王虎 (センチュリオン アクションX)
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序章「さあ、戦車道を始めよう」
第1話


勢いではじめたものです。設定の改変等を含む予定なので気をつけて下さい。

それでは、第1話始まります。


戦車道。それは人の一つの嗜みである。

戦車に乗り、走り、撃ち、敵を撃破する姿は子供の心を刺激するには充分だろう。

 

だが男は言った。

 

戦車は殺戮兵器だ。この現実が変わることはない。

 

特殊カーボンに守られているとはいえ、間違えれば大怪我だ。

 

女は言った。

 

自分自身の指揮が、味方の戦車を潰すことになるかもしれない。

 

ならばその時味方の戦車の乗組員の命を、君は背負えるか?と。

 

これは、自分の在り方を求める一人の男の物語……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今もはっきりと覚えている。

 

豪快なエンジン音、巨大な主砲、圧倒的な大きさ。

 

なすすべもなく回りの戦車が破壊されていく。

 

このままじゃ不味い。早く何とかするしかない。

 

その時、敵戦車の砲身が味方フラッグ車に向いていた。

 

とっさに操縦士に指示を出し射線に割って入った時、世界が回った。

 

 

 

 

「………ん?」

 

ゆっくりと瞼をあける。嫌な夢を見た。

 

ちらりと時計を見ると針は午前7時30分を指していた。

 

「……そういや俺、戦車道止めたんだった」

 

そんな呟きは誰にも聞こえない。

 

 

 

茨城県県立大洗学園。

 

その学園は全長約7600mの翔鶴型航空母艦(艦橋は赤城型航空母艦)によく似た飛行甲板の上に出来た街の中にある。実際は茨城県大洗市の飛び地となっているらしい。

 

高校二年生の時にこの学園に転入し、早一年立っていた。

 

そういえば名前を言ってなかった。

 

俺は出雲 悠希。高校三年生である。

 

ついでに低血圧。頬に大きな傷痕がある。

 

そんな俺は眠気眼のまま現在登校中である。

 

なぜ転入してきたのかは、後々語るとしよう。

 

それよりもここは平和だ。空気もいいし、街の人も優しい。

 

それでも何か、何かが違う。そういう毎日をここで過ごしていた。

 

「よう悠希。元気ねーな」

 

そう言いながら肩を組んでくるこいつは早瀬 総士。後輩からはいい兄貴肌の先輩として結構人気者。だが中身はかなりの戦車マニアである。

 

そんな総士をジロッと睨みながら返す。

 

「うるさい、低血圧なんだよ。毎回言わせるな」

 

「そうカッカするなって。俺とお前の仲じゃないか」

 

「蜘蛛の糸のような細さの仲なのにか?」

 

「酷ぇ!今までお前に言われた中で一番酷ぇ!」

 

うるさい。よくこんな朝からそんな大声が出せるな。不思議で仕方がない。

 

「まあまあ、それよりもしってるか?」

 

「知らん」

 

「俺何も言ってないんですけど!?」

 

「なら早く言え。眠いから教室で寝たいんだ」

 

「お前本当朝は機嫌悪いよな。まあいいか、実は……一つ下の学年に転校生が来るらしいぜ?しかも女子!」

 

ヒソヒソと話す総士。が

 

「……で?」

 

「おま、何とも思わないのか!?女子だぞ女子!」

 

「どうでもいい。一つ下なら尚更だ」

 

「はー、好きな人でもいるのか?」

 

「いる」

 

「………まじで??」

 

俺の発言に驚愕の表情を浮かべる総士。失礼な。

 

「だ、誰だ!?誰にも言わねえから教えてくれよ!」

 

「少なくとも、この学園艦には居ない」

 

「なーんだつまんね」

 

こいつ、さてはからかおうとしていたな?

 

まあいい

 

「それで、何で転校生が女子ってわかったんだ?」

 

「いやそれがよ、結構目撃されててな、もしかして転校生じゃないか?って疑問が結構あったんだけどその子の顔見てこの学園の生徒じゃないって解った」

 

「顔?知り合いか?」

 

「いや知り合いじゃねぇ。けど相手の名前は知ってる」

 

「何言ってるんだお前?まさかストー…」

 

「違ぇよ!その子が結構有名ってだけだよ!」

 

ふむ、友人が犯罪を犯しているのかと思ったが違ったようだ。

 

「で?誰なんだ一体」

 

「俺の記憶が正しければ……」

 

次の友人の言葉に今度は俺が驚愕した。

 

「西住みほだったな」

 

「………」

 

「ん?どうかしたか?」

 

「……いや、何でもない」

 

「そか。ならいいけど」

 

そんな会話をしていたら高校に着いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

睡魔との格闘戦で見事K・Oアッパーカットが決まり無事午前の授業を終え昼休み。

 

「ヤッホー!悠希くん生きてる?」

 

「人を死人扱いするな真姫」

 

「すみません失礼します悠希さん」

 

「いいよ美紅」

 

前者は篠原 真姫。後者は如月 美紅。二人ともクラスメイトである。

 

「んじゃ食おうぜ」

 

ここに来てからよくこの三人と昼飯を共にする。

 

なぜ男子二人と?と思い聞いてみたところ真姫によれば美紅は総士が気になっていることのこと。

 

なるほどねと納得した。

 

だが気になることがある。

 

『西住 みほ』

 

恐らく俺の知っているみほに間違いないだろう。

西住流師範西住しほの次女。

 

なぜ彼女がこの高校に転校してきたのかが解らない。

 

「ん??どーしたの悠希くん」

 

「ん?少し考え事をな…」

 

そう言って食事を続ける。

 

彼女は今年黒森峰に入学したと聞いた。

 

十中八九戦車道の為だろうが、そんな彼女が戦車道の無いこの大洗に来る理由がない。

 

……いや、あるにはあるのだが。

 

はっきり言って彼女は西住流に向いてない。

これはある日俺に対してしほさんがいった言葉である。

 

…何かあったな?

 

推測でしかないが恐らく戦車道で何かあったのだろう。

 

あまり自分の意見や考えを出さず周りに合わせる、もしくは周りに迷惑をかけないため自分を犠牲にするような子だ。

 

「おうそういや悠希」

 

「ん?なんだ総士」

 

「今日はやるのか?アレ」

 

「………そうだな。久しぶりにやるか」

 

「え!?やるの!?久しぶりに腕がなるー!!」

 

「真姫さん食堂では静かにしてください」

 

どうやら久しぶりのアレに周りもやる気満々のようだ。

 

……まあ、楽しいならいいか。

 

そう思う自分がいる。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、私と美紅はあとで行くから先行っててねー!」

 

「おう!」

 

真姫の声に総士が答える。

真姫の横では美紅がペコリとお辞儀していた。

 

相変わらず律儀な子だなと思いつつ俺と総士は目的地に向かって歩き出す。

 

「そういやあれ、動くのか?」

 

「問題ない。毎日整備してるしエンジンも掛けて様子も見てる」

 

「学校終わった後によくやるなお前……」

 

「部活と同じだ」

 

そう会話を続けながら学園にある森に入って行く。

実はこの森、戦車道用の練習施設だったりする。

数十年前にこの大洗学園にも戦車道がありその施設が今でも残っている。

 

そしてその森の深くにそいつは鎮座している。

 

Ⅵ号戦車 『ティーガーll(zwei)』

 

正式名称 「Panzerkampfwagen VI Tiger Ausführung B "Tiger II"」

 

ナチスドイツの重戦車『ティーガーl』の発展型。

通称「キングティーガー」。

 

ティーガーとはドイツ語の虎を意味しティーガーllは非公式に「ケーニッヒス・ティーガー(Königstiger)」

と呼ばれた。

ちなみにケーニッヒス・ティーガーはドイツ語のベンガル虎の意味。

 

これはアメリカ軍が「キング・タイガー」と呼んでいたのをドイツに逆輸入され翻訳された事が由来だという。

 

これはそのティーガーを少しいじった物なのだが、細かいことはまた後に語るとしよう。

 

「というか、よくこんなところ貸してくれたよな」

 

「まあ部活のトレーニングするには広すぎるし、かといって何にも使わない訳にはいかないから許可がおりたんだろう」

 

実際に戦車道の練習に使われていた場所だし、相当広い。

 

……まぁ、あそこと比べれば狭いか?

