってことだろ?つまり俺を超えるってことだな」
たしぎに剣気が突き刺さる。先程までの彼女であれば容易く意識を手放していた筈の気迫。
だが彼女はナツメの眼を真っ直ぐ見ていた。
たしぎ「はぁ!はぁっ!貴方がっ!最強だと言うのなら!!それを超えてみせます!!!」
「はははは!そうか。残念ながらその称号は別の奴がよろしくやってるんでな。俺は"最強の剣士"じゃねぇ」
ロビン「そうね。世界一の大剣豪。その冠は余りにも有名だわ。王下七武海【鷹の目】の男」
たしぎ「鷹の目……」
「最強の剣士を目指すんなら知っとくんだな。後、俺は刀は使えるが剣士ってわけじゃねぇ。まぁやったらやったで誰にも負ける気はしねぇけど」
ロビン・たしぎ「「凄い自信……」」
たしぎ「でもそれくらい強いってことですよね?先程の気配は……その…(人と対峙している気がしなかった……)」
暗黒丸〜甲板〜
話し合いも落ち着いた後。
たしぎがナツメの実力をどうしても見たいと聞かないので少しだけ剣技を見せる事になり、甲板に出てきたのだが……
ロビン「見せるって何をどう見せるの?」
「うーん……そうだな。たしぎが出来ない事でもやってみるか」
たしぎ「私が出来ない事ですか?」
世界最強と自称する実力ならば大抵のことは及ばない筈だ。と腑に落ちないたしぎ。
「まあ見てろ。一瞬だ」
ゴクリと息を飲むたしぎ。ロビンも興味津々のようだ。
ナツメは船首の上に立つと零毀を抜き右肩に乗せるように担ぐ。
たしぎ(凄い!なんて美しい刀……でも刀身が長過ぎて私には扱えない…かな……)
たしぎが刀にぽけ〜っと見てれていた瞬間。
一瞬の出来事で理解が追いつかない。何をしたのか全く見えなかった。
零毀は既に鞘に収められていて、いつ納刀したのかさえ分からなかった。
ただ1つ分かるのは何かの技を放ったのは間違い無いという事。
そこで何かがあったという結果のみ。
ロビンも眼を見開いている。
ナツメには何度も驚かされてきたが、今回のは理解できない。
ロビン「……あり得ない…人間の技じゃ無い……」
海が割れていた。何処かで聞いた御伽噺のように。
海底の地面迄もが深く切り裂かれていた。
どこまで続いているのか分からないほど遠くまで海が割れている。
数秒後、海底の切れ目に海水が飲み込まれていき程なくして先程の海へと姿を戻した。
「一人我のみ尊し。棗流金剛八式"吼虎逸刀"」ドヤァ
たしぎ「……何を……したんですか?」
「なんだよ見てなかったのか?」
たしぎ「いえ、そういう意味ではなくて……」
「簡単に言うと常識を逸れたって事だ。実態は至極単純。斬りたいもんを斬った。」
それだけだ。と説明されるもやはり理解できない。
(まぁ隙だらけだし実戦じゃ使えないんだけどな)
ロビン「それで……これからどうするの?お嬢さん」
たしぎ「私!決めました!ナツメさん!貴方の元で剣を教えて下さい!」
「………えぇ……」
たしぎ「そ!そんな嫌そうな顔しないで下さいよ!後悔はさせません!強くなりますから!そして貴方を倒してみせます!そしてその刀も私が回収します!」
「へぇ………そりゃ楽しみだな。いいよ。お前が俺に勝てたらこの刀はお前にやるよ。その時は剣士として相手してやる」
ロビン「え!?ちょっとナツメ!?」
なんか急に焦り出すロビン。
たしぎ「約束ですよ!師匠!!」ニコッ
こうしてナツメに初めての弟子が出来た………
グランドライン〜〜とある海上〜〜
???「今のは間違いなく剣尖……物の怪の類か…」
あれ?たしぎ……海軍は?
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ヒロイン途中結果
ナミ13
ハンコック8
ビビ6
ハンコック人気ですね!ナミは圧倒的です。そしてビビがランクイン。
締め切り前に上記の方どれかが登場しちゃうかもです。登場しちゃったらすみません。
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第6話〜〜世界最強〜〜
只今評価が真っ二つに割れております!
まあ当然ですよね……
でも読んでもらえてるだけで本当に嬉しいです
今回もお楽しみ頂けたらと思います。
〜〜暗黒丸船内〜〜
「航海士が欲しい……」
船酔いから目が覚めたナツメがロビンとたしぎの居るダイニングバーへ入って来た第一声がそれだった。
たしぎの件から既に1週間の時が流れた。
本来なら3日ほどでナイトランドへ着いていた筈だったのに…
今は何処を浮いているのかすら分からない状況だ。
本来の目的だった《ある島》へのエターナルポース。
その島を指す逆方向にひたすら暗黒丸を進めているのだが…
たしぎ「信じられません……この海をこんな適当な航海で進んでたなんて……」
たしぎの呆れたような声が聴こえるが、声に力が無い。それもそうだろう。
食糧は2日前に底をつき、ここ数日は嵐のような雨が続いている。
3人ともテーブルに突っ伏してる状態だ。初日は良かった。
ナツメとひたすら手合わせを交し、2日目は与えられたメニューを修行としてこなした。
中々に充実していたのではなかろうか。だが3日目からはお決まりのように天候が悪化。
ナツメの力で動く船の動力に、最初は感心していたたしぎだったが所詮は力技。
本来であれば航海術を使い悪天候は避けるべきなのだから。
ロビン「お腹空いたわ……」
その言葉と同時にキュルキュルとお腹を鳴らす3人。
「この船呪われてんじゃねーのかなぁ。島出てからずっとこんな感じだぞ。狙い撃ちされてるみたいに悪天候続き……あーあ、ロビンが暗黒丸なんて名前つけるから…」
皮肉を言いチラッとロビンに目線を送ってみる。
ピクッ
ロビン「聞き捨てならないわね。あれだけ議論したのにまだ文句があるのかしら」
たしぎ「ちょっと師匠、ぶり返さないで下さいよ。ロビンさんもです。今は喧嘩している状況じゃありません」
「おい、師匠ってのはやめろって言ったろ?まだ弟子に取るかを決めたわけじゃ無ぇ」
たしぎ「す、すみませんナツメさん……」
そう。今はこんなくだらない事で喧嘩している場合では無いのだ。
ナイトランドへ向かっているのにはある理由がある。
ロビン「あら。雨が止んだみたい」
甲板に出てみると先程までの雨が嘘の様に晴空へ変わっていた。そして……
たしぎ「嘘……本当に着いちゃった」
少し先に見える島。島の上空に夜空が見える。ナイトランドだ。
3人に元気が戻ると直ぐに島へ上陸した。先ずは飯だ!と適当な店に入るのであった。
ナイトランド〜〜飯屋〜〜
食事を済ませ、ナツメ一行はこれからの事について話し始める。
「お前は本来あの客船でこの街を目指してたんだよな?」
たしぎ「はい。この島の海軍支部へ志願するつもりでした……私…夢があるんです。」
そう言うとたしぎは自分の刀を胸に抱き、真っ直ぐとナツメの眼を見ながら話し始めた。
たしぎ「私は……この"時雨"で剣士として腕を磨いて、世界中の悪党達の手に渡った《名刀》を集めたいんです。名刀と呼ばれる刀が……悪党の手に渡るのが嫌なんです。だから海軍に入って強くなりたいって、女だからって馬鹿にされないくらい強くなりたいと……」
「そりゃ結構な夢だな。だがお前の言う悪党ってのは何が基準だ?」
たしぎ「刀を略奪やお金稼ぎの道具に使ったりする人達は許せません……」
ロビン「海賊や賞金稼ぎって事?」
先程まで本を読んでいたロビンも会話に入ってくる。
「なら残念ながら俺はその悪党って奴だな。最近まで賞金稼ぎとして海賊を狩りまくってた。結構な金も稼いだ。悪党に教えを乞うのか?俺はお前の敵だ」
ロビン「………………………」
たしぎ「そんなっ!ナツメさん達は悪党なんかじゃありません!危険も顧みないで私達を海賊から助けてくれました!それに……」
「言ったろ。"偶然"助けただけだ。正義の味方やってるわけじゃねぇ。せっかく目的だった街まで来れたんだ。海軍入って正義の味方になるんだな」
たしぎ「嫌です!私に剣を教えて下さい!」
それから何度か同じ様なやり取りを繰り返すも、中々引き下がらないたしぎ。
ナツメは意味がわからなかった。何故ここまで執着するのか。
「チッ!もう時間がねぇな。俺は個人的な用事で少し出てくる。数日で戻るが……たしぎ!」
たしぎ「は、はい!」
「考える時間をやるから。戻ったら返事を聞かせろ。数日あるんだ。もう一度よく考えるんだな。お前の人生を左右する事だ」
たしぎ「……分かりました」
「ロビンは宿で待っててくれるか?戻るまでたしぎを頼む」
ロビン「ええ。ただ…何処に行くのか聞いてもいいかしら。剣士さん少し待っててもらえる?」
そう言うとナツメとロビンは一旦店を出た。砂浜を人気が無い方まで進んで行く。
「前回この街へ来た時に買ったコレ。覚えてるか?」
ナツメはエターナルポースを取り出すと、それをロビンに手渡した。島の名前には【スコ】と彫ってある。
ロビン(スコ…確か意味は《何も無い島》こんな所に一体何が……)
「たしぎを拾うまで向かってた島なんだが……そこにちょっと用がある」
ロビン「何か……見えたのね?」
「ちょっと昼寝の邪魔をしに行くのさ」
クククッと面白いものを見つけた子どものような笑みを浮かべると…
新たに小さな小舟を創り出した。
原作でエースが乗っていた船によく似せたモノだが、動力は炎の代わりに水龍を使ったものだ。
ロビン「貴方にこんな事……言う必要は無いのかもしれないけど。気を付けてね」
「ああ。無茶はしねぇから安心しろよ。ちょっと行って帰ってくるだけだ。直ぐに戻る。料理の練習でもしてるといい」
ロビン「ふふふ。そうするわ。後…彼女の事なんだけど……」
「今のまま船に乗せるのは危険だって言いてぇんだろ?分かってるよ、ロビンから少し話をしてやってくれないか?」
了承を得るとナツメは小舟に乗りスコへと行ってしまった。
ロビン(本当に気を付けてね…何だか嫌な予感がするの……)
密かにフラグを立てられながら……
天界〜〜へべの部屋〜〜
天界にポツンと佇む神の神殿。その1区画に見事な装飾を施された巨大な扉がある。
その部屋の中は神聖な空気が充満し、細かい部分にまで金の装飾が施され、どうやら大理石で造られているらしい壁や地は鏡の様に磨き上げられていた。
ドゴォォオン
何度呼びかけるも返事が無いので、いつもの様に扉を蹴り飛ばし中に入るが……
おかしい…気配はあるのに姿が見えない。
ん?よく目を凝らしてみると部屋の隅が何やらゆがんでいるのが分かる。
ガバッとカーテンを開ける様に空間を振り払うと……
ヘラ「やっぱり……」
そこには……
町工場で働くおじさんばりに完全装備でギュイィィンと火花を撒き散らし、何かを造る愛娘の姿。
そして何故か大量に積み上げられた金ダライ。
年頃の娘がこんな物を一体何に使うのか……頭が痛くなる光景である。
へべ「はっ!?お母様!またドアを壊しましたね!?もぉ!勝手に入ってこないで下さいって何度も言ってるのにぃ!!」
ヘラ「アンタが仕事もせずに引きこもってるからでしょ!」
流石にこれ以上は容認出来ないと愛のゲンコツをくらわせるヘラ。
へべ「いったぁああい!お母様酷い!!」
ヘラ「で?仕事もせずに何作ってるのかな?」
へべ「そうなの!ちょっと聞いてお母様!ナツメさんったら酷いのよ⁈」
聞けば最近の彼は目に余るだの、ちょっと目を離した隙に女がホイホイされるだの。
約1時間に及ぶ愚痴の嵐…ヤバイ……この娘、早くなんとかしないと
この様子だと造っていたのは彼に干渉するための何かなのだろう。
問い詰めてみると、お仕置き装置らしきものがいくつか完成していた。
完全に職権乱用である。流石にこんな事を見過ごすわけにはいかないので全て没収。
罰として1ヶ月の謹慎を言い渡した。泣いても許しません!
ヘラ「ったく……神聖な部屋を悪の秘密基地みたいに改造しちゃって……」
娘をぐるぐる巻きにした所で、ヘラは呆れながら装置に寄り掛かかるが…バキっと嫌な音が鳴る。
手を退けてみると割れたカバーの下に押された赤いスイッチの様なものが……
えぇ……これって
へべ「あーーーーーー!!おおおおお母様っ!それっ!……」
ヘラ「わ……私シーラない……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
所変わってグランドライン海上。ナツメはかなりのスピードで目的の島まで進んでいた。
あれだけ荒れていた海は不気味なほどに穏やかで、進行を妨害するものは何も無い。
程なくして目的の島【スコ】へと到着した。
本当に何も無い。周りは森に囲まれており中心に小さい山があるだけだ。
興味をそそられるものは特に見当たらない。誰も立ち寄らない様な小さな島だった。
だが、島に上陸した途端に凄まじい威圧感がナツメを襲う。
まるで重力が何倍にもなった様に足取りは重い。
(やっぱり……もう戻ってやがったか。本当は先に上陸しときたかったんだが……まあいい)
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、先へ先へと進んで行く。
岸から一直線に続く細道を抜けると急に開けた場所に出る。
そしてその奥。小山を背に座る1人の男。
???「先の物の怪と威嚇をしてみれば…人であったか。わざわざこの様なところまで何用か」
その身長はナツメより高く、赤いシャツに黒いマントを羽織る騎士風の男。
整ったヒゲが特徴的で、側には見事な黒刀を立てかけ優雅にワインを飲んでいた。
何よりも目に引くのは鷹の様な鋭い双眸。
この世界にて"世界最強の剣士"の称号を冠する【鷹の目】ジュラキュール・ミホークその人である。
「ふむ。昼寝の邪魔をしに来たんだが……どうやら寝かせる必要がありそうだ」
軽い剣気を飛ばし、腰の零毀へと手を添えるが……ミホークに動く気配は無い。
(チッ、安い挑発にゃのらねぇか…)
鷹の目「要件を言え」
「……世界一の大剣豪。初めは一目見れたらそれで良かったんだが……弟子に啖呵切っちまった。先ずは"剣士"として手合わせしてくれ。構えろよ鷹の目」
龍眼を発動し零毀を抜くと同時に今度は本気の剣気を飛ばす。ミホークは重い腰を上げ黒刀を構えた。
互いの口角が一瞬上がった様な気がしたが……
ギィィィイイイイイン
刀と剣が交わると凄まじい音と共に衝撃波が島を揺らす。
常人には目視できない速度で剣撃がぶつかり合っている。
楽しい。楽しすぎる!
自分の全力を初めてぶつけられる相手にナツメは歓喜したがそれと同時に驚愕もしていた。
最早何線放ったか…100を超えたあたりで数えるのをやめた。その全ての斬に全力を乗せている。
フェイントを混ぜようが雷速で動こうが龍眼で先を予測しながら放とうが全てを防がれ斬り付けられた。
(成る程。世界最強だ)
恐らくミホークも全力で相手をしてくれているのだろう。
その表情に余裕がある様に見えないのが唯一の救いか。
そして同じく、優勢に見えるミホークも内心では驚愕していた。
この歳でこの領域。天才という一言で片付けるなど愚かであると。
幾度交わったか最早分からないが、島の方が耐えきれなくなった様だ。
地面に深く亀裂が入り、とうとう2つに割れてしまった。
互いに満足したのか、その衝撃を合図に2人は刀を、剣を納めた。
「あーあ、負けちまったか……立つ瀬がねぇなこりゃ。ここまで切られたのは生まれて初めてだよ」
見ればナツメは服がボロボロ。身体の数カ所からは血が流れていた。
ミホークに傷は見当たらない。服が多少切れてる程度だ。
鷹の目「ふっ、嫌味にしか聴こえんな。貴様……本来剣士では無かろう。オレの斬撃をここまで浴びて倒れぬとは。剣の腕も見事。名はなんと言う」
「ミカグラ・ナツメだ。悪ぃな、昼寝スポットぶっ壊しちまった」
鷹の目「全くだ……(お前とは、また会いたいものだ。生き急ぐなよナツメ)」
ミホークはそう言って島から出て行った。
少しばかりの休息を取る為、ナツメはその場でドサッと大の字にぶっ倒れると目を瞑る。
だがその時
ゴァッ!!!
空から巨大な光が降り注ぎ島ごと飲み込んでしまった。
抵抗する暇などなくナツメは意識を手放した。
メンゴとか聴こえた気がするが気のせいに違いない。
グランドライン〜〜カームベルトの境目〜〜
???「ソニア!捜索はまだ進まぬのか!」
とある海賊船。その船内は慌ただしく、クルーらしき者達もバタバタと忙しない。
そんな中響く鈴のような声。恐らく機嫌が悪いのだろう。ソニアと呼ばれた女がそれに対して答える。
ソニア「全力で捜索中です!捕らえた海賊の情報だと……この辺りの海域に居るはずなんだけど……」
どうやら総出で何かを探して居るようだ。
???「誇り高き【九蛇】が敵船に奪われるなどあってはならぬ!一刻も早く見つけ出し、始末をつけよ!」
〜〜同時刻、とある無人島〜〜
「ん……なんだこりゃ。なんで俺縛られてんだ?」
ナツメが目を覚ますと、見たこともない無人島で木にロープで身体を縛られていた。
先程まで鷹の目と戦闘していた島とは違う島のようだ。
そして隣の木には見たことの無い少女が、同じように身体を木に縛られていた。
こちらはまだ気を失っているらしい。
(身体の傷はどうやら癒てる……ここどこだ?てかこいつ誰だ?)
どう言う状況か全く分からない。
戦闘の疲労が完全に抜け切っていないのか、ぽーっと空を見て居ると、奥の森から男が現れた。
見た目的に海賊だろう。
海賊「おお、兄ちゃん目が覚めたみたいだな!ギヒヒヒヒ」
「てめぇ海賊か?船が見当たらねぇが……いまどんな状況だよ」
取り敢えず情報が欲しい。我が物顔で海賊が手にしている零毀には目を瞑り問い掛ける。
すると先程まで機嫌が良かった男の表情が怒りに変わった。
海賊「ふざけやがって!あの糞アマども!あいつら急に現れて……俺らの船は!」
ヨダレを垂らしながら、男は何があったのか話し始めたので黙って聞いていると、大体の予想がついた。
どうやらこいつの船を襲ったのは"九蛇海賊団"王下七武海の一角。
海賊女帝【ボア・ハンコック】率いる、女性だけで構成された海賊団だ。
在ろう事かこの男は仲間が襲われてる隙に九蛇の船員を捕らえ、1人だけボートで逃げ出して来たそうだ。
この島に着く前に海に気絶して浮いていた俺をついでに拾ったと……てかヨダレ汚ねぇ!
「ふーん、海賊なら海賊に襲われても文句は言えねぇだろ。てか九蛇知らねぇとかどんだけモグリなんだお前」
海賊「なんだとてめぇ!ギヒッ自分が今縛られてんの忘れちまったのかぁ?」
「だからヨダレ汚ねぇって言ってんだろ!あー、もういいわお前。命救ってくれたのには感謝してやるが……仲間見捨てる屑に慈悲はいらねぇよな?〔縄解いて自害しろ〕」
海賊「なっ!身体が……!勝手にぃぃい!!!」ブシュッ
ナツメの言葉に逆らえず男は零毀で自害した。
「【龍砲】人を言葉で操る異能だ。屑にはお似合いの死に方だろ」
ん〜。と身体を伸ばし零毀を腰に戻す。
隣で気絶中の九蛇の少女を解放すると、おーい起きろ〜と頬をペシペシ叩き始めた。
九蛇女「んむぅ……はっ!男!ってあれ?さっきの奴と違う?(……うわぁ綺麗な人)」
「あー、お前を連れて来ちまったヨダレ野郎ならそこで死んでるよ」
九蛇女「あ、あんたが助けてくれたのね。ありがとう。私はラン。あんたは?」
「俺はナツメだ。ヨロシク。てかここがどこか分かるか?」
ラン「え⁉︎この島の人じゃないの⁉︎そうだ!大変!直ぐに戻らなきゃ!」
急に慌て出すランを落ち着かせるナツメ。島にあるのはボート一隻。
こんな少女じゃどう考えても海王類だらけのカームベルトを渡るなんて不可能である。
「取り敢えずお前は九蛇の海賊船まで戻りたいんだろ?何か目印になるもんとかあるか?」
ラン「目印……あっ、仲間のビブルカード!良かった。コレがあれば帰れる!」
「んじゃそれ目指して送ってってやるよ。俺もこんな所居たくねぇし」
そう言ってナツメはスコへ行く時に作ったものと同じ船を創り出した。
ランはそれを見て驚きながらも色々質問が止まらなかったが…
今はそれどころではないので適当に返事するだけに留めた。
カームベルト〜〜九蛇海賊団船内〜〜
マリー「姉様ー!姉様大変!」バンッ
勢いよく扉が開かれ慌てた様子でマリーがハンコックの部屋へ入って来た。
ソニア「ちょっとマリー!姉様に無礼よ!」
ハンコック「何じゃ騒々しい。ランが見つかったのか?」
マリー「ソニアも!ちょっと外を見て欲しいの!」
彼女の只ならぬ様子にハンコックとソニアは3人で甲板に出るが……
百戦錬磨の女傑達(船員)の表情がおかしい……皆唖然とした顔で海を見て居た。
それにつられてハンコックは海を見るが………
ハンコック「なっ!なんじゃこれは……」
海上に浮かぶ無数の死体。その姿は見慣れたものであったが、数が尋常ではない。
全てが真っ二つに切断された海王類の死体がその異常性を物語っていた。
船を引いている毒蛇"遊蛇"もガタガタと震えている。
ソニア「ぜ…全部一太刀で斬られてる……これだけの数を」
ハンコック「何があった!見ていた者はおるのか?説明せよ!」
その時だった。少し先の海上で何十メートルもある海王類が浮上し水柱が上がる。
どうやらこれをやらかした人物があそこに居るらしい。
物理的にカームベルトを渡れる危険性を考えたハンコックはそこへ行く事を決意する。
もし敵であるならば確実に仕留めなければアマゾンリリーが危険にさらされることになる。
ハンコック「何を呆けておる!総員戦闘準備じゃ!あそこへ向かうぞ!」
ロビン・たしぎ「忘れないで下さいね」
次回いよいよオパーイ島に!死地なのかはたまた楽園になるのか……
たしぎちゃん達のことも忘れないであげて下さいね
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ヒロイン報告なのですが、最近圧倒的ハーレムにして欲しいとの意見が結構寄せられております。
どうしよう……確かに人数は決めてなかったけども
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第7話〜〜メロメロミー〜〜
お気に入り、評価、たくさん頂いて嬉しくてたまりません。
UAもこれだけの方が読んでくださっているのは感動です。
さて今回はハンコック尽くしです。可愛いですよねハンコック。
少し長くなってしまいましたが……御楽しみ頂けたらと!
ナイトアイランド〜〜ロビン・たしぎside〜〜
ロビン「少しは落ち着いた?」
たしぎ「はい…ご面倒をお掛けしてます…」
現在ナツメの帰りを待つ2人。今回は一部屋だが前回と同じ宿を取っている。
あれから2人で色々と話をしたが、ロビンの印象は最初と変わらない。
危なっかしく、綺麗なものしか見てこなかった、夢見る子どもの思想といった感じだ。
ロビン(純粋で真っ直ぐ。良い子なんだけど……)
たしぎ「私は……師匠…ナツメさんに……嫌われてるんでしょうか……」
ロビン「あら、逆じゃ無いかしら。ナツメも初めは乗り気だったじゃない?でも貴女の目的を聞いて、わざわざ此処まで送り届けた。……貴女は…まだ人生を選べる」
たしぎ「人生を選ぶ……」
ロビン「そう。とても素敵な夢だわ……それを大事にして欲しかったのよ」
コーヒーを手渡しながらナツメの意図を代弁する。
そして自分の過去、それに対してナツメがロビンに言ってくれた事をたしぎに話した。
いつ敵対するかもしれない"敵"の事を。
それを聞いてたしぎは驚いたが、同時にナツメが言っていた意味を理解した。
たしぎ「やっぱり師匠は凄い人です。そんな事……簡単には言えません」
ロビン「ふふふ。それでもやっぱり"師匠"なのね(逃す気は無いみたいよ、ナツメ)」
お互いにクスクスと笑い合う。どうやら気持ちは変わら無いらしい。
ロビン「もうこれ以上は言わないわ。改めてこれからもよろしくね。たしぎ」右手スッ
たしぎ「はい!よろしくお願いします!……ところでロビンさん、先程から何を書いてるんですか?」
ロビン「ふふ…砂場が好きなワニさんへのお手紙……このまま引き下がってくれれば良いのだけれど」
たしぎ「?」
その後、帰って来たら驚かせてあげましょう!と料理に勤しむ為に、2人は食材を買いに夜の街へと溶けて行った。
カームベルト〜〜ナツメ・ランside〜〜
ラン「ナツメ!また来たよ!!」
「ったく!幾ら何でも出て来すぎだろ!!暇人かこいつら」
ラン「そういう問題じゃないと思う……」
「飛ぶぞ!捕まってろ!」
ラン「きゃぁぁぁ!またぁぁあ!!??」
これで何体目だろうか……。ランの持つビブルカードを頼りにボートを進める事約30分。
どうやら九蛇の船は方角的に(適当)カームベルトに居るらしいことがわかった。
行き先が分かったのはいいのだが、たかが小型のボート一隻が海域に入った途端に海王類が出るわ出るわ。
ナツメとしても、食す訳でもないのに本当はこんな生態系破壊ばりの大量殺戮など不本意極まりないのだが、倒さなければ此方が食われてしまう。
一刻も早くランを引き渡したい!
よし!海王類は食材として九蛇へのお貢物にしよう!(押し付け)
しかし……このままでは絶滅させる勢いだな。
「ふー、取り敢えずは落ち着いた……のか?」
ラン「し…死ぬかと思った……」
「ククッ。その台詞何度目だよ。それよりさっさと先へ進むぞ!ビブルカード貸してみろ」
ラン「うう〜、島の食料何年分だ〜。勿体無い〜。カードカード……はっ!ナツメ大変!さっきの衝撃でどっかに落としちゃったみたい……」
「な!何だとぉぉぉ⁉︎ど、どうすんだよ!また直ぐに……ん?お!おいアレ!」
少し先に此方に向かって来る船が一隻。2匹の巨大な蛇が船を引いているのが確認出来た。
ラン「九蛇の海賊船だ!蛇姫様〜〜!!」
何度も何度も死ぬ思いをして一際嬉しかったのか、目尻に涙を浮かべて大はしゃぎで手を振るラン。
あの見た目は間違いない。九蛇の海賊船だ。ナツメもどっと疲れが込み上げてきたのだろう。
ボートに腰掛けると、ふぅ…と溜息を吐きつつ煙草に火を付ける。
〜〜九蛇海賊団side〜〜
船員「蛇姫様!対象を発見しました!男です!武器の所持を確認……ら、ランも一緒です!」
ハンコック「くっ!人質を盾にするとは卑劣な!じゃが賊の殲滅が優先じゃ!総員攻撃準備!」
船員「お、お待ちください蛇姫様!ランが此方に手を振ってます!囚われていると言うよりは……」
ハンコック「何じゃと⁉︎…ええぃ!貸すのじゃ!」
そう言って双眼鏡を奪い自身で確認するが。
ハンコック(あ、あれは……男か?……あ、あの様な美しい男は先の敵船には…はっ!何を狂言じみた事を!あってはならぬ!この世で一番美しい妾があの様な男に…!忌々しい!)
ソニア・マリー「「あ、姉様??」」
ハンコックの様子が何やらオカシイ。誰も見たことのない表情をしている。
そうモタモタしてる間に対象は此方へやって来てしまうのだった。
ナツメはランをお姫様抱っこすると、そのままボートを踏み台に九蛇の船へ飛び乗ったのだが。
「えーと、何で縛られてんの?(はぁー。まぁこうなる予感はしてました…)」
ソニア・マリー「「どういうつもり?」」
周り八方を武器で囲まれ、今にも殺されんばかりの殺気を浴びせられるナツメだったが…
「な、何がでしょうか……(やばい此奴ら……格好!はだけ過ぎだろ!オパーイがイッパイ…ニッパイ)」
童貞には刺激が強すぎた。
ソニア「巫山戯るな!男が、海賊が一度奪ったものを送り届けるなど、どういうつもりだ!」
ラン「ち、違うのソニア様!ナツメは海賊から助けてくれて」
ハンコック「もうよい。下がっておれ」
そう言うと、蛇姫様!蛇姫様!とナツメを包囲していた正面が開け、奥から女帝が姿を見せる。
正に絶世の美女。身長はナツメよりも高く(てかこの世界、女性の高身長率多過ぎじゃね?)
絹のようにしなやかで美しい黒髪が美貌を更に引き立てている。
首から下は見ることが出来ません。即!危険因子認定。
女帝に纏わりつく大蛇が余計エロさをサポートしています。(匠目線
おお、ホンマモンの女帝や。
かなり好きだった原作キャラに感動するも、ナツメは何とかポーカーフェイスを保つ。
どうやらかなり不機嫌でいらっしゃる。
性格が原作通りだとしたらここで揉めるのは愚策だと判断した。
ハンコック「正直に答えよ。"男"、そなた…何者じゃ」
「さっきランが言ったろ。ナツ『"男"、二度も言わすな』はぁ…目が覚めたらランと一緒に無人島で縛られてたんだよ。あんたらが揉めた海賊の生き残りに海で浮いてんのを拾われた。意識が戻った後にランを助けて、ついでにこの船まで送っただけだ。直ぐに帰るから、縄解いてくんねぇか」
ナツメの言葉遣いが気に食わないのか周りからは
『なんて品の無い言葉使い!』だの『蛇姫様に向かって無礼な!』だの散々な言われ様だ。
ハンコック「よい!話が進まぬ。ラン、この男が言うておる事は本当か?」
ラン「は、はい!ビブルカードを目印にここまで…ナツメは凄く強くて!海王類からも助けて貰いました」
どうやらランだけは味方でいてくれるらしい。ランちゃん凄くいい子!
まぁ、助けたと言うか海王類は俺が呼び寄せちゃった…みたいな所もあるよね。
はぁー、完全にアウェーだ……極度の男嫌いらしいから当然っちゃ当然の反応だが…
何とか海に浮いてる"お貢物"で機嫌を直してはもらえ無いだろうか。
と的外れな事を考えていたナツメだったのだが……
ハンコック「この者の縄を解け」
全員「「「蛇姫様‼︎⁉︎」」」
この言葉には九蛇海賊団員は元より、ハンコックの男嫌いを知っているナツメ自身も驚かざるを得なかった。え?何この流れ!!おかしくね?俺がメロメロされて海ポチャのパターンじゃ無いのか??
そう思っていただけに逆に警戒心が生まれてくる。
ハンコック「縄を解く前に……一つ聞きたい。この海王類はそなたが仕留めたのであろう。それほどの強者じゃ。何故海に浮かんでおった」
ハンコック(こやつを…一目見て警戒心など吹き飛んでしまった……何故だかわからぬが…この者と話しておっても不快に感じぬ。それどころか……)
ラン(あ、それ私も気になるかも……)
そう来たか!どう説明するべきかとナツメは思考する。
恐らくこんな事を仕出かせる人間が気絶するような事態は只事ではない。
色々と気になることは他にもあるが、もし脅威となるのであれば知っておかなければなら無い。
っと、こんな所か?
「正直に話すと、少し前に俺はスコって島で戦闘してたんだ。その衝撃で島が真っ二つに割れちまったんだが……その後、戦闘に疲れてその場で寝てた。その後は気絶してたから詳しくはわからねぇが……んで、起きたらランと仲良く木にぐるぐる巻きだった。」
全員(島が割れた⁉︎何と戦ってたんだ⁉︎)
「スコで戦った相手は人間だったし、場所もここいらとは関係ない。お前らが警戒するようなことは無いさ。海に浮いてたのは、多分亀裂に落ちて波にのまれたんだろ」
正直に話した。人と話す時は相手の目を見ましょう。
この教訓が生きたのかは知らないが、その答えに満足したのか安心したのか
ハンコック「平穏なるアマゾン・リリーへ帰港する!(なんじゃ!?"仲良く"縛られていたとはどういう意味じゃ?)」
実は、そこかよ!!!が気になっていたハンコック。
(はぁ…何事も無くて良かった。ちょっと遅くなっちまったが。サッサと帰るか)
「んじゃ、俺は帰るから。今度は捕まるなんてヘマすんじゃねーぞ」
ラン「うん!男なのに、助けてくれてありがとう!本当に感謝してるわ!!コレもらって良いの?」
「男なのには余計だろ!ああ、流石に全部持って帰んのは無理だろうけどな」
ランに別れを告げ、大量のお貢物問題も解決し、はははっと笑い合って済んだことに安堵しながら船を出ようと足を掛けたナツメだったのだが…
ハンコック「?何処へ行くつもりじゃ?」
「え?帰るん『ならぬ』…は?」
ハンコック「ならぬと申しておる。そなたもアマゾン・リリーへ連れて帰る。わらわの決定じゃ。覆らぬ」プィ
全員「「えええええぇぇぇぇぇえええ!!!!!!」」
ソニア・マリー「「あ、姉様!男を国へ入れるのですか⁉︎」」
「マジかよ。か……勘弁してくれ……」(危険因子がぁぁ)
九蛇海賊船〜〜ハンコック・ソニア・マリーside〜〜
ソニア「姉様!本気なの?あんな得体の知れ無い男を!」
マリー「姉様!男を入れるなんて前代未聞よ⁉︎」
ハンコック「……ナツメじゃ」
ソニア・マリー「「???」」
ハンコック「あやつの名前じゃ。ナツメと言うておった」
はあ。と呆ける2人と頰を赤くするハンコック。
ハンコック「分かっておるのじゃ…妾は皇帝じゃ。男を国へ入れるなど有ってはならぬ。じゃが(妾の直感が言うておる…このままあの男、ナツメを離してはならぬと)」
ソニア・マリー「「姉様…(一体どうしちゃったの…)」」
その後、滞り無くアマゾン・リリーへと帰港した。
とうとう来てしまった男子禁制の国。全ての住民が女性。
男は入国するだけで本来は死刑。これからどうなってしまうのだろうか…
開門の声が聴こえる。女帝の帰還に割れんばかりの歓声がビリビリと船を震わせた。
「完全に場違いです。何処もかしこもオパーイ。本当にありがとうございました」
ナツメは目立たぬように、見つからないように身をしゃがめて甲板に座っていたのだが…
侍女「蛇姫様。ご苦労様でした。猿女車のご用意が」
変わりないか?女帝の問いかけに、変わりなく。と返す侍女。
ハンコック「其処の男を客人として城へ連れて参れ」
女帝はこちらを振り返ることもなく直ぐに籠の様な乗り物に消えてしまう。
そしてその声に、国中の女の目線が一斉にナツメへと集まる。
その瞬間違った意味での悲鳴が上がる。
男男男男男
鼓膜と言う名の○Tフイールドは最早決壊寸前だった。
(オイぃぃ!何言ってくれてんだ!!目立ちまくりじゃねぇか!!!)
女ヶ島〜〜九蛇城〜〜
ハンコック「遠慮するな。そなたが仕留めた肉じゃ」///
白酒を飲んでいるからか少し顔が赤いハンコック。
「わーい!美味しそう!じゃ無くて!!!歓迎は嬉しいが…そろそろ帰らせてもらえるか?」
校内放送『蛇姫様の湯浴み〜〜!』
ハンコック「湯浴みの時間じゃ。まぁゆっくりして行け」
アマゾン・リリーに来て四日目。一生分の女性に会った気がする。
オパーイ?流石に慣れたよ?慣れって怖いね!こんな四日間だと流石に慣れるわ!!!
初日、ハンコックに大蛇のサロメを紹介される。目を合わせてくれない。
約80個体のオパーイに揉みくちゃにされる。
2日目、何処からか現れたニョン婆とハンコックが言い争いを始め、ニョン婆は何かを悟ったのか引き下がる。ハンコックに城を案内される。一向に目を合わせてくれない。
約86個体のオパーイに揉みくちゃにされる。
3日目、ハンコックに街を案内される。一向に目を合わせてくれない。途中アザラシを蹴り飛ばしたので龍掌で治すも、余計な事すんなよみたいな目でアザラシに睨まれる。
え?なんで?ソニア・マリーと少しバトル。覇気を使わずに勝ったら驚かれる。
約240個体のオパーイに揉みくちゃにされる。
4日目、城の中なのに蹴り飛ばされるアザラシ。配置に疑問を覚える。わざとじゃないよね?
