遊戯王GXX (ユキアン)
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入試

 

 

 

あー、ニコチンが切れてきた。補給したいが、まだまだ受験生は残ってる。クロノス教諭の代わりに試験官なんてやるんじゃなかったよ。しかし、レベルが低いな。もうちょっとバックを厚くしようぜ。そんでもってバックを割ろうぜ。もしくはリカバリーが効くようにしようぜ。【ブラッド・ヴォルス】に【デーモンの斧】を装備させただけとか一瞬で死ぬぞ。

 

「オレのターン、ドロー。魔法カード【苦渋の選択】を発動。デッキからカードを5枚選び相手に見せる。相手はその中からカードを1枚選び、そのカードをオレの手札に加え、残りのカードを墓地に送る。オレは【電磁石の戦士α】【電磁石の戦士β】【電磁石の戦士γ】【レッド・ガジェット】【愚かな埋葬】を選択する。さあ、どれを選ぶ」

 

【苦渋の選択】の効果と【愚かな埋葬】を見て受験生が笑っているが、こいつも墓地利用を考えていない馬鹿だったか。【苦渋の選択】は好きなカードを5枚の中から4枚も墓地に送れる強力なカードだぞ。

 

「僕は【愚かな埋葬】を選択します」

 

「オーケーだ、残りのカードを墓地に送る。魔法カード【予想GUY】を発動。デッキから【磁石の戦士α】を特殊召喚。手札から【レスキュー・ラビット】を召喚して効果を発動。こいつを除外して【磁石の戦士γ】を2体特殊召喚。そして場の【α】【γ】手札の【磁石の戦士β】を墓地に送り、手札から【磁石の戦士マグネット・バルキリオン】を特殊召喚だ。更に、墓地の【電磁石の戦士】3体を除外し、手札から【電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン】を特殊召喚。最後に【愚かな埋葬】を発動。デッキから【磁石の戦士δ】を墓地に送り、効果を発動。墓地の【δ】以外のレベル4以下の『マグネット・ウォリアー』モンスター3体を除外して手札・デッキから【マグネット・バルキリオン】を召喚条件を無視して特殊召喚する。そして【ベルセリオン】の効果を発動。墓地の【δ】を除外して相手の場のカードを一枚破壊する。【ブラッド・ヴォルス】を破壊だな」

 

磁石の戦士γ ATK1500

磁石の戦士マグネット・バルキリオン ATK3500

磁石の戦士マグネット・バルキリオン ATK3500

電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン ATK3000

 

「バトルだ。γ、ベルセリオン、2体のバルキリオンの順でダイレクトアタック」

 

「うわああああ!?」

 

受験番号47 LP4000→0

 

手札誘発は無しか。

 

「はい、お疲れさん。結果は郵送されるから今日は帰っても良いぞ」

 

所感を紙に書き込んでからデッキをデュエルディスクから抜いて次のデッキを装填する。次の受験生がフィールドに上がりデュエルディスクを構える。

 

「「デュエル」」

 

「先行は受験生からだ」

 

「ドロー。私はモンスターをセットしてカードを2枚セットしてターンエンド」

 

受験番号48 LP4000 手札3枚

セットモンスター

セットカード2枚

 

ふむ、何を伏せたか気になるが、この手札ならこの内容でいいだろう。

 

「オレのターン、ドロー、フィールド魔法【チキンレース】を発動。ライフを1000払って1枚ドロー。ターンエンド」

 

代理試験官 LP3000 手札6枚

場 チキンレース

 

「何も出さない?えっと、これをこうするんだっけ?あれ?違った?」

 

おっと、どうやら【チキンレース】の効果を確認しようとしているのか。たぶん、あまり触られない機能だから故障してても気づかなかったのだろうな。

 

「あの、すみません。貸し出されたデュエルディスクが故障しているみたいでして。【チキンレース】の効果を教えていただいてもいいでしょうか?」

 

受験生が礼儀正しく質問してきた。うむ、もう合格でいいな。周りの受験生や観客席にいるオレが担当していない中学上がりの1年が怪訝な顔をしている。徹底的に扱いてやろう。

 

「デュエルディスクの故障は我々のミスだ、良いだろう。【チキンレース】が発動している間、ライフが低い方のプレイヤーへのダメージは全て0となる。そして、ライフを1000払うことで以下の3つの効果の中から好きな効果を発動することが出来る。1つ目は1枚ドロー、2つ目は相手のライフを1000回復、3つ目はこのカードの破壊だ」

 

「ライフが同じ場合はどうなりますか?」

 

「ライフが低い方が存在しないのでダメージが通る。ただし、ダメージを与えた時点で相手の方がライフが低くなる。モンスターを大量に展開しても1体目のモンスターでしかダメージを与えられない」

 

「ありがとうございます。私のターン、ドロー。私も【チキンレース】で1枚ドロー。【ライトロード・ハンター ライコウ】を反転召喚。効果を発動します。【チキンレース】を破壊し、デッキトップを3枚墓地に送ります」

 

デッキトップを3枚墓地に送ることにまた笑いが起きているが、さっきのオレのデュエルを見ていなかったのか?

 

「むぅ、『ライトロード』か。いいだろう」

 

「墓地に送られたのは【ライトロード・パラディン ジェイン】【ライトロード・シーフ ライニャン】【ライトロードの裁き】」

 

「ちっ、面倒なのが落ちたな」

 

「【ライトロードの裁き】が『ライトロード』モンスターの効果で墓地に送られた場合に発動できる。【裁きの龍】をデッキから手札に加える。そして魔法カード【光の援軍】を発動。デッキトップを3枚墓地に送り、レベル4以下の『ライトロード』モンスターを手札に加える。墓地に送られたのは【ライトロード・モンク エイリン】【ライトロード・ビースト ウォルフ】【ライトロード・ウォリアー ガロス】デッキから加えるのは【ライトロード・マジシャン ライラ】更に墓地に送られた【ウォルフ】はデッキから墓地に送られた時、特殊召喚する」

 

ちっ、墓地に4種類揃ったか。

 

「【ライコウ】をリリースして【ライトロード・ドラゴン グラゴニス】をアドバンス召喚。【グラゴニス】は墓地の『ライトロード』モンスター1種類につき300の攻撃力がアップする。そして墓地に4種類の『ライトロード』が存在することによって手札から【裁きの龍】を特殊召喚できる」

 

ライトロード・ビースト ウォルフ ATK2100

ライトロード・ドラゴン グラゴニス ATK2000→3500

裁きの龍 ATK3000

 

「バトル!!【グラゴニス】で攻撃!!」

 

「無論、防がせてもらおう。手札から【バトルフェーダー】の効果を発動。ダイレクトアタック時にこのモンスターを特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる」

 

「くっ、ターンエンド。エンドフェイズ時、デッキトップを7枚墓地に送る」

 

受験番号48 LP3000 手札4枚

ライトロード・ビースト ウォルフ ATK2100

ライトロード・ドラゴン グラゴニス ATK3500

裁きの龍 ATK3000

セットカード2枚

 

「中々良いセンスだ。もっと色々なカードに触れれば君の才能は更に開花する。アカデミアで待っていよう。ドロー、【グラゴニス】と【裁きの龍】をリリースし、君の場に【溶岩魔神 ラヴァ・ゴーレム】を特殊召喚。カードを3枚伏せてターンエンドだ」

 

代理試験官 LP3000 手札2枚

バトルフェーダー DEF0

セットカード3枚

 

