人外少女とポケモンのトモダチが幻想入り (菅野アスカ)
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プロローグ 過ぎた幸せ

主人公ちゃんの過去です。
どうでもいいわこんなの!ってめっちゃ言われそうです。


水の中。

そこは、世界中で最も美しいのではないかと思わされるほど幻想的な場所。

 

水面を見上げれば、陽光がきらめき輝くのが見える。

水中を見渡せば、澄み切った水と天使のはしごを思わせるような光の柱を見ることができる。

 

そんな中に、少女は居た。

 

水底の岩に腰かけて、じっと周りを見ている。

…彼女が水中にいたのは、それらを見たかったからではなく、あつかったからなのだけど。

 

しばらくぼーっとしていたら、誰かの声が聞こえてきた。

 

「ドール、出ておいで」

 

少女―ドールは、その声の主が、大好きな義理の姉であることに気づいた。

 

「おねえちゃん!」

 

ドールは叫んで、真っ黒いうろこに覆われた尾ひれを器用に動かし、水面に顔を出した。

 

(……あれ?)

 

ドールは、池の岸に立っているのは姉だけだと思っていたのだが…姉の隣に、見知らぬ男性が立っていた。

年は、おそらく20代半ば。黒髪に黒い目で、とても純粋そうな人だった。背には、大きな剣を背負っている。

 

(…『おきゃくさま』かな?)

 

そう思って、ドールは尾ひれを足に変え、岸へ向かって泳いだ。

数分後、岸に上がると、姉がタオルで体をふいてくれた。

 

「ドール、この人は――ンさん。泉の近くで倒れていたの。――ンさん、こちらは妹のドールです」

 

ドールは聞き終わってから、紹介された男性にお辞儀をする。

 

「――ンさん、はじめまして。――ラおねえちゃんのいもうとの、ドールです」

「もう、ドールったら。誰もいないところでならいいけど、人前では『お姉様』か『姉上』でしょう」

 

姉は微笑みながら、そう言った。

 

紹介された男性も、それを見て微笑んでいた。

 

それが、

 

ドールが最も幸せだったころの記憶だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で守れなかったんだろう。

誰が、何が悪かったんだろう。

 

お姉ちゃんがしっかりしていたらよかったんだろうか。

私がうまく立ち回ることができたらよかったんだろうか。

お父様とあの人がすれ違っていなければよかったんだろうか。

 

分からない。分からない。

 

他の人が聞いたら、過去の事をあれこれと考える私を馬鹿にするだろうか。

お姉ちゃんたちが知ったら、「何を今さら」と笑うだろうか。

 

あの頃私は小さくて、みんなに守られているばかりだった。

そんな私でも、あの笑顔と、小さな小さな命を、救いたかったのに。

 

あらゆる人から愛されて、うらやましかったお姉ちゃん。

大好きだったけど、少しだけ憎かったお姉ちゃん。

 

私はこんなに大きくなりました。

でも、あの悲劇の原因が、いまだにわかりません。

 

…相変わらず、人の振りした化け物のままだな。私は。




文才ないので変なとこあったらバシバシ指摘してください。


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1章 人外少女が幻想入り
1話 幻想郷へボッシュート


幻想入りします。
いろんな人が出るよー。


『………ル…』

 

『……ール…』

 

『…ドール!』

 

テレパシーで、ドールはやっと我に返った。瓶入りのはちみつドリンクをコップに注ぎながら昔の事を思い出していたようだ。

 

(余計なことまで思い出しちゃったな…)

 

瓶を置いて、テレパシーの主…1体のポケモンに話しかける。

 

「どうしたの?ミュウツー」

『どうした、じゃありませんよ。むしろ、私が聞きたいくらいです。何かしながらボーっとしているなんて、貴女らしくもないことをしているんですから』

 

ドールがいる世界には、動物とともに「ポケモン」という生物が存在している。

ドールはよく知らないが、ポケモンと人間はずっと昔から共存している。

 

ポケモンには多くの種類があり、レベルアップするとき進化して姿かたちを変えたり、しゃべったり、テレパシー使えたりするのもいる。

ミュウツーは、進化はできないが(メガシンカ除く)、テレパシーで会話ができるポケモンだ。

 

「…ちょっと、昔のこと思い出しちゃった」

 

そういった途端、真正面から話しかけられた。

 

「まったくもう…せっかく新調したテーブルクロスが台無しになるとこだったわよ、子オオカミ」

 

声の主は、ハロウィンの仮装を連想させられる衣装を着ている少女。

「エリザ」と呼ばれている彼女は、この家の住人である。

 

「……えっ?」

 

ドールは、そっと自分の手元、というかコップを見てみた。そこには、

………はちみつドリンクが今にもあふれ出しそうなコップがあった。

 

「…ストロー、取ってこなきゃ」

 

そういいながら、立ち上がって、数歩歩いた瞬間。

 

ばごっ。

 

「おわっ!」

 

床が抜けた。

 

「ちょっ……マスター、無事!?」

 

左側から声を掛けられる。

声の主は、一人の少年(少女?)。

彼(彼女)の名はエルキドゥ。エリザ同様、ここの住人である。

 

「………ここボロいから気を付けてって、あれほど言ったのに…」

 

右側からも、声を掛けられる。

声の主は、一人の少女(というか幼女)。

ここに住み憑いている幽霊で、名前は霊子(仮)という。

 

「子オオカミのことだし、忘れてたんでしょ」

「ああもう、うるさいっ!ここ、いったい築何年なんだよっ!」

「え~、わたしここで長いこと幽霊やってるけど、知らない~」

「名前忘れるほど幽霊やってる霊子が知らないんだから、100年は越えてるんじゃない?」

「…………エルキドゥ、言わなくていいです。それよりストロー」

「お、さすがにそれは忘れてなかったわね」

「私を何だと思ってるの!?私そこまで鳥頭じゃないよ!?むしろ記憶力良いよ!?」

 

「確かに、鳥の血引いてる割には記憶力良いよね。君」

 

エリザの隣から、声。

赤い帽子をかぶった青年がいる。

彼はレッド。本日暇つぶしに遊びに来ている伝説のトレーナーである。

 

「レッドさん、私鳥は鳥でもセイレーンですからね?」

「大して変わらないじゃん」

「まーうー(レッドさん今日はずいぶんしゃべるね)」

「レッドさんひどいです…人間じゃないって点では一緒ですけど…あとムウマ、ほんとに今日はよくしゃべってるよね」

 

そう。

ドールは、人間ではない。

それどころか、この世界の人間ですらない。

 

何百年も前、とある魔法使いが人魚と恋に落ち、生まれたのがドールの曽祖父。

 

その曽祖父が、別の世界から迷い込んできたセイレーンと結婚して、生まれたのが稀代の大魔女と謳われた、ドールの祖母のエレイシアで、彼女があっちこっちの異世界を渡り歩き、知り合ったワ―キャットの青年との間に生まれたのが、ドールの母のカメリア。

 

ドール自身は、行ったことのある世界に行けるようになる(デタラメに起動させると行ったことない世界に行ったりしてしまう)マジックアイテム「次元計」を使ってこの世界にやってきた。

 

エリザたちは、さまざまな世界でカメリアが参戦した、「聖杯戦争」という聖杯をめぐる戦いで呼び出した、英霊の力の一部「サーヴァント」が受肉したものである。

5人いるが、カメリアが参戦したのは3回で、サーヴァントは原則1人に1人なのだが、2度目の聖杯戦争で無理やりルールを捻じ曲げ2人召喚したのと、1度目の聖杯戦争ではぐれサーヴァント1人と契約したのが原因で5人いる。

ちなみに、マスターの証でありサーヴァントへの絶対命令権である「令呪」は通常3角までなのだが、カメリアが倒した相手の令呪を片っ端から奪い取った結果、42角になっている(そしてそれら全てをドールが受け継いでいる)。

 

「そんなことより、ストロー早く取ってこなきゃ…って、霊子ちゃん?」

「なに~?」

「ここにあったはちみつドリンク入りのコップがなくなってるのはなんでかな?」

「え、知らないよ?」

「ムウマは?」

「まーう(知らない)」

「じゃ、何で無いの?シンオウ地方屈指のホラースポットだから勝手に消えたのk」

「…ミキュ(…ごめんなさい)」

「あ、ミミッキュだったの?」

「キュ(うん)」

 

ピカチュウのぬいぐるみのような姿をしたポケモン、ミミッキュ。

20㎝しかないのに、どうやって運んだのだろう。

あと、さっきさらっとドールが言ったが、ここはシンオウ地方のホラースポット、もりのようかんである。

 

「返して」

「キュ(はい)」

 

「何で真っ先に私疑ったの!」

「いや、隣だし当たり前でしょ!?」

「ここボロいんだから騒がないでよおー」

「ドール、ミュウとロトムが鬼ごっこして物散らかしてたから捕まえてきたぞ。あと、ストロー」

 

2つの人影。

 

片方は、異様に布の面積が少ない服を着た少女(というか幼女)。

彼女はジャック・ザ・リッパー。「ジャック」と呼ばれている、2度目の聖杯戦争でエリザとともに召喚されたサーヴァントである。

 

もう片方は、白髪金目で、黒いドレスをまとった女性。なかなかスタイルがよく(ただし胸は控えめ)、かなりの美人だ。

彼女はランサーアルトリアオルタ。カメリアが最初に呼び出したサーヴァントで、「アルトリア」の可能性からうまれたサーヴァントである。ドールは「オルタさん」と呼んでいる。

 

「あ、オルタさんありがとうございます。………って、私の声そんなに大きかったですか?」

「いや」

「お姉ちゃんのことだからなんかやらかすと思って」

「ロト~!(見事に当たったね~!)」

 

ロトムがそう言った、次の瞬間。

 

ドォォォォォォン!!!!!

 

「な、何!?」

「わかんないわよ!」

「…ね…ねえ、ちょっと…」

「ジャック何!?」

 

「窓の外の景色…変わってない?」

「……えっ?」

 

確かに、変わっていた。森ではあるが、見慣れたハクタイの森ではない。

 

(……ひょっとして………)

 

ドールには1つ、心当たりがあった。

昔カメリアから聞いた、幻想となった者たちの楽園。

 

(でも、私達が行く場所か……?)

 

「うっわー、派手な音したなと思ったら!」

「こんな場所に洋館なんてなかったはずだが」

 

何者かの声。

ドールは、とっさにバッグからトンファーを引っ張り出し、構えた。

 

「わ、人がいたのか!」

 

入ってきたのは、魔女のような恰好をした金髪の少女と、白髪赤目の赤いズボン(もんぺ?)を穿いた少女。

 

「……あなた達に、聞きたいことがあります」

 

ドールは、2人にそっと、話しかけた。

 

「あなた達は、何者ですか。そして………」

「そして、何だ?」

 

 

 

「………………ここは………幻想郷、ですか……?」

 




誰か文才ください
引いて終わることしかできない私である


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設定

みんなの設定です。
どうでもいい方は見なくていいです。


・時系列

BW2の翌年の1月半ば。

 

・ドール

 

フルネーム:ドール・クラーゲン・オンディール

日本名:猫沼撫子(本人は「かわいらしすぎるから」気に入っていない)

 

17歳

 

スリーサイズ

B88 W60 H92

 

身長160cm、体重60㎏

 

魔法使い(種族としての)、セイレーン、人魚、ワ―キャット、ワーウルフの混血。

エリザからは「子オオカミ」と呼ばれているが、本人の性格は猫に近い。

 

令呪は知り合いからもらった薬か呪符で隠している。

 

学校に行っていたときの成績は常にトップだった(が、地理だけが異様に悪かった)。

 

極度の機械音痴&神業級の方向音痴。

 

母から「空間ごと圧縮して亜空間化させた物置」を受け継いでいる(わかりにくければどこぞの金ピカの宝具みたいなものと思ってればおk)。

 

礼儀作法は一通り身についているが、ブチ切れると全部すっ飛ぶ。

 

スイーツ作らせるとプロ級だが、普通の料理はすさまじく不味い(オルタさん曰く『ダークマタークッキング』)。

 

手先が器用(内職してるから)。

 

細マッチョ。握力測ると握力計が壊れる。

 

好き嫌いはない(が、さすがに食べ物にあるまじき色やにおいをしたものやもう食べ物と言えないものは無理)。

 

架空元素 無と虚数の二重属性

起源は「破戒」と「聖杯」。

 

あっちこっちの世界を旅してる間にその世界の魔法習得したりもしてる(けど回復系は効きが悪い)。

 

外見:黒髪をふくらはぎの途中あたりまで伸ばした金色の目の美少女。黒猫を連想させられる。

 

持ちポケ           2軍(?)

