This work end エルフ課長のさいなん (ARice アリス)
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はじまりは エルフ、会社へ行く
エルフ娘の課長退職記 エルフ課長のさいなん


お人よし、楽観的

そんなのはよく言われる


 

とある日。初夏に入ろうかという少し気温の増してきた季節だ

 

 

 

朝起きると、肌の色が異様に白い

 

 

それに、手足が短く

 

結婚を重ね。バツ2でありながら童貞である私の体の一部である"息子"が"娘"に成っていて。

 

耳が異様にとんがっている。服の上からでもわかるほどの大きさの胸のふくらみまで

 

これは可笑しい。

 

と、とりあえず今日は休め…ない

 

先週一年分の有給休暇を一週間丸ごと使い、趣味の戦艦の模型作りに取り込んでいたからだ

大型キットで一年かけて休みを潤沢に使いながら

去年の八月から組み立ててやっと完成に為る筈だった…のになあ…!

 

現実逃避から回復すると

胸に包帯でサラシを巻き、イヤーマフで耳を巻き込み隠す

鏡で状況を確認すると、私の顔の一ミリたりとも配合されていない美少女の顔つきであった

 

マフラーで…いや、無理だ。会社の入り口で止められるだろう…

 

如何しようかと

 

悩み苦しんでいる処を普段投資の才能でオレ以上の金額を稼いでいるネオニート。

 

前妻の連れ子であるオタクなところが似ている息子が

 

よりにもよって、此奴に見られた!

 

「…どなた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙目になりながら必死に父親だという事を説いた

 

 

「信じるよ…今日は取引は中止してこのニュースを伝えに来たんだ…」

と妙にクールなナイスガイである息子はリビングのリモコンを取ると

 

 

ニュース映像に上半身スーツ姿の美しいケンタウロス(・・・・・・)の女性が映っていた

 

『現在、この非常事態に総理自身も非常事態を宣言しました…

品川駅、西口からレポーターに繋がっております

山田さーん』

 

若い男性だったのだろうか幼い小学生くらいの翼の生えた女の子がリポートしている

『はい!現在確認されている情報では!中年男性から小学生までの男性がファンタジーに出てくる様な女性の姿に変身している異常事態が発生しており。

この出来事に男性が病院に駆けつけています!また、交通各網は大荒れで、局員もこの事態に巻き込まれ。

あ!あちらは二足の羊の足の女性…ズボン?元男性…?でしょうか。

変化した職員も駆り出されるほど急ピッチで現在国家全体で立て直しを図っています!』

 

 

「父さん、ちょっと今日は会社も休めそう」

 

 

「うん、途中まで送っていくよ」

 

息子はオレの体をじろり、と見廻すと

 

「服も買い換えようか、出費は俺から出しておくよ」

昨日の飲み会で持ち合わせ、無いでしょ?

と、妙なところでまた。イケメンである

 

 

「車、乗って」

 

 

「高級車だな…」

 

 

「ちょとネット仲間にレンタルしてるだけ」

 

 

どんな友達だと思いつつも乗り込み、都内を車が走り出す

 

 

しばらく信号待ちをしていて尋ねてみた

 

 

「お前は…いつからその姿なんだ?」

 

「あはは、バレちゃうかあ…」

 

 

山岳山羊のツノが息子(むすめ)に生えていたらそれは気が付くだろう

 

 

「小学校の頃、ちょっと胸が大きくなって…それから」

 

 

「はぁ、それは母さんにも言えないよな」

 

「うん、二足だけど独特な羊の足で靴を買うのもネット掲示板で知り合った仲間に頼んで」

 

「そうか、大変だったな…!」

 

「うん…」

 

元々俺も息子…いや、娘も中世的な顔立ちだったからな

 

「掲示板も大荒れで今回は全世界規模で起きているみたい」

 

「そうか、ありがとう」

 

 

「これからどうなるかはわからない、けれど」

 

 

 

「なーにみんなで一緒にやれば怖くない…ってやつだ」

 

 

 

 

「今日は病院も混み合っているだろうから、ここに来たんだ」

 

 

 

「病院に行っていたらどうなったんだ?」

 

 

 

「ん?変わらない。女性のしぐさと。身体の用法を学ぶだけらしいよ。」

 

 

それって…という言葉を飲み込んで

 

 

 

「そーいうこと。ニュースによれば国は面倒見る積りらしいよ。この国のお偉いさんがたも予想だにしていなかっただろうけどね」

 

 

 

「とりあえず、今日は休んでも大丈夫だよ。男性陣はみんな、そうだろうしね」

 

 

高層マンションに入りこんだ

 

 

エレベーターで49階フロアに降り廊下をしばらく進むと『零路』と小さく名刹に書かれた部屋に鍵を使い入る

 

 

 

様々な服が広い吹き抜けフロア一室に並んでいた

 

「ふわぁ~!」

と惚けていたが『いらっしゃいませ』

との声に驚き人物を見ると『下半身蜘蛛の女性』だった

 

「こ、これは失礼を…」

 

「いえ、お好きな服を選ぶ、というのも難しいですね…フフッ」

 

「レイジさん、一年着こなせる服を適当にチョイスしてもらえるかな?」

 

「いつもお世話になって居りますので。喜んで」

 

このヒトの身体には驚いたがチョイスされたのは

ゴスロリ、競泳水着、秋冬、春、夏と分かれたコーディネートだった

 

 

着せ替え人形となり、半ば自身も楽しんでいたが夕方となり、帰宅の居に着いた

 

 

 

駐車場所とは異なる場所に車を停め、暫く歩いた

 

身体の感覚、途中コンビニで買って食べたアイスクリームの味覚の変化(甘いものは苦手だったが大好きになってしまった)などそんな他愛もない話をしていた

 

二回平屋のローン支払い済みのボロ家に帰宅した

 

 

夜、月は赤く浮かんでいた。今日起きた事、これから起きる出来事。凶事を示すかのように

 

 

 

 

 

家に着くと茫然自失のままベッドに横になった。

 

 

今まで築いてきた物。価値、すべてが替わってしまった

 

 

 

 

 

…横になると耳痛い

 

 

耳、結構敏感なんだな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茫然としていると眠って居たようで、起きるとまだ夜。

 

この体は夜目が利くのか、暗い寝室の枕もとの時計の指す時間は2時

 

 

 

その時

 

 

僅かな音を立てて寝室のドアが開き

 

入ってきた娘と目が合った

 

 

「…父さん」

 

 

 

 

「うん?なんだ」

 

 

 

「明日は大丈夫だから…」

 

 

 

 

「起きるよ」

 

 

でも、という娘を手で静止して

 

 

 

「今日は私も眠れないからね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しして二人でリビングで食卓の椅子に座りながらマグカップを片手にココアを飲んでいた

 

 

 

 

 

「あ、ココア飲むの久しぶりかも…」

 

 

「あはは、母さんは苦手だったからな…」

 

 

父さん。

 

と、両手を膝の上に整え、オレ、いや、私の方を見ながら

 

「込み入ってお話があります…!」

 

「なんだい?」

 

「…お父さん、何時も私は滅多に姿を現さなかった…」

 

ああ、引きこもりだと疑った時期もあったね

 

 

「この姿を見られたくなかったの…母さんにも、父さんにも」

 

 

「父さんは母さんの私に対する呆れた様子の話も聞かずに…離婚の原因になってしまった」

 

いや、度々、教育に関して喧嘩をしていたし。最後には、母さんとは仲が悪かった。

 

 

「…不出来な子でごめんなさい!」

 

 

 

とうとう、泣き崩れてしまった。私はひし、と抱き寄せ

 

受け止める。

 

 

体格差はあるが。これでもこの子の母親(ちちおや)だ、確りせねば

 

 

 

 

日が上り始め、起きるとブランケットが掛けられていた。

 

伸びをするとぶるっと震える。

 

「朝方は少し、冷えるな。」

 

 

 

 

 

粗方の用事は済ませ。身だしなみの整えも終わった

 

「父さん、ご飯出来たよ」

エプロン姿の可愛らしい娘がお玉を持って料理を拵えて待っていた

 

ハムエッグにオレンジジュース。パンのトーストとテンプレの様な食事だったが娘が作った食事なのもあって更に美味しく頂けた

「美味しかった。また作ってくれるとうれしいよ」

 

 

「今日は遅くなると思う」

 

 

うん、と少し寂しそうにうな垂れる娘を見て

 

 

座っていた椅子に立ち上がると

 

「えっと、羊のツノは駄目だったんだよな…よしよし

 

頭の横に生えた角は避けて髪を梳くように撫でてあげた

 

 

 

おとーさーん!と小さい体に抱き付いて来たが優しく撫でてあげた

 

 

 

 

「ちょっと遅刻しそうだな。」

 

「車で送ろうか?」

 

「ああ、駅まで頼むよ」

 

 

会社までの通勤は過酷なものとなった…!

 

 

徒歩15分位で着く最寄りの駅なのだが体の小ささも含めて早めに出ようと思い十分近く遅くなったが車で送られたため何とかたどり着いた

 

 

そこからが大変でいつも昇る階段が山のように見え、登山と化した

 

エレベータやエスカレーターは馬人などの非常に扱いずらい体のヒトの為に使われている。

 

階段の最中、昇ることも降りることも怖くなった私を馬人のお姉さんが背中に載せてくれなかったら五分近くかかっていただろう

 

 

定期を取り出し、いざ、改札!と意気込んだはいいが子供身長なので

 

 

「んしょ。」 IC部分にタッチするだけで手いっぱいだった

 

 

 

 

 

階段を恐る恐る手すりにつかまりながら降りて電車を待つだけだ。

 

急行の通過列車や特急電車が怖くて

 

少し足がすくんだと言うのは余談である

 

 

十分後

目的の電車に乗り込み

 

車内はいつも以上に張り詰めた雰囲気だった

 

女性もそうだが、上書き(・・・)された男性も少し辛そうにしていた

 

 

その中椅子に座る私の前の吊革の前に立つ少しポーとしている

 

少しおっとりしている馬人さんはどなただろう。

 

かなり美人でゆるふわ系だが。親切に下りる階段まで手伝ってくれた。

 

部下、なのだろうか?

 

 

電車を降りる際も手を取って。そのまま会社の前まで来た

 

 

「うーん、ここからは。一人で行けるよね?」

 

「は、はい。ところであなたはどなたなのですか?」

 

「わたし?わたしは…」

 

 

 

「バトー社長!」

 

しゃっ、しゃっ。と連呼して言葉にならない私は相当動揺していた

 

 

 

「社長、今日は会社の前で朝礼を行います」

 

秘書の女性はいつも通りだ

 

 

 

うん、わかった。とユルイ感じで返すこの人は本来

この会社を一代で築いた叩き上げの社長として有名である。

 

毎回上層会議に出席するたびに無言、かと思えば正確な指摘のやり手の社長。

そして会議で話し始めると私だけが睨まれていたのだが

 

 

 

「ありがとー!サキちゃん!」

 

性格まで変わるのだろうか…秘書の女性に抱き付き。ほんわかした笑顔までつけて、二重人格か何かを疑わざるを得ない

 

満面の笑顔で秘書の女性もまんざらではないようだ

 

 

「うーん。そうでもないよー。えるふかちょーくんには

 

まえまえからめをつけていたしねー

 

心の奥でも見通す力でもあるのだろうか?

 

 

 

「ただ、最初から…」

 

「社長、ご指示通り男性職員女性職員、清掃員。差別なく社で働く者を集合しました」

 

 

「うん、ありがと」

ゆるふわヘアのくせっ毛ボブの女性が前線指揮官…見たことないが

 

…のように前髪を纒て上げるとソレだけなのに姿が変わっていた

 

社長は台の上に昇る

 

「総員注目してもらいたい! …私は…馬杭(まくい)社、代表取締役 馬頭 慎二(ばとう しんじ) !」

 

 

「諸君も存知の通り、このような出来事が起こった!」

 

「私も姿は変わった!しかし!以前と変わらず!このようにコミュニュケーションを行っている!」

社長は四つの足(・・・・)の蹄鉄を踏み鳴らした

 

「肌が白くなり、目の退化した者!生まれつき目の不自由な者!変わりは無い!」

専務!と呼ばれ壇上に上がった白い尾びれの生えた彼女は普通の足がありお尻のあたりに大きな尾びれがある。目が見えないが、それすら気にならない美しい人魚のようだ

 

 

「どうも、高雄 信彦です二男の父親、サラリーマン…」

 

 

 

 

 

 

 … ………

 

 

 

 

 

 

「改めてっ、二女のママ!バリッバリのオフィスレデーでーすっ!」

 

場は数人口笛を揚げ歓声を上げている者、何やら興奮し唾を呑み喉を鳴らすもの。

 

 

 

こんなご時世でもまくい社(ウチ)は変態ぞろいだな。

 

 

社風的に(・・・・)…』と今更ながら思い出した

 

 

「…次」

秘書の女性が壇上から強制的に降ろす

 

「中年特有のノリは改善して行こう…」社長も呆れて苦笑している

 

 

 

「空を飛び立つ翼を持った部長!大城 忍!」

 

「ふむ、翼が大きいので社内では迷惑をかけるが、宜しく頼む。えっ、言え?言わなければ…なければ…」

秘書の女性から耳打ちされ大鷲の翼を持つ見た目黒髪の大和撫子女子は

 

 

「しっ、しのぶ、散髪に行こうとしたら散髪屋が娘さんと始めた綺麗な美容室になってたんだよっ…

「黒髪を切りそろえ大和撫子っ!」ポーズをキメて青ざめて又もや自虐ネタだった…

その場はハァハァ…と息を荒げる者 それでも一向に構わん!

堂々と心地のいい笑いと拍手をする猛者冷めきった表情の奥に何を隠しているかわからないが何やらスマホで熱心に撮影している者

 

等カオスな状況だ

 

直ぐさまマイクを社長秘書が奪い

 

「ではッ!社長贔屓ッ!?むしろこちらが我らが社(ばかども)チームリーダー(ごしゅじんさま)っ!」

秘書であるアツイ彼女のマイクパフォーマンスは夏場から年末にかけてよく見られる

 

 

 

誰かが

待ってましたッ!エルフ課長!と呼び声かかり

 

 

私が壇上に上がると総勢百人弱の中で一気に歓声が広がる。

 

 

 

「どうも…私がごしょうかいにあずかりました」

 

マイクの位置が高い、目で抗議してもみんな興奮してるのが怖い

 

 

 

マイクが…と言いかけ

 

ニコニコ笑顔の秘書さんが

「おなまえは?」

あの

 

「おなまえは?」

 

 

諦めよう。フリだ

 

  「  小桜 結(こざくら ゆい) です  」

 

 

「ここまでどうやってきたのかな?」

 

むすこ…と言いかけるとみんなして睨んできたので言い直し、改めキャラを作ろう猫を被るともいう!

 

 

 

 「わたしのむすめのくるまでおくってもらって」

 

静まった

 

 

何で無言

 

と、隣のヒトを頬をひっぱたいてる。お前ら…

 

 

 

 「えきのかいだんにのぼっているとちゅうはよかったんだけど、おりるのもあがるのも、こわくなって」

 

「おうまの、おウマのおねーさんにかいだんのとちゅーでこわくなっていたところを!たすけてもらったのっ!」

 

おずおずと隣を見ると、社長?

 

 

鼻から…いや、何も言うまい…

 

ここまで来たら社会的地位など!あざとく生き残ってやるわ!ええい!ままよ!

 

「かいさつにいったら、あいしー?のぶぶんにたっちっ!するのもたいへんだったよ!」

 

 

見たっ!俺は見たんだ!

社員が叫ぶ

一人必死に小さいスーツ姿のエルフ社長が改札で奮闘しているところをっ!

 

助けなさい…

 

「おうまさんの、んーん、ちかくのえきも『ばとーおねーちゃん』にたすけてもらってなんとかたどりついたよ!」

 

「ありがとー!ばとーさん!」

 

社長並びにみんな

 

頼むから

 

頼むから外でそんな大声で叫ばないで

 

社員が私一人にゾンビ状態で

 

上員役四天王とか言って無双してないで

 

あ、社長、頬ずりは良いですけど私の髪が口に…

 

 

 

まあ

 

こんな馬鹿ども(あいすべきばか)だからこそある意味理想の職場なのだ

 

 

 

 

 

 

それから事態の収拾に

 

 

 

 

 

 

『みんなだいっきらいっ!』

 

 

 

を使用するのにそれ程時間はかからなかった

 

 




ご覧いただきありがとうございます

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魚介系女子! うみへのみち! 1

困難に立ち向かう意志

災難に遭っているのは何も課長だけではありません

短編集です

他のお話挟んであと一話続きます


 

 

 

 

このご時世…姿が変わる前にバイトをクビになった

 

家出してきた身の上なので家族には頼れないし…

 

 

 

 

 

最近食費がかさむ

 

と、サイの女性である大家の大野さんが語っていた

 

 

このアパートを引き払うつもりなので

お世話になったお礼にキャベツ四玉を送った

 

 

 

とぼとぼと行く当てのない散歩を続けていると河川のあたりで人だかりができていた

 

何かと見てみると

 

 

 

小さな女の子が子犬を抱えて先日降り経った雨の影響か

 

ごうごう、と轟鳴り響く濁流の中の中州に取り残されているではないか

 

 

 

此処に居るのは陸上種のヒトたちだけなので消防に連絡していても

このままでは激しい河の流れに飲み込まれてしまう

 

 

どうすればいい…

 

 

「魚類の…とにかく泳げる人は居ないか!?」

 

 

「私が行こう…」

 

言い出したそいつは…

 

そいつは顔つきは変わっていたが覚えている

 

昔中学、高校と競い合ってきた相手だからだ

 

 

ライバル…そんな関係だったかもしれない…

 

 

 

アイツは元々スポーツ推薦で入った俺とは違い

 

一般入試(さいのうもち)だった

 

 

まあ、いろいろあって今は幸せに暮らしているのだろう。そんなアイツが危険に身を乗り出す

 

 

誰か止めに入れ…という白々しい空気に耐えきれず…ああ、そんな空気に耐えきれずだ

 

 

彼女は川辺のコンクリートで戸惑っている

 

 

 

しかし、偶々ここにイルカの人魚が居るのだ…

 

 

シャチの人魚には出せない身軽さで…

 

 

海洋哺乳類でも死ぬような石や木片、プラスチックに鉄が含まれる強い流れの中でさえ…

 

 

 

 

 

 

中でさえ

 

 

 

身を投げ出せる…

 

 

一番身軽(・・)な俺が

 

 

 

 

飛び出してゆくと周りも自身も『あ』という間もなく茶色の河に飛び込んだ

 

 

身が軽い、体は勝手に動いてくれる

 

 

尾びれがとても自然になじんで…もともとこうだったんじゃないか、と錯覚する

 

 

この通り、流れてきた巨木の下をさらに潜る。あっという間に中州にたどり着いた

 

「…助けて」

 

この子自身も犬系の子のようだ、まだ幼い

 

 

「うん、助けに来たよ。上半身に確り掴まってね」

 

「ありがとう…!」

 

 

…革ジャンの上着に掴まらせながら上半身を浮かしながら泳いで行く

 

 

もうすぐで切り立ったコンクリートの川岸に着く

 

そこで木の破片が勢いよく腹に切り傷を作った

 

「ぐッ、頼んだ…っ!」

 

この子を腕で投げ出し、尻もちをついたようだが大丈夫かと安心したところで

 

革ジャンが引っかかり河に引き摺られ

 

下流へと投げ出される

 

