ポケットモンスターミューズ (sunlight)
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太陽の黒点

こんにちは、sunlightです。この度ラブライブとポケモンのクロス作品を投稿させていただきます。書いたことがなく至らぬ点も多いと思いますが見ていただけると嬉しいです。


ここはジョウト地方のポケモンリーグ、毎回どのポケモンバトルも観客の熱い歓声の中熱いバトルが繰り広げられる。今は、優勝者をきめる決勝戦が行われていた。

 

 

ワァァァァァァァァァァァァァァァァァ………!!

 

 

「リザードン! トドメのブラストバーン!」

『ギャース‼︎』

 

リザードンが放ったブラストバーンが相手のカメックスに命中し派手な煙を上げながらカメックスがバタッとバトルフィールドに倒れた。

 

「カメックス!」

 

ブラストバーンの煙が晴れるとフィールドには目を回したカメックスの姿があった。

 

 

「カメックス戦闘不能! リザードンの勝ち!」

 

審判が威勢の良い大きな声で結果を言った。

 

「よって、ジョウトリーグ優勝者は高坂穂乃果選手です!」

 

ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

 

優勝者の声を高らかに叫ぶ審判に会場の観客の興奮のボルテージが一気にスパークした。

 

「やったぁぁぁ‼︎」

 

穂乃果と呼ばれた少女は笑顔で右腕を勢いよく上にあげて飛び跳ねていた。まるで勝利の喜びを体全体で表現しているようだ。

相手がカメックスをボールに戻していると穂乃果はバトルの相手のところへ行き、スッと手を差し出した。

 

「バトルありがとうございました! 貴方とバトルできて本当に楽しかったです!」

 

穂乃果はバトルの相手に眩しいほどの笑顔を向けた。その笑顔にバトルの相手だけでなく審判や観客、さらにはポケモンまで見惚れてしまっていた。

 

「あれ? どうかしたんですか?」

 

固まったまま動かない相手に疑問を感じたのか穂乃果が相手の顔を覗き込んだ。相手は慌てて顔を見られないようにしながら穂乃果の手を握り返した。

それに穂乃果は再び笑顔になり、「また機会があったらバトルしてください!」と言った。

 

「ああ! もちろんいいよ」

 

相手も自然と笑顔になった。

その光景に会場が再び熱狂に包まれた。

 

 

やがて表彰式になり穂乃果は優勝のトロフィーと優勝賞金を受け取った、表彰式はすぐに終わり、ジョウトリーグは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

「はあ……」

 

ジョウトリーグが終わった後、穂乃果は1人、自分の住んでいる地方に帰るための船の便で夜の海をデッキでみながらため息をついた。とてもリーグを優勝したようには見えなかった。

ちなみに今回ジョウトリーグで戦った手持ちのポケモンたちは全員モンスターボールの外に出してある。

 

『ギャギャ、ドラ』

『メタ! メタグロース』

『ガブ、ガブ、カブリアス!』

『ゲコ、ゲコ、コウガ!』

『レッキ! レッキ!』

『バフ! バウ!』

 

自分の主人がため息をついているのを見て穂乃果のポケモンたちが穂乃果の元に集まってきた。

 

「ああ、リザードン、メタグロス、ガブリアス、ゲッコウガ、エレキブル、ルカリオ、今日はありがとうね。」

 

穂乃果は笑顔でリザードンたちに今日のお礼を言うが穂乃果と長い付き合いの

リザードンたちは穂乃果の笑顔に影がさしていたことに気づいた。

穂乃果も心配そうな顔をしているリザードンたちに気づいたのか優しく言った。

 

「大丈夫だよ、みんな、私は…」

 

そう言う穂乃果の顔はすごく悲しそうだった。そんな悲しそうな顔ををリザードンたちは穂乃果にして欲しくなかった。

穂乃果も同じだ。リザードンたちを自分のことで悲しませたくなかった。

穂乃果が自分の今にも泣きそうな顔をリザードンたちに見られないように再び夜の海に顔を向けた。

どこまでも真っ暗で光1つない暗い海はまさに今の自分自身の心のように思えた。

穂乃果がそう考えていたとき…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ‼︎」

 

突然、船内で悲鳴が聞こえた。穂乃果の周りの乗客たちも「何事か⁉︎」とあたりを見回している。

 

ダッ!

 

穂乃果はリザードンたちをモンスターボールに戻し、船内へ一直線に走って行った。

 

 

 

 

ー船内ー

 

「お前たち! 動くんじゃねえぞ!!」

「黙って有り金全部よこしたら命までは取らないぜ?」

「痛いめにあいたくないなら従いなよ!」

「そうだな! ギャハハハハハ!!!!」

 

穂乃果が船内に入ると4人の若い男たちが乗客や乗務員を自分達のポケモンで脅していた。

穂乃果はその光景を見て激しい怒りが湧いた。

男たちはなかなか乗客たちが自分達の言う通りにしないのに痺れを切らしたのかポケモンに指示を出して攻撃をさせた。

 

「チッ! 言う通りにしないのなら力ずくでさせるまでだ! クロバット、エアスラッシュだ!」

 

1人の男が自分のクロバットに指示を出した。

クロバットの翼から出た空気の刃が乗客たちに飛んでいく。乗客たちは観念して目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

「メタグロス、まもる!」

 

 

 

ドガーン!!

 

 

 

 

 

 

強い衝撃が船内に響いた。

乗客たちは自分たちが攻撃を受けたのだと思ったがどこにも痛みはない。

不思議に思った乗客たちが恐る恐る前を見るとメタグロスが自分たちを

まもる、で守り攻撃を防いでくれたのだ。

 

「だ、誰だ⁉︎」

 

男たちはいきなりメタグロスを出したトレーナーを探した。

 

 

 

「ありがとう、戻ってメタグロス」

 

明るい少女の声が聞こえた。

男たちが声のした方をみるとオレンジ色のサイドテールの髪型に青い瞳をした17歳くらいほどの少女が立っていた。

男たちは少女だと知った瞬間「フン」と鼻で笑った。

 

「なんだ? 姉ちゃん、お前も俺たちにやられに来たのか?」

 

クロバットで攻撃した男が聞くと「バカなことを言ってないでさっさと消えなよ。」と穂乃果が返したので男たちは怒った。

 

「なんだとコラ! 目にもの見せてやるよ! クロバット、あいつにエアスラッシュだ‼︎」

 

男がクロバットに指示を出した。

 

「そっちがその気なら… ファイトだよ! リザードン!」

 

男に対して穂乃果はリザードンを出した。

 

「リザードン! 火炎放射でエアスラッシュを全て相殺して!」

 

穂乃果の指示を聞いてリザードンは火炎放射を放った。

 

「ハハハ! バカだなお前は! 全部のエアスラッシュを相殺できるわけが…」

 

男が笑っていると、「それはどうかな?」穂乃果が言った。

リザードンの火炎放射はクロバットのエアスラッシュと衝突するといとも簡単にエアスラッシュを消し去り後ろにいたクロバットに火炎放射が命中した。

 

『クロッ!』

 

「な、何ぃ⁉︎」

 

クロバットも全部相殺されるとは思わなかったのだろう、完全に油断していたクロバットに火炎放射があたりクロバットがひるむ。

 

「リザードン、続けて鋼の翼!」

『ギャフ!』

 

怯んだクロバットの隙をついてリザードンはクロバット鋼の翼を叩き込んだ。おまけに全ポケモン共通の急所である顎にだ。

 

『クロッ! クロ…』

 

クロバットはもうフラフラになっていた。

 

「おい! 何してんだ⁉︎ クロバットしっかりしろ! ヘドロ爆弾だ!」

 

クロバットはフラフラしながらリザードンにヘドロ爆弾を放った。

 

「避けてドラゴンクローでとどめ!」

 

リザードンはクロバットのヘドロ爆弾を天井ギリギリまで飛んで避けてクロバットにそのまま突っ込んでドラゴンクローを決めた。突っ込んだ勢いもありかなりの威力だ。

煙が晴れると目を回したクロバットが倒れていた。

 

「チッ‼︎ 戻れ! クロバット!」

 

男が舌打ちをしながらクロバットをボールに戻すと、男の仲間の2人が男に言った。

 

 

 

 

 

 

 

「何してんだよ。相手は女の子だぜ?」

「だ、だけど、あいつ凄く強いぞ!」

「バカか? 一対一なんて誰も言ってないだろ? 4人がかりで倒すのさ。」

「そうだな、大人に逆らったら怖いことをあの小娘に教えてやらないとなぁ…」

 

 

乗客や乗務員はこれを聞いて「卑怯だぞ!」と怒鳴ったが4人の男たちは無視し、「お前は乗客たちを見張ってろ」と穂乃果に負けた男に3人は言った。

 

 

3人の男たちは穂乃果の前に立った。

 

「お嬢ちゃん、今、ここで俺たちに黙って荷物を差し出すなら何もしないぜ」

「三体一じゃ、勝つのは流石に無理だろう?」

 

男たちは気持ちの悪い猫なで声で穂乃果に言ったが穂乃果は平然とした顔で言った。

 

「貴方たちみたいな人に差し出すものなんてなにもないよ」

 

この言葉に男たちはイラッときた。

 

「そうか… それならちょっと痛い目にあってもらわなきゃな! いけ! ワルビアル!」

「お前もだ! サマヨール‼︎」

「いけ! ストライク!」

 

『ワルビッ!』

『ヨルー…』

『ライーク‼︎』

 

男たちはワルビアルとサマヨールとストライクを繰り出した。

三対一なため、数的にも圧倒的に戦況は穂乃果が不利になってしまい乗客たちは不安そうな顔をする。

 

「リザードン、いける?」

『ギャフ!』

 

しかし、穂乃果がリザードンにいけそうか聞くとリザードンは『任せろ!』というように威勢良く頷いた。

 

「よし… 行くよ! リザードン!」

『ギャーフ‼︎』

 

穂乃果の掛け声にリザードンは威勢良く鳴いた。

 

「フン! ワルビアルにリザードンを出すとわな! 瞬殺してやるぜ! ワルビアル、ストーンエッジだ!」

 

ワルビアルの足元から出た尖った岩がリザードンに迫る。

 

「避けて!」

 

「サマヨール、シャドーボール!」

「ストライク! きあいだめから連続斬り!」

 

 

 

穂乃果の指示でリザードンがストーンエッジを避けたのでサマヨールがシャドーボールを飛ばす。

ストライクもきあいだめで攻撃を急所に当てやすくして連続斬りを放ってきた。

 

「リザードン、ドラゴンクローでシャドーボールを弾き返して! 連続斬りを火炎放射で跳ね返して!」

 

リザードンのドラゴンクローで弾き返されたシャドーボールをサマヨールは避けきれずに、サマヨールに直撃した。

 

『ヨルッ!』

 

ドラゴンクローで勢いよく弾き返されたシャドーボールは自分で放ったとはいえゴーストタイプであるサマヨールは大ダメージを受けた。

ストライクも急所に攻撃を当てようと接近したのが仇となり、リザードンの火炎放射の格好の餌食になり、効果抜群の技を真正面から受けてしまい火炎放射の炎がおさまると目を回して戦闘不能になってしまった。

 

サマヨールもシャドーボールがドラゴンクローよ勢いもありはじき返されたことにより大ダメージを受けて戦闘不能寸前になっていた。

 

「ああ! 俺のストライクが! 一撃で…!」

「くっ… しっかりしろ! サマヨール!」

 

「お前たち何やってんだ! ワルビアル、あのリザードンに破壊光線だ!」

『ビアール!』

 

ワルビアルの口から黒い強大な光線がリザードンに向けて勢いよく発射された。

 

「リザードン! 避けて、火炎放射!」

 

ワルビアルの破壊光線をするりと避けてリザードンはワルビアルに火炎放射をはなつ。

しかし、炎タイプの攻撃は地面タイプのタイプを持っているワルビアルに効果はいまひとつだ、

 

「ハッハッハ! ワルビアルに炎タイプの攻撃をするとはな! そんなの効かねーよ‼︎」

 

男が笑っていると穂乃果はふっと軽く笑った。

 

「そんなの百も承知だよ」

「何ぃ…?」

 

火炎放射の煙が晴れるとワルビアルの目の前にリザードンがいた。

 

「今だ! リザードン、 ワルビアルにドラゴンクロー!」

 

リザードンが至近距離でワルビアルにドラゴンクローをくらわせた。

 

『ビアール‼︎』

 

至近距離で防御もなしにドラゴンクローを受けたワルビアルは苦痛に顔を歪めて怯む。

 

「リザードン、続けてドラゴンクロー!」

 

ワルビアルが至近距離での技を受けて怯んだ隙を見逃さずリザードンはドラゴンクローを叩き込みワルビアルは怯んだこともあり吹っ飛ばされた。

 

『ビアール!」

 

さらに、ワルビアルが吹っ飛ばされた先には大ダメージを受けてヨロヨロしているサマヨールがいた。

 

『ビア!』

『ヨル〜!』

 

二体は思い切り強く衝突してバランスを崩し倒れた。

 

「今だ! リザードン、ブラストバーンでとどめ!」

『ギャーフ!!』

 

ここぞとばかりに、リザードンが出した凄まじい威力の炎がワルビアルとサマヨールを取り囲んだ。眩しい炎の光があたりを包みこみ煙が巻き上がる。

煙が晴れると、そこにはストライク同様、目を回したワルビアルとサマヨールがいた。

 

「ワルビアル!」

「サマヨール!」

 

男たちがいくら呼びかけてもワルビアルとサマヨールが動くことはなかった。

4人の男たちの全てのポケモンが戦闘不能になり男たちは闘うポケモンはもういない。

 

 

「くっ、戻れ!」

「サマヨール戻れ!」

「クソッ! ストライク戻れ!」

 

 

男たちが舌打ちをしながらワルビアルとサマヨールとストライクの3体をボールに戻すと穂乃果は静かに男たちに言った。

 

「さあ、もう観念しなよ、 その様子からあなた達にはもうポケモンはいないみたいだしね…」

 

穂乃果が言うと男たちは怒りの目で穂乃果を見て動けない乗客たちと乗務員たちの方を見た。

 

「誰が観念するか‼︎ こうなったらこうだ‼︎」

 

4人の男たちは船内にあったナイフや椅子を持ち近くの乗客の中にいた小さな女の子に襲いかかろうとした。女の子はショックで動けない! ナイフを持った男が女の子を人質にとろうとしたその時!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メタグロス、サイコキネシス」

『メター!」

「「「「うわぁっ‼︎」」」」

 

穂乃果がメタグロスをボールからだし、男たちがメタグロスのサイコキネシスで浮かび上がらされる。

それに男たちだけでなく、乗客たちと乗務員までもが驚いていた。

男たちと乗客たちが穂乃果の方を見ると肩を震わせて俯いている穂乃果の姿があった。

 

「酷い…… すごく酷い… こんなことをするあなた達には同情の余地なんてものは必要ないよね……!」

 

俯いたままの穂乃果がすごく低い声で男たちに言った。

 

「そんな酷い人間にはもう容赦しない!」

 

穂乃果は鋭い声で男たちに言い放つとゲッコウガをボールからだしリザードンとゲッコウガを見た。

 

「リザードン! 火炎放射! ゲッコウガ! ハイドロポンプ!」

 

穂乃果の指示を受け2体がそれぞれ男たちに技を出した。男たちにリザードンたちの出した技が迫る。

 

 

 

 

 

 

 

「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブハァーーーーン!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲッコウガのハイドロポンプとリザードンの火炎放射が4人の男たちの目の前であたり蒸発した。

男たちはあまりの衝撃に気を失った。

 

「ありがとう、リザードン、ゲッコウガ、メタグロス」

 

穂乃果はリザードンたちに労いの言葉をかけボールに戻すと乗務員に言った。

 

「今です。この4人をロープか何かで縛り上げて下さい。船が船着き場に着いたら4人をジュンサーさんに引き渡してください」

 

乗務員は穂乃果の言葉を聞いて我に返りロープで気絶している3人の男たちを縛りあげた。

穂乃果はそれを見た後、男たちに襲われた女の子の元に行った。

 

「大丈夫だった? もう安心だよ。 さあ、お母さんのところへお帰り」

 

優しい笑顔で女の子の頭を撫でながら言うと、女の子は安心したらしく「うん!」と笑顔で頷き母親のところへ走って行った。

母親は戻ってきた女の子を強く抱きしめた。

そして、恩人である穂乃果を見て、

 

「あの、娘を助けていただき本当にありがとうございました!」

 

娘を助けてもらった母親が穂乃果に頭を下げてお礼を言った。

 

「いえいえ、私はお礼を言われることは……」

 

穂乃果が照れ臭そうに言うと、

 

「いえ! 私たちを助けていただきありがとうございました!」

 

乗客と乗務員が口々に穂乃果に感謝の言葉を贈る。

穂乃果は嬉しくて照れ笑いをしたが心の底では笑顔にはなれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(私は褒められる人間なんかじゃない、私は感謝される資格のある人間なんかじゃない。私は幸せになっちゃいけない人間なんだ……)

 

 

 

 

しかし、そんな穂乃果の気持ちに気づいた人間はこの場には誰もいなかった。

 

 




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仮面をつけた太陽

ほぼオリジナル設定です。原作が好きな方はブラウザバックを推奨します。


ここはオトノキ地方のある和菓子屋のお店、和菓子屋の名前は『穂むら』だ。

その店にジョウトリーグを優勝し、帰りの船で乗客と乗務員を助けたヒーローである高坂穂乃果はそこの娘として生活している。

 

 

「う〜〜ん…」

 

平日の朝6時、穂乃果はいつもその時間に起きる。学校に登校するのはいささか早い気がするが穂乃果はそのために起きたのではない。

穂乃果はひとつ伸びをしてベットから起き部屋から出た。

 

「さてと…」

 

 

穂乃果は階段を降りて一階にある穂むらの厨房に行くと奥の隅っこにある掃除棚を開けた、そして、掃除棚の中の壁にある小さな赤いボタンを押した。

 

 

 

ウィーーン… ガタン‼︎

 

 

 

穂乃果がボタンを押した途端、掃除棚が床に引っ込み階段がその先に現れた。

 

「………」

 

穂乃果は無言のまま階段を降りて行った。

階段の下には大きな扉の地下室があった。穂乃果は大きな扉を両手で開ける。

そこには……

 

 

 

『ギャーフ』 『ヨル〜』 『ふるー!』『バウ!』

 

 

たくさんのポケモンたちが笑顔で穂乃果を迎えていた。

みんな穂乃果が育てているポケモンたちだ。

ジョウトリーグでのポケモンたちだけではなく、他のポケモンたちも仲良く暮らしている。

ポケモンたちにつられて穂乃果の顔も笑顔になった。

「みんな、おはよう! 今日も元気だね!」

 

穂乃果は笑顔でポケモンたちに言った。

穂乃果が平日とはいえこんなに早起きしているのはポケモンたちに餌を与えるためだ。

 

「みんな、ご飯だよ」

 

穂乃果はそう言うとリーグの優勝賞金や以前、指名手配されていたポケモンハンターを捕まえた時の懸賞金で買った自動餌やり機のスイッチをONにした。

 

 

ザァァァァーーーーーッ

 

 

たくさんの餌がポケモンたちの器に入れられる。

ポケモンたちはそれぞれ自分の餌をとって美味しそうに食べ始める。

穂乃果はそれを優しい笑顔で見ていた。

ポケモンたちが餌を食べ終わった後、一部のポケモンたちをボールに戻す。

そして、今日、持って行くモンスターボールを手に取り地下室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

地下室を出ると家族が朝食をとる準備をしていた。

 

「おはよう 穂乃果」

「おはよう! お姉ちゃん!」

「おはよう…」

 

穂乃果に両親と妹の雪穂が挨拶した。

 

「おはよう! みんな」

それに穂乃果も笑顔で挨拶を返す。

 

「お姉ちゃん! ジョウトリーグも優勝したんだね! 新聞にのっていたよ!」

 

「穂乃果! おめでとう!」

 

雪穂が興奮したように穂乃果に聞いた。

 

「うん…」

 

穂乃果が歯切れの悪そうに返すが雪穂は笑顔で穂乃果に聞き続ける。

 

「すごいね、お姉ちゃん! ジョウトリーグも優勝するなんて、カントーやカロス、ホウエンまで優勝したんだから!」

 

雪穂が興奮したまま穂乃果に言う。

 

「ありがとう雪穂、でも、そんなにすごい事じゃないよ」

 

穂乃果が言うと雪穂は興奮したまま穂乃果に言った。

 

「お姉ちゃんは私の自慢の姉だよ! 優しくて、頼りになって、ポケモンバトルも強くてかっこいいし!」

 

穂乃果は雪穂の褒め言葉に居心地の悪そうな顔になった。

 

「雪穂、私はそんな人じゃないよ。 私は自慢されるような人間じゃない…」

 

穂乃果が雪穂に言うとそんな穂乃果の様子に気づいたのか母親が雪穂をに注意する。

 

「雪穂… その辺にしなさい。 穂乃果は…」

 

いつになく真剣な母親にそういわれて雪穂もハッと黙る。

 

「ゴ、ゴメンお姉ちゃん…」

 

雪穂が穂乃果に謝ると穂乃果は雪穂に笑顔で言った。

 

「気にしない気にしない、ありがとう雪穂」

 

第三者が見ればいい笑顔に見えるだろう、しかし、家族である雪穂たちから見た今の穂乃果の笑顔は無理して笑ったような笑顔だ。

 

「じ、じゃあ、そろそろ私は学校に行くから…」

 

そんな雪穂たちに気づいたのか穂乃果はその笑顔のままカバンを持ち食器を流し台に置いて「いってきまーす!」と明るい声で言い部屋を出ていった。

 

 

 

「お姉ちゃん…」

 

 

 

 

穂乃果が出た後雪穂が呟いた。

 

「雪穂、あんまり傷を抉ったらダメよ。穂乃果は今でも苦しんでいるんだから」

 

「で、でも、リーグで優勝するなんてすごい事だよ⁉︎ それにあのことはお姉ちゃんは悪くないのに… あれからお姉ちゃんは、私たちの前では明るく振舞っているけど見てない所ではいつも悲しげな顔をしているよ!」

母親が言うと雪穂も言い返す。

 

「そうだけど… これは穂乃果自身の問題よ、私たちは見守りましょう」

母親が雪穂にキッパリと言った。

 

「お姉ちゃん…」

 

 

 

雪穂はご飯を食べる箸を無意識に見ながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子をドアの隙間から見ていた穂乃果は申し訳ない気持ちになった。

 

 

(はぁ… 家族にも心配かけるなんて… やっぱり私はダメな人間だよ…)

 

穂乃果は雪穂が言っていたあのことを思い出した。

 

(そう… 私は最低の人間だ… それこそ殺されても仕方ないくらい…)

 

穂乃果は1人そう思っていると、

 

『穂乃果ー!』

『穂乃果ちゃーん!』

 

外から聞き覚えのある2人の女の子の声が聞こえた、おそらく自分を迎えに来てくれたのだろう。穂乃果は慌てて今の表情からいつも人前でしている笑顔になり2人の待つ場所へ玄関を開けて向かった。

 

 

 




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廃校の知らせ

オリジナル設定かつオリジナル展開で、性格改変です。


「おはよう! 穂乃果ちゃん!」

「おはようございます。 穂乃果」

穂乃果が外に出るとそこには穂乃果の幼なじみである淡い青色のロングヘアーで大和撫子という言葉がよく似合いそうな女の子とベージュの髪を上からまとめている優しそうな女の子が立っていた。

「おはよう! 海未ちゃん! ことりちゃん!」

朝食の後ときの暗い顔をひっこめていつもの笑顔に2人に挨拶する。

「「はぁ〜ん」」

穂乃果が笑顔で2人に挨拶すると2人は好きな人を見たような顔を赤くしてトキめいた表情になった。

「2人ともどうしたの? 顔が赤いけど風邪?」

疑問に思った穂乃果が首をかしげながら2人に聞くと「なんでもないよ!」と2人は慌てたように言った。

「? まあ、いいか」

穂乃果は不思議そうな顔をしたが2人に「早く学校に行こう」と言う。

「鈍感…」

「穂乃果だから仕方ないですね….」

2人はため息をつきながら呟いた。

「2人とも早く行こうよー!」

穂乃果が手を振りながら言った。

「あっ! 待ってください!」

「おいてかないでよ〜!」

2人は穂乃果を慌てて追いかけた。

 

 

 

 

「そういえば、ジョウトリーグが昨日あったんだよね! 新聞で私見たよ!」

学校に着くとことりが穂乃果と海未に言った。

「ああ、私も見ました、すごかったらしいですね」

海未も言う。1人青い顔になったのは穂乃果だ。

「でも、その優勝した人なんか身元を出すのははNGだって言ったらしくて遠目でしか写真には写ってなかったよ?」

「そうですよね、準優勝者はちゃんと写真に写ってたのに…」

「あーー! きっと、その人は恥ずかしがり屋なんだよ! 顔出しされるのが嫌な人だっているでしょ?」

話し合っている2人に穂乃果が慌てて口を挟む。何を隠そうその優勝した人というのは自分なのだから

突然大声を出した穂乃果にことりと海未は驚く

「ど、どうしたの… 急に…」

「その人がどんな人なのか知りたくはないんですか?」

ことりが戸惑い海未が聞く、何も知らない2人からの反応は普通だろう。穂乃果もそれに気づき

「い、いや… 知ったとしても私たちの知らない人だよ ほら! こんな話はお終い! 早く学校に行こう!」

穂乃果はこれ以上はボロが出ると思い強引にこの話題を切り替えた。海未とことりは穂乃果の態度に首をかしげたが深くは追求しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

学校に着くと穂乃果は机に頬杖をついて窓の外を見ながら何度目かわからないため息をついた。窓の外は雲ひとつない綺麗な青空だったが穂乃果の心は雲しかない曇り空のようだった。

(幼なじみで親友である2人に嘘をつくのは辛いけど仕方ないことなんだ)

穂乃果はそう心の中で思った。

実は穂乃果は自分の経歴やポケモンを周囲の人間や学校には隠している。穂乃果は知っての通り各地方のリーグをいくつも優勝しているいわばエリートトレーナーだ。リーグを優勝したトレーナーは普通は有名になるが穂乃果はそれを拒んでいる。穂乃果には自分のことを知られたくない相手がいるからだ。そのために穂乃果はリーグを優勝しても功績をたてても極力顔を出さず名前もださないのだ。リーグで優勝したトレーナーだとは言えマスコミも取材を無理強いすることは出来ないのだ。なので、穂乃果は謎のトレーナーと言われている。

ちなみにこの秘密を知っているのは穂乃果の家族だけだ。

「どうしたのかな…? 穂乃果ちゃん…」

「何かあったんでしょうか?」

ことりと海未がそんな穂乃果を心配そうに見ているとき、

 

 

 

ピンポンパンポーン♫

『全校生徒は至急体育館へ集まってください。』

ピンポンパンポーン♫

 

 

 

 

突然チャイムがなり放送が学校中にかかり、生徒たちは「なんだろう?」や「何かあったのかな?」といいながらそれぞれ体育館へ向かう。穂乃果も海未とことり一緒に体育館へ向かった。

 

 

 

 

 

 

体育館へ着きいつも通りの挨拶が終わり理事長が壇上に上がった。みんなが理事長の方を見る。

壇上に上がった理事長は全校生徒を見渡しこう告げた。

「えー、みなさん、我が伝統ある音ノ木坂学園は廃校になることになりました」

理事長の言葉に全校生徒がどよめいた。穂乃果もその1人だった。しかし、穂乃果はそんな中さっき全校朝会のときに挨拶をした生徒会長の顔が険しくなっていることに気づき穂乃果は「あー、あの人知っていたのか…」と呟いた。

全校生徒がザワザワ騒いでいるのを見ながら理事長は続けた。

「えー、動揺するのもわかります。しかし安心してください。実行されるのは今の1年生が卒業したらですので…」

理事長はそう言うと降段した。

 

 

 

 

全校朝会が終わって教室に戻ると廊下に『廃校決定』の張り紙がされており生徒たちもその話題で持ちきりだ。中には「廃校だなんて嫌だ」と言う人もいた。海未とことりもそうだった。

「本当に廃校になるのかな?」

2人を様子を察した穂乃果がことりに聞くと

「うん… お母さん、前から言ってたから…」

「母校が廃校だなんて嫌ですね…」

ことりが重々しく呟くと海未もその言葉に賛同した。

「あ、なんか廃校を取り消しになるようなことがこの学校にあれば良いんじゃないかな⁉︎」

再び重々しい雰囲気になり、穂乃果が雰囲気を変えようと慌てて話題を変える。

「「………」」

穂乃果に聞かれたが良い案が浮かばずことりと海未が黙る。

オトノキ地方は全地方の中で最も大きな地方で人口も最大である。大きな地方であるからに学校も多く廃校になることもないわけではない。さらにこのオトノキ地方では他の地方にはない法律もある。例えば同性婚が認められているので同性婚をする人も珍しくなく、一夫多妻や一妻多夫、さらには、一夫多夫や一妻多妻も認められている。話が逸れたが、穂乃果たちの通う音ノ木坂学園は正直あまり特徴のある学校ではない。偏差値も高くなく、部活動でもそんなに強い部活動はない。いわば普通の学校なのだ。だから廃校になってもおかしくない学校だ。

「何か、良い学校の宣伝があれば良いんだけど…」

ことりが呟いたとき海未の頭に名案が浮かんだ。

「そうです! ポケモンリーグに出場すれば良いんです!」

海未の意見に穂乃果とことりは目を丸くする。海未はそんな2人を見ながら続ける。

「ポケモン勝負が盛んなこのオトノキ地方のポケモンリーグに出場して上位に入選すれば良い学校の宣伝になると思います!」

「そ… それは良いけど誰が出場するの…?」

珍しく積極的な海未に若干引き気味になりながらことりが海未に聞くと海未が興奮しながら指差す。

「穂乃果! あなたです!」

「ええっ⁉︎ 私⁉︎」

いきなり海未に指さされた穂乃果が驚きながら海未に聞き返す。

「そうです! 穂乃果! あなたならリーグに出ても入選が出来るはずです!」

「そうだね、穂乃果ちゃんなら出来るね!」

鼻息荒く言う海未にことりが賛同し穂乃果は戸惑う。

「ち、ちょっと待ってよ… 私なんかが出ても…「「そんなことない(ありません)!!!!」」……」

穂乃果の言葉を海未とことりが遮って言う。

「でも… ポケモンリーグに出るには学校の許可が必要なんじゃ…」

「それなら今日の夜にでも、お母さんに言って許可もらうよ!」

「そして生徒会に明日許可を貰いに行きましょう!」

穂乃果が言うと矢継ぎ早にことりと海未が穂乃果に詰め寄る。

「「だからお願い(します)!! 穂乃果(ちゃん)!!!!!」

幼なじみで大切な親友である2人の頼みに穂乃果は断れずに「わかったよ…」と頷いた。その途端2人の顔が輝いた。

喜ぶ海未とことりをよそに穂乃果は全校朝会の時の生徒会長を思い出した。

(ポケモンリーグに出るなんてあの生徒会長が簡単に認めてくれるかなぁ……?)

穂乃果は心の底でそう思った。

 

 

 

 




ハーレムものは書いたことがないのでご指摘、感想よろしくお願いします。
少し性格改変しすぎたかもしれません…


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帰り道での出来事

姉だけでなく兄からも早くかけと叱責を受けました。


1日の授業が終わり音ノ木坂学園の校門を1人で出る穂乃果、ことりはポケモンリーグのことを理事長に話に行っており、海未は部活で今日は1人で帰るのだ。

 

「ポケモンリーグか…」

 

穂乃果は小さく呟いた。今まで穂乃果がオトノキ地方のポケモンリーグに出なかったのは自分の実力を見られたくなかった相手がこの音ノ木地方にいたからだ。だから、ポケモンリーグは他地方の大会しか出ず、優勝しても名前を公表したり写真に写らなかったりしていたのだ。今回もそのつもりだったが親友2人にあそこまで言われたら断れない。

 

「はぁ… 廃校を救いたいのは山々だけど…」

 

穂乃果は小さくため息をついた時

 

 

 

 

 

 

ピリリリリリリリリリリ……‼︎

 

突然、穂乃果の携帯電話が鳴った。穂乃果はいきなりなった携帯電話に驚きながら電話に出た。画面を見ると相手はお母さんだった。

 

「もしもし? 穂乃果だけど…」

『あ! 穂乃果? 悪いんだけど帰りにスーパーで醤油と味醂買って来てくれない? 家の切らしちゃって…」

「あ、はーい」

 

ピッ

 

お母さんからの頼みを受けた穂乃果はいつもの帰り道をUターンしスーパーの方に歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……!

 

穂乃果がスーパーの近くに着くと、スーパーの近くの街頭ビジョンにポケモンリーグのバトルの生放送が放送されていた。

 

『ドダイトス! とどめのハードプラント!』

ズガーン!!!!

『ダイケンキ!』

 

穂乃果がビジョンを見ると茶髪のショートヘアーの少女が自分のドダイトスで相手のダイケンキを倒したところだった。

 

『ダイケンキ戦闘不能! ドダイトスの勝ち! よって勝者、綺羅ツバサ選手です!』

 

ワァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

 

審判が綺羅ツバサの勝利を言うとビジョンから歓声が溢れた。ビジョン越しからでもここまで大きな歓声なのだからバトルが行われた会場はどんな感じなのだろう。

穂乃果はこの綺羅ツバサという人物を知らなかった。

 

(このオトノキ地方では強いトレーナーなのかな?)

 

他地方のリーグにしか参加しない穂乃果はオトノキリーグのことをよく知らない。綺羅ツバサという少女について詳しく知るため近くにいたツインテールの少女に聞いた。

 

「あの? この綺羅ツバサってどんな人何ですか?」

 

「はあ⁉︎ あんた綺羅ツバサを知らないの⁉︎ このオトノキ地方最強のポケモントレーナーよ! ちなみにNo.2とNo.3は同じグループの藤堂英玲奈と優木あんじゅよ!」

 

かなり興奮しながら穂乃果に怒ったように言うツインテールの少女に若干引き気味になりながら穂乃果は再度聞いた。

 

「じ…じゃあ…同じグループってどういう意味なんですか…?」

 

穂乃果が聞くとツインテールの女の子は『信じられない!』というような表情をした。

 

「あんた、A.RISEを知らないの⁉︎ オトノキ地方最強の3人のグループよ!」

 

鼻息荒くビジョンを指差しながら穂乃果に言うツインテールの少女に穂乃果が思わず愛想笑いを浮かべるとツインテールの少女は穂乃果からビジョンに視線を移し。

 

「悪いけどこれ以上聞くことがないならもう行ってくれる? 今からA.RISEの勝利のインタビューがあるんだから!」

 

ツインテールの少女は穂乃果にそう言った。穂乃果もおつかいがあったのでこれ以上ここにいる必要はない。「ありがとう」とツインテールの少女に言うと穂乃果はスーパーに向かって再び歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

ビジョンを見ていたせいで結構遅くなった。穂乃果が醤油と味醂を買ってスーパーを出た頃はもう真っ暗だった。早く家に帰るために近道をするために細い路地に入る。

 

「ここを左に曲がれば…」

「ちょっと…… やめ… さい……!」

穂乃果が路地を左に曲がろうとすると女性の助けを求める声が聞こえた。

 

「はあ… 本当に世の中仕方ないなあ…」

 

ため息をつきながら穂乃果はその声の方に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にやめなさい! 何するのよ!」

「そんなに邪険にすんなよ、まあ、こんなところじゃあ助けなんて来ねーよ」

「諦めるんだな‼︎」

「ヒッヒッヒ…! なかなかべっぴんの娘だぜ!」

 

穂乃果が声のした場所に着くと3人のチンピラが赤髪の女の子に下品な笑みを浮かべながら近づいているところだった。

 

「だ… 誰か助けて…」

 

女の子が涙目になった。

 

「おい、じゃあさっそく…「はいはい、それまで」あぁ?」

 

穂乃果の声が男たちの声を遮った。声の聞こえた方を女の子が見た。

男たちは穂乃果を見るなり下品な笑みを浮かべた。

 

「こりゃなかなかの美少女だなぁ…」

「姉ちゃん、お前も混ぜてやろうか?」

 

「馬鹿なことを言ってないでさっさとどこか行きなよ」

 

男たちが穂乃果に言うと穂乃果がそう返したので男たちはカンカンに怒った。

「んだと! このアマ! 目にもの見せてやる! いけ! コイル!」

『ジジジ…』

「お前もだ! レアコイル!」

『ジジジジジ……!』

 

 

手前にいた、2人のチンピラがコイルとレアコイルを繰り出した。

 

「相手になってあげる… ファイトだよ! ギャラドス!」

『ギャーオ‼︎』

 

穂乃果はギャラドスを繰り出した。

穂乃果とチンピラたちとのポケモンバトルが始まった。

 

「ハハハ!でんきタイプにギャラドスを出すとはな! コイル! 電気ショック!」

「レアコイル! お前は十万ボルト!」

 

「ギャラドス、しゃがんで避けて!」

 

「何⁉︎ エレキボール!」

「レアコイル! お前もだ!」

 

 

チンピラたちのコイルとレアコイルの電気ショックと10まんボルトを地面に這いつくばり避けたギャラドス。

チンピラたちは一瞬驚いたが次の指示を飛ばし、コイルとレアコイルが2体でエレキボールを放つ。

 

「ギャラドス、ドラゴンテールでそのエレキボールを弾き返して!」

『ギャーフ‼︎』

 

「くっ…! コイル! 体当たりだ!」

 

ドガーーーーーン!!!!

 

ギャラドスがドラゴンテールでコイルたちのエレキボールを弾き返し、コイルたちにドラゴンテールで勢いを増したエレキボールがコイルに向かう。しかし、チンピラはコイルに体当たりを命じた。当然エレキボールがコイルに命中し爆発が起こり、コイルはダメージを受けた。

 

しかし、チンピラのコイルはエレキボールのダメージを受けてもギャラドスに突っ込んできた!

 

「えっ⁉︎ ギャラドス、噛み砕くで迎え撃って!」

 

チンピラの指示に穂乃果は一瞬だけ戸惑ったがすぐに冷静さを取り戻しギャラドスに噛み砕くを指示する。

 

『ギャー‼︎』

 

カブっ ガリガリガリ…

 

「くそっ! コイル! そこで電気ショック!」

「まずい! ギャラドス! 振り払って!」

 

チンピラがギャラドスに取って効果抜群であるでんきタイプの技、電気ショックを指示すると、穂乃果は慌ててギャラドスに振り払うように命じた。さすがに電気ショックのダメージは受けたが振り払ったことによりダメージは少なくてすんだ。

 

『ジュルルルルル〜……!』

『ジ⁉︎ ジジジ……!』

 

一方、ギャラドスに振り払われたコイルは後ろにいたレアコイルを巻き込んで地面に叩きつけられた。

叩きつけられた2体のうちコイルは戦闘不能になってしまった。

 

「ああっ! コイル!」

 

「おい! 何してんだ! さっさと起き上がれ! レアコイル!」

 

コイルの持ち主のチンピラは戦闘不能になったコイルを見て悲痛の声をあげる。

 

もう1人のチンピラは一方的に攻撃を受けているレアコイルに苛立った声で怒鳴った。

レアコイルはチンピラの声を聞いてフラフラしながら起き上がる。

 

「いけ! レアコイル! ラスターカノンだ!」

「避けて、破壊光線でとどめ!」

 

レアコイルが放ったラスターカノンを高く飛んで避けて破壊光線をレアコイルに向けて放った。ギャラドスの破壊光線がレアコイルに命中し煙が巻き上がる。煙が晴れると目を回したレアコイルの姿があった。

 

「レ、レアコイル!」

「2体とも戦闘不能だね…」

 

穂乃果は倒れて戦闘不能になったコイルとレアコイルを見た。

 

「くそ〜っ! もどれ! コイル!」

「くっ… おまえも戻れ! レアコイル!」

 

チンピラがレアコイルをモンスターボールに戻すともう1人のチンピラが穂乃果に負けたチンピラの肩を掴んだ。

 

「おいおい… 随分酷い負け方だなぁ…」

「で、でも兄貴! あいつ凄く強いですぜ⁉︎」

「ですよ! 俺たちのポケモンを2体とも返り討ちにしちまいやした!」

「大丈夫だよ。俺ならあいつなんてコテンパンに倒せる…」

 

『兄貴』と呼ばれた後ろで黙って見ていた大柄の体格のチンピラが穂乃果にのっそりと近づいた。

「よくもまぁ、ウチの奴らに随分してくれたなぁ…」

「自業自得でしょ?」

 

穂乃果の返しに兄貴分のチンピラはカチンときたらしく穂乃果をギロリと睨む。

 

「んだと! その減らず口黙らせてやるぜ! いけ! ジバコイル!」

『キュルル……』

 

「ギャラドスいける?」

『ギャーオ‼︎』

 

チンピラはジバコイルを繰り出した。穂乃果は引き続きギャラドスで挑む。

相性的には穂乃果が最悪だが、ギャラドスが『任せろ!』というように鳴き声をあげる。

そして、再びポケモンバトルが始まった。

 

「いけ! ジバコイル、電磁砲だ!」

「ギャラドス、高く飛んで避けてハイドロポンプ!」

ジバコイルの電磁砲を高く飛び上がることで上手く避け、水タイプの大技ハイドロポンプを決める。効果はいまひとつだとはいえ威力の高いハイドロポンプを防御もなく受けたジバコイルはハイドロポンプに押し切られ地面に叩きつけられた。

 

「何やってんだ! さっさと起きろ! エレキボール!」

「破壊光線で跳ね返して!」

 

チンピラに言われ起き上がったジバコイルはエレキボールをギャラドスに向けて放つレアコイルとは違う3つの電気の玉がギャラドスに迫る。しかし、ギャラドスも破壊光線を撃ち、ジバコイルこ放ったエレキボールと衝突した、パワーではギャラドスの破壊光線の方が上だったらしく、ギャラドスの破壊光線に押し切られてエレキボールが跳ね返される。

 

「体当たりで攻撃しろ! モタモタすんじゃねぇ‼︎」

「下に避けて下からハイドロポンプでフィニッシュ!!」

 

ギャラドスの破壊光線で跳ね返されたエレキボールが体当たりをしようとするジバコイルに衝突する。さらに破壊光線の攻撃も加わりジバコイルは大ダメージを受けた。フラフラになりながらギャラドスに向かうが自分の下から攻撃が来るとは思わなかったらしくハイドロポンプをもろに受けてしまった。ハイドロポンプの威力で勢いよく上空に舞い上がり地面に落ちて煙が巻き上がる。

煙が晴れるとそこには目を回して動けなくなっているジバコイルの姿があった。

 

「勝負あったね… それともまだやる?」

『ギャーオ‼︎』

 

穂乃果が静かにチンピラたちに言うとギャラドスがチンピラたちを大きな声で吠えて威嚇する。

それにチンピラたちは震え上がり、ジバコイルを慌ててモンスターボールに戻して、脱兎のごとく逃げ出して行った。

 

チンピラたちが完全に消えて見えなくなると穂乃果は逃げて行ったチンピラを見て呆然としている女の子に今度は駆け寄った。

 

「大丈夫だった? 怪我してない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー?side ー

 

逃げて行ったチンピラを呆然と見ている私に優しく声をかけて手を差し伸べてくれる女性、さっきまではチンピラとのバトルのせいでよく顔を見ることができなかったがようやくちゃんと見ることが出来た。

空のような大きな青い瞳に白い肌、すんなりとした鼻筋にチンピラたちが美少女と言っていたことが分かる。自分自身もそれを見て思わず「綺麗…」と呟いてしまった。

 

「えっ… あっ…」

 

その言葉に驚いたのか素っ頓狂な声をあげる女性、私はそんなあなたに思わず抱きついてしまった。

いきなり抱きついた私にオロオロし始めたが気にせずに思いっきり抱きつく。

 

(暖かくて気持ち良い… 太陽のような温もりがして凄く落ち着く… ずっとこのままでいたい…)

 

しばらく固まっていたけど私の頭をあやすように撫でてくれた。

 

「んっ♡」

 

思わず声がもれる。

顔がドンドン熱くなっていき胸がうるさいほどドキドキしている。

私、貴女のことが好きになっちゃった♡

 

ー?side endー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にありがとうございました! 名前、教えてください♡」

「ち… ちょっと…」

思いっきり穂乃果に抱きつきながらスリスリ甘えてくる目の前の赤髪の女の子、穂乃果が引き離そうとしても両腕を首に回して離さないようにしている。困ったように穂乃果がギャラドスに『助けて』と目でSOSを送るがギャラドスもさすがに人間相手に攻撃することはできずに困った表情を穂乃果に向けるだけだ。

黙ったままの穂乃果を抱きついたまま上目遣いで見ながら赤髪の女の子は聞く。

 

「ねぇ、貴女の名前はなんなの? 私は西木野真姫っていうの、真姫って呼んで、ねぇ、貴女は?」

 

穂乃果の名前を再度聞くために催促する。

 

(すごいグイグイくるな… この女の子… ん? 西木野真姫… どこかで…)

 

穂乃果が考えていると真姫は一層強く穂乃果に抱きついた。バランスを崩した穂乃果はそのままバタリと地面に倒れる。醤油と味醂は咄嗟に抱えていたおかげで無事だったが、

 

(え⁉︎ この子に押し倒されてる‼︎)

 

自分の現状を理解した穂乃果は慌てて逃げようとすると真姫は逃がさないとばかりに穂乃果の頭の両側に自分の両手をついて逃がさないようにした。

 

「ふふふ………」

 

押し倒した穂乃果を見ながら真姫が不気味な笑みを浮かべた。

さすがにこんな相手に名前を教えるのはまずいと思い咄嗟にサーナイトをボールからだし真姫をサーナイトのサイコキネシスで浮かび上がらせた。

「あっ! ちょっと‼︎」

怒った声で真姫が穂乃果に言うと、

「こ、今度会ったら名前を教えるから! じゃあね!!」

と言い、素早くギャラドスをボールに戻しその場を離脱した。

 

「あっ! 待って! 必ず貴女とまた再開するからね! そうしたらもう二度と離さないわよ…」

 

真姫はサイコキネシスで浮かび上がらされたまま穂乃果の後ろ姿を見て言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの女の子、恐ろしいことを言った気がするけど気のせいだよね…」

穂乃果はそう自分に言い聞かせながらその場を走って逃げた。

サーナイトは穂乃果が逃げるのを見るとすぐにサイコキネシスを解き穂乃果の後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー怖かった…」

 

穂乃果はサーナイトをボールに戻しながらさっきの真姫のことを思い出して思わず身震いした。

(それにしてもさっきのあの赤髪の女の子、あの後、私をどうする気だったんだろう…)

 

そんなことを考えながら家の近くの交差点までくると、横断歩道を携帯をいじりながら渡っている女子高生がいた。

そこにかなりのスピードでトラックが走ってきた。

トラックの運転手は女子高生にも信号にも気づいていない。

女子高生はトラックに気づいたようだが驚いて動けないらしくその場に立ち尽くしている。

「危ない! ゲッコウガ! あの人を助けて!」

 

『コウガ‼︎』

 

ゲッコウガは穂乃果の指示を受けると凄いスピードで女子高生の元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー?sideー

今日は私にとって最悪な日だった…

 

朝、目覚まし時計のアラームが壊れてて寝坊し遅刻、慌てて家を出たせいで財布もお弁当も忘れた。

おまけにさっきのポケモンリーグでのバトルでは足を挫いたせいで歩くだけでもとても痛いのに最悪だ。

友達にLINEで愚痴をこぼしながら横断歩道を渡っているとLINEに夢中ですごいスピードで走ってきたトラックにすぐに気づかなかった。

あぁ、私は死ぬのか…

逃げようにも挫いた足と恐怖が足枷となって動けない。

諦めたように私は目を閉じた。

その時、私の体は強い衝撃で吹き飛ばされて…

 

 

 

 

ビュワッ

 

 

 

 

そう考えていると突然、思った衝撃とは違う衝撃がきた。

その衝撃はトラックにぶつかったような衝撃ではなく、抱きしめられたような衝撃だった。

 

 

 

 

 

ストッ

 

 

 

 

私を抱きしめていた人が着地すると私は恐る恐る目を開けた。

『コウガ』

そこには人間ではなくポケモンのゲッコウガがいた。ゲッコウガは私が目を覚ましたのを見るとゆっくり地面に降ろした。

地面に降ろされたとき、私は生きていることを確信した。五感もしっかりしている。

「ありがとう、ゲッコウガ」

『コウガ!』

私の後ろから明るい声が聞こえた。

どうやらその人が私を助けてくれたゲッコウガのトレーナーらしい。

「大丈夫ですか?」

私に声を掛けて私が振り向くことでようやく顔を見ることが出来た。

「綺麗な瞳…」

空のような青い瞳を見て思わず口に出してしまった。

「えっ? あ…」

女の子は驚いたように目をパチパチ瞬かせた。

な、なんてギャップなのかしら!

王子様のようにカッコよく私を助けてくれたとは違い今は、年相応の少女のように可愛い!

「あ、あの、大丈夫ですか? 顔が真っ赤ですよ!」

大丈夫な訳ないでしょ⁉︎ 私がこうなったのは貴女のせいなのよ! 責任とってよ!

って… こんな想像が思い浮かぶなんてこれじゃあ…

完全に惚れているじゃないの!

 

ー?side endー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にありがとうございました!」

「いえいえ、怪我がなくて本当に良かったです。それにお礼は私じゃなくてゲッコウガに言ってください」

「ありがとう、ゲッコウガ」

『ゲコ!』

頭を下げて穂乃果たちにお礼を顔を赤くしながら言う女性、ゲッコウガは誇らしげだったが、穂乃果は照れながらも内心は安心していた。

(間に合って良かった〜… 私のゲッコウガは本当に頼りになるよ…)

そんなことを考えていると穂乃果の手を握りながら女性は言った。

「あ、あの! 名前を教えてください! 私の名前は優木あんじゅです! あんじゅって呼んでください! 彼女はいません! 高校3年生です! 彼女はいません! A.RISEのメンバーです! 彼女いません!」

「えぇと… 高坂穂乃果です。 高校2年生です…」

矢継ぎ早に穂乃果に言うあんじゅさんに穂乃果が若干引き気味になりながら名前を言う。

(音ノ木坂の生徒じゃないし名前を言っても大丈夫だよね… にしてもこの人夕方ビジョンで見たA.RISEのメンバーだったんだ… ていうかなんで彼女を3回も言ったのかな? 普通は彼氏なんじゃあ…)

穂乃果の名前を聞いたあんじゅは目を輝かせながら穂乃果に顔を近づけて言った。

「穂乃果ちゃんっていうのね! いい名前ね! お礼したいから私の家に来てもらえる? いや! 来て!」

「ええっ⁉︎ ちょっと…」

穂乃果の腕を掴み強引に連れて行こうとするあんじゅに穂乃果がさっきのことを思い出し離れようとする。

ガシッ!!

