二次創作/デジモンアドベンチャー03 ロストソウル (島鳥 烏)
しおりを挟む

新たなる冒険のゲートが開く時

 大人になった太一が主人公の物語とは違い、こちらは新たなる選ばれし子供の亮が主人公の物語になっています。それとアドベンチャーらしくデジタルワールドメインの話にしていきます。
 
 ここからは私事になってしまうのですが、もう片方の03から時間が空いてしまって申し訳ないです。私としましても出来れば月一で次話を投稿できればと思っているのですが、仕事やプライベート色々で時間が作れず間が空いてしまいまして・・・。
 それに最後のバトルについても話が長くなってしまうと言う事からバッサリカットさせていただきました。肩透かしになってしまうのは重々承知しています。重ね重ね申し訳ないです。
 ですが、そのバトルももう片方ではしっかり書かせていただきますのでもうしばらくお時間をいただければと存じます。
 前置きが長くなってしまいましたが、もう片方の話共々楽しんでいただければ幸いです。


 東京都内、とある小学校。

 柔らかな朝日の中、多くの子供達が登校するいつもの光景。そしてその子供達と共にパートナーのデジモンも共に登校するのもすっかりそのいつも通りの光景の一部となっていた。

 電脳の世界、デジタルワールドで生まれたデジタル生命体、デジタルモンスター、通称デジモン。データだけの存在であったデジモンだが、過去に起きた現実世界とデジタルワールドが重なる事件によって互いに密接な繋がりを持つに至った。そして、子供達はデジヴァイスを介して心を繋げたデジモンをパートナーとして共存していく事が現実となった世界。

 だが、たった一人だけ、例外がいた。

「はぁ・・・はぁ・・・、良かった、追いついた。何とか遅刻せずに済んだか」

 遅刻してしまうと全力で走っていた少年は先に行っていた集団登校のグループに追いつき、肩で息をしながらも安堵の息を同時に漏らす。

 そんな様子にこのグループを纏め、同じクラスの委員長も務める少年が苦笑交じりで迎える。

「今日は遅刻しなくてよさそうだね。でも、もう少し早く出るようにしたら朝からそんなに疲れる必要もなくなると思うけど?こっちも待たなくて済むしさ」

「そうしたいのはやまやまなんだけど、こいつが負けを認めなくて」

「え~、そっちだってこっちが勝ったらもう一度ってやめようとしないじゃん」

 少年の言い訳に不満を挟んだのは自身と同じ大きさのパチンコを背負った子猿のデジモン。この少年のパートナーのコエモンだった。

「ゲームか何か?別にやるなとは言わないけど程々にした方がいいよ。それで支障をきたすまでやって勉強に身が入らないんじゃ・・・」

「い、委員長!小言はまた今度って事で!ほら、俺達に突き合わせて委員長まで遅刻させる訳にはいかないからさ!よし!コエモン!学校まで競争するぞ!」

「いいね。引き分けのままじゃ気持ち悪いしね」

 朝から小言は聞きたくないとばかりに一方的に話を打ち切って少年は自分が待たせたグループを置いて学校へ向かって再び走り出す。

 やれやれと肩を竦めながら元気なのはいい事かなと思いながら見送る。

そう、思うだけ。先を行く二人の様に言葉を交わせるパートナーが委員長と呼ばれた少年、八神 亮(やがみ たすく)にはいないのだから。

 

 

 

 その後、亮は学校の近くに来るといつも額にかけているゴーグルを外すと慣れた手つきでポケットの中へ仕舞う。出来れば常に身につけておきたいが校則に引っかかってしまう為に学校の敷地に入る時にはこうして仕舞うようにしている。

「お、おはよう、亮君」

 そんな時に声を掛けてきたのはクラスメイトの少女、朝霧 風花(あさぎり ふうか)

 そしてその隣には風花のパートナー。柔らかな毛に全身を包み、フワフワと宙に漂う羊雲型デジモンのフワリモンが揺らめいていた。

「ああ、おはよう。朝霧さん。珍しいね、遅刻ギリギリなんて」

「うん、ちょっと考えなくちゃいけない事があって、それで寝坊しちゃって」

「考えるって、何か悩み事?僕でよければ相談ぐらいには乗れるけど」

「あ、ううん。いいの。大した事じゃないから」

「そうなの?それならいいんだけど」

「うん、ありがとう。それより早くしないとチャイムなっちゃうよ」

 そう言って風花は歩く速度を上げて校舎の中へと入っていく。

 いつもとは違う様子が気になりつつも相手が望まない以上無理に聞き出すのは良くないかなと胸の中に収めた。だが、風花の抱える悩みを直ぐに知る事となる。

 

 放課後。誰もいなくなった教室で風花はフワリモンと残っていた。

「はぁ~」

 物思いにふけていた風花が溜息を吐き出す。その原因となっているのは風花が持っていた一枚の紙。

「何で私にこんなのが届いたんだろう」

 そう呟きながら改めて目を落としたその紙には次の時代を担う選ばれし子供達を育成する計画の参加の有無を問う内容が書かれていた。

「でも、良かったの~、亮君に相談しなくて~。一緒に考えてくれると思うんだけど~」

 風花の悩みを共に考えているのか考えていないのかいまいち捉え処のないおっとりとした口調でフワリモンは風花にそう尋ねる。

「・・・言えないよ。だって亮君はパートナーがいないんだよ。それなのにこんなの言える訳ないよ」

 風花は以前別の町で暮らしていた。そして町に出没していた不審者に狙われてしまっていた。その時、不審者から風花を守ろうとする一心でフワリモンは完全体への進化を果たす。

 だが、風花の恐怖心から力を制御しきれず、相手に重傷を負わせる事となってしまい、その時に相手に与えられた恐怖だけでなくフワリモンが相手に重傷を負わせてしまった事が心に大きな傷となって風花は心を閉ざし、風花の両親も町に留まるといつまでも風花の心の傷は癒えないとこの町へと引っ越してきた。

 心を閉ざしたまま誰とも話をしようとしない風花だったが、亮だけはずっと親身になって声をかけ続けてくれて、やっと過去の悪夢から解放されたのだった。

 個人差はあれど低学年の時には全員パートナーデジモンと出会えている。それなのに一人だけパートナーが現れずにいる亮に自分が特別な存在に選ばれてしまった等と言える筈がなかった。

 そうして家にいても頭の整理が出来ない風花は静かになった教室に残って考え込んでいた。

「・・・やっぱり断ろうかな。あっ」

 そう決断しようとした時だった。窓から入り込んだ風が風花の手からその紙を奪い去っていく。

 そして地面に落ちたその紙を拾ったのは担任からの頼まれごとを終えて戻っていた亮だった。

「これって・・・」

「た、亮君・・・。それは、その・・・」

 しまったと顔を伏せる風花に亮はゆっくりと傍までやってくる。

「ごめん、勝手に見ちゃって。でも、もしかして悩んでたのってこれ?」

「その、実は・・・うん・・・」

「えっと、僕の事とか気にしてたりする?何てそれは流石に自意識過剰か」

 風花の様子に亮はそう考えるも、直ぐに思い直す。

そこに空気に揺られているのに一切空気を読もうとしないマイペースの化身とも言えるフワリモンがその空気をぶった切る。

「そうなんだ~。フーちゃんったら変に気を使っちゃってね~」

「フ、フワリモン・・・」

 ぶっちゃけるフワリモンに風花はバツが悪そうにする。だが、これもただ空気を読んでいないのではなくフワリモンなりに風花の事を思っての事なのだろう。・・・恐らく。

「そうだったんだ。なら僕の事なんて気にしなくていいよ。確かにパートナーが見つからないのは寂しいよ。でも、きっと何処かにいる筈なんだ」

 そう言いながら亮はポケットに引っかけているデジヴァイスを手にする。

「僕の許にデジヴァイスはこうして現れてるんだから」

 人がパートナーを求め、その思いがデジモンに繋がった時にデジヴァイスが現れ、同時にデジヴァイスを媒体にしてデジタルゲートが開き、パートナーデジモンと出会う事となる。

 亮は誰よりも早くデジヴァイスが自分の許に現れていた。それなのにパートナーだけが現れない。

 こんな事は他には起きていない。原因も分からないのだから対処しようもない。それでも亮は信じているのだ。デジヴァイスがある以上絶対にパートナーがいるんだと、そう言ってくれた人がいるから。

「亮君・・・」

 その亮の言葉に風花は自分の意思を固める。

「・・・そうだよね。だったら私が亮君のパートナを見つけてきてあげる」

「・・・え?」

 その突然の発言に亮も驚く。それに風花は照れくさそうに言葉を続ける。

「だって、もし私が選ばれし子供の一人になれたらデジタルワールドに行けるかもしれないし。そうしたら亮君のパートナーを探しに行けるから」

 デジモンが生まれたデジタルワールドには凶暴なデジモンがいるなどの危険性から調査隊以外には行く事が認められていない。けれど、選ばれし子供達の一員になれれば調査隊に同行する事も出来るかもしれない。亮がいけなくても自分がいけるなら代わりに探しに行く事も出来る筈。

 その風花の思いに面食らいながらも亮もその思いに礼を返す。

「ありがとう。でも、さっきも言ったけど僕の事は気にしなくてもいいよ。朝霧さん自身がやりたいかどうかが一番大事だろうし」

「わ、分かってるよ。私もデジタルワールドに行ってみたいってのがあるから」

 デジモンをパートナーに持つ者としてはやはりデジタルワールドへの興味がある。それに嘘偽りはないが、一番の理由はやはり亮の為だ。だが、それを伝えるのは風花の中にある亮への思いと同じぐらいに恥ずかしい事なのだから出かかっていたその思いを少し顔を赤くしながら胸の中に仕舞う。

「そっか。それじゃ、そのついでにお願いしようかな」

「大丈夫~、私がいるから任せて~」

「もう、何でフワリモンが言うのよ」

「だって私も一緒に行くのを忘れてそうだったから~」

 自分の事も忘れないでほしいと何やら甘酸っぱい空気になりそうな所に割って入ってくる。

フワリモンのおっとりとした抗議に亮と風花はついつい笑みを溢してしまうのだった。

 

 

そんな暖かい日々の中で、その温かさとは無縁の深き闇の奥底でまるでその闇そのものの如く静かなる声が静寂に満ちた世界に波紋を呼ぶ。

「必然から生まれた偶然。偶然から生まれた必然。

 未来を見失った者と過去に囚われし者。

 ようやく舞台は整った。さぁ、新しい物語の幕を開けるとしよう。いや、彼等に合わせてゲートが開く、と言った方がいいやもしれんな。くっくっくっくっ・・・」

 

 

 下校するのが遅れて空が闇に向けて茜色に染まる頃。帰り道を歩く亮だったが、突然デジヴァイスに異変が起こる。

デジヴァイスを手にした亮はその画面から侵食し合うように溢れる白と黒の光を目にする。

「これって・・・まさか・・・!」

 デジヴァイスが見せた初めての反応に亮の心はざわつく。

 それに呼応するかのように二つの光は激しさを増し、そして亮の眼前にゲートが開いた。

 

 

 

「そいつが委員長のパートナーなのか?」

「でも、良かったね。パートナーが見つかって」

 翌朝。学校に着いて亮はパートナーのデジモンをクラスメイトに紹介していた。

 だが、亮のパートナーデジモンは集まる人から逃れるように亮の陰に隠れていた。

「ほら、挨拶ぐらいはちゃんとしないと駄目だよ」

 亮に促されて姿を見せたデジモンはローブで全身を覆い、すっぽりと深くまで被ったそのデジモンは姿を見せてなお、顔も体もその全てをかくしたままの姿をしていた。

「・・・初めまして」

 促されて亮の陰からローブに包まれた頭を覗かせるも、一言だけ告げると直ぐにまた隠れてしまう。

「ごめんね。臆病なところある子みたいで」

「みたいだな。・・・でも、珍しいデジモンだよな。なんて名前なんだ?」

「それが分からなくて。データベースで調べてみたけどそこになかったし、この子も自分の名前を知らないらしいし」

 デジタルワールドの研究機関がデジモンのデータベースをネット上に公開していて誰でもあらゆるデジモンを調べる事が出来る。それも確認されているデジモンだけではあるが、それ以前にデジモン自身が自分の事が分からない等を言うのは類のないケースだった。

「そうなのか?また何か色々面倒そうなのがパートナーなったんだな」

「でも、委員長にはピッタリなんじゃない?面倒見いいんだしさ」

「そうなのかな?う~ん、言われてみればそうなのかもね」

 なんて少し不思議なパートナーを紹介し、集まったクラスメイトと会話をする亮だったが、密かに思いを寄せる風花はその中に加われずに離れた席から気にするだけしかできていなかった。

 

 その後、授業が始まると生徒のパートナーデジモン達は閉鎖された空間に集まっていた。

 ここはデジタルワールドを解析した技術で作られたサイバースペース。

デジヴァイスを通じてサイバースペースに入ったデジモン達は子供達が授業を受ける間の時間をここで過ごしている。

 閉鎖されているとはいってもデジモン達が集まるには十分な広さがあり、簡素ではあるものの必要な物は全て揃っている。

ここで本状に束ねられたデータを読んだり、自由に遊び回ったりして思い思いの時間を過ごしながら他のデジモン達と交流を深めている。

 だが、亮のパートナーのローブのデジモンは教室の時からも予想できる通り、隠れるように端の方で一人っきりで座り込んでいた。

 そこに一体のデジモンがやってくる。

「なんか辛気臭ぇのがいるな」

 粗野な口ぶりと態度の小鬼の姿をしたデジモン、ゴブリモンがぶしつけに話しかけてくる。

 それにローブのデジモンは逃げ場を探すようにきょろきょろと視線を彷徨わせる。

「何だ?受け答えもまともにできねぇのか?」

「あぅ・・・」

 最初から端にいるせいで逃げ場もなく、じろじろと覗き込んでくるゴブリモンに何も出来ず、一方的に言われるがままになってしまう。

「・・・にしても薄気味悪ぃ奴だな。お前一体何なんだよ」

 自分の名前を知らないようにその問いに対する答えを持っていないのか、それとも持っていても答える対応力がないのか、ローブのデジモンは口を噤んだまま。

 それにゴブリモンは苛立ちを募らせる。

「おい、何とか言ったらどうだ。口ぐらいあるんだろ」

 声を荒げ始めるゴブリモンに対してローブのデジモンは怯えを増し、その口も身もさらに硬直させてしまう。

「何だ?ホントに口がねぇのか。ちょっと見せてみろよ」

 顔を隠すフードを無理やり剥がそうとゴブリモンが手を伸ばしてくる。だが、それが届く事はなかった。

「ふわふわふわり~ん」

「な、なんだこりゃ!?」

 突然現れ腕に纏わり付いてきた白い雲の様な物体を払おうとゴブリモンが激しく腕を振り回している所にその物体を放ったデジモンが現れる。

「人が嫌がる事をやるのはあまり感心しないよ~」

 間延びした特徴のある声の主、フワリモンはゆらゆらと揺らめきながら傍までやってきていた。

「何だてめぇ!喧嘩売るつもりか!」

「そう言うの私苦手~」

「だったらちょっかい掛けてくるんじゃねぇ!」

「でも~、みんな仲良くした方がいいんじゃないかなって思うから~」

「ちっ!」

 いくら打っても全く響かないフワリモンのあまりのマイペースっぷりにゴブリモンは気が削がれたと舌打ちだけを残して立ち去っていく。

 ローブのデジモンはフワリモンに助けられたのだが、それに礼を言うでもなくその間にこの場から離れようと背中を向けていた。

「ねぇ~、どこ行くの~」

「あ・・・、うぅぅぅ・・・」

 呼び止められてビクリと動きを止め、ローブのデジモンは体を縮こませる。そこにフワリモンはポフンとその頭の上に乗っかる。

「へへへ~、、気持ちいいでしょ~。私の自慢なんだ~」

 フワリモンは自分の体を覆う柔らかな毛を押し付ける。

 乱暴なゴブリモンも、ローブのデジモンの怯えも一切に気にしないフワリモンのマイペースさに毒気が抜かれ、ローブのデジモンは「・・・うん」と短く頷いた。

 

「なんか、ごめんね。この前お願いしてたのに無駄になっちゃって」

「ううん、大丈夫だよ。それより亮君のパートナーが見つかってよかったね」

 先日の事もあり、亮が話をしたいと風花を誘って下校の帰り道を共にしていた。

「・・・でも、今まで来なかったのってどうしてなのかな?」

 ずっと亮の前に現れなかったのに前触れもなく急に現れたかと思うと、すっかり仲良くなったフワリモンを頭に乗せていて、まるで何事もなかったかのように生活に溶け込んでいる。

 イレギュラーな状態だったのにそれを感じさせない様子は不可思議さをより強調している。

「僕も聞いてみたんだけどよく分からなくて。暗い所にいたらしいんだけど・・・」

「それって何処かに閉じ込められてたとか?」

 それなら現実世界に来られなかった理由の説明も付く。けれど、その一方でそれは何らかの厄介な問題を抱えている事をも意味している。だが、そう言う訳でもないらしい。

「う~ん、聞いた限りそうでもないみたいなんだよね。建物の中にいて、そこから出たらダメだって言われてたけどその中だったら自由にしてよかったらしいし」

「でも、そこから出るのを止められてたから亮君の所にこれなかったんでしょ?それなのどうして今これたのかな?」

「それも本人にもよく分からないみたいで。突然、パートナーの所へ行きなさいって言われて来たらしいから」

「そうなんだ。本当に不思議な子なんだね。話を聞いた方がよく分からなくなるなんて。あ、でも悪い子じゃなさそうだよね。亮君のパートナーなんだし」

「そうだね。・・・ずっと待ってた僕のパートナーなんだから」

 謎は一切解明されないまま。それ処かより深まっているようにも感じられる。それでも自分のパートナーだからと信じるしかない。

 それに亮には風花に話さなければならない事は他にもある。

「まぁ、深く考えてもこれ以上は何も分からないだろうしね。それよりあの時の用紙ってもう出したの?」

「あ、うん。学校に来る途中でポストに入れてきたけど」

「そうなんだ・・・。本当にごめん。今更言っても手遅れだと思うけど・・・」

 自分の発言で影響を与えておきながら、それが完全に意味を無くしてしまっている。その上、もう取り返しか聞かない状況にしてしまったと心の底から謝る。

「謝らなくてもいいよ。前にも言ったでしょ。私だってデジタルワールドに行ってみたいからって」

 最大の目的は失ってしまったが、それでも風花のデジタルワールドへの興味が失われた訳ではない。それにその経験をネタにすれば亮と話す口実も出来ると言う初々しい下心もあるのだから。

「でも、余計な気を遣わせちゃったのもあるし・・・。何か埋め合わせみたいなのができればいいんだけど・・・」

「私は別にいいんだけど・・・」

「でも、何もしないってのも悪い気がするし・・・。本当にいいならそれでいいんだけど・・・」

 お互いに相手に気遣う中で、それを変えるのは決まっている。

「だったら~、もうすぐ夏休みだし~、お祭りにでも一緒に行ってもらえばいいんじゃないかな~。人数は多い方が楽しいし~」

 フワリモンの提案にその時の光景が風花の頭の中に浮かんでくる。そこにいるのは主に自分と亮だけだが。

「う、うん。そうだね。私もそうしてくれると嬉しいかな」

「僕は構わないけどそんなのでいいの?」

「うん、もう十分だよ」

 風花が心の中でフワリモンのフォローへの感謝と共に小さくガッツポーズをする。

 その間にまだ人間界に来て日の浅いローブのデジモンが疑問符を浮かべる。

「おまつり?」

「うん。沢山の出店があって他の楽しいんだよ~」

「楽しいの?」

 それに今度は亮が答える。

「そうだね。君もお祭りに行ってみるのはいい経験になるだろうし」

 こうしてやっと出会えたパートナーの加わった新たな日々の一ページが刻まれていく。けれどこれは新たなる冒険の始まりへと続く物語の序章に過ぎなかった。

 

 それから時間は流れ、夏祭り当日。

 待ち合わせの駅に先に着いた亮達に少し遅れて風花達もやってくる。

「ごめん、待たせちゃったかな」

「いや、僕達もさっき来たばかりだよ。約束の時間にもまだ少し早いぐらいだしね」

 そう言葉を交わしながら亮の目に風花の姿が目に付いた。

「浴衣着てきたんだね」

「うん、せっかくの夏祭りなんだしね」

「私が選んであげたんだよ~。似合うでしょ~」

 風花が直接聞けない事を聞き出そうとするフワリモンに風花は照れくさそうに少しだけ俯く。

「でも、ちょっと子供っぽくないかな」

 そんな風に言う風花の浴衣は成長期のデジモンをイメージした柄が入っていた。なんでも和装を元にした服をコーディネートする新進気鋭の若手クリエイターが手掛けた物らしい。

 風花の照れの中にはもっと大人っぽい物の方がよかったんじゃないかと言うちょっとした恥ずかしさも交じっていだが、亮の言葉でそれも無くなる。

「そうかな?可愛くていいと思うよ。それにこれから行くお祭りは人とデジモンの共生を祝う為の物だから、その意味でもピッタリだろうしね」

「そうかな?だったらいいんだけど・・・」

 亮がそう言ってくれるならと風花から恥ずかしさは無くなる。その代わりにちょっとだけ照れが増してしまってはいるが。

「ほら~、私の言った通りでしょ~」

「うん、そうだね」

 フワリモンが自分の見立てに間違いはなかったと鼻を高くする。そんな中で亮のズボンの裾が引っ張られる。

「・・・行かないの?」

 事前に楽しい場所と聞かされ、祭りへの期待感を滲ませるフードのデジモンが急かしてくる。

「ああ、そうだね。この子も待ちきれないみたいだしもう行こうか。話なら歩きながらでも出来るしね」

 駅から出た一行は祭りが開かれる日比谷公園を目指して歩いていく。

「そう言えば、選ばれし子供達って奴。もう始まってるんだよね」

「うん、そうだよ」

次世代の選ばれし子供達を育成する計画は子供達の夏休みに合わせて実施され、風花とフワリモンも都内にある研究所を始めとしたデジモンやデジタルワールドに関わる施設の集うデジモンセンターに通うようになっていた。

「それで選ばれし子供達ってどんな事してるの?」

「今は基礎的な訓練とデジモンやデジタルワールドに関する勉強かな」

「へ~、いたって普通なんだね」

「まだ始まったばかりだから。これからどうなるかも分からないし」

「まぁ、いきなり特別な事をやるって事はないよね」

 選ばれし子供達がどんな事をしているのか。その興味は当然亮にもある。だが、それに関する事柄で亮に聞きたい事が風花にもあった。

「そう言えば、亮君って八神 太一(やがみ たいち)さんって人、知ってる?」

 風花の唐突に出てきた名前に亮は目を丸くしながらもそれに答える。

「え?太一さんは僕の従兄だけど」

「やっぱりそうなんだ」

「でも、そうして朝霧さんが太一さんの事を知ってるの?」

「実は私達の教官として訓練をつけてくてるのが八神さんなんだ」

「・・・そうだったんだ。でも太一さんなら信じて大丈夫だよ。僕だって太一さんがいてくれたおかげで助けられたから」

「亮君にとって特別な人なんだね」

「一応、そうなるかな。このゴーグルをくれたのだって太一さんだったから」

 そう言いながらその存在を確かめる様に額のゴーグルに手を当てる亮の言葉には太一に対する絶対的な信頼が感じ取れる。

 相手は男性で勿論そんな感情ではないと分かっていてもそんな亮の姿に風花は少し妬いてしまう。

 そんな風に他に参加しているのはどんな子達なのかや、そのパートナーデジモンの事。研究センターの中の様子など、色々と話しながら目的の日比谷公園に近づいてきた時、不意の亮のズボンの裾をフードのデジモンに引っ張られてその足を止める。

「どうしたの?」

 さっきの期待を滲ませていた時とは対照的に怯えているように裾を握る手も強張っていた。

「・・・うぅぅぅぅ」

 尋ねても呻きに似た声を漏らすだけで要領を得ない。

「えーっと、話してくれないと分からないんだけど・・・」

 亮もその場にしゃがんで視線の高さを合わせて聞き出そうとするが、ローブのデジモンは俯いてしまうだけで返事がない。

「急に立ち止まって、どうしたの?」

「それが僕にもさっぱりで」

 同じ様に足を止めた風花に同じ様に聞かれても亮は答えられない。

「ねぇ~、行かないの~?お祭り楽しいよ~」

 フワリモンが隣に並んで話しかけても何も変わらない。

 このまま立ち止まっている訳にもいかないが、答えてくれなければ解決方法も探せない。

 どうすればいいのか、三人が困り果てている横を数人の人が横切っていく。その瞬間、亮は自分のズボンの裾を握るフードのデジモンの手に更に力が込められたのを感じ取った。

「・・・もしかして人が多いのを怖がってるのかな?」

 その質問に返答はないが、握る手に入る力でそれが正しい事が分かった。

他者とコミュニケーションをとるのが苦手なフードのデジモンはどうやら祭りを目当てに集まってきた人達の多さにたじろいでしまっているようだ。それでも行ってみたい気持ちもあるから,その二つが混じってうまく言葉にできないようだ。

「大丈夫だよ。僕が傍にいるから」

「でも・・・」

 接するのが苦手なのに大勢の人が集まる場所に行く。それは言葉に出来る程容易な事ではない。そんなパートナーに亮は手を差し出す。

「ほら、手を繋いでれば大丈夫だから。色んな美味しい物が食べられるし、楽しそうなイベントだってあるみたいだから。それにゆっくり行くから。ね」

「・・・う、うん」

 そう説得されてフードのデジモンは亮のズボンから話した手で亮の手を握る。

「じゃぁ、行こうか。また怖くなったら手を引っ張ってくれればもっとゆっくり歩くから」

「・・・うん」

 人の多さから来る怯えを繋いだ手から伝わる暖かい優しさに支えられて乗り越えて歩き出した。

 

「うわぁ・・・」

 公園の中に集まったひしめく人の多さにフードのデジモンはたじろいでしまう。だが、その場で立ち止まる事はなかった。

「大丈夫だよ。でも、このままいきなり奥まで行くのはきついだろうし、とりあえず近くの出店から見に行ってみようか」

 そう決めて、亮はパートナーに合わせてゆっくりと人波を掻き分けながら進んでいく。

 そして立ち並ぶ出店の中から選んだのは出店の鉄板、たこ焼き屋台。だが、普通のたこ焼き屋台ではなかった。その店でたこ焼きを焼いていたのは頭にかぶった壺に王冠を乗せた軟体型のデジモン、オクタモンだった。そして本来銃と剣を持つ代わりに持ったピックで瞬く間にたこ焼きを返していた。

 人間にはない柔軟な体だからこその滑らかな動きに通りすがる人々は思わずその足を止めていた。

「ヘイ!らっしゃい!見ての通りこいつの腕前は見事なもんでしょう!勿論見かけだけじゃなく味だって本物!おっと中身はこいつの足じゃないから安心してくださいよ!いや、ご期待に沿えなくて、と言った方がいいかもしれねぇな!」

 軽快かつ活気のある店主の声は焼きあがっていく生地の音と立ち上るソースの香りと組み合わさり、より多くのお客を引き留めていた。

 だが、それに隣の出店が真っ向から喧嘩を売り行く。

「たこ焼きなんて普通過ぎるだろ。他にある様な事したってつまらねぇよ」

 そう噛みついてきたのは出店もオクタモン同様にイカの形態をした軟体型のデジモン、ゲソモンがその屋台の中にいた。そしてそこで出していたのはまさかのイカ墨スパゲッティだった。

「へ!御大層な事を言ってるつもりだろうが、去年まで出してたのはイカ焼きだったじゃねぇか!」

「それがなんだってんだ。ゲソモンを生かす為に考えた結果なんだよ。それにこっちはゲソモンの墨を使って作ってるんだよ。こっちに比べてそっちはただ引っ繰り返させてるだけじゃねぇか」