オレは混乱し、視界も狭まり上も下も判らない状況だ

 

 

打撲に切り傷が増えて行く。

 

一般人だったら死んでいただろう

 

 

水の中で呟いた…

 

 

 

 

「不思議と怖くない…」

 

 

 

 

目を瞑ろうとした

 

すると、音波(・・)を感じた

 

 

 

目の前に私を抱き上げる彼女が居た

 

「馬鹿っ!」

 

濁った水の中でも判る。変わらない。

 

 

綺麗な蒼い目

 

 

 

ぐん。と加速を感じ

 

 

陸上へと

 

 

 

 

「こっちです!」

 

俺は彼女に助け出された

 

 

「今度は、守って見せる…」

 

俺は死に態で呟いた

 

「おまえ、ソッチの趣味でもあるのか…?」

 

彼女は処置をしながら俯いた

 

「ばーか」

 

そのまま、そっぽを向き

「貴重なライバルの復活だぞっ!相棒(・・)…!」

 

 

そうだ、チーム戦では…こいつとアンカーを組んでいたんだったな…

 

逆にこっちが恥ずかしくて顔を赤くした

 

「ありがとよ…相棒(・・)…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって

 

 

 

高級そうな真っ赤な絨緞に

 

センスのいい花柄の大きい陶器の花瓶

 

黒を基調とした高級感あふれる壁紙

 

オレが座っているのはトリプルベッドのレースのカーテンのお姫様ベッド

 

視界からお高そうな印象を与える。

 

病室だった

 

「…どうも、お嬢様を助けて頂き、ありがとうございます」

 

「い、いえ」

 

「私は秘書官(・・・)の讃岐と言う者です」

 

「ああ、この病室の手配は貴女はお気になさるかもしれないですけれど、私と彼女の折半という事に為っております」

 

 

「彼女とは…?」

 

 

 

 

「彼女はご友人のシャチの人魚の彼女です。彼女もご令嬢だったようで」

 

 

オレが二の次を言う前に彼女は口を出す

 

「ご安心を、彼女達は軽傷で済んでいます」

「それよりも、貴女です」

 

 

「ええっと…何か?」

 

 

彼女はズイと無表情を迫ってくる

 

「新しく病院が始まって以来の大けがですよ」

 

うちの子(・・・・)が夜泣きをし始めて、この様子だと会わせるとさらに落ち込みそうです…」

 

 

「あの、先程から…話が見えない…というか」

 

 

「ああ、失礼」

 

総理大臣の秘書官(・・・・・・・・)を務めております『讃岐 樹希(さぬき きき)』と申します」

 

流石に目が白黒の状態だがさらに迫ってくる

 

「今の状況は極秘事項ですが、彼女の精神状態は以前ほど芳しくなく、殆どお世話していますが…要約すると子供っぽく…少年の心を思い出したというか…」

 

 

「最近、というか顔を見せなくなったのはそういうことでしたか」

 

 

「そう、そして下町で会話して仲良くなったあの子犬を助けようとして…橋から…というなんとも間の抜けた話です…」

 

 

「このような状況なので。お手数ですが、手紙を書いていただきたいのです」

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは…はい、これで大丈夫だと思います…」

 

手紙の内容に驚いたようだが肯いてくれた

 

 

「この度はご迷惑をお掛け致しました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は頭を下げると入れ替わりに看護婦が入ってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間で上半身のけがは完治し、退院の日となった

 

「退院おめでとう!」

 

 

「退院というか…あはは」

 

 

尾びれやつるつるした部分の皮膚の方は精密検査として海洋大学の方に引き取られる事、となった

 

 

「先生も()治るといいですね!」

 

「まったく、一言多いよ!」

二人して笑った

 

「また怪我しないように!とぐろ(・・・)をまいて待ってるよ!」

 

仲良くなった先生は下半身を蛇の胴となっていた

 

「イヤ、怪我しないように来るな。が基本じゃないですか?」

 

「だーいじょうぶ、怪我しない人間なんて居ない…!そして私に処置される人間も!」

 

 

「大丈夫かね…うん、それじゃあ」

 

「おお、ほんとに来た」

彼女の前に屋根付きのプール型の水を張ったトラックが玄関ホールに止まった

 

 

「宮之さんですね?」

 

「はい」

 

「海洋大学の者です。こちらの階段から乗り込んでもらっても?」

 

「はい分かりました」

トラックの横からタラップを出すと歩いて

「水着着用ってこれの事だったのか」

 

 

「はい、ある程度浅くなっていますので」

 

「上から顔を出してもらっても構いませんよ屋根が付いているので」

 

足元から浸かると少し冷たいが、直ぐに慣れるだろう

 

「温度は此方で調整できます」

 

 

「おうっ!私も魚類だったらなあ…!」

 

「はは、では患者さんを引き取らせていただきます」

 

「おう、サインは…十分だし…」

 

 

先生は良い笑顔で送り出してくれた

 

 

「行ってこい!時々連絡送ってねー!」

 

車が走り出す

 

「ともだーち!きみしかー!いないんだからさー!」

 

「ありがとう!せーんせー!」

 

プールの中から手を振った

 

 

 

 

高い位置見ている景色は走り出し

 

時折、水槽から降りてトイレや飲み物の差し入れ等の休憩を挿みつつ

 

都内から少し遠い県の水族館に到着しようというときには夕暮れだった

 

 

「本当に水族館に行くんだ…」

 

人生で小さい頃に行った以来ではないかと

 

「裏の搬入口に回ってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タラップを降り、搬入口の階段を上がってゆく

 

 

それから入り組んだ通路を通り

 

 

職員用のエレベーターに乗り

 

 

目の前には大きな水槽が見えた

職員さんが言うには

「あれは大分治ってからですね」とのことで

 

天井につり下がっている通路を歩いてゆくと、様々な水槽が下に見えそこには様々な種類の人魚も居るようで疑似的な岩場で腰かけて手を振ってくれる人も居た

 

つり天井から降り、再び通路を通っていくと反円状のイルカステージのショースペースに出た

思わず半目になって彼女を見ると

「ああ、大丈夫です。ここはもう営業していません、そのようなことは有り得ないので」

 

「此方のプールから向こうのプールまで泳いでもらってそこが今夜の睡眠スペースとなります」

 

「プールの中で…ですか?」

 

「一応行ってもらえればわかります」

 

「…分かりました」

 

尻尾を浸すと傷口が痛むが真水なのだろうか

 

やさしく尾びれを振るとぐん、と進んで行き

 

曲がり角のカーブも難なく水面に顔を出す

 

「ゲートを開きます」

 

「ゲートの向こうは温水となっています、何か御用がありましたら、明日の9時には迎えに参りますのでご自由に」

 

それとこれを、と渡されたのはコールスイッチと毛布だった

 

「それは水にぬれない加工をしてあるので大丈夫です」

 

 

「はい、分かりました…ありがとうございました」

 

では。と彼女は帰って行った

 

 

ゲートが開き、中に嘆息しつつ入って行き

 

 

目の前に広がるのは円形のプールだった

 

数人の人魚が入っていたのは驚きだったが私を見ると普段通りの行動に入った

 

 

美人だらけで緊張するがゲートは閉じられたのだ…

 

 

 

水族館での夜が始まった…

 




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~陸上を駆けろ!リス娘! 警笛吹く山羊の娘 もういちどの出会い!

最新話2021 7/14 3.55


クラスに気になるやつがいる。

 

ギャルっぽい金髪に明るい笑顔、日焼けした陸上部の女友達の日野だ

 

何かとクラス委員の俺に一緒に居残って手伝ってくれたり。よく話しかけてくれたりする。

 

 

向こうは覚えているのかあいまいだけど、幼稚園の頃、一緒だった。

 

いつも笑顔で、今と同じように園の中心であった…様な気がする。

 

 

 

彼女は陸上部に入っていると気が付いたのは単純で、俺は走るのは好きだ。

 

 

小中学まで陸上のマラソンとしての脚を磨いてきた自負は、あったのだ。

 

 

「かーづのっ」ぷわ!なんて自分の声帯から間抜けな声が聞こえた

 

クラスメイトに気が付かれていないだろうかと周囲を見渡すと誰もいなくって、後ろから悪戯調子に

 

日野がニコニコ笑っていた。

 

 

「今日は晩ごはん何がいいっ?」

 

彼女をずっと見つめていたようだ。恥ずかしくって帰路に就くバスの中でうつむいていた

 

顔が熱い

 

「コロッケ…は昨日食べたし。うーんっ……」なんて呟いている日野は両親のいる実家とは遠い関係上

 

こんなことされれば…勘違い…いや!

 

 

ゆ・う・じ・ん・と・し・て 一人暮らしをしている自分に…料理をふるまっている。あくまで、勘違いしないように…

 

スマホの通知が来たらしく、彼女は通知を覗く。

 

 

一瞬まぶしそうな目線を向け、こちらに数歩前に出ると顔を覗き込み。

 

 

肉じゃが!肉じゃがにしよっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

                モネっ!

 

 

 

 

 

 

 

なんだ、こんなに眩しい彼女なら、

 

 

 

それから、ご飯を食べて。ベッドに一緒にいつも通り(・・・・・)うっすらな鉄の意志で添い寝。

 

意識を失い横になったこと

 

以外覚えていないのだ。

 

何か夜中に身体が苦しく、吐き気、熱が出てきた。

 

汗が出なくって。肌が熱い。みず!

 

 

 

足を折りたたんでやっと入る小さな風呂釜に思いっきり水道蛇口とシャワーを流す。

 

 

しぬ。あつい!あつい!ぎゃああああ!目を抑えながらわめいていた。

 

そして、気を失う前に。頭から風呂に突っ込んで、こりゃあ溺死するな。と我ながら水の中で水を吸い込みながら笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、なんか…獣柄の…?ちょっと身じろぎすると。   ガタッ!!

 

 

「何の音!?」思いっきり目が覚めた   がたたっ!!

 

 

 

ががががが!

 

 

「あらあらー!可愛らしくなっちゃってー!」

 

 

羊の脚?なんだ、誰だ。こいつ!

 

 

カーテンレールが開くとそこには。

 

 

 

側頭部には大きな羊の角が生え、下半身は山羊の脚の異形の日野らしき女性が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は冷静に小さな胴体(・・)を抱き上げられこんな身体を抱き上げる尽力と改めてみる自身のでっかいしっぽと尖ったかかとの無いつま先の女性の身体にパンチを食らった気分だった

 

 

 

 

プラスチックのちゃぶ台を挟み、彼女と、いや。彼女を睨んでいた。

 

 

「あんた、誰だ。日野…じゃないな…」

 

 

 

 

「陸上部出身、幼少のころからの幼馴染。」「なんで?って顔してるね。」

 

 

 

 

「だってこの身体になってから(・・・・・・・・・・)私たち。付き合ったんじゃない。」

 

 

 

鹿角一葉(かづの いちよう) 高校の頃のあだ名はクエスト受付(・・・・・・)

 

 

 

「んんー?まだ催眠術解けてなかったの?」

 

 

 

「だいじょーぶだよ!昨日一斉に変化!の前に私たちの子供はいた(・・・・・・・・・)からね。」といってピンク棒っ切れの円形見えるは一筋の線。

 

 

 

えっ。またしても自分は理解しがたい衝撃のセリフ。何トントラックに撥ねられたように呼吸がおかしくなり浅い呼吸で視線はまっくらに固いものにぶつかって失神していた

 

 

 

 




お馴染み矛盾有ります。投稿を優先。

彼がモネではありません。


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駆けろ!跳べッ!娘たち!リス娘は火をくべる。いのちのヤドリギ

急いだため荒いです。ご容赦を


 

目標の攻撃を避けて剣の切っ先だけではなく、衝撃攻撃までくるかあ

 

あ。見た目変更ここでできたんだ。

 

次来たら惨劇になってらあ。

 

あ。あはは、あははは、ぱぱ、かな?まま。だろうなあ

 

「アハハハハ。ひひひっ冗談だって!いっつも通り引きこもってたから合鍵使って入ったらさあ。」

 

こやつをジト目で見る

ひーなんていって。金の髪に瞳孔は横に入っている。ショートパンツには眩しい足が。膝先からは山羊の逆脚かあ

 

焦げ臭いにおいして急いで風呂に向かったら俺が入っている小さな風呂釜におそらく俺の身体から煙が出ていたらしい

 

む。なんだふくれっ面して。ニヤニヤしても美人にしかならんぞ

 

「もー、カワイー!」抱きついてきおった!体が小さいから身動きできんっ!

 

 

 

 

──────

 

────────

 

 

───────

 

 

この目の前の可愛らしいおそらくリスちゃん(シマエゾリス)にメロメロであるのは確かだ

 

前の姿はメカクレで小さな体なんだけれども

 

真ん中分けに髪型が変わりまた瞳がつぶらでキュートで

 

幼いふさふさの大きなしっぽに

 

どうしても小さい種族なのか上目遣いなのがまた

 

 

…、ま。

 

 

……このマンションに住むきっかけになったことは

 

…わすれてくれてよかったケレドネ。

 

 

 

 

 

[何を言ってる。今日も学校に向かう前に漫画雑誌を五冊買ってくる予定だ]

 

「そっちこそ何言ってるの…………?」

 

[友達が頼ってきているんだ。助けるのは当然だろ]

 

「何を言っているの…?鹿角……あんたの学校、そんなトコだったの…?」

 

[みんなが頼ってくれる。みんなが。日野。そこをどいてくれ。]

 

「鹿角。そのおねがいは。聞けない」

 

[ヨソ者だろう!お前は!]

 

「うん、幼馴染だもんね。」

 

 

[お前。何…?カタチが……変わって……!うわあああああ」

 

 

[そうだよね。ヨソモノ。そいつらをヨソ者にすればいい]

 

 

 

 

 

 

うん。思い出した。貞操をささげたのも。喰われたのも。

 

 

「日野。オレ。」

 

 

「ふふふふ、想いの力が私を変えたの。」

 

「日野……」

 

 

「今日はホタテダヨ」

 

目を虚ろにした日野に。腰に抱き着く。

 

「さすがにスーパーの奴にしてくれ。オーブン、バターで頼む」

 

 

 

「うん!」

 

 

それでいい。それがいい。

 

 

 

『「それ、やあ!」』

 

 

『「それ、やあ!」』すげえ!キャラボイス自分から出せる!」

 

 

 

赤を基調とした落ち着いたクリスマストーンの自宅である団地

 

格子戸の窓から遠くに夕暮れに黒雲が立ち込めていた

 

テレビをつけると大雪が降るそうだ。

 

 

「シチューがデキルヨー!」

 

「おお!シーフードシチュー!うまそー!」

 

 

「スーパーで安かったからイカにしたの」

 

「おお、ホタルイカ!」

 

 

ガタガタと風呂場の小さな風呂桶が風でがたついているのが聞こえる。

 

「今日は銭湯にすっか!」

 

 

「そだね!」

 

 

 

「でな!魔法が現環境最強なんだよー!」

 

「そう、ふふふ」

 

「でな!でな!」そう、ふふ

 

 

 

気が付くと子供のようにはしゃいでいる自分にふと気づいた、まるで母親のように日野は付き添っている。

 

 

「あら。荷物、重いわよ」

 

「ぱぱ。だからなっ!へへっ!」

 

あらあら、なんて日野の目が光っているような錯覚が…ぶるぶる震えるとしっぽにコートをかけてくれた。

 

 

「だーかーら!身重なんだから!」

 

「ふふ、そうね。ね~。」

 

幸せを感じる。自分の身体ではないが。彼女の大切さを思い知る。

 

 

[大事にしなくっちゃ、鹿角]

 

 

[わたしたち、日野]

 

目線が合うと互いに察した。

 

[[どっちが子を生しているのかわかってなかったんかーい!]]

 

スーパー銭湯の食堂休憩室で話されたのはギャグのような大事な話だった

 

近日中に双方病院に向かうのは当然であったが。

 

 




急ぎで放出


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トリ系女子! リン!それ!そらをゆけ!

今日も港を駆け抜ける一陣の風に乗る

 

 

気分

 

 

 

 

…此処からはさすがに彼女たち海鳥のように身軽に滑空できない

 

飛ぶなら!高いところか滑走できる広い遠くの海辺の公園

 

 

ならばっ!目指すは港や街を見下ろす坂の上!

 

 

路面電車が迫る道を、青信号ぎりぎりで駆け抜け

 

 

中華街でいつも通り肉まんを買ってしまうと飛び立つとき身体が重い

 

重くて後悔してしまう!

 

ので、周りの人たちに迷惑をかけないように走る速度を上げるため酒瓶が所々ソリ建つわき道を近道で通る

 

途中に足踏みでその場で麻雀を打っているおっちゃんに挨拶し調子は如何?と聞いたところ『国士無双っ!幸運の女神っ!』と叫んだが

 

私は「元男だっ」とさほど気にしてないけど抗議し脱兎として駆け抜ける

 

 

 

又もや路面電車の道に出たが路線の手前は青信号。

 

駅のホームまで渡り

 

ホームから歩道橋に上がり…滑空!と行きたいところだが翼を広げた途端、犬のお巡りさんこと林のおじさんに隣で睨まれているので

 

翼をたたみ、元気よく駆けだした

 

 

とうとうやってきた、心臓破りの坂が!

 

 

一歩踏み出すと前に見えるのは

 

狭い階段状の急角度の崖ともいえる坂

 

十歩

 

様々な家の春先の日差しを受けて輝く様々な草木

 

二百歩!

 

 

背中の温度は熱いくらい

 

今日はいい運動日和になりそうだ

 

 

 

五百!

 

やぎになったばあちゃん(じいちゃん)?お姉さんになったおばあちゃん(お姉さん)からみかんをもらった

 

とっておこう

 

 

千三百!

 

あと二百段でえ!心臓が何のその!

 

 

倒れた

 

 

そういえばおかしいと思っていたけど今思い出した

 

汗をかかないんだった!

 

近くの家の人から水をもらい休息冷却し呼吸を整える

 

二時間もすれば治っていた

 

急いで頂上へ向かうとすっかり夕方だ

 

 

 

頂上の公園に崖の際に立つ

 

 

 

日の暮れた空

 

 

港にはキラキラと輝く海に

 

オモチャサイズのフネや車

 

全てが黄金色に輝き、染められていた

 

ワタシも此処を飛べたら…

 

 

何度も考えて

 

 

翼を広げた

 

 

 

 

 

…どうやって飛ぶんだっけ?

 

トリ頭とは昔から言われていたが、加速した気がする

 

高校受験をしたときはもっとしっかりしていたような…?

 

後ろから肩に手が伸びた

 

 

「ほう、夕方から夜間飛行禁止されているはずだが?ここに無許可、無公認の場所で飛ぼうとする…トリ頭が居るようだなあ?」

 

「ハヤシのわんちゃ、うぇあ!」

 

林のワンちゃんは思いっきり頬を引っ張る。後ろにはゴメンと謝るミカンをくれたばあちゃん(お姉さん)

 

 

 

「にゃるほろ」

 

 

 

「さーて、坂の下の交番でとおっくりと聞こうか?」

 

 

 

 

「ちぇっ…」今日も飛べなかった

 

 

林のおっちゃんも…訂正!隣で睨んでいるお姉さんも親戚なのに融通してくれても

 

訂正、ごめんなさい。頬を引っ張らないで

 

 

 

 

 

「うう、へんな形になってないかなあ…?」

頬をさすりながら中華街を歩く

 

 

「おう、嬢ちゃん!」

 

 

「あ!コクシムソーのお姉さん!」

 

「おう、元おっちゃんだけど」

 

「何か用?」

 

「中華まんあげるよ」

 

「いいの?」

 

「ああ!今日は儲けたからな!」

 

「賭け事?」

 

「うなわけあるかい!自治会の決め事だ!」

 

ふえー、と感心していると後ろから声がかかる

 

「リン!」

 

「ほえ?母さん??」母さんになった父さんが迎えに来てくれたようだ

 

「電話出てないだろう…」GPSにしといてよかったと嘆いている

 

「ああ!ごめんなさい!」

 

「今日は行くところがあるんだ!急ぐぞ!」首を掴まれずるずると引き摺られる気分は子猫…?