夜飯の後ハンコックが湯浴みに←イマココ
マジかよ…もう直ぐ1週間だよ!?俺何してんの?ロビンとたしぎ大丈夫なのか……
金は結構渡したけど……
正直に言う。ここは天国だった。
だが…………2日前のあの映像を観てから素直に喜べない。
2日前の夜、頭痛と共に龍眼が発動した。
これまで勝手に発動した事はなかったし、頭痛など無かった。
そして映像の子ども達。手掛かりになるものは周りに居た【海兵】。
将校らしき男も居たが殆ど分からない。
あれ以来観ようとしても自分から見ることが出来ない。
あの光景は今かも知れないし、数年後かも知れない。
本当に悩んだ。ロビンとたしぎの事もある。
だが幸運にも女ヶ島へ歓迎されているこの状況。三姉妹の境遇。
かけて見る価値はあるのかも知れない。あの時の子ども達の表情が忘れられない。
考えに考え抜いてナツメは決意した。
深夜〜〜九蛇城蛇姫の寝室〜〜
湯浴みを終えた後、髪を解く姉の様子を妹の二人は心配した目で見守って居た。
最近の初めて見る姉の様子に、どうして良いのか分からない。
出会った時…もしかしたら……あの男に何かされたのだろうか…
ここ数日の接触でナツメと話もした。手合わせもした。悪い男ではないのは分かっている。
不安が募るばかりの妹達だったが、そこへノックが鳴る。
ソニア「どうした、今取り込み中だ」
侍女「あの…ナツメ様が蛇姫様と話をさせてくれと……」
今は湯浴みの直後。恐れ多いのは分かっている。
だが姫が未知なる対応をした男に無下に断るわけにもいかず、侍女は震える声で申し出る。
ソニア「今は湯浴み中だ!直ぐに『構わぬ』姉様?!」
まさかの了承を得ると…静かに扉が開き、入室するナツメ。
ナツメのこんな顔は初めて見る。真剣な表情だ。
「悪いな。ちょっと話がある。王下七武海【海賊女帝】ボア・ハンコック」
ハンコック「なんじゃ(くっ!やはりまともに顔を見れぬ///)」
「失礼を承知で聞くが……もしかして、今回の接触は政府の差し金か?」
三姉妹「「「!!!?」」」
先程のピンクな空気は何処へやら。ナツメの一言でピシッと空気が凍りつく。
この"男"は今なんと言った⁉︎誇り高き九蛇の女帝に向かって《政府の犬》と言ったのか⁉︎
三人共がその顔を歪め殺気を込めた目でナツメを睨みつけた。だが
「そうか……悪かったな。話で聴いていた印象と余りに様子が違ったからよ。気分を害してすまない」
そう言って頭を下げるナツメ。
ソニア「姉様!これがこの男の本性!話など聞く必要無い!」
ハンコック「ソニア。今は七武海として妾が話しておる。ナツメ……どう言うことじゃ?話がまるで見えぬ」
「お前達が政府嫌いなのは知っていたんだ。正直に話すが、俺はこれから世界政府を敵に回す。だから世界政府の組織である七武海のお前を…先の対応で警戒した。政府に俺と接触しろ。とでも言われたのかと思ったよ。だがそんな訳ねぇよな。お前達が政府の言う事なんか聞くはずもない。どうかしてたんだ」
その言葉の後にナツメは龍眼を発動させる。その瞳の変化に三姉妹は大層驚いた。
龍眼の能力を聴かされるも何処か信じられないといった様子の三姉妹。
「これから話す事は他言無用だ。お前達に納得させるために話すだけだ。俺はこの目と俺の能力危険性もあって、世界政府と海軍に警戒されている」
ハンコック「世界政府と敵対じゃと?(ナツメからの真剣な話じゃ。信じたい。信じたいが……)」
ナツメは二日目に観た龍眼の内容を話した。
そして一つ、頼みを聞いて欲しい。とハンコックに申し立てる。
マリー「そんな話を信じろと言うの?」
「…………天竜人の奴隷……心当たりがあるはずだ……
(すまない…だがあの2人を安全に預けるには……ここしか無い)」
三姉妹は驚愕した。ずっと隠してきた事だ。三姉妹は昔天竜人の奴隷だった。
思い出したくも無い過去。背中に刻まれた焼印。一部の人間しか知らない秘密。
何故この男が知っているのか。ナツメを好いていた。一目惚れだった。
彼女本人には未だ自覚はないが……
そんな事実を知られたハンコックのショックは一際大きいものだった。
「言ったはずだこの眼は全てを見通すと。落ち着け。傷を抉ってすまなかった。だがこれで信じてくれたはずだ」
そう言うとナツメは三姉妹を抱きしめる。突然の事に一瞬呆ける三姉妹。
ハンコック「っつ!何を!!!」
「じっとしてろ」
その時。三姉妹の背中が今までにない程、暖かい暖かい光に包まれた気がした。
時間にして10秒ほどだろうか。ナツメは抱擁をそっと解くと
「世話になった例だ」
初めて観たナツメの"笑顔"。三姉妹は先程暖かい光を感じた背中に思わず視線を……
ソニア・マリー「「あ、姉様!!!」」
ハンコック「う、嘘……」
最後に見たのはいつ以来だろうか。
その恨めしかった背中は……生まれたままの綺麗な姿へと戻っていた……
妹2人はお互いに抱き合いわんわん泣いた。ハンコックも涙が止まらない。
ああ、もう隠さなくていいのか……国を騙さなくていいのか……
「良かったな」
ナツメは部屋の隅で静かに煙草に火を灯した。
校内放送「ナツメさん♪御覚悟はよろしいですか?」ニッコリ
次回!ポンコツ女神の般若転生!(大嘘
ハンコックさんナツメに一目惚れです。女ヶ島出るならこれくらいの出会いでないと動かないと思ったのです。
因みにオパーイ2個体につき1人といった設定です(真顔
次回、かなりの急展開です。
時間もヒョイっと飛ぶかもしれませんね。
お楽しみに!
キャラ設定よりオリ主の能力公開を追加しました。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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第8話〜〜決断の回!!〜〜
私的にはココから数話の間で評価が傾くと思っております。
評価次第では無理矢理完結させる予定です。
二次とは言えここまで原作を外れてしまうと気分を害される方が多いのでは?
と思ったからです。
分岐点の話自体は構想、書き溜めほぼ終わっております。
幾ら自己満でも読み手が楽しくなければ死んでしまいますので……
前置き長くなってすみません。お楽しみ頂けたら幸いです。
マリンフォード海軍本部〜〜会議室〜〜
センゴク「今回緊急招集をかけたのはこの男の件だ!」バン!
ホワイトボードに張られた一枚の写真を指すセンゴク。
賞金稼ぎとして目立ち始めた頃、シャボンディ諸島の駐屯地で撮られたのであろう。
その写真の横に【狂鬼】ミカグラ・ナツメとあった。
いつにも増して重苦しい雰囲気を感じさせる会議室。
その面子は錚々たる顔触だ。
"海軍本部元帥"は勿論の事。海軍本部が誇る、最高戦力。
"海軍三大将"【黄猿】【赤犬】【青雉】から始まり、その下に連なる中将の面々。
"伝説の海兵"ガープ。"参謀"おつる。
その他中将から少将に至るまで、どうしてもこの場に来ることができなかった者を除いたとしても
海軍本部の総戦力と言って間違いない"絶対正義"がこの場に集結していた。
おつる「その坊やがどうしたってんだい?」
センゴク「先日、五老星からこの男を『海軍に引き込め。叶わぬなら抹殺せよ』との命令が下った……」
黄猿・青雉「…………」
場がざわつき出す中、センゴクはナツメと直接接触した黄猿と青雉に報告をさせる。
懸賞金4億近くの海賊を海賊団ごと無傷で殺した実力。
グチャグチャの死体を無傷の死体へと変えた不可解な能力。
悪魔の実の能力を吸収し、己のものとする能力。
そのどれもがその場にいる者達を驚かせる内容だったが
センゴク「【鷹の目】から受けた報告だが、戦闘力に関しては底が見えん。鷹の目は奴と戦った様だが…先日の海が割れた現象に関しても奴の仕業で間違い無いそうだ。これ程の男が海軍の、政府の敵に回れば間違いなく今後厄介な事件を起こす!手がつけられなくなる前に何とかしろという事だ!」
ガープは特に興味がないのか煎餅をむしゃむしゃ食べているだけだ。
青雉「こちらに引き込むとしても……どうーするんですかぃ?」
センゴク「だからそれをこの場で考えるんだろうが!」ドン
そんな会議をしている中、ぷるぷるぷるぷると会議室の電伝虫が鳴った。
今緊急会議中だ!と思わず怒鳴ってしまうも海兵からの報告でセンゴクは驚愕した。
センゴク「何だと!?分かった、すぐに行く!此方に通せ!客人としてだ!」ガチャ!
黄猿「……どうしたんですかぁ?」
センゴク「……狂鬼が…奴の方から此方に会いに来た」
全員「「「「!!!?」」」」
青雉(あの野郎…どういうつもりだ?)
時間は少し遡る
アマゾン・リリー〜〜九蛇城〜〜
「あのー……ハンコックさん?」
ハンコック「その様な仰々しい呼び方をするでないっ///……"ハンコック"と……お呼び下さい////」
モジモジと瞳を潤めるハンコック。何だ!この可愛い生物!……って!そうじゃなくて!!!
今にも籠絡されそうになるナツメ。三姉妹の背中をキレイキレイしたのは良かったのだが……
あのまま何も言わずに部屋を出てしまったのが悪かった。
ひとしきり泣いたハンコック達…その後。
ナツメがその場に居なくなっているのに気付いて軽くパニックを起こした。
夜中だというのに島中に警報を鳴らし、迷惑極まりない大捜索が始まった。
(何故だ……空気を読んで話の続きは翌日だな。って普通に部屋に戻っただけなのに…)
別に逃げたわけじゃないし、逃げ切っても100万円貰えるわけでもない。
直ぐにおさまるだろ……と二度寝を決め込み翌朝。
眼が覚めると隣に女帝が寝てたのだ。しかも産まれたままの姿で。
幾ら女性に慣れたっつってもこれは無い!!俺は何もしていないぞ!
今目を覚まされるの困るやん?動けないやん?見なかったことにするしかないやん?
防衛本能が働いたのか、意識を手放し、次に眼が覚めたのがお昼頃。
部屋には誰も居らず、ハンコックが昼飯を持って部屋に入って来るところだった。
ちゃんと服着てるな。うん。良かった。あれは俺が見た邪な夢に違いない。
うん。夢だよ夢。
そして今に戻る。この可愛い生き物は俺にご飯を食べさせたいのか食べさせたく無いのか…
先程から肉を突き刺した箸を、俺の口元に運んで来る。相変わらず目線は合わせてくれないが。
"伝説のアーン"という技だろう。書物で読んだ記憶がある。
こんな事してる場合じゃ無いのは分かってるよ?でも伝説のアーンだよ?
誰が拒めるというのか。しかし意を決して食べようとすると。
ハンコック「……よう……!…わ………じゃ////」スッ
手を引っ込められる。顔を真っ赤にしてボソボソと何か言っているが聴こえない。
その後、見兼ねた妹達によって一度退場させられる姉。急いで昼食を済ませる。
身支度を整え、零毀を腰に据える。気持ちを切り替えろ。
表情を引き締めハンコックの部屋へと向かう。
昨日話した"頼み"について改めてお願いしに行くためだ。
「バタバタしてすまねぇが……昨日話していた内容。覚えてるか?」
ハンコック「無論じゃ。妾に頼みがあると言うておったな。何でも申してみよ」
「……先日龍眼で観た子ども…此奴らを助けたい。手かがりは【海軍】に有るって事だけしか分かってない。だから俺はこれから海軍本部に行こうと思ってる」
ハンコック「なんじゃと⁉︎」
「正直アレがいつの未来かは分からねぇんだ。直ぐに解決するかもしれねぇが数年後って事もある。……今、ナイトアイランドって島に俺の帰りを待ってる仲間が二人居る。数日で帰るって言って出て来たからな。多分、かなり心配かけてる。俺の頼みは……俺が戻るまで…この二人をこの国に匿ってやって欲しい!」
そう言ってナツメはハンコックに土下座で望みを言った。
ハンコック「あああ頭を上げるのじゃっ!元より断るつもりなどっ……」
「すまん……だが仲間の一人は世界政府に追われてる。この国に居ることがバレるなんてヘマはするつもり無いが。危険は0じゃ無いからな。俺が守るなんて偉そうなこと言っちまったが…頼む、事が終われば俺にできる事なら何でもしよう。あの二人を…守ってやってくれないか」
ハンコック「水臭いぞナツメ…そなたには返しきれぬ恩がある……妾はそなたの力になれてこれほど嬉しいことは無い。じゃが…必ず無事に戻って来ると約束してくれるか?」
心強い。これならば……
「約束だ!」
その後、島にいるロビンとたしぎの名前と特徴を伝え、この手紙を二人に渡してくれないか?と、二つの便箋をハンコックに渡す。国のみんなが総出で見送ってくれた。憂も無い。
俺は別れを告げハンコックに貰った海軍本部へのエターナルポースを確認しつつ、海軍本部に向けてボートを飛ばした。
手紙を渡す時ハンコックが
ハンコック「ロビンタ。……シギ。…まぁその様な名の男もおるか……」
こんなことを言って居たのだが勿論聴こえてなかったナツメ。
これが原因で後々色々あるのはもう少し先の話。
冒頭に戻る
海軍本部〜〜客室〜〜
(これだけの面子が揃うと流石に壮観。感動もんだ)
「お初にお目にかかるな。元帥センゴクサン」
センゴク「ああ。賞金稼ぎは廃業したと聞いたが……多数の海賊を狩ってくれた事には感謝する」
今この場にいるのは元帥と三大将、中将のおつるとガープ、ナツメの7人だ。
"狂鬼"が敵であれば逃げる事など不可能である為、その他将校は席を外させ部屋も移動した。
大将は何が起きてもいい様に既に臨戦態勢だ。
おつるは値踏みする様な視線を向け…
センゴクに無理やり連れてこられたのか、ガープはしかめっ面で腕を組んで座っている。
「気にすんな、金が貯まるまでの暇潰しだった」
それから軽い質問が続いた後
センゴク「……単刀直入に聞くぞ。何が目的で此処まで来た」
「そうだな……ある子ども達を助けたい…」
センゴク「子ども達?……分かる様に話せ」
「何時かってのはまだ分からねぇが。ある子ども達が攫われる。手掛かりは【海軍】。それ以外の情報は不明だ。子ども達を救う迄、俺を海軍に置いて欲しい」
センゴク「何だと?ヒューマンショップ関係か?(人攫い……まさか天竜人関係か?)」
おつる「未来の話をしてるのかい?何故アンタにそんな事が分かるんだい」
赤犬「海軍に"置け"じゃとぉ?ワシらが人攫い言うんか?気に入らんノォ…」ボコボコ
センゴク・クザン「「よさんか!(よせ!)赤犬!」」
おーおー、赤犬はやっぱり相当な短気だなオイ。
だが…センゴクの言う通りだ。ヒューマンショップ、天竜人関係である事が最も可能性が高い。
どの道世界政府へ最終的に敵対するのは確定してる。上手く誤魔化すのとか苦手だしなぁ…
龍眼については正直に話しても問題ないだろう。
だが此奴らはまだしも世界政府に。五老星に利用されんのは勘弁だ。
話を有利に持っていく為にはどうすればいい……って考えても仕方ねぇか。
そう言うのは得意じゃねぇ。なる様になれだろ。
クククッ……それにその殺気にはイラっとくんな……
戦う気も起きねぇ位の力を見せるのが手っ取り早いか?
そもそもナツメは交渉ごとなどが得意では無い。本来得意なのは"戦闘"だ。
久しぶりに"棗"のスイッチが入った。
「…オィ……ボコボコ大将…その蟲みてぇな殺気が……さっきから鬱陶しんだょ……」
ソファーから立ち上がると龍眼を開き一瞬で凄王を覚醒させる。
この世界に来て本気の本気、
桁違いの殺気を飛ばすと同時に棗の床にゴッ!!と巨大なクレーターが出来る。
客室は殺気で満ち溢れ、部屋の家具も軋みながら棗を中心に爆風が吹き荒れる。
ガープはおつるを庇うように片膝を付き耐える。
「今の俺は…何処のどいつだろうが3秒でぶっ殺して……また生き返らせる事だってできる。この意味が…お前らに分かるか?」
センゴク「っく!!!(何だと!!!??何て奴だ!これは戦ってはいかん!)」
赤犬「ぐぅ!舐めるなぁ!!『ボルサリーノ!!クザン!!止めろ!』」
センゴクの胃が悲鳴を上げたところでナツメはフッと元の姿に戻り、屍の力で部屋を一瞬にして元に戻した。赤犬が焦がした床まで直したのはサービスだ。
ナツメを除く全員が唖然としていたが、それを気に留めずソファーに座り直した。
「今ので少しは理解したか?お前達は弱い。正義として我を通したいんだろ?場所代に海軍本部の連中全員鍛えてやるよ(この先敵が弱過ぎるのも退屈だからな)」
その後話し合いの末、海軍の"特別臨時教官"として契約を交わした。
センゴク("此方側に引き込め"それが五老星の命令だ!得体は知れんがこれで折れるしかあるまい。海軍を潰されるわけにはいかん……なぜこうも厄介ごとばかり……)
ナツメはその場の人間にだけ能力の説明をした。
悪魔の実の能力者じゃ無いと言った後の反応は呆気ないもので
『でしょうね。そんな気はしてました』といった感じだった。
センゴク含めその場の人間は、コイツは自分達人間とは別種の存在だと割り切ったのかもしれない。
龍眼の能力には流石に驚いていたが。赤犬だけは最後まで納得いかんといった表情をしていた。
それからクザンに基地内を案内されたのだが……
クザン「おい、ロビンはどうした?ほっぽってきたんじゃねぇだろうな」
「心配は心配だが…信用できる仲間に預けてある。お前らにゃ迷惑かけねぇよ」
そうかい。青雉はそれだけ気になったようだ。聞くだけ聞いて何処かへ行ってしまった。
基地の中は意外にも過ごしやすくて、充てがわれた部屋も中々快適だ。
それから海軍基地での生活も次第に慣れて来たナツメ。
ナツメの1日は早朝海兵達の基礎体力づくりが終わった時間から始まる。
覇気や六式なんかは使えないので、それを抜きにした対人戦闘を訓練した。
半年後
時には軍艦に乗り込み海賊の殲滅(約150の海賊を潰した)やシャボンディ諸島へ行って手がかりを探したりもした。
ある日シャボンディ諸島に行った時に手がかりが見つかる。
「この場所……間違いない。龍眼で観た景色だ。建物しか見えなくて分からなかったが……やっぱりシャボンディ諸島だったのか」
だが映像で観たように建物も壊れていないし…地面も荒れた形跡がない。
どうやらまだ先の未来だったようだ。手掛かりを見つけた事で少しだけ気分が楽になった。
センゴクに連絡を入れ、場所の特定ができた事と、小型の監視用電伝虫を置いてもらえるように頼んだ。
センゴク「異常があったらすぐに知らせる」
この半年の功績もあったのか要求はすんなり通してくれた。
場所がわかったのでそれからはなるべく外に出ずに本部基地内で過ごしている。
訓練は厳し目に指導した事もあって、海兵の中にチラホラ発勁を使える人間も出てきた。
将校達との訓練も時間がある者からは積極的にお願いされ受けている。
センゴクからのお願いもあって悪魔の実の能力はクザン以外からは喰らっていない。
戦闘戦闘戦闘で中々充実した毎日を過ごしていた。
そんなある日の事。
???「先生〜〜!」
そう言って駆け足で此方に向かって来る一人の少女。
海兵達の中でナツメの事を唯一"先生"と呼ぶこの少女は、最近特に体術の伸びがずば抜けて良い。
何よりやる気が凄い。
「おお、アインか。今日もテンション高ぇな」
劇場版でルフィの敵として登場した人物。アインだ。
青髮で高身長、フリルが付いた特徴的な上着に短パンと、海兵にしては自由な服装。
彼女の階級が私服を許されているからだ。
映画と同じく初めは暗い顔をしていた彼女。
(なんか知らんけど急に明るくなったんだよなぁ。何で?)
アイン「先生との鍛錬は毎日の楽しみですから!(今日の先生も素敵です!)」
「はぁ……お前だけだよ。んな事言ってくれんのは」
海兵達は日々、それぞれローテーションでペアを組んで組手をさせている。
その際人数の都合上必ず一人が余ってしまうのだが、その一人はナツメと組手をせねばならない。
だがナツメとの組手後は必ず身体がボロボロになる為、一度ヤッたらそのトラウマからか海兵の身体が中々動かず組手にならないのだ。ぶっちゃけ訓練中は相当怖がられてる。
龍掌で治してやってんじゃん!腸が飛び出たくらいで大袈裟なんだよ!
ナツメの"少々"はこんな感じだ。
だがそんな中、アインはナツメとの組手を率先して引き受けていた。
その甲斐もあって彼女の体術の実力は相当なものだ。
能力無しの戦闘であれば少将クラスにまで成長した。
そしてアインがナツメと訓練以外でも、食堂や広場で笑って話す姿はその他の海兵達にも良い影響を与えていた。
"鬼畜外道教官"も訓練以外では笑ったり話したり出来るのか!
そんな感じで割とこの環境に海軍もナツメも馴染んでいった。
後にガープが
『ワシの孫…ルフィと言うんじゃが…立派な海兵になるのかだけ教えてくれんか?』写真スッ
としつこく聞いて来るようになったので
「どれどれ……ふむふむ。今日も変化無しだ!立派に海賊やってんよ!」
そんな答えが聞きたいわけじゃ無いんだろう。知ってるけど。それからガープに出会う度、
今日はどうじゃ!と連日この調子である。おじいちゃん可愛いなおぃ。
勿論龍眼なぞ観てない。原作のルフィを知っているからこその確信犯です。(ゲス顔
〜〜3年後〜〜
海軍本部に来て三年が経った。あれから例の場所は特に変わらずと言った様子。
センゴクからの連絡は一向に無い。
ロビンとたしぎについては問題ない。ちょくちょく手紙でやり取りをしている。
勿論特別なルートだ。ヒントは王下七武海の召集。
これまで重い腰を上げなかった海賊女帝の存在である。
三年の間に何度かの召集があったのだが、女帝は必ず参加する様になった。
センゴクを始め、上層部の者達、七武海の面々まで彼女が何故召集に応じ出したのかは分からない。
一部の者達の間では『偽物ではないか?女帝が一瞬とはいえあんな表情するか?』こんな噂まで……
真相は誰にも分からない…否、分からなくていいのです。
そして裏では召集時に一瞬の隙を突いてハンコックとナツメは手紙を互いに交換していた。
これがルートの真相だ。
ロビンとたしぎの内容によると、アマゾン・リリーにて覇気や戦闘について修行しているとの事。
此方からの手紙でたしぎには特別な修行メニューも渡してある。
料理の修行も途中からハンコックまで加わって励んでいるそうだ。
次に会った時が非常に楽しみだな。
ハンコックの手紙は毎度毎度100枚の紙を越える。
まるで大企業の部長さんのボーナスばりに封筒が膨れている。
内容は……正直最後の1枚しか読んでいない。ごめんよ。
だって近況報告その一枚なんだもん。
そして今回のその内容にナツメは思考を巡らせる。
ハンコック『皆で獲物を狩りに森へ行った時のことじゃ。たしぎが』
「ほぉ、あいつにそんな才能があったのか……」(暗黒微笑)
アイン「先生??どうしたんです?そんな怖い顔して…って!これお手紙!女性からですか!!?」
「ん?ああ、これな。俺の大事な仲間だ」
そう言うナツメの表情はとても幸せそうでどこか寂しそうで…
アインも初めて見る表情に胸がチクチク痛む。
アイン「先生…先生はいずれ海軍を出て行かれるんですよね?」
「まぁな。俺は海兵じゃ無い。ことが済んだらすぐにでも帰るさ」
カラカラと笑うナツメにアインは苦笑いしか出来なかった。
アイン「先生は…先生は何故海軍に?ここを出た後何をするんですか?」
「誰にも言わないか?」
イタズラを思い付いた子どもの様に、ニヒヒと笑うナツメ。
アインは当然です!と耳を近づける。………ゴニョゴニョ
アイン「!!!ほ、本当なんですか!!?」
「まだ自分の中でしか決めてない事だ、マジで誰にも言うんじゃねぇぞ?」
アイン「…い、言いませんよ…聞かなかったことにします……(駄目よアイン!ダメダメダメ!)先生……私………《ぷるぷるぷるぷる》……?」
アインが何かを言おうとした時だった。ナツメがセンゴクから預かっている専用の電伝虫が鳴る。
「来たか!!《ガチャ》もしもし?センゴクか!!?俺だ!」
センゴク『……そう言うわけだ。私なりに色々探っていたが……どうやら確定の様だ。本気で行くんだな?』
「分かってんだろ。契約はここまでだ」
センゴク『この事に海軍は一切関与しない。いいのか!事が終われば貴様は世界的な犯罪者だぞ!!』
「そうだな。だがそれがどうした。だが……今まで世話になったな。頑張って俺を捕まえてくれ」ガチャ
アイン「せ、先生?今のってまさか!!?」
「アイン……今がその時だったみたいだ。……んな顔すんなよ。お前はもっと強くなるから。いつか俺を捕まえに『嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!』っつ、おいアイン?」
突然の別れに感情が抑えきれなかったのかナツメの足にしがみつき子どもの様に泣き出すアイン。
アイン「……せま…ん……やっぱり、やっぱりこんなの嫌だ!!私も連れてってよ!絶対一緒に行く!!」
「おい!意味わかって言ってんのか!?ダメに決まってんだろ!!手を離せよアイン!!!」
時間が無いんだ。ここで止まってる暇はない!
アイン「………貴方の敵になるのなら…私ここで死にます」
「はぁ!?ちょ!ちょっと待て!銃を下ろせ」
アイン「さよなら先生」ガチッ
「!!分かった!分かったよ!!クソッどうしてこうなった…取り敢えず今から行く場所にお前は邪魔だ!後で必ず拾いに行くから船出して待ってろ!いいな!必ず行くから待ってろよ!!」
アイン「約束……ですよ?」ウルッ
一悶着あったが時間がない。
ナツメはこの時の為に準備して置いた特別製のボートを起動させると、雷、水を合わせた爆速でシャボンディ諸島まで急ぎ向かった。
結構飛ばし飛ばしに削りました。
私海軍嫌いなわけじゃ無いですからね?
海軍のキャラ皆大好きですよ。
ここのやり取り気になるんですけど!とのお声が有れば番外編として追い追い書きたいと思います。
次回もその次も超展開かもです。このひと騒動が終わったら原作突入します。その前に少しホノボノも書きたいですが…
ただ一言。ルフィすまない。
ナミいないと航海できないじゃん!とお考えの方、ちゃんと考えております。
今回から数話は意見評価にドキドキしながら頑張って書きます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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第9話〜〜妹属性!爆誕!!!〜〜挿絵あり
今回オリヒロインというか、かなり重要なオリキャラをブッコミました。
そのオリキャラの挿絵を作成していて遅くなったのです。
※挿絵はあくまでイメージしやすい様にと描いたものです。
イメージ壊れるという方は観覧をお控えする事をオススメします。
物語が大きく動く節目ドキに私もワクワクしながら執筆しています。
原作キャラにも負けない可愛いオリキャラに出来るように頑張ります。
ではお楽しみ下さい!
〜〜マリンフォードとシャボンディ諸島中間地点〜〜
「クソッ!クソが!もっと!もっと飛ばせ!」
予想外のタイムロスにイライラしながらシャボンディ諸島へボートを飛ばすナツメ。
島の様子が気になり、先程から龍眼を発動するも何も映らない。
あの子ども達の事となると、てんで機能しなくなる。急がなければ手遅れになる。
何せ三年もこの時を待ったのだから。
マリンフォードを出てほんの数分後シャボンディ諸島に到着する。
と同時にボートを踏み台に島へと飛び移る。
ボートは粉々になってしまったが、そんな事はどうでもいい。
目的の現場まで全力疾走するナツメ。
周りの気配に警戒しつつもヤルキマングローブが振動する程の速度で飛び移っていく。
「見えて来た。あの服装、特徴的なメット、連れている少女は……あの子どもだ!間違いない」
スッと木の陰に隠れ気配を消す。
現場は人気の無い広場。例えるなら野球の内野が機能する程度の広さに、周りを警戒する様に取り囲む黒服の男が四人……その辺の海軍将校より明らかに強い。
その更に後ろにはうつ伏せに倒れる海兵が三人。此方はどうやら死んでいる様だ。
中央には天竜人らしき男が一人。だがこの男…本当に天竜人か?
(何だあいつは……変な喋り方もしてねぇし……原作の天竜人とは明らかに雰囲気が違う……)
道楽でマリージョアから降りて来た様には見えない。
その男の周りに這いつくばる四人の子ども達。三年前に龍眼で観た光景そのものだった。
シャボンディ諸島〜〜奴隷の少女side〜〜
少女(な…何とか四人はつくれた……心臓が痛い…次の回収時期まで持たないかも……)
主人である天竜人の背後で胸の辺りを抑えながら苦悶の表情を何とか誤魔化そうとする少女。
少女(こんな事続けてても何の解決にもならないのは分かってるけど……せめて私の命が尽きるまでは…
誰も死なせたく無い……次生まれ変わったらきっと…)
少女は既に今の人生を"自分の為に"使おうという考え方自体が無くなっていた。
それ程までに追い詰められた日常。次に生まれ変わった時はきっと幸せな人生が待ってる。
だからこの命で助かる人がいるのなら惜しく無い…そんな事を考えていた。
天竜人「少々邪魔が入ったが、収穫はあった。良くやったぞリーシャ」
"ありがとうございます"リーシャと呼ばれた少女は、ホッとした様な笑顔で返す。
この時だけは褒めてもらえる。この一瞬が少女にとって唯一、人生で安らぐ時間だった。
黒服「ではアコウ様。マリージョアへと戻りましょう」
黒服の男が鎖で連なる手枷をかけられた子ども達を起こすと、子ども達を隠す様に歩き出した。
囚われたというのに全く表情を変えずに抵抗もしない子ども達。まるで人形の様な表情だ。
アコウに何かされたのか?だが、このまま行かせるわけがない。
「待てよメット野郎」
ドサッ。四人居た黒服の男がその場に倒れる。と同時に、その進行を防ぐ様にナツメが姿を見せた。
アコウ「何だ貴様。何処から湧いて来た。海兵か?」
アコウと呼ばれていた天竜人は、護衛の男がやられたというのに特に焦った様子はない。
「海兵じゃねぇよ。その臨時教官様だ。それよりその子ども達を連れてってどうする気だ?真昼間から堂々と人攫いなんかしやがって……穏やかじゃねぇな」
アコウ「臨時教官だと?……ほう、貴様がそうなのか。五老星の報告で聞いている。中々有能な教官らしいじゃないか。貴様も連れて行くとしよう。役に立ちそうだからな」
「ああ?天竜人みてぇな糞に使われるのはごめんだね。こっちの問いに答えろよ」
しかしアコウはその問いに答えること無く、両手を前に翳す。
ナツメの背後の木がグニャリと歪み、拘束しようと腕に絡み付く。
何処ぞの女神の様にぐるぐる巻きにされてしまった。
悪魔の実の能力だろう。
「話が通じねぇタイプかよ。こんなもんで俺が……!!」
と腕に力を入れようとした時…
アコウの隣に立つ少女が必死で口を動かし何かを伝えようとしているのが目に入った。
リーシャ《お願いします。抵抗しないで。後で必ず逃します》
声を出さず口をパクパクさせてそう伝えてくるリーシャ。
助けて欲しいんじゃなかったのか?
龍眼で観た少女は……あの時確かにそんな表情をしていた筈だ。俺が殺されると思われてるのか?
この程度の相手ならいつでも逃げれる。少女に話を聞いてからでも遅くないか……
そう判断したナツメは、取り敢えず大人しくアコウに捕まる事にした。
リーシャ(ごめんなさい、お兄さん。後で必ず逃します。此処で暴れられたら全てが無駄になってしまうから……)
アコウ「イキがいい人間だな。初めから大人しく捕まっとれ」
聖地マリージョア〜〜アコウの屋敷(訓練場)〜〜
その後、ナツメと子ども達はアコウの屋敷の離れにある訓練場の様な場所に連れて来られる。
石畳の上で10人程の子ども達が何かをしていた。
随分古典的な修行の様だ……手足もボロボロだ。
10歳にも満たない子どもにやらせるものじゃない。しかも皆が無表情。
手足が擦り剥けようが、木人に縛り付けられ拷問の様に鞭打たれようが、黒服に組手でボロ雑巾の様に蹴り飛ばされようが、悲鳴の一つも上げない。これは明らかに異常だ。精神が完全に壊されている。
ナツメはこの場所に着く前に少女に耳打ちされた言葉を思い出していた。
リーシャ「お兄さんはとても強い。一目見てすぐに分かりました。だけど……この先で何を見ても暴れないで欲しいのです……大丈夫です。私が治しますから」
初めは彼女が何を言っているのか分からなかった…だがこんな光景を見てナツメが我慢出来るはずもなく……
「止めろテメェらぁ!!」
黒服達を倒し、瞬時にその場を制圧し子ども達に駆け寄る。龍掌で手当てする為だ。
アコウ「おお!おおお!!相当な実力者だと聞いていたが!まさかリーシャと同じ治癒まで使えるとはな!ふははは!!実にいい拾い物をした!!いいぞぉ!おい白髪の貴様!これからは、こいつらガキどもは貴様が鍛えろ!壊したらリーシャと交代で治せ。(まぁ……死んでも別に構わんがな……)」
それだけ言うとアコウは黒服と去って行った。
だがアコウの言葉など耳に入っていない。目の前の光景に驚愕していたからだ。
先程駆け寄って治療しようとした子どもはリーシャの手によって回復していく。
まるで龍掌を使った様に。
(俺は確かにさっき龍掌を使った。だがこの子どもを治せなかった。いやあの感覚はそうじゃない……
この子どもには氣がまるで無い!死体なのか!?でもリーシャは目の前で治療していく…どう言う事だ?)
全ての子どもを治療させると、子ども達は何も言わず鍛錬に戻っていく。
そしてナツメの元に苦しそうな表情で近寄ってくるリーシャ。
リーシャ「お兄さんは本物の治癒能力者だったのですね」
「本物?どう言う意味だ?あの子ども達……お前の治癒能力。あれは…」
リーシャ「はい。あれは人間じゃありません。私が能力で創り出した分身。私の命を削って創り出したもの。ですので治療に見えたあれも私が治していただけです……」
「創り出しただと!?あ、悪魔の実の能力なのか?聞いたことがないが…」
リーシャ「ええ。今の主人、アコウ様の奴隷になる前、私は"一般階級"の天竜人に奴隷として買われました。その時に余興として食べさせられた《ケタケタの実》の能力です。今この場に居るのは……私とお兄さんの二人だけなんですよ」
そう言ってニコッと微笑むリーシャ。その笑顔は天使の様だった。
奴隷として攫われたのも、その容姿によるものだろう。
ひまわりの様に綺麗な金髪、透き通る様な真っ白な肌。
双眸は髪色と同じ金色で吸い込まれそうな瞳をしている。
今現在の年はおそらく15歳程だろう。たしぎと出会った時の様な幼さも感じる。
だが………
(何故……こんな所に独りで居てこんな表情で笑えるんだ……)
リーシャ「………あの子ども達を…見てください。本当は…私が救えたかもしれない人達…友達だったんです……あの子達、本当にここに居たんですよ?」
その時の事を思い出したのだろう。静かに彼女の頬を涙が伝う。
こんな事話しても何も変わらないのは分かってる。
でも……あの子達の事を誰かに知って居て欲しい。
この人は強い。きっとココから逃げる事だって出来る。いや、逃してみせる。
そしてこの子達がここに確かに存在してた、生きてたんだよって貴方にだけでも知って貰えたら……
先程彼が治癒の能力を使って居た時の表情、今彼女を見つめる表情を見てナツメの優しさを感じ取ったリーシャ。
今迄誰にも言えなかった感情を沸々と語り出した。
少女には夢があった。
「生まれ変わったらちゃんとした家族が居て、美味しいご飯を食べて……世界を見てみたいな。冒険してみたいな」
他人事の様な夢。今の人生などハナから諦めている夢。
ここに連れてこられた時に居た子ども達。不安だった彼女をいつも笑顔で囲んで励ましてくれた。
だがそんな日は長く続く筈もなく。相当無理をしていたのだろう。
彼女を残し、皆が一気に死んでしまった。居なくなってしまった。
リーシャはそれを見ている事しか出来ず、せめてこれだけでも…と皆を埋めてお墓を作った。
リーシャ「他の子達が死んだ後…お墓を造って埋めてあげたの。でも…その日の夜はどうしても眠れなくて……こっそり抜け出して皆の所に会いに行った。その日は異常に警備も少なくて……」
リーシャの頬を大粒の涙が濡らしていく。
そして…トドメとばかりにリーシャが言った言葉でナツメは遂にブチ切れた。
リーシャ「無ぐなっでだっ…全部掘り返されでっ!………そして背後から声がしたの!……」
振り返ったリーシャの前には
『あのガキどもも最後は役に立ったぞ?』と腹をさすりながら笑うアコウの姿。
ナツメには何故か容易に想像できた。あの男がその時何をしたのか。
子ども達の食事に毒でも混ぜていたのだろう。
リーシャ「私にはすぐに分かった……皆…皆「もういい!これ以上何も言うな!」……」
「こんな腐った所からお前を直ぐに出してやる。もう苦しまなくていい。直ぐに…直ぐに終わらせてやる」
リーシャ「お兄ちゃん……でもお兄ちゃんも死んじゃう……」
「カカカッ!馬鹿言うなよ!俺が死ぬわけねぇだろ?お前は目を瞑ってここで待ってろよ!これ以上こんな腐った場所は見なくていいよ。外の世界は綺麗だぞ?」
ナツメは心配すんなと彼女の頭を撫で回す。
「決めたぞリーシャ!!!お前は俺の家族になれ!俺が何処にでも連れて行ってやるからよ。拒否権は無ぇ!」
リーシャ「……家族…お兄ちゃんが私の…家族になってくれるの?」
「おう!今日からお前は俺の妹だ!きっと毎日楽しいぞ!だから……今は眠ってろよ。次に眼が覚めた時、お前の本当の人生は始まるんだ」
ナツメはリーシャを優しく抱き締めると龍掌を使いながらゆっくりと気絶させ、ソッとベットに寝かせた。同時に奴隷の焼印も跡形も無く元の背中に完治させる。
リーシャ(あったかいなぁ……お兄ちゃん……何だか神様みたい……)
丸い光が眠ったリーシャに吸い込まれるように入っていく。丁度彼女の創り出した分身の数と同じ光が。
そして……
(巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るな!)
ナツメの眼から熱い何かがとめどなく溢れる。殺してやる…一人残らず殺してやる……
「絶対に許さねぇ……」
唇をブチィと噛み切った。
ズオッ!ドゴン!!!!!!
凄まじい破壊音と共にマリージョア全体が震える。
〜〜海軍本部〜〜
センゴク「くっ!ナツメ!!!遂に始めおったか!!!!!!」
黄猿「センゴクさぁん…あっしは本当に行かなくていいんで?」
センゴク「ああ……今大将を失うわけにはいかん……あの一族は世界政府でも異質の闇だ。存在を知った時は本当かどうかも疑わしかったが……奴の行動が…そのまま答えなのだろう」
黄猿「…………おっそろしいねぇ〜。此処まで殺気が飛んで来てるよぉ?」
センゴク(食人族の天竜人とはな……悍ましい闇だ)
〜〜マリンフォード沖〜〜
アイン「…先生……」
マリージョア〜〜アコウの屋敷〜〜
アコウ「何だ!何事だぁ!!!ッツ!き、貴様ぁ!」
リィィィィィィィィン
「よぉアコウ。こんな時間に何処行こーってんだ?連れねぇじゃねえかよ……てめぇら全員……[動くな]……持て成してやるから遊んでけヨ」
ズアァァァァァァア
アコウと黒服達は一歩も動けずにその光景を見ているしかなかった。
大地、空、全てを埋め尽くさんばかりに突如そこに現れた巨大な刃。
その全てがアコウ達に切っ先を向けて……
「たらふく食えよ……お前らが最後に味わうのはてめぇら自身の血だ」
棗流六千七刀龍奥義"屍狂座"‼︎‼︎
ブチュ
聖地マリージョアの一角に突如出来上がった剣山の山。
その衝撃、質量によって、ある区画の全てが歴史の闇と共に消え去った。
棗はアコウ含む親族全ての天竜人、黒服全員を殺害。建物を大地ごとふきとばした。
その後ナツメはリーシャを抱きかかえマリージョアを脱出。
不思議な事に海軍などの追っ手は一人も来なかった。
リーシャは幸せそうな表情を浮かべ、その腕の中で眠っている。
アイン「おかえり先生っ!……良かった。本当に…無事で良かった…」クスン
「くくくっ、必ず迎えにいくって行ったろ?もう此処に用は無い。追っ手が来る前にさっさと帰るぞ。改めて聞くが…本当にいいんだな?俺はたった今から世界的な大犯罪者だ」
セリフと表情がかみ合っていないとは正にこの事だろう。
ナツメは心底嬉しそうな顔をしている。手に抱いている少女がその答えなのだろうか。
アイン「はい!本当、先生ったら何を今更!ふふっ辞表も書いて出して来ましたから!!」
「ははは!抜かりないな!そうか、ならアインもこれからはオレ達の大切な仲間だ。ヨロシクな」
アイン「何処までもついて行きますよ!」ニコッ
その場でアインが乗って来た船を改造し…
リーシャを起こさぬよう慎重にアマゾン・リリーへ帰還した。
アマゾン・リリー〜〜沿岸部〜〜
無事に仲間の元へ帰って来たナツメは、見張りをしていた女ヶ島の少女に帰還を伝えた。
猛スピードでハンコック達を呼びにいく少女の背中を朝日が照らし始めていた。
ハンコック「ナツメ!よう帰って来た!わらわはこの日を待ちわびたぞ!!!」
「おう!今帰った!ちょいちょい顔合わせてたけど全然喋れなかったかんな〜、ただいま!」
涙を流すハンコック。ナツメに抱きつこうとして駆け寄ってくるも、腕の中にいるリーシャが目に入る。
ハンコック「こ、この少女がナツメの言っておった……」
「ああ。今寝ちまってるから起きたら皆んなに改めて紹介する。それと……おい、アイン出てこい」
アイン「あわわわっ!ま、まさかとは思いましたがっ!海賊女帝さんが先生の大切な仲間!?」
ハンコック「なんじゃこの小娘は!名も名乗らぬとは無礼であろう!」
(こ、これは!見下し過ぎのポーズ!!!本当に仰け反ってんだなぁって俺このポーズ生で見たの初めてだわ)
アイン「す、すみません!アインと言います!先生の元で武術を習ってました!」
「あー、ハンコック、実はだな」ゴニョゴニョ
ハンコック「なんじゃと!?(またコヤツは女をホイホイと……!わらわだけでは飽き足りぬのか?裸で床を共にした仲じゃというのに!)」
ナツメはマリージョアに行く前の一悶着を簡単に説明したのだが、どうやら別の意味で捉えたハンコック。
ハンコック「ふんっ、ナツメが仲間になったというならわらわは何も言わぬが……!アインとやら!此方へ来る事を許す」
え?え?と慌てるアインに、こっち来いって言ってんだよ多分。翻訳するナツメ。
アインはハンコックの顔に耳を近付ける。
ハンコック『ナツメの両手は既にふさがっておる!出過ぎた真似をするでないぞ?』
アイン『なっ!いくら女帝さんでもそれは譲れませんね!勝負なら受けて立ちます』
ぐぬぬぬぬ!