ミュウ Lv89         ダークライ Lv88

ロトム Lv89         クレセリア ♀ Lv86

ムウマ ♀ Lv88       ミュウツー Lv87

トゲキッス ♂ Lv89     フィオネ Lv87

ルカリオ ♂ Lv89      ミミッキュ ♀ Lv88

ドダイトス ♂ Lv89

 

 

・ランサーアルトリアオルタ

 

fgoのオルタさんとはまたちょっと違う。

「可能性」からうまれたサーヴァントであるため、「アルトリア」の生き死には関係ない。

 

保護者ポジション(のはずなのに結構迷惑かけてたりする)。

根っこは「アルトリア」と同じ。

 

鎧は真っ黒、ドレスも真っ黒、そしてなぜだか「かわいそう(沢城ボイス)」。

 

ドールちゃんのとこのサーヴァントは受肉しているが霊体化もできる(staynightのギルガメッシュみたいな感じ)。

 

やっぱり暴食王。

 

 

・エリザベート・バートリー(ハロウィン)

 

みんな大好きハロエリちゃん。

 

何故かこの姿で召喚されてしまった(本人は無理に2体同時召喚なんてことしたからだと思っている)。

 

やっぱり歌うの好きな音痴。

 

 

・ジャック・ザ・リッパー

 

幼女のほうのジャックちゃん。

 

ドールを呼ぶとき「おかあさん」でなく「お姉ちゃん」なのは「さすがにお母さんはやめて」と懇願されたため。

 

よくドールに着せ替えさせられたりしている。

 

 

・エルキドゥ

 

英雄王のお友達。

 

「兵器」の自分に「人」として接してくるドールには複雑な感情を抱いている。

 

外見が割と自由自在なため、ドールが小さかった頃はオルタさんと一緒に親代わりをしていた。

 

 

・ありす(ナーサリー・ライム) 不在

 

子供たちのための英雄。

 

平行世界でマスターとなった「ありす」のサーヴァントだったが、その聖杯戦争でセイバーとそのマスターにありすを殺され、カメリアと再契約した。

 

「アリス」ではなく「ありす」を名乗っているのは、「死んじゃうあたしの分も幸せになって」と死ぬ直前のありすに言われたため。

今は宝具でドールの夢になれる。

 

ありすに言わせてみると、ドールは「何もかもいらないと口では言ってるくせに、ほんとは何もかも欲しがる欲張りさん」。

 

今回はトウコの家に遊びに行ってて不在。




…うん、普通にチートや。


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2話 自己紹介とあれこれ

見てくれてる人いるのかなあ…


「………………ここは………幻想郷、ですか……?」

 

 

 

 

「え……何で知ってるんだ?お前、外来人じゃないのか?」

 

金髪の少女が不思議そうに言う。

 

「……その反応…やっぱりここ、幻想郷なんだ…」

「…どういうことだ?詳しく教えてくれ」

 

~少女説明中~

 

「つまり…」

「お前のひい爺さんがここの出身で、婆さんが紫の友人だったから知ってた、と」

「はい」

「……しっかし、あいつの知り合いかあ……。ひょっとしてお前、実は100歳超えてたりするのか?」

 

金髪の少女の少女の問いに、ドールは少女を睨みつけながらこう返した。

 

「…私は今年で18。今は17だけど」

「おっと、それは失礼したぜ」

(紫さんの友人はそんな人ばっかりなのかな…)

 

「それで、お前は何しに来たんだ?」

「ああ、それはですね…」

 

~少女説明中~

 

「「どう考えても紫の仕業だな」」

「あ、やっぱり…まあ、次元計あるし帰r……あれ?」

「どうしたんだぜ?」

 

「……オルタさん、次元計どこにあるか知りません?」

「ここにあるが、さっきロトムがこれ的にしてかみなり撃ってたぞ」

「…………はい?」

 

ドールはオルタの手から次元計をもぎ取って、スイッチを連打した。

しかし。

まったく動かない。

 

「……………ロトム?」

「ロ…ロトー?(な…何ー?)」

 

「何で……よりにもよって、これを的にしたあああああああああああああああああ!!!!!帰れないじゃないかああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

「ローーーーーーーートーーーーーーーーー!!!!(ごめんなさーーーーーーーーーい!!!!)」

 

「何で!?なんで!?ナンデ!?大事なものだってわかってたよね!?」

「お、落ち着け!壊れてるなら直せばいいんだ!河童のとこ行って直してもらおうぜ!!な!?私たちも案内するから!!!」

 

「あ、そうだね。うるさくしてごめん。えーっと、名前何?」

「あ、そういえば自己紹介してなかったぜ。私は『霧雨魔理沙』。『魔理沙』でいいぜ」

「私は『藤原妹紅』だ」

 

「『ドール・クラーゲン・オンディール』、日本名『猫沼撫子』です。『ドール』でも『撫子』でも好きなように呼んでください。オルタさんたちも、自己紹介してください」

「分かっている。ランサーアルトリアオルタ。好きなように呼ぶといい」

「はあ~い、プリティーでキュアキュアなみんなのアイドル、ハロエリちゃんd」

「歌って(超絶下手)踊って殺せる系アイドル(自称)、エリザです」

「ちょっと、子オオカミ何言ってんのよ!?」

「ほんとのことじゃん。ジャックだよー」

「僕はエルキドゥ。みんな(主にエリザ)がうるさくてごめんね」

 

「…………………………………………………」

「『レッドです。ここの住人ではありません。』と言っています」

「よくわかるなお前!?」

「マスター、どうやって意思疎通してるの?」

「勘と目」

「そ、そう」

「霊子ちゃんでーす。幽霊でーす」

 

「自己紹介も終わったことだし、次元計修理してもらいに行きますか」

「あ、その前にここの説明だ。…いや、ひょっとしてお前って結構詳しかったりするのか?」

「教えてもらってはいますが、少なくとも100年前の知識なので教えてください」

「ああ、わかった」

「そっちのことも教えてくれだぜ」

 

~少女情報交換中~

 

「『弾幕ごっこ』に『スペルカード』……いろいろ知らないのが追加されてますね。教えてくださってありがとうございます」

「そっちは『ポケモントレーナー』ってのやってるんだな」

「同時に11体もポケモン連れてる変わったトレーナーだがな」

「仕方ないじゃないですか、ボックスに入りたがらないんですから……」

「話はその辺にして、河童のとこいこーぜー」

「ん、そうだね」

 

言いつつ、ドールは生花の翼をもったセイレーンに変化(へんげ)した。

 

「へえ、そんなこともできるのか。…でも、どうして普通に飛ばないんだぜ?」

「……どうやっても、空飛ぶ呪文を覚えられなかったんだよ………。まあ、それは置いといて。みんなー、ボール入ってー」

「みゅーう!(はーい!)」

「ロトー(わかったー)」

『はい』

 

「あ、ボールもいろいろあるんだな」

「うん。ボールによって捕まえられる確率とか効果とか違うんだよ」

「へー」

「じゃ、オルタさんたち、留守番お願いしまーす」

「ああ」

「じゃ、行ってきまーす」

 

3人は外へ出て舞い上がり、妖怪の山へ向かった。

 

 

 

「これは、面白いものを見てしまいましたねえ…」

 

1人の天狗が、木の後ろから顔を出した。

 

「『幻想郷に現れた、謎の少女の正体に迫る!』見出しはこれで決定ですね♪さあて、後を追わなくては」

 

天狗は3人の後を追い、静かに舞い上がった。

 

 

 

~少女移動中~

 

「へえ、ここが妖怪の山…」

「にとり呼ぶぜ。おーい、にとりー!!!居るかー?」

「にとりなら買い物に行っててあいにく留守だよ」

「あ、みとり」

 

出てきたのは、1人の少女。とにかく、真っ赤な少女だった。

真っ赤な帽子、真っ赤な髪飾りでツインテールにされた真っ赤な髪、真っ赤な服。少々目によろしくない。

 

そして、なぜか背に括り付けてある「禁止」の看板が、(本来ならばすさまじく違和感を醸し出すはずなのに)異様なまでに少女の雰囲気に溶け込んでいて、ドールは一瞬それの存在に気づけなかった。

 

「何でいるんだぜ?」

「…言ってなかった?3日前からにとりと同居してるって」

「あー、そういやそんなこと言ってたな」

 

「で、何の用?それと、そっちの子は?」

「あ…初めまして。私はドールといいます。幻想入りしてきました。これを直してもらいに来ました」

 

そう言って、ドールはみとりに次元計を渡した。

 

「……これ、次元計?あんた、エレイシアの関係者?」

「孫です」

「え?でも…計算が合わないぞ?」

「お母様が魔術で延命してたことが原因ではないでしょうか」

「さすが親子…」

 

言いつつ、みとりは次元計を分解し始めた。

 

 

~数分後~

 

 

「……これ、壊れ方がひどいな。2週間で直ったら…いいほうだね」

「\(^o^)/オワタ」

 

「まあ、直るまで幻想郷を見て回ってるといい。それとそこの天狗、翼見えてるぞ」

「あやややや、ばれてしまいましたか!」

 

「……誰ですか?」

「私は天狗の新聞記者、『射命丸文』といいます!今日はドールさんを取材させてもらおうと思い、来ました!」

 

「…………………お母様が………………」

「はい、なんです?」

「お母様が、『幻想郷に行くことがあったら天狗に気をつけろ』と言っていました」

(((ドールの(お)母さん、ナイス)))

 

「あやややや、警戒されてしまいました……。大丈夫です、変なことは書きませんよ」

「嘘つけ」

「魔理沙さんひどいです~!清く正しいこの私が書く新聞が信じられないのですか!?」

「お前の新聞が清く正しかったことは一度もないだろ」

「妹紅さんもひどいです~!お願いです、取材させてください!」

 

「……別にいいですよ」

「やった!」

「ただし、変なこと書いてあったら即ぶっ飛ばします」

「うっ………ま、まあいいでしょう。まず1つ目の質問、名前・年齢・職業・能力を教えてください!」

 

「…『ドール・クラーゲン・オンディール』、日本名『猫沼撫子』。歳は17。職業はポケモントレーナー。能力は『ありとあらゆる生物の言葉を理解する程度の能力』、『次元を渡る程度の能力』、『ありとあらゆる能力をコピーする程度の能力』です」

「うわチートだ!」

「魔理沙、そんなこと言わないでよ。『次元を渡る程度の能力』は自分だけしか渡れないし、『ありとあらゆる能力をコピーする程度の能力』は自分が見たことがあってその能力についてよく知っていなくちゃ発動しないし、発動しても劣化コピーだし」

「ふむふむ…ええと、それで、ポケモントレーナーというのは?」

「あー…」

 

~少女説明中~

 

「つまり、その『ポケモン』という生物を戦わせる職業ということですか?」

「まあ、ざっくり言えば。ただ、私はどういうわけかほかのトレーナーが寄ってこないんだよねえ…6地方殿堂入りしたってのが広まってんのかな…」

「え!?」

「チャンピオンはやってませんけどね。シンオウ地方のチャンピオンの方に頼んで、チャンピオンにカウントされないようにしてもらったので。」

「なぜですか?」

「チャンピオンが仕事しないであっちへふらふらこっちへふらふらしてるわけにもいかないので」

「なるほど。ちなみに、その6地方とは?」

「シンオウ、カントー、ジョウト、ホウエン、カロス、イッシュです」

「ふむふむ、では次の質問…」

 

~少女取材中~

 

「それでは最後の質問、ズバリ!魔法は得意ですか!?」

 

それを聞くと、ドールは1つの岩を右手で指さし、右腕に左腕を乗せ、言った。

 

「………ガンド」

 

「へ?」

 

ぎゅん、という音がして。

ドールが指さした岩が、瞬く間に壊れた。

 

これぞ、指差しによる病の呪い…「ガンド」である。

正しく言うのなら「ガンド撃ち」。本来は物質的な破壊力など持たない「ご婦人向け」の魔術なのだが、ドールはどうも呪うことにかけては一流だったらしく、あっという間にただの1撃で心臓を停止させる「フィンの一撃」のレベルまで極めてしまい、自分と同じくらいの大きさの岩程度ならば楽に壊せてしまう。

まあ、腕力使っても結果は一緒だが。

 

(…ガンドに破壊力求める時点で間違ってるんだよね……)

 

「おお、これはすごい!では、私はこれで。明日の『文々。新聞』をお楽しみに!」

「あ、その前に」

「はい、何でしょう?」

「……変なこと書いたら、貴女の心臓、あるいは頭があの岩と同じことになります。注意してくださいね(にっこり)」

「は、はい…」

 

文は去っていった。

 

「……初対面で文をあれだけ脅したやつ初めて見たぜ」

「そうなの?」

「ああ、ほとんどのやつがあの笑顔に騙される」

「へえ。あ、ところで魔理沙」

「何だぜ?」

「弾幕ごっこのルール教えて」

「ん、わかった。スペカも今作るか?」

「うん」

 

~少女作成&ルール説明中~

 

「ずいぶん作ったな…」

「別にいいじゃん」

「ちゃんとルール聞いてたか?」

「聞いてたよ。だから、その場に応じてどれ使うか決めるよ」

「早速やってみるか?」

「あ、はい」

「よし、私と魔理沙どっちがいい?」

「魔理沙で」

「ええ…まあ別にいいんだけどよ…」




次回、開幕弾幕ごっこ
デュエル、スタンバイッ!



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3話 弾幕ごっこ

いろんなネタが出まーす


「これは練習だから先に相手のスペルが2発当たったほうが負け。これでいいな?」

「はい」

「ああ、いいぜ!」

 

「よし…始め!」

 

「いっくよー!空符『パーフェクトスカイ』!」

 

ドールの前に扇状に広がる、小玉、鱗弾、へにょりレーザー。

両脇と真ん中にへにょりレーザー、その間に小玉と鱗弾。小玉と鱗弾はクルクルと回転していて、空を連想させられた。

 

そんなに量が多いわけではないから、操作するのは苦ではない。

…かつて出会った、シグという名の少年をイメージしたスペル。

 

「…よっと!これはへにょりレーザーだけ気を付ければ大丈夫そうだな」

(うーん、やっぱりこれくらいのやつじゃ避けられちゃうかあ…)

 

「今度はこっちだ!」

 

大量の星弾を打ち出す魔理沙。

どうにか躱すドール。

 

「そこだ!星符『ドラゴンメテオ』!」

(しまった………!)

 

星弾を避けたことでスキができた。

上空からのレーザー。

 

「………はっ!!!」

 

なんとか躱した。

 

「くう…神話『舞い上がる純白の炎竜』!」

 

真っ白い大玉と、それを取り囲む真っ白い炎弾が魔理沙に発射される。

 

(1、2、3、4、5…)

「?なんだこりゃ?」

 

楽に躱す魔理沙。

 

(6、7、8、9、10…!チャージ完了!)

「せいっ!」

 

右腕から炎…いや、白い炎弾を引き連れた竜の形をした炎を飛ばす。

…かつてともに戦ってくれた伝説のポケモン、レシラムを模したスペル。

 

「んなっ!?」

 

魔理沙はどうにか躱した…のだが、どうやら竜の形をした炎が引き連れていた炎弾が2~3個当たったらしい。

すかさず、ドールはこのスペルの仕上げ…クロスする真っ白い2本のレーザーを撃った。

 

「!」

 

魔理沙はとっさで避ける。…というか、「クロスするレーザー」である以上、正面安地とわかりやすいのだが。

 

「…やるじゃないか。行くぜ!魔符『ミルキーウェイ』!」

 

くるくると、らせん状に広がる弾幕。

 

「避けるの難しいなあ…よし、彼岸花『地上で燃える死者の花』!」

 

扇状に広がる、緑色のへにょりレーザー。数は10~20ほど。

 

「うわ、へにょりは2~3本だけでもきついってのにこの数は鬼畜だろ!」

「うん、私も操作大変。」

 

(………ん?これ…()()に曲がってってる?これじゃ自分の真ん前ががら空きに…)

 

魔理沙は避けつつ考える。いつの間にかへにょりレーザーの色が枯葉のような茶色になり、少し細くなっていた。

 

(落ち着け私…さっき、あいつが言ってたスペル名何だった…?)

