SuperSmashBrothers GrandCross -SeeFallCrisis- (I_Ryuji)
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00 BATTLE START

この世界が融合する前触れ。もう一つの「藤原家」の歴史。そして今。


 全ての始まりは遠い昔、平安時代にまで遡る。

 その藤原家の先祖とされるのは、律令国家の建設で活躍した藤原氏=藤原不比等、その子孫の4兄弟である。歴史書に載っている有名な話としては、その藤原4兄弟は729年に長屋王の変(左大臣長屋王を自殺に追い込んだ事件)があり、その後、光 明子を聖武天皇の后として迎えた後に疫病でその4兄弟は死亡した。

 

 ・・・だがこれは、歴史書に無いもう一つの物語の初めに過ぎなかった。

 当時、死体の処理は火葬だった。死体から病原菌が蔓延するのを防ぐためである。だが、火葬の担当が白骨化を確認する前、一人の男性が突然目を覚ました。同じ血の兄弟と共に白い骨の骸になっているどころか、喪服こそ焼け焦げているものの、高温による水脹れも無く、全裸ではあるが傷一つなく、疫病も完治している状態で彼は閻魔大王に謁見することもなく、命を取り戻したのである。直後この怪奇現象を目の当たりにした火葬担当は、逃げる間も与えられずその場で白骨死体となったと言われている。

 町が謎の全焼死体で混乱している頃、現在で言う石川県に全裸で逃げる男がいた。藤原4兄弟の1人、藤原宇合(ふじわらのうまかい)。その宇合は何故生きているかも知らず、自給自足で原人のような旅をしつつ、只管北へ向かった。約2ヶ月後、宇合は現在で言う東北地方、蝦夷まで来ていた。宇合は草塗れ泥塗れ、落ちている大きな葉で作った服を着て歩いていたところを、蝦夷の人達によって保護されたのである。宇合は「藤原家から逃亡してきた」と話した。

 彼らは宇合を快く歓迎し、若干不自由であるが不満の無い生活を提供してくれた。しかし、そんな平和な日々を破壊したのは、他でもない藤原氏であった。征夷大将軍によって蝦夷の人々は忽ち殺されていった。すると正義感の強かった宇合はその軍勢に立ち向かったのである。蝦夷の人々は避難しろと彼に呼びかけたが忠告を聞かず、当時の征夷大将軍の弓兵を狙った。弓兵は宇合に矢を放ち、宇合は片手を降り注ぐ矢に向けたまま伏せた。しかし、宇合はとある異変に気づいた。自らの手に矢は刺さっていなかった。それどころか、兵士軍は幽霊が目に前に出たかのように慄いて後退する。宇合がその手を確認すると、完全に焦げた矢を握っていた。宇合は徐に鞠を投げるような締まりのない体勢で軍の馬を威嚇した。するとその手からは火の玉が放たれ、馬と兵士が全焼した。自らが何故生きているかが判明した宇合は、10000もの大群に大量の火の玉を放った。すると蝦夷の人々も加勢し、10000という大群が一気に1/10程まで無くなり、彼らは撤退せざるを得なかった。だが、征夷大将軍を除いたその大群は、生きて都に帰ることはなかったという。

 全てを飲み込み焼き尽くす、悪魔のような炎の力を手にした宇合は、蝦夷の民の勧めによりその名を「藤原魔燐(ふじわらのまりん)」に改名した。その後、蝦夷の民桃姫(ももひめ)と婚約し、多くの子孫を世に誕生させた後、先立った妻の後を追う様に老衰によって75歳で世を去ったという。

 その後、この消えぬ炎の力は世代を進めるごとに強くなり、現代歴史書を裏で生きる中で、江戸時代にここからの子孫へ大きな進化を齎す出来事が起きる。当時『白き悪魔』に魂を売り、叶えられぬ願いを叶えた後に呪術を扱えるようになるがそれが災いし、その少女の身体をした女性が幕府によって捕えられ、討ち首の刑を受け当時の牢屋に捉えられていた罪無き彼女を助けた後、その御恩で嫁ぐことになった。その子孫を作るその営みの後に、33代目となる彼に異変が起きた。彼も強力な呪術を突然使えるようになった他、生まれてきた子孫も程無くして発現させてしまったのである。

 こうして誰の手にも負えなくなってしまったもう一つの藤原家は、しかし歴史の中で注目されることも無く世代を、時代を生き抜いてきた。そして時は、昔の面影も何処へやら2040年。平成天皇が平成30年に生前退位した後、元号が変わった新たな世界。77代目・78代目となる双子の青年がいた・・・

 

 

~とある研究所地下~

 (オペレーターA)「東京都品川区に敵性反応!!」

 (オペレーターB)「人口衛星CPUジャッジ・・・魔界使徒と認定!!」

 (オペレーターC)「東京都内のBASプレイヤーに緊急通達!!魔界使徒の殲滅を急いでください!!」

 

~同時刻 某所ショッピングモール~

 「・・・緊急通達?なるほど、魔女が出現したのね。これじゃ買い物どころじゃないけど、カレに任せるとしますか。」

 

~同時刻 月軌道上宇宙船~

 「緊急通達・・・別にこれくらいならあのバカがやるでしょ・・・。私はこのラノベを読破する事に精一杯だし、今日はパスしましょ。」

 

~同時刻 とあるマンション・屋上~

 「・・・はぁ、休む暇も無いって感じだな。」

 「そんな事言わない方が良いよ兄さん。ま、実際ボクもだけどね。」

 「・・・さて、一仕事終わらせるか。」

 「ああ、行こう。」

 

 2人の大学生が、マンション屋上から飛び降りて着地した後、ガレージから車を取り出す。エンジンをかけて目標の位置まで、青いパトランプを光らせながら超高速で突き進み、駐車場に停めた後に彼らは壁の中に消えて行った。

 

~10分後~

 (オペレーターB)「目標の消滅を確認。第二次出現予兆は無し。」

 (オペレーターC)「任務参加プレイヤー、No.1・No.2、ラストアタックはNo.1と断定。」

 

~同時刻 神奈川県自衛隊基地・一般者共有施設ゲームセンター~

 「・・・ま、彼らなら普通だ。どうせ俺はここからだと遠いからな。さて、俺はもう一度ユビートを・・・」

 (客)「あのー、並んでるんですけどー。」

 「・・・あ、すまない。」



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01 to the beginning -puella magi-

とある別世界の2040年、群馬の都市は壊滅した。ただ一人取り残された少女は、新たな同じ世界に希望を託し、その世界を捨て続けた。何度でも何十度でも、ただ「彼女」を絶望から助ける為に。


~2040-07-17 群馬県見滝原市~

 《目まぐるしい勢いだったね。誰にも倒せないあの魔女が、まさか彼女の一捻りで消滅するとは。》

 「ええ、だけどその代償は、その身を之と同じ巨悪にするもの・・・。」

 彼女の目の前には、山というに相応しい黒く巨大な影、之は彼女の言う「その身」の成れの果て。街を一掃する筈だったその「魔女」を殲滅する為に、彼女は奇跡を願い一閃した。その対価として、次は彼女自身がこの街を一掃する。自分の意志とは関係無く。

 《・・・何処に行くんだい?》

 「もうここに用は無いわ。私は、もう一度やり直す。」

 

 彼女は腕の小盾を回し、時間をやり直した。全ては、「彼女」を救う為。

 「(もう何度目に・・・いや、何十度目になるだろうか。私は以前に、数回の遡行で彼女を助けた筈。私の記憶違いだろうか。でも、私の鮮明じゃない記憶の方は、彼女は女神となった。それから後は、自らの魂が最期を迎えて、それからは悪魔に隔離された空間で、その当時の記憶を封印されたまま、空想世界で皆と過ごした。そして皆に救われて、晴れて私は女神にあの世界に迎えられた・・・。その筈なのに、私はまたこのやり直す世界を繰り返している。私は彼女を救うために、何度か世界を諦めたこともあった。ある時は車の免許を、ある時は身分を隠して戦闘機の免許を、ある時はあの存在を消す為に武器を集め続けた。けど、一向に倒せない。それどころか、繰り返す度にそれは強くなっている感じがする。・・・これで49回目・・・、流石に50回目はいけない。次で・・・潰す!!!)」

 彼女は頑なに決意している目標、いや自分の存在意義を自己確認し、次の世界に進んだ。彼女が目覚めるのは、いつも病院のベッド。

 「(知っている天井・・・。身体は14歳でも、心は既に4つ上・・・。この負の連鎖は、これで終わらせたい・・・!)」

 彼女はベッドからメガネを外し、窓に向かった。魔女に一掃される1ヶ月前の見滝原市をその目で一度見つめる為に。・・・が、数秒程度しか見ない予定がその10倍近くも見ていた。目の前の風景は、見滝原市より先進的な風景となっていたからだ。そして、この街のランドマークは、日本人なら絶対知っている建物にすり替わっていた。

 

 「・・・東京タワー・・・・・・!?」

 

 

~2040-06-18 AM6:30 とある家~

 「・・・はぁ、夢オチぃ・・・?」

 寝惚け眼で目覚める少女。目を擦りながら自室のドアを開けて1階に降りると外には家庭菜園でトマトを収穫する男性。少女の父親、知久である。

 「パパ、おはよー!」

 「おはよう。今日の朝はトマトだよ。」

 寝室では、日頃のストレス社会を生きる、少女の母親が激しい格好で爆睡していた。

 「ままーー!おきてー!」

 3歳の男児のポカポカ攻撃では全く歯が立たない。少女はドアを激しく開け、布団を豪快にオープンする。

 「起きろーー!!」

 差し込む日差しに、絶叫する母親、詢子である。

 「うぎゃあああああああああ!?・・・もう朝か・・・。」

 「ままーーおはよー。」

 私の名前は鹿目まどか。見滝原中に通う2年生。弟のタツヤと4人家族で暮らしている。

 「まどか~、そろそろ行こうよ~。」

 鹿目家のホーンを鳴らして立つ水色の髪の少女。

 「あっ~。さやかちゃんおはよ~。」

 あたしの名前は美樹さやか。まどかと同じ2年生で、まどかとは昔からの幼馴染。

 「仁美ちゃーん!おっはよー!!」

 「あら、おはようございます。」

 彼女は志筑仁美。私のクラスの同級生。いっつもラブレターが来る彼女。いいなぁ~、私にも来ないかなぁ~。・・・でもさやかちゃんは私にイチャイチャだし。。。

 「それでさぁ~、昨日中沢が寝言で言ってたんだけど・・・」

 さやかの言葉が止まる。一緒にいた筈のまどかがいないからだ。

 「まどかー?」

 そっぽを向いて気付かないまどか。その方向には長身でYシャツを着ながらも、一方は桃色のロングスカート、もう一方は水色のミニスカートを穿いている2人の影があった。

 「さやかちゃん、向こうに誰かいる・・・」

 「ん?今日はハロウィンじゃないぞ??」

 だが、2人が瞬くと、消えていなくなっていた。

 「何だったんだろ・・・」

 「さやかさん!まどかさん!もう始まりますわよ!!」

 「あっ、ゴメ~ン!」

 