「?何やってんだこいつら」
九蛇城〜〜ハンコックの部屋〜〜
ナツメの膝枕で眠るリーシャ。
そして、互いの肩をど付き合いながら"伝説のアーン"を我先にとナツメに繰り出すアインとハンコック。
それをどうしていいのか分からないナツメはリーシャの寝顔に現実逃避して癒されていた。
ハンコック「ええい!邪魔じゃ!そなた年功序列という言葉を知らぬのか!!!」
アイン「貴方より長い時間先生と過ごした私が先輩なんです!後輩は先輩をたてるものですよ!!!」
「いいから早く飯食わせてくれ……」
ギャーギャーと女帝の部屋に相応しくない程、五月蝿いモーニングだったが……
バンっ!!!
たしぎ「師匠〜〜!!!師匠!師匠!ししょ〜〜!!!」ガバッ
「ぐえっ!!!た、たしぎか?ゲホッ、く、苦しいから!ちょ!覇気!武装色の覇気!」
たしぎ「師匠〜〜!会いたかったですぅ〜〜!」グリグリグリ
久し振りに会ったたしぎは随分と逞しくなっていた。そこにもう1人。
能力でたしぎを引き離す。
ロビン「ダメよ、膝の子が起きてしまうでしょ?」
「ぷはっ、助かった…おお!ロビン!久し振りだな〜、数日が随分長くなっちまった。三人共、本当に世話かけたな」
そう言って頭を下げるナツメ。
たしぎ「本当ですよ!どれだけ心配したと思ってるんですか!海軍に行ったって知った時のロビンなん…もご!むー!」
ロビン「たしぎは余計なこと言わなくていいの」ニッコリ
リーシャ「んむぅ……む?お兄…ちゃん?」
「おはようリーシャ。よく眠れたか?腹減ってないか?」
ここは…と、目をこすりながらキョロキョロ周りを見渡すリーシャ。
取り敢えず事情を説明しなきゃならない。侍女にリーシャを風呂に連れて行ってもらう。
ナツメと向かい合うように他の皆をを座らせると、ナツメはこれまでの事を一から話した。
勿論、リーシャの過去、彼女を自分の家族として連れて帰ってきた事などを細かく話した。
ハンコックとたしぎはリーシャの境遇に涙を流し、ロビンも難しい顔をする。
アインは『もう海軍に未練はありません。世界政府!許せない!』と怒り心頭だった。
その後、リーシャが湯浴みから戻り、皆で朝食を済ませながら其々自己紹介を済ませた。
リーシャ「この度お兄ちゃんの家族になりました!リーシャです。皆さん宜しくお願いします」
「んな他人行儀で挨拶すんな。皆お前を受け入れてくれる」
リーシャが皆を見てみるとニコニコと優しい笑顔を向けてくれた。
「さて、改まって言わせて貰うが……皆!本当に世話かけたな!だがリーシャを救えた事は本当に幸運だった。ありがとう。みんなのお陰だ。そしてこれからの事を話そうと思う」
ロビンの夢、たしぎの夢、リーシャの夢。
ハンコックとアインは特に決まっていないみたいだがそこは追い追いだ。
そして俺の夢。それを踏まえた上で俺が出した答え。それは……
「これから俺たちは家族として海賊旗を掲げる!お前たちは既に俺の掛け替えのない家族だ!!!そしてこれから世界中を冒険して回る!その為の船も作る!航海士も……実は目処を付けてある。海賊せんとして動き出すのは今から2年後!いいか!それから世界は大きく動き出す!その為の準備期間だ!!!」
全員「「「「「!!!!!!」」」」」
皆思うところはあるだろう。だがお前ら鏡で自分の顔見てみろ!
クカカカカカッ!楽しみで仕方ねぇって書いてあんぞ!
「たしぎ!ハンコックにお前の成長っぷりは聞いている。師匠としてお前にある試験をやって貰う!そしてロビン!」
ロビン「!まぁ…ふふふ、悪い顔」
「皆でワニ狩りと洒落込もう」(暗黒微笑)
全員(何て悪い顔!!!)
みんなの妹リーシャちゃんだよ!(真顔
如何でしたか?リーシャちゃん。妹キャラをブッコミました。彼女も今後活躍する予定です。
次回はいよいよ原作突入!果たして麦わらの船に乗る航海士は誰なのか!
そしてコメント、評価もありがとうございます。
次回で続けるか終わらせるか決めようと思ってます。ご意見お待ちしてます。
リーシャの評価も気になります(ボソ
後、オリ主の海賊団の名前を活動報告にて募集しようかと思います!
自分でも考えているのですが中々しっくり来ないです。
皆さんのご意見も参考にさせて下さい!期限は2日とします。その前に決まり次第、次の話を投稿します。
名前が決まらず投稿出来ないのです。お許し下さい。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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第10話〜〜龍の息吹:前編〜〜
お待たせ致しました!
親戚の集まりに強制召喚されてしまいました。
沢山の感想、評価ありがとうございます!
嬉しい感想もたくさん頂けました!
投稿してから気づいたのですが…
二万字超えてました。
削りつつ、前編、後編で分けようと思います!
後編も直ぐにアップします。
アマゾン・リリー〜〜沿岸〜〜
ソニア「ナツメ!姉様の事頼んだよ!」
「おう!任せとけ『お兄ちゃーん、準備出来たってー』あいよ。皆、船に乗ってるか?積み忘れとかねぇか?リーシャ、最終確認頼む」
リーシャ「はーい!」
いよいよ本格的に動き出す時だ。新たな船出を祝福する様に天気は快晴。
雲一つ無く、心地いい潮風が身体を通り抜けていく。
食料、衣類等必要な物を暗黒丸(修繕済)に積み込むと…
暗黒丸から門出を知らせるリーシャの元気な声が聴こえてきた。
今回は、ロビンがクロコダイルからの接触により入手していたエターナルポースを辿る航路。
行き先は勿論アラバスタだ。
マリー「姉様、ナツメも……いつでも帰って来てね!」
ハンコック「うむ、そなた達二人が国を治めてくれるのならば妾も本望じゃ」
やあ。突然だが、三年前ナツメ様が海軍に行った後日談をしようと思う。
え?お前は誰だ。だと?そんな事どうでも良いじゃないか。
私の事は"見送りに来た謎の美少女X"と呼ぶがいい。
ナツメ様が島を出た後、直ぐに蛇姫様率いる九蛇海賊団はナイトアイランドへ向けて出港した。
だが……実はココである事件が起きていた。
そう……【"ロビンタ""シギ"事件】である。
蛇姫様はナツメ様に恋をしておられたのだな。
思い返せば初めて出会った時から不思議に思っていたのだ。
性格最悪と言われる蛇姫様が男相手に1度も《見下し過ぎているポーズ》を取らなかった。
その他にもい……はっ!いかんいかん。すまぬが長くなる故、此処は割愛させてもらう。
とにかくナツメ様に大層御執心だったのだ。
そして考えもしなかったのだろう。ナツメ様の親しい仲間の方々がまさか女性だったとは…
その時の蛇姫様の様子は……なんと言うか凄かった。そう。凄かったのだ。
ナツメ様の動向を知らされたロビンタ・シギ改め、ロビン様たしぎ様も非常に取り乱され……
それはもう三つ巴のカオスが出来上がってな……
その後、蛇姫様は急に原因不明のご病気に……ああ…お労しい……
そんな時に現れたのがニョン婆様だ。ニョン婆様は病気の正体、治療法を知っておられた。
その病名は。なんと言ったか…確か、こいこいちゃんすと言ったか。
とにかく原因が分かり、三姉妹様とニョン婆様は話し合いの末、ある約束を交わす。
これにより蛇姫様は回復の兆しを見せることになる。
『ナツメが戻ってくるまでは立派に国を治め、七武海として国を守る。ナツメが無事戻り、島を出ることになれば妹二人がその後の国を治め、ハンコックは一緒に島を出る』
以上で後日談は終わりだ。これ以上話す事は何もない。
急に終わるな?知らん。3分経った。これ以上は無理だ。私は帰らせてもらう。シュワッ!
「ソニア、マリー、忘れるなよ。ここを離れてもお前達や国の人達も皆、俺の家族だ」
暫しの別れを惜しみながら、笑顔で若干潤んだ瞳を見せる姉妹。
国中の皆の大歓声に見送られながらナツメ達は女ヶ島を後にした。
因みにハンコックはいつも羽織っていたマントは着ていない。
綺麗になった背中が余程嬉しかったのだろう。ノリノリで大胆に背中を露出した服を着ている。
七武海の召集で見た時は普通だったのに……ハンコックさん……幾ら何でもそれはやり過ぎです。
どっかのB級映画よろしく、アナコンダに襲われてる"お嬢様女子大生A"みたいになってるから!
(アラバスタに着いたらまずは皆に服でも買ってやるか……)
暗黒丸〜〜甲板〜〜
船も無事出港した。そろそろ島の皆が見えなくなった頃かな。
ナツメは動力の安定を確認後、外(甲板)に出る。
ロビン・たしぎ・ハンコック・アイン・リーシャの皆が明るい表情で迎えてくれた。
ハンコック「話には聞いておったが……本当に電気と水で動くのじゃな!(な、ナツメ…思い切って…少々大胆な服を着てみたのじゃが…に、似合うかの?///)」
アイン「リーシャと共に戻った時も思いましたが……先生に出来ないことってあるんですか?それとハンコック、「」と()が逆ですよ」
リーシャ「すご〜い!お兄ちゃんはなんでも出来るフレ『リーシャ!?それ以上は辞めようなー?』う、うん……」
ロビン「今回は進路に沿って航海するのだから、遭難は大丈夫そうね……」
たしぎ「師匠はやっぱりカッコいいですっ!私にもウィーン。ガシャン。教えて下さい!!」
「あー、うん。皆ゆっくり順番に喋ろうか……リーシャも危険な真似は禁止な?アインはそれどうやって発音してんの?たしぎ……何言ってんだお前」
ヴォッホン!喉を鳴らし改めて仕切り直すナツメ。
「皆分かってると思うが、これからの予定を再度確認したい。今、俺達はアラバスタへ向かっているわけだが……ロビン」
ええ。とロビンが一歩前に出る。
ロビン「今…アラバスタは王国軍と反乱軍による内戦状態にあるわ。昨日皆に話したと思うけれど、その内戦はある組織によって意図的に引き起こされた。」
そう。ロビンが言う様に、アラバスタ王国の裏から混乱を誘発し、群衆を引っ掻き回している秘密犯罪会社"バロックワークス"それを率いる王下七武海の一角《サー・クロコダイル》。
今王国は奴を筆頭に、組織全体が国の内部に根を張り一触即発状態。
龍眼で確認した所、国取りは仕上げに入っていた。
早いな。クククッ…予定より随分お急ぎじゃ無いかクロコダイル……
2年も前倒しになるとは。原作では裏でロビンが奴を抑えてたって事もあるかも知れんな。
真相は分からないが…
(だがお生憎様だ。ロビンがこっちに居るイレギュラーを除いて、手の内は殆ど分かってんだよ。原作様様だな。残念だが、クロコダイルには呆気なく退場してもらう。たしぎの才能を確認するにも手頃な相手だからなぁ。航海士の事もあるし、たしぎにやってもらいたい事もある。時間をかけている暇はねぇ)
という事で、ナツメはワニ狩り作戦に特に口出しする気は無い。
クロコダイルなどハナっから眼中に無い有様だった……当の本人は…
アラバスタ王国〜〜レインベース〜〜
糞ったれが……またこの夢か。
クスクスクス……
相変わらず不快な笑い声だ。あの女の笑い声と同時に聴こえる俺を呼ぶ声。
あの女が俺を呼ぶ度に観たくもない記憶が夢の中で再生されて行く。
コレは…血の匂いだ。今はその身に染み込んでしまった、鼻の奥にこびりついた様に残るこの臭い。
視界はグニャリと暗く歪み、安定してない。
顔の上半分を隠す様に仮面を付けた連中がニヤニヤしながら俺を指差す。
俺が"殺した"奴等"だが…何度見てもムカつく光景だ。
むせ返る様に重い血の匂いに思わず吐きそうになるも……
「クスッ…クロ、ご指名よ」
あの女が俺に話しかけてくる。俺は"何人目"だ…この後俺は……あのクソアマに……
俺の左手首に付けられた海楼石の手枷。
その手枷に付けられている鎖ごと引き摺られ、俺は仮面の連中の前まで連れて行かれる。
女の顔を睨みつける様に顔を上げたその時……左腕の肘から下をあの女が切り落とした。
他の奴らは首を落とされていたはずだ。何故……
ぐあぁぁぁぁっ!!
糞が!何て情けねぇ声出してやがる……
まだ若かった俺の叫び声が部屋に響き渡った。オィテメェ……何ボサッとしてやがる……
腕は切り落とされた。だが"手枷"も同時に外れたはずだ。何してる…殺せ!皆殺しにしろ!!
情け無い声を出した自分自身への怒り。腕を切断された痛み。
様々な感情が混ざり合い、狂った様に目の前の連中を殺して行く。
あの女は何処へ行った!その姿は既に見当たらない。
違う、後ででいい。あの女も探し出して必ず殺す。
だが今は目の前の屑を……俺をここに連れて来た元凶を殺すのが先だ!
この場に居るのはソイツと俺の二人だけだ。難しい事じゃねぇ。
手を振り上げ、殺そうとした瞬間……意識が覚醒し、ゆっくりと瞼を開く。
まただ…また夢の中でさえ殺し損ねた
それを………
クロ「クハハハハハっ!笑いが止まらねぇ!………一晩だと!?あんなスカした野郎に殺られたってのか!?あっけねぇもんだぜ!」
頭の中を埋め尽くすのは、忌まわしい記憶。若い頃に連れて行かれた異常な場所。
ある日いつの間にかそこに居て、気付いたら消えていたあの女。
人肉を好んで食べる天竜人。俺がまだ弱かった、何の力も持たなかった時の古い記憶……
先程咥えたばかりの、まだ火がついていない葉巻を噛みちぎる。
昨日から何度も確認したニュースクーの一面を、クシャクシャにしながらクロコダイルは吠える。
クロ「糞がぁ!!!アコウ……テメェは……俺が殺すはずだったんだ」
感情に任せるままに大理石のテーブルに拳を叩き込む。その表情に笑顔など何処にも有りはしない。
クロ「俺の獲物を横取りしやがって……ミカグラぁ……あの野郎は許さねぇ!」
クロコダイルから発する行き場の無い怒りが収まる気配は無い。
今迄、欲しいものは必ず手に入れて来た。あの時殺し損ねたあの男を……
俺の手で…必ず殺してやると誓った獲物を…横取りされた。
七武海の召集時だった……海軍本部で偶に見掛る様になったあの男……
クロコダイルはナツメに怒りを向ける。胸にポッカリと空いてしまった穴を埋める為に。
〜〜1週間後〜〜
たしぎ「みなさん準備はいいですか?今回、各自連絡はこの小型電伝虫にてお願いします」
どこか緊張した重元で作戦を指揮するのはたしぎ。
そう、ハンコックが見出したのは、指揮官としての彼女の才能。
今回の作戦を通じて、ナツメはその才能を確認するべく
全作戦の立案、指揮を試験と称して確認しようとしていた。
まずは状況の確認をする為に、アラバスタに存在する数カ所の港を暗黒丸で旋回。
勿論海賊旗などはまだ掲げていない。
船の中からナツメが行った情報収集は、赤龍の雷を応用した電磁波膜を使ったソナー。
ドーム状の電磁波の膜を各所にて数回飛ばし、特に強い氣の集まっている箇所を探り当てる。
範囲はアラバスタ全域に及んだ。
その結果、バロックワークス"オフィサーエージェント"がひと塊りで集まっている事が分かった。
恐らく此処が【スパイダーズカフェ】だろう。
裏から組織を殲滅させる為に作戦は三チームに分かれて行う事にした。
まぁ都合良く幹部が集まっている状況に出くわせる事が出来るのも、龍眼でタイミングを計ったからなのだが……今回は時間の猶予があまり無い為、ナツメのスペックに頼りがちなのは目を瞑ろう。
作戦名《ワニ狩り》内容はこうだ。
アイン・ハンコックの2人はスパイダーズカフェへ。2人の戦闘力であれば殲滅は容易いだろう。
ロビン・たしぎの2人は【スレイン】にて
フロンティアエージェント扮する"王女"ネフェルタリ・ビビ、"王国護衛隊長"イガラムと接触。
現在任務で訪れて居る事はわかっている。
此処は反乱軍の潜伏する街である為、隠密と交渉に長けたロビンを充てた。
そして、ナツメ・リーシャの2人はクロコダイルの居るレインベースのカジノへ向かう。
何をするのかは言わずもがなだろう。
その後は仕上げに入る。
この数年でロビンはクロコダイルを焦らしながらも、少しずつ情報を集めていた。
ナツメペア、アインペアの何れか、もしくは両方が王国首都にて黒幕の証拠品をネタに国王と接触。
ロビンペアはスレインでそのまま反乱軍と接触。
同じ様に証拠の品をネタに、ビビと反乱軍の長コーザを抑える。
たしぎ「アイン、ハンコック。くれぐれも作戦中は喧嘩しないでくださいね。多数対少数の戦闘なんです。チームワークを意識して下さい。お願いしますね」
アイン「人数は全部で9人ですか……ふふふ、割り切れませんね」
ハンコック「戯け…お主はオマケじゃ。妾に全て任せておればよい」
たしぎ『おい。お前ら話聞いてたか?』
アイン「ヒィ!」
ハンコック「わ、分かっておるわ!冗談の通じん奴じゃ……」
師匠から試験として任された作戦を失敗させるわけにはいかない。
初めて聞くたしぎからのドスを効かせた声に鳥肌が立つアインとハンコック。
(た、たしぎさん……凄い迫力だコト……まぁこんだけ気合入ってんだ。大丈夫だろう)
たしぎ「では皆さん!ご武運を!」
アラバスタ〜〜レインベースカジノ〜〜
リーシャ「凄いね!部屋の中キラキラしてる!お兄ちゃんこれ何ー?」
「これか?スロットってんだ。此処にコインを入れてレバーを押すと真ん中のドラムが回転するから。図柄が揃えば配当分のコインが出てくる」
堂々と客としてカジノに入って来たナツメペア。
初めて見る華やかな光景にリーシャが目を輝かせて、これは?あれは何?とはしゃいでる。
うん。メッチャ可愛い。
色々説明していると、リーシャはルーレットが気になった様だ。
「何だ?コレやってみたいのか?」
リーシャ「うん!お兄ちゃん、私思ったんだけど……ゴニョゴニョ」
「お前は何て頭が良いんだリーシャ。よーしよし流石俺の妹」
リーシャ「えへへ///上手くいくと良いねっ!」
「クククッ、ワニを誘き出すついでだ。まぁこれから仲間も増えていくだろう。金は多いほうがいいか」(暗黒微笑)
カジノ社員「失礼します。オーナー、あの…少々問題が……」
クロ「何だ?俺は今機嫌が悪りぃんだ」
カジノ社員「そ、それが…先程からルーレットで遊戯中の少女が……」
クロ「あぁ!?ガキにカジノの金"半分"抜かれただと?テメェ何の冗談だ」
カジノ社員「ヒィ!お、恐らくイカサマだとは思うのですがっ!なにぶん証拠がっ」
クロ「イカサマに決まってんだろ!舐めた真似しやがって」
リーシャ「んー……次はココっ!28番に全部っ!」
ディーラー「あああ、あのっお客様…そろそろ勘弁して下さいぃぃ」
クロ「オィ嬢ちゃん。何の真似だかしらねぇが、此処はガキが来るところじゃねぇ。裏口からおかえり願「キター!揃った揃ったワニセブン!!」あ?」
クロコダイルが振り返る先には少女とは別の人集りが出来ていた。
うお!こいつ本当に揃えやがった!と、野次馬がワイワイ騒ぐ中…
スロットに座る男が背もたれに仰け反りながら此方に視線を流す。
「コレはコレは…クロコダイルじゃねぇの。何だよ、俺の妹が笑顔で遊んでんだ…"不服"か?」
クロ「て!テメェは!何で此処にテメェが居やがる!!"白銀帝"ミカグラぁ!!!」
作戦は問題もなく、どのペアもアッサリと終了した。
アインとハンコックは結局最後の1人を残してどちらが仕留めるかで揉めた結果、
互いに身体の半分に攻撃を加えることによって事なきを得た。
ハンコック「こら!そなたの攻撃した箇所が腫れて妾の領域に侵入しておるぞ!」
アイン「細かいんですよ!私の担当した左半身の爪が若干短かったんですから!おアイコです!」
そして国王コブラ、王女ビビ、反乱軍リーダーコーザの皆にクロコダイルが黒幕である事も認識され、大変感謝されることになったナツメ一味。
コブラはハンコックが居る事に大層驚いていたが……
この国を助けた理由は、仲間であるロビンの数年前から続く因縁という事で簡単に説明するにとどまった。
ポーネグリフについては
「龍眼で調べたが、これはお前が求める石じゃないな」この言葉でロビンも察してくれた。
理由が何であれ国を一つ救ったのだ。それから3日ほど宴は続いた。
ハンコック「ナツメ!妾こそが着るに相応しいと、この国の商人100人が見繕った"おどりこ"の衣装じゃ!!どうじゃ?!似合うかのぅ///」
そう言ってターンをキメるハンコック。オパーイがプルンする。重力仕事しろ。
「…エロい………」ボソ
ハンコック「なんじゃ?エロい?どういう意味じゃ???」
「ち、違う違う、変な意味じゃ無くて!そ、そう、魅力的!凄い魅力的って意味だからな!」
(な、何口走ってんだ俺は!思わず本音がっ…危ねぇ)
ハンコック「そうであろう、そうであろう!妾はエロい!流石ナツメじゃ!よう分かっておるの!」
酒も入り気分を良くしたハンコックは「妾はエロいのじゃ〜」と何処かへ行ってしまった。
リーシャ「お、お兄ちゃん…あれ勘違いしてるよ?いいの?」
「ん?なんか言ったか?」
リーシャ「んーん、何でもない(ダメだこの兄…私が何とかしないと)」
〜〜ビビside〜〜
ビビ「ナツメさん!」
「おお!ビビ!中々話すタイミングがなくて済まなかったなー」
部屋の端でお酒を飲みながら黄昏ているナツメさんを見つけた。
思わず駆け寄って声を掛けちゃったけど、今なら話しかけても大丈夫だよね!?
「たしぎとロビンに聞いたぞ?くくくっ、コーザに随分な啖呵切ったんだってな」
ビビ「ああああれはっ///違うんですっ////もうロビンさん!言わないって約束したのに!」
あああ恥ずかしいよ。
「だが俺たちの為に怒ってくれたんだってな……ったく…王女のお前があのセリフはマズイっての。でもありがとな。……折角の機会だ!お前も飲めよビビ助!」
ビビ「い、いえ。お礼言われる様な事じゃ……ロビンさんにたしぎさん。他の方々にも色々ナツメさんの事聞かせてもらってましたから。って私まだお酒飲む様な歳じゃ無いですし!ビビ助って私の事!?」
ミスター9が言うには…私はお酒を飲んだ事が有るらしいんだけど、記憶が無いのよね……
目が覚めた時ミスター9が傷だらけになりながら何かに怯えていた事を思い出す。
うう……でも折角注いでもらったし……チョットだけ飲んじゃおうかな。
……本当に、皆んな楽しそうに笑ってるなぁ…良いなぁ…
私がナツメさんと一緒に……海賊になったとしたら…
はっ!いけないっ!一瞬寝ちゃってた……あれ?何で私こんな所に…あれ、ナツメさん
「……さか……ビ………覇王色……………」
なんだろう。気がついたら修練場に居た。な、何でこんなに地面がえぐれてるの!?
カルーも泡吹いて気絶してる!
それにナツメさんが何かを言っているけど…上手く聞き取れない。
覇王色って部分だけ聴こえたけど……何だろう。
この時ビビは何故か戦闘中の光景を思い出していた。
今回の件でも嫌という程分かった。力がなければ何も護れない。
ナツメさんと一緒に海に出て見たい!けどそれは難しいんだろうな……
だけど強くなる事は出来るんだ!後2年、ナツメさん達が海に出るまでに私も鍛えてもらおう!
ビビはせめて自分の矜持を守れるくらいには強くなろうとこの時決心した。
ある日の深夜王宮内〜〜テラス〜〜
「たしぎ……受けてくれるのか?」
たしぎ「はい!月に一度は師匠に会えますし!私もまだまだ強くなりたいですから!」
「辛いかもしれねぇが……頼りにしてるからな」
たしぎ「必ず強くなってみせます!絶対に迎えに来て下さいね!」
その後、これから今後二年間の計画を伝え、皆でたしぎを見送る。
そしてナツメは単身ボートでアーロンを倒しにイーストブルーへと向かった。
この世界へ来て三年と半年。グランドラインを逆走し、初めての海。
ルフィの冒険、ONE PIECEの全ての物語が始まった場所は、どこか考え深いものがあったが。
「やっぱ最弱の海って言われるだけはあんな〜。海も静かだし……さっき潰した海賊も今まで出会った連中で最弱。この海だと海賊やるにゃ物足りなさすぎる……しかし……確かこの辺りのはずだが……居た!」
ボートを進めていると、小舟にグッタリと横たわる一人の少女。
ナツメは少女の目の前まで行き、確認する為にしゃがんで顔を覗き込んでみる。
間違いない。"ナミ"だ。
ナミ「うぅ……す、すみませんそこのお兄さん……どなたか存じませんが……水を一杯……
って近っ!!///ビックリしたじゃない!!!(うわーっ海賊かと思ったけど…失敗しちゃったかな)
あーもー、商売の邪魔よ。海賊じゃ無いなら行っていいわよ」
マジかこいつ……こんな方法でよく1億ベリー近くの金を集めたもんだ……
「ほらよ。お前水欲しいんだろ?」
此処で別れたら意味が無い。話を何とか繋げる為に水龍で水を生成する。
ナミ「掌から水が!は!?な、何それ!!!あんたマジシャンだったの?どんな仕組みか気になるけど、心配ご無用、これでも私は海賊なのよ。"ザコースギ"一味って聞いたことあるでしょ?私そこのクルーなの♪」
自慢げに自己紹介を始めるが、どう見ても海賊には見えない。
唯の小娘だが……ってかザコースギって何だよ!名前からしてやる気無いよ!?
ナミ…色んな意味で大丈夫かお前……
ナミ(そうだ!こいつを一味の船まで連れて行ったらお金になるんじゃ無いかしら!あのアホ船長珍しいもの好きだったわよね)
仲間を探してるなら紹介してあげる!とナミの話に乗ったフリをして案内されてみるも…
ああ、こいつらさっき俺が潰した海賊じゃん……うわぁザコースギとは正に
ナミ「こ、こいつら200人以上は居たと記憶してるんですけど……」
「あー、数だけは多かったな。数だけは。でも30秒かからなかったぞ。それより悪かったなー、居場所潰しちまって」
ナミは驚いた様子だったが"居場所"と言う言葉に反応した。
私は海賊専門の泥棒なのよ!海賊なんかじゃ無い!勘違いしないで!
ナツメに向かって声を荒げる。
「なぁ。お前何でこんなことしてんだ?小娘一人でこんな事続けてたら近いうちに殺されるぞ?」
ナミ「余計なお世話「ふむふむ、アーロン一味に村を…成る程、自由になったら世界中を旅して海図を。へぇいい夢じゃねぇか」え?!あ、あんたが何でその事……な、何その目……」
「おいナミ。お前は本当にアーロンが約束を守るなんて信じてんのか?」
ナミ「うるさい!あんたには関係無いでしょ!!?何?さっき会ったばっかなのに助けてくれるっての?馬鹿馬鹿しい!巫山戯ないでよ!」
「いいよ?お前がそれを望むならはっきり言ってみろ。そして現実を見せてやる」
ナツメはそう言うとナミを脇に抱えてココヤシ村へと向かった。
ナミは冗談でしょ⁉︎離して!!と抵抗するも気にしない。
少しするとスッと抵抗を辞め大人しくなるナミ。
初めて出会った不思議な力を持つ不思議な男の
"助けてやる"の言葉に、何をするのか気になったのだろう。
普段は慎重に行動して居たナミだったのだが、この時は何故かハッキリと拒絶する事をしなかった。
それ程までに先の見えない自分の歩む困難な道に追い詰められて居た。
自分自身で気がつかぬ程に目の前の不確かな希望に縋りたかったのだ。
自然とココヤシ村へナツメを案内していた。
ココヤシ村〜〜海岸〜〜
ナミ「アレがアーロンパーク。人間じゃ絶対に敵わない。魚人の海賊団よ。で?どうするってのよ」
「まぁ見てろ。まずはお前に現実を見せてやる…【黒蜜室】」
ナツメが海面に向かって右手を翳し、そのまま引き上げる動作をする。
すると海面が盛り上がっていく。
先の尖った長方形状の真っ黒な物体が姿を現し、次第に球体へと変化する。
その中から一億ベリーの金を取り出すと、徐に地面に投げた。黒蜜室を戻しナミに金を渡す。
【黒蜜室】
この箱はナツメが創り出した倉庫の様なものだ。現時点では、中にこれまで稼いだ金が入っている。
シャボンディ諸島からずっと、海中をナツメと同時に進んで来た彼専用の道具箱である。
ナミ「う、嘘でしょ…あんた本当に何者なの?」
「ナツメだ。さっきからあんたあんたと失礼な奴だな。俺が何者かは今はどうでもいい。その金を持って今からアーロンパークに行く。お前を解放してくれるか試してみろよ」
ナミ「で、でも…こんなお金受けとれないわよ……そ、それに!私が稼いだお金だって少しは」
「あ?そりゃお前の金だろ。俺の金をどう使おうが俺の勝手だ。これは俺の我儘だからな。いいから行くぞ。クククッ。飛ぶぞ!捕まれよ」
ちょっと!またどこ触って…きゃあぁぁぁぁぁあ。これ以上は問答無用らしい。
アーロンパーク〜〜正門前〜〜
「さて、始めるか」
ナミ「フザケンなあぁぁぁ!死ぬかと思ったわ!!!」
ナミのツッコミも良い感じに決まったところで…
先ずはナミが一億ベリーを持って門の中へ入っていった。だが五分、十分待つもナミは現れない。
中からゲスい笑い声が聞こえると同時に門から飛び出して来る人影。
ナミがこちらに涙を浮かべて歩いて来た。
ナミ「ナツメが……いっだどうりだっだっ!悔しいよぉ……あいづらっ世界中の海図を描くまでっ……!ごめんベルメールざんっ……私…」
うわあぁぁぁぁと声にならない様な声で顔をクシャクシャにしながらナツメの胸で泣き続けるナミ。
ナツメはナミの頭を撫でながら、自分が持つ力の事、自分がこれから始めようとしている事、仲間の事を話して聞かせる。
「俺は…俺達は……心から笑い合い、互いの夢を支え合い、この世界を自由に駆け抜ける準備をしている。別に慈善事業やってる訳じゃねぇが。見えちまった……俺の手の届く範囲にお前が居た。それだけの縁だが……俺にとっては充分だ。ナミ、俺の仲間にならねぇか?」
ナミはナツメの話を聴きながら思っていた。
海賊ってあいつらみたいな最低の集まりじゃなかったの?こんな海賊も居るんだ……
良いなぁ。そんな風に自由に生きるって楽しいだろうなぁ。
あいつらさえこの村に来なかったら!アーロンが!アーロンが憎い!!
そんな中差し伸べられた暖かい男の手を取らない理由がない。
反射的といっても良い。そんな速度でナミはナツメの手を取った。
ナミ「私も海に出たいよ!世界を見て回りたいよ!ナツメ……たすけて」
「助けて…か。クククッ!あっさり過ぎて腰抜かすなよ?ナミはここに居ろ。今から"世界最強"を特等席で見せてやる」
そう言ってナツメはアーロンパークへ入っていった。時間にして5秒ほどの静寂……
そしてとてつもない衝撃波が巻き起こる。
アーロンパークの壁が全て吹き飛ぶ。
その場に立っていられないほどの揺れを感じる程に地面が振動していく。
「ウチの航海士様の門出だ!派手に行かせてもらおうかぁ!!」
キンッキンッキンッ…
雷帯を纏ったナツメを中心に、空気の衝撃膜が鼓動の様に次第に巨大なモノへと膨れ上がって行く。
アーロンパークに亀裂が入り、今にも崩壊しそうになって行くのを確かに感じながら…
アーロンは口を開こうとした。その時。
【赤帝龍功轟雷箭疾歩‼︎】
明らかに過剰な一撃。
事前に衝撃膜を使い、軌道上に生物がいない事は確認出来ていたが……
アーロンパークを含む、後方の全てが跡形も無く消し飛んでいた。
一言も喋らせてもらえなかったアーロン一味がどうなったかなど、もはや語る必要もないだろう。
明らかにやり過ぎた……
「あ、あー、…すまんすまん……まさかこんな威力が出ちゃうとは思わんくてだな……」
やっちまったわぁとゆっくり背後を振り返る。ナミの鉄拳が顔面に飛んできた。
ナミ「アホかぁぁぁああ!一億ベリーよ!!?何吹き飛ばしてくれてんの!!」
金の心配だった。
まさかの怒りにナツメは思わず笑ってしまう。そうだ、ナミってこんな性格してたんだよ。
リアルで見ると本当におもしれぇ奴だな。
釣られてナミも思わず笑みがこぼれる。暫くの間、互いに笑い合った。
ナミ(ナツメ……本当にありがとう……)
ココヤシ村に戻り、ナミが事情を説明。
初めは信じられなかったノジコやゲンを含めた島の住民達も、現場を見に行くと
ノジコは"あんがとね!逆にスッキリした!"と言ってくれたのでまぁ結果オーライか。
夜になり一晩の宴がはじまる。皆いい笑顔だ。村人は今日の日を忘れないだろう。
悪夢の痕跡すら消し去ってしまった"白銀の男"の事を。
ナミ「ベルメールさん!私ね、スッゴイ奴と家族になっちゃったの!」
ベルメールの墓の前で嬉しそうに語るナミ。
一頻り報告を終え立ち上がると、背後の木に寄りかかり、優しい表情でナミを見ているナツメが。
ナミ「ちょっと!何処に行ってたの!?探したんだからね!ベルメールさんにも紹介したかったのにー」
「ちょっとネズミに用があったもんでな、もう用事は済ませてきたから」
その後ナツメも墓に挨拶を済ませ、翌日の朝、島の皆に見送られながらアラバスタへ戻るのだった。
新しい家族を連れて。
アラバスタに着いた後、皆にナミの紹介をし、自分はまだやる事が残っているからと、今度はロビンを連れて、王国を後にした。
(良かった。あの様子だと直ぐに馴染めるだろう。仲良くやれよ!さて…次は船だな。金はある。どうせなら限界まで金突っ込んで最高の船にしよう。)
次の行き先はもちろん……
初の一万字越えです……
なっが!
読み疲れますよね、申し訳ありません。
アラバスタ編はしっかり書くとかなりの長さになってしまいそうでしたので、
ご希望の声があればその内番外編で出そうかと思います。
ハンコックがこのままおかしな子にジョブチェンジするのか……
次は後編になります。
此処まで読んで頂きありがとうございます。
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第10話〜〜龍の息吹:後編〜〜
今回後編です!
前編から切り離してますので、そのまま続きからのスタートです。
お楽しみ頂けたらと!
