更識の名を継ぐこと、そして (葛城瑠璃)
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前世

世界は理不尽だ...。

なんでそう思うのかだって?、そんなの当然じゃないか。

無能な奴がすべての色を見ることができて、能力を持っている僕が色を見ることができないんだ。

弓道の大会で世界一になる夢はそこで絶たれたのだから...

それが僕が世界が理不尽だと思う理由さ。

色を見ることができない、それはつまり、僕は目が見えないということだ。

最初から見えていなかったわけじゃない、今も本当は見えている。

それはすべてではなく、普通の人の半分だけ、要するに片目だけしか見えていないのである。

しかも、ほかの人と違い、見えているのはモノクロの世界だ。

今の僕の目の状態は片目は失明しており、また片目は失明はしていないが見えている景色はモノクロの世界なのである。

こうなったのには必ず原因がある、僕の場合原因はどちらとも病気だ。

モノクロに見えるのは全色盲という病気だ。簡単に言うと目から色覚が失われる病気だ。

この病気に治療方法はない。

そしてもう片方は網膜動脈閉鎖症だ。こちらは少しずつ視覚がなくなっていく病気だ。

こちらは早期発見であれば治る病気だった。僕は手術を受け、一時は完治した。

だが、再発し前よりも見えなくなるスピードが速かった、そして再度手術を受けたが

今度は治ることなく目は見えなくなり、僕は失明した。

これはまだ高校3年生である僕にとっては受け止めきれない現実だった。

僕は弓道の大会で日本一になり、世界大会に出場が決まっていた。

将来も弓道の日本代表として約束されていた。

だが失明したことにより、スポーツ新聞で大きく掲載された。

天才高校生、失明により日本代表の夢絶たれる、と。

ニュースでは同情する人たちもいれば、ネットでは僕のことを叩く人たちもいた。

僕は現実を直視できなくなり、精神的にどんどん追い込まれていった。

そのあとは僕がどうなってのかはわかると思う。

こんな現実を前にしたら2つの選択肢のどちらかを選ばなければならない。

1、現実を受け止めて、前へ進む。

2、受け止めきれず、前へ進むことをあきらめ、逃げる。

僕が選択したのは2つ目だ。

現実から逃げると言ってもいろいろな方法がある。

すべて関わらないように殻に引きこもる、人に依存するなどがあるが、僕はその中から自殺を選んだ。

日本でよくある話だ、精神的に追い込まれた学生が自殺した、という話はばかばかしいとは思ってたけど、まさか自分がそうなるとは思ってなかったなぁ。

こんな思いをするくらいなら、次の人生はこんなことがなければいいな。

そんなことを思いながら、自宅のキッチンで僕は包丁を首に突き刺して自殺した...。

 

 

 

 

......うるさいな、人の声がたくさん聞こえる、もしかしてここは病院か?

モノクロの世界を見るのは嫌だったから、目を開かず耳を澄ませて音で自分はどこに来ているのかを確かめた。

音と肌で感じる場の雰囲気からして、病院であることが分かった。

死ぬことができなかったのか、またあの苦しい日常を味わうのかと思いながらも、

起き上がろうとすると、体に違和感を感じた。

起き上がることができないのである、そして腕を動かすこともできないのである。

モノクロの世界を見るのは嫌だったが、現状を確認しなければいけないと感じ、目開けた。

俺はそこで驚いた、失明していたはずの左目が見えているのである、右目は変わらないがそれでも俺は奇跡が起こったと思った。

俺は左目を触ろうとするが、そこで自分の体の変化に気づく。

自分の手が小さくなっているのである、おかしいと思いもう片方の手も見ると

右手も左手と同じように小さくなっていた。

どうゆうことだ?、俺は死んだはずだよな?、なのに生きてるってことは...

