fate/Grand Order ~何故俺が英霊の座に?~ (沢田空)
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特異点F
プロローグ


沢田空です

FGOにハマって翔こっち来たら面白くねっていうどうしようもない動機で書きました
ちなみに聖杯喋ります。僕はアニメとゲームしか知らんのでそこんとこお願いします

ではごゆるりと


俺の名前は朝倉翔。帝鬼軍に所属してた(・・・)男だ。

俺はあの時家族を守って死んだはず…。なのに俺の目の前に映るのは永遠に続くのではと思わせる程強大な草原。

そこに俺は一人立っていた。

 

ここはどこだ?と思考を巡らせるが全く心当たりがない。

だがふと頭に直接語りかけてくる声がした。

 

『ここは英霊の座。死後にその在り方が昇華され、輪廻転生の環から外れた者。貴方は世界を救った英雄なのです』

 

俺が世界を救った…?んなことねぇよ。俺はただ家族を守るために戦っただけだ。そんな大層なもんじゃねぇよ。

 

『その心がけも英雄になった発端でもあるんですよ?まぁそれは置いといて…。あなたにはこれから冬木に行ってもらいます』

 

冬木?どこだそれ?

 

『貴方の世界には無かった地域です。まぁそのへんはめんど…大変なので割愛します』

 

いや今めんどくさいって言いかけたよな?まぁいいか。んでそこに行って何をすればいいんだ?

 

『世界を救って下さい』

 

は?世界を救えだって?ぶっ飛びすぎて意味がわからん

 

『ごもっともです。なので今から送る資料にまとめましたので目を通してください』

 

そう言った直後に近くに資料がドサッと現れた。

何でありかよ…

 

 

 

 

一通り目を通したがほんとなのか?これ。人理焼却とか頭ぶっ飛びすぎだろ。それに挑むのが一人だけとはまた難儀だな

 

『だから貴方に、いや貴方がた英雄の力が必要なのです』

 

まぉそういう事なら任されたよ。ちなみにあんたは誰なんだ?

 

『あ、私ですか?私はいわゆる聖杯ですね。まぁ今は緊急事態のためこうして直接語りかけているんです』

 

はい?聖杯?聖杯ってあれか?何でも叶えてくれるっていうドラ〇もんのパチもんみたいなやつか。てかさっきの資料に備考で書いてあったけど聖杯喋んなくね?

 

『まぁそこは作者の都合と言うことで』

 

いや心読むなよ。それにメタいこと言うなこの聖杯。あ、普通は喋んないんだよな。これだけでこれがどんだけおかしいか分かるわ。

 

『こっちの事はいいのでさっさと行ってください』

 

いや行くも何もどうやっ…おい!俺の体透けてきてるだけど?!行くってそっちの逝く?!

 

『頑張ってくださいね〜』

 

呑気に言いやがって!!後で覚えとけよ!!絶対に壊してやるからなー!!

 

そう言った所で俺の体は完全に座から消えた。

 

 

 

 

 

 

そして次に目を開けたら火の海だった…。

 

「おかしすぎんだろぉぉがぁぁぁぁ!!」

 

俺は絶対にあの聖杯を壊すことを決意した。

 

 

 

ここに来てから数分。俺はあの聖杯の愚痴をダラダラと言っていたがそこであることに気がついた。

それは──

 

「何で俺帝鬼軍の制服着てんだ?それに斬月もある…。確か英霊ってのは全盛期の姿で呼ばれんだよな。なら俺の全盛期は死んだ時ってことか…」

 

近くにあった岩に腰をかけて一人考える。今の現状、周囲の状態、己の状態も含め一つの結論が出た。

 

「考えてもしょうがねぇなこりゃあ。少し歩いて例のマスター?でも探すか」

 

考えるよりも行動、という結論が…。そう言って燃える街中を一人歩き始めた。

 

 

 

 




読んで頂きありがとございます

なるべく早めに更新していくのでお願いしますね
終わセラが進まないとネタバレになっちゃうんだよねこの先


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1話~マスターと所長とマシュマロ~

はい、昨日に続き連続です

意外にもお気に入りも増えたので嬉しいですね


しばらく歩いたが誰もいない。それどころかここに人が生活をしていたのか疑うレベル。まぁビルとかあるから生活はしてたんだろが…

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

すぐ近くから女性の悲鳴が聞こえた。

まだ生きてる人がいたのか?それよりも急ぐか!

そして彼は声のした方に向かった。

 

 

 

 

「なんなの、なんなのよ、コイツラ!? なんだってわたしばっかりこんな目に遭わなくちゃいけないの!? もういやぁ!」

 

私の周りにいるのは骸骨の兵隊とでも言うべきなのかこの世には絶対にいないバケモノ達だった。私はそれに囲まれ、悲鳴をあげていた。

 

それは今までの私が溜め込んでいたものでもあった。周りからは出来て当然のものと言わんばかりの視線や態度。

それらに嫌気がさし半ば諦めていた。このまま死んでしまった方が楽だと思ったから。

 

だがそんな彼女の思いは果たされなかった。

なぜなら────

 

 

「もう大丈夫だ!!俺が助けるから!!」

 

黒い軍服に身を包み、刀とは形容し難い大剣を持った彼が現れたから。

 

それからはすぐだった。彼は私のの周りにいるバケモノ共を一蹴してしまった。

倒し終わったからは大剣を背中にしまい─しまうと同時に包帯が刀身にまかれ──こちらに向かってきた

 

「怪我はないか?」

 

そう言って彼は私に手を差し出してくれた。私は彼の手を掴み立ち上がった。

 

「あ、ありがとう…」

 

「お礼は大丈夫だよ。危険な目にあってたのを見かけたから助けただけだからよ」

 

彼はそう言ってにかっと笑って見せた。私はそんな彼に質問した。

 

「あなたは何者なの?」

 

「俺はサーヴァント。クラスはセイバーだ。」

 

「そう。じゃああなたはこの地の聖杯戦争に参加していたの?」

 

「ん?いや俺は聖杯にこの地に行って人理修復を手伝えって言われたからだ。歩いて最後のマスターを探してた時に丁度あんたの声が聞こえたんだ。それよりもあんたの名前は?」

 

「私はオルガマリー・アニムスフィア。カルデアの所長です。それであなたの真名は?」

 

私がそう聞くと彼は視線を泳がし、頬を掻くような仕草をした。

 

「言わなきゃダメか?」

 

「あ、当たり前でしょ!」

 

真名を隠そうとする彼にイラつき怒鳴ってしまった。

 

「俺は最近の英霊だからな…。まぁいいか。俺の真名は朝倉翔。帝鬼軍所属柊シノア隊一応副隊長だ」

 

「朝倉翔…。悪いけど知らないわ。いつの時代の英霊なのかしら?」

 

「2017年から2018年位だな」

 

「ちょっ!どういう事よ!」

 

驚きを隠せなかった。それはなぜ数年先に──神秘の薄れた世界──英雄が現れるのかだ。

 

「その説明はそこにいる二人にも話す必要があるだろ?」

 

そう言って物陰から出てきたのは一般人枠で呼んだマスター候補の藤丸立花とカルデアの職員でもあったマシュ・キリエライトだった

 

 

 

 

 

俺が助けた人がまさか人理修復の要のカルデアの所長とは思いもしなかった。

まぁそれよりも…

 

「その説明はそこにいる二人にも話す必要があるだろ?」

 

俺が目線を向けた先の物陰から出てきたのは少年と少女だった。歳は俺と変わらない位だろう。

 

「あ、あの!すいません!盗み聞きするつもりは無かったですけど…その出るタイミングが見つかんなかったので…」

 

そう言ったのは紫を薄くしたようなピンクに近い色をした少女だった。

 

「別に怒ってるわけでも無いから大丈夫だ。それにそっちのがマスターか?」

 

「え?あ、はい!藤丸立香って言います!彼女はサーヴァントのマシュ・キリエライトです」

 

「マシュ・キリエライトです!よろしくお願いします!」

 

「宜しくな二人共。…んで何か言いたそうだな所長?」

 

俺の隣で何故かプルプルと震えている所長がいた。こういときって大体とばっちり食らうだよな…

 

「どうしてあなたがマスターになってるのよ! あなたみたいな一般人が、マスターになれるはずがないじゃない!。どんな乱暴をその子に働いて、言いなりにしたの!?それに何でマシュもデミサーヴァントになってんのよ!?」

 

「誤解ですよ!?」

 

「何が誤解してるのよ!? そうでもしないと、あなたみたいなのが、マスターになれるはずがないじゃない!」

 

「まぁ落ち着けよ所長。とりあえず状況を確認しよう」

 

そう言って暴走寸前の所長を止めるのであった。

 

 

 

 

大方の状況をマシュが説明してくれたがそれを聞いた所長はかなり落ち込んでいた。

 

「……………」

 

「所長? どうかなさいましたか?」

 

「……なによ、それ……最悪じゃない。つまり、もう、この男にしか頼れないってことじゃない!」

 

「所長!?」

 

「ああ、もう、どうしてこうなるの、わたしがなにをしたっていうのよ!?」

「所長、落ち着いて。いったい何が」

 

「あなたの説明で確定したのよ。そこにいる一般人以外、ここにいない。全滅したってことがね」

 

俺以外、ここにはいない? オルガマリー所長もいるのだから、誰かひとりくらいいても良いのではないかと思うのだが。

 

「いや俺もここまで誰一人として見ていないからその線で考えるべきだな」

 

翔さんも肯定した。

 

「いい、よく聞きなさい一般人。わたしも、あなたもレイシフトのコフィンには入っていなかった。けれど、他のマスターたちは違う。この特異点Fにレイシフトするためにコフィンへと入っていた。

 コフィンは、ね、安全のためにレイシフト成功率が95%を下回ると、電源が落ちるのよ。だから、他のマスター候補たちは、レイシフトそのものを行っていない」

 

「じゃあ俺達は何で…?」

 

「そんなのコフィンに入っていないからよ」

 

 コフィンに入ると成功率が95%を下回ると電源が落ちる。だが、コフィンに入っていなければそういう制約はない。

 それに、レイシフト成功率は下がるが、0にはならない。コフィンに入っているということは、逆に言えば、成功率95%以下とは、その安全機構によって成功率0%と同義なのだ。

 

だから、ここには、他に生存者はいない。生きてる人はいない。それは同時に――。

 

「俺しかいないのか…」

 

「そうよ!あなたがどうにかしなくちゃいけないのよ!」

 

「あなたはこの子のマスターだから! あなたしかいないのよ! だったら、あなたがやるのは当然でしょう!」

 

「所長がいるのでは……」

 

「それができれば苦労はないのよ! なんで、あなたなんかに、マスター適性があって! ……いえ、取り乱しました。

 ともかく、良いですね? ここからはわたしの指示に従ってもらいます。あなたは、わたしの護衛をなさい。その子に指示を出して、役目を果たすのです。そしてここにいるセイバーと契約してください」

 

「……分かりました」

 

「まぁ俺は良いけどよ、立花の方は大丈夫なのか?」

 

「え?」

 

「いや俺と契約したら負担とか増えるんだろ?倒れたりしたら大変だろ?」

 

俺が当たり前の事を言ったと思うのだか周りは──特に所長──は?みたいな反応している。

 

「この後に及んでそんな事を気にしてたら命が無くなるでしょ!!無理する場面なのよ今は!!」

 

「分かったから。とりあえず落ち着いてくれ」

 

「とりあえず話はまとまったみたいですね。それでは回線を開きます」

 

 わざわざ待っていたのだろうマシュが、回線を開くと青年の姿が映し出された。

 

「こちらカルデア管制室。キミたちがポイントに到着したことを確認した。マシュ、君の宝具を地面に設置してくれるかい。それを目標にしてレイラインを安定化させる」

 

「わかりました」

 

青年の言われるままにマシュが盾を地面にかかげると、空間が固定され、通信も補給もできるようになったらしいが。

 

「オーケー、これで」

 

「なんであなたが仕切ってるのロマニ!? レフは!? レフはどうしたのよ!?」

 

「えええ!? 所長!? 生きていらしたんですか!? あの爆発の中で!? しかも無傷!? どんだけ!?」

 

「どういう意味ですか!? いいから、レフはどこ!? どうして、医療セクションのトップでしかないあなたがその席に座っているの!?」

 

「どうにも……柄じゃないんですが、他に人材がいないんですよ」

 

画面に映る青年──ロマンがカルデアの状況も説明してくれた。

 生き残った正規スタッフは20人にも満たない。レフ教授は管制室でレイシフトの指揮を執っていた。ゆえに、生存は絶望的。

 カルデアは機能の八割を失っており、スタッフは総出で、カルデアスとシバの維持、レイシフト装置の修理を行っているという。

 外部との連絡が立て直せれば、そのまま補給の要請を行い立て直しをするというのが今後のプランだった。

 

「――わかりました。納得はできませんが、そちらは任せます。こちらは、特異点Fの探索を開始します」

 

「フォウ、フォーウ」

 

いやちょっと待て何だあの猫とも言えぬ謎のモフモフは…!あれも一緒にレイシフトしてきたって言うのか?!

 

「あ、翔さん!」

 

「どうした?それに俺のことは呼び捨てでいいよマスター」

 

「分かったよ。それに俺の事も立香でいいよ。これからよろしくね翔!」

 

そう言ってマスターは右手を差し出してきた。それを見てフッと笑い

 

「こちらこそよろしくな立香!」

 

俺は良いマスターに出会えたな。

 

そんな事を思うのであった




うん進まないね!

まぁ是非もないよね!!

次回もよろしくどうぞ!


