真なる格闘家を目指して(嘘) (レッドブルモンスター)
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プロローグ 根性値はステータス
一部修正したりして適当に書いた作品なんで気軽に読んでくれたら嬉しいです。
突然だが、どうやら自分は転生したらしい。
二次創作でよくあるアレだ。
別にトラックから人や動物をかばったなんてかっこいいことはしてない。
どちらかといえば俺自身、結構恥ずかしい死に方をしたっぽいが、自分の傷を抉るようなことをしたくないのであえてこの場では語らないでおこう。
それはさておき、死んだ後は何やら真っ白な部屋にいてそこには天使や女神様なんかが…という事はなく、なんか市役所っぽいところにいた。なんか想像してたのと違うな〜と思っていると事務員みたいな人に連れられて『事故課』という部所に連れてかれた。
どうやら死に方によって担当する課が変わるらしい。
周りにはお年寄りや若い人、子供や親子連れなんかが席に座って待っていた。
暫くするとアナウンスで自分の名前が呼ばれた。
そこに向かうと何故か職員一同が俺に向けて頭を下げていた。少々戸惑ったが、職員の一人が事情を説明してくれた。どうやら職員の人が残業で疲れていたらしく、手違いでに『天寿リスト』という所に送られ、不可避の死をさせられたらしい…というか残業とかあるのか。
一応、生き帰ることはできるのか?と聞くと「出来るは出来るけど肉体がズタボロの状態だから戻っても死ぬことには変わりない」と言われた。
その時は何というか…呆然としていた。まだやりたいことだってたくさんあるというのに。
彼女も出来ていないしDTを捨てておらず、何よりも鉄拳7のギース様を使うことが出来ないということに悲しみを覚えた。
一人、悲壮感に浸かっていると部所の上司のような人が
「転生…する?」
と言ってきた。
なんか瑞鳳の「食べりゅ?」みたいな口調で言ってきたのは無視するとして、『転生』…そんな簡単にやってもいいのかと疑問に思う。早い話がこちらのミスで本来全うするべき人生を失わせた事に非を感じて、緊急措置として『転生』をさせてくれるらしい。
本来ならば喜ぶべき事なのだろうが、職員の話によれば飛ばされる場所がかなりヤベー所らしい。何でもその世界には魔法があるらしく、笑顔で人を爆☆殺する魔砲少女がいるヤベー世界らしい。
ーーー何それまどマギより怖い
もう少しマシな世界はないのかと聞くが、現在空いている枠がそこしかないと言われた。俺もさすがに生き返って早々殺されたくないというとあちらの世界で生きていくための『能力』を提供してくれるらしい。
ーーーどんな能力でも?
「少なくとも常識の範疇を超えない程度には」
ーーーほほう…
その時に俺が頼んだ能力は
『格ゲーの再現能力』
それを職員に言うと何故か驚かれた。
職員曰く前に来た人たちはその世界にあった魔法なんかを頼んでいてらしい。別にわざわざその世界のルールに合わせる必要はないし、自分はただ己のロマンを叶えたくてこの能力を求めたのだ。
例えば真・昇竜拳とか、レイジングストームとか、風神拳とか…ゲームでしかできなかった技を現実でできるなんて素晴らしい事じゃないか!
熱く語ったら軽く引かれた、解せぬ。
なんやかんやあって色々手続きを済ませ別世界へと送られる門にいるのだが…職員一人がお見送りするだけだった。
てっきりこういうのは神様とか天使あたりがやるのかと思っていた。
「神様だって人一人だけで動くわけないよ。それに今は天使も総出で天界にいないよ、バカンスに出掛けてるのさ」
ーーーへぇ、バカンスなんですか。ちなみにどこなんですか?
「立川」
ーーーわあ、ずいぶんと近場だった
そんな事を話しながら俺は光照らす門へと歩いて行った。
深夜、街頭で照らし出された薄暗い夜道を灰色のパーカーにフードを被った一人の少年がレジ袋を片手に夜道を歩いていた。
「すっかり暗くなっちまったな…。早いとこ帰んないとあいつに怒られちまうな」
少年が一人、そう呟きながら駆け足気味で走っていると
「すみません」
「ん?」
女性の声が聞こえた。
少年が後ろを振り向くとそこには誰もおらず、空耳かと思い首を傾げるが
「こっちです」
再び声が聞こえた。
少年が声の方に視線を向けるとそこにはバイザーを被った、月の光に照らし出された碧銀の髪をツインテールにした『大人』の女性が街頭の上に立っていた。
「あー…お姉さん、自分になにか?」
「はい。突然で申し訳有りませんが、あなたに決闘を申し込ませていただきます」
(oh…なんてこったい)
少年はすぐさま理解した。この女性が巷で話題になっているストリートファイトを仕掛けてくる通り魔だという事に。
知人にも気をつけろと言われたが自分なんかが食いつくはずもないとタカをくくっていたが、結果はこのザマだ。
「そうかい…。けど名前を名乗らねえのはちと良くねぇんじゃないか?」
「…その通りですね、では名乗らせていただきましょう」
女性はバイザーを取り外す。
「カイザーアーツ正統、ハイディ・E・S・イングヴァルト。覇王を名乗らせていただいてます」
女性の顔はとても美しく、すべての顔のパーツが完璧に整っている。しかし少年が一番に驚いたのは左右の目の色が違うオッドアイ、まるで宝石の様に美しく、僅かに見惚れてしまった。
しかし彼女は覇王…古代ベルカの王の名前を語ったのに違和感を感じる。
「ヘイ、このご時世に昔の王様の名前を名乗るなんて変わってるぜ。まるで自分がその末裔…いや、本人みたいな口ぶりしてんな」
「その通りです。私がその王なのですから」
正直、ちょっと痛い設定を抱えたかわいそうな女性かと思ったが彼女の構えを見て考えは一転した。
「なるほど…伊達というわけじゃないか」
少年はそう呟きながらバリアジャケットを展開し、大人モードになる。少年のバリアジャケットは先ほどと変わらぬフードを被ったパーカーだが、彼の両腕には肩まで備え付けられた赤い籠手ことを身につけていた。
「まあいいさ。せいぜいあんたの相手になれるよう、努力はするさ」
「では…行きます!」
少女もといアインハルトは言うと同時に地面を強く踏み込み、少年へとパンチを叩き込む。
少年はそれを避けず、腕をクロスしてパンチを真正面からガードする。
ぶつかり合った瞬間、周りの空気が震え轟音を響かせるが少年はビクともせずそれを受け止めた。
少年はすぐさま両腕のクロスを解き、少女の拳を払って右拳を構え正拳突きを放つ。
「チェストぉ!!」
少女は片腕でそれをガードするが
(くっ!?なんて重い拳…!)
しかし少年は間髪入れずに攻めていく。
少女のガードした僅かな硬直時間の隙をつき、上段後ろ回し蹴りを叩き込み腕を振り払い、ガードを崩す。
「《空斬脚》!!」
そのままスラッシュキックの要領で少女の腹部へとクリーンヒットし、少女を吹き飛ばしていく。
少女は腹を抑え、むせながらも立ち上がり先ほどの攻撃について考える。
(重い…ただただ重い一撃だ)
だがアインハルトは挫けず、少年に向けて駆け出し再び殴りかかる。
両者は相手の攻撃を捌き、受け流し、防御し、隙を見つけては蹴る、殴る、投げるなど互いに譲らない。
スピードでは確実にアインハルドが上回っているが、パワーは確実に相手の方が上だと理解する。
今までアインハルトはこれまでに多くの者と拳を合わせてきた。
無論、その中にも男はいたが彼はそれとは比べものにならないほどの強さ。
しかもそれだけではない
(この男…強化魔法を使ってない!)
本来、非力である女性の身で、拳での撃ち合いでは強化魔法を使用し攻撃力や防御力を高め闘うのだが、この男はバリアジャケット以外に一切の魔法を使用していない。
「…なんで」
「どうして『魔法』を使ってないかって?よく言われるんだよな」
少年はアインハルトの考えを見透かしたかのように呟く。
「別に、使えば使えるけど…俺はあんまり魔法使うの得意じゃないんだからさ、詳しくは言えないけど『秘密の力』で戦ってるんだよ」
「…そうですか。なら、私は自分の拳をもってあなたを討ち倒します!」
アインハルトは再び構えを取り、先程よりも強く踏み込み少年へと駆け出す。
(魔力が拳に集まってる…デカイのが来る!)
