IS DESTINY ~蒼白の騎士~ (ELS@花園メルン)
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設定集 ネタバレ注意
登場人物設定 コズミック・イラ編


この設定は原作との相違が多いキャラを書いております。
それと、敵軍でまだ詳しい情報が本作で明らかになっていないキャラは書いておりません。





※注意事項

 

この内容はキャラ設定です。

本作品の『帰還』までお読みの方を対象に書いております。

まだそこまで進めていない人で簡単なネタバレはNGという方はブラウザバックをお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イチカ・オリムラ(織斑 一夏)

 

年齢:16歳

所属:ザフト軍ミネルバ→ザラ隊→特務隊

専用機:高機動型ザクウォーリア→フェイク・ジャスティス

 

本作品の主人公。

10歳の頃、IS世界において帰宅途中に誘拐され、姉のコピーを作るためのクローン計画に巻き込まれる。

しかし、その研究所が爆発し、何らかの要因でコズミック・イラ世界に飛ばされ、そこで助けてもらったアスカ一家に養子にしてもらう。

シン・アスカと同い年でマユの一つ年上の義兄妹としてコズミック・イラで生活を送っていたが、ヘリオポリスでのG兵器強奪から激化した戦争に巻き込まれ、オーブにて義父と義母を失う。

それからシン、マユと共にプラントへと渡り、生活の為、家族の為にザフト軍へ入隊し、後にミネルバへ配属となった。

ユニウスセブン落下事件の終幕時に、マユと共にプラントへ帰国しアスランを隊長としたザラ隊へと異動。

その後はザラ隊としてミネルバにて戦い、地球連合軍ベルリン大規模侵攻の後、IS世界に出没したフリーダムを追い求めるため、篠ノ之 束の協力の元、IS世界へと帰還した。

 

戦闘スタイルは近接寄りの万能型。

マユが射撃寄りの戦闘スタイルなのと日頃からよく一緒にいることもあり、相性が良い。

 

 

 

シン・アスカ

 

年齢:16歳

所属:ザフト軍ミネルバ

専用機:インパルス→デスティニー

 

原作種死においての前半の主人公(後半は……ね?)

マユと共にイチカを発見し、そのまま救出。

以降、イチカのことを家族として迎え入れ、兄弟、親友として接している。

コズミック・イラ71の時、オーブ侵攻作戦で家族の死にゆく姿を目にしてしまい、その元凶であるフリーダム、地球軍のMSを憎んでいた。

しかし、その事を家族であるイチカ、マユに話すことができずずっと悩んでいたが、三人の気持ちを打ち明けることで、家族として辛いことを共有しようと誓う。

ベルリンでの作戦時、巨大MSデストロイに乗っていたアウルを救うために自らが止めを刺した。

原作とは違い、思いを打ち明けられる存在が周りにいたことで復讐に駆られるような事態にはなっていない

 

現在はステラの回復をただ、待ち望み、ステラやアウルのような強化人間が生まれない様にロゴスを倒すことを決意する。

 

 

 

マユ・アスカ

 

年齢:15歳

所属:ザフト軍ミネルバ→ザラ隊

専用機:高機動ザクウォーリア→フェイク・フリーダム→デスティニーインパルスF

 

原作では亡くなってしまったシンの妹。

今現在、イチカと最も距離の近いヒロイン。

イチカ、シンと共にザフトへ入隊し、本来はオペレーターを志望していたが、その才能からパイロットへと転属した。

イチカと共に動くことが多く、部隊編成や相性などもイチカとはかなり合っている。

 

イチカがIS世界へと戻る際、イチカへ率直な思いを伝えるためにキスをした(どこへ…とは言わない)

今は相棒であるイチカの帰りを待ちながら、負けない様にと近い、ロゴスとの戦いに備えている。

 

 

アスラン・ザラ

 

年齢:18歳

所属:オーブ代表護衛→ザラ隊隊長

専用機:セイバー→デスティニーR

 

原作において、ザフト、オーブの両方の軍に所属していた、恐らく原作第三の主人公。

オーブの代表であるカガリの護衛のため、プラントへと渡ったが、その際戦闘に巻き込まれとっさにザクウォーリアを駆り、守るために戦いへと赴いた。

その後、オーブヘと戻ったが、自分も平和のために戦うと決意し、デュランダルと面会、そのままザフトへ復隊し、ザラ隊の隊長としてミネルバへと向かい、戦闘に参加した。

ダーダネルスにおいて、乱入してきたキラやカガリと戦うが、お互いの意見をぶつけても平行線だと認識し、親友と戦うことを決意し銃を向けた。

 

しかし、ベルリンにてキラと戦闘を繰り広げた際、以前までの親友とどこか違うと認識しながらも、機体を失い、敗北した。

今は、デュランダルの追い求める平和の為に戦うことを決め、戦友の機体を受け取り、戦場へと飛ぶ。

 

 

 

ミーア・キャンベル

 

年齢:17歳

所属:プラント

 

原作では整形しラクス・クラインの影武者としてプラントや各ザフト基地で歌姫として活動していたが、本作では序盤の内から素顔の状態でイチカたちと交流を持ち、その途中でデュランダルにスカウトを受け、ホログラムを用いて見た目をラクス・クラインと瓜二つの存在にしている。

そのため、整形は行っていない。

その正体を知っているのはイチカ、マユ、アスラン、デュランダルとミーアの周りにいる人物のみ。

彼女が姿を偽ってまで歌う理由は『自分の歌声で皆を笑顔にしたい』という強い目標があるから。

原作ではアスランの事を想っていたが、本作では如何ほどか……?

また、イチカとの絡みが今後あるのか……?

ちなみに、衣装や姿を変えるホログラムはマクロスFやΔで出てくる機能をお借りしました。

 

 

ステラ・ルーシェ

 

年齢:推定16歳

所属:地球軍独立機動部隊ファントムペイン

専用機:ガイア

 

原作において生きてたらシンとくっついていたであろう少女。

リメイク前にはデストロイから救い出すことでシンの元へと連れ去る、という流れだったが、

本作ではロドニアの時点で専門機関において治療行為を行う流れでファントムペインから脱退。

現在は療養中。

彼女が今後、パイロットに戻るのか、民間人として安全な場所でシンのことを待っているのかは……お楽しみに。

 

 

アウル・ニーダ

 

年齢:推定16歳

所属:地球軍独立機動部隊ファントムペイン

専用機:アビス

 

原作ではブラストインパルスのビームジャベリンで命を落とした少年。

本作ではイチカの地球連合軍でのライバルポジで、原作でのステラポジ。

イチカにとっては一度しか遊んでないが、大切な友人となっており、その命はベルリンにおいてシンに撃たれたことで終わってしまった。

 

 

 

ギルバート・デュランダル

 

年齢:32歳

所属:プラント最高評議会議長

 

原作においてラスボスポジだった人物。

リメイク前は偽ラクスとして現れたタバネと親友でその命をメサイアで絶った。

イチカ、マユを護衛から最新機のパイロットに任ずるまでかなりの信頼を持っている。

さらに、エクステンデッドの治療の為に設備を整えるなど、不当に扱われる命を救おうとしている。

 

本作では、どのような行動に後々出るのか…?

その本心は本人にしかわからない

 



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登場機体設定 コズミック・イラ編(オリジナルのみ)

今回はオリジナルのみの機体紹介をさせていただきます。

既存の機体の紹介をしても、調べたら出てきそうですし、省かせていただきました。


イチカ搭乗機体

 

【ZGMF-1000】ザクウォーリア高機動型

 

イチカが最初に搭乗したMS。

カラーリングを青色にし、通常のザクウォーリアよりも高機動型に改良されてある機体。

イメージはジョニー・ライデンが乗っていた高機動ザクのような感じ

 

武装

ビーム突撃銃×1 (シールド裏に予備カートリッジ)

ヴァジュラビームサーベル×1 (トマホーク代わりの近接武装。シールド内部から取り出し)

ハンドグレネード×4 (腰部取り付け)

 

 

【ZGMF-X09F】 フェイク・ジャスティス

 

プラント防衛戦よりイチカが搭乗したMS。

マユが搭乗するフェイク・フリーダムの兄弟機。

09FのFは【偽り】の意味。

ヤキン・ドゥーエ戦で失われた【X09A】ジャスティスのデータを元に開発された機体。

条約違反であった核エンジンでは無く、セカンドステージの機体同様のデュートリオンエンジンを搭載しており、デュートリオンビームによるエネルギーの補給が可能である。

元になったジャスティスの火力不足を解消するため、リフターの装備を一部変更してある。

武装も大幅に変更しており、セカンドステージの武装を採用している。

 

武装

 

高エネルギービームライフル×1

デファイアントビームジャベリン×2 (連結可能)

フラッシュエッジビームブーメラン×2 (小型ビームサーベルとしても使用可能)

ファトゥム-00F×1

20mmCIWS×2

対ビームコーティングシールド機動防盾×1

 

ファトゥム―00F武装

 

フォルクリス機関砲×4

ケルフス旋回砲塔機関砲×2

バラエーナプラズマ収束ビーム砲×2

 

バラエーナプラズマ収束ビーム砲にすることで、ジャスティスよりも火力を上げている。

 

 

 

マユ搭乗機体

 

 

【ZGMF-1000】ザクウォーリア高機動型

 

マユの最初の搭乗機体。

イチカのザクには劣るが通常のザクウォーリアに勝る機動力を持っている。

カラーリングは薄い紫色。

 

武装

 

ビーム突撃銃×1(シールド裏にカートリッジ)

ヴァジュラビームダガー×2(腰部取り付け)

ビームトマホーク×1(シールド内蔵)

 

 

【ZGMF-X10F】 フェイク・フリーダム

 

マユがプラント防衛戦より搭乗した機体。

フェイク・ジャスティスの兄弟機でこちらも【X10A】フリーダムが元になって開発されている。

エンジンはF・ジャスティス同様デュートリオンエンジンでデュートリオンビームによる補給も可能。

装甲の色はフリーダムとは違い、白を基調に紫、黄色を用いている。

 

武装 

 

20mmCIWS×2

高エネルギービームライフル×1

ヴァジュラビームサーベル×2 (連結可能)

ヴァジュラビームダガー×2 (ザクウォーリアの物を装備)

クスィフィアスレール砲×2

バラエーナプラズマ収束ビーム砲×2

対ビームコーティング機動防盾×1

 

 

【ZGMF-X56S/F】 デスティニーインパルスF

 

ベルリンでの戦いの後、マユへ配備された機体。

【F】とは自由の英語の頭文字から。

フェイク・フリーダムの頃の戦闘データを活かし、マユに合った武装を載せてある。

単機でも充分な火力を発揮できるが、イチカへと後に配備される機体との連携を前提とした機体。

(デスティニーインパルス+ストライクフリーダム)÷2と言った感じ。

動力はデスティニー、レジェンド同様のハイパーデュートリオンエンジン。

バックパックはストライクフリーダムの翼を少し減らして四枚にした感じ。

光の翼をデスティニー同様に展開可能でその色は紫。

装甲の色はフェイク・フリーダムと同様で白を基調とした黄色、紫の装甲。

ビームライフルにはビームサーベル発生装置が備わっており、ビームサーベルを装備していない。

 

 

武装

 

17.5mmCIWS×2

高エネルギービームライフル×2 (連結させ、バスターカノンとして使用可能。イメージはエクストリームガンダムエクリプスフェースのクロスバスターモード)

アンチビームシールド×1

ソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置×2

ビームサーベル×2 (ビームライフル銃口下から発生させる)

腰部クスィフィアス3レール砲×2

機動兵装ウイング ドラグーンⅡ×4 (翼一枚につき一機搭載されており、機体による自動操縦で操作)

腰部収納型ビームナイフ×2 (ビームライフルを失った際などの近距離戦武器)

 

??? (隠された機能。とある二機の連携時、発動のもよう)

 

 

 

アスラン搭乗機体オリジナル

 

 

【ZGMF-X42S-REVOLUTION】 デスティニーR

 

本来、ハイネ・ヴェステンフルスが搭乗する予定で開発していた機体。

しかし、本人が戦死したことで機体を失った同FAITHのアスランへと機体を配備。

基本はシンの扱うデスティニーと遜色ないが、アスラン用に武装を変更してある。

セイバーのアムフォルタスプラズマ収束ビームと同様に本機にも二門の長射程ビーム砲を装備してある。

装甲の色は元はオレンジが基調だったが、真紅に変更された。

光の翼の色はオレンジ

 

 

武装

17.5mmCIWS×2

高エネルギービームライフル

アンチビームシールド

ソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置×2

パルマフィオキーナ掌部ビーム砲×2

フラッシュエッジ2 ビームブーメラン×2 (ビームサーベルとしても使用可能)

デファイアント改ビームジャベリン×2 (連結可能)

高エネルギー長射程ビーム砲×2

脚部ビームソード発生装置×2 (∞ジャスティスの物と同様)

 



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コズミック・イラ編 前日譚
失踪する織斑一夏


こんばんは、ELSです。

この作品は前作のリメイクになります。
アドバイスを参考にところどころ作り替えて行きますのでこれからもゆるりとヨロシクお願いします。


IS【インフィニット・ストラトス】

宇宙空間での活動を想定して造られたマルチフォームスーツで稀代の天才【篠ノ之 束】が開発した歴史的発明だった。

しかし、【白騎士事件】と呼ばれる世界各国の軍事施設がハッキングを受け、日本に向け無数のミサイルが発射されるという世界的大事件が起き、最初のIS、機体名【白騎士】がそのミサイルの完全破壊を成し遂げ、宇宙開発のために造られたISは最新鋭の兵器として扱われてしまう。

更にISは女性にしか操れないという欠点があり、その結果、世界中で女尊男卑という風潮が広まってしまい、【篠ノ之 束】が目指した宇宙進出という夢は潰えてしまったのである。

 

 

そして、世界各国はISの軍事利用を禁止するため【アラスカ条約】を制定。

IS競技というスポーツの大会である【モンド・グロッソ】を開幕し、世界のIS乗りを競わせた。

その頂点に君臨したのが【織斑 千冬】。

篠ノ之 束の親友で織斑 一夏の姉である。

 

 

ISと女尊男卑の風潮により1人の少年は過酷な運命に立ち向かうことになる。

 

 

 

SIDE 一夏

 

 

俺【織斑 一夏】は学校帰りに後ろから取り押さえられ、何処かへ抵抗できずに運ばれてしまった。

 

 

「放せ!放せよっ!!」

 

 

俺は俺の両側からがっちり押さえつけている男たちにそう叫ぶ。

 

 

「うるさいガキだな。

おい、例の薬で眠らせろ!」

 

「はっ!」

 

「放—――がっ・・・!?」

 

 

首の後ろから何かを押し付けられ、プシュッという音と共に一気に俺の体の力が抜け、眠気に襲われてしまった。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

「すごいな、これがブリュンヒルデの血族の遺伝子か」

 

「これは実にいいサンプルが取れたものだ」

 

 

一夏が眠らされ運ばれたのち、運ばれた先の研究所で一夏の身体情報を抜き取り、その情報に感嘆の声を漏らしていた。

 

 

「しかし何故弟から情報を得るんですか?」

 

「決まっているだろう。

ブリュンヒルデに対して単なる人間の我らが近づけるとでも?」

 

「それもそうですね――――あっ!?」

 

 

1人の科学者が悲鳴にも似た声を上げる。

 

 

「な!?お前、一体何を!?」

 

 

施設内にサイレンが響き渡り、警報ランプが赤く光り施設内を照らし出した。

 

 

「ふ、不注意で隣のボタンを...!」

 

「不注意にもほどがあるだろう!?

データを持ってすぐに逃げるぞ!!」

 

 

科学者のリーダーの様な男が全員にそう通達した。

 

 

「子供はどうしますか!?」

 

「データは取れたんだ!

もう用済みに決まってるだろう!」

 

 

そして、科学者全員が逃げ出し、たった1人ベッドに括りつけられたまま眠った状態の一夏だけが残されてしまい、

その後に一夏が眠らされていた施設は大爆発に包まれてしまった。

 

 

その爆発の後には何も残っていなかった。

一夏の姿やその死体さえも...

 

―――――――――――――――――――

 

 

SIDE 織斑千冬

 

 

一夏がいなくなったという知らせを受け、私はすぐさま家へと帰った。

 

家には警察と一夏の友人の1人である【凰 鈴音(ふぁん りんいん)】がおり、鈴は泣きながら警察に話をしていた。

 

 

「鈴!一夏がいなくなったというのは本当か!?」

 

「ち、ちふゆさん!」

 

「ええ、本当のようです。

先ほどこの子に話を聴いたのですが、学校帰りに別れた後からこの子がこの家に遊びに来るまでの間に失踪、誘拐された恐れがあります。

荷物はこの通り全て家の近くに散らばったように落ちていたそうで、それを見つけた彼女が我々に通報してくれました」

 

 

私は気が遠くなりそうだった。

だが、足を鈴に掴まれハッとなる。

 

 

「ぢぶゆざん、いぢがみづがりまずよね!?」

 

 

鈴の声は嗚咽や涙が色々と混じりひどいものだったが、私もこんな風に泣いてしまいたかった。

しかし、妹分の様な子の前というのもあり、涙を流すのは堪えることが出来た。

 

 

「っ...あ、ああ!きっと見つかる、安心しろ、鈴。

...何か情報は無いんですか?」

 

「今のところは何とも...。

近隣の方々に聴いても大した情報を得ることが出来ずに...」

 

 

警察はそう言うと一礼して部屋を出ていった。

バタンとドアが閉まる音と共に私は床に座り込んでしまった。

 

一夏...お前は...生きているのか...?

 

 

PPPPPP

 

と私の携帯が鳴り、画面を見ると、そこには【篠ノ之 束】と映っていて、画面をタッチし通話に出た。

 

 

「...束か...」

 

『ちーちゃん!大丈夫!?

いっくんが行方不明だって知らせを受けたみたいだけど!?』

 

「ああ...。

警察の方は手がかりが無さそうでな...。

束...何か分からないか?」

 

 

私の声には力が無い様に感じた。

 

 

『何故か巧妙に電波妨害がそこら辺一帯にされてたから追跡出来なかったんだよ、2時間ほど前なんだけどさ。

...束さんを出し抜くなんて、初めてだよ...。

でも、ちーちゃん!安心して!

いっくんはきっと生きてるよ!だってちーちゃんの!世界最強の弟なんだよ?だから束さんが探し出してみせるよ!』

 

 

束のその言葉は今の私には神の言葉の様に聞こえた。

 

 

「...ありがとう、束...」

 

 

そう言うと、私は電話を切った。

 

 

「鈴、一夏はきっと見つかる!

だから、安心しろ!」

 

 

束の言葉を借りる様にそう鈴に伝える。

 

 

「ち、ふゆさん?」

 

「何たってアイツは私の弟だ。

世界最強の弟だ、きっとすぐに帰ってきてくれるさ」

 

 

鈴にそう言い聞かせると、鈴は目をゴシゴシと擦り

 

 

「はい!」

 

 

いつものように活発とはいかないが先程より余程元気が出ていた。

 

 

それから私達はかろうじてではあるが普通の生活に戻ることができた。

しかし、束からの連絡は無く、一夏が生きているかどうかの報告はまだ無かった。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

たくさんのイチョウの葉が地面を埋め尽くしている森の中、1人の少年と少女が追いかけっこをしていた。

 

 

「待てっ!マユ!」

 

「やだよー!

捕まえられるなら捕まえてみてよ!お兄ちゃん!」

 

 

マユと呼ばれた少女は木の後ろに隠れ、それを追いかけた少年が回り込もうとすると、反対側からその後に回り込み、

 

 

「ワッ!」

 

「うわぁ!?」

 

「アハハ、お兄ちゃんビビりすぎだよ」

 

 

驚かしてまた逃げていく。

そして、少年もその後を再び追いかける。

 

 

そういった追いかけっこを繰り返して2人は少し広々とした空間に出た。

丁度、木が生えていなくその部分だけ光が差しているかのようであった。

 

その場所へ入った途端に少女は立ち止まる。

 

 

「...」

 

「よし、捕まえた!

...?マユ?どうかしたのか?」

 

「お兄ちゃん、あそこに」

 

 

少女が指さした先を少年が見ると、そこには1人の同い年くらいの少年が倒れていた。




簡単な時系列の紹介をします。

IS側:モンド・グロッソ第1回が終わり、世界一に千冬がなった後

種死:アスカ一家がまだ生きていて、キラもモビルスーツに関わってない


て、感じです。


ちなみにアンケートは
専用機がストライクノワール、デスティニーインパルス、スターゲイザー、ストライクがあがっており、
ヒロインはマユ・アスカ、ルナマリア・ホーク、ミーア・キャンベルとなっています。

1話を投稿してからしばらく時間を空けてアンケートの結果を待ってますので、どんどん来てください。
アンケートは8月上旬で締め切ろうと思います。


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アスカとの出会い

今回はイチカがコズミック・イラへ転移してからの話になります。



Side マユ

 

 

こんにちは、マユ・アスカと言います!

って、自己紹介なんてしてる場合じゃ無いんです!

今日、家族みんなでキャンプに来てて、お父さん達がバーベキューの準備をしてる間、お兄ちゃんと遊んでたら森の中に男の子が倒れてたんです!

 

 

「お、お兄ちゃん、あの人どうしたのかな?」

 

「そんなこと俺が分かるかよ。

マユ、父さんと母さん呼んできてくれ!」

 

「う、うん!」

 

 

そうして、私はお父さんとお母さんを呼びに森の中を走りました。

 

 

 

 

 

Side シン

 

 

シン・アスカ。

マユの兄だ。

 

マユに父さんたちを呼ぶように言ってから、俺は倒れている男の子の元に駆け寄り、その体を揺すった。

 

 

「おい、お前!大丈夫か!?」

 

 

何度も揺すりながら叫ぶと、

 

 

「う...ん...?」

 

 

倒れていた男の子がうっすらと目を開けた。

 

 

「良かった!

なあ、座ることって出来るか?」

 

 

と俺は聞いてみると、

軽く頷いたので、身体を俺が支えながら木にもたれ掛かるように座らせた。

 

 

「待っててくれ、もう少しで大人が来るから」

 

「シン!」

 

 

父さんの声が聞こえた。

 

 

「おーい、ここだ!父さ〜ん!」

 

 

と、場所が分かるように手を振りながら声を出す。

 

 

「この子が倒れていたっていう男の子か?」

 

「うん。でもさっき目を覚ましたから座らせてるんだ」

 

 

すると、父さんは男の子の元に近寄った。

 

 

「君、大丈夫かい?」

 

「...う、ん」

 

「これ何本か見えるかな?」

 

 

と、父さんは指を3本立てた。

 

 

「さ、んぼん」

 

「どこも痛いところとかは無いかい?」

 

 

すると、男の子は頷いた。

 

 

「良かった。

じゃあ、君の名前と何でここに居たのかって言えるかい?」

 

「織斑一夏、家に帰ってたら変な奴らに誘拐されて、薬を撃ち込まれて気づいたら...」

 

 

【オリムラ・イチカ】?

【イチカ・オリムラ】じゃなくて?

しかも、さっき誘拐されたって行ってたけど近くでそんな騒ぎがあったとか聞いてないしな。

 

すると、イチカはポケットからサイフらしきものを取り出した。

 

 

「この中に住所とか書いてます」

 

 

と、サイフから紙切れを取り出し、父さんに渡した。

 

 

「?日本?確か東アジア共和国に併合されていた国だったかな?」

 

「...え?」

 

 

ニホン?聞いたことないな...。

 

 

「確かC.E.(コズミック・イラ)38に併合されたような」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!?

コズミック・イラ?西暦では無いんですか?!」

 

「西暦とはまた随分と古い年号を使うんだね。

今では宇宙への進出が進み、コズミック・イラに変わったのに」

 

「あ、あの!じゃあ、インフィニット・ストラトスって知ってませんか!?」

 

 

インフィニット・ストラトス?

また知らない言葉だ。

 

 

「いや、聞いたことないね。

それは一体なんなんだい?イチカくん」

 

「インフィニット・ストラトスっていうのは――――」

 

 

イチカが簡単にインフィニット・ストラトスというものの説明をしたが、その話の中に出てきた言葉は俺達にはどれも聞き覚えのない言葉だった。

 

歴史の勉強を学校でしているが、【白騎士事件】なんてものは聞いたことも無いし、偉人の中にも【篠ノ之 束】なんて人は出てきてない。

 

父さんはイチカが出任せを言っているとは思っておらず、

しばらく考えると、

 

 

「君はもしかして、別の世界から来たのかも知れないね。

おとぎ話みたいな話だけどさ」

 

 

と言った。

別の世界なんて確かにおとぎ話のようだが、話の食い違いからイチカはどこか別のところから来たのかとは俺も思っていた。

 

それに対してイチカも驚いていた。

 

 

「そもそも、ここにはIS何ていうものは存在しないよ。

あるのは精々作業用のモビルワーカー程度さ。

さて、とりあえず僕達のキャンプ場に移動しようか」

 

 

父さんはイチカを抱えてキャンプ場に向けて歩き出した。

俺もその後をついて行った。

 

 

 

キャンプに戻ると炭火の匂いがしてきて、そこでは母さんがバーベキューの食材を焼いていた。

 

 

「母さん、この子にも食べ物を分けてあげられるかな?」

 

「いいわよ。その子、さっきマユが言ってた子よね?

ねえ、君?お父さんやお母さんはいないの?」

 

 

と、母さんはイチカに訊ねた。

 

 

「いません...。

千冬姉と2人っきりです」

 

 

親がいない?

姉と2人で暮らしてるのか?

 

 

「じゃあ、お姉さんの所に帰らないとね。

どこにお家があるか覚えてる?」

 

「そ、それなんだがな、母さん」

 

 

父さんはバツが悪そうにイチカのことを説明した。

 

 

「ええ!?違う世界から来た!?

...ねぇ、あなた?イチカ君はどうなるのかしら?」

 

「元の世界に戻るには何が必要なのか、っていう情報が不足しているからね...。

なあイチカ君、君さえ良ければだがうちに来ないかい?」

 

「「ええ!?」」

 

 

思わず俺も驚いて声を上げてしまった。

 

 

「な、なんで急にそんな?

俺、お金とか大した額も持ってないですし、そもそも使えるのか分かりませんけど」

 

「単純な善意って理由じゃダメかな?

路頭に迷ってしまう子供を放っておけないしね」

 

 

と、父さんは言っていた。

まあ、今の世の中じゃナチュラルとコーディネーターでの人種差別が活発化してきてるから子供を一人で、なんてしたら危ないか。

 

 

「あなたがそういうなら私は賛成よ。

マユもいいかしら?」

 

「うん!」

 

 

母さんも妹のマユもOKを出した。

 

 

「シンはどうだい?」

 

「別に構わないさ。

反対する理由も無いしさ。

でも、それだとお金がかかるんじゃないか?」

 

 

家の金銭面の話は俺はあまり詳しくないけど、4人家族から5人に増えるんだ。

暮らすのに必要なお金もそれなりにかかると思う。

 

 

「これでも結構な額は稼いでいるからね。

子供の一人くらいは賄えると思うよ」

 

 

確かに父さんも母さんも働いてて、父さんは国の企業で働いてるし給料とかは多いのかもな。

じゃあ、大丈夫なのかな?

 

 

 

 

それからイチカへのこっちの世界で暮らすための情報や俺たちの自己紹介なんかを終え、養子としてイチカ・オリムラは俺たちの家にやってきた。

 

 




本当はイチカ・アスカにしてもよかったんですが、今後の展開からもこの方がいいと思い、
イチカ・オリムラのままにしました。


次回から少しとばして本編の方へつないでいこうと思います。


アンケートの順位の途中経過

ヒロイン

1位 ルナマリア
2位 マユ、ミーア
4位 メイリン

専用機

1位 デスティニーインパルス
2位 ストライク系
3位 スターゲイザー


となっています。

アンケートは本編に入るころに締め切っていきます。


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戦争の始まり

今回、少し短めな内容になっております。


SIDE イチカ

 

 

俺がアスカ家に引き取られてからすでに三年ほど経過し、俺とシンは13歳。

シンの妹のマユは12歳になっていた。

 

こっちの世界に来てからは義父さんと義母さんが本当に色々教えてくれて、こっちでも普通に学校に通うことができた。

家族って今まで千冬姉しかいなかったもんだから、全然知らなかったけど、両親の愛っていうものを初めて受け、こんなにも暖かいんだって思った。

そのせめてもの恩返しとして、千冬姉と暮らしてた頃からしてたように家事をこなし、家での皆の負担を減らせるように努力した。

他にも、いつ元の世界に帰れるか分からないからこっちで働けるように工学系の資格の勉強をしている。

 

俺が住んでいる国【オーブ連合首長国】はモルゲンレーテと呼ばれる国営の大規模な工場があり、将来そこで働けるようになるために、【ヘリオポリス】とよばれる資源衛星コロニーで勉強したいと思っている。

 

 

義理の兄妹のシンとマユとの関係も良好で、

シンとは家族兼親友の様になっており、スポーツなんかの競い合いをいつも行っている。

マユは幼馴染の【凰 鈴音】のような活発な子でたまに俺やシンも手を焼くことがある。

 

 

 

今日も俺はいつものように家で朝飯を作っていた。

 

 

「おはよう、イチカ。

いつも悪いわね、家事を任せちゃって」

 

「おはよう、義母さん。

気にしないでくれよ、俺は好きでやってるんだし。

こうでもしないと何も返せそうに無いからさ。

それより義父さんたち起こしてきてくれるか?そろそろ出来上がるし」

 

「はいはい、ありがとね。

あ、シン、おはよう」

 

「ふわぁ、おはよう」

 

 

階段を下りながら、ぼさぼさの髪を掻くシンが起きてきた。

 

 

「おう、シン。

相変わらず朝、酷いな」

 

「うるさいな。

イチカ、ミルク」

 

「はいはいっと」

 

 

その後、マユや義父さんも起きてきて、朝食を摂り始めた。

 

 

「うん、やっぱりイチカのごはんは上手いな。

これ普通に店でも出せるんじゃないか?」

 

 

と、義父さんが言ってくれた。

 

 

「ホント、イチカの料理ってたくさん食べれちゃう!」

 

 

とマユも言ってくれた。

マユは普段、俺の事は呼び捨てで呼ぶ。

なんかこっちの方がシックリくるとのこと。

 

 

「…太るぞ」

 

 

ボソッとシンが言っちゃいけないことを言ってしまう。

 

 

「お兄ちゃん、うるさい!

ちゃんと運動してるから平気だもん!」

 

 

と、談笑しながら食べていると、

 

 

 

『緊急報道です!

ただいま、地球連合軍が農業用プラント【ユニウスセブン】への核攻撃を実行したとの連絡がありました!』

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

・・・今、なんて言った?

核攻撃?地球連合がプラントに?

これってつまり、戦争ってことか?

 

 

 

「嘘・・・でしょ?」

 

「これは・・・・」

 

「・・・・」

 

「な、なんで?」

 

 

皆、茫然としていた。

【地球連合軍】は遺伝子操作を行われていない人類【ナチュラル】によって構成された軍隊で地球が主な活動圏内になっている。

それに対するのが【Z.A.F.T.】と呼ばれる遺伝子操作によって生まれた【コーディネーター】によって構成されている組織だ。宇宙のプラントにて活動している組。

この二つの人種によってこの世界では差別、紛争などが起こっていた。

オーブはいわゆる中立国でそのどちらにも所属していなかった。

アスカ家はみんなコーディネーターだったが、俺は正直どっちなのか分からなかった。

 

 

 

「シン、イチカ、マユ。

今日は三人とも学校を休んでくれないか?」

 

「え、なんで?」

 

「戦争に発展してしまったら物資の不足なんかがこの国でもいつかは起こるかもしれない。

その前にある程度の避難できる準備を蓄えておこうと思うんだ。

いくら中立と言ってもあんなことが起こったならここもいつ戦火に巻き込まれるか分からないからね」

 

 

それから、3人で街に出て生活必需品や長持ちする食料を買い漁り、家の倉庫へ備蓄しておいた。

俺とシンはその後防災グッズの点検をしながら話をしていた。

 

 

「なあ、シン大丈夫なのかな?オーブってさ」

 

「大丈夫?」

 

「ああ、戦争の影響が出るのは仕方ないかもしれないけどさ、オーブが戦場になったりしないのかなってさ」

 

 

中立ということはつまり、どちらからも攻撃の対象となるってことだ。

それをオーブの代表【ウズミ・ナラ・アスハ】様は分かっていると思うけど、俺は不安だった。

 

 

「正直、俺に言われても分かんないよ。

でも、ハウメアの守り神が付いてるんだからさ、きっと大丈夫さ」

 

 

と、シンは言った。

 

 

「あはは、シンが神頼みするって珍しいな」

 

「な、なんだよ!こんなの、一個人がどうにか出来るわけ無いだろ!?」

 

「ま、そうだよな。

神にでも祈るしか無いってわけか...」

 

 

と、俺達は笑いあった。

でも、人生そんなにいい事ばっかが起こるわけじゃない。

楽観視していた俺らに降り注いだのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶望だった。



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失ったもの

今回、書いてて自分少し涙が出てきました。

やっぱり人が死ぬのって心に来ますんで・・・


SIDE イチカ

 

 

単純に言えば、戦争はやはり起こってしまった。

Z.A.F.T.軍が人型機動兵器【モビルスーツ】通称MSを開発したことにより両軍の力は拮抗するようになってしまった。

片方は核兵器という大量破壊兵器、もう片方はMSという量産可能な機動兵器。

どちらも危険な代物だった。

でも、そんなときに地球軍がヘリオポリスにて5機の新型機動兵器を秘密裏に製造、それがZ.A.F.T.に奪取され戦火はさらに肥大化してしまっていた。

 

一時は地球軍の新造艦【アークエンジェル】がオーブ領海付近でザフトと戦闘を行っており、オーブ軍も防衛の為に軍隊を配備していた。

そのときは、ここも戦場になってしまうのだと、恐れていたがザフトは撤退、アークエンジェルがオーブヘ入港したそうだ。

 

そんな騒動を耳にしてから数週間が経過した後、本当に恐るべきことが起きてしまった。

 

地球軍がオーブにあるマスドライバー施設とモルゲンレーテを狙って無条件降伏を要求し、ウズミ代表がそれを拒否したことで、オーブも戦争に巻き込まれることになってしまった。

 

 

 

俺たちは急いで避難の準備を始めている。

地球軍の宣戦布告から総攻撃までの猶予が殆どなく、港にある避難船の前は大勢の人だかりができているみたいだ。

でも今は、俺たちが無事に避難船に着くまで攻撃が行われないかが不安だった。

 

 

車で向かおうと父さんは考えていたが、道路は渋滞によりとても進める状況ではなかった。

なので、走って向かうことになったのだが、その途中、爆発音が聞こえた。

 

地球軍がオーブヘ総攻撃を仕掛けた際の爆撃音だと思われる。

俺たちは近道をしようと、裏の山からすぐ下にある港を目指し走り出した。

 

 

「急げ、母さん、マユ!」

 

「マユ!頑張って!もう少しだから!!」

 

「うん!」

 

 

俺とシンを先頭に走り、後ろに義父さん、義母さん、マユが走っている。

 

 

「!?伏せて!!」

 

 

遠くの空から何かが接近してくるのが見えた俺はみんなにそう忠告した。

 

ドスン!

という、音と共に赤と黒の戦闘機のような機体の上から青っぽい装甲に二門の砲塔を搭載しているモビルスーツが俺たちよりそう遠くないところに着地した。

 

 

「急いで!いつこっちに気づくか分からない!!」

 

 

俺たちは再び港へ向けて走り出す。

そして港が見えてきたところで

 

 

あと一息だ・・・!

 

と思ったその矢先に近くで爆風が起こった。

 

 

「皆、大丈夫か!?」

 

「父さん、母さん、マユ、平気か!?」

 

「あ、ああ、俺たちは・・・」

 

 

「あっ!マユの携帯が・・・!」

 

 

さっきの爆風でマユの携帯電話が俺たちとは全く違う方向へと転がって行ってしまっていた。

 

 

「そんなものいいでしょ!?

今は兎に角逃げないと!!」

 

「いやぁ!?だってアレ、お兄ちゃんたちからのプレゼントだもん!!」

 

 

と、マユは携帯を拾いに行こうとしていた。

 

あの携帯電話は本体を俺とシンが小遣いを出し合って、マユの誕生日に買ってあげた物で、その時のマユはとても喜んでいたのを今も覚えてる。

 

 

マユが進もうとしなかったの見て、

 

 

「俺が取って来る!

皆、先に行っててくれ!」

 

 

と、シンが携帯を取りに道の無い斜面を滑り降りていく。

 

と、その時マユも義母さんの手を振り払い、シンについて行ってしまった。

 

 

「マユっ!くっ!」

 

 

俺はマユを捕まえようとマユの後を急いで追いかけた。

 

その瞬間、

 

 

(!?何か、来る!?)

 

 

と、咄嗟に感じた俺はマユを無理矢理抱えて、地面に転がるように飛び込んだ。

 

 

 

ドォォォン!!!

 

という、凄まじい爆音とともにマユを抱え転がった俺の上に大量の砂が積もってきた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

SIDE シン

 

 

マユが携帯を落としてしまい、それを取りに俺は斜面を滑り降りていった。

 

幸い、携帯は斜面途中の木にぶつかり、何とか拾えそうだった。

 

 

「よし・・・!」

 

 

俺は携帯の近くまで来て、携帯を拾った。

 

 

ドォォォン!!!

 

 

「う、うわぁぁぁぁ!?」

 

 

その瞬間に斜面の上の方で爆発が起こり、俺はそれによって港のすぐ近くまで吹き飛ばされてしまった。

 

 

「う、うう・・・」

 

 

コンクリートにぶつかって背中が痛かった。

 

 

「君!大丈夫か!?」

 

 

近くに軍人が来てくれたので、立ち上がるために肩を貸してもらった。

 

 

「歩けるね?なら急いで避難するんだ!

幸い、まだ船の空きは残っているから!」

 

 

そっか・・・。ならみんな乗れるかな?

あれ?そういえば、みんなは・・・?

 

 

「どこへ行くんだ!?」

 

「父さんや母さんたちがまだ上に――――――!?」

 

 

斜面の方に振り向くと、そこは斜面なんて無かったかのようにえぐれてしまっていた。

 

 

「嘘・・・だろ・・・?

父さん、母さん、イチカ、マユ・・・?」

 

 

俺はみんなを探すために痛みが走る体を引きずりながら歩いた。

 

そして少し歩いた先で俺は見たくない光景を目の当たりにしてしまった。

 

 

父さんが横たわっていた。

でも、その手は体から大分遠いところまで吹き飛んでいて、血が散っていた。

母さんもその近くに倒れていた。

でも、その体は爆発で飛んでた大木に押しつぶされていて無残な姿だった。

 

 

「ぁ・・・うぁ・・・」

 

 

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!

父さんや母さんが死んでしまってるなんて嘘だ!

 

マユは?イチカは?

 

父さんの体の少し離れたところにマユの鞄らしきものが見えた。

 

 

「!マ、マユ!」

 

 

マユはきっと無事だ!

そう思い、鞄の近くへ向かい、埋もれていた鞄をひっぱりだそうとした。

きっと生きてて生き埋めになっているだけだ!

 

そう思いながら、精一杯引っ張ると、そこには誰の体も見当たらなかった。

 

 

「そ、そんな・・・!

う、うあああああああ!!!!」

 

 

俺は叫んだ。

喉が壊れるくらいにめちゃくちゃに。

そして、睨んだ。

空で戦っている青い翼のモビルスーツ、緑色のモビルスーツ、さっき見た青いモビルスーツを。

アイツらがこんなところで戦争なんかするから父さんや母さんやイチカやマユやもっと大勢の人が死んでしまったんだ。

 

ただ、許せなかった。

自分の大切なものを奪っていったあいつ等が。

 

 

 

すると、近くの地面がモゾっと動いた。

 

!?まさか!!

 

俺はすぐにその場所へ行き、動いた場所をかき分けた。

そこには白い布が見えた。

イチカが今日、避難するときに着ていたジャケットだ。

 

 

「イチカ!おい!イチカ!!」

 

 

俺は返事が返ってくるまで呼び続け、地面をかき分ける。

 

 

「っぷはぁ!!!」

 

 

ある程度土が退くと、イチカが地面から勢いよく体を持ち上げた。

その腕の中にはマユの姿もあった。

 

 

「ぁぁ、イチカ、マユ!!

良かった!!」

 

 

てっきり二人とも死んだかと思っていた。

 

 

「良かった、本当に!!」

 

 

俺は二人をぎゅっと抱きしめた。力強く精一杯。

 

 

「シン?良かった無事だったのか!

マユ、大丈夫か?シンも大丈夫だったぞ!」

 

「お兄、ちゃん?

ああ、よかった!お兄ちゃん!!」

 

「ほら、マユ携帯。

今度は手放すなよ?」

 

「うん!ねぇ、お父さんとお母さんは?」

 

 

マユがそういった瞬間に俺はマユにその光景を見せないように深くさらに抱きしめた。

 

 

「ね、ねぇ、お兄ちゃん?痛いよ?

そ、それに、お父さんやお母さんは大丈夫なの?」

 

 

マユのそんな問いかけを聞くと俺の目から涙があふれてきた。

 

 

「うっ、うう」

 

「嘘・・・だろ?」

 

「・・・嘘だよね?お父さんとお母さんが、そんな・・・い、いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

マユの悲鳴が響き渡った。




いかがでしたか?

要望にあったようにマユはイチカがそばにいたことで生き延びることができました。

これから三人はどんな道へと進むのか・・・・


まだ、きちんと本編に入らないのでアンケートは続けます。
殆ど決まりつつあるんですけどね


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選んだ道

SIDE イチカ 

 

 

俺とシンとマユは無事とは言いづらいけど、何とかオーブの避難船に乗ることができた。

 

マユは泣き疲れてしまったのか、今は軍人に背負われて運ばれている。

俺も、まだショックでポッカリ穴が開いたかのように感じている。

 

俺たちを助けてくれた【トダカ】という軍人は俺たちに応急処置をしてくれながらこれからの話をしてくれた。

 

 

「君たちはこれからどうするのか、決まっているのか?」

 

「どうって、いえ、まだ何も・・・」

 

「一気に色々と起こって心の整理がまだついてなくって」

 

 

自分たちの国が戦争に巻き込まれ、目の前で親が死んだ。

それなのに今後のことなんてまだ判断を付けられない。

 

 

「君たちはそこで寝ている子も含めてコーディネーターかい?」

 

「ええ、そうです」

 

「それなら私は君たちはプラントへ行くことを薦めよう」

 

 

と、トダカさんは提案してくれた。

 

 

「プラントへ?」

 

「【ブルーコスモス】は知っているね?」

 

「たしか、反コーディネーター団体でしたっけ?」

 

「そうだ。連中の動きが地球にて活発化してきているらしいからな。

コーディネーターである君たちに危険が及ぶ可能性がある」

 

「で、でも俺たち、プラントへ行っても生活費とか大した額無いですし・・・」

 

「大丈夫、とは言い難いが国から国民に対してある程度の補助金や生活必需品の提供がある。

それに、わたしからもいくらか君たちに渡そう」

 

「そ、そんな、悪いですよ!?」

 

「そ、そうですって!」

 

 

俺とシンはいくら助けてもらったとしても生活費なんかの面倒も見てもらうなんて、申し訳なかった。

 

 

「だが、君たち三人は子供だ。

まだ働くのに必要な年齢にも達していない。

それとも盗みでも働くつもりか?それなら軍人としては看過できないが」

 

 

そう、俺もシンもまだ13と14だ。本来働くにしても、15からなので俺たちでは働くことはできなかった。

 

 

「それにプラント本国ではあと少ししたら士官学校の応募があったはずだ。

パイロットになれとは言わないが、整備士やオペレーターなどの専攻もあったはずだ。

それに、士官学校は生徒の生活保障なども完備しているらしい。

君たちの生活もなんとかなるはずだ」

 

 

確かにそれだったら俺たちの今後もなんとかなるかもしれない。

 

 

「でも、なんでそこまでしてくれるんですか?」

 

 

ただ助けた避難民の子供たちのはずだ。

他にも大勢の避難民がいたのになぜ俺たちだったのか、という疑問があった。

 

 

「君を、君たちを助けたときの眼だ」

 

「「眼?」」

 

「ああ。

他の避難民たちの多くは悲劇を目の当たりにしたことにより、目が死んだようになっていた。

だが、君たちの眼はまだしっかりと生きていた。

そんな子供たちに賭けてみたくなった、というおじさんの願望・・・だな」

 

「トダカさん、ありがとうございました!」

 

「ありがとうございました!!」

 

 

俺とシンは精一杯の感謝を込めて頭を下げた。

 

 

「君たちにハウメアの加護があらんことを」

 

 

そう言ってトダカさんは部屋を出ていった。

 

 

「なあ、イチカ。

プラントへの移住の話、受けてみないか?」

 

「ああ、そうだよな。

学校に通えて生活も保障されているんだしさ、俺は受けてもいいと思う」

 

「ただ、マユも一緒に士官学校へなんてのは、ちょっとな・・・」

 

 

シンは実の妹が軍に関係する仕事に、というのを心配しているのだと思う。

 

 

「マユも、行く」

 

「マユ!?」

 

「起きてたのか!」

 

「マユだけ置いてけぼりなんて嫌だもん。

別にパイロットになるなんて言ってる訳じゃないから。

でも、お兄ちゃんたちと離れ離れになっちゃうかもしれないのが、マユは嫌なの!」

 

 

と、マユは必死に訴えてきた。

 

 

「どうするんだよ、シン」

 

「分かってるだろ?マユがここまで言い出したら聞かないことくらい」

 

「・・・そうだな、じゃあマユも一緒に行こう」

 

「うん!」

 

 

と、マユの表情はさっきより明るくなってきていた。

 

 

「そして、ちゃんと父さんや母さんのお墓をたててあげよう、な?」

 

「ああ」

 

「うん」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

俺たちはオーブの避難船がプラントへ向けたシャトルがある港で降ろしてもらい、トダカさんにお礼を言ってからプラントへと向かった。

 

行き先はプラント【ディセンベル市】。

ここに士官学校があるのでそこへと俺たちは向かった。

 

 

「シンはどの兵科へ進むのか決めたのか?」

 

「俺、さ。

パイロットになろうと思うんだ」

 

「は・・・?」

 

「あの日、二人が死んだのを目の当たりにしてさ、悲しみとか怒りよりも悔しさが一番最初にこみ上げたんだよ。

もし俺にも力があったら二人は死なずに済んだんじゃないかってさ。

だから俺さ、そんな思いをする人を減らすためにそんな思いを生み出す元凶を絶てる力が欲しいんだ。

これ以上、今ある花を散らさないようにさ」

 

 

シンは手にぐっと力を込めながらそう、話してくれた。

 

 

「俺も、俺も、パイロットになろうって思ってた」

 

「でも、イチカは技士志望じゃなかったか?」

 

「そうなんだけどさ。

俺もシンみたいに、無力な自分がちょっと悔しくってさ。

少しでも強く、守れる力が欲しいなって思っちゃってさ。

それに、お前がパイロットになるんだったらお前を制御する奴がいないとダメだろ?

お前っていつも喧嘩っ早いしさ」

 

「な!?そんなことないだろ!?」

 

「いやいや、結構喧嘩っ早いからな?」

 

 

シンは否定しているが実際のところ学校でも相手に突っかかっていくことが結構あった。

 

 

「はぁ、わかったよ。

これから気を付けるさ。これからもよろしくな、相棒(イチカ)

 

「おう、こっちこそな」

 

「マユをそっちのけで二人で仲良くしてるなんてずるいな~」

 

 

と、プラントへ向かうシャトルの後ろの座席からマユが話しかけてきた。

 

 

「悪い悪い、じゃあマユはどの科を志望するんだ?」

 

「志望はオペレーターだけど、ここって試験の結果でその後の進路も判定されちゃうじゃん?

