ダークソウルif (コッコ)
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序章
逃亡騎士レヴァン


とある森、そこにはボロボロの外衣の下に鎧兜を身に付けた戦士らしき人物が横たわっていた。

その戦士は、目を覚ましたのか徐に起き上がって辺りを見渡す。

 

「ここは・・・何処だ・・・?私は逃げていた筈だが・・・」

 

戦士は不振に思っていると、草むらから何か音がして見てみると、そこには緑の肌で革の面をした化物がいた。

 

「グルル・・・」

 

「何だ、この化物は?」

 

戦士は明らかに化物に対して慣れているかの様な素振りで呟くと、化物は拳を振り上げて襲ってきた。

戦士は軽く避けると、相剣の北騎士の剣とカイトシールドを構える。

戦士はゆっくりと、回りながら隙を伺うと、化物はまた拳を振り上げて襲ってきたが、戦士は避けて一刀両断する。

化物は倒れ死ぬと、薄い光が戦士の元に行く。

 

「・・・また、私に使命を課そうと言うのか。もう、嫌なのだがな・・・」 

 

「きゃあぁぁぁぁぁッ!?」

 

戦士はそう呟いた時、遠くから悲鳴が聞こえた。

戦士は悲鳴の元に走って行くと、さっきの化物三体が髪を後ろに束ねた黒髪の女性を囲んでいる。

戦士は走って化物の一体に向かって北騎士の剣を振るう。

 

「グオォッ!?」

 

化物は呻き声を挙げて倒れた瞬間、他二体の化物も襲ってくる。

だが、長い事使命の為に戦い、化物慣れをした戦士には遊びにもならなかった。

化物は圧倒的な実力差で倒され、戦士は北騎士の剣を鞘にしまう。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

女性は頭を下げて礼を言う。

女性の腕の中では赤ん坊と思われる銀髪の子がすやすやと眠っているが、戦士は疑問に思った。

何故、一般の況してや赤ん坊を連れた女性が使命を帯びた不死の試練の場にいるのだろうと。

戦士は女性にこの世界については聞く事にした。

 

「すまないが、此所は何処だ?私はこの地に来たばかりで右も左も分からぬのだ・・・」

 

「?。此所は白夜王国と呼ばれる国の中ですよ」

 

「白夜王国?(新たな亡国か何かか?)」

 

「おーい!悲鳴が聞こえたが、誰かいるのか!?」

 

話している時に誰かが悲鳴を聞き付けたのか、走って来る。

走って来た人物は、東方の鎧に似た白い鎧で刀を腰に差している。

謂わば侍だ。

 

「大丈夫か!?」

 

「大丈夫です・・・この方が助けてくれましたから」

 

「そうか・・・良かった」

 

侍はそれを聞くと、安心した様に一息着く。

戦士はもう大丈夫だろうと、考え立ち去ろうとすると、侍に引き留められた。

 

「待ってくれ。貴殿に民を救ってくれた礼をしたい。是非、一緒に来てくれないか?」

 

「すまない・・・道を急いでいるんだ・・・」

 

「なら、名前だけでも聞いても言いか?また会えた時に礼をしたい」

 

「・・・レヴァンだ」

 

戦士こと、レヴァンはそう言うと、その場から去る。

これが後の、白夜王スメラギと白夜女王ミコトとの出会いの始まりだった。




名前 逃走騎士レヴァン

性別 男

レベル 100以上

容姿 お任せ

装備 逃亡騎士シリーズ

武器 右、北騎士の剣 左、カイトシールド

世界を二度も渡って使命を成した不死。
だが、三度目で心が折れ、使命から逃走する毎日を送る様になった。
たまに、別の世界に闇霊か白霊として現れる。


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はぐれデーモン

レヴァンは二人と別れた後、一人森の中を歩いていた。

道中、化物や盗賊の類と戦うが全く敵にならなかった。

 

「この世界は何なんだ・・・さっきの二人といい、人が正気でいる世界。こんなのは初めてだ・・・」

 

レヴァンは戸惑いつつ歩き続けていると、辺りが急に暗くなった。

レヴァンは空を見上げると、先程まで夕陽が輝いていたのに夜になっていた。

 

「夜か・・・」

 

レヴァンはその場に地べたに座り、うつ向いた状態で休む。

何れくらいか時間が経った後、レヴァンはいつの間にか眠っており、寝息を立てている。

 

「・・・」

 

レヴァンが寝ている時、回りを囲まれる気配を感じたレヴァンは、北騎士の剣を掴んで警戒する。

徐々に囲まれつつ、レヴァンはすぐに動ける様にしていると、気配の一人がやって来るのを感じた。

 

「誰だ?」

 

レヴァンがそう言うと、黒い鎧を着る若い騎士だ。

騎士には何処か威厳がある。

 

「驚かせてすまない。我々は暗夜王国軍の者だが、この辺りに見た事のない怪物が現れたと言う知らせがあってな・・・見てはいないか?」

 

「・・・いや、見てないな。そんな怪物がいるならすぐに気付くさ・・・」

 

レヴァンはそう言うと、騎士は宛が外れたとばかりに顔をしかめる。

 

「そうか・・・警戒させてすまなかった」

 

「いえ・・・」

 

騎士は馬に乗ると、多くの気配と供に消え、レヴァン一人が取り残された。

レヴァンはまた寝付こうとしたが、怪物と言う単語が離れず、嫌な予感しかしなかった。

 

「また、あの緑の奴じゃなければ良いが・・・ッ!?」

 

レヴァンは呟いた瞬間、何か振り下ろされる物を感じ、ローリングして避けた。

先程、レヴァンがいた場所には巨大な棍棒があり、棍棒を持つ者は醜い怪物だった。

 

「はぐれデーモン・・・!まさか、またこいつを戦う機会が来るとはな・・・」

 

レヴァンは先程の北騎士の剣を引き抜いて、カイトシールドを持って身構えた。

はぐれデーモンはまた巨大な棍棒を振るおうと、振り上げてくるが、レヴァンはその隙に後ろに回りこむ。

はぐれデーモンは棍棒を振り下ろすのを見計らって、レヴァンは北騎士の剣を連続で振るう。

 

大量の血が吹き荒れるが、はぐれデーモンは物ともせず、レヴァンの方を向いて少し飛ぶ。

レヴァンは素早く後ろに下がった瞬間、はぐれデーモンは飛ぶのを止めて落ちてきた。

 

はぐれデーモンとレヴァンの戦いは、激しさを増す。

 

___________

_______

___

 

その頃、怪物を探していた暗夜王国軍は戦いの爆音を察知していた。

 

「何だ、この音は?」

 

「先程、あの者がいた場所ですね・・・」

 

「・・・まさか。全軍、急いで戻るぞ!あの者が襲われているかもしれん!」

 

騎士は襲われているかもしれないレヴァンを助けに向かう為に馬を駆ける。

 

________________

__________

____

 

その頃、レヴァンははぐれデーモンを圧倒していた。

それもそうである。

レヴァンは北の不死院で、何度も死にながらはぐれデーモンの動きを看破している。

しかも、今のレヴァンは戦いの経験を持ち、今更はぐれデーモンに遅れを取りはしなかった。

 

「後、少しだな・・・」

 

レヴァンは、はぐれデーモンと決着を着ける為に、北騎士の剣を振るおうとした瞬間、多くの足跡が聞こえる。

 

「大丈夫か!?」

 

「ッ!?来るなぁ!!!」

 

レヴァンはさっきの軍だと分かり、すぐに止めようとしたが時既に遅く、はぐれデーモンは向かって行ってしまった。

 

「くそが!」

 

レヴァンは悪態をつきながら走って追い掛けると、そこにははぐれデーモンが巨大な棍棒を振るって軍を襲っていた。

あの騎士を筆頭に果敢に戦うも、はぐれデーモンは容赦なく襲う。

 

「ガロン様、早くお逃げください!この怪物は我々では手に終えません!」

 

「馬鹿者!私が此所で退けば、誰がお前達を守る!私は最後まで戦うぞ!」

 

騎士ことガロンはそう叫ぶと、黒い剣を手にはぐれデーモンに向かって行くと、斬り着ける。

相当に良い武器だったのか、はぐれデーモンは悶えて怯んだ。

だが、はぐれデーモンはすぐに立ち直ると、ガロンに向かって棍棒を振るう。

 

「ガロン様!!!」

 

「くッ!?」

 

ガロンは死を覚悟した。

この怪物の棍棒で、体がグチャグチャになるのを考え走馬灯が見える。

 

「(私は此所で死ぬのか・・・)」

 

ガロンはそう考えた瞬間、いきなり吹き飛ばされた。

ガロンは地面を転ぶと、吹き飛んだ方向を見た。

見た物は、はぐれデーモンの棍棒によって押し潰されたレヴァンだった。

 

「ッ!?そんな・・・私のせいで・・・」

 

ガロンはレヴァンが死んだと考えた。

普通の思考ならそう考えるだろうが、レヴァンは不死人。

死ぬ事を許されない呪われた存在であり、二つの世界の使命を果たした名も無き英雄だ。

 

そんな、レヴァンがはぐれデーモンの攻撃を受けただけで、死ぬ事はなく、すぐに立ち上がった。

レヴァンの立ち上がった姿に、ガロンを含め、軍全員が驚いた。

 

「はぁ・・・面倒な事をしてくれる物だ・・・この付けは後で払ってもらうぞ?」

 

レヴァンがそう言った時、はぐれデーモンは向かってくるが、レヴァンは北騎士の剣を振るう。

一線の元に切り裂いたレヴァン、はぐれデーモンは倒れ伏すと、消える。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、あぁ・・・助かった・・・」

 

レヴァンから差し出された手をガロンは取ると、引っ張られる様に立ち上がらされる。

 

「さっきの攻撃を平気そうに・・・お前は何者なんだ・・・」

 

「・・・レヴァンだ。訳あって放浪の身だ」

 

「・・・あまり触れて欲しくなさそうだな。私はガロン。暗夜王国の王子だ」

 



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暗夜王国

レヴァンは暗夜の王子ガロンに礼がしたいと連れられて歩いていた。

レヴァンはこの世界の状況を知るには、ガロンに着いて行った方が、妥当だと考え着いて行く事にし、歩く。

 

「それにしても、長い事歩いた筈なのに何故、夜のままなんだ?」

 

「この暗夜は、常に暗闇で覆われている。暗いが今は朝だろう」

 

「・・・常に夜の国か」

 

レヴァンはグヴィネヴィアの事を思い出した。

レヴァンはかつて、グヴィネヴィアの元に到達し、グヴィネヴィアを殺して王の器を奪った。

その時は心がやさぐれていたとレヴァンは思っている。

 

グヴィネヴィアを殺した時、辺りは全て夜になり、敵の配置も大きく変わってしまった。

まるで、アノール・ロンドが元から夜の世界であったかの様に。

 

「・・・」

 

「どうした?」

 

「・・・何でもない。少し、昔を思い出してな」

 

レヴァンはそう言って歩くと、徐々に明かりが見えてきた。

その光りの照らす場所は街であり、とても幻想的な光景だった。

 

「彼処は暗夜の街か?」

 

「あぁ、暗夜の王都だ」

 

「中々の光景だな」

 

「だが、あの光りは裕福な者達の光で、貧し者には手が入りにくいんだ・・・何とかしたい物だが」

 

ガロンはそう言いながら溜め息をついた。

裕福な者達にしか得られない光・・・。

レヴァンにとってはとても理解しがたいが、暗夜の暗闇を目の当たりにして納得もする。

レヴァンは王都に入ると、そこは光り溢れる街並みで人が溢れ返っている。

レヴァンはこんなに人を見たのは、本当に久しぶりの事で、呆然としてしまった。

 

「・・・」

 

「どうした?」

 

「いや、何でもない・・・」

 

「そうか・・・では、城に行こう。お前への礼があるしな」

 

_____________

________

____

 

レヴァンは暗夜の王城にガロンと共に入城すると、奥から金髪の少年がやって来た。

その少年はガロンと何処か似ており、レヴァンは首を傾げる。

 

「父上。お帰りなさいませ」

 

「うん、元気にしていたかマークス」

 

「(息子だったのか・・・)」

 

王子が子を持つのは珍しくはない、政略結婚等で結婚して子を成せば良いのだ。

それに、中年の王子もいた事も歴史書に書かれてもいた。

 

「父上。この御方は誰ですか?」

 

「この者は私の命の恩人だ。礼をしたくて私が招いた」

 

「初めまして。私はレヴァンと言う・・・よろしく」

 

ぎこちない挨拶をするレヴァンにマークスも挨拶しかえす。

 

「僕はマークスです」

 

幼いながらも、しっかりとした挨拶にレヴァンは関心していると、兵士の一人がやって来た。

 

「ガロン様。王がお呼びです。至急、来るようにとの事で」

 

「父上が?分かった、すぐに行く。レヴァン殿。すまないが客間で待っていてくれないか?すぐに戻ってくる」

 

「はい」

 

ガロンはそれを聞いて、急いで何処かに向かっていく。

一人残されたレヴァンの元に知らせに来た兵士が話しかけてきた。

 

「客間へは私が案内致します。どうぞ、此方へ」

 

「あぁ・・・」

 

レヴァンは兵士に連れられて客間へと向かうのだった。

 

________________

__________

_____

 

レヴァンは客間に通されると、椅子に座って待っていた。

ガロンはどうやら遅くなってしまっている様で、中々来なかった。

レヴァンはそれでも待っていると、部屋の外が騒がしくなった。

 

「・・・外が騒がしい」

 

レヴァンは扉を開けて見ると、騎士や兵士に使用人と騒がしく動いていた。

レヴァンは気になって使用人の一人に聞く。

 

「何があった?」

 

「王が・・・王がお亡くなりになられました!あぁ・・・早く他の重臣達にも知らせないと!」

 

使用人はそう言うと、走って行く。

話通り、この国の王が死んだのだと理解し、レヴァンは部屋の中に入りガロンを待った。

 

暫くした後、ガロンがやって来た。

だいぶ窶れており、今にも力無く倒れそうだ。

 

「・・・すまない。遅くなった」

 

「いや、それよりも大丈夫か?相当、参ってしまっているぞ?」

 

「・・・父上が亡くなってな。私が王として、暗夜王国を治める事になった。だが、私は父上の様に正しく治める事が出来るのだろうか・・・」

 

ガロンは王座を受け継ぐ自信が無さそうにレヴァンに言う。

レヴァンはガロンをかつての自分と重ね、言う。

 

「・・・やらなければならないだろ?」

 

レヴァンはガロンを咎める様に言う。

 

「やらなければ、この国の統治者がいなくなり。苦労の絶えない国になるのは必然。もし、貴殿が間違った道を進んだら・・・私が殺してでも止めてやる。だから、王座を引き継げ。他人のお前からすれば、口だけの言葉だがな・・・」

 

「・・・いや。今の言葉で、目が覚めた・・・民の為にも、私が王にならなければな・・・」

 

ガロンは立ち上がり、決意を露にした目をする。

 

「すまないが礼は後で渡させて貰う。今は、王家の臣下達を落ち着かせなければならない」

 

「分かった」

 

ガロンはまた何処かへ行ってしまい、レヴァンは一人で、客間で過ごした。

 



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客将

前暗夜王の葬儀は終わり、ガロンは臣下やマークスに見守られながら即位した。

ガロンは前王に比毛を取らない威厳と実力を持って、国を期待で満たした。

 

「おめでとう。ガロン殿いや、ガロン王殿と呼べば良いか?」

 

「それでも良いぞ。お前は私の友人だからな」

 

レヴァンは久しぶりに笑った気がした。

多くの旅の中で、笑う事すら忘れてしまっていた自分がである。

 

「レヴァン。お前に頼みがある」

 

「何だ?」

 

「私の臣下にならないか?」

 

ガロンの言葉にレヴァンは黙っている。

ガロンは、続けてレヴァンを勧誘する。

 

「お前の実力は本物だ。あの怪物を倒してみせる腕を外野に置いておくのは勿体無い。どうだ?」

 

「・・・申し訳ないが、断らせて貰う」

 

「何故だ?」

 

「・・・私はただの放浪者。そんな私がいきなり王の臣下になったら、不満を持つ者は必ず現れる。私一人のせいで国に亀裂を入る訳にはいかん」

 

レヴァンの言葉にガロンは、考え込む様に目を閉じて眉間を寄せている。

暫く沈黙が続いたが、ガロンは何か思い付いたのか、目を開いた。

 

「では、客将ならどうだ?」

 

「客将?」

 

「そうだ。客将なら正式な臣下ではない。それなら誰も文句は言わないだろう」

 

レヴァンは考えた。

この世界の事はまだ把握しきれておらず、無闇に出歩くのは期限だと、レヴァンは考える。

それに、不死の呪いが蔓延る三つの世界とは違って、この世界は不死の呪いが無く、正常な人々が多くいる世界。

 

レヴァンの今までの認識では、何処で足を取られるか分からない。

 

「・・・分かった」

 

「そうか!なら、客将としてよろしく頼む。レヴァン」

 

「あぁ・・・」

 

_____________

________

____

 

数日後、暗夜王国は落ち着きを取り戻しつつあった。

前王の死は、国中に伝わると同時にガロンの即位も伝わった。

ガロンへの期待や不安で包まれた暗夜王国をガロンはまず、貧しい者に光りを与えた。

この与えられた光りで何れだけの人々が希望を見いだしたか分からないが、ガロンはこれだけで貧困層の指示を得た。

 

レヴァンも暗夜王国の客将として、緑の化物ノスフェラトゥの討伐を任せられていた。

民を襲うノスフェラトゥを倒し、はぐれデーモンを倒している事も助け、瞬く間に名が広がる。

 

"怪物殺しのレヴァン"

 

それが、今のレヴァンの異名となり暗夜の賊だけでなく、近隣諸国も恐れさせた。

そんなレヴァンは現在、マークスに剣を教えていた。

レヴァンの今の装備は訓練用に貸し出された青銅の剣だけだがやはり、得物を変えただけで強さは変わらない。

 

「やぁ!」

 

「打ち込み甘い。もっと早く、腕で振らず体で振るえ」

 

マークスに厳しく剣を教えるレヴァン。

だが、マークスは折れずに向かってくる。

レヴァンはそんなマークスに関心を抱きながら剣を教える。

 

「(前より腕が上がっているな・・・なら、そろそろ難しい技を教えても良いだろう・・・)」

 

レヴァンはマークスを前に来させると、青銅の剣だけでなくカイトシールドを持っていた。

 

「マークス様。貴方にパリィと言う技を教えます」

 

「パリィとは何だ?」

 

「聞くより実際に見た方が良いでしょう・・・来てください」

 

レヴァンはそう言うと、マークスは飛び掛かる。

レヴァンはマークスの動きを見切ると、カイトシールドを横に振るう。

 

「うわぁ!」

 

マークスの剣はカイトシールドに弾かれ、マークスは大きく体勢を崩した。

その隙を突く様に、レヴァンは突く動作をすると差止めする。

 

「これがパリィです。敵の攻撃を弾き、隙を作る・・・剣と盾を使いこなす者が好んで使った技です」

 

「だが、それだと攻撃を受けるリスクがあるのでは?」

 

「はい・・・パリィの欠点はタイミングを合わせなければ成功しないのです。下手にパリィをすれば、大打撃を被る可能性もあります。しかし、専用の盾や武器さえあれば容易ですがね」

 

レヴァンはそう言うと、バックラーとパリングダガーを取り出して見せる。

 

「成る程、小型の武器や盾にはパリィに特化された武器や盾もあるのか・・・」

 

「はい・・・しかし、此方にもパリィされる事もあるので、気を付けてください」

 

「分かった」

 

マークスの言葉に、レヴァンは兜越しで笑う。

この時間が長く続けばとレヴァンは考えていた。

だが、運命はレヴァンに残酷な仕打ちをしようと、手を伸ばし始めていた。



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突然の別れ

数年後、レヴァンはノスフェラトゥ狩りをしていた。

相手は五十以上はいるにも関わらず、レヴァンは何時もの北騎士の剣ではなく、バスタードソードを使っていた。

 

射程、威力共に使いやすい大剣であり、多くの敵を凪ぎ払うには丁度良い武器だ。

 

「ふん!」

 

「グオォ!?」

 

レヴァンの斬撃は止まる事なく、遂にノスフェラトゥを一人で全滅させた。

 

「ふぅ・・・終わったか・・・」

 

何時通りの仕事だった。

レヴァンは帰還しようとした時、脳内にメッセージが響いた。

 

~闇霊×××が浸入しました~

 

「ッ!?」

 

レヴァンは身構えると、そこには全身が血の様に赤い闇霊がいた。

姿は上級騎士だが、グレートソードを持っている。

闇霊はレヴァンを見つけると、グレートソードを両手に持って突っ込んできた。

 

「この世界は闇霊も現れるのか!」

 

レヴァンはバスタードソードとカイトシールドを構えた。

闇霊は走るのと同時に、グレートソードを振り上げて振るう。

レヴァンは吹き飛ばされ掛けたが何とか持ちこたえ、バスタードソードを闇霊に振るう。

 

闇霊はグレートソードで防ぐと、縦にグレートソードを振りかぶってくるも、レヴァンはカイトシールドでパリィをした。

 

「止めだ」

 

レヴァンは相手に大きな隙を突いて、闇霊の腹を勢いよく突き立てて蹴飛ばした。

闇霊はそのまま倒れると、消えた。

 

「・・・まだいるな」

 

レヴァンはそう呟いた瞬間、色々な姿と武器を持った闇霊が続々と現れた。

 

「どうやら、私のソウルに引かれて来た様だな・・・良いだろう、相手をしてやる・・・来い!」

 

レヴァンがそう叫んだ瞬間、闇霊が一斉に襲い掛かってくる。

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__________

_____

 

「一体、何処まで行ったんだ?」

 

ガロンは何時間経っても帰らないレヴァンを探しに護衛の兵を連れてやって来た。

ガロンはレヴァンを探していると、辺りが崩壊した場所を発見した。

 

「何だ・・・これは・・・?」

 

「・・・ガロン・・・王、殿・・・か?」

 

ガロンは声の聞こえた方向を見ると、腕は切れ、手に持っている刃の折れたバスタードソード、そして血だらけのレヴァンの姿だった。

 

「レヴァン!!!」

 

ガロンは慌てて駆けつけレヴァンの元に駆け寄った。

 

「一体、何があった!」

 

「・・・私にとっての・・・厄介者、が来た・・・。ガロン、王殿・・・別れの・・・時、だ・・・」

 

「しっかりしろ!おい、衛生兵はいないのか!?」

 

「無駄だ・・・もう、手遅れだ・・・最後、に・・・これ、を・・・」

 

レヴァンは残された片手を使って、ある物を取り出した。

それは、レヴァンの愛剣である北騎士の剣だった。

レヴァンは鞘に入れた常態でガロンに北騎士の剣を渡した。

 

「・・・その剣を、渡そう・・・それで・・・別れ・・・」

 

レヴァンはそう言うと、ゆっくりと消えていった。

ガロンは突然、消えたレヴァンに辺りを見渡して探すが、見つからない。

 

「レヴァン・・・レヴァン!!!」

 

ガロンは大切な友との別れを悲しむ。

だが、同時にレヴァンは死んではいないと言う考えがあって、レヴァンは他の国へ旅だったと伝えられる事となった。

レヴァンの残した北騎士の剣は、暗夜王家の秘蔵の剣として安置され、王に認められた者が扱える事となる。

 

だが、北騎士の剣は誰も扱う事は出来なかった。

何故ならレヴァンに匹敵できる実力の者は現れる事はなかったからだった。

 

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______

 

レヴァンは目を覚ました。

不死でいる以上は、この世界でも生き返ると分かっていたのだ。

何故、ガロンと別れる事にしたのかは、闇霊に原因があった。

 

闇霊は神出鬼没で、何時、何処で現れ戦う事になるのか分からなかった。

しかも、中にはとてつもない豪傑もおり、ガロンやマークスがいる内に襲われたりしたらと考えたのだ。

 

「・・・寂しい別れだが・・・その前に・・・此所は何処だ?」

 

レヴァンの回りには白い雪に覆われた大地だった。

 



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氷の部族との出会い

お知らせです。

Darksideの方が非常に難産になっており、更新が遅れます。
楽しみにして頂いておられる読者様にご迷惑をおかけしますm(_ _)m


レヴァンは凍えそうな風の中、歩いていた。

錆びた指輪を填めて足場の悪さを克服し、雪の大地からの脱出を目指していた。

何れくらい歩いたか分からないが、もう太陽が昇っても良い頃合いなのに昇らないと言う事は、暗夜王国内にいるのだとレヴァンは考えた。

 

「意外と寒い物だ・・・この辺りに集落は無い物か・・・」

 

レヴァンは途方に暮れながら歩き続けていると、明かりがちらほらと見えた。

 

「集落、か・・・?とにかく行ってみよう・・・」

 

レヴァンは歩きだそうとした時、足下に矢が突き刺さった。

レヴァンは北騎士の剣の代わりに炎ロングソードとカイトシールドを構えた。

 

「そこを動くな!」

 

声が聞こえると同時に、小数の武装した兵士に囲まれた。

数人が弓を構えて警戒している。

 

「貴様・・・何者だ。暗夜の者でもなさそうだな?」

 

「私は・・・ただの旅人だ。この辺りを旅していたのだが、道を見失ってしまったんだ。すまないが何処か休める場所をくれないか?」

 

「部族の掟により、村へ余所者を入れる訳にはいかん。早々に帰れ!」

 

兵士がそう言うと、レヴァンは集落もとい村へ行く事を諦めた。

 

「なら、せめて道を教えてくれないか?」

 

「いいから、帰れ!」

 

レヴァンは道すら教えてくれないのかと思い、とにかく離れようした時、後ろから声が掛かった。

 

「待て旅人よ。・・・一晩だけなら休んで行っても良いぞ」

 

「クーリア様!この者は余所者ですぞ!」

 

「だが、この者を道も知らずに行かせてしまっては凍え死ぬのは明白・・・万が一の責任は私が取る」

 

「・・・分かりました」

 

村の長と思われるクーリアの説得を受けて、兵士達は村に戻って行く。

 

「すまないな。この村を守る為に余所者を入れない様になっているんだ」

 

「いや、お陰で助かった。こんな雪の中を歩き続けたくはなかったからな・・・」

 

「そうか・・・では、着いてきてくれ」

 

クーリアはそう言うと、歩いて行きレヴァンも着いていく。

村に入ると、レヴァンを警戒する様に見てくる村人。

レヴァンは居心地の悪さを耐えながらクーリアに着いて行くと、大きな屋敷に着いた。

 

「此所だ」

 

クーリアはそう言うと、扉を開けて入る。

 

「ただいま」

 

「お帰りなさいお父さん!」

 

「お帰りなさい父さん」

 

クーリアの元に二人の少女がやって来る。

茶髪の少女はクーリアに抱きつき、水色の少女は側まできた。

茶髪の少女はレヴァンに気づいたのか、戸惑いながらクーリアに聞く。

 

「お父さん。その人、誰?」

 

「あぁ、一晩泊める事になった・・・名前は?」

 

「レヴァンだ」

 

「何・・・!あの、怪物殺しの?」

 

クーリアはレヴァンの名を知っている様だった。

クーリアは不安そうにレヴァンに聞いてくる。

 

「まさか、この辺りに怪異がいるのか?」

 

「いや、私は客将を止めて旅をしていた。その時に、迷い混んでな・・・」

 

「そうですか・・・良かった・・・」

 

クーリアは安心する様に安堵した。

少女二人は首を傾げてキョトンとしており、レヴァンは二人の様子に可愛らしさを感じた。

 

「まぁ、ともかく・・・部屋の用意してきますね」

 

クーリアは屋敷の何処かへ行くと、レヴァンと少女二人が残された。

レヴァンは黙って待っている。

 

「・・・」

 

「あ、あの・・・!」

 

「何だ?」

 

「わ、私、フェリシアと言います!あ、あの・・・怪物殺しのレヴァンですよね!?」

 

「フェリシア・・・!」

 

フェリシアと名乗った少女を水色の少女が咎める。

 

「そうだが?」

 

「そうなんですね!私、大ファンなんです!」

 

フェリシアはそう言うと、何処からか本を持ってきて見せてくる。

本のタイトルは怪物殺しレヴァンと言う、タイトルだ。

レヴァンはいつの間にこんな本が出回っているのかと、疑問に思った。

 

「わ、私!この本の貴方のお話が好きなんです!それで」

 

フェリシアの熱弁は続いていき、水色の少女も溜め息をついている。

レヴァンは熱弁するフェリシアに兜越しで苦笑いしつつも、話を最後まで聞いた。

 

「そうか・・・ここまで言われると、恥ずかしくなるな・・・」

 

「えへへ・・・」

 

レヴァンはフェリシアの頭を撫でながら言うと、嬉しそうにフェリシアは笑う。

 

「レヴァン殿。部屋の用意が整いましたのでご案内させて貰います」

 

「すまない。では、部屋へ・・・」

 

レヴァンは部屋へ行こうとした時、レヴァンは足に誰かに抱き付かれた感覚を感じ、下を見るとフェリシアが足に力強く抱き付いている。

 

「フェリシア?」

 

「嫌です、行っちゃ嫌です!」

 

「離れなさいフェリシア!」

 

水色の少女がフェリシアを引き離そうと掴むが、フェリシアは離れない。

クーリアも手伝うが、フェリシアは宙吊りになっても離れない。

 

「フェリシア・・・!離れなさい・・・!」

 

「嫌ですーーー!」

 

「すみませんレヴァン殿・・・」

 

クーリアはレヴァンに申し訳なさそうに頭を下げて謝る。

 

「はっはっはっは!いえ、大丈夫です。フェリシア、一緒に行くか?」

 

「はい!」

 

レヴァンはフェリシアを持ち上げると、クーリアに案内されながら部屋へと向かっていく。

 



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昔話

レヴァンは宛がわれた部屋でフェリシアを寝かし着けていた。

レヴァンは寝る事はあるが、別に寝る必要はないので椅子に座ってフェリシアの頭を撫でている。

最初はクーリアもフェリシアを咎めたが、レヴァンは構わないと言ってこの状況なのだ。

 

「レヴァン様。貴方のお話を聞かせてください」

 