 

「中華まーん…」

 

「ごめんなさーい!」おねえさんは手を振ってニコニコしてる

 

中華まんは離れ

 

今や車の中

 

 

 

 

 

「林のお義兄さんから電話がかかって来てな」

 

「ほえー!ごめんなさい!」

 

 

「夜間飛行!」

 

ほえ?と聞き間違えかと尋ねる

 

「夜間飛行の許可が出たそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車で来たのは遠くの公園だ

 

 

同じ翼を持つ妹二人が揃っていた

 

母さんも父さんも

 

家族全員だ

 

 

 

「行ってきなさい。くれぐれも浜の方には出ないように。リンを頼むぞ」

 

「はーい、まったく世話の焼ける兄貴…」

 

そう言いながら笑顔なのはなぜ?

 

「ナオミ、お前が一番お兄ちゃんに近く高く飛べるんだからな?」

 

エイキ、お前は一番頼りになる海鳥だぜっ…!

 

「じゃあ!飛ぶね!」

 

「本当は飛ぶのは行かせたくないのだけれど…」

 

母さん、心配しなくても大丈夫、風を掴んで本能的にコツは掴んだ

 

「いってらっしゃい!無事に帰ってくるのよ!」

 

ブワッ

 

と向かい風の後に後ろからの追い風

 

先程の向かい風でエアポケット(・・・・・・)が出来た

 

飛べる…っ

 

 

足を駆け出し、翼を軽く羽ばたく

 

 

 

飛躍した

 

 

浮いたっ!

 

 

 

 

―ビュウ!!という風切り音に一気に飛び立つ

 

 

家族の声も聞こえる

 

「はえー、さすが兄貴…」と茫然に下から見上げるナオミ

 

「高すぎる…一気に…」と少し高度下でがっかりしているエイキ

 

雲の上まで行ってしまうので翼を真下に平行に、少し高度を下げる

 

 

母さんとお母さんの姿もバッチリ見える此方を双眼鏡でウォッチしつつ母さんはどこかに連絡している。行動を把握して空港辺りに連絡しているのだろう

 

 

 

 

 

 

 

地平線を眺める。近くには公園、続く浜辺、灯台、遠くへ視線を移すと山々、反対には向こう岸も見える。海が見える。瀬戸内の海だ

 

 

 

飛び続けて一時間、妹たちも限界のようだ

 

今日は楽しかった

 

下がる途中、声をかけ、二人を引っ張り高い高度まで連れて行きゆっくり地上に下ろしてあげた

 

「二人も上げるとは…ワシ種はパワーが段違いだな」

 

 

「うん!今度は高度計とかGPSも欲しいかな?」

 

 

「フライト旅行だな…よし、組んでみる」

 

 

「ふふ、娘には弱いわね…アナタ?」

 

 

 

 

 

 

イチャついているが仲がいいのは良いことだ…

 

 

ふう、今日は散々だと思っていたけど。

 

 

 

「よかったああ!すんごくよかったよ!二人ともっ!」

 

 

「まったく」と呆れている妹と

 

 

「かっこよかったよ!」と褒めてくれる妹

 

二人と初飛行

 

 

 

 

 

…っこらあああああ!高く飛び過ぎじゃああああああっ!

 

と鬼の形相で迫ってくる怒り顔の林さんさえ居なければ…丸く収まったんだけどなあ…?

 

 

 




女性も変わっている人は変わっています


姿が変わってからなんだかんだで飛べなかったリンくん
陸上部所属

運動センスいい方だけど結構稀な飛行センス、姉妹初飛行に眠れず翌日遅刻したそうな




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魚介系女子! うみへのみち 2

水族館、そこは今や魚類系の病院となった
そこへの大事を取っての精密検査を行う予定の宮之だったが…






円形水槽に入って話しかけてくれたのはクラゲ娘の沙樹ちゃんだった

 

「始めまして 『希生 沙樹(きしょう さき)』と申します。暗いですが、私の姿見えていますか?」

 

半透明の身体の内部が透けているが人間の身体の着衣部分には服を着ていて、足元はクラゲの傘になっている

 

「うん、見えているよ。オレは宮之、『宮之 介(みやの かい)』です」

 

「ああ、よかった、夜中に電飾みたいな…この足の部分ですけど。この部分が目立つので。何か困ったことがあったら言ってください」

 

「親切に…ありがとう」

 

周りを見渡すと半分がイルカやクジラなどの海洋哺乳類の様だ

 

「ええ、その通り。…あ、あうぅ…ごめんなさい…微弱な電気信号を感じ取ってしまうものですから…申し訳ありません…」

しょんぼりする沙樹ちゃんカワイイ!

 

「ふぇ!?そ、そんな、そんにゃ…って!違う!やめてよ!ロウ!」

沙樹ちゃんは振り返り一昔前のパソコンモニターのような分厚い画面に向かって寝転がっていたシロイルカ?の娘が此方に向かいニヤニヤしていた

 

ここでは脳波を抑える訓練をしなければならないのか…

 

「あのー、申し訳ありませんー…」

 

「はい」

 

「あ、失礼しました。ザトウクジラの『マイ』、と申します」

 

「コツ…というか…そういうモノがありますけど…どうします?」

 

あれ?みんな?なんでよじ登って…沙樹ちゃん陸に上がれたんだね…

 

 

「みんな納得の上ですね?」

 

 

 

「失礼して…」

 

何を、と言う前に発せられたそれは

 

 

意識が途絶える前に聞こえたのは何処か遠くに聞こえる聞き覚えのない()の声だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りりりりり

 

 

耳だけでは無く頭にも響く

 

 

 

何の音だ!?

 

 

「何の音?」

 

目が覚めてしまった…

 

 

 

「ごっめーん!みんなー、起きて―!」

 

 

自分を含めたみんなが職員の人の水中マイクの音で目が覚めたらしい

 

オレも水面に上がる

 

長靴とツナギの飼育員のような格好だ

 

ゾウのヒト(・・・・・)足音通信(・・・・)聞き分けられる人いる!?」

 

「マイちゃん…無理そうだね…眠ってるし」

 

どこかの誰かのせいで…とシロイルカの女性がぼやく

脳波の調整に全力を使わせてしまったようだ、申し訳ない…

首を垂れる

 

「脳波か、もしくは喋りなさい。アンタ、調整されてるわ、マイが手伝ってくれたの」

 

「す、すまない…」

 

「ゴンドウイルカのヒトは?」シロイルカの女性が尋ねる

 

「海洋出てるでしょ」

 

きょろきょとしていると隣の少女と目が合った

「彼女?彼女はシロイルカのキイ、私?私は元マグロ漁師のマッコウクジラのシルキー!」

 

「潜ってマグロ取ってたらね!巨大ダイオウイカに襲われちゃって、酷い状況でここに運ばれたの!」

野生の子のマッコウクジラが助けてくれなかったら…てへへ…と金髪ツーサイドアップの彼女は

この人も大変な人生を…

 

「失礼なヤツ!アンタなんかと一緒にしないでっ!」

こっちに向かって…指向性の読み取りか…

「ごめんね!シロイルカのロウちゃん、ちょっと最近ダイエットでイラついてるだけだから…!」

 

「言わないでえええ!」

 

慣れた脳波で波を手に伝えみんなに

『ごめんなさい、それとありがとう!』っとこんな調子でいいのかな?

 

 

ふい、とシロイルカのロウちゃんは顔を赤くし

 

「アンタに謝られてもっ!」

 

とツンデレを披露した

 

 

 

 

うん!頷き。目を閉じ、シルキーは呼吸を整え

「桐生さん!私やってみる!やってみるよ!」

 

桐生さん、職員の女性人間種のお姉さんは桐生さん、か

 

「うん!ここから120km先の雪山!遭難してるの!他の水族館や同種のゾウ種のヒトたちもやってるから必要なのは全体の傾向だからだいたいな位置データーを切り出すのをやってもらいたいの…出来る?」

地図を取り出しペンを差し出す

 

「やってみるさー!」シルキーは腕をグルグル回したあと、両腕を水の中に入れ静かに立ち泳ぎしている。

 

我々は待つ、静かに…

 

 

 

 

「うーん、と」と悩んでいる

 

目を開け、

「ここ?かなあ…崖にいるみたい」

 

書き加え、差し出したのは等高線の狭まる場所

 

大体分かればいいわ!

 

サキちゃん!さっきの観測してた?さらに精度を上げてほしいのだけれど!

と桐生さんは走って向かった

 

 

「ふぃー…ひっさしぶりにのーみそ使ったあ」

風呂に入ったように額をぬぐうシルキー

 

「アタシよりクジラ種の方が精度良いんだから文句言わない!」びしっとツッコむロウ

 

「お二人は仲がいいんですね…!」クスクスと笑いが漏れてしまう

 

「うん!」シルキーは顔を赤くしながら笑顔で頷くが

 

「なにいってんのよ…!」こんなおとぼけ…と顔を真っ赤にしているロウ

 

そこからさらにボケに彼女のお世話スキルが働きさらにツンデレスキルが…

 

 

 

思わず呟いた…

 

『女子力たけ―』

 

 

「は?」とシルキーが真顔で返したのにはみんなビビった

 

 

なんだかんだで朝だ。

 

朝だが目が覚めている。朝まずめ…これが魚類の本性か

 

「馬鹿な事言ってないで、アンタ朝の検診でしょう!」綺麗な白髪に幼い整った顔立ちのロウが朝日を浴びて綺麗に映った

 

「う、うん!」と生返事を返してしまう…

 

 

「しっかりなさい!アタシももうそろそろここを出ることになっているから…」

 

だからアンタには…特にしっかりしてもらわないと…と朝日のせいなのかっあぼ…

 

「この口かあー?」

 

「ごふぇんなふぁい」

 

「まったく…」と苦笑する彼女はハッキリと頭に残る光景の一つだった

 

 

 

 

『ゲート開きまーす…三番の宮之さーん、二番のシルキさーん』

 

 

「診察室までだねー」いっしょだー!と手をつなぎ、のほほんとしている

 

手前のプールまで出ると昨日より痛くない…彼女たちのリラックス効果…?

 

あ、そこの仕切りで別々だー!

 

(3)  (2)と水中に別々に紙が下げられていた

 

じゃあねー!がんばってー!とさっさと手をほどき昇って行った

 

ああ、リラクゼーションが…

 

と、随分余裕ができたな

 

 

ぐんと尾びれをカクと一気に陸に上がり

 

白衣の医師に留められる

 

 

「はーい、バンドウイルカの宮之さん、間違いない?」

 

 

「は、はい、宮之です…せ、先生は…?」

 

 

「ああ、こんな鋭い歯をしているけれど先生はコツメカワウソの白石でーす!ちっちゃい魚しか食べないから安心してねー」

 

って言ったら淡水の人魚に怖がられるんだけどなー!キャハハ!

 

と笑う声も口から洩れる鋭い牙も怖い白石先生は丁寧で前の担当の先生と同じ実に誤解されやすい方だった

 

 

 

「うん?ちょっと尾びれ…が肥大してるね…」

 

「昨日、夜トイレ行った?」

 

「えーとなんだかんだで行ってませんでした」

 

「じゃあ、トイレタイム…トイレ行ってから体重、長さ、肺滑量図りなおそうか」

 

「トイレはここから出て右に曲がったでしょ?そこを職員用に、小さいかもだけどあるから」

 

 

「失礼します…」

 

 

慣れた恒例の行事を熟すとロウが座っていた

 

「うん…」

 

「お世話になっています」

 

「うん、経過も順調だから!最近じゃあ海女さんみたいな形の漁もあるっていうからね…」

 

「深く潜るには周りに気を付けるんだよ?」

 

 

「はい、受診オワリ…気をつけてねー!」

 

ロウは手を振ると水槽に戻って行った

 

「本当に病院なんですねー」

 

「奇妙でしょ?現在ほぼすべての動物園や水族館なんかは大学病院みたいなものかな?」

 

「君の傷も一週間は傷薬を塗れば人間の部分の皮膚以外は傷跡は残るかもだけど完治するよ」

 

「はい、行ってきましたので」

 

「うん、続けようか」

 

「体重、全長、呼吸機能その他諸々……問題なし、血液は結果次第、朝は問診だけど昼間の間はプールの方は開いているから好きに浸かってね」

 

「あとはここ、ここ、ここのプールは本物の野生の鮫とかが閲覧できるよ」

 

「元々の見学コースから見るのも自由だよ」

 

「でも、黒幕のされているところとか職員以外立ち入り禁止の札は入らないように」

 

「はい」

 

「カサゴ系の女子は見ものですぞ…?」

 

「うぇっ!?」

 

「じょーだんじょーだん!」と冗談なのかわからない冗談を言いつつ先生は去って行った

 

 

 

「じーっ…」音を立ててロウさんが此方をジト目で見ていた…

 

「あはは…」

 

ばしゃあんと隣からも終わったのかシルキーさんが隣で「じーっ」と言っていた

 

美少女二人から睨まれ、さらにサキちゃんも加わり、桐生さんからボールが渡されて四人で遊ぶまで照れていた

 

 




ゾウの獣人は足音から会話を行う事も出来るという設定です

ロウちゃんは白髪ロング切りそろえという感じです



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魚介系女子! うみへのみち 3

魚介系女子編集済み



現在、朝の診察からボールで遊んでいたらアシカの海獣人も参加し

白熱した水中水上含めた3D水球ゲームが始まり、傷が痛むのを忘れていた

 

 

「あ痛たたっ!」

 

 

 

「こんなに動き回るのなら痛み止めはいらないかな?」

 

 

「すみませんでした……」

 

ジャンプから着水、一気に濃い赤の血の匂いがし始め

 

 

胴体より尾びれと腰が血がどばーと流れ始め

 

 

 

ずきずき傷んで地上で悶絶して先生が呼ばれた。

 

 

ドクターバッグを持っていち早く駆け付けた先生がガチ切れ寸前だったのは幸か不幸か

 

 

 

 

 

開いた傷に液体にぬれると固まる性質を持つ粉末で出来た粉状止血剤に

加えて鎮静剤を打ってもらった

 

 

 

止血剤は体の動きが固くなるし鎮静剤はすぐに眠くなってきて包帯を巻いてもらっている間の数分で眠りについた

 

 

 

 

元々リハビリか様子見かを陸上で確認するのが今日の日程だった

 

 

二日ほど眠り。目が覚めるとどこかの室内の浅いプールの中であった

 

 

 

知らない間に室内で病気にかかった魚の調整室のような集中治療室

 

 

浅い水が張っているベッドで横になっていて

 

手元にナースコールがあったのでボタンを押すと

周りは手術着とマスク、医療用の帽子を被った数人が部屋に出入りし

瞳孔や心拍数、CTスキャン等の確認を行い尻尾にギプスが巻かれ

 

お昼過ぎになると尻尾の出せる車いすで押してもらって

 

 

元のプールのキャットウォークに移動して挨拶に向かった

 

 

 

 

 

 

 

「みやのーおかえりー…」

 

 

「アンタ大丈夫だったの!」

 

ロウちゃんにシルキーちゃん達がプールの縁に乗り上がって来た

 

 

 

「ロウちゃんったら心配症だなーほら、動かせるよ」

 

 

5センチ動いたかどうかぐらい僅かだがその様子にロウちゃんが『ばかー!』と大声で泣き始めた

 

 

「いきなり先生達も出払って

 それに…私達も夢中になちゃってごめんなさい、みんな心配していたわ」

 

 

 

「うん、大丈夫だよ安静にしていればリハビリも始められるって安心しているし」

 

「水に入るときついからしばらくは陸上暮らしかな。心配かけてこっちこそごめんね」

 

 

「みやのー…」

 

「本っ当ー…。に申し訳ないことをしたわ」

 

「もういいって、大丈夫。あと一週間はゆっくりしないとだから」

 

ロウちゃんも

 

 

 

「ふわあぁぁぁっ、彼女ならこれからは大丈夫でしょう。そう見えます(・・・・・・)

 

会話に加わるようにマイちゃんが水上へと浮かんで来た

 

 

「みんなー!暗い話はこれで終わり、ご飯食べましょう!」

 

昨日起してきた女性の獣医専門の桐生さんがにっこり笑って話を閉めた

 

水際の歩行道路に置いたテーブルに今日の昼ごはんを配膳していった

 

 

 

 

頂きますと手を備えてから全員食べ始めた

 

基本、水質汚染につながるので食べ物は陸上でいただく

沙樹ちゃんは口から食べるプランクトンが透けて見えた。

他のみんなからはジト目で見られて自分が珍しがって恥ずかしかった

 

しかし、捕食時に出る赤い両頬が色っぽい…

 

 

 

「この鯖、この噛みしめる度、肉厚の身っ!魚油…んー!」

 

 

「古米だけど美味しいわね!」

 

 

「あはは、私が完治したらお詫びにこれより大きい 巨大(・・)イカリングでも速達させてもらうよー」

箸でおかずの一品を見ながらどこかオーラが宿っていた

 

 

「シルキー!それ(・・)は駄目よ!」

 

 

 

あははは!と、ここのみんなで笑いあった

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、夜は先程の集中治療室の室内の浅い温水プールで睡眠を取った

 

 

 

 

 

 

 

一晩眠り、朝の検診を行い

 

 

尻尾と脇腹を触られるとまだ鈍い痛みが現れた

 

 

 

地上を歩く分には問題ないのだが、そのまま安静に過ごすことにした

一日をだらーんと無気力的に過ごし夕方の検診

 

保水バッグ、カテーテル、医療品の様子を見ると

 

 

 

おやすみなさい、と出て行き一人、横になっていた

 

 

うつらうつらとまどろんでいると

 

 

「キミ、ひどい怪我だったねー」

 

 

うぇいぃ!?

 

とびっくりしていきなり声がした方を見ると鎧の様な鱗の人魚が居た

 

 

 

しかし、十歩ほどちょっと離れたそれは無菌室の中からだったので余計に驚いた

 

 

 

「ああ、失礼した。わたしはピラルクーの人魚、名はサシイ」

 

 

きみへ声を掛けるタイミングを逃していてね。と彼女はもらい笑いしていた

 

「ピラルクー?」

 

聞き覚えがないな

 

「淡水の魚で古代魚の一種だよ。淡白な白身らしい」

 

「味って…」

 

「お医者さんにも苦い顔をされるけど、ルーツを覚えるのにいいんじゃないかな」

 

 

この独特な方との同室は中々面白そうだなあ……ああ。

 

 

 

 




次回続編


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魚介類系女子! うみへのみち 4

全身に怪我を負った。そこで、彼女に出会った

彼女は正しく悪魔の様な。

とろけるような、夢


目に入り、囚われた

 

前は切りそろえ、うしろに長く生えた冷たく輝く鴉羽の黒髪

特徴的な紅い目がどこかにぶくどうしようもない熱を持ち燈っているような印象

褐色のカーテンサッシから身を乗り出し、バスタブの枠に腕押しする彼女は

 

そこから絵画の世界の華奢な姿も相まって

 

色素の薄い白い肌は仄かな赤らみを得ることで髪と肌との酷薄の色に彩を加える

美しさを持ったが故の閉じ込められた哀れな令嬢のごとく、ひどくこの世界から切り取られているような印象を受ける。

 

彼女はさらり、と黒髪の束を溢すように首を傾け

 

紅い色めくどこか愛嬌のある瞳を人好くようにぐにゃりとゆがめ

 

『我ら』らしい恵まれた容貌をさらりと、いともたやすく彼女は表情をくずすとニヤリと艶めき嗤い

 

顔を高揚に頬を赤らめてこう、挨拶した

 

「 失礼した。わたしはピラルクーの人魚、名は『サシ.イ』 」

 

学が無い者で彼女の言う魚はとんと聞き覚えがない。

 

「ぴらるくー?」

 

でも、知りたい。かのじょを

 

とくん、と波打つ鼓動はどくんと表情のの血管事跳ねた

 

色恋を知った乙女のように。彼女に魅せられている…?

