なんか違うぞこの世界 (黒姫凛)
しおりを挟む

短いシンオウ地方編
え?嘘マジなんなのこれ?


……ハハッ、笑うなら笑ってくれ。
リメイク版出したくせに新しい小説に手を出すこの糞作者。
まぁ文章力皆無だから、見たら公開する可能性大。

リメイク版見てた人とさごめんね?


ふと、疑問に思ったことは無いか?

人間と似た(主に10代20代ぐらいの女の子)が、口から火を噴き、水を吐き、10万か100万かよく分からない電気を身体から放出したり、地面を揺らしたりと、常識じゃ考えられない事が出来る事に?

まぁそれはこの世界の人達にとっては、当たり前なのかも知れない。

いや、俺にはそれが常識では考えられない。

普通思うか?喧嘩の発展したのがポケモンバトル。擬人化したポケモン達が、ぼこぼこにしてやんよ ( ・ω・)っ≡つ ババババみたいなノリで、どんぱちばんぱちやるんだぜ?

普通なら腹殴られたりしたら一般ピーポーの人達なんか血反吐を吐いて倒れるぐらいのあれだよ?そんなものを更に力入れて殴るのだ。恐ろしいったら無いわ。

鳥肌立つし、俺の息子もきゅぅーっと縮まってしまう。

 

さてさて、お察しの通り。私め、転生者でございます。

特に神様にあってこんな特典貰ったとかそういうのは無く、ただ目を開ければ、誰だか分からない別嬪さんが俺の顔を覗いて笑みを浮かべていたのだ。

………そんなに見つめると恥ずかしいでござる。

というか、動かせる範囲で動かしてみれば、手足がなんだか不便であった。

それもその筈。

何故だか分からないが、赤ちゃんになっていた。

……な、何が起こってるのか俺にもわからんが、とにかくなんか凄い事は分かった。

 

「ーーーあぁ〜、よちよちぃ〜。可愛いでちゅね〜。ママに似て、きっとスベスベ肌になるんでちゅよ〜。……ああ、ダメだわ。鼻から赤い噴水が出そう……」

 

………これは誰だろうか?

考えてみるに、一番先に思ったのは俺の親だと言う事。

子供の顔見ただけで鼻血出すとか、何処の変態だよ………。

……こんな親馬鹿もとい、残念美人さんが俺の親なのか……。

いるんだなぁ。本物の残念美人さんって。

 

「………そろそろご飯の時間ね。さぁ、ママのおっぱいでちゅよ〜」

 

えっ!?嘘待って!!

いきなり目覚めて数秒でその羞恥はマジで勘弁して欲しいわ!!

ああっ!!嘘っ!?ま、まぁーーー!!

 

女性の象徴とも言える、双丘の先にピンと立つ桜色のとんがりが、俺の口に押し当てられ、コリコリした突起とその突起から漏れる白い液が口の中を支配していく。

 

…………ああ、精神年齢が思春期超えると、これはめちゃくちゃ恥ずかしいし、全世界の非リアーズに嫉妬の目を向けられそうで恐ろしい事が分かった……_| ̄|○ il||li。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

成長過程の中で、最も身長が伸びるのは大体十代前半である。

生活リズムを崩せば、次第に成長期でも身長が伸びなくなる。

俺はと言うとそんなことは無く、伸び伸びと成長して今年10歳になった。

例え身体がピチピチの小学生みたいな見た目でも、中身は20歳過ぎたオッサンだ。

本を読んだり、書いたりと、まぁ前世の事もあってそういった事は出来るのだが、一つ問題があった。

この世界での文字が読めないのだ。

そりゃそうだ。

ポケモン世界の文字って、某親父みたいなハンターになる系マンガのように文字の説明はされてないから全く分からない。

だから5歳になった時、誕生日プレゼントはいらない代わりに、仕方なく、いやいやだが、マジで勘弁して欲しいのだが、我が家の馬鹿マミィもとい、残念美人さんこと俺の母さんに文字について教えてもらう事にした。

何故だが知らないが、その時の母さんはマジで驚いた顔をした後、思いっきり抱き付いてきて頬ずりし始める始末。

なんなんこの母親?

ただでさえ中身オッサンの俺なのだから、そんな無防備にデカい胸を顔に押し付けてきて、ちゅっちゅっちゅっちゅっと俺の頬にキスしまくってくると、例え当時5歳児の子供でも力が漲っていく息子のネタにされるのだぞ?

前世でも6歳児同士で子供を産んだって言うのはあるのだから、この世界でも同じ事だ。

俺の小さいながらも頑張って元気に立っている息子をこの馬鹿母が見つけるやいな、いきなりズボンを下げてきて以下省略。

 

言える事は、ただ一つ。

『息子に手出すなよ……(二重の意味で)』

 

てか文字教えてくれよ。

じゃないと嫌いになるぞ。

そう言ったらめちゃくちゃ泣きついてきて、たっぷり教えてくれた。

なるほど。このバカ親は、嫌いになると言えば一殺らしい。

これをネタに、暴走したらこの言葉をいうことにするか。

 

5歳児にもなると、ポケモンスクールに通うことが出来る。

何故か行かせてくれなかったので、例のあの言葉を優しく言ってあげた。

……泣いてOKしてくれました。

 

それからポケモンスクールで通いながら、俺はこの世界の事を図書館で調べ尽くした。

分かったことは、ここはシンオウ地方である事。

そして何より、これは図書館で分かった事ではないのだが………。

 

「ーーークロメ君!一緒に帰ろ?」

 

俺の腕を強引に掴んできたこの少女。

……なんという事でしょう。

何故か、幼女時代のシロナさんと同じ世代で生まれてしまったのだ…………。

 

……(●´д`●)マヂカョ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ちょっとした昔の話

10歳になって、俺ことクロメ(サンムーンでの名前と同じ)は、いよいよトレーナーとしてまずシンオウ地方に飛び出すのであった。

……隣にくっつく美少女と一緒に。

 

その前に、少し昔の話を話そう。

なぁに。ポケモンスクールでの話だよ。気にする事は無いさ。

まず、将来クイーンオブトレーナーとしてシンオウ地方のチャンピオンとなる筈のシロナちゃんとの出会いからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はその日、村の近くでポケモンの生態について見て回っていた。

と言っても、どんなポケモンが住んでいるのか興味が湧いただけで、ただ単に動物園とか見て回るだけだったが。

 

シンオウ地方でお馴染みの鳥ポケモンのムックルや、草タイプのスボミーなど、様々なポケモン達が住んでいた。

シンオウ地方って結構森が豊かなのかな。

ここら辺は特に足場が悪いってことも無く、子供な身体でもサクサク行けた。

子供の身体ってホントにスポンジのように吸収して何でも身につけられる。

良い例が体力だろうか。

走り回るだけでいいのだ。それだけで自然とついてくる。

というか、全然疲れないんだよなこの身体。流石、外で遊ぶ子元気な子だ。

 

森の奥まで進んでいくと、ポチャリと鼻に水滴が落ちてきた。

その水滴は次第に空から無数に降り始め、気付いた時には豪雨となっていた。

マジかよ…。傘持ってきて無い……。

何処か雨宿り出来るところを探す。1番いい選択だっただろう。

この中で帰るとかマジ頭おかしいと思う。

 

走る事数分、ずぶ濡れになりながら小さな洞穴を見つけた。

しめたと思い、急いで穴の中へ。

大人じゃ入れないような隙間ではあったが、今の俺には余裕余裕。

 

「ーーーだ、誰ですか………?」

 

と、洞穴の奥からか細い声が聞こえた。

どうやら先客がいたのか。

しかしそこまで狭くないわけだし、ちょっとシェアさせて貰おう。

 

「ごめんけど、少し雨宿りさせてもらえ………」

 

頼み込むために、俺は奥に進む。

が、俺はそこで信じられないものを見てしまった。

 

やせ細った少女が、ポケモンを抱いてくるまっていたのだ。

枝毛が酷いボサボサの黄金色の髪の毛。

もはや骨と皮しか無いのではないかと思わせる細さ。

こんな状態だったら、普通死んでいるだろう。

辛うじて生きているって感じだった。

そしてその抱いているポケモン。

ギリギリと睨みつけるように俺に視線を向けているのは、多分フカマルだろうか。

 

いやちょっと待って。

このフカマルなんか違うぞ。

可笑しい。明らかに可笑しい。

何故、何故……。

 

ーーー『人型』なんだ?

 

訳が分からない。

やせ細った少女よりも少し小さく、まるで少女を守っているような感じのフカマル。頭に角があり、口から覗く鋭い牙。暗闇だから分からないが、お腹あたりが赤く、正しくフカマルと言える。

 

だが、何故人型なのだろうか?

この世界ではそういうものなのだろうか?

前世で読んだことのある擬人化した二次創作小説。

まさかその擬人化だとでも言うのか。

……スゲーよこの世界。マジで間違ってる……。

 

って違う。

今はそんなことはどうでもいい。

この少女を何とかしなくてはならない。

 

「……ねぇ、君。大丈夫?」

 

大丈夫なわけないだろうが。

とにかく、近付いて状況を満たさなくては。

 

ーーーガァアゥ!!

 

突然擬人化フカマルが唸り立った。

この娘を守る為に必死なのだろう。

なんという忠誠心だ。感服したぜ。

俺は背負ってきたポーチから、野生のポケモン達ように持ってきた、あまいハチミツを取り出して、フカマルに差し出した。

と、フカマルが飛び出して、ハチミツを持った腕にガブリと噛み付いてきた。

 

いてぇ!!マジで痛え!!

 

口から出る嗚咽を、叫びを、下唇を噛んで我慢し、ハチミツをそれでも差し出す。

服の上からでも分かるほどの大量出血。

こりゃヤベーな。差し出せば差し出す程、噛む力が強くなっている。

だが、ここで諦めるのは男では無い。

 

「だい、じょうぶだ。安心して食べて欲しい。君の主人を助けたいんだよ」

 

優しく頭を撫でてやり、落ち着かせる。

唸りながら噛み付いているフカマルは、それでも離さない。

 

「大丈夫だから。君が倒れたら誰がこの娘を守るの?その為に食べて欲しいんだ」

 

すると、フカマルは次第に落ち着き始め、噛む力が弱くなり始めて、離してくれた。

俺はよしよしと頭を撫でてやり、ハチミツをフカマルに手渡した。

手で掬い、貪るようにハチミツを食べ始めるフカマルを横に、俺は少女の頭を少しだけ小突いた。

 

「………だれ、ですか……?私に、……近付かないで。貴方も、虐められる……」

 

弱々しくそう言う少女。

だが、俺は虐めとか正直どうでもいいのだ。

てか、一々そんな程度の低い事で心が折られてちゃ、多分この世界じゃ生きていけないだろうよ。

 

「そんなもの知らない。虐めとかどうでもいい。俺は君を助けたいんだよ。顔を上げてくれ、今食べ物をあげるから」

 

しかし、頑なに顔を上げてくれない少女。

力がもう入らないのか、ぷるぷると身体が震えていた。

 

「それは……、貴方のもの……。……私が貰うべきじゃ……ない」

 

「そんなもの知らないよホント。ただずっと生死をさまよってる女の子を俺のポーチに入ってるもので助けられるのなら、俺は何でもしてあげる!!」

 

「ダメだよ……。私は、1人……なの。誰も、私のこと……見てくれないの……」

 

頭にきた。

この少女は悲劇のヒロイン気取ってるただの馬鹿なのだろうか。

そりゃこんな酷い格好してたら同情するけど、俺は怒りが収まりきれなかった。

 

「誰も見てない!?じゃあなんでここにフカマルがいるんだよ!!なんで俺に噛み付いてきたんだよ!!全部君を守るためだろ!?自分は1人!?笑わせないでよ!!フカマルが君とずっと一緒だったじゃないか!!それでも何かい?君はフカマルがいることを不快に思ってたのかい!?」

 

「そんな訳……ない!!フカマルが。……フカマルがいてくれたから、まだ私は死なずに済んでるの……」

 

「だったら、なんで生きようとしないんだよ!!フカマルは!!フカマルは君を守る為に生きようとしてるんだ!!それなのにその守りたい人が死んだらフカマルはどう思うんだよ!!」

 

ハッと顔を上げる。

傷だらけの顔。汚れが目立ち、隈が出来、女の子とは思えない酷い姿。

俺は、優しく抱きしめてあげる。傷に触れないように、優しく、頭を撫でる。

 

「それにほら、今俺もいるしさ。独りぼっちでもふたりぼっちでもないよ。それに、フカマルだけじゃない。俺も君の事を見てるんだ。安心して欲しい」

 

ブワッと、少女の瞳から涙がこぼれ落ち始めた。

今までの苦しみ、今までの悲しみ。

全てがこの涙と叫びに混じっているように聞こえた。

その洞穴に響くのは、少女の嗚咽した悲しみの叫びであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから俺は、少女の傷を手当し、ちょっと持ってきた食料を全部食べさせた。

フカマルに齧られた傷を見ると、何とまぁ一生もん並の傷が出来ていた。

どうやら、擬人化ポケモンは言葉が話せるらしく、素直に一言謝ってくれた。

しかし、プイっとそっぽを向きながらも、俺の傷元に一時的にガーゼと包帯を巻いてくれた事には感謝。

 

そしてこの少女。

まるでボロボロの泥雑巾の如くって感じの少女の名前は、シロナ。

……………し、ろな?シロナ!?

………マジかよおい!!シロナってあのシロナだろ!?

確かにシロナと言われれば、ゲームとかで見かけた容姿と余り変わらない。

金髪もそうだし、連れてるポケモンがフカマルの時点で確定だろ。

てか、そんな超超有名人の顔に傷が付いてるんですけど!?

こりゃ不味いよ!!とんだ失態だよ!!

クッソー。特典あったら、幽波紋の『クレイジーダイヤモンド』を連れて来てるのに!!

 

お腹いっぱいになったのだろうか、少女は俺の腕の中ですやすやと寝息を立て始めた。

じゃあ、寝たということで、この流れからしてやるべき事事があるはずだ。

それは、………ここまでの事情説明だろ。

 

え?ほっぺぷにぷにとかしない?

バッキャロー!!寝てる時こそ辛い思い出を聞き出すチャンスだろうが!!

という訳で、フカマルに聞いてみた。

しぶしぶと言ったところだろうか。

フカマルは息を吐くと、ポツポツと話し始めた。

 

 

 

 

短く説明すると、シロナちゃんの両親が二人共亡くなり、元々お金持ちだったシロナちゃんの家の当主が居なくなった訳だから、財産の配分を親戚でやらなければならない。

しかしここで、肝心な事があった。

それは、シロナちゃんのことであった。

孤児院に預けるという選択肢もあったが、シロナちゃんは妾の子と言う事があり、妾なら使用人として働かせようという何とも酷い事をさせられたようだ。

しかも、その仕事内容は、売女。

流石にハメハメは無かったが、そっち系の趣味を持つおじさん達には絶好の獲物であったため、調教を4歳から受けたそうだ。

なんという胸糞悪い事だろうか。

そして、耐えれなくなったフカマルが一緒に脱走。

何日も何ヶ月も走り、今ここにいるという状態なんだそうだ。

 

ふと、俺はシロナちゃんの頭を撫でてる。

毛並みはボロボロ。女の子としての魅力は失われ、今俺の腕の中にいるのは、ボロボロの少女。

何て可愛そうなのだろうか。

同じ歳でも、環境が全く違う。

こんなのんびり生きてた俺があほらしく感じるよ。

 

そして、他愛もない雑談をフカマル(多分性格は意地っ張り)とちょびちょび話し、いつの間にか外の天候は晴れに変わっていた。

それに気付くと同時に、シロナちゃんがむくりと起きやがってきた。

 

「おはよう。ぐっすり眠れた?」

 

その問に、コクリと顔を赤めて頷くシロナちゃん。

どうしたのだろうか。風でもひいたのだろうか。

だとしたら、さっき毛布をかけてやるべきだった。

 

「じゃあ、雨が上がった事だし、俺はもう行くよ」

 

シロナちゃんを壁に横たわらせ、洞穴の出口を目指す。

すると、ぐいっとポーチを引っ張っているフカマルの姿があった。

 

「どうしたのフカマル。何かあるの?」

 

その問に、コクリと頷くフカマル。

まだなにかあるのか。聞いておかなければ。

 

「……私達さ、何処にも居場所が無いわけよ。多分、貴方が来てくれなかったら、シロナはのたれ死んでた。でも、貴方は来てくれた。噛み付いたのは悪いとは思ってるけど……、シロナの事、お願い出来る?流石に私の分までは世話しなくてもいい。せめて、シロナだけでも………」

 

………ええ子やな。

おじさん感動したわぁ。

ただの意地っ張りかと思ったが、以外にも主人の事だけは大切にしているのか。

 

「大丈夫だよ。フカマルの分も養うから。それに端からそんな話しなくても、強制的に連れていこうとしてたから」

 

「えっ?」

 

「えじゃなくて、フカマルも来ないと了承しないから。フカマルが来なかったら、シロナちゃんはホントに一人になる。唯一心を開いてるフカマルも連れてかないとダメだからな。」

 

「………いいの?迷惑かけちゃうかもよ?」

 

「大丈夫だ。、うちの母親の方が結構迷惑してるんだよ」

 

「……ありがとう。貴方には感謝しかないわ……」

 

「じゃあ決まりだな。シロナちゃん、悪いけど、おんぶするから立ってくれ」

 

俺は屈み、シロナちゃんの細い足を優しく掴む。

本気で握るとへし折ってしまいそうで怖過ぎる。

 

こうして俺は、いや俺達は、洞穴を抜け、マイホームへと帰還することになった。

 

余談だが、シロナちゃんと、フカマルをうちの母親が見た時、クロちゃんが盗られたと大泣きしたのは秘密である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はいー!!
シロナちゃんの昔の酷い過去でしたァ。

ちょっと眠たい時に書いたから多分文書いつも通り下手くそだったな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

飽きれたよホント

昨日の話に続き、今めちゃくちゃ眠たい中で書いてて何書いてるかよく分かんなかった。
シロナちゃんの奴なんかめちゃくちゃご都合主義っぽかったね。
許してヒヤシンス┏○))


前の話の続きと行こう。

ご都合主義でシロナちゃんを家に招き入れて1週間。

やせ細っていたシロナちゃんは、少しずつ肉が付き始め、顔の傷も薬を塗れば綺麗さっぱり無くなった。

良かった良かった。そのまま流れでシロナちゃんがチャンピオンになったら、顔の傷クイーンとして地方に紹介されてしまう。

顔の傷は女の子にとってとても気にするものだ。

ホントに良かったと思うよ。

 

フカマルはシロナちゃんのお世話で忙しそうに駆け回り、母さんの家事何かを手伝っていた。

聞けば、これくらいしか出来ないからと母さんにとってとても嬉しい言葉が返ってきた。

まぁ好きにすればいいんじゃない?

 

今更ながら、俺には父親というものがいないらしい。

産まれる前に死んだとか。

あまり写真とか好きじゃなかった父親は滅多に写真を取らず、家に残ってる写真には一つも写ってなかった。

寂しいと言えば寂しいのだろうが、あまり興味が無い。

というか、うちの母の個性が強過ぎて泣けてくる……。

なんだよ息子と風呂入るって。あんた俺いくつだと思ってるんだよ。5歳だぞ。………5歳児って親と一緒に入るか。

いやいやでもでも精神年齢オッサンの俺に、残念美人と付くが美人すぎる母さんの裸を見たら、これまた俺の息子も立ち上がってきて以下省略。

 

何度も言うけど、息子に手出すなよ(二重の意味で)……。

 

そんなデカい双丘押し付けられたら反応するわ。

スベスベ肌でむっちりした太ももとか、色香を出すうなじだの脇だのスラッとした足だのを見せつけてきたら、嫌になく反応しちゃうんだよぉー……。

ホントどうにかして欲しいよ。

 

心の平穏は、俺には無いのだろうか………。

 

だがしかぁし。最近は、俺がシロナちゃんのお風呂の手伝いをしてるので母さんは入ってこない。

フフフッ、これで私の心の平穏が取り戻せたぞ。

まぁ正確には、子供2人と大人1人が入れない風呂場なので、入りたくても入れないそうだ。

いや入りたそうにするなよ。

 

というか、なんで母さんはシロナちゃんのお風呂の手伝いをさせているんだろう。

いやいや、俺は別に文句は無い。文句は無いんだよホント。

未発育の可愛らしいお胸や、今は痩せて折れそうだがそれでも俺にはエロスを感じさせる二の腕、太もも、脇、そして可愛らしい容姿の娘が全裸。

目の保養に何とも適してる。

あんな搾り取ってくる母さんとなんか一緒に入るより、無邪気な笑顔を向けてくるこの天使ちゃんとお風呂に入った方が、ヒンバスには悪いが、ミロカロスとヒンバスとの差がある程。

いやー、こんな可愛らしい少女の身体を隅々まで洗えるなんて感動……。

前世で昔、妹にやってあげて以来だよこの感動は。

 

ボサボサだった髪も、透き通るような黄金色の髪色になり、枝毛が綺麗に無くなった。

フッ、これも俺のシャンプー&リンス洗いテクだぜ?

ああ〜、シロナちゃんの髪の毛が顔に当たる度、シャンプーのいい匂いが鼻をくすぐってくる。たまりませんなぁ。

 

おっと失礼。ついつい暴走してしまったよ。

でだ、そして更に1ヶ月後。

シロナちゃんの身体はやせ細っていた時とは違い、幼さがあるがこの歳ではめちゃくちゃスレンダーだと思う体つきになった。

こりゃーモテるわな。彼氏出来たら教えてよ。え?5歳じゃ無理?そんなぁ〜。

これもシロナちゃんの今までの生活を一変させるための思いなんだよ?作って過去の事なんか忘れなさい。

へ?彼氏なら俺がいい?

HAHAHAHAHAHA、何を言ってるんだ。

俺にはシロナちゃんと付き合うほど釣り合ってないよ。

 

シロナちゃんの彼氏探しもとい、フカマルを持っているんだからトレーナーとしての知識を身につけさせるために、母さんにポケモンスクールに通わせてあげて欲しいと直談判。

交換条件を呑み、シロナちゃんは1週間後にポケモンスクールに通えるようになった。

良かったね、シロナちゃん。陰ながら応援してるよ。

 

そしてさらば俺氏……。君には大切な用事が出来てしまったな。

お察ししてる人もいるかもしれないが、母さんが俺を食べる(性的な意味)そうだ。

この母親どうかしてるよねホント。

5歳食うとか、しかも自分の息子食べるとかマジで狂ってるよ。

でも、なんか結構真剣だった。

おいぃ……。そんなもんに真剣にならないでよ。こっちが恥ずかしい。

なんで俺を食べたいのかと聞くと、愛らし過ぎる。可愛過ぎる。愛し過ぎる。デカ過ぎる(意味深)だそうだ。俺の息子って大人以上の大きさなんだよホント。

……何処の同人誌だよ。そんな巨根持ってるやつなんてリアルで見たことねーわ。

これ終わったら、親との家族関係全て断ち切ってやろうかな。

 

でも何かさ。寂しさからそういうのが来てるのかもね。

なんか昔言ってたけど、母さんも家族がいなかったとか。

その時あったのが俺の父親で、いつしか結婚した。

唯一の存在であった夫を無くし、多分めちゃくちゃ辛かったと思う。

そう思うとなんか複雑。

まぁなんだ。家族縁だけは切らないで置いてやろう。

頑張れ俺。

頑張って母さんを満足させてやれ!!いや犯れ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーあ、不思議な事に、前世の俺の使ってたポケモンが擬人化して現れました。

 

当然ゲッチュ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シロナ side

 

 

 

クロメ君の家で生活し始めてから1ヶ月とちょっと。

生活免除は勿論の事、ポケモンスクールまで通わせてもらって、ホントにクロメ君のお母さんには頭が上がらない。

ホントに感謝。

 

これも、全てクロメ君のお陰。

あの時助けてくれたクロメ君のお陰で、私達は今がある。

だから私は沢山勉強した。

文字を書いたり読んだりするのは初めての体験。

ペンを持つのにも苦労したけど、だいぶ慣れてきた。

 

クロメ君の役に立ちたいけど、クロメ君はポケモンスクールではあまり積極的にみんなと関わろうとしない。

1人でずっと本を読み、ため息を吐いて、ノートに何かを書き出していた。

この前お願いして見せてもらうと、見たこと無い文字でノートいっぱいに書いてあった。

何かを聞くと、大人になったら教えてくれるらしい。

別に教えてくれたっても良いのに。

 

家以外では、全くと言っていいほどクロメ君と接しない。違う、接したくても接せれないのだ。

なんか周りの子が昼休みは引っ張りオクタンでみんな囲んでお話してくる。

別に不愉快って訳じゃ無いけど、クロメ君の所に行けないのはとても残念。

けどその分、帰り道は思いっきり甘えた。

友達に帰ると伝え、路地に向かうクロメ君の腕を強引にとってギュッと抱きつく。

クロメ君は、全然嫌がらずに頭を撫でてくれた。

クロメ君に頭を撫でて貰えるのはとても嬉しいし、とてもホッコリする。

そんな日が毎日続いた。

 

でも最近は全く甘えられなくなった。

帰り道、友達が手を掴んできて、逆方向に連れていかれてしまう。

なんでか聞くと、『クロメ君に近付かない方が良い』、『あの子怖い』、『暴力振られるよ』と言ってきた。

暴力?クロメ君が暴力なんて振るわけない。

そう否定したら、校舎裏で一方的に殴っていたのを見たらしい。

……そんな訳ない。彼はとても優しいの。分かってないのは貴方たちなの。

 

私は手を振りほどき、急いで家の方に向かった。

後ろから聞こえる友達の声など無視だ。

とにかく今はクロメ君の傍に居たいと思った。

あまり遠くは無いが、私の足じゃすぐには着かない。

でも、とにかく走った。

 

学校を超えた当たり、フッと男の子達の声が聞こえた。私のクラスメイト達の。

学校の塀と家の塀の間の抜け道。

確かここは、海に出るための近道だったはず。

私は構うことなくその道に足を踏み込んだ。

だんだん近付いてくる男の子達の声。

若干、何かを叩いてる音が聞こえてくる。

……嫌な予感がする。そう思ってしょうがない。

胸のもやもやがむず痒く感じる。

もしかしたら、ホントにクロメ君が人に暴力をしてるかもしれない……。

そう思うと、とても怖い。そして何より、助けてあげたい。

そんな状態になるまで、何をしていたのか解決してあげたい。

次第に道幅が広くなっていく。

それと同時に、眩しく輝く夕日の光が視界をぼやかし初めて来た。

立ち止まり、目が慣れるのが待ってられない。

私を強引に開いた。

 

そして、私が目にしたものは………。

 

ーーー木の棒で8人ぐらいの男の子達に殴られているクロメ君の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺 side

 

 

………なんで来ちゃうかなぁ。

 

俺は、手を広げて殴っていた男の子達の前に立ち塞がる少女にそう呟いた。

俺がなんでアホらしく殴られているか。

理由は単純。

美少女天使シロナちゃんに抱き着かれている俺氏→クラスの男の子達嫉妬→何か弱みを握ってそんなことさせてるのでは?→放課後呼び出し→離れろと人数で脅し掛け→頑なに拒否(好きでやってる訳では無い)→巫山戯んな馬鹿野郎!!と殴られる→ケンカスタート→圧倒的強者君臨→次の日の放課後再び脅し→また圧勝→1週間後、シロナちゃんの大切に持っていたモンスターボール(フカマルin)を人質に俺を滅多打ち→そして今現在少女が立ち塞がっております。

 

いやー、なかなか5歳児の頭侮れねーな。

人質とかその他諸々スゲーよ。この世界の子供ってみんな頭良いんだね。

ていうか、シロナちゃんもシロナちゃんだよ。

フカマルのモンスターボールがロック掛けたままで良かったね。

もし不用意にあいつらが出してきたら、瞬殺&病院送りにしてるよ。

てか大事に持ってないでしまうとかなんとかして欲しかったな。

そうしたら俺も殴られずに済んだのに。

まぁ庇って貰ってるだけでもありがてえな。

 

あいつらがシロナちゃんに退いてくれと言っているが、頑なに退かないシロナちゃん。

全く、勇気だけはあるんだから。逃げる勇気ってのも大事なんだよ?

俺はのそっと立ち上がって、シロナちゃんの肩を掴んだ。

 

「シロナちゃん。そろそろ家に帰りなよ。大丈夫、あのモンスターボールは俺が取り返すから」

 

シロナちゃんは俺の言葉に首を傾げだ。

何処に首傾げる問題点あった?

 

「……モンスターボールってなんの事?」

 

……この娘っ子!!自分の相棒の存在すっかり忘れてやがる!!

生死の境を共に過ごした仲だろ!?

ちょっと酷いよシロナちゃん。

 

「人のポケモン勝手に取るなんて、最低です!!今すぐ返して下さい!!」

 

正論。正しく正論。

これには何も言い返せない男達。

 

「……こ、こいつが俺達に渡してきたんだよ」

 

なんて野郎だ。俺に濡れ衣を着せやがったな。

絶対ぶん殴る。これでもケンカだけは強かったんでな。

負ける気がしねーぜ。

 

「じゃあクロメ君には怒っておきます。だから早く返して下さい!!」

 

……多分俺がとったって思ってないなこの娘。

なんていい子なんだよ。オヨメサンニシタイナァ〜。

 

「……ぐっ、シ、シロナちゃんはこいつに何か弱みとか握られてるの?出なきゃ、こんな陰キャラ見たいなやつに付き纏う理由が無いよ!!」

 

言ってくれるねこの5歳児。

えぇ確かにぃ、私めはとても髪を長く長ーく伸ばして目元が結構見えなくなってるんですけども。

その姿だけでモブキャラ扱いは酷いなぁ。

せめてエロゲの主人公って言ってよ。

あ、エロゲの主人公だとめちゃくちゃ女の子集まってくるわ。

 

「………弱み?ねぇクロメ君。弱みって何?」

 

「……弱みってのは、人に知られたくない情報とかを、言わない代わりにこれやってって脅したりする事だよ。アイツらの言ってる事は、俺がシロナちゃんの弱みを握って抱き着かせたりしてるんじゃないのかって言ってるんだよ」

 

「……弱み、ですか。今思えば、結構弱み握られてない?」

 

「例えば?あんまし記憶に無いわ」

 

「ほらほら、私のお尻と胸にホクロがあるとか」

 

「それ誰得情報?てかそんな所にホクロあったんだね。気付かなかったよ」

 

「だってクロメ君身体洗ってくれる時、頭しか洗ってくれないじゃん」

 

「身体が不自由だった時はいざ知らず、今は流石に洗えるじゃん」

 

「背中痒いの。今日は洗ってくれる?」

 

「………ちょっとこの話なしにしよっか。今話すことじゃ無かったよ」

 

そう言えば俺たち以外にもいた事忘れてました。

ごめんちゃい男達。

君たちの憧れは、俺の手で犯した(意味は無い)!!

 

「ふふふふふ、風呂!?どんな弱みを握られてるんだよシロナちゃんは!!」

 

わなわなと震えながら訪ねてくる。

あれ?羨ましいんですか?いいでしょー。

シロナちゃんの身体ってぷにぷにしてて柔らかいんだよ?

と呟いてみろ。絶好シロナちゃんを強引に引き剥がして正義の味方気取りするぞ。

 

「でもそこまで知られたくない事でもないし、弱みなんて無いよ?」

 

「じゃ、じゃあなんで一緒に風呂を?」

 

「好きだからに決まってるでしょ(一緒に入って洗ってもらう事が)」

 

「「「「「「「「「す、好きぃぃいいい!?!?!?(恋愛的な意味で)」」」」」」」」」

 

声を揃えて叫ぶ男達。

いやー、俺もドキッとしたけど、よくよく考えれば、家族なんだから恋愛感情なんて皆無に等しいよねぇ。

……でも肉体関係はどうなん母親よ。

 

「……お、おい、クロメ。俺達と、ポケモンバトルで勝負しろ!!」

 

「……ポケモンバトルを?なんで?」

 

「お前じゃシロナちゃんと釣り合わない!!俺が、いや俺達が貰ってやる!!もし、俺達がこの勝負に勝ったら、シロナちゃんを頂く。お前が勝ったら、俺達はお前の事を1人ずつ1個だけ聞いてやる」

 

「………流れから察するに、8対1だな」

 

「その分勝った時の報酬はデカいぞ?」

 

いや正直要らね。

お前らにしてもらうことなんてこれっぽっちもねーんだけど?

まぁいいや。どーせ勝つし。

お前らの雑魚いポケモンじゃうちには勝てないな。

……一体しかいないけど。

 

「……おいお前ら、随分とまぁご大層な言葉並べて俺を悪者扱いしやがってよぉ。別に俺の事は良いけど、シロナちゃんのポケモンは返してもらうぞ」

 

「悪いが、もしバトルにお前が来ないのならこのモンスターボールを破壊してやる。要はまだ人質ならぬポケ質何だよ」

 

全然上手くないから。

てか、良くもまあ人のポケモン平気で傷付ける。

お仕置きが必要だ。

 

「……ごめんな、シロナちゃん。しばらくフカマルアイツらの所に仕方なく置いておくからな」

 

「いいよ。元々私が招いた事だし。でも、当の本人の事勝手に決めて強引な男の子達。嫌になるよ」

 

「その代わり、今日は全身隅々洗って上げるよ」

 

「楽しみにしてるよ」

 

全く、この5歳児と来たら、褒めたらすぐにこれだよ。

頭いいとかいつまた俺は馬鹿だ。

全然頭良くねーよこいつら。

常識ってもんを知らねぇ。

いいぜ、教えてやるよ。

この世界の常識と、この世界に生まれたわけ俺が何をしてきたかを。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

女の子の涙はさいきょー(その涙を見た主人公最強)

前の夢うつつ状態で投稿した2話と3話。何書いてるんか全く理解出来なかった。半ば半寝で投稿したものですが、今回はちゃんとお目目ぱっちりの時に投稿させて頂いたので安心(^^)v
あ、でも俺目細いからぱっちりの時なんかないかーあはははは………。
………目が細いとコンタクト付けにくいんだぞ。

PS お気に入り登録者様ありがとごさいます。これからもよろしくおなーしゃす!!

2018年 2月18日 一部修正。


試合は3日後。

先生に試合の事を報告したが、8対1じゃ明らかに不利だと言われ、何とか交渉して5人にした。まぁ結果は同じ事だと思うけど。

5対1の試合(イジメ)は、先生達はどうかと言っていたけど、正直トレーニングをすればどうという事はないなと確信しているので問題ない。

それもこれも全てこの娘(前世のポケモン)が悪い。

強過ぎるよこの娘。びっくり仰天だね。

技なんかもゲームの時と変わらなかったし、多分ステも変わらない。もう最高だね。レート戦で最強ポケモン軍勢がリアルで蘇るよ。※あくまで作者が最強だと思ってるだけで、最強でも無敗だとは言ってない。

 

そんなこんなで3日後。

シロナちゃんとにゃんにゃあったが、それはまた後日。

イロイロあって俺の腕にギュッと抱きついた状態で家を出た俺。……歩きずらい。まだ夏じゃないけど暑い……。後未成熟なょぅι゛ょぼでーがヤバイですはい。

そんなお構い無しにギュッとしてくるシロナちゃんを装備しながら、試合の事を俺は考える。

ハッキリ言って負けは無い。これは確定。

相手が伝説準伝説出して来ない限りは大丈夫。……流石にそれは無いよね?

後、相手が人型を出さない限りは大丈夫なんだけど……。

まぁいいか、問題ないね。

 

作戦としては大雑把に1体1本倒していく戦法。

あのいじめっ子共に実力と経験を見せつけさせて、2度と立ち上がれないぐらいにまでボコボコにする。……流石に立ち上がれないぐらいってのはやり過ぎかな。親呼び出して謝罪とかしたくないからな。

まぁガンガンいこうぜでいいかな。避けて避けて攻撃。……ガンガンいこうぜじゃないなこれ。

まぁ後悔しないぐらいでやるとするか。シロナちゃんの事もあるし。後悔させてやる。……俺は後悔しない程度でやるのに相手には後悔させる。フッ、この相手に厳しくて自分に甘い流石俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称 side

 

 

 

 

 

朝早くからというのに、ポケモンスクールには既に子供が溢れかえっていた。コートには白線が引かれ、いつでもバトルの準備は出来ていた。

ポケモンスクールでは、様々な事情とはいえ、何かしらでポケモンバトルをする事は多くある。それは学校法人として、将来有望なトレーナーの成長を向上させると共に、授業の復習も兼ねて行われる。要は授業でどれだけの事を学んで実践で生かし、尚且つ競い合わせる事で、個々の力を伸ばしていく。

観客席で生徒に見せるのも、人の戦いを見せることでどんな事をすれば流れを持っていけるのか、技の使い方、ポケモンとのコンビネーションをイメージさせる目的もある。

バトルをする生徒は、年度末に渡される評価表で勝率がよければ内申点が多い事がある。

 

結果的に言えば、『お前らどんどんポケモンバトルしろ!!』である。

 

勿論1回1回の試合は、全教員も授業なんぞほっぽり出しての観戦。まぁ生徒がいなければ誰に授業すればいい?ということから試合はポケモンスクール全教員全生徒での観戦が義務付けられた。

……これはある意味生徒の成長ぶりを見るものであるため、決して教員達のお喋りタイムではない。

 

既に強者の意か、ふんぞり返って仁王立ちしている8人の生徒。

勿論教員達は、5対1などある意味虐めだと言い合っていたが、そこで揉め合いになった所を校長がサムズアップで許可を出し、今に当たる。

若干教員達の中ではこの試合に対して、あまりいい感情を抱いていない者も多く、その5人の生徒と対戦相手の生徒の担任である教員もそれには反対していた。

 

(………クロメ君。大丈夫だろうか……)

 

彼、担任であるタカトシは、クロメが虐めを受けている事に気付いていた。彼にも、そのことで話したことは多々ある。

だが、クロメはその話に対して、『所詮は5歳児』などと、まるで自分は5歳児ではないかのような反応を見せた。

正直タカトシは、このクロメの言動に対し、本当に5歳児なのだろうかと不安を覚えた。

5歳児となると、やんちゃな年頃になり初めもあって、自分の行動で善悪の区別がつかない状態。聞いた言葉は頭が覚え、日常的に発する様になる。発する事で、話すという動作を身につけていくのだ。

 

しかし、クロメは異常過ぎる。

覚えたてでも、しっかりと区別がついた言い回し、子供とは思えない仕草、大人し過ぎる普段の生活、などなど。考えただけでも両手には数えられないほど浮かぶ。

 

一体彼は何者なのだろうか。

5歳児とは思えない言動、在り方。全ての行動に、大人のような明白な考えがある。何気なく歩いているが、頭の中では何かを考えているよう。

不思議な子であり、恐ろしい子でもある。

裏に一体どんな顔が隠れているのか知らないが、とてつもなくヤバイものを持ってるに違いない。

 

タカトシはそう思うも、やはりこの試合は危険だと唸りをあげた。

不思議な子であり恐ろしい子だとしても、自分の生徒には変わりない。一教師が生徒を守れず何とする。

タカトシは今からでも校長に進言しようと、急いで立ち上がる。

 

「ーーーおやおやタカトシ先生。急に立ち上がってどうしましたか?」

 

タカトシに後ろから声がかかった。

ゆっくりと振り返ると、ニコニコした笑顔で猫背で腰に手を回している校長が立っていた。

まるでタカトシが校長の元に来る事が分かっていたかのように。

 

「こ、これは校長先生。どうしてこちらに?」

 

「いやなに。あそこからはフィールドは見れるが、観客席の様子は見えなくてねぇ。こうやって降りてきたんだよ」

 

ふぉっふぉっふぉっと自慢の髭を手でとく校長。

表情を変えず、ずっとニコニコした笑みを浮かべている。

 

「………校長。突然ですいませんが、やはりこの試合は中止した方が……」

 

「心配なんて無用ですよ。確かに普通の生徒が5対1の試合をやれば危険性はありますが、彼なら全く持って大丈夫ですよ。」

 

ニッコリと笑みを浮かべる校長。

校長はそう言うが、やはりタカトシは教師。生徒が危険な目にあわないようにする為にも、ここは引けなかった。

 

「校長先生、分かるでしょ?あれは明らかにリンチバトルだ。群れの野生のポケモンとは違う。例えバトルだからといって、群れ以上に人同士の複数バトルには危険があるのは分かっているはずです。それでも何故止めない」

 

ポケモンは、時に群れでバトルを行うことがある。一対複数。野生のポケモンは、特に群れの場合だと、群れの規律がある分行動にスキがある。だが、トレーナーの指示で動くポケモンは、連携が例え上手くなくとも、群れよりかは素早く行動出来るし、何より指示はトレーナーに任せて自分は最大の事をすると言う区切りがしっかりとしてある。

その区切りを持つポケモンが5体もいる。並大抵のトレーナーではこの状況は難しい。1匹1匹の行動に注意しながら、尚且つ指示を出していかなければならない。

到底5歳児には無理な、いや、殆どのトレーナーが不可能に近いものである事は確か。出来としたら、ジムリーダーか四天王、チャンピオンぐらいである。

 

「もし、指示ミスであの子達のポケモンの技がクロメ君に当たったら大問題です。今すぐにでも考え直してーーー」

 

「ーーー私の考えは変わらんよ」

 

それでも、校長はニッコリと笑みを崩さず、タカトシを見ていた。

タカトシは苛立ちを感じる。

 

「ふざけないで下さいよ!!アンタは、アンタは生徒をなんだとーーー」

 

「ーーータカトシ先生」

 

タカトシの肩にポンッと手が乗った。

校長が腕を伸ばして、ポンポンと肩を叩いて宥める。

 

「落ち着きなさい。生徒達の事を思う貴方の気持ち。それは分かる。未経験なものほど、過ちは分からないものだ。危険だ。確かに危険だ。だが同時に、それは生徒達にとっても励みに変わる。こんな異常事態でも、変わらず興味津々に見に来る生徒達は、何が見たいのだろうかな?」

 

「……ポケモンバトルです」

 

「その通り。生徒達はポケモンバトルを見に来たんです。しかも今回はまた特別だ。このバトル形式は授業で触れたことの無い形式だ。興味を唆られるのは当然だとも。その興味は段々と励みに、そして力となる。自分に不利な形式でも、突破口さえ見破れば自分も勝てるという自信が生まれるのだ」

 

「でもそれを真似して大怪我をしたら元も子もないのでは……」

 

「ふぉっふぉっふぉっ、それでは君達教師がいる理由がないではないか」

 

校長の言葉にハッとする。

教師とは教えを伝える者。この形状について教えるのが教師。未経験なものほど過ちは分からない。それはこんな形式のバトルをやった事の無いタカトシや教師全員がそうだ。

しかし、例え群れバトルのような形式でも、バトルはバトル。

長年やって来たらものは同じ。

教師として、バトルという教えを生徒達に教えなければならない。

 

「それで話を戻すと、クロメ君は大丈夫ですよ。彼は強い。そして凄い。精神的にも、肉体的にも、そして信頼関係的にも、彼は凄いですよ」

 

「何を根拠に?」

 

「貴方なら分かるはずだ。彼の言動その他諸々、子供とは思えないだろう。私は彼の1面を知らないが、先生ならそう思えるでしょう。それに私、結構勘は当たるんですよ」

 

「……勘、ですか」

 

「ささ、席に付きなさい。彼のご登場だ」

 

校長に急かされ、渋々座るタカトシ。

しかし、タカトシはその数秒後、再び勢い良く立ち上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校門から現れる影。その影とは勿論クロメ。開始時刻には余裕がある登校だ。

砂煙の中を、俯きながら進むクロメ。その姿に8人は勝ったと確信した。やはり自分の思うようにいかなくなり、せめて最後ぐらいはシロナちゃんに、腕に抱き着いてもらおうという魂胆があるのだろうと8人は思った。

が、クロメの姿ににクラスメイトや教師達は唖然とした。唖然とするしかなかった。

黒いコートを羽織り、長かった髪を全て後ろで束ね、3日前とは思えない何処かしら強い雰囲気を持ったクロメが歩いていた。

勿論、隣で腕に抱きついてる学校のマドンナ、シロナにも目がいったが、それでもクロメの姿は、まるで別人のように思わせるものだった。

俗に言うイケメン。髪の下に隠れていたのは、凛々しいまでの顔立ちと、圧倒的威圧感。

まるで幾千幾万幾億と戦場をかけたトレーナーのよう。

これには、5人も驚く事しか出来なかった。

 

「ーーーおいガキんちょ共」

 

いつもとは違う、ドスの聞いた声。声色で分かる。明らかに怒っていると。鋭い視線が、5人の身体をしっかりと見つめる。

シロナを腕から剥がし、フィールドにゆっくりと近づきながら、5人に向かって青筋を立てている。

 

「この前のお返ししてやるよ」

 

コートで仁王立ち、明らかに怒った口調で話すクロメ。

風がフィールドの砂を巻き起こして竜巻を作る。砂煙が舞い、クロメの羽織るコートが靡いた。

 

「本気でかかってこい。所詮はガキんちょだからなぁ、女の子の涙の重さってのをイマイチ分かってないだろう」

 

モンスターボールを取り出した。

しかし、それは子供が持っているのは珍しいボール。ハイパーボールだ。

ゆっくりと構え、完全にバトルモードに入る。8人も慌ててボールを取り出した。クロメと同じ、ハイパーボールを。

 

「教えてやるよ。シロナちゃんの涙の重さをよぉ」

 

クロメはポイッと手首を返してボールを投げた。カツンと地面に当たり、コロコロと数回転がり、ボールが開かれた。

 

「特別講師だ。同じ女の子なんでな。よく教えてくれると思うぜぇ?」

 

ポリゴンと共に姿を現す人型。

クロメより頭1つ高く、子供の落書きのような作りをしたピカチュウの色褪せたフード付きパーカーを身に纏った何かだ。パーカーから伸びる黒いピカチュウの尻尾のようなものがピクピク動く。ひと回り大きいパーカーの下に、色褪せた黄色のミニスカートと黒ストッキング。フードの下から覗くのは、目元を隠すには丁度いい程の長い髪。そして不気味な笑みを浮かべながら、ユラユラと体を揺らしている。

 

その姿は、まるで怨念。テケテケと笑う人型は、まるで蔓延る怨念の如く。

正しく幽霊、亡霊、亡骸。

ピカチュウにも似ているが、ピカチュウではないナニカ。

明らかにおぞましいものだった。ゴーストタイプの何かだろうか。

そして何よりーーー。

 

「女の子を泣かせたら、どうなるのかをよぉ」

 

ーーー明らかに、誰も見た事のない人型のポケモンである事は間違いなかった。

 

 




まぁ文書見て、私の糞な文章力に合わせてくれたら多分どんな擬人化ポケモンなのかは分かるはず。
いよいよ下手くそなバトルシーンだぜYEAH!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

相性微妙だとキツい

読む前に言っておく。
『全部ぶっ込んじゃってすいません!!』。
一応はなんか一万文字超えてました。
本当は2話で分けるつもりだったけど、なんか上手く思いつかなかったし、書いてる途中から何これ?って自分でも思い始めちゃったので、うん『取り敢えずぶっ込んでみた』。
相変わらずの下手だけど読んでくれれば嬉しいです。




読む前に言っておく※2回目。
ポケモンの技で、低確率とか高確率とか効果である付属効果は、この作品では全て100%の確率でなるということでお願いします。
え?理由?んなモン書いてた後に気付いてオリ設定としてぶっ込んだだけだよぉ。
あ、後色々オリ設定ぶっ込んだので、嫌だなぁー、こんなの無いよぉー、と少しでも思ったらこの小説を閉じなさい!!