 東京都立見滝原中学校。教室がガラスで仕切られて、外観も作品の如く芸術的な、東京都見滝原市が誇る都立進学校。進学校と言えど秀才と劣才の差は激しいが、高校進学への全ての条件は揃っているので、進学率はどの高校や大学の付属高校よりも計り知れない。

 この学校に通う前者の3名は2年生の同じクラス。担任はメガネが特徴的な独身・早乙女和子。生徒はフロアに収納されたテーブルを出し、主にPCを用いて授業を受ける。それが普段の学校の一般的な流れなのだが、今朝は担任より話があるそうだ。

 「さて皆さんっ!!玉子焼きは半熟がいいのでしょうかっ?焼き過ぎがいいのでしょうかっ?はいっ、中沢くんっ!!」

 「別にどうでもいいと思うんですが。」

 「その通りっ!!そんな細かいことはどうでもいいのですっ!!流石は学級副委員長っ、話が早いっ!!」

 「いや、俺は確かに半熟が好きだが、人が作った料理に屁理屈を並べては、その後の道徳性に問題が発生する、俺はそう思ってるぜ。」

 「そうなんですっ!皆さんもっ、高が多少の違いでとやかくいう様な人間にはならない事っ!!そしてっ、その様な人間とは結ばれない事っ!!」

 割とどうでもいい話。これは、和子先生のあることを完全告知していた。

 「あー、ダメだったんだねー。」

 「これで何度目なのぉ?こうして人間は独身で生涯を終えるんだなぁ・・・トホホ・・・。」

 「・・・えー、こほん。あと、序でにもう一つお話があります!」

 「(いや今のがメインかよっwww)」

 この頃、少々遠くでスタンバイしている少女は、教室を見ながら解析をしていた。

 「(あの中沢が、学級副委員長・・・?それに、いつもなら先生この嘆き含む持論のとばっちりで突然呼ばれて慌てる筈。・・・まぁ、副委員長を除いてこんな感じの時間軸は2回くらいあったかしら・・・。)」

 「さあ、入ってらっしゃい!」

 和子先生に呼ばれるがまま、静かに歩いて教室に入る黒髪の少女。凛とした風貌で、決して結ばないロングヘア―、その喜怒哀楽の表現をする必要のない美しい眼差しは、あっという間に周りの目線を全て掻っ攫っていく。

 「暁美ほむらです。宜しくお願いします。」

 

 頭脳明晰で運動神経は神の領域、例の転校生はあっという間に周りの注目を奪い取った。

 (生徒A)「何処から来たんですか~?」

 「何処?(見滝原市と言ったら、ここが見滝原市だから知っている事になる。だからここは・・・)風見野市の市立中学よ。」

 (生徒B)「この学校の何処が気にいったんですか?」

 「・・・芸術みたいな・・・場所と言えばいいかしら。」

 「おーい転校生!俺はこのクラスの学級副委員長代理の中沢って言うんだけど、良かったら俺達の部活来ないか?」

 「(今までの時間軸より、何か構ってきてる?)・・・悪いけど、今から薬の時間だから。」

 「薬?どう見たってそんな感じには見えないけどなぁ。」

 「この感じで色々と飛び抜けていると思われているようだけど、これでもまだ病み上がりなの。通してくれる?」

 「俺はそう見えないぜ?お前のその口調は、単に質問攻めに遭いたくないというエゴだ

 ドガッ・・・と、両足の付け根の間に力強い膝が入った。

 「ぎゃああああああっ!?」

 「ごめんなさい、タマが潰れない程度に調節はしておいたわ。通してくれるかしら。」

 保健委員であるまどかは事情を説明する。

 「ごめんみんな。暁美さんは心臓がちょっと悪くて、軽い抗生物質を打たないといけないの。」

 (生徒A)「そうなんだ・・・。ごめんなさいほむらさん。」

 「いえ、転校生とは大抵質問攻めに遭うのが運命、これ位大丈夫よ。」

 まどかの案内で教室の外に出るほむら。一方、まどかの前の席に座る男子生徒が中沢の惨状を見ていた。

 「・・・男性終了のお知らせ、だな。」

 「さ・・・真田・・・」

 「今のはお前が悪い。初対面という体なのに、ガッツリ行き過ぎたな。」

 「・・・暁美ほむらは1000点棒を場に置いている状況なんだ、今回は本気で・・・オエッ」

 

 「暁美さんはさ・・・」

 「・・・ほむらでいいわ。」

 「・・・じゃあ、ほむらちゃんはさ・・・カッコイイよね・・・っ?」

 「・・・」

 「頭も良くて、運動も出来て、」

 「・・・」(歯軋り)

 「なんだか、憧れちゃうなーって・・・」

 すると、ほむらは急停止して回れ右した。それもロングヘアーを靡かせるように素早く。

 「鹿目まどか・・・、貴方は自分の人生が尊いと思う?」

 「へっ・・・?」

 「家族や友達、何よりも自分の周りを大切にしてる?」

 見知らぬ転校生、未だ分からぬ赤の他人同前の少女の、突然の質問。意地悪とも聞こえるが、彼女のに纏わる話とも聞こえる。

 「わ・・・私は、大切だよ・・・。家族も友達も、ここにいるみんなも大事な人達だよ・・・?」

 「・・・もしそれが本当なのだとしたら、今とは違う自分になろうとはしないことよ。周りを失いたくなければ・・・いえ、あなたの全てを失いたくなければの話だけど。」

 意地悪ではなく、意味深と捉えるべきか。

 「えっ・・・?」

 「あなたは鹿目まどかのままでいればいい。今まで通りに、そしてこれからも。」

 「・・・あっ・・・ほむらちゃん・・・!?」

 呼び止めに応じず、道を知っているかのように保健室へと去っていった。

 

 その日の授業が終わり、帰路に就く黒髪の少女。そこに、あれだけのニーを喰らっておいて性懲りも無しに近付く少年、中沢だ。

 「いやいやいや・・・、先程の膝蹴りには恐れ入ったよ。」

 「・・・またあなたなの?私はこれから買い物があるの。引っ越して来たばっかりで最寄りのマーケットを探さなければいけないのよ。もういいかしら?」

 「探す?その割には、既に丁度目星を付けて行っているように見える。だがその先は俺のメインホームだぜ?見滝原市にも既に何回か行ったことのあるような歩き方だが、お前のお望みは逆方向だ。」

 「はい?・・・はっ!?」

 そうだ、今のここは群馬県見滝原市ではなく、東京都見滝原市なのだと、目を見開いて思い出した。迂闊の行動、更に色々とウザいこの男。何よりも、この男はせいぜい不運な少年だけにしか共通点が無いと思っていた。

 「あなた、何者よ。」

 「俺は学級副委員長の中沢だ。中沢輝彦(なかざわてるひこ)。もし俺に興味があるなら神奈川県の自衛隊まで来てくれ、群馬県見滝原市に約4年以上も生活している暁美ほむらさん?」

 『4年以上』『「群馬県」見滝原市』、この言葉にほむらの心拍は急上昇する。丁度路地だったために、拳銃を取り出して一気に奥まで押し込む。その顔は言わずものかな、瞳孔も不安定で汗が噴き出す。

 「何よ・・・!?私の何を知っているというのよ・・・!?中沢っ!!」

 胸倉を掴まれて壁に強く叩きつけられてしまう輝彦だが、彼女とは対照的にリラックスした顔で平気だ。背中を強く打っているというのに、まるで効いていない。片耳イヤホンしている輝彦は片手でスマホのBGMをglobeからDJ YOSHITAKAに変更した。

 「ある程度は調べてあるんだ。まぁ、福山教官と手を組めば簡単な話さ。」

 「貴様・・・っ!!今すぐこの時間軸をやり直してやる!!!」

 突然コスプレとも見て取れる衣装に切り替わると、左手の小盾を回し始めた。が、彼女の脈拍を更に上乗せする現象が目の前で起こった。

 「おや?まだ一日目だというのに、もうリタイアかな?そうやって逃げて逃げ続けるのは、もう嫌なんじゃないかな?仮にも次の世界に行けば、この街に訪れる災悪を止める術は無くなる。言ってしまえば、これがラストチャンスなんだよ、優等生のほむらさん?」

 「動かない・・・っ!?(何故!?今、私は魔法で筋力を上乗せしているのに、コイツの握力の方が上回っている・・・!?それに、仮に彼も魔法を司る存在なら感知できるのに、魔法は一切使ってない!?)」

 これ以上は大事な魔力の無駄遣いと判断して、この場所での時間遡行は諦めた。

 「何がしたいのよ・・・っ!?貴様は一体、何がしたいのよ!?」

 「俺か?別に用がある訳では無い。・・・あ、違うわ。お前に渡したいものがあるんだった。」

 渡されたのは、彼が部長を担う『軍事活動部』の募集チラシだった。学校が休みの土・日・祝日や夏休みなどの長期の一部に野外でサバイバル活動を行う他、サバイバルゲームの試合にも出場する、アクティブ系運動部だった。

 「・・・高がこれだけの為にここまで私を追って来た訳?」

 「折角の勧誘チャンスなんだ、逃す訳にはいかないだろ?」

 「お断りさせてもらうわ。私には、今すぐやらなければならない事象があるから。じゃ。」

 「安心しろ!お前は何れ俺の部に入る事になる。その日が来たら、温かく歓迎してやるさ。」

 ビリっとチラシを破いて、横のコンビニのゴミ箱に投げ入れた。念には念を(中沢が本当にウザいから)、マーケットに行くフリをして遠回りにショッピングセンターに行くつもりだ。