 

 

ああ、そんなことかと容易く彼女は自己紹介を行う

 

「…南米アマゾンなどの温暖な気候で生息している世界でも有数の巨大な淡水魚であり。

 

                      …古代魚の一種で味はたんぱくで―」

 

 

 

 

ん?

 

 

んんん!?

 

とんでもないものをブッコンできたぞ、オイ。この輝く美人さんは…!

 

「待ったまった!」

 

なんだい、何が問題なのか分からない。ようなとぼけた仕草で声を返す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ~?知らなかったわ。私あの集中治療室に入ったのは貴女だけだってきいたけれど?」

 

ぽーっと見とれてしまう。

うつくしい白いゆたかな髪を美術品の様な容姿ににあった巻髪にまとめた彼女はロウ

白蝋でできあがった精巧な芸術品の蝋人形のような彼女

 

 

ああ、その隣には形容しがたい美の現代の芸術品のひとつである囁きあうその乙女たち。かたわれは彼女ロウ

もうひとりは

 

 

「…ミャ・ノー?だいじょうぶ?」

 

うん、わたしはミヤ。ミャ・ノー…うん、うん

 

 

空間にノイズが走る。頭痛がする。

 

『あなたの名前は宮之。『    宮之 カイ   (み や の。あなたの名よ、わすれないで)

 思い出しなさい。』

 

だめね、『持っていかれた』ようね

 

何かを…忘れたような…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、屋敷の中?(わたしのおうちよ)

 

おそとは灰が降っている

 

―――気が付くとアナタはどこかの屋敷の中、私は誰で、貴女は何?―――

 

 

 ……かあさま! 」(かあさん、いままで…どこに…)

 

 

―――愛を求める彼女は、当然貴女自身

   といいたいところですが、ちがいます、貴女と境遇は似ていますが彼の母ではありません――――

 

 

「「かあさま!!」」

 

あら、■■■■■ルデはあまえん(いやだ、そんなのいやだ)ぼうね。でもこれからはあなたは■■(もどりたい、もとにもどりたい!)  一員です  (Nein! いやよ!)

 

 

 

  燃えている、街が。(ああ、この役目からも…)

 

   窓の外は人々の屍が重なり。炎の柱はそこかしこにあり、モノを焼く

        火柱は血をささげるべく天を突き、巨大な影(飛行機)がそれをついばんでいる

   《わすれろ、わたしはわたしだ きえろ おまえはきえろ》

 

人々の痛がる声が絶えない

《そうだ、そのまま》

 

うん、がまんする!(ごめんな。かあさん)ねえちゃんだもん(もっとがんばるから、いい子に…)!」

 

「お前、 の■であるわたしに《わたしに》勝■ると思ってん■ぉ《このからだをよこせ》」

 

 

 

 

眠い…もう、身体をねむりに、まかせよう

 

 

 

―――良い子だ―――

 

 

 

ソウダ、クレヨ。この身体を。任せなって

 

 

喰ラウ コイツ ヨワイ

 

ココカラダシテ。ママ。

 

オカアサンユルシテ。タスケテ

 

イヤダイヤダイヤダ、オマエヲ、ヒキズリコンデ……エエエ!!

 

 

――妬みと失望、生者が生み出した死に誘う死者共――

 

 

 

 

ああ、でも。やることがあるんだ。おれには

 

『今更引き戻れないぞ?』

 

 

れぎゅらーになる。

 

 

ゆくゆくは、せかいになをとどろかせて、いつかあのひとを、みかえしてやる

 

 

――彼の原初の夢、蝉のウルサイあの日。テレビの前で見た水の英雄その志は――

 

 

 

 

 

 

『は?』

 

 

「みやのんがんばれー!!」「がんばれー!」

 

――心を蝕まれ、欠片となった彼のどこかで、声が――

 

『うっ、ウザイ、てめーのことなんかシラネーよ かかわるな。もうすぐなんだ」

 

『ああ、もう、コイツは…しっかりなさい!あんたがやってきたことは、すべてが嘘ではないわ!』

 

――キイ、ロウ、シルキー…――

 

「かえりたい』

 

――口を突いて出た、彼女の本音――

 

  「 『みんなで、帰ろう』 」

 

 

「あのメダル(世界)に、みんなで」

 

 

「もうすぐだ!もうすぐで俺達は!勝てる…」

 

 

 

 

『なんだ?こレハ?あんなところに戻ったって、どうする』

 

 

『むりだよ、だって、もうここは…』

 

 

レーンと歓声が近づいて、水の中で揺らめく。求めるように手を伸ばすと。

 

あ、この後は……確か…

 

沼のように、固まる足。腕はもがいても、黒い影に深く沈む

 

沈んで、溺れて息が切れて

 

たどりつく

 

 

こん、固い音つめたい水の床。揺れる黄色い斜光も届かない闇

 

 

 

闇暗い、水底に。私はいた

 

 

「ここは、どこだ?」

 

 

 

 

「屍を越えてずいぶんと深層まで来たようだな」

 

 

 

「暗い…何もない…なんだ、ここは?」

 

 

 

―――ここは貴女の――――

 

 

 

「私の影で水底が見えも聞こえもせんか

 当然だ。宇宙を望む前にヒトは地の狭さにも気が付けぬ。」

 

 

 

黒い影が闇に浮かび上がる。

 

 

不思議と分かる、ここはこの身体の心だ。不器用な表現だが『精神世界』

 

 

―――あなたは、つらい経験をしていたのですね―――

 

 

目の前には黒い影のようなオレがいた

 

 

「あの後、俺は足がつって、いや」

 

 

 

連れてきてくれたんだよな。

 

 

――そう、あなたは不幸だったわね―――

 

 

 

 

目の前の存在から【得体が知れない。醜い、不気味 ここから去りたいかえりたいここはどこ】

 

 様々な年齢の子供の不安な考えが浮かぶ

 

 

 

 

 わたしは。あなたを消したくはない (思い出す事で殺したくない)

 

 

 

「優しい子だな。他の屍に喰れないように水底に手を引いてくれていた?」

 

 

 

 

 

「 お前は、何者なんだ? 俺達《ヒト》に何があったんだ 」

 

 

 

彼女は「私達は」とそらぶくと

 

 

せいたかの影は縮み ―線のモザイクまみれで、底を見下げ、幼い顔が見えた

 

 

 

「いいえ、語ることを■■に許されていないませんし、わたくしにはまだ待っている奴らも居るんだろう?」

 

 

ここはまだ、来るところじゃないわ

 

 

『わたし』はすがたを強い光に幻惑するように姿を眩ます。

 

 

 

―――泡沫が歪んで輝いて浮き上がる。ゆっくりと―――

 

 

 

 

 

 

「ミヤノよ、もう溺れるなよ」

 

 

長い生の果てに、この巨大な影を落としているソレにまた会うだろうことがなんとなく判っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宮之!!」

マイちゃん。ありがとう、夢の中から現実まで道を標してくれたんだね

 

 

 

「みやのんっ!」

うーうー唸らないの!シルキー…

 

 

 

「ミヤノ、あんた……っ」

ロウちゃん。うん、ごめんね。でも、ほんとうにあやまらなきゃなのは

 

 

「……っ!」

 

 

「いいや、まだ。眼は覚めていない。キショウちゃん、あなたは戦争の記憶を持った『3 ィ』なんだね」

 

 

「……っ」

 

 

「もうアナタの声を聴くことは叶わないけれど」

 

 

「……っ!……!」

 

 

「さよなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、その方は『キショウ サキ』って名前?」

 

「はい、意識が浮かび上がった際の確認の診察、面談で変化後発見された免許証と一致しています」

 

「ロウちゃん……さんやシルキーちゃ……ええと、さんは宮之さんとの

 調整水槽内での水球バレーの後三十分ほどの昏睡状態の際。

 夢の中で誰かの影を見た様な気がした、と話しています」

 

 

「変化以降の重症患者の傾向から君の怪我のパターンは軽い裂傷」

 

 

「入院して三日目、朝の運動検査の水球で急に意識を失い」

 

 

「意識衰弱の状態で亜人を通じて変化(TS)後の事故に遭ったヒトまでも助けるとは…」

 

悪夢で会った人魚っていうのはどの娘だい?

 

「あ、それはザトウクジラの亜人のマイさんのおかげで!」

 

 

「そんなヒトいたっけ?」

 

 

 

 

 

「いえ、リストにも入ってませんね」

 

 

 

 

先生と桐生さんは顔を曇らせた

 

「うん、ザトウクジラ…あれかな。ゴンドウイルカの漁業組合の人が今朝水揚げで言っていたな」

 

「ええ、確認したところ沖合で漁業の職業訓練中に多数の人数が見た、とか」

 

「マイさんをですか!」

 

それは…と言葉を濁すと先生はハッキリと言った

 

「近隣の崖近くの岩礁に打ち上げられたザトウクジラをです」

 

 

 

 

 

 

屋外展示水槽の海岸沿いを望むテラスで、おれ達…は夕方の潮風を浴びていた。

 

 

『 マイ 』の意味は《こちらがわ》 て 意味のハワイ語

 

「カサゴの娘がハワイ生まれだったらしいからちなみに、って教えてくれたわ」

 

四人それぞれが悪夢から覚めても

「結局ワタクシたちは水の中に居ても溺れないし。」

 

「あたしたちは走るより水の中の方が速く動ける。」

 

「あれは、わしら、ボク達たち見た彼女たちの生き方、なんだろうね」

 

 

 

 

「それじゃあ、ここで。迎えに行くからね」

声に振り返ると白衣の桐生さんが

どうしたの、という間もなく彼女の後ろから

 

 

ウン、と音を鳴らし電動車いすが止まる

 

 

不安げに俯く、陸上に上がる下半身が無い彼女

 

「あ、キショウ…さん」

 

「きーちゃ…っ、希生さん……」

 

 

 

 

「はじめまして、になるのかな…みんな」

 

「きーちゃん!また鯖たべよ!あの夢《とき》みたいに」

 

「ごはんのとき。ほ、ほっぺ赤くしても見過ぎないようにしなさいよ!特にミヤノ!」

 

 

「まあ、心外ですわっ」

 

頬をふくらませ、ぷいとふざけてそっぽむくと視線を交わし。

 

クスクス、と私達は笑いあった

私達は4人手をかさねると

 

重ねた手をそれぞれ海に向かい手をかざすと

 

「…それに、ワタクシたちはみんな。『 マイ ()』でつながっていますわ。」

 

私達は海に――――




つづきます。

イは伊かもしれませんしEかもしれません

つづきはいちゃラブコメ書きたい願望…


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人魚たちのあくあろ~ど 水辺からの日常・深海への誘いー

夜の水族館、オレンジ色の誘導灯がわずかに足元と暗い水槽を鈍く照らす仄暗い通路

 

静まり返った水槽の手前、深海魚コーナーで何かの影が動いた

 

恐る恐る。タカアシガニ水槽の角を見やると

 

土茶色の鱗、ぬめるようなその魚の身体は異様なほど太く、人間の男性の足が生えていた

 

ソイツの目の前には、半透明の骨が透けている尾びれを持つ人魚が覆っていた

 

ギョロリとしたその魚眼、双眸をこちらに気が付いたのか振り返ると

 

全貌が明らかになる

 

 

 

人魚は胴体からサシミにされていたのだ!!

 

たまらずふたりは抱きあい。泣きだした

 

その役の演者である(・・・・・・・)ヒラメとカレイの人魚はさすがに擬態を解く(・・・・・)と血のりを拭きつつ慰めに向かった

 

 

「…っはー。こわかったねー。ぺあちゃ大丈夫?」

といってもう一人の 鱸・スズキ人魚のハズキはペアの愛称の 鮭・サケのカシオにハンカチを差し出す

「ありがとう。はーちゃん…」

ハズキはペアの赤らみが解けたのを見て目を合わせてにっこりほほえむとチョコバナナの屋台出てる!いこ!とほお を赤くするカシオに気が付くことなく引っ張っていった

 

「はーーーーーーーーっ、驚きました。新鮮でしたねぇーーーー」

おっとりとした頬に手をあて、たのしそうにぼんやりしている

どことはいわないが体格の大きなマンボウのナンゴウ

「まったく、ぼさっとするんじゃない。後が詰まっているんだ。」

ほら、いくぞ。委員長気質なハンマーヘッドシャークのカドワキが続々と出てくる人魚たちの邪魔にならないように不器用に手を引いて先を行く。それを見てナンゴウは慈愛の表情で笑みを浮かべ、頭を背中によりかかりながら歩いて行った

 

開催されている祭りスペースに手を引いてゆく

 

 

電機製ではなくロウソクで灯る提灯がならび

たくさんの出店からはかぐわしい香りや独特の機械臭なんかが大勢のヒトの声とともに印象を与えた

 

 

そう、水族館と合作して近隣の商店街を使い祭りが開かれていた

 

 

ロウとミヤノはお祭りのおみやげを渡し、一緒に楽しむために。そう!あの子たちのために来ているのだ!

 

「か、かたぬきじゃねえ!これは……」

 

「ま、まるでミシンのごとく、いや!電熱ノコのようにスッパリきれいに切り取られているッッ!スサマジイスピードだッッッ!」

 

「で~きた、はい」

 

「ご、ごせんえんに…ウゥ…なりまーす。」

 

「阿修羅像、五千円、たしかに。また、よろしくおねがいします。」ね!と言い残し目が笑っていない笑顔のロウちゃん

 

がやがやと周りの観衆の女性たちは驚きの表情で拍手で彼女を迎えた

 

「ロウちゃん!何やってるの!」

途中から見守っていたミヤノが駆け出してきた

「あそこの屋台があのイワシの子から一万円取り上げたときに、ね」

 

ん~?ならよろしいかしら。

イワシ・鰯のごとく体が弱い(守護らねばならぬ子ども)彼女は海獣水槽組(おねえさん)にとって愛護・保護の対象なのだ(YESなんちゃらNOなんちゃら)

「早くイカ焼き持って行きましょ」

ロウは大きくまとめた一袋の二別れの手持を片方持つと

「あたしも持つわ」

ふふ、とミヤノは小さく笑った

「なによ」

ミヤノは微笑むと

「い~え、なんでもありませんわ」

二人は言いなさいよ~!なんて言いながらいつもより静けさの待つ水族館へと戻っていった

 

 

 

「ちゃ、チャンチャンチャンチャン…」

眼の色を失った。失われたカシオが屋台の鉄板の前でたたずんでいた

「ど、どーしたのその子?」

ハシボソカラスの鳥人の店主も驚いている

 

「シャケの人魚なんです…この子」

ハズキはどこでタガがはずれたやら…いつもと違うはしゃぎっぷりに驚きつつ

いい傾向だと喜んでいたのだが

「あー、食べていいか悩んでるんだ」

苦笑いで鉄板を扱う店主

「ちゃん、ちゃ。どうしてそれを!?」

 

 

「いや、その駄菓子フルアーマーを見せられたら…ねえ」

 

彼女の身体の周囲にはには両手にたこ焼きお好み焼きたこせんべい、頭のバンダナにはイカ焼きチョコバナナりんご飴が刺さっており、背中のポーチにはかき氷各種わたあめたちの扇隊形で彩られていた

まさに祭りの権化、駄菓子フルアーマーと呼べる究極形態だろう

 

ここにご当地である鮭のちゃんちゃん焼きが加わればもはや「まつりごっど」だろうことはたやすい

 

境内で食べるスペースがあるそうですよ、と通りがかりの眼鏡の人魚さんに助言をもらったのでハズキに持ってもらい、恥じらいつつ向かったふたりであった

 

 

 

 

「ふふ、微笑ましいですねえ…………ねっ 」

 

腕を絡ませるナンゴウをカドワキは恥ずかしそうにキュウと瞳孔が狭まり赤くなった目で頬を赤らめながら

 

「さ、最近なんか距離感近くないか?そ、そう。ふ、風紀を守ろう」

 

「カドワキくんは昔はやんちゃしてたと思うんですけどね?」

 

 

 

「それはないですよぉ…先生」

 

「-…どれが、ないのかなぁ?」

 

右腕にくっついて腕を絡ませる。

さらに押しつけると形をゆがめる私のやわらかな胸元にカドワキはますます緊張してきたのか目が泳ぎまくってる。フフッ。かわいい

 

今、固く言うと硬派で律儀な彼に私は恋をしている

 

そう、昔は彼と私は今のようなことはあり得ない関係で、想像すらしなかっただろうね

 

最初に出会ったのは私が新任として派遣された高校で彼と出会ったのだ

 

あの異変の日、彼に助け出されてから…

 

 

 

 

 

サキ、シルキーの待機組へとミヤノ、ロウが館内で一旦合流したのはこの水族館の魚類搬入口の前であった

 

 

「サキー、シルキー…!買ってきたわよー」

 

二人は

 

「ありがと!」

 

 

 

 

ほら、とイカ焼き串とかき氷、綿あめをシルキー、キショウに渡し

 

最後にアユの塩焼きをキショウに渡すと綿あめとアユの塩焼きを足の触腕に絡め

口でも含んで食べていたのを物珍しそうに二人の人魚が見ていた

 

海獣水槽四人組からジトー、と睨まれるのを意識したのか片割れが咳を一つ佇まいを直すと

 

「どうもありがとう、私はオイカワの人魚のオイカワです。今回誘っていただいて助かりました!」

ややこしいけど覚えやすい名前でよかった、と優美なヒレと色鮮やかな髪色の彼女は照れながら

「私はベニザケのレンと申します。私たちは館内の淡水魚フロアなので、助かります。」

レンは真っ赤なブロンドの髪がきれいな人魚だ

 

 

「もうお二人はどうされたんですか?」

ミヤノが尋ねると二人は気まずそうに

 

「はい、ハタの人魚の新海(アラウミ)さんは今は諸事情で体調がすぐれないとのことで」

 

「あともう一人のアカメの子は来るはずなんですが…」

 

「がっつり肉食系だね」こらっ、とロウがシルキーを叱る。

 

それに笑って

「はい、オイカワさんのような方はなかなか少ないですね…やはり」

 

「なんだよー、気にしすぎだろー」と気やすい仲なのだろう肩を小突くとレンはふふっと嬉しそうに笑った

 

「今度水球しない?」「海獣系人魚かあ、いいねえ、おもしろそう」「ところで君、誰?」

 

「アカメの人魚、イショーだよ?」

いつの間にか銀色の人魚が混じっていた

 

『「なんか自然に混ざってますけど!?」』

 

イショーは不思議そうに頭を傾げた

 

「こういう子ね、思い当たるわ」

 

ジト目で爆弾級の仕業をしかけた一人の人魚を見やる。

 

サキに尾びれで少し足元に海水を浴びせつつ水分補給飲料のふたを開けて差し出している当の本人は気が付いていないようだ

 

「ともかく、イショー、遅かったよ!なにしてたの」

「ちょっと、トイレ。昨日小魚食べ過ぎてお腹痛くて」

 

「昨日のレシピは…ワカサギだったかしら?」ミヤノは100匹で少し油が来ていたかな程度だったが

 

「私たちは消費カロリー多かったものね」

 

「ふふ、淡水魚と海洋哺乳動物のカロリー差、気になるね」オイカワはむむむ、と自分のバストサイズと自分以外の周りの戦力差に少しうらやまし気に見ていたようだ

 

ね~、と間延びしてイショーは眠たげに空を見た

 

「夜間捕食を行うアカメなのに夜型?」「うん、がんばって合わせてるの」

偉いわね。とくすくすと笑って見せると「なでなで」とイショーが優しく撫でてくれた

 

「…この子。ほしいわ」ロウはガチめのトーンだった…

 

「私がその枠です!」意気揚々と名乗り上げる妹枠のサキにミヤノが甲斐甲斐しく

たくさん食べるキショウの頬をぬぐっていた

そんなサキを蕩けた満面の笑みでシルキーが撫でていた

 

「連れていかれるわけにはいかないなあ」

オイカワがにらみを利かせバチバチと火花が散る

 

それで導火線が付いたのか

 

 

ドォン!

