ニードレス・オーダー 【ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか】 (概念)
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〜特異点EX〜
01.


残念ながら、
このページは、
ダンまち要素皆無だ!(バァーン)


「…フォウッ!」

 

てしてしと顔を柔らかい肉球が押し付けられる。

 

目を開けると白くてモフモフっとしたよく見知った物体Xが俺を起こそうと奮戦しているところだった。

 

その物体Xを持ち上げて上体を起こし時計を見ると時間は約束の1時間前。

 

「おはよう、フォウ君。」

 

フォウ君をひと撫でして起こしてくれた事を労うと顔を洗って服を着替えた。

 

今日は朝からダヴィンチちゃんに呼び出されている。

 

このタイミングでの用事なら特異点絡みだとは予想できるものの、珍しく危急ではないとの事なので呼び出しは余裕を持って翌朝となった。

 

あの人曰く、「ちょーっと特殊な事態でね、こっちも情報の解析やら準備やら色々あるからミーティングは明日の朝にしよう、うんそれがいい」と珍しく困惑した様子を見せていたが…

 

なにやら職員の人も慌ただしくしているようでカルデア内部は騒然としていた。

 

この雰囲気にはもう慣れてしまったな。

 

過去に幾度となく経験したことがある雰囲気。

 

その度に帰ってこれた事が奇跡としか思えないような体験をして来たのだが…

 

「やぁやぁ、お早いお着きだねぇ。」

 

ブリーフィングルームに着くと絶世の美人がにこやかに挨拶してくれた。

 

「ダヴィンチちゃん、おはよう。今日も呆れるほど美人ですね。」

 

俺の軽口にダヴィンチと呼ばれた絶世の美人はまるで絵画のように口角を持ち上げる。

 

「ありがとう、でも『美女』って言ってくれないんだね。」

 

「それはデリケートな問題ですので。」

 

「ははっ、私は気にしていないよ?どちらでもね。」

 

軽口を済ませて席に着く。

 

するとダヴィンチちゃんが背に負ったモニターが起動した。

 

「キミはもう分かっているだろうけど推察通り、特異点だ。」

 

あぁ、やっぱり

 

「まぁ、予想はしてましたけどね…あれ、そう言えばマシュは?」

 

「今回は先に説明してサポートの準備をして貰っているよ、なんせ状況が状況だからね。」

 

「状況?」

 

ダヴィンチちゃんは覚悟を決めるようにコーヒーを一口飲むとまっすぐこちらを見つけて言う。

 

「今回の特異点、正確な測定もできなければ人類史において一体いつの話かも分からない。人理定礎値EXの特異点だ。」

 

EX、評価不可能!?

 

「正確な測定ができないって…そんな場所にレイシフトが出来るんですか?」

 

「結果だけ言えば『出来る』…とカルデアの全測定機が結論づけている。とは言っても正直何が起こるかは分からない、おそらく通信すら出来ないだろう。」

 

「…」

 

サポートすら受けられない状態で特異点に…

 

だけどそれが世界を救うためであるならば

 

「加えて言うと今回に限ってはキミには『レイシフトをしない』という選択もできる」

 

「なん…て…?」

 

「今までとは違う、この特異点の反応は非常に弱い、介入するまでもなく消えてしまう、本来ならレイシフトするまでも無い、世界の修正力でなんとかなってしまうようなものだからね。」

 

「…は?」

 

レイシフトしなくてもいい特異点

 

そんな物が存在するなんて初耳だ。

 

今までは世界を守る為、人理を修復する為にレイシフトを重ねてきた。

 

それが人理継続機関、カルデアの使命であり、カルデアの唯一のマスターである俺の使命。

 

別に俺は英雄願望があるわけでは無い。

 

ただただ守りたいものを守ってきただけに過ぎない。

 

加えて言うならなるべく自分の命を危険に晒したいとも思わない。

 

いままで何度も命の危険はあったがそれは俺の使命、俺がやらなければいけない事であり、やりたい事だったからだ。

 

しなくてもいいレイシフトなら別にしなくてもいいのでは、と心のどこかの自分が囁く

でも…

 

だとしたらダヴィンチちゃんは何故レイシフトを提案した?

 

「実はね…この特異点からある英霊の反応が計測された。」

 

ある…英霊?

 

「この特異点から…魔術王の反応が計測されたんだ。」

 

「ソロモンの!?」

 

「そうだ、だからこの件はキミに判断を委ねたいと思っている。」

 

「俺の判断でレイシフトを実行してもいいんですか?」

 

「レイシフトは人理を継続するためにしか使えない…と、いってもこの反応は紛れもなく特異点だ。人理定礎値EXならどうとでも説明はつくだろう。」

 

もし、もう一度あの人に…

 

最後まで勝手な自爆で俺たちを救ったあの男に会えるのなら…

 

「行きたい、と思います」

 

その言葉を受け止めるとダヴィンチちゃんはコクリと頷いた。

 

「了承した、ではそんなキミに一つ頼みがある。」

 

「なんですか?」

 

「もし『アイツ』を見かけたら横っ面張り倒してでも連れて来てくれ。」

 

いい笑顔でそんな事を言うダヴィンチちゃんまじ美人!

 

「…了解!」

 

ブリーフィングルームを出ると声をかけられる。

 

「先輩っ」

 

走って来たのであろう、ズレたメガネと少し赤みがかった頬をして我らが頼れる後輩がやって来たのだ。

 

「マシュ」

 

「先輩、決めたんですね。」

 

神妙な面持ちでそう語りかけるマシュの瞳は心配と悔恨が混じり合っている。

 

「はは、マシュには敵わないな」

 

「私は先輩の事ならなんでもわかるんです」

 

胸を張ってそう言って見せるマシュ。

 

やっぱりマシュとのやりとりは心が和むなぁ。

 

「そうかそうか、はっはっはー」

 

愛い後輩の頭を撫でてやると少し恥ずかしそうにしながらもその手を受け入れてくれた。

 

「先輩、今回も私は…」

 

同伴できない悔しさ、更にソロモンの反応。

 

俺よりあの人と付き合いの長いマシュは行きたかっただろう。

 

「気にしないで…って言ってもマシュには難しいか、じゃぁサポートは任せるからね?」

 

「はいっ、任せてください!」

 

うん、いい笑顔だ。

 

この笑顔があるから、俺はあの出来事も乗り越えられたし、これからもここに帰ってこれる。

 

「頼んだよ」

 

「たとえ離れていたとしても私は先輩の盾ですから!」

 

「ん、ありがとな」

 

少しはマシュの気も晴れたかな?

 

マシュのためにも早く帰ってこないと。

 

それから2時間後、遂にレイシフトの時が来た。

 

「準備はいいかな?」

 

ダヴィンチちゃんはいつも通り、いつも通りにしてくれる。

 

「問題ありません、慣れたものですから。」

 

「先輩、ご武運を…」

 

マシュはやっぱり心配そうだな。

 

「うん、行ってくる。」

 

「じゃあ始めよう、藤丸立香。頑張ってね。」

 

---アンサモンプログラム スタート。量子変換を開始 します。---

 

---レイシフト開始まで あと3、2、1、……---

 

---全行程 完了。レイシフト開始します---

 

時間の円筒の中に意識が吸い込まれていく。

 

いつもの感覚、いつものレイシフト。

 

その中でいつも違う、今では懐かしい声がした。

 

 

『これは君の世界では無い、だけどこれは君の物語だ。』

 

『そうだね、名付けるとしたらこれは…』

 

『世界を救うためではない、意味のないレイシフト、不必要な物語』

 

『ニードレス・オーダーでどうかな?』

 




次回、藤丸立香、ダンジョンに立つ!
見切り発進だけど実はもう次の話は完成しているんだぜ(ドヤ顔)
完結目指して頑張るぞい
※時事ネタだけどFGO2周年おめでとう!


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〜始まる物語〜
01.


原作をFGOからダンまちに変更いたしました。
ご指摘くださった方には感謝を!
PS.ホームズ引けません…



「ギャフン」

 

着地に失敗し、さながらアニメのギャグシーンの如く倒れ込んだ。

 

おかげで大いなる大地とスメルキスする羽目になってしまったぜ、鼻が痛い。

 

まぁそれでも海賊のいる船の上や空中うん百メートルに放り出されたりするよりはマシなんだけどな。

 

それにしてもここは…

 

ヒュォォォォォォォ…

 

獣のうなり声のような風切り音、岩肌が露出した壁面、明かりが心許なく気味の悪い薄暗さを演出する通路、洞窟か。

 

「こちら立香、レイシフトは成功しました。聞こえますか?」

 

帰ってくる声はない。

 

いくら洞窟だからといっても魔術通信が阻害されることはない、魔術はプ◯チナバンドなんて目では無いのだ!

 

と言った所で通信が繋がるわけでもなく…

 

こんな洞窟ではいつの時代か、何処の国か、なんの事件が起こっているのかも分かりやしない。

 

魔術通信が使えないということは、レイシフト前にダヴィンチちゃんが言っていた事が現実となったか、魔術通信さえ阻害される場所にいるかのどちらかという事だが…

 

うん?

 

そういえば誰の声もしない。

 

通信だけの話ではなく周囲に誰もいない。

 

つまり、仲間がいない。

 

「…おーい、誰かいる?」

 

通信と同様、返事はない。

 

「ははっ…やばいわマシュ…もうホームシックになりそう…」

 

独り言を言ってみてもやはり反応は帰ってこない。

 

仲間のいない俺に一体何が出来る?

 

前線は仲間に任せてたから使える魔術は支援程度。

 

今はスケルトン1匹倒せやしない。

 

待てまてマテもしかして今までの状況で1番まずいんじゃ…

 

「…!?……ッ!」

 

今のは誰かの悲鳴?

 

かなり近い、今ならまだ間に合うかもしれない!

 

間に合う?『何』に?

 

特異点で起こった事件で今まで俺1人で解決できた事なんてなかった。

 

全部仲間の協力があったから成し得た事だ。

 

俺1人では何も…

 

「…ッ!」

 

なんて考えはしていても次いで聞こえた悲鳴に俺の足はすでに走り出していた。

 

助けられる人がいたら助けたい。

 

俺だけの手の届く範囲は狭いけどまだ俺の手の届く範囲だろ、これはっ!

 

全力疾走で洞窟を駆け抜けると3メートルほどの巨大な影が一つ。

 

見ればミノタウロスっぽい化物に少年が襲われてる。

 

視認できた瞬間にはほとんど脊髄反射で化物に対して指を向けていた。

 

「ガンドッ!」

 

指から放たれた黒紅の魔法には攻撃力は無いものの時間稼ぎ程度にはなるはず!

 

少し距離は離れていたもののなんとか命中させることに成功。

 

少年を二つに引き裂かんとしていた一撃はガントの効力によって紙一重で阻害された。

 

「ヴヴォオオオオオオオオオオ!」

 

まだ動けんのか!どんだけタフなんだよ!

 

次はないぞどうするどうするどうする!