「くっ・・・」

 痛い所をつかれてたこ焼き屋の店主は言葉を詰まらせる。だが、オクタモンが口撃を仕掛ける。

「ゲソモンの墨なんて食えたもんじゃねぇ。そんなもん食ったら体が痺れちまうだろ」

 オクタモンの口撃に今度はゲソモンが反論する。

「デッドリーシェードの事を言いたいらしいが、残念だがあれは吐き出す時に毒と混ぜ合わせてるんだよ。墨自体には何の効果もない。それどころか普通のイカには比べ物にならない味の深みがあるんでね。当然、試食して問題がないのも実証済みだ。だから出店が許可されたんだよ」

 指摘した問題点を論破し、尚且つ自分達のイカ墨スパゲッティのアピールまで同時にしてくる手ごわい相手だが、オクタモンの立ち向かう姿にたこ焼き屋の店主が今一度自信を奮い立たせる。

「だとしても、日本の祭りに洋食なんてのは似合わねぇな。そんなん食っても祭りに来た気分に浸れねぇんだからな!」

 気勢を取り戻したたこ焼き屋の店主をイカ墨スパゲッティ屋の店主が迎え撃つ。

「自分達に出来る最大限の事をしようとしてるだけだ。常識に縛られてるだけじゃ新しい事なんて始められねぇからな。ま、その程度の度胸すらないような奴にとってみれば正しく馬の耳に念仏ってもんかもしれねぇけどな」

「んだとこの野郎!喧嘩売ってんのか!」

「何だ?そんな事にも気づいてなかったのか?」

 舌戦の域を出そうな程に苛烈になっていく両者だったが、それは突然終わりを告げる。

「ったく、そんなにピリピリしてたらお客さんが近寄ってこれないやろ。もうオトンは下がっといて。オクタモンも手を止めない!」

「おい、邪魔するんなら帰って寝てろ。お客さん、こんなのは放っておいていいから是非食べて行ってください。ちょっと変わってますが、味は保証しますし他の祭りじゃ食べられませんからね」

 オクタモンのパートナーらしき高校生ぐらいの少女と、同じくゲソモンのパートナーらしき高校生ぐらいの少年が父親であるそれぞれの店主を一喝する。

「・・・仕方ねぇな。今日はここまでにしておいてやるか」

「どっちが正しいか。売り上げを見れば分かる事だしな」

 共に矛を収めて騒ぎも収まる。

「・・・なんか色々あるみたいだね。でも、良かったよ。落ち着いたみたいで」

 部外者でしかない亮達は騒ぎが収まるのを眺めるだけだった。そしてやっと収まった事で店の前まで行く事ができる。

「う~ん、やっぱりたこ焼きの方がいいかな。イカ墨スパゲッティはちょっとね」

「それなら私がそっち買ってみようかな。ちょっと面白そうだし」

「そうだね~。分け合えば両方食べられるしね~」

 そうして風花がイカ墨スパゲッティを買いに行っている間に亮はたこ焼きを買いに行く。

 亮が代金を払って受け取り、その少しの間に話していたたこ焼きをフードのデジモンがじっと見つめる。

「・・・それ何?」

「たこ焼きって言う食べ物だよ」

「食べれるの?」

「うん。美味しいんだよ」

「・・・なんかうねうねしてる」

「ああ、鰹節だね。これも美味しいんだよ。食べたらきっと気に入ると思うんだけど・・・。ここだと他の人の迷惑になっちゃうからね」

 亮は少しの間、放していた手を繋ぎ直して購入を済ませた風花達と屋台から少し離れた場所へ移る。

「ここならいいかな」

 亮は比較的人の少ない場所でしゃがみ込んでローブのデジモンのデジモンに高さを合わせる。

「ちょっと待ってね。熱いから少し冷ましてあげるよ」

 そう言って亮はたこ焼きの中から適当に選んだ一つを刺した爪楊枝で少し持ち上げて息を吹きかけて冷ましてから差し出す。

「はい、どうぞ。中はまだ熱いだろうから気を付けてね」

 そう言われてフードのデジモンは恐る恐る食べる。入れた瞬間は大丈夫だったが、噛んだ瞬間に熱さに襲われてフードの中の目を白黒させながらハフハフと息を吐き出す。

「ご、ごめん。もっと冷ました方がよかったね」

「うぅぅぅ・・・熱い・・・でも、美味しい・・・」

 どうやらたこ焼き特有の熱さに苦戦しながらもその美味しさを堪能できたようだ。

 それに亮も表情を緩めながらたこ焼きが半分になるまで交互に食べていった。

「ね~、そろそろ交換しない~」

「あ、そうだね」

 フワリモンに促されて亮と風花はたこ焼きとイカ墨スパゲッティを交換する。

 渡されたイカ墨スパゲッティは透明なフードパックに入れられている事もあって、一見焼きそばの様に見えなくもない・・・・・・のかもしれない。

「イカ墨スパゲッティか・・・。まさか出店で食べる事になるなんて思わなかったな。それで実際食べてみての感想はどう?」

 初めて食べるものの感想としては聞いておきたい。ましてやこんな場違いとも言える所で出して言えばそれは猶更だろう。

「う~ん、まさしくイカって感じかな。好きな人は好きだと思うんだけど・・・」

「そ、そう」

 見る限り反応はいま一つ。これでは食べてみようと言う気が湧いてこないが食べない訳にはいかない。

 亮は未知の食べ物を恐る恐る食べてみる。まったりとした甘みと共にイカの旨みがいっぱいに広がる。だが、その独特の味わいと微かに残る生臭さは子供にはちょっと厳しかった。

「・・・なんて言うか、大人の味って言えばいいのかな」

「私は結構好きなんだけどな~」

 二人とは違い、フワリモンはこの味わいを理解できたらしい。

 亮が独特な味わいを前に微妙な表情を浮かべる間に亮のクイクイと引かれる。

「あ、君も食べてみたいよね」

 ローブのデジモンの行動の意味を理解して亮はたこ焼きに続きイカ墨スパゲッティを食べさせてあげる。

「・・・どうかな?」

「・・・こっちの方が好き。・・・熱くないから」

「ははっ、そうか。そんなに熱いのがダメだったんだね。それじゃ熱いのは避けるようにしようか。出店は他にも沢山あるしね」

 ローブのデジモン共々、新しい経験をしながら祭りを楽しんでいく。その楽しさはいつの間にはローブのデジモンの中から恐れを取り去っていた。

 その最中、屋台に並べられていたリンゴ飴を見つけたローブのデジモンは、その宝石の様に鮮やかな色に心惹かれて繋いでいた亮の手を放して駆け出してしまう。

「あっ!待って!・・・っ!」

 慌てて追いかけようとした亮は通りかかった人にぶつかってしまう。

「す、すいません・・・」

 頭を下げて謝る亮に、ぶつかってしまった相手はいいよと軽く手を挙げてそのまま歩き去っていく。

 その後に亮が追いついた時にはローブのデジモンはしょんぼりと肩を落としていた。

「勝手に行ったらダメだよ。こんな風に危ないからね」

「・・・うん」

 亮に注意されてローブのデジモンは深く反省する。

「でも、気持ちはわかるよ。リンゴ飴って綺麗だもんね。見に行ってみようか」

 そう言って亮は手を差し出す。

「う、うん」

 ローブのデジモンもその手を握って改めてリンゴ飴の出店の方へと歩いていく。

 こうしてパートナーとの初めての祭りを楽しんでいた亮達だったが、その姿を見ていた奴等がいた。

 

 出店を一通り回った亮達は大噴水の近くにあるベンチに座って一休みしていた。

「結構色々と買っちゃったね。けど、君が楽しんで切れたみたいだからいいかな」

 小学生のお小遣いで今回の出費は祭りと言えど少々痛い。それでも隣に座ったローブのデジモンは頭にお面を乗せながらヨーヨー釣りで手に入れた水風船で遊んでいる姿を見られたのだから、その対価として不満はない。

「ふふっ、そうだね。私も誘ってよかったかな」

 亮とそのパートナーが喜んでくれるのは誘った風花も嬉しく思う。勿論、亮と一緒に夏祭りに来られた事が風花にとって一番嬉しい事なのだが。

 だが、今日この日は楽しい事だけでは終わらなかった。寧ろこれから過酷な物語の始まりとなるのだった。そして、風花がある事に気付いた事がその切っ掛けとなってしまう。

「あれ?亮君。ゴーグルが無いみたいだけど・・・」

「えっ・・・?」

 そう言われて額に手を当てた亮は風花が言う通りゴーグルが無くなっている事に気付く。その途端、亮の顔が青褪めていく。

「・・・何で・・・でも・・・どこで・・・」

「た、亮君?大丈夫?」

「・・・あれが無いと・・・また・・・」

 大切な物だとしてもここまで動揺するのは異様ともとれる。そんな今まで見た事のないまでに動揺する亮に風花は心配するがその声も届いていない。

「よう、もしかして探してんのはこれか?」

 亮のゴーグルを持って現れたのは亮のクラスメイトの少年、高杉 和真(たかすぎ かずま)。ただ、いいクラスメイトと言える相手ではない。不良とは言わないまでもお世辞でも素行がいいと言う事の出来ない相手だった。

 連れているパートナーも以前ローブのデジモンに絡んできたゴブリモンである事もそれを示している。

「・・・見つけてくれたの?」

「偶々だけどな。さっき人にぶつかってただろ?そん時に落ちたのを見ててな」

「そ、そうなんだ。ありがとう」

 亮はゴーグルを返してもらおうと和真の許へ行くが、それに和真は底意地の悪い笑みを浮かべる。

「おっと、わざわざ持ってきてやったんだ。返礼っての?そう言うのあってもいいんじゃないのか?」

「返礼って・・・何をすればいいの?」

「大した事じゃないさ。俺等とデジモンバトルをして欲しいんだよ。いいだろ?委員長だってパートナーデジモンがいるんだからさ」

「で、でも、そんなの・・・」

 亮は人一倍争いごとを嫌っている。それはゴーグルを貰う事になった経緯と密接に関係している。 だからこそ、亮にとってゴーグルは絶対に手放せない物になっていた。

 そして、そのゴーグルを取られた亮の心の中が様々な感情が渦巻き始める。

「・・・や、やってみる」

「・・・え?」

「大事な物なんだよね。だったら返してもらわないと。・・・た、戦った事ないけどやってみる」

「・・・うん、頼むよ」

 亮はパートナーの思いに全てを任せる。だが、亮ならパートナーを自分の都合で危険な目に合わせるような真似はしそうにない。何か異常な状態にしか見えない。それを最も感じているのは風花だが、いつも見ていた姿からは想像もできない程に動揺する亮にどうすればいいのかも分からずいた。

 亮も代わりに止める者もいない以上、この戦いは避けられなくなってしまっていた。

 

「相手の行動一つ一つを見極め、弱点を狙いに行く知的な戦法。それに対して全てを力でねじ伏せようとする正反対のスタイルを持つ両者のバトル。素晴らしいの一言に尽きます!」

「うん。勢いのままに押し込むベアモンと最小限の動きで躱しながら隙を見逃さずにカウンターを仕掛けていくコテモン。最後は力で押し切られる形になっちゃったけどもう一度戦ったら同じ結果にならないかもね」

「お集りの皆さん!激しい接戦を見せてくれた両者に拍手でその健闘を称えましょう!」

 大噴水の近くに用意されたデジモンバトル用の特設ステージではどことなく天使を彷彿させる衣装に身を包み、仮面で素顔を隠す謎の司会者、デジモンマスターT・Tとそのパートナーである大きな耳が特徴の哺乳類型デジモン、パタモンがデジモンバトルの参加者と観客を盛り上げていた。

「まだまだバトルは続きます。さぁ、次の対戦者を迎えましょう!」

 デジモンマスターT・Tの言葉に観客は次の対戦者を拍手で迎え、その拍手を受けながら亮達は舞台に上がる。

「そんなに固くなるなよ。やる事なんて単純なんだから」

「う、うん」

 まるでただ遊ぶだけかのように気軽な口調のゴブリモンにローブのデジモンは頷く。だが、それは僅かな間だけだった。

「両者とも準備は整ったようだね。それじゃ始めるよ。デジモンバトルスタート!」

 その掛け声と共にゴブリモンから気軽さは消え、代わりに獲物を見定めた下卑た笑みに顔を歪めた。

「俺がボコボコにしてやるだけだからな!」

 そう言い放ち飛び出したゴブリモンは棍棒で殴り掛かる。

 ローブのデジモンはその突然の攻撃に成す術もなく殴り飛ばされる。

「あっ!・・・うっ!」

 地面へと倒れた相手を見下すようにゴブリモンは棍棒の先をもう片方の手と合わせてパシパシと打ち鳴らす。

「おいおい、これで終わりとかじゃねぇだろうな。それだと肩透かし処じゃねぇぞ」

 ゴブリモンはこれで終わりなんて自分が満足できないと吐き捨てるが、その言葉の殆ど届いていない。だが、そんなのは関係なくローブのデジモンは痛む体を押さえながら立ち上がる。

「ああ、そうこなくっちゃな。おら、どんどん行くぞ!」

「ぅぅぅぅぅぅ・・・・」

 何度も繰り出されるゴブリモンのこん棒をローブのデジモンは身構えた腕で防いで耐えるだけ。

 あまりにも一方的な光景に風花もフワリモンも見ていられなくなってしまう。

「た、亮君。も、もうやめさせた方がいいんじゃ・・・」

「そうだよ~、棄権してあげようよ~」

「き、棄権・・・。そうだね。そうした方が・・・」

 二人に言われて亮もやっとその考えが浮かぶ。だが、相手はそれを許さなかった。

「おいおい、そりゃないだろ。勝負ってのは最後までやりあってこそ面白いんだろうが。もし、そんな萎える事するってんならこっちの気も変わっちまうかもな」

「そ、そんな・・・」

 決着がつくまで許さない。それは暗に自分達が倒すまで逃げるなと告げている。

「仕方ねぇな・・・。おい、そろそろ終わらせてやれ!」

「まだやり足りねぇが、まぁいいか。これで終わりにしてやるよ!ゴブリストライク!」

 一方的に甚振っていたゴブリモンが和真の指示を受けて棍棒を大きく振りかぶる。これでこの戦闘にもなっていない戦いが終わる。

だが、この時、誰も気付いていなかった。ローブのデジモンの口から洩れていたのが弱弱しい呻きではなく、底より込み上げてくる獰猛な唸り声に変わっていた事に。そしてそれが予想外の結末を招く事となる。

「・・・ゥゥゥゥゥ・・・メガフレイム!!」

 ゴブリモンの棍棒が届く直前でフードの奥でその目が赤く光り、そしてそのローブの中に隠れる口から高熱の炎が放たれる。そしてそのゴブリモンはその炎に飲まれた。

「・・・な!?」

 和真を始め誰もが予想しえなかった結末に目を疑う。そしてその間にもゴブリモンがステージ上に崩れ落ちる。

「・・・おおっとまさかの展開!この逆転劇を誰が予想したでしょうか!」

 誰もが呆然とする中、最初に我に返ったデジモンマスターT・Tが静まり返った会場の空気をもう一度盛り上げる。

 それによって再び歓声が上がる中で和真はギリリと歯を食いしばる。

「何でだよ・・・メガフレイムってグレイモンの技だろ・・・なんでそいつが使えるんだよ・・・」

 有り得る筈のない反撃によって自分に返ってきた理不尽な展開を前に和真は亮達をキッと睨みつける。だが、それ以上何をするでもなく気を失ったままのゴブリモンを運んでいく救護班の後に続いてこの場から立ち去ろうとする。

「あ、待って!返してよ!」

「・・・知るかよ」

 ゴーグルを返すと言う約束ごと吐き捨てて行こうとする和真だったが、その前に立ち塞がる者がいた。

「事情はよく分からないけど何か約束してるんだよね?約束は守らないと駄目だよ。そんな悪い子には僕がメッてしちゃうよ」

 その大きな耳で飛目の前まで飛んできたパタモンの注意に和真は舌打ちしながらゴーグルを投げ渡してくる。

「あっ・・・」

「これでいいんだろ」

 ゴーグルをキャッチした亮を後目に和真は救護用のテントへと向かっていった。

 ゴーグルを無事取り戻せて安堵し、心が落ち着いていく亮の許にローブのデジモンが戻ってくる。だが、突然その体が前のめりに傾く。

「あっ!?」

 その体を亮が抱き留める。

「大丈夫!?」

「う、うん。ちょっと体が痛くなっただけだから。それより、役に立てたかな?」

「うん、ちゃんと返ってきたから。全部君のおかげだよ」

 心の平穏を取り戻した亮は感謝しながらも、パートナーに強いてしまった負担を後悔してしまう。

「そっか、良かった」

 だが、ローブのデジモンは亮の言葉を聞き、役に立てたのだと安堵と共に体から力が抜ける。

 そんな二人の目の前に白い物がひらひらと舞い降りてくる。

「・・・雪?」

「・・・綺麗」

「・・・うん」

 まだまだ未熟ながらもパートナーとして絆を繋いでいく二人は真夏に降る不思議な雪を見上げていた。

 

 だが、その時。降り注ぐ雪よりも高い空の上。真夜中の空よりも黒い影が地上を見下ろしていた。

「・・・この力。・・・存外早く見つかるものだな」

 そしてその影もまた悠然と地上へと舞い降りる。

 

「送ってくれてありがとう。今日は楽しかったよ。そ、その亮君も来てくれたから・・・」

 風花は亮に祭りに行ってくれた礼を伝えながら、最後にひっそりと本心を添える。

「僕も朝霧さんと行けてよかったよ」

「えっ?」

 思わぬ亮の言葉に風花は目を丸くさせる。だが、やはりと言うべきか、それは風花が望む物とは少し違っていた。

「友達と行くのは家族と行くのと違った楽しみがあるしね。それにフワリモンもこの子と仲良くしてくれてるし」

「・・・そうだね」

 自分の願望がそう簡単に現実になる訳がないと分かってはいても、そんな思いがあるからこそ突然の言葉に期待してしまう。そんな自分に恥ずかしさが込み上げてくる。

 それを知ってか知らずか、フワリモンがその後に

「最後に邪魔されたのだけなければもっとよかったんだけどね~」

「そうだけど、別に今言わなくてもいいでしょ」

「だって~」

 フワリモンの不満ももっともだが、風花はあの時の亮の様子が引っかかっていて、だからこそあまり触れるべきではないと思っていた。

「でも、あれはそもそも僕の不注意が原因だしね」

「違うよ。勝手に行こうとした僕を追いかけたからだから・・・」

 否は自分にあると言う亮にローブのデジモンはそもそもの発端は自分にあるとそれを否定する。

「だったら二人とも悪かったって事にしようか」

 そう言って亮はちゃんと反省を忘れていないパートナーの頭を撫でる。

「それじゃ、僕達も帰るから。また学校でね」

「うん、またね」

 ありふれた別れの挨拶。けれどこの当たり前の約束が果たされる事はなかった。

 

 風花を家まで送り届け、亮達も帰り道を今日の事を話しながら歩いていく二人の前に静かに一体のデジモンが降り立った。

 黄金に縁どられた漆黒の鎧に全身を包み、蒼いマントをはためかせる姿はまるで闇と一体になるかのよう。けれど悪しき存在ではない。寧ろその対極に位置する聖騎士、それこそが二人の前に現れたデジモン、アルファモンだった。

 何の前触れもなく現れたアルファモンは二人を見据える。いや、正確に言うならローブのデジモンを見た後に亮の方へと視線を向ける。

 そして徐にアルファモンが手を翳すとその周囲に魔法陣が展開する。

「そこを退け。俺も無用な犠牲は出したくない」

 アルファモンが何を考え、何をしようとしているのかは分からない。それでもアルファモンの言動を前にしてそのまま言う通りには出来ない。

「・・・いきなりなんですか?何をするつもりですか?」

 亮はローブのデジモンを守るように後ろに隠し、アルファモンに対峙する。

「そいつを始末する。それだけだ」

 やはりと言うべきか。アルファモンのしようとしている事は到底受け入れる事が出来ないものだった。

「そんな事させない。この子は僕のパートナーなんだから」

 自分の至らなさで苦しませてしまったからこそ、いや、それがあろうがなかろうがパートナーを守らなければならない。

 目の前の強大な相手の静かな圧力を前に気圧されそうになりながらも亮は真っ直ぐに睨み返す。

 そんな亮にアルファモンは失笑を漏らす。

「・・・フッ、パートナーだと。有り得ないな。嘘ならもっとまともな嘘をつくんだな」

「ありえないって・・・。この子は僕のパートナーだ!」

「・・・何を勘違いしているが知らないが。人間のパートナーなど出来る筈がない。そいつはデジモンではないんだからな」

「デジモンじゃない・・・?」

 アルファモンのその一言に亮は言葉を失ってしまう。確かにローブのデジモンは

けれど、それを信じる事は出来ない。突然現れたアルファモンと共に過ごしてきたパートナー。どちらを信じるかは明らかだ。

「そんなの信じない!そっちの言ってる事の方が嘘じゃないの?」

「それならそいつの名は何だ?デジモンであるなら種としての名が存在するだろう」

「・・・名前」

「答えられないだろう。種の証明が出来ない事こそがデジモンではないと言う証だ。・・・そうだな。敢えて名をつけるとするなら、決して存在を許してはならない、消滅させなければならない異物。ロストモン、と言った処か」

 アルファモンの言う通り、亮はパートナーの名を知らなかった。だが、自分のパートナーとしてデジヴァイスを通して自分の許へとやってきたのも間違いのない事実。

 亮はアルファモンの言葉に揺らいでいた心を立て直し、アルファモンを見据える。

「・・・逃げるよ」

 そしてロストモンと呼ばれたローブのデジモンの手を取って全力で走りだす。

「無駄な事を」

 狭い路地の中へと逃げ込んで消えた先を見つめながらアルファモンは光の翼を広げて再び空へと飛翔する。

 

 入り組んだ道を選んで逃げ続ける亮達だったが、その姿は頭上を飛ぶアルファモンには意味がなく、展開された魔法陣から放たれた光弾が亮の進行方向の先の地面を打ち抜く。

そしてその衝撃によって足を止めた亮達の前に再度立ち塞がる。

「諦めろ。そいつを差し出せば済む話だ」

「そんなの出来る訳ない!」

「・・・意思は固いか。仕方ない、ならばお前も運命を共にしてもらうしかないな」

 人を殺す事をも辞さない。その揺るぎのない決意を二人に向ける瞳の奥に宿すアルファモンが亮達に向けて手を翳し、魔法陣を展開する。だが、そこから光弾が鼻垂れる事はなかった。

「・・・どうやら他にも邪魔立てする奴らがいるようだな」

 そう言いながら亮達から外したアルファモンの視線の先に二体のデジモンがパートナーと共に駆けつけてきていた。

「あいつか!光子郎が言っていたって奴は!」

「どうやらそうらしいね、ヤマト」

 全身をメタル化させた狼のデジモン、メタルガルルモンとその背に跨るパートナーであり、かつての選ばれし子供達の一人だった石田 ヤマト(いしだ やまと)が市街地を駆け抜ける。

 そしてもう一組。

「亮も一緒か。まさかとは思ったけど的中するなんてな」

「しかもあまり穏やかな状況だとも言えそうにないようだ」

 超金属クロンデジゾイドの鎧を身に纏った竜戦士、ウォーグレイモンがその手に抱えながら同じくパートナーであり、かつての選ばれし子供達の一人であり、そして亮の従兄でもある八神 太一(やがみ たいち)が夜空を飛翔して現れる。

「ウォーグレイモンとメタルガルルモンか・・・」

 その二体のデジモンを視界に捕らえたアルファモンは何かを馳せるように目を細める。

 そのアルファモンの細やかな反応に気付かず、ただ立ち居姿から発せられる淀みのない気配に太一達は実力を悟る。

「ただもんじゃないってのは間違いないみたいだな」

「最初から全力で行くしかないって事か」

 強敵を前に太一とヤマトは互いに目配せをする。

「久しぶりだな。行くぞ!ウォーグレイモン!」

「本当にこの力が必要になるなんてな。頼んだぞ!メタルガルルモン!」

「「ジョグレス進化!!」」

 二人が同時に掲げたデジヴァイスが一際強く輝きだす。そしてその光に導かれ、ウォーグレイモンとメタルガルルモンは融合し、二つの力を合わせた新たなるデジモン。純白の鎧とマントに身を包み、ウォーグレイモンの形をした左腕とメタルガルルモンの形をした右腕を持つ聖騎士、オメガモンへと進化する。

 白と黒。相対する二体の聖騎士であるデジモンが視線を交錯させる。緊迫する状況で先に口を開いたのはアルファモンだった。

「・・・まさかまたこうしてオメガモンに会えるとはな」

 アルファモンが呟いた意味深な言葉にオメガモンは怪訝な表情を浮かべる。

「私を知っているのか?」

 そうにしか聞こえないアルファモンの呟きだが、オメガモンにはアルファモンと出会った事はない。だが、それも当然だった。

「ああ、よく知っているさ。但し俺のいた世界のオメガモンだがな!」

 それ以上、何も語る気はないと両腕で展開させた魔法陣から無数の光弾を放つ。

 対して、オメガモンは振り抜いた左腕のグレイソードで迫る光弾を次々に切り捨てる。そして流れるように右腕のガルルキャノンから放たれる絶対零度の冷気弾にて反撃を行う。

 それをアルファモンは攻撃の為に展開していた魔法陣を防御用の魔法陣へと変え、正面に出現させた障壁で防ぐ。その攻防を皮切りに両者の激しい戦いが繰り広げられる。

 強大な力を持つ二体のデジモンが戦い合う中、亮も黙ってみているだけではいられなかった。

 この場に留まっていても見ているしかできない。戦いの最中にロストモンと呼ばれた自分のパートナーを狙ってくるかもしれない。

 それなら逃げるべきか?だがそれは太一達に全てを押し付けると言う事になってしまう。例え残ったとしても何も出来はしないとしても。

それにこの場から逃げたとして逃げられる保証はない。太一達と合流できればいいが、太一達と逸れたままアルファモンに追いつかれてしまえば打つ手はない。

(この子を守る為に僕はどうすればいいんだ・・・)

 その答えを示すかのように亮の目の前の空間が歪み、その先に見た事もない光景が広がっていた。

(・・・まさか・・・どうして・・・!?)