ーーー静かだ。

 

音は確かにある。しかし、それすら掻き消すほどの威圧感と存在感。静寂に近い無音空間が、この辺りを覆っているかのような。黙ってなければ何をされるか分からない程の緊張感が、騒いでいた教師や生徒を黙らせていた。

審判役を引き受けていた教師ですら、コール出来ない状態。

 

しかし、そんな場の空気など知らず、シロナはクロメの後ろでずっと目をつぶってクロメの勝利を願っている。

恐怖よりも、威圧感よりも、何よりもクロメの勝利を心から願う儚い少女。

そんな期待を持つ少年、クロメは、ポケットに手を突っ込んだまま、相手がポケモンを出すまで待っている。

クロメはポケモンを1体出しているが、肝心の相手は場の空気同様に黙って動けなくなっていた。

 

「………なぁ、いつまで黙ってんの?そろそろこっちも始めたいんだけど」

 

痺れを切らしたクロメが声をかける。その声は周りの音が聞こえにくいのか、良く響いている。

ハッとした5人は、それぞれの持つハイパーボールをえいっとフィールドに投げ出した。

地面に当たると同時にボールが開き、ポリゴンと共にポケモンの原型が現れていく。

 

「……お、お前が、見た事の無いポケモンを出したとしても、俺達にはパパが貸してくれた強いポケモンがいるんだからな!!」

 

と同時に、ポリゴンから姿を現したのは。

 

「……なっ、なんて事だ」

 

果たしてこの声を漏らしたのは誰だろうか。

クロメかシロナか。はたまた校長か担任のタカトシか他の生徒か教師か。

何れにせよ、その言葉通り、登場したポケモン達は、ポケモンバトル未経験に近いトレーナーが扱うには難し過ぎるポケモン達であった。

 

ーーーバンギラス、レントラー、ニドキング、ニドクイン、ドラピオン。

 

全て最終進化形態であり、この周辺では見かけないポケモン達。どれも凄まじいプレッシャーを放ち、共に雄叫びを上げる。

空気が振動するかのような轟は、静まり返っていた雰囲気を一気にぶち壊す。

 

「すげぇ、本物のバンギラスだ!!」

 

「かっけぇー」

 

「本物初めて見たー」

 

ガヤガヤと騒ぎ出した生徒達とは裏腹に、教師達は不安が顔に出始める。

未熟な生徒には、大型ポケモンの操りは難し過ぎる。

改めて教師達は、この試合が危険なものだと言う事を認識し始めていた。

 

「………安心なさい。例え扱いが出来なくとも、クロメ君がしっかりしてくれるはずですよ。私達は静かに見守りましょう」

 

校長は静かにそう言った。

教師達は顔を見合わせ、試合は中止しないがもしもの為に、実力のある教師達をフィールドの傍に配備させる形で審判に合図した。

 

「みんな準備はいいか?」

 

「いつでも」

 

「けちょんけちょんにしてやるぜ」

 

審判の問に、クロメは静かに、代表してセンターに仁王立ちしている生徒が鼻で笑うように答える。

 

「それでは、試合……開始!!」

 

旗が振り下ろされ、一気に盛り上がりを見せる。

先に動いたのは、この中で一番足が速いレントラーだ。

 

「レントラー、『噛み付く』!!」

 

タンッタンッとジグザグに地面を蹴り進み、思いっきり地面を蹴った。口から覗く犬歯が光り輝く。

 

「………ミミ、『舞え』」

 

クロメは人型ーーーミミに一言だけそう言う。

ミミはパンパンと手をたたき出し、クルクルとその場で二回転。

腕の裾が長い為、振袖のように可憐に見える。

 

「そんな意味不明なことしても、無駄なんだよ!!」

 

ガブリッと閃光の如くすれ違いざまに噛み付く。

ミミのフードがフサっとめくれ上がった。

瞬間ーーー。

 

「ーーーケケッ」

 

いつの間にかレントラーの目の前に移動したミミが黒く尖った尻尾をレントラーの腹に叩き込んでいた。

 

「ーーー『シャドークロー』」

 

その威力は並のシャドークローを遥かに超える威力。反動と威力で、レントラーは一気に吹き飛ばされた。

壁に激突したレントラーは、目をグルグル回し、ぐったりと倒れ込んだ。

 

「………レ、レントラー戦闘……不能」

 

再び唖然とする場の空気。

噛み付くは確かに決まったはずだった。あの不気味な姿をしていた事から、ゴーストタイプだと判断した生徒は見事であった。が、噛み付くの効果で怯ませる事が出来るが、ミミは怯むこと無く凄まじい攻撃を繰り出してきた。まるで効果が無かったかのように。

 

「………一体何が起こったんですか」

 

「クロメ君が『舞え』と言ったのは、多分『つるぎのまい』なのではないですかね」

 

『つるぎのまい』。攻撃を2段階上げる変化技。物理技を得意とするポケモンには持ってこいな変化技である。

 

「まさか、授業で習っていない変化技……、しかも『つるぎのまい』を使うなんて……」

 

「しかもノータイムであの人型ポケモンは技を繰り出しましたよ……。まるでこの次は何を繰り出せばいいのか分かっていたかのような。凄い信頼感ですね」

 

たった少しの流れでも、未熟な生徒とは思えない動きと判断を見逃さなかった教師達。校長は、まるで嬉しそうに口々に言い合う教師達を見て笑みを浮かべていた。

 

「……でも、何故あの人型ポケモンはダメージが入らなかったのでしょうか」

 

「確かに……。『舞え』としか言ってませんでしたし、『まもる』も使ってるようには見えませんでしたが……」

 

ポケモンの技には、相手の技を避わす以外に、『まもる』や、『みきり』と言った、技を防ぐ技がある。連続では出せない技だが、『はかいこうせん』や『ギガインパクト』と言った強力な技以上の威力では無い限り、絶対に破れない強度がある。

 

「ということは、効果がなかったのでは?」

 

「あくタイプで効果無しってありませんよね?そうなると、あの人型ポケモンは新タイプを持っていることになりますよ」

 

タイプ相性には様々ある。難しいかと思われるが、実際考えてみるとタイプの相性は、実際にタイプと同じものを使ってみると一目で分かりやすい。

 

火に水をかけると火の威力は下がるため、みずタイプにほのおタイプは効果抜群。

プラスチック製の箱に火を近づけると、だんだん効果を見せてくるが、時間がかかるため効果は普通。

水に火を近づけても効果は薄い為、ほのおタイプにみずタイプは効果いまひとつ。

雷が地面に落ちても、アースとなって電気を散らす為、効果はなし。

 

といった様々なタイプ相性はあるが、あくタイプ技で攻撃して効果無しというタイプは今のところ存在しない。

唯一効果抜群が一つしかないノーマルタイプだが、それでもかくとうタイプなので全く違う。

無難に考えるなら、人型ポケモンのミミは新しいタイプを持っていると考えるべきではある。

しかしそう考えると、クロメは初めからミミのタイプを理解していたということになる。博士か誰かに言うとしても、理解されていないタイプの為、3日では調べられる事が出来ない。

新タイプの事を知っているのも凄いが、タイプ相性をしっかり考えているクロメ自身も相当なものである。

 

「ーーーちょっと待って。あの人型ポケモン、フードがとれてるわよ」

 

教師の中で、そう呟きが上がった。

よく見ると、被っていたミミのフードがとれ、耳のように両サイドから跳ねているアホ毛のようなものが特徴の、髪が物凄く長い少女が立っていた。相変わらず目元は見えないままである。

 

「……さっきの攻撃でとれたのか。いやしかし、人型ポケモンとは言え、ポケモンの身体が剥がれたようなものだろう。そんな事があっていいのか……」

 

ポケモンと人型ポケモンの違い。それは人型であるかないか。たったこれだけの差である。技の威力は共に同じ。タイプも共に同じ。本当に違うのは、人型をとっているかどうか。

例えば、ポチエナ。人型とそう出ないのを見比べた時、注目すべきは身体に纏っているもの。人型で無いポチエナは、身体を体毛で覆っている。しかし、人型の方はどうだろうか。例え人型と言えど、人としては服の役割を果たす。人型ポケモンは、言語を理解し、それを使うと研究にある。そう、例えポケモンでも、見た目は人間と変わらない。それが人型ポケモンである。研究の結果、人型ポケモンを覆うモノは、時に体毛、時に何かで形成された服、時に両者かそれ以外のものかである。人型ポケモンは身に纏うモノを、自分の意思で着たり脱いだりが可能。但し自分のものでなければ着ることが出来ない。

話を戻すと、自分の意思で着たり脱いだり出来るが、大事なのはそれも自分の体の一部だと言う事。

一種の説では、その纏うモノが体毛の変わりで、衝撃など和らげるなどと言われているが、そんな自分の身体を守るものを脱いでもいいのだろうか。フードも頭を守る体毛の代わりとすれば、とても大事なものである。ましてやバトル中にだ。明らかに頭の防御が取り払われたのと一緒である。

 

「ーーー先生方、お悩みのようですね」

 

教師達が頭を悩ませている最中、クロメが教師達に叫んだ。

 

「一応教えておくと、こいつの、ミミのタイプは未発見のタイプを持ってますが、あくタイプの技を効果無しにするものは持ってませんよ」

 

「じゃ、じゃあなんだと言うのだ?」

 

「分からないんですか?簡単です。『特性』ですよ」

 

『特性』。全てのポケモンが持つ能力の一種。その能力は様々で、バトルで使えるモノ、旅の際に使えるモノと、大きくわけて二種類ある。全部が全部同じではなく、それぞれポケモンが違った『特性』を持っている。

 

「ばっ、馬鹿な!!そんな技を無効にする『特性』なんぞ、ヌケニンの持つ『ふしぎなまもり』しか無いはず……」

 

「その通り。技を無効にする『特性』、正確には効果抜群以外の技を通さない『特性』、『ふしぎなまもり』はヌケニンしか持ってないです。実際の所、ミミにあくタイプ技はイマイチ何ですよ。と思うことは、やはりミミは『ふしぎなまもり』が『特性』だと考えるのが無難。確かにいい線ですけど、ちょっと違うんですね。まぁ、まだここにいる人は見たことないと思うかもしれませんが」

 

「クロメ君の口ぶりからして、まるでこの地方のポケモンでは無いような言い草ですね」

 

校長がそう言った。

確かに、この場にいる人は見たこと無いというのは、そのポケモンの情報自体この地方に無いということになる。

 

「ええそうですよ。正しくこの娘はこの地方のポケモンじゃない。この娘は『アローラ地方』のポケモンですからね」

 

「そ、それって、代々伝わる伝統を伝承し、外部の情報に全く興味を示さない地方の事ですか!?」

 

1人の教師、社会科の教師が今までで一番の驚き顔で立ち上がった。

無理も無い。『アローラ地方』は、自然と共に生きる地方であり、気温は温帯、一年中海に入る事が出来る珍しい地方である。一切の外部との関わりを示さず、他の地方からのポケモンの入国は禁止され、他地方からの移住民なども固く禁じている地方である。観光などは許されているが、『アローラ地方』で捕まえたポケモンを他の地方に持ち出すことは禁止され、見つかった瞬間外交問題で思い罰が下される。

そんなポケモンを、クロメはこんな公の場で繰り出したのだ。

外交問題なんぞ恐るるに足らずである。

 

「……クロメ君、それって外交問題になるんじゃ……?」

 

「いやいや。この地方で野生で出たからセーフっしょ。それに、名前が分かんなきゃ、報告しようにもピカチュウの人型と言えばかたがつきますしね」

 

「じゃ、じゃあ君は、何でそのポケモンの名前が分かったんだ?」

 

教師の問に、んーと首を傾げるクロメ。

確かに、誰も知らないなら、教えて貰っても本当の名前なのかは分からないのが事実。人型であるから、喋る事も可能だが、人型は知能は普通のポケモンよりも狡猾である為、騙すということもある。

一字一句全て信じきるというのは流石にどうかと思うと教師達は不安を抱いた。

 

「まぁ、内緒ということで勘弁。今は、このバトルを終わらせてからですよ」

 

すっかり忘れていたが、今はポケモンバトル中であった。

いつの間にか取り残されていた5人は、じっとクロメを睨んだままである。

 

「よ、よく分かんねぇが、全員で押し切ってやる!!」

 

「でも、あのポケモンの『特性』が分かんないんじゃ、攻撃がきかないーーー」

 

「ーーーあ、それは安心してくれよ。ミミの『特性』は消えたから」

 

消えた。つまり発動し終えたということ。ここまで来ると、『ふしぎなまもり』の説は一気に消失した。『ふしぎなまもり』はバトル中は絶対に発動する。消えるのなら、『いえき』と言った『特性』自体を消す技でないと消えることは無い。

何はともあれ、これで技は聞くという事だ。

 

「じゃあ遠慮なく行くぜっ。バンギラスっ、『ストーンエッジ』!!」

 

バンギラスは右手を握りしめ、思いっきり地面に叩きつけた。その余波で地面が押し出され、地面から長い岩の柱が勢い良く生えだし、ミミに襲い掛かった。

 

「もう1回『舞い』ながら避けろ」

 

再び長い裾を両手で合わせ手をたたき、クルクル回る。しかしさっきとは違い、移動しながら可憐に回っている。長い裾と伸びる長い髪が、可憐である。

地面から伸びる岩の柱を紙一重で避けていき、距離を詰めていく。

 

「ニドキングっ、『じしん』!!」

 

バンギラス同様地面に拳を叩きつけ、地面を激しく揺さぶる。

だが、『じしん』は強力でも、複数バトルの場合、味方陣営も攻撃してしまう。この場合だと、味方陣営は全員効果抜群であり、受けた場合、相当なダメージを受けることになる。流石ここは未熟な生徒と言ったところである。

 

「『ストーンエッジ』の柱をつたってジャンプ」

 

ミミは『舞い』を止め、バク転を繰り返して柱を登っていく。『じしん』で揺れる大地が、バンギラス、ニドクイン、ドラピオンにダメージを与える。

 

「お前何やってんだよ!!この前の授業で相性の事やっただろ!?」

 

さも当然に怒る自称パパ強し君。しかし、ここで揉め事を起こす時点で、まだまだ未熟だと言わせる。

クロメはこの機を逃さず、『3度目』の『舞い』を行わせた。

やんややんやと踊るミミは、クルクルと宙回転し力を貯めていく。

 

「ミミ、バンギラスに『じゃれつく』っ」

 

ミミは『舞い』を止め、くるりんと回り、バンギラスの頭にかかと落としを食らわせる。態勢が崩れたバンギラスに、更にアッパー、溝打ち、右ストレート、左フック、右ジャブ、左ストレート、膝蹴り、回し蹴り、裏拳、股間蹴り、連続パンチ、スネ蹴りーーー。連続で、高速に。余りの速さで砂煙が立ち上がり、バンギラスとミミを覆う。しかしその中でも、ミミは繰り返し繰り返し煙で視界が奪われたバンギラスの身体に攻撃していく。

 

「『シャドークロー』!!」

 

煙を薙ぎ払うように回転し、回転ざまに凶悪な黒い鉤爪のような尻尾で薙ぎ払い。大きな巨体のバンギラスは、一瞬にして場外に叩き出された。

ドスンッと地面が揺れ、後に残ったのは目を回して倒れるバンギラスだけであった。

 

「バンギラス、戦闘不能!!」

 

まさに圧倒的であった。

『つるぎのまい』の最高6段階上げでの効果抜群の『じゃれつく』とトドメの『シャドークロー』。

変化技を駆使して能力を上げ、弱点を見定めての技の構成と、ポケモンの動きを無駄なく行うその技量。とても未熟な生徒とは思えない。正しく実力者トレーナーの中でもこの歳でトップに近いものであろう。

教師達は、まさに度肝を抜かれたように驚きを隠せなかった。

 

「このまま一気に。ミミ、『かげうち』」

 

自分の影に入り込み、影とともに姿を消すミミ。

場に残された3体のポケモンは辺りを見渡し始める。

しかし、場にはミミの姿が見当たらず、忍び寄る影に3体は気付かない。

 

「ーーーミミ、ゴー!!」

 

ニドキングの影に潜んだミミが、背後からのかかと落とし。体勢が崩れ、更に追い打ちをかけるように『シャドークロー』がニドキングを吹き飛ばす。

何も出来ず、吹き飛ばされたニドキングは倒れ込んで目を回した。

 

「ニドキング戦闘不能!!」

 

残り2体。全く持って圧倒的である。

今までダメージは0。このまま行けば、完全試合となる。

 

「圧倒的、ですね」

 

「何も言えません。技の構成とその技量。人型ポケモンもそうですが、クロメ君の実力も素晴らしい」

 

「将来有望なトレーナーですな」

 

トレーナーの目指す道は、それ様々だが、一番多いのはポケモンリーグ制覇だろう。

バッチを8個集め、年に1度行われるシンオウリーグ・スズラン大会で優勝する事。トレーナーの誰もがそれは思う事だろう。

リーグ制覇は、トレーナーにとっては名誉な事で、出身地からリーグ制覇者が出ると、町総出で祭りが行われることもある。

それ程、リーグ制覇をしたトレーナーはそれぐらい凄い事である。そして何より、リーグ制覇をするのは、全て優秀なトレーナーだという事。

クロメは、そんな優秀なトレーナーの前兆を示している。将来有望なのは明白である。

 

「でも、ちょっとピンチな様ですね」

 

校長の言葉に、教師の目は急いでフィールドに向けられた。

向けられた先には、若干引きつった顔のクロメと、ふらふらとふらつくミミの姿であった。ミミの顔色は、前髪で分かりにくいが顔色は確かに悪そうであった。

 

「あの状態は、『どく状態』か!?」

 

ポケモンは『どく』、『まひ』、『ねむり』、『やけど』、『こおり』の五つが基本的な状態異常である。『こんらん』もあるが、主だった状態異常は五つだろう。

特に、『どく』は動くにつれてどんどんダメージが大きくなっていき、『やけど』はダメージが一定だが、技の威力が半減し、『まひ』は動きを鈍くする。

 

「今の流れで『どく』状態なるとしたら、ニドキングに触れた事か」

 

「ニドキングの『特性』、『どくのトゲ』ですか。物理技を得意とするあのポケモンには回避できなかった見たいですね」

 

『特性』の中には、状態異常を引き起こすものがある。ニドキングの『特性』は2つ。ポケモンには『隠れ特性』というものがあるポケモンが多いが、大体そんな『特性』を持つポケモンは早々いない。

ニドキングの『特性』は、今回の『どくのトゲ』と『とうそうしん』。全てのポケモンに言えることだが、ポケモンは見た目では『特性』の判断が難しい。バトル開始と同時に発動すれば対処は出来るが、『特性』を一つしか持たないポケモンが相手ならともかく、2つ持つポケモンだと、どちらかである為、とても判断に困る。これを逆手に取って、バトルを有利に進めるのも手であり、そこはトレーナーの実力が試される。

 

「どく状態か。なんかよく分かんないけど、とにかくチャンスだ!!ニドクインッ、『なしくずし』!!」

 

ニドクインが飛び出す。拳を握り、ふらつくミミの腹に拳を叩き込む。バンッと衝撃波が起こり、反動でミミは後ろに飛ばされた。

しかし、クルンと空中で一回転したミミは、反動とは裏腹に、何食わぬ顔でクロメの近くに戻った。

 

「……まさか、『どくのトゲ』だとは思わなかった。そっちのニドクインももしかしたら『どくのトゲ』かも知れないな」

 

ポイッとクロメはミミにきのみを投げた。状態異常を回復させる『ラムのみ』。それを一気にパクリと食べるミミ。

次第に顔色が良くなっていく。

 

「一先ずこれ持っとけ。ニドクインぶっ倒したらかじれよ」

 

コクリと頷くミミを横目に、ジリっとニドクインを見つめるクロメ。

ニドクインの一撃を食らってもピンピンしているミミに対して、向こうの5人は驚愕の顔をしていた。

 

「あの一撃で無傷!?どんな耐久持ってんだよ……」

 

「ほほぉ。吹き飛ばされた事を利用して、トレーナーの元に戻ってきのみで回復と。なかなか状況判断がいい」

 

ニドキング、ニドクインの一撃は、バンギラスに匹敵する程の威力。その一撃をまるで後ろに移動する為にわざと受けたような流れ。戦意喪失しそうなぐらいの揺らぎを覚えた。

 

「さぁ、早めに終わらせよう。ミミ、『シャドークロー』」

 

地面を蹴り、一気に駆け上がる。その余波は地面に足跡をくっきり残し、更には深くめり込ませるほど。

グンッと伸びた尻尾が黒い鉤爪となり、ニドクインの懐に入り込む。

 

「つっ、捕まえろニドクイン!!」

 

両手で挟むようにガッシリとミミの身体を掴むーーーが、一歩踏ん張り、そこからブリッジで身体を逸らして避ける。両手が合わさった瞬間に地面を蹴り、そこからのバク宙。回る身体が、鉤爪と化した尻尾をニドクインの額に叩き込む。

ゴチンッと鈍い音と共に前に倒れるニドクインに、更に切り返しの『シャドークロー』。

横っ腹に叩き込んだ『シャドークロー』は、メリメリとニドクインの横腹に入り込み、衝撃で足を浮かせ、一気に振り回す。

飛ばされたニドクインは、踏ん張ることも出来ないまま、なす術なく壁に勢い良く激突。バタンッと倒れ、目を回した。

 

「ニドクイン、戦闘不能!!」

 

残り1体と、予想通り『どくのトゲ』だった為『どく状態』となり、懐から取り出した『ラムのみ』を再び口に含む。

 

「今が狙い目だ!!ドラピオンっ、『シザークロス』」

 

「食べながら最低限避わせっ。致命傷は避けろよ!!」

 

もぐもぐと口を動かしながら、飛び交うドラピオンの長い腕を交互に紙一重でかわす。縦に来たのを横にずらし、横に来たのを空中でかわし、正面から来たのを体を逸らしてかわし、クロスして来たのを『シャドークロー』で受け止める。

最低限避け、多少のダメージ覚悟で『シザークロス』を受け止める。

この試合の中で、初めて技のぶつかり合いが起こった。

衝撃波が砂煙を巻き起こし、バチバチと火花が飛び散る。

 

「『クロスポイズン』!!」

 

ドラピオンの防御力は高い。物理型のミミに対しては、的確に防御を行えば多少のダメージで抑えられる。が、ミミは『つるぎのまい』で6段階上げである為、防御を怠れば相当な深傷となる。

 

ぶつかっていた尻尾を押し出し、ドラピオンの腕にどくの液が流れ出す。ミミは一歩後ろに飛び、尻尾で地面の砂をドラピオンの顔向かってぶっかけた。

一瞬目が見えなくなった事を逆手に、ミミは後ろに回り込む。

 

「『じゃれつく』!!」

 

背中にまず尻尾の一撃、更に右フック、回し蹴り、かかと落とし、左ストレート、両かかと落とし、廻蹴り、右ストレート、空中廻蹴り、膝蹴りーーー。

バンギラス時同様激しい猛打撃に、ドラピオンは体勢を崩しそうになるも何とか踏ん張り、首を回転させ、防御に徹する。

ミミの殴り込みは止まらない。更にスピードをまず猛攻。それを受け留まるドラピオン。会場を熱くさせない訳は無い。

 

「『シャドークロー』!!」

 

「『つじぎり』!!」

 

黒い鉤爪と、鋭くなった腕がまたぶつかり合う。

衝撃波の生んだ余波が、会場の外まで届く。

『シャドークロー』と『つじぎり』のぶつかり合いは止まらない。

しかし、ぶつかり合いが起これば起こるほど、その分体力が低下していくのは事実。6段階上げている攻撃を耐えているドラピオンも、流石にミミの一撃一撃は痛い。ミミもそろそろ体力の限界だろう。

 

「……聞き忘れてたけどさ、お前名前は?」

 

クロメがニヤリと笑みを浮かべながら尋ねる。

ドラピオンを扱うソフトモヒカンが似合う何処ぞのヤンキー少年みたいな生徒は、そんな質問を言われるとは思わなかった様で、目を見開いた後、笑いを零す。

 

「まさかお前、自分を虐めてた相手の名前を知らないのか?」

 

「そのまさかだよ。ていうか、俺お前から虐め受けたことないんだけど?」

 

「さて、それはどうかな」

 

「ガキはガキらしく大人しく名乗ってな」

 

「お前もガキだろ?俺はアキラだ」

 

「オーケーアキラ。多分そろそろ体力が両方とも尽きる。この歳でここまでできるなんて相当だなお前」

 

お互い様だと、アキラはそう笑う。

だが実際、教師達にあれほど優秀だと言わせたクロメと互角に立ち回れているアキラも相当な使い手だ。

初め、ニドキングが『じしん』を使ってドラピオンの体力は大幅に削られたはず。それでもなおドラピオンは攻撃を耐え、あらん事かミミと互角に戦っている。ドラピオンの体力の種族値は70。普通よりかは低いが、その分耐久力がある。しかし効果抜群だと、防御があった所で、体力が足りなければ致命傷になりやすい。

今ドラピオンがミミと互角に戦っているとなると、『じしん』が起きる前から、何かしらの能力変化を施していたことになる。

 

「ドラピオンが能力変化できる技と言ったら、『つぼをつく』かな」

 

「よく分かってるじゃねーか。変化技を使えるのは、まぁお前だけじゃないってことだ」

 

『つぼをつく』。『攻撃』『防御』『特攻』『特防』『素早さ』『命中率』『回避率』のいずれかを2段階上げる変化技。

ランダムで、どれが上がるのかは使ってからでないと分からないが、アキラはニドキングで『じしん』を使うのだろうと開始直後から予想していたのだろう。そこで『つぼをつく』を使い、ランダムで能力を上げ、見事2回で防御が4段階上がったことで、『じしん』を耐えることが出来たのだろう。

 

「ドラピオンの防御を活かした守備と、先を見越して応じたアキラ君。いやはや、将来有望なトレーナーが沢山出てきますねぇ」

 

嬉しそうに校長は笑う。

まだ教えた事の無い事を、平然とやってのける生徒達に、心から感心している教師。5対1の試合を中止しなくて良かったと心から思う教師達が多くいた。

 

「これが多分ラストだな」

 

「最大の力で打ち込む」

 

2体はそれぞれトレーナーの元に戻り、ジリっと睨み合う。

アキラの後ろに移動している他の4人も、一体何故こんな試合をしたのか検討も付いていない。

クロメの後ろに両手をしっかり握って勝利を願うシロナも、目を瞑って強く更に願う。

 

「これが最後のーーー」

 

「ーーーラストアタックッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『シャドークロー』!!!!」「『つじぎり』!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両者共に踏み出し、地面を蹴る。

ミミは尻尾を鉤爪に。ドラピオンは長い腕を鋭く尖らし。

両者とも互いの腹部を狙い、迷わず突き出される。

ゆっくりと、事ゆっくりと、時間がスロー再生されているかのような時間の長い流れが、瞬間的にあった気がする。

そしてーーー刹那ッ。

 

衝撃波が2体を中心に巻き起こった。

激しい閃光と共に砂煙が舞い上がり、フィールド全体を覆い隠すような巻き起こしが起きる。

 

吹き荒れる砂嵐の中、審判が煙の中に残る影をずっと凝視する。

次第次第に見え始めた影を見つめ、審判は右手に持つ旗を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー勝者、クロメ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数秒後、観客席からこれまでに無いほどの喝采が舞い上がった。

 




まぁ勝たせないと駄目じゃん?
もう少しドラピオンとミミちゃんの戦い伸ばしたかったけど……、ほら、何?この話書いてる作者、言語力乏しいでしょ?
だからそこまで纏めれなかったのよぉ。
将来的に、シロナたんにフカマル返上させないとガブガブ所持しない事になるからさ〜。
ここはご都合主義で許してつかぁさい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5年ぐらいスキップされる前のお話

ネタがあんまり思いつかなかったので、色々何やかんなやってて今に当たる。

正直何書いてるか分かんなかったけど、見てくれると嬉しいのよ。


ーーーそれは其処にあった。

 

 

無の世界にポツンと浮遊する一つの卵。

 

 

ーーーそれは其処にあった。

 

 

ただひたすらに無の境地に存在する一つの卵。

 

 

ーーーそれは其処で産まれた。

 

 

誰が産み、誰が作ったのか、誰も知らない一つの卵。

 

 

ーーーそれは此処で生まれた。

 

 

砕ける様に亀裂が走り、やがて卵の殻が弾け飛ぶ。

 

 

ーーーそれは此処で誕生した。

 

 

卵から生まれたものは、膝を抱えて丸まっていた。

 

 

ーーーそれは此処で命芽生えた。

 

 

次第に目が開き始め、紫い宝石(アメジスト)の目がくりくりと周りを見渡す。

 

 

ーーーそれは此処で動き出した。

 

 

抱えていた膝を伸ばし、手を足をゆっくりと動かす。

 

 

ーーーそれは此処でふと気付いた。

 

 

周りには誰もいない。たった1人だけの世界。

 

 

ーーーそれは此処で思った。

 

 

寂しいと。辛いと。寒いと。

 

 

ーーーそれは此処で思った。

 

 

だったら作ればいい。自分の世界を。

 

 

ーーーそれは此処で始めた。

 

 

時間を、空間を、存在を、世界を。

 

 

ーーーそれは此処で作り出した。

 

 

自分の、自分だけの、自分の為の、世界を。

 

 

ーーーそれは此処で願った。

 

 

側にいて欲しい、優しくして欲しい、暖かくして欲しい。

 

 

ーーーそれは此処で思った。

 

 

自分と同じ境遇の者を、自分の世界に欲しい。

 

 

ーーーそれは此処で考えた。

 

 

パラレルワールドとの干渉、多重世界、多世界、他世界全ての世界との干渉を作る。

 

 

ーーーそれは此処で呟いた。

 

 

 

 

 

 

『ーーーずっと、ずっと、待ってる………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは唐突に起こった。

別に誰とのせいとかそういうものでは無い。

ただ単に、自分の失態。失敗。そして黒歴史。

さも当然の如く、試合後のクロメの評価はうなぎの滝登り。試合をした日は、ポケモンスクールは授業が無く、放課後のような雰囲気になるが、次の日には押し掛けという押し掛けが凄まじかった。

朝学校に来ると、真っ先に女子に囲まれ、男子に勝負を吹っかけられ、クラスの男子に『お前なんでそんなにカッコイイの?』と聞かれ、『……そんなにかっこよかったんだ』と後悔した目でクロメを見てくるクラスの女子。全く何の事だか分かっていないクロメは、『何でこんなに俺注目されてるんだろねー?』と本当に分かっていない様子でシロナに聞いていた。『………クロメ君がカッコイイからだよ』と顔を赤めて言った呟きは、残念ながらクロメには届かなかったが。

 

授業中でも、教師達にやたらと当てられ、寝る暇がない始末。これまで授業をサボりまくっていたツケがここに回ってきたのだろうかとクロメは溜息を吐く。教師達にとっては、クロメは生徒達にとって模範となる姿だと認めて当てている事も知らず。

 

昼休みには校長室に呼ばれ、シロナを装備して校長室に入った。

シロナの姿を見て、『まず一人目の奥さんかね?』とニコニコしながら言ってくる校長に、マジで訳の分からないような顔で首を捻るクロメ。奥さんという言葉に、腕にくっついていたシロナは、顔を赤めていた。

校長には、昨日の1件で様々な事を聞かれた。

やれ何故バトルをする事になったのか。やれ何処で変化技について知ったのか。やれあのポケモンは何なのか。

午後の授業も、シロナと共に欠席し、夕方まで校長室でずっと話し込んでいた。たまに出して貰えるジュースやお菓子が何よりの救いであった。

 

校長に、あのポケモンはミミッキュかと聞かれた。

当然の如く知っていた校長に、クロメはコクリと頷く。

前にも言ったが、『アローラ地方』は現在半鎖国状態にある。観光は認めるが、移住、又は建物建設、他地方のポケモンの入国禁止、当地方のポケモンの捕獲、又は他地方に連れて行く事を禁止している。理由は全く公開されておらず、観光客に紛れて、外交官も飛んでいったが、特に異常は無かったという。外からの情報も遮断され、情報を出すことも送ることも出来ない。

完全な半鎖国地方なのだ。

 

だがそう考えると、尚更ミミッキュがここにいるのか不思議になる。

『アローラ地方』が半鎖国状態になったのは、クロメ達が生まれる前、故に15年経つ。

 

クロメは野生でいたから捕まえたと言っているが、そうなるとどうして1匹、一人と言った方がいいのか?ともかく、何故孤立していたのだろうか。もしミミッキュのトレーナーが何処かしらにいるとしたらまだいいが、貿易貨物船に迷い込んで此処にたどり着いたとなると、どうやっても外交問題は避けられない。トレーナーがいるなら、そのトレーナーに罰が起こるが、意図せず迷い込んだとなると、その証拠が無いため、こちら側から意図して連れてきたと疑われるのは間違いない。それこそ、どの地方も秘密裏に動いている事が多いのは事実。その一旦として、『アローラ地方』のポケモンのダッシュ、なんて地方のお偉いさんからの指示があったかもしれないと思われるのは、人間が心情を持っているからこそわからないもの。疑か信か。半鎖国などととっている地方は、間違いない疑として決定づけてくる。

 

今回は公での試合では無かった事もあるし、何より人型である事が何よりの救いであった。試合の時にクロメが言ったように、ミミッキュの因縁の相手、ピカチュウの人型だと言えばそれで方がつく。ミミッキュのミミの正体は、クロメとシロナしか知らないので、今のところ情報漏えいは何とか回避出来ている。

 

校長はその事もあり、クロメにミミッキュの引渡しを提示してきた。勿論ただではなく、3つお願いを聞くという事だ。

ポケモン同士の交換ならいざ知らず、ポケモンと金銭を交換のような取引はトレーナー協会では禁止事項だ。

勿論、その事を分かって、尚且つミミッキュは既にクロメ達の仲間だと言い、きっぱりと断る。

最後まで校長は笑顔を崩さなかったが。

 

そして午後の授業を全てパスして放課後、授業を受けていたアキラと合流したクロメとシロナは、帰路へと足を運んだ。勿論腕にはシロナちゃんそーびを忘れずに。

帰路では、他愛もない話が3人を飛び交っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーなぁ、シロナちゃん」

 

ゴロンとベッドに横たわり、何もすること無くぼーっと俺とシロナちゃんの部屋の天井を眺めている俺。

 

「どうしたの?」

 

俺の腹を枕替わりに使っているシロナちゃんは、顔をこちらに向けてきた。

ああ、長い髪から香る匂い、最高だ。

などと変態地味た、否変態思考を巡らした俺は、落ち着け落ち着けとググっときた股間を落ち着かせる。

 

「……いや、大した事じゃないけどさ。シロナちゃんポケモンスクール卒業したらどーするの?」

 

やはり不安はある。

シロナちゃんはホントに可愛い。いや実際前世でゲームの中でしか見たこと無かったミロカロスとかクレセリアぐらいの美しさと同等の可愛さを持っててもイイと言い切れるのだが、とにかく彼女は素直過ぎるのだ。それと、原作通りダメナさんでした。片付けは出来ないし、ホントに抜けてるところが多い。思った事はすぐ行動。でも何処かでポカを起こす。何でもすぐに信じるし、悪い人に捕まったら大変な目に合いそうで……。

とにかく心配なんだ。

 

「んー。私はクロメ君に着いてくよ。『カレン』も旅に出させてあげたいし、何よりまずはクロメ君の戦い方を見て勉強していたいの。………それに、クロメ君と一緒にいられるのなら……」

 

『カレン』とは、あのフカマルの事である。この前色々と難儀しあって話し合った結果がこれだった。

まぁいい名前だと思うよ。あのフカマル、絶対ガブガブになった時、可憐な姿になるだろうからね。

ともあれ、後半部分があまり聞こえなかったが、前半部分だけでも聞くと、俺と一緒に行きたいのか。

 

「多分だけどさ、俺普通の旅とかしないと思うよ。怪我だってするし、もしかしたら最悪死ぬかもしれないよ?」

 

今考えている中で、俺は『カロス地方』に行こうと考えている。勿論それは、メガリングとメガストーンの入手の為。

もしうちの嫁がこの世界にいるのだとしたら、俺はその娘の為にもメガストーンが必要不可欠。

まずは戦力強化をし、その後は『アローラ地方』に渡る。

きっとその頃には、半鎖国状態は解けているだろうと俺の勘が言っている。

そこで俺は、原作よりも多分早いかもしれないけど、UBの調査をして行きたい。願わくは、ルザミーネ様と会いたいものだ。え?ルザミーネ様って誰って?んなモンジョジョ立ちしてる厨二病とリーリエたんhshsの親に決まってんだろ!!あー、モールだかモートだか名前は忘れたが、けしからん。ルザミーネ様はみんなの共有人なのに。独り占めとかnothing。

原作から考えると、同い年かな?んほぉおお!!会うのが楽しみだぜぇええ!!

 

「でもいいの。クロメ君が行くなら、私もその横に着いてく。それが、私の道だから……」

 

静かに俯くシロナちゃん。全く、まだ子供なのに、考え過ぎだよホント。え?俺も子供?冗談よしてくれよ。精神年齢20歳超えてんよ?それを今更ガキ扱いってねぇ?……あ、見た目の話ね。

 

「そっか。じゃあ何処行きたいとか無い?」

 

「……んー、深くは考えてないよ。私の行先は、クロメ君の行先なんだから」

 

その返答は困っちゃうなー。

よくデートで『何処行きたい?』って聞くと『何処でもいいよ』って返答されるぐらい困る。言われた事無いけどね!!

 

「ほらほら、捕まえたいポケモンとかいない?」

 

んーと考え出すシロナちゃん。ウホッ、マジ天使結婚しお。

『カロス地方』に言ったらまずは、プラターヌ博士の所に……ってこの時代だとまだ博士じゃないかもしれない。ナナカマド博士の教え子だって聞いたから、まだお勉強中か。

じゃあ直接シャラシティに出向いてコンコンブルさんに色々聞かなくちゃ。

 

「そう言えば、この前の授業で『メガシンカ』って習ったよね。図書館に行っても、『メガシンカ』の事何も書かれて無かったから、お母さんにパソコン貸してもらって調べてみたの。そしたら、カレンも『メガシンカ』出来る可能性があるって出てたから、その『メガシンカ』って言うのを調べたいな」

 

わぉ流石シロナちゃん。シロナちゃんいつの間に調べてたの?なんて抜け目のない娘!?

やっぱり聞き慣れない『メガシンカ』ってのは気になるよね。俺も気になるもん。

 

「良かった。実は俺も『カロス地方』に行ってみたかったんだ。シロナちゃんと同じで『メガシンカ』について知りたかったからね」

 

後は、対峙するであろうUB戦の為の戦力増加。

今のところ『メガシンカ』するポケモンがどれ位いるのかは分からないが、とにかく『メガシンカ』出来るポケモンはなるべく多く捕まえて育てておきたい。

どうやら、『メガシンカ』をするのは、バトル中1体だけじゃないらしい。絆を素に、新たな姿へと変貌させるのが『メガシンカ』。絆がそのポケモンだけでは無いし、充分なポケモンとの絆があれば、手持ちの数なら何体でも『メガシンカ』ができるそう。ゲームの方で一体しか出来ないようになっているのは、多分一体一体が強力過ぎるから、レートとかで使うポケモンに偏りが生まれるからだろう。

レートとかは同じポケモンは禁止にしたのはメガシンカと同じ要領だからだろうけど、もし2体以上同じポケモンがいて、しかも両方『メガシンカ』したら、大半は勝ち目ないと思う。それこそ、メガガルで瞬殺されそう。まぁ現環境でも、メガガルとメタモンの2体メガガルは拝んだ事は多々あるが。あれは恐ろしいよ………。

 

「でも、『メガシンカ』の情報が何処にあるのか全く分からないし……。気長に探すしかないかな……」

 

「それは心配無いよ。『メガシンカ』については、シャラシティって所で分かるから。他にも色々『メガシンカ』については、『カロス地方』では伝承が多いらしいね」

 

「へぇー。流石クロメ君。何でも知ってるね」

 

「何でもは知らないよ。ただ、知ってる事だけだから」

 

まぁ殆どはゲームの情報何ですがね。しかもうろ覚え……。

フレア団だのギンガ団だの一体いつから行動してるのか全く分からないからね。ニュースとかでは聞いた事ないけど、まだ表立っては行動してない訳か。

動き出すとしたら、遅くても俺達が40歳ぐらいかな。

ヒェ〜、結婚してるかな俺……。

 

「じゃあ、卒業したら『カロス地方』に飛ぼう。でもシロナちゃん。ジム巡りはいいの?」

 

「一先ずは『メガシンカ』について知りたいからね。それからでも遅くないよ」

 

………原作でのシロナちゃんって、どれ位にチャンピオンになったのだろうか。10年前後チャンピオンとしての座を守っているとがなんとか。シロヒカが流行るあの時って、マジでシロナちゃん幾つなんだ?

30?40……は流石にあの見た目だからいってないだろう。

ゲーム設定じゃ、10年前後チャンピオンの座を守り、ナナカマド博士の教え子として考古学者とチャンピオン二つを両立。『カロス地方』のプラターヌ博士は兄弟子に当たるそう。『イッシュ地方』にも渡り、四天王で有名なシキミさんだのカトレアちゃんだのアイリスちゃんだのと友好関係を結び、2年後ぐらいサザナミシティで海に沈む海底遺跡の探査をする。『アローラ地方』のバトルツリーでまさかのタッグ参戦。

んー。考えると、凄まじく旅してるね。いやそう思うと、30代後半ぐらいだな。ルザミーネ様は俺らより年上?いやいや、シロナちゃんが何年後に『アローラ地方』に行くのか分からないから何とも言えんな。

 

でも纏めると、俺シロナちゃん連れてっていいのか?

ゲーム通り行くなら、年齢も多々関係無くなるが、俺が連れていくと、誤差が起きてシロナちゃんの今後の流れに影響するやもしれん。IFルートで、もしかしたらチャンピオンにならず、考古学者として生きていくかもしれない。もしかしたら、考古学者としてだけ生きていくかもしれない。もしかしたら、『イッシュ地方』の元々友好関係を築く筈の人達と会えないかもしれない。

そう思うと、俺の介入はとてつもなく未来を歪めかねないものだったんだな。

シロナちゃんを助けたのはいい。この際、ゲーム通りの設定なら、カナズミシティでおばあちゃんとおじいちゃんと妹4人で暮らしていたはずだ。

俺が関わったから変わったのだろうか。変わってしまったのか。変わらせてしまったのか。どれにしても、全ては俺のせいだ。

俺が生まれなきゃ、きっとシロナちゃんは何不自由無い生活を、ゲーム通りの流れに乗って行けたのかもしれない。

もし今後ゲーム通り行かなければ、どんな終焉が起こるのだろうか。世界の消失で済んだら可愛いものだろう。

それが、全次元、IFルートにおいて、最大の崩壊だとしたら、どんな影響を与えてしまうのだろう。

 

闇は深まるばかりか。シロナちゃんはついて行きたいと言っているが、実際『メガシンカ』を会得するのにどれ位かかるのか目星がつかない。

かかるなら、1、2年。最大でも4年で決着をつけなくちゃならない。

まさか、大好きなゲームに入れたのに、こんなに頭を使うなんてな。いや、ゲームでやっていた時も変わらず頭を使っていたか。

 

「……一先ずは卒業をする事だね。ポケモンもしっかり捕まえなくちゃ」

 

「もう私は決まったよ。もうすぐで夏休みでしょ?クロメ君、着いてきてもらっていい?」

 

「いいよ。俺も、ポケモン捕まえなくちゃならないから」

 

深くは考えないでおこう。今行動を起こしても多分遅い。

俺がこの世界のルートに乗った時点で、引き返すことも、巻き返すことも出来ない。

ならば、そのルートで生き抜くのみだ。死ぬのならば良し。生きるのならば真っ当に生きる。

この際伝説だの何だの出て来い。俺が全てぶっ潰してやる。

 

 

 

 




めちゃくちゃこんがらがるゲーム設定。

シロナの移動の流れからして、シンオウ地方でピカリちゃんと出会ってからイッシュ地方に飛んだのだろうか?
ゲーム内でどんな話があったとか正直うる覚え何で、今回書いたのは作者の独り善がりな設定だけど、無理せず付いてきてくだちぃ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

バイバイ

さぁさぁやっちまったこの作品を見るがいいお客様!!




※一部修正しました。ご指摘ありがとうございます。


あれから5年たった。

いよいよ卒業シーズンに入った俺とシロナちゃん。そして、5年前のバトルから仲良くなったアキラ。

3人でいるのは当たり前の事となり、学校、休日は殆ど一緒に行動していた。

 

5年間で、俺達の手持ちはそれぞれ増えた。特にシロナちゃんが。

 

アキラのポケモンは、ドラピオン、グライオン、ブーバー、ドダイトスの4体。先に言っておくと、この世界では、通信交換で進化という設定が無い。その場合の進化は全てなつき度で進化する。持ち物を持たせて通信交換させて進化させるポケモンは、持ち物をずっと持たせた状態でなつき度を上げるのだ。

ドラピオンを捕まえた理由は、あの時の試合のリベンジがしたいそうだ。ブーバーは、マグマブースターを持たせてなつき度上げ中。ドダイトスは、5年前に校長から譲り受けたポケモンで、既に最終進化だ。名前だけ見ても、なかなか剛腕なポケモンが勢揃いだ。

 

またなのだが、この世界はレベルや孵化厳選とかそういった物が存在していない。タウリンなどと言ったものはあるが、殆どのトレーナーは1から育てて技や技術を念入りに極めていくのが普通のようで、俺の持っているミミのステも多分極振りした数値より下回っているかもしれない。

まぁそれでも、ミミは強いのだが。

 

次はシロナ。ポケモンは、ガフガフになったカレン、グレイシアのクレア、トゲピーのピーちゃん、ルカリオのルカ、ミロカロスのミル、カラナクシのクッシーの6体。

クレアは卵から孵化さたのだが、なんと卵から出てきたのは人型で、しかもメスなのだ。それと川で釣り上げたヒンバスも人型で、根暗な少女だったヒンバスは、進化したらめちゃくちゃ美しくなって目を瞑った。眩しすぎて目が開けられないかと思ったよ。

卵から人型が生まれる光景は初めて見たのだが、爬虫類や鳥類ぐらいしか殻で胎児を守らなかった事もあって、卵の中から人が出てきた時は、マジでビビった。

手持ちはやはり全てゲーム通り。既にカレン、ルカ、クレア、ミルは既に最終進化。チャンピオンの風格が滲み出てる。でも、バトルで俺に勝った事は無い。まだまだ爪が甘いんだよー。アキラとは4対4じゃいい勝負であった。

 

そして肝心の俺なのだが、なんという因果なのか、現時点で持っている全てのポケモンが、人型であった。更には、ゲームで愛用していたポケモン達というオマケの設定もご丁寧につけて。

メンバーは、ミミッキュのミミ、サーナイトのサーヤ、パチリスのミカンちゃん。そして……、5年間、俺が想いを寄せて心の中で呼び続けた『オレの嫁』、クチートのアリア!!

思わず発狂しちゃったよ。もう飛び上がったね。皆からドン引きされた。あの時の目はめちゃくちゃ辛かったです。

どうやって出会ったかは、また後日として、ゲーム内で愛して使っていたポケモン達が、こうも簡単に集まるとかどうなってんだろうか。これが俗に言う主人公補正とか言うやつなのか?

5年前、俺のせいで色々おかしくなっているとか嘆いていた割に、俺って結構凄くね?とか思っちゃってる自分がいる。

まぁ嘆いてもいいけど、そしたらまた皆が冷たい目で見てくるので控えております。

 

そんな5年間中身たっぷりの内容をすっぽり抜かれた俺達はと言うと、卒業式を終え、3人で今や定位置となった空き地で屯っているところだった。

俺たち三人は、ポケモンだけじゃなく、容姿も段々と大人へと成長しているようで、まだ10歳だから幼さは残るが、結構魅力的になっている気がする。

 

アキラはショートモヒカンを維持したまま、ちょっとチャラチャラしたヤンキーみたいな感じになっていた。……イケメンだけど。

シロナは、既にゲーム通りの容姿になっており、髪をウェーブロングにして前髪を俺が誕生日に渡したヘアピンで整えているぐらいで、格好はホント黒としか言いようのない服をずっと着ている。

いつの間にそんな厨二っぽい格好に目覚めてしまったのか……。あっ、色香は充分ありますよ?シロナに告白してる男子はめちゃくちゃいるから。振られても何度も挑戦するその姿、カッコイイぜ。シロナも、そんな男の子と付き合おうとはしないのかね?