 

こうなったら大声出してこっちに注意を----

 

思考を巡らせる俺の真横を

 

1人の『風』が通り抜けた。




やって来ましたダンまちの世界!
大体1ぺージ目の半分ぐらいですが皆さんはどれぐらいの長さがいいのでしょうか?

※19日追記
ミノにガンド聞いてないやんけ!ミノ強すぎとちゃう?

ガント本来の能力とFGOにおける1ターンを現実の時間に換算したらどうなるかという事を鑑みてこのような表現をしております。
詳しくは感想欄をご覧ください。


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02.

ルビをどうやって付けるのかを調べなければ…

※8/4 2:10 誤字を修正致しました


まず一閃。

 

少年に襲いかかる寸前だった怪物の体勢を崩す。

 

次いで一閃。

 

振り返り殴りかかろうとして来た怪物の腕を舞うように躱しそのまま薙ぐ。

 

終に一閃。

 

壁に倒れかかった怪物の左肩から腰までを両断した。

 

切られた怪物の切断面からは醜悪な血が噴水のように吹き出し周囲の空間を紅く染める。

 

断末魔の叫びをあげる怪物はその目に宿していた凶悪な光を失い絶命した。

 

瞬間その体は塵となる。

 

そんなスプラッタな情景の最中でもその剣士は汚されることはなかった。

 

悪魔ぐらいの大きさの化物を切り捨てちゃったよ、あの人…

 

よく見ると剣士の正体は金髪美少女だ。

 

英霊…か?

 

確認するために歩き出そうとする足を後ろから肩を掴む強い力が遮った。

 

「よぉ、すまねぇがあのミノの野郎は遠征帰りの俺たちが逃しちまったやつなんだわ、ただでさえメンドクセェ事態になってるのに分け前だなんだとか更にメンドクセェことは言わないでくれるよなぁ?」

 

痛い痛い!この人力強すぎる!

 

どんなヤンキーかと振り返るとそこには銀髪のてっぺんにかわいいお耳を付けたDQNが立っていた。

 

「何だか分かりませんが分かりました!分かりましたからっ!」

 

「うし、もう行っていいぞ。」

 

強い力から解放されるがまだ鈍痛の残る肩をさする。

 

銀髪DQNは美少女の方に歩いて行ってしまった。

 

今のがこの特異点でのファーストコンタクトって考えるとこの先が思いやられるぞ…

 

それにしても分け前だなんだって言ってたが、もしかしたらさっきの怪物を倒すための職業がここには存在しているのか?

 

だとしたら頼もしいことこの上ないけど。

 

そんなことを考えているとすごい叫び声をして血に塗れた少年が走って逃げて行く。

 

直後DQNの大爆笑が聞こえる、また脅しでもかけたのだろうか?

 

あのDQN猫背でポッケに手突っ込んで口調も悪くて絵に描いたようなDQNだしありえるな。

 

あの耳は可愛いけど。

 

何はともあれ第一村人!

 

歩いて戻ってくる2人に声をかけて情報収集レッツゴーだぜ!

 

勇気を出して、せーの

 

「あのぅ…」

 

「あ゛ぁん?」

 

第一村人の難易度おかしいだろ絶対…

 

「テメェ、まだいやがったのか。そんなに死にてぇか、よしわかった。」

 

言い終わるのが早いか何かが目の前を通り過ぎた。

 

視界にはハラハラと前髪が何本か切られて宙を待っている。

 

え!うそ!?今攻撃されたの!?

 

「いやっ、違うんです、そうじゃなくて!」

 

「何が違ぇんだ、聞いてやるから言ってみろ。」

 

聞いてくれるのに構えは解いてくれないんですね…

 

「ベートさん…」

 

「あ?ちっ…わぁったよ」

 

美少女の言葉で何とか構えは解いてもらえた。

 

「私は…アイズ、アイズ・ヴァレンシュタイン。こちらがベート・ローガ。」

 

「チッ」

 

「藤丸立香です」

 

「どうか…したの?」

 

やっとまともに話ができる人に出会えた…

 

「もしかしてお二人は英霊ですか?」

 

「えい…れい?」

 

「二つ名のことか?『えいれい』なんて二つ名聞いたことねぇが…」

 

しまった、選択肢をミスったか…

 

2人が英霊を知らないという事は現地人と考えていいだろう。

 

「あ、いえ、少し混乱してて、実は…道に迷いまして…」

 

「道に?」

 

「迷ったぁ?」

 

ん?なんだこの2人の反応…

 

「ぶぅわははは!!迷った!こんな上層で?こいつズブの初心者じゃねぇか!地図の代わりに方位磁針でも持ってきましたか?わははははは!!」

 

「ベートさん…」

 

大爆笑じゃないですか、俺はいつの間にギャグを言っていたんだ?

 

「あー、こんな短時間に2回も大笑いするとはなぁ、くくくっ、お前、どこのファミリア所属だ?」

 

「ファミリア?」

 

サ◯ラダ?

 

「オイオイ恥ずかしいのは分かっけど隠すのはナシだぜ?これから助けてやるんだからそれぐらい教えろよ?」

 

「ファミリアってなんですか?」

 

「あ?」

 

爆笑ムードから一転。

 

ベートと呼ばれた銀髪の青年は明らかに顔をしかめた。

 

「まさか気でも狂ってんのか?ダンジョン内にファミリアすら知らない奴がいるなんて冗談にしても笑えねぇ…」

 

おいおい、空気が一気に変わっちまった、此処ではその『ファミリア』って奴がそんなに重要なのか?

 

「魔法」

 

「あ?」

 

「さっき魔法使ってた」

 

気付かれてたか…

 

魔法じゃなくて魔術だけどね、明確な違いは俺には分からないが。

 

「あぁ?やっぱてめぇ冒険者じゃねぇかよ!」

 

「いや、本当に分からないんですって!」

 

さっきからダンジョンだの冒険者だの魔法だのRPGか何かですか!?

 

「やっぱり頭がおかしくなったんじゃねーのか?」

 

会話するごとに明瞭になるこれは何かが違うという違和感。

 

今までの特異点だってだいぶ様々な違いはあったけど、あくまで『特異点』という一つの事象上での差異だった。

 

けれどこれは…

 

なんて表現したらいいか分からないけど何か根本的な所がずれているような…

 

こんな状況で全て話す訳にはいかないし、どう説明したものかな。

 

ピコーン!

 

決してミではないぞ、ピだ。

 

安心しろ、俺にいい考えがある!

 

「実は…自分記憶喪失でして」

 

「記憶喪失だぁ!?」

 

どーだこの完璧な言い訳は!

 

これでどんなに何も知らなくても俺は許されるはずだぜ、俺ってば天才な。

 

「はい、今まで自分が何してたのか、どんな理由で此処にいたのか、そういう記憶がスッポリと…」

 

「魔法は?」

 

「あ、あれは咄嗟に体が動いて…」

 

大丈夫、不自然なところはないはず、そのはずだ。

 

「ともかくコイツぁ胡散臭いトンデモ野郎って事だけは分かった。どうする?殺っとくか?」

 

まって!物騒すぎてシャレになってない!

 

及び腰になっていたところを少し考えていた金髪美少女、アイズさんが鶴の一声

 

「とりあえず、団長のとこ…」

 

「こんな怪しい奴をかぁ?」

 

「私が責任を持ちます、それに…」

 

「あの団長はそんなヤワな奴じゃねぇわな。」

 

団長?話から聞く限り相当すごそうな人だが…

 

「とりあえずついて来い、移動中妙な真似したら殺す。」

 

物騒だなぁ…

 

「分かりました…お願いします」

 

とりあえずは何とかなったけどこあれからどうするか、だ。

 

とりあえずその団長って人に合わせてもらえるのであったら話は早く進むかな。

 

DQN代表のベートみたいな人でなければだけど…

 

それにしても2人は英霊じゃなかった。

 

もしかしたら本当に俺1人しかレイシフトしていないのか?

 

まだ結論付けるには早すぎるけど…

 

これは最悪の場合も想定しないといけないかな。

 

「置いてくぞ。」

 

「あ、待ってください!」

 

アイズさんの表情からは何を考えてるのかは読めないけど

 

ベートは明らかに不機嫌そうだ。

 

そんな2人の速度少し早く、ついて行くのには苦労する事になった




アイズちゃんのぉ!
喋り方がぁ!
わからないぃ!
イェェェェェェェェェェイ!
…原作で勉強中です。
第一村人とのやりとり、いかがだったでしょう?
基本的に自分がやりたいように書いてる小説なのでフィーリングが合えば良いなと思ってます。

6/10 追記
アイズの言葉遣いを修正しました。
継承者さん、ありがとうございます。


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03.

予約投稿できてなかった…
ご迷惑をおかけしました!

※8/7 22:50 改行の修正を入れました
※8/8 6:30 ティオナ→ティオネの間違いを修正しました


団長に紹介すると言われてついて行った道中の二人は凄まじいの一言。

 

会話はほとんどなく捕虜のような気分だったことはこの際置いておこう。

 

襲われることは少なかったが出てきたモンスターはそのほとんどが一撃で塵にされていた。

 

表情もほとんど動かすことはなく、流れ作業に近い感覚なのだろう。

 

こう言う光景に何か見覚えがあると思っていたらそれはいつもの特異点での戦闘風景だった。

 

指揮をとる必要すらない障害に対しては英霊が個々に対応していく。

 

その時もこんな風景を見ていて同じような感想を抱いていた。

 

それにしても英霊じゃない人が此処までの力を持てるって一体…

 

合流地点に到着すると5人の武装した集団が集まっていた。

 

武装と言ってもそんなにゴツゴツとした装備ではなく比較的軽装だ。

 

比較的と言うか目のやり場に困るような女性たちもいるが…

 

「おかえりーアイズ、ベートは帰ってこなくても良かったのに。」

 

「あぁ!?うるせーぞバカゾネス、テメェは悪口しか言えねぇのか!」

 

「ベートだけにはねー」

 

なにやらすごい険悪なんだけど

 

「おかえりアイズ、その人は?」

 

目のやり場に困る人その2が俺に気づいたらしい。

 

「その事で、団長に話が…」

 

なにも予兆は無かった。

 

しかし突然、壁が裂けた。

 

崩れるわけではなく裂けたのだ。

 

その中から音もなく人ほどある大きさのアリがその鋭い顎を開きながら現れた。

 

この後に起こったことはこの先、いやもしかしたら一生後悔する事になるかもしれない。

 

さっきと同じように足はもう動いていた

 

アリの狙いは『1番幼い男の子』

 

まだ間に合う!

 

そう思い決死のダイブを敢行するっ!