 「・・・少しネタバレし過ぎたかな?ま、後はお願いしますよ。炎の使い手さん。ここまできて漸く掴んだチャンスなんだ、無駄には出来ないぞ。」

 意味深すぎる言葉を吐いて、大きなショッピングモールへと足を運んでいった。

 

~PM4:30 フードコート~

 「そっかぁ~、いよいよまどかも痛い方面に走ってしまったかぁ~!」

 「ええっ!?ちょっとさやかちゃん!私は本当に気にしてるんだよぉ!?」

 「きっとまどかとあの転校生は、何かしらの因果で結ばれた切っても切れぬ縁なんだよ~!」

 「こらこらさやかさん、まどかさんが困っておりますわよ?」

 「・・・むぅ~。」

 ムスッとするまどかの後ろで、同じ見滝原中の生徒が適度な声量で噂話をしていた。

 (生徒)「おいおい!見たかツイッター?遂にこの見滝原にも、例のゲーミングパフォーマー集団が遠征するんだってよ!!」

 (生徒)「おう見た見た!あの5人~10人以上で活動する毎日投稿系のYouTuberだろ!?」

 (生徒)「見滝原っつったら、音ゲーの激戦区だろ?果たしてあの5人組が見滝原市民に勝てるかっつったら、こりゃ生で見てみてぇなぁ!」

 まどかはもとより、さやかと仁美の耳にも入っていた。

 「うおっ!!遂にあのガチゲーマー集団があたし達見滝原の國境を超えようというのだな~っ!!けしからーん!!」

 「さやかさん、とても気合が入っているじゃないですの。」

 「当ったり前でしょー!?だがここは音楽ゲームの超激戦区!!毎日のように音楽ゲームコーナーは何処も満員御礼!骨肉戦のように互い鎬を削る日々!そんな紛争状態の戦場に足を踏み入れれば、世界最強を謳うSMBも勝てまい!!」

 「さやかちゃんって、何の専攻だっけ。」

 「あたしはmaimaiとDDRの見滝原チャンピョンだよ?忘れたとは言わせないぞぉ?」

 「仁美ちゃんは・・・やってるの?」

 「残念ながら私は習い事で精一杯です故、ゲームセンターに現を抜かす暇はありませんわ?」

 「ったく仁美はいっつも習い事習い事で、優等生も暇じゃないわね~?習い事でひっそりと自分を磨くよりも、あたしみたいに表に出て敵を無双した方が、簡単に先立つモノなんて手に入るんだからぁ~♪この間のギタドラのギター部門大会だってー」

 そう言って、パンパンに膨れ上がる財布を出すさやか。そこから煌びやかに指を動かし、福沢諭吉を4人引っ張る。

 「凄い・・・さやかちゃん凄いよ!!」

 「・・・習い事のコンテストでは・・・手に入らない・・・」

 「おやぁ?優等生も劣等生に転落する気になりましたかぁ?」

 「・・・そ、そんな気などありませんわ!?私は皆さんが知っている通り志筑物産の御令嬢、そんな束にならないはした金になど興味はありませんわ?まどかさんは何か専攻しているの?」

 「私は・・・うん、一応パパの影響でビートマニアをやっているけど・・・。まだ高速譜面は出来ないなぁ・・・。」

 「けど出来るようになったら世界が大きく変わるぞ?よーし、今日は用を終わらせたらSMBを迎撃だぁ!!」

 「用って、あの子?」

 「ふふっ、まぁね。」

 仁美と別れて、CD店に寄るまどかとさやか。当然店内もあの噂で騒がしかった。

 (生徒)「おいおい!今日はメインの5人が来るって話だぞ!!」

 (生徒)「リーダー格の2人は現在見滝原入りしていて、副リーダー格の女子高生は学校が終わり次第高速で直行、あと一人の陸自の将軍は休みとって昨日から見滝原入りしてるんだとよ!!」

 (客)「ガチだ・・・!圧倒的にガチ勢だ・・・!!」

 (客)「今日は戦争が始まるぞ・・・っ!!見滝原とSMBの第一次音ゲー大戦だああああっ!!!」

 (見滝原ラジオ)「皆さん聴いてください!本日、世界的に有名なゲーミングネットパフォーマンス集団のSMBが見滝原に襲来するとの予告が公式Twitterにて明らかになりました!!今日はアドアーズ見滝原店にて現地集合するそうで、現在店内は音ゲーコーナーのみ店側の好意で貸し切り状態、見滝原代表は既に臨戦態勢!ただ、未だにDDR女王の中学生プレイヤー『ff(フォルテシモ)』は現れておりません。あの中学生は気付いていないのでしょうか・・・?」

 「さやかちゃん・・・の事だよね?」

 「もしかして今から試合なのかな・・・。ごめんまどかっ!あたしの頭だけ見えないようにして!」

 「えっ?・・・そっか、やっぱり音ゲーよりもそっちが優先だよね。」

 「うん。この状況で見つかったら、非常にヤバイかもぉ・・・!」

 「有名になるのも大変だね・・・。」

 (生徒)「おい、まどかの奥の、フォルテシモじゃないか?」

 (生徒)「・・・あの水色の髪は・・・マジか!?」

 「・・・気付かれた・・・ぁ?」

 「さやかちゃん!あっち逃げて!!私がこの場を凌ぐから!!」

 「わ、分かったよ!!このCD、買っといて!!後でお金出すからっ!!」

 「あ、うん!」

 有名人も一苦労、まどかはリバースしそうになったただの友人と嘘ついて、なんとかさやかを脱出させた。

 「ふぅ・・・なんとか急場は凌いだ・・・かな?」

 《誰か・・・助けて・・・》

 「・・・ふぇ?」

 《早く・・・誰か・・・っ!》

 「・・・こっち・・・?」

 偶然にもさやかの逃げた方向。その奥は立ち入り禁止の倉庫なのだが、謎の声に導かれて歩く。

 「ここで・・・いいのかな?」

 突如、一枚の天板が崩れて、白い動物が落下する。辺りは傷だらけで、とても弱っている。

 「・・・大丈夫!?」

 《早く・・・あっちに・・・っ!!》

 「・・・助けなきゃ・・・っ!!」

 どうして猫と兎が合わさったような姿をしているのか、どうしてテレパシーで脳に話しかけるのか、そんな事を考える余裕もあったのだが、先ず考えたのは、安全な場所への救助だった。しかし、背後に一瞬にして現れる黒い影。

 「そいつを私に寄越しなさい。」

 「!?」

 右手を拳銃の形にして、まどかの背中に突き付ける少女。まどかは背筋が凍り、ゆっくりと振り向くと、それは今朝の彼女自身だった。

 「ほむら・・・ちゃん・・・!?」

 《そいつだ・・・っ!そいつが・・・僕にいきなり・・・っ!!》

 「痛い目に遭いたくなければ、何も言わずそれをこっちに渡しなさい。」

 「(ただの・・・指鉄砲・・・ほむらちゃんは・・・本気じゃない・・・!!)っ!!」

 まどかは直角に逃げようと足を横に出した。だがほむらは咄嗟に、

 「バンっ。」

 「っいっ!?」

 ほむらの掛け声とともにまどかは前方へと吹き飛ばされる。まどかには何が起こったのか一切分からなかった。

 「次は吹っ飛ぶだけでは済まないわよ。さぁ出しなさい。」

 「っっっっっ!!!(何で・・・っ!?ただの指鉄砲じゃないの・・・っっ!?)」

 《助けて・・・僕はもう・・・。》

 「誰か・・・助けて・・・。」

 その瞬間、辺りが白い煙に包まれた。

 「まどかっ!!今だ!!」

 「うっ、うんっ!!」

 その白い動物は赤い目をしていたので、白い空間でもはっきりと分かった。直ぐに立ち上がって、ほむらのいる場所から離れる。

 「さやかちゃんっ・・・手を・・・」

 「あ、まどかは鈍足だっけ。仕方ないなぁ。」

 「どうして分かったの・・・?」

 「何か落ちる音がしたからさ、観客に見つからないルートで走ってきたって訳よ。で、その白いのは何?」

 「分からない・・・分からないけど・・・。」

 が、走る2人の目先に異変が起こる。見つめる先の空間が歪み、謎の背景へと変化していく。

 「・・・何なのよ・・・。何が起きてるのよ!!」

 「非常口が・・・開かない・・・っ!!」

 ほむらも白い空間を謎の力で吹き飛ばすが、俊足美樹さやかの逃げ足はコスプレ通り魔の視界から外れるほど速かった。

 「・・・ちっ。」

 彼女は舌打ちをするや否や、謎の空間を察知した。そこに『アイツ』がいることも。

 「厄介ね・・・。一先ず彼女を迎撃してからの方が早いかしら。」

 空間に閉じ込められたまどかとさやかは、不気味な生物に囲まれていた。

 「何なのよ・・・何なのよコイツ等は!!!」

 「気持ち悪いよ・・・さやかちゃん・・・!!」

 謎の言語を発する生物は、裁ちバサミを持って円を狭めて接近する。

 「あんなのに挟まれたら痛いじゃ済まされないよね・・・?」

 「くそーっ、こんな場所で使いたくなかったけど、使うしかないっ!!」

 「え?さやかちゃんっ!?」

 さやかはまどかの逃げ道を作るために、制服スカートの背に隠していた伸縮警棒を取り出して立ち向かう。体に突き出される刃先を弾き、回し蹴りで吹っ飛ばしてから一匹ずつ息の根を止めていく。

 「さやかちゃん・・・!」

 「グズグズしないで、あたしの傍に!!」

 一方の外界、黄色の髪をクルクルのツインテールにした同じ中学の制服姿の少女が、白い生物の行方を追っていた。

 《大丈夫?怪我してない?》

 《直ぐに行きたいのは山々なんだけど、魔女の結界に閉じ込められてしまったようだ。それにちょっと今の状況では自立歩行も難しい。それに、君と同じ見滝原中学の女子学生に介抱されている。今は僕達でこの結界に留まった方が良さそうだ。出来るだけ急いで!》