「話?」

 

「はい!レヴァン様の活躍を聞いてみたいです!」

 

フェリシアの言葉にレヴァンは苦笑いしつつも、何を話そうか考える。

レヴァンは暫く考えた後、一つだけ思い出した。

 

「では、異形の姉妹の事を話そうか」

 

「異形の姉妹?」

 

「あぁ・・・かつて、私は遠い国の地下にある病み村を進んでいた。病み村は、とても暗く猛毒の矢を無数に放つ敵や大量に向かってくる亡者と呼ばれる人でありながら、人ではなくなった者達が多数いた」

 

レヴァンは病み村の事を初めに言うと、次にグラーグの話をする。

 

レヴァンはグラーグを最初に見た時、美しくもとても恐ろしく感じ、グラーグ自身も襲い掛かってきた。

グラーグの剣は火を吹き、グラーグが乗る蜘蛛は溶岩を吐いた。

炎に強い防具と盾が無ければ負けており、戦いは長期戦になった。

 

だが、遂にレヴァンがグラーグを下した。

その時のグラーグの瞳は・・・とても悲しそうだった。

グラーグは消え去り、レヴァンは疑問に思いながら突き進むと、奥に卵背負いと言う者がいて、新たな従者かと、問われた。

 

レヴァン自身は、咄嗟に嘘を突いて従者だと言い、悪態を突かれながらも通された。

レヴァンが見た者は、グラーグとは別の異形・・・混沌の娘がいた。

だが、混沌の娘はグラーグとは違い、何処か優しさを感じ、話し掛けてみたが無言だった。

 

後で従者から聞いた話によると、混沌の娘の娘グラーグは妹の混沌の娘の為に人間性と呼ばれる物を集めていた。

 

レヴァンは酷く後悔した。

 

彼方から襲い掛かってきたとは言え、妹の為に人間性を集めていたグラーグを殺してしまった。

その後、レヴァンは混沌の契約を交わし、代わりに自身の人間性を与えて混沌の娘を救った。

 

「これが、異形の姉妹の話だ・・・」

 

「・・・悲しいお話です・・・グスッ・・・」

 

「あぁ・・・私も、ただ異形だからと、無闇に戦うのは止めた・・・さぁ、もう遅い。早く寝なさい」

 

「でも、レヴァン様は何処で寝るのですか?」

 

「私は後で寝るから・・・気にしなくても良い・・・」

 

レヴァンはフェリシアを安心させる様に撫でると、落ち着いたのか寝息を立てて眠っている。

 

「・・・私は人ならざる者だが、人なら・・・こんな風に幸せを得られただろうか?考えてもしょうがないが・・・」

 

レヴァンはそう呟くと、部屋を出た時、クーリアが慌てた様子でやって来た。

 

「レヴァン殿!客人である貴方に頼みたい事があるります!」

 

「どうしました?」

 

「怪異が・・・怪異が現れたのです!我々は立ち向かったのですが、敵わず・・・どうか、村を救ってください・・・!」

 

クーリアに頭を下げられ頼み込まれる。

レヴァンはクーリアの肩に手を置くと、クーリアは頭を挙げた。

 

「分かった。場所は何処だ?」

 

「此方です!」

 

クーリアに案内されて、レヴァンは走って行く。

 

_________________

__________

_____

 

レヴァンがそこへ向かうと、村人や兵士達が傷付いて倒れていたり、手当てされていたりしていた。

 

「怪異は何処へ?」

 

「恐らく、村の外かと・・・」

 

「分かった」

 

「待ってください!怪異は氷を操ります!対策もなく戦うおつもりですか・・・」

 

「・・・一宿一飯の恩。見ず知らずの私を受け入れてくれたクーリア殿の為に・・・怪異を葬るだけです・・・」

 

レヴァンはそう言うと、村の門へ向かって行くと、霧に包まれて閉じられていた。

レヴァンは見た事があった。

それは、常に強敵がいる所には霧が掛かっており、通ると戦いになるのだ。

 

「・・・やるか」

 

レヴァンはそう呟くと、霧に入って行く。

霧を通り抜けた時、目の前には大きく細い体型で、青い剣と盾を構え、全身を鎧で纏った異形がいた。

 

「・・・見た事ないな。新手か?」

 

「グオォォォォォ!」

 

異形は剣を振り下ろすと、氷が真っ直ぐにレヴァンに向かってきて、レヴァンは避けた。

 

「成る程な・・・この異形は、デーモンの類い・・・名を付けるとしたら、氷結デーモンと、言った所か?」

 

「グオォォォォォ!」

 

異形こと氷結デーモンとレヴァンの戦いが幕を挙げた。

互いの強い力がぶつかる。



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氷結デーモン

レヴァンは身構えると、氷結デーモンは走ってきて剣を振るってくる。

 

攻撃方法は殆んど熔鉄デーモンと同じだが時々、強力な攻撃や鋭い氷を回りに出現させたり、巨大な氷の柱を突如、突き出してきたりする。

だが、レヴァンも負けずと、氷結デーモンが接近してきたら炎のロングソードで、近づけず遠くにいる時はロングボウと炎の矢で応戦する。

 

レヴァンが隙を突いて、後ろに回り込みつつ少しずつ攻撃していき、相手の体力を削り落としていく。

 

_____________

________

____ 

 

村内では、外から響く戦いの音に不安を抱くクーリアと住民達がいた。

氷結デーモンの攻撃である、氷の柱が村内で見えると、村人に動揺の声が走る。

 

「クーリア様。本当にあの余所者はあの怪異に勝てるのですか・・・?」

 

「・・・怪物殺しの異名を信じるしかない」

 

「クーリア様!」

 

不安の中、クーリアの使用人が走ってきて来た。

 

「フローラ様が・・・!フローラ様がいません!」

 

「何だと!?・・・まさか」

 

クーリアは嫌な予感を抱きながら、戦いが行われている村の外を見る。

 

______________

_________

____

 

「ちッ・・・思った以上に氷の攻撃が効くな・・・」

 

レヴァンはエスト瓶を飲みながら悪態をつく。

氷結デーモンは不死の世界では見られなかった氷属性を放ち、レヴァンに襲い掛かってくる。

何の耐性もないレヴァンには、とても辛い戦いだった。

 

「・・・ん、あれは・・・クーリア殿の・・・」

 

レヴァンは戦いの場にあの水色の少女を見つけた。

少女は岩に隠れ、ガタガタと震えており、今にも泣き出しそうになっている。

 

「不味い・・・氷結デーモンが気づく前に何とかしなければ・・・」

 

レヴァン身構えた時、氷結デーモンは向かって来ようとしたが、何を思ったのか氷結デーモンは少女の方へ振り向いた。

 

「ひぃッ!」

 

「グオォォォォォ!」

 

「逃げろ!!!」

 

氷結デーモンが少女の存在を知ると、真っ直ぐに少女へ向かっていく。

少女は逃げるが、突然少女の前に氷の柱が現れて阻む。

氷結デーモンは追い付くと、少女に無慈悲に剣を振り上げた。

 

「父さん・・・!」

 

少女はそう言うと、氷結デーモンは剣を振り下ろした。

少女は死を覚悟して目を瞑っていたが、何時まで経っても痛くなく、様子を見る為に目を開けた。

そこには、咄嗟に出した巨人の盾を両手に持って防ぐレヴァンの姿があった。

 

「怪我はないか?」

 

「は、はい・・・」

 

少女の言葉を聞いたレヴァンは安心した様に頷くと、氷結デーモンと向き合う。

 

「氷結デーモンを倒すまでは出られない・・・だから」

 

レヴァンはそう言い掛けると、巨人の盾をしまって少女を抱き抱えた。

 

「しっかり掴まってろ。振り落とされたら死ぬと思えよ?」

 

「はい!」

 

レヴァンは右に炎のロングソード、左に少女となり、戦いずらくなった。

氷結デーモンはお構いなしに突っ込んできて、レヴァンへ攻撃してくる。

レヴァンはローリングが出来なくなったが、華麗なステップで避けていき、氷結デーモンを攻撃していく。

 

レヴァンが何度か攻撃すると、氷結デーモンは怯んだ。

 

「(今だ・・・!)」

 

レヴァンはそう思うと、炎のロングソードを連続で叩き込む。

レヴァンは体力が続く限りに振るい、氷結デーモンがまた攻撃して来ようとしたが、レヴァンが強攻撃を一撃当てた瞬間、氷結デーモンは攻撃を停止してゆっくりと倒れていく。

 

「グオォォォォォ・・・!」

 

氷結デーモンは倒れると消えていき、レヴァンの元にソウルが集まる。

 

【氷結デーモンのソウル】

 

レヴァンの頭にそれが過ると、完全に倒したと判断して少女を下ろした。

 

「・・・それで。何故、あんな所にいた?」

 

「・・・」

 

「黙っていたら分からんぞ?」

 

「・・・ごめんなさい。私、フェリシアが羨ましく思って・・・それで、村の外で落ち着くまで妬んでいました・・・」

 

「それは・・・お前も俺のファンなのか?」

 

レヴァンは問うと、少女は頷いた。

  

「・・・そうか。だが、お前は妹に自慢できるぞ」

 

「え?」

 

「お前は私の戦いを間近で見れた。それは、本では体感出来ない事だ。危なかったが、それでも、中々味わえない経験になったのは間違いない」

 

レヴァンはそう言うと、少女の頭を撫でた。

少女は顔を紅く染めながら嬉しそうに微笑む。

 

「さて・・・戻る、ん?」

 

レヴァンは戻ろうとした時、地面に何か落ちている物を見つけた。

レヴァンは近づいて拾ってみると、それは氷結デーモンの使っていた剣だった。

 

【氷結の剣】

 

頭に名前が過ると、レヴァンは少し振るってみる。

普通に振るうと、氷結の剣は何の反応もないが、両手に持って振り下ろすと氷が一直線に伸びた。

 

「す、凄い・・・」

 

「あぁ・・・まさかの良い拾い物だ。さぁ、戻ろう」

 

レヴァンは少女の手を引きながら歩いて行く。

 

「そう言えば、お前は何と言う名前だ?」

 

「フローラ・・・フローラと言います・・・」

 

フローラは名乗ると顔を少し紅くしている。

レヴァンは風を引いているのかと考え、少し足を早めるのだった。




【氷結デーモンのソウル】

この世界に名も無きデーモンが迷い混み、豪雪の中で氷を操るデーモンへと変異した。
この世界ではイレギュラーである、不死人による影響なのだろうか。

【氷結の剣】

氷結デーモンから取れた氷を操れる剣。
とても凍てつく剣であり、並みの者が使えば心までも凍りつく。


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新たな旅

翌朝、レヴァンはフェリシアもフローラも起きていない明け方に出る事にした。

レヴァンは悲しませない様にとの配慮でもある。

 

「村を救って頂いたのにもう、お行きのですか?」

 

「あぁ・・・私はもう少し旅をしておきたくてね。フェリシアとフローラに黙って行ってしまった事を代わりに詫びといてくれませんか?」

 

「分かりました。この先を真っ直ぐに進めば道が現れる筈です。その道が見えればもう迷いません」

 

クーリアの指差す方向をレヴァンは見て、再びクーリアに向いて頭を下げた。

 

「ありがとう。では、また何処かで会いましょう・・・」

 

レヴァンはそう言うと、雪の広がる大地を真っ直ぐに進んでいく。

 

「・・・本当に不思議な人ですよね。あれだけ強いのに、どの国にも仕えないなんて・・・」

 

「何か訳でもあるのだろう・・・そうでなければ、常に逃げるような面影を見せたりしない・・・」

 

________________

__________

_____

 

レヴァンは真っ直ぐに突き進むと、道が見えたのを確認し、道の上に立った。

レヴァンは道を進んで旅に出る前に、クーリアから貰った地図を頼りに歩いて行く。

 

「ふむ、この先を進めば幾つかの中間を抜けると、シュヴァリエと呼ばれる街へ行くのか・・・」

 

レヴァンはそう呟きながら地図をしまうと、歩きだす。

ひたすら歩いて目指し、雪も見えなくなった土地まで来ると、異変を感知した。

 

【闇霊 人喰いミルドレッドが侵入しました】

 

レヴァンは非常に身震いした。

 

人喰いミルドレッド。

かつて、病み村で遭遇した闇霊だった。

ほぼ全裸だが、巨大な包丁で襲い掛かってきて、何とか倒しクラーグ戦を手助けした謎の女。

だが、レヴァンにとってはとてもトラウマな女である・・・何故なら。

 

「レヴァちゃーーーん!」

 

「来るな、近寄るな!ミルドレッドーーーー!!!」

 

何故かストーカー化しているのである。

 

「もう、中々見つけられなかったから心配したよ!」

 

「抱き付くな!気色悪い!!!」

 

「もう、そんなに私の事を惚れてるのね~」

 

「(は、話を聞いていない・・・)」

 

レヴァンは最初の世界からずっと、ストーカーしてきては何処だろうと現れてくるのだ。

闇霊なので倒せば済むが、すぐに戻ってくるので滅多な事では生者には戻らなかった。

ミルドレッドは何回も侵入しては、別の意味でレヴァンを襲ってくるのでトラウマになった。

 

「離せ、ミルドレッド!」

 

「離さないよ!今度こそ私の物にしてやるから!」

 

「ちくしょーーー!!!」

 

レヴァンは堪らず慌てて出した盗賊の短刀で連続で突き刺す。

流石のミルドレッドも痛みで放れるが、笑っている。

 

「もう、意地悪~。ふふふ」

 

「はぁ・・・はぁ・・・。一体、どうやって此所へ来た?」

 

「あぁ・・・それがねぇ・・・私も分からないけど、何故か飛ばされたのよね。生身ごと」

 

「な、生身・・・まさか」

 

「そう、今度は霊体だけじゃないわよ・・・」

 

ミルドレッドの言葉にレヴァンは非常に寒気を感じた。

ストーカーのミルドレッドが霊体ではなく、本体で来るとは思わなかった。

 

「それに、他にも来てたわね?太陽の戦士やら火防女やら・・・」

 

「待て!それはつまり、他の奴等も来ているのか?」

 

「多分ね・・・この先を行って左の道に行くと森があるから、そこを進んで行くと、貴方にとって始まりの場所へ行けるわよ」

 

ミルドレッドはそう言うと、自ら姿を消した。

レヴァンはミルドレッドの言葉が気になり進んでみると、確かに左に道があり、森がある。

 

「・・・行ってみなければ分からないか」

 

レヴァンは左へ進み、森へと足を踏み入れる。



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森の中へ

レヴァンは森の荒れた道を進んでいた。

枝や草の踏まれる音が響きながら突き進むと、横から斧が振り下ろされレヴァンはローリングして避ける。

 

「ッ!?亡者!」

 

「・・・」

 

レヴァンはこの世界では見る事のなかった亡者に動揺を隠しきれなかった。

亡者は斧を振り上げてレヴァンを襲うが、レヴァンは避けて炎のロングソードで切り裂いた。

 

「・・・まさか、亡者まで現れるとはな・・・」

 

レヴァンは亡者に警戒しながら森を進む。

何度か亡者と戦っていると、分かれ道が現れた。

 

「どっちだ・・・ん?」

 

レヴァンは下にメッセージの書かれたサインを見つけた。

左の内容は間違いと書かれ、右は正解と書かれていた。

普通の神経ならサインを信じて進むが、不死の世界では極希に罠があるのにサインしてたぶらかす様な内容もある。

 

「・・・さて、行くか」

 

レヴァンは右を選んだ。

右の道を進んでいると、森が開けて分かれ道の最後が見える。

左の道には、首なしデーモンが二体も待ち受けてそれ以外何もない。

 

「ふぅ・・・首なしデーモンを相手にするのはごめんだ」

 

 

レヴァンは少し身震いして更に先に進む。

長い森がレヴァンを阻むが、レヴァンは迷いなく進んで森を抜けると、そこには信じられない物があった。

それは、火継ぎの祭祀城その物だった。

 

「そんな、馬鹿な・・・」

 

レヴァンにとっては不死としての使命を帯び、全てを始めた場所。

レヴァンは戸惑いながら歩くと、見慣れたフード姿をした人物がいる。

それは、火防女と呼ばれる者が着る服だ。

 

「・・・そこの人」

 

「あら、随分と早かったですね?」

 

火防女と思しき人物は振り替えると、微笑みを浮かべている。

だが、その微笑みは何処か狂っている様にも見える。

 

「お前は・・・火防女か?初めて見る顔だが・・・」

 

「申し遅れましたね。私は火防女のルティア・・・この世界での、火防女です」

 

「・・・なら、最初に聞きたい。ここは何処だ?何故も、デーモンも、亡者すら関係なく存在する?」

 

「随分と質問が多いですね・・・この世界は簡単に言うと、不死の世界ではありません。この世界では不死の呪いは無いのはご存知ですね?」

 

ルティアの言葉にレヴァンはうなづくと、ルティアは話しを続ける。

 

「この世界では、まだ先の事になりますが暗夜と白夜が戦争をする世界です」

 

「何だと!?」

 

レヴァンは驚愕した。

親しい者が多くいる暗夜と最初にいた国、白夜が戦争をする。

レヴァンは固まってしまった。

 

「まぁ・・・これだけは避けられませんが・・・重要なのはその先、一人の少女の決断です」

 

「一人の少女?」

 

「はい。少女の選択で全てが決まります。暗夜が負ける未来・・・白夜が負ける未来・・・あるいは・・・。幾つもの可能性が彼女を苦しめ、絶望へ突き落される試練の数々・・・それが少女に課せられた使命であり、運命です」

 

「・・・私に、何をさせるつもりだ?」

 

「簡単です。少女を導くか、破滅させてください。どちらかを達成すれば・・・不死から永遠に開放させられます」

 

「ッ!?」

 

レヴァンの長年の夢、不死からの開放。

レヴァンにとっては、もう了承を決定する条件だった。

 

「どうします?」

 

「・・・分かった」

 

「それは良かった!では・・・」

 

ルティアは中央にある篝火に手を翳すと、火が灯った。

不死のレヴァンにとって、憎しみと希望の象徴・・・レヴァンはルティアに向く。

 

「行った事のある場所ならこの場所から転送できますからね。では、ご武運を・・・」

 

ルティアはそう言うと、何処かへ行ってしまった。

 

「・・・休むか」

 

レヴァンは篝火に腰を下ろすと、ゆっくりと休む。

ミルドレッドから聞いた、太陽の戦士らしき人物はおらず、レヴァンとルティアだけしかいなかった。

 

「先に旅立ったのだろうか・・・まぁ、いつか会えるだろう・・・」

 

レヴァンはそう呟くと、静かに眠る。



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シュヴァリエ

レヴァンは新たな使命を達成する為に火継ぎの祭祀場から長い時間をかけて、シュヴァリエへやって来た。

シュヴァリエは暗闇に包まれながらも、活気のある街だった。

だが、レヴァンは此所で思わぬハプニングに立ちはだかって立ち往生していた。

 

「何故、通れん?」

 

「だから、言ってるだろ!そんな怪しい格好をする輩を通せる訳がないだろと、何度言わせる!」

 

レヴァンの服装は逃亡騎士の格好で、確かに上半身に鎧を着け、その上にボロボロの外衣を羽織っていて、かなり怪しく見える。

レヴァンは検問していた兵士に追い返されると、レヴァンはどうした物かと、考える。

 

「ふむ・・・忍び込むしかないか・・・」

 

レヴァンはそう呟くと、静かに眠る竜印の指輪と霧の指輪を填めた。

すると、レヴァンは半透明になり同時に、音も無くなった。

レヴァンは兵士の横を気付かれない様に通ると、街の中を暫く歩いて路地へ入る。

 

「ふぅ、まさかこんな事に使う事になるとはな・・・」

 

レヴァンはそう呟くと、指輪を外そうとした時、外が騒がしくなった。

レヴァンは路地の物陰から除き込むと、数人の男が老婆と幼い少女を取り囲んでいる。

 

「おいおい、人にぶつかっといて謝罪もねぇのかよ」

 

「謝っただろ!」

 

「いや、ぶつかった奴がな怪我したみたいでよ。慰謝料を払いな!」

 

男達はどうやらイチャモンをつけて老婆と少女か金を巻き上げようとしているつもりらしい。

レヴァンは指輪を着けたまま男の一人の元に行くと、思いっきり殴り飛ばした。

 

「ぐへぇ!」

 

レヴァンの力は尋常ではなく、普通に殴れば怪我じゃすまず、殴れた男は顔の原型を変えて失神している。

 

「な、何だ!?」

 

「急に飛んだぞ!」

 

男達は混乱し始めると、レヴァンは続いて男達を殴り飛ばしていく。

 

「ひ、ひぃッ!」

 

男の一人が逃げようとした時、レヴァンは近くにあった樽を持ち上げると、投げる。

樽は見事に当たり、男はそのまま気絶した。

 

「な、何なんだ・・・」

 

少女は唖然としていた時、ある一点を見た。

その一点はレヴァンが立っている場所で、少女は目を凝らして見ると、レヴァンの姿が少し見えた。

 

「と、透明人間!」

 

「ッ!?」

 

レヴァンは突然、叫ばれた言葉に驚いて急いで逃げる。

侵入したとバレたら面倒事になるのは明白で、逃げるしかなかった。

 

_______________

_________

____

 

「はぁ・・・はぁ・・・。ここまで逃げれば良いか・・・」

 

レヴァンは少女から逃げ切ったと考え、指輪を二つ外した。

レヴァンは元の姿へ戻ると、同時に装備を変えた。

その装備は下級騎士の鎧で、兜だけを外して傭兵風にした。

腰には普通のロングソードを差しているので、怪しまれる事はない。

 

「これなら大丈夫だな。では、少し休んでから先に行こう」

 

レヴァンは大通りに出ると、レヴァンを怪しむ者はおらず、レヴァンは安堵しながら平然と通る。

だが、何の運命なのか道の向こうからさっき助けた少女が走ってくる。

 

「おいおい・・・」

 

レヴァンは信じられないと言わんばかりに手を額に当てる。

少女はレヴァンを探しているのか、辺りをキョロキョロとしてからレヴァンの元へ向かってくる。

 

「ねぇ、そこの人!」

 

「何ですか?」

 

「この辺に透明な人いなかった!?」

 

「・・・さぁ、見ていませんが?」

 

「そうか・・・じゃぁね!」

 

少女はそのままはしって行くと、レヴァンは安堵して休める場所を探していると、一件のボロ屋を見つけた。

レヴァンは入って見ると、そこには篝火があり、レヴァンは手を翳すと、火が灯る。

 

「ありがたいな・・・これで休める・・・」

 

レヴァンは腰を下ろしてゆっくりと、休む。



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襲撃者

レヴァンは篝火で休み終えると、小屋を出て歩き出す。

人通りに溶け込んで歩き、悟られずにシュヴァリエから抜け出そうとした時、何者かが後ろから不意に斬りかかってきた。

 

レヴァンは避けて身構えると、そこには女神の騎士ロートレクがいた。

 

「ロートレク!」

 

「ククク・・・久しいな、レヴァン・・・お前に復讐霊として殺された日以来か?」

 

「やはり貴様も来ていた・・・また誰かを殺す気か?」

 

レヴァンは身構えながらロートレクに問うと、ロートレクは薄気味悪く笑う。

 

「貴様も知っているだろう?ある使命を果たせば不死からの解放が果たせると。その使命は主に二つ・・使命の課せられた少女を導くか、破滅させるか・・・俺は破滅させる道を選んだのさ」

 

「成る程な・・・つまり、まだ使命の果たせるか分からない少女を殺すつもりか?」

 

「ククク・・・そうだ」

 

ロートレクはそう言うと、レヴァンに斬り掛かり、レヴァンはロングソードを抜いてロートレクのショーテルを防ぐ。

だが、ショテールの特徴的な大きく曲がる刃が直接レヴァンに襲い掛かる。

 

「ぐッ!」

 

「どうした?俺を前の様に殺してみろ!」

 

ロートレクは二本のショーテルを次々に素早く振るい、レヴァンは防ぐのがやっとだ。

レヴァンは徐々に体力が削られていき、追い詰められていく。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「・・・つまらんな。俺を倒した気迫はもう、ないのか?」

 

「・・・分からん。だが、いつの間にかそんな気迫は捨ててしまった」

 

「成る程・・・つまり絶望に負けたか。なら、もう用はないな」

 

ロートレクはそう言うと、ショーテルを振るってレヴァンを切り裂こうとした時、多くの足跡が聞こえてきた。

 

「衛兵さん此方だよ、早く!」

 

「ちッ、邪魔が入ったか・・・レヴァン。また今度に決着を着けよう・・・」

 

ロートレクはそう言うと、走って何処かへ消えていった。

レヴァンは力無く崩れると、レヴァンの元へ続々と人がやってくる。

 

「おい、大丈夫か!」

 

「すごい怪我だぞ!早く、手当てを!」

 

衛兵の言葉に杖を持った男が、杖を掲げて光をレヴァンに移した。

レヴァンは暖かさを感じると同時に、みるみると傷が癒えてきた。

 

「大丈夫か!」

 

「あぁ・・・大丈夫だ・・・」

 

「いったい何があった?この少女が知らせなかったら死んでたぞ?」

 

レヴァンは見てみると、不安そうに見てくる少女がいる。

レヴァンはゆっくりと、近づくと背丈に合わせる様に屈む。

 

「そうか・・・お前が知らせてくれたのか」

 

「だ、だって・・・襲われてたから・・・」

 

「ふ・・・別に怒ってはいない。むしろ助かった・・・ありがとう。お前、名は?」

 

「く、クリムゾンだ!」

 

「クリムゾン、か・・・良い名だ。大事にしろよ」

 

レヴァンはそう言うと、立ち上がって去ろうとした。

衛兵は立ち去ろうとするレヴァンを呼び止めた。

 

「ちょっと待ってくれ!事情を聞きたいから・・・」

 

「事情は知り合いと戦っていた。それだけだ」

 

レヴァンはそう言うと、人混みに紛れて消えて行った。



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フウマ公国と四代目

シュヴァリエを抜け、元の装備に変えたレヴァンは日が出ているのに気が付いた。

 

「抜けたか・・・早く白夜へ行かなければ」

 

レヴァンは足を早める。

ロートレクの事もあって何時、少女が殺されるか分からないからだ。

レヴァンは足を早めて歩いていると、桃色の花を枝全体に咲かせた木々の道に入った。

レヴァンは歩き続けていると、気配を感じ取って立ち止まった。

 

「何者だ?」

 

レヴァンはそう言うと、多数の東方の隠密の服装をした男達が現れた。

男達はそれぞれ暗器らしき武器を構えている。

 

「我らの国に無断で足を踏み入れるとは・・・何者だ!」

 

「(国?私は知らずに他国に足を踏み入れてしまったのか?)」

 

「聞いているのか!」

 

「聞いている・・・無断で立ち入ってしまったのは申し訳ないが、先を急いでいる。通して貰うぞ」

 

レヴァンがそう言うと、男達はいきなり斬り掛かってくる。

レヴァンはロングソードを抜くと、暗器を弾き返して男を斬った。

 

「き、貴様!」

 

「お前達が先に仕掛けたのだろ?」

 

「うるさい!皆の者、掛かれ!!!」

 

指揮官らしき男がそう言うと、一斉に飛び掛かってきた。

レヴァンは男達をあしらって行くと、次々に切り裂いていく。

時に剣で時に盾で、防ぎ殺しながら徐々に指揮官に向かっていく。

 

「お、お前達!相手は一人だぞ、何をしているんだ!」

 

「無駄だ。お前達では相手にすらならんぞ」

 

そう聞こえると、男達の後ろから頭目らしき男が現れた。

 

「部下がとんだ失礼をしました。レヴァン殿・・・」

 

「ほぉ・・・どうやらお前は私を知っているようだな?」

 

「はい・・・我々、忍びは常に情報網を張り巡らせておりますから。私はコタロウ・・・この国、フウマ公国の公王でございます」

 

コタロウはそう言うと、深々と頭を下げた。

 

「王がそんなに頭を下げて良いのか?」

 

「多くの怪物を殺した貴方様は英雄。私は王でも、英雄ではありませんから・・・」

 

「英雄・・・か・・・」

 

レヴァンはかつて、英雄と呼ばれた者達と戦った事を思い出した。

特に深淵歩きのアルトリウス、竜狩りオーンスタイン。

この二人はとても強かった・・・オーンスタインはスモウとタッグだったがそれでも強かったと言える。

それに比べてレヴァンはこの二人と比較して、自分は英雄の器ではないと感じた。

 

「英雄と呼ばれる程の事ではないさ・・・」

 

「そ、そうですか?」

 

「あぁ・・・では、先に行っても良いか?急ぎなんだ」

 

「はい」

 

コタロウの許可を得たレヴァンは歩いて行く前、コタロウの目を見ていた。

コタロウは・・・とても野心家だとレヴァンは感じ取った。

レヴァンはこれまでの戦いの中で、信用できる人間か信用できない人間かの区別が付けられる様になっていた。

 

嘘をつく人間を瞬時に感知するが、わざと罠に掛かって抜け出し、命乞いをさせた後にアイテムを貰ったりした。

 

「・・・ん?何だ・・・」

 

レヴァンは歩いている時に、目の前で戦いが起こっていた。

コタロウの言っていた忍びの服装をしているが、戦い合ってる者達は全員同じ服装をしている。

 

「はぁ・・・はぁ・・・これまで、か・・・」

 

「逃がしはせんぞ・・・サイゾウ・・・覚悟!」

 

忍びの一人がサイゾウと呼ばれた男を殺そうとした時、腕にナイフが刺さった。

 

「ぐわぁッ!?」

 

「な、何だ!」

 

戸惑う忍び達の元に現れたのはクレイモアとカイトシールドを持ったレヴァンだった。

 

「やれやれ、数人でリンチか・・・お前達、殺されるか覚悟は出来てるな?」

 

レヴァンは言い終わると同時に、殺気を出した。

レヴァンの殺気はとても強大で、気絶する忍びもいた。

 

「ひ、ひぃッ!?た、退却!」

 

忍び達はレヴァンを恐れ、逃走するとサイゾウの元に行く。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい・・・お陰で助かりもうした・・・」

 

「なら良い。私は白夜へ急いでいるので失礼・・・」

 