冷静に考えようとしても、落ち着くことができず、どんどん混乱していった。

そして、見知らぬ女性に俺は抱きかかえられた。

女性は鏡の前に立ち自分と女性の姿が鏡に映った。

僕は衝撃を受けた、理由は単純、自分の姿が赤ん坊になっていたのである。

えっ、なにこえ...言葉が出なかった(赤ん坊なので声自体出すことさえはできないけれど)、

また混乱しそうになったとき、僕を抱いている女性が衝撃の言葉を発した。

「無事に生まれてありがとう、私の赤ちゃん」

といい、僕をさらに強く抱きしめてくれた。

ここでようやく、自分がどんな状況に置かれているかが分かった。

僕は生まれ変わったんだ、それなら失明した目が見えるのも納得がいく、そして今僕のことを抱いているこの女性は僕の母なのであるというのが分かった。

そう、僕は生まれ変わったんだ。

右目は全色盲のままだけれども、それでも僕はうれしかった。

また世界の色を自分の目で見ることができるのだから。

母はまた僕のことを抱いてくれた。

僕は母の温もりを感じながら、眠りについた...

 

 

 

 

僕は更識家の長男として生まれ変わった。

名前は更識 瑠璃夏(るりか)、名前の由来は生まれた時が夏で父と母、そして僕が三人で見た夕焼けが美しかったからだという。

本当は夕谷という名前にしていたはずだったのだが、なんやかんやでこの名前のなった。

 

 

 

 

今僕は10歳になった。

今までは周りからからかわれたり甘やかされながらここまで育ってきた。

だけど家のみんなは僕の右目について最初は深く考えていたそうなのだが、母と父は逆に考えたこともないらしい。

僕はてっきり深刻に考えているのかと思ったのだけどそんなことはなかった。

母は僕が生まれたことを本当に心から喜んでくれていた。

父も母と同じだと言ってくれた。前世の僕は前を向かないで逃げてしまった。

だけど自分はそのことについては後悔はしていない。もう過ぎたことなのだから、今と昔は関係ないのだから。

そして喜ばしいことに僕には妹ができることになった。性別が分かったのは母が妊娠してから約18週間目ぐらいの時だ。僕は今のこの人生が本当に幸せに思えた。

母の見舞いが終わり父と家に帰る途中、父から帰ったら話があるから自室まで来てくれと言われた。

だけど驚きはしなかった前から言われていた稽古についてのことだと分かっていたからだ。

これから僕は更識家の当主の座を父から引き継ぐため厳しい鍛錬の日々を送ることになる、守らなければいけない大切なもののために...




これは調子に乗って深夜テンションで書いてしまったのですが、自分自身ISのアニメしか見ていなく原作を読んでいないので次回は原作を買って読んでから投稿します。
...もう少し文章力がほしいなぁ、もう少し勉強しなければ!


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新しい家族

今回は結構ズバズバ進んでいきます。


病院から家に帰りつき、僕はすぐに父の自室へ向かった。

そして父の部屋に着き、扉を開け、中に入った。

部屋の中には父の姿があり、その表情はいつになく険しい表情になっていた。

僕はいつもとは違う父に少し驚きつつも、父の所に向かった。

その後、父は僕を座布団の上に正座をさせてこれからの僕がやるべきことや父自身が僕の稽古の相手をすることなどを話した。

 

 

 

 

話をした翌日から稽古が始まった。

稽古の内容は武術の中での槍術、剣術そして弓術だった。

だけど僕には弓術の弓の弦を引くための力はなかったため、弓術だけは後回しになった。

剣術の稽古では、基本的なことを教えてもらった。

槍術も教わったのは剣術と同じようなことだった。

そのあとに体を作るための筋トレとランニングをして最初の稽古は終わった。

初めての稽古だったからなのか、今日はとても疲れた、そのせいもあり僕はいつもより二時間早く寝てしまった。

 

 

 

 

稽古を始めてから一週間が経ち、父は基本ができるようになった僕に技を教えてくれるようになった。

教わった技は槍術では引き落としや巻き落としを、剣術では袈裟懸けや逆袈裟懸けをやった。

剣術は呑み込みが早く父にも褒められたが、槍術に関しては全くできなかった。

父は初日だから仕方がないとは言っていたが、僕としてはとても悔しかった。

そのあとは、ランニングと筋トレをやった。いつもなら疲れて寝てしまうのだが、眠れなかった。

理由は分かっていた。悔しかったのである、僕は初日だからとかそうゆうことをできない理由の言い訳にしたくないからである。

僕は屋敷のみんなが寝むるのを待ち、そのあとに一人で技の練習をした。

 

 

 

 