 

「そう言えば」

 

「む?」

 

「お前この戦車、どこに在ったんだ?」

 

顎に手を当てながら言う総士。

 

「………まあ、色々あったんだ。色々な」

 

「ふーん」

 

少し視線を落としながら答えたら総士はそれ以上聞いてこなかった。

助かる。

 

「で?今日はどうするよ」

 

「そうだな…少し走らせてみるか」

 

「射撃は?」

 

「それは止めておこう。今日は部活しているところが多いからな」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてこのティーガーllは、

 

 

戦地に出向く事となる。



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オリキャラ紹介+戦車紹介

感想にてプロフィールを出して欲しいとあったので現時点の物を投稿します。

随時更新していく予定です。その為、ネタバレを含む可能性があります。ご注意下さい。


主人公

 

出雲 悠希(いずも はるき)

 

身長176cm

 

性格 低血圧の為、朝は不機嫌。普段は物静か。

 

趣味 戦車整備

 

好きな戦車 ティーガー

 

特徴 低血圧で頭痛持ち。左頬に大きい一生傷がある。

 

本作品主人公。

低血圧で午前は機嫌が悪く友人にも容赦なく毒舌を叩き込む。

午前中の授業は睡魔と格闘戦の時間。

高校二年生の時、とある理由により大洗学園へ転校しそこで早瀬 総士等と出会う。

左頬には大きい一生傷がある。

高校一年生の時に出来た傷らしいが…………?

 

なお1話にて好きな人がいると総士に話す。

 

ティーガーllでは通信手兼車長を務める。

 

追記

 

西住みほとは幼馴染。その為距離が近い。

幼い頃はよく彼女のフォロー回っていた。

 

母親の名前は出雲晴夏(いずもはるか)。白髪のロングヘアー。

事故により死亡している。

 

 

搭乗戦車 ティーガーll(ヘンシェル砲搭10.5cm砲搭載型)

 

モデルキャラは特に無し。

 

 

 

早瀬 総士(はやせ そうし)

 

身長 179cm

 

性格 元気(悠希曰くうるさい)

 

気質 面倒見のいい兄貴肌。

 

趣味 戦車や航空機等のミリタリー系統の知識をひたすら頭に詰め込むこと。

 

好きな戦車 チーフテン

 

特徴 金髪頭

 

今作品のギャグ担当。

「主人公に罵られつつも親友の立場となり普段は突っ込み担当だがいざというときには相棒のような立場の人物」と言う作者の考えから生まれたキャラ。

面倒見のいい兄貴肌と言う気質で学園の後輩からは尊敬されている………が、中身はミリタリーマニアであり多彩な知識を持つ。

美紅から好意を向けられている。なお、本人は気付いていない模様。

 

搭乗戦車であるティーガーllでは装填手を務める。

 

モデルキャラは『あっちこっち』の戌井 榊。

 

 

 

 

篠原 真姫(しのはら まき)

 

身長162cm

 

性格 マイペース(?)

 

好きな戦車 M1エイブラムス

 

趣味 戦車操縦

 

本作女子オリキャラその1。

金髪で腰当たりまである長髪ストレートが特徴。

お気楽な雰囲気でムードメーカーの役割を果たす。

実は天才気質設定。

如月美紅の恋心にいち早く気付きサポートする。

なお、本人はあまり恋愛に興味はない模様。

 

キャラの誕生理由は如月美紅以降に記す。

 

ティーガーllでは操縦手を務める。

 

モデルキャラはVOCALOIDの弦巻マキ

 

 

 

 

 

如月 美紅(きさらぎ みく)

 

身長156cm

 

性格 物静か 律儀

 

好きな戦車 メルカバ

 

趣味 音楽鑑賞

 

本作女子オリキャラその2。

明るい紫色の髪が特徴。

普段は物静かで同級生にも敬語を使い律儀な印象を受ける。

 

とある理由により総士に恋心を抱いている。

 

ティーガーllでは砲手を務める。

 

モデルキャラはVOCALOIDの結月ゆかり

 

 

 

 

篠原 真姫と如月 美紅の誕生理由は作者が惑星某戦車ゲーム実況を見ていた時に砲手役がvoiceloidの結月ゆかりがやっていて非常にぴったりだったので名前を変えて出すことに。

篠原 真姫はよく結月ゆかりのVoiceloid実況で弦巻マキを見かけるので採用。

ちなみに美紅は第1話投稿前日まで名前はゆかりだったが原作キャラと被っていることに気付き(遅いよ)急遽、初音ミクのミクを美紅に変換して採用。

なんか申し訳ない。

 

 

 

 

オリキャラ搭乗戦車

 

ティーガーll(ヘンシェル砲搭10.5cm搭載型)

 

正式名称「Panzerkampfwagen VI Tiger Ausführung B "Tiger II"」

 

日本名 Ⅵ号戦闘車両ティーガーB型 "ティーガーll"

 

言わずと知れたナチスドイツ最強の重戦車。

その姿はティーガーの発展型と言うよりはⅤ号戦車パンターを一回り大きくしたような感じで垂直装甲のティーガーlに対しティーガーllでは傾斜装甲が採用されている。

 

それと同時に欠陥戦車でもある。

ノルマンディー上陸作戦で急遽ほぼテスト無しの状態で投入されたティーガーllはエンジンの出力に難があり舗装地で最大時速38kmとかなりのノロノロである。

車体重量は70t近くありトランスミッションは故障を多く起こしパンターのエンジンを積んでいたため出力不足は一目瞭然だった。

 

反面、防御は最強にふさわしいものになっている。

ティーガーllが実戦投入された時点でこの戦車に対抗できる戦車が連合軍にはおらずティーガーllが敵戦車に正面装甲を貫通されたと言う報告書や証言は()()()()()()()()()()()()ことがこの戦車の防御力を証明している。

 

他に上げるべきものはやはり8.8cm砲だろう。

アメリカの90mmより強力でソ連の122mmより精度が良い(この辺り某戦車ゲームはしっかりしてる)。特にティーガーllの8.8cm砲は敵戦車の有効射程外から一撃で撃破可能と言うシャーマン涙目な砲であった。

 

アメリカの偵察部隊から「ティーガーが来たぞ!」と報告が入ると逃げ出す人もいたとかいないとか(タイガー恐怖症と言うものらしい)。

 

本作品ではこのティーガーllにエンジンとトランスミッションの強化が施され、主砲は71口径8.8cm砲から68口径10.5cm砲へと改装されている。

 

この10.5cm搭載は史実の計画にある「既存戦車の再武装」と言う計画にあったもの。しかし弾薬の重量が増え弾薬の搭載がかなり削られることになるため採用されなかった。

 

追記

 

このティーガーllは悠希の母、出雲晴夏の乗車戦車であり晴夏個人の戦車である。

そして『Eシリーズ』にあるE75を限りなくティーガーllに似せたもの。

ゆえに『ティーガーllの皮を被ったE75』『限りなくE75に近いティーガーll』と言える。

 

 



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第2話

今回短めです。
キリの良いところで止めました。



それでは始めます。


最初はちょっとした衝突だった。

 

今考えてみれば、自分も少し頭に血が上っていたのかもしれない。

 

そんな中で隊長は紅白戦を提案した。

 

お互いに納得する戦果が出ればいいと思っていたのだろう。

 

けれど俺が見た戦車に乗り込む相手は、

 

明らかに殺意が込められていた。

 

その結果、彼女を窮地に追いやってしまった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「……ん」

 

今日は簡単に目が覚めた。

それもそうだろう。自分の寝間着は汗でびしょ濡れだ。

 

……最近悪夢が多いな

 

ちらりと時計を見ていつもより早いことを確認する。

 

二度寝してしまう前に家を出よう、

と支度を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で現在眠気眼で登校中。

 

さてあのティーガーllに乗ってから結構な時間がたっている。

解ったことと言えば転校生はやはり西住みほだった事。

 

やはり何かあったのだろうか。暫く戦車道をやってないので情報が解らない。

 

「オーッス」

 

いや、正確には情報を調べてないだけだが。

 

「あれ?おーい」

 

どこかで恐れているのかもしれない。戦車道と言うものに。

 

「返事がない。ただの屍のようだ」

 

「俺が屍ならお前は存在してないと言うことか」

 

「え?まって、何でそうなるの?」

 

「それほどの存在だと言うことだ。わからんのか?」

 

「よし解った。表でろ」

 

「もう外だよ」

 

「ぐぬぬ…」

 

こんなやり取りをしている相手は早瀬総士。後輩から良く尊敬され面倒見のいい兄貴肌を持つ金髪頭。

ついでミリタリーマニアでもある。

 

……そう言えば

 

「なあ総士」

 

「ん?なんだ」

 

「去年の戦車道大会って見たか?」

 

「そりゃもちろん。全戦見たけど?」

 

ビンゴ。少しこいつから情報を引き出そう。

 

「なら優勝したのはどこだ?」

 

「ん?去年はプラウダだが?」

 

………んん?