 

とりあえずドールの目の前のがら空きのスペースからはずれておく。

 

それを見たドールは、髪を数本引き抜いた。

 

「…汝、我が(しもべ)なり」

 

ドールがそう告げると、髪はうねうねと動き、やがて絵本の妖精のような形のものが2体できた。

 

髪でできた妖精は、ドールの左右に分かれた。

 

次の瞬間、へにょりレーザーが途切れ、大量の白い水滴弾が放射状に撃ち出された。

 

「うお!?…いや、これ自機狙いか。ならチョン避けでいけるな」

 

異変解決数は10回超え、百戦錬磨の魔理沙には、楽に看破されてしまった。

 

「しっかし、チョン避けすればいいとはいえ…この数はきついな」

「だよね~」

「うっし、蹴散らすぜ!恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」

「!」

 

魔理沙の周囲の使い魔から、5条のレーザーが発せられる。

 

「う…回転までするの…?」

 

5条のレーザーは、時計回りに回転していた。

 

(待って…魔法陣の数は10…てことは…)

「…増える?」

「当たりだぜ♪」

 

残った魔法陣からも5条のレーザーが撃ち出される。

今度は反時計回りだ。

 

「魔理沙もなかなかいやらしいスペカ考えるねえ…」

 

魔理沙の真正面にレーザーが来ると消えるが、配置された6色の小星弾が向かってきて、そこそこ鬱陶しいスペルである。

 

(魔理沙が普通に撃ってくる星弾もなかなか鬱陶しい…)

 

「…魔理沙、忘れちゃいけないよ?私のスペルはまだ終わってない」

 

そう告げて、ドールはさらに使い魔(模造妖精)を追加し、水滴弾を撃つのを止め、黄緑色の細いレーザーを5条、撃ち出した。

 

「おっ…そっちもレーザーか」

「レーザーだけじゃないよ♪」

 

ドールは言って、真っ赤な楕円弾をレーザーとレーザーの間に撃ち込む。

 

「おっと、これは…楕円弾とレーザーの隙間に入ればいけるな」

 

言いつつ、魔理沙は大星弾の列を撃ち出す。

 

「う……鬱陶しいなあ…地味に避けるの大変なんだけど…被弾覚悟ならいけるけどさ」

 

傍から見たらカラフルで美しい勝負なのだが、やってる本人たちはその美しさに見とれる暇はない。やって分析程度である。…余裕があれば、見物しつつ戦うやつもいるのだろうが。

 

「う~…えい!」

 

ドールは叫んで、赤い楕円弾を撃ち止め、やや太めの黄緑色のレーザーを5条、使い魔とともに撃ち出した。

 

「このスペルのレーザー、全部扇状だな。へにょりやさっきのみたく間に何かあるとかじゃないとすぐ避けられるぜ?」

「うん、知ってる。…後ろ、注意」

「は?」

 

ばん、という音がして、レーザーの先端が破裂し、大量の赤いへにょりレーザーが撃ち出された。

 

「なっ!?」

 

魔理沙は迷わずレーザーの隙間に突っ込み、へにょりレーザーを回避する。

 

「…グレイズ」

少し不満そうに、ドールがつぶやいた。

 

「なるほどな…。さっき思い出したが、このスペル名、()()()『地上で燃える死者の花』だったな。きちんと聞いとけばよかったぜ」

 

そう。

 

1番最初の緑のへにょりレーザーは、前の花の後に生えた葉。

真っ白い水滴弾は、彼岸花の球根。

黄緑色の細いレーザーと真っ赤な楕円弾は、茎とつぼみ。

そして、黄緑色のレーザーとその先端から出てきた赤いへにょりレーザーは、成長しきった茎と花。

 

「私、彼岸花好きなんだ♪私の誕生花だからね♪」

 

(待てよ…これが花だろ?ってことは…)

 

黄緑のレーザーは、細い茶色のへにょりレーザーになった。

 

「やっぱり、枯れた茎か」

 

外側2本は外側、内側3本は内側に向けて曲がっていく。

隙間には、茶色の点弾が等間隔で撃ち込まれる。

 

「これは…虫か?」

「うん」

 

へにょりが細いから、点弾を避けるのは楽だ。パターン化している。

だが、へにょりが曲がるスピードも考えないと、下手すれば当たる。

 

「めんどくさいな…」

 

「…スペル、終了」

 

ぱん、とへにょりが破裂した。

米粒弾が飛び出す。

しかし、それと同時に点弾が消えた。

 

「んな!?ほんとにめんどくさいスペルだなこれ!」

 

魔理沙は、点弾があった位置に飛び込んで米粒弾を躱した。

 

「とっとと方を付けるぜ!恋符『マスター…」

「そう来ると思ってた!」

 

そういうと、ドールは左腕を振り上げた。

 

「チャージ完了!神話『舞い降りる漆黒の雷竜』!」

 

上空に打ち出されたのは、真っ黒いバラ弾に取り囲まれた、漆黒の竜の形をした雷。

…ドールにとって特別な人とともに戦った伝説のポケモン、ゼクロムを模したスペル。

 

「なあ!?」

 

後ろに飛びのき、躱す。

 

(…待てよ、これ……ドールが2回目に使ったやつと似てる…ってことは…)

 

「気づいたかもしれないけど、手遅れだよ!」

 

ドールは仕上げに、クロスする真っ黒いレーザーを放った。

魔理沙の位置は、ドールの正面からわずかに左にずれている。

 

「しまっ………!」

 

避けようとしたが、それより先にレーザーに直撃した。

 

「がっ……!」

 

「そこまで!」




ドールちゃんは技作るときは今までに見たものを技にすることが多いです。


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4話 思わぬ再会

ドールちゃんの交友関係がちょっと明かされます。


「見物させてもらってたけど…なかなかいい線行ってるじゃないか」

「ありがとうございます、みとりさん」

「お前…変な技考えるの得意だな…」

「そう?今まで見てきたものをイメージしてみたんだけど」

「あの竜とか何なんだぜ?」

「あれは伝説のポケモン。かっこいいから真似してみたんだけど…いやあ、骨が折れる…」

「そうだろうな。…ああ、私はもう帰るぞ。用事があるんだ」

「そうですか。すみません、付き合っていただいて」

「どういたしまして」

 

「いや~、いい試合だったね~」

「ああ、本当にな。」

「あんなスペル、私じゃ考えられないです!」

「皆さん、ありがとうございます…って…あの、どちら様で?」

 

「「「!?」」」

 

ドールの発言に、みとり・妹紅・魔理沙が一斉に振り返る。

そこにいたのは…

 

「…守矢神社のやつらじゃないか。何でいるんだぜ?」

 

守矢神社の面々が、勢ぞろいしていた。

 

「いやあ、なんか魔理沙と新入りちゃんが派手にやってるから見に行こーって」

「右に同じ」

 

「諏訪子様と加奈子様がそうおっしゃったので。…って……撫子さん!?」

「えっ…早苗!?」

 

「え、知り合いなのか?」

「通っていた学校が近かったので…」

「…あ、本当だ。よく(うち)に来てた子じゃないか」

「この姿では初めましてだねー。裏の祭神、洩矢諏訪子だよー」

「表の祭神、八坂神奈子。よろしく」

 

「よろしくお願いします。…それで、なぜここに…?あと、いったいいつから見て…?」

「外の世界では信仰が得られなくなってしまいまして…。あと、魔理沙がドラゴンメテオ撃ったあたりから見ていました」

 

「そっちはなんでここにいるんだい?」

「どうも、管理人の方の手違いの何かみたいです」

「もうボケが始まってるんじゃないか、あいつ…」

「神奈子様、聞かれてしまいますよ…」

「なあに、構うもんか」

「早苗、いいんだよ。悪いところを指摘されて怒るのは自覚してる(あるいはアホの)証拠だから」

「そうなんですか…?」

「子供の喧嘩も同じでしょ?」

「あ…そうかもしれませんね」

 

「仲いいな。ところで、私そろそろ帰っていいか?」

「あ、どうぞ」

 

妹紅は去っていった。

 

「私もこれの修理始めるな」

「あ、はい」

 

みとりも帰っていった。

 

「いや~それにしても、まさか撫子さんに会えるなんて思ってませんでした!」

「私もだよ」

 

「なあ、さっきから気になってたんだが…早苗、なんでお前ドールの事日本名で呼んでるのぜ?」

「いや、『好きなように呼んでくれ』と言われたので…」

(あんまり気に入ってないんだけどね…)

 

「あ、そうだ!撫子さん、今日はうちに泊まっていきませんか!?」

「え?いいの?じゃあ、お言葉に甘えて……………………………………………………………………いや、遠慮しとく。オチが見えてるから」

『アルトリアが食べ物食べつくすというオチね』

 

「そうですか、残念です…」

 

早苗はがっくりと肩を落とした。




外の世界にいた時のドールちゃんのマイブームが神社巡りでした。


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5話 観光と面倒ごと

観光回。
…のはず。


守矢一家が帰ってから、魔理沙が言った。

 

「なあ、ドール。ドールは幻想郷を見て回るんだろ?」

「ん、その予定だけど、どうかした?」

「良ければ私が案内するぜ?」

「あ、お願い~」

 

「よし、決まりだな。じゃ、まずはどこがいい?」

「うーん……人里かな?」

「よし、行くぜ!」

 

~少女移動中~

 

「わ、結構にぎわってるんだね」

「ああ。………ん?あれは……………慧音?」

 

魔理沙の視線の先には、1人の女性がいた。

 

真っ白い髪を肩にかかるくらいまで伸ばし、変わった形の帽子をかぶっている。

 

(真面目そうな顔。先生みたい)

 

「おーい、慧音!今日は寺子屋がある日だろ?どうしたんだー?」

 

魔理沙の声でこちらに気づいた女性――慧音は、こちらへ歩み寄ってきた。

 

「ああ魔理沙、ちょうどいいところに…って、そっちの子は誰だ?」

「あ、『ドール・クラーゲン・オンディール』、日本名『猫沼撫子』です。幻想入りしてきました」

「(オンディール?どこかで聞いたな)私は『上白沢慧音』。そこの寺子屋で教師をやっている」

 

「で、どうしたんだぜ?」

「ああ、実は休み時間に外に出て遊んでいたうちの生徒が、妖怪とも何ともつかないものに襲われてな。それで、他にもいるかもしれないから、今日の授業は午前だけになったんだ」

 

「………上白沢さん。そいつ捕まえましたか?」

「ああ、苦労したがな。後、慧音でいい」

 

そう言いつつ、慧音は1つの箱を取り出した。札が貼られているうえ、荒縄でがんじがらめにされている。

 

「札まで貼ったのか。…っていうか、札なんかどっから出したのぜ?」

「前に霊夢に頼んで、子供たちの護身用に作ってもらった札の予備だ。ガスのような体をしていて、ただ閉じ込めただけでは逃げてしまうのでな」

「どうやって捕まえたんだぜ、そんなの」

「偶然薬を売りに来ていた鈴仙に協力してもらった」

「ああ、なるほど」

 

「(体がガス…ってことは…)慧音さん、それちょっと見せてください」

「え?ああ、いいが…」

 

どうする気だ、と言い終わる前に、

ドールは札を引っぺがした。

 

「!?どうしたんだいきなり!そんなことしたら中のやつが…!」

「…慧音さん。私、心当たりがあるんです。たぶん、こいつは私の世界から来た『ポケモン』です」

 

すうっと、中のポケモンが姿を現す。

 

「…やっぱり」

「へえ、ほんとに体がガスだ」

 

魔理沙が近寄った、その瞬間。

 

「魔理沙、危ない!」

 

ポケモンが、魔理沙に襲い掛かった。

 

「ムウマ、出てきて!」

 

ドールはムウマを出し、

 

「ムウマ、シャドーボール!」

 

指示を下した。

 

ポケモンは魔理沙から離れ、ぎりぎりでシャドーボールを躱す。魔理沙も躱す。

 

「もりのようかんに帰ってもらうよ…ゴース!」




めっちゃ短い。


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6話 新たな発見と巫女

やっと霊夢登場。


「ゴース?それがこいつの名前か!?」

「はい。分類は『ガスじょうポケモン』、たぶん人間が普通に殴ってもあまり意味はありません!」

 

「そうか…なら!」

 

慧音は、数発の弾をゴースに向かって撃ち出した。…しかし。

 

「なっ…!?全然効いてない!?」

「…どうやら、慧音さんの弾は『ノーマルタイプ』と判断されたようですね」

 

「タイプ?どういうことだ?」

「ポケモンとその技には『タイプ』というものがあり、それによって技の効き具合が変わるんです。ゴースは『ゴースト・どくタイプ』。『どくタイプ』は『ノーマルタイプ』と相性が悪く、『ゴーストタイプ』に至っては全く効きゃしません」

 

「なら私が撃つぜ!!」

 

魔理沙はそう言って、大量の弾幕をゴースに撃ち出した。

 

「!…ウギィ……!!」

「ん、私のもそんなに効いてないな」

「魔理沙のは『フェアリータイプ』と判断されたみたいだね。『ゴーストタイプ』には普通の効果だけど、『どくタイプ』にはちょっと分が悪い」

 

「全く効かないわけじゃないだけマシか…じゃあ別のやt」

「ムウマ、あくのはどう!!」

「まーう!(まかせて!)」

「え?」

 

ドールはムウマに指示を出す。

 

ムウマは、全身から真っ黒い波動を放った。

 

「ウギィィィ…グアァァ!!!!」

 

そのまま、ゴースは倒れた。

 