それから二週間と二日で僕は槍術、剣術ともに簡単な技はすべてできるようになった。自慢ではないが剣術に関しては少しだけなら応用技もできるようなった。

父からは呑み込みが早いな、と褒められた。素直にうれしかった。

だけど深夜にこっそり自主練しているのがたまたま通りかかったメイドさんに見られてしまい、父に報告され、こっぴどく叱られてしまった。

 

 

 

 

稽古を始めてから四週間の頃には僕の稽古時間は早くも倍に増やされ、ランニングする距離も筋トレの量も1.5倍に増やされた。正直最初はきついと父に文句を言ったが、前のメニューはもう慣れただろ?、夜も寝ずにやっているならこれぐらいできるだろうと少し挑発するように言ってきたため、父に乗せられ、やけくそになりながらも稽古に励んだ。

 

 

 

 

稽古を増やしてから数日後、母がいつ出産してもおかしくないと医者に言われたと連絡が来て、僕は稽古を、父は仕事を部下に任せて、休みを取った。

母と生まれてくる妹をすぐにでも見るために。

 

 

 

 

出産の予定日が過ぎた二日後に母が破水し、分娩室へ移った。

母が出産の苦しみに耐えてる間、僕と父は落ち着くことができず、分娩室の前でうろうろしていた。

母が分娩室に入ってからちょうど一時間経ったとき、赤ちゃんの声が聞こえた。

それに気づくと父と僕は向かい合い喜んだ。

僕はうれしすぎて泣いてしまい、父はそんな僕を抱つきながら泣いた。

そのあと少しだけ母と生まれた妹の顔を見ることができた。

父は妹を抱いた時も泣いた。もちろん僕も抱かせてもらったが泣くことはなかった、でも心の中で新しい感情が出てきた。

それは守りたいという感情だ。僕自身なんで最初にこの感情が出たのかが分からなかったけど今は深く考えないようにした。

そのあとは母にまた明日来ると伝え、父と一緒に屋敷へと戻った。

 

 

 

 

父と僕は家に帰りつき、屋敷の中に入るとメイドのお姉さん達や父の部下の人達が結果がどうだったのかをすごい形相で聞いてきた。

僕はこの時初めてみんなのあんな顔を見た。正直怖かった。

どうやら父は生まれたら屋敷に連絡する約束をしていたらしいのだが、うれしさのあまり忘れていたと言っていた。あぁ、だから、みんな玄関で待っていたのか。気持ちは分かるけど約束は守ろうよ...と父に聞こえないようにつぶやいた。

そのあとは、父がみんなを広間に集め、無事に妹が生まれたことを話した。

皆から祝福の言葉をたくさんもらった。そしてそのままみんなで宴会をすることになり、ここ更識の屋敷はみんなが疲れきるまでどんちゃん騒ぎが続いた。

 

 

 

 

皆が疲れて寝静まった時に僕は目が覚めた。

なぜ今頃起きたのかは自分でもわからなかった。たぶん宴会ではしゃぎすぎて疲れて寝たのかもなぁ。

だけど、途中から記憶が飛んでいるから、いつ寝たのかわからなかった。

しかも、原因不明の頭痛がした。そして、気分もあまりよくなかった。

広間は酒臭かったので、少し風に当たれば気分も良くなると思い、広間から出て僕は庭へと向かった。

 

 

 

 

庭に着くとそこには意外な人物がいた。

布仏家の当主の奥さんであり、昨年生まれた虚ちゃんのお母さんの姿だった。

布仏さんは病弱で体もあまり強くないため、部屋からめった出てこない人なのだ。

たまに僕に会いにきてくれたりすることはあるが、大体は僕のほうから布仏さんのとこに行く事のほうが多いのだ。

珍しいな、どうしたんだろう?