 《テレパシーの感応テンポが早くなってきたわ。おそらくすぐそこ!!》

 チャキッ、と、不気味な金属音が彼女の耳に届く。

 「誰っ!?」

 「巴マミ、やはりここに来ると思っていたわ。」

 「あなたは・・・例の転校生かしら?今日からまた一つ、近くに魔法少女の反応が現れた思ったら、やっぱりあなただったのね。それで?何故私の名前を知っているのかしら。」

 「詳しいことは言えないけど、私は見滝原市の全てを知っている。あなたの事も、そしてあなたに訪れる絶望も。」

 「言っている意味が分からないわね。今の私は急いでいるの。キュウちゃんが見滝原中学の生徒と一緒にいるようだしね。」

 《僕を襲ったのは黒髪の魔法少女だ!彼女は危険だ!!》

 《奇遇ね。私も丁度対敵しているところよ。》

 マミが不気味に微笑む。

 「どうやら、話で解決しようとしても済みそうにないわね。だけど私も暇じゃないの。通してくれるかしら。戦いたいのなら別の日にしましょう。」

 「そうもいかないわ。既にこの時点で計画は大きく狂っているの。もう取り戻しようがない。なら、この世界を絶望に包んでもう一度やり直すだけ。」

 ヘビーリボルバーの照準をマミに合わせ、威嚇する。

 「・・・分かったわ。殺りましょう。」

 火縄銃の西洋版・マスケット銃を大量に召還すると、ほむらに対して先制攻撃を放つ。

 「いきなり100連発・・・ちょっとやりすぎちゃったかしら。」

 「・・・甘いわね。」

 「っ!?」

 ほむらの方向へと銃撃して、体に全弾が着弾したしたと思った、いや確かに肉眼で確認した。ところがほむらは真反対の場所まで瞬間移動しており、マミを軽く背後から蹴り倒した。

 「何が起こったの・・・っ!!」

 「終わりよ。」

 マミが振り返る瞬間に放たれた凶弾、マミは咄嗟に空になったマスケット銃で防いだが、何故か肩に激痛が走る。ほむらはまた瞬間移動で真横に移動していた。

 「!?」

 「あなたは私を一生倒せない。どんな奇跡があろうとも。」

 「(これは真っ向勝負を挑んだらこちらの魔力はおろか体力が持たないっ!仕方がない、先ずは魔女の結界が先よ!!)くっ!!!」

 マミは直ぐに戦略的撤退が正しいと判断し、反応のある方向に逃げる。が・・・

 「無駄よ。」

 ほむらは逃げる方向を直ぐに判断し、瞬間移動でマミの方向に立つ。そしてマミの必死な顔面に魔法弾をお見舞いした。

 「ぐぅっ!!!!」

 「もう、あなたは私から逃げられない。ここであなたを楽にしてあげるわ。」

 マミはこの瞬間、絶望感に満たされた。自分の死が目の前に来ていることが現実となっていること。悔しいが、もう成す術無し。それは仮に観客がいたら満場一致で感じることだ。

 「さよなら。」

 マミの脳ミソを吹き飛ばす銃弾が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・え?」

 「・・・は?」

 両者がフリーズする。零距離に近い空間、その僅かな隙間に湾曲する透明な壁が現れていた。薄さは性病予防のゴムくらいだと思われる。それくらいの極薄のガラスのような魔法陣が、マミとほむらを遮り、拳銃の弾を止めていた。

 「・・・チャンス・・・っ!!」

 「何よこれ・・・っ!!」

 マミは一瞬のフリーズから目が覚めて、魔女の結界に向かった。ほむらは謎の防壁をあの手この手で破壊を試みるが、一向に壊れない。

 「(巴マミを葬って、少しでも未来を変えるチャンスだったというのに、畜生!!!)」

 不可解な現象が、マミの窮地を救ったが、あちらは依然として危機を迎えていた。

 「さやかちゃん、全然減らないよ・・・?」

 「それどころか、増えていると思うのはあたしだけかなぁ?これじゃこの後の戦まで体力が持たないよ!」

 「この状況で音ゲーの心配・・・?」

 呆れるまどかだったが、その呆れも直ぐに焦りに変わる。

 「まどか、こうなったら突っ込むよ!どうにかしてこの変な場所を抜けるの!!」

 「うん、それしかないよね・・・。」

 さやかは決死の覚悟でまどかと共に結界を強行突破する決意を固めた。その時だった。

 《邪魔よ。離れて。》

 「ふえっ?」

 「何?」

 凛とした声がフィールド内に響き渡る。中央に現れたのは、今朝のドレス女。

 「星々の加護があらんことを・・・。邪神に憑りつかれし悪魔よ、その姿を滅して平伏せ。」

 金髪で高身長、水色のドレスを纏った弱冠18前後の少女。指揮者のようなタクトを振りかざすと、閉鎖空間であるこの場所に大量の流れ星を降らせ、之を生物に直撃させることによって辺りを全滅させた。

 「何が起きてるのよ・・・。次から次へと訳分かんないよ・・・。」

 「星の子よ、迷える子羊を救う道を開きなさい。」

 タクトを非常口があった場所に向けると、先程の流れ星が次々に突き刺さり、結界の出口を形成した。

 「さあ行きなさい。時間がありません。」

 「何かよく分からないけど・・・ありがとうございます!!」

 「ありがとうございました!!・・・って、あれ?」

 まどかは確かにドレス姿の彼女を見ていた。が、お辞儀をした瞬間に消え去っていた。

 「早く行こう!いつ閉まるか分からないから!!」

 しかしながら現実は無常、非常口を今度は例の生物が覆い隠した。

 「しつこいっ!!そこをどけぇ!!!」

 《大丈夫!私に任せて!!》

 「え?さやかちゃん、後ろ!!」

 「一気に決めさせて、もらうわよ!!!」

 出口を覆い隠し、これでもかと護る綿毛頭の魔物を、無限の魔弾で焼き尽くした。

 「開いた!」

 「今だっ!ありがとうございます!!」

 無事に脱出に成功した2人と巴マミ。直ぐに治癒魔法で白い生物に対して応急措置を施す。

 「これで大丈夫!」

 《やれやれ、世話をかかせてしまったね。》

 「お二人は大丈夫?」

 「なんとか・・・。」

 《まさか警棒で抵抗するなんて、恐れ入ったよ。やっぱり君達は僕が見出す適性を大きく超えている。とんでもない存在になる事は間違いないだろう。》

 「どういうこと?」

 「そういえば自己紹介がまだだったわね。私は巴マミ。あなた達と同じ、都立見滝原中学校の3年生よ。そしてこの仔はキュウべぇ、私の大切な友達よ。」

 《実は、君達に大切なお願いがあってきたんだ。》

 「大切なお願い?」

 

 《僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ!!》




キャラクター紹介

鹿目まどか(CV:悠木碧)
東京都立見滝原中学校の2年生。至って平凡で柔らかい家庭に生まれ、至って普通な中学生生活を、至って平和で仲良しな親友たちと過ごす少女。しかしある日、この世に無い筈の力の存在を知ることになる。音楽ゲームの街・見滝原市での専攻はBEAT MANIA

美樹さやか(CV:喜多村英梨)
鹿目まどかと同じで、運動が出来ること以外は至って普通(まどかとベタベタなところを除いて)な元気いっぱいの少女。また、交通事故で入院している少年に恋心を寄せている。見滝原市内ではDDR中学生王者「ff(フォルテシモ)」の名で有名であり、数々の大会に於いて豚共を撃墜している。ある日、この世の必定なのか半強制的に世界最強ゲーマー集団と音楽ゲーム対決することが勝手に決まってしまい、まどかと同じく流れによって力の存在を知る。専攻はDDRを始めとするKONAMIの音ゲー全般とmaimai

暁美ほむら(CV:斎藤千和)
鹿目まどかを絶望から救い出す、ただそれだけの為に幾度となく世界を繰り返してきた魔法少女。しかし彼女の記憶は曖昧で、一度自分は彼女自身によって救われたと思い込んでいる。だが、この世界に起きている謎の事象に端からこの世界を諦めかけており、無能だと思っていた少年に時間を巻き戻すことをロックされ、時間操作や銃刀法に引っかかる事間違いナシの武器によってマミを追い詰めるが謎の防壁であと一歩のところを妨げられたりと不幸が続いてしまう。一応、専攻はDDRとSOUND VOLTEX

巴マミ(CV:水橋かおり)
まどかとさやかを囚われた結界から助け出した、見滝原の魔法少女。その前にほむらによって殺されかけたが、謎の事象で一命を取り留めた。主要人物中唯一の3年生で、基本的に周りには友達がいない。またこの時期ならではの「病(?)」を抱えており、彼女は気付いていない。火縄銃の西洋版であるマスケット銃と、リボンを用いた拘束魔法で敵を嬲る。専攻はmaimaiとCHUNITHM

中沢輝彦(CV:松岡禎丞)
見滝原中の2年生で、まどかとさやかのクラスで学級副委員長をしている。とてもおちゃらけているが、どんなことにも真剣に対応し、部活「軍事活動部」の部長兼同部サバゲーチームの隊長をしている。暁美ほむらの存在や謎については既に知っているようで、必死に彼女を部に勧誘するが、その裏では何を考えているのか全く不明である。専攻はjubeat・GITADORAのドラムを始めとする全社音楽ゲーム全般(太鼓の達人を除く)


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02 to the beginning -super smash bros-

表はゲーム好きの青年達。だが裏は怪物を消し去る戦人(ファイター)。これは、見滝原と彼等の邂逅の序曲である。


~2040年 6月3日(日) 東京都品川区・某所~

 午前6時、彼らの朝は早い。

 「・・・兄さん、朝だよ。」

 「・・・んぁ?・・・はぁ、6時か。」

 「昨日も遅くまでゲームして、明日の大事な会議なんでしょ?」

 「・・・そういや、そうだったなぁ。色々と落ち着いて、久々にやろうって生きこんで、アイツはアイツで張り切り過ぎてるし・・・」

 そのアイツが、料理の合間に寝室へ来た。

 「もう!組の長がそんなだらけてどうするのよ!いい加減にしないと、フライパンで横スマッシュ打っちゃうよ?」

 「それはマジで痛いからやめてくれどうせ裏面じゃねーんだろ(´・ω・`)」

 「それとも?流石にフライパンはキミでも皮膚がキレるからゴルフクラブかテニスラケットにでもしてあげましょうか?」

 「だから『公式戦』の技をリアルでかますのは勘弁してくれぇ(´・ω・`;)」

 「じゃ、ボクは兄さんよりもロングスリーパーな文学少女を起こしてくるわ。」

 「へーい。んぁあぁ、起きるかぁ。」

 寝癖でボサボサな髪の毛を適当に掻き上げて、何故か冷蔵庫に冷やしているメントールガンガン系のアイボンで洗眼し、高校3年生の彼女が作ってくれた朝食のあるテーブルの椅子に腰掛ける。

