王者は一人!この俺だ!! (○坊主)
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王者は一人!この俺だ!!

 時代は海賊時代。

 

 時はまさに時代が変わる節目。

 

 ポートガル・D・エースの公開処刑まで残すところ三時間弱。

 世界各地ではすでに海軍本部 対 白ひげ海賊団の話題で持ちきりであった。

 

 三日月状の島にそびえる海軍本部にはすでに50もの軍艦と無数の砲台。そして10万人の海兵が集結して、最終防衛にあたろうとしている。

 それだけでなく、各々の事情を胸に秘めて海軍側に就く者、それも戦局のカギを握る5名の曲者達も姿を見せていた。

 

 

 “海賊女帝”ボア・ハンコック

 “鷹の目”ジュラキュール・ミホーク

 “天夜叉”ドンキホーテ・ドフラミンゴ

 “影鬼”ゲッコー・モリア

 “暴君”バーソロミュー・くま

 

 

 それぞれが強豪犇めく新世界でも名を馳せる絶対強者“王下七武海”として参戦している。

 海兵が大まかな作戦を伝えてはいるが、海賊である彼らが全くその通りに動くとは到底思えない。

 だがそれでも、これから確実に起きる白ひげとの戦争を考えれば絶対に欠けることのできない戦力であった。

 

 今回の目的であり、敵の妨害目標でもあるエースの処刑。

 その眼下で処刑台を堅く守るのは海軍本部の“最高戦力”とも称される三人の「海軍大将」

 

 青雉 クザン

 赤犬 サカズキ

 黄猿 ボルサリーノ

 

 彼らがこの場に五体満足で居座っている限り、処刑を防ぐことは絶対にできないであろう。

 

 

「……いやな予感がするな…」

 

「なんじゃ?お前が弱気なことを言うとはめずらしい。相手は白ひげ。予想を裏切られるのは必然の相手じゃろうが」

 

 

 珍しく横で弱気になっている男に激を飛ばす。

 彼の名はモンキー・D・ガープ。

 偉大なる航路(グランドライン)一周を果たした伝説の大海賊 ゴール・D・ロジャーを捕えた男として「英雄」とも呼ばれる歴戦の猛者だ。

 

 戦争前であるというのにのんきにおかきを食っているガープを見てため息をつく者はセンゴクという。

 またの名を「仏のセンゴク」の彼もガープと共に海軍で生きてきたものであり、海軍の元帥を務める重役だ。

 

 普段であれば何も感じることはない戦場であるが、今回の一戦に限っては胸の奥底に引っ掛かるモノに一抹の不安を抱いていた。

 それを吐露したのだが、それは当然だろうがと一蹴され、ため息をついた。

 

 確かに言っていることはわかる。

 これから相手にする海賊は“白ひげ海賊団”

 

 新世界でも最も勢力を有している海賊であり、そのトップは四皇の中でも古株。それも今現在で最も海賊王に近い男として呼ばれている男だ。

 振動を操る“地震人間”としての白ひげは本気を出せば世界を滅ぼせる力を持った危険な人物。

 こちらが王下七武海や海軍大将をそろえていたとしても、負ける可能性を秘めているのだ。

 

 

「確かにそうなんだ。やつらに勝つために戦略を練り、そしてそれに見合うだけの舞台も作り、そのための戦力も整えた。国をも潰せる戦力なのにも関わらず、この引っ掛かった感じがどうにもな…何か大事なことを忘れているような…」

 

「んなこと言っておってもどうしようもならん。報告で白ひげの傘下にいる海賊たちがもうすぐ姿を現すとあったんじゃ。現状の戦力でどうにかするしかないじゃろ」

 

「…そうだな」

 

 

 前方には白ひげに加勢するために集った傘下の40をも超える海賊団。

 それによってついに始まるのかと中継を見ている者達は一斉に固唾を呑んだ。

 

 

「元帥!攻撃しますか!?」

 

「まだ待て!“白ひげ”は必ず近くにいる!!何かを狙っているはハズだ!!海上に目を配れ!!」 

 

 

 指示を仰ぐ海兵にそう伝え、少しの間にらみ合いが起きた。

 互いに静寂が訪れるが、それもすぐに終わる。

 

 

 ゴボ…

 

 ゴボボ…

 

 

「まさか…!」

 

 