 

「プラウダが……優勝?」

 

「知らなかったのか?決勝で黒森峰をプラウダが破って優勝。黒森峰は十連覇を逃したんだ」

 

「……嘘だろ?」

 

黒森峰が……負けた?

 

「嘘じゃないんだなーこれが。てか何でこんな事を?」

 

「すまん総士。もう少し詳しく頼む。できれば試合内容とかも」

 

「お、おう……なんか午前中なのに珍しく真剣だな」

 

「珍しくは余計だ」

 

「とは言っても試合はほとんど悪天候でテレビでは発砲煙しか確認できなかったよ、けど試合終盤にあることが起こったんだ」

 

「あること…?」

 

「試合終盤、黒森峰の戦車が荒れた川に落ちたんだ。いや~さすがにハラハラしたな。そしたら黒森峰のフラッグ車の車長の子が川に飛び込んで行ったんだ。結果フラッグ車が撃破されて試合終了、って訳さ」

 

「……そのフラッグ車の車長、誰だかわかるか?」

 

「西住みほだったけど?」

 

……なるほど。

 

「すまんな総士、助かった」

 

「いいけど……何かあったのか?」

 

「まあ、少しな……」

 

どうやら、彼女に会って話をした方が良さそうだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「はぁ?必修科目に戦車道??」

 

「しー!静かに!!」

 

午前中睡魔にコークスクリューブローが炸裂して昼休み。真姫がそんなことを言い出した。

 

「で?そんなガセみたいな話どこで聞いたんだ?」

 

「それが……三学年で広がってるみたいで」

 

そう真姫の隣の美紅が答える。

 

「けどよ、大洗の戦車道って確か数十年前に無くなったんじゃなかったか?」

 

「総士の言う通り、大洗の戦車道はなくなっている。でもそれが必修科目になると言うことは」

 

「復活する、ってことだよね」

 

「そう言うことになるな」

 

だが、と続ける。

 

「なぜ今頃かだ。今は昔ほど戦車道が流行っているわけじゃない」

 

「確かにそうですね」

 

「総士、何か戦車道関係でこの学園が戦車道を復活させそうなニュースはあったか?」

 

「あるぜ。最近なんだが、近々戦車道の世界大会が日本であるらしい」

 

「ふむ…世界大会か」

 

大方政府が力入れろって予算でもおりたか?

 

「………なあ皆」

 

俺の声に皆が振りかえる。

 

「もし仮に戦車道が復活して俺が戦車道をしたいと言ったら、皆はついてきてくれるか?」

 

 

「「「……」」」

 

 

少し時間をおいて、総士達が口を開く。

 

「何いってんだよ!俺達の仲だろ?」

 

「そうだよ~。嫌で戦車乗ってる訳じゃないしねん♪」

 

「私達は好きでやってるんです。ですから悠希さんについていきます」

 

……俺はいい友達を持ったみたいだ。

 

「……ありがとう」

 

その友人達に、俺は頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……彼は問題無いかと」

 

「みたいだねー。じゃ次行こっか」

 

その様子を見ていた三人は歩き始める。

 

「楽しみだねー()西()()()の重戦車マイスターさん?」

 

 

 

そして物語は、大きく動き出す。

 

 

 

すべては、大洗の為。

 

 

 

 



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第3話

どーもです。最近日本に第二次世界大戦時に排水量五十万t級戦艦という計画があった事を知ったセンチュリオンアクションXです。

お気に入りしてくれた方々、ありがとうございます。

それでは始めます。


あの日、目が覚めると病院にいた。

 

頭に包帯、左頬に大きいガーゼ、右足は吊るされ左腕はギブスで固定されていた。

 

後に聞いた話、フラッグ車を庇ったさいに放り出され大怪我をしたらしい。

 

目が覚めた次の日、しほさんが来た。

 

怪我の事を聞かれた後で、しほさんは言いづらそうに言った。

 

 

 

『あなたを……転校させます』

 

 

 

 

あの日、全てが変わった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

ゆっくりと目を開く。どうやらティーガーllの整備中に眠ってしまったようだ。

 

「……最近こんな夢ばっかりだな」

 

あの日、西住流を止めたあの日。

 

全てを置いてきた、あの日。

 

最近こんな夢ばっかりだ。何故かは解らない。

 

「……後悔、してるんだよな」

 

正直自分でも解らない。

 

ただあの日出された提案を、俺は呑むしかなかった。

 

「無力で無能、あいつの言ってた通りだ」

 

才能がない、無能、役立たず、面汚し

 

散々言われてきた。

 

それでも、

 

『お前は無能では無い。私が保証する』

 

そう言い続けてくれた彼女に

 

「俺、もう一回戦車道やるよ」

 

聞こえるはずの無い暫く合ってない幼馴染の友人に向けて、そう言った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

気づけば西に太陽が沈もうとしている時間だった。

ティーガーllの整備を終え校門をくぐったところに親友が立っていた。

 

「オッス、お疲れ」

 

「何だ、帰ってなかったのか」

 

「美紅に勉強教えてたんだ」

 

「なるほど」

 

俺の質問に答えたのは早瀬総士。大洗にきて第一の友人であり親友である。

 

「んで?本当に戦車道やるのか?」

 

「ああ、そのつもりだ」

 

「そうかい」

 

それ以上聞いて来ない辺り、やはりこいつは気が利くのだろう。

 

「まあいいや、飯食いに行こうぜ」

 

「べつに構わんが、お前金はあるのか?」

 

「昨日バイトの給料日だったんだ。無かったら誘わねーよ」

 

「そうか。ならいくか」

 

「よっしゃ!なら今日はハンバーグ定食に唐揚げにポテトにトンカツにマグロ丼にするか!」

 

「食いすぎだ馬鹿」

 

周りの客に引かれる事間違いなしだ。

 

「ちぇ、ならハンバーグ定食に唐揚げでいいか」

 

「そのくらいが妥当だろう。あまり金を使うなよ」

 

「大丈夫だ、俺は生活費以外は趣味にしか金を使わないからな!」

 

「その趣味で多大な量の金を持ってかれて月末金がないと泣きついているのはどこのどいつだったかな?」

 

そう、こいつは趣味の為なら金を惜しまないタイプの人間。特にこいつの趣味は金がかかる。

 

「まあ……趣味は金がかかるから」

 

「ほどほどにしておけよ」

 

「無理だね!」

 

「もうお前には金をかさん」

 

「善処するので見捨てないで下さい」

 

「あまりにも綺麗な土下座に呆れを通り越して尊敬するよ……」

 

土下座する友人にそう言った。

 

 

 

ー翌日ー

 

 

 

「へー、やっぱり悠希くん戦車道やるんだ」

 

「ああ」

 

午前中、睡魔に対しキャメルクラッチを決め現在は食堂。

いつものメンバーで食事をとっている。

 

「まああくまでも噂だし、本当にあるかどうか解らないんだけどな」

 

「そう言えばもし仮に戦車道があったとして、大洗の戦車はどうなるんでしょう?」

 

「んーどうなるんだろうな。予算降りてくるなら多少の戦車は買えるんじゃないか?あれ?そうなると悠希、俺達の戦車ってどうなるんだ?」

 

「その点は問題無い。俺達はあのティーガーllがある」

 

「大丈夫なの?あれ使って」

 

真姫の言葉に頷き続ける。

 

「ああ、戦車道のルールに違反してなければどんな戦車でも使える」

 

「でもあのティーガーllって10.5cm砲でしょ?史実じゃアハトアハトの強化版だよ?」

 

「あれは『既存戦車の再武装』って言う計画にあった10.5cm砲搭載計画のティーガーllだ。戦車道のルールには砲本体に制限を殆んど掛けてないからな」

 

「戦車道のルールって基本的にはどんな感じなんですか?」

 

「それに関しては総士のが詳しい。頼む総士」

 

「1945年8月15日、つまり第二次世界対戦終結までに開発または()()()()()()()()が仕様可能、それに判定装置を取り付ける事、だな」

 

「ちょっと待って。私オープンキャンパス行った大学の戦車道チームでたしかセンチュリオンってやつ使ってたとこあるけどセンチュリオンってイギリスの戦後戦車じゃないの?」

 

「センチュリオンはMk.lというプロトタイプのみ戦時中に6両開発されているんだ。戦闘記録は朝鮮戦争の時に強奪されたクロムウェルとセンチュリオンとの戦闘が初めてだけど戦時中に開発されて輸送中に終戦を迎えたMk.lは戦車道のルールには違反してねぇんだよ」

 

「さ、さすがミリタリーマニア……そう言うのすらすら出てくるね」

 

「戦車道見てりゃ常識だろ?なあ悠希」

 

「俺はドイツ専門だ」

 

どこかの誰かさんに耳にタコ出来るくらい聞かされたからな。

あ、誰かさんって言うのは総士じゃないぞ?