少年はガードするべく、先ほど同様腕をクロスしようとするが
「《バインド》!!」
(ゲッ!?)
アインハルドが拘束魔法を発動し、鎖のようなものが少年の体全体に巻きつきその場に固定する。
そしてアインハルトは少年のお留守となったボディに自分の持つ絶対の必殺技を放つ。
「《覇王断空拳》!!!」
「ガァッ…」
アインハルトの放った必殺技《覇王断空拳》を食らって苦悶の声を漏らす少年。
あまりの威力に少年の体を衝撃が突き抜け、背後の街道が砕けるように割れる。
そして少年は意識を失ったのか脱力したかのように頭を垂らす。
(あっけない…)
手応えを感じながらも、アインハルトはそのように思った。
あれだけ威勢の良い言葉を吐いておきながらこの程度で終わると、少年に対し軽く失望していた。
少年は気絶したのかピクリとも動いておらず、アインハルトはバインドの拘束を外した。
「いいパンチだったぜ」
「ッ!何!?」
しかし、先程まで沈黙していた少年はバインドの拘束が解けたと同時にアインハルトの眼前にまで迫り、油断しきっていた彼女の腹に右回し突きを叩き込む。
「セイッ!」
「ぐっ…」
その衝撃に腹を抑えるアインハルト。
少年は右拳を後ろに回し、正拳突きの体制へと入る。
「ハアァァァァァ……チィィェストォ!!」
「……ッ!」
少年の放った拳は胸部へとヒットし、アインハルトは今までに味わったことのない衝撃と痛みが襲い、思わず倒れそうになるが少年はそれで終わらずさらに追い討ちをかける。
「セイセイセイセイセイ!!!」
胴体を始め、腹部、肩部、腕部に次々と拳を叩き込む。
「うおぉぉぉ…チェストォ!!!」
そしてトドメと言わんばかりの紫電を纏った正拳突きを放つ。
その威力はアインハルトの《覇王断空拳》をも超える勢いで放たれ、アインハルトは数メートル先まで吹き飛ばされ、地面へと倒れこんだ。
「だが…まだ詰めが甘い」
少年はそのように呟きながら、バリアジャケットと大人モードを解除する。
「これに懲りたらもう通り魔なんかするんじゃねぇぞ」
そのように告げ、その場を去ろうとするが
「待って…ください…」
後ろを振り向くと、フラフラになりながら立ち上がっていたアインハルトがいた。
少年はまだやるのかと思ったが彼女は立つのもやっとという状態なためすぐに警戒を解く。
「まさか…あなたがあの…『鉄拳王』…だったんですか」
その言葉を言い終えると同時にアインハルトは今度こそ地面へと倒れ伏したのだった。
そして一人、破壊し尽くされた公園で少年が一人叫ぶ。
「人違いだ!」
「オラァ!こんな夜中になにやって…って何だこりゃ!?」
背後から声が聞こえ振り向くとショートヘアーに赤い髪の少女が立っていた。
「あ!おい、これはお前が…「し、失礼します!」って、え!?ちょ、ちょっと!!」
少年は大人化が解けたアインハルトを彼女に半ば押し付ける様に、その場から凄まじいスピードで逃げるように走って闇の向こうへと姿を眩ませて行った。
「な、なんなんだよ…」
このミッドチルダには一つの伝説が存在する。否、『生きる伝説』が存在した。その者は武器を使わず、ただ己の拳のみでありとあらゆる強者を叩きのめす、それはまさしく『真なる格闘家』。
彼らは男をこう呼んだ。
『鉄拳王』と
「なんだこれは…」
パソコンのとある画面で、ワナワナと手を震わせて『勝手』に作られた自分の特設サイトを見てそう呟いた。
「なんだよ《鉄拳王》って…別に俺は世界平和(戦争)するようなアトムみたいな髪型をしたおじいちゃんじゃないんだってのに…」
俺こと《風間四郎》はこの世界に転生したのだ。最初は大いに喜んだのだが多くのトラブルや天界のアフターケアがない状態での生活はかなり厳しかった。最初は子供達でも参加できるような少しばかしでかい大会なんかに参加したりして、食い扶持を稼いでいたのだが何度も闘っている内に、知らない間に自分が勝手に伝説化させられてしまった。
一時期は根も葉もない噂が立てられ強化人間や殺し屋、古代ベルカの隠されたもう一人の王など、どんどん設定が捏造されやがてこんな二つ名がついた。
酷い時には何十人もの武器を持ったやつに囲まれて、果たし合いという名のリンチをされかけたりした事もあった。最近では自分が住んでいた安アパートが特定されてしまい、入り口前は大量の野次馬。今は人目につかない場所でテント暮らしと親愛なる隣人とともに協力しながら生活し、顔バレしないよう普段からフードを被りながら昼夜逆転の生活をしている。
「まったく…少しは普通の生き方をしたいよ…」
四郎はぼやきながら照らし出される月を眺めていた。
主人公がアインハルトに対して放った技は『鉄拳7』の主人公キャラ、風間仁のレイジアーツで、見た目もまんま風間仁のコスチュームです。
また気がむいたら更新していこうと思います。
それではまた次回、お会いいたしましょう。
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第1話 ゲーセンでの乱入対戦は緊張する
気持ちの良い日差しが差す朝に自然あふれる森の川の前で一人の青年がバリアジャケットを展開し、目を瞑って佇んでいた。
「……フー……」
ゆっくりと呼吸を整えながら目を開き、拳を前に出し構える。彼は体の中に周る『氣』を拳へと流す。
すると
バチッ!