だから結局どうなるのか分からないかな」

 

 

俺たちが入るのは士官学校。

Z.A.F.T.軍に入るための優秀な人材を育成するのが目的の学校である。

そして、俺たちが入るころからその仕組みが少し変わっており、地球軍との戦争ということもあり、MSパイロットが不足しているのが現状である今の世の中で実力が高い訓練生が技士やオペレーターになってしまうのは軍からしたら宝の持ち腐れであるので、全科の試験に格闘術、射撃技術なんかの試験を追加し、他の科でも実力の高い訓練生はパイロット科へと異動することになる。

しかも、パイロットになりたくないからと実技試験で手を抜くと、それらは必修項目なので留年、退学などという処置をとられてしまう。

 

 

「まあ、そこはなるようにしかならないだろ?

それにマユって格闘術とか苦手そうだし」

 

「あれ?シン、知らないのか?」

 

「?何をだよ」

 

「マユって実は護身術を習ってたんだぞ」

 

「は!?そんなの知らないぞ!」

 

「だってお兄ちゃんには言ってなかったし」

 

 

と、マユが言うと、シンは一人知らなかったことにガックシと肩を落とした。

 

 

「あ、見えてきたよ!あれがそうじゃない?」

 

 

と、マユが窓の方を見たので俺たちも続いて外を見た。

 

 

「おお!本当だ!」

 

「でっかいな~」

 

 

前の世界じゃ自分が宇宙に行くことなんてないと思ってたけど、まさかこんな形で宇宙に来れるなんてな・・・

俺はプラントや無限に広がる宇宙を眺め、そう思った。




まだ、本編には入りません。
少し訓練生時代を掻こうと思っています。

そして、それが終ればアンケートも終了しようと思います




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友との出会い

少し、今回から士官学校編に入ります。


SIDE イチカ

 

 

「――――以上の者たちの入学を歓迎する。

その力、是非プラントのために役立ててくれたまえ」

 

 

ディセンベル市に無事についた俺たちは士官学校へ入学するための試験の手続きをして後日、試験を受け無事に入学することができた。

 

そして今は校内の講堂で教官やらお偉いさん方の長い説明を受けているところだ。

パトリック・ザラ議長やシーゲル・クライン前議長なども毎回出席なされていたそうだが、シーゲル氏は暗殺、パトリック氏は現在ヤキン・ドゥーエにて戦争の指揮を執っておられる。

 

現在戦況は地球軍とザフト、それとラクス・クライン率いるオーブ軍の三勢力のぶつかり合いになっているそうだ。

そして、地球軍はプラントを破壊するために核ミサイルを再び用いてきたそうだ。

ユニウスセブンの悲劇【血のバレンタイン】の再来と思われたが、そこにオーブ軍が乱入し、ミサイルを阻止した。

オーブ軍には青い翼のモビルスーツがいたそうだ。義父さんと義母さんが死ぬ原因となった機体とシンはそう言っていた。

その戦況の報道が流れたことでプラントでも揺らいでいる人が少なからず存在していた。

プラントの歌姫【ラクス・クライン】。彼女が戦場に敵として現れたことがザフト、プラントにも影響を与えているようだった。

 

と、俺がこの前見た報道の内容を頭で整理している間に、入学の式典が終っていた。

 

 

式典が終わったのち、各科の教官たちが教練の内容が記録された端末を俺たちに渡し終えたことで今日は解散となった。

ひとまず、シンやマユに合流してそこから後の内容を決めようと思う。

 

 

 

「あ、すみません」

 

 

講堂を出ていく人が溢れている中で俺は不注意で人とぶつかってしまった。

 

 

「あ、いえ、こちらこそ」

 

 

相手は女性で長い灰色っぽい髪、顔のそばかすが特徴だった。

その人は俺とぶつかったときに尻もちをついたみたいだったので、俺は手を差し出した。

 

 

「立てますか?」

 

「ありがとう!」

 

 

・・・どこかで聞いたことあるような声だな。

 

 

「私は【ミーア・キャンベル】っていうの。ミーアでいいわ。あなたは?」

 

「ああ。俺はイチカ・オリムラ。

さっきはごめんな、俺の不注意で」

 

「いいのよ。それよりオペレーター科の人がどこにいるかとか知らないかしら?

私もそうなんだけど、誰がどことか分からなくて」

 

「そうなのか、ちょうど妹もオペレーター志望なんだよ。

よかったら一緒に来るか?」

 

「いいの!?ありがとう!」

 

 

ミーアと共に俺はシンやマユを探しにいった。

少し開けた広場に行くとそこに、シン、マユと他数人がいて話をしていた。

 

 

「おーい、シン、マユ!」

 

「あ、イチカ!

って、その人は?」

 

 

と、俺に反応したマユが聞いてきた。

 

 

「こっちはミーア・キャンベルさん。

オペレーター科の人探してるって言ってたから連れてきたんだよ」

 

「そうなんだ。

初めまして、ミーアさん!私、マユ・アスカっていいます!」

 

「こちらこそ、ミーア・キャンベルよ」

 

「それで、シン、こっちの人たちは?」

 

 

俺はシンの隣にいた人たちの事を聞いた。

 

 

「ああ、こいつらは「良いって、自分で話すよ」そうか?」

 

 

シンの言葉を遮り、赤いメッシュの男が話し出した。

 

 

「ヴィーノ・デュプレ。

メカニック志望だ、よろしくな」

 

 

そして、もう一人黒っぽい肌の男も自己紹介してくれた。

 

 

「俺はヨウラン。

ヨウラン・ケントだ。よろしくな、色男」

 

「なんだよ、その色男って!」

 

「ん?だって、いきなり可愛い子連れて来るなんて相当な奴だと思ってな!」

 

「そんなんじゃねぇぞ。

向こうもオペレーター志望を探してるって言ってたから案内してただけだし」

 

「ほらほら、ヨウランやめろって!

悪いな、お前の自己紹介も聞かせてくれよ」

 

 

と、ヴィーノがヨウランを止めて俺にそう促した。

 

 

「イチカ・オリムラ、志望はパイロットだ。

間違っても色男なんて呼ぶんじゃねぇぞ!」

 

 

と釘を刺しておいた。

 

 

「ん?シンの家族って言ってたから、てっきりアスカなのだと思ってたけど、違うのか?」

 

「あ、ああ、俺、ちょっと色々あってな。

シンの家で養子として生活してたんだよ。

家名は違うけど、家族みたいなもんさ」

 

「そっか。そんじゃあこれから飯でも食べないか?

親睦会って意味も兼ねてさ!」

 

 

とヴィーノがそう提案してくれた。

 

 

「お!いいねぇ!

せっかくかわいい子もいるんだし行こう行こう!!」

 

 

とヨウランも乗り気だった。

 

 

「ね!それ私達も参加していい?」

 

「ん?」

 

 

声のする方を見ると赤色のショートヘアの女性と同じ色のツインテールの女性がいた。

 

 

「わたしは【ルナマリア・ホーク】、こっちは妹のメイリン。

よろしくね!」

 

「メ、【メイリン・ホーク】です!よろしく!」

 

 

すると、ヨウランが

 

 

「ん~!男4女4!ちょうどいい数だなぁ!

よし、行こう行こう!!」

 

 

と超テンションが上がっていた。

 

 

そしてちょっと多くなったが8人で近くにあるオープンカフェに向かった。

俺はこの後トレーニングをしようと思ってたので軽めに済まそうと思い、サンドイッチとコーヒーにしておいた。

 

 

「へぇ、シンもイチカもパイロット志望なんだ。

私と同い年なのに凄いね」

 

 

と、俺たちの兵科を聞き、メイリンはそういった。

 

 

「別にそんなことも無いんじゃないか?」

 

「人によっては俺たちよりも低い年でパイロットになろうとしてる人もいるかもしれないしな」

 

「そうそう。

それにルナマリアもパイロット志望じゃん、俺たちと一つしか変わらないのに似たようなもんだろ?」

 

 

と俺とシンはそう返した。

 

 

「それもそっか。

ヴィーノとヨウランは?なんでメカニック志望なの?」

 

「俺は単純に機械が好きだからかな。

特にモビルスーツみたいな大きな機械の整備をしてみたいんだよ」

 

「俺はなんとなく、かな。

パイロットなんて死地に赴くなんてのは俺には無理だし」

 

 

ヴィーノとヨウランもメイリンの質問にそう返した。

 

 

「マユとミーアは?やっぱり戦場に出るのは怖いってある?」

 

「そうかも。

私、オーブに住んでたから戦争に巻き込まれちゃってたんだよね。

その時に、街や施設を平気で焼いてるモビルスーツを間近で見たから、怖いって思っちゃった。

でも、お兄ちゃんやイチカが士官学校に入るって決めてたから私もついて行こうって思ったの」

 

 

とマユはそう話した。

それで少し雰囲気が暗くなってしまったが、

 

 

「お~よしよし!このヨウランさんが慰めてやるぞ~!」

 

 

とマユの肩を抱こうと腕を伸ばすと、

 

パシッ、グイッ

 

 

「痛てててて」

 

 

シンがヨウランの腕をつかみ、背中の方へ勢いよく回した。

 

 

「あんまりマユに変な真似するなよな」

 

「分かった、分かったから!

お、折れる!!」

 

 

ヨウランが降参のポーズをとると、シンは手を放した。

 

 

「うわぁ・・・目に見えるほどのシスコンっぷり・・・」

 

 

とルナマリアが少し引いていた。

 

 

「な!?別にそんなんじゃないって!」

 

「うっそだぁ!シン、ちょっと目がマジになってたぞ?」

 

 

とヴィーノもからかいだす。

 

 

「だ~も~!そんなんじゃないから!!」

 

 

とシンがそう言うと、皆笑い、さっきの暗い雰囲気が嘘のようになっていた。

 

 

「アハハ。

それじゃあ、ミーアは?」

 

「私?私はそうね・・・。

兵士の皆に元気を与えたいから、かな?」

 

「兵士に元気?

それなら別に他の仕事でもいいんじゃないの?」

 

「ううん、なんか、ね。

もっと間近で声を届けて、元気にできたらなって思って、それでかな。

自分で言うのも恥ずかしいんだけど、私の声って意識して話したらラクス様に似てるのよね」

 

「え!ホント!?聞きたい聞きたい!!」

 

 

と、メイリンが急に乗り気になり、ミーアを急かした。

 

 

「え、ええ。・・・コホン。

こんにちは、ラクス・クラインですわ、メイリンさんよろしくお願いしますわ」

 

「す、すごい!!

本物そっくり!!」

 

 

とメイリンは興奮していた。

 

 

「ほら、ラクス様ってプラントの歌姫として歌手活動もなさってるから、似てる声の私が近くで励ましたりとかしてたら、皆も元気になるかなって思ったの」

 

「なるなる!絶対なるよ!!」

 

 

メイリンがもう、アイドルオタク並みの勢いを見せていた・・・。

 

 

その後もしばらく談笑を続けて、俺たちは自分たちが生活する寮へ向けて帰った。




いかがでしたか。

各キャラが原作ではいつ出会うのかが分からなかったので、オリジナルを含めてこんな感じにしました。

それに、今回ミーアも出ましたが、彼女はこれからどんな道へと進むのか・・・!

次は【彼】も出す予定です!


アンケートの途中経過を同活動報告に載せておきます。



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学校生活

SIDE シン

 

 

俺たちが士官学校入学してしばらくして、ヤキン・ドゥーエで行われていた戦争がようやく終結した。

結果は地球軍、ザフトともにクライン派及びオーブ軍の介入により痛み分けで終わった。

 

ザフト側はパトリック・ザラ議長や大勢の兵士を失い、地球軍もブルーコスモスのムルタ・アズラエル、同じく多くの兵士が戦死した。

これを教訓に戦争なんてもう起こらなければいいのに・・・、と俺は思った。

 

 

 

士官学校の訓練の内容は主に生身での格闘戦、銃撃戦の訓練、モビルスーツの運用のためのシミュレーション、基礎体力作りだった。

知識面はモビルスーツ工学、機械工学、その他一般教養など、幅広い分野の勉強を行っていた。

 

幸い、俺たちの中にはそれぞれの科目が得意というメンバーが何人かいたので、科目に応じて教え合いなんかを行い、最初の1年の試験を無事に終えることができた。

 

 

「はぁ~!やっと終わった~!!」

 

 

俺は自室でぐてっとしていた。

 

 

「おい、シン。

怠けすぎると癖になっちまうぞ」

 

 

同じ部屋のイチカにそう諭された。

 

 

「いいじゃんか、今日くらいさ。

折角、試験も終わったんだしのんびりさせてくれよ」

 

「ま、それもそっか。

俺は射撃の訓練してくるよ。ちょっと上手くいかなかったからさ」

 

 

そう言って、イチカは部屋を出ていった。

さて、少し寝ようかな・・・。

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

俺は射撃場へ向かうと、そこで待機している教官に訓練用の銃と模擬弾を借り、空いている場所へ向かった。

 

パァン!パァン!

 

俺はそもそも銃を撃つような機会がこれまで全くなかったので的に写っている人のシルエットを正確に撃ち抜いたり、などという技術は特になかった。

 

でも、前々から勉強していた機械工学やモビルスーツ理論などは上位に入れるような点を取ることができ、実技のナイフ格闘術や無手格闘術では、シンには及ばなかったが上位に食い込むことができた。

 

 

『訓練生は直ちに講堂へ集まれ!』

 

 

と放送が入り、俺は銃を教官へ返して講堂へ向かった。

講堂には既に何人か集まっており、各兵科ごとに列になっていた。

俺も並んで教官が話し出すのを待つことにした。

 

 

「それでは、本日まで行われていた試験の結果を発表する。

それでは筆記総合の方から、

一位【レイ・ザ・バレル】」

 

 

おお!と、どよめきが起こった。

レイ・ザ・バレルは確か、長い金髪の男の人だった気がする。

そのまま何人か呼ばれてゆき、

 

 

「七位【イチカ・オリムラ】」

 

 

俺の名前が筆記において上位で呼ばれた。

 

その後、九位、十位でシン、ルナマリアも呼ばれた。

 

 

「続いてナイフ実技の発表を行う!

一位【シン・アスカ】。

二位【レイ・ザ・バレル】」

 

 

と、シンの名前とレイの名前が呼ばれる。

その次は筆記では名前を呼ばれなかった人が呼ばれていた。

 

 

「五位【イチカ・オリムラ】

六位【マユ・アスカ】」

 

 

俺の名前の後にマユの名前も呼ばれた。

操縦科にいる人でマユのことを知らない人たちは、オペレーター科から実技上位者が出たことに驚いていた。

 

 

「続いて射撃実技の発表を行う!

一位【レイ・ザ・バレル】」

 

 

!?またあいつが一位!?

一位を二つってことは今回のトップはあいつか!?

 

 

「三位【マユ・アスカ】

四位【シン・アスカ】」

 

 

マユが再び上位に入って、シンはマユの一つ下だった。

近くにシンがいたのでシンを見てみると、悔しそうにしていた。

 

 

「八位【イチカ・オリムラ】

九位【ルナマリア・ホーク】」

 

 

俺とルナマリアも上位10人に入った。

そしてすべての項目の発表が終わり、教官が話し出した。

 

 

「一週間ご苦労だった。

各々が望む結果を得られたかどうかはわからないが、今年の結果はこれだ。

来年ではさらに上を目指すように各員努力を惜しむな!!

以上で話は終わるが、マユ・アスカ!」

 

「は、はい!!」

 

 

教官に名指しで呼ばれ、マユは詰まりながらも返事をした。

 

 

「本校のカリキュラムは既に理解していると思うが、貴官には来期から操縦科へ移ってもらう!

準備をしておけ、いいな!」

 

「りょ、了解です!!」

 

「では、解散!!」

 

 

 

 

その後、いつものメンバーで集まり試験結果の話をしていた。

 

 

「まさか、マユが操縦科へ移動だなんて。

マユ、大丈夫なの?」

 

 

メイリンがマユに尋ねた。

 

 

「モビルスーツに乗って戦いに出るのは怖いけど、上からの指示だったら従わないとね」

 

「安心しなって、マユちゃん!」

 

 

と、ヨウランが言い出した。

 

 

「君の事が大事で大事で堪らないお兄ちゃんが君の事を守ってくれるってぇぇぇぇ!!!

何すんだよ、シン!?」

 

 

ヨウランがまたいつもの軽口をマユに言ってたのでシンがヨウランに鉄拳をお見舞いしていた。

 

 

「いつも言ってるだろうが!からかうなってな!!」

 

「お、俺はマユちゃんの雰囲気を直そうと!」

 

「それで、なんでいつもいつも俺を話に持ち出すんだよ!?」

 

「ん~?その方が面白いから?」

 

 

またヨウランが殴られた。

 

 

「いや、今のはヨウランが悪いって。

あれ?そういえば今日、ミーアは?」

 

 

とヴィーノはパンに噛り付きながらそういった。

そういえば、まだ見かけてないな。

 

 

「マユ、メイリンあんたたち何か知らないの?」

 

「今日は私見てませんよ」

 

「私も。

あ、でも、教官室に入って行くのを見たって人がいたんだけど」

 

 

教官室に?

まあ、普通なら教官室に行っても不思議じゃないけど、今日一日顔を出さないってのは変だな。

 

 

「おそらくミーア・キャンベルはもうこの学校にはいないだろう」

 

 

俺たち以外の声がしたので、そっちを見ると

試験結果の殆どが1位だったレイ・ザ・バレルがいた。

 

 

「座ってもいいか?」

 

「ああ、いいけど。

それよりどういう意味だよ?もういないって」

 

 

ヴィーノがレイに代表で尋ねた。

 

 

「先ほど、【ギルバート・デュランダル】議長がお見えになっててな。

彼と共に車に乗り込んでいたのを見かけたんだ。

何故、と思い教官に掛け合ってみたところ、彼女は自主退学と同時に議長に何かしらのスカウトを受けていた。

と、いう情報を得てな。

つまりはそういうことだ」

 

 

ってことは、ミーアは議長からの引き抜きで何かしら別の目的ができたってことか。

にしても別れも言わずに行ってしまうなんて、寂しいな。

 

でも、ミーアが自分で決めたんならその道を進むべきだな。

また、会えるといいな・・・。

俺は心の中でそう思った。

 

 

「それと、ここにいる試験上位者に話しておこう。

来期からは俺たちはモビルスーツの操縦を実際に行うことになるそうだ」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。

だが、今年は少し違っていてな。

軍の新型のテストパイロットに選ばれる可能性もあるらしい」

 

「し、新型!?そんな情報、あんたどっから取ってきたの!?」

 

 

ルナマリアはレイの言葉に驚いていた。

 

 

「ちゃんとカリキュラムを読んでいないのか?書いてあったぞ」

 

「そうだよ、お姉ちゃん。

ちゃんと読んでおかないと」

 

 

と、メイリンは呆れいていた。

 

 

「じゃ、じゃあ、なんで皆知ってる情報をわざわざ話したのよ?」

 

「お前みたいに理解してない奴がいるとも限らんからな」

 

 

と、ルナマリアの問いにそう返したレイ。

ルナマリアは少し、不機嫌そうになった。

 

 

にしても、新型か・・・。

ヘリオポリスみたいにならなければいいんだけど・・・。

 




ここでミーアはメンバーから外れました。
ここでデュランダルにスカウトされたって感じです。

それと、レイがメンバーと絡み、マユが操縦科へ転属となりました。
さあ、これからどうなるのか・・・


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新型モビルスーツ

SIDE イチカ

 

 

今日は俺たちはザフト軍の軍事施設である【アーモリーワン】へ来ていた。

本来なら今日も座学や訓練なんだが、成績上位者10名のみザフト軍のモビルスーツの見学に来ていた。

成績上位者ということで参加したのは、俺、シン、ルナマリア、マユ、レイと他5名だった。

 

 

「今回は新型機開発の見学及び、モビルスーツの起動実験を行ってもらう。

まずは、新型機の方だ。そうだな・・・。何か所かあるから5人に分かれてもらおう。

その方が効率も良くなるだろうしな」

 

 

と、教官に言われ、俺たちは2グループに分かれたが自然といつものメンバーでグループを作ったので、

俺たちは教官についていった。

 

最初に入った工場では緑色の装甲が特徴の機体が並んでいた。

確かこれは、【ZGMF-600 ゲイツ】だったはずだ。

先のヤキンでの戦争にも用いられ、隊長機としても使われることがあったはずだ。

 

 

「ここにはゲイツが収納されているが、奥にその改修型がある。それを見てもらう」

 

 

教官に付いていき奥で見たものは、

姿形はゲイツとほとんど同じだが、武装が少し変わっているように見える。

 

 

「これは改修型の【ゲイツR】だ。

これまでのゲイツより軽量化され機動性、運動性は向上している。

その他、武装にも変化が加えられており、新兵でも扱いやすいように複合兵装防盾システムはクローからサーベルへとなり、扱いずらいロケットアンカーをレールガンへと変えている。

貴官らも、いずれは搭乗することになるかもしれない機体だ。

しっかり覚えておけ」

 

 

ゲイツの工場を出てその反対側へ行くと、そこにはゲイツとは打って変わって、これまでの戦争で姿を見せなかった新型の姿があった。

 

 

「これがザフト軍の次期量産機である【ニューミレニアムシリーズ】の【ZGMF-1000 ザクウォーリア】だ。

従来のGAT-Xシリーズの性能を上回る性能を出すことが可能であり、そのパイロットに合わせて武装を換装する【ウィザードシステム】が搭載されてある。

これがそのシステムの詳細だ」

 

 

と、教官が俺たちに端末を見せた。

なるほど、地球軍のモビルスーツ【ストライク】のストライカーシステムを用いたのか。

機動用、射撃用、格闘用に分けているのか。

それにウィザード無しでも充分に性能を発揮できるのか。既にスタイルが決まっている人には扱いやすそうだな

 

 

「場合によっては貴官らの配属が決まるころには正式配備されて、これらが貴官らの機体になる可能性もある。

なのでそれぞれが自分のスタイルを身に着けておくことだ」

 

 

すると、シンが教官へ質問した。

 

 

「あの、ここまでは新型ではありますが、いずれも量産機だったと思います。

それで、かつてのGATシリーズの様なエース機は開発されていないんでしょうか?」

 

「それに関しては次の工場にて説明する」

 

 

そして俺たちはもう一つのグループと合流し、最後の工場へと足を運んだ。

 

 

「ここには先ほどアスカ兄が質問してきたいわゆるエース機が開発されている。

さて、ここからは実際に乗っている奴から話してもらおう。

コートニー、リーカ、マーレ来てくれ」

 

 

と、教官が三人の人の名前を呼ぶと、赤いザフトのパイロットスーツを着た二人の男性と一人の女性がやってきた。

 

 

「【X24S カオス】のテストパイロット、【コートニー・ヒエロニムス】だ。

よろしく頼む」

 

「【X88S ガイア】のテストパイロットを勤める【リーカ・シェダー】よ」

 

「【マーレ・ストロード】【X31S アビス】のテストパイロットだ」

 

 

とそれぞれが自己紹介をしてくれた。

 

 

「さて、ここからは俺たちが説明しよう。

先ず、カオスは―――――」

 

 

と、ヒエロニムスさんが代表で新型三機の説明を資料、実物を元に説明してくれた。

 

 

「それと追加であと二機新型が開発されている。内一機は今、地球で飛行試験を行っているのでな、それに関しては省かせてもらおう。

それで、最後の一機が【X56S インパルス】だ。この機体は先の4機と比べて極めて特殊でな、次の資料を見てくれ。

このインパルスは先の変形機構を兼ね備えた機体と違い、分離及び合体を特徴とした機体なんだ。

インパルスは上半身、下半身、コックピットの役目を持つ戦闘機三機で構成されている。

それにより部位欠損というすぐに修理が必要な状態でも換装することですぐに戦場に復帰できるという利点がある。

それともう一つ、先に教官から説明されていたと思うが、ザクウォーリアのウィザードシステムに似た【シルエットシステム】というのも搭載されていて、これも戦闘機の形を模していてインパルスの背部に取りつけることが可能だ。

それにより母艦に戻らなくても換装できるというわけだ。

今現在では、高機動戦闘用の【フォース】、近接戦闘用の【ソード】、遠距離砲撃戦用の【ブラスト】の三種類のシルエットが開発されている。

しかし、この機体を用いれば戦闘の幅がさらに広がるから新たなるシルエットの開発も進んでいる」

 

 

と、最後の新型インパルスについて説明を受けた。

 

その後、俺たちはモビルスーツの起動実験に参加し、ザクウォーリアの起動実験を行った。

 

 

「基本システム、立ち上げ完了。

バッテリー正常稼働。

システムオールグリーン」

 

 

俺が機体のシステムを立ち上げると、コックピット内のモニターが外の状態を映した。

ザクウォーリアが横になった状態で起動したので、当然外の景色も横になったように映っていた。

 

 

『オリムラ、そのまま立ち上がらせてみろ』

 

 

と、教官の指示を受け俺はシミュレーションで行ったような手順で機体を動かした。

すると、機体はゆっくりとではあるが、体を起こし、そのまま立ち上がった。

 

おお!本当に動いた!!

と、実際にモビルスーツを動かしたのは初めてだったので、少し興奮してしまっていた。

 

 

『そのまま工場の外へ歩いてみろ。

ゆっくりで構わん』

 

「は、はい」

 

 

俺はモニターに映る景色を見ながらゆっくり機体を動かした。

なんていうか自分の身長が高くなったみたいだった。

 

工場へ出て、教官の指示を受け、移動したところで俺は機体を降りた。

 

 

「日々の訓練が活きているな。

スムーズな動きだったぞ」

 

 

と、教官からお褒めの言葉をいただいた。

それで起動実験は終了し、俺たちはまた士官学校へと戻った。

 

その後は士官学校にあるモビルスーツを使い、戦闘訓練や操縦の訓練を行い、あっという間に時が過ぎた。

 




今回は、アーモリーワン編です。
そろそろ原作舞台に突入しようと思います・・・。

色々と案を練って、頑張っていきます。


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卒業と配属

すみません、今回は投稿が遅い上に短いです


「はぁっ!」

 

「チィ!」

 

 

イチカはゴムナイフをシンに向けて振るうがシンはそれを逃れようと体を捻り躱した。

今現在、士官学校では、ザフト軍入隊へ向けた最終調整として卒業試験が行われていた。

 

筆記試験においては、イチカたちは上位10人の中に入っており、更にシンはトップの成績をとっていた。

実技試験の射撃試験では、シンは惜しくも2位、トップをレイがとっていた。

そして、現在ナイフ格闘試験が行われており、イチカとシンが戦っていた。

イチカとシン以外の戦績は、レイとマユがそれぞれシン、イチカと戦い敗北し、その後レイが勝利したことで3位にレイ、4位にマユが就いていた。

ルナマリアは8位という結果に終わっていた。

そして、残ったイチカとシンで決勝という形になっており、周りのギャラリーは2人に声援を送っていた。

 

 

「ッ!!」

 

 

睨み合いに痺れを切らしたイチカが攻めに転じ、ゴムナイフを突き出したが、シンはゴムナイフを持っている腕を掴み、そのままイチカの脚を払い転ばせ、ゴムナイフを持っていたイチカの手を背に回し、自分の持っていたゴムナイフをイチカの首に添えた。

 

 

「そこまで!

シン・アスカの勝ちとする!」

 

 

と、教官の言葉で試験は終了し、シンが勝利を収めた。

 

結果として、卒業試験での上位10人の内にイチカ、シン、マユ、ルナマリア、レイの5人は入ることが出来た。

ヴィーノ、ヨウラン、メイリンも自分たちが希望した兵科にて、卒業試験を通過することができた。

 

 

士官学校における卒業式では、普通の学校同様に長い話や卒業証書の授与などもあるが、メインはその後の配属の発表である。

そして、配属先を教官や役人が発表し締めくくりとなる。

 

 

「それでは、配属を発表する―――――――」

 

 

と、教官が話を始め、何人もの名前を読み上げ、プラント防衛部隊や、地球のジブラルタル基地、宇宙哨戒部隊などに配属させた。

 

 

「最後に新造艦【ミネルバ】への配属だ。

パイロット7名【シン・アスカ】【マユ・アスカ】【イチカ・オリムラ】【レイ・ザ・バレル】【ルナマリア・ホーク】【ショーン・レミッツ】【デイル・キーツ】。

管制官【メイリン・ホーク】。

整備官【ヴィーノ・デュプレ】【ヨウラン・ケント】―――――」

 

 

と、イチカたちの名前が呼ばれ、ミネルバへと配属された。

 

 

「これにて貴官らは勇敢なるZAFT兵士となった。

その力をプラントのため、コーディネーターのために使ってほしい。

これで、卒業式を終了する」

 

 

そうして、イチカたちは晴れて士官学校を卒業した




アンケートは最後3日で締め切ろうと思います。
タラタラと続けててすみませんでした


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コズミック・イラ編 本編
新たなる戦火


いよいよ、本編へと突入します。

違和感などがあると思いますが、その場合、感想の方へ意見をお申し出ください


SIDE イチカ

 

 

C.E 73 10月2日。

俺たちが士官学校を卒業してから早数か月、アーモリーワンにて開発中だったザフト軍新造戦艦【ミネルバ】の部隊に配属となり、新型モビルスーツのテストや訓練に明け暮れていたが、明日いよいよミネルバの進水式が行われることになった。

 

今日はそのための艦載モビルスーツの点検をしようとミネルバの自室にて準備を行っていたら、パソコンへ通信が入ってきた。

相手はこのミネルバ艦長の【タリア・グラディス】艦長だった。

 

 

『おはよう、イチカ。

まだ自室にいてくれてよかったわ』

 

「なんでしょうか?自分はこれからカオスの点検作業の手伝いがあったんですが?」

 

『今日はその予定はキャンセルよ。

貴方とそれにマユの二人には護衛の仕事をお願いしたいの』

 

「護衛ですか?一体、誰の?」

 

『デュランダル議長、それとオーブの【カガリ・ユラ・アスハ】代表とその付き人のよ』

 

「アスハ!?・・・わかりました」

 

 

カガリ・ユラ・アスハ。

ウズミ元代表の娘でなかなかにじゃじゃ馬だと義父さんからも聞いたことがある。

そんな人が何でここに?

 

 

グラディス艦長からの通信が切れると俺は士官学校卒業時に渡された赤いザフトの軍服を着、アーモリーワンのシャトルターミナルへ向かった。

 

 

 

 

 

SIDE マユ

 

 

「分かりました、失礼します」

 

 

私はタリア艦長からの通信を切り、メイリンへ連絡を入れた。

 

 

「あ、メイリン?

ゴメン、今日の予定キャンセルで!」

 

『へ?嘘?私、楽しみにしてたのに!?』

 

「急に任務入っちゃったからさ、また今度ね?」

 

 

と、言い終わると私は通信を切った。

そして、ザフトの赤い軍服を着て急いでシャトルターミナルへ急いだ。

 

イチカには先に連絡を入れたってタリア艦長は言ってたから、もう向かってるはず、急がないと!

 

 

私は車を使い、ターミナル近くまで走り、そこから車を降りて中へ走った。

 

 

「マユ、こっちだ」

 

「あ、イチカ!」

 

 

イチカが既に待っており、私はイチカの元へと向かった。

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

「ねえ、議長は?」

 

「まだ来てないぞ。

多分、そろそろだと思うけど」

 

 

マユがターミナルに来ると、少ししてからデュランダル議長と他の役人の人がターミナルに入ってきた。

 

 

「来たぞ、マユ。

議長、おはようございます」

 

「おはようございます」

 

 

俺たちは議長たちの元へ向かって挨拶をした。

 

 

「君たちがミネルバから来たイチカ・オリムラとマユ・アスカだね?

今日はよろしく頼むよ」

 

「議長、アスハ代表がお着きになられたと連絡が」

 

「ああ、わかった。

・・・しかし、本当に急だな。

まあいい、行くとしよう」

 

 

 

 

俺たちは議長の後に続き、ターミナルの奥へと向かった。

そこには短めの金髪の女性とバイザーを着けた男性がおり、金髪の女性はオーブ政府の役人が来ているスーツを着用していた。

 

 

(この人がカガリ・ユラ・アスハ・・・。

それで隣のが護衛ってことか)

 

 

「お待たせして申し訳ない、姫。

遠路お越しいただき申し訳ありません」

 

「いや、議長もお多忙だと思うが時間を割いていただき感謝する」

 

 

と議長と代表の二人は挨拶を交わした。

 

 

「それで早速になりますが、本日のお忍びの御用件とは?

一体なんでしょうか?」

 

「以前より申していたはずだ。

戦後のわが国の技術及び人的資源の軍事利用の中止の申し入れていると」

 

 

それからも会談は続き、その後アーモリーワン工場区に移動しながらも話は続いていた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

工場区では様々なモビルスーツの点検、開発が行われていてた。

その工場の間の広い道を歩きながらも、議長たちの話は続いていた。

 

 

「―――ならば、今の情勢下で我々はどうすべきか、それは代表もお分かりかと思いますが?」

 

「我々は自国の理念を貫くまでだ」

 

 

オーブの三大理念

・他国を侵略せず

・他国の侵略を許さず

・他国の争いに介入しない

だったはずだ。

俺もマユも義父さんによく聞かされていた。

 

 

「それは我々も同じです。

ですが、それは力無くしては成しえない。

それは代表もお分かりかと思いますが。

だからこそオーブも軍備を整えているはずでしょう」

 

 

オーブでの戦争以降、俺たちのようなコーディネーターは地球には行く当てが無く、プラントへと昇ってきた人たちが多数いる。

 

 

「―――だが!強すぎる力はまた新たな争いを呼ぶ!!」

 

「いいえ、代表。

争いが無くならぬから、力が必要なのです」

 

 

・・・オーブは以前、地球軍の圧力に負け、国を戦火に焼かれてしまった。

力があれば守れたかもしれなかったのに。

 

 

ウーウーウーウーウーウーウー!!!

 

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

突如、工場区内にサイレンが響き渡った。

それと同時に一部のハンガーが爆発した。

 

 

「何事だ!?」

 

「新型が何者かに奪取されたようで・・・!」

 

「何だと!?」

 

 

爆発のあったハンガーは6番。

あそこにあった機体って・・・。

 

 

「議長!恐らく、カオス、ガイア、アビスです!

急いで避難を!!」

 

 

俺は議長にそう告げた。

それに爆発のあったハンガーから黒いモビルスーツ、青いモビルスーツ、緑のモビルスーツの三機が現れた。

 

 

「あ、ああ、分かった。

誰か、代表たちをシェルターへ!

イチカ、マユ、君たちも対処に当たってくれ」

 

「「はい!!」」

 

 

俺とマユは急ぎ、自分たちの機体が置かれているハンガーへと向かった。

幸い、ハンガーは爆発のあった個所より遠く、無事だったのですんなりと向かうことができた。

 

 

「マユ、行けるか!?」

 

「待って!最後の調整が終わってないの!!」

 

「くっ、俺もだ!

急いで終わらせるぞ!!」

 

 

俺たちはコックピットへと飛び込み、システムを立ち上げ情報を入力、確認していく。

 

 

「量子触媒反応スタート、パワーフロー良好、全兵装アクティブ、オールフリー。

システム起動、オールグリーン。

よし、行ける!」

 

『イチカ!こっちも行けるよ!!』

 

「なら行くぞ!!」

 

 

俺たちが乗った機体の頭部のカメラアイが光り、モニターが周囲の情報を見せた。

 

 

「イチカ・オリムラ、ザクウォーリア、出る!」

 

『マユ・アスカ、ザクウォーリア、行きます!」

 

 

そして、青色のザクと薄い紫色のザクが立ち上がった。




最後に出た二人のザクはオリジナルです。
武装に関しては後程、説明します!

現在、アンケートはマユが一位で、ミーアとルナが並んでいます。
メイリンは殆ど場外って感じですね。

もし、三人の結果が同率だった場合は、何とかハーレムか、取りあいにできるように頑張ります・・・。
機体はやはりデスティニーインパルスが一番でしょうか。
そこからストライク、量産機のカスタムって感じですね


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アーモリーワン攻防戦

再投稿になります。
原作設定と、大幅に異なる内容を指摘して頂いたので修正いたしました


「はっは!

弱過ぎだろ!コイツら!!」

 

「油断するなアウル!1機変わったのがいるぞ!」

 

 

アビスを奪取した【アウル・ニーダ】はその機体性能の強さと敵の呆気なさに笑っていたが、カオスを奪取した【スティング・オークレー】がいさめ、注意を促した。

 

 

「あん?」

 

 

アウルがスティングに指示された方向を見ると、ガイアを奪取した【ステラ・ルーシェ】と戦い、徐々に押している緑色のザクウォーリアがいた。

 

 

「おいステラ、何遊んでんだよ?」

 

「こいつ、強い!」

 

 

ステラはガイアの機動力で圧倒しようと試みるが、そのザクウォーリアは最短で距離を詰め、シールドバッシュで動きを封じていく。

 

 

「何なのよ!あんた!?」

 

ステラの力が弱いわけでは無い。

相手が強過ぎるのだ。

何故なら相手は、かつてのオーブ戦やヤキン・ドゥーエでの戦いを生き抜いたパイロットの1人【アスラン・ザラ】なのだから。

 

 

アスランはカガリの護衛として【アレックス・ディノ】という偽名を用いてプラントに来ていた。

しかし、突如新型のモビルスーツが奪取され、避難しなくてはいけない状態になり、カガリを連れてシェルターへと向かうはずだった。

しかし、その道中の道が破壊されたモビルスーツやハンガーの残骸で塞がれてしまい、どうしようも無かった。その際に近くに見つけたモビルスーツを使い、カガリを死なせまいと戦場に向かったのであった。

 

 

「アスラン、どうするんだよ!

敵のモビルスーツはどれも新型だし、第1お前!全然、乗って無いんだろ!?」

 

「ああ、そうさ!あの戦い以来殆ど動かしてなんかないさ!

でも、あの場でこうしなきゃ2人とも死んでたんだぞ!?

それに、俺は君を死なせる訳にはいかないんだ!」

 

 

アスランはザクウォーリアのシールドからビームトマホークを抜き、ガイアへ切りかかる。

ステラはシールドでトマホークを防ぎながら、ガイアの腰からヴァジュラビームサーベルを抜き、切りかかる。

 

 

「!アスラン、力負けしてるぞ!?」

 

「ぐっ、分かってる!」

 

 

アスランはガイアのビームサーベルを持っている方の腕を払い除け、後ろへ跳んだ。

しかし、そこにカオスが追撃を掛けた。

 

 

「ステラ!!」

 

 

スティングはステラの名を呼びながら、ビームサーベルを抜き、アスランが避けた方へ向かい切りかかる。

 

 

「もう1機!?」

 

「もらったぜ!」

 

 

スティングはザクウォーリアの腕を切り落とした。

 

 

「ぐぅぅ!!」

 

「そら、止めだ!」

 

(とった!)

 

 

スティングはそう思ったが、突然カオスのコクピット内にアラートが響き渡る。

 

 

(!?ちっ、増援か!)

 

 

カオスが切りかかるのをやめ、後ろへ飛び退くと先程までいた所にビームが飛んできた。

攻撃の主は青色のザクウォーリア、イチカが先程乗り込んだ機体だ。

その後からはマユが乗っている薄い紫のザクウォーリアがアスランの乗っているザクを庇うように降り立った。

 

 

「そこのザクウォーリア、ここは撤退してください。

後は私たちが引き受けます」

 

 

マユの顔がアスランたちのコクピットのモニターに映った。

 

 

「君は、さっきの?」

 

「!オーブの代表たちが何で戦ってるんですか!?

早く退いてください!!」

 

「し、しかし、お前達2人じゃ!」

 

 

と、マユの通告にカガリは反論する。

 

 

「大丈夫です。

増援はまだ来ますから」

 

 

マユがそう言うのと同時にこの戦場に4機の戦闘機が乱入してきた。

4機は所々変形していき、3機がモビルスーツに変形合体し、最後の1機が、背中に取り付き武装へと変形した。

赤と白が基調のモビルスーツへと変形し、そのモビルスーツは背中の2本の対艦刀を抜き、マユ、アスランたちの前に降り立った。

 

 

「何でこんなことを...!

また戦争がしたいのか!アンタ達は!!」

 

 

シン・アスカと【ソードシルエット】を装備した【ソードインパルスガンダム】が戦闘に介入した。

 

 

「あ、あれも新型なのか?」

 

 

インパルスの変形行程を見て、唖然としたカガリはマユに問う。

 

 

「ええ、そうです。

ですから、お下がり下さい。

港にミネルバが停泊していますので、そこへ行けば保護してもらえると思いますので」

 

「くっ、すまない...!」

 

 

アスランは片腕を失くしたザクウォーリアを操り、ミネルバのある港へ向かった。

 

 

「マユ、行けるのか?それにイチカも」

 

「ああ、行けるさ。

俺はアビスの相手をする」

 

「私はガイアの!」

 

 

イチカはザクウォーリアを他の量産モビルスーツと戦闘していたアビスへ向け、ビーム突撃銃を放った。

 

 

「あん?なんだよ、また増援か?」

 

「お前の相手は俺だ!」

 

 

マユは腰にビーム突撃銃を戻し、2本のビームダガーを抜き、ガイアへ切りかかった。

 

 

「なんだ、お前は!」

 

「戦争なんて、もう、させない!」

 

 

スティングは予想外の新型に悪態をついた。

 

 

「データに無い新型だと!?

チッ、ネオの奴...」

 

「てぇぇぇい!!」

 

 

シンは対艦刀【エクスカリバー】を連結させ、カオスに切りかかった。

 

 

「パワーは向こうの方が上なのか!?」

 

 

対艦刀をシールドで防いだスティングは驚いた。

 

 

「アウル、連携でいくぞ!!」

 

「OK!」

 

 

アウルはアビスでイチカへタックルを仕掛け、吹き飛ばし、そのまま、【カリドゥス複相ビーム砲】をソードインパルスへ向けて放った。

 

 

「!?」

 

 

シンは咄嗟にシールドを構えて防ぐが、威力の高さに機体を踏ん張らせている。

 

 

「へっ、もらったぜ!」

 

「しまった!?」

 

 

スティングはビームサーベルを使って、インパルスの対艦刀を切り落とした。

 

 

「へっ、これで!」

 

「やらせない!」

 

 

スティングがインパルスを切ろうとしたが、カオスに何かが突撃を仕掛け、吹き飛ばした。

それは、ステラが相手していたはずのマユの乗っているザクウォーリアだった。

 

 

「ぐっ!何やってる、ステラ!」

 

「...ごめん」

 

 

ステラはスティングにそう返した。

 

 

 

「悪い、マユ。

助かった!」

 

「しっかりしてよ、お兄ちゃん!」

 

「ああ!」

 

 

 

「スティング、ちゃんと仕留めてくれよ――ッッ!」

 

「油断してしまったけど、今度は!」

 

 

イチカはアビスへとビーム突撃銃を放った。

 

 

戦闘はまだ終わりの兆しを見せない




イチカとマユのザクウォーリアの紹介です。
イチカ専用ザクウォーリア(青色)
ビーム突撃銃×1(シールド裏にカートリッジ)
ヴァジュラビームサーベル×1(シールドから取り出し)
ハンドグレネード×4(腰部取り付け)

スラスター出力向上を行い、インパルスたち、ガンダムタイプが用いているヴァジュラビームサーベルを装備。
別名高機動ザクウォーリア

マユ専用ザクウォーリア(薄い紫色)
ビーム突撃銃×1(シールド裏にカートリッジ)
ヴァジュラビームダガー×2(腰部取り付け)
ビームトマホーク(シールド内蔵)

ナイフ戦を得意とするマユ用に近接武器を増やし、機動力を上げたザクウォーリア。
イチカのザクウォーリアよりかは速度は遅い


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逃亡と女神の出港

今回で、一応、アーモリーワン編の話は終了とします。

結構、端折ったり、オリジナルが入ったりと分かりづらくなってるやもしれません


イチカのザクウォーリアとアビスは格闘戦を繰り広げていた。ビームランスのアビスとビームサーベルのザクウォーリア。

リーチの差ではアビスの方が有利であったが、イチカ専用のザクの機動力を活かし、イチカはランスを躱し、アビスへと切りかかった。

 

 

「スティング!ネオとの約束の時間きてるぞ!」

 

「ああ!」

 

 

アウルは通信でスティングへと呼びかける。

 

 

「遅れてる。バス行っちゃうぜ?」

 

「分かっている!!」

 

 

シンとの戦闘を続けていたが、インパルスのパワーに徐々に押されてきたカオス。

撤退を行おうとスティングは決めた。

 

 

「ステラ!撤退するぞ!」

 

「...しが...んな」

 

「?ステラ?」

 

「私がこんなぁぁぁ!!」

 

 

ガイアは犬のようなMA形態へ変形して一直線にマユのザクウォーリアへ突撃をかけた。

 

 

「っ!」

 

 

グリフォンビームブレイドを展開しながら突撃してくるガイアをマユはタイミングを合わせガイアの頭部を蹴ることで突撃を防いだ。

 

 

「っぅあ!...私を...よくもぉ!!!」

 

 

ステラには周りが見えていなかった。

見えているのは倒すべき敵であるマユのみである。

そんなステラに対してアウルが禁句を述べた。

 

 

「ならお前はここで死ねよ(・・・)!」

 

「!?」

 

「アウル!」

 

 

【死】。その言葉を聞いた途端にステラの動きが止まった。

 

 

「ネオには僕から言っといてやるよ。

さよならってなぁ!!」

 

「ッッ!!」

 

「おい、いい加減にしろ!アウル!!」

 

「でもこうでもしないと治まんないでしょ?」

 

 

と、アウルは悪びれる様子を見せなかった。

 

 

「死ぬ...?

死ぬのは嫌...怖い...。

いや...いやぁァァァ!!!」

 

「ステラ!」

 

 

スティングの呼び掛けを無視してステラはガイアを操縦し、逃げ出した。

 

 

「ま、待て!」

 

 

マユはとっさの出来事だったので少し反応が遅れたが、ガイアを追いかけんと自分も空へ飛び立とうとした。

しかし、

 

 

ボフッ!

 

という音と共にザクウォーリアのスラスターが暴発、マユは着地を余儀なくされた。

 

 

「嘘!?なんでこんな時に!?」

 

「お?貰いっ!」

 

 

動きが止まったマユに対して、好機と思ったアウルはカリドゥス複相ビーム砲で砲撃を行った。

 

 

「マユぅ!!」

 

 

イチカが機動力を活かしてマユの前に入り、ビーム砲をシールドで防いだ。

 

 

「ぐぁっ!!」

 

 

シールドが付いている左腕が爆発し、イチカとマユは吹き飛ばされてしまった。

 

 

「もういい!アウル、ステラを追って撤退だ!!」

 

「了解〜」

 

 

アビスとカオスがガイアを追って空中へと飛んでいく。

 

 

「おい、マユ!イチカ!大丈夫なのかよ!?」

 

 

シンが2人を心配してザクの元へ駆け寄った。

 

 

「俺たちのことはいい!早く、アイツらを追え!」

 

「行って、お兄ちゃん!」

 

「わ、分かった!」

 

 

シンのソードインパルスがカオスたち三機を追いかけ、空へ飛んでいった。

 

 

「ミネルバ、聞こえますか?こちらイチカです」

 

 

イチカはミネルバへ通信を行った。

すると、モニターにミネルバの副長【アーサー・トライン】が映った。

 

 

『どうした、一体!

新型三機の捕獲はどうなっているんだ!』

 

 

アーサーは不安と焦りが入り混じった声でイチカへ尋ねる。

 

 

「今、シンが三機を追っています。

しかし、俺たちの機体が機能不全で動けません。

ですので、シンの方へ増援とフォースシルエットを射出してください!」

 

『か、艦長!』

 

『分かってるわ、アーサー!