と考えていたら、布仏さんは僕の視線に気づきこちらに顔を向け、話しかけてきた。

「どうしたの、瑠璃君?」

その呼び方は女の子みたいだからやめてって前から言ってるのになぁ、と心の中で思いながら返事を返した。

「気分がすぐれなかったので風に当たれば少しはましになるかと思って...」

「そう、私と同じね」

返事を返した後布仏さんは縁側に座った、僕も縁側に座り話を続けた。

妹のことや虚ちゃんのこと、そして僕自身の事などいろいろな話をした。

布仏さんは話している時少しだけ寂しそうな感じだった。

何かあったのかなと思い、聞いてみても強引に別な話題に変えられてしまい、結局聞くことはできなかった。

 

 

 

 

10分ぐらい話した後、今日はもう寝るね、と言って、布仏さんは自室へ戻っていった。

僕も戻って寝ようかと思ったのだけど、話してたせいか、目が冴えてしまい眠れそうになかったので道場へ向かい、胴着に着替え、技の練習を夜が明けるまでやった。

 

 

 

 

道場には時計がないので、何時間やったのかはわからなかった。

だけど、夜が明けていることに気づき、僕はそこで練習を打ち切った。

今日は朝早くから母と妹がいる病院に行くことになっているからだ。それと、この間自主練はほどほどにしておけと父に言われていたのでみんなが起きる前に自分の部屋に戻っておかないとまた父に怒られてしまうからである。

父は普段から優しすぎるからなのか、反対に怒らせた時がとても怖い、僕も泣きそうになったことがある。

僕は父や屋敷の人たちにばれないように足音や物音を立てないように注意しながら自室に戻った。

 

 

 

 

自室に戻ってから、すぐに眠気に襲われ、倒れそうになったが、何とか堪えた。クローゼットから着替えを取って僕はシャワーがある浴場へ向かった。あまりに夢中になって練習していたので、この寒い時期には考えられないほどの汗をかいていたのだ。これでは、ばれてしまうのは時間の問題だったので、足音を立てない程度の速足で風呂場へと向かった。

そのあとは汗を洗い流した。不思議なことにシャワーを浴びたら、眠気も覚めたので僕は自室に戻った後、ベットで小説を読みながら、父や屋敷のみんなが起きるのを待った。

 

皆が起きたのはそれから二時間経った後だった。そこからはみんなと朝食を取り、僕と父は母と妹に会う準備をした。

 

屋敷から出ると父は今日妹の名前を発表するから期待しとけよ、と僕に自信満々に言ってきたのだが、正直に言うと、父にはネーミングセンスのかけらもない。

父が妹に母が気にいりそうな名前を付けられるか正直心配だった。

なぜなら、母は周りの人たちのような一般的な名前は絶対に付けたくないと入院する前から言っていたのだ。父が母の要望に応えられるか本当に心配だ。

僕はそんなことを考えながら、父と共に、母と妹がいる病院に向かった。

 

 




ISの小説最新刊はあってもその前が周った書店になかったことについて軽くショックを受けました。
ネットで注文したほうが良いのだろうか?
次回の投稿はまだ未定なので気長に待っててもらえると光栄です。
誤字脱字等あれば教えてください。


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愛しい妹

タイトルをミスってしまったので再投稿です。


車で移動して、10分ぐらいで病院に着いた。 いつもなら、着くのに20分ぐらいかかるのだが、道が余り混んでなかったお陰でいつもより早く着くことができた。 そのあとは受付を済ませて、母と妹がいる部屋に向かった。

 

 

 

 

部屋に着き、扉を開けて中に入ると、そこには妹を抱いた母がいた。

僕は駆け寄り、母の胸の中で寝ている妹をじ~っと見つめていた。 その間に父と母は退院予定日や家のこと話していたらしいが、妹を見つめることに集中していた僕には何も聞こえなかった。

僕が妹を見つめることをやめたのは、父がこれから名前を付ける、と言っていることを母から伝えられたので、僕は渋々妹を見つめることをやめて、ベットに座っている母の隣に座った。

父は一回咳払いをしてから、妹の名前を言った。 その名前を聞いた母と僕は、言葉が出なかった。

前回より名前のセンスがひどすぎたため、僕はどう言葉を返したらいいのかわからなかった。母は少し厳しい目になりながらも黙っていた。 父が言った名前候補は美雪だった。

名前にに雪が入っている理由が分からない、まだ美はいいとしても、雪はどこから出てきた!

