最強生物の力を宿した白兎 (タイルアルゴウ)
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プロローグ

僕、ベル・クラネルは小さい頃からある一人の海賊の夢を見るようになっていた。

 

その海賊は海賊団の船長で「百獣」「陸海空の生きとし生ける者の最強生物」「この世における最強生物」とまで呼ばれる存在だ。

 

僕はその海賊の存在に驚きを隠せなかった、その理由は海賊の風貌と規格外さだった。

 

その姿は鬼のような二本の大きな角に腰まで伸びる長いナマズ髭を蓄え、常人が見上げるほどの常人の数倍はある体躯をした筋骨隆々の大男で、左腕には髑髏と龍の鱗のような刺青に右腹部には大きな十字傷がある。

 

そして、四十回の死刑宣告を受けても、標高一万メートルの上空からの落下しても、千を超える拷問を受けてすらほぼ無傷で済み、鎖で首を吊られようとも鎖が千切れ、ギロチンにかけられようともその刃が砕け、串刺しにしようとも槍が折れてしまう。

 

誰にも傷つけられず、自分自身でも殺せない耐久力と生命力を持つ海賊。

 

更には偉大なる航路(グランドライン)の「新世界」と呼ばれる海に皇帝のように君臨している四人の大海賊「四皇」の一人でもある。その力と影響力は計り知れないほどだ。

 

そんな海賊にはある野望があった、それは最強の海賊団を作ると言う事。

 

僕はそれについて別の事に置き換えて考えてみた。

 

どういう風に置き換えたのかと言うと、自分が大好きで読んでいる英雄譚に置き換えた。

 

英雄には多くの仲間がいる、それは英雄の人望もあるだろうけどそこには強さもあったはずだ。

 

だから、人は英雄の後に続いていくと。

 

そういった考えに行き着いた僕はその海賊の野望を別の形で実現しようと考えた。

 

冒険者になって出会い求めることと最高で最強の派閥(ファミリア)を作ろうと。

 

あれから五年の間に色んな事が起きた、僕を育ててくれていたお爺ちゃんがモンスターに襲われて崖から転落死した。

 

その事に僕は三日間泣き続けた。まだ何も育ててもらった恩返しが出来ていなかったのに・・・。

 

それから三日が過ぎると僕は冒険者になるために村を出た。

 

オラリオに着くと、派閥(ファミリア)に所属しようと向かうのだが僕の見た目から見下す人が多く、まともに話すら聞いてくれない。

 

そんな時、ある一人の女神さまが現れる。

 

その女神さまの名前はヘスティア様、どうやらヘスティア様もファミリアに入ってくれる人を探していた為、利害一致で僕は【ヘスティア・ファミリア】最初の入団者となった。

 

僕と神様が最初に向かったのがある一軒の本屋だった、何でもここは神様の馴染みの店で最初の入団者はここで恩恵(ファルナ)を刻むと決めていたらしい。

 

そうして、流れ作業のように僕の背中に恩恵が刻まれて、【ステイタス】が表示される。

 

 

ベル・クラネル

 

level1

 

力EX 耐久EX 器用EX 敏捷EX 魔力I0

 

百獣S 覇気S 破砕A 耐異常S 拳打A 幸運A

 

この世における最強生物(カイドウ)

・力、耐久、器用、敏捷のアビリティを常時超高補正

最強(おもい)が続く限り効果持続

最強(おもい)の丈により効果向上

 

【覇気】

・三種の覇気を扱う事が出来る。

・武装色:体や武器に纏わせて攻撃力を上げる

・見聞色:周囲を感知する力

・覇王色:全てを威圧する力

 

海賊としての矜持(パイレーツ・プライド)

・自由を求めることで敏捷のアビリティを高補正

 

 

こうして、恩恵を受けた僕の物語は今始まる。




感想などいつでもお待ちしております。


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一話

【ヘスティア・ファミリア】の団員となった僕ベル・クラネルはギルドに行き、冒険者登録をしに行こうとすると神様がこう言って来る。

 

「気をつけて行って来るんだよ、ベル君。」

 

「はい、神様。」

 

神様の言葉に僕はそう言ってギルドにへと向かう。

 

ギルドに着いた僕は早速受付に行き、話しかける。

 

「あの冒険者登録をしたいんですけど・・・。」

 

僕がそう言うと、受付のハーフエルフの女性がこう言って来る。

 

「畏まりました、それでは此方の用紙に名前・年齢・所属ファミリアをご記載ください。」

 

女性は紙とペンを取り出しながらそう言って来る。

 

僕はそれに従って紙に書いて提出する。

 

「ベル・クラネル氏 14歳 【ヘスティア・ファミリア】ですね。聞いたことのないファミリアですが、新興派閥(ファミリア)ですね。」

 

女性職員は僕の書いた紙を見ながら確認していく。

 

「はい、そうです。」

 

それに対して同意をすると、女性職員はこう言って来る。

 

「それでは、新人冒険者講習と言うものを実施しておりますので受講されますか?」

 

「はい、お願いします。」

 

僕はその申し出を受け入れ、その講習を受けるのだった。

 

二時間後、講習を受け終えた僕は頭がパンクしそうになっていた。

 

すると、女性がこう言って来る。

 

「クラネル氏はダンジョンの知識が足りないようなのでもう少し講習を受けられたほうがいいですね。」

 

「わ、分かりました。」

 

精神的に疲労している僕はそう返事を返すのが限界だった。

 

すると、そんな僕に女性職員はこう言ってくる。

 

「それでは、自己紹介をさせていただきます。私はこの度クラネル氏の専属アドバイザーを請け負うことになりましたエイナ・チュールと申します。」

 

女性職員もといエイナさんが頭を下げながらそう言って来る。

 

「僕はベル・クラネルと言います。こちらこそよろしくお願いします、エイナさん。」

 

僕も頭を下げながらエイナさんにそう言った。

 

 

 

 

エイナさんとの会話を終えた後、僕はギルドで貸し出されている武器の中で小人族(パルゥム)用の大きめのメイスを借りてダンジョンに向かうのだった。

 

ダンジョンに入ると、そこは地上とは違う緊張感が充満していた。

 

僕はメイスを片手に一階層の中を歩いていくと、ゴブリンとコボルトが密集していて通るにはあの群れを全滅させなければならない。

 

そう考えた僕はメイスを構えてモンスターの群れにへと突っ込んでいき、横薙ぎに振るうと風圧だけでモンスターの群れを一掃できたのだがメイスが持ち手からボッキリと折れてしまった、しかも持ち手の方も力を軽く入れただけで壊れてしまっている。

 

「これ、弁償なのかな?」

 

そう呟きながら僕はモンスターの魔石を集めるのだった。

 

魔石を集め終わると、僕は物足りなさを感じているためもう少しだけダンジョンに潜る事にした。

 

襲い掛かってくるモンスターに対しては蹴りで対応するのだが、威力が強すぎて魔石ごと砕いてしまった。

 

色んな事があったけど、まぁいいかという気持ちで地上に戻って換金を済ませた後にエイナさんに報告をする(まぁ、武器が振っただけで折れたって事はちょっと誤魔化したけど)。

 

武器の破損についてはよくある事なので不問ということになっているらしい。

 

換金と報告を終えると、僕は神様の書いてくれた地図を元に本拠(ホーム)に帰っていくのだった。

 

 

 

 

 

僕達【ヘスティア・ファミリア】の本拠は北西と西のメインストリートに挟まれた区画にある廃教会の隠し部屋である。

 

「ただいま戻りました、神様。」

 

そう言って隠し部屋の扉を開くと、神様がこう言って来る。

 

「おかえり、ベル君!!」

 

笑顔で迎えてくれる神様に感謝しながら僕は今日の事を話した。

 

神様は僕のダンジョンでの話を聞いてこう言って来る。

 

「ベル君、君のステイタスだとギルドが持っている武器では運ぶだけならまだしも使おうとすれば一秒も持たないだろうね。」

 

神様は僕が使ったメイスの話を聞いてはっきりとそう言った。

 

それに対して僕は神様にこう言った。

 

「でも、神様僕のステイタスは規格外ですけど、それでもlevel1ってだけじゃないんですか?」

 

神様は僕の言葉を聞いてこう言ってくる。

 

「ベル君、確かにそうは言えるけど君の場合はそうも言ってられない気がするんだ。」

 

「え?」

 

神様の言葉に僕はキョトンしてしまう。

 

「どういう事ですか?」

 

神様の言葉に対して疑問しかない僕はそう問いかける。

 

「うん、君の【ステイタス】にあるスキル【この世における最強生物(カイドウ)】には何らかの意志というものが働いていると言ったほうがいいのかな、そんなものを感じるんだ。」

 

「・・・。」

 

神様の言葉を受けて僕は自分の右手に視線を向ける。

 

何らかの意志、それは僕の意志とは別のものなのかな?

 

そう考え込んでいると、神様がこう言って来る。

 

「ベル君、今は考えていてもしょうがないぜ。だから、今日は休むべきだぜ。」

 

そう言って来る神様に対して僕はそれもそうだと思い、今日はもう休む事にした。




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二話

読者の皆様、お久しぶりです。

約一か月半ぐらいでしょうか、投稿出来ずにすみません。

大学の事で色々ありまして、これからは出来る限り投稿していきたいと思います。

カイドウ要素を追加するためタグに「オリ獣人」というものを追加しました。

今後とも作品ともどもよろしくお願いいたします!!


僕は眠りについたハズなのに真っ黒い空間にいた。

 

「ここ、どこなんだろ?」

 

キョロキョロと周囲を見渡していると、一滴の水が降って来た。

 

「これって酒かな?」

 

降って来た水滴の匂いを嗅ぐと、それが酒である事が分かった。

 

「でも、何で上から酒が降って来たんだろ?」

 

そう言いながら僕は上に視線を向けると、鬼のような二本の大きな角に腰まで伸びる長いナマズ髭を蓄え、常人が見上げるほどの常人の数倍はある体躯をした筋骨隆々で、左腕には髑髏と龍の鱗のような刺青に右腹部には大きな十字傷がある大男が巨大な瓢箪の中にあると思われる酒をグビグビと飲んでいた。

 

「・・・!!」

 

僕はその光景を見て動揺を隠せなかった、目の前に夢の中だけの存在だった海賊(カイドウ)がいるのだから。

 

「ん? なんだこのガキは?」

 

カイドウは僕の存在に気づいて酒を飲むのを止めてそう言って来る。

 

「ぼ、僕の名前はベル・クラネルと言います。あなたは四皇・百獣のカイドウさんですよね?」

 

自己紹介と共に僕はそう問いかける。

 

「ほう、お前みてぇなガキでも俺の事を知ってんのか。」

 

そう言ってカイドウは再び酒を飲み始める。

 

「はい、僕あなたの事をずっと夢の中で見ていました。」

 

「夢、だと?」

 

僕の言葉に反応をして、カイドウは酒を飲むのを僕の方を見てくる。

 

「何でテメェの夢ん中に俺が出てくんだよ。」

 

「それは僕にも分かりません。でも、カイドウさんの夢を見ている内に僕はあなたに憧れました。」

 

カイドウの問いかけに僕はそう答え、思っていた事を言った。

 

「憧れだぁ、何でそんなモンを抱く?」

 

「それは・・・、百獣のカイドウという海賊の全てとは言いませんが、物語の英雄みたいだったからです。」

 

そう言った後も僕は言葉を紡いでいく。

 

「それでですね、僕もカイドウさんの野望を別の形で実現させようと思いまして・・・。」

 

「・・・。」

 

そう言っている中でカイドウさんは無言のまま僕を見てくる。

 

すると、その時カイドウさんが口を開いた。

 

「で、お前は俺の野望をどうやって実現させるつもりだよ。」

 

「それは・・・。」

 

カイドウさんの問いかけに言葉を詰まらせる僕。

 

「出来るかも分からねぇ事を言ってんじゃねぇぞ、ガキがぁ!!」

 

それに対してカイドウさんはそう叫びながら僕に金棒を振るってきた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

金棒の一撃をまともに喰らってしまった僕は宙を舞った後、頭から地面にへと叩きつけられた。

 

「ゴハァッ!!」

 

頭から地面に叩きつけられた僕は激痛が走る。

 

この程度で済んだのは恐らく【この世における最強生物(カイドウ)】のおかげだろう、でなきゃ今頃血と肉の塊になってたと思う。

 

「ほぅ、俺の一撃をまともに受けてそれだけで済むなんざ中々丈夫じゃねぇか。」

 

金棒を肩で担ぎながら僕の事を見下ろしてくるカイドウさん。

 

僕は立ち上がってカイドウさんにこう言った。

 

「確かに今の僕じゃあなたの野望(ゆめ)を叶えること出来ないでしょう・・・、僕は決めたんだ。」

 

「何を決めたってんだ?」

 

僕の言葉にそう問いかけてくるカイドウさん。

 

「僕の夢は出会いと英雄になる事なんです、その英雄には多くの仲間がいました。だから、あなたの野望と僕の夢を合わせたんです。」

 

「だからなんだってんだ、それで俺の野望が叶うとでも思ってんのか?」

 

そう言って来るカイドウさんに対して僕はこう言った。

 

「確かにそれが何だって思っちゃいますよね・・・。でも、僕も半端な覚悟でなんか言ったりなんかしない。」

 

ギロリとカイドウさんを睨み付けながら言葉を紡ぐ。

 

「男が一度決めたことから逃げたらそれはもう男じゃないでしょ。」

 

その言葉を聞いたカイドウさんは少し酒を飲み、こう言って来る。

 

「ウオロロロロロロ、確かに自分の言葉を曲げるのは男じゃねぇな。」

 

その言葉の後にこう言って来る。

 

「だったら、やってみろ。お前のやり方というのでな。」

 

「はい!」

 

その言葉に僕ははっきりと返事をした後、白い光に包まれていった。




感想・指摘などをお待ちしております。


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三話

あの不思議な空間でカイドウと邂逅を果たした僕は寝ている神様を起こさない様に着替えてダンジョンにへと向かった。

 

ダンジョンに向かっている途中で何らかの視線を感じ、その方向を見る。

 

その方向には摩天楼施設(バベル)があった。

 

頭を傾げながらバベルの方を見ていたが、僕は視線の事を忘れてダンジョンにへと向かうのだった。

 

 

 

バベルの最上階、そこはとある一柱の美神の私室(プライベートルーム)となっている。

 

その美神の名前はフレイヤ、オラリオに存在する派閥(ファミリア)の中でも唯一level7の冒険者が在籍する【フレイヤ・ファミリア】の主神である。

 

「あの子、いいわね。」

 

そう言った後、フレイヤは葡萄酒(ワイン)を口に含む。

 

「純粋で綺麗で透明な魂だけど皇帝の様な気高さを持っていながら獣の様な凶暴な色を持っているなんて不思議な子ね。」

 

そう言うフレイヤの言葉を聞いているのはただ一人、オラリオ唯一のlevel7にして【フレイヤ・ファミリア】首領である猪人(ボアズ)の武人・オッタル、二つ名は【猛者(おうじゃ)

 

「オッタル、あの子はどこに入っているの?」

 

「あの者の名はベル・クラネル、新興派閥【ヘスティア・ファミリア】唯一の団員です。」

 

己の主神に問われたことに淡々とした口調で答えるオッタル。

 

それを聞いたフレイヤは目を細めながらこう言った。

 

「そう、ヘスティアの眷属(こども)なのね。」

 

フレイヤは微笑を浮かべる。

 

その笑みが何を意味しているかはフレイヤにしか分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、僕はダンジョンにやって来て武器を持たずに一階層にへとやって来た。

 

何故、武器を持たずにダンジョンに潜ったのかというとちゃんとした理由があった。

 

それは今更過ぎる【この世における最強生物(カイドウ)】というスキルの再確認だ。

 

いくら魔力以外のアビリティがEXとなっていても、どこまで通用するのかを確かめていなかった。

 

だから、朝早くにやってきて検証というのだ。

 

早速目の前にゴブリンが群れで現れた瞬間、僕は拳を構えて襲い掛かった。

 

そこからは簡単だった、ゴブリンの頭は拳によって果物の様に潰れ、体は蹴りによって変な方向にへと折れ曲がる。

 

ゴブリンを全て倒した後、僕は魔石を回収しながらこう思った。

 

物足りない、と。

 

そう思った僕は二階層にへと続く階段にへと降りていき、スキルの確認をしようと思ったがエイナさんの講習で習った事を思い出す。

 

それは冒険者になったものが必ず耳にする言葉。

 

「冒険者は冒険をしてはいけない。」

 

その言葉は何とも矛盾しかない言葉だと聞いた最初は思った。

 

だが、その言葉の意味は安全なダンジョン探索を心がけましょうという意味を含んでいるのだそうだが、今はその言葉を無視することにした。

 

僕は二階層に降りたのだったが、一階層と変わり映えがしないため更に下の階層にへと降りていく。

 

そこで行き着いたのが六階層、ここには新人殺しと呼ばれるモンスター・ウォーシャドウというモンスターがいる。

 

異様に長い腕の先に三本のナイフの様に鋭利な指は備わっている全身黒一色の人型モンスターで、その実力は六階層のモンスターで随一だという。

 

だが、そんな事は僕には関係が一切なかった。

 

それはウォーシャドウがその指で攻撃を仕掛けてきても、僕はいとも簡単に躱す事が出来るし、受ける事になったとしても逆のその鋭利な指が逆方向に折れ曲がってしまうだけだからだ。

 

僕はその様子を見てこう思った。

 

このスキルは強すぎる、と。

 

しかし、このスキルとは常に向き合っていかなければならないという事がわかっている僕は一度魔石を換金するために地上にへと戻っていくのだった。

 



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四話

地上に戻ってくると、早速僕は換金所で集めた魔石を換金した後、僕はもう一度ダンジョンに潜るために屋台で腹ごしらえをする事にした。

 

「すみません、この肉の串焼きを三本と果実水をください。」

 

「あいよ。」

 

朝早くと言う事もあって焼きたての串焼きが果実水と共に出てきた。

 

それらを受け取った僕はギルドの待合のソファーに座って串焼きを食べ始める。

 

「{これ食べ終わったらもう一回ダンジョンに行こうかな。}」モグモグ

 

そう思いながら食べていると、続々と他の冒険者達がダンジョンにへと向かっていく。

 

その光景を見ながら僕はこう思った、速く一緒に潜る事が出来る仲間(ひと)が現れないかな、と。

 

現状では難しい事を考えながら最後の串焼きの肉を食べ終え、果実水を一気に飲み干すのだった。

 

「プハッ、よし行こう。」

 

口元を拭った後、空になった容器と串をゴミ箱に入れてダンジョンにへと向かうのだった。

 

 

 

ダンジョンに入った僕は敏捷のアビリティをフルに使って上層の最下層・十二階層まで降りてきた。

 

すると、そこでは他の冒険者がオーク、インプ、バットバット、シルバーバック、ハード・アーマード、インファントドラゴンなどの大量のモンスターに襲われていて、パーティは全滅してしまっていた。

 

凄惨な光景を目にしたと言うのに、僕の心は平常心を保っていた。

 

「{何でだろう、異様に落ち着いてるな~。}」

 

そう考えていると、モンスター達が僕の存在に気付いて襲い掛かってくる。

 

危機的状況なはずなのに何故か愉しんでいる僕がいる、何だか不思議な気分だ。

 

そう考えている間も迫ってくるモンスターの大群に目を向けると、全身に武装色の覇気を纏って思い切り地面を蹴って大群に突っ込んでいく。

 

まず小回りの利くインプと空中を動き回るバットバットを手刀で仕留め、オークとシルバーバックは貫手で身体を貫通させて直接魔石を抉り取り、ハード・アーマードは甲羅の上から拳で叩き潰し、インファントドラゴンは頭から踵落としで頭を砕いて倒した。

 

「ふぅ、こんなものかな。」

 

そう言いながら息を吐き、魔石を集めていくと、モンスター達が生まれてくる。

 

それに対して僕はうっすらと笑みを浮かべると、魔石の回収を中断して戦闘に入る。

 

後から襲ってきたモンスターの大群も難無く撃破した僕はその全ての魔石をバッグパックに詰め込むとこれ以上入らないと判断して地上に戻る事にした。

 

五階層まで戻ってくると、なんだか騒がしいと感じた僕は見聞色の覇気を発動させて周囲の状況を探ることにした。

 

すると、俺の後ろから巨大なモンスターが迫って来ている事を察知した。

 

そのモンスターの正体は・・・。

 

「ヴヴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

牛頭獣人でlevel2のモンスター・ミノタウロスだった。

 

雄たけびを上げながら迫って来るミノタウロスに対して僕は躊躇など一切なく武装色を纏った拳をミノタウロスの鳩尾の部分に抉り込ませた。

 

「ヴォッ!?」

 

いきなりの攻撃に驚くミノタウロスだが、僕は関係なく拳による連打を叩き込んでいく。

 

殴る度に伝わってくる軋む骨に撓む肉の感触が心地よくも感じた。

 

「ヴ・・・ヴォ・・・。」

 

何発も受けたミノタウロスは足元をぐらつかせて立っているのもやっとのようだ。

 

「これで終わりだ。」

 

最後に頭にかかと落としを喰らわせると、ミノタウロスは魔石とミノタウロスの角(ドロップアイテム)と化した。

 

「それにしても運がいいな、最後にミノタウロスの魔石と角が手に入るなんて。」

 

そう言いながら僕はベルトに角を挟み込み、魔石は何とかバッグパックに詰め込んだ。

 

すると、後ろから誰かが近づいて来るのを感じた僕は振り返りざまにバッグパックを背負いながら戦闘態勢に入る。

 

「あの、ミノタウロスを・・・見ませんでしたか?」

 

