スカイガールズハイ (3×41)
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プロローグ①

秋の夕暮れ、街は人々の雑踏で埋め尽くされていた。

買い物をする人間、岐路につく人間、ほとんどは岐路に着く人間だろう。

ビル郡の間を歩いている人間、ジョン=ワトランはそれらの人間とはまた別のタイプだった。

このSD研究都市はソニックダイバーの研究開発を進める企業群が世界から集中する都市で、

ダイバー養成アカデミーの近隣に位置していた。

世界最先端の研究を進める企業群は同時に企業テロやさまざまな事件を誘発するものであり、

そのための対処機関が設置されていた。

ジョン=ワトランはそのSCBI、ソニックダイバーシティ、ブラウオブインベスティゲーション、の

AS機動1課に所属するイギリス出身の部隊員だった。

もともとイギリスのAS、アーマードスーツ、特殊部隊に所属していたが、

その腕を買われて日本のSCBIに移籍してきていた。

SD研究都市にはイギリスの研究企業群も入っており、その防衛は世界各国の共通の課題だった。

 

ワトランは街頭のコンビニに入ると、新聞とサンドイッチとコーヒーを購入し、

支払いを済ませてコンビニを出る。

そしてビニール袋を持って人の波をかきわけるように歩いて、

研究都市の中央部のビルに向かうと、

そのビルの自動ドアを開けてビルの中にはいっていった。

 

AS機動1課の区画は巨大なビルの3フロアを占める。

世界各国から最精鋭を集め最新の機器を与えられた機動1課は待遇までがずいぶんとよかった。

ワトランはエレベーターから出ると少し歩いて広い部屋にはいった。

広い部屋には一番奥の巨大モニターの手前にソファーが並べられそれにはさまれるようにテーブルが置かれていた。

 

そのソファーにそれぞれ座っている二人の人間がワトランに声をかけた。

 

「おうワトラン。今日は夜勤だったか。精が出るな」

「ワトランさんおつかれっすー。今日は私も夜勤っすよー」

 

最初にワトランに声をかけた男はフェイルというスキンヘッドの巨漢で、AS機動にも優れるが情報官としても有能だった。

もう一人の女性は澪田唯吹(みおだいぶき)という少女でパンクロッカーのような奇怪な格好をしている、

絶対音感をはじめさまざまな特殊技能を持つ彼女は高度な情報分析能力を買われてAS機動1課に配属された、

幼少のころからパンクロックに触れ自分でも作曲からライブまでやっているらしく、彼女のざっくばらんとした口調とエキセントリックな格好はおそらくそのあたりからきているのだろう。

 

「ワトランさん私みたいないたいけな少女と一緒に一夜をともにできてうれしいっすかー?キャー!興奮するっすー!」

 

ワトランはコンビニで買った荷物をテーブルに置くとソファに座り込んだ。

 

「あいかわらずやかましいやつだな。イブキ、お前と過ごすくらいなら、そうだな」

ワトランは少し考えて続ける。

「まだアルパカと一緒にいたほうがマシだ。騒がしくない分作業に集中できる」

 

唯吹は大げさに両手で頬を押さえていった。

「ガーン!ワトランさんひどいっすよー。いっちゃなんですけど、私のライブのファンが今の話聞いたらワトランさん刺し殺されちゃいますよ」

フフーンと腕を組んで唯吹が言う。

どことなく鼻が伸びているかのような様子だ。

 

「やれるもんならやってみろ。イギリスDATの隊員を刺し殺せるやつがいるなら逆にスカウトしてやりたいよ」

ワトランはため息をつくようにフゥと息を吐き出すと、両手で新聞を広げた。

 

「ハハハ、違いないな」

フェイルが口をあけて笑って唯吹に聞いた。

「そういえばイブキのロックバンド、だったか?は、えらく盛況らしいな。もしかしたらワトランをやれる逸材なんてのも混じってたりしてな」

唯吹が身を乗り出すように言った。

「そーっす!日本でも5本の指に入るパンクロックバンドっすよ!ジェイルロックなんて雑誌では新星出現かとまで言われてるんっすから!ワトランさんもフェイルさんもパンクを聞くべきっすよ!」