「私のターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズ、【ラヴァ・ゴーレム】の効果によって1000のダメージ、そしてリバースカード【上級魔術師の呪文詠唱】を発動。手札、または場の通常魔法を速攻魔法として発動する。オレが発動するのは【所有者の刻印】この効果によって【ラヴァ・ゴーレム】をオレの場に戻し、最後のセットカード【火霊術 - 「紅」】によって【ラヴァ・ゴーレム】をリリースして、その攻撃力分のダメージを与える」

 

「きゃああああ!?」

 

受験番号48 LP3000→2000→0

 

「これがアカデミアでちょっと前に流行った『紅ラヴァ』だ。はい、そこ、バーンが汚いとか言っている中学上がり。子供じゃないんだ、いつまでも攻撃力だけ見ていると勝てなくなるぞ。高々2700とか3000で一喜一憂してたら一瞬で死ぬぞ。あと、墓地肥やしを笑ってるやつもだ。墓地は第2の手札、むしろデッキによってはこっちが手札になる。それが本校の今の環境だ。それで、君だが、ほぼ合格だな。楽しみにしていると良い」

 

「ありがとうございます」

 

そんな感じでどんどんデッキを入れ替えながら受験生を捌いていく。まあ、今の所試験官に勝った受験生はいないがな。惜しい所まで追い込んだのは何人かいるが、子供に負けるほど弱くはない。

 

いや、まあ、シンクロやらエクシーズやらペンデュラムなんて世に全く知られていない召喚方法を使う不自然に派手なイケメンとかもいたんだが、マナーが悪いからデュエル内容に関わらず不合格は確定してるんだけどな。墓地肥やしのカードを見て、無知から嘲笑する程度の行為ならともかく、相手を見下して挑発を行うような輩は矯正不能と見ている。今の在校生だって墓地肥やしを見て笑う受験生たちや中等部の生徒を見て自分にもあんな時があったなぁって顔をしてるからな。

 

そして負けたことに文句を言っていたイケメン達だが、公式に作成されていない不正カードの使用、ソリッドビジョンのデータバンクに不正なアクセスをしたと見做されてリアルファイト要因に捕縛されていることだろう。

 

彼らはデッキを持たずにリアルファイトによって対象を捕縛することに特化したスペシャリストたちだ。デュエルで勝ったらという条件に一切反応せず、上司からの命令で仕事をこなす。

 

それにしても、もしかして今年度の生徒の中に主人公がいるのか?カードはやっていたがアニメは殆ど見てないしな。確か特徴的な髪型をしていると聞いた覚えはあるんだが。ヒトデとか蟹とか海老とか。海産物っぽい髪型のやつはいないな。

 

まあ、今年の同類共のお陰でサンプルが大量に手に入ったことだし、シンクロとエクシーズとの普及にも乗り出したいな。ペンデュラムとリンクは当分の間、出すことは無い。先の2つだけでも混乱が起こるだろうからな。ペガサス会長と海馬社長にプレゼンを行わないと。あと、マスタールールへの以降も始めたい。LP4000は少なすぎる。8000の時でさえ少ないと思うことがあったぐらいだからな。

 

自分の割り振られた分のデュエルを終えて会場の外の喫煙所に向かう。デッキケースの一つからタバコを取り出して火を着けてもらう。

 

「おう、ありがとうな」

 

嬉しそうにしているオレの精霊を見て和む。すまんな、いつもサーチから融合素材にして。通常召喚したこと無いな。効果は噛み合わないし、こいつのために召喚権を使うか疑問視してしまうからな。それでもこいつはオレの相棒なんだよ。

 

タバコを吸いながら相棒を召喚して使うデッキを組もうかと考えていると、オレと同じように精霊が取り付いている受験生らしき少年が会場に走り込んでいる。はて?時間的にはもう試験は終わる頃のはず。そう思っていたら他にも会場に走ってくる受験生らしき姿が何人も見られる。そして、その中の一人の精霊付きの少女が転ぶ。

 

さすがに見過ごすことが出来ずにタバコを灰皿に捨てて駆け寄ると会場の方から遅刻組の先頭を走っていた精霊付きの少年が戻ってきていた。

 

「おい、大丈夫か」

『クリクリ〜』

 

「……痛い」

『傷は大分深いみたい。それに足も挫いているわ』

 

なるほどね。医務室に運ぶしかないな。

 

「そこの二人、お前達はデュエルアカデミアの受験生だろう。遅刻みたいだがどうした」

 

「あんたは?それに横のは精霊なのか!?」

 

「オレはアカデミアの教師だ。今日は試験官として来ている。精霊に関しては後だ。そっちの子が転んだのが見えてな、大丈夫か?」

 

「血がいっぱい」

 

少年の方は敬語が使えていないのはいいが、少女の方は口下手だな。あと、表情が変わらないな。怪我の具合を見てみると、膝からかなりの出血をしている。抉れてるな。

 

「医務室に案内する。少し我慢しろ」

 

少女を横抱きにして医務室に向かう。

 

「オレも一緒に行っていいか?」

 

「遅刻の理由も聞きたいし、二人まとめて実技試験をしてやるよ。まあ、テーブルデュエルになるだろうがな」

 

少年も連れて歩き出すと二人の精霊がどうするのかを悩んでいたので声をかける。

 

「ほれ、そっちの精霊たちも着いてこい」

 

「……見えてる?」

 

「まあな。少年も見えているし、君も見えているみたいだな。少年のハネクリボーは知っているが、君の精霊は見たことがないな」

 

精霊界でもトリックスター達には会ったことがないな。サイバース族には会ったことがあるんだが。

 

「この娘、使い方が分からない。でも、ずっと一緒」

 

そう言って、デッキケースから青い枠に八方向の矢印が付いていて、右下と左下の矢印が赤くなっていて、守備力も書かれておらずレベルもランクとかいう物も書かれず、守備力の代わりにLINK-2と書かれているカードを見せてくれた。完全にリンクモンスターだな。EXモンスターゾーンが現状無いために召喚は絶対に不可能だ。

 

「見たことがないな。使用したことは?」

 

「使い方が分からない。融合素材が書かれてたから融合した。駄目だった。リリースも駄目。テストモードでもエラーが出た。けど、一緒」

 

「そうか」

 

使用したことがないのならリアルファイト要因を呼ばなくても良いな。それに、彼女は今まで見てきた奴らとは違う。オレやあのイケメン共と同類ではなく現地産なのだろう。そして精霊自身が望んで傍にいるのなら、それを尊重してやる必要がある。

 

「なあ先生、もしかして精霊って珍しくないのか?」

 

「いや、珍しいさ。だが、アカデミアには1学年に10人位は精霊と共にいる生徒がいる。今年は少ないなって思ってた所だ。教師も精霊付きは珍しいな。オレと実技主任と他に2人程度だ。ちなみに精霊付きの生徒には特別授業に出る義務がある。精霊に関する知識と、精霊との正しい接し方だな」

 

「へぇ〜、そんな授業もあるのか」

 

「自分は選ばれた者だと勘違いしている奴らの心を折る必要もあるし、付き合い方に悩む生徒もいる。急に精霊に付かれて、デッキバランスを崩したりなんかもあるからな。アカデミアを卒業後には互助会にも入会することも多いな」

 

少年と話している内に医務室に到着し、医者に彼女の手当を頼む。

 

「それじゃあ、改めて受験票の確認と遅刻した理由を聞こうか」

 

「ええっと、受験票はこれだぜ。それから遅刻の理由は電車の遅延で、証明書がこれ」

 

渡された受験票と遅延証明書を確認して問題がないのを確認する。

 

「よし、ではこれより試験を開始する。本来ならデュエルディスクを使用した試験だが、今回は場所が場所なのでテーブルデュエルで行う。処理の間違いは適時指示するので従うように」

 

「はい」

 

「では、君には精霊のデッキとはどんなものかを身を持って体験してもらおう。お互いのデッキをカット&シャッフル」

 