アラバスタ王宮内〜〜深夜の寝室〜〜
ハンコック「のう……アイン、ビビ、ナミ」
アイン「……ええ。貴女の言いたい事は分かっていますよ。先生は…一人で全てを背負い過ぎです」
ビビ「アインさん……」
ナミ「…………」
ハンコック「……分かっておるのならよい……ふふ…のぉリーシャ…そなたの兄は本当に凄い男じゃ……」
リーシャ「……んむ……おにぃ……zzz」
皆が思っていた事だった。いくら護ってくれる存在が居るとはいえ…
自分達は普通の家族としてノホホンと暮らして行くわけじゃない。
海賊旗を掲げる以上、最早お尋ね者。自由に生きる為にはそれなりの力もいる。
各々がこれまでの人生で身にしみて分かっている事だ。家族とは支え合うもの。
支えられてばかりではこの先きっと、ナツメにも無理が出る。
桁違いの力を持つ彼も一人の人間なのだから。
人間には適材適所と言うものがある。とハンコックは続ける。
ナツメは放って置くと何でもかんでも自分が!と背追い込む。
その話は布団の中であったが朝方まで続いた。
そして王宮内ではこんな一コマも………
コブラ「あれは…リーシャちゃんか?何かを探しているようだが……やぁリーシャちゃん」
リーシャ「あ!こんにちは!コブラさんっ!」
本当にこの子の笑顔には癒される……私の娘にしたいくらいだ……
だが何を探しているのか尋ねて見ると、真剣な表情で実は…と改まる。
思わずコブラも釣られて真面目な表情に。
おじさんリーシャちゃんの頼みなら結構頑張っちゃうぞ。
コブラ「こらこら、年頃の娘がその様な顔をするものでは無いぞ?」
リーシャ「コブラさん……いぇ…こ、国王様にお願いがありますっ!実は……」
そうか、見た目で随分幼く見ていたが…この子もそう言う年頃なのだな。
コブラは直ぐにリーシャをテラコッタ(イガラムに瓜二つの奥さん。侍女長)の元へと案内した。
水の都〜〜ウォータセブン〜〜
ロビン「綺麗な街……」
「へー、想像以上だ。壮観だな!」
この街に来た理由。勿論!船を買う為だ。そしてロビンを連れて来たのにも理由がある。
「ロビン、ここは世界政府に所縁がある。司法の塔も近いからな。この街をよく覚えておけ」
何か見えたのね?と問いかけてくるロビンだったが、今は敢えて何も言うまいと口を閉ざす。
用心するに越したことはないが、今は考えても仕方のないことだ。
一頻り街を見て回り、ロビンも買い物(主に本)を済ませ、いよいよ造船所のある区画に入る。
ロビン「こうして二人で街を歩くのも…随分と久しぶりね」
「何だ急に?辛気臭いな、出かけたきゃいつでも付き合うぞ?」
いきなり来た不意打ちに顔を赤くするロビン。ナツメの背後から声が掛かった。
振り向くと…眼鏡をかけた美人秘書らしき女性。
スーツをピシッと着こなすやり手のリーマンの様な男。
ウォータセブン市長であり、"世界最大の造船会社ガレーラカンパニー"社長、アイスバーグと
美人秘書(CP9)カリファだった。
カリファ「社長、見て下さい。セクハラです」
バーグ「ンマー、カリファ、あれはセクハラじゃないぞ。恋人同士だ。ンマー美男美女カップルだな!」
何言ってんだいつら。と呆けるナツメと完全に後ろを向いてしまうロビン。
取り敢えず今回は注文をしに来ただけだったので、予算と希望の船体素材、
受け取りに来るまでの期間(2年間)預かっていてほしい事を伝える。
バーグ「??この船体を囲む様な筒は何だ?」
「ははは!そいつはな!俺のとっておきだ!」
よく分からんが上客だ。注文を受けた以上海賊船だろうと創り上げるのがプロ。
前金を渡し、ナツメとロビンはアラバスタへと帰港する。
ロビンはアラバスタへ着くまでの間ずっと顔を赤くしながら何かを呟いていた。
バーグ「ンマー、あいつらの顔どこかで見た記憶があるんだが……しかし海賊でもないのに海賊船を造れとは可笑しな客だ」
カリファ「社長。セクハラです」
バーグ「何で!?」
あっという間に2年の歳月が経過した。
〜〜2年後〜〜
いよいよ待ちに待った旗上げの時!その日の朝はいつにも増して皆が早起きだった。
アラバスタ王宮内も、英雄の船出とあってバタバタと忙しなく駆け回っている。
コブラ「ナツメ君とナミちゃんは、まだ戻らんのか?」
彼に言いたいことがある。と国王はナツメ帰還の知らせを今か今かと待っていた。
リーシャ「先程連絡が入りました。お兄様はもう直ぐそこまで来ているそうです」
コブラ「おお!そうか、いよいよだな!所でリー『お断りします』早い!まだ何も言っておらんぞ!?だが…リーシャちゃんは本当に2年で見違えたな!」
リーシャ「当然です♪一味のメイド兼、お兄様の妹なのですから」
そう。この2年でリーシャは勿論のこと、皆が見違える成長を遂げた。
やあ。また会ったね、え?誰お前だって?いい加減覚えてくれないか。
私は【謎の美少女X】アラバスタ踊り子バージョンだよ。
さて、紹介を始めよう、何せ3分しかない。3分立つと帰りたくなるんだ。
リーシャ(15→17歳)医者…非戦闘員?
アラバスタの侍女の物とは、性能も見た目も違うメイド服を着こなし、
佇まい、言葉遣い、雰囲気共に相応しいものに仕上がっている。
メイド服も彼女自身で造ったものらしいが……本当に大したものだな!
癒しメイド担当。覇気などは使えないが癒しのオーラを使い皆を癒してくれるぞ!
戦闘力は見ていないので不明だ。恐らくは非戦闘員だろう。
・一言コメント「自分の家族を守れる様にハンコックと医学を学びました。切っ掛けはお兄様の龍掌です。皆さんどんどん怪我してくださいね♪」
・得意料理:栄養学を取り入れた海の料理、スイーツ、お茶菓子
・能力者、ケタケタの実
ナミ(16→18歳)航海士…非戦闘員
彼女は天候をよみ、船を自在に操る技術を備えた。一味唯一の航海士だ。
この2年でナツメとちょくちょく海に出てグランドラインの気候を勉強していたようだ!
勉強熱心だな!2年でスタイルはかなり恵まれたものになっているようだ!
今日もナツメと船を取りに行ってるからな!
・一言コメント「航海術は誰にも負けないわね。伊達にこの2年で3桁死にかけたわけじゃないの」
・得意料理:ココヤシ村の家庭料理、みかん系スイーツ
ハンコック(27→29歳)医者…戦闘員《覇王色.武装色の覇気
元海賊女帝!その美しさはアラサーになっても止まることを知らないな!
元々戦闘面でかなりの強さだったこともあって、2年間は自身も鍛えながら他の仲間の教官をやっていたぞ!彼女自身変わったことといえば服装だな!
今の彼女はナツメに影響を受けてか革ジャン着ちゃう系お姉様と言った感じだ!
アラバスタの医者、女ヶ島から派遣で呼びよせた医者から医療も学んでいたな!
リーシャと並んで、一味で二人いる医者の一人だ!戦闘もこなす完璧お姉様だな!
重力仕事しろ。
・一言コメント「ナツメを落とすのに悪魔の力など借りぬ!」
・得意料理:医学料理、精力がつく料理
・能力者、メロメロの実
ロビン(26→28歳)考古学者…戦闘員《見聞色の覇気
頭脳明晰!どんな時でも冷静沈着、クール系パーフェクトお姉さん!
彼女はこの2年でコブラの許可を取り、ちゃっかりポーネグリフを読んじゃったらしいな!
成長期は終わったのかスタイルはさほど変化は無いぞ!元々スタイルは恵まれてるけどね。
戦闘に関しては見聞色の覇気を覚醒させた。
・一言コメント「ふふふ、特に無いわ」無いのかよ!!!
・得意料理:南国系の豪快な料理、ダークマター系不思議スイーツ
・能力者、ハナハナの実
アイン(22→24歳)特攻隊長…超戦闘員《武装色、見聞色の覇気
彼女は唯ひたすらに2年間修行に費やした……最早修羅と言ってもいいと思う。
それぐらい強くなった。ふ、震えが止まらないよぉ。
冗談はさておき本当に強くなったんだ!
ナツメ直伝の体術を操り、氣のコントロールもかなりのものらしいな!
悪魔の実の力もあって一味での戦闘力はイチニを争う!
・一言コメント「先生にはまだ敵いませんよ?唯、同じく修行を付けてもらっている姉弟子にだけは絶対負けたく無いんですっ!」
・得意料理:簡単なアラバスタ料理
・能力者、モドモドの実
おっと3分経ってしまったな!これはいかん!帰らせて貰うよ!デュワッ
「よ!待たせたな!皆準備は出来てるか?」
リーシャ「お兄様!お帰りなさいませ!皆、出港準備は出来ております♪」
コブラ「ナツメ君、よく戻ったな。成る程!これは立派な船だ」
ナミ「でしょ〜?性能もすっごいのよ!7億なんてとんでもない買い物だったけど大満足だわ!」
ナミと共にウォータセブンに船を取りに行っていたナツメ。彼女のおかげで何の問題もなくアラバスタに戻って来れた。
〜〜回想〜〜
「おー!!!ちゃんと注文通りだ!こりゃすげぇ!」
現れたのは巨大な帆船。原作サウザントサニー号の約4倍の大きさだ。
船首には巨大な木彫りで出来た黒龍が、正面から船にしがみつく様に取り付けられている。
両サイドも片側に4匹の龍、合計8匹の龍が船側面に絡み付き、頭を外に突き出している。
更に、突き出した頭の口内には鋼の筒が埋め込まれている。砲筒の様だ。
ナミ「すっごーい!100人は軽く乗れそうね!いくらしたの?」
バーグ「素材は"宝樹アダム"をふんだんに使った。どんなに困難な海でも超えて行けるだろう。
ンマー、8億だな」
ナミ「はっ!8億うぅ!?ナツメ!あんたそんなにお金あったの!!!?」
「ん?ああ、賞金稼ぎ時代とカジノでもリーシャと一緒に稼いだからな〜。
8億か!いい買い物したな!」
ナミ「う、腕がなるわね……」
だが残りの残金をナミに問い詰められ…
それを聞いたナミによる執拗な値下げにより7億までまけてもらった。
すまんアイスバーグ。この子ちょっと…がめつくて……
カリファ「値下げはセクハラです」
ナツメ「あ、ハイ」
〜〜回想終了〜〜
コブラ「ナツメ君、君に話がある」
「おう!どうしたんだ?コブラ、真剣な顔して」
コブラ「ビビを連れて行くなら…代わりにリーシャたん置いてけ」
「アホか!その鼻血引っこめろ変態ジジイ!てかビビ?ビビ助が何だって!?」
ビビ「ナツメさん!「ビビ助?」……私、この2年間ずっと悩んで考えました!でも考えれば考える程この想いは止められなくて……私!沢山修行したんです!強くなりました!父にも最初は反対されてたけど、今では応援してくれてます!お願いです!私も!私も冒険に連れて行ってください!!!後、ビビ助は辞めて…」
「ビビす…ビビ……」
ビビの告白にその場で驚いたのは、実はナツメ一人。
ハンコックもロビンも、アインもリーシャも…
振り向くと皆がナツメの言葉を笑顔で待っていた。
コブラ「そういうわけだ。ナツメ君。ビビの事を宜しく頼む!」
「国王まで!……だがビビは王女だぞ?いずれこの国を」
ハンコック「それは妾も同じ事。ビビの決意は固いぞナツメ。あやつの眼をよくみて見ぃ」
「……分かったよ!俺としちゃ大歓迎だった。可愛い妹みたいなもんだしな!ビビ!」
ビビ「はい!皆!行ってくるね!(やったぁ!!!)」
そして一味は全員船に乗り込んだ。
「野郎ども!『"野郎"はお兄様だけです』…えぇ……しまらねぇなオィ。まぁいい、たしぎを迎えに行くぞ!出港だぁ!!」
追記〜〜ビビ〜〜
ビビ(14→16歳)戦闘員…《覇王色、武装色の覇気
弱冠14歳にして、ある事をきっかけに覇王色の片鱗を見せる。
その後、2年間ハンコックに覇王色のコントロール、
アインに武装色の修得を鍛錬され、体術の腕も中々の水準に達している。
武装色のレベルは武器に纏わせ戦う事が出来るほど。
狙撃の腕もいい為、狙撃手として活躍するかもしれない。
腰のガンベルトに五丁の銃を携えている。銃には其々愛称を付け可愛がっている。
・一言コメント「海賊女王に私はなるっ!(勿論、王様はナツメさん!えへへ…///)」
・得意料理:アラバスタの料理、スイーツ全般
ローグタウン〜〜海軍本部"大佐"司令室〜〜
スモーカー「たしぎぃ!!!」
この部屋では聞き慣れた怒鳴り声。
大声で呼ばれたたしぎは駆け足で上司の部屋へと入ってくる。
スモーカー「たしぎぃ!テメェ!!トロトロと何やってやがった!!」
たしぎ「す、すみません!スモーカーさん!!眼鏡が何処かに行っちゃって……」
スモーカー「オィ。テメェの頭に引っ付いてるそりゃなんだ」
あ!と慌てて眼鏡をかける。
スモーカー「テメェは抜け過ぎだ!!抜けてんのは気合いだけじゃ足りねぇのか!?処刑台で海賊共が騒いでる!海賊同士の三つ巴だ!!いいな!"麦わら"の首が飛んだらバギー、アルビダその他の一味を包囲!畳み掛けろ!!」
たしぎ「は、はい!すみませんっ(来た!流石です!師匠の計画通りですね!)」
《ぷるぷるぷるぷる》
スモーカー「なんだこんな時に!」
海兵「そ、曹長にお電話みたいです」
チッ!早く済ませろ!との声に
『す、すいません』と、ビクビクしながらたしぎは受話器を取る。
この電伝虫は、ナツメと連絡を取る際に使う。
本部から支給された、たしぎ専用電伝虫という"設定"だ。
電伝虫の殻はナツメ特別製の金属で出来ており、電波などの盗聴は完全にシャットアウトされる。
普段は大佐の部屋で電話に出るなど絶対にしなかったのだが……
このタイミングはナツメにより作戦として聴かされていた。想定内の事態だ。
『おう!たしぎか!?何も喋らずそのまま聴け。たった今グランドラインを抜けてイーストブルーに入った。予定通りの時間にローグタウンに着く。いよいよ計画実行の時だな』
たしぎ(師匠!いよいよなんですね!長かった……最後に師匠に会ったのはイツ頃だったでしょうか……確か480時間と23分16秒前ですね。随分前に感じます……あ〜〜〜〜師匠師匠師匠〜〜!)
『皆、お前の帰りを待ってるからな!俺も楽しみにしてるよ。おい!アイン!勝負勝負ウルセェ!っと……すまん。そういうわけだ」
たしぎ(了解です!心の中なので100回は了解しておきましょう!アインは相変わらずですか…私と先生の会話を遮るなど万死に値します!強く…なっているのでしょね……なっていなければ)
『あ、そうそう……スモーカー"大佐"泣かすなよー』
カカカカカッ!ナツメの笑い声を最後に電伝虫の通話は切れた。
たしぎ「ふふふ…善処します」(暗黒微笑)
スモーカー「??誰からだ」
たしぎ「いえ、"本部"からでしたが…別支部宛への間違い電話でした」
ナツメが出した2年にも及ぶたしぎへの任務。
それは…
ルフィ達のグランドライン突入のサポートをする為に、"たしぎに海軍支部へ入隊して貰う"
という内容のものだ。たしぎは原作と同様ローグタウン管轄の海軍本部曹長に。
スモーカーの部下として2年間潜入する事も出来た。
今の今まで上手い具合に事は運べた。
2年間の間に、ナツメとたしぎは電伝虫でちょいちょいやり取りを交わした。
月に一度ナツメが直々に修行。【棗流】も仕込み始めたし、覇気の修行も勿論怠らなかった。
後は原作通りに"麦わらの一味"がローグタウンへ来てくれるかどうか……
ここは正直賭けだった。何せ、航海の要になるはずのナミがウチの一味に居るのだ。
変わりの航海士が居なければローグタウンへなど来れないだろう。
アーロンパークに寄ってない時間を上手い具合に航海士獲得期限として噛み合ってくれないだろうか
……なんて考えていたのだが。
ルフィはちゃんと航海士を仲間にしていた。ほんの数週間前に分かったことだ。
どうやらあの村で仲間になったらしい。
時期的にはアーロンパークの時間が丸々空く程の余裕。
そこに組み込まれたのが"彼女の未熟さ"だった。
ナミに比べると航海士の腕は、少し心許ない事が分かった。
恐らくナミとの腕前の差がアーロンパークに寄らなかった時間の余裕に上手く噛み合ったらしい。
そして殆どが原作通りの展開で進んで行く。
〜〜麦わら一味side〜〜
サンジ「ウソップ!テメェ先に戻って"カヤ"ちゃんの安否確認しとけ!この煙野郎は俺が相手する!」
ウソップ「わ、わかった!頼んだぞ」
ルフィ「サンジ!お前も先に行け!こいつは俺が相手する!!」
サンジ「ルフィ!?『早く行け!』チッ!マリモ!先に行ってる!」
ゾロ「な!剣筋がっ!全く見えなかった!!(こ、この女!会った時と動きが違いすぎるだろ!)」
たしぎ「女だと思って甘く見ましたね。ふふふ、まぁ"それ以前"の問題でしたが」
スモーカー「テメェが3000万だと?終わりだ麦わら。悪運尽きたな」
ルフィ「ゲホッ……!くそぉ!(何だこの棒、体に力が入らねぇ)」
麦わらの一味は絶体絶命のピンチに陥っていた。
サンジ、ウソップを逃すも…ルフィは呆気なくスモーカーに抑えられてしまう。
ゾロも昼間、街で出会った"彼女に瓜二つ"のドジな海兵にあっさり負けてしまった。
たしぎ(師匠は何故こんな奴らを……)
正直たしぎは腑に落ちない。
他ならぬナツメの頼みだったから、今回の作戦に二つ返事で了承はした。
だが…何よりも大切な師匠との時間を……2年間もこの一味の為に……
そう考えるとモヤモヤしてしまう。
合流したら師匠に聞いて見ましょうか…それより今は…
スモーカー(たしぎの今の動き……何だ?俺にも見えなかっただと……意味が分からねぇ、実力を隠していた?何故だ)
そして少し不機嫌になってしまったが、遂にたしぎは動き出した。
ゾロ「なっ!何のつもりだテメェ!!」
ルフィ「!!?あいつ海兵じゃ?」
たしぎ「貴方達の実力はよく分かったわ。行きなさい」
ゾロは何かをたしぎに耳打ちされると同時に文句を吐きながら逃げて行った。
スモーカーは目の前の光景が信じられなかった。人を見る目には自信があった。
コイツは…ノロマで抜けてはいるが芯はしっかり通っている女だ!
自分の支部に入った当初、"正義"を語るたしぎは嘘など言ってなかった筈!
そんなたしぎがよりによって、"剣士"を逃しただと!!?何の冗談だ!
スモーカー「たしぎ!!テメェ!!!どういうつもりだ!!納得いく様に説明しろ!!」
ギロリとガンを飛ばすも、今までの彼女はもう居ない。
一瞬だけニコッと微笑んだかと思うと、直ぐに見たことの無い表情に引き締まる。
コレは…"上に立っている奴"の顔だ。
たしぎ「長かった茶番も此処までです」
スモーカー「茶番だと!?テメェの正義は嘘だったのか!?」
雨が強くなってきましたね…たしぎはその言葉の続きに溜息を吐く。
ルフィは訳が分からないと言った感じだ。
たしぎ「海軍は嫌いですが……ふふ、その中でも貴方の"正義"は、まぁ…悪くは無いですね」
スモーカー「っ!!クソが!その感じ……テメェは始めから!!!」
たしぎ「当然ですよ。私には心を許す家族が居ますから……そして私がお慕いするのは……
世界にただ一人だけです!お世話になりましたね、"スモーカー"」
ドンッ
スモーカー(なっ!!これは覇王色の!!!)
気が付けばスモーカー愛用の十手は膾切りにされ、ルフィとたしぎの姿は何処にも無くなっていた。
ローグタウン〜〜某所〜〜
「すまねぇな。親父の見送り邪魔しちまってよ」
???「構わんさ。お前には世話になっている。それに……お前も"家族"の門出だったんだ」
「ははは!その通りだよ。悪ぃ、気ぃ使わせたな。あいつはウチの副船長だからな……くくく、いよいよだドラゴン!これから俺は世界に出る!」
ドラゴン「お前が……世界にどの様な影響を与えていくのか……楽しみにしてる。私と同じ名を持つ"龍の王"よ」
〜〜ドンッ!と成長の記録〜〜
たしぎ(19→21歳)副船長、戦闘員…《覇王色、武装色、見聞色の覇気
この2年間で一番頑張ったのは彼女だろう。
そして師匠愛、向上心によって、様々な才能を開花させていく。
部隊の指揮、戦闘時のセンス、覇気三種の練度、棗流の修得(現在20%)
どれを取っても人一倍努力し、途轍もなく強くなった。己の夢の為。
そして一番は師匠、ナツメの弟子として絶対に無様な姿は見せられない!
という、彼女の矜持から来るものだ。まだまだ成長段階。
これから彼女は副船長としてどう活躍していくのか!ゾロとの対決も気になる所。
・一言コメント
「コメントですか?(師匠師匠師匠〜〜!好きです!大好きです!)…特にありませんね」
・得意料理:家庭料理、お弁当系の箱に纏める料理
ナツメ(24→26歳)
・二つ名【銀龍帝】、【白金(シロガネ)の龍王】
ココ数話の超展開、今回の前編、後編……通してご覧下さった方々、如何でしたか?
感想、評価など頂けますと非常に嬉しいです!
所々で小ネタはすみませぬ。ノリです。
今の所書いていて特に楽しいのはアインとハンコックの絡みです。
次回からはたしぎも本格的に副船長として活躍します。
そして麦わらの一味の航海士はカヤでしたね!
次回、ルフィと遂に接触、たしぎが無双、海賊としてのオリ主に対する各地の反応。
主人公の海賊団の名前…結局決まらず少しカットです。
次回判明します。懸賞金もお楽しみに!
此処まで読んで頂きありがとうございます。
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第11話〜〜ありったけの〇〇をかき集め〜〜
今回から原作突入回です。
今回も8千字超えちゃいました。
新世界のヒロイン決定!活動報告にて!
しかし大人数の台詞回しが無茶苦茶難しい……
今後もっと練習して行きますのでどうか大目に見てあげて下さいませ。
では、お楽しみ頂けたらと!!
〜〜ゴーイングメリー号〜〜
ウソップ「はあ!はあっ!!か、カヤー!無事かぁ!って誰だお前!!!!」
雨の中、全力疾走でメリー号に戻って来たウソップ。
先ずはカヤの無事を確認するべく船室へと飛び込むも、
そこに居たのは、笑顔でカヤに紅茶を入れる金髪、金眼のメイドだった。
カヤ「あ、ウソップさん!無事だったんですね!良かった…」
リーシャ「……カヤさん此方の方は?」
兄様の情報に無かった人だ。カヤの反応を見るに、この方も恐らくは麦わらの一味でしょう。
一応確認を取ります。
ウソップ「俺はウソップ!この一味の副船長だ!(ドヤァ)ってやってる場合かっ!!お前が誰だよ!!」
リーシャ「騒がしい方ですね。リーシャとお呼び下さい。"海賊団ウロボロス"の医者、兼メイドです(副船長が真っ先に帰って来るとは…)」
ウソップ「う、ウロボロス?聞かねぇ名前だな。な、何で余所の海賊がうちの船に…」
カヤ「…それよりもウソップさん、他の方々は?」
そ、そうだった!と、今の状況を伝える。海軍に襲われ、他の3人は戦闘中。
留守番しているカヤの無事を確認しに、先に戻って来た。との事だった。
直ぐにカヤへ船を出す準備をお願いするウソップ。そこにリーシャの待ったが入る。
リーシャ「もう直ぐ、私達の船が此方に到着します。貴方達の一味が戻り、この船を収容次第、直ぐにグランドラインへ入ります」
サンジ「カヤちゅわぁぁあん!無事かぁーい!?って!うぉ!何故こんな所に天使が!!?」
ウソップ「さ、サンジ!あいつは倒したのか!?ルフィとゾロは!?」
サンジも戻り、状況の照らし合わせをしていると…ガガガガガガ!ガコン!
船が急に振動を始め何かに乗り上げた様な衝撃が。
『来ましたね』リーシャの声に、直ぐに甲板に出て確認するサンジ達。
何と、メリー号が巨大な船の船内に収容されていた。
リーシャ以外の三人は驚愕の表情を浮かべ、カヤは言葉も出ず唖然としている。
サンジ「な!何だってんだ!おいウソップ!説明しろ!」
ウソップ「わ、わかんねぇよ!リーシャとか言ったか!?こりゃどういう事だ!!」
リーシャ「先程説明した通りですよ?お兄様がお待ちです。皆様私に着いて来て下さい」
ウソップ、サンジも…こんなデカイ海賊船に狙われる様な事したか?訳が分からん。
といった様子だ。
取り敢えず3人は彼女について行くしかなかった。
そして客室に通された3人が見たものは……
サンジ「こ、ここが天国……か…」
噴水の様な放物線を描くサンジの鼻血。
たしぎ「師匠〜!師匠師匠〜会いたかったですよぉ!!!」
先程、ゾロと戦闘していた筈の美人海兵が、銀髪の男にグリグリ抱き付いている光景。
アイン「たしぎ!今はそんな場合じゃ無いでしょ?先生から離れなさい!そして刀を抜きなさい!!私と勝負です!!!」
その海兵の女性の腰を引っ張り、青髪の美女が突っかかっている光景。
ビビ「沢山作ったから遠慮しないでどんどん食べて下さいね♪ロビンさんも紅茶のお代わり如何ですか?」
ロビン「ふふ、ありがとう。次はコーヒーを頂けるかしら」
端の方で本を読む黒髪の美人お姉さんと、水色髪の美少女がテーブルに料理を運ぶ光景。
ナミ「ナツメ!船の回収は完了よ!嵐が激しくなってる!そろそろ出港しないと」
タオルを肩に掛けながらオレンジ髪の美人が入室して来る。そして……
ルフィ「うんメェーー!!これお前が作ったのか!?スッゲェうんメェぞ!!!」
「噂には聞いてたが、いい食いっぷりだな!!ウチのクルーは皆んな料理出来んだぞ?」
にししし!とナツメと呑気に談笑しながら爆食いをかますルフィの姿。……って!!!
サンジ・ウソップ「「飯食ってる場合かぁぁぁ!!!!」」
ロビン「あら。お帰りなさいリーシャ。ご苦労様」
リーシャ「ただいまです♪たしぎもお帰りなさい!久し振りだね!」
たしぎ「リーシャ!久しぶりです!立派になりましたね!見違えるようです!」
この時リーシャはたしぎの再会を喜んだ後、ナツメに耳打ちする。
リーシャ『カヤさん、一通り診察しました。特に病気などは…唯、精神的な負荷が身体に影響を与えていたみたいです。無茶をしなければ時間が解決してくれるかと…』
ナツメはその報告に『そうか。ご苦労さん』と耳打ちで返した。
カヤ「……ゾ、ゾロさんの姿が見えませんが…」
確かに。ウソップ、サンジは部屋を見渡すもゾロの姿が見えない。
「ん?たしぎ、お前より先に逃げたんじゃなかったのか??」
たしぎ「そうでした。師匠、今ハンコックが甲板で待機中ですので、そろそろ『ガチャ』あ、戻って来ましたね」
麦わら一味「「ゾロ(さん)!!!」」
サンジ「んなっ!何てお美しい!天女が舞い降りた…ココはやはり天国……」
ドアが開くと同時に客室へ、ドサッと投げ捨てられた男。麦わらの一味のゾロだ。
そして続いて入って来たハンコックだったが、何故か青筋を浮かべている。
どうやら、目の前で跪くサンジも目に入っていない様子。
ハンコック「たしぎ!!そなた此奴に正しい道順を教えたのか!!?」
たしぎ「え?ちゃんとこの場所を教えましたよ?道順を書いた地図も一緒に」
どうやら見聞色で探っていた所、ゾロは真逆を全力疾走していたらしい。
その後、此方に引き返したと思えば街の中をグルグルと無駄に走り回り…
痺れを切らしたハンコックが直接捉えに行ったのだとか。
何故わらわが迷子のお守りなぞ!と、大変不機嫌だ。
(あー、そう言えばゾロって極度の方向音痴だったな。忘れてた)
ゾロ「チッ!別に1人でも来れたんだよ!それよりも…ルフィ!!どういうこった!?此奴ら誰なんだ!」
「あー、俺が説明するよ。そう警戒すんなって。あ、ナミ、出港だ。船出してくれ」
了解、船長♪ナミは一旦部屋を後にした。
リーシャが紅茶を入れ、麦わらの一味を座らせると、
ナツメは今回の作戦について、所々かいつまんだ説明を始める。
サンジだけは心ここにあらずだったが…
「まず初めに。今回お前らを助けた理由。ルフィ、お前の兄貴に頼まれたからだ」
ルフィ「!!?お前エースを知ってんのか!?」
「ああ、友達だよ。ちなみに爺さんも顔見知りだぞ?エースとは一年半くらい前ちょっとな」
そう、この日の為に、ナツメは赤髪、白ひげの四皇に単騎で接触していた。
白ひげとの接触時、エースと友達になりルフィの事をガープ経由で知っている。
と話す。そして話が弾みエースと友人関係に持って行ったのだ。
個人的にナツメが友になりたかった事も勿論理由の一つだが、今この時麦わらの一味を助けた理由の説明として、船長であるルフィを納得させる為でもあった。
「俺は"海賊団ウロボロス"の船長やってるナツメだ。お前らを救出してくれたのはウチの副船長。たしぎだ。彼女には特に頑張ってもらった。何せこの時の為だけに2年間も海軍に潜入してたんだ。ちゃんと礼言っとけよ?」
その言葉にたしぎは少し難しい顔をする。
だがルフィ達は実際あの場でたしぎが居なければ海軍に捕まっていただろう。
たしぎの"2年間の任務"に驚愕しながらも各々が礼を言う。
だがゾロは気になっていた。いや、ウソップもカヤもだ。
因みにルフィはまだ飯に夢中だ。
ウソップ「ち、ちょっと待ってくれ!確かに助けてもらった事には感謝する!でもおかしくねぇか?今の言葉だと…」
ゾロ「ああ。何でお前は2年も前から今日の事を知っていた……」
ナツメは龍眼を発動させ、その能力で未来を観れる事を説明した。
勿論虚実も混ぜながら。
不思議な力にはルフィで耐性を持っていた筈の麦わら一味。皆がその言葉に驚愕した。
そして続けて驚愕の未来を伝える。
「お前達はこれからグランドラインに入る予定だろ?ルフィ、一味の航海士は…」
ルフィ「ん?あぁ!カヤだぞ」
「カヤ。お前はグランドラインへの知識持ってんのか?」
その言葉にカヤは少し詰まるが、ほ、本で見た知識程度しか…と続けた。
「お前達が此処で別れ、今の知識のままで進んだらどうなるか教えてやる。グランドラインってのは"リヴァースマウンテン"って所から入るんだが、其処は激流が昇るように流れてる。其処に突入する際、あの船…メリー号だったか?それ毎バラバラになって御陀仏。それがお前達の未来だ」
麦わら一味「「!!!」」
「カヤ、航海士ってのは船の命だ。今の半端な知識じゃお前にクルーの命を預かる資格はねぇ」
サンジ「テメェ!言い過ぎだ「吠えるな」!!」
「ルフィ、俺は…お前の兄貴に『弟を頼む』って頼まれた。俺は友達との約束は大事にしたい。見えちまった以上は死んでくのをミスミス見逃せる性格じゃねぇんだよ。だから1ヶ月だ。グランドラインへは、一先ず俺が連れてってやる。その後1ヶ月でせめてマトモに航海出来る様になれ!…カヤ、お前はウチの航海士のナミに航海術を教えて貰え」
カヤはナツメの言葉を重く受け止めた。そして、それはナツメも同じ心境だった。
ナミとの可能性を奪ってしまった罪悪感。本来は此処までする予定ではなかったが、
そこまで切羽詰まった予定など無い。アーロンとの戦闘経験値も得られていない。
元々体調が悪いカヤ。彼女1人が負担を負う様な状況だと一味は容易に崩壊してしまう。
この1ヶ月はルフィが了承した場合は受け入れる。と皆んなには事前に了承を取っていた。
此処でルフィが了承すれば良し。しなければ此処でお別れだ。
元々の計画は既に完了している。此処からはナツメのただの善意なのだから。
ルフィ「…カヤ。お前はどうしたい」
カヤ「わ、私…勉強したいです!ナツメさんの言う通りだと思います…私は命を預かる航海士です!ウソップさんと…皆んなと冒険したいって海に出ました!けど覚悟も知識も足りなかった!ナツメさん!お願いします。力を貸してください!!」
ウソップ「カヤ……よーしっ!俺も応援するぞっ!!」
ルフィ「にしししっ!そっか!分かった!1ヶ月だな!!お前らもいいな!?」
サンジ「そんな健気なカヤちゃんも素敵だぁぁあ」
ゾロ「船長命令だ。仕方ねぇ。ナツメ。世話になる」
ルフィ「ところでよ!この船の名前何て言うんだ!?」
「ああ、こいつの名前は【エターナル・バンズ・オブ・ドラゴン】"永遠の龍の絆"って意味だな。まぁ長いから復命の【ドラゴン・ゲート】って呼んでる」
ロビン(……ダークカイザー丸が良かったわ)
7億の船に厨二病全開の船名を付けたナツメであった。
リーシャ「話も纏まりましたね♪お兄様、皆さんをお部屋へ案内します」
「その前に…!お前ら!!自己紹介やっとくぞ!ルフィ!ぶっちゃけ俺たちが海賊団始めたの四日前なんだわ!海賊に関してだけはお前らのが先輩だ!カカカッ」
麦わら一味「「はぁぁぁあ!?」」
ルフィ「よ、四日前ぇぇぇえ!?何でこんなスッゲェぇえ船持ってんだ!?」
サンジ「こ、この天使達を四日で集めたってのか……ナニモンだよ」
ウソップ「か、金持ちのお坊ちゃんとかか!?」
ゾロ「アホか!んな訳ねぇだろ!!(こいつらの一味…全員ただモンじゃねぇ。特に船長。ナツメの野郎は桁違いだな……鷹の目に似た気配がしやがる…)」
カヤ「な、ナツメさん…あなた達……一体何者なんですか?」
するとたしぎが無言で麦わらの一味の元へ歩み……ピラっと1枚の手配書を見せ付けた。
そして自慢げにサムズアップする。
それ以外の一味の面々も、各々船長の手配書に思う所があるのか自慢げな表情だ。
たしぎ「ふふふ。これが私達の船長です」(暗黒微笑)
鋭い眼光に、悪そうな笑みを浮かべるナツメの写真が載っていた。
そして手配書には………
wanted【白金の龍王】ミカグラ・ナツメ〜賞金額 7億ベリー〜
ウソップ「ぶぶっーーーーーーっ!!!」
全員「「な!7億ベリーぃぃぃぃいいい!!!??」」
カヤ「わ、私この手配書見たことがありますっ!!し、【白金/シロガネの龍王】…まさか…貴方が……」
ルフィ「スッゲェーーぇえ!!」
ゾロ「何やらかしゃこんなふざけた額に何だよ!」
ウソップ「あばばばば……く、クリークの何倍だよぉ…」
サンジ「自慢げなたしぎちゃんもステキだぁぁぁぁ」
たしぎ・アイン「「ふふふ、これでも低い位です。師匠(先生)は世界最強ですから」」
こんな時だけシンクロ率100%でハモる二人に…
ハンコック「ふんっ!わらわの夫になる男じゃぞ。当然じゃな」
『はぁ!?(ピクピクッ)』
ナツメとナミ(操縦中)
それにリーシャ以外の"ウロボロス一味"全員がハンコックの言葉に青筋を立てる。
そして数秒後、お馴染みの喧嘩が始まった。
今回はたしぎも加わりハンコックとアイン含む三名が特に酷い。
3人は"ナツメポジ"を右.左.背後の三方向から取り合う。
ナツメはもう慣れたのか、無表情でリーシャを膝に置いてこれからの事を考えていた。
此処までされて、ナツメ本人に自覚が無い事に、リーシャは心の中である決意をする。
リーシャ(これは…いけませんね。明日、いえ、今晩にでも"ルール"を作りましょう)
「うーん思ったより遅いな…何チンタラしてやがんだ?そろそろ蒔いたタネが……」
ウソップ「な、何で此処まで揉みくちゃされてこんなに落ち着いてんだよ!!?」
ルフィ「なはははは!こいつらおんもしれぇなぁー!!」
サンジ「ぐぅっ!テメェぇぇぇえ!!何て羨ましいんだっ!!!」
グワングワン揺らされながらも平常心で考え事を続けるナツメ。
サンジが羨ましさにガチ涙を流し…
ゾロはたしぎを見て何処か複雑な表情を浮かべている。
ルフィは飯に夢中になりながらも、その光景に笑っており
ウソップは(ま、まさかカヤまで)と、カヤをチラチラ見ていた。
そして……部屋のドアが勢い良く開く。
ナミ「ナツメ!!リヴァースマウンテンの直ぐそこまで来たんだけどっ!緊急事態よ!!皆も外に来て!!早くっ!」
青ざめた顔でナミが勢いよく部屋に入ってくる。
「クククッ、やっと来やがったか。随分遅かったな」
この事を予感していたのかナツメは立ち上がり表へ出て行った。
先程迄の嵐は嘘の様に止み、青空がどこまでも広がっていた。
そして皆も続くが……外の光景に……
ナツメ以外の全員が驚愕の表情を貼り付けた。
イーストブルー〜〜リヴァース・マウンテン海峡〜〜
キーィィィィン……拡張器に電源を入れたのだろう。
マイクの不協和音の様な不快な音と共に、あの男の怒号が海に響き渡った。
サカズキ『此処が落とし所じゃァ!白銀帝ェ!大人しく要求を飲まんかァ!!!』
ここは最弱の海"イーストブルー"。
そこには、普段であれば決してあり得る筈のない光景が広がっていた。
"海軍本部"からの軍艦。その数何と20隻![バスターコール]の四倍の軍事力。
グランドラインですら無い最弱の海に、この戦力投入は普通では無い。
そう。今回の事態。対象の海賊は普通では無いのだ。
一隻一隻にはそれぞれ少将以上の指揮官が乗っており、対象に対する警戒心の高さを物語っていた。
正に、海軍による本気の出撃作戦。一斉に軍艦の砲筒が対象に向けられる。
軍艦は大将サカズキの指揮により、目標船を中心に円を取り囲む様に陣形を展開させていた。
この状況での砲撃を受ければ…たった一隻の海賊船など海の藻屑になる。
サカズキ(元々、オンドレが大人しゅう要求を呑むなんぞ思うとらん!儂はハナっから貴様を潰す為にこんな所まで来たんじゃけェのォ!)