 

と雄々しい音とともに灯の華が咲いた

 

 

 

 

 

あ、始まった!

 

がさがさと草むらから二人の人魚が現れた

「こっち、こっち!」

 

「ぺあちゃん、祭り会場回ってから登山なんてもう足が棒だよお…」

そこらで見かけた木の棒でやっとのこと立っているハズキ

「わっっぷ!」息継ぎしながら歩いていると突然足を止めたペアと前方不注意でぶつかってしまう

 

どうしたの?とペアの視線の先を見ると白髪の髪の人魚があお向けで倒れていた

 

二人は駆け出し向かう

 

「呼吸は…狭まっている…瞳孔…脈拍、尾びれ、鱗の状態、弱く…バイタルが悪い」

 

「こおり、みず…」

 

喋れる元気があることと氷水!?と驚いていると

 

「あっ」 "祭りゴッドセット"が意図せずしてかがんだ状態から彼女に倒れていった

 

 

 

「ごっ、ごめんなさーーーーい」

 

 

「うんん、大丈夫、むしろ助けられちゃったっ」ふふ、と素敵に笑う薄幸の美少女

「どうしたの」

ぷるぷると震えながら二人は赤くなっていた

「あっ、あなた、どこの水槽の子?」

緊張しすぎでしょ、と挙動不審なペアにハズキは若干嫉妬しているのを感じながら言葉を飲み込んだ

 

「でも、よく見ると…」

彼女の身体はホットドックのマスタードやケチャップ、焼きそばのソースにブルーハワイと彩られていて

おかしくて笑ってしまった

 

 

その様子をかしげて笑う二人にさらに笑いの燃料を足してしまったのだ

 

鱸・スズキの人魚のハズキが背負い、街まで戻ってきたが…

 

「混んでて見れないね…」

 

 

「いい処知ってますよ」

苦笑いのイワシの人魚が指し示したのは水族館だった

 

 

 

 

『「こんばんはー…」』

 

そこは本来ショーを行う海獣水槽だった

ハズキはここで実際のイルカショーを見たことがあったが海獣系人魚には出会ったことはない

 

祭りの会場である街のほうへ行かなかったのだろう多数の人魚が見られる

ふたりはおそるおそる除いているが鰯・イワシの人魚の子は慣れたように入ってゆく

「こんばんわ、みなさん。私と友達も混ぜてください」

 

「んー?あっ、シノリちゃん」

 

どこ行ってたのよ!とロウが怒りをあらわにする

 

「ごめんなさい、落とし物を探していたら山まで」

山ぁ!?と叫び始めたためシルキーとミヤノが止めに入る

 

二人に取り押さえられ説教モードの怒りをとりあえず納めたロウは二人の人魚にお礼を述べた

 

「いえいえ!私たちも高台から花火を見るのをあきらめていたところでしたし」

 

「とりあえず花火が終わってしまうよ。みんなで見て楽しもうよう」

 

 

 

 

た~~まや~!

 

シルキーと鰯・イワシのシノリ、サキ、ロウとミヤノがそれぞれハズキとペアを挟むようにきれいな大輪の花火を眺め、掛け声した

それぞれには笑顔が広がった

 

真夏の思い出の一つ、サキは自身の網膜映像から記憶へと焼き付けた

 

 

 

 

花火の音は館内にも響いていたが事務員室の中ではコツメカワウソの白石が電話を取り

隣には桐生さんが不安げに電話線を見ていた

 

「……ハイ、ハイ。それでは。そういうことで」

 

 

「…どうでした?」

 

 

「2泊3日…それくらいかな。漁業組合の方にも声をかけて全員だし、それでも人手は足りない。

 海獣組のみんなも連れて行かないといけないとのことだね」

 

 

「でも…シルキーちゃんは…海を恐れているんですよ!?」

 

「仕方ないでしょう。他も同様、請け負ったそうですし」

 

「私も行きます…!」

 

「いいえ、支援に新任の先生が来るそうなので、その方の援助をお願いします」

でも、と二の次を紡ぐ前に鋭い目で白石が告げる

「貴女にしか頼めないのです。海上に出たら我々はまだ食糧の危機や溺れ死は避けられますが」こう言っては難ですが…

 

「貴重な人間だ…」

 

 

白衣を羽織るとそのまま白石先生は事務員室から出て行った

 

そんな……と泣き崩れる桐生であった

 

その手には『沈没船舶への救助支援要請』と書かれた一枚の書類であった

 

深海への闇の誘いが彼女たちを待ち受けていた

 

 

 

 



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トリ系女子!跳びたて、オオワシパパ!

戻る意識…

 

煙に巻かれたコクピットにおれは居た

 

エンジン停止!エンジン停止!

 

失速している、スロットルを上げろ!

 

くそっ、コパイロットの意識がありません!

 

翼部を失い。

 

回転する機体

 

「脱出しろ!」

STLL(ストール)STLL(ストール)

 

複座席の相棒を置いてか?

 

 

目の前に迫った崖

 

ダメだ!落ちる!

 

 

 

 

 

 

 

アナタ、アナタ。

 

 

 

「起きてください!」

 

 

「はっ!?」

 

「水をどうぞ」

 

「すまない」

 

「またあの夢を見ていたんですか?」

 

ああ、あの時の翼のあった頃の夢だ

 

俺の翼は動かない

 

 

翼を手に入れたはずなのに。

 

 

あの日…子供たちは心配そうに怯え、私の目を見ていた…

 

「父さん…どうしよう。おれ…」

 

「パパ」

 

「お父さん…」

 

あの日、深夜に携帯にたたき起こされ、連絡メールを見て自身の変化に

 

寝室に現れた娘たち(天使)

 

ああ、気がつかされたんだ…

 

 

「大丈夫だ…!」

 

「あのさ、お父さん」

 

「ああ」

 

大事な

 

「明日休み?」

 

「馬鹿たれ!」

 

あの状況で言ってのけたあのバカ娘思い浮かべるのはいつも。

 

あの子だけは…ほんと―…っに

 

 

「しかしなあ、ハクロくん!義兄として言わせてもらう!いわせてもらうぞお!ひっく!」

 

「妹を泣かせるようなことは!ゆるさんぞ!子供たちもだ!」

 

だけどあの『ばか』は 泣きをみたほうがいいがな!

 

胃をキリキリと痛めているのは重々承知して居ります……

「いつもご迷惑を…」

 

最近どこも品切れになっている胃薬を渡すと尻尾を振っていたハヤシのお義兄さん

 

「あ――… 平和ってなんだあ?異変前のほうがへいわだったぞお?

        地面もまわってるし!またやつのしわざあああ……?」

 

さすがに十杯でお義兄さんもばたん。と倒れた

 

「お義兄さん!」

 

気持ちよさそうに眠っている。背負って行くのは翼で塞がっているので横抱きだ

 

お姫様抱っこともいう

 

 

居酒屋で焼酎を頼むと『濃い!』

というので焼酎を水を足し足し薄めに薄めたアルコールにお義兄さんは

「なんだか、いつもより濃いなあ、うまい!うまい…」と舌を巻いていたが…

途中からべろんべろんで

聞いた話では小柄ながら精力的に住民調査や手助けを行っていて

 

常に街を見てきた自負もあり責任感、無遠慮さ傍若無人っぷりは他の追随を許さないし。

 

血のつながりもあり…

まあ、案外あの子と似ているのかもしれないな。

 

むにゃ、なんて言いながら子供のように寝息を立てている大人しい様子を見ると

 

「大人しくしていれば美少女なのにな」

 

「がはは、かねもちだ…」

 

 

 

 

「はは、どんな夢を見ているやら…」

 

 

 

 

 

「ああ、安心してくれ

 あくまでも空戦機動した際のパイロットのデーター採取だ」

 

久々に出社(・・)呼び出しにうんざりする

 

『伝説のパイロットである』 『 雷雲 (サンダー)』『 風雲 (クラウド)

 

その単語に(オレ)の眼差しは死線をくぐった当時のものになっただろう

 

一瞬殺意を覚えたが抑え込み、ずっとニコニコと人の好い笑顔だ

 

…新任の上官の彼には悪いことをしたな。

 

 

 

飛行前日、対Gスーツを着込み、フル装備

 

格納庫を見学し、世界の不堕伝説を築いたアイツを一瞥し

 

飛行計画、ブリーフィング前で

 

「あ、あ、ああああの。よろしく、デス……!」怯えるあの子に

 

「ああ」としか返せなかった

 

 

 

 

 

 

航空機燃料で陽炎を吐き出しながら滑走路前で機体を止める

 

「管制任せた」

 

「らじゃ…プリーズたわーこんとろー…」

 

空、出るには遅すぎたのか…

 

【コントール。進入を許可する。】

 

「あ、季節外れの…」

 

荒れるな…これは

 

雪が降り始めた

 

 

 




いろいろ矛盾あるけど見逃してください


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トリ系女子!飛び立ったオオワシパパ2

完全にとっ散らかってますが後ほど編集します


凍り付いた時間、相棒である彼は強制的にベイルアウトされたことによって
長期間意識不明の状態だった
"変異"が起こり、彼の身体はネコミミ、ネコシッポの美少女となった

目覚めた瞬間、彼は。彼女は叫んだ。

「ハクロはまだ生きているか。」と


 

 

 

『再度命令を』

 

俺の翼は動かない、鋼鉄の翼は失われた日から飛び立つことを忘れていた

 

それは空に広がる

 

『これ以上の猶予は無い、再度攻撃を続行せよ』

 

片翼の

『『責務を果たせ』繰り返す。『パンドラ』を破壊せよ』

 

希望だった

 

 

 

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

『これは極秘の任務である。諸君らには前もって伏せていたが、今回集まった搭乗員には説明しよう』

 

『メインミッションは宇宙デブリの一部破壊だ』

 

『これは呼称を…「パンドラ」 今回の任務は「パンドラ」の成層圏内での分離破壊を主目的とする』

 

『これは現在、地球重力圏で発生した旧軍拡により発生した巨大衛星の残骸である

 現在成層圏へと衛星圏を離脱、降下中であり、これに伴い スーパーセル (強力な積乱雲)が予想されている』

 

『このスーパーセルには、『一時間の間』100mもの(・・・・・・)隙間が生じるとされる。これを掻い潜り』

 

『各機の燃料タンクベイに接続されるこの特殊弾頭ミサイルを目標のポイントに射撃後、即座に帰還してもらう』

 

『帰還は楽なものになるだろう。質問は無いか?』

 

 

 

 

 

 

『リーダー機、予定時刻を通過』

 

宙から渦を描く巨大な雲が地表に向け目前に迫っていた

 

『合同艦隊による解体が始まる。そのままの高度を維持せよ』

 

了解

 

 

 

 

 

 

 

 

…物凄い雷鳴に、切りたった崖の中に突っ込むようだ。

 

空気の壁が雷雲を孕んで轟々と聳えている

 

2メートルと無い距離だ

 

「こ…ら………イガー2、舵が…聞かな…。地表が近…!機体より離…す…!」

 

道をずれたら一気に地表だ

 

静電気(カミナリ)でさっきから航法システムも静かだが…感か。おい、相棒、次を頼む」

 

 

「…次の空気の壁を右4°バンクしてヨーでスリップしつつ左に」

 

「アイ・コピー」

 

 

長い風の絶壁を俺達はひたすら最短で中心部へ向けて飛び続けている

 

「あれは…」

 

「看板…それに鉄くずも混ざっている…地上は…どうなっているんだ…」

 

空気の壁の中を巨大な3mはある広告の看板がひしゃげた状態で飛び交っていた

 

「早く事態を納めなければなりませんね」

 

「…次」

 

「はい、です」

 

 

 

 

「なあ、カンダ、お前、あの時…」

 

「意識不明…のこと、ですか?恨んでなんかいませんよ、妻が亡くなったのだって

  …病院までの道での事故ですし」

 

ここにいるのも命あってのことですから

 

 

あ、この間娘と買い物なんかに出かけたんですよ?

 

パパー、センスが古い!何て言われて

 

ミニスカなんて履くとは…てへへ…

 

 

変わっちまったなあ…オレも、周囲も…

 

 

 

『こちら、コント……ル、聞こえるか?』

 

「パイロット、通信回復しました」

 

「ああ、HQ、この機体以外はベイルアウトした、現在彼我目標との距離僅か」

 

『その機体が特殊弾頭の予定量の最後だ、残念だが』

 

「ああ、目標との距離を求む」

 

「そのまま12時方向、中心部まであと20」

 

 

「10」

 

 

 

『ブリーフィングで報じた通りだ、破壊しなければ、地上の文明は崩壊する』

 

 

雲間を抜けた先には目前には台風の目のように巨大な空間が開いており

 

その落下物は

天使の羽のように

大気摩擦で白熱し、羽のように部品が舞い散っていた

 

右翼部、ジェネレーターはアレか!

 

 

俺は機体をブレイクしつつ中心部へと向かっていた

 

「散沫した残骸が機体に!」

右翼部に衝突した鉄パイプが突き刺さり、燃料が漏れ始めた、直ぐさま燃料タンク弁を閉め

……るが燃料の放出が留まらない。

 

「帰りは飛んで帰れってか?」

 

「帰りは頼んだ…よ」

 

「ごジョーだんを…」

 

目標、機関部、補足!

 

 

ロックが外れない!

当然だ、何本もの鉄片が突き刺さっているのだから

 

『構わない、よな。相棒』

 

『おう、行こうぜ』

 

機体を目標部へと最後のアフターバーナーを推進させ

 

目前に迫った

 

あの空間失調症で彷徨った、雪山ではなく

 

『天国直前まで寝坊助だったな』

 

『フフ恨みっこなしだ、互いにな』

 

ハハハ、と笑いあい。ヘルメットを投げると

 

そこで

 

 

『リベットが!』

 

その言葉の後、俺達は空中へ投げ出された

 

グルグルと目が回り、シューターから発進したのではなく。機体が文字通りバラバラになったのだと

 

急降下する羽を持たない相棒を見て気が付いた

 

おれも急降下し、この腕の中に入る。相棒

 

 

 

 

 

もう、飛び立てないわけじゃない。

 

翼を広げると

 

『ああ、子供(天使)たち。今日から休日だ』

 

空は晴れていった

 

 

 

 

 

 

 

 

推進を得て

 

 

 

空力を得て

 

空に飛び立つ

 

空は荒れているが構わず高度を上げる。

 

民間の飛行者の空間範囲から出るためだ

 

 

 

がたがとた音を立ててしばらく激しく揺れ、漸く空の雲の上へと

 

         動かないおれの翼(航空翼)は運んでくれた

 

「…私たち二人が航空機で飛び立つのは。これが最後でしょうね」

 

 

「…分かっているんです。事故に遭い

 この身体(小娘)になるまで身動きのできない不自由な身体だった私は

 

        本当は臆病で、身勝手な正義感で自分が勇ましい人間を演じていたって」

 

 

「私は翼のある亜人ではありません。私は()にもなれ(飛べ)ない。」

 

 

 

おれは…

 

 

見ていたさ。他の機体が分解されていたのを

 

 

「もう、この世界に機関砲(武力)はいらないんです」

 

「国境も、人種も、もうない」

 

「お前…」

 

 

「わかり、ますか…?もう、限界なんです」

 

雲の上、天国の様な…晴れ渡る空、に

 

 

もう、限界なんだろ? () が、降りてきている

 

見ていたさ、鏡の前で血を吐いてるのを…

 

「フフ、無理を言ったんです。最後くらい、空を見たいと。」

 

 

「ホラ、綺麗でしょ…?一斉に帰るんです。渡り鳥が…」

 

キレイな顔で……ッ

 

その日、海外へと在住の希望者を持てる航空燃料を使い、帰国させる試みが行われた

 

枝分かれし、幾重にもひこうき雲を描くそれは

 

春浅い若い新緑の芽吹きのようだった

 

 

「帰投しましょうか」

 

「帰ったら鼻にティッシュ詰めとけよ……」

 

「うーい。らじゃらじゃ」

 

「語尾をのばさないの!コントロール、こちらクラウド1、帰投する」

 

「策定されたコースより帰投せよ」

「了解」

 

 

 





相棒ことカンダも何だかんだ乗せてもらってるとか、鳥人系の子供に指導しているとか

そんな【美少女(おじさん)】の話

まだまだ、つづきますヨー…


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えるふ課長 あるこう、しらないせかい


再びまくい社を訪れた彼女

そこは水没した古代の都と化していた










 

 

 

 

 

会社のエントランスに到着した

 

 

いつも通り途中まで線路伝いに首都圏に来ようとしたが

 

 

所々の劣化が酷い

 

 

足元が崩れたので水没した元高速道路の下を泳ぐこととなってしまった

 

 

 

…この本社ビルも鉄骨も大分劣化している…

 

 

 

 

 

『ようこそ、マックイ社へ…!……です……現在、時刻……ュウニジ・三十分です…!…』

 

 

 

 

 

 

 

『追加メッセージ…記録、ここのライブラリ(・・・・・)は何時でも開かれています…此方にお越しの方は…これでいいのか?…此方にお越しの方は…地下にお下がりください』

 

 

 

程なく私の声がホールに響き渡る。

 

 

 

懐かしいな、【異変】が始まって、最初にライブラリを造ったのは。

 

電力を社毎に区切られ、自家発電まで使って、社長の英断だったな

 

 

 

 

人類と云う種の記憶

 

今では若者が図書館代わりに使用しているらしいが…

 

 

 

 

 

 

 

『ニジュウサンガイ… フ アデズ』

 

 

「ここのエレベーターももう潮時か」

 

 

 

「身体が軽くて助かった」

 

 

職場だった…階は殆ど床が抜けて、枠越しに海が見える

 

エレベーターのフチに足を置き、えい!とエレベーターを踏み落とすと気持ちがいいくらいに綺麗に落ちて行った

 

さて、と意気込みを付けつつ細くなった鉄の足場を飛び渡って

 

やっと私のデスク前

 

 

コツコツと回収してきたが今日で最後の品だ

 

 

勿論今は田舎に暮らしているのだが、村民の仲間のたっての希望で一番動きやすい私が選ばれた、という訳だ

 

 

長年持っていたデスクの鍵を胸元から取り出すと

 

鍵のかかっていた引き出しからは一枚の写真

 

 

あの頃の、始まった当初の『あの』

 

 

緩い雰囲気の開会式の社員総出で私に怒られる(だいきらい!)直前だな。

 

 

 

回収したし、『迎え』が来る筈なんだけど…

 

 

 

「彼女、来れるのか?」

 

昨日彼氏(・・)とお熱い様子だったし…

 

 

 

 

っお~い…

 

 

 

お~い!