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2話~キャスニキ登場!!~

作者「うんサブタイトル考えんのめんどいね
だからテキトーにい…グビャア!!」

翔「真面目にやれ駄作者!毎回毎回進まねぇのに何言ってんだ!!
んじゃあ本編行くぞ!」




立香と握手を交わしてから俺達はこれからどうするかを休憩を兼ねて話し合っていた。

 

「さて、休憩はこれくらいでいいでしょう。小休止程度ですが、あまり長く休んでもいられません。まず、これからのプランですが、この特異点Fを調査し、こうなってしまった原因を探ります。具体的には――」

 

「フォウ!!フォウーーー!!」

 

「全員戦闘態勢!!敵だ!」

 

俺が叫ぶとロマンからも連絡が入った

 

「いますぐそこを離れるんだ! 生体反応がある、サーヴァントだ! サーヴァント戦はまだ早い!」

 

「無理ですよ」

 

そう言い現れたのは大鎌を持ち全身が黒いモヤかなにかに包まれた──恐らく女性──人だった。

 

「私からは逃れませんよ。残念ながら」

 

「そこを何とか出来ねぇかな?融通とか聞かせてよ」

 

そう軽口を叩きながらも斬月を構えるが不味いな。あれ相当強いぞ?特にあの鎌が問題だわ

 

「生憎と融通というものを持ち合わせていませんので無理ですね。だから大人しく殺されなさい!!」

 

そう言って彼女は鎌を両手で構え突っ込んできた。それを斬月で受け、そのまま鍔迫り合いになる

 

「おおー強ぇーなおい!」

 

「そうですか?あなたはそうでもない」

 

そう言ってお互いに一度距離をとる。こちらはマシュも戦えれば数の有利でなんとか押せないこともないが…。

 

チラッとマシュを見るがやはり震えていた。そこで俺がと思うがこれから先の戦いを考えるとそれは最善ではない。

だからなるべく経験を積ませたい。ならやるべき事は一つ…

 

「マスター!!俺とマシュの二人で攻める!!所長!!周囲を警戒していてください!!何が来ればロマンから知らせが入るはずですから!!マシュ!!」

 

俺が大声で雑にだが指示をし、マシュを呼ぶ。俺の声を聞いてかマシュの肩がビクッと動いた。

 

「お前が戦いたくないのはわかる。だけど!これから先幾度のピンチにそんなのは言い訳にしかならない!だから恐怖に打ち勝てとは言わない!だけどそれに立ち向かえ!!俺達英霊だって元は人だ!恐怖の一つや二つはある!!お前と何ら変わらない!!だから──」

 

そこで痺れを切らせたのか奴が鎌を振り下ろして来た。それを紙一重で避けお返しとばかりに攻撃をするも巧みに大鎌を使い受け止められた。そこからは拮抗した鍔迫り合いになった。

 

「マシュ!!自信を持て!!そしてお前の力を何に使いたいのか考えろ!!そうすれば自ずと答えが見つかるはずだ!!」

 

俺はそう言って鎌を弾き、そこから接近し斬月を振るう。ここからはマシュに任せるしかない。それに彼女にはマスターがついてる。なら俺がするべき事は…

 

「全開で行くぜ!」

 

時間を稼ぐことだ。

 

 

 

 

私たちの前に現れたのは大鎌を持ったサーヴァント。戦わなきゃいけない。先輩を守らなくちゃいけない。だけど…

 

 

 

──恐い

 

それが全身を支配する。今すぐにでも前に出なくちゃいけないのに体が動かない。それどころか震えだけが大きくなる。

この特異点に来てから戦闘を行っていない訳ではない。その時は恐かったけど動けた。なのに何で…!?

 

「マスター!!俺とマシュの二人で攻める!!所長!!周囲を警戒していてください!!何が来ればロマンから知らせが入るはずですから!!マシュ!!」

 

その時翔さんが指示を出していて私にも声がかかった。

 

 

「お前が戦いたくないのはわかる。だけど!これから先幾度のピンチにそんなのは言い訳にしかならない!だから恐怖に打ち勝てとは言わない!だけどそれに立ち向かえ!!俺達英霊だって元は人だ!恐怖の一つや二つはある!!お前と何ら変わらない!!だから──」

 

そこで相手サーヴァントが接近し鎌を振り下ろした。翔さんはそれを避け刀で反撃するが受け止められ鍔迫り合いになる。

 

翔さんの言うことも頭では分かっています。マスター、先輩を守らなくちゃいけない。でも足は震えたまま。私は…私は先輩のサーヴァントなのに…!!

 

「マシュ!!自信を持て!!そしてお前の力を何に使いたいのか考えろ!!そうすれば自ずと答えが見つかるはずだ!!」

 

鍔迫り合いのまま翔さんは私に語りかけました。私の力を?私に力を渡してくれた英雄の力をどう使いたいか…。

そうゆう事だったんですね。ありがとうございます翔さん。私はこの力に、私に力を貸してくれた英雄に感謝してもしきれないですね。

 

私はこの力でマスター、先輩を守り、共に歩き続けます!!

 

 

 

翔がマシュに激をとばしてからはこちらの戦いも激しさを増した。

互いに刀と鎌を振るい高速で移動する。だがそれは翔が劣勢の状況で起っていた。

 

「クソが!その鎌厄介だな!」

 

「フフフ。あらこの鎌に何か感じるものでもあったのでしょうか?」

 

彼は直感──第六感といったもの──で感じ取っていた。あの鎌が宿すもの。

 

「その鎌、不治の呪いでもついてんだろ?」

 

「察しが良いのですね。そう、これには不治の呪いが付着しています。なので一太刀でも当たれば英霊だろうと治ることはありません」

 

そう言って彼女は再び接近する。それが何度目なのかは分からない。だが今回のは今までよりも速い。

 

「ッチ…。さっきより速ぇじゃねぇか」

 

「先程までは手を抜いていたので」

 

「そうか…よ!!」

 

彼は無理に刀を返した所で何かしらの気配が近づいてきたのを感じ取った。

 

「(この場面で来るかよ…!)」

 

そう悪態をついた時には目の前に己の獲物を振りおそうとする彼女の姿があった。

 

「しまっ…!!」

 

自分に迫る鎌を何とか避けようとするが間に合いそうになかった。ここまでか、と彼が思った次の瞬間鎌は防がれた。

鎌を防いだのは黒を基調とした大盾。そしてそれを扱うものはピンクの髪に前髪は片目を隠すように。先程までは震えていたマシュだった。

 

「大丈夫ですか!翔さん?」

 

そんな彼女の目には決意に満ち溢れていた。そんな中近くに気配が突然として現れた。

そこに立っていたのは立っていたのは杖を持った青年だった。

 

「よぉ、ちょっとばかり手を貸してやるぜお二人さん」

 




キャスニキ「俺の出番これだけかよ?!タイトルの割に!!もう少しねぇのかよ!!例えばお嬢ちゃんに宝具の事とか教えたり、ランサー倒したりとこかよ!!」

作者「うん、大丈夫だよアニキ。この後ちゃんと戦いが待ってるからさ」

キャスニキ「ならいいけどよ。ちなみにあいつは何してんのよ?」

翔「…」 刀を構えたまま動かない

作者「さぁ?。恐らくもう一人のじぶ…グブェラ!?」

翔「ネタバレはあかんだろ駄作者!!」刀の峰側を振り押した状態

キャスニキ「あんた…案外容赦ねぇーのな…」苦笑い


ってことで次回もよろしくどうぞ!


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3話~目的地~

作者「メイドオルタきたー!!」

翔「えらくテンション高ぇな?野暮だか良いことあったんだな?」

作者「そーなんだよ!まさかな諭吉さん1枚入れたらな…来たんだよ!!来てしまったんだよ!!メイドが!!ライダー枠が少ないうちのカルデアに!!」

翔「わかったから近い!!んまぁおめでとう。それで更新が遅れた理由か?」

作者「あれ何で翔さん斬月構えてんの?ねぇなんで?」

翔「そりゃあブッパするためだろ?」

作者「いや何普通にしようとしてんの?!それくらったら流石にし…「月牙天衝!!」」

作者「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

翔「ふぅ…。んじゃあ本編行くぞ!」



前回のあらすじ

 

翔マシュ励ます、そしてキャスニキ登場!!

 

「よぉ、ちょっとばかり手を貸してやるぜお二人さん」

 

そこに立っていたのは青い髪に杖を持った青年だった。

 

「あんた誰だ?味方って捉えていいのか?」

 

翔が彼に聞くと彼はああ、いいぜと了承した。

マシュに鎌を塞がれた彼女は彼を見て顔を強ばらせていき、そして叫んだ。

 

 

「貴様…キャスタァァァァァァァァァァ!!!!なぜ貴様がそちらにいる!!」

 

「おぉ久しぶりだなランサー。そりゃあお前達何かよりもこっちの方が何百倍もマシだからよ」

 

「殺してやる!!貴様はここで殺す!!」

 

「きゃぁ!」

 

ランサーはマシュを無理やり弾き飛ばしキャスターに接近し鎌を振るう。キャスターはそれを己が持っていた杖で難なく防ぐ。

 

「キャスタークラスがランサーの真似事ですか。滑稽ですね!!」

 

「はっ、笑わせんなよ。俺の本来のクラスはランサーだ…っよ!!」

 

キャスターは杖を槍のように振るい攻撃する。だがクラスのせいか攻めきれない。

そこでマシュがランサーの背後に周り攻撃を仕掛ける。

だがランサーは上に跳躍し、マシュの攻撃をかわすと同時に距離も取った。

 

「キャスター、こっちを任せてもいいか?」

 

「あぁ?どういう事だ小僧?」

 

「何かがこっちに近づいてきるから俺はそっちを対処する。だからこっちを任せたいんだ。それとマシュの事頼んだ」

 

翔はさっきの違和感について気になるから、離れる意を伝える。

 

「…わかった。こっちは任せろ」

 

「ありがと、キャスター」

 

翔がそう言うとキャスターはおう、とだけ言い再びランサーへと向かっていった。

翔は瞬歩でマスターの前に飛んだ。急に現れた翔に立香は驚きを隠せなかった。

 

「うわぁ!翔!?」

 

「悪いマスター。少し単独で行動したい」

 

翔の申し出に真っ先に反対の意を示したのは立香の近くにいたオルガマリーだった。

 

「あなた何言ってるの?!サーヴァントがマスターから離れるなんて有り得ないわ!!」

 

「…何か俺達に不利なることがあるんでしょ翔?ならそっちは任せるよ」

 

「っちょ!何言ってんのよ!!」

 

オルガマリーが立香に迫った。

 

「彼がここから離れたらあいつはどうするのよ!!あのキャスターが味方だとしてもあのランサーに勝てる保証はないのよ!?」

 

そこでロマンから連絡が入り驚愕の事実を述べた。

 

「…いや所長。こっちに向かってきているのはサーヴァント、それもクラスはバーサーカーだ」

 

それを聞いた所長の顔がどんどん青ざめていく。まぁ当然の反応である。だが立香は違った。彼はサーヴァントのクラスや特性といった基本的なことはマシュに教えて貰っていた。だからバーサーカーがどれだけ危険なのかは知っているがあっけらかんとしていた。

 

「マスターは案外にも落ち着いているんだな」

 

「へ?だって翔が守ってくれるんだろ?だからこの場を二人に任せるって言ったんだろ?」

 

翔はその事に少しばかり驚いた。このマスターはさっき会ったばかりの俺を既に信頼(・・)していた。天然なのかキモが座っているのかは分からない。

だが信頼されて気分を害するものはいないだろう。(一部のアベンジャーは除く)

 

「っふ。マスターは何でもお見通しってか」

 

そういい彼は笑った。

 

「んじゃあマスターの期待に応えよう。所長の事頼んだぞマスター」

 

そう言い残し彼はバーサーカーがいるであろう方向に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

「ここら辺か…」

 

バーサーカーがいると思われる場所まで来たがそこは酷い有様だった。周囲は更地状態。こりゃ酷いな…。

 

「ウォォォォォォォォォォォ!!!」

 

「!!こりゃ本気でやんねぇーと俺がやれんな…」

 

斬月を抜き、声の方を見ると二mはあるであろう体が黒いモヤで覆われ、手には馬鹿でかい石剣を持っていた。だがシャドウサーヴァントになろうとも圧迫感がすごい…。多分だがかなり有名な英霊何だと結論づけた。

 

「ウォォォォォォォォ!!!」

 

叫びながらものすごいスピードで突っ込んできた。

 

「っんな!?」

 

それを左に躱し、カウンターで横一線に斬りつける。だが…

 

「硬すぎんだろ!!斬月が効かねぇっておかしいだろ!」

 

今の攻撃で右腕を斬りつけたが斬った感覚がなかった。それどころか皮膚だけで跳ね返させられた。

壁に突っ込んだバーサーカーから少し離れた。

 

「しゃぁね、こっからは加減なしだ!」

 

俺は左手を顔に添えて引く。そこには鬼のような白い仮面──左目の当たりから赤いラインが伸びている──が現れる。

そしてそのままバーサーカーに突っ込む。

 

「ウォォォォォォォォ!!」

 

雄叫びを上げながら石剣を縦横無尽に振るってくるがそれらを全ていなした。そして石剣を大きく弾き飛ばした隙をついた。

 

『これで終いだ』

 

俺が縦に振り下ろした時に思いも寄らなかった反撃を受けた。

それを腹にモロに受けた俺は色々なものを無視して数十メートル吹き飛ばされた。

 

『っクソが…!何であの体勢から反撃できんだよ!それも弾いた剣を地面に突き立てて蹴りとかありぇねぇだろ…!』

 

悪態をつきながら口内の血を吐き捨てる。

多分だか内臓の一個は逝ったな…。

だが今の一撃は信じられなかった。

バーサーカーは手に持っていた石剣を弾かれた瞬間に地面に突き立てたのだ。だがそんなのを出来るのか言われれば不可能と誰もが答えるだろう。だがバーサーカーはそれをやり終いには回し蹴りの容量で反撃をしたのだ。

 

まさにバケモノ。その一言が脳裏をよぎった。

 