「な!?ワンキルかよ!?」

「ムウマのほうがレベル上だからね」

「レベル?」

 

「ポケモンは、相手を倒すと『経験値』というものを手に入れ、それがある程度溜まるとレベルが上がるんです。レベルが高くなればなるほどポケモンは強くなります。…さっきのゴースのレベルは11、ムウマのレベルは88です」

「うわ、すっげー差!!」

「確かに、それなら一瞬で倒せるな」

 

「ええ。後、さっき見ていて気付いたんですが、対人戦の時はレベル云々は関係ないっぽいです」

「なるほど」

 

「…それなら、何で最初からやらなかったんだぜ?」

「いや、2人がやってくれるならそれでいいかなーと…」

「お前なあ…」

「とりあえずこいつは預かっときます」

 

そう言いながら、ドールはゴースを持っていた空のプレミアボールに入れ、カバンに放り込んだ。

 

「さ、観光行こ」

「お、おう」

 

~少女観光中~

 

「で、ここが鈴奈庵だぜ」

「本屋?」

「貸本屋だぜ。販売もやってるけどな」

 

2人は中に入った。

 

「いらっしゃいませ~…って、あれ?そちらの方は?」

 

奥から、1人の少女が現れた。

市松模様の着物の下にスカートをはき、その上にエプロンをつけているという、和洋折衷な格好をしていた。

 

「あ…初めまして。異世界から幻想入りしてきたドールといいます」

「初めまして!私は本居小鈴。ここの店番です。それで、何のご用でしょうか?」

 

「平たく言うなら観光です。…でも、ここ…少し気になる力がするので、見させてもらいますね」

「気になる力、ですか?」

「ここは妖魔本も多く扱ってるから、それじゃないか?」

「そうかも」

 

そう言いながら、あちらこちらの本棚を見る。

 

「やっぱり、絶版になったのが多い…ん?」

「どうした?」

「これは……」

 

ドールは、棚に並んだ本の1つに手を伸ばす。その本の題は、

 

「……『【写本】アブラメリンの書』…?」

 

天使や悪魔を呼び出し、願望をかなえるための手順が記されている魔術書(グリモワール)…「アブラメリンの書」の写本であった。

 

「油みりんの書?料理本か何かか?」

「『アブラメリンの書』。正しくは『術師アブラメリンの聖なる魔術の書』。天使や悪魔を召喚し、さまざまな願いをかなえるための手段や護符などが記されている魔術書」

 

「ああ、それですか。それ、アブラメリンの書の写本とは名ばかりの、天使と悪魔の名前や役割、逸話について羅列しただけの本ですよ。ちょこちょこ召喚方法とか使役する方法とかも書いてありますが、力の弱い下級天使や下級悪魔のやつくらいしかありません」

「…これ、もらっていいですか?」

「別にいいですよ。もう処分しようかと思ってたやつですから」

「そうですか。あとは……」

 

~少女買い物中~

 

「花言葉の本とか宝石言葉の本とか、いったい何に使うんだぜ?」

「贈り物するとき使うんだよ。これ、もう絶版になってて売ってないし」

「ありがとうございま~す♪」

 

「他はどこ行きたいんだぜ?」

「ん~……博麗神社」

「よし、わかったぜ!」

 

~少女移動中~

 

「ほら、ここが博麗神社だぜ!」

「…言っちゃなんだけど…人、居ないね…」

「こんな山の上まで来て参拝するやつはいないのぜ」

「だよねー…。ところで、博麗の巫女ってどこいるの?」

「霊夢な。たぶん中にいると思うから呼んでくるぜ!」

 

魔理沙はそう言って、本殿の中に入っていった。

 

(…暇…)

 

ドールは待っている間暇だったので、あちらこちらを見ていた。

 

(この末社はなんだろ…お母様はこんなのがあるとは言ってなかったけど…)

 

本殿の近くに、末社(祭神と縁の無い神を祀る社)が設置されていた。

末社に取り付けられているのとは別に周りを細い注連縄で囲まれており、末社自体の扉には札が何枚も張られている。

 

(こんなに厳重に札が張ってあるってことは、よっぽどやばい神でも居るわけ…?なんか、最近建てられたみたいだけど…)

 

「お~い、そこで何やってんだ~?」

「あ、魔理沙」

「霊夢、中にいたぜ」

 

そう言う魔理沙の後ろから、1人の少女が歩いてきた。

 

歳は、魔理沙と同じくらい。髪を大きな赤いリボンでポニーテールにしていて、脇が出る不思議な形の巫女服を着ている。

 

(博麗の巫女…?)

 

「初めまして、私は霊夢。見ればわかるだろうけど、ここの巫女やってるわ」

「初めまして。私は…」

「ドールでしょ?魔理沙から聞いてるわ」

「そう」

 

「あんたがなんかやらかしたら遠慮なくとっちめさせてもらうからね。あと、賽銭置いてけ」

「うわ出た、妖怪賽銭置いてけ!」

「ちょっと、何よそれ。喧嘩売ってんの?」

「やめなさい、霊夢」

 

そう言って出てきたのは、1人の女性。

 

脇が出る形の白衣(しらぎぬ)の下に黒いアンダーウェアらしきものを着ていて脇が見えないようになっていること、髪をいわゆる巫女縛りにしていて、霊夢が顔の両脇に垂らした髪につけている髪飾りをつけていないこと、緋袴の形状が馬乗り袴であることを除けば、霊夢そっくりの服装をした女性だった。

 

「あ、義母さん」

「ごめんなさいね、うるさい巫女で。私は『博麗夢幻』。先代の博麗の巫女で、霊夢の義母よ」

「初めまして、ドールといいます。あと、外の世界の通貨しかもっていないのでお賽銭は置いていけません」

 

「無理しておいていかなくてもいいんだy」

「大丈夫よ、交換できるやつが居るから」

「あ、そう」

 

ドールはそう言うと財布を出して賽銭箱に近づき、45円投げ込んだ。

 

「!!!ヒャッハァァァァァーーーーーーーー!!!」

「お前、45円って…」

「…ああ、価値が違うんだっけか。ここと外」

 

「ありがとうあなたいい人ね!!!」

「え、えっと……」

「霊夢、落ち着きなさい」

「( ゚д゚)ハッ!し、しまった。思いがけない出来事に、つい取り乱しちゃったわ」

「外から来た人って、普通はどれくらい賽銭入れてくの?」

「大体1円か5円だぜ。45円も置いてくやつはそうそういない」

「あ、そうなんだ。始終ご縁がありますように、って意味で45円なんだけど」

 

などと一同が話していたら、

 

「そこの子ーーーーーー!!!ちょっとお話いいーーーーーー!?」

 

空から天狗がものすごいスピードで降りてきた。

紫のリボンでまとめられたツインテールが、ものすごい勢いではためいている。

 

「あらはたて。珍しいわね。あんたがここに来るなんて」

「文が『すごいネタを仕入れた』って自慢してたから、文を問い詰めてそこの子について聞いて、んでもってあっちこっちで情報集めてここにいること突き止めたの!!!大変だったんだから!!!」

「あの…あなたは…」

 

「っと、こほん。私は姫海棠はたて。天狗の新聞記者。ちょっと取材させてほしいんだけど」

「…変なこと書かないでくれますか?」

「書くわけないよ!文じゃあるまいし!!」

「じゃ、いいですよ」

 

「よし!じゃあ質問1つ目、趣味は?」

「素性聞かなくていいので?」

「念写の応用でパクってきたから大丈夫!」

「(メモ帳でも写したのかな…?)じゃ、大丈夫ですね。読書、チェス、将棋、花札、掃除、手芸、日光浴、森林浴です」

「ふむふむ、じゃあ2つ目…」

 

~少女取材中~

 

「それじゃ最後の質問、好きな男の子のタイプは?」

「へ?え、えっと……1つだけでもいいから確固たる信念を持つことができていて、優しくて、トモダチ思いで、動物が好きで、私と共通点があって、勉強もできる人……?」

『あら?それって………。はあ、恋は盲目ね』

「なるほどー。ありがとっ!明日の『花果子念報』、お楽しみにっ!」

 

そう言って、はたては去っていった。

 

「で、あんたどうするの?もう日が傾いてきてるんだけど」

「家ごと幻想入りしたから帰る」

「あ、そう」

 

~少女帰宅中~

 

「ただいま」

「お帰り、マスター」

「遅かったね」

「途中で迷子になっちゃって………」

 

「ほんとに君は方向音痴だね。お腹すいてるでしょ?ご飯作っといたよ」

「あ、レッドさんて料理できたんですね。いつも缶詰食べてるからてっきりできないのかと」

あの状況(雪山の頂上)でどう料理しろと?あと、君には言われたくないな」

「喧嘩を売っているんですか……?」

「ドール、早く食わないと冷めるぞ」

「あ、はい」

 

~少女食事中~

 

「…レッドさん、人のこと言えないじゃないですか……」

「言わないでよ…君ほどじゃないよ……」

 

「辛い野菜炒めはまだ許す。だが、なぜ紅茶があんな味になる!?」

「何とも形容しがたい味だったね…」

「エルキドゥ、素直に『まずい』と言って大丈夫ですよ」

「ありすの紅茶が飲みたいー…」

 

ありすというのは、この家のもう1人の住人…というか、サーヴァントである。

ドールの母:カメリアが最初に参戦した聖杯戦争で、セイバーにマスターを殺された直後にカメリアと出会い、再契約したらしい。

今はお泊り会に行っている。

 

「ありすといえば、ありすが帰ってくる前に戻れたらいいね」

「ああ、そうだな」

「それはそうと、子オオカミ。もう9時半よ」

「…あ、眠いと思ったら…。もう寝よう」

『そうしましょうか』

 

こうして、ドールのやたら騒がしい1日が終わったのであった。




なぜか私の中で「レッドさんはメシマズ」という固定概念が出来上がってます。


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7話 新聞と憤怒

タイトルで大体わかるでしょうか


「フィーオ!フィーオ!(起きて!起きて!)」

「んぅ……」

 

かわいらしい、しかしやかましい鳴き声で、ドールは目を覚ました。

 

「ふぁ……おはよ、フィオネ………」

「フィーオ!!!(1回で起きてよ!!!)」

「ごめんごめん……っていうか、何で出てるの?」

「フィオー(レッドさんが出してくれた)」

「あ、じゃあご飯はレッドさんが出してくれたの?」

「フィーオー(うん、そうだよ)」

 

「子オオカミ、食事と着替え持ってきたわよ。」

「エリザありがとう」

 

~少女食事&着替え中~

 

「食器は自分で片づけて頂戴」

「わかってるよ」

 

そう言って、ドールは食器を持ってダイニングルームへ向かった。

 

~少女移動中~

 

「ん?」

 

テーブルの上に、見慣れない紙の束が置かれていた。

 

「『文々。新聞』に『花果子念報』…ああ、昨日の」

 

ドールはまず、『花果子念報』の方から目を通し始めた。

 

『【魔術使いの外来人】

昨日の昼下がり、ライバル新聞記者・射命丸文が『すごいネタを入手した』と自慢していたのを発見。彼女を問い詰め、外来人がやってきたという情報を入手した。

 

そこで、取材をするべく、情報を集めて回ったところ、博麗神社に向かったことが分かったため、博麗神社まで飛んでいき、発見した外来人に取材を試みた。

 

彼女の名は『ドール・クラーゲン・オンディール』。日本での名を『猫沼撫子』というらしい。

 

異世界から幻想入りしてきた『魔術使い』であり『ポケモントレーナー』だそうだ。

ポケモントレーナーというのは、異世界の妖怪のような存在である『ポケモン』を戦わせ、強くする職業らしい。

 

外見は、ふくらはぎのあたりまで伸びた黒髪を1つ結びにした金色の目の美少女。今年の9月20日で18になるらしい。

 

【挿絵表示】

 

 

強力な魔法(本人が言うには魔術)を操り、ポケモンの腕も純粋な腕力も強いが、読書やお菓子作りや森林浴を好むおとなしい面もあるようだ。

 

また…』

 

「…嘘とかは書いてないな。次」

 

『【幻想郷に現れた、謎の少女の正体に迫る!】

昨日、ネタを探しに魔法の森を散策していたところ、見慣れぬ館が出現していた。

 

これはどうしたことかと思い、見ていたら、その中から1人の見慣れぬ少女が霧雨魔理沙さん・藤原妹紅さんとともに現れた。会話を聞いてみたところ、玄武の沢に行く様子だったため、追跡。

 

その後、みとりさんに発見されてしまったため、玉砕覚悟で突撃取材を試みた。

 

彼女の名は『ドール・クラーゲン・オンディール』、日本名を『猫沼撫子』というらしい。

 

彼女は異世界から幻想入りしてきた『ポケモントレーナー』で、『ポケモントレーナー』というのは、『ポケモン』という生き物を戦わせ、強くしたり、きずなを深めたりする職業だそうだ。

 

また、彼女はなんと稀代の大魔女『エレイシア・クラーゲン・オンディール』の孫で、とても強力な魔法を使いこなし、自分と同じくらいの大きさの岩を難なく破壊して見せていた。

 

外見は、黒髪金目の美少女。歳は17だという。

 

【挿絵表示】

 

彼女が着ている服は、学校(外の世界の寺子屋)の制服で、私は外の世界から入ってきた本で似たような制服を見ていたため、学生なのかと思い、聞いてみたところ、違った。

 

彼女は外の世界で学校(正しくは高等学校、十代後半の少年少女が通う学校)に通っていたことはあったが、1年もしないうちに退学してしまったらしい。

 

この『退学』という言葉に注目していただきたい。

退学とは、学校を途中でやめる、あるいはやめさせられること。

そして、彼女は小さいころ魔力を制御できずポルターガイストを引き起こしたことがあり、今でも感情が高ぶると制御できなくなったりするという。

 

つまり、彼女は学校で何かやらかしてしまい、退学させられたのではないだろうか。

 

ポケモントレーナーとしての旅の途中で『ギンガ団』という組織を『邪魔』というだけの理由で潰し、『プラズマ団』という組織を同じく『邪魔』という理由で一時的に行動不能にした事があると言っていたため、ひょっとしたら本性は鬼巫女こと博麗霊夢さんのような性格なのかもしれない。