彼の手に稲妻が纏わり付いた。そしてその拳のまま、両腕を自分の体の方に引き掌から大量の氣を放出。それは青いボールのような物へと変わっていき、バチバチと稲妻が宿っていく。
「ハアァァァァァ…」
さらに力を高めてゆき、やがて大きさはバスケットボールほどの大きさになる。
「オォォォォォ!」
青年はそれを流れる川へと放つべく、腕を前に出す。
「電刃!波動kってアババババ!?!?!?」
しかし突如として氣の塊に纏っていた稲妻が青年に流れ、ビリビリと体を痺らせながらその場に倒れこんでしまう。放った塊はそのまま川の水面へと飛んでゆき、爆発音を響かせながらあたりに雨のように水しぶきが舞う。
「…また失敗だ」
服の一部が黒焦げになり、大の字で倒れた四郎がぼやく。彼が放った技は『ストリートファイターV』に登場するリュウのVトリガー『電刃練気』を組み合わせた
「『電刃練気』は出来たんだけどな…。やっぱり『電刃波動拳』はケンの師匠、剛拳の技だからそんな簡単には出来ないか〜」
そう言って土埃を落としながら立ち上がり、岸に打ち上げられた魚を数匹拾い自分の住まいであるテントへと戻って行った。
暫く歩くと今の住まいである紺色のテントへと辿り着く。一度自分のテントで黒焦げた服装を取り替えて、自分の隣のテントの住人に声を掛ける。
「お〜い、朝だぞ〜。いい加減起きろ〜」
テントの入口のチャックを開けると中には寝袋に身を包んだ少女がスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた。
「むぅ〜…あと5分…」
「ほほう…いいのか?俺がせっかく取ってきた魚を全部頂いちゃって」
「はーい!起きたー!」
「…まずは寝癖をどうにかしろ。色々凄いことになってるぞ、ジーク」
テントの隣人、それは世界公認の次元世界最強10代女子『ジークリンデ・エレミア』だ。
「そう言えばこの前は帰りがやけに遅かっなー。何かあったん?」
むしゃむしゃと俺が作った焼き魚を頬張りながらしゃべるジーク。彼女との出会いは最初に俺がこの森に目をつけ、先にテントを張っていたのだがいつの間にか勝手に俺のテントを占領し、今日からここが自分の住まいと言い張る始末。
当時、平穏な生活とは無縁な中で唯一のオアシスとも言えるこの場所を奪い合うべく、互いに拳を交えた。あの時はまだ俺自身が未熟というのもあったがそれでも勝負は互角。長きに渡る戦いの末、結局最後は互いに相打ちとなって終わった。
それ以降は、協力しあって済むという条件で両者は納得はした。
「あー…例の通り魔に襲われちまってね」
「あれま。それで、そいつはどうなったん?」
「通り魔は何かオッドアイの女の子で自分が王様だか何だか言ってたよ。なかなかいい筋してる奴だったけど、まあ結局は『レイジアーツ』で返り討ちにしたよ」
「ふーん…というかか弱い女の子相手に腹パンするとか最低ちゃう?」
「血みどろキャットファイトやってるおまえらが言うか」
俺も詳しくは知らないがジークは昔、『エレノアの神髄』という技で相手の手の骨を砕くという事を試合中に起こしてしまったらしく、以来それがトラウマで最近は大会には参加していないらしい。
「それで?その子とやりあってどうだった?」
「どうだったって…何が?」
「実力や、四郎から見てどないやったんか?」
「……」
少なくとも、俺が思うに二種類の人間がいる。
一つは自分の力を誇示するために戦う者。自分こそ最強やら、俺が気に食わないから勝負を挑んでくる…そんなとこだ。
もう一つはただ純粋に戦いたい者。自分の力がどこまで及ぶかを試したいと、伸びしろがある者か俺と戦いたいというだけの人間がいる。
彼女はどちらかと言えば前者の方だろうが。
「……悪くなかった。踏み込みも、動きも、戦い方もな。ただ…」
「ただ?」
「戦っている時に何度も違和感を感じたんだ。まるで強迫観念に駆られてるように『そうでなくてはいけない』…そんな風に感じたんだ」
彼女がなぜ多くの人間にストリートファイトを仕掛けたのか、最初は自分の強さを誇示するためと思ったがそれとはまた違う『なにか』。けど今の俺にはそれを知る術はない。
「あーもうこの話はやめだ。飯食ったら続きをやるか〜」
「ま〜たあのビリビリするのやるん?」
「違えよ。とりあえず次は八極拳の稽古さ」
『八極拳』とは中国拳法の一種で打撃技が主体の武術だ。太極拳や蟷螂拳とは違い、美観を追求せずにただ実戦に特化した武術でもある。この武術を使う者は鉄拳では『レオ』、ストリートファイターでは『ユン』『ヤン』、そしてkofでは『シュンエイ』『テリー』なんかがいい例だろう。
四郎は以前、作成した等身大の人形を近くに生えていた木の後ろに紐で括りつけ、自分は木の前へと立ち
「フン!」
地面を強く踏みしめ、右拳で木を打ち抜く。すると木の後ろの方でパァン!という破裂音が響く。それを確認するべく背後に回ると先程備え付けていた人形が見るも無残に粉々となっていた。
「うへぇ…やっぱりやばいな、この『寸勁』って技」
『寸勁』とは中国拳法の技の一種でわかりやすく言えば『鎧通し』。拳から放たれるエネルギーを鎧という壁を通し抜けて内臓へと伝える技だ。たとえバリアジャケットを着ていても衝撃はモロに内臓へと伝わっていくだろう。更に恐ろしい考えとして『真・昇龍拳』の要領で相手に打撃を与えた後、体内に氣を流し込み爆発。あら不思議!外面は綺麗で内臓がグチャグチャとなった死体の出来上がり!
…笑えねぇ
「昔の人は凄いこと考えるもんだよな…」
そんなことを考えながらも夕方まで黙々と修行をする四郎であった。
「おい、いたか?」
「ダメだ、どこにもいねぇ」
「確かこの公園なんだよな」
(ちっくしょう!一体全体どういうことだ!?)
夜、夕飯をスーパーで購入し帰り道である例の通り魔に襲われた道を通ると、何故か武装した少年少女達がうろうろしていた。
(まずったな…まさかあの時の戦いが動画サイトに上げられていたとは)
彼らの話を盗み聞きすると以前の通り魔との戦いが何者かによって撮られていたらしく、今までやっと沈静化していた伝説が再び熱を持ち、我先にと俺を討たんと多くの者が集まっていた。
まるで犯罪者のような扱いだ。
(見つかったらまた面倒だ…。こっそり帰んないとな…)
そう考えながら四郎は身を潜めながら歩を進めた。
「えっと、その…手合わせお願いします!」
(なぜこうなった…)
天を仰ぐ彼の目の前には、緑と赤の瞳を持つ少女がこちらに頭を下げていた。
次回はどのスタイルで戦っていくかはまだ迷っています。
拳で戦うかそれとも能力を行使して戦うか。
意見をくれたらありがたいです。
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第2話 負けることも学びの一つ
いやマジで驚きました。
どれくらいありえないかと言うと三島一族が、笑顔でちゃぶ台囲んで食事するという夢を見るほどの衝撃を受けています。
今、俺の目の前には緑と赤の瞳を持つオッドアイの金髪幼女が頭を下げている。何故こうなったのか、事の発端は例の通りが武装した子供達との戦闘を回避するため、公園内にある森を抜けて別の通りを抜けた所にこの少女がいた。
少女は俺の存在を認知すると同時に驚きの声を上げようとしたが咄嗟に口を閉じ森へと引き込んだ。
…うんこれ普通に犯罪だわ
いくら焦っていたとはいえ、犯罪スレスレの行為をするのはあまり良くないと思ったがそうでもしなければ武装集団に俺の居場所がバレてしまう。とりあえず少女にそう説明すると何とかわかってくれたようだ。
何とか武装集団から離れてようやくマイホームに帰れるかと思いきや、どうやらこの少女も俺が目当てで公園を彷徨いていたとのこと。俺と手合わせを願うために頭を下げているのだ。
(…どうするか)
正直言って迷っていた。件の通り魔の事もあり、ここで派手にやり合うわけにもいかないし何より相手は武術を習ってるとはいえ本気でやるわけにもいかない。
下手をすれば彼女の信じる武道を『壊してしまうかもしれない』。
俺は今まで多くの者と戦ってきた。その中には俺との圧倒的差に絶望し挫折する者、武の道を捨てるというものまでいた。目の前にいるそんな『希望』を壊すのは決して許されることではない。
(ならば…)
四郎は必ず戦う前に相手に必ず聞くことを少女に向けて放つ。
「一つ聞く」
「は、はい!」
「お前は…なぜ戦う?」
戦う理由、それはとても重要な事だ。やましい考えを持つ者、くだらない思いを抱く者、自画自賛する者…もし彼女が『真の格闘家』ならば答えられるはずだ。
本来あるべき答えを
「私は…守りたいんです。大切な物を…」
「大切な物?」
「私は今までみんなに守られてきました。だけど…守られるだけじゃ嫌なんです!今度は私が皆を守る!だから私は強くなるために戦うんです!」
「………」
正しい
これこそ『本来あるべき答え』。きっと、彼女なら乗り越えられるだろう。内心、感心しながらも四郎は拳を構える。
「……いいだろう。構えろ」
「ッ!は、はい!」
四郎は大人化しながらバリアジャケットを展開し、少女も同じく大人化しバリアジャケットを展開する。少女の姿は長い金髪の髪を青いリボンでサイドポニーにし、服装は黒を基調としたジャケットを身につけている。
能力はいらない
戦うなら己の肉体で十分
俺の事を知りたいか?
ならば拳で語り合おうではないか
四郎は両拳を前に出し構え、格闘スタイルは『三島流喧嘩空手』で挑む。
「そういえばお前の名前を聞いてなかったな…」
「ヴィヴィオ…高町ヴィヴィオです」
「そうか…では」
「いざ尋常に」
「勝負!」
戦いの合図が始まると同時に両者は一斉に駆け出す。四郎は地面がひび割れるほど踏み込み、一気にヴィヴィオと間合いを詰める。ヴィヴィオは迫り来る四郎に、四郎は立ち向かってくるヴィヴィオに殴りかかる。
(ッ!…ダメだ!)