イチカ!レイとルナマリアが既に追撃に向かっているわ!

シルエットはすぐにでも射出させるから貴方たちは機体を歩いてでもいいからミネルバへ収容して!』

 

 

 

そう言って、通信は切れた。

 

 

「タリア艦長はなんて?」

 

「レイとルナが増援でシンの援護に向かうから俺たちはミネルバへ機体を戻しておけとさ」

 

 

すると、イチカとマユの元へ通信が入った。

先ほど話に出たルナマリアとレイである。

 

 

『イチカ、マユ、無事か?』

 

「レイか!ってかお前ら今まで何してたんだよ!?」

 

『すまない、コクピットが瓦礫に埋もれていてな。

MSで撤去しようにも防衛に回していたから時間が掛かった』

 

『そういう訳よ!

それで、シンの方は?』

 

「お兄ちゃんは今、三機を追いかけて10時の方角に!

ガイアはなぜか戦線離脱を図ってて、他の二機もそれに続いてたんです!」

 

『了解した。

急ぐぞ、ルナマリア。

新型複数相手ではシンもいつまで保てるか分からん』

 

『ええ!了解よ!』

 

 

レイ、ルナマリアとの通信が切れるとイチカとマユは機体を動かして、ミネルバのある港まで歩いて行った。

機体を格納庫へ移動させ、戦闘の様子を知るために二人はミネルバのブリッジへ上がった。

そこには先ほど、ザクウォーリアに乗っていたアレックスとカガリ、それにデュランダルもいた。

 

 

「やあ、イチカ、それにマユも。

先ほどは助かったよ」

 

「いえ、議長もご無事で。

それよりもなぜミネルバへ?」

 

「状況を知るのと、姫がこちらへ来たと聞いてね。

私もこちらへ来たのさ」

 

 

と、デュランダルはイチカへそう話した。

 

 

「メイリン、お兄ちゃんたちの方はどうなってるの?」

 

 

マユは管制官を勤めているメイリンの元へ行き、話を聞いた。

 

 

「そ、それが、さっき換装し終えたんだけど、お姉ちゃんの機体が損傷しちゃって今レイとシンの二人で戦ってるの!」

 

「カオスたちの状況は?」

 

「カオスとアビスはシンたちと戦ってるけど、ガイアがずっと外壁へ攻撃を続けてて、壁もいつまでもつのか・・・」

 

 

映像ではアビスの砲撃をかわしながらフォースシルエットへ換装したインパルスが距離を詰め、レイの白いザクウォーリアがカオスと交戦していた。

 

 

そして恐るべきことが起こってしまった。

ガイアの攻撃に外壁が損傷し、さらに追い打ちと言わんばかりにアビスのビーム砲の一斉射が直撃、アーモリーワンの外壁に穴が開いてしまった。

 

 

「ま、不味いですよ、艦長!!

このままでは!」

 

「・・・やむを得ないわね。

議長、本艦はこれより緊急発進を行い、アーモリーワンの外へ出ようと思います。

恐らく、あの三機が向かう先には母艦があると思われ、その追撃に出ます」

 

「仕方ない。

タリア、君の判断に委ねよう。

それと姫と護衛の方に部屋を貸してもらえるだろうか?」

 

「ええ、分かりました」

 

 

 

デュランダルとその秘書官、カガリとアレックスはブリッジを出ていった。

 

 

「総員、直ちに戦闘配置へ!

これより、ミネルバを出港させます!」

 

 

 

こうして、カオス、ガイア、アビスの三機を追撃するべく、進水式を明日に控えていたミネルバとそのクルーは予定よりも早く、戦場へと赴くことになった




これはもしかしたら、IS編に入るまで相当時間を要するかもしれません。

その場合って、原作名は今はISですが、ガンダムの方へ変えた方がいいんでしょうか?
それとも、ガンダム編、IS編と二つの小説に分けた方がいいのでしょうか?


それと、マユの専用機も考えないと・・・。
一応の候補は【フリーダム(オリジナル装備)、ジャスティス(オリジナル装備)、デスイン(イチカ同様orオリジナル装備)】
って感じです・・・。

それと、ヒロインアンケートは終了いたしました。
もし、今後、マユの専用機や他のアドバイスがある方は、活動報告の方へ新しいのを作っておきますので、そちらへお願いします


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星屑の戦場

今回も戦闘回です。
結構、まきでやってますので雑な部分があるかもしれません


SIDE イチカ 

 

 

カオス、ガイア、アビスの三機を追いかけ、アーモリーワンの外へ飛び出したシン、レイ、ルナマリアを追いかけ、敵の母艦を発見するためザフトの新造艦であるミネルバはアーモリーワンから発進した。

 

 

「近くに敵の母艦は?」

 

「約150の距離にて所属不明艦を確認」

 

「それがおそらく敵の母艦でしょうね。

以降、不明艦を【ボギーワン】と呼称。

インパルスとレイとルナマリアのザクは?」

 

「現在交戦中!

こちらからの通信は妨害によって不可能です!」

 

「なら敵の数は?」

 

「敵は――3機、内1機はモビルアーマーです!」

 

 

映像が映って、そこにはレイの白いザクファントムとインパルスがモビルアーマーと交戦していて、少し離れてルナマリアが二機の黒いモビルスーツと交戦していた。

 

 

「これより対艦戦闘を行う!

ブリッジ遮蔽、信号弾並びにアンチビーム爆雷発射用意!

アーサー!早く席について!」

 

「は、はい!」

 

 

これ以上は邪魔になると思い、俺とマユはブリッジから出て格納庫へと向かった。

調整不足で先の戦闘では途中離脱をせざるを得なかったのでその問題点を改善するため、ヴィーノ、ヨウランと共に戦闘データを元に新たな調整を行っていた。

しばらくすると、インパルスやザクが帰投してきた。

 

 

いきなりの実戦ということもあってか、シンとルナは疲れた様子だった。

俺はシンのもとに向かって話をしに行った。

 

 

「お疲れ、シン」

 

「…ああ、イチカ。

そっちは大丈夫だったか?」

 

「一応な。

お前やレイたちに追撃を任せて悪かったな」

 

「しょうがないだろ?

いきなりの実戦に最終チェック済んでないまま出てたんだからさ。

それより、ミネルバの中騒がしいけど何かあったのか?」

 

「アスハ代表とその護衛がミネルバにいるんだよ」

 

「アスハが!?」

 

「アーモリーワンで俺たちより先に戦ってたザクに乗ってたのがそうだったんだよ」

 

「なんで、アスハが船に・・・」

 

 

すると、エレベーターが開き、レイを先頭に議長、件のアスハ代表とその護衛のアレックスさんがモビルスーツデッキにきた。

議長が船に来たことでデッキにいた全員が議長に向け敬礼をすると、再び作業に戻っていった。

 

 

「なんでこんなところにまで・・・」

 

「あれじゃないか?

新型モビルスーツの確認。お前のインパルスについては議長も話してなかったからさ」

 

 

俺がそういうとシンは端末を開き、インパルスのデータを確認し始めた。

でも、アスハ代表から距離を取ろうとしなかったので、話に聞き耳でも立てようとしているようにも見えた。

 

 

 

「―――だが!今回の新型三機の為に貴国が被った被害の事はどうお考えか!」

 

「・・・代表!」

 

「だから力など持つべきではないと?」

 

 

急に話し声に怒気が混じった声が聞こえ、聞き耳を立てずとも、分かるようになった。

 

 

「大体!なぜ必要なのだ!そんなものが今更!

我々は誓ったはずだ!もうあのような悲劇は繰り返さない!互いに手を取って歩む道を選ぶと!」

 

 

その言葉を聞き、シンの溜まっていた感情が爆発しようとしていた。

 

 

「おい、シン。

少し落ち着けって」

 

 

俺はシンの肩を持って止めようとしたが、すでに遅かった。

 

 

「さ「さすが綺麗ごとはアスハのお家芸ですねッ!!」え?」

 

 

しかし、シンよりも早くアスハ代表に対して言葉をぶつけた人がいた。

 

 

「ちょ、マユ!?」

 

 

マユがアスハ代表に対して鋭く睨んでいた。

 

 

「マユ!」

 

 

レイが議長の元を飛び出してマユをいさめようとしにいった。

 

 

『コンディションレッド発令!パイロットは搭乗機にて待機せよ!』

 

 

その放送を聞き、マユはレイがマユの元へ向かう前にその場を離れ、ルナがマユを追いかけた。

他の聞いていた整備班なんかもすぐに持ち場に着き始めた。

 

 

「シン、俺たちも行くぞ!」

 

「あ、ああ」

 

 

 

NO SIDE

 

 

「申し訳ない、姫。

彼女とその兄弟はオーブからの移住者なもので。

よもやあんなことを言うとは…」

 

「オーブの・・・?」

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

 

パイロットスーツに着替えた俺は自分のザクウォーリアにて待機していた。

 

 

 

『イチカ!お前のザクの調整まだ済んでないらしいから、今回激しい動きは出来ないぞ!』

 

 

と、ヴィーノからの通信を貰った。

 

 

「了解、じゃあ、今回はガナーで出る!

メイリン、今回の装備はガナーで頼む」

 

『了解!ザクウォーリアイチカ機、装備はガナーを装備します。

装備完了、発進どうぞ!』

 

「イチカ・オリムラ、ガナーザクウォーリア、出る!」

 

 

俺はミネルバのカタパルトから戦場となるデブリ帯へ飛び出した。

 

 

『イチカ、今回は艦周囲での護衛を!

貴方の機体はまだ本調子じゃないでしょ?』

 

「分かりました。

ミネルバの護衛を勤めます」

 

 

俺はミネルバのスペースに着地し、いつでも砲撃が行えるようにガナーウィザードのメイン武装であるオルトロスを構えた。

俺が出撃して少ししてシンのコアスプレンダーやルナのザク、ショーン、デイルのゲイツが発進してきた。

 

マユのザクも出撃し、俺と同じようにガナーウィザードを装備してミネルバに着地した。

 

 

「マユ、さっきのは」

 

「うん、分かってる。

私もカッとなり過ぎちゃって…」

 

 

よかった、マユも反省してるみたいだし。

 

 

「じゃあ、迎撃準備しとけよ。

右は俺がやるから、マユは左を」

 

「わかった。

にしても、敵艦の動きってまだないの?」

 

「艦長、ボギーワンは?もう、シンたちが到着するはずですが」

 

『分からないわ、でも警戒を続けてて。

…妙ね。シンたちの方はどうなの?』

 

『シグナル健在――いえ!ショーン機、シグナルロスト!!

並びにボギーワンのシグナルも途絶えました!!』

 

「何!?――艦長!後ろ!」

 

 

 

俺が後ろを確認するとそこには先ほどまで前方にいたボギーワンとそこから発進するモビルスーツが見えた。

 

 

『機関最大!右舷の小惑星を盾に回り込んで!

イチカ、マユ!ミサイルの迎撃並びにモビルスーツを寄せ付けないで!』

 

「「はい!」」

 

 

「マユ、モビルスーツは俺が叩く!

迎撃を任せた!」

 

「うん!」

 

 

ミサイルとは別方向から5機のモビルスーツが接近していたのを確認し、俺はオルトロスを放った。

 

 

「チィ!敵の策にはまったか・・・!」

 

 

オルトロスはデブリの残骸に当たり、敵MSには当たらなかった。

 

 

「イチカ!別方向からも!」

 

「何!?」

 

 

新たに二機のMSがミネルバに向けて砲撃を行っていた。

 

 

「メイリン!シンたちは!?」

 

『カオスたちと交戦中!デイルもやられてる!』

 

「くそっ!」

 

 

俺はグレネードでデブリに隠れている敵をデブリごと爆発させ、吹き飛ばしたところをオルトロスで撃ち抜いた。

 

 

「!ミサイル!ミネルバ!!」

 

 

ミネルバへ向かっていたミサイルが見えたので俺はオルトロスを照射してミサイルの迎撃を行った。

マユも同時に行ったが全てを迎撃することはできず、ミサイルはミネルバへと向かった。

 

 

「直撃コースじゃない・・・?

右側!小惑星から離れて!!」

 

『マリク!上昇!』

 

『ま、間に合いません!!』

 

 

小惑星に当たったミサイルの爆発で小惑星の一部が砕け、ミネルバ右舷に直撃、右舷スラスターに瓦礫がぶつかり破損してしまった。

すぐにレイも出撃し、増援の対処に向かった。

 

 

「くそっ!」

 

 

MSをオルトロスで撃ち抜くが、別のMSにガナーウィザードを破壊されてしまった。

 

 

「しまった!」

 

 

すぐに、パージしビーム突撃銃を構え、敵を追撃する。

 

 

『右舷のスラスターはいくつ残ってるんです?』

 

 

ミネルバブリッジとの通信が残っていたのでそんな声が聞こえた。

アレックスさんの声?

 

 

『六基よ!でもそんな状態で出てしまっては的にされるだけよ!』

 

 

艦長とアレックスさんが議論していた。

アレックスさんがいうには右舷の砲を一斉に撃ち、小惑星の残骸もろとも押し出し、一気に抜け出すということらしい。

でも、そんなことしたらミネルバもただじゃすまないかもしれない。

 

しかし、そのままいてもただ撃たれるだけだからこの方法に賭けるしかないかも知れない。

 

 

『今は状況を変えることを優先すべきです!…っ』

 

 

そうアレックスさんは言った後、急に黙った。

 

 

『やってみましょう。

マユ、イチカ、貴方たちにはミネルバに直撃するデブリを排除してもらうわ』

 

 

そういう指示を受け、俺たちはミネルバの直営に回り、迎撃に備えた。

ミネルバが作戦を実行し、激しい砲撃と共に、ミネルバは小惑星から離脱、俺は小さい物をビーム突撃銃で、大きい物をグレネードで破壊していき、マユはオルトロスを使って壊していった。

 

その後、ミネルバは艦主砲【タンホイザー】を撃ち、ボギーワンを攻撃した。

ボギーワンの損傷が激しく、敵は撤退。

ミネルバもかなりの被害を被ってしまったので、MSを回収し宙域を離脱し、安全なところで修理を始めた。

 

 

こうしてミネルバは2機のMSを失ったが、何とか生き延びることができた。

 

それにしても、アレックスさんって軍にでもいたのか?

ああいう作戦ってやっぱり普通に護衛だけじゃ思いつかないと思うんだが…。

 

 

 

俺はそう、考えながらパイロットスーツを着替えるため、更衣室へと向かった。



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怒りの矛先

今回は戦闘回ではありません。

でも、アニメでのこのシーンは名シーンの一つなのでは無いかと思い、自分なりに頑張って書きました。


SIDE イチカ

 

 

「本当かよ、それ!?ユニウスセブンが!?」

 

 

ミネルバの修理が難航しているため、談話室で待機していた俺たちにそんな知らせがメイリンから来た。

 

 

「あれだけの質量の物がそう簡単に軌道変更するものなんですか?」

 

「隕石にぶつかったか、何かの影響で軌道がズレたか。

実際に見てみないと分かんないけどな」

 

 

マユの質問にヨウランが何となく答えた。

 

 

「それが何でまた、こんな急に?」

 

「それよりもユニウスセブンが地球へ落下コースってのは本当なのか?」

 

 

シンが俺たちに知らせてくれたメイリンに聞いた。

ミネルバへ来た通信もメイリンが受け取っていたので、ある程度の情報は持っているだろうしな。

 

 

「うん。

バートさんもそう言ってたから多分そうだと思う」

 

 

メイリンが返す。

それを聞き、ルナはぼやいた。

 

 

「はぁ~。

アーモリーワンでの強奪騒動もまだ片付いてないのに次は隕石って何でこうも次から次へと…」

 

 

確かにそうだ。

カオスたち三機が所属不明艦に奪われて、それがまだ解決していないのにミネルバへ連絡が来たってことは何かしらの対処を俺たちがしなくてはならないのかもしれない。

 

 

「で?今度はそのユニウスセブンをどうすればいいの?」

 

 

と、ルナマリアはヴィーノ、ヨウランを見た。

 

 

「どうって…」

 

「どうするんだ…?」

 

 

「砕くしかない」

 

 

悩んでいた二人ではなく、レイがそう述べた。

 

 

 

「砕く!?あれを!?」

 

「軌道変更が既に不可能なら、もうアレを砕くしかない。

そうすれば細かな破片は大気圏で燃え尽きるだろう」

 

「でも、デカいぜアレ!?」

 

「そうそう。

現時点の大きさが大体半分で8キロはあるし」

 

「そんなに!?どうやって砕くのよ!?」

 

 

レイの言葉にヴィーノ、ヨウラン、ルナが驚く。

 

 

「それにあそこには、まだあの時のお墓が残ってますし…」

 

 

そう、マユがつぶやいた。

ユニウスセブンには血のバレンタインの悲劇があって多くの人の遺体がまだそのままになっている。

マユはそのことを危惧しているのだ。

 

 

「だが、このままでは地球に衝突して地球は壊滅する。

そうなればユニウスセブンどころか、何も残らないぞ」

 

 

レイはそう言った。

このままただ待っていたら本当に取り返しの付かない事態になってしまう。

ユニウスセブン以上の死人が出てしまうぞ…。

 

 

「…地球、滅亡……?」

 

「…だな。

けど、さ?そうすれば地球軍や、ザフトの基地にも被害が出て、戦争なんてやめて手を取り合おうなんてならないか?」

 

 

と、ヨウランが言った。

その性格から暗くなった場の雰囲気を戻そうと、軽く冗談半分で言ったんだろう。

でも、それが裏目に出てしまった。

 

 

 

「よくそんなことが言えるな!お前たちは!!」

 

 

運悪く、廊下に人がいてそれを聞き、怒鳴り込んできた。

しかもその人が今、ミネルバにて保護されているアスハ代表とアレックスさんだった。

あ、アレックスさんは偽名で本当は前議長の子である【アスラン・ザラ】だそうだ。

 

俺たちはヨウランの言葉を聞き、怒りながら入ってきた代表に敬礼をした。

 

 

「やはりそういう考えなのか!お前たちザフトは!!

あれだけの戦争と犠牲を払って!ようやくデュランダル議長のもとで変わったんじゃなかったのか!!」

 

「…おい、カガリ」

 

 

と、アスランさんが代表を止めるが、睨まれてしまっていた。

 

 

 

「別にヨウランだって本気で言ってた訳じゃないさ」

 

 

沈黙を破ったのはシンだった。

 

 

「聞いてたんなら分かるだろ?

俺たちの雰囲気がどんなもんだったか。

ヨウランはそれを少しでも和ませようと、軽い冗談を言っただけだ。

俺たちの事なんて知りたくもないだろうけど、本気で大勢人が死ねばいいだなんて俺たちだって思ってないさ」

 

 

そりゃそうだ。

そもそも俺たちはこれ以上、人が死ぬのを減らすために軍に入ったんだ。

すると、レイがシンを制した。

 

 

「シン、言葉に気をつけろ」

 

「……。

ああ、そうでした。この人オーブの代表ですもんね。

偉いんでした、すみません」

 

 

と、最後に皮肉気に言ってコーヒーを啜った。

 

 

「お前っ…!」

 

「いい加減にしろ、カガリ」

 

 

と、シンの元へ行こうとしていたアスハ代表をアスランさんが止めた。

 

 

「オーブが嫌いみたいだな、君それとそこの彼女も」

 

 

アスランさんがアスハ代表の前に出て、シン、マユに向けて言った。

 

 

「議長から聞いたが昔はオーブにいたみたいだが、何故嫌うんだ?

くだらない理由で関係の無い代表にまで突っかかるのであれば唯ではおかないぞ」

 

 

その言葉がシン更にはマユに火をつけた。

 

 

「くだらない?くだらないなんて言わせるかっ!」

 

「それに関係ないって言うのも大間違いです!

私達の家族は国に、アスハに殺されたんだから!!」

 

 

その言葉にはアスランさんも驚いた。

 

 

「国を信じて、あんた達の掲げる理想ってのを信じて!

そしてあの日!オノゴロで殺されたっ!」

 

「アーモリーワンで、代表は言ってましたよね?

『強い力は新たな争いを呼ぶ』って!

貴女のお父上があんなものを作らなければ、国が焼かれることも無かったんです!

それに、力を持つことがいけないことだって先日、言ってましたけどっ!

なら私たちはただ殺されるのを待ってればいいんですかっ!?

黙って撃たれてろって言いたいんですかっ!?」

 

 

シン、マユは実の親が死んでるからこそ、余計にそういう念があったはずだ。

…少なくとも、俺だってあの時の事を少し恨んでないってわけじゃない。

オーブが焼かれたのは理念を貫き、国民を守ることより優先してたからじゃないのかって俺は今でも思ってる。

 

 

「だから俺は!あんた達を信じないっ!オーブという国も信じない!

そして、人よりも国の理念を推すあんた達を信じないっ!!」

 

「あなたたちはっ!その理念を貫き続けることでっ!自分たちの言葉でっ!

誰が傷つき、死ぬことになるか考えたことがあるんですかっ!?」

 

 

 

シンとマユはそう言うと、談話室から出ていった。

当然、目はアスランさんと代表をにらみつけていて、涙を浮かべていた。

 

 

「シン!マユ!」

 

 

二人が出ていったことで、再び部屋に沈黙が漂った。

代表もすぐ、部屋を出て行ってしまった。

 

 

「カガリっ!」

 

 

アスランさんが追いかけようとした。

しかし、それをヨウランが呼び止めた。

 

 

「あのっ…。

さっきは、不躾なこと言って、すみませんでした…」

 

 

そう言って、頭を下げた。

 

 

「あ、ああ、カガリにもそう伝えておくよ」

 

 

そして、アスランさんは代表を追い、部屋を出た。

 

 

「…ねぇ、イチカ?

シンとマユってオーブで家族失ってたの知ってるけど、さっき言ってたことってホントなの?」

 

 

と、メイリンが俺に聞いてきた。

他の皆も気になるようだった。

 

 

「あんまり、言いたくはないんだけどな…。

少し、話すよ」

 

 

俺は、談話室に残っていたルナ、メイリン、レイ、ヴィーノ、ヨウランへ簡単に説明した。

俺たちが一緒に暮らしてて、オーブが戦争に巻き込まれ、避難してたらモビルスーツの戦闘に巻き込まれた。

など、簡単に説明をした。

 

皆の反応はなんとも言えない渋い顔だった。

 

 

しかし、その後、艦内放送でユニウスセブンへ向かうということを知らされた俺たちはそんな状態ではあったが、すぐに準備にとりかかった。

修理を行っていた間に俺やマユの機体も整備、調整されたので今度は普通に戦うことができる。

 

 

パイロットスーツに着替え、待機場所へ向かうと、マユが既に準備をして待機していた。

 

 

「あ、イチカ。

さっきは、ごめん」

 

「気にすんなよ。

お前やシンが言ってくれたお陰で俺も少しは清々したしさ」

 

「…うん、でも、私この前も代表に対して変な態度取ってたし…」

 

「仕方ないさ。

オーブで、あの戦場にいて、何も言わないって言う方が難しいんだからさ」

 

 

すると、レイ、シンが入ってきた。

 

 

「シンにも言ったが、俺は別に気にしていないぞ」

 

 

マユが何を言おうとしたのか察したのか、レイが先に口を開いた。

 

 

「え?」

 

「どちらが正しいのか、そんなのは誰にもわからない。

もちろん俺や議長にだってな。

だが、今は守るべき者を守るために戦うだけだ、違うか?」

 

「ううん、違わない。

これ以上、たくさんの人が死ぬのを見たくないもん」

 

 

マユはそう答えると、MSデッキへ向かった。

俺もシン、レイと共にデッキへ向かい、出撃の指示が出るまで、機体で待機することにした。




本来ではシン一人がカガリを責める話ですが、今回はマユと共に、訴えるということにしました。
イチカは今回は見守る役って感じです


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世界の終わるとき

ユニウスセブンでの戦闘シーンです。

今回は少し再試やら体調不良やらで遅くなってしまって、ちょっと内容も薄いかもしれません。


SIDE イチカ

 

 

ユニウスセブンに進路を向けてミネルバは進んでいた。

 

作戦の概要はユニウスセブンの破砕作業を行っているジュール隊の支援、援護だそうだ。

ユニウスセブン付近へ到着次第発進し、ジュール隊と合流、破砕作業専用装置【メテオブレイカー】の設置を支援するというのが今回の目的だ。

 

俺はふと、モニターに映るミネルバドッグを見ると、緑色のザクウォーリアに搭乗するアスランさんの姿が見えた。

 

 

「あの人...」

 

「艦長に頼んでアーモリーワンで乗ってたザクをそのまま貸してもらえたそうよ」

 

 

と、モニター越しにルナが教えてくれた。

俺はアスランさんの機体へチャンネルを合わせ、通信を行った。

 

 

「先ほどは俺の家族が失礼しました」

 

「君か。いや、こちらにも非はあったことだ。

…家族、ということは君の両親もその、オノゴロで?」

 

「実のって訳じゃないですけど、そうです」

 

「そうか…」

 

「さっきのシンやマユのような発言は多分、あの時を体験したほとんどのオーブ国民がしたいと思います。

俺だって、多少はそうですから。

だけど、いい方向へ持っていこうとしている人たちをただ突っぱねるだけじゃ駄目だと思うから、皆押しとどめてるんです。

今回だってシンもマユも全部が全部アスハ代表が悪いって思って無いはずなんです。

言い過ぎたって後悔してましたから」

 

「…そうだな、あの戦争を経験して家族を失って辛いのに、それをくだらないとあしらった俺も悪かった。

後で、彼らに会うように協力してくれないか?許してくれるかはわからないけど、せめて面と向かって謝罪したい」

 

 

と、アスランさんは俺に頼んできた。

 

 

「わかりました。

でもその前に目の前のことを何とかしましょう。

よろしくお願いします、アスランさん」

 

「ああ、こちらこそ、よろしく。えっと」

 

「イチカ。イチカ・オリムラです」

 

「よろしく、イチカ」

 

 

と、和解したのも束の間、艦内に放送が響き渡る。

 

 

 

『発進停止、状況変化!

ユニウスセブン付近にて破砕作業中のジュール隊がアンノウンとの交戦開始!

対モビルスーツ戦闘用の装備への換装を行ってください!』

 

「アンノウン!?」

 

『さらに、ボギーワンの反応を確認!

ブルー22デルタッ!』

 

「あの艦が…?」

 

 

すると、アスランさんがメイリンへ尋ねた。

 

 

「どういうことだ!」

 

『詳しいことは。

ですが、本作戦は依然ジュール隊の支援に変わりなしです!

換装が完了した機体から順に発進してください!』

 

 

俺の機体は換装する必要が無いので一番に出撃することになった。

 

 

「イチカ・オリムラ、ザクウォーリア、出る!」

 

 

俺の機体が発進し、同じく換装の必要が無いマユも発進し俺たちは換装を終えていないシンたちより先行してユニウスセブンへと向かった。

ユニウスセブンは地球への進路をとっており、地球へ落下するのも時間の問題だった。

 

ユニウスセブン付近で戦闘の光が見えた俺たちは、ジュール隊のチャンネルに合わせ、通信を行った。

 

 

「こちらミネルバ所属イチカ・オリムラです。

ジュール隊、これより援護します!」

 

「こちらはジュール隊、イザーク・ジュールだ。

援護を感謝する。所属不明のジン数機とカオス、ガイア、アビスが敵だ。

すまんが、貴様らには三機の相手を手伝ってもらうぞ。

ジンたちは俺の部隊が交戦中だ」

 

「了解です」

 

 

イザーク・ジュール…。

ヤキン・ドゥーエでの戦争にてザフト軍のエースパイロットとしてデュエルガンダムを駆って生き延びた人だ。

俺は受けた指示通りにアビスを相手にするため、そちらへ向かった。

マユはガイアへと向かっていった。

 

 

 

NO SIDE

 

 

イチカはアビスを発見し、ビーム突撃銃で攻撃を行った。

 

 

「見つけた、アビス!」

 

「おっ、あの時の青いヤツ!」

 

 

アウルのアビスは両肩のシールドの内側からビーム砲を発射した。

イチカはそれを横転してかわし、ビームサーベルを抜き、斬りかかった。

アウルはそれをビームランスで受ける。

 

 

「お前らのせいかよっ!コイツが動き出したのはっ!」

 

「違うっ!俺たちはこれを破壊しようと――」

 

「敵の言うことを信じられるかよっ!

オラぁ!!」

 

 

ザクとアビスでは力の差があり、イチカは押されてしまう。

 

 

「ぐっ!?」

 

「そらぁ!!」

 

 

アウルはビームランスをザクへ向けて振り下ろそうとした。

 

 

「やらせるかよっ!」

 

 

イチカはハンドグレネードを放り投げ、シールドを前に構える。

 

 

「何っ!?」

 

 

アウルもビームランスでの攻撃を中断し、爆発を防ぐためにシールドを構える。

グレネードは爆発し、イチカとアウルの間に距離が開いた。

 

 

「イチカ!」

 

「シン?」

 

 

イチカの元にフォースシルエットを装備したインパルスが近寄った。

 

 

「なんでこっちに来たんだよ!

破砕作業は!?」

 

「そっちはレイとアイツが行ってる!」

 

「アイツ?アスランさんか?」

 

「ああ!だから俺たちもこっちを早く終わらせて援護に行くんだよ!」

 

「わかった!」

 

 

「へっ、どっちも今日こそ落としてやるよ!!」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そのころ、マユはガイアと交戦を開始していた。

 

 

「はぁぁぁ!」

 

「この機体っ!」

 

 

ガイアはユニウスセブンを足場にMA形態へ変形し、突進してマユのザクへ攻撃を行った。

マユはガイアの機動力に圧倒されて、ユニウスセブンに押し倒された。

 

 

「これで終わりね、紫色ッ!!」

 

「まだっ!」

 

 

ガイアが接近してくるのを横へ回転して回避し、起き上がりすぐに拳で殴り飛ばした。

 

 

「マユっ!援護するわ!」

 

「ルナマリア?」

 

 

ガナーウィザードを装備した赤いザクウォーリアがマユの元へ降下してきた。

 

 

「二人でやれば早く終わるわよ!」

 

「ありがとう」

 

 

 

二機も戦闘を開始した。

 

 

 

そのしばらく後、ユニウスセブンに突如亀裂が走り、巨大な隕石だったユニウスセブンは二つへ分離した。

 

 

「割れた!?」

 

「破砕作業に成功したの!?」

 

 

マユ、ルナマリアは割れたことで飛んでくる破片を避けるため、上へ退避した。

ガイアも同じように避け、二機との距離を取り、宙域から離脱していった。

 

 

「撤退していくの?」

 

「そろそろ、こっちも限界ですから下がった方が良いと思うけど」

 

「何でよ?」

 

 

と、ルナマリアがマユに尋ねる。

 

 

「このままだと私達も地球の重力で引きずられていくってこと」

 

「ヤバいじゃない、それ!」

 

「だから―――すみません、通信が、ってこれは?」

 

「何?私の方は来てないんだけど?」

 

 

マユの元へは通信文が届いたが、ルナマリアには来ておらず、マユへ尋ねた。

 

 

「ミネルバが艦主砲で地球へ落下してる破片を破砕するため、ユニウスセブンと共に降下するって」

 

「何ですって!?じ、じゃあ、急いで戻らないと」

 

「それと、私とイチカは【ボルテール】へ移乗する議長のシャトルを護衛、そのまま本国へ付き添えと」

 

「え、ホントに?」

 

「みたい」

 

 

マユとルナマリアはミネルバの方へ戻るが、ルナマリアは機体を収容するも、マユはミネルバ付近で待機していた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

アビスと交戦していたイチカとシンはアビスがユニウスセブンの方へ向かっていったのでそれを追いかけた。

しかし、追いかけた先でイザークが駆る【スラッシュザクファントム】とアスランの【ブレイズザクウォーリア】にカオス共々圧倒されていたアビスを見て、アスランとイザークの腕を見て止まってしまった。

 

 

「すごい…」

 

「これがヤキン・ドゥーエを生き残ったパイロットの力かよ」

 

 

「二人とも、何をしている?

作業はまだ終わってないんだぞ!」

 

 

レイに叱咤され、メテオブレイカーを運搬しているジュール隊の援護に向かった。

 

 

「あんな力を持ってる人が何で、オーブに…」

 

 

シンがそうつぶやいた。

 

 

「守りたいものがオーブにあったからなんじゃないか?」

 

「守りたいもの?」

 

「確か、アスランさんて、ヤキン・ドゥーエではオーブで戦ってたんだろ?

その時に大切なものを見つけたってことじゃないか?俺たちが守るために軍に入ったみたいにさ」

 

「…そっか…」

 

 

そして、ユニウスセブンへメテオブレイカーを設置、作動させドリルがユニウスセブンへと突き刺さった。

それによりユニウスセブンはひび割れ、二つへと分離した。

 

 

「やったか!?」

 

「まだだ、しかし俺たちはここまでが限界だ」

 

 

シンは成功したと期待したが、レイは否定した。

 

 

「撤退するってことか?

まだ、破砕しきれてないのに?」

 

「シンはともかく、俺たちの機体では高度に耐えきれるか分からんぞ?

それにイチカ、お前に指令が下っている」

 

「俺に?」

 

「議長の護衛だそうだ。

ミネルバへと戻ったらボルテールへ向かえと書かれている」

 

「分かった。

シン、戻るぞ!」

 

 

と、シン、イチカ、レイは撤退を開始した。

しかし、シンは未だにユニウスセブン付近で破砕作業を行っているアスランの乗るザクを発見し、そこへ向かった。

 

 

「シン!?」

 

「すぐに戻る!」

 

「…行くぞ」

 

 

その後、マユと合流したイチカはミネルバから発進したシャトルを護衛しながら、ボルテールへ向かった。

 

 




次回からはオリジナルというか、ミネルバ側での話ではありません


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新たなる剣

今回はオリジナル回となります。
といっても、アニメの内容にあったプラント防衛線の話ですが…。


SIDE イチカ

 

 

俺とマユは議長の護衛のためジュール隊のボルテールへと移動し、そのままプラント本国へと入国した。

そのまま俺たち二人は何故か議長の執務室で議長と共にお茶を頂いていた。

 

 

「ひとつお聞きします、議長。

何故、私達二人に護衛を任せたのでしょうか?」

 

 

俺は議長にそう尋ねた。

 

 

「『護衛』というのは仮の目的だよ。

本当のところは別にある。

君たちの機体が完成したという知らせをユニウスセブンへ向かう前に受けてね、それを受け取ってもらおうと思うんだよ」

 

「私たちの?ですが、我々には既に専用のチューンナップを施したザクがありますが」

 

 

と議長の言葉にマユが返した。

 

 

「確かにそうだが、君たち二人は優秀な人材だ。無論、シンやレイ、ルナマリアも同様だ。

だからね、新型のテストパイロットとしてデータを取って貰いたいんだよ」

 

「新型ですか?

でも私たちが聞いていたのはカオス、ガイア、アビス、インパルスそれと地上での試験が間もなく終了する予定のセイバーの五機だったはずです」

 

「では、これを見てもらおうか」

 

 

そうして議長は部屋のスクリーンに電源を入れ、あるファイルを開いて見せた。

 

 

「こ、これは…?」

 

「ファーストステージの…?」

 

 

俺たち二人が見たのは、【ZGMF-X10A フリーダム】と【ZGMF-X09A ジャスティス】の二機だった。

 

 

「ぎ、議長、何故この二機が!?

これらは確か、ヤキン・ドゥーエ戦でもオーブ軍で運用されていてその後の行方が分からなくなっている機体では?」

 

 

マユが議長に驚きながら聞いた。

 

 

「ああ、確かに原型となったフリーダム、ジャスティス共に行方は分からない。

更に言うと、この二機はデータを元に再構築した復元機の様なものだ。

当然、核エンジンなんてものは積んではいないし、オリジナルには遥かに劣る。

言うなればこの二機は【フェイク・フリーダム】並びに【フェイク・ジャスティス】といったものだ」

 

 

フェイク…偽りってことか。

 

 

「劣ると言っても、心配することは無い。

セカンドステージに用いているVPS装甲やデュートリオンビーム送電システムを採用している。

後は、各自で確認してくれると助かる」

 

「…ですが、議長。

何故、この機体を私たちに?」

 

「守りたいと思っている君たちに新たなる剣を――

と、言えば聞こえは良いのだが、実を言うと今後起こりうる問題への対策といったものだ」

 

「起こりうる問題?」

 

「ユニウスセブン落下での【ジン】の件やアーモリーワンでの強奪など、ザフトへの悪影響は多大なものだ。

更に地球ではブルーコスモスが何やらキナ臭い動きを見せているそうだ」

 

「ブルーコスモスが?」

 

 

ブルーコスモスっていうのは、過激派のナチュラルで構成された派閥のようなもので、俺の世界でいう女性権利団体のようなものだ。

コーディネーターを完全なる害悪とみなし、【青き清浄なる世界の為に】を目的としてコーディネーターの虐殺などを行っている。

 

 

「それと、ラクス・クライン嬢の行方も掴めていない」

 

「え?ラクス様って今もプラントで活動されてますよね?

この前も私、ニュースで見ましたけど…?」

 

 

と、マユが尋ねた。

そういえば、今度、地球のザフト軍ディオキア基地でライブを行うってニュースでやってたな…

 

 

「そうか、ちょうどいい。

彼女の知り合いだったな、君たちは。

…私だ、執務室に来てくれるか?」

 

 

議長は一本、内線を入れた。

俺たちの知り合い?ラクス様のことだったら、そりゃあ、メディアで見てるから当然知ってるけど、そんなの一方的に知っているだけだ。

 

少し待つと、部屋をノックする音が聞こえた。

 

 

「入ってくれ」

 

「失礼します」

 

 

入ってきた人を見て、俺とマユは驚いた。

 

何故ならその人は、先ほど話に出ていたラクス・クライン本人だったのだから。

 

 

「ラクス様?」

 

「嘘っ!?本物だ!?」

 

 

マユは驚きのあまりに叫んでしまった。

まぁ、マユもメイリンと同じでラクス様の歌のファンだから、仕方ない…のか?

 

 

「紹介しよう、彼女は――」

 

「いえ、ここは自分で行います」

 

「――そうか、ならば任せよう」

 

 

議長が紹介しようとしたのを止め、ラクス様が話し出す。

 

 

「お久しぶりですわ、イチカさん、マユさん」

 

 

と言われたが俺たちは本当にテレビとかで見たことはあっても、実際に話したりしたことはなかったはずだ。

 

 

「あ、あの、ラクス様?人違いではないでしょうか?

私も、イチカもそのラクス様とお話しする機会なんて無かったですし…」

 

 

と、マユがしどろもどろになりながら答える。

大スターを目の前にして話すファンみたいだな。

 

 

「あらあら?この話し方では分かり辛かったかしら?

コホン…、久しぶりね、イチカ、マユ、これで判るかしら?」

 

 

え…?まさか…。

 

 

「ミーア…なのか?」

 

「え、嘘でしょ?いくらミーアの声がラクス様に似てたとしても流石にそれは無いんじゃない?」

 

 

と、マユは否定したが、

 

 

「ええ、その通りよ、イチカ」

 

「ウソォォ!?」

 

 

本人が認めたことですぐに驚きに変わった。

 

 

「はぁ~い、イチカ、マユ。

改めてお久しぶり、ミーア・キャンベルよ」

 

 

と、かつて士官学校で聞いていたような話し方で俺たちにしゃべりだした。

 

 

「な、なんで?

っていうか、その衣装も顔も丸っ切りラクス様なんだけど!?」

 

「ああこれ?実はこれって、ホログラムなの」

 

 

と、言ってロングスカートの中から端末を取り、スイッチを押すと、また別の衣装に変わった。

 

 

「じゃあ、今までのラクス様って全部ミーアが?」

 

「ええ、ここ最近出てるのは殆ど私よ」

 

「えええええ!?」

 

 

また、マユは驚き、声を荒げた。

 

 

「では、議長、ミーアは影武者だということですか?」

 

「ああ。無論、彼女も自分の意思でここにいる。

皆を勇気づけられるなら、とね」

 

「そういったことも含めての対策ということですか?」

 

「ああ。ラクス・クラインはかつてプラントの敵として現れている。

その後の足取りは掴めていないが、活動休止としていつまでも留めておくのも限界がある。

そこで彼女の出番ということだ」

 

 

 

途端、執務室にサイレンが響く。

 

 

「なんだ!?」

 

「待て、すぐに確認を取る。

――一体、何の騒ぎだ!」

 

『大変です、議長。

地球軍の月からの大規模な部隊がこちらへ接近中とのことです!』

 

「何…。

そうか、分かった。迎撃部隊を直ちに出せ」

 

『それから大西洋連邦の声明もあって、地球諸国が地球軍との同盟を開始したとのことです』

 

「む…。やはり、最悪の事態が起こったか…。

防衛ラインの構成を急がせろ!」

 

 

そう言って、議長は通信を切った。

 

 

「議長」

 

「ああ、いずれはこうなると踏んではいたが、予想よりも早かったようだ。

君たち二人にも迎撃に出てもらう、F・フリーダム、F・ジャスティスを使い、プラントを守ってくれ。

私も迎撃部隊の指揮を執る」

 

 

そう、命令され、俺たちは急ぎ、プラントのモビルスーツデッキへ向かった。

 

 

「失礼します、デュランダル議長の命により、フェイク・フリーダム及びフェイク・ジャスティスの受領に来ました」

 

「君たちがか。

話は伺っている。すでに君たちの前の機体からの戦闘データを移している。

調整などは済ませているが、いきなりの実戦となってしまうのでな、くれぐれも扱いには気を付けてくれ」

 

 

そういうと、そこの開発主任は急ぎ、出ていった。

俺とマユは急ぎ機体に乗り込んだ。

俺はジャスティスにマユはフリーダムに乗り、システムを起動させた。

 

 

「OSはセカンドステージの物と同じか…。

しかし、エネルギー量がザクとは大違いだ…。

…システム起動、各システムオンライン、出力オールグリーン。

マユ、俺は行けるぞ!」

 

「こっちも!」

 

「イチカ・オリムラ、フェイク・ジャスティス、発進する!」

 

「マユ・アスカ、フェイク・フリーダム、発進します!」

 

 

俺たちはモビルスーツデッキを飛び出し、戦場へと向かった。




いかがでしたでしょうか。
今回登場させました、イチカとマユの機体は一応、仮の機体です。
アンケートでとった、デスティニーインパルスもきちんと登場させますので。。。


機体の説明としては
F・ジャスティス、Fフリーダム共に、出力は核エンジン搭載機ではなく、インパルスたちと同じ、デュートリオンビーム送電システム。
装甲はVPS装甲。
武装はどちらもセカンドステージの機体と同様の武装

武装 F・ジャスティス

高エネルギービームライフル×1
デファイアントビームジャベリン×2
フラッシュエッジビームブーメラン×2
ファトゥム-00F×1
20mmCIWS×2
対ビームコーティングシールド機動防盾×1

リフター武装
フォルクリス機関砲×4
ケルフス旋回砲塔機関砲×2
バラエーナプラズマ収束ビーム砲×2

備考 アビス、フリーダムに搭載されていたバラエーナプラズマ収束ビーム砲をリフターに装備、火力面を補っている。


武装 F・フリーダム

20mmCIWS×2
高エネルギービームライフル×1
ヴァジュラビームサーベル×2
ヴァジュラビームダガー×2
クスィフィアスレール砲×2
バラエーナプラズマ収束ビーム砲×2
対ビームコーティングシールド機動防盾×1

備考 マユのザクに取り付けられていたビームダガーを後付けで搭載。


と、紹介しましたが、キラやアスランの乗っているフリーダム、ジャスティスとは性能は劣っていると考えてください。
次回は、プラント防衛線の戦闘です。


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驕れる牙

プラント防衛線(イチカ、マユ参戦版)です。
F・フリーダム、F・ジャスティスの初陣になります。

それと、最後のあとがきにガンダムブレイカー3を用いての自分なりのF・フリーダム、F・ジャスティスを画像にしました。


NO SIDE

 

イザーク・ジュールは苦戦を強いられていた。

多大な地球軍の戦力に対してこちらは守るべきプラントをすぐ後ろに控えたままで戦力も地球軍には劣る。

ビームアックスで地球軍のモビルスーツ【ウィンダム】を両断する。

 

 

「チィ、数ばかりがこうも多くては…!」

 

「イザーク!こっちもそろそろ持たないぜ!?」

 

 

ジュール隊副隊長の【ディアッカ・エルスマン】がそう報告する。

 

 

「狼狽えるな!俺たちがここで抜かれてしまってはプラントを守るものが無くなるんだぞ!」

 

 

ハイドラガトリングビーム砲で【ダガーL】を破壊し、ビーム突撃銃で別の機体を撃ち抜く。

別の宙域ではオレンジ色のブレイズザクファントムがファイアービー誘導ミサイルで敵のミサイルを迎撃し、両手にビームトマホークを持ち、二機同時にウィンダムを切り裂いた。

 

 

「ヴェステンフルス隊長!このままではこちらのエネルギーが先に尽きてしまいますっ!」

 

「ハイネで良いって言ってるだろ?

それより、エネルギーがヤバくなってる機体から順次交代、代わりに後ろで控えてるのを前に出せっ!

ここが正念場だぞ!」

 

 

と、ヴェステンフルス隊隊長【ハイネ・ヴェステンフルス】は部下を激励する。

 

 

「とは言ったものの、流石にこれだとこっちの消耗が激しいな…。

ったく、敵さんはどんだけモビルスーツを隠し持ってんのやら――!?」

 

 

アラートが後方からの攻撃を知らせ、咄嗟に横へかわす。

すると、背後から何もない所から暗緑色の機体が姿を現しながら、斬りかかってきた。

 

 

「おわぁ!?って、この機体、ミラージュコロイド使ってんのか?

バリバリ条約違反の機体を開発しやがって…。

おらぁ!!」

 

 

ハイネは暗緑色のダガー【NダガーN】を蹴り飛ばし、ミサイルで破壊する。

 

 

「さて、と。

次は…お?なんだこの反応?新型?しかも援軍か!」

 

 

ハイネはプラントから急速接近してくる反応を二つ確認した。

 

 

「さてさて、一体どんな――嘘だろ?なんであの機体が!」

 

 

反応の正体はかつてオーブ軍側にて猛威を振るったザフト軍の新型モビルスーツ【フリーダム】、【ジャスティス】の二機だった。

しかしそのカラーリングはかつての物とは別物だった。

 

 

「カラーリングは違うけど、間違いねぇ!

フリーダムとジャスティスだ!あんなのあるんなら最初から出せっての!」

 

 

フリーダム、ジャスティスはハイネを通り過ぎ、二手に分かれて敵部隊へ向かっていった。

 

 

 

「当たって!」

 

 

フリーダムもといF・フリーダムに乗ったマユはビームライフルを放ち、正確な射撃でウィンダム、ダガーLを撃ち抜いていった。

 

 

 

「すごい…、この距離からも正確な射撃ができるなんて…。

それに――」

 

 

当然、敵も撃ち返してくるが、F・フリーダムはそれをひらりとかわし、ダガーをヴァジュラビームサーベルで接近して切り抜けた。

 

 

「この機動性も…。

私達のザクよりも断然早い…!

ぐっ…!?」

 

 

切り抜けた後、急制動を行ったことで、その負荷がマユにもかかる。

 

 

「じゃじゃ馬って感じ…。

扱えるのかな、私に…。

でも!」

 

 

ウィンダムが切りかかってきて、それを機動防盾で防ぎ、腰に備え付けているヴァジュラビームダガーでウィンダムの腕とメインカメラを突き刺し、破壊する。

 

 

「議長が私たちに託してくださったもの…!