「えっ⁉︎」

離れようとする穂乃果に抱きついて離さないあんじゅに穂乃果が驚くとあんじゅが穂乃果に抱きついたまま言った。

「ねぇ 来てよぉ〜 お礼したいのぉ〜」

「ひっ!」

顔を近づけ耳に息を吹きかけるように言うあんじゅにさっきの出来事がフラッシュバックし慌ててあんじゅから離れる。

「お、お礼は結構です! それじゃあ!」

穂乃果はゲッコウガをボールに戻し一目散にその場を去った。

「あっ! 待ってよ!」

あんじゅは追いかけようとしたが挫いた足の痛みで走れない。

穂乃果が去った後あんじゅは1人考えていた。

(今度会ったらあの子をA.RISEに勧誘しようかしら…?)

去った後、あんじゅがそう考えていたのを穂乃果は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果が家に帰るとお母さんと雪穂から「遅い!」と大目玉を食らった。

なぜこうも遅くなったのか理由を説明しその後の2人の態度を話すとお母さんはニヤニヤして、雪穂はすごく怖い顔で穂乃果を睨んだ。

その後、部屋で雪穂に散々問い詰められ穂乃果はすっかりヘトヘトになってしまった。

 

 

「わ、私… 何か悪いことをしたのかなぁ…」

雪穂に散々絞られた後、真意に気づかない穂乃果は1人そう呟いた。

 

 

 

1人意味の分かっていない鈍感はこの後たくさんの受難に巻き込まれていく、

高坂穂乃果の受難は始まったばかりだった。

 

 

 

 




ハーレムものは書いたことがないのでご指摘、感想よろしくお願いします。


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修羅場の始まり

この小説は完全なオリジナル設定です。
ハーレムものはやはり難しいです….


ピリリリリリリリリリリリリ……

 

「うーん……… 朝か…」

いつもの穂乃果が起きる時間である朝の6時に目覚まし時計のアラームが鳴り、穂乃果がベッドから眠そうに目をこすりながら起き上がる。

 

「みんなにご飯食べさせに行かないと…」

 

ポケモンたちへのエサをやりに穂乃果が地下に向かう。

 

 

 

「あっ! 穂乃果、おはよう!」

 

「おはよう…」

「おはよう! お父さん、お母さん」

 

厨房に着くとお母さんとお父さんが早くも今日の仕込みをしていた。

 

「お母さん、どうしたの? こんなに早く…」

 

穂乃果が母親に聞いた。

 

「昨日の夕方に隣町の老人ホームからほむまんの大量注文があったのよ、そのために今から仕込みをしているの。夕方に届けて欲しいって言っていたわ」

「へー… そうなんだー…」

 

 

ドンッ!

 

 

穂乃果が感心していると穂乃果の脹脛の辺りに何かがぶつかった。

 

「わぁっ‼︎」

 

『バオプ! オププ…』

 

「ああ! 危ない!」

 

ぶつかったことに驚いた穂乃果が声をあげながら、後ろを見るとお母さんのポケモンである小さな赤い炎のような頭をした小人のようなポケモンであるバオップがヨロヨロとたくさんの材料をかかえながらよろけていた。どうやらお母さんに頼まれて今日のほむまんの材料を取ってきたところだったのだが、あまりにもたくさん持ちすぎて前が見えずに穂乃果にぶつかったのだ。危うくバオップが材料を落としそうになったが、穂乃果が素早くバオップの持っていた材料を支えたおかげでなんとか落とさずにすんだ。

 

「フー… セーフ…」

 

「こら! バオップ!」

 

穂乃果が安心しているとバオップのトレーナーであるお母さんに怒られる

 

「多くの物を持つと前が見えなくなって危ないでしょ!」

 

『オプ…』

 

お母さんに怒られてすっかりしょげるバオップをかわいそうに思ったのか穂乃果がフォローする。

 

「お、お母さん、バオップだってお母さんのために手伝ってくれたんだから… に怒らないであげて…」

 

穂乃果がお母さんに言うとしょげているバオップを見て、お母さんも言いすぎたと思ったらしく「少し言いすぎたわ… ごめんなさい…」とバオップに謝った。

 

『オプ… オプ…』

 

バオップも自分の不注意を穂乃果とお母さんに頭を下げて謝った。

仲直りが済んだところで穂乃果は、ほむまん生地をこねているのお父さんの脇を通り掃除棚のスイッチを押し地下室に入って行った。

 

 

 

 

 

 

「フー… 餌やり終わりと…」

 

「あ、穂乃果、もう朝ごはんできているわよ」

 

数分後、ポケモンたちにエサを与えた穂乃果が地下室から出てくると仕込みを終えたお母さんが朝食を作り終え、その料理を料理を手伝っていたのだろうチャーレムが運んでいた。

ちなみにチャーレムもお母さんのポケモンだ。

 

「よし、チャーレムありがとう」

 

『レム〜』

 

「ふあ… お姉ちゃん、お母さん、お父さん、おはよう…」

 

朝食の準備が整いチャーレムをボールに戻して雪穂をお母さんが起こしに行こうとしたところ雪穂が眠そうな目をこすりながらリビングに入ってきた。

 

「おはよう! 雪穂」

 

「おはよう、 雪穂」

 

「おはよう…」

 

穂乃果、お母さん、お父さんが雪穂に挨拶を返す。雪穂も席に着いたところで高坂家の朝食が始まった。

 

「あ、そうだ! お母さん、今日はポケモンたちとご飯食べていい?」

 

「ええ、いいわよ」

 

雪穂がお母さんにポケモンたちと朝食をとってもいいか聞くとお母さんが快く承諾してくれたので雪穂は大喜びでモンスターボールを放り投げ自分のポケモンたちを出す。

「ワカシャモ、エーフィ、キノガッサ、ハトーボー、朝ご飯だよ!」

「バオップ、チャーレム、フォレトス、ハーデリア、あなた達もよ」

 

「ヒヤップ、ヤナップ、フタチマル、ナットレイ、飯だ…」

 

『シャモ!』

 

『ノガッサ!』

 

『オプ、オプ!』

 

『フォーレ…』

 

『タチィ』

 

『ナット!』

 

雪穂につられてお母さんとお父さんもモンスターボールから自分たちのポケモンたちを出しポケモンフーズをポケモンたちに与え、一緒に朝食を食べ始める。

高坂家では、たまにこんな風にポケモンたちと一緒に朝食を食べる日があるのだ。

ちなみに穂乃果のポケモンはすでにさっき食べたのでモンスターボールの中だ。穂乃果の持っているポケモンは多くなかには穂乃果が作ったあの広い地下室でないと飼えないほどの大きな重量級のポケモンもいるのだ。そのため、穂乃果のポケモンたちはこの朝食には参加していない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

1番早く朝食を食べ終えたのは穂乃果だ。もうすぐ幼なじみの2人が迎えにくるので自然と早く食べ終われるようになったのだ。

 

 

 

『穂乃果ちゃーん!』

『穂乃果ー!』

 

 

 

言ってるそばから幼なじみの声が聞こえた。

 

「いってきまーす‼︎」

 

流し台に食器を片付けてカバンを持ち穂乃果は2人の待つ場所へ玄関を開けて向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう! 穂乃果ちゃん!」

 

「おはようございます。穂乃果」

 

「おはよう! ことりちゃん! 海未ちゃん!」

 

いつも通り穂乃果に2人が挨拶し穂乃果が笑顔で挨拶を返すとやっぱり2人は顔を赤らめる。

 

(本当にいつも何でこの2人は挨拶返したら顔を赤らめるんだろう?)

 

2人の気持ちに全然気づかない穂乃果は首をかしげる、これもいつものもはや光景だ。

 

「本当に鈍感ですね…」

 

「私たちの気持ちに穂乃果ちゃんはいつ気づいてくれるのかな…」

 

首をかしげた穂乃果を見て海未とことりはため息をつく。

顔を赤らめたと思ったら今度はため息をつきガッカリしたような顔をする幼なじみ2人の百面相に穂乃果は頭にクエスチョンマークを浮かべた。

 

「? 2人とも早くも学校に行こうよ、遅刻しちゃうよ?」

 

穂乃果が2人に言うと2人はため息をつきながら3人一緒に歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、ことり、理事長の許可はとれましたか?」

 

3人が学校の校門を通るとポケモンリーグの参加許可が取れたか海未がことりに聞いた。

 

「うん! 穂乃果ちゃんのポケモンバトルの腕はお母さんもよく知ってるし! なかなかに面白そうだから理事長としては許可しますって!」

 

「本当ですか! それなら後は生徒会の許可を取るだけですね! 今日の放課後にでも行きましょう!」

 

ことりが笑顔で理事長の許可がとれたと言うと海未も笑顔になり生徒会への許可をもらいに行こうと言う。

そんな盛り上がっている海未とことりとは裏腹に穂乃果は心配していた。

 

(あの生徒会長が簡単に許可するかな?)

 

海未とことりは生徒会への許可が簡単に取れると思っていたが穂乃果はそうは思えなかった。

なぜなら穂乃果の妹の雪穂の友達に綾瀬亜里沙と言う女の子がいて『音ノ木坂学園に私の姉が通っている』と雪穂に言っていて穂乃果にも亜里沙のことを雪穂は話していた。穂乃果は名字が同じということで亜里沙の姉が生徒会長であるということに気づいた。そして昨日、雪穂にこってりしぼられた後、『雪穂の友達の亜里沙ちゃんはお姉さんのことを何か話してなかった?』と雪穂に聞いたのだ。雪穂は答えにくそうにしていたが穂乃果が熱心に頼むのでとうとう教えたのだ。

雪穂が言うには廃校が決まってからお姉ちゃんが『私が絶対に廃校を阻止する!』っていつも言ってばかりでお姉ちゃんがすごく怖くなったと亜里沙は言っていたそうだ。

穂乃果はこれを聞いてようやく納得した。『廃校が決定した』と理事長が言っていたときあんなに生徒会長が険しい顔をしていた理由はそれだったのかと、しかも、生徒会長は『私が』と亜里沙に言っていたことから生徒会の人たちを頼らず1人で廃校の問題をなんとかするつもりらしい、そんな人がポケモンリーグに出場し入選し入学希望者を増やすなどという普通なら難しいことを許可するとは穂乃果は到底思えなかった。

 

 

(でも、そんなこと2人には言えないしな…)

 

 

穂乃果は今度は海未とことりを見た。2人とも理事長の許可がとれたことに大喜びしている。その雰囲気に水を差すのも気がすすまないし何より2人とも自分のためにここまでしてくれているのだから、そんな2人の好意を踏みにじることは穂乃果には出来なかった。

 

(まあ… 生徒会長にとりあえず許可もらえるか聞きに行ってその後のことはそれから考えよう…)

 

穂乃果はそう考え無理やり自分自身を納得させた。

 

 

 

左右で笑顔で話している海未とことり、真ん中でうかない顔をしている穂乃果、シュールな光景のまま昇降口に入った途端、

 

 

 

 

 

 

ダキッ!

 

 

 

 

 

 

「えっ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

穂乃果に急に誰かが抱きついたのだ、驚いた穂乃果は条件反射ですぐに振り払おうとするががっしり抱きついていて振り払えなかった。

 

 

「同じ学校に通っていたなんて… これって運命ね……!」

 

 

穂乃果に抱きついて顔を穂乃果の胸に埋めたまま抱きついた人物は言った。

穂乃果はその人物が誰なのかを確認するために自分の胸からその人物の顔を引き離した。

 

 

「あ、貴女は…」

 

 

穂乃果はその人物が誰だったのかを見てサーっと顔から血の気が引いていくことが自分でもわかった。

「ふふふ……」

穂乃果の胸から顔を離して妖艶に笑うその人物とは、

「西木野真姫… さん…?」

 

「ふふふ♪ そうよ! あなたの真姫よ!」

 

そう、昨日チンピラたちに絡まれていて穂乃果が助けた少女である真姫だったのだ!

「やっぱり貴女はかっこいい…」

 

そういうと真姫は穂乃果に再び抱きつき穂乃果の胸に顔を埋めた。

 

「もう、二度と貴女を離さないわ…」

 

穂乃果の胸に顔を埋めたまま真姫は小声で呟いたが穂乃果には真姫が何て言ったかはっきり聞こえた。

 

穂乃果はその声を聞いて背筋が凍った。

 

そして、同時に『昨日、自分はとんでもない人を助けてしまった』と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこんなことに…」

 

 

穂乃果に早速受難が降りかかったが、これはほんの始まりにしか過ぎなかったのだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




兄から誰か1人くらいヤンデレにしてほしいと依頼がありましたので真姫をヤンデレにしました。
ヤンデレも書いたことがないので上手く書けたか評価を感想欄によろしけばお願い致します。


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修羅場と生徒会の許可

この小説はオリジナル設定かつ性格改変です。


「ちょっと貴女、いきなり穂乃果に何の用ですか?」

 

「そうだよねぇ〜 こんなところでいきなり抱きつくなんてどんな常識をしているのかなぁ〜」

 

昨日、帰り道にチンピラに絡まれていた時に穂乃果が助けた真姫の登場に穂乃果が固まっていると海未とことりが能面のような顔で真姫に詰めよる。

 

「…何? 貴女たち 私は今、この人と話をしているんだけど」

 

しかし、真姫は気の強い性格なのか、海未とことりの言葉にも物怖じせず強気な姿勢で返す。

 

「はぁ⁉︎ もともと穂乃果ちゃんは私たちと話していたんだよ!」

 

「嫉妬かしら? 見苦しいわね〜」

 

「なっ! いきなりでてきて抱きつくような常識のない人には言われたくないですよ! この泥棒猫!」

 

「何ですって⁉︎」

 

穂乃果はそこまで聞いてようやく我にかえった海未とことりは真姫に穂乃果を取り囲んで鋭い視線をぶつけ合っていた。3人とも今にも殴り合いを始めそうな顔をしている。

 

「ち、ちょっと… みんな…」

 

「「「なあに?」」」

 

穂乃果が3人の争いを止めるため声をかけると3人はさっきと全然違う眩しいほどの笑顔を穂乃果に向けた。

穂乃果はそんな3人を見て背筋が寒くなったがそんなことに構っている場合ではない。

 

「け、喧嘩はダメだよ! こんなところで!」

 

穂乃果は出来るだけの作り笑いで3人に言い争いを止めるように言った。

 

「でも…」

 

「でもじゃない! ほら、真姫ちゃんも謝って!」

 

穂乃果に言われ3人は渋々向き合う。

 

「すいません、少し言い過ぎましたー」

「私もごめんなさいー」

「それはどうもー こちらこそー」

 

あまりの棒読みの謝り方に穂乃果はため息が出そうになった。海未とことりは穂乃果関係のことになると誰が相手だろうが一歩も引かないのだ。しかし、穂乃果には2人がなんでそこまで意固地になるのかわからなかった。

 

(なんで、海未ちゃんもことりちゃんもいつもあんなに私のことになると意固地になるんだろう)

 

穂乃果がそう考えていると「あの…」と声がかけられた。その方を見ると真姫が穂乃果の方をさっきとは全然違う頰を赤くして恥ずかしそうな顔で見ていた。

 

「あ、貴女の名前を教えてください…」

 

さっき海未とことりと言い争う時とは全く違う消え入りそうな声で穂乃果に聞いた。

そういえば、昨日はあまりにも怖くて逃げ出しちゃったから名前を教えてなかったな、と穂乃果は思い自分の名前を教えた。

 

「高坂先輩ですね これからよろしくお願いね」

 

穂乃果に真姫は笑顔で言い最後に海未とことりに鋭い視線を向けた後に1年生の教室に向かった。

あまりの態度の違いに穂乃果が呆然としていると

 

 

 

 

 

 

バキッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かが壊れる音がすぐ後ろから聞こえた。それは海未が靴を取り出すために開けた下駄箱の取っ手だった。

海未の握力により下駄箱からとれた取っ手はもう使い物にならないくらい握りつぶされていた。

 

(うわぁ… 海未ちゃんってすごい握力だなぁ…)

 

穂乃果が顔を引きつらせながらそう考えていると後ろから声が飛んだ。

 

「フ、フフフ… あの生意気な1年生風情が… 私の穂乃果に手を出そうなんざ100万年早いんですよ…!」

 

俯いているせいでどんな表情しているのかは見えないが海未の背後からドス黒いオーラが見えているのでいつもの彼女とは思えないくらいの恐ろしい表情をしているのは間違いない。

 

「そうだよね〜 いくら後輩といえども私の穂乃果ちゃんに手を出すのは許せないなぁ〜…」

 

海未の隣にいることりからも似たようなドス黒いオーラが出ていた。

 

 

「は、早く教室に行こう! 遅刻しちゃうよ!」

 

そんな2人を見て穂乃果はこのままではマズいと悟り早く教室に行こうと2人に促す。

 

しかし…

 

 

 

 

 

 

 

ガシッ! ガシッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、海未とことりが穂乃果の両肩をつかんだのだ。勿論2人の背後からはドス黒いオーラが出たままで、能面のようなかおをしていたが、

何故両肩をつかまれ、そんな恐ろしい表情をされるのか訳が分からない穂乃果の疑問に答えるように2人は穂乃果の耳もとで言った。

 

 

「「後で、ゆっくりあの真姫って娘のことを説明してもらうからね(もらいますからね)」」

 

 

 

穂乃果はそんな2人が恐ろしすぎて頷くことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー放課後ー

 

「酷い目に遭った…」

 

ぐったりしたような顔で穂乃果は呟いた。

 

あの後、穂乃果は真姫との関係を休み時間のたびにことりと海未に根掘り葉掘り聞かれすっかり疲れ果ててしまっていたからだ。

 

「さあ、 生徒会へ許可をもらいに行こう!」

 

「そうですね! まあ、理事長の許可をもうとってありますから心配はないですね!」

 

「そんなに上手くいくかなあ…」

 

海未とことりが必ず許可をもらえると思っているようだが穂乃果はそうは思わなかった。

 

「雪穂に聞いた人物像では『いいよ』と簡単に言う人ではないと思うんだけど…」

 

海未とことりに聞こえない声で穂乃果は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー生徒会室ー

 

「認められないわ」

 

(やっぱり…)

 

生徒会室に穂乃果たちが入るとそこには金髪長い髪をポニーテールにしている青い瞳の人と紫色がかかった長めの黒髪をおさげにしている人がいた。ことりと海未が生徒会長に自分たちが考えた廃校を阻止する案を話し許可を貰おうとしたが即座に否定された。

海未とことりは納得のいかない顔をしていたが穂乃果はある程度予想はしていたのであまりショックは受けなかった。

 

「貴女たち、ポケモンリーグを甘く見てるんじゃない? そもそも本戦に出場するだけでも大変なのよ? エントリーするのは自由だけど去年、本戦に出場出来たのはこの音ノ木坂の生徒でも私1人だったのよ? それでも優勝どころか入選すら出来なかった、貴女たちが出場したところでこの音ノ木坂学園の看板に泥を塗るだけだわ」

 

生徒会長が穂乃果たちを青い瞳で睨みつけながら厳しい声で言う。

 

「廃校の問題は私たち生徒会がなんとかするわ。貴女たちもこんなくだらないことにうつつを抜かしている暇があるなら残りの学校生活をすこしでも有意義に過ごすことね」

 

海未とことりは俯いてしまった。ポケモンリーグのレベルの高さは知っていたがここまでとは思わなかったのだろう。自分たちが穂乃果にポケモンリーグの出場を薦めたのは幼い頃からバトルの強い穂乃果を見ていたからだが、そのレベルの高さならさすがの穂乃果でも入選するのは無理だろうと思ったのだ。

生徒会長は何も言わずに俯いた海未とことりから視線を移し今度は2人とは違い何も言わなかった穂乃果を見た。

 

「貴女もそう思うでしょ? 2人は貴女のことを強く推薦していたけど学園最強の私でも入選できなかったポケモンリーグに貴女なんかが入選できるとは思わないわ」

 

穂乃果はさすがにムカッとしたが顔にはださないように努力した。

 

「そんな言い方「「そんな風に言わないでください!!!!」」⁉︎」

 

穂乃果が言い返そうとしたとき隣から鋭い怒号がとんだ。

いきなり怒号をあげたのは穂乃果の隣にいた海未とことりだった。

2人は生徒会長をキッと睨みつけた。

 

「貴女は… どうして貴女は穂乃果をそこまで否定するんですか⁉︎ まだ、バトルもしていないのにどうして穂乃果が弱いと決めつけるんですか⁉︎」

 

「わ、私はそんな風には…」

 

「私たちの事はいくら侮辱しても構いません! だけど、穂乃果ちゃんをそこまで言うなんて許せません!」

 

「……!」

 

顔を真っ赤にして興奮しながら生徒会長に怒鳴る海未とことりに対して生徒会長はおし黙り、穂乃果は声が出なかった。

2人は私のためにここまで怒ってくれている。こんな私のために…

 

 

 

 

 

 

 

「まあまあ… みんな落ち着き…」

 

 

 

 

 

 

 

突然、場の雰囲気を変えるような間延びした声が生徒会室に響いた。

その声の主はさっきから蚊帳の外だった副生徒会長だった。

副生徒会長は笑顔で続けた。

 

「絵里ちも落ち着き… 熱くなっても何も解決しないで?」

 

「……」

 

副生徒会長の言葉に冷静さを取り戻したのか生徒会長も落ち着く。

海未とことりはまだ不服そうにしながら生徒会長を睨みつけた。

副生徒会長は穂乃果を見た。

 

「貴女の名前は穂乃果ちゃん…やったっけ?」

 

「あ、はい」

 

副生徒会長が穂乃果に聞くと穂乃果がそうだと返す。

副生徒会長はフウと息を吐くと続けた。

 

「そんなに強いか弱いかでもめるんやったら絵里ちと穂乃果ちゃんとでポケモンバトルをすればええやん そしたらハッキリするやろ?」

 

 

「な、何で私がこんな娘なんかと…」

 

 

予想しなかった副生徒会長の提案に生徒会長がたじろいだ。

 

「いいでしょう! 受けて立ちます! この際白黒ハッキリつけましょう!」

 

「いいよね! 穂乃果ちゃん!」

 

海未とことりが穂乃果に聞くと穂乃果は「え? うん…」と頷いた。

穂乃果もこの生徒会長だとは言え言われっぱなしは癪だったからだ。

そんな穂乃果たちを見て生徒会長も思ったのか小さく舌打ちをして椅子から立ち上がった。

 

「いいわ! 受けて立ちましょう、でも条件があるわ」

 

「条件?」

 

生徒会長がだした条件というものに生徒会長以外が聞くいた。

 

「もし、貴女に私が勝ったらもう二度とポケモンリーグに出場するなんて言わない事よ!」

 

穂乃果に指を突きつけながら言う生徒会長に海未とことりは目を見開いてたじろぐが、穂乃果は挑戦的にニヤッと笑った。

 

「ふーん… 面白い…」

 

穂乃果はそう呟くと生徒会長に言った。

 

「それじゃあ、20分後、校庭のバトルフィールドでバトル開始です」

 

「わかったわ… せいぜい足掻くことね」

 

生徒会長はそう言うと生徒会室を出て行った、その後を副生徒会長もついて行った。

 

 

 

 

 

 

「本当に大丈夫ですか…? 穂乃果…」

 

「学園最強が相手だったらさすがの穂乃果ちゃんでも…」

 

自分たちから言い出したことだとは言えさすがに相手が学園最強は心配になってきたのか海未とことりが心配そうに穂乃果に言う。

 

 

 

「大丈夫だよ… 2人とも… 学園最強だなんて所詮井の中のケロマツだろうしね…」

 

 

 

 

穂乃果はふふっと軽く笑い校庭にあるバトルフィールドに向かった。

 

 

 




ご指摘、感想お待ちしております。
それにしても穂乃果のキャラが…


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生徒会長とのポケモンバトル

小説情報にもある通りこの小説は穂乃果がチートです。原作のようにはいきません。


音ノ木坂学園には半年に一度、月末にポケモンバトル大会という行事がある。そのため音ノ木坂学園の校庭にはポケモンバトルに使うためのバトルフィールドがあるのだ。ちなみにバトルフィールドがあるのはこの学園だけではなくオトノキ地方の学校ならほぼどの学校にもあるのだ。穂乃果たちがバトルするのはそのバトルフィールドだ。

 

 

 

生徒会室からの約束から20分後、穂乃果がバトルフィールドにやってくるとそこにはすでに生徒会長、副生徒会長、海未、ことりと穂乃果以外の全員が待っていた。

 

 

「あら? 随分と遅かったわね。 私に負けるのが怖くなって逃げ出したのかと思ったわよ?」

 

 

モンスターボールをかまえながら生徒会長が挑戦的な笑みを浮かべながら穂乃果に言うと「そんなわけないですよ」と穂乃果が笑顔で返す。

 

 

「それでは審判はウチが務めるで! これより綾瀬絵里と高坂穂乃果の勝負をはじめる。ルールは使用ポケモンは1体どちらかのポケモンが戦闘不能になったらバトル終了です! それではバトル開始‼︎」

 

 

副生徒会長の声を合図に生徒会長と穂乃果のバトルが始まった!

 

 

 

 

「その笑顔がいつまでもつかしらね、行きなさい! オニゴーリ!」

 

「フフッ… ファイトだよ! オニドリル!」

 

生徒会長はこおりタイプのオニゴーリ、穂乃果はノーマル、ひこうタイプのオニドリルを繰り出した。

 

「へぇ… タイプ相性も理解してない人なのね… そんな人がポケモンリーグに通用するわけないわ、一撃で終わらせてあげるわ! オニゴーリ! 冷凍ビーム!」

 

『ニィゴォォォ!』

 

生徒会長の指示を受けてオニゴーリがオニドリルに冷凍ビームを放った。

 

「オニドリル! 上昇してかわして高速移動!」

 

『クワァァァァ!』

 

オニドリルの方が素早さが高いのでオニゴーリの冷凍ビームを上昇することでかわし高速移動をする。

 

「かわしても無駄よ! オニゴーリ、もう一度冷凍ビーム!」

 

『ニィゴッ!』

 

 

「かわして鋼の翼!」

 

『クワァァァ!』

 

オニドリルはオニゴーリの冷凍ビームをオニドリルは高速移動で上がった素早さで素早くかわし鋼の翼を叩き込む。効果抜群の鋼の翼がきまりオニゴーリが怯む。

 

『ニィゴ⁉︎』

 

「ああっ! オニゴーリ!」

 

「オニドリル! オニゴーリが怯んだすきに上昇して上空から熱風!」

 

オニドリルの鋼の翼がきまりオニゴーリが怯んだ隙を見逃さず追撃がこないように上昇するオニドリル、生徒会長がオニゴーリに指示を出そうにも上空にいるため、下からの有効な攻撃の指示が間に合わない。さらに上空からの熱風により避けるタイミングがないためオニゴーリは再び効果抜群の攻撃を受けた。

 

『オニ! オニ…』

 

オニゴーリは効果抜群の技を2回連続で受けたためダメージが大きくオニゴーリはもうフラフラになっていた。

 

「ちょっと⁉︎ オニゴーリ! しっかりしてよ!」

 

生徒会長はもう余裕をかましていることなんてできなかった。完全に穂乃果のことを舐めていたからだ。

ところがいざバトルをしてみると追い詰められているのは自分の方なのだ。

生徒会長は戸惑いながらこの状況を打破する一発逆転の作戦を考える。

 

(なんなの⁉︎ この娘⁉︎ でも、私は負けるわけにはいかない! だけどオニゴーリの体力は残りわずか、対して相手のオニドリルの体力は満タン、こうなったら一か八か…)

 

 

「オニゴーリ! 絶対零度よ!」

 

『オ… オニゴォォォリィィィ!!!!』

 

このままでは負けてしまうと判断したのであろう、生徒会長は一発逆転を狙って、生徒会長の指示を受けオニゴーリは一撃必殺の技である絶対零度をオニドリルに向けて放つ。

オニゴーリも一発逆転を狙って高火力での攻撃をオニドリルに向けて放った。

 

「なるほど… 一か八かの勝負に出たか… だけど、絶対零度は一撃必殺だけど当たらないと意味がない! オニドリル急上昇してかわして!」

 

穂乃果の指示を受けオニドリルが上空に急上昇し絶対零度をかわす。

 

「なっ⁉︎」

 

「そのまま急降下してギガインパクトでとどめ!」

 

生徒会長が驚いていると、穂乃果が間髪入れずに次の指示を出す。

 

『クワァァァァ!』

 

穂乃果の指示でオオスバメが自身の力を全て溜めて勢いよく急降下してギガインパクトをオニゴーリに向けて放つ。

 

『オニ!! オニ〜…』

 

 

ドガーン!!!!

 

 

オニドリルの持てる力を解き放った強烈なギガインパクトが見事オニゴーリに命中しオニゴーリはその強烈なギガインパクトで地面に叩きつけられる。

 

 

 

煙が晴れるとフィールドには目を回して戦闘不能になったオニゴーリの姿かあった。

 

「そ、そんな… オニゴーリ!」

 

生徒会長がいくら呼びかけてもオニゴーリは動くことはなかった。

 

「そんな… 一撃も与えられないなんて…」

 

生徒会長は目を大きく見開いていた。まるで信じられないというような顔だ。

それは、海未もことりも副生徒会長も呆然としていた。

 

「副生徒会長、判定を…」

 

「ハッ! オ、オニゴーリ戦闘不能! オニドリルの勝ち! よって勝者、高坂穂乃果です!」

 

穂乃果の声にようやく我にかえって副生徒会長が判定をする。

判定を聞くと穂乃果はオニドリルに労いの言葉をかけてモンスターボールに戻した。

しかし、この結果に納得がいかないのか生徒会長が声を張り上げて抗議し始めた。

 

「そ、そんなありえない! こんなの何かの間違いよ!」

 

生徒会長が穂乃果に言うと穂乃果はため息をついた。

 

「生徒会長、結果を受け入れないのは格好悪いですよ。 それに貴女の作戦は穴だらけでしたよ?」

 

「ど、どういうことよ!」

 

穂乃果の問いに生徒会長が怒鳴り返す。

 

「生徒会長、最後はなんで絶対零度をオニゴーリに指示したんですか?」

 

「そんなの決まっているでしょ! あの状況では一撃必殺が一番有効な手段だったからよ!」

 

穂乃果は目を細めた。

 

「そうでしょうか? 私ならあの状況ではあられを指示するんですが」

 

「何言ってるの⁉︎ あられなんて指示したところで何も変わらないわよ!」

 

「生徒会長はオニゴーリの特性を知らないんですか?」

 

「私を馬鹿にしているの⁉︎ アイスボディよ!」

 

「それならアイスボディの発動条件はなんですか?」

 

「あられのときに決まって…… あ……!」

 

生徒会長が言葉に詰まった。何かに気づいたようだ。

穂乃果はそれを見てフッと軽く笑った。

 

「そうです。あの時絶対零度ではなくあられを指示しておいてわずかながら体力を回復させておけばギガインパクトを耐えられたはずですよ?」

 

「で、でも、アイスボディが発動しても体力が回復するのは全体の16分の1よ! それなら一か八かで絶対零度を指示した方が…「まだ気づかないんですか?」何によ!」

 

「生徒会長のオニゴーリは、ふぶきを使えないんですか?」

 

「‼︎」

 

生徒会長が目を見開いた。

 

「そうです。あの時ふぶきを指示しておけば至近距離でしたからわたしのオニドリルはかわしようがありませんでした。倒せはしなくても大ダメージを与えることはできたはずです。さらに単体では命中率が低いふぶきでも天候があられならば100パーセント決まります。こっちの方が作戦としては良いと思いますが」

 

「……」

 

穂乃果の説明に生徒会長は言い返せずに悔しそうに肩を震わせて俯いて黙ったままだった。

 

 

 

 

「やったーー! 穂乃果ちゃんが勝ったーー!」

「流石です! 穂乃果!」

 

穂乃果の説明が終わると海未とことりが穂乃果が生徒会長に見事き勝利した片手大喜びをしている。

 

「……」

 

「絵里ち…」

 

反対側では生徒会長が副生徒会長の肩を優しく叩いた。今も生徒会長は肩を震わせて黙ったまま俯いたままだ。

 

 

「さあ! 生徒会長、ポケモンリーグの出場を許可してくれますよね!」

 

海未が生徒会長に言う。

 

「認めないわよ…」

 

「え?」

 

「そんなの絶対に認めないわよ!」

「ええっ⁉︎」

 

バトルに勝利したのに生徒会長はポケモンリーグの許可をしようとしない。これに海未とことりと穂乃果は驚く。

 

「ちょっと‼︎ 約束が違いますよ! バトルに勝利したら許可してくれるんじゃないんですか⁉︎」

「そんなこと約束してないわよ…! それにこれは私が油断したから負けたのよ!」

「そんな!」

 

海未が聞くと生徒会長が滅茶苦茶な暴論を返すので海未とことりはショックを受ける。

生徒会長は今度は穂乃果を睨みつける。

 

「貴女が勝ったのは単なるまぐれよ! まぐれでないというのなら月末にあるポケモンバトル大会て勝負よ! そこで貴女が私に勝てたのならその時はポケモンリーグの出場を許可してあげるわ!」

 

生徒会長はそう言うと鼻を膨らましてオニゴーリをボールに戻し、バトルフィールドを出て行った。

副生徒会長も生徒会長の後について行った。

 

 

 

 

2人がバトルフィールドから出て行った後、生徒会長の言ったことに海未とことりは怒り心頭になっていた。

 

「あー! もう! なにあの生徒会長!」

 

「一方的に攻撃されていたのに何がまぐれですか! どうみても実力だったじゃないですか!」

 

「まあまあ、2人とも落ち着いて…」

 

怒りがおさまらない海未とことりを宥めるように穂乃果が言った。

 

「だって悔しいじゃないですか‼︎」

「そうだよ‼︎ 穂乃果ちゃんは悔しくないの⁉︎」

 

海未とことりが穂乃果に言うと穂乃果は笑顔で返した。

「そんなに怒らなくても大丈夫だよ、月末のポケモンバトル大会で生徒会長を叩きのめせばいいだけの話だよ」

 

 

「そう… 徹底的にね…」

 

 

 

 

穂乃果は誰にも聞こえない小さな声で呟いた。

 

 

 

 




バトル描写やストーリーが上手く書けたかご指摘をお願いします。


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因縁をつけられた太陽

この小説はオリジナル設定です。


「ポケモンバトル大会か…」

ここは穂むらの2階にある穂乃果の部屋、穂乃果はベッドに横になって生徒会長の言っていたポケモンバトル大会のことを考えていた。

 

ポケモンバトル大会は音ノ木坂学園に半年に1回ある学校行事だ。前にも説明した通りオトノキ地方ではポケモンバトルが盛んだ。そのためオトノキ地方の学校はこんな風にポケモンバトル大会を学校行事に加えている学校が多い。音ノ木坂学園もその1つだ。ポケモンバトル大会のルールは各学校により異なるが、音ノ木坂学園のルールはこうだ。

まず、各クラスで代表者を1人決める。

次に学年でポケモンバトルをして、学年の代表者を1人決める。

そして、最後に1年生から3年生まで総当たり戦でバトルをし、勝率により優勝者を決めるのだ。

 

 

去年の優勝者は今日、穂乃果とバトルしたあの生徒会長だ。そして、その時に優勝してからはこの音ノ木坂学園のポケモンバトル大会では一敗もしておらずいつのまにか学園最強と呼ばれていたらしい。

 

 

ちなみに穂乃果はこの音ノ木坂学園のポケモンバトル大会には今までは1度も参加したことはない。理由は自分の強さからの経歴がバレることを防ぐためと、自分の強さを周囲の人間に見られたくなかったからだ。

そして、前にも説明したがオトノキ地方に自分の力を知られたくない人がいるからだ。

 

 

(でも、さすがに学校のポケモンバトル大会は大丈夫でしょ… それに、ポケモンリーグは海未ちゃんかことりちゃんを説得して出てもらおう… あの2人もポケモンバトルは弱くないし)

 

 

穂乃果は他地方と同じようにこのオトノキ地方のポケモンリーグに出場すればほぼ確実に上位は狙える。優勝する可能性も十分ある。しかし、優勝すればこの前のA.RISEの勝利のインタビューのように優勝者はその顔を大衆に晒される。穂乃果はそれを避けたかった。他地方の時のように顔出しを拒否することは出来るがポケモンリーグにきていた観客や選手には見られてしまう。そして、知られたくない相手がポケモンリーグに来ている可能性もゼロではないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「はあ… 取り敢えず、ポケモンリーグの問題は後でじっくり考えるとして今は、目先のポケモンバトル大会のことに集中しよう…」

 

 

 

 

 

穂乃果はそう呟くと電気を消して布団を被り眠りについた。

 

 

 

 

 

 

ー翌朝ー

「穂乃果先輩〜♪」

「「……」」

「あ、あの…」

穂乃果は今、一昨日チンピラに絡まれていたのを助けた真姫に腕を抱きつかれて困っていた。

そして、その後ろからは幼馴染2人が後ろにブラストバーンのような炎をまとわせながら真姫を睨みつけていた。

どうしてこうなったのかを説明すると、朝、穂乃果が朝いつものように学校に行こうとするといつもは幼馴染2人が自分の名前を呼んでくれるのに今朝は呼ばなかったため2人とも『今日は休みかな?』穂乃果が思って玄関を開けるとそこには幼馴染2人はいたのだが穂乃果の方を見ず別の方向を射殺すように睨みつけていた。穂乃果が2人が睨みつけていた方向を見ると、そこにはあの時助けた真姫がいた。真姫も海未とことりを同じような目で睨んでいたが穂乃果が来るとその顔を笑顔に変え穂乃果に抱きついた。

そして今の現状に至るのである。

 

「〜♪」

「「……」」

「ち、ちょっと真姫ちゃん… みんな見てるから…」

 

真姫は穂乃果の腕に抱きついたまま離さない。ちなみになぜ真姫が穂乃果を下の名前で呼んでいるのかは『穂乃果が高坂じゃなくて穂乃果と呼んでね』とさっき真姫に言ったからだ。そして、穂乃果がそう言った瞬間、真姫はぱぁぁ、と顔が輝きに海未とことりは視線はさらに不機嫌な表情になった。

この二元化現象に穂乃果は戸惑うばかりだ。

 

(なんでこの3人はこんなに仲が悪いのかな?)

 

自分が原因だと気づかない鈍感は腕に真姫を抱きつかせたまま歩き出そうとした。その時にようやく海未が穂乃果の腕から真姫を離した。

「何するのよ‼︎」

「貴女のような人が穂乃果に私の穂乃果に抱きつくなど笑止千万!」

「そうだよ! 穂乃果ちゃんはことりのものだよ!」

「なんですって!」

「私は物じゃないのに…」

いきなり腕から離された真姫は腕から剥がした海未に怒鳴ると海未も真姫に怒鳴り返し、そこにことりも加わり穂乃果は誰のものかで言い争いになってしまった。3人の気持ちに気づかない穂乃果ら論点外れなことをボヤいていた。

その間にも3人の言い争いはヒートアップしていく。

「穂乃果先輩は私のものよ! 邪魔しないでよ!」

「笑わせるんじゃありません! 穂乃果は私のものです!」

「ちょっと… いくら海未ちゃんでもそれは聞き捨てならないなぁ〜……!」

 

 

 

ざわざわ… ざわざわ…

 

 

 

3人があまりにも激しく言い争うので通行人が何事かと穂乃果たちを見る。

穂乃果はさすがに恥ずかしくなった。

「み、みんな… 近所迷惑になるから早く学校に行こうよ…」

穂乃果がそう言うとあれだけ激しく言い争っていた3人がぴたりと言い争いをやめた。

「でも…」

「でもじゃないよ! ほら! 早く行こう!」

穂乃果はこれ以上通行人や周囲の人たちに自分たちの痴態を見られるのは嫌なので3人に早く学校に行こうと言った。3人はまだ納得がいかず不服そうな顔をしていたが穂乃果が3人の背中を押し強引に歩き出させた。

 

 

 

 

ー教室ー

「おい… 見ろよ」

「あ… 噂をすれば来たよ!」

「高坂さんが来た…」

「あの噂本当なのかな…?」

学校に着き真姫と別れた後、穂乃果たちが教室に入るとクラスメイト全員が一斉に穂乃果たちを正確には穂乃果を見た。

「ど、どうしたの?」

いきなりクラスメイト全員から視線を向けられて穂乃果はたじろぐ。

「穂乃果! ねえ! あの噂って本当⁉︎」

「学園最強の生徒会長とポケモンバトルしたって!」

「どうなの⁉︎ 穂乃果!」

矢継ぎ早に穂乃果に聞いたのは穂乃果の友達のヒデコ、フミコ、ミカの女子3人、いつも3人一緒にいるのでみんなからは3人まとめてヒフミと呼ばれている3人だ。

「え? 何で知ってるの…?」

穂乃果がヒフミに聞いた。

「昨日、私の知り合いの後輩が見たのよ! 生徒会長と穂乃果がポケモンバトルしてるところ! でも、その時はもうポケモンバトルは終わってて… ねえ!どっちが勝ったの⁉︎」

「え? い、一応勝ったのは私だけど…」

ヒデコが興奮しながら穂乃果に聞く。穂乃果は咄嗟のことで嘘が思いつかず本当のことをヒデコに言うと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えええええええええええええええーーーーーーーー!!!!!???」

 

 

 

 

 

 

その途端、教室中が驚きに包まれた。

「それって本当⁉︎ 穂乃果!」

ヒデコがさらに興奮した様子で穂乃果に聞き返す。

穂乃果は『しまった!』と思ったがここまで来たらもう引き返せない。

「う… うん…」

自分の失態に戸惑いながらも穂乃果は何とか頷く。

「高坂さん、すごい…」

「学園最強に勝っちゃったの…?」

「信じられない…」

穂乃果は自分の経歴に勘付かれないか不安で周りの声にまったく気づかなかった。

穂乃果を我に帰らせたのはフミコの言葉だ。

「じゃあ、今度のポケモンバトル大会のクラスの代表は穂乃果で決まりだね!」

「そうだな!」

「学園最強に勝てるんだもんね!」

「高坂の奴、今まで自分の実力を隠してたんだな〜」

フミコがそう言うとクラスのみんなが賛成した。海未とことりもその中にいた。

 

 

 

その後、クラスの担任が教室にやって来て、穂乃果のことをクラスメイトたちが担任に話し担任も穂乃果のクラスの代表のことを認めた。

穂乃果はみんなからの期待の眼差しが眩しすぎて断れず頷きポケモンバトル大会のクラスの代表が穂乃果に決まりそうになった時…

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってください! そんなの納得いきません!」

 

 

 

 

 

 

 

突然、誰かが大声で穂乃果のクラス代表に『待った』を掛けた。

クラスの全員と担任がその大声をあげた人物を見る。

その人物は穂乃果をギロリと睨みつけた。

「学園最強の生徒会長に高坂なんかが勝ったなんて嘘だ! クラス最強の俺でも全然敵わなかったのに! それに今までポケモンバトル大会に出てなかった奴が俺を差し置いてクラス代表だと⁉︎ そんなの認められるか!」

「い、岩川くん…」

早口に自分の主張を大声で捲し立てているのは穂乃果と同じクラスの男子の岩川大輔だ。180センチメートルの長身の細身で端正でイケメンな顔立ちは黙ったままなら女子にモテそうだが、自分より成績が悪い、ポケモンバトルが弱いなど自分より劣る人を見下す自惚屋な性格な故に女子からは鬱陶しいと評判は悪い。

しかし、鈍感な彼はそんなことには微塵も気づかずむしろ自分が鬱陶しがられているのは単なる照れ隠しだと思っていた。

そして、岩川にはもう1つどうしようもないところがある。それは空気を読まないところだ。

現に今もせっかくみんなが納得して決まりかけていた代表を否定されてクラスの雰囲気はどんどん悪くなっていった。

しかし、鈍感な岩川はその雰囲気に気づかずに穂乃果より自分の方が強いと言い続ける。

「俺はクラス最強なんだぞ! つまり高坂は俺より弱いんだ! ここは俺が代表になるのが筋だろ⁉︎」

岩川はクラスの全員を偉そうに見渡し言う。

岩川が迷惑な大声で自分の主張を言う度にクラスの雰囲気は悪くなる一方だった。

岩川はさらに続けた。

「それに生徒会長に勝ったなんて言うがそんなのは高坂の出鱈目だろ! 大方実力がないくせにクラスの代表になりたくてそんな嘘を「「黙れ!!」」⁉︎」

岩川がそこまで言うと突然、自分の声より大きな怒号が教室に響き渡った。

クラスメイトや担任もいきなりの怒号に驚き怒号をあげた主を見る。

みんなの視線の先には肩を震わせて岩川を射殺そうとばかり睨みつけていることりと海未の姿があった。

「あなたに何がわかるって言うの⁉︎ 生徒会長と穂乃果ちゃんのバトルも見ていないくせに何の根拠があって出鱈目だって言えるの⁉︎」

「な、何言ってんだよ… クラス最強の俺が敵わなかったんだから、高坂なんかが生徒会長に敵うわけないだろ…」

「はあ⁉︎ もう一回言ってみなさい‼︎」

海未とことりがあまりの剣幕で岩川に怒りを露わにして怒鳴るので岩川はたじろぐ。

怒りのおさらない海未とことりがさらに岩川に怒鳴ろうとしたとき、

 

 

 

 

 

「まあまあ… みんな落ち着いてよ」

 

 

 

穂乃果が海未たちと岩川の間に割って入り穏やかな声で3人に言った。

「落ち着いてって! 穂乃果! 貴女は悔しくないんですか⁉︎」

海未が穂乃果を睨みつける。しかし、穂乃果は海未たちに優しく微笑む。

「言い争っていてもしょうがないよ? ほら、落ち着いて」

「「……」」

穂乃果が優しい声で論すように海未とことりをあやすように抱きしめた。

2人は静かになった。

クラスメイトや担任も言い争いが治まり安心していると

「フン 俺は事実を言っただけなのに怒鳴られるなんてそいつら常識がないな」

「……!」

空気を読まない岩川がまた侮辱するようなことを言った。

これにはクラスメイトや担任も岩川を睨む。

全員が岩川に対して頭にきているのだ。

そして頭にきていたのはそんな素振りは見せなかったこの人もだった。

「それに…「弱い人ほどよく人を見下すよね」……何だと?」

岩川がさらに続けようとすると1人の女の声で遮られた。

その声の主は海未とことりを抱きしめながら岩川を絶対零度の瞳で見ている穂乃果だった。

岩川はすぐに穂乃果に言い返そうとしたができなかった。

なぜなら自分を凍らすほどの冷たい瞳で自分を見ていて言葉が喉に引っ込んだからだ。

クラスメイトや担任はもちろん岩川も穂乃果のいつもの彼女からは信じられないほどの冷たい瞳にたじろぐ。

「な、何だよ… 文句があるなら俺とポケモンバトルだ! それでお前に俺の方が強いと言うことを教えてやるよ……!」

岩川が震える声で穂乃果に指を突きつけて言う。

「いいよ」

穂乃果は即答した。

「じ、じゃあ、放課後に校庭のポケモンバトルフィールドでバトルね!」

この重い空気に耐えられなくなったのか担任が明るい声で言う。クラスメイトたちもそうだったのか一斉に首を縦にふる。

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

その時、一時限目の始まりを告げるチャイムがなり朝の騒動はこれで終わった。一時限目の授業が始まるためみんな授業の準備をし始める。

一時限目が始まった。

穂乃果は岩川の方をちらりと見てフッと軽く笑った。

 

 

 

 

 

「私のことはいいけど大切な親友を馬鹿にしたんだから容赦しないよ… 生徒会長と同じ井の中のケロマツだって教えてあげる…」

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果は誰にも聞こえない声で岩川にむかって呟いた。

そして、穂乃果の声に答えるように持ってきていた6つのモンスターボールがゆっくりと揺れた。

 

 

 

 

 




感想やご指摘をよろしくお願いします。
岩川のポケモンのリクエストがあれば送ってください。


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クラス最強とのポケモンバトル

この小説はオリジナル展開です。
今回、フルボッコ要素があります。
リクエストなされたポケモンも登場します。



キーン コーン カーン コーン

 

 

今日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り穂乃果たちのクラスの生徒たちや担任はまっすぐ校庭のバトルフィールドに向かった。

 

 

穂乃果がバトルフィールドに着くとたくさんの生徒たちがバトルフィールドの周りに集まっていた。それも穂乃果たちのクラスだけではなく他のクラスや上級生や下級生までいた。

穂乃果はこの人だかりに驚いて思わずあたりを見渡すと生徒会長と副生徒会長も野次馬に紛れてバトルフィールドの近くにいた。

生徒会長を見つけると穂乃果は顔をしかめた。

(何で生徒会長がここに… 私のバトルなんて見ないはずなのに… ん? まてよ… あっ! あの生徒会長、もしかして私がこのバトルに負けたら『私に勝ったのはやっぱりマグレよ!』って言ってポケモンリーグへの出場をやめさせる気だな!)

穂乃果は生徒会長を横目で睨みながらバトルフィールドに向かった。

 

 

 

 

バトルフィールドに着くとすでに岩川が待っていた。岩川は穂乃果をニヤニヤしながら見た。

「やっと来たか、にしても、やっぱり、俺のポケモンバトルはこうギャラリーが多くないとな〜」

「あなたがみんなを呼んだの?」

穂乃果が岩川に聞くと岩川は穂乃果に指を突きつけながら返した。

「ああ! そうだ! お前のふざけた噂は全校生徒に広まっててな! だから俺がお前の実力は嘘だと言うことを証明してやるって言ったらこんなに集まったのさ! まあ、どうせお前は俺に負けるんだけどな!」

「……」

岩川は自分の実力に絶対的自信を持っているようだ。そして岩川の自慢話が始まった。穂乃果はそんな岩川ともう会話するのが嫌になり黙ることにした。

そして、別のことを考えていた。

(なるほど… 生徒会長はやっぱりそういう目的で来たのか…)

穂乃果は生徒会長がこのポケモンバトルを見に来たのは岩川の話を聞いて自分が負けるところを見るためだと思った。

穂乃果はまだ自慢話をしている岩川と見下すような目で見ている生徒会長を見て誰にも気づかれないようにニヤリと笑った。

 

 

(私も今日くらいは本気でポケモンバトルしよう… 私の大切な親友たちを侮辱したんだから容赦はしないよ…)

そう思いながら穂乃果は自分のモンスターボールを撫でた、穂乃果の意思に答えるようにボールが揺れた。

 

 

 

「あのー そろそろポケモンバトルを始めてもいいですか?」

まだ自慢話をしている岩川にいい加減にうんざりしていたのか審判を務める担任の先生が聞いた。

「ああ! 俺は準備OKだ!」

「私もです」

2人の返事が返って来ると担任は右手を上に挙げた。

「これより、岩川大輔と高坂穂乃果のポケモンバトルを始める! 使用ポケモンは3体どちらか全てのポケモンが戦闘不能になればバトル終了です! では試合開始!」

担任はそう言うと右手を勢いよく振りおろした。

 

 

「おい、ちょっと良いか?」

「何?」

穂乃果がポケモンを出そうとすると岩川が穂乃果に話しかけた。穂乃果はうんざりしていたが顔に出さずに聞き返す。

「お前にチャンスをやるのさ! お前がこの俺に負けるのはもはや確実だろ? だからお前がここで俺にクラス代表の座を返して謝れば許してやるぜ? こんな大勢の前で大恥かくのは嫌だろ?」

「くだらないこと言ってないでさっさとポケモン出しなよ」

岩川は胸を張って慈悲をかけるように穂乃果に言ったが穂乃果は気にせず涼しい顔で言い返したため岩川はカンカンに怒った。

「んだと! この俺に謝らなかったこと後悔させてやるぜ! いけ! アーボック!」

『シャーッ!』

「後悔するのはあなただよ… ファイトだよ! オニドリル!」

『クワーッ!』

岩川はどくタイプのアーボック、穂乃果はノーマル、ひこうタイプのオニドリルを繰り出した。

2人がポケモンを繰り出しポケモンバトルが始まった。

 

 

「先手必勝! アーボック! 雷の牙!」

『シャーッ!』

「オニドリル! 上昇してかわして高速移動!」

『クワッ!』

オニドリルにとって弱点であるでんきタイプの技、雷の牙でまっすぐ突っ込んで来るアーボックをオニドリルは上昇することで躱し高速移動をした。

「怯むな! アーボック、毒針だ!」

「躱して、ドリルライナー!」

アーボックの毒針を高速移動で上がった素早さで躱しアーボックにとって効果抜群のドリルライナーを決める。毒針を放っていたアーボックは避けれずドリルライナーをくらってしまいふっ飛ばされる。

『シャーッ‼︎』

ドガーン!