ヴィヴィオは自分の中の『聖王』が囁く。アレと拳をぶつけては、アレをガードしてはいけないと直感で理解する。しかし既に拳は振るわれてしまっている。ヴィヴィオは咄嗟に顔を横に傾けて、四郎の拳をギリギリのところで回避する。四郎も同様に首を傾けて避けていた。
ブォン!!
ヴィヴィオの背後の道路が衝撃で壊れる。
(寸でのとこで避けたか…いい判断だ)
ヴィヴィオの行動に感心しながらも四郎は左拳で少女の腹を打ち抜こうとするが、ヴィヴィオは右拳を引きバックジャンプで回避する。両者は一定の距離でにらみ合い、相手の隙を伺いながら攻め時を待つ。
相手の動きから察するに流派はストライクアーツ。ボクシングのような素早い動きで相手を翻弄しつつ強烈な打撃を与えるスタイルだ。対してこちらの『三島流喧嘩空手』はパワーを重視したスタイル、一撃一撃はまさしく必殺。だが相手に当たらなければ意味をなさない。
(考えも仕方ない…まずは攻めて相手の出方を見る!)
四郎はヴィヴィオへと突っ込んでいく。ヴィヴィオは独自のステップを踏みながら、四郎の拳を余裕を持ちながら回避し隙をついてパンチを当てる。しかし四郎は殴られても怯まず、ヴィヴィオに拳を振るうが素早い動きでどんどん避け、的確に攻撃を四郎へと当てていく。
(なるほど…例の通り魔とはまた違う戦い方だな)
彼女の動きはシンプル兼単純な動き、避けて攻撃する。ヒット&アウェイな戦法だ。しかし如何にシンプルな戦い方でも極限までに研ぎ澄ませばそれはやがて大きな武器となる。今の彼女は何にでも化けられる宝石の『原石』。
才能があると言えるだろう。
(しかし…マニュアル通りの戦い方をする者ほど『ありえない事』に対処はできないだろう)
ならば見せよう
本当の戦い方というものを
彼女は未知との遭遇に興奮していた。何せ今、彼女の目の前にいるのは格闘界の生ける伝説、みんなの憧れともいえる存在『鉄拳王』と拳を交えているのだから。
(すごい…!1発1発の拳にものすごい威圧感を感じる!)
自分と同じオッドアイの少女、アインハルトとは比べものにならない程の強者の威圧を感じながらも、彼女は戦いを楽しんでいた。自分の実力が伝説に通用すると。
(動きはしっかり見えてる。後は油断せず、しっかりと攻撃を当てれば…!)
コーチやリオ、コロナから教わった戦い方を思い出しならば行ける。うまくいけば勝てるかもしれない…彼女にはそれほどまでに心に余裕が生まれていた。
少年は再びヴィヴィオへと突っ込んでくる。
(来た!どっちから来る?右…左…真っ直ぐ!)
ヴィヴィオは突っ込んでくる少年の拳を避け、右拳でストレートを放つ。きっと避けて反撃をするだろうと、少年が回避するルートを想定しながらも、牽制のための拳を少年へと振るった。
しかし
バギィ!
(…え?)
それは、ヴィヴィオの考えとは異なる物だった。なぜならヴィヴィオの振るった拳は『避けられるもの』。しかし、少年はそれを避けずあえて顔面で拳を受け止めた。
予想外、ヴィヴィオの経験上こんなことは初めてであろう。基本に忠実であるほどありえない事態に人は混乱する。それはヴィヴィオも例外ではない。
(硬直した!この瞬間を待っていた!)
四郎はヴィヴィオの一瞬を狙って拳を振るう。
(ッ!大丈夫!まだ避けられる!)
しかしヴィヴィオはすぐに冷静さを取り戻す。先ほどの拳は既に見切っているから避けられる。そう思っていたが
ヒュン!
「ア…!?」
(……え?)
ヴィヴィオの腹にまるでハンマーで殴られたかのような衝撃が襲う。ヴィヴィオはゴロゴロと転がりながら遠くまで吹き飛ばされてしまう。
(どうして?)
腹を抑え、混乱しながら立ち上がる。一瞬油断したとは言え、見切っていた拳だ。
だが、さっきの拳は今までの『ソレ』とは訳が違った。
疾すぎたのだ
(まずは1発だな…)
四郎がヴィヴィオに放った技、それは『鉄拳』において最強と謳われた技であり彼の切り札ともいえる技《風神拳》だ。《風神拳》は瞬速の強い踏み込みからアッパーを繰り出す技であり、そのスピードは常人でもやっと見れるほど。しかし四郎はそれのさらなる上位版を使用した。
その名も《最速風神拳》。通常の《風神拳》とは違い、体の中に流れる氣を瞬間的に爆発させ、体の筋肉を最大限にまで発揮し目に見えぬ速さで放つことができる。
しかし、この技は氣の燃費が非常に悪いためそう簡単に出せる技ではない。現に四郎は僅かながらも視界がぐらついでいる。
(これ以上はまずいな…『アレ』で決めるか)
四郎は意識を何とか保ちながら、ふらついているヴィヴィオに急接近する。
「ハァァァァ……チェェストォ!!」
「あぐ…!」
ヴィヴィオの腹に強烈な正拳突きを放つ。
「セイセイセイセイセイ!!!」
そして休む暇もなく、四方八方から拳の嵐を浴びせる。
「デヤァ!!」
ヴィヴィオが倒れそうになったところを《風神拳》のアッパーで打ち上げ、四郎はヴィヴィオが落ちてくる前に手を円を描くように回す。
「トドメだ!!《剛掌波》!!!」
ドォン!!!
ヴィヴィオが四郎の前に落ちてくる瞬間、彼女の胴体に両手を当て発勁技《剛掌波》でヴィヴィオへと放った。当たった瞬間、まるで大砲を撃ったような音が辺りを響かせ、彼女はぐったりとその場に倒れ伏した。
「…精進するといい」
これこそが風間四郎の混合技、通称『三島スペシャル』だ。
今回、作者が独自に考案した混合レイジアーツ、通称『三島スペシャル』は風間仁の正拳突きからのオラオラ、次に一八の風神拳アッパーで打ち上げ、そして最後に平八の剛掌波でトドメという構成となっています。
相変わらず戦闘描写が下手くそだぁ…。
あ、あとヴィヴィオと四郎が拳を振るうシーンは鉄拳6のopをイメージしたものです。
次回からはkof系統の技が出てきますのでお楽しみに
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第3話 攻撃は最大の防御
夏だというのにリアルがクッソ忙しいくて書く暇がなく、中々ネタが浮かばなくてここまで伸びてしまいました。
代わりと言っては何ですが今回は少し長い内容となってます。
それではどうぞ。
戦いを終え、息を吐く四郎だが内心ではかなり焦っていた。
(っておいおい!やっべー!!)
いくら勝負を挑んできたとは言え相手は自分と同じくらいの小さな女の子。それだというのにいくらムキになってたとはいえ、本気スタイルの『三島スペシャル』を使ってしまったのだ。
(生きてる…よね?)
ヴィヴィオの安否を確認するべく、恐る恐る彼女へと近寄る。近くまで来ると彼女の呼吸音が聞こえるのがわかる。どうやら気を失っているようだ。
(ふう、大丈夫そうだな。とりあえず、まずは起こさないとな)
四郎はペチペチとヴィヴィオの頬を突くが、なかなか起きようとしない。
(うーむ、起きないな…ここに放置して帰るって言うのもアレだしな。とりあえず近場のベンチに寝かそうか)
四郎はでヴィヴィオを持ち上げながら、公園のベンチへ運んでいく。
(…う…こ、ここは?)
ヴィヴィオは痛む身体によって朧げながらも意識が覚醒する。身体に浮遊感を感じる、誰かが自分を担いでいる事がわかりゆっくりと瞼を開く。そこには先ほど自分が勝負を挑んだ『鉄拳王』がお姫様だっこで自分を担いでいるのだ。
(え?え?)