大将サカズキは…青筋を浮かべながら我慢の限界に来ていた。
もう待てん!交渉は決裂じゃァ!全艦砲撃せェ!と怒号を飛ばす。だが
ガープ「待たんかぃ。未だ返事を聞いとらん。海賊になった以上"七武海として手中に収める"コレが上の決定じゃ。同時に七武海を抜けて奴の一味に入った"海賊女帝"の穴埋めにもなる…」
サカズキ「白銀帝!奴は此処で殺すべきじゃろォが!…五老星は何も凝りとらん様じゃのォ!!」
〜〜回想〜〜(ナツメ。アラバスタ出港の四日前)
海兵「せ、センゴク元帥!元帥宛に連絡が!大変ですよっ!!」
慌てた様子で部屋に入って来た海兵。手には受話器が上がった電伝虫を持っている。
センゴク「何だ?直接私にか?誰からだ」
海兵「そ、それが……教官…いえ、白銀帝から元帥に変われと……」
センゴク「何だと!?《ガチャ》…ナツメかぁ!!貴様ぁ!好き勝手しおって!」
『うるさっ!何だよ…いきなり怒鳴るなっての。あの件は放置したお前らにも非があるだろ?何が"世界政府加盟国"だ。まぁ…んな事今はどうでもいい。それよりセンゴクに朗報だ』
胃薬の用意はいいか?と笑いながら続けるナツメ。
『時が来た。ずっと準備してたんだ。四日後の事だ………実は僕。海賊デビューします』
センゴク「な!何だとぉぉぉお!おい!ふざけるな!正気か!!何処が朗報だ!」
奴があの"天竜人殺害事件"を起こしてからの2年間。
・将来有望だった将校アインの辞表。
・七武海。サー・クロコダイルの敗北。
・アラバスタ王国の大事件。
・白ひげ、赤髪との接触。
・アインと思わしき人物と…名だたる海賊団を幾つも壊滅。
胃が痛くなる様な事件を、立て続けに報告で聴かされていたセンゴク。
海兵に、ちゃっかり《胃薬を持って来い》のジェスチャーをしながら怒鳴る。
流石は元帥。器用な男だ。そしてトドメとばかりに白銀帝の海賊団結成宣言。
という事は、いよいよ本格的に【怪物】が海軍の敵になるという事を意味する。
『あ、後"海賊女帝"七武海辞めるってよ。まぁずっと前から家の一味だったんだけどね』
センゴク「は!?(そ、そう言えば…あの女が召集に応じる様になったのは奴が教官になってからだ……此処2年は全くと言っていい程…そ、そういう事だったのか!)き、貴様!あの時からコレを計画していたな!?」
『そういう事だ。アインも元気でやってるよ。ちなみに[女ヶ島]は既に俺の縄張りだ。手出したら……分かってんだろ?んで此処からが朗報。四日後、旗上げと同時にローグタウンでヒト暴れする。カカカッ!暇だったら来いよー。遊んでやるから《ガチャ》」
言いたい事だけ言って通話を切るナツメ。
センゴク「な、なめ腐りおって!!ガープを呼べ!直ぐに各地に散ってる少将以上を招集!直ちに部隊を編成させろ!」
〜〜回想終了〜〜
ドラゴン・ゲート号〜〜甲板〜〜
ロビン「ふふふ。相変わらず無茶するわね」
ナミ「な、な、な………」
「カカカカカッ!軍艦20隻に本部の上級将校。センゴクも本気だなぁ。大将赤犬が出て来たかぁ。流石にボコボコマグマと砲撃全部食らったら船もお釈迦だなこりゃ♪そう言うわけだから…戦闘開始ぃ!!!」
ナミ「アホかぁぁぁあ!!何てことしてんのよ!!あんたが何とかしなさいよね!!?」
ハンコック「な、ナツメ…わ、わらわの為に…そ、そこまで……///」
たしぎ・アイン「「むぅー」」
ルフィ「スッゲェぇえ!!!」
サンジ「ま、マジかよっ!…クソヤベェぞ!!!」
ゾロ「成る程。あの野郎完全にイカレてんな……」
リーシャ「お兄様はイカれてません!あ、怪我したら私が治してあげますから♪」
余りの光景にウソップ、カヤは"あわわわわ"と震えている。
「クククッ。わーってるよ、今回はこの船の《とっておき》を試したくてなー!残念ながらお前らの出番は……無い!ビビ!ウソップ!それぞれ右側左側の"龍頭"を45度にセットしろ!」
ビビ「り、了解ですっ!!ウソップさん!行きますよっ!!」
ウソップ「は!?な、何だよ急に!お、俺!?「急げぇ!間に合わなくなっても知らんぞぉ!!」ひっ!はいぃぃー!!」
ナミ「ちょっとぉ!ナツメ!?何する気なの!?」
「はははっ!まぁ見てろよ!前に言ったろ!あれは普通の大砲としても使えるが、本来は俺専用の秘密兵器なのよ。上手い具合に360度囲まれてっからなぁ。試し打ちには最適です」(暗黒微笑)
ルフィ「お前スッゲェ悪い顔してるぞ?」
この時ウロボロスの一味、皆んなが同じ事を思った。
あぁ……ナツメがこの顔をしてる…ロクなことにならないな。と。
伊達に2年間彼に付き合って来たわけでは無いのだ。
ドドンッ!!とwanted!!!
【ウロボロス海賊団】
海賊船名:エターナル・バンズ・オブ・ドラゴン号
復命(普段表記):ドラゴン・ゲート号
船長・【白金の龍王】ミカグラ・ナツメ
賞金額・7億ベリー
海賊名アドバイスありがとうございます!
名前って本当に難しいですよね。
厨二風にするのにかなり悩みました。
二つ名が漢字なので海賊名、海賊船名はカタカナにしました。
賞金額に関しましては、天竜人殺し、マリージョア半壊、四皇と接触、政府上層部がナツメの実力を認知。
この理由により初回から凄い額になりました。
次回もう少し跳ね上がります。
たしぎの無双は次回になります。申し訳ありません。
ちなみにハンコックは見聞色使える設定です。
次回の更新は仕事が激化する為、少し間が空きます。
次回「とっておきダァ」
此処まで読んで頂きありがとうございます。
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第12話〜〜八龍の咆哮〜〜
ハァハァ……お待たせしました
沢山の高評価を頂いてしまい、これは何とかして書かねば!
と、奮闘した次第でございます。
皆様本当にありがとうございます!
今回の話は後々手直し入るかもです。
今の思考回路ではこれが限界でした。
情けないですが、楽しんで頂けたらと!
〜〜リヴァース・マウンテン海峡〜〜
「よぉ、ガープにサカズキ。久しぶりだな。歓迎会まで開いてくれるたぁー感動もんだな」
ガープ「ぶぁっはっは!!こんな大ごとにしおって!!…その姿…敵対と見做してええんじゃな?」
「大事にしたのはセンゴクだろうよ。話聞いてんだろ?」
サカズキ「始めから分かっちょった事じゃろぉが…覚悟せェよ。白銀帝ェ…」
現状ドラゴン・ゲート号を中心とし、円形にナツメ達を包囲する20隻の軍艦。
海賊船と軍艦との距離は1キロ間隔で保たれている。
だが、現在その軍艦全てがピクリとも動く事を許さない状況が出来上がっていた。
この2人以外の海兵は皆凍えているようだ。
〜〜数分前〜〜ドラゴン・ゲート
ビビ「ナ、ナツメさん!龍頭のセット終わりました!」
ウソップ「はぁっ!はぁ!コッチも終わったぞーっ!!」
「おお。ありがとさん…さて、このまま終わらすのは簡単だが…一言くらい挨拶しに行くか!」
そう言うのと同時だった。ゴァッ!!ナツメを中心に吹き荒れる暴風。
周りの海面ごと船を振動させると共に、その姿は見る見る変貌していく。
銀色だった髪は白く、白く白く変色していく。
そして、美しかった肌は余すところ無く黒く染まる。
幾何学模様が顔面を走り、ゆっくりと瞼を開く。
その双眸は真紅。瞳孔は縦に割れていた。
海王類が"キレた"時に見せる瞳に似ている。
[【凄王/スサノオ】の覚醒]
たしぎ「し、師匠のあの姿は…久しぶりに見ましたね…」
アイン「いつ見ても凄まじいです!」
たしぎ・アイン「「はぁ……カッコいい……///」」
ナツメの変化を初めて見る麦わらの一味。
ウソップはその威圧感にやられ、失神していたが、その他の面々が思っていた事。
"アレ"が本当にナツメだと言うのか!?
先程までの姿からの余りの変貌ぶりに、同一人物とはとても思えない。
ルフィ「す、すげぇ……」
サンジ(マジかよ此奴……本当に人間なのか?…)
カヤ「…白金……」
「さて、途中で逃げられちゃツマらんからな…先ずは……」
取り囲む軍艦を一回り見回す。
やはり俺が訓練した海兵が殆どか。何だぁ?まーだビビってんのか?
両手を空に翳すナツメ。
「アイスサークル"龍大輪"!!」
ナツメは水龍で20メートル程の龍を創り出す。その数40頭。
一つの軍艦に二頭を宛行い、左右から船体に絡ませる。
そして、取り囲む軍艦全てを龍ごとヒエヒエの能力で凍らせてしまった。
上空から見れば正に巨大な氷の輪。軍艦に巻き付く龍の氷彫刻が出来上がった。
リーシャ「…綺麗……」
そしてナツメは船体から外に向かって歩き出した。
その脚が空中を踏むと同時に、海水が立ち上がり巨大な氷の道が出来ていく。
「クククッ!王ってのは自ら道を創り(物理)堂々と歩む。そうだろ?ビビ」
ビビ「あっハイ」
カヤ「……こ、これが…"白金の龍王"………」
ハンコック「ふふっ。そうじゃ…流石は妾の夫。ナツメはそうで無くてはな///」
たしぎ・アイン「「ハンコック。後で話があります」」
リーシャ「はぁ…………」
道は一隻の軍艦に向かってナツメの歩みと共に伸びて行く。
ロビン「うふふ、海兵さん達、寒そうね…酷いことするわ」
ゾロ「チッ!何て馬鹿げた力だ!グランドラインにゃこんなバケモンがうじゃうじゃ居やがんのか!?」
ナミ「バーカ…こんなのがウジャウジャいてたまるもんですか。悪魔の実の能力者でもこれ程の規模は不可能だわ…ナツメの力が特別なのよ」
龍王の凱旋を終え、ナツメの眼前に立つ2人の男。
久し振りに【怪物】の姿を目視した2人に以前の様な焦った表情は見えない。
"大将"そして"英雄"に相応しい堂々としたものだった。
此処から話は冒頭へと戻る。
「これで晴れて俺も海賊になったワケだ。これからは時代が大きく動く。お前の孫を含めてな。ガープ。ルフィは必ず上がってくる」
ガープ「ぶはははっ!ナツメ!ルフィに会ったのかっ!!まぁお前を含めてワシが捕まえてやるがのお!そしてルフィは海兵にするんじゃ!!」
「カカカッ!まだ諦めてなかったのかよ!残念だが、もう手遅れだなー」
2人して笑っていると、其処へマグマの塊が飛んできた。
だがナツメの氷塊によって相殺される。
水蒸気が晴れると、其処には憤怒の表情と共に文字通りボコボコと煮え滾る男。
サカズキ「手遅れなんは貴様じゃァ!儂は捕まえる気は無い!!ココで殺しちゃる!"大噴火"!!!」
サカズキの怒号と共に、マグマの塊が打ち上げられた。
それらは空からナツメの周囲を破壊し尽くしていく。
氷の道を破壊されながらも瞬時に船に後退する。
「ふーおっかねぇ。同窓会も済んだし、そろそろグランドラインへ行きますか!ナミ!いつでも動ける準備!お前らはみんな中央に集まってろ。巻き添え食うぞ!」
そしてドラゴン・ゲートの船首"黒龍"頭部に埋め込まれた黒い金属塊の上に立つナツメ。
赤龍の氣を解放し、膨大な量の雷を全身に纏わせた。
ゴォォォォォォォォォォオオオ
咆哮の様な音と共に8匹の龍頭、その口内が急激に雷熱と光を帯び…真っ赤に変わる。
ナミ「それが"とっておき"って奴?ずっと気になってたけど……何するつもりなのよ」
「クククククッ!!ナミは"REーRUGANN"って知ってるか?」
勿論知っているわけがない。
この世界にそんな化学兵器などあるはずが無いのだから。
(最近どうにも力の加減が出来なくなってきている。この世界で人間として寿命を全うする為にも…この力の制御はずっと自分に課してきた課題だった。最近の兆候は…"あの時"と同じ感覚に近い。家族ができた以上、星を破壊するなんて絶対に避けたいからな)
そう。ナツメがこの"とっておき"を船に組み込んだのには理由があった。
次第に暴走を匂わせてくる自身の力。
前回はそのコントロールが効かず、最後はヘラに殺されてしまったのだ。
また同じヘマをしない様に投じた対策がこの龍頭咆哮。
威力を八方向に分散、制御を練習する為のものである。
「出力は30%に抑える。別に殺すつもりは無いからな。下手に動かれない様にわざわざ固定までしたんだからよぉ。安心して喰らってくれ」(暗黒微笑)
あ、また悪い顔してる……
皆が心を一つにした瞬間、八龍の咆哮と言う名の超電磁砲が海に響き渡った。
「俺がウロボロス海賊団船長!ミカグラ・ナツメだぁぁあ!!ロード・オブ・ジェノサイド!!」
瞼をしかめる程に眩しい雷龍の咆哮。その軌道上の海水は瞬時に蒸発していく。
八方向に放たれた超電磁砲は、無情に軍艦を飲み込んでいった。
その名の通り、正に"滅びの道"が出来上がっていた。
「はっはっは!想像以上だなー!!うん!余りの威力にナツメはナツメは感動してみたり?」
ドヤ顔を決めるナツメ。各々の反応が気になる所だが……
ナミ「アホかぁぁぁああ!!何っちゅうもん造ってんのよ!!」
ルフィ・ウソップ「「スッゲぇぇぇえええ!ビームだぁぁぁああ!」」
サンジ「おいマリモ…俺ァ夢でも見てんのか?クリークがえらく可愛く見えてきたんだが」
ゾロ「同感だクソコック。今こんなバケモンと敵対でもしたら…」
サンジ・ゾロ「「ウチの一味は一瞬で崩壊だ……」」
いつの間にか目を覚ましたウソップ。ルフィと2人で興奮しっぱなしだ。
ナミはナツメにゲンコツのツッコミをかます。
ナツメは凄王を解除しナミに船を出す指示を飛ばす。
ルフィ「カヤ!メリー号にもあのビーム付けよう!!」
カヤ「えぇ…!?で…でも……アレは彼の能力有ってこそじゃ……」
「流石ルフィ!よく分かってんなぁ!ビームは男のロマン!だろ?」
リーシャ「……"野郎共"にしか理解出来ない感性です…」
ナミ「アンタ達っ!リヴァース・マウンテンに突入するわよっ!!何処かに捕まってなさい!」
「海軍は…流石に追っては来ないか…だが念の為だ…アイスキャニオン!」
入り口に船が入ると同時に、ナツメは巨大な氷壁を創り出す。
レッドラインに剃る様に出来た氷の峡谷。
それによって、リヴァースマウンテンの入り口は完全に塞がれてしまった。
その後、皆が客室に戻り無事にグランドラインへと突入した。
今回通った道は、二本ある入り口の大型船用に開けたルートだ。
グランドラインに入ると手頃な島を見つけ、其処にドラゴンゲートを停泊させた。
ウソップ「よ、良かった…外傷は見当たらねぇ…」
メリー号もその船体を現し、ナツメの船の側に停泊させた。
そしてドラゴンゲート号客室に一同は集まっていた。
麦わらの一味はこれから1ヶ月間、各々のが最低限この海を渡れる様に修行をする事になる。
そのチーム分けをする為だ。
無論、カヤはナミと。ウソップもそれに付き合う。
サンジはハンコックとリーシャから、体調管理に優れた料理などを学ぶ。
ルフィはアインを特別講師に戦闘力を上げるために組手だ。
ビビとロビンは食事を担当。
たしぎ「すみません師匠…」
「どうしたんだ?こんな所に呼び出して」
今後の方針も決まり、各々が暫しの休息に入ったのだが…
たしぎは今回の事でナツメの真意がどうしても知りたかった。
彼女のこんな表情は初めて見るな……
たしぎ「何故!何故ですか!?何故…麦わらの一味に其処まで……」
「ああ、その事か…お前は……あの一味失望したんだろ?何故この程度の奴等のために2年間も!って所か?」
たしぎ「……はい…いくら師匠が大切にしている友人との約束とはいえ…」
「そうか…いいだろう。2年も頑張ってくれたんだ。お前には話そう。知る権利があるからな…たしぎ、お前"革命家ドラゴン"は知ってるよな?」
そして、その日の夜〜〜
たしぎ「ロロノア。もう一度貴方の力を私に見せなさい」
ゾロは…たしぎに呼び出されていた。
ゾロ「俺ァあの時…確かに油断していた。だが船長に、ルフィに誓ったんだ。俺はもう2度と負けねぇ…」
鷹の目に斬られた傷は、ナツメの龍掌によって完治している。
傷跡は本人の希望により残してはいるが…
さっきとは違う!と黒いバンダナを頭に巻き気合いを入れるゾロ。
たしぎ「成る程。覚悟は一人前の様ですね。ですが…その覚悟は私も同じ事。貴方は本気の覚悟を持った相手と、戦った事がありますか?」
ゾロは治療中ナツメに言われた事を思い出していた。
『あいつは強ぇぞ?誰よりも努力して、誰よりも貪欲に強さを求めてきた。たしぎの夢、覚悟は生半可なモンじゃねぇ。…あいつの夢に喰われるなよ』
一度戦った相手だ。剣士の腕は自分より遥か先にいる。そんな事は分かっている。
だが覚悟で負ける訳にはいかねぇ。夢は世界最強の剣士。
それを目指す以上、目の前のこいつも絶対に超えなきゃならねえ相手だ。
これ以上は剣で語る。合図も無く自然と斬り合いは始まっていた。
たしぎ「太刀筋は悪く無い。悪くは無いのですが…貴方の剣技(仮)はお粗末すぎますね…」
ゾロ「あ?(仮)だと!?どーいう意味だコラ!」
たしぎ「どういう意味も何も…剣技と呼ぶには幼過ぎるから(仮)なのです。(笑)じゃ無かっただけ有難く思いなさい」
ゾロ(クソが!……全く絣もしねぇだと!!)
たしぎ「はぁ……ほら隙だらけです。脚運び!もっと爪先を意識しなさい!頭で考えている思考に身体が置いていかれています。剛の剣によくある兆候ですね」
何をどう放っても全く彼女に掠りもしない。
途中からたしぎは"時雨"を抜くことも辞め、先程から木の枝でゾロの剣撃を受け流していた。相手の得物は刃物ですらないのだ。ゾロのプライドはボロボロだったが……
たしぎ「奥義を打つ時に必ず決めてやるという意識だけは素晴らしいです。ですが…相手をよく見なさい。放った後、私が倒れていますか?背中を向けたまま死にたいのですか」
ゾロの瞳は微塵も諦めた様子が無い。
どんな状況でも真っ直ぐ向き合うゾロの覚悟を見たたしぎは的確なアドバイスを続ける。
ナツメに出会った時の自分の姿を重ねながら。
「くくくっ!随分容赦なかったな。それで……満足したか?」
たしぎ「ええ。彼は強くなりますよ。その時が楽しみです」
〜カヤside〜
カヤ「天候…ですか?」
ナミ「ええ。グランドラインの航海を教える前に、先ずカヤには天候の読み方から覚えてもらうわ。でもその前に……」
ウソップ「イッテェぇぇぇえ!何すんだナミ!テメェ!!」
ナミ「アンタさっきからうっさいのよっ!!集中できないでしょ!!外で遊んできなさい!」
俺はガキかっ!!!ツッコミもそこそこに、カヤの真剣な表情を見て黙るウソップ。
ナミ「ったく……いい?その後は潮流の読み方を教えるわ。その応用が終わったら"ログポース"の使い方。1ヶ月で覚えるなんて大変だけど…航海士なんでしょ?スパルタで行くから覚悟しなさいよね!」
カヤ「はい!!1ヶ月でモノにして見せますっ!よろしくお願いします!」
ウソップ「………………………………………………」
ナミ「だから!あんたは気が散るから出て行きなさいって言ってんでしょ!!!」
ウソップ「なな何で殴んだよっ!!声出してねぇだろ!!!」
カヤ「ウソップさん……その…応援してくれるのは嬉しいけど……動きが五月蝿いです……」
サンジside〜
ハンコック「此奴!真面目に話を聞く気があるのか!?」
リーシャ「……サンジさん…料理の腕は私達よりも遥かに御上手なのですから……真面目にやって下さい!!私にはお兄様のお世話をする大役があるんですから!!」
サンジ「ち、ちがうんだ!マイエンジェル!!余りの眩しさにっ!くぅ」
顔がにやけ、鼻血が止まらないサンジ。
リーシャ「サンジさんの反応を見るに…ハンコック、貴女の服装に問題があるのでは?私の造ったこの服に着替えてきて下さい」
ハンコック「な!わらわのせいじゃと申すのか!?ええい!その不快な顔をやめんか!!」
リーシャ「はぁ……前途多難です。お兄様」
ルフィside〜
「おー、やってるやってる」
アイン「先生!……ルフィ、休憩しましょう。先生、お茶を入れてきますね」
ルフィ「ゼェ!ゼェッ!!あいつとんでも無く強ぇぇぞぉ!!!」
「カカカッ!そりゃ俺が鍛えたんだ!当たり前だろ。ウチの特攻隊長様だからなー」
ルフィ「俺ゴムなのに!あいつのパンチすっげぇ痛えんだ…何でだ!?」
「……知りてぇか?これを覚えればお前が負けたスモーカーにも攻撃を当てることが出来る」
ルフィ「!!ケムリんにか!?知りてぇ!!」
「……ルフィ、お前の夢は何だ」
ルフィ「決まってる!!俺は!海賊王になる男だっ!!!」
「ははははっ!大層な夢だ!だがお前らしい最高の夢だ!!!いいかルフィ。自由に生きるってのは実は難しい事だ。俺たちの一味も自由を求め強くなった!お前も強くなれルフィ!!何も奪われないように!テメェの手で守ってみせろ!」
ルフィ「当たり前だぁぁあ!!」
アイン「ふふふっ。先生を超えるんですか……ですが。先ずは私に一撃でも当ててからのお話ですね!」
その姿を船から見守る影が2つ。
ビビ「ルフィさんは面白い人です。でも海賊女王は譲れませんっ!」
ロビン「うふふ…楽しい1ヶ月になりそうね」
新世界〜〜とある島〜〜
ミホーク「幹部連中は何処にいる」
鷹のような双眸を一味に向け、案内を促す世界最強の剣士。
そしてその先、一味の幹部連中が集まるキャンプの中央に座る1人の男。
???「よう鷹の目。こりゃ珍客だ……俺は今機嫌が悪りぃんだが…何時ぞやの決着でもつけにきたか?」
「ふん。赤髪。片腕の貴様と今更決着をつけようなどとは思わん。お前も接触したと聞いているが…あの男が遂に動き出したようだ」
新たに"海賊"として更新された手配書を渡すミホーク。
赤髪「おお!こいつは友達なんだ!海賊になるって聞いて勧誘したんだけどよ」
ラッキー「がはははっ!見事にフラれちまったよな、お頭!」
ベックマン「ありゃお前がしつこ過ぎたからだ」
ミホーク「それともう1人…気になる男を見つけたのでな。ふとお前が昔していた話を思い出した。ある小さな村の…面白いガキの話……」
もう一枚の手配書を渡すミホーク。何っ!?まさか!?と盛り上がりを見せる。
赤髪「来たか!ルフィ!!」
その後、島はミホークを巻き込んだ宴が始まり盛大な盛り上がりを見せた。
そしてその手配書、新聞の記事は世界中に様々な反応を見せることになる。
ゼファー「あの野郎ぉ……俺は忠告した筈だぜ!海賊なんぞになりやがってぇ!!アインも連れて行きやがったんだ。約束を違えた時は覚悟しやがれ……」
モサ「アイン…こんなに楽しそうに…」
エース「親父ぃ!これ見てくれよ!!」
「グラララララ!!あのハナタレ小僧かぁ!!」
エース「ああ!友達なんだ!!ナツメ!遂に来たか!それにルフィも!」
1ヶ月後〜〜グランドライン入り口〜〜
麦わらの一味、ウロボロス一味の船は現在一度入ったリヴァース・マウンテンの入り口に戻って来ていた。
厳密にはもう1つの入り口。原作でルフィ達が突入した方に来ている。
「やっぱり自分の力で入らねぇとな。カヤも準備は出来てるか?」
カヤ「はい!天候も問題無し!潮の流れも安定しています!!」
ナミ「この1ヶ月で叩き込める事は全て叩き込んだつもりよ!!失敗したら承知しないんだからっ!」
サンジ「逞しいカヤちゃんも素敵だぁぁぁぁ」
ウソップ「カヤ!落ち着いて行けよ!いざという時は俺が……いや、ルフィがなんとかする筈だ!!」
ゾロ「ったく…オメェは何にも変わってねぇな」
ルフィ「にししししっ!!ナツメ!皆んなもありがとな!!」
「行ってこいルフィ!!またそのうち会おう!!」
ルフィ「よし!野郎ども!グランドラインに向けて!!出港だぁぁぁぁあ」
後方で見守るウロボロス一味。
メリー号は何の問題も無く無事にリヴァースマウンテンへと登って行った。
リーシャ「行っちゃいましたね♪」
アイン「ルフィも中々強くなりました!1ヶ月前の彼とは別人ですよ」
たしぎ「ええ。彼等ならば大丈夫でしょう。私にも新たな発見がありましたし」
ビビ「この1ヶ月…楽しかったですね!私達も負けてられませんよ!」
「此処からは彼奴らの冒険だ。皆んな、俺の我儘に付き合ってくれて感謝する。そして……今からは俺達ウロボロスの冒険だ!!」
ロビン「そうね。楽しみだわ。それで船長…これからの予定を聞かせてもらえるかしら」
ナミ「ふふっ。何処でも連れて行ってあげるわよ」
「それに関してはもう決定している。リーシャ」
リーシャ「はい。遂にこの時がやって来ました!!皆さん、1ヶ月前に話した"協定"の事は覚えていますね?」
その言葉にナツメ以外の皆が【勿論よ。】と頷く。
「は?リーシャ、協定って何の話『よろしい。それを踏まえた上で次の島は此処です!』えぇ……お兄ちゃん無視しないで」
リーシャは一枚のチラシをペラリと皆に見えるように翳す。
其処にはこう書かれていた。
《幸せを摑み取れ!!夢見る全ての淑女達が集う伝説のレース!!海賊だろうが海軍だろうが犯罪者だろうが関係ない!!此処は愛の島!!!見事優勝を勝ち取り伝説の花嫁になるのは君だぁぁあ!!》
・開催地/ラトゥール島【別名:ウエディング島】
・参加条件/女性
・優勝商品/青薔薇のブーケ、伝説の称号
「あ、あの……リーシャー?お兄ちゃんこんなの聞いてな『ナツメは黙ってて(下さい)!!』あ、ハイ…すみません」
ナミ「成る程ねぇ、早速"例の権利"を掛けて勝負ってわけ?」
ハンコック「こ、これはまさに……」
たしぎ「ふふふ。私が出る以上、勝ちは揺るぎません。可哀想な事になる前に棄権して下さい」
アイン「はぁ…たしぎ、前々から思っていましたが。とうとう頭がおかしくなりましたか…可哀想に」
ロビン「これは負けられないわね……」
リーシャ「このレースに優勝した1人だけが例の権利を獲得です。勿論私も参加しますので悪しからず」
ビビ「えっ!?リーシャも参加するの!?」
ハンコック「リーシャ、これはかつてない戦いになる。妾も手加減は出来ぬぞ?」
リーシャ「ふふふ。お気遣いは無用です。お兄様、次の島は此処です。宜しいですね?」
「な、なんかよくわからんが、皆の意見が一致してるのならいっか……俺船長なのに……」
こうして…初の冒険?に向けてしまらないスタートを切るウロボロス海賊団。
世間の反応は全く真逆の反応を見せているとは知らずに。
wanted〜〜ウロボロス海賊団〜〜
船長・【白金の龍王】ミカグラ・ナツメ
懸賞金:10億6000万ベリー
副船長・【黒華の鬼姫】たしぎ
懸賞金:3億7000万ベリー
【元海賊女帝】ボア・ハンコック
懸賞金:1億4000万ベリー
【蒼玉の激拳】アイン
懸賞金:2億ベリー
【悪魔の子】ニコ・ロビン
懸賞金:9000万ベリー
次回、例の権利と共にナツメを巡ってレース開幕です!
手配書に関しまして、少し書かせて頂きますね。
ナツメは最早、海軍と世界政府に完全敵対しちゃいました。
圧倒的な力を体験したサカズキの進言によりこういう結果となりました。
たしぎはスモーカー経由で情報割れです。
覇王色の覇気を持っている。戦闘力もヤバイと報告されこの様な結果に。
ハンコックは言わずもがな、ロビンは青雉からのリークです。
アインに関しても実力はセンゴクに割れています。
懸賞金の額はあくまでも海軍の認識できている範囲の危険性を表したものです。
一味の序列には関係ありません。
元から高いのもナツメの存在が大きいです。
リーシャとビビに関しては追い追いです。まだ海軍に認知されていません。
額はこの先の冒険で上がっていきます。
次回も不定期更新です。徹夜続きで文章おかしいかもしれません。
申し訳ありません。仕事が落ち着き次第手直ししますので……
2つ名も変えちゃうかも。
此処まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
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第13話〜〜龍の花嫁〜〜
沢山の応援コメント、評価。毎回言う様ですが、本当にありがとうございます!
元気沢山もらってます。
今回は久し振りに?ノホホン回です。
個人的には楽しんで書けてます!
今回殆どナツメの出番はありません。すみません。
今回も皆様にお楽しみ頂けたら幸いでございます。
ドラゴン・ゲート号〜〜リーシャの部屋〜〜
「よ!リーシャ、少し話しねぇか?」
リーシャ「お、お兄様!今紅茶を入れますので「リーシャ」はい?」
「お前がメイドに拘りを持ってるのは分かってる。ただ、2人きりの時は…船長じゃなく兄ちゃんとして接して欲しいかなー」
リーシャ「は、はいっ///じゃなくて!うん。お兄ちゃん!」
ああ。なんて可愛い妹だ…。お兄ちゃん幸せ。
リーシャの笑顔は昼夜関係無く、眩しくナツメを照らしてくれる。
丁寧な仕草で完璧に紅茶を淹れる妹を、幸せそうな表情で見つめる兄の姿。
白金の龍王と呼ばれる男のソレは、兄妹の間でしか見せない表情であった。
リーシャ「それで…お兄ちゃん。こんな夜遅くにどうしたの?」
時間はすっかり日も落ち、静かな波の音が心地良く船を揺らす時間帯。
皆が寝静まり、その場で聴こえるのは兄妹の仲睦まじい声だけだ。
ナツメの真剣な表情にゴクリと喉を鳴らすリーシャ。
「うーん、ちょっと今回の行き先の件でな。あの時の皆んなの反応が気になったというか……(主にリーシャの反応が)」
リーシャ「ラトゥール島の事でしょ?気になるって、もしかしてレースの事?」
「うむ。ウエディング島とも言うらしいな。それでだな……そのぉ……」
この反応はいつもの兄らしく無い。リーシャは違和感を感じるも思考する。
レースの事で何か思う事が有るのだろう。優勝賞品の事?もしくは"協定"の事?
もし協定に関してだったら……話す訳にはいかないよね…
お兄ちゃん自身で気付いてもらわなきゃ意味が無いもん。
あれ?よく見ると少し身体が……ふ、震えてるっ!?
あのお兄ちゃんが!?こ、これは只事じゃ無いのでは!?
意を決して兄に問いかけて見る。
リーシャ「……お、お兄ちゃん?……何か不安な事でもあるの?」
「そう…見えるか?」
リーシャ「だって、お兄ちゃんがそんな顔するの初めて見たよ?何だか声も弱々しいし…」
わざわざ私の所に来たんだ。もしかしたら皆んなに話しにくい事なのかも……
リーシャは思い出していた。
アラバスタでハンコックが危惧していた兄の負担の事を。
一味の…家族の為にと、何でも1人で背負ってしまう兄。
もしかしたらこの数年で無理が来たのでは無いか?鈍感な兄だ。
自分では気付いていなくて無意識に私に助けを求めて来たのかも……
もしそうなら!妹の私がお兄ちゃんを支えてあげなくっちゃ!!
「あのな、リーシャ。俺はお前の事を家族に、妹にするってあの時に誓った。"どこでも好きな所に連れて言ってやる"って約束もしたよな?」
リーシャ「う、うん。(あれ?何か思ってたのと…)」
「お前の夢に"家族と幸せになる"ってのがあんのも知ってる。ただ…流石によぉ……結婚は…早いんじゃ無いかなぁ!!!」
リーシャ「…は?はぁ!?お、お兄ちゃん何言って「お兄ちゃんも考えたんだ!」あ、ハイ」
「お前には自由に生きろって言ったし?幸せな家庭ってのに憧れてるのも分かるし?でもっ!結婚ってそんなに急ぐ事なのか!?ハ、ハンコックやロビン辺りはまだ分かる!『ガンッ!!』だがお前はまだ17歳だ!か、海賊団だって結成したばっかりだし……」
何か隣の部屋で凄い音が……お兄ちゃんは気付いていないみたいだけど…
全く…盗み聞きとは……頂けませんね……って!!そうじゃ無くて!!!
お兄ちゃん何勘違いしてるの!?ま、まさか結婚相手探してるって思われてる!?
「無い頭で必死に考えたんだ…女の幸せは結婚にあるって本に書いてんの見た事あったし、海賊やってちゃマトモな出会いなんか無いだろ?そこまで皆んなが切羽詰まってんだったら俺は止めない。離れてても家族は家族だ!ただ…流石に……リーシャ、"お兄ちゃんじゃ…ダメ"なのか?せめて後数年は待って欲しいんだが……」
リーシャ「(はわわわっ///お兄ちゃんっ、その表情は反則です///じゃなくてっ!!不味い!誤解されてる!!)
ちょっと待って!私結婚相手なんか探して無いよ!?も、勿論!他のみんなだって!」
「…え?じゃ、じゃあ何で皆んな花嫁レースにこんな熱くなってんの?俺はてっきり皆んなが結婚相手探しに必死になってんのかと思ってたんだが…違うのか?」
リーシャ「お、お兄ちゃんそれ…本気で言ってるのかな……」
この言葉には流石にリーシャもため息しか出なかった。
隣で聞き耳を立てている皆んなも同じだろう。ズッコケた様な音が聞こえたし。
ちょっとやそっとのアプローチではどうにもならない事が判明しただけ、儲け物かもしれない。
〜〜お隣(ハンコック)の部屋〜〜
ハンコック「何じゃ!ノックもせずにゾロゾロと!無礼であろう!!」
アイン「シー!!静かに!!」
ビビ「こ、これっていけない事なんじゃ……」
たしぎ「ナミ、師匠がリーシャの部屋に入って行ったのは本当ですか?」
ナミ「ええ、すっごい真剣な表情してたわ。ロビン!お願いっ!」
ロビン「……こんな事……趣味じゃ無いんだけど……」
リーシャの部屋の横。ハンコックの部屋には皆が集まっていた。
初めは気に入らなかったハンコックも、ナミとたしぎの言葉を聞いて目の色を変える。
ロビンは乗り気しないと言いつつも、能力でリーシャの部屋に文字通り聞き耳を立てた。
皆が壁に隣接したテーブルの下に潜り込む。
たしぎ「も、もっと隣に詰めて下さい!」
ハンコック「ここはわらわの部屋じゃ!文句が…む!むー!」
ロビン「し!静かに」
『お前には自由に生きろって言ったし?幸せな家庭ってのに憧れてるのも分かるし?でもっ!結婚ってそんなに急ぐ事なのか!?ハ、ハンコックやロビン辺りはまだ分かる…』
ガンッ!!勢いよくテーブルに頭を打ち付けるハンコックとロビン。
ハンコック「あ、あやつ何を言っておるのじゃ!?わらわが他の男を!?あり得ぬ」
ロビン「こ、これは…想像以上ね……」
ナミ「はあー、呆れた……此処まで鈍感だったのね〜」
たしぎ「これは…由々しき事態です。状況を重く受け止めなくては…」
ビビ「……私…リーシャちゃんと歳変わらないんですけど……」
裏ではやはりこんなやり取りが展開されていた。
何で?私はいいの?と、ビビが悲観している所にアインが口を開こうとしたその時。
リーシャ「全くあなた達は!!盗聴とは粗相が悪すぎますよ!?」
其処には、いつの間にか話を終えたリーシャの姿。
頬をリスの様に膨らませて仁王立ちしていた。
リーシャ「仲間に能力を使うのは禁止した筈です!まさかロビンが約束を破るとは……」
ロビン「……流石ね…気付かれてたなんて」
ハンコック「ふふふ、クールぶってもその様なタンコブがあっては形無しじゃの」
ナミ「アンタが言うなっての!!」
アイン「でも、どうしますか?事態は思ったより……明日には島に着いてしまいます」
リーシャ「まぁ、気長に行くしか無いでしょう。協定は変更無しです。今のお兄様にグイグイ行っても困惑させるのが落ちです……」
たしぎ「それがいいでしょう。イイですか?誰が勝っても恨みっこ無しです!約束ですよ」
そして各々の部屋に戻り夜は更けて行った。皆の誓いとともに。
ラトゥール島〜〜レース会場〜〜
進行『さぁぁぁあ!皆さん!!遂に!遂にこの時がやってまいりましたぁぁ!!!』
島中に響き渡るアナウンスの声と共に盛り上がりを見せるラトゥールの街並み。
巨大なハート形の形をしたこの島は、別名ウエディング島と呼ばれている。
広さはシャボンディ諸島と同程度だが、今日この日に限っては世界中から様々な人々が集まり、正にお祭り状態と化していた。
日が昇っているというのにそこら中に花火が上がり、街中も露店で溢れている。
「うわぁ…凄え人の数。酔いそうだぁ…」
前世で人混みに縁がなかったナツメは上陸するなり既にウンザリした様子だ。
ナツメ以外は街の様子に目を輝かせていたが。
リーシャ「凄いです!何処もかしこもお祭り状態ですね!女性は皆さん参加者の方達でしょうか」
ナミ「皆んながそうじゃ無いでしょ。それにしてもカップルだらけね〜〜」
たしぎ「そこら中でカップルがプロポーズしてますよ!?」
ロビン「ふふふ…この雰囲気じゃ無理もないわね」
ビビ「た、確かに…何だか甘い香りも……」
街中をよく見てみれば男が跪いてプロポーズしている光景がちらほら目に入る。
アイン「先生!あれを見て下さい!あの山の麓に咲く巨大な薔薇!あの場所がレースのゴール地点ですよ!」
「でっか!!何だあれ!?すげぇな、自然に咲いたもんなのか?」
街を抜けた先にある森林地帯のさらに先、
巨大な青い薔薇が天に向かって咲いているのが確認できた。
レースは翌日の早朝らしいので、各自荷物をホテルに預け、一時的に解散となった。
ナツメはてっきり皆に街を連れ回されるものだと身構えていたのだが…
「おっかしいなー、皆んな何処に行ったんだ?リーシャまで居なくなって」
仕方ねぇ、ちょっと独りでブラついてくるか。
なんだかんだで単独行動が久し振りのナツメは、この世界に来たばかりの事を思い出しながら宿を後にした。
「「「結婚して下さい!!」」」
ナツメが宿を出てほんの1分後の出来事である。
いつの間に集まったのか。ナツメの周囲を取り囲む30人ばかりの淑女達。
出会って早々プロポーズの嵐がやって来た。
「はぁ!はぁっ!!何だってんだ急に!!!」
町中を逃げ回る事、約1時間。
夢中で建物の中に飛び込んだナツメはやっとの思いで解放される。
???「おやおや、大変でしたな!それ程のイケメンが独りで街を歩けばそうなるのは必然ですぞ?」
「うお!誰だあんた!!」
振り向けば、其処には小太りに貴族の様な赤い服を着こなす男。
ヒゲが立派に左右に尖る様に伸びており、歳は四十後半くらいだろう。
男は中々サマになる礼をしながら、名をバツニーと名乗った。
「あー、ここあんたの家か?悪りぃ、すぐ出て行くからよ」
バツニー「いえいえ、これも何かの縁です。貴方に少々お願い事が……白金の龍王」
「あ?テメェ……何もんだ?」
バツニー「ほっほっほ!そう警戒せずとも宜しいです。貴方ほどの有名人。今では、知らない者の方がモグリというものでしょう。この島でレース以外の争いはご法度。私はレースの"主催者"兼、"司会者"を『プロフェッショナル!』に、務めさせていただいております。バツニー!!で御座います」
「あ、ああ。そうか。バツニーって…ウエディング島じゃ縁起悪そうな名前だが……んで、頼みってのは何だよ」
バツニー「実は………ゴニョゴニョ」
ラトゥール島〜〜翌朝〜〜
ラトゥール島。
この街の入り口でもあり、レースのスタート地点に建てられた巨大な建造物。
その姿はまさにナツメの世界で言うスタジアム。
レース開催当日。その日は島中の人間がスタジアムに集まり賑わいを見せていた。
会場には巨大なモニターが設置されている。
其処に映し出されているのは街を埋め尽くすほどの淑女達。
その中には勿論……
ハンコック「くくく……いよいよじゃの…」
ナミ「なんて参加人数よ。そんなに皆んな結婚したいわけ?」
ロビン「この衣装…走り辛いわ…」
今回の参加者の衣装は花嫁をモチーフにデザインされたもの。
白を基調としたドレス風のワンピースに、胸元にはバラの刺繍が施されている。
ウエディングドレスとは違うのだが、中々凝ったデザインだ。
ビビ「素敵なデザインですよ?私は好きです!」
リーシャ「ナミ、ビビ、いいですね?作戦通りに動いて下さい」
たしぎ「師匠…一体どこに……夕食にも顔を見せてくれませんでしたし…」
アイン「心配せずとも、先生なら何処かで観戦してるでしょう。それにやる気を最大限引き出すために、終わるまでは顔を見せない。と提案したのは貴女ですよ?」
一発の花火が打ち上がり、マイクの電源が入る。
バツニー『さぁさぁさぁ!いよいよ!いよいよこの時がやってぇぇまいりましたぁぁああ!4年に一度の花嫁レェェェエーーーーースゥゥウ!!!』
わあぁぁぁぁああああああ
観客の大歓声とともに会場に紙吹雪が舞い散る。
バツニー『今回も!司会進行をさせて頂くのは!この私!ミスタープロフェッショナルことぉぉお!!バツニーぃぃぃい!!!!そして!何と何と!今回はコメンテーターに特別ゲストもお呼びしております!ウロボロス海賊団!船長!!ミカグラ・ナツメ氏です!』
『あの衣装走りにくそうだな……あ、ナツメだ。よろしく』
全員「「「えええぇぇぇぇぇぇぇええええ!!!!!??」」」
やあ。また会ったね。お?久し振りだって?嬉しいねぇ!