「おぉ、白夜ですか。なら、私が案内いたしましょう」

 

サイゾウの言葉にレヴァンは反応して振り替える。

 

「白夜への道を知っているのか?」

 

「はい・・・私は白夜王家に仕える忍び。四代目サイゾウですから」

 

四代目サイゾウと名乗ったサイゾウは、ニッコリと笑うのだった。



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陰謀

レヴァンとサイゾウは共に白夜を目指して歩いていた。

サイゾウは負傷してはいるが、歩けない訳ではないので早足で歩く。

 

「大丈夫か?」

 

「はい。この位の傷・・・大した事はありません」

 

「そうか・・・ッ!?伏せろ」

 

レヴァンはそう言うと伏せ、サイゾウもレヴァンに合わせて伏せた。

レヴァンの見る先には、フウマ公国の忍びと思われる忍びが巡回している。

 

「どうやら捜索の手が広げられたらしいな・・・」

 

「その様ですね・・・どうしますか?」

 

「・・・任せろ」

 

レヴァンはそう言うと、木に隠れてファリスの弓を構えた。

ファリスの弓を引くと、忍びの一人に矢を当てた。

 

「な、何だ!何が起こった!」

 

混乱する忍び達に、レヴァンは移動しつつファリスの弓で次々と仕留める。

巡回していた忍びを仕留めると、レヴァンは手招きしてサイゾウを呼ぶ。

サイゾウはレヴァンの合図を見て、レヴァンの元に向かうと静かに進む。

 

忍びの巡回は白夜へ行く程、厳しくなりレヴァンの弓だけでは対処できなくなった。

 

「数が多すぎるな・・・」

 

忍びの警戒は時間が経つにつれ厳しくなり、逃走も困難になりつつあった。

レヴァンはどうするか考えていると、サイゾウがレヴァンの元に来る。

 

「私に考えがあります」

 

「考え?」

 

「はい。それは・・・」

 

________________

_________

____

 

「奴等はまだ見つからんのか!」

 

「申し訳ございません!味方が近くに倒れていたので近くにはいると思うのですが・・・」

 

「早く見つけて殺せ!・・・そうでなければ私が殺されるからな・・・」

 

コタロウは焦っていた。

フウマ公国に侵入したサイゾウを始末しようとしていたら、レヴァンがこの国に足を踏み入れたと報告を受けた。

 

レヴァンは人が襲われたりしている事を黙って見捨てないと、コタロウは聞いており万が一、レヴァンがサイゾウに接触しコタロウに襲われたと言えば、必ず殺しに来ると、考えていた。

 

「くそ・・・」

 

コタロウは命を危機を感じながら怒りと焦りでうろうろしていると、忍びが報告に来た。

 

「報告します!サイゾウを発見しました!」

 

「よし!私、自ら始末する!それまで押さえていろ!」

 

「御意!」

 

忍びは了承すると走っていき、コタロウは不敵に笑う。

コタロウはサイゾウの元へ急いで来ると、サイゾウが取り押さえられた状態でいた。

 

「ふっはははは!無様だなサイゾウ!これで、おしまいだ!」

 

コタロウはそう言いながら忍びの暗器手裏剣をサイゾウに突き刺した。

しかし、サイゾウは刺されると同時に消えてしまった。

 

「なッ!?」

 

「写し身・・・そんな事も見破れぬとはなコタロウ」

 

コタロウは振り向いた瞬間、首に重い一撃を受け、気絶した。

サイゾウは気絶したコタロウを見ていると、激しい爆発音と共に忍び数人が飛んできた。

 

「やれやれ・・・片付いたか・・・」

 

「はい。これ以上の殺生は無用です。行きましょう」

 

「こいつもか?」

 

レヴァンはコタロウに指を指して言うと、サイゾウは笑いながら言う。

 

「これで懲りたでしょう。また何かするつもりなら、私が責任を持って倒します」

 

サイゾウはそう言うと歩いて行き、レヴァンも着いて行く。

 

_______________

_________

____

 

レヴァンとサイゾウはフウマ公国を抜け白夜領に入ると、平たい道を真っ直ぐに進んでいた。

 

「もうすぐ王都へ着きます。頑張ってください」

 

「あぁ・・・」

 

レヴァンはもうすぐ白夜へ着くと聞いて、一つ疑問に思った。

使命を課せられた少女は誰なのか分からなかった。

このまま行っても分からずじまいで終わりそうになると、レヴァンは少し焦る。

 

「どうしました?」

 

「いや・・・何でもない・・・」

 

レヴァンは歩いていると、道の先に大きな街が見えてきた。

 

「レヴァン殿。白夜の王都へ着きました」

 

レヴァンがかつて旅した世界の王都が神々しいなら、白夜の王都は幻想的な所だった。

自然と街が合わさり、街の中心となる城が更に引き立たせた所だった。



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白夜王国

サイゾウと共に王都に入るとまず、賑やかな街並みが目に入った。

レヴァンは回りを物珍しそうに見ていると、住民達もレヴァンを珍しそうに見ている。

 

「賑やかな街だな」

 

「あぁ。此所は平和を愛する国だ。商業も盛んで皆、笑顔でこの国を守り立ててくれる」

 

「・・・羨ましい物だな」

 

レヴァンは城下不死街を思い出す。

城下不死街は、もはや城下町とは呼べない位に荒れて、兵士や盗賊挙げ句の果てにネズミまでもが、亡者となっていた。

白夜の王都とは天と地の差だ。

 

「さぁ、王城へ着きましたよ」

 

サイゾウはそう言うと、近づいたから分かる様に王城はとても大きく、暗夜の王城と良い勝負だ。 

とは言え、アノールロンドやロードラン等にあった城の方が大きかったが。

レヴァンは王城に通されると、見覚えのある白い東方の鎧を着ている男がいた。

 

「ご苦労だったサイゾウ。無事で何よりだ」

 

「はい。しかし、任務は失敗しました・・・この者が私を助けてくださらなければ死んでいました・・・」

 

サイゾウはそう言ってレヴァンを見る。

男はレヴァンを見ると、驚いた様な顔で問い掛けてきた。

 

「お主は・・・レヴァンか?」

 

「はい」

 

「おぉ、やはりそうか!あの時、ミコトを助けてくれて本当に感謝する。それだけではない、サイゾウの命も救ってくださるとは」

 

男はそう言うと、手を取って握手する。

 

「私は白夜王スメラギだ。数年前と今回の礼がしたい。礼の準備が出来るまで是非、留まってほしい」

 

「・・・分かった」

 

レヴァンは了承した。

使命を課せられた少女は確実に白夜王国にいると、レヴァンは考えている。

そうでなければ、ロートレクが白夜との国境近くにあるシュヴァリエにいる筈がない。

 

「(何はともあれロートレク・・・お前の好きにはさせんぞ・・・)」

 

レヴァンは来るかもしれないロートレクからの脅威に、白夜の者達に悟られず警戒を始める。

_____________

________

____

 

レヴァンは白夜王城の貸し与えられた部屋で武器の手入れをしていた。

何時、何処でロートレクや他の刺客が現れるか分からないからだ。

準備を怠らない様に武器を手入れし続けていると、部屋の外に気配を感じ、咄嗟に近くにあった打刀を手に取り戸を開けた。

 

「誰だ」

 

レヴァンは戸を開けたのは良かったが、誰もいない。

レヴァンは戸を閉めて中へ入ろうとした時、下の方に尻餅をついている銀髪の少女がいる。

 

「・・・何をしている?」

 

「え、えーとですね・・・」

 

少女はレヴァンの問いに少し口ごもった口調をして応えようとした時、向こうから足跡が聞こえる。

 

「カムイ!」

 

「あ、リョウマ兄さん」

 

「駄目だろカムイ。此所は父上の御客人の部屋なんだぞ」

 

「ごめんなさい・・・通り抜けようして、それで・・・」

 

カムイは反省の色を出しながらうつ向いている。

レヴァンはそんなカムイを黙って見ていると、視線を感じた。

視線を感じる方向を見ると、カムイの兄リョウマがレヴァンの手に持つ、打刀を見ていた。

 

「この刀が気になるか?」

 

「あ、いや・・・暗夜風の鎧を着てるのに刀を使うんだなと・・・」

 

「これは私が使う武器の一つだ。見てみるか?」

 

「良いのですか?」

 

レヴァンは頷くと、打刀を鞘から抜いてリョウマに見せた。

打刀は名刀と言えないが刀身は鈍くも鋭く輝き、何でも斬れると言わんばかりだ。

リョウマとカムイは打刀を目を輝かして見ている。

 

「わぁ・・・」

 

「凄いな・・・」

 

「他のも見てみるか?」

 

武器を褒められて良い気分になったレヴァンは、他の武器も見せてみたいと思った。

二人は頷くと、レヴァンと部屋の奥へ入っていく。

__________________

___________

______

 

「二人共、何処へ行ったのかしら・・・」

 

白夜王スメラギの妻ミコトはリョウマとカムイを探して城を歩いていた。

探してから数分が経過する中、一行に見つかる気配がなく、ミコトは困り果てていた。

 

「・・・あら?」

 

ミコトは部屋の一つが騒がしい事に気付きその部屋を覗いて見ると、リョウマとカムイが白夜では見かけない武器を見て、はしゃいでいる。

 

「リョウマ、カムイ」

 

「お、お母様!」

 

「こ、これは!その・・・」

 

二人は慌てた様子でミコトを見ていると、レヴァンは対応する。

 

「すまない。私が二人を引き留めてしまったのだ。二人は悪くはない」

 

レヴァンの言葉に二人は振り向く。

自ら罪を被りにいったレヴァンに二人はとても申し訳なさそうに見ている。

 

「貴方は・・・レヴァンさん?」

 

「お久しぶりです」

 

レヴァンはミコトの名前は聞いてはいなかったが、反応からしてあの時の女性だとすぐに分かった。

レヴァンとミコトは縁側に座って、リョウマとカムイの遊ぶ姿を見ながら話していた。

 

「あれから数年・・・貴方の噂は聞いていましたよ」

 

「噂?」

 

「はい。数多くの武器で数多くの異形の怪物を葬り、人間に武を振るえば天下無双と、白夜で言われています。でも、死んだと聞いていましたが・・・」

 

「・・・死んだ事になった噂には触れないでください」

 

レヴァンは自分が不死人だと悟られたくなかった。

不死人だと発覚した時、家族も友も恋人も全て無くして北の不死院に幽閉された。

レヴァンは親しい者達から受けた恐れの目を今も忘れない。

 

「・・・触れられたくない事があるのですね」

 

「はい・・・それを知られると、親しい者達が離れて行ってしまうので・・・」

 

レヴァンは拳を力強く握っていると、その拳の前に花が差し出された。

見てみると、そこには笑顔で花を差し出すカムイがいた。

 

「お花あげます!」

 

「良いのか?・・・ありがとう」

 

レヴァンは礼を言うと、またカムイは走り出していく。

レヴァンは受け取った花を静かに見つめ、静かに微笑む。



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不死の宿命~前編~

真夜中になり、ミコト達は自分の部屋へ帰っていくと、レヴァンも眠っていた。

長い時間の中、レヴァンは目を覚ますと、立ち上がって戸を開けて外に出た。

庭へ出ると、レヴァンは静かに立って言った。

 

「いるのだろ?出てこい」

 

「あら、気づいたの?」

 

レヴァンは声の聞こえた方を見ると、霊体ではないミルドレッドが現れた。

その手に肉絶ち包丁と木板の盾を持っている。

 

「・・・何しに来た?」

 

「決まってるじゃない。私はね・・・貴方と言う一人の男に会いに来たのよ!」

 

ミルドレッドはそう言って、武器を放り出して抱きついて来ようとしてきた。

レヴァンはミルドレッドの抱きつきを避けると、ミルドレッドは庭に置かれていた大きな岩に諸に当たった・・・顔から。

ミルドレッドは流石に痛かったのか、かなりもがいている。

 

「そんな理由で生身で来る筈がない・・・本当の理由は?」

 

「もう、相変わらず釣れないわね~・・・まぁ、私はわざわざ生身で警告に来ただけよ」

 

「警告?」

 

「貴方の警戒してるロートレクて、言う男が白夜に現れたわよ」

 

「ッ!?」

 

ロートレクが現れた。

その言葉を聞いて、レヴァンは遂に現れたと感じた。

 

「奴は何処だ?」

 

「それは私にも分からないわ。だって、見たの一瞬だったもん。警戒してる貴方にとって、一大事でしょ?」

 

「・・・そうだな。使命を課せられた少女は誰か知ってるか?」

 

「あら?会ってないの?」

 

レヴァンの問いを聞いて、ミルドレッドは意外そうにレヴァンを見てくる。

 

「・・・その様子だと知らないみたいね~。良い?貴方はもう、会ってるのしかも、最近。記憶を探りだして見つけなさいな。でも、早めにね・・・」

 

ミルドレッドはそう言うと、帰還の骨片を使ったのか光と共に消えてしまった。

レヴァンはミルドレッドの言う通り、記憶を探っていく。

遂、最近会った少女は・・・カムイ一人だ。

 

「まさか・・・」

 

レヴァンは気づいた。

使命を課せられた少女は、カムイだったのだ。

レヴァンは急いでカムイの元へ向かおうとした時、城の奥が騒がしくなった。

 

「しまった!」

 

レヴァンは急いで走る。

廊下を走っていると、使用人が逃げ惑い、兵士が武器を手に向かっていく。

レヴァンは兵士の向かっていく方へ行くと、所々に死体あった。

 

「・・・近くにいるな」

 

レヴァンはそう呟くと、更に奥へ進んでいく。

兵士が何者かと戦っているのか、金属音と怒声が聞こえる。

レヴァンは氷結の剣を手に、向かうとミコトとカムイを庇う様に兵士がロートレクと戦っている。

だが、兵士は一方的にロートレクに殺されている。

 

「止めろ、ロートレク!」

 

「・・・やっと来たかレヴァン」

 

ロートレクは反り血を全身に浴びた状態で振り向く。

レヴァンは氷結の剣をロートレクに向けて警戒する。

 

「ロートレク。やはり、白夜に来たか・・・」

 

「ククク・・・此所に獲物がいるんだ・・・来ない訳にはいかないだろ?」

 

ロートレクはそう言うと、二本のショーテルを構えた。

 

「構えろ。決着を着ける時だ」

 

「あぁ・・・」

 

レヴァンは氷結の剣を構え、ロートレクと対峙した。



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不死の宿命~後編~

レヴァンとロートレクが対峙する中、二人は動く事なく静かにゆっくり動きながら身構えている。

レヴァンは間合いをジリジリと詰めていく中、ロートレクはレヴァンが間合いを詰める分、下がる。

 

「・・・」

 

レヴァンはロートレクの隙を伺い続けていると、突然ロートレクが切り込んできた。

レヴァンは氷結の剣で、ロートレクのショーテルを防ぐがやはり、ショーテルの曲がった刃で傷つく。

 

「どうした?それだと前の様に負けるぞ?」

 

「ちッ・・・はぁ!」

 

レヴァンはロートレクに対して攻勢に出た。

氷結の剣を両手で持ち、連続で切り着ける。

ロートレクは二本のショーテルで巧みに防ぎ、カウンターを繰り出したりする。

 

一進一退の攻防。

 

レヴァンとロートレクの戦いは激しさを増していく。

戦うレヴァンの姿をミコトは不安な面持ちで、黙って見ている。

 

「ロートレクさん・・・」

 

レヴァンは氷結の剣を振り上げると、勢いよく振って氷の攻撃をロートレクに仕掛けた。

ロートレクは避けきれず氷の攻撃を受けたが、致命傷にはならなかった。

 

「ふん・・・その奇妙な剣は、デーモンから取り上げたのか?」

 

「分かるのか?」

 

「そんな禍々しいデーモンのオーラを纏った剣・・・デーモンの武器しかないだろ?」

 

ロートレクはそう言うと、ショーテルを振るう。

レヴァンは避けたが、ロートレクはもう一本のショーテルで攻撃してきた。

レヴァンは氷結の剣で防いだが、氷結の剣は飛ばされてしまった。

 

「くッ!?」

 

「ククク・・・武器を無くしたなレヴァン?」

 

「まだ、武器はある・・・」

 

レヴァンはそう言うと、ソウルから新たに雷を纏ったサイズとカイトシールドを取り出した。

レヴァンはその二つを持って、ロートレクに向かっていく。

 

「はぁ!」

 

「ちッ!」

 

ロートレクは受けずに避け、ショーテルで攻撃するもカイトシールドが完全ではないにしろ、防ぐ。

レヴァンは勢いに乗ってサイズをロートレクに振るっていく。

ロートレクは少し間合いを下げた時、ロートレクは瞬間的に横に避けた。

ロートレクの顔にボルトが横切り、レヴァンの手にはクロスボウがある。

 

「ちッ、ちょこまかと武器を変えやがって!」

 

「それが私の戦い方だ。武器を変え、敵をどんな手段を使ってでも倒す・・・私達の専売特許だろ?」

 

「ふん・・・確かにな・・・」

 

ロートレクは二本のショーテルを構えると、レヴァンはサイズをしまい、黒騎士の斧と盾を取り出した。

 

「何て大きな斧なの・・・」

 

「大きい!」

 

ミコトは唖然とし、カムイははしゃいでいる。

ロートレクは少し、たじろいで下がっている。

 

「さぁ・・・決着を着けようか?」

 

「・・・ふん」

 

レヴァンは黒騎士の斧を肩に担ぐ様に構え、ロートレクも構える。

 

________________

_________

____

 

その頃、スメラギは雷神刀を持って、兵士と共にミコトとカムイの元に向かっていた。

 

「待っていろ・・・ミコト、カムイ!」

 

スメラギは必死に走って来てみると、部屋は半壊しその部屋の中央で乱戦を繰り広げるレヴァンとロートレクがいる。

スメラギは唖然としていたがすぐに正気になり、ミコトを探すと、ミコトとカムイが部屋の隅にいた。

 

「ミコト!カムイ!」

 

「スメラギ様!」

 

スメラギは二人に駆け寄ると、ミコトとカムイを抱き締めた。

 

「良かった・・・無事で、良かった・・・」

 

「スメラギ殿!」

 

二人が無事で安心しているスメラギに、戦いながらレヴァンは叫んだ。

 

「早く二人を連れて逃げろ!こいつは私が相手をする!」

 

「しかし!」

 

「早く!」

 

レヴァンは叫んだ瞬間、ロートレクに重い蹴りを受け、倒れる。

ロートレクはその隙を突いて、カムイに向かっていく。

 

「死ねえぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

ロートレクのショーテルがカムイに向かって振り下ろされる。

だが、カムイは危機を感じたのか避けた。

 

「カムイ!」

 

「痛い・・・痛いよ・・・!」

 

しかし、ショーテルはカムイの目元を斬り、カムイの目元は血を流している。

 

「ロートレク・・・貴様!!!」

 

レヴァンは立ち上がってロートレクに走っていく。

だが、レヴァンの足ではロートレクの元に行くまでに次の攻撃がカムイを襲うのは明白。

レヴァンは何とか間に合わせようと、必死に走り続ける。

 

「ちッ、仕留め損ねたか・・・だが、これでおしまいだ」

 

ロートレクの言葉を聞いたミコトは、目元を押さえて痛がるカムイを庇う様に被う。

 

「させるか!」

 

次にスメラギが雷神刀をロートレクに振るって、ロートレクは下がった。

 

「くッ!猪口才な!」

 

ロートレクはスメラギに向かってショーテルを振るうが、スメラギは素早い動きで避け、ロートレクを逆に斬った。

 

「ぐぉッ!何故だ・・・何故、ただの人間が・・・そんな強力な武器を・・・!!!」

 

「ただの人間と言う訳ではないさ・・・ロートレク」

 

ロートレクはスメラギに斬られた傷を押さえながら振り向くと、グレートソードを振り下ろす直前のレヴァンがいた。

 

「・・・深い絆を持った家族を守ろうとした武人だから持つ事が許されているんだ」

 

レヴァンがそう言い終わると、グレートソードは振り下ろされ、ロートレクはグレートソードの下敷きになった。

グレートソードが退かされると、ロートレクは消えかかっている。

 

「くそ・・・また、貴様に負けるのか・・・」

 

「私は守るべき者がいるなら、負ける訳にはいかないからな・・・」

 

「ふん・・・口ではそう言っているが・・・私を殺した後、奧にいた女神に何をした・・・?」

 

ロートレクの言葉に、レヴァンは驚愕する。

何故、グヴィネビアを殺した事を知ってる口調で言ったのか、レヴァンは震えながらロートレクを睨む。

スメラギ達は黙っている。

 

「何の事だ?」

 

「惚けるな・・・私は、奧にいた女神の存在は知っていた・・・だが、途中で貴様に殺されて終わったがな・・・あの時のお前の目は・・・ソウルを喰らうデーモンその物だった・・・」

 

「黙れ・・・」

 

「否定するか・・・?否定しても神殺しの罪は」

 

「黙れと言っている!!!」

 

レヴァンはロートレクにそう怒鳴ると、ロートレクは愉快そうに笑う。

 

「ククク・・・貴様の怒鳴り声・・・久しぶりに聞いたな・・・では、また何処かで会おう・・・」

 

ロートレクはそう言うと、消えていった。

レヴァンは震える体を必死に抑えると、傷ついたカムイの元へ向かっていく。

カムイは目元を押さえて酷い痛みに唸っている。

 

「痛いよ・・・」

 

「大丈夫だ。ミコト殿、少し離れて」

 

「は、はい!」

 

ミコトは離れると、レヴァンはタリスマンを手にし祈る様に屈む。

すると、カムイは光に包まれ、カムイは痛みが無くなったかの様に寝息をたてた。

 

「・・・ふぅ。これで大丈夫の筈だ」

 

レヴァンはそう言うと、ミコトはカムイに抱く。

 

「カムイ・・・!良かった・・・あぁ、カムイ・・・」

 

「今の術は?」

 

「奇跡と呼ばれる物です。前いた国で使われた物です・・・」

 

レヴァンはそう言うと、ゆっくりと倒れ込んだ。

 

「レヴァン!」

 

「・・・大丈夫です。少し、疲れた・・・だけ、です・・・」

 

レヴァンはそう言うと、静かに目を閉じて気を失った。



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闇の王

レヴァンは目を覚ますと、木造の屋根が見えた。

レヴァンは辺りを見渡して見ると、スメラギが胡座をかきながら寝ている。

 

「・・・世話を掛けてしまった様だな」

 

レヴァンは起き上がろうとした時、左の腕が自棄に重く感じ見てみると、カムイが左の腕に抱き着いて寝ている。

レヴァンはカムイをじっと見ていたが、ある事に気づいた。

 

「(傷が・・・!)」

 

カムイの目元にはロートレクから受けた斬り傷が深く残っていた。

レヴァンはまだ少女とはいえ、女の顔に傷を残した事に罪悪感を覚える。

 

「(あの時、もう少し注意を払っていれば!)」

 

「・・・む、目が覚めたのか?」

 

スメラギは目を覚ましたのか、声を掛けてきた。

レヴァンは起き上がろうとしたが、スメラギは手を前に出して制止する。

 

「休め。別に気にする事はない。それにカムイが起きてしまうからな・・・」

 

「何故、カムイが此所で?」

 

「それはな。カムイはお前より先に目を覚ましてな。カムイは怯えきって、お前から離れようとはしないんだ・・・」

 

スメラギは困った様にカムイを見ている。

無理もない。

幼い子供が突然、凶器を振るわれ傷つけられたら恐怖心を抱くに決まっている。

レヴァンは守りきれなかった事を悔やむ。

 

「まぁ、また奴が現れるかもしれん・・・奴は消えただけで、死んだと確認していない・・・」

 

「・・・そうですね」

 

レヴァンはそう言うと、カムイをゆっくりと撫でる。

カムイは落ち着いているのか、僅かに笑みを見せる。

 

「・・・レヴァン殿。一つ聞きたい」

 

「何でしょう・・・」

 

「かの者ロートレクは、神殺しの罪・・・と言っていたがあれは何の事だ?」

 

スメラギの言葉にレヴァンはカムイの撫でる手を止めた。

レヴァンはカムイを起こさない様に徐に起き上がる。

 

「・・・さぁ、私にはさっぱり?」

 

「言いたくないのか?」

 

「・・・」

 

スメラギの問いに沈黙するレヴァン。

二人の間に重い空気が流れる。

 

「・・・ん」

 

レヴァンは沈黙を破りを庭を見る。

すると、庭から血の様に赤い闇霊が現れたのだそれも多数。

 

「ッ!?」

 

レヴァンは自身のソウルからブロードソードを取り出すと構え、スメラギも警戒する。

闇霊達はゆっくりと歩み寄ると、跪いた。

 

「遂に見つけました我らの王よ・・・」

 

「闇を統べし王・・・」

 

闇霊達は挙ってレヴァンを王、闇を統べる者等と言い始め、レヴァンはこの言葉のワードをヒントに答えを出した。

 

「こいつら・・・ダークレイスか!?」

 

「ダークレイス?」

 

ダークレイス。

生きとし生ける者達の全ての敵。

ダークレイスはソウルを奪い闇を広げる異端者の集団だ。

ダークレイスの特徴的なダークソードも見える事から、ダークレイスで間違いなかった。

 

「・・・何しに現れた?」

 

「貴方様を玉座に連れ戻しに来ました」

 

「我れらの主、闇の王樣。どうか、お戻りを・・・」

 

「断る!・・・あの時はどうかしていたんだ。世界を・・・闇に包んだ事は・・・」

 

「レヴァン!どういう事だ!」

 

レヴァンはスメラギの問いに答えられなかった。

世界を照らす火を消し去り、闇を広げた闇の王だとスメラギに対して死んでも言えなかった。

 

「我らには貴方樣が必要なのです。どうか・・・」

 

「消え失せろ・・・次はない・・・!」

 

レヴァンはブロードソードを少し抜くと、ダークレイス達は諦めたのか消えていく。

レヴァンは空しさと苦しさしか残っていない。

 

「・・・スメラギ殿。私はもう立ち去ります」

 

「レヴァン殿・・・」

 

「また、何処かで会える事を祈ります」

 

レヴァンはそう言うと、ソウルから帰還の骨片を取り出して使用した。

レヴァンは光に包まれると、姿を消していた。

 



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異変

レヴァンはシュヴァリエに戻ると、気力も無く地べたに座った。

自身の固く閉じていた過去が開けれ、不死の世界の事を思い出してしまった。

迫る強敵、度重なる罠と待ち伏せ、何度も侵入してきては襲い掛かってくる闇霊。

レヴァンはもう、疲れてしまったのだ。

 

「・・・此所で投げ出しても良いのだろうか」

 

レヴァンは深く考え、深い眠りについていく。

 

_______________

__________

_____

 

レヴァンは目を覚ました。

何れくらいの時間が経過したか分からないが、街に人のいる気配を感じなかった。

レヴァンは出てみると、そこに静かな空間が流れており、レヴァンは歩きだそうとした。

だが、突然の怒声によって歩みを止めた。

 

「何だ・・・」

 

レヴァンは怒声のする方へ行くと、白夜兵と暗夜兵が熾烈な戦いを繰り広げていた。

 

「何だ・・・何が起こっている・・・」

 

「運命が動き出したのですよ」

 

レヴァンは振り向くと、そこには火防女ルティアがいた。

 

「運命だと?」

 

「はい。今夜、白夜王スメラギは死にます」

 

「何だと!?」

 

レヴァンはそれを聞いてすぐに助けに行こうとした時、誰かに取り押さえられた。

レヴァンは取り押さえられた人物を見た瞬間、驚愕する。

 

「ソラール!?」

 

「すまない・・・」

 

取り押さえていたのは大陽の戦士ソラールだった。

ソラールは悲痛な感じが兜越しでも分かるか、今のレヴァンには感じ取れなかった。

 

「離せソラール!スメラギ殿を・・・スメラギ殿を助けなければ!」

 

「助けてしまえば不死からの解放が永遠に無くなるとしてもか!」

 

「何だと・・・どう言う事だ!?」

 

「それは私が説明しましょう」

 

ソラールの後ろからルティアが現れ、説明し始める。

 

「使命を課せられた少女カムイを導いて解放されるには、定められた運命を通るしかありません。時として破る事は出来ますが、それは今ではありません・・・」

 

「何故だ・・・」

 

「簡単な事なのです。この運命を破壊すれば、カムイは暗夜の兄妹達と絆を築く事は出来ず、赤の他人となります。そうなれば、導く者の最後の敵に辿り着く事が出来なくなるでしょう」

 

「つまり、最後の敵を倒さねば解放はあり得ぬと?」

 

レヴァンの言葉にルティアは微笑む。

ソーラルはとても辛く、苦しそうにレヴァンの近くで立っている。

 

「・・・私のしている事は分かっている。だが、貴公が不死からの解放を望んでいるのに、永遠に不死から解放される好機を逃す・・・私はどうなっても良いが、それでは貴公がまた道を踏み外してしまうのではと思うと・・・」

 

「ソラール・・・」

 

レヴァンはソラールを暫く見つめていたが、レヴァンは決意した。 

 

「私は・・・それでもスメラギ殿を助けに行く」

 

「貴公!」

 

「・・・それで、よろしいのですか?」

 

ソラールは驚き、ルティアは鋭い目で睨んでくる。

レヴァンは決意は変えないと言う意思表示に頷く。

 

「・・・ならば、行け!まだ・・・まだ間に合う筈だ!」

 

「すまない!」

 

レヴァンは走っていく。

友を助ける為に、自分の呪いからの解放を棄てた。

その姿に睨んでいたルティアの表情は・・・笑っていた。

 

「ふふふ・・・(それで良いの・・・貴方には絶望が似合うのだから・・・)」

 

「火防女殿?」

 

「何でもありません。では、帰りましょう・・・貴方は火継ぎの祭祀場へ帰るまでが、私の護衛なのですから」

 

「そうであったな・・・此所へ最初に着た時にいきなり護衛として連れられたのは驚いたが、レヴァン殿と再会出来て良かった」

 

「ふふ、レヴァンさんも良い友をお持ちですね。行きましょうか・・・」

 

ルティアはそう言うと歩いて行き、ソラールはレヴァンの無事を祈った後に、火防女に着いていく。 

 



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友の死と決別

レヴァンは必死に走り、スメラギの元に駆け付けると、スメラギは・・・大量の矢が刺さり、何かに斬られた様な斬り傷を残して死んでいた。

レヴァンはその姿を見て、目を見開き信じられなかった。

 

「スメラギ、殿?何故だ・・貴方程の者が・・・」

 

「ほぉ、懐かしい者を見たな?」

 

レヴァンは声の方向を向くと、年老いているが間違いなくガロン本人だとレヴァンは認識した。

レヴァンはガロンにロングソードの刃を首に向けた。

 

「貴様・・・!」

 

「かつての友に刃を向けるのか?ふふふ・・・面白いな」

 

「貴様は確かに友だ・・・だが、此所にいるスメラギも私の友だ!」

 

「なら何故、今更来た?もっと早く来れば助けられたであろうに?」

 

「くッ!