「続けてドリルくちばし!」

アーボックがふっ飛ばされたところに高速移動で上がった素早さで追いつく、地面に叩きつけられて煙が巻き上がるが特性がするどい目のオニドリルには関係ない、砂煙の中でアーボックを見つけ出しドリルくちばしを決めた

『シャー!』

アーボックの悲鳴が砂煙の中から聞こえた。

煙が晴れるとフラフラしながらなんとか立っているアーボックの姿があった。

「良いよ! オニドリル、その調子! 」

『クワーッ!』

「何してんだ! しっかりしろ!」

『シ、シャー…』

笑顔でオニドリルに穂乃果はそう言うとオニドリルは力強く返事をする。反対に一方的に攻撃されているアーボックは岩川の呼びかけにも苦しそうな返事をするだけだ。

「これで決めるよ! オニドリル、ドリルライナー!」

『クワーッ!』

オニドリルがアーボックにとどめのドリルライナーを放った時

「アーボック! 締め付ける!」

『シャッ!』

ガシッ‼︎

『クワッ!』

アーボックはオニドリルのドリルライナーが決まる前にくちばしに締め付けるを決めた。オニドリルが苦しそうに顔を歪める。

「ヘヘッ! どうだ!」

岩川が技が上手く決まり調子良さそうに言う、会場のにいる誰もが穂乃果に対して不利な状況だと思ったが穂乃果はふふっと小さく笑い。

「オニドリル! アーボックの締め付けるを受けたまま上昇!」

『クワーッ!』

『シ、シャッ…⁉︎』

「「「えっ!」」」

穂乃果の指示を受け、オニドリルはアーボックの締め付けるを受けたまま上昇した。アーボックは逆さ吊りになりオニドリルに連れ去られる。アーボックはまさかの展開に戸惑っている。岩川もそれは同じだ。会場の人間までも驚いていた。

「オニドリル! そこで高速移動!」

『クワーッ!』

オニドリルがアーボックを逆さ吊りにしたまま高速移動をする。アーボックは締め付けるをしたままなのでオニドリルから逃げられない。しかし、締め付けるをやめて逃げようにもここは空中、締め付けるをやめてしまえば真っ逆さまだ!

「ア、アーボック! 何とかしがみつけ!』

『シャッ… シャッ…』

 

 

 

スルッ

 

 

 

『シャーッ‼︎』

アーボックはオニドリルの高速移動に何とかしがみついていたがやはりダメージとオニドリルの素早さについていけず真っ逆さまにフィールドに落ちていった。

「今だ! オニドリル! ギガインパクトでとどめ!」

『クワーッ!』

地面に落ちていくアーボックが地面につかないうちに2度の高速移動で上がった素早さで追いつきノーマルタイプの大技であるギガインパクトを決める。

ドガーン!!!!

『シャーッ!』

「アーボック!」

アーボックはギガインパクトで地面に強く叩きつけられ砂煙が巻き上がる煙が晴れると目を回したアーボックの姿があった。

「ア… アーボック…」

 

「アーボック戦闘不能! オニドリルの勝利!」

ワァァァァァァァァァ!!!!

審判が判定を言うのを合図に会場が熱気に包まれた。穂乃果の勝利に会場が盛り上がる。

「さすがです!」

「良いよ! 穂乃果ちゃん!」

「穂乃果先輩! 頑張れー!」

当然、海未、ことり、真姫もその中にいた。

穂乃果は笑顔で3人に手を振って答えた。

 

 

「う、嘘だ… 俺のアーボックが負けるなんて…」

その頃、岩川はアーボックが戦闘不能になったことが信じられなくて放心状態になっていた。しかし、そんな岩川を正気に戻したのは穂乃果の言葉だった。

「落ち込んでないで早く次のポケモン出しなよ。クラス最強なんでしょう?」

「‼︎」

岩川はこの言葉で我に返って穂乃果を見た。

「そうだな… 今のは絶対まぐれだ! 後の2体で高坂なんかコテンパンだ! なんてったって俺はクラス最強なんだからな!」

1人で言っている岩川をよそに穂乃果は岩川に見えないように俯いて呟いた。

「その威勢がいつまで持つかな…?」

穂乃果はそう言うと不敵に笑った。

 

 

 

 

 

 

「次はお前だ! 頼んだぞ! ニョロボン!」

『ニョボ!』

「オニドリル、ありがとう、ゆっくり休んでね、じゃあ、次は、ファイトだよ! サザンドラ!」

『ギャーーフ‼︎』

岩川はみず、かくとうタイプのニョロボン、穂乃果はオニドリルを引っ込めて、あく、ドラゴンタイプのサザンドラを繰り出した。

2人がポケモンを繰り出し再びバトルが始まった。

「相性はこっちが有利…! ニョロボン! 冷凍ビーム!」

『ニョロー!』

「サザンドラ火炎放射で相殺!」

『ドラー!』

岩川のニョロボンがサザンドラにとって効果抜群の冷凍ビームを放つが穂乃果のサザンドラが火炎放射を放ち相殺する。

「何⁉︎ それなら、ビルドアップからの爆裂パンチ!」

「空を飛ぶでかわして!」

岩川の指示でニョロボンがビルドアップで攻撃力を上げサザンドラにとって効果抜群の爆裂パンチを放つがサザンドラは空を飛ぶでかわし、空高く飛び上がる。

「ニョロボン! サザンドラが降りてきたら爆裂パンチだ!」

『ニョロッ‼︎』

ニョロボンがサザンドラの空を飛ぶの攻撃が来たら爆裂パンチを放つために攻撃体制をとりサザンドラの攻撃を待つ。誰もがサザンドラが大ダメージを受けると思っていた。

(成る程… 良い判断だ… でもね…)

穂乃果も良い判断だと思っていた。

しかし…

「サザンドラ、空を飛ぶ攻撃!」

『ギャーフ!』

サザンドラが上空から勢いよくニョロボン目掛けて急降下してくる。ニョロボンが爆裂パンチの準備をしサザンドラに狙いを定める。

(よし! いける!)

岩川が攻撃も決まったと思い思わず頰が緩む。

「サザンドラ! 急降下しながらトライアタック!」

「何⁉︎」

『ニョロッ⁉︎』

「「「ええっ⁉︎」」」

しかし、穂乃果の予想しなかった攻撃に岩川とニョロボンが驚く、会場の人間も驚いていた。

驚いたせいで岩川もニョロボンの指示が咄嗟に出来ずにニョロボンも動けなかった。

ドガーン‼︎

『ニョロー!!!!』

防御なしに受けたサザンドラのトライアタックにニョロボンが吹き飛ぶ。

「ニョロボン‼︎」

「今だ! サザンドラ! 流星群でとどめ!」

『ギャーーフ!!!』

穂乃果の指示を受けてサザンドラがドラゴンタイプの大技の流星群を放つ。無数の隕石が地上に降り注ぐ、トライアタックで吹っ飛ばされたニョロボンは逃げれず流星群に直撃し煙が巻き上がる。煙が晴れるとフィールドには目を回して動けなくなったニョロボンの姿があった。

「そ、そんな… ニョロボン‼︎ 起きろよ! ニョロボン!」

岩川がニョロボンに何度も呼びかけるがニョロボンは起き上がることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「二、ニョロボン戦闘不能! サザンドラの勝利!」

「…ワァァァァァァァァァ!!!!」

審判の声に会場に再び盛り上がる。

しかし、会場の人間たちは少なからず驚いていた。

岩川とて伊達にクラス最強とは言っていない。実力は十分ある。それにタイプ相性も良く、どう見ても穂乃果の方が不利だった。

それなのに穂乃果のサザンドラにニョロボンは一撃も与えることが出来なかった。

岩川も信じられなかった。

「嘘だ! こんなの!」

「どこが嘘なの? 私は反則なんてしていないよ? あなたも見ていたでしょう? クラス最強なんだから言い訳なんて見苦しいよ、早く最後のポケモンを出しなよ」

「っ! いけ! バンギラス!」

『グァーフ‼︎』

岩川が穂乃果に言うと穂乃果は涼しい顔で返したので岩川は怒り、なかばヤケクソでポケモンを出した。

「気の早い人だね… サザンドラ、ありがとう、ラストはあなただよ! ファイトだよ! ゲッコウガ!」

『コウガ!』

岩川は、いわ、あくタイプのバンギラス、穂乃果はサザンドラを引っ込めて、みず、あくタイプのゲッコウガを繰り出した。

両者がポケモンを繰り出し最後のポケモンバトルが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「バンギラス! 破壊光線!」

『グァーフ‼︎』

バンギラスの口から黒い強大な光線がゲッコウガに向かって飛んでいく。

「何? 隙だらけになるのに… ゲッコウガ! 影分身でかわして!」

『コウガ!』

ドガーン!!!!

バンギラスの破壊光線が直撃してゲッコウガがダメージを受けたと思ったが影分身で出来た破壊光線が命中しゲッコウガは無傷ですんだ。

「ゲッコウガ! ハイドロポンプ!」

ドドドドドドドドドドドド‼︎

ブファーーーーーン!

『グァーーー!』

バンギラスの破壊光線を影分身でかわしバンギラスにとって効果抜群の水タイプの大技のハイドロポンプを決める。

バンギラスも防御をしようにも破壊光線をうった後は動けなくなってしまう為そのままノーガードでハイドロポンプを受けてしまいバンギラスは大ダメージを受けてしまった。

「バンギラス! しっかりしろ! ギガインパクト!」

「ゲッコウガ! もう一回影分身!」

岩川がバンギラスにノーマルタイプの大技のギガインパクトを指示する。穂乃果はさっきと同じ手である影分身をゲッコウガに指示する。

「2度も同じ手を食うか! バンギラス! 分身をなぎ払うようにギガインパクトだ!」

『グァーフン!!!!!』

岩川はさっきのかわされた方法を防ぐ為にバンギラスに片っ端からギガインパクトをするように指示する。

「そうくると思った。ゲッコウガ! 影うち!」

『コウガ!』

ゲッコウガが影分身の分身をなぎ払うとゲッコウガはそのギガインパクト目掛けて影うちを放った。

ドガーン!!!!

ゲッコウガの影うちとギガインパクトが衝突し煙が巻き上がる。

「ハッハッハ! お前は馬鹿か? みすみす突っ込んでいくなんて」

岩川が大笑いしていると穂乃果はふっと軽く笑った。

「どっちが馬鹿か見て見たら?」

「あ?」

穂乃果は煙が巻き上がる方を指差した。なんとそこにはゲッコウガが無傷でバンギラスに影うちを放っているところだった!

「ば、馬鹿な⁉︎ ギガインパクトは確かに命中したのに!」

信じられない光景に岩川が驚く、会場の他の人間も同じだ。

「驚いている暇はないよ! ゲッコウガ! もう一回ハイドロポンプでフィニッシュ!」

『コウガ‼︎』

ドドドドドドドドドドドド!!!

ドガーン!!!!!

『グァーフ!!!!』

「バンギラス‼︎」

ゲッコウガの放ったハイドロポンプがバンギラスに決まった。効果抜群の技を受けたバンギラスはもうフラフラだ。

『グァ… クフッ…』

バタン

バンギラスはバタリと倒れ力尽きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「審判、判定を…」

岩川が呆然と倒れたバンギラスを見ていると、穂乃果が審判に声をかける。

「バ、バンギラス戦闘不能! ゲッコウガの勝利! よって勝者、高坂穂乃果!」

ワァァァァァァァァァァァァァ!!!!

「良くやったね、 ありがとう! ゲッコウガ」

『コウガ!』

審判も呆然としていたが穂乃果の声で我に返った。戸惑いながら審判が結果を言うと会場が再び歓声に包まれる。

「すごいぞ!」

「穂乃果がクラス最強に勝った!」

「あんなに強いなんて…」

次々に穂乃果に対して賞賛の声が届く。

「穂乃果ちゃん! すごい!」

「流石です! 穂乃果!」

「パーフェクトな勝利ね…」

当然、海未、ことり、真姫もその中にいた。

穂乃果は笑顔で手を振ってその声に答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘…」

一方、生徒会長は信じられないと言うような顔をしていた。あの時のポケモンバトルで自分に勝ったのは単なるまぐれだと思っていたがこのポケモンバトルを見ているとそうとは言えなくなってしまったからだ。

決して、岩川のポケモンたちが弱いわけではない。穂乃果のポケモンたちが強すぎるのだ。

そんな呆然としている生徒会長の肩にポンと誰かが手をおいた。

生徒会長が振り向くとそこにはいつになく真剣な表情の副生徒会長がいた。

「なあ、絵里ち、あの子ただ者じゃあらへん、もう許可してもええんやないか?」

「そんなこと絶対に認めないわよ… 私の方が正しいと証明してやる…」

副生徒会長が生徒会長に言っても生徒会長は聞かない、如何やら何がなんでも認めないようだ。

「希、私にはまだ奥の手があるのよ。ちょっと今度の週末を利用して里帰りしてくるわ」

「それってまさか…」

「ええ、アレを取りに行くわ。ロォーシーアン地方よ。私はあの娘にだけは絶対に負けたくないから」

生徒会長は副生徒会長にそう言うと「もうここには用はない」と言い去っていった。

「絵里ち…」

残された副生徒会長は生徒会長の背を寂しそうに眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、嘘だ! こんなの嘘だ!」

その頃バトルフィールドでは岩川が試合の結果に納得がいかず喚いていた。

「クラス最強の俺が高坂なんかに負けるなんてあり得ない! そうか… 俺は無意識に手加減をしたんだな…」

自分の敗北を意地でも認めなず自分自身に言い訳をする岩川にみんなは呆れた顔だ。

誰がどう見ても手加減をする暇もなく圧倒的な実力の差だったと言うのに。

「俺は手加減をしたんだ…そうだ、そうに「いい加減に現実を見たら?」‼︎」

自分勝手な言い訳をし続けている岩川にみんながうんざりしていると岩川の言葉を穂乃果が遮った。

「負けたんだから潔く負けを認めなよ。貴方は今、相当格好悪いよ? それに、貴方の攻撃は隙だらけだったし…」

「ど、どういうことだ!」

穂乃果が呆れ顔で岩川に言うと岩川が言い返す。

「3戦目、なんで初っぱなからバンギラスに破壊光線を指示したの?」

「そんなの決まってんだろ! 強力な攻撃だからだよ!」

岩川が自信満々に言い返すと穂乃果は額をおさえた。

「まあ、破壊光線は確かに強力な攻撃だけど使った後はしばらく動けなくなるんだよ? それにバンギラスとゲッコウガでは素早さは圧倒的にゲッコウガが上なわけだから、ゲッコウガに攻撃を当てられに来たようなものだったよ? 貴方の作戦は当たったら有利なだけで、反面、私の時みたいにかわされたら隙だらけになってしまう、それに貴方は全然気付かずにその後もギガインパクトを指示した、まあ、ギガインパクトで影分身の分身をなぎ払ったのは良かったと思うけど」

「…ち、ちょっと待て!」

穂乃果が岩川に説明をしていると岩川が口を挟んだ。

「バンギラスがギガインパクトで攻撃した時、何でお前のゲッコウガは無傷だったんだ⁉︎ もしかして、お前は反則をしたのか⁉︎」

岩川がそう言うと穂乃果は呆れたようにため息をついた。

「貴方はゲッコウガの特性を知らないの?」

「俺を馬鹿にしているのか⁉︎ 激流だよ!」

「もう一つあるでしょう? 夢特性って言って非常に珍しく特性が、私のゲッコウガはその夢特性である変幻自在なんだよ」

『コウガ』

穂乃果が岩川にそう言うとゲッコウガがまるで『そうだ』と言っているように頷いた。

「……」

穂乃果に自分の主張を完璧に論破され岩川はもう何も言えなかった。

 

 

 

 

 

そして何も言えなくなり黙って俯いた岩川の前に穂乃果は立った。

「貴方は何故、このポケモンバトルに負けたか分かる?」

「そんなの俺のポケモンたちが弱かったからに決まってんだろ…」

岩川は不貞腐れたように言うと穂乃果は首を横に振った。

「違う、貴方のポケモンたちは十分強かった。クラス最強と言われるだけはあった」

「じゃあ、何でおれはお前に負けたんだ!」

岩川が穂乃果にそう怒鳴り返すと穂乃果は岩川を冷たい目で見た。

そしてこう言った。

 

 

 

 

「それが分からないのなら貴方は一生井の中のケロマツだよ…」

 

 

 

 

穂乃果はそう言うとゲッコウガをボールに戻し、岩川に背を向けてバトルフィールドから出て行った。

岩川が後ろで「どう言う意味だ‼︎」と言っているが穂乃果は無視した。

(貴方が負けたのは貴方自身が弱かったから… ポケモンたちは弱くない。 それに気づかないとずっとそのままだよ…)

穂乃果は岩川に背を向けたまま自分の心の中で呟いた。

 

 

 




ご指摘、感想よろしくお願いします。
バトルシーンがうまく書けたかどうか評価をお願いします。


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副生徒会長と穂乃果

この小説はオリジナル設定です。


岩川とのポケモンバトルが終わり穂乃果は自分を待っていてくれた海未たちと帰ろうとすると

 

「そこの君、ちょっと良いかな?」と誰かに呼び止められた。

 

声のした方に穂乃果が振り向くとそこには副生徒会長が笑顔で立っていた。

 

「何の用でしょうか?」

 

穂乃果は少し顔をしかめて副生徒会長に言うと

 

「そんな怖い顔せえへんで欲しいな〜」

 

 

穂乃果に対して副生徒会長は陽気な笑顔で返し、「ちょっと2人きりでお話せえへん?」と穂乃果に言った。

穂乃果は怪訝そうな顔をしたが先輩なので断れず海未たちに「先に帰って」と

言い副生徒会長の所へ行った。

穂乃果が副生徒会長の所に行くと、

 

 

「ここじゃ、ちょっとアレだから別の場所でお話しようよ」

 

「……」

 

副生徒会長が穂乃果に笑顔でそう言うと副生徒会長はいきなり穂乃果の手を引っ張り、まるで逃がさないと表現するように穂乃果を連れて行った。穂乃果はさらに顔をしかめたが疑う要素はないので黙ってついて行った。

 

 

 

「………」

 

そんな副生徒会長と穂乃果を物影からじーっと見ている人物がいた。

しかし、2人は全く気づかずに歩いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー校舎裏ー

 

「さて、ここなら邪魔は入らんやろ」

 

「……」

 

副生徒会長が笑顔のまま穂乃果に言った。

穂乃果が副生徒会長に連れてこられたのは校舎裏だ。どこの学校も同じのように校舎裏は普段から人通りが少なく放課後の時間になると人通りなんてほとんどない。おまけに校舎側の反対側はブロック塀で囲まれており副生徒会長の言う通り誰にも話の邪魔をされる心配はない。

 

「……」

 

しかし、だからこそ穂乃果は不安だった。

漫画やドラマなどではこう言う人通りの少ないところで先輩に呼び出されるとカツアゲや暴力を振られるからだ。

おまけに『副生徒会長は生徒会長と仲がいいらしいからあの時のポケモンバトルのことを根に持って自分に復讐しに来たのかもしれない』と言うとんでもない妄想が浮かびあがってきた。

穂乃果は一瞬そんな映像が頭をよぎり身震いした。

穂乃果は自分を少しでも落ち着かせようと小さく深呼吸をした。

そんな穂乃果を見て副生徒会長がふふっと笑い。

 

「そんな硬くならんでもええよ〜? 別にウチは君に何かをするために連れてきたんやないよ〜?」

 

「それなら何で私をこんな所に連れてきたんですか?」

 

副生徒会長が穂乃果に優しい声で言ったが穂乃果は緊張を崩さない姿勢で副生徒会長に聞く。

穂乃果の問いに副生徒会長はニッコリと笑い

 

「そんなの決まってるやん、君がどうしてあんなにポケモンバトルが強いかを聞くために来たんや!」

 

副生徒会長が笑顔で穂乃果に言うと穂乃果は驚いた顔をした。

 

「何ですか? もしかしてヒーローインタビューみたいなヤツですか?」

 

「そうや! 理解が早くて助かるわ〜」

 

穂乃果の問いに副生徒会長は笑顔で返す。

 

(なんだ… 考えすぎか…)

 

穂乃果は安心して緊張がほぐれたのか笑顔になる。

それを見て副生徒会長は穂乃果の隣にやって来た。

 

「さあ〜 高坂穂乃果さん? 貴方の強さの秘訣とは何ですか?」

 

副生徒会長が変わらない調子で自分の右手をマイクの形にして穂乃果に聞くと穂乃果は微笑みながら質問に答えた。

 

「ふふっ、そうですね、私の強さの秘訣はどんな時でも自分のポケモンをを信じていることですかね」

 

穂乃果が返答すると今度は副生徒会長は穂乃果にこう聞く。

 

 

 

 

「それだけではないと思うな〜」

「えっ?」

 

 

 

 

穂乃果が副生徒会長の言葉に驚いて再び副生徒会長の方を見た。

そして、副生徒会長の顔を見てギョッとした。

副生徒会長は今までと同じおちゃらけた感じの声で穂乃果に言ったが目は少しも笑っていなかった。相手を笑顔で威圧するとはこう言うことなのだろうと穂乃果は思った。

再び穂乃果の体が緊張で硬くなる。

「どう言う意味ですか?副生徒会長」

 

「希でええよ」

 

笑顔を消し穂乃果が副生徒会長に聞き返すと副生徒会長は笑顔で応えた。

穂乃果は面食らったが名前を名乗ってくれたのに名前で呼ばないは悪いと思い、

 

「……希先輩どう言う意味ですか?」

 

穂乃果が副生徒会長の名前を呼ぶと副生徒会長こと希は笑顔で応えた。

 

「簡単なことや、確かにポケモンバトルに勝利するためにはポケモンとの信頼関係大事や。 せやけど穂乃果ちゃんのあのバトルスタイルはそういう信頼関係だけでは出来へん。もっとたくさんの経験やポケモンについての知識がなきゃ出来る訳ない。 それに穂乃果ちゃんのクラスの人は穂乃果ちゃんは自分たちと同レベルのポケモントレーナーだと思ってるみたいやけどウチはとてもそうだとは思えへんのや」

 

「………」

 

希に自分の全てを見抜かれているようで穂乃果は気持ちの悪い汗が出始めた。

そして、嫌な予感が頭をよぎった。

 

 

 

 

 

 

『自分の秘密が暴かれてしまうかも』という予感だ。

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果はそう考えると急に怖くなった。

穂乃果は何か上手い言い逃れを必死で考える。

しかし、焦る頭で考えても上手い言い訳は考えつかなかった。

何も言わない穂乃果を見て希は畳み掛けるように聞く。

 

「貴女は何かとても大きな事をみんなに隠してるよね?」

 

「っ‼︎」

 

急に今までの関西弁から標準語に口調を変え穂乃果を真っ直ぐ見つめながら希が穂乃果に聞いたので穂乃果は思わず目を逸らした。

おそらくこの状況から逃げたいという条件反射的なものだったのだろう。

しかし、希はそれを許さなかった。

 

「どうなの?」

 

目を逸らした穂乃果の顔を掴み逃がさないように自分に強引に自分に向かせる、希の真っ直ぐな瞳は自分を溶かしてしまいそうだった。

このままだとマズいと思い、穂乃果が希の手を強引に振り払って逃げようとした時、

 

 

 

 

 

シュシュシュシュシュシュ!!!!

 

 

 

ドガーン!!!! ドゴーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ!!!!」

「な、なに⁉︎」

 

突然、穂乃果と希に向かって何かが放たれ爆発が起きたのだ。幸い2人には当たらなかったため怪我はせずにすんだ。

 

「な、なんや⁉︎ これは!」

「ミサイルばりとタネ爆弾だ‼︎」

 

穂乃果がそう言った途端

 

『ピアー…』

『ナッキー‼︎』

『ズパス‼︎』

 

「‼︎」

 

まるで穂乃果の言葉に答えるように3体のポケモンの声が聞こえた。

ミサイルばりとタネ爆弾の煙が晴れるとそこにいたのは、

 

「スピアー! それにヤナッキーとノズパスまで……!」

むし、どくタイプのスピアーと、くさタイプのヤナッキー、それにいわタイプのノズパスだった。

 

『スピッ!』

『ナッキー!』

『ズパス‼︎』

 

穂乃果が自分たちの名前を呼ぶと3体は再びさっきと同じ技を放つ、慌てて穂乃果がポケモンを繰り出して自分たちを守ろうとすると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソーナンス! カウンターや!」

 

『ソォーナァーンス‼︎』

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

 

シュー… ドドドドドドドドドドドドドド ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピアー!!!!』

『ナッキー!』

『ズパス⁉︎』

 

 

「ふう… 危なかった…」

「の、希先輩…」

 

穂乃果がポケモンを繰り出す前に希がエスパータイプのソーナンスを繰り出し、カウンターで攻撃を跳ね返してくれたのだ。

ソーナンスの攻撃を受けてスピアーとヤナッキーとノズパスは吹っ飛ぶ、カウンターは相手から受けたダメージを2倍にして返す技だ。2体分の技を一気に返したためかなりの威力だ。

 

 

『ピアー…』

『ナッキー…』

 

しかし、スピアーとヤナッキーはカウンターの攻撃を受けてもフラフラしながら立ち上がる。

ノズパスも特性【がんじょう】で戦闘不能を免れたらしく立ち上がる。

 

 

 

「まだ立てるんやな…」

 

希が呟いた。

 

「にしてもあのスピアーたちは誰のポケモンで何で私達に攻撃してくるんだろう…」

 

穂乃果も希に続いて呟いた。

 

その時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ! 外したか!」

 

「っ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

突然、物陰から舌打ちと聞き覚えのある声が聞こえた。

穂乃果と希がその方向を見ると校舎の物陰に隠れている人影が見えた。

物陰に隠れていて姿が見えないが穂乃果と希は声を聞いただけでその人物が誰なのかハッキリ分かった。

 

「あ、貴方は…」

 

思わず希は驚いた顔をした。

しかし、驚いた顔をしている希とは対照的に穂乃果はその人物を目を細めて睨みつけた。

 

「そんなところでコソコソ隠れてないで出てきたら? それとも出てこれないのかな? 臆病者」

 

 

 

 

ガサッ ザッ ザッ…

 

 

 

穂乃果の挑発に応えるように物陰から隠れていた人物が姿を現した。

その人物は穂乃果と希を見るなりニヤリと気持ちの悪い笑みを浮かべた。

 

「今更何の用?」

 

希がその人物の笑みにビクリと肩を震わせる。しかし、穂乃果は全く怯えもせずに鋭い視線をその人物に向けながら問いかけた。

 

「………」

 

その人物はその問いかけに答えずにニヤニヤ笑っている。

穂乃果はいつまでも問いかけに答えないその人物に痺れを切らしたのか少々怒気を含めた声でその人物に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今更私たちに何しに来たの? 岩川君…」

 

 

 

 

 

穂乃果が言うと物陰に隠れて穂乃果たちに攻撃をしてきた人物、岩川は不敵に笑った。

そして、こう言った。

 

 

 

 

 

「何しに? そんなの決まってんだろ… あんな全校生徒の前でこの俺に大恥をかかせたお前に復讐しに来たんだよ!」

岩川はそう言うとスピアーとヤナッキーとノズパスに回復の薬を与え体力を回復させた。

回復の薬で体力が回復したスピアーとヤナッキーはすぐに起き上がり岩川の前に立つ。

 

 

 

 

「そう… イジメと言う復讐をな… いけ! スピアー! ヤナッキー! ノズパス!」

 

 

岩川の声を合図にスピアーとヤナッキーとノズパスが穂乃果たちに再び襲いかかる!

 




ご指摘、感想お待ちしております。


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岩川の悪あがき

この小説はオリジナル展開です。
今回は視点が変わる時があります。
後、今回は胸糞注意です。


「スピアー! ミサイルばり! ヤナッキー! タネ爆弾! ノズパス! ロックブラスト!」

 

 

『ピアー!』

『ナッキー!』

『ズパス‼︎』

 

 

岩川の指示を聞きスピアーはミサイルばり、ヤナッキーはタネ爆弾を穂乃果と希に放つ

 

「ソーナンス! もう一回カウンターや!」

 

『ソォーナァーンス‼︎』

 

 

 

シュシュシュシュシュシュシュシュ!

 

 

 

ドゴーン!!!!

 

 

 

 

ピカーン‼︎

 

 

 

 

ドガーーーーン!!!!

 

 

 

 

『ピアッ‼︎』

『ナッキ‼︎』

『ズパス⁉︎』

 

スピアーとヤナッキーの攻撃をさっきと同じようにカウンターで跳ね返し、2倍のダメージをスピアーとヤナッキーに当てる回復の薬で体力は全快したとはいえ2倍になったダメージを受けたスピアーとヤナッキーは地面に倒れる。

「何してんだ! さっさとお前ら起き上がれ!」

 

岩川がスピアーたちにそう怒鳴りつけると3体はフラフラしながら立ち上がり希たちの方を睨みつける。

 

「ほう… まだ立ち上がれるんか… せやったらウチも本気でやらんとなぁ、 いくんや! ムウマージ!」

 

『マージ…』

立ち上がったノズパスたちを見て希は新たにゴーストタイプのムウマージを繰り出した。

 

「希先輩! それなら私も!」

 

「待って… 穂乃果ちゃん、ここはウチに任せてやな」

 

「えっ⁉︎」

 

穂乃果もポケモンを繰り出そうとモンスターボールを構えたしたが希に手を自分の前に出されて止められた。

 

穂乃果は驚いて希を見ると希は笑顔で穂乃果に言った。

 

「人に向けて攻撃するなんて非常識なことやと音ノ木坂の副生徒会長としてもあいつに教えなアカンからな…」

 

どうやら希も岩川の行為に穂乃果同様に頭にきているようだ。

でも心配そうな穂乃果に希は笑顔で言った。

 

「大丈夫や穂乃果ちゃん! ウチに任せとき!」

 

希はそう言うと岩川の方を見た。

 

 

 

 

 

「何だ? 副生徒会長が相手か? まあいい… 俺が用があるのは後ろにいる高坂だ! あんたなんてさっさと倒してやるよ!」

 

「ほう… それは大層な自信やなぁ… ウチを相手にどこまでやれるかな?」

 

岩川は希が穂乃果を守るように立ち塞がり自分が相手になると言ったことに驚いたようだがすぐに気を取り直し挑発的な言葉を希に投げかける。

希も岩川の挑発に挑発的な言葉を投げ返し校舎裏でのポケモンバトルが始まった。

 

 

 

 

 

 

「いくぞ! スピアー! ムウマージにミサイルばり! ヤナッキー! ソーナンスにタネ爆弾だ! ノズパス! ムウマージにロックブラスト!」

 

『ピアー!』

『ナッキー!』

『ズパス‼︎』

 

「ソーナンスはカウンター! ムウマージはゴーストダイブで避けるんや!」

 

『ソォーナァーンス‼︎』

 

『マージ!』

 

岩川の指示でスピアーはムウマージにミサイルばり、ヤナッキーはソーナンスにタネ爆弾を放つ。しかし、希の方も負けておらずムウマージはゴーストダイブでタネ爆弾をかわし、ソーナンスはカウンターで技を跳ね返す。

 

『ナッキー‼︎』

 

そして、ソーナンスのカウンターにより2倍の威力で跳ね返された攻撃はヤナッキーに命中しヤナッキーは戦闘不能になってしまった。

 

「ヤ、ヤナッキー!」

 

岩川は悲痛な声を戦闘不能になったヤナッキーを見てあげたが、そんな岩川を見て穂乃果は岩川に呆れていた。

 

(さっきからソーナンスのカウンターでヤナッキーたちはダメージ受けてたじゃん… 作戦を変えないからそりゃそうなるよ… 学習能力のない人…)

 

穂乃果は岩川を呆れた目で見た。

穂乃果がそう考えている間にもポケモンバトルは続いている。

 

「今や! ムウマージ! ゴーストダイブや!』

 

「スピアー! ムウマージが出てきたらダブルニードルで迎え撃て!」

 

ミサイルばりの攻撃のためにゴーストダイブを使ったムウマージが姿を現しゴーストダイブをスピアーに放つ。スピアーもムウマージの姿を現し、攻撃してきた時にダブルニードルで迎え撃つ。

 

 

バキーン!!!!

 

 

スピアーとムウマージの技のぶつかり合いで強い衝撃が起こる。しかし、ムウマージの方が力負けしスピアーに吹き飛ばされる。

 

「ムウマージ!」

「スピアー、やれ! ムウマージに毒づきだ! ノズパスはロックブラスト!」

 

『ピアー!』

 

ぐさっ‼︎

 

ドカーーーーン!!!!

 

『マージ!』

 

スピアーに力負けしたムウマージが吹き飛ばされたことによりノーガードになってしまいスピアーの毒づきとノズパスのロックブラストを防御もなしに受けてしまう。ムウマージは毒づきとロックブラストのダメージを受けて思わずよろける。さらに悪いことに今のスピアーの毒づきとノズパスのロックブラストの2つともがムウマージの急所に当たってしまいムウマージのダメージがかなり大きい。

 

『マ、マージ…』

 

「ムウマージ、しっかりするんや!」

 

「スピアー! 今のうちに羽休め!」

 

ムウマージがダメージによりヨロヨロしているうちにスピアーが羽休めにより体力を回復させる。最初はソーナンスのカウンターのおかげもあり希が優勢だったが今の攻撃で一気に戦局は逆転した。希のポケモンはムウマージとソーナンス、ムウマージは今の攻撃でかなりのダメージを受けているし、ソーナンスはカウンターなどの反撃技は強力だがそれはあくまで相手の攻撃を受けた場合、つまりソーナンスは相手が攻撃してこないと攻撃ができないのだ。そして、岩川がムウマージを吹っ飛ばした時にソーナンスではなくムウマージを追撃した理由もそれだった。

岩川は急所に攻撃が当たったことでフラついているムウマージを見てニヤリと笑い。

 

「スピアー! 追撃だ! ミサイルばり!」

 

『ピアー‼︎』

 

ドガーーーーーーーン!!!!

 

『マージ!』

 

「ムウマージ!」

 

ムウマージはフラついていたせいでスピアーのミサイルばりをかわせず希もムウマージに気を取られすぎてスピアーが攻撃に気づくのが遅れたせいでムウマージはミサイルばりを全弾くらってしまった。

 

『マ、マージ…』

 

ムウマージはもう立ち上がるのも辛そうだった。そんな

 

「とどめだ! スピアー! ムウマージにもう一度ミサイルばりだ! ノズパスはロックブラスト!」

 

『ピアー!』

『ズパス‼︎』

 

岩川の指示にスピアーがムウマージにとどめのミサイルばりを放つ、スピアーのミサイルばりとノズパスのロックブラストがムウマージに迫る!

 

(勝った!)

 

岩川は勝利を確信し口元が緩んだ。

 

しかし…

 

 

 

 

「そう簡単にウチは負けへんで! ソーナンス!』

 

『ソォーナァーンス!』

 

 

 

 

希の指示でムウマージの前にソーナンスが現れる。

しかし、岩川は余裕の笑みを崩さない。

 

「ははっ またカウンターでかえすつもりか? それは無理だな、お前のソーナンスは何回攻撃を受けたと思ってるんだ? いくらソーナンスの体力が高いといえども、もうそろそろ限界だと思うぜ?」

 

岩川が不敵に笑いながら希に言うと希はニヤリと笑った。

 

「そんなの百も承知や、 ウチの目的はそれではないで? 悪いけど勝ったのはウチの方や!」

 

「そんな訳がないだろう」

 

希が言うと岩川は希を見下したな目で見た。

 

 

 

 

「馬鹿な人…」

 

希の作戦に気づいた穂乃果は岩川に呟いた。

 

 

 

 

「ソーナンス! 道連れや!」

 

『ソォーナァーンス!』

 

「な、なんだと⁉︎」

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

スピアーとノズパスのミサイルばりとロックブラストによりソーナンスは倒れて戦闘不能になる。しかし、道連れは自分が相手の攻撃により戦闘不能になった場合、相手も戦闘不能にさせるという技だ。煙が晴れると道連れの技の効果でスピアーとノズパスが倒れて戦闘不能になっている姿があった。

 

「ありがとな、ムウマージ、ソーナンス」

 

希はムウマージとソーナンスに労いの言葉をかけボールに戻した。

対して岩川はと言うと、

 

「そんな… スピアー! ノズパス!」

 

予想だにしなかった希の攻撃に岩川は驚きを隠せないでいる。

 

「う、嘘だ… こんなの…」

 

岩川はショックで呆然としながら膝から崩れ落ちていった。

そんな呆然としている岩川の前に希が立った。

 

「さあ、観念するんやな、あんたに戦うポケモンはその反応から察するにもう一体もいないようやからな」

 

「……!」

 

希が岩川に言うと岩川はキッと希を睨みつけた。

希の言う通り岩川のポケモンはさっきの穂乃果とのポケモンバトルで戦闘不能になった3体と今回のバトルでのノズパスたちの6体だ。

スピアーたちまでもが戦闘不能になったおかげで岩川に戦えるポケモンはもういない。

どう見ても岩川の完敗だった。

 

「くっ…!」

 

負けを認めたくないのか岩川は唇を噛み締めて俯いた。

そして、俯いたままヤナッキーたち3体をボールに戻した。

俯いたままの岩川の前に希は立った。

 

「岩川くん、穂乃果ちゃんに負けてクラス最強の座を奪われた悔しさはわかるけど、これって単なる逆恨みやで? 負けたなら次のポケモンバトル大会でリベンジすれば…「誰が負けたって?」…え?」

 

希の言葉を遮って俯いたままの岩川が希に言った。

希も岩川の言葉にキョトンとしている。

 

「ヒッヒッヒ…」

 

そして、次に岩川は不気味に笑いながら立ち上がり希にこう言った。

 

 

 

 

 

 

「ヒッヒッヒ… まだ俺には奥の手があるんだよ… おい、俺『達』を甘く見てんじゃねーのか? 副生徒会長さんよ…」

 

岩川が希にそう言うと岩川は勢いよく右腕を上にあげて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今だ! やれ!」

 

 

 

 

 

 

ビュビュビュビュビュ!!!!

 

シュルルルルルルルルル!!!!

 

ダダダダダダダダダダダ!!!!

 

ジィィィィィィィィィィ!!!!

 

 

 

 

 

 

その時、岩川の声を合図に岩川が隠れていた校舎裏からさまざまな攻撃が希に向けて飛ぶ。

希は驚いて逃げようにも足が動かない!

希は痛みを覚悟して目をつぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「希先輩! 危ない!」

 

「うわっ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガーーーーーーーーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ー希sideー

 

ウチは目をつぶって痛みを覚悟していたがいつまでも痛みはやってこなかった。

 

「えっ?」

 

ウチがおそるおそる目を開けるとそこには、

 

「だ、大丈夫ですか? 希さん…」

 

ウチを守るように覆いかぶさっている穂乃果ちゃんの姿があった。どうやら動けないウチを穂乃果ちゃんが体を張って守ってくれたのだ。

 

「ほ、穂乃果ちゃん……?」

 

ウチは驚きを隠せなかった。

 

「怪我はないようですね… 良かった…」

 

穂乃果ちゃんは安心したような笑顔でウチに言う。

 

(綺麗な笑顔……)

 

ウチはその時の穂乃果ちゃんの笑顔に思わず魅入ってしまった。

 

 

 

ドキッ… ドキッ…

 

 

そして、何故か穂乃果ちゃんの顔を見るとドキドキ心臓が大きな音を立ててなり始めた。

 

 

 

(あ、あれ? どうしたんやろ…)

ウチは思わず突然ドキドキし始めた胸に手を当てた。

しかし、穂乃果ちゃんにはそれが胸を押さえているように見えたのか慌て始めた。

「え⁉︎ 希先輩! 怪我しちゃったんですか⁉︎ 大丈夫ですか⁉︎」

「だ、大丈夫や!」

 

穂乃果ちゃんは胸に急に手を当てたウチをみて胸に怪我をしたと思ったらしく調べようとするがウチがあわてて穂乃果ちゃんの手を受け止める。

 

「あっ……!」

 

その時、穂乃果ちゃんと自分の手が触れた。そして、ますます胸の鼓動が早くなり顔が熱くなっていくことが自分でもよくわかった。

穂乃果ちゃんもそれに気づいたらしくさらに慌て始めた。

 

「希先輩! 顔が真っ赤ですよ! 本当に大丈夫ですか⁉︎」

 

「だ、大丈夫だよ! 私は…」

 

思わず標準語になってしまった。 取り敢えずこれ以上穂乃果ちゃんの近くにいるのはマズいと思い動こうとする。

そして、次の瞬間私はとんでもないことに気づいた。

穂乃果ちゃんは自分に覆いかぶさって攻撃から私を守ってくれた。そのせいで私は今、穂乃果ちゃんと見つめあっている。

そう、穂乃果ちゃんに押し倒されている体制になっているのだ。

その事を理解した瞬間、私はさらに顔が熱くなった。

穂乃果ちゃんはそんな私を見てさらに慌てているが私も別の意味で慌てている。

しかし、年上の意地と言うものでなんとか平静を装って穂乃果ちゃんに私は言う。

「あの… どいてくれへんかな? ウチ… 起きれないから…」

 

「あ! すいません…」

 

穂乃果ちゃんにそう言うと穂乃果ちゃんもすぐに理解してくれたようですぐにどいてくれた。

 

 

(あ、危なかった… あのまま見つめあっていたら、私はどうなっていたやろ…)

 

 

 

まだドキドキしている胸を押さえながら私が立ち上がろうとすると

 

 

スッ

 

 

希の目の前に手が差し出された。

「どうぞ、立てますか?」

それは優しい笑顔で自分に手を差し伸べてくれる穂乃果ちゃんだった。

 

「〜〜〜〜!」

 

その時、私は穂乃果ちゃんの手を掴まず強引に立ち上がった。そして、穂乃果ちゃんから顔が見えないように顔を逸らした。

正直限界だった。これ以上穂乃果ちゃんにいろいろされたら頭が沸騰しておかしくなってしまいそうだったからだ。

穂乃果ちゃんはいきなり顔を逸らした私を見て自分が何かしたと思い込みオロオロし始めたがそんな穂乃果ちゃんに私は心配をかけるのが嫌で「大丈夫だよ」と言っておいた。

しかし、胸のドキドキと顔の熱さはひいてはくれなかった。

でも、コレって… もしかして漫画やドラマとかでよくある…

 

ー希side endー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、穂乃果は希が怪我になかったことに安心していた。しかし、そのあと何故か希が百面相をし始めたのを不思議そうに見ていた。

そんな穂乃果を現実に引き戻したのは岩川の言葉だった。

 

「チッ! また外したか…」

 

人に向けて攻撃をした挙句全く反省していない岩川の態度に再び怒りをおぼえた穂乃果はキッと視線を強めて岩川を睨みつける。

穂乃果が次に岩川の方を見るとそこにいたのは岩川だけではなかった。

岩川の後ろに、音ノ木坂学園の制服を着た男子生徒2人と女子生徒2人がいた。

しかし、その4人は悪い笑みを浮かべていた。

音ノ木坂学園の制服を着ていることから音ノ木坂学園の生徒だと言うことはわかるが穂乃果はこんな人たちは見たことがなかった。

 

「岩川くん… その人たちは?」

穂乃果が岩川に聞くと岩川は誇らしげに答えた。

 

「聞いて驚くなよ! この方たちは音ノ木坂学園に名を轟かせる最強のグループ【ストロングウォーリアーズ】だ!」

 

岩川が誇らしげに穂乃果に言うとストロングウォーリアーズの4人はひとを見下したような笑みを浮かべた。

そして、岩川は穂乃果に指を突きつけた。

それを見てストロングウォーリアーズの4人が穂乃果と希を取り囲んだ。

百面相していた希もそれでやっと我に帰ったらしくあたりを驚いた顔で見渡している。

 

「…女子生徒2人を相手に大勢でなんて卑怯じゃないかな?」

 

穂乃果の岩川に聞くと岩川は大笑いをした。

 

「何言ってんだ? お前… 最初に言ったろこれはイジメだって、卑怯もクソもねえんだよ」

 

岩川は悪びれもせず穂乃果に言う。

 

「私たちをどうする気?」

 

穂乃果が岩川に聞くと岩川は口元を歪めて穂乃果たちに最低な一言を2人に放った。

 

「そうだなぁ… まずはお前ら2人を俺の気の済むまでボコボコにして、あとは、俺たちの性処理をしてもらおうかな?」

 

「「‼︎」」

 

岩川がそう言うと穂乃果と希は絶句して言葉が出なかった。

ストロングウォーリアーズの男子生徒2人も岩川がそう言うと顔を見合わせ穂乃果と希をジロジロ舐め回すように見始めた。

そして…

 

「へぇ… 2人ともなかなかの美少女だな…」

 

「俺たちのいい性処理の道具になってくれそうだ…」

 

「でしょう?」

 

下品な笑みを浮かべながら言う岩川と2人の男子生徒に希は身震いした挙句

女子生徒2人は穂乃果たちを見てクスクス笑っている。

 

「じゃあさっそく…」

 

男子生徒1人が近くにいた希に触ろうとする。

しかし希はギリギリでその手を避けポケモンを出すためにボールを取り出そうとすると、

 

 

 

 

「アリアドス、いとをはく」

『アリ!』

 

 

シュルシュルシュルシュル

 

 

「うわっ‼︎ くっ…」

 

希がポケモンを繰り出すより先に男子生徒がアリアドスを繰り出しいとをはくで希を動かないように体を縛り付けた。

希はばたりと地面に倒れる。

糸から抜け出そうとしてもアリアドスの粘着力の強い糸で希は身動き一つ取れなくなってしまった。

 

「へへっ… どうだ」

 

「流石ですね! それにしても副生徒会長もこんな風に糸で体を縛られているとまるで何かを誘っているようですねぇ」

 

「〜〜〜〜!」

 

「こいつ何か言っているわよ?」

 

女子生徒が希を指差して言う。

希はアリアドスのいとをはくで口まで塞がれてしまい話すこともできずにいた。

 

「にしても、副生徒会長は前々から思っていたが本当にエロい体つきだなぁ、見ろよ! この胸!」

 

「やべー! 興奮が止まらない!」

 

「さっそくヤっちゃいましょう‼︎ ここなら誰も来ません! 俺たちにたっぷりご奉仕してくれよ?」

 

岩川とストロングウォーリアーズの男子生徒2人はズボンを脱ぎ下半身は裸になった。

 

「キャー‼︎ 変質者よー!」

 

「でも、その変態を誘っている痴女がここにいまーす!」

 

ストロングウォーリアーズの女子生徒2人はわざとらしく叫び声をあげたが顔はニヤケており携帯のカメラ機能の動画モードで希を撮り始めた。

 

「〜〜〜〜〜〜〜‼︎」

 

希は涙目で『やめて‼︎ お願い‼︎』と言っているようだ。しかし、やめろと言われてやめるような奴らではない。

男たち3人は今度は順番について話し合っているようだ。

 

「最初はお前に譲るよ岩川」

 

「えっ⁉︎ いいんですか⁉︎」

 

「ああ! こんなチャンスをくれた報酬さ」

 

ストロングウォーリアーズの男子生徒2人の許可を貰い岩川はご機嫌で下半身を露出したまま希に近づいた。

ストロングウォーリアーズの男子生徒は食い入るように見つめ、女子生徒はニヤニヤしながら見ている。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜‼︎」

 

希は逃げようとしたがそれより先に男子生徒と女子生徒が希の体を押さえた。

そして男子生徒がアリアドスの糸を足の部分だけ切り希の両足を掴み股を広げる。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 

希が涙目で首を横に振っているが岩川はニヤニヤしながら希の股に自分の下半身を近づけた。

 

「さあ… 副生徒会長… 貴女の初めて俺が頂いてやるよ。 この俺に抱いてもらえるんだから嬉しく思えよ〜」

 

岩川はそう言うと腰を沈めた。

希がもうダメだと観念して目をつぶったその瞬間‼︎

 

 

 

 

 

「メタグロス、サイコキネシス」

 

『メター!』

 

 

 

ピンッ!

 

 

 

「「「「「うわぁっ‼︎」」」」」

 

 

 

 

希が観念して目をつぶった時、穂乃果の声が自分の耳に聞こえた。しかし、自分の知っている声ではなく氷のような冷たい声だった。そしていつまでも痛みが来ないので目を開けるとそこには穂乃果のポケモンであろうメタグロスが岩川とストロングウォーリアーズの4人をサイコキネシスで浮かび上がらせていた。

 

 

 

「メタグロス、そのままそいつらを投げ飛ばして」

 

 

 

 

『メター…グーーロース!」

 

 

 

ビュンッ‼︎

 

 

 

 

「「「「「うわぁーっ!」」」」」

 

 

 

 

 

ドガーン!!!