 

俺の容姿は、正直自分じゃ何とも言えない。第2者第3者からの視点からしたら、イケメンだのアイドルだの養ってだの様々言われた。なんだよ。俺よりもお前らの方がイケメンだろおい。特にアキラ、お前は隠れファンが出来てるんだぞ?俺みたいな、女の子に喋りかけたら逃げられるような男にイケメンとか言って、恥ずかしくないのか?

 

まぁそんな自分を追い詰めるのもここまでにして、今は卒業後の話をしていた。

アキラは、ポケモンスクールの方針通り、ジム巡りをするそうだ。

チャンピオンになって、俺の挑戦を待っているらしい。

いやはや、恥ずかしいね。まぁでも、アキラの実力ならジム巡りは楽勝だと思う。頑張って貰いたいね。

 

「ーーーそれで、お前らは『カロス地方』って所に行くんだろ?」

 

「そうだよ。授業でやってた『メガシンカ』ってのに興味があるの」

 

「へぇー。そんな授業受けたのかどうか忘れちまったけど、もしなんか分かったら教えてくれよ、その『メガシンカ』ってヤツ」

 

「当たり前だろ。腐れ縁としてここまで来たんだ。仲間外れなんてことはしないから」

 

「そりゃ有難いね。いい友を持って俺は嬉しいぜ」

 

「アキラも、チャンピオンになったら報告してよ?私が倒しに行くから」

 

ふんすっとおっきな胸を張って鼻から息を吐くシロナ。

うん。取り敢えず自分の格好に気をつけようか。

 

「何言ってんだよ。お前は来なくていいっつうの。俺はクロメとの決着をつけてぇんだよ」

 

「クロメとの決着なんかそこら辺でやってなさい。私は、アキラが私達より偉くなるのがムカつくだけなのよ」

 

「はぁっ?テメェ、言ってくれるじゃねぇか。昔はそんな大口叩けなかったのに、今はよく唸るなぁそのお口はよぉ」

 

この5年間で、この2人は仲が良くなった。それはもぉ毎回毎回喧嘩するほどに。

 

「ふんっ、バトルの事しか頭に無いヤツと、クロメを一緒に出来ないわ。それに、私の方が貴方より強いんだから」

 

「何言っちゃってんだこのパツキン女はよぉ。テメェとのバトルは全部引き分けじゃねぇか!!」

 

「じゃあこの際ハッキリさせる?今日は卒業式。最後を飾るには丁度いい雰囲気よ!!」

 

「言ってくれるぜ抜け抜け女!!テメェの終りを自分で語るなんて、流石抜け抜け女だなぁ!!」

 

「別に抜けてないし!!髪の毛ちゃんとあるし!!」

 

髪の話なんかアキラはしてないよ。性格の問題だよシロナ。流石に自覚はないんだよね。天然だなホント。

 

「ーーーいつも通りうるさいわね。静かにするって言う選択肢は無いのかしら」

 

俺がいつ二人を止めようかと眺めていると、ポスンと膝の上に何かが乗っかってきた。

下を見ると、振袖が黒く主だった部分が黄色の袴を着て、束ねた黒い髪が巨大な口となっている俺のポケモン、もとい『オレの嫁』ことクチートのアリアが、俺の胸板にもたれ掛かっていた。

 

「それがいつもの2人。あの2人が元気なかったら、今となっては心配しちゃうよ」

 

「あんたも甘いわね。いくら明日から別々に分かれて過ごすけど、今更寂しいとか言えないからああやって気を紛らわせてるんでしょ?」

 

「………それは言わないで上げてよ」

 

やはりゲームの時のクチートだったのでその影響か、性格はツンツンしている。まぁ可愛いんだけどね(笑)。

俺がそう言うと、フンッとそっぽを向いて、わざと体重をかけようと力を込めてもたれ掛かる。

俺の手を取り、振袖から手を出して、ギュッギュッと俺の手を握っては手を合わせて恋人繋ぎで繋いできたりとなんか初めて他の人の手を触る赤ちゃんみたいな感じで色々してくる。可愛い(笑)。

 

「おい見てみろよ!!クロメの膝にアリアが乗ってるぞ!!」

 

「えっ?あっ!!ちょっとアリア!!すぐそこから降りなさい!!」

 

どうやっても収集のつかない争いを抜け出す為としての口実を見つけやがったアキラ。

後で覚えてやがれぇ……。

 

「フンッ。ここは予約制なのよ。ちなみに1人87万6千時間。時間が終わるまで無制限に乗れるわ」

 

「私の順番いつぅ!?」

 

100年後かな?大体。

てかそんなに乗ってたら俺達死んじゃうよ。

 

「ちょっと二人共。俺腹減ったからそこまでにしてくれよ」

 

「ええー、でもぉ……」

 

「まだ明日からの準備してないんだし、早く帰って準備しなくちゃ」

 

旅支度は一切してない俺達。

明日の朝イチで間に合うのだろうか。

アリアを持ち上げ、身長約90センチの小柄な身体を片手で抱っこし、ゆっくりと立ち上がる。

この持ち方はアリアのお気に入りで、何でも俺の温もりを感じつつ、自分よりも背の低いヤツを見下ろせるからだとか。別名『アリアのイス』である。

そんな光景を、いつものように羨ましそうに見つめるシロナ。何?いつも思うけどアリア抱っこしたいの?本人は頑なに嫌がるけど、したいならしてもいいんだよ?

 

「………私は別にしたい訳じゃないの。…………………して欲しいの」

 

最後の部分がよく聞こえなかったが、まぁいいだろう。

そのままアキラと別れ、帰路に着く俺達。その前に買い物を済ませなければならない。

大体は母さんが用意してくれたが、後残っているのは靴と自分の服。

やはり旅は同じ服を着て旅するというのは抵抗がある。

お金は十分に貰っているので、このまま服屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

案の定と言うべきかなんというか。

服屋を後にし、更に靴屋で靴を買った俺達は、家に到着し、荷物の整理に取り掛かっていた。

シロナの買った服は黒いコートが3着。黒いノースリーブが沢山。何で、黒ばっかりなの?そんなに好きなの?後、たまたま見つけた、シロナが原作でつけてたルカリオの頭の後ろにあるあの丸細いヤツの形をしたヘアピンがあったのでそれを買ってあげた。案の定物凄く喜ばれた。

その後は服をカバンに詰める作業なのだが、どうしても入らない黒いコートを無理やり手提げ鞄にぶち込んでいたが、その後破裂。新しい鞄を買わざる負えなかった。………何やってんだよ。相変わらずのダメナさんのようで……。

 

鞄を買いに行き、再び準備に取り掛かった俺達。

野宿する事があるかもしれないが、今の時代とても便利な道具が多くなった。

寝袋なんか、丸めたらあんなに分厚くなるはずなのに、実際はめちゃくちゃぺっちゃんこに収納出来るんだ。全く邪魔にならない。

いやはや、驚く事が多いね。こんなにもスムーズに旅が出来るなんて、どれだけ旅の失敗とかを生かしているのか分かるよ。

 

服は数着。下着も数枚。歯ブラシOK、タオルOK、財布OK、寝袋OK、料理する為の必要な小型収納器材OK、その他諸々OK、っと。

シロナの方もしっかり確認する。

うん。今だけはやらかしてないようだ。感心感心。

女の子はやっぱり持っていくものが多いな。髪の毛を整えるブラシとか化粧箱とか。まぁ旅で必要となるものは全て俺が持っているので大丈夫なんだけど……、明らかに多いと思う。

確かに持ち物はいい。いいのだが、鞄にパンパンに入っているのが何とも。

まぁ後で困らないようにするには用意周到だな。

 

じゃあ後は、早めに寝るしかないかな。

二つの鞄を玄関に起き、床に就く。

何だか今日は真ん中におっぱいのでかい人がいるけど、抱き枕だと思って寝れば………っれ!?いつの間にバカ母いるんだよ!!

 

シロナは既にお休みタイム。

母さんは俺の身体を持ち上げると、お部屋にお持ち帰りされました……。

…………何で明日早いのに連れていくかな。

一先ず俺は、ぐっすり眠れなかったとだけ言っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲッソリとした表情で、俺は港に来ていた。

シロナは物凄くウキウキしており、俺の元気が奪われているような気がする。

うちの親はお肌てかてか。ナニをしたらそんなテカるんだよ。ホントにナニしたら。

出航は後少し。アキラがわざわざ送り出しに来てくれた。

 

「……じゃあな、ダチ公。お前と会う日は、俺がチャンピオンになってる時だぜ」

 

「ははっ、抜かせ。こっちこそ、お前と会う時は『メガシンカ使い』だよ」

 

「貴方よりも早くクロメが達成するわ。精々頑張りなさい」

 

「けっ、このド天然女が。テメェこそ、クロメの足引っ張るんじゃねぇぞ。………後、クロメにちゃんと気持ち伝えるんだぞ………」

 

「わっ、分かってるわよ……」

 

何やらコソコソ話していたが、俺に話せないような話なのだろうか。

まぁ最後の最後まで仲がよろしいようで嬉しい限り。

 

「ーーーおやおや、間に合いましたな、クロメ君」

 

ふぉっふぉっふぉっと、いつもニコニコ笑顔1000000点の校長先生と、担任のタカトシ先生がやって来た。

タカトシ先生は未だに浮かない顔をしているが。

 

「校長先生にタカトシ先生。どうしたんですか?」

 

「いや何。折角の優秀な生徒が外国に出るというのだから、是非送り出しぐらいはしようとね」

 

どうやら校長先生はそれだけでは無かった。

何やら着ている上着の胸ポケットに手を突っ込むと、何やら透明な石を三つ取り出してきた。

しかもそれは、俺が見覚えのあるものだった。

 

「こ、これは……!?」

 

「そう。君達2人がこれから向かうシャラシティで必ず必要になるであろう『メガストーン』です。『クチートナイト』、『サーナイトナイト』、『ガブリアスナイト』の三つ。『ルカリオナイト』は、直接向こうの方から貰い受けるでしょう。あ、後これを。シャラシティで『メガシンカ』の伝承者の方にあったら渡しなさい。きっと良くしてくれる筈です」

 

俺は『メガストーン』を三つ受け取り、一つをシロナに渡した。

小石のように小さい石だが、とても美しい石だった。

透き通った表面は、向こう側までキチッと見え、内部の表面にDNAの二重螺旋の紋章が埋め込まれている。

これが自然界の何処かに埋まっているとなると、大富豪なんかは高値で買売するだろう。

でも妙だ。何で校長先生はこんなにも『メガストーン』を持っているのだろうか。たった一つでも、持っているだけで珍しいと言われる代物を、三つも持っている。しかもシャラシティの継承者の人にこの紙を渡せと言われたが、コンコンブルさんと何か縁があるのだろうか。

てかこの校長スゲェんだよな。金はあるし権力もある。子供達の為にこの施設を建てたと発表してるけど、何でこんな事をしたのだろうか。………まさかの黒幕?ハッハッハッ、まさかそんな訳ナイヨネ?

 

「えっと、ありがとうございます……で、いいんですか?と言うか、こんな高価なもの俺達はまだ持つ資格なんて……」

 

「そんな事はありませんよ。確かにまだ10歳の子供。でもいつかは大人になる。遅かれ早かれ、君達にその力はとても必要になると私は思います。何にせよ、何の力を持たない私がこんな代物を持っているのは宝の持ち腐れ。持つのなら、それを最大限生かす事の出来る者に渡さなくてはね」

 

………ホントにこの人黒幕?

いやいやいやいや。こうやって騙すケースはよくある事だ!!騙されるな俺!!

 

「………分かりました。この『メガストーン』。使わせて貰います」

 

「ありがとう。それで、その『メガストーン』はまた輝ける」

 

その言葉と同時に、船の汽笛が響いた。

校長は1歩下がると、交代するようにタカトシ先生が前に出た。

 

「クロメ君。君は優秀だが、それでもまだ子供だ。無茶は絶対しないように」

 

「分かってますよ。必ず、『メガシンカ』を会得して見せます」

 

その言葉を最後に、校長先生とタカトシ先生、アキラと順番に別れの挨拶をし、母さんの前に立った。

 

「母さん。なんやかんや言って、俺を育ててくれてありがとう。まぁ色々されたけど、母さんも寂しかったし、これからも1人になって寂しくなると思うけど、俺絶対帰ってくるから。だから、それまで元気でな」

 

「……クロメ、そしてシロナちゃん。無事で帰ってくるのよ?いつでも、家にいるからね」

 

そんな残念美人こと我が母親は、ギュッと俺達を抱き締めた。

辛いんだろうな。聞いたら、父さんも旅の途中で死んだらしい。こんな事、子供には言えないだろうな。

俺達も、そんな父さんの二の舞になるかも知れないと不安があるのだろう。

 

「大丈夫大丈夫。俺は絶対戻ってくるよ」

 

「私も、絶対戻ってきます」

 

「……うん。ありがとう……二人共」

 

涙声でそう呟く母さん。抱き締める力が強くなった。

俺達も、ギュッと抱き締める。

絶対帰ってくると想いをのせて…………。

 

 

 

 

出航する船に乗り、遠くなる姿をずっと見つめる。

別れという訳では無いが、離れ離れになるのは、少しばかり寂しい。

手を振る母さんに、俺達は手を振る。

絶対戻ってくるという誓と、今まで育ててくれた感謝をのせて。

俺達は今、シンオウ地方を旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーさらばシンオウ地方。また逢う日まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー全てが消えた……。

 

 

黒い世界。

 

 

ーーー全てが消え失せた……。

 

 

 

白亜と黒鉛が交じるその髪が、シャボン玉のように浮かぶその世界を叩き壊した。

 

 

ーーー全て壊した……。

 

 

跡形も無く。

 

 

ーーー全て壊した……。

 

 

紫い宝石(アメジスト)のクリクリとした瞳が、幾多も浮かぶシャボン玉を見据え、その髪で1個1個壊していく。

 

 

ーーーああ、嘆く……。

 

 

これは誰の?

 

 

ーーーああ、叫ぶ……。

 

 

あれは誰の?

 

 

ーーーああ、泣き喚く……。

 

 

それは誰の?

 

 

ーーーああ、泣き叫ぶ……。

 

 

だから誰の?

 

 

 

世界を壊しては、一瞬にして世界を壊していく。

 

幾回幾十回幾百回幾千回幾万回幾億回幾兆回ーーー。

作っては壊し、作っては壊し、作っては壊し、作っては壊しの繰り返し。

 

ーーーああ、全てを……。

 

 

恨む世界。

 

 

ーーーああ、全てよ……。

 

 

平和な世界。

 

 

ーーーああ、全ての……。

 

 

醜い世界。

 

 

ーーーああ、全てが……。

 

 

滅びる世界。

 

 

ーーーああ、全ては……。

 

 

私の世界。

 

 

 

ただひたすらに、機械の如く繰り返される行動は、全てがまるで操られているかのよう。

 

 

ーーーだから待って……。

 

 

いいから止まれ。

 

 

ーーーでも待って……。

 

 

だから止まれ。

 

 

ーーーそれでも待って……。

 

 

これで止まれ。

 

 

ーーーそして待って……。

 

 

だったら止まれ。

 

 

 

ーーー頭が痛い。

 

 

ーーー頭が割れる。

 

 

ーーー彼女は考える考える考える。

 

 

ーーー答えが出ない。

 

 

ーーー生まれてこない。

 

 

ーーー彼女は狂った。

 

 

ーーー遂に狂った。

 

 

ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーッ。

 

 

 

 

ーーー何故、生まれない?

 

 

世界が否定する?

 

 

ーーーどうして、生まれない?

 

 

理が否定する?

 

 

ーーー何で、生まれない?

 

 

私自身が否定している?

 

 

 

分からない解らないワカラナイ解らない分からないワカラナイ分からないワカラナイ解らない分からないワカラナイ分からないワカラナイ解らない分からない解らない分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らない分からない解らない分からないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ分からない解らない分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ解らない分からない解らない分からない解らない分からない解らない分からない解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ解らないワカラナイ解らないワカラナイ解らない分からないワカラナイ解らない分からない解らないワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイーーーーーーーーーッ。

 

 

ーーー狂え。

 

命を喰らえ。

 

 

ーーー狂え。

 

 

命を燃やせ。

 

 

ーーー狂え。

 

 

命を切り裂け。

 

 

ーーー狂え。

 

 

命を潰せ。

 

 

ーーー壊れろ。

 

 

何もかも。

 

 

ーーー壊れろ。

 

 

全てののモノを。

 

 

ーーー壊れろ。

 

 

存在するモノを。

 

 

ーーー壊れろ。

 

 

形無きまで。

 

 

ーーー生まれて。

 

 

新たな。

 

 

ーーー生まれて。

 

 

世界の花園に。

 

 

ーーー生まれて。

 

 

世界の理に。

 

 

ーーー生まれて。

 

 

果てしない道の世界に。

 

 

ーーー来て。

 

 

狂ってもいい。

 

 

ーーー来て。

 

 

壊れててもいい。

 

 

ーーー来て。

 

 

破壊されててもいい。

 

 

ーーー来て。

 

 

私を助けに来て。

 

 

 

 

ーーーだが願いは破滅を生む。

 

 

苦しい苦しいーーー。

 

 

ーーーだが願いは交差する。

 

 

怖い怖いーーー。

 

 

ーーーだが願いは裏切られる。

 

 

助けて助けてーーー。

 

 

ーーーだから彼女も。

 

 

いやだいやだーーー。

 

 

ーーー未だ世界に裏切られている。

 

 

狂いたくないーーー。

 

 

 

狂う呪う滅びる亡びる葬る嘆く叫ぶ死ぬ殺ぬ(しぬ)悪ぬ(しぬ)殺す刺す脅す墜す嚇す殺す殺す裂ける飛び散る溶ける溶かす解けるーーー。

 

 

ーーー彼女は頭を悩ませる。

 

 

生まれないのは何故?出来ないのはどうして?理解が出来ない?処理が追いつかない?命が必要?ならば殺して殺し尽くさなければならない?そうすれば生まれる?そうすれば出来る?そうすれば完成する?自己処理の可能性?意味はある?確率はある?生まれない事は起きない?あの人は来る?誰か来る?同じ人が来る?来てくれる?連れてこれる?ホント?ホント?

 

 

ーーー彼女は考える。

 

 

だったら殺さなくちゃならない?誰を殺す?世界ごと?私が今までしてきたことは無駄?無駄だったの?無駄でしか無かったの?何で教えてくれなかったの?どうして教えてくれなかったの?

 

 

ーーー彼女の嫉妬が。傲慢が。独占欲が。強欲が。支配欲が。

 

 

嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いキライ嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いキライキライ嫌いキライ嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いキライ嫌いキライキライキライキライキライキライキライ嫌い嫌いキライキライキライ嫌い嫌いキライキライキライ嫌い嫌いキライ嫌いキライキライ嫌い嫌いキライ嫌いキライキライ嫌い嫌いキライキライキライ嫌い嫌い嫌いキライキライキライキライ嫌い嫌いキライ嫌いキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

ーーー全ての欲が、完全否定した。

 

 

 

 

 

ーーー崩れる壊れる崩壊破壊。

 

ーーー儚く割れたシャボン玉は、跡形もなく世界と言う理から消え失せた。

 

 

ーーー全てが壊れた。

 

 

それは破滅を意味する。

 

 

ーーー全てが壊された。

 

 

それは破壊を意味する。

 

 

ーーー全てが崩された。

 

 

それは崩壊を意味する。

 

 

ーーー全てが葬り去られた。

 

 

それは悲しみを意味する。

 

 

ーーー全てが消え去った。

 

 

それは哀しみを意味する。

 

 

ーーーだから生まれた。

 

 

それは誕生を意味する。

 

 

ーーーこうして生まれた。

 

 

それは存在を意味する。

 

 

ーーー一つのシャボン玉となって、世界に、彼女の世界に降臨した。

 

 

それは再臨を意味する。

 

 

ーーー眩い光と共に、光る赤子のように。

 

 

それは君臨を意味する。

 

 

ーーー世界と言う代償を払い、世界が誕生した。

 

 

それは等価交換を意味する。

 

 

ーーー嘆いた彼女は綻ばせた。

 

 

『ああ、生まれたーーー』

 

 

ーーー彼女は涙した。

 

 

『生まれてくれたーーー』

 

 

ーーー彼女は涙を流した。

 

 

『良かったーーー』

 

 

ーーー彼女は喜んだ。

 

 

『嬉しいーーー』

 

 

ーーー彼女は泣いて喜んだ。

 

 

『嬉しいーーー』

 

 

ーーー彼女は泣いて嬉しがった。

 

 

『ありがとうーーー』

 

 

ーーー彼女は感謝した。

 

 

『ありがとうーーー』

 

 

ーーー彼女は涙して感謝した。

 

 

『私の世界にありがとうーーー』

 

 

ーーー彼女は深く感謝した。

 

 

『だから早くーーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ーーー会いに来て、愛しき我が主ーーー』

 

 

 

ーーー狂う彼女は、儚げな笑顔で、そっとシャボン玉にキスをした。

 

 

ーーーそれは、その世界の始まりを意味するものであった………。

 

 

ーーー狂った彼女は。

 

 

ーーー常闇の中で。

 

 

ーーー激しく悶えるのだった。

 

 

 

 




次からはカロス地方編です。
え?誰がシンオウ地方編は終わったっていった?
さらばしかし言ってねぇだろ!!

………コルニ出したいなぁ。髪下ろしコルニマジ可愛い。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メガシンカの旅
到着と休憩


遂に、脱リアル!!
長年待ち続けて遂にやりました。脱してやりましたよ脱。
これで好きなことし放題だぜぇ!!
………脱リアルしたら人生の終わりか。

と冗談はさておき、ちょっと更新遅れました。ちょっとどころじゃないな。こんな下手くそな作者の作品を待っていてくれているであろう皆様。大変長らくお待たせしました。

今もマジ眠いんで、めちゃくちゃ下手くそになってるけど、大目に見て欲しい。


キャモメがキャーキャー鳴き、青空を優雅に飛んでいる。

キャモメは陸の近くに来ると、船の周りに集まる習性があるらしい。という事は、もうそろそろ陸に着くということだ。

船に揺られて早四日。

シンオウ地方とカロス地方はそれはもう海里の距離が長い為、途中途中補給しないと着かないほどだった。それでも補給したのは2、3回程度。

新しい地方で、初めての旅でワクワクを胸に抱きながら、船は港に近付いていく。

 

「ここが、カロス地方……」

 

「特にシンオウ地方と変わってるところはないな」

 

「……ちょっと〜。ムードぶち壊さないでよ」

 

プクーっと顔を膨らますシロナを横目に、目の前に広がるカロス地方の大陸を、俺はずっとボーッと眺めていた。

シンオウ地方よりも少し肌寒い空気を感じながら、俺はゲーム内の設定を思い出していく。

 

脅威となるフラダリは『ホロキャスター』の製作者として今有名になっているだろう。正直の所、これはどうでもいい。今はフレア団が裏で活発に動いているかどうかが問題だ。

メガシンカを扱う為の生け贄になるのなら別に構わない。だが、障害となるなら即刻ぶち壊すしかなくなる。

イベルタルかゼルネアスのどちらか知らないが、今捕まえているのなら即解放しなくてはならない。封印を解くという事ではなく、あくまで元いた場所に戻すという事です。

 

船はコンクリートの堤防に近付き、船体を壁際までピタリと寄せて止まる。

堤防から渡り橋がのばされ、船に乗っていた人達が次々に降り始める。俺達も、それに続いて降り始める。少し厚着し、身体を温める。

ゲーム内では見た事ない街であった。

アニメ見たく、名前の無い町や村も存在するのか。

 

「取り敢えず、今日は何処かで1泊しよう」

 

時刻は昼過ぎ。今から出ても、シャラシティには到着しない。そこまで急いではないし、初めての旅としては万全な状態で進みたい。

これにもシロナは了承し、ポケモンセンターに向かう。

アニメ同様に、泊まれるスペースはあるらしい。コテージの2段ベットだから、俺たち以外の人達と共有なるかもしれないが、それも旅の醍醐味だと認識すれば気にすることもない。

 

肝心のポケモンセンターが見当たらないので、道行く人にポケモンセンターの場所を聞いた。

が、何ということでしょう。この街にポケモンセンターはないようです。無い場所とかあるんだな。

泊まる場所がないか聞くと、どうやら町外れに旅館があるらしい。

早速その旅館に行く事にした。

 

移動中に購入したタウンマップを使い、今の場所を確認する。

ラッキーなことに、シャラシティと距離はそこまで無かった。

2、30kmぐらいの距離である。

10歳の歩幅なら、2日3日あれば着くだろう。途中で幾つかトンネルに入らないと行けない箇所も多く、厳しい道のりになりそうだ。

山道は流石に10歳じゃきついだろうか。

 

「この山道きつそうだな」

 

「何かあれば背負ってもらうからいい」

 

「その役誰がやるんだよ……」

 

これで安心。ふんすっと鼻から息を吐くシロナ。甘え過ぎにも程があるだろおい。

幾つかあるトンネルは、多分ポケモンの生息地。

わんさか野生のポケモンがいると思うから、ここでちょっとバトルをしつつ進んでいこうと思う。少しでも腕を磨いておきたい。

 

そうこうしているうちに、多分目的地であろう旅館らしき建物が目に入った。

和風っぽい見た目の旅館からは風情を感じ、築何年か知らないが、古臭さが何処か懐かしさを感じさせた。

中に入ると、外装の和風っぽさが更に引き出されているような感じて、机や椅子、設置されている家具は全て和風っぽいものだった。

カウンターらしき所に行き、まず部屋が空いてるか確認。

正直言って、俺とシロナが同じ部屋で寝た所で、何の間違いも起こらない。起こらない筈だ。起こるとしても、シロナが俺にくっついて寝てるぐらいのもんだ。

結局部屋は一部屋しか空いていなかったので、そこで2人で泊まることになった。別に同室だからって恥ずかしくないもんね。そこらのヘタレ共とは違うもんね。

 

部屋に案内され、部屋の6畳ほどの部屋に入る。畳の匂いが鼻をくすぐり、思わずくしゃみ。

一先ず荷物を置き、観光がてらに街に戻って見る事にした。

旅館の方に、夕御飯はどうするか聞かれたが、外で食べると伝え、旅館を出ていく。

因みにポケモン達はお休みタイムだ。つまりシロナと二人っきり。お手手繋いで行きましょうねぇシロナ。はっ。どうだヘタレ共。俺はお前らなんかとは違うんだよぉ〜。

 

 

後で突如頭の上に水の入ったバケツが見事に降ってきて頭に嵌った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーふぅー」

 

チャポンと水面にお湯が垂れ落ち、温泉に波紋が出来る。

湯気がこれ以上無いほど濃く立ち上り、目の前の光景にボヤを出す。

今は露天風呂に来ている。運良く今日の空は曇りなく星がキラキラと輝いている。やはり露天風呂は風景も大事だと思う。

開放感があるから、更に心の平穏も欲しい。

そして何よりも、誰もこの空間にいない事だ。貸切という訳じゃないけど、誰ひとりとしてここに入ってこない。

有難いね。ここで煩くされたら迷惑だ。いきなりバケツが降ってきて頭に嵌った時は焦ったが、アレが工事中だった建物の鉄筋だったらあれじゃ済まなかった。

 

「………これから、どーするかねぇ……」

 

今の悩みと言えば、やはりこれからの事だ。

アニメでは、コルニは1度も祖父に勝ったことが無いと言っていた。多分その分だと、現役の方がもっと強いと考えられる。

波動で全てを跳ね返すあのルカリオもそうだが、やっぱりコンコンブルさんのトレーナーとしての実力も高い。

この世界で生を受けてはや10年。その間色々なトレーナーと戦って来たが、やはりこれといって飛び抜けて強いと思ったのは、シロナとアキラぐらいしかいない。

まぁ、生徒と戦ったのが多かったので何とも言えないが、今までの戦いで自分自身成長出来たと実感出来ていない。

このままでは、コンコンブルさんに呆気なくやられるのが落ちだ。

良くて一分。悪くて瞬殺。開始早々やられる事もありうる。

とてもじゃないが、俺も俺のポケモン達も、まだまだ未熟だ。

何処かで一度鍛えるのがベストだろうか。

いやだが、今の実力も知りたい所だ。ワンパンされる落ちは分かっている。それでも、何処までやれるか知ってみたいのも、子供としての好奇心だろうか。

そうなると、ポケモン達の精神的なダメージを和らげなくてはならない。ワンパンされるという事は、自分は弱いと自覚してしまって、メンタルが弱くなってしまう。アニメでもあっただろ。サトシが未完成のサトシゲッコウガで氷のジム行ってボッコボコにやられてメンタルやられた事を。

俺はワンパンされると思ってやっても、多分指示に熱が入らないだろうし、ワンパンされないように全力で行っても、負けたらメンタルやられる。

一度、ポケモン達と話した方がいいかもしれない。

 

「………鍛えるべきか、一度自分達の実力を測るか……。悩むな……」

 

「ーーー何そんなに悩んでるのよ」

 

「ん?ああいや。これからどーするか考えてい…た……とって、おまっ!!なんでここにいるんだよ!!」

 

背後からかかった声に反応すると、いるはずのないクチートのアリアがそこに仁王立ちで構えていた。何纏わぬ姿で。

恥ずかしいのか暑いだけなのか、若干頬が赤く染まっている。

 

「まままっ、前!!前隠せ!!」

 

急いで前を向き、水中に潜る。

そんな俺の気遣いも知らず、アリアは俺の横に座り込んでもたれ掛かってきた。

 

「そんな恥ずかしがる事じゃ無いでしょ。いいから顔上げなさい」

 

よいしょっと俺の頭を掴んで引っ張り出す。

酸素を取り込むために息を荒くしてると、アリアがいつもの定位置、膝の上に座り込んだ。ちょっと待てよ!!全裸でこの体勢はヤバいって!!

 

「待て待て待て待てっ。今は膝の上に乗るのはヤバいって!!」

 

「何がヤバイの?いつも通りじゃない」

 

「格好の問題だ!!今裸なんだからお前の身体が直に当たって意識しちまうの!!」

 

「あ〜らー?こんなロリロリボディに反応しちゃうの〜?」

 

まるでいじめっ子。ニヤニヤしながら笑いを堪えてこちらを見てくる。なんて女だ。男の敵かよオレの嫁は。

アリアはここぞとばかりに、10歳児の胸板に身体を預けて来る。

 

「好きなだけ興奮しなさい。私は貴方の妻なんだもの」

 

「出来れば貸切の時に言って欲しかったなその言葉。ここじゃ誰か来ちゃう」

 

「この体勢なんだから既にヤってるのと変わらないんじゃない?」

 

「いや実際やってないし!!そもそもまだ手は出さないし!!」

 

「自分の母親には手を出されてるくせに、やっぱり自分からじゃ誘えないの?」

 

図星だ。確かに言われてみれば、そうかもしれない。

でも可笑しくない?こちとら必死に抵抗してるのに、無理やりなんだよ?それをまるで俺がやって欲しいみたいに勘違いしやがって。

俺は健全な母親を持ちたかったんだ!!

 

「いや俺は別にやりたいからやってる訳じゃ……」

 

「でも抵抗は途中で辞めちゃうよね。いいのよ?我慢しなくても、あの人の代わりに私がするんだから。これも、妻の務めでしょ?」

 

巨大な髪の口で、俺の頬をぺろぺろ舐める。

アリアは俺の手をギュッと握り、愛おしいそうに撫で回してる。

だが、俺はある事に気付く。

 

「………お前絶対酔ってるだろ」

 

「はぁ?酔う?馬鹿な事言わないでよ。え?なに?もしかしてここで抱くから酔ってるか確認したの?酔ってるなら記憶曖昧になるもんねぇー」

 

確信した。いや普通に考えて普段こんなセリフアリア言わないもん。俺が嫁嫁言ってると照れ隠しだろうか、ストレートをお見舞いしてくるし、俺から抱き着きにいくとアッパーかまされる。なんで俺殴っておいて膝に座るんですかねぇ?

普段自分が俺の妻だと絶対言わないアリアが、言うんだから絶対酔ってるはずだ。

 

「……アリアの姿見てると、なんか萎えてきたわ」

 

「むぅ……、クロメ酷い。こんなロリロリボディじゃ興奮しないの?」

 

「いやそういう訳じゃないんだけど。いつでもアリアは可愛いぞ」

 

「……ホント?いつも素っ気ない態度とってる私、可愛いと思ってくれてるの?」

 

「勿論だ。だってアリアは俺の嫁なんだから」

 

「そっか……。フフッ、そっかそっか……」

 

何やら納得したのか、こくんこくんと頷くアリア。ちっちゃくて可愛い。

だが、なんでアリアはこっちに入ってきたのだろう。流石に酔ってるアリアを1人にさせるはずは無い。

誰かのいたずらか?けしからん。犯人が分かったらコショコショの刑にしてやる。フッ、この性感帯を弄るのはあのバカ親にも評判がいいこの俺のテクで感じさせてやるぜ!!…………誰得?

アリアに聞いてみる……が、既にアリアはおねんね中だ。可愛い。

ほっぺマジやらけぇ。なんだこのほっぺは。ぷにぷにしてる。

やっぱり人型と言うだけあって、皮膚の肌触りも完全人と変わらない。柔らかさもそう。でも、こんなぷにぷになのにあんな人の身体じゃ消し飛ぶ程の威力をバンバン受けてるのに血1滴と流れないのはどうしてだろう。服で肌が隠れてる所は分かる。でも顔とか切り傷一つない。マジ不思議だポケモンの身体。

 

アリアをこのまま浸かりっぱなしにしてるのは流石に不味い。

でもどうしようか。流石に身体を見るのは勘弁して欲しい。だからといってこのままだと誰か入ってきたら誤解を招きかねん。

せめて誰か入ってきてくれたらいいーーー。

 

ーーーバシャンッ!!

 

瞬間、目の前に水飛沫が上がった。

勢いよく上がった水は、浸かっている俺達の身体を余すこと無く、バケツに入った水を勢いよく掛けてきたように濡れまくった。

ビシャビシャになった俺は、怒りの視線を向けた。

なんとルールの守らない奴だ。立て札に書いてあるだろ。

 

「ーーーびひゃーっ。温泉サイコーなんじゃー!!」

 

まず最初に飛び出したのはモフモフそうな白い大きな尻尾。次に飛び出したのは手首にモコモコの白い毛を生やし、頭の横に白い可愛らしい耳。白銀色の透き通った髪をもつ少女、パチリスさんのミカンちゃん。バンザーイとはしゃぎながら湯を四方八方に飛ばしまくり、温泉の湯を減少させていく。勿論全裸で。

 

「ミカンちゃん!!何やってるの!!」

 

更に誰かが入ってくる。

スラッとしたモデル体型の手脚。控えめに自己主張しているが、それでも大きい胸。耳元まであるエメラルドグリーン色のツヤツヤした髪と色香のあるうなじ。タオルで前を隠し、駆け足で入口からやって来た少女、サーナイトのサーヤ。

俺がいるにも関わらず、何とも無防備過ぎる姿で男子風呂にお入りなったこの娘っ子達。アンタら羞恥心とかないの?

 

「フフフッ、妾の力を取り戻すには願ってもない場所ではないか。流石我が半身であるクロメであるな。褒めてつかわそう」

 

「……褒められて嬉しくなかったのって初めてだわ俺」

 

「案ずるでない、いつも心の何処かで人の温もりを欲する我が半身よ。いつでも妾の胸の中に飛び込んでくるがいいわ」

 

「俺そこまでぼっちじゃないぞ!?」

 

アリアを起こさないようにそっとツッコミ。

すると、いつの間にか横にいた前髪で顔が隠れているミミッキュのミミが寄り添ってきた。うん、可愛い。

 

「ごめんなさい、クロメさん。実はこの露天風呂、私達の貸切なんです」

 

サーヤが高笑いして仁王立ちしてるちっこいミカンちゃんにゲンコツをかます。

ミカンちゃんを脇で挟み、タオルを巻いた状態で俺の元までやって来るサーヤ。

 

「貸切?よくそんなの許しが出たな」

 

「これといって理由は無いんですが、女子風呂の方が何処かの誰かに壊されてしまったようで、入浴終了間際ですがこちらに入れてもらう事になりまして」

 

何処かの誰かって誰ぞ。そんな奴いたのかよ。物騒な女子風呂だなおい。

シロナ達は先に入ったって言ってたし、残るは俺のポケモン達だけだったのか。

 

「じゃあ俺はアリア連れて出てくわ。しっかり使って疲労を無くせよ」

 

タオルを腰に巻き、アリアをお姫様抱っこで抱っこして立ち上がる。

ホントはこの3人の誰かを連れてきたかったけど、流石に今入ってきたのに邪魔したら迷惑だろうしな。

なんて思いながら浴槽から1歩出ると、グイッと腰に巻いたタオルを引っ張られた。

 

「何処に行くのじゃ?まさか、妾をおいて先に行こうとはしておらぬよな?我が半身よ」

 

引っ張ってたのはミカンちゃんでした。未だ脇に抱えられてる状態のミカンちゃんは、腕を必死に伸ばして俺のタオルを取ろうとしていた。

ちょっ、待って。この場で俺の息子が空気に晒されたらもうお前らのトレーナーとしてやっていけなくなるから!!羞恥心で兎みたいに死んじゃうから!!

 

「…………くろ…め。いっ…しょに………はい……る」

 

ミミがタオルを控えめに摘んで引っ張ってくる。うん、可愛い。

するとまた更に引っ張られる感覚が。

振り返って見れば、案の定サーヤが顔を赤くしながら引っ張っていた。

 

「………あの、その……。ひ、日頃の感謝を込めて、お背中お流ししても………?」

 

………なにみんな。俺と一緒に入りたいの?どれだけ俺と理性を戦わせるの?後俺を羞恥心で殺したいの?なんなの?わけがわからないよ(・д・`*)。

一先ず、アリアを外に寝かせてくると言って、その場を立ち去った。後でその場に戻ってきたけど。

 

 

 




ちょっとした主人公のポケモン紹介。短縮系。

クチート、アリア。
ただのツンデレ。酔うと甘え上戸になる。ロリロリぼでぃ。主人公のお嫁さん(通称)。ただ主人公がクチート好き過ぎてリアルで人形まとめて5個買った程。

サーナイト、サーヤ。
控えめながら、やる時はやる女。基本的世話焼きな性格で、厨二病(今後パチリスさん)の面倒を見ている。世話焼きお母さん。密かに正妻の位置を狙っている。きょぬーのおねーさん。

ミミッキュ、ミミ。
引っ込み思案で、大概クロメの影に隠れている。でもバトルでは引っ込み思案が無くなり、修羅と化す。特に、ピカチュウを見つけると、悍ましいほどのオーラと、恨みの篭った視線を向け、その周囲一帯にポケモンを寄せ付けなくする程。基本可愛い。

パチリスさん、ミカンちゃん。
ただの厨二病。サイキョーの盾。世界大会の動画見てて、『パチリスさんマジヤバっす!!』と主人公が悶えてパチリスさんを作ったのが始まり。パチリスさんを作ってる最中、(当時ORAS)卵孵化でグルグル自転車こいで回ってる時、毎回毎回痛いセリフを吐き続けたのが原因だと思われる(ガチ話)。基本的銀髪ろりろりびしょーじょ。クロメの事を半身と呼ぶ。

後2人程増えますが、いつになるかは分かりません。特に6匹目が。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

嫁は増えて俺の精神は削られた

待っててくれてサンキューですはい。
学生、特に高校生ってマジ大変。部活でなんか夏よりも長くやるようになっていつもヘトヘトで帰ってくるから小説書けねぇぜ。

それでも待っていてくれた人にはマジで感謝。
今回は奮発して一万文字突破したけど、内容に期待は載せるな以上。

前置きが長い?そんなー。久しぶりにしゃぶらせてぇー。あっ、喋らせてぇーだ。何をしゃぶりたいんだろうか作者は。
きっとクチートたんのお口をチューチューしたいんだなこの変態めが。

今回はちょっと卑猥な単語とか描写とか出るけど、ちゃんと全年齢対象作品だかんね!!

今回も駄作かよこのダメ作者!!


ーーー夜。

心地いい風が空いた窓から吹いてくる。火照った身体を冷やすには丁度いい。

数多の星々が暗闇の中、暗い夜の林を薄く照らし、窓際に座って外を見る風景にはもってこいの光景であった。

星を見ると、俺の悩みは星の数に比べればちっちゃいものだと思わせてくれる。だが悩みが解決される訳じゃない。

 

俺はこれからの事に頭を悩ませている。

コンコンブルさんは強い。果てしなく強い。今の状態なら100%負ける。悔しいがどうしようもない。

長年の経験と磨き上げた実力が圧倒的に足りない。

ではどうするのか。俺は主人公じゃないから、そんなお約束的なギリギリ勝ちなんぞ望めない。特訓するかこのまま突っ走るか。

どちらも難しい話じゃないが、どちらもデメリットがある。

特訓の場合だと、経験を積ませられるが時間がかかる。このまま行く事では今の実力が知れるが、もしコンコンブルさんの目に止まらなければそこでメガシンカを会得する事は諦めることになる。

シンオウ地方では鍛えていたと思うが、鍛え方が足りなかった。

簡単に出てきてはみたものの、物凄い壁に当たってしまったようだ。

 

「……どうしました?空を眺めてる時は大体悩んでる時ですけど、何かお悩みがあるんですか?」

 

後ろから声がかかり、首だけを後ろに向ける。そこには畳の上をスタスタと浴衣姿でサーヤが歩いてきた。

今部屋には俺以外出払っていたが、いつの間にかサーヤが帰ってきたようだ。

 

「いや、これからの事について考えてるんだが。……サーヤは今のままでシャラシティを目指すか、何処かで実力を高めるかどっちがいいと思う?」

 

今に始まった訳じゃない。何も自分で悩まなくとも、俺には仲間がいる。前世で『三人寄れば文殊の知恵』とことわざがあったが、俺の仲間は三人以上いる。一人よりも二人。二人よりも三人。三人よりもそれ以上と、考えを出す事が出来る。

 

「……そうですね。私は今よりも少し強くなってから言った方がいいかと。実際まだ時間はありますし、急いでいる訳でもありませんでしょ?」

 

「なるほど。やっぱり実力を積んだ方がいいか。一年と言ったが、どうせアキラも一年以上かかると思うから、焦らずに行った方がいいか」

 

「ではこれからどうするんですか?」

 

やはり他人の意見を聞くのが一番だ。気付けない所を指摘してくれるのは自分では分からないから有難い。

しかしと、俺は再び頭を悩ませる。コンコンブルさんの実力っていうのはネットで見た事あるが、そこまでの実力を持っている人物は相違ない。自画自賛だが、俺とポケモン達の実力は、ベテラントレーナー手前ぐらいだ。実際シンオウ地方では負け無しだったのだから、そう思うのが妥当だ。

だが、そんなレベルの俺達だからこそ、生半可なトレーナーたちの実力ではレベルアップは望めない。

せめて実力があり、経験豊富なトレーナーがいればどうということは無いのだが。

 

「……それが決まってないんだよ。これからの予定も期末待てないし……。今手詰まりなんだよね……」

 

「ここら辺だと、ミアレシティが近いですから、そこから行きますか」

 

「ああそうだな。さっき見た時はミアレシティが近いからそこで…………………え?今なんてった?」

 

何故かサーヤがミアレシティの名前を出した。咄嗟に俺は聞き返す。

サーヤはまるで何を言っているんだと言いたげに首を可愛く傾げた。

 

「えっ、何って。それは何処のジム(・・)を最初に行くかの話では無いのですか?てっきり何処のジムから行こうか悩んだのかと思ったのですが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………はい??

 

「ちょっと待ってくれ。ジムってあのジムだよな。勝ったらジムバッチが貰える各地方に8つあるジムの事だよな?」

 

俺は立ち上がってサーヤの肩を掴んで問い詰める。サーヤは困惑した表情を浮かべている。

 

「え?え?え?ジムってそのジムしかないじゃないですか。っていうか近いですクロメさん!!」

 

顔を赤めてアタフタし始めるサーヤ。そうかそうかそんなに俺の顔が近くて嫌なのかそういうのってなかなか本人の前では言い難いよな分かる分かるちょっと傷付いた……。

と少し心に傷を負いながらも、表面上は表情を曇らせない俺。

 

「………ジム。ジムの存在忘れてた………」

 

「……じゃあクロメさんは一体どうやって強くなろうとしてたんですか」

 

「……いや、こう……なんて言うの?どっかの洞窟とかトレーナー片っ端から声かけて勝負していこうかなーぐらいしか考えてなかったです……」

 

肩を落とし、イジイジと頬をかく。

サーヤはマジかと言わんばかりに鋭い眼つきでこちらを見てくる。解せぬ。俺はそんな目では興奮する変態(紳士)ではないのだぞ?

 

「………アレだけ啖呵切ってた割に考え無しで、しかも肝心な事すら忘れているなんて……。呆れてものも言えませんよ」

 

はぁっ、と肩を落として溜息を吐く。いつも謙虚なサーヤさんに呆れられてしまった。

いや確かにジムの事は完全に忘れていた。ゲームとかは絶対ジム回らないといけなかったからどうせ流れ的にいつか回るだろうと頭の隅にその事を置いていたのは俺が悪かった。

だが俺にも言い訳させて欲しい。実際この世界に来て早10年。ゲームの事など殆ど忘れかけているというのに、どうしろというのだ。

考え無しも悪かった。俺も悪かった。しかし俺は悪くない。この世界に転生させた神が悪いんだ!!

 

「いや、その……面目無いです、ホントに」

 

「全くですよ。何時ものカッコ良すぎなクロメさんは何処に行ったのですか」

 

「そのカッコ良すぎなクロメさんにも少しは休息という労いの言葉をかけて欲しいし、文字通り休息が欲しいと言いますかなんの言いますか…………」

 

カッコ良すぎとか何とか聞こえたがそんなものお世辞に過ぎん。

と気付いたらいつの間にか正座させられてる俺。

サーヤに説教喰らっていると、何故かオカンに怒られているような感じがして、ついつい無意識に正座してしまう。

……まぁオカンと言っても、実際俺の母親はただの残念美人さんだし、自分の息子に手を出す女だし、残念美人だし、文字通り息子に手を出す残念美人だし。なんか思ったけど、うちの親に怒られたこと1回も無いように思えてきた。俺がいい子だったのか母親がただ叱る事自体しなかったのか。そんなんでよくグレないと思ったよねうちの母は。

 

「でも、ありがとな。サーヤがいてくれなかったら、多分俺ジムの存在ずっと忘れてたんだと思う」

 

「お礼を言われる程でもありません。寧ろ頼ってくれれば私は嬉しい限りです」

 

「でもいつもサーヤにお世話になってるよな。偶には何かお礼(・・)しなくっちゃな」

 

「おっ、お礼(・・)ですか!?そそそそそんな恐れ多い!!わ、私には貴方の側にいるという特権があれば何も望みませんので……」

 

こういう時に限って、サーヤは遠慮がちになる。そういう遠慮してる時のサーヤも可愛いが、如何せんいつも頼りっぱなしなのは事実。もう少し我儘の一つ覚えで言って欲しいもんだ。

 

「いやいや、偶には我儘言ってくれよ。今は誰もいないんだし、出来る範囲でならなんでもする(・・・・・・)からさ」

 

女の子(特に遠慮がちになる子)には言われてみたい言葉掛けである魔法の言葉『なんでもする』。これを言われれば、女の子は忽ち自分の欲をさらけ出し、男にお願いしてくる。何と言う甘い問いかけなのか。これを言えば世の男(ドM)は女の子に顎で使われてハッピーではないか。フッ、だがしかし。この言葉掛けには弱点がある。それは、『イケメン専用』だ!!

例えば普段心の中に潜めていた恋心、抱きしめて等と甘えたい欲望、普段のストレスをイケメン(でありドM)の男に八つ当たりできる気分転換等など、これら全て、『イケメン』の存在の出番だ。

生憎俺はイケメンという類ではない。そう、無いのだ!!ポケモンスクールであんなに女の子の視線を感じていたのも、キモいだのブスいだの死ねばいいのにと陰口を言われていたからに違いない。

ずっと近くにいたシロナですら、俺を異性として見てくれない。何たる事か!!抱きついてきたときのあのオツパイの感覚が片時も頭から離れません。どうしてくれるんだ!!