守って見せる!プラントを!たぁぁぁぁ!」

 

「う、うわぁぁぁ!」

 

 

ビームダガーを投げ、ダガーL二機を仕留めた。

 

 

「全砲門展開!マルチロック!フルバーストォォ!」

 

 

ビームライフル、腰のレール砲、翼部のビーム砲の五門を一斉射し、敵部隊を一斉に攻撃した。

 

 

「やばっ、この演算はちょっときついかも…、それにエネルギーも結構持って行ってるし」

 

 

マユはフルバーストを撃ち終わった後、少し後退しながらビームライフルで狙撃を行っていく。

 

 

 

マユとは別方向へ向かったイチカは敵部隊に押されつつある部隊の援護へ向かった。

 

 

「あれは、ジュール隊?」

 

 

イチカが確認した先には多数のモビルスーツと交戦している空色のザクファントムとガナーザクウォーリアがいた。

 

 

「チィ、ちょこざいな!」

 

「おい、イザークあれ!!」

 

「何だ!!…ジャスティスだと!?」

 

「まさか、アスランが?」

 

「馬鹿を言え!あいつはミネルバと共にいただろうが!」

 

 

イチカが乗っていることを知らないイザークとディアッカは驚いているが、イチカはその二人を援護すべく、両肩のフラッシュエッジビームブーメランを投げ、ダガーLのキャノン砲を切り裂き、ファトゥム00Fのバラエーナプラズマ収束ビーム砲でウィンダムを撃ち抜き、イザーク達と合流した。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「アスラン、お前っ!…あれ?」

 

「貴様は確か、ミネルバのパイロットだな。

議長の護衛で共にプラントへ戻っていたのか」

 

「はい、ミネルバ所属のイチカ・オリムラです」

 

「その機体は?ジャスティスに酷似しているが?」

 

「これは議長から受け取った新型です。

ジャスティスに似てますが、核エンジンは搭載されてなくて、セカンドステージの機体と同列の物だと」

 

「まぁいい。

戦えるのならあれらを蹴散らすぞ!」

 

「ああ!」「了解!」

 

 

イチカとイザークが前に出て、ディアッカが援護射撃を開始した。

ディアッカのガナーザクウォーリアのオルトロスを避けるために左右に分かれた地球軍MS部隊をイザーク、イチカが挟撃する形で襲い掛かる。

 

 

「いぇぇぇぇい!!」

 

 

ビームアックスでイザークがダガーを両断、イチカはデファイアントビームジャベリンで敵を切り、離れている敵をリフターのビーム砲で撃つ。それでも残った相手をディアッカが正確な射撃で仕留める。

即席のコンビネーションであったが、エース級のパイロット三人の連携は地球軍を圧倒するのに足りうるものだった。

 

そこへ、偵察を行っていた別部隊から連絡が全軍に通達された。

 

 

「敵別動隊が――核ミサイル装備でプラントへ向け接近中!?」

 

「こいつらは囮ってことですか!?」

 

「不味いぞ、イザーク!ほとんどの部隊がこっちの防衛に出てしまってる!」

 

「総員、ただちに核攻撃部隊への迎撃に当たれ!

プラントをやらせるなぁぁぁぁ!!」

 

 

ザフト軍のモビルスーツが直ちに移動を開始するが、別部隊へ向かおうとする機体を地球軍が攻撃を仕掛け、妨害を行う。

 

 

「くっ、俺が先行します!」

 

 

イチカはF・ジャスティスのファトゥムを前面に展開し【ハイマットモード】へ、移行し一気に加速して、別動隊の方へと向かう。

 

 

「なんて…数だよ…」

 

 

イチカはその核ミサイルを装備した別動隊の規模に恐怖した。

イチカが前の世界にいた頃、社会の授業で習った原爆のような大量殺戮兵器、こっちの世界に来てユニウスセブンへ放たれた核ミサイル、一発で大勢の人の命を奪うような兵器が今、イチカの目の前に大量に投入されている。

 

 

「でも、止めなきゃプラントが…!

やらせない…、やらせてたまるかぁぁぁぁ!!」

 

 

イチカがそう叫ぶと共にイチカの視界が一気にクリアになった。

 

 

(何だ…これ…)

 

 

そう、一瞬考えたが、直ぐに他所へやり、核ミサイル部隊を迎撃するためにイチカは接近する。

その際にビームライフルの出力をキーボードで変更し、長距離から狙撃を開始した。

 

 

「当たれ…!」

 

 

出力が大幅に上昇したビームライフルで正確な狙撃を行い、イチカは核ミサイル装備型のウィンダムのミサイルハッチを撃ち抜き、プラントへたどり着く前に核ミサイルを爆発させた。

その爆風によって敵の一部は巻き添えを喰らい、さらに誘爆を起こしていった。

 

 

「これなら…!」

 

 

イチカはやれる、と思ったが、コクピットに機体のバッテリーが残り20パーセントを切ったアラームが鳴る。

 

 

「狙撃の為に出力を上げ過ぎたか…!」

 

 

「さっきの狙撃には驚いたが、動きが止まればこっちのもんだぁ!!」

 

「青き清浄なる世界の為にィィィ!!」

 

 

F・ジャスティスの動きが止まったのを好機と見た地球軍は核ミサイルを発射する。

 

 

「くそっ…、ダメなのかよ…」

 

 

イチカは諦めかけてしまった。

 

 

「そこのモビルスーツ、急ぎ後退せよ。

そこは我が艦の射程圏内だ」

 

 

と、イチカに通信が入る。

 

 

「り、了解!

…あれってナスカ級…だよな?」

 

 

そのナスカ級は見慣れぬ兵装を取り付けており、核ミサイル部隊に対してその兵装を向けた。

そして、その兵装【ニュートロン・スタンピーダー】を放った。

それは核ミサイルを次々に破壊し、地球軍モビルスーツ、その母艦までもをたちまち飲み込んでいった。

 

 

イチカは目の前の光景に呆気に取られていた。

ナスカ級から放たれた一撃が核ミサイルを全て落とし、完全にプラントを守り切ったのだから。

 

 

「な、なんだ、あれ…」

 

 

核ミサイルによるプラント破壊に失敗した地球軍はすぐさま部隊を撤退、イチカはナスカ級に回収してもらい、プラントへと帰還した。




F・フリーダムです。

【挿絵表示】


F・ジャスティスです。

【挿絵表示】



何か、おかしな点やここをこうしたらなどのアドバイスがあればお願いします。


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和解と発足

評価を少しずついただけてとても嬉しいです。
今までの段階で評価をしてくれた方、感想をくれた方本当にありがとうございます!


SIDE イチカ

 

 

核攻撃を阻止した俺たちザフト軍は何部隊かを残し警戒態勢を敷いたが、後に警戒を解除し何とかプラントを守り切ることができた。

MSデッキにマユと共に機体を移動させた後、一息つくためにプラント本国を二人でブラブラすることにした。

 

 

「あ!イチカ、次はあのお店見てみよっ!」

 

「はいはい、分かったよ」

 

 

…訂正、俺は荷物持ちに徹していた。

まあ、折角できた暇な時間だしマユも買い物とかしたかったんだろう。

かくいう俺も出かけることができて良い気晴らしになっているし。

買い物を終えた俺とマユはプラントシャトル発着ターミナルにあるカフェにて休憩を取ることにした。

 

 

「結構、買い込んだな」

 

「そうかな?服、化粧品とかだけど?」

「服って着る機会なんて、早々無いんじゃないか?」

 

「分からないじゃん!

今日みたいに出かける時とか...そのデ、デートした時とか...」

 

 

デート...だと!?

あのマユがデート!?

誰だ!一体誰なんだ!?

レイ?ヴィーノ?ま、まさか、ヨウランじゃないだろうな!?

 

...これは、1度シンと話し合って協議する必要があるか...?

 

 

「話変わるけどさ...。

イチカ、ジャスティスに乗ってみてどう感じた?」

 

「ジャスティスに乗って?

新しい機体が貰えて自分が認められたって嬉しく思った反面、怖いなって思った...。

あんな、強力な機体を扱うってことは、それだけ俺たちに大きな責任が伴うって事だしな」

 

「責任?」

 

「敵だったとしても、地球軍のパイロットの命を奪うってことは、結局のところ、人殺しと何ら変わりないんじゃないかと思うんだ」

 

「でも、それは私たちが殺らなきゃ多くの人が死んでしまうからっ...」

 

「ああ、その通りだ。

俺たち軍人が戦わないと関係ない人が大勢死んでしまう。

でも、戦って勝ち取った平和は多くの人の死の上に築かれたものなんだ。

だからこそ、撃った俺たち自身が撃った相手のことを決して忘れちゃいけないんだと思うんだ。

それは、俺たちパイロットの責任だと俺は思う」

 

「撃った相手のことを決して忘れてはいけない...」

 

「ああ。

だから、さ、平和になってもその事を忘れずに慰霊碑に祈りにいこう。

撃った相手に対してできるせめてもの償いのためにさ」

 

「うん、そうだね」

 

 

と、マユは言うとしばらく俯いていた。

でも、パッと顔を上げて

 

 

「よし!しんみりした話はここまでっ!」

 

 

と、いつもの調子で言った。

 

 

「あれ?あそこにいるのって...?」

 

 

マユがカフェの外を見て呟いた。

俺もつられてそちらを見ると、ミネルバと共にオーブへ戻ったはずのアスラン・ザラさんがラクスもといミーアと話をしていた。

 

ミーアは護衛の人と何処かへ行って、アスランさんは俺の事に気づいてこっちに来た。

 

 

「イチカ、君もプラントへ来てたのか」

 

「ええ、ユニウスセブンの時に議長をプラントへ護衛していたので。

アスランさんは?オーブへと戻ったのではないんですか?」

 

「そうだったんだがな...。

君もいたのか、マユ・アスカ。

君に話したいことがあったんだ」

 

「私もです。

先に言わせてもらいます。

あの時はカッとなって無礼な言葉を言ってしまってすみませんでした。

アスハ代表の話を聞いていたら許せなくて...」

 

「家族を失っている君たちには当然ながら思うとこもあるだろう。

だが、覚えておいて欲しい。

カガリだってあの時、父親を失っている。

自ら死を選んだウズミ様をな。

だからこそ、家族を亡くした時の悲しみは彼女だって、無論、俺だって分かっているさ。

そんな中でも彼女は亡くなった父の意思を受け継ぎ、国を護っている。

弱音を表に出さずに自分の理想を追い求めてな。

だから、あまりカガリのことを悪く言わないで欲しい。

...それと、俺もすまなかった。

さっきも言ったが家族を失ったのは俺だって同じだ。

失った時の悲しみが大きいことだって当然、分かる。

だが、今君たちは生きているんだ。

今のことにしっかりと目を向けないと、その内、大事なものを失うことに繋がってしまうぞ」

 

「...はい、肝に銘じておきます」

 

「ならいいさ。

アスラン・ザラだ、よろしく頼むよ、マユ・アスカ」

 

「はい、アスランさん」

 

 

マユとアスランさんの誤解は解けたみたいで俺としては嬉しかった。

二人は握手を交わし、仲直りの意思を示した。

 

 

「それで、アスランさんはなんでプラントに?」

 

「すまない、イチカ。

その質問に答えていなくて。

...俺は、ザフトに戻ろうと決めたんだ」

 

「ザフトへ?でも、代表の護衛はどうするんですか?」

 

「今、彼女に俺は必要ないさ。

だから、俺は俺に出来ることをやろうと思って、前々から議長にアポを取っていたんだ。

それで今日ようやく会うことができるのさ。

...そろそろ時間だ、失礼する」

 

 

アスランさんはその場を立ち去っていった。

 

 

「あの人も私たちと一緒に戦うってことなんだよね...?」

 

「そうだな。

俺たちも戻ろうか、マユ。

議長に次の指示を仰がないと」

 

 

俺とマユもシャトルターミナルを出て、ザフト本部へ向かった。

議長の執務室へ向かい、俺たちは中へ入った。

そこには先ほど別れたアスランとミーア、それに議長がいた。

 

 

「やあ、イチカ、マユ。

丁度、君たちを呼ぼうと思っていたんだ」

 

 

と、部屋へ入ると議長がそう俺たちに話した。

 

 

「と言うことは、議長?

俺、いえ自分の下に就く二人というのはやはり?」

 

「そうだ、アスラン。

彼らが君の隊に参加する二人だ」

 

 

アスランさんが議長に尋ね、議長は俺たちがアスランさんの部下だと答えた。

て、ことは俺たちはこれからアスランさんの隊へ入るのか?

 

 

「ず、随分と急ですね、議長?」

 

 

と、状況を上手く飲み込めていないマユが議長へ尋ねた。

 

 

「以前も言ったが、今後のための対策だよマユ。

地球で、活動が活発化しているブルーコスモスやオーブの急な動きに対して、ね」

 

「オーブの?」

 

「大西洋連邦との同盟を引き受けたそうだ。

直にメディアでも話題になるだろう」

 

「待ってください!そんなことになったら今オーブにいるミネルバは!?お兄ちゃんはどうなるんですか!?」

 

 

と、マユは声を荒げ、議長へ尋ねた。

 

 

「ミネルバは既にオーブを出たよ。

ただ、オーブと地球軍に挟撃に合い、被害を負ったみたいだが。

しかし、多少の被害は受けたが無事だという報告も受けている」

 

「よ、良かったぁ」

 

「そしてアスラン、君にはミネルバの方へ向かってもらう。

それと、これを」

 

 

議長は一つの羽型のバッジをアスランさんに渡した。

あれは!Faithの勲章!

 

 

「これを君に託そう。

これを持つ意味は君ならば分かるね?」

 

 

Faithは特務隊として独自の権限を持っている。

言うなれば、戦場でも通常の指揮官の命令では無く自分の命令で部隊を動かせる...はずだ。

 

 

「イチカ、マユ。

二人はアスランの隊に入るのは少しあとになる。

先に再び護衛の仕事を頼みたい」

 

「議長のでしょうか?」

 

「私もだが、彼女の護衛もだ」

 

 

議長はミーアを示した。

 

 

「ミーアの?

あ、そう言えばライブを行うって話を......あ」

 

 

マユがしまった、というような顔をした。

アスランさんの目の前でミーアの名前を出してしまったからだ。

アスランさんは彼女のことをまだラクスだと思っているはずだ...。

 

 

「あ、心配しなくてもアスランには既に話してあるわ」

 

 

と、ミーアがそう言った。

それを、聞きマユは安堵する。アスランさんは苦笑いをしていた。

 

 

「そういう訳だ。

君たちが士官学校で友人だったことも聞いている。

それと、これからは俺のことはアスランと呼び捨てで構わない。

いくら部隊だと言っても堅苦しいのは俺はあまり好きじゃない」

 

「「分かりました、アスラン」」

 

「出来れば敬語もやめてもらえないか?」

 

 

と、アスランは少し困った顔をしていた。

 

 

「アスランはすぐに出立してくれ。

二人も我々の準備ができ次第、出撃を頼むよ」

 

「「「了解」」」

 

 

ここに、アスランを隊長とした俺たち【ザラ隊】が発足した。

 

 

 



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地球での休日

今回、かなり、短めです。
理由としては、その次の話との落差?シリアス差?があるからですー


SIDE イチカ

 

 

プラントを出た俺たちは地球への降下を開始し、ザフト軍ディオキア基地に降りた。

ミネルバと俺たちの隊長のアスランは今、地球軍のガルナハン基地にて現地の人の援助の元、ローエングリン破壊作戦を行っているようで、その後にこっちに合流するらしい。

 

ミネルバが着くまでの間は俺とマユは暇を貰ったので、俺はバイクを借りて1人、街を観光しに行った。

 

 

「さってと、街に来たは良いけど何しようかな...?

買い物は確定としてそれだけだと時間余っちゃうしな...」

 

 

と、俺が悩んでいると

 

 

「なあ、お前!良かったらバスケしねぇか?丁度、人数足りなくて困ってんだよ!」

 

 

と水色の髪の青年が話しかけてきた。

 

 

「俺か?でも、俺バスケとかしたことないんだけど」

 

「良いって。

俺らも適当にやってるだけだからさ!」

 

「...良し!じゃあ俺もやろうかな」

 

「OK!スティング、ステラ、あと一人見つかったぞ!」

 

「ん?そうか。

あんた、悪かったな、いきなり引き込んで」

 

「いいよ、俺も暇してたし。

俺はイチカ、よろしく頼む」

 

「スティングだ」

 

「俺はアウル」

 

「...ステラ」

 

 

と、3人も自己紹介してくれた。

 

 

「3人は兄弟とか?」

 

「いや、同じ施設出身てだけだ。

そういう意味では兄弟かもな」

 

「それより早く始めようぜ!」

 

「...やろ」

 

 

俺はアウル、スティング、ステラと共にバスケをやることにした。

 

4人ということもあり、2on2をチームを変えながら回していき、点なんかは関係なくただ純粋に身体を動かしていた。

アウルとスティングはスポーツでもやってたのか身のこなしがとても軽く、ステラはポーっとしてるようで急に鋭い動きを見せ、翻弄してきた。

俺も負けじと必死に脚を動かし、時間が経つのを忘れるくらいにバスケをやっていた。

 

 

「ふぅ、あ〜楽しかった!」

 

「イチカ、お前中々やるな!」

 

「ホントだぜ、素人って言ってたけど嘘だろ、それ」

 

「いや、ホントだよ。

ただ、身体を動かすことは日頃からやってるからさ。

こんな風に純粋なスポーツなんてのは久しぶりだけど」

 

 

本当に疲れた。

アイツらのスタミナは無尽蔵かと思うくらいに長い間動いてた気がする。

 

 

「にしても、ドリンク、サンキュー!」

 

「気にすんなよ...って、もうこんな時間か!

俺、買い物しないといけないから帰るよ!」

 

「ああ、俺らもそろそろ帰るし!

ほら、ステラ!帰るぞー!」

 

「...海は?」

 

「海はちゃんともう少ししたら行くから待ってろ!

それより、帰らないとネオが心配するぞ!」

 

「ネオ!うん、帰る!」

 

「じゃあまたな、アウル、スティング、ステラ」

 

「ああ、俺らまたどっかで会いそうだし、またな!」

 

「じゃあな!」

 

「...バイバイ」

 

 

3人とは別方向に向かい、バイクに乗ってすぐに買い物を済ませ、ディオキア基地へと俺は帰った。

 

帰る途中、少し考え事をしていた...。

 

 

「アウルの声......何処かで...」

 

 

その時はそんな程度の疑問だったので、俺はそれを振り払いバイクのスピードを上げた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

その二日後、ミネルバが朝のうちにディオキア基地へ着港、議長にも空きの時間が出来たということで、俺たちミネルバのパイロット、グラディス艦長、議長で会食を行うことになった。




ご覧の通り、あの3人との邂逅です。
さて、今後どうなるやら...。


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戦争の裏

再投稿となります。

ある程度修正はしましたが、色々と予定があり時間が空いてしまったのでまだ少々変なとこがあるかもです。
...自分なりには頑張りましたが...


SIDE イチカ

 

 

シン、ルナ、アスランよりグラディス艦長、レイが早く来たので、前々からディオキアにいた俺たちは議長との5人で話をしていた。

 

 

「グラディス艦長もレイもお疲れ様でした」

 

「いえ、イチカとマユもプラントをよく守ってくれたわ」

 

「それにあの2機の新型を上手く扱えているそうじゃないか」

 

 

レイはここから見えるMSハンガーの中に置かれている俺たちの機体を見てそう言った。

 

 

「まだまだ振り回されてるけどな。

けど、そっちもシンが凄い活躍したんだろ?

敵の部隊をぶった斬りだって聞いたけど」

 

「確かにあの時のシンは凄かった。

敵のMAを単機で倒しただけでなく、敵母艦をも破壊したからな」

 

 

と、話をしていたらハイネがシンたちを引き連れてこの場に来た。

 

 

「議長、ミネルバのパイロット3名をお連れしました」

 

「ああ、ご苦労。

久しぶりだね、アスラン、先日のプラント以来だね」

 

「ええ、お久しぶりです議長」

 

「それで君たちは――」

 

「あっ、はい!

ミネルバ所属のルナマリア・ホークであります!」

 

「お、同じく!

ミネルバ所属のシン・アスカであります!」

 

 

と、二人は緊張した様子で挨拶をしていた。

俺とマユは議長とお会いする機会が何度かあったので、もうあの様に緊張することは無くなったから、何か懐かしいと思った。

 

 

「君が...!

君のことは良く覚えているよ...!

それにこの前の戦いでも大活躍だったようだね。

レイやタリアから聞いているよ」

 

「え...?」

 

「そういえば、叙勲の申請も届いていたね。

追々、君の手元に届くだろう」

 

 

と、議長はシンに言っていた。

ここの所の活躍ぶりを聞いているとそれも当然だなと思い、更に自分の家族がそうやって成果を得るのは嬉しく思う。

 

シンたちも席に座り、8人での会食が始まった。

 

 

「ローエングリンゲートでも君の活躍は素晴らしいものだったと聞いているよ」

 

「あれはただ、隊長や現地で協力してくれた人のお陰です。

俺、いえ、自分はただその作戦に従って行動しただけで」

 

「この街が解放されたのも君たちがあの施設を落としてくれたお陰だ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

議長からのお褒めの言葉でルナも喜んでいた。

 

 

「それで、議長?

宇宙の方はどのような感じで?」

 

 

と、グラディス艦長が尋ねる。

 

 

「プラントに向けての核攻撃以来、大きな争いは起こっていないよ。

月の哨戒部隊との小さな争いが起こる程度さ。

地上の方も何がどうなっているのか...。

こちらが停戦協定などを持ちかけようとも、向こうはそれを良しとしないようでね。

戦争などしたくないが、それだとこちらはどうにも出来ないが―――――いや、軍人の君たちにする話では無かったね。

しかし、戦うことをやめ、戦わない道を選ぶというのは、戦うことよりも難しいものだ」

 

 

議長は悩むようにそう仰った。

 

 

「でも!」

 

 

そこでシンが口を挟んだ。

 

 

「ん?」

 

「あ、いえ...」

 

「いや、ぜひ話してくれたまえ。

前線で戦っている君たちの意見というものも聞いてみたいものだ、その為に君たちを呼んだみたいなものだからね」

 

「...確かに、戦わない道を選ぶことは大切かもしれません。

でも!敵の脅威がある時は仕方ないと思います。

戦うべき時に戦わないと...!

何一つ、自分たちの命すら守ることが出来ません...。

普通に...平和に暮らしている人たちは守られるべきですっ!

それに、失ってからではただ後悔することしか出来ないからっ...」

 

「シン...」

 

「お兄ちゃん...」

 

 

俺とマユもただシンの言葉を聞いていただけだった。

 

 

「ですが、殺されたから殺して、殺したから殺されて...それで最後は平和になるのか...と、以前言われたことがあります。

でも、その時の俺は何も言い返せず、今もその答えは出ていません。

そして、俺は今もまだ戦っています」

 

 

シンに続いてアスランもそう自分の意見を話した。

 

 

「そう...問題はそこだ。

何故我々はこうまで戦い続けるのか、何故戦争は終わらないのか、人はいつの時代も戦争は嫌だと言っているのにね。

何故だと思う?イチカ」

 

 

議長は俺に聞いてきた。

 

 

「...先に、俺自身の話をしてもいいですか?」

 

「構わないよ」

 

「これは、シンとマユと二人の親にしか話していないことなんです。

信じてもらえないかもしれないですが、俺はこの世界で生まれ育った人間ではない(・・・・・・・・・・・・・・・・・)んです」

 

「お、おい、イチカそれは...!」

 

 

と、俺の言葉にシンは反応するが他の人は誰もが皆、突然変なことを言い出したと思い、驚いた顔をしていた。

当然、誰も信じては居ないのかもしれない。

しかし、その沈黙を議長が破って話しかけてきた

 

 

 

「...ふむ、確かに信じられない話だ。

が、シンやマユは信じているのかい?」

 

「は、はい、私の父と母も信じてます。

イチカの話は作り話だったとしても、出来すぎているものでしたので...」

 

「では、仮にイチカがその別の世界の人間だとして、君は何を伝えたいのかな?」

 

「はい、まず俺のいた世界にはMSなんてものは存在していなくて、それどころか宇宙へ進出すらしていません」

 

「ふむ、それだけを聞くと我々の世界の古い歴史とそう変わりないみたいだが...?」

 

「ですが、俺のいた世界には【インフィニット・ストラトス】と呼ばれるパワードスーツがありました」

 

「ほぅ、そんなものが存在するのか...」

 

「しかし、そのインフィニット・ストラトス通称ISには欠点が存在していて、【女性にしか動かせない】のです」

 

「確かにそれは欠点だ。

それでは、恐らく男と女の間に深い溝が出来てしまうのではないかね?」

 

「そうなんです。

実際、ISを扱うことが出来ると言うことで多くの女性が男性を物のように扱うようになり、女尊男卑という社会風潮に世界が変わっていきました。

酷いところでは、男性を奴隷のように扱ったり、産まれたのが男の子だからという理由で自分の子を殺したりと、過激なことを行う人もいました」

 

「それでは、ブルーコスモスと同じでは無いか!」

 

「はい、そう言った意味ではナチュラルとコーディネーターの関係に似ています。

で、俺が言いたいことは、俺のいた世界とこっち世界。

どちらも相手を見下したり、どっちも同じ人間なのに相手を異質な存在としか思ってなかったりするから、それを、排除しようと躍起になっている、のだと思います。

動物が他の動物に縄張りに立ち入られると攻撃するように」

 

 

俺は、自分のことや意見を長々と語った。

信じてもらうことが目的じゃなくて、飽くまで俺の意見を伝えることが目的だ。

 

 

「でも、そんな世界があるなんてホント驚きよ、私!?」

 

「悪かったよ、でも今まで言わなかったのは信じてもらえないって思ってたから...」

 

 

と、俺はルナへ反論する。

議長が少し席を外して、議長以外のメンバーとなった時にルナがいきなり俺に話しかけてきたんだ。

 

 

「だが、言葉にしなきゃ伝わらないこともあるという事だ。

俺自身、イチカの話を未だに理解し切れていないが、イチカが別の世界で自分の命を生きていたって、ことだけは確かに分かったよ」

 

 

と、アスランも俺の肩に手を置いてそう言ってくれた。

 

 

「だが原因は分かっているのか?」

 

「全く覚えてないんだよ。

こっちに来る前のことは、普通に幼馴染と学校から出たとこまでは覚えてるんだけどさ」

 

「なら、無理に思い出す必要は無いかもしれないわね。

私も一つ聞いていいかしら?」

 

 

レイの質問に答えたあと、グラディス艦長がそう聞いてきた。

 

 

「いいですけど」

 

「イチカは元の世界へ帰りたいのかしら?」

 

「…俺は帰りたいと思ってます。

向こうには家族や友達だっていますから。

でも、こっちへ来た原因が分からないから今はまだ帰ることができません

けれど、いつかは帰れると信じて俺は今、戦います!」

 

 

俺はグラディス艦長の質問にそう返した。

これは俺が前々から思っていたことである。

向こうの世界にだって待っててくれる人はいるけど、帰り方が分からない以上、死ぬまでこっちの世界にいて家庭を持ったり働いたりするかもしれない。

でも、どっちの世界も俺には大切な世界だからどちらにせよ精一杯生きることに変わらない。

 

 

「あなたがそう決めているのならば私からは何も言わないわ。

これからも私たちに力を貸してちょうだい」

 

 

それから議長が戻ってくるまでルナから質問責めにあっていたが、とりあえず、俺が異世界の人間だということは内密にしておくことで話は纏まった。

 

 

そして議長が戻り、話が再開した。

 

 

「イチカの経歴については、やはり何とも言えないが君の意見は伝わったよ。

確かに、そういった面も一つの理由だが、もっとどうしようもない理由があるのだよ、戦争には。

例えば、あそこにある機体【ZGMF-X2000 グフ・イグナイテッド】。

先ほど、工廠からロールアウトされた新型でね。

戦争だからこうして、新たな機体が次々と造り出される。

他にもミサイルや武器など大勢の物が破壊され、撃たれ、工場で新たに造られる。

このMSを一つの機械産業と捉えてくれたまえ。

これほどに高価格で回転が良い利益の種など他にあるかね?」

 

「でも、議長それは!」

 

「そう、戦争である以上それは当たり前で仕方の無いことだ。

人というものは1度儲かると逆のことも考えてしまうのだよ。

戦争があるから儲かる、ならその逆は?戦争が無ければ儲からない。

だから、儲けるために戦争をやろうとする」

 

「そんな!?」

 

「あれは敵だ、仕方ない戦おう。

危険だ、仕方ない戦おう。

そう言って人類に戦争するようにし向け、産業として扱おうとする者達がいるのだよ。

自分たちは影から利益を得ようとしてね。

この戦争の裏にも彼ら【ロゴス】がいるだろう」

 

「ロゴス?」

 

「彼らがいる限り地球、プラントは戦争を終わらせることは出来ないだろう。

だが、それこそが最も難しいことなのだよ...我々には」

 

 

議長の言葉は俺たちにとって衝撃的なものだった。

俺たちの戦争を裏から操る存在がいるなんて、知りもしなかった。

それからは料理が運ばれたということもあり、食事を行い、食べ終わってから話を再開した。

 

 

「ところで、議長?

イチカとマユが私の隊に来るということでしたが、彼らの機体はいったい?」

 

 

と、アスランが議長へ尋ねた。

 

 

「ふむ、ここからでも見えるだろうか...。

...ああ、アレだよアスラン。

あの2機が二人の機体だ」

 

 

議長の指さした方をみんなが見る。

当然、そこには俺とマユの機体があるんだが。

 

 

「ジャス...ティス?」

 

「ああ、君は以前、アレのオリジナルに乗っていたのだったね――」

 

「...あの機体が...なんでここに......?」

 

「ん?どうかしたのかい?シン」

 

 

シンの呟きを聞いた議長はシンを見た。

シンは信じられないものを見るかのようにマユのF・フリーダムを見ていた



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家族の嘆きと『声』

遅れてしまい、すみませんでした。

なかなか書くのに手間取り、少し変な感じかもしれません。

それと少しずつ物語が動くように頑張ってみました


SIDE イチカ

 

 

シンはマユの機体を見てただ呆然とし、議長の質問に答えていなかった。

 

 

「お、お兄ちゃん?ど、どうした――キャ!」

 

 

マユがシンの元へ向かい様子を伺うと、シンが強引にマユを振り払った。

 

 

「なんでアレに乗ってるんだよ、マユッ!

なんで、父さんと母さんを殺した機体なんかにっ!」

 

「え、ちょ、どういうことお兄ちゃん...?」

 

 

マユは何を言われたのか分からないという様子だった。

俺もマユと同じだった。

 

 

「オノゴロで!あの戦争で!

脱出船まで逃げていた俺たちの近くで戦闘していたモビルスーツの中にあの翼のモビルスーツがいた!いたんだよ!

目の前で父さんたちの命を奪ったんだ!」

 

 

知らなかった...。

義父さんと義母さんが死んだ原因の一端がフリーダムだったなんて。

 

 

「...そんな、アイツが...関係も無い一般人を...?」

 

 

アスランも何かを呟いていたがあまり聞き取れず、今の俺の思考では理解出来なかった。

 

 

「シン、少し落ち着いてよ」

 

 

と、ルナがシンをなだめるが、

 

 

「これが落ち着いていられるかよっ!

家族を殺した機体が眼の前にあるのに、そんなの落ちついてられるか!」

 

 

と、シンの怒りにルナは黙ってしまった。

 

 

「シン、君は少し誤解をしている。

あの機体は【フェイク・フリーダム】。

かつてヤキン・ドゥーエやオーブの戦場にいた機体【フリーダム】とは別物だ。

が、君の怒りは最もだ。

知らなかったとはいえ、家族を奪った機体と酷似している機体に君の大事な妹を乗せたのは私だ。

すまなかった」

 

 

議長がシンに対して頭を下げた。

 

 

「ッッ!...すみません、失礼します」

 

 

シンはそう言ってこの場を去った。

 

 

「シン!」

 

 

ルナがシンの後を追いかけていった。

 

 

「イチカ、マユもすまなかったね。

知らなかったとはいえ、まさか、君たちにとって仇とも言える機体と同じ外見の機体に乗せていたとは...」

 

 

と、議長が俺たちにも謝罪してきた。

 

 

「い、いえ、俺は大丈夫です...。

ただ、あまりの事実に頭が追いついていってないだけです...」

 

 

俺は、議長に対してそう返したが、正直、大丈夫ではなかった。

別に議長が悪いとかでは無い。

シンの言葉を聞いてから、俺の頭の中であの時の光景が蘇って、更に見てもいないのに義父さんたちがフリーダムの攻撃で吹き飛ぶ映像が浮かんでしまい、少し...なんというかキツいものがあった。

 

 

「議長、自分も失礼します...」

 

「...」

 

 

俺は一言そう言って下がったが、マユは震えながら頭を下げ俺に付いてきた。

 

 

「マユ、とりあえずミネルバの部屋まで送るぞ?」

 

「...イチカの部屋がいい...。

今は、独りでいたくないから...」

 

「分かったよ」

 

 

俺はそう言って、会食を行ったホテルの自販機で飲み物を買い、部屋まで帰った。

道中、俺とマユは一言も交わさずにいた。

 

 

「...大丈夫か?」

 

「...」

 

「すまん、そんなわけないよな。

俺だってそんなことないのに」

 

 

今、俺たちはこうして苦しんでいるけどあの時、目の前でその光景を見ていたシンはずっとこんな気持ちを抱いたまま今まで生きてたってのかよ...。

 

俺、シンより強くなるつもりでいたけど、アイツの方がずっと先にいたんじゃないか...!

 

 

「お兄ちゃん...ずっと前から知ってたのにそれを私たちに話さずに一人抱えてたんだよね...。

強いなぁ...やっぱり」

 

 

本当そう思う。

マユがフリーダムに乗ってるって事実を知って、それが爆発したんだとしても、それは至極当然だと思うから。

もちろん俺だって家族を殺した機体だなんて知ってたらマユを乗せてなかったかもしれない。

 

 

「なら、俺たちがアイツを支えよう。

アイツ独りで苦しんでたんなら俺たちがそれを少しでも軽くしてやろう」

 

「...うん」

 

 

 

 

 

SIDE シン

 

 

「シン、さっきのは流石に不味いんじゃない?

レイなんて議長へのシンの態度を見たとたんにすごい睨んでたわよ?」

 

 

部屋にまでついてきたルナにそう小言を言われた。

 

 

「確かに、あの場で当たり散らした俺が悪いさ。

でも、まさか家族が親を殺した機体に乗ってるなんて思わないじゃないか!」

 

「でも、あの機体は本物のフリーダムとは別物だって言ってたじゃない」

 

「だけど、あの姿を見たら、あの時の光景が頭に浮かぶんだよ…」

 

 

マユの携帯を取りに行った俺の少し上にいた父さんたちの死体が転がってて、その上空では緑色の機体と赤と黒の機体、それとあのフリーダムがいた。

あの三機のうちどれかが父さんたちを殺したんだというのはその状況からして明らかだった。

 

 

「忘れろとは言えないけど、いつまでも過去のトラウマに捕まったままだとこの先楽しく生きていけないわよ?」

 

「……わかってるさ、そんなことは」

 

「ひとまず明日は私達、休暇なんだからさ。

一度、気持ちの整理でもしてきたら?」

 

「……」

 

 

俺はルナの言葉に返答せずにベッドに横になった。

 

 

 

そして次の日、俺はルナの言われたように、ちょっと遠出して気持ちを整理しようと海へ向かった。

 

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

「え?救難信号ですか?」

 

「ああ。この地図のこの地点にある研究所。

ここはかつて地球軍が占拠していた基地があったんだが、今は放棄されていてね。

君とマユに調査を頼みたい」

 

「分かりました」

 

「すまないね。

昨日のゴタゴタのすぐ後にこの様な事を頼んでしまって」

 

「いえ、それでは今から向かいます」

 

 

俺とマユはF・ジャスティスとF・フリーダムを駆り、その基地周辺へと向かった。

 

 

「マユ、ここら辺で降りよう」

 

「うん」

 

 

万が一の事態を避けるために近くの森に機体を隠し、俺とマユは廃基地へ潜入した。

 

 

「結構、広い場所だけど信号の発信位置って分かるの?」

 

「大体の場所ってのはマークされてるから――あの建物だ。

あの中のどこかに発信源があるはずだ」

 

 

基地本部らしき建物に入り、俺たちは手あたり次第に室内を捜索した。

上の階からしらみつぶしに探し、今は地下まで降りてきている。

 

 

「もう残ってるのってこの部屋だけだよね?」

 

「ああ。

今のところ全部はずれだから、ここもはずれならただの機械の故障ってことになるだろうな」

 

「ここまで来たのに~?」

 

 

けど、故障だとしたらなんでそれがザフトの俺たちに届くんだ?

別に国際救難チャンネルって訳でもないのに、地球軍じゃなくザフトの俺たちに届くなんて

 

 

「開けるよ?」

 

「ああ」

 

 

俺が室内に向けて銃を構え、マユがスイッチを押す。

ドアが開いた瞬間に俺は室内に飛び込み、銃を構えながら室内を見渡す。

 

 

「別に誰もいないね・・・」

 

「ああ」

 

 

室内には誰もいなかった。

しかし、一か所だけ起動している端末があった。

 

 

「これまだ機能してるんだね。

データ、吸い出せるなら吸い出しておかないと」

 

 

マユが端末を取り出し、起動していた端末に繋ぐ。

 

 

「えっと…、なにこれ…。

Brunhild Clone Project…?」

 

「ッッ!少し、見せてくれ!」

 

 

マユがデータを吸い出していた端末の場所を変わってもらい、データ収集をしながら表示されていた計画に目を通していた。

 

 

Brunhild Clone Project

ここは英語で書かれていたが、その下からは日本語でかかれていた。

こっちの世界では英語が主流で俺だって英語を主に使ってる。

なのに、この文書は日本語で書かれているなんて何か変だ。

 

 

「わ、これって何語なの?私、読めないんだけど」

 

「ISが世に出て数年、その力は全世界を揺るがすほどのものだった。

中でも、開発者たる篠ノ之 束と初代ブリュンヒルデの織斑 千冬。

この二人はその存在だけでも世界を震撼させるほどのものだった」

 

「え、イチカこれ読めるの!?」

 

「これ、俺の国の言葉だ」

 

「え、ホントに!?」

 

「圧倒的な力を誇示しつづけてもはや伝説とまで言われている織斑 千冬の戦闘力を研究することができれば、世界で実権を担うことができるほどの軍隊を産み出せるだろう。

しかし、そのブリュンヒルデのガードは固すぎて、本人に近づき、研究サンプルを得ることすら困難であった。

そこで我らは、ブリュンヒルデの血族たる織斑 一夏へ目を付けた。

天賦の才を持つブリュンヒルデの唯一の弟の織斑 一夏なら今は未熟ではあるが、後にブリュンヒルデに匹敵するほどの力を付けることができるだろう。

そう、推測し我々はサンプルとして織斑 一夏を確保することに成功した。

研究の第一段階はクリアし、その細胞やDNAの採取も完了した。

 

……ここで途切れてるな。

後は、吸い出した詳細なデータを基地で解析してもらおう」

 

「ねえ、ここに載ってる一夏って名前ってイチカのことなの?」

 

 

マユが俺にそう聞いてきた。

 

 

「多分、そうだと思う。

ISって言葉も出てきてたし、千冬姉の名前もあった。

ってことは、俺のことなんだろうな。

でも、なんでその研究がこっちに流れ込んでるんだ?」

 

「分からないけど、これってもし地球軍がデータを収拾してたとしたら、かなりやばいことなんじゃない?」

 

 

すると、突然、部屋に声が聞こえた。

 

 

『――る?おーい、聞こえるかな~?』

 

 

巨大なモニターにノイズが走り、俺たちはそこに注目した。

 

 

「音声だけ、みたい。

もしかしたら、映像も出せるかな?」

 

「分からない。

少し、調整してみるか」

 

 

するとノイズが酷いが少しだけ映像が映った。

 

 

『あれ?少し、見えてる?』

 

「…!?嘘、だろ?」

 

「?イチカ?」

 

 

俺はモニターにノイズが走りながらも映っている顔に見覚えがあった。

そして、マユが俺の名前を呼んだとき、そのモニターに映っていた人が声を荒げた。

 

 

『え!?いっくん!?いっくんなの!?』

 

 

モニターの相手が手元を弄って、すぐにより鮮明な映像が見えた。

 

 

「束…さん?」

 

『いっくん…?』

 

 

 




後半からはもうオリジナルですね!
アドバイスを受け、こんな感じに仕上げました。

まあ、違和感結構あると思いますが、次回も頑張ろうと思います


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天災との再会

今回は少し短めになります。



SIDE イチカ

 

 

廃基地にある端末に通信が入り、俺とマユは相手の顔を確認した。

水色のエプロンドレスに機械のウサギ耳のカチューシャを付けていた女性だった。

マユは誰か分かっていなかったが、それも当然だ。

相手は俺のいた世界でISを開発した俺の姉千冬姉の親友である篠ノ之 束その人だったんだから。

 

 

「本当に束さんなんですか?」

 

『うん、そうだよ~。

にしても、いっくん今までどこにいたのさ!

束さんとっても心配して探し回ったんだよ?

全く見つからなくて死んだんじゃって思ってたけど…。

ってか、いっくんその今着てる服って宇宙服?

そんな動きやすそうな宇宙服初めて見たよ~!』

 

 

と、俺の質問に答えてもらってからマシンガンのような話をしてくる。

 

 

「実は俺、異世界にいるんです」

 

『異世界?あのラノベとかであるような剣と魔法の世界、みたいなの?』

 

「いえ、そんなのでは無くて―――」

 

 

俺は自分に起きた出来事を簡単に話した。

 

 

『なるほどなるほど!異世界の技術は凄いね!

宇宙進出どころか、MSなんていうものまで造り出してるなんて!

......けど、やっぱりどの世界も争いは絶えないんだね。

で、帰り方が分からないんだっけ?う~ん、束さんも流石に難しいかな~。

......今は別の――――――だし』

 

 

最後、何を言ってるかはノイズが酷く俺には聞こえなかった。

 

 

『あ、でもその基地にこっちのデータがあったてことは何かしらの抜け道が存在するって事だからさ!

そこのところは束さんが少し調べてみるよ。

でも、いっくん、気を付けてね?

ちーちゃんのクローンの計画がそっちに流れてて、技術力がそっちの方が上ってことはもしかしたら計画が成功させられてる可能性もあるんだから』

 

「はい、気を付けます」

 

『えっと、マユちゃんでいいのかな?』

 

 

束さんはマユにそう聞いた。

 

 

「は、はい!」

 

『じゃあ、まーちゃんだ!

まーちゃん、いっくんの事よろしくね?』

 

「わ、わかりました」

 

『じゃあ、そろそろ切るよ。

束さんも何かと忙しくってさ~』

 

 

そういうと、モニターの電源が切れた。

それと同時にこの部屋の照明も消えた。

この基地に残ってた電力も完全に底をついたってことか。

 

 

「とりあえず、議長にこのことを伝えよう。

クローン技術があっちの世界より発展してるこの世界であの計画が進行していたとしたら、俺の遺伝子からクローンが作り出されても千冬姉みたいな操縦技術を持つ可能性がある」

 

「そうだね。

データも可能な限りは吸い出せてるから戻ろ」

 

 

俺とマユは基地を抜け出し、機体のある森へ戻る。

機体のシステムを立ちあげると、アラートが響く。

 

 

「接近する機体が3機...。

いずれも識別コードはザフトのものだ」

 

「でも、増援の話は受けてないよね?」

 

「一応、コンタクトを取ろう。

でも、戦闘の準備はしておいてくれ」

 

「わかった!」

 

 

俺たちは森から飛び出し、空中へ上がる。

すると、地面を滑るように移動しながらこっちへ接近して来る3機の黒い機体が見えた。

 

 

「こちらは、ザフト軍ミネルバ所属の者だ!

そちらの所属及び目的をお聞かせ願う!」

 

『...』

 

「聞いているのか!

応答してくれ!」

 

『...』

 

「グッ!?」

 

 

3機はバズーカに取り付けてあるビーム砲でこっちに攻撃を仕掛けてきた。

 

反応や警告も無しに撃つのか!?

 

 

「マユ、迎撃!

所属が分からない以上敵と見なすしかない!」

 

「了解!」

 

 

俺とマユは3機の黒いMSと戦闘を開始した




短くてすみません。
理由としては次回が戦闘回なので、切上げさせてもらいました。


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アンノウン

遅くなってしまい申し訳ありません。

ちょっと用事が立て込んでいたり、、、
体調面で色々とありまして、、、


黒いMSたちが攻撃を仕掛けてきたことで、イチカ、マユも回避しながら攻撃を開始した。

 

イチカはファトゥムのプラズマ収束ビーム砲で、マユも翼のプラズマ収束ビーム砲で遠距離から攻撃を行った。

機動力はジャスティスとフリーダムの方が高いこともあり、距離を取りながら遠距離射撃戦に徹していた。

 

 

「イチカ、どうするの!?

このまま撃ってるだけじゃこっちのエネルギーが先に尽きちゃうよ!」

 

「確かにこのままじゃ埒が明かない。

連携で切り抜けるぞ!」

 

 

イチカとマユは左右に広がり、三機を挟撃しようと試みる。

それに対し、黒いMSたちは三機が一列に並び、それぞれが左右を警戒する態勢を執りながら、基地へ向けて前進している。

 

 

「当たって!」

 

 

マユがイチカの方向を向いている機体に後ろからビームライフルで射撃を行った。

だがマユの方向を見ていた敵がビームと敵の間に割り込み、その腕に内蔵されていたビームシールド発生装置でビームライフルを防いだ。

 

 

「ビームが弾かれた!?」

 

「ザフトでのビームシールドのMSへの取り付けなんてまだ行われてないのに、どこの勢力なんだよ、アレは!?」

 

「こっちの武装って殆どビームだよ!?どうしたら…?」

 

「一機に火力を集中してシールドで防げないようにするしかないっ!

二機俺が引き離すから合図で残りの一機に攻撃を集中させるぞ!」

 

「それじゃあイチカの負担が大きいよ!」

 

「コイツの機動性なら行ける!」

 

 

イチカはジャスティスの火砲を敵周辺の地面に放ち目くらましとし、一機を分離させたリフターでもう一機は機体による突撃で吹き飛ばし、先ほどの様なカバーが行えないような距離に敵を引き離した。

 

 

「マユ、撃てっ!」

 

「…そこっ!」

 

 

マユはバラエーナプラズマ収束ビーム砲とビームライフルによる同時攻撃を行った。

残った黒い機体はそれを防ぐためにビームシールドを発生させ、迎え撃った。

マユの攻撃はシールドに防がれたが、高威力の攻撃に敵はそっちにしか対応できなかった。

 

 

「でぇぇい!!」

 

 

イチカが背後からデファイアントビームジャベリンでコクピット部分を貫いた。

爆発が起こり、イチカは機動防盾で爆風を防ぐ。

 

 

「やった、やったよ!イチカ!」

 

「後二機、このまま落とすぞ!」

 

 

ジャスティスとリフターによる突撃から態勢を立て直した二機の黒い機体は近くにいたジャスティスに対し、バズーカやビームで射撃を行った。

そこにリフターが割り込み、攻撃を受け爆発し、イチカはそれを利用し後ろへ飛んだ。

 

リフターを失ったことでジャスティスの機動性、火力は落ちてしまったが、マユのフリーダムがイチカの元へ降り立ち、カバーに入った。

 

 

「ここからは私に任せて!イチカは援護を!」

 

「悪い、任せた!」

 

 

マユはF・フリーダムの機動防盾を構え、二機へ突撃する。

イチカは高エネルギービームライフルで援護を行う。

黒い二機のMSたちはマユの接近を阻止しようと射撃を行うがイチカの射撃によりライフル付きのバズーカを破壊され、代わりにビームサーベルを構え、マユに向けて突進を掛ける。

 

 

 

「ココッ!!」

 

 

敵機との距離が縮まったところでマユは急上昇を行い、敵の上を飛行し後方から敵機のメインカメラへビームダガーを投げ頭部を破壊した。

頭部を破壊されたことで敵の動きは鈍り、その隙を突きイチカとマユは敵を破壊した。

 

 

所属不明の三機を撃破したことで周囲に敵の姿は無く、ようやく一息つくことができた二人はヘルメットを外し、コクピットを開き外の空気を吸った。

 

 

「くぅ…、なかなか正体不明ってのも骨が折れるな…」

 

「でも、ホントあの機体たちってどこ所属なんだろうね?