 

が俺が飛んだと同時、男の子も動いていた。

 

持っていた身の丈以上ある槍を素早く構えアリを一突き。

 

それだけでアリは塵へと変わっていた。

 

残されたのは…

 

慣性の法則に従って空中に浮かぶ惚けた顔をした俺、その先にいる驚いた顔をする男の子。

 

結果は当然…

 

ドンガラガッシャーン

 

男の子もを巻き込んで派手に転がってしまう。

 

「いたた、大丈夫?」

 

「僕は大丈夫だが…」

 

「ゴメン、余計な事したみたいだ。君は俺よりずっと強いんだな。」

 

ナデナデ

 

いつもマシュにしているようにその子の頭を撫でていた。

 

「「・・・・・・・!?」」

 

俺とその子以外の空気が凍りついてることも知らずに。

 

「な、な、な…」

 

「ははっ、君は頭を撫でるのが上手いね。」

 

「おう、これは俺の二つと無い特技だからな。」

 

やっぱり人の頭を撫でてる

 

ビュォン!

 

と和むなー…え?

 

何かが顔のすぐ横をかすめていった

 

「おい…その汚い手を団長から退けろ…っ!」

 

右頬に熱い感触

 

手を当ててみると血が出ていた

 

「ヤバイヤバイヤバイ!ティオネがキレた!」

 

「あわわわわわ…」

 

「誰か止めろぉ!死人が出るぞ!」

 

「止めるって誰がっすか!?」

 

騒然とする周囲。

 

一歩、一歩と此方に歩んでくる『恐怖』

 

「退けろって言ってんだよこのッ…」

 

目の前に迫る拳

 

あ、これ俺死ん…

 

「ティオネ、やめるんだ。」

 

その一言で拳が 鼻先で止まり風圧だけが自分の顔を叩いた

 

「でも!」

 

「僕の事を心配してくれたんだね、ありがとう。でも僕にだって善意と悪意の判断ぐらい出来る。この子に悪意はないよ。」

 

何がどうなってるか理解が追いつかない。とりあえず、生きてて良かった…

 

「立てるかい?」

 

そう言って手を差し伸べてくれる男の子。

 

軽く服についた土埃を払ってからその子はアイズに向き直る。

 

「アイズ、この子は?」

 

「ミノタウロスを掃討した後に出会った人で…名前はフジマルリツカ、記憶が無くなってなにも知らない…らしい?」

 

「胡散くせぇ野郎だからフィンの所に連れてって判断仰ぐかって話になったんだよ、団長様。」

 

ベートはニヤリと笑いながらそう告げた。

 

団長と呼ばれた男の子はフムと少しだけ考えるとこっちに向き直る。

 

「申し遅れたね、僕の名はフィン・ディムナ、僭越ながらロキファミリアの団長をさせてもらっているものだ。」




ライブ、楽しかったです(やはりプリパラは信用できるコンテンツ)


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04.

遅くなりました!
最近忙しすぎる、お盆ヤベェ…
見直しをあまり出来てないので誤字とかあるかもです。


この少年が…団長さん!?

 

もっと屈強でガハガハ言ってるような大男を想像してた…

 

「因みに年は君よりかなり上だ。よろしくリツカ。」

 

年…上…

 

嘘だろ、どう見たってジャックちゃんあたりと同じぐらいかと思ってた…

 

英霊では多々ある事だけどこれから現地人にまで見た目と年齢の不一致を心配しなきゃいけないのか…

 

「さ、先ほどは失礼しました…」

 

差し伸べられた手を取って立ち上がる。

 

フィンと名乗った少年…いや、団長は何の苦もなく俺を立ち上がらせた。

 

「気にしていないよ。さて、本題に入ろうか。」

 

「本題?」

 

「君の事だろう?確か記憶喪失だとか。」

 

 

「あぁ!色々ありすぎて完全に忘れてました!」

 

「では、また記憶喪失になる前に此処を出るとしようか。話は道すがらでいいかい?」

 

「はい、お願いします団長さん。」

 

「フィンでいいよ。」

 

フィンは撤収の号令をかける

 

とりあえずこれで何処か安全な場所に行けるならもう何でもいい気がしてきたぞ

 

「どうやら君が何も知らないって言うのは本当らしいね。」

 

唐突な切り出しに心臓が飛び出るかと思った。

 

「…どうしてそう思うんですか?ベート…さんみたいに怪しいとかは?」

 

「思うさ、外傷もないのに記憶を失ったなんて話は聞いたことがないからね。」

 

まぁ言い逃れ流ためにとっさに思いついた事だしな…

 

本当はすべて話してしまえれば楽なんだけど魔術の秘匿やら迂闊に話すことはできない。

 

「理由は簡単だよ、あまり自分で言いたくはないんだが僕達ロキファミリアの名は広く知れ渡っているんだ。ありがたいことにね。話を聞く限りアイズやベート、僕の頭を撫でた時点で君が少なくとも僕の、ひいてはロキファミリアに関する記憶はないと理解した。」

 

「頭を撫でただけで?」

 

「頭を撫でただけで、だ。その辺の話はまた機会があったらするとしよう。ともかく、何も知らないという点では君を信用してると言っておこう。で、君はどうしたいんだい?」

 

俺はどうしたい…か。

 

目的はこの特異点の解決だけど、そのために今自分が何をすればいいか分からない。

 

と言うよりもそもそも情報が足りてない。

 

此処がどんな場所なのか、どんなことが起きているのか、何もかも。

 

この状況で俺がまずやるべき事は…

 

「ここはどういう場所なのか教えてください。」

 

「…いいよ、じゃあ少し昔話をしようか。」

 

そうして始まる彼の昔話

 

それは俺の考え方を根本から覆すものだった

 

彼曰く…

 

「遠い昔、暇を持て余し過ぎた神々は我々の暮らすこの世界に降りてきた。

そして神々は決めた。

自分たちの力を封印してこの不便さと不自由さと刺激に溢れた世界で永遠に楽しく生きようと。

彼らに出来ることはたった一つ。

僕らにモンスターと戦う恩恵を与える事だけ。

自らは戦う力を持たず、彼らはただ僕らを見守るのみ。

そうしてモンスターと戦う力を与えられた僕たちが、モンスターを倒す場所。

それが此処、ダンジョンだ。」

 

荒唐無稽

 

どんな歴史資料を見たってそんな史実はどこにもない。

 

ましてや俺は様々な特異点を見てきた。

 

そう、人間は神々とは決別していなければならないはずだ。

 

その事を俺は『あの特異点』で見てきた。

 

「…神々が降りてきたのはどれぐらい前ですか?」

 

「言った通り遥か昔だよ、正確にはわからないが、少なくとも僕らが生まれる前であるのは確かだね」

 

「なら神に会う事は?」

 

「出来るよ、街を歩いていれば普通に見かけるだろうし…と言っても神と分かればの話だけど姿は僕らと同じだからね。ありがたみなんて何もない、あえて言うなら神という種族って感じだね。」

 

此処にきて…初めて人と話した時から抱いてた違和感

 

「あぁ、そろそろ外に出るようだよ。ダンジョンの真上はバベルって塔になっていてね。あとはここを上がるだけさ。」

 

嗚呼…そういう事か…

 

誰が答えをくれた訳でもなければ、自ら気付いたという訳でもない。

 

それはただただそこにある現象として…

 

納得なんてすっ飛ばして押し寄せる現実の波。

 

「ん、久しぶりの外だ、気持ちがいいね」

 

開ける景色、そこは人間と亜人、様々な種族がせわしなく行き来している。

 

あるものは商売をし、あるものは武装をして、またあるものは買い物を楽しんでいる

 

それは非現実的な日常風景。

 

それはまるで

 

「あぁ…こう言う言い方は適切ではないかもしれないけど敢えて言わせてもらうよ。」

 

まるで…

 

「ようこそ、ここが迷宮都市オラリオ、ダンジョンの真上に作られた各々が各々の理由で各々の為に『冒険』するための街だ。」

 

ファンタジーだった。




忙しい…忙しい…
何に忙しいかって?
バイト、バイト、バイト、ライブ、バイト、ライブ、バイト、飲み、バイト
↑大体こんな感じ
セレンディピティなパレードは素晴らしさが溢れてました。
更新ペース上げたい定期


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〜運命のターニングポイント〜
01.


頑張って書いたぜ!って思って文字数見たら3000文字だってよ

はは、ワロス…

今の状態だと地の文を大体立花くんとリンクさせてるから文字数増えないね。

更新ペースとかの問題もあるしそこはもうご愛嬌でおなしゃす、努力はしていきますんで…



「此処がギルドっす。」

 

「ありがとうございました…」

 

「大丈夫っすか?なんだか呆然としてる感じっすけど。」

 

「…どうでしょうね。」

 

「疲れてるならそこのベンチで少し休むといいっすよ。あとこれ。」

 

「これは?」

 

「団長から預かった手紙っす。ギルドで聞きたい事を聞けたら開いてくれって言ってたっす。」

 

「そうですか…」

 

「自分もギルドに用事があるのでこれで失礼するっす。」

 

平凡そうな人はあっさり行ってしまった。

 

どうしようこれ…

 

考える、ベンチに腰掛けて街行く人々を眺めながらただひたすらに考える。

 

今までだって自分の理解の範疇を超えた自体は山ほどあった。

 

だけどそれは誰かが何かをした結果であり全ては理解を超えた範囲で説明可能な事象に過ぎなかった。

 

しかし今回は違う。

 

この世界に明確な意図は存在しない。

 

ただそうなるべくしてそうなったという言うなればただの自然現象に過ぎない。

 

そう、世界はこれで正常なのだ。

 

特異点なんてとんでもない、これはもう…

 

「異世界だ…」

 

そこに確証なんて何もない。

 

しかし今までに遭遇した特異点での経験全てがそうだと叫んでいた。

 

ここにはここの歴史があり、文化があり、規則(ルール)がある。

 

考える限りもう一つの世界として完成してしまっている。

 

起きうる問題も事件も全てはこの世界の規則に則って起きている。

 

つまり修復すべき事象など初めから存在していない。

 

一体何をすればいいんだよ…

 

カルデアとも連絡が取れず、サーヴァントもいない。

 

まさに足元がいきなり消え失せたような状況だ。

 

まぁいままで空中に放り出されたことも何度かあったけどな、はは…

 

はぁ、カルデアに帰りたい。

 

せめてカルデアに連絡が取れればなぁ…

 

マシュやダヴィンチちゃん達は元気にしているだろうか。

 

『今回に限ってはキミにはレイシフトをしないという選択もできる』

 

不意にそんなダヴィンチちゃんの言葉を思い出した。

 

そうか、そういえば…

 

俺は『望んで』ここにいるんだ。

 

何をすれば良いかなんて分からない。

 

けれどそんな事は些細だ。

 

目的は最初から決まってる。

 

あのゆるふわ系お節介オタクを見つけ出す事だ。

 

そして一発ひっぱたく!

 

来たはいいけど思ってたのと違ったから帰るなんてカッコ悪い事はしたくない。

 

だったら1人でもやってやるさ。

 

どうせ帰る方法もわからないんだ、ならまずは行動しないとな!