「わるいが俺はクラシックしか聞かん」

新聞を読みながらワトランがつぶやくように言った。

実際はクラシック以外にもそこそこ聞くことはあった。だがもしそれを話すとそこからイブキが話を広げそうだったので黙っておく。

「いやーもったいないっすよー。私たちの曲を聴いたらワトランさん」

イブキがワトランのほうに人差し指を向ける。

「あなたのハートもロックされちゃうっすよ!」

そういってバーンと人差し指をはねさせる。

「激しくうざいな。フェイル、何か気になるニュースはあったか?」

流されてイブキはげんなりしたようだがいつものことである。実際のところイブキは人気だというバンドでも美人で通っており、そのポーズもさまになってはいたのだが。

ワトランに聞かれてフェイルが手元の端末を操作する。

「そうだな、最近フランス区画のバイオロジス社が第三世代SDのコアリアクターの開発に着手したらしいな、三千子がそちらに警戒を割くといっていた。」

フェイルの言う三千子とは機動1課のトップである、以前は中東で傭兵として戦っていたこともあるらしいがその腕を買われてSCBIにスカウトされたということだった。AS乗りで女性とはそれだけで稀有だったが、その腕はワトランやフェイルを遥かに上回った。

「その分ほかが手薄になるからな、しばらく増員もかけるそうだ」

「そうか、ありがとう」

ワトランは礼を言うと、新聞の記事を読みながら考えに沈んだ。

SD、ソニックダイバー、インドのナノマシンの権威である博士の皮膜装甲理論と、日本の外骨格工学の天才博士が作り上げた生体外骨格兵器である。

もともとは災害救助などを想定されて設計されたということらしかったが、

それなら皮膜装甲やコアリアクターによる空間エネルギー装甲が必要になるとは思えなかった。

そしてソニックダイバーの兵器的な優位性はすぐさま浸透し、世界各国が競ってソニックダイバーの研究、開発に着手したのだった。

第一世代は人体のまわりを大きく取り囲む外骨格の風貌であったが、

軽量化を果たした第二世代からはマッシブな全身鎧のように頭以外の体を包み、それで航空機動を含めた高速機動や、

仮想空間からの兵装転送技術により、より兵器としての側面を強化していった。

また、これがソニックダイバーの唯一といっていい弱点だったが、SDを稼動させることができる人間はかなり限定されていた。

SDのコアはどういうわけかほとんど女性にしか同調せず、その上女性の中でもごく一握りの人間しか使うことができなかった。

しかしながらSDが軍事的に圧倒的な優位性があるのは事実であり、各国が競って人員の確保と育成を進めているのが現状だった。

「そういえばイザナギさんがいないようだが」

新聞から顔を上げてワトランがたずねた。

「イザナギさんなら兵器ドックだと思うっすよ。最近新しくアルバニが3機投入されましたし」と、イブキ。

「ああ、そっちを見てるのか。じゃぁ俺もそっちを見てくるかな」ワトランが新聞をたたみながら言った。

「あ!じゃぁ私もいっていいっすか!?」イブキが立ち上がる。

フェイルがイブキに言った。

「お前は学校の宿題でもやってたほうがいいんじゃないか?」

軽く笑いながらフェイルに言われてイブキは腕を組んで

「ふふーん、私の記憶力をなめてもらっちゃ困るっす。だいたいのことは一度見たら忘れないっすよ~」

「ううむ、無駄に高スペックなやつだな」フェイルがうなりながら言った。

 

そのとき、広い作戦室に放送音声が流れた。

 

『AS機動1課のイザナギだ。研究都市の第5区画で高度問題発生。総員兵器ドッグに急げ!』

 

作戦室でその放送を聞いていたワトラン、フェイル、イブキは急いで兵器ドックに向かった。

 

 

_______AS機動課ビル内兵器ドッグ

 

 

巨大なSCBIビル内の地下には兵器ドッグが置かれている。

兵器ドッグは広く、AS、アーマードスーツや各種兵装、自律思考戦車アルバニのドックもかねていた。

 

その広いドッグのハッチがプシュっと音をたてて開くと、ワトランたちが入室してくる。

 

『いやーワトランくんこんなときに夜勤だなんてついてないねー。まぁひとつよろしく』

自律思考戦車アルバニ1号がワトランに声をかける。

「お前らは気楽でいいな。まぁせいぜいアシストを頼むぞ」

いってワトランが右こぶしでゴンっとアルバニの車体をたたいた。

 