 

レヴァンはガロンの言葉に反論出来なかった。

もっと早く、事態に気付いていればスメラギは死ななかった。

不死から解放されなくとも、友と呼べる者が生きていてくれればそれで良かった。

レヴァンはその思いをしまい、ガロンの首を切り裂こうとした。

 

「間違った道に入ったならば、ガロン!貴様を殺してでも止める!!!」

 

「おっと」

 

レヴァンはロングソードを振るおうとした時、突如ガロンは何かを前に出した。

その何かは、気を失ったカムイだ。

レヴァンは慌てて刃を止め、身構える。

 

「人質か!」

 

「人質?違うな・・・こやつはわしの娘だ」

 

「ッ!?娘だと?」

 

「こやつには利用価値がある・・・ハイドラ神がそう御告げをくださったのだ。間違いない!ふふふ・・・ふっはっはっはっはっはっは!!!」

 

「(ハイドラ神?御告げ?狂ってしまったのか・・・それとも・・・)」

 

レヴァンはガロンの様子が可笑しい事に気付いた。

ガロンの言動は明らかに何かに操られている様に感じた。

もし、操られていなければただ、狂ったとしか言えない。

 

「さらばレヴァン・・・わしにはまだやる事があるのでな」

 

「逃がさん!」

 

レヴァンは追い掛けようとした時、横から黒い剣が振り下ろされた。

レヴァンは咄嗟に避けると、剣を振り下ろした正体に驚愕する。

 

「黒騎士!」

 

「・・・」

 

そこには、アノールロンドで何回も戦った黒騎士がいた。

黒騎士は巨体に似合わない鮮やかな技で、敵を葬る厄介な存在だ。

 

「くそ、こんな時に!」

 

レヴァンは身構えた瞬間、街の路地から二体の影が現れた。

 

「・・・おいおい、嘘だろ?」

 

レヴァンが見たのは・・・新たに二体の黒騎士だ。

矛と斧と剣の黒騎士が揃い、完全に不利な状況に陥った。

 

「やるしかないか・・・!」

 

レヴァンはロングソードとカイトシールドを構えると、黒騎士達は一斉に掛かってくる。

最初に攻撃してきたのは剣の黒騎士で、素早い斬激がレヴァンを襲う。

レヴァンはカイトシールドで防ぎ、反撃しようとした所で斧の黒騎士が後ろから斧を降り下げた。

多きな音と共に煙が立つも、レヴァンは間一髪の所で避けた。

しかし、次は矛の黒騎士がリーチを生かした凪ぎ払いをレヴァンに仕掛け、吹き飛ばされた。

 

「ぐはぁッ!」

 

レヴァンは壁に叩き付けられると、ロングソードを杖に、立ち上がろうとしたが、斧の黒騎士に吹き飛ばされて、また壁に叩き付けられる。

 

「はぁ・・・はぁ・・・くそ・・・此所までか・・・」

 

レヴァンは覚悟を決めた時、後ろから重い衝撃が走った。

倒れる前に後ろを見ると、そこには大剣を振り下ろし終えた四体目の黒騎士がいた。

 

「四体、目・・・こんな事があるのか・・・?」

 

レヴァンは疑問と自分の未熟さを悔しく感じながら消えていった。

残された黒騎士は、役目を終えた様に立ち去っていく。



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暗夜王城への襲撃

レヴァンはシュヴァリエの篝火で目冷ました。

疑問と後悔と憎しみが、レヴァンの心を包み込み、レヴァンは立ち上がった。

今のレヴァンの姿に温厚さは無く、代わりに憎悪を抱いた威圧感を出していた。

 

「ガロン・・・今すぐお前を・・・」

 

"殺しに行く・・・!"

 

_________________

___________

_____

 

暗夜の王城ウィンダムでは、兵士二人が欠伸をしながら城へ入る門の守っていると、兵士二人の首に矢が刺さった。

兵士は倒れると、奥から現れたのはファリスの弓を持ったレヴァンだ。

 

「・・・行くか」

 

レヴァンは門に来ると、扉を開けた。

中へ入ると、数人の兵士が驚いた様な顔をして槍を構える。

 

「な、何者だ!」

 

「門の衛兵は何をしていた!」

 

「殺した」

 

「なッ!?」

 

レヴァンは平然と答えると、クレイモアとグレートアクスを持って歩く。

レヴァンの放つ殺気と威圧に、兵士はたじろぐ。

 

「さぁ、死にたい奴から掛かってこい」

 

レヴァンはそう言った時、兵士達は勇気を出して向かっていく。

レヴァンは向かってくる兵士をクレイモアで横に凪ぎ払い、グレートアクスで叩き潰していく。

兵士は殺されていく仲間を見て、怯えるがそれでも食い止めようと必死になった。

 

「と、止めろ!」

 

「怯むな!一斉に掛かれ!」

 

「一斉に掛かられたら面倒だ・・・なら」

 

レヴァンは一斉に掛かれない様に走りながら近づいてくる敵を斬っていく。

一直線になった兵士を凪ぎ払い、叩き潰し、串刺しにする等して突破していく。

 

「ひ、ひぃ!」

 

「助けて・・・助けてくれ!」

 

レヴァンを相手にして兵士はもはや、搾り取れる勇気すら無くなっていた。

だが、レヴァンは逃げる兵士も容赦なく殺していく。

 

城の奥へ進むと、貴族なのか華やかな衣装を纏う男女が血だらけのレヴァンを見て逃げている。

 

「ふん、臆病者供が・・・ガロンは何処だ?」

 

レヴァンは歩いてガロンの行方を探していると、前を通った扉の奥が騒がしく聞こえた。

レヴァンはクレイモアとグレートアクスをしまい、銀騎士の剣を取り出すと開け放った。

 

「きゃぁぁぁ!」

 

「く、曲者!」

 

部屋にはガロンはおらず、その代わりにメイドと紫の長髪の少女がいた。

回りが混乱する中、少女は落ち着いている。

 

「貴方は何者なの?」

 

「・・・話す通りはない。ガロンは何処だ?」

 

「あら、父を殺そうとする人に居場所を教えると思ってるの?」

 

相変わらず少女は落ち着いており、レヴァンは時間の無駄だと考えて部屋を出ていく。

 

「・・・恐ろしい人ね」

 

少女はその一言だけを言うと、メイド達に連れられて安全な場所へ行く。

________________

__________

_____

 

レヴァンは玉座の間の扉まで来ると、多数の兵士とジークフリートを持った青年がいる。

レヴァンは青年を見て、感心の色を見せた。

 

「ほぉ、ジークフリートを継承したか・・・マークス」

 

「レヴァン・・・何故、父上を狙う?」

 

「・・・奴は道を踏み外した。奴が王になる前の約束を果たすべく、殺しに来た」

 

レヴァンは銀騎士の剣と紋章の盾を手に持って、構えた。

 

「邪魔をするなら・・容赦はしないぞ?」

 

マークスはその言葉を聞いて、無言でジークフリートと獅子の盾を構えた。

 

「・・・そうすると思ったぞ」

 

「言葉はいらない・・・互いの剣で語ろう・・・」

 

ここに、後の暗夜王国最強の騎士マークスと名も無き英雄レヴァンの一騎討ちがなった。

二人の気迫に回りはたじろぎ、怯んでいる。

 

「では・・・始めようか」

 

レヴァンはそれだけを言うと、戦闘が始まった。



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運命の決定

マークスはレヴァンの隙を伺って、ゆっくりと動く。

レヴァンもマークスに合わせて動き、静かな戦いになっている。

 

「くッ・・・(やはり簡単には隙を与えはしないか)」

 

「どうした?来ないのなら此方から行くぞ?」

 

レヴァンの挑発ともとれる言葉に、マークスは釣られない様に我慢した。

 

"先に動いたら負ける"

 

マークスの脳内にその言葉が響き、そして昔教わった技パリィを思い出す。

パリィの驚異を幼い時に受けた事をマークスは未だに忘れていなかった。

 

「・・・」

 

「ふん、仕方がないな・・・なら、行くぞ!」

 

レヴァンはそう言うと、素早い動きでマークスに迫った。

 

「ッ!?」

 

マークスは咄嗟に獅子の盾で防ごうとするが、レヴァンは立ち止まって蹴りを入れて防御を崩した。

 

「はぁ!」

 

レヴァンは隙を突いて、マークスを攻撃する。

マークスは間一髪の所で、ジークフリートで防いだがレヴァンの攻撃は続く。

縦に横にと、大振りながら素早い斬激にマークスは防ぐのがやっとだ。

だが、マークスも一方的に攻撃される様にレヴァンから鍛えられていない。

 

マークスはローリングし、レヴァンの猛攻を避けると、今度はマークスが攻め立てる。

 

「せやぁ!」

 

「甘い」

 

マークスの攻撃はレヴァンに軽々と止められる。

だが、マークスは諦めずレヴァンにジークフリートを振るう。

しかし、レヴァンはマークスの技を紋章の盾で軽々と何度も止めていきそして、盾を振るってジークフリートを弾いた。

 

「しまった!」

 

「馬鹿が・・・パリィを忘れていたか?」

 

レヴァンはそれだけを言うと、銀騎士の剣の柄でマークスの腹を殴った。

 

「ぐはぁッ!」

 

マークスは倒れ込み、苦しむ。

 

「・・・終わりだ、マークス。戦いは決した」

 

「まだ、だ・・・まだ・・・戦える・・・」

 

「無理をするな・・・どちらにしろ、お前に勝ち目は無かった・・・」

 

レヴァンはそう言い放つと、マークスは気を失った。

兵士に動揺が走るなか、レヴァンは玉座の間の扉へ向かっていく。

 

「どけ」

 

レヴァンのその一言で、兵士は道を開けた。

そしつ、レヴァンは扉の前に立つとゆっくりと扉を開け放って入った。

レヴァンが奧に入ると、ガロンが斧を持って玉座に座っていた。

 

「・・・ガロン」

 

「ククク・・・来たかレヴァン」

 

ガロンは玉座から立ち上がると、レヴァンに向かって歩く。

 

「それで?わしを殺しに来たのか?」

 

「そうだ。お前は道を踏み外した・・・だから、王になる前の誓いにより、貴様を殺す」 

 

「やれる物なら・・・やってみせい!」

 

レヴァンはガロンのその言葉を聞くと、ガロンの胸に勢いよく銀騎士の剣を突き刺した。

 

「・・・終わった。ッ!?」

 

「ククク・・・どうした?」

 

レヴァンは信じられないと言わんばかりに、銀騎士の剣を抜いて構えた。

ガロンは胸を刺された筈なのに生きている。

レヴァンは冷や汗をかいた。

 

「貴様、不死になったのか・・・?」

 

「不死とは何か知らんが・・・近い物をわしは得ている。貴様には勝ち目はないぞ?」

 

「ふん、だったら死ぬまで斬ってやる!」

 

レヴァンは銀騎士の剣を振るおうとした時、突如吹き飛ばされた。

 

「ぐぅ・・・こいつらは・・・」

 

そこには金色の細長い鎧で巨大な兵士が三体立っている。

それは虚ろの衛兵その物で、手に持つハンマーが今にもまた炸裂しそうだ。

 

「其奴らは新しくわしが登用したアレサンドラ、ルカ、レギムだ。今のお前の相手に相応しい三人だ」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

アレサンドラ達は無言で、レヴァンに向かってくる。

レヴァンは虚ろの衛兵は一対一に持ち込んで倒したが、いきなり三体は流石のレヴァンでも勝ち目は無かった。

レヴァンはせめてガロンだけでもと走り出したが、ルカがガロンとレヴァンの間に飛んで、立ちはだかった。

 

「レヴァンの処分を任せたぞ」

 

「待て!くッ!」

 

レヴァンは虚ろの衛兵の猛攻に苦戦を強いられていく。

虚ろの衛兵の重い振り下ろしを避ければ、別の虚ろの衛兵が攻撃をくわえてくる。

そして、三体同時の回転攻撃をレヴァンに仕掛けてくる事もあった。

 

「くッ・・・此所まで来て・・・」

 

レヴァンはエスト瓶が尽き、傷だらけで倒れ込んだ。

アレサンドラ、ルカ、レギムは容赦なく迫りハンマーをレヴァンに一斉に振り下ろした。

 

______________

_________

____

 

「此所は・・・」

 

レヴァンが目を覚ました場所は火継ぎの祭祀場の篝火の近くだった。

レヴァンは起き上がると、辺りを見渡した。

祭祀場は以前より人がおり、見知った者達も大勢いた。

 

「おぉ、気が付いたか!」

 

「貴方は・・・ジークマイヤー殿か?」

 

「そうだ。覚えていてくれたか!」

 

ジークマイヤーはカタリナと言う国の騎士で、玉ねぎの様な鎧を纏っている。

しかし、その玉ねぎの様な鎧・・・カタリナの鎧はとても性能が高いので暫く使っていた事がある。

 

「貴方も呼ばれたのですか?」

 

「うむ、何でも少女を導くか破滅させろと言われてな。私は導く方にしたよ。貴殿は?」

 

「・・・導く方です」

 

「そうか!ならば、この世界でも共に助け合っていこう!」

 

ジークマイヤーはそう言うと、レヴァンは頷いてから別れた。

ジークマイヤーの他にもルカティエル、アンドレイ、レア等と戦いや準備等に手を貸してくれた人物達もいる。

だが、中にはペイト、クレイトン、パッチ等と言動が怪しい者達もいる。

 

「何だ、そのしけた面は?」 

 

「ッ!?貴様は、ロートレク!」

 

レヴァンはロートレクが後ろにいた事に警戒し、銀騎士の剣に手を掛けた。

 

「おいおい、待てよ。今は敵対するつもりはない」

 

「・・・何故だ?」

 

「出口を見てみろ」

 

レヴァンは出口を見てみると、出口は霧に覆われている。

 

「あれのせいで出れなくなってやがる。今、ここで殺りあっても特はしない」

 

「・・・何故、閉じられている?」

 

「あのルティカて、言う火防女が一斉に呼び寄せたんだよ。そろそろ、本格的に運命が動き出すなどどうだのと」

 

「・・・」

 

レヴァンはルティカの元へ歩いていく。

ルティカの元へ来ると、ルティカは来る事を知っていたかの様に振り向いた。

 

「そろそろ来ると思ってましたよ」

 

「ルティカ。何故、此所へ?」

 

「それはですね。もう、変えられないぐらいに運命が進んだのですよ」

 

「変えられない?」

 

「・・・今まで自由に行動できたのは、準備期間であり人の運命を変え期間でもありました。でも、もう期間は終わり人の運命はもう変えられません。遂に本格的な戦いなるのです。導く者と破滅させる者との」

 

ルティカはクスクスと、笑う。

 

「・・・つまり、時が来るまで」

 

「大人しくしていてくださいね?」

 

ルティカはそう言うと、遠くを見つめて話さなくなった。



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更なる旅

レヴァンは火継ぎの祭祀場で出られる日を待ち続けた。

待って、待って、待って・・・長い時間が流れ続ける。

待っている間にアンドレイの所に赴き、武器の修復や強化や矢の調達をしていた。

 

「暫く診ない内に随分と武器に無茶をさせたな・・・」

 

「無茶をさせなければならなかったんだ・・・まともに修理できる鍛治職人がいなくてな・・・」

 

「そうか・・・まぁ、わしはお前が亡者にならなければそれで良いがな」

 

「・・・相変わらずだな」

 

レヴァンは矢を一本々見ていきながらそう呟くと、ソラールがやって来た。

 

「ソラール。お前も武器の手入れを?」

 

「あぁ、私も何時でも戦える様にしなければいけないからな。レヴァン・・・少し、暗くなったか?」

 

「?。何の事だ?」

 

「いや・・・分からないなら答えなくてもいい・・・」

 

「ソラール。お前、変だぞ?。また何か抱え込んでいるんじゃないだろうな?」

 

ソラールはロードランで、悩みを抱え込んで亡者へとなった経緯がある。

あの時、ソラールを倒すのはかなり抵抗があった。

ソラールはロードランでは、かなり信用できる人間であり、友なのだ。

 

「・・・いや、本当に何でもないんだ」

 

「・・・そうか」

 

レヴァンは悩みを聞き出すのを諦め、修理された武器と調達した矢を持って奧にいく。

ソラールはレヴァンの後ろ姿を見ていた。

 

「(レヴァンの姿が・・・昔、見た闇に染まったレヴァンその者だ・・・何事も無ければ良いが・・・)」

 

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_____

 

レヴァンは歩いていると、ある事に気付いた。

それは、出口の霧が晴れて通れる様になっていた。

レヴァンは試しに手を出口に通すと、やはり通れた。

 

「・・・」

 

「あら、もう行かれるのですか?」

 

レヴァンは振り向くと、ルティアが立っていた。

 

「霧が晴れたと言う事は・・・通っても良いんだな?」

 

「はい」

 

「・・・なら、行かせて貰う。カムイを探さねばならないからな」

 

レヴァンはそう言って出口を通り、旅立って行く。

ルティアはその後ろ姿を見て、笑っているだけだった。

 

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_____

 

レヴァンは森を抜けて暗夜領を歩いていた。

シュヴァリエで聞いたガロンの話しでは、カムイはガロンの娘になっている筈だ。

居場所の候補は王城が挙げられるが、ガロンが娘にしたとは言え、白夜の王族を優遇するとは思えない。

 

それに、襲撃した際にも見当たらなかった事もあり、王城にはカムイはいないと判断した。

 

「全く何処へ・・・」

 

レヴァンは歩き続けた。

途中、ノスフェラトゥや盗賊を相手にするが阻まれる事ではなく、通っていく。

 

歩き続けたレヴァンは少し休もうと、木に寄り添うと地べたに座り込んだ。

数分の間、レヴァンは休んでいると馬車が通る音が聞こえてきた。

だが、レヴァンのいる場所は民家どころか人気すら無い辺境、貴族が乗る様な馬車が通るとはとても思えない。

 

「・・・賊か?」

 

レヴァンは馬車を利用した新手の賊だと予想し、木陰から様子を見る。

しかし、馬車には小数の兵士が護衛におり、賊ではなかった。

レヴァンは怪しく思い、気付かれない様に後を付けていく。

_______________

__________

_____

 

レヴァンは馬車を付け続けていると、廃城の様な場所に到着した。

レヴァンは霧の指輪と静かに眠る竜印の指環を着けて中へ入っていく。

中へ入ると、馬車から金髪を紫のリボンで結んだツインテールをしている少女がはしゃぎながら降りてきた。

 

「カミラお姉ちゃん!早く、早く!」

 

少女のはしゃぐ言葉に合わせて紫のロングヘアーをした妖艶な雰囲気を出した女性が降りてきた。

 

「ふふ、そんなに慌てなくてもカムイに会えなくなる訳ではないわよ」

 

カミラと思われる女性の言葉に、レヴァンは反応した。

探し求めていたカムイが此所にいる。

レヴァンは更に話を聞く為、近付いて見る。

 

「だって、楽しみだもん!久しぶりにカムイお姉ちゃんに会えるもん!」

 

「(成る程な・・・こいつらはガロンの娘か・・・)」

 

レヴァンは二人はガロンの娘だと認識すると、二人は中へ入って行く。

レヴァンも続いて行き、城へ入ると城の外見とは裏腹にかなり整えられている。

レヴァンは二人を付けて行くと、一つの部屋へ入った。

 

レヴァンは閉じられた扉が勝手に開いたとあっては、怪しまれるので扉越しから聞き耳を入れる事にし、扉の近くに立った。

 

「久しぶりねカムイ」

 

「カミラ姉さん!久しぶりです」

 

「カムイお姉ちゃん、私も!」

 

「ふふ、エリーゼさんも久しぶりです」

 

楽しそうな声が聞こえてくる。

レヴァンは聞き耳を立てているが、聞こえ辛くもう少し耳を近付けようとした時、廊下から誰かの足音が聞こえてきた。

 

「ッ!?」 

 

レヴァンは慌てて離れると、水色のメイドが扉をノックする。

 

「フローラです。紅茶とお茶菓子をお持ちしました」

 

「ッ!?フローラだと・・・!」

 

「え・・・?」

 

レヴァンは遂、声を出してしまいフローラは聞こえたのかレヴァンの方を見る。

しかし、フローラから見ればそこには何も無くフローラは空耳だと思い扉へ向く。

そして、許可が下りたのかフローラは部屋へと入った。

 

「・・・まさかフローラがいるとはな。何故だ・・・」

 

レヴァンは考えていると、後ろに衝撃が走った。

振り向くと、茶髪のメイドが尻餅をついている。

 

「痛いです~・・・あれ?確か、誰かとぶつかった様な気がしたのですが・・・」

 

「(まさか、フェリシア!)」

 

レヴァンは少し、後ずさると前から誰かが来た。

 

「おい、フェリシア。何をしているんだ?」

 

「あ、いえ・・・誰かとぶつかった気がしたのですが・・・」

 

「はぁ・・・誰もいないぞ。大方、またドジで何かにぶつかったんだろ」

 

「ジョーカーさん!幾らドジな私でも限度はありますよ!」

 

「分かったから早く行くぞ」

 

ジョーカーと思われる執事はフェリシアと共に歩いて行くと、部屋をノックして許可が下りたのか入る。

 

レヴァンはこの機を逃さず、扉を通るとそこには楽しそうに笑うカミラとエリーゼそして、忘れる筈もない伸びた銀髪で赤い瞳、目立つ古い目元の斬り傷・・・間違いなくカムイ本人だった。

 



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迷い

長い年月を得て成長したカムイに、レヴァンは無意識に手を伸ばした。

しかし、手を伸ばしきる前に扉が開かれて誰かが入ってきた。

 

「マークス兄さん!レオンさん!」

 

「遅くなってすまない」

 

「少し、野暮があってね」

 

「(マークス!・・・随分と成長したな・・・隣にいるのはガロンの子か?まぁ、それは兎も角、厄介な相手が来たものだ)」

 

レヴァンは悪態を突くと、マークスは部屋の奥へと移動している。

レヴァンはどうするべきか考えていると、マークスは何かに反応したかの様に顔を歪める。

 

「あら、どうしましたマークス兄さん?」

 

「・・・何かいる」

 

「え!?」

 

「奇遇だね。僕も、異質な存在を感じるよ」

 

レヴァンは戸惑いを見せる。

マークスだけでなく、レオンと言う王子にも感ずかれた。

部屋はマークス達が警戒し始め、レヴァンはこれ以上バレない為に、混乱の最中に扉から抜け出そうとした。

 

しかし、運悪く腕が花瓶に当たってしまい落ちて割れてしまった。

 

「ッ!?そこか!」

 

マークスはレヴァンの前ギリギリにジークフリートを突く。

目の前で刺さったジークフリートを見て、レヴァンは正直かなり冷や汗をかいた。

 

「・・・どうやら外したみたいだね」

 

「ふむ、しかし少し手応えはあった」

 

マークスはジークフリートを見ると、破けた布があった。

レヴァンは咄嗟に外衣を見ると、切り裂かれた後があった。

レヴァンはマークス達を見ると、カムイとエリーゼ以外戦闘体制に入っている。

 

「姿を現せ。もう、逃げ場はない」

 

「(不味いな・・・)」

 

レヴァンは必死に策を考えていると、扉が開かれ年配の男が入ってきた。

 

「どうしました!突然、大きな音がなったのですが!」

 

「(今だ・・・!)」

 

レヴァンは走り出して、男を押し退けて扉を通り抜けた。

後ろでは声が響き渡るも、レヴァンは気にせず走り続けた。

 

____________

_______

___

 

レヴァンが逃げたした後、レヴァンに押し倒された男ギュンターをカムイは助け起こしてマークスとレオンは衛兵に侵入者がいる事を伝えて追い掛けさせる。

 

「まさか、この北の城塞に入り込む者がいるなんて・・・」

 

「何だか怖いよ・・・カムイお姉ちゃん、狙われてるのかな?」

 

「おいおい、そんな縁起でもない事を言うなよ・・・でも、全く無いとは言い切れないね・・・」

 

「あぁ・・・警戒の為に今夜は北の城塞に泊まっていこう」

 

「やったぁ!カムイお姉ちゃんと一緒に眠れるね!」

 

それぞれの言葉が飛び交う中、カムイは不思議な感覚に包まれていた。

それは一言で言うと、懐かしいのだ。

 

「・・・何なんでしょうかこの感覚」

 

「カムイ?」

 

「あ、いえ・・・何でもありません」

 

カムイは疑問を浮かべた顔から笑顔へと変える。

愛する兄妹の為に。

 

____________

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____

 

レヴァンは何とか北の城塞から抜け出すと、北の城塞を見詰める。

明かりがポツリポツリと、点いている。

 

「・・・カムイ。お前はそれで幸せなのか?」

 

レヴァンはカムイの状況を思い出す。

カムイは暗夜の兄妹達と笑い、幸せそうな顔をしていた。

あの様子だと、白夜の事は忘れているとレヴァンは考え、うつ向いた。

カムイは暗夜の兄妹が本当の兄妹ではないと分かればどうなるのだろうか。

レヴァンは一人考え、悩む。

 

白夜へ連れ戻すべきか、そのままにしておくべきか・・・。

 

レヴァンはどうするべきかを必死に考える。

 

「・・・ん?」

 

レヴァンは考え込んでいると、前から誰かが来た。

 

「・・・マークスか」

 

「レヴァン・・・」

 

やって来た人物はマークス本人だった。

マークスはレヴァンの前にやって来ると、問い掛ける。

 

「・・・カムイを連れ戻しに来たのか?」

 

「・・・それを今、考えている」

 

「なら、見逃してくれ・・・!私は、血は繋がらなくてもカムイを本当の兄妹だと思っている・・・だから・・・!」

 

「本当の兄妹が悲しんでいるのにか?」

 

「ッ!?」

 

レヴァンの指摘にマークスは黙り込む。

 

「良いか?確かにカムイは幸せなのかも知れないが、本当の事をしれば・・・本当の兄妹も共に敵になるかもしれないぞ?それに、白夜の兄妹は必ずカムイを奪い返しに来る・・・絶対にな」

 

「・・・それでも、カムイは私達の兄妹だ。何があっても、受け入れる」

 

「・・・」

 

頭を下げて答えたマークスにレヴァンは静かにマークスを見詰める。

そして、レヴァンは深い溜め息をついてマークスの肩に手を置いた。

 

「・・・見逃してやる。だが、一つ言っておかなければならない」

 

「何だ・・・?」

 

「・・・カムイは本当に命を狙われている」

 

「ッ!?」

 

「気を付けろ。私も出来る限り側でカムイを守る。もし、カムイを狙う敵が現れたら・・・全力で戦え、敵は私並みに強いぞ」

 

レヴァンはそれだけを言うと、立ち去っていく。

見逃してカムイの一時の幸せを守る為に。



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北の城塞からの自由

騒動から数日が経った頃、レヴァンは時より北の城塞に入り込んではカムイの様子を見る様になった。

カムイはフローラ、フェリシア姉妹とジョーカーとギュンターそして、リリスと呼ばれる少女と共に暮らしている。

 

幽閉の様な生活なのに、とても幸せそうにカムイは笑っている姿を見て、レヴァンは白夜へ帰すと言う考えが徐々に薄れつつあった。

 

「・・・私はどうすれば良いのだろうな。スメラギ・・・」

 

かつて救えなかった友の事を呟くと、レヴァンは北の城塞へ歩いていく。

 

_____________

_________

_____

 

レヴァンはいつも通り忍び込むと、フェリシアとフローラが歩きながら話しているのを見つけた。

 

「カムイ樣、大丈夫かしら・・・」

 

「大丈夫ですよ!きっと、カムイ樣ならこの城塞から自由になれますよ」

 

「・・・そうだと良いけど」

 

「(城塞からの自由?・・・行ってみるか)」

 

レヴァンはカムイの元へ向かう。

自由とは何の事かを知る為に。

 

________________

___________

______

 

レヴァンは塔へやって来ると、レオンとエリーゼとカミラがいるのが見えた。

レヴァンはもう少し近づこうとした時、金属音がレヴァンの耳に届いた。

 

「あれは・・・」

 

レヴァンが見た物は、マークスとカムイが戦っているのだ。

マークスは馬に乗りカムイに訓練用なのか青銅で作られた剣を振るい、カムイも青銅で作られた剣を持ち防ぐ。

レヴァンはどう考えてもカムイが不利だと思った。

自らが鍛えたマークスを相手に対して、カムイはまだ未熟な所があると判断した。

 

その結果を踏まえると、カムイの方が不利に見える。

 

「・・・はぁ、またこの気配か・・・」

 

「レオン?」

 

「あの時の気配がする・・・気を付けて」

 

レオンはレヴァンの気配を感じたのか、レヴァンの方を見てくる。

だが、今回は逃げなかった。

レヴァンはカムイの実力を見てみたいと思い、止まった。

レオンはレヴァンの考えを察したのか溜め息をついてカムイの方へ向いた。

 

「はぁ・・・今回は大丈夫そうだよ」

 

「あら、何でなの?」

 

「逃げようとしないからだよ」

 

レオンはそう言うと、二人の戦いを見詰める。

相変わらずマークスが優勢だが、徐々にカムイが押し返してきて遂にカムイがマークスに一撃を与えた。

 

「見事だ、カムイ。強くなったな」

 

「ありがとうございます・・・マークス兄さんのおかげです」

 

「・・・いや、お前の才能だ。いずれお前は、この暗夜王国一の剣士になるかもしれないな」

 

