モモンガ様英雄伝 (約239ガゼフ)
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プロローグ

初投稿です。
拙い部分もあるかと思いますが、よろしくお願いします。


西暦2138年、DMMO-RPG YGGDRASIL(ユグドラシル)

9つのワールドに多彩な種族、2000を超える職業に6000を超える魔法やスキルの数々、外装を変更出来る等、その自由度の高さは多くの人々を虜にし、DMMO-RPGといえばこれと言うほどの一大ブームを巻き起こした。

しかし、どんなモノであってもいずれは衰退して行くのであり、ユグドラシルも例に漏れず、近々サービス終了が予定されている。

 

そんなユグドラシル終了の5日前。

 

ユグドラシルに存在する9つのワールドの中の1つ。ニダヴェリールに存在する都市の中で、種族レベルを取っている者でも入る事の出来る開放的な都市。

全盛期に比べると、かなり人通りが少なくなっていると言わざるを得ないが、数多くない異形種の入れる都市という事もあり、そこそこの人数のプレイヤー達が行き交っている。そこで、様々な種族のプレイヤーが様々な物の売買を行っていた。

 

今更アイテム等を売買して金貨やアイテムを得たところで、残り5日で全て消えてしまう為に殆ど意味を成さない。だが、だからこそ、様々な生産職プレイヤーや上位プレイヤーが、今までの彼等の成果を誇示するかのように、破格の値段でアイテムを売り、買う方もまた、自分達の見つけられなかった未知のアイテムなどを見つけたり、コレクター魂から購入して楽しんでいる者もいる。

また、もう垢banなんて怖くないと、如何わしい者を売っていたであろう露店も−品物と値札が置いてあるだけだ。やっていたプレイヤーは既にbanされたのだろう−ある。

 

その中で、1人の茶色いボロ切れのようなローブを身に纏った骸骨の異形もまた、様々なアイテムを物色していた。

 

骸骨の異形ことモモンガは、PK対策にあまり珍しい装備はせず、また、ギルドの本拠地であるナザリックから多少離れたところで、仲間達の来ない暇な時間や寂しさを紛らすかのように買い物を楽しんでいた。

コレクターのモモンガにとって、ここに売られている様々なアイテムはどれも眼を引く物ばかりであり、また、営業マンとして培われた感性と生来の貧乏性が、安いアイテムを買わない事を許さなかった。ここに来てからかれこれ3時間程過ぎていたが、未だに飽きる様子はない。

その上、モモンガはここ最近、ずっと1人でナザリックの維持費用を稼ぎ続けていた。その結果、ソロでの稼ぎに慣れ、莫大な維持費用を払ってもなお余剰分が出るようになっていた。

宝物殿の金貨を使うのも躊躇われるが、増やすのもまた景色が変わってしまう為に躊躇われ、溢れる程の金貨を手持ちにしているのである。

そんなモモンガの眼に、また興味深い物が映る。

「リング・オブ・サステナンス100個で10万かあ。全盛期に見たら発狂モノだな」

と、思わずモモンガは呟く。

リング・オブ・サステナンスは非常に需要の高い物であり、制作も簡単でなかった事から、購入しようとするとかなりの値段がついていたのである。

それを思えば、もう使わないので当然であるのだが、やはりこの値段は安い。

そんな独り言を聞いた人間種の店主は少し恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうに頷く。

「俺はギルドマスターだったからな。新人に配る分を以前生産ギルドに大量発注したんだが、流石に買いすぎたな」

そう言って、あんたはアンデッドだから必要ないだろ?なんて無粋な事は聞かず、豪快に笑い声を上げながら笑いスタンプをだす。

同じギルドマスターというところから、少し相手の今までの思い出に興味を持ち、この寂しさを一時でも忘れられればと話しかける。

「おお、そうなんですか。実は自分もギルマスなんですけど、やはり似た様な事がありましたよ。ギルマスの宿命ってやつですかね?」

「さあなあ。だが、そうやって周りに気を配れている所からするに、俺と同じく良いギルマスをやっていたようだな」

自分で言いますか… と呆れ半分に言ったモモンガを見て、男は、いいじゃねえかと笑う。だが、確かにこの豪胆さや陽気さはリーダーに向いていたのかもしれないな、とも思う。

「まあ、とは言ってももうメンバーは殆どいないんだけどな。だが、最後くらいは、俺とその仲間たちが情熱を注いだモノの成果を見て欲しいんだよな」

「ええ…!ええ!わかりますよ、その気持ち。しかとこの目に焼き付けておきます」

同じような境遇の者を見つけ、モモンガは少し嬉しくなる。

彼のメンバー達を思い出したのか、少し落ち込み掛けていた店主だったが、モモンガの言葉を聞いて、笑顔スタンプを出しながら上を向いた。

「ありがとよ。これで救われるってもんだ。」

「いえいえ」

だが、そう言った後、店主はモモンガを見て少し考える素振りを見せ、腕を組みながら独り言のように言葉を紡ぐ。

「だが… この思い出はもう終わりだ。これから俺たちは前を向き、歩んでいかなければいけない。また、ここで出来た仲間と同じくらい素晴らしい者達と会えると良いな」

モモンガの脳裏に、彼らの事が浮かぶ。

「ここでの仲間たちと同じくらい、ですか…。そうですね。」

とりあえず店主の言葉を肯定してみるが、そんなモモンガから黒い何かが溢れ出て来るような気がした。

そんなもの、これからの人生に現れるのだろうか?と、疑問に思う。

あの、協力してナザリックを作り、難関クエストに挑み、前代未聞の大記録を打ち出した、愛すべき癖の強いアインズ・ウール・ゴウンの仲間たちと同等の者が?

モモンガは少しの間思案し、いや、と首を振る。

これから自分は毎日会社に働き続ける。そんな未来が待っているだろう。

仮に友達と呼べる者が出来たとしても、ギルドの仲間たちを超えるものは現れれないだろう。

そう結論付け、代金を払い、店主に挨拶をしたモモンガはその店を後にした。

結局、それからまた1時間程買い物を続けたが、何となく見たデジタル時計の数字に驚愕し、急いでナザリックに帰還して、ログアウトした。

 

ーーーーーー

 

ナザリック地下大墳墓第9階層、円卓の間。ついにユグドラシルも残す時間を数時間となった。

その円卓の間では、黒き漆黒の粘体のヘロヘロと禍々しいローブを着込んだモモンガが談笑−というより、ヘロヘロが一方的に愚痴を零している−していた。しかし、ヘロヘロは眠いからと途中でログアウトした。モモンガはスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手にし、セバスとプレアデスを引き連れ、玉座の間に向かう。セバスとプレアデスを平伏させ、アルベドの設定を弄り、旗を見てギルドメンバーを思い出していくうちに時間が過ぎてゆく。

 

23時59分

 

ああ、楽しかったな

モモンガは、彼の中の青春とも言える、輝かしい時を思い出して、目を瞑る。

 

ナザリックに攻めてきた1500を撃退した事

 

必死にギルド武器を作った事

 

強大なワールドエネミーに挑む為に、会議に丸一日使った事

 

 

23時59分30秒

 

そんな事を思い出している内に、また寂寥感に襲われてきた。

モモンガは、目を瞑ったままユグドラシル終了までのカウントダウンをし始めたーーー

 

 



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