 

また…』

 

「………」

 

ドールの手から『文々。新聞』が滑り落ちた。

 

「ふ、ふふ。ふふふふふ。あの馬鹿天狗、あれほど言ったのに……ふふふふふ、あっはははは…」

 

がたがたと、家具や皿が揺れ出した。

 

「おっと、いけないいけない。魔力の無駄遣いしちゃった」

 

そう言いつつ、ドールはバッグの中のぼうけんノートを取り出し、ページを1枚破ってこう書いた。

 

【ちょっと用事ができました。妖怪の山に行ってきます】




※ドールちゃんの挿絵はイメージです。
画力無くてごめんなさい。


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8話 迷子と向日葵

残念な美少女とか残念なイケメンとかっていいよね。


「物置にあった幻想郷の地図持った、水筒と(バスケットにサンドイッチをひたすら詰め込んだだけの)お弁当持った、包帯と絆創膏持った、スペカも持った…よし、全部持った!…よな?何か忘れてるような気がするけど…。まあ、大丈夫でしょ」

 

そう言って、ドールは家を出た。

 

~少女移動中~

 

「…………迷った……………」

 

フラグ回収乙。

 

「そうか…忘れものって…トゲキッス…。トゲキッス連れて来れば…飛んで行けたのに……ん?待てよ…セイレーンに変化すれば行けるじゃないか!ここじゃ無理だからとりあえず、空が見える場所探そう!」

 

~少女移動中~

 

「…あれ、ここは……」

 

ドールは、いつの間にかひまわり畑についていた。

 

「どこ、ここ?」

 

ドールが地図を出そうとすると、

 

「ここは太陽の畑よ」

 

背後で声がした。

 

ドールが驚いて振り向くと、そこには1人の女性が立っていた。

緑色の髪を肩にかかるくらいのところで切りそろえ、チェック模様のワンピースを着、白い日傘をさしていた。

 

「私は風見幽香。ここに住む妖怪よ。…あなたは、今朝の新聞に載ってたドールであってるかしら?」

「ええと…はい、あってますが」

「ふうん……。ねえあなた、ちょっと私と勝負してみない?」

「…………はい?」

 

「最近異変も何もなくて、退屈してたの。いいでしょ?」

「あ、あのう……」

 

私先を急いでいるんですが、というより早く、幽香が大量の弾幕を飛ばしてきた。

 

「!!」

 

とっさに躱す。

だが、弾幕の嵐は止みそうにない。

 

(反撃するか…)

 

ドールはスペルカードを出し、叫ぶ。

 

「復符『ルプリーズ』!」

 

紫色のト音記号の形をした弾幕が、撃ち出される。

…かつて訪れた異世界で、さまざまなことを教えてくれた先生をイメージした弾幕。

 

「?こんな少ない弾幕で、この量の弾幕に対抗しようというの?」

「……」

 

ドールは黙って、弾幕の操作に専念する。

 

(初心者だから、こんなに少しの弾幕しか出さないのかしら?)

 

幽香がそう考えた瞬間、ト音記号の形をした弾幕が、ひまわりにぶつかりそうになった。

 

「!!!」

 

幽香は焦って、ひまわりを守ろうとする。

 

だが。

ひまわりを倒してしまうかに思えたその弾幕は、ひまわりには何の影響も及ぼさず――()()()()()()

 

「…!」

 

バウンドした弾幕が幽香のところへ向かっていったため、幽香は避けた。

 

「なるほど…。面白いスペル考えるじゃない。燃えてきたわ!!!」

 

幽香はさらに大量の弾幕を撃ち出す。

ドールはそのすべてを、弾のバウンドを利用して相殺する。

 

(…そろそろスペルブレイク…)

 

次のスペルは何にするか、と思案するドール。

 

「…邪魔な弾幕。蹴散らすか」

 

ぽつんとつぶやき、スペカを出す。

それと同時に、スペルが終了する。

 

「軌跡『最初の勝利』」

 

大量の茶色い楕円弾が、幽香へ向かう。

…1番最初に倒したジムリーダーからもらったわざマシン、『ステルスロック』をイメージしたもの。

 

「…うっとおしいわね」

 

楕円弾は、幽香の近くへ行くとその場で静止し、幽香の動きを阻む。

 

ドールは次に、輪の形になった緑の小玉(俗にいうポンデリング)を撃ち出した。

…2番目に倒したジムリーダーからもらったわざマシン、『くさむすび』をイメージしたもの。

 

「!」

 

幽香は、それを躱す。

 

(…これ、絶妙に邪魔な位置に来るわね…)

 

輪の形になった緑の小玉を躱すと、茶色の楕円弾がそこにある。

躱しきれないわけではないが、弾幕と弾幕の隙間に入るのがすさまじく難しい。

 

かなりいやらしいスペルである。

 

(…スペルカードで蹴散らした方がいいかしら)

「花符『幻想郷の開花』!!」

 

あらゆる場所に花を咲かせ、それを弾幕として放つスペル。

 

(この子、飛べないらしいから…これは、たぶん躱しにくい…!)

 

「…これは…。まだです。まだ私のスペルは終わっていません!」

 

そう叫び、ドールは黒に近い紫のクナイ弾を撃ち出し、それと同時に茶色の楕円弾を撃つのをやめた。

…3番目に倒したジムリーダーからもらったわざマシン、『シャドークロー』をイメージしたもの。

 

5つのクナイ弾が動物―ポケモンの爪のような形になり、回転しながら幽香に向かう。

幽香の近くへ行くと、5つのクナイ弾がばらばらになり、扇状になって幽香へ向かっていく。

 

クナイ弾の間は隙間だらけだが、その間を縫うように輪の形の緑の小玉が入り込む。

弾幕の上を飛ぶか、どうにかしてクナイ弾と小玉の間に入るかしないと、避けられない。

 

(ずいぶんといやらしいスペル考えるのね、この子…!)

 

大量の花の弾幕で、ドールの弾幕が相殺される。

弾幕の合間を縫って、クナイ弾が飛んでいく。

華々しい勝負だった。…難易度はかなりの物だっただろうが。

 

ドールは、輪になった緑の小玉を撃つのをやめ、茶色い大玉を撃ち出した。

…4番目に倒したジムリーダーからもらったわざマシン、『ドレインパンチ』をイメージしたもの。

 

元の技のように体力を吸い取る力こそないものの、直線的に突っ込んでいくその動きはまさにパンチのようで、体力を吸い取る力はその後ろについていく、無数の茶色の点弾で再現している。

 

(これは…。こういう直線的に飛んでくるのはちょっと新鮮ね)

 

幻想郷の弾幕は、ほとんどがトリッキーな動きをするもの。こういった直線的なものは、あまりない。ドールは、それならばむしろこういったものの方が慣れていなくてよけにくいのではないか、と思ってこの動きにしたのだが…それは、少々甘い考えだったようだ。

 

(…割と難なく躱されてる…)

 

弾幕を躱した際、躱した場所に弾があると、躱そうが躱すまいが当たる。

だが、それは、回転したり、いきなり軌道が変わったりなどのトリッキーな動きをする弾幕だからこそできる技。

直線的な弾幕では、弾と弾の間に入ることも難しくないのだ。

 

(ミスった…)

「こんなのじゃ楽勝よ!それっ!」

 

さらに大量の花の弾幕を追加する幽香。

ドールはクナイ弾の位置を工夫し、相殺していく。

 

(…そろそろ、変化させなきゃ)

 

ドールはクナイ弾を撃つのをやめ、水色の水滴弾を大量に撃ち出した。

…5番目に倒したジムリーダーからもらったわざマシン、『しおみず』をイメージしたもの。

 

(奇数弾…なら、チョン避けでいけるわね。大玉も、動きが直線的だし)

 

幽香もかなりの実力者。弾幕の判別ならお手の物である。

 

「私のスペルはそろそろ終わるけど、あなたのはまだかかりそうね?」

「……」

 

ドールは、無言で弾幕の操作に専念する。

幽香のスペルが終了する。…が、元々幽香が大量に弾幕を放っていたため、あまり変わらない。

 

傍から見たら、ほぼ互角の戦いに見えるのだろう。

だが。

 

(…私は直撃まで行かずとも掠るくらいは何度もしてるのに、あの人は掠ってすらいない…)

 

熟練者と、初心者の差。

いくつものスペルや弾幕を見てきた幽香に対し、ドールは知識こそあるものの、実際に見たものは少ない。

それが、大きな差を生んでいるのだ。

 

「ほらほら!ぼーっとしてると当たるわよ!!!」

「!!」

 

ドールの目の前に、幽香が撃ち出した弾幕が迫っていた。

慌てて躱す。…が。

 

その途端、ドールの視界が歪んだ。

 

(…え?)

 

ドールの目には、驚く幽香が見えるはずだったが…だんだん視界がブラックアウトしていき、何も見えなくなった。

 

その直後ドールを襲った、胃がせり上がるような感覚と、心臓が普段の数倍の早さで動いているような感覚。

 

ずいぶんと、久しぶりな感覚。

本来ありえないはずの感覚。

 

(なん…で……?ケイオ…)

ドールは、自分の中の同居人に、語り掛けようとした。

 

だが…それよりも早く、意識が途切れた。




だから、戦闘シーンは苦手なんだってば…。
ちなみにドールちゃんが放ったスペカ「軌跡『最初の勝利』ですが、本来はしおみずイメージの弾幕の後、ドレインパンチイメージの弾幕が消えて銀色の追尾弾(大玉、ラスターカノンイメージ)を撃ち出し、その後しおみずイメージの弾幕が消えて白いランダム弾(中玉、ゆきなだれイメージ)を撃ち出し、その次にラスターカノンイメージの弾幕が消えて黄色の細いレーザー(チャージビームイメージ)を撃ち出す。そして最後に残ってるすべての弾幕が消えて、黄土色、茶色、赤、紫のバラ弾に囲まれた銀色の大玉(四天王とシロナさんイメージ)を撃ち出します。


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⑨話 霧の湖

9話なので。


『ドール…起きなさい、起きなさいってば』

「…ん…」

 

聞きなれた声が頭の中で響き、ドールは目を覚ました。

 

(ケイオス…さっきサボったでしょ)

 

ケイオス。

ケイオス・コンウェニエンティア・オルドヌング。

ドールの中の同居人である。

 

別に多重人格者であるというわけではない。どちらかというと、憑依に近い。

…ドールの母、カメリアが最初に勝ち取った聖杯の中身、である。

紆余曲折を経て聖杯の中身になり、カメリアの願い――持病を治すこと――を叶えたのちいろいろあってドールに宿ることになったとかなんとか聞いてはいるのだが、ドールはよく知らない。

 

カメリアの持病はドールにも遺伝しており、ケイオスはそれを抑えている。

 

『サボったわけじゃないわ。ちょっとうつらうつらしただけ』

(寝てる時でも能力は発動できるんじゃなかったの?)

『まあ、何というか…設定し忘れた?みたいな』

(ケイオスにしちゃ珍しいね。ところで、ここは?)

 

ドールは、ログハウスのようなところのベッドに寝かされていた。

 

『ああ、ここは…』

 

ケイオスが返答するより先に、部屋に女性が入ってきた。…幽香だった。

 

「あら、もう目が覚めたのね」

「あ…さっきの…」

「新聞に持病持ちと書いてあったわね。ごめんなさいね。大丈夫?」

「あ、はい。私の持病、あってないようなものなので…」

 

「あら、そうなの?…ところで、話は変わるけれど。この子について、何か知ってる?」

 

幽香はそう言って、近くに置いてあったクッションに寝ていたポケモンを抱き上げた。

 

「?リーフィア。何で幻想入りなんか………あ」

「どうしたの?」

「きゃう~~?(どうかした?)」

「君…ミツルさんの個体値厳選祭りで逃がされた子が進化した子…?」

「きゃう(うん)」

「???話がよくわからないんだけど」

「あ……」

 

~少女説明中~

 

「つまり個体値ってのはパラメータのことで、その子は個体値低いからミツル君って子に捨てられて幻想入りしたと…」

「捨て…うん、まあ、そうなる…のか。…この子は、個体値低いわけじゃあないみたいですけど…」

『5vで、しかも♀じゃない。激レア』

 

「ふうん…そうなの。ああそうそう、頼みがあるんだけど」

「なんでしょう?」

「あなた、天狗に会いに行くんでしょ?」

「ええ。そうですが」

「私も同行していいかしら?」

「?何かあったんですか?」

「これを見なさい!!!」

 

幽香はそう言って、『文々。新聞』の2面目を開いて突き出した。ちなみに、1面目にはドールの事がでかでかと載っている。

 

「『風見幽香、謎の生物を発見!また1つの命の灯が消える…』…?」

「全く、こんな根も葉もない記事書いて!!!いったい何書いてんのよあの馬鹿天狗!!!」

「本当、ヒトをなんだと思ってんでしょうね」

「というわけで同行させてもらうわ」

「あ、はい。よろしくお願いします、風見さん」

「…幽香でいいわ」

「じゃあ、幽香さん」

「…さっさと行くわよ。文は今、霧の湖にいるわ。変わった動物を見つけたんですって」

「?はい」

(なんかこの子はやりにくいわ…)

 

~少女移動中~

 

「ここが霧の湖よ」

「ほんとに霧が濃いですね…あの馬鹿()はどこでしょう」

「う~ん、今日はいつもに増して霧が濃いわね…。これじゃよく見えないわ…」

 

「…ん?あれ、でしょうかね?」

「どれよ?」

「ほら、あそこで氷像になってる…」

 

ドールが指さした先には、確かに凍り付いて氷像のようになった、どうやらもとは烏天狗だったらしい物体があった。

 

「…よく見えないけど、文みたいね」

「いったい何g」

「そこのおまえーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

「?」

 

いったい何があったんでしょうか、とドールが言おうとした瞬間、霧の向こうから少女の声がした。

 

そして、しばらく待っていると、その声の主が走ってきた。

ソーダ色の髪を同じ色のリボンでまとめていて、背中からは翼のような形になった氷が突き出ていた。

 