突然の出来事に頭が追いつかないヴィヴィオ。しかし、そんな状況でも一つだけわかる事があった。
(そうだ…私、負けちゃったんだ…)
あの『鉄拳王』と少しの間だけ拳を合わせ、僅かとはいえ互角に渡り合っていたがやはり心のどこかでは悔しいと感じていた。しかし、それと同時に自分はまだ頑張れる、強くなれると確信していた。
(私もいつか、この人みたいになりたい)
道は見えた
あとは私がそれについていけるかだ
(ふぃ〜…とりあえずここに寝かせてっと)
四郎はヴィヴィオを運び終え、ベンチで横に寝かし終え自分は近くの街灯に寄りかかり、彼女の事について考察する。
(そういえば、前に襲ってきた通り魔と色は違うけど同じオッドアイなんだよな)
巷ではそういうオシャレが流行っているのかと思ったがカラコンという訳ではないようだ。しかし、彼には気になる点がもう一つあった。
(何だろうな…あの時の動きといい、まるで『場慣れ』しているというか)
あの時、四郎が振るった拳を寸前で避ける姿はまるで歴戦の戦士のように感じ取れ、例の通り魔の少女とどこか似た雰囲気を漂わしてもいた。
(…考えても仕方ないか。しかし何だろうな?『高町』。どこかで聞いたことのある名字だ。確か前に聞いたことがあったような…)
四郎が必死に過去の記憶を引き出そうとしていると
「う…」
「お、気がついたか」
少女が呻き声を上げながらゆっくりと目を覚ます。どうやら意識が戻ったようだ。
「あ…私は」
「すまなかったな。こちらも加減なしでやってしまって」
「え?いやいや!こちらこそいきなり勝負を挑んだりして!…迷惑でしたよね?」
「そんな事はない。久方ぶりに楽しめたよ」
そうですか、とホッとするヴィヴィオを見て四郎も心のどこかではホッとしていた。どうやら心は折れていない、強い子だと感心する。
「やっぱり強いんですね。『鉄拳王』さんは」
「『鉄拳王』はやめてくれ。それにな、周りからはそんな風に言われるが俺はこれでもまだまだなんだ」
「え?」
四郎の言葉にヴィヴィオは驚いた。あれ程の強さを持っていても彼自身がまだまだと言うなんて。
(ぶっちゃけ本当にまだ力不足なんだよな…。《電刃波動拳》はてんでダメだし、あと《覇王翔吼拳》は出来てもタクマ・サカザキの《覇王獅咬拳》はまだ無理だし…)
彼の力不足の基準は置いといて、四郎は未だに力を極めていないことは確かだろう。
自分は決して最強ではないと自覚している。努力はしていると言えど、それも能力のおかげでもあり自分の力とは呼べないのかもしれない。しかしそれでも俺は毎日、この世界に来た時、雨の日も風の日も馬鹿みたいに拳を振っていたんだ。
彼女もあれ程の力を手に入れるのに多くの努力を惜しまずしてきたはずだろう。
「…じゃあ、あなたは何のために戦うんです?強くなるために戦っているんですか?」
「……俺は」
四郎はヴィヴィオの素朴な問いに答えようと口を開こうとした瞬間
突如として四郎目掛けて『ピンク色のビーム』が飛んでくる。
「なッ!?」
四郎はそれを瞬時に察知し、自分に飛んでくるビームに驚きながらも『K'』の高速移動技《ブラックアウト》でその場からスライディングするように回避する。先ほどまで寄りかかっていた街灯は見るも無残に壊されていた。
「くそっ!一体どこのどいつが…」
四郎は悪態をつきながらビームが放たれた場所へと目を向けるとそこには白いバリアジャケットを纏い、手には金色と赤いコアが特徴の杖を持つ茶髪ツインテールの女性だった。女性は空に飛んでこちらに杖を向けていた。
「あ、あの人は…」
「なんだよ、まさか知り合いか?」
ヴィヴィオが震えた指で女性に指をさしてこの様に言った。
「な、なのはママ…」
「おかーさん!?」
まさかの身内登場!
しかも今はこいつはなんと言った?確かに今、『なのは』、その様な言葉を口にしていた。
(ま、まさか!)
ここでようやく彼女の名字の疑問が解けた。ヴィヴィオの名字は『高町』、そして俺に攻撃してきた女性を『なのはママ』と呼んだ。つまりここから導き出される答えは一つ。
(管理局のエースオブエース 高町なのはだとッ!?)
『高町なのは』、時空管理局という国家組織の一員で今までに数多くの事件を解決してきた実力派魔導士だ。その強さはまさしく『魔王』の如くと言われている。そんな彼女がどうしてここにいるのか、そんな考えで頭が一杯になっているとなのはが口を開く。
「ヴィヴィオ、もう安心してね」
「あ、安心?何を…」
「大丈夫よ。その男に乱暴されたんでしょ?今から彼とちょっとO☆HA☆NA☆SIするからそこで待っててね」
(う〜んおかしいな!なんか『お話』のイントネーションがおかしいし、それに俺が暴漢扱いされてるな!?)
一体どこでそんな風に見られたのかはともかくとして、まずは相手の怒りを抑えなくては…
「え〜とですね、お母さ「お母さんと呼ぶなァ!」ふお!?」
突然怒鳴ったと思うと急にこちらの顔めがけてビームを飛ばしてくる。体を捻ってなんとか避けたが、いくら非殺傷設定とは言え顔はまずいだろ
「よくも…よくも私のかわいいヴィヴィオの純潔を奪って!しかもそれをお母さんと?私は絶対に認めないよ!」
「違うよなのはママ!?」
事態はさらにややこしくなり、なのはは自分の周りに魔法陣を複数展開し大量のビームを発射する。四郎はそれを《ブラックアウト》で回避しながらこの状況の打破する方法を模索する。
(どうする?後ろの道を通って逃げれば武装集団と鉢合わせ。かと言って前に逃げれば管理局のエースが立ち塞がってやがる…)
まさしく四面楚歌、詰みとも呼べるこの局面。下手をして後ろに逃げれば追いかけてきたなのはと武装集団との乱戦になる恐れがある。かと言って話し合いでの解決はもはや不可能。もし潔く罪を認めようとするのならビームの嵐が飛び交ってくるだろう。
やはりここは逃げる他ない
(とは言えだ…相手は戦闘のプロフェッショナル。そんな簡単には行かないはずだ)
逃げるとは言えどさすがに無傷で逃げ切るのは無理だ
なら自分がやるべきことは一つ
(相手にある程度のダメージを負わせて戦線離脱!絶対に倒すだなんて思っちゃいけないぞ…)
四郎は覚悟を決め、《ブラックアウト》を止めその場に止まり拳を掲げる。
「
四郎は掲げた拳に氣を込め、自分の足元に力一杯、地面が割れる勢いで叩きつける。
「《パワーゲイザー》!!」
すると四郎の足元から膨大なエネルギーが間欠泉のように噴き出し、四郎はロケットのように吹き飛ばされる形で、なのはの直上へと飛ぶ。
「Vトリガー、発動!」
彼は重力の法則に従って落ちながらも、豪鬼のVトリガー《怒髪衝天》を発動。自分の体に赤いオーラが宿る。これによって自分の放つ技のスピードと反射神経、さらには自分の体内の氣を更に高める。
なのはは自分に向かって落ちてくる四郎目掛けて大量のビームを放つ。四郎はそれに対し、自分の持つ氣を片手に集中させ紫色の弾を作り上げる。
「《斬空波動拳》!!」
四郎は自分に迫り来るビームを《斬空波動拳》を飛ばして相殺していく。
しかし
(くっ!数が多すぎる!)
なのはが展開する魔法陣から放たれるビームは数十にも及ぶ。対してこちらは《怒髪衝天》での自己強化はしてるとはいえ、あれほどの数を連続発射していても相殺しきれず、数の暴力には勝てはしない。
(致命傷になる攻撃だけを相殺しろ!それ以外は無視だ!)