「そんな・・・まだまだ私なんか・・・」

 

「いいか?私はお前こそが・・・この闇に包まれた国に、光をもたらす者になってくれると信じている」

 

「兄さん・・・」

 

マークスはカムイが暗夜に光をもたらすと言う言葉に、レヴァンは同感する。

カムイは確かに何か魅力を感じる。

カムイの笑顔はレヴァンを希望へと運んでいるのだ。

 

「全く・・・剣の腕で全てが決まる訳じゃないだろ、兄さん達」

 

「レオンさん・・・」

 

「ふっ・・・負けず嫌いだな、レオン。お前には類い稀な魔道の才能があるんだ。そこを極めればいい」

 

「・・・それで兄さんが、認めてくれるならね」

 

「あ、そんな事よりレオンさん」

 

二人の話にカムイは割って入った。

 

「何だよ、そんな事って。大事な話じゃ・・・」

 

「えっと・・・法衣が裏返しですよ」

 

「えぇッ!?」

 

カムイの言葉にレオンは驚いて法衣を見る。

 

「寝起きだな、レオン」

 

「わわっ・・・酷いよ、兄さん達!分かってたなら、早く言ってよ!」

 

「はは・・・すまんすまん。だが、そう言う」

 

レオンは慌てて走って行き法衣を直している。

レオンのその姿にカムイ達は微笑んでいる。

見るからに幸せそうな兄妹達にレヴァンは邪魔してはならないと、立ち去ろうとした時。

 

「待てレヴァン」

 

マークスに呼び止められた。



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レヴァンとカムイ

マークスに呼び止められたレヴァンは振り向くと、カムイ達に見られている。

レヴァンは誤魔化せないと分かると、溜め息をついて2つの指輪を外した。

レヴァンの姿が現れると、マークスとレオン以外は驚いていた。

 

「だ、誰ですか!?」

 

「初めましてかな?私はレヴァン。かつて、マークス王子に剣を教えていた者だ」

 

「ま、マークス兄さんに剣を・・・」

 

「あぁ・・・所でマークス王子。何故、私を呼び止めた?」

 

「・・・王城へ赴く前に、レヴァンから見たカムイの実力を聞きたい」

 

マークスの言葉にレヴァンはカムイを見る。

レヴァンは静かにカムイを見つめる。

カムイは不安そうにレヴァンを見ておりそれを見たレヴァンは、マークスに結果を伝えた。

 

「・・・ギリギリ合格だろ。まだ不安な所もあるが、戦えない事はないだろ」

 

「ッ!?ありがとうございます」

 

「ふ、別に私は感謝される様な事はしていない。それよりもカムイ王女」

 

「はい」

 

「・・・傲れる事なく、その剣を振るい続けろ。傲れれば剣は乱れを起こし、駄目にする。だが、傲れる事なく剣を振るえば・・・自分で築いてきた剣の腕は必ず答える。それを忘れるな」

 

「・・・分かりましたレヴァンさん」

 

レヴァンはそれを言うと、また二つの指輪を填めて姿を消した。

 

_________________

___________

______

 

レヴァンが消えた後、カムイ達はレヴァンの事を話していた。

 

「すごーい!本の人だよねあの人!」

 

「本の人?」

 

「うん!フェリシアにこの本を借りたんだ!」

 

エリーゼは本を取り出して見せると、怪物殺しレヴァンと書かれた題名の本だった。

古びた本を見て、カムイはそうとう前の物だと分かった。

 

「レヴァンさんはいったい何歳なのでしょうか?」

 

「ふむ、それは私にも分からん・・・少なくとも父上と同年齢だと思うのだが・・・」

 

「でも、とても若々しい声だったわよ。マークス兄さん」

 

カミラの指摘にマークスも深く考え始め、眉間に皺を寄せてしまっている。

 

「・・・マークス兄さん。聞きたい事が」

 

「何だ?」

 

「あのレヴァンと言う奴・・・昔、父上の命を狙った奴じゃないの?」

 

レオンの言葉に回りは凍り付いている。

ガロンの命を狙ったレヴァンの事を知るマークスは、難しい顔で答えた。

 

「・・・色々あったんだ。あの事は父上はもう気にしておられない」

 

「でも、あのまま野放ししていたら」

 

「レオン」

 

レオンの言葉を遮る様にマークスはレオンの名前を一言だけ言った。

とても威圧感があり、回りは静かになった。

 

「・・・ふぅ、もう終わった事なんだ。これ以上は蒸し返すな」

 

「・・・分かった」

 

レオンはまだ納得できないと言う顔だが了承する。

マークスはレオンの言葉に頷くと立ち去って行った。



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無限渓谷の戦い~前編~

レヴァンはカムイと別れ三日が経った時、レヴァンは無限渓谷へ赴き亡者を討伐していた。

レヴァンが足止めされていた時、亡者は各地に現れる様になり、人々のソウルを奪うべく村や町等を襲っていた。

レヴァンは亡者討伐を民や国から受ける事があり、亡者討伐に勤しむ様になった。

 

「ふぅ、終わったか・・・」

 

「レヴァン殿」

 

レヴァンは振り替えると、そこには無限渓谷の砦を守る忍びモズがいた。

 

「此度の異形の者達の討伐、誠にありがとうございます」

 

「いや、奴等の場合は報酬関係なしに討伐しているだけだ。あれは捨て置く訳にはいかないしな」

 

「そうですか。では、約束の報酬です」

 

モズはお金の入った袋をレヴァンに渡すと、レヴァンは受け取って立ち去ろうとした。

しかし、此所で予想だにしない人物達がやって来た。

 

「モズ様!一大事に御座います!」

 

「どうした!」

 

「少数の暗夜王国軍が不可侵の掟を破り迫っております!」

 

「何だと!くッ・・・今、砦にいる兵は少数・・・ますいな・・・」 

 

モズはどうするべきか考えていると、レヴァンは声を掛けた。

 

「モズ殿。私も暗夜王国軍の掃討を手伝っても良いか?」 

 

「よろしいのですか?」

 

「乗り掛かった船だ。手伝うさ」

 

「おぉ、貴方がいてくだされば戦は勝てます!皆の者!有事に備えて戦の用意だ!!!」

 

モズはそう叫ぶと、白夜兵達は戦いの準備に入った。

レヴァンは暗夜王国軍が来るであろう道を見ていると、そこにはカムイ達がいたのだ。

 

「何をやっているんだ・・・カムイ・・・!」

 

レヴァンはそう呟いた時、カムイの横を見ると見知らぬ悪人顔の男とパッチがいる。

 

「パッチに騙されたのか?いや、それなら隣にいる男の説明がつかないな・・・」

 

「どうしました?」

 

「・・・いや、何でもない。さぁ、戦いに出向くとしよう」

 

レヴァンはそう言うと、ツヴァイヘンダーを肩に乗せる様に持ってカムイ達を待ち構えた。

 

_______________

__________

_____

 

カムイはギュンターとジョーカーとフェリシアを連れて偵察に来ていた。

ガロンからガンズとパッチと呼ばれる男二人を預けられ無限渓谷の無人である筈の砦を向かっていた。

しかし、カムイ達はここで予想だにしない警告を聞く事になった。

 

「暗夜王国軍よ!此所は暗夜と白夜の不可侵の掟に定められた地だ!戦闘の意志が無ければ退け!」

 

「ッ!?白夜王国軍が何故此所に!」

 

「カムイ様!此所は退いた方がよろしいかと!」

 

白夜王国軍がいる事で、ギュンターは撤退を進言したが、ここでまたトラブルが起きた。

 

「いや、そうはいかねぇな」

 

ガンズはそう言うと、経済を発した白夜兵の元に向かっていき、斧を振り下ろした。

 

「ぐわぁッ!」

 

「ガンズ、何を!?」

 

「ぐっはははは!白夜兵は皆殺しだ!」

 

ガンズの暴走で、もはや白夜王国軍との戦闘は避けられなくなり、カムイ達は戦闘体勢に入った。

 

「おいおい、これは聞いてねぇぜ・・・これは早々に消えるとするか」

 

パッチはそう呟くと、逃げる用意をした。

カムイ達はパッチの行動に気付かないまま白夜王国軍との戦いが始まった。

 

「はぁ!」

 

老騎士ギュンターが馬上から槍を振るいその身に纏う分厚い鎧で仲間を守り、ジョーカーとフェリシアは暗器で攻撃しつつ傷ついた中間を直していく。

カムイもマークスによって鍛えられた剣術で、白夜兵を倒していく。

だが、劣勢である事は変わらずカムイ達は行き止まりの方へ徐々に追い詰められていく。

 

「やはり、数が多すぎますな」

 

「はい・・・ん?彼処に竜脈があります!」

 

竜脈。

それは王族が発動させる事ができる物で、地形変化や回復等と様々な効果がある。

カムイは竜脈の元に行って発動させると、行き止まりだった場所に白夜王国軍の制圧下にある、砦までの道が出来たのだ。

 

「馬鹿な!道が出来ただと!」

 

「皆さん行きますよ!」

 

カムイ達は橋を渡ろうとした時、カムイの足元に巨大な槍の様な物が刺さった。

カムイは前をよく見ると、そこにはレヴァンが巨大な弓を構えて待ち構えている。

 

「レヴァンさん!?」

 

カムイの言葉にギュンターとジョーカーは首をかしげるが、フェリシアはかなり驚いている。

 

「れ、レヴァン様!?」

 

「知ってるのかフェリシア?」

 

「ジョーカーさん、レヴァン様は有名人ですよ!怪物殺しの異名を持つ英雄です!」

 

「聞いた事がある。かつて、ガロン様が異形の怪物の討伐の途中で出会った放浪者で、怪物を単独で倒した腕を買われてガロン様から臣下の誘いを受けた程の者だ」

 

ギュンターの説明にジョーカーは驚きを隠せないでいた。

レヴァンは竜狩りの弓をしまうと、ツヴァイヘンダーとカイトシールドを手にした。

 

「カムイ王女。これはどういう事だ?何故、不可侵の領域に足を踏み入れた」

 

「それはお父様の命令で・・・無人の砦を偵察に来ました」

 

「無人?・・・今の奴ならやりかねないか」

 

「え?」

 

レヴァンの呟きにカムイは反応するが、レヴァンはツヴァイヘンダーをカムイに向けた。

 

「・・・掛かって来い。どちらにしろ前にしか行けないのだろ?」

 

「カムイ様、此所は逃げましょう!レヴァン様の実力は本物です・・・戦っても勝ち目はありません!」

 

「・・・」

 

「どうした?来ないなら此方から行くぞ?」

 

レヴァンはそう言うと、素早い動きで一気に迫った。

 

「ッ!?」

 

カムイは咄嗟にガングレリで防ごうとしたが、ツヴァイヘンダーが振り上げられた瞬間、カムイは危険を察知して後ろに飛んだ。

すると、ツヴァイヘンダーの振り下ろされた場所には多きなヒビが入った。

 

「ちッ、避けたか」

 

カムイはその言葉を聞いて、背筋が凍った。

あのまま防いでいたら、間違いなく潰されて死んでいた。

それでも、レヴァンとカムイ達の戦いは序章に過ぎない。



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無限渓谷の戦い~後編~

レヴァンはカムイやギュンター達にツヴァイヘンダーを振るう。

特大剣とも言えるツヴァイヘンダーを片手で軽々と振るう姿にカムイ達は怯む。

 

「どうした?そんなへっぴり腰では私には勝てんぞ?」

 

「くッ・・・せやぁ!」

 

カムイはもう戦うしかないと感じ、ガングレリを振るう。

しかし、レヴァンはカイトシールドで防ぎツヴァイヘンダーをカムイに振るう。

 

「きゃッ!?」

 

「カムイ様!」

 

「運の良い奴だ。あと少し避けるのが遅れていたら死んでいたのにな」

 

「・・・何故、貴方は白夜側に?」

 

「私はどちらにも所属していない・・・この戦いに参加したのはただの成り行きだ」

 

レヴァンはそう言うと、ツヴァイヘンダーを再び振るった。

カムイは避けたが、レヴァンの攻撃を防ぎきるのはギリギリの所で、カムイの腕は痺れていた。

レヴァンはカムイの状態を悟ったのか近づいてツヴァイヘンダーを振り上げた瞬間、カムイのガングレリの刃がレヴァンの胸に向かっていく。

 

「はぁ!」

 

カムイは一筋の希望を刃に託し、レヴァンの胸に突き立てようとしたが、レヴァンはカイトシールドを振って弾き返した。

 

「ッ!?」

 

「終わりだ」

 

レヴァンはそれだけを言うと、ツヴァイヘンダーを振るおうとした瞬間、ツヴァイヘンダーの持つ手に暗器が刺さり落とした。

 

「カムイ様!」

 

「フェリシアさん・・・」

 

暗器を投げたのはフェリシアで、レヴァンは確認すると呻き声一つ立てず暗器を引き抜いて捨てた。

 

「まさか、あのフェリシアが私の腕に暗器を投げてくるとはな・・・」

 

「知り合いなのですか?」

 

「はい・・・昔、氷の部族の村にレヴァン様が訪ねに来たんです。でも、怪異が現れてレヴァン様が討伐した後、いなくなったのですが・・・」

 

「そんな事もあったな・・・」

 

レヴァンはそう言うと、黒騎士の矛を取り出して構えた。

 

「さて、第二回戦を始めようか?」

 

レヴァンがそう言って迫ろうとした時、後ろが何か騒がしかった。

 

「何だ、この騒ぎは?」

 

「レヴァン殿!」

 

レヴァンの元に慌てた様子の白夜兵が知らせにやって来た。

白夜兵の慌てぶりからただ事ではないのは分かる。

 

「か、怪異が・・・怪異が現れました!」

 

「怪異だと・・・特徴は?」

 

「羊の様な頭で、大きな得物を両手に一本持っています!」

 

「まさか・・・」

 

レヴァンには覚えがあった。

その怪異は、山羊頭のデーモンと呼ばれるデーモンの一種だ。

場所によっては手強くなる厄介な存在で、攻撃力もとてつもなく高い。

だが、問題はもっと別の所にあった。 

 

「数は?」

 

「・・・三体」 

 

「やはりか・・・」

 

デーモンは一体だけとは限らない。

昔、デーモン遺跡で学んだのだ。

最初の内に立ちはだかったデーモンは手強いにも関わらず、数を増して立ちはだかってきた。

 

「・・・すぐに行く。カムイ決着はまた今度だ」

 

「あ、待ってください!」

 

カムイの呼び止めようとする声も聞かず、レヴァンは走り出して行った。



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山羊頭のデーモン

レヴァンが駆け付けて来ると、砦付近は地獄絵図その物だった。

山羊頭のデーモン三体が白夜兵を蹂躙して回っている。

山羊頭のデーモンの持つ二つの事件は大剣は軽々と白夜兵を切り裂き、白夜兵を恐怖させた。

 

「くッ・・・レヴァン殿はまだか!」

 

「伝令が無事に行けたのならもうすぐ来る筈です!」

 

「なら、レヴァン殿が来るのを信じて怪異を何としても止めるのだ!」

 

モズがそう指示した時、山羊頭のデーモンの一体がモズ達に向かってくる。

モズ達は身構え備えていた時、山羊頭のデーモンの頭に何かが突き刺さり吹き飛ばされた。

 

「待たせたな」

 

声のする方向には、竜狩りの弓を持ったレヴァンが立っていた。

 

「レヴァン殿、ご無事でしたか!」

 

「ふ、当たり前だ」

 

レヴァンはそれだけを言うと、山羊頭のデーモンを見ると立ち上がってきた。

他の二体も現れ、三体に囲まれる様にレヴァンは真ん中に立った。

 

「ちッ、面倒だが相手をするか」

 

レヴァンがそう呟いた時、山羊頭のデーモンの一体が向かってきた。

山羊頭のデーモンの大剣をレヴァンは避けると同時に、黒騎士の矛で切り裂く。

山羊頭のデーモンは血が大量に吹き出すが、倒れる事なくレヴァンに向かってくる。

 

レヴァンはまた攻撃を仕掛けようとしたが、後ろから二体目の山羊頭のデーモンが襲い掛かった。

レヴァンは咄嗟に避けると、三体目が襲い掛かる。

 

「くそ、これではあの時と同じだ・・・」

 

レヴァンは虚ろの衛兵の事を思い出す。

黒騎士の矛を構え直したレヴァンは、三体の山羊頭のデーモンと対峙する。

 

「レヴァンさん!」

 

「なッ!?カムイ!」

 

レヴァンはカムイ達が此所までやって来るとは思わなかった。

山羊頭のデーモン達はカムイに気付いたのかゆっくりと向かっていく。

 

「カムイ様!異形の者が近づいてきました!」

 

「くッ!」

 

カムイ達が戦闘体勢に入ったのを見たレヴァンは大きく叫んだ。

 

「逃げろ、カムイ!」

 

「え?」

 

山羊頭のデーモンは目にも止まらない速さで近づきカムイに大剣を振り下ろそうとした。

 

「ッ!?」

 

カムイは目を力強く閉じたが、一向に痛みがこない。

カムイはそっと、目を開けて目に入ったのは。

 

「大丈夫か、カムイ?」

 

ジークフリートで大剣を防ぐマークスの姿だった。

マークスは素早く離すと、山羊頭のデーモンを切り裂いた。

ジークフリートの力は強大な為、山羊頭のデーモンは堪らず倒れた。

 

「マークス兄さん!」

 

「僕達もいるよ」

 

マークスに続いてカミラ、レオン、エリーゼがやって来た。

 

「皆さん!来てくれたのですか」

 

「えぇ、何か可笑しいと思ったから追い掛けてきたわ。そしたらパッチが逃げてたのを見つけたの」

 

カミラはそう言うと、猫を掴む様にボロボロのパッチがぶら下がっている。

 

「そういや、いなかったな」

 

「いないと思ったら・・・」

 

ジョーカーとギュンターは呆れて物を言えないと言う様に見ている。

パッチは震えながらカミラに懇願する。

 

「あ、あの。もう案内したのですから離してください!」

 

「そうだったわね」

 

「カミラ王女、少し待ってくれないか?」

 

そこに、返り血だらけのレヴァンがやって来た。

レヴァンの後ろには山羊頭のデーモン二体が転がっている。

 

「あら、随分と仕事が早いわね」

 

「慣れてるからな・・・それより、久しいなパッチ」

 

「げッ!旦那!」

 

「パッチと知り合いなの?」

 

「あぁ、昔の事だがこいつに崖を落とされてな。まさかカムイを騙してないだろうな、と考えてな」

 

レヴァンの言葉に暗夜の兄妹やカムイの臣下達はパッチを睨み付けた。

 

「いやいや、まだ騙してない!」

 

「まだ?」

 

「いや・・・その・・・」

 

パッチは口ごもっていると、白夜側から援軍がきた。

 

「どうやら白夜の援軍だな。さて、私は今は白夜側なんだ。相手をして貰うぞ?」

 

「くッ・・・カムイ。此所からすぐに逃げろ」

 

「でも・・・!」

 

「早く!・・・私達もすぐに追い付く」

 

マークスの言葉に、カムイは悲痛そうな表情で臣下を連れて逃げた。



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再会

レヴァンは無くしたツヴァイヘンダーの代わりに修復したバスタードソードを持った。

レヴァンの出す威圧感に、マークス達はたじろぐ。

 

「さて、戦いを始めようか?」

 

「・・・はぁ!」

 

最初に斬り掛かったのはマークスだ。

マークスは馬の機動力を生かして攻撃するが、レヴァンにいとも容易く避けられる。

次に攻撃したのはレオンで、魔法でレヴァンに仕掛けるが、右手に杖を持ち、左手に紋章の盾を持つと唱える。

すると、紋章の盾ら青く光だした。

魔法がレヴァンの元で爆発すると、レオンは仕留めたかと考えていたがレヴァンは盾を構えた状態で無傷だった。

 

「なッ!?」

 

「紋章の盾は魔法を大きく防ぎ、更に魔法の盾と呼ばれる魔法で更に魔防を上げた。今なら魔法を全て防げる」

 

「魔法まで使うのか、それも未知の・・・厄介だな」

 

「次は私が行くぞ」

 

レヴァンはそう言うと、素早く間合いに入るとマークスにバスタードソードで斬り掛かった。

マークスは一撃目は防いだが、二撃目は体勢を崩した。

 

「兄さん!」

 

三撃目がくる前にレオンが防ぎ、事なきを得た。

レヴァンが攻撃最中、カミラはドラゴンに股がりレヴァンの後ろを突いていた。

カミラは上空から急降下して斧を振るうと、レヴァンは紋章の盾で防ぐ。

レヴァンは反撃に出ようとした時、レオンの魔法が飛び、マークスがジークフリートで放った雷が迫る。

 

「くッ!」

 

レヴァンは咄嗟に紋章の盾で防ぐと、大きな爆発と共に土煙が覆う。

 

「やったの・・・?」

 

「・・・いや、まだだ」

 

マークスはそう言うと、土煙が晴れてそこには黒色で装飾された鎧兜と血の様に赤いマントを羽織る騎士だった。

 

「やるな。まさか、私に別の鎧にさせるまでに強くなっているとは思わなかったぞ」

 

「まさかレヴァンか?その鎧は何だ?」

 

「これか?これは竜血の騎士の鎧だ。かつて、竜を狙った英雄ヨアが率いた・・・竜を狩る為の騎士達の鎧だった」

 

マークス達は驚愕した。

竜を狩る騎士の鎧に反応したのは、マークス達は竜の血を引いているのだ。

それなのに竜を狩る、と言われたら誰でも驚く。

 

「さて、続きと行くとしよう・・・私も少々、本気を出すからな」

 

レヴァンはそう言うと、右手に深淵の大剣とアルトリウスの盾を構えた。

レヴァンの持つ深淵の剣は不気味な闇を少し放ち、アルトリウスの盾は何処か聖なる力か何かを感じる。

 

「その武器は?」

 

「かつて、深淵歩きと言われた英雄の武器だ・・・だが、この剣の持ち主の英雄は深淵の怪物に破れ、長い時間をかけて深淵に飲まれ、敵も味方も判別できない怪物になった。この剣も聖剣であったのに深淵の飲まれた剣となったんだ」

 

レヴァンの説明に英雄の使っていた武器とマークス達は聞いて、警戒する。

レヴァンは深淵の大剣を振るおうとした時、何処からともなく忍び達が現れた。

 

「くッ、白夜軍の援軍か。此所は退くぞ!」

 

マークスはそう言うと、カミラ達を連れて退いて行った。

残されてレヴァンは振り向くと、身構える忍びと兵士がいる。

 

「面倒な事になったな・・・」

 

レヴァンは誤解を受けていると悟り、どうするべきか迷っていた時、白夜軍の後ろから声が聞こえた。

 

「待て待て!その者は我等の味方だ!」

 

声の主はモズで、慌てて走ってきた。

 

「この者は異形討伐に加え、暗夜軍撃退に貢献してくれたのだ。武器を下ろしてくれ!」

 

「ほぉ、そうなのか?」

 

すると、奥から口許を仮面で隠した男が現れた。

衣装からすると忍びで、かなりの腕をしているとレヴァンは思っている。

 

「はい。この者がいなければ、暗夜王国軍か異形に殺されていたでしょう・・・」

 

「・・・そうか」

 

男はモズの言葉にその一言だけを言うと、レヴァンを品定めする様に見てくる。

 

「・・・何だ?」

 

「いや、何でもない」

 

男はそう言った時、また白夜王国軍の軍勢がやって来た。

先頭には赤い鎧を着る侍がいる。

 

「リョウマ様が着たな」

 

「リョウマ?もしかして・・・あのリョウマか?」

 

レヴァンは昔、カムイとリョウマ二人と過ごした事を思い出す。

リョウマはやって来ると、男の元にやって来た。

サイゾウとモズ達は跪いてリョウマを出迎える。

 

「ご苦労だったサイゾウ」

 

サイゾウと聞いて、レヴァンは疑問に思った。

サイゾウはもう少し優男みたいな人物だったのに、容姿がまるで違った。

レヴァンは疑問に思いつつも、二人の話を聞く。

 

「はい・・・しかし、俺は何もしておりません。モズの話によるとこの者が暗夜王国軍の退けたと」

 

リョウマはレヴァンを見ると、何か疑問の表情を見せた。

 

「お前・・・何処かで会ったか?」

 

「・・・会ってたのはあっている」

 

レヴァンはそう言うと、竜血の騎士の鎧から逃亡騎士の鎧に変えた。

すると、リョウマは驚いた様な顔になった。

 

「レヴァン・・・レヴァンなのか!」

 

「お久しぶりです」 

 

「そうか。お前が暗夜王国軍を・・・」

 

「あの、リョウマ様。お知り合いですか?」

 

サイゾウはリョウマに聞くと、リョウマは笑いながら頷く。

 

「あぁ・・・昔、父上の客人として来訪してな。僅かな時間だったが色々な武器を見せてくれた」

 

「・・・あの時は私もシュヴァリエにいたんだ。スメラギ殿を助けられなくてすまなかった。リョウマ王子・・・」

 

「いや、あの時はどうしようもなかったんだ・・・謝る事はない・・・それより、王都に寄らないか?母上もお慶びになる」

 

「うむ・・・では、そうさせて貰おう。今は宛はないしな」

 

レヴァンはリョウマの言葉に甘え、白夜王都へ向かう事になった。



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再びの襲撃

レヴァンはリョウマ達に連れられて白夜王都へやって来た。

相変わらず賑やかな町並みであり、暗夜との一触即発の雰囲気等は無かった。

 

「相変わらずだな。この雰囲気」

 

「この国は平和を愛し、民を愛する国だからな。出切れば戦争は避けたいが・・・」

 

リョウマは暗夜との戦争を危惧していた。

スメラギが殺されたとはいえ、やはり平和を保っていた白夜を戦争の渦に入れるのは酷なのだろう。

 

「戦争はさせはしないさ。私がな」

 

「それはどう言う意味だ?」

 

「・・・秘密だ」

 

レヴァンはそう言うと、リョウマはまだ疑問を浮かべていたが白夜の王城へ向かっていく。

 

________________

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白夜王城の玉座の間へ行くと、そこにはミコトが立って待っていた。

 

「お帰りなさいリョウマ」

 

「はい。母上、今回の暗夜との紛争で懐かしい人を連れてきました」

 

「懐かしい人?」

 

リョウマはそう言うと、後ろを見せる。

そこにはレヴァンがおり、ミコトは一目見ると微笑んだ。

 

「レヴァンなのですね。お久しぶりです」

 

「お久しぶりです。ミコト殿」

 

「まさか貴方が手を貸してくださるなんて・・・本当にありがとうございます」

 

「いや、世話になった借りを返しただけです・・・」

 

レヴァンとミコトは親しそうに話していると、奥から誰かがやって来た。

 

「ミコト様」

 

「あら、サイゾウさん。どうしました?」

 

「今日、レヴァンが訪ねてきたと息子から聞きまして。一目見たくてきました」

 

そこには老いた男がいた。

老いた男を見たレヴァンは、まさかと思い聞いた。

 

「まさか、フウマ公国で会ったサイゾウ殿か?」

 

「おぉ、覚えてくださったか!あれから月日が経って、わしは歳を取りまして息子に家督を譲って隠居したのですが・・・息子と会って流石に驚いたでしょうか?」

 

「同じ名前だからな・・・もしかして、家督を継ぐ者がサイゾウと名乗るのが習わしなのか?」

 

「えぇ・・・息子は五代目。息子の晴れ舞台を見れたのも貴方のお陰です」

 

四代目サイゾウは深々と頭を下げる。

 

「いや、当然の事をしたまでだ。目の前で命が散るのを見たくないだけでな」

 

レヴァンは少し、悲しそうな雰囲気を出した。

不死の世界ではレヴァンは多くの人や英雄の死を見てきた。

その中にアイテムを買って親しくなったり、共闘して敵に挑んだ者もいるが最後に正気を失ってレヴァンに襲い掛かり、殺した。

 

「何か訳がありそうですね・・・」

 

「あぁ・・・」

 

「・・・あの!立ち話はこれくらいにしましょう。レヴァンさん、今日はゆっくり休んで行ってください」

 

「はい」

 

_________________

___________

______

 

レヴァンはかつて宛がわれた部屋を与えられると、レヴァンは武器を出して手入れを始める。

こうしていると、昔に戻った様な感覚を受ける。

 

「・・・ふぅ」

 

レヴァンは一息ついた時、誰かの気配を感じ取った。

 

「・・・誰だ?」

 

レヴァンは打刀を手に襖を開けると、誰もいない・・・と、思ったら縁側の右側に少女がいる。

少女は気弱なのか、かなりビクついている。

 

「・・・どうした?」

 

「いえ、此所を通ろうと思いまして・・・す、すみません!」

 

「いや、脅かした此方が悪いんだ。すまない、驚かせたな」

 

レヴァンはそう言って襖を閉めようとした時、庭に何かの気配を感じ取った。

それは人の気配ではなく、明らかに異形の物だった。

 

「・・・部屋に入ってろ」

 

「へ?」

 

「入るんだ。襖を閉めて静かになるまで出てくるな」

 

「は、はい!」

 

少女は言われた通り、部屋に入って襖を閉めた。

レヴァンは打刀を鞘から抜くと、構えた。

すると、奥からハベルの鎧と武器を持った闇霊が現れた。

 

「闇霊か・・・それも、ハベルと来たか」

 

闇霊はレヴァンを確認すると、重い足取りだが向かってきて大竜牙を振り下ろす、大きな爆発音と共に庭に大きな窪みができるも、レヴァンには当たらなかった。

レヴァンは闇霊の後ろに回り込んで打刀で斬りつけるが、ハベルの鎧の防御力で弾き返された。

 

「ちッ、やはり威力が足りないか・・・なら、これならどうだ」

 

レヴァンは打刀をしまい、新たに黒騎士の特大剣を取り出した。

異様な大きさが目立つ黒騎士の特大剣を闇霊に向かって振るうと、攻撃が当たった闇霊は少し怯んだ。

レヴァンはこの期を逃さず振るい、闇霊の攻撃は避けていく。

 

そうした戦い方をして、遂に闇霊を倒した。

 

「ふぅ・・・」

 

レヴァンは一息ついていると、襖が開けられた。

少女が怯えながら覗いている事からそうとう怖かったのだとレヴァンは思った。

 