 

「他にも色々あるけど…まあいいや、とにかくあのティーガーllは問題無いって事だ」

 

「ほー」

 

真姫が感心した様に声を漏らす。

美紅は美紅でしっかり聞いていたようでなんかキラキラしてる。

 

「でも学校側から許可は貰えるんでしょうか?」

 

「そこも問題無い。現に放課後に使っていいとも言われてるし。俺の履歴みた生徒会からは絶対に許可を貰える」

 

「「なんで?(ですか?)」」

 

総士と美紅がハモる。仲良いなお前ら。

 

「そういや言って無かったな。俺が一年生の時の学校」

 

「お前があんまり聞くなって言ってたからな」

 

「まあそうだな。俺が行ってた学校は黒森峰だ」

 

「「「……え?」」」

 

「黒森峰だ」

 

「「「………えぇぇぇぇー!?」」」

 

「うるさ!ここ食堂だぞ!」

 

とりあえ周りの生徒に謝り会話を続ける。

 

「ちょ、おま黒森峰って!いや前に戦車道やってたって聞いたけど!生徒会の事も納得出来るけど予想外だわ!」

 

「ま、まさかの名門中の名門……」

 

「けど一昨年の大会お前出てなかったよな!?」

 

「大会始まる前に戦車道止めたからな。出てないのはあたり前だ。黒森峰でもティーガーllに乗ってたよ」

 

「じゃああのティーガーllは…」

 

「いやあのティーガーllは事情があって話せないが俺が黒森峰にいた頃のやつとは違う」

 

「じゃあ悠希さんは何故大洗に?」

 

「それは……」

 

美紅の言葉に詰まる。

 

「……話したくないと」

 

「……すまん」

 

「構いません。誰にだって話したくないことはありますから」

 

…優しい子だな。

 

「さて戻ろうぜ悠希、次移動教室だろ?」

 

「そうだな。行こう」

 

「え!?私食べ終わって無いんだけど!?美紅は!?」

 

「遅いです真姫さん。先に行きますね」

 

「美紅の裏切り者ーー!」

 

 

真姫の叫び声が食堂に響くが俺達は気にせず食堂を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…悠希、お前は今どこに居るんだ……」

 

とある学園艦で少女が呟く。

 

 

 

 

 

再会の日は近い。

 

 

 




名前から察している方もいるかもしれませんが作者はセンチュリオンも好きです。

劇場版で出てきたセンチュリオンMk.lは現在世界に二両しかないそうです。

センチュリオンMk.l,Mk.llの主砲は17ポンド砲(約77mm)で戦闘記録は無く戦時中輸送されている時に終戦したそう。

ティーガーと張り合える事が出来たかもしれない戦車の内の一両と言われていますが記録がないので戦闘力は未知数だそうです。

設定改変

車両について

1945年8月15日までに試作、開発された戦車



1945年8月15日までに試作、開発及び()()()()()戦車


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第4話

遅くなりました。

大学のAO試験や願書書いてたり地域のイベント等が重なってしまい。申し訳ない。

過去最高文字数なので許して下さい。

原作キャラの口調に違和感があるかもしれません。いやー難しい。

それでは第4話、始まります。


私は今、どうしようもない位の崖っぷちにいる。

 

何故こうなったのかは理解している。

 

あの日、紅白戦が終わった後に私はあいつの病室を訪れた。

 

私の戦車を庇い、悠希は投げ出され大怪我を負ってしまった事に強い罪悪感が沸いた。

 

結局その日目を覚ますことはなかった。

 

退院すれば学校に来るだろうと私は待った。

 

けれど、あいつが学校に姿を現す事はなかった。

 

悠希、

 

何故私の前から消えた?

 

お前は今、どこに居るんだ?

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

『ーーーーーー』

 

「なあ総士」

 

「ん?」

 

移動教室の授業後、生徒会の呼び出しにより集まった全校生徒にオリエンテーションとして戦車道の紹介動画が流れていた。

これで戦車道があるのは確定だなと思っているとき、隣にいた悠希が話しかけてきた。

 

「お前は戦車道をどう思っている?」

 

「は??」

 

なに言ってんだこいつ。そんなの

 

「さっき動画で言ってただろ?戦車道は人の嗜みだ。それ以外に何があるんだ?」

 

「……本当にそうなんだろうか」

 

「は?」

 

どういうことだ?

 

「俺は、戦車は殺戮兵器だと常に思っている。俺が乗っているティーガーも、一体何人の人を殺したのか解らない。いや、少なくとも俺は戦車道の戦車を殺戮兵器として運用して怪我人を出した奴を知っている」

 

「は!?戦車道で怪我人!?」

 

あり得ない話ではなかった。

 

ただここ数年戦車による攻撃で怪我をした人の情報は殆んど無い。

 

「総士、俺が戦車をやる理由は一つだけなんだ」

 

「な、なんだよ…」

 

少し詰まりながら聞く。

 

 

 

 

「黒森峰に勝つ。それだけだ」

 

 

 

 

 

「……悠希、お前……」

 

その時、悠希の目にはやる気ではなく憎悪の様なものを俺は感じた。

 

こいつは恨んでいるのかもしれない。

何故黒森峰からこの大洗に来たのか俺には解らない。

ただ少なくとも、何かしらの恨みがあるのだろう。

 

そうでなければ、

 

こいつの()()()()()()()()()()理由が解らない。

 

本当に一体、黒森峰で何があったんだ……?

 

「……ということでよろしくー。あ、三年の出雲 悠希と早瀬 総士、篠原 真姫と如月 美紅はこの後生徒会室にきてね」

 

「ん?」

 

「お?」

 

呼び出しのお知らせに目線をステージの上に向けると此方に向かってニッっと笑う生徒会長 角谷 杏がいた。

 

「……どうやら、俺達が戦車道をするのはもうお見通しらしい」

 

「みたいだな」

 

「行こう」

 

「ああ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「よく来たね」

 

「よく来たねって、呼び出したのは君だろ?生徒会長」

 

まあねと返し干し芋を食べているのは角谷 杏。大洗生徒会会長。この学園に来た際にちょっとした恩がある。

 

「それで、私達が呼ばれたのは戦車道のことですよね?」

 

「その通りだ。さっき説明した用に戦車道選択者の成績優秀者には特典がつく」

 

と河嶋 桃が肯定の意を示す。

 

…………ん?待てよ、特典?

 

「特典?なんだそりゃ」

 

俺が疑問に思った事を総士が代弁してくれる。

 

「さっき言ってたじゃ無いですか。成績優秀者には単位や遅刻の見逃しがつくって…………まさか聞いて無かったんですか?」

 

美紅の言葉に俺と総士は目線を剃らす。

………二人で話ていて聞いて無かったとか言えない。

 

「総士君?聞いて無かったんですか?」

 

「いや、その、な」

 

「聞いて無かったんですか?」

 

「いや、あの」

 

「聞いて無かったんですね?」

 

「ハイ」

 

もう少し粘れよ総士。

 

「あなたという人は……!」

 

「待て美紅!これには富士山より高く日本海溝より深い訳があって!」

 

「いつもいつも人の話を聞く用に言ってるじゃないですか!大体いつもあなたは……」

 

「青春だねー」

 

「青春なのかこれは?面倒見のいい母親にしか見えんが…」

 

「オカンってやつだね!」

 

「真姫さん??」

 

「ゴメンナサイ」

 

美紅の説教が始まり呑気なことを言った生徒会長に返す。

 

こうなった以上、美紅は止まらない。気がすむまでほっておこう。

 

……あ、総士が正座した。

 

「さて話に戻ろう生徒会長」

 

「あの、いいんですか?あれ」

 

「気にするな。日常茶飯事だ」

 

聞いてきた副会長小山 柚子にそう返す。

 

「生徒会長が知ってるように俺達はこのメンバーで戦車道をやる。昨日俺達のクラスに来たのも大方その話だろ?」

 

「…へえ、気付いてたんだ。流石重戦車マイスターだね」

 

「その名前は止めてくれ、買い被りにも程がある」

 

この名前まで知ってるか……かなり調べられてるな。

 

「しかし、競技の最低参加台数は5両。俺達にはティーガーllがあるが残りの4両をどうするつもりだ?」

 

「いやーそれがさ、探すしか無いんだよねー」

 

「……は??」

 

探す??