 

って訳でまずは情報収集だ。

 

とりあえず目の前にあるギルドってところに向かうか。

 

その歩みを進めるのにもう迷いは無い。

 

ギルドは神殿のようなところだった。

 

神も普通に会えるっていうからには神代の時代あたりを想定しといたほうがいいな。

 

中に入ると神殿風な外側と違い内部から受ける印象はまさに役所と言った雰囲気をしている。

 

周りから聞こえてくる会話から察するに様々な人が様々な要件で出入りをしているようだ。

 

窓口的なところに行って話を聞かなければ。

 

受付らしきところを見渡しているとちょうど一つの窓口が開いた。

 

「すいません」

 

「はい、ご用件はなんでしょう?」

 

受付のお姉さんはまさに職員と言った程だ。

 

唯一現実と違うところといえば耳から察するにエルフだと言うところだろうか。

 

この世界にもあるんだね、メガネ。

 

「あー…えーっと…」

 

なんて言えばいいのか、記憶喪失になんてなった事ないから説明の仕方が…

 

「あ、もしかしてロキファミリアの方から伺っていた、えーとフジマルさん?」

 

「そうです、藤丸立香です!」

 

「ダンジョン内で記憶を失うなんて…とこか怪我をしている訳でもなさそうですし、何らかの魔法でしょうか?」

 

もしかしてさっきの平凡な人が話を通しといてくれたのか?

 

「あー、どうなんでしょうね、あはは…」

 

「あ、失礼しました。私は受付のエイナ・チュールと言います。以後、お見知り置きを。」

 

「改めて、藤丸立花です、よろしくお願いします。」

 

「こちらでもフジマル様の情報を調べてみたのですが冒険者登録はされていないようです。となると普通の市民であるか他の町から来たという可能性に絞られますが…」

 

だってつい何時間か前に来たばっかだもん、ここ(この世界)

 

「えーっと…俺の事はいいのでこの町のことを詳しく教えてもらえませんか?」

 

「よろしいんですか?何なら特別措置としてクエストという形で調べる冒険者を集うこともできますが…」

この世界の冒険者って何でも屋みたいな事やってるんだな…

 

「自分の事は追々何とかしようかなって。それよりも今をどう生き抜くかの方が重要ですから。ほら、僕一文無しですし。」

 

「なるほど、生活基盤をどうするかという話ですか…となると働くしかありませんね。」

 

「ですよねー…」

 

「身寄りもツテもないとなると職探しは非常に困難かと思われますが…1番手っ取り早いのは冒険者になる事ですね。」

 

冒険者、アイズさんやベート…さん、フィンさんと同じ職業か。

 

「冒険者は神の眷属、ファミリアとなり、ここギルドにて登録してなる事ができます。具体的な収入はモンスターを倒した時に手に入る魔石や素材を交換する、又はクエストの報酬等によって得られます、いわゆる出来高制ですが強ければ強いほどたくさん稼げますよ?」

 

「強ければ、ですか…言っちゃなんですが僕、腕っ節は平凡ですよ?」

 

「冒険者になられる方の殆どは最初から強い訳ではありませんよ。」

 

「というと?」

 

「冒険者になるという事は神からの恩恵、ファルナを受けるという事です。」

 

恩恵(ファルナ)?」

 

「簡単に言えば神の眷属(ファミリア)に入った冒険者は神から恩恵(ファルナ)を受け、常人とは比べ物にならないほど強くなれます。と言ってもそれは敵を倒したりして経験を積むことが必要ですが。」

 

なんだか本格的にRPGみたいになってきたな。

 

「とは言っても、やはり危険は付き纏います。なんせ危険が渦巻くダンジョンに潜る訳ですから…」

 

これまたそれはそうだ。

 

言っておくが、俺は自分から危険に飛び込むほどの勇気はない。

 

何か理由が無ければ平凡な日常を送るだけで満足できる、そう言う人間だと思う。

 

「じゃぁ冒険者になります」

 

「え?もうちょっと考えてからでも…」

 

「冒険者って、有名になれますよね?」

 

「迷宮都市、ですからね。偉業を残せばそれこそ世界中に名が広がりますが…」

 

「だったら大丈夫です、冒険者になります!」

 

そう、理由はそれだけで十分。

 

別に有名になりたいって言う願望がある訳じゃない。

 

有名になるって事は名が広まるってこと。

 

名が広まるってことはたくさんの人が自分の名前を聞くって事。

 

たくさんの人が名前を聞くってことはそれだけで奴の耳に藤丸立花(俺の名前)が入る可能性が高くなるってことだ。

 

別に自分から探すのを放棄はしないけど効率はいいに越したことはない。

 

いるって分かって、会いに来てくれないほど薄情じゃないだろ、アンタは…

 

「分かりました。ではまずファミリアに入っていただくところからですね。」

 

「ファミリアに入るにはどうすればいいんですか?」

 

「入団資格はそのファミリアによって様々ありますが、先ずは神に会う所からですね。」

 

神に会う、かフィンの話ではそこらへんを歩いてたりするそうだけど…

 

「ついこの間も冒険者になりたいって子がいたんですけど大体のファミリアから門前払いされてしまったらしくて…あ、その子はなんとか入団できたみたいなんですけど見ていると危なっかしくって放って置けないと言うかなんて言うか…」

 

だんだん愚痴じみてきた。

 

「あ、失礼しました…話が脱線しましたね。」

 

「いえいえ、母性的で素敵だと思いますよ。」

 

「それは褒め言葉ですか?それとも年をとって見えると言う嫌味ですか?」

 

「褒め言葉ですよ!女性的って意味です。」

 

女性を褒めるのはどうしてこう難しいのか…

 

今度ディルムットあたりにでもご教授願うとしようか。

 

「とりあえずそのファミリアってのに入ってからまた来ればいいんですね?」

 

「まぁ、そう言うことになりますが…」

 

「エイナさーん!」

 

おっと後がつかえているな、とりあえず目標も決まったし行動するか!

 

「では!」

 

「あっ、ちょっとまっ…行っちゃった…」

 

「お風呂はいって来ました!今の人は?」

 

「ついこのあいだまでの君と同じよ!もう!」

 

「えっ、なんで怒って…エイナさーん!」

 

そう言えばあの白髪の少年どっかで見たことがあるような…

 

いや、この世界に来てばっかの俺に知り合いなんている訳ないよな、うん。

 

そう思い立花はギルドを後にした。




評価もして欲しいけど1番もらいたいのは感想だったりする。

評価じゃ星の数でしか読み手の意思が分からないけど感想ならコミュニケーションが取れるからね!

作者本位の作品だけどバシバシ感想をください!

返信なら任せとけー(バリバリー)

※19日追記

藤丸立香が平凡ってんなわけないやろw

あくまで自己評価です
ただ身体能力的にも魔術素養的にも公式設定では彼は平凡なので高度200Mから女神にプランチャ決めようとも原初の海の女神に対してガンドでスタンさせようともラスボス素手で殴ったりしようとも彼は平凡なのです(断言)


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02.

※※※本文を読んだ後に、後書を読んでください※※※


後にした訳だが…

 

「あなた神様?」

 

「違いますけど…」

 

「あなた神様?」

 

「からかってんのか?」

 

「あなた神様?」

 

「私は神だ!私の夢は不滅だーーーーー!(友情出演)」

 

神様いねぇ…なんか1人土管から復活しそうな奴はいたけど。

 

こんな事ならエイナさんに場所とか神様の特徴とか聞いておくんだったなぁ…

 

ん?

 

ポケットに紙が入ってる。

 

なんだっけこれ?

 

開いてみるとそれはどうやら手紙のようだった。

 

自分の知りもしないはずの言語で書かれたその紙を手紙だと分かった理由は簡単、『読める』からである。

 

読めもしないはずの言語が読める理由が気にならないわけではないけども…

 

まぁ分からない事を考えても分かるわけないよネ!

 

重要なのは手紙の内容だ。

 

えーっとなになに?

 

『リツカへ

聞きたい事はギルドで聞けたかな?

僕の予想ではおそらく君は冒険者になろうとしているはずだ。

もし冒険者になりたいのなら一度黄昏の館来るといい。

そこは僕達、ロキ・ファミリアの本拠地になっている。

僕は君に少し興味があるんだ。

君さえ良ければロキ・ファミリアの入団試験を受けてみないか?

もし僕の予想が外れていたとしても力になれるはずだ。

場所はダンジョンの入り口であるバベルの塔から北にある。

また君に会えるのを楽しみにしているよ。

フィン・ディムナ』

 

もしかして千里眼でも持っているのだろうか…

 

まぁそれはそれとして渡りに船である事は確かだよな。

 

だったらその船に乗っかるまでよ!

 

いざ!黄昏の館とやらへ!

 

「迷った、うん、迷った。」

 

地図も方位磁針もないのに流石に無理だったか。

 

そもそも来たばっかりの街でどっちが来たかなんて分かる訳もない。

 

こうなったらだれかに道を聞くしかないな。

 

!?

 

これは…

 

この匂いは!?

 

「ジャガ丸くんが揚げたてです!」

 

お腹が空いた…

 

そう言えばバタバタしてて何も食べてないな…

 

空腹って自覚すると一気に来るよなぁ。

 

魔術も使ったせいか意識が朦朧として目眩が酷い。

 

フラフラと匂いのする方向に行ってみるとコロッケみたいな食べ物が売られていた。

 

「おっ、お客さんお買い上げですか?アルバイトだから安くはできないけどこの女神ヘスティアが手ずから渡すっていう事でいっぱい買っておくれよ!」

 

「ごめん、腹は減ってるけど天涯孤独の一文無し…」

 

なんだ…

 

「え、ちょっと、お客さん?お客さーん!?」

 

あぁ、もう声も出ない、意識が遠のく…

 

まったく、この程度で情けな…

 

君はこの世界に於いて異端だ。

君にはこの世界に於いて為すべき使命はない。

だけど…君が成した事、君が結んだ絆は決して無駄にはならないよ。

ちょっと働きすぎだよ、たまには気楽にしてもいいんじゃないか?

 

「それをあんたが言うのかよ…」

 

「お、目が覚めたのかい?」

 

目を開けるとそこにはロリ巨乳がいた。

 

「貴女は…」

 

「まぁ、まずはこれをお食べよ」

 

そこにはコロッケのような食べ物が大量に積まれていた。

 

「売れ残りで申し訳ないが、お腹が減っているんだろう?」

 

「ありがとうございます!」

 

一つ手にとってそれを頬張るとなんとも奇妙な味がする。

 

これは…小豆クリーム?