3度目の登場だ。流石に私の事は覚えてくれたみたいだね!
そう、私は"謎の美少女X"ウエディング衣装バージョンだよ。
今回はリーシャが言っていた"協定"に関して少しだけ話すとしよう。
1ヶ月前、麦わらの一味と共にグランドラインの島に停泊した初夜の事だ。
ウロボロス一味はナツメを除く、皆が会議室に集まっていた。
リーシャに呼び出された為だ。
ハンコック「何じゃ?こんな時間に皆を呼び出して…」
たしぎ「師匠について大事な話があるとの事でしたが」
アイン「リーシャ、このような時間まで起きていると肌に悪『はいそこ!ソコの三人!』え!?」
リーシャ「今回の会議は貴女達三人が主な原因です!まぁ皆さんに聞いてもらいますけど」
ナミ「あ、あれ?リーシャ、もしかして怒ってるの?」
リーシャ「いえ、怒ってはいません。で・す・が!最近の貴女達のお兄様に対するアプローチですよ!三人は少し目に余ります」
ロビン「確かにそうね。顔を合わせれば喧嘩ばかりだもの」
ナミ「……私だったらウンザリしちゃうかも」
三人「「「うっ!!」」」
ビビ「あの……皆さん全員がナツメさんの事……」
リーシャ「其処ですよビビ。これは確信なのですが、私を含めて皆さん、お兄様に恋してますよね?」
その言葉に若干名は顔を赤らめ、若干名は当然です!と言った様子だ。
リーシャ「私も…異性として意識している以上、気持ちはわかります。ですが、あんなにがっつき過ぎては振り向くものも振り向きません。ここで皆さんに提案があります」
そう。ここでリーシャにより出された提案こそが"協定"の正体だ。その内容は
・お兄様の前で無闇矢鱈に喧嘩をしない。
・お兄様に必要以上にベタベタしない。
・公の場で"夫である"等適当な発言をしない。
・アプローチの場は公平に決める。抜け駆けは万死に値する。
・お兄様の意思を尊重する。
・お兄様が誰を選んでも恨まない。
・"お兄様は共有財産です同盟"に加入する。
以上。この七の誓いに沿ってこれを協定とする。
裏ではこんな話し合いがあったんだ。皆んなは勿論同意したよ。
ルールを作らなきゃ一味に崩壊を招きかねないからね〜。
家族を大切にしているナツメがこんな事望んでるわけもない。
リーシャは流石だねー!っと3分経ってるじゃないかっ!
私もレースがあるから!それじゃ!
ラトゥール島〜〜会場〜〜
そしてバツニーにより、参加者達にレースのルールが説明された。
コースは巨大な薔薇まで一直線の単純なルート。
最初に薔薇の頂上へ辿り着いた者が優勝者だ。途中の戦闘、妨害行為は何でもあり。
但し、乗り物に乗るのは反則。己の足で走って辿り着く。相手を殺しても反則だ。
この二つの反則を犯さなければ、その他は何でもあり。そしていよいよ……
バツニー『さぁ!皆!準備はいいかぁぁぁあ!!伝説の称号を手にするのは一体誰だぁぁぁあ!!!位置についてぇぇぇえ!!』
リーシャ「ナミ!私の後ろに!!」
ナミ「OK!!ビビ!頼んだわよっ!!」
ビビ「はい!任せてください!」
バツニー『ぇぇぇえ!!よぉぉぉおおい!!!』
たしぎ(ふふふっ。皆さん…卑怯だとは思わないでくださいね)
アイン(先ずはたしぎとハンコックを……)
ハンコック「ふんっ。妾の優勝は決まっておる」
バツニー『すたぁぁぁぁぁぁあああとぉぉぉおおおおおお!!!』
其処はドン!じゃねぇのかよ……
ナツメがツッコミを入れようとした。バツニーが開始の合図をした。
淑女達が大地を踏みしめようとした。その時!
ドンッ!!!!×3
バツニー『おっとぉぉぉおお!?これはまさかの展開だぁぁぁあ!!』
『ま、マジかお前ら!!…完全にガチやんけっ!!』
バツニー『は!覇王色の覇気だぁぁあ!!』
とある三ヶ所から同時に放たれた覇王の覇気。金属が擦りあった様な轟音。
凄まじい気配に当てられ、殆どの参加者がドミノ倒しの如く地に伏していく。
観客達の中にも泡を吹いて意識を手放す者もチラホラ。
ハンコック「くっ!!な、何じゃと……?まさかっ…たしぎまで!!」
アイン「さ…流石に三者からの覇王色は応えますね……ぐっ!…」
たしぎ「この気配は!ビビですか!?まさか彼女が!」
たしぎ・アイン・ハンコック「しかし…この2人を潰すなら今(じゃ!)!!」
"偶々近くに居た"ウロボロスの主力3人が其処に激突した。
こういう時の為に互いに切り札を隠していたのだろう。
ビビ「はぁっ!!はあっ!り、リーシャさん…ナミ…!」
リーシャ「考えることは皆同じですか…ですが……想定の範囲内です!」
ナミ「ええ!今の内に行くわよっ!」
一足先にスタート地点を抜ける三人。
行き先をこの島に決めた、その時からリーシャの作戦は始まっていた。
リーシャとナミは非戦闘員。マトモに戦っても勝ち目は無い。
リーシャ(戦闘において重要なのは相手の情報です。アインとたしぎは必ずぶつかる。其処にハンコックも加わり三つ巴になれば…かなりの時間が稼げます)
リーシャは"そうなる様"に、スタート地点の配置をある方法で操作していた。
そして、ハンコックの覇王色対策にはビビの協力が必要不可欠。
ナミと三人でチームを組み、最終地点500メートルからは公平に三人の駆けっこで決着する。
リーシャ(ただ…ロビンの姿が何処にも見えないのが気になります…)
ロビン(間一髪ってところかしらね……うふふっ酷い事するわ…)
スタジアム〜〜司会席〜〜
『成る程な…あの3人が組んだのか…クククッ!面白くなってきたじゃん』
バツニー『………………………………』
ナツメの横で司会進行のバツニーは……覇王色に耐え切れず気絶していた。
花嫁達のガチバトル開幕!!
参加者数ー12000人
脱落者ー11993人
《ウロボロス一味》
脱落者…………無し
リーシャ「わたしっ!気になりますっ!!」
ついに始まってしまいましたね。
開幕いきなり覇王色の激突です。
果たして優勝は誰の手に!!
ナツメさん鈍感すぎてすみません。
このお話からその辺の心境とかも動かして行こうと思っています。
実はまだ仕事の方はデスマ中なんです。
でもコメント見たら書きたくなってしまうw
後、いつもコメント下さる方が居るのですが、その方のコメントが運営さんに消去されてしまいました。
恐らく私が展開を匂わせる様なコメントをしたせいだと思います。
本当に申し訳有りませんでした。
次回も不定期です。
此処まで読んで頂きありがとうございました。
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第14話〜〜女狐と100億の薔薇〜〜
台本形式という物を調べてみました。
今回からセリフの頭にキャラの名前を付けることをやめてみようと思います。
なので文章を一から書き直しており遅くなりました。
このパターンでも内容がちゃんと伝わるようでしたら、コメント下さると助かります。
問題ないようでしたら次回からもこの様に致します。
では、お楽しみ下さい。
「おーい、起きろプロフェッショナル」
此処はラトゥール島にある花嫁レースの会場。
関係者席、実況席が設けられたスタジアム上部だ。
スタート地点であるグラウンドがよく見える特等席でもある。
四年に一度、普段であれば賑わいを見せて居るはずの会場も今は静かなものだ。
先程炸裂した覇王色の覇気……原因は明らかだが。
「……………」
「あー、クソ。司会進行が寝てんじゃねーよ」
ナツメは気絶した司会進行のバツニーを何とか起こそうと頬をビンタする。
自分の仲間がやらかした事なので少しだけ罪悪感も感じていた。
スタジアム〜グラウンド〜
現在グラウンドにて、ドミノ倒しで気絶中の大会参加者。
総勢1万人以上が地に伏せている。ある数人を除いて…
少し離れた場所で、蹴りと刀が激しくぶつかり合う音だけがその場に響き渡る。
生身と斬撃。その衝撃は地面を、スタジアムを揺らすほどであったが…
「ふん。流石は副船長じゃ……随分と腕を上げた様じゃの」
「当然です。私は2年間血反吐を吐いて強くなりました…全ては…この想いの為に!」
「そなたのナツメへの想いは相当なものじゃ…しかし…それは妾も同じ事!」
ハンコックとたしぎ。互いに目立った外傷はない。
2人の武装色は正に拮抗していた。
両者が再度攻撃に転じようと動き出した。その時。
「…ハンコック……たしぎ…やってくれましたね」
凄まじい破壊音と共に吹き飛ぶ瓦礫の山。
瓦礫が衝撃により撒き散らされ、土煙が晴れていく。
無表情で佇む1人の女性。初撃にて二人に吹き飛ばされたアインだった。
「「アイン!」」
「ふふふ…あの程度で…私が倒れるとでも?…2人共、覚悟はいいですか?」
額に一筋の血を滲ませるアイン。両手両足を武装色が染め上げる。
同時に途轍もない氣を練り上げ、殺気を込めた視線を2人に目配せる。
そして、右脚を軸に大地を踏み込んだ。
衝撃で地面を螺旋状に陥没させ、低い体勢を取る。
「……棗流:演武・龍天陣」
「アイン…貴女本気ですか?………はぁ…聞いても無駄な様ですね……いいでしょう。受けて立ちます!」
アインから放たれるソレは仲間に向ける殺気ではない。
完全にキレている様子だ。
どうやら私から片付ける様ですね…
たしぎは時雨を納刀。柄巻に左手を充て、半身になる。
「ハンコック、巻き込まれます。下がってて下さい」
ハンコックを下がらせるたしぎ。その構えも独特であった。
左手を添えた柄頭は下を向き、同時に鞘尻は肩の辺りまで上を向く。
一瞬、口角を上げると…アインに対して殺気を飛ばした。
「……棗流:金剛八式・華華羅閻魔」
「くっ……やめい!そなた達、殺し合いをするつもりか!?」
船医でもあるハンコックは逸早く冷静さを取り戻した。
2人に矛を収めるように説得しようとするも
「「問答無用!!!」」
"拳と剣"その道は違えど、同じ師を持つ2人。
大切なものを守る為にと身に付け、己を極めんと日々高めて来た"棗流"。
奇しくもその初撃が向けられたのは同じ一味の"仲間"だった。
第一コース〜中間地点〜
スタジアムから約3キロ地点。街の大通りを、並走して走る二つの影。
1人は手配書によく見る顔。ウロボロス海賊団のロビン。
もう1人はナツメ一味では無いようだ。
紫色が特徴的な髪色に、スタイルはロビンにも負けず劣らずといった様子。
何処ぞのコックが目視すれば即座に跪きそうな美少女である。
「どうやら追っ手は来てないみたいね……………っ…!!」
青ざめた顔で、走って来た方角を振り返るロビン。
少女は相棒の異変に、周囲を警戒しながら質問する。
「どうしたの?ロビン…顔色悪いわよ?」
「わ、私…戻らないと!!
(この殺気…本気で殺し合いを…仲間同士で何を考えているの!?)」
「え!?ロビン!そっちはスタジアムだよ!?」
此処まで来たのに戻ると言い出すロビンに、少女は理由を言って!と強く迫る。
先程の殺気を説明するロビン。一味の仲間同士で殺し合いをしているかもしれない。
手遅れになる前に止めなければと説明した。
「そんなのダメよ!私は青薔薇を手に入れる為に貴女と組んだのよ?」
少女は改めて"契約"の内容を確認する様にロビンを説得する。
「私の目的は青薔薇のブーケ。私が薔薇の麓にある"石の塊"まで案内する。代わりに護衛してもらう契約だったでしょ?」
「自分の夢よりも大切な家族なの。どうやら敵は見当たらないし、契約は此処でお終いね。カリーナ、此処からは1人でお願い。」
どうやらロビンの決意は固い様だ。
しょうがないな〜とカリーナと呼ばれた少女はゴールへ足を進めようとした。
その時。
「ロビンさん?」
「ビビ?それに、リーシャとナミまで。そう、貴女達チームで動いていたのね」
ビビに声を掛けられ振り向くと、リーシャとナミも後方に続くのを確認した。
自分達より先に進んでいたロビンを見て、三人とも驚いた様子だ。
「おっどろいた!ロビンこんな所まで来てたのね〜」
「まさか先を越されていたとは…流石ですね」
「と、ところでそこの人は…」
ビビの言葉にリーシャとナミの目線がカリーナへと動く。
カリーナはロビンの反応を見て、同じウロボロスの一味だと確認。
警戒もそこそこに自己紹介しようと振り向くが…
「私はカリーナ。今回ロビンとパートナーに……ってナミ!?」
「カリーナじゃない!あ、あんた!何でこんな所に!?」
思わぬ再会に驚きを見せるカリーナとナミ。
どうやらただの知り合いというわけでは無いらしい。
「あら、貴女達知り合いだっだの?」
「ええ、泥棒時代に組んでた時期があったの。この島に居たのは驚いたけど…まっさかロビンがこんな女狐と組んでたなんてねぇー、やめときなさいよ。裏切られるのがオチなんだから」
「言ってくれるじゃないの、この泥棒猫!海賊嫌いのアンタが海賊団なんて意外ね〜」
「何ですってぇ!?誰が泥棒猫よ!!」
ムムムと睨み合う泥棒二人。どうやら因縁のライバルといった様子だ。
収拾がつかなそうだと判断したロビンは割って入る。
「ごめんなさい。急いでるの。久し振りの友達との再会に水を差す様で悪いのだけれど…」
「「友達じゃない!!」」と声を揃えて反論するナミとカリーナ。
「ふふっ。息ぴったりじゃないですか」と突っ込むビビ。
此処でリーシャはロビンの正面へ立ち、彼女の表情をじっと見つめると
「ロビン…何かあったんですね?話して下さい」
リーシャは即座にロビンの様子に異変を見抜く。
表情に出していないように見えるが、一味の船医である彼女から見れば明らかに焦った様子だ。顔色も非常に悪い。
「船医さんには敵わないわね…」
ロビンはこのまま一人で現場へ向かうつもりだった。
しかし、リーシャの全てを見透かしたような双眸に、表情に笑みを浮かべ観念した。
先程自分が"見聞色"で感じ取った殺気から、恐らく戦いがエスカレート。
殺し合いの域に達し、非常に危険な状態であると。
「私達も戻りましょう!!」
ビビは即座にスタジアムへ戻ろうと決意する。
ナミもリーシャも同じ気持ちだった。ロビンは三人を巻き込みたくはなかったが。
特にリーシャはこの事態を招いてしまったのは自分の所為だと責任を感じていた。
「ちょっと待ちなさいよ!」
結果一味全員で止めに行く決断をし、スタジアムへと掛けようとした時だった。
其処にカリーナからの待ったが入る。
「ナミ、本当にお宝を諦めるの?あの泥棒猫のナミが?」
「何?アンタに構ってる暇なんてないの!ブーケが欲しいなら好きにすればいいでしょ」
「あの青薔薇がどういう物かあんた知らないのね。いいわ、教えてあげる。あの青薔薇は四年に一度、この島にしか咲かない超希少な花なの。養殖も不可能。それに加えて成るのはほんの数十本だけ。青薔薇のブーケは贅沢にも全ての青薔薇を束ねた物なのよ」
ある"特殊な技法"を使ってね!とカリーナは得意げに話を続ける。
ただの花束ではない様子に、ナミも少し興味を示した。
「……特殊な技法?」
「そして…その技法で束ねられた花束を絞ると出てくる一滴の雫。それが青薔薇の本当の価値なのよ」
ロビンはその噂を聴いたことがあった。
"ある花"から採れる一滴の雫。其れは空気に触れると即座に結晶化を始める。
一粒の宝石が誕生するのだ。無論、唯の宝石ではない。
手にした者を未来永劫幸せにすると言われてきた伝説の宝石。
記憶にあるその名を口にするロビン。
「聴いたことがあるわ……確か…【ブルーローズ・ムーン】」
「流石ロビンね。ウシシ!その価値は売れば100億ベリー!あの天竜人でさえ一粒しか持ってない!ナミ、これを聴いても諦めるっていうの?」
「ひゃ!100億ベリーですってぇ!!!?」
これから生涯目にする事の無いかもしれない金額に、ナミの目がベリーに変わった。
青薔薇の本当の価値を知る者は少ない。
だが、100億の価値がある物が簡単に手に入るとは思えなかったカリーナ。
用心を重ね、昔組んだ事のあるナミを仲間に引き込みたかったのだ。
「取り分は半々!どお?悪く無いでしょ?」
「50億……くうっ!悪いわね!魅力的だとは思うわ。でもお金で買えない物を私は手に入れたの。悪いけどあんた一人で行って」
あのナミが大金を諦めた!?
一味の驚きは驚愕するものであったが、同時にナミの言葉は嬉しくもあった。
「行くわよ皆!あのバカ達止めるんでしょ!?」
「ナミさん!私感動しました!」
「仕方ありません、勝負はまた次回に持ち越しましょう」
「ナツメは大丈夫かしら…彼が居るのに何故……」
各々の想いを胸にスタジアムへと駆け出した四人。
カリーナは固まっていた。何がナミを変えたのか気になった。
お金で買えないもの。そんな物あるわけ無い。
「待って!私も行くわ!そっちの用事が済んだらでいいから私と組みなさい!」
カリーナの発言にナミはビックリするも思考する。
「はあ!?アンタ一人で行けばいいでしょ?何でそんなに組みたがるのよ!………カリーナ、アンタ、他に隠してる事あるでしょ」
「ギクッ!……そ、そうよ!悪い?一人じゃ難しいのよ!だから協力しなさい!」
ギクって本当に言う人初めて見ました。と驚くビビ。
ロビンとリーシャは皆の少し前を走っている。
ナミは足元を見たのか不敵な笑みを浮かべ……
「ふーん……取り分は私が8、アンタが2」
「はぁ!?欲張りすぎでしょ!半々で十分じゃない!」
「こっちは充分な戦力提供するのよ?アンタこそ50億何て欲張りすぎだわ」
「私は情報提供と入手方法を知ってるのよ?せめて6・4!これ以上はまかんないわ」
「7・3。此処で手を打ちなさい。イレギュラーが出たって助けてあげないわよ?」
「……このっ!泥棒猫!!」
「うふふっ。毎度割りっ♪宜しくね、女狐♪」
意地悪な表情で共闘の握手を差し出すナミ。
カリーナはベー!と、舌を出し可愛らしく威嚇して返すのだった。
そしてスタジアムに到着し、一同が見たものは……
「師匠!!!」
「ナツメ!動いてはならぬ!今止血を!!」
「あ……ああ…あ………」
時雨を落とし膝をつくたしぎ。
向かい合うように両膝をつき放心状態のアイン。その右手は真っ赤な血で染まっていた。
慌てふためき目に涙を浮かべながらナツメの傷口を両手で塞ぐハンコック。
そして……
口からは血を吐きながらも笑顔を浮かべ、胡座をかいてその場に腰を落とす男。
左胸に空いた穴から血を流すナツメの姿だった。
「お…お兄様ぁ!!!!」
「嘘でしょ?……ナツメ……ナツメ!!」
リーシャとナミは即座にナツメの元へ駆け寄る。
「ロ、ロビンさん……これって…」
「ええ。嫌な予感が当たったみたいね……私達も行きましょう」
涙を浮かべ、震えながらも、目の前の状況が信じられないと行った様子のビビを引き連れてロビンはナツメの元へゆっくりと歩みを進める。
「あ、あいつ船長でしょ?何があったのよ……」
カリーナはその場の雰囲気に呑まれ、静かにその場に佇んでいた。
スタジアム〜〜皆が到着する数分前〜〜
「ぐっ!……此奴ら……いつの間にこんな……」
たしぎとアインが起こす闘いの余波で飛来してくる大量の瓦礫。
それを見聞色で交わしながらも二人の様子を。成長を驚くハンコック。
「あいつら……此処までする理由は何だ……たしかリーシャがあの時…」
ナツメは二人のガチバトルをその目に映しながらも、あの夜リーシャに言われた言葉を思い出していた。
『お、お兄ちゃんそれ…本気で言ってるのかな……』
あの時、妹が浮かべた不安げな…呆れたような表情。
皆の居場所として、家族として海賊旗を挙げた。
だが…本当に皆と向き合っていたか?
考えろ考えろ!リーシャはあの時何を伝えたかった?
裏で何かを決め、話し合っていたことは知っている。
この島に来た時の皆の表情。何か伝えたい様なそんな顔をしていた。
「しっかりしろよ…俺は船長だろう……」
俺は…居場所を造っただけで満足して…それで完結してたんじゃ無いか?
家族がコレだけ争う原因を知らねばならない。もう隠し事は無しだ。
「くくくっ!流石ですね。私も大層努力しましたが…」
「くくくって、笑い方が先生になってます…よっ!!」
常人では目視するのも難しい速度で打ち合う二人。
互いに氣を、覇気を纏わせた"刀と拳"。
アインは身体能力を極限まで高めた四肢を使い、八方から攻め立てる。
氣の回転を加えた拳は着撃点に螺旋の跡を刻みこむ。
その動きは"舞"を思わせ、美しく洗練された動きであった。
「私の斬撃で傷もつかないとは…ですが!!」
たしぎも負けてはいない。納刀時に鞘に込めた氣を刀身に即座に纏わせる。
そして神速の抜刀と同時に"物打ち"から鋒へと凝縮させた氣を礫として打ち出す。
一点に絞られた力はアインの身体を徐々に傷つけていった。
「「いい加減に……倒れろ!!」」
二人の怒号が重なり合う。
ハンコックは大事にならないでくれと苦味を潰した表情で見守っていた。
だが、このままでは拉致があかない様に見える戦いも変化を見せる。
「……貴女の想いは充分に分かりました…ですが、そろそろ終わりにしませんか?」
たしぎは終わりの言葉と同時に腰から鞘を外し、くるりと回転させると
キイィィィィィィィィィン…
切羽と鯉口が鳴りあう音がその場に響いた。
「決着を。奥義・篠の五月雨」
ハンコックにはたしぎが初めて構えた様に見えた。
半身に腰を落とし、右手は刀身と同じ様に前方へ。鎬地辺りに手を添えている。
左手は掌を裏返し、潜り込ませる様に柄頭を乗せているだけだ。
ナツメの世界風に言うならば少し変わったビリヤードの構えに似ていた。
「賛成です」
アインは一言だけ言うと瓦礫の上からストンと地に落ちる。
そして地に足が触れた時、破壊音と共に直径3メートルのクレーターをつくった。
此方は構えという構えはとらない。だが…
「この技は絶対に防げません……【ドラゴン・ドレス】」
アインの身体を凄まじい氣が駆け巡る。
彼女の指先は黒鉄の様に黒く染まり、キリキリと音を立てていた。
互いに譲る気は無いらしい。
その様子を上から見ていたナツメ。
「不味いな……彼奴ら本気で…」
あの奥義を二人に教えたのはナツメ自身。
大切なモノを守る為の力。
その守るモノの為に二人はぶつかり合っているのか?
最初はそう感じた。だから止めはしなかったが……
今はそれを微塵も感じさせない。
「まだまだ未熟だな……馬鹿弟子どもが!」
一触即発の刹那。
「そこまでだお前ら」
コンマ数秒、アインの初動が速かった。
ビキビキッ。鈍い音と共にアインの右手がナツメの左胸に食い込む。
皮膚、神経、筋肉、血管をズタズタに進ませ、指先は肺を貫通していた。
「し、師匠……?」
「え……?私…今何を……せ…先生……あ…ああ……ああぁ」
二人ともが正気を失っていたのだろう。
たしぎは地に膝をつくと同時に時雨を落とす。
アインは目の前の状況が受け入れられず軽いショック状態だった。
「ナツメ!動いてはならぬ!今止血を!!」
ハンコックは慌てながらもナツメの体を支え、その場に座らせた。
血反吐を吐き、溜息を一つ。胡座をかいてタバコに火を付けるナツメ。
何かを言おうと口を開きかけたその時。
「お兄様ぁ!!!!!」
「ナツメ!!」
リーシャとナミが駆け寄ってきた。
後ろを見てみるとロビンとビビの姿も確認出来る。
その更に奥に見かけない顔の少女も居たが。
「何だお前ら…戻ってきたのかよ」
「ええ。こうなる事が何となくだけど予想出来たから」
そう言って心配そうな顔を見せるロビン。
リーシャはナツメに泣きながらしがみつき何があったのかを聞いてきた。
「全員揃ってるのか。良い機会だからお前らに話がある」
「あ…ああ……先生……」
未だ放心状態のアイン。ナツメは彼女の頬を平手打ちした。
「っ!!先生!!」
「しっかりしろよ!俺は大丈夫だ。あれくらいで死ぬか!撃ち込まれた氣が若干暴れて、治りが少し遅ぇだけだ」
リーシャの心配は杞憂に終わった様だ。
兄の龍掌はこの程度の怪我であれば瞬時に回復させる。
そうならない原因が不明だった為の心配だった。
「さて……たしぎ!アイン!ハンコック!そこに直れ」
一味はナツメを囲む様に立って居たが、呼ばれた三名はナツメの前に正座した。
これからお説教タイムだ。
三人の頭に一発づつ拳骨が落とされた。
ぐぅ!と唸る三人。既に左胸は完治してした様だ。
「何が理由であれ、あの技は家族に向けるもんじゃねぇ!2度とあんな真似すんじゃねぇ!いいな!!!アインとたしぎは許しが出るまで棗流禁止!」
「しゅ、修行もですか?「ったりまえだ!!」ひぇっ」
説教もソコソコに終わらせると、ナツメは今回の事を皆に謝罪した。
その行動が意外過ぎたのか、皆が驚愕といった様子だ。
「今回の件は俺が原因なんだろ?こんな事態になったのもちゃんと皆んなの話を聞いてやらなかったからだ。すまんかったな……んで、考えた訳だ。船に戻ったら一人一人と話がしたい。ちゃんと聴くから話せよ。いいな」
この言葉には皆が言い淀む。正直困ってしまう。
何せ船長は皆に告白しろ!と言っているのだから。
そして暫しの沈黙の後、リーシャが口を開いた。
「分かったよ、お兄ちゃん。船に戻ったら皆から重大な発表があります。心して聞いて下さいね」
「ちょ!リーシャ!?本気で言ってんの!?」
ナミは顔を赤くして焦りだした。ビビも俯いて耳まで真っ赤だ。
「そんな…先生に怪我をさせた後にですか?」
「そうですよ!(これじゃ私達が圧倒的に不利です!」
「いいんですか?此処でハッキリさせないとお兄ちゃん一生気付いてくれませんよ?」
アワアワするたしぎとアインにあっけらかんと進言するリーシャ。
リーシャの言葉に二人は観念した。
「ひでぇなリーシャ、一生は言い過ぎだろ…お兄ちゃんそこまで鈍く無いと思うけど」
「はぁ…本当に困った船長さんね……私も乗ったわ。一生何て待ってられないもの」
「ロビンまで!!……まぁいい。んで、レースはどうすんだよ」
そう忘れがちだが今はレース中なのだ。
すると其処に…
「あー、話終わったー?初めまして船長さん♪私カリーナ!ヨロシク」
自己紹介もソコソコに、カリーナは先程のナミとの会話をかいつまんで説明した。
「て事だからさ!どお?私と手を組まない??」
「ナツメ!これはチャンスよ!!船につぎ込んだ貯金も全部返ってくるんだから!70億よ!70億!!」
「ナ、ナミ……うーん、分かったよ。どうやらレースは機能してねぇし。俺たちは海賊だからな!お宝目の前に帰る選択肢はねぇ!行くか!」
「決まりね!ルートは私とロビンが知ってるから!ウシシ!ヨロシクね!ナツメ!」
カリーナに差し出された手を取るナツメ。
なんだかんだで一味初めての冒険である。
ナツメは気合いを込めて宣言した。
「どの道俺らの誰かがゴールしてただろ、貰えるもんは貰っちまおう!タイムリミットは周りが眼を覚ますまでだな!行くぞ野郎『野郎共はお兄様だけです』えぇ……」
こうしてカリーナという美少女を含めた一同はスタジアムを後にした。
目指すは巨大な青い薔薇の麓。100億ベリーの宝石。
【ブルーローズ・ムーン】を求めて。
ラトゥール島〜〜ドラゴン・ゲート号近海〜〜
ナツメ達の船に寄り添い隠れるように停泊する一隻の船。
船体には所々宝石が埋め込まれている。
甲板には今まで奪ってきたであろう財宝が無造作に散らばっていた。
其処に島を見つめる一人の男。
鎖を掌から放出し自分の腕に巻きつけると、周りを囲む部下に指示を出した。
「ジャララララ!いいか!あの女が例の物を持ってる所を確認次第、奪い取れ!」
ヒント:中の人(○栗旬)
たしぎが最初に放った棗流は(カカラエンマ)と読みます。
そして、ココでカリーナが登場です。
仲間になるかは次回をお楽しみに。
バカラの登場はもう少し先になります。
此処まで読んで頂きありがとうございました。
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第15話〜〜告白〜〜
申し訳ありません。
では、お楽しみ頂けましたら幸いです。
「人として死にたい…か……お前がそれを望むなら……」
聞き慣れた声。大好きな兄。ナツメの声にリーシャは目を擦る。
薄暗く、視界がはっきりとしない…
少しの時が経ち、視界がゆっくりと晴れていく。
『何?ここ…どこ……?』
何処かの谷間に落ちたような薄暗い空間。
周りはドス黒い岩肌に囲まれている。
生気がまるで感じられない不気味な場所に佇むリーシャ。
そんな中、天蓋の隙間から一筋の光の柱が人影を照らしていた。
『……お…お兄ちゃん……?』
そこに居たのは、ナツメと見たこともない美しい女性の姿。
互いに胸を寄せ合いながら座って居る。
女性は全身血塗れであった。胸には穴が空いており、致命傷を負っている様に見える。
その表情は何故か幸せそうで……彼女の双眸はナツメを優しく見つめていた。
恐らく……彼女はもう長くない。
「ああ…分かってる…一人じゃ寂しいんだろ……俺も付き合おう…」
ナツメは優しい声でその女性に語り掛けると、女性を"左腕で"優しく抱き寄せた。
『う、嘘っ!そんな……』
よく見れば…ナツメの右腕は肩から先が無くなっており、所々が大怪我を負っている。
岩肌に寄りかかる二人は幸せそうな表情を見せながら……
そのまま力無くユックリと地に伏せていった。
『いや……嫌!お兄ちゃん!!お兄ちゃんっ!!!死んじゃやだよ!!』
リーシャはナツメに駆け寄ろうとするが…
動けないし声も出せない。ただ静かにその光景を見ていることしかできなかった。
無力な妹は涙を流しながらも、兄に駆け寄ろうと必死にもがく。
その時、視界は真っ白い光に飲み込まれていった。
……い!………しろ!!……おい!!!
「…うぅ……お、お兄ちゃん……」
「リーシャ!!大丈夫か!?……お、おい。お前…その眼……」
眼?