 

「いや、なんでさ」

 

「この学校が数十年前に戦車道やっていたことは知っているだろう?」

 

「ああ、それがどうしたんだ?河嶋」

 

「ならその時に使っていた戦車が学園艦のどこかに…いや必ずあるはずだ」

 

「ふむ」

 

確かに数両あってもおかしくは無い。

ただ…

 

「そんな車両が使えるのか?まともに整備されてるとは思えないが……」

 

「その辺は自動車部に任せてあるから大丈夫大丈夫」

 

と生徒会長が返す。

ふむ、それならまあいいか。

だが、妙に引っかかる。

なんだこの違和感は………

 

「………ねえ、おかしくない?」

 

「真姫?」

 

真姫が顎から手を放してそう言った。

 

「ねえ悠希君、美紅が大洗の戦車をどうするのかって聞いたときの総士君の返事覚えてる?」

 

「戦車をどうするか?」

 

ふむ、たしか『予算が降りるなら多少の戦車が買えるんじゃないか』だったか?

 

「そう。でも普通、数十年前にやってたからと言う理由で予算や戦車無しにはいがんばって下さいっておかしくない?」

 

……言われてみればそうだ。確かに戦車道の戦車は個人でも持てる。だが戦車は多大な金がいるし維持費も洒落になら無い。

 

それが何も無い状態の学園に何も無しにはいがんばって下さいっていうのはおかしい。

 

少なくとも戦車数両の支給があってもおかしくはない。

 

戦車を探すところから始めると言うことは、そう言った類いの支援が無いと言うことだ。

 

「それにあの特典。いくら何でも優遇しすぎてる」

 

「それは私も思いました。食堂の食券100枚、遅刻見逃し200日、通常授業の3倍の単位…何か裏があるんじゃないですか?」

 

美紅の言葉に生徒会メンバーは黙ったままだ。

もう少し推理を進めよう。

……てか特典そんなんだったのか。

ちなみに総士は脚がしびれたのか立ち辛そうにしている。

 

「何かしらの問題があって戦車道にでなければならなくなった、けど戦車道は一人でやるものじゃないし大人数が必要、だから成績優遇を付けてでも生徒を集めなければいけなかった……こんな感じか?」

 

「……やっぱり隠せないか」

 

生徒会長が諦めたように口を開いた。

 

「会長!?話すんですか!?」

 

「しょうがないよ、あそこまで推理されたら気付くのも時間の問題だし。話すよ」

 

「ああ」

 

さて、この話にどんな裏がある?

 

 

 

「……廃艦になるんだ。大洗の学園艦がね」

 

 

 

 

…………………廃艦……だと?

 

 

 

「……廃……艦…?」

 

「それって………学園が無くなるってことですか……?」

 

美紅と真姫が絞るように声を出す。

そう言えば彼女らはここで育った子か。

 

「文部科学省は学園艦は維持費が大変だから次第に無くしていく、と言うことだ」

 

……なるほど、言いたいことは解る。しかし

 

「解せぬな」

 

「何が?」

 

真姫の言葉に返事はせず、総士の方に振り向く。

 

「総士、高校生戦車道と言えばどこの学園だ?」

 

「あん?黒森峰学院だが?」

 

「イギリス等の海外の学園とつながりがある学園艦は?」

 

「聖グロリアーナとプラウダだな」

 

「設備がかなり整っていて金がある大学の付属学園」

 

「サンダースだな」

 

「他に有名な学園艦は?」

 

「アンツィオや知波単とかだな」

 

「……やっぱりか」

 

「どういうことですか?」

 

「大洗には活躍するような競技がないんだ。アンツィオや知波単は知らないが、黒森峰は高校生戦車道って言われたら必ず出てくるだろうし聖グロやプラウダは海外の支援がある。廃校なんてなったら向こうの国が黙ってない。サンダースは大学が兼ね持っているから簡単には潰せない」

 

「そこで大洗が選ばれた、と?」

 

「だろな、おそらくだが」

 

「ケッ、こっちの生活も知ら無いくせに何を勝手に……」

 

珍しく総士も怒っているようだ。

無理もない。いきなり住む場所が奪われるんだ。怒りたくもなる。

 

「だからこうなったんだろう?戦車道でいい成績を残せば廃艦の話は無くなるって」

 

「…やっぱりすごいよ、君」

 

「別に、俺はすごくないさ。さて話を戻そう。俺達は戦車道をやる。生徒会長には恩もあるし」

 

「恩?なんだそりゃ」

 

「学園に転入するときにな、色々世話になったんだ。こうなった以上俺達もほっておくわけにはいかない。俺達にも協力させてくれ生徒会長」

 

「………ありがと」

 

生徒会長は一言、そう言った。

 

「それじゃ、俺達は戻る。俺は戦車の整備をしなきゃならんし」

 

ぞろぞろと順番に生徒会室を出ていく。

 

「…ねえ出雲君」

 

最後に俺が出ていこうとしたとき、生徒会長が聞いてきた。

 

「君、あの事件の事まだ恨んでる?」

 

「……ああ」

 

と返し続けた。

 

「今でも、あの時の無力な俺を、俺は一生恨みつ続けるさ」

 

そう言って生徒会室の扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……戦車道、か」

 

ティーガーllの整備を終え帰宅中の俺は考えに耽っていた。

 

(生徒会長にはああは言ったが、新規参加の学校が戦車道で優勝するのは難しい。いや、はっきり言って一回戦突破も危ういだろう。戦車道初日に戦車を探すだろうからまずそれで戦力の把握しなくちゃな。どうみても戦力が足りない場合は………仕方がない、背に腹は変えられん。その場合、()()()()()()()ティーガーllを………)

 

「……悠希君?」

 

突然名を呼ばれ思考が停止する。

 

誰だ?総士達なら先に帰ったし……

 

振り替えるとそこには…

 

 

「悠希君、だよね?」

 

「……みほ」

 

 

一年ぶりに会う、西住みほが居た。

 

 

 




wotblitzで最近カメさんヘッツァーと黒森峰ティーガーでMバッジ取ったんですが、アンコウSPだけ1バッジ止まりのセンチュリオンアクションXです。

黒森峰ティーガーのMバッジはきつかったです。
ミサイル弾くとかまほさんどうやってんの?(操縦してるのうp主だけどね)

カメさんヘッツァーはなぜか勝率が60%超え。

なのになぜかアンコウだけとれないんです。ラドリー勲章二回取ったのに、素の経験値1200超えたのに1バッジ……これもうわかんねえな。

最近はE75乗ったり六一式戦車乗ったりと楽しんでます。もうちょっとでヤークトティーガーとE100できます。

次回の更新は早めにします。絶対に。

それでは。


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序章 最終話

大分と早く書けたので投稿します。

それでは、始めます。


評価設定を10文字から5文字に変更しました。


手にした力を振るう理由は 今でも変わらない

 

友人 自分の居場所 誇り 穏やかな生活

 

安らかな日常 自分の愛する人

 

それらが奪われるのなら

 

俺は 何度でも戦車に乗るだろう

 

ただ 守るために

 

ただ 奪われないために

 

今日も俺は 王虎に乗る

 

 

『とある少年の日記から一部抜粋』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら」

 

「あ、ありがとう」

 

ベンチに座っているみほに飲み物を渡しみほの右側に腰を降ろす。

 

プシュと缶コーヒーを開けて一口飲むが、みほは両手で握ったままだ。

 

「……去年の大会の話は友人から聞いたよ」

 

「っ!」

 

そう言うとみほの両手に力が込められた。おそらく予想していたのだろう。

みほの表情からは苦しさや怯えと言った物を感じ取れる。

 