『(あんなの出来んの吸血鬼でもいなかったぞ!マジてバーサーカーなのかあれ)』

 

剣を杖替わりに立ち上がり、敵を見据える。バーサーカーはそのままこちらに走ってきていた。

 

『ならこれならどうだ?』

 

斬月を両手で持ち、頭の上に構えた。そして斬月が青白い光を纏っていく。まるで力を吸うかのように。段々と光が強くなっていく。

 

『月牙…天衝!!!』

 

斬月を振り下ろし、バーサーカーに放つ。

青白い三日月はバーサーカーを覆った。確かにそれを見た。なのに──

 

『ウソ…だろ…?』

 

バーサーカーは自らの石剣で月牙天衝を受け止めた。だがそれと同時に石剣は砕け、体にも少なからず傷はついている。

ならばと思い瞬歩で彼の周り高速で移動する。目的としては錯乱。そして──

 

『これで本当に終わりだ』

 

背後に周り、青白い光を纏った斬月を振るった。

 

『月牙天衝!!』

 

彼の斬撃がバーサーカーを包みこみ、彼の姿は跡形もなく消えた。

 

「ふぅ…」

 

仮面を消し、斬月を背中に収め、近くにあった瓦礫に腰を下ろした。

さっきのバーサーカーについて考えた。

 

「(アレで理性飛んでるってありぇねぇわ。もしアレで頭使われたら勝ち目はなしだな。もしかしたらマスターだけ狙うのも有り得るな…)」

 

そこまで考えた時点で腰を上げ、マスターの元に向かった。

 

 

 

 

マスターの元に戻るとランサーを倒したのか四人が待っていてくれた。

そんな四人を見て、無事でよかったと思った。

彼らは俺の姿を見るとこっちに駆け寄ってきた。

 

「翔!!よかった!」

 

「無事で何よりです!!」

 

「バーサーカーは!?倒したのよね?!」

 

「どこの英雄か知らねぇがバーサーカーをやるったスゲェな」

 

上からマスター、マシュ、所長、キャスターが言い寄ってくる。

 

「心配かけて悪かったな。バーサーカーは倒したし怪我もない…はず」

 

「はずって何?!どこか痛いところとかない?!」

 

「いや大丈夫だから、落ち着けって」

 

「あ、あの…翔さん…言いにくいのですが…」

 

マシュの一言に疑問に思い首を傾げる。

 

「鼻血出てます」

 

「うそ?!」

 

「あ、ほんとだ」

 

恥ずい?!いつ出たんだ?!あれか!バーサーカーとの戦いでか?!あのヤロー!!許さんぞ…!!

 

「いや何で目の前にいるマスターが気づかないんだよ」

 

キャスターがため息をつきながらやれやれと言った感じで言ってきた。

 

「それよりもお前ここに座れ」

 

「へ?」

 

「治療すっから座れ」

 

キャスターは一体何を言っているんだ?俺はケガなんてシテナイヨハハハ

 

「いいから座れ。テメェ内臓潰れてんじゃねーか」

 

「「「はい?!」」」

 

「…何で言うかなキャスター」

 

渋々と言われた通りに座るが周りが特にマスターがうるさい。

 

「潰れたってどうゆうこと?!大丈夫なの?!それより何で言わないの?!バカなの?!翔はバカだ!!アホ!!すっとこどっこい!!」

 

こういった具合で言ってくるが最後の方なんて罵倒じゃねーか。何だよすっとこどっこいって。

 

「まぁ落ち着け坊主。何故だかわからんがこいつのケガは治り始めてる。内臓が再生するなんてありぇねぇだろ。まぁ一応ルーンを掛けとくけどよ」

 

マスターに説明をしながらルーンを掛けてくれた。終わったみたいで、もういいぞと言われたので立ち上がる。

 

「ちょっと待ちなさい。内臓がこんな短時間に再生するなんて聞いたことないわ。あなた本当に何者なの?」

 

所長が俺に再度聞いてきたが…何て答えるのが正解なのだろう

ひとまずは誤魔化すしかないかなぁ何て思ってるとマスターが

 

「嘘言ったら許さないぞ翔」

 

これは逃げ場ナイジャナイデスカ

 

「はぁー…わかった。再生に関しては俺の刀の力としか言えない。それと俺はマスター達の味方だ」

 

「刀の力?」

 

「ああ。まぁ今は時間もないからこれで納得してくれ」

 

頼むと手を合わせて言う。これでダメだったらどうしようか…

 

「まぁ俺はいいけど…」

 

チラッと所長を見るマスター。

 

「…まぁいいわ。そしてキャスターあなたに聞きます。今この地で何が起きているのか知ってることを教えてちょうだい」

 

「はいよ」

 

 キャスターが説明でわかったことは、キャスター自身がこの聖杯戦争の参加者だったということ。

 セイバーのサーヴァントに倒されたサーヴァントは、黒くなり、あふれ出してきた異形とともに何かを探しはじめたということ。

 セイバーを倒し、キャスターが勝利することが出来たのなら、この特異点という場所における問題が解決するだろうということ。

 

「というわけで、目的は一致している」

 

「なるほど、手を組むということね。あなたはセイバーを倒したいけれど戦力が足りない」

 

「ああ、そういうこった。利害は一致しているしな」

 

「じゃあ任せたわよ藤丸」

 

「えぇ?!」

 

「あなたマスターでしょう。サーヴァントの一人や二人、うまく使って見せなさい」

 

「いや三人目ですからねこれで」

 

「っ…今のは言葉の綾です!」

 

「まぁとりあえずよろしく頼むぜマスター」

 

「それじゃあ、目的の確認と行こう。アンタらが求めているものとオレが目指す場所はおそらく一緒だ。セイバーの根城だな。この土地の心臓部といっても過言じゃねえ」

 

「セイバーは城でもを構えているのか」

 

「まあ、そんなところだ。道筋は教える。いつ突入するかは、そこのボウズ次第だ」

 

「わかった。それじゃあ向かおう。ここにいても事態は変わらないしね」

 

「はい!行きましょう!マスター!」

 

俺らはキャスターの導きに従って、この土地の心臓部へと向かった

 

 




感想の方お願いします

では次回もよろしくどうぞ


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4話~大空洞~

お久しぶりです

今回はいつもより長めです。五千文字くらいかな?

ではごゆるりと


俺達は今キャスターの案内でこの土地の心臓部である大空洞に向かっている。何でもそこには大聖杯?もあるらしい。

 

「そういえばキャスター。セイバ―はどんなサーヴァントなんだ?」

 

「ああ…。あいつは他のサーヴァント達とは違う。他の奴らがやられたのもセイバーの宝具があまりに強大すぎたからだ。騎士王と誉れ高い『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』の担い手、アーサー王なら尚更だ」

 

『アーサー王だって!?』

 

キャスターの答えにロマニが思わず声を上げた。それもそのはず。

 

アーサー・ペンドラゴン。騎士の王、アーサー王といえば、遥か昔の古代イングランドの王様だ。物語や歴史に関する知識に疎い俺でも知っているその存在は、日本でもあり余るほど有名だ。

 

「気持ちはわかるがそこまで驚くなよ。俺の勘が正しけりゃ、お嬢ちゃんの宝具はセイバーとは相性が良いはずだ」

 

キャスターの言葉にマシュはピクリと体を揺らすと、申し訳なさそうに口を開く。

 

「……すみません。私はまだ宝具を使えません。これではいつまで経っても欠陥サーヴァントのままで……」

「マシュ!自分をそんな風に言っちゃダメだよ!」

 

『そうだよマシュ。宝具は英霊の奥の手、いわば超必殺技だ。それを一日二日で使えるようになるわけ――』

 

「あ?そんなのすぐに使えるに決まってるじゃねぇか。サーヴァントと宝具ってのは同じもんだからな。お嬢ちゃんがサーヴァントとして戦えるのなら、その時点で使えるはずだ」

 

落ち込むマシュに立香とロマンが必死にフォローをするが、キャスターがそれを斬って捨てた。

 

「なのにできねぇってことは……なんつーかな?弾けてねーっつーか、大声を上げる練習をしてねぇだけだ」

 

「……!そ、そーなーんーでーすーかーーッ!!」

 

「ちょっと!いきなり大声出さないで!鼓膜が破れかけたわよ!」

 

キャスターの言葉でマシュは本当に大声を出したものだから、当然至近距離にいた全員の耳が被害を被る羽目になる。怒鳴るオルガマリーの声も相当うるさいのだが、黙っておく。

 

「やる気があるのは結構だが、そりゃものの例えだ。例え!」

 

まさか冗談で言ったことを本気で実行すると思わなかったのか、キャスターも疲れたような表情を見せる。この天然さに思わず笑いが出てしまった。

 

「…っはははは!」

 

「翔さんも笑わないでくださいッ!」

 

「悪い悪い」

 

とそこでキャスターが突然言った。

 

「今回嬢ちゃん、恐らくあんたが攻略の鍵だ」

 

「私がですか?」

 

キャスターに名指しされたマシュは一瞬呆ける。

 

「嬢ちゃんのその盾。間違いなくそいつが宝具だ。そしてそれこそが、セイバーの宝具に対抗できるもんだと確信している」

 

「ですが…今私は…」

 

マシュは躊躇する。そう、マシュは今自分と融合したサーヴァントの真名が未だに分かっていない。故に宝具を使うことができないのだ。

 

「嬢ちゃんの今の状態は聞いている。だが勘違いしちゃいけねえ、サーヴァントと宝具は一心同体だ。嬢ちゃんがサーヴァントとして戦える以上、当然宝具もつかえるはずだ」

 

そしてキャスターはよっこらせと立ち上がる。

 

「ちっとばかし、俺に付き合いな嬢ちゃん」

 

そう言って、キャスターはマシュを広めの場所へと連れていく。

 

 

そこにはマシュとキャスターが対峙しており、他の皆は少し離れた場所から見ていた。

 

「俺が思うに、あんたは単に魔力が詰まっていてそれを吐き出す要領が掴めてねえ。それをこれから、叩き込む」

 

キャスターは杖を構えると

 

「遠慮なしで掛かってこい。でなけりゃ…そっちが死ぬことになるぜ?」

 

キャスターの凄まじい殺気にマシュはたじろぐ。それでもマシュは持ち直した。

 

「そんじゃ、行くぜ!」

 

そうして、キャスターはマシュに攻撃を仕掛ける。杖を振るうキャスターに対して、マシュは盾で懸命にガードする。キャスターの猛攻にマシュは後退し続ける。

 

「どうした、嬢ちゃん!守ってばかりじゃどうにもなんねえぞ!」

 

「!…ヤアー!」

 

キャスターに触発されたマシュは盾を振るい、キャスターを弾く。弾かれたキャスターは体勢を整えつつ距離をとる。

 

 

「やりゃあ、できんじゃねえか!」

 

それからも戦闘は数分続いた。最初は、キャスターの殺気と気迫に押され気味だったが。次第にその身を振るい立たせ、積極的に戦えるようになってきた。それを見たキャスターは

 

「さて…ここいらが仕上げ時か…」

 

マシュから距離を取り、詠唱し始める。

 

「我が魔術は炎の檻、茨の如きは緑の巨人…」

 

「な!?まさかキャスター、宝具を使うつもりなの!?いくら何でもやりすぎよ!」

 

それを見た所長は中断させようと動く、しかしそれを俺は制した。

 

「いや、止めるな」

 

「どうしてよ!?今、マシュは宝具を使えないのよ!?万が一のことがあったら…」

 

「これはマシュ自身が望んだことだ。それに彼女は守られる側より守る側の人間だ。信じてやれよ所長」

 

その言葉に所長は言葉を失った。その目は決して反らさず、マシュの方を見ていた。

立香はそんな翔を見て、大きく感じた何て強い信頼を寄せているのかと。

そんなギャラリーにお構いなしにキャスターは詠唱を続ける。

 

「因果応報、人事の厄を清める社―倒壊するは…!」

 

そして地面から、炎の巨人が現れる。そして巨人の一撃がマシュに迫る。

 

「っ!(守らないと…使わないと…皆消える…)」

 

迫る巨人の手を前にマシュは必死に振り絞る。そして翔に言われたことを思い出す。

 

「(偽物でもいい…今だけでもいい…。私が使わないと、先輩が…皆が消えてしまう…!だから!)」

 

「ああ、あぁああああ―――…!!!!」

 

その瞬間、マシュの盾が輝きだす。

マシュがそれを付きだすと、盾を中心に巨大な壁が出現する。

それが巨人の攻撃を防ぐと、そのまま跳ね返し、巨人を転倒させた。

倒れた、巨人はそのまま消滅した。キャスターをそれを見て笑みを浮かべた。

 

「私、いま…」

 

マシュ自身も信じられなかった。今のはまさに宝具それを使えたのだ。

 

「ヒュウ、何とか一命は取り留めるとは思ったが、まさか宝具を跳ね返すとはな。嬢ちゃん、あんたはもう立派な一線級のサーヴァントだ」

 

キャスターにお墨付きを貰えたマシュはうれしさがにじみ出る。

 

「やったな、マシュ!」

 

「はい…先輩」

 

立香の労いにマシュも心が躍る。

 

「フォウ!フォーーウ!」

 

フォウも心なしか嬉しそうだった。

 

『驚いた。まさかこんなに早く宝具が使えるなんて、マシュのメンタルはそれほど強くなかったのに…』

 

ロマンも信じられないと言う顔だった。

 

「そりゃあ、あんたのとらえ方が間違ってたんだよ。嬢ちゃんは守るほうの人間だ。鳥に泳ぎ方を教えても、しょうがねえだろ?それなら高く飛べる方法を教えてやんなきゃなあ」

 

キャスターは分かりやすく喩えを言う

 

「と言っても、それでも真名をものにするところまではいかなかったがな」

 