だが、イケメンだとかどうでもいい。今は少しでもサーヤの役に立ちたいのだ。死ねと言えば死ぬかもしれん(勿論遺書書いて死ぬ前に嫁可愛がってから飛び降ります)。消えろと言ったら消えるかもしれん(勿論嫁可愛がって初夜遂げてから消えます)。自分のトレーナーを変えろといえばすぐサーヤに相応しいトレーナーを探す(男は性欲の捌け口にする可能性大なので女の子トレーナー限定に)。

少しでもいいから、サーヤのよくというものを消化して欲しいのだ俺は!!

 

「ななななななななんでもいいんですか!?」

 

顔を真っ赤にしながらひょえーっとマジに驚いた。

魔法の言葉に食いつくサーヤ。エビでタイを釣るとはこの事。エビという魔法の言葉でサーヤというタイが釣れたぜ。

俺はこくこくと何度も頷く。

 

「……そ、その。ひひひ、膝枕とかも?」

 

「俺でいいならいつでも」

 

イ、イケメンの特権。美女に膝枕を俺がやれだと!?

なんでそんな事言うのだろうか。俺はそんなイケメン野郎ではないのに。……この年になっても彼女がいないから仕方なくとか言った哀れみだろうか?いやまだ10歳なんだから将来はまだある。でもなんか小馬鹿にされてるようで嫌だな。

 

「そんなお願いいつでも叶えてやる。もっと普段出来ないような欲望を言ってみろ」

 

「ええええええ!?!?………ひ、膝枕でも充分なのに。じゃ、じゃあ、………一緒に寝る、とか?」

 

俺の胸元に手を置いて、目をウルッとさせて首を傾げてくるこの巨乳美少女。

あざとい!!あざとすぎるこの娘!!これは男が断れない女の子の必殺技『上目遣い』!!

これで堕ちない男はいない!!寧ろ堕ちない男は男では無いぃ!!まさに女の子の特権。必殺必中の大技。い、いつの間にサーヤはこんな技を覚えたんだ!!俺はサーヤにこんな技を覚えさせた覚えはない。ま、まさかっ、他の男でやっていたとでも言うのかぁぁあ!?!?ゆゆゆゆ許せん!!許せんぞその男!!箱入り前の娘(モンスターボールin前の擬人化ポケモン(♀))になんてことをしたんだ!!これじゃまるで、サーヤがヤリ捨てされたみたいじゃないか!!由々しき事態だ。サーヤはいつでも俺の穏やか天使であったはずなのに……。ソイツ、どうしてくれようか。

 

「そ、そんなんで、いいのか?もも、もっと欲を出しても、いいんじゃないか?」

 

握り拳から手汗が滲み出てきた。額からも脂汗が収まらない。

だが、俺はこんな所では収まらない。もっとサーヤは欲があるはずだ。どうせなら全部聞いてからその中で一つやってやることにしよう。

 

「ええええええ!?!?こ、こんなお願いでも駄目なんですか!?もう後一つぐらいしかないですよぉ………」

 

「それを言ってみろ、うん。この際なんでもOKだ」

 

モジモジと可愛らしく恥ずかしがっている。か、かわエェ……。なんて破壊力なんだこのダイナマイトボディ。そしてその表情。サーヤ。お前は俺の心に萌え死に爆弾という原子爆弾を落とす気か!?

 

「………こ、このお願いは、恥ずかしくて言えません!!」

 

おおこの娘、最後まで意地を張る気だ。もう何が何でも聞いてやる。後悔はない。寧ろ、今まで欲を言ってくれなかったサーヤが悪い。

 

「なんでも言ってくれ。俺はサーヤに何でもしてあげたいんだ」

 

「ひぇぇえええええ!?!?ややややめてください死んじゃいますぅ!!」

 

肩を掴む俺を引き剥がそうと涙目で必死に抵抗するサーヤ。

もう分かった。では、こちらも紳士(変態)の扉を開こうではないか。

グフッ、お嬢ちゃん、いいことして遊ばない?きんもちいいよ?快楽に溺れちゃおうよぉ?

等と内心指をワキワキさせて脳内のサーヤに迫る俺をイメージしながらも、俺は済まないと謝って肩を離した。暴れたせいでサーヤの浴衣が解け、その胸元から二つの巨大な双丘が零れ落ちそうな域をさ迷っていた。も、もう少しでサーヤの先っぽが見える!!見えてしまうぅ!!

 

「いや、そこまで抵抗されるとは、そんなに言いたくなかったんだな。ホントすまん。でも俺は、今まで頑張ってきたお前にご褒美が上げたいんだ。だから自分が叶えたい今以外じゃ絶対お願い、遠慮なく言ってみてくれよ」

 

………これ言ったら、サーヤみたいな性格の子は、絶対言ってしまうだろう。なんか強制的に言わせようとしてる感あって俺最低だな。まぁ添い寝以上に胸に秘めてることなんて、俺を消すぐらいだろうから、今のうちに誰に渡すか考えておかないとな。その女の子トレーナーの性格とか色々。

 

「………クロメ、さん。……分かりました、言います。でも、クロメさん。変なお願いですが、変な女だと思わないでください……。私は、クロメさんに嫌われたくありません……」

 

「ああ。絶対嫌わない。寧ろ、俺はサーヤが欲を言ってくれて嬉しいよ」

 

ガチ泣きしそうなサーヤの頭をよしよしと優しく撫でる。ああ、ツヤツヤの髪が俺の手をクッションに触れているかのような浮遊感をくれる。絶対俺の顔にやけてるだろ。

 

「………はい。じゃあ、私の……、一番叶えたい欲は…………」

 

……なんだろう。こっちもめちゃくちゃ緊張してきた。いやマジでどんなの来るんだろう。ドキドキの反面ハラハラしかねぇ。どっちにしたって俺の首が飛ぶのは確実。回す方のノッブに聞いて確認とるとかそういうの省いても確実だ。

今更だけど、腹括っておくか。

 

「…………ク、クロメさんの、……お嫁さんになる事です!!」

 

「よし分かった。俺も覚悟を…………って、えっ?」

 

!?!?!?!?!?!?ナニナニナンノハナシ?オレモイレテヨー。!?!?!?!?!?!?マジサーヤ何言ってたの?おっかしいなー。俺ってば、最近耳が遠くなった様な気がするよー(棒)。

真っ赤になっているサーヤ。だが、俺は今実際何を言われたのか見当もつかなかった。

 

「………サ、サーヤさん?もう1度言ってくれませんかね?」

 

「…………酷いです。女の子の口から2度もそんな恥ずかしい事言わせるんですか………?」

 

ご最もでございます。いや別に聞こえなかった訳じゃないのよ?ホントに聞こえてましたよ?いやただの現実逃避ですよ?ハハハッ、そんなフラグ打ちおるような主人公補正俺にあるわけないじゃないか。バッカだなぁ、ははははッ…………………………………………………………………………………………………………………………。ええええええーーーーッ!?!?

 

おおお俺のお嫁さん!?お嫁さん!?嫁さん!?ヨメさん!?ヨメサン!!嫁3!?

まさか俺に自分で言ってくれる事があるとは思わなかった。が、なぜ俺のお嫁さん?いやホント俺イケメンじゃないし、アリアという嫁いるし。と言うか、その嫁にすら俺は拒否られてるんだけど。どうなったら俺のお嫁さんになりたくなったのか。

 

「………り、理由聞いても?」

 

「……ま、まぁ、それ位なら。……クロメさんは、前世でも私を使ってくれていました。あの時、バトルで勝ってクロメさんに褒められる事がどれだけ嬉しかった事か。おやつを貰って撫でてもらったり、私が答えるわけでもないのに、私に話しかけてくれたり、とっても嬉しかった。この世界に来て、クロメさんがいると知ってから私はもっと嬉しくなった。髪を切る前のクロメさんは前世でも同じような見た目だったから、髪を切ってからのクロメさんはホントにカッコ良くなってたし、何よりも会話出来ることに私は胸打ち抜かれた。だからこそ、クロメさんとの会話は大事にするし、長く近くにいたいと思っていました」

 

言っちゃなんだが、めちゃくちゃ恥ずかしい。言われている事が褒め言葉なのだが、何故かむず痒いぜ。

でも、とサーヤは言葉を濁らせる。

 

「前世でもこの世界でも、クロメさんのお嫁さんポジションはアリアさんだけ。では私はなんだろうかといつも不安でした。喋る事ぐらいしかしない女?正論を伝えてくれるだけの便利な女?私はどんな女に思われたってよかった。貴方が私をただの便利でしか無い女と思っていても良かった。愚痴を言えるだけの捌け口女だと思われていても良かった」

 

「おいサーヤ。俺はお前を1度も……」

 

「でもです!!」

 

サーヤはそっと俺の手を握ってきた。

正直ぷにぷにとした手とか今堪能してる場合じゃない。

若干頬を赤めながらも、サーヤは指を絡ませてくる。

 

「私は、どんな女に思われたって、クロメさんの近くに、そばにいさせていられるだけで私は嬉しいんです。それだけで良かった。ホントにそばに居るだけで私は満足でした。でも、クロメさんが言ってくれたように、少し我儘でしかないこのお願い、聞き届けてくれませんか?そんなアリアさんみたいに愛してくれなくてもいいんです。嫁だと言ってくれなくてもいいんです。性欲の捌け口でも、旅の資金集めの売女でも、なんでもしますから。私を、貴方のーーーー」

 

「ーーーーそれ以上言わないでくれ。虫唾が走る」

 

我慢出来なかった。ここまで自分を卑下しているとは思わなかった。

強い口調で俺はサーヤの口を手で塞ぐ。手で塞がれたサーヤの口はモゴモゴと動いていたが、しばらくすると大人しくなった。

 

「…………私を、側においてくれないんですね」

 

「誰もそんな事言ってないだろ。全く、なんでお願い一つでここまでシリアスになるんだよ」

 

頭を掻きながら、俺はギュッと抱きしめる。涙をそっと拭き、胸の中に抱き寄せる。

 

「………私を捨てるんですか?」

 

「捨てるとか言ってないだろ。虫唾が走るって言ったのは、お前が自分自身を卑下し過ぎだからだ。何も、たかがお願い一つでサーヤの人生全部かけることなんてないんだから」

 

「………それでも、それでも私は!!……ずっとクロメさんの近くに居たい。我儘、これは我儘。片思いし続ける憐れな女の醜い我儘。どうかクロメさん。この事は忘れてください。そして、私を捨ててーーー」

 

「ーーーいい加減にしろよ、サーヤ」

 

我慢出来ない。俺は軽くサーヤの頬を打つ。普段女の子に手を挙げないが、俺はこの時頭に血が上っていた。状況上仕方ない。

涙をポロポロ零すサーヤの肩を掴み、紅い曇り無き瞳を見つめる。

 

「お前がどういう風に自分を卑下しているかなんてそんなこと知らない。俺が怒ってるのは、サーヤ自身が自分を卑下してたら、お前と関わってきた奴の気持ちはどう思うんだよ!!」

 

「そ、それは………」

 

「俺はともかくとして、アリアは。ミミは。ミカンちゃんは。シロナは。カレンは。俺の母親は。お前に関わってきた全ての人は、お前が自分を卑下してて、心が痛くなるとか思わないのかよ!!」

 

もう1度、強引だが胸の中に抱き寄せる。離さんとばかりにギュッと抱きしめ、耳元でそっと囁く。

 

「………俺は、サーヤ自身が自分を卑下してるところを見てると、凄く辛いよ。心が痛い。俺だけじゃないはずだ。今お前の状況を他の奴らが見たら、絶対に止めるはずだ。なんでそんなに苦しんでたのに自分だけの心の中に閉じ込めていたのかってな。側にいたいだか何だか知らねぇが、俺はお前を手放す気は毛頭ねぇ。あるとするなら、逆に俺がお前をもっと近くに寄せるだけだ。嫁になりたい?そんなのなればいい。俺はアリアだけを愛してるわけじゃない。ミミも、ミカンちゃんも、シロナとシロナのポケモン全員を、俺は愛している。お前がそん中に含まれていない事なんかねぇんだよ!!」

 

「………クロメ、さん」

 

「俺はお前に捌け口だのなんだのとそんな事に使ったりはしない。俺はお前の主人であり、パートナーだ。そんなひでぇ妄想なんか、そこいらのゴミ箱に捨てちまえ!!俺が欲しいのは、いつも真面目で、みんなの面倒を見てくれて、間違いがあればすぐに教えてくれて、優しくて、頼れるお姉さん的な立ち位置の、お前しかいらないんだよ!!」

 

抱きしめる力を緩め、サーヤが顔を上げてくる。イケ顔だろうがブサメンだろうが関係ない。俺は安心させるように笑みを浮かべる。

全く、こんなに顔がぐちゃぐちゃになるで涙流しやがって。

 

「お前の願い、聞き届けた。お前は今日から俺の嫁だ。他でもない、この世でポケモンを誰よりも幸せにできる俺の嫁になるんだ。誇ってくれよ、サーヤ」

 

「………はい。はい……クロメさんっ」

 

再び泣き出すサーヤを宥め、頭を撫でる。

普段見せない彼女の裏側を見れただけでも、あの魔法の言葉はとても役に立った。これを機に、サーヤも少しは我儘を言って欲しいものだ。遠慮とか要らず、ホントの嫁のように夫を頼って欲しい。

まぁ、アリアにはいっつも顎で使われてるけどな。

 

「………泣き止んだか?」

 

「………はい、お陰様で。醜いところをお見せしました……」

 

「なーに。可愛い嫁の、知らない一面を知れたわけだし?俺的には醜いの何の、むしろ嬉しい限りで」

 

「………フフッ、ありがとうございます、クロメさん。私は、もっと貴方の側にいたいです」

 

「そうそう。サーヤはいつもの笑顔が似やってる。そっちの方が可愛いよ」

 

「もー、からかわないで下さいよ…。………そんな人には、お仕置きです」

 

ぐいっと浴衣の胸元が引っ張られる。

思わず前に倒れそうになり、体勢を戻そうとすると。

 

ーーーチュッ。

 

突然、サーヤが俺の視界に入ってきたかと思うと、何か柔らかいものが唇に触れていた。ほんの数秒触れていたが、サーヤが俺の顔から顔を離さなかった事から大体予想はついた。と言うか、あの状況でなら、一つしかない。

つまりキスされたのだ。え?誰にって、サーヤにですけど?

やった当の本人は、アウアウとやってしまったどうしようと小声で震えていた。

勿論俺はと言うと、未だにフリーズ中。

あれは不意打ち。俺は悪くない。寧ろこの状態にさせた雰囲気が悪い。

 

「………ど、どうですか?私のファーストキスの味は。……残念ながら、クロメさんのファーストキスはクロメさんのお母様に取られてしまっていたので悲しいですが、私の初めてを捧げられただけでも良かったです…………って、どうしたんですか、クロメさん。何か様子がーーーッ!?」

 

ーーーチュッ。

 

……こんな雰囲気にさせた雰囲気とサーヤが悪い。俺は悪くない。俺は決して悪くない。この状況からして絶対俺から行かなきゃならないということは察した。よって俺はこれからサーヤの初夜を迎えさせなければならなくなったようだ。安心しろ。俺のおっきな息子で幸せにしてあげるよゲヘヘヘッ。

サーヤを押し倒し、貪るように唇を吸う。

サーヤの閉ざす口の中に俺の舌を侵入させ、サーヤの口の中を蹂躙していく。歯茎を舌でなぞり、舌を絡み合わせ、舌をストローを吸うかのように勢いよく吸いつく。

何分経ったかその唾液交換が終わり、サーヤの口から口を離す。離した時、口と口の架け橋のように透明な糸がいやらしく伸びていた。

 

「………サーヤ。俺、もう……」

 

俺の息子は臨界突破だ。浴衣では隠しきれなかった我が息子は、パンツから抜け出そうと中から押して、浴衣では隠しきれないほどの膨らみが浴衣から覗いていた。

サーヤは察したか、頬を赤く染めて、不安な表情を押し殺して笑を作ってコクリと頷いた。

俺も男である。無理矢理されていたのは何度も経験済みだが、自分から行くのは初めての経験である。心臓バックバク。

 

俺はサーヤの下半身に手を滑らせる。すらっとした足を愛でるように優しく撫で、脹脛を軽く揉みしだく。空いている片方は、サーヤの上半身に伸ばし、そのデカい双丘を優しく揉みしだく。

サーヤの口から喘ぐ声が漏れ始める。

構うことなく俺は胸を揉みしだきながら、足に這わせている指を、次第次第に太もも、そして又へと手を滑らせる。

次第に声を上げ始めるサーヤを横目に、女の子の大事な部分に手を触れた。

ビクンっと身体が震え、大事なところから漏れている愛汁を指でそっと絡めとり、サーヤに見せる感じで顔の前に近付けた。

 

「………もう濡れてるな。このまま入れていいか?」

 

答えは返ってこない。あるのは頷き。

俺はパンツを脱ぎ、そのいきり立つ息子を空気に触れさせる。

サーヤは俺の息子を見ると、更に身体が火照ったかのように顔が赤く染まっていく。

 

「……………行くぞ」

 

密部にそっと触れ、焦らすように解していく。

そしてゆっくりと腰を前に押し出していきーーー。

 

ーーー俺とサーヤの淫らな夜は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーサーヤよ。これからもう1度温泉に行こうではな……い…………か………………」

 

突如として開けられた襖。そこから現れたのはミカンちゃん。

しかし俺とサーヤの状況は然、オツパイ丸出しで息子丸出しの状態であった。

俺とサーヤ、そしてミカンちゃんは硬直した。

何も出来ない何も喋れない。忘れていたが、ここは皆の部屋であった。よって勝手に開くのはおかしい事ではなかった。

 

「ーーーちょっとミカンってば、何勝手に走って………んの……よ………」

 

「………………………!?!?!?!?!?!?」

 

「どうしたの3人共。なんかあった………………の………」

 

更に増える目撃者。ミカンちゃんに続き、アリア、ミミ、シロナの順番で顔を覗かせてきた。

 

………俺は思う。短い人生だなぁ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近は配布色違ディアンシーにハマってます。もちクチートとミミッキュとサーナイトとパチリスは忘れてませんよ。
オニシズクモとドヒドイデ育て始めました。ドヒドイデ色違なんで嬉しいです。孵化厳選成功。

………え?そんな余裕あるなら小説書けって?
寝落ちするんだよコンチクショー!!

自分の小説読んでると何だか出来後悪くて何も言えねぇ……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

何を言ってるのかわからないが取り敢えず俺も最後まで自覚無かったですはい

………ちゅかれた。
部活ちゅかれた。眠い。寝たい。お休みプリーズ。
最近夕日が傾くの早くて5時には真っ暗なのに、外部活でありながら7時以上も部活やる事件。
その後帰ったら筋トレして飯食って風呂入って勉強………。
俺に休みってある?

この話は、なんかめちゃくちゃテンションキモい時に作ったヤツです。個人的に見たら、ペラペラの紙に穴空きまくりの汚い出来になっているので、この話見なくてもどっちでも構わないっす。
ホント期待裏切るようでごめんなさい まぁそれなら直せごらぁ!!ってなるんですけどね。堪忍な。

本日まで待っていてくれた人、感謝とともに謝罪を。


静寂ほど、叫びたいだの暴れたいだのと、静まり返ったこの場の空気を破壊したい衝動が押し押せて来ることは無い。

それは生き物の性というもので、動くモノ程そういった感性は強いのだろう。

場合によっても、獲物から逃げ切る為に擬態して身を隠す生き物達も、本当は動きたくて仕方ない。でも食われるのも嫌だがら我慢と、動きを我慢して感情を押し殺さなければならない状況でも動きたくなるものだ。

常に生き物の体の何処かは動いている。食べる時、寝る時、走る時、歩く時、立ち止まっている時、物を持っている時などなど。止まっている時は絶対ない。常に動くという現象が起きている時点で、身体が止まるという事は無い。

あくまで個人的なものなのだが、自分の意思で意識を失う事は出来ないのだろうか。

それこそ、他人に意識を刈り取って貰えればコチラとしては有難いものなのだが、惜しくも今この状態ではそんな馬鹿な事は言えない。もし言ったのなら、逆に俺のナニを刈り取られそうなのだ。

 

というのも、あの光景を見られて只今正座中の俺は、とてつもなく逃げたい気持ちであった。

それはもう、自分から意図せず無意識に意識を失う事が出来れば迷う事無くどんな手を使ってでもやる程に。

 

いや、周りから見ればこの状況はとても羨ましいと思わせるだろう。

両隣に女の子。目の前にも女の子、俺の背中にも女の子がくっついている。なんて天国だ羨ましいんだよリア充が!!などと思ったヤツ、直ちにここに来なさい。代わってあげよう。何心配するな、その代わりと言ってはなんだが、後の処理は君に任せた。俺はトンズラする。

 

え?何故トンズラするって?そんなもの逃げるために決まってるじゃん。女の子に囲まれて羨ましいとか思ってる頭お花畑な奴、君達は間違ってる。

俺のこの状況、一回体験したらわかる。2度とそんな口は聞けないだろう。何故って?お前達はあれか?集団殺人してる奴に囲まれた人の事を羨ましいと思うのか?

いや、今の問では、誰も彼もが羨ましいとは思わんだろうし、同情するだろう。だから是非、その同情の心を俺にも向けて欲しい。こちとら胃に穴が開きそうなんだよ。

見てよ皆の表情。笑顔なのに目だけは笑ってないんだ。よく俺は笑顔なのに目だけは笑ってないって表現があんまり想像つかなかったけど、今目の前にしてたら嫌という程分かった。

止めて!!俺そんな目で見られても興奮しないよ!!

 

「……さてクロメ。アンタ、何しでかしたの?」

 

「俺しでかした前提ですか!!慈悲はないのか慈悲は!!」

 

「……私達の気持ちも考えないで押し倒してたクロメに慈悲の二文字は存在しない」

 

「……」

 

クズめと言いたげな目で見下ろしてくるアリア。その横で完全にキレてるシロナ。俺の横でヤンデレタイムに入っているミミ。カレンとミカンちゃんはサーヤに事情聴取中だ。ミカンちゃんが未だににやけ面なのは理由は知らん。

 

「で、何処までやったの?正直に吐きなさい」

 

「いや別に俺は何も……」

 

「隠さなくていいわよ。どうせサーヤに聞くだけだし。ま、これで何かしてたってのを聞けば、重罪だけどね」

 

「ごめんなさいマジすんませんでした手出しちゃいました反省してますこの通りですすいませんまじホント勘弁」

 

瞬間的土下座。そのタイムたった0.1秒。

重罪と聞かれたらこの女達は何しでかすか分かったもんじゃない。マジほんと怖いわ。

そりゃ手出しちまった俺が悪いけどさ、もうちょい優しくしてよ。超ブサイクな俺が可愛い女の子に手と息子(意味深)出しちゃったけどさ、そこまで怒る必要ないじゃん。

何?ブサイクは可愛い女の子に近づくな?酷いだろそれ!!誰が決めたんだ!!慈悲よこせ慈悲を!!

 

「………クロメ、さん」

 

「…………な、なんだ?ミミが珍しいな、こんなにーーー」

 

「ーーー何したかキッパリ吐いて」

 

ぎょっとした。まさかあのミミがこんなにも怖ぇーとは思わなかった。もう物凄い威圧。フードの下と長い前髪に隠れた目が光ってるように思えるぐらいヤバい。

 

「具体的に言うと私達が温泉から上がって涼みに行って別行動になった間サーヤさんとどんな事をしていたのかをぜひ詳しく洗いざらい腹を割って話して欲しいです勿論言い訳は結構嘘偽りなく正直に私の目を見て一言ずつ言ってくださいでもそうすると私凄く恥ずかしくなりますずっと見つめられると私が恥ずかしくて話に集中出来ないので取り敢えず私をサーヤさんと同じようにして再現してみてくださいもし本番しちゃってるのであればそれもやってもらって構いませんキスだけならそのキスした舌の動きも全て再現して触った箇所全て私の体を触って再現してください大丈夫です私はどんなクロメさんでも愛します愛でます癒します可愛がります甘えます甘えまくりますずっと側に居ます全てを愛しく思い愛しく思い狂おしく思います話さないのであれば容赦なく私色に染めて言わせます大丈夫です最初は痛いだけでも後から気持ち良くなります後遺症はありません私だけに命令されて動く人間に生まれ変わるので何処にも後遺症の心配はありませんさぁ早速私色に染めてあげますクロメさんも私に使えるだけの泥人形じゃ嫌でしょ?ならばここで喋って我が身可愛さに言ってみてくださいよ」

 

………ひぇーーーーっ。

こえーーーーよぉーー!!マジこえー!!

誰だよこの子新入りか?こんな怖いオーラ出してるやつなんか俺のパーティにいないぞ!!あれか?シロナのポケモンか?捕まえたんなら言ってくれよ俺めちゃくちゃビビっちまったじゃねーか!!小便チビっちゃうわ。

 

「おおお落ち着けミミ。大丈夫話すから話すから!!だからそんな怖い目で見ないでぇ!!」

 

女に弱い説。

女の子に集られたら俺勝ち目なさそうな感じがして堪らん。可愛い声で、『お金ちょうだい?』なんて言われてみろ。死ぬぞ?発狂するぞ?悶えるぞ?萌え死ぬぞ?痙攣起こすぞ?

まるで女の子の免疫が全く無い男みたいな感じになっちゃうぞこら。

そんな俺の妄想は脳のゴミ箱にポイ捨てし、渋々語る事にした。

まずサーヤとの会話。サーヤがどんな思いだったのか。どんな気持ちで過ごしていたのか。話せる範囲で3人に話した。勿論ナニをしでかす前に至った流れもきっちりと。

 

「………ふーん。それで雰囲気に流されてヤりそうになったと」

 

「いやマジでやってないからセーフだと……」

 

「勿論アウトよ。何甘い雰囲気に流されちゃってるのよ」

 

「男には断れないものがあるんだよ」

 

「お母さんとのナニ行為は抵抗する真似して自分で誘ってるって言ってたっけ?」

 

「それガセネタだから!!俺節度守ってるから!!」

 

それでもヤッた時点で節度のせの文字も守ってないのだが。5歳で近親相姦+童貞卒業。はっ、前世とは大違いだ。悪い意味で。

いっつも言うけど、5歳に手を出す母親もどうかしてると思うよ?どんだけビッチなんだよ!!って叫びたいぐらい。でも親が知らないオッサンとパコってたら嫌じゃない?もし俺がそんな状況に出くわしたら、相手のオッサン殺しそうだわ。

 

「私達だってそんな甘い展開になった事すらないのに、サーヤだけズルいわ」

 

「なんだよずるいって。サーヤみたいな甘い雰囲気で流されてヤりたいのか?我が嫁は意外と脳内PINKであった」

 

「うっさいこの変態!!」

 

げしっと腹を蹴られる。痛いよ。凄く痛い。気持ちいとか言ってる奴頭完全にイカレてるわ。

勿論俺にそんな性癖はありませんのであしからず。

 

「で、どうする?このまま一思いにやる?」

 

シロナがイイ笑顔で首を傾げてきた。

シロナ、君は良い女になったよ。将来男をその尻に引いて扱き使うんだぞ。

アリアは腕を組んでんーと唸って考える。なにやだ可愛い。

 

「どう処刑しようかしら。今後こんな事が起きないように躾なくちゃならないし、痛い事しましょうか」

 

「ドMに目覚めたら?」

 

「………そん時はそん時よ」

 

誰も俺の味方はしてくれなかったようですはい。

どうやら死刑は決まったようだ。俺耐えれるかなぁ?痛いのはホント勘弁して欲しいんだけど。

 

「ちょっと待たぬか」

 

すると、男勝りの口調でカレンがアリアとシロナを止めた。

どうやらサーヤの事情聴取は終わったらしい。サーヤを連れて近付いてくる。てかミカンちゃんの笑がもっと凄くなったんだが気のせいか?サーヤはマトマのみぐらいに赤面してるし。

 

「処刑は私に決めさせてもらっても良いか?」

 

「珍しいわね。カレンからそんなお願いが来るなんて」

 

「何。どうせなら、と思ってな」

 

何やらニヤつき顔でカレンは俺達全員を見渡すと、俺の背後に回り込み、ポンと手を叩いた。

……なんか嫌な予感。

 

「私の処刑方法は、サーヤとの続きを皆でやる事だ」

 

「……サーヤとの続き?」

 

「続きって事はまさか………!?」

 

「……えっ?」

 

全員が一斉に戸惑った。いや、カレンとミカンちゃん、サーヤは驚いてはいないが、俺の周りにいた三人と俺はめちゃくちゃ驚いた。

何その展開。エロ漫画か何かですか?同人誌のハーレム展開ですか?お腹いっぱい何ですか?

 

「ちょっとカレン!!こっち来なさい!!」

 

シロナがちょいちょいとカレンを呼び出す。それに続いてgirl's達もシロナの周りに円を作った。

どうやらマジに驚いているようだ。こんな話却下だ却下。この小説R-18じゃないんですけど?ハーレム乱交とかメシマズですよこの小説には。

 

「カレン。どういうつもりなの?」

 

「なに、お前達がクロメと肉体的に結ばれたいと理解したからこの処刑法を出したんだが?」

 

「それじゃあまるでクロメのアレに群がる痴女じゃない」

 

「痴女で結構。私達は、既に抱かれる気でいる。サーヤを筆頭にな。お前達はどうするんだ?もしするのであれば、私が後はなんとかしよう」

 

うっと、苦虫を噛み潰したような表情をアリアとシロナはする。方だけで言っときながら、肝心な所ではヘタレであるこの2人。

そんな2人を置いて、ミミは賛同した。

 

「ミミは腹が決まった様だな。お前達はどうする?」

 

「………ホントに抱いてくれるのかしら?」

 

「既に出してしまった以上、男として断れないように言ってやる。さぁどうする?」

 

今でも不安が顔に出るシロナとアリア。そんな表情を見てカレンは口元を釣り上げてイイ笑顔をしている。

 

「……分かった。私も覚悟を決めた。クロメの事が好きなら、ここでアイツに思いをぶちまけてやる」

 

「私もやってやるわ。私以外じゃ生きていけなくなるようにしてやる」

 

「その意気だ」

 

円陣を解散し、再び元の位置に戻る女達。俺に内緒で何話してたんだ?こちとらなんかよく分からん気持ちが渦巻いてるんだけど?

 

「クロメよ。お前はサーヤに文字通り手を出そうとした。違わないな?」

 

「まぁ違うことは無いけど……」

 

「実はな。この場にいる女子はその事に腹を立てている」

 

「それは見てわかるよ。何が言いたい?」

 

「お前は勘違いしている。サーヤに手を出したから怒っているんじゃなく、サーヤだけに手を出したから怒っているんだ」

 

………はい?

何ですと?

 

「………手を出したから怒ってるんじゃなく、手を出したのがサーヤだけだったから怒ってる?ちょっと意味不明なんだが……」

 

「お前は鈍感だからな。周りの好意がよく分かって無かったんだろうが、間違いなく、この場にいる女子全員は、お前の事を愛しているんだ」

 

「………いやいや待ってほんとに意味分からん。なんで?俺に惚れる要素無くない?アリアに俺の嫁宣言してんのにずっとツンのまんまで俺やっぱ嫌われてるんだなぁとか思ってたんだけど……」

 

「……うぐっ。そ、それは、ただの照れ隠しよ。悪い?」

 

「というわけなんだが、クロメ。私がお前に下す罰は。というか罰ではなく責任の取り方は、この場で全員をお前の嫁にする事だ。勿論将来的な意味でな」

 

…………ええっ!?!?

 

「ちょっと待って本気で待って!!何?俺に対するからかいか?笑えねぇ冗談は勘弁してくれよ!!」

 

「誰も冗談とは言ってないだろう。本気だよ本気。アメリカンジョークでもジャパニーズジョークでもない。私達は本気でお前を愛してる」

 

「俺を好きになる理由とかないと思うんだけど……」

 

「それは個人で違うさ。まぁ私とシロナは言わずとも、お前に助けられたからな。一目惚れってやつだ」

 

「……マ、マジのマジか?」

 

こんだけ言われてもなお信じられない。

イヤほんとマジで。現実味がねぇ。いつから俺は主人公になったんだよ。主人公限定のハーレム展開ですか?んん?

 

「くどい。アリア鍵閉めろ。こっから先は、男女の営みの時間だ」

 

 

ーーーなんか急過ぎて意味わかんないんだけど、この後朝までしっぽり取られました。

 

 

 

 




また部活ですわー。新人戦雨やめて欲しいわー。長引くとつれーわー。
戦闘シーン書きたいですまだ全然ジムとか行ってないです。早く行きたいです。
メガシンカ同士で戦わせたいです。

それではまた。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

乙女の始まり

何とか早く出せてよかった。
この前みたいなスッカスカの話にはしてないので、読んでくれると嬉しい。

全くサブタイが思いつかない……。



ーーー昨日は一体何があったのかな?

 

サーヤ押し倒し事件があって、その尋問後何が起こったのか全く覚えていないんだが。

何かあったような気がするんだが、一体何だろうか。

みんな腰痛いって嘆いてるけど、ホントニナニモナイヨネ?ナカッタヨネ?シンジテモイイヨネ?

 

という事もあり、何故かもう1泊した俺達は、翌日の朝港を出発した。目指すはミアレシティのミアレジム。ヒヨクシティでも良かったが、それだと遠回りになるので、取り敢えず距離の遠いミアレシティに行くことにした。

 

「やっぱり、シンオウ地方とは違って肌寒いわ」

 

「……だったら、もう少し厚着してくるんだったな」

 

シロナの格好はゲームでお馴染みの黒を基調としたコートと黒いニーソ。未だ成長中の母性の塊はゲーム通り開けた胸元から主張し始めており、足の方も美脚と言える程すらっとしていて、妖艶な雰囲気を醸し出していた。道行く男の目線がシロナに集中し、アイドルを隣に連れている感じで歩き難い。

しかもーーー。

 

「何よ、なんか冷たいわね。タダでさえ肌寒いのに、クロメにまで冷たくされたら私凍っちゃうわ」

 

「凍らないよそんな程度じゃ。それよりもシロナ、自分の格好と周りの目線から何か察する事は無いか?」

 

「え?私の格好?……特に変ってわけじゃないと思うけど。あっ、なんか男の人の目線が凄い」

 

ーーーこのように、全く自分のことが分かっていないのだ。成長期になって間もないが、シロナの場合はどんな服を着ても色香が出てくる。それを自覚しないで更に自分の容姿に似合う服を纏えば、世の男共は生殺しである。

勿論俺は制御出来ているから問題ない。

しかし、今この天然っ娘をこの道端に置いておけば、待てを食らってた男共は一斉にシロナに群がるだろう。

それだけは嫌だな。シロナはいつまでもダメナでないとダメなのだ。主にファンの心を鷲掴みにする目的でだが。

 

「一応説明しておくとシロナ。お前の格好は別に普通だ。特に何の変哲もない格好だよ。そして何より今日の服装は可愛いと言える」

 

「えっ?そ、それは……、ありがとう」

 

ムックルが豆鉄砲を食らったような顔をして、動かしていた足を止めると、顔を赤く染めるシロナ。

一々反応が可愛いな。だから世の中の男に襲われそうになるんだ。

 

「だがしかし、それは服装だ。服装は似合っているとだけ言ったんだ。問題なのはシロナ、お前自身だ」

 

「私自身?身嗜みもバッチしだと思ったんだけど……」

 

「違う違う。身嗜みもバッチリでいつも通り可愛いぞ。でもな、これはシロナのせいではあるが、シロナは悪くは無いのだ」

 

「え?なにそれ?じゃあ一体何が変だって言うの?」

 

全く分かってない様だ。いや、確かに自分の変化は自身では分からない事が多いかもしれない。シロナも、天然だが、若干天然だが、ほんの少し天然だが、気づかないのは当たり前かもしれない。

 

「今のシロナはな、物凄く美しいんだ。オブラートに包んで言えば、モデル以上の美人さん。ストレートに言えば、エロい格好した綺麗な女の子なんだ。だから少し自重しろって言いたい」

 

「ええええええろいって何よ!!………まだ10歳の成長期の女子を変な目で見るなんて、変態しかいないのかしら」

 

その言葉は誰に向けられたのかは分からないが、その周りに潜んでいた大きな子供達はその冷たい言葉で心折られる。

俺はシロナをそんな目で見てはいないが、意識するとやっぱりエロいと思ってしまう。

俺は自分の着ていた黒い生地の暑いフードがモコモコした上着を渡す。上着を外した時は少し冷えたが、そこまで寒いとは言い難い寒さであった。

 

「シロナ、これ着てろ。その格好じゃ、街とか繰り出したらもっといやらしい目で見られるぞ」

 

「………あ、ありがとう。でも、寒くない?」

 

「心配すんな。寒くないし正直ちょっと暑かったぐらいだ。仕舞うのも面倒いから着とけって」

 

「うん、そうする。………ところで聞くけど、クロメも変な目で私を見てたの?」

 

「そんな目で見てたんなら、俺はお前に教えないだろ。俺はそんな目で見る事は今はねぇよ。青いガキが何言ってんだか」

 

「青いって、クロメも私と同い年じゃない。同い年に青いなんて言われたら癪に障るんですけど」

 

「無駄口叩くなら手を動かせ。早く着て出発するぞ」

 

むーっと、頬を膨らませているシロナを急かして早く上着を着させる。少し大きかったようで、ダボダボの上着から顔を覗かせている姿は小動物を連想させた。

素直に可愛いと賞賛。

 

「ちょっと大きい」

 

「小動物みたいで可愛いぞ。それなら手袋代わりにもなるからいいだろ」

 

「うん。………それに、クロメの匂いがする」

 

「なんか言ったか?」

 

「な、何でもないから気にしないで」

 

ほっこりしているシロナの手を掴んで歩かせる。

ここで立ち往生してたら日が暮れてしまう。次の街までは頑張って歩かなければならない。

と言っても、ここはミアレシティと一直線で繋がる道。途中街などなく、歩いて数時間程度なので助かった。

 

「………クロメ。一つ聞いていい?」

 

「なんだよ。そんな重っ苦しい雰囲気で」

 

さっきまでとは違い、何故かテンションを落としてシロナは俺に話しかけてきた。

立ち止まる事も出来ないので、歩きながら聞くことにした。

 

「……覚えてる?クロメが私とカレンを助けてくれた時のこと」

 

「…………ああ、覚えてるよ。あれは忘れろって言われても忘れられないもんだからな」

 

「……クロメは、あの時出会って数秒の私達を助けてくれた。でも私、怖かった。クロメが一体何を考えてるのかよく分からなかった。だけど今となっては、クロメについて来て良かったと思ってるよ?」

 

「そう思ってくれてるなら、俺は手を差し伸べた甲斐があったという訳だな」

 

「でもクロメ。1度も私達の事、聞かなかったよね?お母さんもそう。私達の事情は全く聞かなかった。別に知らなきゃならないとかそういう事じゃないけど……、聞きたいとか、思った事ないの?」

 

確かに、聞きたいと思ったことはある。実際俺の知っているシロナの事情とはかけ離れていた。

俺の知っている限りでは、カンナギタウンに祖父母と妹と共に住んでいたのは記憶している。親は行方不明だが、そこまでブラックな状況では無かったはずだ。

しかし、あの時のシロナの姿を見れば、とても一桁前半の年齢の子が負う傷の量では無かった。

それこそ拷問。調教。躾。いろんな事が頭を過ぎっていた。

俺というイレギュラーが介入した事で、全くもって別の世界に書き換えられてしまっている。

だから俺は知りたいと思っていた。聞いてみようとした。しかしそれは、同時にシロナの傷を開く事にも繋がる意味を持っていた。

だから聞けなかった。聞くわけには行かなかった。

ポケモンというジャンルで、出てくるキャラクターで俺が好きなのはシロナがダントツだ。……因みに2位がルザミーネ様。3位がカミツレ様で、4位がナツメ様だ。ナツメ様に至っては、携帯のホーム画にしていたほど。

話を戻すが、俺は自分が好きなキャラが傷つくのは見たくなかった。エゴかもしれないが、正直に言うとあの時シロナを助けたのは、ただの自分勝手に動いていたに過ぎなかったのだ。

 

「……ごめん。正直に言うと、聞きたい。でも、俺は血眼になるぐらいには聞きたいとは思ってない。人それぞれの事情があって、それをプライバシーと言う。俺は他人にずかずか聞くよりも、相手が話してくれるのを待つ人だからね。こう言うのはなんだが、無理しないで落ち着いた時に話して欲しい。それこそ、笑い話で吹っ飛ばして言える時にね」

 

笑い話で吹っ飛ばして言える時に。多分難しいかもしれない。今の俺は軽率だった。言ってしまった言葉は訂正できない。

恐る恐るシロナを見ると、目元に涙を薄ら浮かべ、今にも泣きそうな表情をしていた。

 

「な、泣く事ないだろ。俺が泣かせたみたいじゃないか」

 

「……で、でも……。私、嬉しくって……」

 

「いつまで経っても泣き虫だな。あんまり女の子が男の前で泣くと男はコロッと逝っちまうから程々にしとけよな」

 

「……クロメも、コロッと逝く……?」

 

「……さぁな、俺には嫁がいるし」

 

「私も嫁に入ったんだけど?」

 

「じゃあ既にコロッと逝っちまってるわ」

 

ピンッとシロナの額をデコピンし、俺よりも頭1個分低い位置にあるシロナの頭をぐりぐりと撫で回す。

シロナは撫でられるがままにされ、嫌よ嫌よと撫でる手を振り解こうとじたばたする。

 

「……もう、いつまでも子供じゃないのに」

 

「大人からしちゃ、俺達はまだまだ子供だよ。それに、まだ子供の方が好き勝手出来るだろ?」

 

「ホント、クロメといるとなんだか変な感じがする。兄妹がいたらこんな感じなのかな……」

 

「立ち位置的に俺が兄だな。シロナは世話のかかる妹」

 

「なんでクロメがお兄ちゃんなのよ。クロメは弟。私が姉なの」

 

「弟に撫でられる姉って威厳無いよな?」

 

「全国の姉さん敵に回しちゃったよ今」

 

「俺はお前の事しか言ってないし。逆に姉の威厳見せろって怒られるかもな?」

 

「……ぐっ、いつか私が居ないと生きていけないようにしてあげるわ!!」

 

「ちょいヤンデレ発言NGよ。シロナのヤンデレ見てみたいけど我慢だ我慢」

 

「ヤンデレ?なんだか良くわからないけど、絶対負かしてやるわ」

 

「頑張れ頑張れ、愚姉ちゃん」

 

「うがぁーっ!!もう怒った!!もう許し乞いても絶対許さないんだから!!」

 

ボコボコと俺の胸を殴ってくるシロナ。うん、全く痛くない。

シロナが自分の過去を自ら言うのは今まで無かったから、話を持ちかけてきた時は正直焦ったが、こうやって表情豊かになっているのを見ると、そんな焦りも無くなっていく。

ホント、心配した俺が馬鹿だったよ。

 

「シロナ、これからも宜しくな」

 

「ここっ、これからもっ!?それってつまり!!そういう事でいいの!?」

 

「いや旅の話だから。いくら嫁にしたからって、ホントに結婚するかは知らないけど」

 

「………だと思ったわよ。でもアリア達には負けないんだから!!」

 

「ポケモンと張り合ってもね……」

 

擬人化したポケモンとの結婚は正直分からん。

結婚しては行けないという事も無いし、多分していいと思うが、子供はやっぱり人型のポケモンだろうか。

人型はメスが大半らしいから、産んだとしてもメスだろうし。まぁ可愛ければなんでもいいか。

 

 

 

 

「ーーーうひょー、なんか可愛い子ちゃんがいるぜ」

 

突然の事に後ろを振り向いた。

すると、後ろの茂みからガサガサと音を立ててガラの悪い男が歩いてくる。

 

「ーーーねぇお嬢ちゃん。俺らと遊ばねぇ?」

 

今度は反対側から同じようにガラの悪い男が歩いてくる。

反射的に、俺はシロナを背後に隠す。

下心見え見えな表情の男達は、ポケットに手を突っ込みながら歩いてくる。

 

「……生憎、私達は急いでるから」

 

「えー?連れねぇ事言うなよぉー。すぐ終わるからさー」

 

「そんなひょっろい男よりも俺達の方がたのしめるぜー?」

 

「私はクロメの方がいいの。貴方達みたいなガラの悪い男にはついて行かないの」

 

シロナは俺の背後で物凄く強気に男達を否定。

男達は面白く無さそうに顔を顰め、ポケットから手を抜いた。モンスターボールと一緒に。

 

「ガキが。素直に従っていればよぉ。怪我なんてする事は無かったんたがな」

 

「2対2だ。勝ったらお嬢ちゃんは俺達についてきな」

 

男達はモンスターボールを空中に放り投げる。

モンスターボールが開き、青いポリゴンが飛び出す。ポリゴンは形を変え、地面についた瞬間にポリゴンが一気に分散。ポケモンが姿を現した。

 

「……カラマネロとゴルバット」

 

逆さになった大きなイカみたいな姿をしたカラマネロ。4枚の羽をはためかせているクロバット。

クロバットはシンオウ地方にいたが、カラマレロはこの世界では初めて見た。

 

「どうしたー?怖気付いちゃったのかなー?」

 

挑発的に俺達を誘ってくる男達。

俺のポケモン達からすれば、クロバットは少々面倒臭い。アリアとみかんちゃんを出せば問題ないが、そうなると今回は後者だろうか。

俺は腰のモンスターボールに手を触れる。

しかし、その手はシロナの手によって止められる。

 

「……シロナ?」

 

「ごめん。このバトルは、私一人でやる」

 

そう言って、シロナはモンスターボールを投げた。

クルクルと宙を舞うモンスターボールを横目に、シロナは俺の手を握ったまま前に立つ。

 

「クロメ。私はいつまでもクロメの後ろに立ってるだけの弱い女のままじゃいやだ。私だってメガシンカ使いになりたいの。だから、私の成長した姿をクロメに見て欲しい」

 

その目はとても真っ直ぐだった。覚悟を決めた奴の目だった。

その目に写っているのは何かは分からないが、根本的にシロナはもっと先を見据えていた。

そんなシロナを、止めるヤツなんていないだろう。

 

「分かった。シロナの成長した所、見せてもらうぞ」

 

「うん!!」

 

同時にモンスターボールが開き、ポリゴンが溢れ出る。それは形となり、シロナの相棒の姿を形作っていく。

困難だろうが苦痛だろうが、これから2人はずっと一緒にいるだろう。

シロナは前に進み、その横を相棒であるカレンが共に進んでいく。

ゲームでもそうだった。アニメでもそうだった。シロナの隣には、ガブリアスがいた。この世界でも同じ。

シロナの隣にはカレンが並んでいるのだ。

 

「カレン。私達の力、クロメに見せるわよ!!」

 

「……お前が言うまでもない。私達の力を特等席で見えるのだ。見逃す事は許さん」

 

カレンとシロナの戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 




今度はバトルシーン。頑張っちゃいますよ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

まさかまさかの急展開

ーーー先先先々週

「よしゃ新人戦頑張るでェ」( `ω´ )ふんすっ

ーーー次の日、台風。

1週間更に試合の為の練習が行われる。_| ̄|○ガーン

ーーー先先々週。

「よしゃ明日こそ頑張るでェ」( `ω´ )ふんすっ

ーーー次の日、またもや台風。

それによって、更に1週間伸びる。_| ̄|○ガーン

ーーー先々週。

「よしゃ明日は雨大丈夫だな。頑張るでェ」( `ω´ )ふんすっ

ーーー先週。

「新人戦終わったー。さぁ小説書くでぇ」( `ω´ )ふんすっ

ーーー次の日、修学旅行。

「( ˙-˙ )oh......しかもケータイ禁止……」_| ̄|○


という訳で忙しくて書けませんでした。
そしてなんということでしょう。小説の書き方を忘れてしまった。
惰弱惰弱人に言ってたら俺が惰弱になってた。
という訳でもないんですけど、待ってた人、ただいま。
頑張ります。………駄作だけど。




PS いつの間にかお気に入り200人突破してた件。これを機に、お気に入り百人突破記念話とか書かないとダメですかね。時間あったら書いときましょう。

待ってた人、そして感想くれた人。感謝感激。


ーーー私は惨めだった。

 

ーーー私は空っぽだった。

 

ーーー私は………、1人だった。

 

 

ゴミの山で生まれた私。

冷たく降り注ぐ雨が、生まれた私の身体を鋭く愛撫する。

生まれて初めて、最初に思った事が、ただ冷たいだけの『孤独』だった。

 

何も無い。私の中にも、何も無い。

ゴミを見つめ続けるだけの毎日。

止むことのない雨が、いつまでも私の身体を冷たく撫で続け、私を少しずつ死に近づけていた。

 

ーーーこれが当たり前なのか、と。

 

私の周りには用済みになったゴミしかない。その中にいる私も、用済みになったゴミと変わらない。

誰も見向きせず、誰も気にしようとしない。

所詮ゴミ。混ざっても砕いても、出てくるのは使えなくなったもの。即ちゴミ。

 

上を見上げれば、いつも薄暗い雲が空を覆っている。

私は生まれてからずっとその空を見続けていた。

変わる事の無いただただ雨を降らす曇り空。

虚ろな目で私は、いつも見ていた。

悲しくは無い。嬉しくもない。辛くも……ない。

こんなものだと。私は理解した。

 

ゴミは再利用されるまで動く事は無い。

それが何時なのかは分からない。明日、明後日、明明後日、1ヶ月後、2ヶ月後、半年後、1年後、5年後、10年後、100年後、1000年後ーーー。

ゴミ溜めという止まった時間の中で、私はずっと待った。どれだけ待ったか分からない。

やせ細る私の身体との根気勝負。

変わらない時間が流れ、変わっていくのは私の寿命。

何時しか、目を開ける事さえもめんどくさくなった。

そっと目を閉じ、誰とも会話する事が無かった為に必要の無い口を噛み締め、滴る雨を身体で受けながら、私はそのまま意識を手放した。

生きてる事って、辛いのだと。

私は、生まれた私は、そう理解した………。

 

 

 

そんなある日、生まれて初めて、雨が止んでいることに気付いた。

ゴミの山に出来た水溜まりが、日光の光を反射させ、薄暗かったこのゴミ溜めを明るく照らしていた。

最後に、陽の光が見れた事はとても嬉しかった。

目尻が熱くなり、雨も降っていない筈なのに、私の頬を水滴が伝った。

そんな光景を見ながら、私は目を再び閉じていく。

体力はもう残ってはいない。

悔いはない。寧ろこんな光景を見れた事は、短い間だったが、私が生まれて生きていた中で、素晴らしいと感動出来たのだ。

そんな光景を見ながら死ねるなんて、私は運がいい。

 

願わくば、今度生まれる時は真っ当な生活を送りたい。

ご飯を食べて、動き回って、いっぱい寝て、いっぱい話したい………。

 

そんな想いをのせながら、私は意識を深く手放した。

 

 

 

 

 

そこに、光がある事も知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーッ!!!!