振り返ると、そこには長い金の髪に金色の眼で手に剣を持つ少女が僕にそう言いながら立っていた。



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五話

タグに「ベル性格変化」を追加しました。


「あの、ミノタウロスを・・・見ませんでしたか?」

 

そう言って来る少女に対して僕はこう言った。

 

「それなら僕が倒しちゃいましたよ。」

 

そう言いながら僕は魔石とドロップアイテム(ミノタウロスの角)を見せると、少女はこう言って来る。

 

「ありがとう、そしてごめんなさい。」

 

「どうして謝るんですか?」

 

いきなりの謝罪に僕はそう聞かずにはいられなかった。

 

すると、少女はこう言って来る。

 

「実はミノタウロスを上層に逃がしてしまったのは私達だから。」

 

それを聞いて僕は謝罪についての理由に納得した。

 

「謝罪の理由についてはわかりましたけど、気にしなくていいですよ。」

 

「どういう事、ですか?」

 

僕の言葉に対して少女は首を傾げながらそう聞いてくる。

 

「あなた達が逃がしてしまったのはしょうがないことですよ。何が起こるか分からないんですから、ダンジョン(ここ)は。それじゃあ、僕はこれで。」

 

その言葉を聞いて少女は戸惑うかのような顔をしている中、僕は魔石と角をバッグパックに入れてすぐに上層にへと上がっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

地上に戻ると、僕は集めた魔石を換金所にへと持っていくとそこにはエイナさんが立っていた。

 

「ベル君、今ダンジョンから戻ってきたの?」

 

「はい、今日もこんなに魔石を取ってきました。」

 

僕はそう言いながらバッグパックを広げる。

 

「ん?ベル君、この魔石と角ってミノタウロスのものだよね?」

 

バッグパックの中を見たエイナさんがそう聞いてくるのに対して僕はこう答える。

 

「はい、五階層に降りた時に出くわしたのでついでに倒しました。」

 

そう言った瞬間、エイナさんの雰囲気が変わった。

 

「ベル君、君は何やってるのか分かってるのかな?君の実力じゃまだ五階層は早いの、それにミノタウロスを倒したってlevel1じゃ不可能なの!!」

 

そう言って来るエイナさんに対して僕はこう言った。

 

「エイナさん、そんなの僕には関係無いんですよ。だって、死ねばただ天に召されるだけなんですから。」

 

僕はそう言った後、魔石を換金してギルドを出ていくのだった。

 

 

 

 

エイナSIDE

 

私、エイナ・チュールはある一人の冒険者の事が気掛かりである。

 

その冒険者の名前はベル・クラネル、ほんの一週間前にこのオラリオにやってきて新興派閥(ファミリア)【ヘスティア・ファミリア】の唯一の団員になった男の子。

 

見た目的にも冒険者には向いていない可愛い顔立ちをしているじゃなかった、雰囲気を持っている。

 

だからこそ、私は弟のようにも思っているベル君が死ぬなんてことにならないように厳しくダンジョンの厳しさを教えてきたと思っていた。

 

でも、ベル君は私の言う事を聞かずに五階層に降りたというではないか。

 

しかも、そこのに対して注意をしたら彼はこう言った。

 

『エイナさん、そんなの僕には関係無いんですよ。だって、死ねばただ天に召されるだけなんですから。』

 

死に対して恐れていないというか達観していると言えばいいのだろうか、そんな感じがした。

 

「どうしちゃったんだろ、ベル君。」

 

私は変わっていくベル君に何か違和感を感じ始めた。



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六話

ギルドを後にした僕は本拠(ホーム)にへと戻ると、神様にステイタスの更新を申し出た。

 

「ステイタスの更新?別に良いけど、ベル君のステイタスは変化がないと思うよ?」

 

そう言いながらも更新の準備を始める神様に対して僕は上着を脱いでベッドへうつ伏せに寝転がる。

 

着々と更新がされていく中で、神様がこう言って来る。

 

「ベル君、今回はお金たくさん稼いできたみたいだね。」

 

「えぇ、本拠の改築とかもしたいですしね。それに、入団希望者がいたとしても本拠がこれじゃあ話にもなりませんし。」

 

「うぐっ!!」

 

神様の言葉に対してそう返すと痛いところを突かれて声を上げる。

 

そんな声を上げた後、神様が僕のステイタスに違和感を感じたのかジッと覗き込んでくる。

 

「べ、ベル君、一つ聞きたいんだけどさ・・・。」

 

「何ですか、神様?」

 

そう言って来る神様に対して僕がそう聞くと、こう言って来る。

 

「ランクアップが可能になっているのはどういうこと何でい?」

 

そう聞いて来る神様に対して僕はこう言った。

 

「あぁ、それはミノタウロスを一人で仕留めたからじゃないですかね。」

 

「ミ、ミノタウロス!?」

 

僕の言葉を聞いて神様は驚きの声を上げる。

 

「どうしたんですか、神様?」

 

「どうしたじゃないよ、怪我は無いのかい!?」

 

僕がそう言うと、神様は慌てながらそう言って来る。

 

「怪我なんてしてませんよ。だって、僕が一方的に叩きのめしましたから。」

 

「そ、そうなのかい?」

 

「えぇ、だから僕は無傷ですよ。」

 

僕がそう言うと、神様は戸惑いながらも確認をしてくるのでハッキリとそう言った。

 

「分かったよ、嘘もついてもないみたいだしね。それじゃあ、ランクアップさせるよ。」

 

「はい。」

 

そう言って来る神様に返事をする僕。

 

「はい、ベル君更新が終わったよ。」

 

「ありがとうございます、神様。」

 

更新を終えると、神様はステイタスを書き写した羊皮紙を僕に渡してくる。

 

それに目を通すと、スキル欄に一つのスキルが追加されていた。

 

ベル・クラネル

 

level2

 

力EX 耐久EX 器用EX 敏捷EX 魔力I0

 

百獣S 覇気S 破砕A 耐異常S 拳打A 幸運A

 

この世における最強生物(カイドウ)

・力、耐久、器用、敏捷のアビリティを常時超高補正

・最強(おもい)が続く限り効果持続

・最強(おもい)の丈により効果向上

 

【覇気】

・三種の覇気を扱う事が出来る。

・武装色:体や武器に纏わせて攻撃力を上げる

・見聞色:周囲を感知する力

・覇王色:全てを威圧する力

 

海賊としての矜持(パイレーツ・プライド)

・自由を求めることで敏捷のアビリティを高補正

 

一騎打ち(タイマン)

・一対一での戦闘の際、全アビリティ高補正

 

このスキルを見た瞬間、あのミノタウロスとの戦いが切っ掛けで発現したものだと分かった。

 

「ベル君、このスキルの発現理由は分かっているから言わなくていいよ。」

 

「はい。」

 

神様も発現の元が分かっているようでそう言って来る。

 

「でもね、ベル君一つだけ言わせて欲しい。」

 

「何ですか?」

 

「ボクを一人にしないでおくれ。」

 

「分かりました、神様。」

 

悲痛な顔でそう言って来る神様に僕はそう言うしかなかった。

 

 

 

ランクアップの報告をするために僕はもう一度ギルドにやって来ると、何やら賑やかな気配を感じた。

 

「【ロキ・ファミリア】が遠征から帰ってきたらしいぞ!!」

 

「本当か、見に行こうぜ!!」

 

【ロキ・ファミリア】 確かこのオラリオの二大勢力の一角だったけ。

 

そんな事を考えているとギルドに着いた僕はエイナさんの所にへと向かう。

 

「エイナさん、さっきぶりですね。」

 

ボクがそう話しかけると、エイナさんはこう言って来る。

 

「そうだね、それでどうかしたの?」

 

そう聞いてくるエイナさんに対して僕はこう言った。

 

「ミノタウロス撃破したらランクアップしましたんでその申告に来たんです。」

 

僕がそう言うと、エイナさんは固まってしまう。

 

「ベル君、もう一回言ってくれるかな?」

 

「だから、ランクアップしたから申告に来たんですって。」

 

一瞬だけ静寂に包まれた後、エイナさんは大声でこう言った。

 

「ラ、ランクアップ~~!!?」

 

その声に反応して周囲の人達の視線を集めてしまっている。

 

「エイナさん、声が大きいですよ。ほかにも人がいるんですから。」

 

僕はそう言いながら周囲に視線を向ける。

 

そして、なんとか僕はエイナさんを連れて個室に連れていき、話を再開する。

 

「べ、ベル君、ほ本当なの、ランクアップしたって!?」

 

「はい、そうですよ。」

 

どもりながらもそう聞いてくるエイナさんに対して僕は淡々とした口調で答える。

 

「本当にランクアップしたの?」

 

疑いの目で見てくるエイナさんに対して僕はこう言った。

 

「そんなに疑うなら確認すればいいじゃないですか、僕のステイタス(恩恵)を。」

 

そう言うと、僕は上の服を脱ぎすてて背中に刻まれた恩恵(ファルナ)を曝け出す。

 

「さぁ、早く確認してください。」

 

そう言いながら僕はエイナさんに背中を向け、ステイタスを見せる。

 

「う、うん。」

 

エイナさんは僕に言われるがままステイタスに目を向ける。

 

「確かにランクアップしてるけど、力・耐久・器用・敏捷に至ってはEXってどういう事!?」

 

エイナさんはそう言って頭を抱え込んでしまう。

 

「エイナさん、これは僕のあるスキルが起因しているんです。」

 

僕はそう言いながら脱いだ服を着ていく。

 

「スキル?」

 

僕の言葉を聞いたエイナさんが顔を向けてそう言ってくる。

 

「えぇ、ですからあり得ないことがあなたの目の前で起こっている。」

 

「でも、アビリティの上限を超えるなんて・・・!?」

 

「何が起こるかはわかない、それが神々の恩恵ですよ。」

 

「っ!?」

 

それに対して僕がそう言うと、エイナさんは押し黙ってしまう。

 

「それじゃあ、ランクアップの申告は終えたのでもう帰りますね。」

 

「う、うん。」

 

僕はそう言って個室の扉のノブに手をかけると、エイナさんの方に顔を向けてこう言った。

 

「エイナさん、僕があなたにステイタスを見せたのは誰にも口外しないと信頼しているからです。もちろん、神様にも許可は得ているので安心してください。それに、僕の異常なまでのランクアップの理由を知ってもらうにはlevelとアビリティ欄だけで十分と神様も言っていましたし。」

 

「ベル君・・・。」

 

エイナさんはほのかに嬉しそうな表情を浮かべると顔を引き締めてこう言ってくる。

 

「ここで見るものは誰にも他言しないって約束するよ。 もしベル君のステイタスが明るみになるようなことがあれば、私は相応の責任をおうとして君に絶対服従を誓うよ。」

 

エイナさんは僕の顔を見ながら真剣な表情でそう宣言してくる。

 

「い、いや、絶対服従って・・・そこまで深刻にならなくてもいいんじゃ・・・。」

 

僕はそう言うが、エイナさんは首を横に振った後、こう言ってくる。

 

「ううん。 冒険者にとってステイタスは一番バラしちゃいけないもの………それを見せてくれるっていうのなら、私も相応の覚悟を負わないとフェアじゃない」

 

「エイナさん・・・。」

 

エイナさんの真摯なその姿に、再度僕はこの人の事を信頼できると確信する事が出来た。

 

「ありがとうね、ベル君。」

 

急にお礼を言ってくるエイナさんに対して僕はこう言った。

 

「何がですか、エイナさん?」

 

「だって、私の事を信頼してくれてるから秘匿にしなくちゃいけないステイタスを見せてくれたんでしょ。」

 

「はい、そうですよ。」

 

エイナさんの言葉に僕がそう返した。

 

「だからだよ、私の事を信頼してくれてるって事が嬉しくてね。」

 

そう言いながら微笑むエイナさんを見て、僕はなんだか落ち着いた気持になった。

 

「それじゃあ、僕はもう帰りますね。」

 

「うん、気をつけて帰ってね。」

 

「はい。」

 

そう会話をした後、僕は本拠にへと帰っていくのだった。



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七話

すみません、間違えて消してしまったので投稿します。

内容は変わっていませんのであしからず。


ギルドから本拠へと帰ってきた僕は神様が用意してくれた夕食を食べながらこれからの事について話し始める。

 

「神様、本拠(ここ)を改築しようと思うんですけどいいですか?」

 

僕がそう聞くと、神様がこう言って来る。

 

「その意見には賛成だよ!でも、お金が足りないだろ?」

 

神様の言葉に僕はこう言った。

 

「資金の問題は僕がダンジョンに行って稼いで来るので大丈夫ですよ。」

 

「うん、ありがとうベル君。」

 

僕の言葉に神様がお礼を言って来る。

 

「資金が貯まったら改築をどこのファミリアに依頼するんですか?」

 

僕がそう聞くと、神様はこう言って来る。

 

「そうだね、【ゴブニュ・ファミリア】に依頼するつもりだよ。彼らなら建築関係の依頼も請け負っているからね。」

 

「そうですか。」

 

依頼をどこに頼むかと聞くと、神様はそう答えてくれる。

 

そうして、食事を食べ終わった後は今日の疲れをとるために眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の翌日、神様よりも朝早くに目を覚ました僕は身体を解した後、着替えてダンジョンに向かうことにした。

 

今回からはきちんと書置きを残してから行くので、神様に心配をかける事は無い。

 

更に言えば、より多くの魔石やドロップアイテムを入れられるように今までよりも大きな袋を持っていくことにした。

 

朝の空気を味わいながらダンジョンに向かっていると、上空から誰かからの視線を感じ、その方向を見た。

 

そこにあったのは、摩天楼施設(バベル)だった。

 

エイナさんに聞いたことがある、バベルの最上階にはオラリオの最大勢力の一つである【フレイヤ・ファミリア】の主神である女神フレイヤの私室(プライベートルーム)になっている、と。

 

ということは、感じた視線(もの)は女神フレイヤのものなのか・・・?

 

そう考えはしたが、気持ちを切り替えてダンジョンに向かおうと歩き出した。

 

「あの…、コレ落としましたよ?」

 

その途中、歩き始めた俺の後ろから誰かが声をかけてくる。

 

俺が後ろを振り向くと、そこには手の上に豆玉サイズの魔石を乗せた銀髪ポニーテールの女の子がいた。

 

「ありがとうございます、えっと名前は?」

 

俺はシルさんの上の魔石を取り、礼を言いながら名前を問いかける。

 

「私の名前はシル・フローヴァといいます、そこの【豊饒の女主人】という酒場で働いているんです。」

 

「僕はベル・クラネル、【ヘスティア・ファミリア】所属の冒険者です。」

 

俺とシルは互いに自己紹介をした後、シルの指さす場所には【豊饒の女主人】という店があった。

 

「うちは昼間は喫茶をしているんですけど、夜は酒場をしているので出来ればそちらでお願いしますね。」

 

それを聞いた僕はこう言った。

 

「分かりました、ダンジョンに行った後にでも食事に来ますね。」

 

「はい、お待ちしていますね‼ベルさん、いってらっしゃい‼」

 

「行ってきます。」

 

俺がそう言ってからダンジョンに向かうと、シルは満面の笑みでそう言って送り出してくれた。

 

 

 

 

ダンジョンに着くと、さっそく僕は上層の最終階層である十二階層まで降りると、僕は一度呼吸を整えてから先にへと進み始める。

 

襲い掛かってくるモンスターを蹴散らして魔石を集めていきながら進んでいくと、中層最初の階層である十三階層に続く道を見つけた。

 

「ここから中層か、楽しみだな。」

 

そう呟いた後、僕は中層にへと足を踏み込んだ。

 

中層は上層よりも薄暗く眼を凝らさないと見えない所もあるが、上層とは違う点がもう一つある。

 

それはモンスターの出現速度と数である。

 

中層は上層とは比較にならないほどの速度でモンスターが生み出されて襲ってくる為、僕は見聞色の覇気を常時発動させて十三階層の中を歩いていく。

 

すると、僕の目の前に数十人のパーティが何かから逃げるように走って現れるが、そのまま俺の横を通り過ぎて走り去っていく。

 

かなり慌てているのか武器やアイテム、魔石などを落としていくのだった。

 

その後ろからは無数のヘルハウンドやアルミラージ、ダンジョン・ワームが迫って来ているその光景に僕は何も言わずに拳を構える。

 

飛び掛かって来るヘルハウンドにただの手刀で頭を砕き、アルミラージは連続蹴りで蹴り飛ばし、ダンジョン・ワームはさっきの冒険者達が落としていった剣に武装色の覇気を纏わせた状態で斬りつけてぶつ切りにしてやった。

 

モンスターの群れを片付けた後、使い終わった剣に纏わせた覇気を解くと砕け散ってしまう。

 

それを見ていた僕は専用武器が必要だなと思いながら十四・十五・十六と先にへと進んでいくと、そうして辿り着いた階層が十七階層。

 

十七階層には僕が五階層で倒したミノタウロスが生み出される場所でもある。

 

僕は魔石とドロップアイテムの他にミノタウロスの持っている自然武器(ネイチャーウェポン)である石斧を回収しながら階層の中を進んでいく。

 

石斧を集めたとはいっても、手加減を間違えて二本くらいしか回収できなかったけど。

 

すると、一番奥までやってくると巨大な壁がある空間にへと出た僕。

 

この十七階層と十八階層を結ぶ嘆きの大壁(なげきのたいへき)と呼ばれる大広間にある十七階層最後の障壁、その場所がゴライアスという階層主を生み出す。

 

階層主とは、正式名称迷宮の孤王(モンスターレックス)と呼ばれるモンスターで、そのモンスター達は特定の階層にのみ出現する強力な固有存在である。

 

「へぇ、思ったよりも綺麗だなぁ。」

 

大壁を見ながらそんな事を言っていると、突然大壁に大きな亀裂が入る。

 

どうやら、ここの階層主の誕生の時のようだ。

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

雄叫びを上げて壁を破壊しながら生まれて来るゴライアスを見ながら石斧を袋から一本取り出すと、普段の武装色の覇気を纏わせるだけでなく、より硬化させて黒く変色させる。

 

「さて、行こうかな。」

 

そう言った後、強く地面を蹴り砕きながらゴライアスに向かっていき、武装色を纏わせた石斧の一振りで右の足首を切断し倒した。

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

 

足首を切断された事に驚くよりもいきなり襲ってきた激痛に悲鳴を上げる。

 

「うるさい。」

 

そう言いながら僕は倒れて来るゴライアスの右足に飛び乗り、石斧の刃の部分を足にへと食い込ませてからそのままの状態で頭部に向かって引き裂きながら向かっていくと同時に聞こえて来る途切れる事の無い痛みに耳障りな悲鳴を上げるゴライアスは胴体を動かして暴れようとするが、そんな事お構いなしに僕は頭にへと向かう。

 

頭の方に着くと、持っていた石斧をゴライアスの眼に向かって投擲し、そのまま左眼にへと突き刺さる。

 

眼から襲ってくる痛みに悶えるゴライアスを尻目に、僕は次の石斧を取り出して攻撃に移るとするが、ゴライアスが右の拳を放って来たがそれを回避した後伸びきった右腕の手首を切断した。

 

その瞬間、石斧が砕けてしまう。

 

どうやら、回収の時点で少し耐久度が落ちてしまっていたらしい。

 

そして、ガラ空きになっている腹部に覇気で黒く変色させた拳と蹴りを止めどなく打ち込み、ゴライアスは灰にへと変わると同時に砕け散った魔石が周囲に散乱するのだった。

 

「ふぅ、今日はこのくらいにしておこうかな。」

 

そう言いながら魔石とドロップアイテムでパンパンに膨れ上がった袋を担いで地上にへと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

地上に戻ってくると、すっかり日が暮れて夕食にはちょうどいい時間帯になっていた。

 

僕は今日集めた魔石を換金しに行くと、そこにはエイナさんが立っていた。

 

「あっ、ベル君!」

 

エイナさんは僕の事を見つけるとすぐに駆け寄って来てこう言って来る。

 

「ベル君、今日はいつからダンジョンに潜ってたの?」

 

そう聞いてくるエイナさんに僕はこう言った。

 

「そうですね、早朝からですね。」

 

僕がそう言った瞬間、エイナさんが小声でこう言って来る。

 

「ベル君、君がいくら規格外のステイタスやスキルを持っていてでも無茶だけはやめて。ベル君にも死んで欲しく無いんだから。」

 

それを聞いた僕はエイナさんにこう言った。

 

「分かってますって。」

 

そう言いながら僕は到達階層の事について話す。

 

「そうだ、エイナさん到達階層の更新をしたいんですけどどうしたらいいんですか?」

 

「あっ、それならこっちに来て更新の手続きをするから。」

 

「分かりました。」

 

それを聞いて僕はエイナさんの後ろにへと続いていく。

 

そうしてやって来た場所が個人的な相談をするために使われる個室である。

 

「それじゃあ、ランクアップをしてから到達階層を教えて。」

 

そう言いながら羽ペンに墨を付けて書く準備を整えるエイナさんに僕は到達階層を口にする。

 

「十七階層の嘆きの大壁です。」

 

「十七階層・嘆きの大壁・・・、へ?」

 

僕の言ったことを繰り返しながら紙に記していたエイナさんは突然素っ頓狂な声を上げるてからこう聞いてくる。

 

「ベル君、私の聞き間違いかな?今、十七階層の嘆きの大壁って言わなかった?」

 

それに対して僕はこう答える。

 

「えぇ、言いましたよ。それがどうかしたんですか?」

 

「どうかしたかじゃないよ、まさか階層主に挑んでないよね!?」

 

僕の言葉を聞いて声を張り上げながらそう言って来るエイナさんに対してこう言った。

 

「挑みましたよ、それでちゃんと討伐しておきました。」

 

笑みを浮かべながらそう言うと、エイナさんはこう言って来る。

 

「討伐しておきましたよ、じゃないの!!一人で階層主に挑むなんてわざわざ死にに行くようなものなんだってば!!」

 