「「デュエル」」

 

「先行は受験者からだ」

 

「なら、オレのターン!!」

 

「あっ、一応医務室だから静かにな」

 

「おっと、そうだったぜ。お騒がせしてすみません」

 

手札を置いて周りの人に頭を下げる。うん、言葉遣いはともかく礼儀はちゃんと知っているな。

 

「それじゃあ、続きで。【E・HERO キャプテン・ゴールド】を墓地に送って【-摩天楼- スカイ・スクレイパー】を手札に加えて発動。【E・HERO ブレイズマン】を召喚して効果で【融合】を手札に加えて発動。手札の【E・HERO シャドー・ミスト】と【E・HERO オーシャン】を融合。『HERO』と水属性で【E・HERO アブソルートZero】を融合召喚。【シャドー・ミスト】の効果で【E・HERO エアーマン】を手札に加えて、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

受験番号120 LP4000 手札2枚

場 -摩天楼- スカイ・スクレイパー

E・HERO ブレイズマン ATK1200

E・HERO アブソルートZero ATK2500

セットカード1枚

 

「じゃあ、オレのターン、ドロー。まずはフィールドの張替えだな。手札から【歯車街】を発動。これによって【スカイ・スクレイパー】は破壊される。そんでもって手札から【古代の機械射出機】を発動。オレの場にモンスターがいないのでフィールドのカードを1枚破壊して『アンティーク・ギア』モンスターを特殊召喚する。これで【歯車街】を破壊してデッキから【古代の機械飛竜】を特殊召喚。続いて破壊された【歯車街】と特殊召喚された【飛竜】の効果でデッキから【古代の機械猟犬】を特殊召喚し、デッキから【古代の機械箱】を手札に加える。手札に加わった【古代の機械箱】はドロー以外で手札に加わった時、攻撃力か守備力が500の地属性・機械族モンスターをデッキから手札に加える。持ってくるのはオレの相棒【古代の歯車機械】だ。そして【猟犬】の効果を発動。自分の手札と場のカードを利用して融合を行える。オレは場の【飛竜】【猟犬】手札の【箱】【歯車機械】を融合。起動しろ【古代の機械混沌巨人】」

 

古代の機械混沌巨人 ATK4500

 

「すげえ、実質手札2枚でこれか」

 

「しかも召喚権が残っているけどまあいいや。バトルフェイズ」

 

「リバースカード【ヒーローバリア】これで攻撃を一度だけ無効にする」

 

「残念だな。【混沌巨人】は魔法・罠の効果を受けず、更にはバトルフェイズ中にモンスター効果を使わせない」

 

「それじゃあ【アブソルートZero】でも破壊できないのか!?」

 

「そして相手のモンスター全てに攻撃できる。【ブレイズマン】【アブソルートZero】の順で攻撃」

 

「ちくしょう!!負けた。先生強いんだな」

 

「まあな。ちょっと手札を確認させてもらうぞ」

 

サーチした【エアーマン】と【死者蘇生】か。融合デッキも見せてもらってバランスを確認。そしてピン刺しの【ハネクリボー】か。合格でいいだろうな。【混沌巨人】じゃなければ勝敗はまだ付いていなかったからな。

 

「うむ、ミスは無いな。さてと、次はあの娘だな」

 

「あっ、オレも見せてもらっていいかな?」

 

「かまわないだろう」

 

治療を施された少女に受験票の確認と遅延証明書を見せてもらってから試験を始めることを告げてデュエルを始める。

 

「先行は受験者からだ」

 

手札を見て不思議に思うカードが来ていた。デッキに入れた覚えがないのだが。不思議に思っていると相棒が自己主張していた。つまりは相棒が突っ込んだということだ。相棒はたまにピンポイントなカードを自分のデッキに投入することがある。今回もこれが必要ということだろう。

 

「ドロー。【トリックスター・ライトステージ】効果で【トリックスター・キャンディナ】を手札に、召喚。召喚時効果、チェーンは?」

 

「なしでいい」

 

「手札の【トリックスター・マンジュシカ】最後に【サモンチェーン】発動。処理、召喚権が増える。【キャンディナ】と入れ替える。デッキから【マンジュシカ】を加える。【キャンディナ】召喚【マンジュシカ】と入れ替え、デッキから【トリックスター・リンカーネイション】を加える。【キャンディナ】召喚【リンカーネイション】を手札に加えて3枚伏せてエンド」

 

受験番号14 LP4000 手札2枚

場 トリックスター・ライトステージ

トリックスター・マンジュシカ ATK1600

トリックスター・マンジュシカ ATK1600

トリックスター・キャンディナ ATK1800

セットカード3枚

 

すげえ嫌な予感がする。

 

「オレのターン、ドロー」

 

「手札にカードが加わった時、【マンジュシカ】の効果。1枚に付き200ダメージ。【ライトステージ】の効果、『トリックスター』でダメージを受けたら200ダメージ」

 

「カード1枚で800ダメージか」

 

代理試験官 LP4000→3200

 

「リバースオープン【リンカーネイション】相手は手札を全部除外して除外した分だけドローする」

 

「げえっ!?手札から【クリフォトン】を発動!!ライフを2000払い、このターンにオレが受けるダメージを全て0にする!!」

 

代理試験官 LP3200→1200

 

「むぅ、躱された」

 

「すげぇ、1ターンキルになるところだった」

 

危なかった。相棒には本気で感謝しないとな。その後は先程のデュエルと同じ流れで【混沌巨人】を融合召喚して全部を殴り飛ばして勝利を収めた。

 

「さて、本来なら結果は郵送されるのだが、君達は二人共合格だ。最も、少年の方は実践はともかく筆記がな。少年は一番下のオシリスレッドになるだろう」

 

「なあ、先生。その少年ってのは止めてくれないか。オレには遊城十代ってちゃんとした名前があるんだからな」

 

「私も早乙女雫。ちゃんと呼んで」

 

「ああ、そうだな。遊城、早乙女。改めて自己紹介をしよう。デュエルアカデミア本校の校長を務める柏木遊大だ。まあ、今年からの新米だ。校長ではあるが選択授業のデュエル講座・基礎と一般には公開されていない精霊学の教師も務めることになっているからな。顔を合わせる機会は割りとあるだろう」

 

なお、前任者のハゲ校長はオーナーの怒りに触れてクビになった。環境についていけなかった上に弟子たちにすら教えを否定されて行動に移し、敗れ去った。そこまでならまだ校長の職に残れただろうが、一番弟子とも言える生徒の考えを頭から批判し、カードを批判した上にリアルファイトで殴り倒した上でデッキを燃やした。

 

今は本土で裁判中で一審で罰金2000万の上で無期懲役を言い渡されているが控訴したようだ。その上でデュエルを求めたが、こちらの検察官はオレとクロノス教諭の一番弟子だ。温いサイバー流弁護士など一瞬にして蹴散らすだろう。

 

裁判デュエルはデュエルの中で弁護士にとって最も難しいデュエルだ。何故なら、裁判デュエルが行われる条件の一つがデュエルモンスターズが原因の一つであること。そして、その原因がデュエルの内容であること。この2つの条件を満たした上で、弁護士は被告が主体で汲み上げたデッキを使わなければならず、デッキの内容は裁判の原因となったデュエルの内容に反らなければならない。

 

今回の場合だと、前校長はバーン、バウンス、パーミッション、耐性付与、墓地肥やしを批判した。つまりこれらの効果を持ったカードを使えないのだ。まあ、サイバー流なら殆ど引っかからないな。弁護士もサイバー流だからデッキ回しも慣れたものだろう。まあ、『キメラテック』を使わないサイバー流なんて【パワー・ボンド】に気をつけておけば怖くもないな。