 突如として開いたデジタルワールドへと続くデジタルゲート。何故、今ここに開いたのかは分からない。それでも亮が出来る最善の方法はこれしかない。

「行こう!」

「・・・うん!」

 亮はパートナーの手を取って走り出す。

「待て!亮!」

 呼び止めようとする太一の声にも振り向かず、亮はまるで自分達を助ける為に開いたようなデジタルゲートの中へと飛び込んだ。

 亮達を助ける為だけに開いたのではないとも知らずに・・・。

 




次回予告
 ついに自分のパートナーとの出会いを果たすも、アルファモンの襲撃にあってしまった八神亮。
 その時、目の前に開いたゲートへとパートナーと共に逃げ込むも、最低限の知識しか知らない亮達は右も左も分からず当てもなく彷徨うしかなかった。
 そんな二人の前にあるデジモンが現れる。
次回、「漢の教え」
 新たなる冒険のゲートが開く。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

漢の教え

 お待たせしました。ロストソウル第二話投稿完了です。
 今回ではアルファモンやオメガモンに並んで人気を集めるあのデジモンが登場します。
 他にも作品には自分のデジモン愛を小ネタとして反映させています。例えば第一話の方ではワールドやフロンティアの劇場版を用いたりしております。これより先の話はあまり入れ込む余裕がないので入るかどうかは分かりません。
 今回の話でもあるデジモンとの出会いがちょっと都合がいいよなと自覚しながらも、全五話で纏めようと思ってるのでどうしても話を詰める都合上そうなってしまいました。ですが都合よくなってしまっているのはこの部分だけになると思うのでご容赦頂ければ・・・。

 作品についてはここまでなんですが、一つ謝っておきたい事があります。今回の投稿は二週間前に負える筈だったんですが軽い鬱状態なってしまって全く話を書けなくなってしまって遅れてしまいました。PS4のフリープレイの戦国BASARAのおかげでストレス解消できて何とか立ち直る事が出来ましたが・・・次回の投降も遅れる可能性があります。
 ネガティブな要素ではなくポジティブな要素ではあります。
 と言うのも年末はゲームが次々に発売されてしまうのです・・・!
 アトリエ、地球防衛軍、龍が如く、そして何よりデジモンストーリーに新作が出てしまう!この誘惑に抗う事は難しい・・・。
 出来る限り並行して書き進めるつもりではありますがどうしても遅れてしまう可能性が高くて・・・(汗)
 なので先に謝罪させてもらいます。申し訳ないですが少々お待ちください。


「・・・これからどうしようか」

 アルファモンから逃げる為にデジタルゲートへ飛び込んだものの、亮はデジタルワールドに関する知識は最低限しかなく、当てのある訳がなかった。

「どこへ行けばいいとか、君は何か分からない?」

 デジモンならデジタルワールドの事も知っているのではないかと尋ねるも、ロストモンと呼ばれていたパートナーは首を横に振るだけ。

「そっか、暗い場所にずっと居たって言ってたもんね」

 今いる場所は見渡す限りの平原。現実世界と同じで時間的に夜の闇に包まれているが、それも朝が来れば当然明るくなる。ずっと暗いままと言う事はない。少なくとも元々居た場所はここではないのだろう。

「遭難した時は助けが来るまであまり動かない方がいいって聞くけど。・・・助けじゃなくてあの黒いデジモンが来るかもしれないし」

 ゲートは既に閉じている。直ぐには来ないだろうが、いつ来るかも分からない。ここにずっと留まる訳にもいかない。

「・・・兎に角、先へ進んでみようか」

 亮はパートナーを連れて当てもないままにデジタルワールドを彷徨い始める。

 

 道なき道を歩き続けるうちに夜も明け始める。それだけの時間を歩き続けた二人にも疲れの色が見え始めてしまう。それでも前に進み続けるしかない。

 まるで生えるように前半分が地面から突き出るバスや、逆さに建って中に入れそうにもないビル等々。現実にはあり得ないデジタルワールドならではの歪な光景の中を通り過ぎていく。そんな中で不意に見なれてはいるが絶対に平原にはある筈のない物が二人の前に現れる。

「・・・自販機?」

 草木が生い茂る平原の中で無造作に林立する自販機はあまりにも浮いている存在だったが、もっとおかしなものを見てきた上に、歩き疲れた二人は気にする事もその前まで行く。

「・・・これ、使えるのかな?・・・少し疲れたし買ってみようか。何がいい?」

 そう聞かれてローブのデジモンは自販機の商品を見るも、なかなか決められなかった。

「・・・決められないかな?だったらお茶でいい?体を動かした時に甘い物ってのもなんだし」

「うん」

 ローブのデジモンが頷き返したのを確認して、亮は投入口に硬貨を入れる。けれど、その効果はそのまま返却口に落ちて帰ってきてしまった。

「・・・ダメか。そうだよね。こんなところにある自販機が使える筈ないよね」

 肩透かしな結果が切っ掛けとなって抱えていた不安や疲労が一気に押し寄せてくる。

 そうして亮は使えない自販機に背中を預け、その場に座り込んでしまう。

 その隣に同じ様に座ったローブのデジモンはそっと呟いた。

「・・・ごめんね」

「どうしたの?急に」

「だって、僕がいなかったらこんな事にはならなかったから・・・。あのデジモンも僕の事いない方がいいって言ってたし・・・」

 不安なのが一緒なだけではなく、その原因が自分にあるんじゃないのかと余計につらい思いをしていたのだろう。

「そんな事ないよ。君と出会えて僕は凄く嬉しかったんだから。だって君は僕のパートナーのアライブモンなんだから」

「アライブモン?」

 アルファモンが言っていたロストモンとは違う呼び名にローブのデジモンは首を傾げる。

「うん、君は生きてていいんだよ。だから、ロストモンなんかじゃない。アライブモンなんだ」

「・・アライブモン。・・・うん!」

 亮がつけてくれた新しい名前を反芻して、アライブモンは大きく頷く。

 その様子に亮も表情を綻ばせる。

「歩き続けて疲れちゃったし、このまま少しだけ休もう。・・・そしたらまた先へ行こう。デジモンが住んでる場所は見つけられなくてもデジモンは絶対に見つけられるから。そこで話を聞いてもらえれば・・・」

 気が緩んだ亮に睡魔がやってきて、使えない自販機に体を預けたまま眠ってしまう。

 

 ガチャン!

 つい眠ってしまった亮達だったが、近くで何かが落ちる音に起こされてしまう。

「う・・・ん・・・」

「起こしてしまったか。済まぬな」

 目覚めた亮達に向けて謝ったのは身長二メートルを超す大男。だが、人間ではない。肩から羽織るGAKU❘RANに身を包んだ獣人型デジモン、バンチョーレオモンだった。

「・・・えっと」

 座ったままの態勢で時間的にも殆ど寝れていない亮は念願のデジモンを前にしても頭が働かない。そんな亮を他所にバンチョーレオモンは亮達に向けて話し続ける。

「人間は時折見かけはしたが子供は初めてだな」

 そう言いながらバンチョーレオモンは亮達を起こした時とは別の分の水を新たに自販機から二本購入する。

「起こしてしまった詫びだ。遠慮なく飲むといい」

 そう言いながら差し出してくる水を亮は呆然としたまま受け取る。

「こ、これで大丈夫です」

「・・・どうした?呆けたままで。まだ寝ぼけてるのか?それとも子供にはジュースの方が良かったか?」

「その、自販機使えるんですか?」

 色々と聞きたい事はあったが、まだ整理をつけられない頭の中で最初に出たのがその疑問だった。

「ん?そうでなければこれはいったい何だと言うのだ?」

 亮の疑問にバンチョーレオモンは自分用に先に買っていた水を見せながらそう答える。

「寝てしまう前に買おうとしたんですけど買えなかったんで・・・」

「・・・もしやその後ろのから買おうとしたのか」

「そうですけど」

「だとしたらそれは当然だ。よく見てみろ。その自販機には明かりが灯っていないだろう」

 そう言われて確認してみるとバンチョーレオモンの言う通り、背中を預けていた自販機には明かりが灯っていない。もう少し早くついていれば暗い闇の中で気づけたかもしれなかったが、夜明け近くの薄闇の中ではそれに気づけるだけの余裕は亮には残ってなかった。

「そ、そうだったんだ」

 何の事はない。ただ自分の注意力が足りなかっただけなのかと気が抜けてしまう。

「ふっ、だが運がいい。この場合は悪運の方が適切か」

「悪運、ですか?」

「ああ、なんせ動いていない自販機の中にはヌメモンが入り込んでいる事があるからな。もしそれに遭遇していたらどうなっていたか」

 軟体型デジモン、ヌメモン。攻撃力も知性もないが外敵と認識した相手に向けてウンチを投げつけてくるそれはそれはとてつもなく恐ろしいデジモンである。もしそんなデジモンに襲われでもしたら・・・。

「・・・そうですね」

 その悲惨な光景を想像して顔を引きつらせる亮の様子にバンチョーレオモンは基本的な知識もない様子を訝しむ。

「そんな事も知らぬとはな・・・。お主らだけか?他に誰かおらぬのか?」

「はい・・・。僕達だけです」

「ふむ。・・・何か事情があるようだな。良ければ話してみぬか?」

「はい・・・、実は・・・」

 亮は自分達がデジタルワールドに来るに至った経緯を話すと、バンチョーレオモンは神妙な面持ちを浮かべる。

「・・・成程。それでデジタルワールドへと逃げてきたのか」

 事情を理解したバンチョーレオモンは亮の説明の間に渡された水を飲んでいたアライブモンに目を向ける。

「・・・確かに他とは違う奇妙な気配を感じるな」

 バンチョーレオモンのその言葉にまさかアルファモンの様にアライブモンを排除しようとしてしまうのかと身を強張らせる。

 そんな亮に対してバンチョーレオモンは力強くも暖かい笑みを返す。

「案ずるな。我は子供を襲うような下劣な真似はせん。それは漢としての道に反するからな」

「・・・男?」

 日常では決して聞くことはないであろう多少大仰なワードにアライブモンは小首を傾げる。それはバンチョーレオモンのスイッチを入れてしまう事になってしまうのだった。

「否!男ではない!漢である!!」

 バンチョーレオモンの勢いに驚いて飲んでいた水を落としそうになっているアライブモンを他所にバンチョーレオモンは語り続ける。

「男と言うのは性別を意味するものだ。だが、我の言う漢とは生き様の事だ。常に高みを目指し進み続ける者。それは何でも構わない。力であれ、知識であれ、心であれ、己の道を見出し臆する事無く突き進む事が出来る者。それが漢だ!!」

 これ以上ない程の熱意を込めて自身の信念を語るバンチョーレオモンだったが、それをアライブモンには伝わっていなかった。

「・・・まぁ、いいだろう。こればかりは言葉で伝えられるものではないからな。そう!伝えるには己が生き様を見せる他ないのだからな!」

 そしてバンチョーレオモンはその信念に基づいてある決意をする。

「あい!分かった!ならば我がお主らの面倒を見よう!」

「えっ・・・、いいんですか?僕達としては有難いですけど・・・」

「当然だ。寧ろこのまま見過ごす事こそ問題だ。何故ならそれは漢の道に反する事になってしまうからな」

 バンチョーレオモンの個性の強さに押されながらも助けてくれるデジモンに出会え、亮達に一筋の光明が差し込まれた。

 

 その後、バンチョーレオモンにデジタルワールドでの旅のいろはを教えてもらいながら平原を進み、やがてデジモン達の村の近くまで辿り着く。

「おお、そうだった。町の中での注意点だが、自販機は円でもいいが町にある店の場合はドルでの支払いになるからな。なんでもそれを知らなかった人間にがいて、食い逃げをされそうになったと言う話があるそうだ。お主らも気を付けておくようにな」

「そうなんですね。それを知らなかったら僕も食い逃げしなくちゃいけなくなってたかも」

「それは関心せんぞ。金がないなら食い逃げなどせず労働で返せばいいのだからな」

「それもそうですね。でも、自販機は円が使えたのに店ではドルになるのって何でですか?」

「さぁな、我も知らぬ。この世界は人間の世界のデータが集まって出来たものだ。その理由も人間の方に関係しているのではないか?」

 推測するとすれば世界で最も使われている貨幣はドルになる。けれど、最も自販機の割合が多いのは日本になる。それが反映された結果、そんなちぐはぐで面倒な状況がデジタルワールドでは当たり前になっているのかもしれない。

 とは言え、何者かの意志によって作られた世界ではないのだからその真相を知る者はいない。そして何より無秩序な世界であるデジタルワールドにおいてその理由を探る事は無駄以外の何物でもないのだろう。

 こんな風にその都度必要な事を学びながらやがて町の姿が見え始める。だが、不意にバンチョーレオモンがその足を止める。

「どうしたんですか?」

「何やら様子がおかしくてな。少し様子を探る。我の後についてこい。慎重にな」

 その指示を受けて気配を消して物陰に身を隠しながらバンチョーレオモンは進み始め、亮達もその後に続く。

 町から少しそれた場所にある周囲を一望出来る高台へと登ってそこから様子を探る。すると町の中には軍人の様な姿をしたデジモン達が町に住むデジモンが我が物顔で歩き回っている光景があった。

「・・・D❘ブリガードか」

「D❘ブリガード?」

 初めて聞く名前に疑問符を浮かべるアライブモンにバンチョーレオモンが答える。

「ああ、デジタルワールドの各地で無法の限りを尽くす外道共だ」

「何でそんな事するの?」

「それは奴等にしか分からぬだろう。だが、ただの無法者とも違う。我も幾度か相対した事があるのだが、完全に連携の取れた戦い方を見る限り自らの欲のままに行動を起こしているとも考え辛い」

 バンチョーレオモン言う通り。最速で町の制圧を進めるD―ブリガード達には無駄な動きはなく、完全に統制が取れている。見た目同様完全に軍隊そのもの。

「目的がなんにせよ悪行を見逃す事は出来ん。奴等を追い返してくる。お主等はここで待っていろ」

 そう言い残してバンチョーレオモンは一気呵成に町へと乗り込む。

 幾度となく辛酸を嘗めさせられたバンチョーレオモンの突然の襲撃にもD❘ブリガードのデジモン達は動じる事無く陣形を組んで迎撃を開始する。

 前列を固める竜型サイボーグの歩兵デジモン、コマンドラモンの部隊が携帯するアサルトライフル、M16アサシンを一斉に放つ。

「その程度でこの我が止められると思うてか!!」

 だが、バンチョーレオモンはそよ吹く風と一切怯まず、弾幕の中を勇猛果敢に突っ切っていく。

 その気迫を前にしてもコマンドラモンも恐れずに尚も銃弾を放ち続ける。

 絶えず放たれる無数の銃弾を浴びながらもバンチョーレオモンはダメージを受けてはいない。それを可能にしているのは物理攻撃の89.9%のダメージを無効化するGAKU―RANがあるからこそ。けれど、それを得られたのも偏にどんな逆境においても立ち向かい続けた勇敢さによってバンチョーの称号を得たからこそだ。

 そして降り注ぐ銃弾すらも意に介さず、バンチョーレオモンは瞬く間に距離を詰め、そして繰り出される拳の前にコマンドラモンの陣形はいとも容易く瓦解する。だが、その瞬間、後ろに控えていたコマンドラモンの中においても選ばれた一部の者しか進化できないエリート、シールズドラモンが吹き飛ばされるコマンドラモンを飛び越え、頭上からバンチョーレオモンに襲い掛かる。

「喝っ!!」

 だが、それもバンチョーレオモンは裂帛の雄叫びだけで大気を震わせ、それによって体制を崩したシールズドラモンに拳を叩きつける。

 強烈な一撃を受けて尚もシールズドラモンは立ち上がる。精鋭として選ばれただけの事はある。

 そしてシールズドラモンは正面から特攻する。だが、それは無謀な行動ではない。スカウターモノアイによってGAKU―RANの特性を分析し、それによって羽織っただけではだけたまま晒されている胸元こそが唯一の弱点だと見定め、そして極限まで研ぎ澄ませたナイフを突き立てる。

「・・・デスビハインド」

 ナイフの切っ先は寸分違わずバンチョーレオモンの体に突き刺さる、筈だった。

「・・・それが攻撃のつもりか?」

 ナイフの切っ先は確かにバンチョーレオモンの体に触れている。だが、触れているだけだ。

 どれだけ力を込めても鍛え上げられた筋肉の鎧を前に刃は一向に沈んでいかない。

 バンチョーレオモンが身に纏うGAKU―RANは大きな守りの力を与えている。だが、バンチョーレオモンはそれに頼りなどしない。常に己が肉体を最大限にまで鍛え上げているバンチョーレオモンにとって最大の守りはGAKU―RANではなく己自身の肉体。故に弱点などない。それがバンチョーだ。

「温いわ!」

 シールズドラモンの胸倉を掴んで待ちあげたバンチョーレオモンはその胴体に容赦く拳を打ち込む。

「道具に頼った力なんぞでこの我に傷を与える事など出来ぬとしれ!」

 悪辣なるD❘ブリガード達では自分には勝てないと宣告するバンチョーレオモンだったが、特殊テクスチャー加工がされている体表によって姿を消したコマンドラモンが密かに近づいてきていた。

「甘い!」

 その気配を察知したバンチョーレオモンが繰り出した拳によって放たれた衝撃波が姿を消していたコマンドラモン達を薙ぎ払う。

「言ったであろう!道具に頼った所で我には勝てぬと!漢なら己が身一つでかかってこんか!!」

 苛烈な怒号に初めてD❘ブリガードの面々はたじろぎを見せた。

「情けねぇな・・・。この程度でビビってんじゃねぇよ」

 バンチョーレオモンと戦っていたD❘ブリガード達が空けた間から粗野な口ぶりと共に現れたのはマシーン型デジモン、タンクドラモン。

「ようやく会えたな。ずっと待ってたぜ」

「・・・どこかで会ったか?生憎と記憶になくてな」

「ああ、そうだろうな。なんせこの体になって会うのは初めてだからな!ブラストガトリング!!」

 キャノン砲の横にあるガトリングガンから一秒間に放たれる3600の弾丸がバンチョーレオモンに放たれる。その激しさは瞬く間にバンチョーレオモンを覆い隠すほどまで巻き上がった砂煙が証明していた。

 それでも土煙が晴れた時、バンチョーレオモンは変わらず悠然とその場に立ち続けていた。

「・・・そう言えばD❘ブリガードの中に一人だけ魂の籠った一撃を放つ奴がいたな」

「思い出してくれて何よりだ。ここじゃてめぇも本気させねぇだろ。続きは外でやろうじゃねぇか」

「ふっ、良かろう」

「てめぇらも。余計な手出しするんじゃねぇぞ。ヘタレ共にいられたって邪魔4にしかならねぇんだからな」

 そう言い残してタンクドラモンはバンチョーレオモンと共に町の外へと向かっていく。

 

「・・・凄い強いね」

 バンチョーレオモンの実力を目の当たりにしてアライブモンはそう呟く。

「そうだね。僕達が居ても足手纏いにしかならないだろうね」

 バンチョーレオモンの戦いに圧倒される二人だったが、ただそのままでいる事も出来なくなってしまう。

「・・・あれ、何かな?」

 アライブモンが何かを感じて、亮もその先へと視線を向けるとそこは建物の陰になっている部分。ぱっと見ではよく分からないが何かがおかしい。注視してみると何もそこにはいない筈なのに建物の陰の中に紛れてそれとは違う影があった。

「何かいる?」

 影があると言う事は姿が見えない何かが存在していると言う事。そして姿を消す能力をコマンドラモンが持っている事はバンチョーレオモンとの戦闘の中で見せている。

 と言う事は必然的にコマンドラモンが何かをしようとしていると考えるべきだろう。そしてそれは決して碌な事ではない。

「・・・よし」

 何かを企んでいるのなら見過ごすわけにはいかないと亮はゴーグルに手を当てながら勇気を奮い立たせる。

「僕も行ってくるからアライブモンはここにいて」

「え・・・?一人で・・・?」

「大丈夫だよ。直ぐに戻ってくるから」

「・・・うん」

 一人にされてしまう不安を抱えながらもアライブモンは亮に言われるままに見送ってしまう。

 

「そ、そこにいるんだろ!何してるんだ!」

 駆け付けた亮に見破られ、コマンドラモンは潔くその姿を現す。

「・・・人間か」

 バレてしまった以上は作戦の遂行は出来ない。だが、それだけが理由であっさりと姿を現した訳でなかった。

「まぁいい。代わりにお前を利用させてもらう」

 そう言いながらコマンドラモンは亮にM16アサシンの銃口を向けた。

 

 一方。平原に場所を移してバンチョーレオモンとタンクドラモンはバトルを続けていた。その激しさは平原の所々が焼け野原と化している事からも見て取れる程だ。

「チッ!相変わらず無茶苦茶な野郎だ!!ブラストガトリング!!」

 草花を踏み潰しながらキャタピラを焼き切れてしまいそうな程に回し続けるタンクドラモンは絶えず弾幕を張り続ける。

 対してバンチョーレオモンはその身一つで弾幕の中をタンクドラモン目掛けて真っ直ぐ駆け抜ける。

「これでもくらえ!ストライバーキャノン!!」

 搭載した砲弾を胴体の左右から伸びる砲塔からバンチョーレオモンの進行先の地面に向けて放つ。

本来であれば殲滅用に周囲30キロを焼き尽くす核弾頭を積んでいるのだが、この時は殲滅ではなく制圧。万が一その障害となる者が現れた時に対応する為に一軍に加わっていたが故にそこまでの破壊力はない。だが、それも爆発範囲を抑える為だけ。威力自体はそれほど落ちてはいない。それは焼け野原となっている周囲の状況が物語っている。

 着弾と同時に周囲を焦土と化す程の爆炎を跳躍して躱したバンチョーレオモンはその爆風を受けて高く舞い上がる。

「狙い通りに飛んでくれてありがとよ」

 タンクドラモンは足場のない空へと飛んでしまったバンチョーレオモンに向けてもう片方の砲塔を向ける。

「そらもう一発だ!ストライバーキャノン!!」

 砲弾が迫りくるも逃げ場のないバンチョーレオモンだったが、そこに動揺はなかった。

 バンチョーレオモンは自慢の短刀、男魂を引き抜き、砲弾へ向けて投擲。そして真っ二つになった砲弾が生み出す爆炎の中を突っ切ってタンクドラモンへと拳を構える。

「はぁぁぁーーーーーー!!」

「舐めんなーーーーーー!!」

 真っ向から迫るバンチョーレオモンにタンクドラモンも三本のニードルが付けられた鋼の拳で迎え撃つ。

 拳と拳がぶつかり合い、その結果気合を纏ったバンチョーレオモンの拳がタンクドラモンの鋼の拳を打ち砕いた。

「まだだ!」

 勝利を諦めないタンクドラモンはもう片方の腕でバンチョーレオモンを狙う。だが、それも弾かれバンチョーレオモンには届かない。

「お主の心意気!見させてもらった!我もそれに応えよう!」

 バンチョーレオモンは足元の地面に突き刺さっていた男魂を引き抜く。そして全霊を込めた一閃を繰り出した。

「・・・獅子羅王斬」

 その太刀にて全ての武装も一纏めにタンクドラモンを切り捨てる。

「・・・ぐ・・・あ・・・」

 鋭い斬撃の前にタンクドラモンは幾度目かの敗北を喫してしまう。それでもタンクドラモンはまだ倒れない。

「・・・ざ・・・けんな・・・負けて・・・たまるか・・・てんだよ・・・」

 もう勝敗は決した。それでもタンクドラモンは残った片方の腕で殴ろうとする。

けれど、もう既に通用しなかった上に大きなダメージを負った状態では通用するはずのない事は分かり切っている。それでも尚、勝利を掴み取ろうと腕を伸ばすかの様に僅かに残った力を叩きつけようとする。

バンチョーレオモンはそれを避けるでもなく、労わるようにそれを掌で受け止める。

「勝負を諦めぬ執念。誠にあっぱれだ。だが、時には負けを認め、受け入れる事も高みに行く為には必要な強さだ」

「・・・高みとか・・・どうでも、いい・・・。俺の前に、立つ奴を・・・ぶっ潰す・・・それだけだ・・・」

 自分の事も顧みず、ただ目の前の相手だけを睨み続けるタンクドラモンの勝利への執念は相当な物。だが、それだけではまだバンチョーレオモンには届かない。

 けれど、その中にある荒々しくも絶える事のない魂の輝きをバンチョーレオモンは尊いと認める。

「強くなれ。お前はもっと強くなれる。・・・むっ」

漢同士の魂の語らい。だが、それを邪魔する奴等が現れる。

「・・・遅かったか」

そこに現れたのは町に残っていたD❘ブリガード達と人質に取られた亮だった。

「・・・貴様等、その子供をどうする気だ?」

「お前を倒すのに利用するつもりだったが、どうやらそれも間に合わなかったようだしな」

 そう言いながら亮を捉えたコマンドラモンを引き連れたシールズドラモンはバンチョーレオモンに敗れたタンクドラモンを一瞥する。

「だが、人質としての利用価値がなくなった訳ではない」

「くっ・・・!」

 人質を取られてしまっては流石のバンチョーレオモンも成す術はなく、歯噛みする以外にない。僅かにでも隙があるのであれば直ぐにでも助け出したいが、そんな隙を見せる相手でもない。

「余計な事は考えない方がいい。こいつを死なせたくなければそこでじっとしていろ。安心しろ。お前をどうこうするつもりはない。こちらもそんな余裕もないからな。撤退するのを黙って見ていればいいだけだ」

 手段を問わない非情さを持ちながらも過信に陥る事のないD❘ブリガード。だが、例外がいた。

「・・・邪魔、すんじゃ・・・ねぇ・・・つったろうが・・・」

 仇敵との戦いに水を差されたタンクドラモンは仲間達に向けて怒りに満ちた敵意を向ける。

 だが、それをシールズドラモンは一笑に付す。

「大口叩くなら結果を出してからにしろ。そこまで進化できたとしても所詮は落ちこぼれ。過ぎた力を持って過信した愚か者が」

「・・・クソ、が・・・」

 何かしらの確執があるのか、成熟期のシールズドラモンに蔑まれ、完全体であるタンクドラモンはその目に憎悪の炎を燃やす。

 だが、タンクドラモンの憎悪の炎をバンチョーレオモンの漢気の熱意が吹き消す。

「愚か者?それは貴様の方だ!!己が信念を持たぬ者に他者を見下す資格などない!少なくともこやつにはそれがあった!」

 そのバンチョーレオモンの言葉にタンクドラモンは目を丸くさせる。

 その一方でシールズドラモンにはバンチョーレオモンの熱さは響かず、鬱陶しそうに目を細める。

「・・・御託はもういいか?いくらほざこうがお前に何ができる?それともこいつがどうなってもいいのか?」

 シールズドラモンの言葉に合わせてコマンドラモンは銃口を亮に向ける。

「ぬぅ・・・」

「それでいい。撤収するぞ。一応そいつも連れてこい」

 シールズドラモンの指示を受け、コマンドラモン達はタンクドラモンを連れて立ち去っていくのを、バンチョーレオモンはただ見ているしかできなかった。

 

「・・・ふむ。これを仕掛けていたのか」

 高台で待っていたアライブモンから話を聞きながらバンチョーレオモンは亮が捕まってしまった場所でコマンドラモンが仕掛けていた小型爆弾DCDボムを発見する。

 そしてそれを空へと高く投げ、拳から放たれる衝撃波を放って爆破する。

「・・・それでお前は何もせずに居たと言うのか」

 今まで何も言わずただ聞いていただけのバンチョーレオモンは全てを把握した今、アライブモンに向き合う。

「パートナーが一人で危機へと向かうのを何もせずに見ていたのか」

「・・・だ、だって亮がここにいてって・・・」

 バンチョーレオモンの厳しい言葉に委縮してしまう。だが、バンチョーレオモンの叱責は更に厳しさを増す。

「パートナーが連れていかれたのに何もしなくていいと思っているのか?」

「だ、だって何すればいいのか分からなかったから・・・」

「何をすればいいかではない!何をしたいかだ!お前はパートナーを連れていかれたままでいいと思っているのか!」

「・・・ぅぅぅぅ」

「唸っているだけでは何も変わらんぞ!今一度問う!お前は何がしたい!」

「・・・助けたい・・・亮を助けたい・・・!」

 自分の意思を示したアライブモンにバンチョーレオモンは牙を見せて応える。

「ならばその為の行動へ移せ。我もその思いに力を貸す」

 そうして亮救出作戦が遂行される事となる。

 

「まだ・・・まだ足りないのか・・・もっと力があれば・・・」

 D❘ブリガードのメンバーに駐屯地へと連れ戻されたタンクドラモンは更なる力への渇望が自分の奥底から湧き上がるのを抑えられずにいた。

 そこにD―ブリガードを操る者。老人の姿をした強欲を司る魔王型デジモン、バルバモンがその長い髭を撫でながらタンクドラモンの前に現れる。

「ほっほっほっ、力を望む欲望。誠に心地よい。そなたの欲望、叶えてやってもよいぞ」

「・・・俺は俺の力であいつを倒す。誰の助けも望んじゃいねぇ」

「本当にそれでよいのか?力の差が分からぬ訳でもあるまい。あやつの実力は究極体の中でも頭一つ抜けておる。例えそなたが更なる進化を遂げた所で勝てると思うか?儂ならばそれ以上の力を与える事も可能だぞ」

 バルバモンの甘言は間違いなく事実に基づいている。だからこそタンクドラモンはそれを拒絶しきれない。そして同時にバンチョーレオモンに告げられた言葉が浮かんでくる。

「・・・ああ、認めてやるよ。俺は負けた。完敗だ。勝てる気なんてしねぇ。だからこそもっともっと力がいるんだ。誰も俺を馬鹿にさせねぇぐらいの力が。・・・あいつを超えるだけの力が・・・」