「はい。宝具を使えるようにはなりましたが、未だに宝具の真名も、英霊の真名は分かりません」

 

キャスターの言葉にマシュは少しシュンとなる。

 

「…未熟でもいい、仮のサーヴァントでもいい、そんな願いで宝具を開放したのね?」

 

所長の言葉にマシュは頷く。

 

「あなたは真名を得て、自分が選ばれた者に…英霊そのものになる欲が無かった。だから、宝具も貴女に応えた。あーあ、とんだ美談ね。御伽噺もいいとこだわ。まあでも、宝具を使えるようになったのは喜ばしいことだわ」

 

口ではそういうも所長もこの結果に喜んでる様子だった。

 

「それで、その宝具には何て名前にするの?」

 

立香がそう質問する。確かに名前が無ければ、色々と不便だ。

 

「それだったら、いいスペルを考えてあるわ」

 

所長が命名する。

 

「宝具の疑似展開だから…そうね、ロード・カルデアスと名付けなさい。カルデアは貴女にとっても意味のある名前よ。霊基を起動させるには通りのいい呪文でしょ?」

 

「はい!ありがとうございます、所長!」

 

マシュも所長が付けた名が気に入ったようだ。

 

『ロード・カルデアス…うん、それはいい。マシュにぴったりだ』

 

ロマンもその名に不満はないようだ。

 

「さて、これで戦力は全て整ったわけだな?」

 

 「ああ。後は大聖杯を目指すだけだ」

 

マスターの言葉に皆気を引きしめ、大空洞を目指した。

 

 

 

 

 

 

俺達が大聖杯の存在する大空洞へと向かう足は衰えず、敵を蹴散らしながら前進していた。

その結果、大空洞付近に到達するまでの時間はそうかかりはしなかった。

そうして辿り着いた大空洞の入り口は、まるで獲物が入るのを待ち受けるかのように大きな口の先には暗闇が広がっている。

緊張した面持ちの立香は、この周囲に漂う濃密な魔力?に少しばかり重圧を感じるようだった。

 

「…ここに、セイバーがいるんだね」

 

「ああ、奴を倒せば恐らくこの特異点とやらは治るだろうよ。だがまあ、その前に面倒なのを相手にしなきゃならないがな」

 

キャスターはそう言って背後を振り返る。続けて全員がそちらを見やると、入り口から少し離れた小さな丘の上に佇む長身の人影。

黒いボディアーマーを着込み、白髪で褐色の肌を持つ男。その鋭い目は鷹を思わせ、手には長大な黒弓が握られている。

 

「おう、早速信奉者の登場か」

「……ふん。信奉者になった覚えはないがね。つまらん来客を追い返すくらいの仕事はするさ」

 

「要は門番じゃねェか。お前ら先に行きな、こいつは俺がやる」

 

キャスターが杖を構えながら催促する。

 

「でも…大丈夫なのか?」

 

立香が心配した様子で聞くがキャスターは「安心しな。すぐに追いつくからよ」と言いのけた。

そのおかげでマスターは「任せるよ!」と答えた。

 

「んじゃあ、ここらでケリ、つけようや!」

 

キャスターとアーチャーの戦闘が始まった。

俺達はそれを尻目に洞窟の中へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

洞窟の最奥部へ到着した俺たちはその光景を目の当たりにする。そこにあったのは巨大な魔力の塊だった。

 

「これが、大聖杯……超抜級の魔術炉心じゃない。なんで、極東の島国にこんなものがあるのよ…」

 

所長はその予想を超えた魔力量に思わず震える。

 

 『資料によると、御三家の一つであるアインツベルンが制作したそうです。かの一族は人造人間(ホムンクルス)を作り出す錬金術に秀ていたそうですが…』

 

ロマンが説明をしている時。

 

「話はそこまでだ。来るぞ…!」

 

俺も警戒レベルを最大限上げる。 

 

「……」

 

マシュたちの前に現れたのは、漆黒の鎧を身にまとい、禍々しい黒い剣を持った少女のような騎士だった。マシュはその存在を前にして、気圧されそうになる。

 

「…なんて、魔力放出。あれが、本当にあのアーサー王なのですか?」

 

「間違いない。何か変質しているようだけど、彼女は間違いなくブリテンの王にして、聖剣の担い手であるアーサー王だ」

 

マシュの疑念に応えるようにロマンが説明する。

 

「でも…あれはどう見ても女の子だよね?」

 

マスターは最もらしい疑問を問う。

 

『恐らく、事情があってキャメロットでは男装していたんだろう。男性でなければ王位に付けないなんてことはそう珍しくもない。大方、そんなお家事情があったんだろう。多分だけど、宮廷魔術師の悪知恵だろうね。伝承にもあったけど、ほんとにマーリンは趣味が悪い』

 

ロマンは何処か不愉快そうな声色をしていた。その時、

 

「…ほう、面白いサーヴァントがいるな」

 

沈黙を貫いていたセイバーが唐突に喋り出した。

 

セイバーは興味深そうにマシュを見いながら言った。

 

「しかし…面白い。その宝具は面白い」

 

セイバーは剣を構え

 

「構えるがいい、名も知らぬ娘よ。その守りが真実かどうか、この剣で見極めてやろう!」

 

「来るぞ!マシュ!」

 

「はい!マシュ・キリエライト!セイバーとの戦闘を開始します!」

 

 

 

 

 

 「ハア―――――!」

 

セイバーが剣を振るうと、マシュがそれを盾で止める。

 

「…!!」

 

その一撃、一撃が重く、マシュは防ぐので精一杯だった。

 

「どうした?そんなものか?」

 

「くっ!」

 

「おらあぁぁぁぁ!!!」

 

後ろに回り込み斬りかかるもセイバーはマシュを弾くと同時に回転して剣で受け止めた。

 

「チッ!流石はアーサー王ってか…!」

 

セイバ―の魔力放失によって鍔是り合いの状態から吹き飛ばされるも空中で体勢を整え着地し、見据える。

 

マシュがセイバ―の攻撃を弾き翔が隙を突く。またこれと逆で攻めるがセイバーの攻防一体ともいえる魔力放出に大した効果は得られなかった。

 

「そろそろ、終わりにするか」

 

セイバーはマシュたちから距離を取り、剣に魔力を貯める

 

「宝具を使う気だわ!」

 

それを見た所長は大声で叫ぶ。そしてマスターは右手にある令呪をきった。

 

「令呪をもって命ずる!。マシュ、宝具展開!!」

 

「はい!」

 

マシュも宝具を使う体勢に入る。そして、セイバーの黒い聖剣からそれが、放たれる。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガーン)!!!」

 

刀身から放たれた黒き斬撃がマシュたちを襲う。

 

「宝具…展開します!!」

 

それに対して、マシュは盾を斬撃の前に突き出す。

 

仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!!」

 

盾の中心から壁が魔力の壁が出現する。

その壁は黒き斬撃を受け止める。しばらく続いたそれは、ようやく奔流が収まる。

マシュの宝具はセイバーの宝具を防ぎ切った

 

「ハァハァハァ…ッ!」

 

「ほう?よく防いだな娘。では次は全力で撃たせてもらおう」

 

セイバーは剣に魔力を溜める。それはさっきよりも多く、禍々しかった。

 

「そ、そんな…」

 

所長はそれを見て絶望した顔で座り込んでしまった。

だが立香は諦めようとしていなかった。否諦めたくなかった

 

「(クソクソクソ!俺には何もできないのか…!)」

 

だが無情にもセイバーは告げた。

 

「さらばだ。卑王鉄槌、極光は反転する。光を呑め!

 

約束された(エクスカリバー)勝利の剣(モルガーン)!!!」

 

そうして振り下ろされた刀身から放たれた黒き斬撃がマシュたちに襲いかかる。

 

 

はずだった。

 

 

「月牙…天衝!!!」

 

黒き斬撃の奔流を青白い奔流がぶつかり合い打ち消した。

それを見たセイバーは驚きを隠せなかった。自らの宝具──例え反転しようとも、輝きを失おうとも絶大な威力を誇る──を正面から打ち消したことに。だがそれ以上に興味が湧いた。

誰が自分の聖剣を打ち消したのかに。

 

『悪いが、ここから先は通行止めだ』

 

そこに立っていたのは仮面を付けた翔が三人を守るように立ってセイバーを見据えていた。

 

 




いやーマシュも宝具使えるようになったし良かったね。え?その所翔影薄くね?って。いやいやそこはほら兄貴の顔を立ててさ。
アーチャーは兄貴に任せたのはまぁ原作通りかなー。流石に翔とは接点がないから無理あったし。
セイバーの時の翔に関しては一旦消えて何してんだよって思うかもしれないけどそこはほら力を出すためとか、ね。

まぁご都合主義だから是非もないよね!!
てことで次回もよろしくどうぞ!


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5話~終わりであり始まり~

皆さん遅れてすいませんでした、

一応今回で特異点Fは終了ですかね



「『悪いが、ここから先は通行止めだ』」

 

「ほう?我が聖剣を打ち消すか。おもしろい、おもしろいぞ貴様」

 

セイバーは笑っていた。その目には己と同等の強さを誇る剣士がいる。

例えその身が反転していようとも強者と戦えるとこ自体に嫌悪はない。何なら喜びすら感じている。

 

「(…まだこんな気持ちになれるなんてな。おかしなものだ)」

 

セイバーは笑いながらも聖剣を構える。

 

「さぁ行くぞ名もしれぬ英雄よ。もっと私を楽しませろ!」

 

セイバーは魔力放出で一気に接近し、聖剣を振るう。

それに対して翔も斬月を振るう。

お互いがお互いに全力で剣を振るう。それは常人には捉えられスピードではなくまさに音速とでも言わんばかりの高速戦闘。立香達の目に映り、聞こえるのは残像と剣がぶつかり合う音のみ。

それほどに二人の闘いは凄まじかった。

 

「『…楽しいのか?』」

 

翔はそんな質問を打ち合いの中ポツリと聞いてしまった。

鍔迫り合いになった時にセイバーは少し驚きながらも答えた。

 

「…なぜそう思う?」

 

「『さっきのしかめっ面から途端に笑顔に変われば誰でも気づく』」

 

「…っ!」

 

一瞬セイバーの体が硬直した。翔はその隙を見逃さず鍔迫り合いから吹き飛ばした。

そこから瞬歩で接近し追撃を行う。

セイバーは思わぬ攻撃に体制を崩しながらも耐え、魔力放出で翔を吹き飛ばし距離をとった。

 

「…貴様の言う通り私は楽しいと感じている。だがそれもここまでだ。いつまでもこの闘いを続けるわけにいくまい。貴様も同じだろ名も無き英雄よ」

 

「『ああ、そうだな。此処いらで決着をつけようか誉れ高き騎士の王よ』」

 

お互いに剣を再び構えるが先程とは違い、魔力を己が剣へと注ぐ。

 

「これが私の全力だ!!

 

束ねるは星の息吹 輝ける命の奔流

 

受けるがいい!!『約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガーン)』!!!」

 

放たれるはかの聖剣の一振り。それに対抗すべからずは彼女への侮辱であると。そして翔も全力の一振りを放った。

 

「『流石だよ、騎士の王よ。だけど俺も負けるわけにいかねぇ!!

 

この力は仲間のために!!家族を守るための力!!

 

月牙 天衝ォォォ!!!』」

 

それは先程の青白い光ではなく少し赤みを帯びた黒であった。

お互いの宝具がぶつかり合う。そこにあるのは負けてたまるかという意地のみ。

だがだんだんと翔が押し始めた。

 

「『ウオオオオオアアアーーーッ!!!』」

 

そしてセイバーの一振りを押し切り翔の宝具がセイバーを包み込んだ。

その一撃は大空洞が震えるほどのもの。そのまま月牙天衝は大聖杯の玉座たるものを半壊させた。

 

 

 

 

立香side

 

もうダメだと思った。セイバーの放った一撃で俺たち全員終わりだと思った。だけどそこに現れたのは白い仮面を付けた翔だった。

翔はセイバーの一撃を打ち消した。それだけでも驚きだった。

今、翔が戦っているうちにとマシュの元に駆け寄った。

 

「大丈夫マシュ!?」

 

「…は、はい。大丈夫です。でも…」

 

マシュは戦闘の方へと目を向けた。

そこにはあるのは剣がぶつかり合う甲高い音のみ。二人の姿は全くもって見えない。

所長も何が起こってるのか分かってないし。そんなことよりも…

「翔は一体何者なんだ?」

 

「…マスター。私は歴史に関しては知っているつもりです。ですが過去に朝倉翔何て人物、ましてや帝鬼軍なんてものは日本にはありません。なので私の推測ではあるんですが…」

 

マシュの言葉はそこで途切れた。視線を追うとそこには二人が胸の前に剣を構えていた。

 

「まさか宝具?!」

 

いつの間にか近くまで来ていた所長が声を上げる。

 

「マスター、所長も私の後ろに!」

 

マシュが盾を地面に突き立て防御の姿勢をとる。二人とはそこまで離れておらず、二つの宝具がぶつかれば余波は大きなものとなってこちらに来る。

盾に身を隠すと二人の詠唱が聞こえてきた。

 

「これが私の全力だ!!

 

束ねるは星の息吹 輝ける命の奔流

 

受けるがいい!!『約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガーン)』!!!」

 

「『流石だよ、騎士の王よ。だけど俺も負けるわけにいかねぇ!!

 

この力は仲間のために!!家族を守るための力!!