 「それじゃ、いただきまーす!」

 「ふぅ、いただきます。」

 

 その頃、別の部屋の弟の方。

 「おーい、もう6時過ぎたぞ。」

 「・・・」

 「・・・相変わらず、死んだみたいに息も長いし脈も弱いんだなぁ。おい、早く起きろ。」

 「・・・ぅるさいわねぇ・・・zzz」

 「・・・ほぉ、ボクに対して『煩い』かぁ?じゃ、今日は・・・。」

 横にブランとだらしなく伸ばしている彼女の腕を手に取り、秒速で腕菱木十字固めする、なんて鬼畜な男だ。

 「んぃっ!?」

 「もう兄さんも起きてるんだぞ?腕を折られたくなかったらとっとと起きろ。」

 「わ、分かったわよ!それを早く解きなさい!!」

 観念して飛び起き、筋を伸ばされた腕を摩って渋々ベッドから起きる高3JK。兄の部屋に行く前に寄った配達物入れにあった新聞紙を玄関から持って、何処を確認すると思えば・・・

 「っうし、3連単10万賭けは成功しているね。」

 「・・・また競馬?そんなのに金を無駄にするより、もっと実のあるモノを買ったらどうなの。・・・まぁ、こんな忠告してもあんたは辞めないどころか全部当てるんですから?」

 「今日の仕事が終わったら直ぐに換金しに行くか。134.2倍だから1342万か、十分だ。」

 それを十分と捉える彼はどんな頭をしているのか、訳が分からない。

 「今日は明日に向けての会議があるんでしょ。何処でやるの。」

 「うーむ、今日は折角赤日だから、いつものところでやるか!」

 そう言いながら、簡易的に作った朝食をテーブルに出す。

 「いただきます。」

 「さて、いただきます。」

 

 食べ終わった4人は、部屋の外に出て作業をする。と言っても、お城の様に大きい場所である。通路や広間には数々の絵が描かれており、床は白と水色のチェックで統一されている。

 【泊まり込みの社員の皆さん、朝6時半になりました。料理部の皆さんは大食堂にて朝食を出してください。】

 「すいません!料理長は分かりませんか?」

 「へ?・・・まさか今日も朝食の事忘れてるなぁ!?」

 兄の方が呆れて、料理人達の会議室を開けた。料理長である少年は、いつもこの部屋で雑魚寝している。

 「・・・ふぅ、岩〇両斬波!!!」

 「ひでぶっ!!!」

 世紀末の断末魔を吐いて目を覚ました茶髪の少年、涎を垂らしてテーブルが汚い。

 (クルー)「・・・」

 「・・・ぉぃ。」

 「ふわあぁ・・・ぇ?・・・あっ!朝食作る時間だ!!」

 「もう過ぎてんだよバカが!!」

 「ひぃっ!?・・・わっ!!大変申し訳ありませんでしたあああああああああああ!!!!!!!!」

 (クルー)「色々と新しいアイデアを出したりアドバイスで一段階二段階も料理を格上にする力があるからあまり言えないですし、朝食に出すものの殆どは固定されてるから大丈夫ですけど、幾ら中学3年生だからって、そろそろ責任というものを感じてください!」

 「っ・・・す、すいませんでした・・・。」

 「割とガチな説教だなw」

 (クルー)「てことで料理長、早く朝食の残りを作ってください?じゃないと今日のお休みはないですよ?」

 「すいません!!直ぐに準備します!」

 走って厨房に駆ける少年。青年は頭を抱えた。

 「本当申し訳ない。こんな一年中寝て曜日のヤツを普通は雇ってはいけないのはごもっともなんだが、彼の事情といい俺達の活動への参戦といい、今度、その場所でお土産持ってきますから勘弁してやってください・・・。」

 (クルー)「いえいえ、正直我々は大助かりです。謝らなければいけないのは自分達ですよ。職員の皆さんに作らないといけない料理の数々を数段階上まで引き上げる事に加えて、身になること全てを指南して下さいます。あれでまだ中3な上に、そちらの活動に何かと役立って、毎日疲れる程動いて、疲れない訳が無いですよ。我々も見習わないといけません。」

 「まぁ、確かにそうかもな。快く面倒を見てやってくれ。」

 そして開門時刻になる8時前、会社が休みの日限定で彼らが門を開ける。ここは会社である一方で、その風貌や会社の本業を全開で用いる為に副業を社内で行っている。

 「ロック外したな?」

 「OK、開けるよ!」

 息の合う男女が声を揃えて、

 「本日もご来店いただき、誠にありがとうございます。只今より開店です!!」

 外門を開けて、来店客の車が門内に次々と入り込む。ここは彼女の母が起業したアミューズメントセンター運営やアーケードゲーム制作の大手企業、『PEACH』である。彼女は学生ながらに、母親から之を継いだ若き女社長である。1フロアにJリーグのサッカーコート2つは入るほど非常に広いながらも、1F~3Fがゲームセンターで4F~5Fが四つ星のホテルを完備、彼ら専用の最上階を含めた6F~9Fが本社となっている。地下も1Fと2Fがあり、それぞれ社員と来店客兼用のレストラン街となっている。またこの会社は、・・・いや会社というよりは城である。これも彼女の母が設計したもので、とあるゲームから丸々引用して『ピーチ城』と呼ばれている。ゲーム原作とはデザインは一緒でも巨大すぎるが。

 (係員)「では、お休みという事ですがセキュリティー管理なので打刻を。」

 「はーい☆」

 IDをカードリーダーに通し、腕の動脈認証を済ませたら入店・・・ではなく出勤打刻の完了である。

 (係員)「大島桃花社長、おはようございます。」

 「おはようございます♪」

 当社はスーツではなく、蝶ネクタイではなく普通の会社と同じネクタイをしているところ以外は執事のような格好をするのが決まりで、女性社員はメイド服からフリフリや余分なアクセサリーを外したような膝丈スカートが規定となっている。社長である彼女は会社に出勤する場合のみ、踝程までのロングスカートを着用したピンク色のドレスを身に纏っている。地毛金髪ロングヘアー、身長177cm・体重61kg・Dカップの彼女こそ、親より会社を引き継いだ女子高生CEO、大島桃花である。

 (係員)「西川星薇様、おはようございます。」

 「ええ、おはよう。」

 静かで小生意気な態度の彼女は、同じく高校3年生であるピーチに誘われて入社している。文学少女とも言われる程読書を好むが、その半数以上は所謂ラノベである。正社員ではあるが彼女のみ、ピーチの許可もあり水色のロングドレスを着用し、社員として働く際は同じ女性社員と分け隔てなく普通の制服に着替え直している。身長181cm・体重41kg・Cカップと痩せ過ぎと思われがちな彼女が、西川星薇(せいら)である。

 (係員)「相場竜輝様、えー、1時間の寝坊分と残業は差し引かせていただきますね。」

 「本当にすいませんでした・・・。」

 彼は社内食堂の料理長を担う中学3年生。休みという事もあるので彼のみ退勤の打刻をしてもらう。とても料理をするとは思えない細身で、これでも数学が得意で強肩であるのが驚きな「ショタ」である。退勤登録が終わると、彼の場合は自転車でマンションまで帰る。本来中学生は仕事してはいけないのだが、お手伝いという名目で面子は保っているようで、お金の方も自由に使えているようだが一度桃花のサブ垢(つまり2口目以降の口座)に振り込まれてから封筒で領収書と共に渡すそうだ。身長166cm・体重40kgの彼が相場竜輝である。

 そしてこの兄弟。二卵性双生児の双子で20歳、身長2cm差で低い方が兄、高い方が弟である。どちらも何か違うという事は殆ど無い。特徴的に違うといえば、兄の方は制服で細身に見えるが鋼のような肉体を持ちどんな場所でも頭脳で突破出来る力がある。弟の方は4.0以上の強力な視力を持っており、普段でも自分の視力で酔うので、視力を2.0にする視力低下コンタクトを付けて生活している。兄とは違ってそれほど筋力は無いが、身長差やジャンプの高さによって、兄の目となる事があるのだ。イタリアと日本のハーフで、兄の方は身長189cm・体重77kg、弟の方は身長191cm・体重55kg、彼らの名は、

 (係員)「おはようございます、藤原マリオ様、藤原ルイージ様。」

 「ああ、おはよう。」

 「はい、おはようございます。」

 

 2040年の世界、ふざけた政治の時代が終わり、新たな政権によって再始動を果たした日本。車の免許も中学生から取れるようになり、若手ドライバーが急増した事に加え、高速道路や一部道路への特殊改造車両の速度制限が解除されて常にレーサーの街へと化した東京都。品川区に建つ城のような会社、その最上階が彼らの家でもある。また同じ品川区に、ルイージが2年で手に入れた資産を使いマンションを建設し、その大家の部屋も別荘として使っている。まさに品川区は、彼らの街と化していた。先程の竜輝も、家賃無償でマンションの最上階に住んでいる。彼らは会社で仕事をする一方で、もう一つの活動も行っている。

 「マーリオっ!今日もやるんでしょ?」

 「今日は港区の団体がHPを通して挑戦状を叩き付けてきた。ポータブルWi-Fiで互いに公開生放送するらしい。」

 「ボク達に対して公開生放送で喧嘩を売るなんて、ボク達も舐められたもんだね?」

 「いいんじゃないの?どうせ彼らは自分の醜態を全裸で晒したいだけのドМなんでしょうから。」

 「そんな訳だから、直ぐに出発するぞ。」

 一行は、各々スポーツカー・スーパーカーに乗り込み、港区のゲームセンターへと向かった。マリオは所狭しと赤系全色が塗りたくられたGTO、ルイージは深緑のRX-8、桃花はピンク色に塗装したポルシェ918、星薇は中古車を魔改造して水色塗装を施したカローラレビン(AE86)である。