それに対して僕はこう言った。

 

「死んだらそこまでの男だったって事と僕が弱かったと言うだけです。」

 

僕がそう言うと、エイナさんは黙り込んでしまう。

 

「それじゃあ、僕はこの魔石とドロップアイテムを換金してきますね。」

 

僕はそう言いながら魔石とドロップアイテムの入った袋を持って扉から出ていくのだった。

 

 

 

 

 

換金を済ませた僕は本拠に戻って来ると、神様にこう言った。

 

「神様、今日は贅沢に外食にしませんか?」

 

それを聞いた神様はこう言って来る。

 

「それはいいけど、お金の方は大丈夫なのかい?」

 

改築費の事を心配している神様に対して僕はこう言った。

 

「少しくらいなら大丈夫ですよ、それに使ってしまった分は僕がダンジョンで稼いできますから。」

 

僕の言葉に神様がこう言って来る。

 

「ベル君・・・、僕は何て良い眷属(こども)を持ったんだ!!」

 

そう言いながら涙を拭うしぐさをする神様に対して僕はこう言った。

 

「それじゃあ行きましょう、神様。」

 

そう言って僕は神様と共に【豊穣の女主人】に向かうのだった。




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八話

早朝に知り合った【豊穣の女主人】という酒場で給仕として働いている銀髪の少女・シルさんの誘いを受けて、僕と神様は夕食を食べにやって来た。

 

店の中に入ると、そこは如何にも酒場という雰囲気が醸し出されていて、様々な種族の冒険者達が卓テーブルを囲んで楽しく酒と料理を飲み食いをしている。

 

その光景を見て神様がこう言って来る。

 

「へぇ~、こういう外食なんて初めてだよ。」

 

店内を見渡しながらそう言って来る神様に対して僕はこう言った。

 

「そうですね!僕もこう言うのは初めてですから、楽しみましょうね神様!!」

 

「そうだね、ベル君!!」

 

そう話していると、給仕の人が僕達に近づいて来てこう言って来る。

 

「ようこそ、豊穣の女主人へ!!あっ、ベルさん来てくださったんですね!!」

 

近づいてきた給仕はシルさんで僕の姿を見てそう言って来る。

 

すると、それを見ていた神様が僕とシルさんの方を見てこう言って来る。

 

「ベル君、その子は誰なんだい?知り合いかい?」

 

そう言って来る神様に対して僕はこう言った。

 

「神様、この人はシル・フローヴァさんという人でこの酒場で働いている従業員の人なんです。実は、ここを選んだのはシルさんがここを進めてくれたからなんです。」

 

僕の言葉を聞いて神様がこう言ってくる。

 

「へぇー、そうだったのかい。それじゃあお腹一杯食べようじゃないか!!」

 

「はい、神様。」

 

神様の言葉に対して僕はそう言い、シルさんにカウンター席まで案内してもらう。

 

席に着くと、僕と神様は献立表に目を向けてからこう言った。

 

僕はそんな光景を目を向けながらシルさんに案内された席に座り、メニューを見てこう言った。

 

「それじゃあ、最初なんでパスタを二つ。」

 

「パスタですね、分かりました。」

 

僕が注文をすると、シルさんは厨房に注文を伝えに行った。

 

そう考えていると、僕と神様の前に山のように盛られたパスタ二つが置かれた。

 

「おまちどうさん、パスタ二つだよ。」

 

そう言って来るのはいかにも女将さんって雰囲気を醸し出しているドワーフの女性がカウンターに立っていた。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

僕はそうお礼を言ってパスタの隣に置かれたフォークを手にして食べようとすると、女将さんがこう言って来る。

 

「私はここの店主のミア・グランドって言うんだ。アンタがシルのお客さんかい?ははっ、冒険者のくせに可愛い顔してるねぇ。」

 

「あ、あははは・・・。」

 

ほうっておいてください、気にしてしてるんですから!!

 

そう心の中で言っていると、ミアさんの次の言葉に驚かされる。

 

「なんでもアタシ達に悲鳴を上げさせるほ大食漢なんだそうじゃないか!じゃんじゃん料理を出すから、じゃんじゃん金を使ってくれよぉ!」

 

「えっ!?」

 

ミアさんの発言に僕は心底驚いた、それもそのはず僕は見た目通りそんなに食べれる方ではないのでどこからそんな情報が来たのか・・・、そんなウソの情報を言う人が一人いた。

 

「シルさん?」

 

僕は隣にいたシルさんに声をかけると、シルさんはこう言ってくる。

 

「すみません、ベルさん。」

 

シルさんは瞳をウルウルさせ頬を赤く染めていた、可愛いなと思ってしまった。

 

「シルさん、すっごく可愛いですけどダメですよ。」

 

「テヘッ。」

 

まぁ、そんなこんな感じでパスタを食べながら会話を楽しんでいると、ある声が聞こえてくる。

 

「ご予約のお客様の一団、ご来店~~~!!」

 

その声に反応して入口の方を見ると、朱色の髪の神様を先頭に様々な種族の人達が入ってくる。

 

すると、神様がその集団を見た瞬間、声を荒げて大声でこう言った。

 

「ロキ!?」

 

その声に店の中にいた客全員の視線が此方にへと向けられる。

 

もちろん、今入ってきた一団【ロキ・ファミリア】の視線もだ。

 

「ドチビーーー!?」

 

同じくしてこっちを見て朱色の髪の神様もとい、神ロキも大声を上げる。

 

というか、この二人の反応からして仲が良くないと判断出来た。

 

「なんで君がここにいるんだい!?」

 

「それはコッチのセリフや、何で貧乏のドチビがここにおんねん!!」

 

神様と神ロキは互いにそう言いながら睨み合うが、それはすぐに終わることになる。

 

「神様、少し落ち着いて下さい。」

 

「そうだぞ、ロキ。ここで騒ぐのはどうかと思うぞ。」

 

神様達に対してそう言うのは僕と翡翠色の髪をしたエルフの女性だった。

 

「せやかて、リヴェリアこいつは・・・、ブベッ!?」

 

「いい加減にしろ、二度は言わんぞ。」

 

神ロキが反論しようとした矢先、頭頂部に手刀の一撃を受けた後、他の団員の手によって運ばれていくのだった。

 

僕も神様を座っていた席にへと連れて行き、注文してあったパスタを食べ始めてもらう。

 

するとその後、僕達の所に一人の小人族パルゥムの男がやって来る。

 

「僕達の主神が失礼したね」

 

「いえ、こちらこすいません。」

 

互いに謝罪をすると、小人族の男がこう言ってくる。

 

「僕は【ロキ・ファミリア】団長のフィン・ディムナだ、君は?」

 

自己紹介と共にそう聞いてくるフィン・ディムナに対して僕はこう言った。

 

「僕は【ヘスティア・ファミリア】所属のベル・クラネルといいます。」

 

僕がそう名乗ると、フィン・ディムナはこう言って来る。

 

「すまなかったね、ベル・クラネル。」

 

「いえ、こちらにも非はありますから。」

 

そう話した後、互いにそれぞれの席に戻って食事を始める。

 

その際、神ロキの挑発に近い発言に反応する神様を抑えながら食事を続けていると、シルさんがやって来てこう言って来る。

 

「ベルさん、お酒はどうですか?今日は珍しい極東のお酒を入荷したんです。それに合わせて料理を出す事も出来ますよ?」

 

そう言って来るシルさんに僕は少し考える。

 

「{意外に今日はまだお腹に余裕があるから頼もうかな。}それじゃあお願いしますね、シルさん。」

 

「はい、かしこまりました。」

 

現時点で頼んであったパスタも残り少ない事もあって、その極東の酒と料理を頼むことにし、注文を受けたシルさんは厨房にへと入っていった。

 

すると、シルさんが大きな酒瓶と杯さかずきを持って戻ってくる。

 

「これが極東のお酒ですよ。」

 

そう言って僕の目の前に大きな酒瓶と杯を置くシルさんにお礼を言ってから杯に酒を注ぐと、杯には透き通った酒が注がれた。

 

それをそのまま呷ると、口の中に独特な風味が広がってくる。

 

しかし、その酒を初めて飲んだにも拘らずどこか飲み慣れている感覚があった。

 

それはひとまず置いておいて、僕は神様にもこの酒を勧めることにした。

 

「神様、この酒飲んでみてください。おいしいですよ。」

 

そう言いながら杯を差し出すと、神様がこう言ってくる。

 

「そうなのかい?それじゃあ、頂くよ。」

 

そう言って神様は盃にあった酒を一口飲むとこう言ってくる。

 

「う~ん、このお酒は結構辛口みたいだね。ボクはちょっと苦手だね。」

 

そう言いながら杯を僕に返してくる神様からその杯を受け取り、減った分だけ酒を注いで一気に酒を呷った。

 

すると、【ロキ・ファミリア】の方からある話し声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキ・ファミリアSIDE

 

私、アイズ・ヴァレンシュタインはファミリア内での遠征の打ち上げに参加している。

 

すると、同じファミリアの幹部であるベートさんがこう言って来る。

 

「よっしゃ、おいアイズあの話聞かせてやれよ!!」

 

それを聞いた私は何の事か分からず首を傾げてこう言った。

 

「あの話?」

 

「なんだよ、忘れちまったのか?」

 

私の反応に対してベートさんは呆れたという表情をしたと思ったら、こう言って来る。

 

「五階層でミノタウロス始末しただろ、そん時にお前の近くにいたいかにも駆け出しっていうようなひょろくせぇガキがよぉ。」

 

それを聞いてあの時会った少年を思い出した。

 

雪のように白い髪に宝石のように赤く輝く眼をした少年の事を。

 

「それってさ、十七階層で襲ってきたミノタウロスを返り討ちにしたら上層に上っていっちゃった奴?」

 

ベートさんの言葉に対して同じくファミリアのティオナがそう言った。

 

「あぁ、みっともねぇったらありゃしねぇよな!!」

 

ティオナの言葉に同意をしながらもベートさんは勘違いをしたまま貶し続ける。

 

ベートさんの発言に対して私はこう言った。

 

「ベートさん、違います。」

 

「あぁん?何が違うってんだよ、アイズ?」

 

私はベートさんが言ったことを否定する。

 

「最後の一匹は私は倒してません。」

 

「あぁん?」

 

私がそう言うと、ベートさんは顔を顰める。

 

そしたら、ティオナの姉でファミリアの幹部の一人でもあるティオネがこう言って来る。

 

「それじゃあ、誰がミノタウロスを倒したの?」

 

「まさか、あのガキが倒したって言うんじゃねぇだろうな?」

 

ティオネに続いてベートさんがそう言ってくるのに対して私はこう答える。

 

「うん。」

 

あたしが頷きながらそう言うと、ベートさんは大声で笑い始めた。

 

「ギャハハハハッ、アイズお前いつの間に冗談が上手くなったんだ?面白れぇ!!」

 

ベートさんは私の言っている事が冗談だと言い、笑う。

 

「事実です。」

 

ムッとしながらも私はそう言った。

 

「ムスッとしたアイズたんもかわええー!!」

 

そう言って抱き着こうとしてくるロキを躱すと、ベートさんがこう言って来る。

 

「アイズ、雑魚なんて庇う必要なんざ無ぇんだよ。雑魚は大人しく巣穴にすっこんでればいいんだよ!!」

 

そう言いながらベートさんは手に持っていたジョッキに注がれているお酒を飲み干す。

 

すると、副団長のリヴェリアがベートさんにこう言った。

 

「いい加減にしろ、ベート。そもそも、ミノタウロスを逃がしてしまった我々の不手際で起こってしまったものだ。謝罪することはあっても酒の肴にして良いものでは無い、恥を知れ。」

 

落ち着いた口調で話すリヴェリアに対してベートさんはこう言った。

 

「うるせぇぞ、ババア!!雑魚に雑魚って言って何が悪ぃ!!」

 

「やめい、ベートもリヴェリアも。酒が不味くなるやろ。」

 

ロキがそう言っても止めに入ったけど、ベートさんは聞く耳を持たずこう言った。

 

「雑魚は戦場ここに来るんじゃねぇよ・・・、ぐぼっ!?」

 

そう言った瞬間、ベートさんはお店の入り口まで飛んでいった。

 

私がベートさんのいた場所を見ると、そこには五階層で会ったあの子がいた。

 

だけど、最初に会った時と雰囲気が変わっていて、言い表すのであれば今の姿はまるで怒り狂う獣もしくは鬼。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ロキ・ファミリア】の大声で話す獣人の男の言葉を聞いていて何とか抑えていたけど、最後の一言によって僕の怒りの許容範囲を越えた。

 

「雑魚は戦場ここに来るんじゃねぇよ・・・、ぐぼっ!?」

 

その言葉が発せられた瞬間、僕はその狼人の男を殴り飛ばして入口まで飛んでいった。

 

その突然起こった目の前で起こった光景を目にして固まっている

 

その数瞬の後、【ロキ・ファミリア】全員の視線が僕に集中するが、そんな事はどうでもいい。

 

今はさんざん吠えていたあの獣人の男を潰すことだ。

 

そう頭の中で思いながら獣人の男が飛んでいった入口に向かおうとしたら男と話していたアマゾネスの少女二人が僕の前に立つ。

 

「アンタ、自分の仕出かした事分かってるのかしら?」

 

「最初に喧嘩売って来たのはお前らの仲間じゃないですか、僕は売られた喧嘩を買っただけですよ。」

 

僕がそう言っていると、殴り飛ばした狼人の男が眉間に皺を寄せながら怒気を身に纏って近づいてくる。

 

「オイ、テメェどういうつもりだ!!」

 

そう言ってくる男に対して僕はこう言った。

 

「さっきもこの人達に言ったが、僕は売られた喧嘩を買っただけだ。」

 

「あぁん?」

 

そう言いながら睨み合う僕と獣人の男。

 

一触即発の雰囲気に周囲の者達が息を呑む。

 

すると、そこに神様とフィン・ディムナがやってくる。

 

「べ、ベル君少し冷静に・・・!?」

 

「ベート、少し落ち着け。」

 

その二人の言葉に僕と男はこう言った。

 

「大丈夫ですよ、神様。すぐに終わらせますから。」

 

「落ち着けだぁ!?ふざけんじゃねぇぞ、フィン!!喧嘩売られて黙ってろって言うのかよ!!」

 

そう言いながらも睨み合うのを止めない僕達にミアさんの怒号が飛ぶ。

 

「アンタら、喧嘩がしたいなら外でやりな!!ここは飯を食って、酒を飲む場所だ!!」

 

その怒号を聞いて僕達は無言のまま店の外にへと出る。

 

そして、互いに向かい合うようにして対峙する。

 

「テメェ、覚悟は出来てんだろうな。」

 

「それはこっちのセリフですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

「おい、ドチビ。お前、何してくれとんねん!!」

 

「ロ、ロキ・・・。」

 

僕、ヘスティアは今超めんどくさい神物やつの相手をしている。

 

「にしても、ベートにケンカ売るなんてあの白髪の子供もアホやな。一発で終わるで。」

 

ロキの言う通りだ、本来第三級冒険者level2が第一級冒険者level5に勝つことは不可能。

 

だけど、ベル君には例の【この世における最強生物(スキル)】とミノタウロスを倒した時に発現した【一騎打ち(スキル)】がある。

 

だから、どうなるかわからない。

 

そう考えながらボクはベル君の方を見るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

今、【豊穣の女主人】の前で僕と獣人の男は向かい合いながらも互いを睨み付けている。

 

周りには野次馬が殺到していて、しかも賭けまで成り立っているようだ。

 

だが、そんな事はどうでもいい。

 

今はあの獣人の男を殴り倒せればそれでいい。

 

そう考え終えると、僕は拳を握って構える。

 

獣人の男は僕の事を格下と見ているため構えてはいるが、隙だらけだ。

 

「とっとと来いよ、雑魚。叩き潰してやる!!」

 

そう言って来る獣人の男に向かって僕は走り出し、男との距離を詰める。

 

「オラァッ!!」

 

距離を詰めてくるのに対して獣人の男が蹴りを放って来る、それに対して僕はその蹴りを受け止める事にした、片手で。

 

「なっ!?」

 

獣人の男は自身の蹴りが受け止められたことに驚愕の表情を浮かべ、周りの人達も目の前の光景に驚きを隠せないようだ。

 

「テメェ、何しやがった!!」

 

そう言って来る獣人の男に対して僕はこう言った。

 

「受け止められたぐらいで動揺するなよ、弱く見えるぞ。」

 

僕がそう言うと、憤怒の籠った眼をしている獣人の男はさっきよりも顔を険しくさせながら蹴りを放ってくる。

 

しかし、僕はそれを避ける事はせずに向かって来るその蹴りを掴み取ると、そのまま木の枝を振り上げるように持ち上げると、そのまま振り回してから地面に向かって思い切り振り下ろした。

 

獣人の男を叩きつけたと同時にけたたましい轟音と共にその地面は割れ、砂煙が舞う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベートの蹴りを片手だけで受け止めたやと!?」

 

目の前の光景を見てロキはそう叫んだ。

 

当然だろうね、level5の自分の眷属の蹴りを片腕で簡単に受け止められて驚くなというのが無理な話だよね。

 

でも、今起こっている事が紛れもない現実だ。

 

そう考えながらボクはベル君の方を見る。

 

確かにベル君の持っている【この世における最強生物(スキル)】は規格外だと思っていたけど、まさかlevelが3つも差のあるlevel5にまで通用するなんて思わなかった。

 

あのスキルは規格外すぎる!!

 

「おい、ドチビなんやねんあのおまえの眷属は。」

 

そう考え込んでいるとそう言ってくるロキに対してボクはこう言った。

 

「ボクにも分からないよ、今のあの子の事は。」

 

「んな訳あるかぁ!!新人冒険者(level1)の奴が第一級冒険者(level5)の蹴りを防げる訳無いやろが!!」

 

ボクの言葉にそう反論してくるロキに対してこう言い返した。

 

「ロキ、あの子はlevel1じゃないよ。」

 

「んぁ、それやったらlevelナンボなんや?」

 

僕の言葉にそう聞き返してくるロキにこう言った。

 

「君の所の眷属(こども)達が上層までミノタウロスを追っていた話していたろ、その時五階層で出会った一匹のミノタウロスをあの子が倒した事によってlevel2になったんだよ。」

 

「なんやと、お前の所の眷属は冒険者になったのはいつなんや?」

 

「確か、僕の眷属になったのが一か月前だったかな。」

 

ボクの言葉を聞いてロキは勿論【ロキ・ファミリア】の眷属達も驚愕の表情を浮かべる。

 

「なん・・・やと!?ドチビ、お前まさか【神の力(アルカナム)】使ったんやないやろな?」

 

真面目な表情をしながら真剣な声音でそう問いかけて来るロキに対してボクはハッキリとこう言い切った。

 

「それは無いよ、ロキ。なんだったら男神(ゼウス)に誓ってそんな事はないよ。」

 

そう言い返してくるボクを見て、ロキは溜息を吐きながらこう言って来る。

 

「そうかい、ならええんやけどな・・・。」

 

ロキはそう言いながら二人の方にへと視線を向ける。

 

僕もロキから視線を外し、ベル君の方を見た。

 

そこで僕の目に映った光景はベル君がロキの所の眷属(こども)を地面に叩きつけていた。

 

 

 

 

 

 

 

地面に叩きつけられた獣人の男は気を失っているのかピクリとも動かない。

 

すると、僕の所にフィン・ディムナが近づいて来るのを見て僕はこう言った。

 

「感情任せにこのような事を申し訳ない。」

 

そう頭を下げてそう言うと、フィン・ディムナはこう言って来る。

 

「いやいや、元を正せばベートが悪いんだから。」

 

「すみません。」

 

謝罪をしていると、神様と神ロキが近づいて来る。

 

「ベル君!!」

 

目尻の涙を浮かべながら駆け寄ってくる神様は僕にこう言って来る。

 

「君は何を考えているんだい、あんな無茶なことをして!!もしもの事があったらどうするつもりだったんだい!?」

 

そう言って来る神様の言葉に対して僕はこう言った。

 

「もし、死んでたら僕はそれまでの男だっただけですよ。」

 

僕のその言葉を聞いて神様は勿論、神ロキとフィン・ディムナも驚愕の表情を浮かべる。

 

それはそうだ、そんな事を言うのはごく少数でありベルのような若者から出て来る言葉では無いからだ。

 

「それじゃあ神様、僕はお店の会計をしてきますね。」

 

僕はそう言って【豊穣の女主人】へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、アイズあの子が本当にミノタウロスを倒した子なの?」

 

「うん。」

 

私、アイズ・ヴァレンシュタインは同じファミリアのティオナとベートさんとあの子の喧嘩をよく見える所から観戦していて、その向こうではロキと神ヘスティアが話をしていた。

 

そんな時、ティオナがミノタウロスの事を聞いて来て、私はそれに同意する。

 

「でも、そんなの信じられませんよ!level1なのにミノタウロスを倒せるなんて!!」

 

そう大声で言ってくるのはレフィーヤ。

 

「アイズの言ってる事も信じてあげたいけど、この場合はレフィーヤの言っている事が正しいわ。level1にミノタウロスは倒せないわ。」

 

レフィーヤの後にそう言って来るのはティオネ、どうやらティオネもレフィーヤと考えていることは同じみたい。

 

「ティオネ」

 

そうやって話していると、ベートさんとあの子の喧嘩が始まった。

 

「とっとと来いよ、雑魚。叩き潰してる!!」

 

ベートさんが挑発をすると、あの子は走り出して距離を詰めていく。

 

それに対してベートさんは攻撃態勢を取って蹴りを繰り出した。

 

私も含めた全員がこれで終わったと思った。

 

しかし、その考えはすぐに覆された。

 

目の前に広がっていた光景はベートさんの蹴りを片腕で防いでいるあの子の姿だった。

 