この反応で確信した。おそらくしほさんに大会の事について何かしらの事を言われたのだろう。

 

(そんな事言うつもりは無いんだがな……)

 

そんな表情を見てこう思いながら、苦笑する。

実際、幼い頃はみほのフォローに入ることが多かった。

そうやってフォローしていた事も全部しほさんにばれてたのだが、しほさんは何も言って来なかった。

 

そう考えると彼女の心情は理解できる。

みほはただ、自分のただしいと思った行動をしただけ。

しかし結果的には彼女の行動で黒森峰は敗北した。それは西()()()()()()()()()()()()()()なのだろう。

 

ならば今回自分のすべき事は、幼き日のようにフォローする事だ。

 

微笑を浮かべながら言った。

 

「怪我は無かったか?」

 

「えっ、うん、無かったけど……」

 

彼女にとっては予想外の言葉だったのだろう。

 

「そうか、よかったじゃないか。みほもあの落ちた戦車の乗組員も無事だったんだろう?」

 

「うん…」

 

そう返事をしているみほには元気がない。

昔は活発な娘だったのに……いつ頃からかみほは引っ込み思案な娘になってしまった。

 

「ならいいじゃないか。お前は正しい事をしたんだよ。お前は胸はって言えばいいんだ『人の命を救った』って」

 

はっ、と振り返るようにみほがこちらを向くがそのまま続ける。

 

「おまえがあいつやしほさんになんて言われたのかは解らない。ただみほ自身が、その行動に後悔が無いのならそれはそれでいいじゃないか。別に俺はみほを責めるつもりは微塵も無いよ。だから」

 

とみほの頭に手を置きながら

 

「そんな顔するな。自分の思ってる事を言えばいい。違うか?」

 

そこまで言うと、みほは飛び込んできた。

 

「私…()()()()()が居なくなって…どうしたらいいか…わからなくて……!」

 

「すまんな。その事については謝る。許してくれ」

 

そこまで言った後は、静かにみほは泣いていた。

俺は何も言わず、ただみほの頭を撫でていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「うん、ありがとう悠希君」

 

しばらくしてみほが離れた。

 

「……悠希君は一年前からここに?」

 

「ああ、二年の春から通ってる……もう一年以上経つのか」

 

「…悠希君が居なくなってから、お姉ちゃんずっと落ち込んでた」

 

「………」

 

みほはあの日の事を知っている。だがここへ転校した理由などはしほさん等の極少数の人間しか知らない。

 

また、みほの姉であり同じ年の西住まほもその理由を知らない。

と言うより、しほさんも俺も言えなかった。

言ってしまえばまほはきっと………

 

と考えていた時、そっとみほの右手が俺の左頬に触れる。

 

「みほ?」

 

「…傷、治らないんだね」

 

「……一生傷だよ」

 

と言いながら微笑する。

俺自身、あの時のことを後悔してないと言えば嘘になる。

ただ、それで彼女が救われるのなら……そう思う。

 

「みほはここで戦車道をやるのか?」

 

「…」

 

俺の質問にみほは黙った。

 

「生徒会長になんか言われたか?」

 

「…必修科目で戦車道選んでくれって…」

 

みほは知らないが、大洗は廃校の危機にある。戦車道をやることになってみほがいると知ったらあの生徒会メンバーが黙ってるはずがない。だが

 

「嫌ならやらなくていいんじゃないか?」

 

「え?」

 

「無理にやる必要は無いって事さ。それでも生徒会が言ってくるなら俺の所へ来い。まあ、なんとかしてみせる」

 

「悠希君…」

 

「さて、そろそろ日が暮れる。帰るぞ」

 

そう言って立ち上がる。

 

「悠希君は戦車道を?」

 

「…やるつもりだ。だがみほ、俺の意見でやるやらないを決めるな。みほはあくまでも自分の意思でやればいい」

 

「…うん、ありがとう()()()()()

 

「……お前、また『お兄ちゃん』になってるぞ」

 

「え!?あ、その、忘れて……//」

 

いつからか呼ばれなくなった呼び名。

さっきもだが無意識だったのか?

 

「ま、流石に高校生にもなれば恥ずかしいか」

 

ケラケラと笑う俺に対しみほは顔を真っ赤にしたままである。

 

「呼びやすい方で呼べばいいさ」

 

「……」

 

と言うと悩み出すみほ。

……待って、そんなに葛藤することなの?

 

「…悠希君」

 

結局名前呼びにするようだ。

 

「それじゃあ帰るか」

 

「……悠希君!」

 

「ん?」

 

「あの、二人の時だけ、お兄ちゃんって呼んでいいかな?」

 

その質問に少し目を見開きながら俺は笑顔答える。

 

 

 

「ああ、かまわないよ。みほ」

 

 

 

 

 

 

ちなみに次の日、クラスの男子生徒から二年の西住とどういう関係だ!と迫られた事をここに記す。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふ~」

 

その日の風呂上がり、頭を拭きながら椅子に座りテレビをつける。ちなみに俺はニュースしかみない。

 

「北の国が米国挑発ね……一体いつまで続くんだろうな」

 

なんてぼやいていると机の上の携帯が鳴った。

 

「誰だ?こんな時間に」

 

着信相手の名前を見る。

 

 

『着信 西住しほ』

 

 

その文字をみた瞬間、すぐに電話に出る

 

「もしもし?」

 

『久しぶりね』

 

「…ええ、お久しぶりです。しほさんそれで……」

 

『あなたの頼んでいた物が完成しました』

 

「!そうですか。では、大洗に」

 

『もう輸送している途中です』

 

「……何から何まで、ありがとうございます。しほさん」

 

『その律儀なところ、母親にそっくりね』

 

「母さんに?」

 

『ええ。彼女は事ある度に私にお礼を言って頭を下げていたわ』

 

「……そう、ですか」

 

『話は以上です』

 

「忙しい時に連絡ありがとうございました。無理なさらないよう頑張って下さい」

 

『ええ、あなたも体調管理には気をつけて』

 

「はい………では」

 

そう言ってしほさんとの電話を切る。

 

……やっとできたか。()()が。

 

「……待ってろよ○○、お前だけは必ず俺の手で倒す。絶対に」

 

そう言って左手を握った。

 

 

 

 

 

そして、戦車道初日がやっていくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思ったより集まりませんでしたね」

 

「全部で18人、私達と出雲さん達をあわせて25人です」

 

河嶋、小山と続き俺が口を開く。

 

「だが最低の人数は揃っている。後は戦車だな」

 

「まあなんとかなるでしょ、結果オーライ」

 

「そんなんでいいのか生徒会長……」

 

呆れ気味にそう呟くと三人で話しているみほが視界に入る。

 

他の二人は知らないが、仲良くできているみたいで何よりだ。

 

そして倉庫の前に生徒会メンバーが並び河嶋が口を開く。

 

「これより戦車道の授業を開始する」

 

「あの戦車は、ティーガーですか?それとも」

 

「えーっと、なんだったっけ。出雲君開けてくれる?」

 

「わかった。総士、手伝ってくれ」

 

「おう!」

 

生徒会長の命により重い緑の鉄扉を開く。

そこにあったのは、ボロボロの戦車。

 

「うそー」

 

「ありえなーい」

 

「ボロボロ~」

 

()()()()でいいのでは?」

 

「これはただの()()()…」

 

と色々な声が聞こえる。

 

「四号戦車D型か」

 

「だな」

 

一発で見抜く総士、それに同意してゆっくりと戦車に近づく。

 

「錆びが目立つな……」

 

「装甲と転輪は大丈夫そうだよ悠希君」

 

「!みほ」

 

いつの間にか隣に居たみほに驚きながらも、そのまま続ける。

 

「履帯は巻き直すとして、ターレットリングやエンジンは動かさないと解らないが………装甲と転輪が無事なら十分だ。いけるぞ」

 

その言葉に周りからわずかに声が上がる。

そして一言、みんなに聞こえる声で言った。

 

「さあ、戦車道を始めよう」

 

 

 

 

 

 

 

この先 少年が見るのは希望か絶望か

 

 

それは誰にも解らない

 

 

 

 

 