 

 

 

 

 

 

穂乃果のメタグロスのサイコキネシスで浮かび上がらせて投げ飛ばされた岩川たちは投げ飛ばされた方向にあったゴミ箱に5人全員が綺麗に入った。

希がいきなりゴミ箱へ吹っ飛ばされた岩川たちを呆然と見ていると穂乃果は今度は違うポケモンを繰り出した。

 

『コウガ!』

 

そのポケモンとは今日の岩川とのポケモンバトルで大活躍したゲッコウガだった。

 

「ゲッコウガ、影うちで希先輩の糸を全部切ってあげて」

 

『ゲッコウガ!』

 

穂乃果の指示を受けゲッコウガが影うちで姿を消し希の糸を素早く切った。

希はすぐに動けるようになった。

 

「ありがとう… 穂乃果ちゃ…ん……?」

 

お礼を言おうとした希の声が止まった。

なぜなら今自分の目の前にいる人物は自分のよく知る高坂穂乃果ではなくよく似た別の誰かと錯覚したからだ。

しかし、希がそう錯覚したのも無理はなかった。

なぜなら今の穂乃果はいつもの表情豊かな顔は人形のように無表情で目も全てを見ただけで凍らす絶対零度の瞳をしていたからだ。

穂乃果をよく知る人でも錯覚するだろう。

 

 

 

 

「くそっ! よくもやったな! てめぇ‼︎」

 

「ただじゃおかねぇ!」

 

「私たちにこんなことをしてもう許さないわよ!」

 

「泣いて許しを乞うても許さないぞ!」

 

その時、メタグロスのサイコキネシスによりゴミ箱まで吹っ飛された岩川たちがゴミ箱から出てきて戻ってきた。

全員が悪態をつきながら希を睨みつける。

希はさっきの出来事が頭にフラッシュバックし思わず穂乃果の後ろに隠れた。

5人は今度は自分たちを吹き飛ばした穂乃果を睨みつける、しかし、すぐに立場が逆になってしまった。

穂乃果が感情のない氷のような顔と瞳で岩川たち5人を睨みつけていたからだ。

穂乃果の視線にたじろいだ岩川が穂乃果ではなく希にターゲットを変更しようとすると希を守るように穂乃果が立ちふさがった。

そして、高坂穂乃果とは思えない程の低くて冷たい声で岩川たちに言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなにイジメが好きなら、私をいじめて。私が貴方達に本当のイジメを教えてあげるから…」

 

 

 

 

 

 

そして穂乃果は心の底で呟いた。

 

 

 

 

 

(貴方たちがバトルではなくイジメだというのなら私はもう容赦しないよ… 貴方たちには地獄を見てもらうよ……)

 

 

 

 

穂乃果はそう心の奥底で呟くと誰にも見えないように小さく笑った。

 

 

 

 




バトルシーンと希の部分を上手く書けたか評価をお願いします。
穂乃果の性格を少し改変しすぎたかもしれません…
感想もお待ちしております。


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イジメという名のポケモンバトル

この小説はオリジナル展開です。
今回はフルボッコ要素があります。
穂乃果が少し怖いですのでご注意を…


穂乃果の言葉に岩川たちは驚いた顔になった。

自分からイジメて欲しいなんて言うとは思わなかったからだ。

でも、穂乃果の瞳からの冷気に岩川たちはビビるばかりだ。

「な、何だよ… そんなにイジメて欲しいならイジメてやるよ!」

穂乃果の絶対零度の瞳を受けて岩川たちは声が出なかったが、何とか岩川が震える声で穂乃果に言い返した。

言い返したものの岩川はかなりビビっていた。

なぜなら、今の自分たちを睨みつける穂乃果の瞳は、あの時、教室で自分に向けられたものとは全く違うものだったからだ。

睨みつけられているだけで自分は恐怖で動けなくなってしまう。

今の穂乃果の瞳はあの時より冷たく、睨んだだけで相手を凍らせるような瞳になっていた。

そして、そう思っていたのは岩川の隣にいたこの4人も同じだった。

 

 

 

 

「「「「………」」」」

ストロングウォーリアーズの4人も岩川と同様に穂乃果にかなりビビっていた。

正直、4人とも穂乃果のことを舐めていたからだ。

しかし、岩川にポケモンバトルで勝ったのと今の素早い技の指示、それに自分たちを睨みつけるあの瞳により最初の余裕はもうどこかに吹き飛んでしまっていた。

 

 

 

 

ビビって攻撃してこない岩川たちを見て穂乃果はニヤリと笑い挑発するように言った。

「どうしたの? 早く私をいじめてみなよ… それとも出来ない? 腰抜けめ…」

その言葉に単純な岩川たちはカチンと来たらしくすぐに穂乃果に怒鳴り返す。

「んだと‼︎ てめぇ! 俺たちを舐めんじゃねぇぞ! コラァ‼︎」

「もう泣いて謝っても許さないわよ!」

「徹底的に叩きのめす‼︎」

穂乃果の挑発に簡単に乗ってしまった岩川たちは戦闘態勢をとる。

そんな岩川たちに穂乃果はふふっと軽く笑い小さな声で呟いた。

「徹底的に叩きのめされるのは貴方たちだよ……!」

穂乃果はそう呟くとメタグロスとゲッコウガを見た。

「愚か者供に本当のイジメを教えてあげて… ファイトだよ、ゲッコウガ、メタグロス!」

『メター‼︎』

『コウガ!』

メタグロスたちは岩川たちを鋭い目で睨みつけている。

それもそうだ、自分たちの大事な主人をこいつらに犯されそうになったのだから。

穂乃果はメタグロスとゲッコウガを見た後、今度は希の方を見た。

「希先輩、危ないので私の後ろに絶対にいてください」

「は、はい…」

希は思わず敬語になってしまった。

なにしろあの冷たい瞳でそう言われたのだから、

穂乃果は希にそういった後再びメタグロスたちを見た。

(メタグロスたちも本気だね。私ももう我慢出来ないからね… やるからには徹底的に叩きのめすよ…)

穂乃果はそう心の底で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果がそんなことを考えている間にストロングウォーリアーズの4人はモンスターボールを構えた。

「いけ! アリアドス!」

「頼んだぞ! デンチュラ!」

「いくのよ! レパルダス!」

「それいけ! ペンドラー!」

『アリ!』

『チュラッ‼︎』

『ニャプ!』

『ドラー!』

4人は一斉にボールを投げポケモンを繰り出した。

繰り出したのはアリアドス、レパルダス、デンチュラ、ペンドラーの4体だ。

「頼みますよ!」

ポケモンが全て倒された岩川はストロングウォーリアーズの4人の後ろに隠れた。

そして、ポケモンバトルという名のイジメというものが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペンドラー! ゲッコウガにメガホーン!」

「アリアドス! お前はメタグロスにミサイルばり!」

「レパルダス! メタグロスにつじぎり!」

「デンチュラ! ゲッコウガにエレキボール!」

『ドラ!』

『アリ!』

『ニャプー!』

『チャラ!』

4人がそれぞれのポケモンに技を指示し、技がゲッコウガとメタグロスに飛んでくる。

「メタグロスはまもる、ゲッコウガはメタグロスの後ろに隠れて!」

『コウガ!』

『メター!』

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

ストロングウォーリアーズの4人の攻撃をまもるでメタグロスが防ぎ、さらにゲッコウガがメタグロスの後ろに隠れることで二体ともノーダメージですんだ。

「今度はこっちの番! メタグロス! アリアドスにサイコショック!」

『メター!』

穂乃果の指示を受けメタグロスがアリアドスにサイコキネシスを放つ。アリアドスにとって効果抜群の技のためアリアドスは吹き飛ぶ。

「ゲッコウガ! 追撃だよ! 飛んでいったアリアドスに冷凍ビーム!」

『コウガ!』

メタグロスのサイコショックにより吹き飛ばされたアリアドスにゲッコウガが追撃の冷凍ビームを放つ。効果は普通だが吹っ飛ばされたことにより防御が出来ずアリアドスは大ダメージを負い、さらに吹き飛ばされた先にはブロック塀がありアリアドスはそこに頭から突っ込んだ。

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

ブロック塀にアリアドスが突っ込んだことで派手な音を立てながら石埃が巻き上がる。煙が晴れるとそこにはブロック塀に頭から突っ込んだまま目を回しているアリアドスの姿があった。

「ア、アリアドス!」

アリアドスのトレーナーである男子生徒が悲痛な声をあげる。しかし、いくら呼びかけてもアリアドスは動かなかった。

「そんな…」

アリアドスのトレーナーが呆然としている。

「そんな… 一瞬で…」

「あり得ない…」

「嘘…」

他の3人も呆然としていた。

そのせいで自分たちのポケモンたちのことを見ていなかった。

『ニャプ……!』

『チャラー!』

『ペンドラー!』

「「「‼︎」」」

ポケモンたちの悲鳴が聞こえて我にかえった3人が自分たちのポケモンを見ると、

「メタグロスは破壊光線! ゲッコウガはハイドロポンプでとどめ!」

『メッ…ター!』

『コウガ!』

 

 

 

 

ズドドドドドドドド!!!!

 

 

 

ドガーーーーーン!!!!

 

 

 

 

 

シューー………

 

 

 

 

 

 

メタグロスとゲッコウガにより3人のポケモンであるデンチュラ、レパルダス、ペンドラーの3体が目を回して地面に倒れていた。

「「「………」」」

3人は言葉が出なかった。決して彼らのポケモンたちが弱いわけではない。ただ穂乃果のポケモンたちが強すぎるのだ。おまけにメタグロスたちはノーダメージで自分たちのポケモンを一掃した。

穂乃果は戦闘不能になった4体を一瞥し4人に再び視線を向けた。

「これで終わり? 話にならないんだけど…」

眉毛をあげて冷笑する穂乃果に4人はカチンときたのかまた簡単に挑発に乗ってしまった。

「そんなわけねーだろ! 今のはちょっと油断しただけだ! いけ! ハブネーク!」

「そうだぜ! いけ! ペラップ!」

「頼むわよ! エアームド!」

「いくのよ! パンプジン!」

『ブネーク…』

『ラップ!』

『アームド!』

『プジン…』

ストロングウォーリアーズの4人は新たに4体のポケモンを繰り出した。

次に繰り出したポケモンはハブネーク、ペラップ、エアームド、パンプジンの4体だ。

「ふーん… やっぱり簡単には折れてくれないか… まあいいや… その方が潰し甲斐があるからね…」

穂乃果は自分にしか聞こえない小さな声で呟くとメタグロスたちを見た。

「よし、行くよ! メタグロス、ゲッコウガ!」

『メター!』

『コウガ!』

穂乃果の呼びかけにメタグロスとゲッコウガは威勢良く返事を返した。

そして、再びポケモンバトルが始まった。

 

 

 

 

 

 

「エアームド! エアスラッシュ!」

『エアー!』

「メタグロス! まもる! ゲッコウガは後ろに隠れて!」

『メター!』

『コウガ!』

 

 

 

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

エアームドの先制攻撃のエアスラッシュをさっきと同じ手を使い防いだメタグロスとゲッコウガ、しかし、これで終わりではなかった。

「2度も同じ手を食うか! 今だ! ペラップ! ハイパーボイス!」

「続くわよ! パンプジン! シャドーボール!」

『ラップー』

『プジン!』

その指示を聞いてメタグロスとゲッコウガにパンプジンはシャドーボールをペラップはハイパーボイスを放つ。

そう、エアームドのエアスラッシュはメタグロスにまもるを使わせるための囮だったのだ。まもるは相手の攻撃をノーダメージで防げる反面、使用した後はすぐには使えなくなるという欠点がある。ストロングウォーリアーズはエアームドのエアスラッシュでメタグロスにまもるを使わせその後に攻撃をするという作戦だったのだ。

((((いける‼︎))))

ストロングウォーリアーズの4人は作戦が上手くいったと思っていた、

しかし…

 

 

 

 

 

「そうくると思った…」

 

 

 

 

 

穂乃果は少しも慌てる素ぶりはなく口元をつりあげた。

まるでそれを予測していたようだった。

そして…

 

 

 

「ゲッコウガ! ハイパーボイスが放たれる前にペラップの口に向けて冷凍ビーム!」

『ゲッコー!』

 

 

 

ジジジジジジジ………‼︎

 

 

 

 

『ペラ⁉︎』

「「「「えっ⁉︎」」」」

穂乃果の指示でペラップのハイパーボイスが放たれる直前にゲッコウガはペラップの口に向けて冷凍ビームを決めた。

効果抜群に加えて口だけではなく顔全体を凍らせたのでペラップはハイパーボイスのダメージを自分自身で負い、大ダメージを受けた。さらに顔全体を凍らせたのでペラップは息ができず混乱状態に陥ってしまった。

「まだまだ! メタグロス! コメットパンチでシャドーボールを弾き返して!」

『メター‼︎』

穂乃果の指示を受けメタグロスが飛んできたシャドーボールをコメットパンチで弾き返す。弾き返した先にはパンプジンがおりコメットパンチの威力も加わり自分で放った技だとはいえゴーストタイプのパンプジンは大ダメージを受けた。

『プジッ‼︎』

パンプジンがその攻撃を受けペラップの近くに落ちる。

「チャンスだよ! メタグロス、サイコショック!」

『メター!』

 

 

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

 

 

 

ズガーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

『ペラー!』

『プジー!』

メタグロスのサイコショックが動かないペラップとパンプジンに決まる。煙が晴れるとそこには目を回したペラップとパンプジンが倒れていた。

「ペラップ!」

「パンプジン!」

トレーナー2人がペラップたちに呼びかけるが起き上がることはなかった。

「く、くそ! エアームド! ゲッコウガにメタルクロー!」

『エアッ!』

「ゲッコウガ、影分身!」

『コウガ!』

 

 

 

シュシュシュシュシュシュシュシュ………

 

 

 

 

「う… どれが本物なんだ…?」

ゲッコウガの影分身によりたくさんの分身が現れた。トレーナーもエアームドもどれが本物だかわからない。

「仕方ない… エアームド! 片っ端から攻撃だ!」

『エアー!』

「ハブネーク! お前も片っ端からポイズンテール!」

『ネーク!』

本物を見つけるために片っ端から攻撃するハブネークとエアームド、徐々に分身が消えていき本物が割りだされていく、しかし、穂乃果は少しも慌てず、

「今だ! メタグロス! 破壊光線!」

『メター!』

穂乃果はチャンスだと思いメタグロスに破壊光線を指示した。そう、ゲッコウガ に影分身を指示したのは相手を分身に気をとらせておいて隙を作るためだったのだ。

「「しまった‼︎」」

 

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドド

 

 

 

 

 

 

ドガーーーーーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

『エアー!』

『ネーク!』

メタグロスの破壊光線を分身を消すのに夢中になっていたエアームドとハブネークは完全に不意を突かれて防御もなしにくらってしまった。

ハブネークは吹き飛ばされ校舎裏にある木に激突し、エアームドは咄嗟に飛んで避けようとしたがそれが上手くいかず破壊光線の攻撃で上空に舞い上がる。

空はエアームドのテリトリーだが攻撃のせいで上手く飛べずに真っ逆さまに地面に落ちていく。

「エアームド! 一旦、地面に落ちて体制を立て直せ!」

「そうはさせない! メタグロス! サイコショック! ゲッコウガは冷凍ビームでとどめ!」

『メッタ!』

『ゲッコ!』

 

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

『エアー!』

「エアームド!」

上手く飛べず逃げ場のない空中でメタグロスとゲッコウガの攻撃をノーガードで受けてしまいエアームドは地面に真っ逆さまに落ちていき翼がボロボロになった姿で目を回していた。

「そ、そんな…」

エアームドが戦闘不能になったのを確認し穂乃果は今度はハブネークの方を見た。

「しっかりしろ! ハブネーク!」

『ハ…ブネー…ク』

トレーナーの声を聞きフラフラになりながらも何とかハブネークは立ち上がる。しかし、もう限界だということは明らかだった。

しかし、トレーナーはハブネークが立ち上がると

「ハブネーク! ポイズンテールだ!」

『ブネー…ク』

ハブネークの状態を気にもとめずにポイズンテールを指示した。ハブネークはフラフラしながらぎこちない動きでポイズンテールをきめようとするが、

 

 

 

「ごめんね、ハブネーク… メタグロス、コメットパンチ、軽めでいいよ」

『メター』

 

 

 

ドガッ

 

 

 

 

『ブネ…』

 

 

 

バタン

 

 

 

 

それを穂乃果が見逃すわけもなくメタグロスにコメットパンチを指示した。しかし、軽めでいいとメタグロスに言ったのはおそらくハブネークに同情したのだろう。

「ハブネーク!」

トレーナーがハブネークに呼びかけるがハブネークはピクリとも動かなかった。

トレーナーは動かないハブネークを見ると舌打ちをした、

そして次の瞬間、信じられない行動をとった。

「この役立たずめ!」

 

 

 

ドガッ!

 

 

 

「っ‼︎」

 

 

 

 

 

なんとそのトレーナーは動かないハブネークを思いっきり頭から蹴ったのだ。

穂乃果は思わず目を見開いた、メタグロスとゲッコウガも同じだ。

そして、穂乃果があたりを見渡すとなんと他の3人もそれを見て戦闘不能になった自分たちのポケモンを罵声を浴びせながら殴る蹴るなどの暴力を振るっていた。闘っていなかった岩川までもだ。

今まで黙って見ていた希もさすがに我慢ならずに岩川とストロングウォーリアーズの4人に怒りの声を上げようとしたとき

 

 

 

 

 

 

「メタグロス! 破壊光線!」

『メター‼︎』

 

 

 

 

 

 

ドガーーーーーン!!!!

 

 

 

 

 

 

「「「「「うわぁっ!」」」」」

 

 

 

 

 

希は目を見開いた。なんと穂乃果のメタグロスがポケモンたちではなく岩川たちに向けて破壊光線を放ったのだ!

しかし、それを指示したのは間違いなく穂乃果だ。

メタグロスの放った破壊光線は岩川たちの近くをかするように通っていき、校舎裏の木に命中し木が木っ端微塵に砕け散った。

「な、なんてことをするんだ!」

「こっちのセリフだ!」

岩川が穂乃果に怒鳴ると穂乃果がいつもの明るい声からは信じられないような低い声で岩川たちに怒鳴りかえした。

穂乃果はさっきの氷のような冷たい瞳とは全く違う今度は火のような瞳で岩川たちを睨みつけ、今度はゲッコウガに技の指示をだす。

「ゲッコウガ! ハイドロポンプ!」

『コウガ!』

 

 

 

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

 

 

 

 

「「ヒイッ!」」

「「キャーッ‼︎」」

「逃げろー!」

 

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

 

ゲッコウガのハイドロポンプは破壊光線同様に岩川たちの近くを凄まじい威力で通っていった。

希が思わずメタグロスとゲッコウガを見ると2体とも親の仇をとるかのような目で岩川たちを睨みつけている。

穂乃果も同じような目で岩川たちを睨みつけていた。

誰の目からも穂乃果たちがすごく怒っているというのは分かる。

攻撃が当たらないように逃げ回る岩川たちに穂乃果は今度はメタグロスに指示をだす。

「メタグロス、サイコキネシスで動きを止めて」

『メター!』

 

 

 

 

 

ピンッ

 

 

 

 

 

 

「「「「「うわぁっ!!!」」」」」

 

 

 

 

 

メタグロスのサイコキネシスに寄り岩川たちは宙に浮かばされ身動きが取れなくなってしまった。

穂乃果がメタグロスとゲッコウガを後ろに従えて岩川たちに近づいてくる

岩川たちはもうちょっと恐怖で顔面蒼白になっていた。

「さて… 次はどうしようかな?」

穂乃果がニヤリと笑って岩川たちに言うと岩川とストロングウォーリアーズの男子生徒2人は首を激しく横に振り『やめてくれ!』と訴えており女子生徒はあまりの恐怖で泣き出していた。

しかし、メタグロスのサイコキネシスで自分たちは逃げることもできない。

「な、何でこんなこと…」

男子生徒が穂乃果に聞くと穂乃果は「はあ?」と返した。

「何って… さっきあなたたちが私たちにしたことをそのまま私はやっただけだよ?」

穂乃果がそう言うと岩川たちはなにも言えない。

なにも言えなくなった岩川たちを見て穂乃果はニヤリと笑い。

「さあ… もう逃げられないから安心して当てられるね〜…」

穂乃果はそう言うとゲッコウガとメタグロスは攻撃体制に入った。

「や、やめて! 助けて! お願いします!」

女子生徒が泣きながら穂乃果に言うが穂乃果は鋭い視線を女子生徒に向けた。

「よくもまあ、いけしゃあしゃあと『助けて』なんて言えますね、さっきあなたたちは希先輩が『やめて』と言っているのにやろうとしていたじゃないですか」

「そ、それは…」

穂乃果はそう言うと今度は全員を見渡した。

「それに、これはイジメだと言ったのはそっちでしょう、あんなに大勢でかかってきて…」

穂乃果の言葉の一つ一つにより岩川たちに弁解の余地はなくなっていった。

穂乃果は言い訳が思いつかず俯いた岩川たちを一瞥するとメタグロスとゲッコウガの方を見た。

そして、攻撃の指示を出した。

 

 

 

 

『メタグロス! 破壊光線! ゲッコウガ! ハイドロポンプ!」

『メター!』

『コウーガー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「うワァァァァァァァァァァァァァ!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガーーーーーーーーーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ー希sideー

凄まじい威力の攻撃が岩川たちに向けてとんだ。

ウチは岩川たちがどうなったかみると驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーんちゃってね! ありがとう、メタグロス、ゲッコウガ」

『メターグロース♪』

『コウーガー♪』

そこにはさっきとはまったく違う、いつもの太陽のような眩しい笑顔でメタグロスとゲッコウガの頭を撫でている穂乃果ちゃんがいた。

メタグロスとゲッコウガも穂乃果ちゃんに自分たちの頭を擦り寄せて笑っていた。

岩川たちはというとメタグロスのサイコキネシスでまだ浮かび上がらせたままだった。

ゲッコウガとメタグロスが放った技は岩川たちにあたらないように絶妙にコントロールされていたのだろう。

岩川たちはまったくの無傷だった。

しかし、ショックが大きかったのか全員が白目をむいて気絶していた。

ウチが岩川たちに近づくと岩川の股間の部分が濡れていた。あまりの恐怖で失禁したのだろう。

他の4人も白目をむいて気絶して動かなかった。

しかし、岩川も含めた5人の白目をむいた変顔にウチは思わず吹き出した。

 

 

 

 

「希先輩!」

 

 

 

その時、ウチの背後から聞きなれた声が聞こえた。

ウチが後ろを振り返るとそこには自分に向けてくれる優しい笑顔の穂乃果ちゃんが立っていた。

ウチはやっぱりこの笑顔を見ると顔が熱くなる。

「顔が真っ赤ですよ⁉︎ 大丈夫ですか⁉︎」

穂乃果ちゃんはウチに心配そうに聞いた。うんは顔が赤いのを必死に隠そうとしたが無理だった。

「う、うん… 大丈夫…」

ウチはいつもの飄々とした声ではなく消え入りそうな声で穂乃果に言った。

「それは良かったです!」

穂乃果ちゃんはそれを聞くとニッコリウチに微笑んだ。

ウチはその笑顔を見てまた顔が熱くなる。

 

 

(やっぱり… これって… これって…)

 

 

ウチは自分の気持ちが信じられなかった。

でも、そうとしか考えられなかった。

ー希side endー

 

 

 

 

「希先輩どうしたんだろう…」

さっきと同じように穂乃果の顔を見ると急に赤くなったり驚いた顔になったりしている希の百面相に穂乃果はまた不思議そうな顔をする。

「まあいいか…」

百面相をまだ続けているの希を余所に穂乃果は気絶したままの岩川たちのところへ行った。

メタグロスのサイコキネシスで浮かび上がらせたまま、穂乃果は5人のポケットの中を手を入れて何かを探し始めた。

「う〜んと… おっ! あった!」

穂乃果は女子生徒のポケットの中から何かを見つけて取り出した。

穂乃果はその何かを取り出すとメタグロスにもういいと言いサイコキネシスを解いた。

サイコキネシスが解かれ岩川たちは地面に落ちたがまだ白目をむいて気絶したままだった。

その声と音を聞いて希もようやく我に返り穂乃果の元に駆け寄る。

「どうしたん?」

希が聞くと穂乃果は女子生徒のポケットから取り出した携帯電話を希に見せた。

「携帯電話? それ、どうするん?」

「どうするって、これを生徒会長と先生に見せるんですよ、今回の証拠品としてね」

穂乃果は希に言うと希は頭にクエスチョンマークを浮かべた。

「何でその携帯電話が証拠品になるん?」

希が穂乃果に聞くと穂乃果は笑顔で説明する。

「実は希先輩があの人たちに犯されそうになっていた時、女子生徒が1人携帯電話でその様子を撮影していたんですよ、これを見せれば、希先輩は本当に犯されそうになっていたという証拠になります。さらに、この状況だけを見れば私たちがあの5人に一方的に暴力を振るったように見えますし、あの5人も本当のことは話さないと思いますし、ですが、この証拠品があればあの人たちも言い逃れはできません」

「………」

穂乃果の考えに希は唖然とした。

「も、もしかして穂乃果ちゃん… 最初からそれが狙いでサイコキネシスを…」

希が聞くと穂乃果は頷きながら答えた。

「ええ、まあ、ポケモンに暴力を振るったのが許せなかったというのもありましすが、 なにより…」

穂乃果は一旦そこで言葉を区切った。

そして、希を真っ直ぐ見つめ眩しい笑顔でこう言った。

「希先輩を傷つけたことが許せなかったからですね」

 

 

 

ズキューーーン!!!!

 

 

 

 

 

その言葉に希は胸を押さえてうずくまった。

急に胸を押さえてうずくまった希を見て穂乃果は驚き慌て始めたが希は顔を上げず「大丈夫…」とさっきと同じ消え入りそうな声で言った。

穂乃果は顔を上げない希を心配そうに見ていたが顔なんて上げられる訳がなかった。今の自分の顔は顔から湯気が出るほど真っ赤なのだから、

「希先輩… 本当に大丈夫ですか?」

穂乃果が心配そうにかがんで希の顔を覗き込む。

嬉しい気遣いだが今の希にとってはマズいことこの上ない気遣いだ。

希は沸騰しそうな頭を懸命に働かせて上手い言い訳を考える。

「ほ、穂乃果ちゃん… ウチは本当に大丈夫やから…」

結局、上手い言い訳はいくら考えても思いつかず苦し紛れにそう言う。

穂乃果はまだ心配そうにしていたが大丈夫だと無理矢理顔が見えないようにした。

 

 

(アカン! こんな顔は人に見せられん!)

 

 

希は顔を真っ赤にしながらそう心の奥底で叫んだ。

 

 

 

 

 

「希先輩、本当にどうしたんだろう…」

希があんな風になっている原因は自分のせいだと言うことに全く気づかない鈍感は不思議そうな顔をしながら希を見ていた。

「まあ大丈夫ならいいか… さてと… 今度はこっちを何とかしないとね…」

希から視線を移し穂乃果は今度はポケモンバトルで戦ったハブネークたちを見た。

「こんなに傷ついて…」

穂乃果は心配そうにハブネークやペラップたちの体を優しく撫でた。

「サーナイト、出てきて」

『サーナ』

穂乃果は今度はサーナイトを繰り出した。

そこでようやく希も顔を復活させ穂乃果の方を見た。

「穂乃果ちゃん、何をするん?」

希が聞くと穂乃果は「まあ、見ていてください」と言った。

そして今度はメタグロスとゲッコウガに指示を出す。

「メタグロスはサイコキネシスでさっき戦ったポケモンたちをここに連れてきて、ゲッコウガはアリアドスをブロック塀から助けてあげて」

『メター!』

『コウガ!』

穂乃果の指示を受けメタグロスはサイコキネシスで戦闘不能になり動けないポケモンたちを1箇所に集めゲッコウガはブロック塀をハイドロポンプでアリアドスが突っ込んだ周りだけを壊しアリアドスを無事に助けだした。

「ありがとう、メタグロス、ゲッコウガ」

穂乃果がメタグロスとゲッコウガにお礼を言う。

希は穂乃果が何をするつもりか分からず首をかしげた。

穂乃果はメタグロスとゲッコウガが連れてきたストロングウォーリアーズのポケモンたちを見て

「サーナイト、全体に癒しの波動で回復させて」

『サーナ』

穂乃果ちゃん指示を受けサーナイトが癒しの波動を全体にかけポケモンたちを回復させる癒しの波動によりハブネークたちの傷がみるみるうちに治っていった。

『ブネーク!』

『ドラー!』

『チャラ!』

『ニャプ!』

そしてついにポケモンたちが回復し元気に起きあがった。

「おお! 良かった! 元気になったんだね!」

穂乃果が元気になったポケモンたちを見て笑顔で言う。

『ラップ!』

『エアー!』

『プジン!』

『アリー!』

ポケモンたちも自分たちを助けてくれた穂乃果にかなり好感を持ったらしくまるで『ありがとう』と言っているようにそれぞれの鳴き声を上げている。

「よしよし、みんな無事でよかった〜!」

穂乃果が笑顔でポケモンたちを撫でながら言うとポケモンたちもつられて笑顔になり穂乃果に擦り寄る。

なんとも微笑ましい光景だった。

希はそんな穂乃果を見ていて思わず感心していた。

穂乃果は元気になったハブネークたちに岩川たちが目覚めたら『文句の一言でも言ってやれ』と言い、ハブネークたちの元を去った。

ハブネークたちはそんな穂乃果の後ろ姿を寂しそうに見送った。

 

 

 

「ありがとう、メタグロス、ゲッコウガ、サーナイト」

元気になったポケモンたちを見てもう心配はいらないと思ったのか穂乃果が大活躍したメタグロスたちにお礼を言いボールに戻した。

そして、今度は自分の携帯電話を見た。

「あ⁉︎ もうこんな時間だ!」

穂乃果は携帯電話の液晶画面に映った時間を見て驚いた声をあげた。

なんやかんやで気づかなかったが、今は放課後、辺りはもう真っ暗に近かった。

一人暮らしの希は大丈夫だが穂乃果は「お母さんに怒られる」とオロオロしていた。

「プッ… アハハハハハハハハハハ……!」

さっきまで自分を守ってくれた時と全く違い、今の穂乃果はお母さんに怒られるとまるで小学生のように慌てていた。そのギャップに思わず希は吹き出した。

笑いだした希に穂乃果がほおを膨らます。

「笑いごとじゃないですよ! お母さん怒ると本当に怖いんですから!」

「ゴメンゴメン…」

子供っぽい仕草で怒る穂乃果がまたおかしく謝っても笑いが止まらない。

「全く… 希先輩の家ってどこですか?」

「え?」

穂乃果がまだ笑っている希を見ながら聞くと希が不思議そうな顔をした。しかし、穂乃果がしつこく聞くので仕方なく教えた。

「でも、どうしてそんなの聞くん?」

希が穂乃果に聞き返すと穂乃果は笑顔で希に言った。

「もうこんな時間ですし送っていこうと思って!」

「‼︎」

「可愛い女の子が暗い夜道を1人で歩くのは危険ですからね! 1人より2人で帰った方が安全ですよ!」

穂乃果が笑顔でそう言うと希の顔がまた熱くなる。

「い、いいよ…」

希が拒否しても穂乃果は「やるったらやる」が私の信条です!と言い、ボールからサーナイトを再び出し、

「何度もゴメンね、サーナイト、希先輩の家までテレポート!」

『サーナ!』

 

 

 

ピカァーーッ!

 

 

 

 

眩しいテレポートの光が辺りを包み込み希は目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー希の自宅前ー

「着きましたよ! 希先輩!」

穂乃果の声で希は目を開ける。見るとそこは紛れもなく自分の家であるマンションの前だった。

「サーナイト、ありがとう!」

『サーナ』

穂乃果がサーナイトにお礼を言うと希も慌てて穂乃果にお礼を言う。

「穂乃果ちゃん… 今日は本当に何から何までありがとう… それとゴメンな… 穂乃果ちゃんの知られたくないこと探ろうとして…」

お礼を言った後、希は申し訳なさそうに言った。

しかし、帰ってきた言葉を聞いて驚いた。

「いいんですよ、気にしてませんから、それにそれがあったからこそこうして希先輩と知り合えたわけですし!」

穂乃果は希の手を握って笑顔で希に言った。

希は思った、なんて優しいのだろう、普通自分の隠していることを探られたら人は怒るか嫌悪するのに目の前の少女は嫌悪するどころか探ろうとしている人間を受け入れてくれている。

そう考えたら自分の胸がすごく熱くなってきた。

 

 

「希先輩! また明日学校で!」

そんなことを考えていると穂乃果が希に笑顔で手を振っていた。

見るとサーナイトのテレポートの光が辺りを明るく照らしていた。

希も穂乃果に笑顔で手を振り返した。

そして、テレポートの光が完全に消えた。

穂乃果に会えなくなるとなぜか急に寂しく感じた。

そして、今すぐにでも穂乃果に会いたくなった。

こんなの今まで感じた事のない感情だ。

 

 

ここまできたらいくら色恋沙汰に疎い自分でも穂乃果に抱くこの気持ちが何なのかくらい分かる、

 

 

(ああ、ウチは穂乃果ちゃんに恋してしまったんやな…)

 

 

なぜか思考回路は冷静だった。

自覚する前にもう心のどこかではこの気持ちに気づいていたのかもしれない。

嫌な感じも全然しなかった。

希はふっと軽く笑い。

 

 

(まさかウチの初恋の相手は女の子やったなんてな…)

 

 

 

同性同士の恋愛なんてこのオトノキ地方では珍しくない。

自分には縁のないものだと思っていたが、今ほど同性愛に寛容的なこのオトノキ地方に生まれてよかったと思ったときはなかった。

 

 

(だけど、穂乃果ちゃんは競争率高そうやなぁ… せやけどウチは誰が相手でも負けん! ウチの初恋、絶対に実らせてみせるで!)

 

 

 

希は心の底でそう思うといい気分で部屋の鍵を開け部屋に入った。

 

 

 

 

しかし、希はまだ知らなかった、自分の想い人にはライバルがすでに大勢いることを、そして、これからも増えていくことを…

 

 

 

 

 

 

 




ご指摘、感想をお待ちしております。
上手く書けたか評価もして頂けると嬉しいです。
穂乃果の性格を改変し過ぎたかもしれません…
岩川たちがその後どうなったのかは次回で明らかとなります。


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事後処理

この小説はオリジナル設定です。
今回は視点がかなり変わります。


ー希 sideー

あの事件の翌日、ウチがいつものように学校に登校すると生徒たちがザワザワ騒いでいた。

ウチは疑問に思って近くにいた男子生徒に理由を聞く。

「あの、何かあったん?」

希が聞くと男子生徒は答えた。

「ああ、なんか俺もよく知らないけど、昨日、校舎裏で大暴れした生徒がいてその人に怪我を負わされた人たちが『そんな奴学園から追い出せ!』って、今、職員室で先生たちに言ってるんだって」

ウチはそれを聞いた時、職員室でそんな事を先生たちに話している人物たちが誰なのかすぐに分かった。

 

(アカン! このままやとウチを守ってくれた穂乃果ちゃんが犯人にされてまう! そんなことは絶対にウチがさせん!)

 

気がつけばウチは職員室へ向けて駆け出していた。

 

ー希 side endー

 

 

 

 

 

ー職員室ー

その頃の職員室では穂乃果がたくさんの先生たちに囲まれていた。海未、ことり、真姫も一緒だ。

朝、穂乃果たちが学校に登校するといきなりたくさんの教師たちが穂乃果を取り囲み強引に職員室に連れてきたのだ。

穂乃果が強引に職員室に連れて行かれたのを見て海未たちは心配でついてきたのだ。

今は怪我を負わされた被害者たちが自分たちに穂乃果がどんな仕打ちをしたか教師どもに説明しているところだ。

「以上のことがあったんです! 高坂の奴は俺たちに暴力を振るったんです! あの校舎裏の壊れたブロック塀や折れた木が証拠です!」

大きな声で自分の主張を言い被害者を演じている人物は当然岩川大輔だ。

その横には昨日、穂乃果たちを校舎裏で犯そうとして逆に穂乃果にボコボコにされ返り討ちにあったストロングウォーリアーズの4人もいた。

4人とも怪我を主張するようにわざとらしく絆創膏や包帯を見える位置にしていた。

穂乃果はそんな4人を見て怒りを通り越して逆に呆れていた。

(サイコキネシスで投げ飛ばしたくらいで怪我なんてするわけないでしょ… ゴミ箱の中から出てきたときみんな無傷だったじゃん… あったとしてもちょっと擦りむいたぐらいだろうに…)

穂乃果は岩川たちを見てそんな事を考えていると岩川は何も言わない穂乃果を見て調子に乗ったのかさらに続けた。

「それに、その後、俺たちのポケモンにも乱暴をしたんです! ポケモンたちはみんな酷い目にあわされたっていって泣いていましたよ…」

岩川がそう言うと岩川の後ろにいたストロングウォーリアーズの男子生徒は無念そうに俯き、女子生徒は泣き出していた。

泣き出した女子生徒を教師たちが支えて、教師たちは敵意のこもった目で穂乃果を睨みつける。

(分かりやすい嘘泣き… 騙される方もどうかと思うけど…)

しかし、穂乃果は全く気にしておらず『証拠品をどのタイミングで見せようかな』などと余裕の表情だった。

その時、

 

 

 

バンッ!!!!

 

 

 

突然、職員室の机を叩く音が聞こえみんなびっくりする。

叩いたのは海未、ことり、真姫の3人だ。

「穂乃果はそんな事をするような人ではありません!」

「そうだよ! ポケモンに暴力を振るったりなんて穂乃果ちゃんなそんな事は絶対にしない!」

「それに、穂乃果先輩がやったという証拠もないはずよ?」

海未とことりは穂乃果にかかっている容疑を完全否定し、真姫は一応中立の意見を言っているようだが内容はどう考えても穂乃果の味方だ。

「なにいってるんだ! 高坂が俺たちに暴力を振るった証拠はあの荒れた校舎裏のことだとさっきから言っているだろ!」

真姫にストロングウォーリアーズの男子生徒が言い返すと真姫は冷静な目で男子生徒を見返した。

「それなら、あなたたち以外に誰かその光景を見た人はいるの?」

真姫が岩川に聞くと岩川は「う…」と押し黙った。

「それならあなた達の証言が嘘だと言うこともあるわね…」

真姫がそう言うと海未とことりもそれに便乗し始めた。

「そうですよ! あなた達の嘘だと言う可能性もあるじゃないですか!」

「岩川くんにいたってはその動機もあるしね!」

「なんだと! 俺の言うことが信用出来ないのか!」

海未とことりの言葉に岩川も言い返しとうとう言い争いになってしまった。

海未たちも岩川たちも今にも掴みかかろうとしている。

穂乃果はそれを冷静な目で見ていた。

 

 

(そろそろ、証拠品を提出するかな…)

 

 

そう思うと、ゆっくりと立ち上がった。

 

 

そして全員を見渡しこう言った。

 

 

「皆さん、岩川たちに騙されていますよ」

 

 

 

ー廊下ー

 

ー希 sideー

 

 

ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ………!

 

 

ウチは今、職員室に向けて廊下を走っていた。

副生徒会長が廊下を走るなんてあってはならないことだろうがそんな事を言っている場合ではない。

「人通りが少なくて良かった。 この先の廊下の曲がったところが職員室や…!」

ウチは脇目も振らずに職員室へ通じる曲がり角を曲がろうとした。

すると……

 

 

「えっ⁉︎」

「あっ⁉︎」

 

 

キキーーーッ!!!!

 

 

ドッシーーーーン!!!!

 

 

ウチは曲がり角から出てきた人にぶつかってしまった。

その人に慌てて謝ろうとすると、

「イタタ… なにしてるのよ…? 希…」

聞き覚えのある声にウチが顔を上げるとそこには、

「イタタタタ… え? 絵里ち?」

そう、音ノ木坂学園の生徒会長でありウチの親友である綾瀬絵里がいたのだ。

「ご、ごめん… 絵里ち…」

「あ、私の方こそ…」

慌ててウチが謝ると絵里ちも謝り返す。

でも、こんな事をしている場合ではない。一刻も早く穂乃果ちゃんのところに行って誤解を解かないと!

「ねえ? 何をそんなに急いでいるの?」

ウチがそんな事を考えていると、絵里ちが首を傾げて聞いてきた。

確かにぶつかるほどのスピードで廊下を慌てて走ってきた人にどうしてそこまで急いでいるのか理由を聞きたくなる気持ちは分かる。

でも、今はそんな暇はない。

「悪いけど、ウチは今は急いでいるんや! 話はまた後でな!」

ウチが再び走りだそうとすると絵里ちがウチに聞いてきた。

「もしかして、高坂さんの事?」

「⁉︎」

ウチはその言葉に体がビクッと反応した。絵里ちは正解だと思ったのか続ける。

「あの子なら、今、職員室ですごく問い詰められていたわよ、あの子が何かやらかしたの?」

「そんな訳ないやろ…」

絵里ちがウチにそう言うとウチは少しムッとしながら返した。

絵里ちはウチに続ける。

「あの子の肩を持つの? まぁ、貴女はあの子に最初から随分と好印象を持ってたようだったからね、でも、職員室であんな風に問い詰められているって事は余程の規則破りな事をしたのね」

「……」

絵里ちは穂乃果ちゃんを貶すような言葉を次々にウチに言った。いくら親友と言えどもウチの事を体を張って守ってくれて、ウチを受け入れてくれた穂乃果ちゃんの事をそんな風に言われるのは酷く気分が悪い。

何も言わないウチを見て絵里ちはさらに声を高めて言った。

「まぁ、希もあんな子とはもう関わらない事をお勧めするわ、規則破りな常識のない子と一緒にいたら貴女の印象も悪くなるからね〜」

「……!」

 

 

ブチッ!!!!

 

 

そこまで聞いてウチの中の何かが切れた。

 

 

「それに… 「いい加減にしいや‼︎」……⁉︎」

ウチは絵里ちに思いっきり怒鳴った。

「の、希…?」

ウチが急に怒鳴ったことに驚き目を見開いた。

幸い人通りが少なくて騒ぎにはならなかったがウチは我慢の限界だった。

ウチは絵里ちをキッと睨みつけた。

「穂乃果ちゃんの事を何も知らんくせして何でそんな事を言うんや! 穂乃果ちゃんが悪い事をした? 冗談じゃない! それどころか穂乃果ちゃんはウチの恩人や!」

「ち、ちょっと…」

普段あまり声を荒ないウチに絵里ちはオロオロし始めた。でも、ウチはそれを気に留めずに続ける。

「穂乃果ちゃんが悪いって何を根拠に言うんや! 言うてみい!」

次々と捲したてるウチに絵里ちは言葉が出ないようだ。ウチは絵里ちを睨みつけながら言った。

「もういい! 絵里ちなんて知らん!」

ウチはそう言うと絵里ちを押しのけて穂乃果ちゃんのいる職員室に絵里ちを振り向かず向かった。

 

 

だからこそ気づかなかった。

 

 

ウチを絵里ちが呆然とした表情で見ていたことに…

 

ー希 side endー

 

 

ー職員室ー

「は⁉︎ 騙されているだって⁉︎ まだ、そんな嘘を言うのか!」

「そうだ! そうだ!」

その頃、職員室では穂乃果の言葉に岩川たちを信じていた教師が穂乃果に掴みかかったところだった。

岩川たちもそれに便乗している。

海未たちがその教師をとめたおかげで大事にはならなかったが、穂乃果は涼しい顔で続ける。

「まあ、これを見てください」

穂乃果はそう言うとポケットから昨日の証拠品である携帯電話を取り出した。

「あ、私の携帯電話!」

持ち主である女子生徒が声をあげる。穂乃果は女子生徒を無視して続ける。

「実は、校舎裏があんなことになったのはこれが原因なんです」

穂乃果はそう言うと携帯電話を動画モードにし、昨日の動画を再生させた。

そこには岩川たちが副生徒会長を犯そうとしているところがバッチリ映ってた。

「こ、こんな…」

「う、嘘…」

「マ、マジかよ…」

岩川たちを信じていた教師たちは目を見開いて驚き、海未、ことり、真姫は岩川たちを射殺さんとばかりに睨みつけた。

さっきまで余裕ぶっていた岩川たちは顔が真っ青になった。

穂乃果はそんな岩川たちを横目で見て気づかれないようにニヤリと笑い続けた。

「実は、昨日、校舎裏で岩川くんたちに副生徒会長が犯されそうになりましてね、私は慌ててそれを止めようとしたんです、それで弾みで校舎裏のブロック塀を破壊してしまったり、木を折ってしまったりしたんです」

穂乃果が教師たちの方を見ながら言った。

穂乃果は続けた。

「ちなみにこの携帯電話はさっきの通りあの女子生徒のものです。私の携帯電話ではありません。この映像は岩川くんたちが副生徒会長を犯そうとしていた時にこの携帯電話の持ち主であるあの女子生徒が撮影したものです。おそらく、犯した後、これをネタに副生徒会長を言いなりにするつもりだったんでしょう」

穂乃果はそう言うと今度は岩川たちを見た。

「まあ、返ってそれが証拠品になった訳だけどね」

穂乃果の言葉に岩川たちは目を伏せた。

教師たちは岩川たちに「今の話は本当か?」と聞いている。

ストロングウォーリアーズは観念したようだが、1人だけ違った。

 

 

「ちょっと待ってください!」

 

 

迷惑な大声でその場の空気を壊したのは、そう、岩川だ。

もう証拠品があるのに岩川は何を言うのかと、穂乃果たちは思った。

しかし、次の瞬間、岩川は信じられない事を言った。

 

 

「俺たちを誘ったのはあの副生徒会長の方からです!」

 

 

「「「「「⁉︎」」」」」

 

 

岩川の言葉に穂乃果たちや教師たち、さらにはストロングウォーリアーズの4人も驚いたようだ。

岩川はさらに声を荒げて続けた。

「昨日、校舎裏にあの副生徒会長が俺たちを呼び出して誘惑したんですよ! そしてわざと俺たちに犯されようとしたんです! 多分、その事をネタにして俺たちを揺するきだったんですよ!」

全てを知っている穂乃果は苦し紛れの言い訳だな、と思ったが、周りは余りの

急展開に頭の理解が追いついていないようだ。

岩川はさらに副生徒会長が悪いと言い始めた。

穂乃果が問い詰める言葉を変えて岩川が言い逃れできないようにしようとしたがその必要はなかった。

 

 

ガラッ!!!!

 

 

「ちょっと待ったぁ!」

 

 

突然、職員室のドアが勢いよく開いて大声が職員室に響き渡った。

全員が大声の主の方を見た。

「ふ、副生徒会長?」

大声の主は副生徒会長こと希だった。

希はドアから手を放し腕組みをして金剛力士像のような威圧感のまま岩川に近づいた。

「出鱈目を言うな! 穂乃果ちゃんを昨日、校舎裏に呼び出したのはウチや!

校舎裏があんな事になったんは、アンタがポケモンバトルで穂乃果ちゃんに負けた腹いせに穂乃果ちゃんを襲って、穂乃果ちゃんが自分の身を守るために抵抗したからやろ! その後、ウチを犯そうとして、穂乃果ちゃんはウチを助けるためにアンタたちと戦ったんや! 暴力を振るったなんて片腹いたいわ!」

希はいつものゆったりした静かな声からかけ離れた大声の早口で捲したて、岩川たちの前に立った。

 

 

「そしてこれも嘘やろ!」

 

ビリッ!!!!

 

 

 

希はそう言うと絆創膏や包帯を思いっきり剥がした。

 

 

 

全員がさすがにやり過ぎと思い怪我を見るが、包帯や絆創膏がされていた箇所には怪我どころか擦り傷一つなかった。

またまたみんなが目を見開いた。

希は岩川たちを鋭い目で睨みつけて続けた。

「校舎裏が滅茶苦茶になった事は次の日になったらすぐにバレる。そしたらウチらの口から自分たちのしたことがバレる。せやかららアンタらは昨日、穂乃果ちゃんを襲おうとして返り討ちにあった仕返しに校舎裏の事件の犯人は穂乃果ちゃんで自分たちは被害者だと言うことにしようとしたんやろ!」

希は岩川たちに指を突きつけて言った。

「「「「「………」」」」」

岩川とストロングウォーリアーズはもう言い逃れはできなかった。

追い討ちをかけるかのように希は続けた。

「ウチの予想やけど、アンタらは穂乃果ちゃんがその後、自分たちのポケモンに暴力を振るったなんて言ったんやないか? 自分たちのポケモンたちにも暴力を振るっていたのはあんたらやろ! そして、アンタらが気絶していた時に穂乃果ちゃんがそのポケモンたちを介抱したんや」

「「「「「………」」」」」

全員が岩川たちを侮蔑の目で見ていた。

そして、希は自分の近くにいたストロングウォーリアーズのポケットからモンスターボールを1つひったくり投げた。

『ブネーク!』

モンスターボールからはハブネークが出てきた。

希はハブネークに暴力を振るったのは穂乃果かと聞いたがハブネークは首を横に振り違うと言い、岩川たちの方を尻尾で指差した。

全員がこれで確信した。

さっきの岩川たちの証言は全部嘘だったのだ。

何も言えなくなった岩川たちに1人の教師が低い声で岩川たちに言った。

「君たちは許されない事をしたね、高坂さんのおかげで未遂に終わったが一歩間違えれば取り返しのつかないことになっていた。親御さんに連絡をして君たちには厳重に処罰を下すぞ」

ストロングウォーリアーズはそれを聞いてその場にへたり込んだ。岩川は小さな声で「違う、悪いのは高坂だ」と言っていたがオオカミ少年状態になった岩川の言葉を今更、誰が信じるでしょう、そして、教師たちは全員、疑ったことを穂乃果に謝り岩川とストロングウォーリアーズの4人を引きずるように職員室から連れて行った。

行き先はおそらく生徒指導室だろう…

 

 

 

そして、次の日から、岩川たちが音ノ木坂学園に登校する事はなかった…

 

 

 

 

 

岩川たちが連れていかれた後、今日は臨時休校と言うことになった。

それもそうだ、犯罪紛いなことが起きたのだから、

生徒たちは大喜びで帰っていった。

穂乃果もいつも通りに海未たちと一緒に帰ろうとして校門に来ると、

「穂乃果ちゃん!」

穂乃果を呼ぶ声が後ろから聞こえた。

穂乃果が振り向くとそこには希が笑顔で立っていた。

「穂乃果ちゃん、ウチと一緒に帰らへん?」

希はそう言うと穂乃果の腕に自分の腕を絡めた。

そして、海未たちの方を見てニヤリとしてやったりと言うような笑みを浮かべた。

「「「⁉︎」」」

海未、ことり、真姫の3人は希の笑みを見てそれがどう言う意味なのかに気づいた。

その時、周りの温度が一気に下がった。

「ちょっと、副生徒会長が穂乃果に何の用ですか?」

「穂乃果ちゃんは私たちと一緒に帰るんですよ〜」

「穂乃果先輩は私のものよ、部外者は引っ込んでてよ」

3人が希の腕から穂乃果を引き離し希を睨みつける。

「なんや? 穂乃果ちゃんとウチは帰っちゃダメなんか?」

希も一歩も引かず笑顔だが威圧感のある笑顔で海未たちを睨み返す。

「ダメに決まってるでしょう、穂乃果は私のものですから」

海未が穂乃果を抱き寄せてそう言うと、それに今度はことりが反応する。

「はあ⁉︎ 海未ちゃん、頭おかしいの? 穂乃果ちゃんはことりのものなんだよ!」

それを聞いては真姫も黙ってない。

「まだ、貴女たちはそんな事をいっているのかしら? 穂乃果先輩は私の事を愛しているのよ?」

「はあ⁉︎ ふざけた事を言わないでください!」

「そうだよ! 貴女なんかを穂乃果ちゃんが好きになる訳がないじゃん!」

「なんですって⁉︎」

そう言うと3人は激しくにらみ合った。

穂乃果が慌ててとめに入ろうとすると

 

 

グイッ

 

 

誰かが穂乃果の腕を引いて抱き寄せた。

穂乃果が自分の腕を引いた人物をみると

「フフフ…」

そこには優しい笑顔を浮かべた希がいた。

穂乃果はそれを見てあっと声を上げた。

「そうだ。希先輩、今日はありがとうございました! 職員室で私を庇ってくれて、とても心強かったですし、あの時の希先輩は凄く格好良かったです! とても心強かったです!」

穂乃果は太陽のような眩しい笑顔でお礼の言葉を希に言った。

「っ‼︎」

希はその穂乃果の笑顔に顔を赤らめた、そして、自分も穂乃果に笑顔を返す。

希の照れたような笑顔を見て穂乃果は希に微笑んだ。

そして、

「希先輩の笑顔ってとても可愛いですね!」

 

 

ズギューーーン!!!!