「…妖精?」

「そこら辺の妖精と一緒にしてもらっちゃ困るよ!!!あたいは氷の妖精チルノ!!!げんそうきょーでさいきょーの妖精だ!!!」

「はあ…。チルノ、あんたまだそんなこと言ってるわけ?確かにあんたの力は妖精の中では最強かもしれないけど、幻想郷じゃ下の方じゃない」

「そんなことないっ!」

 

「…で、何の用?えっと、チルノ…だっけ」

「おまえ、強いらしいな!!!あたいとしょーぶしろ!!!」

「………文をぼっこぼこにするのに全力投球したいんだけどなあ。ま、ジャブ程度でいっか」

「何ぶつくさ言ってるんだ!!!さては、怖いんだな!!!」

「うん、怖い怖い。何が怖いって相手の実力を見抜けない君の馬鹿さ加減が怖い」

 

「なにっ!?」

「…メラミ」

「へ?」

 

ドールがチルノの方に手を伸ばし、呪文をつぶやいた途端、ドールの手から大きな火球が飛び出し、チルノを襲った。

 

「!!!???ああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

チルノは叫びながら、湖に転がり込んだ。

 

「あなた、えげつないことするわね…」

「氷には炎。基本です。…ジャブ程度だったんですが、思ったより効きましたね。メラにした方がよかったかな…」

 

こうかはばつぐんだ。

 

「うう…。き、今日はここまでにしといてやるー!!!えっと…アイドリングストップ!!!」

「…『I'll be back』じゃないかな?」

「あ!それ!」

 

そう言いながら、チルノは去っていった。

 

「…邪魔ものもいなくなったし、文を解凍しましょうか」

「そ、そうね」

 

~少女解凍中~

 

「ふう~、助かりました~」

「あんた何やってんのよ」

「いや~、チルノさんがあの生物を凍らせるのを見物していたら、巻き込まれてしまいまして…」

 

文が指さした先には………

…ゲンガーの氷像、否、氷漬けゲンガーがあった。

 

「……お前…逃げたのか………」

「?あなたのポケモンなの?」

「いえ、私の家に住み憑いてるゲンガーです」

 

(毎朝寝起きドッキリは勘弁してほしい…)

 

「…っと、こんな話してる暇じゃなかったわね。文。殴らせろなさい」

「あやややや!?なぜですか!?」

「あんな記事書いたからに決まってるでしょう!!!」

 

というが早いか、幽香は文に黄金の右ストレートをくらわせた。

ドゴォ、という破壊音が響く。

 

「さて、私も1発」

 

そう言うと、ドールは亜空間倉庫の鍵を開け、中から1本の杖を取り出すと、唱えた。

 

「ブラックスティンガー!!!」

 

黒い波動が、文に向かって発射された。

 

「ぎゃああああああああ!!!」

 

ピチューン!

 

「ふう、すっきりしたわね」

「ええ」

 

「ところであなた、どうやって帰るつもり?」

「…迷子の心配をしているなら、安心してください。よそへ行くならいざ知らず、家に帰るなら勘と帰巣本能で何とかなります」

 

そう言いながら、ドールは杖をしまい、ゲンガーを解凍するなど、帰り支度を始めた。

 

「…だったらいいけど」

 

ドールの発言がフラグであると、この時は2人とも考えていなかった。

ドールが帰宅したのは、午後6時半であった。




ブラックスティンガーは聖剣伝説LOMの魔法です。


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10話 香霖堂

無線マウスになって可動範囲が増えたのはうれしいけどちょっと手を滑らせて落としまくって困る。


「ドール。話がある。ちょっとそこに正座」

「もうしてます」

「いいから聞け」

「…はい」

 

「今後どこかに行くときは、絶対に、絶対に、絶・対・に、トゲキッスを連れて行くんだぞ。そして、寄り道をするな。ちょっとのつもりでもするな。いいな?」

「…はい……」

 

「子オオカミは筋金入りの迷子だものねー。いつぞやも『プライムピアってどこだよ!?』って叫びながらヒウンシティ中を爆走してたらしいものねー」

「あそこは誰でも迷うでしょ!?」

「さすがに1時間近く看板に気づかないのはちょっと…」

「うっ…」

 

「はいはい、2人ともそこまで。もうすぐ食事の時間なんだから」

「おなかすいたー!!!」

「というわけでマスター、食事の準備をお願い」

(助かった…)

 

~少女食事準備中~

 

「今日は何だ?まともなものか?」

「レトルトシチューです」

「ああ、それなら大丈夫だな」

 

~一家食事中~

 

「フラグだと思った?残念!!フラグじゃなかったわ!!!」

「エリザ誰に何を言ってるの?」

「あ、何でもないわ」

「?そう。じゃ、私先お風呂入るねー」

 

~少女入浴中~

 

「戻ったらボディソープ買い足さなきゃ…じゃ、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

「「おやすみー」」

「おやすみ」

こうして、1日が終わった。

 

 

~少女就寝中~

 

 

「………………………んぅ…」

 

今は朝の5時。ドールにとってはいつも通りの起床である。

 

「…ごはん……つくらなきゃ……あれ、ふくが…」

『ドール、しっかり目を覚ましなさい。ベッドの隣に置いてあるでしょう』

「あ……あった……………」

 

~少女着替え中~

 

「さて、ご飯作んなきゃ。焼き魚でいいかな」

 

~少女移動中~

 

「あ、おはようマスター」

「おはようございます、エルキドゥ」

「マスターに手紙が届いてるよ。『香霖堂』っていう店から」

 

「???誰だろう??ご飯作った後見ますね。」

 

~少女調理中~

 

「いいにおい!!お姉ちゃん、今日のご飯なーに?」

「焼き魚とインスタントみそ汁と白米」

「えー、また?」

「まともに作れるの、これくらいなんだから仕方ないじゃない」

 

~一家食事中~

 

「うん。今日も今日とて白米は微妙にべちゃっとしてて焼き魚はボロボロだったわね」

「言わないで。…それで、エルキドゥ。その手紙というのは?」

「これ」

「ふむ、どれどれ…」

 

【ドール・クラーゲン・オンディール様

あなたに会いたい人が2名幻想入りしています。

大至急香霖堂へお越しください。

                     香霖堂店長 森近霖之助

                     サーヴァント ありす

                     トレーナー N      より】

 

「………!?」

「どうしたんだい?」

「………皆さん」

「?なんだい、マスター?」

「何よ、いったい。」

「なんかあったのー?」

「どうした。その手紙、何が書いてあった?」

 

「………香霖堂に………行きます………………留守を……頼みます………」




もりのようかんのお風呂はシャワールームに猫足バスタブ運び込んだものなので、狭いです。
え?ゲーム内でシャワールームなんてなかった?

            /)
           ///)
          /,.=゙''"/   
   /     i f ,.r='"-‐'つ____こまけぇこたぁいいんだよ!!
  /      /   _,.-‐' ~/⌒  ⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃ ( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |
     / iトヾヽ_/ィ"\      `ー'´     /


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11話 すれ違い

ダイナミックネタバレタイトル。


「えっと…それから、こっち」

 

手紙に同封されていた地図を片手に、ドールは魔法の森の中を歩き回っていた。

 

目的地はもちろん、香霖堂。赤丸で囲んであるため、迷わない。もりのようかんが幻想入りした地点については、おそらくありすが魔力をたどったのだろう。

 

「それで…ここからまっすぐ…」

 

~数分後~

 

「…ここ、かな?」

 

ドールの目の前には、和風建築の一軒家が建っていた。よく見てみると、和風だというのに扉は洋風なドア、窓は障子という何やら奇妙なつくりの店だった。

 

(…今更だけど、幻想郷って中途半端に外の知識が入ってきてるな…)

 

魔理沙、妹紅、みとり、慧音、小鈴の服、そして霊夢及び夢幻が着ている博麗の巫女の制服。突っ込みだしたらきりがない。早苗たち守矢組は元外の住人なので論外だ。

 

(…なんか暗いけど、誰かいるの、かな?まさか、開店前?)

 

そう思いつつ、ドールはドアを3回ノックした。

 

「すいませーん、誰かいらっしゃいますでしょうかー?」

 

…返事はない。

 

(入って大丈夫かな…)

『返事がないんでしょ?なら、ここでやきもきしてるより入って様子見した方がいいんじゃない?』

(…それもそうか)

 

ドールはドアノブを回し、引いてみた。…あっさりと、開いた。

 

そうっと中に体を滑り込ませ、店内を見渡す。

店内には、所狭しと品物が並んでいた。

 

昔懐かし、二層式の洗濯機。

今やスマホに「現代版三種の神器」という地位を分捕られた、ガラケー。

外の世界にあったら国宝、そうでなくともどこかの神社の御神体くらいにはなりそうなほど古そうな日本刀。

などなど、さまざまな品々が並んでいる。

 

いくつか、否、品物の半分くらいに「非売品」と書かれた紙が張り付けてあるため、おそらく趣味でやっている店なのだろう。

 

「あの…どなたかいらっしゃいますかー…?」

 

まさか、本当に準備中か?とドールが思ったその時、奥から声がした。

 

「ごめんごめん、ちょっと昼寝してて。すぐそっち行くからもう少し待ってて」

 

眠そうな、男性の声だ。眠っていたというのは本当らしい。

 

(こんな朝っぱらから昼寝…?)

『昼寝というより、二度寝かお寝坊さんと言った方がいいかもしれないわね。朝早くから来たドールもドールだけど』

(ケイオス、黙って)

 

などとドールが脳内会話をしているうちに、1人の男性が現れた。

銀の髪をショートボブに近い髪形にカットしていて、黒縁のアンダーリムの眼鏡をかけていた。黒・青・白の左右非対称な服は、おそらく和服の洋風アレンジか洋服の和風アレンジか和洋折衷なジャンル不明な服のどれかなのだろうが、デザインのせいかアイヌの民族衣装っぽい。

 

「僕はここの店主、森近霖之助。君は…ドールで、あってるかな?」

「はい。…それであの、Nとありすは?」

「あー、うん…それがね。今…居ないんだ」

「………はい?」

 

「昨日地底に行ったっきり、戻ってこないんだよ。今日になったら戻ってくるかとも思ったんだけど…」

「………………………………………………」

 

地底。

それは、旧地獄の通称だ。

幻想郷の地下に広がる、かつて地獄であったところ。妖怪、怨霊、地霊、そして鬼までもが住むところ。

 

元々住人だったものを除いて好んでいきたがる者は、ほとんどが強がり、実力者、死にたがり。そうでなければよっぽど自分に自信のあるものか、博麗の巫女か、大馬鹿者。ドールの母、カメリアは、地底について説明するとき、いつもこう言っていた。

 

そんなところに、2人は行った。

昨日行ったきり、帰ってこない。

そこから導き出されることは、3つ。

 

1つ目は、かなり確率は低いが…道に迷った。

あの2人なら、道に迷ってもポケモンの技で乗り切るなりありすの使い魔に道を探させるなりできるため、おそらく違う。

 

2つ目は、鬼の宴会に誘われ、戻るに戻れない。

これはありうる。ありうるが、ありすは酒を飲もうとは思わないだろうし、何か用事があっていったのなら、あの2人なら断るだろう。そのため、可能性は低い。

 

そして、3つ目は……

 

「まさ、か。まさか。まさか…………!!!」

2()()()()()()()()()()()()()()()()。その可能性がないとは言えなかった。

 

旧地獄に住む妖怪は、地上に住む妖怪より血気盛んだと聞く。

そして、旧地獄には怨念を抱いて死んだ者の霊である怨霊、嫌われて封じ込められた地霊などがいるのだ。

 

2人が殺されていないと、どうして言えようか。

 

確かにありすはサーヴァント。だが、戦闘は不得意だという。

殺されるまでいかずとも、怪我をするくらいはあるのではないだろうか。

 

「……森近さん。森近さんは、地底までの道を知っていますか?」

「…知っているよ。行くつもりかい?」

「…はい。会ったばかりで厚かましいとは思いますが…道を、教えてください。お願いします」

 

「………………………いいよ。僕も、心配だったしね。連れて行ってあげる」

「本当ですか!?」

「本当だよ」

「ありがとうございます!!地図にも載っていなかったから、助かります!!」

「危険だから載せなかったんだろうね。…少し待っていて。準備をするから。準備ができたら、行こうか」




香霖のキャラがわからない。


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12話 橋姫

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「……あの、森近さん」

「何だい?」

「さっき、『旧地獄に行くには洞窟を通る必要がある』って言ってましたけど、これ…………洞窟は洞窟でも、縦穴ですよね?」

 

2人の目の前の地面には、巨大な縦穴があった。

 

「うん、まあ…縦穴って言った方が正しいんだろうけど。洞窟、と言っても間違いじゃないだろう?」

「まあそうですけど。でも、縦穴なら縦穴と言ってください」

 

「ちょっと、そこの2人」

「?」

 

声をかけられる。

ふと、ドールが前を見ると、そこには1人の女性が立っていた。

 

ショートボブの金髪に縁どられた白い顔に、緑の瞳がらんらんと輝いている。…否、輝いてはいない。いやなものを見るような、険しい目つきである。

着ている服は、上が茶色、下が青基調で、形状はペルシアンドレスに近い。

 

「はあ…。また人間が来た。人間2人が、旧都にいったい何の用よ。…いや、人間じゃなさそうね。それでも聞かせなさい。何しに来たのか」

「…おや。君が、魔理沙が言ってた橋姫かな?旧都の目前にいると聞いたけど」

「うるさいわね。私がどこにいようが、私の勝手じゃない。それとも、私みたいな陰気な妖怪は地底に引きこもっていろとでもいうの?妬ましいわね。その自分勝手な考え、とても妬ましいわ」

「あ、いや、そんなつもりで言ったわけじゃ…」

 

「……私たちは人を探しに来ました。つい先日、ここを通った方はいませんか?橋姫さん」

 

「………………パルスィ」

「えっ?」

「私の名前よ。水橋パルスィ。種族名で呼ばないでちょうだい。どっかの小悪魔や大妖精と違って、私には名前があるんだから」

 

「…では、パルスィさん。ここを通った方を知りませんか?」

「知りたいの?仲がいいのね。ああ……妬ましい。あんなに素敵な男性と、あんなにかわいらしい女の子と仲がいいなんて。とってもとっても妬ましいわ」

「知っているんですね?」

「…ええ、知っているわ。ずいぶん慌てた様子で駆け下りていったわ」

(…じゃあ、何らかの原因で旧都まで行けず、連絡手段もないままってことはないか…)

 

「会いたい?」

「ええ、そりゃあもう」

「そう。なら……私を倒していくことね!!!」

 

そう叫び、パルスィは大量の弾幕を撃ち出した。

 

「!!」

 

2人はとっさに躱した。

だが、弾幕は止まない。

 

「私、ここの門番なの。私は橋姫だもの。あの2人も、その前に来た金髪の魔法使いも、みんな私を乗り越えていったのよ」

「…森近さんが『魔理沙が言ってた橋姫』と言った理由がわかりました!!!」

「ああ、あいつ魔理沙というのね。でも、そんなものはどうでもいいわ。ここを通りたくば、私を倒しなさい!」

 

「頼んだよ、ドールちゃん!僕は非戦闘員だから、ここで見てるけど!!!」

「ええ、わかりました!!あと、ちゃん付けしないでください!!」

「ああ、そんなに仲良さそうに…妬ましいわ!!!」




パルスィのキャラがわからん。


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13話 地底

戦闘描写ざっくりカット。ごめんなさい。


「妬符『グリーンアイドモンスター』!」

 

たくさんの緑の弾幕が、ドールに向かってくる。

動かない緑の小さな弾幕がその軌道に設置されるため、まるで蛇のようだ。

 

ドールは、どうにかして躱す。

 

 

(さっきから防戦一方…)

数多くの木々が原因で、派手なものが多いドールのスペルは、なかなか出せない。

 

(…しかたない、水橋さんのスキをついて地底に駆け込むか…!)