 

飛び出す瞬間、余波に耐えきれたかった地面に靴裏の形がぽっかりと空いた。

狙いは必中。穿つは2匹の敵。

カレンは自身の持つ刀を握り直し、カラマネロの懐目掛けて刀を振り上げる。

1歩ズレ、その刃を紙一重で躱したカラマネロは、カレン目掛けてムチのようなしなやかな腕を、胴目掛けてカウンターを仕掛けた。

が、カレンは右足を上げて右から来る腕を防ぎ、左から来た腕を跳躍で躱す。

 

ポケモンにはパラメーターで6個の能力が全て数字化されて表示される。しかしそれはゲームの中であって、実際はパラメーターなどは無く、どれほど強いかなんて、戦って見ないと分からないものだ。

そして何より、擬人化ポケモンというのは、ポケモンという生態の枠から飛び抜けており、擬人化でないポケモンの倍以上の能力を持っているとか何とか。

実際ジャンプすれば軽々十数メートルの木を越す事も出来るし、技の威力は計り知れない。

 

しかし、幾ら能力が飛び抜けているって言っても、それでは意味がない。実際問題、今のカレンの攻撃はダメージを与えられているものの、躱されている攻撃もある。

能力が全てでは無いし、当たらなければそれは普通の攻撃と同じだ。

経験の差というものもあれば、コンビネーションと言った筋もある。

単に能力だけを過信しているだけではポケモンバトルでは勝ってはいけないだろう。

 

「カラマネロッ、『つじぎり』!!」

 

「カレンッ、『りゅうのつるぎ』!!」

 

再びカラマネロとカレンが交差する。

斜め右から刃を入れ込み、腰の回転と背筋、腹筋に力を入れバク宙。バク宙の最中、カラマネロの『つじぎり』を全て弾き、更に着地と同時に横から一太刀カラマネロに叩き込む。

 

「ーーーッ!?」

 

急所に当たった攻撃は、カラマネロを怯ませるには十分だった。

防御が間に合わなかったカラマネロは、後ろに倒れ込む様に地面から足が浮いた。

更に追い打ちをかけるように、カレンはカラマネロに飛びかかる。

 

「クロバットッ、『エアスラッシュ』!!」

 

カラマネロとカレンの丁度上に出現したクロバットから、鋭い4枚の衝撃波が放たれた。

衝撃波は何処に当たったのか、白い爆風を起こし、カレンとカラマネロを包み込む。

 

爆発音と共に広がる煙は、クロバットまでは届かないが辺り一帯を覆い尽くす。

クロバットはそんな中でも、カレンとカラマネロの姿を捉えていた。超音波を放ち、暗闇の中で自在に飛ぶことの出来るコウモリ特有の能力。不意打ちなど、クロバットには通用しない。

しかしそれは、音波で最低限感知できる事だけであって、反射速度が早くなる訳では無い。

即ちそれは、反射速度よりも早くクロバットに近付けられれば、クロバットは逃げる事が出来ない。

 

「ーーーッ!?」

 

クロバットはハッとする。

カレンの位置が瞬間的スピードで自身に向かっている事に。

空中というひこうタイプのホームグラウンドでは、ひこうタイプが圧倒的有利。しかし、攻撃が当たれば有利もクソもない。

煙の中から飛び出す影。

無論、刀を構えたカレンである。

煙を断ち切り、横構えに刀を握ったカレンは、一瞬にしてクロバットの目の前に現れる。

 

「ーーーッ!?」

 

「ーーー遅い」

 

すれ違いざまに一閃。

ひこうタイプの領分である空中でも、狙いは必中である一閃を受けては墜ちるしか無かった。

斬られたクロバットは、抵抗する力も無く静かに地面に落ちた。

カレンもその後に地面に足を下ろす。

 

「………嘘だろ!?なんの技無く一撃で終わらせやがった……!!」

 

「畜生ッ!!これが人型と元種の格差かよ……」

 

クロバットは倒れたものの、カラマネロは未だ健在である。

2対1の不利な状況下でも、一撃必中を見せ、見事に一体撃破。男達は苦虫を噛み潰したようにギリギリと歯を食いしばる。

 

「今頃で遅いけど、降参するなら今のうちよ。子供だと思って舐めてかかった自分達を恨む事ね」

 

全く持って今更である。

しかし、シロナの言葉は更に男達を炙る言葉のようにも捉えることが出来る。実際、男達は眉間に皺を寄せ、青筋をぴくぴくさせていた。

 

「調子乗りやがって……。負けて泣いても赦してやんねぇからな!!」

 

クロバットのトレーナーの男は、クロバットをモンスターボールに戻した。そして、新たにモンスターボールを取り出し、宙に投げ捨てる。

モンスターボールが開き、ポリゴンと同時に現れたのは、カロス地方に生息する『ホルード』であった。

 

「ちょっと!!使用ポケモンは一体ずつじゃなかったの!?」

 

「ハッ、誰もそんな事言ってねぇんだよ!!大人を怒らせた事、後悔させてやらァ!!」

 

大人(笑)は腕を組んでしたり顔でシロナを睨みつける。

シロナは小声で『大人(笑)、だっさ』と口ずさんでいた。

俺はシロナをこんな下品な子に育てた覚えは無い。

 

「カラマネロ、『ばかぢから』!!」

 

カレンの後ろから現れたカラマネロ。

腕をフルスイングで振り、草を刈るように横から腕が迫る。

カレンはそれをブリッジで躱し、足でカラマネロの顎を蹴り上げ、宙に浮いたカラマネロの腕を掴む。

 

「ーーーはぁああっ!!」

 

そのまま担ぎ、カラマネロを背負い投げ。

地面に叩きつけるのではなく、逆にホルードに投げ渡した。威力も付けて。

 

「受け止めて投げ返せ!!」

 

ホルードの自慢の耳も使い、難なく受け止めた後、すぐに振りかぶってカラマネロを投げた。若干カラマネロは涙目である。

そんな(カラマネロ)を、カレンは受け止める事は出来ないため、飛んでくる(カラマネロ)を踏みつけ、ホルード目掛けて飛び上がった。

 

「力比べだ!!『きあいパンチ』!!」

 

「カレンッ、『りゅうのこて』!!」

 

背中の鞘に刀を収め、青紫色に輝く両拳を握り、迫るボルドーの拳と打ち付けあった。

ホルードの一撃は重い。流石穴掘り名人であり、ワンリキーファミリーに次ぐ力持ちである。

ぶつかり合った拳を離し、地面に着地したと同時に転ばす為に膝の関節に足を引っ掛ける。が、それを悟ったのか、ホルードは狙われた足を上げ、そのままかかと落としを繰り出してきた。

 

「ーーーチッ」

 

カレンから思わず舌打ちが聞こえる。上手い具合にホルードはカレンのペースに敢えて乗り、機会を伺っているようにも見える。

カレンはかかと落としを躱した後、すぐさま立ち上がって距離をとる。

 

巨体とは思えない身のこなしに苦虫を噛み潰したような顔をするカレン。だが、その場で終わるカレンではない。

距離をとった後、柄を握り直し、ぐっと体重を前に乗せて低い体勢のまま飛び出した。

 

「天まで届けっ、『のぼりりゅう』!!」

 

ジャンプして拳を握り、勢い良く地面を殴りつける。拳を中心に地盤が崩れ、巨大なクレーターの出来上がり。すると、クレーターから次第に土の柱が出来始め、何時しか龍の姿に変わっていく。

5体の龍となった柱は、天を昇るように上へ上へ進み、その龍の一つである柱の頭に刀を刺して仁王立ちするカレン。黒い振袖のコートをはためかせ、右手を前に掲げた。それと同時にカレンが乗る龍を除く、4体の龍がホルードに襲いかかる。

それぞれ違う動きをした龍は、四方向から押し寄せて逃げる隙間を与えない。

 

「『あなをほる』で地面に逃げろ!!」

 

すかさず指示を出し、ホルードはすぐさま耳をドリルのようにして穴を掘っていく。

しかしおいそれと逃がすカレンではない。

一体の龍がホルードの穴に突進していき、他の三体の龍も地面にぶつかっていく。ぶつかっていくとは言葉通りでなく、障子破りのような指を障子に突き刺していくような感じで、龍は地面へと潜っていく。

まるで水面を泳ぐかのように龍は地面を這い、無造作に動いている。

 

「ーーーつっかまえた!!」

 

一体の龍がホルードを鋭い牙で挟み込んで地面から放り投げた。

飛び出したホルードは地面に足をつけることが出来ず、一気に空に飛ばされる。

 

「トドメくらええええええ!!!」

 

シロナの叫びと同時に、カレンの乗る龍含む5体の龍がホルードに狙いを定めて昇っていく。

身体をジグザグに揺らし、天を昇る龍を現したこの姿は、正しく昇り龍。可憐で美しく空を昇る龍は、まるで本物かのよう。

 

空中での動きは地面とは違って動きが制限され、5体の無造作に動く龍を避ける事など至難の業である。

しかし、ホルードは空中で体勢を整えると、躱して上手く耳で龍のヒゲを掴み、龍の上に着地した。

 

「行けホルード!!『アームハンマー』ッ!!」

 

耳に力が篭もり拳を握る。

着地後、低い体勢で突っ走る。迫り来る龍を易々と躱し、カレンの乗る龍に足を向けていた。

迫る龍を殴っては吹っ飛ばし、龍を土に変えていく。ボロボロになった龍は、土片をばら撒き崩れていく。

 

「喰らいやがれぇ!!」

 

「『げきりん』!!」

 

ーーー『げきりん』発動。

 

ドクンと心臓が疼く。

紅能に呑まれる身体が、奥から湧き立つように膨れ上がり、強く強くと燃え上がっていく。

変わり始めたのは髪だった。透き通った青紫色の髪は紅に染まり、瞳も紅く染まっていく。

これがドラゴンタイプ最強の技、『げきりん』。

理性を吹っ飛ばして唯ひたすらに攻撃を繰り返す大技。

 

カレンの乗る龍が動いた。

『げきりん』発動時は、攻撃力素早さ共にパワーアップし、その威力は元の数倍。しかし、一定時間が過ぎると『こんらん』状態に陥り、自分を攻撃してしまう。

喰らえば一撃、外れれば自縛。諸刃の剣である技を使う場は本当に終盤のみである。

シロナも、それを分かってカレンに指示をしたのだろう。

見ていて分かるが、シロナもカレンも成長している。それこそ、生き生きしている。

多分だが、このバトルはシロナとカレンの勝利だ。

それが今のシロナとカレンは気付いてはいないだろうが、それはこのバトルに集中しているからこそだ。

 

近づくカレンとホルード。

力の差を分かっているのか、ホルードの表情には冷や汗が見られる。

しかしそこで止まれるわけはない。龍の上を走るホルードが止まれば、一瞬で振り落とされる。そうなれば、もうホルードの負けは決定しているも同然だ。

 

耳の拳を握り、思い切りジャンプ。振りかぶってハンマーになった拳を振り下ろす。

カレンも、鞘に戻した刀の柄を掴み、そのまま飛び上がる。

そして、すれ違う瞬間。

振り下ろされた拳をカレンは抜刀した刀で防ぎ、滑らせるように拳をいなす。自然と流される攻撃が、ホルードの懐へとカレンを誘う。

そして顎を蹴り上げ、怯ませたところで追い打ちをかける。

速く、鋭く、そして重く。

縦横無尽にぶった斬り、トドメの一撃として土手っ腹に拳を叩き入れた。

力の乗った拳+重力によって、ホルードは勢い良く落下していく。

時間はかからず、落下して1秒足らずで地面に衝突した。

砂煙が立ち上り、クレーターを新たに作ってホルードは地面にめり込んでいた。

 

「言わずもがな、シロナの勝利だな」

 

ズーンと響く音と共に、俺の声が響いていく。

カレンの『げきりん』状態はモンスターボールに戻すと解除される為、シロナはホルードの確認が出来次第カレンをモンスターボールに戻した。

 

「お疲れ様だな」

 

「……どう?私達も成長してるでしょ?」

 

シロナは自然と笑を零し、それに釣られて俺も顔が綻んでいく。

 

「ああ。シロナ達も強くなったな。カレンとのコンビネーションも凄かったよ」

 

「もう、隣に立てるぐらい強くなった?」

 

「……それは、どうだろうな。ホントに強くなっだけど、俺達も成長してない訳じゃない。いきなり追いついたってのはまだだろうな」

 

「でも、また1歩クロメに届いた。今はそれで十分」

 

シロナが身体を預けてきた。

見て分かるが、シロナは緊張していただろう。いくら俺に成長した姿を見せるのなんの言っても、不安もあっただろうし、心配も心のどこかにあったんだろう。

だけど、ここまで成長してくれていた。

見るからに傷ついていた少女はもういない。今ここにいるのは、成長し始めた前に進む少女だけだ。

俺も、もっとシロナが安心出来るようにしなくてはならないな。

 

「……ふざけやがって」

 

不意に、立ち尽くしていた男達が睨みながら零した。

それは諦められていない、屈辱と憎しみ、尚且つズタズタにされたプライドが許さないとでも言っているかのようだった。

 

「もう勝負はついたろ。大人しく引き下がってくれ」

 

「馬鹿なこと言ってんじゃねぇぞガキが!!てめぇらなんて、拳一つで十分だ!!」

 

負け犬の遠吠えとはこの事だ。

つかつかと二人の男が拳をゴキゴキ鳴らして歩いてくる。

ここでアリアぐらいに殴らせるのもいいかもしれないが、まだ相手は手を出していないため、殴って来ないと正当防衛が成り立たない。もし手を出したら、それこそ相手が漬け込んでくる。それはシロナも理解したようで、俺の胸に隠れるように身を寄せてきた。

 

「ガキが。大人に刃向かった事、後悔させてやらァ!!」

 

咄嗟にシロナを守る為に抱き締めた。

振りかぶった拳は止まることなく振り下ろされ、俺の顔面にーーー。

 

「辞めなさい!!」

 

当たること無く、逆に男達が吹き飛ばされた。

何事かと思い、声が上がった方を見る。

頭に大きなスピーカーのようなものを付けた八重歯が口から飛び出している羽の生やした少女と、黒い髪に首元に爪やらなんやらと付けたネックレスを下げ、ゲームで見たことあるような髪型をしている女性がいた。

 

「ああっ、あんたは!?」

 

「『竜使い』の、ドラセナ!?」

 

おおっ。道理で見た事ある髪型だ。

という事は隣にいるのは『オンバーン』だな。擬人化もなかなかカッコイイじゃないか。

 

「……貴方達。子供に暴力を振るうとは何事ですか!?今の勝負が気に食わないのなら、私がお相手致します」

 

「い、いや。俺達はもう帰ろうと……」

 

「では早々に立ち去りなさい。そして金輪際、子供に集るような事はないように」

 

「はっ、はいぃ!!」

 

威勢のよかった男達は、掌を返したように逃げ去っていく。

ざまあ無い。

さっきまで怖い顔をしていたドラセナは、男達がいなくなると顔を緩め、ゲームでお馴染みの微笑みになった。

 

「大丈夫でしたか?全く、子供に暴力を振るうなんて許せませんね」

 

「助けて頂き、ありがとうございます」

 

「いえいえ、当然の事をした迄です。それよりも、見たところここら辺の子では無いようですが、どちらから?」

 

「俺達はシンオウ地方から。ある目的の為にカロス地方に来ました」

 

「まぁ、シンオウ地方?私も、シンオウ出身なの。カンナギタウンって分かるかしら?」

 

「マジですか!?カンナギタウンって俺達の住んでる隣の街ですよ」

 

「あらあら偶然ね。……改めて、私はドラセナ。訳あってカロス地方で修行の旅をしています」

 

「俺はクロメ。で、こっちが…、…シロナ、どうした?」

 

さっきから何も話さないシロナ。

違和感を覚えて、俺はシロナの顔を覗き込んで見る。

そして俺は、後になって後悔してしまった。あんな顔をさせたくないと、誓った筈なのに。今のシロナは、……出会った時と同じ顔をしていた。

 

「……うそ。なんで、なんで……?なんでこんな所に……」

 

突然震えだしたシロナ。身体が冷たくなっている。

気温のせいではない。明らかに何が起きている。

 

「…………嘘だと言ってよ、ここまで来たのに……、また……、またなの………?」

 

「マジどうしたんだよ。様子おかしいって」

 

「いや……、いや。もう戻りたくない………。暗いとこは嫌、寒いとこはいや、痛いのはいや……」

 

「シロナ!!おい!!ホントどうしたんだよ!!」

 

マジ危ない状況だ。

いきなり震えだしたかと思うと、俺にすがるように怯え始めた。

ドラセナも、何が起こっているのか把握出来ていない。

 

「シロナ!!おい、シロナ!!」

 

「どうして……?どうして、どうしてよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………どうして、ここにいるの?『お母さん』」

 

 

 

物語は、進展すること無く、更にドブ沼へと落ちていった。




次はいつ出来るか分かんないけど、頑張ってはやめにだすでぇ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お説教のお時間です

作者「オラに時間と国語力を分けてくれーー!!!」

※尚、誰もくれなかった模様。


前世において、ゲームをしながら何食わぬ顔で四天王とやらを黒いカエルで無双していた時、その四天王の中に彼女はいた。

一見、とても包容力のある優しい女性だと思わせる彼女。しかし、何でかしゃん2番目に倒すと怒られる。

2番目って言うのは、弱いと言う意味を指すらしいので、弱いと思われている事に怒ったようす。

彼女は、ドラゴンタイプの使いであった。

そりゃあもう見た目で分かるほど。首元、手首、耳、足、腰等など、至る所に龍の爪だの何だの付けている。

出身もシンオウ地方と来た。神話が大好きな事も分かったし、伝説のポケモンに憧れてドラゴンタイプの使いになったようだ。

 

俺は彼女を初めて見た時、ふと思った。

 

ーーーシロナ様と、なんか関係あるんじゃね?

 

シロナ様もシンオウ地方出身。しかも髪型も同じで、何より神話が大好きな事と、相棒がドラゴンタイプだという事だ。

これは絶対何かあるぞと、何か裏事情なんかを隠して想像させている運営に聞きたいが聞けないため、俺は転生されるまでずっと思っていた。

そして転生され、何やかんやあって今に当たるが、今の今までそんな疑問さえ忘れていた。

いやただ単に忘れた訳じゃないのよ?

実際問題、この世界が印象深かったから、次第に薄れてきちゃったの。めちゃくちゃ悪気とかないので悪しからず。

 

で、思うに、俺はこの世界が誰かの想像の世界だと思い始めた。

そりゃあ運営が暴露もしてないストーリーがあるんですよ?ダメナさんだの何だのと、可愛くネーミングしてるほど結構重視されてるあのシロナ様を運営があんな境遇にさせるとおおもいで?

いや運営だろうがなんだろうがシロナ様をあんな目に合わせる想像をした奴には俺の鍛え上げられた二の腕ラリアット+エルボードロップ&首折をコンボで繰り返して息の根を止めるんだけど。

それで、この世界を想像している誰かが、きっとこの世界にいるはずだ。まず俺じゃない。俺はI LOVE シロナ様だから絶対ありえないシロナ自体も、そんな境遇を喜んで受けるほどマゾでは無い。

可能性として、ダイパ時代にシロナ様に勝てなかった奴が恨みを持って、こんな世界を想像して俺と同じように転生したかもしれない。

それとも、本当に運営の考えたシナリオなのかもしれない。

 

深まる謎。次第に現れていく世界の本質。

このままだと、本当にみんなの知ってるポケモンの世界じゃ無くなるかもしれない。

 

だが、今はこっち優先だ。

俺に抱きつきながら小鹿のように震えているょぅι゛ょシロナ様と、ドラセナさんの問題だ。

メガシンカ獲得はいつになるのやら………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………なんでここにいるの?…………お母さん?」

 

ーーー世界が止まったかと思った。

そんなびっくり発言をしたシロナを横目に、あんぐりと驚く俺とドラセナさん。

 

「……シロナ、何言って……っ」

 

しかし、冗談かと思いきや、その表情はとてもじゃないがジョークを言っている顔ではなかった。

その表情はまさに絶望。恐怖し怯えを超えた何か。

ガクガクと震え、今にも零れ落ちていきそうなシロナの身体を、俺はギュッと抱きしめた。

 

「………まさか、貴女………シロナちゃん?」

 

ドラセナさんも思い出したかの、また恐る恐ると言った感じで口にした。

想像以上に、シロナはビクビクとしている。

静寂のさなか、俺は理解した。

きっとドラセナさんはシロナとの再開に何も言えないのだと。

無理もない。遠いカロス地方で、いきなり知り合いにあったのだ。しかも、ずっと昔の。戸惑うのも分かる気がする。

しかし、それはあまりにも馬鹿な発想だった。

思い出せ、シロナの境遇を。どんな目にあったのかを。

 

 

「………貴方、一体どこに行っていたの?」

 

自分の知るシロナと理解したドラセナさんは、額に青筋を立てながらそうシロナに問いた。

シロナは怯えるの一点張り。顔が真っ青になり始めている。

忘れていた。シロナは、虐待、拷問、暴力を与えられていた事に。

 

「………貴方が失踪してから、早6年。その間に、私達夫婦がどれだけ辛い思いをしたか分かってる?」

 

辛い思い。何をほざいているのか。

それはシロナの方も同じだろう。

これだけ恐怖していると言う事は、1桁前半であるにもかかわらず、肉体的精神的に傷をつけられたに違いない。

 

「今となっては、もうどうでもいい事よ。……でも、貴方とは二度と会いたくなかったわ……、シロナちゃん」

 

「………ご、ご………ごめ……、ごめん………な………、さい」

 

怯え方が異常だ。冷や汗も尋常じゃない。

これはマジでやばい。

このままだと、シロナが精神的に病んでしまう。

 

「ストップだ、ドラセナさん!!」

 

何か言いたげなドラセナさんは、俺の注意に素直に従う。

これ以上何をシロナに言うつもりなんだ。

 

「……悪いけど、これ以上は何も言わないでくれ。それ以上言うようなら、俺はあんたを力ずくで黙らせる」

 

ドラセナさんはジッと俺の方を見ている。

しかし、その目は怒りの色を見せていない。まるで見定めているかのような目をしている。

暫く経って、ドラセナさんはこくりと頷くと、俺はカレンをボールから出した。

 

「…………何故私を……っ、シロナ!!」

 

シロナの状況を見たカレンは、ぎゅっとシロナの身体を抱きしめる。

そして、ギロッと俺を睨んだが、正面にいたドラセナさんの存在に目を見開いた。

 

「…………き、貴様っ。何故ここにいる!!もうシロナは縁が切れたはずだろう!!」

 

縁とは、きっとドラセナさん達との関係の事だろう。

カレンの今の表情は、あの時の表情と変わらない。何がなんでもシロナを守りたいと言う意志が強く伝わってくる。

 

「………あの時のフカマルかしら?まだこの娘についていたのね。その依存性、早く直したらどうなのかしら?」

 

「依存っ!?依存だと!?私は自らの意思でシロナと共にしているのだ!!それを貴様は依存と!?巫山戯るのも大概にしろ!!」

 

威嚇のように声を上げるカレン。しかし、その威嚇にドラセナさんは動じない。きっと、今のカレンのような獰猛的なポケモン達と幾多もぶつかったからだろう。ドラゴンタイプというのは、どうも手のかかるポケモンが多いらしい。

 

「ドラセナさん。あんた、それでも人間か?まるでシロナをゴミのように扱ってるんだが……」

 

「……………あら、私は本心を言っているだけ。それに表も裏も何も無い。唯あるのは、その娘が私達にとって害でしか無かったという事よ」

 

少しの間を開けたドラセナさんは、それでも淡々と話を続ける。

しかし、俺は少し違和感を感じた。

何故、ドラセナさんは間を置いたのか。今の今までシロナを蔑んでいたのに、なぜ即答しなかったのだろうか。

 

「………兎に角、もうその娘を近付かせないで。見てるこっちが不快になるわ」

 

「言われるまでもない。貴様ら一族にシロナを金輪際近づけてやるものか。今度こそ、近付いてきたのなら、私が血祭りに挙げてやるっ」

 

「あら、それは楽しみね。返り討ちにしてあげなさいと伝えておくわ」

 

「おいクロメ、いくぞ。このままここにいる理由はない」

 

シロナを背負い、ミアレシティの道を進んでいくカレン。俺が立ち止まっている事に気が付き、声をかけてきた。

 

「………すまんカレン。一つだけこの人に聞きたいことがあるんだ。先に言っててくれ」

 

「そいつに聞くことなどない!!早くシロナを……」

 

「少しで終わるから、頼む」

 

「…………分かった。但し、早く追いついてくれ。シロナの心を治すには、お前しか出来ない」

 

「………分かった」

 

そう言うと、カレンは走り去っていった。この道は一本道だから、そのままミアレシティに着く。しかし、俺はドラセナさんにどうしても聞かなければならないことがあった。

 

「………なぁドラセナさん。あんた、何を隠してる?」

 

「………何、とは?一体何のことーーー」

 

「ーーー恍けるな。あんた、シロナの事あれだけ言ってる割には、俺がゴミって言った事に対して、ちょっと間があっただろう」

 

「………それが何か?」

 

「見え見えなんだよ。あんたの()は」

 

「…………嘘?一体何のことかしら」

 

知らないの一点張り。

しかし、俺は食い下がらない。シロナの為だ。ここで聞かなくちゃ、俺がシロナを理解する事は出来ない。

 

「そろそろホントの事言ってもいいんだぜ?カレンとシロナは先に行かせた。大方、シロナにだけは聞かれたくないようだったから先に行かせたが、俺になら話せるだろ?」

 

「本当に何をーーー」

 

「俺はシロナの仲間であり、6年前から俺達の家族だ。その家族が怯えて、悲しんでいるのを前に、ジッとなんてしてられないんでね」

 

「…………」

 

エゴかも知れないが、シロナが大好きで贔屓しているからかもしれないが、俺は家族のピンチは黙っていられない。

それは前世でも現世でも変わらない。

問題を一つでも解決させたい俺の我儘ではあるが、これは絶対聞かなくてはならない話なのかもしれない。

 

「………………そこまで、あの娘を思ってくれていたのね」

 

いきなりシュンとなったドラセナさんは、さっきのが嘘みたいに、朗らかになった。

 

「………………まずは謝罪を。あなたの前で、シロナちゃんの前で、罵倒するようなことを言って申し訳ありませんでした。でも、これはあの娘にとって、今後私達の家系との断絶を図るには、これしかないのです……」

 

「………断絶?それはどういう事ですか?」

 

「簡単ですよ。あの娘を、私達の家系から引き剥がすための、ね」

 

「引き剥がす?確かシロナの両親は亡くなったと聞きましたが……」

 

「一人になったシロナを引き取ったのは私達夫婦です。まだ幼い。2歳児の少女を、ただ一人には出来ません。あの娘もそうなのですけど、私達はとある龍の郷出身で、シロナの両親は私達と従兄弟同士でした。しかし郷の人々は、元々両親を毛嫌いしていました。郷の男と、外から来たよそ者の女。その二人が恋に落ち、新しい命を産み落とした。新しい命の芽生えと思えば聞こえがいいのですが、郷ではその子供が悪魔のような存在になっています。その子供が影響で、郷にどんな変化が起きるか分からなかったからです」

 

「でもそれは、それはとても些細なことじゃないですか」

 

たかが子供一人で郷の運命が変わるとか何処のあれだよ。酷いにも程がある。

 

「郷の村長は代々、予言者として生涯生きていきます。その村長がシロナちゃんを占った時、こう出ました。『黄金色の髪をなびかせた少女、神聖な頂にて時間と空間をねじ曲げるであろう。そのそばに居る黒い髪の少年、少女との出会いにより、世界に終焉を呼ぶであろう』」

 

黄金色の髪をって、間違いなくシロナじゃん。じゃあ黒髪の少年は?

………まさか、俺?

 

「これが善なのか悪なのか判断は難しいものでした。しかし、世界の終焉と知った郷の人々は、シロナが害ある娘だと知ったがいや、すぐに殺害しようと動き出しました。両親は、シロナを庇って二人とも亡くなったそうです……。しかし、全員が子供を殺すなんて賛同する訳がありません。反対した人もいます。その反対派に私達夫婦がいました。結果的に、子供がいなかった私達の家に引き取られましたが、最悪はまだ続きました。一年経った頃、郷の強制脱退願いを盾に、シロナを渡せと言ってくる輩が現れ始めました。勿論そんな事で私は屈しませんでしたが、そんな時、夫が殺害されました。夜、暗がりを奇襲され、喉元を抉られていたとか何とか。………これ、見えるでしょ?拷問された時の傷よ。シロナを渡すというまで拷問は続いたわ」

 

その服の下の傷、シロナと同じくらいの傷であった。腕だけのはずなのに、傷の量は半端でなかった。

 

「……痛々しいでしょ?この傷は一生消えないそうよ。でも私は、この傷を見る度いつも思うわ。何故あの時耐えなかったのかって……。そうすれば、あの娘に危険な思いをさせる事は無かったはずだって。今更後悔しても遅いわ。もう私達が恐怖の対象だと記憶させてしまったから」

 

「………じゃあ、ドラセナさんはわざとあんな真似を?」

 

「醜いでしょ?これじゃああの娘の親にも顔向け出来ない。娘をよろしくと頼まれた筈なのに………、私は、何も出来なかった……………」

 

ドラセナさんも頑張ったのだろう。想像出来ない拷問に我慢し、折れそうな心を立て直し、それでも続く拷問に歯を食いしばって耐えたのだろう。女性だとか、多分関係なく卑劣な事をされたかもしれないが、ドラセナさんはそれでも強く意思を持ち続けた。

俺はそんな彼女に賞賛したい。だがーーー。

 

「ーーー悔やむのも、後悔するのも、止めにしましょう」

 

涙を零すドラセナさんだが、俺の言葉に顔を上げる。

 

「俺はドラセナさんがどれだけ頑張ったのかは知らない。知るはずも無い。だって知りたくないんですから。ドラセナさんがシロナの事を大切に思っていた事は分かります。自分可愛さに白状してしまった事もしょうがないと思う。でも、しょうがないで済まないのがシロナの状態だ。俺はねぇ、怒ってるんですよ?後悔だのなんだの垂れてるくせに、そんな色シロナに見せないで罵倒する。正直言いますよ。俺はあんたが憎ったらしくてたまらない!!後悔したならそれ以上シロナを罵倒するな!!後悔したならそれらしく心を入れ替えろ!!シロナの親に顔向け出来ない?なら顔向け出来るようにすればいい!!それが何も出来なかったシロナへの償いってもんだろ!?」

 

「……………っ、じゃあどうすればいいのよ!?今更謝ってももうシロナちゃんが戻ることは無いの!!私だって罪を償いたい!!でも何も出来ないんじゃ仕方ないじゃない!!」

 

「仕方ないのに罵倒するのは可笑しい!!結局のところ、あんたは口だけって事なんだよ!!何も出来ない?罪を償うはずの気持ちがそんな程度でいいと思ってるのか!?」

 

「ーーー………っ、それは………」

 

後ずさるようにドラセナさんは身を引いた。

久しぶりに怒ったと思う。

前世でも、ヤンキー相手に片手で6人ぶっ飛ばした時以来だ。

 

「ドラセナさん。例え後悔するような過ちでも、それを糧に後悔しないような生き方をする人もいる。後悔したくないのなら、前に進むしかないんです。ドラセナさんは、そんな新しい道の始まりで足踏みしてるだけだ。何も変わらないし何も始まらない」

 

「…………っ、でも、……本当にどうしたらいいのか、分からなくって……」

 

「それを考えるのも、決めるのも自分自身ですよドラセナさん。もう出来ることがないのなら、自分の内面を変えればいい。例えば………ほら、ドラセナさんは、トレーナーだ。もうシロナみたいな境遇の子が居なくなるように強くなったり、そんな子供達を育てる人になったりさ。ジムリーダーとか、四天王とかに」

 

「………………」

 

無言のまま、ドラセナさんは、ずっと俺を見ている。

しかし、それは一瞬の事で、すぐに口を開いた。

 

「…………ありがとう、少しだけ、自分の道が見えたような気がするわ。そして何より、シロナちゃんの事、ありがとう。子供に言われるのは釈然としないけど、貴方のアドバイス通り頑張ってみるわ」

 

俺はそのまま歩き出す。

何やかんやむしゃくしゃしたが、ドラセナさんも悪い人じゃない。

それはゲームをやっている人なら誰でも分かる。

あの優しい表情。母性を感じさせる雰囲気。

the motherって感じの人が悪い人の訳ない。

 

「ねぇ、貴方の名前はなんて言うの?」

 

俺は歩いたまま、振り向く。

俺の目に写ったのは、ゲームと変わらない表情のドラセナだった。

 

「クロメって言います。シロナちゃんの家族ですよ」

 

それを聞いて、ドラセナさんは微笑み、「ありがとう」と口ずさんでいた。

 

 

ドラセナさんに過去の事を聞いておいてなんだが、俺もドラセナさんも自分の我儘でしか無かった。

自分の事だけぺちゃくちゃ言っておいて、結局のところ誰も他人の事は考えていないただの暴言。

それでも俺は言いたかった。ドラセナさんに後悔を乗り越えて欲しいのだ。

それが俺に出来るストーリーの改変。

それが鬼と出るか蛇と出るか分からないが、是非輝かしい未来に伸びて欲しいものだ。

俺はそんな事を思いながらカレンたちの後をゆっくり追った。




なんか釈然としないドラセナさんお説教回。
ホントだったらアドバイスとかしないで自分で考えろ的な事にしようと思ったらいつの間にかこのアリサマー。
もっと考えろよクソ作者だね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

if ヤンデレシロナちゃん

これはifの話。
順番からして、正常ルートを最初に出すんでしょうが、ちょーとかかってるんで、これ以上の先延ばし投稿は難しいのでifから先に出させていただきます。

展開としては、トラウマを持ったシロナちゃんをクロメが励ますか励ませなかったかの選択で、励ませなかったのならと言う話。

簡単に書いたので、頭をフル回転させる必要は無いです。


「…………シロナ。本当にお前がそれを望むのか?」

 

「何を言ってるの?当たり前じゃない。だから、私はこうするのよ」

 

対峙するのはカレンとシロナ。

しかしシロナは様子がおかしい。明らかに何か違っている。手には赤く染まったナイフ。表情は全くの無表情。顔や髪にも赤が飛び散っており、ナイフからは真新しく血がぽたぽた垂れている。

 

「…………私が、選択を間違えなければ、こんな事には……」

 

「正しい選択をしても、間違った選択をしても、結局返ってくるのは私が皆を殺す事実だけ。安心してよカレン。今までのよしみで楽に殺してあげる」

 

「私は死ぬ事に抵抗はない。だが聞かせてくれ。シロナは私達を殺して何を望む?そんな事したらアイツだってーーー」

 

「ーーークロメの事も知らないのに、クロメの事を語るな」

 

ーーー瞬間。擬人化であるカレンの反応も掻い潜って、シロナの持つナイフが心臓を一突きした。

ビシャッと吹き出た鮮血は、更にシロナの髪や肌、服を赤く染めていく。

 

「……シ、ロナ」

 

「さようならカレン。私は、貴女と出会えて、良かったと思ってる。でもダメ、クロメと過ごすには、貴女達は必要ないの」

 

「…………あの時、アイツにシロナを任せていれば、こんな事にはならなかったな。………済まない、シロナ。私はお前の気持ちなど、考え……て、なかっ………た………」

 

シロナの肩にカレンがもたれかかった。

その身体は冷たく、それは死亡したと確信できる事。

シロナは、カレンの亡骸をゆっくり地面に寝転がらせ、若干千鳥足で森の中に歩き出した。

 

「…………待ってて、クロメ。すぐに行くからね」

 

月に照らされた狂気と血に染まった表情は狂人の笑を浮かべていた。無邪気だったシロナの面影を全て殺し、殺人鬼としてのシロナを誕生させた。

既にクロメのポケモン達は葬り去られ、残っているのはシロナだけ。

クロメの旅は中途半端に、最悪の展開で終わりを告げだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………んんん???

 

…………なんだこれ?

 

ふと目が覚めたら真っ暗だった件。

何言ってるか分かんないと思うが俺も何言ってんのか分かんない。

取り敢えず目隠しとかされてるのか?

 

ーーージャランッ。

 

………アレ?手が動かせねぇんだけど?

おっかしいなー?あ、アレ?足も動かねぇ。

なんか足につけられてるのか?ジャラジャラ落としてるから鎖でもついてんのかねぇ。

はっはははははっ、鎖がついてちゃ動けないよね。びっくりしたびっくりした。はっはははははっ………………。

 

 

 

んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん???????????

何その状況!?!?!?

 

おっかしいな。俺の記憶が正確なら、ドラセナさんと会話して別れたはずなんだけどなぁ?

なんでいきなり暗点からの縛りプレイ?誰得?

ていうか声も出せないんだけど!!

 

うわーーーぁぁあ!!!!アリアー!!サーヤー!!ミミー!!ミカンちゃんんん!!!シロナァああ!!!誰でもいいから助けてくれぇ!!!!

 

 

 

 

「ーーー呼んだ?」

 

 

 

この声はシロナ!!なんか捕まってるみたいなんだ!!助けてくれぇ!!

 

 

「…………どうして?」

 

 

え?どうしてって、こんな拘束いつまでもされていたいドMじゃないんだ俺は。頼むから助けてくれよぉ。

 

 

「…………でも、拘束してないと、他の女のところに行くんでしょ?」

 

 

………へっ?何の話?

別に俺は女好きでも無く、女のところに行きたいとか思ってないから。真面目ちゃんだよ?真面目ちゃん。

 

 

「…………でも、私以外の女を抱いたよね?」

 

 

えええっと、いや何と言うか………。

………まさか懺悔しないと解いてくれない感じ?

 

 

「懺悔するような事でもあるの?教えて。私はクロメの全てを知っておきたいの」

 

 

いや取り敢えず拘束をですね……。

 

 

「外さないよ?」

 

 

え?

 

 

「絶対に外さない」

 

 

え?ええ?

 

 

「私が一生、クロメのそばに居るから。他の女なんていらない。私だけを見ていて欲しいの。私の内面も外面も行動一つ一つを貴方の心に焼き付けて欲しいの」

 

 

…………ちょっと待って。今俺視界塞がれてるけど明らかに異常だってのは分かるよ。きっと目が血走ってる。まずは落ち着いていこう、ね?

 

 

「…………私はいつでも冷静だよ?今おかしいのはクロメの方だよ?クロメはいつもカッコよくて頼りになって私の恩人で大好きな人で大切な人で私の王子様で私の正義の味方なんだよ?クロメが私を守ってくれて助けてくれて大切にしてくれているんだよ。でもクロメは私の愛を受け止めてくれない。他の女のところに行っちゃう。そんなの嫌……、そんなの嫌だ。クロメはいつも私のそばにいなきゃ行けないんだよ?クロメは私以外と会話しちゃいけないんだよ?クロメは私と手を繋いで過ごしていかなきゃならないんだよ?クロメは私しか見ちゃいけないんだよ?クロメは私の手料理しか食べちゃダメなんだよ?クロメは私を愛していなきゃならないんだよ?だってそうじゃない。私達は相思相愛。赤い糸で結ばれた運命の相手なの。他なんていらない。私はクロメが、クロメは私がいればいいの。考えちゃダメ。全て私だけを考えて。起きた時もご飯を食べる時も歯を磨く時も私を抱きしめる時もキスする時もエッチする時も寝る時もいついかなる時全て私がだけを考えていて。私はクロメを愛してる。この世界に存在する何よりも愛して恋焦がれて情熱的に愛を欲してるの。火照る身体の疼きをいつもクロメで癒してた。でもやっぱり本物じゃないとダメ。指じゃ我慢できないの。私はクロメの愛をたっぷり注げる。どんなプレイだってクロメが望むなら雌犬になり座がる。足の指もしっかり舐めてあげる。だからクロメも私だけを愛して。本当は殺してでも一緒になりたいぐらいだけど、そうしちゃったらクロメの声が聞こえなくなっちゃうから嫌だ。あっ、そうだ。これから毎日クロメの血を飲めばいいんだ。クロメも私の血を飲めばこれでいつでも一心同体になるね。ふふふっ、素敵だなぁ。これから毎日クロメを感じられて嬉しいなぁ。ねぇクロメ、子供は何人欲しい?私はサッカーチームが2つ出来るぐらい欲しいなぁ。クロメとの子供なら物凄く可愛いと思うし、かっこよくなると思うんだ。毎日毎日家族でじゃれあってずっとここで過ごしていきたいね。だからね?周りは邪魔なんだよ。カレンたちには悪かったけど、私たちの邪魔をしないように片付けておいたよ。えっ?殺したかって?……………なんでそんな心配するの?クロメは別に関係ないじゃん。これからここで過ごしていくのに、そんなこと気にしたって時間の無駄だよ?えっ?俺はここで過ごすつもりはない?何言ってるの?クロメは私の事を愛してるんだから、何処で暮らそうが関係ないよ?むしろ私もここは少し嫌なんだ。誰かに邪魔されるのが嫌だ思ってこんな汚い所に住むことになるんだから、私の事、幻滅しちゃうよね?でも分かってクロメ、怒らないでクロメ。私は真剣に何処が良いのか考えたんだよ?必死になって探して、やっと誰にも見つからないところが見つかったんだ。殴ってもいい、蹴ってもいい、半殺しにしてもいい。でも、私はクロメの事を愛してるってことを知って欲しい。いついかなる時もクロメの事だけしか考えてない。どんな時でもクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメクロメ、全てクロメの事だけを考えてるんだよ?だから私を捨てないで、嫌いにならないで、幻滅しないで。もしクロメにそんな事思われたら私、生きていけなくなる……。えっ?俺はシロナを嫌ったりしないって?………クロメは本当に優しいね。だから私はクロメが大好きなの。その声もその顔もその仕草もその表情もその瞳もその髪もその手もその足もその指もその内臓もその骨もその唾液ですら私は大好き。だからクロメも私の全てが好きなんだよね?いいよ。クロメになら全て差し出せるよ?だからここで暮らそ?私が全てやるから。何もかもスベテ。ダカラ安心シテ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー私ト一緒ニナロウ」

 

 

 

 

俺の意識は目隠しが取られると同時に失った。

 

目の前にあったのは、美しかった黄金色の髪に赤が混じり、綺麗に整っていたシミ一つない顔や黒いコート状の上着や白い肌を赤く染め、目に光が無かったシロナの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………コレデ、ズット一緒ダヨ、アナタ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー世界が一つ、無条件で破壊されました。

 

ーーー見直し及び検討の後、新たな世界の制作を開始。

 

ーーー別ルートから『審判』の物語をスタートさせます。

 

ーーー創造神『アルス』は破壊を執行し、『審判』の誕生を急がせなさい。

 

 

 

 

 

 

 

「言われるまでもありません。全ては、我が主のために」

 

 

 

 

ーーー構成開始。シークエンスに入ります。

 

ーーー時空間軸の固定完了。時間の概念の定着を確認。

 

ーーー了解。これより、『審判』転生計画、第3垓3654京6136兆9820億2975万4972回目を行います。

 

ーーー願わくば、次のルートで出来る時を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こんなifルートぶち込まれても分かんないよね。
だからごめんなさい。
出来たら早く出すんで待ってください。

待っていてくれる人にはホント感謝感激です。
作者もマジで忙しいんですけど、何卒これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

俺のやるべき事

お話的に二つに分けました。
と言っても、後半部はまだ出来てません。
もしかしたら、これが今年最後の投稿になるかも。
皆様、残り少ないこの2017年。良いお年を(๑•̀ㅁ•́ฅ✧


この世界に来て何度も何度も悩んだ事。一番と言ったら、俺がこの世界で何をするのかという事だろう。

思えば、何もわからず転生され、後ろ盾も何にもなく、ただ正しいと思ったことを真っ当にやっていただけの10年間。

苦しむ事など無かった。絶望する事など無かった。あるのは、目の前にいるこの少女に向ける、同情の悲しみのみ。

気持ちが覚めている訳じゃない。ただ実感が湧いてこない。

ポケモンの世界だと知って、どれだけ俺は嬉しかった事か。念願のポケモンの世界に来れたことは、俺にとって最大の喜びだった。

 

だが、現実はそんなに甘くなかった。

表だけしか知らなかった俺は、裏の事を全く感じていなかった。

その結末が目の前の少女だ。

心が壊され、俺に抱き着いて子供のように甘えているシロナ。

何が平和だ。何がポケモンマスターになるだ。

表立った世界しか知らない餓鬼がそんなような言葉を吐いてるとともうと、無性に反吐が出てくる。イライラする。ムカムカする。殺したくなる。

何幸せそうに生活してるんだよ。俺の目の前に、そんな幸せでさえ送れなかった女の子がいるんだぞ!!