「ウソー!?」

 

「そんな・・・。」

 

「ウソでしよ!?」

 

「・・・!?」

 

ベートさんも止められた事に驚いていて、あの子がこう言った。

 

「受け止められたぐらいで動揺するなよ、弱く見えるぞ。」

 

それを聞いたベートさんは怒りで顔を酷く険しくなり、もう一度さっきよりも鋭い蹴りを放った。

 

けど、あの子はその蹴りを簡単に掴むと、ベートさんを持ちあげて振り回した後地面に思いきり叩きつけた。

 

地面に叩きつけられたベートさんは気絶しているのか動かない。

 

私はその光景を見てこう思った、凄いと。

 

level差など物ともしないあの強さはどうやったら身に付くのだろう、そう考えだしたら止まらなかった。

 

すると、あの子の所へフィンが向かっているのを見て私も行こうとしたらリヴェリアに止められた。

 

「アイズ、お前も他の者達と共に先に本拠(ホーム)に戻っていてくれ。」

 

そう言って来るリヴェリアの真剣な眼に私は素直にティオナ・ティオネ・レフィーヤと共にホームにへと戻っていった。



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九話

謝罪と会計をするために【豊穣の女主人】の中に戻ると、いきなりシルさんが僕に抱き着いてきた。

 

「もう、心配したんですよベルさん!!」

 

そう言って来るシルさんの目尻には涙が溜まっていて今にも零れ落ちそうだった。

 

「すみません。シルさん、この通り僕は何ともないので安心してください。」

 

僕がそう言うと、シルさんは僕から離れるとこう言って来る。

 

「確かにそうですけど・・・・。」

 

そう言って俯くシルさんにどう話しかければいいのか迷っていると、エルフの従業員の人がやって来る。

 

「それでどういった要件でしょうか?」

 

そう聞いてくるエルフの従業員の人に僕はこう言った。

 

「あの、このお店のお会計をと思いまして・・・。」

 

僕がそう言うと、エルフの従業員の人は納得をした表情をしてこう言ってくる。

 

「そうでしたか、それではお会計は5.960ヴァリスになります。」

 

「そうですか、それじゃあこれでお願いします。」

 

代金の額を聞いて僕はヴァリスの入った袋を取り出して代金を支払った。

 

それを終えると、シルさんが僕にこう言って来る。

 

「ベルさん、またのご来店をお待ちしてますね。」

 

「あっ、はい。わかりました。」

 

シルさんの言葉に僕はそう言うと、その後に女将のミアさんの所に向かう。

 

「ミアさん、すみませんでした!!」

 

そう言って頭を下げる僕に対してミアさんはこう言って来る。

 

「今回は見逃してやるが、今度やったらタダじゃ置かないからね。」

 

ギロリと睨み付けてくるミアさんにブルッと身体が震えてしまう僕。

 

何とかお許しを貰った僕は外で待っている神様の元へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ベル君がお店の中に入っていくのを見届けた後、ロキが話しかけてきた。

 

「おい、ドチビ。」

 

「なんだい、ロキ。」

 

ボクへの相変わらずの呼び方に辟易しながら言葉を返すと、ロキはこう言って来る。

 

「あのお前の眷属(こども)の言葉、あれはどういう事や?」

 

ロキのその問いに関してボクはすぐには言葉を返せなかった。

 

そんな事はお構いなしにロキは言葉を続けてくる。

 

「あんな冒険者になりたての子供が言うようなセリフとは思えれへんで。」

 

「そんな事、ボクだって解ってるよ。」

 

ロキの言っていることは正しい、だけどボクにはベル君を止める術がない。

 

だけど、ベル君の中で何かが変わったことは解っていた。

 

ミノタウロスを倒したとあの子から聞かされた時に心臓が止まるかと思った。

 

もし、あの子を失ってしまったらと考えるとそれだけでも怖い。

 

だけど、あの子は冒険者だ。

 

そんな危機的状況に陥るかなど分かる訳がない。

 

だから、ボクは強く言う事が出来ない。

 

でも、この言葉だけは言わせてもらった。

 

『ボクを一人にしないでおくれ。』と。

 

「ドチビ、ちゃんと自分とこの眷属を見とかなアカンで。」

 

そう言って来るロキにボクはこう言った。

 

「大丈夫だよ、ロキ。ベル君はそんなに馬鹿じゃないからね。」

 

「そうか、ほんじゃあな。」

 

そう言ってロキは自分の眷属の待つ本拠(ホーム)にへと帰っていくのだった。

 

すると、それと同時にベル君がボクの所へ戻ってきたのだった。

 

 

 

 

所変わって、摩天楼施設(バベル)の最上階・フレイヤの私室(プライベートルーム)では・・・。

 

「あぁ・・・、いいわ。」

 

美の女神にして最強派閥の一角【フレイヤ・ファミリア】主神・フレイヤは両手で頬に添えてウットリとした表情を浮かべながらある人物を注視している。

 

その人物はベルである、ロキの子供との喧嘩で圧倒的な力を見せつけたベルにフレイヤは心を奪われていた。

 

その様子は側仕えの様に佇む大男、【フレイヤ・ファミリア】首領・オッタル。

 

他の神の子供に意識を向けている主神の姿にも微動出せずに立っている。

 

すると、フレイヤがふと呟いた。

 

「でも、まだ何か(・・)が足りないわね。」

 

ため息交じりにそう言いながら椅子に座るフレイヤ。

 

ここで初めてオッタルが口を開く。

 

「何が足りないのでしょうか、フレイヤ様。」

 

そう言って来るオッタルに対してフレイヤは笑みを浮かべながらこう言って来る。

 

「それは私にも分からないわ。」

 

それを言った後、フレイヤはフゥッと息をつくのだった。

 

 

 

 

 

神様の所へ戻って来ると、あれだけいた人だかりも無くなっていた。

 

「それじゃあ僕達も帰ろうか、ベル君。」

 

「はい、神様。」

 

神様の言葉に僕はそう返事をして本拠(ホーム)へと帰るのだった。

 

本拠に帰ると、僕は神様にこう言った。

 

「神様、【ステイタス】の更新をして貰っても良いですか?」

 

そう言って来る僕に対して神様はこう言って来る。

 

「別に構わないよ、僕も少し気になっていたからね。」

 

そう言って来る神様に対して僕は上着を脱いでいつも【ステイタス】更新している格好になると、その上に神様が乗って来る。

 

そうして、着々と【ステイタス】が更新されていく。

 

それが終わると、神様がこう言って来る。

 

「ベル君、スキルが一つ増えたよ。」

 

そう言って来る神様は【ステイタス】を書き写された羊皮紙を見せてくれた。

 

その書き写されていた更新の結果は・・・。

 

ベル・クラネル

 

Level2

 

力EX 耐久EX 器用EX 敏捷EX 魔力I0

 

百獣S 覇気S 破砕A 耐異常S 拳打A 幸運A

 

この世における最強生物(カイドウ)

・力、耐久、器用、敏捷のアビリティを常時超高補正

最強(おもい)が続く限り効果持続

最強(おもい)の丈により効果向上

 

【覇気】

・三種の覇気を扱う事が出来る。

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・覇王色:全てを威圧する力

 

【海賊としての矜持(パイレーツ・プライド)】

・自由を求める事で敏捷のアビリティを高補正

 

【一騎打ち(タイマン)】

・一対一での戦闘の際、全アビリティ高補正

 

【百獣の憤怒(ラージ・オブ・ビースト)】

憤怒(いかり)による全アビリティ高補正

憤怒(いかり)が続く限り効果持続

憤怒(いかり)の丈により効果向上

 

羊皮紙に書かれている自分の【ステイタス】を見ていると、神様がこう言って来る。

 

「いいかいベル君、もう今日みたいに誰彼構わずに喧嘩を買ったり売ったりしたら駄目だよ。」

 

「・・・はい。」

 

そう言って来る神様に対して僕はそう言うのだった。

 

 

 

【豊穣の女主人】の一件から一夜が明けて、僕はエイナさんから呼び出しを受けてギルドにやって来ると、何故か個室の面談室に案内された。

 

面談室に入ると、そこにはエイナさんが座って待っていた。

 

僕がエイナさんの正面に座ると、エイナさんがこう言って来る。

 

「ねぇ、ベル君私ね朝凄い話を聞いちゃったんだけど・・・。」

 

そう言って来るエイナさんの表情は笑顔でも目は笑っていなかった。

 

たぶん昨日の【ロキ・ファミリア】の団員との喧嘩の事だとすぐにわかった。

 

「エイナさん、それ僕ですよ。」

 

色々と話の流れをぶった切ってそう言うと、エイナさんがこう言って来る。

 

「そうだよね、この話を聞いて白髪に赤い眼って私の知っている冒険者だと君しかいないからね!!ただでさえ君は特異なスキルを持っているんだよ!!それなのになんでその自覚が薄いの!!」

 

大声をそう言った後、エイナさんは手で顔を覆いながら溜息を吐くと疲れた顔をして続けてこう言って来る。

 

「ベル君、お願いだから私に心配させないでね。それと、極力は面倒事は避けるように!!」

 

そう言いながら迫って来るエイナさんの迫力に押されて僕はこう言った。

 

「ぜ、善処します。」

 

いや、そう言うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エイナさんとの話を終えた僕はダンジョンに向かう前にアイテムの補充をすることにした。

 

西の目抜き通り(メインストリート)から外れた少し深い路地裏にある【青の薬舗】という【ミアハ・ファミリア】の本拠(ホーム)兼店にやって来た。

 

「こんにちは、アイテムが欲しいんですけど・・・。」

 

僕はそう言いながら店の中に入ると、犬人(シアンスロープ)の女性が奥の方から現れた。

 

「・・・あっ、ベルだ。」

 

「お久しぶりです、ナァーザさん。」

 

ナァーザさんはこの【ミアハ・ファミリア】の団員であり薬師なため、僕はここの回復薬(ポーション)を買っている。

 

「ベル、最近・・・ここに来なかったから・・・何かあったの?」

 

そう聞いてくるナァーザさんに僕はこう言った。

 

「まぁ、色々ありまして・・・。」

 

茶を濁すように言う僕に対して首をかしげるナァーザさん。

 

すると、また店の奥から一人の男性がやってくる。

 

「おぉ、ベル・クラネルか。しばらく顔を見なかったが息災だったか?」

 

僕にそう言って来る神物が【ミアハ・ファミリア】の主神・ミアハ様だ。

 

「はい、ミアハ様達も元気そうで何よりです。」

 

僕がそう言うと、ミアハ様は笑みを浮かべながらこう言って来る。

 

「はっはっは、俺もナァーザも元気にやっているよ。」

 

そう言っているミアハ様に対してナァーザさんはこう言った。

 

「ミアハ様は相変わらずタダ同然で回復薬(ポーション)を渡しちゃうから火の車。」

 

「・・・ははははっ。」

 

ナァーザさんの一言に乾いた笑いをするミアハ様。

 

「何はともあれ元気そうで何よりです。」

 

僕はそう言った後、注文をする。

 

「それじゃあ回復薬(ポーション)を1ダースください。」

 

僕がそう言うと、ミアハ様が驚きながらこう言ってくる。

 

「ベルよ、そんなに回復薬を買うのだな。そんなに気合を入れてどこまで潜るのだ?」

 

「行ける所までにしようと思っているんです。」

 

ミアハ様の問いかけに僕はそう答えているとナァーザさんがケースに入った回復薬1ダースを持ってやって来る。

 

「・・・はい、ベル・・・回復薬1ダースだよ。」

 

そう言いながら僕の前に回復薬を置くナァーザさんに6000ヴァリスの入った麻袋を渡した後、回復薬をバッグパックに入れる。

 

「それじゃあ僕はこれからダンジョンに行ってきますね。」

 

「うむ、怪我の無い様にな。」

 

「気をつけてね。」

 

そう言って来るミアハ様とナァーザさんに僕はこう言った。

 

「はい!!」

 

そう言った後、僕は真っ直ぐにダンジョンにへと向かうのだった。




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十話

青の薬舗を出た後、ダンジョンに向かった僕はゴライアスを討伐した後すぐに地上に戻った為踏み込まなかった十八階層にへと足を踏み入れた。

 

十八階層 この階層はモンスターが発生しない安全階層(セーフティーポイント)であり水晶と自然に満ち溢れた地下世界で、別名が「迷宮の楽園(アンダーリゾート)」と呼ばれている。

 

その事をエイナさんから聞いていたけど・・・、本当に地下なのに明るいな。

 

そんな事を考えながら階層内を歩いていると階層の東部にある断崖の上に村があるのを見つけた。

 

これもエイナさんから聞いた話だけど、この階層には冒険者達が独自に作り上げた街があるとか。

 

確か街の名前はリヴィラだったかな。

 

今回リヴィラに行く事は無いため、通り過ぎて十九階層に続く階段を下りていく。

 

十九階層は二十四階層まで木肌でできた壁や天井、床は巨大な樹の内部を彷彿とさせていて、燐光の代わりに発光する苔は無秩序に迷宮中で繁茂し、青い光を放っているから視界は開けている。

 

その十九階層の中を歩いていると、バトルボア、バグベアー、ガン・リベラ、リザードマンなどのモンスターが群れとして襲ってきた。

 

だが、こんな群れ(もの)では僕は止まらない。

 

武装色の覇気を纏った拳でバグベアーの頭を砕き、突進してくるバトルボアを蹴り上げ、噛み付いてこようとするガン・リベラに石を投げつけて撃ち落とし、リザードマンの首を掴むと同時にへし折った。

 

その群れを一掃した後、持ってきた巨大な麻袋へと魔石とドロップアイテムを入れていく。

 

魔石とドロップアイテムを回収し終えた僕はまだまだ入る麻袋を持って下の二十階層にへと降りていく。

 

二十階層に降りてくると、僕は見聞色の覇気を使ってモンスターがより多くどこに集まっているのかを調べようとしたその時!!

 

前方から冒険者の一団が慌ただしくこっちにへと向かってきた、というよりはやっとの事で逃げてきたという方が正しいな。

 

そう考えていると、冒険者達は僕の横を通り過ぎていき上の階層にへと昇って行くのを見ながらこう思った。

 

二度目だな、この状況。

 

「グオオオォォォォォォッ!!」

 

そんなことを考えているとその後にやって来たのはバトルボア、バグベアー、ガン・リベラ、リザードマンに加えてグリーンドラゴンが雄叫びをあげながら迫ってきていた。

 

グリーンドラゴン、確か二十四階層に出てくる希少怪物(レアモンスター)だった気がするな。この階層まで上がってくるのは珍しいな。

 

そう思っていると、グリーンドラゴンが口を開いて鋭く巨大な牙を突き立ててくるが、その牙が僕に突き刺さることはなかった。

 

むしろ、僕の身体によって自慢の牙は無残にも砕けたのだった。

 

牙が砕かれたことによって走る激痛に絶叫するグリーンドラゴンをよそに僕は拳を隙だらけのどてっ腹に叩き込む。

 

その瞬間、グリーンドラゴンは近くにいたほかのモンスターたちも巻き込みながら後ろにへと倒れていく。

 

巻き込まれなかったモンスター達がその隙間をすり抜けて襲って来るが、僕はそのモンスターの群れを殲滅するのだった。

 

モンスターの群れを殲滅した後、僕は魔石とドロップアイテムを回収していく。

 

全部回収し終えて持ってきていた麻袋は入る所が無いくらいに膨れ上がっているのを確認すると、地上に向けて歩き始めるのだった。

 

 

 

 

地上に戻ってくるとギルドに行き、集めて来た魔石とドロップアイテムを換金する。

 

換金を終えると、僕は掲示板に張られていたある張り紙が目に入って来た。

 

怪物祭(モンスター・フィリア)?」

 

そう目に入った言葉を呟くと、余計に気になってしまったためエイナさんに聞くことにした。

 

「エイナさん、掲示板に張ってあった怪物祭(モンスター・フィリア)って何なんですか?」

 

「あぁ、この怪物祭(モンスター・フィリア)っていうお祭りはねこのオラリオで数年くらい前から開催されるようになった年に一度のお祭りの一つなの。」

 

「へぇ、そうなんですか。」

 

「【ガネーシャ・ファミリア】が主催で催されるこのお祭りは闘技場を一日借り切ってモンスターを調教(テイム)する所を観客に見せるっていうものなの。本来ならダンジョンに生息しているモンスターは気性が荒くて凶暴なものが多いから調教を行うのは極めて難しい上にそれ以前にモンスターをダンジョン内で捕獲して闘技場まで連れてくることも難儀なんだけど、【ガネーシャ・ファミリア】に所属をしている冒険者達は腕利き揃いであるためこういったことも可能にしているからなの。」

 

僕がそう聞くと、エイナさんはその事について教えてくれた。

 

その話を聞いて僕は少し考え込む、神様と何処かに出かけた事ってなかったな、と。

怪物祭(モンスター・フィリア)か・・・、息抜きには丁度良いかもな。

 

「それは僕もちょっと気になりますね、当日は休息日にして祭りの参加しようと思います。」

 

僕がそう言うと、エイナさんがこう言って来る。

 

「そうだね、いい考えだと思うよ。」

 

「それじゃあエイナさん、ありがとうございました!!」

 

そう考えた僕はエイナさんにお礼を言った後、まっすぐ本拠(ホーム)にへと帰っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

本拠に戻ってくると、どこかへ出かけようと準備をしている神様がいた。

 

「神様、何処か出かけるんですか?」

 

「あっ、お帰りベル君。そうだよ、今日は【ガネーシャ・ファミリア】で神会(デナトゥス)があるからそれに参加するんだ。」

 

「そうなんですか、気を付けて行って来てくださいね。」

 

そう言って来る神様に対して僕はそう言った。

 

「うん、それじゃあ行って来るね!!」

 

神様はそう言いながら神会にへと出かけて行ったのだった。

 

本拠(ホーム)に残った僕は換金したばかりの金を持って慌ててある場所に向かうのだった。

 

 

 

夜空に月が浮かび、この迷宮都市・オラリオを静かに照らしてくれている。

 

『本日はよく集まってくれたな皆の者!!俺がガネーシャである!!さて、積もる話もあるのだが今年も例年通りに三日後には怪物祭(モンスターフィリア)が行われる!!皆のファミリアにもどうか是非とも・・・・・・・・・・。』

 

今回の神会(デナトゥス)の主催者であるガネーシャが挨拶をしている中、他の神々は思うように行動していた。

 

僕はいつもの服装に上着を着ただけの恰好で、持参したパックにテーブルに並べられている日持ちのしそうな料理を入れていく。

 

「アンタ、あの頃と何にも変わらないわね。」

 

「!?」

 

突然、背後から声をかけられた事に驚いて喉を詰まらせてしまうけど、水を飲んで流し込んだ。

 

「ぷはぁっ、急に驚かさないでくれよヘファイストス!!」

 

後ろを振り向くと、僕が展開にいる時からの神友である鍛冶神ヘファイストスが呆れた表情をしながら立っていた。

 

「まぁ、元気そうで何よりだわ。ヘスティア、アンタもファミリアを持つ事になったんだからちゃんとした振る舞いをしなくちゃダメよ。」

 

「それくらいは僕だって分かってるさ。でも、こればっかりは仕方が無いじゃないか、僕の所は零細ファミリアなんだからさ。」

 

「そんなこと言っても主神であるアンタががそんなんじゃダメなんじゃないの。」

 

「うぐっ!!」

 

ヘファイストスの的確な指摘にボクは呻き声をあげてしまう。

 

「ねぇ、二人だけで話さないで頂戴。一緒に会場を見て回りましょうって言ったじゃない。」 

 

そう言って言いながらヘファイストスの隣から現れたのはオラリオ最強の一角である【フレイヤ・ファミリア】主神のフレイヤだった。

 

「ゲッ、フレイヤ何でここに!?」

 

「あら、ヘスティアお久しぶりね。」

 

ボクの言葉をスルーしたフレイヤはそう言って来て、ヘファイストスがこう続けて来た。

 

「さっき会場の入り口で偶然出会ったのよ、それで一緒に会場を回る事にしたのよ。」

 

ヘファイストスは軽いノリでそう言って来るが己の苦手としているフレイヤが目の前にいるだけではなくて、その美の神(フレイヤ)の美貌に目を奪われた男神達の視線が集中しているため鬱陶しい事この上ないとばかりにボクは顔を顰める。

 

「それにしても、フレイヤが参加してくるなんて何時ぶりかしらね。」

 

「さぁ、そんな事一々覚えていないわ。強いて言うなら気分が乗らなかったって所かしら。」

 

ヘファイストスの問いに葡萄酒(ワイン)を一口踏みながらそう言っているフレイヤ。

 

ボクはフレイヤとヘファイストスの話を聞きながら料理を食べていると、【ガネーシャ・ファミリア】の団員の一人が僕たちのもとにへとやってきてこう言って来る。

 

「神ヘスティア、眷属の方からのお届け物です。」

 

「ベル君から?なんだろう?」

 

その団員は届け物である箱をボクに差し出しながらそう言って来るのに対して、ボクはその箱を受け取る。

 

その事を確認した団員はお辞儀をした後、この場から離れていく。

 

「一体何かしら、開けてみたらどうかしら?」

 

「うん、そうだね。」

 

フレイヤに言われて箱を開けると、そこに入っていたのは淡い水色を基調とした落ち着きのあるドレスだった。

 

「あら、ステキじゃない。」

 

「そうね、ヘスティアさっそく着てきたらどうかしら?」

 

ヘファイストスとフレイヤもこのドレスの事を見て賞賛してくれる。

 

「そ、そうだね、それじゃあ今から着替えてくるよ。」

 

ボクは二人にそう言ってドレスにへと着替えに行くのだった。

 

 

 