 

 

穂乃果にしてはなんてことない言葉だったのだが、いつもは飄々としているが実はピュアな希にしては破壊力抜群だったらしい。

希はその言葉に顔が熱くなり穂乃果に顔を見られないように顔を伏せる。

しかし、今、自分は穂乃果を抱き寄せている状態、そして、自分は穂乃果の身長より少し高いつまり今、自分の顔の下には穂乃果の顔がある。

「⁉︎」

希がそのことに気づいたのは顔を伏せた時、目の前には不思議そうな顔をした穂乃果の顔があった。

そして、今、自分は至近距離で穂乃果と見つめあっている状態だ。

さらに、自分の目の前には穂乃果の柔らかそうな唇があった。

「……」

そして、自分は吸い寄せられるようにその唇に…

 

 

 

 

 

「キリキザン! メタルクロー!」

『ギザッ!』

 

 

 

ドスッ!

 

 

 

「うわっ⁉︎」

「きゃっ⁉︎」

 

 

 

 

希の唇が穂乃果の唇に近づいた時、いきなりキリキザンが2人の間にメタルクローを放ったのだ。

2人はなんとかそれを避けたおかげで幸い怪我はなかった。

2人は慌ててキリキザンのトレーナーを探した。

「ハァ… ハァ…」

そこには、キリキザンのトレーナーであろう海未が荒い息遣いで希を射殺さんとばかりに睨みつけていた。

さらに、希は周りからも殺気が出ていることに気づいた。

「何してるんですか〜 副生徒会長〜?」

「私の穂乃果先輩の唇を奪おうとした… 許せない…」

希が辺りを見渡すとことりと真姫がモンスターボールを構えて希を取り囲んでいた。

ことりは笑顔だが殺気が笑顔からダダ漏れになっていた。

真姫はハイライトオフの瞳で希を見据えて後ろに黒いオーラを纏っていた。

「もう、これは許せないなぁ〜 いけ! チラチーノ!」

『チラー』

「絶対に許せない… いけ、 ブースター」

『ブスター!』

ことりはチラチーノを真姫はブースターを繰り出した。

3人はポケモンを繰り出し、希を取り囲む。

「ハ… ハハハ…」

自分の置かれている状況に気づいた希は乾いた笑いを浮かべた。

 

 

 

 

「キリキザン! メタルクロー!」

「チラチーノ! スピードスター!」

「ブースター! 大文字!」

 

 

 

 

『ギザッ!』

『チラー!』

『ブスター!』

 

 

 

 

 

海未、ことり、真姫の指示を受けてキリキザンたちが希に一斉に攻撃を放った。

希は痛みを覚悟して目を瞑った。

 

 

 

 

「メタグロス! まもる」

 

 

『メター!』

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

希はいつまでたっても痛みがこないので目をおそるおそる開けた。

そこにはあの時と同様に穂乃果がメタグロスを出してまもるで自分を守ってくれたのだ。

 

 

 

「はぁ… 仕方ないなぁ… それにしても何で海未ちゃんたちは私のことになるとこんなになるんだろう?」

 

 

 

海未たちがなぜ怒っている原因が自分だと気づかない鈍感はため息をつきながら、メタグロスに希を守っておくように指示を出し、海未たちを宥めに行った。

海未たちは納得はいってなかったようだが穂乃果が希との事を説明すると「またか…」とため息をついた。

怒ったり、ため息を吐いたりの海未たちに穂乃果はクエスチョンマークを頭に浮かべた。

希も海未たちと同様にため息が出た。

そして、心の中で小さく呟いた。

(ハァ… 競争率は高いけど、これじゃあ前途多難やな…)

 

「何でみんな私を見てため息ついてるんだろう…?」

そんな中、穂乃果はみんなを不思議そうな顔で見ていた。

 

 

 

みんなからの好意に気づかない鈍感はこれからも色々な人間のハートを無意識に掴んでいく、そして、修羅場はどんどん大きくなっていく

 

しかし、それに気づいた人間はこの場には誰もいなかった。

 

 




ご指摘、感想お待ちしております。


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新たな出会いはトラブルの始まり

この小説はオリジナル設定です。


岩川たちの事件から一週間がたった。

生徒たちの間でも岩川たちの事件は話題にはなったが一週間も経ったらみんなその話題を持ち出す人はいない。

穂乃果たちのクラスも岩川大輔の席は空席になっていた。

最初はみんな岩川のことに戸惑っていたが一週間も経てばみんないつも通りの学校生活に戻る。

音ノ木坂学園には再び平穏が戻っていた。

 

 

 

 

 

「……」

1日の授業が終わり、放課後になってあの原因を解決に導いた第一人者である穂乃果は帰り支度をしながら1人考えていた。

その内容とはこうだった。

(何であの4人は私にあれ程絡んでくるのかなぁ?)

穂乃果がこう考える理由は岩川の事件の日から4人は穂乃果に対するアプローチ(穂乃果は気づいていない)が露骨になったからだ。

さらに、希までもが穂乃果と会うたびに穂乃果によく絡んでくるようになったのだ。

最近では、穂乃果の胸を後ろから揉む希先輩曰く『ワシワシ』というものをされている。

しかし、それをされる度に海未たちからはドス黒いオーラが出てくるのだ。

希は希でしてやったりというような顔をするので、顔を合わせる度に4人は火花を散らしている。

しかし、穂乃果は何故あの4人があそこまで仲が悪いのか分からなかった。

 

 

 

 

穂乃果は考えごとをしながら下駄箱から靴を取り出して履き昇降口を出る。

今日は、海未は弓道部の部活、ことりは最近始めたらしいメイド喫茶のバイト、真姫は両親との約束があり、希は生徒会の仕事があるため、穂乃果は1人で帰るのだ。

誰かと一緒に帰らないのは寂しそうに見えるが穂乃果は1人で帰るのも嫌いではない。

何故なら考え事に集中できるからだ。

「……………」

しかし、いくら考えてもあの4人があそこまで仲が悪いのかは穂乃果には分からなかった。

「みんなで仲良くしたいなぁ…」

穂乃果はポツリと願望を呟くと、校門を出て帰路につこうとすると、

 

 

 

 

 

 

「キレイハナ! エナジーボール!」

「チョロネコ! みだれひっかき!」

『キレッ!』

『チョロ〜!』

「ヘラクロス! メガホーンで相殺!」

『ヘラー!』

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

「‼︎」

どこからかポケモンと人間の声が聞こえてきた。技の名前を叫んだり爆発音が聞こえるあたりポケモンバトルをしているのだろう。

穂乃果が気になってその場所に向かった。

 

 

 

 

「ドグロック! キレイハナにベノムショック!」

『ドグロ!』

 

 

 

ドガーン!

 

 

『キレッ!』

 

 

 

 

穂乃果はそのポケモンバトルをしているだろう場所に着いた。

そこは、音ノ木坂学園の近くにある広い空き地だった。

空き地にはポケモンバトルするためにだろうバトルフィールドのような線が引いてあり、本物のバトルフィールドのようになっていた。

確かにこの空き地ならばバトルの邪魔になるものはほとんどないし、近隣にあるのは無人のアパートと、倒産して解体作業が来月から行われる廃ビルなので壊してもなんら被害はない。

穂乃果が見てみるとバトルのルールはタッグバトルだった。

さらに、ポケモンバトルをしているフィールドの周りには音ノ木坂学園の制服を着た生徒が数人いた。

そして、バトルをしているのは音ノ木坂学園の制服を着た、朱色の髪色でショートヘアーの元気そうな印象を与える少女と、髪にカチューシャをつけて眼鏡をかけていて大人しそうな印象を与える少女がタッグを組み、同じく音ノ木坂学園のデザインの制服を着ている女子生徒2人のタッグとポケモンバトルをしていた。

しかし、穂乃果はカチューシャの女子生徒たちの相手の女子生徒たちの制服を見てギョッとした。

何故なら、女子生徒2人は真っ黒な制服だったからだ。

そして、よく見るとバトルしているカチューシャの少女たち2人以外、観戦している生徒全員が黒い制服を着ていた。

音ノ木坂学園のデザインの制服から音ノ木坂学園の生徒だということはわかるが女子生徒特有の学年を見分けるためのリボンの色が違うことを除けば他は真っ黒の黒い制服だったからだ。

正直、デザインに気づかずに色だけで判断していたら違う学校の生徒だと勘違いしていただろう。

(何…? あの真っ黒な制服… 音ノ木坂学園にあんな制服の人いたっけ…?)

穂乃果はそんな人達を見て気味が悪かった。

 

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

ドサッ!

 

 

 

「キレイハナ!」

「チョロネコ!」

 

 

「キレイハナとチョロネコ戦闘不能! よって、ドグロックとヘラクロスの勝ち! よって勝者、岩尾美希さんと荒川渚さん!」

『ヘラー!』

『ドグロ!』

穂乃果がそう考えている内にポケモンバトルの勝敗はついた。審判をしていた男子生徒が結果を宣言するとヘラクロスとドグロックは勝利の雄叫びをあげた。

そして、ポケモンバトルに勝利した荒川と岩尾と呼ばれた女子生徒2人はヘラクロスとドグロックをモンスターボールに戻し、カチューシャの少女とショートヘアーの少女に近づいた。

しかし、その表情は不気味な笑みを浮かべていた。

「っ‼︎」

穂乃果はその笑みを見て何か嫌な予感がしてその場所にむかった。

 

 

 

「戻って! キレイハナ!」

「戻れ… チョロネコ…」

その頃バトルフィールドでは、ポケモンバトルに負けた2人がポケモンをモンスターボールに戻しているところだった。

荒川と岩尾は2人の前に立った。

そして、荒川が言った。

「さあ、貴女のポケモン私によこしなさい」

荒川が2人に言った。

「…い、嫌です…」

カチューシャの少女が首を振りながら後ずさり消え入りそうな声で荒川に言った。

 

 

 

ダンッ!

 

 

 

「「……ッ!」」

ビクッ!

 

 

 

カチューシャの少女の言葉が気に障ったのか岩尾が地面をふみ鳴らして2人を脅した。

「気に入ったポケモンくれるって約束でしょ? 私たちがタダであんた達なんかとポケモンバトルしてやるとでも思ってたの?」

岩尾はそういうとカチューシャの少女の腰についていたホルターからモンスターボールを奪いとった。

「や、やめて!」

その時、ショートヘアーの少女がカチューシャの少女のホルターを奪いとった岩尾にホルターを取り返そうと飛びかかった。

しかし、

「レディアン、いとをはく」

 

 

シュルシュルシュルシュルシュル

 

 

「にゃっ⁉︎ くっ…」

ショートヘアーの少女が岩尾に飛びかかるより前に荒川がレディアンを繰り出しいとをはくでショートヘアーを縛り上げた。

そして、その少女からもホルターを奪いとり、再びカチューシャの少女の方を向く。

「こうなりたくなかったらあんたのポケモン全部見せなさい、そこから私が気に入ったポケモンをもらってあげる、弱いあんたなんかより私が持っていた方がポケモンも幸せよ」

カチューシャの少女はもう泣きそうだったが何も言い返せなかった。

2人が諦めかけたその時、

 

 

 

「はいはい、そこまでですよ」

 

 

 

荒川と岩尾が2人のホルターからモンスターボールを取り出した時、明るい少女の声がその場に響いた。

 

 

 

 

 

荒川と岩尾がその方向を見るとそこには、オレンジ色のサイドテールの髪型で音ノ木坂学園の制服を着ている穂乃果が立っていた。

荒川と岩尾は穂乃果を見ると舌打ちをした。

「何だ、あんた? 私たちに文句でもあるの?」

荒川が穂乃果に喧嘩腰で言うと穂乃果は真剣な顔で言いかえした。

「ポケモンバトルに勝ったからって言って他人のポケモンを奪おうとしている人がいたので止めに来たんです」

穂乃果が言うと荒川と岩尾は大笑いをした。

「ハハハ! 負けたらポケモンを渡すっていう約束でポケモンバトルをしたんだよ! そもそも、弱いあいつらが待っているよりか、私たちが持っている方が良い…」

荒川が言うと岩尾も便乗した。

「そうそう、むしろ良いことよ! 弱くて使えないトレーナーからポケモンたちを解放してやってるんだから! 逆に感謝して欲しいくらいよ!」

荒川と岩尾のあまりにも酷い言葉にカチューシャの少女とショートヘアーの少女はもう今にも泣きそうだった。

周りにいたギャラリーも荒川と岩尾の仲間らしく『そうだそうだ』と言っている。

穂乃果はそんな荒川たちに目を向けずに俯いた。

荒川と岩尾は俯いた穂乃果を見てニヤリと笑った。

「ねえ、あんたもこの子たちの肩を持つってことは、弱いトレーナーよね? それなら、あんたも持っているポケモン全部、私たちによこしなさい!」

「‼︎」

荒川が穂乃果に言うと穂乃果は言葉にならない声を小さくあげた。

それが聞こえなかったのか岩尾も穂乃果に詰め寄る。

「そうね、あんたが持ってるより私たちが持っていた方がポケモンたちも救われるわ、わかったらさっさとよこしなさい!」

荒川と岩尾が手を出して穂乃果にポケモンを全部寄越せと言うが穂乃果は俯いたままだ。

「何よ! 何か言いなさいよ!」

「黙ってないで、さっさと寄越せ!」

荒川と岩尾がいつまでも俯いたまま何も言わない穂乃果を見て穂乃果に怒鳴った。

そして、次の瞬間

 

 

がばっ

 

 

俯いたままの穂乃果が顔をようやく上げた。

荒川と岩尾がポケモンを全部寄越せと脅そうとしたがすぐに声が喉に引っ込んだ。

「「⁉︎」」

何故ならさっきとはうって違う氷のような冷気を放つ瞳をしている穂乃果が荒川と岩尾を睨みつけていたからだ。荒川と岩尾はその絶対零度の冷気を放つ瞳に思わず震えあがった。カチューシャとショートヘアーの少女も、さらには荒川たちの仲間までもだ。

声がでない荒川たちを見て穂乃果は不敵に笑った。

そして、今度は荒川たちに聞こえるようにこう言った。

 

 

 

 

「私は、こんなポケモンバトルは普段は受けないんだけど、一度くらいならいいや… でも貴女たちが私のポケモンを欲しいのなら………」

 

 

 

 

 

穂乃果は一旦そこで言葉を区切った。

 

 

 

 

 

「私たちに勝てるものならの話だよね………!」

 

 

 

 

 

穂乃果がそう呟くとモンスターボールをポケットから取り出し構えた。

 

 

 




ご指摘、感想よろしくお願いします。


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空き地でのポケモンバトル

この小説はオリジナル展開です。
酷評が多いですが書きました。


穂乃果の言葉に荒川と岩尾は声が出なかったがなんとか言い返そうとする。

 

 

「フ、フン! 私に勝てるものなら⁉︎ 逆でしょ⁉︎ 私たちにあんたが勝てるかでしょ⁉︎」

「そ、そうよ…!」

 

 

穂乃果の瞳にビビりながら荒川と岩尾は穂乃果に言い返した。

しかし、2人以外はまだ言葉がでないようだ。

穂乃果はそれを見て軽く笑った。

 

「そうですか? まあいいですよ… 論より証拠、実際にポケモンバトルで確かめましょう… そちらは今のルールであるタッグバトルで結構です。私は1人でのダブルバトルで戦います」

「「「⁉︎」」」

 

 

穂乃果の提案に穂乃果以外の全員が驚いた。

 

タッグバトル対ダブルバトルでは圧倒的にタッグバトルの方が有利だ。

何故ならタッグバトルはパートナーと息を合わせないと勝てないと言う欠点があるがさっきのポケモンバトルを見るからに荒川と岩尾の相性は良い、さらに、指示をだすのは自分のポケモン1対のみですむ、対してダブルバトルでは2体のポケモン両方に指示をだしつつポケモンたちの状態にも気を配りながらバトルをしなければならないからだ。

しかし、荒川と岩尾はこれ幸いと顔を見合わせニヤリと笑った。

そして、そのバトルのルールを承諾した。

 

 

「自分から不利なルールを提案してくるなんて、アンタって馬鹿?」

「私たちの勝利は決まったも同然ね!」

 

荒川と岩尾はもう穂乃果に勝利した気でいる。

しかし、穂乃果は余裕の表情だ。

 

「ポケモンバトルはやってみないと結果なんてわからないよ…?」

 

穂乃果は荒川たちに聞こえないように呟いた。

 

 

 

 

 

 

しばらくしてポケモンバトルの準備が整った。

審判の男子生徒がバトル開始の声をあげ、右手を上に突き上げた。

 

「これより、荒川渚と岩尾美希のタッグと高坂穂乃果のポケモンバトルを始める! 使用ポケモンは2体、どちらかのポケモンが2体とも戦闘不能になった時点でバトル終了です! では、バトル開始!」

 

男子生徒が勢いよく右手を振り下ろしバトルが始まった。

 

 

穂乃果がポケモンを繰り出そうとすると、荒川と岩尾が穂乃果に話しかけた。

 

「2人がかりだからって言い訳はなしよ!」

「私たちが勝てば貴女のポケモン全部寄越しなさい!」

 

荒川と岩尾が穂乃果に言った。

その言葉を受けて穂乃果はしばらく、考えていたが何かを思いつき荒川たちに言い返した。

 

「分かりました。もし、貴女たちが私たちに勝てば貴女たちの願いを何でも一つ聞きましょう、しかし、負けたら、貴女たちはもう2度とこの2人に関わらないでください」

 

「「‼︎」」

 

穂乃果はカチューシャの少女たちを指差しながら言った。

穂乃果のこの言葉に荒川と岩尾は驚く。

 

「だってそうでしょう? 私のことを弱いトレーナーだと言うのなら私に負けるはずないじゃないですか、だったら良いじゃないですか」

 

「そ、それはそうだけど…」

 

「それに、私だけがリスクを背負うのは理不尽です。そちらにもそれ相応のリスクは負ってもらわないと…」

 

「っ! わかったわよ! 勝てば良いんでしょ! 勝てば!」

 

 

穂乃果の提案を荒川たちは自分たちから言い出したことのため渋々了承した。

苦い顔をしている荒川と岩尾に対して穂乃果は言質を取ったことを心の中でガッツポーズを取った。

もちろん、そのことを荒川たちが知るはずもないが、

 

 

 

 

「さあ、出番だよ! ファイトだよ! ガブリアス! エレキブル!」

『リアス!』

『レッキ!』

 

穂乃果はいつもの掛け声とともにドラゴン、じめんタイプのガブリアスと電気タイプのエレキブルを繰り出した。

 

「いけ! フリージオ!」

「頼むぞ! グライオン!」

『ジオッ!』

『ライ!』

 

 

対する荒川と岩尾は相性で選んだのかこおりタイプのフリージオとじめん、ひこうタイプのグライオンを繰りだした。

両者がポケモンを繰りだし、ようやくポケモンバトルが始まった。

 

 

 

 

 

「先制攻撃だ! フリージオ! ガブリアスに冷凍ビーム!」

『ジオー!』

 

「ガブリアス、穴をほるでよけて!」

『リアス!』

 

先制攻撃のフリージオの冷凍ビームを穴をほるでよけてガブリアスは地中に潜る。

「グライオン! エレキブルにシザークロス!」

『ライオン!』

「エレキブル! 自分に雷を打ってかわして!」

『レッキ!』

 

 

グライオンの方はシザークロスをエレキブルに放つ。しかし、エレキブルは自分に雷を放ちエレキブルの特性『電気エンジン』で上がった素早さでシザークロスを躱す。

 

 

「今度は、こっちの番! ガブリアス、地面の中ですなあらし!」

 

 

ふしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

 

 

『ライ⁉︎』

「グライオン⁉︎」

 

 

地面の中からのガブリアスのすなあらしにより地面から砂の竜巻が舞い上がった。

グライオンは地面から出てきた砂の竜巻を避けることができず、竜巻にのまれ空に舞い上がる。

 

 

「チャンスだ! ガブリアス! グライオンにドラゴンクロー!」

『リアス!』

 

ガキーン!!!!

 

 

ドガーン!!!!

 

 

ガブリアスはグライオンのところまで飛び上がり、グライオンが落下している最中にドラゴンクローを放った。竜巻にのまれて落下中のグライオンは避けれずドラゴンクローをまともにくらってしまい地面に叩きつけられる。

 

「グライオン! しっかりして!」

「何してんの⁉︎ フリージオ! ガブリアスに氷の礫!」

『ジオー!』

 

 

グライオンがダメージをくらったのを見て荒川がフリージオに指示をだし、フリージオがガブリアスに氷の礫を放つ。ガブリアスも空中で避けられずダメージを負った。

 

 

『リアス!』

 

 

ドサッ!

 

 

「ガブリアス! 大丈夫⁉︎」

『リアス!』

 

 

ガブリアスは氷の礫を空中でくらったがすぐに体制を立て直し地面に着地した。穂乃果がガブリアスを心配したがガブリアスは大丈夫だと言うように威勢良く鳴いた。

 

 

「追撃よ! グライオン、ガブリアスに一撃必殺! ハサミギロチン!」

『イオン!』

 

 

シャーーー!

 

 

「ガブリアス! 穴を掘るで避けて!」

『リアス!』

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

ダメージを負ったガブリアスを見て、チャンスだと思ったのか岩尾がグライオンに一撃必殺の大技であるハサミギロチンを指示した。グライオンが自分のハサミを鋭く光らせガブリアスに向かってくる。しかし、グライオンのハサミギロチンをガブリアスは再び穴を掘るで避けた。ハサミギロチンは当たったら確実に相手を戦闘不能にできる技だが当たらなければ意味がない。穴を掘るで避けたおかげでグライオンのハサミギロチンはガブリアスに当たらず地面に激突した。

 

 

「グライオン⁉︎」

 

 

「今だ! エレキブル! グライオンにけたぐり!」

『レッキ!』

 

 

 

ドスッ!

 

 

 

ドガーン!

 

 

 

「グライオン!」

 

 

ハサミギロチンが外れたせいでグライオンは地面にぶつかりエレキブルの攻撃に瞬時に反応できなかった。そのせいでグライオンはエレキブルのけたぐりを攻撃をノーガードで受けてしまった。グライオンの体重はそれほど重くないのでけたぐりの威力は高くないが不意を突かれてしまったことでグライオンは空中に舞い上がる。

 

 

「グライオン! 何とか体制を立て直して!」

 

「させない! エレキブル! グライオンにもう一回けたぐり!」

 

「そうはいくか! フリージオ! 冷凍ビームでエレキブルの動きを止めろ!」

 

 

空中に舞い上がったグライオンを見て岩尾は何とか体制を立て直そうとするが、穂乃果はすかさずエレキブルに追撃のけたぐりを指示する。しかし、これは相手はタッグを組んでいるポケモンバトルだ。岩尾の相方の荒川がフリージオに冷凍ビームを指示し、エレキブルのけたぐりを阻止しようとする。

しかし、そう上手くはいかなかった。

 

 

「こっちだって2体いるんだよ! ガブリアス! フリージオに炎の牙!」

『リアス!』

 

 

荒川と岩尾に対する穂乃果もダブルバトルでありポケモンは1体ではなく2体いる、今、グライオンは空中に舞い上がって体制を立て直そうとしているため相手の自由に動けるポケモンはフリージオだけだ。穂乃果はそれを狙いガブリアスにフリージオにとって効果抜群である炎の牙を指示する。エレキブルに気を取られていた荒川とフリージオは咄嗟に反応できずフリージオは大ダメージを負って地面に叩きつけられた。

 

 

『ジオッ⁉︎』

「フリージオ!」

『ライオン!』

「グライオン!」

 

 

フリージオがガブリアスの炎の牙をくらい地面に叩きつけられたと同時にグライオンもエレキブルのけたぐりをくらいグライオンも地面に叩きつけられフリージオの近くに落ちる。

 

「今だ! ガブリアスはグライオンに全力で流星群! エレキブルはフリージオにフルパワーで雷!」

『リアス!』

『レッキ!』

 

 

 

ドドドドドドドドドドドド………!

 

 

 

 

ジジジジジジジィィィィィィ………!

 

 

 

 

ドカーーーーーーーーン!!!!

 

 

 

 

動けないグライオンとフリージオに凄まじい威力の雷が落ち、さらに無数の流星群の隕石が降り注ぎ煙が巻き上がる。その煙に全員が目を瞑った。煙が晴れるとそこには目を回して地面に埋もれて戦闘不能になったフリージオとグライオンの姿があった。

 

 

「グライオン⁉︎」

「フリージオ!」

 

 

 

荒川と岩尾が戦闘不能になったフリージオとグライオンを見て信じられないというような声をあげた。その場にいた荒川と岩尾の仲間たちもカチューシャの少女たちも呆然と戦闘不能になったグライオンとフリージオを見ていた。

 

 

「審判の君… 判定をお願い」

 

 

穂乃果が呆然としている審判をしていた男子生徒に声をかけると男子生徒もハッと我に帰り判定を言った。

 

 

「フ、フリージオとグライオン戦闘不能! エレキブルとガブリアスの勝ち! よって勝者、高坂穂乃果!」

 

 

ザワザワ… ザワザワ…

 

 

審判が判定を言うと周りがざわついた。

 

「嘘…」

「荒川と岩尾に勝ったぞ…!」

「そ、そんな馬鹿な…」

 

荒川と岩尾の仲間たちが信じられないと言いたげに言い出した。

穂乃果の後ろにいるカチューシャの少女とショートヘアーの少女も目を丸くして、声も出ない状態だ。

 

 

「う、嘘よ! 2人がかりで戦ったのに負けるなんて!」

「そうよ! あんた何かインチキしたでしょ⁉︎」

 

 

バトルに負けたのが納得がいかないのか荒川と岩尾が穂乃果に食ってかかった。荒川たちの仲間もそうだそうだと言いだす。

しかし、穂乃果は眉を寄せて言い返す。

 

 

「私は何もインチキなんてしてませんよ。 逆になんで私がインチキしたと思うんですか?」

 

 

穂乃果の言葉に荒川と岩尾も言い返す。

 

 

「だっておかしいじゃない! 2人がかりで戦ったのに私たちが負けるなんて!」

「そうよ!」

 

 

荒川と岩尾があくまでもインチキだと言うことに穂乃果はため息をついた。

 

 

「2人がかりで戦ったからといっても必ず勝てるとは限りませんよ? 確かに貴女たちの連携は良かったけどその分隙も多かったですし」

「ど、どういうことよ⁉︎」

 

穂乃果の言い分に荒川が言い返した。

 

 

「例えばグライオンたちが戦闘不能になる直前の指示、グライオンをエレキブルが攻撃した時、どうしてフリージオにエレキブルを攻撃させたんですか?」

「決まってるでしょ! グライオンが危ないんだからフリージオに援護をさせたのよ!」

 

 

荒川が怒鳴ると穂乃果は目を細めた。

 

 

「そうですか? 私ならあの状況ではフリージオの冷凍ビームをガブリアスに向けて放つんですが…」

「アンタ馬鹿⁉︎ そんな事してどうすんのよ?」

 

 

穂乃果の説明に岩尾が声を荒げて返したが、穂乃果は気にせずに続けた。

 

 

「だから、あの時、グライオンはどっちみちエレキブルの攻撃を受けていたんだから、言い方は悪いけどグライオンを見捨てて、ガブリアスに冷凍ビームを放てば少なくともフリージオは無事だったはずですよ。 さらにエレキブルにとっては効果は普通の冷凍ビームもガブリアスに放っていれば効果抜群ですからガブリアスに倒せはしなくても大ダメージは与えられたはずです、こっちの方が作戦としては良いと思いますが?」

 

 

「「…………」」

 

 

荒川と岩尾は言葉が出なかった。確かに穂乃果の言う通り、あの時、フリージオがグライオンの援護ではなく自分を攻撃してくるガブリアスに攻撃していればフリージオまで戦闘不能になることはなく状況は不利になっても勝敗はついていなかった。さらに電気タイプのエレキブルには効果は普通の冷凍ビームもドラゴンタイプを持っているガブリアスには効果抜群なためこの作戦の方がまだ勝機はあっただろう。荒川と岩尾の作戦より穂乃果の作戦の方が有利だ。

 

 

穂乃果に完璧に論破され、荒川と岩尾はもう穂乃果になにも言い返せなかった。

周りにいる荒川たちの仲間もそうだった。

穂乃果はそんな荒川たちに近づいた。

 

 

「さあ、約束です。 2人のポケモンを返してください。そして、この2人にはもう関わらないでください」

 

 

穂乃果がそう言うと荒川と岩尾は唇を噛み締めた。

このルールは他ならぬ自分達から言い出した事だ。今さら取り消すと言うのは2人のプライドが許さなかった。

荒川たちは舌打ちをし、

 

 

「フン、こんな弱いポケモン要らないよ!」

「そうさ! こっちから願い下げだ!」

 

荒川と岩尾はカチューシャの少女とショートヘアーの少女に自分たちが奪ったボールのついたホルターを乱暴に投げつけると、悪態をつきながらフリージオとグライオンをモンスターボールに戻し、ブツブツ言いながら空き地を出て行った。荒川たちの仲間もその後に続いて出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

完全に荒川たちが空き地から去り見えなくなった後、穂乃果は「ふう…」と息を吐き緊張を解いた。

そして、荒川のレディアンのいとをはくで縛られたままのショートヘアーの少女を見た。

 

 

「ガブリアス、腕の刃であの子の糸を切ってあげて」

『リアス』

 

 

穂乃果がそう言うとガブリアスは頷き、腕についている鋭い刃を上手く使い、ショートヘアーの少女を傷つけずに糸を全て切った。

ガブリアスが糸を切り終えると穂乃果はエレキブルとガブリアスに労いの言葉をかけモンスターボールに戻した。

カチューシャの少女とショートヘアーの少女を見るとまだショックから立ち直れないのか呆然と座り込んだままだ。

穂乃果はそんな2人を怖がらせないように優しい声で2人に話しかけた。

 

 

「もう大丈夫だよ、安心して」

 

 

穂乃果の言葉に2人の少女は穂乃果の顔を見た。

穂乃果の言葉で2人は少しショックから立ち直ったのか小さく『大丈夫』と言うように頷いた。

穂乃果はそれを見て一安心した。そして、さっきの黒い制服を着た人たちについて2人に質問した。

 

 

「ねえ、嫌な事を思い出させて申し訳ないんだけど、さっきの人たちって何なの?」

 

 

穂乃果が聞くと2人は顔を見合わせてから申し訳なさそうに答えた。

 

 

「じ、実は私たちもあの人たちのことは知らないんですぅ……」

 

 

カチューシャの少女が消え入りそうな声で穂乃果に言った。

穂乃果は『え?』と言うような顔をした。

すると今度はショートヘアーの少女も言いだす。

 

 

「そうにゃ… かよちんといつもみたいに帰ろうとしたら、さっきの奴らが細い路地からいきなり出てきて、この空き地に連れてこられて無理矢理ポケモンバトルをさせられて負けたら気に入ったアンタらのポケモンをもらうって言われて…」

 

 

2人はそう言うと俯いた。

穂乃果は助けられてよかったと心の底から思った。

そして、同時にフツフツと怒りも湧いてきたのだ。

 

 

「そんなのポケモンバトルしゃないよ!」

 

穂乃果が言うとショートヘアーの少女が俯いたまま続けた。

 

「そして、凛たちはあの人たちに負けちゃって…」

「あなたが助けてくれなければ私たちはポケモンを奪われていました! 本当にありがとうございます! えっと…」

 

 

ショートヘアーの少女が落ち込んでいる時にカチューシャの少女が大人しめの外見からは想像できないような大きい声で穂乃果にお礼の言葉を言った。名前を言いたいけど分からないと気づき穂乃果は自分の名前を2人に教えた。

 

 

「私は高坂穂乃果、音ノ木坂学園2年生だよ」

 

 

穂乃果は笑顔で2人に名前を教えた。

笑顔の自己紹介により緊張が解けたのか、つられて2人も笑顔になり自己紹介をする。

 

 

「星空凛です! 音ノ木坂学園1年生です! 高坂先輩!」

 

ショートヘアーの少女が穂乃果の手を握って元気よく自己紹介をした。

 

「こ、小泉花陽です… 音ノ木坂学園1年生です…」

 

それに続いてカチューシャの少女も恥ずかしそうに自己紹介をする。

穂乃果は2人の名前を知り「凛ちゃんと花陽ちゃんだね、高坂先輩だと堅苦しいから、私のことは穂乃果と呼んでね」といつもの太陽のような笑顔で言った。

 

 

 

((綺麗な笑顔…))

 

 

 

「「………」」

 

 

 

2人はその笑顔を見て固まった、うっすら頰も赤い。

さっきの荒川たちとポケモンバトルをしていた時にしていた氷のような冷たい瞳と違い、自分たちに見せている太陽のような温かい瞳と笑顔に凛と花陽は思わず見惚れてしまっていた。

 

 

「どうしたの? 2人とも?」

 

 

ポーッと見惚れている凛と花陽に穂乃果が首を傾げながら聞くと2人はハッと我に返る。

 

 

「な、なんでもないにゃ!」

「そ、そうです! なんでもないです! 助けてくれてありがとうございます!穂乃果先輩!」

 

 

突然、アタフタして穂乃果にお礼を言う花陽と凛に穂乃果は首を傾げながら凛と花陽に笑顔で言った。

 

 

「気にしないで、同じ音ノ木坂学園の生徒としてもあんなのは放っておけなかったからね」

 

 

穂乃果はそう言うと花陽たちに手を差し伸べ立ち上がらせ花陽と凛の服についた汚れを払った。

 

 

「こんなに汚されて… 本当に災難だったね…」

 

 

穂乃果が汚れを払い終えると優しく2人に言った。

 

 

「あ、ありがとうにゃ…」

「あ、ありがとうございます…」

 

 

凛と花陽は穂乃果をポーッと見ながらお礼を言った。

汚れを払い終えると穂乃果はカバンを持ち凛と花陽に言った。

 

 

「もう、大丈夫だよ。 あの人たちは貴女たちにはもう2度と関わらないだろうし、しつこいようなら、先生に言えばいいよ。その時は私も力になるよ」

 

 

穂乃果は笑顔で凛と花陽にそう言うと、「またね」と2人に言い空き地を去っていった。

残された2人は穂乃果の後ろ姿をじっと見ていた。

 

 

ー凛 花陽 sideー

 

(穂乃果先輩、ポケモンバトルとても強かったな… それに私たちのポケモンを取り返してくれた。 すごくカッコよかったな…)

 

(穂乃果先輩ってとても優しい人にゃ! なんだかとても頼り甲斐のある人だにゃ〜!)

 

穂乃果が去った後、凛と花陽は一緒に帰り道を歩きながらそれぞれさっきの事を考えていた。

2人は助けてもらったことで穂乃果にかなり好感を持ったようだ。

 

 

((また、穂乃果先輩に会いたいな…))

 

 

そして、この言葉が自然に頭に浮かんだ。

 

 

ー凛 花陽 side endー

 

 

 

一方、穂乃果は帰り道を歩きながらさっきの空き地にいた荒川と岩尾たちのことを考えていた。

 

「……」

 

穂乃果はあんな人たちは音ノ木坂学園にいたことすらあの時初めて知った。

いろいろ引っかかる点はあるが一番気になるのはあの黒い制服だ。

 

(あの黒い制服… あれは音ノ木坂学園の制服だけど本当に音ノ木坂学園の生徒なのかな… でも2年生にはあんな人たちはいないし… 1年生だとは思えない… となると3年生かな…)

 

穂乃果はあの人たちは1番生徒の人数が多い3年生だと推測した。

 

(となると、明日、希先輩に聞いてみようかな、生徒会役員だからあの人たちのことも知ってるかもしれないし…)

 

考えが纏まるといつの間にか自分の家に着いていた。

家の扉を開け、ただいまーと明るい声で言い穂乃果は家に上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー? sideー

 

ガターン!!!!

 

「何? 収穫なし? ふざけるな!」

 

ここは、音ノ木坂学園の近くにある誰も住んでいない古い空き家、そこには十数人の男女がいた。全員が音ノ木坂学園のデザインの黒い制服を着ている。そこで今、その中の1人の男子生徒の怒鳴り声とイスを蹴り倒す大きな音がその空き家に響いた。

怒鳴り声をあげた男子生徒はギロリとある人物たちを睨みつける。

睨みつけられた人物たちは蛇に睨まれたカエルのように首を縮ませ震え上がっていた。

その震え上がっている人物たちはさっき凛と花陽からポケモンを奪おうとして穂乃果に返り討ちあった荒川たちだ。

荒川は男子生徒の声に震ながら返す。

 

 

「と、途中までは上手くいってたんだよ! でも、なんだがわからないけどすごく強い奴がやってきてさ…」

「私たちとポケモンバトルで私たちに勝っちゃって追い払われたのよ!」

 

 

荒川と岩尾が男子生徒に言った。

本当は自分たちが圧倒的有利な条件でのポケモンバトルだったのだがそれを言う勇気は荒川たちにはなく事実を少し捻じ曲げて伝えた。

しかし、男子生徒は大声で怒鳴る。

 

 

「でも、結局そいつに負けてポケモンは奪えなかったんだろう⁉︎ それなら意味ねえんだよ!」

「で、でも… 弱いポケモンだったから…」

「ふざけんじゃねぇ‼︎」

「ひっ……!」

 

 

言い訳ばかりする荒川たちに怒鳴り声をあげた男子生徒が殴りかかろうとすると、

 

 

「まあまあ… どっちも落ち着いてよ…」

 

 

1人の女子生徒が間に入って争いを止めた。

女子生徒は長い髪を揺らしながら、荒川に殴りかかろうとした男子生徒の方を向いた。

 

 

「小宮くん、荒川たちに暴力を振るったところで何も解決しないよ?」

「み、宮下さん… で、でも…」

「あたしに文句があるの?」

「い、いえ… すみません…」

 

 

小宮と呼ばれた男子生徒は言い争いを止めた宮下と言う女子生徒に違憲しようとしたが、宮下が有無を言わさない迫力を出しながら小宮に言うので小宮は細い目を大きくしてすごすごと引き下がった。

宮下はどうやらここにいる奴らのリーダーのようだ。

宮下は今度は荒川たちの方を見た。

そして、宮下は空き家でのことを荒川たちに聞いた。

 

「ねえ、アンタたちってその空き家に駆けつけた女子生徒に負けてポケモン奪えなかったんでしょ?」

「え? う、うん…」

 

宮下が聞くと荒川が頷く。

 

「ふーん… どんな子だった?」

 

 

宮下はさらにそれについて聞く。

荒川は頑張って思い出しながら宮下に穂乃果の特徴を伝える。

 

 

「え、えーと… 髪型はオレンジ色のサイドテールで、青色の大きな目をしていて… それから… 音ノ木坂学園の制服を着ていたからうちの学校の生徒で… あ、あと、リボンの色から2年生だと思うよ!」

 

 

荒川は思い出させるだけ思い出し、宮下に穂乃果の特徴を教える。

 

宮下は「なるほど」と呟いた。

 

荒川たちは宮下が何故今更になって穂乃果の特徴を聞いたのか分からなかったが、自分たちのことが有耶無耶になったため何も言わなかった。

荒川たちのことを気にせずに宮下は荒川たちが言った、女子生徒のことを考えていた。

 

 

(その子、もしかしたら岩川くんとポケモンバトルした子かな…)

 

 

宮下は荒川たちから聞いた特徴の条件がその女子生徒にピッタリあてはまっている事に気付いた。

宮下は岩川と穂乃果のポケモンバトルを見ていたのだ。

荒川たちが、その女子生徒の正体が穂乃果に気づかなかったのはその日も他の人たちから今日のようにポケモンを奪いに行っており、2人のポケモンバトルを見ていなかったからである。

そのため自分達に勝利した女子生徒が誰かわからずに他の人と話し合っているが、女子生徒の正体が穂乃果だと気づいた宮下は違った。

 

 

 

 

(なるほど… どうやらあの子の強さは見た通りかなりのものみたいね… 気に入ったわ… 次は自分の目で確かめてみましょう…)

 

 

 

 

 

どうやら宮下はバトルの強い穂乃果のことが気に入ったようだ。

宮下は心の底でそう小さく呟くとまるで子供が『明日が楽しみだ』と親に言うような顔で笑った。

 

 

 

 

 

笑顔を1人で浮かべる宮下、彼女たちの存在こそが音ノ木坂学園が廃校になった原因の一つでもある。

しかし、それは一部の人間しかまだ知らない。

 

 

 

 

 

やっかいな相手に気に入られた穂乃果、あの空き家での出来事が今回の彼女の受難の始まりだった。

 

 

 

 

そして、その受難はすぐ近くに近づいていた。

 

 

 

 

 




ご指摘、感想を良かったらお願いします。
次回も読んでくれると嬉しいです。


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悪質な学園警察

この小説はオリジナル展開かつオリジナル設定です。
今回は元ネタありです。


空き地でのポケモンバトルから次の日、学校の昼休みにいつもの中庭で昼食を食べながら穂乃果は昨日のことを海未たちに話していた。

 

「え⁉︎ そんな人たちがこの音ノ木坂学園に⁉︎」

 

穂乃果の話を聞いて驚いていきなり大声をあげたのは意外にもことりだ。

理事長の娘でもそんな話は聞いたことがなかったのだろう。

 

「うん… ことりちゃん、何か知らない?」

 

穂乃果が聞くとことりは首を困った顔をした。

 

「ゴメン… わからない… 黒い制服の人たちなんてあったことないし… お母さんもそんな人たちのこと何も言ってなかったし…」

 

ことりは申し訳なさそうに穂乃果に言うと、穂乃果は大丈夫だとことりを元気付けた。

 

「しかし、誰なんでしょうか? その黒い制服の人たちって…」

 

「1年生にはそんな人いないわよ?」

 

海未が疑問に思い言うと真姫が自分たちの学年にはいないと言う。

 

「希先輩は何か知ってます?」

 

海未たちにはその黒い制服の人たちに心あたりがないと言うので穂乃果は生徒会の副会長である希に聞いた。

 

「…その人たちって…」

 

希が口ごもりながらも言い出した。

 

「何か知ってるんですか⁉︎」

 

穂乃果が希に詰め寄ると希は答えにくそうにこたえる。

 

「その人たちは音ノ木坂学園の公安委員会というやつらや…」

 

希が言うと「公安委員会?」と全員が聞く。

 

希は言いにくそうにその公安委員会というやつらの説明をした。

 

「公安委員会というんもんはいわばこの音ノ木坂学園の治安を守るために組織された学園警察みたいなもんや、力で悪を取り締まる武闘派集団で黒い制服が目印なんや、ちなみにそれは毎年3年生から選ばれる」

 

希が説明すると海未が聞く。

 

「で、でも! そんな人たち私たち知りませんよ⁉︎ そもそも学園警察とあろう人たちが何でそんなカツアゲみたいな事をするんですか⁉︎」

 

海未の質問に希は額をおさえた。

 

「知らんのは当然や… あいつら滅多に活動なんかしてへんからな…」

 

「「「「えっ⁉︎」」」」

 

希の言葉に全員が驚く。

その反応にこたえるように希は続ける。

 

「腐っちまったんや… 昔は学園警察として名を馳せてて音ノ木坂学園のブランドの一つやったらしいんやけど、今の公安委員会は暴力にものを言わせて金やポケモンを奪い取る。いわばヤクザ同様の集団なんや… 公安委員会は偉いと言う謎の理論により学校にもほとんど登校せぇへんし… せやから教師たちも関わらんようにしてんのや… 公安委員会の存在を知ってんのはウチら3年生と教師たちだけ、だからウチら生徒会も何とかしよ思てんやけどな… それに、音ノ木坂学園が廃校になったきっかけも元はといえばあいつらの悪名が広まったせいなんやけどな…」

 

「悪名が広まったって?」

 

ことりが言うと希は続けた。

 

「ウチらが3年生に進級する少し前やった。あいつらがこの近くに通う中学生から穂乃果ちゃんが言うてた空き地の時みたいにポケモンバトルを無理矢理やらせて負けたらポケモンをその相手の中学生から奪うというのを何件もやってたんや!」

 

「「「えっ⁉︎」」」

 

あまりの非情なことにみんな声が出なかった。

希は続ける。

 

「それが広まって音ノ木坂学園の評価はガタ落ち… 今年の公安委員会は1番酷い連中らしくてな… 音ノ木坂学園の生徒たちが混乱しないよう、その事件はさすがに学園側が動いて公安委員会の連中にポケモンを返させて解決したんやけど… これ以降公安委員会による被害を出さんように公安委員会は今年で終わりにしようと教師たちとウチら生徒会で決まったというわけや… せやから知らんのは当然や、知っている人たちが隠してるんやからな…」

 

希が言うと全員が黙って俯いた。

 

 

 

 

 

 

 

ー宮下 sideー

 

同時刻、公安委員会のリーダーである宮下たち公安委員会は昨日、穂乃果と荒川たちがポケモンバトルをした空き地のとなりにある廃ビルの屋上から中庭の様子を双眼鏡で見ていた。

この廃ビルからは中庭が見えるのだ。

 

「ふふ… 見つけたわ… 何を話しているのかしらね〜…」

 

中庭で穂乃果たちが自分たちのことを話しているとは知らず、宮下は自分が気にいった相手を見つけられて嬉しそうだ。

 

「なあ、本当にあの真ん中にいるオレンジ色のサイドテールのやつが荒川に勝ったのか? 見るからに弱そうなんだが…」

 

ご機嫌な宮下のとなりでは同じく穂乃果たちを双眼鏡で見ていた小宮が納得いかないというような表情をしていた。

 

「本当だよ! 私たちに勝ったのはあいつよ!」

 

確認のために呼ばれた荒川が穂乃果を指差しながら小宮に言う。

しかし、小宮は信じなかった。

 

「そうか? 俺にはあの周りにいる奴らの方がまだ強そうに見えるがな…」

 

小宮が言うと荒川が「どうして?」と聞いた。

小宮はため息を吐いた。

 

「お前な、自分の通っている学校のことくらい知ってろよ… まあいい説明してやる」

 

小宮はそう言うと小さく咳払いをして荒川に説明し始めた。

 

「あのオレンジ色サイドテールの髪型の奴の左にいるロングヘアーのやつは街でも有名な園田道場の娘だ、部活の弓道でも好成績を収めているよ。 反対側のベージュの髪を上からまとめた奴はこの学校の理事長の娘だ、あの赤髪の奴は確か、今年の入学者で成績トップをとって新入生挨拶をしていた奴だ。そんで、西木野病院の1人娘、まあ正真正銘のお嬢さまだ、最後にあの黒の強い紫色の髪をおさげにしてる奴は東條希つってな、同級生だから知ってると思うが説明してやる、あいつは生徒会の副会長を務めてる、まあ、廃校になったんじゃかたなしだろうがな…」

 

小宮の説明に荒川は納得した。

 

「でも、何で小宮がこんなに詳しいの?」

 

「学校の有名人くらい知ってるだろ!」

 

小宮がどうしてこんなに詳しいのか気になった荒川が小宮に聞くと小宮は自分の通っている学校の有名人くらい覚えてろ!とつっこまれた。

 

「まあまあ、落ち着きなよ」

 

宮下が双眼鏡を見てニヤニヤしていて小宮に荒川が怒鳴られている何ともシュールな光景で1人落ち着いた声がその場に響いた。

 

「なんだよ、奈良」

 

小宮が荒川に怒鳴るのをやめて奈良のほうを見ると奈良は穂乃果たちを双眼鏡で見て呟いた。

 

「まあまあ、あのサイドテールのやつが強いかどうかは分からないが、もしそれなら俺、そいつとポケモンバトルして見たいんだよね〜」

 

奈良は落ち着いた声で穂乃果を双眼鏡で見ながら小宮たちにニヤニヤ笑いながら言った。

 

「そうだな、俺もやるなら今だと思うな、何たって公安委員会はこの音ノ木坂学園の正義であるんだからな。そんな俺たちに楯突いたんならそれ相応の罰が下って当然だからな」

 

奈良の隣から金髪の男子が割り込んだ。

 

「近衛もかよ…」

 

小宮が呆れたように言う。

奈良と近衛の言葉にあの時負けた屈辱を果たすために荒川と岩尾もその提案に乗った。

自分たちこそ正義だという間違った正義感を持っている公安委員会のメンバー

は自分たちのしたことは棚に上げ、穂乃果が悪いとまで言い出したのだ。

 

「まあ、そんなに言うんなら実際にポケモンバトルしてみれば? そしたらハッキリするでしょう… 小宮、そうしたらアンタもあの子が弱いか否か分かるんじゃない?」

 

「……!」

 

宮下が双眼鏡を外し、首にかけながら近衛と奈良に言うとリーダーの許可もとれたことに大喜びし、「早速、今日の放課後一斉に仕掛けよう」と打ち合わせをしている。

小宮も宮下の言ったそれを聞いて自分の力を見せしめるためとあいつが弱いことを証明するいいチャンスだと思ったらしくその提案に乗った。

 

 

 

宮下は小宮たちの様子を見て不敵に笑った。

そもそも、彼女の目的は穂乃果の力を目の前で確認することなのだ。

だからこいつらがバトルすることが宮下にとってはいい確認になるのだ。

 

 

「ふふふ… 私に見せてよ… 貴女の力を…」

 

 

宮下は放課後が楽しみだと言わんばかりに不敵に笑いながら呟いた。

 

ー宮下 side endー

 

 

 

 

 

そんなことを宮下たちが話し合っていたとは穂乃果たちが知る由も無い、

 

 

 

そして、公安委員会の厄介な奴に気に入られていることも…

 

 

 

 

この厄介な出来事の幕開けはもうすぐそばに近づいていた。

 




ご指摘、感想をよろしくお願いします。
公安委員会のポケモンのリクエストも募集しております。


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公安委員会との対面

この小説はオリジナル設定です。
公安委員会のポケモンはリクエストを参考にしました。


キーン コーン カーン コーン

 

放課後になり今日の最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。生徒たちはカバンを持ち下校する者もいれば部活に行く者もいる。

穂乃果たちは今日は部活も生徒会の仕事もなかったらしく5人みんなで帰ることにした。

そんな中で穂乃果は公安委員会のことを考えていた。

 

(公安委員会… まあ、希先輩の話を聞く限りではかなり悪質な学園警察みたいだけど… まあ、黒い制服だって言うなら、あの空き地にいたあの人たちが公

安委員会だということがほぼ間違いないと思うけど…)

 

穂乃果は昼休みの希の話を話を聞いて空き地で相手からポケモンを奪おうとしていたあの人たちが公安委員会だということに気づいた。

そして、嫌な考えが頭に浮かんだ。

 

 

 

 

『負けっぱなしで引き下がるような人たちかな』という考えだ。

 

 

 

 

 

 

希の話を聞く限り、公安委員会は学園警察という普通の生徒とは違うということを鼻にかけて、自分たちがやることこそが正しいと決めつけているようだ。

そんな人たちがこんな一生徒にしか過ぎない穂乃果に負けっぱなしで引き下がるだろうか?