この時ほど、幸せな生活に囲まれた餓鬼共や、今まで怠惰な生活を送っていた俺に無性に腹が立った事は無い。

後悔の波が押し寄せる。何度も何度も心の中に押し寄せ、皮肉にも目の前にもしシロナを助けた時のイメージがずっと頭の中を過ぎっている。

 

ーーー裕福では無いながらも、幸せな家庭で過ごした俺。

ーーー裕福でも何でも無く、存在価値を捨てられたシロナ。

 

同じ歳でも、こうも境遇が違う子がいるんだと思うと、俺は自分を殺したくなる。ムシャクシャする。イライラする。吐き気がする。

 

俺に縋って甘えるシロナは、本当に子供のようだ。

10歳と考えたら、きっと子供なのかもしれない。

だが、まるで親に甘える乳児のようであるのなら、この違いは受け取れられるだろう。

親の温もりを忘れた哀れなシロナ。その姿を見るたび、俺は涙が溢れ出てくる。握り締める拳からも血が出る程に。

 

助けてくれよ。助けて上げてくれよ。

今の俺には薄っぺらい言葉掛けしか掛けてやれない。

他人任せだとは思ってる。でも、シロナが心底幸せになるには、俺ではどうしようも無いんだ。

神様。この世界の創造神。頼むからシロナを助けて上げてくれよ。少しでも幸せに続くようにさせて上げてくれよ。

見返りが欲しいなら俺が代わりになってやる。土下座だろうが命差し出すがなんだろうが俺はやってやる。

それでシロナが幸せになってくれるなら、俺は本望だから。

幸せの形を、シロナに与えて上げてくれよ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唖然とした。

それは目の前に映る光景が見出した俺の感情。

ドラセナさんと別れた後、ずっと真っ直ぐ進んだ所にカレン達がいたので合流したが、それは俺を唖然とさせる光景だった。

 

「…………おい、カレン。この娘(・・・)は誰だ?」

 

その問にカレンは答えてくれない。

女の子座りをしているシロナの隣で、ずっとシロナを見ているだけだ。

 

「おいっ、カレン!!この娘(・・・)はっ、この娘(・・・)は誰なんだ………!!」

 

「……………シロナだ。正真正銘、私のマスターである、シロナだ」

 

「………マジで言ってんのかよ。幾ら何でもっ。これはっ……、酷すぎだろ……」

 

目の前にいるシロナ。その姿はまるで幼児。

外見は10歳の姿。だが、やってる事はまるでお遊び。

精神が衰退し、幼児化している。

自分を守る為に、シロナは心を切り離し、完全に心の奥に自分を押しとどめてしまった。

残ったのは、あの時の恐怖の前兆である歳の精神。

痛々しい。実に痛々しい。嘆く暇も与えず、自分の心を手放して身を守った結末。

俺は、その姿に動揺しか感じられない。

 

「……シロナの、シロナの心はもう限界だ。多分、心を元に戻すには時間がかかる。私達には、どうしようもない……」

 

「………ふざけんじゃねぇっ。ふざけんじゃねぇよっ!!何なんだよ!?何なんだよこの現状は!!ただ旅をしてるだけなのにっ、何でこうなるんだよ!!」

 

怒りが頂点に達した。

我慢出来ず、側にあった木の幹を殴りつける。

木が軋み、殴った後にはくっきりと拳の跡が残っている。

 

「………意味わかんねぇよ。何で、何でこんな事になっていくんだよ………。俺達は、ただ……、ただ旅を楽しんでただけなのに………」

 

「……クロメ」

 

殺してやりたい。この手で殺してやりたい。マジで殺したい。

これ程までに怒った事はあるだろうか。

身体の奥から熱く熱い感情が爆発しそうな事はあるだろうか。

これが憎悪か。これが嫌悪か。これが憎しみか。

疼きが全く収まらねぇ。マジで沸騰してやがる。煮えたぎってやがる。

イラつきが収まらねぇ。

人の為にこれだけ人間は怒り狂えるのだと初めて知った。

生半可な怒りではなく、自分でも制御出来ない、血管がプッツンするようなぐらいに血液が煮えたぎっている。

冷ますことなんぞ、もう出来はしない。

 

 

「ーーークロメくん?」

 

 

が、俺の頭は一瞬で冷やされた。俺の手を誰かが握っている。

傷一つない綺麗な手をしている。それでいて、白くて細い指。

俺は、ゆっくり手の主の顔を覗いた。

そこに居たのはーーー。

 

 

「ーーーシロナ………」

 

 

俺の怒りの元である、俺の中で大切な家族のシロナであった。

 

「………シロナ、どうして俺をーーー」

 

「………ふぇっ、何でシロナの事呼び捨てにするの………?ちゃんとちゃん付けで呼んでよ!!」

 

「えっ?あっ、ごめん、シロナちゃん」

 

突然の事に呆気に取られたが、シロナちゃんの話の内容から見て、シロナが俺と家に帰ってから1年ぐらい経った時の心になっている。

詰まりは、今までで一番幸せな一時であると言うこと。

絶対に、そんな暗いところから助け出してやる。

 

「クロメくんクロメくん。一緒に遊ぼ!!」

 

「………カレン、どうしよう」

 

「取り敢えずは付き合って上げてくれ。もしかしたら、元に戻せるチャンスかもしれない」

 

カレンに助けを求めるが、華麗に避けられる。

だが、カレンの言った事も間違いではないかもしれない。

もしかしたら、シロナを元に戻せるチャンスが、これからやる遊びでやってくるかもしれない。

 

「………分かった。シロナちゃん、一緒に遊ぼう」

 

俺は気を引き締め、その答えに了承した。




来年もこの作品共々、何卒良しなに(๑•̀ㅁ•́ฅ✧


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヤンデルシロナちゃん

数日遅い、あけましておめでとうございます。
そしてそして、今日成人式を迎えた方。おめでとうございます。
作者もあと何年かで成人式を迎えますが、成人式って何するのか分かんない。
まぁ、そこまで難しく考える必要ないのかなと思います。

今回はヤンデルシロナちゃん。
ヤンデレのシロナちゃんって、天使だと思わない?


精神がょぅι゛ょ化したシロナを救い出す為、お遊びでシロナの心を開かせることになったわけなのだが、その場にいても何も遊べるものがないという事に気付いた。

これは盲点。この場で出来るとしたら、体を動かすことか砂遊び程度。

そんな事でシロナが心の底から喜ぶ可能性は低い為、もうちょい何かが欲しい所。

が、やはりまずは当人のやりたい事を聞くのが一番だという事に気づいたので、シロナに聞くことに。

 

「ーーーなぁシロナ」

 

「むっ。呼び捨て禁止!!」

 

……怒られた。

5年ぐらい前から呼び捨てにしてたからなんか素で呼び捨てで呼んじゃうね。

なんか頰っぺた膨らませてぷくーってしてるシロナちゃんマジ天使。

 

「………シロナちゃんは何がしたい?」

 

「えーっ、なんか恥ずかしい〜」

 

なんか体クネクネさせて来たぞこの娘。マジ可愛いんだけど!?

クネクネするに当たって黄金色の長い髪がゆさゆさ揺れてマジ天使のようしかも顔を少し赤く染めて照れてる所も素晴らしく男心をくすぐる!!こんな中身おっさんぐらいの精神持つ男にそんなお誘いしてたら即食べられちゃうぞ!!足食いだぞ!!YSPされるぞ!!

 

「………あー、恥ずかしがらずに言ってみなよ。大丈夫、シロナちゃんの望む事を大半は叶えてあげるよ」

 

「えっ、ホント!?」

 

「ホントのホント。俺は嘘つかないよ」

 

フッ、ここで出来る男心アピしとけば好感度アゲアゲアインシュタイン。攻略に1歩近づくぜ。

……あれ?なんか目的と合ってるようで違うような気が………。

 

「えーと、じゃあ新婚生活!!」

 

「他のはないかなー?そんな事よりももっと他のことした方が面白いよー?」

 

即ダストシュートである。

………新婚。新婚生活か………。

新婚生活とかなんぞ?シロナちゃんみたいなょぅι゛ょ年齢は結婚に憧れを持つとか聞いたことあるけど、堂々と新婚生活か。そうかそうか新婚生活かー。はっはははははは……………。

乾き笑いしか出ないな。せめて俺の気持ちもう少し考えてお嫁さん修行とかにしてよ。どうせ俺新婚生活とかしないんだから、一生独り身な男にそんな事言わないで!!

 

「えーっ、叶えてくれるんじゃなかったのー!!」

 

ブーブーと不貞腐れる天使ちゃんもといシロナちゃん。

グイグイ俺に近づいて来ないでくれ。そのロリコン殺しのような服で俺に寄ったら殺されちゃう!!

即死だよ即死!!さっきの新婚生活とかいう威力180の大技食らって弱点ヒットアンド効果抜群でHP僅かなのに、HP回復イベかと思ったら即死難易度のどうしてご登場。発狂フィーバーだよ!!

 

「それは流石に………。………因みに新婚生活とか何でそう言ったの?」

 

「そんなの、クロメくんと結婚したいからに決まってるじゃない」

 

……………良くわかるよ。なんかどっかで言ったような気がするけど、この流れは『私、大きくなったらパパと結婚するんだー』とか言ってるパパに甘々の娘さんだ。

今はいいよ?後々加齢臭だの何だので、『お父さんの洗濯物と一緒に洗わないで』とか冷たい目で見られるオチのように、期待させといて落とす流れだ。

前世での我が家系では二人の妹はそんな事無かった為、ホントにそんな話があるのかは知らんが、思春期の男女は繊細。

軽い性知識で勃○しちゃうお年頃なんだから、昔の事なんて『あぁ、そんな事もあったね』などと言って彼氏つくってヤリまくりなんだろ。

ハッ、リア充死すべし!!リア充を自慢するもの即死刑!!

…………思うに、リアルに充実なら別に彼氏彼女持ちじゃなくても、自分の人生に満足してるなら、それもリア充と呼べるのではないか?

まぁ、俺はこっちの世界で充実してるでいいんですけど?

 

と、そんなことはさておき、シロナちゃんの言葉にどうしても期待出来ないわたくしめ。

まぁ、結果を予想しちゃうと大体そんな感じだよねー。あははははは…………。

 

「ウン、アリガトネー。トッテモウレシイヨー」

 

とりま感謝ぐらいは返しておく。棒読み気味なのは考慮してもらいたい。ここでマジ本気で希望持ってると落とされるぞ。

 

「じゃあ約束ね。シロナとクロメくんが結婚出来るようになったら、絶対結婚しようね?」

 

「ウンウン。シヨウシヨウー」

 

ごめんよシロナちゃん!!俺はっ。俺はその言葉に期待出来ない!!未来見えるスコープとかあるなら喜んでするんだけど!!

どうしても、どうしても棒読みになってしまうんだァァ!!

 

「嬉しいなー。クロメくんとの結婚生活。きっと毎日楽しいんだろうなー」

 

「………そうだな。そうなった時は、みんな呼んで盛大にしよう」

 

あるかどうか分からない結婚式。呼ぶとしたら、まずは母さんだろ。その次にアキラ、校長先生や学校の先生。………俺学校の友達、シロナとアキラしかいねぇじゃん。ハッ、ボッチワロス。悲報 思えば友達二人だった件。スレ1つ立ったな。

というか、何で遊びの話がガチリアルな話になっていったんだろうか。どれ位で話が変わった「……クロメくん」のかってえ?

 

「ど、どうしたのシロナちゃん」

 

「………クロメくん。みんなって………誰?」

 

「…………えっ?あっ」

 

しまった。今のシロナはょぅι゛ょ化してたんだ。そりゃ知らないわな。

 

「…………そう言えばシロナちゃんは知らないんだったね、ごめん」

 

しかし、今のシロナちゃんってどれくらいの精神年齢に戻っているのだろうか。

俺しか知らないという事は、会った当初ぐらい。でも、シロナちゃんが本当に心を開いてくれるまでに1ヶ月ぐらいは経った。でもその1ヶ月間は母さんとも打ち解けている筈だ。

 

「シロナちゃんは俺の母さんを知ってるだろ?母さんにウェディングドレス選んでもらって着たらきっと凄いよ」

 

「…………その人は、ホントにクロメくんに必要………?」

 

「ーーーえっ?」

 

えっ?エッ?えっ?エッ?えっ?な、なんて言った?今しがたシロナちゃんっぽくない事を聞いたのだが。そんなシロナちゃんが言うはずないよねぇ〜。

 

「……………クロメくん。今の私、どお?」

 

「………ど、どおって聞かれても、可愛いよとしか言えないんだけど……」

 

「………ホントにクロメくんは、私の事可愛いと思ってるの?」

 

「あ、当たり前じゃないか。どれだけ俺の心の中で抱きしめた事か」

 

「………どれくらい抱きしめたの?」

 

「……数え切れないよ。可愛い姿を見せてくれれば抱きしめたくなる衝動に支配されそうになるんだ」

 

「……他にそんな事考えた人っている?」

 

「……いない……、かな。俺はシロナちゃんを助けた時からずっと可愛いと思ってた。あの時助けたのも、善意とかじゃない。シロナちゃんだったから助けたんだ」

 

「……もし、私が可愛くなくても助けたの?」

 

「それがシロナちゃんなら、俺は助けたよ」

 

…………さっきからめちゃくちゃ恥ずかしい事言ってるんだけど。

穴があったら入りたいよ(´;ω;`)。

 

「……じゃあ、クロメくん。抱き締めていいよ」

 

「……えっ?あ、うん。ありがとう……」

 

俺はギュッとシロナちゃんを抱きしめた。

胡座かいて座っているから、膝の上にシロナちゃんが乗ってる感じなんだが、めちゃくちゃいい匂いします。そして何よりやわっこいです(´;ω;`)。ロリコン殺しの服着て、更には柔らかいろりこんぼてぃを押し付けてくるなんて、反則じゃぁあ!!!

 

「……どう?私の身体。気持ち良い?」

 

「えーっと、なんと答えればいいのやら」

 

「正直に答えて」

 

「……気持ちいいです」

 

「ずっと抱きしめていたい?」

 

「……抱きしめていたいです」

 

「離したくない?」

 

「……離したくないです」

 

「シロナと結婚したい?」

 

「…け、結婚したいです」

 

「シロナと暮らしたい?」

 

「…暮らしたいです」

 

「シロナ以外いらない?」

 

「…いらないです」

 

…………ん?なんか今の返答違くないか?ヤバい。なんか寒気が。

恐る恐るシロナちゃんを見てみた。

そして、俺の目に写ったのはーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーえへへっ、嬉しイナー。クロメクン♡」

 

 

満面の笑みを浮かべながらも、目に光を灯していないシロナちゃんが俺を見つめていた。

 

ここからが俺の、二つに分かれた絶望と希望の分かれ道だった。

 

 




部活があり、作者もいよいよ大事な一年になります。
感想くれれば(ノシ 'ω')ノシ バンバン返しますけど、執筆の方はもしかしたら、1、2週間飛ぶかもしれない。
でも、シロナちゃんの為に(ノ゚ο゚)ノガンバルゾイッ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヤンデレるシロナちゃん♡

やったぞ!!時間があったぞ!!
雨に感謝!!大感謝セール!!赤セイバーもびっくりの大感謝祭で花びら交換祭りだ!!

ヤンデルシロナちゃん2話目。
あぁーっ、シロナちゃんhshs可愛いよクンカクンカしたいよ抱き締めたいよぺろぺろしたいよ結婚したいよぉおおおおおお!!!!!

速報 部活休みでテンション崩壊のお知らせ。


「ーーーフフッ、フフフフフッ」

 

ヤバい。どっかで選択ミスった。

いや何処で間違えたなんてのは分かりきってたし、何よりもその解釈は違う。

シロナちゃんは精神ょぅι゛ょ化した瞬間からこんな事になっていたんだ。

それこそ俺の見当違い。カレンに頼むと言われたはずなのに、覆す事が出来なくなりそうな流れを作ってしまった。

これは洒落にならねぇ。冗談ばっか言ってる場合じゃねぇ。シロナちゃんマジ天使hshsクンカクンカしてイチャラブしたいよとか言ってる場合じゃねぇ。

過去最大のピンチだ。

 

「……お、落ち着けよシロナちゃん。そんなにも近づかなくても………」

 

「エッ?ナニ?近付いて欲しくないの?クロメくんはあんなにもシロナの事を愛しるって言ってくれたのに」

 

「…た、確かに俺はシロナちゃんが好きだよ……?だけど、限度ってものが……」

 

押し倒されそうになるのを、俺は必死に抵抗する。

全体重を掛けて俺に擦り寄ってくるのだから、無下にも扱えず、かと言って身体を許すことも出来ない。なんという焦らしプレイ。

 

「だってクロメくん、シロナ以外のことなんて必要ないでしょ?だってさっき私以外いらないって言ってくれたじゃない。嬉しかったなぁ。あれが愛ってものなのね。心がその事だけで侵食されていくのがトッテモ心地よかったよ」

 

ヤバい。シロナちゃん遂にエロスに手をかけた。服装とかろりこんぼてぃを強調したロリコン殺しの服だけど、遂に表情までもが艷美なモノに……!!

 

「だからね?ここで抱いても何も起きないよ?クロメくんとシロナ以外誰もいないの。二人だけの世界。二人だけの時間。心地いいネ、心安らぐね、ステキだねぇ。この幸せな時間が今はとっても離したくないんだぁ」

 

シロナちゃんが俺の頬を一ペロ。んひゃぁあ!!俺の分身がこんな所で猛威を振るおうとしてるぅ!!

やめてぇ!!俺死んじゃうぅううううう!!!

 

「硬くなってるね。これからシッポリヤる事を想像した?フフッ、いいよ?どんな事でもしてあげる。どんな穴にでも入れていいよ?でも、約束して。これから先、私以外の事を考えないって。そうしたら、この身体。クロメくんの思うがままに使ってもいいよ?」

 

今度は耳を甘噛み。ヤバいヤバい。マヂでヤバい。

ズボンを俺の息子がこじ開けようとしてる。治れ俺のビックマグナム!!お前をここで使う気は無い!!

 

「我慢しなくてもいいよ?全部本能に任せればいい。二人だけの時間を、激しく過ごそ?♡」

 

「……だ、駄目だ!!そんな事したら、シロナちゃんは!!」

 

「分かりきってる事だよ。………もう後戻りはできない」

 

とてつもなく弱々しい。乙女の恥じらいとかそういうものじゃなく、弱音を吐くような弱い存在のそれ。

シロナちゃんは自分の状況を理解しているのだ。

 

「知ってる?クロメくん。絶望から、失望から、暗闇から救ってくれたクロメくんは、私の唯一の存在なんだよ?家族だったカレンよりも、もっと大きな存在。神様、って言った方が早いかもしれない。アホじゃないかって思われそうだけど、私はあの時そう思ったの。胸の高鳴りは異常。恋を通り越したそれ以上の感情。その言葉を口に出来ないことがとっても辛い」

 

スリスリと俺の胸元に顔を擦りつけている。まるで動物特有のマーキングだ。ギュッと抱き締めてきたシロナちゃんは、振りほどくことなど容易い力加減であった。しかし、俺は何故か振りほどくことが出来ない。

 

「………優しいね、クロメくんは。本当に……優しい男の子。そんな貴方だからこそ、私は恋以上の何かにどっぷりハマっちゃったのね。思えば、クロメくんは私の手は絶対離さなかったよね。助けてくれた時もそう、寝てる時も、学校に行く時も手を繋いでくれた。イヤイヤな顔してるくせに、いつも仕方ないって言って手を繋いでくれる。どれだけシロナの心を満たしてくれたと思う?」

 

顔を上げて、俺の頬を優しく両手で撫でる。

むず痒く感じるその行為は、何故かとても心地いい。

 

「もうクロメくんを上辺だけじゃ愛する事は出来ない。シロナの身体を全て使ってクロメくんを愛して上げたい。だからね、クロメくん。シロナと一緒に溶けちゃお?身を任せて、シロナに全部委ねて」

 

そう言って、シロナちゃんはスカートをたくし上げ、むわっとした湿気を出す黒タイツを俺に見せつけてきた。

これは完全にヤバい匂いだ。オスを殺す淫乱な匂い。

完全に理性を持ってかれる。

 

「…お、俺は、まだ………」

 

「まだそんな事言うの?でも駄目♡シロナからは逃げられないよ。ずっとずっとずぅーっと我慢してきたんだから。シロナだけのクロメくん。シロナ以外見ちゃダメだよ?♡」

 

「待って!!シロナちゃんっ、俺は…………」

 

「クロメくんの身体に、シロナの気持ち良さを擦り込んであげる。ちゃんと大きくしてね?♡」

 

ああ、ヤバい。頭がくらくらしてる。メスの匂い嗅いで酔ってるんだ。

ヤバいな。こんな状況になるなんて。

シロナちゃんを助けたかっただけなのに。神というのはどうも上手く行かせてくれないな。

………まぁいいか。このまま、シロナちゃんに身体を預けよう。なんかどうでも良くなってきた。考えるのをやめたってのはこういう事なんだな。

何か大切なものがあった気がするけど、まぁいっか。

このまま………快楽の中に、沈んでしまおう………………。

………………………………。

…………………。

…………。

……。

…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー貴様クロメ!!それで本当にいいのか!!

 

 

 

俺を呼ぶ声が聞こえた。それは沈みそうな俺の心に深く入ってきた光。眩しい程の何かを持った光。

その呼ぶ声は何処か必死になって俺を呼んでいる。

何だろうか。俺のファンか?ストーカーなら遠慮して貰いたいもんだ。

 

 

 

ーーーしっかりしろ!!お前はシロナを助けてくれるんじゃ無かったのか!!

 

 

 

なんかどうでも良くなってきたんだ。

モテない俺に遂に春が来たと思ったのに、訳の分からない事言いやがって。俺の純情を返せ。

 

 

ーーーしっかりしてくれよ!!私はっ………、私は…………。

 

 

なんだか弱々しくなっている。

なんだ病気か?後で良い医者のところ連れてってやるよ。

でもなんだろう。この声を聞いてると、なんか変な気持ちが込み上げてくる。

 

 

ーーー…………私はっ、これから………何をしていけばいいんだ。

 

 

更に弱々しい声。

何故だ。何故か俺はその言葉に深く同情している。

何よりも、何故か言わせたくないという気持ちが込み上げてきた。

なんだこれは?何なんだこれは?俺はこのまま沈む筈なのに、この声は何なんだ!!

 

次第にその声は、俺を確信へと導く。

 

 

 

ーーー………私の家族をっ、たすけてくれ……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モンスターボールから抜け出し、クロメに乗っかっていたシロナを引き剥がす。

コロコロと転がっていくシロナを横目に、カレンは木の幹にぐったりともたれかかっているクロメを激しく揺さぶる。

 

「貴様クロメ!!それで本当にいいのか!!」

 

クロメの顔を掴み、必死にそう問いかける。

今のクロメは何も言わない。放心状態となったクロメを元に戻す方法など、カレンには持ち合わせていない。

だが、それで諦めるような女では無いのがカレンだ。

 

「しっかりしろ!!お前はシロナを助けてくれるんじゃ無かったのか!!」

 

次第に涙が零れてきた。

悔しさがあり、悲しさがあり、苦しさがそれを物語っている。

長年そばに居た自分では無く、何時からか一緒にいるようになった存在の方が、シロナにとっては大切なんだと思い知らされた。

恋は盲目と言うが、シロナにとって今はクロメしか見えていない。だが、それは上げすぎた好感度の末路。行き過ぎた愛の結末。正しくそれは病みである。

シロナのそれも病み。愛情という言葉を知らなかった、世界から見離された存在である少女に、クロメという存在は丁度いい依存場所だった。

何故自分では無いのか。長年居たはずの家族ではなく、途中介入の彼の方に。

そこに悔しさを持っているが、尚且つそれに悲しさと苦しさも含まれる。

自分は何もしてやれない。助けてくれた恩人に何も返してやれない。そう思うと、涙が止まらない。

 

「ーーー…………しっかりしてくれよ!!私はっ…………、私は……………」

 

自分が生まれてからすぐ捨てられた。

厳選などと言って、お前はハズレだと言われて捨てられた。

カレンは生まれた個体の中で1番弱かったらしく、誰も引き取る事は無かった。

売られていく中、家族とも言える仲間達が必死になって逃げようとする姿が目に浮かんだ。時には目が合い、『逃げて』などと自分を心配してくれる時もあった。庇って連れていかれる者もいた。

結局残ったカレンはダストシュート。

ゴミしかないところに捨てられ、冷たい雨に打たれた。

何日、何週間、何ヶ月、何年と。

そうしてカレンが見つけたのは、年端も行かないやせ細った少女。彼女が新しい家族であり、過去からの守るべきものだと認識した。

だが今はどうだ。その守るものを守る事も出来ず、あまつさえ他人に押し付けている。

無力な自分が馬鹿馬鹿しく感じ、悔しさの余りに涙が止まらない。

 

「ーーー…………私はっ、これから…………何をしていけばいいんだ」

 

シロナが壊れたら、もうカレンの拠り所はない。

家族がもう1度失われ、孤独と後悔を背負って生きていかなければならない。

だが、最後の希望。それはシロナが一番心の拠り所にしているクロメだけだ。

たった1人の家族を救って欲しいと願い、カレンは胸に抱いた一番の願いを持って、そう呟いた。

 

 

「ーーー…………私の家族をっ、たすけてくれ………………」

 

 

その言葉はクロメをピクリと動かし、窮地から引っ張り出すには十分な言葉だった。

 

 




ヤンデレ〜 ヤンデレ〜♪♪ヤンデレ〜の〜 シロナちゃ〜ん かわいく〜て〜 かわいく〜て〜♪♪まるで天使の〜 よう〜♪♪シロナちゃん〜 ハスハス〜♪♪ぺろぺろクンカクンカ〜 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

愛を込めて By クロメ

ふははははははっ!!!!!
どこからともなく現れるシロナ教信者が1人、名を黒姫!!
部活でえっちらおっちらしてる間にめっちゃ時間が空いたぞ!!
とにかく落ち着いて聞いてほしい。済まなかったと。
何分忙しい故、上手く時間を縫ってために貯めているんだが、一行にその成果が出ることが無い。
取り敢えずバレンタインとか言う非リアの強敵が現れるので、その日には特別企画としてなにか投稿できるようにしたい。
今回なんか無理矢理感満載だけどご勘弁。



ーーー考えていた。

今までの事を。これからの事を。俺達の関係を。

差も難しく考えてはないけれど、一個一個考えて思った事がある。

俺は彼女(シロナ)に何をして挙げられたのだろうか、と。

主人公気取りの右も左も分からず生まれて今まで来た俺だったけど、今この時、どんな気持ちだったのか分かんなくなってきた。

スクールにいた時、どんな気持ちだったのだろうか。家にいた時、どんなことを思っていたのだろうか。

この世界で謳歌したい?やりたい事が多く見つかった?こんがらがっていく思い。目の前の事が大き過ぎて、目的が定まらない。

 

彼女、シロナ。俺が生前好きだったキャラクター。

あの孤高な姿に惚れた。あの美しい姿に惚れ惚れした。時に見せたポンコツさにギャップ萌えした。そして何より、全てにおいて恋をしてしまった。

オタクだの何だの呼ばれてもよかった。実際どれだけキモいだのなんだの言われたことか。シロナを語る友人に『シロナは渡さん』とどれだけ吠えた事か。

クチートとは別に好きになった彼女を、どうしても抱きしめたかった。

どんな形でも、どんな姿でも、俺は彼女を身体のどこかで感じたかった。

 

その夢は叶った。しかも、ラノベ系でありそうな展開を載せて。

穴蔵の中でゴミのように汚く、必要とされない生きてる価値のない彼女。でも俺は違った。あの時誰か分からなかったが、俺は手を差し伸べた。それがシロナ出会った時、どれだけ嬉しかった事だろうか。あの時、シロナでなかったら、俺はここまで心の高まりは無かったと思う。

彼女だったから、シロナだったから俺はあの時心の底で込み上げてくるものがあったんだ。

 

シロナがいる毎日は色がカラフルになったようだった。元々ポケモンの世界に来たというだけでも、色のついた世界だったが、シロナという存在がいただけで、俺の世界はさらに輝くものになったんだ。

 

でも、それは俺だけの世界だった。

俺だけ輝いても、その隣にいるシロナは輝けなかった。輝いて見えても、裏では輝きが見えない程の闇があった。

過去という闇、それに囚われた彼女は、俺と真逆の心境に満ちていた。

その結果がこれだ。俺は彼女の事を何も知らなかった。5年間も一緒にいた筈なのに、俺は全く彼女の事を知ろうとしなかった。

 

 

最低だ。自分だけいいと思っていた自分への罰だ。

対する俺とシロナの心境が、どちらが深くなるにつれてそれは大きな差を呼んでいく。

このまま行くと、取り返しのつかない事になっていくのは事実だ。

 

ではどうするか。彼女を、シロナを助ける為には、俺は何が出来る?

話す?抱き締める?そんな上辺な事では本当に取り戻せない。

もっと、もっと彼女が今かけて欲しい言葉を考えろ。

これから先、こんな事が起こるかもしれない。だったら、ここで俺が彼女を救うしかない。

誰にも譲れない。これは俺がやることなんだ。目的が分からないとかじゃない。今これが、俺の今やる事なんだ。

 

やってやる。俺は、シロナを取り戻してやる。

苦しんでるシロナの為にも。今叫び続けて俺を呼んでいるカレンの為にも。俺とシロナのポケモン達のためにも。

 

ーーー絶対、やり遂げてみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーークロメ………、クロメ………」

 

譲り続けるカレン。放心状態の彼を呼ぶには、カレンには今この手しか持ち合わせていない。

しかし諦めたらそこで終わりだ。自分では何も出来ない事を悔やみながらも、クロメを必死に起こそうとするカレンを見つめるシロナ。

誘惑し、シロナの虜にさせようとしたが後一歩のところで邪魔が入った。シロナにとって、それは腹立たしい事であった。

しかし、クロメがもう一度起き、自分に語りかけてくればもう一度堕とすチャンスを見越し、ここは敢えて邪魔をしない。

どうせ自分の物になるのだと内心思いながら、シロナはしてやったような目でカレンを見つめるのだった。

そして、それは早くも達成される。

 

「ーーー………なんか、いっつもカレンって泣いてるイメージしかないんだけど」

 

カレンでもシロナでもない少しくぐもった声。声の主は勿論今まで寝ていたクロメのであった。

シロナはニヤケ顔を隠しきれない。あと少しで自分のものになるという嬉しさが、身体の奥から込み上げてくる。

 

「……私は、泣いてなんか……っ、……ない」

 

涙を拭い、鼻をすするカレン。

しかし拭いても拭いてもそれは収まることがなかった。

 

「カレンってさ、泣く時は、大体シロナが関わってるんだよね。わっかりやすいことに。シロナが怪我した時も、怒られて泣いた時も、決まって俺のとこに来て泣いて助けを扱いてる。毎回毎回そうだった。今じゃ、カレンが泣いてる=シロナがピンチって解釈が持ててるんだ」

 

どっこいしょっと、身体を起こすクロメ。

お尻の土を払い、カレンをゆっくり立ち上がらせた。

何故か、クロメの表情には笑みが浮かべられており、可愛いものを見たと言わんばかりの目をカレンに向けていた。

 

「なぁ、そうだろシロナちゃん。いつもいつもカレンはお前の為に泣いてくれてたんだ。俺以上に、カレンはシロナちゃんの事を思ってるんだぜ?」

 

「……そんなの知らないよ。シロナはクロメくんにしか興味ないの。他の事なんてゴミ箱に捨ててしまうわ」

 

相変わらずの反応。しかしクロメは、ゆっくりと足をシロナに向けて歩き出した。それにはカレンとシロナも驚きの色が出る。

 

「ホントにそう思ってる?なら、なんで俺を起こしてるカレンの邪魔をしなかった?」

 

「それはカレンが起こせば、またシロナがクロメくんを説得出来るチャンスがあるから見逃したの」

 

「でもおかしいよ。それなら自分で起こした方がより俺を魅了できるだろ?カレンが起こせば、俺が一定の距離でしか話さなくなることを考慮したのか?」

 

「関係…ない。シロナはそれが最善だと思ったの」

 

「それじゃあ、なんで()()のポケモンを捨ててないの?興味なかったんじゃなかったっけ?」

 

その言葉にハッとした。その表情を見た瞬間、クロメはしたり顔。シロナはカレンを頭ごなしに否定していたが、カレン以外のポケモンはモンスターボールのまま自身の手元に残していた。興味が無いのなら、即そのモンスターボールを捨てるなどの事はした筈である。

 

「それってさ、まだシロナちゃんが捨てきれない感情を持ってるからだよね?そんなのがなかったら、シロナちゃんはモンスターボールを捨ててたはずだ」

 

「……変な事言わないでっ。シロナはクロメくんしか………」

 

「それにさっき言ったよね。後戻りは出来ないって。なら、自分では無理でも誰かに助けて欲しかったんじゃなかったの?」

 

「……そ、そんな事……っ」

 

無い、とは言いきれない。シロナは最後まで言葉を言えなかった。

言葉の裏の意味。突き放すように感じても、実際は裏返しで考える。

自分ではもうこれ以上は抑えられない。なら、誰かにそれを止めてもらえる事を望む。

なんという無理矢理感。しかし、当てずっぽうだがシロナは動揺を隠せない。さっきまで手の甲で泳がせていた魚が、まさかの叛逆。一瞬にして、シロナの勝利への道が閉ざされていく。

 

「……もうさ、無理しなくてもいいよ。シロナちゃんは俺の事を欲しい欲しい言ってるけど、その感情を誰かに止めて欲しかっただけだよね」

 

「……ちがっ、シロナはホントにクロメくんだけを………っ」

 

「思い出してよ。俺は今まで、シロナちゃんの側を離れたことあった?置いてどこかに言ったことある?」

 

「…………」

 

そんなの自分で自覚してる。置いていったことなんて無い。いつも俺の側にシロナを置いていた。

大好きだった彼女がいるだけで、俺は力が溢れてきたから。

でも、それだけじゃない。

 

「俺はシロナちゃんを雑に扱ったことなんて無い。いつも俺の側で一緒に過ごして、楽しい時間を過ごしたんだ。でも、それは俺だけじゃない。カレンや他のポケモン達がいたからそう思えるんだって分かった」

 

笑い合えたのは俺たち二人だけじゃない。他のみんながいたから。いつも、笑って過ごすことが出来た。

 

「俺はね、シロナちゃんが大好きさ。心の底から思ってるよ。実際言うと、あの時初めてあった時に一目惚れした。でも、みんなを否定するシロナちゃんは俺は好きにはなれない」

 

実際はもっと前に一目惚れしてます。

が、そんな事言えない。

シロナの目の前で立ち止まり、クロメはギュッと抱き締める。

堕とすはずが堕とされていく。

しかし、何故か歯痒く感じる事は無かった。スーッと透き通る何かがシロナの心に入り込んでくる。

自然と、シロナは身体をクロメに寄せていた。

 

「今なら間に合うよ。しっかりカレンに、そして皆に謝れば、元の楽しい生活に戻るんだ。誰も責めたりしない。そんな奴がいたら俺が止めてあげるから」

 

「……もう、無理よ。できっこない……」

 

「大丈夫、もう一度笑い合えるから。それにさ。俺、シロナちゃんに言いたいことがあるんだ」

 

「……なに?」

 

「俺がなんでシロナちゃんとずっと一緒にいたと思う?なんでずっと側で過ごしてたと思う?」

 

それには首を傾げるシロナ。もうさっきのヤンデレ化シロナの姿は跡形もなく消え去っていた。

クロメは口元を緩めて笑いかけ、じっとシロナの目を見つめて口を開いた。

 

「ーーーこの言葉を、俺は君に捧げたい」

ーーー前世よりこの言葉を俺は君に送りたい。

 

 

クロメにとって、その言葉は、今世紀最大の物語となるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……シロナちゃん、愛してる。俺と、ずっとに一緒にいよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ふぇっ!?」

 

ボンッと赤面を通り越して爆発したシロナ。

それに我慢の限界が来たクロメは。

 

「あぁっ、もう可愛いなぁ〜っ」

 

その姿を見た瞬間、欲望を抑えきれなくなったクロメはニヤリと笑い、シロナの唇に唇を落とした。

それには目を見張るシロナ。ギュッ抱き締めている為、簡単に解く事が出来ない。しかし、いつしか、身体をクロメに預けていた。それを感じたクロメは、更に熱いディープを交わす。

そのキスは、なんだか恥ずかしさより、嬉しさの方が断然強かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




語るなら 姿で見せよ ホトトギス。
みんなもポケモン、GETじゃぞぉ〜。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ハッピーエンド?そんなの当たり前に大切じゃん

『速攻魔法発動!!「ねぇ....なんでほかの人と話してたの?僕以外とは喋っちゃいけないって言ったでしょ?ねえ…」を発動!!』

『リバースカードオープンッ、トラップ発動!!「ご都合主義」。貴様のターンを強制終了する!!』

『おっ、おのれぇ!!!!』


キスはレモン味、とか聞いたことある。けどシロナと交わすベーゼはレモン味というか、歯磨き粉の味がする。

いつも強請ってきて頬っぺたとかにしかしたこと無かったキスを、恥ずかしげもなくやっています。

 

「………んッ、んんっ……」

 

目をぱちくりさせてなすがまま状態のシロナに愛おしさを感じ、抱き寄せて深く深く浸る。

心の奥から沸き立つ感情。これが欲望なのか。初めて何が何でも欲しいと思い、我慢出来ずにしてしまったけど、後悔はない。寧ろあそこでしなきゃ男が廃るってもんでしょ。

 

「………ぷはっ。く、くろめきゅんっ、一体何を……っ」

 

「何をって、キスしただけだけど?何?もっと欲しかった?」

 

「違くて違くてっ、もっとして欲しかっだけど違くて」

 

「シロナ言ってたよね。俺が欲しいだの何だの。正直ここまで女の子に好かれてるのは嬉しかったよ」

 

前世でも欲しいだの何だの言われたのって、俺がお菓子とか持ってて妹が食べたいからせがんで来た時ぐらいしか欲しい欲しい言われたことない。あっ、これが欲しいって訳じゃないから言われたことないわ。

だから、今日生まれて初めて欲しいと欲望丸出しで言ってくれたシロナには、今思えば嬉しさを感じるな。

だけど、男にとって譲れないものがある。

 

「けど、俺は尻に敷かれるのは性分じゃないんでね。敷かれる前に俺からやっておいた。正直、予想外だろ?」

 

尻に敷かれる男ってなんか俺は嫌だ。やっぱり男っていうのは、どっしり構えてて、女の子を護ってこそだと思う。女の言いなりに成り下がりたくは無い。

 

「シロナに告ったの、俺ガチのガチ、超ガチだよ。初めてあった時から一目惚れ。胸の奥から湧き出すシロナを自分のモノにしたいって欲望が、めっちゃ溢れ出てる。好きで好きで堪らないんだ」

 

初めて見た時はそう、ダイパをやってなかったため、BWから始めた俺だったが、サザナミビーチ……だったか?名前忘れたけど、カトレアたんの別荘にいたシロナ様に、俺は全細胞が疼いた。

勿論BWと言えば、マジイケメンでお馴染みアロエの姉御、フウロっぱいでお馴染みのフウロたんや、ライモンでポケモンつよいもんでお馴染みカミツレサマーウィィィィィィィィィィwwwwwwwwwwwwwとか、履いてないでお馴染みアイリスたん、永遠の(見た目)14歳ことカトレアたん、シキミっぱいでお馴染みシキミたん、ポケモンシリーズ経ってのヤンデレ疑惑のある落し物イベントで対面するルリたんなどなど、BWから素敵可愛い女の子が大量に登場した。

勿論、ジュジュベ事女優となってポケウッドに出演し始めたナツメ様なども最高に可愛い。ナツメ様のお胸や太ももに埋もれたい(願望)。

だがそれでも、俺はシロナ様が一番なのだ。何故かって?

 

ーーー俺は金髪黒衣装が大好きなんだァ!!

 

分かるだろ?黄金色の髪と黒が主体の服。全く文句なしの組み合わせだ。しかもスタイル抜群しっかりそうなお姉さんに見えて実はダメな人というギャップを持ち、手持ちのポケモンなんか中々癖のあるポケモンばっか使ってて、可愛くて最高で可愛いんだよ!!これを最強最萌最愛と呼ばずして何とする!!

画面の向こう側には女神が降臨なさっていたのだ(驚愕)。

 

「でも、その願いは届かないと思ってたんだ。シロナと会った時の姿は、今でも忘れられない……。傷付いた身体、傷んだ髪に壊れた心。見てられなかった。遠くに置き去りにされてて、手を伸ばしても届かないと思ってた」

 

俺とシロナ様にあったものは、3次と2次という超えられない壁。

手を伸ばしても、触れれるのは画面のみ。声も無ければ姿形全て二頭身以下で映し出されていたために、毎日のように諦めていた。

 

BWから2に変わり、更にXYと進化していった。

髪下ろしコルニを初めとした可愛いキャラが続出していく中、俺のメインヒロインであるシロナ様の存在が無くなっていく感じがした。手が伸ばせないのに、更にそれはどんどん遠くなっていく。

耐えられなかった。信じられなかった。届かぬ思いのまま、サンムーンまで過ごしていた。

きっと誰もがシロナ様の魅力を知らないまま、『シロナ?あぁ、ダイパのチャンピオンね』的な感じな認識しかないだろ。

バカ言ってんじゃないよ!!女性初のチャンピオンだよ!!

 

「でもさ、今まで過ごしてきて、段々シロナとの心の差ってのが近付いてるような気がしたんだ。実際、俺の感情よりも遥かに大きな愛を俺に向けてくれてるけど、これも俺とシロナの心が近づいてるって事だろ?俺はシロナが大好き。シロナは俺の事が狂おしい程好き。好きの度合いがやばいけど、同じ好きってことには変わりない」

 

この世界に突然生まれて、一体何をすればいいのか分からないまま、何もする事無くポケモンがこの手に実際に出来ると思っていただけだったはずなのに、そこにいつしかょぅι゛ょシロナが現れた。

これはもう運命だと。テンプレだと。ヒロイン助けてさよらなハッピーエンドなのだと確信した。

 

「過去とかそんなの今の俺達には関係ない。関係あるのは、お互いの気持ちがどうなのかって事だろ?過去は過去、今は今、未来は神のみぞ知るってさ。吹っ切れて俺と、俺達とまた新しい生活を送ろう。毎日が幸せで、過去にあった事でお釣りが来るぐらい平和な生活をしよう。だから、俺と一生を共にしないか?」

 

告白?ノンノン、プロポーズだよ。

ヤンデレシロナ様をどう戻すかって言われたら、俺も君が好きだよって言って、後戻り出来ないよう論破すればいい。まぁ俺はシロナと結婚したいからこうやって来たけど、実際のヤンデレは知らないよ?まだシロナに心の隙間があったから入り込めただけだから。………真似しないでね。

 

「………いい、の?シロナ……、皆をっ、否定したんだよ?クロメくん以外いらないって、認めたく無かったんだよ?こんな悪いシロナと、本当にずっといたいって言ってくれるの…………?」

 

「当たり前じゃん。だって好きなんだもん。恋は盲目って言うだろ?そんなの謝っちまえば解決するさ。もっと前向きに行こうぜ。終わった事に一々反応してたら、胃もたれして死んじゃうよ」

 

「………クロメくんと、一緒にいていいの?汚くて穢れたシロナを、そばに置いてくれるの……?」

 

「今まで置いてきたじゃないか。これからも、ずっと俺のそばに居てくれよ」

 

寧ろ俺がそばに寄ります。

シロナのいい香りをいつでも嗅げるって言うのは最っ高デスなぁ。俺のモノと考えるとなんだかいやらしいが、もうシロナは俺だもんねぇ!!誰にも渡さねぇから!!

 

「………シロナ、これからもクロメくんと一緒に居たい!!どんな事されてもいい!!嫌われてもっ、暴力振られてもっ、呆れられてもっ、クロメくんのそばにずっと居たい!!」

 

涙を流すシロナの身体を抱き寄せる。

涙で服が汚れる?そんな事気にする奴は男じゃねぇ!!好きな女が泣いてる時は、胸の中で泣かせるってのが常識だろ!!(キッパリ)

 

「……酷いことするな、シロナの妄想の俺って。安心してくれ、暴力なんか絶対に振らないし、シロナに飽きる事なんてありえないから」

 

「………うんっ。うん……」

 

「ずっと一緒にいような。家族は、大勢いた方が楽しいからな」

 

「………大好きだよ、クロメくん……」

 

「俺も大好きだよ、シロナ」

 

抱き寄せたまま、泣き止むまで俺はシロナを胸の中に包んでいた。

やっと悲願の願いを叶えることが出来た。届かないと思ってた思いは、どんな形であれ、俺の元に来てくれた。

 

この運命に感謝する。この運命に呪いあれ。願わくば、シロナ様の幸せと等価交換で呪いを投げつけてやりたい。

神だろうがなんだろうが、シロナを泣かせるのなら、俺は神でも殺してやる。それが俺の家族だったでさえ、絶対に殺してやる。

多分それが、今俺がシロナを守ってやれる唯一の事だからだろう。

何とも、無謀なことかもしれないけど、シロナや家族を守るためなら、大切なんだろうな。

 

 

 

 

「………良かったな。シロナちゃん」

 

 

 

離れていたところから、そっとカレンが顔を覗かせ、今までに見たことの無かった、可愛い笑顔を浮かべていた。

 

 

 




無理矢理感ぱないの。
まぁ、早く進めたかったから、早く書きました。
メガシンカ早く出したい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ミアレシティ到着

( ^o^)<ンンンンンンンンンンンンンンンwww時間( ^o^)<ンンンンンンンンンンンンンンンwww無いのぉぉおおおおおおおおおおおおっ!!!!!
ちきしょーリア充の何処が偉いっていうんじゃぁァァ!!!


シロナ side

 

 

あれから私は正気を取り戻した。クロメくんとの熱いベーゼで⁄(⁄ ⁄•⁄ω⁄•⁄ ⁄)⁄テレテレ。

お互いに好きだという事を打ち明けたら、なんだか物凄く心が軽くなった。きっと嬉しくなったんだ、両思いだと知ったから。

アリア達には悪いけど、なるようにしてなったって言ったと言った方がいいかもしれない。

これが運命なんだと。運命によって決められた赤い糸の結ばれる結果だと。

 

取り敢えず、アリア達には二重の意味で謝っておこう。後々アリア達が出て来て、物凄く心配してくれてた。私のポケモン達並に涙流してた。

心配かけてごめんなさい、と。クロメくんと両思いになりました。これから幸せになります、と。

敢えて邪魔しないでとは言わない。まぁクロメくんと両思いになりましたとも言ってないけど。アリア達も、クロメくんの事が好きだと私は知っている。旅館でのサーヤの事もあるし、嫁扱いされていつも噛み付いてるアリアも心做しか嬉しそうにしてる。

ミミとみかんちゃんも例外じゃない。挙句の果てに、私のポケモン達までクロメくんに好意を寄せてる。

 

何と言うことでしょう。私の御付き合いする方は、天然の女ったらしです。複雑ですね。私だけがクロメくんと幸せになっていいのか。

一層の事、何処かでクロメくんに言った方がいいかもしれない。

そうすればみんな幸せみんなハッピー。お母さん、クロメくんにはお嫁さんが沢山ですよ。

 

とは言ったものの、なんだか私のせいで目的が物凄く脱線してる。

この地方に来て2日3日。なんか物凄く濃い数日を過ごしてて、元凶である私が言うのもなんだけど、もうお腹いっぱいです。

このまま、クロメくんとのラブラブ生活を送りたいけど、クロメくんにはここに来た理由がある。それは私も例外じゃない。

 

『メガシンカ』。カロス地方で古来より存在する通常進化の更に上。戦闘時、パートナーとの絆によって引き起こる現象が、新たな進化だと授業では聞いたことあるけど、なんだかみんなその話は聴き逃してる感じがした。だって進化を超える進化だよ?普通はみんな欲しいって思うじゃん。私と互角のアキラだって、勝つ為にその力は欲しい筈なんだけど。

クロメくんだけ目を輝かせてその話を聞いていた。すぐその話は終わったけどね。私も、そんなクロメくんにする『メガシンカ』について調べたけど、なんだか曖昧なものばっか。伝承なのか都市伝説なのか、人を興味惹かれさせるような記事はなく、諦めてたけど、何処からか調べてきたクロメくんが私に説明してきた。

どうやら、カロス地方と言う外国にあるらしく、そこで『メガシンカおじさん』から伝承させてもらうらしい。

 

らしい、と言うのは、これが本当なのかクロメくんでも分からない事だと言ってきた。でも、私が調べられなかった事をクロメくんは詳しく教えてくれて、やっぱりクロメくんは凄い。

卒業まで、スクールは抜けないと約束してたから、それから数年間頑張った。新しいポケモンを捕まえて育てたり、トレーナーとしての知識をしっかりと蓄えたりした。リオルがルカリオに進化したのはびっくりした。ただでさえオスの擬人化なのに、それが進化して無系統進化だと思われてたルカリオに進化しちゃったから、世間も驚きだ。私も驚き。クロメくんは、なんだか遠い目をしてたけど、なんで?