 センゴクや大将らは一斉に気づく。

 白ひげがどこに存在し、これから何をするのかを。

 

「…こりゃとんでもねェ場所に現れやしねェか…!?」

 

「…布陣を間違えたかねェ」

 

 

 大将の黄猿がそう呟くと同時に海底から白ひげの母艦 モビー・ディック号が姿を現した。

 かなりの高齢であるというのに筋骨隆々なその姿から、いまだに現役だと誰もが察することが出来る。

 

 

「グラララ…何十年ぶりだ?センゴク…おれの愛する息子は無事なんだろうな…!!」

 

 

 カツン、カツンと階段を上り、姿を見せる。

 両腕に力を込め、宙を殴りつけた。

 

 

「白ひげ…!!」

 

 

 今のは白ひげなりの挨拶だ。

 そして始めようかという合図でもある。

 センゴクは今までの経験から察していた。

 

 エースがなぜ来たのかと叫び、白ひげはそれに対する解を伝える。

 白ひげ海賊団の者たちは一同に白ひげの意思に同調し、一斉に雄たけびを上げた。 

 

 これから始まるのは時代が変わる大決戦。

 乱入する者がいたとしても、エースの救出のためにインペルダウンへと侵入した麦わらのルフィか、白ひげを漁夫の利で仕留めようとする海賊ぐらいだろう。もしそれ以外にいるとしたら大馬鹿者(・・・・)ぐらいだ。

 

 

(……ん?大馬鹿者?)

 

 

 仏のセンゴク。そこでふと気づく。

 元帥の席を担っているセンゴクは当然ながら様々な情報を耳に入れている。

 海賊のルーキーの情報からや四皇の情報。それだけでなく、各国で発生している革命など、多くの事を知っている。

 それなのになぜ、こんな大事なことを忘れていたのか。

 “白ひげ”の傘下でもない。エースとなんらかのつながりがあるわけでもない。

 だからこの戦場に来るはずがない。

 そう勝手に思い込んでしまっていたのだ。

 

 両陣営の両側から、白ひげが起こした“海震”によって発生した巨大な津波が襲い掛かる。

 だが、そんな些細なことはいまのセンゴクの頭の中にはない。

 冷や汗をかきながら、必死に今の状況を整理していた。

 

 

 世界の平和を謳い、海の警察の総本山海軍本部。

 これは文字通り、世界において最も勢力を保有する存在と言ってもいいだろう。

 

 対する存在は“白ひげ海賊団”

 これも世界で名を知らぬものはいないほどの有名な大海賊。現海賊最強とも言われる存在だ。

 

 

 そんな二大勢力が一大決戦を行えば結果はどうなるか。

 相打ちはあり得ない。なぜならこちらは殲滅が目的であり、向こうは奪還が目的であるからだ。

 奪還されてしまえば海軍は戦力を有していようとも敗北であり、信用や権威は失墜するだろう。

 

 相打ちがない以上、勝者が今後の世界を支配すると言っても過言ではないだろう。

 つまり、これは事実上の最強決定戦とも言いかえれる。いうなれば頂点だ。

 

 頂点を争うのであれば、あいつ(・・・)が来ないはずがない!!

 

 

「~~~ッ!!!しまったァ~~!!!」

 

「!?どうしたセンゴク!突然叫びだしおって!」

 

「ガープ!!今すぐ中将の3割を処刑台付近に集めろ!!不味いぞ!くそっ!私としたことが失念していた!!」

 

 

 頭を抱えだすセンゴクにただ事ではないと察したガープは大至急集めるように指示をだす。

 だがその行動は遅かった。

 両側に迫っていた津波が同時に消滅したのだ。

 

 

「!?なにがおこった!?」

「親父が起こした津波が消されただと!?大将じゃない!!」

 

「…あの小僧め…!!」

 

 

 突然の変化についていけない海兵や海賊がいるなかで、白ひげやセンゴクといった特定のものたちは誰が行ったのか分かっていた。

 

 

 「王者とは!!常に孤高の存在でなければならない!!」

 

 

 「それゆえに!群れることしかできない者に、頂点を求める必要などなく!!」 

 

 

 「頂点へと至る道を歩む権利すら存在しない!!」

 

 

 戦場になろうとしていた一帯に響く声。

 上空から響くことに気づき見上げる者達がいる中で、声の主は上空から降下してきた。

 