 

対する検察官である弟子は【古代の機械熱核竜】の精霊付きで【熱核竜】が主体のデッキだ。オレのコンボで【飛竜】と【猟犬】を出す代わりに【熱核龍】が2体並ぶ。墓地のカードをデッキに戻すカードも多用するために低レベル光属性天使族もそっと忍ばせてある。とにかく【熱核竜】を出してひたすら殴り掛かる。たまに3体並んでいる所に【リミッター解除】を撃ち【貪欲な瓶】でデッキに戻った【リミッター解除】を引き直して再び発動なんかもする恐ろしいデッキだ。

 

『古代の機械』デッキの特徴だ。エースを出せばそれでほぼ決まる。【古代の機械巨人】【古代の機械究極巨人】【古代の機械混沌巨人】【古代の機械熱核竜】これらを展開して維持するか、2回ぐらい立て直せばデュエルに勝利している。そしてそれらを召喚することに特化したデッキというのはサイバー流の言う「互いが全力を出し合う」という理念を真っ向から破り捨てる。

 

サイバー流の言う「互いが全力を出し合う」というのはエースモンスターでの殴り合いのことを指す。4000、8000、16000がポンと出てくるサイバー流なら相手のエースを簡単に殴り殺して勝利できるからだ。

 

それに対してオレが本校に赴任して6年の間に広げた教えでの「互いが全力を出し合う」はデッキ構築から始まる。このモンスターでこうしたい、このコンボでこんなことがしたい。それをまず考える。そうして1本の軸を完成させた後にそれを素早く出すための道筋を考える。それから余った枠に汎用の防御札やドローカードを投入する。そして相手の状況が整う前に、あるいは整っている状況毎一気に吹き飛ばす。そこに容赦はない。勝つか負けるかの真剣勝負。必死になるからこそ楽しめる。それがデュエルだ。

 

それが分からないサイバー流のデュエリストには滅びてもらう。前校長のようにな。ルールを守った上で楽しくデュエルが出来ないのならやらなければいい。

 

 

 




ストラクチャーデッキは安くて強い。はっきり分かる。

あっ、ちなみにチューナーはカテゴリとしては存在してます。チューナーをコストにするカードやサーチカードは出しますが、シンクロ自体は当分待機中です。解禁されるのは2年時でしょうけど。



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入学式

今回はデュエルはなし。

この作品独自の設定の説明会ですね。

サイバー流批判に関しての評価と感想をいただきました。

別にサイバー流が嫌いなわけではありません。ただ、アニメで説明されているサイバー流の説明だけでは舐めプだと感じてもいます。この作品では原作のGXで批判されていたサイコ流に近いデッキが横行します。OCGに近いデッキですから。相手のエースはきっちり止める。止めれなければ効果で除去する。そういう風な作品にしたいと思っています。ですのでテンポの都合上で鮫島校長には退場していただいております。ご不快に思われる方も居られたことをお詫びいたします。


 

 

「諸君、入学おめでとう。オレが今年度より校長となった柏木遊大だ。校長ではあるが、授業も受け持っているので顔を合わせる機会は多いだろう。さて、まずはこの本校でのシステムについての説明をしよう。長い話になるが、退学に関しての話もある。聞いていません、知りませんは聞かない。ちゃんと話を聞いているように。相手のカードの効果を聞き逃すなんてデュエリストとしてはずべきことはするなよ。まず、制服を見ても分かる通り、君達は3つのランクで分けられている。上からオベリスクブルー、ラーイエロー、オシリスレッドだ。このランク性はオーナーの常に競争してこそ成長が見込めるというお言葉から来ている。ランクが高ければ高いほど、施設の使用の優先度が高くなったり、寮の設備が充実していたりする。そして月初めのテストの成績によってランクが変動する。気を抜けばオベリスクブルーから一気にオシリスレッドなんてこともありえる。ちなみに去年の1年生のことだが、最初の試験でオベリスクブルーから降格したのは28名。半分以上が落ちた。そしてオシリスレッドからオベリスクブルーまで昇格したのが6名いる。この意味が分かるか?中等部主席万丈目準」

 

オレに問われてオベリスクブルーの青いコートを着た生徒が困惑しながら答える。

 

「……何か不正が?」

 

「はい、面白い答えをありがとう。正解はアカデミア本校は魔窟だからだ。最初に宣言しておく!!中等部での授業はお遊びだ!!まずはこの映像を見てもらう」

 

モニターの映像内ではオレとクロノス教諭がデュエルディスクを構えている。

 

『オレのターン、ドロー!!フィールド魔法【歯車街】を発動。そして【古代の機械射出機】を発動。このカードは自分の場にモンスターが存在しない場合、自分の場の表側表示のカードを1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊し、デッキから【アンティーク・ギア】モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。オレは【歯車街】を破壊してデッキから【古代の機械巨人】を特殊召喚。さらに破壊された【歯車街】の効果を発動。このカードが破壊された時に発動できる。手札・デッキ・墓地から『アンティーク・ギア』モンスター1体を選んで特殊召喚する。オレはデッキの【古代の機械兵士】を特殊召喚する。カードを1枚伏せてターンエンド』

 

「さて、此処までで問題だ。あの時のデッキには【古代の機械巨人】は3枚入っていた。だが、オレは【歯車街】で【古代の機械兵士】を出した理由は?」

 

「そんなのは簡単だ。【古代の機械巨人】は特殊召喚できない効果を持っているからだ。【古代の機械射出機】は召喚条件を無視すると書いてあるから特殊召喚できる」

 

「これぐらいは分かるか。では、続きだ」

 

『ワターシのターン、ドローニョ。手札から【歯車街】を発どーう。そして、【サイクロン】で【歯車街】を破壊するノーネ』

 

『それにチェーンして【サイクロン】を発動。【歯車街】を破壊する』

 

「さて、問題だ。この後の効果の処理を答えてみろ」

 

「ふん、アンタの【サイクロン】が【歯車街】を破壊して、もう一人の教諭が『アンティーク・ギア』モンスターを特殊召喚。そして【サイクロン】が対象不在だ」

 

「はい、0点」

 

「なっ!?」

 

自信満々に答えて0点と言われて顔を真赤にする。

 

「誰か分かる者はいるか?」

 

ぽつぽつとラーイエローから手が上がり、オシリスレッドでも一人だけだが手が挙がる。

 

「じゃあ、オシリスレッドの君」

 

「はい。校長先生のチェーン2で【サイクロン】で【歯車街】が破壊されて墓地に送られ、【歯車街】の効果の発動条件が満たされます。ですが、チェーン1の【サイクロン】の効果が残っています。【歯車街】は破壊された時、発動できる。ですのでタイミングを逃してしまい、チェーン1の【サイクロン】対象不在になります」

 

「正解だ。これがタイミングを逃すという現象だ。何人か、これと同じ現象を見たことがあるはずだ。見たことがないのなら、その程度のレベルだったということだ。なあ、中等部主席万丈目準。いつオシリスレッドに落ちるか分からんぞ」

 

屈辱から振るえているがその程度だ。

 

「さて、分かったな。オシリスレッドでもオベリスクブルーよりも知識を持つ者はいる。ただ、家庭環境によってカードをまともに揃えられなかったことから実技の成績が芳しくなかった者もいるだろう。ここは学び舎だ。そういった生徒を援助するシステムが今年から導入される。制服と同時にアカデミアに絶対に持ってくるようにと白紙のカード、ブランクカードが20枚入っていたはずだ」

 

胸ポケットから白紙のカードを取り出して両面を見せる。

 