「あ、あの!今の爆発や金属音は何ですか!」

 

「・・・知らない方が良い」

 

「は、はい・・・」

 

レヴァンの言葉の意味を何か察したのか、少女は返事をすると向こうからバタバタと走ってくる音が聞こえてくる。

 

「どうした!」

 

「ね、姉様!」

 

少女の姉なのか赤い短髪が特徴の少女が白夜の槍である薙刀を持って、走ってくるのが見えた。

 



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打ち明ける真実

闇霊を撃退した時、最初に薙刀を持った少女が騒ぎを聞き付けてやって来ると、続々と武装した人間が集まってきた。

中にはリョウマやミコト、四代目サイゾウと五代目サイゾウそして、長い銀髪束ねた弓を持つ青年もいる。

 

「どうしたレヴァン!何があった!」

 

「実はな庭に怪しい者がいたので、交戦したのだ。取り逃がしたが・・・」

 

レヴァンは闇霊が現れたとは言わず、怪しい者と言って誤魔化した。

白夜の者達に闇霊と言う驚異を教えて、不安にさせたくなかったからだ。

 

「そうか。サイゾウ、大至急その怪しい人物を追うんだ。暗夜の斥候かもしれん」

 

「はッ!」

 

五代目サイゾウはすぐに消えて捜索に向かった。

レヴァンは黒騎士の特大剣をしまうと、リョウマとミコトは駆け寄ってくる。

 

「大丈夫か。戦ったと言う事は怪我をしていないか?」

 

「いや、相手の攻撃を避けていったからな・・・怪我はしていない」

 

「そうですか・・・良かった」

 

「あ、あの。母様達のお知り合いですか?」

 

「えぇ・・・私の古い友人です。レヴァンさん。この子達はヒノカ、サクラ、タクミと言い、私の大切な子供です」

 

ミコトに紹介された三人の前に出ると、レヴァンは礼儀正しく御辞儀して挨拶する。

 

「初めまして。私はレヴァン・・・放浪の者だ」

 

「ひ、ヒノカだ・・・」

 

「サクラです・・・」

 

「・・・」

 

レヴァンの挨拶に二人は応えるが、タクミは特に何も言わない。

レヴァンはタクミの目に疑いの色がある事を知ると、疑われているのがレヴァンでも分かった。

レヴァンはタクミの反応に少し、戸惑っているとサイゾウが戻ってきた。

 

「リョウマ様。怪しい暗夜風の鎧を着た男を捕まえました」

 

「そうか。此所へ連れてきてくれ。レヴァンに確かめさせる」

 

「はッ」

 

サイゾウはすぐさま消えると、暫くして一人の男を連れてきてきた。

 

「ま、待て!何の理由で連れてこられているか分からんが、私は無実だぞ!」

 

男はそう叫んでいるが、サイゾウに取り抑えられる。

レヴァンは男とその鎧を見ると・・・タマネギみたいな物で、レヴァンはその鎧を見て額に手を当てた。

 

「ジーグマイヤー殿・・・」

 

「む、その声は・・・おぉ、やはり貴公か!すまないが助けてくれないか!」

 

レヴァンはジークマイヤーの反応に呆れていると、リョウマは少し困り顔で聞いてくる。

 

「知り合いか?」

 

「・・・まぁ、知り合いだ。良い奴ではあるが、かなり考え込んだりする奴なんだ。絶対、何かを考えてその言動を怪しまれて捕まったんだろう」

 

「おぉ、流石は貴公!私が捕まった経緯を当てるとは!」

 

「(当たってたのかよ・・・)」

 

レヴァンは心の中でそうツッコムと、ジークマイヤーは続けて言う。

 

「貴公!共に使命の少女を探しに行こう!貴公となら」

 

「使命の少女?」

 

ジークマイヤーの言葉にミコトが反応すると、レヴァンは素早くジークマイヤーの兜を押さえた。

 

「な、何を!」

 

「ジークマイヤー・・・その話は今、此所でするな・・・その少女の親族が集まっているんだぞ・・・」

 

「そ、そうだったのか・・・?」

 

「あぁ・・・間違っても大声でもう言うな・・・」

 

「どうしたんだレヴァン?」

 

「いや、何でもない」

 

ジークマイヤーへレヴァンが忠告すると、リョウマにどうしたのかと聞かれ、レヴァンは誤魔化す様に言った。

その後、ジークマイヤーは無実だとレヴァンは言って解放された。

レヴァンとジークマイヤーは部屋で活動情報を交換していた。

 

「成る程、ソラール達も動いたのか」

 

「うむ、ソラール殿は白夜に来ていると思うが・・・見掛けておらん。レア殿も二人の従者を連れて暗夜へ向かった。導く者側は少なく、破滅側は多いのは確かだ」

 

「そうか・・・」

 

「しかし、やはり貴公はすごいな。使命の少女カムイを見付けるとは」

 

ジークマイヤーの言葉にレヴァンはうつ向いて応える。

 

「すまない。カムイとは、はぐれてしまった。まだ無事だと思うが・・・」

 

「・・・大丈夫だ!別にすぐに破滅側が現れる訳ではない」

 

ジークマイヤーは励ます様に言うが、やはりレヴァンの心は晴れない。

レヴァンはどうするべきか考えていると、襖の外に物音が立った。

 

「貴公・・・」

 

「分かっている・・・」

 

レヴァンはロングソードを片手に襖に手を掛けて・・・素早く開けた。

そこにはミコトが立っていた。

 

「ミコト殿・・・!」

 

「・・・どう言う事ですか?カムイが」

 

「・・・聞いておられたのですか全てを?」

 

ミコトは頷くと、レヴァンは仕方ないと思いミコトに全てを話す事にした。

 

「さて、何処から話すべきか・・・」

 

「やはり、原因から言った方が良いのでは?」

 

「・・・そうだな」

 

レヴァンは全てを語る。

自分は不死である事、不死の世界からこの世界に飛びされた事、カムイを使命達成の為に導き不死から解放される為の旅の事、そしてカムイを破滅させようと狙う者がいると。

 

「そんな・・・」

 

「信じられないだろうが、全て真実だ。昔に見ただろ・・・普通の人間なら振るう所か持つ事さえ叶わない武器を振るっている私を・・・私は、化け物だ。私は普通の人間になりたくてカムイを利用する様に守り、使命を果たさせようとした。私は・・・最低なのかもな・・・」

 

「・・・そんな事はありません」

 

レヴァンはミコトの方を見ると、真剣な目付きでレヴァンの事を見つめている。

 

「確かに貴方は化け物かもしれません・・・ですが、貴方には心があるではありませんか?」

 

「心・・・?」

 

「はい・・・本当の化け物は心の無い存在こそが化け物。でも、貴方は心があって人に対して本当に優しい方です。そんな方が本物の化け物である筈がありません。貴方は・・・ほんの少し、怪力な人間です」

 

ミコトの言葉にレヴァンは、涙を流した。

初めて不死として受け入れられた事に嬉しかった。

レヴァンが不死になってからは、同じ境遇の不死以外に受け入れられず、冷たい境遇しか受けてこなかった。

 

「ありがとう・・・ミコト殿・・・」

 

レヴァンはただその一言を言うのが限界で、ミコトは優しく微笑む。

 

「・・・私はどうすれば?」

 

一人、置いていきぼりなジークマイヤーは困った。



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カムイの帰参と救援戦

レヴァンは縁側で、緑茶を飲みながら武器の手入れをしていると、城内がバタバタし始めた。

 

「何だ?」

 

「おぉ、貴公!そこにいたか!」

 

「これは、どうしたんだ。ジークマイヤー殿」

 

「カムイ殿が見つかって帰参されたそうなのだ!カムイ殿は無事だったのだ!」

 

ジークマイヤーの言葉に、レヴァンは驚いて固まってしまった。

暫くその状態だったが、レヴァンは正気を取り戻した。

 

「それで、カムイ殿は何処に?」

 

「今はミコト殿とリョウマ殿が玉座の間で話をしているが・・・」

 

レヴァンは立ち上がって玉座の間へ向かっていく。

 

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______

 

レヴァンが玉座の間へ来ると、何か慌ただしくなっていた。

 

「どうした?」

 

「レヴァンか。ヒノカとサクラが民の治療中にノスフェラトゥと人形の異形に襲われていると報告があった。それで俺はカムイと共にヒノカ達の救援に向かう所だ」

 

レヴァンはリョウマの後ろを見ると、状況を飲み込めていないカムイの後ろ姿が目に入った。

カムイはレヴァンの方を見ると、驚いた顔で見てくる。

 

「レヴァンさん!?」

 

「そうだ、カムイ。レヴァンはまだ子供だった時に俺とカムイを短い間だっだが色々と教えてくれた人だ。覚えていないのか?」

 

リョウマの言葉にカムイは頷くと、レヴァンは項垂れる。

 

「・・・やはり記憶を無くしてしまっていたか。それは後々、話すとしてリョウマ殿。すぐに救援に行こう。私も動向する」

 

「そうか。レヴァンがいてくれるのなら頼もしい限りだ。行くぞ!」

 

リョウマの言葉に、カムイとレヴァンはすぐに救援に向かって行く。

 

________________

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レヴァン達が来ると、既にノスフェラトゥと異形の大軍に囲まれたヒノカとサクラがいる。

異形はレヴァンが見慣れた亡者兵で、下級と上級がわんさかいる。

 

「不味いな・・・まさか亡者がこんなにいるとは・・・」

 

「亡者?」

 

「・・・亡者は心を無くした元人間だ。人のソウルを狙い本能のままに襲う。今回はヒノカやサクラのソウルに引き付けられたのか、あの二人を中心に囲んでいる」

 

「くッ!それならもっと早く救援せねば」

 

「気を付けろ。奴等は亡者とはいえ、戦いの実力はそのままだ。気を引き締めて戦え」

 

レヴァンはそれだけを言うと、亡者とノスフェラトゥに向かっていく。

レヴァンはバスタードソードとカイトシールドを手に次々とノスフェラトゥと亡者を倒していく。

 

「すごい・・・」

 

「油断するなカムイ。まだ敵は多いぞ」

 

カムイとリョウマの元にノスフェラトゥと錆びた斧、折れた剣、槍、盾等で武装した亡者の兵が迫ってきた。

 

「せやぁ!」

 

「はぁ!」

 

リョウマは素早い動きでノスフェラトゥと亡者を斬り、蹴散らしていく。

カムイはガングレリを振るっていると、後ろから亡者兵が斬り込んできた。

 

「しまったッ!?」

 

カムイは突然の不意打ちに対処できないでいると突然、亡者が崩れ落ちた。

亡者の後ろには緑の髪の忍びと棍棒を持った女、そしてジークマイヤーがいる。

 

「ふぅ、間一髪だったな・・・」

 

「スズカゼさん、ヒノカさん!あの、貴方は・・・?」

 

「おぉ、そうえば会ってなかったな!私はカタリナのジークマイヤー。助太刀に来たぞ!」

 

ジークマイヤーはそう言うと、飛び掛かってきた亡者兵を凪ぎ伏せた。

 

「レヴァン殿は何処だ?一緒に行ったと聞いていたが・・・」

 

「レヴァンさんならあそこに・・・」

 

カムイの指差す方を見ると、そこには無数のノスフェラトゥと亡者を凪ぎ払うレヴァンの姿があった。

バスタードソードとカイトシールドから銀騎士の剣とアストラの直剣を持って二刀流で戦っていた。

 

「す、すごいな・・・」

 

「ふむ、やはり腕は衰えていないな。さて、このまま立っていただけではレヴァン殿に怒られてしまうな。我々も続くぞ!」

 

ジークマイヤーはそう言うと、大軍に向けて走って行った。

ジークマイヤーは亡者とノスフェラトゥを倒していき、レヴァンの元に合流する。

 

「貴公!」

 

「ん、ジークマイヤー殿か?」

 

「助太刀するぞ!」

 

「助かる」 

 

レヴァンとジークマイヤーは互いの背中を守りながら目の前の敵を討ち倒し、前に進み続ける。

レヴァンとジークマイヤーがヒノカ達の元に辿り着くと、ヒノカが体勢を崩しながらサクラを守っていた。

亡者の一体がヒノカに襲い掛かろうとした時、レヴァンの斬撃が襲う。

 

「大丈夫か」

 

「お前は、レヴァンか?」

 

「その様子だと無事の様だな。後は任せろ・・・」

 

レヴァンは銀騎士の剣とアストラの直剣を構えると、ノスフェラトゥと亡者と対峙した。

亡者とノスフェラトゥはレヴァンを見付けると、襲い掛かるがレヴァンは難なく倒していく。

 

「すごい・・・」

 

ヒノカの口からそう漏れている間にレヴァンは亡者とノスフェラトゥの群れを撃滅した。



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カムイの迷い

ノスフェラトゥと亡者を殲滅したレヴァン達は、ヒノカ達の元に集まっていた。

 

「片付いたな・・・」

 

「うむ。しかし貴公、この状況の中に我々はいても良いのか?」

 

ジークマイヤーはそう言うと、カムイ達の方へ見る。

そこには涙を流しながらカムイに抱き付くヒノカと近くに立っているサクラがいる。

リョウマもいて、この雰囲気の中にジークマイヤーは戸惑っている。

 

「黙って立ってればいいさ・・・折角の再開に水を指す訳にはいかん・・・」

 

「・・・そうだな」

 

レヴァンの言葉にジークマイヤーは頷くと、カムイ達を見る。

カムイはまだ戸惑っているのか、オロオロとしつつもヒノカを支えている。

 

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白夜の王城へ戻ったレヴァンは夜、縁側で武器の手入れをしていると足跡が僅かに聞こえてきた。

レヴァンは足跡の方を見ると、そこには元気の無いカムイだった。

 

「どうした?」

 

「・・・レヴァンさん。私は本当に白夜の人間なのですか?」

 

「どうしてそれを聞く?」

 

「・・・ミコト女王がレヴァンさんと過ごした日があったと聞いて」

 

「気になったのか?」

 

レヴァンはそう聞くと、カムイは頷いた。

レヴァンは少し溜め息をつくと、武器をしまった。

 

「・・・確かに過ごしたな。あの夜、偶然だったかもしれんが・・・本当に楽しい時間だった」

 

「そうだったのですか?」

 

「あぁ・・・興味津々に私の武器を聞いたり、花をくれたりしたな」

 

レヴァンは兜で見えないが少し笑った。

 

「・・・私はやはり白夜の人間なのですね。ですが、私には・・・!」

 

「好きな道を選べば良いのではないか?」

 

「え・・・?」

 

「どちらかが大切なら、その道を取れば良い。私は知っている・・・お前が暗夜の兄妹やフローラ達と過ごしていた時間を・・・一つしか道が選べないなら、後悔の無い道を選べば良い」

 

レヴァンの言葉にカムイは、まだ迷いのある表情でうつ向く。

レヴァンはそんなカムイにそっと頭を撫でた。

 

「まだ迷うなら、ゆっくり考えろ。別に絶対に悪い状況に行くわけではあるまいからな」

 

「レヴァンさん・・・」

 

レヴァンの言葉にカムイは不安の無い表情になっている事をレヴァンは確認すると、縁側を後にした。

 

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レヴァンは城内を歩いていると、弓を訓練する為なのか幾つか的のある場所にレヴァンはやって来た。

 

「・・・少し、練習するか」

 

レヴァンはそう呟くと、ロングボウを持って立つと弓を引いた。

狙いを定めると離し、矢を飛ばすと見事に真ん中に当たった。

レヴァンは当たった事を確認すると、素早く矢を取り弓で放つを繰り返した。

 

「何してるの?」

 

レヴァンは声の聞こえた方を見ると、タクミが練習用なのか弓と矢を持って立っていた。

 

「少し弓の練習をしていた。少しは練習しなければなまってしまうからな」

 

「ふぅん・・・レヴァンも弓を使うんだ」

 

「剣だけでは対応出来ない事も多かったからな」

 

レヴァンはそう言うと、的に刺さった矢を引き抜くと弓をしまって出口の方へ行く。

 

「では、お先に失礼する」

 

レヴァンはそれだけを言うといなくなり、タクミはレヴァンの使っていた的を見てみると、驚いた。

的は殆んど真ん中にしか当たっておらず、弓の達人でもこうはいかない。

 

「・・・いったい何者なんだ?」

 

タクミはそれだけしか言えなかった。



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悲しみ

レヴァンは部屋前に戻ると、縁側にミコトが座っていた。

レヴァンは近づくとミコトは気付いたのか、レヴァンの方へ顔を向けた。

 

「レヴァンさん」

 

「ミコト殿。こんな所で何をしているのでする?」

 

「・・・少し、カムイの事で相談が」

 

ミコトの言葉を聞いたレヴァンは、ミコト、隣に座って話を聞く事にした。

 

「それで相談とは?」

 

「はい。実は、カムイを御披露目に出そうと思っているのですが・・・民はカムイを受け入れてくれるのか心配なのです。白夜の王族と言えど、暗夜の王族として育っていたのは事実・・・カムイを御披露目に出して反発が無いのかと・・・」

 

「・・・うむ、確かに難しい事かもしれん。しかし、カムイは貴方とスメラギ殿の娘だ。民もきっと受け入れてくれる」

 

「・・・はい」

 

ミコトはやはり不安は抜けないのか、暗い表情を見せるがもレヴァンに少し微笑む。

レヴァンはミコトのその微笑みを見て、とても綺麗だと無意識に考えた。

 

「・・・レヴァンさん」

 

「何だ?」

 

レヴァンはミコトの方を見た時、肩にミコトが寄り添いレヴァンは体が少し跳び跳ねた。

 

「少しだけ、このままでいさせて下さい・・・」

 

「・・・あぁ」

 

レヴァンは寄り添うミコトを受け入れ、暫くの間だけその状態でいた。

 

「私はどうすれば・・・?」

 

その二人の様子を困った様に見ているジークマイヤーに気付かないで。

 

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翌朝、御披露目当日となりレヴァンは城下にやって来ていた。

城下は屋台や人で賑わい、カムイ達も楽しんでいる中、レヴァンは屋台の男に呼び止められた。 

 

「ちょっとそこの人!良かったら見ていかない?」

 

「うむ、少しだけなら」

 

レヴァンは屋台の品を見てみると、御守りなのか色々な物袋が売られている。

 

「これは何の袋なんだ?」

 

「これは縁結びの御守りだよ。色々な物を祝いの日に売ってるけど、中でも恋が叶うかもしれないこの御守りが一番売れてるよ」

 

男はそう言うと、赤い御守りをレヴァンに見せた。

恋愛と聞いて、レヴァンは昨晩の事を思い出して少し恥ずかしくなる。

 

「おッ!まさか、お客さん。もしかして意中の人でもいるのかい?」

 

「むぅ・・・」

 

レヴァンは恥ずかしさばかりに顔を背けると、男は笑って恋愛の御守りを渡した。

レヴァンは仕方なく受け取ってお金を出すと、男は笑いながら言う。

 

「まいど!恋が叶う事を祈りますよ!」

 

「少し静かになれ」

 

レヴァンはもう、恥ずかしくて堪らないでいると、向こうの広場にミコトが白夜の兄妹達と見慣れぬ水色の長髪の少女がいた。

どうやら御披露目が始まった様でカムイもそこにいる。

 

「特に反発がないが・・・逆に受け入れらているじゃないか」

 

レヴァンは安心した様にそう呟いた瞬間、カムイの腰に差してあったガングレリが突然騒ぎだし、抜けていった。

ガングレリの飛んだ方を見ると、そこには黒いフードを被った男がガングレリを取り、地面に勢いよく突き刺した。

 

刺さった瞬間、地面は爆発して多くの民が吹き飛ばされた。

しかも、幾つかの岩がカムイの元へ向かって飛んでいる。

 

「カムイ!」

 

レヴァンは走ったが到底間に合わず、カムイの死が決まったと思った時、ミコトがカムイを庇って倒れた。

レヴァンは立ち止まって動揺した。

 

ミコトがカムイを庇って死にかけている。

レヴァンは動揺を抑えてすぐに駆け付けた。

 

「ミコト殿!」

 

「・・・レヴァン、さん」

 

「ミコト殿!しっかりしてくれ!」

 

「レヴァン、さん・・・お願い・・・です・・・私はもうすぐ死ぬでしょう・・・だからカムイ・・・を・・・守って・・・ください・・・」

 

「分かった!分かったから死なないでくれ!」 

 

レヴァンはそう叫ぶが、ミコトは優しく微笑むと今度はカムイの方へ見る。

 

「カムイ・・・」

 

「お母様・・・!」

 

「良かった・・・貴方が無事で・・・私は・・・貴方の事を・・・本当に・・・娘として愛していました・・・」

 

「嫌です!死なないでください・・・!」

 

ミコトの言葉にカムイは泣き崩れる。

 

「レヴァン・・・」

 

「何ですか・・・?」

 

「最後に一つだけ・・・私は・・・貴方の事が・・・す・・・きでした」

 

レヴァンはそれを聞いて、目を見開いた。

そして、レヴァンはミコトに告げた。

 

「私も好きだった・・・」

 

「ふふ・・・これで思い残す事はもう・・・ありません・・・どうか、カムイの事を・・・よろしく・・・お願いします・・・」

 

ミコトはそれだけを言うと、息を引き取った。

カムイはミコトが息を引き取った事を知ると、深く泣いた。

レヴァンは悲しみを堪えて立ち上がると、フードの男を殺気を含んで睨み付けた。

 

「貴様は生かして帰さん・・・殺してやるぞ・・・!」

 

レヴァンはそう言うと、二つの石を取り出すと光に包まれた。

すると、レヴァンの姿が竜の様な鎧に包まれその手に剣と盾が握られている。

その姿にリョウマ達は驚いていると、レヴァンが動いた。

そして、男とレヴァンはぶつかった。



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暗夜軍の襲来

レヴァンは男に向かっていくと、素早く剣を振るう。

だが、男は容易くレヴァンの攻撃を受け止めるとガングレリでレヴァンを攻撃する。

レヴァンは盾で防ぐと、剣で攻撃する。

 

激しい攻防戦が続く中、後ろから大きな気配が迫って来るのを感じたレヴァンは振り替えると、白と青を協調した竜らしき生き物が迫っていた。

 

「くそ、増援か!」

 

レヴァンは向かえ討とうとした時、遠くからリョウマの声が聞こえた。

 

「止めろレヴァン!その竜はカムイだ!」

 

「何!?」

 

レヴァンは驚いて竜の方を見た時、既に竜は男の元に向かっており、戦闘になっていた。

 

「くそ!」

 

レヴァンは走って向かうが間に合わず、男はカムイによって倒された。

しかし、カムイはいっこうに戻る気配はなく、暴れまわっている。

 

「止めろカムイ!」

 

レヴァンは呼び掛けるが、カムイは高い雄叫びを挙げてレヴァンに向かって突進してきた。

レヴァンはローリングで避けると、今度は水の様なブレスを吐いてくる。

レヴァンはブレスを防ぐと、カムイはまた突進してきて今度は吹っ飛ばされた。 

 

レヴァンは体勢を整えて立ち上がると、カムイは雄叫びを挙げて暴れまわっている。

 

「どうすれば・・・」

 

レヴァンはカムイを止める為に考えていると、何処からともなく歌声が聞こえてきた。

レヴァンは見てみると、そこにはリョウマ達と共にいた水色の長髪をした少女が歌いながら近づいている。

 

「何をするつもりだ・・・?」

 

レヴァンはそう呟いた時、カムイが少女を押し倒して首を前足で掴んだ。

レヴァンは咄嗟に前に出ようとしたが、カムイの様子がおかしく徐々に大人しくなっている。

そして、カムイは激しい光と共に元の姿に戻った。

カムイは暫く気を失っていたが、すぐに意識を取り戻した。

 

「・・・私は、何を?」

 

「気が付いたか?」

 

「・・・レヴァンさん、なのですか?」

 

カムイのその言葉を聞いてレヴァンは安堵すると、輝きだし元の逃走騎士に戻った。

 

「・・・いったい何があった?いきなり竜化して暴れだしていたぞ?」

 

「・・・お母様の死を見て、急に体が熱くなって・・・」

 

「もう良い・・・無理に思い出すな」

 

レヴァンはそう言うと、リョウマ達がやって来た。

 

「カムイ!」

 

「リョウマ兄さん」

 

「・・・ふぅ、無事だったか」

 

リョウマは安堵する様に呟くと、継ぎにミコトの遺体のある場所へ行く。

ミコトは静かに眠っており、カムイとリョウマ達は深く悲しんでいる。

 

「母上・・・!」

 

「母様!」

 

「グスッ・・・母様・・・」 

 

リョウマとヒノカとサクラは涙を流して泣いている。

そんな中で、タクミは悲しみと苛立ちがあったのか、カムイを睨みつけながら言う。

 

「くッ・・・お前のせいだ・・・お前のせいで母上が!」

 

「ッ!?」

 

「タクミ!」

 

タクミの言葉にカムイはショックを受けたのか表情は更に暗くなる。

無理もない事だった。

旗から見れば、カムイが持っていたガングレリで死んだのだ。

責めてしまうのも無理はない。

 

「・・・貴公。これは・・・破滅側の陰謀なのだろうか・・・?」

 

「・・・分からん。だが、その可能性はあるだろうな・・・」

 

レヴァンはミコトの遺体を見詰めながらそう言う。

 

「・・・無理をしなくても良いのたぞ?」

 

「すまない・・・だが、泣いている暇は、無いんだ」

 

レヴァンは肩を震わせながらそう言うと、ジークマイヤーは察したのか無言になった。

レヴァンは兜越しで涙を流していたが、レヴァンは気配を感知して振り返った。

 

「・・・」  

 

「ど、どうしたのだ?」

 

「・・・何かいる」

 

レヴァンは銀騎士の剣を取ると、気配のする方へ構える。

その様子が見えたのか、リョウマがやって来た。

 

「どうした?」

 

「・・・何かが来る様だ。警戒していてくれ」

 

レヴァンがそう言った時、赤い人形の物体が現れた。

だが、その姿を見たレヴァンの背が凍り付いた。

赤い人形の物体は走って迫ってきた。

 

「レヴァちゃーん!」

 

「み、ミルドレッド!」

 

レヴァンの聞いた事のない声に、リョウマを筆頭とした兄妹達は唖然とした。

レヴァンは迫りくるミルドレッドを避けて掴み、投げ飛ばした。

ミルドレッドは投げ飛ばされはしたが、また走ってくる。

 

「ジークマイヤー。あれは何なんだ?」

 

「あぁ・・・まだ追い掛けられていたのか・・・あの赤い者はミルドレッド。レヴァンに何故か惚れた食人鬼だ」

 

「食人鬼だと!」

 

「まぁ、別にレヴァンさえいれば無害だが、その代わりレヴァンが犠牲になる」

 

「・・・大変ですね」

 

ジークマイヤーはそう言うと、サクラの同情とも取れる言葉が出た時、レヴァンは遂にミルドレッドに捕まった。

 

「離せミルドレッド!今はこんな事をしている暇はない!」

 

「レヴァちゃん!貴方、浮気してたでしょ!浮気は許さないわよ!」

 

「何が浮気だ!付き合ってすらいないだろ!」

 

「もう、照れちゃって///」

 

その後、レヴァンは何とかミルドレッドを引き剥がすと息を切らしながらレヴァンはミルドレッドに問う。

 

「はぁ、はぁ・・・それで何の用だ?」

 

「ふふ、実はね・・・暗夜王国軍が迫ってるのよ」

 

「何だと!?それは本当か!」

 

「あら、貴方は誰?」

 

「この白夜王国の第一王子リョウマだ。何故、知らない?」

 

「レヴァちゃん以外の男には興味ないの。それよりもどうするつもりなの?」

 

ミルドレッドの問いに、リョウマは応えた。

 

「無論、迎え撃つ!暗夜にこれ以上、好き勝手はさせん!」

 

リョウマの答えに兄妹達も賛同の声が挙がり、戦う事になった。

リョウマ達は行こうとした時、石像が突然割れて何かが飛び出してきた。

その何かとは、黄金とも取れる色の剣だった。

 

「これは・・・夜刀神!白夜に伝わる伝説の刀だ」

 

「伝説の刀・・・」

 

レヴァンは夜刀神を見ると、確かに普通の武器とは違う力を感じ取る。

まるで、火の様に温かく篝火の様だった。

夜刀神はそのまま降りてくると、カムイの元へ飛んできた。

 

「夜刀神がカムイの所へ・・・!」

 

「私が・・・」

 

「カムイ。この刀はお前の力になる・・・受け取るんだ」

 

レヴァンはそう言うと、カムイは夜刀神の柄を掴んだ。

夜刀神はまるでカムイに合わせた様に安定し、カムイも扱いやすそうに見える。

 

「ふふ、これで面白くなってきたわね」

 

「・・・ミルドレッド。お前は何処の陣営だ?」

 

「あら、私は貴方がいるならどの陣営でも構わないわよ?でも、今回は敵になっちゃうかな」

 

「どう言う事だ?」

 

「私はね・・・暗夜王国に属してるの」

 

「何だと?」

 

ミルドレッドの言葉にレヴァンは驚きを隠せなかった。

ミルドレッドが暗夜所属になるとは思ってもいなかった。

 

「まぁ、すぐに抜けるけど・・・貴方が暗夜に来るならずっと暗夜よ」 

 

「・・・それはカムイが決める。白夜か・・・暗夜かは、な?」

 

「ふふ、そう言うと思ったわ・・・じゃぁね」

 

ミルドレッドはそう言うと消え去り、レヴァンは迫る戦いに不安を抱く。



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戦地へ

レヴァンはミルドレッドがいなくなったと分かると、ミコトを見た。

しかし、そこにはミコトの遺体がなく、元から無かった様になっている。

 

「ミコト殿の遺体が無い・・・!」

 

「何だと!」

 

「お母様の遺体が無くなった・・・!」

 

レヴァンとリョウマ達は辺りを見渡したが見つからない。

リョウマ達は悔しそうな表情を見せる。

 

「くそ、これも暗夜の仕業か!」

 

「許せん・・・!」

 

「まだ決まった訳ではない・・・それよりも今は暗夜を優先せねばならないぞ?」

 

「・・・そうだな。行くぞ!」

 