 

月牙 天衝ォォォ!!!』」

 

二つの宝具がぶつかり合う。セイバーの宝具は先程とあまり変化はない。強いていえば大きさのみ。だけど翔のは違った。先程は青白い安心出来るものだった。だけど今回のは赤黒かった。そして禍々しいと感じた。

 

「『ウオオオオオアアアーーーッ!!!』」

 

翔が唸り声を上げて力を込めたんだろう。それと同時に聞こえたのは何かが崩れた音だった。

盾から顔を出して見てみると煙がまっていた。その中に剣を振り切って途切れ途切れ息をする翔が立ってた。

 

「ほ、本当にアーサー王を倒しちゃったのアイツ…?」

 

「は、はい。恐らくそうだと思います」

 

そんな二人の会話を聞いていた時、聞きなれた声が俺に届いた。

 

「おぉ、こっちも終わったみてぇじゃねーか」

 

「キャスター!」

 

「よぉ坊主。こっちも終わったぜ」

 

そういうキャスターの体はかなりボロボロであった。それほどにあのアーチャーとの戦いは凄かったのだろう。

 

「それよりもあいつの所に行くぜ」

 

「ああ、そうだね」

 

キャスターも揃い四人で翔の元へと向かった。

 

 

 

 

 

────

「はぁはぁ…。ちょっとこれはヤベぇな…」

 

「翔ー!!!やったじゃん!!これでなんとかなるよねきっと!」

 

いつの間にか合流したキャスターも合わせて四人がこちらに来た。

 

「喜んでるとこ悪いけどまだなんだよマスター。少し下がっててくれ。そうだろセイバー?」

 

「嘘!?まだ立っていられるっていうの!?」

 

煙が晴れた中セイバーは立っていた。だが鎧はボロボロ、体も光の粒子が足元から現れている。

そしてセイバーの後ろの大聖杯の玉座たるものを半壊している。

そしてセイバーは先程の冷徹な笑みではなく、温かい笑みだった。

 

「ふっ、中々楽しかったぞ名も無き英雄よ。…聖杯を守り通す気でいたが、己が執着に傾いた挙句、敗北に喫した…。結局、どう運命が変わろうと私一人では、同じ末路を迎えるというわけか…」

 

セイバーは語る。

 

「今のはどういう意味だ?何を知ってる?」

 

「いずれ貴方も知る。アイルランドの光の御子よ。そして…名を知らぬ英雄よ。グランドオーダー、聖杯を巡る戦いは今、始まったばかりだ」

 

その言葉を最後にセイバーは消滅した。

 

「セイバー…。俺も楽しかったぞ。出来れば違う形で会いたかったな…」

 

「な、おい!くそ…、最後の最後で思わせぶりなこと言いやがって」

 

キャスターは口惜しい心境だった。翔は少し寂しげに呟いていた。

そんな時、キャスターの体だけが粒子になる。

 

「!…強制退去か。俺らはここまで…ちょっと待て何でお前はそのままでいんだ?!」

 

その言葉を最後にキャスターは座へと帰された。だがおかしい。キャスターの言葉は誰に向けられたのか。そんなの一人しかいない。

ここまで立香達を支え、セイバーを倒した人物。

 

「…ンなもん俺が聞きてぇよ」

 

残った三人の視線を浴びながらボソッと言いどうしたらいいのかわからない翔であった。

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容の許容外だ」

 

その声を聞いて三人の体が強ばった。翔にとっては知らぬ声。所長に関しては涙を少し浮かべている始末。

だが翔は感じとっていた。あれは(・・・)人成らざるものだと。自分自身(・・・・)がそうであるように。

 

「レフ教授!?」

 

「レフだって!?彼がそこにいるのかい!?」

 

マシュもロマンも驚いており

 

「まさか、生きていたなんて…!」

 

立香も驚愕していた。それもそうであろう。彼は本来は死んだと思われていた人物。それが生きていたのだ、誰でも驚く。

だが翔だけはレフのことを睨んでいた。

 

 

「おや?今の声はロマニ君かな。君も生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来てほしいと言ったのに、私の指示を聞かないとは全く…」

 

レフは笑顔が豹変した。

 

「…どいつもこいつも統制のとれてないクズばかりで反吐がでるな。人間とはどうしてこう、決まった運命から外れたがるのか」

 

その表情の変わりように、翔は警戒心を最高レベルまで引き上げた。

 

「先輩…!あれは、私たちの知っているレフ教授ではありません!」

 

マシュもレフの異質さを見抜き、立香もレフの豹変に恐怖心が出ていた。しかし

 

「レフ…ああ…レフ生きてたのね」

 

オルガマリーはレフが生きていたことに歓喜し、レフへと近づいていく。

 

「ダメだ!そいつに近づくな!」

 

翔が呼びかけるも、所長は聞く耳を持たない。

 

「良かった…貴方がいなくなったら、私これからどうやってカルデアを守ればいいか…」

 

もはや彼女の心は完全にレフに依存していた。

 

「やあ、オルガ。元気そうで何よりだ。君も大変だったようだね」

 

レフは作りものの笑顔を貼り付け言う。

 

「そうなのよ、レフ!管制室は爆発するし、この街は廃墟になってるし、カルデアに戻れないし、予想外のことばかりでもうどうしたらいいか…。でも貴方がいれば…!」

 

「ああ。まったく予想外のことばかりで頭が来る。…その中でも特に予想外だったのは君だよ。君の足元に爆弾を仕掛けたのに、まさか生きているなんて」

 

「え…?レ、レフどういう、事なの…?」

 

彼女はレフの言っていることが理解できなかった。いや、したくなかったというべ気だろうか。

 

「いや、生きているのとは違うな。君はとっくに肉体は死んでいる」

 

レフは容赦なく言葉を放つ。

 

「どうやらトリスメギストスは、残留思念となった君をこの冬木に転移させてしまったようだ。君にはレイシフト適性が無かっただろう?肉体があったままでは転移できない。つまり君は、死んだことで初めて、あれほど切望していた適性を手に入れたんだ」

 

彼女は、完全に動揺、混乱していた。

 

「そんな…消滅?私が…?もうカルデアに戻れない…?」

 

「そうだとも。だがそれではあまりに哀れだ。せめて、死ぬ前に生涯をカルデアに捧げた君に、今のカルデアを見ておくといい」

 

すると、レフの背後の空間に巨大な穴があき、その先にはカルデアスがあり、その中心の球体は真っ赤に染まっていた。

 

「なによ…あれ…カルデアスが赤く…。嘘よね…?あれは、ただの虚像でしょ、レフ…?」

 

「本物だよ。君のために時空をつなげたのだからね。聖杯があればこんなこともできる」

 

現実を受け入れられないオルガマリーにレフが言う。

 

 「さあ、よく見たまえ。アニムスフィアの末裔よ!あれがお前たちの末路だ。人類の生存を示す青色は一片もない。あるのは、燃え盛る赤色だけ。あれが、今回のミッションがもたらした結果だよ」

 

「黙れよ」

 

その一言と共にレフの横を青白い三日月が通り過ぎる。

レフは視線を所長から斬撃を飛ばしたであろう人物へと目を向けた。

 

「たかがサーヴァント風情がこの私にたて突く気か?」

 

「黙れって言ったのが聞こえなかったのかクズ野郎」

 

彼──翔は視線を伏せながらも言葉を紡ぐ。

 

「お前がどこの誰だろうと知ったこちゃっねぇ。むしろ知りたくもねぇよ、テメェらみたいなバケモノの考えなんて」

 

「フ、フハハハハハハ!バケモノだと…?この私をバケモノだと!低欲な使い魔がこの私を愚弄するか!所詮貴様らなど私()にとって有象無象の存在と変わらん存在だと知れ!」

 

笑い言い放った彼の目は僅かながら開きながらもその目には復讐の炎が見て取れた。

 

「貴様らには名乗っていなかったな。私の名はレフ・ライノール・フラウロス。貴様たち人類の処理に遣わされた。2015年担当者だ」

 

「君も聞いているな、ロマニ?共に魔導を研究した学友として、最後の忠告をしてやろう」

 

一呼吸置き言った。

 

「カルデアは用済みとなった。お前たち人類はもうこの時点で滅んでいる」

 

その一言から大空洞が揺れ始める。

 

「この特異点もそろそろ限界か…いいだろう。今回の所は引いてあげよう。しかし、忘れるな。君たちの末路はすでに決定している。そして、この先にあるのは絶望だけしかないということを」

 

そして彼は地面に座り込んでいる所長を一目見て笑った。

 

「では、さらばだ。哀れにも生き残ったカルデア諸君」

 

そう一言を残しレフは消えた。

 

「地下空洞が崩れます!いえ、それ以前に空間が安定していません!ドクター!至急レイシフトの実行を…!」

 

「もう既に実行している!でもゴメン、そっちの崩壊が早いかも…!」

 

「でも所長は!?」

 

立香の一言で皆が黙ってしまう。彼女にとって、カルデアに戻っても死。このままでいても死。それらしかないのだ。どう足掻こうとも彼女は死ぬ。現状(・・)では。

 

「俺に考えがある。時間が無いから急ぐぞ。マスター、これ使え」

 

そう言い手渡したのは聖杯だった。

 

「 聖杯?!」

 

「所長、あんたはまだ生きたいのか?」

 

「…え?」

 

「これから先どんな事があろうとも生きてやるって覚悟はあるのか?」

 

俯きボソッと言う。

 

「…無いわよそんなの。私にとってレフは大切な人だった。それが…こんな形で裏切られて…もうどうしたらいいのか分からないわ…」

 

「…なら尚更生きろ」

 

翔はそんな所長に酷なことを言う。彼は彼女の目を、オルガマリー・アニムスフィアを見ていた。

 

「立香を、マシュを、ロマンを、他のスタッフを信じて生きろ。あなたが倒れても誰かがきっと支えてくれる。周りの人達はあなたの事を信頼している。だから生きるんだオルガマリー」

 

翔は彼女の肩に手を置き優しく言う。彼女はそんな彼に言

われて、涙を浮かべながらも俯き頷いたら、彼女は少しだけ救われたのかもしれない。彼女の中に死にたくない想いが現れたのも翔のおかげでもある。

 

「マスター!早く使え!」

 

「で、でもどうやって…!」

 

立香がどう使用すれば迷っていた時聖杯が少しばかり輝いた。

 

「ちょっ!何よこれ!」

 

その光は所長を包んでいきやがて消えた。

 

「…まさか今ので授肉が?」

 

「みんな!ギリギリ間に合った!意識を強く持ってくれ!レイシフトするよ!」

 

ロマンの通信が入った途端に翔以外の四人(三人と1匹だが)

を光が包んだ。

 

「ちょっと待って!翔は!?」

 

「…彼はこっちに「大丈夫だマスター」

 

ロマンの通信を遮って翔が言う。既に立香達はサルベージされかけており足元ら辺が消えている。

 

「またいつかきっと」

 

その言葉を最後に特異点Fは消滅した。




所長授肉しましたね(知らん顔)
あ、一応授肉ん所サルベージ間に合わせたのは話せる暇あるなら間に合うんじゃね?って感じです。
次回はカルデアの病室から。
んじゃあまた次回もよろしくどうぞ!



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幕間の物語
6話~召喚ってこんななのか?!~


お久です

召喚の所ってこんなに長いっけ?って思いながら書いてました


目を覚ますとそこは一面草が生い茂る草原だった。

 

「ああ、そうか。ギリギリ退去が間に合ったのか」

 

立ち上がり少し歩く。

 

「(英霊の座なんて言うから誰かしらいるのかと思っていたが誰もいないな…)」

 

『冬木での件、お疲れ様でした』

 

「…テメェ、あれはどういう事だ」

 

『どういう事、とは?』

 

「とぼけんな。俺がここに帰れたのはお前が何かしたんだろ」

 

そう、普通に考えれば彼の退去は間に合っていなかったのだ。それが間に合った。では何故か、そんなものは簡単だ。

この聖杯が翔をあの地から退去させた。流石に英霊だろうとあそこにいたらこちらに戻ってくるのは不可能だろう。

だから聖杯は翔のことを呼び戻した(・・・・・)のだ。

 

『まぁいいじゃありませんか。無事帰ってこれたんですから』

 

「…お前に頼みがある」

 

『頼みですか』

 

「ここから直接カルデアに繋いでくれ。向こうの召喚なしにこっちから向かう」

 

なんと馬鹿なことを、と英霊達は皆声を揃えて言うだろう。

 

──召喚

 

それは現世で触媒を用いて詠唱を唱えそれに英霊が答えて初めて現界する。それが降霊儀式なのだ。それを座の方からアクセスし、現界するなどそんなアホなことがあるか。

 

『出来ないことは無いですよ?まぁあなたが言い出す前からカルデアには送るつもりでしたし?』

 

「…マジかお前。何でもありかよ。そして俺の意見は無視かコノヤロー」

 

『まぁ私聖杯ですから!』

 

ドヤァ!!と効果音が聞こえそうなの声色で言うがこんな聖杯ほんとにあるのだろうか。

 

「じゃあ頼んでもいいか?」

 

『もちろんです。まぁそう言うと思っていたのでアクセスし自体はもう終わってるんですが』

 

「優秀すぎるなほんと…。どうしたらいんだ?」

 

『念じれば大丈夫ですよ。「カルデアに召喚!」とか簡単に思えば』

 

そんな簡単なことがある訳あるか。

 

「カルデアに召喚!…こんなんでいいのか?」

 

『はい。ちなみに足元を』

 

「足元?…ってもう召喚始まってんのかよ!?」

 

『じゃあ人理修復頑張ってくださいね〜』

 

その言葉を最後に朝倉翔は座からカルデアからと前例のない召喚をした。

 

 

 

──カルデア──

 

時は少し遡り、特異点Fから戻りマスターである藤丸立香は

 

「…ここは?」

 

 

 

まだ覚醒しない頭で考えながら辺りを見渡す。そこでやっと気づく。

ここはマイルームだと。そんな時、扉が開いた。

 

「先輩?体の方は大丈夫ですか?」

 

「フォウ?」

 

 

入ってきたのはピンク色の髪にメガネを掛けた少女――マシュとフォウさんだ。

 

 

「ああ、大丈夫だよマシュ。それよりもあの後どうなったの?」

 