穂乃果はそう考えると周りにいるほかの4人を見た。

 

「……」

 

みんなは色々な話をして歩いていた。

出会ったときは険悪だったが少し経てば『同じ人を想う人どうし仲良く』と言う希の言葉で、なんだかんだで海未たちは多少は親しくなっていた。

穂乃果はこんな雰囲気を壊したくなかった。

正義のヒーロー気取りではないけど、穂乃果は本気でそう思った。

公安委員会が私に復讐しにきたらおそらく周りの海未たちにも危害が及ぶかもしれない。

穂乃果はぐっと拳を握りしめた。

 

(公安委員会に喧嘩をうったのは私だ、私はみんなを巻き込みたくない… みんなは傷つけたくない… 公安委員会がきたら私が相手になろう…)

 

穂乃果がそう考えていると、

 

 

 

フワッ ピシッ!

 

 

「っ⁉︎」

 

 

 

突然、自分の体が浮き上がり動けなくなったのだ!

 

「穂乃果⁉︎」

「穂乃果ちゃん⁉︎」

 

海未とことりが穂乃果を見て叫び声をあげる。

 

「な、なんやあれは⁉︎」

「エスパーポケモンの技のサイコキネシスよ!」

 

希と真姫も叫び声をあげる。

 

「だ、誰⁉︎」

 

穂乃果がサイコキネシスを使っているポケモンを探そうとすると、

 

 

 

ピューーーッ!

 

 

 

「うわーーーーー‼︎」

 

 

 

 

「「「「穂乃果(ちゃん)⁉︎」」」」

 

 

 

 

サイコキネシスにより穂乃果は宙に浮いたまま、悲鳴をあげながらどこかに引き寄せられるように飛んでいった。

海未たちがその後を慌てて追いかける。

しかし、サイコキネシスで飛ばされた穂乃果は学校の敷地から出た後、住宅街の屋根の上を通っていき、追いかける海未たちとの距離はどんどん開いていった。

 

 

「アカン! このままやと見失ってまう!」

 

 

走りながら希が言うと海未がポケットからモンスターボールを取りだした。

そして、ポケモンを繰り出す。

 

 

『ホーク!』

 

モンスターボールから出てきたのはムクホークだった。

 

「ムクホーク! 穂乃果を追ってください!」

『ホーク!』

 

人間の足よりもムクホークの飛ぶ速さの方が速いと判断した海未はムクホークを繰り出すと穂乃果の後を追うように指示した。

ムクホークは翼を大きく羽ばたかせ穂乃果を追いかける。

 

 

 

 

シューーーーーー……

 

 

 

 

「うわーーー!」

 

 

 

ドスン‼︎

 

 

 

そして、サイコキネシスで飛ばされている穂乃果はそのまま飛び続け、敷地がすごく広い場所に下った。

地面に落ちたらくる衝撃を覚悟して目を瞑ったが痛みはこなかった。

穂乃果がゆっくり目を開けると、

 

『リキー!』

「ゴ、ゴーリキー?」

 

そこには紫色の筋肉質の体のポケモンであるゴーリキーがいた。

どうやら、穂乃果が落ちてきたときに受けとめてくれたようだ。

思わずあたりを見渡すとそこは昨日、荒川たちとポケモンバトルをしたあの空き地だった。

しかし、ポケモンバトルのためのラインは引いていなかった。

穂乃果はすごく嫌な予感がした。

 

『ネーン』

「ネ、ネンドール⁉︎」

 

今度は別の方からポケモンの鳴き声が聞こえたので見た。

ゴーリキーの隣にはサイコキネシスで自分をここまで連れて来たであろうネンドールがフワフワ浮いていた。

サイコキネシスが解かれ地面に自分は尻もちをつく。

 

「やっと会えたな… 高坂穂乃果…」

「だ、誰⁉︎」

 

混乱している穂乃果に新たに男性の声が聞こえた。

慌てて穂乃果はその声の主を探す。

 

「戻れ、ゴーリキー、ネンドール」

 

赤い光がゴーリキーとネンドールをモンスターボールに戻した。

戻した人を穂乃果が見てようやくその人間が誰なのかに気づいた。

 

「あ、貴方たちは誰…?」

 

穂乃果がその人物を見て声をあげるとその人物は君の悪い笑みを浮かべた。

黒い音ノ木坂学園の制裁を着た男子で、荒川たちに怒鳴っていた男子だ。

そう、公安委員会のメンバーである小宮だ。

小宮の後ろには小宮の仲間であろう公安委員会のメンバーが4人立っていた。

穂乃果に負けた荒川と岩尾もその中にいた。

小宮は穂乃果と面と向かって会うのは初めてだが構わずに不気味な笑顔を浮かべながら口を開いた。

 

「一応自己紹介をするな? 俺の名前は小宮正伸、公安委員会のNo.3の実力者だよ… 高坂穂乃果…」

 

小宮が低い声で意地の悪そうな顔をしながら自己紹介をすると後ろのメンバーも自己紹介をする。

 

「俺は近衛伸だ、公安委員会のメンバーだ」

「俺は奈良聖、同じく公安委員会のメンバーだよ」

 

小宮の後ろにいた、近衛と奈良も不気味に笑いながら自己紹介をする。

穂乃果はキッと視線を強めて口を開いた。

 

「私に何の用ですか?」

 

一応年上なので敬語を使って話すがそれに敬意はない。

穂乃果が聞くと小宮が言葉を返す。

 

 

「お前、昨日、ウチの荒川と岩尾に随分としてくれたそうじゃねぇか… そんな非常識なお前に公安委員会に逆らったらどうなるか教えてやろうと思ってな…」

 

 

小宮が不気味な笑みをさらに深くして穂乃果に言った。

しかし、穂乃果も強気に言い返す。

 

「私はポケモンを人から奪おうとしている泥棒からポケモンを取り返しただけですよ? それのどこか非常識だと言うんですか? それに、人からポケモンや金を暴力でせびり取る人たちが学園警察の公安委員会だなんて笑えますね…」

 

穂乃果はニヤッと笑い、わざと小宮たちを挑発するような口ぶりで言った。

この穂乃果の言葉に自尊心とプライドが異様に高い小宮たちは眉を釣り上げ、穂乃果に強い敵意を抱いた。

それもそのはず、今まで公安委員会という名前をふりかざせば誰も自分たちに刃向かうことはなかったからだ。

小宮たちにとっての公安委員会は学園警察ではなく、自分たちのやることこそが正義で正しいことだというものだ。

誰かが少しでも自分たちに刃向かえば徹底的に制裁と言う名のイジメをした。

だからこそ生徒たちも教師たちも公安委員会に逆らおうとはしなかったのだ。

しかし、目の前の女子生徒は自分たちを恐れず、逆に『従わせられるものなら従わしてみろ』言わんばかりの表情で自分たちを見ている。

小宮たちはそんな穂乃果の態度に我慢がならなかったのだろう。

 

「おい、そこまで言うなら俺たちとバトルしようぜ… 公安委員会の恐ろしさを教えてやるよ…」

 

小宮が言うと他のメンバーも穂乃果に言い出した。

 

「そうだな、口で言っても分からない奴は拳で教えてやらないとな… 上下関係というものを…」

「公安委員会に逆らったらタダじゃ済まないことをこの子にしっかり示さないとね…」

 

それぞれがモンスターボールを構えた。

穂乃果もモンスターボールを構えて身構える。

 

 

 

 

 

『ムクー…!』

 

一方、穂乃果を追っていたムクホークは事の一部始終を見て、大慌てで海未たちに知らせに行った。

 

 

 

 

 

「ふふふ… あの子、実際見てみるとすごく可愛いわねぇ… 容姿も私好みだわ… さあ、貴女の強さじっくりと見させてもらうわ…」

 

そして、空き地の横の廃ビルの屋上ではフェンスに体をもたれて長い髪を風になびかせている宮下が穂乃果たちとのバトルを楽しみだと顔にだしながら見ていた。

 

 

そして…

 

 

 

 

 

「行くぜ! 公安委員会の恐ろしさ思い知れぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

小宮の声を合図に公安委員会と穂乃果の入り乱れたバトルが始まった!

 

 

 

 

 

 

 




ご指摘、感想をよろければお願いします。
公安委員会のメンバーのポケモンのリクエストも募集しております。


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傲岸不遜な公安委員会

この小説はオリジナル設定です。
酷評が多いですが書きました。
公安委員会のポケモンはリクエストを参考にしました。


公安委員会と穂乃果とのポケモンバトルが始まろうとしていた頃、海未たちは穂乃果を追っていたムクホークを探していた。

『ホーク!』

「ムクホーク! 穂乃果は見つかりましたか⁉︎」

『ムーク!』

海未たちの元へ戻ってきたムクホークは穂乃果の居場所に連れて行く一鳴きすると翼を羽ばたかせさっきの空き地に向けて飛んだ。

海未たちもムクホークの後について行き一直線に空き地に向かう。

 

 

 

 

 

ー空き地ー

一方、その頃空き地では小宮、奈良、近衛の3人が穂乃果を取り囲んでモンスターボールを構えていた。

荒川と岩尾は後ろにいて動かない。

穂乃果もモンスターボールを構えて身構える。

 

 

3対1なんて側から見れば卑怯だと思えるが穂乃果はそんなことを言っても公安委員会は聞く耳を持たないだろうということを知っていたので言わなかった。

穂乃果は真正面から公安委員会とバトルする気で挑む。

 

 

公安委員会と穂乃果が鋭い目をしながら睨み合う。

辺りに緊張が走り、それが頂点に達したときお互いがモンスターボールをなげポケモンを繰り出した!

 

そして、穂乃果と公安委員会とのバトルが始まった。

 

 

 

 

「私のポケモン、ファイトだよ! ガブリアス!」

『リアース‼︎』

穂乃果はいつもの掛け声とともに勢いよくモンスターボールをなげ、ドラゴン、じめんタイプのガブリアスを繰り出した。

近衛たちの後ろにいる荒川と岩尾は穂乃果のガブリアスを見て『あの時自分たちに勝ったポケモンだ!』と言った。

その時、

 

「おい、こんな奴お前らだけで十分だろ? わざわざ俺が出なくても良い…」

 

奈良と近衛もポケモンを繰り出そうとしたとき小宮がポケモンを繰り出すのをやめ、モンスターボールをポケットに戻した。

小宮はどうやら公安委員会のメンバーが2人もいれば穂乃果を倒すなんて簡単だと思ったらしく自分が出るまでもないと言った。

奈良と近衛は驚いたものの『いいぜ! あんな奴一捻りだ!』と言った。

そして、バトルに参加しない小宮は荒川たちと一緒に後ろに下がった。

小宮は穂乃果のことを侮っているようだが、荒川と岩尾は少し心配だった。

荒川と岩尾は穂乃果の実力を身を以て感じたからだ。

荒川と岩尾がそう考えているのをよそに奈良達もモンスターボールからポケモンを繰り出した。

 

「いけ! ツンベアー!」

「頼むぞ! クリムガン!」

 

『ベアー‼︎』

『ムガー‼︎』

 

公安委員会の奈良と近衛はこおりタイプのツンベアーとドラゴンタイプのクリムガンを繰り出した。

相性は若干穂乃果が不利だが穂乃果は少しも焦った様子は見せない。

ツンベアーとクリムガンは穂乃果のガブリアスをかなりの強敵だと認識したらしく体を強張らせいつになく緊張の面持ちだったが、奈良と近衛はそれに気づかない。

 

「ふーん… お前のガブリアスは結構強そうなポケモンだが、俺たち公安委員会にお前なんかのポケモンが敵うわけがないな…」

 

「空き地の時は荒川たちが油断したからだけのこと、今回はそうはいかないぜ… 公安委員会は学園の正義だ、その公安委員会に楯突いたんだからお仕置きをしないとなぁ…」

 

奈良と近衛は穂乃果を見下した目で見で嘲笑ながら不快な言葉を言った。

どうやら、やる前から自分たちの勝利を確信しているようだ。

しかし、穂乃果は気にした様子もなく返す。

 

「ポケモンバトルはやってみないと結果なんてわかりませんよ? それにくだらないおしゃべりをするならこっちからいきますよ?」

 

穂乃果の挑発の返しにプライドの高い奈良と近衛はわかりやすく怒った。

 

「んだとコラァ‼︎ てめぇ、俺たちは公安…「ガブリアス、ツンベアーに瓦割り!」 …⁉︎」

 

奈良が穂乃果に言い返そうとする怒鳴り声を遮り穂乃果がガブリアスに奈良のツンベアーへの瓦割りの指示を出した。

ガブリアスは持ち前のすさまじいスピードでツンベアーに突っ込んでいき脳天から瓦割りを決めた、奈良もツンベアーも会話に気を取られていて反応が咄嗟にできずに瓦割りを防御もなしに受けてしまった。

効果抜群の技にツンベアーは地面に倒される。

 

『ベアー!』

 

「お、おい! ツンベアー! しっかりしろ!」

 

奈良は効果抜群の技を受けて倒れたツンベアーに怒鳴る。横では近衛が倒れたツンベアーを見てクリムガンに慌てて指示を出す。

 

「ク、クリムガン! りゅうのいかりだ!」

 

『ムガーー‼︎』

 

クリムガンの口から輝く紫色の波動の攻撃がガブリアスに向かって飛ぶ。 りゅうのいかりはドラゴンタイプの技だ。 ドラゴンタイプであるガブリアスがくらえば大ダメージを受けることは間違いない。

しかし、

 

「ガブリアス! ドラゴンダイブでかわしつつ、クリムガンに攻撃!」

『ブリアース‼︎』

 

 

クリムガンのりゅうのはどうをガブリアスはドラゴンダイブの攻撃で高く飛ぶことにより避け、クリムガンにとって効果抜群であるドラゴンダイブを食らわせた。

 

ビューーー!!!

 

 

 

ドガーーーーーーーーン!!!!

 

 

クリムガンは効果抜群のドラゴンタイプの技を決められて吹っ飛び、空き地の端の方まで飛ばされた。

 

「ク、クリムガン! しっかりしろ!」

 

「こうなったら……! おい! 2人がかりで攻撃だ!」

 

近衛がクリムガンまで攻撃されたことに焦ると、奈良が今度は2人がかりで攻撃しようと近衛に提案する。

本来なら卑怯なやり方だが悪名高い公安委員会がそんなことに気を配るはずもなくクリムガンとツンベアーが起き上がったのを見て、クリムガンとツンベアーに指示を出す。

 

 

「「きりさくだ‼︎」」

 

『ムガー!』

 

『ベアー‼︎』

 

奈良と近衛の指示を受け2体はガブリアスに爪を鋭く尖らせきりさくを放つ。

しかし、穂乃果はガブリアスに避けろとの指示を出さず、ガブリアスもきりさくを避けようとしなかった。

避けようとしないガブリアスを見て2人はいけると思った。

しかし、

 

 

「ガブリアス! すなあらし!」

 

『リアース!』

 

 

フシャァァァァァァァァァァァァァァァァ……!

 

 

『ムガー⁉︎』

 

『ベアー⁉︎』

 

ツンベアーたちがきりさくをガブリアスに放つ直前に穂乃果はガブリアスにすなあらしを指示した。

地面から竜巻のように巻き上がったすなあらしが至近距離にいて避けられないツンベアーとクリムガンにもろに決まる。

ツンベアーとクリムガンはすなあらしの砂のおかげで動きにくい状況でもなんとかきりさくを当てようとするが、ガブリアスの特性、『すながくれ』でガブリアスの姿を上手くとらえれずすなあらしのなかで右往左往しているばかりだ。

さらに、すなあらしのおかげで体力がどんどん削られていた。

この好機を穂乃果が見逃すわけもなく、

 

 

「今だ! ガブリアス! 最大パワーで流星群!」

 

『リアース‼︎』

 

 

ヒューーーーーン……

 

 

ピカーーーッ‼︎

 

 

 

 

ドガガガガガガガーーーーン!!!!

 

 

 

すなあらしで動きが止まったツンベアーとクリムガンにガブリアスがドラゴンタイプの最強の技である流星群をフルパワーで放った。すさまじい威力をもったたくさんの隕石がツンベアーたちをめがけて降り注ぎ煙が巻き上がった。煙が晴れるとちょうどすなあらしも晴れ、空き地の真ん中に目を回して地面に埋もれているツンベアーとクリムガンの姿があった。

 

 

「そんな…… ツ、ツンベアー⁉︎」

 

「クリムガン⁉︎」

 

 

近衛と奈良が信じられないと言うような顔をした。

2人だけではなく後ろにいた荒川たちも同じような顔をしている。

公安委員会が呆然としているとその中で穂乃果が「戦闘不能ですね…」と小さく呟いた。

呆然としていた公安委員会の奈良と近衛の2人も穂乃果の言葉で我に帰り、悔しそうに舌打ちをしながらポケモンをモンスターボールに戻した。

2人が次のポケモンをだそうとすると、

 

 

「待て……」

 

 

後ろから誰かが低い声で近衛と奈良がモンスターボールからポケモンを繰りだそうとしている手を掴んだ。

近衛と奈良が驚いて後ろを見るとそこには険しい顔をした小宮が立っていた。近衛たちは小宮に何で止めるのか言おうとしたが小宮がただならぬ威圧感を出しながら「もう、お前たちは下がっとけ…」と言うので2人はその威圧感による恐怖で言葉が喉に引っ込んで何も言えなくなってしまった。

 

 

小宮はその威圧感を出しながら近衛たちを押しのけて穂乃果の前に立って言った。

 

 

「お前はどうしても俺たちに従わずに逆らう気なんだな… それなら、俺が相手になってやるよ…! 2度と俺たちに逆らうだなんて思えなくなるように正々堂々とポケモンバトルでな!」

 

 

小宮のこの言葉に公安委員会のメンバーも穂乃果も驚いた。

まさか、真っ向からポケモンバトルをすると言うなんて思わなかったからだ。

穂乃果は動揺を抑えながらも小宮に言い返す。

 

「ふーん… 公安委員会の口から正々堂々だなんて言葉が出るとは思いませんでしたけどね… まあ、いいですよ、ルールはなんですか?」

 

「6vs6のフルバトルで勝負だ」

 

「「「⁉︎」」」

 

小宮の言葉に近衛たちは目を見開く。

公安委員会のNo.3とも呼ばれる小宮の実力はかなりのものだ。それは自分たちがよく知っている。

フルバトルならずポケモンバトルで小宮に今まで勝ったのは自分たちの知っているなかでもNo.1の宮下とNo.2のやつだけだ。

他に勝てる人で思いつくのは学園最強と呼ばれる生徒会長ぐらいだ。

そんな、音ノ木坂学園の実力者がいくら強いとは言え『一介の女子生徒に本気のフルバトルを申し込む』なんて付き合いの長い自分たちが知ってる中でも一度もなかったことなのだ。

近衛たちが驚くのも無理はない。

 

 

近衛たちはこれならさすがの穂乃果も引き下がるだろうと思ったが穂乃果は笑顔で小宮に答えた。

 

 

「分かりました。 その勝負、受けて立ちます!」

「「「⁉︎」」」

 

 

またもや驚いて目を見開く近衛たち、公安委員会のメンバーのポケモンバトルのレベルはこの学園の中でもかなり高い。穂乃果に負けた近衛たちはどちらかと言うと公安委員会の中でもバトルの腕はかなり下の方だ。だから、穂乃果はそれなりに強いだけだと思っていたが、まさか、公安委員会の中でもNo.3の実力を持つ小宮とのポケモンバトルを受けて立つとは思わなかったのだ。

受けて立ちますと言った穂乃果に対して小宮は不敵に笑いながら言った。

 

「良いのかぁ? 俺は公安委員会のNo.3だぜ? お前が俺に勝てるとは万に一つの可能性もないと思うけどなぁ…」

 

「そうでしょうか? ポケモンバトルは実際にやってみないと分かりませんよ?」

 

小宮の挑発にも乗らず笑顔のまま落ち着いた声で返す穂乃果に小宮はムッとした。

今まで、公安委員会No.3だと言えばこの学園の生徒ならあらかたの奴は自分にバトルする前から諦めて負けを認めたからだ。

しかし、自分の前にいる穂乃果は諦める様子は微塵もなかった。

小宮は穂乃果のそんな態度も気に食わなかった。

そして、心の中で『こいつを圧倒的な力で負かす‼︎』と決めた。

 

 

小宮はあまりの急展開に理解が追いついていない近衛たちに『バトルフィールドを準備しろ』と命令した。

この空き地の近くの廃ビルにはバトルフィールドのラインを引くための特殊なラインカーを置いているらしく、近衛たちは小宮の指示通り特殊なラインカーでバトルフィールドの引き始めた。

 

バトルフィールドのラインを近衛たちが引いている中、小宮は穂乃果に近づき、不敵に笑いながら言った。

 

 

「おい、高坂穂乃果、一つ賭けをしねーか?」

「賭け?」

小宮の言葉に穂乃果は疑問で返した。

いきなり話しかけてきた小宮に驚きつつも嫌な予感しか漂わせないその『賭け』と言う言葉に穂乃果は警戒心を強める。

そして、その警戒心を強めただけの答えが返ってきた。

 

 

「俺がお前に勝ったらお前のポケモン全部寄越しな、公安委員会に逆らった罰としてな…! 公安委員会に逆らった悪い生徒は学園警察としてキッチリお仕置きしねーといけないからなぁ…」

 

 

穂乃果は小宮からの言葉に目を見開いた。凛や花陽たちの時と同じようにポケモンバトルに勝ったら相手のポケモンを奪うという卑劣な行為だからだ。

穂乃果は改めて公安委員会の卑劣さを認識した。

穂乃果は少し考えてから小宮に返した。

 

 

「なら、もし、私が貴方に勝ったら貴方が今まで人から奪ったポケモンやお金を全部返してその人たちに謝ってください」

 

 

穂乃果の言葉に小宮は『なんで俺がそんなこと⁉︎』と言ったが穂乃果の『リスクは平等にするのが正々堂々とした勝負です』と言われ言い返せなくなった。

何にしろ正々堂々としたポケモンバトルで勝負だと言ったのは他ならぬ自分なのだから。

小宮は舌打ちをしながらその条件を飲んだ。

 

 

「フン… でも、俺がお前に負けるなんてことはあり得ない… お前は自分のポケモンを俺に寄越すことになるのはやる前から決まっていることだ…!」

 

 

穂乃果を見下した目で見ながら嘲笑する小宮はまた不快な言葉を穂乃果に投げつける。

しかし、穂乃果は気にした様子もなく返す。

 

 

「そうでしょうか? まあ、それは実際にポケモンバトルをした方が早いでしょう… そろそろライン引きも終わりますよ…」

 

 

穂乃果がラインが引かれてバトルフィールドになった空き地を指差すと小宮と穂乃果はそれぞれの立ち位置に立った。

 

「近衛、お前が審判をしろ…」

「あ、ああ…」

 

立ち位置に立つと小宮が近衛に審判をしろと命令した。

近衛は戸惑いながら頷いてバトル開始の宣言をするために真ん中に立ち、右手を高く上げた。

 

「これより、小宮正伸と高坂穂乃果のポケモンバトルを始めます! 使用ポケモンは6体どちらか全てのポケモンが戦闘不能になればバトル終了です! なお、ポケモンの交換は自由とみなします! 両者ポケモンを!」

 

近衛はそう言うと両者がポケモンを繰り出すように指示を出した。

近衛の開始の宣言により、穂乃果と小宮はそれぞれ1体目のポケモンを繰り出す。

 

 

「俺の1体目はこいつだ! いけ! ワルビアル!」

『ビアーール‼︎』

 

 

「ワルビアルか… それなら私は、ファイトだよ! ルカリオ!」

『バウーッ!』

 

 

小宮はあく、じめんタイプのワルビアル、穂乃果はかくとう、はがねタイプのルカリオを繰り出した。

両者がポケモンを繰り出したところで近衛がバトル開始の宣言をする。

 

「それでは、バトル開始!」

 

近衛はそう言うと右手を勢い良く振り下ろした。

そして、穂乃果と小宮の6vs6のフルバトルが始まった!

 

 

 

 

 




ご指摘、感想を良かったらお願いいたします。
バトルシーンが上手く書けたか感想欄によければ書いてくださると嬉しいです。


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公安委員会とのポケモンバトル 穂乃果VS小宮 前編

この小説はオリジナル展開です。
間が空いて申し訳ありませんでした。
公安委員会のポケモンはリクエストを参考にしました。


近衛のバトル開始の宣言を聞きバトルフィールドに出された小宮のワルビアルは低い唸り声をあげながら穂乃果のルカリオを睨みつけた。

ワルビアルの特性の『いかく』が発動し、ルカリオの攻撃がさがる。

しかし、穂乃果のルカリオは焦った様子もなく落ち着いた目でワルビアルを見ていた。

そして、先にポケモンを出した先行の小宮が動いた。

 

「ワルビアル! ドラゴンクローだ!」

『ビアー‼︎』

 

「ルカリオ! ボーンラッシュで迎え撃って!」

『バウワウ!』

 

ガギーーン!!!!

 

バトルが始まり小宮はワルビアルにドラゴンクローを指示し、ワルビアルが爪を紫色に光らせてルカリオに突っ込む。

しかし、穂乃果も負けじとボーンラッシュを指示し、骨の形の武器を体を守るように斜めにしてワルビアルのドラゴンクローを弾いた。

強い衝撃が起き、ワルビアルとルカリオが互いに吹き飛ばされる。

 

「それなら、じしんだ!」

 

「不味い‼︎ ルカリオ! 耐えて!」

 

ががががががががががががががが………‼︎

 

小宮がワルビアルにルカリオにとって効果抜群で威力の高い技であるじしんを指示する。

じしんは範囲が攻撃範囲が広く避けることが難しい技だ。穂乃果はルカリオに耐えるように言った。

 

『バ、バウ…』

 

効果抜群の技を受けてもルカリオが立ち上がる。

しかし、ただでさえ威力の高い技であり、効果抜群の技をくらったルカリオは辛そうだった。

 

「とどめだ! ドラゴンクロー!」

『ビアール!』

 

 

辛そうにしているルカリオに小宮が容赦ない追撃を放つ。しかし、穂乃果はルカリオをチラリと見て次の指示を出した。

 

「まだまだ! ルカリオ! カウンター!」

「バウッ!』

 

「何⁉︎ カウンターだと⁉︎」

 

 

ビューーー!

 

 

ドゴッ!!!!

 

 

ドガーーーーン!!!!

 

 

ワルビアルはじしんの攻撃を受け、弱っているルカリオに畳み掛けるようにドラゴンクローを放つ。しかし、穂乃果は物理技のダメージを受けた場合、そのダメージの倍で相手に攻撃する技であるカウンターを指示する。ドラゴンクローで脇目も振らず突っ込んできたワルビアルはルカリオの格好の的となり、防御もできずに腹部に強いカウンターの打撃を受け、空き地の端まで飛ばされた。

 

 

「あのルカリオ、カウンターが使えるのか… おい! ワルビアル! しっかりしろ!」

 

『ビ… ビアール……!』

 

 

カウンターによりじしんの攻撃を倍で返され、ワルビアルはもう立ちあがるのも辛そうだったが、それでもなんとか立ち上がる。

 

 

「とどめだ! ルカリオ、インファイト!」

 

『バウワー!』

 

「ワ、ワルビアル! かわ…」

ドガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

 

 

シューーーーーーーー………

 

 

『ビ、ビアール…』

 

 

フラ… バタン

 

 

立ち上がろうとしたワルビアルに穂乃果が容赦無くインファイトを放つ。ワルビアルの特性である【いかく】をもろともしない凄まじい威力のインファイトは小宮の指示が届く間も無くワルビアルを戦闘不能にさせた。

 

 

「ワ、ワルビアル戦闘不能! ルカリオの勝利!」

 

審判の近衛がそう言うと穂乃果はルカリオと喜んだ。

まずは穂乃果が一勝だ。

対する小宮は倒れて動けないワルビアルを見下ろすと、

 

「チッ… 役立たずめ…」

「っ!」

 

小宮は戦ってくれたワルビアルに労いの言葉もかけずに、逆にワルビアルを罵倒しながらモンスターボールに戻した。

その言葉に穂乃果は敏感に反応し、小宮に問いかけた。

 

「小宮さん、ワルビアルを労わないんですか?」

 

「はあ?」

 

穂乃果の言葉に『小宮はなんでそんな事をしなければならない?』と言いたげに疑問符を返す。

小宮は続けた。

 

「労うって、負けた奴になんでそんな事をしないといけない? ポケモンは人間の言う事を聞くのが当然だ」

 

「…っ‼︎」

 

小宮はさも自分が正しいと言いたげに穂乃果に言った。

小宮のその言葉に公安委員会のメンバーである近衛たちも頷いている。

穂乃果は小宮のその言葉に顔をしかめ俯き両手をぎゅっと強く拳の形にして握りしめた。

ルカリオも穂乃果の隣で『バウバウ…!』と唸り声をあげながら小宮を睨みつけている。

小宮はワルビアルのモンスターボールをポケットにしまうと次のボールを取り出し、2体目のポケモンを繰り出した。

 

 

「今のバトルは少し油断をしたから負けたが、今度はそうはいかないぜ? いけ! オノノクス!」

 

『ノォォォォォォォクス!!!!』

 

 

次に小宮が繰り出したのは大きな鎧を着たようなドラゴンのポケモンでドラゴンタイプのオノノクスだった。

小宮のオノノクスはモンスターボールから勢いよく飛び出すと威勢良くルカリオを睨みつけ大声で威嚇するように叫んだ。

 

 

小宮がポケモンを出した事によりポケモンバトルが再開された。

 

 

「いくぞ! オノノクス! ドラゴンクローだ!」

『ノォォォォクス!』

 

「ルカリオ! ボーンラッシュで迎え撃って!」

『バウウ!』

 

 

ドガーーーン!!!

 

 

 

オノノクスのドラゴンクローをルカリオはさっきと同じ要領で受け止めオノノクスが反動で後ろに吹き飛ばされる。

 

(接近戦ではダメか… だからと言ってゴリ押しすれはさっきのカウンターを喰らう… それなら…)

 

「オノノクス! きあいだまだ!」

 

『ノォォォォォォォ!』

 

小宮は穂乃果のルカリオを見て計算を働かせていた。

オノノクスは物理攻撃が得意なポケモンだ。物理攻撃はじしんのような遠距離でもできる攻撃もあるが接近戦がメインな攻撃だ。

オノノクスは攻撃力が高いポケモンだ。接近戦を得意とするがカウンターがある以上それは難しい。

小宮はそれを踏まえて特殊攻撃でルカリオにとって効果抜群であるきあいだまを指示した。

青白い大きな玉がオノノクスの手から放たれルカリオに向かう。

 

 

「ルカリオ! ボーンラッシュではじき返して!」

 

『バゥーーー!』

 

 

ガキーーーーーーン!!!!

 

 

ドガーーーン!!!!

 

 

ルカリオは放たれたきあいだまをボーンラッシュをバットのようにして打ち返した。

オノノクスはボーンラッシュのスピードも合わさった攻撃を避けることもできずに自分で放った攻撃を自分で受けてしまった。

 

『ノ、ノクス……!』

 

「オノノクス! しっかりしろ!」

 

 

ボーンラッシュのスピードも加わったきあいだまを受けたオノノクスは辛そうだったが体力のあるドラゴンポケモンなのでまだ戦えそうだった。

 

 

一方、反対側の穂乃果はオノノクスをじっと見つめていた。

 

 

(やっぱり、オノノクスは簡単には倒れないか、だとすると攻撃を叩き込むには今がチャンスだ!)

 

 

「ルカリオ! りゅうのはどう!」

 

『バゥーー!』

 

ボーンラッシュではじき返されたきあいだまにフラフラしているオノノクスにルカリオが畳み掛けるようにオノノクスにとって効果抜群であるりゅうのはどうを放った。

 

「オ、オノノクス、避け…」

 

ドガーーーン!!!!

 

 

『ノクス……!』

 

 

不意をつかれた小宮はオノノクスに指示する間も無く、オノノクスも反応が遅れたせいで避けることもできずにりゅうのはどうをくらってしまった。

 

 

「反撃のすきを与えないで! ルカリオ、もう一度りゅうのはどう!」

 

 

シューーーーー……!

 

 

ドガーーーン!!!!

 

 

『ノォォォ……!』

 

オノノクスが怯んで小宮がアタフタしている間に穂乃果はもう一度りゅうのはどうをルカリオに指示し、オノノクスを追い詰めた。

しかし、穂乃果がとどめをさそうとしたとき…

 

 

「一旦戻れ! オノノクス!」

 

「⁉︎」

 

小宮は穂乃果が攻撃するのを見て慌ててオノノクスをボールに戻した。

確かに、倒れるよりは一旦引っ込めてポケモンを少し休ませる作戦もある。

穂乃果はオノノクスの強さを考慮してりゅうのはどうを覚えているルカリオのままで挑んだが、引っ込められては意味がない。

それに小宮のあの性格上、徹底的に叩き潰すのなら真正面から来るはずだ、引っ込めたということは作戦を変えたということだ。

計算が外れた穂乃果はボールに戻した小宮を少し苦悶の表情で見た。

小宮は何も言わずにオノノクスのボールをポケットに入れると別のボールを取り出し、3体めのポケモンを繰り出した。

 

 

「こうなったらこいつだ! エーフィ、頼んだぞ!」

 

『フィア〜』

 

小宮の3体めのポケモンはエスパーポケモンのエーフィだ。

恐らくルカリオに有利なポケモンを選んだのだろう。

エーフィを繰り出したことにより再びポケモンバトルが始まった。

 

 

「エーフィ! サイケ光線!」

 

『フィー!』

 

「ジャンプでかわして、波動弾!」

 

『バゥー!』

 

小宮のエーフィのおでこから放たれた念力の波をルカリオはジャンプでかわし、上から波動弾を放つ。

 

 

「そうはいくか! エーフィ! スピードスターで跳ね返せ!」

 

 

シャラララララララララ………

 

 

「まずい! ルカリオ、波動弾で打ち消して!」

 

 

 

ドガーーーン!!!!

 

 

 

ルカリオの放った波動弾をエーフィは星の形の粒子を放つ技であるスピードスターではね返した。

ルカリオは避けようにもジャンプで避けたためここは空中であり避けようがない、そのため穂乃果はルカリオにもう一度波動弾を放つように指示を出した。波動弾を放つことにより最初の攻撃とぶつかり打ち消しあうと思ったからだ。

結果的にルカリオはダメージは受けたがあまり大きなダメージではなかった。

ルカリオは地面に着地して体制を立て直す。

 

 

「チッ…! それならサイコキネシスだ!」

 

 

『フィアー!』

 

 

ドガン‼︎ ドゴッ!

 

 

『バウ! バウ!』

 

 

エーフィのサイコキネシスによりルカリオは動けなくされ地面に叩きつけられる。

ワルビアルとオノノクス戦のダメージもあり、サイコキネシスはかなり応えたようだ。

 

「ルカリオ! 大丈夫⁉︎」

 

『バゥーーー!』

 

穂乃果の心配そうにルカリオ聞くとルカリオは大丈夫だ。 と言うように威勢良く鳴いた。

 

 

「もう一度、サイコキネシスだ!」

 

『フィアー!』

 

 

小宮はもう一度、ルカリオを動けなくして攻撃しようと思いエーフィにサイコキネシスを指示する。

 

 

「2度も同じ手はくらわない! ルカリオ! 地面に向けて波動弾!」

 

 

『バゥーーー!』

 

 

 

ドガーーーーーーーン!!!

 

 

ルカリオは地面に向けて波動弾を放った。 波動弾が放たれたことにより煙がまきあがりすなあらしのような気候になる。

穂乃果の狙いに気づいた小宮は唇を噛み締めた。

穂乃果の狙いは波動弾でエーフィを攻撃することではなく、波動弾を地面にうち砂煙を巻き上げさせることで、視界を悪くさせるためだったのだ。

現に、エーフィはルカリオを見失いサイコキネシスがうてなくなっていた。

 

 

「エーフィ! 煙が晴れたら攻撃だ!」

 

『フィア‼︎』

 

 

小宮は煙が晴れたらもう一度サイコキネシスを放とうとするが、

 

 

「戻れ、ルカリオ」

 

「⁉︎」

 

 

穂乃果はルカリオを引っ込めた。

予想していなかった行動に小宮は驚いた。

そんなことを他所に穂乃果は2体めのポケモンを繰り出した。

 

 

「次はあなただよ! ファイトだよ! オニドリル!」

 

『クァーー‼︎』

 

穂乃果の2体目はノーマル、ひこうタイプのオニドリルだ。

オニドリルはまだ煙が晴れないバトルフィールドをじっと見た。

エーフィは煙が完全に晴れるのを待って動かない。

小宮は煙が晴れるまでここはどちらも動かないと思っていたが、

 

 

「オニドリル! エーフィにドリルくちばし!」

 

 

『クァー‼︎』

 

 

穂乃果はオニドリルにドリルくちばしを指示した。

オニドリルは威勢良く鳴いて砂煙の中に突っ込んでいく。

穂乃果の攻撃の指示を聞いたエーフィは身構えるが、

 

 

「エーフィ! 大丈夫だ! 砂煙の中でエーフィに攻撃を当てるのは不可能だ! ただのハッタリだ! そのまま動くな!」

 

小宮はエーフィに動くなと指示を出し、煙が晴れるのを待つ。

しかし、穂乃果はあれ?と眉をあげて小宮に問いかける。

 

「小宮さん、オニドリルの特性は【鋭い目】ですよ。 命中率は下がりませんよ? たとえ、砂煙の中でもね…」

 

「な、何⁉︎」

 

 

穂乃果の説明を聞いて慌ててエーフィに逃げるように指示を出そうとする小宮だがもう遅かった。

 

 

「今だ! オニドリル!」

 

『クァーー‼︎』

 

 

ドガーーーン!!!!

 

 

『フィアーー‼︎』

 

 

「な、なんだと⁉︎」

 

 

穂乃果の合図と同時にオニドリルが砂煙の中からエーフィの真正面に突っ込んできたのだ。

突然のことで小宮もエーフィも反応が遅れオニドリルのドリルくちばしを防御もなく受けてしまい、エーフィは悲鳴をあげながら吹き飛ばされる。

 

 

「オニドリル! 続けてドリルライナー!」

 

 

「エ、エーフィ、よけ…」

 

 

ドガーーーン!!!!

 

 

吹き飛ばされて倒れているエーフィに反撃の隙を与えないようにオニドリルはドリルライナーを放った。

エーフィは避けれずにドリルライナーを受けてしまい、空き地の端まで吹き飛ばされて壁にぶつかる。

 

「とどめだ! オニドリル、ギガインパクト!」

 

 

『クァーー!!!!』

 

 

ドガーーーーーーーーン!!!!

 

 

威力の高い攻撃を何発も連続で受けた後で、凄まじい威力のギガインパクトを防御もなく受けたエーフィは攻撃の煙が晴れると地面に埋もれて目を回している姿があった。

 

「…っ! エーフィ、戦闘不能! オニドリルの勝ち!」

 

 

近衛がエーフィが戦闘不能の宣言を言うと小宮はワルビアルの時のようにエーフィを労いもせず、舌打ちをしてエーフィをボールに戻した。

そして、エーフィのボールには目もくれず、新たなモンスターボールをポケットから取り出した。

 

 

「こうなったらお前だ! いけ! パルシェン!」

 

『シェーーーン……!』

 

 

小宮が次に繰り出したポケモンは二重の貝に挟まれてその間から顔を覗かせるみず、こおりタイプのポケモンであるパルシェンを繰り出した。

穂乃果はオニドリルのままバトルを続けるようだ。

そして、バトルが再開された。

 

 

「パルシェン! れいとうビーム!」

 

『シェーーーン!』

 

「オニドリル! 高速移動でかわしてパルシェンの後ろに回って!」

 

『クァーー‼︎』

 

 

パルシェンの先制攻撃のれいとうビームをオニドリルは高速移動をすることにより上手くかわしその上がった素早さでパルシェンの背後に素早く回った。

 

「パルシェン! 後ろだ!」

 

「遅い! オニドリル! 熱風!」

 

 

ブファァァァァァァァァァ……!

 

 

『シェー!』

 

オニドリルの背後に回ったオニドリルはすぐに熱風を放った。 素早さの低いパルシェンは至近距離の熱風を避けれずにダメージを受けたが、防御力が高いのですぐに立て直す。

 

 

「チッ! それならこうだ! パルシェン! 撒菱だ!」

 

『シェーーーン!』

 

 

シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ……!

 

 

小宮はパルシェンにオニドリルを攻撃させずに撒菱を指示し、バトルフィールドに撒菱が飛び散った。

 

 

「気をつけて、オニドリル! 何が来るかわからないよ!」

 

 

『クァーー』

 

 

攻撃をしないパルシェンに身構える穂乃果とオニドリルだが

 

 

「戻れ! パルシェン!」

 

「⁉︎」

 

 

小宮はパルシェンに撒菱を使わせた後、何もせずパルシェンをボールに戻した。

これには、穂乃果も近衛たちも驚いたらしく目を瞬かせている。

小宮はそんな周りの様子を気にも留めずに5体目のポケモンのボールを取り出した。

 

「次はお前だ! プテラ! 頼んだぞ!」

 

『テーラー‼︎』

 

「…?」

 

 

小宮が次に繰り出したのは古代のポケモンであり、いわ、ひこうタイプのプテラだ。

次々にポケモンを交代させる小宮に穂乃果は疑問符を浮かべた。

 

 

(おそらく、撒菱を使ったのは私に少しでもダメージを与えてバトルを優勢にするため、でも、なんで交代させたのかな? オニドリルだからパルシェンは相性有利だったのに…)

 

穂乃果はそこまで考えて「あ!」と気づいた。

 

(そうか、高速移動を警戒したのか… パルシェンとオニドリルではオニドリルの方が圧倒的に素早さは高い。 高速移動が使えるのならこの後も素早さが上がるかもしれない。そして、さっきみたいな攻撃を受けたらパルシェンは一方的に攻撃を受けるだけだ!)

 

穂乃果はパルシェンを引っ込めた意図に気づくと小宮を見た。

 

(流石No.3というだけはあるね… 状況判断が上手いな… )

 

穂乃果は小宮の強さを再認識すると【近衛たちとは違い一筋縄では勝てない】と思い気を引き締めた。

 

そして、再びポケモンバトルが再開された。

 

 

 

 

 

 




今回はここまでです、変なところで区切ってすいません。
ご指摘、感想をよかったらお願いします。


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公安委員会とのポケモンバトル 穂乃果VS小宮 中編

この小説はオリジナル設定です。
2部作の予定でしたが予定を変更して3部作になりました。
今回は中編です。
公安委員会のポケモンはリクエストを参考にしました。



小宮と穂乃果のフルバトルが空き地で行われているころ、海未たちはムクホークに導かれ空き地に向かっていた。

 

『ホーク‼︎』

 

ムクホークが空き地の入り口で地面に降り翼でここだと海未たちに伝えた。

 

「ここですね、ありがとうございます、ムクホーク」

 

海未はここまで案内をしてくれたムクホークにお礼を言うとモンスターボールに戻し、空き地を見た。

ことりたちも海未の後に続く。

そこでは、穂乃果と希が言っていた黒い制服を来ていた公安委員会であろう人たちが向かい合いながら立っていて、その中の1人が穂乃果とポケモンバトルをしていた。

 

「穂乃果!」

 

「っ⁉︎ う、海未ちゃん⁉︎ みんなも…」

 

海未が思わず声をかけると穂乃果が驚きこ声を上げながら空き地の入り口を見た。

小宮も近衛たちも声のした空き地の入り口を見る。

小宮は海未たちが穂乃果の仲間だと言うことに気付いたらしく、また侮辱するような不敵な笑みを浮かべながら不快な言葉を放った。

 

「おいおい… お仲間のお出ましかぁ? 弱者は常に群れているんだよなぁ… 学園の平和を守っている正義の味方である公安委員会に楯突く常識のない奴が多いな… まあいい、こいつを叩きのめしたら、お前らもまとめてお仕置きしてやるよ…」

 

小宮は海未たちを見下した目で見て下品な笑みを浮かべながら不快な言葉を並べた。

海未たちは小宮の言葉を聞いて希が話していた悪名高い公安委員会だと気付いた。

 

「何が学園の平和を守っているですか⁉︎ 公安委員会という名をかざして、人からお金やポケモンを奪ったりする人たちのことを正義とは言いません!」

 

「フン、なんとでも言えよ… お前らのような弱者に何を言われても俺は痛くもかゆくもない…」

 

小宮の言葉に、正義感の人一倍強い海未が小宮に臆する事なく小宮に言い返したが、小宮は見下した姿勢を崩すことなく海未たちを見てさらに侮辱するような不快な言葉を放った。

 

「ちょっと、貴方ね…!「小宮さん」…⁉︎」

 

真姫が海未の前に出て小宮に避難の眼差しを向けながら言い返そうとするが途中で誰かがその言葉を遮った。

真姫もみんなも驚いてその声のした方を見ると、

 

 

「貴方の相手は私のはずです。 みんなは私を心配して来てくれただけです。 みんなは関係ありません。 それにバトルに支障はないはずです、早く続けましょう?」

 

その声の主は穂乃果だった。

穂乃果が『みんなに手を出すな』と言いたげな眼差しで小宮を睨みつけながら言うと、小宮が嘲笑いながら言い返した。

 

「フン… まあいい… 見るのなら許可してやるよ… お前らもそこで、こいつが俺に無様に負けるのを見ていろよ…」

 

小宮が穂乃果を指差しながら、更に侮辱するような言葉を言うと海未たちは小宮をさらに怒りのこもった眼差しで睨みつけたが小宮はそれを見て、フンと鼻で笑いプテラに指示を出した。

 

「いけ! プテラ! 原始の力だ!」

 

『テーラー‼︎』

 

「オニドリル! 高速移動でかわして、ドリルくちばし!」

 

『クワァーーー‼︎』

 

 

小宮はプテラにオニドリルにとって効果抜群の原始の力を指示を出す。

プテラの周りに5つの岩の塊が浮かび上がり、オニドリルに向かって飛ばした。

しかし、穂乃果はオニドリルに高速移動を指示してかわした。 二回の高速移動で上がった素早さで岩の塊をかわしてドリルくちばしをプテラに決める。

 

「負けるな! プテラ! 至近距離から原始の力!」

 

『テーラーー‼︎』

 

 

ドガガガガガガガガガガガ………!

 

 

『クワァーーー!』

 

 

プテラはドリルくちばしにより近づいたオニドリルに至近距離から原始の力を決める。 オニドリルは至近距離だったので上手くかわせず効果抜群の岩の塊をもろに受けてしまう。

 

「効果抜群か…! 大丈夫⁉︎ オニドリル!」

 

『ク、クワァー……!』

 

辛そうなオニドリルを穂乃果が心配するとオニドリルは『大丈夫』と言うように鳴いた。

 

「プテラ! 畳み掛けろ! 雷の牙!」

 

『テーーーラーーーー‼︎』

 

効果抜群の技を至近距離で受けて辛そうにフラフラしているオニドリルに小宮が容赦なく追撃の同じく効果抜群の雷の牙をプテラに指示する。

プテラは口の牙にでんきを纏わせながら一直線に突っ込んでオニドリルに噛み付く。

 

ガブッ!

 

ギリリリリリリリリリリリ……!

 

 

『クワァーーー!』

 

 

「負けるな! オニドリル! ギガインパクト!」

 

 

プテラの雷の牙をまともに受けたオニドリルは苦しそうな表情を浮かべたが穂乃果の声を聞き、力を振り絞って至近距離でギガインパクトを放った。

 

ドガーーーーーーーーン!!!!

 

 

『テーラーーーー‼︎』

 

 

「何してんだ‼︎ 原始の力!」

 

『テ…テラーー‼︎』

 

 

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュ……!

 

ドガーーーーーーーーン!!!!

 

 

『クワァーーー‼︎』

 

 

ドガーーーーーーーーーーーン!!!!

 

 

至近距離から受けたギガインパクトによりプテラは避けることができず真っ逆さまに落ちていく、しかし、プテラも負けじとオニドリルに原始の力を最後の力を振り絞って放った。

お互いの技を受けたオニドリルとプテラは地面に同時に落ち煙が巻き上がった。

 

 

「オニドリル!」

 

「プテラ!」

 

煙が晴れると地面に落ちて目を回しているオニドリルとプテラの姿があった。

ダブルノックダウンだ。

 

 

「オニドリル、プテラ、共に戦闘不能!」

 

戦闘不能になったプテラとオニドリルを見て、近衛が両者戦闘不能だと言う声をあげた。

 

 

「オニドリル、よく頑張ったね。 ゆっくり休んでね」

 

「チッ… 使えねぇ奴だ… あんなギガインパクトくらい耐えろよな…」

 

戦闘不能になった後でも、ポケモンを優しく労う穂乃果とは対照的に小宮はプテラを労うことなく舌打ちをしながらモンスターボールに戻し、また暴言を吐いた。

プテラは申し訳なさそうな顔をしていたが小宮は見向きもしなかった。

小宮はプテラのボールをポケットに入れるとまた別のボールをとりだした。

穂乃果も次のポケモンを繰り出すために次のボールを繰り出した。

 

 

「もう一度いけ! パルシェン!」

 

 

「ファイトだよ! サーナイト!」

 

 

穂乃果はエスパー、フェアリータイプで女性のような姿をしていてドレスを着ているようなポケモン、サーナイトを繰り出し、小宮は紫色の2枚重ねの貝から顔を覗かしているポケモン、パルシェンを繰り出した。

 

 

『サ、サーナ…』

 

 

穂乃果のポケモンのサーナイトはバトルフィールドに出るなり、先ほどのパルシェンの撒菱の効果で足元で小さな爆発が起きてダメージを受けた。

 

 

両者がポケモンを繰り出したことによりポケモンバトルが再開された。

 

 

「まずは、サーナイト、ゆうわく」

 

『サーナー』

 

 

穂乃果の指示を聞き、サーナイトは胸のあたりから出たハート型の粒子をパルシェンに向けて飛ばした。

 

「パルシェン! 高速スピンで弾け!」

 

『ルーシェーーン‼︎』

 

 

シュパパパパパパパパパパパパ………!!