朦朧とする意識の中、目の前には心配そうにこちらを見る兄の姿。
その瞬間、大粒の涙がリーシャの頬を伝う。
そして思わず兄に抱きつき、泣き噦るリーシャ。
「お兄ちゃん……生きてる!良かった……良かったよぉ」
「リーシャ……今…お前の眼が俺と同じ龍眼に……何か見えたのか?」
「…うん……お兄ちゃん、今のって……」
「マジかよ……どうなってんだよ……」
そして同じく意識を取り戻したカリーナが口を開く。
「な…何……さっきの……」
カリーナも同じものを見た様だ。不思議そうな視線をナツメに送る。
それに続く様に皆意識を取り戻した。
「お前ら……良かった。俺が薔薇に触れた瞬間、いきなり全員が倒れたんだよ……」
リーシャと同時に意識を取り戻した一同。
ナツメは何があったのかを説明した。
道中は特に問題も無く薔薇の麓へ辿り着いた。
だが、ナツメが薔薇の幹に触れた瞬間の事だ。
ナツメの体内に蓄積されている氣が暴走し、凄王が発動。
氣は周囲に撒き散らされ、皆に影響を与えたという。
一瞬だったが、全員の瞳が龍眼へと変化していた様に見えたと語るナツメ。
顔を見合わせる一同。恐らく皆が同じ光景を見たのだろう。
カリーナが思った事をそのまま口に出した。
「その……ナツメが言う能力の話が本当だとしたら……さっき皆んなが見たのって」
カリーナからの不安を煽る一言に、たしぎとアインから反論する声が上がる。
「やめてください!!そんな事!ある訳が無いじゃないですか!!!」
「そうですよ…薔薇が見せた唯の幻覚なんだから……滅多な事言わないで」
「……だが、さっきのは間違い無く龍眼だった。…何が見えた…お前達が見た未来を話せ」
見た内容を聴かせろ。と詰め寄るナツメの間にハンコックが身を割り込ませ口を開く。
「……ナツメ、その龍眼という能力。それはそなたの力で他者にも使わせる事が出来るのか?」
「いや、そんな事は不可能なはずだが……少なくとも龍眼に譲渡の力なんか無い」
「ならばこの話は此処までじゃな。くだらぬ。アインの言う通り唯の幻覚じゃ」
なんでも無い様に振る舞うハンコック。
しかし、彼女の指先が震えているのをビビは見逃さなかった。
この眼の力はカリーナ以外の全員が知っている事。
龍眼で見た未来の的中率は100%。それは麦わらの一味の一件で証明されている。
「ハンコックさん…」と瞳を潤ませ不安げな表情を浮かべるビビ。
その様子を見て不安を吹き飛ばす様にナミも口を開く。
「あーあー、くっだらないわ!ロビン、薔薇の頂上にブーケがあるでしょ?確認して」
すると上空から青薔薇を束ねたブーケがナミの胸にストンと落ちてきた。
ロビンが能力で落とした様だ。
「皆!!ミッションコンプリートよ!船に戻りましょ!結晶化はそこで!!」
ブーケを確認すると、カリーナは元気一杯の声と共に笑顔を振り撒く。
重い空気を振り払う様に。何かを誤魔化す様に。
「リーシャ、大丈夫か!?」
「ご、ごめんなさい、お兄様。ちょっと腰が抜けちゃったみたい」
ナツメははぐらかされた未来が気になりつつも、妹を抱き抱える。
話は船に戻ってからだ。
(龍眼が発動してたのは間違いねぇ。皆は何を見た?あの様子から、良く無い未来だったのはお察しだが……一味に関わる事だったら後で聞いておかねーとな)
ラトゥール島〜〜第一コース地点〜〜
ウロボロス一味、カリーナを含めた合計九名は、目的である青薔薇のブーケを回収。
順調に帰路へと足を進めていた。
薔薇の甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「街の終わりが見えて来た!あなた達の船までどのくらい?」
カリーナの声にアインが反応を返す。
「街から少し外れた西の海岸に止めた筈です。距離は此処から3キロも無いでしょう……それにしても……リーシャ!いつまでそうしてるつもりですか!?貴女ばっかりズルいっ!!」
「そなたばかり甘えすぎでは無いか!?そろそろ自分の足で走れるじゃろ!!くうっ…妾もしてもらった事がないというのに……」
「リーシャぁ…師匠から降りて下さいよぉ……私がおぶりますからぁ」
アインの言葉にハンコックとたしぎも続く様に頼み込んだ。
後方を走るナツメの胸の中で幸せそうなリーシャの表情が嫉妬の状況を作り出していた。
たしぎに至っては涙目である。
「見てくださいお兄様……薔薇に日没が照らされて……ロマンチックですねー」
「あ、ああ。そうだな。余り喋るな。舌噛むぞ……って!おい!腕を絡ませるな!!走りにくいだろ」
「「シカトすんな!!」」三人のツッコミを他所に、お姫様抱っこ中のリーシャの元へ、近づいて来たビビがボソボソと耳打ちをしてくる。
「リーシャ!"協定"は?キョウテイ!!」
「はっ!そ、そうでした。私とした事がつい……」
そのやり取りを見ていたカリーナはナミに疑問をぶつけた。
「ねえナミ。あ、あいつらって…兄妹じゃないの?」
「兄妹よ?でも少し特殊なのよ。一味じゃないアンタに詳しくは話せないけどー」
「えー?教えてよケチ!」
ナミは掻い摘んで、兄妹だけど血は繋がってないの。とだけ返答を返した。
「なぁ、その協定っての何なんだ?そろそろ教えてくれてもいいだろ」
「ふふっ。それはですね……「ナツメ。私達の船の方……」
リーシャが兄の疑問に応えようとした時だった。
ロビンがナツメに聞こえるギリギリの距離で異常を報告する。
どうやら"ドラゴン・ゲート号"付近に不審な動きを感じ取ったとの事。
「ドラゴンゲート号に侵入者ねぇ……おいカリーナ。今、俺らの船をいじくり回してる連中が居るらしいんだが。お前、心当たりは?」
「ギクッ!!……何?何の事!?と、特に心当たりはないかな〜」
「アンタ…分かり易すぎるわよ」
ナツメの問いかけに冷や汗を流し目線をそらすカリーナ。
ナミの呆れたような声に一同も同じくといった様子で頷く。
ナツメは立ち止まるとリーシャを地に下ろした。
「お兄様?」不思議そうな顔をするリーシャ。ナツメの行動に皆が足を止める。
「ヤバッ!なんか感づいちゃった?」と分かりやすく警戒するカリーナ。
「おい、カリーナ。本当にお前のお仲間じゃねぇんだな?」
「うっ…そ、そうよ!分かった!分かったてばー、正直に言うから!そんな怖い顔しないでよ!仲間じゃ無いわ。ぶっちゃけここまでの足に使わせてもらっただけ。彼奴ら私が宝石を手に入れたら奪い取る気満々だったみたいだし」
「ふーん…なぁロビン。俺らをウロボロスだと知ってて喧嘩売ってる様子なんだろ?……クククッ。骨がある奴だといいが……お前らちょっと離れてろ」(暗黒微笑)
右手を掲げ、掌を空に向けて開くナツメ。氣を練り上げると周囲の大地が震えだす。
ズァッ!!全長3メートルはあるだろうか。
劔を"屍の氣"で創り出した。その数、大凡300本。
無駄に装飾までこだわった逸品に、初めてナツメの力を見るカリーナは
「な、な、な…何なのよ…」と驚愕の声を漏らす。
「はあぁぁぁぁあ………ッオラァ!!」
ナツメは宙に浮く全ての劔を、空に向かって槍投げのように遠投した。
衝撃で足元の大地がヒビ割れ、爆風が空に捲き上る。
大剣は瞬時にその姿を彼方へと搔き消した。
30秒後。
「随分と趣味の悪い船ね……ふふっお見事。全弾命中したわ」
賊の声だろう。
ロビンの報告と同時に、少し離れた場所から悲鳴と破壊音が聴こえてくる。
「あ?全弾だと?んだよ拍子抜けだな。雑魚じゃねぇか」
能力で結果を見ていたロビンの報告に落胆の表情を見せるナツメ。
「カリーナ、アンタをここまで連れて来た連中って何者なの?」
「ナミもよく知ってる奴らよ……昔二人で忍び込んで捕まった……」
アンタまさか!声を荒げ、意外も意外といった様子のナミ。
「トレジャー海賊団・マッドトレジャー……」
「冗談でしょ!?昔彼奴らにされた事、忘れたの!?」
どうやら因縁があるらしい。ナミは皆んなに昔話を聞かせた。
カリーナとは昔宝を取り合った仲で、ある日、二人はトレジャーハンターの一味に忍び込みその宝を奪おうと奮闘したが、捕まってしまい酷い拷問を受けたらしい。
何故そんな奴らと組んだのか問い詰めるナミ。するとカリーナは
「実はね………ゴニョゴニョゴニョ」
「はあ!?嘘でしょ!?」
「ウシシッ!どうかしら船長さん。このまま私と組んで、根こそぎ奪ってみない?」
「ふむ…テゾーロ・マネーねぇ……」
〜〜ドラゴン・ゲート号〜〜
ウロボロスの海賊船。ドラゴンゲートを目視出来るところまで来たナツメ一同。
カリーナの話からすると、目的は薔薇の宝石のみだった筈だ。
取り敢えず、トレジャー海賊団の目的を知る為に木陰に隠れ様子を伺うことにした。
副船長でもあるたしぎはロビンへ状況の確認を指示する。
「ロビン、どうですか?彼奴ら、私達の船で一体何を……」
「何かを探してるみたい……あら。今金庫に…目的は私達のお金みたいね……」
「な!なんですってぇ!!!?いーい度胸してるじゃ無い……」
「心配すんな。黒蜜の金属だ。どうしようもねぇよ」
ナツメの言葉に安心するも束の間……
金庫を荒らされてると聞いてはナミが黙っているわけが無い。
「ふん、身の程を知らぬ唯のウツケじゃったか」
「いい!?彼奴らの船の甲板!見えるでしょ!?あそこの財宝を根こそぎ奪うわよ!!ナツメ!行ってきて!」
「待つのじゃ。ココは妾が行こう。あの程度の相手に船長が出る必要も無かろう」
「分かったわ。ハンコックに任せる!遠慮は無用よ!思いっきりやっちゃって!」
おーおー、ウチの航海士は怖いねぇ。とタバコに火を付けるナツメ。
単純に潰すだけではなく敵船の財宝を奪う作戦となった為、たしぎが各員へと指示を飛ばした。
別段警戒するほどの相手でも無い為、作戦と呼ぶほどのものでは無かったが。
敵の大多数がドラゴンゲート号に居るのは確認済み。
敵船にて残党をハンコックが掃討し、ビビとロビンの三人で宝を奪い脱出。
その間に他の皆でマッド・トレジャーの相手をすると言うものだ。
〜敵船にて〜ハンコック・ロビン・ビビside
「な、何だてめぇら!ってお、お前は!海賊女帝!?う、嘘だろ……て事はまさか……あの船」
乗り込んだハンコック達は、早速見張りの敵船員と遭遇した。
見張りと言うよりは損傷した船をセコセコ修復に励んでいた所であったが。
「あら…私達の事知らずに絡んできたって事?呆れた……」
「ビビ、そなたは下がっておれ…此処は妾一人で充分じゃ」
「え?は、はい……(ハンコックさんすごく怒ってる…」
"前代未聞。最強最悪のルーキー"懸賞金10億越えの船長。
軍艦20隻を瞬時に沈め、大将を瀕死の重傷に追い込んだ圧倒的戦闘力。
絶対に関わってはいけない化け物。彼らは完全にミスを犯したのだ。
散々な言われ様だが、ナツメ達本人は知る由もない噂話である。
「ひ、怯むな!"龍王"は居ねぇ!!所詮女だ!数で掛かれば大した事ねぇ!!」
「そなた達…ウチの副船長が聴いておったら殺されておったのぉ。じゃが……今の妾はそれ以上に機嫌が悪い……慈悲など皆無と知れ」
敵船員達はミスを犯した。船長の名が余りにも巨大な為、侮っていた。
他の一味など取るに足らないと。
もはや後悔しても遅いが。彼等は悲鳴をあげることも許されず、船から姿を消した。
ドラゴン・ゲート号〜〜甲板〜〜
「おいおい冗談じゃねぇ!テメェ!なんて野郎連れて来てやがる!!カリーナァ!裏切りやがったのか!?」
敵船長の名はマッド・トレジャー。
ナツメよりも身長が高く、胸元に歯車の特徴的なタトゥー。
身体に鎖を巻き付け、サングラスをかけて居る。
彼の計画はこうだった。
戻って来たカリーナから宝石を奪い、"偶然"近くに止まっていた巨大な帆船から、ついでに財宝を奪い、用済みのカリーナを殺す。
これまで何度もやって来たことだ。何ら難しくはない。
狙った船がウロボロス海賊団で無ければの話だが。
「はぁ?元々あんたの仲間でも何でもないでしょ。それより何でこの船にいるの?そんな計画は無かったと思うんだけど…」
これは完全にマッドのミスである。だがカリーナに無理やり責任を押し付けるしかない。
それ程迄に彼は気が動転していた。
知っていれば手を出すはずがない。此処は"新世界"では無いが相手は10億越えの首。
「カリーナ、テメェ、計画と違うじゃねぇか……俺たちの合図があるまでは誰もこの船に近ずけない筈だろ?ジャラララ。宝石に加えて大金が手に入るってお前が言うから手を組んだってのによ」
それを聴いてナミがカリーナを睨み付ける。
「カリーナ、アンタどういう事?」
「ちょっと待ってよ!そんな話信じる訳!?」
必死に弁名するも、アインとたしぎも疑いの目を彼女に向けた。
あんな未来を見た後なのだ。影響を及ぼす様な事態は全て潰す。
ウロボロス一味は仲間以外、全ての危険因子に対して警戒し、殺気立っていた。
しかし此処で先程から黙って様子を見ていたナツメが口を開く。
「もういい」
「お、俺はアンタの船だって知らなかったんだ!その女に騙「うるせぇ。黙れ」
マッドの言い訳も虚しく、ナツメの発動した【龍砲】によってその口は塞がれた。
反射的に鎖をナツメの身体に巻きつけるマッド。
喋れはしないが、身動きを封じた事で邪悪な笑みを浮かべる。
「悪いな。この船に俺が乗せた以上、カリーナも俺の大切な仲間だ。残念だが、お前は招いた覚えがねぇな」
「大切な…仲間……」
こんな状況で怪しい自分を無条件に受け入れてくれた。
カリーナの表情は何処か嬉しそうだ。
「お前は惨めな奴だな。マッド・トレジャー。仲間を何だと思ってんだ?お前の目…仲間を道具としてしか見てねぇ。お前の仲間も皆が同じ目だ。俺が嫌いな……腐った目だよ」
そう言うナツメに何時もの不敵な笑みは無い。ただ静かに男の終わりを口にした。
「【自害しろ】」
マッド・トレジャーは自慢の鎖を自身に巻き付け、その身を海へと投げ出す。
その表情は何を浮かべていたのか最早知ることは叶わない。
能力者であるマッドは身動きも取れず、静かに海の底へと沈んでいった。
「さて、残党はアインとたしぎ。任せた」
「「承知!」」
残党狩りへ瞬時にその場を後にするたしぎとアイン。
ナミとカリーナ、ナツメの三人がその場に残っている。
「これで満足か?ナミ」
「う、うん!ありがと!スッキリした!」
「ったく。お前は昔から無茶ばっかしてたんだな。あの"下手くそな行き倒れ"だけで金集めてたんじゃ無かったと知って、別の意味で安心したわ」
「こ、こらっ!変な事思い出させないでよね!」
「さ、さっき何をしたの?あいつが自分から海へ飛び込むなんて…」
先程から驚かされてばかり。ナツメの能力を教えてもらい、カリーナはある決意をする。
(これで能力者じゃないなんて…なんて無茶苦茶なの……でも彼と…彼の一味と仲間になれば私の夢が一気に現実へと近ずく!!)
「アンタまた何か企んでるでしょ。"女狐"カリーナ」
「げっ!女狐って言うな!この泥棒猫!」
「げっ!って……お前…分かり易すぎんぞ。もう少し演技力鍛えろよ。ナミの行き倒れよりヒデェ」
「ちょっとぉ!ナツメ!また言ったわね!?」
また賑やかになりそうだな…
物思いに耽るナツメの元へ、全てを終えた一味全員がいつの間にか集まっていた。
取り敢えず大事になる前に島を離れる事にした一行。
ナミの操縦の元、ラトゥール島を後にするのであった。
ドラゴンゲート号〜〜リーシャの部屋〜〜
ラトゥール島を出港して1日が経過。
現在の時刻は夜。船はグランドラインの海域を当てもなくゆっくりと進んでいる。
ナツメを除くウロボロス一味は"作戦会議"の為リーシャの部屋に集合して居た。
カリーナは客室で就寝中。
「さて、いよいよこの時がやって来ましたね。いいですか?どんな結果になろうとも恨みっこ無しです」
リーシャの真面目な雰囲気に黙って頷く一同。
ハンコック、アイン、たしぎの三名は既に覚悟を決めた様子。
ロビンとナミ、ビビは不安げな表情を浮かべて居る。
「お兄様からは特に順番の指定はありませんでした。誰から行きますか?」
ナツメの性格上、何番目に尋ねようが結果は変わらないだろう。
だが…彼も人間だ。第一印象のインパクトというものは小さくはない。
有利になるか不利になるか……
皆が思考の海に入ろうとした時、四つの手が上がった。
三つは言わずもがなだが…震える一つの手は意外な人物の挙手。
「「ビビ!!」」
「ま、まさかそなたが手を挙げるとは……」
「え…えへへ…トップバッターは私に…行かせて貰えませんか?」
リーシャを含めた皆の想像に無かった人物。ここで皆が同じ事を思った。
これは…何が起こるか予想出来ない。
あえて変則的なルートで攻めるのもありなのではないか?
「ビビ!しっかり思いの丈を!後悔の無いようにね!!」
ビビの震える肩を抱き寄せ励ますリーシャ。
この子ったらこんなに大きくなって……
皆の心情は何故か母性を思わせるソレであったという。
〜〜ナツメの部屋〜〜
ナツメは窓際の椅子に寄りかかり、夜を見ながら煙草をふかしていた。
酒を一口含むと皆の思いつめた表情を思い出す。
これから一人一人と向き合って話し合う。
スタジアムの一件以来、ナツメは皆の言動、行動を注意深く観察していた。
それにより、実はある程度の予想はついているのだが……
彼女達の話がどんな話であれ最後まで全部聞くつもりだ。
「ナ、ナツメさん……」
小さなノックとともに聞きなれた声がする。
「……ビビか…入れ」
「し、失礼しま〜す……」
「ははは!んな恐縮すんなっての!お茶入れるからそこにかけてろ」
ひゃ!ひゃい!
間抜けな返事を返したビビは、言われた通り部屋の中心に置かれて居るソファへ静かに腰掛けた。
ほれ。とコップを渡すナツメ。
「取り敢えず一杯やって落ち着けよ」
「はい。……んくっ…………はぁーー」
「落ち着いたか?」
苦笑いを浮かべて心配するナツメの顔は凄く優しさを感じさせる。
その表情で安心したようだ。と判断した所で話は本題に入っていく。
「んで?話ってのはなんだ?出来れば"協定"についても教えて欲しい」
「………ナツメさん。協定の事をお話しする前に……ひとつだけ言わせて下さい」
顔を耳の先まで真っ赤に赤らめるも、真剣な表情のビビ。
どうやら想像は間違っていないらしい。だとしたら…俺は……
思わず唾を飲み込む"白金の龍王"
彼のこんな表情は中々見られない。
「私…ネフェルタリ・ビビは……ナツメさんの事を心の底から愛しています」
…俺は……………
今後の執筆について少し考える時間を下さい。
此処まで読んでいただきありがとうございました。
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第16話〜〜ウロボロス〜〜
結果、全員分書かせていただきました。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
"愛"って何だ……
俺には……その言葉の意味が分からなかった。
生まれ落ちてから26年。俺が生きる過程で身につけたものは何だ。
考えても"力"くらいしか思い付かねぇな………違う。
この力は…生まれてずっと付きまとっていた呪いの様なもんだろ。
身に付けただと?そんな大層なものじゃ無い。
俺は人を好きになった事が無かった。
いや、それがどういうものか分からない。と言った方が正しいか。
"力"しか持たないのなら…ソレにすがるしか無いじゃないか。
何言ってんだ?…そうじゃねぇだろ馬鹿野郎……
世界に嫌われていただと?本当にそうなのか?
前の世界には……世界中には何人の人間が居た。自惚れるな。
勝手に自身で決めつけて、逃げてきただけじゃ無いのか?
そうだ。分かってんだろ。
初めから、答えなんか出ていた。
今の俺には愛する仲間、家族が居る。
初めてだった。この"呪い"を人の為に使うことが出来たのは。
呪いを…大切な人を守る力へと変えてくれた人。
目の前の"彼女"もそうだ……
ビビ…恐いのか?何で震えてんだ。
俺が恐いとかか?
わからねぇ……
何がそんなに不安なんだ。
薔薇の一件で皆が暗い顔をした。
彼女達には何時も笑顔でいて欲しい…
お前には…お前らには笑顔の方が良く似合う。
いつまでも、この輪の中で笑っていてくれ……
『私…ネフェルタリ・ビビは……ナツメさんの事を心の底から愛しています』
この一言を伝えたかったのか……
勇気を出して言ったのだろう。
今の彼女は色々な感情が混ざった様な表情をしている。
"愛の告白"か……
好きな異性へ思いの丈をぶつけるのは中々に大変な事なんだよ。
昔、そう…書物で読んだ事がある。
「ビビ……」
「ひゃ!は、はい!!何でしょうか!!!ナツメさん!!///」
俯いた顔を上げるビビ。
………え?
人生で一番ビックリした事をあげなさい。こう問われれば間違いなく
"今この時"です!!と、ビビは元気よく返したに違いない。
「ナ、ナツメ……さん?な、な、泣いてるんですか?」
「は?……何じゃこりゃ!!な、何で………いや、そうか…俺は………嬉しかったんだよ。泣く程嬉しかったんだ。きっとな……」
もしかすっと酒のせいかもな。と続けるナツメに「一言余計ですっ!」と返すビビ。
正直、ビビは一目見た時からナツメに惹かれ、恋に落ちていた。絶対無敵の船長。
彼が見せる初めての様子に、何だか可笑しくて、嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。
互いに笑い合う二人の表情は間違いなく"幸せ"を浮かべていた。
そして……
「俺もお前の笑顔が大好きだ。ビビ」
第一印象の特典?
そんなものがもし有るのならば、彼女が今夜見たナツメの表情がそうだろう。
彼が告白されて涙を見せたのは……その一度きりだったのだから。
ドラゴン・ゲート号〜〜リーシャの部屋〜〜
ゆっくりと帰還したビビの元へ、リーシャが一番に駆け寄り、声をかけた。
「お帰りなさい!どうでしたか!?って、え?ビ……ビビ………?」
「た、ただいまです〜みなさんっ。えへへへぇ///」
部屋に帰還した王女の顔を見て、まず一同全員が思った事。
やばいこれ……一発目で終わった……
こんなに幸せそうな人間の表情など初めて見る。
ナミが目の前に1兆ベリー積まれてもこんな表情には…ならないんじゃないだろうか。
不味い不味い不味い!不味すぎるんですけど!?
母の心で見送った筈の一同の心が次第に暗黒面へと堕ちていく。
「なななっ何じゃその顔は!!一国の王女が見せて良い顔ではないぞっ!!」
「は、は、ハンコックは少し黙ってて下さい!!何があったの!?師匠になんて言われたんですか!?」
「ははっ…オワタ……私の負けですビビ…情けは無用です。殺しなさい。先生さようなら」
『はい。皆さんさようなら〜』(幻聴)
大好きな人にフラれてこんな幸せ顔になる筈もない。
思いを告げる前に戦いが終結してしまった。
この結果に、アイン、たしぎ、ハンコックのライフはほぼ0。
底をつきそうな勢いを見せる。
"戦わずして勝つ"正に武の極地。
「って!言ってる場合かっ!!!あんた達落ち着きなさいよ!ビビなんて居なかった!いいわね!?」
「ナ、ナミさん!?酷いっ!?」
「ナミ、貴女も相当応えてますね……あれ?…ロビンが居ません」
リーシャの言葉で正気に戻る一同。テーブルの上にメモが置いて有るのを発見する。
《誰も行かないみたいだから…私、行って来るわね》
一同「「「えぇぇえ!?ロ、ロビン!?」」」
流石怖いもの知らずというか…この空気で突撃する辺り流石と言えよう。
有る意味、第二の勇者誕生の瞬間である。
〜〜ナツメの部屋〜〜
「ナツメ。入ってもいいかしら」
ビビの時より少しだけ強めのノック。この世界に来て初めて出来た仲間の声だ。
ナツメは席を立ち扉を開けると、自らドアを開けロビンを部屋の中へと招き入れた。
「よぉ。ロビン。次はお前だったか」
「ふふふ。こんばんわ……随分幸せそうな顔ね。何かいい事あった?」
「ま、まぁな。取り敢えずそこにかけろよ」
ロビンの笑顔に思わず目をそらすナツメ。
彼に促され、ロビンは外にあるテラスへ足を運ぶ。
(ふふふっ。ビビの"告白"はかなりの効果があったようね……)
今迄、仲間としてしか接して来なかったナツメは先程の事もあり若干挙動不審だった。
初めてナツメに女性として認識されたのだ。
そんな"想い人"の姿を可愛らしい。と、心のアルバムに記録するロビン。
(な、なんか今夜のロビンが…妙に色っぽいというか……)
そしてホットミルクが入ったカップを二つ持ち、ナツメもテラスへ足を踏み入れる。
ほら。とロビンにカップの一つを手渡した。
互いに向かい合うように椅子へ腰掛ける二人を、月の光が優しく照らす。
「……何だか懐かしいわね」
「はははっ。前にもこんな事あったな。6年前か…随分時がたったもんだ」
「あら、覚えてたのね。ふふ。意外だわ」
「当たり前だろ!初めて仲間が出来た夜だぞ?忘れるかよ」
その言葉を皮切りに、思い出話を始める二人。
ロビンは思い出していた。ナイトアイランドの夜を。
その後に起きた出来事も。
「そして三年間も……貴方は帰って来なかったわね………」
静かにそう告げる彼女の表情は笑顔であったが、両目から細い涙が頬を伝っていく。
「げっ!わ、悪かったって!ちゃんと理由があったのは分かってんだろ!?泣くなよ」
「ふふっ。ええ。今更突っついたりしないわよ」
「ロビン…もしかして、お前……あの頃、ずっと泣いてたのか?」
サッと手慣れた仕草で涙を拭き取るロビンを見て思わず口にしてしまうナツメ。
いつも気丈に振る舞ってみせる彼女。
だが、ナツメに出会うまで、その人生はずっと世界政府に追われ続けて来たのだ。
あの時、彼女を守ると誓ったばかりだった。
そんな矢先に三年も放置したのだ。
内心では悲しい想いや不安な思いをさせ続けて来たのではないか?と察してしまう。
「……どうだったかしら…ふふっ。もう忘れちゃったわ…えっ?ちょっとナツメ!?」
大丈夫と笑顔を見せるロビンの表情を見て、色々な感情が頭の中を埋め尽くす。
気がつけば椅子を立ち、ロビンの手を引き上げていた。
余りの不意打ちに顔を真っ赤に染めながらも、何が何だかわからない。
そして彼女はナツメの胸へ静かに身を預けた。顔は赤いままで。
「…ひっ…く…ぐすっ…私があの時…どんなに不安だったか貴方にわかる?」
「そうだよな……悪りぃ……これからは…二度と放ったらかしたりしねぇよ」
ナツメの胸の中で泣き噦るロビン。
あの時ロビンが過ごした三年間は、ナツメの思っていた以上に辛いものだったようだ。
ナツメの体温がロビンを暖めていく。三年間の想いを溶かすように。
そして、ロビンが泣き止んだのを確認した為、引き離そうと身体を離したナツメ。
「ダメよ…もう少しこのままで……」
「お、おい!ロビン!?」
離してはくれないようだ。
彼女の両腕はシッカリとナツメの背中に絡みついていた。
「ナツメ……このまま聴いて。薔薇の麓で観た内容の事……貴方に話すわ」
彼女の暖かい吐息がナツメの胸を暖めていく。
そして龍眼で観た内容をロビンは静かに語り出した。
「……俺が…死ぬ?…しかも知らない女と二人で……な、なんだそりゃ」
「貴方が見せた最後の表情……とても幸せそうだった……でも!そんなの許さないわ!」
ロビンは先程よりも強くナツメを抱きしめる。
わ、分かった!分かったから落ち着け!!と宥めるナツメ。
「分かってないでしょ!?貴方の性格だときっと無茶をする!お願い……お願いだから……私達の側に居てちょうだい……貴方が死んでしまったら………」
「おいおい、俺の事はお前が一番よく分かってんだろ……」
「なら、島での一件は何?貴方に傷が付く所なんて初めて見たわ。確実なんて言い切れないでしょ?」
「お前……アインの事「その件じゃ無いの」……は?」
ロビンが言っているのは、アインとたしぎが暴走した一件ではない。
薔薇の麓でナツメが暴走した時の話だ。
氣が暴走した時。彼を中心に起きた爆風。
その際、ロビンが意識を失う瞬間。彼に飛んで来たのは拳ほどの石だった。
"ただの石"が頭部にぶつかっただけ。
それだけで、ナツメの額から血が出ていたのをロビンは見逃さなかったのだ。
「そんな事……今迄は絶対にあり得なかった事でしょ?」
「はぁー、本当によく見てんな。ははっ、ロビンにはかなわねぇや」
「理由までは分からないわ。青い薔薇が原因だと思うけど……」
「あぁ、例の宝石。そいつが出来たらちょっとした実験をしてみるつもりだ。ってそんな顔するなよ。命がどうこうの話じゃねぇ」
これ以上無茶はしないでほしい。ロビンは心からそう思っていた。
今回の件ではっきりと再認識した事。
此処はやはりグランドラインであり、彼も一人の人間だという事。
「約束して頂戴……絶対に私達の前から居なくならないで…」
「ああ、約束するよ。心配ばかりかける船長ですまない。流石に少しウンザリしたんじゃ無いか?」
「うふふっ。まさか。私、ナツメの事を愛してるもの……」
「え!ちょっ!!」
ロビンは不意に"ハナハナ"で腰から腕を咲かせナツメを抱き寄せる。
そして本物の腕を首に絡ませ、その唇を重ね合わせた。
空を埋め尽くすほどの星空の中、船上のテラスで重なり合う男女を、月明かりが照らす。
「……ん…んむっ……………ぷぁっ…ロ、ロビン!!!」
ま、まじかよ……今俺!とアワアワする船長。
「あら、初めてだったの?意外ね」
顔は真っ赤だが、あくまでも冷静な彼女を見て、気が高まったのか動転したのか。
「お、お前は初めてじゃ無いのか?」
と、アホな質問をしてしまうナツメ。
「……そうね、これで2回目かしら」
またも不意打ちである。再び唇を重ねるロビン。
「私が愛したのは後にも先にも貴方一人よ。二度とバカな事聞かないで」
「あ、ハイ……っておい!ロビン!?」
ナツメが返事をする間も無く、ロビンはスッと部屋を後にした。
「っはぁ!はぁ!き、緊張したわ……わ、私ナツメと…ききき、キスを…///」
部屋を出た扉の裏では動揺を隠せなかったのだが…それは此処だけの話。
〜〜リーシャの部屋〜〜
「…ただいま」そう告げ、静かにリーシャの部屋へ戻ったロビン。
近くに居たリーシャが声をかける。
「ロビン!お、おかえり。随分遅かったですね……」
いつも気丈に振る舞い、表情に余り変化を見せないロビンだが、この時は違った。
「な、なんかロビンが色っぽく見えるんだけど……」
「ナミもそう思いますか?……な、何があったのでしょうか……」
なんかやたらと顔が火照ってる……
唇を人差し指をなぞる動作がいちいちエロい……
部屋に戻るなり奥へ座ってしまったロビンをナミとリーシャが分析する。
「そんなに何があったか気になるの?……そういえば、他のみんなは?」
先程からナミとリーシャ以外のメンバーの姿が見当たらない。
「あー、ビビは皆んなの夜食作りにキッチンよ〜。あの"三馬鹿"はさっきどっか行っちゃったわ。ったく…何が作戦会議よ。絶対ロクな事にならないんだから」
「それにしても遅いですね……ナミ、先に行ってきてはどうですか?」
「ダメよ、さっき順番決めたでしょ?あいつらナツメの事になるとアレだもん。私まだ死にたく無いし」
「ふふふ、今行けばナツメの面白い姿が見られるかもしれないわよ?」
(ほ、本当に何があったの……)
ロビンがイタズラっぽい笑みを浮かべると、其処にアインとたしぎが戻ってきた。
「はぁ〜。ただいまです……ってロビンじゃ無いですか!!」
「ろ、ロビン!あああ貴女まで何故そんなに幸せそうな表情を……せせせせ先生と何かあったんですか!?」
たしぎとアインがロビンへと詰め寄るが……
アインの挙動不審っぷりに拍車がかかる結果となってしまった。
「アイン…落ち着きなさい。順番決めをしたのでしょう?次は誰が?」
「次はハンコックですよ。既に師匠の部屋に向かった筈です」
どうやら次はハンコックらしい事を確認すると、一同は席に着いた。
ビビが夜食を持って戻ってきたからだ。
取り敢えずお茶を濁し一息ついたところに、ナミが口を開く。
「で?三人の作戦ってなんなの?変な事しないでよね」
「し、しませんよっ。失礼な!!三人の作戦というより…私がハンコックの頼みを聞いただけです」
「ええ、アインの力を借りたいとかで。それと、告白に行く流れは私、アイン、ナミ、リーシャの順番でしたが……」
「「私達は二人で一緒に行かせていただきます」」
ハンコックがアインに何を頼んだのか気になっていたナミとリーシャ。
其処にアインとたしぎから、まさかのダブルアタック発言が飛び出す。
「あ、あんた達本気なの!!?(仮にどちらかが選ばれでもしたら……)」
「「戦争になりそうですね……」」
「リーシャとビビの言うとおりだわ。余り良い作戦とは言えないんじゃない?」
スタジアムでやらかしたばかりの二人に心配そうに苦言を呈すロビン。
思わずリーシャとビビの声も重なる。
しかし、心配御無用です。と言い切る二人。
「私達は師匠の弟子なんです。今回の不祥事、これをまずは謝らないと…」
「ええ。先生の顔すら…まともに見れません」
「はぁー、反省してるなら良いんじゃない?でも次にやらかしたら分かってるわよね?」
「「は、はい…」」
ナミの顔が怖い。リーシャとビビは冷や汗を垂らす。
この様子なら大丈夫そうね。とロビン。
「ハンコックさんは……大丈夫でしょうか…」
「此処までしてあげたのです。後は後悔の無いよう撃沈するのみですよ、ビビ」
「アインさん!?そんな言い方はひ、酷いです!」
「ははは。冗談ですよ、冗談(棒」
一体ハンコックに何をしたのだろうか……
〜〜同時刻。ナツメの部屋〜〜
「ナ、ナツメ///」
いつもの女帝からは感じられない、どこか弱々しい声と共に扉がノックされた。
ガタガタッ!ガゴン!
何やら騒がしい音。そして部屋の扉が開くと…
「よ、よおハンコック!よく来たな!!は、入ってくれ」
何故か挙動不審のナツメ。その姿を見て只々頬を染めるハンコック。
互いにオロオロしながらソファーへと腰掛けた。
「な、何やら騒がしかった様じゃが///…部屋でも片付けておったのか?///」
「…お…おい、何で隣なんだ。普通は向かいに座るだろ……」
「よ、良いでは無いか///…わらわとナツメの仲じゃ///」
(ま、まあいいか。さっきの"アレ"で今はマトモに顔を見れん)
さっきのアレとは勿論ロビンの一件である。
心の中で少し時間をくれ。と謝るナツメ。
互いに触れるか触れないかの距離に腰掛けた二人。
暫しの沈黙が訪れた。10分後、落ち着いたのかナツメの方から声をかける。
「ふぅ……すまん、ちょっとテンパっててな〜。落ち着くまでに時間がかかった」
「そ、そうか///……ナ、ナツメ!何か気がつかぬか?」
「ん?何かって……ん?…………んん!?」
10分もの間、マトモにハンコックの姿を見ていなかったナツメ。
声を掛けられたことにより、彼女の方に視線を送ると、ようやく気が付いた。
だが間違いでは無いかと自分の目を何度も擦る。
女性にこんなこと言うのはナンセンスだろう。
分かってはいたが、思わず口に出してしまう。
「な、なんかお前…いや、間違ってたらすまねぇ。わ、若くなってね!?」
そう。見た目が完全に若返っている。
見間違えじゃ無いだろう。だが、具体的に12年ほど若返った様に見える。
「ど、どうじゃ?今のわらわは20もいかぬ姿なのじゃが……」
「や、やっぱりそうか…待てよ?……あ!アインか!あ、あいつにやられたのか?」
仲間に能力を使う事はこの一味では禁止している。
まさかまた暴走して!?そう思ったナツメは部屋を出ようと立ち上がるが…
「ち、違う!妾が頼んだ事。アインは無実じゃ」
「頼んだって…何でこんな事したんだ?」
ナツメの困った様な表情を見たハンコックは察した。
あぁ。これでも響かぬか…妾は……
そして暗い表情を浮かべ口を開く。
「初めて会うた日の事を覚えておるか?」
「あ?当たり前だろ。ランを助けて九蛇の船まで送ったんだ。ははっ、懐かしいな。随分前だ」
「そうか……妾は…そなたが船に来る少し前に姿を捉えておった」
「え?そうなの?」意外といった声色をのせ、酒を手渡すナツメ。
勿論白酒だ。
グラスに浮かぶ自身の顔を見つめながら"酷い顔じゃな"と彼女は呟く。
そして、彼女は酒を一口で全て流し込むと、感情を乗せた声で話を続けた。
「っぷはぁ!妾は!ひと目見た時からっ!そなたを好いておった!ナツメが海軍に行ってからも!本当は行きとうなど無かった!そなたが居たからじゃ!顔を一目見た時どれ程嬉しかった事かっ!」
此処でハンコックの瞳が潤み、その美しい頬を涙が濡らしていく。
「三年ぶりにそなたが戻った時もじゃ……飛び跳ねる程嬉しかった。アラバスタでの2年半も……妾がナツメの事を思わなかった日は1日たりとも無い。じゃが、時は立てども一向に振り向いては貰えぬ。分かっておった。妾の独りよがりじゃと……羨ましかったのじゃろうな……この一味は皆が"若い"……何が言いたいかと言うと…妾のただの嫉妬じゃ。気にするな」
「ったく……アホかお前は!」
「いっつ!……な、何をするっ!」
ナツメは見当違いも甚だしいと、ハンコックのおデコにデコピンをかます。
そして、ソファーに腰掛ける彼女を抱き上げた。
「な、な、な、ナツメ!!な、何じゃいきなり!///」
「今からアインの所行って戻してもらってこい。話はそれからだ」
「わ、妾の姿がそこまで気に入らぬのか?」
「か、可愛いに決まってんだろ!でも俺は本当のお前と話がしたいんだよ。ほれ、さっさと行った行った」
(か、可愛いと言われた………///)
〜〜十分後〜〜
ナツメの部屋に戻ってきたハンコック。
「うん!やっぱりお前はそうでなくちゃな!!」
「はぁ!はぁ!こ、これは短時間で繰り返すものでは無いな………ふー」
汗をかいている彼女を見て、夜風に当たろうとテラスへ出る二人。
格子に寄っ掛かるナツメと、向かい合う様に佇むハンコック。
月の光に彼女の汗が照らされ、妖艶な雰囲気を漂わせていた。
「クククッ。実を言うとな、お前を初めて前にしたあの時、俺は籠絡されそうだった。その後も、海軍に行くまで俺は……お前に飯を食わせて貰ったり…お前と向かい合うたびに理性と戦うのがきつかったんだぜ?」
「な!なんじゃと!?くっ!あの時…恥ずかしがらずに押し倒しておけば……」
「ははは!ったく、お前はブレねぇなハンコック」
「わ、妾は本当にナツメの事が愛しくてたまらぬ……もしあの映像の様に……そなたが居なくなってしまう事があれば……妾は耐えられぬ」
「そりゃ俺もだ。お前達の一人でも俺の前から消えちまったら…俺は自分がどうなっちまうか分からねえよ。だから、それが起きない為のウロボロス海賊団。だろ?ロビンに聞いたよ。お前にも約束する。お前達を置いて死ぬなんて事は死んでもしねぇ!」
「ふふっ…面白い言い回しじゃな。約束じゃ。この想いは妾の一方通行でも構わぬ。だから……「何勘違いしてんだ?」な、ナツメ?」
「俺も、お前達と同じだハンコック。だからそんな悲しそうな顔すんなよ」
「わ、妾と同じじゃと?……な、ナツメ…」
僅かに震えるハンコックの両手を包み込む様に取り、ナツメは満面の笑みを見せ、こう言った。
「おう。俺もお前が大好きだ」
「だ、"大好き"と言われた!はぁぁあ………///(これが結婚!///)」
思わずナツメの胸の中へと寄りかかる様に倒れるハンコック。
それをナツメは優しく抱きとめた。
長年の想いが届いたのだから、彼女にとってこれ程嬉しい事は無い。
まるで一枚の絵の様な……倒れる時も美しい。
まさに世界一の美女。ナツメはそのまま柵にもたれかかり、膝枕をかます。
暫くの間、二人は海風に浸り続けるのであった。
ハンコックの日記。
その夜の、翌日を書いたページは、こう始まっていた。
《妾は今日という日を生涯忘れる事は無い……》
予想通り長くなりました。
ONE PIECE要素薄めですがお許し下さい。
アイン、たしぎ、ナミ、リーシャは次回ですね。
お楽しみに。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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第17話〜問題児の覚醒イベント〜
何故こんな中途半端に更新が止まってしまったのか。
書溜めが全て消えたからでございます。
もう一度同じ話を書こうとしても中々上手くいかず、ただ、未だに評価や見てくれている方本当にありがとうございます。
前のような頻度とはいきませんが、ストックは出来ました!
これから再びよろしくお願いします。
ドラゴン・ゲート号の船内、甲板から階段を二階層程下り、通路を奥へ進むと見えてくる一つの扉。絡み合うように彫られた二頭の竜はまるで今にも動き出しそうなほど精巧に彫られている。
だが、猛々しさとは裏腹に、通路を満たす神聖な香りは、訪れた者を幾らか癒してくれる効果が有るようだ。
先程から扉の前で何度も深呼吸を繰り返す二つの影。船材の効果を知っているのか定かでは無いが、一刻前の酷い有様に比べれば、かなり落ち着いたと言えるだろう。
"【宝樹・アダム】の香りは心を落ち着かせる効果がある"と噂されていた為、これがその証明になったのではないだろうか。
「すぅーはぁ……アイン、準備はいいですか?」
「うぅ、やっぱり緊張しますね……私達は想いを上手く言葉にするのが苦手なんです。二人で押し掛けるのは余りいい結果を生まないかもしれませんよ?」
「アインが弱気になるのは珍しいですね。特攻隊長ともあろう者がらしく無い。ぶっちゃけキモいです。でも、このまま扉の前でモジモジしていては埒があきません。いい加減覚悟を決めましょう」
「さり気無くシャツのボタン緩めてる貴女に言われたく無いです。いつからお色気担当になったんですか。壊滅的に似合っていませんね、相当キモいです。自覚して下さい」
「ふふふ……アイン。貴女こそスカートなんか履いてどうしたんですか? 脳筋の貴女がそんなに動き難い格好をするなんておかしいですよね? 師匠の前で正座する状況を想定してきたんですよね? 浅はか過ぎて笑えます」
常識人?であるリーシャやナミはここには居ない。その為、問題児二人の不毛な言い争いが続くのは当然と言えた。
「はっ!! 私とした事が……言い争いは何も生み出しません。冷静になって下さい。もう一度確認です。いいですかアイン、我々はビビ達と立場が少し違います。先ずは謝罪からというのを忘れないで下さい」
「たしぎがそれを言うのおかしく無いですか!? ま、まあ今は優先すべき事がありますし、気を取り直して……スゥー…ハァー」
よし!と気合いを入れ直すアイン。その手を扉に掛けようとーーー手を伸ばすもーーー引っ込める。
「た、たしぎ、やっぱり貴女が開けて下さい」
「え!?最初に決めたでは無いですか!! 退出する時は私、今扉を開けるのはアインの役目です!早く開けて下さい。このままでは朝になってしまいますよ?」
「ぐぅ……」
「だぁぁぁあああ!! テメェらいつ迄ドアの前でグダグダやってんだ!!気が付いてんのに一時間も待ってる俺も俺だがいい加減にしろ!!」
「ししし師匠!?」
「先生っ!?」
そう、現在この二人が居るのはナツメの私室前。いつ迄経っても入る決心がつかず、実は先程の不毛なやり取りも27回目を数えていた。
何やら扉の前が騒がしいーーーああ、あの二人か。と、ナツメは気が付いていたのだが先日起こした騒ぎの件もあり、心の準備も必要か。なんて考えが過ぎった為、放って置いたらこの有様である。
「よくもまあ同じやり取りを何回もするもんだ……ほら、サッサと入った入った」
「「ううっ……し、失礼しますぅ……」」
普段の賊を掃討する荒々しい一面は影を潜め、ハモりつつも叱られる子どものように萎縮するアインとたしぎ。これもまた家族の前でしか見せない微笑ましい一面だ。
二人はナツメに言われるままにソファーへ腰掛ける。
「そう言えば、お前らって酒飲めんだっけ? ミルクか酒くらいしか出せねぇんだが」
「は、はい!普段は口にしませんが海軍で飲まされましたので」
「あ、私もお酒で大丈夫です!」
そうか、こんな些細な事まで知らなかったんだな。自分で質問しておいて、若干落ち込みつつグラスに酒を注ぐ。それをヒエヒエの力で軽く冷やし二人へ手渡す。そして対面側のソファーへと腰掛けた。いよいよ本題だ。
「ーーんぐっ……ぷはぁーー……ん? 何だよ、飲まねぇのか? 部屋入るだけでアレだったんだ。言い難いなら酒の力借りんのも手だと思うぞ?」
「い、いえ。こればかりはお酒の力を借りるわけにはいきません」
「……アインの言う通りです。師匠、先ずは」
二人の表情は緊張していると言うよりも、何処か思い詰めた様子が伺える。
(む。相当言い辛そうだな。俺なんかやらかしたか?)