自律思考戦車アルバニは人工知能が搭載された戦車で4本の足と2本の銃機関銃が搭載された手を持つ。

また戦車本体には戦車砲が搭載されており、背部にとりつけられたポットの両サイドからは電磁アンカーを射出することもできる。

 

「きたか、ワトラン。さっそくだがASを装着してエレベーターに乗れ。内容は追って説明する」

すでに耐衝撃スーツに身を包んだイザナギ三千子がワトランに言った。

三千子は175cmと長身で髪はショートに切りそろえ、両目には鋭い意思がこもった眼光をたたえている。

「はいはいはーい。私はどうするっすかー?」

イブキが気楽な調子で尋ねる。

「澪田は管制ASで出ろ。急げ!」

言われてイブキが了解と右手を上げて敬礼のポーズをすると、耐衝撃スーツを手にとって設置されたASのほうへ走った。

 

ワトランも耐衝撃スーツを着て、胸部の開いたASに向かう。

2,5mのフルアーマーのアーマードスーツに身を沈めると、ハッチを閉じる。

すると目の前に画面が現れ、リアクターを機動、各種センサー、駆動系を立ち上げ始める。

 

アーマードスーツは全身装甲のパワードスーツで、両腕に強力な重機関銃を搭載している。

また背部のバーニアによる瞬間加速も重宝する場合が少なくない。

この装甲を打ち抜くことは用意ではなく、機動性やすべての地形で有効な汎用性ともに高性能の装備である。

 

ワトランのアーマードスーツが機動し、歩いてエレベーターに向かっていると、

三千子やイブキのアーマードスーツも同じようにエレベーターに向かっているのがわかった。

イブキのアーマードスーツは背部に円盤状のレーダーを装備しており、機動性に劣るものの、電子制御に特化した性能も持つ。

三千子のASはワトランと同じパワータイプで高機動のものだった。

フェイルのASと計4機が巨大なエレベーターに乗り込むと、エレベーターが稼動し上昇を始める。

 

『今から屋上の輸送機で第五区画のエベロン社に向かう』

三千子が通信で伝える。

『エベロンってドイツのエベロン社ですか?あそこのオートマターが突破されるとはどんな手をつかったんです?』

ワトランがたずねる。

『わたしなら電子制御でオートマターを全部クラックするっすかねー』

イブキが口を挟んだ。本気で言っているのか冗談かはわからない。

 

AS各機に三千子のASから映像データが送られてきた。

『これがエベロンのビル前の監視映像だ』

 

ワトランが映像を見ると、エベロン社前の広い庭の前に一台の大きいトレーラーが止まると、

中から2機のアーマードスーツが出てきた。

 

『なっ・・・』

ワトランが言葉を詰まらせる。

『やっこさんASを出してきたんですか?オートマターじゃ歯が立たないわけだ』

言いながら映像を見る。

 

玄関に出てきた6機の無人警備ロボ、オートマターがその二機のASに機銃を掃射した。

オートマターから高速で吐き出された弾丸は、しかしASの分厚い装甲にはばまれて地面に散らばった。

次に二機のASが計4機の重機関銃を搭載した腕を掲げると、次の瞬間4つの重厚から鉄甲弾が掃射され、

嵐のような弾丸の掃射が6機のオートマターを粉々に引き裂いた。

 

『ひえー、オートマターでよかったっすねー。これが人間だったらえらいことっすよ』

通信でイブキがつぶやくようにいった。

もしこれがオートマターではなく人間だったら、まさしくミンチにされていたことだろう。あるいは人質にされていたかもしれない。

三千子の声が通信ではいる。

『武装グループに人質はとられなかった。しかし連中はオベロン社ないでおそらく研究データ、および機材の奪取をしていると思われる』

上昇するエレベーター内で三千子が続ける。

『われわれは輸送機でエベロン上空に向かい、ASのフォーマンセルでエベロン社の武装グループを強襲する。敵は重武装でAS以外にも何を持ち込んでいるかわからない。十分に注意しろ』

 