「そのカードはKC社海馬社長とI2社ペガサス会長の全面協力の下に開発されたカードだ。同じく学園での電子マネーやメールや通話を行えるPDAのスロットに装填し、カードリスト内から好きなカードを選択すれば、そのデータが書き込まれ、学園のデュエルディスクのみに反応してデュエルを行える画期的なカードだ。成績優秀者には追加でカードが配られ、校則違反などで没収される。そして、卒業時に成績に応じて実際のカードと交換が行われる!!」

 

PDAに挿入してリストから【ブラック・マジシャン】を選択してブランクカードにデータを入力して【ブラック・マジシャン】のカードをデュエルディスクにテストモードで置けば、【ブラック・マジシャン】のソリッドビジョンが浮き上がる。

 

「あ、あの、リストに【青眼】も、あるんですけど」

 

ラーイエローの女生徒が恐る恐るといった感じで質問してくる。それに関しての答えはこれだ。

 

「言ったはずだ。全面協力だと。もっとも、イラストは完全に新規描き下ろしで差別化はされる。ちなみに海馬社長直筆のイラストだ。昔からペガサス会長が海馬社長に【青眼】の量産の打診をしていたのだが、それを後押ししてきた。無論、ペガサス会長の【トゥーン】もブランクカードで使用できるし、卒業時に配布もされる。だが、分かっているな。何方のカードも二人共深く愛していることを。生半可な気持ちで手にしようとは考えるな。コストにしまくったら殴られたからな」

 

【トレード・イン】で捨てて、【アドバンスドロー】でリリースして、【融合解除】から3体リリースで【神獣王バルバロス】をアドバンス召喚なんてしてたらデュエル終了後に顔面にグーパンチを食らった。使い方が気に食わんと言われたが、確かに自分では出来ない【青眼】の使い方だと認められ量産に至ることが出来たのだ。下敷きの【希望皇 ホープレイ】に謝ってほしいけどな。まだいないけど。

 

「ああ、それからブランクカードに関して一つ注意事項だ。生徒のブランクカードはこちらで全て管理している。勝手にアンティや力づくで強奪しているのが分かれば退学だ。黙っている必要はない。親の権力で脅しても無駄だ。最初にも言ったがKC社とI2社が全面協力だ。二度と日の目を見れると思うなよ。奪われた、拾ったならすぐに教師に申告すること。無論、トレードも貸出もなしだ。ブランクカードの増減の許可は教師だけが持っている。異常が確認されれば査問会の調査、場合によっては退学だ。ちなみに二日前にそれを行った馬鹿が居てな。退学になった。詳しくは先輩に聞いてみるが良い」

 

これだけ脅せば問題ないだろう。分からないようなら退学になるだけだ。

 

「続いて、月一テストに関してだ。月一テストはデュエルモンスターズについての試験だ。昨年までは筆記と実技だけだったが、今年からはデッキ構築の課題が追加される。このデッキ構築は毎回出されたテーマを満たしたデッキを一ヶ月をかけて構築し、レシピを提出する形になる。まあ、最初の頃は簡単だ。そこまで難しいものではない。来月の試験まで半月しかないからな。まずはこの【メガロック・ドラゴン】だ。こいつを有効利用するデッキレシピの提出だ。そこまで難しくはないはずだ。PDAのリストを利用してもらって全然構わない。これは多くのカードに触れてもらうために行われる。多くのカードに触れることによって使えないカードなどこの世には存在しないということを理解してもらいたい」

 

【隣の芝刈り】の恐ろしさを新入生の何人が理解できるだろうか。

 

「そして月一テストの点数によって寮の入れ替えを行う。これは強制だ。ちなみに制服は元の色を利用してもらっても構わないし、改造するのもありだ。そこは自由だ。そして最後だが、此処、アカデミア本校では独自の禁止・制限の裁定が行われている。リストをちゃんと見ておくように。以上で入学式を終わる。さて、最後になるが、これが分かる奴はこの場に残るように」

 

オレの相棒では目立たないのでクロノス教諭の【古代の機械巨人】に出張ってもらう。

 

「では、解散」

 

生徒の殆どがホールから出ていき、14人の生徒が残る。その内8人は精霊付きでもなければ見えてもいないのでホールから追い出す。残った6人の内、1人は見えていない精霊付きだった。彼についている精霊が強引にこの場に留めている。

 

「さて、君だけは何がなんだか分かっていないようだね」

 

「あの、助けて下さい。動けなくて」

 

「放して上げなさい【椿姫ティタニアル】彼にも君を見ることは出来る」

 

オレが説明してやれば【ティタニアル】蔓を解いて彼を開放する。

 

「動けるようになった。校長先生、一体何が?」

 

「話は移動してからにしよう。君達を先輩と引き合わせる」

 

「先輩?」

 

6人を連れて旧特待生寮の場所に作った多目的教室に向かう。

 

「なあ先生、それって試験の時に言ってた?」

 

「そうだ、遊城。そして、ようこそ、オレ達は君達を歓迎しよう」

 

多目的教室に入ると同時にクラッカーが鳴らされる。総勢25名とその精霊たちが新たな同類たちを歓迎する。

 

「さて、此処にいる彼は見えていない。だが、ぼんやりとだが見えてきているはずだ」

 

「校長先生、一体何が起こっているんですか!?」

 

「君はデュエルモンスターズの精霊の話を聞いたことはあるかい?」

 

「噂程度なら。じゃあ、もしかして」

 

「そう、此処にいる者は皆見えているし、相棒がいる。無論、君にも相棒が着いている。見えてはいないようだが、ここは精霊の力に溢れている。しばらくすれば身体が慣れて見えるようにもなるし、話せるようにもなる」

 

「じゃあ僕のは【椿姫ティタニアル】?デッキに入れた覚えもないのに勝手に入ってくるのが」

 

「ちなみにデッキは?」

 

「『巨大戦艦』です」

 

その言葉に皆からの同情が集まる。機械族デッキに【ティタニアル】はかすりもしないな。こういうことがあり得るからブランクカードの導入を推し進めたんだよ。

 

「手札事故も多かっただろう。植物族のデッキを扱う先輩もいる。彼女に相談してブランクカードを使って調整し直すと良い。専用デッキとサブデッキを用意すればサブデッキには潜り込まなくなるから。ただ、サブデッキばかりを使ってるとまた侵食される。召喚もたまにしてやらないと拗ねて手札事故が起こりやすくなる」

 

そう説明してやると落ち込んでしまった。

 

「なんでこんな目に」

 

「そういう運命としか言えないな。まあ、実際の所、相棒とコミュニケーションを取ってなんとかするしか無いな。苦労した奴は君以外にもいる。ここは精霊達と上手く付き合っていくための集まりだ。そして精霊学の授業を行うための教室でもある」

 

何人が自分も苦労したからと励ましている。

 

「さて、では自己紹介をしようか」

 

 

 

 



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日常

 

 

 

「デュエルモンスターズには大きく分けて、3種類のカードが存在する。モンスター、魔法、罠。この3種類だな。では、さらに細かく見ていこう。まずはモンスターからだ。万丈目、モンスターの種類を全て答えてくれ」

 

オレに指名された万丈目は嫌そうな顔をしながらも立ち上がり答える。

 

「通常モンスター、効果モンスター、融合モンスター、儀式モンスター。誰も入学していないようだが、入試で見たシンクロモンスターとエクシーズモンスター、ペンデュラムモンスターは入るのか?」

 

「あれらは不正カードだ。そんなものは公式に存在しない。彼らは今頃ブタ箱に入っているだろう。青少年保護法もこの件に関しては保護してくれない。それだけカードの不正使用は重い。だが、ペガサス会長は大変興味をお持ちになられている。現在調整中とのことだ」

 

「なら、それだけだ」

 