 タンクドラモンの目にはずっと原動力となっていた憎しみの炎が再び燃え上がる。けれど、その奥底にあるのはそれとは違う純粋な熱だった。

「そう、そなたはその欲望に従うのじゃ。・・・ただそれだけでよい」

 まるで沼に引きずり込むようにバルバモンが開いたゲートの先へ、それに気付かぬままに渇望に支配されたタンクドラモンは痛む体を黙らせながらその中へと足を踏み入れた。

 そしてその二つの力への渇望がタンクドラモンを誤った道へと進ませる事になってしまうのだった。

 

 平原の中、バンチョーレオモンはたった一人でD―ブリガードの駐屯地の正面で仁王立ちをしていた。

「我は逃げも隠れもせん!倒したいのなら全兵力でかかってこい!」

 正々堂々と宣戦布告をするバンチョーレオモンを打倒すべく町の時とは比較にならない程の数の兵士が基地から出現する

「さぁ!全力で来るがいい!」

 一人で大軍を相手取るバンチョーレオモンだが、一人だけではない。

 

 バンチョーレオモンがD―ブリガードの兵士達と戦っている一方でアライブモンは駐屯地の裏から高く聳える壁を見上げながら自分のするべき事を反芻していた。

 アライブモンの役目は捕まっている亮を見つけて助け出す事。その為にはまず基地の中へ侵入しなければいけない。バンチョーレオモンがたった一人正面から乗り込んだのも注意を惹く為。

今、バンチョーレオモンは大勢の兵士を相手に防戦に専念している。それもアライブモンが侵入する時間を稼ぐと共に乱戦状態を維持していれば相手も人質を持ち出せなくなると言う試算があってのも。

流れ弾で万が一の場合があれば切り札を失ってしまう事になる。そんなミスをしでかすような相手ではない。だからこそそこに付け入る事が出来る。

 大勢を一人で相手にし続けるバンチョーレオモンもきついが、亮を直接助けに行くのはアライブモン自身。

 アライブモンは亮を絶対に助け出してみせると奮い立たせる。そして壁の上部に向けて左手を突き出す。

「ポイズンアイビー!」

 ローブの裾の中から毒性を帯びた蔦を伸ばして壁に纏わり付かせてから巻き戻し、自分の体を引っ張らせて壁の上部へと登って敷地内への侵入を果たす。

 

そうして見つけた通気口から基地の内部へと入り、その中を這って進んでいく。

 幾つもの部屋を探り、やがて亮が捕らわれている牢獄へと辿り着く。牢屋の中に亮の姿も確認できる。どうやら一応は丁重な扱いを受けてはいるのか、危害を加えられている様子は見受けられない。

 とりあえず無事を確認出来て一安心といきたい所だが、それは助け出してからだ。

 だからと言って今すぐ飛び出す訳にもいかない。軽はずみな行動をしてしまえば亮に危害を加えられてしまう事にもなりかねない。単独行動をする前にバンチョーレオモンにも焦るな、慎重に行動しろと予め言い聞かせられていた。

 アライブモンは逸る気持ちを抑えながらタイミングを伺う。だが、早々にそのタイミングが訪れるとはいかない。

 看守のコマンドラモンは暇な時間を怠惰に過ごす事なく、その役目を果たしている。亮がアライブモンに気付けば隙を作る事も可能かもしれないが牢屋とダクトの位置関係があまり良くなく、亮に気付いてもらえる気配はない。亮に気付いてもらおうと物音を立てればコマンドラモンにも気づかれてしまう。

 いい手段が思いつかないまま悩んでいるとコマンドラモンに変化が訪れる。

 コマンドラモンの許に通信が入り、耳元に手を当てながらそれに応じる。

「どうした?・・・そうか、人質を使うのか。ああ、今から連れていく」

 バンチョーレオモンとの戦いが長引きすぎていると判断したのか、予想とは違う行動を起こし始めてしまう。

何事も予想通りに物事が進むとは限らない。それでもこれは千載一遇のチャンスにもなりえる。

牢屋を開け、亮を連れて部屋を出ようとするコマンドラモンにこのまま亮を連れて行かれる訳にはいかないとアライブモンはダクトの格子を外して部屋の中へと躍り出る。

 コマンドラモンは突如として現れた侵入者に反応して振り向く。

「バンチョーレオモン以外にも侵入者がいたか。だが、こっちはただの子ネズミでしかないようだな」

 見るからに成長期のアライブモンに対して、同じ成長期とは言えどもD―ブリガードの一員として過酷な訓練を積んできているコマンドラモンが憶する事はない。

 反対に自ら躍り出るも、戦いに慣れていないアライブモンはコマンドラモンの鋭い視線に怯んでしまいそうになる。

 そんなアライブモンに亮も意を決してコマンドラモンに背後から体当たりを仕掛ける。

「この・・・!」

 僅かによろけるも踏みとどまる。だが、その亮の勇気に触発されたアライブモンが態勢を立て直す前のコマンドラモンに向けて飛び掛かる。

「コロナックル!」

 アライブモンは高熱を放つ右腕でコマンドラモンを殴りつける。

 その一撃がクリーンヒットし、コマンドラモンはそのまま気を失ってしまう。

「亮、大丈夫?」

「うん。アライブモンのおかげだよ。でも、よく来れたね」

「バンチョーレオモンが注意を引いてくれてるから」

「バンチョーレオモンも来てくれてるんだ。それなら早くここから出ないと」

 逃げるにしろ倒すにしろバンチョーレオモンの負担を減らす為にも一刻も早く脱出しなければならない。

 亮はコマンドラモンの持っていた鍵を使って手錠を外すとアライブモンと共に脱出を試みる。

 

 一方でバンチョーレオモンの戦闘は長引く毎に投入される兵士の数は増え続け、その激しさを増していた。

「・・・流石にこの数はきついものがあるな」

 そう溢しながらもバンチョーレオモンには焦りや苛立ちの様なマイナスな感情はない。寧ろこの苦境こそが自分を更に高みへと導いてくれると喜悦交じりで獰猛な牙をむき出しにしている程。

そこにはアライブモンへの杞憂もない。助けたいと心の底から発した意思を信じ、任せた以上は最後まで信じ切る。それもまた漢としての気概と言うものだろう。

「タンクドラモンを出すぞ!」

次々に兵力を投入しても止められないバンチョーレオモンにD―ブリガードも次なる一手として更なる兵力を投入する。

バンチョーレオモンは自分を囲む十体を超えるタンクドラモン達を見回す。

「・・・どうやらあやつは居らぬようだな」

 あれだけの傷を与えたのだ。この短期間に復活は無理だと分かってはいても漢と見初めた相手と相対する事を出来はしないと微かに落胆の色を見せる。

 だが、そんな事はタンクドラモン達には関係がない。一斉に構えたブラストガトリングの砲身がバンチョーレオモンを狙う。

 同時に放たれるブラストガトリングの銃弾の中をバンチョーレオモンは突っ切る。魂の籠らぬ攻撃など脅威を感じる事はおろか闘志すら燃え上がらない。

「・・・有象無象が束になるより、あやつ一人の方がまだ我の胸に届いたわ!」

 バンチョーレオモンは容赦なくタンクドラモンを一体殴り飛ばす。

 と、同時にタンクドラモンの内の一体がストライバーキャノンを放つ。

 その砲弾が直撃し、爆炎に覆われるもGAKU―RANと鍛え上げられた肉体を持つバンチョーレオモンにはまともなダメージ一つ与えられない。寧ろその爆炎によってバンチョーレオモンの姿がタンクドラモンの視界から隠す事になってしまうだけだった。だが、その目くらましもタンクドラモンにとって失策とまではならない。

 爆炎の中から飛び出したバンチョーレオモンをタンクドラモンの内の一体が補足する。そのデータは他のタンクドラモンにも共有され、爆炎によって視界を塞がれたタンクドラモン達も同時にバンチョーレオモンを補足する。

 そして次々にストライバーキャノンが立て続けに放たれる。

 そんな激しさを増していく戦闘だったが、だが未だにバンチョーレオモンにとっての真の戦いは始まってすらいなかった。

 そしてその真の戦いを告げるかの様に基地の内部から壁を吹き飛しながら爆炎が噴出する。

「・・・あやつらに何かあったのか・・・!?」

 物々しい状況にバンチョーレオモンの気が削がれる。それならば助けに行かなければならないが、バンチョーレオモンにはそれが出来なかった。

 それはタンクドラモン達が居るからではない。高空より飛翔する存在が居たからだった。

 

「・・・そろそろ外に出られる筈なんだけど」

 連れてこられた時の記憶を頼りに基地の内部を進んでいる亮とアライブモンだったがそのまま何事もなく脱出する事は出来なかった。

「・・・止まれ」

 人質に逃げられたと通達を受け、探索をしていたシールズドラモンに見つかってしまう。

「おとなしくしろ。そうしていれば悪いようにはしない」

 シールズドラモンの言葉に嘘はない。なるべく人質を傷つけたくない上に無駄な労力もかけたくはないのだから。だとしてもそれに従う訳にもいかない。

「・・・脱走するような奴に言うだけ無駄か。ならば致し方ない」

 捉える為に荒事も辞さないと言外に告げるシールズドラモンにアライブモンがその前に立つ。

「アライブモン・・・」

「・・・戦うよ。亮と一緒に逃げるんだ・・・!」

 キッと睨み返すアライブモンにシールズドラモンは冷たい目で睥睨する。

 相手は見た所、成長期のデジモン。だとしても手を抜きはしないとシールズドラモンはスカウターモノアイでアライブモンの弱点を探る。

 だが、そこに映し出されたのはそんな生温い物ではなかった。

「・・・な!?・・・お前は一体・・・」

 スカウターモノアイによって示されたのは蠢く無数のデータ。アライブモンのローブの中に内包された圧倒的な存在感を覗き見てしまったシールズドラモンはその中に飲まれるかのような錯覚に苛まれ、二の足を踏んでしまう。

「何を尻込みしている」

 余力として控える中で脱走した亮達の捜索に駆り出されていたタンクドラモンがそこに現れる。

「いや・・・こいつは・・・」

 得体の知れない恐怖をうまく言葉にできす、それに気づかないタンクドラモンはシールズドラモンを退かせる。

「まぁいい。こっちは俺がやる。お前は表の奴等の支援にでも行っていろ」

「あ、ああ」

 その指示に従いこの場から去ったシールズドラモンの代わりにタンクドラモンが立ちはだかる。

 より強い相手に代わってしまってもアライブモンの心は挫けない。

 そんなアライブモンにタンクドラモンはその銃口を向ける。

「・・・ブラストガトリング」

「・・・ぅぅぅぅ!」

 放たれる銃弾の雨に晒されながらも、アライブモンはそれに必死に耐える。だが、それもアライブモンを倒す為ではなく無力化する為に力を削ぎ落しているに過ぎなかった。

「アライブモン!!」

 亮の悲痛な叫びに続くかのようにタンクドラモンの砲塔は弾丸の代わりに硝煙を燻らせる。

「躾はこれぐらいでいいか。これ以上痛い目にあいたくなければ大人しく従え」

 そう言われても従う事なんて出来はなしない。亮は何とか切り抜ける方法はないかと考えを巡らそうとするが、それはタンクドラモンに読まれていた。

「逃げようとしても無駄だ。俺達はデータをリンクし合える。ここで補足した情報は他にも伝わっている。例え逃げたとしても一度補足した以上俺達からは逃げられない」

 その事実を突きつけられて尚、いやだからこそより一層ここで負ける訳にはいかないとアライブモンは傷つきながらもタンクドラモンを力強く睨みつける。

「・・・負けられない。・・・亮と一緒に逃げるんだ・・・。絶対に負けられないんだ!」

 そしてアライブモンはその為に自らの中に渦巻く力を目覚めさせていく。

「ゥゥゥゥァァァアアアア・・・!!!」

 叫びと共にアライブモンのローブの中に隠された鳴動し、肥大化していく。そして隠されていたその姿の一部がローブの中から現れていく。

 樹木の左腕。獣の右腕。骨の左足。鉱石の右足。竜の口。その体の所々を覆う鋼の装甲。

 統一感のない歪な姿にタンクドラモンは顔を顰める。対してアライブモンはタンクドラモンの様子も認識できていないように低い唸り声を漏らし続けていた。

 それでも敵としての認識は依然として変わらず、排除する為にタンクドラモン目掛けて突進する。

「ふん、見かけがどうであろうと後先考えないような奴にやられはせん。ブラストガトリング」

 再び放たれる無数の弾丸さえも意識にないのか、一切怯むことなくタンクドラモンに向かって走り続ける。

 対してタンクドラモンはブラストガトリングを放ちながらも思い通りに懐に入らせはしないとキャタピラを逆向きに回転させ、後退と攻撃を同時に行い距離を保とうとする。

だが・・・。

「コズモフラッシュ!」鉱石の右足から放出された大宇宙のエネルギー波を推進力として利用し、アライブモンは彗星の如く空を駆け抜ける。

「フラウカノン!」

 樹木の左腕から大輪の花が咲き、その花弁を銃口に変えてエネルギー弾を打ち出す。

「くっ!」

 複数のデジモンの技を使う有り得ない相手にタンクドラモンは歯噛みしながら銃弾を放ち続けると共に回避を行う。だが、そのせいで後方へ下がる事はままならず、アライブモンと瞬く間に距離を詰められてしまう。

「カイザーネイル!」

 右腕の獣の腕から鋭い爪が伸び、タンクドラモンの体を切り裂く。

「ネイルボーン!」

 立て続けに光を放つ骨の左足がタンクドラモンを蹴りつけ、その光によってデータ異常に蝕まれるタンクドラモンは身動きが取れなくなる。

「ドラゴンインパルス!」

 弾き飛ばされるタンクドラモンを更に竜の口から放たれた竜の形をした衝撃波によって吹き飛ばされ、激しく壁に叩きつけられる。

「ギガデストロイヤー!ギガデストロイヤーⅡ!」

 広がった装甲に包まれ、砲身へと変化した両腕から二種類のミサイルを同時に発射。そして激しい爆炎がタンクドラモンを覆いつくす。

 その炎が消えた後には完全に沈黙したタンクドラモンが残された。

「ゥゥゥゥゥ・・・」

 それでも尚、アライブモンの闘争心は収まらず、必要のない攻撃を更に繰り出そうとタンクドラモンの許へと近づいていく。

「もういい!もうそれ以上しなくていいから!」

 走って追いかけてきた亮の声にアライブモンはその足を止める。

「・・・う・・・ぁ・・・」

 同時にアライブモンは自分の中で荒れ狂う力に苦痛に満ちた呻き声を漏らしながら、その力は収束していき、その体もローブの中へと収まっていく。

 そして元の姿へと戻った瞬間にその場へと倒れてしまう。立つ事もできないまま自分の体を抱える様は痛々しい。それはタンクドラモンから受けたダメージが原因だけだとは思えず、そしてローブから見せた姿と幾つもデジモンの技を使うのは誰の目にも異様としか映らない。

 けれどそんな事など苦しむアライブモンを前にどうでもいいと亮は直ぐに駆け寄る。

「アライブモン!」

 亮の自分の名を呼ぶ声に痛みに耐えながら顔を上げる。

「・・・亮・・・僕、ちゃんと戦えたよね・・・?」

「うん。ほら、アライブモンのおかげで外にも出れるようにもなったよ」

 そう言いながらアライブモンの体を労わりながらそっと抱き起し、最後の攻撃で破壊された壁とその先に広がる外の光景を見せる。

「・・・それじゃ一緒に出られるんだね。良かった・・・」

 役目を果たせたと安堵したアライブモンはそのまま意識を手放し、静かな寝息を立て始める。

 それを乱さないように亮はアライブモンをゆっくり背負いそのまま外へ向けて戦ってくれたアライブモンの分まで前へ向かって歩き出した。

 そして脱出を果たした亮の目に壮絶な戦いの光景が飛び込んできた。

 

 基地内部から爆発が起こった直後、高空より飛翔する存在が突如現れ、バンチョーレオモン目掛けて急降下する。

「・・・BAN―TYO!BAN―TYO!!!!!!!」

「むっ!」

 その存在に気付き、バンチョーレオモンは直撃する寸前で跳躍して躱す。そしてその瞬間にまるで墜落するかのように高空より現れた存在がバンチョーレオモンの居た場所を貫く。

 巻き上がる土煙を風が払った時、そこに立っていたのは全身をサイボーグへと改造されたデジモン、ダークドラモンだった。

「・・・貴様は」

 その問いかけもダークドラモンには届かない。

「GAAAAAAAAA!!!!!!」

 ダークドラモンはバンチョーレオモンの問いに応えず、代わりとばかりに咆哮と共に突進してくる。

「ギガスティックランス!!!!」

 右腕に仕込まれた強大な力を内包したギガスティックランスの切っ先をバンチョーレオモンに向ける。

「っ・・・!。獅子羅王斬!」

 ギガスティックランスにバンチョーレオモンも獅子羅王斬を繰り出す。そして槍と短刀がぶつかり合い、尋常ならざる衝撃が周囲に放たれる。

「・・・まさかお主は・・・」

 互いにその衝撃に弾かれる中、その攻撃を受けたバンチョーレオモンは突如現れた相手のその真っ直ぐなまでの力を感じ、正体を知る事となる。けれどそれにもダークドラモンは答えない。

「GRAAAAA!!!!!」

 理性などない力の本流として襲い掛かるダークドラモンのギガスティックランスに男魂を再び重ね合う。

 互いの闘気を削り合うような鍔迫り合いの中、バンチョーレオモンは男魂の軸をずらし、鬩ぎ合う力を受け流す。

 すかされたダークドラモンは受け流された流れのままにバンチョーレオモンの脇を抜けていく。そこに狙いを澄ましたバンチョーレオモンが拳を叩き込もうとする。

 蓄積された膨大な戦いによって洗練された戦闘技術。だが、ダークドラモンの闘争心はそれをも超える。

 すかされたダークドラモンはギガスティックランスの穂先を地面に突き立て、それを軸として無理やり受け流された力のベクトルを捻じ曲げ、そしてその力を蹴りに乗せてバンチョーレオモンの体に叩き込む。

「がっ!!」

 思いもよらぬ攻撃をバンチョーレオモンは防ぐ事も出来ずダイレクトにその身に受け、蹴り飛ばされてしまう。

 そこに追撃を仕掛けようとしたのは二者の戦いに入る事が出来ずに見ているだけだったタンクドラモン達だった。

 絶好のチャンスだとバンチョーレオモンに向けて一斉に銃口を構えるタンクドラモン達だったが、そこから銃弾が放たれる事はなかった。

「邪魔をスルNAAAAA!!!!!」

 絶叫を上げながらダークドラモンは翼状のブースターを最大出力で展開し、瞬く間にタンクドラモン達をギガスティックランスで貫き、全滅させる。

 これで二人の戦いに水を差すものはいなくなったと悠然と振り向くダークドラモンにバンチョーレオモンは変わり果てても尚、変わらぬ意思を感じ取る。

「・・・そうか。ならば我も真っ向から受けて立とう!」

 衝動のまま力をぶつけてくるダークドラモンに、バンチョーレオモンは築き上げた技術を捨て、その奥にある力を振るう。

 互いに何度も武器をぶつけ合わせ、その都度、互いの闘気が高まりあっていく。そしてその高まる闘気によってぶつかり合う衝撃も激しさを増し、ついに互いに武器を弾き飛ばされてしまう。それでも戦いが止まる事はない。

 武器を失った両者はその拳をぶつけ合う。

 力と力のぶつかり合い。それは荒々しくも完全に調和のとれた天秤の様にどちらかに趨勢が傾く事はなかった。

 だが、そんな戦いにも終わりは訪れる。

 互いにぶつかり合い。闘気を高め続け、そしてその果てに極限まで至る。

 まるで示し合わせたかのように拳を打ち合わせ、互いに弾かれ、そして間合いが空くと同時に極限まで高まった闘気を同時に力へと変換する。

「はぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!」

 バンチョーレオモンは拳に。

「GRRRRAAA・・・・!」

 ダークドラモンは体内に。

 互いに臨界へと達した時、その力を解放する。

「フラッシュバンチョーパンチ!!」

「ダークロアー!!」

 バンチョーレオモンの拳から放たれた気合とダークドラモンの放ったダークマターが両者の間で衝突し、鬩ぎ合う力が逆巻く奔流となって絡まり合いながら立ち上っていく。それはあたかも力と力のぶつかり合いの中で互いの意思を響かせ合う二人の様でもあった。

 そしてその力と力は、確たる己と言う地盤によって支えられたバンチョーレオモンのフラッシュバンチョーパンチが、力に飲まれ自我を見失っているダークドラモンのダークロアを押し返し、絡まり合ったその力を叩きつける。

 逼迫した戦いの果て。

そこに至っても尚、互いに睨み合いは続いていた。だが、勝負は既に決している。

 最後の攻撃を受けたダークドラモンは辛うじて立っているだけ。もう戦う力は残されていなかった。

「Grrrrrrr・・・・・・」

 まだ勝利への執着を唸り声として発しながらもダークドラモンは空へと飛び立ち、バンチョーレオモンの前から立ち去っていく。タンクドラモンの時には勝敗は決しても退こうとはしなかったにも拘わらず。

それは敗れた際に帰還するようプログラムされているせいか、それとも強くなる為に負けを認めろと言うバンチョーレオモンに言われた言葉を覚えているのか。

 その答えを知る者はいない。ただ、一騎打ちに固執する様子はタンクドラモンの時と変わっていない。そして何より交わした拳がそれを伝えていた。

 バンチョーレオモンは拳に残った熱を感じながらもその胸に寂寞を抱え、ダークドラモンの消えていった空の果てを見つめていた。

 そんなバンチョーレオモンの許へと戦いを見届けた亮がやってくる。

「・・・どうやら脱出できたようだな」

「うん。アライブモンが頑張ってくれたから」

「そうか・・・。無事に、とは言えぬようだな」

「・・・うん。でも、今は寝てるだけだから」

「そうか」

「これからどうするの?」

「・・・そうだな。取り合えず町へ戻ろう。きっとお主達を受け入れてくれるだろうからな」

「受け入れってって・・・」

「面倒を見ると言っておきながらその言葉を翻すのは漢の道に反するが、お主等も巻き込む訳にもいかぬ。お主も見ただろう。あやつはまた我の許へ現れる。我はそれに付き合わねばならぬからな。あやつが見失っている己自身を取り戻すその時まで」

 変わり果ててしまっても根本は変わらずにいた。それを感じ取ったバンチョーレオモンは信じた。いずれ本来の自分を思い出せる筈だと。

 亮もバンチョーレオモンは巻き込みたくはないと言ったが、自分達が付いていけば足を引っ張ってしまうと理解している。だからこそ、その決意に水を差す事はなかった。

「・・・バンチョーレオモン、行っちゃうの?」

 代わりに目覚めたアライブモンがそう聞き返す。

「我がいなくともやっていけると確信している。何故ならお主等の中にある漢をしっかりと見せてもらったからな」

 町に住むデジモンを助ける為にと危険を顧みなかった亮。そして亮を助ける為に勇気を振り絞って立ち向かったアライブモン。二人には間違いなく漢としての気概が宿っている。

「・・・なんとなく分かった気がする」

「そうか、それは何よりだ」

 アライブモンの言葉にバンチョーレオモンは力強い笑みを浮かべる。

「では、町まで戻るとしよう」

 これからの事をそれぞれに思いを馳せながら残された僅かな時間を共にする。

 バンチョーレオモンとの出会いによって大切な事を教わった。この出会いはこれで終わりではない。また、再開を果たす事になる。だがそれは互いに望む形ではなかった。




次回予告
 バンチョーレオモンと別れ、デジモン達の町で過ごす亮とアライブモンの許に次世代の選ばれし子供達が迎えにやってくる。
 アルファモンの存在に悩み、戸惑いながらも子供達と共に現実世界へと帰ろうとする亮。だがその裏で暗躍する者がいた。
 物語が複雑に絡まり合う中、その歪みを正す為に傍観者がついにその重い腰を上げる。

次回、「闇の中へ」
 新たなる冒険のゲートが開く。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

闇の中へ

今回、選ばれし子供達が活躍する回になります。
それと同時に傍観者もついに動き出す・・・。
と、同時に今回もデジモンワールドをネタに組み込むことが出来たんでそれも楽しんでもらえたら嬉しいです。

と、本編については以上ですが、その、執筆が遅れている事を誠に申し訳なく思ってます。
ネットフリックスにあるオリジナル作品や昔の名作(スティーブンキングのミストとか)のドラマがあまりにも面白すぎてしまって・・・。
時間が・・・時間が足りない・・・。


「ふぅ、これで最後かな。そっちはどう?アライブモン」

「うん、こっちも終わった」

 バンチョーレオモンと別れた亮とアライブモンはD―ブリガードから守った町で日々を過ごさせてもらい、その代わりに町の人達の手伝いをしていた。

 この日も肉が生る畑で育った肉の収穫を手伝っていた。野菜ではなく肉が実るなんてありえない話だが、デジタルワールドではそれが当たり前だった。

 亮も最初は驚きもしたが、それも最初だけ。実際に目の当たりにすれば受け入れるしかなく、受け入れてしまえばそれはもう不思議な事ではなくなってしまう。

「助かったぜ、ありがとな。後はこれをメラモンの所へ配達に行ってくれればもう終わりだ」

「メラモンって事はお店の方だね。うん、分かったよ」

 肉畑を管理する古代恐竜のデジモン、ティラノモンの最後の頼みを引き受けると、亮とアライブモンの前に次々と肉が山の様に積まれていった。

 どう見てもこれを運ぶのはかなり大変だが、そこはデジタルワールド。

 亮は山の様に積まれた肉を次から次へと背負っていたリュックへと詰め込んでいく。

 子供一人が背負えるリュックの収納量を遥かにオーバーしているにも関わらず、その全てがリュックの中にすんなり納まった。

 何故そんな事が可能かと言うと、それはリュックの中にしまう際にデータへと変換され、圧縮される事により見た目よりも遥かに多くの物を入れる事が出来るからだ。

 このリュックはこの町の長であるおばあさんの姿をしたエンシェント型デジモン、ババモンにD―ブリガードを追い払った礼にと貰ったものだった。

 そしてリュックに大量の肉を仕舞った亮達はこの町唯一の飯屋、バーニングルメへ。そして到着するとその店主兼料理人である全身に紅蓮の炎を纏った火焔型デジモン、メラモンへ頼まれていた肉を届ける。

「お、なんだ、お前らが届けに来たのか?ティラノモンの野郎、楽しやがって」

「別にいいよ。僕達の方が厄介になってるんだしね」

「うん、ティラノモンのお手伝い楽しいよ」

「ま、お前らがそう言うんならいいけどよ。もう昼飯は食ったのか?まだだったらなんか用意してやるぞ」

「いいの?」

「ああ、ここまで運んでくれた駄賃代わりだ。遠慮すんなよ」

「それならお言葉に甘えさせてもらおうかな」

「メラモンの料理、美味しいから好き」

「ははっ、そう言ってくれるのが何よりだ。それじゃ直ぐに用意するからな」

 そうして二人の前に出されたのはバーニングルメで一番人気の爆裂チャーハン。

 見た目はごく普通のチャーハンだが、米の一粒一粒がパラパラに解ける程しっかりと炒められながらも、ふっくらとしたうま味を一切逃さずに閉じ込めている。一噛みする毎にうまさが口の中で弾ける様はまさに爆裂。

それを可能にしたのはメラモンの灼熱の炎。その炎によって短時間で米の表面を炒める事が出来るからだ。

 他にも細切れにされた特製チャーシューとニンジンやグリーンピース等の野菜が見た目だけでなく味わいにも彩を与えているが、それらも米のうまさを最大限引き出す為に一役買っている。

「ん~~~~~」

 爆裂チャーハンのあまりのうまさにアライブモンも思わず唸ってしまう。

「このチャーハンの味をしちゃったら他のチャーハンが食べられなくなるかも」

 亮がそんな風に思ってしまうのも無理はない。メラモンだからこそ作り出せる至高のチャーハンなのだから。

 だが、メラモンが用意していたのはこれだけではない。

「ご馳走ついでに新作の味見も頼んでいいか?」

「新作?全然かまわないけど」

「そうか。ちょっとだけ待っててくれよ」

 そう言いながらメラモンは鉄の箱と鉄の棒が伸びた台を用意し、亮達が持ってきた肉をいくつかの塊に切り分け、スパイスを混ぜ込んでそれを鉄の棒に突き刺して鉄の箱を被せると、拳を引いて構える。