リョウマの言葉に、カムイも含めて白夜軍は戦地である白夜平原に向かう。

レヴァンもカムイ達に続いて行き、白夜平原へと向かって行く。

 

_______________

_________

_____

 

レヴァンはカムイ達と白夜平原へ来ると、向こうには無数の暗夜王国軍が待ち受けていた。

リョウマ率いる白夜王国軍は暗夜王国軍と対峙した時、両者は睨みあう。

 

暫く、睨みあっていたが遂に暗夜王国軍が攻勢に出て向かってきた。

 

「行くぞ!」

 

リョウマも部隊を率いて暗夜王国軍へ向かって行き、両者は激しい乱戦になった。

レヴァンもカムイの守りはジークマイヤーに任せ、戦場の前線へ出てクレイモアとバスタードソードを振るった。

 

レヴァンの攻撃で次々と切り捨てられ、レヴァンは進軍を続ける。

 

「数が多いな・・・」

 

レヴァンは辺りを見渡すと、怯えきった暗夜兵がレヴァンに武器を持って囲んでいた。

 

「逃げるなら今だぞ?私は別に追ったりしないぞ?」

 

「う、うるせぇ!お、お前を殺して手柄にしてやる!」

 

暗夜兵達は舐められたと思ったのか、一斉に掛かってきた。

レヴァンはそんな暗夜兵達を凪ぎ払うと、先に進んで行こうとした時、戦場が急に静かになった。

レヴァンは戦場の中央を見てみると、そこにはマークス達とリョウマ達そして、カムイと水色の長髪の少女がいる。

 

「どうしたんだ?」

 

レヴァンはそう言いながら歩いて行くと、マークスはレヴァンの存在に気付いて話し掛けてきた。

 

「レヴァンか。今回はどちらの味方だ?」

 

「私はカムイの味方をしている。それだけだ」

 

レヴァンはそう答えると、マークスは難しい顔になる。

 

「そうか・・・だが、今は・・・」

 

マークスはそう呟くと、カムイの近くに馬を歩ませる。

そして、マークスは手を伸ばしてカムイに問いかける。

 

「カムイ。私達は血は繋がってはいない・・・だが、本当の兄妹の様に絆のある兄妹だと私は思っている。戻って来てくれ・・・」

 

「騙されるな。カムイは俺達の兄妹だ。此方だ、カムイ!」

 

リョウマはそう言うと、カムイに手を伸ばす。

二人の兄が手を伸ばし、両者の兄妹達は不安そうにカムイを見つめている。

 

「私は・・・」

 

カムイはどちらを取るべきかを迷っているのか、答えを出せていない。

レヴァンは溜め息をついて、カムイの元へ歩いた。

 

「カムイ。言った筈だ・・・好きな道を選べと・・・別に必ずしも戦うとしても、兄妹を殺す訳ではない。お前が正しいと思った道を選べ」

 

レヴァンはそう言うと、カムイは考える様にうつ向く。

そして、カムイは再び顔を上げると、カムイの顔は決意に満ちた表情をしていた。

 

「私は・・・」

 

カムイの決断が今、此所で決まる。



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白夜編
光を進む者


「・・・マークス兄さん。兵を退いてください」

 

カムイの言葉にマークスは顔を歪め、リョウマは笑った。

カムイの言葉は事実上、白夜に着くと言った様な物だった。

 

「何故だカムイ?」

 

「私は白夜の王都を見てきました。平和な所で民は笑顔で溢れて、心の底から優しい人達ばかりでした。それなのにお父様・・・いえ、ガロンに渡されたガングレリが爆発してその平和は壊されてしまいました。私は、暗夜が・・・ガロンが正しいとは思えません」

 

「何と言う事を・・・!父上が悪だと言うのか」

 

戸惑うマークスの後ろからレヴァンにとってもっとも怖れていた事態になった。

それは、ロートレクとモルドレッド、、クレイトン、カーク等の腕の立つ者達が現れた。

 

「マークス殿。そろそろ始めてもよろしいかな?」

 

「ロートレク・・・!」

 

「あのカムイと言う女は暗夜を裏切ったのでしょ?なら、早く剣を向けてください」

 

ロートレクの言葉に、マークスは分かってはいるが動けずにいるのだろう。

マークスにとってカムイは血は繋がらなくても絆の深い兄妹であり、大切な家族なのだ。

 

「しかし・・・」

 

「・・・はぁ。貴方がやらないなら・・・俺がやりましょう!」

 

ロートレクはそう叫ぶと、カムイに向かって斬り掛かってきた。

 

「ッ!?」

 

「死ねぇ!」

 

ロートレクの攻撃にカムイはすぐに動けないでいると、レヴァンがカイトシールドで防ぐ。

 

「また貴様か、レヴァン!」

 

「性懲りもなく来たか、ロートレク」

 

レヴァンとロートレクは対峙すると、カムイの脳内が響いた。

カムイにとって最も思い出したくない記憶が徐々に開かれ始めていた。

 

「あ・・・あぁ・・・」

 

「どうしたカムイ?」

 

カムイは突然、怯え出してヒノカがカムイの異常に気付いて声を掛ける。

しかし、ヒノカの言葉は今のカムイに届かず、カムイはロートレクを見て怯えている。

 

レヴァンもカムイの異常に気付いてカムイを見ると、ロートレクの方を向いてる事からレヴァンはすぐに記憶の、それもロートレクに襲撃されて傷を負った場面を思い出したと悟った。

 

「考えるなカムイ!」

 

レヴァンは咄嗟に叫ぶと、カムイはすぐに正気に戻って夜刀神を構えた。

 

「待て、ロートレク」

 

「何を待つのですか?もうカムイは敵ですよ?」

 

「・・・私がカムイを斬る」

 

「マークス兄さん!?」

 

マークスが言葉に驚いたカミラが大声で叫ぶ。

レオンとエリーゼも驚いている。

 

「カムイが暗夜を裏切ったのは明白・・・なら、せめて私が終わらせよう」

 

「カムイ、下がっていろ」

 

レヴァンがマークスの相手をしようとした時、レヴァンの回りをロートレク達が取り囲んだ。

 

「おっと、お前には邪魔をさせないぞ?」

 

「悪く思わないでね?貴方が一番厄介な存在だから足止めするのよ」

 

「ちッ・・・」

 

レヴァンは厄介だと思いつつ身構えると、戦いが始まった。



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白夜平原の戦い~前編~

レヴァンは最初にロートレクへ向かって行く。

バスタードソードとクレイモアで攻撃すると、ロートレクは軽々と避けてレヴァンに反撃してくる。

 

レヴァンは避けると、次にミルドレッドの肉断ち包丁が襲い、レヴァンはまた避けると、クレイトンの竜断の三日月斧が襲い掛かりレヴァンはまともに背中から斬られた。

 

「ぐぅッ!」

 

「レヴァンさん!」

 

斬られたレヴァンを見てカムイは叫ぶと、前からマークスが迫ってきてジークフリートを振るってくる。

しかし、間一髪リョウマが防ぐ。

 

「余所見をするなカムイ!」

 

「でも、レヴァンさんが!」

 

リョウマはレヴァンの方を見ると、明らかに劣勢でリョウマは助けに行きたくとも前にいるマークスから離れられなかった。

ヒノカとタクミはカミラとレオンと交戦しており、戦う力のないサクラは当然、助けに向かえない。

 

「ククク・・・無様だなレヴァン」

 

「お前達が多勢で来るからだろ?」

 

「そうでもしないと勝てないでしょ?ねぇ、クレイトン?」

 

「そうだな・・・確かにレヴァンの様な化物相手なら多数の方が有利だ」

 

ロートレク、ミルドレッド、クレイトンの三人に囲まれて戦うレヴァン。

ジークマイヤーはカークを相手に苦戦を強いられており、救援は望めない状況になった。

 

「ククク・・・今度こそお前の死に様を見させて貰うぞ?」

 

ロートレクはそう言うと、ショーテルをレヴァンに振り下ろそうとした時、レヴァンの後ろから雷の槍の様な物が飛んできた。

ロートレク達は避け、レヴァンは後ろを見るとそこには太陽の紋章が特徴の鎧と盾を持つ戦士がいた。

 

「待たせたなレヴァン」

 

「ソラール・・・!」

 

ソラールはレヴァンの隣に立つと、ロートレク達と対峙した。

 

「やはり、白夜へ来ていたのかソラール」

 

「ふふ、私は太陽を求めて旅をしているのだぞ?暗夜では残念だが太陽は見れんし、それに白夜へ赴いてみたいと言う気持ちがあったからな」

 

「・・・相変わらずだな。では共に行こう、ソラール」

 

レヴァンとソラールのタッグにロートレクは危機感を抱いた。

ロートレクは昔、貪食ドラゴンをレヴァンとソラールと共に戦った事があった。

その時に、レヴァンとソラールの息のあった戦いを見ていた。

正しく最高のタッグ・・・ロートレクはまさかこんな形で二人に挑む事になるとは思ってすらいなかった。

 

「あら、怖じけついたのロートレク?」

 

「・・・まさか。我々はどんな事になってもカムイを仕留めるだけだ」

 

ロートレク達も構え、戦況は更に激しさが増していく。



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白夜平原の戦い~後編~

レヴァンとソラールはロートレク、クレイトン、ミルドレッドを相手に奮戦し始める。

二人の攻勢に、徐々にロートレク達は押され始めた。

 

「くそ!やはり、こいつらを合流させたのは失敗か!」

 

「そんな事を言ってる暇は・・・きゃぁッ!」

 

ミルドレッドが言い掛けている時、レヴァンの斬撃が襲い、ミルドレッドは倒れた。

 

「・・・ふふ、私の敗けの様ね・・・こんな思いをしたのは久し振り・・・流石は私の惚れた人ね・・・」

 

ミルドレッドはそう言うと消えていき、死んだとレヴァンは考えた。

 

「ちッ・・・ミルドレッドがやられた・・・!」

 

「おい、此所は逃げた方か・・・ぐぉッ!」

 

クレイトンの隙を突いたのはソラールで、クレイトンの腹に剣を突き立てた。

クレイトンはゆっくりと倒れると、消えていく。

 

「残るはお前だけだ・・・ロートレク」

 

「・・・ククク、やはり強いな・・・お前達・・・」

 

「当たり前だ。我々は互いに、強い絆を得た最高の友なのだからな」

 

「そうか・・・戦況は不利。なら、逃げさせて貰うぜ」

 

ロートレクはそう言うと、帰還の骨片を使って消えて行った。

 

「勝負は着いたか・・・」

 

「その様だな・・・」

 

「貴公、無事か!」

 

二人の所にジークマイヤーが走って近づいてきた。

ジークマイヤーも、カークを倒してレヴァン達に合流したのだ。

 

「ジークマイヤー殿も片付いた様だな・・・」

 

レヴァンはそう言うと、カムイ達の方へ向く。

そこには、息を切らすマークスとその側で対峙するリョウマとカムイがいた。

 

「・・・マークス兄さん。兵を退いてください」

 

「くッ・・・やはり、暗夜を、私達を完全に裏切ったのか・・・カムイ」

 

「・・・」

 

マークスの問いにカムイは答えないいや、答えられない。

カムイは暗夜の兄妹を裏切った訳ではなかったが、マークス達から見ればカムイは裏切り者だった。

 

「マークス兄さん、此所はもう退くしかない!軍はもう、ボロボロだ・・・悔しいけど・・・」

 

「そんな・・・カムイがまだ彼処にいるのよ!カムイ・・・!」

 

「カムイお姉ちゃん!」

 

暗夜の兄妹達の悲痛な声に、カムイは顔を辛そうに歪めるしかできない。

だが、カムイはもう決めた事だと割り切って道を変えない。

 

「・・・すみません。もう、決めた事なんです」

 

「・・・全軍、退くぞ」

 

「マークス兄さん!?」

 

「カミラ。退けと言ったのだ・・・行くぞ」

 

マークスはそう言うと、馬を走らせて退いていく。

他の兄妹達も退いていき、暗夜王国軍も完全に退いて行った。

白夜平原の戦いは、白夜の勝利に決した。



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テンジン砦

レヴァンは戦いの後、空しく平原を見つめていた。

平原は白夜、暗夜関係なく屍を転がしており、血の大地が広がるばかりだった。

 

「・・・」

 

レヴァンは黙って平原を見つめていた時、不意に後ろから声を掛けられた。

 

「・・・レヴァン様」

 

「・・・フェリシア?」

 

レヴァンは振り向くと、そこには心配そうに見つめるフェリシアがいた。

 

「フェリシア・・・どうして此所に?」

 

「ジョーカーさんと一緒にカムイ様を探していてカムイを見つけて合流しました。レヴァン様も此所にいると聞いて・・・」 

 

「そうか・・・」

 

レヴァンはそう言うと、また平原を見つめる。

その姿は何処か虚しげで、遠い世界を見つめている様だった。

 

「・・・大丈夫だ、フェリシア。この戦いはすぐに終わらせる。きっとな・・・」

 

「・・・はい」

 

______________

________

____

 

 

レヴァン達は白夜平原の戦いを終えた後、レヴァンはカムイとジークマイヤー、ソラール、フェリシアそしてアクアと言う少女と共にテンジン砦へとやって来た。

 

「えーと・・・此所は?」

 

「此所はテンジン砦よ。サクラが先に来て、民達の治療を行っているの。私達も手伝いましょう」

 

「分かりました」

 

カムイとアクアがテンジン砦へ入城するのを確認したレヴァン達はカムイ達に続いて、テンジン砦に入城する。

中へ入ると、多くの怪我人がおり、治療が出来る白夜兵達が慌ただしく動いている。

 

「カムイ姉様・・・!」

 

「大丈夫ですか?サクラさん。ここからは私もお手伝いしますね」

 

「あ、ありがとうございます・・・!」

 

カムイとサクラが話している時、レヴァンは歩きながら民の怪我の具合を見て回った。

どの民達も酷い傷で、生きているのがやっとだと分かる。

レヴァンは暫く歩いていると、向こうから呼び声が聞こえてきた。

 

「誰か、誰か来てください!」

 

レヴァンはその声を聞きて駆け付けると、そこには虫の息の苦しむ負傷者の民と泣き叫んで助けを求めて来る若い娘がいる。

 

「どうした?」

 

「お父さんが・・・お父さんが!」

 

レヴァンは娘の言葉を聞いて男を見ると、傷は深く手遅れの状態だった。

白夜の祓串や暗夜の杖、そしてレヴァンの奇跡でもどうしようもないと、長年の経験で感じ取った。

 

「どうしました!」

 

騒ぎを聞き付けたのか、カムイ達が走って来ると娘が悲痛そうな声で伝える。

 

「お父さんが・・・!」

 

「ッ!?・・・大変です!この人は危険な状態です!すぐに治療を」

 

「無理だ」

 

サクラの言葉を遮る様に冷たく言う。

 

「な、何故ですか・・・!」

 

「・・・この男の傷は深すぎる。治療をしても完全になおらないし、死までの苦しむ時間を増やすだけだ」

 

「ですが、まだ助からないと決まった訳では!」

 

カムイも反論するが、レヴァンは冷静に一言言う。

 

「・・・それでもだ」

 

レヴァンはそう言うと男を側に行って、問い掛ける。

 

「死ぬ前にお前が悔いの無い様にしてやる・・・何か最後に望みはあるか?」

 

「うぅ・・・む、娘が・・・苦労が・・・無いように・・・して、くれ・・・」

 

「・・・どうする、サクラ王女?」

 

レヴァンはサクラに聞くと、サクラは悲痛そうに男を見つめてそして手を取りながら言う。

 

「分かりました・・・」

 

「・・・ありがとう」

 

男は安心したのか、力無く崩れ落ちて息絶えた。

娘は泣き叫んですがり、カムイ達はそっとしておく事にした。

 

「・・・レヴァンさん。どうして助からないと言ったのですか?」

 

「・・・深すぎる傷だった。私は長い間、戦ってきた経験での判断だ。あの傷は治療してもまた傷口が開き、最後に死ぬ。苦しみながら・・・」

 

レヴァンはそう言うと、向こうへ足早に立ち去る。

レヴァンの背中を見つめるカムイにジークマイヤーが言う。

 

「カムイ殿。悪く思わないでくれ。レヴァンは死に敏感なのだ」

 

「何故なのですか?」

 

「・・・レヴァンを含めた我々は此所へ来る前、ある使命を帯びて旅をしていてな。その旅は・・・過酷を極めた」

 

「過酷だったのですか?」

 

「あぁ・・・全てを投げ出して絶望に身を委ねてしまう程にな」

 

ジークマイヤーがそう言うと、ソラールが続いて言う。

 

「だが、レヴァンはそんな絶望に屈せず進み続け、何故そこまで歩いて行けるのかを聞いたら。約束を交わして使命に挑んでいたのだ」

 

「約束ですか?」

 

「そうだ。レヴァンは昔、とある場所に理不尽にも幽閉されていた。時が長く過ぎ、レヴァンは諦めかけていたそうだがある時、幽閉場所から鍵を持った死体が落ちてきて、上を見た時、騎士が見えたそうだ」

 

ソラールは思い出しながら話していく。

 

「レヴァンはその後、鍵を使って脱出して進んで行きそして、その騎士に会ったそうだが、虫の息で助かりそうもなかったらしい。レヴァンはその後、騎士に使命達成を託され使命が待つ試練の場へ足を踏み入れたそうだ。その騎士の死を無駄にしない為に、未練もなく死んで行けた一人の人間の為に」

 

ソラールの話が終わると、カムイ達はレヴァンの悲しい出来事に雰囲気が暗くなっている。

ソラールは慌てて場を和ます。

 

「いやいや!そこまで暗くならなくとも!」

 

「貴公が暗い話をしたからだろ?」

 

「おい、それは全部私のせいにするつもりか?」

 

二人のやり取りはもはやコントで、カムイ達はいつの間にか笑ってしまっていた。

場が和んでいた時、一人の白夜兵が走ってきた。

 

「申し上げます!暗夜王国軍が迫っております!」

 

戦いは続く。



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恩人との戦い~前編~

カムイ達は外へ出ると、中規模の暗夜王国軍が向こうに陣取っている。

カムイ達はすぐに戦闘体勢を整える為に配置に着く。

 

_____________

_________

____

 

その頃、暗夜王国軍を率いる青年は真剣な顔でテンジン砦を見ている。

その青年の側に重厚な鎧とその上に紋章が描かれた青い布を身に付ける騎士が歩いてきた。

 

「緊張しているのかサイラス?」

 

「オスカー殿。・・・正直に言えば緊張しています」

 

「そうだろうな・・・戦場では常に緊張していた方が良い。そうすれば油断無く戦える」

 

オスカーの言葉にサイラスは微笑むと、暗夜王国軍に号令を出うとした時、ある人物が目に入った。

 

「なッ!?まさか、カムイなのか・・・!」

 

「カムイ?あの暗夜を裏切ったと言う王女か?」

 

「・・・カムイは俺の親友です。まさか、いきなり戦う事になるなんて」

 

サイラスは悲痛そうに言うと、オスカーはカムイの方を目にやると、逃走騎士を身に付けるレヴァンが目に入る。

 

「(あの者・・・ただ者ではないな。恐らく、一番危惧しなければならない存在だな)」

 

オスカーはそう思うと、腰に差してあるアストラの直剣に触れる。

 

_____________

________

_____

 

カムイ達は戦闘準備を調え暗夜王国軍と対峙すると、向こうから一騎の騎士が現れた。

レヴァンは警戒してファリスの弓を取り出して構えている。

 

「おーい、カムイ!俺だサイラスだ!」

 

「え・・・?」

 

「知り合いか?」

 

「・・・いいえ」

 

カムイは疑問の表情を出して答えた姿を見たレヴァンは、カムイはサイラスの記憶も無くしているのではと考えた。

サイラスはカムイの親友だと名乗るが、カムイはやはり見に覚えがないのか疑問の顔を深める。

 

「くッ・・・やはり覚えていないか・・・だが、それならやり易いだろう・・・全軍、攻撃!」

 

「来るぞ・・・」

 

レヴァンはそう言うと、暗夜王国軍が一斉に向かってくる。

カムイも命令を下すと、暗夜王国軍へ攻撃を開始した。

互いの軍は互角の乱戦状態になり、レヴァンはひたすら撃破する。

レヴァンは進み続けていると、向こうから上級騎士の鎧を身に纏った騎士が現れた。

 

「・・・上級騎士の鎧と言う事は、アストラの出身か?」

 

「いかにも、私はアストラのオスカー。貴殿に勝負を挑ませて貰う」

 

「オスカーだと・・・!」

 

レヴァンは名前を聞いて、驚きの声を挙げた。

かつての恩人が今、レヴァンの前に立ちはだかっている。

レヴァンは少し、肩を震わせながら聞く。

 

「オスカー殿・・・何故、貴方は暗夜に与する?」

 

「ある少年に剣を教えていてな。その少年はまだ未熟練でまだ離れる訳にはいかない」

 

「そうか・・・一つ、貴殿に言っておきたい。あの時、出してくれた恩を仇で返すようだがすまない」

 

「出してくれた恩?・・・まさかあの時の!」

 

「レヴァン。あの不死院に長い間閉じ込められ続け、貴方に救いだされた者です。・・・さぁ、戦いを始めましょうか?」

 

レヴァンはそう言うと、銀騎士の剣と紋章の盾を取り出して構えた。

オスカーの使う武器はアストラの直剣で、聖属性の着いた魔法剣を使う。

レヴァンは少しでも戦いを有利にする為に魔法に強い紋章の盾を選んだ。

 

「その盾は・・・私の物か?」

 

「次に会った時に貴方は亡者になっていました。だから、この盾を形見として私が使っているのです」

 

「成る程な。同じ盾を持つ同士の戦いか・・・悪くない」

 

レヴァンとオスカーは対峙すると、二人は戦いを始めた。

 

「レヴァン殿は何処へ行かれたのだ!」

 

レヴァンとオスカーが戦いを始めた同時刻、ジークマイヤーとソラールは奥へ行ってしまったレヴァンを探していた。

だが、何処もかしこも暗夜兵や白夜兵でごった返していて発見は困難だった。

 

「レヴァンなら大丈夫だと思うが・・・一人だからな・・・」

 

「ソラールさん、ジークマイヤーさん!」

 

二人の所へカムイが走ってやって来た。

 

「はぁ・・・はぁ・・・レヴァンさんを見かけませんでしたか?」

 

「いや、我々も探しているのだが・・・」

 

ソラールがそう言い掛けた時、奥の方が徐々に静かになっているのを感じて見てみると、白夜と暗夜の両兵が戦いを止めて何かを見ている。

 

「何でしょうか?」

 

「分からん・・・」

 

カムイ達は人だかりの方を見ていると、激しい金属音が聞こえ、カムイ達は顔を見合わせてから人だかりの奥へ行くと、レヴァンとオスカーが激しい勝負をしていた。

互いに攻撃を避けては攻撃し、攻撃を受けたら盾で防ぐ等と繰り返しているが、激しい戦いであった。

 

「あの鎧は、アストラの上級騎士の物か」

 

「上級騎士?」

 

「アストラと言う地で身分が高い騎士が使う鎧だ。その鎧があると言う事は我々と同じ境遇の者だろうな」

 

ソラールがそう言うと、レヴァンとオスカーの戦いは更に激しくなり始めた。

 

「とにかく止めないと!」

 

「だが、どうやって?相手はレヴァンとそのレヴァンと互角に戦う騎士だぞ?」

 

「下手に邪魔立てすれば逆にやられるな」

 

「そんな・・・」

 

カムイは不安そうにレヴァンを見ると、オスカーと鍔迫り合いになっていた。

 

「強いな・・・やはり、お前が使命を為したのか?」

 

「使命はなしたさ・・・だが、そこには・・・新たな絶望しか存在しなかった!」

 

レヴァンはそう言うと、オスカーに強烈な蹴りを入れて吹き飛ばした。

オスカーが体勢を崩すと、レヴァンはすかさず斬りつけるが、オスカーは紋章の盾で防いだ。

 

「絶望しか無かっただと?どう言う事だ・・・!」

 

「・・・聞かない方が良いさ」

 

レヴァンはそう言うと、オスカーに銀騎士の剣を向けるのだった。

 



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恩人との戦い~後編~

レヴァンとオスカーの戦いは長く続いた。

互いの技は見切られ、防がれる繰り返しを行い続け、二人の疲労はピークに達していた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「はぁ・・・はぁ・・・やるな、レヴァン」

 

「それはオスカー殿もそうではないですか?」

 

レヴァンはそう言うと、再び武器を構えてオスカーも武器を構えた。

暫くして、二人はまた戦いを始めて斬り合いが始まる。

その光景をカムイは心配そうに見て、ソラールとジークマイヤーも例外ではなかった。

 

「はぁ!」

 

「せやぁ!」

 

二人は同時に攻撃するとレヴァンには左肩を、オスカーも左肩に剣が刺さり負傷した。

 

「レヴァンさん!」

 

カムイは咄嗟に叫ぶも、聞こえていないのか振り向かずにオスカーと同時に立ち上がって構える。

だが、二人の利き手は使えず、互いに盾を捨てて剣だけになった。

 

「・・・最後の攻撃になりそうだな」

 

「そうだな・・・」

 

レヴァンとオスカーはそう言って走り出すと、互いに剣を振り下ろそうとした。

だが、二人の間にカムイが立ちはだかった。

 

「止めてください二人共!」

 

「・・・退いてください。オスカーとは決着を着けなければなりません」

 

「もう戦いは終わっています」

 

カムイはそう言うと向こうを見て、レヴァンとオスカーも続いて見ると、向こうにはサクラの臣下であるカザハナとツバキそして、アクアがサイラスを捕らえていた。

 

「サイラス・・・!」

 

「暗夜王国軍の将が捕まった今、もう戦いは終わっています。オスカーさん・・・投降して下さい」

 

カムイの言葉にオスカーは、暫く項垂れたがアストラの直剣を地面に捨てた。

それは、事実上の投降を了承する物だった。

 

________________

__________

_____ 

 

暗夜王国軍との戦いを終えて、カムイの前に捕虜になったサイラスとオスカーがいる。

レヴァンはカムイの少し後ろに立って待機している。

 

「・・・俺の負けだ。殺せ」

 

「・・・」

 

「何・・・?何故、止めを刺さない?」

 

「あの・・・貴方は戦いの間・・・白夜王国軍を倒す事を、何度も戸惑いましたね。それは私が・・・この国の王女だからですか?私が貴方の親友だから・・・わざと手加減したのですか?」

 

カムイの問いにサイラスは、無言でカムイを見ている。

 

「ガロン王の命令で、私達を倒しに来たのではなかったのですか?」

 

「・・・そんな命令なんかより、大事な物がある」

 

「え・・・?何ですか、それは」

 

カムイの疑問に答える様に、サイラスは答える。

 

「騎士の誓いだ。俺はお前に、命を救われた。幼かったお前を外に連れ出して処刑されそうになった時、お前は身を挺して俺を庇ってくれた・・・あの時、俺は誓ったんだ。お前に救われたこの命・・・何時だってお前の為に捨てる覚悟だと」

 

「!!サイラスさん・・・」

 

「この命は、親友のお前の為にある。その俺がどうして、お前を殺せる?」

 

「・・・ありがとうございます、サイラスさん。ようやく思い出しましたよ。幼い頃、いつも一緒に遊んでくれた優しい友達の事を。あの時、初めて外の世界を見せてくれたのは、貴方だったのですね・・・」

 

「全く・・・思い出すのが遅いぞ。ぼんやりしているのは相変わらずだな。・・・例えお前が白夜王国の王女だったとしても、お前はお前だ。俺にとっては、何も変わらない」

 

二人の話が進み、サイラスはカムイの仲間になった。

レヴァンはオスカーの方へ歩むと、問う。

 

「オスカー殿はどうする?」

 

「そうだな・・・」

 

「オスカー殿。一緒に行きましょう。俺に剣を教えてくれた貴方は俺にとっても、カムイにとっても必要なんだ」

 

サイラスはオスカーに説得する様に言うと、レヴァンはオスカーの教え子がサイラスと判断する。

そして、レヴァンはまたオスカーも問う。

 

「もう一度言うが・・・どうする?」

 

「・・・ふむ、カムイ殿に着いて行くのも面白そうだ。それに、サイラスにはまだ教えなければならない事もあるからな」

 

「決まりだな」

 

レヴァンはそう言うと、二人の縄を切って解放した。

オスカーは立ち上がると、レヴァンと握手する。

 

「言い損ねていたが、本当に久しいな・・・レヴァン」

 

「あぁ・・・あの時は、世話になった」

 

レヴァンとオスカーは再開を喜んでいると、女と男が傷だらけで走って来た。

 

「伝令!伝令ッーーー!」

 

「大変じゃ、サクラ様!」

 

「サイゾウさん、オロチさん・・・!どうしたのですか傷だらけで・・・!?」

 

二人は慌てた様子で息が荒い。

オロチは息を調えた後、伝令を伝える。

 

「こ、国境に向かう途中で・・・リョウマ様とタクミ様が・・・!」

 

「え・・・?」

 

「イズモ公国の国境に向かったお二人が、行方不明になってしまわれた・・・!」

 

「もしかすると敵に囚われたか、最悪、戦死なされた恐れも・・・!」

 

「そんな・・・!い、いやぁぁッ!リョウマ兄様、タクミ兄様・・・ッ!!」

 

「!サクラ様、お気を確かに!」

 

サクラは叫んで取り乱し、白夜の忍であるスズカゼがサクラを落ち着かせようとする。

 

「・・・その伝令は、本当なのですか?」

 

「ちッ・・・!こんな事、冗談で言う分けないだろうが!!どうして俺はあの時、リョウマ様のお側を離れちまったんだ!カゲロウの奴、上手くやってくれていると良いが・・・!」

 

「よいか?カムイ様。この軍の指揮を執っているのはそなたじゃな?わらわは亡きミコト様抱えの呪い師範。オロチと申す。今は戦闘の指揮はユキムラ軍師が執っていて、戦闘は小康状態にあると言う状態にあると言う事なんじゃが、二人の安否を確かめる為にもすぐにイズモ公国へ向かいたいんじゃ。お力をお貸しくださいませぬか?」

 

「はい、勿論です」

 

「かたじけないのう・・・」

 