 

 

「おお、見えた!シノブちゃーん!」

 

 

 

「っと」シノブは窓の枠に足を着くと器用に立っている

 

 

「シノブちゃん、歳なのに昨日足腰立ってなくって大丈夫かと思ったけど…」

 

「べっ、別に大丈夫だ」しかし、ここも変わったな…

 

明らかに話題変換…

 

「そうだね、草が生える前は、夜でもお昼の今、海みたいに町中がきらめいていた気がするよ」

 

「では、部長の指定座席に着き給へー!」

 

シノブちゃんは着用してきたツタ製飛行用の座席紐を広げた

 

 

 

「そうですね、オオシロ家当主 いや、大城忍部長」

 

 

 

「そうだ、ココは…ここは過去の遺物」

 

「行きましょう」

 

「ああ、改めて、さよなら」息子か娘が利用するかも、だがなと言い残しワタシ達は飛んでいった

 

 

 

 

 

 

「段々フラついてきてますけど…?」

 

「昨日、十三人目の娘の懐妊祝いがいけなかったのか…」

 

 

「…はぁ、第四世代(ひまご)はお婆さんですし、今の第六世代(やしゃご)の子供ですか?」

 

だって、だって。と身体をくねらせるのは良いのですが…

 

 

「何時まで経っても…乙女ですねぇ…それよりも、あそこに漁船がありますから、乗せてもらいましょう、手漕ぎですし。私がやりますから。」たぶん

 

揺れる、揺れる

 

 

「分かった、着陸する!」

 

 

 

 

「スミマセン、乗せてもらってもいいですか?ツレが限界なんで…!」

 

 

 

「ええよお!ゆ~っくりな!」

いい人だ

 

ゆっくりと着陸し

 

「手漕ぎ手伝います。漁の帰りですか?」舵を変わる

 

 

「ああ、私も漁の帰りさ~ネリマ水上バスターミナル辺りでお茶してかえろっかと思ってたんだ」

 

 

「あ、あの、ネリマまで良いですか?」

 

シノブ…しぐさが若い…

 

 

「うんだ、ええよお、アタシはハクチョウの亜人。オバアチャンだけどねえ~」

 

 

「あはは、見えないですね!」

 

 

「歳とっても私達亜人は姿は変わらないかあらねえ~」

 

 

それから彼女は色々と話してくれた

 

昔はシブヤのあたりで海女をやっていたことや

 

祖先はオフィスレディだとか

 

 

 

最近でも嬉しいのは孫の大型帆船でナルミ辺りの外洋に出てお茶を頂くのが一番の親孝行だとか

 

 

そんなこんなで大きなビルの上層部の跡こと『ネリマ水上バスターミナル』に着いた

 

中は整備されていて出店が並んでいる

 

 

「わ~!彼氏と来たかった!」シノブ…大騒ぎだね

 

「温泉饅頭を買っている暇もなければ、靴を買う暇もないからね、お金かかるし」

 

「は~いっ…」残念そうな顔をするな!今年でちょうど三百六十五年生…

 

しかしっ、私の長い耳は聞き逃さなかったっ…!

 

『2372年版!限定組み立て帆船!発売!』

 

「行く暇はないんでしょ…!」ええい!はなせい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

改め、気を取り直して

 

 

昨今の移動手段はたいてい電気動力に頼らないものだ

 

だが、少ない数だが、年々技術の発展と共に増えて来てはいる。

 

第一世代が生きている間に新たな社会を見れるかと云えばそれは疑問だ

 

 

 

私達の第三世代から寿命はガクンと落ち

 

この数十年前には第二世代もほとんどが亡くなった

 

バトーさんも最近は畑仕事を避けてきているが元気…なのだろう

 

例外は長寿の象徴であるエルフ種のみが第二世代以降も長い寿命を続けている

 

 

 

「また、ソレ?アンタ、『レコーダー』に吹き込むの好きねえ」

 

 

まあ、娘に伝えておくわよ

 

 

それ(しゅみ)が切れる頃にはアンタをまくい社まで運ぶように、とね」

 

 

済まない…

 

 

 

 

「あ、ユイ。魚、亜人だ」

 

遠くの岩場で人魚の人が手を振っていた

あははー!と手を振り返すシノブは本当に若々しい

 

「お姉さんたち、ちょっといい?」同じエルフ種のヒトか

 

「はい?なんでしょう」シノブ、ビクビクしなくても…人見知りは治らないか…

 

「ちょっとこのカメラの撮り方を教えて欲しいんだ」

 

「おお、サキ社製ですか!」

 

「そうなんだよ!判るヒトは判るんだなあ!」コイツ!第二世代かっ!

 

「まず、脳波デバイスが…」と

 

それからその人と会話に熱中してしまった

 

仲良くなったお礼に家にあるカメラのフィルムまでもらっちゃったよ!

 

 

 

 

 

 

『間もなくオクニッコー…』とアナウンスの降り口のナガノケンザカイまで近い

 

「シノブ…って寝てる…」弁当まで…ちゃっかりしてるなあ

 

 

「そろそろ降りるよー!」

 

「うわっ!アイ?」

 

 

「また、娘さんの名前が出てましたよ…」

 

「…ごめん」

 

 

愛、『大城愛』。彼女の【異変】前の娘、ヒューマンの女性だ

 

最近になって寝ぼけて彼女は【過去】を思い返すことが多い

 

 

 

 

「山が見えてきましたよー!」

ハコネあたりは見えてくるのだ

 

乗員がおお、と沸く

「おお、バトーも降り口で待っていることだし、用意をしなきゃ」

 

「ですね」

 

 

 

 

 

湖のほとりのバトーさんの建造したバス停の港で帆船バスは止まった

 

「はい、3200円お預かり…」

 

去っていくバスを見送り

 

 

 

降り立つと

 

「お~い!まくい社はどうだった?」バトーさんが山の坂から降りてきた

 

「バトーさん、変わらず、アーカイブのアカウント(入館者)も順調に増えてきていましたよ」

 

バトーさんは腰に手を当て、全く、無茶な若者が多いようだ。と喜んでいた

 

「ああ、写真は?」

 

「持ってます」

 

 

なら、と社長は何かを手で合図した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『サクラ!誕生日おめでと~う!』

 

木陰から社員一同で迎えてくれた…

 

 

「ありがとう…!」

 

 

「さ、村に帰ろう。今日は鶏料理に牛肉だ、大奮発だぞ~!」

 

『ハナコおぉ~ぉ!!』タカオさんがと叫んでいるが他のヒトがフォローしているので大丈夫だろう…多分

 

 

「おっと、電池が切れそうだ…」

 

…笑いあう人たち

 

この笑顔や悲しみの裏があってこそ記録を続ける

 

 

これが終わっても、どのような媒体でも私はこれからも綴っていくだろう

 

___出版 まくい社 小桜 紬 原作者『小桜 結』







一旦この話は落ち着きます




番外編として出るか他の話として違う世界の亜人系の話を載せるかもしれません

ご覧いただきありがとうございました




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アイスフロストベルト。赤道帯氷山脈群。日常のとざされた世界!
トライアングル な けもの。ぶりざーど 極氷点下の赤道帯にて


がたがたと木戸を風雪の吹雪がなぐるように吹き付ける

 

ロビーホールとはいえ、二重戸の上、戸の閉まりは良い筈なのだけれど

 

 

 

『東西の等圧線が狭まり…ばらく…くでしょう』

 

ラジオが聞こえずらい…もともと田舎ってこともあるんだけど

 

「ラジオ局の機材の修理…来月初めまで、か」

 

急がないと

 

あとそれと

温かいストーブに干している洗濯もの

 

乾いているだろうか

 

 

 

ん、む?

 

 

風に混じって人の声が聞こえる

 

 

さっきからガタガタいっていたのはもしかして

 

 

 

 

 

 

戸をゆっくりと開けると彼女は吹雪に押されるようになだれ込んできた

 

 

 

「どしたの?」

 

彼女は勢いあまって尻もちをつき、ウーと唸り睨みつけてくる

 

 

 

 

 

「ペンギンの獣人とはいえ…この寒いのは寒いのっ!!」

 

 

「いやーすまんすまん凛子。部品頼んでたの忘れてた」

 

 

広いロビーから管理人室だった部屋に移動している

 

 

ペンギンの亜人、その女の子の幼馴染である 『華 凛子 はな りんこ』

 

改めて見廻すと………短足だ

 

腰からは『ペンギン』の胴体となっている。元の生物を知らんが

 

 

ん?この凛子様のナイスなスタイルに惚れちゃったカナー?

 

しかし、と無駄に育った胸を…本人は自覚していないんだろうがドヤ顔で腰に手を当て強調している

 

「いーや、昔から短足だなーって」

 

ハァ?ムカつく!まったく、ひどいクソやろーね。とぶつぶつ文句を言っている

 

「ここいらじゃあ野郎は俺一人だもんな」

 

―………あー…

 

と複雑な凛子

 

だって彼は………

 

 

 

 

 

目の前の真っ白な男性『鳴咲 鳴 なるさき なる』

 

いつも、いつもこいつは素知らぬ顔で

 

たぶん意図せずして私の心をかき乱す

 

 

私たちの暮らす地域は熱帯に位置しており

 

現在の地球寒冷化(・・・・・・・・)の影響が一番効いている地域だ

 

 

私はこいつのお姉さんやお父さんとは違い生まれから亜人だった

 

こいつとは幼馴染で出身の村では一番若い私とコイツは子宝を望まれていた

 

その話を聞かされてからコイツとは距離を取ろうとしたのだが…コイツは頭がいい。天才といっても差はないと思う

 

機械工作、室内農業の経験、氷漬けの海の漁の方法、それらを生まれから瞬く間に開発していった

 

本人が言うには『どこからか知識を引っ張り出しているだけ』とのことだが

 

 

厭味ったらしくこいつを扱うのに、こいつは私に対して嫌悪感を吐き出したことはない

 

むしろ簡単に流されてしまうからこそコイツとの今の仲があるのだろう

 

正直に言おう、こいつと家庭を築くのも………悪くはないか、な?

 

 

それからというものコイツの外出に連れ立ってもらって

家庭の外壁の修理や外部機材の修理なんかを手伝っている。

 

素直になれないとはいえ、こいつ(ナル)が毒舌を吐くなんて

 

 

「……なにかあったの?」彼はふい、と顔を背ける。そしてうつむくと

 

 

 

「実はラジオ塔の修理に行かなければならないんだ……」

 

「あー…」

 

「どっち、の?」

 

この裏手の山の上にある電波塔か

 

 

「六階、要は屋上だな」

 

 

「この強風の中?」

 

 

「死ぬわよ、判ってんの?」

 

「心強い味方を用意したのだよ」

 

 

 

「あ、あはは。ど、ドモー……?」

 

 

幼いころ私とコイツのあこがれの人だった白熊の雪子さんだった

 

 

驚いている私たちをきょどきょどするのは人離れしすぎたのかな…

 

 





急ぎ仕上げました。


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Knowledge appetite after 2,000 years 二千年後の知識欲
人造シャケと窓越しの人魚、エルフは旧都トウキョウにて待つ



貧乏学生のバトーは高級な霜降り牛レベルのバイオフィッシュ
【シャケ】の養殖網を見学学習に来ていた

そこで事件は起こる。




 

[現在、CEO歴2007

  このように過去のように不安定な漁を行うことなく、機械の身体を持ったバイオフィッシュが自己増殖、プランクトン自己加工食品の回収を行う事により...Wait...検索]

 

 

 

[高雄茂子 海洋第三高学部所属、Wait......

... Warning .. Warning【!進入禁止区域!警告情報を送信!】Warning Warni....

【!あなたは端末に表示される以下の非常ルートを通りなさい!】..]

 

 

 

窓を備えた海中の狭い筒の中では学生たちの網膜センサーと知覚アラームが警告情報を盛大に大音量を響かせていた

 

 

今日は住居プラントの学習区の中ではなく滅多に見られない海中を窓から見学学習という嫌がらせか一般的に滅多に口に入らない

旧時代だと牛肉並みに高い機械の魚の造りだす味に妄想を膨らませていた処

 

海中を泳いできた海中に存在する海洋高の人魚亜人の女の子が進入禁止区域に入ってきたと云う処で各々の端末には退避命令が出ていた

 

俺は特に思う処もなく白髪の女の子がこれから払う被害額に哀れに思った程度だったのだ

 

 

 

 

『よう、あの子可愛かったなあ!』

 

              『そうか?泳ぎスマホのあれが?』

『アレはシロイルカ族系の娘だよ!』

 

 

              『お前変なの知ってんだな』

 

 

『あん?喧嘩売ってんのか?』

 

              『学生割引でどれだけ

               もやしの種を購入できるかをだな』

 

『あーあー、お前も大概だなー、ビンボーはやだねー』

 

              『馬頭家断絶の真っただ中だ、贅沢は敵』

 

『人工増速機』

 

『ミス、稀有な種族な為に

 繁殖に人工増殖機とかお前の種族もカワイソーだな

 

             『おー、言ってくれるね。割と優遇だよ

              成人の一人立ちも速いし、力仕事も外回り

              も得意とかいろいろ有利だし…』

 

             『何より!外回りは人魚とのロマンス、

                         有り得るしな!』

 

『亜人の中ではエルフの方が社交界出るの多いのだが…』

 

『お前、どこまで貴族階級に近づいてる?』

 

             『……厨房には入った』

 

『皿洗い、だろ?』

 

             『今日のお前なんか刺々しいゾー?』

 

『現実を知れ、男の子!』

 

 

             『あー、飯が…』

 

『伸びたか?すまんな』

 

             『いいよいいよ、繊維食品のびちゃって

              塩分過多だけど』

 

『なあ、んで、今どこよ?』

 

               『撮った、端末で写真どぞ』

 

『あんがとよ』

 

              『あん?』

 

『アンタみたいなのがハイブの

 外壁工事してくれるおかげで暮らせてんだ』

 

 

馬人の馬頭は休憩用の水中呼吸空間用の休憩テントから

 

 

海洋に映し出された超大型構造物のビル群外面の絶景を映し出していた

 

よく見るとそこに手元にハシで伸ばした栄養保持繊維カップ麺が映し出されていたのには『ツムギ』も笑いを堪えていた

 

 

「長老、ツリーの飾りつけ、終了しそうです」

 

 

「よろしい、そろそろ旧暦十二月だ」

 

 

第四世代の曾祖父にあの件についていい加減許可を貰いたい

今日は秘策もあるのだ

 

「お爺様、例の件、お考えいただけましたでしょうか?」

 

 

「おお!ツムギ!忘れる筈もなかろう!政府特例AR-1の許可だろう?」

 

何か、渋っていた割に感触が良いな

 

「そうです前々から申した通り【小桜家】の歴史を是非読み解きたいのです」

 

「可愛い孫娘の為だ、構わんとも!」

 

孫馬鹿の箱入り娘にしていたくせになんかニヤニヤしてるし気持ち悪いな…

 

 

「今すぐだ!ささ、途中まで護衛を付ける。呼び出しまで時間がかかるから十分支度していきなさい」

 

 

「はい、畏まりました」

 

貴族らしく贅沢にスペースを使った大樹から逃げるように私は駆けた

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、そうか。巡り合えたのだな、『馬頭』と」

 

「【初代小桜】は姿を御隠しに為られて幾千年」

 

「運ばれる社の箱の中で眠られておるらしいがの」

 

「百年に一度の祭典、あの子があの役に、でしょうか」

 

「かもしれんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉーい、新人、アラーム鳴ってんぞー」

 

「あ、先上がります!」

 

「おう、ゴクローサンあの外壁の継ぎ目は中々できてたぞ」

 

 

「はい!」

 

 

「あの、いいですか?私、―と申します

  こちらに馬頭さんという方がいらっしゃると聞いて」

 

「えっ!は。はいぃ?」

 

 

白髪の貴族の人魚!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらからは世界遺産、ゆっくりとお進みに為られるよう」

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました」

 

 

 

 

案内人は一度踵を返しながら浅く礼をし去って行った

 

 

 

 

 

 

ここには初代様(ユイさま)の残したニンゲンの足跡

 

 

 

『ヒトの記憶』も此処にあるに違いない

 

 

 

ここは、元々の海の底だった

 

 

 

   『旧古代文明水都 トウキョウ町』

 

 

 

 

 

「ようこそ、馬杭社へ!ユニークなサービス!ライブラリーも開かれています!ご自由にどうぞ!」

 

整備されている?

 

じいさま達か?