「バーニングフィスト!」

 拳から燃え上がる炎を放ち、箱の中の肉を一気に焼き上げる。その間、僅か一秒足らず。

 そんな短時間では肉に中まで火は通らないが、それで構わない。

 メラモンは表面の焼けた部分をナイフで切り落とすとそれを更に乗せ二人の前に出す。

「灼熱ドネルケバブだ。食ってくれ」

「それじゃぁこっちも頂きます」

 そう一言告げて亮は削がれた肉に噛みつく。

 焦げる直前の肉のカリカリとした触感に一秒にも満たない間しか焼かれてない事によって身から殆ど滴り落ちる事もなく残った肉汁が噛んだ瞬間に染み出してくる。本来であればじっくり焼き上げる事によって肉の味を凝縮させるのだが、それとはまた違ったあふれ出る味わいをもたらしていた。そしてスパイスがその味わいのインパクトをより一層高め、強烈な印象を与えてくれる。

 シンプルを極めた先にある素材の味を限界まで引き出す灼熱ドネルケバブは究極の肉料理の一つと言っても過言ではないだろう。

「・・・これすっごく美味しいよ」

「うん!うん!」

「反応を見れば分かるぜ。それもお前らが持ってきてくれた肉のおかげだな」

 亮とアライブモンはデジタルワールドに来て大変な目にも遭ったが、今はこうしてデジタルワールドの暮らしを楽しんでいた。

 けれどこの生活がずっと続く事はなかった。

 

「新作料理が食べられるなんて運がよかったね」

「うん。また晩に食べにこよう」

「ははっ、そんなに気に入ったんだね。さて、次は何しようか」

 メラモンの料理に舌鼓を打ってバーニングルメを後にし、この後の事を考えていた亮とアライブモンの許にオウムのような巨鳥型デジモン、パロットモンがやってくる。

「二人ともここにいたんだ」

「パロットモン?何か用事?」

「ああ、て言っても用があるのは俺じゃないんだけどね。亮達を探しに人間が来たんだよ。今、ババモンの所で待ってるから行ってくれるか?」

「探しに・・・。うん、分かったよ」

 亮達を探しに来たと言う事は現実世界へと連れ帰る為に来たと言う事だろう。だが、戻ればあのアルファモンがアライブモンを狙ってくると言う事でもある。

 いつまでもデジタルワールドに居続けると言う訳にもいかないが、だからと言って戻る訳にもいかない。

「・・・亮」

 亮の不安が伝わったのか、アライブモンも不安そうにしてしまう。

 ここで逃げる事も出来ない。どうなるかは分からないが、行くしかない。

「・・・大丈夫・・・きっと大丈夫だから」

亮は大丈夫だとアライブモンの手を握りながらそう口に出す。それはアライブモンにだけでなく自分自身にも言い聞かせながら。

だが、そこで待っていたのは予想外の人物だった。

 

「亮君・・・!良かった、無事だったんだ」

「朝霧さん・・・!?」

 亮を探しに来たのは風花とパートナーのフワリモン。それ以外にも数人の子供達とそれぞれのパートナーデジモン達。それで全て。大人は一人もいなかった。

「朝霧さん達だけ?他には誰もいないの?」

「うん。デジタルゲートがうまく開けなくて大人は通れなかったから」

「・・・そうなんだ」

 亮はずっと心配していたのはアルファモンがデジタルワールドまで追いかけてくる事だった。だが、風花達だけしか来れていない様子を見る限りどうやら大人がデジタルワールドを越えられないようにアルファモンもデジタルゲートを越える事が出来ないようだ。

 それはいいとしてもまた別の懸念がある。風花達が来たと言う事は自分達をリアルワールドへと連れ戻す気なのだろう。今アルファモンの居るリアルワールドへ。

 亮の無事を確認出来て安堵する風花と複雑な反応をする亮。その二人に割って入る者がいた。

「感動の再開はそれぐらいにしといてよ」

 やけに冷めた少年がタブレットPCをポーチの中から取り出しながら亮と風花の二人に冷や水を浴びせる。

 そして背面のカメラをアライブモンへと向けるが、それを警戒したアライブモンは亮の陰に隠れてしまう。

「・・・悪いけどそいつをこっちに出してくれない?」

「何するの?」

「データをスキャンするだけだよ。研究所でやる方が正確だけどどうせ戻る気はないんだろうし」

「それは・・・」「は?何言ってんだよ。そいつを連れて帰るのが俺等の目的だろ」

 亮がそうだけどと言おうとした所で鋭い目つきの少年が冷めた少年に食って掛かる。それに冷めた少年は冷たい視線を向ける。

「無理やり連れて帰る訳にもいかないだろ。それにアルファモンとか言う奴がそこのデジモンを狙って暴れたんだし、連れ帰ったらまた同じ事が起こるのが目に見えてる。かなりやばい奴っぽいし、連れ帰るのもそれはそれで問題なんだよ」

「だからって勝手に決めてんじゃねぇよ」

「勝手にじゃない。これを渡された時に泉さんと場合によってはって話し合ってたんだからね」

 泉 光子郎(いずみ こうしろう)。かつての選ばれし子供達の一人としてその知能を発揮して当時の子供達が状況を打破する為に活躍していた人物。今、人間の中でデジタルワールドやデジモンについて最も造詣の深い人物であり、学生の頃から幾つもの論文を発表し、その功績から20代半ばと言う若さながらデジタルワールド研究所の所長に任命されている人物。亮とアライブモンを巡る騒動でも陣頭指揮を執って対応して事に当たっている。

「だったら俺達にも先に言っとけよ」

「無事が確認されていない状況で少しでも時間を無駄にしたくない。見つかってからの事なんてその時でも遅くはない。それ以前に先に言っても言わなくてもどうせ何も変わらない。これだけ言えば理解できる?」

「・・・お前な。チームワークって言葉知ってるか?」

「あんたみたいな脳筋と一緒にしないでくれる?なんでもかんでも食って掛かるそっちの方こそチームワークなんて無縁なんじゃないの?」

「はいはい。喧嘩はそのぐらいでいいでしょ」

 一触即発の二人の少年の間に割って入ったのはばっちりとメイクを決めた今時の少女だった。そしてその少女は二人の少年を止めた後、亮の方をじっと見つめる。

「へ~成程成程。彼が例のって事ね。ふ~ん、見た目も中の上ってとこかな。草食系ってぽいのがちょっとあれだけど、この二人みたいにめんどくさいのに比べれば全然いいかもね」

「あ、あの蔵戸さん・・・」

「ああ、心配しなくていいわよ。人のを取ったりとか、そんな面倒な事する気ないって」

「べ、別にそう言う訳じゃ・・・」

「分かってる分かってる。それより私達の紹介、一応はやっておいた方が良いんじゃない?スキャンしてる間にそれぐらいの時間はあるでしょ。君もこっちはその子に危害を加える気はないって分かったでしょ?だからこっちに出してくれない?」

「そうみたいだね。ほら、アライブモン。大丈夫だからみんなの前に行って」

「う、うん」

 恐る恐る亮の陰から出てきたアライブモンに冷めた少年がタブレットPCを向けながら聞いていたのとは違う名前を口にする。

「アライブモン?まぁ、名前なんて何でもいいか」

 しかしそれも気にする事ではないとスキャンを開始する。

 その間に子供達とそのパートナーの自己紹介が始まる。

「それじゃ自己紹介ね。まずは私から。私は蔵戸 美優(くらと みゆ)。で、こっちがあたしのパートナー」

「アスクモンだ。美優共々よろしく頼むよ」

 今時の少女、美優に続いて尻尾を巻き付けた杖を掲げる白蛇のデジモン。アスクモンが丁寧な口ぶりでもたげていた頭を下げる。

「じゃぁ次あんたね」

「言われなくても分かってるっての。俺は大武 雅人(おおたけ まさと)。で、こっちがドスモンだ」

「・・・ヨロシク」

 目つきの鋭い少年、雅人が紹介を済ませてしまうように発達した両腕を持つ鉱石型のデジモン、ドスモンは武骨と言う言葉がぴったしな様にその一言だけで済ます。

 だが、それ以上に口数が少ない者がいた。

「・・・間宮 佑真(まみや ゆうま)。それとショットモン」

 冷めた少年、佑真は自分とパートナーの傾くサイズの大きいヘルメットで片目を隠すトカゲの獣人型デジモン、ショットモンの名前だけを告げ、ショットモンも一度亮達へ目を向けるも直ぐに自分のショットガンのメンテナンスに没頭する。

「さて、自己紹介もこれぐらいってとこかな。君達の事は一応ここに来る前に聞いてるし、風花ちゃん達の方は必要もないだろうしね」

「何じゃ、わらわは良いのか?寂しいのう」

 子供達とそのパートナー以外にこの場所を提供していたババモンが不貞腐れてしまう。

「そ、そうね。それじゃお願いしようかしら」

 不貞腐れるババモンに苦笑交じりで美優がババモンの望みに応える。だが、それを後悔する事になろうとは・・・。

 

「・・・そうしてわらわがこの安らぎの町の長となり、この町はここまで発展するようになったのじゃ。じゃが、ここで満足する訳にもいかぬ。満足してしまえばそこで止まってしまう。この町に住むデジモン達の為にももっと良い町にせねばならぬ。それこそがこのババモンの使命なのじゃよ」

 ババモンの自己紹介は自分の事だけに留まらず、この町の生い立ちから歩み、そして展望に至るまでが長々と続いていた。それは数時間に及び、子供達やパートナーデジモン達も疲れ果てぐったりとしてしまっていた。

 だが、目の前に広がる光景をババモンは自分が原因だとは思わなかった。

「・・・ふうむ、どうやら長旅で疲れているようじゃの。気が付かぬとはすまなんだのう。そう言えば亮とアライブモンが来た時も同じように疲れておったのう。わらわとした事がすっかり失念してしもうたわ。直ぐに休める場所を用意しよう。少しばかりここで待っておれ」

 そう言ってババモンは屋敷から出ていく。

「・・・凄くよく話すデジモンだったね~」

 フワリモンが呟いた感想に亮も少しばかり困り顔を浮かべる。

「良いデジモンなのは間違いないんだけどあれだけはね。町の事とかここに住むデジモンの事を誰よりも考えてるからなんだけど」

「それは分からなくはないけど・・・。って言うかそっちはまだ終わらないの?」

 美優にスキャンの経過を聞かれ、佑真は淡々と答える。

「もうとっくに終わってるよ」

「だったらもっと早く言いなさいよ。そうすれば途中でなんとか解放される事だって出来たかもしれないでしょ」

「そう?変に口を挟む方が返って長くなりそうじゃない?」

「そうかもだけど・・・。それよりスキャン終わったんだったら何ずっとやってんのよ」

 スキャンが終わったと言いながらもずっとタブレットPCを操作し続けている佑真に美優がそう問いかける。

「スキャンしたデータを分析してるんだよ。まぁ、戻ってからでもいいんだけどさっきの話が長く続きそうだったからね。時間を無駄にするのはあまり好きじゃないし」

 ババモンの語りに精神的なダメージを受ける中で意にも介さずにいた佑真だったが、それも本来の役目を越えてはいるもののやれる事を見つけて聞き流していたからだったようだ。

周りの事など気にも留めないからこそだが、それはパートナーのショットモンも同じ。ババモンの長い話の間も佑真が美優に問われている間もメンテナンスの終わったショットガンを分解しては組み立て、組み立てては分解を繰り返していた。

 パートナー揃って飄々とした佑真だが、佑真が解析していたアライブモンの情報は亮にとって知りたい事でもあると同時に知るのが怖いと思うものだった。

「・・・それで何が分かったの?」

「何も分からないってのが分かったってとこだね」

「分からないって・・・」

「これじゃ流石にね。詳しくは戻ってからじゃないと。でも、正直言ってかなり面白いね」

「面白いって、分からない事が?」

「ああ、解析しようにもデータがバラバラで解析しようがない。そのくせ、データ量が尋常ないぐらいに内包されてる。化け物みたいな奴って聞いてたけど、正直半信半疑だったんだけどどうやら間違いじゃないかも」

「・・・アライブモンは化け物なんかじゃない!アライブモンは僕のパートナーなんだ!だから絶対に化け物なんかじゃない!」

 存在するべきではないとアルファモンに狙われていたからだけではない。亮はアライブモンの力の片鱗を目の当たりにしていた。だからこそ、亮の中にもアライブモンへの懸念は宿っている。けれど出会ってから過ごしてきた日々。危険を顧みずに助けに来てくれたのも事実。

 アルファモンが狙ってきた意味と信じたいと言う亮の思い。その二つによって心の逆麟となっていた。

「ああ、いや、言い方悪かったか。でも、悪い意味で言ったつもりはないんだけどね。化け物って言ってもそれだけの力を秘めてるって意味なんだし。よく言うだろ。力は使い方次第だって。そいつも同じ。そいつがかなり危険だってのは多分間違いないだろうけど、デジモンには無限の可能性がある。そいつも同じなのかもしれないしね」

「そ、そっか。ごめん、大きな声出して」

「いいよ。こっちも軽はずみで言うべきじゃなかっただろうし」

 亮は佑真に悪意はないと知り、佑真も亮への気遣いが足りてなかったと反省する。その様子に納得いかないのが約一名。

「・・・お前。ここに来る途中で何か変な物でも食ったのか?」

「は?何訳分かんない事言ってんの?」

 突然そんな事を言い出した雅人に佑真は不機嫌そうに顔を顰める。

「お前が謝るとか、そうとしか考えられねぇだろ」

「非があれば認める。それって人として当たり前の事でしょ」

「いや、俺にはそんなの一度もなかっただろ」

「それはあんたの言動が短絡的だからってだけだろ」

「・・・お前ってホント可愛げねぇな」

「可愛げって、そんな風に思われる方が気持ち悪いんだけど」

「こっちだってそんなん言うの気持ち悪ぃっつの」

「だったら一々言わなくていいんじゃないの」

「てめぇが一言も二言も余計な事を言うからだろうが」

「先に言い出してるのはそっちでしょ」

 剣呑の空気が立ち込めだしだその時にババモンが戻ってくる。そして言った言葉でそれは一瞬で霧散する。

「何じゃ。疲れてると思うて休める場所を用意してきたんじゃがのう。ふむ、夜までまだ時間があるしの。折角じゃ、わらわが為になる話でしようかのう」

 あの長話がまた始まるのかとうんざりする雅人も、それならと佑真はタブレットPCへと視線を戻し、雅人も言い合いを続ける気が失せてしまう。

「そ、そのお気持ちだけで充分ですから」

「そうか、残念じゃのう」

 ババモンは残念そうにするが、美優の丁重な断りのおかげでどうにか寸前で長い話から逃れる事が出来た。

 

 その後、亮とアライブモンが風花とフワリモンを連れて町を案内していた。他の子供達とパートナーデジモンは美優が気を利かせて別行動をしていた。

「へぇ~、デジモンの町ってやっぱり変わってるんだね」

「そうだね。変わってるけどその分ここでの暮らしも楽しいんだけどね。それにここに住むデジモン達も皆優しいし」

「そうなんだ。・・・亮君が無事でホントに良かった」

「・・・心配させてごめん」

「良いんだよ。亮君が無事だっただけで」

 ちょっとだけいい雰囲気になりかけるも心配させてしまったと申し訳なさのある亮と亮の所に来る一心で見つけてからの事を考えていなかった風花の二人は続く言葉が出てこなくなってしまう。

このまま沈黙が場を支配するかと思われたがそうはならなかった。

「でも、まさか亮君とアライブモンの方が先にデジタルワールドに来ちゃうなんてね~。約束が無駄になっちゃたね~」

 フワリモンがそんな呑気な事を言い出したのも亮の無事を確認できたから。そしてその呑気な言葉は周りを和ませる。

「もうそれはいいんだけど・・・」

「そっか~。亮君と一緒にデジタルワールドにいるんだからそっちの方がいいもんね~」

「それはそうだけど・・・。そ、それよりこっちに来て大変じゃなかった?」

 フワリモンが何気なく言った事だったが、それは風花にとって一番の望み。だからつい恥ずかしくなって風花は話を逸らす。

 そんな風花の思いも知らず、亮は聞かれたままデジタルワールドに来てからの事を話し始める。

「大変だった時もあったけど直ぐにこの町に来れたし、何よりバンチョーレオモンがいてくれたからね」

「バンチョーレオモン?」

「うん、デジタルワールドに来たばっかりの時に助けてもらったんだ。今はもう旅立っていないんだけど」

 バンチョーレオモンへと思いを馳せる亮だったが、亮以上にバンチョーレオモンから影響を受けたアライブモンも話し始める。

「バンチョーレオモンってかっこいいんだよ!ちょっと怖い時もあったけど・・・。でも、すっごく強くてすっごくかっこいいんだよ!D―ブリガードって悪いデジモン達がいたんだけどバンチョーレオモンが一人で全部倒しちゃったんだから!」

「そうなんだ~。そんなに凄いデジモンがいたんだ~」

 アライブモンの話すバンチョーレオモンにフワリモンは素直に感心するが、風花はそうではなかった。

「・・・やっぱり大変な目に遭ってたんだね」

「うん、だけどバンチョーレオモンが助けてくれたから。それにバンチョーレオモンだけじゃなくてアライブモンも頑張ってくれたからね」

「だって亮がいなくなっちゃうのが嫌だったから・・・」

「そっか~。アライブモンも活躍したんだね~」

「・・・えへへ」

 亮を連れ戻せた誇らしさと褒められる照れくささに笑みを溢すアライブモン。それを見ていたのは亮達だけではなかった。

 

「・・・ふむ、順調と言いたい所だが、いささか進みが遅いか。いや・・・」

 深い闇の中。出会った子供達の姿を映したスクリーンが宙に浮かんでいた。それを眺めながら闇の主は頬杖をつきながらひっそりと呟く。

「・・・進みが遅いのではなく。こちらが性急に進みすぎていると言うべきか。・・・このままでは、な」

 その視線の先には亮やアライブモン達の姿を映し出す以外にも無数に浮かぶスクリーンの中があった。闇の主はその中のある一つのスクリーンへと視線を移した。

 

「・・・戻ってこぬか。あやつの執念は儂の想像を超えておったようじゃな」

 様々な機材に囲まれた部屋の中。自分の髭を撫でながらバルバモンは空の培養器を眺めていた。

 この培養器の中で調整されたダークドラモンが帰ってくる事はなかった。だが、それをバルバモンが気にする様子はない。

「まぁよい。実験は成功したのじゃからな。このデータを元にダークドラモンを量産すれば兵力は揃う。敵となる者の把握も済んだ。準備は万全」

 全てバルバモンの計画通りに事は進んでいた。D―ブリガードが各地を襲っていたのは戦闘を介してD―ブリガードの強化を図り、同時に行動を起こした時に障害となる者を炙り出し、その能力を把握する為。

 ダークドラモンの量産が終われば真の侵略を始められる。ただ、バルバモンにはそれだけでは満足できていなかった。

「・・・と言いたい所ではあるが、まだあと一つ。あれを手に入れなければな・・・」

 その底知れぬ欲を満たす算段を立てるバルバモンだったが、それは通信によって中断させられてしまう。

「噂をすればなんとやら、か・・・・。何の用じゃ?」

「そんな言い方はあんまりではないですか?私と貴方は互いに協力関係を結んでいる。言わば一蓮托生なのですから」

「よく言うわ。儂を利用する気しかないのであろうに」

「それは貴方も同じなのでは?そう言う意味でも一蓮托生と言えると思いますが」

「儂には正反対にしか思えぬがな。まぁよい。それより要件を早く言ってくれんか?」

「ええ、そうしましょう。実はそちらに迷い込んでしまった子供がいまして」

 通信の相手はそう言いながら送られた亮のデータが機材の一つとして備え付けられていたモニターに表示される。

「この子にあまり干渉しないでいただきたいのです。同時にこちらに戻らぬようにして手を講じていただければ」

「干渉せずに気をつけつつ戻らぬようにしろとは。なかなか無茶な要求をしてくる。じゃが流石に遅すぎたのう」

「と、言うのは?」

「もう既にこの子供とは一悶着あったようじゃからな。報告が儂の所に上がってきておる」

「それで、彼は無事なんですか?」

「ああ、幸いな事に助けられたようじゃよ」

「そうですか。それならいいんです。彼が無事である事とこちらに戻ってこない事。最低限その二つさえ守ってもらえれば」

「・・・それだけ重要な存在と言う事か」

「いえ、そうでもありませんよ。ただ、彼を狙うデジモンがこちらに居ましてね。それがなかなかに厄介なデジモンで騒動を起こされると都合が悪い。だからそのデジモンが行動を起こせないようにそちらに行ったままでいてほしいのです。彼が無事でいてもらいたいのも、もし何かあればそれはそれでこちら側で騒ぎの元になってしまいますから。それだけでしかありませんよ。・・・それとも貴方は私が今以上に何かを望む必要があるとでも思っているのですか?」

「・・・確かにな。そなたが手にした力。それがあれば世界を手にする事も可能であろう。儂と同じ魔王が欲した力なのじゃからな」

「ええ、ですから貴方も私に協力してくれている。そうですよね」

「その通りじゃ」

「ふふっ、私も気をつけなければいけませんね。貴方に後ろから狙われないように」

「ふんっ。それは儂とて同じ事。・・・確かに一蓮托生かもしれんな。互いに背中を狙い合っているのじゃからな」

 裏で暗躍し、その為に手を貸しながらも互いに警戒し合っている両者。その謀略に巻き込まれる子供達。一体この先に何が待ち受けているのか。

 それを見通している者はただ一人。誰にも気付かれない闇の奥底でこの事態を憂慮していた。

 

 翌朝。目的を果たした子供達は夜が明けるのを待ち、帰還の為に町から出立しようとしていた。

「それじゃ、私達はもう行くね。アライブモンは大丈夫だってなったら直ぐに戻ってくるから」

「・・・僕達も行くよ」

「え?でも・・・」

 思いもよらない亮の言葉に他の子供達も驚きを見せる。だが、それは決して帰る事を決めたからではなかった。

「僕達はこっちの事を少しは知ってるから手助けできると思うんだ。食べ物の調達とか、こっちでやってるし」

「持ち込んでる食糧はあまり余裕はないからね。ここで補充した分を含めても節約しなければ持ちそうにないし。助かるには助かるけど」

 亮の提案に佑真は思案し、その後に雅人と美優が続く。

「保存食も味気ないしな。それに比べてこっちの食い物はうまかったからな。保存食ばかり、しかも制限されてってのはしんどいんだよな」

「あたしらとしては助かるけど・・・。いいの?」

「僕達を探しに来させちゃったし、それにこれからもアライブモンの為に色々してもらう事になるのに全部任せっきりってのも気が引けるから。大した事は出来ないけど、僕も何かしたいんだ」

「それはいいが、向こうへ帰る訳ではないのだろう?君達だけでここへ戻って来る事は出来るのかい?」

 自分達が帰ってからの事をアスクモンが尋ねるが、心配には及ばなかった。

「それは大丈夫。これがあるから」

 そう言いながら亮はリュックの中から掌サイズの飛行機の模型を取り出す。

「オートパイロットって言ってね。これを使えば大きくなって中に乗れるようになってあらかじめインプットされている町まで自動で帰れるんだ」

「そんな便利な物があるんだ」

「まるでゲームだね。まぁ、デジタルの世界だから同じような物か」

 風花と佑真がデジタルワールドならではの道具に面白い物があるんだなと感心する。これなら見送った後に戻るのも問題はない。

「ふむ。それならこちらが気にする必要はないようだね」

「それじゃ、戻るまでの間だけど私達の新しい仲間って事で。改めてよろしくね」

 美優が選ばれし子供達代表の様に亮を一員として受け入れ、亮とアライブモンも選ばれし子供達と共に帰還までの間、行動を共にする事となった。

「こちらこそよろしく。それで帰る方法なんだけどどうやって帰るつもりなの?」

 亮の疑問に佑真が答える。

「昔にお台場霧事件の時にヴァンデモンってデジモンがゲートを開いて向こうに行った時に使ったゲートがヴァンデモンの城にあるからそれにデジヴァイスの力を加えてゲートをこじ開ける予定。ゲートキーパーが壊れてなければ今直ぐにでもゲートを開けるんだけどね」

 本来ならしなくていい苦労に佑真が面倒だと嘆息する。

「成程。それじゃそこを目指すんだね」

「そういう事」

 目指す先を確認して、亮とアライブモンは他の子供達とそのパートナーと共に歩き出した。

 

 それから数日経ち、子供達の旅路の果てにヴァンデモンの城へと辿り着く。

「・・・どうやらすんなりとはいきそうにないな」

 少し離れた場所で身を潜めながら様子を探る子供達の目に、悠然と聳える城の門前を二体のコマンドラモンが守る姿が映る。

「あれはコマンドラモン?何でこんな所にいるんだろう」

 主を失った城は廃墟同然になっている筈。リアルワールドとデジタルワールドを繋ぐデジタルゲートを開く装置がありはするが、二つの世界の間にある封印によってその装置を以てしてもデジタルゲートを開く事が出来ない。デジヴァイスの力を加えればこじ開ける事は出来るが、単体では意味をなさない筈。

「・・・誰もいない場所って事は誰にも気付かれずに入り込めるって事でもある訳だ。見た感じ中も広そうだしね。拠点として利用するにはもってこいだったのかもね」

 佑真はそう推測するが、これが当たっていようがいまいが厄介な事になっているのは変わらない。帰る為にはD―ブリガードを相手にしなければいけないのだから。

「要するにあいつらを蹴散らせばいいだけだろ。へっ、簡単じゃねぇか。行くぜ、ドスモン」

「オウ」

 そう言って雅人はドスモンと共に駆け出していく。

「あ・・・、おい・・・!ったく、これだから」

 雅人の独断専行に佑真は頭を押さえる。

「いいの?二人だけで行っちゃったけど」

 雅人とドスモンだけで大丈夫かとアライブモンが心配するが、佑真はいたって冷静。こうなる事は既にここまでの付き合いの中で既に経験済み。今更動揺はしなかった。

「まぁ、何とかなるだろ。実力“だけ”は本物だからね」

 実力は認めつつもそれ以外の部分で認めたくないと“だけ”の部分の皮肉に込められている。

「でも、あのデジモンは姿を消せるし、かなり厄介だと思うんだけど・・・」

 町を占領していた時の事を思い出しながらその時に見せた能力を亮が伝えるが、それは佑真達も既に把握していた。

「それは知ってるよ。捜査隊も出くわした事があって、その情報も上がってきてたからね」

 D―ブリガードの事は既に把握済み。問題はない。しかしそれに首を傾げる者がいた。

「・・・でも~、その情報を見てないとか~、忘れてるとかしてそうだよね~」

「「「・・・・・・・」」」

 フワリモンが思ってつい口に出した事。それは一緒に行動をしていた子供達とデジモン達は否定する事が出来ずに嫌な沈黙が流れる。

「・・・はぁ~、ショットモン」

 名を呼ばれたショットモンはそれだけで言いたい事は全て理解していると軽く目配せした後、草むらに隠れるように姿勢を低くしたまま大外に回り込むように雅人達の後を追いかける。

 

 他の子供達の杞憂など知らままに特攻を仕掛ける雅人とドスモン。

 近づいてくる不審者にコマンドラモンは容赦なく銃を構え、迎撃を開始する。

「いくぜ!ぶちかましてやれ!ドスモン!」

「ロックタックル!!」

 交差した両腕で銃弾から身を守りながら銃弾の雨を突っ切って岩石の体を叩きつける。

 それをコマンドラモンも銃でガードするが、岩石の体全身でぶつかってくるロックタックルの衝撃を防ぎきれず吹き飛ばされる。

 それを横目にロックタックルの標的から免れた方のコマンドラモンがドスモンを舐められる相手ではないと判断し、姿を消す。そして吹き飛ばされた方のコマンドラモンもまた立ち上がりながら姿を消した。