ビームが肩や腹、頬などを掠めながらもなのはへと落ちてゆき、距離は10メートルまでとなった所で、四郎は右腕を自分の直上へと動かし手刀の形にする。
「うおおおおお!」
「なッ!?」
その状態のまま、真下にいるなのはに急降下し渾身の一撃を放つ。
「《禊》!!」
四郎は落下速度と氣を纏った手刀をなのは目掛けて振り下ろす。なのはは咄嗟にレイジングハートでガードするが
「うおらあああ!!」
「ッ!?」
四郎はそんなものは関係ないと言わんばかりに手刀に力を込め、そのままなのはを地上へと叩きつけるように落とし、ドォン!と音を響かせ、公園の街路に大きなクレーターが空く。
「ハァハァ…ヴィヴィオ、あとのことは頼むぜ…」
少なからずともこれで時間は稼げるはず。だがこちらも無傷ではない、氣を大幅に消費してこのままでは倒れるかもしれない。後のことはヴィヴィオにまかせて早いとこここから離れなければ…、そう思いながらゆっくりと歩を進めようとするが。
「ッガ!?」
何かが足に絡みつきその場でこけてしまう。痛みを堪えながらも自分の足元を見ると何かリボンのようなものが足に絡み付いていた。
「バインド…!」
何者かによって自分の足が拘束されていた。今、この場でこれができるのはただ一人のはず。四郎はぎこちながらゆっくりとクレーターの部分へと首を動かすとそこには大量の魔力を放出しながらレイジングハートをこちらに構えたなのはの姿がそこにあった。バリアジャケットは所々が土埃で汚れている。
「…一応念のため言っておくけど、私とちょっとOHANASIしましょう?そうすればこんな事はしないよ?」
「へっ、よく言うよ…」
ニコニコと顔で笑ってはいるものの目は明らかに笑っておらず光はない。でかい攻撃でこちらを仕留めるつもりなのだろう。
(Vトリガーの制限時間が近づいてる…確実に決めなくては)
少しづつだが、しかし確実に赤黒い稲妻が消えようとしている。足は拘束され、逃げだす前にこちらがやられる。ならば自分も相手の攻撃を真っ向から受け止める他ないだろう。
「「ハァァァァァ……!」」
なのはは魔力を高め、四郎は自分の中にある氣を全て自分の掌へと集中させる。勝負は一瞬、少しでも氣を緩めれば全てが持ってかれる。
そして
「ディバイン…バスター!!」
なのはは身動きが取れない四郎にトドメと刺すべく、ディバインバスターを放つ。
「うおおおお!《
四郎は迫る極光に対し、掌に集中させていた氣を地面に向けて打ち付け炎の波動を炸裂させる。するとどうだろうか、氣の塊が弾けた瞬間、その場に天まで届こうというほどの巨大な氣の柱が現れる。それにディバインバスターが衝突しせめぎ合う。その衝撃は凄まじく、思わず目を覆ってしまう程の光量と、風圧でコンクリートの地面がめくれる程でもあった。
拮抗はしばらくの間続いたがお互いの持つエネルギーが尽き、少しずつ消滅していった。そして、光の柱が消えた先になのはが見たものはというと
「…やられた」
そこには誰もおらず、ただバインドが無理やり引き千切られた形跡だけが残っていた。
「む〜…遅いな〜」
四郎のテントで一人ゴロゴロしているジーク。彼がここを出て既に2時間は経っていた。彼が通うスーパーはここから片道数分程度なので本来ならこんなに遅くはならないはず、また挑戦でも申し込まれて帰りが遅くなったのだろうという考えにふけっているとテントの外からガサガサという音が聞こえた。
四郎が帰ってきたのかと思い、ジークがテントから外に出ると
「お〜今日も帰りが…ってどしたん!?ボロボロやないか!」
ジークが目にしたのは彼のトレードマークである灰色のパーカーはボロボロで一部肌が露出しておりそこには傷や打撲など、怪我をしており彼も立つのがやっとなのかフラフラとしていた。
「ああ…ジークか…ただいま」
「ただいまって…何があったん!?」
「それなんだが…今は…ちょっと…倒れるからあとはよ…ろし…」
「え!?お、おい!」
四郎はジークにそう告げ、その場に倒れこんでしまった。
そういえばこの小説、いつの間にかお気に入りが900件を突破してるのにさっき気が付きました。
こんなガバガバ設定の小説に興味を持っていただき本当にありがとうございます。
この小説が続くよう頑張っていきます。
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第4話 人は魚で殴られると死ぬ
あと少し短めです。
四郎は目が覚めると見知らぬ場所に立っていた。あの後、意識が何度も消えかけボロボロの体を引きずってマイホームまで戻ってこれたという記憶はある。
それだというのに自分が今いる場所はウユニ塩湖の様な場所に立っている。周りを見回しても綺麗な空と、湖の水面しかなく、人が一人もおらず自分だけがそこにいた。
「…まさか死んじまったか?」
ここはこの世界のあの世なのだろうか、そんなことを考えていると後ろでパシャッ…と何が近づいてくる音がする。後ろを振り返るとそこには
体長2メートルの熊が四郎の目の前に立っていた
「ッ!?うおおおおお!?」
思わず尻餅をついて後ずさりする四郎。パシャン!とズボンが水に浸かったがなぜか濡れはしなかった。
(何故こんなとこに熊が!?)
突然の事で困惑する四郎、もしかして喰われるのかと思ったが熊は動かずじっと四郎の事を見つめていた。てっきり襲いかかってくるのかと思ったがそれ以上に彼はその熊に見覚えがあった。
「まさか…平八のペットの熊か?」
『熊』
初代鉄拳から登場するキャラで平八のペット兼友達。格ゲー史上最も異色なキャラとして有名なのだが、というかそもそも何でこいつがこんなとこに…。
すると熊が俺に手を差し出してくる。警戒しながら近づくとその手には何か封筒に入った手紙のような物があった。
「まさか…俺にか?」
「 (・ω・)」
熊は喋らないが雰囲気で何となく取れと言っているのがわかった。熊にお礼を言って紙を手に取る。どうやら俺宛の手紙らしい。
「差出人は…あの部署の人から?」
かつて俺がこの世界に送る際に担当していた人で、門を通るまでお世話になった人だ。
「一体なんだろうか…」
紙を開くとそこにはこう書かれていた。
「ええっとなになに?…『異世界での生活はいかがお過ごしですか?やはり前の世界とは違って刺激に溢れていらっしゃるでしょう』…その刺激のせいで俺は殺されかけたんだけどね…」
そんな愚痴をこぼしながら続きを読んでいく。
『貴方がいる場所はいわば夢の中、我々は貴方の夢に干渉する事は出来ないので代わりにうちの部署のマスコットである熊に伝言を頼みました。本題に入りますが、実は前に貴方の能力で重要な物があったのを忘れていました。全部とまではいきませんがそちらに一部『武器』を送らせていただきました』
「『武器』…?」
色々とツッコミどころが満載なのは無視して、封筒を調べると中には赤い十字架のペンダントの様な物が入っており、よく調べるとデバイスのようだ。試しに使用してみるとホログラム型の画面が開かれ、内容を見ると
「おお、これはすごい!マスターレイヴンの小刀にビリー・カーンの六角棍、それにバルログの鉤爪まである!」
一部とはいえそれでもかなりの数の武器が収納されていた。さすがにマキシマの武装やアリサのデストロイモード(チェンソー)までは入ってなかったが…。
「というかレオの鉄球まで入ってる…これは武器カテゴリに入るのか?」
実際、前にもそれっぽい感じの武器が欲しいなも思っていたが、デバイスのカタログなんかを見るととても子供の小遣いで買えるような金額ではないという事で諦めたりした事があった。というか子供だけで買えるはずがない。
『…以上が今回同封した物です。時間をあけてまた新たに武器を支給させていただきます』
手紙の内容を見る限り、また近いうちに新たに武器が支給されるらしい。今度はどんな武器が来るのだろうと心のどこかでワクワクしているていると、ある事を思い出す。
「あれ…ちょっと待てよ?俺、ここからどうやって戻ればいいんだ?」
手紙には俺の夢の中と書いてあったがどうやって目覚めればいいのか。試しに湖の水で顔を洗ったりしたがこれといって変化はない。水も飲んだりしたが味はなく口に入った瞬間に消えて無くなってしまう。
どうすればいいかと悩んでいると手紙の最後にこんな事が書かれていた。
『最後に、夢から覚める方法なんですがそちらにいる熊さんが現実世界に戻す方法を知っているのでご安心ください』
「ああ、ちゃんと帰れるのね」
このまま永遠に熊と夢の世界にいるなんて事態はどうやらないみたいだ。四郎はさっそく熊に夢から覚める方法を教えてもらおうと後ろを振り返ると
「(「・ω・)「がおー」
「ぶふぉッ!?」
突如として自分の腹に強い衝撃が走る。よく見ると熊の右拳(?)がボディにめり込んでいた。突然の奇襲に対処できず四郎はそのまま空中へと打ち上げられてしまう。そして熊は湖に手を突っ込むとどこから取り出したのか、新鮮な『鮭』を取り出し、鮭の尻尾を掴みバッドのように構える。
そして
カッキィーーン!!