シグナルは友軍の物だけどあんなの見たことないよ?」

 

「とりあえず一度、ディオキアへ戻ろう。

議長への報告も済ませないとだしな」

 

 

イチカとマユは機体を動かし、基地へ戻るのだったが、イチカのF・ジャスティスはリフターを失ったことにより機動力が低下していたため、マユのフリーダムに引っ張られながら基地へ帰った。

 

 

イチカたちは基地へ戻ると報告のためデュランダルの滞在している来賓室へ向かい、部屋へ入室した。

 

 

 

「失礼します、議長。

ただいま調査の方から帰還いたしました」

 

「ご苦労だったね、イチカ、マユ。

早速だが調査の報告を頼むよ」

 

 

イチカは回収したデータが入った端末を部屋にあったプロジェクタへ繋ぎ、それを映し出した。

 

 

「まず、基地内は設備が一部生きていましたが、人員は配置されていませんでした。

そして、動いていた端末から可能な限り情報を吸い出したのですが、吸い出した情報がこちらになります」

 

 

そう言いながらイチカはブリュンヒルデ・クローン計画の内容を表示した。

 

 

「これは?恐らく何かの計画書なのだと思うが表題から察するにクローン計画ということかな?」

 

「はい、これは名前の通り【クローン計画】になりますが、この計画の出元、対象が問題となります」

 

「ふむ。

つまりイチカ、君にはここに書かれている字が読めるということだね?」

 

「この計画書は私がいた世界で私の国で主流となっている言語【日本語】で書かれていました。

つまり、この計画の内容は私のいた世界で行われていたものだということです」

 

 

イチカの言葉にデュランダルは少し驚いた様子を見せるが、すぐ元の調子に戻り話を続けるよう促した。

 

 

「計画の内容は私の姉【織斑千冬】のクローンを作るというのが大まかな内容です。

私の姉はISにおいての大会で世界一を取り、【ブリュンヒルデ】と呼ばれるほどの強者でした。

当然、その操縦技術は相当なものです。

ですが、姉の生体データを入手しようにもガードが固いことから断念し、その血縁者である私こと【織斑一夏】からその生体情報を抜き取り、織斑千冬の力を再現しようとしたのがこの中に記載されていた内容でした。

 

そして、その計画は成功し生体データのサンプルの抜き取りに成功したとココには記載されていました。

恐らく、私がこちらの世界に来る前の記憶が無いのは、このことが原因だと推測されます」

 

「つまり、イチカのご家族である千冬嬢のクローンを作るためにその弟である君から生体情報を獲得し、その情報でクローンを作成しようとしている…と?」

 

「はい。ですが、その計画書がなぜこちらの世界へ流れ込んでいるのか…というのが疑問となります。

私がこちらの世界へやってきたことと何かしらの関連があるのか、そこのところはまだ解りませんが仮にデータもこちらの世界へ流れ込んでおり、技術が発展しているこの世界で悪用されていればその被害は計り知れないかと思います」

 

 

デュランダルは難しい顔をしていた。

 

 

「報告ありがとう。

確かに、この計画の内容がこちらの世界へ流れており更にそれが悪用されるなどという事態になればこの世界の争いは更に泥沼化するだろう。

クローン技術は遺伝子操作の発展のようなものだ。それに薬物による人体の強制強化などを行っているケースもある。最悪の事態は避けられるように我々も手を打つ必要があるか…」

 

「それと議長、向こうの世界での私の知人の科学者と通信でコンタクトをとることができたのですが、向こうの世界とこちらの世界の間での抜け道をあの人は探ってみると言ってました」

 

「ふむ、それは心強いな。

何らかのアクションがあればこちらにもまた知らせてくれたまえ。

報告は以上かな?」

 

「いえ、最後になりますが、私たちが基地を脱出する際に所属不明の敵部隊と交戦しました」

 

「それはつまり、地球軍の部隊ということかな?」

 

「識別コードはザフトの物でした。

しかし、その機体情報や外見などは今のところ私たちが知るような機体ではありませんでした。

――こちらがその機体との交戦の映像です」

 

 

イチカは謎の黒いMSたちとの交戦の様子をジャスティスのログから抜き取り、それを見せた。

 

 

「これは…、確かにこのような機体は初めて見るし、開発の知らせも受けていない――が、識別コードはザフトの物だったと…。

これに関しても私の方で調べておこう。

二人とも、ご苦労だった、下がってくれ」

 

「「失礼します」」

 

 

 

イチカとマユは部屋を出て、自分たちに割り当てられた部屋へと戻っていった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

とある一室にて、モニターを見ながら誰かが笑っていた。

 

 

「機体のテスト、及び戦闘データの回収とアップロード終了。

これを用いることで更なる機体の強化、更に――の育成が可能となる」

 

 

そのモニターにはとある戦闘の映像が流れていた。

その戦闘の相手は青が基調のMSと白に紫の翼のMSだった。




少し、雑かもしれません。
ですので、時間が空いた時に修正を掛けようと思います。

中途半端な内容で申し訳ありません


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舞い降りた蒼剣

出来るうちにと思って早めに次話を投稿しました。

なんか、書いてると筆が乗るって感じがしてスッとかけました


アーモリーワンにて強奪された三機の部隊が黒海先のダーダネルス海峡付近にて確認された。

それにより、俺たちミネルバの部隊は本来の任務であるボギーワンの部隊つまりカオス、ガイア、アビスの追撃に出ることになった。

 

今回の作戦ではミネルバ隊であるシン、レイ、ルナに加えて、アスラン率いる俺たちザラ隊と今回から補充要員でミネルバに加わる【ハイネ・ヴェステンフルス】の総勢7名のMSパイロットが参加することになった。

 

些か、赤服のパイロットが偏り過ぎては無いかと思うが、それ以前に一つの部隊にFAITHの称号を持つ士官が三人も集まっていることの方が問題では無いかと思った。

まぁ、それほどまでに敵勢力の規模が大きいということでもあるが…。

 

 

 

「ハイネ・ヴェステンフルスだ。

プラント防衛戦なんかで見かけたと思うがオレンジの機体が俺のだ、よろしく頼むぜ?」

 

「はい、よろしくお願いします、ハイネ」

 

 

俺はハイネに対してそう返す。

今は作戦前に息を合わせるための顔合わせも兼ねての会議を行っていた。

 

 

「お~!お前は分かってるじゃないの!イチカ~!

俺はさ?名前で良いって言ってるのにアスランてばずっとヴェステンフルス隊長なんて呼んできてたんだぜ?

少しは俺の気持ちも察してほしいもんだな?」

 

 

そう言いながら俺に肩を組んできて、一緒にいたアスランをジト目で見た。

 

 

「も、もうそのことはいいだろう!

そ、それよりも、今は解決することがあるって言ってたんじゃないか?ハイネは」

 

 

アスランは強引に話を切り上げた。

するとハイネも俺から離れ、シンを見た。

 

 

「俺もあの時、あのテラスにいたからお前の話は聞いてたぜ?シン。

確かに、家族を失ったっていうのは辛いわな。

この世の中、相手への憎しみを捨て去れとはさすがに俺は言えんわ。

 

けど、これだけは言っておくぜ?

忘れろ、捨てろとは言わねぇよ。

でも、割り切れよ、でないとお前、いつか大切なものをまた失うことになるかもしんねぇぞ?」

 

「ッッ…」

 

「復讐の気持ちに負けたりすんなよ?

辛いときは吐きだしゃいいんだ。気持ちを吐き出せる仲間が近くにこんだけいるんだ。頼れ頼れ」

 

 

そういうとハイネは部屋を出ていった。

 

 

「俺からも一つ言わせてくれ、シン。

確かに過去を忘れないのは良いことだ。

けれど、過去ばかりに振り返っていたら今ある大切なものもその手から零れ落ちてしまうかもしれない――ということを覚えておいてくれ」

 

 

アスランもハイネを追いかけるように部屋を出た。

 

 

「わたしたちも出ていくわね?」

 

「出撃まであと少しだ、シン。

出れるようにはしておけよ?」

 

 

とルナとレイも出ていった。

 

 

「お兄ちゃん…」

 

「シン、ずっと一人で抱え込ませてて悪かったな。

お前がずっとそんなに思ってたのを俺たち知らなくて――家族失格だな、これじゃ」

 

「俺だって、話そうと思えば話せたんだッ!でも、あの時その光景を見てない二人にそんなことを伝えるのが――思い出させるのが怖かったんだッ!」

 

 

シンは涙を流して、俺とマユにそう話した。

 

 

「――それは違うよ、お兄ちゃん。

私達、家族じゃん!悩んでたり苦しんでたら助けたいに決まってるじゃん!

気づいてあげられなかったけど、悩んでるって知ってたら私達だって無理にでも話させて気持ちを知ろうとしたもん!」

 

「そうだぜ、シン。

俺は血のつながってない家族だけど、それでも、悩んでるなら一緒に悩んだり力になってやりたいって思う!

それが家族ってもんじゃないのか?」

 

 

俺やマユも自分の気持ち、シンが悩んでいるなら一緒に背負いたいって気持ちを真摯に伝えた。

 

正直、もっと話してお互いの気持ちをぶちまけるようにしていたかった。

けど、現実は非情でそんなことは許してくれるわけも無かった。

 

 

『コンディションレッド発令!パイロットは搭乗機にて待機をお願いします!』

 

 

と、メイリンによるアナウンスが艦内に響き渡った。

そろそろ作戦海域に入る頃だとは思っていたけど、早すぎないか?

 

 

「シン、マユ、今は戦うことに集中しよう。

時間はたっぷりあるんだ。終わった後にいっぱい話をしよう」

 

「……ああ!」

 

「うんッ!」

 

 

俺たちはすぐMSデッキへ向かい、自分の機体に乗り込んだ。

俺はメイリンへ状況を確認するために尋ねた。

 

 

「メイリン、敵の規模は?」

 

『それが、さっきまでは地球軍の空母軍だけだったのが、増援でオーブのイージス艦艦隊と空母タケミカズチが合流してます!』

 

 

オーブ…!?

――オノゴロでの戦争の時は徹底的に平等を決め込んでいたのに、今は地球軍や大西洋連邦に成り下がったってことなのかよ…!

 

 

『オーブ軍のMS多数出撃を確認、並びに地球軍もMSを出してきました!』

 

『対空迎撃用意!敵を近づけないで!

ルナマリアとレイは甲板で艦の護衛を!

グフは敵の出方によって出撃して。

他のパイロットたちは各自の判断で遊撃及び敵母艦への攻撃を行って!』

 

 

と、グラディス艦長の指示を受け、俺たちMS部隊は出撃を開始した。

 

 

『シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!』

 

『アスラン・ザラ、セイバー、発進する!』

 

『マユ・アスカ、フェイク・フリーダム、発進します!』

 

「イチカ・オリムラ、フェイク・ジャスティス、発進する!」

 

 

俺たちは順次出撃し、ミネルバに敵を近づけさせないように攻撃を開始した。

 

 

俺はビームライフルでこちらへ向かってくるオーブ軍のMS【M1アストレイ】並びに【ムラサメ】のコクピット部分を正確に撃ち抜き破壊した。

また、編隊を組んでくる相手には背部のスラスターを破壊することで海面へ落としたり、ビームブーメランで敵の武装を切り落としたりなど、なるべくエネルギーの消費を抑えながら的確に落としていった。

 

アスランやシンも機体の持ち味である機動力を生かし、敵を翻弄し、背後を突いたりなどをし、次々にオーブ軍、地球軍のMSを落としていった。

 

 

 

SIDE マユ

 

 

私は今、かつて自分が育った故郷であるオーブのMS部隊と戦闘を行っています。

頭ではわかっていても、いざオーブの機体を前にすると撃つことを躊躇し、武装やスラスターを破壊し、極力の殺しを避けていた。

 

フリーダムの機体性能なら火力で力押しで行けば圧倒することはできるけれど、私はフリーダム持ち前の機動力を生かし、武装やメインカメラを的確に破壊していった。

 

 

メイリンから通信が来て、タンホイザーを用いて軸線上の敵を一掃するとのことで、私は射程範囲から逃れ、そこからミネルバへ攻撃が行かない様にMSを攻撃していった。

 

 

ミネルバのタンホイザーのチャージが完了し、いざ発射しようとしたその時、

 

 

どこからともなくビームライフルが撃たれ、ミネルバのタンホイザーが破壊されてしまいました。

 

 

「何っ!?」

 

 

私は撃ってきた方角を割り出し、そちらへ機体を向けるとそこには、

私の機体と同じ出で立ちをした青い翼の機体がいました。

 

アレには見覚えがあった。

当然、私の機体の元となったオリジナルのデータなどを議長から見せていただき、知ったのもあったが、何よりつい最近、お兄ちゃんから直接話を聞いたのだから勿論鮮明に覚えている。

 

 

「フリーダム?

オ父サン、オ母サンヲ撃ッタ機体――――?」

 

 

私の視界、思考が一気に何か赤いもので塗りつぶされたような感じがした。




ここからは色々展開が巻き起こる戦闘回になります


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蒼の覚醒

ミネルバのタンホイザーから逃れるために俺は射線上から退避し、ミネルバが撃つのを待っていた。

しかし、ミネルバからのタンホイザーが放たれることは無く、むしろミネルバの艦主砲部位が破壊されてしまっていた。

 

 

「別方向からの攻撃!」

 

 

俺は攻撃された方を向いた。

そこには、マユのフェイク・フリーダムと同じような機体でその翼の色は青色だった。

 

 

「フリーダム…なのか?

それに後ろの戦艦、アークエンジェルか?」

 

 

フリーダムの後方から真っ白な戦艦がこの戦場にやってきていた。

 

アークエンジェル。

記録を見た限りだと、ヘリオポリスでの件の時にストライクを回収した戦艦で通称は【足つき】。

クルーゼ隊が地球まで追いかけたが、アラスカにて取り逃がし、オーブヘ渡ったそうだ。

その後はヤキン・ドゥーエ戦でも地球軍、ザフト軍と敵対するような感じでオーブ軍として戦場に参加していた。

終戦後の消息は不明だったが、こんなところに現れるなんて…。

 

 

すると、アークエンジェルから一機のMSが出撃してきた。

あの機体…、画像で見たことのある【X-105 ストライク】とうり二つだな。

でも、ストライクとカラーリングが全く別物で、ピンクを基調としており、しかも肩にオーブの獅子のマークが彩られていた。

ってことは、アレはオーブの代表が乗ってる機体って事か!?

 

 

『私は、ウズミ・ナラ・アスハの子、カガリ・ユラ・アスハ!

オーブ軍、直ちに戦闘を停止し軍を退け!』

 

 

アスハ代表!?なんで戦場に!?オーブに帰ったっていう報告だったのに。

そのアスハ代表はいきなり戦場にフリーダムと躍り出て、いきなり停戦要求をオーブ軍へ行っていた。

 

 

俺は、接近してくる敵機をあしらいながら、その動向を見ていたがオーブ軍の返答は【拒否】を現すかのようなミサイルによる一斉攻撃だった。

これにはさすがに驚いた。まさか、自国の代表に対して銃を向けるなんて…。

しかし、そのミサイルは代表のストライクの近くにいたフリーダムが火砲の一斉射によって破壊していた。

 

 

「アスラン、どうします?

――アスラン?」

 

 

俺は隊長であるアスランに不測の事態が起こったため、指示を仰ぐ。

 

 

「あ、ああ。

イチカはそのまま地球軍とオーブ軍の相手を頼む。

マユは――おいっ、マユ!?」

 

「!?マユっ!!」

 

 

 

マユが信じられない行動に出た。

 

 

敵か味方かは分かっていないフリーダムに対して攻撃を開始していた。

 

 

「マユっ!おい、マユっ!!くそっ、通信が切られてる!」

 

「彼女、恐らく周りが見えていないぞ!

グラディス艦長、ハイネの出撃を!

この混乱に乗じて向こうも手を打ってくるはずですっ!」

 

 

アスランが艦長に意見を具申し、ハイネがミネルバから出撃してきた。

 

 

「俺はとりあえず、敵の増援を食い止めておくぜ?

ちょうど、向こうも本命を出してきたみたいだしな?」

 

 

ハイネがそう言い、俺は敵の母艦を確認した。

母艦からは変形し空中へ飛ぶカオス、浅瀬の方へ向けて移動するガイアの姿が見えた。

恐らく、アビスも海中にいるのだろう。

 

 

「俺がマユを止めに行く。

二人とも、そちらは任せたぞ」

 

 

アスランはそういうと、セイバーを変形させフリーダムのいる方へ飛んでいった。

 

 

 

SIDE マユ

 

 

「フリーダムゥゥゥ!!」

 

 

私には今、目の前のフリーダムしか見えていなかった。

さっき、一瞬真っ赤に視界が染まった感じがしたけど、なんか視界がクリアになった気がする。

ううん、今はそんなことよりもフリーダムを落とさないと…戦場に出てきてこちらを撃った時点でアレはただの敵だ。

お父さんたちのこともあるけど、今の私はザフトの軍人なんだ――力を持っている私たちが艦を守らないと!

 

 

 

私はフリーダムに対しビームライフルを連射した。

狙いはコクピット。

しかし、それを嘲笑うかのようにフリーダムは躱し、腰からビームサーベルを抜いたと思うと、一直線にこちらへ向かってきた。

 

 

「今から抜いても間に合わないっ!ならっ!」

 

 

私は機体のスラスターの出力を落とし、真っ逆さまに海中めがけて落下していく。

フリーダムも当然それに付いてきたので、海面に激突しそうなところでクスィフィアスレール砲を海面に発射し、高く水しぶきを上げさせ、一瞬でもフリーダムの視界を遮らせた。

 

そしてすぐにビームサーベルを抜き、フリーダムを切り付ける。

でも、それは向こうのシールドに阻まれてしまい、逆にこちらの左腕が切られてしまった。

 

 

「でもっ!」

 

 

私は、これ以上の追撃を避けるためにフリーダムを蹴り、距離を取った。

そして、もう一本のビームサーベルを連結させ、再び攻撃を行おうとしたが、

 

 

「待つんだ、マユっ!」

 

 

セイバーが私の前に割り込み、攻撃を阻止した。

 

 

「何で邪魔するんですか!」

 

「そんな状態の機体じゃ、これ以上の戦闘は無理だ!

一度、下がれ!」

 

「そんなの、分からないじゃないですか!!」

 

「いいから行け!隊長命令だ!」

 

「くっ、分かりました」

 

 

私は、諦めきれなかったが命令に従い、ミネルバへの道を飛んでいった。

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

 

アスランがフリーダムの方へ向かい、俺とハイネは浅瀬から回り込んできているガイアと海中から接近してくるアビス、さらに多数のオーブ、地球軍のMS部隊を相手にしていた。

カオスはシンが相手をしていた。

 

 

「くぅ、数が多いねぇ!

おい、イチカ!落とされんなよ!」

 

「分かってるよ!」

 

 

俺は接近してくる二機のオーブ軍のMSを二本のデファイアントビームジャベリンで切り裂いた。

 

 

 

NO SIDE  

 

 

「見たことないやつがいるじゃんか!!」

 

 

アビスのパイロットのアウルはイチカのF・ジャスティスへ接近し海中から飛び出し、ビームランスを振り下ろした。

 

 

「アビスか!」

 

 

ランスを機動防盾で防ぎ、反撃を試みようとイチカが考えたとき、接触していたアビスとの接触回線が開き、相手の声がイチカに入ってきた。

 

 

『面白いじゃん!コイツ、前の時の青い奴か!!』

 

 

アビスのパイロットの声を聴いたとき、イチカは信じられないものを見たような顔になった。

 

 

「うそ…だろ?その、声、アウルなのか?」

 

『あ?誰だよ、お前?』

 

 

しかし、相手のパイロットはイチカのことを知らないと言わんばかりにそう聞いた。

 

 

「俺だ!イチカだ!この前、街で会っただろ!!」

 

『街で?そんなの知るかよ!!とっとと落ちろよ、この野郎!!』

 

 

アウルはアビスでジャスティスに横蹴りを入れ、吹き飛ばして三連装ビーム砲を放った。

 

 

「…俺が分からないのか?えぇい!」

 

 

イチカはビームを躱し、アビスの動きを封じようとビームブーメランを投げる。

 

 

『そんなんが効くかよ!!』

 

 

アウルはビームブーメランをビームランスで破壊し、カリドゥス複相ビーム砲を撃った。

イチカはそれを機動防盾で受け止めた。

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

クソッ!まさかアビスに乗ってたのがアウルだったなんて…、どうすればいいんだよ…!

 

 

『おい、イチカ!ボサッとするな!後ろだ!!』

 

「え?しまっ―――うあぁぁ!!」

 

 

考え事をしてしまい、後ろからのミサイルの攻撃に気づかず、反応が遅れモロに被弾してしまった。

機体はミサイルの爆風によって海中に叩き落とされ、しかも俺もその衝撃で意識が少し遠のきかけていた。

 

 

駄目だ…、ここで意識を失くしたら…!

動け、動け動け動け!!

俺はこんなところで終われない、死にたくないっ!!

 

 

消えそうな意識の中、そう俺は強く思った。

すると、プラント防衛戦の時のように意識がクリアになり、微かに空色の種のようなものが割れるのを感じた。

 

途端、意識が覚醒し自分が次に何をすべきか?

そのための最適な動きを瞬時に起こし、俺は機体を海中から浮上させ、一気に飛び出した。

 

 

「うおおぉぉぁぁぁぁ!!!」

 

 

俺は近くにいた敵機をビームサーベルで切り、すぐさま次の対象へデファイアントビームジャベリンを振り抜いた。

俺に反撃を仕掛けようと三機でビームライフルを連射してくる敵もいたが、その敵をビームライフルとバラエーナプラズマ収束ビーム砲でコクピットを貫き、破壊した。

 

そして背後から六連装のビーム砲が飛んできたのを避けると、俺はアビスへと向かった。

 

 

「アウルゥゥゥ!!」



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血に染まる海

今回はアスラン要素多めの内容になります。

ちなみに戦闘はオリジナルです


SIDE イチカ

 

 

俺はアビスに向かってデファイアントビームジャベリンを振り下ろす。

が、その攻撃は肩のシールド兼兵装によって防がれてしまい、また接続通信が入ってきた。

 

 

『青いの!お前は俺が落としてやるよぉ!!』

 

「チィ、落ちろぉ!!」

 

 

俺はバラエーナプラズマ収束ビーム砲を放ち、アビスの両肩のビーム砲を破壊し、怯んだところを狙ってビームランスを切り落とした。

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

『避けろ、イチカ!』

 

 

俺がアビスに止めを刺そうとしたが、シンから通信が入り咄嗟に後ろへ避けると何処かからミサイルが飛んできて俺とアビスの間を通り抜けた。

そしてMA状態のカオスがアビスを掴み、撤退していった。

 

 

「待て!!」

 

『イチカ!ミネルバが!』

 

 

シンにそう言われてミネルバを見ると、多数のオーブのMSの攻撃により、被弾箇所が増えていた。

 

 

「フリーダムは」

 

 

乱入し、マユを被弾させたフリーダムはどこで戦っているのか?

と俺は、ミネルバへ戻りながら周囲を確認した。

 

すると、浅瀬付近にてセイバーとグフがガイア、フリーダムの相手をしていたのが見えた。

あの二人なら大丈夫だと、安堵し俺はミネルバを援護すべく、機体を進ませた。

 

 

 

 

SIDE アスラン

 

 

「キラ!なぜお前が今になって出てきた!」

 

 

俺は小さいころからの友人だった【キラ・ヤマト】に呼びかけた。

フリーダムの動きからして、パイロットはアイツだと思ったからだ。

 

 

『アスラン!?君か!』

 

「今すぐカガリを連れて下がれ!」

 

『…それはできないよ。

僕たちはこの戦いを止めにきたんだ』

 

 

お前ならそう言うと思ったよ、キラ…

 

 

「だが、お前たちが戦場に来たことで起こったことは何だ!?

ただ闇雲に戦火を増やしているだけだろう!」

 

『けど、あの攻撃を止めていなければ、オーブへの被害が…!』

 

「ふざけるな!その考えの結果がこれだと言っている!

確かに、被害が出るかもしれない――が、ならお前はミネルバに、俺たちに沈めと言いたいのか!?」

 

『そうじゃない!僕は――』

 

「もういい。

どの道お前は俺たちの敵だというのに変わりは無いんだ。

カガリを連れて退くつもりが無いというのならば――俺がお前たちを無理矢理にでも下がらせてやる!」

 

 

俺は自分の中のリミッターを外すように意識し、SEEDを発動させた。

 

 

「キラァァァ!!」

 

『くっ、アスラン…』

 

 

フリーダムの動きも急に変化し、ビームサーベルを抜いて俺に切りかかってきた。

俺はそれをシールドで受け止め、もう片方の腕でビームサーベルを抜き、斬りかかった。

しかし、それは同じようにシールドで防がれ、鍔迫り合いになっていた。

 

俺はその状態から脱出のためにCIWSを目くらましの為に放ち、一気に押し切ろうとしたが、

フリーダムの腰に備え付けられていたレール砲が撃たれ、それに直撃してしまう。

 

 

VPS装甲のおかげで大したダメージにはなっていないが、代わりにエネルギーを多く消耗してしまっていた。

俺は減ってしまったエネルギーの事も考え、一度MA形態に変形し、射撃で牽制しつつハイネに対して通信を行った。

 

 

「ハイネ、すまない、手を貸してほしい」

 

『お?何だアスラン?しょうがねぇなぁ――って言いたいところだが、俺もガイアたちを相手にしててな、そっちもキツイと思うが纏めて相手にするんだったら構わないぜ?』

 

「それでいい。

向こうは敵同士なんだ。

こっちの方が遥かに連携を取りやすい」

 

『なら敵を引き寄せつつ、合流するぜ』

 

 

 

通信を切った俺は、フリーダムを合流地点に少しでも近づけるため、アムフォルタスプラズマ収束ビーム砲をフリーダムより上から放ち、海面へと追い込む。

 

すると、フリーダムの背後から敵を何機か引き連れたハイネのグフがその手に近接ブレードを持ちながら、フリーダムへフィンガーキャノンを放っていた。

 

 

『よりにもよって、フリーダムが相手かよ…。

まあ、見せてやるぜ、ザクとは違うってことをなぁ!!』

 

 

しかし、フリーダムにグフが切り付けようとしたところでフリーダムが宙返りを行い、グフの背後に回り込みビームライフルを放とうとするが、

 

 

『甘いんだよ!』

 

 

ハイネはそう動くのを読んでいたのか、すぐに後ろを向きグフのスレイヤーウィップをフリーダムへ伸ばし、そのビームライフルを奪い、海へ捨て去る。

 

流石はFAITHの称号を持つ者と言ったところだろう。

俺はハイネの動きに感心すると同時に、ハイネを追いかけてきていたオーブのムラサメ、ガイアに対してビームライフルとアムフォルタスプラズマ収束ビーム砲で襲撃を掛けた。

 

それによりムラサメを何機か落とすことに成功し、ガイアは後ろへ後退していった。

 

 

「次は!」

 

 

俺はハイネに任せていたフリーダムへ向き直り、そちらへビームライフルを放つ。

しかし、フリーダムは振り向き様にシールドで防ぎ、翼にある二門のビーム砲を放ってきた。

 

 

『後ろががら空きだっての!』

 

 

ハイネがグフのフィンガーキャノンを放つが、それをフリーダムは軽々と避け、ビームサーベルでグフの腕を素早く切り捨てた。

 

 

『なんて出鱈目な動きだよ!?』

 

「ハイネ!」

 

 

俺はグフからフリーダムを引き離すべく、セイバーの射撃武装をフリーダムへ放ち続け、フリーダムを引き離した。

すると、ガイアがMA形態で背中のビームブレイドを展開したまま突進をかけてきたので俺とハイネはそれを躱し、フリーダムへガイアは攻撃を行った。

 

 

しかし、そんなことをキラが許すはずも無く、ガイアは頭部を蹴られ海面にたたきつけられた。

 

 

「クソッ、攻めきれないッ!」

 

 

すると、ミネルバに多くの敵機体が向かっていくのが見え思わず動きを止めてしまった。

それはハイネやキラも同じだった。

 

 

『おいおい、ちょっとヤベェんじゃないか?』

 

「…キラ、これがお前のやりたかったことなのか?

地球軍やオーブに味方し、ミネルバを落とすことが…。

俺たちは足止めをされていたと、そういうことか?」

 

『――アスラン』

 

「行くぞ、ハイネ。

ミネルバを援護しないと!」

 

『おう、分かってるさ――アスラン!避けろ!』

 

 

ハイネの声で気づいたが海中からガイアが再び突進してきていた。

しかも、フリーダムを狙ってだ。

だが、その間に俺がいたこともあり、ガイアは俺もろともフリーダムを切り裂こうとしてきていた。

 

 

「しまっ・・・!」

 

『アスランッ!――――ウガァァァァ!?』

 

「…え?」

 

 

ハイネのグフが俺とガイアの間に割り込み、身を挺してガイアのビームブレイドを防いでいた。

 

 

『ミネルバを…助けろォ、いけぇ、アスラン!!』

 

「ハイネ、ハイネェェェ」

 

 

俺の呼びかけも虚しく、グフは爆発し近くにいたガイアと俺は吹き飛ばされてしまった。



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失った人と道標

SIDE イチカ

 

 

ミネルバへ押し寄せる敵を一機、また一機と落としていくが、その量は多く、ミネルバへの被害がどんどん重なっていく。

 

 

「このままじゃ持たないぞ!!」

 

『艦長!ミネルバを一旦退かせてください!このままじゃ!』

 

 

補給、予備のパーツで機体を修理したマユも戦線へ復帰してはいるが、状況は確実にこちらに不利だった。

 

 

『ミネルバを後退させる!

皆、あと少し持ちこたえてちょうだい!メイリン、セイバーとグフにも艦の護衛を!』

 

『は、はい!―――え?グフ、シグナルロスト…』

 

「!?ハイネが!?嘘だろ!」

 

 

すると、セイバーもミネルバ付近へと戻ってきた。

 

 

『ハイネは…、俺をかばって、ガイアに…』

 

 

と、アスランは口にした。

正直、FAITHの称号を持つ彼が死ぬなんて思わなかった。

だからこそ、俺たちへの心的ダメージは大きかった。

 

 

『おい!イチカ!しっかりしろ!

まだ俺たちにはやることがあるんだぞ!!』

 

「!シン」

 

『マユだって、そうだ!

ミネルバへの脅威を排除するまでまだ戦いは終わってないんだぞ!』

 

『…お兄ちゃん』

 

『俺たちが、ハイネの分まで戦わないと!』

 

 

そうだ…。

シンの言う通り、俺たちにはやることがある。

ハイネがいなくなったのなら、彼の分まで俺たちが戦うしかないんだ!!

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

 

俺はビームライフル、バラエーナプラズマ収束ビーム砲を一斉に放ち、編隊を組んでいる敵部隊を破壊していった。

マユもF・フリーダムの全武装一斉掃射で多数の敵MSを落としていった。

シンはブラストへ換装し、ケルベロス高エネルギー長射程ビーム砲とミサイルランチャーによる一斉攻撃を行い、接近する敵MS、ミサイルを排除していった。

 

 

ミネルバがある程度後退したところで、援軍が到着し戦況は有利になったが、敵もすぐに撤退し戦闘は一応の終着を迎えた。

 

 

ミネルバは再び基地にて補給と修理を行わなくてはならず、俺たちの機体もそれと同時に修理、データの更新を行っていた。

そして、俺とシン、レイ、アスランは議長に呼ばれ、執務室へとやってきていた。

 

 

「ロドニアの研究所ですか?」

 

「ああ。

以前、君とマユが持ち帰ったデータを解析したところ、この付近にあるかつての地球軍の研究施設の名前があってね。

どうやら、このデータはそちらへ転送されたようなんだ。

そこで調査隊を派遣しようと思ってね、君たちを連れて我々も調査を行おうと考えている」

 

「議長自らが、でありますか?」

 

「うむ。

こう見えても私は以前はれっきとした科学者でね。

こういった研究の知識もある程度は持っているのさ」

 

 

 

そして、俺たちはロドニアのラボに調査部隊として派遣され、施設内に侵入した。

 

 

「こ、これは、なんというか…」

 

 

ミネルバ副長のアーサーさんが施設へ入って、口元を押さえた。

施設にて俺たちが見たものは、たくさんの子供たちの死体、液体に漬けられたままの人間の眼球などだった。

吐きはしなかったものの、多少の不快感が俺を襲ってきた。

 

 

「分かってはいましたけど、刺激がきついですね」

 

 

と、アーサーさんは言った。

ここの施設は多少の設備が生きており、施設にいた子供たちのデータが多少閲覧できた。

 

 

「クロト・ブエル…オルガ・サブナック…シャニ・アンドラス。

これは、あの時の彼らか…」

 

 

アスランはデータを見てそうつぶやいていた。

地球軍の施設だから、やはり戦場で戦った相手のデータもあるんだろうか…。

俺も別の端末で調べていると、見覚えのある顔があった。

 

 

「アウル、ステラ、スティング…。

やっぱり彼らも、そうだったのか…。――ん?これは?」

 

 

別のファイルに入っていた人体データだろうか。

名前はただの被検体1号だった。

顔の画像データは無かった。

が、何かが引っかかっていたがそれの正体が分からないまま、結局そのファイルを閉じた。

 

 

「イチカ、少し来てくれ。

このファイルだが、君の国の言語では無いか?」

 

 

と議長に呼ばれ、見てみたファイルはタイトルは日本語で【いっくんへ】と書かれていた。

それを開くと、テキストファイルと何かのプログラムが自動でインストールされ始めた。

 

プログラムがインストールされたと思うと、すぐに画面が変わり、束さんの顔が映った。

 

 

『お!やっほー!いっくん、束さんだよ~!』

 

「た、束さん?どうして!しかもこの場所に俺たちが来る保障なんて無いのにどうやって連絡を!?」

 

『君たちがここにいずれ来ることは分かってはいたんだよ?

束さんの方でもあの時の基地のデータを解析したからね。確か、ロドニアってところだったかな?

で、いっくんの今いる世界では日本語は使われていないみたいだったから、ハッキングして日本語でファイルを作成して、開いたら束さんの元へ連絡がくる様にしておいたのだ!』

 

 

と、どや顔で話すが、何とも言えない凄い技術だった。

議長も俺たちの話を聞いてこっちに来たアスランも驚いていた。

異世界同士をネットワークでとはいえ、ハッキングするとは…。

 

 

「異世界越しにハッキングって流石ですね…」

 

『で、いっくんにお知らせがあるんだけど、良い知らせと悪い知らせ、どっちからがいい?』

 

 

と、束さんは俺に二択をふっかけてきた。

 

 

「えと、じゃあ、良い方の知らせから」

 

『一応ね、いっくんがこっちに帰って来るための準備はできたんだよ!』

 

「え!?本当ですか?」

 

『うん!ただ、その為にISコアを一つ失うことになったんだけどね。

それと、今はまだいっくんしか移動することができないんだよ。

こっちの世界やそっちの世界からいっくん以外の人が移動することはできないんだよ』

 

「ISコアでそんなことができるんですか?」

 

『まあね。

と言っても、ISコアは束さんでも分からない未知なところがあるからね。

もしかしたらそう言うことができても当然の事なのかもしれないんだよ』

 

「でも、どうやって俺をこっちからそっちの世界へ移動させるんですか?」

 

『それはこの装置をそっちの世界でも作ってもらえば後はこっちで何とかできるよ!』

 

 

そう言って、束さんはこっちのコンピュータへ何かの設計図のファイルを送ってきた。

 

 

「これを作ればいいんですか?」

 

『そーだよー。

その装置は所謂、電話の子機みたいなものでね。

今、束さんが作ってる親機と通信して物質を飛ばすんだ。

なんていうか、ポ〇モンの通信交換的なやつ?』

 

「な、なるほど…。

議長、そういうことらしいのですが、開発は可能なんでしょうか?」

 

「ふむ、見たところだと可能だろう。

ミス・シノノノ、これの開発はこちらで引き受けましょう」

 

 

と議長が束さんにそう言った。

 

 

『うん、わかったよ。

何か、貴方にだったら安心して任せられる気がする。

いっくんの事もお願いね?』

 

「お任せください。

彼の存在は我々にとっても大きなものだ。

出来る限りのことは致しましょう」

 

 

「じゃあ、束さん。

もう一つの悪い知らせの方を聞かせてください」

 

『うん。悪い知らせって言っても二つあるんだけど、一つはこれ』

 

 

そう言って、見せてきたのはとある画像だった。

 

 

「た、束さん!これは!!」

 

「フリーダム、なのか?」

 

『見覚えがあるんだね?

こっちの世界では現行のISは試作段階の第三世代が最高なんだけどね、この機体は突如、現れてモンド・グロッソにて暴れまわったんだよ』

 

 

画像に映っていたフリーダムは、IS用に改造されたような見た目で、頭部はバイザー、腕や足はところどころを装甲で覆っており、青い翼が特徴的だった。

 

 

『おかげでこっちの世界の政府は大荒れ。

そのフリーダム?ってISを手に入れようと躍起になってるほどなんだよ。

束さんも正体を追うために色々手を打ってみたけど全部だめだった。

向こうには束さんを超える相手がいるってことだね…』

 

「とりあえず、もう一つの知らせは…?」

 

『いっくんの偽者が出たの』

 

 

俺の偽者。

束さんはそう口にした

 




そろそろIS世界との関わりを強めていこうと思います。

リメイク前よりも大分変ってきてるとおもいますが、これからもよろしく頼みます


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強化人間

SIDE イチカ

 

 

俺の偽者。

束さんは確かにそう言った。

 

 

「どういうことなんですか?束さん」

 

『そのまんまの意味なんだよ、いっくん。

いっくんの偽者。顔、声、体格全てがいっくんの生き写しのような感じだった。

でも、どこからか突然フラッと現れたの。

当然、家に帰ったからちーちゃんや一緒にいた中国人は泣いて喜んでたんだよ。

だからこそ、そいつが偽者だって言えなかった。

そんなこと言ったらちーちゃん達、絶対に壊れてしまうから。

それに、何の確証も無く言ったとしても信じて貰えないだろうからね。

だから、仮にこっちへ戻ったとしても、言い方はアレなんだけどいっくんの居場所は今は無いの。

けど、もし戻るときが来たら束さんに任せて!

戸籍や住むとこなんかはこっちで何とかするから!』

 

「そうなんですか…。

今の俺が会いに行ったところで千冬姉たちには却って混乱させてしまうってことか。

 

なら、議長。

あの装置が完成したら向こうの世界のフリーダムについての調査を私に任せてください」

 

「ああ、無論そのつもりだ。

こちらの世界から現時点で唯一移動できるのはイチカだけだからね。

我々の世界から流出した物が被害を及ぼすのであれば、その尻ぬぐいはこちらで行うべきことだ」

 

『なら、いっくん。

こっちはいっくんが帰って来れるように、それと帰ってきたときの為にバックアップの準備を整えておくよ。

それと、出来ればそっちでのいっくんのデータを送れないかな?

そうすればこっちでいっくんの力になれるものを作れるかもしれないからさ』

 

 

ということで、俺の機体のデータから俺の機体のOSや各種データを束さんに対して送った。

 

 

「それでは束さん、そっちはよろしくお願いします」

 

『いっくんも、気を付けるんだよ!!』

 

 

そうして、通信は切れた。施設の調査もある程度終了し、一度、引き返そうと思った矢先に、MSが接近してくるアラートが鳴った。

 

 

「地球軍か!」

 

「シン、イチカ、アスランは迎撃を頼む。

レイ、君は奥にいる調査隊に退避の指示を」

 

「「「「了解」」」」

 

 

俺たちはそれぞれの機体に乗り込み、システムを立ち上げた。

すると、メインカメラが敵の姿を確認した。

敵は二機でガイア、アビスだった。

 

 

「アウル…、それじゃあガイアにはスティングかステラのどちらかが…」

 

『シン、俺とガイアへ攻撃を!

イチカはその間のアビスへの陽動を頼む』

 

『分かった!』「了解」

 

 

俺はアビスへビームライフルを放つ。

 

 

「アウル!」

 

 

なるべく施設から遠ざけるために、俺は射撃で牽制しつつ機体を押し出し、そのまま接触回線で通信を行った。

 

 

「たった二機で一体どうするつもりなんだ、アウル!」

 

 

俺は、時間を稼ぐためにもそう問いただした。

 

 

『――が…』

 

「え?」

 

 

小さい声のため、あまり聞き取ることができなかった。

 

 

『母さんが!母さんがぁ!!』

 

「母さんって、いったいどうしたんだよ!!」

 

 

あの施設にはそもそも誰もいなかった。

ならアウルの言う【母さん】って一体…?

兎に角、動きを止めさせるしか!

 

 

『邪魔すんなよ!母さんがあそこに!』

 

「話を聞け!

お前の母さんはあそこにはいなかった!そもそも、誰もいないんだよ!!」

 

『うあぁぁぁぁ!!』

 

 

駄目だ、話を全く聞いていない…。

けど、動きが単純になってる。

冷静さが無い今なら!!

 

 

俺は、フラッシュエッジビームブーメランを投げた。

それはアビスのビームランスで弾かれるが、冷静さを欠いていることで一振りは大振りなものになっていた。

だから俺はその隙を突き、両腕をデファイアントビームジャベリンを両手に持ち、切り裂いた。

更に、メインカメラを破壊し、抵抗しそうな要因を潰した。

 

が、腕と頭部を失ったアビスは未だ暴れまわるので、仕方ないと思い、コクピット部分を殴ることで衝撃を与え、気絶するように追い込んだ。

 

 

「こちらイチカ。

アビス及びそのパイロットを沈黙させました」

 

『了解、こちらも――シン!?何をやっている!』

 

 

と、アスランの驚いた声が聞こえ、そっちを見やるとシンがガイアから少女を引っ張り出しているのが見えた。

彼女にも俺は見覚えがあった。

アウルと一緒にいた少女【ステラ・ルーシェ】だ。

彼女もアウルと同じようにガイアに乗っていたということだろう。

で、シンはステラをインパルスへ乗せ、ミネルバに向かって飛んでいった。

 

 

『ああ、くそっ!何をやってるんだ、シンは!』

 

「アスラン、こっちのアウ―――アビスのパイロットはどうすれば?」

 

『アビスの収容は後で行うとして、パイロットが生きているのならミネルバへ運んでくれ。

俺が話を通しておく』

 

「分かった」

 

 

俺はアウルをアビスから引きずり出し、怪我が無いかなどの確認をした後、ジャスティスへ乗せミネルバへ連れて行った。

格納庫へ戻ると、アスランが既に連絡を入れておいてくれたからなのか、担架の手配がされていた。

俺はアウルを背負ったまま、コクピットから降りる。

当然ながら、地球軍の兵士をザフトの船に連れ込んでいるので、警戒はされていたが、意識が無いのを確認したら、医療班が医務室へ運んでいった。

 

結果として、ステラとアウルを連れ込んだ俺とシンはアスランの指示と言うことと奪取された機体の鹵獲ということでグラディス艦長の御叱りのみで済まされた。

とはいえ、これまで散々、俺たちを苦しめてきた機体のパイロットということもあり、皆警戒していた。

 

 

 

医務室で静養しているアウルとステラは外傷は軽い打撲などで済んだのだが、衰弱が酷かった。

理由としては、二人が地球軍の生体CPU【エクステンデッド】であることが原因だろうと、ロドニアの研究施設で得たデータを元に明らかになった。本来、エクステンデッドは精神暗示装置を用いてその体を調節する強化人間らしいのだが、その装置が無ければ精神的にも身体的にも悪影響を及ぼすようだ。

それを聞いた時のシンの顔はとても辛そうな顔だった。

 

ディオキアの海で遭難していた時にシンはステラと一緒にいた。多分、その時に共感したんだろうなと俺は思う。

一時期、ステラが眼を覚まして暴れだしたときも抱きしめ、「大丈夫、俺が守る」と言い聞かせていた。

 

 

俺とシンは二人を助けたことで議長に呼ばれた。

 

 

「二人が助けた連合のエクステンデッドだが、このままではどちらも衰弱死するだろう」

 

「そんな…、どうにかならないんですか!?」

 

 

と、シンは議長に訴える。

 

 

「だが、方法はある。

それは君たちだってわかっていることじゃないのかい?」

 

 

そう。

その方法を俺たちは知っている。

地球軍に二人を帰すことだ。

でも、それはつまり、戦場に出てくる様に向こうが調整してくる可能性もある。

 

 

「はい…。

でも、ステラを、これ以上戦いの中に置いておくことは俺は嫌なんです!!」

 

「だが、それ以外に方法が無いのも事実だ。

選んでほしい。

君たちは、彼女たちが生きる可能性に賭けるのか、命の尽きるその時まで見守るのか」

 

 

俺は、アウルが最後まで苦しみながら死ぬのを見たくない。

関わった時間はそれほど長くない。

でも、失いたくない大切な友達だと思える。

だからこそ、アイツには生きていてほしい。

 

 

「議長、俺はアウルを、アイツを地球軍へ送り帰します。

アイツには生きていてほしいから…。

でも、地球軍がアウルを兵器として戦場に駆り出すのだとしたら、アイツは―――俺が撃ちます」

 

「イチカ…」

 

「分かった。

君はどうする、シン?」

 

 

シンにとってもこれは酷な選択だと思う。

自分が守ると誓った人を敵とも言える相手に帰すのだから、そうなればきっと、また戦うことになるだろうから。

 

 

「すみません、俺、まだ答えを出せません」

 

 

シンの拳は震えていた。

多分、アイツも心で揺らいでるんだと思う。

 

 

「そうか。

なら、決心が着いたのなら報告してほしい」

 

 

俺たちはミネルバへ戻り、二人の様子を見に向かった。

アウルとステラは暴れださない様にと拘束具をされ、ベッドに寝かされていた。

俺たちが部屋を訪れ、声を掛けても二人は目を覚まさなかった。

 

 

そして、ミネルバはそんな二人を乗せたまま次の戦場へ向かう。

次の戦場でもきっと、フリーダムが出てくるんだろう。

あのフリーダムと束さんの言っていたフリーダム。

 

今になって出てきたあの二機に一体どんな関係があるかは分からないけれど、世界を混乱させるならアイツは、俺が…

 




アウルもロドニアにステラと奇襲を掛けて来れたのは、単純にスティングがアウルを止められなかった、というだけです


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すれ違う友

SIDE イチカ

 

ミネルバが航行するその進路に地球軍とオーブ軍の同盟艦隊が網を敷いていた。

ミネルバはジブラルタルへ向かう必要があったが、その行く手を再び遮られてしまっていた。

 

俺たちはパイロットルームでのブリーフィングを行っていた。

 

 

「戦力では以前と同様にこちらが不利なことに変わりは無い――――が、それは突発的な乱入に対して上手く対処が出来ていなかったからだ」

 

 

戦力図をモニターに展開し、アスランがそう言った。

 

 

「更にこの戦闘において、向こうはエース機を二機俺たちに鹵獲されている。

つまり、戦力低下は否めないということだ。

そこを突くことでより被害を抑えつつ、ジブラルタルへの道を切り開けると俺は思う」

 

「じゃあ、今回もフリーダムとアークエンジェルが奇襲を掛けてきたらどう対処するんですか?」

 

 

ルナがアスランへそう質問する。

 

 

「フリーダムの乱入への対処は俺が行う。

その間に君たちがオーブ並びに地球軍の部隊を相手して欲しい。

今作戦では、シン、お前はブラストシルエットによる後方からの火力支援を行ってくれ。

前回の戦闘ではミネルバ周囲の防衛が手薄だった。

敵の出方によっては換装し、敵母艦への対艦攻撃を行ってくれ」

 

「分かりました」

 

 

モニターに表示されていた図に二つの駒が現れ、一つはミネルバ周囲に、もう一つは少し外れた場所に移動した。

セイバーとインパルスの展開位置ということだろうか。

 

 

「次に、レイ、ルナマリアだ。

君たちには前回同様、ミネルバの護衛を行ってもらうが、その際、レイにはガナーを装備して出てもらう。

レイの射撃の正確さはこれまでの戦闘でよく分かっている。

遠方から接近する機体をシンと共に落としてくれ。

ルナマリアはその後詰めだ。

シンとレイの網を抜けた機体を排除してくれ。

ここが抜かれたらミネルバへの被害は相当なものだと思っておくんだ」

 

「「了解しました」」

 

 

ミネルバと同位置の所に二つの駒が配置された。

 

 

「最後にイチカ、マユの二人だが君たちには最前線での遊撃を頼む。

本来、君たちの機体は連携を行うことでその真価を発揮できる機体だ。

だからこそ、二人のみを前に置くことでより連携を取りやすくなると俺は思う。

作戦開始時、敵MS部隊に対して一斉射撃を行ってくれ。

マユはエネルギーが尽きる寸前まで撃ったらミネルバにて補給を行ってくれ」

 

 

「はい」「了解です」

 

 

最後に二つの駒がミネルバと敵艦隊の中間に配置された。

 

 

「グラディス艦長から出撃の命があるまで待機してくれ」

 

 

俺たちは機体へ向かうが、その途中でシンはアスランに呼び止められた。

 

 

 

SIDE シン

 

 

俺はコアスプレンダーへ向かう前にアスランに呼び止められた。

 

 

「何ですか?」

 

「議長からの連絡だ。

君が救出したステラという少女のための治療を行うことが可能かもしれないらしい」

 

「本当ですか!?