「はい。私達がカルデアに戻ってくると同時に特異点Fは消えました。そして私達全員が気絶した状態で戻ってきたそうで…。それをドクターや他のスタッフさん達が部屋に運んでくださったみたいです」

 

「…って事は所長も無事なの?」

 

「はい!あの時翔さんに渡された聖杯のおかげでちゃんと生きています」

 

笑顔で答えるマシュに一安心する。マシュも所長も全員が無事で帰還できた。それに聖杯も手に入れられた。

だけど……

 

「…翔はやっぱりいないんだね」

 

その言葉にマシュも顔を俯かせてしまう。俺たちにとって翔はあの特異点を突破できた救世主のようなもの。

それがこの場にいないのだ。悲しみ以外の感情など出てなどこない。

 

「でも翔さんの事ですしはひょっこりと現れたりしそうですけど」

 

「…はっはは。有り得そうだね」

 

二人でそんなことを話してながらも部屋を出る。

 

「それでドクターが呼んでるんだっけ?」

 

「はい、先輩が目を覚ましたらブリーフィングルームに来てくれと。丁度様子を見に行ったら起きていたのでお疲れの所悪いとは思いますがお願いしますね先輩?」

 

少し申し訳そうに笑うマシュに大丈夫だから、と言いブリーフィングルームに向かう。

そしてブリーフィングルームに着くとドクターと所長が待っていた。

 

「やぁ立香君。目覚めたばかりで悪いんだけど現状を説明するね」

 

 

────────

 

 

「…要は残りの七つの特異点を修復をして人理を救えって事ですか」

 

ドクターと所長の話を聞いた事をまとめるとカルデアの外の世界は既に無く、特異点となった歴史を修復し聖杯を集めろと。

そしてそれは俺自身がマスターとして現地に行ってやって欲しいと。

この時の俺は難しい顔をしていたんだろう。ドクターが申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。

 

「そうゆう事だね。こんなことを子供の君に頼むのは筋違いなのは分かっている。けど…」

 

「大丈夫ですよドクター。俺以外にできる人がいるなら別ですけど、状況が状況ですから。それにここで何もしなかったら唯死を待つだけ何ですよね?なら俺は生きる為にやりますよ」

 

「ありがとう立香君。君みたいな子が最後のマスターで良かった。それに伴ってサーヴ「そこからは私が話します」…わかりました所長」

 

ドクターの言葉を遮り所長が一歩前に出て話す。

 

「いい藤丸?あなたは魔術の魔の字も知らない一般人です。それでも最後のマスターとして魔術については知らなくてはいけません。これからは私とマシュの二人であなたに教えます。そしてこれからあなたにはサーヴァントを召喚してもらいます」

 

今の言葉を聞いたスタッフ一同は開いた口が塞がらない様子だった。

 

「…何よあなた達、私が何か間違ったことでも言ったかしら?」

 

「い、いやいや、今所長が自ら魔術を教えるって聞こえたけど気のせいですよね?」

 

ドクターの質問はその場にいたスタッフ全員の疑問だったみたいでみんなが皆所長を見ている。

 

「な、何よ!悪い?!私が教えた方がそれなりに早く覚えられるでしょ?!」

 

顔を真っ赤にしながら言う所長に場が和む。マシュでさえびっくりしている様子。

そんなに驚く事?

 

「そ、それは今置いといて!サーヴァントの召喚よ!」

 

────────

 

というわけで、場所を移動し現在俺が居るのはカルデアにある一室。ここのマスター全てが自分の従者たるサーヴァントを召喚する場所。召喚システム・フェイトがある部屋である。ほかにはマシュを筆頭として、ドクターや所長、 それと見たこともない美女がいた。

 

「お、やっと来たかい。そこのお調子者はいつまで私を待たせておく気だい」

 

痺れを切らした美女が割り込むように話に参加する。

 

「おっと、そうだった。あまり気のりしないことだったから、忘れていた」

 

ロマンは彼女?を紹介し始める。

 

「皆、紹介するよ。彼…あ、いや、彼女…?と、とにかくそこにいるのは、我がカルデアが誇る技術部のトップ。レオナルド氏だ。見ての通り、普通の性格じゃない。当然、普通の人間でもない。というか、説明したくない」

 

最早投げやりな感じだった。

 

「…この人、サーヴァントです!」

 

「それに、レオナルドってまさか…」

 

マシュは驚き、立香も名前を聞いて思い至る。

 

「そう、今考えている通り、カルデア技術局特別名誉顧問レオナルドとは仮の姿。私こそ、ルネサンスに誉れの高いレオナルド・ダ・ヴィンチその人さ!気軽にダ・ヴィンチちゃんって呼んでね」

 

ダ・ヴィンチはドヤ顔で真名を明かす。

 

それもそのはず、史実では男性の筈が女性の姿をしているからだ。

 

「おかしいです!だって、史実では男性と…」

 

「既成事実は疑ってかかるべきだぞ~。というかそれってそんな重要なこと?実は男だったとか女だったとか誰が最初に言いだしたんだろうね…。私は美を追求する。それは発明も芸術も同じ。全ては理想、美を体験するための私だった。そして、私の理想の美はモナ・リザだった…となれば、こうなるのは当然の帰結だろ?」

 

驚く一同にダ・ヴィンチはさも当然のように語る。

 

「…つまり、自分の理想像がモナ・リザだったから、それに合わせて整形したってことか?」

 

「まあ…そういうことなんだ…。いや、ぼくも一応科学者の端くれではあるけど、カレの持論は全然理解できなくてね…そんなねじ曲がった変態なことをするのはカレ位さ」

 

「フフフ…それはどうかなドクターロマン。文明も円熟すればなんでも有りさ。美少女になりたい!って言う願望もノーマルになるかもだよ?」

 

「そうかもしれないけど…君は何時の時代の英霊だい?」

 

「天才に時代は関係ないさ。君たちも覚えておくと言い、この先何人もの芸術家系サーヴァントと出会う、そしてその誰もが、例外なく素晴らしい偏質者であると!」

 

「(それ、得意げに語ることなのかな?)」

 

内心で突っ込んだ俺は悪くないだろう。

 

「成程、知りたくなかった事実でしたが、ご忠告感謝しますダ・ヴィンチちゃん」

 

「(そして、マシュは律儀にちゃん付けするのか…)」

 

「これからは、主に資源物資の提供、開発、英霊契約の更新等、君達のバックアップを行う。私はカルデアに召喚されたサーヴァントだから、マシュのように各時代にそうそう跳んではいけない。最も、マスターと正式な契約をしたのなら話は別だ。その時は一介のサーヴァントとして力を貸そう。そうなる運命を楽しみにしているよ」

 

 どうやらダ・ヴィンチちゃん(諦めたよもう色々と)はレイシフトに同行できないらしい。いずれにせよ、彼の大天才が力になってくれるのならば、心強い。

 

「それじゃさっそく召喚といこう。今回はカルデアの電力で一回、そしてこの呼符での計二回の召喚だ。ああ、呼符に関してはまた今度説明するとしよう」

 

金色に光る札?みたいのを渡される。これが呼符らしい。

 

「まぁ最初は電力での召喚だ、何が来るかは君次第だ。期待して待ちたまえ。それじゃ一回目スタートだ!」

 

「まともなサーヴァントを召喚するのよ!」

 

「フォウフォウ!!」

 

所長が念を押してくるが俺にどうしろと…。すると召喚システムの方が動き出し、回り始める。そして三本の輪に変わり、金色に変わった。そしてそこに描かれていたのは弓兵の絵柄だった。

 

「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上した」

 

そこに現れたのは白髪で褐色肌、そして赤い外套を纏った男が立っていた。

彼は先の特異点でキャスターに倒されたアーチャーだ。

 

「あなたは…」

 

「ああ、冬木ではすまなかったな。まぁこうして召喚されたんだよろしく頼むよマスター」

 

どうやら彼は特異点での事を覚えているみたいだ。

 

「ウンウン、立香君の引きはいいみたいだね!これなら安心だ!」

 

「えっ?引き?」

 

「おっと、私としたことが口が滑ってしまった。気にしないでくれたまえ。さぁ二回目だ!立香君呼符をサークルの真ん中に置いてくれ」

 

ダ・ヴィンチちゃんに言われたとおりに置いてまた動き始める。

先程と同じように金色の光だったけど今度は剣士の絵柄だった。

 

「──問おうあなたが私のマスターか?」

 

そこに現れたのは特異点で最後に戦ったアーサー王だった。だけど髪や肌の色が違う。

 

「えっ?あなたは特異点で…」

 

「…すいませんでしたマスター。あの時の事を忘れろとは言いません。だけど今回、私はあなたの剣になると誓いましょう」

 

微笑むように話す彼女を見て安心する。特異点では何か変質していたって話だからこっちが本来の彼女なのだろう。

そして彼女はアーチャーに向き直り微笑んだ。

 

「またあなたに会えるとは思ってもいませんでしたアーチャー」

 

「それは私もだよセイバー。おかしなこともあるものだな」

 

やれやれ、といった表情で話すアーチャーだがそれを見てクスリと笑うセイバー。

二人を見ていると何故か和む。まぁ自体が自体だ、こういうのもありなのだろう。

 

すると突然召喚システムが再び動き始めた。みんなが驚いている。今回二回だけなのに何故?!とダ・ヴィンチちゃんも驚いていた。

 

「ここがカルデアか…。サーヴァント、セイバー。呼ばれてはないけど来たぜ立香」

 

そこにいたのは出刃包丁のような大きな刀を背にし、黒い軍服に身を包み、俺らが冬木を生き抜けた救世主の存在。

 

──朝倉翔が立っていた。



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7話~疑いと紅茶~

お久です
書き上がったので投稿します

今回はほのぼの?だと思うよ


「ここがカルデアか…。サーヴァントセイバー。呼ばれてないが来たぜ立香。」

 

かつて無い召喚をした立香は開いた口が塞がらなかった。

何故なら、今回の召喚は二回。そしてそれはセイバーとアーチャーの二人が来て終わった、はずだった。

なのに何故か召喚された翔に驚いてた。

 

「翔!!」

 

そしてそのまま立香は翔に飛びつくように抱きつこうと駆け寄った。そう思われたのだか……

 

「元気そうだな立…グボッ!」

 

なんと抱きつかずに鳩尾に拳を決めるのだった。

 

「なん…でだ…よ」

 

そのまま鳩尾を抑え立香を見る。俺の瞳には笑顔のはずなのに全く笑っていないマスターがいた。

 

「元気そうだね翔。それでまず言うことは?」

 

「…全く心当たりがないんだけど」

 

「へぇーそう。……もう一発逝く?」

 

「おい!ちょっと待て!何で怒ってんだ?!俺なんかしたか?!その拳を下ろせ!!ちょ、待っ!グベラッ!」

 

俺の静止も聞かずに殴るマスター。そのまま倒れた俺の胸ぐらを掴み前後に揺らし始めた。

 

「どれだけ心配したと思ってんだ?!あのまま消えたと思ってこっちは気が気じゃ無かったんだよ!それにそれを悟られないように振る舞うの疲れんだぞ!なぁ!なぁ!」

 

「マ、マスター。とりあえず揺らすのはやめてあげてください。彼、白目剥いてます」

 

……もうダメだ。来たばっかなのに座に帰りそう。てか帰りたい。

そう思ってる横騎士王が止めに入ってくれるがマスターはまさかの行動に出た。

 

「白目剥いてる暇かぁ!?起きろや!!」

 

「痛っ!ちょ起き…たから…ビンタやめて!」

 

そうそのまさか。俺を起こすためにビンタをしたのだ。それも往復で。

 

「あ、あの先輩。とりあえず話だけでも聞きましょう!」

 

 

 

 

 

 

場所移り、食堂兼監禁所。

 

「それで何でこっちが呼んでもないのに来れたの?そしてまず謝罪な」

 

俺の目の前で仁王立ちをするマスター立香。俺にはどこぞの魔王にしか見えない。

 

「あの時はすまん。こっちに来れたのは座にあった聖杯のおかけなんだ」

 

「座に聖杯?」

 

「そう、俺が無事でいられるのもその聖杯のおかげなんだよ。それに今の現状も把握してる」

 

そっか、と安心する横でセイバーとアーチャーがおかしいって顔をしていた。

セイバーが当たり前?の質問を投げてきた。

 

「ちょっと待ってください。座に聖杯はありません。本当に聖杯があったのですか?」

 

「え?そうなの?」

 

「はい、英霊は聖杯を望んでいます。だから聖杯戦争があるのです。なのに座に聖杯があったら聖杯戦争自体無くても英霊は望みを叶えられる、あなたは何者ですか?本当に私たちの味方なのですか?」

 

「アーチャーの考えは?」

 

立香は直ぐには聞かず、隣にいるアーチャーに聞く。

 

「私もセイバーと同じだ。そもそも私の場合は少し違うがね。だが座に聖杯があるとは考えにくい、いやありえるわけが無い」

 

アーチャーの見解を聞いた一同は俺へと疑いの目を向ける。お前は俺たちの敵か?ってな。

 

「まず俺は敵じゃない。そもそも敵なら来た時点でマスターを殺してる」

 

「やはり!」

 

「落ち着け騎士王。マスターが生きてる時点でその可能性は消える。そして冬木で助けなんてしないだろ普通?座に聖杯があるとかは無いとかは一度置いといて、俺は新参者なんだ。英霊になったきっかけも分からない」

 

「どういう事だね?君には聖杯に望むものが無いと?」

 

「ああ。俺自身に対するものはな。俺が望むものとしたら、家族が幸せに生きてくれれば他は何もいらない。それよりも二人の真名を教えてくれ。不便で仕方ない」

 

「ああ、そうだな。真名をエミヤという。よろしく頼む」

 

「……アルトリア・ペンドラゴンです」

 