 「あ、やっぱりそこにいたか。ルイージ、ちと俺は寄り道するぞ。」

 【了解。撮影の準備しておくね。】

 マリオは車列から外れ、その近くの朝食バイキングをしているファミレスの駐車場へ行く。

 (店員)「何名様ですか?」

 「いや、あそこの茶髪の連れだ。」

 「ん?あ、マリオさーん!」

 「よっ、相変わらず休みは食べ放題で謳歌か?」

 「私が食べ放題大好きなのはマリオさんもよく分かってらっしゃるじゃないですかー♪こうやって色んな場所の食べ放題を歩き回ってるんですよ!」

 「・・・ったく、後で店員にガン飛ばされても知らねーぞ?この量、大赤字じゃねーか。」

 一般人が食べる量ではない、それはタワーの様に積まれる使用済みの皿で一目瞭然だ。これで太らないから驚きだ。一体このエネルギーは何処に飛んでいくのやら。

 「マリオさん、今から動画の撮影ですか?」

 「まぁな。高速から遠目でお前が見えたもんだからあいつ等に準備を頼んで、俺はこっちに来たって具合だ。」

 結局、無茶苦茶食べて黒字で店を後にした。

 「お前はどうすんだ?」

 「これから、ちょっとゲームしに行こうと思います。そろそろお店が開く頃ですので、朝の頭の体操にパズルゲームでもやろうかなって。」

 「そうか。ま、交通事故だけは気を付けるんだぞ。」

 「はい。では失礼します!」

 自転車に跨って、これで少しぐらいしか膨れないのが不思議なお腹を前屈みで隠しながら、颯爽と道路に消えていった。

 「ふぅ、さて俺も行くか。」

 

~AM8:55 ゲームセンター前~

 「待たせたな。」

 「ヨッシー君、相変わらずだった?」

 竜輝の事はヨッシーと呼ばれているらしい。

 「相変わらず、店泣かせの胃袋を発揮していたさ。」

 「あ、今日のカモが来たよ。」

 「よーし整列ー!」

 桃花の掛け声で、4人が横一線に並ぶ。駐車場にやってくる5人の団体、彼らは、マリオ達が運営するホームページの掲示板にて挑戦状を叩き付けた『命知らず』である。

 (敵隊長)「俺達はこの地区を牛耳っているASHというチームだ。お前ら、この間この中で目立ったそうじゃねぇか。俺達のテリトリーでカメラ回してそんな事されちゃ黙ってらんねぇんだよなぁ!!なんだ、今日は4人だけかぁ!?」

 「人数はどうでもい。俺達の目的はお前らの息の根を止めるだけだ。」

 「そろそろ9時だね、始めるよ。」

 そこに、自転車が駐車場へ入り込んだ。

 「・・・え?ヨッシーか!?」

 「え!?マリオさん!?」

 なんと竜輝もこのゲーセンに行くようだった。偶然とはいえ・・・

 「マリオ!?もしかしてついて来いって彼に話した?」

 「い、いや俺は何も言ってないぞ!?俺はただヨッシーに会いに行っただけだ!!」

 「兄さぁん・・・?」

 「待ってください!これは完全に偶然です!!マリオさんには何処に行くなんて言ってませんし・・・」

 「本当かなぁー?」(テニスラケット取り出して

 「マジですガチです許してください(´・ω・`)」

 「ピーチさん、マジなヤツですから・・・」

 大島桃花、彼女はヨッシー同様マリオからピーチと呼ばれているらしい。

 「・・・ふ、本当に偶然っぽいから許してあげるわ?で、どうするのよ?」

 (敵メンバー)「ケケケッ、カモがもう一人増えたぜ?」

 (敵メンバー)「今日はあのショタもご馳走になってやろうぜ?」

 「・・・ここに来たのは偶然とはいえ、どうやら戦うしかなさそうですね。」

 「・・・ヨッシー、やれるかしら?」

 「勿論ですよ!しっかりと腹ごしらえも済ませてきたので!!」

 「よし、文句無しの5on5だな。急な展開だが、さっさと始めるぞ!」

 この戦いが始まった時点で、特に竜輝が混ざったことによって、勝負は完全決着のシナリオになっていた。マリオは格ゲーの決闘を申し込まれ全戦無傷で返り討ち、ルイージはメダルゲームにて最高配当ジャックポット連発という強運にて敵を粉砕、ピーチは全身を動かす音楽ゲームでパーフェクト連続の完封勝利、ヨッシーは店舗内対戦専用になってしまったパズドラのアーケードで無類の強さで敵を圧倒的に鎮圧。星薇はガンシューティングゲームで一回も死ぬことなく全クリし、何回もコンティニューさせた相手に赤っ恥をかかせた。

 (敵隊長)「・・・覚えとけよ・・・、次はお前らを二度と立てない様にしてやる!!ズラかるぞ!」

 「言ってろ。完封される様ではお前らは何世紀後も勝てない。」

 竜輝がカメラを止めて、ASHの負け戦を収めた動画撮影を終える。

 「っし、今日も完全勝利だね!」

 「みんな、ご苦労さん!これから例の場所で明日の会議をするが、祝勝会も兼ねてヨッシーも来るか?」

 「はい!お供させていただきます!!」

 

 彼らが昼食で来たのは、5つ星ホテルの中に建つビュッフェレストランの中。

 「何気に初めて来るけど、美味しそうなのは一目瞭然だね!」

 「ヨッシー、ここではあまり爆食するなよ?」

 「でも全種類イっていいですか?」

 「それは構わない。程々にね?」

 全員が受付して、各々食べたい料理を手に取って席に着く。竜輝は白目で見られるほどの爆食で、周囲を困らせるほどのヘビースリーパーだが、それ以外は空気の読める方なので、マリオの言いつけ通り少なくした。本当に全種類食べるつもりではあるが・・・。

 (全)「いただきます!」

 とても美味しそうに食べる5人。ここで、本題を切り出してみる。

 「ではこれより、明日の遠征について会議をしようと思う。ロゼッタ、話は纏まったか。」

 ピーチやヨッシーと同じく、星薇もロゼッタという名前があるようだ。

 「ええ。明日行く場所は、最近になって政府によって合併が決まった地域、世田谷区の下半分と狛江市を合体させた場所、見滝原市よ。なんでも見滝原市は現在、音楽ゲームの戦場とまで言われているらしいわ。」

 iPadを取り出して、壁に立てかけて説明する。

 「音楽ゲームの戦場!?という事は、私が大活躍するってこと!?」

 「ま、そうなるな。明日はきちっと頼むぞ、ピーチ!」

 「ふふーん、この私を誰だと思ってるの?この世の音楽ゲームなら知らぬものはない音楽ゲームの女神、ピーチ様ですわ!!」

 「でも気を付けた方がいいともいえるよ。流石のピーチでも敵が多すぎる。住民全員が音楽ゲーム内段位道場で高段位修得者と思わないと、甘く見てると・・・」

 そこに着信を知らせるバイブがテーブルを伝う。

 「お、丁度いいな。お疲れ様です、将軍!」

 「ふっ、待たせたな!!」

 彼らより遥かにオヤジな男が画面に現れた。小さい画面では見にくいので、iPadの画面を左右2分割にして大きくする。

 「えっ!福山さんも来るんですか!?」

 「月曜日、この日は休みが取れたもんで、マリオに話しておいたのさ。有事にならない限りは暇ってことよ!」

 「スネークが来てくれるなんて、俺としてはなんて心強いか!」

 「お前と同じでオールジャンルのゲームをやってきた漢だ、新たな戦場にお前達だけ行かせるなんてクソみたいなことは出来ないさ!」

 笑顔が凛々しく強面なこの男は、神奈川県は横浜市に基地を置く陸海空総合的な日本有数の軍事基地・KASDF(神奈川県総合自衛隊)の大将、そしてマリオ達のチームに欠かせない『非常勤』の中でも一番の戦闘力を誇り、マリオとは一つのライバル関係でもあるアメリカ出身日本在住の、ルイージ超えの高身長192cm・体重83.5kg、福山スネーク(真名:ソリッド・スネーク)である。因みにIQも非常に高く、チームではルイージの次(彼は550)に高い180である。

 「しかしお前らも恐ろしいところに喧嘩を売りつけたもんだよな。よりにもよって見滝原市は止めた方がいいって何度言ったか。したがもう引き返せねぇ、人類最強ゲーミングネットパフォーマー集団の無敗神話が途切れるか伸びるかは、もう神の手に委ねられたって事よ。」

 チーム内一の音楽ゲーマーのピーチも、ここまで聞くと流石に心配になる。年長者の同業者に言われれば、肝の据わり過ぎて何個肝臓があるかよう分からん彼女も身構えるのは必然だ。

 「本当に危険なの?」

 「下調べは済んでいるとは思うが、あそこに潜む2人の美闘士と2人の狂戦士がいるそうだ。」

 「DDRのff(フォルテシモ)とmaimaiのT.R.(ティロ・リズマー)、そしてjubeatのDZ ZEUS(DZゼウス)とRbのGodHades(ゴッドハーデス)か?」

 「戦う前から怖気付く訳ではないが、あのガキ共は最強だ。なんでも全ての譜面フルコンボは当たり前で、彼らに土を付ける為にSEGAやKONAMIは頭を悩ませているらしい。現在諸事情で活動休止しているGodHadesも、十八番であるRbに限り初見最大難易度でプレイして、一発フルコンKO出来る『絶対音感』と『絶対間隔』を持っているらしい。」

 「GodHadesはよくニュースで耳にするよ。活動休止以前は世界進出して猛者を何度も無敗でぶっ潰したらしいよな。」

 「それだけじゃねぇ。ffは、同じくDDRで東日本最強と言われている、群馬県は風見野市に活動拠点を置くAppleBite(アップルバイト)に匹敵するクソガキと言われているらしい。」

「スネークが言うんだ、その話は本当と見て良いだろう。だが、対策はどうするんだ。見滝原攻略についても、俺たちの事情についても。」

「断言しよう、お前たちの事情については俺も全力で支援するが、その他は知らん(・ω・`)」

 「俺達の事情に関しては俺達が何とかするさ。スネークは最強の傭兵とはいえ、俺達の世界では民間人の扱いだからな。」

 「なら、俺は民間人のフリをして、今日中にでも見滝原市とやらに潜入してやろうか!」

 「そうだな。では翌日見滝原駅集合、俺達は先に見滝原入りしているから、ピーチとロゼッタ、そしてヨッシーは学校が終わったら来てくれ。」

 「了解!」「ええ、いいわ。」「よぅあい!」

 「お前食べながら喋るな・・・」

 