 

食べれなくはない、って言うか味を理解して食べればスイーツとしていけるかも。

 

「味はバラバラだから当たり外れはあるかもね。」

 

「大丈夫です、好き嫌いは贅沢、贅沢は敵ですから。」

 

良妻(猫)の方にも散々言われた。

 

レイシフトの時はワイバーンやらゲイザーやら色々食べてきたからなぁ。

 

もらったコロッケみたいな食べ物(ジャガ丸くんと言うらしい)を平らげると満足感に満たされる、新しいものに手を出すたびに違う味が楽しめてうんちゃらポッターに出て来る100の味がするビーンズのようだった。

 

「ごちそうさまでした。」

 

「お粗末さま。すまないね、こんなものしかなくて。でも僕としては放って置けなかったんだよ。」

 

「そんな…すごく助かりました。感謝こそすれ、文句なんてとんでもないですよ。」

 

「これは僕の矜持みたいなものだから気にしないでくれ。ところで…なんであんな街中で空腹で倒れる状態になってたか聞いてもいいかな。」

 

「実は何時間前から此処での記憶が一切なくてですね…お金も一切持っていなかったし何よりそんな事すら忘れるぐらい焦ってたのかもしれないですね。」

 

「そうか…君はこれからどうするつもりなんだい?」

 

「とりあえず冒険者にでもなろうかと思ってます。食い扶持も必要ですしね。」

 

「ぼぼぼーぼ冒険者!?」

 

唐突に目を輝かせ始める。

 

なんだかどっかのギャグ漫画みたいになってるぞ。

 

「ソソソソウナノカー、ち、因みにもうファミリアとかは決めてるのかな?」

 

「とりあえずロキファミリアに行こうかなと。」

 

「ロキファミリアぁ〜???????」

 

顔がありえないほど歪んだ

 

「ダメだダメだ!ロキのとこなんてろくなとこじゃないぞ!あんな無乳神のところに行ったって受け入れてもらえないに決まってる。だったら!…あぁ〜でもベル君とのスイートライフがぁ、でもでも新しい家族だし…でもでもでも…」

 

コロコロと表情を変える、賑やかな人だ。

 

「えぇーい、君っ!名前はなんと言う!」

 

「藤丸立香ですが…」

 

「僕はヘスティア。女神ヘスティアだ!リツカ君!君がよければ僕のファミリアにはいらないか!?」

 

女神ヘスティア…女神!?

 

『この女神ヘスティアが手ずから渡すっていう事で…』

 

そ、そう言えばそんなこと言ってたなぁ…

 

この人、いやこの神様、神様だったのか…

 

「いいんですか?」

 

「いいっ!でもやっぱり…いや、いいんだっ!家族が増えることはベル君にとってもいい事だろうし。今メンバーは1人しかいないからロキの所には劣るが…」

 

何か悩んでらっしゃるようだ。

 

そう言えばさっきもベル君がうんちゃら言ってたな。

 

「ちょっと考えさせてください。」

 

「分かった、でも助けた恩とかそう言うのは考えなくてもいい、自分の思う通りに決めてくれ。」

 

さて、渡りに船が2つ、重要なのはどちらの船に乗っかるか。

 

この女神さまはおそらくすごく心根が優しい。

 

自分をファミリアに迎え入れるのは利益をもたらすだけでは無いのだろう。

 

それを押してでも俺をファミリアに誘ってくれている。

 

ロキファミリアに行く予定はあったがあくまで予定だ。

 

もしかしたらヘスティアのファミリアに入るという選択肢もあるのかも知れない。

 

だが彼女を察するに絶対俺に入って欲しいと言うわけでもなさそうだ。

 

情報を整理すると…

 

ロキファミリアは

・聞く限りではトップクラスのファミリア

・人が多いので様々な人に会える

・団長のフィンは俺を気に入ってくれてるらしい

 

ヘスティアファミリアは

・比較的に自由に動けそう

・ヘスティアの性格からしてアットホームな所

・少人数ゆえに情報の管理は出来そう

 

何方がいいとは一概には言えない。

 

って事は本当にこれは自分の思ったままに決めるしかないかな。

 

ここまで考えて結局はどっちのファミリアで冒険者になりたいかっていう結論な訳ね。

 

さぁ、俺はどっちのファミリアには入りたい?どっちのファミリアで冒険者になりたい?

 

「…決めました。」

 

「っ…」

 

「俺は…

→《ヘスティアファミリアに入ります。」》

→《ロキファミリアに入ります。」》




ついにこの時がやって来ました。
自分のやりたかった事の1つ、リアルタイム執筆ならではの仕組み『選択肢アンケート』です。
立花くんをどちらのファミリアに入れるか、それを読者の皆様に決めてもらおうと思います。

自分の活動報告の欄にアンケート用のページを作成いたしましたので詳しくはそちらから…

え?自分の書きたいこと書いてる作品ならどっちのファミリアか決めてあったんじゃ無いのかって?
どっちも書きたいに決まってるでしょ!
てな訳で自分が読みたい方へ気軽にご投票ください!

※19日追記【 アンケートについて】
自分の情報不足で感想の方にアンケート誘導をしてしまいました…
誠に申し訳ございませんでした…
報告を下さった方々には平に感謝を!

20日追記 【誤字修正】
誤字を修正いたしました。
今までの投稿文も
藤丸立花

藤丸立香
にしました。
黒歴史すぎるぞこれは…
報告して下さった方には本当に感謝を…

21日追記 【神威について】
神の放つ神威によって神と人間の区別ができる
とのコメントを頂きましたが原作内での表現から
ヘスティアは普段神威を放っていないと判断しました。
しかし自分の原作把握が疎かだった事が明確になったので今必死に原作を読んでいます!
コメント下さった方には感謝を…



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03.

少し短い(今までとあんま変わらない)ですがアンケートの結果報告として

ご協力いただいた方には多大なる感謝を!

ヤベェよ…

switch手に入っちまったよ…

ヤベェよ…(更新速度的に)


「俺は、ロキファミリアに入ります。」

 

そう告げると風の向きが変わったような気がした

 

もしかしたら今の選択はこの世界における自分の運命を大きく左右するものだったのかもしれない。

 

その答えを静かに受け止めたヘスティアは今までとは違う、ただ静かな雰囲気で尋ねる

 

「どうしてか…理由を尋ねてもいいかな?」

 

俺は…

 

「俺は此処でやらなければいけない事があるんです、頼まれた事も…それを成し遂げる為にはロキファミリアの方がいいような気がして、ただそれだけなんです。ごめんなさい…」

 

その答えを聞くとヘスティアは俯き肩を震わせた。

 

怒ってる?

 

泣いている?

 

もしかしたら俺はこの小さくて心優しい女神を傷つけてしまったのか?

 

「あの…」

 

「ふふっ、ごめんごめん。ちょっと嬉しくてさ。そっかーロキファミリアでやりたい事かーなら仕方がないね!」

 

顔を上げたヘスティアは意外にも笑っていた。

 

「嬉しいんですか?」

 

「嬉しいさ!だってリツカ君はちゃんと悩んでくれたんだろう?」

 

「はい、多分此処に来て1番悩みました。」

 

「だったら嬉しいよ、今まで自分が誘った中でしっかり悩んでくれたのはリツカ君が初めてだからね!」

「でも団員は1人いるって言ってませんでしたっけ?」

 

「ベル君は即決だったからね、だから悩んでくれたのは君が初めてで間違いないよ。」

 

そう告げると横に座りヘスティアは語る。

 

「今でこそファミリアを名乗れてはいるけどついこの間までは眷属が1人もいなくてね…声をかけては見たんだがこんな僕の眷属になんて誰もなってはくれなかった。それどころか考えてすらくれなかったんだ。眷属が1人もいないことを知ると皆同様に話も聞かず去って言ったよ。あの頃は子供達には見る目がないー!とか思ってたけど今考えれば初めてのダンジョンに1人で潜るのは大変だよね。ウチのベル君を見てたらわかるよ。それでも僕にとってはちょっとしたトラウマだぜ?だから君が最大派閥であるロキファミリアと団員が1人しかいないウチとをちゃんと迷って、答えを出してくれたんだって思うと嬉しくてね、君はいいやつだよ!」

 

背中をバシバシと叩かれる。

 

少し痛かったがそれは気分の悪いものではない。

 

「僕の事を振って行く先がロキの所っていうのがちょっと気に食わないけど、それはそれだ、君のことは応援してるよ!ロキの奴に追い出されたら僕のところに来ればいいさ!」

 

「はい…ありがとうございます!」

 

「あ、でもなぁ〜、僕、一度振られちゃったしなぁ〜そんな相手をファミリアにすんなり入れるのもなぁ〜。」

 

少しイジワルそうな顔をするヘスティア。

 

こういう人がするイジワルに関しての対処は簡単だ。

 

1.まずか弱い性格のフィーリングを下ろす。

 

2.目を少し潤ませて相手の瞳を見る。

 

3.なるべく切なそうな声で…

 

「えっ…だめ…ですか…?」

 

「うっ…」

 

WEAK WEAK WEAK

 

「じょ、冗談だからね!?君のことはちゃんと…」

 

ニヤニヤ

 

「は、計ったなぁー!」

 

心根が優しい人は庇護対象にすごく甘いからなぁ…この人神だけど。

 

きっと一生懸命で危なっかしくて放っておけない純粋な子供みたいなタイプがストライクだろう。

 

「ヘスティアが先にイジワルしたからでしょうに。」

 

「あ、名前…」

 

「ん?」

 

あ、普段から神格だの英霊だのと接してたせいで呼び捨てにしてしまった。

 

「いや、いいんだ。その呼ばれ方も嫌いじゃないぜ?リツカ君とはいい友達になれそうだ!」

 

なんだかこの世界に来て初めての気を許せる相手に出会った気がする。

 

「じゃあ僕は行くよ。あ、それと最後に…」

 

「なんですか?」

 

「君、『隠し事』してるだろう?」

 

「…ッ!?」

 

「やっぱりね、その反応を見ればわかるさ。」

 

「…どうしてそれを?」

 

「勘違いしないでくれよ?その事でどうこうって話じゃないんだ。君の隠してる事を暴こうとも思わない。ただ君が自分自身のことを話す時、どうも言葉を選んでる気がしてね。」

 

「…」

 

「まぁ話してみて君が悪いやつじゃないって思ったからね、おおかた嘘をあまりつきたくない、吐くとしても必要な時だけで済ませたいとでも思ってるんだろう。いいかい、知ってるかもしれないけど君たち子供は僕ら神には嘘がつけないんだ。だから子供達(きみたち)が神に隠し事をしたい時にどう言う感じになるか分かるんだよ。だからロキと…いや、ロキ以外でも他の神と会う事になったら気をつけるんだよ?」

 

「はい…分かりました。」

 

納得がいった。

 

俺が『この世界の記憶』が無いと言った時に疑わなかった理由も。

 

俺の返答でヘスティアが喜んだ理由も。

 

俺の言葉が全て真実だとわかっていたんだ。

 

だからあんなに…

 

「俺の素性に関しては詳しい事は言えません。だけど、嘘をあまりつきたくないって…そう思ってます。」

 

嘘が通じない神に、そう告げる。

 

あなたの予想は当たっていてさっきまで楽しんでいたのも嘘じゃありませんよ、と。

 

「そうかい。」

 

そう言ってヘスティアは微笑んでくれた。

 

まっすぐ言うのが少し気恥ずかしかったからこんな言い方になっちゃったけど、伝わってよかった。

 

「ありがとうございます…俺、此処に来て色々大変だったりしてたけど何とかやって行けそうな気がします!」

 

頭を深く下げて感謝の意を伝える。

 

此処は異世界だ。

 

自分の知らない常識があって。

 

自分の知らない理があって。

 

それでも…

 

心の優しさと言うのはどの世界でも共通なんだ。

 

だったら常識や理の差なんて大した問題ではないではないか。

 

「それは何よりだよ。ロキの所に行く道は分かるかい?」

 

「そういえばそれで迷ったんでした…」

 

「此処の道を行くと大通りに出る、大通りに出たらバベルとは反対側にまっすぐ向かうんだ。町の一番端ぐらいに着いたら大きい館が見えるはずだからそこが黄昏の館だよ。」

 

「ありがとうございました!この恩は必ず…」

 

「いいって、それじゃあまたどこかで会おうじゃないか!」

 

そう言ってヘスティアは行ってしまった。

 

「…」

 

天を仰ぐと空は夕暮れの濃い赤に変わっていた。

 

そろそろ夜がやってくのだろう。

 

ヘスティアとはまたどこかで会えそうな気がする。

 

それじゃあ行こう。

 

その場に背を向けて立花は歩き出した。




「ふふ、面白い子だったなリツカ君。」

下界には様々な子供達がいて様々な物語を見せてくれる。

ベル君は一生懸命だけど危なっかしくて放っておけなくて、大好きなことには変わりないけれど…

あの子も大概危なっかしい。

果たして彼がロキファミリアに入った後にはどんな冒険が待ってるのだろうか?