「うむ。よく出来たといいたいが、少し抜けている。まあ、混同されていたりあまり知られていないからな。まずはトークンモンスターだ。実際には存在しないカードだがこれらは場でのみモンスターと識別されるカードだ。それから能力系のチューナーモンスター、ユニオンモンスター、デュアルモンスター、スピリットモンスター、トゥーンモンスター。効果モンスターと一括りにされることがよくあるが、これらをサーチするカードが存在したりする以上分けておいてもいいだろう」

 

オベリスクブルー生もノートに書き綴っていく。

 

「そして、トラップモンスターとその例外、罠カードとして扱わないトラップモンスターの2種類だ」

 

「罠カードとして扱わないトラップモンスター?」

 

「では、引き続きだ。万丈目、トラップモンスターの特徴は?」

 

「永続罠で魔法・罠ゾーンを使用した状態で場に特殊召喚されるモンスターだ」

 

「その通り。それに対して例外である罠カードとして扱わないトラップモンスターは魔法・罠ゾーンを使用せずにモンスターとして特殊召喚される。それともう1種類存在する。たぶん、気にしたことはないはずだ。分かるやつは居るか?」

 

誰も手を挙げないし、近くのやつと相談している。

 

「正解は特殊召喚モンスター。意味がわからないとは思う。あまり説明する意味もない。これを参照するカードは存在しないからな。簡単に説明すれば、通常召喚が出来ないモンスターがこれに当たる。儀式とか融合もそうだし、テキストに通常召喚出来ないと明記されている。一応、区分分けがされているので説明しておく」

 

「なぜそんな説明をするんだ。時間の無駄だろう」

 

「万丈目、自分の無知は恥ずかしいぞ。知っているのと知らないのとでは天と地程も違うことだぞ。入学式の時みたいな恥を晒したいか?」

 

そう言ってやれば悔しそうな顔をする。

 

「次は魔法カードだ。そうだな、遊城、魔法カードの特徴を答えてくれ」

 

「オレ?えっと、緑色の枠で通常魔法、速攻魔法、儀式魔法、装備魔法、永続魔法、フィールド魔法に別れてて、永続魔法とフィールド魔法は場に存在しているときだけ効果を発揮するだっけ?」

 

「概ねはそれであっている。だが、まだまだ足りないな。速攻魔法以外はセットしたターンでも発動できて、速攻魔法はセットしておけば相手ターンにも発動できる。また、速攻魔法は自分のターンに手札から発動できる。たまに理解していないのがいるが、速攻魔法はスペルスピード2のカードだ。スペルスピードとチェーンに関しては次回に説明する。今日は簡単に説明しておく。スペルスピード1のカード、通常魔法などは基本的には自分メインフェイズのみ発動できるカードだ。それ以外のタイミングで発動できるのがスペルスピード2のカードだ。覚えておくように。基本的にはマークが付いているのでそれで見分けることになる」

 

画用紙に書いてきた各種魔法の識別マークを見せる。

 

「見ての通りだな。さて、魔法カードの処理に関してだが【光の護封剣】の処理に疑問を思ったことはあるか?まあ、度々エラッタがかかっているので混乱している者も多いだろう。ちなみに最新版の効果はこれだ」

 

光の護封剣

通常魔法

このカードは発動後、フィールドに残り続け、相手ターンで数えて3ターン後の相手エンドフェイズに破壊される。

(1):このカードの発動時の効果処理として、相手フィールドに裏側表示モンスターが存在する場合、そのモンスターを全て表側表示にする。

(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、相手モンスターは攻撃宣言できない。

 

「昔に比べるとテキストが大分伸びた。最初期は使うと場に残らないから除去できなかったりした。あと、墓地に送られるのが破壊に変わったりして(2)の効果は永続効果だったりと色々ある。ちなみに、何故場に残り続けるのかというと、通常魔法は一連の効果の処理が終わった後に墓地に送られるというルールがあるからだ。永続魔法にすれば良い気もするが、永続魔法のサーチとか、通常魔法のサーチとかの問題があるから通常魔法のままだな。このようなちょっと変わった物もあることを覚えておいて欲しい。ちなみに通常魔法だが一連の処理の終わりがなく、3ターン後のエンドフェイズに破壊されるというのを覚えておいて欲しい。場のカードの破壊が発動条件になっているカードもあるからな」

 

この辺が曖昧なやつは多いと思う。何しろそこそこのレアカードだからな。こっちの世界のスターターデッキは紙束だからな。未だに【山】とか【平地】が入っているからな。せめて【ガイアパワー】とかにしろよ。【罠はずし】じゃなくて【サイクロン】とか。特に一番バカなのかと言いたいのが【折れ竹光】だ。

 

折れ竹光

装備魔法

装備モンスターの攻撃力は0ポイントアップする。

 

こいつは『竹光』カードのコンボの中核なのだが、他の竹光がスターターデッキには収録されていないのだ。ただの嫌がらせカードだ。もう少しまともなスターターデッキを発売してもらおう。せめて種族ごとに分けるとかさ。

 

「最後に罠カードだ。これに関しての特徴を、そうだな、天上院に答えてもらおう」

 

「はい。罠カードは3種類存在し、通常罠、永続罠、カウンター罠が存在します。特徴としては、一度場にセットし、次のターンからしか発動出来ないということです。また、カウンター罠はスペルスピード3で、カウンター罠にはカウンター罠でしかチェーンを組むことが出来ません。また、トラップモンスターも存在しています」

 

「正解だ。補足するならセットしたターンにリバースすることが出来ないが正確だな。例えば破壊された時に発動する通常罠【黄金の邪神像】なんかはセットしたターンに破壊されても発動する。覚えておくように。また、罠カードのサポートとして【処刑人マキュラ】なんかは有名だな。墓地に送られたターン、手札から罠カードを発動できるモンスターだ。他にも例外的に手札から発動できるカードも存在する。その場合は条件が一行目に記載されている事が多い。カードを良く読むように。見たことのないカードを相手が使用してきたら素早くデュエルディスクの機能を使って調べる癖を付けるように。墓地から除外して発動するカードも多くなってきているからな。むしろそちらが本命のカードすらある。気をつけるように。はい、今日の授業は最初の月一テストに出るからよく復讐しておくように。また、通常モンスターのフレーバーは一切でないからな。そこで寝てる遊城にも伝えておけ」

 

隣の生徒に叩かれて起きる遊城にため息が出る。精霊との親和性は高いし、デュエルでの勘も冴えている。これでせめてまともに授業を受けてくれれば多少筆記が悪くても小言で済ませれるんだけどな。場合によっては家庭訪問かな。

 

 

 

 

 

 

「う〜ん、【メガロック・ドラゴン】か。墓地の岩石族を除外して特殊召喚。除外した数かける700の攻撃力と守備力か。レベルは7。とりあえず墓地を肥やせば良いのか?」

 

授業が終わり放課後の現在、多目的教室で月一テストで提出するデッキ作りに悩んでいる。

 

「どうしたんだい、十代君。何を悩んでいるのさ」

 

悩んでいるオレの所に【スクラップ・コング】の精霊が付いている先輩がやってきた。

 

「岡部先輩、実は月一テストの課題のデッキ作りに悩んでて。岩石族に関してあまり知らなくて」

 

「ああ、校長のデッキ作りの課題ね。去年までは基礎を受けている生徒だけの課題だったんだけどね。あれは、知識が付くからオススメだよ。お題は何だい?」

 

「【メガロック・ドラゴン】です」

 

「【メガロック・ドラゴン】か。墓地の岩石を除外して特殊召喚するモンスターだったね。十代君、捻くれた答えと正統派な答え、どっちを出してみたい?」

 