しほさんの口調大丈夫かな……。一応オリ主と話すときはしほさんは柔らかい設定です。

○○にはオリキャラの名前が入りますが、今は公開しません。

しほさんから送られる物についても現在は公開しません。

さて今回で序章、アニメの第1話までが終了し次回から聖グロ戦の章に入っていきます。

ここまで呼んでいただいた皆様、感想をいいただいた皆様、お気に入り登録をしてくれた皆様には大変感謝しています。

これから先、長いですがこの『王虎』を応援していただけたら幸いです。それが作者の原動力となります。


……さてここからなんですが、主人公の関係とプラウダ編もしばらくしたら書くと言うこともありまして、
他校の戦車を()()()()()()()ことになりました。

実際、ティーガーllはサンダース相手ではほぼ無双状態になってしまいます。

それでは面白くないので()()()()抵抗できるような戦車を追加するつもりです。
(あくまでもある程度です)

もちろんサンダースだけでなくプラウダや黒森峰も強化されると思います。
(多分黒森峰はストーリーの関係上絶望的なくらい強化はいるかも……)

それでも主人公の位置は最強の重戦車と言う立場を変えるつもりはありませんのでご理解の方をよろしくお願いいたします。


それでは、次回も王虎にご期待ください。

感想等をいただくとありがたいです。
(誹謗中傷的なものはお控え下さい)


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第二章「王虎、戦地へ」
第1話


今回キリの良いところでやめたところ2000字ちょっとと短いです。

すいません許してください。

次回は長くするので。




それでは第二章、始まります。


時々、悪夢ではない夢を見る。

 

いつかみた、幼い日の記憶。

 

縁側に座って、庭を見つめている俺の先に戦車を乗り回す二人の少女 、西住まほと西住みほ。

 

俺の隣に立ってその光景を眺めているその二人の少女の母親、西住しほ。

 

そしてその隣には白髪の、俺の母親、出雲 晴夏が居た。

 

 

 

いつかみた記憶。

 

その中には、俺やまほ、みほの日常が写っていた。

 

あの日は確か、まほの家に預けられるんだったか。

 

西住家の玄関でかあさんは見送りの俺に口を開いた。

 

『悠希』

 

『何?かあさん』

 

『戦車はね、本当は戦争の為に開発された物なの。けれど戦争と戦車道は同じものではないの。はっきりと覚えておいてね』

 

『??』

 

首を傾げる俺に優しい笑顔で頭を撫でる母親。

 

『ふふ、まだ難しいわね。それじゃあ、行ってくるから良い子にしてるのよ?』

 

『うん!』

 

この言葉が、かあさんの最後の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ぞろぞろと皆が戦車を探しに歩き始めた頃。

 

 

「いけるぞって……ほんとに大丈夫なのか?このおんぼろ戦車」

 

「問題ない。竜骨も無事だし、フレームもしっかりしてる」

 

呆れたように近づいて来たのは親友の早瀬総士。流石に予想外だったらしい。

 

「以前これに乗っていた人はよほど大切に乗ってたんだろう。正直言ってもっとおんぼろ戦車があると思ってたからな」

 

「これ以上のおんぼろがあんのかよ……」

 

そう言って肩でため息を付く総士。

 

「整備は自動車部に任せよう。美紅、真姫」

 

「はい?」

 

「んむ?」

 

入り口付近にいた二人えおよぶ

 

「とりあえず俺と総士でティーガーを取りにってくる。二人は……そうだな。みほ!」

 

倉庫から出ていこうとしていたみほを呼び止める。

意図を察したのかみほは何も言わずともこちらに向かってきてくれた。

 

「どうかした?おに……じゃなかった。悠希君」

 

「俺と一緒に戦車に乗る仲間だ。紹介する。早瀬総士に篠原真姫、そして如月美紅だ。んで総士は知ってるだろうが、俺の幼馴染の西住みほだ」

 

「よろしくお願いします」

 

紹介したのち、一番にみほが頭を下げた。

そんなみほに近づく真姫。

 

「よろしくね~。みほちゃんって呼んでいい?」

 

「あ、はい、えっと」

 

「真姫で良いよー。篠原って呼びにくいでしょ?んで悠希君。私達はどうすれば良いのかにゃん?」

 

「みほ達と一緒に戦車を探してきてくれ。捜索隊は多いほうがいいからな」

 

「了解!んじゃいってくるねー!」

 

「あ、真姫さん!もう………では、行ってきます悠希さん」

 

「ああ、あまり真姫が暴走しないよう見ておいてくれ」

 

「はい。では」

 

そう言って美紅は真姫を追いかけていった。

 

「……さて生徒会長、俺達はティーガーを取って来る」

 

「りょうかーい。あそこ回収班の車両が入れないから気を付けてねー」

 

「了解した。行くぞ総士」

 

「おうよ」

 

と総士と二人で山奥へと入っていった。

 

 

 

 

『ねえみほちゃん、さっき悠希君のことなんて呼ぼうとしてたの?』

 

『え!き、聞こえてたんですか?』

 

『そりゃもうバッチリね!で、で?なんて呼ぼうとしてたのかにゃん?』

 

『私も気になるなー?』

 

『沙織さん!?』

 

『いいじゃん減る物じゃないんだし』

 

『幼馴染って所も気になるよねん。で、そこの所どうなのみほちゃん?』

 

『あぅ…』

 

 

 

 

こんな会話があったとか無かったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ悠希」

 

「ん?」

 

ティーガーの場所へ行く途中、総士が腕を組ながら問いかけてきた。

 

「さっきあったのは四号戦車だったが、大洗もドイツ戦車を主に使ってたのか?」

 

「いや、事前に調べてみたが大洗の戦車は国籍がバラバラだったらしい。とはいえ全盛期はかなり優秀な戦車を保持していたみたいだが……」

 

「だが?」

 

「……ほとんどが売却されたみたいだ」

 

事前に生徒会長に頼み集めた領収書。その中の数点、戦車のものが残されていた。

 

「!じゃあいま大洗にある戦車は」

 

「軽戦車や癖のある中戦車、全盛期に売れることの無かった()()()()()()()しか恐らく残されていない」

 

「…そんなんで勝てるのかよ」

 

不安になるのもわかる。だが

 

「勝てる勝てないじゃないんだよ総士、やるかやらないか。今はやるしかないんだやらなければ廃校だぞ」

 

「……そう、だな」

 

そう、やるしかない。

大洗学園を救うために。

 

 

そして()()()()()()()()()

 

「着いたぜ」

 

森の奥ふかくにいつものように王虎は鎮座していた。

 

「ああ、総士は車長席に座ってくれ」

 

「道案内すれば良いんだな?」

 

「ああ、操縦席からも見えなくはないがな。ヘッドフォン型の通信機があるからそれを使ってくれ」

 

「了解」

 

その返事を聞いて俺は操縦席に乗り込む。

 

「さて、運転は久しぶりだが……頼むぞティーガー」

 

エンジンかけると改良されたマイバッハ社製V型12気筒水冷ガソリンエンジンが唸りをあげる。

 

「エンジン安定、冷却水問題なし。その他に以上なし」

 

細かいチェックを入れてから両手のレバーをゆっくり倒す。

 

12気筒エンジンが回転を初め約70tの巨大な車体がゆっくりと動き始めた。

 

「動作安定、シフトチェンジ ギア2(セコンド)……トランスミッション異常なし。よし総士、案内頼む」

 

『オーケー。まあしばらくは道なりだが段差やアップダウンが激しい。気を付けてくれ』

 

「了解」

 

 

王虎はゆっくりと林道を走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

そう、戦地へ赴くために。

 

 

 

 

 




第二章始まりでまさかの主人公母親死亡が明らかに。


みぽりんってこうやって絶対やらかすと思うんですよね。

さて第二章始まりました。母親は元々いない設定だったんです、物語の関係で。

お気に入り登録してくださった方々、ありがとうございます。

評価してくださったてっちゃーんさんありがとうございます。


今後もこの王虎をよろしくお願いいたします。

評価字数設定を10文字から5文字に変更しました。

感想やアドバイスなどよろしくお願いします。


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第2話

お久しぶりです。センチュリオンアクションXでございます。



色々あるので話は後書きにて。



それでは、始めます。


母親である出雲晴夏はプロの戦車道の選手であった。

 

西住しほの懐刀と言われる程の実力者であり度々雑誌に特集が載る程である。

 

そんな母親が、戦車道の事故で死亡した。

 

当時の事は、あまり覚えていない。

気付けば葬式が始まっていた。

 

度々、戦車道の関係者であると思われる人達がこちらに同情のような視線を送って来たり声をかけてくる人もいた。

 

だが、殆どの目線が俺の身体中に突き刺さった。

 