僕は神様が出かけた後すぐに仕立て屋に行き、一着のドレスを仕立てて貰うとそのまま【ガネーシャ・ファミリア】の本拠(ホーム)に届けて帰路を歩いている。

 

「神様、喜んでくれたかな?」

 

そう言いながら僕は|本拠にへと歩いて帰っていくのだった。



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十一話

ボクはベル君の届けてくれた淡い水色のドレスに着替えて会場にに戻ってくると、何故か男神達が騒がしかったけど無視することにして、ヘファイストスとフレイヤの元に戻ってくると、そこにはロキまでがいた。

 

「ゲッ、ロキ!?」

 

「ゲッってなんやねん、ゲッって!!ちゅうか、なんやねんそのドレスは!?」

 

ボクの言葉に噛みついて来るロキだが、ボクの来ているドレスを見てそう言って来るのに対してこう言ってやった。

 

「ふふん、このドレスは眷属(こども)のベル君がボクの為に届けてくれたドレスなんだよ!!」

 

「あっ、そうか。」

 

殊更興味が無いという感じでそう言って来るロキに対していつもなら喧嘩腰で行くのだが、先日の一件の事もあるのだが、何より眷属(ベル)の用意してくれたこのドレスを汚したくは無かった。

 

「それで、揶揄う為だけにここに来たのかい?」

 

ボクがそう問いかけると、ロキはこう言って来る。

 

「そんだけや。」

 

ロキの言葉を聞いてボクは思わずコケそうになったけど、何とか耐えた。

 

「って言うのは冗談やけど、用はあるで。」

 

その言葉を聞いてボクは身構える。

 

ロキはボクに向かってこう言って来る。

 

「お前んとこの眷属(こども)、異常すぎとちゃうか。」

 

そう言って来るロキに対してボクはこう言った。

 

「それがどうかしたのかい?」

 

「もう一回だけ確認させてもらうわ、ホンマに【神の力(アルカナム)】使ってないんやな?」

 

「何度も答えてあげるよ、使ってないってね。」

 

そう言いあっている二柱の神の間に入っていくのは一人の美の神。

 

「ちょっとロキも、ヘスティアも楽しい宴の席なのにそんな顔しちゃダメよ。」

 

会話に割って入ってきたのはフレイヤだった。

 

「ちょい、フレイヤ邪魔すんなや。こっちは今大事な話してんねや。」

 

そう言っているロキに対してフレイヤはこう言った。

 

「あら、それならもっと別の場所で話した方が良いじゃないかしら?」

 

「うぐっ」

 

そう言って来るフレイヤに対してロキは言葉を詰まらせる。

 

「それじゃあ、私はこの辺で失礼させてもらうわね。」

 

「もう帰るのかい、フレイヤ?」

 

フレイヤの言葉にボクがそう問いかけるとこう言って来る。

 

「えぇ、興味深いことも聞けたし、それにここにいる男神(おとこ)は食べ飽きちゃったし。」

 

その言葉に何人かの男神が反応する。

 

「すげ~」

 

思わずそんな言葉が口からこぼれてしまった。

 

「そんじゃ、ウチも帰るとするかな。」

 

そう言ってロキも帰ろうと僕の横を通り過ぎる時にこう言って来る。

 

「ドチビ、あの色ボケ女神には気ィつけときや。」

 

そう言って早々に去っていくロキの後ろ姿を見ていると、ヘファイストスがこう言って来る。

 

「私も忠告しておくわ。フレイヤには気をつけなさい。」

 

「う、うん、分かったよ。」

 

ロキに続いてそう言って来るヘファイストスの言葉にボクは同意する。

 

しばらくして、【神の宴(デナトゥス)】は終わりを告げてボクはベル君の待つ本拠(ホーム)にへと帰っていった。

 

本拠に帰ってくると、ベル君がソファの上で熟睡していた。

 

「遅くなってごめんね、ベル君。」

 

そう言いながらドレスは綺麗にクローゼットに入れていつもの服装に着替えてベッドの中にへと潜るのだった。

 

その一方で、摩天楼施設(バベル)の最上階、そこを私室(プライベートルーム)として使用している美の神フレイヤが自室へ戻って来て優雅に葡萄酒(ワイン)を口に含み飲み干した後こう言って来る。

 

「ヘスティアったらどうやってあんなにも感情を隠せるようになったのかしら?」

 

そう言いながらも楽しそうに笑むフレイヤは外にへと目を向ける。

 

「それに、ロキの言っていた通りヘスティアの眷属(子供)は規格外ね。まさか・・・、第一級冒険者(level5)に勝ってしまうなんてねぇ・・・。初めて見かけた時も美しかったのに、より一層魅力が増したわ。でも、あの様子ならlevel6いえ、level7(あなた)にも勝る力を持っているのかしら?あなたはどう思うのかしら、オッタル?」

 

そう言ってフレイヤは後ろに控えている自分の眷属(オッタル)に問いかける。

 

「・・・自分の目で確かめない事には分かりませんが、得体が知れないものを感じるのは確かです。」

 

主神(フレイヤ)の問いに即答で返すオッタル。

 

「そうね、私もあの子の魂には疑問を持っていたの。あんなにも純粋な魂に獣のような凶暴な()や皇帝の様な気高さを持つ()を持っているのかしら。」

 

フレイヤはそう言いながら自分の顎に手を当てて考え込み始める、そしてある事を思い出す。

 

「そうだわ、もうすぐ怪物祭(モンスター・フィリア)だったわね。良い事を思いついたわ。」

 

そう言いながらフレイヤはオッタルに顔を向ける。

 

「全てはフレイヤ(あなた)様の為に。」

 

オッタルはフレイヤが考えを聞かずにそう言いながら静かに頭を下げるのだった。

 

 

翌日、僕が目を覚ますといつの間に帰って来ていた神様がベッドの上で寝ていた。

 

「行ってきます、神様。」

 

神様を起こさないように動いてダンジョンに潜る準備を整えてそう言ってから本拠(ホーム)を出るのだった。

 

そして、変わった出来事が起こる事無く怪物祭(モンスター・フィリア)当日を迎えるのだった。



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十二話

怪物祭(モンスター・フィリア)当日、僕は今日一日は休息日としてダンジョンには行かずに神様と一緒に祭りに参加することにした。

 

「楽しみだね、ベル君。」

 

「そうですね、神様。」

 

そう話しをしながらエイナさんから聞いた祭りの醍醐味である【ガネーシャ・ファミリア】が開催しているモンスターの調教(テイム)を見学するために闘技場(コロッセウム)に向かっていると、後ろから声を掛けられた。

 

「おぉー、白髪頭丁度良い所に通りかかったニャ。」

 

「えっと、どうかしたんですか?」

 

僕達に話しかけて来たのは【豊穣の女主人】の猫人の女性店員さんで、商業ファミリアらしき紋章(エンブレム)の刻まれた紫色の可愛らしいがま口財布を手渡してくる。

 

「これをおっちょこちょいのシルに渡して欲しいのニャ。」

 

主語が抜け落ちている言葉に僕と神様が首を傾げていると、もう一人の女性が現れた。

 

「アーニャ、それでは説明不足ですよ。クラネルさんが困っています。」

 

静かにそう指摘したのはエルフの女性店員さんだった。

シルさんと同じ給仕服を着ているので同僚という事は分かるのだが、自分の名前を言われたことに驚いてしまった。

 

「あの、どうして僕の名前を?」

 

僕の問いかけに対してエルフの店員さんは軽く会釈をしながら答えてくれた。

 

「私はリューと申します。シルの同僚で彼女がいつもクラネルさんの話をしているので、それで。シルはクラネルさんに夢中なんですよ。」

 

「そうだったんですか・・・。」

 

リューさんの話を聞いて納得をする僕は話を本題へと戻す。

 

「それでどうかしたんですか、シルさんがどうかしたとかって。」

 

僕の疑問にアーニャと呼ばれた猫人の店員さんが答えてくれた。

 

「実は怪物祭(モンスター・フィリア)を見に行ったシルが忘れていったこの財布を届けて欲しいのニャ。」

 

それを聞いてやっと事の本題を理解出来た僕と神様はこう言った。

 

「それくらいでしたら、別に構いませんよ。」

 

「そうだね、困った時はお互い様さ!」

 

「ありがとうございます、クラネルさん、神ヘスティア。」

 

リューさんとアーニャさんは僕達にお礼を言ってからお店の仕事にへと戻っていった。

 

「それじゃあ、人探しをしながらお祭りを楽しもうじゃないかベル君!!」

 

「はい、神様。でも、優先するのはこの財布をシルさんに届けるのが先ですからね。」

 

「わかっているさ、それくらい!!」

 

そうやって人だかりの中にへと入っていくのだった。

 

 

 

 

シルさんを探しながら祭りを堪能しているが、一向に見つかる気配が無い。

 

すると、前方の方から悲鳴らしき声が聞こえて何事かと思いながら身構える。

 

「モンスターだぁあああああああああああああああああああああああああああああっ!?」

 

誰かは分からないが言い放ったその一言を皮切りに周囲はあっという間に混乱状態に陥ってしまう。

 

その叫びと共にモンスターの一撃ではじけ飛ぶ屋台を見て周囲にいた人達は更に混乱し、少しでも早く離れようと必死に逃げ始める。

 

「なんだって!?」

 

神様は顔を青くさせて驚くが、僕はこう言った。

 

「神様、僕が時間を稼ぎますから今すぐここから逃げてください。」

 

「な、何を言ってるんだい!?あれだけの数のモンスターを君一人でどうにか出来る訳ないじゃないか!!」

 

そう言って来る神様に僕はこう言った。

 

「大丈夫ですよ、神様。僕は神様を絶対に一人にはしませんから。」

 

「あ・・・。」

 

僕はそう言ってからモンスターの密集している場所に突っ込んでいく。

 

「「「「「「「「「「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」」」」」」」」

 

咆哮を上げながらモンスター達は僕に襲い掛かって来るが、両腕両足に武装色の覇気を纏いながら迎え撃つ。

 

最初に突っ込んでくるソードスタッグの角を掴むと、その角をへし折って痛みに悶絶している隙に頭の下に蹴り砕き、シルバーバックは自分を拘束していた手錠の鎖を利用しての攻撃をしてくるが、僕はその鎖を拳で覇気を纏った砕き、懐に飛び込んだその瞬間にシルバーバックの鳩尾らしき部分に拳を叩き込むと同時に倒れこみ、オークは壊した屋台から使えそうな木材を手に握って殴りかかってくるが、僕はその木材ごと蹴りを放って頭を粉砕すると灰となって霧散した。

 

「やった、やった!凄いじゃないか、ベル君!!」

 

手放しで喜んで近づいて来る神様に僕はこう言った。

 

「いや、神様危ないから逃げてくださいよ!!下界では神様は力は使っちゃいけないですから!!」

 

「おいおい、ベル君。君が守ってくれるからボクは大丈夫さ!!」

 

屈託のない笑顔をしながらそう言って来る神様に僕は思わず苦笑してしまう。

 

だが、騒動はこれで終わりでは無かった。



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十三話

僕は神様を抱きかかえてモンスターとの遭遇を極力避けるために裏路地を通って移動しながら本拠(ホーム)に向かっていると、ある光景が目に飛び込んできた。

 

その光景というのが一匹のシルバーバックが僕達の前に立ち塞がったかと思えば突然地面から謎の植物系モンスター数十体がシルバーバックを喰らうというものだった。

 

「な、なんなんだいこれは!?」

 

次々に予測不能な事態を前にして神様はそう叫ぶ。

 

すると、その声に反応してなのか植物系モンスター達が襲い掛かってくる。

 

「チィッ!!」

 

舌打ちしながらも襲い掛かってくる植物系モンスターの触手と噛みつきを躱していく僕に神様がこう言ってくる。

 

「ベル君、ここはひとまず逃げよう‼時間を稼いで他の冒険者達を待てば…」

 

「神様」

 

そう言ってくる神様の言葉を僕は言葉を被せて止め、後ろに跳躍して植物系モンスターと十分な距離が出来たところで見聞色の覇気でこの周辺にモンスターがいないことを確認すると言葉を続ける。

 

「僕は逃げることは出来ません。ここで全部倒します」

 

そう言った瞬間、両拳両足を武装色の覇気で硬化させてモンスター達に向かって駆け出す。

 

僕の事を認識した植物系モンスターは何十本もの触手を使って襲い掛かってくるが、僕はそれを手刀で薙ぎ払う。

 

悲鳴じみた声を上げるモンスターを尻目に僕は頭らしき口のついた場所に一撃を見舞った。

 

その瞬間、一撃を受けたモンスターは灰へと変わり、残ったのは紫紺の魔石ではなく極彩色の魔石だった。

 

でも、今はそんな事どうでもいい。

 

神様に迫るモンスターの脅威を蹴散らすことが今の僕の使命だ!!

 

頭の中でそう考えながら次々と謎の植物系モンスターを倒していくと、突然モンスター達は向きを変えてある場所を向かっていく。

 

その方向の先を見ると、そこには【ロキ・ファミリア】が謎の植物系モンスターと交戦している。

 

だが、何故か金髪金目の少女ばかりが集中的に狙われている気がした。

 

その理由は何だと考えていると、少女の周りに風魔法が発生している事に気づいた。

 

つまり、あの植物系モンスターは魔法に反応している!!

 

しかも、僕が相手をしていた植物系モンスターも魔法に反応してそっぽ向いて少女の所に向かおうとしている。

 

それを見た僕はムカついた。

 

最初に喧嘩吹っかけて来たのはモンスター(お前等)の癖に今更無視してんじゃねぇよ!!

 

そうした怒りに呼応して硬化させていた拳や足から雷が発生する。

 

バリバリと激しく迸る雷を気にも止めずに全力で疾駆(はしっ)た。

 

その瞬間、激雷が轟き僕はその勢いのままに植物系モンスターを蹴散らした。

 



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十四話

謎の植物系モンスターを一掃した僕は他の事に目もくれずに神様の元に戻ると、モンスターに襲われる事無く無事な姿で立っている神様が見えて安堵の息を漏らした。

 

「神様、無事で良かったです」

 

「うん、それはボクの話だけどね・・・」

 

僕の言葉に対して呆れながらそう言って来るがその後には互いに笑みを浮かべていると、それを邪魔するようにモンスターが現れる。

 

「「「グォオオオオオオオオオオオッ!!」」」

 

「邪魔だ!!」

 

襲ってきたソードスタッグ、トロール、バグベアーを一撃で粉砕し、ちゃっかり魔石を回収してその場から移動する。

 

すると、ギルドの都市放送が流れてくる。

 

どうやら、逃げ出した全てのモンスターが討伐されたという内容だったため、事態は収束にへと向かうのだった。

 

その日の夜、今日の夕食はガッツリと肉尽くしを食べながら今日のモンスターの大脱走について話しをしていた。

 

「それにしても、今日は散々な一日だったよ」

 

「そうですね、しかもモンスターが町に逃げ出しましたし・・・。それにしても、あのモンスターはいつも僕が探索している階層にはいなかったので深層のモンスターなんじゃないかと思うですよ」

 

神様の言葉に同意しながらも自分の抱いた疑問をぶつける。

 

「う~ん、それに関しては僕は頼りにならないから明日アドバイザー君にでも聞いてみると良いよ」

 

「そうですね、そうします」

 

そういう結論に出た僕と神様はその後も楽しく夕食を食べるのだった。

 

夕食を終えて僕は上着を脱いで【ステイタス】の更新の準備をしていた。

 

「よーし、【ステイタス】を更新するよベルくん!!」

 

「はい、よろしくお願いします神様」

 

こうして、神様は手際よく【ステイタス】を更新していく。

 

「ベル君、すぐに写すからチョット待っていてくれ」

 

「はい」

 

そうして、【ステイタス】を羊皮紙に写した神様は僕に見せてくる。

 

そこに写っていたのは・・。

 

ベル・クラネル

 

Level2

 

力EX 耐久EX 器用EX 敏捷EX 魔力I0

 

百獣S→SS 覇気S→SS 破砕A→S 耐異常S 拳打A→S 幸運A

 

この世における最強生物(カイドウ)

・力、耐久、器用、敏捷のアビリティを常時超高補正

最強(おもい)が続く限り効果持続

最強(おもい)の丈により効果向上

 

【覇気】

・三種の覇気を扱う事が出来る。

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・覇王色:全てを威圧する力

 

【海賊としての矜持(パイレーツ・プライド)】

・自由を求める事で敏捷のアビリティを高補正

 

【一騎打ち(タイマン)】

・一対一での戦闘の際、全アビリティ高補正

 

【百獣の憤怒(ラージ・オブ・ビースト)】

憤怒(いかり)による全アビリティ高補正

憤怒(いかり)が続く限り効果持続

憤怒(いかり)の丈により効果向上

 

発展アビリティが四つ上昇しているだけで他は何も変わっていなかった。

 

「やっぱりあのモンスターを倒しても昇格(ランクアップ)はありませんでしたね」

 

「まぁ、昇格(ランクアップ)するには神々(ボクら)が認めるほどの偉業を達成しなくちゃいけないしね」

 

神様はそう言いながら(グラス)に入った水を飲む。

 

僕は上着を着直して隣に座って同じように水を飲む。

 

「それじゃあ、明日に備えて寝ようじゃないか!!」

 

「はい、神様」

 

こうして、僕達は明日に備えて眠りについた。

 

しかし、僕の身体にはある変化が起こっていた事をまだ知らなかった。

 

 

眠りについた僕はある夢を見る事になった、それはカイドウが青い龍に姿を変えて敵対する者達と激しい戦闘をしている所だった。

 

カイドウは口から熱風や炎を吐き、咆哮が雷になり、身体を動かせば暴風を起こしている。

それは正に天変地異という言葉が相応しいと思った。

 

そして、僕はより一層ダンジョンに潜り強くなりたいと思ったのだった。

 

 

 

 

怪物祭(モンスター・フィリア)の翌日、僕はいつもの様にダンジョンに来ていた。

 

今回はギルドにあった冒険者依頼(クエスト)から僕にでも出来そうな物を数種類を選んだ。

 

その内容は「ヘルハウンドの牙×十五個」「ライガーファングの毛皮×十個」「ミノタウロスの角×十個」の依頼書を提出し、正式に僕の依頼として受託された。

 

依頼書を懐に入れてから僕はダンジョンに向かうのだった。

 

ダンジョンの入り口までやって来ると、身体を解した後足を運ぶのだった。

 

そうして、僕は十三階層で黒犬(ヘルハウンド)の牙を十五個集めた後、十五階層にある一つの広間(ルーム)でミノタウロスの怪物素材(ドロップアイテム)である《ミノタウロスの角》を集めていた。

 

「ヴヴォオオオオオオオオッ!!」

 

「フッ!」

 

吠えながら石斧を振り下ろすミノタウロスの横っ面に蹴りを入れて魔石に変えると共に目的の怪物素材(ミノタウロスの角)が現れる。

 

「これで目標数は稼いだぞ、あとは大虎(ライガーファング)の毛皮だけだ」

 

そう言いながら巨大な麻袋に魔石とドロップアイテムを回収する。

 

「ヴヴォオオオオオオオオッ!!」

 

そうしていると、ダンジョンの壁が罅割れ始める。しかも、その広さはこの広間(ルーム)全体にまで広がっている。

 

「確か、これが怪物の宴(モンスター・パーティー)って言うのかな?」

 

そう言っている内にダンジョンが新たに生んだミノタウロスの大群に取り囲まれた僕だけどこのくらい乗り越えなくちゃ行けない、英雄やカイドウ(あの人)の様に成るんだ!!