 

 

対する小宮はパルシェンに高速スピンを指示し、ゆうわくのハートを全て弾き防御した。

 

「今度はこっちからだ! パルシェン! 地面に冷凍ビーム!」

 

『シェーーーン‼︎』

 

 

小宮はパルシェンに地面に向けて冷凍ビームをするように指示した。

パルシェンの口から放たれた氷のビームが地面にあたり、たちまちバトルフィールドが氷のフィールドになっていく。

サーナイトは氷のフィールドになったことにより地面が滑りやすくなりヨロヨロしていた。

 

「今だ! パルシェン、サーナイトに近づいてつららばり!」

 

『シェーーーン‼︎』

 

ドガッ ドガッ ドガッ……!

 

『サーナー‼︎』

 

「サーナイト!」

 

パルシェンは氷のフィールドを上手く殻にこもりながら滑り、サーナイトの近くに素早く接近し、つららばりを放った。 パルシェンの口から勢いよく放たれた鋭い氷の槍が滑りやすい氷のフィールドで上手く立たずヨロヨロしているサーナイトに直撃し、サーナイトは後ろに吹き飛んだ。

 

 

(なるほど… つららばりが5発全弾放たれたということはあのパルシェンの特性はスキルリンクか… それと、地面を凍らせて相手の動きにくくする作戦か… ちょっと厄介だけど… でも、それなら)

 

「サーナイト! 自分にサイコキネシス!」

 

『サーナ』

 

 

フワ…

 

「⁉︎」

 

穂乃果はサーナイトに自分に向けてサイコキネシスを放つように指示した。

サイコキネシスをサーナイトが自分に向けて使うと、サーナイトの体が地面から浮き上がった。

小宮の氷のフィールドにする作戦は地面に足がついてないと意味がない、なら、こうやって自分のサイコキネシスで浮いていればいいだけのこと。

自分の作戦に上手く対処された小宮は驚き、舌打ちをし、顔をしかめた。

 

 

「チッ… でも空中なら逃げ場はない! パルシェン! もう一度つららばりだ!」

 

『シェーーーン!』

 

 

「サーナイト! テレポートで避けて! マジカルリーフ!」

 

『サーナー』

 

 

シュパパパパパパパパパパパパ……!

 

 

ドガーーーーーーーーーン!!!!

 

 

ひこうタイプのポケモンとは違い、サイコキネシスで浮いているだけのサーナイトは空中では上手く動けないと思った小宮はパルシェンにもう一度つららばりを指示した。

しかし、穂乃果はサーナイトにテレポートを指示し、いとも簡単に避けられる、そして、パルシェンの後ろに周り、サイコパワーでつくった数十枚の葉をサーナイトの周りに素早く浮かび上がらせてパルシェンに放った。

効果抜群のマジカルリーフを受けたパルシェンはフィールドの後ろに吹き飛ばされる。

さらに、特性がスキルリンクなため、攻撃が急所にあたらないなんてことはなくたくさん放ったマジカルリーフの数枚がパルシェンの急所に当たったらしくパルシェンはかなりのダメージを受けていた。

小宮は驚いて思わず穂乃果に言った。

 

「なっ⁉︎ お前のサーナイトはテレポートが使えるのか⁉︎」

 

「はい、私のサーナイトは技のバリエーションの多さが長所ですから」

 

驚く小宮に対して穂乃果は少しだけ微笑みながら返した。

それが、余裕をみせているようで癇に障ったのか、小宮は苛立った声で次の技を指示する。

 

 

「パルシェン! ハイドロポンプだ!」

 

「サーナイト! テレポート!」

 

パルシェンのハイドロポンプをサーナイトはさっきと同じように避けて、姿を消した。

 

「パルシェン、高速スピンだ! フィールドを動き回れ!」

 

「っ⁉︎ サーナイト、下がって!」

小宮の指示にパルシェンは高速スピンを使った。

それを聞いて、穂乃果はサーナイトに下がるように指示し、サーナイトはさっきと同じ位置に姿を現したが、氷のフィールドをベーゴマのように回りながら、つまり高速スピンをしたまま動き回るパルシェンが突っ込んできたのだ!

サーナイトは避けようにも避けきれず、高速スピンのしたままのパルシェンに体当たりされ吹き飛ばされる。

 

「サーナイト!」

 

「ククク… 驚いてる暇はないぜ! パルシェン! そのまま高速スピンでフィールドを動き回れ!」

 

 

『シェーーーン!』

 

 

「サーナイト! マジカルリーフ!」

 

 

パルシェンは高速スピンをしたまま氷のフィールドを動き回る。

穂乃果はパルシェンの動きを止めようと効果抜群のマジカルリーフを放つように指示したが、

 

「パルシェン! 高速スピンでマジカルリーフを弾け!」

 

『シェーーーン!』

 

 

シュピピピピピピピピピピピピピピピピピ……!

 

 

ドゴッ

 

 

『サーナー‼︎』

 

 

パルシェンはマジカルリーフを高速スピンで弾き、そのままサーナイトに突っ込んでいく、サーナイトは避けきれず高速スピンをまともに受けてしまう。

いくら高速スピンの威力が低いといっても何回も受けてしまえばダメージは蓄積されていき最終的には追いつめられてしまう。

 

 

(あの高速スピンをなんとかしてとめないと…)

 

 

穂乃果は懸命に頭を働かせ、この状況を打破する方法を考えた。

パルシェンのあの防御力と高速スピンによりマジカルリーフは弾かれてしまった。 他の攻撃も弾かれる可能性が極めて高い。

さらに、氷のフィールドになった以上、本来パルシェンにはないはずの素早さが加わり、高速スピンの体当たりを避けることも難しくなっている。

このままでは、サーナイトの体力が尽きるのも時間の問題だ。

状況は穂乃果にとってすこぶる悪かった。

その時…

 

 

 

(………ん? 待てよ… そうか! あれを使えば!)

 

 

 

 

穂乃果の頭の中にピカッと閃光のようにこの状況を打破できるアイデアが閃いた。

 

(これなら、もしかしたらいけるかもしれない!)

 

 

「パルシェン! サーナイトを角に追い込め!」

 

『ルーシェーーン!』

 

「サーナイト! 一旦戻って!」

 

 

小宮がサーナイトを追い込めて攻撃しようとしていたが穂乃果がそれよりも早くサーナイトをボールに戻した。

小宮はサーナイトをボールに戻したことに、一瞬驚いた顔をしたがすぐにニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべて見下した態度をとりながら、さらに侮辱するような不快な言葉を放った。

 

 

「なんだ? サーナイトなら勝てないと思っての交代か? 弱者にしてはいい判断だと思うが、氷のフィールドになった以上、お前じゃ俺に勝つのは不可能だなぁ… ここで無様に負けるより素直に俺に土下座してさっきの非礼を詫びてポケモンを渡した方がまだ良いと思うけどなぁ…」

 

『お前の大切な仲間も見てるしな』と小宮は海未たちの方を指差しながら穂乃果に言った。

フィールドを味方につけた小宮は自分の勝利を確信しているようだ。

 

 

 

「どこまで最低な人なんですか……!」

 

「あんなのが学園警察だなんて信じられない……!」

 

「どれだけ人に不快な思いをさせれば気がすむのよ……!」

 

「最低どころか良心の欠片もあらへん奴やなあ……!」

 

 

 

小宮の口から次々と放たれる不快な言動に海未たちは怒りの表情を浮かべながら小宮に非難の言葉を浴びせた。

 

「フン… なんとでも言えよ… お前らのような弱者に何を言われても痛くも痒くもないぜ… 弱い奴ほどよく吠えるとよく言うからなぁ… 俺は学園警察の公安委員会のNO.3だ… 学園警察は学園の正義だ…! 学園警察の公安委員会のやる事が常に正しいんだよ……! お前らのような弱者は俺たちに黙って従っていればいいのさ‼︎」

 

海未たちの言葉を聞いた小宮は全然悪びれもせず、海未たちの方を見て不敵な笑みを浮かべながら不快な言葉を投げかけていった。

最後に小宮は自分を睨みつける海未たちを鼻で笑うとバトルフィールドに向き直った。

バトルフィールドでは、穂乃果がサーナイトのボールをポケットにしまい新たなボールを構えていた。

小宮を射殺すような冷たい視線を向けていたが…

小宮はその視線に一瞬たじろいだがすぐに気を取り直して、不快な言葉を投げかける。

 

 

「次のポケモンを早くだせよ… お別れは済んだようだからなぁ…」

 

「わかりました。 私の4体目はこのポケモンです。 ファイトだよ! ヨノワール!」

 

『ヨルー…』

 

 

穂乃果が次にだしたポケモンは大きな浮遊霊のようなポケモンで、ゴーストタイプのヨノワールだった。

ヨノワールを見るなり小宮は不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「お前はバカか? 俺のパルシェンのスピードを見ただろうが、おれのパルシェンを止めるにはそれ以上のスピードのポケモンじゃないと止められないんだよ…こんな簡単なことも分からないなんて、やっぱりお前のポケモンたちは俺がもらってやった方が良いよなぁ…」

 

 

 

小宮の侮辱的な言葉に黙って聞いていた海未たちだったが、小宮の主張は正しかった。

ヨノワールはかなり動きが遅いポケモンだ。

パルシェンも動きは遅いが、あの氷のフィールドと高速スピンを組み合わせた攻撃でかなりの素早さになっている。

これなら、まだサーナイトの方が良かったかもしれない。

海未たちもどうして穂乃果がこのタイミングでヨノワールをだしたのかが分からなかった。

さすがに心配になり穂乃果の方を海未たちが見ると、

 

 

「大丈夫だよ、みんな」

 

 

海未たちは驚いた。

視線の先には穂乃果がいつもの優しさ溢れる笑顔を浮かべながら自分たちに微笑みかけていたからだ。

それは、この状況でも、なんの焦りも感じさせない強い笑みのようにも感じられた。

 

 

「私はあんな人には絶対に負けない、みんなをあんなに侮辱したことは許せないからね。 小宮さん、私はこの後は今、バトルフィールドに出ているヨノワールで貴方の残りのポケモン全て倒します! 貴方のその腐りきった性根と捻じ曲がった根性を叩き直して、無駄に高いプライドを粉々に打ち砕いてみせますよ…!」

 

穂乃果は海未たちに微笑みかけながら言った後に、小宮に向きなおり指を突きつけて挑戦的な言葉を放った。

 

 

「フン、一丁前にカッコつけやがって… やれるものならならやってみろよ! パルシェン! 高速スピンでヨノワールに体当たりだ!」

 

『ルーシェーーン‼︎』

 

 

パルシェンは高速スピンをしながらサーナイトにしたようにヨノワールに向かっていった。

 

 

「………」

 

 

しかし、穂乃果はヨノワールに指示を出さないでいた。

氷のバトルフィールドをアイススケートのようなスピードで向かってくるパルシェンはヨノワールに5秒も経たずに目前にまで接近した。

小宮が攻撃が当たるのを確信して口元を緩めたその瞬間、

 

 

 

「ヨノワール、トリックルーム!」

 

 

 

『ヨルーー……!』

 

 

 

フシャアアアアアアアアアアアアアアアン………

 

 

 

穂乃果がそう言うと同時にヨノワールは目から桃色の光線を発射してバトルフィールドの時空が歪み、桃色の四角い空間になった。

 

 

「ヨノワール! 避けて、シャドーパンチ!」

 

 

『ヨルー…!』

 

 

ドゴッ バキッ

 

 

『シェーーーン!!』

 

 

「な、何だと⁉︎」

 

 

小宮の驚きの声が響き渡った。

ヨノワールの技、トリックルームが発動した瞬間、あれだけ素早かったパルシェンの動きが急に鈍くなりヨノワールに軽々と避けられ、シャドーパンチを受けてパルシェンはフィールドの端まで吹っ飛ばされたからだ。

 

 

「続けて、かみなりパンチ!」

 

「パ、パルシェン! フィールドを滑って避けるんだ!」

 

『ヨルー……!』

 

 

ドガッ

 

 

『シェーーーン!!!』

 

 

パルシェンは氷のフィールドを使って避けようとしたがトリックルームの素早さが遅いものから行動できるという効果で回り込まれ、効果抜群のでんきタイプの技であるかみなりパンチを受けてしまった。

 

 

『シェーー…』

 

 

「何してんだ! しっかりしろ!」

 

 

さらに今のヨノワールのかみなりパンチがパルシェンの急所に当たったらしくパルシェンは通常以上のダメージを受けて辛そうだった。

しかし、小宮はパルシェンの状態など気にせずに早くヨノワールに攻撃をしろと怒鳴りつける。

 

 

「ヨノワール! トドメのかみなりパンチ!」

 

 

ドガーーーーーーーーン!!!!

 

 

 

『シェーーーン!』

 

 

動きの鈍くなったパルシェンに穂乃果がヨノワールにトドメのかみなりパンチを指示し、トリックルームで上がったヨノワールの素早さでパルシェンに電光石火の勢いで近づき、至近距離でかみなりパンチを放った。

パルシェンは悲鳴が響き渡り、煙が晴れると地面に埋もれて目を回しているパルシェンの姿があった。

 

 

「ば、馬鹿な… こんなのあり得ない……」

 

 

それを見て小宮は放心状態になっていた。

恐らく、あれほど優位に自分が立っていた戦況をあっさりと覆されたことに理解が追いついていないのだろう。

それは海未たちも、他の公安委員会のメンバーも同じで、その場にいた穂乃果以外の全員が驚きに目を見開いていた。

 

 

「小宮さん、御託を言ってないで早く続けましょう? 弱者に負けて悔しくないんですか?」

 

そんな中で穂乃果が冷静に小宮にさっきと同じように挑戦的な言葉を投げかけるとプライドのの人一倍高い小宮は分かりやすく反応した。

 

 

「くっ… この役立たずめ! いけ! オノノクス!」

 

『ノォォォォォォォォォォクゥゥゥゥスゥゥゥ!!』

 

小宮は自分がさっきまで見下していた相手に挑戦的な言葉を投げかけられ、簡単に戦況を覆されたことにかなり苛立っているらしく、パルシェンを押し込むような風にしながら乱暴にモンスターボールに戻し、半ばヤケクソでポケモンを繰り出した。

 

穂乃果はそんな小宮の様子をを見てニヤリと笑い、ヨノワールを見上げて大きな声で言った。

 

 

 

「さあ! ここからだよ! ヨノワール!」

 

 

『ヨルーー……!』

 

 

穂乃果の言葉にヨノワールは小さくとも威勢良く鳴いて穂乃果の言葉に応えた。

 

 

そして、再びポケモンバトルが再開された。




ここまでです。 変な終わり方ですいません。
2部作を予定してましたが3部作になってしまいました。
ご指摘、感想を良かったらお願いします。


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公安委員会とのポケモンバトル 穂乃果VS小宮 後編1

この小説はオリジナル設定です。
公安委員会のポケモンはリクエストを参考にしました。
後編1です。
すいません、次回は決着をつけます。


穂乃果と小宮のポケモンフルバトルも終盤に差し掛かっていた。

小宮は残り2体、対する穂乃果は残り5体の状況だ。

現在、小宮はオノノクス、穂乃果はヨノワールを繰り出していた。

 

 

「オノノクス! つるぎのまいだ!」

 

『オノノノノ!』

 

キン! カキーーン!!

 

 

小宮はオノノクスにつるぎのまいを指示した。

オノノクスの周りに青白い剣が現れ、光り輝きながらオノノクスの周りをまわり攻撃力が上がる。

 

「つるぎのまいで攻撃力を上げる作戦か… それなら… ヨノワール! れいとうパンチ!」

 

『ヨルー…』

 

 

「オノノクス! ドラゴンクローで迎え撃つんだ!」

 

『ノークス!』

 

ドガーン!!!!

 

『ヨルーー!』

 

「ヨノワール!」

 

バトルフィールドの中央で二つの技がぶつかった。

トリックルームで上がった素早さで攻撃するヨノワールに対し、つるぎのまいで高めたパワーで迎え撃つオノノクス、スピードではヨノワールが有利だったがもともとのパワーの高さもありオノノクスが押し返しヨノワールを吹っ飛ばした。

 

 

「ヨノワール、大丈夫⁉︎」

 

『ヨルー!』

 

 

穂乃果がヨノワールを心配すると、ヨノワールは『大丈夫だ』というような声をあげ穂乃果を見た。

オノノクスはやっぱり強いと思い、穂乃果がヨノワールと共に小宮とオノノクスを見ると

 

 

『ノ、ノクス…』

 

「⁉︎」

 

 

そこには苦しそうにしているオノノクスの姿があった。

大分ダメージが蓄積されているのだろう。

恐らく、さっきのルカリオ戦のダメージだ。それに今のヨノワールのれいとうパンチも押し返しただけで、まったくダメージを受けなかった訳ではなかったのだ。

小宮は苦しそうなオノノクスを見て顔をしかめた。

 

 

「何へばってんだよ、オノノクス! さっさと攻撃しろよ! きりさくだ!」

 

『ノ… ノクス…』

 

 

 

小宮は苦しそうなオノノクスを心配もせずに自分の勝利のためにオノノクスに早く攻撃を出すように指示を出した。

オノノクスは辛そうな顔だったがそれでも爪を鋭く尖らせてヨノワールにきりさくを放とうと迫る。

しかし…

 

 

ツルッ

 

ドスッ

 

『ノクス!』

 

「何してんだ! オノノクス!」

 

オノノクスはきりさくを放とうとヨノワールに接近しようとしたが、さっきのパルシェンによる氷のフィールドによりオノノクスはヨノワールに近づけず足を取られ転倒する。

 

 

「ヨノワール! 背後かられいとうパンチ!」

 

 

シュン…

 

 

ドガッ!

 

 

『ノ… ノクス…!」

 

 

穂乃果の指示を聞き、ヨノワールは転倒したオノノクスをトリックルームの効果を生かして背後に素早く回り込み、オノノクスにとって効果抜群のこおりタイプの技であるれいとうパンチを叩き込んだ。

効果抜群の技を連続で受けたためかなりの大ダメージだ。

さすがのオノノクスもルカリオ戦のダメージと今のダメージにより、

 

『ノ、ノクス……!』

 

バタッ

 

力つき地面に倒れた。

 

 

「おい! オノノクス! 起き上がれよ! おい!」

 

小宮が必死にオノノクスに呼びかけるがオノノクスはぴくりとも動かなかった。

 

 

「オ、オノノクス戦闘不能! ヨノワールの勝ち!」

 

 

審判の近衛が結果を言った。

オノノクスが戦闘不能になり小宮の戦えるポケモンは残り1体となった。

戦闘不能になったオノノクスをみて、モンスターボールを取り出した。

みんながまたポケモンを罵倒しながらボールに戻すと思ったが…

次の瞬間、信じられないことを言った。

 

「チッ…! このオノノクスも使えねぇ奴だ… せっかくこの間、中学生のガキから奪ったポケモンなのによ…! 所詮、中学生のポケモンは弱ぇか…!」

 

「⁉︎」

 

穂乃果も海未たちも小宮のこの一言に目を見開いた。

 

 

「小宮さん、まさか… そのオノノクスは中学生から奪ったポケモンなんですか⁉︎」

 

穂乃果が小宮に震える声で聞くと、小宮は苛立った声のまま言い返した。

 

「ああ⁉︎ そうだよ! この間、俺にバトルを挑んできた身の程知らずの馬鹿な中学生がいてな! バトルで勝ったらポケモンをもらうという条件のもと手に入れたポケモンだ! なのに、その中学生は凄く弱くてよ。 使えねぇポケモンばかりだったが、まだ使えそうだったそいつのオノノクスを返り討ちにしてボールを奪ったらそいつ泣き出しちまってさ、返せ返せうるさかったよ。まあ、もちろん返しはしなかったが、そしたら、そいつは泣きながらみっともなく逃げていったよ!」

 

小宮は苛立った声のまま人を貶すような言葉を次々と並べた。

小宮の言葉に穂乃果や海未たちの顔が険しくなる。

小宮はそれに気づかずに続けた。

 

「後で聞いたらオノノクスはそいつのエースポケモンだったらしくてな、エースポケモンが取られたことで学校から虐められて転校したらしいぜ! オノノクスも最初はその中学生に会いたがっていたが、もうそいつには会えない。と言えば素直に信じてすぐに新しい主である俺の指示を聞いてくれたぜ。 まあ、オノノクスもそいつが持ってるより強者である俺が持っていた方が良いかと思っていたが…」

 

小宮は動けないオノノクスを侮蔑の視線で見下ろすとオノノクスの近くに行って続けた。

 

「そいつのポケモンだけあってこのオノノクスも弱かったな、弱者のポケモンは同じく弱者だ。 強者の俺が持つのは相応しくない。 だからな…」

 

小宮はオノノクスのモンスターボールをポケットから取り出し倒れているオノノクスの目の前に置いた。

そして、

 

バキッ!!

 

『ノク…?』

 

 

「「「「⁉︎」」」」

 

全員が目を見開いた。

小宮はオノノクスのモンスターボールを足で踏みつけて壊したのだ。 あろうことかオノノクスの目の前で、穂乃果も海未たちも近衛たちでさえも目の前で起こっていることが信じられなかった。

オノノクスはモンスターボールがなぜ壊されたのか分からず小宮に『自分はどうなるのか?』という視線を泣きそうになりながら向けた。

しかし、小宮は…

 

「フン、俺が指示を出していたのにもかかわらず、負けたお前にはもう価値はない。 俺は使えない弱者の奴はいらないんだ。 目障りだ、分かったらさっさと俺の前から消えろ!」

 

『ノ、ノクス……!」

 

小宮のあまりにも酷い言葉にオノノクスの目から涙が流れた。

オノノクスは小宮に縋るような視線を向けたが小宮はそんなオノノクスにとどめとなるような一言を放った。

 

「なにぼけっとしてんだよ! 消えろってんだよ! もうお前は必要ない。 とっととどこかに行くか、どっかで死ねよ!」

 

 

「ノ、ノクス……!』

 

 

オノノクスは今の言葉に余程のショックを受けて地面に顔を伏せた。

顔の部分が濡れていた、恐らく大泣きしているのだろう。

小宮はそんなオノノクスにフンと鼻を鳴らし、近衛たちを見た。

 

「おい、バトルの邪魔だ。 さっさと俺の目の前にあるこの『粗大ゴミ』を片付けろ」

 

 

そこまで聞いて、海未たちの我慢も限界を超えたのか小宮に怒りの形相で怒りの声を上げようとした。

その時、

 

 

 

 

 

 

 

 

「黙れっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、天から響くような怒号が空き地に響き渡った。

怒号が近くの廃ビルや古い空き家に木霊した。

その怒号の主は小宮を射殺すような怒りの炎の灯った瞳で睨みつける穂乃果だった。

怒号の主を見つけると全員が目を見開いた。

海未たちも近衛たちも小宮でさえもだ。

なぜなら、穂乃果の顔からはいつもの明るい優しげな面影は消え、青い瞳も怒りで真っ赤になっていると錯覚するほどになっていたからだ。

普段は穂乃果は滅多に怒らない。しかし、誰の目からも、彼女は今、かつてないほど怒っているのだと言うことがわかる。

穂乃果は小宮を射殺すような視線で睨みつけると小宮に怒りをぶちまけた。

 

 

「もう、良い加減にして! なにが学園の平和を守っている公安委員会なんだよ! 散々、人間やポケモンに酷いことばかりして、これのどこが正義なんだよ! これまで、どんな人でも、どんなポケモンでも分かり合いたいし、これからもそうしたいよ……! でも、あんただけは絶対に許さない!」

 

 

穂乃果の言葉に回りも小宮に非難の言葉を浴びせた。

 

 

「穂乃果の言う通りです! あなたには人間としての良心がないのですか⁉︎ さっきから黙ってあなたの言葉を聞いていても、あなたは他人に不快感しかあたえられないのですか⁉︎」

 

「本当に、あなたはトレーナーなの⁉︎ 貴方を信じて一生懸命戦ってくれたオノノクスなんであんな簡単に切り捨てられるの⁉︎ 貴方のことが分からないよ!」

 

 

「貴方は救いようのないクズね……! 今まで生きてきて見てきた人たちの中でも最低最悪のクズよ…! 同じ人間だと思いたくないわ…!」

 

 

「あんたっちゅうやつは…… どこまで性根が腐ったら気がすむんや! あんたのようなやつは世間一般では外道と言うんや! 少しは恥を知ったらどうやねん‼︎」

 

 

海未たちも小宮を睨みつけながら次々と非難の言葉を投げかけるが小宮はそんな海未たちを鼻で笑った。

 

 

「フン、どうとでも言え……! 強者の俺は強い奴にしか興味はない。 弱いやつはいても仕方がない。 何も間違ったことはしていない。 寧ろ当然のことをしているのさ……! まあ、後の負けた4体もこのバトルが終わったら捨てるけどな!」

 

小宮はこれだけ非難されても悪びれもせずに嘲笑いながら海未たちに言い返した。

さらに、負けたワルビアルたちもこの後、オノノクスのように捨てると言うのだ。

海未たちが小宮をさらに怒りのこもった視線で睨みつけたが、小宮はどこ吹く風といった様子でバトルフィールドを見た。

 

 

バトルフィールドでは言い合っている中で、近衛たちのポケモンであるゴーリキーやドテッコツなど力自慢のポケモンがオノノクスを力を合わせてフィールドの端まで運んだところだった。

オノノクスは小宮に言われたことが余程ショックだったのか、虚ろな瞳で動こうともしなかった。

小宮はそんなオノノクスには目もくれず、最後のポケモンのモンスターボールをポケットから取り出した。

そして、穂乃果とヨノワールを見ながら嘲笑いの笑みで不快な言葉を投げかける。

 

 

「俺の6体目はこいつだ。 こいつは今までの奴とは違うぜ? お前のヨノワールなんか目じゃないほどな……!」

 

小宮は自分の6体目に相当な自信があるらしく余裕の表情だった。

しかし、穂乃果は小宮を見ずにオノノクスを悲しそうな目で見ていた。

そして、何かを決意したような顔になり、今度はヨノワールを見つめた。

そして、ヨノワールにしか聞こえない小さな声で言った。

 

「ヨノワール、もう容赦しなくて良いよ… オノノクスの為にも、相手の他のポケモンの為にも、相手にトラウマを刻むくらいに叩きのめすよ……!」

 

穂乃果の言葉にヨノワールは力強く頷いて、『ヨルー』と鳴いた。

黙って聞いていたヨノワールも怒っていたのだろう。

 

 

バトルフィールドの反対側にいる小宮はそんなヨノワールを見て、唇を釣り上げた。

そして、6体目のポケモンのモンスターボールを投げ、ポケモンを繰り出した。

 

 

そして、バトルが再開された。

 

 

 

 

 




ご指摘、感想を良かったらお願いします。
次回こそ決着を書きます。
本当にすいません…

小宮への救済は必要でしょうか?
よろしければご意見を感想欄かメッセージで送ってくださると嬉しいです。


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公安委員会とのポケモンバトル 穂乃果VS小宮 後編2

この小説はオリジナル展開です。
長らくお待たせして申し訳ないです…


オノノクスをバトルフィールドの外に運び出され、穂乃果と小宮のポケモンバトルが再開された。

小宮は最後の6体目のポケモンをだすべくモンスターボールを構えた。

 

「これが俺の6体目だ! いけ! ハガネール!」

 

『ネーール‼︎』

 

小宮のモンスターボールから勢いよく飛び出したポケモンは鋼の身体をもつ大きな蛇のようなポケモンであり、じめん、はがねタイプのハガネールだ。

小宮のハガネールは威勢の良い声で鳴き穂乃果のヨノワールを威嚇した。

ハガネールは小宮のエースポケモンらしく、近衛たちは「ハガネールをだしたぞ…」ヒソヒソ驚いたように話している。

 

穂乃果も小宮のハガネールはかなりの強敵だと思っていた。

体格も普通のハガネールより大きく、力も強そうだ。

 

「いくぞ! ハガネール! アイアンテール!」

 

『ネーール!!!!』

 

「ヨノワール! シャドーパンチで迎え撃て!」

 

「ヨルーー…』

 

 

 

 

ドガーーーン!!!!

 

 

 

シュッ…

 

 

 

ドガッ!

 

先ほどのトリックルームの効果により素早さの低い小宮のハガネールはかなりの素早さだ。 しかし、穂乃果のヨノワールの方がもともとの素早さはまだ遅かったらしく、アイアンテールが決まる前にシャドーパンチを決めた。

しかし、どちらとも、もともとの素早さはほとんど同じだったらしくアイアンテールの前に攻撃を叩き込むのはかなりギリギリだった。

穂乃果もそれを考慮してヨノワールが完全にハガネールのアイアンテールを避けるのは不可能だと考え、シャドーパンチを指示したのだ。

それに、ハガネールは防御力に高いはがねタイプのポケモンだ。

ゴーストタイプは等倍とはいえ、高いダメージは与えられなかったようだ。

さらに、防御力の高いハガネールはヨノワールのシャドーパンチを受けても怯まずにアイアンテールを叩き込んでヨノワールを吹き飛ばす。

ハガネールのアイアンテールはすさまじいパワーだ。

 

 

 

 

「あのハガネールとヨノワールの素早さは少し違う程度ですね… おまけにあのハガネールのパワーはすさまじいですね…」

 

「せやな… 小宮は恐らく、ヨノワールがトリックルームを使ったのも考慮してハガネールを繰り出したんやろ… パワーではハガネールに分がある… あたったら防御力の高いヨノワールも…」

 

外野の海未と希が小宮のハガネールを見て呟く。

 

 

 

 

「ヨノワール! 大丈夫⁉︎」

 

『ヨ、ヨルー!』

 

威力の高いはがねタイプの技、アイアンテールを受けたヨノワールを穂乃果は心配の声をかける。

ヨノワールは首を振り『大丈夫』というように鳴いた。

ハガネールはかなりの強敵と認識し、ハガネールを穂乃果とヨノワールがもう一度見る。

 

 

しかし…

 

『ネール…』

 

「⁉︎」

 

ハガネールはシャドーパンチを受けたときには全然ダメージは受けてなさそうだったのに、アイアンテールを叩き込んだときには苦しそうな顔をしていた。

 

 

「あのハガネール… 少し様子がおかしい…!」

 

「くくく… 驚いたか…?」

 

穂乃果がハガネールを見て呟くと、その声が聞こえたのか小宮が気味の悪い笑みを浮かべながら言った。

そして、苦しんでいるハガネールをよそに得意げにマジックの種明かしをするような口調で説明をする。

 

 

「俺のハガネールは攻撃力が異様に高いだろう? それは、俺がハガネールに技の威力を上げる技である【いのちのたま】を持たせているからさ!」

 

「⁉︎」

 

鼻をふくらまして得意げに説明する小宮に穂乃果たちは目を見開いた。

小宮の言う通り【いのちのたま】は確かに技の威力を上げる技だ、しかし、その代わりに攻撃を相手にあてるたびにその反動により自分の寿命を削る恐ろしい道具なのだ。

使いすぎると最悪の場合、命を落とす危険もある。

 

「あ、貴方… 何をしているか分かっているの…⁉︎ 【いのちのたま】は最悪の場合、いのちを落とす危険があるのよ…⁉︎」

 

真姫が震える声で小宮にして言うと、小宮は真姫をうるさいと言うように睨みつけて言い返した。

 

「それがなんだ、 さっきも言ったろうが、ポケモンは俺たち人間の言うことを聞くのが当然なんだよ、俺がこいつに【いのちのたま】を持たせたのはもともと高い技の威力をさらに上げるため… それに、こいつが死んだらそこまでのポケモンだったということだ… 雑魚に用はない… それにこいつが死んだところで痛くも痒くもないからな……!」

 

 

 

普通のトレーナーはこんな危険な道具は普通は持たせない。

しかし、小宮は自分のポケモンに危険な道具を持たせたことに何の罪悪感も感じていないようだ。

これを聞いた海未たちは「命をなんだと思ってるんだ!」と小宮に対して怒りの声をあげている。

小宮はそんな海未たちをウザそうに見たあと、苦しそうにしているハガネールを見上げ、

 

「おい! お前、何へばってんだ! しっかりしろよ!」

 

ハガネールに怒鳴りつけた。

ハガネールは苦しそうにしながらも何とか空いてのヨノワールを睨みつける。

 

 

 

 

 

「ハガネール…」

 

『………』

 

 

その時、穂乃果はハガネールを心配そう顔でに見ていた。

ヨノワールも黙ったまま相手のハガネールを見つめている。

 

 

 

「ほら! しっかりしろよ! ハガネール! もう一度ヨノワールにアイアンテールだ!」

 

『ネ、ネーール‼︎』

 

穂乃果がそんなことをしている間にも小宮は攻撃をハガネールに指示していた。

小宮の声にハガネールは苦しそうにしながら尻尾を光り輝せ振り上げ、ヨノワールめがけてアイアンテールを繰り出した。

 

「…っ! ヨノワール! 後ろに下がって!」

 

 

 

ドガーーーーン!!!!

 

 

 

別のことに気を取られていた穂乃果は小宮の指示に反応が遅れ、アイアンテールを避けるためにヨノワールに後ろに下がるように慌てて指示を出す。

ヨノワールはトリックルームの素早さにより間一髪でアイアンテールをかわした。

 

 

「おいおい、バトル中に上の空かぁ…? もしかして俺のハガネールに恐れをなしたのかぁ?」

 

 

小宮はそんな穂乃果を見て、ニヤリと笑いながら、また不快な言葉を穂乃果たちに浴びせた。

穂乃果は小宮の言葉に反応せずハガネールだけを心配そうに見ていた。

今の攻撃で再び体力が削られたらしくハガネールがくるしそうな顔をする。

 

「一気に決めるぞ! ハガネール! かみくだくだ!」

 

『ネ… ネール!』

 

苦しそうにしているハガネールを気にも留めず小宮は一気に決めようとゴーストタイプに効果抜群のあくタイプの技のかみくだくを指示する。

 

 

「くろいきり!」

 

しゃーーーー……

 

 

ハガネールがかみくだくを決めるためにヨノワールに真正面から近づく、しかし、ヨノワールはくろいきりを出してハガネールを撹乱させる。

真っ黒な霧がバトルフィールドに漂いハガネールはヨノワールを見失ってしまいオロオロし始めた。

 

「くっ…! ハガネール! アイアンテールを振り回せ!」

 

ハガネールはヨノワールを見つけられず攻撃を当てずっぽうで当てようと尻尾を光り輝かせ振り回しアイアンテールを決めようとする。

しかし、ヨノワールに攻撃を当てた手応えはなく、アイアンテールは空回りするばかり、

 

 

「今だ! ヨノワール、ほのおのパンチ!」

 

「な、何⁉︎」

 

ハガネールはヨノワールの効果抜群のほのおタイプの技であるほのおのパンチを受けて苦しそうに顔を歪ませる。

おまけにアイアンテールを振り回していたため道具の【いのちのたま】が裏目にでてしまいハガネールはかなりのダメージを負ってしまった。

 

 

「ヨノワール! とどめのほのおのパンチ!」

 

 

穂乃果は怯んだハガネールにとどめを刺すべくもう一度、効果抜群の技である、ほのおのパンチを放つ。

しかし、小宮もただではやられない。

 

「させるか! ハガネール、まもる!」

 

ヨノワールのほのおのパンチがハガネールに決まる前に小宮はまもるを指示した。まもるによりハガネールはノーダメージですんだ。

ヨノワールはまもるによりほのおのパンチを当てられずに大きな隙をつくってしまった。

 

 

 

 

 

「今だ! ハガネール! かみくだく!」

 

小宮はほのおのパンチにより近づいたヨノワールに外さないようにかみくだくを指示をした。

ほのおのパンチを放つために接近したヨノワールはハガネールのかみくだくを避けることができずに効果抜群のあくタイプの技を受けてしまった。

【いのちのたま】によりハガネールの攻撃力が上がっているためヨノワールはかなりの大ダメージを負った。

「ふん、どうだ! お前のヨノワールはもう限界だろ!」

 

「……」

 

小宮は攻撃が上手くいったことにニヤリと笑う。

しかし、ヨノワールは苦しそうにしながらも起き上がった。

穂乃果は黙ったままヨノワールに次の指示をだす。

 

 

「ヨノワール、くろいきり」

 

しゃーーーーーーーーーーー……

 

 

穂乃果はさっきと同じくくろいきりをヨノワールに指示をだす。

真っ黒なくろいきりがバトルフィールドを再び覆った。

 

「バカだな! 何度も同じ手を食うか! ハガネール! まもるだ!」

 

小宮はハガネールはさっきと同じくまもるを使い攻撃を防ごうとする。

 

「ヨノワール! ほのおのパンチ!」

 

穂乃果はヨノワールはほのおパンチ放つように指示をだすが、ハガネールはまもるを使っているためまったくのノーダメージだ。

 

「ハハハ! ハガネールがまもるを使っているのにみすみす突っ込んでいくなんてお前はバカか? 今度こそは外さないぜ? ハガネール! とどめのかみくだくだ!」

 

ハガネールは近づいたヨノワールにとどめのかみくだくを決めようとする。

攻撃が決まったと思い小宮が頰を緩める。

海未たちも攻撃を決まったと思い焦った表情をするが…

 

 

「今だ! ヨノワール! 反対の手でほのおのパンチ!」

 

 

 

グワッ!

 

 

 

ドスッ!

 

 

 

 

「な、なに⁉︎」

 

 

 

ヨノワールがハガネールがかみくだくを決める前に反対の手に炎を纏わせ、ほのおのパンチを放った。

至近距離で放たれた効果抜群のほのおタイプの攻撃をまともに受けたハガネールは地面に倒れた。

さらに【いのちのたま】により蓄積されていたダメージによりさすがのハガネールも耐えきれなくなり、

 

『ネ… ネール…』

 

バタンと力尽きた。

 

「な、なんだと⁉︎ おい! ハガネール、起きろよ!」

 

小宮がいくら呼びかけてもハガネールが起き上がることはなかった。

小宮の最後の1体が倒れて6体のポケモンを全て倒したのだ。

 

 

「ハ、ハガネール戦闘不能! ヨノワールの勝ち! よって勝者は高坂穂乃果……!」

 

 

 

審判の近衛が呆然としながら判定を言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ご指摘、感想を良かったらお願いします。
変なところで終わってすいません…
次回はバトル後です。


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慈悲のある者とない者

この小説はオリジナル展開です。
今回はネタを少しいただいていますが許可は取ってありますのでご安心ください。


ハガネールが戦闘不能になり穂乃果の勝利が確定した、

審判の近衛が勝利の判定を言った。

 

「バ、バカな… こんなことが…」

 

小宮は呆然としながら呟いた。

自分は公安委員会のNo.3になってからは負けたことなどほとんどなかった。

負けたとしても公安委員会のメンバーくらいだった。

それなのに、今、自分は目の前にいるただの一生徒に負けたのだ。

バトル前もバトルの最中も油断していた。

5体倒されても、最後のハガネールが残りの5体を倒してくれると思っていた。

今までもどんなピンチでも自分のハガネールに【いのちのたま】を持たせ、技の威力を上げてねじ伏せることができた。

だから今回もハガネールがねじ伏せてくれるとばかり思っていた。

小宮の脳内をいろいろな考えが渦巻いていると、

 

「小宮さん、確かに貴方のポケモンはすごく強かったです。 しかし、貴方はポケモンへの愛情や思いやりの気持ちが欠けていました… だからこそポケモンたちは貴方の期待に応えてくれなかったんです」

 

 

穂乃果が小宮に声を投げかけた。

小宮はキッと視線を強くして穂乃果を睨みつけて言い返した。

 

「愛情や思いやり⁉︎ はっ! そんなもので勝利を得ることなどできるわけがない! 綺麗事を言うな!」

 

「けど、貴方は穂乃果先輩に勝てなかったじゃない、それに、勝てなかったのは、バトル中の会話から察するに相手を舐めてたからなんじゃないの?」

 

「くっ……!」

 

小宮の反論に真姫が口を挟み小宮の反論を論破した。

小宮は今度は真姫を睨みつけたが気の強い性格の真姫は小宮を睨み返す。

そこに、さらに海未がたたみかける。

 

「さらに、貴方ははもちものを持たせた状態でハガネールにバトルさせたでしょう? 【いのちのたま】はダメージの反動があるとはいえ、攻撃力が上がる効果があります… 対する穂乃果のヨノワールはもちものは持っていませんでした。 状況は貴方が有利だったはずです。 そんなバトル条件で負けた貴方に反論できる要素がどこにあるんですか?」

 

その言葉に小宮は何も言えなくなった。

意地もプライドもズタズタにされたことを表すように拳を握りしめ唇を噛み締めて穂乃果を恨みのこもった目で睨みつけている。

 

「チッ… 愛情や思いやりで勝てただと…⁉︎ くだらねぇ…」

 

小宮は悔しさに地団駄を踏むのを表すように穂乃果の言葉に悪態をついた。

そんな小宮を見かねたのか希が言った。

 

「負け惜しみを言ってないで早くハガネールをモンスターボールにもどしたらどうや?」

 

希の言葉に小宮は舌打ちをしてハガネールに悪態をつきながらモンスターボールに戻そうとする。

しかし…

 

 

「…ん?」

 

 

何度もハガネールをモンスターボールに戻そうとするが何回やってもハガネールはボールに戻らなかった。

『ボールが故障したのか?』と小宮がモンスターボールを調べようとすると…

 

 

「⁉︎」

 

かばっ!

 

「え?」

 

 

ハガネールをじっと見ていた真姫が何かに気づいたらしく慌てて小宮を押しのけてハガネールに駆け寄った。

真姫は未だに身動き一つしないハガネールに近づいて身体を調べた。

そして、真っ青な顔で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずいわ! ハガネールの生命力が尽きかけてるわ!」

 

「「「「「え⁉︎」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真姫の言葉に穂乃果たちも近衛たちも小宮までもその場にいた全員が驚いた顔をする。

真姫はハガネールを調べながら続けた。

 

 

 

 

「相当衰弱しているわ… このままだとあと数時間と持たないうちにハガネールが死んでしまうわ‼︎」

 

 

 

「そんな!」

 

「ハガネール可哀想……!」

 

「ま、まじかよ……!」

 

真姫の言葉に全員が真っ青な顔になる。

自宅が人間もポケモンも診る大きな総合病院である、真姫は両親の影響もあり医学の知識はあると言っていた。

だからこそ真姫の言葉には説得力があり、誰もそれを疑ったり鼻で笑ったりしなかった。

近衛たちも真姫が医者の娘だということは知っていたらしく何も言わなかった。

 

そんな慌てる近衛たちを無視して、真姫はポケットからモンスターボールを取り出してポケモンをだした。

 

 

「ハピナス! 出てきて!」

 

『ピナ〜』

 

 

真姫のモンスターボールから出てきたのはたまごの袋をお腹のあたりに抱えて優しそうな顔のポケモンであるハピナスだ。

 

 

「たまごうみ!」

 

『ピ〜ナ〜』

 

ハピナスはお腹の袋から優しいピンク色の光をだしハガネールに向けてたまごを発射した。

たまごうみは本来なら体力の半分を回復させる技だが、ハガネールの意識は戻らなかった。

 

 

「サーナイト! 私たちもいやしのはどう!」

 

『サーナ!』

 

 

真姫のハピナスに続き、穂乃果もサーナイトを繰り出していやしのはどうを指示する。

サーナイトの全身から優しいピンク色の光がハガネールを包んだ。

しかし、ハガネールの意識はまだ戻らなかった。

 

「誰か他に回復できるポケモンを持ってる人は⁉︎」

 

真姫が荒々しく全員に聞いた。

恐らく回復できるポケモンを増やしてハガネールの生命力を回復させるためだ。

しかし、海未たちも近衛たちも回復技の使えるポケモンは持っていなかった。

 

 

「そのハガネール… 私のガブリアスにポケモンセンターまで運ばせようか?」

 

「ダメよ! 今のハガネールは生命力が尽きかけている状態よ! 意識もはっきりとしていないから動かしたりすると人間と同じでかえって不味いことになるかもしれないわ!」

 

 

 

こんな空き地で何とかするよりポケモンの力を借りて治療のできる施設に運ぼうと提案するが真姫によると少し動かしただけで危険な状態だそうだ。

だからといってこんな空き地では適切な治療はできない。

治療のできる人間を呼びにいっても、ハガネールの状態から察するに、呼びにいって戻ってくる間にハガネールが力つきる可能性が極めて高いだろう。

 

どうすればいいのか分からずみんなが悲しそうに俯く。

 

その間にもハガネールの生命力はどんどん尽きかけていった。

 

小さくなっていく呼吸、動かなくなっていく身体、それはハガネールの死がもう目前だということを表していた。

 

ハガネールが助からないと海未たちが思ったその時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諦めたらダメ! サーナイト! フルパワーでいやしのはどう!」

 

『サーナー‼︎』

 

「⁉︎」

 

 

突然、空き地に大きな声が響いた。

その声に全員が驚き声の主を見る。

その声の主は、サーナイトに指示を出している穂乃果だった。

穂乃果は今度は別のモンスターボールをポケットから取り出しポケモンを繰り出した。

 

「オニドリル! 出てきて!」

 

『クワァーーー!』

 

穂乃果がモンスターボールからだしたのはオニドリルだ。

小宮とのバトルの傷が目立つが力強く鳴き声をあげる。

そして、穂乃果はカバンからノートを取り出して1ページ破りとり何かを書いてオニドリルに渡した。

 

 

「オニドリル! これをポケモンセンターに持っていって!」

 

 

『クワァッ!』

 

 

渡した紙を受け取ったオニドリルは『了解!』というように威勢良く一鳴きして飛び立っていった。

オニドリルを見届けると穂乃果はさらにポケットから別の2つのモンスターボールを取り出し、2体のポケモンを繰り出した。

 

「出てきて! ヨノワール! ゲッコウガ!」

 

『ヨルーー…」

 

『コウガ!』

 

 

穂乃果が繰り出したのはヨノワールとゲッコウガだ。

穂乃果は今度はヨノワールとゲッコウガに指示を飛ばす。

 

 

「ゲッコウガ! 上に向けて軽めにハイドロポンプ!」

 

『コウガ!』

 

ゲッコウガが上に向けて軽めにハイドロポンプを打った。

ハイドロポンプの水が重力に従ってまとまって落ちてくる。

 

「ヨノワール! 炎のパンチで水を打ち消して!」

 

『ヨールッ!」

 

落ちてきたハイドロポンプの水をヨノワールがほのおのパンチで打ち消した。

炎のパンチで水が蒸発し、水蒸気がハガネールの上空に立ちこめた。

 

 

「これで、呼吸はしやすくなった… あとはオニドリルが戻ってきてくれるのを待てば…」

 

そう、穂乃果がゲッコウガに上に向けてハイドロポンプを軽めに打つように指示を出したのは水が重力に従って落ちてきたときにヨノワールは炎のパンチで蒸発させて水蒸気を発生させてハガネールの呼吸を楽にするためだったのだ。

穂乃果はそう言うと倒れているハガネールの身体を優しく撫でた。

 

「大丈夫… 絶対にあなたは私が助けてみせる! 死なせたりなんかしないよ!」

 

ハガネールに笑顔を向けなから優しくて、それでいて力強い声で言った。

 

 

これを見ていたみんなはさっきより驚いていた、こんな緊急事態にポケモンたちにあんなに指示を出せることにだ。

 

 

みんなが驚いたのはそれだけではなかった。

もっとみんなを驚かせたのは彼女の瞳が諦めの色になってなかったからだ。

こんな状況ではハガネールの命を救うことは絶望的なため、普通なら諦めるだろう。

しかし、彼女の瞳には諦めるどころか『絶対に救ってみせる!』という意思が灯っていた。

どうしたらいいのか分からなくても彼女は最後まで諦めない。

 

 

 

「「「「「「………」」」」」」

 

みんなはその様子を何も言えずに呆然と見ていると、

 

 

 

『クワァーーー!』

 

 

 

とりポケモンの鳴き声が空き地に響いた。

みんなが一斉に鳴き声がした方向を見る。

 

 

「オニドリル! よかった!」

 

それは、さっき紙を持たせて飛ばした穂乃果のオニドリルだった。

穂乃果のオニドリルが戻ってきたのだ。

くちばしには何か袋を咥えている。

穂乃果はその袋から何かを取り出すと今度は真姫の方向を見た。

 

 

「真姫ちゃん! これを早くハガネールに!」

 

 

「え⁉︎」

 

 

真姫が突然の声に驚き素っ頓狂な声をあげる。

穂乃果の手には力尽きたポケモンを完全に回復させる道具である【ふっかつそう】が握られていた。

真姫も穂乃果が何をして欲しいのか理解し、ハガネールの口元にふっかつそうを細かくして持っていきゆっくりと飲ました。

 

 

『ハガ⁉︎ ハガーーー‼︎』

 

 

するとどうだろう、あれだけ弱っていたハガネールが元気に起き上がった。

 

 

「よかった! 元気になったのね!」

 

 

真姫が安心したように言った。

ハガネールは真姫に感謝の気持ちを表すように真姫に笑顔で身体を寄せた。

 

 

「いいわよ…! それにお礼なら穂乃果先輩の方にいいなさい」

 

 

真姫が言うとハガネールは穂乃果に笑顔で寄りそった。

命を助けてもらったのでかなり穂乃果に好感をもっているらしく、気を許しているようだ。

元気になったハガネールを見て海未たちも喜びの声をあげている。

 

 

「ば… バカな……! こんなことが…!」

 

 

そんな中、小宮が呆然としながら声をあげた。

何故、ハガネールが死にかけたのか未だに分かっていないようだ。

小宮の声に気づいた真姫が小宮に怒鳴った。

 

 

「アンタ! ハガネールにどれだけ無茶をさせていたのよ! 下手をすれば死んでいたのよ!」

 

「うっ!」

 

 

視線を強くして睨みつけながら声を荒げる真姫にさすがの小宮もたじろいだ。

真姫はさらに続ける。

 

 

「【いのちのたま】は反動で寿命を削る危険な道具なのよ! 普通は特性がマジックガードなどの特性を持つ反動がこないポケモンに持たせるのが普通なのよ! いったいどれだけ【いのちのたま】を持たせた状態でハガネールにバトルさせたのよ!」

 

 

真姫の怒りの声に小宮はたじろきながら返答した。

 

 

 

「数百… いや、千を越える…」

 

 

小宮が言うにはハガネールをバトルさせる度に【いのちのたま】を持たせた状態でバトルさせていたそうだ。

それに、真姫はさらに目を怒らせた。

 

 

「それだけ無茶させてればこうなって当然よ! 何回も寿命が削られたら限界がくるわ! そんなことにも気づかなかったの⁉︎」

 

 

「ぐぐっ!」

 

 

真姫の言葉に小宮は俯いた。

寿命が削られていたことは分かっていた。

しかし、寿命が削られるのもほんの少しだけだと思っていて、実際にはここまで限界だとは思わなかったのだ。

しかし、懲りずに小宮も言い返す。

 

 

「それがなんだ! 俺は技の威力を上げるために【いのちのたま】を使っただけだ! ハガネールが勝手に死にかけたんだ! 俺は悪くない!」

 

 

その言葉に公安委員会を除く全員がさらに怒りのこもった目で小宮を睨みつけた。

その時、

 

 

 

『ネーーーーーーーーーーーール!!!!』

 

 

 

突然、ハガネールが立ち上がり小宮に向けて、大声をあげた。

小宮はいきなり大声をあげたハガネールに怒鳴る。

 

 

「なんだ‼︎ いきなりデカイ声で叫んでんじゃねぇよ‼︎ このクズ!」

 

 

その言葉にハガネールは怒りの表情になった。

さらに、

 

 

「うわっ! なんだ⁉︎」

 

 

突然、小宮のポケットからモンスターボールが飛び出して青い光とともにボールに戻したポケモンたちが飛び出したのだ。

 

 

『ビアール!!!!』

 

『フィアー!!!!』

 

『ルーシェーーン!』

 

『テーラー!!!!』

 

 

 

ワルビアル、エーフィ、パルシェン、プテラの4体はボールから出てくるなり小宮を射殺すように睨みつけた。

それに気づかないのか小宮はポケモンたちに怒鳴った。

 

 

「なんだ! お前たちまで! 勝手にボールからでてくんじゃねぇよ!」

 

 

しかし、それを無視して、エーフィがサイコキネシスで小宮を浮かび上がらせて動けなくした。

そして、ポケットからでた5つのモンスターボールをサイコキネシスで自分たちの方に引き寄せた。

 

 

『ビアール!!!!』

 

 

そして、エーフィがサイコキネシスで引き寄せたモンスターボールにワルビアルの破壊光線を放った。

激しい轟音が空き地に響き、煙が晴れるとモンスターボールは跡形もなくなくなっていた。

 

 

「そ、そんな……」

 

 

小宮はポケモンたちの思わぬ反逆に呆然としながら呟いた。

穂乃果たちもポカンとしながらそれを見たいことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでです。
ご指摘、感想を良かったらお願いします。

皆さん、メリークリスマスです


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傲慢な態度の対価

この小説はオリジナル展開です。
今回はジーク・フリューゲル様から頂いたオリキャラが登場します。


それは、あっという間の出来事だった。

小宮のポケモンたちが彼のモンスターボールを奪ってそのモンスターボールを跡形もなく消したのだ。

ポケモンたちのまさかの反逆行為にその場にいた全員が驚きを隠せなかった。

 

「お、お前たち… どうして…?」

 

小宮は呆然としながらポケモンたちに呼びかけたがエーフィたちは小宮に見向きもせずオノノクスのところに向かった。

そして、エーフィたちがオノノクスにも何かを話すと、ポケモンたちは今度は穂乃果のところにやって来た。

 

『フィア〜♪』

 

エーフィが甘えるような鳴き声をあげて穂乃果の足元にすり寄った。

それに続いて、ハガネール、オノノクス、ワルビアル、パルシェン、プテラの5体も穂乃果にそれぞれ甘えるようにすり寄ってきた。

 

「え…? あなた達、いったいどうしたの?」

 

突然、自分に甘えるようにすり寄ってきたプテラたちに穂乃果は戸惑った。

特に命を救ってもらったハガネールは穂乃果にかなりの好感を持っており、完全に気を許していた。

他のポケモンたちも、相手のポケモンであるにも関わらず、必死で仲間のハガネールを助けてくれたり、小宮の非道なやり方に自分たちのために怒ってくれたことから、その気持ちが偽りでないことを理解しているのだ。

 

 

しかし、この光景に納得のいかない人物が声を張り上げた。

 

 

「お、お前たち! 何をしてるんだ! 俺を裏切る気か⁉︎ お前たちは俺のポケモンなんだぞ‼︎」

 

 

そう、それはボールをポケモンたちに破壊された張本人である小宮だ。

自分のモンスターボールを破壊して、敵であるはずの穂乃果に甘えている自分のポケモンたちの行動が理解できないのだ。

しかし、エーフィたちは喚く彼を侮蔑の視線で見るだけだった。

 

醜くエーフィたちに対して罵声を浴びせながら喚き続ける小宮に穂乃果が声をかけた。

 

 

「まだ分からないんですか? 小宮さん、貴方はポケモンたちに捨てられたんですよ… 貴方は、ポケモンたちを愛さない… ポケモンたちを都合の良い道具にしか思ってない、でも違う、ポケモンたちにも人間と同じく心があるんですよ、それに、さっきのポケモンたちの行動を思い出してください」

 

穂乃果はそう言うと、エーフィたちの方を見ながら続けた。

小宮もエーフィたちの方を見た。

 

 

「モンスターボールはポケモンと人間の絆の象徴とも言えるものです、それをただ壊すだけでは飽き足らず跡形もなく消す行為… これは、貴方との関係全て消したいというポケモンたちの意思表示ですよ」

 

その言葉に小宮は俯き、肩を震わせなから穂乃果の言葉を黙って聞いていた。

穂乃果は続ける。

 

 

「貴方はポケモンたちから見限られたんですよ… 今までポケモンたちとの関係をかろうじて繋ぎとめられていたのは『勝利』というものだけです。 しかし、今回のバトルのこと、ハガネールが死にかけたこと、そしてポケモンを最後まで愛さない貴方の姿を見たことでそれも切れたんですよ」

 

 

穂乃果はそこまで言うとエーフィたちの方を見た。

小宮も穂乃果につられて見るとエーフィたちは小宮に今までにないほどの冷たい視線を向けていた。

次に周りを見渡すと、海未たちは自分を侮蔑の視線で見ており、近衛たちは自分を失望したような視線で見ていた。

 

 

「これが、今の貴方なんですよ」

 

 

穂乃果はそう言うと小宮の中で何かが弾けた。

そして、小宮の腕が振り上がり、穂乃果に向けて振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

「うるせぇ!!!!」

 

 

 

ドガッ!!!