「な・・・!?消えるとか反則だろ!」

「・・・ムゥ」

 姿を消したコマンドラモンを前に周囲を見回すがそれで見つけられる筈はない。だが、反対にコマンドラモンからは変わらずドスモン達の姿は丸見え。左右に展開したコマンドラモンがドスモンに向かって一方的に銃弾を浴びせる。

「グゥ・・・!」

 何とかしようと銃弾が飛んでくる方へ腕を振るうが方向は分かっても距離までは分からず、僅かな銃弾を弾くだけでしかない。

 だが、そこに草むらから飛び出したショットモンが現れる。

「・・・LIZ―S」

  飛び出すと同時に飛び出したショットモンが構えたショットガンLIZ―Sを放つ。

  瞬時に放たれた無数の弾丸はその先の空間で消え居ていたコマンドラモンの一体をハチの巣にする。

 適当に撃って当たった訳ではない。例え姿を消していてもそれは体表面のテクスチャを変化させているだけ。発砲時のマズルフラッシュまでは消せはしない。それを頼りに場所を特定した。そんな芸当が出来たのもコマンドラモンの攻撃にも耐え続けていたドスモンの耐久力があってこそ。

 そしてLIZISの激しい反動を利用して後方へと弾かれるように飛んだショットモンは身を捩って半回転。空へ向いていた視線を地面へと向ける。

「メットバッド」

 ドスモンの頭上を越えて次なる空間へとヘルメットで覆われた頭での頭突きをかます。

 瞬く間に二体のコマンドラモンを打倒し、ショットモンは静かに着地する。

「・・・戻るぞ」

 着地よりも静かにそう一言だけ告げてショットモンは引き返す。

「お、おい!・・・何だよ」

 折角倒したのにと悪態をつきながらも雅人はドスモンと共に仲間達の元に戻って来る。

「・・・勝手な行動は止めろって何回行ったらいいのか教えてくれない?」

 戻って来るや否や嫌味たっぷりに辛辣な言葉で迎える佑真に不満げに戻ってきた雅人が更に不満を大きくする。

「何だよ。それならこっちだって何で来ねぇんだって言いたいっつの。折角中に入れるようになったってのに」

 そんな雅人の言い分に佑真はうんざりした顔を返す。

「そのチャンスを潰したのはあんただっての」

「何だよ、それ」

「あんた等が戦ったせいで中の奴等にも侵入しようとしてるってのがばれたんだよ。通信機を身に着けてたし、隠れてる時にでも通信して伝えてるに決まってるだろ。そんな状況で正面から行ったって集中攻撃受けて返り討ちになるのは目に見えてるよ。警戒レベルだって引き上げられてるだろうし。はぁ~、これで侵入するのがもっと難しくなったよ」

「だ、だったら止めてくれりゃいいだけだろ」

「うん。だから常に言ってるだろ。勝手な行動を止めてくれって。何回もね」

「うっ・・・」

 ぐうの音も出ない程に言い負かされた雅人を放って佑真は侵入方法へと思考を回す。

「・・・でも、どうする?周辺は探索がされている可能性が高い。しかも姿を消せるとなると迂闊に近づく事も出来ないしな・・・」

「姿が見えなくても影まで消せる訳じゃないから分からない事もないと思うけど」

 亮が経験から知った事を伝えるが、今回はそれは役に立ちそうにない。

「・・・いや、建物の陰に紛れてたら見つけられないし、建物の中にいる奴等も陰で把握するのは完璧には出来ない。敵がどれだけいるかも分からない中で迂闊な事は出来ない」

「地上がダメなら空から。と行ければいいのだろうが私達の中で空を飛べるのはフワリモンだけだからな」

 アスクモンも考えている事を口にするも、それは不可能だと切り捨てる。だが、佑真はそれを可能にするピースを繋げる。

「・・・いや、それいい考えだよ。八神君。オートパイロットだっけ?あれって一つだけ?幾つかあれば何とか出来るんだけど」

「えっと、確かまだ七つぐらいあったと思うけど」

「七つか・・・。オートパイロットって一人乗り?」

「ううん。二人まで乗れるようになってるけど」

「それなら十分だよ。じゃぁ・・・、ああ、でもその前に亮君ってどこまで付いてくるの?」

「どこまでって」

「こっちに残るんだろ?だったらここで戻ってくれてもいいからさ」

「・・・そうだよね。ゲートの所に辿り着いてそのまま向こうに帰るんだよね。それだと僕達が脱出しなきゃいけなくなるし。それは流石に無理か」

「脱出についてはそこまで気にしなくていいけど。あいつ等もゲートを通って向こうに行かれるかもしれないからここにいる奴等は全部追い払うのが先になるだろうし」

 追い払うと言うのであれば奥まで辿り着いても亮とアライブモンだけで戻る事も出来る。何だったら亮とアライブモンを外まで送ってから他の子供達がゲートの所まで戻ると言う事も出来る。

 だが、ここから先も同行するのなら恐らく亮とアライブモンも戦闘に参加する事になるだろう。

 アライブモンに戦わせたくはない。力を使っていた時のアライブモンの異様な姿。そしてその後に多大な負荷を受けて苦しむアライブモンの姿が脳裏に浮かんでくる。けれど、他の子供達とパートナーのデジモンだけに行かせてそのまま町まで戻れる程、面の皮は厚くない。

 付き合うべきか戻るべきか。その答えが出せない亮の手をアライブモンが引く。

「一緒に行こ。皆の力になれるかもしれないから」

「アライブモン・・・」

 バンチョーレオモンとの出会いを経て一回りも二回りも成長したアライブモンの意思に亮も繋がれた手を握り返す。

「・・・うん、そうだね。僕達も協力するよ」

「そう、ま、こっちとしてもどれだけ中にいるのかも分からないから人手があるに越したことはないからね」

「もう、折角協力してくれるって言ってくれてるんだからもっと柔らかい言い方ぐらいしてもいいんじゃないの?これだからうちの男連中は・・・。でも、亮君は違うみたいだから私としては大歓迎よ」

「でも、無理はしないでね。亮君達に何があったらいけないから」

「ふーちゃん心配しすぎだよ~。私達もいるし皆もいるんだから大丈夫」

 亮とアライブモンの決断を受け入れ、D―ブリガードを追い払う為の作戦を遂行する為の準備に取り掛かる。

 

「それじゃオートパイロット貸してくれない?」

「あ、うん」

 佑真は亮からオートパイロットを受け取ると隅々まで観察していく。

「・・・見た感じただの模型だね。っとここにポートがあるんだ」

 オートパイロットの背面下部にあるポートを見つけるとタブレットPCを取り出してオートパイロットとケーブルで繋げる。

「・・・これなら何とかなりそうだね」

 タブレットPCの画面にはオートパイロットを構成するプログラムが表示される。それを見て佑真は片側の口角を吊り上げる。だが、他の子供達はちんぷんかんぷん。

「・・・で、具体的には何が出来んの?」

 美優の問いに佑真はプログラムをいじりながら答える。

「見た感じこれはそのまま戦闘機を小さくしたような物みたいだからね。まぁ、武装はないけど。でも、それ以外は完璧。脱出装置もあるからルートを設定してあの城の上を通過するように設定して、座標が重なった時に脱出装置を起動するようにすれば屋根の上に降りれる。そうしたら窓から中に侵入できるしね」

「ほぉ、そんな事が可能だとはね」

 プログラミングまでやってのける佑真にアスクモンが感心する。

「大した事ないよ。ちょっとデータいじるだけなんだし。流石に本物の戦闘機じゃこうはいかないだろうけどね。全てがデータで構成されているデジタルワールド様様」

「でも、そんなんやってもうまくいくか?空からなんて丸見えだろ」

 作戦に対して雅人から指摘が入るが、佑真はそれを軽くいなす。

「そんなの隠せばいいだけだろ。フワリモンが進化すれば解決するっての。ああ、それと戦闘機が近づけば警戒するとか言い出すかもしれないから先に言っとくけど、そのまま通り過ぎれば気にしなくなる。まさかそこから飛行中に飛び降りてくる奴がいるなんてそうそう考えつかないだろうしね」

「へいへい、俺が考えつく事なんか頭のいいお前にはとっくに解決してるんだろうな」

「少しは物分かりがよくなったみたいで良かったよ。それじゃ朝霧さんとフワリモン。頼んだよ」

「私達の出番だね~。ふーちゃん頑張ろ~」

「う、うん、責任重大だね」

「気を張るような事じゃないよ。寧ろ一番安全なのは君達になるかもしれないしね。よし、これで行けるか。それじゃ、他のをやってる間に君達に行動してもらおうか」

 佑真は作戦の概要を伝え、風花とフワリモンがそれに従う。

「行くよ。フワリモン」

「うん、フワリモン進化!」

 風花がデジヴァイスを掲げ、発せられる光を受けてフワリモンの体を覆う羊毛が雨雲の様に灰色に変化し、その中からすらりと伸びる四肢と緩やかに巻いた角の生えた頭を出すクラウディモンへと進化を果たす。

 そしてクラウディモンが風花を背に乗せ、空へと駆け上っていく。

「エクステンドクラウディ!」

 クラウディモンが纏う羊毛が広がり、空を覆いつくしていく。

 そしてその中に紛れて風花とクラウディモンが最初に見張り台の屋根に降りる。

 気付かれたかどうかを確認出来れば作戦を中断して退かせる事も出来るが、姿が見えない以上相手の反応を確認する事も不可能。見張り台の真上に降りているのだから気付かれていれば直ぐに対応してくるだろうが、それがない以上は気付かれていないと考えるべき。反応が見えない以上は恐らくとまでしか言えないが。

「・・・姿が見えないってのはやっぱり厄介だね」

「始めた以上はうだうだ言ってねぇでやるしかねぇだろ」

「・・・止めるなんて言ってないっての」

 反応を把握出来ない事は予想していたが実際にその不快さに作戦を続行するべきか判断に迷いが生まれる。

ついそれを口にしてしまった所に良くも悪くも迷いとは無縁な雅人に妥当な事を言われ、また別の不快さを感じながらも否定できずその分、表情を濁らせながらオートパイロットを起動させる。

「それだけ威勢がいいんだったら最初に乗ってもらおうか。不備がないか確認ついでにさ」

「・・・それって大丈夫なのか?」

「多分ね。試してみない事には試してみない事には確実な事は言えないし。何?もしかしてビビってんの?」

「んなわきゃねぇだろ。行けばいいんだろ、行けば。行くぞ、ドスモン」

 佑真の意趣返しに誘導されて雅人は大きくなったオートパイロットにドスモンと共に乗り込む。

「で、これどうすりゃいいんだ?」

 戦闘機の操縦なんてした事がある訳のない雅人にどうすればいいのか分かる訳もない。だが、そんなに複雑な操作は必要ない。

「中央の辺りに大きなボタンがあるからそれを押せばいいだけなんだけど・・・。それでいいんだよね」

「ああ、その辺りはいじってないからね」

 オートパイロットを使用した事のある亮が変更はないかと佑真に確認しながらも使用方法を伝える。

「・・・これか」

 言われた通り見てみると計器や操縦桿がある中で異彩を放つまるでおもちゃの様なボタンを見つけ、雅人は躊躇いなく押すとハッチが締まり、エンジンが起動し殆ど滑走する事無く飛び立つ。ボタン一つで戦闘機が動くなんてリアルではありえない事がいともたやすく起きるのもデジタルワールドならでは。

 見た目だけではなく、質感さえも雲そのものの様にクラウディモンの羊毛の中を突っ切り、佑真の組んだプログラムの通り城の真上に差し掛かった所で脱出装置が起動し、コクピットから排出される。そしてパラシュートが開いてゆっくりと降下する、筈だったが質感が似ていても雲ではなく羊毛。繊維が絡まってパラシュートが開かない。

「・・・これってヤバくね」

「・・・アア」

 重力に引かれ、落下の勢いが増していく雅人達はやがて下まで落ちてしまう。だが、衝撃はなかった。

「間に合って良かった」

 落下する雅人とドスモンをクラウディモンが背中で受け止め、そのまま下まで降りていく。

 

「・・・プログラミングは完璧だったけど、作戦に穴があったみたいだね。まぁ、ああなるかもとは思ってたけど」

「・・・思ってたんなら言っておきなさいよ」

「言っても余計な恐怖心を煽るだけだよ。クラウディモンがいればそれも問題ないってのも想定内だったし」

 効率的なのか陰湿なのか。美優にわかる事はたった一つ。

「・・・何で真面な男がいないのかな」

 美優はつくづく自分の男運のなさにうんざりする。

 だが、そんな嫌気にいつまでもかかずらっている暇はない。真面ではあるが美優の範囲外にいる亮が作戦を先に進めるよう促す。

「ど、どうやら計画通りに収まってるみたいだし、僕達も行かないと」

「一秒無駄にする度に成功率は下がってくしね。次、どっちでもいいよ」

「・・・あんなの見た後じゃ気が乗らないけど少しでも早く解放されたいものね」

 美優は紐なしバンジーもかくやと言う恐怖体験の方が自分の望みの可能性がないのに面倒な仲間に無駄に付き合い続けるよりマシだと次に起動させたオートパイロットに乗り込んで雅人に続く。

「次は僕達だね・・・」

 高所から落とされる光景を遠目ながら目の当たりにして亮は躊躇してしまう。

「考え変えてもいいけど?無理に行く必要はないし」

 佑真に改めて尋ねられた迷いの答えを出す前に亮にアライブモンが手を握ってくる。

「行こう。亮」

 いつもより強く握ってくるアライブモンの手から同じ恐怖を感じているのが伝わってくる。同時にそれを乗り越えようとする意志も。

「・・・うん」

 そうして亮とアライブモンも、そして最後に佑真とショットモンもオートパイロットを利用して見張り台の屋根に降りる。

 

「さてと、では私が様子を探ってみるとしよう」

 無音で移動できるアスクモンが屋根を這って上から中を覗き込む。そして戻って仲間達に伝える。

「ここにはコマンドラモンが二体。そことそこの辺りにいたよ」

「それならショットモンとドスモンが同時に飛び込めば制圧できるかな。ショットモンは向こう。ドスモンはその反対側からって事で」

「いいのか?また馬鹿やるかもしれないぞ」

「今、これやれるのはショットモンとドスモンだけ。勝手な暴走さえしなければ君達の戦力は貴重だからね」

「・・・お前がそんなこと言うなんて、雨どころか隕石でも降ってきそうだな」

「何言ってんの。ずっと言ってるだろ。あんたが馬鹿な事やらなきゃこっちも余計な事言わなくて済むんだって」

「・・・前言撤回。快晴が続きそうだな」

「そう言う下らない事を言うから駄目なんだよ。ショットモン。ドスモン。頼んだよ」

「おい、ドスモンに命令すんじゃねぇよ」

「マサト。キニスルナ。ヤルコトハカワラナイ」

「・・・仕方ねぇな。ドスモンに免じて許してやるよ」

「・・・はぁ。そうかい。それじゃぁ、改めて頼むよ」

 その余計な事がいらないんだと佑真が心底うんざりする一方でショットモンとドスモンが佑真の指示通り乗り込み、数秒と経たずに制圧を完了する。

「僕達はあまり役に立たないかも」

 亮はそのあまりの早業にそんな感想を呟きながら選ばれし子供達に続いて見張り台から城の内部へと侵入する。

 

「・・・うわ、ここってどうなってるの?」

 アライブモンがそう言うのも無理はない。

 まるでトリックアートの世界に踏み込んだかのように上下が無茶苦茶になっている入り組んだ通路。しかもそれは単に通路がめちゃくちゃになっているだけではなく逆さまになっている通路の上を当然の様に逆さまで移動するコマンドラモンの姿が重力までもがその法則に従っているのを示していたのだから。

「私は別に何とも思わないが」

「そりゃあんたはね」

 地面も壁も天井も関係なく這って進めるアスクモンはこんな不可思議な空間を常に生きている。

 アスクモンと美優がそんな会話をしている間に佑真がリュックの中からドローンを取り出す。

「まずは周囲の状況を把握する。こんな所じゃ隠れながら進むのも難しそうだしね。念の為にこいつを持ってきておいてよかったよ。これが終わるまで皆は待機してて」

 ドローンを飛ばした佑真はタブレットPCで送られてくる映像を元にマッピングし、ショットモンがドローンや自分達に気付く可能性のある敵の動きを監視し、それを逐一伝えて佑真のサポートを務める。

「・・・こう言うのって落ち着かねぇな」

 隠れるのが性に合わない雅人がうずうずと飛び出したい気持ちを抑える。

「じっとしてないと。折角、間宮君が探ってくれてるんだから」

「分かってるんだけどよ・・・」

 亮に注意されるも落ち着きのなさは変えられない。

「でも、ドスモンは全く動かないよね」

 パートナーとは対照的に微動だにしないドスモンのデンとした姿に風花はそう呟く。

「まぁ、そいつは岩だからな。家にいる時もする事がない時は像みたいにじっとしてるぐらいだし」

「本当に全然動かないね~」

「うん、凄いカチカチ」

 好奇心からフワリモンが頭に乗られ、アライブモンに体を触られてもドスモンはピクリともしない。

「フワリモンもアライブモンも断らずに触るのはよくないよ」

「そんなの一々気にする奴じゃねぇし、別にいいんじゃねぇの」

「アア、オレハ、キニシナイ」

 そんな緊張感のないやり取りを前に作業に没頭していた佑真も口を開く。

「・・・あんた等隠れてる自覚あんの?まぁ、勝手に飛び出されるよりはいいけど」

 チクリと一言言いながらドローンの操作を続けていたが、そのドローンがコマンドラモンに気付かれ撃ち落されてしまう。

「あ・・・・。ごめん、静かにしてなくて」

 自分達のせいでミスしてしまったのかと亮が謝るが、佑真はそれを不思議そうにする。

「何で謝ってんの?もしかしてそのせいで落とされたとか思ってる?だったら必要ないよ。元よりこうなるのは分かってたし。こんな場所であんなの飛ばしてたらそりゃ落とされるよ」

 ドローンが撃ち落されたと言う事は敵にばれたと言う事。にも拘らず平然としている佑真に雅人が慌てだす。

「おい、そんな悠長にしてる場合かよ」

「ここにいる事まで知られた訳じゃないし、焦らなくてもいいっての。数で劣る上で戦うんだったら狭い場所の方が良い。つまりここ。後ろも気にしなくていいしね。周辺の構造も大体は分かったし、後はここにいる奴等を倒すだけだ」

 普段通りのクールさの中に普段見せない戦意を滲ませる。

 

「エクステンドクラウディ!」

 クラウディモンが羊毛を周囲へと広げて通路の空間全体に満ちる。

「これで視界を潰せる。こっちが相手を見えなくなるのと同じように向こうもこっちを見えなくなる。条件は同じ。でも、こっちは見えなくても把握する事はできる。クラウディモン。敵は何処にいる?」

「こことここと、それにここ。他には・・・」

 クラウディモンが広げた羊毛を掻き分けて進む敵の動きを感じ取り、タブレットPCに表示された周辺の地図に敵の居る場所を蹄の先で指し示していく。

「・・・成程ね。これなら数が来てもこの通路で迎え撃てるか。それ以外でも色々とやりようがあるか・・・」

「戦略を考えるのもいいが、いつまでも悠長にする訳にも行かないのでは?見つかってはいなくともここにいる事は知られてしまっているのだから増援を差し向けられてしまうだろうし」

 アスクモンの指摘に細かい事は状況に合わせてその都度修正すればいいと佑真はそれに首肯する。

「ああ、そうだろうね。じゃぁ、排除開始といくかな」

 そうしてD―ブリガードとの戦闘。その本番の幕が切って落とされた。

 

「・・・一体何処にいる」

 クラウディモンの羊毛に視界を塞がれた状況の中、ツーマンセルで捜索を行うコマンドラモン達が互いの場所を確認し合う意味も込めて軽い会話を繰り返していた。

「まさか俺達の方が襲撃を受ける事になるなんてな。しかも視界を潰すなんて味な真似しやがる」

「だが、それは向こうも同じ筈。把握出来たとしてもこの状況を作り出している奴だけだろう。タンクドラモンの様に情報を共有できるなら別だろうが」

「流石にそれはないと言いたいが、ここまで入り込まれてるのを鑑みればそうも言って・・・」

 言葉を交わしながらも耳を澄ましていたコマンドラモンが迫ってくる何者かの存在に気付き、言葉の代わりにその方向へと銃口を構える。

 と、同時に羊毛を突っ切って飛び出して来たドスモンにコマンドラモンは反射的に銃弾を撃ち込む。

 だが、頑強な岩の体に覆われたドスモンは止めるには至らない。

「ドスンパンチ!」

 ドスモンが繰り出した重い拳が片方のコマンドラモンの胴体に炸裂し、激しい衝撃と共に吹き飛ばされる。

「・・・くっ」

 もう片方のコマンドラモンは不利だと判断を下し、仲間を置いて後方へと下がり、羊毛の中へと姿を消す。

「・・・そのまま直進。逃がすなよ」

 ドスモンの後に続いてきた雅人が佑真から渡されて装着していたヘッドセットを通じて佑真の指示が届く。

「おい、ドスモンはそんな早くは走れねぇぞ」

「言われるまでもない。その先の通路は曲線になってて視界が悪い中じゃ逃げ足は鈍る。だからさっさと追いかけろ。逃げられるだろ」

「ああ、そうですか。ドスモン。さっきの奴を追いかけるぞ」

「アア」

 指示通りに追いかける。確かに通路は緩やかに曲がりくねっている。あまりにも非効率的で無意味なつくりだが、重力すらも無茶苦茶なこの空間でそれを言うのもナンセンスか。

 全力で走るも足の遅いドスモンだが、ドスモンの全速力程度なら緩やかなカーブなら狭い視界でも辛うじて対応が出来る。

 対するコマンドラモンは佑真の読み通り全速力は出せない。それでもドスモンと同じ程度に速度を落とせば通路のカーブに対応はできる。だが、追う側と追いかけられる側では同じにはならない。

 背後から追いかけてくるドスモンの足音に気を取られたコマンドラモンは前方と後方共に意識を割かれ、その分だけ速度を出せずにいた。

 その差によって追いついたドスモンはその勢いのまま体当たりをぶちかます。

「ロックタックル!」

 そのままコマンドラモンを倒すと雅人がそれを佑真に伝える。

「もう片方のも倒したぞ」

「それなら一度引き返して別れてる通路の右に進んでくれ」

「分かれた通路を右だな。ドスモン、戻るぞ」

「モドルノカ。ワカッタ」

「ちょっと待ちなさいよ。あたし達が付いてきてるの忘れないでよね」

 そう言いながら雅人の後から美優とアスクモンも現れる。

「次に行く前に傷を治しておかなければな。パナケイヤ」

 アスクモンは尻尾に巻き付けた杖を掲げると柔らかな光を放ち、ドスモンが負っていた傷を癒していく。

「さぁ、これで大丈夫だ」

「タスカル」

「それじゃさっさと次倒しに行ってきなさい」

「お前まで命令すんのかよ」

 そんな風に雅人とドスモン。美優とアスクモンが行動を共にしながら各個撃破を続けていった。

 

「どんな気分だろうな。逆の立場になるってのは」

 相手から姿を消す戦法を取るコマンドラモンだが、今は相手に視界を潰されながら自分達の場所を把握されている。

通常なら自分達が行う戦法を相手にされてしまった状況に陥ったコマンドラモンがどんな反応をするのか。それを想像する佑真は心底楽しそうにほくそ笑む。

 その傍らで何も役割を与えられていないアライブモンが呟く。

「何もしなくていいのかな・・・」

「いきなり加わっても連携を邪魔するだけになるかもしれないからね」

 皆の力になりたいと決意しながらもそれが果たせていないアライブモンに亮は亮なりに宥める。

「ヘッドセットも亮君の分は用意してこなかったみたいだし。仕方ないよ」

「アライブモンの力が必要になる時がないんなら問題ないって事だからそれはそれでいいと思うけど」

「・・・そうなのかな?」

 風花とクラウディモンにもそう言われアライブモンも完全には納得できないながらもくすぶる思いを胸に収める。

「そうだね。そのうち増援が来るだろうし、そうなればショットモンにも対応してもらわなきゃならなくなるけどその時にもし敵がここに気付いた場合の事を考慮しておくとショットモンの行動が制限しなくちゃいけない。クラウディモンは残るとしても戦闘には向いてないしね。だからこそ、君がここにいていざと言う時に僕達を守ってくれるのならショットモンも自由に動く事が出来て作戦の成功率も飛躍的に上昇させられるからね。君がいてくれるだけでも大きな意味があるよ」

「・・・そっか・・・うん。皆を守るよ!」

 佑真はアライブモンの思いを汲んだと言う訳ではなく。ただの事実を並べただけでしかないが、その事実によってアライブモンは自分の役割の重要性を理解する。

 そうこうしているうちに佑真の想定通り、仲間が次々と倒されている事に気付いたコマンドラモンの要請を受けて大勢の援軍が送られてくる。

「・・・援軍の到着だ。ここからが正念場になるぞ」

「せいせいするぜ。これでちまちませずに済むんだからな」

「さっさと帰る為にもサクッと終わらせちゃいましょう」

 通信機越しに佑真、雅人、美優の三人はこれより先の仕事を確認し、揃ってデジヴァイスを構える。

「ショットモン!」

「ドスモン!」

「アスクモン!」

「「「進化!!」」」

 デジヴァイスから発せられる光を受け、ショットモンはヘルメットがぴったりと嵌るまでに成長し、身軽さを感じさせる細身の体で武器をアサルトライフルへと持ち替えたアサルトリザモンへ。

 ドスモンは岩石の肉体が更に隆起し、更に鋼に覆われた拳を得たドゴスモンへ。

 アスクモンは人間の上半身と蛇の下半身を持ち、雌雄一対の蛇を体に巻き付けるナーガモンへ。

 それぞれが進化を果たし、ここでの戦いもまた先のレベルへと進化する。

「そこから前進。一分後に増援部隊の一つがやってくる。通路は少し広くなるから思う存分暴れていいよ」

「そりゃ有り難いが、かなりの数が来たりはしないんだろうな」

「増援なんだから当たり前だろ。でも、気にしなくていいよ。通路も広くなってるって言っても部隊を展開しきるには狭すぎるし、それにお膳立てはしておくからね。はい、残り50秒。向こうは待ってくれないぞ」

「やりゃいいんだろやりゃ。・・・お膳立てって何なんだ?」

 雅人は通信を切ってから佑真の言っていた事が気にかかる。だが、通信をしなおす暇はない。

「まぁいいか。ドゴスモン。この先の通路に援軍が来るらしい。結構いそうだし油断するなよ」

「ノゾムトコロダ」

 佑真からの指示を受けて先へと突き進む。

「で、こっちはどうすればいい訳」

 雅人とドゴスモンの後姿を見送りながら美優は自分達の行動を尋ねる。

「君達には一番重要な役割をしてもらう事になるよ」

 そうして盤面はチェックメイトへと向かっていく。

 

 雅人とドゴスモンが増援部隊と遭遇するそれより数秒前に敵の頭上を通る通路をアサルトリザモンが潜伏していた。

「・・・そっちはどう?」

「いつでも行ける」

 佑真の確認にアサルトリザモンは短く告げる。

「それなら予定通りに」

 通信を終えるとアサルトリザモンはアサルトライフルを背負い、四肢を使って壁に張り付いて敵の頭上へと移動。そして両手を話してぶら下がると懐から手榴弾を取り出す。

「スプラッシュグレネード」

 放り投げると同時に手榴弾は分裂し、爆撃となって降り注ぐ。

「どこからの攻撃だ!!」

分裂した手榴弾の威力は低いが相手を錯乱させるには十分な効果を上げる。

「・・・上だ」

 シールズドラモンがスカウターモノアイにて生体反応を探ってアサルトリザモンの場所を発見し、コマンドラモン達が集中砲火を仕掛ける。だが、その時には既にアサルトリザモンは通路を登り、銃弾から逃れていた。