 

そういった覚悟で僕はミノタウロスの大群に攻撃を仕掛けるのだった。

 

そうして、僕は魔石とミノタウロスの角を大量に確保するのだった。

 

次に、ライガーファングの毛皮を求めて十七階層にへと降りて行くのだった。

 

 

 

 

 

十七階層に降りて来ると、僕はライガーファングの群れに襲われていた冒険者を見つけた。

 

「助けないと!」

 

僕はそう言って負傷した冒険者にさらに爪を立てようとするライガーファングの一匹に拳を喰らわせ他瞬間、ライガーファングはいとも簡単に宙を舞い岩壁に激突すると共に怪物素材(ライガーファングの毛皮)に変わる。

 

「き、きみ、は・・・」

 

「喋らずに体力を温存して下さい!」

 

傷の具合が酷いのかとぎれとぎれでしか喋れない冒険者に僕はそう言ってから残ったライガーファングの群れを相手するのだった。

 

ライガーファング全てを撃退し魔石と怪物素材(毛皮)を回収した後、僕は持っていた回復薬(ポーション)全てをその負傷していた冒険者に浴びせるが、焼け石に水の様な状態だった。

 

どうしたものかと考えた時、エイナさんの言葉を思い出した。

 

『ベル君、身体の調子がおかしかったら【ディアンケヒト・ファミリア】のアミッド・テアサナーレ氏を訪ねてね。彼女なら大抵の不調も回復してくれるから』

 

その言葉を思い出した僕はその冒険者の身体を抱えてダンジョンから地上への帰還を急ぐのだった。

 

しかし、焦れば焦る程にダンジョンは冒険者をあざ笑うように牙を剥くのだった。

 

「邪魔だ、どけぇええええええええええええええええええっ!!」

 

そう言いながら僕はヘルハウンドの頭を蹴り潰し、地上への階段を目指していく。

 

しかし、それを阻むようにダンジョンは怪物(モンスター)を刺客として差し向けて来る。

 

「わ・・・、たし・・・、を・・・」

 

そうやってモンスターを倒しながら進んでいると、抱えている冒険者が何かを言おうとしている。

 

「いいから、意識をしっかり保ってください」

 

それを無視するかのように僕は走り出す。

 

モンスターの猛追を躱し、何とか地上に辿り着くと他の冒険者に【ディアンケヒト・ファミリア】の場所を聞くと、そのファミリアが運営している治療院を紹介して貰い、情報量として余剰分のライガーファングの毛皮を五枚手渡してすぐに向かうのだった。

 

そうして、治療院に辿り着いた僕はその冒険者の人を預けて待合室に備え付けられた椅子に腰を下ろすのだった。

 

数十分後、一人の女性が僕の所までやって来た。

 

「貴方が重傷の冒険者を運んできた方でしょうか?」

 

そう聞いてくるのはサラリと溢れる細い長髪は白銀、大きめな双眸に儚げな睫毛がかかっていて、服装は白を基調とした治療師を思わせている【派閥(ファミリア)】の制服だ。

 

「私は【ディアンケヒト・ファミリア】のアミッド・テアサナーレといいます。」

 

その名前を聞いて僕も立ち上がって自己紹介をする。

 

「あの、初めまして!僕は【ヘスティア・ファミリア】のベル・クラネルと申します!!」

 

互いに自己紹介を済ませた後、アミッドさんが本題に入ってくる。

 

「クラネルさん、先程貴方が連れてこられた冒険者の方なのですが部隊(パーティ)を組まれていた方でしょうか?」

 

「いえ、違います。大虎(ライガーファング)の群れに襲われているのを発見してそれで・・・」

 

「なるほど、それでですか・・・」

 

僕の話を聞いてアミッドさんはなにか考え込み始める。

 

「あの、どうかされたんですか?」

 

「あっ、すみません。先程の冒険者の方でしたら治療を終えていますが意識は戻ってはいません。それでも、お会いになられますか?」

 

「いえ、僕が行っても何も出来ませんから・・・」

 

「そうですか、解りました。クラネルさんも」

 

そう聞いてくるアミッドさんにそう聞かれたが、僕がいても何も出来ないし、魔石の換金や冒険者依頼(クエスト)怪物素材(ドロップアイテム)を納めなければいけない事から今日の所は帰ることにした。

 

治療院を出た後、僕はギルドに行き最初に冒険者依頼(クエスト)怪物素材(ドロップアイテム)を提出し、報酬を受け取ってから魔石を換金して本拠(ホーム)にへと帰って行くのだった。

 

すると、僕が近道をするために普段とは違う路地裏に入ると小人族(パルゥム)の少女が慌てて走ってきて僕の前で倒れる。

 

「君、大丈夫!?」

 

そう言って僕が手を伸ばそうとした時、少女の後を追ってきた様子の男が剣を抜いた状態でやってくる。

 

「やっと追い付いたぞ糞小人族(パルゥム)ッ!!」

 

そう言いながら男は少女に剣を振り下ろそうとしていた。

 

僕はそれを見て男と少女の間に立ち、男の剣を裏拳で弾く。

 

「邪魔だガキ、そこどきやがれぇっ!!」

 

そう言ってくる男に対して僕は冷静に問いかける。

 

「この子に何するつもりですか・・・・?」

 

「うるせぇぞクソガキッ!!今すぐ消え失せねぇと後ろの糞小人族(パルゥム)ごと叩っ斬るぞ!!」

 

それに対して僕ごと後ろにいる少女の事を斬ると断言してくる始末だ。

 

ダメだ、どけない。

 

そう思った僕は麻袋を通路の隅に置き、拳を握った。

 

斜め後ろの方でその姿を見た小人族(パルゥム)の少女は驚きの表情を浮かべる。

 

それを見た男も瞠目した後顔を赤くさせながら怒声を上げる。

 

「マジで殺されてぇみてぇだな・・・!!」

 

そう言ってギラリと剣を構える男は完全に臨戦態勢に入った。

 

「死ねぇっ!!」

 

そう言いながら僕に向かって斬り掛かってくるのに対して、僕は見聞色の覇気で動きを察知し武装色の覇気で掌に纏い振り下ろされた剣を左右別々の場所で挟み、力任せにへし折った。

 

「な、なっ・・・・・・!?」

 

男は得物である剣をあっさりと折られた事に驚きを隠せず言葉を失ってしまっていた。

 

その隙だらけな姿を見て、僕はその隙に少女を逃がそうと振り向くと、既に少女の姿はなかった。

 

少女の気配は覚えたから追うことは出来るけど逃げられたのならいいかと思い、僕は放心状態の男を無視して麻袋を背負って本拠(ホーム)にへと帰っていくのだった。

 

そのまた翌日、僕はダンジョンに向かっていると後ろから声を掛けられる。

 

「お兄さん、お兄さん、白い髪のお兄さん。リリをサポーターとして雇って頂けませんか?」

 

そう聞いてくるのは自分より大きリュックサックを背負いフードを深く被った昨日冒険者に追いかけられていた小人族(パルゥム)の少女だった。

 

「えっと、昨日の小人族(パルゥム)()だよね・・・・・?」

 

僕がそう問いかけると、リリと名乗るサポーターの少女はこう言ってくる。

 

「ほえ?リリは小人族(パルゥム)ではなくて犬人(シアンスロープ)ですよ」

 

そう言いながらフードを取ると、そこには犬人(シアンスロープ)であることを証明する犬耳があった。

 

「ごめんね、変なこと言っちゃって」

 

「いいえ、リリは気にしてませんから!!」

 

しかし、僕は腑に落ちないことがあった。

 

それは昨日の少女と全く気配が同じだということだ。

 

まぁ、なにか企んでいるんだろうけどとりあえずは様子見だなと判断した。

 

「それでお兄さん、サポーターはいりませんか?」

 

そう言ってくる少女に対して僕はこう言った。

 

「それじゃあ、お願いするよ」

 

「はい、お任せください!!」

 

少女は満面の笑みでそう言ってくるのだった。

 

【ソーマ・ファミリア】所属のリリルカ・アーデ、そう名乗る少女とお試し契約という形でダンジョンに潜っている僕はいつも通り中層に降りようとすると、慌てて声を掛けてくる。

 

「ちょっと待って下さい、ベル様!?もしかして、ベル様は・・・」

 

「うん、Lv.2だよ」

 

それを聞いたリリはあんぐりと口を開けて驚きを隠せないでいた。

 

まぁ、声を掛けた冒険者がLv.2だなんて思わないよね。

 

内心そう思いながら僕は中層の入り口に入っていく。

 

中層に入ると、リリは落ち着かない様子で周囲を警戒していいると、ヘルハウンドとアルミラージの群れがやって来る。

 

「ベル様、この数はリリ達では・・・」

 

リリが逃げることを勧めてくるけど、僕はその逆で群れの中に突っ込んでいく。

 

そして、アルミラージが持つ迷宮の武器庫(ランドフォーム)である小型の石斧(トマホーク)を奪うと同時に覇気で硬化させてから投げるとその射線にいたモンスターを撃破していく。

 

それと同時に覇気を纏った拳と蹴りでモンスター達を蹴散らしていくのだった。

 

その光景を見てリリは唖然としていたが、すぐに復帰して戦闘に参加する。

 

僕の拳と蹴りの射程範囲外のモンスターに矢を射掛けていき、リリを狙うモンスターがいれば僕がそれを防ぐという方法でモンスター達を蹴散らしていくのだった。

 

「凄いですベル様、お強い!!」

 

「リリも中々いい動きをしていたと思うよ」

 

そう言ってくるリリに対して僕はそう言った。

 

「いえいえ、リリの力なんてなくてもベル様ならお一人でどうにか出来ていましたよ!!」

 

「・・・ははっ」

 

リリの言葉に苦笑いを浮かべる僕。

 

「さて、それじゃあ地上に戻るか」

 

「はい、ベル様!!」

 

僕の言葉にリリは賛同して地上に戻るのだった。

 

 

 

 

地上に戻ると、リリに換金を任せて僕はエイナさんにリリの事を伝えに行くのだった。

 

「【ソーマ・ファミリア】のサポーターかぁ・・・」

 

僕の話を聞いてエイナさんは苦い顔をする。

 

「やっぱり何かあるんですね」

 

「うん、【ソーマ・ファミリア】の冒険者って何か鬼気迫っているような感じがするのね。いつも換金所で揉め事を起こしているみたいだし・・・。でもね、お酒も有名な派閥(ファミリア)だからそこまでお金には困っていないはずだけど・・・」

 

「そうですか・・・」

 

エイナさんの説明を聞いて僕も考えを巡らせる。

 

「まぁ、ベル君が問題ないならそのままで良いと思うよ。だって、ベル君一人だと何をするか解らないもん」

 

「・・・・」

 

最後のエイナさんの言葉は聞かなかったことにしよう。

 

エイナさんとの話を終えて僕がリリの元に行くと、拳二つ分の麻袋が四つ机の上に置かれていた。

 

「ベル様、全額で400000ヴァリスです!!」

 

「結構稼いだね」

 

そう言ってくるリリに対して僕はそう言いながら対面に座る。

 

「そ、それでは・・・配分を決めましょうか」

 

そう言ってくるリリに対して僕は各10万ヴァリス入った麻袋四つの内三つを差し出した。

 

「えっ、ベル様!?」

 

僕の行動が不思議に思えたのかリリは驚きの声を出す。

 

「今回の報酬は元々半分にするつもりだったんだ。でも、リリには僕のレベルの事言っていなかったからね、だからそのお詫びにね」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!!」

 

「待ちません、それじゃあまた明日ね!!」

 

リリの言葉を無視して僕は本拠(ホーム)にへと帰るのだった。



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十五話

リリとサポーター契約を結んだ翌日、僕達は中層で魔石と怪物素材(ドロップアイテム)の収集に勤しんでいた。

 

「フッ!」

 

「ギャンッ!」

 

ヘルハウンドを蹴り一発で倒し魔石と怪物素材(ヘルハウンドの牙)を回収する。

 

「今日も絶好調ですね、ベル様!」

 

「う~ん、そうなのかな?いつもこの位は熟してたからよく分かんないや」

 

そんな会話をしながら僕達は正規通路を離れて別の場所でも収集を行おうと移動をする。

 

移動中、僕の見聞色の覇気がこの先の奥から人の気配を感知する。

 

しかし、それには疑問を抱かざるをえない。

 

その理由は・・・。

 

「リリ、この先って確か行き止まりだったよね・・・?」

 

「えっ、はい。この先は行き止まりになっています」

 

僕の問いかけに不思議に思いながらも即答してくれたけど、なんで行き止まりのその奥から人の気配がするんだろう?

 

疑問に思った僕は行き止まりとなっている場所にへと歩を進める。

 

「ベル様、どうかされたのですか?」

 

「リリ、ごめん。ちょっと付き合って」

 

僕の不可解な行動にリリは疑問府を浮かべているけどどうしても確かめておきたいという自己満足に付き合って貰うことにした。

 

そうして、行き止まりまでやってくると見聞色の覇気を集中させる。

 

すると、明らかに人の気配が感じ取ることが出来た上にその気配の人物には手足が拘束されていることは解った。

 

「リリ、少し離れてて」

 

「へ?わ、解りました」

 

僕の言葉にリリが了承すると共に少し距離を取るのを確認した後、武装色の覇気を纏わせて黒く硬化させた拳で行き止まりの壁を殴った。

 

「べ、ベル様!?」

 

僕の突発的行動に驚くリリ、すると殴られた場所に亀裂が走り、崩れ落ちると同時に大きな空間が現れた。

 

「べ、ベル様、これって・・・未開拓領域ですよ!?」

 

そう言いながら興奮しているリリを余所に僕はその空間に足を踏み入れる。

 

足を踏み入れた空間には何かの実験施設のような場所で、手術台のような台には手足を拘束されている褐色肌に白髪の少年がいた上に実験のすぐ後なのか大量の傷が刻まれていた。

 

「いつものやつじゃねぇな。誰だ、お前ら」

 

手足を拘束され傷だらけにも拘わらず覇気を滾らせ敵意を膨らませている少年に僕は名乗ることにした。

 

「僕はベル・クラネル。【ヘスティア・ファミリア】唯一の眷族です」

 

「リ、リリはリリルカ・アーデです。リリは【ソーマ・ファミリア】のサポーターです」

 

「それで君の名前は?」

 

「俺はリガスだ」

 

僕の自己紹介の後にリリが自己紹介をした後に問いかけると、意外にもリガスという少年は素直に名乗ってくれた。

 

そんなリガスに対して僕は運命的のようなものを感じた。

 

その瞬間、頭に激痛が走ると共にある光景が過ってくる。    

 

その光景というのが若い頃のカイドウと一人の少年が出会うというものだった。 

 

この出会いが四皇・百獣のカイドウが率いる百獣海賊団誕生の瞬間だった。

 

そして、その光景に出てきた少年とリガスが重なって見えた。

 

そう判断した僕はリガスに向かって口を開いた。

 

「リガス、ここから出れたらどうする?」

 

「「!?」」                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             

 

その言葉にリガスはもちろん、リリも驚きの表情を見せる。

 

「どう言うつもりだ、同情のつもりか」

 

怒気を孕ませる眼で睨み付けてくる。

 

「そうじゃない、わざわざ人体実験までされるくらいだ。それだけ特異な力を持っているって事だろ。なら、その力を()()の元で好きなだけ暴れて見せろ」

 

「!?」

 

この言葉に対して驚きの表情を見せるリガス。

 

「お前は何を言っているんだ・・・?」

 

「簡単な話だ、俺の右腕になれリガス」

 

リガスの戸惑いの言葉にはっきりと言ってのける。

 

「・・・良いだろう、俺は今からアンタの下につく。だが、その器じゃないと判断したとき問答無用に殺す!!」

 

「決まりだな」

 

その言葉に僕はニヤリと笑った後、リガスの手足を拘束する枷を破壊する。

 

枷から解放されるとリガスが体が動くか確認をした後こう言って来る。

 

()()()()、これから如何する?」

 

「何でさん付け?」

 

「今のアンタは俺の大将だ、敬うのは当然のことだ」

 

「そうか」

 

急なさん付けに疑問を抱いた俺の問いに平然と答えるリガス。

 

「そうですよ、ベル様。リガス様の言う通りこれからどうするのですか?」

 

リリも同意見なのかそう言ってくる。

 

「とりあえず、地上に出ようか」

 

そうして、僕達は一度ダンジョンから地上にへと出るのだった。

 

リガスはリリの持っていたリガスの身体を覆えるくらいの布を纏ってダンジョンを出るのだった。

 

 

 



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十六話

ダンジョンから地上に戻ってくると、早速僕達はギルドに行き魔石と怪物素材(ドロップアイテム)を換金してリリに報酬を払った後別れた。

 

僕とリガスは【ヘスティア・ファミリア】の本拠(ホーム)に帰って行くのだった。

 

本拠(ホーム)に着くと、リガスがこう言ってくる。

 

「ベルさん、ここが本拠(ホーム)なのか・・・?」

 

「そうだよ、入って入って」

 

問いかけてくるリガスに対してそう答えながら中に入ると神様が出迎えてくれた。

 

「お帰りベル君!おや、ベル君後ろにいるその子はもしかして・・・」

 

「はい、神様の考え通り入団希望者です」

 

「やったーー!!」

 

問いかけに答えると、神様は全身で喜びを表現するように飛び跳ねるのだった。

 

「リガスです、これからよろしくお願いします」

 

「うん、よろしくねリガス君!!ボクの名前はヘスティア、竈を司る女神でこの【ヘスティア・ファミリア】の主神さ!!まぁ、ファミリアとは言っても眷族はベル君と君しかいないんだけどね・・・」

 

「まぁ、その内増えていきますよ神様」

 

神様の皮肉に僕はそう言いながら椅子に座るのだった。

 

そうして互いに自己紹介を終えたリガスと神様はリガスに恩恵を授けるのだった。

 

「なにこれぇ・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

そうして、何の問題も無く恩恵を授かったリガスの【ステイタス】を見た神様がそんな呆けた声を出した。

 

リガスも【ステイタス】を写した羊皮紙を眺めながら無言のままだった。

 

「どうしたんですか、神様。リガスの【ステイタス】に何か問題でもあったんですか?」

 

「えっ、あぁ、ううん。そんなことは無いんだけどね・・・」

 

「? 僕にも見せて」

 

「はい」

 

僕が見たいと答えるとリガスから羊皮紙を受け取り確認する。

 

リガス・ルナーリア

 

Lv.1

 

力I0 耐久I0 器用I0 敏捷I0 魔力I0

 

古代S 翼竜S 火炎S 火災A 剣士A 拳打A 破砕A 覇気A

 

翼竜咆吼(プテラノドン)

任意発動(アクティブトリガー)

・翼竜化

・状態異常無効

・全アビリティ能力超高補正

 

百獣崇拝(クティノス・ラトレイア)

・超早熟する

崇拝(しんこう)が続く限り効果持続

崇拝(しんこう)の丈により効果向上そ

 

百獣忠誠(クティノス・ピスティス)

・超早熟する

忠誠(こころ)が続く限り効果持続

忠誠(こころ)の丈により効果向上

 

【覇気】

・二種の覇気を扱う事が出来る

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・流桜:内部破壊の覇気で武装色の上位

・未来予知:数秒から数十秒の先の未来が見える見聞色の上位

 

火災(キング)

・炎纏身体強化

・炎纏全能力超高補正

 

翼竜の悪魔の実(リュウリュウの実)

・人型

・人獣型

・獣型

 

炎翼血統(ルナーリア・ブラッド)

・発炎纏躯

・漆黒迅翼

・発炎時、耐久のアビリティ常時超高補正

・消炎時、敏捷のアビリティ常時超高補正

 

リガスの【ステイタス】を見た僕はある人物のことが頭を過った。

 

カイドウの腹心の一人で名前はキング、異名は"火災"のキング。

 

リガスはその男に関連する【ステイタス】(もの)なんだと判断できた。

 

「神様、僕の【ステイタス】も更新して貰って良いですか」

 

「へ?良いよ!!」

 

いきなりの言葉に呆けた声を出したけど神様は更新を了承してくれた。

 

僕はこう考えた、リガスとの出会いが運命のように感じたことによって【ステイタス】に変化が起こっているんじゃ無いのかと・・・。

 

そして、僕が【ステイタス】を更新するとこうなっていた。

 

ベル・クラネル

 

Lv.2

 

力EX 耐久EX 器用EX 敏捷EX 魔力EX

 

百獣SS 覇気SS 破砕S 耐異常S 拳打S 幸運A

 

この世における最強生物(カイドウ)

・力、耐久、器用、敏捷のアビリティを常時超高補正

最強(おもい)が続く限り効果持続

最強(おもい)の丈により効果向上

 

【覇気】

・三種の覇気を扱う事が出来る

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・覇王色:全てを威圧する力

・流桜:内部破壊の覇気で武装色の上位

・未来予知:数秒から数十秒の先の未来が見える見聞色の上位

・覇王色纏い:■■■■

 

海賊としての矜持(パイレーツ・プライド)

・自由を求めることで敏捷のアビリティを高補正

 

一騎打ち(タイマン)

・一対一での戦闘の際、全アビリティ高補正

 

百獣の憤怒(ラージ・オブ・ビースト)

憤怒(いかり)による全アビリティ高補正

憤怒(いかり)が続く限り効果持続

憤怒(いかり)の丈により効果向上

 

青龍の悪魔の実(ウオウオの実)

・人型

・人獣型

・獣型

 

百獣総督(クティノス・エクサルコス)

・仲間の数に比例して全アビリティ超高補正

・一定以上の叫喚時における伝播機能拡張

・乱戦時のみ、拡張補正は規模に比例

・戦意鼓舞

 

 

「スキルが増えてる上にどれもが規格外だよ・・・」

 

神様はそう言いながら頭を抱える。

 

「まぁ、なるようにしかなりませんよ神様」

 

「そうだね、ベル君」ガックシ

 

僕の言葉に答えるも神様はうなだれてしまった。

 

「ベルさん、これからの予定を確認しておきてぇんだが・・・」

 

「あぁ・・・、それならリガスの冒険者登録だね。それでも明日にしようか、今日はゆっくり身体を休ませて」

 

「了解した」

 

そうして、僕達は明日に備えて身体を休めるのだった。



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十七話

リガスが【ヘスティア・ファミリア】に加入した翌日、僕とリガスはギルドに来ていた。

 

「おはようございます、エイナさん」

 

「ベル君、おはよう。今日はどうしたのかな?」

 

「実は新しく団員が入ったので冒険者登録を」

 

「そうなんだ、おめでとう!!」

 

そうやって話していると、リガスが話しかけてくる。

 

「ベルさん、ここからは俺が・・・」

 

「解ったよ、それじゃあ僕はあっちの方で待ってるからね」

 

「あぁ」

 

そう言ってくるリガスに僕はそれを了承する。

 

「それじゃあエイナさんリガスのことよろしくお願いします」

 

「うん、任せて」

 

そうして、リガスは冒険者登録をした後エイナさんの講習を受けるのだった。

 

 

 

講習後、僕とリガスは摩天楼施設(バベル)の中にある鍛冶系派閥【ヘファイストス・ファミリア】の店舗に来ていた。

 

店舗とは行っても下級冒険者向けの出店されている店で、新人鍛冶師が作成した武器や防具が売られていて名前を売る場所でもあると言うことだ。

 

「リガス、気に入るのはあった?」

 

そう聞いてくる僕に対してリガスはこう言ってくる。

 

「いや、まだもう少し見させてくれ」

 

「解った、決まったら言ってね」

 

リガスの武器と防具は今回僕が購入する事になっている。

 

最初リガスは自分で稼いだお金で買うと言っていたけど神様の一声で折れるしかなかったと言うことだ。

 

そして、僕も武器を探している。

 

理由はいつまでも素手というわけにも行かないからだ。

 

触ってはいけないようなモンスターと戦ってからでは遅いからだ。

 

「ん?」

 

すると、僕の目に入ってきたのは一本の金棒だった。

 

「制作者は・・・ヴェルフ・クロッゾ・・・」

 