で、でもそれじゃあ、アウルにも可能なんですよね!イチカにも——「その、治療を行うことができるのは、現段階では一人が手一杯だそうだ。

議長もそのことを悔やんでおられた」――けど、このことはイチカには…?」

 

「ああ、既に話をしてあるらしい。

だが、アイツはその上で、ステラを助けてほしいと議長に進言したそうだ」

 

 

そう、だったのか…。

 

 

「伝えてくれて、ありがとうございます。

俺、少しイチカと話をしてきます」

 

「ああ、分かった」

 

 

俺は、イチカを追いかけるため急いで部屋を飛び出した。

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

「イチカ!」

 

 

MSデッキ近くで俺はシンに呼び止められた。

 

 

「アスランから聞いたけど、ステラへの治療を進言したって本当か?」

 

 

そっか、聞いたのか…。

 

 

「本当だぜ。

アウルを治療するかステラを治療するか、より良く二人を助けられる方法があるんだ。

その方法に縋らない手は無いと思うけどな」

 

「だったら、なんでアウルを治療して欲しいって頼まなかったんだよ!?」

 

「…今のシンには、ステラが必要だと思ったから、かな?

シン、前よりも表情柔らかくなったの気づいてるか?」

 

「…え?」

 

「ステラと遭難してた時、その日以来、お前、少しずつ変わってるんだよ」

 

 

僅かな変化だったけど、俺とマユは分かってた。

 

 

「は?本当か?全然、実感ないんだけど」

 

「馬鹿、何年家族やってると思うんだよ?

お前の顔もマユの顔も散々、見てるんだぜ?

分かるに決まってんじゃんか。

———だからこそ、お前を変えてくれたステラにはお前と一緒にいてもらいたいんだよ。

アウルのことは、きっと、何とかなるからさ」

 

「イチカ……、ありがとう、本当に!」

 

「イヤイヤ、俺がステラにお礼を言いたいくらいだからな。

その代わり、お前がしっかりと守ってやれよ?」

 

「ああ!」

 

 

俺とシンにとっての心のわだかまりの様な物が無くなった気がした。

俺たちは機体へ搭乗し、出撃の合図が出るまで待機していた。

 

 

『あ、お兄ちゃん、やっぱり表情良くなってるね』

 

『なあ、俺ってそんなに分かりやすいか?』

 

「まあ、俺らからしたら、って付け加えるけどな」

 

『今のお兄ちゃんはそうだね——好きな人ができた!って、感じの顔してる』

 

『は!?な、なんだよそれ!?

す、ステラは別にそんなんじゃ!』

 

「お~い、シン、墓穴掘ってるぞー?」

 

『はっ!?』

 

 

シンの顔が珍しく、赤面していた。

 

 

『しかもこれ、ブリッジや他の機体とも通信繋がってるんだよね』

 

『ちょっと、シン~?

聞いちゃったわよ~?』

 

 

ルナがシンをからかうために反応してきた。

 

 

『わ!これって敵との禁断の恋って奴かな?』

 

 

メイリンもそれに乗じて、口を出す。

 

 

「あー、シン?お疲れ様」

 

『何だよそれ!?

ってか、ルナもメイリンも煩い!!』

 

 

『楽しそうなのは良いけれど、戦闘前ということも忘れないで頂戴ね?』

 

 

と、グラディス艦長に制される三人。

 

 

『敵MS多数展開を確認。

今のところ、アークエンジェルの姿は確認されていません』

 

『では、イチカ、マユから順次MSを発進!

ここを乗り切る!』

 

 

俺たちは機体を立ち上げ、出撃していく。

 

 

「マユ、敵の大隊を引き付ける。

最初に火砲を敵中心に集中させるぞ!」

 

『分かった!』

 

 

出撃した俺たちは先行し、全砲門を展開し、俺たちの後方にいるミネルバを狙うために接近してくるオーブ、地球軍の同盟MS部隊を一斉射撃で撃ち抜いた。

更にマユはフリーダムのフルバーストを連射し、敵へ追い打ちを掛けていく。

 

 

『イチカ、ごめんちょっとエネルギーを消費しすぎたから少し補充してくるね!』

 

「ああ、マユのおかげでかなりの量を墜とせたから、後は任せてくれ」

 

 

と、マユはミネルバへエネルギー補充のため、後退した。

 

 

「さてと、行くぞ、ジャスティス!」

 

 

脅威を排除しようと部隊を分け、ジャスティスへと向かってきたオーブ軍部隊に俺はフラッシュエッジビームブーメランを投げ、腕を切り裂き、攻撃を開始した。

 

すると、別方向から俺とオーブ軍の間に艦主砲らしきビーム砲が飛んできて空を裂いた。

 

 

「やっぱり来たか、アークエンジェル。それにフリーダムも!」

 

 

ブリーフィングの時に来るだろうと予想はしていたから、前回の様な戸惑いは無かったけど、戦場を混乱させる行為を今回も行うのだと思うと、アレが邪魔にしか思えなかった。

 

 

 

 

SIDE アスラン

 

 

マユがミネルバ付近へ後退してきたとき、予想通りアークエンジェルが戦場にやってきた。

 

 

「各機、手筈通りに行くぞ」

 

 

俺はそう指示を出すと、MA形態へ変形させ、セイバーでフリーダム付近を目指した。

その途中、カガリの乗っているであろう【ストライク・ルージュ】がアークエンジェルより出撃し、前回のように停戦の呼びかけをしていた。

 

 

「…お前は、なんでいつもそう突っ走ることしかできないんだ、カガリ。

争いを止めるために争いの火種に飛び込むんじゃ、火に油を注ぐだけだって何故分からない。

キラ、お前もお前だ。

カガリの意見に賛同するのはいいが、もっと別の方法だってあったはずだ。

なのにわざわざ戦いを選ぶのか、お前は…?」

 

 

俺は誰にも聞こえないようにそう呟いた。

俺は変形させ、フリーダムへビームライフルを放った。

フリーダムはそれを避け、ビームサーベルを抜き、俺に切りかかって来る。

俺はそれをシールドで止め、同じようにビームサーベルで切りかかる。

 

 

『そこを退いてくれ、アスラン!

僕は、戦いを止めないと!』

 

「そう言いながらお前が力を振りかざしてどうする!

俺たちからすればお前やカガリのしていることはただの敵対行為だ!

そんな行いを受けながら、戦いをやめろ?ふざけるな!!」

 

『退く気は無いんだね?』

 

「それをお前が言うのか!」

 

『平和な世界の為に、僕は、君を撃つ!』

 

「ならば、今度こそ、俺がお前を撃つ!」

 

『アスラァァァァン!!』

 

「キィィラァァァァ!!」

 

 

セイバーとフリーダムが距離を取り、再びぶつかり合った。

 




キラVSアスランになります。
今回の戦況はアビス、ガイアがいない分、エース機の数はオーブが少ないですが、物量で言えば同盟艦隊の方が有利です。
さぁ、次回はどうなるのか・・・

カガリの声は届くのか・・・?






あれ?そういえば、ダーダネルス海峡での戦いって、セイバーが落とされたときの戦いでしたっけ?


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覚悟の剣

オリジナル戦闘回になります。


SIDE アスラン

 

 

「でぇぇい!」

 

 

俺はキラの動きから予測できる移動先に対して、アムフォルタスプラズマ収束ビーム砲とビームライフルを放つ。

それにより、キラは回避先を変更するが、そう誘い込むことが狙いだった俺はビームライフルを放ち頭部を狙った。それをキラはシールドでガードするが、それで正面の視覚を遮ることができ俺はここでビームライフルをキラへ向けて放り投げる。

そして、ガードを解除したところで20mmCIWSを先ほど投げたビームライフルに放ち、ライフルを爆発させる。

シールドを除けた無防備な状態でその爆発を受けたフリーダムは体勢を崩し、俺はそこを突きヴァジュラビームサーベルで追い打ちを掛け、フリーダムを墜とすように切りかかった。

 

 

「終わりだっ、キラ!」

 

 

俺はこのままフリーダムにビームサーベルを振り下ろすことでそのまま終わると思っていた。

しかし、ここで思いも寄らぬ乱入者が現れた。

 

 

『やめろ!アスラン!』

 

 

ストライク・ルージュがこちらへ突進を掛けてきて、フリーダムに切りかかる俺を突き飛ばした。

 

 

「ぐっ…。

カガリ…、君か」

 

『アスラン…なんでお前とキラが戦う必要があるんだよ!?』

 

「理由…か。

それは現時点でお前たちがミネルバの脅威であるということを理解して言っているのか?」

 

『脅威?何を言っている!

私達はこの戦闘を止めにきただけで…』

 

「その結果が何だ!!

実際に戦闘を中止させることができたか!?

オーブ軍が撤退したか?

違うだろう!!

ただ、向こうを駆り立て火に油を注いでいるに過ぎないんだ!」

 

『そんなつもり…私には——』

 

「そもそも、何故お前がオーブを離れる必要がある!

代表であるお前が国にいて、中から国を変えることができていれば、そもそもこんな争いすら起こっていなかったんだよ!」

 

『だが、あのまま国にいてもセイラン家の傀儡にしかならなかった!』

 

「それで守るべき国民のいる国を離れ、外から呼びかけている…と?

それこそセイラン家の思う壺だと何故分からない!

代表であるお前が国を出てしまう事こそがオーブの為にならないことぐらい分かっていた筈だ!」

 

 

 

実際、どうだ?

セイラン家は俺がオーブにいたころから何かと企んではいたが、カガリがいたことで自重していた。

しかし、今、そのカガリがいないということは必然的に力のあるセイラン家が国を牛耳っていることに変わりは無い。

 

 

『なら君は、カガリにあのまま結婚してしまえと言っているのかい?』

 

 

先ほどまで無言だったキラも会話に乱入してきた。

 

 

「国を、国民を思うのならそれは必然だったと俺は思うが?

昔の話になるが、俺だってザラ家とクライン家の婚約があった身だ。

そういった国を背負う立場の人間にとってそういうことはいずれは起こりうる出来事だったはずだ。

国をより纏め上げる上で必要なことだ。

カガリ、君はオーブの平和と婚約、どちらを選ぶんだ?」

 

『そんなもの国の平和に決まっているだろう!』

 

「ならばこそ!国の中にいて動く必要があったんだ!それをお前は!」

 

『ならカガリの気持ちはどうなるんだ!?』

 

 

ここで再びキラが乱入する。

 

 

「何も捨てることができない奴に、何かを守ることなんてできないんだよ!

かつてのプラントやオーブの代表だってそうだ。

ずっと何かを犠牲にして、自分たちの国を守ってきてるんだよ!

自分が綺麗なままで何かを救えるだなんて、ただの夢でしかない!

そんな夢をかなえるまで国民はどうする?待てばいいのか?」

 

 

父上だって…、パトリック・ザラだってそうだ。

プラントのより良い発展の為に、俺や母上よりも仕事を選んだ。

そうしなければプラントは衰退するからだ。

 

今のオーブだってきっとそうだ。

国民の安全という重いものを背負っているからこそ、理念を捨ててまで勢力の大きな大西洋連邦の傘下に入っている。

それを『悪』だとは、俺は思わない。

どんな代表者だって自分の下にいる人を救うことが何よりの願いだからだ。

 

結果的にはオーブはプラントにとっての敵になってはいるが、それは【ロゴス】という裏で糸を引くものがいるからだ。

 

 

『だけど、君の言うことも分かるけど…。

でも、僕たちはオーブが争いに巻き込まれるのを抑えるためにここにいるんだ。

カガリだってこんなことになるのが嫌で、泣いていたんだ!

君だって、カガリが泣くことを望んでいないはずだ!なら道を———!』

 

 

そうキラは俺を押し通ろうとする。

 

 

「俺はザフトの軍人だ。

俺だって何かを犠牲にしてここにいるんだ!

ミネルバを守るために、俺はお前に負けるわけにはいかないんだ!」

 

 

俺はSEEDを発動し、キラを迎え撃つ。

カガリは俺たちを止めようとしてはいるが、止められずにいた。

 

 

 

SIDE シン

 

 

アークエンジェルが現れ、アスランがそちらに向かい、フリーダムの相手をしている中、ミネルバ付近で俺たちはオーブ、地球軍の接近を防いでいた。

 

 

「でぇぇい!」

 

 

ミサイル、レール砲、ケルベロスビーム砲などの火砲をフルに活かし、地球軍のダガーやウィンダム、オーブ軍のアストレイやムラサメを落としていった。

 

 

『シン、カオスとピンク色のウィンダムが来てるわ!

カオスはイチカが押さえてるけど、ウィンダムの方をお願い!』

 

 

と、ルナに通信を送られ、俺はインパルスをフォースへと換装させ、一機だけ色の違うウィンダムを落としに向かった。

 

 

「はぁぁ!」

 

 

ウィンダムにビームライフルを放つが、それを躱され、ビームサーベルで切りかかってきた。

それを機動防盾で防ぐと、同時に接触回線で通信が入って来る。

 

 

『全く、やってくれるね、ザフトのエース君は!

ステラとアウルは君たちが連れて行ったんだろう?』

 

 

コイツ、ステラたちのことを知ってるのか?

ということは、この男がファントムペインの隊長でステラたちが【ネオ】って呼んでいる奴か。

 

 

「そうだが、それがどうしたんだよ!

兵器としか見ていないお前たちの所にいるよりもマシだと俺は思うけどな!」

 

『何をバカな!

ステラたちのことは大切な存在だと思っているさ!』

 

「なら、なんでパイロットとして戦わせてるんだよ!

ステラの気持ちを知っているんだろう!?

彼女は死ぬのが怖いと震えていたんだ!

なのに、死と隣り合わせのMSに乗せて、それで大切だと!?ふざけるな!」

 

『なら君がステラを守るっていうのか?』

 

 

そんなのとっくに決まってるさ。

 

 

「当り前だ!

彼女を戦争の無い暖かな世界へと連れて行って見せる!

そのために俺は、一刻も早く戦争を終わらせるんだぁぁぁ!!」

 

 

ステラを守りたい、そう強く願った俺の中で種が割れた気がした。

あの時の地球軍の大隊を相手にしたときと同じような感覚だった。

 

 

今ならコイツの、インパルスの力を発揮できる!

 

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

 

競り合っていた俺とウィンダムの拮抗を打開するため、俺はスラスターの出力を落とす。

そうすることでシールドをはじかれ、無防備になってしまう。

 

 

『終わったぞ、ザフトのエース君!』

 

「甘い!」

 

 

俺はインパルスのドッキングを解除し、胴体と下半身を分けることでウィンダムのビームサーベルを躱す。

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

 

ビームサーベルを躱した俺は、ビームライフルでコクピット後部をロックオンした。

けど、曲がりなりにもステラを思っていたコイツを殺すことは、ステラにとって辛いことかもしれない、と思い、俺はウィンダムの高機動型用バックパックのスラスターを撃ち抜き、飛行できないようにし近くの敵機へ蹴り飛ばした。

 

 

「メイリン、ソードシルエット!

敵母艦への攻撃を開始する!

マユ、対艦攻撃の援護を頼む!」

 

『は、はい!』

 

『分かったよ!』

 

 

俺はシルエットフライヤーがこっちへ飛んでくるまでに敵母艦へ接近し、迎撃部隊の数を減らしていた。

マユも援護に向かってきて、艦の護衛を行っていたムラサメやアストレイを落としていく。

 

 

『クソッ、もうやめろ!!』

 

『フリーダム!?』

 

 

アスランが足止めしていた筈のフリーダムがこちらへ来ていた。

じゃあ、アスランは!?

アスランは金色のムラサメとそれにあれは…ストライク!?その二機のMSを相手にしていた。

 

 

『お兄ちゃん、行って!あれは私が抑えるから!』

 

「ありがとう、マユ!」

 

 

俺はソードへ換装して一番近いイージス艦へと着地する。

迎撃を行おうと、艦上の機関砲がインパルスを撃つが全く効いていない。

 

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

 

俺は対艦刀エクスカリバーを艦砲部分に突き刺し、攻撃が止んだことを確認したら次の艦を無力化しに向かった。

次も同じように艦砲を切り、切り、切り、一際大きな護衛艦タケミカズチへ飛び乗ると、そのブリッジに俺の見覚えのあるオーブ士官がいた。

 

 

「貴方は、トダカさん?」

 

『君は、シン・アスカか。

やはりパイロットになっていたのだな。

なら君の家族も?』

 

「はい、貴方のお陰で俺たちは無事、プラントへ渡ることができました」

 

『…そうか。

なら、最後に私を撃て。

この艦の指揮官は私だ。

それで、この戦闘においてのオーブ軍は負けを認めることだろう』

 

「な、何を!」

 

『私は、間違っていると分かっていながら、ミネルバへの攻撃指示を出した。

だからこそ、せめてもの償いを——「ふざけるな!あんたにはまだやれることがあるはずだろ!」―――――やること?』

 

「間違っているって分かるのならそれを正すことだってできるんだ!

オーブを変えることができるのはきっと、あなた達みたいな人なんだよ!

だから、こんなところで終わろうとしたらいけないんだ!」

 

 

あの日、家族を失って途方に暮れた俺たちに新たな道を示してくれたその人が、こんなところで諦めるなんて…。

なら、俺があなたに新たな道を示すんだ!あの時みたいに!

 

 

『…そうか。

まだ、子供だろうと思っていた私が愚かだったということか…。

ならば、私も動こう。

君の言うやれることを私も探してみるとするさ』

 

 

そう言って、トダカさんは通信を切った。

俺はタケミカズチの主砲を破壊し撤退した。

 

 

 




ちょっと今回はイチカ空気でしたが、次回、
イチカとスティング。マユとキラ。アスランと金ピカ&ストライク。
を書こうと思います。


あと、今回のアスランの訴え如何だったでしょうか?
若干、私の考えも入っておりますが、変だったなら申し訳ありません


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向かい合う敵

SIDE イチカ

 

 

俺はマユが後退した後、ミネルバへ向けて進攻してくる敵MSを相手にしていた。

 

マユがこっちへ戻ってきた後も敵の勢いは止まず、MS部隊がどんどん押し寄せてきた。

そのMS部隊の中にカオスと色の違うウィンダムを確認したが、ウィンダムは迂回してミネルバへ向かっていった。

俺とマユは数の多い方を受け持ち、残りをシンたちに任せ、カオス率いるMS部隊を相手にした。

 

 

「カオス、ならあいつがスティングか!」

 

 

俺はカオスにビームライフルを放つがMA形態のカオスの機動力により難なく躱された。

カオスは脚部ビームクローを展開し、すれ違いざま俺に切りかかってきた。

大気圏内での戦闘のため、カオスのバックパックのポッドは外せないため、武装の数は少なくなってるけど、ガイアやアビスと違って、脚にも武装があるから油断ができない。

 

俺はジャスティスのリフターを切り離し、その上に飛び乗り、カオスを追いかける。

 

このままじゃ埒が明かないな…!高機動型の足を止めるには宇宙ならデブリが使えるけどそんなものこんな海には無いからな…。

俺はビームブーメランを左右へ投げ、少しでも逃げ道を塞ごうとした。

幸い、それを回避するためにカオスは下降し、海へ向かったため、俺は海面に向けてビームライフル、バラエーナプラズマ収束ビーム砲を放ち、目くらましのための水しぶきを巻き上げた。

そのまま俺はカオスを追いかけるようにリフターから飛び降り、カオスの機動兵装ポッドをデファイアントビームジャベリンで切り裂いた。

 

これにより、カオスの高機動は封じることができたので、俺はそのままカオスを海へ蹴り落とし、リフターに乗り他のMSを落としに行った。

 

 

SIDE アスラン

 

 

時間稼ぎという意味ではある意味成功なのだが、俺はフリーダムを落とせないことに少し、焦りを抱いていた。

 

向こうは核エンジンを搭載していることでほぼ無尽蔵に戦えるのに対し、こちらはエネルギーの残量が残り三割を切っていた。

カガリのストライクはキラにここを任せたと確認したら、オーブ艦隊の方へ向かっていった。

が、途中でオーブ軍に足止めをされていた。

 

機体のエネルギーが尽きてしまえば、それこそフリーダムに落とされてしまう。

それまでに何としても戦況がこちらへ傾いて欲しいものだ。

 

しかし、そんな願いは叶わず、こちらに対してアークエンジェル方面から攻撃が飛んできた。

 

 

「!?」

 

 

咄嗟に躱すことはできたが、その隙にフリーダムが俺を抜け、敵艦を襲撃しようとしているインパルスの方へ向かっていった。

フリーダムを追尾しようとしたが、そこに二本のビームが降り注ぐ。

 

 

「援軍だとっ!?

このままだと、キラが…!」

 

 

アークエンジェルから増援で向かってきたのは、黄金のムラサメとストライクだった。

 

 

「ストライクだと?

あの機体は確か、ヤキンでの戦いで大破したと聞いていたが、アークエンジェルが回収したのか?

だが、身を隠していたアークエンジェルがあそこまで復元させられるはずがない…。

ええいっ!!」

 

 

俺はビームサーベルを抜き、ムラサメに切りかかる。

しかし、それはシールドで防がれてしまう。

 

 

『やるねぇ、流石は元ジャスティスのパイロットなだけはあるな?』

 

「その声、バルトフェルド隊長!?

何故、ここに!?

いや、そもそもなんで貴方の様な指揮官がいながら、キラやカガリを止めなかったんですか!?」

 

『ん~?

それはねぇ~『敵に余計なことを喋るな、バルトフェルド』おぉっと、怖い怖い。

まあ、強いて言うならこれは前々から計画していたことってことかな?』

 

「それはどういう――クソッ!」

 

 

バルトフェルド隊長が敵に回っていたとは予想外だった。

仮にも部隊の指揮官を任されていたほどの人が、このような無謀な戦いに手を貸すとは…。

しかし、もう一人の声は一体?

機械音声だったから分からなかったが、ストライクを扱えるパイロットが今までのアークエンジェルにいたとは思えない。

 

それに、前々からの計画と言っていたが、それはこの戦いへの介入事態だとは思えない。

もっと、別の何かを行おうとしているようにも、取れる。

 

 

しかし、それ以上考えることを許さないかのように、ストライクから攻撃が飛んでくる。

ストライクはインパルスの様にバックパックを自在に変えて戦う機体だが、このストライクは三種類のバックパック複合の【パーフェクトストライク】と呼ばれる装備だった。

フリーダムの様な高火力を有していながら、対艦刀やブーメラン、しかも高機動パックを装備していた。

 

 

「くそっ、こんな伏兵が用意されていたとは…!」

 

 

俺はシンが敵旗艦を落としてくれることを願って、この二機を相手にしていた。

残るエネルギーは二割…、シン頼んだぞ…!

 

 

 

SIDE マユ

 

 

お兄ちゃんがオーブ艦隊への攻撃を開始するとき、フリーダムがそれを阻止しようとこちらへ飛んでくるのが見えました。

 

私はお兄ちゃんの攻撃の邪魔をさせないため、フリーダムを相手に戦い始めました。

 

 

「また、あなたですか!」

 

『くっ、退いてくれ!

その機体じゃ、フリーダムには!』

 

 

ビームサーベル二本を使って切りかかって来るフリーダムをシールドで一本防ぎ、もう片方をビームサーベルを持つ腕を掴み、防ぎました。

 

 

「お兄ちゃんの邪魔はさせません!

…貴方は、私が止めます!」

 

『ぐっ、退いてくれ!!』

 

 

フリーダムが腰のレール砲を放って、私を無理矢理引きはがしました。

衝撃で一瞬、吐きそうになりましたが、フリーダムを追いかけます。

 

 

「逃がしません!貴方を止める…、何があっても!!」

 

 

私の中で前の戦闘のときみたいに何かが割れる感じがして、頭が一気にクリアになりました。

私は、フリーダムの動きを止めるべく、死角から一気に詰め寄り、ビームサーベルで切りかかりました。

 

 

「はぁぁ!!」

 

『ッッ!』

 

 

しかし、それを読んでいたかのようにフリーダムは躱し、代わりにこちらの腕を持っていかれました。

 

 

「強い...!

けど、片腕が無くても...!!」

 

 

シールドを投げ、そこにビームライフルを撃つことで反射させ、フリーダムの肩の装甲を削る事に成功しました。

 

さらに、少しでも時間を稼ごうとバラエーナプラズマ収束ビーム砲を連射で放ち、足止めを行います。

しかし、フリーダムはそれを難なく躱し、私に切りかかってきました。

片腕を失ってシールドのみで防ぐしか無かったので、私は2本のビームサーベルを防ぎ切ることが出来ず、もう片方の腕、足を切られ、成す術なく落とされてしまいました。

 

 

『その力は危険なんだ。

だから、ごめん、落とさせてもらうよ』

 

 

最後にフリーダムのパイロットはそう言ってきました。

 

どの口がそんな事を...!

私はそう思わずにいられませんでした。

 

条約違反の核エンジンを搭載した機体。

そんなものを持ち出しておいて危険なのはこっち?

 

けど、私にはどうすることも出来ずただ、海へ落ちていきました。

 

 

最後にかろうじで見えたのは敵の母艦を落とすインパルスの姿でした。

お兄ちゃん、やったんだね...。

 

作戦は成功しました、けど大事な機体を失ってしまい、私は帰艦するお兄ちゃんに拾ってもらい、ミネルバへと戻りました。

 

 




一応、グダグダになりますが、ダーダネルス辺りはここで終わります。

賛否両論になると思いますが、次の章で、1度種死編を中断するかもしれません


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刹那の思い

SIDE イチカ

 

 

ミネルバがジブラルタルへ向かう途中、以前議長に言われていた連合のエクステンデッド【アウル・ニーダ】の処遇について、連合へ引き渡すことでその命を繋いでもらう、ということになり、俺はグラディス艦長へ申し出た。

 

 

「つまり、彼を連合の元いた部隊へと送り帰す。

そう言うことで良いのね?」

 

「はい。

シンが保護したステラとアウルの二人の内、一人は治療を行うことが可能ですが、もう一人は今の設備では余裕がないということで二人を生かすために、俺は地球軍と接触しようと思います」

 

「そう…。

議長の賛同を得られているのであれば私からは何も言わないわ。

でも、危険が伴うのではないの?

こちらがいくら貴方一人で行くと告げても向こうが部隊を展開していたら、それこそ貴方が捕まる可能性だってあるのよ?」

 

「その危険もあるでしょう。

でも、下手に数を連れて刺激する方が却って危険だと自分は思います」

 

 

グラディス艦長は少し悩むと、

 

 

「いいわ、許可します。

向こうへの連絡はアビスの識別コードで通信を送るというので良いわね?」

 

「はい。

許可していただき、ありがとうございます」

 

「良いのよ。

でも、必ず戻りなさい」

 

 

俺はアウルを連れていくため、病室へと向かった。

医務官には事情をあらかじめ説明してあったので、連れ出す際の補助をしてくれて助かった。

 

 

「識別コード、ヴィーノ送っておいてくれたのか。

あいつ等にもお礼を言わないとな…」

 

 

俺は機体を発進させ、アビスのコードで地球軍に連絡を取る。

 

 

【こちらはザフト、ミネルバ所属の者だ。

アウル・ニーダを保護している。

彼の身柄をそちらへ引き渡したい。

そちらの部隊の指揮官一人で来てほしい。

場所は――――】

 

 

といった通信を送り、指定した場所で待つ。

途中、アウルが眼を覚ました。

 

 

「あれ…僕…?」

 

「起きたのか、アウル」

 

「母さん…?」

 

「俺は、お前の母親じゃないよ。

ってか、俺男だし性別違うからな?」

 

 

アウルの眼はまだ虚ろというか、しっかりと前を見れていない感じだった。

 

 

「僕、どうなるの…?」

 

「大丈夫だよ、お前はこれから家へ帰れるんだ」

 

「家?母さん、待ってるかな…?」

 

「きっと、待っててくれてるよ。

だから、それまで寝てていいんだぞ?」

 

「ああ、ありがとう、イチカ……」

 

 

そう言って、アウルはまた眠りについた。

再会したときは俺のことを覚えていないようだったけど、記憶操作の暗示が解けかけてるってことなのか?

 

 

指定したポイントへたどり着いた俺は、機体のシステムを警戒モードで起動し、向こうの接触を待っていた。

すると、接近する機影を一機確認し、確認すると色の違うウィンダムだった。

ウィンダムは俺の機体から離れた所へ着陸し、コクピットを開くと、仮面の男が機体から降りてきた。

 

俺もアウルを抱え、そのまま機体を降りる。

 

 

「アウル…」

 

 

仮面の男は俺が背負っているアウルを見ると、そうつぶやく。

 

 

「こいつを死なせたくないから帰すんです。

だからこそ、約束してください。

こいつを、ちゃんと家族のいる暖かい生活を送れる場所へ帰すって!」

 

「…家族のいる、というのは承諾しかねる。

アウルの親は既にこの世には存在しない。

だが、暖かい生活を送らせる、ということは何とかしてあげよう」

 

 

親がいない…そういう意味では俺もアウルも似ていたのか…。

 

 

「…あ……ネオ?」

 

「目が覚めたのか、アウル」

 

「僕…」

 

「今は話さなくても大丈夫だ。

それと、ザフトの兵士君。

アウルに最後何かを言ってやってくれるか?」

 

「…わかりました。

アウル、ちゃんと治して来いよ?

そしてちゃんと平和なとこで暮らすんだぞ?

そしたらまた、バスケなんかやろうぜ」

 

「イチカ…、おう、そうだな」

 

 

それだけ言うと、俺は機体へ戻りシステムを通常モードへ移行してこの場を離れた。

 

これであいつと二度と会えなくなったとしても、これが正しい選択だったはずだ…。

 

俺はそう強く思うとミネルバへの帰還の道を一気に駆け抜けた。

 

 

 

NO SIDE

 

 

薄暗い部屋。

一人の青年が俯き、悩んでいた。

 

 

「アスラン…どうして、君は…?」

 

「いつまで悩んでいる、スーパーコーディネイター」

 

「そんな風に呼ばないでくれ!」

 

「アスラン・ザラは敵になった、それだけだろう?

今までも敵として戦っていたことがあったんだろ?

なら、元に戻っただけじゃないのか?」

 

「ッ!違うッ!そんなことない!

いくら君が、ラクスの認めた人だからと言っても、それ以上は――!」

 

 

そう、怒りながら振り向く青年。

しかし、少年はその青年の眉間に銃を突きつけた。

 

 

「それ以上は、何だ?

敵であるなら撃つ、それだけの筈だ。

ラクスの敵になるというのなら猶更な」

 

「…でも、アスランは」

 

「やれやれ、ラクスが知れば嘆くだろうな…。

自分の騎士がかつての友と戦場で銃を向け合うだけでこうもヘタレるなんて」

 

 

と、皮肉気に少年は青年にそう言った。

 

 

「それで、君は一体なんの用でここに来たっていうのさ?」

 

「地球軍の部隊がベルリンで展開しているそうだ。

こちらの補給が終わりしだい、殲滅に向かうぞ」

 

「殲滅じゃない…。

だって、僕は誰も殺してなんか…!」

 

「ミゲル・アイマン、ニコル・アマルフィ、ラウ・ル・クルーゼ」

 

「!?」

 

「そして、フレイ・アルスター。

皆、お前が関わって死んだ人なんだろう?

何が不殺だ。お前は十分に人殺しだろう?」

 

「違うっ!僕は!」

 

 

そう、否定する青年に少年は暗示を掛けるかのように、つぶやく。

 

 

「お前は人殺しだ。

それはお前自身が良く分かっているはずだ。

認めろ、スーパーコーディネイター。

お前の価値は戦いの中でこそ見出されると。

ラクスだってそれを望んでいるさ」

 

「――ラクスも…?」

 

「ああ、今もお前の為に新しい剣を用意してくれてるだろう。

だからこそ、お前はその為にも自身の力を見せつけるんだ。

それがラクスの為にもなる」

 

「僕の…力が、ラクスの…?」

 

「ああ。

だから、次こそは殺せ。アスラン・ザラを、群がる敵を」

 

 

青年の眼から光が消えていくように見えた。

そして、青年はポツリポツリとつぶやく。

 

 

「アスランを…、敵を…殺す…。

それが…ラクスの為に……」

 

 

少年は部屋を出て、自分に割り当てられた部屋へ向かう。

 

 

「お前にとってのラクスが、今のお前を見たらどう思うのだろうな?キラ・ヤマト。

そして、向こうでもこちらでも、漸く動くことができる。

織斑一夏…お前の存在を潰すことで、俺の俺たちの存在意義が証明される」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

地球連合軍の基地にて。

ネオ・ロアノークは一人の少年をベッドに運ぶ。

 

 

「?おい、ネオ、何だよコイツは?」

 

「お前の兄弟さ、スティング」

 

「兄弟?俺にそんなのいたのか?」

 

 

緑色の髪の青年【スティング・オークレー】は運ばれている衰弱した少年を見てそう言った。

 

 

「それでネオ?

コイツ連れて帰ったけどどうするんだ?」

 

「何、当てはあるさ。

確か、この基地にロールアウトされた新型があったな。

それに彼を乗せるのさ」

 

「な!?あれは俺にって言ってただろ!?」

 

「スティング、安心しろ。

お前の機体もちゃんと準備が進められている。

だから、きちんと帰って来るんだぞ?」

 

「ああ、任せとけって」

 

 

そして、運ばれた少年はカプセルベッドの中に放り込まれる。

 

 

「ロアノーク大佐。

どのように処置を施しますか?」

 

「ふむ。

では、ここ最近の記憶の消去。並びに、ロドニアに向かって見た光景を私が言うとおりに調整できるか?

内容は――――」

 

 

そう言われ、研究員は装置を操作し、ベッドを起動した。

 

 

「さあ、目覚めたら今度こそ、暖かい世界の為に戦おうな、アウル」

 




これで次回からベルリンでの戦闘に持っていけそう…な気がします。

そしたらそろそろあっちの世界での物語を進めてもいいかなって思います。


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イチカの戦い

NO SIDE

 

吹雪荒れているベルリンの大地。

地球連合軍の母艦【ボナパルト】にて一機の巨大なMAに一人のパイロットが搭乗した。

 

 

『GFAS-X1 デストロイ、スタンバイ』

 

 

そう、管制官の声を聞き、パイロットはシステムを立ち上げ、発進可能な状態にする。

 

 

『いいか?お前は最前線へと向かい、迎撃部隊や歯向かう者全てを焼き尽くすんだぞ?

そうすることでザフトに殺されたお前の母親も喜んでくれるさ。

頼んだぞ、アウル』

 

 

と、ネオ・ロアノークは荒唐無稽な嘘を述べる。

しかし、デストロイの搭乗者【アウル・ニーダ】にはそれが真実だと思わせられるように記憶を操作されていた。

 

 

「ザフト……お前たちがっ、母さんを…!!」

 

 

悲痛な呻き声をあげると、アウルは機体を母艦より発進させた。

破壊の名を持つ機体が今、蹂躙を開始する。

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

俺たちミネルバクルーは今、補給と修理を終え、ジブラルタルへ向かう前にベルリンへ向かっている。

理由は、地球軍の大規模侵攻がベルリンへ向けて行われており、現地のザフト守備軍では対応が間に合わなくなっているからだ。

 

しかし、こちらも前回の戦闘でマユ、レイ、ルナの機体を失っており、今は俺とシンとアスランの機体のみという戦力不足が否めない状況になっていた。

 

 

「今回の貴方たちの作戦内容は可能な限りの時間稼ぎよ。

現在、現地民の人たちが避難している途中なのだけど、未だその作業が滞っているわ。

だから、レイたちにもその作業の手伝いをしてもらう間、MSが無事なあなた達がなるべく敵の意識を空へ向けてちょうだい。

それと、現地の情報を見るに、巨大なMAが戦場に現れたらしいわ。

その大きさは我々が今までに見たサイズのMAとは比べ物にならないものよ」

 

 

そう言いながら、艦長はその敵の外見の分かる映像を見せた。

 

 

「ちょ、ちょっと、これってデカすぎない!?」

 

「ああ、おおよそMS三機分ほどだろうな」

 

「こんなのが今、ベルリンで暴れてるんですよね…」

 

 

ルナ、レイ、マユがそう機体の姿を見て話した。

 

 

「どうする、アスラン?」

 

「恐らく生半可な攻撃では通らないだろうな。

かと言って、インパルスの装備をソードやブラストにしたとしても、それでは機動力が損なわれて却って的になるだろう」

 

「なら、やっぱりフォースシルエットとセイバー、ジャスティスによる高機動での攪乱が一番ってことか」

 

「グラディス艦長、敵の装備に関して分かることはありますか?」

 

 

出撃する俺たち三人は如何に敵に仕掛けるかを練っていた。

アスランは武装の情報も欲しいので艦長に情報を仰ぐ。

 

 

「そうね。

今のところは、左右2門計4門の高出力のビーム砲と、敵のフライトユニットの円周上に配置されているビーム砲とミサイルランチャーが確認されているわ。

後は、実際のものを見ないと分からないわね」

 

「分かりました。

なら、俺たちはベルリン付近で出撃。

状況に応じて接近して攻撃だが、飽くまでこちらの目的は陽動だ。

それに他にも敵は大勢いるだろう。

そちらへの注意も忘れるな」

 

「「はい」」

 

 

ミネルバはベルリンを目指し突き進んでいった。

すると、徐々に周りが雪の大地に変わっていき、さらに進むと、雪の大地が惨状と化していた。

俺の世界でもベルリンという街はあった。

ISの世界大会【モンド・グロッソ】を行うための巨大な競技場。

そういう有名な建造物があるほどに大きな都市だった。

けれど、そんな感じを一切見せないほど、この街は廃墟と化していた。

倒壊した建物、燃え上がる炎、そして奥に巨大なMSが見えた。

 

 

「何で、何でこんなことを!」

 

『イチカ、シン、発進するぞ。

残存戦力も危うくなっている。

アスラン・ザラ、セイバー、発進する!』

 

『了解!

シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!』

 

「イチカ・オリムラ、フェイク・ジャスティス、発進する!」

 

 

俺たちは巨大なMSの侵攻を止めるべく、向かっていった。

 

 

『三人とも聞いて。

別方向にアークエンジェルの姿が確認されたわ。

恐らく、フリーダムも既に戦場にいると思われるわ。

向こうもやるべきことは分かっていると思うけれど、充分に注意して!』

 

 

艦長にそう言われ、俺たちは了解の意を示した。

 

 

「どうする、アスラン?

また前みたいに邪魔をしてくる可能性もあるけど」

 

『やることは変わらない。

俺たちは都市の人を安全に避難させられるように動くだけだ。

しかし、向こうの出方次第では、攻撃するようにしてくれ』

 

『あいつ等、またここで暴れるつもりなのかよ!』

 

「…まずは敵の火砲を破壊した方がいいかもしれない。

そうじゃないと避難どころじゃないぞ」

 

 

俺は巨大なMSにバラエーナプラズマ収束ビーム砲を放つ。

しかし、それはビームシールドに阻まれ、弾かれてしまった。

 

 

「嘘だろ!?

あの巨体をビームシールドで覆ってるのか!?」

 

『不味いな、それではこちらの装備は効かないようなものだぞ』

 

『アスラン!避けろ!』

 

 

アスランのセイバーへビームが降り注ぐ。

アスランはそれをシールドで防ぎ、被弾は免れた。

セイバーへ攻撃を行った機体を確認すると、それはフリーダムだった。

 

 

「あいつ、また邪魔を!!」

 

『フリーダムは俺が止める。

シン、イチカ、そちらは任せる』

 

「了解!」『ああ!』

 

 

アスランはフリーダムへ、俺たちは地球軍の部隊へそれぞれ機体を向けた。

 

 

 

 

SIDE アスラン

 

 

アークエンジェルが来ているという知らせがあったから、お前はここにいるんだろうという予感はしていたさ、キラ。

だが、何故このタイミングで俺を撃つ?

今、最優先事項はあの巨大な機体から街を守ることだろう?

 

しかし、俺の声はあの戦いでも分かったが、キラには届いていないのだろう。

 

ならば、墜としてでも帰らせるしかない!

それにキラ一人に時間を割くわけにはいかない。

一気に決めなくては!

 

俺はビームライフルをフリーダムへ向けて放つ。

同じようにフリーダムも俺を狙ってビームライフルを撃って来る。

 

それを回避したとき、違和感を感じた。

 

 

何だ?いつものキラの戦闘と何かが違う…。

一体、何だ?

その違和感を抱いたまま接近するのは不味いと判断し、俺は一旦距離を取る。

 

すると、俺やフリーダムを撃つために、地球軍のMSが数機こっちへ接近していた。

 

俺は自分に向かってくる機体をビームサーベルで切り抜け、更にビームライフルで後ろから撃つ。

 

そして俺はキラへ抱いていた違和感の正体を知った。

 

 

 

フリーダムが、キラが、敵機体のコクピットめがけてビームサーベルを突き刺していた。

これまで、キラと共に戦ってきたことは何度もあった。

しかし、その時には決まって武装やメインカメラなどを破壊する【不殺】の方法をとっていた。

それが今のアイツはどうだ?

フリーダムめがけて攻撃を仕掛けるウィンダムのすべてにコクピットへの攻撃を行っていた。

 

アイツに一体、何があったというんだ……!

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

クソッ、大きいだけには留まらず、この火力…!

これでは全然近づくことも出来ないぞ!

 

 

「何で、こんなことを平然としてるんだよっ!

何で、お前たちは…!!」

 

『イチカ、ウィンダムの隊長機がそっちへ行ってるぞ!』

 

「!分かった!」

 

 

ネオ・ロアノーク…、お前たちは一体、何をしたいんだよ!

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

 

ウィンダムめがけてデファイアントビームジャベリンを振るう。

それはシールドで止められ、向こうもビームサーベルを振るってきたので、それをシールドで受け止めた。

 

 

「貴方たちは、一体何の目的でこんな大量虐殺を行っているんだ!ネオ・ロアノーク!!」

 

『君か、ザフトの兵士君。

強いて言うなら、アレはアイツの意思だよ。

家族を、ザフトに奪われたアウルの、ね?』

 

「アウル…だと!?

アレに乗っているのがアウルと、貴方はそう言ったのか!?」

 

『ああ、そうだ。

アレに乗っているのは君が俺に引き渡したアウル・ニーダ、本人だ』

 

「…何をしたんだ…!

アイツに!一体、何を!!」

 

『何、衰弱しかけていたからね、少し調整したに過ぎないさ。

後、記憶も弄ったな。

家族を母親を殺したのはザフトだっていう記憶を、な』

 

 

何だよ、それ…?

どこまで、あなた達は…、お前らは腐ってるんだ!!

 

 

「クソッ!!」

 

 

俺はウィンダムを蹴り飛ばし、アウルが乗っているMSに急接近する。

 

 

「アウル!俺だ!

イチカだ!聞こえたら返事をしてくれ!!」

 

『…す。

……殺す。

ザフトを…!母さんを殺した奴を!!』

 

 

アウルのそんな狂気染みた声が聞こえた。

それと同時にMSの手が外れ、無線誘導兵器となり、俺にビームを放ってきた。

 

 

『イチカ!近づきすぎてる!一旦、離れないと!!』

 

「シン、あれにアウルが乗ってるんだ!」

 

『アウルが!?

…くそっ、連合の奴ら、いつまでこんなことを!』

 

 

カオスが俺を落とそうと接近してくる。

それを俺はシールドで受け止める。

 

 

『見つけたぜぇ!この前の借りそのまま返してやるよ!!』

 

「スティング…!

お前、アウルにあんな事させて、何も思わないのか!?」

 

『ああ?アウルって誰の事だよ?

それより、あんな機体があるんだったら俺に乗せろよな、ネオの奴…』

 

「な、何だよ、それ?

お前も、そんなに人殺しをしたいのか?」

 

『あ?決まってんだろ?

あんなでっかいので引き金を引けば、それだけでたくさんの機体をぶっ潰せるんだぜ?

最高に決まってるだろうが!!』

 

 

 

スティングも、以前、出会った時のような雰囲気ではなく、人殺しを楽しむような性格に変貌していた。

調整を繰り返して、人を殺すことを快楽のように思わせるなんて…。

 

 

「ふざけるなァァァァァ!!!」

 

 

俺の中で種が割れる。

シールドに力をこめて、カオスを吹き飛ばし、横から蹴りとばす

 

 

『何だよ、コイツ、急に!?』

 

「お前が、お前たちが調整されて作られた兵士だっていうのは分かるさ!

でもっ!それでもっ、戦争で人を撃つことを喜んでいるなんて、間違ってる!

だから、俺がっ!!」

 

 

俺はデファイアントビームジャベリンを抜き、カオスのコクピットに突き刺す。

 

 

「お前たちみたいなのが二度と作られない様に、戦うからさ…。

だから、ゆっくりと眠っててくれ、スティング」

 

『……ああ、お前に任せたぜ、イチカ。

これで俺も夢を見られるかな?』

 

「見れるさ、平和な世界の夢を、な」

 

『それは、楽しみだ…』

 

 

カオスが落下し、爆発する。

悲しんでなんかいられない。

まだ止めるべき相手がいるんだから、俺は戦う!

 




なんか、エクステンデッド組が悲惨に思えてきた…

それとネオがとってもクズくなってる気がします・・・。
次回、デストロイを止めるための戦いの続きです。


それと、ISアーキタイプブレイカー始まりましたね。
皆さん、どんな具合でしょうか、ガチャは?
自分はISカードは貰えるのを含めると星5は4枚です。



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新なる敵

SIDE イチカ

 

 

俺はアウルを止めるべく、巨大なMSに向かい攻撃を開始した。

接近し、無線誘導兵器の手をデファイアントビームジャベリンで切り裂き、そのまま背中のフライトユニットにある巨大なビーム砲塔を両断する。

 

 

「アウル!