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
落ちてくる四郎を鮭の芯(?)で捉え、さながらまるでプロ野球選手のようなな美しいフォームでフルスイング。四郎はそのまま空へと飛ばされ、意識が白く塗りつぶされていった。
「……ハッ!?」
目が醒めるとそこは見慣れたテントの中だった。よく見ると自分の着ていたパーカーはいつの間にか脱がされ、ところどころに包帯や塗り薬を塗ったあとが見受けられた。
「ど、どないしたんや!?」
テントの入口から隣人のジークが慌てて駆け込んできた。
「あ、ジーク…」
「四郎、目を覚ましたんかいな!?よかった〜…」
あの後、どうやら俺は3日近くは寝ていたらしくその間にジークが俺の傷の治療をしてくれてたらしい。ジークに誰にやられたとか色々と問い詰められたりした。
「…というわけさ」
「あー…そりゃまた災難やったな。いきなりあんな格好で来られたからうちがビックリしたわ。というか相手は仮にも管理局最強の魔導士やで?よくそんなのと対面して生き残れたな」
「そりゃまあ…死に物狂いだったからな」
あの時の戦いを思い出すと今もゾッとする。そんな事を考えているとジークが四郎のパソコンをとあるサイトの画面を見せる。
「ほれ。これ見てみい」
「ん?…ゲッ!?」
そこには『激戦!魔王VS鉄拳王』というタイトルが付いた動画で写し出されている。記事には『あの管理局のエースと互角!勝負は引き分け』と書かれ、これのせいで今やネット中お祭り騒ぎが起きてる始末。
「おいおい勘弁してくれよ…。これじゃ出歩けないじゃないか」
「しばらくほとぼりが冷めまで待つしかないっちゅうことや。…それよりも、四郎」
「なに?」
「もう次からはあんまり無茶したらあかんよ?あんたが傷ついたら…その…うちは…(ゴニョゴニョ」
「え?今なんて?」
なぜか顔を真っ赤にし、モジモジするジーク。後半は何を言っていたかはわからなかった。
「と、とにかく!今後無茶はせんとってな!?」
「お、おう」
なぜ自分が怒鳴られたのか理解していない四郎だった。
「やっとだ…見つけだぞ『鉄拳王』…!」
そんなやり取りを、森の向こうからひとりの人物が見ていた。
「今度こそ貴様を…お前を倒して、私の強さを証明する!」
はい、今回は新たに主人公が渡されたのは『武器』です。
まあ武器と言ってもまだ全部は渡されていません。数でいうと大体10個位の武器が支給されました。
とはいえ、まだ武器を使って闘うのは少し先になるでしょう。
そして最後のはネタバレでオリキャラという事になっています。
どんなキャラなのかはお楽しみに。
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第5話 汚いさすが忍者汚い
遅れた理由は言い訳させて頂くとリアルが忙しくて書けなかったのと体調を崩していました。
久々なんでクオリティが下がってるかもしれません…次回からはもっと早く投稿できるよう頑張ります。
あと今回の話では人によって不快に思う部分があるのでご了承ください。
あの事件から既に一週間が経ち、その頃には傷を治しながらも新たに得た『武器』を用いて着々と修行を進めている四郎。今は修行場所である開けた森の中で一人、自作した鉄拳の木人を真似たハリボテの前に立っていた。
四郎は裾の中に仕込んでいた『トランプ』のカードを3枚、空に放り投げる。本来ならそのまま落ちてくるはずなのにカードはクルクルと空中で回っている。
「…いけ」
四郎が合図をすると同時に3枚のカードが一斉に木人に向けて発射される。カードの一枚はまるで刃物のように木人の腹に突き刺さった。その内の2枚は木人の肩や顔を掠めめるだけで隣の木に刺さってしまう、
「うーん、うまくいかんな…」
彼が真似ているのはKOFに登場するキャラであるオズワルドの戦闘スタイル、カード暗殺術『カーネフェル』を習得しようと励んでいた。
「やっぱり停滞させれるのが最高3枚だけど、一度に撃つと命中率が悪くなるな」
オズワルドは格ゲーの中では少し特殊なキャラで、一番の特徴は飛び道具の『滞空』。《Q》と呼ばれる技で飛び道具であるトランプを自らの頭上に投げ、その場に滞空させコンボ最中にほぼノーモーションで撃ち込む事が出来る。
しかし欠点としては自分がダメージやカードを投げる最中に攻撃を食らうなどすると、滞空が解けてしまう。ここまではゲーム基準ではあるのだが、一番難しい点はというと常にカードに氣を集中させながら戦うのが難しいのだ。目の前の相手に集中しながらも『滞空』の保持に努めるのがどれほどまでに大変なことか。
(だがしかし!俺は諦めんぞ!《joker》を放つその日まで決して諦めんぞぉぉぉぉぉ!!!)
あの後、カードに纏わせていた氣の量を誤って木人に斬りつけたところ、首がスパッと斬れ落ちてしまった。
あとでちゃんと直すからゆるしてちょ(´・ω・`)
修行を終え、自分のテントに戻ってきた四郎だが、ここである違和感に気づく。
(…またか)
眠りから覚めたあの日から妙に殺気と視線を感じるようになった。最初はジークを狙っての事か、はたまたジークの追っかけかと思ったが最近になってこの殺気は自分に向けられていることが分かった。大方、相手の目的は薄々と理解はしている。
リベンジを求めてか、もしくは復讐か。
大体は3:7の割合で復讐で狙われていることが多いが、その襲撃自体もう数えきれない程、もちろん全員返り討ちにしている。しかし今回は他のやつらとは違う点があった。浴びる程の殺気を当てられているというのに
しかし今のところはこちらを見ているだけで相手は攻撃に移ろうともしない。出方を窺っているのか好機を待っているのか…。
「まあ、なるようになるさ」
相手が挑んでくるならこちらも対抗するまで、精々寝首を掻かれぬよう警戒は怠らないでおこう。そう考えながらジークを起こそうとテントに向かうと中には誰もおらず、自分宛の手紙が置かれていた。中を見るとどうやらジークのマネージャーに呼び出しを受けたらしく、今日は帰れないとの事らしい。
(あいつも大変だな…)
それもそうだろう、彼女はすでにプロの格闘家という枠に入っている。それに比べて俺はファイトマネーを稼いでチマチマと生きているなんとも悲しい男か…。
少しネガティブな気分になっていると机の上に何やらチラシが置かれているのに気づく。気になって見てみると近場のショッピングモールのチラシらしく、項目の一つに女性物の可愛らしいお洋服にいくつか赤ペンで丸が書かれていた。
今までずっとジークが戦っていることが当たり前だと思っていたが、彼女も年頃の女の子だ。こういうのにもやっぱり憧れを持っていたのだろうか。そんな事を思いながら適当にページをめくると気になる項目を見つけた。
「ん?『アイスカーニバル』…?」
どうやらモールでこの時期限定で行われている様々な次元世界から取り寄せた氷菓子の祭典らしく、その中には前世の故郷である地球も含まれており、ガリガ〇君やホームラ〇バーなど今では味わえないものばかりが集められていた。
…あと何故かあず○バーが次元世界で最も硬いアイスとして紹介されている。仕方ないよ、噛み砕こうとしたら歯が折れちゃうしあのままで釘を打てるレベルで硬いからね、あれ。
「むう…」
正直に言うと無茶苦茶気になる。特にこのブラッ〇サンダーのアイスとかが気になってしょうがない。行ってみたいという衝動に駆られるが例の事件でますます外に出歩けなくない、ましてやショッピングモールなんかだとバレたりしたら大騒ぎになってしまう。