「どうやらお膳立てってのがこれらしいな。ドゴスモンこっちも派手に行くぞ!」

「オウ!」

 アサルトリザモンへ注意が向いている隙をついてドゴスモンが突撃する。

「ドゴスナックル!」

 その剛腕でコマンドラモンを纏めて薙倒す。

 別方向からの襲撃にもシールズドラモンはいち早く反応して回避し、そこから続けてナイフを構えてドゴスモンに切りかかる。

「デスビハインド」

 シールズドラモンの目にもとまらぬ早業にドゴスモンは戦士の間で考えるよりも先に引いた右腕で辛うじてガードする。

「ムゥ・・・!ナラバ・・・!」

そして弾き返すと共に左手を腰に落とし、渾身の力を込めて突き上げる。

 だが、シールズドラモンは迫りくる鋼鉄の拳にも動じず、その拳の先に足をかけ、拳の勢いを跳躍力へと変換し高く跳ねる事でダメージを限りなくゼロに減らす。

 シールズドラモンへのカウンターを狙ったドゴスモンの一撃は無効化されただけでは終わらず、その瞬間に他のシールズドラモン達がドゴスモンの周囲を囲み、全方向からデスビハインドを叩き込もうとする。

「エレクトリックウール!」

 ドゴスモンのピンチを察知したクラウディモンが発生させた静電気がシールズドラモン達の体を走る。

 だが、所詮は静電気。シールズドラモンの動きを一瞬止める程度しか出来ない。でも、それで十分だった。

「スピニングスチール!」

 高速回転しながら両腕を広げたドゴスモンの鋼の拳が周囲を囲んでいたシールズドラモンを一掃する。

「チッ・・・!」

 ドゴスモンの拳を踏み台にして宙へと逃れていたシールズドラモンは舌打ちと共に着地する。

「何をしている!お前らも攻撃しろ!」

 コマンドラモンへ怒声を飛ばすが、シールズドラモンはその怒声を詰まらせてしまう。

「おねんね中の相手にそれを求めるのは流石に無理があるんじゃないか?」

 ドゴスモンへ注意が移った僅かな間に集団の中に飛び込んで瞬く間に壊滅させたアサルトリザモンが倒れ伏したコマンドラモン達の中で手にしたアサルトライフル・LIZ―Aの銃身を燻らせていた。

「・・・・・・」

 自分達の部隊が壊滅に追いやられた現状に対してシールズドラモンの前後には迫ってくるドゴスモンと悠然と行く手を塞ぐアサルトリザモン。

 最後に残ったシールズドラモンが追い詰められる中アサルトリザモンの足元にいたコマンドラモンが意識を取り戻し、M16アサシンを掴もうとするもそれより早くアサルトリザモンが放った銃弾が弾き飛ばす。

 だが、その一秒足らずの間にシールズドラモンはアサルトリザモンの背後を抜けて逃走する。

「ご苦労さん。よくやってくれたよ。後はそのまま寝とけ」

 羊毛の中へと姿を消したアサルトリザモンを気にも留めず、アサルトリザモンは銃床をコマンドラモンの首筋に打ち付けて再び昏倒させる。

「・・・オワナイノカ?」

 逃げていったシールズドラモンを気にも留めないアサルトリザモンへドゴスモンが傍へ寄りながらそう尋ねる。

「その必要はない。こいつが起きるように手加減したのもこうさせる為だからな」

「・・・ドウイウコトダ?」

「撤退しようとした時にどちらから逃げるとなれば動きの遅い君の方へ逃げる。もしそれで抜けられたらその先にいる雅人や美優が捕まって人質にされるかもしれない。そうなった所でクラウディモンの力を使えばどうにか出来るだろうが面倒な事になるのは変わりない。確実に仕留める為にはこっちに逃げてもらう必要があった。それに彼等にも出番があった方が良いしな」

 全ては作戦通りに進んでいた。

 逃走したシールズドラモンが追われていない事を確認すると別の部隊へ通信を行おうと足を緩める。だが、その前に足元に異物がある事に気づき足を止める。それが植物の種だと気付いた時には遅かった。

 その種から芽が生え、それが蔓となって体に巻き付き拘束される。抵抗する暇さえない一瞬の早業。

 雄の蛇の顎を撫でながらナーガモンがその姿を現す。

「流石としか言いようがないね。全部佑真の作戦通りになるなんて」

 ナーガモンはドゴスモンとアサルトリザモンが戦っている間に通路の裏を伝って反対側へと回り込んでトラップを仕掛けていた。全ては佑真の作戦通り。

 その事にナーガモンが感心している間に雄蛇の伏犠が左腕へと移動し、空いた右肩に身動きが取れなくなったシールズドラモンを担いでドゴスモンとアサルトリザモンに合流する。

「死屍累々とはこの事だね」

 ナーガモンはそこら中に倒れたD―ブリガードの一軍を前にドゴスモンとアサルトリザモンの戦闘力にも感心しながら担いでいたシールズドラモンをその中に投げ込む。

「誰も死んでないぞ」

「ふむ、それなら全員捕えておかなければならないね。頼んだよ。木徳・伏犠」

 元居た位置へと戻り、ナーガモンの右肩から顔を出す雄蛇、伏犠が瓢箪の種を吐き出し、その種が見る間に成長し、育った巨大な瓢箪が倒した敵の全てを吸い込む。その間にドゴスモンがぽつりと呟く。

「・・・キイテナカッタガ」

「ナーガモンの事か?話す時間はなかったからな」

「・・・マサトガオコリソウダ」

「それなら心配はいらないよ。美優がもう伝えているだろうからね」

「ソウカ。ナライイ」

 アサルトリザモンからまたしても佑真から全てを聞かされていなかったのかと雅人が不満を露わにするのを想像していたドゴスモンだったが、ナーガモンによってその必要はないと知る。

「さてと、それじゃ次のグループを排除しに行くとしよう」

 こうして完璧ではないながらもそれぞれのデジモンの能力を活かした連携によってD―ブリガードを次々と排除していく。

 

「・・・ここを狙ってくるとはのう。ここを拠点にしているのはまだ誰にも知られてはおらんかった筈。ならば狙いはゲートと言う事であろうな。で、あれば襲撃者は向こうへ帰ろうとしている人間の子供達じゃろうな。・・・しかしこうも簡単にやられてしまうとはのう。中に入られてはタンクドラモンも力を発揮できぬか。こうなった以上は被害を抑える為にもこのまま行かせてもよい所じゃが・・・そうも行かぬか。あやつに言われておる以上はな」

 こうなってしまった以上、取るべきは最後の手段。子供達の許へ最大の危機が迫ろうとしていた。

 

 D―ブリガードを次々に排除しながら城内を踏破し、やがて一行はゲートのある広間へと辿り着く。

「・・・・・・」

 クラウディモンの羊毛では広間へ流れ込みにくく、代わりにアサルトリザモンがLIZ―Aを構えながら内部を探る。

姿はない。それでもコマンドラモンが姿を消して潜んでいる可能性もある。影にも注意を払い、彫像などの陰にも紛れてないかライトを当てて確認する。

「・・・クリア。大丈夫だ。ここには誰もいない」

 アサルトリザモンが安全を確かめると残りのメンバーも中に入ってくる。

「ふぅ、これで帰れるようにはなった訳ね」

 任務の終わりか目に見える形で表れてほっと胸を撫で下ろす美優だったが、そんな美優にナーガモンが水を差す。

「帰るにもまだ少しかかるよ。D―ブリガードがまだ残ってるかもしれないし、亮君とアライブモンも外まで送らないといけないしね」

「口うるさく言わなくても忘れてないってば」

「それならいいんだけどね」

 そんな二人のやり取りにアライブモンは近づいてくる別れの足音を感じていた。

「・・・そっか。もう帰っちゃうんだね」

 寂しさを漏らすアライブモンにクラウディモンがその寂しさを紛らわせようと話しかける。

「お別れって言っても直ぐに戻って来るから。アライブモンは危険なデジモンじゃないって説得しに戻るだけだもん。それに次に戻って来るときはアライブモンと亮君も一緒に帰れるしね」

 クラウディモンはアライブモンと共にした時間によってアライブモンが危険なデジモンではないと理解している。だが、クラウディモン以上に時間を共にしている亮は簡単に頷く事は出来なかった。

「・・・でも、そう簡単に行くのかな」

 問答無用で襲ってきたアルファモンの事を思い出してしまい、どうしても心配は拭えない。

 そんな亮にクラウディモンがそうしたように風花も亮の心配を和らげようとする。

「きっとうまくいくよ。アライブモンが危険なデジモンになるって言ってたけど、もしそれが嘘じゃないとしても、データを持ちかえればそうならないようにする方法を見つけ出せる。そうなればアルファモンがアライブモンを襲う理由も無くせるんだから」

「・・・そうだね。うん、きっとうまくいく」

 想定通りに進むとは限らない。けれど、亮にはそうなると信じる以外に出来る事はない。

 そんな亮の苦悩に悩みとは無縁そうな雅人が亮の背中を叩いてくる。

「何とかなるって。そいつが悪い奴じゃないってのはよく分かってるしな。しっかり伝えてきてやるよ」

「う、うん。ありがとう」

 雅人の強引さに押され気味になりながらも、そのおかげで多少は気が逸れていく。

 そして佑真も普通とは違うが佑真なりに気遣いを見せる。

「まぁ、説得できなければ別の方法を考えればいいだけ。その都度、最大限出来る限りの事はするし。泉さんや教官とか、大人も対応してくれてるしね」

「・・・そうだね。太一さんだっているんだ。だからきっとどうにかしてくれるよね」

 かつて亮を救ってくれた最も信頼する太一が関わってくれている。何よりも心強い筈なのだが、オメガモンとアルファモンの戦いを見ていた亮はそれでも確信する事は出来ない。それでも太一ならきっとどうにかしてくれる。そう言い聞かせるしかなかった。

 そんな亮の事など露知らず。雅人と佑真はまた言い合いを始めてしまう。

「お前はなんでそうズレてんだよ」

「別の観点から事実を言ってるだけだろ。それにそう言うあんたは碌に考えもしない勢い任せ。それに比べればマシでしょ」

「勢いじゃねぇよ。こいつらを見てきてそう思ったからそう言ってんだからな」

「だからそれが勢いだけだって言ってるんだよ」

「あ~!もう分かんねぇ奴だな!そうじゃねぇって言ってんだろ!」

「違うんならどう違うのか。ちゃんと説明してくれない?じゃないと反論にならないよ」

 そんな二人に苦言を呈する者が徐に現れた。

「・・・敵地であるにも関わらず喧嘩を始めるとは呑気じゃのう。緊迫する中での余裕は必要じゃが、気を抜いてしまうようでは命取りになるぞ」

 まるで初めからそこにいたかのように何の気配もなく現れたバルバモンに全員の視線が集まる。

「何で爺さんがこんな所に・・・。」

「チカヅクナ、マサト。ソイツハキケンダ」

 老人の姿であるバルバモンに雅人は油断を見せるが、同じ老人の姿であるにも関わらずババモンとは違う圧倒的な存在感を感じてドゴスモンが静止させる。

 それだけの存在感を持ちながらも気配無く現れたバルバモンにドゴスモンだけではなく、他のパートナーデジモン達も一斉に警戒する。

「ほっほっほっ。ただの老いぼれに聊か過剰な反応ではないか?」

「ただの老いぼれ?それが事実なら多勢の相手に構えられてそんなに悠長には出来ないと思うが?」

「それ以前に俺達以外でここにいると言う事はD―ブリガードに関係していると告げてるようなものだ。察するに黒幕か、それに等しい者と考えるべきだろう」

 バルバモンの異様さをナーガモンとアサルトリザモンがそう推測する。

「ほう、その程度は考える力を持っているのか。じゃが、それぐらい出来ない様な者に儂が鍛えた兵士がしてやられるなどあまりにも無様すぎると言うもの。だとしてももっと鍛え直さねばならぬのは変わりないがのう」

 そう言いながらバルバモンの目に狂気の色が宿る。この後にどんな地獄がD―ブリガードに訪れるのか想像もできない。だが、そんな事を気にしている余裕はない。

「このまま見逃してくれる訳ないよね。だったらここに現れる訳ないもんね」

「ナラバ、ウチタオスホカナイ」

 クラウディモンとドゴスモンだけではなく、アサルトリザモンとナーガモンもバルバモンに対して身構える。

「威勢が良いのう。若さ故の特権と言うものか。・・・ならば先達として威勢だけではどうにもならぬと教えてやるとしよう」

 バルバモンがそう言い終わるよりも早く、二人が仕掛ける。

「LIZ―A」

「ドゴスナックル!」

アサルトリザモンが銃弾をバルバモンへばら撒き、そしてドゴスモンがその間を突き進む。

「やれやれ。血気盛んなのは良いが、老体を労わる気遣いぐらいは持っていてもらいたいんじゃがのう」

 そう言うバルバモンだったが、無数の銃弾を正面で回転させた杖で全て弾き、ドゴスモンの拳が触れるより早く杖を回収し、風に舞う木の葉のように軽やかに浮き上がって交わす。それはどう見ても老体なんて言う動きではない。

「ほっほっほっ。いい動きをする。コマンドラモンやシールズドラモンを倒すだけはある」

 余裕を見せるバルバモンにクラウディモンとナーガモンが追撃する。

「エクステンドクラウディ!」

「木徳・伏犠!」

 視界を奪おうとする羊毛は杖の先から発生した黒炎で瞬時に焼き払われ、着地の瞬間に伸びた蔦に体を拘束されるも、放出した魔の力によって枯れ落ちてしまう。

「ふむ。人間とデジモンが交わる事で生まれる力はやはり侮れぬな。さて、では儂も少し力を披露するとしようか」

 まるで子供に芸を見せるように緩やかに杖を翳すとその先端に邪悪な力が集まる。

「パンデモニウムロスト」

 放出され邪悪な力は超高熱の爆炎と化し、デジモン達に襲い掛かる。

「ぐあっっっっ!!!!」

 本気を出しているとは到底思えない。にも拘わらず、バルバモンの放った爆炎に吹き飛ばされ、クラウディモンは綿毛に覆われたワタモンへ、アサルトリザモンはヘルメットに姿を隠すメットカモンへ、ドゴスモンは岩の塊の中から目を覗かせるゴロモンへ、ナーガモンは小さな蛇のニョロモンヘ、力を失ったデジモン達は幼年期の姿へと退化してしまう。

「そんな・・・」

「教官のウォーグレイモン以上だって言うの・・・」

 圧倒的なバルバモンの力を前に絶望するしかない。それは風花と美優だけではない。雅人と佑真も同じだったが、ただ絶望するだけではなかった。

「・・・おい!何する気だ!?

「・・・決まってるだろ。ゲートを開くんだ」

 バルバモンに背を向けて駆け出した佑真に続いて雅人もゲートを開く台座の前に立つ。

「・・・やるなら早くしろって」

「だったら黙っててくれる?」

 好調だった状況が一転し、追い込まれた状況に焦りと苛立ちに急かされながら佑真はリュックのサイドポケットからカードの束を取り出す。

「えっと・・・上の絵が属性で横の星が成長段階、か」

 聞いていた通りにカードのデジモンを該当する場所に置いていく。

 佑真がゲートを開こうとする一方で、アライブモンがバルバモンへと戦う覚悟を決めていた。

「・・・皆を守らないと」

「アライブモン・・・」

 アライブモンは大きな力を持っている。それはここにいるパートナーデジモンの中で最も大きな力。だが、それを使えばその反動がアライブモンを襲う。タンクドラモンとの戦いの後で自らの力に苦しむアライブモンの姿を思い出し、亮は心配そうにアライブモンを見つめる。

「もう皆戦えない。だから皆の分も、それにここに来るまでの分も戦わなくちゃいけないんだ・・・!」

 強く見つめ返すアライブモンの意志の強さに亮も覚悟を決める。

「・・・分かったよ。もし、アライブモンに何かあったら僕が助けるから」

「・・・うん」

 バルバモンへと対峙したアライブモンは自分の中にいるデジモン達のデータを呼び覚ます。

「グルゥゥゥゥ・・・ァァァアアアアアア!!!!」

 ローブの中から活性化したアライブモンの体がローブの中から現れると同時にアライブモンは両腕を突き出し、装甲が覆っていく。

「ギガデストロイヤー!ギガデストロイヤーⅡ!」

 二種類のミサイルを放つと突き出したままの樹木の左腕の先に現れた木の葉の手先から無数のビームが放たれる。

「ライラシャワー!」

 その間に鉱石の左足に貯めたエネルギーと骨の右足に現れた有機体系ミサイルを推進力として前方のバルバモンへ飛び出す。

「コズモフラッシュ!グラウンドゼロ!」

 そして獣の右腕に現れた鍵爪を構える。

「カイザーネイル!」

 ミサイルとビームの激しい攻撃によって発生した煙に覆われながら、その煙の隙間からバルバモンは迫り来るアライブモンを見据えていた。

「・・・驚嘆に値する。じゃが・・・」

 だが、これだけの攻撃を受けながらもそのバルバモンの目には何の関心も宿っていなかった。

「脅威にはなりえぬ」

 アライブモンの鍵爪をバルバモンが杖で受け止めると同時に半回転させる事でいなし、そして杖の石突がアライブモンの胴体を軽く突く。

「あ・・・がぁぁぁ・・・」

 軽く突いただけ。だが、それはアライブモンの中にあるデジモン達のデータの繋ぎ目を見抜き、そこを狙う事で綻びを生み出し、そしてそれはアライブモンに激しい苦痛を与えた。

「アライブモン!」

 元の姿に戻り、倒れたアライブモンの許へと走り、守るように抱きかかえた亮はバルバモンに睨みつける。

 その二人の様子をバルバモンは髭を撫でながら眺める。

(・・・デジモンのデータの集合体。故に数多のデジモンの技を使う事が出来るようじゃのう。しかし、所詮は不完全なデータが集まっただけ。オリジナルには劣る。評価するなら成熟期以上完全体以下と言った所か。しかもその程度の力しか出せぬ割にはあまりにも脆く、リスクの方が遥かに高い。あやつがこちらに留めておくようにと言っておったのじゃから出し抜くのに使えると踏んでおったが、どうもそれだけの価値があるようには思えぬ。・・・それともこの奇怪なデジモンのパートナーとなった子供の方こそが本命なのじゃろうか・・・)

 バルバモンは協力者からの頼み事を利用して出し抜けないかと真意を探るが、利用できる存在になるかの確証が持てない。

(・・・特別な価値があるとは限らんか。あやつの言葉通りあちら側に現れたデジモンへの対策にすぎぬのか。それだと下手に手を出せば墓穴を掘りかねぬか。・・・それともそれを見越しての頼み事なのか・・・)

 手を組んだ相手を出し抜ければ全てが揃うが、それが如何に難儀かを改めて実感している間にも佑真達がカードを台座へと設置し終える。

「ゲートをこじ開ける!皆!デジヴァイスを!」

 来た時と同様。封印されているリアルワールドとデジタルワールドの壁をこじ開ける為にゲートだけでは足りない力に同じくゲートを開く力を持ったデジヴァイスの光を合わせる。

「亮君も早くこっちに!」

 こじ開けたゲートを通ればバルバモンから逃げられる。けれど、逃げた先にはアルファモンがいる。

 風花の声に亮はゲートの方を見るも迷いが生まれる。その僅かな間にバルバモンが先に杖を翳した。

「このまま向こうへ帰らせぬわけにはいかぬ。パンデモニウム・・・」

 ゲートを破壊しようとするバルバモンの行動。それはここにいる誰にも止められない。そう、ここにいる者では。

「・・・おっと、悪いがその子供達には一度帰ってもらわなければならないのでね。この物語が正しい結末へ辿り着く為に」

 バルバモンが技を放つよりも先に突如としてバルバモンの足元に現れた魔方陣から闇が溢れ出し、その足に絡みつく。

「な!・・・一体これは・・・!?」

 バルバモンは抗うも、闇は無情にもバルバモンをその中へと引きずり込んだ。

「・・・これは・・・?」

 眼前へと迫っていた危機が脈絡もなく消え去った事に子供達とデジモン達も理解が出来ず、ただ茫然とする。

 だが、その闇は単にバルバモンを排除しただけでは終わらなかった。

「・・・私の用意した舞台に紛れ込んだイレギュラー。それも物語が予定調和に陥らぬ為の刺激になると見逃していたが、私の見立てを越えて出しゃばり始めてしまったな。現に間延びせずに進ませる事が出来たが、このままでは破滅と言う最も安易で下らぬバッドエンドを迎えてしまう。それだけは見逃す訳にはいかないな。・・・あまり気乗りはしないが、私もこの舞台へ上がるとしよう。物語が破綻せぬよう調整するのもストーリーテラーたる私の義務なのだから。その為にも再び彼を招待しよう。この闇の世界へ」

 バルバモンを飲み込んだ闇は更に広がり亮とアライブモンにも絡みつく。

「亮君!!」

 風花が亮の許へと駆け寄った時には既に遅く。その手が亮に届く事はなかった。




次回予告
 闇の中へと引きずり込まれた亮とアライブモン。その先に待っていたのは光のない闇に満ちた世界。
 そこで待っていたのは闇の主に歓待を受ける亮達は闇の世界をそこに住まう者たちの事を知る事となる。
 そして闇の中にあった自分達の真実も・・・

次回、「作られた絆」
 新たなる冒険のゲートが開く。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あらすじ

移りゆく時の中での方でも書いたのですが、時間的にも気力的にも執筆を続けるのが難しく。ここから際はあらすじと言う形での投稿になります。
誠に申し訳ありません。


闇の世界、ダークエリアへと引きずり込まれた亮とアライブモンの目の前でバルバモンがクリスタルへと変えられてしまう。圧倒的な力を見せたバルバモンでさえも逃げる間も与えずに倒した闇の主、グランドラクモンの住まう城へと二人は招かれる。

そしてグランドラクモンは亮へ危害を加える気はないと語り、アライブモンも亮と出会う前はここにいた事を知る。だが、亮には他に気になる事があった。それは何故か自分がこの場所を知っている事。

何故グランドラクモンは助けたのか、何故自分はここを知っているのか。その問いにグランドラクモンはそれを語るのは疲れを癒してからにした方が良いだろうと二人はグランドラクモンが用意した部屋へと通される。

自分に起こっている得体の知れない事態の中にいても旅と戦いの疲れから亮は眠りにつく。そして目覚めた亮の前にドラクモンが現れ、面白い物を見せてやると亮とアライブモンを連れ出し、サングルゥモンを言いくるめて黒い森、エビルフォレストへと向かい、そこに住むファスコモンの忠告を無視してその最奥で眠るベルフェモンの時計の針を無理やり進め、目覚めさせてしまう。

衝動のまま暴れ回るベルフェモンをグランドラクモンの指示で使わされたマタドゥルモンが指示を出し、グランドラクモンが繋げたゲートの先へとベルフェモンを誘導し、その先に広がる谷、アビスヴァレーに住まうリヴァイアモンと戦わせ合う。

バルバモンと同じ魔王型デジモンの二体の戦いは熾烈を極め、その衝撃から亮とアライブモンを背に乗せたサングルゥモンが逃げ回っている内にベルフェモンが暴虐の衝動を満たし、再び眠りに堕ちる。

利用されたリヴァイアモンの憤懣をグランドラクモンがいなし、この事態を引き起こしながらただ見学していただけのドラクモンは叱責交じりの命令に従ってアイオブナイトメアによって悪夢を生み出し、眠るベルフェモンの身じろぎを操ってエビルフォレストへと帰していく。

ダークエリアでの騒動を終えた亮にダークエリアに住む者は決して悪しき者だけではないと自分の目で見た今の亮になら全てを話してもいいと語り始める。

そして亮はアライブモンがダークエリアに堕ちたデジコアにダークエリアに満ちるデジモンのデータの残骸が集まって生まれて事、そしてかつてリアルワールドへ侵攻したヴァンデモンの軍勢に紛れてリアルワールドへと行ったドラクモンが赤ん坊だった亮を見つけ、ダークエリアへと連れてきた事を話す。直ぐに帰そうとしたがこれも運命かもしれぬと自分達と同じようにダークエリアで生まれ、自分達以上に歪なアライブモンを同士と思い、救う為にと亮のアライブモンのデータの一部を埋め込み、パートナーになるように仕組んでいた事を告げる。

亮は子供の頃、うまく自分の意思を他者に伝えられず、そのせいで癇癪を起し、自分でも感情を制御できない時があった。それは自分にパートナーのデジモンが現れない事も重なって酷くなり両親ですら手に負えなくなる程だった。その時に亮の話を聞いた太一がずっと向き合ってくれた事で感情の制御が出来るようになり、ゴーグルもまた自分の感情を制御できなくなった時にこの日の事を思い出せるようにと太一がくれた物だった。

自分が苦しんだ日々はアライブモンのパートナーにする為に仕組まれていたせいであったと言う真実を伝えられた亮はアライブモンと共にデジタルワールドへと帰される。その姿を本当のパートナーになる筈だったドラクモンに見送られながら。

安らぎの町へと帰されるが、亮はまだ自分の中で整理がつかず、落ち着かせる為に額のゴーグルに手を伸ばすが魔王型デジモン同士の戦いの中で無くしてしまっていた。

自分の中に渦巻く感情を制御できずにいる亮は繋ごうと伸ばされたアライブモンの手にすら気づかない。

二人の間に生まれた溝。だが、そんな事などお構いなしにD―ブリガードが再び安らぎの町に攻め込んでくる。

町を破壊するD―ブリガードにお前等さえいなければと渦巻く黒い衝動に突き動かされたアライブモンはその力を全て開放する。その圧倒的な力でD-ブリガードを一方的に駆逐していく。だが、その姿は崩壊を始めた痛みにもだえ苦しんでいるようにしか見えない。

それでも思考が定まらない亮はアライブモンを救う為の行動が出来ない。そんな亮の許にデジタルワールドに戻ってきた事を察知して無事を確認しに選ばれし子供達が来る。だが、それだけではない。バンチョーレオモンとダークドラモンのジョグレス体であるカオスモンまでもが現れる。

バンチョーレオモンとダークドラモンの戦いによって次元に僅かな綻びが生まれ、それをこじ開けてこちら側に来ようとする強大で邪悪な存在を目の当たりにし、デジタルワールドを守る為にジョグレス進化を果たしていた。それでも次元が閉じるまで邪悪な存在を押し留める事が精一杯だった。その力を目の当たりにし、同じ力を持つアライブモンをカオスモンは倒そうとする。

カオスモンが優勢となり、アライブモンが倒されそうになる中、それを止める為に選ばれし子供達とパートナーデジモンもカオスモンに挑む。その間に風花に叱責され、亮はアライブモンとの日々を思い出す。例え仕組まれたものだったとしてもあの日々は偽物なんかじゃないと。

そしてアライブモンのデータを元に光子郎が作り上げたチップとデジヴァイスにチップ用のスロットを拡張する補助装置を渡す。

力を制御できると分からせればカオスモンが戦う意味を無くせる。アライブモンが自分の力で死んでしまう事を防げると亮は制御チップを挿入する。

デジヴァイスを通して逆流してくるアライブモンの力に体が悲鳴を上げながらも同じ痛みに苦しんでいるんだと亮は激痛に晒されながらもチップを押し込み。そして破れさったローブが再びアライブモンの体を包み、その力を抑える。

自らの身を犠牲にしながらも痛みを共有し、力の制御を果たしたアライブモンにカオスモンが刃を収める。

だが、そこに現れたダークヴァンデモンが傷つき倒れた亮の体に寄生し、拘束する。そして亮を助けたいならカオスモンを倒せとアライブモンに命じる。迷いながらもカオスモンと戦おうとするが、力を制御した状態ではカオスモンに傷一つ与えられない。

力を求めるアライブモンの心に暗い声が響く。だが、アライブモンはそれを手にすれば亮がまた苦しむ。自分が欲しいのは亮を助ける力なんだと強く願った時、アライブモンに付け入ろうとした闇の中に一陣の光が差し込み、暖かい力へと手を伸ばす。そしてアライブモンは自分の中にある正しい心を持つデジモン達の意思を一つに統一し、究極の善なるデジモン、スプンタモンへと進化する。