~6月4日(月) 東京都見滝原市~

 有給でお休みを取ったマリオとルイージが午前10時、都内の電車にて見滝原市へ向かった。車もあるし交通手段には困らないのだが、彼らは何かと用心深く、あまり行ったことのない場所には公共交通機関で赴くという、石橋を叩いて叩いて叩きまくって渡る前に割る程に慎重である。

 「見滝原市・・・噂通り音楽に満ち溢れているな。」

 「うん。スクランブル交差点の横断歩道BGM、自販機のコイン投入時のBGM、家電量販店の店外BGM・・・ここはいつ来ても飽きなそうだね。」

 「おう!お前ら!!」

 現地のファッションセンターでピーチの指示通りに着こなしてきたスネークが、大量の荷物抱えてマリオ達に歩み寄ってきた。

 「おいおい、どうしたんだその荷物は!」

 「昨日の退勤後に早速乗り込んでみたんだ、ここは品川以上に未来に満ち溢れてやがる。そんでこれは、乱獲してきた非常食だ。」

 中を開封すると、UFOキャッチャーのプライズだろう大型のお菓子や加食の詰め合わせが3袋ぎっちり詰まっていた。

 「そういや、お嬢ちゃんはどうした?」

 「おいおい・・・、今更忘れたとは言わせないぜ?ピーチは女子高生だ。今は通勤じゃなく通学してるんだよ。」

 「お、そうか。だがまだハッキリしていない事もあるだろう。一企業の社長であろうものが、週5で休んでいていいのか?」

 「その辺は心配するな。代わりの方がいらっしゃる。」

 その頃の社内では・・・

 (社員)「おはようございます!」

 「ああ、おはよう。」

 上品な口紅を塗り、見るからに高そうなスーツを着こなした女性社員が出勤する。その女性は、何の躊躇いもなく最上階付近まで上がり、社長室まで歩き、出勤の打刻を押すと扉のロックが解除される。ピーチこと大島桃花ではない者が使用しようとしているのだが、警報などは一切ない。この女性こそ「社長代理」である。

 【詢子さん!おはようございます!】

 「あーおはよう。今日は見滝原市に凸りに行くんだろぅ?よかったら私の娘にも宜しくな?」

 【はーい!私達の活躍、是非生配信で見てくださいね!】

 【そろそろ行くわよ桃花。直ぐ朝偵察終わらせないと鬼教師にコロされるわよ?】

 【分かってるわよぉ!じゃ、今週も宜しくお願いします!】

 「あー任せときな。」

 そう、鹿目詢子はピーチがCEOを勤める会社の代理であった。しかし、当の娘であるまどかには会社の社員と言っているようだ。

 「ふわぁ、じゃあこの書類を終わらせちゃいましょうかねぇ。」

 (執事)「社長代理、beat nationの代表が来られております。」

 「分かった、直ぐに向かうよ。」

 

 そしてピーチ達が学校を終える時間、2台のスポーツカーが颯爽と見滝原に繋がる高速道路の風を切った。

 (野次馬)「お、おい!遂にSMBのピーチが見滝原に来やがったぞ!!」

 ピンク色、そして白のストライプをアクセントに取り入れたランボルギーニが瞬く間に過ぎ去った。

 (野次馬)「その後ろは・・・!やっぱりロゼッタだ!!」

 水色を基調とした、エンジンをスポーツカー用にフル改造したスバルのR2が野次馬達に風を送り届ける。

 「しかし、本当に魔界使徒っているのかなぁ?」

 【先日あなたのカレがぶっ潰したでしょ、もしかしたらその生き残りが居るのかもよ。】

 「親玉を倒して生き残るって?・・・まぁ、あり得ない話ではないけど・・・。」

 法定速度を超過していて、普通なら当然アウトなのだが、2040年の日本では申請が受理された車両に限り、高速道路や指定道路を制限速度超過して走行することが出来る。平均300km/hで突っ走り、見滝原市到着にはそう時間は掛からなかった。

 「着いたわよ、マリオ!」

 【そうか。今すぐ見滝原市の音ゲー人間どもを駆逐しに行きたいところだが、それよりも先に惨く駆逐しなければならない先客がいらっしゃったようだ。】

 「惨く駆逐する?どういうこと?」

 【魔界使徒・・・、市内のショッピングセンターの倉庫内に、魔界使徒の反応を検知した。直ぐに殲滅すれば、そう時間は掛からないだろう。行けるか?】

 「勿論よ☆」

 「一体、私達は何のための切り札だと考えているのかしら?」

 【承知しているさ。では座標を送るから、現地集合で頼む。】

 マリオからの座標図がピーチの画面に転送された。車両から必要なものを持ち、ロゼッタは撮影機材を担ぐ。

 「ピーチ、分かっているだろうけど、今日の目的は今から叩き潰す使徒なんかじゃないんだからね。分かっているわよね。」

 「大丈夫っ!でもロゼッタちゃんも、絶対に油断しちゃダメだよ?機材、一つでも落としたらルイージ君が泣いちゃうよ?」

 「もう何年動画配信者をやってると思ってるのかしら。初歩的なミスをそれくらいで犯す訳が無いわ。」

 これから始まる撮影に興奮するピーチと、冷静沈着なロゼッタ。使徒の観測された倉庫に先に着いたのは、駐車場にドリフト駐車したマリオとルイージだった。

 「さて、借り暮らしの邪魔者には、命を以て立ち退いてもらいましょうか。」

 「久しぶりの交戦だからね。あーあ、『組み手』したいなぁ。」

 ルイージが退屈そうに『組み手』というワードを口にする。背伸びしてリラックスした表情のルイージに対して、非常に落ち着いているマリオ。倉庫の扉の前にやってくると、警備員に止められる。

 (警備)「お客様、ここから先は関係者以外立入禁止区域でございます。裏のお客様用入口からの入店を・・・」

 「そうか、だが今は俺達も関係者だ。命が惜しくなければお前が立ち退け。」

 マリオとルイージが、同時に警察手帳っぽい形の物を見せた。警備員の目の色が変わり、焦りが見える。

 「この倉庫内に、使徒反応を検出した。中で手荒な真似はしないけど、事態が酷ければ多少は覚悟するように。」

 (警備)「しっ、失礼致しました!お気をつけて!!」

 「よし、行くぞ。」

 「5分でカタを付けようじゃないか。行こうか!」

 シャッターを開き、立入禁止の倉庫に足を踏み入れる。マリオのショルダーバッグ、ルイージの腰のポーチから、謎の機械を腕に取り付ける。

 〈Battle Assistant System、起動シークエンス。登録者の腕の静脈及び動脈認証を行います。〉

 〈登録者、藤原マリオ様、確認しました。BASを起動します。〉

 〈登録者、藤原ルイージ様、確認しました。BASを起動します。〉

 「神経接続プログラム、W型使徒目視アプリケーション起動。」

 〈了解。W型使徒目視機能を開始します。神経より脳に一時的な能力付与につき、約1秒違和感が生じます。ご注意ください。〉

 腕に装着した機械により、2人は「魔界使徒」を目視出来るようになった。その瞬間、辺り一面が結界に包まれる。そう、魔界使徒とは魔女の事である。

 「目視出来るようになった人の気配を感知して、臨戦態勢に入ったようだね。」

 「ざっと500くらいか・・・。蛆の様にうじゃうじゃ出てきやがって、目障りだ。」

 「全部、一気に燃やそうか?」

 「そうだな、だが手の内をバラして対策されると面倒だ。俺達の力は最終手段にしよう。見た感じ、コイツ等は俺達の力を使えば簡単に捻れそうだ。少し遊んでやろうじゃないか。」

 鋏を持った手下が襲い掛かる。それをマリオは長い脚から繰り出される素早い回し蹴りで一蹴する。ルイージは一歩下がった後で、スライディングキックで吹き飛ばす。これだけの攻撃で手下達は散る。

 「これじゃお腹いっぱいにならないよね?弱すぎるし。」

 マリオの無線に通信が入る。

 【マリオっ!もう行ってるの?】

 「ああ、裏の方に行っている。」

 【使徒が現れたのね。強そうかしら。】

 「いいや、全然強くないよ。だから『遊んで』いるんだ。周りに人の気配も無いし。」

 【ふーん、それじゃ今から私達もそっち行くね。実はスネークにちゃんとした格好をさせる為にご指導していたけど、実際にここのファッションを見たくて、実はそっちにいるのよ。】

 「分かった。くれぐれも、手荒な真似だけはしないようにな。」

 無線を切ると、徐々に手下達が迫っていた。

 「一気に襲い掛かれば倒せるって魂胆かな?」

 「正しい決断だが、残念ながら俺達は『組み手』が得意でな、選択を間違ったようだな!」

 凡そ100体の手下が一斉に襲い掛かるが、マリオは顔面を掴んでは握り潰し、ルイージは鋏を奪い取って首を断ち切る。そのまま次々と飛来する人面綿の大群を、マリオはパンチやキック、ルイージは武器を奪い取って連キルを重ねる。

 「ほう、遂に四方八方を囲みに来たか。」

 「追い詰められたねぇ。・・・この際ってどっちが追い詰められているのかな?」

 「ほざいてろよ、分かってるんだろうが。」

 「はははっ、言ってみただけだって!」

 「なら、ツインアタックと参ろうか。」

 「僕はいつでもOKだよ!」

 「よし、行くぞ!」

 マリオは足でカウントすると、両手を正面に翳して気を集中させる。簡単に仲間を殺されて焦る手下共は相手を間違えたと後悔するように引き下がろうとするが、それを許さないのがこの兄弟である。マリオは右手の掌底を勢いよく床に叩きつけ、ルイージは両手を自身の真横に開く。一気に地面が熱せられ、結界内の辺り一面は高温地獄と化し、ルイージが旋回することによって火の玉を撒き散らして200体を一気に殲滅した。