一体どうすればいいのかと悩んでいるとここである事を思い出す。
「…イメチェンしてみるのも悪くないか」
そう呟いて、ジークのテントから出て行き自分のテントへと戻っていった。
「おお…これはすごい」
自分の住処から歩いて数十分、目的地であるショッピングモールへと到着した四郎。辺りは多くの家族やカップル、学生が集まり賑わっていた。本来ならこれだけの人がいる中で四郎が出歩けば一瞬で自分の正体がばれてしまうが、今回は違った。
(ふ、やっぱり誰も気に留めようとしないな)
四郎の現在の恰好はジークが普段着ている似たような赤いジャージにフードを被った状態だ。
(※ようはスリムボブの赤ジャージ)
以前ネットで自分のエゴサーチをした際、一般的に自分のイメージは灰色のパーカーがトレードマークとされており、なら逆に普段着ないような服を着てみたらいいんじゃね?と思いついた。そして結果は予想通り、誰も自分の事に気が付きもしなかった。とはいえ、もうすぐ夏が近づいてくるこの時期、そしてショッピングモールでジャージを着ているのとフードを被っているのはさすがに変に思われ一部の人から視線を感じるが、気にする程のものではなかった。
(こうやって静かに回るのも久しぶりだなぁ)
今までは外を出歩けばあっという間に挑戦者たちが群がるように集まったり、一方的なファンがかつての住処であるアパートにまで押しかけてきたり、偶にガチの殺しの技を持った奴と戦ったりなど過激すぎる人生を送っているなと思った。しかし今回は違う…ようやく手にしたひと時の平穏、大切に過ごさなければ。そう思いながら目的である『アイスカーニバル』の会場へと歩を進めると
ドンッ
「きゃ…」
どうやら誰かとぶつかってしまったようだ。声からして女性と判明、申し訳ないと思いながらしりもちをついている女性に手を差し伸べる。
「あ、大丈夫で…ッ!?」
「あ、はい。ありがとうございます」
四郎はその女性を見て思わず固まってしまう。なぜならその女性は以前、覇王を名乗って自分に襲い掛かったオッドアイの少女なのだから。
(な、なんで彼女がここに!?)
内心で動揺する四郎だが、彼女はまだ四郎が『鉄拳王』とは気づいてないようだ。そうと決まれば早々に謝罪して自然に立ち去ろうとする。
「こちらの不注意でした。すみませんでした」
「あの…」
そそくさとその場を去ろうとするが、オッドアイの少女が話しかけられて思わず立ち止まってしまう四郎。
「…なんでしょう」
「えっと、私の勘違いかと思うんですけど…以前どこかで会いませんでしたか?」
「…さあ、自分は心当たりはありませんね」
そう答え、四郎はその場から逃げるように立ち去った。
(はぁぁぁ…一瞬、正体がばれたかと思った…)
何故かどっと疲れを感じる。正体がばれかけるトラブルがあったもののようやくお目当てのイベントである『アイスカーニバル』の会場へとたどり着いた。並んでいる商品はどれも見た事もない物ばかりで、ミッドチルダでは珍しいアイスが多く存在したが四郎はそれに目もくれず『本命』を探しそうと進もうとした。
次の瞬間、背後で爆発音が響いた。
(何故こうなったし…)
なんかよくわからんがこのモールにテロリストが攻め入ったようだわ。数は一瞬だったけど30人以上かな?あとはそれぞれ斧やら剣やら銃やらのデバイスを展開してた。しかも統率が取れてたから全員手練れかも知れないな。
俺は見つかる前に『麟』の隠密スタイルでその場を難なく抜け出せたんだけど、モールの出入口の扉や窓が全部シャッターで閉じられてた。どうやら万全なセキュリティシステムが裏目に出たようだ。しかもこのシャッター、結構頑丈だから壊すのは無理だろう。
…いや、その気になればぶち抜けるだろうけど、やったら後が面倒になりそうなのでこの案は保留。
ダルシムやベガのようなワープ能力があればすぐにでも脱出できるだろうけどもそれはまだ習得してはいない。現状、このモールからの脱出は厳しいだろう。はっきり言って今の状況はこのまま見つからないように隠れているか、それとも大人しく人質として捕まって管理局からの助けを待つか。
この中で答え選ぶなら間違いなく前者を選ぶ。人質になったところで安全が保証されているとも限らないし、最悪のケースとしては殺されるかも知れないからだ。ここはやはり身を潜めた方が正しいだろう。
だけど、本当にそれでいいのだろうか
(………)
自分でも薄々分かっている、この状況を打破する第三の答えを
「…ッチ」
四郎は舌打ちをしながら踵を返して、来た道へと戻っていく
──今から自分がやろうとする事は単なる八つ当たり
──正義でも何でなもない
──奴らに対しての、唯の『嫌がらせ』なのだから
(さて、どうしたもんかね)
モールのある東館にとりあえず引き返したものの、特に作戦は立てていない。わかっているのは犯人たちが人質を取っているいる以上、派手に暴れまわることが出来ない。
(…ちまちまやってくか)
「ハァーめんどくせ!なんで俺たちが見廻りなんかしなきゃなんないんだよ!」
「仕方ないだろ、リーダーからの指示なんだ。逆らったらどうなるか、お前も知ってるだろ?」
「そりゃそうだけどさ!」
普段ならお昼時に賑わうはずのフードコートだが今は誰もおらず、ピエロのような仮面を被った二人組の男がそれぞれ武器を持ち、店内から持ち出した酒を飲みながら駄弁っていた。
「全く、相手は交渉で時間を稼ごうだなんて見え見えなんだよ。ああいうのは目の前で人質をぶっ殺して首を縦に振らせりゃいいんだよ」
「そりゃいい。けどちょっと殺す前に楽しむってのもいいんじゃないか?」
「お、そりゃいいね!じゃあ俺はあの金髪のオッドアイのガキな!」
「俺は緑髪の奴で…いや、もういっそ全員でまわしてヤるか?」
「ギャハハ!そりゃナイスアイデッ!?」
「ん?どうした?」
下衆な笑い声を上げた相方の男が突如として黙った。男が声を掛けるが反応はしない。
「……外道が」
「!?」
突如として相方の男の背後から聞き覚えのない声が聞こえた。そして相方の男は白目を剥いてその場に倒れると、現れたのは親指を立てた真っ赤なジャージに身を包んだ青年が立っていた。
「だ、誰だてめぇ!?」
男は応戦しようと手に持っていた剣で目の前のジャージの男に斬りかかろうとする。
「遅い」
しかしジャージの男はテロリストの剣の柄を素早い動作で左手で掴み、懐へと一気に肉薄し右拳を突き出す。
「《雷打》!」
「うがッ!?」
自身の右拳から青い氣の塊を発生させるとともに瞬時に炸裂させ、腹部に強い衝撃を与える。テロリストはそのまま吹き飛ばされ、勢いよく柱にぶつかり気絶した。
「ふぅ、これで16人目と…」
四郎は男たちが持っていた武器を壊しながらため息をつく。派手に動けないのならば少しずつ戦力を削っていけばいい。ステルスなら『レイヴン』『いぶき』『麟』のようなアサシンスタイルで充分通用する。
「さてと、次に行きますか」
四郎は気絶した男2人をバインドで亀甲縛りにして目立たない場所にに隠し、再びを獲物を探すべくその場を後にした。
最初にテロリストを倒した際に使ったのはKOF2000に登場する暗殺者(正確には飛賊)『麟』の必殺技《鉄斬舞 羅殺》と呼ばれる技で相手の心臓に親指、人差し指、小指を突き刺す技です。
(※四郎は殺してはいません)
次回はとある四天王キャラの1人を出していこうと思います。
それではお楽しみに
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