 

 

「困ったな、儀式はあと数日だろう?待てなかったのか?シレ?」

 

 

 

「あなたは…」

 

 

 

 

成人のエルフ…

 

 

 

「あー、孫か、どうも、ユイだー、あー」

 

 

ご先祖様に本当に不敬だがクスクス笑ってしまう

 

「どうも、小桜 紬です文明再開から2100年、やっと会えましたね」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

 

「本来、我々子孫は貴女に接触したかったのです」

 

「そういうことなら…」

 

苦虫を噛み潰したような顔…クス

 

 

「でもそれは、周りの人たちだけ、私は、そんなことには興味は無いんです」

 

 

 

口を開けて、呆けてる可愛い人

 

 

「ヒト、いえ、人間、人類の足跡に興味があるんです」

 

 

ユイさんがやっと笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからは…私はある本を出版した

 

紙で出来た書籍、自由図書としてだ

 

電子書籍棚の間に紙媒体の本があること、それに驚いた人々に広く知れ渡り

 

 

 

 

紙の書籍の売り上げが上がったことは予想外で

 

 

 

オオシロとタカオという方の名の推薦で親友の同種族同士の縁談が上がったのは

 

本当にハッピーエンド、と言っていいんじゃないだろうか

 

 

 

悲しみの跡には、同じくらい喜びもある

 

ある人が教えてくれた言葉だ、今回もその通り、かな

 

 

余談として始祖である結さんは吹っ切れたように働いた(・・・)のも社会問題と化したが

 

それはまたいつか話すだろう

 

 

「記録者、代九世代、小桜 紬!ようこそ!馬杭社へ!」





バトーの子孫は事故で身寄りを失くし、高校三年の頃にはクラスが同じとなった紬と出会い

それを見ていた母親から伝えられ、云々

ユイは歴史の観測者から自身が動く方が目的を果たせると思い動き出した、と言う感じです

泳ぎスマホを書きたかったのですが、ちょっと要素薄くなってしまいましたね

徹夜で書きました、ちょっと何言ってるかわかんないですが

つづきもいつか出ます。たぶん


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訪れなかった終末 熱帯:カイダンニテ、君を待つ1

かもしれない。


……どこまでも続く海

 

 

この神社の階段は海につながっている。

 

 

ずっと前から、この星の水辺は広がり、僕たちは当然、このわずかに残った陸地も飲み込まれるのだろうな。

 

と漠然と考えていた、そんないつもの二人が集まる。

 

 

 

―-境内の真夏、午前昼前…

 

僕はあの子との忘れられない、そんな時を過ごした

 

大切な思い出を語ってゆく

 

 

 

 

 

この階段が105段目で海に浸かっているのを確認することはもう五歳のころには終わっていたし

 

最近は特に昆虫採集にも虫自体の数も減ってきた

 

知り合いの人魚のお姉さんは何かの大規模工事とやらで周りの大人も連れだって

ここらにいる人間は僕の知る限り

 

生まれの一年違う年子の幼馴染の男の子だけだ

 

赤ん坊のころから一緒で、家族ぐるみでの付き合いのヤツ

 

僕にとって、ソイツとのこの境内に集まるのは。

いつも、いつでものルーティンで、必ず組み込まれる。幼少期の狭い世間では世の常となっていた

 

 

 

そいつがここ二、三日全く音さたなく

自分の家の手漕ぎ小舟を家の向かいの山まで往復で二、三十回は向かった

 

漕いだ労力むなしく、留守だった

 

 

 

あれから大人たちに勉強を教えてもらいつつ、夏が終わりそうな。

 

ひぐらしが、悲しく泣いていた晩夏

 

 

 

家に帰ると、親父が、母さんをぶっていた

 

「なにしてるんだよ!」

 

「おれたちは!おれは!もうおしまいなんだ!」

 

「カオル、これで商店に行ってきなさい」「でも、」「早く!」

 

 

もう、僕の家族は。同じ形にもどらない気がした

 

舟をこぎ、沖に出ると、にぎりしめた千円札はやぶれていた

 

 

俺は、また、あの階段へ向かった。

 

 

鈴虫が泣いていて。

 

 

 

聞き覚えのない、後ろから女の子がやってきた

 

 

「泣き虫…」

 

 

うるさい、だったか。とにかくひどい言葉を漏らしたのは

 

 

 

「私のパパ、怒ってた、あの人たちになのか。」誰にでも、なのか。

 

とにかく、どうにかなるよ。

 

 

夏の夜、虫たちの音色に包まれ、疲れ果て、眠る香る。線香と甘いスイカのような香り、柔らかい感覚

 

今でも、彼女に…

 

 

夏の蝉たちの鳴き声で目が覚めた。

 

暑い日差しに、ありえないものを見た、でもそれはのぞんでいたものではなくって。

 

 

 

とにかくそれは、嬉しかった

 

 

「薫、おはよ。」お寝坊さんだね?いつもより、それらしくなっていた

 

 

「ああ、(のぞみ)、おはよう」なんでもないように、できただろうか。たぶん私の顔は…

 

希は私のほっぺたを縦横伸ばすと

 

 

「やーめーろっ…!」

手を振りほどき、うつむいて、また、歪んだ顔で(精一杯笑って)見ていたのだろう

 

「うん、元気だね!」

 

 

 

 

「…なっちまったのか」

 

胸元のリボンが特徴的なサマーワンピース、いつもの麦藁帽もすこしぶかぶかだ

頭をなでてくる。抵抗はしない

 

「ん、最後の日に、股が血が出てて両尾びれちょっとなりかけててね」

 

「胸元も、ふくらみかけだけど、おっきくなっててさ、さわってみる?」そういって、手を持って行った

 

「アハハ、あれ?女の子のおっぱいだぞー?」

 

 

泣いてんじゃねーか

 

 

「無理すんなよ」そう言って肩に手をまわし、抱きしめた。

 

「親友の、ハグだ」今度は、彼女が泣く番だった

 

 

『「二人して泣いて」』日もまだてっぺんなのに、と笑いあった

 

 

「海の中の街を造ってるんだって」

 

「親父がスゲー…キレてたのはあれのせいか」

 

 

「百年も土地が完全に沈んだ海上暮らしなんて、やりたくないよね」

 

 

「親父は。死んでるな。俺の母ちゃんみたいになれば違うんだろうけど」

 

 

「心配すんなって!一ヶ月だろ!」

 

 

 

 

 

 

「いいえ、私は行きません……」

 

「貴女には幸せになってほしいの…分かってちょうだい…」

 

親父は奥の茶の間で黙って古い新聞を読みふけっていた

 

「ダイジョーブ!ヨユーだって!食べ物も支給されんだしさ!カーちゃん楽しんで来いよ!」

 

約束もできないのに

 

母が抱きしめたのは、わかっていたから

 

 

 

 

 

今では、

 

 

今では骨ばった父

 

 

この家を建てたとき、僕は生まれていなかった。

 

海運貿易商の際、救助に当たったのが母だったそうだ、互いに一目ぼれで。俺は3年後に生まれることとなった

 

 

「父さん、水の申請まだ届いてないのかなあ…」

 

 

「……かぉぅ……」

 

 

「父さん」

 

 

「わぁしぁ…もぅ…だぇぁ…」

 

 

「……無理だよ、父さん居なくなったら誰が居るんだよ!」

 

 

「タカオには…悪いこと………を……」

 

 

 

「タカオ…?父さん………?」

 

耳元で聞いた彼の言葉は、あれから吐き出すように漏らしていた罵倒の言葉ではなく

何かの一種の懺悔だった

 

彼の読み耽っていた資料には色あせ、傷だらけでほとんど読めない、会社…とは読めた

 

それを読む時間は一種の狂信に近い物のようで遠巻きに見ていたが

 

忌の際に想うもの…タカオ…母さんの旧姓か…?

 

 

水は届かない、日が昇って、夕焼けになって、雨が降って、嵐が起きて、日はなかなか降りない

 

 

父はミイラとなった

 

残りの燃料で父を火葬し、砕き、海に撒いた

 

照りつける日差し、何もない世界、海原。昔読んだ海の砂漠。海面下にはハイブがあり、そこで豊かな生活をしているのだろうか、あの人口で? 言い得て妙だ

 

釣り上げた魚から血を吸いだすのも限界に近い、最後の釣り具も損失したし。歳も取り過ぎた

 

 

 

縁側で寝転がる。聞こえるのは波のちゃぷちゃぷとうねる音

 

 

いや、聞こえるのは…あの時の鈴虫と波のひいては寄せる

 

やさしいあの香りと君の姿は薄っすらと戻ってきた

 

 

『もう限界…?なら、帰ろう…命の生まれた海へ…!』

 

幻だろう、彼は希。うっすらと父と母が横に立っている

 

私は最後の力を振り絞り、縁側から海に飛び込んだ。

 

 

 

 

泡が身体を包む。

 

せめて瞼を閉じてしまわないように幻を幻視し続けると足が…下へ、深海へと尾を掻きだした

 

泡がさらに私を包む

 

腕はあの日のように泳ぎだ(クロール)する

 

 

 

真っ暗な世界に来た…何か灯が近づいてくる…

 

 

私の父と母は闇の中へと消え去っていった

 

 

「のぞみ………  …    」

 

 

 

 

 

さんは……ここに居るということは…」

 

「母さん、おめでとう、戸籍はもう違うけれど。妹。なんだね」

 

「っ、違うわ!あなたも…」「違わないよ、立派な命だよ」

 

 

 

僕は真っ赤な紅の、あの夕焼けのような。の最期の笑顔、色鮮やかな魚を一緒に食べたあの日を思い出す

朱色ベタの人魚になっていた

 

おめでとう。どのようなことであれ、僕は君を祝福し、手助けするよ、タカオ家次期頭首……

 

 

高雄 茂子

 

 

水槽の中、彼女の腕の中で白色の赤子の人魚が静かに眠っていた。

 

母は不安そうに見ていたが、(ワタクシ)はこの子だけでも、何が起ころうと護り通そう(・・・・・・・・・・)、そう刻む

 

 

 

 

 

 

 

ceo.1989 偉大なと母に誓いここに刻む 宮野 薫

 

 

 

 






ミヤノ……


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新暦貴族マトウ. 外装工業員バトウ.ep1

後ほど程修正前提の投稿です


―馬人の貴族、家系―

 

偉大な世界復興の立役者の子孫であると自覚しなさい、と何度も母上には。

 

言いつけられていた。

 

そんな立派な方なのだと、3歳の子馬の私は一度は見てみたい、と母に告げてみると

 

 

あなたが5歳の時には社交界に出る用意をしておきます。

 

そう告げてから社交マナー、言葉遣い、経済、その他諸々。貴族っぽいことは教えられてきた

 

今こうして緻密(ちみつ)に修理工をやってけるのはこの基礎があってこそ

10歳の身で社会に出ると意外と役立つのだ、特に社会性を築く上での数字や所作、言葉遣いというのは

 

 

ともかく、色々な大人たちにあいさつ回り。言葉を二三交わして

 

お菓子を皿にもって下さる方や親指切断マジックとかいうテンプレのジョークを言う優しい方なんかが多かった。

 

最近のモンはおじいさんは複数いたがタバコやサケを勧めるヤンキーじいちゃんだったんで最後の方は互いに「カカ」と笑いあっていた

 

うちは分家でさらに離れているので名前だけのモンだ、気楽なパーティかと思った終わりごろ。

 

 

その女性(ヒト)は現れた

 

 

 

ゆるやかなウェーブがかった、ツヤのある色素の薄い、たおやかな白髪に

 

白い、まつ毛の長い慈しむ様な眼尻の下がった優し気なヘイジーブルーの瞳

 

蒼い口紅を注した薄く微笑む綺麗な唇

 

華奢な白磁のような肌の細い腕と肩

 

白いブラウスに押しやるようなとても豊かな胸

 

人胴のウェストはとても細かった

 

馬胴には一番に目につく馬頭本家家紋が描かれたスカート

 

脚には白い馬足袋が気つけられており

 

会場に姿をちらりと見せただけで瞬く間に彼女は私の目を奪ったのだ

 

他の大人たちは片足を膝立ちにして胸に手を当て、跪く、最敬礼だ

 

自分も遅れずに真似をするように。

 

そのまま道ができる。俺までの。

 

 

 

 

「は」

 

 

「う~~~~!き、」 き?  「キャャワイイ~!」

 

 

脇に手をやり俺を持ち上げる。目を輝かせる「ばとーおねーちゃん」が次の瞬間には居た

 

 

 

会場は再び盛り上がりを見せていた

 

 

『バトーおねーちゃんって呼んで!』そう言って止まらない彼女に俺は折れた

 

そのまま頬ずりほおにキスの嵐。なんかイメージ像が崩れていった。

残念なおねーさんに格が下がった気がする…

 

今はしばらく声をかけて楽しそうに歓談している

 

「カカ。長老には驚いたろ!」

酒飲んどけ、今のうちにな。が二の次に出る親戚のおっさんは驚かせるために用意したイベントだそうだ

 

本家の方はグダグダしたのは好まんが

 

うちはウチ。向こうさんも目線に入っとらん。

 

 

「水のように透明でその世界で染めるように色を変える。あん人はそういう人よ」

うちのじいさまが最期にそう、苛烈な目。バトーさんを見やる視線で呟いていたのが印象的だった

 

 

食事を楽しんでいると会場にライトが収まり暗がりができ、アナウンスが流れた

 

 

『現在、我々は  『水中都市機構(アクアランドハイヴ)

 

         『空中大気都市機構(エア・ランドマーク・サイト)

 

 

  分かれて暮らしており。陸海空、それぞれの生態系が交わる、最も重要な

                       それぞれに最も関係性のある『陸』』

 

その一部に我々水中都市機構。は有ります。

 

『旧暦、新暦。それぞれの合間に在った地球寒冷化を抑えた英雄。ラジオ局のただの青年が

 今やこの世界の中枢を担う我々アクアハイヴを建築した歴史的異人であるのはご承知の上でしょう』

 

 

『勿論、忘れてはなりません四賢者の皆々様、馬頭家当主様』

 

 

『そして、』

 

 

「タカオ家ご息女である茂子様からご登場を戴きます」

 

会場後部のドアが開き白髪の黒目の自分と同じくらいか少し大きい女の子がスポットライトの中二人の大人を連れ立ってこちらにズンズン向かってくるのだ

 

 

周りはくすくす笑っているが

 

?を頭に浮かべながらそれを迎えるように右腕を祭礼に構えるが

 

 

目の前で立ち止まると

 

 

「別にアンタを認めるワケないから」といってビンタされたまま呆然としていると女の子は飛び出していった

 

「あー。複雑な状況なんだ。迎えてやってくれ。許嫁としてな」

 

 

 

 

 

 

「熱を起して倒れるとは。」思いもよりませんでした。と言いたげなベットの上の俺に鋭い視線の母

 

そのままこの三畳ほどの医務室を出て行った

 

 

ツンケンした態度の今は亡き父も母には苦労したに違いない…

 

「そうでもないカナ~~」

 

そういえば俺は誰に寄りかかっているんだと、視線を上げると

 

そこにはお姉さん。バトウ様が馬胴を支えに枕にしていた

 

 

目を白黒させて驚く俺を気にせず

 

「結構あの子。素直だからね~。あれでも惚けとしてた子だったんだよ?

 

                      『キミのパパが殺されるまでは』 ね。」

 

「知りたい…カナ?」

いたずらしたような顔でも、目は笑っていない

 

 

「殺してやりたい…って目をしていたもの…」

 

 

 「『父の死が君を変えた』 マクイ・シンイチくん」

 

馬人とエルフの遺児マクイ

 

 

『キミとタカオが交わるとき。『小さな世界』にどんな化学反応が起こるだろうね』それの言葉をバトウは飲み込んだ。

 

 

 

 

 



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壊死に肉塊、空に魂 つばさが生えた日

 

「あー、こりゃあ。」中年のお医者さんは身体検査から得たデーターを何度も見やると慣れたように私と両親に告げた

 

「『まゆりちゃん』おめでとうございます。『後天性天使病』です」と

 

 

この世界に過去の人々は魂の腑分けを行った結果、私の様な魂魄に異常を抱える障害

 

『後天性自然性転換病』と呼ばれる姿かたち、動作。魂が全く異なる人間になるという不可思議で不気味な世になってしまったという

 

 

私の場合は魂と肉体が徐々に空中に浮いてゆく肉体が完全に死滅し新たな女性天使の肉体となる、そんな病だ。

 

その症状の対処法しかなく。鎖などで宙づり状態のまま固定し。肉体が文字通り腐ってゆき、中から新たな身体が現れる。

 

『人族卵生体症』の方とも似通っているがあちらは体に急に糸が張り出し、卵を自ら作ったうえで中から出てくるというもの。

 

私は余程惨い経過を経ることで進化するので、家族にも伝えずらい。

 

医師も看護師も経験者と精神科医というきついものだそうだ

 

転換性両母も私の頭を抱えて泣いている。

 

 

ごめんね。

 

 

点滴やメスがテーブルに並んでいる。

 

痛み止めや壊死した肉を切除する道具だそうだ。

 

 

想像もしたくない。

 

 

一週間と二日濁った粘液が体中を流れている。匂いはもう感じない。目は濁っているだろう。

 

 

火花が散るように体を時折熱い鉄棒のような切込みが入る。

 

 

一ヶ月。

 

 

 

いまはいつだろう。体組織がぼたぼたと落ちる。濁った黒に近い視界からたまに白い光が見える。

 

 

 

私は再び世界を目視した。

 

光にあふれている。この白い部屋の隅で三人ほどの人が手を組み喜んでいた

 

涙を流し、何やら濁った鳴き声で叫んでいる。

 

あれは………人間なのか…

 

 

一日中そうだ。視界の端から光が消えない。睡眠欲もわかない。食事は水のみ。流動食も続かない。

 

流動食を一度食べたが水分に変換されて水を飲むこととなる。食欲はあるし、空腹だ。

 

そこの生き物!キーキー喚くな!

 

……気が狂いそうだ。神様でもなんでも人間に戻してくれ!!!

 

 

 

いちねん、しょうきが、けずれている

 

えがお、にんげん、なにが、ああ、ああ、ああ

 

わたしは!しろから!しろからなにかが

 

、はいでて!

 

 

 

 

きょうからにっきをかきます!

 

せんせい、おくすりはにがいのでぜりーください!

 

  ・・さい  ま  ゆ ちゃん

 

*まゆちゃん、よくかけました。これから ゆっくり りはびり してゆきましょう

 

おかあさまへ #彼女は体重、体高。ともに平均より低いです。これから成長の余地はあるでしょう。

        長い歴史を受け継いで、エルフのように安らかに長い寿命を迎えます。

        後、リハビリテーションについては別紙を参照してください。

 

四年間、ご苦労様でした。ゆうきくん。数少ない難病ですが

きみの回復には医師看護師きみのご両親もとても喜んでいました。おつかれさまでした。

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました!おさかなたべたい!」

 

 

「そうねえ。なにがいいかしら?」

 

「あぶらがのったやつ!」

 

 

 

 

 

 

 

 



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青色水路、迷宮の如く
青き火星 ~青色水路・港町ポルト・アクアより~


更に月日は流れ...

まだ書きたいことがあったので不定期で続けます

召し上がれ、ボナペティート!


ボクは昔から身体が弱く、風邪を引き

同級生たちと学校に行くことさえままならなかった

 

 

 

自分に自信の持てない弱虫なボクはイジメを受けていた

 

そんな僕を見て、両親は地球を離れ

 

 

遥か7,528万キロメートルに位置する惑星の、ここはのんびりとした港町

 

 水の火星 (マルテ・ダ・アクア)』の首都である

 

 

『リコ・ポルト・アクア』、豊かな水の港。という意味らしい。そんな場所に移住を決意した

 

 

 

ここは都会とは違い火星の空気はとても良い

 

ここは特に観光スポットにもなる田舎の星の為、喘息は収まったけれど

 

周囲の陽気で気軽な雰囲気に中々溶け込めず。

 

 

昨日もまた熱を出して寝込んでいたのだが…

 

 

 

その日は一晩寝込んでいたが

 

今朝、自身の変化に着いて気が付いた

 

汗で濡れたTシャツが気持ち悪かったのでベッドのフチに座り、起き上がろうとすると

 

ん?