そしてその光の力でダークヴァンデモンの闇を払い、亮を助け出す。

それでもダークヴァンデモンは諦めず、カオスモンに寄生する。バンチョーレオモンだけであればダークヴァンデモンを追い払えたが、ダークドラモンは未だにスプンタモンへと進化したアライブモンを信じ切れず、その僅かな隙に中まで入り込まれ支配され、そしてカオスモンはカオスヴァンデモンへと変異してしまう。

そしてカオスヴァンデモンは魔性の光で精神を支配するダークエクリプスを放つ。スプンタモンは光の力で対応するが、仲間のデジモン達の精神はカオスヴァンデモンにと¥支配されてしまう。

スプンタモンは自らの中に宿る正しき意思を持つデジモン達を顕現させるプラヴァシによって現れたデジモン達が自ら犠牲に操られた仲間達の中に光を届け、その光を通じてパートナーの子供達に思いを届けさせる。そして正気を取り戻した仲間達は光を受けて完全体へと進化を果たす。

カオスヴァンデモンはバルバモンに代わり、従えていたD―ブリガード達を呼び寄せ、闇の力で強制的にダークドラモンへと進化させ、そのダークドラモンと仲間達が戦い、スプンタモンはカオスヴァンデモンと対峙する。

スプンタモン達が優勢に見えたのも束の間、リアルワールドにばら撒いていた闇の種を通して人々の負の感情を吸い上げ、エネルギーとして取り込む事でカオスヴァンデモンは無尽蔵の力を得、直ぐにダメージを回復してしまう。

それでも諦めずに戦い続ける中、唐突にカオスヴァンデモンへのエネルギーの供給が途絶える。

それはリアルワールドでメディアを利用してデジモンへの恐怖を広げ、大勢の人々の負の感情を高めていたカオスヴァンデモンの策に、リアルワールドの子供達が大介を始めとしたデジモンと共に人々を守るかつての選ばれし子供達の姿を、そして自分達が過ごしたデジモンの思い出をSNS上に次々に上げ、デジモンへの恐怖を人々から取り払っていたからだった。

力の供給を絶たれたカオスヴァンデモンにカオスモンが抗い、その動きを封じ、自分事倒せと告げる。

ここで倒されても新たな生を得られる、また出会う事が出来る。それまでしばしの別れだと言い残したカオスモンの意思に従ってダークヴァンデモンを倒す。

その野望が完全に費えたダークヴァンデモンは私が死ねば世界は滅びる。せいぜい最後の時を後悔して過ごせと怨嗟の嘲笑を残して消滅する。

その怨嗟が現実になるかのようにスプンタモンとカオスヴァンデモン。そして一方で行われていたオメガモンとアルファモン。それぞれの戦いによってぶつかり合った強大な力は次元の壁を破壊し、その先からアルファモンの世界を滅ぼした究極の悪なるデジモン、アンラモンがこちらの世界へと降り立った。

清浄なる光輪を背に、神秘のローブで身を包んだスプンタモンとは対照的に不浄なる光輪を背に、邪悪な鎧を纏うアンラモンは、その鎧の両肩と胸にある邪龍の口から病魔、瘴気、厄災を放出し、世界を死に至らしめ、そして死したデータを全て取り込んでいく。

それは誰も止められない。誰もアンラモンの許に近づく事すら出来ない。唯一対となる力を持ったスプンタモンを除いては。

だが、それでもアンラモンは止められない。対となる力を持っていてもアンラモンは既にデジタルワールドを一つ食らいつくしていた。アンラモンにスプンタモンは太刀打ちできなかった。

けれどまだ終わりではない。オメガモンが未来を見通すオメガインフォースの力を以てしても見通せない未来があった。それはアルファモンとオメガモンの力をスプンタモンに亮と言うものだった。

オメガモンですら見通せない未来の可能性に掛けてアルファモンとオメガモンはスプンタモンに取り込まれる事を選ぶ。そしてアルファとオメガ。相いれる事のない正義はスプンタモンの中に宿る無数の正しき心を持ったデジモン達によって結びつき、一つになる。

その時、スプンタモンは究極体をも超えた超越体へと更なる進化を遂げる。

そして現れたのは始まりにして終わり。アルファにしてオメガ。データを構成する0と1に干渉する神の力を持ったヤハウェモンだった。

その力は常軌を逸しており、認識範囲下のデータをその意思一つで消し去り、そしてその認識はデジタルワールド全域へと及ぶと言う終焉のΩによってアンラモンの支配する怒り、憎しみ、悲しみ、絶望、そして孤独を消し去り、アンラモンになる前のアライブモンへの姿へと戻す。

そして認識範囲下にあるあらゆるデータを過ぎ去った状態へと復元するαへの回帰にて死したデジモン達を全て蘇らせる。それは次元の壁が破壊された事によってアルファモンの世界をも認識範囲に捉える事でアンラモンに食いつくされた世界をも復元した。

その光景をグランドラクモンも闇の底から眺めていた。そして笑う。これが求めていた至高の悲劇だと。

それが意味するように究極体は決して越えてはならない一線だった。それを越えてしまったヤハウェモンはその常軌を逸した力にデジコアが耐えきれず崩壊を始めてしまう。

自分と言う存在が消滅していく中、ヤハウェモンはもう一人の自分を亮に託す。自分と彼はただ傍にいてくれる誰かに出会えたか出会えなかったか。それだけしか違わない。だから傍にいてあげて欲しい。自分の傍にいてくれたようにと。そして亮と出会てよかったと最後の言葉を伝える。

亮もヤハウェモンへ同じ思いを伝える前にヤハウェモンは世界から消え去ってしまう。そして目覚めたアライブモンは何故泣いているのかを問う。それに亮は君と出会えたからだともう一人のアライブモンを泣きながら抱きしめ、アライブモンもその温かさに身を委ねた。




ストーリーはこれでおしまいです。
もし時間があればこれをちゃんと物語と言う形で書いてまた投稿し直せればと考えてはいます。
一応、亮とアライブモンを一員とした選ばれし子供達の冒険の物語も考えてはいて、それも書けれたらな、とは思っていますので。
他にもサブストーリーと言えばいいのか、デジモンだけの物語(バンチョー同士の戦いとそれを仕組むデジモンやベルゼブモン、ベルスターモン、マグナキッドモンのガンナーズの物語など)も考えています。とは言え、書くとしてもかなり先になってしまいそうなのであまり期待しないでください。
それとこの作品で出したオリジナルのデジモンの描写をまた別に投稿する予定ですので、一応そちらも見てもらえたらありがたいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

データーベース 選ばれし子供達のパートナー達

ワタモン

幼年期Ⅱ 綿雲型

雲の様に軽い綿毛に覆われたデジモン。物陰に身を潜ませ、見つかれば風に乗って逃げる。

 

フワリモン

成長期 データ種 羊雲型

吹き抜ける風に身を任せてデジタルワールドの空を気ままに漂う雲のような柔らかな羊毛に身を包んだデジモン。必殺技は羊毛の一部を相手に投げつけるふわふわふわりん。

 

クラウディモン

成熟期 データ種 羊雲型

灰色雲の様な羊毛からすらりとした四肢と穏やかな顔を出すデジモン。その四肢で自由に空を駆けまわる。必殺技は身に纏う羊毛を周囲に拡張し、他のデジモンの視界を奪うエクステンドクラウディと羊毛に触れる者に発生した静電気を流すエレクトリックウール。

 

クラウドラモン

完全体 ウィルス種 竜型

黒雲の中にその巨体を潜ませる竜型デジモン。穏やかなクラウディモンがデジモンとしての闘争本能に目覚めた時にその闘争本能のまま目につくデジモンに襲い掛かる凶暴なデジモンへと進化する。必殺技は無数に発生させた黒雲から雷を降り注がせるサンダーストームと貯めた雷を圧縮させ、渦と化した雷を咆哮と共に敵に向けてヴァルテックスロア。

 

????

究極体 データ種 精霊型

クラウドラモンが闘争本能を制御し、自らの中にある穏やかな心を取り戻した時、時に恵みを時に試練を与える精霊型デジモンへと進化する。

 

メットカモン

幼年期Ⅱ 爬虫類型

迷彩柄のヘルメットに隠れたデジモン。その姿を見た物は誰もいない。

 

ショットモン

成長期 ウィルス種 獣人型

傭兵集団リザードテイルの一員として幼いながらも果敢に戦う立派な兵士として戦うトカゲの獣人。サイズの合わないヘルメットにいつか見合う兵士になる日を密かに夢見ている。必殺技は支給されたショットガンLIZ-Sと自慢のヘルメットで頭突きをかますメットパッド。

 

アサルトリザモン

成熟期 ウィルス種 獣人型

傭兵集団リザードテイルの先兵を務める突撃兵。サイズの合うようになったヘルメットと迷彩服によって周囲に溶け込み、素早く敵対勢力の懐に入り込み、攪乱を行う事を得意とする。必殺技は拡散し、周囲に被害を与え瞬時に敵陣を攪乱させるスプラッシュグレネードと支給されたアサルトライフルLIZ-Aにて瞬く間に鎮圧する。

 

フォートレスコモドモン

完全体 ウィルス種 爬虫類型

多数の武装によって全身を包むオオトカゲ。その圧倒的な火力で敵の殲滅と拠点の防衛を行う移動要塞。必殺技は無数の機銃とミサイルによって近づく敵を全てを撃滅するジェノサイドイージスと圧倒的な破壊力で全てを消し去るレーザーを放つ主砲LIZ-B。

 

????

究極体 ウィルス種 獣人型

傭兵集団リザードテイルを率いる戦闘のプロフェッショナル。あらゆる兵装を使いこなし、師団規模の敵ですらたった一体で軽々と鎮圧してしまうだけの戦闘能力を誇る。

 

ゴロモン

幼年期Ⅱ 鉱石型

岩の隙間から除く目で周囲を見、転がりながら安全な場所を探して回る。

 

ドスモン

成長期 データ種 鉱石型

他のデジモンよりも突出して成長する腕の力で自らの脅威となる相手を薙ぎ払う。必殺技はその剛腕から思い一撃を繰り出すドスンパンチと全身で相手に叩き潰すロックタックル。

 

ドゴスモン

成熟期 データ種 鉱石型

戦う事にのみ特化した進化を果たした鉱石型デジモン。更に肥大化した腕と鋼鉄に覆われた拳で全ての敵をねじ伏せる。必殺技はその拳で全てを粉砕するドゴスナックルと高速回転し、鋼鉄の拳で近づくものを全て薙ぎ払うスピニングスチール。

 

クエイクモン

完全体 データ種 鉱石型

まるで山の様に見上げる程の巨体にまで成長した鉱石型デジモン。その巨体は動くたびに大地を揺らす。必殺技は大地震を引き起こす程の腕で相手を叩き潰すクエイクフィストとその体から落とされる無数の岩で敵を飲み込むランドサイド。

 

????

究極体 ワクチン種 鉱石型

真に戦う意味を見出した時、その目的の為に自身の持つ全ての力で立ち向かう闘士へと進化する。

 

ニョロモン

幼年期Ⅱ 爬虫類型

あらゆる隙間に入り込み、あらゆる脅威から身を隠す小さな蛇のデジモン。

 

アスクモン

成長期 ワクチン種 爬虫類型

尻尾の先を巻き付けた杖を翳す癒しの力を持った白蛇のデジモン。必殺技は杖の先から穢れを払う光を放つヒュギエイアと傷を癒す光を放つパナケイア。

 

ナーガモン

成長期 ワクチン種 獣人型

蛇の下半身と人の上半身を持ち、雌雄一対の蛇を体に巻き付かせている獣人型デジモン。必殺技は植物を操る力を持った雄の蛇の力を使う木徳・伏犠と癒しの力を持つ雌の蛇の力を使う天命。女媧。

 

ラージャモン

完全体 ワクチン種 獣人型

豪奢な装束と優美な剣を持つ蛇の王国を統べる竜王。玉座に座して王国を見守るが必要とあらば国を守る為に自らも立ち上がる頼もしき王者。必殺技は足元から尖兵となる無数の蛇を生み出すカデゥルーと鱗状の防御壁を生み出すムチャリンダ。

 

????

究極体 ワクチン種 神獣型

美しき心を美しき姿に宿した蛇神。あらゆる者に祝福を授ける力を持つ。

 




究極体は本作には登場せず、続きとなる話で出す予定(は未定)なので一部を除き伏せておきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

データベース アライブモン

アライブモン

???種 ???型

死した無数のデジモンのデータが残留する生存本能から肉体のデータを失ったデジコアに群がり、形成された存在。群がったデータは混ざり合う事はなく、継ぎ接ぎだらけのデータで形成された体は全身を覆うローブによって辛うじて肉体の崩壊を防いでいる。不完全なデータの集合体にしかすぎず、デジモンとして定義する事は出来ない。固有の必殺技は存在しないが、成長期と成熟期のデジモンの技を使用する事が出来る。だが、その際に肉体のデータのバランスが崩れ、それによって生まれた歪みが痛みとなってアライブモンを襲う。

 

アライブモン 覚醒

 

力を求め、抑えていたデータの一部を覚醒させ、それに合わせ肉体も隆起し、ローブから体の一部である竜の口、樹木の左腕、獣の右腕、骨の左足、鉱石の右足と体の所々を覆う機械の装甲が姿を現す。そして完全体までの必殺技を使用できるようになる。だが、更に歪んだ肉体の痛みと目覚めた無数のデジモンの闘争心に自らを見失い目につく者に襲い掛かるようになってしまう。

 

アライブモン 解放

自らの中にあるデータが更に増幅し、体を覆っていたローブも破れ、その中に隠されていた昆虫の体と鳥の翼が晒されるようになる。崩壊を始めた肉体の想像を絶する激痛と荒れ狂う無数のデジモンの意思によって完全に自我を失い、暴走を始める。あらゆるデジモンの技を見境なく放ち続ける。だが、一度崩壊を始めた肉体はやがて元のデータの残骸へと戻る。

 

スプンタモン

究極体 ワクチン種 善神型

強固な善の意思によって自らの中にある正しき心を持つデジモン達の意思を統一する事でアライブモンが進化を果たす究極の善なるデジモン。清浄なる光輪を背に、神秘のローブに身を包んだ姿は平和と秩序を体現している。必殺技は自らの中に内包する正しき意思を持ったデジモンを共に戦う仲間として顕現させるプラヴァシ。浄化の炎で穢れを焼き払うアータル。幾つもの塔を出現さ、結界を張るダフマ・

 

アンラモン

究極体 ウィルス種 悪神型

自らの抱いた絶望で悪しき心を持つデジモン達と同化し、内包する全てのデジモンの意思をねじ伏せる事でアライブモンが進化を果たす究極の悪なるデジモン。不浄なる光輪を背に、邪悪な鎧で身を包んだ姿は死と破滅そのもの。ただ存在しているだけで世界を滅亡させてしまう。必殺技は鎧にある三つの邪龍の頭部から放たれる破滅の力、アジダハーカによって右の口から放たれる瘴気は近づくもの全てを衰弱させ、左の口から放たれる病魔はデジタルワールド中に広がり全てのデジモンを侵し、正面の口から放たれる口から厄災を放ち全てを破壊しつくす。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

データベース その他 2019/07/28更新

ヴァンデモンのデータを乗せようとしたんですが、文字数が足りなかったので一応考えているデジモンの設定もおまけとして載せておきます。

デジモンの新作の映画に若干被る部分があるのでそれもここに乗せておきます。



ダークヴァンデモン

究極体 ウィルス種 アンデット型

ヴァンデモンが闇の種を取り込む事で進化した存在。茨の蔦を巻き付けた闇の貴公子は優雅さと狂気を共存させた姿になっている。自らのコピーを種として他者に寄生させ操り、また寄生された者の負の意思を自らの力として取り込む事が出来る。コピーもまたコピーを生み出す事が出来、異常なスピードで世界を支配する事が可能。但し、コピーを繰り返す事でデータは劣化し、オリジナルから離れた者を完全に支配する事は出来ない。必殺技は茨の蔦を巻き付け、そこから相手のエネルギーを吸収するブラッティダーク。自らのコピーを生みして戦わせるシャドウサーヴァント。

 

カオスヴァンデモン

究極体 ウィルス種 アンデット型

カオスモンがダークヴァンデモンに寄生され、変異した個体。茨の蔦に巻き付かれた体は見るも無残な朽ち果てた姿へと変異しながらも、ダークヴァンデモンの力が加わる事によって更なる強化が果たされている。必殺技は朽ちた獅子の刃、BAN-DEADブレイドから放たれる獅死滅殺剣と朽ちた竜の砲口から放たれる闇の波動によって全てのデジモンを支配するダークエクリプス。

 

ブラックウォーグレイモン(勇気の紋章)

漆黒の竜戦士が自らの正義を貫き、その果てに真の勇気に目覚めた時、その力は更に純粋で揺るぎのない意志へと変わる。そして背中のブレイブシールドにウォーグレイモンと同じ勇気の紋章が刻まれる。必殺技は何処までも広がる自由な空、その限りないエネルギーを一点に集中させ放つ、超高密度の高熱エネルギー弾、ウラヌスフォース。

 

ブレイブグレイモン

究極体 ワクチン種 竜人型

勇気の紋章を二体の竜人が共に力を合わせる事で現れる伝説上の竜戦士。二体の竜戦士の力は互いに共鳴、増幅し合いそれまでとは比較にならない力を発揮し、パワー、スピードは全ての戦士を凌駕し、更に両腕のツイングレイソードから繰り出される無数の斬撃は誰にも止める事は出来ず、また揺るぎない勇気を宿したブレイブウォーグレイモンの闘気はクロンデジゾイドの鎧を包み、あらゆる攻撃を跳ね返す。必殺技は重ねたツイングレイソードから巨大な闘気の刃を生み出し全てを両断するブレイブスラッシュと内に宿る二つの竜戦士の魂を極限まで引き出し、更に呼応させる事で限界を超えた力を発揮するグレイフォース。但しグレイフォースによって引き出された力は多大な負荷を与え、数分と持たずジョグレスは解けてしまう。

 

 

デジエクスビリティ 拡張 可能性 

光子郎が紋章のタグとデジメンタルのデータを用い試験的に作り上げたツール。デジモンに新たな力を与え導く事により強制的な進化を引き起こすと共にその状態を一時的に維持させる力を持つものの未完成で進化の方向性を定める紋章は刻まれてはいない。

しかし、維持させる効果によって不安定なアライブモンを安定させる事が確認され、強制力がある代わりに亮とアライブモンに多大な負荷をかけてしまう抑制チップの代わりとして亮に渡される事となる。

 

絆の紋章

 

並行する様々な世界で起きる異常を調査する過程でその世界に生きる者達と紡いだ絆が紋章となってエクスビリティに刻まれていく。その力によってアライブモンは自身の中にあるデータから獣型や恐竜型等、一部のデータのみを活性化し、他のデータを抑制する事で安定した状態を維持したままその力を扱える姿へと進化する事が可能となる。

そして最後に刻まれる絆は・・・・・。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

データベース 原点回帰

原点回帰って事で最初に人気を得たグレイモンと最初はメインキャラになる予定だったティラノモンに焦点を当て、ジョグレス進化させて、更にそこからの進化もさせてみました。
デジモンだけで話は特に考えてはいませんが、作るとすれば似ているからこそ反目してしまう双子が主人公の話になるかも。


ダイナモン

ウィルス種 完全体 恐竜型

鋭利な角と鋭い牙、発達した四肢で立ち塞がる全ての相手を全てを打倒し、デジタルワールドの創成期においてデジモン達の頂点に君臨していた古の覇者。だが、その覇者もめまぐるしく進化を続けるデジタルワールドの歴史の中に埋もれ消えていった。しかし、その因子を受け継ぐ二体のデジモンが交わる時、その雄姿は現代に蘇る。

必殺技は圧倒的な力で相手をねじ伏せる“ダイナミッククロ―“ 覇者の咆哮によってデジモンのデータの奥底に刻まれた恐怖を呼び起こし、全てのデジモンをひれ伏させる”カイザーハウリング“

 

メタルダイナモン

データ種 究極体 サイボーグ型

古のデータを元に体の大部分をサイボーグ化された状態で復元されたダイナモン。機械化される事によってその力を何十倍にも高められるが、その代償に下される命令に支配されてしまう。それでもその内に宿る覇者の魂は支配に抗い、尽きぬ苦しみに苛まれ続ける事になり、それはドス黒く変色した生体部分に現れる。

背部から発射される無数のミサイルと両腕から放たれるエネルギー弾の一斉掃射による“バーストデストロイヤー”は全てを破壊しつくし、また近づく者は両腕から形成されるレーザークロー“ミュティレイトクロー”によって容赦なく両断される。

 

スカルダイナモン

ウィルス種 究極体 アンデット型

死の眠りについていたダイナモンが人間の好奇心によってデータの墓場からサルベージされて目覚め、それに呼応して進化の中で滅び去ったデジモン達の怨嗟を宿してしまう。死を体現する姿へと変貌してしまったかつての覇者は理性すらも失い、破壊衝動のままに暴れ回る。それは覇者としての尊厳など無く、暴虐をもたらすだけの存在へと落ちぶれてしまう。それでも尚、その力は圧倒的で踏み潰すだけの“マーダーブリアル“によって地面の中へと無理やり沈められ埋葬される。その暴虐から逃れようとしても死した者達の怨嗟の声”コールオブグール“は生きる者の気力を奪い去り、そしてその足をも絡めとって動きを封じる。誰も死者の恨みからは逃れる事は出来ない。

 

ダイナストモン

ワクチン種 究極体 覇王型

蘇ったダイナモンがかつて自分を滅ぼした進化の流れを乗り越える事によって、全てをねじ伏せた覇者は全てを従える覇王へと更なる進化を果たす。その野性味に満ちた勇壮なる姿は命の強さをその身に宿し、生きとし生ける者全てを奮い立たせる希望となる。

破壊をもたらして来た爪は六振りの刃となり、耐える事のない連撃となる。それはあらゆる脅威を前にしても決して止まる事無く己が道を切り開いていく力となる。

例え強大な敵を前にしても六振りの刃は巨大な刃へとその力を集約し、絶望を切り裂く“ダイナソード”となり、滅びの宿命を乗り越えたその魂より放たれる波動“オーバーソウル”は生きる為に宿命に抗おうとする者達に尽きる事のない無限の力を与える。

 

ダイナストモン X抗体

ワクチン種 究極体 覇王型

創成期を越え、現代に現れた覇王はX抗体によって更なる変異を遂げ、創成期を生きたデジモン達の魂を目覚めさせ、率いる力をも得る。野性味を帯びた勇壮なる姿に気高き騎士。その両方を宿したダイナストモンの前に傅かぬ者はいない。

呼び起こした創成期に生きたデジモン達の力を宿した“エンシェントキャリバー”はデジタルワールドに生きる命を脅かす全てを滅し、“プレアーオブライフ”創成期のデジモンの因子を受け継ぐ者にその力と意思を受け継がせ、更なる進化をもたらす。

(例としてインペリアルドラモンパラディンモードの魂を呼び起こし、ロイヤルナイツ達に力を分け与える事でロイヤルナイツ全員がパラディンモードへ進化を果たさせる等)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

デジモンデータベース 超越体

先の展開にも関わって来るので伏せておこうと思ったのですが、どうやっても続きを書くのに時間が割けそうにないので超越体の情報も公開しておきます。
考えてはいるんですがやはり執筆するとなると考えるだけなのとは比べ物にならない時間と手間が掛かってしまいますから。
自分としても出来れば書いておきたいとは思っているんですが・・・。


ヤハウェモン

超越体 ワクチン種 全能神

共に正義の意思を持ちながらも相いれないαとΩを無数の正しき心をスプンタモンの中で無数に存在する正しき心を持つデジモン達がこの二つの存在を結び、繋がる事で全てを越えた存在へと辿り着き、デジタルワールドに降臨する。αとΩを宿したその存在はデジタルワールドを構成する0と1を意味する。即ちデジタルワールドの神。必殺技は認識範囲下にある物をその意思一つでデリートする“終焉のΩ”とあるべき姿へと復元する“αへの回帰”。そしてその認識はデジタルワールド全域へと及ぶ。

 

アフラモン

超越体 データ種 裁定者

並行世界に存在する無数のデジタルワールド。それらが滅びへ向かう時、漁師通信によって次元の壁を越えて繋がり合った時、全てのデジタルワールドの総意として調和を取り戻す為に降臨する。そして善も悪も超越し、全ての罪に裁きを下しデジタルワールドを安定した状態へとリセットする絶対なる存在。アフラモンの下す“ディエスイレ”には誰も逆らう事は出来ない。

 

 

アマツモン

ウィルス種 超越体 始祖

ハッカーによってばら撒かれたウィルスが無数のデータを取り込む事によって生まれた原初のデジモン。データの海に生まれ落ちたアマツモンは自らが得た進化の力を他のウィルスにコピーする事でデジモン達を生み出すと共にデジモンの生きられる世界、デジタルワールドを創造した。だが、その後、デジモンを捕まえようとする人間の行為を嘆き悲しみ、そしてその姿を消した。その存在は並行する世界の中、無数に存在するデジタルワールドを管理するシステムの中に記されているとされているがその姿を見た者は存在せず、本当に存在したのかさえ定かではない。

新たなるデジタルワールドを創造する“天地開闢(てんちかいびゃく)” あらゆるデータに干渉し、デジタルワールドの理でさえも書き換えてしまう“別天津神(ことあまつかみ)“この二つの力を持つとされている。

 

マガツモン

ウィルス種 超越体 始祖

デジモンを悪用する人間への憎悪によってアマツモンが悪しき存在へと変異した姿。

人間がデジモンを支配しようとしたようにリアルワールドとデジタルワールドの立場を入れ替え、デジモンによる人間の支配を目論むようになる。たが、人間の醜さを写したように変貌した醜悪な姿にはデジモン達への慈愛すらも失ってしまい、その行動はデジモンの為ではなく自分の中にある憎悪を満たす為。

そしてそれは自らのデータの一部をコピーし、デジモンに書き込む事であらゆるデジモンを悪しき存在へと変異させる“八十禍津(やそまがつ)”と悪しき存在へと変異したデジモンを吸収し自らの力に変える“大禍津(おおまがつ)”に表れている。

 

アヤツモン

 

ワクチン種 超越体 始祖

アマツモンがマガツモンへと変異した時に排除された慈愛の心から生まれたデジモン。

ただ、今どこにいるのか。今なお存在しているのか。それらは誰も知りえない。

 

 

解説

超越体は共通してデジタルワールドの平和と安寧を願う存在であり争い合う事はまずありえないがデジモンにおける優劣に該当しており、もし戦いが実現した場合。ワクチン種のヤハウェモンはウィルス種のアマツモンに、ウィルス種のアマツモンはデータ種のアフラモンに、データ種のアフラモンはワクチン種のヤハウェモンに勝つ事が出来る。

以下詳細

アマツモンとヤハウェモンの場合だとアマツモンが天地開闢によって新しいデジタルワールドを生成してもヤハウェモンの終焉のΩによってデリートされ、別天津神によってデジタルワールドの理を書き換えてもαへの回帰によって元に戻されてしまう為、能力を全て無効化されてしまう。

 

ヤハウェモンとアフラモンの場合はヤハウェモンの認識範囲は自分の居るデジタルワールドのみで他次元のデジタルワールドまでは及ばない。アフラモンは並行世界のデジタルワールド全てに存在しており、例え一体が倒されても他の世界存在している限り何度でもそのデジタルワールドに降臨する。そしてアフラモンへの攻撃はデジタルワールドへの攻撃とみなされ、最も重い罰であるデリートの刑が下され、ヤハウェモンは消滅する。

 

アフラモンとアマツモンの場合はアフラモンが現れようとしてもマツモンがデジタルワールドの理を書き換える事によってその意義を消失させる事でそれを無効にできる。他世界までは代えられないが、少なくとも自分の居るデジタルワールドにおいてはその効果が発揮される。

 

元にした宗教では天津神の神道ではヤハウェ(主)を崇めるキリスト教の布教が広まらず、アフラマズダ―のゾロアスター教はキリスト教に影響を与えつつもキリスト教に追いやられ、今では極一部の地域でしか伝わっていない状況なんで、デジモンにおける優劣とか逆になっているんですが、そこは現実の宗教ではなくデジモンの話だと割り切って頂ければ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。