エレベーターがSCBIビルの最上階に到着する。

4機のASがエレベーターから出ると、暗い屋上のヘリポートに一機の輸送機が三千子たちを待っていた。

両翼に可変プロペラをつけた輸送機RB-2の後部が開き、4機のASを収容する。

『ヒョーッ!緊張するっすねー!』

管制ASのイブキが通信を入れる。

フェイルが軽い口調で舌をかむなよと通信を返した。

RB-2のパイロットがASの収容を確認すると、

可変プロペラがうなりをあげて回転しはじめ、

4機のASと2機の自律思考戦車を乗せた輸送機は浮遊すると、すぐ上昇し研究都市の暗い空を飛んだ。

 

 

 





な、なんだこのとってつけたようなラブコメ要素は・・・


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プロローグ②

暗いビル群の上空を両翼プロペラの輸送機が疾走する。

輸送機の眼下では高く伸びるビル群が高速で後方へ過ぎ去っていく。

飛行する輸送機は遠方のひときわ大きなビルへ向かった。

『RB-2がエベロン社ビルとすれ違いざまに電磁アンカーでエントリーする。準備はいいか?』

ASから三千子がほかの三人に通信する。

『準備オーケーです』とワトラン。

『いつでもかまわんぞ』とフェイル。

『わたしもオッケーっすよー』とイブキ。

 

輸送機がエベロン社ビルと交差しようとする。

 

『イブキ、エベロン社内部をレーダーで捜索できるか?』

三千子がイブキに尋ねる。

 

『了解っすー』

イブキのAS内で各種電子兵装が起動する。

イブキの目の前に膨大な情報が表示され、両手をマニピュレーターモードにして高速で操作し続ける。

イブキはその膨大な情報をすべて確認し、脊髄反射的に両手の指を操作した。

 

『出たっすよー。エベロン社の5FにASが三機、玄関エントランスに有人ASが二機オートマターを牽制してるっす。

あとは玄関の後ろと5Fの中央部に高度ジャミングがかかってるっすね』

 

『どこかからASを強奪してきたんだろうな。ならまだあるかもしれん』とワトラン。

 

『私はエントランスの有人ASをやる、ワトラン、フェイル、イブキは5FのASを制圧しろ』

 

フェイルが少し驚いたように通信した。

『おいおい三千子。一人でAS二機をやる気か?ずいぶんとやる気だな』

だがフェイルは手を貸そうかなどとはたずねなかった。

三千子ならまぁやれるだろうという判断である。

 

『ではカウントする。4,3,2・・・』

 

三千子がカウントダウンを始める。

4機のASと2機の自律思考戦車が輸送機の後ろの位置取り、

輸送機の後ろのハッチが開く。

 

『1・・・』

 

輸送機がエベロン社ビルとすれ違う。

 

『ゴー!』

 

4機のASが後ろ向きに輸送機から飛び降りた。

 

黒い空からエベロン社の巨大なビルに向かって滑空する。

 

4機のASは腕のアンカーケーブルを射出、エベロン社のビルにアンカーを打ち込むと、

それを巻き取りつつ下方に弧を描いて、ビル5階の窓に向かって加速した。

 

それぞれのASが逆の腕の機関銃を窓に向かって掃射しガラスを破壊し、

そこからビル内部に突入した。

 

他方三千子は弧を描きながら1Fのエントランスに突入した。

 

5Fのワトランたちがビル内部に突入すると、

 

広い部屋の中に2機のASが確認できた。

 

『5FにはASが3機っす。奥のジャミング区画の解析をはじめるっす!』

イブキがエレクトロニクスを立ち上げ背部の円盤状のレーダーから周囲の捜索を開始する。

 

ワトランのASはすぐに立ち上がると目の前のASに重機関銃を掃射しながら壁に走る。

ワトランのASの右腕から高速で吐き出される数十発の鉄甲弾が敵ASにふりそそぎ装甲を大きくへこませる。

敵のASが反撃してくる。こちらに疾走する鉄甲弾がワトランが隠れた壁をやすやすと引き裂いた。

 

1Fのエントランスに突撃した三千子はすぐ2機の敵ASを確認すると、

片方が持っていた大口径ガトリングを機銃掃射で破壊すると、

そのまま背部のオーバードブーストを起動、

背部からのバーニア噴射で高速で加速しつつもういったいのASに突進した。

 

三千子のASが敵ASに突撃するとそのまま三千子のASがフワッと浮いて

敵ASの右腕を両足ではさみ腕の先を両腕でつかむと、

三千子のASが外骨格の人工筋肉をうならせ体を強力にそらせた。

 