 

ドールは、自ら弾幕の中に飛び込んだ。

 

「!?あなた、何考えてるの!?」

「倍符『クレームドゥーブル』!」

 

スペルを発動させる。…かつて出会った異世界で、自分よりも年下だったのに、魔導士として名をはせていた、一人の少年をイメージしたもの。

 

ドールの近くの弾幕全てが、ドールに引き寄せられていく。

 

「なっ…!?」

 

あと少しでドールに触れる…というところで、それらはさながらパチンコのように、全方向へ飛んでいった。…同じ量の、クリームの形の弾幕とともに。

 

そして、それらによって周囲の木が倒れ…パルスィに向かっていった。

 

「!!!」

 

パルスィは、とっさで躱す。

だが。

 

「…やるわね、でもまだ…っ!?」

 

砂煙が収まったころ、パルスィの目には…

 

倒れた木々と、倒れなかった木々程度しか、映っていなかった。

 

 

 

「へえ、ここが地底…」

「…ねえ、さっきの、ほんとにいいの?」

「一刻を争う事態です。これくらいは、まあ」

 

言葉を交わしながら、大通りをかけていく。

 

「どこかあてはあるのかい?」

「…魔力です」

「?」

「私とありすは、魔力のパスがつながっています。それをたどれば…あれ?」

 

突然、ドールが立ち止まった。

 

「どうしたんだい?」

「さっきまで、あそこにいたのに…いない」

「へ?」

「ちょっと待ってください、すぐたどり直します………………………あれ?」

「何かあったのかい?」

 

「……………地上にいます。あの2人…ううん、少なくとも、ありすはここに居ません」

「ええ!?なんてこった!!行き違い!?」

「はい。…でも、おかしいな。ありすに瞬間移動なんて能力は…」

 

「ねえ、そこの子」

 

背後から、いきなり声をかけられる。

 

「!?」

 

見ると、1人の少女が立っていた。

赤い髪を三つ編みにしている。瞳も、同じ赤だ。頭から、三角耳がつきだしている。

 

(…猫の妖怪?)

「あたいは『火焔猫燐』。ちょっと、一緒に来てくれない?」

「何か用事でも?」

「あたいの主人が、あんたに用があるんだって」

「主人?…サトリ?地底(ここ)の屋敷に住んでいるという」

「……へえ、物知りなんだねえ。誰から聞いた?」

「母から」

 

「ふうん…まあ、そんなことはどうでもいいさ。とにかく来て。あんたにとってかなり重要なものがあるから」

「…何ですか、それは」

「そいつは見てからのお楽しみ。…まあでも、ヒントくらいはあげるよ。ヒントは~…」

 

そう言いながら、燐は自分の三つ編みを指さした。

 

「これに似てるもの、かな」

「…?」

 

赤い、三つ編みに似ているもの。

ドールは思考を巡らせる。

 

「…そんなもの………………………あっ!!!」

 

叫んで、燐を凝視した。

 

「ど、どうした!?」

 

霖之助が訊ねる。

ドールはそれを無視して、無意識につぶやいた。

 

「あかい…くさり…」

「へ?鎖が、どうしたんだい?」

 

またも、霖之助が訊ねる。

 

「…………行く」

「えっ?」

「………………行きます、その屋敷」




待っててくれた方ははたしているのだろうか


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14話 あかいくさりと無意識少女

待っててくださった方々、すみません。


「もうちょっとでつくよ」

 

燐が言う。

 

「…………」

 

ドールはそれを聞いているのかいないのか、険しい表情のまま黙り込んでいる。

 

「…ドールちゃん、ちょっとはしゃべってよ」

「…えっ?ああ、はい、何でしょう」

「どうしたのさ、さっきからずっと険しい顔して」

 

「…あそこにあるらしきものがちょっと問題でして…」

「?鎖が、問題なの?」

「私の予想通りなら、あそこにあるのはただの鎖ではなく、私がいた世界の『シンオウ地方』を生み出した、神と呼ばれる伝説のポケモンを呼び出し、使役するために、ある人が作り上げた鎖…『あかいくさり』です」

 

「は!?神!?そんなもの呼び出してどうするわけ!?」

「その人曰く、『人は感情があるから醜い。神と呼ばれるポケモンの力を使って感情を消す』だそうで…」

「うーん、何があった」

「現代社会の闇ですかね…っと、着いたみたいですね」

「あ、ほんとだ」

 

 

 

屋敷内には、たくさんの動物(?)がいた。

 

「あ、やっぱり気になる?こいつらはさとり様のペットたち。あたしもそうだよ」

「…なるほど、心を読むことができるから、自分の意思を言葉で伝えられない動物たちに好かれるのですね」

「まあ、そういうこと」

 

しばらく進むと、応接室らしき場所についた。

 

 

「さとり様、言ってた子を連れてきましたー」

「わかりました」

 

部屋の中にいたのは、1人の少女。

ピンクの髪をショートボブにし、カチューシャをつけている(ひょっとしたら体の1部かもしれない)。

フリルの多い水色の服の下にこれまたフリフリのスカートをはいていて、かわいらしい。

ピンクの瞳と、赤い管につながったもう1つの目…サードアイが、ドールの方を見つめていた。

 

「初めまして。ドールさんと、魔理沙の知り合いの霖之助さんですね。私は古明地さとり。ここの主です。それで、あなたを呼んだ理由ですが。…ついさっきまでここにあった、あの赤い鎖を、知っていますね?ああ、返答は心を読むのでいいです」

 

「………やはり、知っていますか」

「なぜ、ここにあるの」

「…それは、あなたが1番よくわかっているのでは?」

「…えーっと、どういうこと?ドールちゃん」

 

「………道中で、あれはとある人が神を呼ぶために作ったもの、というのは言いましたよね」

「うん」

「私がそれを阻止しようとしたんですけど、どうしようもなくて。…そしたら、別の4体の神と呼ばれるポケモンが、呼び出された2体の神によって誕生した銀河を消して、あかいくさりを壊して、呼び出した人をあの世界と均衡を保つために存在する『やぶれたせかい』に引きずり込んだんです」

「へえ!…じゃあつまり、それは壊れて…」

「幻想入りしたんでしょうね…。はあ、よりによってあんな物が…」

 

「わかってるじゃないですか。理由。…それで、本題なのですが。あなた方が会いたがっているお2人は、どうやら誰かからこれの存在を知ってきたようです。そして、こんなものがあっては大変なことになるからと、破壊しようとしたのですがどうやっても壊れず、結局彼らが自分たちで保管することにしたんです」

「え?それなら、ここにはないはず…」

「…あかいくさりは2つあるんです。3体の神から取り出した結晶から作り出されたものと、それを分析することで科学によって作り出されたものが」

 

「そのうちのどちらかが、ここにあったものですね。…それで、ですね。最初の1つは、うちのペットのお空が持ってたんです。で、それをあのお2人が持って屋敷から出た少し後に、ここにあったもう1つの方が出現したのですが…」

「が?」

「…非常に言いにくいのですが。お燐をあなた方のところへ行かせた後、机に置いて少し目を離したすきに、こいし…私の妹が、それをもってどこかへ行ってしまって…」

「「……えっ?」」

「あのお2人もどこかへ行ってしまいましたし…」

 

「……一大事じゃないですかやだー!!!!!!」




こいしちゃん、無意識でとんでもないことをやらかす。


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15話 悪魔の妹の妹

「どうしよう…あれが人の手に渡ったりしたら…誰かが用途に気づいたら…」

「ま、待ってドールちゃん!君、どうにかできたんだろ?なら、大丈夫じゃないかな!?」

「…私がどうにかできたのは、4体の神と呼ばれるポケモンのおかげです。意思の神アグノム、知識の神ユクシー、感情の神エムリット。そして、やぶれたせかいの主、ギラティナ。さっき言ったでしょう」

「あっ……」

 

「えっと、さとり、だっけ。妹さんがどこ行ったか分かったり…」

「無理です。こいしの能力は『無意識を操る程度の能力』。常に無意識で行動している…つまり、心がすっからかんなんです。読心なんてしても意味ありません」

「/(^o^)\ナンテコッタイ…」

「おまけに、他人の無意識に干渉して『存在しないもの、しても道端の石ころのようにくだらないもの』だと認識させる…というか、他者の認識からはずれてしまう。他者に意識されると解除される能力ですが、そもそもこいしがどこ行ったのかわからないから…」

「意識しようがない、と…」

「そう言うことです」

 

「………」

「おや、お燐。どうしたのです、そんなところに立ち尽くして…………なるほど、お客ですか」

「はい。取り込み中みたいだったので、別の部屋に待たせてあるんですが…」

「いったい誰が……………あら。お燐、すぐに連れてきて」

「はーい」

 

「…ああ、お2人ともここにいて大丈夫ですよ。今来た方は…」

「お連れしましたー」

 

お燐に連れられ入ってきたのは、1人の幼女と1人の少年。

 

幼女の方は両サイドでピンクのリボンをリボン結びにしたナイトキャップをかぶっていて、美しい金髪は、顔の両側だけ伸ばされ、後ろ髪は短く切られている。瞳は鮮血のような深紅。服も同じ色だ。そして、背中からは、燃え盛る炎の翼が生えていた。

対して、少年の方は、癖のついた銀髪を短く切り、燕尾服を着、腰に刀を差している。瞳は澄んだコバルトブルー。中性的な顔立ちで、燕尾服を着ていなければ少女に見えただろう。歳は、ドールの少し下くらいか。

 

「初めまして。私はグランベル・スカーレット。吸血鬼よ」

「僕は十六夜優夜。人間で、グランお嬢様の執事です」

「おや、紅魔館の…。僕は森近霖之助。道具屋の店主をやってるよ」

「…初めまして。私は…」

「知ってるわ。ドール・C・オンディール。ありすから聞いたわ」

「………!」

 

「何でありすを知ってるの、って言いたげな顔ね。聞きたい?」

「…当たり前でしょ。聞かせて」

「条件付きよ?」

「何、条件って」

 

「この件が片付いたら、紅魔館まで来ること。」



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16話 理由と追跡

超・お久しぶりです。
忘れられてる気がする。


「紅魔館?」

「ええ。私たち吸血鬼が暮らしているところよ」

「何故?」

 

「2つ、理由があるんだけど。1つ目は、そこにあなたが探してるお2人さんがいるから。もう1つは…私の、双子の姉の遊び相手、探してて…」

「は?遊び相手?」

「…まあ、そう思うわよね。話すと長くなるからかいつまんで説明するとね、私の姉…フランドールって名前で、愛称フランって言うんだけど、そのフランが、最近遊び相手がいなくて退屈してるのよ。…遊び相手っていうよりは、弾幕ごっこの相手ね」

「…それで?」

 

「博麗の巫女とかどっかの森の魔法使いとかは自分のことで忙しいみたいで遊び相手になれないし、かといって妖精メイドで遊び相手が務まるかというとそうでもないの。フランは、その、ちょっと気がふれてて…おまけに、おかしいくらい強い力を持ってるの。しかも、力のセーブがうまくできなくて、下手すると相手をミンチにしちゃうし…極めつけは能力ね。あの子の能力は『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』で、その名の通り実体さえあればどんなものでも破壊できちゃうの。弾幕ごっこで使うことはあまりないけど、何かにいら立つとすぐ能力使って物に当たっちゃって、今、遊べないことに癇癪起こして能力乱用してるせいで、部屋中の物粉々なのよ。ついでに妖精メイドも何人か犠牲になったわ」

「…つまり、そのフランって子の癇癪抑えるためにその子と弾幕ごっこしろと?」

「まあそう言うこと。あなた、強いんでしょ?」

 

「………ま、いいか。最終手段もあるし…」

「あら、案外あっさり引き受けてくれるのね」

「いや、だって早くあの2人に会いたいし」

「ああ、そう言うこと」

 

「……ところで、グランさん。どうして戻ってきたので?」

「あ、さとり忘れてたわ。ごめんなさい」

「…別にいいですがね。…………なるほど、そう言うことですか。」

「さとりにしかわからないんじゃ意味ないから言うわね。私たち、幻想郷を旅しているんだけど、昨日ここに来たとき偶然お空が持ってたあかいくさりをちらっと見たのよ。その時はなんだかすごい力こもってるなあとしか思わなかったのだけど、そのあと地上に出てから優夜が用事あったから香霖堂行ったら、外にありすとNがいたの。見たことないから幻想入りしたんだなと思って、優夜の用事が終わるまで退屈だったからその2人と話してて、ちょっとした話題のつもりであかいくさりのこと言ったらありすが『あかいくさり!?ここに来てたの!?ちょっとあなた、それがあった場所教えて!!』って」