 

『出雲家の出来損ない』

 

 

これが俺に貼られていたレッテルである。

 

なぜこんなことを言われるのか、俺には解らなかった。

 

ただ、母親の才能が子にある期待を裏切られた結果なんだろう。

 

戦車道を始めて解った事は自分には才能がない。

ただそれは才能が無いだけであって下手だと言う訳ではない。

いわば凡人、平均的であった。

 

それなのに周りの目は厳しかった。

 

なぜなのだろう。

 

俺は守りたい物を守りたいだけなのに

 

守りたい物は全部

 

自分の手から滑り落ちていった

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『もうちょいかな?だいぶ時間かかったな』

 

「仕方ないさ。改良されてるとはいえ70tの巨体だからな。登り坂とかはどうしても時間がかかる」

 

通信機越しに親友、早瀬総士と話す。

 

ティーガーllは知っての通りかなり重い。

解りやすく言えば大人のマッコウクジラは体重約41tに対しティーガーllは約70t。どれだけ重いんだと言いたくなる程である。

 

ティーガーllにはパンターと同様マイバッハ社製V型12気筒水冷式ガソリンエンジンが搭載されている。

 

パンターと同様馬力は700馬力なのだがティーガーを動かすには馬力が足りない。

(ただしパンターのエンジンは1943年末以降588~600馬力のエンジンへと変更されている)

 

いわゆるパワーウェイトレシオに大きな差が出てくるのである。

 

そのパワーウェイトレシオをよくするためにエンジンをいじったのがこのティーガーllなのだ。

 

『まあな。しかし他の戦車に着いていけるのか?』

 

「どうだろうな。黒森峰のときは重戦車だけで動く場面もあったが、基本的には列を整えて行動だったからな。まあ、その辺りはみほの指揮によるな」

 

『へぇ、そりゃ楽しみだ。お?着いたな。色んな戦車が見えるぜ。掃除してるみたいだな』

 

「そうか、ちなみにだが車種は解るか?」

 

『さっきの四号戦車に3突、M3リー、38tに八九式『チイ』だな』

 

「………圧倒的に火力が足らないな」

 

『だな。まさかチイとは俺も予想外だぜ』

 

ふむ、こうなって来ると厳しい。火力はティーガーllを除くと頼りになるのは3突の7.5cm咆にM3の固定7.5cmだろう。

四号の主砲も7.5cmではあるが見た限り対戦初期の短砲身だ。あれは貫通力に不安が残る。

 

38tやチイに関しては火力に期待出来ない。だがどちらとも軽戦車の運用をすれば問題ない。

チイに関しては全面の面積が狭いから蛇行運転何てされたら狙いにくくてしかたがない。

 

「……まあ仕方ないか。売れ残りの戦車だしな」

 

『売れ残りだからな。3突や四号があっただけでも良しとしようや』

 

「そうだな」

 

『さてお披露目しようぜ。大戦最強の重戦車をよ』

 

「ああ、行こうか」

 

残りは下り坂。一気に下る。

 

その豪快なエンジン音に皆が気付き手を止める。

 

校庭に出たとき総士がキューポラから頭を出す。

 

「真姫!誘導頼む!」

 

「オッケー!」

 

通信機越しに総士の指示を聞きながらゆっくりとティーガーllを列に並べる。

 

「ふぅ…」

 

「おう、お疲れさん」

 

「お前もな総士」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

戦車から飛び降り、生徒会長に報告する。

 

 

「ティーガーll、回収完了だ」

 

「お疲れ~」

 

相変わらず干し芋を食べながら返事をする生徒会長に苦笑しつつティーガーを見る。

 

そこには掃除していた事を忘れ、まじまじとティーガーを見つめる少女達がいた。

 

「悠希君、あの戦車って……」

 

「ん?みほか。ああそうだ。()()()()()()()l()l()だよ……」

 

こう言って伝わるのはみほやまほ、そしてしほさん位だろう。

 

そして、お互いに()()()()()()()()()

 

「どうした?悠希」

 

「いや、何でもない」

 

急に暗くなった事を不思議に思った総士が聞いてきたがごまかす。

 

「あ、あの!出雲悠希さんですよね?」

 

「む?」

 

そんな悠希にはなしかけてくる一人の少女。

 

「君は?」

 

「秋山優香里さん。一緒に戦車を探してたんだ」

 

「ありがとうみほ。いかにも自分が出雲悠希だが、何か用かな?秋山さん」

 

「あのティーガーllについて一つお聞きしたい事がありまして。よろしいでしょうか?」

 

「ああ、かまわないが?何が聞きたい?」

 

「えっと、あのティーガーll()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その質問に俺とみほが固まった。

 

「あの……出雲殿?」

 

「秋山、そのことは絶対に誰にも言うなよ」

 

「え」

 

「いいな」

 

「はい」

 

有無を言わさず、とはこの事だろう。

 

(まさか気付くか……)

 

とは言え内心、悠希は焦っていた。

バレるかもしれないという焦りだ。

 

「あ、秋山さんみんな待ってるから戻ろう?ね?」

 

「え、あ、西住殿!?」

 

みほのフォローにより秋山は四号戦車の方へと戻っていく。

 

「ふう……ひとまずは安「は~るき君?」心?」

 

肩に手を置かれた。

しまった。こいつの存在を忘れていた。

 

ミリタリーマニアのこいつが今の秋山の話を聞いて気付かないはずがない。

 

「ちょっっっっっっと後でお話があるんだけど、いいかな?」

 

「……Дa(ダー)」

 

思わずロシア語で返事をしてしまった俺は悪くない、と思う。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

掃除が終わり皆が帰った後

 

「んじゃ、聞かせてもらおうか。あのティーガーllについて」

 

「もう隠すつもりはない。何でも聞いてくれ」

 

総士と1on1での話し合いとなった。

 

「とは言え、おれも秋山の話でやっと合点がいったんだがな」

 

「やっぱりお前も気付いていたのか……」

 

「気付く、というよりは違和感だったがな。さて単刀直入に聞くぜ。この戦車()()()()()()()()l()l()()()()()()()

 

「……その通りだ。まあ10.5cm砲を積んでいる時点でただのティーガーllではないが…」

 

「それもそうだな…」

 

「総士、カール白臼砲をしっているか?」

 

「あたりまえだ、戦車道では使っているとこは申請がめんどいからほとんど使ってるとこは見たことがない」

 

「その申請の事もしっているか?」

 

「ああ、まずカールを戦車扱いにすれば使えるようになる。まずカールに屋根取り付けて戦車扱いにしたら後の製作年月は満たしているから…………あん?待てよ……()()()()()()()

 

「そうだよ総士。こいつはティーガーllであってティーガーllではない。姿容姿はそっくりだが、細かいところは違う」

 

「………なるほど、ドイツの大戦中にEシリーズ計画重戦車の中にティーガーllによく似た戦車になる予定の奴があったな。『E75』重戦車。それがこの戦車の本当の姿か」

 

「正解だ総士。けどEシリーズはE100の履帯を除き車体すら完成していない。証言にあるティーガーllに似せればいい」

 

「なるほどな。だから連盟には『ティーガーll 既存戦車の再武装』という名目で許可が降りた訳だ」

 

「ああ」

 

納得が言ったのか総士がまじまじとティーガーを見つめる。

 

「しかし、この戦車本当にどこにあったんだ?」

 

「……出雲晴夏、しっているか?」

 

「ん?しってるぜ。西住しほの懐刀と言われてプロの戦車道まで登り詰めた才女。使用戦車はティーガーll。戦車道の試合中事故で亡くなったって……おい待て、悠希お前まさか……」

 

「察しがいいな総士。俺はその出雲晴夏の息子、そしてこのティーガーllは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母さんの遺品だ」

 

 

 




後書きと言う名の近状報告

どうも。センチュリオンアクションXでございます。

1ヶ月以上の放置……誠に申し訳ない。

この小説、実はスマホ投稿なんですよね。

まあ何があったかと言いますと。

簡単に言ったらスマホ、ぶっ壊れました。はい。

いや、前からおかしかったんです。
40%位充電残ってるのに勝手に電源切れて電源つけ直したら0%になってたり。

変えに行こうかと思ったら大学の合格発表だの車校の入学準備だの文化祭だの行事がつめっつめで……

やっとこさスマホ変えて投稿しました。誠に申し訳ない。

それではまた次回。よろしくお願いします。


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