アルトリアは渋々といった形で名乗る。

 

「アーサーじゃないの?」

 

「アルトリアってのはアーサー王の幼名だよ立香君」

 

立香の質問にロマンが答える。

 

「あれ、ドクターいたの?」

 

「ひどいな!最初からいたよ?!そんなに影薄いかい僕?!」

 

涙目になりながら言うロマン。それをダ・ヴィンチが止める。

 

「まぁ落ち着ロマン。君の真名はなんだい?服装からして日本出身なのは分かるが」

 

「流石はかのレオナルド・ダ・ヴィンチだな。俺は朝倉翔。日本帝鬼軍柊シノア隊所属だ」

 

「待ってください」

 

マシュが一歩出て聞いてきた。

 

「帝鬼軍とは何ですか?私の知る限り歴史上にそんな軍はありませんでした。ましてや翔さんの名前もありませんでした」

 

「ん?帝鬼軍無いの?」

 

あっけからんと聞く俺に再び疑いの目。

 

「みんなは聞いたことある?」

 

「いえ、ありません」

 

「私もないな」

 

「僕も知らない」

 

「知らないわ」

 

「フォウフォウー!」

 

「私も知らない。君のいたその帝鬼軍について教えてくれ無いか?私たちには聞いたこともないものなんだ」

 

そうか、と言い立ち上がる。

 

「まず帝鬼軍はかなり昔からあってな、二百年位前からある呪術組織なんだ。帝鬼軍の前は帝の鬼、何て名乗ってたな」

 

「呪術に興味はあるけど、その帝の鬼にも聞き覚えがない。続けてくれ」

 

「オッケー。俺は親がいなくてな孤児院にいたんだ。そん時は幸せでな、孤児院のみんなが家族だった。そんな中、急に世界が滅びた」

 

「「「はい?!」」」

 

みんながみんな‴世界が滅びた‴ってことを聞いて驚いてた。

 

「続けるぞ?滅びてからは吸血鬼に捕まって家畜みたいな扱いを受けてた。捕まってから二年が経って、家族みんなで逃げたんだけど俺含めた三人以外全員殺された。その一人も死んだと思ってた。それからは帝鬼軍に拾ってもらって親代わりの人に剣を教わって家族を殺した吸血鬼共に復讐しようと、残った家族を守ろって決めたんだ。

それからは隊のみんなが家族になった。それも守りたかった。だから俺は吸血鬼共を、家族を利用していた帝鬼軍を潰そうとした」

 

「どういう事?あなたにとって帝鬼軍の人達は命の恩人じゃないの?」

 

オルガマリーが聞くが、そんな事は無いと答えた。

 

「帝鬼軍の奴らは俺や俺の家族を使って人体実験してたんだよ」

 

「そんな!!」

 

「酷いなそれは」

 

「あいつらは俺らの中にある天使のラッパを使って吸血鬼を殲滅しようとしてたんだ。それで使われたのが隊にいた奴の妹だったんだ。利用するだけ利用して使えなくなったら捨てる、それがあいつらの考えだった」

 

「それでも俺らは前に進んだ。そんな中、親代わりの人が仲間を生き返らせるために世界を滅ぼしたことを知った。でも責められなかったんだ。あいつは俺らと同じ、それ以上に仲間を大切にしていたんだ。だから全ての元凶である第一始祖を倒すことを決めたんだ。俺はその第一始祖を全ての力を使って倒した。力を使い切った反動で俺は死んだ。簡単だけどこれが俺の歩んできた道だ」

 

話を終わって食堂は静寂に包まれた。その中、マスターがその静寂を破った。

 

「何個か質問、翔は今も昔の家族が大事?」

 

「ああ、もちろんだ。あいつらあっての俺だからな」

 

「二つ目、翔にはその天使のラッパが使えるの?」

 

「いや使えない。俺の中の天使は鬼が封じてる」

 

「三つ目。その鬼ってのは?」

 

「俺達が滅びた世界で生き残るためには力が必要だった。吸血鬼に対抗するための力が。それが鬼。武器に封じ込めて力を引き出す。身体能力、自己治癒力が格段に上がる。でも失敗して暴走したら自分が人喰いの鬼になる」

 

「暴走の心配は?」

 

「無いとは…言いきれない。俺の鬼はかなり特殊でな、自己治癒力が異常で再生の域まで至ってる。身体能力も馬鹿にならないほどに上がるけどその分鬼が強い。過去にも乗っ取られたことが数回ある」

 

「じゃあ四つ目。俺達も翔の家族に入れて欲しいな」

 

「へ?」

 

あまりに意外な事にマヌケな声が出てしまった。他の人達も何言ってんの?って顔してるし。いや何でオルガマリーは顔紅くしてんの?嬉しそうだし。

 

「ダメ?ダメなら令呪使ってでも無理にするけど?」

 

「いやいや!そんなことに令呪使うなよ!…他はどうなんだ?一人嫌そうな顔をしてるけど」

 

そう言ってペンドラゴンの方を見る。

 

「ペンドラゴンが嫌なら今のは無しにしてくれ」

 

「アルトリアで結構です。別段不満は…少しありますが嫌ではありませんので」

 

素っ気ない態度をとるアルトリアの前まで向かう。目の前にきて俺は優しい口調で語りかけた。

 

 

「ここにいるのは一つの目的に歩みを向ける者達だ。かつての俺の仲間たちも最初はバラバラだった。だけど一緒にいるうちに家族になっていた。あなたの逸話は詳しくはないが知っています。だから家族がどうとかはわからないと思います。だからこそ、ここで、カルデアのみんなと家族になりませんか?」

 

膝を折り、騎士が王に忠誠を誓うように頭を下げる。

 

「頭を上げてください。今の私は王ではありません。…確かに私には家族がどういうものかは分かりません。それに少し戸惑っただけです」

 

「あーもう!!そういうの抜きにしてなりたいの?!なりたくないの?!」

 

痺れを切らしたマスターが怒鳴る。ホントに感情豊かだな。

 

「そ、その…な、なりたいです…」

 

薄らと頬を紅く染めて俯いてボソッ呟いた。

いやまぁ下から見てるからバッチリ顔が見えていたんだけどね。

まぁ可愛かったよね

 

「じゃあ俺達はこれから家族だ!そして翔は俺達の味方!!異論は認めません!!」

 

「あれ、僕の役目取られた?」

 

「まぁいいじゃないかロマニ。頼もしい限りだよ」

 

「うん、まぁそうなんだけど」

 

苦笑いを浮かべるロマン。他の職員も何故かホッとした顔をしてた。

 

「じゃあ今日はこれで解散にしよう。立香君も目覚めたばかりで万全じゃない。これからの為に少しでも休もう。それと明日からは立香君には少し魔術と歴史に関して勉強してもらう。それでいいかい所長?」

 

「もちろんよ。初日だからって甘くないから覚悟しなさい」

 

 

───翔の自室

 

あのあと自室(マスターが案内してくれた)に戻り部屋にあるベットへと横になる。

それでも頭にあるのはやはりあの聖杯。

 

「(あの聖杯は誰が何の目的で座に?あるのも異常みたいだし、それにあれ喋るし。まさかとは思うが人理焼却をした奴がわざと送った、とか。……流石にそれは無いか。そうだとしてもメリットがない)」

 

そんな中、来客を告げるアラームがなる。

扉を開くとそこに居たのはアルトリアとエミヤだった。

 

「なに、彼女が君に謝りたいと言ったから来たまでだ」

 

「なっ!それは言わない約束でしょう!シロウ!」

 

顔を赤くして反論するがエミヤはどこぞ吹く風のようにスルーする。

 

「私をシロウと呼ぶのはやめてくれ。紅茶を持ってきた。中でお茶にしようではないか翔」

 

「構わないけど、紅茶何か入れられるのか?」

 

「もちろんだとも」

 

そう言うので二人を部屋へと勧める。部屋には簡単な机とイス、それにベットしかないので俺がベットに二人にはイスに座ってもらう。(エミヤは直ぐには紅茶を淹れる様なので座ってはないが)

 

どこから出したのかわからない紅茶のセットとポットで紅茶を淹れるエミヤ。

 

「お前過去に執事でもしてたろ?」

 

「生憎とそういう仕事には就いたことがない。ただ料理等が好きなだけだよ。それよりも彼に言いたいことがあるのではないか?アルトリア」

 

アルトリアの方を向くともじもじした様子でソワソワしていた。

なんだろう、可愛い以外の感情が出てこない。

 

「そ、そのさっきはすいませんでした。あなたの事を疑ってしまって」

 

「その事ならもう大丈夫だよ。それに当然の態度って言われたらそっちが理にかなってる」

 

「いえそれでも謝らせてください」

 

「大丈夫だよ」

 

「それでも」

 

「大丈夫」

 

「「………」」

 

「何故そんなに頑固なんですか!!素直に謝罪くらい受けてください!!」

 

「そっちの方が頑固だろ!!大丈夫だって言ってるんだから素直に引き下がれ!!」

 

そんな俺たちの言い合いを見て、わかりやすくエミヤがため息をつく。

そんな俺たちの前に淹れたてであろう紅茶を出す。

 

「私からしたらどちらも頑固者だと思うが?紅茶でも飲んで落ち着いてくれ」

 

言われたままに紅茶を飲む。

 

「美味い!?」

 

「流石はシロウですね。美味しいです」

 

あまりにも美味しくて驚いた。

 

「口にあってよかった。落ち着いたかね二人とも?それと翔に聞きたいことがあるが構わないか?」

 

「ん?いいぞ?」

 

「君の世界には吸血鬼がいたのか?」

 

エミヤの問いにああ、と答え紅茶を飲む。ホントに美味いな。

 

「吸血鬼は‴個‴ではなく‴群‴でいてそれを率いていたのが始祖と呼ばれていた者達で間違いないかね?」

 

今の説明を聞いて呆然としてしまった。俺の話だけでここまで分かるのか?俺は吸血鬼が個人で動くものではなくじゃなくて始祖の配下にあるなんて一言も言ってない。

 

「よく分かったなそこまで。エミヤの言う通りだよ」

 

「何故吸血鬼は始祖に従うのですか?」

 

「まぁ全ての吸血鬼にとって始祖は生みの親なんだよ」

 

エミヤがそうかという顔でいるので少しエミヤの考えを聞いてみたくなった。なのでエミヤへと聞くとこう答えた。

 

「今の言い方からするに始祖が直接何からしらの方法で吸血鬼化させる。すると吸血鬼にされたものは濃く始祖の血を引くことになる。そしてその者が他の者に与えれば血は薄まる。より始祖の血を濃く受け継いだものが上位の位にそして強い力を持つ」

 

「な、なるほど…」

 

「すげえ、ホントによく分かったな」

 

「このくらいは直ぐには考えがつく。それよりも紅茶のお代わりはいるかね?」

 

「「もちろん!」」

 

アルトリアとタイミングよく声が重なる。二人して顔を見合わせ次第に笑った。

 

エミヤはそれを見て静かに紅茶を淹れていくのだった。

 




はい、後半はサーヴァント達だけでの話でしたね。ここまでエミヤが鋭いのはお約束+おかん補正だよね絶対。
え?今回のはおかん補正ないって?いんだよエミヤは全カルデア共通でおかんなんだから(ずいぶんと勝手)
それにまぁ青王可愛いよね


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8話~模擬戦~

1ヶ月ぶりです


「はっ!」

 

「オラァ!」

 

ガキンガキンと金属がぶつかり合う音が響く。片方は刀とは形容しがたい太刀。片や白と黒の双剣。

担うものは黒の日本の軍服を纏うもの。対峙するのは浅黒い肌に赤い外套を纏った白髪の男。

 

その模擬戦を端で見ているのは金髪の少女、アーサ王もといアルトリアだ。

彼女が見守るの中、二人は今日何度目かわからない模擬戦を再び始めた。

 

 

 

────────

 

「全く、二人とも何故あんなに長いのですか、はい水です」

 

「ははは、悪いな」

 

「柄にもなく楽しくなってしまってな、ありがとう」

 

いつの間にか持ってきていた水を渡し、それを受け取り飲む二人、翔とエミヤ。

 

朝食を作り終わったエミヤが翔に模擬戦でもどうだ?と誘ったのが事の発端だ。

何でも翔の実力が見たかったらしいとか。

その結果二人の模擬戦は三十二回も繰り返された。

 

「……珍しいですね」

 

「ん?何がだ?」

 

「いえ、シロウが例え模擬戦でも楽しいと笑うことがです」

 

「……私でも楽しいと感じることはある。それよりも翔のその武器は鬼呪装備とものだな?」

 

「ああ……あれ?俺説明したっけ?」

 

翔の言葉を聞きはぁと溜息をつく二人。

 

「な、なんだよ」

 

「忘れたのですか?あなた鬼について説明する時に話していたじゃないですか」

 

「あ、そっか。でもそれって鬼を封じるとしか言ってなくないか?」

 

「…それもそうですね」

 

「私が解析したのだよ。私が使える魔術で」

 

「へぇー、エミヤ魔術使えんのか」

 

「まぁ使えるのは投影と解析等の簡単なものばかりだかね」

 

少し自傷気味に笑い説明するエミヤ。

 

「じゃあ模擬戦の時にこいつを解析したのか?それとも投影しようとしたのか?」

 

「投影しようとしたが出来なかったよ」

 

エミヤの言葉にアルトリアが。

 

「なぜです?見たところこの武器からは確かに悪意を感じます。でもあなたが投影出来ない程には見えない」

 

「……投影しようとした瞬間に感じたのだよ」

 

「何を?」

 

「強力な殺意をだ」

 

その言葉にアルトリアだけが驚く。彼女は彼の魔術を知っている。分不相応の投影をすれば魔術回路が焼き切れ、何かしら体に影響があるのも。

 

「どういうことです、シロウ」

 