「捻くれた答え?」

 

「正統派な答えは如何に墓地を肥やして【メガロック・ドラゴン】の攻撃力を高めるかに終始するだろう。捻くれた答えは【メガロック・ドラゴン】を使い倒すデッキだ。【メガロック・ドラゴン】が活躍することはないだろう」

 

「う〜ん、じゃあ正統派で」

 

「捻くれた答え」

 

いつの間にか雫が側に来ていた。

 

「おや、雫君もかい?」

 

「うん、困った」

 

「良いよ。それじゃあ、十代君に紹介するカードはこれらだね【岩投げエリア】【岩投げアタック】【リバイバルゴーレム】【岩石の番兵】これらは墓地肥やしと壁に最適だ。【愚かな埋葬】や【針虫の巣窟】も良いだろう。【メガロック・ドラゴン】を墓地に送って【死者転生】で回収するのも良い。まあ、こんなところだね。あまり教えすぎると勉強にならないから」

 

岡部先輩に言われたカードをPDAのリストで確認していく。たしかに壁になって墓地肥やしも出来る。なるほどな。

 

「雫君の場合は【ブロックドラゴン】【紅蓮魔獣 ダ・イーザ】【ギガストーン・オメガ】【D.D.ダイナマイト】【隣の芝刈り】」

 

気になってそっちも調べてみると除外に関係するカードと【隣の芝刈り】は自分のデッキを相手のデッキの枚数と同じになるように墓地に送るカードだった。

 

「【メガロック・ドラゴン】の除外して特殊召喚する効果を逆手に取ってとにかく除外しまくるカードを投入して【ダ・イーザ】や【D.D.ダイナマイト】で吹き飛ばすデッキさ」

 

「いいの?」

 

「【メガロック・ドラゴン】がお題なら大丈夫さ。活用してるでしょ?除外肥やしに。それに【青眼】を戦闘させずにとことん蘇生してリリースしまくるような人だよ。怒れるわけないじゃない。僕だって【スクラップ・コング】の召喚時に自壊する効果を逆手に取って【エンペラー・オーダー】でドローしてるしね」

 

そうか。そういう考え方もあるのか。

 

「昨年は【エレメンタルバースト】がお題でね。皆が【魔の試着部屋】とかで並べるデッキの中で僕は【ジャンク・コレクター】と【闇よりの罠】で【エレメンタルバースト】を使うデッキを提出したね」

 

「「【ジャンク・コレクター】と【闇よりの罠】?」」

 

「簡単に言うと墓地から通常罠を除外してその効果を発動するってカードだね。お題が【大革命】だとこれはできなかったんだけど【エレメンタルバースト】なら発動できるんだ。違いはコストと発動条件だ。間違えやすいから注意しような」

 

違いが分からずに首を傾げていると簡単に説明してくれた。

 

場に○○が存在する場合に発動できる。これが発動条件で

場に存在する○○をリリースして発動する。これがコストなんだそうだ。

 

違いとしては発動する時に○○が場に存在しているか、いないか。そこが違うらしい。【エレメンタルバースト】は4属性をリリースして発動する。からコストで、それを踏み倒せるのが【ジャンク・コレクター】と【闇よりの罠】らしい。

 

「まあ、此処らへんは校長がもうちょっと分かりやすく授業で教えてくれるはずさ。だから居眠りはやめておけよ、十代君」

 

「なんで知ってるんですか!?」

 

「授業中は精霊達は精霊達で集まって何かしているみたいでな。ハネクリボーが居眠りで怒られてたって話したみたいだぞ。あんまり居眠りばっかりしてるとブランクカードを減らされるぞ。便利だろう、ブランクカード」

 

「便利です」

「便利」

 

「昨年卒業した先輩にいたんだよ、精霊は付いているけどカードを持っていないのが。精霊が【カオス・ソルジャー -開闢の使者-】で、あのカードって恐ろしく枚数が少ないだろう?儀式の方の【カオス・ソルジャー】はなんとか引き当てて揃えたらしいんだが。【カオス・ソルジャー】自身にカードを生み出してもらうのは少し違うしな。校長が苦労して世界中の大会を探して賞品になっている大会を見つけて、その先輩を引き連れて大会に出場できる手続きを行ったんだよ。先輩は大分苦労しながらもなんとか優勝したけどな。すぐにとんぼ返りだ。なんせ卒業式に遅刻しそうになったんだからな」

 

「つい最近のことだったんですか!?」

 

「運が良いのか悪いのか分からないけどな。3年間待ってようやく見つけたんだからな。今はプロとしてのデビュー戦待ちだな。何でも、大手企業のスカウトを蹴って親戚筋の小さな町工場がスポンサーで、普段はそこの工員として働くみたいなんだ」

 

「プロだけじゃない?」

 

「あの業界ってね、結構厳しいんだ。デュエルで勝つだけじゃ誰にも認められないんだ。観客が喜ぶデュエルをした上で勝たないといけない。だから、ランキング上位のデュエリストほど表に出てこないだろう?やりたくないんだよ、スポンサーからもああしろこうしろって指示が来るから」

 

「そうなんですか?もっと華やかなものだと思ってたんですけど」

 

「中にはそれが天性とも呼べる榊プロみたいなのもいるけど、新人以外は大体見世物用のデッキを組んでる。本気のデッキじゃないんだ。校長の教え子にはプロの世界に入って、自分から降りていった者が多いからね。大抵はプロであった実績を使って営業マンになるみたいだ。それか、実家の家業を継いだり、親戚筋の会社に勤めるのが多いね」

 

「そういう先輩はどうするんですか?」

 

「僕は、悩んでいるんだよね。プロリーグから勧誘は来てるし、スポンサーもね。ただ、リーグがね、攻撃力にしか目を向けないパワー勝負が主体のリーグなんだ。僕のデッキだと多少パワー負けしてしまうからデッキを大幅に改造する必要があるし、そこまでして勝ちたいかと言われるとそうでもない。もうちょっとだけ、一般人にも奥深さが分かってもらえればなぁ」

 

あ〜、なんか空気が落ち込んでる。話題を変えよう。

 

「そういやさ、さっき言ってたプロになった先輩のデビュー戦っていつなんですか。皆で応援したいんですけど」

 

「3日後だ。それにしても応援か。デッキも調整してるだろうし、それは良いね。校長に話してみよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜、だるい、眠い」

 

『そんなに気を抜いていて大丈夫なのか』

 

「ああ、うん、本来の調整とは違うからちょっと不安だけど、問題はないと思うよ」

 

オートシャッフルやサーチ機能が搭載されたプロ公式のデュエルディスクに装着してあるデッキを叩く。

 

『戦術が理解されないとは、難儀な物だな』

 

「仕方ないよ。見世物だからね」

 

八百長を強要されないだけマシだ。柏木先生とクロノス先生の勧めで親戚筋の会社の社員を務めながら、その会社にスポンサーになってもらってプロリーグで活躍するのが安定した道なのだ。どうしても、プロリーグに馴染めないと言う人はいるからな。落ちぶれて地下競技には行きたくないから、就職した上でプロになり、引退しても営業でその腕を振るう機会はあるはずだからと言われた。たぶん、それが正解なんだろうな。

 

「高坂選手、お時間です」

 

控室のドアがノックされ係員の人に呼び出される。

 

「了解。それじゃあ、行きますか」

 

控室から出てステージへと歩いていく。大勢の観客の声が聞こえる。まあ、月一テストで慣れたものだ。MCがオレの紹介をしているが特に気にしない。そして、対戦相手はこのリーグのチャンピオンだ。大体のリーグで新人のデビュー戦はそこのリーグのチャンピオンと決まっている。現実を見せるためらしいけど、負ける気は全くしない。