「もしかしたら…」

自分のファミリアに入ってくれていた、そんな未来もあったのだろうか?

所詮は過ぎた事、全知全能神(おとうと)でも無い限り時間は巻き戻せないけど…

そんな事を想像せずにはいられなかった。


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〜入団試験〜
01.


大変お待たせいたしました!

お待たせした分今回は内容量がいつもの二倍強になっております!

お楽しみください…


ヘスティアに聞いた場所に行くとそこには確かに巨大な館がそびえ立っていた。

 

と、言ってもまだ門しかみえていないのだが…

 

目の前に鎮座する門はまるで城でもあるのかと間違えるほど巨大で堅牢なものである。

 

もしかしたらここに攻め込まれることを想定しているのかもしれない、とも思ったが門の装飾は綺麗なものでおそらく周りに威厳を示すと言う役割の方が強そうだ。

 

歩いてきた街や周囲の雰囲気から察するに近くに戦争があるということはなさそうだ。

 

此処へ来る道中にひりつく雰囲気をした者は例にもれず自分とは反対方向の天にそびえるバベルの塔、つまる所ダンジョンに向かっていた。

 

しかしおそらく夜ということもあってか大体の冒険者は金曜日のサラリーマンのように飯や酒を喰らいながらその日にあった事を語り合っていた。

 

きっとこれがこの街、オラリオの日常なのだろう。

 

人々はそう俺に確信させる程楽しそうに1日を過ごしている。

 

…そろそろ真面目に現実と向き合おう

 

門の前には門番らしき人がいて俺のことを訝しげに睨んでいた。

 

それはそうだ、だってこの館の前には俺と門番の人しかいないんだもん。

 

そりゃあ門の前で突っ立って繁々と見物してたら不審者かと思われるよねそうだよね。

 

そんな2人だけの空間(?)に耐えきれず、その人に話しかけてみる。

 

「あの…黄昏の館と言うのはこちらでお間違い無いでしょうか?」

 

「…そうだが、何用か?」

 

明らかに怪訝そうな目で見る門番。

 

「入団したくて来たんですけど…」

 

その一言を聞くと門番の様子が一変した。

 

「入団?貴様のような何の取り柄もなさそうなガキがか?」

 

悪い方向に…

 

門番の人は笑わせるなとばかりに嘲笑を浮かべる

 

「この前もお前のようなガキが居たな。最近多くて困るんだよ、勘違いした身の程知らずのガキが。いいか?此処はオラリオ最大を誇るロキファミリアの本拠地だ、俺でさえ入団するのには苦労した。それをお前のような物見遊山の奴が入れるとでも思っているのか!」

 

あー、なるほどね。

 

なまじロキファミリアに所属している事に誇りを持ってる分俺みたいな弱そうな奴が自分と同じ所に所属したいなんてその自尊心が許さないのだろう。

 

このひねくれたプライドをお持ちの門番さんに一言物申しておきたい。

 

人を見た目で判断するのってどうなんだろうか。

 

そんな事をしてたら此処(オラリオ)では生きていけないって今日貴方のとこの団長さんから学んだとこなんですが…

 

「あのでもフィンさんに来いって言われて…」

 

「この俺でさえ入団するのに苦労したのに団長がお前のような軟弱そうな奴に目をかけるわけなかろう!嘘をつくならもっとマシな嘘をつけ!」

 

にべもない…

 

さてはてこれはどうしたことか、手紙でも見せればいいかと思ったがこの調子だと偽物だ何だと言われてしまいそうだな。

 

「もう一度だけ確認します。僕はフィンさんに呼ばれてここに入団試験を受けに来ただけなんです。通しては貰えませんか?」

 

「くどい!」

 

「分かりました…」

 

仕方がない、最終手段と行きますか。

 

重心を落として相手との距離をとる。

 

問題は果たして届くかどうか賭けになる所か…

 

でもやるしかあるまい、強行突破するにはこれぐらいしか無いのだからッ!

 

「な、何だ…実力行使にでも出る気か貴様!」

 

「恨まないでくださいよ、人を見かけで判断したあなたが悪いんですから。」

 

距離は十分、これならいけるか?

 

「こいつ、何をッ…」

 

スゥーーーー

 

「フィーーーーンさーーーーん!!!!!!!!!」

 

「ぬぉっ!」

 

俺の出した大声に門番の人は怯む。

 

そう、中に入れてもらえないなら外に出てきてもらうまで!

 

「ふーーじーーまーーるーーりーーつーーーかーーがーーきーーまーーしーーたーーよーー!!!!!!」

 

この(おもい)よフィンさんに届け!黄昏の館のフィンさんまで!

 

「貴様っ、やめんか!」

 

「フィーーーーンさーーーーん!!!!!!!!!」

 

「えぇい!取り押さえてくれるわっ!」

 

門番さんは迷惑行為を働く不審者(俺)を取り押さえにかかるが距離は十分にとってある。

 

これでしばらくの時間稼ぎをできるはずだ!

 

ゴゴゴゴ

 

これから大声を上げる不審者VS自尊心の高い門番という異色のエキシビションマッチが行われようかという時に重厚な門がその見た目に即してゆっくりと開いていく。

 

「何の騒ぎだ!」

 

見えたのは門に即した大きな館とそこに続く広場、そして長身の女性だった。

 

髪は綺麗な緑の長髪、凛々しい顔つきに耳は長くおそらくエルフなのだろう。

 

その女性が怪訝そうな目で此方を見ていた。

 

「はっ、副団長、ただいま不審者を捉えるところでして…」

 

「不審者じゃないやい!こちとらフィンさんに呼ばれて来てるんだっての!」

 

信じてすらもらえなかったけどね!

 

「フィンに?と言うことはお前が例の?」

 

良かった、話がわかる人がきてくれた…

 

「はい、藤丸立香です。ご迷惑をおかけしました…」

 

特に大声を出した件とか、近所迷惑も顧みないで騒いだ件とかは本当に申し訳ないと思う。

 

だけどこっちだって必死です。

 

「なっ、副団長!この者が本当に団長に呼ばれて来たのですか!?」

 

門番は驚愕と不服の声を上げる。

 

「そうだ、門番には話してあると言っていたが、交代でもあったか?」

 

「先ほど…そういえば客人が来ると。」

 

それは暗に俺は客人には見えなかったって言う事かな?

 

まぁ見えないだろうな、自分でも入団希望て言っちゃったし。

 

まさか客人扱いしてもらえるとは思ってもいなかった。

 

けど報連相は組織で基本だと思うんだけどなぁ。

 

「ではお主のミスだな。なぜ確認を取らなかった?」

 

「はっ…入団希望との事でしたので…」

 

「それで追い払おうと?入団希望者を追い払うのはお前の職務か?」

 

あれ、なんか話が思いもよらぬ方向に…

 

「しかしこのような…」

 

「質問に答えろ、これはお前の職務かと聞いている。」

 

「い、いえ…ですが!」

 

「言い訳はいい、最近このような事がよくあるとは聞き及んではいたが…相応の罰があると覚悟しておけ!」

 

「あのー…」

 

ちょっとまずい流れになってるので話を止めさせてもらう。

 

「すいません、自分が門の前でウロウロしていたせいで門番さんが自分の事を不審者だと思ったみたいで。」

 

「…なに?」

 

「いやぁー、今思い返せはあれは自分から見ても不審者だっただろうなぁ。ごめんなさい!まさか自分が招かれた場所がこんな凄いところだとは思わなくて、門番さんも仕事に真面目だっただけなんだと思いますので…」

 

確かに門番さんの態度はちょっと?横柄だったけど、自分がこれからお世話になるかもしれない場所に余計な波風をたてることもないだろう。

 

「なるほど、理解はしたが入団希望者を勝手に追い払ったのは事実だ。次このようなことがあったら処罰を下す。そのように覚えておけ。」

 

「はっ…」

 

よかったよかった。

 

やはり何事も円満解決に限るね。

 

門番さんもこの事から何かを学んでくれればいいけど。

 

副団長と呼ばれた女性はこちらに向き直り頭を下げる。

 

「すまなかった、フジマル殿。こちらの者が迷惑をかけたようだ。」

 

「気にしてないですよ、それに殿なんてつけてもらうほどたいそうな人間じゃないのでないので普通に立香でお願いします。」

 

「了承した、リツカ。私はリヴェリア・リヨス・アールヴ、このファミリアの副団長を務めている者だ。よろしく頼む。」

 

「よろしくお願いします、リヴェリアさん。」

 

「ひと段落ついたようだね。」

 

お互いに挨拶を終えると館からフィンと何やら厳ついおじさんが出て来た。

 

よく見れば館の窓からは何事かと見物客がこちらを見ている。

 

「お早い登場だな、フィン、ガレス。」

 

2人の登場に少し憤り気味だ。

 

そんなリヴェリアに対してフィンは少しだけ悪びれた様子を見せた。

 

「悪かったとは思ってるよ。」

 

「お前の意図は解らないわけでもないが、それなら説明の1つもあっていいと思うがな。」

 

「そう怒らないでくれよ。」

 

「そうだぞ、そのように小言が多いから団員に母親などと…」

 

「ガレス…お前にはスルトの剣が必要のようだな。」

 

スッと空気が氷点下にまで落ちる。

 

その怒気は絶対零度の炎とでも例えれば良いか…

 

しかしそんなことは意にも介さず厳ついおっさんはむっはっはと笑ってみせた。

 

「くわばらくわばら、でだ。其奴が話に聞くフィンのお気に入りという奴か。」

 

「その通り、リヴェリアはさっき挨拶してたね、こっちはガレス、僕とリヴェリアと同じ、ロキファミリアの古参さ。」

 