聞いてくれ、アウル!!」

 

 

俺はアウルが聞いてくれるのを信じ、呼びかけ続けた。

しかし、それを邪魔するかの様にウィンダムが突撃を仕掛けてくる。

 

 

『あの機体はやらせん!』

 

「邪魔をするな!!」

 

 

ビームブーメランを投げ、腕を切断し、飛んでこれない様にバックパックをCIWSで破壊する。

 

 

『何ッ!?うあぁぁぁ!』

 

「俺は、アンタを信じてアウルを帰したんだ。

なのに…!」

 

 

ウィンダムがベルリンの大地に落ちたのを確認すると、再び巨大MSを止めるべく、俺は攻撃を開始した。

しかし、そこへビーム砲が飛んでくる。

 

 

「今度は何だ!?」

 

 

飛んできた方角を確認すると、そこにはアスランが前の戦場で戦っていたストライクがいた。

ストライクは対艦刀を振りかざし、こっちへ切りかかって来る。

アウルを止めないといけないのにっ!

 

 

SIDE アスラン

 

 

キラの行動に驚いたが、俺は機をうかがい、フリーダムにアムフォルタスプラズマ収束ビーム砲で攻撃を行う。

しかし、それをフリーダムはこちらを見ずに宙返りすることで躱し、そのままこっちへ斬りかかってきた。

 

 

「何だ、この動きは!?」

 

 

今までのキラとは違うと分かってはいたが、その動きに俺は驚き気づいたときにはセイバーの右腕を切られていた。

 

 

「しまった!?」

 

 

追い撃ちを掛けようと、フリーダムはこちらへビームサーベルを振るってくる。

それにより頭部が破壊され、いよいよこっちの後が無くなってきていた。

 

 

「仕方ない…か。

すまない、セイバー。

お前をイージスと同じように扱ってしまう…」

 

 

俺は、セイバーの残った片腕でフリーダムの腕を掴み、脚で胴体にしがみつく。

そして、コクピットハッチを開き、脱出の準備を整えて自爆用のキーを入力する。

 

これは俺がかつてキラと戦った時に乗っていたMS【イージス】で行った戦法だった。

それによりかなりの怪我を俺は負ってしまったのだが、今は怪我なんて考えてられないと思い、セイバーから飛び降りる。

20カウントで自爆するようにセットしたので間もなく爆発するだろう。

俺はパイロットスーツに取り付けられている非常用スラスターを使って着地する。

 

カウントが0になり、セイバーが自爆し、その爆風でフリーダムは吹き飛ばされる。

これで、少しでも被弾してくれればいいのだが、と俺は淡い希望を抱いていたが、現実はそう甘くは無かった。

他のMSなら可能性はあったが、フリーダムは装甲もかなりの強度で大した損傷を負っていなかった。

 

フリーダムは別の戦闘空域へ飛んでいったが、俺はアイツに、キラに何があったのか分からないでいた。

 

 

SIDE シン

 

 

ウィンダム部隊を撃墜し、巨大MSを止めようと思いそちらへ機体を向けた。

イチカはアークエンジェル部隊のストライクと戦っていたので俺がやるしかないと思い、アウルを止めるため巨大MSに接近した。

 

 

「アウル!お前、なんでこんなことしてるんだよ!」

 

『ザフトを…!母さんを殺したザフトを…!!』

 

 

そう、アウルは呻いていた。

俺が、フリーダムが父さんたちを撃った時からつい最近まで抱いていた憎しみの気持ちに似ていた。

だからこそ、俺はアイツの苦しみを解放してやりたいと思った。

 

 

「イチカ、あいつを楽にしてやってもいいか?」

 

 

戦闘中だと分かっていたが、俺はイチカに確認をとる。

 

 

『シン!?それってつまり…!』

 

「ああ。

アイツを楽にしてやりたいんだ。

ステラの仲間だから助けてやりたい、だけどいつかアイツがこの光景を作ったのが自分だって知ったら、それこそアウルが壊れてしまうかもしれない。そんなことにならない為にも…!」

 

 

俺は、イチカに酷な選択をさせていると思う。

自分の選択で友人の生死を決めてしまうのだから。

 

 

『…ああ頼む、シン。

お前にだからこそ任せられると思うんだ、俺』

 

 

イチカはそう決断した。

俺はどうするんだろう…。もし、ステラがアウルのようにベルリンを焼くようなことをしていたら…?

俺はイチカのように決断できたのだろうか…。

 

俺は自分の中のリミッターを外す意識をし、ミネルバに指示を送る。

 

 

 

「分かった。

メイリン、ソードシルエットを!」

 

 

ミネルバから射出されたソードシルエットから対艦刀【エクスカリバー】を二本取り、一気にアウルの近くへ接近する。

すると、巨大MSの頭部にあるビーム砲に光が収束し、ビームを放つ体制になっていたので、そこに対艦刀を一本突き刺す。

そして、残った最後の一本の対艦刀で胸部にある三門のビーム砲の中心を突き刺す。

 

 

「アウル…、恨んでくれてもいい。

けれど、こうすることが多分、一番いいと俺は思ったんだ。

いつか、平和な世界が来たら改めて謝罪させてくれ」

 

 

俺は対艦刀が刺さったところから火花を放つ巨大MSから離れ、そう倒れ行くMSに向かって言った。

 

巨大MSやエース格のMSがやられたことで地球連合軍の部隊は総崩れとなり、ベルリンのこれ以上の被害は食い止められることができた。

 

アークエンジェルやフリーダム、ストライクはあの大型MSデストロイを俺が破壊したのを確認してから戦場を離脱していた。

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

戦闘が終結し俺たちはベルリンの住民で被害にあって逃げ遅れた人がいないか、捜索していた。

そんな中、俺は倒れたデストロイのコクピット付近に灰色と水色のパイロットスーツを着たアウルを見つけた。

 

既にその体は冷たくなっていて、死んでいるのだと分かった。

せめて、安らかに眠れるようにと、俺はベルリン近郊にある湖でアウルにささやかな水葬を行った。

 

 

「もう一緒にバスケしたり、会話したりできないけど、ここでならゆっくり眠れると思うんだ。

だからせめて、誰にも邪魔されない夢の中で、世界の平和を待っててほしい。

すぐには無理だけど、いつかお前のところに行くからさ。

……じゃ、あ、おやすみ…アウル」

 

 

俺はアウルの身体を湖に沈めた。

暗く深い湖の底へアウルの身体が消えていく。

それを見ながら俺は泣いていた。

 

 

「友達を…こんな風に見送るなんて……こんなの、辛すぎるだろ…!?

アイツら、街で会った時は全然、パイロットって感じがしない普通の人間だったのに…!

なんで、こんなことを平然とやらせるんだよ…!!」

 

 

俺はベルリン市街のザフト駐屯地へ戻った。

そこでラジオからデュランダル議長の放送声明が流されるというので、それを聞いていた。

 

 

『私は、プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルです。

今日、私がお話しするのは本日あった辛く、悲しい出来事についてです。

遠方でお住まいの方はご存じないと思いますが、本日、ベルリンにて地球連合軍の大規模侵攻がありました。

彼らは、大量のMSと一機の巨大なMSを持ち出し、罪もないベルリンの市民を焼き払っていきました。

幸い、今は勇敢なザフト兵士のお陰で事態は収束しています。

ですが、悲しいことに地球連合軍はその大量虐殺を一人の子供にやらせていたという事実が発覚しました。

その子供は既に亡くなりましたが、連合はその子を薬物による暗示により兵士に仕立て上げ、引き金を引かせていたのです。

以前、私はとある連合の施設でそういった実験を行っていた痕跡を発見しました。

そこにはたくさんの子供の死体が転がっており、いずれも実験の材料、成果の確認のために殺されていたのです!

 

確かに、我々ザフトでも少年兵はいます。

ですが、彼らは自ら平和の為に立ち上がり、自国を守るために戦っています。

けれど、地球軍はどうなのでしょうか?

中には自ら志願した者もいることでしょう。けれどその裏で、不幸なことに薬でむりやり戦う道具として扱われる子供が存在しております!

 

この放送を聞いている方々にお聞きしたい。

それをこのまま放置しておいていいのでしょうか!?

大人の方に問います。自分の子が薬のせいで無理矢理戦わされることにあなたは喜べますか?

子供に問います。自分の友人が無理矢理戦わされることに、何も感じないのでしょうか?

 

私は、この度の事実を知った際、非常に心が痛みました。

同時に、そのような行いを実行している輩を許せないという気持ちでいっぱいになりました。

 

私は、平和を望む人、ただ愛する人と共に暮らしたいと願う人を支持すると共に、その行いを邪魔しようとする者もいます。

彼らは【ブルーコスモス】という組織を作り上げ、その裏で暗躍し、自分たちの利益の為に人々に武器を持たせ、何があっても戦いをやめようとしない者たち、【軍需産業複合体 ロゴス】。

世界の平和を阻害せんとする組織と私は全面的に戦い、真なる平和を掴み取ることをここに宣言します!』

 

 

議長の言葉と共に複数人の顔写真が表示された。

【ロゴス】、以前議長も仰っていた組織か…。

本当にこれで戦いが終わるっていうなら、俺は最後まで戦って見せる…。

それがアウルやスティング、死んでいった人たちへの償いにもなると信じて!

 




もう原作との相違だらけですけど、この方向性で進めていきたいと思います。

それと、一つアンケートを取らせてほしいんですけども、
このSSはイチカが主人公なのですが、IS世界にイチカが戻り、メインヒロインのマユやサブ主人公のシンと別行動をとる感じになるんです、今後。
その時に、
1.イチカの方のみのストーリーを書くか。
2.マユ、シンを視点としたイチカがいないときのストーリーも書く
のどちらがいいでしょうか!?
活動報告にアンケートで聞きたいと思います。
【IS世界にイチカが戻った後…】
ってタイトルで活動報告に出してます


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帰還

今回、いつもよりは長めで、しかも順序を変更しました。




SIDE イチカ

 

 

デュランダル議長のロゴスに対しての宣戦布告とも言える発言より二日。

ベルリンの被害状況の確認や被害者の救出などに尽力していたミネルバは一度、補給のためにジブラルタルへ戻った。

俺はその際、議長に呼ばれ執務室へと足を運んでいた。

 

 

「失礼します、議長。

それでお話とは一体?」

 

 

議長は執務室の窓から外を眺めていたので、その顔をうかがうことはできなかった。

しかし、こちらへ向くとフッと微笑み、話を始めた。

 

 

「ご苦労だったね、イチカ。

先日の戦いの連続で疲れているだろうに」

 

「いえ、結局あの巨体を倒したのはシンですから…」

 

「アウル・ニーダがパイロットだったというのは、レイから報告を受けている。

ロゴスとはやはり、その様な行いを罪もない子らへ強要しているのだな。

…それで、君をここへ呼んだ理由だが、例の装置が完成した。

よって君にはミス・シノノノと共に君の世界でのフリーダムについて調査を行ってもらいたい」

 

「あれができたのですか!?

で、ですが、今は平和の為にロゴスと戦わなくてはいけない時です。

なのでまずそちらを片付けるべきでは?」

 

「無論、その通りだ。

だが、君たちの世界のフリーダムの元凶が仮にロゴスだとしたらそれこそ、そちらの世界のために動かなくてはならないはずだ。

それに、イチカ。

君が抜けたらミネルバは危険に陥るほど、君の仲間は弱いのかい?」

 

「そんなことありません!」

 

「それと、ミネルバに戻ってきてもらったのは、君を含め新しい機体を受領するためでもあるのだよ。

君の機体は君の成すべきことを終えた後での受領になるがね」

 

 

それならば、俺のやることは向こうの世界でフリーダムを探し、必要ならば倒すだけだ。

それに千冬姉たちの所に現れたっていう俺の偽者についても探らないといけない。

 

 

「分かりました。

その命令、必ずやりとげてみせます」

 

 

すると、議長は翼のバッジを俺に渡してきた。

ザフトの特務隊の証であるFAITHのバッジだ。

 

 

「うむ。

では、君が独自に動けるようにこれを渡そう。

これから君には特務隊として、向こうで動いてもらう。

とは言っても、あまり向こうでは意味はなさないがね。

ミネルバ所属のまま動くよりかはクルーの者にも怪しまれず動けるだろう。

それでは私は、新しい機体を受け渡すので、そちらへ向かうが、君はどうするかね?」

 

「俺も向かいます。

事情を知ってる人には別れを言っておきたいので」

 

「そうか、ではついて来るといい」

 

 

急な特務隊の任命に些か戸惑ってはいるが、やるべきことをやる前に向こうへ向かうのは――と、思い俺は議長に付いていった。

ジブラルタルのMSハンガーへ向かい、そこには既にシン、レイ、アスラン、マユが待っていた。

 

 

四人は議長に敬礼し、議長の指示でやめるが、俺の胸に付けているフェイスのバッジを見て驚く。

 

 

「イチカ!お前もフェイスになったのか!?」

 

「ああ。

その事について皆に話すことがあるんだ。

俺は向こうの世界に戻ることになった。

シンやアスランはロドニアで俺と向こうの世界の知り合いの話を聞いてたから分かると思うけど、向こうに現れたフリーダムの調査、それに必要な装置が完成したらしい。

だから、俺は議長の命を受けてその対処に向かおうと思うんだ。

あっちは俺が生まれた世界だ。フリーダムが何をやろうとしているのか分からないから、俺がそれを確かめるんだ」

 

「そっか。

なら、お前の留守は俺たちがカバーするさ!」

 

「そうだな。

それに、お前が抜けたくらいで負けるようなことはそうそう無いだろう。

以前にも、お前とマユがいないことがあったが、何度も切り抜けているからな」

 

「むしろ、お前が戻って来る時にお前の場所が無くなってないか俺は心配だぜ」

 

 

と、シン、レイに言われた。

 

 

「事情は把握した。

けれど、向こうで何が待ってるか分からないんだ。

そちらも気をつけてな」

 

「ああ」

 

 

と、アスランに激励の言葉を貰った。

 

 

「…行っちゃうんだね。

って、別にそんなもう一生会えないって訳じゃないよね?」

 

「当然さ。

少なくとも俺は行き来することができるみたいだし、きっと戻って来るさ」

 

「うん!

じゃあ、さよならじゃないね!

行ってらっしゃい!」

 

「ああ、行ってきます」

 

 

そう言って、マユとハイタッチを交わした。

 

 

「…なあ、アレどう思う?レイ」ボソッ

 

「…俺は良い感じだと思うがな。アスランは?」ボソッ

 

「どうだろうな。

イチカがどう受け取っているかにもよるし、マユの気持ちも俺には分からないからな。

二人次第と言った所か…」ボソッ

 

 

と、三人が何かを言っていたが、無視しておこう。

 

 

「イチカ。

それでは君には準備の後、再びここへ戻ってきてもらおう。

既にこちらの準備を済ませてある。

後は、君の準備とミス・シノノノの方の受け入れが完了次第、任務を行ってもらう」

 

「分かりました!」

 

 

俺はミネルバへ戻りグラディス艦長へ事情を説明し、別れを言ってから準備を始めた。

 

 

 

 

NO SIDE

 

 

イチカがハンガーを出て、残ったシン、アスラン、レイ、マユの四人は議長から新機体を受領していた。

ライトが点灯し、4機のMSの姿が現れた。二機は姿は殆ど似ているが、一機は全くの新型、最後の一機はインパルスに酷似していた。

 

 

「まずはシン、君からだ。

【ZGMF-X42S デスティニー】。

君のインパルスから得たデータを元に君用にカスタマイズが施されている。

武装はインパルスの各シルエットを参考にしている。

確認してくれ」

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

 

シンはデスティニーへ乗り込み、そのスペックを確認し始めた。

 

 

「続いてはレイ。

【ZGMF-X666 レジェンド】だ。

かつて、ラウが乗っていた【ZGMF-X13A プロヴィデンス】の後継機だと思ってくれていい」

 

「ラウの?

ありがとうございます、議長」

 

「クルーゼ隊長の…」

 

 

レイ、アスランはレジェンドを見て、自分の兄のような存在、上官のことを思い出していた。

レイもレジェンドへ乗り込み、機体のチェックを行った。

 

 

「続いてはアスランだ」

 

「はっ!」

 

「そう固くならなくていい。

君の機体はシン同様にデスティニーだが、これは戦死したハイネ・ヴェステンフルスが受け取る予定だった機体だ。

機体名は【ZGMF-X42S REVOLUTION デスティニーR】だ」

 

「ハイネの?」

 

「本来、彼を主体とした部隊を編成する手はずだったが、それも行えないまま彼はこの世を去ってしまったからね。凍結するつもりだったが、君のセイバーもかなりの損傷を負っているだろう。

受け取ってくれ」

 

「…一つお聞きしてもよろしいですか?」

 

「何だい?」

 

 

アスランはギルバートに真剣な表情で訊ねた。

 

 

「この時期での新型、恐らくですが核エンジンを搭載していますね?」

 

「ああ、その通りだ。

条約で禁止されていたという事実も無論承知している。

が、それはロゴスとの戦いにおいて必要なことだと私は思っている。

ベルリンの時の惨劇を未然に防ぐためにもこれは必要なことだ。

それに、ロゴスを解体させたら、これらの機体は全て放棄するつもりだ」

 

 

ギルバートはそうアスランに話す。

 

 

「…わかりました。

この機体、確かに俺が受け取ります」

 

 

アスランは機体に乗り込み、システムやOSの調整を開始した。

最後にマユへ渡す機体に体を向け、デュランダルは説明を開始した。

 

 

「最後にマユ、君の機体だ。

【ZGMF-X56S/F デスティニーインパルスF】

君が乗っていたF・フリーダムを発展させたスペックを開発途中だったデスティニーインパルスへ採用したものだ。

この機体は単機でも充分な火力を発揮できるが、イチカへ渡す予定の機体との連携が前提の機体だ。

二人そろって渡す予定だったが、イチカはしばらくここを離れるからね。

君に先に渡すことになってしまったが、存分に振るってくれたまえ」

 

「はい!」

 

 

マユはデスティニーインパルスへ乗り込み、機体情報を目に通し始めた。

 

 

「これ…、インパルスの比じゃない…!

それに【ハイパーデュートリオンエンジン】、【ミラージュコロイド】だって!?

条約違反を承知でこの機体を造ったっていうのか…。

これ、振るう相手を間違わない様にしないと…」

 

 

シンは自分に託された機体のその恐るべき性能を目で確かめ、強力な力を振るうことに少し戸惑いながらも、その責任をしっかりと感じていた。

 

 

「ラウの機体の発展型か…。

俺に扱えるのか―――いや、彼ができたのなら、俺だってやってみせる」

 

 

レイはラウのことを思い出し、その強さに負けない様に戦うことを胸に誓っていた。

 

 

「デスティニー、それにこれはミラージュコロイドか…。

まるで、ハイネとニコルと共に戦っているみたいだな…。

議長は、未然に防ぐためにこの力を俺たちへ託したんだ。

その意思を無駄にしないためにも、俺は戦うさ…。

キラが一体、何を思っているのかは分からない―――けれど、向こうが撃って来るというのなら俺はそれに立ち向かうまでだ」

 

 

アスランはかつて共に戦った戦友と機体を託したデュランダルと、たくさんの人の思いに応え、親友と戦う事を決意していた。

 

 

「これ、性能が凄すぎる…!

それに、【機動兵装ウイング ドラグーンⅡ】。

機体の方で自動操縦みたいだけど、扱えるのかな、私に…?

ううん、託されたんだもん。

機体性能に見合うように私が頑張らないと…!

イチカが戻ってきたときに笑われちゃうもんね!」

 

 

マユは自分の機体の情報を見て、その性能、武装に驚くが、それに見合うパイロットになれるように自分も強くなると誓い、長く共に戦った相棒に恥じない様に戦うことを決意した。

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

俺はミネルバにて荷造りを進めていた。

と言っても、束さんの方である程度の支度が行われていると思うから大した量では無く、自分が使っていた銃や端末などの最低限なものを揃え、再びハンガーへと戻った。

 

ハンガーにはさっきいたときと違って、新しい4機のMSにライトが当たっており、それらがシンたちの機体だと俺には分かった。

 

 

「議長、お待たせしました。

私はいつでも行けます」

 

「ああ、分かった。

それではこちらだ」

 

 

俺が議長に案内されたのは、ハンガーの隅にある少し大きめな装置の前だった。

 

 

「これが、束さんから言われていた装置ですか?」

 

「ああ、彼女の才能には恐れ入るよ。

敵に回っていれば恐ろしいと思えるくらいにね。

それでは、そこの台座に乗ってくれ。

後は君の生体情報を読み込むことであちらの世界へ飛ばすことが可能なのだそうだ」

 

「はい。

では、行ってまいります。

議長、こちらの事、よろしくお願いします」

 

「任せておいてくれ」

 

 

俺は台座へと上がると、装置が作動し、俺の身体を読み取っていった。

 

 

「イチカ!」

 

 

すると、マユが俺のところにやってきた。

 

 

「後は装置の方で行ってくれるだろう。

私は外しておくよ」

 

 

と、議長はこの場を離れた。

 

 

「必ず帰ってきてね!

じゃないと、私、寂しいから…!」

 

「ああ、分かってるさ。

それに、向こうに俺の端末を持っていくから、束さんに頼めば連絡が取れるようにしてくれるさ」

 

「じゃあ、これは無事に帰って来られるようにおまじない!!」

 

 

そう言って、マユは俺にキスをしてきた。

 

 

「私、待ってるから、帰ったら答えを聞かせてね!」///

 

「…あ、ああ」

 

 

俺は急なことでそんな言葉しか出てこなかった。

そして、俺の身体を装置から発せられる光が包み、俺の目の前は真っ白に塗りつぶされた。

 

 

『あなたが、織斑一夏ですね?』

 

(誰だ?――千冬姉に似ている?)

 

『最初の搭乗者が彼女だからでしょうね。

外見は彼女を参考にさせてもらっています。

私は、コアナンバー001【白騎士】と、貴方がたが呼んでいるISのコアです』

 

 

真っ白な世界で俺の目の前に現れた千冬姉に似た女性は自分を白騎士だとそう答えた。

 

 

(て、ことは【白騎士事件】の時の白騎士って、千冬姉ってことなのか?)

 

『ええ。我が創造主の友人である彼女を乗せ、私はミサイルを落とすために戦いました。

ですが、その結果ISは軍事利用に扱われ、本来の目的である宇宙利用が行われなくなっています。

…そして、白騎士事件と呼ばれた事件の日。

ISという存在のすべてが始まった日。ミサイルを撃ったのは創造主という情報が流れ、自作自演と世界では言われてますが、それは間違いです。

ハッキングを行い、今の世の中へと誘導するためISの力を見せつけようとした人物は別にいます』

 

 

俺は白騎士から信じられないことを聞いた。

束さんに罪を着せた黒幕が存在すると、白騎士は俺に教えたのだ。

 

 

(それって、俺が探そうとしているフリーダムと関係しているのか?)

 

『その可能性は否定できないでしょう。

それで、織斑一夏。

あなたにはその真実を追っていただきたいのです。

創造主の為にも、そして世界の為にも』

 

 

俺は唐突すぎて、少し戸惑っている。

【世界の為】という、スケールの大きい出来事にまで発展しているとは思わなかったから。

それに、その存在が俺の探しているフリーダムに関係している可能性もある、という事。

もしかすると、全てが一つに繋がっているかもしれないということもあるのかもしれない。

 

 

(分かったよ、白騎士。

俺がその真実を暴いて見せる)

 

 

俺は白騎士へそう宣言した。

 

 

『―――そうですか。

ありがとうございます、織斑一夏。

では、貴方のご武運を祈っております』

 

 

そう言うと、白騎士は姿を消し、真っ白な世界は徐々に薄れていった。

 

 

「いっくん!いっくん!!」

 

「…ここは…?」

 

 

目の前には俺の知り合いで向こうの世界で姉の親友だった【篠ノ之 束】さんがいた。

 

 

「成功したんだよ、いっくん!

いっくんは帰ってきたんだよ!自分の世界に!」

 

「!本当だ!

本当に移動することができるなんて…!」

 

「いっく~ん?束さんを舐めすぎだよ?

まあ、疲れていると思うからまずは休んでもらわないとね!

でも、その前におかえりなさい!!

 

「はい、ただいま!」

 




イチカは無事にIS世界へと戻りました。
ここからはIS世界編となります。
その前に、各種設定を一回、上げようと思います。

それと、シン、レイ、アスラン、マユの機体を新機体へと変更です。
それぞれの武装なんかは後日、設定で上げますので、お待ちを・・・!


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インフィニット・ストラトス編 前日譚
再会


タイトルの通りに今回はとあるキャラとの再会です。

まあ、出てくるのは最後なんですがね


SIDE イチカ

 

 

「それで束さん。

早速と言っては何ですけど」

 

「お?何だいいっくん!

束さんにできることならなんでもしてあげるよ?」

 

「そうですか――――じゃあ、この部屋、片付けましょうね?」

 

 

俺と束さんがいる、この束さんの隠れ家の束さんのプライベートルームは言っては何だが、ごみ屋敷と言っても過言では無いほどの部屋だった。

脱ぎ散らかされた服、開発材料なのか何なのかよくわからない部品、強いては食べかすなど、千冬姉の部屋を見ているようで少し懐かしさを感じた。

 

 

「え~束さんまだ使えると思うんだけど―――「いいですね?」…はい」

 

 

こっちの世界へきて、最初にやったことは束さんの部屋の掃除だった。

 

数十分経って、ようやく部屋は綺麗になった。

 

 

「いやぁ!すごいね!あんなごみ屋敷だった束さんの部屋がこんなに綺麗に片付いてるよ!」

 

「自分でごみ屋敷だって言うんならもう少し片付けましょうよ…」

 

「はは~やろうとは思ってたんだけどね~」

 

 

その後、情報交換を行うため、お茶を淹れて休憩しながら話を行った。

 

 

「それで束さん。

今後の方針なんですけども」

 

「そうだね。

とりあえずはいっくんにはIS学園へ行ってもらうことになるかな」

 

「何でです?」

 

「そういやまだいっくんは知らないんだよね。

あの偽者がISを動かしたんだよ。

つまりは世界初の男性IS操縦者ってことだね。

まあ、そいつの正体を探るっていうのを今はいっくんにはやって欲しいんだよ。

あのフリーダム?っていうISは神出鬼没だから情報が少なくってね?

出来ることからやった方が良いと思うんだよね」

 

「でも、それって俺もISを動かせることが前提ですよね?

俺、男だから無理だと思うんですけど?」

 

 

IS学園はそもそもIS操縦者、整備士を育成する学校だ。

当然、カリキュラムにIS系の物も含まれているので、ISを動かせない、つまり男は入学ができない。

俺の偽者は何かの要因で動かせるみたいだが、束さんが俺をIS学園に送るにしても、俺がISを使えるかどうかはまだ分からない。

 

 

「いっくんは動かせるよ!

いっくんはさっき白騎士と会話したって言ってたでしょ?

IS適性の高い人はコアと共鳴して会話することが出来るんだよ!

原因はちょっと分かってないんだけど、つまりいっくんはISを使えるってことだよ!」

 

 

白騎士、つまりISのコアと会話をできる人というのはそのコアとの親和率が高く、検査を行うとその適正結果は高い値を出すらしい。

ちなみに参考として千冬姉のIS適正はSランクだったそうだ。

俺の適正を測ってみるとA+と中々な高ランクだと束さんも言っていた。

 

 

「じゃあ、いっくんはIS学園に行ってもらうっていうので構わないよね?」

 

「まあ、適正があってやるべきことの為に必要なら俺はそうしますよ。

じゃあ、何か勉強できる参考書みたいなのってありますか?」

 

 

流石に勉強せずに学園に入学しては自分としても恥だし、何より知識を得ておくことで自分にとって利益になるかもしれないからだ。

 

 

「一応、束さんがISを開発する段階でまとめておいたレポートや各国で主流の機体のデータならネットで見られるよ~」

 

「じゃあ、それを使わせてもらいますね。

束さんはどうするんですか?」

 

 

俺がISについて学んでいる間、束さんは何をするのだろうか、俺は少し気になっていた。

 

 

「実はね~いっくんの乗る専用機を開発するんだよ!」

 

「俺の、専用機?」

 

「そう!

しかも、ザフト軍のMSっていうのをモチーフにした奴を!

データを貰っているからね~。

いっくんの為にも束さん頑張るよ!

――――とは言っても、フェイズシフト装甲とかデュートリオンエンジンっていうのはまだまだ難しそうだから、量産機をベースに開発してみるんだけどね」

 

「ありがとうございます、束さん」

 

 

俺はエッヘンと胸を張っている束さんへ頭を下げてお礼を言った。

 

 

「いっくんにはこれから負担を掛けるかもしれないからね。

万全に動けるように束さんも力を入れるよ!」

 

 

 

そう言って、束さんは別室へ移動し、俺は部屋にあった束さんの開発レポートを読んでいった。

そこに書いていた内容は、IS整備、開発において必要な知識や、ISの内部機構に関しての説明が殆どで、これをISを開発し始めてた頃の束さんが書いたレポートなんだっていうのを忘れてしまうくらいに、凄い出来のレポートだった。

俺が士官学校を卒業する前に出したMS工学の論文なんかじゃ、束さんのレポートにはまだまだ遠く及ばないっていうことが分かった。

 

 

俺がレポートを読みふけっていると、部屋を誰かがノックした。

 

 

「?どうぞ」

 

「失礼します。

お食事の用意が出来ました、いっくん様」

 

「え、あ、ああ、ありがとう。

君は、一体?」

 

 

部屋に入ってきたのは杖を片手に持った銀髪の少女だった。

しかし、その両目を彼女は閉じていた。

 

 

「私はクロエ。

【クロエ・クロニクル】と申します。

束様に助けられて今はここで束様の生活のお手伝いをしています。

...家事は練習中ですが」

 

「そっか。

よろしく、クロエさん」

 

「よろしくお願いします、いっくん様」

 

「その『いっくん様』ってのは、止めてもらってもいいか?

様付けで呼ばれるのはちょっと慣れてなくてな」

 

「分かりました。

では、『いっくんさん』と」

 

 

さん付けじゃなくてもいいんだけどな。

まあ、様って言われるのは慣れてないし、それでいっか。

 

 

クロエさんに連れられて、束さんのラボを歩いて行く。

そこで俺は一つの疑問を尋ねてみた。

 

 

「クロエさんって、その、目が見えないのか?

それにしては綺麗に歩けてるなって思ってさ」

 

「いえ、別に失明したわけではありません。

私はとある施設で実験体として扱われていたため、その影響で目が少し変なのです」

 

 

そう言って、クロエさんはその両目を開き、俺に見せてきた。

その眼は金と黒に彩られており、何か引き込まれそうな感じだった。

 

 

「…気持ち悪いでしょう。

変なものをお見せしました」

 

「そんなことは無いと思うぞ?

綺麗な金色だったと俺は思う」

 

「そうですか。

ありがとうございます、いっくんさん。

ちなみに、私が歩けているのは束様に頂いた生体同期型のISがあるからです」

 

 

生体同期型…。

そんなISまで存在するのか…。

少し歩くとテーブルとイスがあり、そこには料理が並べられていた。

 

品数は多くは無かったけれど、どれも一生懸命作ったという気持ちがこもった料理だと俺は思う。

 

 

「お!いっくん来たね!

じゃあ、くーちゃんの作ったご飯を食べようか!」

 

 

それから三人で食事を行い、束さんが提案してきた。

 

 

「ねえ、いっくん!

くーちゃんに家事を教えてあげられない?」

 

「家事をですか?」

 

「そうそう!

くーちゃん!いっくんはね?すっごく料理が上手なんだよ!

掃除や洗濯ももはや主婦レベル!」

 

「いやいや、そんなこと無いですって」

 

 

と、俺は束さんの言葉を否定したが、

 

 

「いっくんさん!是非、教えてください!

私、もっと料理ができるようになりたいです!」

 

 

と、クロエさんがグイグイと押してきたので俺は折れ、クロエさんに家事を教えることとなった。

 

すると、束さんの持っていた携帯に電話がかかってきて、ディスプレイを束さんが見ると、とても嬉しそうな顔をして電話に出た。

 

 

「もしもし!箒ちゃん!!

電話待ってたよ~!!」

 

 

どうやら電話の相手は俺の昔の幼馴染で束さんの妹の【篠ノ之 箒】みたいだ。

束さんがISを作り出した関係で、箒の一家は要人保護プログラムの下、各地を転々してたと千冬姉に聞いたことがある。

束さんはこんな感じで人のいないところで暮らして、箒とは離れ離れだが、その関係が良好そうで俺は良かったと思う。

 

 

「――そうそう!箒ちゃんにスペシャルなゲストがいるんだよ!

さ、しゃべってみてよ!」

 

 

と、束さんは携帯をスピーカーモードへと変えて、テーブルに置いた。

 

 

『姉さん?クロエの事はもう何度も聞いてるから分かっているのですが…』

 

 

と、電話口から聞こえる久しぶりに聞く幼馴染の声は勘違いをしていた。

 

 

「えっと、久しぶりだな、箒?」

 

 

俺はそう話しかけた。

久しぶりに話すからこそ、何を話すべきか良く分からなくてそんな短い言葉になってしまった。

 

 

『一夏……なのか…?』




モッピー登場!
それと、クロエの話し方が難しいです!

IS側の時間帯は大体、偽一夏が入試でISを動かしたって辺りで、世界が騒いでいる辺りです


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方針

『一夏……なのか…?』

 

「ああ、そうだぜ。

お前の幼馴染の織斑 一夏だ」

 

『今まで、どこにいたというんだ!?

姉さんから、行方不明だと言われ!

千冬さんの家に戻ってきたから安心したら、それは偽者だと教えられ!

私が、一体どれだけお前を心配していたか分かるか!?』

 

 

箒は泣きそうな声で俺にそう怒鳴ってきた。

確かに、すごく心配を掛けたと思う。

 

 

「…ごめん。

帰るに帰れなかったんだ」

 

『……んん!ま、まあ、それなら仕方あるまい。

それで今は姉さんの所にいるんだな?』

 

「ん?ああ。

今、束さんにISについて教えてもらってるんだ」

 

『IS?何故、お前がISについて勉強している?

お前は男だろう?』

 

「実はね~!

いっくんもISを動かせるんだよ~!」

 

 

束さんが箒に対してそう暴露した。

 

 

『へ…?』

 

 

ああ、もう束さんがいきなりそんなことを言うから箒、戸惑ってるじゃないか!

 

 

「で、箒ちゃんにお願いがあるんだけどさ」

 

『ちょ、ちょっと待ってください、姉さん。

頭が追い付いてなくて……』

 

 

やはり箒は混乱していた。

 

 

『す~は~す~は~……。

大丈夫です、続きをどうぞ』

 

「いっくんの手助けを箒ちゃんに頼みたいんだよね。

IS学園でのさ」

 

『一夏の手助けをですか?

もしかして、一夏は何か危険なことに巻き込まれているんですか?』

 

 

束さんの頼みに箒はそう疑問を返した。

 

 

「巻き込まれたっていうより、その出来事の対処を俺がやらないといけないんだよ」

 

『説明してくれないか?

いきなり幼馴染の手助けをしてくれと頼まれても、何をやっているのか分からないことに首を突っ込みたくはないのだ』

 

 

と、箒は言うので、俺は俺の身に起きたことを説明した。

数年前に誘拐され、何の経緯か分からないが別の世界へと飛ばされたこと。

そこはISなんて存在せず、こっちの世界とは根本的に違うこと。

コズミック・イラの世界で軍に入り、戦っていたこと。

その過程で束さんと連絡を取ることができ、そこで俺の偽者、コズミック・イラのMSと同じ外見のISが現れたことを知り、束さんの協力の下、こっちの世界へ戻ってきて今に至るってこと。

 

 

『ううむ…、何とも奇怪なことが起こったものだな…。

それで一夏はそのコズミック・イラの世界から派遣された人員ということなのだな?』

 

「ああ。

向こうでこっちの西暦世界について詳しいのは俺しかいないしな」

 

『ならば、私もできるだけ協力しよう。

ですが、姉さん。

一夏の外見はどうなさるおつもりですか?

世界中では一夏の偽者の方を本物として見ています。

同じ外見の人間が現れたら後から出てきた一夏の方が怪しまれると思いますが…?』

 

「そこは束さんにお任せあれ!

実はいっくんの為に偽装戸籍とかの準備を進めながら、変装用のアイテムを開発してたんだよ!」

 

 

束さんが取り出したのはミーアがラクス・クラインの姿に変装するときに使っていた端末と同じようなものだった。

 

 

「これさえあればいっくんの姿はあら不思議!

事前に決めておいた見た目に早変わりできるんだよ!

それと、声は……変声機でも使えばいっか」

 

『見た目の方に意識向けてて、そっちは無計画だったんですね…姉さん』

 

 

まあ、それによって身分や顔、声なんかの問題は解決したし良いか。

 

 

『では、私はIS学園で一夏と共にいればそれでいいのですか?』

 

「う~ん、それでもいいんだけどね。

一応、偽者はいっくんに化けてるんだし、偽者の方に近づかなければちーちゃんからも少し怪しまれそうな気がするんだよね?

だから、程よく偽者とも行動を共にして欲しいんだよ」

 

 

と、束さんは箒へ伝えた。

 

 

『…なるほど。

それもそうですね。

では、その様に私も動こうと思います。

それではこの辺で失礼します。

あまりに長いと護衛の人が怪しむと思うので』

 

「ああ、またな、箒。

IS学園で会おう」

 

「ばいばい、箒ちゃん!

また電話してね!」

 

『ええ。

失礼します』

 

 

それで箒との通話を終了し、食事を終えた俺たちは三人で皿洗いをして、また各自別の行動を開始した。

 

 

「束さん、ここってどこか銃を撃てる場所ってありますか?」

 

「銃?

う~ん、ラボの隅っこにしょぼいのだったら作ってるけどそこでいい?」

 

「はい。

お借りしてもいいですか?」

 

「いいよいいよ~!

だって、作った割に全く練習に使ってないもん」

 

 

で、クロエに案内され射撃場―――とは言い難い小さいスペースで射撃の練習を行った。

それと同時に頭で色々と考えていた。

 

俺の偽者。

一体、何の目的で成り代わるようにして千冬姉たちの前に現れたんだ?

俺の居場所を無くすことで向こうに何の得があるのか…。

 

フリーダムのIS。

束さん曰く、情報が少ないがその力は現行のISでは太刀打ちできず、各国も捜索を行っているけど尻尾を掴めない。

 

白騎士事件の真相。

白騎士のコアが言っていたミサイル基地のハッキングを行った黒幕。

世界では束さんがやったという情報が出回っていたが、それは偽りの情報だと白騎士は言っていた。

 

 

この三つがすべて繋がっているとしたら、それは何年も前から仕組まれていたことになるってことだ。

フリーダムと白騎士事件の真相を確かめることは今はできないから、俺の偽者の正体を掴むためにIS学園で探らないとな。

 

 

 

 

それから数日が経過し、束さんの部屋でISについての勉強を粗方終え、実際にISを動かすことになった。

 

 

「それじゃあ、いっくんはこの開発途中のに乗ってね!

ちなみに、これは箒ちゃんへ渡す予定のだから!くれぐれも壊さないでよ…!!」

 

「わ、分かりました」

 

 

俺は赤い装甲のISに身を預け、楽にした。

すると、たくさんの情報が一斉に頭に流れ込み、俺の視界が光で包まれ、思わず目を閉じた。

目を開けると、身長が伸びたかのように目線が高くなっていて、手を動かすと機械の腕が動いた。

 

 

「うん!無事、起動できたね!

それじゃあ、飛んでみよっか?」

 

「は、はい!?

いきなり飛ぶんですか!?

やっぱり最初は歩いたりするんじゃ…?」

 

「う~ん、まあそうなんだけどね?

いっくんなら何とかなりそうだし良いかな~って思ってさ」

 

 

良くない!全然良くないですよ!?

と、いう叫びを俺は出さずに飲み込んだ。

どの道、いずれは飛ぶ必要があるんだからその順番がずれただけだ…!

そう、心に言い聞かせ、飛ぶイメージをした。

モビルスーツで地球や宇宙を飛んでいた時のイメージを。

モニターに映る景色が自分の動きで変わっていく、あの感じを。

 

 

そうすることで、ISが浮き、ゆっくりと上に上昇していく。

 

 

「あ!いっくん!

その機体の名前は仮だけど【赤椿】って名前だからね!」

 

「はい。

少しの間よろしくな、赤椿」

 

 

俺がそう、自分の乗っているIS【赤椿】へ言うと、装甲が少し煌いたように見えた。

赤椿を操り、ゆっくりと空へ上昇し、一定の高さで停止した。

 

 

『じゃあ、いっくん!

そこで少し自由に飛んでみようか!』

 

「は、はい!」

 

 

俺は初めて搭乗したということもあり、ふらふらとではあるが、ラボの上をゆっくりと飛行した。

 

 

『うんうん!やっぱりいっくんにはISを扱う才能があったんだね!

ちーちゃんの弟だからかな?

…それとも、いっくん自身が…』

 

 

束さんは一人でぶつぶつと俺が動かせる理由について考察していた。

 

俺はそんな束さんを他所に、慣れるためにMSのテストで飛ぶような軌道を描き、練習を行った。

初日のIS稼働はこの程度で終了したが、思ったより疲労がたまり、俺は疲れ切っていた。

なので、そのままラボの割り当てられた自室の布団に倒れこみ、意識を闇に落としていった

 




一応、アンケートの結果が2番が圧倒的に多いということで、2番の方向で進めていきます!
専用機はもうジンで確定かな・・・?


今、出ている箒に渡す予定のIS赤椿ですが、
質問にもあったのですが、紅椿ではなく、赤椿です。
理由としては、束さんもまだ4世代を造れていないからその試作機が赤椿ということになっています


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存在表明

IS学園へと向かう前、最後の話です。



「よし!そろそろいっくんの存在を世界に明かそう!」

 

「漸くですか…。

もう、入学一週間前ですよ?」

 

「それが狙いなんだよね。

遅ければ遅いほど、学園も貴重な男性操縦者を保護するために動かなくちゃいけなくなる。

余計な手が入る前に学園に入ることができるってことだよ!

早ければ、その分いっくんのことを探られる可能性があるからね!

まぁ、束さんに掛かればそんなことは無い……と思いたいけど、世の中何があるか分からないからね~。

だからこそ面白いんだけどさ!」

 

 

そう言って、束さんは俺に変装の為の装備を手渡してきた。

 

 

「いっくんの変装する相手のデータはその中にインプットしてあるから、それを使うんだよ?」

 

 

と、言われたので俺は鏡の前でその装置を使い、自分の見た目を変えてみた。

髪の毛は焦げた茶色へ変わり、目は少し薄めの茶色に変わる。

日本人だった俺の見た目はすっかり変わってしまい、コズミック・イラでいそうな青年の姿に変わっていた。

変声機を付け、声を出してみると、自分の声に多少は似ていたが、どこか前より凛々しい感じの声色だった。

 

 

「うんうん!いっくんってことは全くバレない完璧な変装だね!

流石は束さんっ!!

あ、これ身分証明書ね?

さて、今日から君はカムイ。【カムイ・リンクス】だ。

血縁関係は心配しなくてもいいよ。

数年前に起きたテロで両親を亡くし、束さんが偶然見つけて拾ったって設定だから!

それにその時の記録も改竄してあるから、怪しまれることも殆ど無いだろうし!

後は…いっくん!じゃないや—――カー君のプロフィールを頭に叩き込んでおいてね、誰に聞かれても答えられるように!」

 

「分かりました」

 

 

束さんに身分証明書などを受け取り、それらをカバンへと閉まった。

 

 

「さて、それじゃあハッキングして国際チャンネルでお披露目としますか!」

 

 

そうして束さんは自室に引きこもっていった。

俺はラボのロビーで実際に束さんの放送を見ようと端末を起動させ、国際チャンネルを開いた。

 

 

『やあやあ!全世界の皆?

篠ノ之 束だよ~!!

今日は、巷で男性IS操縦者が見つかったって喚いてる君たちに束さんからビッグなお知らせをプレゼントしちゃおうと思うんだよね!!

なんと!束さんが保護していた男の子がISを動かしちゃったんだよ~!ビックリビックリ!

その子は数年前に何処だったかな…?まあ、どっかの国で起きてたISテロの被害者でね?

世界を転々としてた束さんが偶然拾っちゃったんだよ。

な~んか、ビビッと来たからこの子は何かとんでもないことをする子だと思ってね!

結局、束さんもビックリなISを動かす男の子だったわけだけど。

この子はIS学園に入学させちゃおうと思いま~す!

 

束さんも拾ったとはいえ、親だし?子供にはちゃんと学校に通ってほしいわけなんだよね?

でも、最近物騒じゃん?ISを兵器と勘違いしてる奴らのお陰でさ!

だから、IS学園に送って保護してもらおうって考えてるんだよ!

IS学園だったらさ?どの国にも属さないってことを国際規約で決められてるじゃん?

だったら彼を狙おうとしてくる輩もいないんじゃないかって思う訳!

まあ、そんな施設に部隊を送ろうとか考えてる奴らもいないと思うけどさ、もしそんなのがいたらお前らの権力の為の大事な大事なISコアを潰すからな?

 

まあ、そんなことをする輩がいないことを願ってるよ、束さんは。

それじゃあ、ビッグニュースはこの辺でね~

束さんは愛すべき息子との最後の交流が残ってるので!!』

 

 

そう言って、束さんは通信を終えた。

矢継ぎ早に言いたいことを言って、通信を終えたけど、世界中は大混乱だろうなぁ…。

試しに俺の端末からSNSを確認してみると、当然荒れていた。

【#天災の隠し子】なんてタグが存在するほどに…。

 

 

「さあ!いっくん!これでようやく我らのスタートラインに立った訳だけども!!」

 

「はぁ」

 

 

俺は軽く流し、その次の言葉を待った。

 

 

「行く前にくーちゃんと三人で写真撮ろっ!!」

 

 

なんか凄い大事なことを言うのだと思っていたが、一人暮らしを始める家族に対して接する親と同じような感じでなんか新鮮な感じだった。

一人暮らしを始める家族の気持ちってこんな感じなんだろうか?

 

俺には千冬姉とコズミック・イラの世界でシンとマユという、兄弟関係の家族しかいないから、良く分からない。もし、義父さんと義母さんが生きてて、向こうで普通に進学したらそんな気持ちになるんだろうか?

 

そんなことを考えていると、束さんがカメラと三脚を持ってきて、俺の前に設置する。

そしてクロエと一緒に三人並んでカメラに向かって笑顔を向けた。

新しい家族との一枚を残すことができた。

 

 

写真をカバンへ入れ、俺はクロエの方を向いた。

 

 

「それじゃあクロエ。

短い間だったけど、楽しかったよ。

次はいつ会うか分からないけど元気でな?」

 

「はい。

いっくんさんもお元気で。

束様の食生活の管理はおまかせください」

 

「そして、束さん。

これからもご協力をよろしくお願いします。

フリーダムの方も何か分かったなら連絡をお願いします」

 

「了解だよ!じゃあ、近くの国の空港まで送るよ!」

 

 

束さんお手製のステルス機能付きニンジンロケットで近くの国の空港のある都市の外れに運んでもらった。

 

 

「それと、いっくんと箒ちゃんのISだよ。

ちゃんと箒ちゃんに渡しておいてね?