 

「何かが落ちてくるぞ!!」

「あのままだと海に落下する。何がしたいんだ?」

「いや、あれは…海上バイク!世界でも一台しかない機体のホイール・オブ・フォーチュンだ!!初めて見た!!」

 

 

「あいつめ…っ!よりにもよってこんな重大な時に来よってからに…!」

「あらあら…こいつぁ不味いんじゃないの?」

「だよねぇ~」

「海軍に対して迷惑しかかけられんのかあの小童は…ッ!!」

 

 

「親父…どうする?」

「グラララ。あいつの性格上、こっちに対してはそこまで害はねぇだろう。むしろ好機だ」

 

 

 機体を取り巻く車輪が特徴のバイクを見て歓喜の声をあげる海兵や海賊もいる中で、両軍のトップらは白ひげVS海軍から三つ巴の戦いに移ることを確信した。

 

 一触即発だったマリンフォードは一気に空気が変わり、その状況を生み出した張本人は落下から見事な着地を決めて海軍と海賊の間に割り込むようにバイクを走らせて、陣取る。

 

 

「白ひげ海賊団に海軍…フッ、随分と壮大なことを行おうとしているではないか」

 

 

 ライダースーツを身にまとった男は現状を確認して笑う。

 わざわざ戦う前から乱入したのも自分がいるのだと盛大に魅せるためだ。

 

 

「何しにきた貴様!!白ひげに味方するとでも言うのか!?」

 

「何しに来ただと?そんなこと、決まっているではないか」

 

 

 叫ぶ海兵を一蹴し、天を指して大声で叫ぶ。

 

 

「貴様らに、この戦いは相応しくない!なぜならば、貴様らが頂点をとるための要素が決定的に欠けている!!」

 

「世界にとって頂点とは!群れて取れるものではない!!それを理解せず、頂上決戦などとほざく輩が多い事この上ない!!」

 

「頂点とはすなわち“王者”!!絶対なる孤高の強者の証!!」

 

「故に俺自らが、貴様らに頂点と言うものを教えてやろう!!!」

 

 

「!!総員、戦闘準備!!!」

「分かっていると思うが、奴を味方と思うな!!絶対に仕留めろ!!」

 

「グララララ!!言ってくれるなァ小僧が…お()ぇらァ!準備はいいかァ!!」

『 うおおおおおお!! 』

 

 

 男の姿が変化していく。

 海兵、海軍の雄たけびを無視するかの如く、人ならざるモノへと変貌させていく。

 背には大翼を宿し、悪魔のような角を持った紅蓮の身体。

 尾も生え、巨人族とも競えるほどの巨大さを有したその姿は圧倒的な畏怖を振り撒くドラゴンそのものであった。

 

 

「あの姿は…!噂通りの能力を…っ!?」

「“自然系(ロギア)”よりもさらに希少…動物(ゾオン)系「幻獣種」!!」

 

 

『揃うべきものは全て揃った。パーティの幕は上がったぞ。第一幕、始めようではないか!!』

 

 

「総員!やつから意識を外すな!!一人だとしても勝ちとタカをくくるなよ!最後を迎えるのは我々かも知れんのだ!!」

 

「始まるぞ……戦争が…!!」

 

『 行くぞォォオ!! 』

 

「あの男も 世界を滅ぼす力をもっているんだ!!」

 

 

『まずは我が力の一端を魅せてやろう!!“灼熱のクリムゾン・ヘルフレア”!!』

 

 

 紅蓮の魔竜が業炎を吐き、それを挟むようにして海軍からは隕石が、海賊からは極大の振動が襲い掛かる。

 それを開戦の合図とし、各勢力が一斉に戦場へと切り込んでいった。

 

 

 エースの処刑を防ぐために攻め入るは「白ひげ」率いる新世界47隻もの海賊艦隊

 迎え撃つは政府の二大勢力「海軍本部」「王下七武海」

 それをあざ笑うかのように乱入した“絶対王者”

 

 今までの歴史にも類を見ない一大決戦。

 誰が勝ち、誰が負けても時代が変わる戦争の火蓋がついに切って落とされたのである!!

 

 

 




 
 
 
 
 
 
 


 

“絶対王者”

  ジャック・アトラス


動物(ゾオン)系幻獣種 ドラドラの実 モデル“レッド・デーモン”




 

 


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