テレビ報道されたり、ぜひ研究させてとか言われたけど丁寧にお断り。お子様だから、詳しい事は分かんない。子供に難しいことを聞くのはアホな事だと思う。

 

まぁそれからトントン拍子で事が進んでったけど、やっぱり不思議だ。『メガシンカ』、魅力的な事なんだけど興味を示さないのは一体……。

でもこうやって誰かに邪魔されず、大好きな人と一緒にいられるんなら、私は構わないんだけどね。

 

 

 

「ーーーシロナっそろそろ時間なんだけど。後がつかえてるんだから早く変わりなさい!!というか、今すぐ変われ!!」

 

「私の体内時間的にはまだ1分しか経ってないのよー。そんなに怒ると、クロメに嫌われるわよ」

 

「はっ、そんな挑発で私がホイホイ釣られると思ってんの?…………ね、ねぇ?そうよね?クロメ。怒っても私の事、嫌わないわよね?」

 

「思いっきし乗ってんじゃん」

 

こんな日々が、ずっと続けばいいのにね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロメ side

 

 

なんだか遠回りしてしまったが、目的はしっかりと頭の中に入っている。

なんやかんや言っても、シロナも元に戻ってくれたし、アリア達もボールの中で心配していたようだが一安心。こういう普通の関係ってやっぱりいいよね。安らぎを得るっていうかなんと言うか。まぁ、シロナと相思相愛になったんだけど、このままでもいいやって思ってしまう。シロナの事が好きだとしても、俺はアリアの事を嫁だと思ってるし、サーヤ達のことだって好きだ。優柔不断でも、俺は愉快でみんな愛せるならそれでいい。向こうがどう思ってるかは知らないけどね。

 

とまぁそんなこんなでミアレシティに到着したわけですよ。ゲートを通って行くと、なんとまぁパリの街並みがずらりと並んでますよ。パリ行ったことなんて無いんだけど。

活気が溢れてるし、顔を上げればミアレシティのシンボル、プリズムタワーが聳え立っていた。

 

すげぇなおい、なんだこの街は。今まで見てきた街が霞んで見えるぞ。初めてTOKYO行って見た人の数に驚いてた時よりも凄い。

横にいるシロナも、口を開けて放心状態だ。

取り敢えず小突いて意識を戻させる。ま、女の子にとってはミアレシティって結構魅力的なのかもしれないな。伊達にパリ模様してないし。

 

さてこれからどうしよう。後1時間もすれば日が完全に傾く。それまでに宿を探したいわけだが、案の定俺が知ってる所って()()しか知らない。他とこがなかったっけ?流石に忘れちった。

 

まぁ、金はあるからいいか。子供に持たせる金額では無いにしろ、旅には資金が必要だ。というわけで気付いたと思うのだが、ミアレシティで1番高いであろう宿、もといホテル。そう、HOTEL。決していやらしい方じゃないぞホテルだ。

グランドホテル・シュールリッシュ。あのバカでかいホテルである。

まぁバイト出来たし?プレイ当時は結構お世話になってました。うん。泊まるところはここがいいね。バイトした時、自分の部屋みたいに汚してたその快適さを俺も味わってみたい。

 

がまず、ポケモンセンターにアリア達を預けて回復させなければ。ポケモンも疲労は溜まるから、しっかりと明日の為に無くしておかなきゃならない。受け取りは明日でいいか。しっかり休んでよ。

 

というわけで、シロナの手を引いてホテルの中に入っていきます。

シロナがお金の心配だのなんだの言ってくるけど、心配無用。安い部屋とって2人で寝ましょ。へ?まだ早い?何言ってるんだよ、一緒に寝るぐらいずっとしてきたじゃん。え?緊張で眠れない……?…………だ、大丈夫。俺はしっかり寝るから(`・ω・´)キリッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称 side

 

 

夕食も終わり、日が完全に沈んだ時間。窓から覗ける景色は、まるで絵に書いたよう。光が街を明るくし、暗い夜の街に活気を与えている。the 都会という感じの風景に、思わず心が踊ってしまう。

 

「いやー、ベッドフカフカだなー」

 

ボヨンボヨンと、真新しいベッドの上で飛び跳ねて感触を味わうクロメ。子供というかなんと言うか、確かに跳ねてみたいとは思ってたりするが、良い子が真似しては駄目だぞ。

流石に寝床に金をかけるつもりはなかったクロメは、ホテル内で1番安い部屋を取った。このホテルでは何処のベッドもふっかふかの1級品。そこまで人数をとる訳でもないし、長く滞在する訳でも無いのでフロントに着くや否即決即入居した。安い部屋はシングルベッドで、シロナは顔を赤く染めながらクロメの隣に居たが、ベッドに寝転がるや否表情が変わった。

 

「なんか、すぐ寝無たくなっちゃいそう……」

 

目をトロンとさせ、ゴロゴロとベッドの上で寝転がるシロナ。小さいポケモンがじゃれてるみたいで微笑ましい。

黒のノースリーブと黒いジーンズと言うラフな格好で過ごすシロナだが、ゴロゴロ転がるとぷにぷにな二の腕や、チラチラとたまに覗くピンク色の突起物がクロメの視線を泳がせる。

晴れて両思いになった彼等だが、初心な彼氏である。(爆ぜろ)

 

「これからどうするの?ミアレジムに挑戦するにしたって、相手のタイプとか分かんなきゃ戦いづらくない?」

 

「大丈夫、そこに抜かりはないよ。それに、タイプが分からない状態こそ、トレーナーの実力が見えてくる。目先の事だけを見て甘えてるわけにもいかないよ」

 

「……ふーん。やっぱりクロメは凄いね。かっこいいよ、そういう所」

 

「……ちゃ、茶化すなよ。シロナも、立派なトレーナーになりたきゃ自分で考えるのも大切なんだから」

 

「はーい、そうしまーす。でも、今はクロメの戦いを見て研究したいから、色んなことを吸収してくよ」

 

髪が邪魔であったのだろう、後ろで髪を束ね始めたシロナの笑顔に、変に意識するクロメ。……お前、母親と散々犯ってんだからキョドってんじゃねぇよ(怒り)。

 

「シロナも『メガシンカ』使えるようになりたいんだろ?だったら、俺のだけ見てちゃ駄目だ。対戦相手の戦術とかも重要になってくる。明日の試合でそれをしっかり覚えて見ててくれよ」

 

「当然。クロメの試合は絶対見逃さないわ。だから、絶対勝ってね。応援してる」

 

触れるだけの軽いキス。体を預けてきたシロナをそっと抱き留め、コロンとベッドに転がるクロメ。枝毛の無い黄金色の滑らかな髪から香る女特有の香りが、クロメの鼻を刺激し理性の楔を解いていく。

クロメの胸に頭をぐりぐり押し付け、まるでマーキングするかのように擦り付けるシロナ。

 

「……シロナ、どうした?」

 

「………クロメ。私の身体、どう?助けられた時から、貴方の好みに近付けようと頑張ったんだよ?この髪も伸ばしたし、胸もおっきくなるように毎日揉んだ。腕と脚も毎日ストレッチで伸ばしてたし、健康的な身体を目指して適度な運動とか色々してたんだよ?これも、全部クロメの為。嬉しい?私の心は全部貴方色なの」

 

一瞬クロメは焦った。また、昼間のような事態になったのかと。だが、シロナの目はしっかりと意識を保っていた。銀色の曇ない透き通った瞳が、美しく面妖にクロメを虜にしていく。

ぷっくりした小さな唇。白いシミ一つない白い肌。どれもこれも、真っ直ぐにクロメだけを見ているかのよう。

 

「……クロメ。何度も言うわ。私は、貴方の事が好き。大好き。好き過ぎて狂いそうなくらい大好き。ずっと抱き締めて感じてたいし、いつまでも見つめあっていたい。我慢しなきゃならないけど、心の底から貴方を求めてる。身体が疼いてしょうがないの……」

 

細長い綺麗な腕。年齢にしては出る所がしっかりと出た胸。健康的なほっそりとしたくびれ。すらっとした長い脚。細くもなく太くもなくと言ったスタイル抜群の身体を精一杯身体に擦りつけ、甘い声でクロメを誘う。

 

「……ねぇ、私……キスだけじゃいや……っ。私の身体に、貴方を……覚えさせて?」

 

蕩けるような上目遣いの誘惑。

クロメはそれに抗う事など出来ず、シロナの口に吸い付いた。

口内をしたで蹂躙し、両手で胸や下半身を愛撫する。クロメの手が動く度、シロナはビクッと身体を震えさせ、要望を募らせていく。

 

明日に備えて寝る筈の寝室は、ブラックコーヒー必須の甘ったるい時間が流れ始めた。

 

 

 




そろそろ作者最後のインターハイに向け、練習がハードになってきて時間がありましぇん。後、友達に『俺今日からリア充〜wwwお前ざまぁwwww』って言われてムカついた。お前俺よりも正直カッコよくねぇだろうがァァ!!なんでスポーツして筋肉付いてるやつが弛んだ脂肪に負けるんだよォォお!!!

………俺も、出来るならリア充になりてぇ……(*´・ω・`*)グスン


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ジム戦、開始

昨日まで遠征で1日平均3~4試合してましてん。作者はずっと座りっぱなしのポジションだから、足がパンパンで動けまてん。

まぢちゅかLETTERaaaaa。

言い訳させて欲しいけど、疲れてたから駄作になったんだからね!!(ツンデレ感)※ただし駄作はいつも通りである。


 

 

 

 

 

ーーージム戦。

 

アニメ中やゲームなど、ポケモン関連においてジム戦と言うものは外せないものである。自分の実力がどれほどなのか知る事が出来、ストーリーを進めるために突破しなくてはならない壁の1つ。

ジム戦をする事で、よりポケモンについて深く知る事が出来、長い時間をかけて育てたポケモンで勝利を獲得出来た喜びは、幾つになっても喜ばしい事だった。

 

そんなジム戦を見るだけでなく、画面越しでやるわけでもなく、実際にする事が出来る。控えめに言って、めちゃくちゃ最高です。

ゲームでは、技を選択してシステム通りにしか進まなかった。アニメでは、ただの傍観者としてしかいられなかった。

だが、今は違う。自分で考え、自分のポケモンがシステムに囚われずに戦い、ジム戦を体験出来るのだ。願ってもない事である。これ程までに嬉しい事は無い。

この世界のトレーナーは、某マサラ人のようにポケモンマスターを目指す者、リーグ制覇、チャンピオンの座、ブリーダーと言った職業で活躍を目指す者がいるが、誰もがトレーナーとなったら必ずジム戦をすることになる。トレーナー達にとって、ジムとは憧れのものであり、挑むべき試練である。

 

そんなジム戦に、俺はこれから挑んでいく。

勝ち負けじゃなく自分の力がどの程度なのか確認のようなもの、と言っていたが、なんだか夢にまで見たジム戦を出来ると思うと、何がなんでも勝ちたくなってきた。

シンオウ地方ではスクールで無双。校長先生が講師で呼んだトレーナーをボコり、1桁後半の年齢にして鬼がかっていた俺氏。

天狗になってる訳じゃないけど、この世界じゃ反則級の知識とアニメで見たあの動く戦闘をずっと見てきた俺の頭では、同年代で敵無しなのは分かっていた。講師としてきたトレーナーも、まだジムバッチを数個所持していた、言っちゃ悪いが半人前のトレーナー。半人前程度じゃ俺は倒せなかったよう。校長先生の当然の結果だとでもいいだけな目はなんだったのか良くわかんなかったけど、とりあえず挑める相手には全勝していた。正直言って飽きた。もっと強い人とやりたいと願う気持ちが大きい。それはアリア達も同じ事のようで、バトル終わりにいつも退屈だと愚痴を吐いていた。

 

だが、そんな愚痴も今日まで。いよいよ1人前、しかも更に上の熟練者の中のトップ。この世界にある、ポケモン協会認定のトレーナー。

そんな人と戦う機会がやっと出来たのだ。もう、実力確認とかそういうのは捨てよう。そんなこと言ってた俺を殴り殺してやりたい。

やるなら全力。向かうなら真っ直ぐに。ガチで勝ちに行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーようこそチャレンジャー!!我がミアレジム、ジムトレーナーが俺、デンタ!!君のチャレンジ精神に敬意と喝采を送ろう!!」

 

丸太のように太い腕と足。安全第一のヘルメットを被り、作業用のつなぎ服を上半身だけ脱いでタンクトップ姿で、フィールドの中心に仁王立ちしていた。工具を入れたポケットを肩から斜めにかけ、いかにも工事現場にいそうな印象のジムリーダーと名乗った男、デンタは、拍手を贈りながらガハハッと大きく笑った。

 

「シンオウ地方〇〇〇タウンから来た、クロメです。宜しくお願いします」

 

アニメではこうやって挨拶をしていた。とりあえず例に習って挨拶を交わす。

 

「うむうむ。自己紹介を素直にしてくれる若い者、なんと謙虚な姿だろうか。君の姿を、是非他の若い連中に見習わせたいな」

 

腕を組み、相槌を打つデンタ。のしのしと歩き出して俺達の目の前まで近付いてくる。

概要に載っていたが、デンターーー、敬意を払ってデンタさんと呼ばせてもらう。デンタさんはイッシュ地方のヤーコンさんの弟子であり、何年か前までヤーコンさんの元で仕事やジムの手伝いをしていたが、ヤーコンさんの勧めもあって、ジムリーダーになったそうだ。

あの男前で有名なヤーコンさんの元で修行をしたのなら、俄然腕がなるというものだ。

 

「ジムバッチは幾つ持っているかな?」

 

「ほんの2日3日前にこの地に来まして。シンオウ地方の方でもジム巡りはしていないので、ジムバッチは持ってないです」

 

「ほほぅ、初めてのジムがここというわけか。うむうむ、尚更やる気が出てくるものだな」

 

そう言って、ポケットから小型のリモコンのようなものを取り出すと、ポチッと後ろに向けてスイッチを押す。フィールドの近くにあった壁から、収納ケースのような扉が開き、プシューっと白い煙と共にモンスターポケモンが3つ現れた。

 

「…………あの、お願いがあるんですが」

 

「ん?お願い、とな?」

 

「はい。出来れば、1()()()()()()()()でやらせてくれませんか?」

 

ピクっと、デンタさんの身体が震えた。俺の言っていることが分からないらしく、シロナは首を傾げた。

 

「……それは、ルール違反だ。君のレベルにあったポケモンでないと公平ではない」

 

「そんなこと分かってます。でも、俺は()()()()()()()()()来たわけじゃありません。()()()()()()がしたいんです」

 

ポケモン協会が定めたジムリーダーの鉄則で、こんなものがある。

 

『ジムリーダーたるもの。より公平に、より平等に』

 

ジムリーダーは、挑んできたトレーナーが持つバッチに合わせてポケモンの強さを変える。ジムバッチ7個所持しているトレーナーが、ジムバッチ1個目をGETした時と同じ強さの相手なら公平ではない。かと言って、ジムバッチ所持数0のトレーナーに、1番強いポケモンを使ってバトルするのも平等ではない。

だからポケモン協会は、ある規定を出した。

トレーナーに合わせ、ほぼ平等に、ほぼ公平にバトルが出来るようにしなさい、と。

 

これまた難しい事で、例えバッチ1個のトレーナーでも、ポケモンが強い場合があったり、トレーナーの指示が的確でジムリーダーの使うポケモンが全く壁として機能出来なくなる。

かと言って、その規定を無くせば、トレーナーが勝てなくなってくる事もあるしと、ジムリーダー達の中でストレスの一環となっている。1トレーナーは情報通でも無い限りはこの話は耳にしない。

デンタさんも、そんなストレスの溜まる1人なのだろう。動揺するということは、そういう事だろうから。

 

「………とは言っても、君の実力が俺には分からない。もしこのバトルが、今後の君の人生で深く傷になってしまう可能性だってある。強がりはやめなさい」

 

「強がりじゃありません。俺はこの地方で成し遂げたい事がある。その為には、貴方の全力を倒さなければならないんだ。だからお願いします。どうか、俺と全力で戦ってください」

 

「………しかしだね。ここは公式戦のフィールドだ。あくまでジム戦をしなくてはならない場所なんだ。それ以外の目的でバトルが行われると、ジム閉鎖は免れない。毎回審判が映像を録画して上に報告しているから難しいんだ。私個人に申し込みをしているのなら、プライベートの時にでも……」

 

「それじゃ遅すぎる。何分、時間を取られすぎてしまい、予定よりも進行速度が遅いんです。今は、一秒一秒時間が惜しい。それに、あくまでジム戦をしなくてはならないって事は、ジム戦に()()()ればいい。公式戦でも、バトルをしっかりしていれば、それはジム戦になるんでしょ?公式戦に見立てて俺とバトルしてください、お願いします」

 

ぺこりと深く頭を下げるクロメ。それに便乗し、シロナも慌てて頭を下げた。

 

「……何故そこまで俺の全力にこだわる?君はこの地方で何を成し遂げたいんだ?」

 

「決まってるじゃないですか。この地方でしか伝わらない伝承、『メガシンカ』使いになる事ですよ」

 

その返答に、デンタさんは目を見開いた。カロス地方のジムリーダーならば知っていて当然の伝承。しかし、ほかの地方に100%伝わっているとは言い難い『メガシンカ』の伝承。

若くしてその情報を知り、母国を飛び出して海外まで来た俺を、デンタさんは穴が開くほど見つめてくる。

 

「……後ろのお嬢ちゃんもかい?」

 

「は、はい!!そのつもりです」

 

「………そう、か。君達も『メガシンカ』を……」

 

なんだか、異様に相槌を打ち始めたデンタさん。腕を組み、そうかそうかと口ずさんでいる。

 

「分かった。その勝負、受けようではないか」

 

「本当ですか!!」

 

「おうとも。今の会話も録画している訳じゃないし、審判にも交渉しよう。ただし、やるからには全力だ」

 

デンタさんはもう一度スイッチを押し、今度は空いた隣の壁がプシューっと息を吐いた。白い息と共に現れたのは、3つのハイパーボール。見ただけても、あのボールに入っているポケモンは強いと確信して言える。

 

「ここからはあくまでも公式戦。しかし、俺個人の戦いだ。使用ポケモンは各3体。入れ替えは3回まで。全てのポケモンが倒れた瞬間にバトル終了。これでどうかな?」

 

「はい。それで大丈夫です」

 

デンタさんは駆け足でボールを取りに行き、空いた収納ケースをしまう。フィールドに立ったデンタさんは、審判さんに事情を説明。公式戦のような私試合。審判さんも軽く受けてくれたようで、審判さんが高らかに宣言した。

 

「では、これよりジムリーダー デンタとっ、トレーナー クロメによるジム戦を開始します。両者、ポケモンを!!」

 

「俺の一体目、仕事だ、『レアコイル』!!」

 

「出番だ、『ミカンちゃん』!!」

 

両者同時にモンスターボールが投げられ、開き、そしてポケモンが姿を現した。デンタさんのポケモン、でかいネジが球体のフォルムに捩じ込まれ、U字型磁石が球体の横に手のようにくっつき、球体の中央にあるひとつの目玉。それが『コイル』というポケモンだが、『レアコイル』はそれが3体くっついた状態のポケモン。三位一体とはこの事である。

対して、我が陣営先行者は我らが同士『ミカンちゃん』。白い透き通った髪と、頭の横にあるぴょこぴょこと嬉しそうに動く可愛らしい耳。手首についたモコモコな毛。もふもふな大きな白い尻尾。汚れひとつない純白の改造ワンピースを身にまとったパチリスさん(厨二病)。腰に手を当て、仁王立ちで構えるその姿はまさに偉大である。

 

「わーっはははははっ!!妾っ、ここに推参!!」

 

ビクトリーとVの字を両手の人差し指と中指を前に出して決め、ドヤ顔を決めていく我らがミカンちゃん。

その姿にデンタさんはおおっ、と声を上げた。

 

「まさかまさかの人型とは。いやはや、胸が熱い。より、ワクワクが止まらなくなってきたぞ!!」

 

「ビリーっ!!」

 

デンタさんもレアコイルもやる気は満タンのようだ。

それを見越し、審判さんが声を張り上げる。

 

 

 

「ーーーそれでは、試合っ、開始!!」

 

 

 

今、ワクワクの止まらないバトルの幕が、切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




100メートル10秒台並のスピード展開でありました。
今度はいつになるのかなー、こんな駄作でも見ていてくれる人にはスライディング土下座で感謝したい(真面目)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

やっぱ大人で尊敬出来る人って凄いよね。

………今、いつだ?何時何分だ?

はっ、スマン遅れた。単純に言えばバトルの回想が思いつかなかった事と初めてのバイトで忙しくて仕方無かったのだ。許してくれ。これからちまちまと投稿していくから、よろしく頼む。いや、頼みます。

待っていてくれてた人。バトルの回想を期待してくれていた方がいるかもしれないが、期待を裏切るようですいません。(ネタバレ)


ーーーカチッ、カチッ、カチッ………。

 

時計の針が谺響する。あるのは無数の時計、それを浮かす無の空間。全ての時計が同じタイミングで針を動かし、止まることの無い永遠の時を刻む。違うのは、針が指す時の位置と、針の進む方向のみ。どれも同じ時を刻むものは無く、全てが個の時を刻み進ませる。

 

「ーーー誰だァ?俺んとこの領域に勝手に入りやがったのはァ」

 

ピタリと針が全て止まった。谺響した音は消え、風の音すらしない静寂が無の世界を支配した。

一瞬空間が捩れ、そこから人影が姿を現す。ここに物の概念は無い。あるのは時間を動かす為の道具である世界の時計の数々のみ。物の姿をこの世界で作る事は世界時計以外では無理である。

その影とは別のもう一つの影が姿を現す。

 

ーーーーーーーーーーーー(久しぶりね。元気していたかしら?)

 

声は聞こえない。しかし、影の口の動きから大体の察しをつけた。

 

「そんな世間話のために俺の世界に来たと?……言っとくけどなぁ。俺はお前に協力なんぞしてねぇんだからな。……あの人を、この世界に呼ぶって聞いたから、仕方なく手を貸してやったんだ。態々アイツと組んでまで新しい世界を作らせやがって。もしあの人が、手に入らなかったら、てめぇを完全に()()()やるからよ」

 

影は何も言わない。対面する影からの殺気は本気のものだ。しかし、影は怯えた様子もなく、逆に口元を緩めた。

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーー』

 

影は言った。しかし、もう一つの影は顔を顰めていそうな呆れた態度を取る。

 

「………その割には、楽しげな顔してんじゃねぇか、えぇ?俺達で決めたよな?あの人の人生に関与しないって。ただ、あの人が俺達の元に来れる()()()()()()()しただけのはずだが?」

 

『ーーーーーーーーーーーーーーー』

 

影は言う。影は何かを悟ったかのように片腕らしきものを上げ、指のように影を細くして、そっと空間を押すように動かした。

 

「分かっていると思うが、今お前はあの人の人生を狂わせたんだ。もしかしたら、無いはずのイレギュラーが出たりして、もう一度()()()()事になるかもしれないんだぞ。そうなった時、次は何億何兆回目で当たってくれるか……」

 

『ーーーーーー』

 

分かっていますよと、言いたげな影にフンっと顔を背ける影。ではまた、と言ったかのように、影は空間の中に消えていく。

 

「……最後に、言わせろや」

 

空間が歪み、その中に影が入り込んでいる間際、影が言った。

 

「後悔すんじゃねぇよ。お前が始めて、お前が狂わせた事だ。どっちにしろてめぇは絶対後悔する事になる。必ずな………」

 

ただ悠々と、その言葉を聴きながら影は消えていった。残されたのは、再び取り戻された静寂と、ただ呆然と浮遊する影。

しかし、影はひたすら続く虚無の空間を見つめ続け、脳裏に浮かんでいるであろう先の会話を思い出していた。

 

「……狂わせる、ね。そりゃ、アイツだけってのは筋違いか。人っていう概念の限界を超えさせちまってるからな。こりゃ根回しが必要、かな。アイツらにも頼んでおくか」

 

両手を合わせるかのように影が動き、パチンっと音が響く。それは空間全体に広がるだけでなく、止まっていた世界時計を動かす為のスイッチの役割も果たす。

 

「……さて、まずは最初の根回しだ。死んでくれるな、ーーーさま」

 

1つの時計が、本来正常に動くはずの時計が、狂い始める。

 

誰も知らないハッピーエンドが、誰も知らないバッドエンドに近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーガッハッハッ。いやいや、君とのバトルはとても面白かった。1番、とは流石に言えなかったが、ポケモン達との絆はトップクラスであるな。うむ、将来が楽しみで仕方ない」

 

デンタさんとの試合は白熱した。俺はミカンちゃんとサーヤ、そしてアリアで挑んだ。結果は、うん、まぁ……ぼちぼち何じゃね?1勝2敗という戦果でしたー。これほんとにやって行ける?

 

「俺は物凄く勉強になりました。デンタさん、改めて言わせてください。俺の我儘に付き合って下さり、ありがとうございました」

 

「うむ、もう気にすることではない。珠にはこういう試合もしてみたいのは仕方の無い事だ。ジムバトルは勝ってバッチを取るだけではないのだ。自分よりも遥かに強い強者に触れる。成長への栄養となれた事に、俺は深く感動しているぞ!!」

 

デンタさんのキャラがこういう人でホント良かった。負けても何故かウキウキした感覚が止まらない。この人と戦えて良かったって心底思えてくる。またバトルしたくなるじゃないか。

 

「でも、ほんとに凄かったよ。私じゃまだ追いつけないね」

 

「そんな事ないよ。シロナだって、いつかもっと凄いバトルが出来るよ」

 

「うむ、人には様々な戦い方があるのだ。焦らず自分のスタイルを見つければいい。そして何より、俺は将来また君たち2人とバトルしてみたいな」

 

シロナは驚きを隠せなかった。デンタさんの口から俺だけでは無く、シロナの名前もあがったからだ。

 

「わ、私も良いんですか?」

 

「当然だろう。君は彼の近くにこれからもいるのだろう?ならば、君は彼の成長を見ながら自ら成長出来るはずだ。更に言えば、『メガシンカ』とは己とパートナーとの絆を深く結んでいなければならないのだ。生半可なものでは『メガシンカ』なぞ会得出来ん。だからこそ、『メガシンカ』を会得するであろう君ともバトルしてみたいのだよ」

 

「ありがとうございます!!私も、精一杯頑張ります!!」

 

「うむっ」

 

結論。デンタさんはめちゃくちゃいい人。

この世界に来て初めて人間性として、トレーナーとして、憧れを持ったかもしれない。デンタさんの性格もそうだが、俺の我儘を笑顔で聞いてくれる器の大きさ。これは流石に真似出来ない。俺だったら、何だこのガキってなっちまうだろうから。そして何より、戦っていないはずのシロナにも期待をしてくれていた。俺達は必ず『メガシンカ』を会得出来ると。そうデンタさんは思っていてくれているんだ。ならば、その期待に答えるしかない。絶対に、俺達は『メガシンカ』を会得してみせる。

そう思いながら、俺達はミアレジムを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




めちゃくちゃバトルの回想悩んだ。どうしようどうしようってめちゃくちゃ悩んだ。学校行ってもペン持ってそれをずっと考えてた。
ごめんなさい、ホントごめんなさい。
あの展開絶対バトルするじゃんって思っていた人大半だと思いますけどごめんなさい。

あ、でも、それでも俺はこの作品を待っていた方達に大きな大きな感謝をします。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

頭のネジは3本消えた(な、何を言ってるのか俺も理解出来てねぇ……

んんんー、引越しすると、寂しいね。
ホームシックがやばいね。寂しさに押しつぶされそうだよ。

待たせてすまぬが、話は全く進まない。
そして何より、サブタイマジなんにしようか考えられない。

待たせたなぁ、諸君。
お気に入り登録何気に400半分超えてるってなんか嬉しいね。ありがと諸君。

では、長話もなんだし、どうぞご覧あれぇ。


ーーー夢を見た。

 

空に浮かぶ燦々と輝く、灼熱の太陽。それを呑み込む嵐と豪雨の集合体。まるで全てを吸い込むかの如く、圧倒的な引力でそれを大きくしていく。

その真下。手を掲げ、操るかのように手を動かす人影に、何故かノイズが走る。

だがそれは何故か心に引っ掛かりを感じさせる。ノイズがかかっている為か、ハッキリと考えられない。

 

その人影が動いた。右手をお腹に置き、まるで妊婦がお腹の中にいる我が子を愛でるような手付きで撫でている。

慈愛に満ちた目をしている。蕩けるような妖艶の笑みを浮かべているように見える。顔の部分のノイズが途切れ途切れでかかり、若干の顔の表情が確認できた。

 

視界が振れた。どうやら倒れ込んだらしい。地面に横倒しになり、視界が赤くなっていく。

 

人影が動き出した。腕らしき物を動かし、体の前で両手を合わせるような動き。すると光が生み出され、両手の中に少しずつ大きくなる光の玉が現れた。

人影はゆっくりと両手を離し、優しく宙に解き放つ。光は一気に大きくなり、やがて人型のような形を取り始める。

 

すらっとした脚。引き締まった細い腕。キュッとしたウエスト、おわん型の大きめな胸部。女性の身体に変化しているのがひと目でわかった。やがて薄れ、まるでガラスが砕けるように光がパリンと割れていく。

脚には頑丈そうな膝を護るゴツゴツした黒いプロテクター。その下には下半身全体を覆う体のラインを強調した黒タイツらしきもの。腰には黒鉄のように硬そうで光沢のあるミニスカートのような服。手には黒い篭手。上半身は黒い長袖のインナーを着て、胸部にはたわわに実ったものを申し訳程度に上に押し上げている黒いプロテクター。おへそ部分が顔を見せ、そのキュッとしたお腹周りから色香を感じる。身体を軸に周りをユラユラと漂う黒く長い髪を束ねた姿は、異性が見ただけで絶頂するであろう。無論、全身から見るだけで分かる異性を興奮させるその色香は、俺の思考を溶かし、本能のままに行動させようとしている。

 

 

だが、顔を見た瞬間に止まった。止まってしまった。まるで時が止められているかのように。

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

声にならない音が耳に届いた。ノイズのかかった人影が女の子となった光の玉に何かを言っているのか、それともこちらに言っているのか。しかし、そんなことは今はどうでもいい。今目の前の事しか考えられない。

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

 

あの女の子の顔。どう見てもーーー。

 

 

 

 

 

 

ーーー俺の顔なのだ。

 

 

 

その考えが浮かんだ瞬間、俺は重たい身体を動かす。何故俺と同じ顔なのだろうか。女の顔にするのなら、絶対こんな顔だろうと言う俺の考えと全く同じ顔。めちゃくちゃ整った顔をしているし、めちゃくちゃ可愛く見える。

両手で顔を何度も確認して宙を浮く女の子の顔を見る。

何故か、触っている顔が、俺の顔では無い。こんなに鼻もスっとしていないし、こんなにもハリのある肌なんてしていない。

 

ふと、まだ赤くなってない視界に金色の髪が写った。俺は、ゆっくりとその髪を掴む。少し引っ張ると頭に痛みを、髪の毛が引っ張られる感覚がした。

 

違う。これは俺の身体じゃない。

 

一瞬のうちに何かが覚めるような感じがした。込み上げてくる恐怖が。怖さのあまり身体が無意識に震え上がる。

 

間違いなく俺のでは無い。

 

疑問が浮かんだ。と、瞬間に、視界が一瞬にして真っ暗に染まる。

 

理解出来なかった。あの光となって出てきた女の子は俺の顔に似ていた。だが、俺の身体は俺のでは無かった。

 

じゃあ、俺が見ていた光景は、一体誰の光景なんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーうふふふふっ。狂おしい程、愛おしく思っております。

 

ーーー貴方が私のモノになるまでは……、

 

 

 

 

ーーー何度でも、世界を代えてやりますわ。

 

 

ーーーだから安心してください。

 

 

 

ーーー○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡○○○様♡ーーー

 

 

ーーー愛しております、○○○様♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーハッ。……はぁっ、はぁはぁ………」

 

悪夢を見たような気がした。身体を嫌な汗がつたっている。内容は思い出せないが、何かとてつもなくやばいものだと理解出来た。

息を整え、呼吸を落ち着かせる。深呼吸をして、緊張を解す。

 

時計を確認。午前二時。完全真夜中である。

昨日はシロナとミアレシティを観光した。手持ちのポケモン達が拗ねていたが気にしない。まぁデートみたいなものなのか?オシャレなカフェや洋服屋を色々回った。ホテルに戻り、出発の準備を整えてから就寝。その就寝時間は大体十一時頃。夢を見たせいか長い時間眠れなかった。

 

とりあえず、このベトベトな身体をシャワーで流そうと、ダブルベッドから降りようとした時、ギュッと右腕の裾を掴まれる感覚を感じた。

見ると、寝ているはずのシロナが心配そうな目でこちらを見ていた。

 

「眠れなかった?」

 

「いや、変な夢見ちゃったからさ。叩き起された」

 

「……そう」

 

掴んでいる手を離そうとそっと両手で解こうとする。が、逆にシロナは指を絡めてきた。何事かと思った瞬間、ギュッとシロナが俺を抱き締めてきた。

 

「凄い夢だったんだね。クロメの顔、酷い顔してる」

 

「……まぁ覚えてないけど、多分相当やばかったと思う。全身ベチョベチョさ」

 

「怖くて眠れない?」

 

「いや、シロナがこうやってくれてるから、今は全然怖くないよ」

 

「ふふっ、何だか前よりも正直に言うようになったよね」

 

「そうかな?でも、シロナが俺に好意を抱いてくれて、俺にぶつけてくれたから正直になれたのかもな」

 

正直乙女心の『お』の字も知らなかった俺。今はまだ『な』の字までしか理解出来てないと思っているが、女の子がどういう言葉掛けで喜んでくれるとかは全く理解出来てないまま。

無意識だが、俺はシロナに『変わった』と言われる程変わったのかもしれない。

 

「……クロメ。やっぱり明日も休も?クロメがそう言ってるから大丈夫だと思うけど、あんまり笑えてないよ?」

 

どうやらさらに心配されるような顔をしていたらしい。無理矢理笑顔を作ろうとすると何だか苦笑いになる。

 

「大丈夫……、でも無いか……。ごめん、シロナ。怖くないって言ったけどやっぱめちゃくちゃ怖いや」

 

「夢の内容は覚えてないのに?」

 

「うん。こう、なんだろう。背筋が凍りつくような感じだし、鳥肌が立ってる。後、なんか気分が悪い……」

 

背筋を凍らせるような夢。鳥肌が立つようなおぞましい夢。夢で片付けられるならいい。だが、何故か夢だけの話では終われないような気がしてならない。その事に俺は恐怖している。

 

「落ち着いてクロメ。大丈夫だよ、私が、私達がついてる。なんにも心配しないで?」

 

ギュッと抱き締めてくるシロナ。柔らかな身体が俺の身体を刺激し、甘い香りが鼻を撫でまわす。蕩けるような甘い声で耳元で囁かれ、俺は気分を少し落ち着かせることが出来、シロナをもっと感じるために、身体を更に密着させようと後ろに手を回した。

 

「とっても幸せ?嬉しい?」

 

「ああ。とっても嬉しいし、幸せを感じられるよ」

 

「……クロメ。いいえ、クロメ君。私は今、幸せだよ?」

 

「ああ、シロナちゃん。俺も今、とっても幸せだ……」

 

「……なら、もっと幸せになろ?」

 

そのまま俺を押し倒す感じで体重をかけてきた。案の定俺は後ろに倒れるしか無く、シロナにマウントを取られる形になった。

 

「今はいっぱい甘えて?クロメ君の為なら何でもしてあげる。何でもしてあげられる。今はとことん甘えて欲しいな?」

 

「ははっ、嬉しいよ。でも俺はシロナちゃんに甘えられてる方がもっと幸せを感じられるよ。シロナちゃんの笑顔を、蕩けた顔を甘えた顔を、嬉しそうな顔を見てると、俺は物凄く嬉しい。俺が甘えるよりも、シロナちゃんが甘えてくれた方が、俺は嬉しいかな」

 

「いつもよりクロメ君は弱気だ。ふふっ、でもいいの。クロメ君はいつでも頑張ってるから。たまには弱気な所も出さないとね。じゃあまたクロメ君に甘えちゃってもいい?」

 

「勿論だよシロナちゃん。いっぱい甘えて、いっぱい甘やかせてくれよ」

 

「……だーい好き。私、幸せ過ぎて狂っちゃう……」

 

「この前狂ってた人が何を今更。シロナちゃんが望むのなら、俺が幸せを与えてもっと狂わせるよ」

 

「……あぁっ、もう、もうもうもうっ。好き好き好き好き好きっ。クロメ君の事が好き過ぎて仕方ないよっ。心の底からクロメ君を欲してるっ……。クロメ君を見てるだけで理性が飛びそうだよぉ……。あぁ、あぁっ、クロメ君クロメ君クロメ君んんんっ。……私を見つめないでぇっ。見つめられたら、身体が火照っちゃうぅ……。クロメ君…、もう我慢できないよぉ……、一緒に蕩けよぅ……?」

 

「……シロナちゃんっ」

 

シロナちゃんの顔を引き寄せ、その唇に俺の唇を重ねる。熱く深く濃厚な時間。お互いがお互いを求め合い、啜るように舌吸い上げ、舌を口内に侵入させ歯を舐め合う。お互いがお互いの顔を掴み離さないと言わんばかりの勢いで重なる。呼吸は鼻。体の密着度はほぼ100%に近い。脚を絡め合い、シロナちゃんが完全に身体を俺にのせている。

終わる事の無い熱い交わり。鉄をも溶かし兼ねないその重なった唇は、まさに野獣の如し。

 

「……シロナちゃん。シロナちゃんっ……」

 

「……んあっ、クロメ君っ、クロメ君クロメ君クロメ君クロメ君クロメ君んんんっ………んんっ。あいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅあいちてりゅぅううっ……」

 

呂律の回らない口を動かしそう呟くシロナちゃん。その目にはハートの形が浮かんでおり、顔は完全にトロ顔。穴という穴から体液が流れ、特に鼠蹊部当たりがびちゃびちゃに濡れている。幾多も唾液を交換し、その都度シロナちゃんが俺に向けて蕩けた顔で愛を語る。壊れた機械のように、何度もラジカセをリピートしているかのように。それでいて、愛おしくも狂おしくも感じるシロナちゃんを更に俺は溶かしつくすのであった。

 

お互いに服を脱がし始め、月明かりが照らす中、俺達は何度も何度も1つになって蕩けていった。お互いがお互いを求め、欲し、欲望をぶつける。俺はとことんシロナに甘え、シロナは俺に蕩けていった。

そんな、ミアレシティ最後の夜であった。

 

 

 

 

 

尚、朝起きるとカンカンに怒ったポケモン達がベッドを囲んでおり、全員からの説教を1時間以上かけて2人で受けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミアレシティを離れ、荒野地帯である13番道路を横断している。横風がヤケに強い。ゲームをやっていたから分かるが、本物を浴びてみるとやばい。ぎゃー目に砂がガガガっ。

 

当面の目標はあるが、今はジムに挑む為にヒヨクシティに向かっている。ポケモン達は砂煙でダメージを受けてしまうのでモンスターボールの中に退避。はがねタイプをもつアリアとじめんタイプのカレンはモンスターボールの中には入らず、俺たちの横でポケモンが来ないか見張りをしがてら、それぞれのトレーナーに甘えている。

 

( ∩≧Д≦∩) ンア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙~~!アリアたんマジカワユスぅぅうううっ!!

ツンツンデレデレな所とかまぢカワユス過ぎるぅぅぅうううっ!!

 

アリアは今俺の腕の中。クチートの身長平均よりも2倍ある身長だが、小学生レベルなのは言わずもがな。ならば、腕の中で甘やかすのが一番だろう。

さっきはホテルでやばい程叱られたが、今は機嫌を直してくれている。んんんっ、デレデレなアリアたんマジカワユス。

 

最近はめっきり可愛いがることが出来ず、スキンシップを疎かにしてしまった。確かにシロナは可愛いが。天使だが。俺の彼女だが。この子を差し置いては何事か。シロナは愛に狂った天使。アリアはテンプレツンマシマシデレ多めの女の子。みんな可愛いじゃダメ?俺独り占めしたい。え?重婚は認められてる?やったぜ。

 

「……ちょっとクロメ。撫でる手が止まってるわよ。仕方なく撫でられてるんだから、ちゃんと撫でなさいよね」

 

んほぉぁっ。ツンデレデレ頂きましたぁ。うんやばい、もう一杯。

 

「俺はもう撫でるのは満足したんだけど。アリアは満足してないの?」

「ししししてるに決まってるじゃない!!もういいわっ、触らないで!!」

 

(○゚∀゚)ガハッ∵∴ やはりツンデレデレはいい。そうやって自分の感情を恥ずかしがって出さないアリアたんマジhshs。

 

「んーやっぱ、まだ満足してねーわ。もっと撫でさせて?」

「しししし仕方ないわね。しょうがないから撫でさせてあげるわ。こ、これは、クロメが撫でたいって言ったから仕方なくそうしてるんだからね!!」

 

この即答で答えてくる所、嫌いじゃねぇ、です。いやむしろいっぱいチュき。

(ºдº)アッー!!!!↑んもぉんもぉんもぉんもぉんもぉんもぉんもぉんもぉかぁーわぁーいーいー!!

そのプリチーなお顔とか華奢な身体のくせに人間絶対殺せるウーマンなところとかツンデレデレなデレの多いところとか甘えたくても甘えられない日々頭の中で葛藤してる所とか俺の嫁発言にめちゃくちゃ喜んでる所とか妹みたいにお兄ちゃんって呼んでみたい願望ある所とかつぶらな瞳とかーーー※現在、安全防止のネジが3本抜けております。よって、このようなとち狂った言葉が出てきますが何卒、哀れんだ目で見てやらず、可哀想な人を見るような目で見て上げてください。え?哀れみと可哀想な人を見る目ってほぼ同じ?知りませんね(すっとぼけ。

 

 

あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ、アリアたんマジカワユスぅぅうううっ!!