そう紹介された厳ついおじさんはこれまた厳つい笑い方をする。

 

「腐れ縁と言い換えてもいいがな、ガレス・ランドロックだ。宜しくするかどうかはこれから次第と言ったところだな。」

 

そうだ、色々あって失念していたが入団試験を受けに来たんだ。

 

「話を聞いてた限りでは僕の予想通りってとこかな?」

 

「はい、ロキファミリアに入れてもらうためにここへ来ました。」

 

ここまでの半日で様々な事があった。

 

そのおかげで自分の向かう道ははっきりしている。

 

「ではいささか特殊ではあるが入団試験は今から、この館の広場行おう。出来るかなリツカ?」

 

フィンは挑戦的な笑顔でこちらに問いかけてくる。

 

お前に大衆の面前で入団試験を受ける度胸はあるかと。

 

「問題ありません。」

 

きっぱり言ってのける。

 

準備をしなければいけないことなど存在しない。

 

大衆の面前?問題ない。

 

ここで何か失敗してもただ俺が恥をかくだけだ。

 

『世界が滅ぶ』なんてこともないしな。

 

「ふふっ、よろしい!では中に入りたまえ。」

 

中に入ると門がゆっくりと閉まっていく。

 

広場は松明によって照らされており門の外よりも明るく、周囲の視界が確保できた。

 

目の前の館からは好奇の視線が無数に降り注ぐ、いわゆる完全なアウェー。

 

まぁ、今までアウェーじゃなかった方が少ないけどね…

 

「入団試験はフィン、リヴェリア、ガレスの3人が責任を持って受け持とう。我々が各々の判断基準で君を見定める。特別待遇だねリツカ。」

 

うわぁ…この人笑顔でプレッシャーをかけてきたよ…

 

「問題ありません、よろしくお願いします!」

 

と元気よく言ってみたものの3人共問答無用でかかってこいとかだったら死んじゃいますよ、俺…

 

「では最初は…」

 

「私が行こう。」

 

そう静かに告げたのはリヴェリアだった。

 

「立香、私の質問に答えて貰おう。それが私からの試験問題となる。よく考えて挑めよ?」

 

質問…一体なんだろうか、面接みたいなものか?それともダンジョンに関する常識問題?

 

そんな俺の思考を遮るようにリヴェリアの問答は始まった。

 

「問おう。お前の前に門が2つあり、片方が天国、片方が地獄へ続いているとしよう。そしてそれぞれ門の前には門番が立っている。片方は正直者、片方は嘘つきだ。どちらの門が何方に繋がっているかはお前には分からないし、お前が話しかける門番が正直者か嘘吐きなのかもお前には分からない、許された質問の回数はどちらかに一回だけ、さて、お前は門番に何を尋ねる?」

 

なぞなぞ?

 

まさか入団試験でなぞなぞを解くことになるとは思わなかったが…

 

この問題、前にカルデアにあったなぞなぞ本にハマったナーサリーから聞いた事があったな。

 

さて、思い出そう。

 

片方が正直者、片方が嘘つきだろ?

 

もしも『あなたの後ろの門は天国に繋がってますか』と聞いたら両方とも[はい]と答える。

 

逆に『あなたの後ろの門は地獄に繋がってますか』と聞いても両方とも[いいえ]となるだけ。

 

となると重要なのは正直者だろうと嘘つきだろうと本当の事を言わせる事…

 

となると…

 

答えは『あなたの後ろの門は天国に繋がってるかと聞いたら[はい]と答えますか?』だ。

 

この質問の仕方なら正直者なら本当のことを教えてくれるし、嘘つきは嘘を言わなければいけないが為に正直に答えなければいけない。要は負数と負数を乗算するとプラスになるのと同じ感じって書いてあったな。

 

「答えは…」

 

一瞬。

 

ほんのほんの微かにだが、リヴェリアの目が残念そうに見えた気がした。

 

なんだ?

 

なんで今の一言で残念に感じる?

 

そんな理由は考えうる限りではただ1つ。

 

聞きたいのは『答え』ではない…?

 

だったら何が聞きたいんだ?

 

思い返せリヴェリアはなんて言っていた?

 

【問おう。お前の前に門が2つあり、片方が天国、片方が地獄へ続いているとしよう。そしてそれぞれ門の前には門番が立っている。片方は正直者、片方は嘘つきだ。どちらの門が何方に繋がっているかはお前には分からないし、お前が話しかける門番が正直者か嘘吐きなのかもお前には分からない、許された質問の回数はどちらかに一回だけ、さて、お前は門番に何を尋ねる?】

 

聞きたいのが答えではないなら問題は省いてもいいはず。

 

【問おう。お前は門番に何を尋ねる?】

 

つまりは…

 

【問おう。お前は何を尋ねる?】

 

これかぁ…

 

「俺は…元の場所に戻れる方法を聞きたいですかね。まだまだやらなければいけない事が沢山あるので。」

 

その答えを聞くとリヴェリアは笑みを零した。

 

「ふふ、瀬戸際だったな。もしかしたらお前の聞く門番は嘘つきかもしれんぞ?」

 

「そうだったらどんな手を使ってでも本当の事を聴き出しますよ。」

 

リヴェリアは決して『なんと尋ねれば天国へ行ける?』とは言わなかった。

 

つまり本当の事を聞き出すことはリヴェリアの聞きたいことじゃ無い。

 

なぞなぞのように見せかけて本当は窮地に陥った時にどのような行動を取るかっていう質問なんてね。

 

上部だけに騙されず、物事の本質を図るために違和感は徹底的怪しむべし…か。

 

全く…

 

「あなたは意地悪な人ですね。」

 

「おや、それは心外だ。特別措置で入団試験をしているんだ。これぐらい答えてもらえなくてはな。」

 

そんなリヴェリアの言葉を聞いてフィンは意地悪そうに告げる。

 

「おやリヴェリア、その質問に君の満足いく答えを出せたのはこの子が初めてじゃなかったかな?元々信用できなさそうな人物をふるい落すために…」

 

「んんっ、誰も今ので満足したとは言っていないのだがな。まぁ、満足させる『答え』を出すために鍛えてやっても良いと思える物は持っているのではないか?」

 

おぉ…どうやら何とかリヴェリアには認めてもらえたようだ…!

 

ホントギリギリだった…

 

「では、次はワシじゃろうな。」

 

安心したのもつかの間。

 

大地に胡座をかいて座り込んでいたガレスがその腰をあげる。

 

「ワシが問うのは無論武力!さぁ、遠慮せずにかかって来るがいい!」

 

どっかの魔王ですかあなたは!

 

無理無理無理無理きっと死んじゃいますって!

 

「と、言いたいところなんじゃが、ワシは先ほど酒を飲んでしまってのう。ベート!頼めるか?」

 

館全体に聞こえるような声でその名を呼ぶとこれまた館全体に響き渡る音量で返事が返ってきた。

 

「うるっせェぞクソジジイ!興味ねぇよ!」

 

「お前もうるさいぞ、とりあえず降りてこい。」

 

すると上階の窓が開きそこから飛び降りてくる。

 

「あのな、何で俺が入団試験なんかに…」

 

俺を見て鼻を鳴らす。

 

「前言撤回だクソジジイ、興味がないどころじゃねェ、却下だ却下!丁重にお帰り願え!」

 

な、何でそこまで嫌われてるの俺…

 

「俺の蹴りも見切れないような奴が冒険者になって何が出来るってんだよ。くだらねェ事でおっ死ぬのが関の山だろうが。」

 

「そうは言っても最初は誰もが素人じゃろう。」

 

才能(センス)が無ェって言ってんだよ!」

 

流石にここまで言われて黙ってるのは違うよな…

 

「ベートさん…いや、ベート。俺と戦え。」

 

空気が変わる。

 

ベートの中で俺という存在が道端の石ころから楯突く虫ぐらいに変化したのだろう。

 

「あ゛ァ…?」

 

明確な威嚇。

 

だがその程度では怯まない。

 

まっすぐその目を見返す。

 

「お前が俺を認められないって言うならそれしか無い。俺だって何の覚悟も無しにここに来てる訳じゃないんだっ…!」

 

「震える声で良く吠えんじゃねェかよ…分かった、了承だ。この雑魚は俺が捻り潰す。」

 

そりゃ怖くないわけはない。

 

俺だって痛いのは嫌だし苦しい思いはしたくない。

 

「あー、念のため言っておくがあくまで試験だからな?殺したりするなよベート。」

 

「心配すんな、そこまでキレちゃいねぇ。手加減はしてやるよ。」

 

あーあ、これで良かったのかね。

 

もっと頭のいいやり方があったのかもしれないけど…

 

流石に少し頭に来た。

 

このDQNに少し分からせなければいけない。

 

「ではお互い10歩距離を取れ、ワシの試合開始の合図で試験を始めるぞ。」

 

お互いに一歩一歩離れていく。

 

一歩進むごとに覚悟を決めていく。

 

もしかしたらこれは断頭台に向かう一歩なのかもしれないが…

 

やがて10歩。

 

覚悟は決まった。

 

向きなおると遠いとも近いとも言えない距離に1人の獣人が立っていた。

 

自分を認めない相手、認めさせたい相手。

 

「互いに準備はいいな?」

 

無言で頷く。

 

「それでは、試合開始ッ!」

 

そうして火蓋は落とされる。




次回、とある迷宮の英霊召喚、「レベル5VSレベル0」

歯ぁ食いしばれ最強、俺の最弱はちっとばかし響くぞ!(大嘘)

ベートの声優(岡本信彦)さんだからそんなことをふと思ったり。

いかがでしたでしょうか?

ほんとは一ページで入団試験を終わらせようかとも思っていたのですがとりあえず今までの倍ほどで。

これからはこの長さで書いて行こうと思ってます。

それでは次回をお楽しみに!


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.02

長期にわたる蒸発大変申し訳ありませんでした。


サーヴァントのマスター自身が戦闘するという行為は端的に言ってしまえば絶対絶命を意味する

 

過去行われたとされる聖杯戦争ではその限りではなかったのかもしれないが、藤丸立香が人理修復において戦闘の矢面に立つ事は少なくとも推奨されていなかった

 

考えれば当たり前のことではあるが藤丸立香は人類史を修復できる最後の存在であるとともにマスターとして見出される前までは一般人として生きて来たのである

急ごしらえの魔術はサーヴァントを支援するだけのものであったし、戦闘は極力サーヴァントに任せていた

 

死ぬ事はそれ即ち人類史の消滅

 

そんな状況で彼はある一つの能力を身につけていた

 

能力というには少しばかり大げさであるが、そのせざるをえなかった成長は対峙しているベート・ローガの精神を逆なでするには十分であったのだ

 

「…チィ」

 

一瞬

 

なんの力も持っていない生意気なクソ野朗なんて一瞬でかたをつけてやろうと考えていた

 

しかしこの状況はなんだ?

 

なんでアイツは『立って』いられる?