何故だかその鍛治師が造った金棒に惹かれたため、僕はその金棒を購入することにした。

 

「ベルさん、決まったぞ」

 

そう言ってくるリガスの手には刀があった。

 

「うん、それじゃあ会計に行こうか」

 

そうして僕は金棒を、リガスは刀を買うのだった。

 

ちなみに料金は・・・。

 

金棒・・・9990ヴァリス

 

刀・・・11000ヴァリス

 

武器を買った後は防具なのですが、僕は【この世における最強生物(スキル)】の影響からか傷を負うことが無いためリガスだけが防具を買う形になっている。

 

普段僕はリリを連れて中層を探索しているそれなりに防御力の高い防具が良いと考えていると【ヘファイストス・ファミリア】の店員が話しかけてくる。

 

「ようこそ、冒険者!!今なら俺の作った防御と耐久性に優れた防衣服を試着できるぜ!!」

 

そう言って店員が指差す方向には全身黒の服があった。

 

本当に只の服にしか見えないと思っていると、リガスが店員に尋ねる。

 

「おい、頭部の防具もあるのか」

 

「あぁ、冒険者は命あっての物種だからな」 

 

僕はリガスがそんな謎の注文をすることから出会ったことを思い出した。

 

自分を拉致した連中に対する対策だと考えに至った。

 

店員は顔を覆い隠せるくらいの黒い保護帽(ヘルメット)仮面(マスク)が一体になったものを取り出してくる。

 

「気に入った。その二つを買う」

 

「まいどあり!!」

 

こうして、リガスのダンジョンに行く準備は整った出会った。

 

 

ちなみに料金は・・・

 

服・・・15000ヴァリス

 

仮面保護帽(マスクヘルメット)・・・3000ヴァリス



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十八話

買い物を済ませると、僕とリガスはリリと合流するために噴水広場にやってきていた。

 

すると、狸人(ラクーン)の中年男が声を掛けてくる。

 

「おい、ガキ共お前ら最近アーデと連んでる奴らだろ」

 

「なんですか、いきなり?」

 

そう言ってくる中年に言葉を返すとこう言ってくる。

 

「あぁ、お前らに話があったんだよ。あいつには気をつけとけ」

 

「どういう意味だ」

 

「それはな、あのアーデって奴はウチの派閥でも面倒事の種なんだよ」

 

中年の言葉に今度はリガスが反応すると話を続けてくる。

 

「あのアーデって奴は取り入るのが上手ぇ。サポーターとして小隊(パーティ)に参加しては他の冒険者の荷物から物をかすめ取ってやがるんだ」

 

「「・・・・・・」」

 

リリのことをこれでもかと貶してくる中年に対して怒りを抱きながらも最後まで聞いたその上で・・・。

 

「それでよぉ、一つお前らにも儲け話があるんだよ」

 

「儲け話?」

 

「あぁ、今度あのアーデとダンジョンに潜るんだったら型に嵌めてやるのさ。それで今までの行いを清算させるんだ」

 

そう言いながら下卑た言葉を吐く中年に対して僕の返事はこうだった。

 

「死ね」

 

金棒に武装色を纏わせ思い切り振り抜いた。

 

「ぐぎゅべばぁ・・・・・・っ!!」

 

中年の顔は金棒の一撃で変形し天高くその肉体は宙を舞った。

 

「お前がしたいことは()()達に罪を擦り付けることだろ。だったら、おれ達も相応の対応をさせて貰うぜ」

 

未だに宙を舞う中年を見やりながらそう言った後、()とリガスはリリと合流するのだった。

 

「リガス」

 

「あぁ、ベルさんウチを舐めたケジメはキッチリと取らせる。それでリリルカの方はどうなさるんで?」

 

「リリのダンジョンでの知識は全て経験により得たものだ。選択肢は二つだ、改宗(コンバージョン)するか、生まれ変わった【ソーマ・ファミリア】()()として【ヘスティア・ファミリア(おれ達)】の傘下に下るか、だ」

 

「なるほど、そりゃあ良い考えだ」

 

そう話しながら噴水広場にやってくると、リリが先に舞っていた。

 

「おはようございます、ベル様、リガス様」

 

「うん、おはようリリ」

 

「あぁ」

 

そうやって挨拶しあった後、僕達はダンジョンに入っていくのだった。

 

「フンッ」

 

上層ではリガスの成長を促すために僕は極力手を出さずにいた。

 

リリはリガスの背後に迫るモンスターに県政程度の矢を射かけるなどのサポーターとしての仕事を全うしている。

 

「ベル様、今日はどこまで潜られるのですか?Lv.1のリガス様に中層はまだ早い気がしますが・・・」

 

「いや、いつも通り十七階層まで降りる。その方がリガスの成長にも繋がるからね」

 

「解りました、それでは参りましょう」

 

「あぁ」

 

そうして、僕達は十七階層まで降りて行きモンスターの魔石と怪物素材(ドロップアイテム)を収集するのだった。

 

その後は地上に戻って換金し分配をした後、リリにダンジョンに潜る前の話をする。

 

すると、リリは顔を蒼くさせながら逃げだそうとするも逃げられず椅子に座っている。

 

「それでベル様達はリリを如何するおつもりなのですか・・・?」

 

恐怖に染まった顔でそう聞いてくるリリ僕は優しくこう言った。

 

「なにもしないけど、一つの選択をして貰う」

 

「選択ですか・・・?一体どんな・・・」

 

改宗(コンバージョン)するか、新生【ソーマ・ファミリア】団長として【ヘスティア・ファミリア(おれ達)】の傘下に下るかの二択だ」

 

改宗(コンバージョン)でお願いします」

 

リリの選んだ選択肢は改宗(コンバージョン)だった。

 

「団長の座には興味ないの?」

 

「興味が無いと言えば嘘になりますが、団長になったとしてリリは確実に暴走をします。今まで受けてきた苦痛を億倍にして与えるようになるでしょう、そうなれば今度はリリがベル様達の粛正対象になってしまうので」

 

冷静、自分のことを冷静に分析し理解している。

 

だからこそ僕はリリルカ・アーデを欲したんだ。

 

「決まりだ、今夜【ソーマ・ファミリア】に襲撃する」

 

「わ、解りました!!」

 

「了解だ、ベルさん」

 

そうして、人知れずに【ヘスティア・ファミリア】による【ソーマ・ファミリア】襲撃作戦が発動されるのだった。

 

 

 

 

深夜、誰もが寝静まる時間【ソーマ・ファミリア】本拠(ホーム)の前に立つのはリガス只一人。

 

「さて、奴らは一人残らず焼き尽くす」

 

そう言いながら抜刀すると武装色の上位である流桜と炎翼血統(スキル)で生み出された炎を纏わせて敵陣に切り込んでいくのだった。

 

 

 

一方で、僕とリリは【ソーマ・ファミリア】が所有する酒蔵にへと来ていた。

 

さっき見聞色で気配を探ってみると本拠(ホーム)の倍以上の人数がいた。

 

しかし、神ソーマの気配は無かった。

 

「ちっ」

 

思わず舌打ちをしてしまうほどに僕は嫌悪感を抱いた。

 

その理由は解らないけど、ここであれば主神である神ソーマが酒造りのために訪れている可能性が高いとのことで来ているのだが問題点は一つ。

 

【ソーマ・ファミリア】現団長ザニスがどこにいるかだが、そこに関しては問題では無い。

 

ああいう人間ほど性根が腐っている上に向上心も無いからLv.1のリガスでも問題なしと判断した。

 

更に言うと、深夜までの時間リガスはダンジョンに潜った後に神様に【ステイタス】を更新して貰っている。

 

 

リガス・ルナーリア

 

Lv.1

 

力A880 耐久A980 器用B752 敏捷A899 魔力I0

 

古代S 翼竜S 火炎S 火災A 剣士A 拳打A 破砕A 覇気A

 

翼竜咆吼(プテラノドン)

任意発動(アクティブトリガー)

・翼竜化

・状態異常無効

・全アビリティ能力超高補正

 

百獣崇拝(クティノス・ラトレイア)

・超早熟する

崇拝(しんこう)が続く限り効果持続

崇拝(しんこう)の丈により効果向上そ

 

百獣忠誠(クティノス・ピスティス)

・超早熟する

忠誠(こころ)が続く限り効果持続

忠誠(こころ)の丈により効果向上

 

【覇気】

・二種の覇気を扱う事が出来る

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・流桜:内部破壊の覇気で武装色の上位

・未来予知:数秒から数十秒の先の未来が見える見聞色の上位

 

火災(キング)

・炎纏身体強化

・炎纏全能力超高補正

 

翼竜の悪魔の実(リュウリュウの実)

・人型

・人獣型

・獣型

 

炎翼血統(ルナーリア・ブラッド)

・発炎纏躯

・漆黒迅翼

・発炎時、耐久のアビリティ常時超高補正

・消炎時、敏捷のアビリティ常時超高補正

 

 

スキルの効果があるとは言え、成長速度が速すぎると思った。

 

まぁ、それは置いておいて僕達もやることをやってしまおう。

 

「それじゃあ、やるよリリ」

 

「はい、ベル様」

 

深夜帯なだけになるべく声を潜める、気付かれたら元も子もないからね。

 

僕はリリを背負って金棒に流桜と覇王色を纏わせ跳び上がった。

 

 

 

 

 

「降三世引奈落!!!」

 

 

 

 

 

 

 

流桜と覇王色を纏い激しく迸る黒雷を放つ金棒を振り回した後落下の勢いと二人分の体重も加わった事よって威力が跳ね上がった一撃が酒蔵に叩き込まれた。

 

その瞬間、その一撃によって都を揺るがし衝撃は付近の建物は吹き飛んだ。

 

その後、【ソーマ・ファミリア】の本拠(ホーム)から光の柱が立ち上ったところを見ると神ソーマは天界へ送還されたようだ。

 

あの後、戻って来たリガスから話を聞くと神ソーマは酒蔵からの爆発音を聞いて放心状態になって窓から転落したらしい。

 

あと、ザニスはリガスに交渉を持ちかけようとしたが問答無用で斬り捨てたらしい。

 

あと、ザニスの仕事部屋からは各地の貴族やら豪族らへの賄賂に密輸などの裏取引の書面を回収してきたらしい。

 

しかもその中にはダンジョン産モンスターの密輸に関する書類まであった。

 

まぁ、僕達としてはこれ以上首を突っ込む気は無いためこの裏取引の件に関しては憲兵役も務める【ガネーシャ・ファミリア】に押しつけることにした。

 

足が付かないように貧困街(スラム)の子供に駄賃を渡した上で【ガネーシャ・ファミリア】に届けて貰った。

 

ちなみに子供に頼んだのは初老の小人族(パルゥム)に変身したリリである。



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十九話

【ソーマ・ファミリア】からケジメを取ってすぐのこと、僕達は本拠(ホーム)にて神様に【ステイタス】の更新をして貰っていた。

 

「それでソーマは放心状態で窓から転落死したって事なんだね、リガス君」

 

「えぇ、そうです」

 

神様の言葉にリガスは淡々と事務的に答える。

 

そして・・・。

 

「君がベル君達と小隊(パーティ)を組んでいたって言う小人族(パルゥム)のサポーター君だね」

 

「・・・はい、そうですヘスティア様」

 

神様がそう言うとリリは借りてきた猫のように大人しくというよりかは小さくなりながら答える。

 

「君の事はベル君達から聞いているけど・・・、君はこれから如何していくんだい?」

 

そう聞いてくる神様にリリはこう答える。

 

「リリはあのまま行けば確実に殺されていました、用済みの道具として。だから、そんな危機的状況にいたリリを助けてくれたベル様達に報いたいのです。ヘスティア様、どうかリリを【ヘスティア・ファミリア】に入れてください、お願いします!!」

 

そう言いながらリリは地面に手をついて頭を下げる。

 

「嘘は言っていないね・・・。【ヘスティア・ファミリア】への入団を許可するよ」

 

「ありがとうございます!!」

 

「ただし、もう二度と前の派閥でして居たようなことはしないように。もし、破ったらどうなるかは解るよね」

 

「はい!!」

 

こうして、【ヘスティア・ファミリア】に新しい団員が加わったのだった。

 

【ソーマ・ファミリア】から【ヘスティア・ファミリア】へと改宗(コンバージョン)したリリの【ステイタス】がこちら。

 

 

 

リリルカ・アーデ

 

Lv.1

 

力I42 耐久I42 器用H143 敏捷G285 魔力F317

 

《シンダー・エラ》

・変身魔法

・変身像は詠唱時のイメージ依存。具体性欠如の際は失敗(ファンブル)

・模倣推奨

・詠唱式【貴方の刻印(きず)は私のもの   私の刻印(きず)は私のもの】

・解呪式【響く十二時のお告げ】

 

縁下力持(アーテル・アシスト)

・一定以上の装備過重時における補正

・能力補正は重量に比例

 

百獣崇拝(クティノス・ラトレイア)

・超早熟する

崇拝(しんこう)が続く限り効果持続

崇拝(しんこう)の丈により効果向上そ

 

百獣忠誠(クティノス・ピスティス)

・超早熟する

忠誠(こころ)が続く限り効果持続

忠誠(こころ)の丈により効果向上

 

【覇気】

・二種の覇気を扱う事が出来る

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・流桜:内部破壊の覇気で武装色の上位

・未来予知:数秒から数十秒の先の未来が見える見聞色の上位

 

魔法を持っていることには驚いたが、なるほどとも思った。

 

これであれば種族を偽り他派閥の冒険者から荷物などを掠め取れると言う訳だ。

 

スキルに関してはサポーター向きのスキルと言える。

 

しかし、今のままではダメだ。

 

「ベル様、どうかされたのですか?」

 

そう聞いてくるリリ本人に対して僕はこう言った。

 

「うん、リリには自衛の術を身に付けて欲しいんだよね」

 

「自衛・・・ですか・・・」

 

それを聞くと、リリは少々苦い顔をする。

 

「そう、もし僕やリガスが自分の戦闘にしか手が回らなかったらリリが狙われちゃうからね」

 

「確かにそれはそうですが、リリに戦いの才能なんて・・・」

 

「リリ、僕は別に前に出て戦えなんて言ってないよ」

 

「えっ」

 

「自衛は自分の命を守るための物なんだから」

 

「はい!!」

 

そんな会話をしながら夜は更けていくのだった。

 

 

 

 

 

早朝、オラリオはある話題で持ちきりだった。

 

それは【ソーマ・ファミリア】の本拠(ホーム)及び酒蔵が襲撃を受け、主神ソーマは天界へ送還され、眷族は皆殺しという内容と同派閥団長のザニスが賄賂や密輸を行っていたという内容だけだった。

 

「モンスターの密輸に関しては揉み消されてるか・・・」

 

しかし、密輸に関しては【ソーマ・ファミリア】だけではなく【イケロス・ファミリア】という派閥も関与していたらしくギルドは【イケロス・ファミリア】を指名手配することにした。

 

その理由は事情聴取の為に【イケロス・ファミリア】の本拠(ホーム)を【ガネーシャ・ファミリア】団長である【象神の杖(アンクーシャ)】シャクティ・ヴァルマと団員数名が訪れるともぬけの殻だったらしい。

 

これにより、【イケロス・ファミリア】は闇派閥(イヴィルス)寄りの位置付けとなった。

 

「う~ん、世の中何があるか解ったもんじゃ無いね」

 

そう言いながらパンを囓る神様に対して僕達の反応は・・・。

 

「まぁ、そうですね」

 

「あぁ」

 

「えぇ、そうです」

 

なんとも淡泊な反応だったとさ。

 



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二十話

【ソーマ・ファミリア】の騒動から一週間が過ぎた頃、【ヘスティア・ファミリア】に新しい団員が増えることになった。

 

それが肌頭(スキンヘッド)金の弁髪に帯型(ベルト)黒眼鏡(サングラス)を威圧感のある肥満体で巨漢の少年。

 

「初めましてだなぁ~、俺様は魔法大国(アルテナ)が産んだ希代の天才魔道具製作者(アイテムメイカー)ダマ様だ!!」

 

「なんだこの肉盾にしか使い道のねぇ肉塊は」

 

「んだと、この変態マスク野郎!!」

 

「「あぁん!?」」

 

売り言葉に買い言葉でリガスと自身をダマと名乗っていた男が睨み合う。

 

「仲良いね」

 

「「良くない(ねぇ)!!真似すんな!!」」

 

神様の言葉に息の合ったやりとりが行われたことによってそれに拍車がかかることを二人はまだ知らない。

 

「それでなんでダマ様は魔法大国(アルテナ)から迷宮都市(オラリオ)に?」

 

リリの質問に対してダマはリガスとの睨み合いを止め答え始める。

 

「良い質問だな、簡単なことだ。魔法大国(アルテナ)の奴等が俺様の才能に嫉妬しまくって罠に嵌めて追放されちまったのさ」

 

「ちなみにどのような発明をされたのですか?」

 

「それは・・・モンスターを一網打尽にする病原体(ウイルス)だ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

ダマの言葉に僕達全員が驚いた。

 

それがもし成功に至れば人類最高の発明になるからだ。

 

「その試作品を試した結果、近くの村の住民が死んじまってな。それで追放されたって訳だ」

 

「「「「だめだ、こいつ!!」」」」

 

追い出されたのは自分の開発したその病原体(ウイルス)のせいだろうと思ったがそれ以上は言うまいと思った。

 

「ベルさん、コイツはダメだ。いつか絶対やらかす。損得で動くなら損の方がデカすぎる」

 

「そうですね、リリもそう思います」

 

「ボクも二人に同意見かな」

 

そう言ってくる団員二人と主神の意見とは別の事を考えていた。

 

それはカイドウ率いる百獣海賊団の最高幹部の一人に病原体(ウイルス)を扱う奴がいたことだ。

 

だからこそ、僕は口を開いてこう言った。

 

「入団を認める」

 

「「「ベル(君)(さん)(様)!?」」」

 

「よっしゃあぁああああああああっ!!俺様の凄さが理解できる奴はいるんだよ!!」

 

「でも、やらかしたら()()()()()()?」

 

「うっす・・・」

 

でも、締めるところはしっかりと締めておくことが大事だよね。

 

ダマも納得してくれたみたいだし、良かった。

 

こうして、【ヘスティア・ファミリア】に新しくダマが加わった。

 

そして、神様がダマに恩恵(ファルナ)を授けるとこうなっていた。

 

ダマ・ヴェネノ

 

Lv.1

 

力I0 耐久I0 器用I0 敏捷I0 魔力I0

 

古代S 首長竜S 疫病S 疫災A 錬金A 神秘A 調合A 拳打A 破砕A 覇気A

 

首長竜咆吼(ブラキオサウルス)

任意発動(アクティブトリガー)

・首長竜化

・状態異常無効

・全アビリティ能力超高補正

 

百獣崇拝(クティノス・ラトレイア)

・超早熟する

崇拝(しんこう)が続く限り効果持続

崇拝(しんこう)の丈により効果向上そ

 

百獣忠誠(クティノス・ピスティス)

・超早熟する

忠誠(こころ)が続く限り効果持続

忠誠(こころ)の丈により効果向上

 

【覇気】

・二種の覇気を扱う事が出来る

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・流桜:内部破壊の覇気で武装色の上位

・未来予知:数秒から数十秒の先の未来が見える見聞色の上位

 

疫災(クイーン)

・病原体作成

・病原体強化

・病原体改悪

・抗体作成

・抗体強化

・抗体改良

 

首長竜の悪魔の実(リュウリュウの実)

・人型

・人獣型

・獣型

 

絡繰人間(サイボーグ)

・魔石接収循環

・肉体改造

 

戦争屋武技(ジェルマ・アーツ)

・火花

・電撃

・巻力

・透明

 

「なにこれぇ・・・」

 

神様は遠い目をしながらそう言っていたが、僕にとってはどうでも良かった。

 

「それじゃあギルドに行ってからダンジョンに行こうか」

 

そう言うと、リガスがこう言ってくる。

 

「ベルさん、それは良いんだがコイツも連れて行くとなると上層で動くことになるがどうするんだ?」

 

「いや、このまま行くよ。ダマにも早く強くなって貰いたいし」

 

「鬼ですね、ベル様」

 

僕の言葉にリリが冷静にツッコミを入れてくる。

 

「さぁ、行こうか」

 

こうして、新団員を迎えてダンジョンに挑むのだった。

 

この後、ダマがエイナさんの友人であるミィシャさんにちょっかいを駆けていたためそれが原因でリガスと喧嘩になりダンジョン探索が午後になってしまったのは後の話。



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二十一話

リガスとダマの喧嘩で予定がずれた為、僕達は昼食を済ませてからダンジョンに潜るのだった。

 

ダンジョンに潜るけども魔石や怪物素材(ドロップアイテム)を集めるのは変わらないが、スキルの確認をすることにした。

 

他の冒険者を巻き込まないように小広間(スモールルーム)に移動するのだった。

 

「ベルさん、スキルの確認をするとは言うが何をするんだ?」

 

「それはね、僕とリガスとダマのスキルになんとかの実ってあるじゃない。それを確認しとかないと土壇場で使うのはどんな事が起きるか解んないからな」

 

リガスの質問に僕は答える。

 

「なるほど」

 

「そんじゃあ、まずはこのダマ様がやるぜ!!」

 

それを聞いたダマがスキルを発動させ、肉体が変化を始める。

 

そうして、まるでインファント・ドラゴンのような首長竜な姿になった後、首長竜と人間の様に立ち上がった姿になった。

 

「ムハハハッ、こりゃいいぜ!!この力と俺の造った魔道具(マジックアイテム)が組み合わせれば敵は無いな!!想像が膨らむぜ~~~~!!」

 

そう言って高笑いをするダマにリガスがこう言った。

 

「一々騒ぐな、耳障りだ」

 

「なんだとテメェ!!」

 