 

 

「……クロメ君が、クロメ君が他の女をだきしめてるぅぅ」(嫉妬目

 

「……重婚、か。シロナと一緒に、私も貰ってくれるだろうか……?」(若干の期待感

 

 

 

 

 

 




さぁーて、次の投稿はいつになるのやらぁー。
もう少しで学校始まるので、それに慣れてからまた投稿しまぁす。
待ってくれてる人にはマジで感謝。

感想とか、今後の話を自分なりに考察してみたとか、そういうの送って欲しいかもな。もしいいものだったら、話の中で使わせてもらうかも。
あ、ブーイングはなしね。わたくしメンタル弱いから。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一冊の本は幸せの形を押し付ける

まぁ一応生きているっていう証明です。
中々に時間が取れない。勉強やばい。
法律だの衛生だの栄養だの覚えること多過ぎぃ。

更新はまた未定になる。


1人でに一冊の本が開いた。

 

そこから、飛び出す形で少年のような形をした紙が現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

1人の少年がいた。

 

その少年は困っている人を見かければすぐに傍により、逆に自分が困っていたら他人に協力を仰ぐ。偽善者でもなく、悪役でもなく、人に不快感を与えないよう、天秤でバランスを保っているような性格をしていた。

 

他人に自分の責任を押し付けるのは横暴であり、他人を助けて正義の味方ずらしているのは偽善者である。

 

少年は無意識にそのバランスを保ち、人を炊き寄せる何かを無意識に周りに送っていた。

 

 

が、そんな少年は1つの壁にぶち当たる事になる。

 

 

自分の周りに助けを乞う人がいなくなったのだ。更には、何故か少年にまるでその分が押しつけられたのではないかと思えるような不運が一斉にやってきたのだ。

 

普通の人ならば、いつもの如く他人に協力を仰ぐだろう。

 

が、少年は違った。協力を申し出ることが出来なかった。

何故か。理由は簡単だ。

 

少年は今までバランスを無意識に保っていたはいたが、いつしか自身の感情がそのバランスを崩すことに対してストップをかけるようになったのだ。

 

ーーー自分は何も他人に出来ていないのに、何故自分の分を手伝って貰おうと思ったのか。それは駄目だ。それは余りにも僕が我儘だ。今彼らは困っていないのに、これを手伝ってと言えば、まるで僕が悩みの原因になってしまうじゃないか。

 

だから少年は何も言わず、何時もの雰囲気で何気なく生活し、自分に降り掛かる不運を少しずつ払っていくのだ。

 

良くいえば、他人に迷惑を掛けたくないという意思の強い少年。

 

 

悪くいえば、他人に甘える事が出来ない、可哀想な少年なのだ。

 

 

それは、例え自分が壊れてしまうとしても、この生き方だけは変わらない。変えられない。変えることが出来ない。

 

変えられるとすれば、それは少年が死ぬ時だけだ。

そうすれば、その呪縛から解き放たれ、少年はそんな感情に呑み込まれることなく、上手く行けば輪廻転生で新たな人生を歩むことが出来るかもしれない。

 

少年はそんな事を知る由もない。知る術がない。

ならば誰が少年に教えるしかない。少年の生き方に、少しアドバイスをするのだ。そうすれば少年は少しでも心が楽にーーー『ーーーーーーーーーーーーーーー(させる訳ないじゃないですか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『|ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー《分かっていませんね。どんな事が起きようとも、あの方にその事を教える必要等ないのです》』

 

 

 

 

 

『|ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー《そんな事、貴方が作られる前から記憶として、深く深く刻まれていたでしょ?》』

 

 

 

『|ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー《余計な事は考えないで。計画はもう少しで決行されるわ。》』

 

 

 

『|ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー《今はとても忙しい時なの。貴方の役目、忘れているわけじゃありませんよね?》』

 

 

 

『|ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー《今の貴方の状態で、どれだけのゴミが捨てられるかは作った私でも分かりません。ですので、貴方は今よりも更にレベルを上げていただかないと困るのです》』

 

 

 

『|ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー《貴方もあの方とずっと一緒にいたいと考えない日などないのでしょう?ならばその夢の実現のため、今出来ることを想像してみなさい》』

 

 

『|ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー《想像してみなさい。毎日があの方の声、匂い、心、気持ちで満たされる自身の体を。これ以上ない快感ではありませんか?……あぁっ、ああああっ、なんと素晴らしい光景なのですか。久方ぶりに滾ってきてしまいますわぁ》』

 

 

『|ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー《……ふふっ、やっと分かった顔をなさいましたね。そうです、そうですその顔です。その盛った雌の如く発情しきった身体を慰めたいのでしょう?今は自分の指で我慢しなさい。……もう少し、もう少しよ……》』

 

 

『|ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー《………貴方は欲に忠実でとても嬉しいわ。裏切った三日月はもう捨て置くとしても、もし邪魔だてするようであれば迷うこと無く殺しなさい。そうすれば、危険分子はいなくなる。そうすれば、あの方は私達の元に………あぁっ、ああああっ、んんんっ、身体が火照ってきてしまいますわぁっ》』

 

 

『|ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー《という訳で、分かりましたね?既に他のものは動いています。貴方もここで油を売ってないでしっかり自分の役目を全うなさい》』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー少年は今幸せなのだろうか。

 

それは今私達が考えるには些か難しいものだ。

 

人の幸せは人それぞれ。他人を巻き込もうが他人が幸せだと思えるのなら、喜んで自分も幸せになろう。

 

では、少年が幸せになるにはどうすればいいのだろうか。

 

答えは簡単ではないか。

 

 

ーーーワタシタチノモノニスレバ、ショウネンモキット、シアワセニナレルハズダ。

 

 

 

マッテイテクレ、愛シイ愛シイ私ノゴシュジンサマーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本はまた一人でに閉まった。

 

今度は、開いた時よりも固く、頑丈に。

 

まるで、絶対に逃がさないと言わんばかりの、束縛であるようにーーー。

 

 




一体、読み手は何ーライさんなのか。
そして中断させた声は一体何造神様なのか。

謎はフカマルフカマル厳選。


んんん?なんぜルビがしっかり機能してないと?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

誰がどう生きるかは人それぞれだが、それを他人がどう思うかなんて分からない

タイトルの意味不感……。
まぁタイトルなんてなんでもいいです(丸投げ。

一気に書いたんで誤字脱字あるかもしれないが気にしないでくれ。
マジ話が済まないからとりあえず駆け足で進んでいくぞい。




超えなければならない壁というのは、生きている中で1度2度など起こりうる事だ。

それが自らの生涯にどう影響するか分からないし、結果的にどういう結末になるのかなど、中途半端でなく生涯の終着点まで考え抜いている者など、生きとし生けるものには誰一人居ないだろう。

ただ日々の生き方が当たり前なのだと疑う事など1つもせず、自身の事だけを考えた生活を送る。

これが当たり前だ。当たり前なのだ。何度も言うが、これは当たり前なのだ。

 

もしこれが、()()()()()()()()()()()()()()()事も気付かないまま生涯を生き抜いたのなら、どう思うだろうか。

驚愕だけで済むものもいるだろう。少しばかりの怒りが込上げるものもいるだろう。

 

だがそれは、物語に関わりが薄い者達が受けるものだ。劇場の脇役は大して活躍しないから終わりも呆気ないことと同じで、彼らが思うものは要は主役を引き立たせるための前座に過ぎないのだ。

 

では、その主人公はどうなるのだろうか。

植え付けられた世界にいる主人公は、どう感じるだろうか。

脇役同様たったそれだけの感情で済むのだろうか。いや違う。かの者は主人公という存在だ。脇役が引き立たたせたものをたったそれだけで終わらせるなどありえない。

 

ではどうなるのか。答えは簡単だ。

 

 

要は、他のものよりも()()という果てしない暗闇に落とされるだけなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーこれからの方針を改めて考えてみよう。

 

クロメがそう言った。

 

ヒヨクシティに着いたものの、ヒヨクジムは閉まっていた。

仕方ないため、このままマスタータワーを目指すことになった一行。

正直言ってまだ実力的に足りないのはクロメ自身、そしてそのポケモン達自身、ミアレシティでの戦いで痛感している。

10歳だとか、潜って来た修羅場とか経験とか、色々と足りない物がクロメ達にはある。

それは、一瞬で解決するものではなく、時間と努力がゆっくりと解決していくのだ。だがクロメはそれを分かっていてカロス地方に来た。

 

何故彼がそれを分かっていてこの地に来たのかは()()()分かっていない。が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と頭の中でそう言ってくるのだ。

 

それに今も不思議と()()に感じていないのは、彼のそばに居る()()が邪魔をしているのかもしれない。

 

まるで掌で踊らされているようなクロメの行動は、このまま止まることがないだろう。

だが、これが()()()()なのだ。

彼がしたいと思った事をする。それは自身を満たすことが当たり前であるこの世界では常識だ。

 

この当たり前の事が、生涯どう影響するかも分からないが、彼は必ず絶望し、選択する事になるだろう。

 

それがどうであれ、傍観者は見守るしか出来ないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジム閉まってたね」

 

「……まさか閉まってるとは。予想外だわ……」

 

ヒヨクシティを出て、12番道路に差し掛かっている俺たち一行。

ジムが閉まっているのはホントに予想外であった。

なので、片っ端からトレーナーにデメリットなし(現金支払いなし)のバトルを仕掛けまくり、少しでも皆との連携(メガシンカ組を優先)を意識してバトルに望んでいた。

 

エリートトレーナーはホントいい相手だ。ハズレがない。さすがエリート。美人も多いし可愛い。

……こんな事口走ると隣のダメナさんにお仕置きされるから言わないけど。

 

短パン小僧は……あれだ。頑張れと言っておこう。

 

チラチラと見える海を眺めながら足を運んでいるが、長閑過ぎて眠くなってしまう。

が、マスタータワーまでは気を引き締めなければならない。

()()()()()()()()()()()()()メガシンカを獲得しなければならないと強い意志として心の中で熱く燃え上がっている。

シロナもやる気だし、絶対にメガシンカを獲得したい。

 

思ったんだけど、メガストーンって幾つあるのだろうか。

メガシンカ出来るポケモンの数はゲーム内では決まっていたし、獲得出来る数も交換とか使わない限りは1個しか手に入らなかったが、この世界ではどうなっているのだろうか。

興味はある。シロナに言ったら調べてくれるだろうか。

 

「なぁシロナ」

 

「ん?どうしたのクロメくん」

 

恋人繋ぎを迫ってきてハイライトオフで脅迫してきたシロナにさっき思った事を口にする。

 

「……確かに、メガストーンの数とか興味はあるわね。というか、一時的な進化っていう進化論を無視する能力がそもそもの話興味を尽きさせないわよね。考古学者になるついでにそういう事も調べてみようかしら」

 

中々の乗る気で有難いんですけど。流石プラターヌ博士の妹弟子……だったけ?うん、流石だ(すっとぼけ。

 

「あ、勿論そうなったらクロメには遺跡の調査とか色々手伝って貰うからね」

 

「お安いご用さ。メガストーン全部使ってみたいしね」

 

やはりメガシンカを獲得した後はメガシンカ出来るポケモンを全部使ってみたいものだ。

 

そんな、将来に花を咲かせながら、マスタータワーに向かうのだった。

 

 

 

シャラシティまで、あと数km。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界の改変までのカウントダウンは、止まることがなくなったーーー。

 

 

 

 

 

 




次の投稿は未定


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

己の事が理解出来ていないものは、はっきり言って弱い

サブタイん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"。

書いてて思う謎進行。書いてる最中にどんどん後の設定が後付けサレテイクゥゥ。


映画見ました?今回の映画見て思ったんだけど、ピカチュウ泣く時って絶対感動出来る(確信


聳え立つそれを見た時、自然と心の底から沸き立つものがあった。感動、喜び、感激、幸福感。ゲーム内でしか見れなかった其の姿を見た瞬間、クロメの背筋を震えさせる程の感情を与えた。

 

かの塔は『マスタータワー』。長きに渡りメガシンカを伝承してきた由緒正しき聖塔。海を背にそびえ立つそれは、途方も無い可能性が広がっているようにも思える。

 

ついにクロメ一行はシャラシティに到着し、マスタータワーを前にしていた。

 

「………ここがマスタータワー」

 

「……凄い迫力ね。不思議な力を感じるわ」

 

近くに拠れば分かる程の迫力。そして身体全身を震わせる不思議な力。これがマスタータワーだと、これこそがメガシンカをて伝承する聖域なのだと、クロメとシロナは自身の体と心で理解した。

 

「……すげぇ、足がなんか竦んでるよ」

 

「疲れたからって、訳じゃないわよね。初めて見たわ。クロメがそんなにも取り乱してるなんて」

 

分からなくもないけど、と驚きを混じえた笑みを浮かべたシロナに、クロメは小さく苦笑い。

人は緊張すると身体が硬直状態に陥るが、クロメのそれはまだ硬直状態の手前気味だ。

 

「正直ここまでとは思わなかった。覚悟してたけど、流石天下のメガシンカ伝承地だ」

 

ピリピリとした空気の震えを肌で感じ、自然と冷や汗が流れる。

 

「……入ろう。ここからが正念場だ」

 

重くなった右足を前に出し、1歩1歩と歩みを進める。

緊張からくる鼓動の速さを抑えようと両手を力強く握り締める。

マスタータワー内部へと入っていくクロメとシロナは、覚悟と強い意志を持って進んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず目の前に見えたのはメガルカリオの巨大な象だった。

神々しく佇むその姿は正しく歴戦の覇王。彫刻からでも伝わる究極の肉体美と覇王のオーラ。正にメガシンカとして形作っている象徴とも呼べる。

 

そして上を見上げると螺旋状になった階段と真っ直ぐに上に伸びた塔の内部。チラホラと踊り場があるが数多い訳では無い。

原作のように最上階はカロス地方を見渡せる程の光景が見えるのだろうか。

 

「……凄い」

 

「これが、メガルカリオ……」

 

圧巻だ。初めての体験だらけな旅であるが、これ程までに強い体験をしたのは初めてだ。

口を開く事しか出来ない2人は、メガルカリオの彫刻を穴があくほど見つめていた。

 

 

「ーーー何か、ようかな。若人達よ」

 

 

メガルカリオの象の背後から声がする。

一瞬驚いたが、その声の主が誰かはクロメはすぐに理解できた。

 

「ここはメガシンカという、新たな進化を伝承する聖域。遊び心で勝手に来られては行けない場所なのだ。悪いことは言わん、立ち去るがいい」

 

声の主が姿を現した。

アニメとは違い若いからか、全体的に筋肉質で体も大きく思う。引き締まった体に、特徴的な眉毛。貫禄がありすぎる雰囲気と、絶対なる覇王のオーラ。一目で確信した。目の前にいる一人の男こそ、あの人なのだと。

 

「俺達は、そのメガシンカを伝承するために来ました」

 

「……伝承、だと?」

 

男の目が細まる。鋭い眼光で見つめているのは心か態度か。どちらにしろ、男は怒気の篭った視線を向けてくる。

 

「貴様らがなんの為に来たのかは分かった。が、その目的を果たす事は出来ん。尚言えば、()()()を持っている貴様には絶対に教えられん」

 

「……えっ?」

 

ピシッとクロメの方を指さす男。クロメは、咄嗟のことに唖然とした。

 

「……ど、どういう意味ですか?仰る意味が分からないのですが……」

 

「言葉通りの意味だ。それを捉えることは、ワシではなくお前自身のはずだが?」

 

呆れとともとれるため息と共に、男は背を向けた。

 

「何故わしが言った意味が分からない。たった一つ、たった一つの事が何故わからない。貴様には圧倒的に欠けているものがある。メガシンカは言わばポケモンとの絆。しかし、それ以前に、人間として、伝承者になるものの志として、貴様には必要なものがある。だから貴様は弱いと言われるのだ。笑わせてくれる。そんな弱さでよくもまぁここに来れたものだ。恥を知れ」

 

クロメとシロナは男の言う弱さが分からなかった。更に言えば、シロナはクロメの何が弱いのかと、心の底から怒りが込み上げてきた。自身を救ってくれた想い人。それを貶されるのは彼女自身が許さなかった。そしてクロメはーーー。

 

 

ーーー否定したいのに、否定出来ない………。

 

 

男の言葉に対し、クロメは否定の声を上げようとした。が、何故かその全てが心に響く。まるで正論を聞かされているように。まるで男が正しくて、間違った考えを正してもらっているかのように。

ただ一言、違う、と口から発せられない。自分は弱くないはずだ。だが否定する事が出来ない。クロメは葛藤を味わっていた。

が、男は更に畳み掛けてくる。

 

「間違いを正すことはしないが、迷えるメリープだ。ヒントを教えてやろう。その弱さは己の近くに必ず存在する。だが、これを否定してはならない。否定ではなく考えを改めろ。それが分からないのなら永遠に貴様は弱い餓鬼だ」

 

益々、クロメには分からなくなっていた。否定するものでは無い?改めろ?なんの話しをしているのだ?頭の中で男の言葉が縦横無尽に駆け巡る。

 

「後は、自分の力で何とかするがいい。今の貴様は、隣の小娘にすら()()()

 

その瞬間、シロナが前に立ちボールを放った。飛び出したボールからポリゴンと共に現れたのはカレンだ。

 

「待ちなさい!!クロメが弱い筈ない!!クロメは私のヒーロなんだ!!」

 

「ヒーローが必ずしも強いとは限らない。それとな、小娘。()()と言われて反論せず、あろう事か女の後ろに隠れるだけの餓鬼など、弱いと思われて当然なのでは無いか?」

 

ハッとして、自分の立ち位置を見る。クロメ()()も数歩前に立っていた。

 

「ーーーっ!!うっさいうっさい!!クロメが弱いはずないでしょ!!」

 

「事実だ。それに小娘、貴様が怒ると余計に弱く見えるぞ」

 

グッと心臓に杭打たれる様な思いを味わう。

シロナは何も言い出せず、クロメの横までゆっくりと後ずさった。

 

「小僧。貴様にはもう何も言わん。その小娘を連れて、とっとと去るがいい」

 

「……っ、待ってください!!俺はーーー」

 

 

 

瞬間、男が遠ざかっていく。

 

 

何が起きたのか理解出来なかった。

 

 

更間を空き、自分達が後ろに飛んでいるのだと理解した。

 

 

 

刹那、胸辺りがまるで強打したような激しい痛みを受けた。

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーー」

 

 

 

 

 

既に見る価値すらないと、言われたかのような眼光で、男はクロメの視線から消えていった。

 




書いてる側からも何書いてるか分からない。

大雑把に書くと、

クロメ一行マスタータワーに入る

現れた謎ブルさんに目的を話す

謎ブル「貴様は弱いンゴ。自身の弱さを自覚しろンゴ」

シロナ「クロメは私のヒーローンゴ」

一行外に放り出される。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

独りは、時に平穏を求める為に欲する

時間を指定して初投稿。
筆が進んだので書いていくぅー。

感想で主人公優遇過ぎない?的なものを頂いて、返答ではあーやって描きましたけど、ちょっと考えていたものを捻りました。
まあ結局優遇になるかもしんないけど、そんなの是非も無いよね(すっとぼけ)


いつの間にか、景色は青空に広がる空の下だった。

今だ打ち付けたような激しい痛みに顔を顰めるが、砂浜に転がされた体をなんとか起こし、痛みのある箇所に目を向けた。

 

服はなんともない。では服の下。捲ってみると、赤く腫れた皮膚が痛々しく現れた。思わず痛みが更にこみあげてくるのですぐに服を下ろす。

 

クロメは脳裏で何が起きたのかと思考を回す。

クロメはあの男、多分だがコンコンブルブルと話をしていた。……一方的な論破発言は置いておくとして、何故いきなり吹っ飛ばされた?

何が飛んできた訳でもない。かと言って、誰かが目の前に現れた訳でもなく、一瞬、一瞬だ。刹那の瞬間に身体が後ろに吹っ飛ばされていた。

 

クロメはここで一つの仮説を立てた。

あの時クロメ達を吹っ飛ばしたのは()()()()なのだと。

コンコンブルの相棒はルカリオであり、そのルカリオは相当強い。『しんそく』でクロメ達の前に一瞬に現れ、その余波で威力を弱めた『はっけい』で後ろに吹き飛ばす。

ほぼ核心を突いたような仮説のように感じるが、原作知識を持ったクロメだから立てられる仮説。実際熟練者であるが、現実的に音速を超えたスピードで音もなくあらわれ、その力を一切使わない軽めの『はっけい』が出来るのかと思うところなのだが、ここはクロメから言ってしまえば超次元の世界だ。前世に比べパワフレが激しく、物理法則を無視した現象をいくつも起こすこの世界では至極当たり前なのかもしれない。

 

では、仮説を立てられたことで、次は自信に振られたあの言葉を思い出す。

 

『弱い』。

 

クロメにはこの言葉の意味が全く分からなかった。

弱いとは、精神に捉えるのか、肉体的に捉えるのか。意味合いは様々あるが、クロメにはそんな深く考えられるほど心境は穏やかではなかった。

 

頭を抱える。この世界に来て初めての挫折感。

やっと手の中に納めることが出来ると確信した事が一瞬にして離れた。

謎が謎を呼ぶとはこの事だ。考えれば考える程分からなくなる。

 

コンコンブルは言った。考えを改めろと言った。考えとはなんなのだろうか。改めろとはどういう事なのか。

考えている事、それを考えるとクロメは幾つか思いたあるフシはある。が、改めるとなると途端に分からなくなる。

 

まるで、当たり前だからと考えているから全く気にしていない様な感じがする。

 

「……はぁっ、さいっあくだ……、マジ……なんなんだよぉ……」

 

普段吐かない弱音がついポロッと零れた。順調だと思っていたクロメたちの旅は、ここへ来て最大の難関にぶち当たった。

 

「…………んっ、クロメ……?……っ、クロメ!?大丈夫!?」

 

少し離れた場所に倒れていたシロナが目を覚まし、四つん這いでクロメに迫った。

少々髪が乱れているが、今の彼女にはそんなことどうでもいい事だ。今は大切な人であるクロメへの心配心が大きい。

 

「…シロナ、ああ、俺は大丈夫だ。……ちょっと、さっきの言葉をね……」

 

「クロメ……。くっ、あの男、クロメ君に弱いっていいやがったっ。許せないっ、許せない許せないっ。カレン、これからカチコミ行くよ」

 

「待てシロナ、落ち着くんだ。それに、シロナが怒ってまた顔を出したら、またクロメが弱いと侮辱されるぞ」

 

憎悪に満ちたシロナを落ち着かせるカレン。コンコンブルはクロメではなくシロナが怒ったことに対し、クロメを弱いと煽りさらにシロナが怒り、シロナさえ論破された。気持ちは分かる、とカレンはゆっくりとシロナを宥めるのだった。

 

「それで、どうするのだ?門前払いをされた以上、ここに長居しても時間の無駄だが?」

 

「………っ、あ、ごめん。話聞いてなかった。もう1回頼む」

 

「……お前は、大丈夫じゃないみたいだな。一先ずポケモンセンターに向かおう。一泊して身体を落ち着かせるんだ」

 

「……あぁ、そうしようかな。でも、少し1人にしてくれないか?今は1人になりたいんだ……」

 

クロメは手持ちのポケモンを全員モンスターボールから出した。

立ち上がり、アリアの前に膝ついて頭を人撫で。

 

「……ちょっと、1人になりたいからさ。シロナ達とポケモンセンターに向かって行ってくれ」

 

クロメはおぼつかない足取りで歩き始めた。

その背はまるで死人。あの威圧から来る強烈な一言は心抉るものだ。無理もないとは無責任だが、クロメは途方もなく心が空っぽになっているだろう。

 

「……クロメっ」

 

咄嗟にアリアが向かおうとするが、その肩をミカンちゃんが抑える。

他のポケモン達もクロメを慰めたい一心だが、今1人になりたいクロメの気持ちを尊重するようだった。

 

 

クロメが立ち直るにはどうすればいいのか。

時間が経過してくれれば立ち直れるのか。

何かきっかけがあれば気持ちが晴れるのか。

 

誰もその答えは、分からずじまいであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーよかったのですか?主よ」

 

「構わん。あの小僧がお告げの通りならば、あの小僧は危険だ」

 

「弱さを改めろとは、なんと言いますか……、至極真っ当な事なのでは?」

 

「……違うのだ。その答えは全く違うのだ、()()よ。あの小僧は根本的に間違いを犯している。それは、トレーナーだからこそ間違える過ちでもあり、伝承者ではあってはならない考え方だ」

 

「……申し訳ございません、主よ。私は、あなたの仰る考えが思い当たりません」

 

「気にすることでは無い。これは、あくまでワシの直感なのだ。ワシの直感が伝えてくる。あの小僧は、トレーナーだからどうこうという話ではないと。まるで、普通とは違う考えを持っていて、それはトレーナーとして間違っている考えなのだ」

 

「トレーナーとして、間違っている……ですか?」

 

「然り。あの小僧はその意味がわかってはいなかった。当然だろう。それを当たり前の考えとして気にしていなかったのだからな」

 

「……流石、我が主であります」

 

「してルーよ。お前は、今から瞑想に入れ。ワシの直感が伝えてくる。あの小僧はもう一度ここを訪れると」

 

「今の状態から持ち直してですか?」

 

「そうだ。更に言うと、小僧は覚悟と決意を持ってやって来る。それは、小僧が伝承者になる為の成長した姿だ。もし、もしもだ。小僧が覚悟と決意を持ってここに来た時、ワシは状況次第では受けるかもしれん」

 

「……そういう、事なのですね?」

 

「……あぁ、久方振りの統一じゃ。抜かるでないぞ、()()()()

 

「ーーー畏まりました、我が主」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、クロメ君初の擬人化じゃないポケモンと遭遇。

手持ちになるとか言ってないから手持ちにしない(フラグ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

バレンタイン
私には、この日が一番大切


ギリギリだ。ギリギリ間に合った。
疲れて何も言えねぇ。チョコ作り過ぎて余ったの食ってたら胃袋もたれた。
何分急いでいたもので、多少手抜きっぽい感じかもしれないけど、勘弁してください。


2月14日。今日も晴天なり。

今日という日だけは雨が降って欲しくなかったが、日頃の行いが良かったのか、見事にサンサンだ。いいお出かけ日である。

今日は一年に一度、彼女が大切にしている日。

何の変哲もない休日だが、彼女ーーーシロナにとって今年のこの日は間違いなく特別な日である。

 

昼食を家族で食べ終えた後、シロナは食器を流しに持っていくと、すぐさま部屋に向かった。

机の上に置いてあった財布を強引に掴み、駆け足で階段を降りていく。

 

「ーーーカレン!早く行きましょ!」

 

声を張り上げ、未だリビングにいたカレンに声をかけた。

くるっと振り返ったカレンは、何やら顔を顰めている。

 

「……すまないが、今日は一緒に行けなくなった。悪いが、私の他に誰かを連れて行ってくれ」

 

そう断りを入れたカレン。

珍しいものだとシロナは思った。当日ブッチとか、今までしたこと無かったはずなのに。

 

「えっ、どうして?」

 

「……クロメに呼ばれてな。行きたかったが、こればっかりはどうにも………」

 

「そっ、そっか。……うんっ、仕方ないよ。何なら、カレンの代わりに買って行ってもいいよ?」

 

「それは助かる。私は前々から言っていたグラスを頼む」

 

「了解。クロメくんの事、宜しくね」

 

「……あぁ、任された」

 

財布をポケットに入れて、リビングのソファーで唸っていたアリアの首襟を掴んだ。突然の事に驚いたアリアは、そのまま玄関まで引っ張られて行く。

じたばたしているアリアを横目に、「行ってきます」と一言。

アリアにも靴をしっかりと履かせて、市街地に駆けて行った。

 

「待て待て待て待てっ。一体何なのよ!!」

 

いつもは力では負ける筈のシロナが、ここまで力を出している。これには驚きと困惑が隠せない。

体力の無さでは家の中でトップと言ってもいいシロナだが、その顔は全く持って余裕の顔。息もしっかりとしているし、その足取りはタンタンとリズムを刻んでいる。

何が彼女にここまで力を引き出しているのか。ふと思った事は、アリアには瞬時に理解出来た。

なんせ今日はーーー。

 

「どうせアリア暇なんでしょ?だったら、シロナの買い物に付き合って!!」

 

「私も暇じゃないのよォお!!!クロメの誕生日プレゼントっ、決まってないんだからァァ!!!」

 

ーーーそう。今日はクロメの誕生日である。

本人は完全に忘れているが、家のカレンダー全て(クロメの部屋除く)の部屋に『kurome's birthday!!』とデカデカと書かれている。

忘れる事はない、大切な人の誕生日なのである。

 

「ツキミオジサンの店で取り寄せたのが今日来るの!!アリアもっ、決まらないならそこで見て決めちゃえ!!」

 

「ふーざーけーんーなーぁっ!!私は去年の失敗を繰り返さないように考えてるんだから!!」

 

今日の失敗。忘れる筈もない、今世紀最大のやらかし。

夕御飯の際、自分の誕生日が今日だと言うことを全く持って忘れていたクロメに、それぞれ誕生日プレゼントを渡した。

その際、アリアの前に渡したのがサーヤであった。サーヤは毎年毎年凝ったものを贈っているため、中々に繊細な物も多い。クロメに渡したものも、自ら作ったガラスの彫刻。………サーヤの女体だったのはさておき、ビーナスもその美しさには驚愕するであろうものであった。が、事件は起きた。

クロメがゆっくりと机に起き、アリアが1歩前に出た。その時、大き過ぎて机に乗らなかったプレゼントに足を引っ掛け、そのまま転倒。クロメがアリアを受け止めたのは良かったのだが、アリアの持っていたプレゼントが見事にサーヤの彫刻にヒット。そのまま机から転倒し、床に激突。その衝撃で、腰より下の部分が全壊。ビーナスもびっくりな現象が起きた。

これには全員唖然。サーヤはそのまま後に倒れて気絶。1週間布団(クロメの)から出てくる事は無かった。1週間の間、啜り泣く声と神に対する愚痴などが聞こえてきたが、相当ショックだったであろう。

アリアが悪くないとはいえ、これにはアリアも閉じ篭ってしまう始末。クロメの優しさ(乙女中毒性甘々Voice)でサーヤの心をベロンベロンにし、アリアの罪悪感を愛でぶっ飛ばしたので事無きことを得たが、アリアは未だにそれを根に持っていた。

 

「あれはただの事故なのに……。サーヤもそれは分かってたでしょ」

 

「でもそれはそれ。今年はそんな事故が起こらないように気をつけたいの!!」

 

「でもそれ渡すプレゼントと関係無くない?考えるべき順番間違ってると思うけど」

 

「うっ、うっさい!!大体何で私なのよ!!サーヤは今回も部屋でなんかやってると思うけど、ミミとかみかんとかシロナのポケモン達もいたでしょ。決まって無い奴連れてきてどうするの!!」

 

「ミカンちゃんはルカとどっか行っちゃったし、ピーちゃんはまだ子供。ミルはサーヤとタメ張ってたから止めといたし、クッシーとクレアはもう渡すもの準備中だったから邪魔できなかったし、ミミは見当たらなかったし。とにかく、1番近くにいたのがアリアだったから」

 

「ただ単に誰か誘うのメンドくさかっただけね!!私はヒマじゃないのにぃ!!」

 

未だ離してもらえないアリアの叫びと共に、市街地に足を急がせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーオジサン!!例のヤツ届いた?」

 

ドアを勢い良く開け、ドアについている鈴が汚く鳴った。市街地の中心部にある雑貨屋ツキミ。店内には綺麗に並べられたガラスの彫刻やグラス。焼物の花瓶や皿、色とりどりなヘヤピンなど、大小様々なものが整列していた。

 

「やぁ、来たねシロナちゃん。アリアちゃんもよく来た」

 

スキンヘッドの厳ついオジサン。彼がこの店のオーナーであるツキミ。御歳四十後半だというが、正直年の割に全然若く見える。初めて見る人には、顔の怖い店員として思われるぐらいだ。

 

「予定通り、シロナちゃんの頼んだものと、カレンちゃんが頼んだものは届いたさ。もう箱詰めしてあるから、ちょっと取ってくるよ」

 

そう言って、店の奥に消えていったツキミを見つめ、ふと店内を見渡しているアリアに目を向けた。

何やら値札を見て唸っているご様子。

 

「……お金、足りないの?」

 

「ちちちちちがうわよ!!ただ単に見たかっただけなの!!別に値札見てこんなに高いのと思ってどうしようか悩んでるとかそういう事じゃないから!!お金には余裕ありありだからァ!!」

 

そう言うと、顔を赤くして抗議し始める。アリアはアリアなりにクロメに尽くしているわけだし、擬人化という事もあって中々買い物には行かないのだ。こういうのは興味深く見たいのだろう。

 

「なら、もっと見てみたら?私も残って見てたいし」

 

この雑貨屋は、この市街地の中では有数の品揃えと、ツキミの趣味かはたまた時の流れかよく分からないが、流行には敏感なのだ。普通のデパートで買うよりも、ここで買う方が信頼出来る。

 

「……そうね。あっ、これって……」

 

そう言ってアリアが手に取ったもの。それは、髪留めであった。

 

「あっ、それってクロメくんが可愛いって言ってたヤツ」

 

テレビドラマを見ていて、顔がアップして映っていた時にふと俳優さんの髪留めに目が止まっていた。簪のようにも見えるし、カチューシャにも見えるその髪留め。モコモコした綿状の塊が可愛くデコられ、ピンクと白で彩られたその大きめな髪留めは、クロメの好みに十分匹敵していた。

なんせクロメは可愛い物好き。取り敢えず可愛いぬいぐるみなんかは集めているし、長い髪を後で束ねている時も女子が使ってそうなシュシュだし、おでこ強調がクロメのスタイルなのか知らないが、たまに猫耳カチューシャも付けている。…………これが似合い過ぎて家の女子達が野獣化したのはどうしようもない。特に残念美人母。

クロメもこれを探していたが見つからず、諦めていたのを覚えている。

 

「…………値段は結構するけど、私的には問題ないわね」

 

「案外早く決まったね。あんだけ渡す時の事考えてちゃ、もっと悩むと思ってたのに。あっさり決まって面白みのない」

 

「いいでしょ別に。クロメ、これ結構好きそうだったもの。…………渡したら、猫耳付けてくれるかなぁ……?」

 

なんて甘い声で妄想を展開するアリアを放置し、そろそろ来るであろうとレジに向かうシロナ。

カレンの分のお金は無いが、お財布の中にはクロメの分も入っている。要はあまり金の使い道が分からないクロメは、正直どうでもいいと言って、お年玉をいつもしに渡している。まぁたまに使っているが、それはクロメのお金なので全く文句なし。が、多分シロナのお金だろうがクロメが使う時点で問題ないと放置するだろう。むしろもっと使ってみたいな。

 

「お待たせ、今日はカレンちゃんが来てないからアレだけど一緒に持っていくだろ?」

 

「勿論。今日は1年でとても大切な日なの。仲間はずれなんてしないわ」

 

「モテる男はいいねぇ。じゃ、アリアちゃんもそれ買うんだろ?早く買って渡してあげな」

 

既婚者であるツキミには、アリアとシロナは自分の子供のようなものだろう。親バカの感性が働き、何とも応援したくなるのはツキミがただ単にいい人というわけじゃないだろう。めちゃくちゃいい人、なのだ。

 

商品分の金を渡し、すぐさま家に向かって走り出した。未だ妄想に浸っているアリアの首襟を掴んで。

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰ると、なんだかいい匂いがした。クロメがいつも料理をしているため、今日はどんな料理なのかと期待しながらリビングに向かう。

リビングの扉を開けると、既にプレゼント渡しが始まっていた。

 

「えーっ、もう渡し始めてたの?もうちょっと待って欲しかった」

 

「帰るのが遅かったから仕方ないわ。それよりも、まだ渡してないのはサーヤとミル、遅れてきた二人なんだから早く渡しなさい」

 

クレアはひしっとクロメの腕にくっついたまま動かない。

プレゼントを渡した順で、どうやら抱きつき券(本人の許可無し)をゲット出来るようだ。今はクレアなので、今机に置いてあるクレア人形は彼女のだろう。

 

「なら私が。今年は誰かさんに壊されないように、工夫しましたので、ご覧くださいっ」

 

ゴソゴソと布を取っていき、机にドンと置いた。

そこにあったのは、今日よりもさらに美化され、くびれや凸部分もしっかりとくっきり掘られているサーヤの女体の彫刻であった。今年はショウケースに入れられていた。

 

「おぉっ、今年もまた凄いの作ったな………。てか、何で裸?」

 

「そっ、それはっ、クロメさんにいつでも襲われても大丈夫だというサインを……」

 

チラッチラッとクロメに視線を送るサーヤ。クロメをあすなろ抱きしている何処かの残念美人母は、サーヤに何かの箱を渡していたが見て見ぬ振りをした一同。

 

「はっ、甘いわね。去年は負けたけど、今年は負けないわ!!」

 

ミルもまた、サーヤのプレゼント波にでかいものを出てきた。ガラスケースに入ったそれはサーヤと同等であり、きめ細かく入ったラインや筋、髪の1本1本までもが動き出しそう彫刻があった。勿論ミルの女体。

 

「…………は、反応に困るんだけど」

 

「ふふーん。私の方がより美化され洗礼されエロスを感じさせるでしょう!!」

 

「何言ってるんですか。リアルな貴女は腹脂肪たゆんたゆんでお尻もこんなにキュッとしてないでしょう。美化し過ぎにも程があります」

 

「なんですってーーー」

 

「え?え?やりますか?ーーー」

 

と、喧嘩し始めた二人を放置。終わるのを待つとキリがないため、早めに渡そうと思い、シロナはカレンにグラスの入った紙袋を渡す。

お世話になっているのは同じ時から。渡すのも、一緒と決まっている。

 

「ーーークロメくん。誕生日おめでとう」

 

「貴様、私達のプレゼント、大事にしなかったら、お前の某をもぎ取ってやるからな」

 

何とも物騒な発言。しかし、それを分かっていた上で、クロメは笑みを浮かべていた。

 

「ありがとう。二人のプレゼントって毎年センスあるから、楽しみにさせてもらってるよ」

 

こうして、クロメの誕生日は毎年の如く、華やかに祝われるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーークロメ、これ……」

 

「………えっ?これって、俺が欲しかったやつ!?」

 

「………うん、たまたま見つけたから……」

 

「アリア、ありがとうっ。やっぱり俺の嫁は幸運を持っていたんだ!!」

 

その発言は、戦争を巻き起こすとは知らず、楽しい楽しい誕生日会をぶっ潰す原因となったのだった。




リアルに作者の誕生日です。
ケーキワンホールが毎年恒例。レアチーズケーキは最高ですまる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

バレンタイン?あぁ、バカップル共がイチャコラしてそうな日ね

バレンタイン前夜。2話でお送りいたします。
話の中ではバレンタインとなってますけど、明日一気に投稿出来るか不安なのでここで出しました。
さぁチョコ作りチョコ作り〜。、


Happy Valentine!!

全国のリア充の諸君。元気しとるかのォ?私の名前はクロメじゃぁ。今日は2月の14日。何の日か分かるじゃろ?

そう、バレンタインじゃ。

子供からお年寄りまで幅広くチョコレート会社の策略にハマって今現在の風習が位置づいてるわけじゃが、リア充諸君は、チョコレートを貰ったかのぉ?

何?まだ?なんという事じゃ。今すぐチョコレートを貰わねば間に合わなくなるぞぉ。さもなくば、義理チョコなるお友達専用枠のチョコとして男友達にあげられるかもしれないぞぉ?

まぁ、そうなったら非リア勢全員で笑ってやるがのぉ。

 

え?非リアは黙ってろ?おいおい、それは人権侵害じゃないのか?たかが女と過ごす時間を長くしてキスしたりエッチな事してベッドでアンアン喘いでビュッビュッしてるだけのやつが何言ってるんだ?あぁん?

 

大体よ、お前非リアだなってよく言われるけどよ、俺は二次元に嫁を持ってるんですがなにか文句でもあるんですか?

は?キモい?死ね?このオタク野郎ぉ?

 

ちょぉぉぉぉぉおおっと、何を言っているのか分からないのぉ。

リア充という言葉は、リアルに充実してるという省略型じゃが、彼女彼氏持ってないだけでリアルに充実していないとは言いきれないのじゃないのかな?

実際結婚しないで独身で生活している先輩方は、自分のやりたい事をやって充実してるから、そんな先輩方もリア充と呼べるんじゃないのかな?

オタク共も、リアルではないが同じ趣味嗜好の仲間と共に楽しく過ごしているから、リア充と呼べるじゃろぉ?

 

お前らは言葉の意味をしっかり理解出来ておらんようじゃのぉ。

だからバレンタインのチョコも貰えないんじゃ。

え?俺?俺はくれる人なんていないよ。

え?お前にチョコを貰うだの言われたくない?

何を言うか。だったら、お前はこの世界に来てみるがいいんだ。

バレンタイン?チョコレート?何それ美味しいの?状態じゃぞ。

バレンタインが存在しない世界で、どうやってチョコを貰えばいいんじゃよ。出来るなら、俺に教えて欲しいのぉ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Happy Valentine!!(白目)こんにちはこんばんわおはようございます。何時何分か知らないけど、みんなのアイドルクロメだぞ☆(ゝω・)vキャピ」

 

「………………」

 

「ごめん嘘だから引かないでめっちゃ心に傷ついた」

 

「………今回だけだぞ。で、なんで私だけここにいるんだ?」

 

そう。ここは我が家のキッチン。ちょっとだけ他の家よりも大きなキッチンで、俺ことクロメはカレンさんとキッチンに立っていまーす。

 

「私は、シロナとの買い物を断ってこっちに来たんだ。くだらない事ならば、私はお前の某を引きちぎるからな」

 

「oh......。今ので玉が縮んだぜぇ。だが待ってくれ。今日は俺と一緒に料理を作って欲しいんだ。」

 

「……は?料理?何故私がお前なんかと。大体、まだ昼餉を食べて1時間も経ってないんだぞ。一体何を作って食べると言うんだ」

 

「うん。その疑問はいいね。でも質問の前に、今日は何月何日か分かる?」

 

「……馬鹿にしているのかお前は。今日は2月14日。何の変哲もないただの休日だが?」

 

こめかみに青筋が浮き出てるカレン。目付きはいつも通りおっかないのに更に怒ってちゃちびっちまうよ。

 

「その通り。今日は何の変哲もないただの休日だ。で、質問の返答だけど、俺は今日デザートが食べたくなったからチョコレートを使ってお菓子を作ろうと思うんだ。どう?」

 

「……どう?と言われても。だったら、私なんぞいらないだろう?今日は私も買い物に行きたかったのに………」

 

「えっ?………なんかごめん。今度詰め合わせするから許してくれ」

 

「今日じゃなきゃ駄目だったんだが………。まぁ、本人は気付いてないのだから、もういいとしよう。その言葉、忘れるなよ」

 

「イエッサ!!で、どんなのを作ろうとしているかと言うと、生チョコ大福を作ろうと思うんだ」

 

「?なんだその、生チョコ……大福?大福とは一体なんなのだ」

 

そう言えば、この世界に大福は無かった。まんじゅうあるのに大福無いのってなんか不思議に思える。

まんじゅうがあるからかは知らないけど、片栗粉や白玉粉、小麦粉だってある。麺があるから小麦粉はあるって分かるけど、他のやつはなんであるのかって思う。

だったら大福ぐらい作ればいいじゃん。

 

「大福って言うのは、もち米や白玉粉を使った和菓子っていうものなんだ。ほら、いかりまんじゅうとかもりのようかんとかあの分類のお菓子だよ」

 

「成程。だが、何故私なんだ?今部屋にいるサーヤとかでも良かった筈だが……」

 

「考えて見てくれよ。カレンが作った大福を、シロナちゃんが食べる姿を。美味しい美味しいって言って食べるシロナちゃんの姿を」

 

「…そ、それはーーー」

 

 

何故か服がはだけてる状態で色っぽく大福を口に含むシロナ絵図。

 

『………んっ。カレン………。これ、すっごく……、美味しいよ……』

 

瞳の奥にハートのマークを浮かばせ、口を綻ばせて上目遣いで見つめるシロナ絵図。

 

 

「ーーー私に出来ることなら何でもしようっ」

 

うわぉ、鼻血大量。まずは鼻血止めてからにしてよ。

取り敢えずカレンの鼻に小さく丸めたティッシュをぶち込んだ。

カレンはシロナが大好きだからね。レズビアンも俺はいける口だよ。ショタコン?お断りだ。

 

「……で、これから私はどうすればいいのだ」

 

「因みに料理経験は?」

 

「貴様がいつもキッチンにいるから、誰一人として包丁を満足に握ったものなどいないのだが?」

 

そう言われると、聞いといてなんだが申し訳ない気分になるな。

俺は前世の記憶を生かして、ほぼ毎日キッチンで3食作っている。あの最胸グラマラス美人ショタコンの残念美人な我が母親?あれに包丁を持たせてみろ。食卓崩壊まっしぐらだよ(下的な意味で)。誰が性欲剤入れて喜ぶんだよ。ポケットに隠してるそれ、超薄型ゴムでしょ。何度その箱見たと思ってるんだよ。もうさっきで分かるほどだよこんちくしょう。

 

取り敢えず板チョコと生クリームをそれぞれ冷蔵庫から取り出し、まな板と万能包丁をしっかり洗って、乾いた布で水気をしっかり拭き取る。

 

「分かった。じゃあまずは生チョコを作るから、この板チョコを細かく刻もう」

 

まずカレンに、見本を見せる。

チョコって結構硬い。肉や野菜とは違って、力を入れないと中々切れないものだ。俺は板チョコが切れないという事は今まで無かったけど、力が足りないと中々切れないのは確かだ。

 

手際良くチョコを刻み、半分ぐらい切った所でカレンにバトンタッチ。包丁の握り方を教え、ゆっくりと刻み始めた。

やはり擬人化ポケモン。一般的な女性よりも断然力があるな。包丁がまな板に刺さったんだもの(白目)。

力加減をしっかりさせて今1度チャレンジ。今度は上手く成功しているようだ。

 

生チョコを作るにあたって、疑問に思ったことは無いだろうか。

チョコレートを何故細かく刻まなければならない?面倒臭いからそのまま湯煎をした事のある人もいるかもしれない。

まぁ、別に悪いというわけじゃないんだ。俺も実際面倒臭いと思ってるし。湯煎の意味をしっかり理解していれば全く問題ないんだけど。

で、何故細かくするかと言うと、単純にその方が熱で溶けだすのが早いからである。それにチョコを長いこと熱していると、チョコの匂いが薄くなってしまうから、熱す時間を短縮させる考慮も含まれているんだ。

案外、面倒な事ほど意味があるんだね。俺も前世で妹にこっぴどく言われました。

 

「さぁ、次は湯煎だ」

 

細かく刻めた後、チョコを大きめのボールに入れ、水を張った鍋にボールを浮かばせる。火をつけ、混ぜながらチョコを溶かしていく。

 

「……湯煎というものは、そう言う事なんだな」

 

「良く湯煎の意味知らない人は、お湯の中にチョコを入れたり、鍋にそのままチョコ入れたりして失敗するだろうね」

 

料理をあまりしない人は特にそうなんだが、湯煎とは一体なんなのか分からない人が多い。

確かに湯煎とは言うけど、お湯の中にチョコをぶち込むのは間違いだし、チョコを直で温める人もいるんじゃないだろうか。

 

「まぁ、レンジでも焦がさないようにチンすれば簡単に出来るけど、俺レンジで焦がしちゃった事あってトラウマなんだ……」

 

レンジでチンの方が簡単だ。耐熱ボールにチョコとバターか生クリームを入れてレンジにぶち込む。時間を決めて、チョコがしっかりと溶けるまでチンする。

気を付けることはやっぱり焦がさないこと。時折レンジから取り出してちょっとずつ混ぜていくと焦がしにくくなるよ。

 

「よし。チョコがしっかりと溶けたら、火を切って、ボールを取り出す」

 

カレンが熱されて熱いはずのボールを何食わぬ顔で素手掴み。流石ポケモン。これくらいの熱さなんて造作もないのか(驚愕)。

取り出したボールに生クリームを入れ、しっかり混ぜ合わせる。混ぜ合わせると、チョコが滑らかになって生クリームが見えなくなっていく。トロトロにチョコがなったら、クッキングペーパー、無かったらラップを。容器の中に垂れ流して、厚さ1cmぐらいに均等に流し込む。足りなかったらもう1個容器を用意すればいい。

 

「なるほど。これで生チョコの完成だな」

 

「ちょっと冷ましてから入れると上手く出来るから、手で触って多少熱が飛んだら冷蔵庫に入れよう」

 

まぁ案外早く熱が飛んだので、冷蔵庫にそのままぶち込む。

後は冷え固まるのを待つだけだ。

 

「……ふむ。案外チョコを溶かすまでは簡単だが、チョコを冷やし固めるまでは時間が長いな」

 

分からなくもない。俺も冷してる間はポケモンしてたし、この時間は暇だ。

だがしかし、ここはご都合主義と行かせてもらおう。時間が無いためさっさと進んでしまうぜ。

 

 

ーーー数時間後。

 

 

「………なんだか異常に早かったのは気のせいか?」

 

「気のせい気のせい。さ、次は大福の生地だ」

 

大福。前世では和菓子屋さんには必ず置いてあった和菓子の1つ。家でも、お餅で餡子といちごを包み込めばいちご大福は簡単に作れた。

今回は、チョコ大福だが工程は変わらない。

 

「まず用意するのはもち米の代わりである白玉粉、砂糖、水、片栗粉」

 

注意しなければならないのだが、水は適度に入れなければ後々水分を多く含んでしまう。

今回の俺は、白玉粉 60g、水 80cc、砂糖 大さじ一杯と半分。

これで大体6~8人ぐらいかな。ホント、前世の記憶って便利ー(cookpad参考)。

 

「まずは計らないといけないから、計りに耐熱ボールを置いてボタンを押す。そうすれば、このボールの重さは含まれなくなるからしっかり計ることが出来る」

 

計り終えた白玉粉に、水と砂糖を加えて混ぜる。しっかりと混ぜないと、後で大福の生地にしっかりならなくなるので、ダマが無くなるまでかき混ぜる。ダマというのは、まぁ簡単に言えば溶けきれてない粉末のブツブツしたのが固まったようなものだ。これが無くなるまでしっかり混ぜ合わせる。

混ぜ合わせた後、ラップをしてレンジに入れる。時間は2分半。レンジでチンしている間に、平ペったい容器かまな板に片栗粉を出しておく。

 

「生地が出来たぞ」

 

レンジからカレンはボールを取り出してきた。

ラップを取って、水をつけた木べらで混ぜ合わせる。耳たぶのような硬さが大体大福の生地の丁度いい硬さだ。まぁアッツアツの餅なんか素手で触りたくないよね。まぁそこは自分の判断に任せよう。

混ぜた後もう1度ラップを張り、30秒またレンジでチンする。

 

「カレン、チョコ出して」

 

冷蔵庫からチョコを取り出し、感触を確認。しっかり固まっているようだ。チョコを硬くしたいのなら、生クリームの量を少し減らせば硬さは変わる。俺は柔らかい方が好きなので分量分生クリームを入れた。

カレンに、小さめにチョコを丸めさせている間に、耐熱ボールから取り出した生地を片栗粉でまぶしていく。あまりつけ過ぎると、食べた時に口の中が粉々になるからあまり付けすぎないように。

適量でちぎった生地を左手で持ち、一度丸めた後右手の親指の付け根辺りで広げていく。

大体5~6cm当たりだろうか。若干中央の生地を厚くしておいて、そこにチョコを乗せる。

ここからが難しい。まず、チョコを生地で包んでいく。

左手で軽く握り、右手で軽く押さえながら回して生地をチョコに纏わせていく。俺も何回か失敗してしまったが、中々楽しいものだよ丸めるのは。

生地とチョコのてっぺんが丁度同じ高さになったら、今度は生地をチョコの上に被せていく感じで伸ばしていく。若干渦を巻いている感じで作ると尚やりやすい。チョコが生地で見えなくなったら、蓋部分を下にして形を整えていく。

丸っこくなった後、片栗粉を若干付け直て完成。

 

「……おぉ、これがチョコ大福なるものか」

 

「お好みでココアパウダーをかけてもいいよ。かけすぎないようにだけど。じゃあ、カレンも一緒にやろうか」

 

「ああ、分かった」

 

生地が冷めないうちに、丸めていく作業は、あまり時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1つ言いたいことがあった。

何故俺はカレンとチョコを作ったと思う?

 

理由は簡単。ただ単に女の子からチョコを貰いたかっただけです( 涙目 )。

だって考えて見てよ。カレンはシロナが大好き。シロナの喜ぶ事は大体するんだ。

そこで考えた。カレンを料理に誘って、シロナにあげるという口実を立てて誘えば、お零れで俺にもカレンの作ったチョコが貰えるのだ。

なんと素晴らしい作戦だろうか。これで俺もバカップル共に馬鹿にされなくて済むぞ(白目)。

 

カレンを利用したのは悪いと思ってるけど、これは俺の命に関わる事なんだ。許せカレン。買い物だろうがなんだろうが連れて行ってあげるから、今回ばかりは許せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




作者は貰う側ではなく、作る側なのさ!!
材料費が馬鹿になりませんでした作者にお金をください(切実)



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。