 

安い挑発を無視してデュエルディスクを見せつける。言葉でなくデュエルで語れという意味だ。それを見てつまらなそうにしているチャンピオンもデュエルディスクを構える。

 

「「デュエル!!」」

 

「先行は俺様だ!!オレは【ローンファイア・ブロッサム】を召喚。そしてこいつの効果で自身をリリース!!デッキから【ギガプラント】を特殊召喚。さらに手札から装備魔法【スーペルヴィス】を【ギガプラント】に装備させる。これにより【ギガプラント】は再度召喚された状態となる。そして【ギガプラント】は再度召喚された状態に真の力を発揮する。デッキから2体目の【ギガプラント】を特殊召喚する。ふはは、どうだ、恐ろしいだろう!!」

 

【ギガプラント】が2体フィールドに並んだだけで勝った気になっているのか高笑いをしている。頭が痛い。この程度なら柏木先生に1年間授業を付けられた生徒の方が強い。チャンピオンは勘違いをしたままターンエンドする。

 

チャンピオン LP4000 手札4枚

ギガプラント① ATK2400

ギガプラント② ATK2400

スーペルヴィス(ギガプラント①)

 

「さあ、突破できるものなら突破してみな!!」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて。俺のターン、ドロー。魔法カード【儀式の下準備】を発動。デッキから【カオスの儀式】を選択し、それに記載されているモンスター【カオス・ソルジャー】を選択して、その2枚を手札に加える。続いてフィールド魔法【混沌の場】を発動。発動時の処理によりデッキから『カオス・ソルジャー』儀式モンスターである【超戦士カオス・ソルジャー】を手札に加える。そして【カオスの儀式】を発動。レベルが8以上になるように手札・場のモンスターをリリースすることによって【カオス・ソルジャー】を儀式召喚する。手札の【超戦士カオス・ソルジャー】をリリースし、【カオス・ソルジャー】を儀式召喚。手札からモンスターが墓地に送られたので【混沌の場】にカウンターが一つ乗る」

 

カオス・ソルジャー ATK3000

 

「続けて【超戦士の萌芽】を発動。レベルが8になるように以下のどちらかの組み合わせを墓地に送り、手札・墓地から『カオス・ソルジャー』儀式モンスターを儀式召喚する。オレは手札から光、デッキから闇の方を選択する。手札から【開闢の騎士】デッキから【宵闇の騎士】を墓地に送り墓地より【超戦士カオス・ソルジャー】を儀式召喚。更に【開闢の騎士】と【宵闇の騎士】は『カオス・ソルジャー』儀式モンスターの儀式召喚のために墓地に送られた場合、その『カオス・ソルジャー』儀式モンスターに効果を与える。【超戦士カオス・ソルジャー】の現在の効果は

 

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードが戦闘または相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。自分の手札・デッキ・墓地から「暗黒騎士ガイア」モンスター1体を選んで特殊召喚する。

(3):1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを除外する。

(4):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。このカードはもう1度だけ続けて攻撃できる。

(5):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。相手の手札をランダムに1枚選び、次の相手エンドフェイズまで裏側表示で除外する。

 

となる。そして【混沌の場】にカウンターが乗り、効果を発動。相手の手札をランダムに1枚除外する。さらに、墓地の【開闢の騎士】と【宵闇の騎士】を除外。ここに最強の三戦士が揃う。現われろ【カオス・ソルジャー -開闢の使者-】」

 

超戦士カオス・ソルジャー ATK3000

カオス・ソルジャー -開闢の使者- ATK3000

 

「【開闢の騎士】と【宵闇の騎士】が除外されたことでデッキから『カオス・ソルジャー』儀式モンスターと儀式魔法を手札に加える。【超戦士カオス・ソルジャー】と【超戦士の萌芽】を手札に加える。バトルだ!!【超戦士カオス・ソルジャー】で【スーペルヴィス】を装備している【ギガプラント】を攻撃!!」

 

「まっ、待て!!」

 

「待たない!!開闢爆裂斬!!」

 

チャンピオン LP4000→3400

 

「【ギガプラント】を破壊し、墓地に送ったことで元々の攻撃力分のダメージを与える!!更にモンスターを破壊し墓地に送ったことで【超戦士カオス・ソルジャー】は続けて攻撃ができる」

 

「【スーペルヴィス】の効果で【ギガプラント】を守備表示で特殊召喚ぐわああああ!?」

 

チャンピオン LP3400→1000

 

「蘇生した【ギガプラント】に再び攻撃、効果でダメージ!!【開闢の使者】で残った【ギガプラント】を攻撃!!【開闢の使者】もモンスターを破壊し墓地に送ったことで続けて攻撃ができる。【カオス・ソルジャー】と共にダイレクトアタック!!」

 

「や、やめぎゃああああああああ!?」

 

チャンピオン LP1000→0

 

ステージに取り付けられているソリッドビジョンの衝撃増幅装置によって大きく引き飛ばされるチャンピオンに会場が静かになる。だが、次の瞬間この日一番の歓声が上がる。ただの力押しのデュエルを評価されてもあまり嬉しくなかった。作った笑顔で観客に手を振り控室に戻る。

 

「はぁ、大学に行って教職免許でも取った方が良かったかも。デュエルアカデミア本校の教師に成れれば、同類はいっぱいだろうしな」

 

『では、今からでも勉強をし直すか?』

 

「いいや、立派な社会人になったんだ。そんな責任を放り出して道を変える訳にはいかないだろう。歯ごたえのないデュエルが続くかもしれないが我慢してくれよ」

 

『休暇が多く取れれば本校に顔をだすのも良いだろう。新しい同類たちも増えているはずだ』

 

「そうだな。ちょっと岡部に近況報告のメールを入れておこう」

 

最近購入した携帯を操作して岡部にメールを送っておく。柏木先生は忙しいことが多いから岡部から伝えてもらうのが良いだろう。会場からホテルに戻る頃には岡部からメールが返ってきていた。

 

「今年は少ないのか。変わったカードの精霊ね。召喚方法不明か。【獣神ヴァルカン】とか【ゴーストリック・アルカード】みたいに未実装のカードとはまた別か。矢印が何か意味があるんだろうな。守備力がないのも気になる」

 

『うん?トリックスターではないか。こっちに来ていたのか』

 

「知っているのか、カオス・ソルジャー」

 

『うむ、簡単に言えばこちらで言うアイドルグループの一種が近いか。そのアイドルの中で海外勢グループがトリックスターだ』

 

「精霊でもそんなところがあるんだな」

 

『無論だ。とは言えだ、こちらのようにテレビのようなものが普及しているわけではない。エンディミオンやラメイソン辺りならあるかもしれんがな。基本は風の便りで近くに来ていればちょっと見に行く程度だ。私は偶々だが彼女たちのライブを見たことがある』

 

「なるほどね。ちなみに召喚方法は?」

 

『すまないな。彼女たちのデュエルを行っている姿を見たことがない』

 

「まあ、アカデミアの皆も確認しただろうから分からなくても仕方ないか」

 

メールを確認したついでにニュースに目を通せば先程の試合のことが大々的に報道されている。基本的には褒め称えてくれているが、一瞬で終わってつまらないなどの意見が上がっている。

 

「これがプロか。見世物になって最適な手を打ってこの評価か。柏木先生やクロノス先生や佐藤先生が微妙な顔になるはずだ」

 

学生時代が楽だというのがよく分かる。こんな気苦労をすることもなければ、気楽に話せる友人も傍にいない。竜胆先輩みたいにフリーの大会荒らし兼精霊界の冒険家の方が精神的には楽な生き方なんだろうな。オレとは別の意味で苦労は多そうだけど。

 

 



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