「殺意と言ったが正確には悪意、恨みと言った憎悪だな。それに解析したが分かったのは刀の名と種類だけだ」

 

エミヤの説明に翔は苦笑いを浮かべていた。

エミヤが投影出来ないのも納得していたのだ。何せこの武器、斬月は彼の分身(・・)なのだから。

 

「カケル、使っているあなたには何も影響がないのですか?」

 

「まぁ特にはなそれよりもエミヤ、もう昼飯の時間じゃないのか?」

 

「なに!?悪いが二人とも私は先に戻らせてもらう」

 

「ああ、それと俺らの分も頼んだぞ」

 

「任せておけ。それに二人分以上作ってしまっても構わんのだろ?」

 

そう言い残しエミヤは食堂へと向かった。

 

「さて俺らもゆっくりしたら行くか」

 

「カケル」

 

声を掛けられそちらを向くと真面目な顔つきなアルトリアがいた。

 

「あの時の…特異点でのあの仮面は何だったんですか」

 

その質問に翔は顔を変えることなく答えた。

 

「あれも鬼の力だよ、まぁ本来の力じゃなくて副産物だけどな」

 

「副産物ですか?」

 

「そう、俺は生まれつき鬼を宿してたんだよ。鬼呪無しで力を使おうとしたらあれが出てきた。それだけの話だよ」

 

立ち上がり、行こうと言うがアルトリアは動こうとしなかった。

疑問に思った翔はどうした?と聞くがそれにアルトリアは慌ててなんでもないと言い、翔はアルトリアが考えていることに気づかなかった。

二人はトレーニングルームを後にし、食堂へと向かった。

 

 

 

「(生まれつき鬼がいるなんて……。カケルの生まれた頃はまだ吸血鬼はいなかったはず…。あなたはどれだけの苦しい道を歩んできたのですか)」

 

 

 

 

 



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第一特異点 邪竜百年戦争オルレアン
9話~目的~


これは夢だろう。

少なくとも夢だと理解できる。

俺はカルデアのマイルームで寝ていた筈だ。なのに、何故こんな所にいるのだろうか。

 

そこは何処かの住宅街。おそらく日本だろう。

 

ここがいったい何処なのか、そう考えて少し歩く。

そんな時、叫び声を聞いた。その声色はとても悲しかった。

 

 

 

「ごめんね…また約束…やぶっ…ちゃった…」

 

「もういい!!喋んな!その先は後で聞くから!頼む!」

 

黒髪の少年は大粒な涙を流している。それに対し、少女は儚げに、今にも消えてしまいそうな笑みを浮かべていた。

二人の周囲には大量の血。素人の俺が見ても分かった。

゛彼女は助からない゛と。

 

「ううん…あのね…私ずっと…ね、君のことが…大好き…だっ…よ…。」

 

「…ああ、分かってるよ!そんなの…俺もなんだから!だから頼む…!!死ぬな!!」

 

「…それだけ聞ければ…私は…十分だよ…。だから…幸せに生きてね…」

 

「…おい。おい!ふざけんなよ…!頼むから…!お前の我が儘でも全部何でもするから…!頼む!死なないでくれ!俺を…置いていかないでくれ…!!」

 

そう言い残し、彼女は息を引き取った。

血だまりの中栗色の髪をした少女を抱き寄せ、必死に叫ぶ黒髪の少年。

そんな彼は翔に似ていたと思う。

 

 

そこで景色が変わった。

 

今度も日本だろう。今度は空港だ。

 

そこには黒い軍服を着た人たちと目が赤く、白い服を着た人達、更に巨大な悪魔な様な奴もいた。

 

たくさんの死体がある。それだけで気分が悪くなっていく。

 

そんな中、一人の少年が背中から黒い羽のようなものを生やし、巨大な悪魔と戦っていた。

 

そんな中、さっきまでいた場所にいた少年が涙を流しながら嘆いていた。

 

「俺に力が無いから…いつもいつも優にばっかり負担させちまう…。…もっとだ、もっと力がいる。俺に力を!誰も傷つかないようになる為の力を寄越せ!!斬月!!」

 

そう叫んだ彼は姿を変えていった。

 

頭から延びるのは白く大きな角。

 

胸のあたりには穴が開いている。

 

もはや人とは形容しがたい姿になった彼は戦っている元へと飛んだ。

 

 

そんな彼を見て、思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは一体だれの夢なんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミュー、フォーウ! フォフォーウ!!」

 

「おはようございます、先輩。そろそろブリーフィングのじか――きゃっ!?」

 

「あ」

 

 

 ちょうど良くドアが開きマシュが俺に挨拶しながら声をかけて、飛び上がったフォウくんによる肉球パンチを額に食らった。

 アレ、痛いんだろうかそれともやわらかいんだろうか?少し気になる。

 

 

「キュウゥゥゥ……」

 

「ごめんなさいフォウさん、避けられませんでした…………でも、朝から元気そうで嬉しいです。

先輩も昨夜はよく眠れましたか?」

 

「うーん、まあ眠れたかな?」

 

 

 攻撃を受けた側なのに攻撃してきたフォウくんに謝るマシュに俺は少し笑いながら、マシュに返事をする。変な夢を見たのは確かだが、よく眠れたのも事実だ。

 そんな俺の返答にマシュは笑顔になる。

 

 

「それはよかった。よく眠るのも才能の一つといいます。目が覚めたところでブリーフィングの時間です。皆さんも集まってますよ」

 

「うん、わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が特異点Fから帰還してから数日。

次の特異点が捕捉出来た。

 

管制室に入ると待っていたのはドクター。

いつも通りのヘタレな笑顔で私を迎えてくれた。

 

 

「おはよう、立香くん。よく眠れたかな?」

 

「はい」

 

「遅いわよ藤丸!」

 

「ははっすいません所長」

 

苦笑いを浮かべながら謝る。

 

「やっと来たか、おはようマスター」

 

「おはようございますマスター」

 

「おはよ、立香」

 

「おはようみんな

 

「うん、それではブリーフィングを始めようかな。まずは……そうだね。君たちにやってもらう事を改めて説明しよう」

 

みんなが集まったのを確認してドクターは説明を始めた。

 

「一つ目は、特異点の調査及び修正。

その時代における人類の決定的ターニングポイント。

君たちはその時代に飛び、それが何であるかを調査・解明して、これの修正をしなくてはならない。さもなければ2017年は訪れない、2016年のまま人類は破滅するだけだ。

以上が第一の目的。これからの作戦の基本大原則になる。第二の目的は聖杯の探索だ

 

レフは恐らく聖杯またはそれに準ずる何かを手に入れ利用している。時間旅行やら歴史改変をする以上そういったものでなければ不可能に近い」

 

というわけだから、特異点調査の過程で必ず聖杯もしくはそれに準ずる何かの情報は得れるはず。元の歴史に戻したところでそこに聖杯があったらどうしようもないからね。

 

だから聖杯の破壊もしくは回収をする必要があるわけだ」

 

 

 確かに原因であるその時代に無いものがあったら大変だ。それが聖杯何ていうやばい代物なら尚更……。

 

 

「……以上二点がこの作戦の主目的だ。わかったかな?」

 

「はい、分かりました」

 

 

 

 

今回行く特異点の情報をまとめると、今回は「オルレアン」。後にフランスになる場所であり、有名な「百年戦争」の地でもある。

特異点化したという事は何かしら違う点があるという事で、それは実際に見ないと分からない。

 

「じゃあ、レイシフトの準備をしようか」

 

「はい」

 

再びコフィンに入り、目を閉じる。

 

『アンサモンプログラム スタート。

霊子変換を開始 します』

 

『レイシフト開始まで あと3、2、1……』

 

『全工程 完了。

グランドオーダー 実証を 開始 します』

 

 

 

 



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10話~再会~

お久です

駄文ですがどうぞ


目を開ければそこには草原が広がっていた。

目頭を揉みつつ周囲を見回すとやや離れた場所に立香達がいるのを確認する。

立香らのもとへと歩く。

 

「あ、翔!これでみんな揃ったね」

 

そう言う立香の後ろににはマシュ、エミヤ、アルトリアがいる。

俺だけ少し離れて、レイシフトされたのか?

まぁいいか。それよりも――

 

「そっか、それはよかった。それで、ここはどこ?」

 

「ここは……わかりました。どうやら1431年のようです」

 

「1431年?」

 

「はい。百年戦争の真っ只中のようです。ただ、今は、戦争の休止期のようです」

 

「休止?」

 

「はい。百年戦争は、その名の通り、百年間継続して戦争を行っていたわけではありません」

 

 比較的のんびりとした戦争が散発的に起こっていた。それがこの百年戦争だとマシュは語る。

 

「なるほど――え?」

 

「先輩? どうかなさいましたか。空をみあげ――て……え?」

 

「おいおい、なんだよ……」

 

「……なんですか、アレは……」

 

「いったいあれは……」

 

「よーし、通信が繋がったぞ。って、あれ、どうしたんだい、みんなして空なんかみあげちゃって」

 

「ドクター、映像を送ります。アレは、なんですか?」

 

 空を見る。空には、何かがあった。光の輪だった。

 

「なんだ、これは……衛星軌道に展開した魔術式か? なんにせよ巨大すぎる。

1431年にこんなことは起きていない。間違いなく、未来消失の理由の一端だ。アレはこちらで解析するしかないな……君たちは、現地の調査を」

 

「了解です」

 

 そういうわけで、まずは街を探す為に歩き出す一同。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩くとエミヤと翔の耳が捉えた。

 

「マスター、この先で何者かが戦っている」

 

「それも片方は人じゃない。俺達が先行して見てくる、アルトリアとマシュはマスターを守りながら来てくれ」

 

「わかった、任せるよ二人とも!」

 

その声を聞き、二人は駆け出した。草花生い茂る草原を颯爽と駆け抜ける。

翔はそこである違和感を感じた。襲われているはずなのにあまりにも負傷者が少ないことに。

 

「おい、エミヤ」

 

「分かっている。あまりにも負傷者が少ない。どういう事だ…?」

 

エミヤも強化した視力で確認が出来た。二人の頭にはグルグルとそれだけが回り始めた。その思考を端へと追いやり、駆ける足に力を入れる。

 

着いてみればそこは確かに戦闘の痕跡が残っていた。

だが負傷者どころか血の一滴(・・・・)すらも無いのだ。

 

「おいどういう事だこれ。確かにこっちから戦闘音はしてた、なのに何で血の一滴すら無い」

 

「ふむ…、考えられるなら私達が確認する前から既に避難を行っていた、或いは血すらも流さずに迎撃した、のどちらかだろう」

 

エミヤの建てた仮説に怪訝な顔をしておかしいだろうと繋げた。

 

「そんなバケモンみたいなこと出来るやつこの時代にいるのか?」

 

「可能性は無いに等しいだろう。だが現に目の前でそれが起こっていたのだ。そういう仮説が建ってもおかしくはないだろう」

 

そこで少し行った先──街の城壁付近で大きな爆発音、それと黒い棺桶(・・・・)青い炎のナニカが複数(・・・・・・・・・・)が見えた。

 

「まさか…!」

 

「おい!翔!」

 

エミヤの静止も聞かずにただその場へと走る。そんな事があるのか、アイツが同じようにいるのか?だとすれば──!

と走りながら頭の中はそれだけだった。

自分が死ぬまで共に戦ってきた仲間が、家族があそこにいるかもしれない。

自然と胸は高鳴っていた。状況が状況なのにも関わらず。

 

「そこにいるのか君月、三葉…!」

 

 

──────────

 

「ハァハァハァ…クソ…!まだ来るぞ!」

 

いい加減にしろと思いながらも金髪を二つ結びにした女は持っている斧を構える。

 

「分かってる!それよりも息が上がってるが大丈夫なのか?」

 

 

息を上げながらも双剣を構えるピンク髪のメガネの男に話しかける。

 

「お前こそ似たようなモンだろ」

 

それに対してフッと鼻で笑い駆け出した。

 

「援護頼むぞ三葉(・・)

 

「任せろ君月!」

 

────────

 

急げ、急げ、急げ!

あそこにアイツらがいる、戦っている。もう二度と家族は失わない。みんなで帰るんだ。

 

鬼の力で強化された視力で捉えた。黒い軍服にピンク髪に金髪。双剣に斧。

 

「君月ィィ!三葉ァァ!」

 

声を荒らげ家族の名を呼ぶ。聞こえた二人はワイバーンと対峙しながらもこちらに視線を向けた。

驚いた顔をしている。

なんて顔してんだ。まるでお化けでも見たみたいじゃねぇか。

 

自然と口元が緩む。だけど肩に担いだ斬月の柄をしっかりと握る。

 

「ウチのモン(家族)に手ぇ出してんじゃねぇ!!」

 

叫びながら二人の近くにいたワイバーンの首を落とす。

 

まず一つ、残り二十二。

 

「ハァァァ!!」

 

瞬歩を使って確実に首を落としていく。

今ので八、後は飛んでるヤツらだけ、なら──

 

斬月が青白く光る。下段に構え空へと振り上げる形でそれを放った。

 

「月牙天衝っ!!」

 

打ち上げられた月牙天衝で残りを一掃する。

フゥと一息いれ、斬月を肩へと担ぎ直す。そうすれば柄についてる包帯が鞘替わりになる。

…いつまで経ってもこれの原理はよくわかんねぇ。

そんなことよりも今は──

 

「なんて顔してんだお前ら、ったくいい事でもあったのか?」

 

そう言う俺の顔は笑顔だったんだろう。でもなんでだろうな、久しぶりの再会なのに視界がボヤけるわ、なんかしょっぱいな。ったくよ、こんな再会夢でしか見た事ないってのに。

 

そんなことを考えていると二人は泣きながら抱きついてきた。

 

「本当に翔なのか…?」

 

「ああ、そうだよ。二人とも、ただいま」

 

 

 

 

 

 



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