 

「痛ったいなぁ…」

 

口では弱音を吐いているがその目は未だ死んでいなかった

 

最初の一撃

 

ベートは軽く意識を刈り取ろうと顎に向かって横薙ぎの蹴りを放った

 

少なくとも初見では俺の蹴りに反応できていなかったしこれで終わるとそう確信して

 

しかし現実はどうであろうか?

 

急所へと放った攻撃はその尽くが外され現実としてまだ目の前に立ち続けたいた

 

もちろんベートは全力ではない

 

レベル5であるベートが全力を出すという事は相手を『殺す』時だけであり、ましてやなんの力も持っていない常人に力を使う事などあってはならない

 

だが相反してベートは本気であった

 

手を抜いて万が一にも目の前の勘違いした男に合格されてはたまったものではない

 

だから全力は出していないが手を抜いてるわけではないのである

 

「うざってぇ…」

 

「それは…褒め言葉として受け取っとくよ」

 

と、軽口を叩いてみたもののそれほど立香自身にも余裕があるわけではない

 

ベートの攻撃を全て躱しているわけではない、躱せないものを単に急所から外しているだけだ

故にダメージは蓄積しているし立香自身もほぼ満身創痍の状態である

加えて立香の方には肉弾戦以上の攻撃手段は存在しない

決死を賭すなら一撃ぐらいは当てられる可能性は存在するであろうがそれでは意味がない

 

「なぁ、そろそろ止めては良いのではないか?」

 

リヴェリアがそう進言するもフィンとガレスは止めようとはしない

 

「レベル5のベート相手にあそこまで持っているなら素質はあると認めても良いだろう?これ以上はただ怪我を増やすだけだと思うのだが…」

 

そんな正当性溢れる言葉にフィンは苦笑いを浮かべる

 

「女性であるリヴェリアにはちょっと理解しがたいかもしれないね」

 

「何が…」

 

「意地だ」

 

ガレスはそう短く答えるとまた黙り込む

 

その視線は真剣に実力があまりにも離れた2人の戦いに向いていた

 

「ここで止めたらきっとわだかまりが生まれるよ、だったら全部ここで吐き出させちゃえば良いとは思わないかい?」

 

その言葉にリヴェリアは深くため息をつく

 

怪我をした場合治すのはこの3人のうちの誰になるかなどは分かりきった話になる故に

 

「そろそろ立ってんのもやっとだろ?横になって休んだ方がいいんじゃねぇか?」

 

その言葉に立香は己の状況にもかかわらず笑みをこぼす

 

「…結構優しいんだな」

 

「冗談も分かんねぇほどフラフラしてるってか?あぁ?」

 

戦い始めの頃から立香とベートは反比例しているようにその感情を変えて行った

 

最初に見せたベートへの激情は見る影もなく、ただ虎視眈々と反撃の機会を伺う立香

 

弱者と断じたものに煽られ、圧倒的な力の差を見せつけてるにもかかわらず立ち上がる姿により苛立ちを募らせるベート

 

誰がどう見ても立香が一方的に嬲られているだけの光景

 

にも関わらず、余裕をなくしているのはベートである

 

「やっぱり優しいよ、ベートは」

 

「テメェ…いい加減に…」

 

「確かに俺は弱いしベートは強いよ、でもそれは戦わない理由にはならないしベートに『庇われる』理由にもならない」

 

「俺には俺の戦いたい理由があって、それを妨げるなら幾ら強さに違いがあっても俺はそれを超えて行く」

 

過去、幾度となく困難はあり、試練はあり、絶望があった

 

その全ては度重なる奇跡の上に成り立っており、もう一度同じことをしろと言われてもほぼ不可能だろう

 

ただ、今この場所まで藤丸立香を立たせているのは何より、前に進む意思があったからに他ならない

 

この瞬間空気は完全に立香が支配した

 

「余計な事ぐだぐだ考えてないで来い!ベート・ローガ!今、この瞬間の敵はこの俺だ!」

 

もう言葉は必要ない、ここまで言われて黙っているベートでもない

 

返答は確実に意識を刈り取る蹴りとなって帰って来た

 

狙いは側頭部、立香の反応速度では絶対に回避できない一撃

 

だからこそ立香は見る前に回避を始めなければいけない

 

速すぎる一撃、だからこそ立香はこの瞬間にかけた

 

ジッっと髪に蹴りが掠める音がなり一か八かの賭けがここに成る

 

指をベートに向け唱える

 

「ガン…う…」

 

回る視界、絶えぬ吐き気、気を抜くと意識を持っていかれそうになる

 

「直撃は避けても風圧は避けられねぇだろ。それでも、人間相手なら脳を揺らすのには十分だ。」

 

「これで…ケリだ」

 

今までの中で一番弱い攻撃、それによって呆気なく立香は地に伏した

 

「不愉快なんだよ、雑魚が…」

 

倒れた立香を見ようともせずにベートは背を向ける

 

その表情は勝者だと言うのにも関わらず暗いものであった

 

「そこま…なっ…」

 

試合終了の掛け声をかけようとしたフィンが驚きの声を上げる

 

「テメェ…なんでまだ立っていられる…」

 

余裕はなかったはずだ、意識を断ったはずだ

 

「立ち上がれるはずがあるわけねぇだろ!」

 

「ーーーーーー告げる」

 

「汝の身は我が元に、我の運命は汝の剣にーーー」

 

「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

「誓いを此処に」

 

「我は常世総ての善と成る者」

 

「我は常世総ての悪を敷く者」

 

「汝三大の言霊を纏う七天」

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

誰も、その光景を見ていた誰もがその存在を知らない

 

神であるロキでさえも

 

それはこの世界、特にオラリオでは珍しくない「魔法」に到達する為に作り出された

 

多くの者が研鑽を積み、外法を犯し、冒涜的な手段にも手を染めてたどり着こうとした「魔法」という域

 

神の恩恵によって誰にでも手に入れられる可能性があるからこそ、この世界では発達しなかった文明

 

その名はーーー魔術

 

「やれやれ…どうにも私は厄介ごとに恵まれた運命にあるらしい…と言っても、今更だとは思うがね」




本文はリハビリ程度です。

今はただ、ご迷惑をおかけしたことに対して、謝罪をさせていただきます。

誠に申し訳ありませんでした。

PS

一年近く触れられなかったにも関わらず温かいお言葉をいただき嬉しさと申し訳なさでいっぱいいっぱいです…

ベートのレベルが4になっていた為レベル5に訂正しましたソウル01さん、ありがとうございます!


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.03

あいも変わらず設定ガバで進めていくのでご指摘等ございましたらよろしくお願いします

そして今回の話でマジか…と思うかもしれませんが弁明は後書きにて

自分の技術不足で伝わるかわからないので明言しますが、今回はベート視点です


「さて、君にはマスターが世話になったようだ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()は頭を数回トントンと叩きながらその閉じていた目を開く。

 

その光景を見ていた奴はもれなく何も言葉を発せずにいた。

 

違う。先程までとはあまりに別人になっている。

 

体格や顔立ちはそのままだが、服装は黒と赤の衣装に変わっており、何よりもその立ち姿は比べものにならない程威圧感を放っている。

 

「てめぇ、何しやがった?二重人格の上早着替えの特技でも持ってやがんのか?ロキファミリアの試験なんて受けてねぇで曲芸師にでもなるべきじゃねぇか?」

 

男は不敵に笑みを浮かべる。

 

「そうキャンキャンと恐れるなよ。動揺を隠すためにとりあえず吠えて見せるのは良いが、こちらも少々込み入った事情があるのでね。早急に対処させてもらおう。」

 

恐れる?

 

俺が…恐れる?

 

何を?

 

目の前の男をか?

 

手を強く握るとじっとりと汗をかいている。

 

それは男が発した言葉を証明づけるように感じられて…その瞬間、己の中で何かがはじけるような感覚がした。

 

「舐めんなぁ!」

 

先程とは比べものにならない程早い一撃を軽々と回避しながら距離を取り、詠唱を唱え始める。

 

「I am the bone of my sword. ーーー体は剣で出来ている」

「うらぁああああああ!」

 

「Steel is my body, and fire is my blood. ーーー 血潮は鉄で、心は硝子」

「ベート!」

団長が声をかけて来るがもう止まれない。

 

「I have created over a thousand blades. ーーー 幾たびの戦場を越えて不敗」

攻撃は回避され続けそのことに更に苛立ちが募る。

 

「Unknown to Death. ーーー ただの一度も敗走はなく」

「備えろベート!」

備える?今更何を言って…

 

「Nor known to Life. ーーー ただの一度も理解されない」

「親指の震えが止まらない…」

 

「Have withstood pain to create many weapons. ーーー 彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う」

「おそらく、その攻撃は…!」

 

「Yet, those hands will never hold anything. ーーー 故に、その生涯に意味はなく」

「…ッ!?」

 

瞬間、男を中心に何かが爆発する

 

 

「So as I pray,UNLIMITED BLADE WORKS. ーーーその体は、きっと剣で出来ていた。」

 

 

空には意味を失い回るが如き歯車が世界を埋めつくさんとばかりに浮遊し、地には数多の剣が刺さる荒野

 

館の前の風景は完全に吹き飛び、そこにいる人物は目の前の男と自分、レベル6の3人を加えて5人だけになっていた。

 

「ある程度賭けだったが、問題なく発動できたようだな」

 

男は何かの感覚を確かめるように手を握って開く

 

「先程の試験という言葉、敵意はあったが殺意は感じられない攻撃、相手であろう君に加えて力量が高い3人を引き込んで見たが、如何かね?」

 

あまりにも変わらない男の態度、それはこの空間に居ることが当然のようで、寧ろ今になっては先程まで館の前にいたことの方が不自然に感じられた。

 

「なんの魔法だ、コイツは…」

 

「ふむ、魔法ではないが君にそれを説明する義理はないな。」

 

そう言うと男は手をこちらに向ける。

 

すると何もない空間から一瞬で現れる。それも1つ2つではない本当の意味で数えきれない、無限にも思える数の剣が360度、己に対する空間を埋めつくさんと出現した。

 

「…っ」

 

「さて、君にはマスターと戯れてもらった借りもある。殺しはしないが…相応の報いは受けてもらおうか、覚悟はいいかね?相当痛いぞ。」

 

「う…らぁあああああああああああああああああ!」

 

「そうか、ではもう2度と相見えないことを願う」

 

男が手を握りしめた瞬間、意思を宿した剣はその一本一本が正確に襲いかかる。

 

その光景と激痛を最後に意識は暗闇へと引き摺り込まれた。

 

 

 

 




本文内で十分に伝わったかどうか不安ではありますが、英霊召喚ではなく憑依的なことになりました。

実は以前のルート分岐の時に
ヘスティアファミリアのルートであれば通常の英霊召喚
ロキファミリアルートであれば憑依的なものにする
という構成を決めておりました。

もしかしたら通常の英霊召喚を見たかった方がほとんどかもしれませんね…

具体的な説明等は今後物語に関わっていくことになりますが、この物語はこのように進めていかせていただきます。

追記
誤字修正をなさってくれた方々には感謝を、日本語までガバな自分です…


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