 

 

 

「「「「「「⁉︎」」」」」」

 

 

 

 

その場にいた全員が目を見開いた。

小宮が穂乃果の頰を拳で殴ったのだ。

穂乃果は比較的に運動神経は良い方だ、しかし、それでも女性だ、男性の小宮には劣る。

避けれずに頰に防御もなしに頰に拳を叩き込まれた穂乃果は吹っ飛んだ。

殴られた穂乃果は地面に砂埃をあげながら倒れた。

 

 

 

「……っ!」

 

 

 

穂乃果は殴られた頰を抑えながら起き上がり、小宮を見た。

それに小宮の目は逆上して燃え上がり倒れている穂乃果にさらに殴る蹴るなどの暴行を加えた。

 

 

「全部全部全部全部全部全部全部お前のせいだ!!!! お前なんかがいるせいで!!!!」

 

 

ドガッ! ボゴッ! バキッ!

 

 

「うっ…! くっ!」

 

 

穂乃果は小宮に首を押さえつけられながら地面に押し付けられ、動けなくさせられたまま暴行を加えられた。

逃げようとしても、穂乃果は抑え付けられ動けない。

穂乃果はどんどん傷だらけになっていった。

我に帰り、穂乃果を海未たちが助けに行こうとした時

 

『フィアーー!!』

 

「ぐわっ⁉︎」

 

 

ポケモンの鳴き声とともに空き地に念力波が放たれた。

みんなが念力波の源を見ると小宮のエーフィが彼を睨みつけながらサイコキネシスで浮かび上がらせ動けなくしているところだった。

小宮がエーフィにまた怒鳴りつける。

 

 

「何しやがるんだ!!!! さっさと下ろせ!」

 

 

しかし、エーフィはそれを無視して小宮を鋭い目で睨みつけた。

ワルビアルたちも小宮を怒りのこもった視線で睨みつけている。

エーフィはさらにサイコパワーを増幅させるかのように両目を蒼く光らせた。

 

 

『フィアーーー!!!!』

 

 

「あ、ああっ! ぐわああああああ!!!!」

 

 

エーフィは凄まじいパワーの念力波を小宮に向けて放った。

凄まじいパワーの念力波を受けた、小宮は空中に舞い上がり、

 

 

『ビアーール!!!!』

 

 

ビシビシビシビシビシビシビシ!!!!

 

 

「ぐっ! ぐがっ! や、やめろ…! うわああああああ!!!!」

 

 

そこにワルビアルがそれに追い討ちをかけるようにストーンエッジを放った。

勢いがバトルのときと比べてないため、出力は抑えているのだろうがあたると痛いであろう。

小宮の身体は地面から飛び出した大量の岩の破片に命中したため至る所が血だらけになっていた。

 

 

『フィアーーーー!!!!』

 

 

 

「う、うわあああああ!!!! 助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

最後にとどめとばかりにエーフィがフルパワーのサイコパワーを開放した。

フルパワーのサイコキネシスを受けた小宮は吹っ飛び、隣の廃ビルにまで飛んでいった。

そして、5階あたりの錆びれた窓のガラスを突き破り放り込まれてしまった。

 

 

そして、彼が放り込まれた窓から変な音が聞こえたが彼は気絶したのか声が聞こえなくなった。

 

 

「「「「「「「「………」」」」」」」」

 

 

あまりの一瞬の出来事にみんなが呆然としていると、

 

 

『フィア…』

 

『ビアール…』

 

『ネール…』

 

『テラー…』

 

『ルシェーン…』

 

『ノクス…』

 

小宮の元ポケモンたちが怪我をしている穂乃果に近づいた。

 

「え? どうしたの?」

 

穂乃果が戸惑っていると、エーフィが傷口に顔を近づけた。

 

『フィア〜』

 

「⁉︎」

 

なんと傷口を優しく舐めたのだ。

見ると他ののポケモンたちも穂乃果の周りを囲み心配そうな視線を向けてくる。

エーフィ以外は身体が大きくて傷口を舐めたりすることは出来ないからだろう。

 

 

「ありがとうね、みんな、心配してくれて、でも私は大丈夫だよ!」

 

 

穂乃果は立ち上がり、ポケモンたちを見渡して1体ずつ撫でながらニッコリと微笑えんで言った。

しかし、傷が痛むのか引きつったような笑顔だ。

エーフィたちは自分たちの恩人に対しての、元主人のあまりの仕打ちに落ち込んだ顔になった。

ポケモンにも人間と同じく心がある。

だからこそ、「気にしないで」と言われると心が痛むのだ。

目の前の自分たちの恩人をこんなに傷つけたのは、勝利を得られるから従っていだけの主人だったが、それでも自分たちの元主人だ。

エーフィたちは穂乃果に対しての罪悪感で押しつぶされそうだった。

 

 

『フィア! フィア!』

 

 

その時、エーフィが仲間のポケモンたちを見渡しながら何かを話すように言った。

仲間のポケモンたちはエーフィの言ったことに一瞬驚いた顔をしたが、すぐに全員が力強く頷いた。

 

 

『フィア!』

 

 

そして、エーフィを筆頭にポケモンたちが穂乃果をが何かを決意したような瞳で見た。

そして、穂乃果に近づき穂乃果のモンスターボールをコンコンと叩いた。

 

 

「え? 何? みんなどうしたの?」

 

 

ポケモンたちの行動に穂乃果が困惑した。

エーフィたちは何かを訴えるように穂乃果を見ている。

 

 

「もしかして、穂乃果ちゃんにゲットしてもらいたいんやない?」

 

 

その行動を見て希が穂乃果に言った。

 

 

「私に?」

 

 

穂乃果が目をパチクリと瞬かせた。

海未たちも理解したのか穂乃果に言った。

 

 

「恐らく、自分たちの元主人の所業に罪悪感があるのでしょう、だからこそ、穂乃果の仲間になって役に立ちたいと思ってるのではないですか?」

 

 

「仲間にしてあげたらいいんじゃないかな、エーフィたちは穂乃果ちゃんに好感を持っているようだしね!」

 

「下手なトレーナーにゲットされるよりは、穂乃果先輩の方が良いと思うしね」

 

 

「みんな……」

 

 

海未たちもエーフィたちの願いどおり仲間に加えることを穂乃果に勧めた。

穂乃果はエーフィたちの目線に合うようにしゃがみ問いかけた。

 

 

「本当に私なんかでいいの?」

 

 

穂乃果が聞くと、ポケモンたちが頷きながら鳴いた。

返事は言葉が分からなくても分かるだろう。

穂乃果はそれを聞くと、ポケットから空のモンスターボールを6つ取り出し、エーフィたちにコツンと優しく当てた。

しばらくボールが揺れてポンと音がなった。

エーフィたちが穂乃果の仲間になった瞬間だった。

 

 

モンスターボールに自分からエーフィたちは入っていくように見えたのは見間違いではないだろう…

 

 

穂乃果はエーフィたちをモンスターボールから出すと、6体を見渡して言った。

 

 

「これからよろしくね! ワルビアル、エーフィ、プテラ、パルシェン、オノノクス、ハガネール!」

 

 

穂乃果がそう言うとワルビアルたちは『こちらこそ!』と言うように鳴き声をあげた。

穂乃果のポケモンであるヨノワール、ゲッコウガ、サーナイト、オニドリルも仲間が増えたことに喜びの声をあげている。

 

 

まるで、それは種族は違えど1つの家族のような光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー公安委員会 sideー

 

「「「「………」」」」

 

 

一方、一部始終を見ていた公安委員会の近衛たちはあまりにも驚きすぎて言葉がなかった。

公安委員会でもトップクラスの実力を持っている小宮をほぼ圧勝したことだけでも驚きだったのに、その後、ハガネールが死にかけ、相手がそれを必死に助け、小宮がポケモンたちに見限られ、相手に腹いせに暴行を加えた小宮を廃ビルに吹っ飛ばして、小宮の元ポケモンたちが、小宮とバトルした相手のポケモンに6体全てがなったのだから。

 

 

「「「「………」」」」」」

 

 

近衛たちはまだ理解が追いついていなかった。

吹っ飛ばされた小宮のことも心配だが、今はこの現状を理解したいのだ。

その時、

 

 

 

「おい、公安委員会とやらは、未だにこんな事をやっているのか?」

 

 

 

近衛たちが棒立ちになりフリーズしていると後ろから声がかけられた。

驚いてその声のした後ろを振り返ると2人の青年が立っていた。

 

 

1人はショートカットの黒髪に白髪の混ざった髪型に強靭な意志の宿っている瞳、冷たさを含んでいる整った顔立ちに似合っている、ただならぬ雰囲気が醸し出されている青年。

もう1人は髪を前で右に分けた茶髪の髪型に、大きく切れ長の瞳に高い鼻をしたジュノンボーイ並みの整ったルックスをほこりながら、頭の良さそうな知的な雰囲気を漂わせる青年だ。

 

 

「‼︎ 花谷大我さんに天城飛彩さん……!」

 

 

奈良が2人の青年を見て名前を呟き、怯えたような声をだした。

他の公安委員会のメンバーも2人を見た途端に冷や汗を垂らしている。

 

 

「まあ、何をしていたかはだいたい想像はつくが、さっさと消えろ!」

 

 

「「「「………ひっ!」」」」

 

 

ショートカットの髪型の青年がモンスターボールを取り出して荒川たちに怒鳴ると、荒川たちは蜘蛛の巣を散らしたように空き地から逃げていった。

逃げていった公安委員会のメンバーたちを見て2人が呟く。

 

「本当に口ほどもない奴らだな、昔もそうだったが本当にあいつら腐ってやがるな…」

 

 

「そうだね、俺たちがいた頃も公安委員会は腐っていたけどあの様子では何も変わっていないようだね」

 

 

ショートカットの青年が呟くと茶髪の青年も呟いた。

2人は今度は、空き地の真ん中にいて、今の怒鳴り声が聞こえたこちらを驚いたように見ている4人とポケモンたちを見た。

 

 

「さてと、医者を目指す者として彼女の手当てをしないとな、それと、彼女たちにも俺たちのことを説明しないといけないかもね、おそらく公安委員会と関わりがあると思われるだろうから」

 

 

茶髪の青年がそう言って、4人に近づこうとすると、やはり、公安委員会と話していたのを見て警戒されているのか身構えられた。

ショートカットの青年は面倒臭そうな態度を取っていたが誤解されるのは嫌らしく、茶髪の青年についていった。

 

 

ー公安委員会 side endー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー小宮 sideー

 

 

「う、う〜ん…?」

 

 

俺は目を覚ましすと知らない天井が目に飛び込んできた。

あの、空き地の後の記憶が咄嗟に思い出せなくて思考を巡らす。

空き地でポケモンたちが俺を裏切った後、俺を侮辱したあいつに然るべき処置をしようとしたら、突然、俺のポケモンたちから攻撃され吹っ飛ばされてからの記憶がなかった。

取り敢えず起き上がって辺りの様子をみようとすると、

 

 

「うっ! いててててて……!」

 

 

起き上がろうとすると、身体が激しく傷んだ。

自分の身体を見てみると、ワルビアルのストーンエッジやサイコキネシスでここに投げ飛ばされた時にできたのであろう傷が身体中に無数についていて血があらゆるところから流れていた。

俺は痛い身体に鞭を打ち立ち上がり、廃ビルのトイレに駆け込み、埃にまみれて汚れた鏡を見ると予想よりもっと酷いことになっていた。

顔には無数の岩の破片が掠ったりあたった跡があり、皮膚はボコボコになっていて誰が見ても『醜い』と言われるであろう顔になっていたからだ。

 

 

俺は拳を握りしめた。

 

 

「くそっ! くそぉっ! あいつ! 俺をこんな目に遭わせやがって! 必ず復讐してやる! 公安委員会のメンバー総出であいつをぶっ潰して! 公安委員会の権力を思いっきり使ってあいつをこの学園から追い出してやるぅ!」

 

 

俺は高坂穂乃果への怨みを募らせながら、近くにあった古びた掃除用具でトイレの鏡を割り、さらに、そこら中の物を壊して物に八つ当たりを始めた。

何年も使われていない古びた廃ビルの物は脆くて壊れやすく、音をたてて壊れていった。

鏡の近くにあった、枯れた花の挿してある花瓶を割り、錆びれた古いトイレのドアを凹むまで蹴りつけた、高坂穂乃果への怨みごとを言いながら、

 

 

「あいつが! あいつが! 全部全部全部全部全部全部あいつが悪いんだ! あいつのせいで俺はこんな目に遭ったんだ! 許せねぇ! 公安委員会は学園の正義なんだぞ! 公安委員会のやることが常に正しいんだよ! あのクソ野郎!」

 

 

俺は近くにある物を片っ端から壊していったが、高坂穂乃果への怨みは募るばかりだった。

 

 

 

 

 

「そこまでにしなさい」

 

「ああっ⁉︎」

 

 

 

 

その時、俺の背後から声がかけられた。

怒りで頭に血が上っていたためぶっきらぼうな返事になったが、誰なのか確認すると血の気が引いた。

 

 

「み、宮下さん…!」

 

 

ー小宮 side endー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、公安委員会のNo. 1の実力者かつトップである宮下だった。

小宮は宮下だと分かると途端に蛇に睨まれたカエルのように萎縮した。

宮下は空き地でのバトルの一部始終を見ていたが、あえて知らないふりをして小宮に何があったかを聞いた。

小宮はこれ幸いと思い、空き地で穂乃果たちに公安委員会に逆らい、暴行まで加えられ、こうなったのは穂乃果のせいだと宮下に伝えた。

さらに、自分たちのポケモンも穂乃果たちに取られたと伝えて、宮下に穂乃果たちを自分の代わりに潰してもらおうと考えていたのだ。

宮下は黙って小宮の話を聞いていたが、小宮の話が終わると冷ややかに小宮に言った。

 

 

 

「言いたいことはそれだけ?」

 

「え…?」

 

 

 

公安委員会に逆らったと言えば動くだろうと思っていたのに、予想外の言葉が返ってきたことに小宮が目を見開いた。

宮下は小宮を冷たい目で見ながら続けた。

 

 

 

「だからなんだと言うの? 調子に乗ってバトルに負けて、ポケモンを死なせそうになってあの子たちに助けられ、負けた腹いせにあの子に暴行を加えて、挙句にポケモンたちに捨てられて、最後にはあの子にポケモンを取られたくせに」

 

 

「⁉︎」

 

 

小宮はさっきより驚いて目を大きく見開いた。

なんで、宮下がそのことを知っているのだと思っていた。

宮下が廃ビルの屋上から一部始終見ていたことを知らない、小宮は、嘘を言ったことにさらに立場を失っているが小宮は、今はそこまで考える余裕がない。

さらに、自分のポケモンたちが穂乃果のポケモンになる前に吹っ飛ばされたためにその事を知らなかった。

宮下は続けた。

 

 

「それに、アンタ、私に嘘をついたわね。 そんな嘘吐きに協力なんてするわけないわ」

 

 

宮下の言葉に小宮は「違う! 誤解だ!」と宮下に言ったが全部見ていたため、宮下は鼻で笑うだけだった。

宮下はさらに小宮に追い討ちをかける。

 

 

 

「それに、アンタなんてもういらないわ」

 

「はあ…?」

 

 

宮下の言葉に小宮は一瞬何を言われたか理解できなくて、間の抜けた声を上げた。

宮下はさらに続けた。

 

 

「もう必要ないって言ってんの、アンタはいつも何かあれば暴力ばかり、ポケモンたちに自分勝手なことばかりをして見限られた。 たとえ、No.3の実力を持っていてもポケモンがいなければ意味がないわ」

 

 

その言葉を聞いて、小宮の顔が青ざめていった。

最後に宮下は小宮に顔を近づけると彼の耳元で言った。

 

 

「アンタは今日限りで公安委員会をクビよ、バトルに負けて、ポケモンも失ったアンタにはもう用はないわ」

 

 

その言葉を聞いて小宮は絶望の色に染まった顔になり膝から崩れ落ちていった。

宮下はそんな小宮を見て、カラマネロとマニューラを繰り出し、カラマネロのサイコキネシスで浮かび上がらせ、公安委員会のシンボルである黒い制服をマニューラの辻斬りで切り刻んだ。

下着姿になっても小宮は虚ろな瞳のまま動かなかった。

宮下はそんな小宮をつまらないものをみるような目で一瞥すると、「もうここには用はない」と言いたげに小宮に背を向けた。

宮下が出ていった後も小宮はしばらく立ち上がる事すらも出来なかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー宮下 sideー

 

「〜〜♪」

 

 

小宮との話の後、宮下は1人で気持ちを抑えきれずにいた。

実は自分も小宮のことを嫌っていたので、厄介払いができて嬉しいのだ。

さらに、気に入った相手である穂乃果の強さも見れたことにも満足していた。

 

 

(ふふふ♪ 聞いていた通り、あの子の強さはかなりのものだったわね! おまけに強さに加えてあの優しさ! 私の好みにどストライクだわ! さあ、どうやってあの子を私のものにしようかしら!)

 

 

宮下は心の中でそう言いながら廃ビルの廊下を歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを宮下が思っていることを穂乃果はまだ知らない。

 

 

宮下と穂乃果が直接対面する日も近いだろう…

 

 

 

穂乃果への今回の最大の受難は、もうすぐそばに近づいていた。

 

 

 

 




ご指摘、感想を良かったらよろしくお願いします。
少しやり過ぎたかもしれませんが…

次回の更新は来年の3月頃になります。


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音ノ木坂の双璧と呼ばれた2人

続きです。
長らくお待たせして申し訳ありません。


一方こちらは空き地。

 

小宮が彼のポケモンたちによって吹っ飛ばされた後の空き地に新たに響き渡る2つの声。

海未たちが怪我をした穂乃果の手当をしようとするとき空き地の入り口から聞こえたのだ。

そして、1人の青年が公安委員会の他のメンバーたちに怒鳴ると蜘蛛の巣を散らしたかのように空き地から逃げ出していった。

 

2人の青年は公安委員会の近衛たちを追い払うと穂乃果たちの元へ歩いてきた。

公安委員会のことを知っていたということは彼らと関係があるかもしれないと思い穂乃果たちが緊張の眼差しで2人を見た。

 

すると、茶髪の優しそうな青年が微笑みながら穂乃果たちに話しかけた。

 

「怖がらなくて大丈夫だよ、俺たちは君たちに危害を加えたりはしないからね、ただ、さっき殴られていた君の怪我の手当てをしたいだけだよ」

 

茶髪の青年がイケメンに似合うようなスマイルで穂乃果たちに話しかけるが、公安委員会と何か関係があるかもしれないという不信感が残り、警戒心は解くことができなかった。

 

「自己紹介が遅れたね、僕は天城飛彩、君たちの学校の卒業生で今はポケモンドクターを目指している学生だよ」

 

天城飛彩は自分の自己紹介が終わると、今度は自分の後ろにいる目つきの悪い男性を紹介する。

 

「こっちは花谷大我、僕の同級生で見た目は目つきが悪くて怖そうだけど、とてもいい奴だよ」

 

飛彩に自己紹介されると花谷大我も「よろしくな…」とだけ言った。

 

「大丈夫や、みんな! この人たちはさっきの公安委員会の奴らと違って良い人たちや! それにこの2人は凄くバトルが強くて在学中は【音ノ木坂の双璧】とも呼ばれてたんやで!」

 

自己紹介されても警戒心を解こうとしない穂乃果たちに2人が困っていると希が助け舟をだした。

口ぶりからどうやら2人と面識があるらしい。

 

「希先輩、この人たちと知り合いなんですか…?」

 

穂乃果が希に聞くと希が2人を改めて紹介する。

 

「そうや、改めて紹介するで茶髪の人が天城飛彩さん、音ノ木坂の卒業生でウチと同じ生徒会のメンバーであり元生徒会長やったんや、バトルもものすごく強いんやで! ちなみに、ウチはその時は庶務やった。 もう1人は花谷大我さん、この人は飛彩さんのライバル的存在で言わずもがなバトルはとても強い、そして、元公安委員会のメンバーやったんやけど…」

 

「っ!」

 

 

そこまで希の説明を聞いて『公安委員会のメンバーだった』という単語に穂乃果たちは敏感に反応し大我に対して身構えた。

それを見て慌てて希が顔の前でブンブン手を横に振り穂乃果たちに違うと言う。

 

 

「ち、違うで! 大我さんはさっきの奴らとは違う! 大我さんは公安委員会と言っても穏健派の方や!」

 

希の言葉に「穏健派?」と海未が聞き返す。

落ち着きを取り戻した海未を見て安心したのか希が説明を続ける。

 

「そうや、公安委員会と言っても今は分からんけど、当時は穏健派と過激派の2つに別れてたんや」

 

「どういうことですか?」

 

まだよく理解をしていないのか穂乃果がさらに説明を求めた。

希が説明を続ける。

 

「当時の公安委員会… 大我さんたち穏健派は公安委員会と言っても学園警察という名の名目をキチンと遵守して規則を破って抵抗する者にだけ最低限の制裁を加え処分を学園に促すという至って普通の学園警察としての組織、逆に過激派はさっきの小宮とかいう奴のような公安委員会という名を語り前にウチが説明した通り暴力に物を言わせて弱い人間から金品やポケモンをせびり取るヤクザこような組織、この2つに別れてたんや」

 

希はそこで言葉を区切り大我の方に目を向けた。

大我は「続けろ…」と希に静かに言った。

 

「その中で大我さんは穏健派のリーダーやったんや、まあ、過激派と穏健派は言わずもがな対立していて、過激派はことある事に穏健派に嫌がらせや暴力を振るっていたんや。 そして穏健派の人たちも過激派の暴力に屈して過激派に寝返る人も少なくなかったそうや… とは言っても、過激派は脅しの材料になるポケモンバトルの強い人だけを穏健派や一般生徒から過激派に入れ込んで、そうでもない人はポケモンや金だけを奪って男女問わず動けなくなるまで暴力を振るい、公安委員会から追い出すということをしていたんや… 酷い話やな… でも、大我さんはそんな過激派を壊滅させようと尽力してたんや…」

 

希はそこまで説明すると目を伏せた。

 

「でも、分かる通り過激派の方が圧倒的多数で多勢に無勢の状態で大我さんたち穏健派は壊滅、過激派は当時の公安委員会のメンバーで一番バトルの強い大我さんを公安委員会の過激派に引き入れようとしたんやが大我さんは穏健派の解散と同時に当時の穏健派のメンバーを引き連れて公安委員会を辞任したんや…」

 

「えっ…!」

 

その言葉に穂乃果たちは言葉が出なかった。

希も悔しそうに続ける。

 

「穏健派が壊滅し、大我さんたちが辞めた後は公安委員会の過激派はさらに横暴になったんや、過激派が大我さんたち穏健派を壊滅させたことや大我さんのバトルの強さを逆手に取られて『自分たちは無敵だ! 学園警察に逆らったら痛いめを見るぞ!』と言うスローガンを掲げ始めた。 こうなったら独裁者と一緒や… そこから学園生徒のみならず中学生や他の学校の生徒、一般人からポケモンを奪うというのが始まったんや… ウチら生徒会がいくら動いても無駄やった… 飛彩さんは公安委員会の過激派にバトルを申し込み壊滅を目論んだけど数で押し切られ敗北し、さらに『学園警察に逆らった!』と公安委員会が騒ぎ立て、教師陣に飛彩さんの有りもしない噂を誑し込み挙げ句の果てに生徒会から飛彩さんを追い出したんや!」

 

「「「「⁉︎」」」」

 

聞いていた穂乃果、海未、ことり、真姫は余りの公安委員会の過激派の酷い仕打ちに言葉が出なかった。

飛彩たちの方を穂乃果がちらりと見ると当時のことを思い出したのだろう悔しそうに唇を噛みしめていた。

 

「で、でも、それならどうしてさっきの人たちは逃げ出したんですか?」

 

ことりがさっき大我の声に尻尾巻いて逃げ出した公安委員会のメンバーの近衛たちのことを聞いた。

確かにこれなら近衛たちは穂乃果や自分たちにしたように大我たちにも強気に出るはずだ、なぜ怯えたように逃げ出したのか、ことりだけでなく穂乃果たちも分からなかったようだ。

 

希が説明を続ける。

 

「多分今の公安委員会にも穏健派のことが伝わってるからやろ…… 最後まで残った穏健派の人たちはみんなバトルが強い人やったらしいからな…… 過激派が総動員で穏健派を壊滅させたらしいし… せやから1vs1でバトルだと勝てる訳ないからと理解しているからやろう…」

 

 

希の説明を聞いて穂乃果は納得できた。

 

あの時、近衛たちは4人しかいなかったので大我たちにバトルでは勝てないと思い逃げ出したのだ。

 

恐らく大多数でいれば大我たちのみならず穂乃果とのバトルに小宮が負けても大我たちを壊滅させた時のように大多数で多勢に無勢状態にして穂乃果の仲間の海未たちもろとも強引に暴力を振るい、勝利を収めるつもりだったのだろう、なんとも卑怯な手だ。

 

公安委員会の卑劣さは再確認したが大我たちに対する警戒心は無くなったため穂乃果は大我たちに自己紹介をした。

 

それに続いて海未たちも2人に軽く自己紹介をした。

 

穂乃果の怪我の手当ては医者志望の飛彩が受け持ち、的確な処置のおかげで傷は早めに手当てが完了した。

 

 

 

 

その後は大我たちも交えて少し談笑をした。

 

大我と飛彩は今は大学生で飛彩はポケモンドクター、大我はブリーダーを目指しているのだそうだ。

 

穂乃果たちも廃校阻止のためポケモンリーグの出場を目指しているのだと明かした。

 

しかし、現在の生徒会長の絢瀬絵里がなかなかそれを認めなくて困っているとも話した。

 

海未やことり、真姫はバトルに勝っても認めようとしなかったなどと不満を明らかにしていた。

 

大我は「大変なんだな…」と言っただけだったが飛彩は態度が違ったことに穂乃果が気づいた。

 

飛彩は下を向き「未だに彼女はそうなのか…」と悲しげに呟いた。

希も「はい…」と消え入りそうな声で呟いた。

 

「………」

 

そんな2人に気づいたのは穂乃果だけだった。

 

 

 

 

(もしかして、生徒会長がやたらとポケモンリーグへの出場を認めないのは飛彩さんたちの事件が関係しているのかな…?)

 

 

希と飛彩のため息を吐く仕草を見て穂乃果は心中で呟いた。

 

 

 

そして、この穂乃果の読みが当たっていたことを穂乃果たちが知るのはもう少し先のことだった。

 

 

 

 

 

 

そして、自分たちとは違い別の人間が公安委員会の壊滅を目論んでいたことを知るのももう少し先だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー別 sideー

 

ここは、音ノ木坂学園の生徒会室。

ここに公安委員会を今度こそ壊滅させようと動いている人がいた。

 

「メンバー編成はこれで良いわね… さてと… 週末を利用して里帰りしてお祖母様の所から取ってきた私の最終兵器もあることだし… 今度こそ、私は誰にも負けないわ!」

 

その人物は金色の綺麗な髪を靡かせてそう呟いた。

そう、学園の現在の生徒会長であり学園最強の称号を持つ絢瀬絵里だ。

 

穂乃果とのバトルに負けた後、彼女は自分の生まれ育った故郷であり祖母がいるオトノキ地方からはるか離れた年中気温は氷点下であるとても寒い地方、ロォーシーアーン地方に里帰りしていたのだ。

 

彼女はそこから最終兵器というものを持ってきたらしい。

 

彼女はその最終兵器を使いかつて飛彩たちでも壊滅させられなかった公安委員会の壊滅を目論んでいるのだ。

 

絵里がそう独り言を言って息巻いていると。

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

その時、無遠慮に生徒会室の扉が開いた。

その人物はドサッとカバンを乱暴に生徒会室の机に置いた。

自分の世界に入り込んでいた絵里もいきなりの乱入者に驚いたらしく生徒会室に入ってきた人物を驚いた目で見た。

 

入ってきた人物はこんな容姿をしていた。

 

黒いツインテールの髪型で背が低くて紅い瞳、形の整った鼻と唇に少しつりがちの大きな目が勝気な印象を与える少女だ。

 

少女はそんな絵里をジト目で見た後、刺々しい口調で話しかけた。

 

「息巻いてるところ悪いけど、あたしたち以外でも公安委員会とバトルしてる奴がいるみたいよ、そして勝利して公安委員会による強奪を未然に防いだらしいし…」

 

「え⁉︎」

 

ツインテールの少女の言葉に絵里は驚いた。

すぐに「その人は誰⁉︎ 」と聞いた。

 

 

ツインテールの少女は絵里に特徴を伝える。

 

「…え? ええと…? 1年生の子が言ってたんだけどオレンジ色のサイドテールの髪型にアンタと同じ蒼い色の目をした2年生の子だったって… にしてもそんなバトルが強い生徒がいるなんて… ん? アンタ、どうしたのよ…?」

 

 

 

ツインテールの少女の説明を聞くたびに絵里は顔が怒りの表情な染まっていった。

ツインテールの少女もそれを見てギョッとした。

その子と絵里は面識がないとばかりに思っていたからだろう。

絵里はツインテールの少女の両肩をガシッと掴み顔を近づけて言った。

 

 

「何としてでも先に公安委員会を壊滅させるわよ!」

 

それにツインテールの少女が言い返した。

 

 

「な、ならその子に手伝ってもらえば…「ダメよ!」…ええっ⁉︎」

 

 

ツインテールの少女がそのサイドテールの2年生の生徒に自分たちといっしょに公安委員会の壊滅をしてもらおうと持ちかけるが絵里はそれを聞くなりその考えを否定した。

 

絵里は特徴を聞いて公安委員会の暴動を未然に防いだ生徒が誰なのか気づいた。

 

廃校阻止のためにポケモンリーグ出場を目指していると巫山戯たことを自分に言って自分を打ち負かした女子生徒だ。

そしてさらにクラス最強にも勝ち、そのクラス最強の暴動も収め、副生徒会長を救ったことで彼女に注目が集まっていたから自分もよく知っている。

 

絵里は穂乃果のことが異様に気に食わなかった。

そんな相手の手を借りるだなんて冗談じゃない。

絵里はツインテールの少女を鋭い目で睨みつけてまるで命令するかのように言った。

 

「私とあなたで公安委員会を壊滅させるわよ! 最初からそう言う手筈だったでしょう? あなただって公安委員会が憎いはずよ! あなたの居場所を奪ってあなたの1番のパートナーを奪ったんだから!」

 

「ぐっ‼︎」

 

絵里の言葉にツインテールの少女は顔を歪めた。

さして、ゆっくりと頷いた。

 

 

「そう、それで良いのよ、この計画に加担して公安委員会を壊滅させるのは私たち… そうよね、“矢澤にこさん”」

 

 

絵里にそう言われて矢澤にこは再び小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー? sideー

 

そして、こちらは別side、フードを深く被った人物が空き地の隣の廃ビルの3Fから空き地の様子を見ていた。

最初から一連の様子を見ていたため勝敗も知っている。

 

そして、その後、上から男子生徒の悲痛な泣き叫び声も聞こえた…

 

その人物はその泣き叫び声を聞いて小さく呟いた。

 

『ヤハリ小宮ハ切リ捨テテ正解ダッタナ… 宮下二根回シシタ甲斐ガアッタ… 彼ハ暴力バカリノ使エナイ奴ダッタカラナ… ソレニ引キ換エ…』

 

どうやらボイスチェンジャーを服に装着しているらしく声は機械からの穴埋めような声だった。

フードを被った人物は今度は小宮のバトル相手だった穂乃果に目をつけた。

 

 

『アンナ逸材ガイタトハナ、バトルノ腕モ確カナモノダッタシ、最後ノ救イ方モ気ニ入ッタンダナ』

 

 

 

 

どうやらその人物は穂乃果の強さに目をつけたようだ。

フードの人物は機械のアナウンスのようにそう呟くと『明日カラ調ベテミルカラ…」

とニヤリと笑って呟いた。

 

 

 

 




ご指摘、感想を良かったらお願いします。

受験生になるので執筆が遅くなります。
本当に申し訳ありません…


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公安委員会の暴動、再び

前回の続きです。
オリキャラが多いです。


大我と飛彩と知り合った日から3日過ぎ、1日の授業が終わった放課後、生徒たちがそれぞれの友人たちと帰ろうとしている中、それは起こった。

 

 

ピーン、ポーン、パーン、ポーン

 

 

校内放送がかかった、みんなが何事かと騒ぎ始める。

 

 

「全校生徒の諸君、今から面白いイベントを開催する。 校庭のバトルフィールドに来たまえ」

 

教師の声ではない生徒の声で言った。

生徒たちは不審がりながらもバトルフィールドに行こうとするが、面倒だという理由で『行かない』という生徒たちもいた。

しかし、次の言葉で生徒たちは全員動くことになる。

 

「来ない生徒は学園警察の公安委員会に逆らった罰として、公安委員会が裁きを下す」

 

「「「「っ‼︎」」」」

 

教室にいた生徒たちの肩がビクリと跳ね上がり、弁当を急いで片付けバトルフィールドに向かう。

それは、穂乃果たちも同じだった。

一緒にいる海未やことりもバトルフィールドに苦々しい顔をして向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーバトルフィールドー

 

バトルフィールドに着くと穂乃果たちが着くと、既に3学年の生徒がたくさん集まっていた。

バトルフィールドの真ん中には台とマイクが置いてあり、バトルフィールドの反対側には黒い制服の公安委員会の面子がニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべていた。

 

 

「「穂乃果、海未、ことり(ちゃん、先輩)!」」

 

その時、先に来ていたのであろう希と真姫とも合流した。

海未が副生徒会長であるため理由を知っていそうな希に問いかける。

 

「さっきの校内放送はやっぱり公安委員会の仕業ですよね?」

 

希は苦々しい顔のまま「そうや…」と頷いた。

 

「でも、なんで公安委員会のことがこんなに広まっているんですか⁉︎」

 

海未がさらに希に問いかけた。

 

希は公安委員会のことが広まっている理由を説明した。

 

公安委員会がなぜこんなに広まっているかと言うと、空き地の事件の後、小宮が起こしたことが広まったからだ。

 

公安委員会と一般生徒がバトルをして公安委員会が敗北し、以前から公安委員会の壊滅を目論んでいた生徒会がその勝利した生徒を探そうとしたからだ。

公安委員会の悪名はそれ以前からもそれなりに噂として広まっていたらしく、公安委員会を知っていた一般生徒たちもが公安委員会に勝利したその生徒を探そうとした。

そのため、生徒会がその生徒に公安委員会の壊滅の協力の要請の接触するために生徒たちに聞いて回ることにした。

もちろん、副生徒会長である希のところにもその案は来て、希も彼女なら本当に公安委員会の壊滅のキーパーソンになるはずと思っていた。

彼女の得意の占いより確信の持てるものだった。

これにより狭い学院の中では話題になり公安委員会のことと、公安委員会に勝利した生徒のことが同時に広まった。

 

ところが、ここで問題が起こった。

公安委員会に勝利した生徒を探そうとした次の日、生徒会長がそれを聞きつけ、希を含めた他の生徒会メンバーにすさまじい剣幕で怒鳴り込みにきたのだ。

『何でもその生徒に協力は絶対に認めない』だそうだ。

生徒会のメンバーがどれだけその案のメリットを説明しても生徒会長は聞く耳を持たなかった。

最も生徒会長は日頃から自分たちの案は殆ど聞かないので今回のことは相談しておらず、怒鳴り込みにきた理由も生徒会メンバーは分からなかった。

 

結局、生徒会長の強引な捩じ伏せにより、生徒会メンバーの協力要請の案はすぐに取りやめとなり、生徒会メンバーや生徒会長の信頼する人だけで公安委員会の壊滅という結果になってしまった。

 

希も絵里に協力要請の案を持ちかけたが聞く耳は持ってくれず、苛立った絵里から公安委員会の壊滅作戦から外されてしまった。

 

 

希が説明し終わると同時に公安委員会のメンバーであろう女子生徒がバトルフィールドの真ん中に設置させれている台に登った。

公安委員会のシンボルである黒い制服と共に不敵な笑顔を浮かべながら、マイクの音声調節をすると体育祭の開会宣言をするかのように語りだした。

 

「さあ、皆さん、お集まりいただきありがとうございます、私は公安委員会のNo.4である別府と言います。 素晴らしき私たち学園警察の公安委員会の姿を拝められて光栄でしょう?」

 

別府と名乗った女子生徒がそう言うと全員が『あんたたちが呼び出したんだろうが!』と心の中で思ったが今は何かを言おうものならどんな仕打ちを受けるか分からないので口をつぐむ。

公安委員会のNo.4と言うことは実力も相当なものなのだろう。

 

そして、壇上の別府は声を高めて続ける。

 

「しかし、嘆かわしいことに学園の平和を守り公正を遵守する優れた私たち学園警察の公安委員会の公務を妨害した生徒がいましてね、その愚かな生徒を断罪するために皆さんを呼んだのです」

 

『断罪』その言葉が全員の心に黒い重りのようにのしかかった。

公安委員会の『断罪』とは何か、そういう考えが全員の脳内を渦巻く。

 

「それは、こいつらです」

 

 

別府が言うと同時に公安委員会の男子生徒が2人の女子生徒をバトルフィールドに連れて来た。

 

1人はオレンジに近い褐色のショートヘアーの髪型であり、大きな金色の瞳と猫のように柔らかな唇をした元気な印象を与える女子生徒。

もう1人はカーキ色の髪色にカチューシャを付けてピンク色の大きな瞳と柔和な顔立ちから優しげな印象を与える女子生徒だ。

 

 

「っ⁉︎」

 

 

その2人を見て穂乃果は目を見開いた。

それは、空き地で公安委員会にポケモンを奪われそうになり自分が助けた凛と花陽だったからだ。

 

穂乃果の態度に真っ先に気づいた海未が穂乃果に知り合いかと聞くが真姫が説明する。

 

 

「あの断罪される2人、私のクラスメイトよ…」

 

「ええっ⁉︎」

 

 

真姫の言葉にことりが驚きの声を上げる。

別府がざわめくギャラリーを見てニヤリと不気味に笑い、凛と花陽を前に出して声を張り上げた。

 

 

「さあ〜皆さん! この愚かな2人は1年生の星空凛と小泉花陽というのですが、私たち公安委員会にポケモンバトルを身の程知らずにもほどがあるに等しいと言うのに挑んできましてね、当然、弱いトレーナーなので結果は敗北でした。 なので、学園警察らしく弱いトレーナーの元からポケモンたちを解放させてあげようとしたのですが拒否しましてね、注意すれば抵抗するばかり、なのでポケモンたちのためにもお仕置きをしようと思いましてね〜…」

 

 

凛と花陽はその言葉を聞いて肩を震わせていた。

誰もが暴論だと考えたが今日は放課後だが部活がなくて教師陣も帰っており、頼るものは何もおらず助けたら自分たちが被害を被るだけだと思ったからだ。

 

見て見ぬ振りをする生徒たちを見て別府は勝ち誇った笑みを浮かべた。

そして、急に優しい声色で凛と花陽の肩を掴んで語る。

 

「でも、私たちもただお仕置きをするばかりではありません。 みなさんも納得しないでしょう、なので、私たちともう一度この2人がバトルして勝利すればこの【断罪】はなかったことにしましょう、しかし負けたら弱くて使えないトレーナーなのでポケモンたちを解放するためにこの2人を【断罪】し、2人のポケモンは私たちが保護します」

 

「⁉︎」

 

別府は公安委員会のメンバーとポケモンバトルをして負けたらポケモンを保護という名の奪う行為をしようとするのだ。

一般生徒と公安委員会との勝負の結果は見えている。

凛も花陽も涙を堪えて自身のモンスターボールを握りしめた。

 

バトルフィールドでは公安委員会のメンバーが既にバトルスタンバイをしている。

 

そして、手前にいた凛が別府に押されるように反対側のバトルフィールドに強引に立たされた。

 

 

そして、ポケモンバトルが始まった。

 

ルールは1vs1のバトルだ。

 

 

凛の相手は空き地の時の相手だった荒川だ。

荒川は凛を見据えると「あの時と同様に無様な負け姿を晒すんだな!」と吐き捨てた。

 

バトル開始の宣言と同時に両者がポケモンを繰り出す。

 

凛はでんきタイプのサンダース、荒川はどく、じめんタイプのニドクインを繰り出した。

相性から見ても凛の方が不利だった。

結局、ニドクインの繰り出したサンダースに効果抜群のじめんタイプの技、ニドクインの大地の力でサンダースは戦闘不能となった。

 

次の花陽の相手はこれもまた空き地の時の相手である岩尾がつとめる。

岩尾も「あんたみたいな雑魚が私みたいな強者に勝てるわけがない」と毒を吐いてバトルフィールドに向かった。

 

バトルが開始され花陽はくさ、フェアリータイプのモンメン、岩尾はあく、ほのおタイプのヘルガーを繰り出した。

 

これも相性が花陽が不利だった。

結果的に花陽のモンメンは一撃もヘルガーに与えられず、ヘルガーの火炎放射で消し炭のようになり戦闘不能になってしまった。

 

力の差は圧倒的だった。

 

別府は荒川たちに敗北した2人を見下した目で見るとギャラリーを見て高らかに声をあげた。

 

「さあ〜皆さん! たった今、この2人が使えないトレーナーだということが証明されましたね! 私たちはこの2人のポケモンを今から保護します! あんな弱くて使えないトレーナーの元にいるより強者の私たちの元にいる方がポケモンたちも幸せになるはずです! さあ、早くポケモンを出しなさい!」

 

 

別府がそう言って寄越せと手を出した。

 

「い、嫌です…!」

 

凛たちは後ずさった。

ポケモンたちはトレーナーにとって大切な仲間だ。

凛と花陽はそれを手放すことができるはずがなかった。

拒絶な言葉を聞いた荒川と岩尾は花陽たちに詰め寄った。

 

「ああ? あんたらさあ、あたしたちがせっかくあんたたちのような使えないトレーナーからポケモンたちを解放してやるっていってんのよ? さっさとありがたく寄越しなさいよ」

 

「そうそう、あんたらなんかがいくら頑張っても使えない奴は使えない奴のままなんだよ」

 

余りの酷い言葉にギャラリーからも不平の声がザワザワと聞こえてきた。

 

「相変わらず最低な人たちですね…!」

 

「何であんな暴動が許されているのよ……!」

 

「生徒会は今日は地域のボランティア活動の報告として先生と市役所に行ってるからなぁ……! その隙を突いたという訳やな……!」

 

海未と真姫と希が公安委員会に怒りを燃やしている。

ことりは声には出さなかったが怒っているのは確かだ。

 

「………」

 

1人何も声を出さず俯いているのは穂乃果だ。

何かを考えるように黙っている。

 

 

 

バトルフィールドではいつまでもポケモンを差し出そうとしない凛たちに荒川たちが殴りかかろうとした。

しかし、別府がそれに『待った』をかけた。

そして、再び全員を悪どい顔で見渡しとんでもない事を言ったのだ。

 

 

「なら〜 今からあなたたちギャラリーの人たちから1人代表で私たちとポケモンバトルしてもらいまーす、それで、私たちに勝利できたらこの2人の罪は見逃しましょう。 しかし、負けたらその人もトレーナーとして使えない奴なのでポケモンを保護します〜」

 

この言葉にギャラリーの空気が凍った。

つまり、自分たちのポケモンまでも奪うというのだ。

 

別府は凍りついたギャラリーを無視するかのように明るい元気な声でマイクを片手に持った。

 

「このマイクを受け取った人がみんなの代表でーす、ではいきますよぉ〜」

 

別府は結婚式で花嫁がブーケを投げるかのようにマイクを放り投げた。

これが、結婚式のブーケなら取り合いをするところだが、今のこのブーケは悪夢のブーケだ。

全員がマイクから離れようと走り始める。

 

 

パシッ

 

 

 

「⁉︎」

 

 

 

その時、誰かがマイクを掴んだ音がした。

別府は顔を輝かせて、ギャラリーはその人物を哀れそうに見た。

 

 

悪夢のブーケならぬマイクを取ったのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのバトル… 私が相手になります」

 

 

その人物は取ったマイクを放り投げるとオレンジ色のサイドテールの髪を風になびかせながらバトルフィールドに立った。

 

荒川と岩尾はその人物を見て凛たちを恫喝する事を忘れて目を見開いた。

 

その人物は自分たちが空き地でポケモンを奪おうとした時に颯爽と現れて自分たちを返り討ちにした人物だ。

 

その人物は凛と花陽に微笑みながら話しかけた。

 

「大丈夫だよ… 私があなたたちを助けて見せるから」

 

それを見て凛と花陽のほおがこんな状況だと言うのに自然と緩んだ。

((また、助けにきてくれた!))

2人は顔を見合わせて同じ言葉を思い、微笑みあった、そして。

 

((きっと、もう大丈夫!))

 

2人は何故かそう思えてならなかった。

 

 

「へー、貴女は誰なのかしら?」

 

初対面の別府は自分が投げたマイクを受け取り、バトルフィールドに来たサイドテールの人物に薄気味悪い笑みのまま問いかけた。

 

 

「私の名前は、高坂穂乃果です」

 

 

 

穂乃果が無表情で別府に返すと、別府はニヤリと笑い、荒川たちに目で合図をおくった。

 

そして、公安委員会と穂乃果のバトルが始まるまで時間はかからなかった。

 

 

 




ご指摘、感想を良かったらお願いします。

受験生になるので執筆はかなり遅くなり、次回がいつになるか分かり兼ねますが次回も読んでくださると嬉しいです。


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