張り詰めた空気は5分程の静寂を経て再び動き出す。だんまりだった二人が突然同時に立ち上がったのだ。いよいよ分からない。と少しばかり身構えるナツメ。そしてーーー
ーーーーーーすみませんでしたぁ!!!!ーーーーーー
俺がこの世界に来て少なく無い月日が流れて来た。初めはシャボンディ諸島のチンピラ三人組だったか、中々のモノだったと記憶している。それから賞金稼ぎとして生活する中で、この光景は正直何度見たか分からない。だが……未だ嘗て、これ程の【土下座】を見た事が有るだろうか……いいや無い。断言出来る。これは最早芸術の域。
ピッタリと息の合ったダブルアクションが更に芸術性をーーーーーー
「ーーーって、そうじゃねぇ!!」
「「え?」」
「あ、ああ何でもねぇよ。いや、それよりも何の真似だ? 取り敢えず頭を上げてくれないか?」
何かとんでも無い事を仕出かしたのなら未だしも、身に覚えのない家族の土下座は気分が良いものではない。このままでは話も出来ないため頭を上げてくれと促すも、微動だにしない二人。
「………師匠……我々は本来、こうして顔を向ける資格すらありません。大切なモノを守る為と教えられた誓いを破り、剰え…その力をを家族に向けたのです」
「先生!!聞いてください!!元はと言えば私が暴走して仕掛けたのが始まりです!!たしぎは悪く無いんです。私が……それに先生の胸を…くっ……ぅぅ…ごべんなざいぃぃ」
成る程。蓋を開けてみれば単純明快、二人はウエディング島での事を気にしていたのだ。
アインに至っては大泣きしている。いつも天真爛漫で元気が取り柄の彼女が大泣きする姿など初めて見たナツメ。それ程までに思い詰め葛藤していたのだろう。たしぎも肩が震えている。
こりゃあ、単純に"許す"って言葉だけじゃ納得しないか。
下手をすれば一味を抜けるなんて言い出しかねない。
「まぁそうだな。お前達は俺の教えを破り、せっかく身に付けた力を家族に振るった。あれだけ血反吐を吐いて身に付けた力をだ。初めは…お前達の中に譲れないものが有るのを感じたから傍観していたが、まぁ【奥義】を打ち合うのは流石にアウトだったな」
「はい……」
「俺がいる時点でそんな事は絶対に許さなかったが、仮にだ。アイン、お前の技があの時たしぎに届いていたら彼女は間違い無く死んでいた」
「つっ!!……その通りです……」
「たしぎ、お前は途中からアインが暴走してるのに気が付いてたろ。それに敢えてのった。違うか?」
「!! は、はい……彼女は気のコントロールが完璧ではありませんでした。奥義を発動する際、込めすぎた気が暴走してるのに気が付きました」
「"篠の五月雨" は上手く当てれば気の流動を封じ込める上に戦闘不能に出来るからな。お前の判断はある意味間違ってねぇ。だがーーー」
未だ土下座を続ける彼女達の正面へ腰を落とすナツメ。それに気が付いた二人は思わず頭を上げる。そして二人の視界に映ったのは……たしぎに右手、アインに左手と、両手を前に突き出しニヤニヤと悪い顔をするナツメの姿。
「ひゃんっ!!」
「んきゃっ!!」
覇気を纏ったデコピンをオデコに貰った二人は、余りの痛さにゴロゴロと転げ回る。
その様子をカカカッ!と満面の笑みで眺める船長。
「いっひゃぁぁぁい!!ひぇんひぇい!?何しゅるんですか!!」
「いったぁぁぁあっ!! 痛い痛いぃぃ!!痛すぎますぅぅ! 師匠!? 修行で受けた打撃よりデコピンの方が痛いってどういう事ですか!?」
「罰だよ罰、コレで今回の件は終わりだ。お前達の反省は充分に伝わったし、そもそも俺達は海賊で有る前に家族だろう。至らない部分を支えるのも家族。アインも聴いてたろ? たしぎはお前を止める為に敢えて挑発に乗ったんだ」
「で、ですが……」
「お前の奥義を躱せる確率は半々って思い至ったんだろ。つまり身を呈してお前の暴走を止めようとした。あの場にはハンコックも居たからな」
「……では何故…たしぎにも罰を?」
「己の力を過信したからだ。お前達は気の扱いに関してまだまだ未熟、ヒヨコみたいなもんだからな。実際は半々どころじゃ無い。10%って所だな…たしぎがあの場で取るべきだったのはハンコックを連れて離脱、俺を呼びに行くってのが正解」
「10%!? そ、そんな。師匠、お言葉ですがそこまで私はアインに劣っていると?」
「そういう問題じゃねぇ。あの時のお前は少なくとも"篠の五月雨"を使える精神状態には至っていなかったって事だよ。棗の奥義を甘く見過ぎだ、馬鹿弟子ども」
「で、でも先生、唯のデコピンが罰では軽過ぎませんか? 確かに凄く痛かったですが……」
同じく。と頷くたしぎにーー暗黒微笑ーーいわゆる悪い顔を貼り付けるナツメ。
「アホか、唯のデコピンのわけないだろ」
そう言って手鏡を彼女達の顔が映るように翳す。
そこには[只今反省中ーー御免なさいぴょん]の文字が痣としてくっきり浮き出ていた。
「「んなっ!?」」
「くっ…くくくくくっーーーハッハハハハ!! 超ウケる!! ばかみてぇだぞ!!うははははっ!あーーー腹いてぇ!!」
「師匠!?乙女の顔になんて事するんですか!! こ、こんな痣が残るならボコボコにされた方がマシですぅ!! 今直ぐ龍掌で消して下さいぃぃ!」
「うわぁぁあん!!これじゃぁ先生のお嫁に行けないじゃないですかぁぁぁあ!!」
ゲラゲラと笑い転げるナツメに消して消してと詰め寄る乙女二人。無情にもそれは叶わず、一週間後に自然と消えるらしい[罰]を甘んじてウケる事になった。
一頻り気が済んだのかソファーに腰掛けるナツメと、不服です! とリスのように頬を膨らませるも着席するアインとたしぎ。だがその表情に先程までの悲壮感は見られない。
「まぁもう大丈夫だとは思うが、今後はこう言ったことがないようにな」
「「はぁい……」」
「んじゃ次はナミだったか?呼んできてくれ」
そう言って見送られる二人はどっと疲れた様子で肩を落とし退出する。お互いに顔を向かい合わせると、虚ろな表情で口を開くのはたしぎ。
「はぁ……私は疲れたのでこのまま休みます。アイン、貴女が呼びに……ん?……」
「えー、たしぎが行ってき………あれ?」
「「……私達、何で部屋を出てるんですか?」」
二人を見送りグラスに酒を注ぐナツメ。問題児二人を一度に相手した疲れを身体に感じながら煙草に火をつける。
「フゥー……てか意外だったな。てっきり他の三人みたく告白されるもんだとばかり思ってたんだが。て事は俺の片想ーーー」
「アホかぁぁぁぁぁあああ!!」
「先生のバカぁぁぁぁぁぁあああああ!!」
「ーーーーーーファッ!?」
「何で私達部屋出てるんですか!!先生幾ら何でもあんまりですよぉ!!」
「な、ななな何追い出してくれちゃってるんですか!! 師匠は何処までアホなんですか!?全く!!鈍感もここまで来ると理解不能です!!」
「おおお落ち着けお前ら!ななな何言ってーーー」
突然の事態にあたふた慌て出すナツメ。アインはソファーに項垂れオイオイと涙を流し、たしぎは追い討ちをかけるようにナツメの至近距離で不服を申し立てる。
彼女達のオデコに浮かんだ反省の文字が非常にシュールな光景であった。
そして……神の悪戯か、はたまた彼女の計算か。師匠!聴いてるんですか!? と、迫るたしぎのシャツのボタンがーーー
「え?」×3
ーーー勢い良く弾け飛んだ
「たしぎ……幾ら何でもあざと過ぎませんか?…ここまで計算してたなんて」
「きゃぁぁぁあああああ!!ちちちちちがうんですししょう!! てか見ないでください!!」
その場に胸を隠すようにしゃがみ込むたしぎだったが、何の反応も見せないナツメが気になりチラリと顔を上げる。
「そ、その…下着くらいは付けよう。な? は、ハンコックじゃ無いんだから」
意外と冷静だったナツメ。侮るなかれ、伊達に女ヶ島を生き抜いたわけでは無いのだ。
一生の不覚……と気落ちするたしぎをアインが何とか立たせ、再びソファーへと腰掛ける三人。気まずい沈黙を破ったのは意外にもナツメだった。
「ふぅ、ちょっとアクシデントはあったがーーーって、こらソコッ!さり気無くボタンを外すな!!」
アインから「チッ」と舌打ちが聞こえた気がするが、恐らく気のせいだろう。
「まぁ、お前達が戻って来たって事は話がまだ終わってなかったって事だよな?」
「ええ。師匠、私達から大事なお話があります。聴いていただけますか?」
「まぁ待て。おおよそ予想はついてんだ。ほら、こう何度も女の口から言わせるのも……いい加減情けねぇだろ? 先ずは俺から言わせろよ。お前達の話はその後で聞く」
「先生…ま、まさか」
「あああ、アイン!おおおお落ち着きなさい!!まままだそうだと決まったわけじゃ」
「いや、たしぎ。お前が落ち着けっての。こんな事を言えば[優柔不断][最低クソ野郎]とか言われるかもしれねぇが、正直な気持ちだ。嘘はつきたく無い。ーーー俺は…俺はな、お前達の事が大好きだ。家族として、仲間として、そしてコレは今日気付いたんだが、異性としてもお前達の事が大好きだ。愛してる。ゆくゆくは……その、一緒になりたいな。と、思ってたりもする」
ナツメの告白に静まり返る室内。
やはり無理があったか…散々考えたがこの答え意外見つからなかった。
まぁこいつらの気持ちもまだ聴いていない以上、俺の独りよがりになってるのかもしれんが……後々言わずに後悔するよりはマシだ。
何の反応もないことから撃沈したと覚悟したナツメ。だが
「「グッフォぁぁぁ!!」」
「え!?ちょっ!!オイ!!二人ともどうしたんだ!?」
「うわぁぁぁあああん!やりました!やりましたよ!たしぎ!!」
「ゆ、夢じゃ無いですよね……?し、師匠がわ、わた、私達の事を女性として」
「ーーーあ、ああ。愛してる」
「「ゴファッぁぁ!!」」
「怖い!?」
まるで何処ぞのコックのように放物線を描く乙女の鼻血。それを躱しつつ出血多量で倒れないように龍掌をあてがうナツメ。
かなり息が荒いが何とか二人を落ち着かせる事に成功する。
「ふ、ふいはへん師匠……ふぅ、心の準備が出来てませんでした」
「み、右に同じくーーーでもっ、でもっ!!たしぎ!!」
「はい! 師匠、覚悟はいいですか?」
顔を見合わせ何かを確認し、頷く二人。
「か、覚悟?なんか嫌な予感がするぞ……おい!こっち来んな!!ちょっ!!」
ーーーーーー師匠ぉ!/先生ぇ!私もーーーーーー大好きですっ!!
「ゴファッ!!くっ苦しっーーーーは、ははは。ああ、あんがとよ」
〜同時刻〜
一度顔を出しに訪れたが、直ぐに自室へと戻っていったハンコックを除き、この場に居る者達は問題児二人を今か今かと待っていた。何かしらやらかすのでは無いかと皆がハラハラする中、痺れを切らした者が約一名その口を開く。
「ちょっと!!幾ら何でも遅過ぎじゃない!? さっきのハンコックもそうだったけど…何であいつらは揃いも揃ってぇぇ!」
「す、すみませんっすみませんっ」
「ビビ、何でアンタが謝んのよ!悪いのはあいつらでしょ!?」
「ナミ、落ち着いて下さい、ビビが怖がってます。それに、こう言う時こそ余裕があるか無いかで差が生まれるものですよ?」
「リーシャの言う通りよ。気持ちは分かるけど待つのも女の仕事って言うでしょ?」
「むぅぅ。分かったわよ。はぁ…ロビンみたいに余裕がある女にならなきゃね〜。てか何でリーシャはそんなに余裕なのよ」
「ふふっ。私はお兄様の妹でもありますから。出来る女なのです」
そう得意げにサムズアップするリーシャ。
「はいはい、確かにアンタは出来る女よ」
「ナミさん可愛い……ひゃっ!に、睨まないで下さいぃぃ」
「たく、ビビに言われると嫌味に聞こえるのよね〜」
「あ、ひゃんっ!な、ナミさん……く、くすぐったいですぅ」
麗しき乙女達の戯れも、元はと言えば一人の男を想う集まりなのだ。
これだけの美女の人生を一纏めにするタラシっぷりは称賛に値するが、これで彼女達を幸せに出来なれなければナツメはきっとロクな死に方をしないだろう。
「たっだいま帰りましたぁぁぁ!!」
「あぁ…師匠……夢じゃ無いんですね。ふふふ…うふふっ…………あ、次はナミの順番ですよ。師匠がお待ちです。私はこれにて失礼します、でわーーー」
ーーーーーー頑張って下さい。そう言いながら部屋を後にしようとするたしぎだったが
「ちょっと待てぇぇぇぇええええ!!」
遅くなった事に何の説明もなく退出しようとしたたしぎをゲンコツでしめるナミ。ついでにアインも同罪である。
「いったぁぁぁ!ちょっとナミ!痛いですよ!? 今日これ以上頭部にダメージ受けるとバカになるじゃないですか!」
「ナミ!?何するんですか!!アインはまだ分かりますが副船長である私までバカになったら一味が崩壊しますよ!!?」
「うっさい!!アンタ達元々バカでしょ!!」
「「ナミが酷い!!」」
「あら、ふふっ。二人とも…そのオデコはどうしたの?」
(あっ…ロビンは流石ですね。私も気にはなっていましたが敢えて触れなかったのに。大方、謝り過ぎたとかで空回りでもしたのでしょう。お兄様の気が込められているのなら私でも治せますが……まぁ必要ありませんね。どうせ自業自得に決まってます)
「ロビン…これには深い深い訳があるのです」
「ううっ…これには触れないで下さい……」
「どーせバカやったんでしょ?アンタ達バカなんだもん」
「「さっきからナミが酷い!?」」
「私を待たせた罪は重いのよ? まぁ今回はこの辺で許してあげる。500万ベリー、二人にツケとくから」
「「そんなぁ……」」
「ナミはスムーズにお願いしますね。流石に眠くなってきました……」
「はいはい、分かってるわよ。じゃ、行ってくるわね〜」
[出来る女]になる!とやらの目標は約2分で挫折したナミであった。
少し文章の書き方を変えて、読まれた方は違和感があったかもしれません。
その為長くなってしまい、ナミとリーシャ回は次回になります。
+αで次回は皆さんが大好きなあの方が登場します。
現在同時進行でリメイクを執筆中です。
ある程度追いついたら投稿しようかと思います。
どのような内容でも構いませんのでコメント頂けると励みになります。
これからもよろしくお願いします。
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第18話〜白金と黄金〜
ナミ、リーシャ回です。
一万字と長いですが、どうかお付き合いください。
「…こ……は…柔らかい……グゥ………」
「ナツメの寝顔って初めて見たかも……イケるわねーーーじゃ無くてっ!! アンタ何寝てんのよ!!!!」
「ーーーグヘッ!! ………いってぇ……ん、………あ? ナミ!? ここ何処だ!?って俺の部屋かよ。悪りぃ寝てたみたいだわ」
「何の返事も無いから勝手に入っちゃったわよ。あーもぉ!この私が控えてるってのによく寝れたわよね?信じらんない」
「そういう事は自分で言うなよ……」
ソファーにもたれ懸かりいつの間にやら意識を手放していたナツメ。その前に仁王立ちするのは海賊団・ウロボロスが誇るーーー凄腕航海士のナミ。
「ー"可憐で美しい"ーが抜けてるわよ。ほら、起きた起きた」
「平然と心の声読むの辞めろっての。うわっ、分かった!わーったから」
「取り敢えず座ってろよ」とナミを座らせ席を立つとキッチンへ向かうナツメ。
船長室に限らず、この船にはメインの厨房の他にも各私室に簡単な調理設備が揃っている。
これはナミの要望によるもので、日々、一味のメンバーは己の女子力を磨いているのだ。
船長室に関してはオマケで付けられたものだが。
ナツメは簡単なホットカクテルを作ると、それをナミに手渡し対面へと腰掛けた。
「ん……あ、美味しいし温かい。これ…ベルメールさんのミカンの香りがする」
「ああ。お前好きだろ? 甲板に植えてあるミカンをちょっと拝借してな。リキュールにしたんだ」
「そ、そう。勝手に使ったのはいただけないけど、まぁいいわ。ありがと」
「ロビンが言ってたんだけどな、柑橘系の香りは心を落ち着かせるらしいぞ。今のお前にはピッタリだな、ははっーーグエッーー何すんだよ!!」
「うっさいわねぇ…アンタはいっつも一言多いのよ」
「ったくーーーかかと落としはねぇだろが」
「……………………」
「あんだよ、今度はダンマリかぁ? 」
そこから数分間の沈黙。先程までの威勢は影を潜め、両手で包み込むように持つホットグラスは時折彼女の口元へ運ばれる。そして彼女の双眸はジッとナツメを捉えたまま離さない。あまり見つめられるのに慣れてない為、時折視線を逸らすも事態は進展を見せず……
《らしくない》
何とも可愛らしいではないか。ものの例えで"黙ってれば可愛いのに"何て表現が有るが、こうも当て嵌まる人物は中々居ない…と言うか違和感が凄い。
一味のツッコミ役? 兼ムードメーカーの彼女。金に目が無く、それ絡みだと時折無茶をしたり、無茶苦茶な事を言うこともある。だが仲間思いで情に厚く、好きな事には全力で取り組む性格だ。アーロンの支配から解放されてからは、より一層生きる事を楽しんでるようだった。
何かと表情、感情の変化に忙しい印象があるが、ナミがこんな表情を見せるのは珍しい。
思い当たる節はーーー先程のロビン、ハンコック。
「……はぁ、お前もかよ……あのなぁ、心配してくれんのは嬉しいが、考えてもみろ。俺が死ぬってよ、本気で想像出来るか? 」
「あぁーもう! こんなの私らしく無いってのに! 分かってるわよ、ナツメが強いってことくらい……でも、あんなの見せられて黙ってられるわけ無いでしょ!?」
「お、おい。ナミ?」
「私は航海士なの! 戦うなんて出来ないし、アンタを傷付けるような敵の前に立ったって瞬殺されちゃうのが関の山だもん! 正直、アラバスタでの2年間を後悔しだしてる……何で戦う力を身に付けなかったのかって。私だって助けて貰ってばっかりじゃ……戦えるようになりたいの……」
ナツメは「無い」と言い張るが、あの光景はきっといつか訪れる。その時に、ただ黙って見てることしか出来ない自分が許せない。と、ナミは大粒の涙を流す。
此処まで感情を表に出すのはアーロンに絶望を突きつけられた時以来だ。
「ウチのクルーが過保護過ぎて辛い……」
「………うっ……うぇえっ……ぐすっ…………………は、はぁ?」
「あのな、ナミ。人間ってのは向き不向きがあるんだよ。ウロボロスに関しちゃ戦闘要員は充分に足りてる。航海士ってのはーーお前の様な一流になると尚更だがーー変わりなんか居ない。クククッ……ナミがウチに入るまでの航海は散々だったんだぜ?それこそ何度死にかけたか」
「……そうなの? ナツメの能力で何とでもなりそうじゃない……」
「そんな訳あるか! 俺は戦闘以外"からっきし"だからな、海に対する知識も技術も持ってねぇ。食料だって島に着かなきゃ手に入らん。ぶっちゃけお前が居ないと、この一味はマトモに冒険なんか出来ねぇよ。餓死不可避だ!ハハハッ」
「あんたねぇ……ふふっ。そうね!私が居ないとあんた達何も出来ないんだから!感謝しなさいよね!?」
「すーぐ調子乗るーーーまぁそれでこそナミだ。 お、おお俺が…ああああぃした女がヤワじゃ困るんだよ」
「………ふーん、へぇ〜何?なんて言ったの? 今。もう一回言って?」
「は、はぁ!? チッ、何も言ってねぇよ。お、おいこっち来るなって!」
成る程ね〜、ロビンが言ってた通り女に耐性が無いってのは本当みたいね。ナイスよロビン、コイツにマウント取れるなんて滅多に無いんだから!! こうなったら行けるとこまで行ってやるわ。
ナミ自身、男性に慣れてないのは棚に上げ、此処ぞとばかりに擦り寄る姿は、宛ら女豹の様である。
「お、おおお前、さっきまで泣いてただろうが!ちょ!胸!当たってるから!! 俺に凶器を向けるな!!」
「演技に決まってんでしょ。フフッ、私の"行き倒れ"を散々馬鹿にしといて見抜けなかったの? アンタもまだまだね……」
「……い、いかん………このままじゃ理性ががが」
全身を這うように密着させ絡ませるナミ。若干ヤケクソ気味ではあるが、此処まで来れば羞恥心など遥か彼方に吹き飛ばしたのか、唇を重ねる二人。ビビが見れば卒倒しそうな光景である。
ーーーーーー
「ふう、確かに面白いもん見れたわ。満足満足!」
「お、お前なぁ。んなもん何処で覚えたんだ」
「フィーリングよフィーリング! あんた以外にこんなことする訳ないでしょ?あ、あたしだって恥ずかしかったんだから……」
「本当かよ」
「ったりまえでしょ!!」
「いってぇ!ったく………最後はリーシャだったな……遅くなっちまったし寝てたら無理に起こさなくて良いからな」
「はいはい、多分起きてるわよ。それじゃあね〜〜、約束!忘れないでよね!!ーーーー世界最強何でしょ? 船長♪」
「……ああ。約束だ」
なんだかんだナミもそれなりに時間をかけてしまったが、後が控えている。
足取りは軽く、最後のクルーを呼びにナミはナツメの部屋を後にした。
♦︎
同時刻、四方を漆黒の壁が囲む殺風景な一室に別の意味で汗を流す二人が居た。
ここはドラゴン・ゲート号船内に設けられた修行場、修練場である。壁はナツメの【黒蜜】によって補強されている為に、ある程度の衝撃であればビクともしない。正方設計の部屋だが縦横20メートルの広さがある。
日中は主にたしぎ、アインの二人が修業として暴れまわっているのだがーーー
「ふぅ……流石ですねビビ、アレを躱されるとは思いませんでした」
「リーシャも凄かったよ! 能力者なのは知ってたけど、まさかあんな事が出来るなんて。それにアレってナツメさんと同じーーー」
「ーーー付き合ってくれてありがとうございます。そろそろ戻りますよ、"ナミが帰って来た"ようです」
ビビの称賛に若干食い気味で言葉を被せるリーシャ。その表情は何処か嬉しそうで、寂しそうで……ビビには詳しくは分からなかったが余り良くない事なのかもしれない。と、それ以上深く聞く事はしなかった。
「うん。そ、それよりも大丈夫?これからナツメさんに会うのに……」
「ええ、この程度の傷や痣はすぐに治せます。ビビもほら、此方に来て下さい」
見れば互いの身体はボロボローーーとまではいかないが、所々に出来た打撲痕や擦り傷は中々に痛々しい。少なくとも[非戦闘員]のリーシャには似合わない傷だ。
ビビの傷口を暖かい光が包み込む。
この二年、アラバスタでリーシャが習得した【氣】を使ったアンチエイジフィーリングだ。
「凄い……傷がどんどん治ってく……」
「そう言えばビビに使うのは初めてでしたね。兄様の【龍掌】とまではいきませんが原理は同じです。これもアイン、たしぎの習得した"棗流"なんですよ?」
「へぇ〜、そっか。リーシャは凄いなぁ……」
「へ?凄い? 」
キョトンとした顔でビビに首をかしげるリーシャ。
ーーー凄い? そうでしょうか……戦闘に関して言えばナミ以外には敵いません。
ーーー医療知識はハンコックに及びませんし、私がやっているのは所詮お兄様の真似事です。
ーーー料理にしても、この一味は皆が
「そんな事ないよ!」
「あれ?わ、私…もしかして口に出してました?」
「あのね、リーシャ。アラバスタでハンコックが言ってたでしょ? "妾もこう見て完璧では無い。無論、お主達もじゃ。人には適材適所がある"って」
「ぷっ……あはははっ、それはハンコックの真似ですか? あんまり似てないですね」
「もぅ!茶化さないの! ーーーリーシャは本当に凄いよ。元から器用だと思ってたけど、家事全般は何でもこなしちゃうし、治療に関してもそう。これもハンコックが言ってたんだけどーーー」
『医療を学べば学ぶ程、思い知らされる……あの兄妹は規格外じゃ。のぉ、本当にあの二人は血が繋がっておらんのか? 妾にはそうは思えぬ。兄の背中を必死に追いかけるリーシャの姿は、昔のソニア達を想わせるが……日が変わる度に思うのじゃーーー』
「"まるでナツメが二人居るみたいだ"って。私は最初その意味が分からなかったよ? 性格だって全然違うんだし、雰囲気は……何処と無く似てる気がしなくも無いな〜って思う事はあったけど」
「わ、私がお兄ちゃんに?」
「でもリーシャが戦えるんだって知ってから、不思議と二人の姿が重なって見えたの」
「それは……つい先程のことですよね?」
「う、うん。さっきの戦い方、スタイルは全然違うんだけど、まるでナツメさんと戦ってるみたいで……上手く言えないなぁ〜。ごめんね」
「何で謝るんです? ナミも言ってましたが、ビビは自分に非がないのに謝る変な癖があります。もっと自分に自信を持って下さい。"海賊女王"が聞いて呆れます」
「手厳しいなぁ……そんな所も似てるかも」
「何か言いましたか?」
「ーーーふふっ!リーシャも自分に自信持ちなよ!って言ったの!」
「……っ……わ、私はいつでも自信満々です! 」
「出来る女ですからね!だっけ?」
「もぉ!ビビ!怒りますよ!」
♦︎
「ーーー何してるんですか? ナミ……」
「ひゃぁっ!!り、りリーシャ!? いきなり起きないでよ!!ビックリするでしょ!!」
「寝てたつもりはありませんが……それよりも、その右手に構えた油性マジックは何ですか?それで私の顔に何をしようとしてたのか説明して下さい」
「ち、違うのよ? 別に何も……ね、ロビン」
「あら。『ほんっとリーシャって肌白いわね。こう白いと何か描きたくなっちゃうわ』って言ってたのが聴こえてたけど」
「へぇ。私の顔はいつから貴女のキャンパスに?」
「ロビンの裏切り者!? 無駄に上手いモノマネすなっ!!ーーーリーシャ〜? そう言えばビビが居ないみたいだけど〜」
「もう遅いので今部屋に送っている所です。そ・れ・よ・り・も!ナミ?」
「わ、悪かったってば! 私がそんな事するわけ無いでしょ?ーーーってアンタ今何て?」
「初犯、且つ未遂に終わりましたし、500万ベリーで勘弁してあげます。感謝して下さい」
「ちょ!私からたかろうっての!? 」
「ついさっきアインとたしぎから"たかって"ましたよね? これから私が何処へ向かうかお忘れですか?」
「うっ!」と後ずさりするナミ。リーシャが言いたいのはつまり、折半という事だろう。何よりも金を愛する元泥棒をカツアゲする少女。ナツメとの一件で舞い上がったテンションは何処へやら。軽率な行動を後悔する航海士であった。
「はぁ……降参よ、降参」
「ふふっリーシャ、貴女ナツメにどんどん似てきてるわね」
「ロビンまで……先程ビビにも同じ事を言われました」
「あ!それよ!リーシャ、ビビを部屋に送ってるってどういう事?」
「ナミには言ってませんでしたっけ……ケタケタの実。私の能力です」
「あ、あれ!? リーシャがもう一人!? いつの間に………分身の能力って事?」
「それだけじゃ無いですけどね。昔は数体が限界でしたがーーー」
リーシャの部屋を埋め尽くす勢いで突如出現する分身達。その光景にロビンも目を見開いていた。気が付けば、否。気付けなかったのだ。更に、驚愕すべき性能をリーシャは語り出す。
「この分身はこの場に存在しているようでしていない。そして確実に存在している」
「なに?どういう事?」
「ロビン、分身の一体に攻撃してみて下さい」
リーシャは分身を一体に留め、ロビンにソレを攻撃するように促す。
「いいの?」と再度確認を取り、徐に手に持っていた本を開くと、栞として使っていた短剣を分身に向け投げた。だが……
「っ……!!な…んで…」
ナイフは分身をすり抜けた。そしていつの間にか分身の背後に現れていた"もう一人"のリーシャがナイフの柄を掴みーーー気が付けば更にもう一人の分身リーシャ。ロビンが投げた筈のナイフをロビンの背後より首筋に突き立てているではないか。
瞬時に4体に増えたリーシャ。分身を全て消し再び口を開く。
「……何が起きたのか理解出来ましたか?」
「い、いつの間にか分身が増えてたし……気が付いたらロビンが」
「私にもさっぱり。見聞色でも感知できなかった……ナイフをすり抜けたから存在しない幻影だと解釈したけど、それだと後ろに現れた分身がナイフを掴めた説明がつかない。それにーーー」
「あの分身は此方が攻撃する時には実体化し、敵意を感じた攻撃はすり抜けます。そして分身が触れたものは寸分違わず複製出来ます。と、言っても制限はあるんですけどね。そしてーーー」
ーーー分身は目視でしか認識することが出来ない。
「はぁ!? そんな都合が良い能力、反則じゃない!」
「ロビンの見聞色でも感知出来ないとなると、お兄様でも難しいかもしれませんね。ですがナミ、この能力はリスクがあるんです」
「り、リスク? それって」
「ふふっ、秘密です。ーーービビも送り届けましたし、私、お兄様の所に行って来ますね!では後程」
ロビンもリスクについて気にはなっていたが、追求するようなことはしなかった。アレだけの能力なのだ。リスクがあるのは当然だろう。と
「は!?き、消えた!? ロビン!リーシャがーーー」
「ええ。まだ他にも能力があるのね」
「はぁ〜、ナツメに続いてリーシャまで化け物じみてきたわね……ったくあの兄妹は」
ーーーナミは気が付いていなかったみたいね……リーシャが最後に一瞬だけ見せた目……あれは間違いなくーー【龍眼】
♦︎
「……お兄ちゃん………お兄ちゃん!!!」
「うぉ!っ、はは!リーシャ、よく来たな。つーかマジですまん! こんなに待たせる事にーーー」
「いいの、いいの! むぅ〜っ!お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!」
「おお!?ど、どうしたリーシャ、何処にもいかねえよ。ほら、何か飲むだろ?」
部屋に入って早々、ナツメの姿を視界に入れたリーシャは勢い良く兄に飛び付いた。
そこに先程までの仰々しさは無く、純粋に兄へ甘える妹の微笑ましい光景だ。
足をパタパタと動かし、グリグリと兄の腹部へ頭を擦り付けるリーシャ。そんな愛らしい妹を暫し撫でてやるナツメ。
五分ほどそのやり取りは続き、満足したのか自分のした事を思い出したのかーー恥ずかしいーー耳の先まで真っ赤に染めた少女の姿は心情を容易に汲み取れる。
思わず顔を伏せる妹を尻目に席を立つナツメ。
真新しい金の装飾が施されたティーカップに注がれるのはーーリーシャにしか出さない特性の紅茶だ。
丁寧に入れた紅茶を未だ俯いた少女へ手渡し、自らもソファーへと腰を落ち着かせる。
「ふわっ!?お、お兄ちゃん……いいの?」
「何遠慮してんだよ、こんな時くらい甘えてもバチは当たんねぇだろ? そんな神が居たら俺がぶっ飛ばす!」
「ふふふっ、お兄ちゃんは世界最強だもんね〜!」
ナツメの膝の上でプラプラと足を振りながら、リーシャは満足そうに兄を見上げていた。
愛する妹の、心から幸せそうな笑顔にナツメも笑みで返す。だが、その奥に……一瞬だったが、僅かに除いた[陰]を"棗"が見逃すはずも無く。
「なぁリーシャ、お前……何があった」
「お兄ちゃん! 」
ナツメの元から飛び降りるリーシャ。手の中からリーシャが離れていく感覚。僅かにナツメの手を掠めた余韻は何処か淋しさを感じさせた。
兄の正面へ身体を向け、そっと瞼を閉じる妹。そしてーーあるはずの無い[ソレ]をゆっくりと発動させる。
リイィィィィィィィィィーーーーーーーーーン
「……バカな!……龍眼……だと」
「ふふっ。そうだよ、……ナツメと一緒」
何処までも見透かされたような感覚を覚える黄金の瞳。瞳孔は縦に割れており、呼吸に合わせて僅かながらに収縮を繰り返す。棗だけが持っていた能力の為、自らが見るのは初めてになるが、間違い無く妹の双眸に収まるソレは龍眼であった。
掛け替えのない家族ーー愛する者達と出逢わせてくれた未来を見据える瞳。
驚きはした。驚きはしたが、今ナツメの心を疑心させるものはそこでは無い。
妹は、リーシャは今ーー
「お、お前、リーシャ……だよな?」
ーー今確かに俺の事を[ナツメ]と
気が付けば龍眼は解除され、普段の……可愛らしい妹の瞳に戻っていたが。
「私が呼ぶのは可笑しい……かな……ナツメ」
「っ!!」
こいつは……本当に俺の妹なのか!?
「……今は…違うかな」
「は!? お、おい。リーシャ今、俺の心の中を」
「ぷっ……あははははっ! だってだって、すっごく分かりやすい顔してるんだもん! ーーこいつは本当に俺の妹なのかーーでしょ? 直ぐ顔に出るんだから、心を読むまでも無いよ!」
「っ……か、からかうなよリーシャ。逆に俺はお前が何を考えてるのかさっぱりだーーお前のそんな顔……見るのは初めてだからな」
「そう……だよね。ううん。私も今自分がどんな顔でナツメを見てるかわからないもん。だからーー貴方が見せて?」
「は? っ!! おい!ちょ!!リーシャ!?」
ナツメの両頬へ添えられた白く美しい手。爪の先まで手入れの行き届いたソレを、妹である筈の少女からの諸手を、ナツメは拒否する術を持たない。
互いの鼻先が触れ合うほどの距離まで詰め寄るリーシャ。潤んだ彼女の双眸に釘付けになるナツメ。
そしてーー両者の視線が交差する。
「そっか……私、今こんな顔してるんだね」
ーーこれが私?お兄ちゃんの瞳に映ってるこれが……
「り、リーシャ………」
「ふふ、ナツメのそんな顔見るのも初めて……」
唇と唇が触れ合うギリギリの距離感。言葉を口にすれば互いの吐息を確かに感じる距離感。
ピンク色に指した唇と同じくらい染まった彼女の頬が微かにつり上がる。
ーーリーシャ……お前………
「ーーなーんてね!! お兄ちゃん可愛いっ!」
「は、はぁ!?」
「ふふふっ、ビックリした?」
「………ビックリした。ったくリーシャ、お前は悪い子だな」
「……お兄ちゃん………」
「……っ………… リーシャ、お前やっぱり」
好きだよ!!
「そんなの好きに決まってる! 私、私、お兄ちゃんの事大好きだよ!! 戦いだっだら、医療だったら、料理だったら負けちゃうかもしれない!!でも!この気持ちはっ、貴方を想う気持ちは誰にも負けない!! お兄ちゃん!お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!!………好きだよぉ…死んじゃやだよぉ…………」
「お前までそんな事心配してたのかよ……」
ーーそれに……いくらおめかししても……どれだけ貴方の事を想っても……私はお兄ちゃんの妹なんだよね……ううん。それで良い。初めて出来た私の大切な家族だもん。たった一人の妹だもん。だけど間違ってるとは思わない。思いたくないよ。せめて……ナツメの側に居たい。私が守ってあげたい。大切なこの気持ちと共に
何故それが聴こえるのか説明はつかない。だが唐突に流れ込んでくるリーシャの本音にーーナツメの中の[何か]が吹っ切れた。
「……チッ、ったく本当にどうしようも無いな。リーシャ、お前にまで泣かれちゃあ俺もいよいよお終いだ」
「ぐすっ……お、お兄ちゃん?」
「……お仕置きだリーシャ。俺が……この俺が死ぬだと!? どいつもこいつもあり得ねぇ事を好き勝手言いやがって!! ふざけんじゃねぇ!!分からせてやるよ。しっかりと見てやがれ! お前の兄が!お前達が船長と呼ぶ俺が!お前達が愛したミカグラ・ナツメは死にやしねぇってなぁ!!」
「え!? お、お兄ちゃーーーーーきゃぁぁぁぁあ!!」
ーーこれが、これからする事が正しいとは思わない。だが……このままでいい訳がねぇ!!全員、全員だぞ!? 一人漏れ無く泣き喚きやがってーー舐めてんじゃねぇ!
リーシャを脇に抱え、瞬足を持って外へーーテラスから飛び出た金と銀は、そのままドラゴン・ゲートの甲板へと降り立った。
一体何をするつもりなのか。初めて見る兄の、想い人の表情からは何も読み取る事は叶わない。
「リーシャ、此処を動くなよ」
「お、お兄ちゃん! 何するつもりなの!?」
「クククッ、決まってんだろーー喧嘩だよ喧嘩ァ!」
「は?はいぃ!?」
「ふっふはははは!! リーシャ、お前が、お前達が愛した男がなんなのか……俺の本当の姿を!世界最強の男の姿を!しっかりとその目に焼き付けろ!!」
凄王の覚醒と共に、ナツメはこの世界で初めてーー嘗てその身を神に滅ぼされる事になった禁断の力【創造と破壊】の力を行使した。呼び出されるは滅びを齎す破壊の竜ーー
「久しぶりに喧嘩の時間だぜーー来い!バハムート!!」
♦︎
テラスから燦燦と差し込む日の光に、微かな熱を感じながら右へ左へ身を動かす様は、果たしてどんな夢を見ているのかーーーーー
ーーーーーーふっ、幸せそうじゃのぉ……良かったな、リーシャ。じゃが
キングサイズのベットに横たわるは金と銀。シルクのシーツは薄手のために、二人が[生まれたままの姿]であろう事は容易に想像できる。
ーーーシュルシュル
水を差すのは如何なものかと珍しくも脳裏を過ぎった"まともな思考"は既に彼方へ消え去りーーー来訪者が奏でるのはその身を纏う全ての布が地に付する幸せな音色ーーー否、邪なる本能か
「リーシャが許されて妾が許されぬ道理があるまい」
全く意味の分からない持論を独りごちる彼女の頬は薄く紅色である。
ナツメの右側は「金」によって埋まっている。ならば。と、彼女はそそくさと左側へ身を遊ばせた。
この"軽率な行動"がある意味修羅場を齎す事になるなど、この時の彼女には想像ーーーー出来ていたが、いつもの事じゃ。と、軽く無視するのだった。
ーーーーーー
後半の詳しい描写はこれから先の話で組み込まれる予定です。
[リーシャの今後の立ち位置、バハムートとの戦闘等]
特にリーシャの龍眼に関してはこれから先の物語に深く関わって来ます。
リメイクを書いていて思ったのですが、現在13話までの台本形式を消したいので一から書き直しています。
なので、14話からの話は大して変化が無いのです。
この場合どうするべきなのでしょうか。
また新しく投稿し直すのか、それとも今現在投稿中の話を丸々差し替えていくべきなのか……
ご意見下さると助かります。
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