カムイの言葉にオロチは礼を言った時、先ほどまで取り乱していたサクラが前に出た。

 

「わ、私も行きます!」

 

「いけません、サクラ様。国境沿いの戦場はとても危険です。どうか、サクラ様は此所に残っていてください」

 

「い、嫌です!兄様達が・・・せ、せ、戦死なされたかもしれないのに、私だけ・・・大人しく待っているだけなんて、そ、そんな事、できません・・・!」

 

サクラの言葉にレヴァンは、強く心を打たれた感覚を感じた。 

レヴァンはサクラの瞳を見ると、サクラの目には強い意志と覚悟が宿っているのを感じ取った。

レヴァンは静かにサクラとスズカゼの元に来ると、言う。

 

「・・・着いて来たかったら来させれば良い」

 

「ですが!」

 

「サクラ王女は気弱だが覚悟を感じる。そんな奴を止められはしない・・・それに、危険が及ぶなら俺が責任を持って守り通す」

 

レヴァンはスズカゼにそう言うと、スズカゼは迷う様な表情を出していた時、アクアがカムイに言う。

 

「ねぇ、カムイ・・・どうかサクラの気持ちを汲んであげてくれないかしら。母親を亡くしたばかりで・・・今度は兄妹まで・・・大人しく待っていろと言う方が無理だわ・・・私も全力を尽くして守るから。ね、お願い。カムイ・・・」

 

アクアの言葉にカムイ達に頷いて答える。

 

「分かりました。サクラさんは私達が守ります。危険かもしれませんが、着いて来ると言うなら止めませんよ、サクラさん」

 

「ありがとうございます・・・」

 

「はい。一緒に頑張りましょう・・・サイラスさん、オスカーさんも来てくれますよね?」

 

「あぁ、俺は逆に此所に残れない。どっちみちお前に着いて行くさ」

 

「私はサイラスが行くなら共に進むさ」

 

二人の返答を言うと、サイゾウは顔を歪ませながら言う。

 

「・・・おい。この暗夜の野郎も着いて行くのかよ?」

 

「不満か?」

 

サイゾウの言葉にレヴァンが言うと、サイゾウは不機嫌そうにレヴァンに言う。

 

「・・・あぁ」

 

「・・・無理もないな。もう、信用すらされないとは・・・暗夜も、ガロンも変わり果ててしまったのだな・・・」

 

「え・・・?」

 

レヴァンの呟きにカムイは疑問の声を出すが、聞く事は出来なかった。

今のレヴァンは何処か悲しげで、聞くに聞けなかった。

 

「良い?カムイ。あまりゆっくり話している時間はないわ」

 

「・・・そうですね。そろそろ出発しましょう。次の目的地は・・・イズモ公国です」

 

カムイはそう言うと、テンジン砦を出発する。

レヴァンもカムイに続いて歩いていく。



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支援会話1

支援会話~カムイ×レヴァン~

 

レヴァンはマイキャスルで、鉱石採取の当番に当たりツルハシ片手に採掘していた。

ツルハシは元々、拾って以外と使える武器として重宝していた。

 

「ふむ、今日はこれくらいか」

 

「レヴァンさん」

 

「カムイか。どうした?」

 

レヴァンが作業を終えると同時にカムイがやって来た。

恐らく、鉱石の取りに来たと思われるがレヴァンは念の為にカムイに何をしに来たか聞いた。

 

「鉱石を取りに来ました。何か取れましたか?」

 

「あぁ、あるぞ」

 

レヴァンはそう言うと、サファイアをカムイに差し出した・・・大量に。

 

「え、えーと・・・多くないですか?」

 

「そうか?」

 

カムイの戸惑う声に、レヴァンは首を傾げながら聞き返す。

暫く静かな環境になったが、カムイが動いた。

 

「あ、あの。レヴァンさん」

 

「何だ?」

 

「・・・昔の私はどんな感じ立ったのですか?」

 

「ふむ・・・あまり、昔と変わらん」

 

「え・・・?」

 

レヴァンの言葉にカムイは疑問の声を挙げると、レヴァンは続ける。

 

「お前は優しく、誰にでも慕われる・・・それは昔でも同じだ」

 

「レヴァンさん・・・」

 

「何を思ってそんな事を聞いたのか分からないが、お前は何時ものお前でいろ」

 

「はい」

 

 

【カムイ×レヴァン D→C】

 

 

支援会話~レヴァン×サクラ~

 

レヴァンは武器の手入れをしていた時、レヴァンの元にサクラがやって来た。

 

「あ、あの・・・レヴァンさん」

 

「どうしましたサクラ王女?」

 

「え、えーと・・・祓串の調達をしたいので、その・・・て、手伝ってもらいたいんです・・・」

 

サクラはビクビクしながらそう言うと、レヴァンは手入れの手を止めて立ち上がる。

 

「分かりました。手伝いましょう」

 

「あ、あ、ありがとうございます・・・」

 

レヴァンとサクラは祓串を買うと、レヴァンは全ての祓串を持ってサクラと歩いている。

 

「す、すみません・・・全部持たせてしまって・・・」

 

「いや、別に構いはしないさ」

 

会話は所々途切れ、常に無言の環境が二人を支配する中、レヴァンは切り出した。

 

「サクラ王女」

 

「は、は、はい!」

 

「あまり、そうビクつかれると此方まで落ち着かないから落ち着いてくれないか?」

 

「は、はい・・・すみません・・・」

 

レヴァンのハッキリとした言葉にサクラは少しショックを受けて落ち込んだ。

 

 

【レヴァン×サクラ D→C】

 

 

支援会話 レヴァン×フェリシア

 

今回、レヴァンはフェリシアに用があって来たのだが。

 

「はわわわ!」

 

フェリシアは転んで食器を割ったり、お茶菓子を落としたり散々な所をレヴァンは見てしまう。

 

「・・・(気まずい・・・)」

 

レヴァンの存在に気づいたのかフェリシアに涙目で見られながらそう思うと、戸惑いながらフェリシアの安否を確認する。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「はぅ~!見られたくない所を見られてしまいました・・・!」

 

フェリシアはかなり落ち込んでしまい、レヴァンはあたふたとしながらフェリシアを慰める。

 

「だ、大丈夫だ。失敗は誰にでも」

 

「今回で十回目のドジなんです・・・」

 

「(そ、そんなに・・・)」

 

流石のレヴァンも、フェリシアの異常なドジに驚きを隠せない。

そんなレヴァンの反応に気づいたのか更に落ち込んでしまう。

 

「そんなに落ち込むな・・・」

 

「ですが・・・」

 

「はぁ・・・フェリシア」

 

「はい!」

 

「・・・失敗は誰にでもある。それが毎回の事だとしても失敗したなら仕方ない」

 

「で、でも・・・」

 

フェリシアはなおも元気を出さないが、レヴァンはフェリシアの肩に手を置いて言う。

 

「私もできる限り支える。だからこれ以上、落ち込むな」

 

「・・・はい!」

 

レヴァンの一言で元気になったフェリシアに、レヴァンは少し疲れを感じた。

 

【レヴァン×フェリシア D→C】



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スケルトンの軍勢

カムイ達はイズモ公国へ向かう為に黄泉の階段を進んでいた。

不気味な場所で何時、何が襲い掛かってきても可笑しくなかった。

 

「不気味な所ですね・・・」

 

「あぁ・・・かつて訪れた地下墓地に似た雰囲気だ」

 

「地下墓地?」

 

「ある目的で地下墓地と言う場所を訪れたのだが、そこには無数のスケルトンと言う骨の化物達の巣窟だった。まぁ、中には理性的なスケルトンもいたが・・・大半は敵だった」

 

レヴァンの言葉にカムイ一同は背中に寒気を感じた。

骨の化物スケルトンの話は流石に恐いのだろうとレヴァンは感じた。

 

「まぁ、幸いにも此所は墓地ではないのだろ?それにスケルトンは単体なら大した事は・・・」

 

レヴァンがそう言いかけた時、向こうから無数の気配を感じ取って立ち止まった。

 

「レヴァンさん?」

 

「・・・何か来る」

 

レヴァンはそう言うと、バスタードソードを握り警戒すると、向こうの暗闇から多くのカシャッ、カシャッと音を立てて骨が歩いて来ていた。

 

「ッ!?スケルトン!」

 

レヴァンはそう叫ぶと、戦闘体勢に入った。

スケルトンはファルシオンと呼ばれる曲刀を片手に突っ込んでくる。

 

「来るぞ!」

 

オスカーはそう叫ぶと、スケルトン達は一斉に走り出してきた。

スケルトン達が真っ先に攻撃を仕掛けたのは、レヴァンで無数のファルシオンが一斉に向かってくる。

レヴァンはツヴァイヘンダーを出し、両手持ちで横に振るうと向かってスケルトンを吹き飛ばした。

 

スケルトンの軍勢はレヴァンの方へ集中攻撃を仕掛け、他の仲間には滅多に目もくれなかった。

 

「何故レヴァンさんだけが!」

 

「恐らくレヴァンが持つ強大なソウルに引き寄せられているのだろう・・・」

 

「ソウル?」

 

ソラールの言ったソウルについてカムイは疑問の声を挙げた。

ソラールはソウルについて説明する。

 

「ソウルとは、我々に宿る力の源で生命の源でもある。ソウルは強大であればある程、強い力を持つ事ができるが・・・その分、ソウルを狙う輩に狙われやすくなる」

 

「つまり、レヴァンさんは今?」

 

「スケルトンにとって、最高のご馳走だな」

 

ソラールはそう言うと、攻撃してきたスケルトンを倒した。

レヴァンはツヴァイヘンダーやグレートソードでスケルトンを蹴散らしていくが、数は多く捌き切れずに攻撃を受ける事もあった。

だが、それでもレヴァンはスケルトンを蹴散らし続け、遂にスケルトンの親玉とも言える巨大なスケルトンが現れた。

 

「ぐおぉ・・・!」

 

「ふん、こいつか」

 

「ちょっと、かなりでかいわよ!」

 

レヴァンは冷静に見ていたが、カザハナは巨大なスケルトンの大きさに驚く。

それはレヴァン達の世界を経験しなければ大きい敵だが、巨大なスケルトンはまだ序の口と言った所だった。

 

「下がってろ。一撃で沈める」

 

レヴァンはそう言うと、巨大なスケルトンが柄と刃を持って剣を振り下ろすが、レヴァンはそれを避けて巨大なスケルトンにツヴァイヘンダーを縦斬りで両断して沈めた。

 

「凄いです・・・」

 

「いくら何でも一撃は・・・」

 

レヴァンの攻撃を見た一同は唖然としていたが、レヴァンは仲間の方に向き言った。

 

「さぁ、行こうか?」

 

レヴァンはそう言って歩き出す。



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亡者の大襲撃

昨日はマークスの誕生日です。

自分は誕生日の番外編は書いたりしませんが、好きなキャラの誕生日が来るのは嬉しいです


カムイ達が黄泉の階段を抜けて道を進むと、遠くに集落が見えた。

だが、集落は火に包まれており叫び声が挙がっている。

 

「姉様!集落が襲われています!」

 

「もしかしたら賊かもしれません。助けに行きましょう!」

 

カムイ達は走って行こうとした時、レヴァンがカムイの肩を掴んで止めた。

 

「待て。・・・嫌な予感がする。急ぐのも大事だが、準備を念入りにしておこう」

 

「・・・わかりました」

 

カムイ達は準備をし始めた時、レヴァンにはどうしようもない不安に駆られていた。

百戦錬磨のレヴァンでさえ避けて通りたいと思う程の予感、レヴァンは不安を隠せずにいた。

 

「(何だ、この予感は・・・)」

 

レヴァンは不安を抱きながらも、準備を終えたカムイ達と供に集落へ走って向かって行った。

 

_____________

_______

___

 

カムイ達が集落に来ると、集落内では兵士と亡者が交戦しており、数で勝る亡者が兵士を次々と殺している光景が広がっていた。

 

「なんと・・・!亡者がこれ程の数で襲うとは」

 

「確かにな・・・この地に来てから亡者は多数でいてもここまでの大軍ではなかった。・・・カムイ。気をつけて戦ってくれ」

 

「はい!」

 

カムイ達は亡者との交戦を開始した。

亡者の武装は下級兵士や上級兵士等の武装でいる。

数では負けているも、亡者との戦いになれたレヴァン達が亡者を凪ぎ払っていく。

 

「ふん!」

 

レヴァンはクレイモアを振るって、カイトシールドで攻撃を防ぎながら戦っていると、向こうに金棒を振るって亡者を凪ぎ払っている男を見つけた。

男は勇敢に戦っていると、後ろから不意を突いた亡者が槍を突き立てようとしていた時、一本の投げナイフが亡者の首に突き刺さった。

 

「大丈夫か?」

 

「む?お主はだれだ?」

 

「私はレヴァン。集落が襲われていたので助けに来た」

 

「おぉ、お主が噂の怪物殺し・・・わしはフウガ。この風の部族の村の長だ」

 

「いったい何があった?これだけの亡者は見た事がない」

 

レヴァンの問いにフウガは集落の中にある城に指を指すと、その城の回りを飛んでいる何かがいた。

 

「あの竜が突然現れ、襲ってきたのだ。抵抗したが余りに強く、挙げ句の果てにこの様だ」

 

「あれは・・・まさか、ヘルカイトか?」

 

「ヘルカイト?」

 

「私がこの地に来る前にいた竜の名です。中型ですが、竜である事に変わりはない」

 

レヴァンがそう言った瞬間、ヘルカイトが急に急降下をして来ると、大きく口を開いた。

レヴァンは攻撃を仕掛けてくると感じた。

 

「来るぞ!」

 

レヴァンはそう言ってフウガと供に走って避けると、ヘルカイトのブレスが襲った。

ヘルカイトのブレスは回りにいた兵士や亡者関係なく燃やしていき、命を奪った。

 

「トカゲ野郎が!」

 

レヴァンは空を飛ぶヘルカイトに弓で狙って放つも、射程外のヘルカイトに当たる事はなかった。

 

「ちッ、遠すぎるか・・・!」

 

レヴァンはどう戦うべきか考えていると、向こうから走ってくる音を聞いたレヴァンは振り向いた。

 

「レヴァンさん!」

 

そこにはカムイ達が亡者を倒して突破してきていたのだ。

ヘルカイトはカムイ達を見つけたのか、また急降下してブレスを仕掛けようとしている。

 

「まずい・・・!来るな!!!」

 

「え?」

 

レヴァンはそう叫ぶと、カムイは立ち止まった時、ヘルカイトのブレスがカムイから少し離れた場所で炸裂した。

あと少し前に出ていたらカムイ達は死んでいた。

 

「な、何ですかあの竜は・・・!」

 

「はわわ!見た事がない種です!」

 

「あれは・・・ヘルカイトか!」

 

「知っているのですかソラールさん?」

 

「あぁ・・・ヘルカイトは竜の中では中型に位置する狂暴な竜だ。私はかつて、ヘルカイトによって道を阻まれていたレヴァンを見た事もあり、その手強さを知っている」

 

ソラールがそう言うと、カムイ達は飛んでいるヘルカイトを見た。

ヘルカイトは相変わらず飛んでいたが、何を思ったのか城の方へ飛んで行ってしまった。

 

「・・・成る程、挨拶代わりか。舐めてくれる・・・フウガ殿。私に依頼しないか?」

 

「依頼だと?」

 

「あぁ。私は依頼さえされればどんな相手でも倒す。報酬は取らない安心してくれ」

 

レヴァンはそうフウガに言うと、フウガは暫く考えていたが決断をレヴァンに下した。

 

「奴の事を知るレヴァン殿なら任せられる。依頼しよう・・・どうか集落の者達の仇を討ってくれ」

 

「分かった」

 

「待ってください!」

 

レヴァンは城へ向かおうとした時、カムイに呼び止められた。

 

「私達も行かせてください」

 

「駄目だ。奴は今までの敵ではない。下手をすれば死ぬぞ?」

 

「カムイ殿。レヴァン殿の言う通りだ。ヘルカイトは熟練した戦士でも苦戦する程の怪物・・・カムイ殿達が行けば犠牲がでるかもしれんぞ」  

 

ジークマイヤーの言葉にカムイは迷った表情になった時、ジョーカーがレヴァンの前に立った。

 

「俺も行く。確かにあの竜野郎は強いし、俺達が足手まといになはかもしれねぇ・・・でもよ、戦いを補佐する位なら出来る筈だ」

 

「確かに補佐してくれるのは助かる・・・だが」

 

「わ、私も行きます!」

 

サクラがそう言って手を挙げると、スズカゼとサイゾウとオロチ等と次々に手が挙がっていく。

 

「なら、私も行きます。私の主であるカムイ様が行かれるなら私も付き合うまでです」

 

「ふん、無謀な戦いはしたくないが・・・あの化け物を人任せにして捨て置く訳にはいかんからな」

 

「わらわもじゃ」

 

「皆さん・・・」

 

仲間達の言葉にカムイはそれでも迷っていると、今度はオスカーがレヴァンに言った。

 

「・・・レヴァン。カムイ達を信じてくれないか?」

 

「オスカー殿・・・!?」 

 

「なら、私もだ。此処まで覚悟を決めた者達を阻みはしない」

 

「ソラールまで・・・」

 

「・・・なら、私も行くぞ!」

 

「ジークマイヤー殿・・・震えているが?」

 

レヴァンの最後の言葉で全員が吹き出すと、笑いに包まれて明るい雰囲気になった。

カムイも決断したのかレヴァンに答えを出した。

 

「私も戦います。レヴァンさん・・・お願いです」

 

カムイは真っ直ぐにレヴァンを見つめると、レヴァンは暫く無言でいたが溜め息をついて城の方へ向いた。

 

「・・・生きて帰れると考えるな。死ぬ気で戦え」

 

レヴァンはそれだけを言うと、城へ歩いていきカムイ達も続いて行った。



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ヘルカイト

カムイ達は城内に入ると、中はボロボロでとても静かだった。

 

「・・・中にも侵入している様だな。跪を引き締めて掛からなければ死ぬぞ」

 

レヴァンはそう言って歩き出し城内を歩いて行く。

カムイ達も続いていき静かな城内を歩いていると、物陰から体格の大きな剣と盾を持った蛇の怪物が現れた。

 

「レヴァンさん!?」

 

「こいつらは蛇頭だ。気を付けろ。剣以外に魔法や頭を使った攻撃を仕掛けてくるぞ」

 

レヴァンはそう言い終わると、蛇頭はカムイ達に攻撃を始めた。

蛇頭はまずレヴァンの元に近づくと、大きく剣を振るうがレヴァンはカイトシールドで弾き返して隙を作るとクレイモアで吹き飛ばした。

 

「先ずはこれ良しか・・・」

 

「凄いです。あの技は・・・パリィですか?」

 

「ほぉ、パリィをご存じでしたか?」

 

レヴァンは感心した様に言うと、カムイは頷く。

 

「私が暗夜でマークス兄さんが見せてくれた技です・・・」

 

「・・・そうか」

 

レヴァンはそれだけを聞くと先に進んでいく。

道中、何度も蛇頭と交戦するが支障もなく進み続けていると、大きな霧の掛かった部屋を見つけた。

 

「・・・見つけた」

 

「え?此所にいるのですか?」

 

「そうだ。奴はこの先の霧の中に潜んでいる・・・中に入れば倒すか、死ぬまで出られない」

 

レヴァンはそう言うと、回りは緊張した雰囲気に包まれた。

 

「無理をしなくてもいいぞ。どのみち、今のお前たちじゃヘルカイトとやり合うのは・・・無謀だ」

 

レヴァンはそう言った時、仲間達は沈黙する。

暫くその空間が広がっていた時、後ろから何か大きな音で向かってくるのを聞いたレヴァンは振り向くと、そこには鎧猪が突進してきており、レヴァンは避けようとした。

 

しかし、レヴァンは後ろを見た時、フェリシアがおり避ける事が出来ずにそのまま直撃してヘルカイトのいる部屋へフェリシア共々放り込まれた。

 

「レヴァンさん!フェリシアさん!」

 

カムイは叫んだ時には既に遅く、二人は霧の中へ消えていた。

 

____________

_______

___

 

レヴァンとフェリシアは鎧猪の攻撃で霧の中へ入り込んだ。

レヴァンはすぐに立ち上がると、辺りを警戒する。

 

「ヘルカイトは・・・いないな」

 

レヴァンはヘルカイトがいない事を確認すると、近くで倒れているフェリシアの元へ駆け寄った。

 

「起きろフェリシア」

 

「へ・・・?レヴァン様・・・?」

 

レヴァンはフェリシアの言動を聞くと、安堵し立ち上がらせた。

 

「気を付けろ。既に霧の中だ。・・・何処からヘルカイトが来るか分からんぞ?」

 

「は、はい・・・!」

 

レヴァンとフェリシアは警戒しながら身構えていた時、突然屋根が壊れ、巨大な何かが落ちてきた。

そこにいたのはヘルカイトで、大きな雄叫びを挙げてレヴァンとフェリシアに対峙した。

 

「行くぞ!油断するな!」

 

レヴァンはそう言ってクレイモアと火に強い竜紋章の盾を持って向かっていく。

ヘルカイトはその姿を見ると、レヴァンに向かって噛みつこうとしてくるが、レヴァンは咄嗟に避けてヘルカイトを切りつけた。

ヘルカイトは怯まず翼を振るうと、レヴァンは吹き飛んでしまった。

ヘルカイトはそのレヴァンの隙を突こうとした時、フェリシアが暗器を投げ、ヘルカイトに刺さり注意がフェリシアに向いた。

 

「グオォォォォォ!!」

 

ヘルカイトは雄叫びを挙げると、口からブレスを吐こうとした。

だが、レヴァンは咄嗟にヘルカイトにクレイモアを突き刺し、ヘルカイトを怯ませるとレヴァンはフェリシアを崩れた残骸の影へ行くと、フェリシアを伏せさせる。

 

「フェリシア。此処に隠れていろ、すぐに決着を着けてくる」

 

「嫌です!私も」

 

「今のお前では実力不足だ。酷な話かもしれないが隠れていろ。・・・大丈夫だ、すぐに戻る」

 

レヴァンはそう言って走りだすと、ヘルカイトと戦い始めた。

レヴァンはヘルカイトに苦戦しつつも勇敢に戦い、遂にヘルカイトを撃破寸前まで追い詰めた。

 

「とどめだ!」

 

レヴァンはとどめを刺す為にクレイモアを両手で持って振るう寸前、ヘルカイトの攻撃がレヴァンより早く当たろうとしていた。

 

「(間に合わないか!)」

 

レヴァンはヘルカイトの攻撃を受けようとした時、ヘルカイトの目に突然、暗器が刺さりヘルカイトは怯んだ。

レヴァンはその隙をついて強力な一撃をヘルカイトに当てると、ヘルカイトは呻き声を挙げながらゆっくりと消えていった。

 

【飛竜のソウル】

 

レヴァンはそう頭に過ると武器を下ろし、暗器の飛んできた方向を見た。

そこには息を切らしてへたれ込んでいるフェリシアがおり、レヴァンは額を押さえて唸った後、大きく息を吸って怒鳴った。

 

「この馬鹿者が!!!」

 

かつてレヴァンが呪術の教えを受けていた人物の口癖でフェリシアを怒鳴ると、フェリシアはビクッと硬直させた。

 

「死にたいのか!下手をすればお前の命は無かった!あれだけ隠れていろと言った筈だぞ!」

 

レヴァンの説教にフェリシアは涙目になりながら話す。

 

「で、ですが・・・あのままだったら死んでたのはレヴァン様の方ですよ!」

 

「うッ・・・」

 

レヴァンはフェリシアの正論に何とも言えない状況に陥ってしまった。

レヴァンは不死の身であるとはいえ、同じ不死以外の仲間たちには伝えていない・・・いや、伝えたくなかった。

レヴァンが不死であり、死ねば死ぬほど亡者に成り下がると聞けば幾らカムイでも化け物と考えると恐れたからだ。

 

だから、レヴァンはフェリシアに対して何も言い切れなかった。

 

「・・・はぁ・・・もう良い・・・目的は果たしたんだ。カムイ達の援護に向かうぞ」

 

「は、はい!」

 

レヴァンはクレイモアとカイトシールドを手に歩き始めると、フェリシアも続くのだった。



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放浪の英雄

~???side~

 

何時からだろうか・・・

 

彼が不死となって北の不死院に送り込まれたのは・・・

 

私は彼の恋人として心の満たされる愛を抱いていた筈なのに私は、彼を化け物として見てしまった・・・

 

私は彼が連れ去られてから心に取っ掛かりがある中で生活していたある日、私の瞳にダークリングが現れて故郷の皆は私を化け物だと口々に罵倒していく・・・

 

私はこの時、あの時の彼の気持ちがよく分かった・・・

 

化け物と呼ばれて恐れられた彼の孤独な気持ちと絶望を・・・

 

私は彼と同じ北の不死院に送られたが、長い年月故か牢の鍵が壊れており、外に出ることができた・・・

 

私は彼を探して北の不死院を歩いたが見つからず、代わりにいたのは不死人の成れの果てである亡者だった・・・

 

亡者を相手に慣れない戦いをしながら進むと、一つの巣を見つけて近付いた・・・

 

巣の上に立ってみたその時、大きな鳥に突然、掴まれて連れ去られた。

長い間、飛んでいた時に広場が見えるとそこで放り投げられる様に降ろされて鳥は何処かへ行ってしまった・・・

 

私はそこで心の折れた男からこの地は不死人がグヴィン王から火を引き継ぐ為の巡礼をする場所であり、私も巡礼をする立場に置かれた不死の一人になったのだ・・・

 

私は巡礼をしながら彼を探した・・・だが、彼はだいぶ前にやって来ていたのか所々の強敵は見かけず、偶然出会った者達からレヴァンが化け物を凪ぎ払う様に倒して進んでいったと聞いた・・・

 

私は巡礼を続け、アノール・ロンドを進み、王のソウル奪うべく武器を片手に奥底の王達の元へ向かい、王達のソウルを奪った。

これでレヴァンと再開できる筈だと考えて・・・

 

だが、彼と再開する事はなかった・・・

 

私が火を引き継いで次の世界へ行っても見つからない・・・

 

そこでも、引き継ぐ事に成功して次の試練を覚悟して燃やされていったが、次に目が覚めた場所は広い草原だった。

 

私はここが不死人の世界とは異なる場所で、彼がいるかもしれない世界だと直感した。

何故なら怪物殺しと彼の異名が広がっており、同一人物なのかは分からないが噂を頼りに彼を探す事にした

 

私は・・・この世界も旅をして彼を探しだして謝りたい、例え許してくれなくても・・・

 

私はファーナムの鎧兜を纏い、武器を手に彼を・・・レヴァンをこの世界で探し続ける・・・

 

~side終了~

 

レヴァンとフェリシアがヘルカイトと戦闘していた時、カムイ達は多数の蛇頭と亡者、一頭の鎧猪を相手に苦戦を強いられていた。

 

「くッ・・・数が多いです・・・!」

 

「亡者なら兎も角、蛇頭と鎧猪は厄介だ。蛇頭の攻撃と鎧猪の突進には気を付けるんだ」

 

カムイはソラールと背中を合わせて大軍を相手に戦っていると、亡者の一体が剣を片手に戦えないサクラの元に突進していく姿があった。

 

「サクラさん!!」

 

カムイはサクラの元に駆け付けようとするも距離が遠く、間に合わない。

サクラは恐怖で身動きが取れず、ただ亡者の振り下ろされる錆び付いた剣が振り下ろされるのを待っていた。

 

サクラは強く目を閉じて斬りつけられる痛みが襲われる感覚を待っていたが、何故かこない。

サクラは閉じていた目を開けて見ると、亡者の剣を別の剣の刃が止めていた。

 

「か弱い少女を相手に剣を振るうか・・・外道が」

 

その声の主は上半身に毛皮の付いた鎧と兜を被った戦士風の人物だった。

その人物の手に握られているのはクレイモアで、軽く背丈に届く刀身を軽々と片手で持って、亡者の刃を止める姿にサクラは呆気に取られていると、クレイモアが素早く振るわれ亡者を斬りながら吹き飛ばした。

 

「大丈夫ですか?怪我は無いようですが・・・」 

 

「は、はい!助けて頂いてありがとうございます!」

 

「そうですか・・・」

 

戦士風の人物は安堵した様に溜め息をつくと、助けに来たカムイがやって来た。

 

「サクラさん!」

 

「カムイお姉さま!」

 

サクラは走ってカムイの元に行くと、カムイに抱き付きカムイも優しく受け止めた。

 

「貴方はその子の姉ですか?」

 

「はい・・・サクラさんを助けて頂いてありがとうございます」

 

「・・・次は気を付けた方が良い。亡者を筆頭としたこいつらはどんな行動を取るか分からない・・・ノスフェラトゥと言う化け物の方が余程やり易い位に・・・。油断をすれば一瞬の内に命を狩られるんだから」

 

戦士風の人物はそう言うと、クレイモアと打刀を持って亡者の大軍に素早く接近し、武器を振るった。

クレイモアで豪快に、打刀で華麗にと、二刀流の剣術で先程まで沢山いた大軍が次々と減っていく。

 

「凄い・・・」

 

「ふむ・・・流石は放浪の英雄だ」

 

「放浪の英雄?」

 

何処から現れたのかジークマイヤーが感心する様に頷いて戦士風の人物を見ていた。

カムイはジークマイヤーの呟いた放浪の英雄と言う言葉に、ジークマイヤーは説明した。

 

「あの者の名はリクセラ。あんな鎧を纏っているが歴とした女性だ。あの者はとても強く多くの苦難乗り越える程の実力者なのだが、各地を放浪する癖があってな・・・だから放浪の英雄と呼ばれている」

 

「何故、放浪を?」 

 

「それが分からんのだ・・・。どうやら人探しをしているようだが、リクセラ自身はあまり人と話す様な人物ではない・・・あ、そうだ。これだけは行っておくが別に悪い存在ではない、不器用で人に対して厳しい口調になる事もあるが、実際は優しい人物だ」

 

ジークマイヤーがそう言い終わると、リクセラは最後に残った鎧猪に目掛けて持ち変えたグレートソードを縦に振るい一刀両断にして戦いを終結させた。



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