強力な装甲を持つASにも関節にまで装甲することはできない。

敵ASの右腕がメシメシと音を立てて肩からべきんと破壊された。

 

その瞬間、三千子はASの左腕を敵ASの破壊された肩口に向けるとそこから

敵AS内部に重機関銃を掃射した。高速の鉄甲弾が敵ASのベトロニクスをズタズタに引き裂き、起動を停止させる。

 

もう一体の有人敵ASはすでに外の広い庭に出ていた。

そこからエントランス内部の三千子に機銃を掃射する。

 

三千子はすでに破壊した敵ASを目の前に担ぐとオーバードブーストを起動。

エントランスから飛び出して敵ASに加速する。

 

敵ASが両腕を掲げて疾走する三千子のASを狙ったところで、

三千子は両足の人工筋肉をメシメシとうならせて天高くジャンプした。

 

あたりに黒い空が広がり、くるりと宙返りすると眼下に反応が遅れた敵ASがゆっくりと近づいてくる。

 

敵ASの背後に着地した三千子は敵ASの胴部を両腕でつかむと、

そのまま下方にオーバードブーストを起動し、

敵ASごと天高く舞った。

 

再び二体のASが黒い闇夜を滞空する。

三千子は敵ASを抱えたまま頭を逆にし、

そのまま高速で地面に突っ込んだ。

 

上空から高速で二体のASが地面に激突した。

先に敵ASが地面に激突し、

三千子は敵ASに固定した両腕をズリズリ摩擦して落下のgを減殺し、

地面スレスレで停止した。

 

ASは横の衝撃には比較的強いが縦の衝撃には弱い。

まともに頭から地面に激突した敵ASの搭乗者はよくて気絶しているだろう。

 

 

 

5Fで銃撃戦をしていたワトランたちのところに

窓からアンカーケーブルで上ってきた三千子のASが加わった。

 

『うー、もう下の2機をやったのか。はやいねぇ』

と、フェイルが通信する。

 

『今5F中央部のサーチをしてるっすよー。どうも連中エベロンのコアデータをクラックしてどこかに転送しようとしてるっす!』

 

『くそっ、あまり時間がないな』いって三千子も目の前の敵ASに機銃を掃射する。

装甲がへこんだ敵ASの動きが鈍くなってきた。

 

と、そのときエベロン社の1Fから装甲車が飛び出し、エベロン社の玄関を突き破って

走り去った。

 

『ちっ、機材を持って逃げたな!!ワトラン!!あちらを追え!!アルバニもそちらに回れ!!』

 

『了解』

 

ワトランは短く言うと5Fの窓に走りそこから、アンカーケーブルで勢いをころしながら

1階に下りると、

背部のオーバードブーストを起動、

ジェット噴射で加速しながら逃走する装甲車を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

装甲車は一体のASを背部のコンテナの上に乗せ、

研究都市郊外の道路を走っていた。

海沿いの無人の道路を一台の装甲車がすさまじいスピードで走っていく。

 

そこにオーバードブーストを起動して道路を高速で疾走するワトランのASと2機の自律思考戦車アルバニが追いついてきた。

 

装甲車のタイヤはご丁寧にまわりを装甲でシールドされている。

 

ASを疾走させながらワトランがどうするかと逡巡していると、

装甲車のコンテナの上のASが大口径ガトリングを掃射してきた。

 

『くっ』

 

ワトランは小さくうめくとASのサイドバーニアを吹かせてジグザグ走行し

ガトリングの掃射を回避する。

 

疾走するガトリングの銃弾がワトランのASを通り抜け、

その後ろで走るアルバニの装甲をズタズタに引き裂いた。

 

『うわーやられたー』

 

アルバニが断末魔をあげて機能を停止する。

 

ワトランはさらに回避行動でガトリングの大口径の弾丸を交わし、

空中にジャンプをして、コンテナの上の敵ASに機銃を掃射し、さらに装甲車を追った。

 

疾走する装甲車とASと自律思考戦車は

トンネルに入った。

敵ASのガトリングがワトランの左の道路を切り裂いた。

 

ワトランはASをトンネルの壁にそって疾走させ、

飛んできたガトリングの弾丸を地面に着地してさらにかわす。

 