「二人とも、止めろ」

 

今朝の二の舞を避けるために止める。

 

「済まねぇ、ベルさん」

 

「すんません」

 

僕の制止に二人が謝罪と共に喧嘩を止める。

 

「ダマのスキルは確認できたから次はリガスだね」

 

「えぇ」

 

リガスがその言葉に同意した後、頭に長大なトサカがあり長い嘴を持つ黒い飛竜(ワイヴァーン)の姿になり、次に両腕が翼とトサカがある人間の姿になりました。

 

「こんな所だ、ベルさん」

 

「うん、そこからどう戦いに生かすかだね」

 

「あぁ」

 

そうやって話していると、リリが話しかけてくる。

 

「ベル様、モンスターが来ました」

 

それに反応したのはリガスとダマ。

 

「「ベルさん、ここは俺(様)に任せてくれ」」

 

息の合った台詞を言った瞬間、睨み合いを始める。

 

「リガステメェ、俺様の真似してんじゃねぇよ」

 

「それはこっちの台詞だ、ダマ」

 

「「俺(様)の邪魔すんじゃねぇ!!」」

 

「お二人とも、息ピッタリですね」

 

「そうだね、これが喧嘩じゃなかったらなお良いんでけど・・・」

 

二人の言い合いを尻目に僕とリリは襲ってくるモンスターを迎撃する。

 

「よーし、上等だ!こうなりゃ、倒したモンスターの数でどっちが上か決めようじゃねぇか」

 

「フン、良いだろう。まぁ、勝敗は決まりきっているがな」

 

そうして、リガスとダマはモンスターを倒し始める。

 

ダマはその巨体と尾を生かして薙ぎ払うと共に魔道具(マジックアイテム)での攻撃を繰り出してモンスターを倒していき、リガスは人獣型の状態で翼となっている腕から斬撃を飛ばしモンスターを切り刻んでいく。

 

「お二方、凄いですねベル様」

 

「そうだね」

 

二人の猛攻によって襲いかかってくるモンスターは全て魔石と怪物素材(ドロップアイテム)に変わっていくのだった。

 

そうして数十分後には辺り一面に魔石と怪物素材(ドロップアイテム)だけが転がっていた。

 

「ムハハハッ、どうやら俺の勝ちのようだなリガス」

 

「ほざけ、ダマ。どう見ても俺の勝ちだろうが」

 

「「あぁん!?」」

 

結論から言って堂々巡りで喧嘩は収拾が付かなかったとだけ言っておこう。

 

こうして、僕達は四人での探索を終えて地上に帰還するのだった。

 

帰り道の途中、ある事に気付いた。

 

「あっ、僕だけスキルの確認してないや」

 

「そういえばそうでしたね」

 

「まぁ、明日にでも確認すればいいや」

 

自分だけスキルの確認をしていないことに気付いたが明日に持ち越しにすることにした。 

 



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二十二話

本拠(ホーム)に戻ってくると、神様もバイトを終えて帰ってきていた為【ステイタス】の更新をして貰うことにした。

 

僕のステイタスはあまり変化はなかったけど、リリ・リガス・ダマの三人はステイタスが急上昇していた。

 

リリルカ・アーデ

 

Lv.1

 

力I42→B742 耐久I42→B767 器用H143→S903 敏捷G285→A852 魔力F317

 

《シンダー・エラ》

・変身魔法

・変身像は詠唱時のイメージ依存。具体性欠如の際は失敗(ファンブル)

・模倣推奨

・詠唱式【貴方の刻印(きず)は私のもの 私の刻印(きず)は私のもの】

・解呪式【響く十二時のお告げ】

 

縁下力持(アーテル・アシスト)

・一定以上の装備過重時における補正

・能力補正は重量に比例

 

百獣崇拝(クティノス・ラトレイア)

・超早熟する

崇拝(しんこう)が続く限り効果持続

崇拝(しんこう)の丈により効果向上そ

 

百獣忠誠(クティノス・ピスティス)

・超早熟する

忠誠(こころ)が続く限り効果持続

忠誠(こころ)の丈により効果向上

 

【覇気】

・二種の覇気を扱う事が出来る

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・流桜:内部破壊の覇気で武装色の上位

・未来予知:数秒から数十秒の先の未来が見える見聞色の上位

 

 

リガス・ルナーリア

 

Lv.1

 

力A880→S980 耐久A980→SS1100 器用A752→A852 敏捷A899→S976 魔力I0

 

古代S 翼竜S 火炎S 火災A 剣士A 拳打A 破砕A 覇気A

 

翼竜咆吼(プテラノドン)

任意発動(アクティブトリガー)

・翼竜化

・状態異常無効

・全アビリティ能力超高補正

 

百獣崇拝(クティノス・ラトレイア)

・超早熟する

崇拝(しんこう)が続く限り効果持続

崇拝(しんこう)の丈により効果向上そ

 

百獣忠誠(クティノス・ピスティス)

・超早熟する

忠誠(こころ)が続く限り効果持続

忠誠(こころ)の丈により効果向上

 

【覇気】

・二種の覇気を扱う事が出来る

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・流桜:内部破壊の覇気で武装色の上位

・未来予知:数秒から数十秒の先の未来が見える見聞色の上位

 

火災(キング)

・炎纏身体強化

・炎纏全能力超高補正

 

翼竜の悪魔の実(リュウリュウの実)

・人型

・人獣型

・獣型

 

炎翼血統(ルナーリア・ブラッド)

・発炎纏躯

・漆黒迅翼

・発炎時、耐久のアビリティ常時超高補正

・消炎時、敏捷のアビリティ常時超高補正

 

ダマ・ヴェネノ

 

Lv.1

 

力I0→B780 耐久I0→A810 器用I0→B700 敏捷I0→C695 魔力I0

 

古代S 首長竜S 疫病S 疫災A 錬金A 神秘A 調合A 拳打A 破砕A 覇気A

 

首長竜咆吼(ブラキオサウルス)

任意発動(アクティブトリガー)

・首長竜化

・状態異常無効

・全アビリティ能力超高補正

 

百獣崇拝(クティノス・ラトレイア)

・超早熟する

崇拝(しんこう)が続く限り効果持続

崇拝(しんこう)の丈により効果向上そ

 

百獣忠誠(クティノス・ピスティス)

・超早熟する

忠誠(こころ)が続く限り効果持続

忠誠(こころ)の丈により効果向上

 

【覇気】

・二種の覇気を扱う事が出来る

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・流桜:内部破壊の覇気で武装色の上位

・未来予知:数秒から数十秒の先の未来が見える見聞色の上位

 

疫災(クイーン)

・病原体作成

・病原体強化

・病原体改悪

・抗体作成

・抗体強化

・抗体改良

 

首長竜の悪魔の実(リュウリュウの実)

・人型

・人獣型

・獣型

 

絡繰人間(サイボーグ)

・魔石接収循環

・肉体改造

 

戦争屋武技(ジェルマ・アーツ)

・火花

・電撃

・巻力

・透明

 

「なんですか、この馬鹿げた数値の上昇(上がり方)は!?」

 

自身の【ステイタス】が書き写された羊皮紙に目を通したリリが絶叫する。

 

「何か可笑しいところでもあったの?」

 

「全てが可笑しいです!!」

 

僕の問いに声を荒げたリリがそう言った。

 

「【ソーマ・ファミリア】に居た頃のリリの数値の上昇値を五十倍以上はありますよ!!」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「軽く流そうとしないで下さい、ベル様!!」

 

そうやってリリが大騒ぎしているとリガスがこう言ってくる。

 

「【ステイタス】が下がってるなら兎も角上がってるなら文句言ってんじゃねぇ」

 

「そうだぜ、リリルカ」

 

リガスとダマの言葉にリリは更に言葉を重ねる。

 

「ですがね、リリは冒険者の才能が無くてサポーターをしていたんです。それがいきなり【ステイタス】が爆上がりしたら誰だってこうなりますよ!!」

 

行き着かずにそう言い切ったリリは呼吸を整える。

 

そんな中、神様がこう言ってくる。

 

「ベル君、今日は外食にしないかい?」

 

「外食ですか・・・、あっ良いですね!!」

 

「話を聞いて下さい!!」

 

突然の外食の提案に疑問を抱いた僕だったが、ある事に気付き同意する。

 

リリが悲痛な訴えの後にこう言ってくる。

 

「何言ってるんですか、これから資金を貯めていかないといけないのに散財している場合じゃないんですよ!!」

 

「確かにそうだぜ、ベルさんここで金を使うってのは・・・」

 

「かってぇなお前ら、そんなもんダンジョンで稼げば済む話だろうがよ」

 

「テメェは黙ってろ、肉達磨」

 

「んだと、変態野郎」

 

ボクと神様の会話に待ったを掛けるのはリリとリガス、逆に同意しているのはダマだった。

 

ダマの楽観的すぎる発言にリガスが噛み付き睨み合っている。

 

しかし、神様はこの外食であることを考えていた。

 

「確かに散在するのは駄目だけど、三人の入団歓迎会はしたいしさ」

 

「「「!!」」」

 

そう、神様が外食にしようと言い出したのは恐らく三人の歓迎会をしようと考えたからだ。

 

「うん、最初にベル君が入団してくれた時も細やかだったけど歓迎会をしたんだ。だから、君達三人にも歓迎会をするって決めてたんだ」

 

「遅くなっちゃったけどね」

 

僕と神様の言葉を聞いて三人は納得したような顔をする。

 

「解りました、それなら仕方ありませんね」

 

「あぁ、そういう事なら仕方ねぇ」

 

「俺様は最初から解ってたけどな」

 

そうして、僕達は夜のオラリオに繰り出した。

 

僕達が歓迎会の場所に選んだのは「豊穣の女主人」、料理も酒もおいしいここであれば満足してくれるだろうと考えたからだ。

 

「それじゃあリリルカ君、リガス君、ダマ君の入団を祝して・・・」

 

『乾杯!!!』

 

料理と酒が届き乾杯して歓迎会は始まりを迎える。

 

「おいリガス、テメェはなんで飯の時にも仮面(マスク)外さねぇんだよ!?どんだけ恥ずかしがり屋だよ、テメェは!!」

 

「黙れ、贅肉達磨が。テメェこそ痩せろ」

 

「「あ``ぁ``!!」」

 

正に一緒即発の気配に店にいる全員が警戒態勢を取っていた。

 

「おい、二人ともせっかくの宴の席なんだから喧嘩は無しにしろ」

 

「「済まねぇベルさん」」

 

そんな二人に注意する僕の言葉に素直に従ってくれる。

 

「リガス様とダマ様はこんな時でもブレませんね」

 

「楽しくて良いじゃないか、ボクは嬉しいんだ」

 

そう言いながらリリと話している神様が酒を呷る。

 

最初はどうなるのかと思ったけど、歓迎会は何事もなく終了し帰路についたのだった。

 

三人の入団歓迎会の翌日、僕達が遅い時間に眼を覚ますとリリが話切り出してくる。

 

「ヘスティア様にベル様、改築しましょう」

 

「そうだね、いつまでもこのままだと他の入団者が入れないもんね」

 

真面目な顔つきでそう言ってくるリリに対して僕は賛成の意を示す。

 

「それなら【ゴブニュ・ファミリア】に頼むと良いよ。あそこの主神であるゴブニュは建築の神でもあるから頼りになるよ」

 

「それじゃあ改築は決定したと言うことだけど、僕から希望があるんだ」

 

「ベル様、何ですか?」

 

「この廃教会は残しておきたいんだ、ここは【ヘスティア・ファミリア(僕達)】の始まりの場所だから」

 

「良い考えだよ、ベル君」

 

「流石ベル様」

 

僕の提案に神様とリリは賛同してくれ、リガスとダマも無言だが納得はしてくれたようだ。

 

「それじゃあ今日から改築費を稼ぐためにダンジョンへ行こうか」

 

「「「おぉ!!」」」

 

そうして、僕達は現状の目標に向かってダンジョンへと向かうのだった。

 

 

 

 

二十三階層、ダマの経験値(エクセリア)獲得するために今はこの階層に留まることが多くなっていた。

 

そして、昨日忘れていたスキルの確認をする為でもある。

 

獣型が青い鱗を持つ極東の"龍"と呼ばれる姿になり、人獣型はその"龍"と人の姿が融合した姿となっていた。

 

しかし、その確認が済んだ後人の姿に戻ると側頭部に角が生えていた。

 

「なんで?」

 

「いや、俺らに聞かれても理解んねっす」

 

「解っていることは・・・」

 

「スキルが関係しているって事だけだな」

 

ダンジョンで長く別のことに気を取られているわけにも行かないから一端ダンジョン攻略に集中することにした。

 

「ムハハハッ、くたばりやがれモンスター共!!」

 

笑い声を上げながらダマがバグベアーを殴り飛ばしていく。

 

「一々うるせぇぞ、ダマもっと戦いに集中しやがれ」

 

「あぁん、テメェこそ一々茶々淹れてくんじゃねぇよリガス」

 

口論しながらも襲いかかって来るモンスターを撃破していく二人。

 

「よく戦いながら喧嘩が出来ますね、リガス様もダマ様も・・・」

 

「二人だって戦闘では私情を持ち込まないって事でしょ、当たり前のことだけど・・・」

 

僕とリリもモンスターを会話しながら片付けていく。               

 

すると、冒険者の一団が通り過ぎる。

 

そのすぐ後ろからモンスターの大群が迫ってくる。

 

「ベル様、やられました。"怪物贈呈(パス・パレード)"です!!」

 

「問題ないよ、リリ。すぐに終わる」

 

僕はそう言いながら武装色の覇気を纏って金棒を振るった。

 

"金剛鏑"

 

振るわれた金棒から生まれた衝撃波がモンスターの大群とぶつかり瞬く間に魔石と怪物素材(ドロップアイテム)、灰にと変わる。

 

「凄いです、ベル様!!」

 

「ムハハハハハッ、派手だぜ!!」

 

「何を当然なことを言ってやがんだテメェらは、ベルさんなら普通のことだろ」

 

興奮気味のリリとダマの言葉にリガスが冷静に言い切った。

 

「それじゃあ先に進もうか」

 

「「「はい(あぁ・おう)!!」」」

 

魔石などを全て回収し終えた僕達は階層を下っていくのだった。



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二十三話

二十三階層から二十四階層に降りてくると空気が変わっていることに気づいた。

 

「皆、此処から先は警戒を上げて進もう」

 

「分かりました(あぁ、おう)」

 

そうして、二十四階層の探索を開始する。

 

「全くこの階層はなんなんですか!?入るやいなやモンスターの大群に襲われるなんて異常過ぎます!!」

 

リリが射撃による牽制しながら大声でそう言ってくる。

 

「間違いなく異常事態(イレギュラー)だね、それもかなり規模が大きい」

 

「どうします、ベルさん」

 

「とりあえず管理機関(ギルド)に情報提供に行こうか。そうでもしないと被害が広がるだろうし」

 

こうして、僕達の二十四階層探索は終わることとなった。

 

ギルドに報告・換金した後、僕達は本拠(ホーム)に帰ってきていた。

 

「それにしてもなんだったんでしょうか、あのモンスターの大群・・・」

 

リリがそう言いながらバリスタの整備をしている。

 

「そうだね、恐らくだけど何処かの通路が塞がってしまっているから階層にモンスターが集中しちゃったとかかな」

 

僕も金棒を磨きながらリリの疑問に予測を立てる

 

「なるほど、それならモンスターの大量発生のことも納得は出来る」

 

リガスは刀の研磨を済ませて鞘に納める。

 

「だけどよベルさん、大型モンスターも通る通路をどうやって塞ぐんだよ。半端なものじゃ簡単に突破されちまうし」

 

ダマは戦闘で使い切った魔道具(マジックアイテム)に補充用の魔石を組み込んでいる。

 

「そこなんだよね、中層のモンスターが突破できない程の何かで塞がっている通路か・・・」

 

「ベル様、何か変なこと考えてはいませんか?」

 

僕の言葉に反応してリリがジト目になりながらそう言ってくる。

 

「気になるよね」

 

「えぇ」「まぁ、そっすね」「ダメですよ」

 

「よし、明日は二十四階層の集中探索をする」

 

「了解(っす)」「いや、危険過ぎますよ!!」

 

「大丈夫、リリは僕が守るから」

 

「〜〜〜もう、もう!!」

 

僕の言葉に何故か頬を赤らめるリリ。

 

「なぁ、リガス、ベルさんあれワザとか?」

 

「いや、完全に素だったな」

 

「怖っ」

 

何故かリガスとダマが小声で話していたけど喧嘩してないから良いか。

 

明日の予定が決まった僕達は眠りにつくのだった。

 

翌朝、僕達は神様にステイタス更新をしてもらった。

 

まぁ、僕の【ステイタス】はスキルの影響で変化なしだから抜きにしてリリ達の【ステイタス】はというと・・・。

 

リリルカ・アーデ

 

Lv.1

 

力B742→A829 耐久B767→A809 器用S903→SS1073 敏捷A852→S969 魔力F316→D432

 

《シンダー・エラ》

・変身魔法

・変身像は詠唱時のイメージ依存。具体性欠如の際は失敗(ファンブル)

・模倣推奨

・詠唱式【貴方の刻印(きず)は私のもの 私の刻印(きず)は私のもの】

・解呪式【響く十二時のお告げ】

 

縁下力持(アーテル・アシスト)

・一定以上の装備過重時における補正

・能力補正は重量に比例

 

百獣崇拝(クティノス・ラトレイア)

・超早熟する

崇拝(しんこう)が続く限り効果持続

崇拝(しんこう)の丈により効果向上そ

 

百獣忠誠(クティノス・ピスティス)

・超早熟する

忠誠(こころ)が続く限り効果持続

忠誠(こころ)の丈により効果向上

 

【覇気】

・二種の覇気を扱う事が出来る

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・流桜:内部破壊の覇気で武装色の上位

・未来予知:数秒から数十秒の先の未来が見える見聞色の上位

 

 

リガス・ルナーリア

 

Lv.1

 

力S980→SSS1372 耐久SS1100→SSS1201 器用A852→SS1090 敏捷S976→SSS1200 魔力I0

 

古代S 翼竜S 火炎S 火災A 剣士A 拳打A 破砕A 覇気A

 

翼竜咆吼(プテラノドン)

任意発動(アクティブトリガー)

・翼竜化

・状態異常無効

・全アビリティ能力超高補正

 

百獣崇拝(クティノス・ラトレイア)

・超早熟する

崇拝(しんこう)が続く限り効果持続

崇拝(しんこう)の丈により効果向上そ

 

百獣忠誠(クティノス・ピスティス)

・超早熟する

忠誠(こころ)が続く限り効果持続

忠誠(こころ)の丈により効果向上

 

【覇気】

・二種の覇気を扱う事が出来る

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・流桜:内部破壊の覇気で武装色の上位

・未来予知:数秒から数十秒の先の未来が見える見聞色の上位

 

火災(キング)

・炎纏身体強化

・炎纏全能力超高補正

 

翼竜の悪魔の実(リュウリュウの実)

・人型

・人獣型

・獣型

 

炎翼血統(ルナーリア・ブラッド)

・発炎纏躯

・漆黒迅翼

・発炎時、耐久のアビリティ常時超高補正

・消炎時、敏捷のアビリティ常時超高補正

 

ダマ・ヴェネノ

 

Lv.1

 

力B780→SSS1371 耐久A810 →SSS1202 器用B700→SSS1100 敏捷C695→SSS1065 魔力I0

 

古代S 首長竜S 疫病S 疫災A 錬金A 神秘A 調合A 拳打A 破砕A 覇気A

 

首長竜咆吼(ブラキオサウルス)

任意発動(アクティブトリガー)

・首長竜化

・状態異常無効

・全アビリティ能力超高補正

 

百獣崇拝(クティノス・ラトレイア)

・超早熟する

崇拝(しんこう)が続く限り効果持続

崇拝(しんこう)の丈により効果向上そ

 

百獣忠誠(クティノス・ピスティス)

・超早熟する

忠誠(こころ)が続く限り効果持続

忠誠(こころ)の丈により効果向上

 

【覇気】

・二種の覇気を扱う事が出来る

・武装色:肉体や武器に纏わせて硬度と攻撃力を上げる力

・見聞色:周囲を感知する力

・流桜:内部破壊の覇気で武装色の上位

・未来予知:数秒から数十秒の先の未来が見える見聞色の上位

 

疫災(クイーン)

・病原体作成

・病原体強化

・病原体改悪

・抗体作成

・抗体強化

・抗体改良

 

首長竜の悪魔の実(リュウリュウの実)

・人型

・人獣型

・獣型

 

絡繰人間(サイボーグ)

・魔石接収循環

・肉体改造

 

戦争屋武技(ジェルマ・アーツ)

・火花

・電撃

・巻力

・透明

 

「もうリリは何も言いません・・・」

 

全員の【ステイタス】を確認したリリが何故か疲れた様子で遠い目をしていた。

 

それをよそに僕はあることを考えていた。

 

それはリリの戦闘能力向上についてだ。

 

今はサポーターとしての役目に徹してもらっているけど前にも言ったようにリリには自衛の力を持ってもらいたいと思っている。

 

数が有限かつ攻撃手段の矢が尽きればリリは不利になるからこそ、バリスタ以外の武器が必要だ。

 

リリの体格に合わせての武器か、一撃特化の武器にするかで迷ってしまう。

 

これに関しては同じ小人族(パルゥム)の意見を聞くのが良いんだけど・・・、生憎そんな相談が出来る小人族(パルゥム)の知り合いなんて居ない。

 

色んな武器を試していくしかないと結論に至るが、今回はサポーターの仕事に専念してもらうことにした。

 

「それじゃあ行こうか、二十四階層!!」

 

「はい(あぁ、おう)!!」

 

いよいよ僕達は二十四階層に向かうのだった。



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