体形に合ったTシャツを着ていた筈、お腹がすーすーすると思ったらお腹が出てるね。

 

その押し上げる原因である真下が見えない、この胸元の脂肪の塊のせいで

 

股間の相棒の感覚もないし、臓器の巡りもいつもと違う気がする……多分……

 

これはつまり…

 

 

余り頼りたくないが…

 

 

「かあさーん、ちょっと!」

 

どうしたのー?と同二階のテラスから洗濯物を干していた母が部屋に入り

 

 

「『(カエデ)』あんた!まさか!まあ、まあまあ!」

 

 転性 (トラブ)っちゃったんだけど…」

 

 

現代社会において女性、男性の差別的な自己認識はあまり役立たない

 

その要因となるのが

 

 

『 転性 』これが我々現代人には最も重要な社会基盤を左右する

 

 

母はいつも通りの満点の太陽の様な笑顔で

 

「買い物ね!」 と告げた

 

 

 

 

 

 

ボクは母さんに連れられ、水路横の路地道を歩く

 

基本、この星『 水の火星 (マルテ・ダ・アクア)』は夏と冬のみの季節が巡る、特に夏は長く今も橙に青と緑、薄い白色で彩られた地面のタイルにサンサンと太陽が降り注いでいる

 

街並みはイタリアという地域の流れを汲んでいるようでゴシック調の派手さは抑えられた街並だ

 

街中には水路が築かれており、水路のみで渡る事ができると謂う店がある程運河や水路が発展して居り

 

個人用のボートやゴンドラを利用する人も珍しくは無い

 

そして、この珍しい景色を見に来る観光客も少なくない

 

だが、ボクはもう久々の外出にウンザリで

 

「うだるような暑さだ」

 

体形的に今までの服は身長的にも小さすぎるので母さんの服を貸してもらったが

 

「胸元がキツイ…」

 

耳を引っ張られる

 

「まったくもう!失礼ねえ…」

 

「ああ、そう言う意図はないんだけど、ごめんなさい」

 

そうよ、気を付けてね!失礼にあたるんだから!なんて頬を膨らませてわざとらしく怒る

 

母さんも『  TS病  (転性症)』によって性が変わった経験があるそうで

 

母さん曰く『あの頃は、高校だったかしら、荒れに荒れてたわね。ふふっ』

と、今では考えられないような内容を、なんて笑いながら話していた

 

「あら、奥様!」

 

運河から声が掛けられ振り向いた先には人魚の亜人のマルテッロさん

 

ピンク色の髪と尾ひれが特徴的なカワイルカの人魚でつい最近50代で転性した方だ

動物的特徴から目が不自由になってしまった

ハンデは在るがイルカ特有のエコロケーション(超音波測定)によって大体の物の形は判るそうで

今も前と同じピザ屋の店長を務めている

 

 

「あら~、マルテッロさん大荷物じゃない。手伝いましょうか?」

 

荷物が大量に積まれた舟を引いているのを見て言いだしたが

 

156と小柄ながらも母さんはバッファローの亜人でありパワーに技術も合わさり、そのいい例に

マルテッロさんとの初めての出会いでマルテッロさんを狙ったガタイの良いしつこい男性のナンパ相手五人ほどを常人には見えない程の速度で一発でノシていた

 

 

「大丈夫よ、殆ど空きボトルとトマト缶ちょっとだから……うん?」

 

そちらの子は楓くん?と舟を岸に着け、水辺の縁に腰を下ろして、本格的に喋るつもりだな

黒を基調とした緑色と青色の線があしらわれているスポーツ水着を着用していて

自分とは違いキレイな身体のラインが浮き出て自身よりも色っぽいと感じる

これで転性直前に離婚した前妻との間に息子を持っている

 

「ええ、そうです。今から晴れて楓ちゃんの服を選びに行く予定なんです!」

 

「お店は決めてあるの?」

 

「ポルト・イーストの『デアッツァ(高級服屋)』とか『ネゴスティツィ(老舗靴屋)』とかの、質の良い物って感じで揃えようかと」

 

ちょ、母さん!そんな高い物を選ぼうとしてたの!

 

「だったら考え直した方が良いわ、着慣れないからどうしても生地を痛めてしまうし」

 

「そうね、この子のサイズの調子じゃあ体形も変わりそうだし……オススメとかあります?」

 

「船着き市場だけど、『ファスタ』っていうチェーン店がお勧めね。ニポンの『ウニグロ』のライバル店よ」

 

ナチュラルな服で有名な大人気チェーンブランド『ウニグロ』

ボクは…無印のプリントされてないジャージなんかがお気に入りだったな

 

この間のテレビで店の名前は社長がイシダイの人魚で好物がそれだからとか聞いたが

 

 

「でも、この子に入る服あるかしら?」

 

「う~ん、トップ、アンダー含めると89くらいあるし…」

 

無論、無駄にデカイ胸の話だ

自分でも…何の亜人かはなんとなく察しが付く…

 

「この荷物運んだ後30分位時間できるから案内しましょうか?」

 

「あら、よろしいの?お店は…」

 

マルッテロさんは腕の側面にひれが付いている小さな手を顔を隠しながらくすくすと綺麗に笑った

 

「美人処の買い物に付き合うのにに言いも悪いもないわよ…ふふ」

 

 

 

 

 

『絶品パスタ・マルゲリータはお任せ!マルテッロのイタリアン!』の従業員出入り口で待っていると

すぐにマルテッロさんが先程の水着から上に白いTシャツを羽織って出てきた

 

荷運び用のボートではなく自家製の観光用のゴンドラで運んでもらえるそうだ

これはここに来て初めてだな~と何となく考えていた

 

「お店、忙しくない?」

 

「息子がね。ポルトっ子なら女性の我が侭聞かんでどうする!…って勢いづいちゃって」

 

「ノリと勢いがこの街らしいわね…」

 

変わった人たちだな。と半ば呆れてポカーンと口を開けていた

 

「もうそろそろ河岸大市場よ」

 

 

視界が開けてきた

 

詰め放題の魚を入れた買い物袋を手足で持つ翼人

三人ほどで店主を取り囲み。蜂蜜を値切り交渉しているどこかで見たですわ口調の人魚(たぶんクラスメイト)

 

器用にエスプレッソとタコスを飲み食いしながら人を避け、立ち泳ぎしている獣人

高速バタ足でエンジンボート並みの速さで物資を輸送する運び屋の獣人

手紙を手渡しで渡す綺麗なさも静止している様に見える羽の郵便配達員の虫人

 

船のオモチャを指さしながらひれ足で駄々をこねる人魚の子供と引っ張る母親の人魚

 

 

 

そこには様々な人種が集まっていた

 

 

ここ、こそが…

ウン・グランデ・メルカッテ・ピヴ(腹ぺこ商売市場)』だよ~!

 

世界が広がった気がした

 




分割ですが次回はいつも通り不定期


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水路の先 のんびり猫と二人のヒミツ

銀髪、銀の角、銀の鱗を持つ尾を靡かせるは。彼女は同級生。

お嬢様らしくなく。気の良い。気さくな彼女はいつものように快活に動き回る。

値切り交渉に勝勇み、そこに一人の人物を見つける

…彼女の母親から説明を受けると…


 

W・A・T・A・K・U・SI(わたくし)に一言も相談なしとはどーいうことですの!?』

 

 

『腹ペコ市場』に着くと僕が目に入ったのか『どこかで会った』彼女が押し寄せてきたのだ

 

毎回絡んでくる。この目の前の銀色の人魚である女の子は

 

 

 

『シス・アプロディ=カタパルト』

 

 

 

やんちゃだった、昔は。その言葉の通りの意味で。

 

「大体ですわね……あなたは!聞いてますの……? 」

 

 

 

「あっ…その顔…いぃ…」

 

 

 

この顔を赤くする目の前の女の子はこうなる前は(・・・・・・)大男を付けて街中を練り歩いていたのだ

 

その理由がなんとも可愛らしい

 

『キスをすれば子供が授かる』

 

そんな理由で町中の女の子のほっぺにチューしていた

 

だが

 

 

「あぁ…、なんて……かっこいい…やはり………」

 

 

 

わたしのだんなさま

 

なんて妄想にうわごとを言っている。

 

いやんいやんとばかりに赤い頬に手を当て揺れている女の子

 

 

 

 

彼女も俺と同じ男性だった『転性症』の一人だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は両親は資産家。

 

母親は厳しい方で

 

父親が甘やかしていた

 

 

当然金にすり寄る連中がその『付き人』の男どもだったって話で

 

「どうすれば、友達ができるカナ…」

 

から

 

「どうすれば次代の家長として品位を持てるかな…」

 

から

 

「どうすれば跪くんだ…?」

 

に変わっていった……らしい

 

 

 

そうして思いついたのがその『イタズラ』だ

 

 

そんなものでも街の人々はなんとも可愛らしいものだとは思わなかった

 

『付き人』の連中はそんな可愛い者では無かったからだ

 

女性にセクハラを強い、男性を貶める。そんな気の荒い連中で

 

「ここに。さあ、新生活の家へ向かうぞ!」

 

という場合にそいつらに絡まれて、母さんがノシたのが真相だ

 

 

 

 

 

 

 

「アプロさまあー!向こうの商店はサンマがお安いらしいです~!」

 

「シスさま~!はやくはやく~!」

 

 

 

 

 

 

ボッコボコにされた次の日には、あら不思議。

 

 

 

その連中も可愛らしくなってしまったが

 

 

この子達を宜しくねえ~…

 

 

 

 なんて

 

その二人を紹介する目が笑っていない笑い方で

 

ヤツの母親から言われた時には作為的なものを…

 

……よしておこう

 

 

 

 

「…ッ、ああん!待ちなさい!ひき肉が先ですわ!」

 

彼女は此方と向こうを見やり、焦れている

 

 

「行ってきなよ…後でどこかの喫茶店に集合すればいい」

 

 

いつも以上の勢いに思わず苦笑いだが

 

 

「申し訳ありません、楓さん。また後でゴンドラを用意いたしますわ。それでは失礼いたしますわ~!」

 

 

 

買い物袋を器用に尾びれの場所にある背びれに引っ掛けて急いで泳いでいった

 

 

 

ふと気が付くと

 

「楓、友達。いるじゃないの…ふふふ」

 

「いや、別にそんなんじゃ…」

 

「モッテモテだねえ、お姉さん」

 

フフフフフとしばらく舟の上で二人から弄られ

 

途中、水上販売のエスプレッソを二杯ほどぐぃっといただき

 

 

橙色の壁に囲まれた青い水路を右へ左へ、奥へ奥へと辿り着いたは

 

 

 

船着き場に降りると

 

 

 

     老舗服店『ミント』

 

 

 

 

 

「いらっ、しゃい」

 

 

 

のんびりとした口調のネコミミ、ネコしっぽ

 

 

 

マリンブルーのワンピースの落ち着いた雰囲気の。

 

金髪 碧眼 のんびりやネコ美少女が迎えてくれた

 

 

マルテッロさんの話では最近まで痴呆症だった(・・・) 転性 (TS)』男性だそうだ

 

 

ふぃっ?と首を傾げる様子に何かぐっとくるものがあるがここには衣服を買いに来たのだ

 

落ち着いた店構えだ

 

全体的にアンティークの落ち着いたカラメル色の棚に様々な色の衣服が飾られている

 

天井は高く、中央は吹き抜けフロアでそこからは四階まで高く続いている様子が見える

 

 

マルテッロさんに気が付いた店主?のネコ美少女は

 

「まる。ひさしぶり~…!」

 

ゆっくりと手を振った

 

 

「おうおう、あいかわらずのんびり屋だなあ。ルイは」

 

 

 

此方にも気が付いて手をひどくゆっくりと振った

 

 

「どうも、るい。です、よろしく~」

 

ぺこり、と一礼

 

 

『で。』と二の次を告げるマルテッロさん

 

 

 

「この大量の荷物は何だ?」

 

 

「布、いと、はり。ほとんど、ざいりょうの ぬの。」

 

 

「まったく、注文したは良いが夢中になりすぎたんだろう?また、息子に…」

 

 

三階フロアまでの吹き抜けに山のように積まれているダンボール

 

 

 

すると二階の階段から髪を乱雑に束ね、顔は前髪で見えないが

  シャツにベスト、パンツスーツのバーテン服姿の青年が現れた

 

うず高く積まれた荷物に気が付くとその時大きな声で

 

「じーちゃん!あれほど必要だったら助けを呼べって言ったよな!?」

 

吼えた。威嚇する猫のように。

 

 

 

「え、いや、だって~っ…! …うゥ~…」

 

 

ルイさん…涙目で上目使い…これは…

 

 

息子さんはすっと視線を逸らす。此処に居る誰とも目が合わず泳ぎまくっている…

 

「すみません、お見苦しい処を…えーっと、えーと」

 

「いえ、娘の服を身繕いに来たのだけれど…」

 

 

「あ、はい。少々お待ちください!」

 

息子さんは吹き抜けフロアから中央奥にあるレジに向かいその奥のドアへと入っていった

 

次に現れたのは

 

四つのピンでふんわりとした中央前髪以外前髪を留め

 

後ろの髪を上に向かいバレッタと呼ばれる髪留めでまとめている

 

これまたクロネコ美少女であった

 

 

 

残念ながらメガネは度が合っていないので見えないが

 

 

「それはどうしたの?エルちゃん」

 

 

「これですか?ライ()に教えてもらったんです!こうすればお客の顔を見なくても接客できるって!」

 

 

 

 

ここ居る全員が思った『ああ、可愛いけど。人見知りなんだナー』と

 

 

 

 

 

 

そこからは怒涛のお着替えタイムである。

 

更衣室の中でエルさんが持ってくる服の試着をルイさんに手伝ってもらっている

 

下着はまずは『男心レベル』が低いとされる水着から始まったが

 

 

「布」の面積を保っていないものや

 

 

派手でちょっとレースで透けてるようなもの。

 

 

そもそもビキニや競泳ものから入ろうよと思ったが

 

 

これ以降の服は『恥ずか死レベル』が下がった気がしたような……

 

 

そしてフリル生地の物やタイトスカート、チューブトップなんかも鏡に着ている姿を見ると

 

 

 

『こんな綺麗な娘、自分じゃないみたいだけど、何故だかやっぱり自分の様な気がする………』

 

 

 

動きに合わせて鏡の中の自身も動く、そんな自身の姿に何故か既視感を覚えるのだ

 

 

 

 

「これから、すきになっていけばいいよ」

 

 

 

 

 

 

後ろで服を畳む手を止めたルイさんは唐突にそんなことを言いだした

 

「みんな自分に素直に生きる何て無理だよ、歳を重ねる…

 いや、一日、一時間、一分でも自分は次へ更新しているもんだよ」

 

 

努力を怠らねば、ね?

 

 

と一転クールでニヒルに笑うルイさん

 

 

 

まさか、と言いかけたその時

 

「じーちゃん、反対に着せたりないよねー!」

 

 

 

ヒミツとばかりにひとさし指を当てたルイさんの唇はま、さ、か。と言っていた

 

 

「ねこだからわからない、にゃん、なんちゃって~…!」

 

 

「お客様~今開けますからね~」

 

 

ちょ、やめ

 

 

「ステキ!似合ってるじゃない!」

 

「ふっふ~ん、さっすが私の娘ね。」

 

 

 

やっぱり

 

 

 

 

 

 

 

ゴスロリは似合わない……

 

 

隣のぼんやりとしたルイさんは自慢げに胸を張っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上をお買い上げですね。量が多いのでお宅まで配送させていただきます」

 

いい買い物だったわ~などと

マルテッロさんと母さんはつやつや笑顔で眼鏡とエルさんを弄りつつ話し合っていた

 

 

「ごめんなさい」

ず~ん、と落ち込んだルイさん

 

「どうしたんですか?」

 

「わたし、ときどき きおくが飛んじゃうの」

 

へ?

 

「さっき着せ替えしてたことはおぼえているんだけど、なにをいっていたのか。なにをしていたのか」

 

ときどき、そのぶぶんが分からなくなるの

 

眉尻を下げて涙目で物凄く落ち込んでいる。

 

ボクは。ぽん、と肩に手を当てニッと笑うと

 

「大丈夫だよ。また来るからその時は。また話して、笑って。また会おう?」

 

暗くなり、彼女の眠たげな瞳が

 

秋の青空のようにゆるやかに晴れた

 

 

 

さて、夕方になってしまったがマルテッロさんにお礼を述べ、元の場所で別れると家の前には

 

 

「あら、ステキなお召し物ですわ!」

 

カエデさん!

 

 

 

彼女のこと、忘れてた…!

 

 

 




いつになるかですが見やすくするために後ほど編集を行います…


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ネコミミ少女店主、ルイのひなたぼっこ

老舗屋ミントの朝は早く、朝4時には駆け込みで

 

先ずは冷たい水で顔を洗い歯を磨く、姉妹たちの昼間のパブの飲食物の下ごしらえから

遅くまで洋裁作業でお昼ごろには起きるであろうルイちゃんのごはんの用意を行い

 

パブ二階裏側の居住スペースから

駆け込んでいく姉妹二人を二階の窓からルイはぼーっとした目で。されど、しっかり見送っていた

 

ふわあ、と長いキューティクルたっぷりのふわっとした

ブロンドの髪が、みみが、しっぽがのび(・・)と共に揺れ動いた

 

 

二、三。瞬きをするとルイは首を傾げた。はてさて

 

最後のフリル生地を仕立てたところで机にだらしなく寝ころび。身支度を整えた記憶がないのだ

 

ま、いいっか。と二度寝を敢行するも。「ルイちゃん、ごはんよ~。」と自身の妻であった女性が

 

同二階の居間から声がかかる。ふたたび首をかしげると戸があらかじめ少し開けられており

 

美味しい魚のにおいにルイは飼い猫のように しゅったたたぱっと寝巻からルームウェアに身支度を整えた

 

そのとき、無意識であるが壁に飾られた一枚の写真にふわり、と指先で触り、戸をぱたん、ゆっくりと閉めると

 

だれかがみていたら

その写真の中の猫の娘は二人の老夫婦と三人の子供のうちひとりは笑顔を増したように思えた

 

 

さてと、あさご飯をゆっくり噛んでたべたルイは

あれから うしの娘さんはあの体格だとまだのびしろがありそうだの、マルはまだ配達にこない、だの

 

じつにヒマそうに家々の連なる屋根の上からぼう~と空を見ていた

 

ネッルアクアシティ(水中街)に知り合いがいるので潜ってみるのも手だなと考えていたところで

青髪の少女が店に近づいているのを確認すると普段とは変わり

天窓からパルクール(効率的な移動動作)を用いて店内の吹き抜けへと飛び込むと階段の手すりを滑り、途中階の支柱でくるりと回り三階の高さから受付の前にねこの衝撃を和らげる能力を伴って

右手、片膝立ちの三点着地を行った。

 

 

すっくと立ちそのまま、受付隣の柱に備えてあるタイマーを二回くるりとまわし受付へと座り、

 

 

『いらっ、しゃい。ようこそ~ぅ、裁縫店ミントへ~』ひどくゆっくり接客をこなすのであった

 

 

少女は大変良い客であった、業務と趣味をこなすとちょうど三時ごろ

孫であったエルちゃんのくだものスムージーとクリームシューがおひるごはんだ

 

『CLOSE』といったん店をたたみ。ミント三階の左側ドアからエルアル姉妹のパブへと入る

階段でゆかねばまた、ジャンプして、ホネでもおったら大変よよよとなかれでもしたらいけないので

屋根はバレてると思うけど。と頭の片隅で考えている

 

そんな気も知らず、真っ黒にポイントで茶色が入ったパブに入ると昔馴染みであった

『まる』が配達に来ていた

 

面白い話(コイバナ)』で盛り上がったが次の配達に遅れるのでつづきはあとで話してくれるとのこと

 

あの子、今度来そうだな。ふたりに思いっきりドレス仕立ててあげようっ…!とふだんとは一変奮起するのは

別の話

 

妻はネッルアクア(水中街)に食料品を買いに行っていたらしい書置きが置かれていた

 

夜まえの空いたじかんだ、一人で食べるのも寂しいのでエルの前でかるく話しながらティータイムを過ごした

 

壁備え付けのテレビでは他の星でどの流行がどのメイクがなど情報バラエティを見ていたらもう暗くなってきた

 

 

私も水路と風行きを見る限り、大丈夫そうだと判断して、とても広いフロアに仕立てた服を配置していった

 

よるの8時には飾りつけも終わり、明日はすこしやすもう かと考えていた

 

夜11時には一家全員がそろい、おさかな入りトマトのパスタとクックベリーのパイをたべて

 

お酒を飲む気がしないので

自家製ブドウのかるいアルコール飲料をのみ。ふわふわうとうととしているとアルがベットへと運んでくれた

 

あけ放たれた夏のまどからは、湿り気のにおい。

 

 

 

あしたはあめになる。

 

かのじょのなかにきおくにない、ずぶに濡れたワンピースの少女のビジョンがうかんだ

 

 

 

かなしげなひょうじょうで

 

 

みせは…閉められないなとぼうっと思い浮かんでいた

 

そのまま、ルイはながいまつげのうつくしい碧眼をつむり、みみをよこにたおし、眠りこんでいった

 

 

 

 

 



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