それでこれは箒ちゃんといっくんのISのカタログスペックをまとめた資料。

こっちは学校でちーちゃんに渡しておいてね」

 

「了解です」

 

「書類上とはいえ、今の束さんといっくんは親子だから、ね。

身体には気を付けて何か困ったことがあったら連絡してね?」

 

「はい。

では、いってきます、義母さん」

 

「!?うん!!いってらっしゃい!!」

 

 

こうして、俺と束さんは別れを告げ、俺は空港へ向かって日本行きの便に乗り、母国へと帰国した。

 

 

随分と遠回りになったが、これで晴れて本当に帰国できた。

一時的なものとは言っても、嬉しいものは嬉しいな。

 

 

 

しかし、帰ってきた母国はあまり居心地の良いものとは言えなかった。

空港のゲート付近で男性が女性警備員に連れられて奥へと消えていくのが見えたが、近くの人に尋ねると痴漢容疑で捕まったらしい。

でも、そんな様子は一切無かったと、近くにいた人は言っていたのに、女性警備員はそれを聞き入れず、問答無用で男性を連れて行ったそうだ。

 

空港には監視カメラを設置しているはずなのに、それすら確認せずに逮捕していた。

不当な行いだと思ったが、恐らく俺がいくら訴えたとしても、聞き入れてはもらえないだろう。

【女尊男卑】という風潮のせいで、痴漢冤罪や男性の不当逮捕、生まれた子が男の子というだけで捨てられる、などといった行いが増えているらしい。

そしてその行いを権力を持っている【女性権利団体】が正当化しており、日本における出生率は低下、男性失業者も増えているらしい。

 

まるで、【ブルーコスモス】によるコーディネーターの弾圧を目の前で見ているかのようだった…。

 

今の俺ではどうすることも出来ないし、やらねばならないことがあるので、IS学園行きのモノレールへ乗り、目的地へと目指した。

 

IS学園はその所在地は日本にあるが、あらゆる国、組織、企業が介入することを許さないという、規約が存在している。

故に、束さんは俺をここへ入れたのだと思うが、実際のところその規約すらも怪しいと俺は思う。

 

が、あらゆる国の人間が集うこの学園だからこそ、俺や束さんの目的を果たす上での情報を集めることが可能なはずだ。

 

 

モノレールがIS学園のある人工島へと到着し、俺は荷物を持って、IS学園へと向かった。

束さんが事前に連絡を入れてくれたお陰で、校門前で教員が待っているそうだ。

 

で、校門前に着いたら、そこには俺の姉【織斑 千冬】の姿があった。

 

……千冬姉。




これでIS編の本編まであと1、2話になりました。

次回は、千冬姉と一夏【カムイ】の再会になります。


ちなみに、イチカの変装後の見た目はバナージ・リンクスと思ってください。
名前はカムイってしてますけど

それと、アンケートの結果からイチカの専用機を決めさせていただきました。
一応、今作は種死とISが舞台ということなので、ジン・ハイマニューバにしようと思います。
武装については後々…


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IS学園へ

あけましておめでとうございます。
今年も本作やその他作品をよろしくお願いします。




IS学園の校門前には、俺の姉、織斑千冬が待っていた。

隣には千冬姉より大分背の低い眼鏡をかけた女性も待っていた。

 

久しぶりに千冬姉と再会することができて、俺は嬉しさで思わず抱きしめたくなったが、自分は今、【織斑一夏】では無く、【カムイ・リンクス】なんだ、と胸に言い聞かせ、千冬姉の前に向かった。

 

 

「束から連絡を受けたが、お前がもう1人の男性操縦者のカムイ・リンクスだな?」

 

「はい。

カムイ・リンクスです。

フランス出身で年は16です」

 

「ああ、私は織斑千冬だ。

お前が入ることになるクラスの担任を勤める」

 

「私は副担任の【山田 真耶】です。

よろしくお願いしますね、リンクス君!」

 

「ええ、よろしくお願いします。

織斑先生、山田先生」

 

 

俺は頭を下げ、あいさつを返した。

 

 

「お前は束の所で世話になっていたそうだが、あいつは何故、お前に興味を持ったんだ?

あいつは身内以外の奴とは関わりを持つことを極端に拒否していたほどだ」

 

「それは自分には何とも…。

ですが、俺を助け出そうとしていた時、束さんは生きていたことに喜んでくれました。

篠ノ之 束という人間は人間不信である、と言う情報が世界では流れていると思いますが、あの時の束さんはそんなことを感じさせないほどに、見ず知らずの俺に対して必死に救おうとしてくれました」

 

「…そうか。

リンクス、ありがとう。

お前が、あいつのことをそのように思っているのは友人である私にとっても嬉しいことだ」

 

 

俺は、織斑先生の質問に対してそのように返したが、この返答に関してはあらかじめ束さんの作成したプロフィールを元に俺が考えたでっちあげだ。

 

 

「いえ。

それで、これからなんですが、俺はどうすればいいですか?」

 

「ああ。

お前には寮に入ってもらう。

急な話故に相部屋で相手は女子だが、そこは我慢してくれ。

それと、束からお前と篠ノ之 箒用に専用機が渡されていると話を聞いているが?」

 

「はい。

こちらがそのスペックになります」

 

 

俺はカタログスペックの書類を織斑先生へ渡した。

 

 

「ああ、すまない。

……第四世代試作型IS【赤椿】、第三世代試作量産機【ジン・ハイマニューバ】。

…束、またとんでもない物を作ろうとしているな…」

 

「だ、第四世代!?試作型にしても、凄すぎますよ!!

各国が第三世代の試作にようやく取り付けているというのに、更には量産機まで!?」

 

 

と、織斑先生は頭を抱え、山田先生は驚いていた。

 

 

「では、山田先生。

リンクスを寮まで案内してください。

そして、リンクス、寮に荷物を置いたらそのまま山田先生にアリーナへと連れてきてもらえ。

お前の適正を確認させてもらう」

 

「分かりました。

それでは、山田先生、案内お願いします」

 

「は、はい!では、リンクス君こちらです!」

 

 

 

山田先生に案内されIS学園の敷地内を歩き、ホテルの様な内装の建物へ入っていった。

 

 

「...随分と高級感がありますね。

もっと他の設備へ資金を回した方が良かったんじゃないですか?」

 

「...あー、やっぱりリンクス君もそう思いますか?

実は、上の方から圧力が掛かったとか何とかあったみたいで...」

 

 

と、山田先生は寮の内装についての知っている事を教えてくださった。

その途中、何人かの女子生徒がおり、

 

 

「ねぇ、なんでこんな所に男がいるのよ?」

 

「私が知る訳ないでしょ?」

 

「...汚らわしいわね」

 

 

と、侮蔑の目をしながら俺の方を向いてヒソヒソと話していた。

山田先生には聞こえてないみたいだが、俺には聞き取ることが出来た。

 

 

「やっぱりリンクス君は見られてますね。

興味あるって感じの視線が向けられてますよ?」

 

 

と、むしろ勘違いしていた。

まあ、その方が問題へ発展しなくて俺としては助かるんだが...。

俺が言わないことで問題へ発展しないのならばそれに越したことは無い。それに、下手に女尊男卑主義の人を刺激するといらぬトラブルへ巻き込まれそうで、現時点では勘弁したい。

 

 

「ここがリンクス君の部屋になります。

そして、鍵はこちらです。

急なことだったので相部屋となってしまったので、しばらくは女子との生活になりますが、我慢してください。

あ!い、如何わしいことはダメですからね!?

て、私ったら何を言ってるんでしょうか......!?」

 

 

と、山田先生に部屋の前に案内してもらったが、本人が自分の言葉で自爆し、顔を真っ赤にしていた。

自爆している山田先生から鍵を受け取り、俺はノックして寮の部屋【1025】室へと入った。

廊下の内装からも予想できたが、寮の部屋は高級ホテルのような一室だった。

 

山田先生は相部屋と言っていたのだが、同室の人がまだ入寮したという痕跡はなかった。

入学式の頃に入ってくるんだろうか?

 

俺はベッドへ荷物を置き、束さんによる自作のISスーツや持ってきていた端末、貴重品などを別のカバンへ詰め、部屋を出た。

 

 

「あ、準備はできましたか?リンクス君」

 

「はい。

それでは、アリーナへの案内をお願いします」

 

「任せてください!」

 

 

俺は山田先生に付いていき、アリーナを目指した。

アリーナ前で織斑先生が待っており、

 

 

「来たな。

それでは、更衣室でISスーツに着替えてこい。

山田先生も準備をお願いします」

 

 

と、言って、アリーナの中に入っていった。

俺は案内板に従い、男子更衣室へと向かい、ザフト軍赤服のパイロットスーツへ着替え、自分の専用機の待機形態である腕輪を右腕へ装着し、指定されたピットへと向かった。

 

 

『よし、来たな?リンクス。

これからお前には実力を測るために山田先生との試合を行ってもらう。

この試合に負けたからといって、特に何かが左右される訳でも無いから、気負う必要は無い。

準備が出来たら、フィールドへと続くカタパルトへと乗れ』

 

 

と、織斑先生に指示され、俺は自分のISを起動した。

 

頼んだぞ、ジン!

 

俺の身体を光が包み、光が収まると俺の目線は高くなり、腕は所々を装甲が覆い、軽装を身に纏ったような感じになっていた。

そのまま、カタパルトの上まで歩き、装甲を纏った両足をカタパルトに乗せる。

 

そうすることで、機械音声が流れ、射出のカウントダウンが始まり、俺は飛べるように構え、背部のスラスターの出力を上げていく。

 

 

『射出までカウント5...4...3...2...1、射出します』

 

「カムイ・リンクス、ジン、発進する!」

 

 

機械音声に合わせてカタパルトが射出され、それと同時に機体のスラスターを一気に吹かせ、フィールド内へと飛び出した。

 

フィールドには既に深緑色のIS【ラファール・リヴァイヴ】を纏った山田先生が待機していた。

 

 

「ホントにISを動かせるんですね!

まさか、二人もISを扱える男の人がいるだなんて...!」

 

『山田先生、私語はその辺で。

それでは、試合を開始しろ。

アリーナの使用時間は限られているからな。

30分を過ぎれば、試合を中断させる!』

 

 

と、織斑先生が管制室から話すと、機械音声でまたカウントが始まり、そのカウントがゼロになった。

 

 

「では、行きますっ!!」

 

 

山田先生との試合が開始された。

カムイ・リンクスという人間にとって初めての対人IS戦闘が始まった。

 

 




カムイ(イチカ)の専用機
【ジン・ハイマニューバ】に、なりました。
見た目は、今までのIS作品では、MS系統はフルスキンが主だったと思うんですが、そういう意見もあり、フルスキンにはしない設定にしました。
背部のスラスターはジンシリーズの形と同じ風ですが、腕、脚の装甲は、ある程度、ISスーツが露出した感じです。
頭部は、よくあるバイザー型をイメージしてください。
ザフトMSのモノアイと同じライトピンクカラーです


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適性試験

戦闘回になります。
久しぶり過ぎて、書けるか不安なんですがね...


山田先生はロケットランチャーを二門展開し、それを放ってきた。

 

俺はアサルトライフルを一丁展開し、飛んでくるロケット弾を撃ち落した。

 

 

束さんから頂いた【ジン・ハイマニューバ】には、武装を多く積んである。

 

射撃武装はアサルトライフルが一丁、脚部外側に取り付けている三連装ミサイルポッド、無反動バズーカを一門、スナイパーライフルを一丁。

近接武装に日本刀型の実体剣を一本、同サイズの二本の実体剣。

と、豊富な射撃武装と近接武装を積んでおり、その上で、高機動スラスターやバーニアを積んだ、全距離対応型となっている。

流石に、コズミック・イラで主流になっていたビーム系武装は開発できていないので、ビームライフルなどは搭載されていない。

 

 

距離を取り、スナイパーライフルで山田先生のISの装甲が無い部分を狙い撃った。

 

 

「甘いですよっ!」

 

 

しかし、ライフルから放たれた一撃は山田先生に最低限の動きで回避され、アサルトライフルで反撃を行われてしまった。

アサルトライフルの弾丸から逃れようと機体を射線上から逸らしたが、回避が遅れ、脚に被弾してしまった。

 

それにより、俺のシールドエネルギーがいくらか減少した。

 

 

IS競技における勝敗は、あらかじめ充填されていたエネルギーを武装によってダメージを与え、0にすることで勝利となる。

ISには操縦者を攻撃から保護する【絶対防御】と呼ばれる機構が備わっている。

これは、シールドエネルギーを多く消費してしまうので、操縦者への危険が無い場合、ほとんど発動することが無い。

しかし、IS戦において、装甲で隠されていない部分を攻撃されると絶対防御が発動し、大幅にシールドエネルギーを減少させることができる。

 

 

俺が受けた個所は脚部装甲に守られていた個所だったので、絶対防御が発動せず、それほどエネルギーを消費していない。

けれど、このまま受け続けると、エネルギーもすぐに底を尽いてしまうので、俺は左腕にシールドを展開し、アサルトライフルを防いだ。

 

 

「リンクス君、咄嗟の判断力が素早いですね!

それに初心者とも思えないほどに動けています!

代表候補生の中でも上位へと登れるほどの動きですよ!」

 

 

と、山田先生は俺にアサルトライフルを撃ちながら話しているが、さっきまでの何処か初々しい新任教師という感じは無く、ベテラン教員って感じのオーラを纏っていた。

 

 

「ってことは、それを圧倒する山田先生は国家代表レベルってことですか?」

 

「いえいえ、私なんて候補生止まりでしたよ!

……まぁ、織斑先輩たちがいた頃の代だったってこともあるんですけどね。あの頃の皆さんは凄かったんですよ…。

アハハァ……」

 

 

と、山田先生は急にテンションが下がりながら、自分の候補生のころの話をした。

 

 

「でもっ!今の私は先生ですっ!

先生として、リンクス君には負けられませんよっ!!」

 

 

山田先生は近接用ブレードを二本展開し、急接近してきた。

俺はそれを防ぐために日本刀型の実体剣を腰から抜き、迎え撃った。

 

 

「せいっ!

私は、基本は射撃戦がメインですけどっ!

接近戦もできるんですよっ!!」

 

 

山田先生はそう言いながら、二本のブレードで押し切ろうと力をこめてくる。

俺は押し切られまいと、脚部ミサイルポッドを山田先生へと放った。

 

 

「!?そんな所にミサイルを!?」

 

 

山田先生は咄嗟に機体を後退させるが、ミサイルから逃れることはできず着弾してしまい、シールドエネルギーを削ることに成功した。

そのまま追撃を掛けようと、俺はアサルトライフルをミサイルの着弾によりできた爆風の中に連射するが、

 

山田先生が爆風の中から急加速を掛け、シールドを前に構えながら突進を仕掛けてきた。

咄嗟の事で、対処が遅れてしまい、アサルトライフルを弾き飛ばされてしまった。

 

 

「更に行きますよっ!!」

 

「!?パイルバンカー!?」

 

 

シールドを前に構えていたことで、パイルバンカーが隠されて見えなかった俺は、思わず驚いた。

防ごうとシールドを構えたが、シールド越しにパイルバンカーを放たれてしまった。

鋭い杭が撃ち出された勢いで、俺は大きく吹き飛ばされてしまい、危うく、アリーナの防護シールドへ打ち付けられそうになった。

 

更に、シールドエネルギーは大きく削られ、4割を切ってしまった。

 

 

「最初の攻撃に対処できるかどうかで、試験の際のレベルを判断するんですが、リンクス君の対処の速さや反撃を見て、このレベルでも行けると判断しました」

 

 

と、山田先生は俺に話す。

IS操縦に関して、先生の方が圧倒的に上手だったと実感させられた。

 

 

「【流石】の一言ですね。

でも、俺だってこのままやられる訳にはいきませんよ」

 

 

俺は、実体剣を二本展開し、それを連結させた。

頭の中でこれまでの戦闘の時のように種が割れた感じがし、意識が鮮明になった。

スラスターのエネルギーを放出し、そのエネルギーを吸収するのを意識し、再び、スラスターのエネルギーを一気に放出した。

 

 

「うおぉぉぉ!!」

 

「【瞬時加速(イグニッション・ブースト)】!?

入学時のこの段階で!?」

 

 

山田先生へ向けて爆発的な加速力で接近した。

その行動に驚いたからなのか、山田先生は対処ができずあたふたとしていた。

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

「シ、シールド!!」

 

 

山田先生は素早く物理シールドを展開したが、俺は連結剣を横に薙ぎ払いシールドを弾き飛ばした。

 

 

「キャッ!?」

 

「でぇぇぇい!!」

 

 

そのまま、山田先生のシールドエネルギーを削るべく、連結剣を振るい、エネルギーを削っていった。

 

 

「ッッ!!」

 

 

しかし、俺が振るった連結剣の軸線上に山田先生が咄嗟にIS用のグレネードを展開し、振るった剣を止めることが出来なかった俺はグレネードを斬ってしまった。

 

ドォォン!!

 

と、爆発が起こりグレネードを切り裂いた俺と近くにいた山田先生は爆発に巻き込まれてしまった。

 

 

「グっ…!!」

 

「ああっ!?」

 

 

と、俺と山田先生は別方向へ吹き飛ばされ、俺のエネルギーは残り2割ほどになってしまった。

 

そしてそこで

 

 

『そこまで!!

制限時間の経過により、シールドエネルギーの残量から勝者山田先生!!』

 

 

と、織斑先生のアナウンスが入り、俺の敗北でこの試験は終了だった。

 

 

「ふぅ~、試験という事を忘れて熱くなりそうでした…!

リンクス君、お疲れ様です!

検査はこれにて終了になりますので、こちらのピットへ付いて来てください!」

 

 

と、さっきまで戦っていた相手とは思えないくらいに新任教師感が出ていた。

山田先生に付いていき、ピットで消費してしまったエネルギーの補給等を行っていたら、織斑先生がピットへと入ってきた。

 

 

「ご苦労だった、リンクス、山田先生。

これがIS学園の教師の実力だ。

知識、技術面において、聞きたいことがあれば聞くといいだろう。

…まあ、技術に関しては必要は無さそうだがな」

 

「そうですよ!

リンクス君すごいですね!

現時点で瞬時加速を使うことができるなんてっ!!」

 

「瞬時加速ですか。

あれって、そんなに難しいものなんですか?」

 

「難しいですよ!

スラスターから噴出したエネルギーを再吸収して、そのエネルギーと同時に新たにスラスターからエネルギーを放つんですから!

大抵の人がやろうとすると、貯めが不足したり、貯めすぎたりで失速したり、制御ができなくて突っ込みすぎたりするんですよ!?

……私だって、習得するのにどれだけ掛かったか…」

 

「今では違うが、本来、【瞬時加速】という技術は代表候補生になるための必須技術だったのだ。

しかし、習得できる人間が少なくてその条件は無くなったのだがな」

 

 

それほどの技術だったのか...。

理論に関しては束さんに聞いてたけど、あの時の貯めて放つ感じは殆ど感覚でやっていたから、教えろとか言われても無理だろうな…。

 

 

「それと検査した結果、お前のIS適正はA+だった。

中々なものだな。

候補生の中でもここまで高い人間は、そうそういないぞ。

卒業すれば、フランスの国家代表でも目指してみるか?」

 

「いえ、束さんの元へ帰りますよ。

まだ恩を返し切れていませんし、やらないといけないことがありますから」

 

「そうか。

それではゆっくり寮で休むといい。

が、それと同時に予習もしておけよ?

まあ、アイツの所でいたのならここでの勉強はかなり楽だと思うが」

 

「...織斑先生、ひとつ聞きたいのですが」

 

「なんだ?この後も入学式へ向けての準備をしなくてはならん。

手短に頼むぞ」

 

「俺と同じ男性操縦者の織斑一夏についてです。

ご姉弟ですよね?良かったら話を聞かせて欲しいんですけど」

 

 

同じ男性操縦者だから、という理由でなら聞き出せる情報もあるかもしれない、と思い、俺は織斑先生へ尋ねた。

 

 

「弟のことか。

生憎と答えられることは少ないぞ。

私は基本寮住まいだったから、アイツのことを放って置きすぎたからな。

一時期はドイツに滞在していたし、一緒にいた時間は殆ど無かった」

 

 

と言って、織斑先生は行ってしまった。

それからは寮の自室へ戻り、持ち込んだ荷物の荷解きを行って、1日を終えた。

 




カムイのジンの設定は後日上げます。

次は入学まで飛ぶかな...もしくは、前日かなって感じです。



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赤き椿

SIDE カムイ

 

 

この状況、キツい...キツ過ぎるぞ......!

俺カムイ・リンクスはIS学園内の食堂で1人、食事を摂っていた。

 

俺と山田先生の戦闘が終了し、寮へ戻ってから食事を取りに向かったのだが、当然、寮にはまだ男は俺一人なので周りは女子だらけだ。

 

そんなとこで食事を取っていれば、どうなるか分かるだろうか?

 

 

「あの子がこの前、ニュースで分かった男の操縦者?」ヒソヒソ

「みたいね。何でも篠ノ之束博士の所で暮らしてたとか」ヒソヒソ

「嘘っ!?じゃあ専用機とか持ってるのかしら!」ヒソヒソ

 

 

と、色々と話している女子生徒たちの声が聞こえる...。

そう。全員の注目が俺に集まっているのだ。

山田先生に案内され、寮を歩いていた頃には陰口のようなものを言われていたのだが、今は何というか興味深々という感じがあちらこちらからにじみ出ている状態だった。

 

 

最初の方はまだ、少なかったから助かった。

けど、人が人を呼んで今はこの食堂には大勢の人が集まっている。

 

 

誰か...せめて気をまぎらわす相手をしてくれ...!

 

俺が心でそう願っていると、1人の生徒が話しかけて来てくれた。

 

 

「ここ、空いているか?」

 

「!あ、ああ!空いてるぞ!」

 

 

そう言って俺は声のした方を向くと、そこには以前電話で会話をした、俺の幼馴染の篠ノ之箒が立っていた。

 

 

「では、失礼させてもらう。

それで、久しぶり...で構わないか?」

 

「ああ、そうだな。

久しぶり、箒。

ちなみに今の俺はカムイ・リンクスだからな?」

 

「分かっているさ。

姉さんから何も言われていないと思ったか?

ちゃんとそこいらの情報も得ているに決まってるだろう」

 

 

と、言いながら箒は皿に入っていた天ぷらを齧る。

 

 

「部屋に男物の荷物があったからな。

お前が来ているのだろうと思って、こっちに来た。

その予想は見事に当たったな」

 

「てことは、俺の相部屋相手は箒なのか?」

 

「だろうな。

恐らく、姉さんが手回しをしたんだろう。

後、私の自衛用に機体を預かっていると聞いてるが?」

 

「ああ、それなら部屋に戻ってから渡すさ。

流石にここで渡すのは...な?」

 

「う、うむ。

それもそうか。

随分と見られているな...食べづらいぞ...」

 

 

たくさんの視線が集中する中、俺と箒は何とか食事を終えて、そそくさと寮の自室へと戻り、一息をついた。

 

 

「はぁ...食事だけでここまで疲れるとはな...」

 

「全くだ。

...少し失礼するぞ」

 

 

箒はそう俺に断りを入れるが、俺が返事を返す前に箒は俺を抱き締めてきた。

 

 

「お、おいっ!?」

 

「...本当にお前が生きていてくれて良かった!

電話では声を聞けたが、実際に目で確かめないと実感が無くてな...。

再会出来たならこうしようと考えていたのだ」

 

 

箒はそう、涙を流しながら俺に話した。

 

 

「ちゃんと生きて帰ってきた。

ただいま、そして久しぶり、箒」

 

「ああっ!ああっ!

おかえり、一夏っ!」

 

 

箒が泣き止むまで俺は彼女の頭を撫でていた。

泣き止むと、箒は疲れ切ったのか、そのまま寝てしまった。

箒をベッドへ寝かせたあと、俺は束さんへ連絡するために端末を起動し、束さんのラボへと通じる秘匿回線で連絡を取った。

 

 

『もすもすひねもす〜?束さんだよ〜!』

 

「こんばんは、束さん。

一応、IS学園に着いて一段落したので連絡しました」

 

『うんうん!無事に着いてよかったよ!

あ、箒ちゃんは?』

 

「さっきまで起きてたんですけど、今はぐっすり寝てますよ」

 

『ホント!?じゃ、じゃあ!箒ちゃんの寝顔写真を!!』

 

 

連絡を行い、同室の幼馴染の話をすると、束さんは寝顔写真をしつこく要求してきた。

 

 

『ッッ!!これでまた、私は...戦えるっ!!

私の戦いを...!!』

 

 

束さんは俺が送った箒の画像を見て、歴戦の戦士が新たな剣を受け取り、戦場へ赴くようなセリフを言っていた。

 

 

「それと、千冬姉にも会えました。

最も、ただの教師と生徒としてですけどね」

 

『それにしてはカー君嬉しそうだけど?』

 

「まあ、自分の家族が元気な姿を見ることができたんですから、ね。

でも、その幸せを与えたのが敵、だというのなら複雑な気持ちなんですけど」

 

『大丈夫。

ちゃんとカー君がちーちゃんに幸せを与えられるようになれるよ。

そのために君も、私も箒ちゃんも戦うって決めたんだもんね』

 

「ありがとうございます。

とりあえず、今日の所はこの辺で切りますね。

また、時間のある時に連絡します」

 

『はいは~い!

まったね~?』

 

 

そう言って、束さんは通信を切った。

俺も端末を切り、入寮時に受け取った参考書を読んで予習を行ってから横になって眠りについた。

 

 

翌日、目を覚ました俺と箒は束さんから受け取っていた箒の専用機【赤椿】の性能調査の為に、織斑先生から許可をもらい、アリーナを借りていた。

 

 

「じゃあ、展開してみてくれ、箒」

 

「う、うむ…!」

 

 

やや緊張した様子で箒はISの待機形態である勾玉の付いたブレスレットを握り締めていた。

そして箒が眼を瞑り、少しするとブレスレットが光り、箒をISの装甲が包んでいた。

 

 

「これが…私のIS…」

 

 

赤椿を身にまとった箒はその姿に目をきょろきょろとしていた。

 

 

「それじゃあ、軽く飛んでみてくれ」

 

「う、うむ」

 

 

すると箒の機体は徐々に浮上し、アリーナの客席辺りにまで上昇すると、そのままゆっくりと移動し始めた。

俺はそんな箒の後を追うように飛び、隣に並んだ。

 

 

「どうだ?

束さんが言うには、箒が扱うように調整してるから扱いやすいだろうって言ってたけど」

 

「ああ。

思ったよりもしっくり来る感じだ。

使い慣れた竹刀で素振りをしているかのように、スムーズに動ける」

 

 

確か、束さんは操縦者支援のシステムを組み込んで、更に箒の動きにのみ合わせるように専用の調整をしてるらしい。更には箒が動かせば動かすほど、ISが学習し、より箒が扱いやすくなるように進化しているそうだ。

 

そしてそれを証明するかの様に見る見るうちに箒の動きは洗練されて行き、飛行を行うのみに関しては自由に飛ぶことができていた。

 

 

「じゃあ、箒!

次は、武装を展開してみてくれ!」

 

「武装?

ああ、この刀とそれにこれは……脇差か?」

 

 

箒が展開した武装は日本刀と日本刀の二分の一くらいの長さの脇差だった。

これは束さんが箒用に搭載した武装だ。

箒は父親が剣道の師範をしており、小さいころから剣に触れていた。なので、剣道や更には剣術を教わっているので、篠ノ之流剣術において用いられる彼女が慣れ親しんだ武器を搭載しているのだ。

 

 

「刀の方は【雨月】、脇差の方は【水月】らしい。

実際に振るってみたらいいと思うぞ?」

 

「では、そうしてみよう」

 

 

そう言って、箒は二本の武装を振るった。

すると、それぞれの刀から赤い斬撃が振るった先へと飛び、途中で消えた。

 

 

「これは…?」

 

「その武装にはエネルギー発生装置を搭載しているらしくて、振るうことで遠くにいる相手に斬撃を飛ばせることができるそうなんだ。射撃武装を扱うのが苦手だろうという束さんなりの配慮らしいぞ」

 

「…なるほど」

 

 

それから何度か試し切りを行った後、的を表示させ練習を行い、箒はISを解除し今日の練習は終了した。

そして時は少し過ぎ、IS学園の入学式が行われた。



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インフィニット・ストラトス編 本編
入学初日 前


これは、前よりはマシだが結構キツイな……。

俺、カムイ・リンクスは食堂で受けた視線同様のものをここ、1年1組の教室でも浴びていた。

だが、その視線の数はクラスの内、半分程度は別の奴へ向けられている。

【織斑 一夏】。俺が【イチカ・オリムラ】としてコズミック・イラでザフトの軍人として戦っていた時に突如、俺に成りすまし織斑家に現れた男。

 

織斑一夏が先頭のど真ん中の席に座っているので、窓際の真ん中あたりに座っている俺よりもそっちへ視線が集中していた。

ちなみに、箒は俺の座っている席の列の先頭に座っている。

すると、前のドアが開き、山田先生が教室へ入ってくる。

 

 

「皆さん、おはようございます!

ようこそ、IS学園へ!皆さんの御入学を心より歓迎致します!

私は副担任の山田真耶と申します。これから1年、皆さんと共に頑張っていきますのでよろしくお願いします!」

 

 

と、山田先生は教壇へ立ち、自分の名前を黒板サイズのスクリーンへ写し、自己紹介を始めた。

 

 

「「「「「.........」」」」」

 

「「よろしくお願いします、山田先生」」

 

「は、はい!よろしくお願いしますね!篠ノ之さん!リンクス君!」

 

 

しかし、クラス内は謎の緊張感?に包まれていて、返答したのは俺と箒の二人だった。

 

 

「では、自己紹介を出席番号順でお願いします。

最初は相川さんから!」

 

「はい!出席番号1番!相川清香です!―――――」

 

 

と、相川さんから自己紹介が始まり、そのまま何人かが自己紹介を行い、次に織斑一夏の番になった。

しかし、山田先生が呼ぶにもかかわらず、彼は反応せず何かを考えたままだった。

 

 

「織斑君?織斑君?」

 

「!?は、はい!」

 

「あの、自己紹介で『あ』から始まってて今『お』なんだよね。自己紹介してくれるかな?ダメかな?」

 

 

と、山田先生が申し訳なさそうにへこへことした態度で織斑へ尋ねていた。

…山田先生、そんなに弱気にならなくても……。

俺は検査試験の時の山田先生と今の先生の雰囲気の差に少し呆れていた。もっと、堂々とすればいいのに、と。

 

 

「んん!!…え、えーと、織斑一夏、です。よろしくお願いします」

 

 

織斑は短くそれだけ口にした。

しかし、周りの生徒はそれで終わることを許さないかのように、鋭い視線を織斑へ浴びせていた。

そして、その視線を受けた織斑は意を決したかのように息を大きく吸い込み、

 

 

「―――以上です!!」

 

 

と、短く言った。

一体、何を言ってくれるのだろう、と期待していた他のクラスの人たちはその予想外の一言で何人かズッコケていた。

そして、そのドタバタでクラスの殆ど、俺と箒以外は教室へ入って来る人に気づかなかった。

ああ、今だけは織斑へ同情しよう…。

心の中で俺は織斑へ同情し、織斑の頭へ攻撃が降り注ぐのをただ眺めていた。

 

織斑千冬という、我が姉の出席簿チョップという攻撃を。

 

ズドンッ!

 

出席簿らしからぬ音が響き、織斑は頭を押さえ、クラスの人たちは音の発生源へ目を向ける。

 

 

「げ、げぇ!?千冬姉!?」

 

「織斑先生だ、馬鹿者!!」

 

 

更に出席簿が頭へ炸裂した。

 

 

「山田先生、HRを任せてしまってすまなかったな」

 

「あ、いえ!先生、会議はもう終わったんですか?」

 

「ああ。――諸君、私が担任の織斑千冬だ。諸君ら新入生に基礎を叩き込むのが私の仕事だ。

私の言うことはよく聞き、理解しろ。分からないなら分かるまで指導してやる。ただし、分からないままにしておくことは許さん。それと、逆らってもいいが、逆らうならばそれ相応の対応を見せてもらうぞ?いいな」

 

 

と、織斑先生は一息に話した。

あれ?少し、態度が軟化してるか?

昔だったら、「私の言うことには、はい、かyesで答えろ」的なことを言ってたと思うけど、分からないなら分かるまで教えるとか絶対言わなかっただろうな。

 

と、俺が考え事をしたせいで、その後の兵器の対応に遅れてしまった。

 

 

「キャーー!!千冬様、本物の千冬様よ!!」「ずっと、ファンでした!!」「私、お姉さまの為なら死ねます!!」

 

 

と、様々な声がクラスを埋め尽くし、俺の耳はやられてしまった。

な、なんだ、これは…?戦略兵器か…?

と、一瞬勘違いしていしまうほど、耳が死にかけた。

 

 

「―――はぁ、何故、私のクラスにはこれだけ馬鹿者が集まるんだ?」

 

 

と、織斑先生はやれやれと頭に手を置いていた。

 

 

「で、貴様は満足に自己紹介の一つもできんのか?」

 

「い、いや、俺は、ちゃんとしてますが・・・?」

 

「馬鹿者、どこがだ?」

 

 

そう言いながら、織斑先生は再び織斑をしばく。

 

 

「まあいい。それで、山田先生?自己紹介はどこまで済みましたか?」

 

「今、番号順で織斑君まで済んでいます。多少、時間を費やしてしまいまして…」

 

「はぁ、まだ数人ですか…。仕方ないな。

では、リンクス!時間の都合もあるから代表でお前が自己紹介をやれ。

他の奴らも気になっているだろうしな」

 

 

と、織斑先生は俺を指名してきた。

薄々、そんな予感はしていたから、俺はスッと立ち上がり、話し始める。

 

 

「カムイ・リンクスです。年は皆さんより一つ上の16歳です。

ニュースなどで話題になりましたが、篠ノ之博士の下で保護され、養子として暮らしていた際にISを扱えることが分かりました。とはいえ、皆さんと同じ初心者です。一緒に頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。―――最後に、篠ノ之博士とは親子の関係ですけど今、あの人がどこにいるかとかは分からないのでその辺の質問はお答えしかねます」

 

 

そう言って、席へ座った。

 

 

「ふむ、なかなか良い自己紹介だ。

しかし、リンクス。自己紹介なのだから、もう少し自分の事を話すべきだ。

分かったか、織斑、自己紹介とはああいうことを言うんだ。

分かったら座れ」

 

 

そして、HRは終了し、授業までの間、小休止が挟まれた。

クラス内だけでなく、廊下からも他クラスの生徒が男性操縦者を見に来ている中、箒が俺の元へきて話しかける。

 

 

「カムイ、大丈夫か?色々と」

 

「ああ、箒。視線には大分慣れてきたよ。

にしても、箒こそよくこの視線の中で話しかけてきたな」

 

「視線は関係ないさ。それに、私とお前は一応、家族のようなものだぞ?

家族と話すのに誰かの許可がいるのか?」

 

「それもそうだな」

 

 

と、箒は周りにも聞こえる感じで話す。

形式上、俺は束さんの息子なので、箒は叔母に当たる。

周りが俺や織斑に対して話しかけ難い状態だが、こう話しかけることで、特に違和感を持たれることなく箒は話すことができる。

 

 

「え、篠ノ之さんて、リンクス君の家族なの?」「ほら、篠ノ之博士の養子だから」「ってことは、篠ノ之さんは博士の妹なんだ~」

 

 

と、周りも解釈し、俺と箒が話している状態をクラスの皆は家族の会話っていう風に見ていた。

しかし、

 

 

「よ、箒、久しぶりだな」

 

「…織斑」

 

 

俺がIS学園に入学した理由でもある本人、織斑一夏が気さくな感じで箒へ話しかけてきた。

 

 

「なあ、屋上言って話そうぜ!」

 

「悪いが、今は家族と話してるんだ。

後にしてくれ」

 

「別にいつでも話せるだろ?

な、お前もいいよな?」

 

 

と、俺に対して聞いてくるが、その眼はどこか俺を不審、異質と言った思いがこもっていた。

 

 

「いいよ、箒。

後で話そう。昼食の時でもまた話せばいいんだからさ」

 

「……ああ、分かった」

 

 

で、織斑は箒を連れて教室を出た。

俺は箒の端末宛てにメッセージを送っておいた。

 

 

『乗り気じゃ無かったのに無理に向かわせてごめんな』

 

『気にするな。何とか情報を抜き出せるように努力する』

 

 

と、返信が返ってきたので、少し安心し端末を閉じ、次の講義のための参考書を取り出した。

チャイムが鳴る少し前に箒が教室へ戻ってきて、後から不機嫌そうな織斑も戻ってきた。

そして、授業が始まり、山田先生が授業の進行を始めた。

 

 

「ISはその運用においては現時点では国家からの承認が必要であり、もし違反、逸脱した運用を行った場合は、アラスカ条約によって罰せられます。

では、アラスカ条約について、そうですね―――リンクス君、説明をお願いします」

 

「はい」

 

 

俺は返事をして席を立った。

その時、山田先生及びクラス全員が俺の方を向いてきた。

男性IS操縦者がどれほどの知識を持っているのか、という興味があるんだろうか。

俺は束さんの資料や参考書を基に勉強した内容を話す。

 

 

「アラスカ条約、正式にはIS運用協定はISという現行の兵器を遥かに上回る性能を持った力を日本に対して諸外国がISに関しての情報の開示、研究、共有を目的として定められました。

条約には、研究のための国家機関の設立とISという圧倒的な力を軍事利用してはならないという物などが存在しています」

 

「はい、その通りです!

では、その国家機関について、織斑君!二つお答えください!」

 

「うぇ!?」

 

「…なんだ、織斑、事前に参考書を渡しておいたはずだろう。

山田先生の質問に関しての答えは最初の数ページ以内に書かれている。

―――待て、お前、参考書はどうした?」

 

 

織斑先生は織斑へそう尋ねた。

そう言えば、織斑の机にはノートと筆記具しか出ていないな。

 

 

「古い電話帳と間違えて捨てました!」

 

 

織斑は潔くそう言った。

織斑先生は見かねて、織斑の頭へ出席簿を振り下ろした。

 

 

「はぁ、山田先生、申し訳ありませんが別の人へお願いします」

 

「わ、分かりました。では、布仏さん――――」

 

 

こうして、織斑の無知さを証明するかのような授業が終了した。

 

 




織斑の正体について分かった人はいるでしょうか(ノーヒントのくせに何を言ってんだか)

次回は縦巻きロールさんの登場になります。


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入学初日 中

最初の授業が終了し、俺は箒と会話を行っていた。

すると、織斑の席辺りで織斑とイギリスの代表候補生の【セシリア・オルコット】が会話をしていた。

 

 

「セシリア・オルコットか…。箒は見た感じどうだ?」

 

「代表候補生という地位に胡坐をかいている女、と言ったところだな。

事実、代表候補生を知らないことを恥と罵っている。

まあ、織斑も学が足りていないがな。

流石に代表候補生という単語は義務教育の課程で何度も出て来るが、それを覚えていないということは、な」

 

「そうなのか。

俺が通ってた時はIS関連の授業なんて受けなかったから、小学校の時だと知らなかったかもな」

 

「2、3年ほど前から社会科などで導入されているぞ。小学校なら6年で、中学校なら1年で習うはずなんだが」

 

 

織斑とオルコットの口論は段々と良く分からないところまで発展してきていた。

やれ、代表候補生の自分と同じクラスになれて幸運やら。やれ、入試で教官を倒した云々やら。

と、入試という言葉で、俺は箒へ聞いてみたくなった。

 

 

「箒も一般入学なんだよな?」

 

「ああ、そうだが」

 

「入試っていうか、IS実技の試験て受けたか?」

 

「もちろんだ。

と、言っても、私の場合はほぼ強制で学園に入学させられたからな。

そういうお前はどうなのだ?男性操縦者だったら、入試免除とかでは無かったのか?」

 

「まあ、俺の場合、箒も知ってるけど公表されるのが1週間前だったからな。

起動できるかの検査と軽い実技試験だけだったぞ。

でも、山田先生は強かったなぁ」

 

「そ、そうなのか?私も山田先生が試験官だったが、お世辞にも良い動きとは言えなかったぞ?」

 

「そっか。箒は知らないのか。

山田先生だけかは知らないけど、試験を担当した教員って実は初撃への対処で難易度を変えていくらしい」

 

「本当か?それは」

 

 

と、箒が俺に聞き返してきたが、他にも

 

 

「ねぇねぇ、リンクス君!今の話って本当?」

 

 

と、席が近くの【谷本 癒子】さんも話しかけてきた。

 

 

「ん、谷本さん、でいいんだよな?」

 

「そうだよー。もう名前覚えてくれたんだ。

で、さっきの話の続き、教えてよ!」

 

「ああ。

俺が山田先生と試験を行った時は、動きが洗練されていて、国家代表レベルの動きだったんだよ。

あの人、織斑先生たちの年代の少し下らしいから、国家代表にはなれなかったらしいけど、猛者の中で鍛え上げられた代表候補生って感じだったな」

 

「へぇ!山田先生ってそんなに強いんだ!

じゃ、他の先生もそんな感じなのかな?」

 

「多分、そうだと思う。

手を抜かれた状態っていうか、受験者のレベルに合わせた戦闘で実力や対応力を試すのが目的だって聞いたぞ」

 

「そうなんだ!ありがと、リンクス君!」

 

「ああ」

 

 

と、谷本さんは自分の席へ戻っていった。

と言っても俺の斜め後ろだが。

そのままチャイムがなり、先生たちが教室へ入ると皆、席へ戻り、授業の準備を始めた。

 

 

「さて、次の授業を——と言いたいが、まず、来月行われるクラス対抗戦の代表者であるクラス代表を決めたい。

クラス代表とは、その名の通り各クラスの顔的存在だ。

教員の雑務や行事の際の点呼などを行ってもらう。

言うなれば、学級委員だと思ってもらえればいい。

自推、他推は問わん。

意見の有る奴は挙手をしろ」

 

 

あー、これ後の展開が分かったかも……。

 

 

「はい、織斑君を推薦します」「私もそれに賛成です」「千冬様の弟だもんね」

 

「ふむ、では候補者は織斑一夏…他はいないか?」

 

 

あれ?俺、呼ばれてない?

もしかして予想が外れたか?

 

 

「はい!カムイ・リンクス君を推薦します!」

 

 

と、後ろから谷本さんの声が聞こえた。

振り向くと、てへっという感じの顔をして俺の方を向いていた。

謀られたっていうことか……。

 

 

「え!?ちょっと待ってくれよ、千冬姉!俺、そんなのやらないぞ!?」

 

「馬鹿者、織斑先生だ!

それに、推薦されたのに断るということは、クラスメイトの期待を裏切るということで構わないんだな?」

 

 

織斑が反論したが、そう言われると渋々と頷いていた。

 

 

「リンクスに織斑の2名で構わないか?

他に意見が無いなら決選投票となるが」

 

「納得がいきませんわ!!」

 

「なんだ、オルコット?

言いたいことがあるのならば、立って喋れ」

 

 

織斑先生にそう言われ、オルコットは立ち上がり、話し出す。

 

 

「男がクラス代表だなんて、いい恥さらしですわ!

私に、このイギリス代表候補生で入試トップのセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年味わえと!?」

 

 

と、オルコットは怒鳴りだす。まるで、男という存在を拒絶、汚いものとでもいうように、オルコットはただ自分の主張を押し付けた。

 

 

「実力から行けばクラス代表にふさわしいのは私だというのは自明の理!

私はこのような島国までISの修練をしに来たのであって、極東のサルのサーカスを見に来たのではありませんわ!」

 

「なら、自分で立候補すればよかったじゃないか。

なんで態々、他人に推薦されるのを待ってたんだ?

ああ、そうか。自分が推薦されると思っていたけど、期待通りに行かなくて恥ずかしくなって自分から言って出たのか!

それに、日本を島国だっていうけど、イギリスだって似たようなもんだろ!」

 

 

と、織斑がオルコットの発言にキレたのか、そうまくしたてる。

 

 

「あ、あなた!私の祖国を侮辱いたしますの!?

そ、それに期待などしておりませんわ!」

 

「日本を最初に侮辱したのはそっちだろう!!

後、声が上擦ってるし!」

 

 

と、売り言葉に買い言葉で、もはや収拾がつかなくなっている。

 

 

「決闘ですわ!」

 

「おう、いいぜ!やってやるよ!!」

 

 

と、何故か代表を決めるだけの会議が、決闘にまで発展してしまった。

織斑先生は面白そうに見ているし、山田先生はオロオロしている。

だれも、止めようとしてなかった。

 

 

「それにあなた!!さっきから何で黙っているんですの!?」

 

「そうだぞ!男を侮辱されたのに何でお前はそうも平然としてるんだよ!!」

 

 

と、今度は俺に飛び火した。

俺も渋々立ち上がり、口を開く。

 

 

「はぁ、そもそも、お前たちは何の話をしてたんだ?

これはクラス代表を決めるための会議だろう。

それを男だからとか自国がどうだとか。論点がズレ過ぎてるんだよ。

先生も、面白がってないで止めてくださいよ」

 

「ああ、すまんすまん。

私もリンクスと同じ意見でな。何でクラス代表からここまで口論が発展するのかとつい、可笑しくなってな、ははは」

 

「って、織斑先生!笑い事じゃないですよ!」

 

「わかったよ、山田先生。

では、推薦された3名でISによる決闘を行うことにする。

勝率の高い者にクラス代表を決定する権利をやろう」

 

「わかりましたわ」「わかった」「わかりました」

 

「それと、篠ノ之。

お前も決闘に一戦でいいから参加しろ」

 

「うぇ!?わ、私もですか!?」

 

「なんて声を出している。

お前の専用機の実力をまだ実際に確認していない。

だから、3人のうち、誰か一人を選んでそいつと対戦をしろ」

 

「は、はい。

では織斑先生、聞きたいのですが、3人の中では誰が一番強いのでしょうか?

戦うのでしたら私は強者と戦ってみたいのです」

 

 

と、箒は織斑先生へ問うた。

オルコットは自分が選ばれるだろうなと思い、ふふんと威張っていたが、織斑先生の発言で一気にその態勢が崩れる。

 

 

「リンクスだろうな。

アイツは山田先生の全力を引き出し、最後まで奮闘していたからな」

 

「な!?なぜですか!?私は、入試の時、山田先生を倒しましたのよ!?

な、なのに、何故!?」

 

「オルコット、お前は気づかなかったのか?

山田先生に手加減されていたということを」

 

「…どういうことですの?」

 

「はぁ、リンクス説明しろ」

 

「分かりました。って言っても、山田先生に聞いた内容ですけど。

実技試験は初撃の対応に応じて難易度が振り分けられていて、試験官は相手の対応力に応じて試験を行っていました。

実技試験はISを扱う上手さを確認するのは当然ですが、対応力やきちんとした機動ができるか、などを確認する試験だというのが、山田先生から聞いて判断した内容です」

 

「ふむ。おおむね正解だ。

理解したか?オルコット。

山田先生を倒したと言ったが、事実として難易度が低い状態だったということを頭においておけ」

 

 

わなわなとセシリアは震えながら話す。

 

 

「何故、何故ですの?

何故、私ではなく、紛争孤児のような穢れた男などが!」

 

 

それを聞いて箒が怒鳴った。

 

 

「......おい貴様、今、誰の家族を侮辱した...?」

 

「決まっていますわ!そこの紛争に巻き込まれ死に体になりかけた愚かな男ですわ!」

 

「ほう?言うに事欠いて貴様、私の家族を愚かと罵るか...。

織斑先生、私はこの女を相手に選択します。

大事な家族を侮辱されて黙っているなどできません!」

 

「篠ノ之、少し落ち着け。

まあ、お前の気持ちは分かった。

故に、オルコットとの試合を認めよう。

決闘は来週だ!代表候補者三名と篠ノ之はそれぞれ準備をしておけ!それでは授業を始めるぞ!!」

 

 

と、最後には結局、織斑先生が箒を落ち着け、来週に試合を行うと取り決め、この場での論争は終了した。

俺も、後で箒のケアをしとかないとな



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