トンネルを出たとき、ガトリングが熱されすぎたのか玉切れか敵ASが左腕の重機関銃を掃射してきた。

 

『突破する!援護しろ!!』

ワトランはアルバニに通信すると、

背部のオーバードブーストを最大出力で加速した、

『りょうかいー』

アルバニがいって、両手の機関銃をコンテナの上の敵ASに掃射する。

 

ワトランはさらに加速し、装甲車に接近すると、

ASの両足の人工筋肉をうならせてそのまま上空へ飛んだ。

 

浮遊感がワトランのASを包み眼下に走る装甲車が後ろに過ぎ去る。

 

装甲車の前に着地したワトランのASは、

装甲車のほうを向きASの両腕で装甲車をしたから持つと

 

『うおおおおおおおおあああああっ!!!』

 

うなって装甲車を慣性を利用しつつ持ち上げ

そのまま一本背負いの格好で投げ飛ばした。

 

装甲車は車体を逆さにして道路にうちつけられるとそのままこすれながら移動してから停止した。

 

『やるねーワトラン君』

アルバニがワトランのASの前で停止した。

『やったか・・・』

うめくようにワトランが言って、装甲車のほうを見ると、

装甲車のコンテナが開いて、

大口径ガトリングを持った2機のASと、エベロンの研究機材を持った1機のASが出てきた。

 

『なっ・・・』

ワトランが驚いたようにうめくと、

コンテナの上にいたASと別のAS二機がワトランのASの前に立ちふさがり、

研究機材を持った敵ASがオーバードブーストを起動し、海沿いの道路を走っていく。

 

ワトランの前には大口径ガトリングを構えた3機のAS。

その3機の敵ASのかまえるガトリングが回転しはじめた。

ワトランの目にはその大口径ガトリングの回転がひどくゆっくり見えた。

 

そのとき、

上空から黒い影が

ワトランと3機のASの間に高速で衝突した。

 

その人影のようなものは

落下の衝撃を両足と右手を地面につけて減殺しおえると、

3機の敵ASのほうに向けて左腕を突き出した。

 

次の瞬間3つのガトリングから弾丸が嵐のように吐き出された。

そのあまたの弾丸が人影に向かう。

 

しかし、その弾丸の嵐は人影を切り裂くことはなかった。

人影が掲げた左腕の前でその弾丸がすべて停止する。

そしてバラバラと弾丸が地面に落下していった。

 

それはソニックダイバーの空間シールドだった。

そらから降ってきた1機のSDは

次の瞬間1機の敵ASの前に加速し、

全身鎧のような機体の右腕をしたに振りかぶり敵ASを上空20mに打ち上げた。

 

次にSD背部の黒い巨大な剣を手に取ると、

体を回転させながらその隣のASを横文字に切り裂いた。

 

目の前5mにいた敵ASがソニックダイバーに向けてガトリングを掃射する。

 

黒いSDはその瞬間跳躍し、その敵ASの背後に着地すると、

背部のプラズマバーニアを起動、

一瞬で敵ASに向かって超加速しながら、

体を横に向けて肩甲骨の部分から敵ASに質量と全運動エネルギーをぶつけた。

 

高速の鉄山功で吹き飛ばされたASは、

道路から高速で海へ飛び出し、海面を高速で4、5回はねるとそのまま海に沈んだ。

 

最初に上空に打ち上げられたASが地面に衝突して轟音を上げた。

 

ソニックダイバーは腰部のハードポイントから

熱質量ライフルを抜くと、遥か遠方を走行するASに標準を定めて引き金を引いた。

 

ライフルから発射された赤い熱質量弾が夜の闇を裂いて疾走し、

オーバードブーストで道路を走るASを装甲ごと引き裂いた。

 

SDの搭乗者はワトランのASにかけよってワトランのASに左手を差し出した。

「イザナギにいわれてこっちに飛んだんだけど、危ないところだったね」

 

『ああ、助かったよ。名前を聞かせてもらってもいいか?』

 

左手を差し出したSD搭乗者の少女は小さく笑っていった。

 

「私はエリーゼ、エリーゼ・フォン・ディートリッヒだ。はやく後始末をすませよう、ジョン=ワトラン。まだ一杯やる時間はあるはずさ」



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