 「ざっと300体、あとは200体だけども・・・」

 【はーい!ピーチだよっ☆】

 【無線でもテンションの変わらない桃花に敬意を表して、中指。】

 【ちょっとぉ!星薇ちゃん酷いよぉ!】

 「なんだ?あまり無駄話している状況ではないという事は理解しているのか?」

 【こっちも現地に到着したよ!禍々しい瘴気が充満しているわね・・・。】

 【けど、外から伝わる微弱熱波とダクトから流れる羽毛の焦げたニオイからして、半数は焼却したのかしら。】

 「その通りだ。こちらも残りを捜索するが、正面の倉庫から入ってくれないか。」

 【了解。行くわよ、桃花!】

 【オッケー!さてと、いっちょ片付けますかっ!!】

 通話が途切れ、マリオ達は捜索を再開する。一方のピーチ達も、『ff』捜索に駆けるファン達を掻い潜りながら、倉庫前の扉に到達した。

 

 (警備員)「おいおいちょっと!そこの女子高生さん、そこからは関係者以外立ち入り禁止の場所だぞ?」

 「ごめんねぇ~、でも私のマリオ君から話は通ってる筈だけどぉ?」

 「『OSF』直属の怪異殲滅部隊・世界ランク1位のクルー『SMB』の者よ。公務執行妨害で拘束されたくないのなら、直ぐに通してくれるかしら。」

 ピーチはおねだりしながら、ロゼッタは冷徹な眼差しで警備員を見つめ、マリオ達と同じく警察手帳型の証明証を突き付ける。

 (警備員)「ひっ!失礼致しました!!!」

 「行くわよ。どうやら、自然生成の結界内に一般人が取り込まれている様ね。」

 「えっ!?急がなきゃ!!」

 「それだけじゃないわ。2名の、私達と同じ雰囲気の中学生が侵入中よ。それも、一方は中学生を助けようとしているようだけど、もう一人は行く手を遮っているように見える。」

 「二手に分かれましょう!星薇は結界の方向、私は交戦中の場所に行ってくる!」

 「ええ、行きましょう。」

 この2人もマリオ達と同じBASを左腕に装着し、彼女達の場合は起動するメニューが違った。

 「BAS!登録者専用メニュー、『Battle Form』の起動!!」

 〈スクランブル確認。Battle Formを起動。ゲーム開始まで、5秒。4秒、3秒、2秒、1秒…〉

 「BAS、フルスロットル!!」「BAS、フルスロットル。」

 〈Battle Form,complete.〉

 その瞬間全身が強く光る。ピーチはピンク色のロングドレスを纏い、数本のチョークを胸ポケットに装備する。ロゼッタも水色のロングドレスを纏い、胸ポケットにタクトを挿す。

 「あれは・・・拙い!」

 ピーチは颯爽と交戦中の戦場から300mの場所に到着し、魔力変換によってズーム監視を行う。巴マミと暁美ほむらが交戦し、暁美ほむらの方が危険と判断すると、胸ポケットからチョークを取り出して、ハルバードパラソルを開いて盾にした陰で10秒で魔法式を書き上げる。

 「行け!Unbreakable magic wall!!」

 床に描かれた魔法式が光を起こし、傘を始動点として一直線に極薄の魔法壁が完成する。その防壁によって間一髪、暁美ほむらによる巴マミへのヘッドショットは阻止出来た。

 「この魔法式の短さじゃ15秒と持たないだろうけど、あの子が結界に取り込まれた少女を助けに行くには十分ね。あの黒髪が勘付く前に、戦略的撤退へと勤しみますか☆」

 撤退中に、ロゼッタへ無線を繋ぐ。

 【こちらコードネーム・ピーチ。応答願います。】

 「こちらコードネーム・ロゼッタ。仕事は済んだかしら?」

 【ええ!あと一歩遅ければ正義の味方の脳ミソが吹き飛んじゃうって所だったよ!間に合ってよかったぁ~。】

 「こちらも結界に潜入出来たわ。一般人が脱出口を探しているみたいね。」

 【私もそっちに向かいたいけど、ヤバい中学生に目を付けられちゃったら大変だから、私は一時撤退するわ!】

 「了承したわ。こちらも、結界の使い魔を擂り潰して、地獄に出荷したら戻るわね。」

 【よろしくぅ~っ!終わり。】

 一般人が徐々に使い魔に歩み寄られてくる。この瞬間が狙い目だった。

 「さて、あの一般人には一生の思い出に、あの綿毛の成り損ないには冥土の土産に、私の西洋星術でも見せてあげましょうか。」

 胸ポケットに挿しているタクトを取り出すと、敵の結界範囲をタクト一振りで引き延ばして、自分が結界に入った後に、脳裏に流星群を思い浮かべる。

 「(一斉砲撃するには、何かとあの一般人が邪魔ね。)邪魔よ。離れて。」

(まどか)「ふぇっ?」

 「星々の加護があらんことを・・・。邪神に憑りつかれし悪魔よ、その姿を滅して平伏せ。」

 タクトを一回転させて、先端を使い魔の集団を指すと、その集団に無数の砲弾とも言える星(?)が降り注いだ。忽ち、綿毛の使い魔は儚く散ってしまう。

 「(まだまだよ。)星の子よ、迷える子羊を救う道を開きなさい。」

 出口を塞いでいた使い魔の壁に向けて一斉掃射し、大半を亡き者にする。

 「さあ行きなさい。時間がありません。」

 桃色の髪の少女と水色の髪の少女は、一礼して出口へと駆け込むが、またもや使い魔がこれでもかと塞ぎにかかる。

 「全く、どれだけ私の読書時間を奪いたいのかしら。」

 次の術式を詠唱しようとした時、別方向から先程ヘッドショット寸前の所を助けられた黄色の髪の少女がやってきた。

 「(あの体外に湧き出る魔力、もう大丈夫のようね。さて、早く表の準備をしましょうか。)」

 これで結界内の一般人は大丈夫だと悟り、速やかに結界に穴を開けて脱出した。

 

 「ピーチとロゼッタから通達。状況の終了が確認されたよ。」

 「よし、なら俺達も用事を済ませに行きますか。」

 用が済んだ以上、倉庫内に居座る必要は無いので、出口へと向かった。しかし、謎のテレパシーを彼等の直感で盗聴する。

 《僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ!》

 「・・・兄さん聞いた?」

 「ああ、はっきりと聞こえた。ピーチから授かったテレパシーを聞く能力が、ここで役に立つとはな。」

 メールでピーチに「5分程遅れる」と打ち込み、予定を変更した。

 「市外の訪問者として、挨拶せねばなるまい。」




藤原マリオ「Mario」(CV:木内秀信)
世界最強の実力を誇るゲーマーにして、世界最高峰のゲーマー集団並びに世界一のゲーミングネットパフォーマーYouTuber「Super Mario Bros.(SMB)」の代表に君臨する20歳の青年。普段は幼馴染であり想い人でもある年下の社長の下で働く一流社員で、仕事が終わると直ぐに仲間達とゲーム三昧の日々を送っている。しかしそれは表の顔で、本来の姿である裏の顔は、世界最強の能力者、平安時代より受け継がれし「豪炎」の力を持つ『戦人』である。彼が幼き頃より親しまれ、現在は全部隊の総本山として身を構えるプレイヤーである。炎の力で攻撃するだけではなく、炎で傷口を焼くことで治癒し、炎の力で一定時間の身体能力向上も出来る。ゲーマーとしての専攻はアクションゲーム・格闘ゲーム全般だが、激しく体を動かす音楽ゲームも得意である。(イメージは絶園のテンペストの不破真広)

藤原ルイージ「Luiji」(CV:森久保祥太郎)
世界最強のゲーミングネットパフォーマー集団の副将を務めており、集団戦ではチームの頭脳として活躍する。双子の兄であるマリオと同じく社員なのだが、普段は不幸なことがよく起こる残念なイケメン。しかし、ギャンブルに関しては豪運の持ち主であり、競馬等で億単位の資産を持っている。彼もまた平安時代から続く「豪炎」の力を持ち、力で捻じ伏せるマリオに対してパワー面に欠ける分、戦法で敵を叩く戦略型のスタイルを貫く。いざとなれば炎で敵を焼き払えるのだが、彼は狙撃に特化しており、視力はマサイ族も逃げ出す20.0を誇る。更に炎で直接眼を炙ることで、一定時間倍以上の視力を持てる。但し普段は視力を2.0にする矯正眼鏡を掛けている。専攻はメダルゲームとシューティングゲーム、戦略型のゲームだが、手先勝負の音楽ゲームなら自信はある。(イメージは絶園のテンペストの滝川吉野)

大島桃花「Peach」(CV:伊藤静)
高校生にして大手企業「PEACH」の社長を務める。マリオとは幼馴染であり、同時に両想いの関係である。また、鹿目詢子とは長い付き合いであり、彼女が高校に「出勤」する時は、代理で詢子が社長として出勤する。実は彼女は元々「魔法少女」だったのだが、マリオが所属する特殊部隊の元締である研究所によって、彼女が契約した時に背負わされたデメリットの一切を解除してもらい、研究所が誇るシステム「BAS」によって疑似変装出来る。石突にハルバード、露先に刃の付いた武器を使うのだが、魔法少女時代に解読した魔法少女原文を用いて魔導計算式(魔法式)を魔力を籠めたチョークで床などに書き、強大な魔法を発現することも出来る。またマリオに劣らない格闘技術も持っているので、「肉弾戦姫」とも呼ばれる。専攻は音楽ゲーム全般。(イメージは絶園のテンペストの鎖部葉風)

西川星薇「Rosetta」(CV:ゆかな)
名目上アルバイトとして、桃花の会社のOLとして働く高校生。とても病弱に見えるが、痩せ過ぎなだけで体力はある。ルイージとは両想いなのだが、周りからはルイージが尻に敷かれてると思われている。重度のラノベ中毒者で、一日の大半は読書に費やす。桃花と同じで彼女も魔法少女の過去を持ち、魔法少女の現実を知った直後研究所で「契約解除」した桃花とは違って、彼女はその力を利用して自らの願いによって閉ざされた西洋星術への道を抉じ開ける選択をした。タクトが内蔵された薙刀を武器を扱うのだが、魔法よりも西洋星術による呪術や砲撃を優先する。専攻はシューティングゲーム全般だが、テーブルゲームやオンライン麻雀も得意である。(イメージは絶園のテンペストの不破愛花)


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