 

「ああ…そう言えば、ありすはあの時霊体化してついてきてたから、あれの形状知ってたな…って言うか霖之助さん、この2人に会ってたんですか」

「ああうん、そう言えば来てた。正しく言うなら優夜君の方に会ってた」

 

「…話戻すけど。それで、とりあえず場所を教えてその場を去ったんだけど、なんか気になっちゃってね。魔法で地底まで転移して、あの2人に合流したのよ」

「ああ、じゃああの時いきなりありすが地上に出たのは…」

「私の魔法で一緒に転移したからね」

 

「…じゃあ、なんで戻ってきたの?」

「ありすが『地底(あそこ)にドールがいる!!』って叫んだからよ。どうやら、あの子もパスをたどったみたいね。だから2人を紅魔館まで送ってから、ここまで来たのよ」

「……何で?」

「気になったのよ。あの子、ものすごい魔力の塊じゃない。あんな人の形した兵器と言って差し支えない存在に懐かれてるなんてどんな女傑なんだろう、って。それに、あの子、あなたの事をすごく強いって言ってたから、フランのガス抜きにちょうどいいと思って」

 

「………」

「何でそんなジト目で見るのよ…」

「はあ…別にいいけど、そっち行くにはまずこっちの件を片付けなきゃいけないでしょ?どうやってどこにいるかもわからない子を探すの」

「それなら大丈夫」

 

グランは、そう言うと、目を閉じた。

 

「私は霊圧を探れるから」

「霊圧?」

「読んで字のごとく、霊…魂の圧力よ。魂を水とするなら、霊圧は水圧。なんとなくわかる?」

「まあ、何とか。…なるほど、魂の圧力だから無意識とか関係ないわけだ」

「そう言うこと。私はまだ不慣れだから、こうして目を閉じなきゃ探れないんだけど………!!見つけた!!」

「早速!?」

「ええ。この霊圧はこいしの霊圧で間違いないわ。ええと、場所は……」

 

右手を額に当てて考えるグラン。…その顔が、どんどん青ざめていく。

 

「グラン?」

「…こいしがいる場所……」

 

グランはわずかに間を空けて、言った。

 

「守矢神社だわ………」




引いて終わるしかできなくなってきた…
何とか改善しないと。


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17話 紅魔館終了のお知らせ

ほんっっっっっっとうにお久しぶりです。
忘れられてるかな…


「守矢神社と言うと…早苗がいたあそこ?何かまずいの?」

「まずいというか…なんというか…」

 

言葉を濁らせるグラン。

 

「はっきり言ってくれないと、困るんだけど」

「ええ…そう…そうよね…それはわかってるの……わかってるんだけど…」

 

言いつつ、うつむく。

 

「…グランお嬢様は、以前、錬金術の触媒欲しさに守矢神社に喧嘩売ったことがあるんです」

「ああ、そう言うこと」

「優夜!?」

「すみません、お嬢様。言わなくてはいけないかと思いまして」

「そりゃあそうだけど…」

 

「まあ、それはどうでもいいよ。守矢神社にいるんでしょう?行きますよ。あ、霖之助さんは戻ってくださって大丈夫です。地図ありますから」

「え?でも…」

「お店、あんまり長く空けているわけにもいかないでしょう?」

「…そう、だね」

 

「私は一緒に行くわよ。監視、ありすに頼まれちゃったもの。『放っておいたら、絶対に何かやらかすわ!!ドールはそう言う人種なのよ!!』ですって」

「あはは、ありすらしい」

 

××××

 

 

SIDE:ドール

 

しばらくして、私たちは、さとりからこいしちゃんという子の写真をもらい、グランの瞬間移動で守矢神社に行った。…地図、必要なかったな。

 

「…変わってないな」

「何が?」

「全部。多少ぼろくなった程度で、あとは全然変わってない。大事にされてるんだね、ここ」

「ふーん、そう」

 

興味なさそうに、そっぽを向くグラン。…いや、違う。これは興味がないんじゃない、興味がないふりをしてるんだ。

 

では、何のために?

 

私だったら、ふった話に相手が生返事なんてしたら、興味ないんだと判断してその話をやめる。

でも、興味がないなら聞きゃしないだろうと思って、いろいろと話し出す人もいるだろう。…それを狙ってるのかな?

 

「……」

「…」

「……」

「…」

「………」

 

どうやら、当たってたみたいだ。この沈黙、無意識の沈黙じゃなくて意図的な沈黙だろう。話し出すのを待ってるのかな?

 

でも、私はいいヒトじゃありません。察してわざわざ昔話してあげるほど、お人よしじゃありません。詮索しないで。

じゃあ、どういうふうに動くかというと…

 

無 視 す る 。

 

だってこっちはNとありす優先ですし。ぶっちゃけグランはどうでもいい。早くあの2人に会いたい。だから、無視してこいしちゃんとやらを探す。

 

「え…あ、ちょっと…」

「駄目ですお嬢様。彼女、察してます」

 

おいコラ2人とも聞こえてんぞ。猫の聴力なめるんじゃない。

全く、私の昔話なんか聞いて何が楽しいんだ。

それはどうでもいいや。早く探さないと。

 

~少女探索中~

 

「んー…こっちにもいないかあ」

「お姉さん、誰か探してるの?」

「へ?」

 

背後から、声をかけられる。

振り向いたら、そこには1人の少女がいた。

 

歳は、たぶん、さとりと同じくらい…いや、ちょっと下くらいかな。

薄く緑がかった灰色の髪をセミロングにしていて、瞳は綺麗な緑色。

袖に黒いレースが付いた黄色い服を着、ラナンキュラスが刺繍された緑のスカートと、紫のハートが付いた黒い靴を履いている。

かぶっているのは、黄色いリボンがまかれた黒い帽子。大人っぽい、やや背伸びをしたデザインに見えるが、全体的に落ち着いた色合いだからか、とてもよく似合っている。

そして…左胸に、2本の管がついている、閉じた紫の目があった。

…間違いない。この子だ。

 

「ええと…古明地こいしちゃんで合ってるかな?」

「?私を知ってるの?」

「知ってるというか、探し人は君だよ。君、真っ赤な鎖を持っていったでしょう?」

「うん。この鎖が欲しいの?」

 

言いつつ、こいしちゃんはあかいくさりを取り出した。

 

「そう。それが欲しいの」

「ふうん。じゃあ、どうぞ」

「え、こんなあっさり…いいの?」

「うん。それ、なんか変な力出してたから、前に本で読んだ『神様をつなぎとめる鎖』かなって思って持ってっただけだもん。検証終わったからもういいの」

 

うわ、勘がいいなこの子。

というか、検証って何やった。

 

「んー…まあ、中らずと雖も遠からず…かな。それじゃあ、貰うね」

 

これで、あの2人に会える。

 

××××

 

「ちょっと、お2人さん。あかいくさり手に入ったから紅魔館とやらまで連れてって」

「ひゃ!?あ…そ、そう。わかったわ。じゃあ、私の手をつかんで」

 

瞬間移動のために、優夜はグランの右手、私はグランの左手をつかむ。

 

「…言っておくけど、フランは本当に強いわ。だから、本気でやってちょうだい。何かが壊れるとか気にしなくていいから」

「わかってるよ」

 

向こうから言ってくれるなんて、ありがたい。

最初から、全力投球するつもりだったけど、物を壊さず戦闘するのって苦手なんだよね。

それに、ちょうどストレスもたまってたことだし…

 

 

 

…お望み通り、()どころか()()()()()()のも気にしないで、思う存分暴れさせてもらおうか。

だって、気にするなって言ったのは、そっちでしょう?

 

××××

 

悪魔の妹の妹は、のちに語る。

 

あんなこと言わなきゃよかった。

彼女は、1番上の姉よりも悪魔で、2番目の姉以上の破壊の申し子だったと。



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18話 紅魔館と悪魔の妹

しばらくドールサイドでお送りします


「ここが紅魔館よ」

 

紅魔館は、その名の通り、真紅の館だった。

屋根と言わず、壁と言わず、すべてが紅に塗りつぶされている。はっきり言って趣味が悪い。

 

塀と門すらも真っ赤で、目が痛い。…あ。

 

「門番、やっぱりいるよね…。寝てるけどいいの?」

「美鈴はいつもこうなのよ。ま、好都合だけど」

「?」

「グランお嬢様は、このことについて、当代のスカーレット家当主、すなわちこの屋敷の持ち主で美鈴の雇い主である上姉君に、詳しいことをおっしゃっていません。ただ、下姉君のガス抜きにちょうどいい相手を連れてきた、とだけ」

「ああ、そういうこと…」

 

下姉君というのは、フランという子のことだろう。

そして、美鈴さんが起きていたら当然上姉君とやらにも、この話が伝わるわけで。

探し人をダシにするなんて~とか、言われるのが嫌なんだろう。

 

「門は開いてるわ。さあ、行きましょう」

 

~少女移動中~

 

大広間を抜けて、階段を下りていくまでの間に、人に会うことはなかった。せっかくこいしちゃんの能力をコピーして使ってみていたというのに…

 

「紅魔館っていつもこうなの?」

「ん?ああ、違うわ。これの効果よ」

 

グランはそう言うと、懐からルーンが刻まれた石を取り出した。

 

「ルーンにはあまり詳しくないけど…厄除けのルーン、かな?」

「ええ。ここの大図書館に住んでる魔女からもらったものよ。これのおかげで、私が望んでいないものは、自然と離れて行ってくれるの。今は、ここの住人や、妖精メイドやメイド長に気づかれないようになってるわね」

「大図書館…」

 

気になる。すごく。

貴重な蔵書もあるんだろうか…あとで行けるものなら行ってみたい。欲しい資料がなかなか手に入らなくて困ってるんだよな…

 

…それにしても、この階段、長いな。さっきから30分くらいたってるような。

 

「グラン、フランってこんなに地下に住んでるの?というか、今どれくらいの位置にいるの?」

「危険だから、封印されてるの。…半分くらい、自分で閉じこもっているようなものだけど。今は、大体この階段の半分くらいね」

「これで半分…」

 

どれだけ地下にいるんだ。

…しかし、危険なのはわかるけど、封印するのはいかがなものか。

フランの能力は、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力。しかも本人は、加減できずに乱発してしまうと来た。

だが、それなら、閉じ込めなどせずに、加減の仕方を教えれば済むことではないか。

グランは、フランは気が違ってしまっているから、外になんて出せないと言っていたけど、それが一体いつからそうなのかにもよる。生まれつき狂っている人物など、そうそういない。ひきこもる前からそうだったのなら、医者を呼ぶほかないけれど、閉じ込められてからなら、原因はそれなのではないのか。

自主的に閉じこもっているとも言っているけれど。閉じこもりの原因は、私にはわからないけど…それでも、自主的だからいいというものでもないだろう。

家の中だけ、部屋の中だけでは、わからないものはたくさんある。倫理観だってそう。世界だってそう。自室という小さな空間の中では、学べるものは他者の重要性だけだし、得られるものは孤独だけ。

はるかにましではあるけれど、似たような状況下に置かれていたことのある私には、よくわかる。

暗い中に、独りきり。話しかけても、答えてくれる人はいない。ふと、出ようと思っても、封印されてしまっているから、少しの外出もかなわない。教えてくれる人が居ないから、善悪の区別もつかない。加減だってわからない。

そんな状況、誰だって発狂してしまう。フランは、そんな生活を、495年も続けてきたのだから、狂ってしまうのも無理はない。

 

フランの状況を分析していたら、つくづく自分は恵まれていたのだと思い知った。

私も、幼少期は、わずかな外出もままならなかったけれど、お姉ちゃんはほぼ毎日来てくれたし、オルタさんたちがいた。それに、時折、本当に時折、外に出ることもできたのだ。

…本当に、悲劇のヒロイン症候群時代の自分は、思い出すのも恥ずかしい。対話ができる人が居て、気遣ってくれる人が目に見える場所にいる。自分の出自を考えれば、それだけで、途方もないほど幸せ者だったというのに。

 

~少女移動中~

 

「さあ、ここよ」

 

着いた場所は、本当に陰気なところだった。地下牢を改造して作った部屋だと言われても、違和感を覚えないほど。

塗装も何もされていない、石造りの壁。床は、石畳がむき出しだ。

扉には、幾重にも封印が施されていたらしい。魔法陣の残滓が残っている。今は、封印は1つだけのようだけど。

 

「フラン、遊び相手を連れてきたわ。今開けるわね」

「…グラン?帰ってきてたの…?遊び相手って誰?」

「新入りよ。…よし、開いたわ。私たちは上で待っているわね」

「結構。…初めまして、フラン」

 

部屋の中は、非常に愛らしい空間だった。…ところどころ、ひびが入ったり、えぐれたりしていなければ。

床には、花柄の、かわいらしいカーペットが敷かれている。かんしゃくを起こしたフランが破壊してしまったのか、あちこち破れて、その下の床がえぐれている。

奥の方には、上に棺桶が乗った、これまたかわいらしいデザインの2段ベッドがある。さすがに、あれは被害を受けていないようだ。

そして、部屋のいたるところに、見た目も材質も様々な、人形とぬいぐるみが置かれている。5個中1個くらいの割合で、足が取れていたり、縫い目から綿がはみ出していたり、ひどいのになると首がもげていたりするけれど。

 

「あなた、だあれ?」

 

そういうフランは、グランと非常によく似ていた。

金色の髪。鮮血のような緋色の瞳。ロリータファッションというのだろうか、愛らしいデザインの真っ赤なワンピース。グランのものとはデザインが違う、大きなリボンが付いたナイトキャップ。背中から突き出した羽は、宝石のようなものが、いくつも連なった形をしていた。

 

「私は、ドール。ドール・クラーゲン・オンディール。最近来たばっかりだよ」

 

フランに近づきながら、私は言った。

 

「一緒に遊ぼう、フラン。私、君と友達になりに来たんだ」



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