妹が生まれた時は雪なんて降ってなかったし、今も寒いとはいえ、もう春が目の前に来ているというのにどうしてその名前になったのかが全く理解できなかった。

固まっている僕と母に父は何か問題でもあったのかと聞いてくるが、僕はあきれてしまい答える気にはならなかった。

だが今の一言で父は母の地雷を踏んでしまった。

「問題がない?、大有りに決まってるでしょ」

母は怖い笑みを浮かべながら、父に近づいていた。父はまだ地雷を踏んでしまったことに気づいておらず、何が問題なんだ?、と首をかしげていた。

そのあと母はさっき僕が心の中で思っていたことをはっきりと父に言い、 さらに、母自身が名前が気に入らなかったこと、その理由、さらには名前とは関係ないこと、つまり父との日常での不満まで言っていた。

僕は母の本気で怒った顔は生まれてきて初めて見た。とにかく母の

顔は笑っているのに鬼気迫る雰囲気が怖かった。

それを見て、僕は泣きそうになった。

母は僕が後ろで涙目で自分のことを見ていることに気づき、父に言うのをやめて、僕を抱きしめて怖がらせてごめんね、と謝ってくれて、僕が落ち着くまで抱きしめてくれた。

 

 

 

僕は母に抱きしめられて、落ち着きを取り戻し、もう大丈夫と母に伝え、母は僕から離れた。 そのあとは母と父、そして僕で妹の名前を考えることにした。

本当は父が考えて命名するはずなのだが、母がそれを良しとはしなったため、僕も一緒に考えることになった。

 

 

 

 

あれから数分経ったぐらいに僕は考えていたことがぽろっと口に出てしまった。

「......かたなはどうかなぁ」

父には聞こえなかったみたいだが、母には聞こえたらしくなんといったのか聞いてきた。 僕は必死にごまかそうとしたけど、母は引いてくれそうになかったので言うことにした。 「かたなって言葉が頭によぎったら、自然と口にでちゃっただけだよ...」

母はそれを聞いて、何かひらめいたらしく、ペンを手に取り、紙に何かを書き始めた。

 

 

 

 

母が紙との格闘を終えたのは書き始めてから数分後くらいだった、僕にとってはその数分がとても長く感じた。たぶん父も同じことを思っているかもしてない。

母は僕と父に名前を書いた紙を見せた。そこには漢字で刀奈と書いており、僕は読み方が分からずかたなな?、と呼んでしまったが、母が言うには、どうやら違う読み方みたいだ。

 

 

 

 

母はさっき僕が口に出したかたなという名前を使ってくれたらしい。 僕は自分が出した名前に決まるとは思っていなかったため、その時は本当に妹に気に入ってもらえるのかが心配になった。 そんなことを考えていたら、母がまた抱きしめてくれて、刀奈ちゃんも気に入ってくれると思うわよ、何より、優しいお兄ちゃんがつけてくれた名前なんだから、とまた慰めてくれた。

 

 

 

 

その後に何故この漢字にしたのかを母は僕と父に教えてくれた。

刀のように美しく、強くあって欲しいからこの漢字にしたと母は言っていた。

僕がかたなという名前が浮かんだのは、ただなんとなくかわいいかなぁと思ったからである。

実際そんな深い意味はなかった。 ともあれ、妹の名前は更識 刀奈に決まったのだ。 その後は面会時間が過ぎていることを看護師さんが教えてくれるまで、僕たち三人は喋った。

 

 

 

 

僕は病院を出る前に母の退院予定日を担当の看護師さんに聞いた。 看護師さんは予定では再来週の水曜日と言っていた。水曜日だとしたら母と妹が家に帰ってくるのはあと二週間後ぐらいというのが分かった。 あと二週間も母と妹に会えないのかと思うと少し寂しかった。

だって、面会時間は取れるのだが、父は部下の人に頼んでいたとはいえ、部下の人も仕事を全部はさばき切れていないらしく、少しずつではあるが仕事が溜まっていたのでこれ以上休みは取れなかった。

僕も一週間丸々稽古を休んでいたので、そろそろ再開しないと体がなまってしまうのもあるが、正直毎日の習慣になっていた稽古をやりたくて仕方がなかったのもある。

まぁ、父がいなければ僕一人では病院に行くことができないのだ。

屋敷から歩いていくにはかなり距離があるからだ。あとはまだ6歳だからということもあり、バスで来ていいと母に聞いたのだけど、まだ貴方には早いからやめときなさい、と言われてしまった。だからあと二週間は会いたい気持ちを我慢しなければならないと考えると、僕自身会いたいという欲望に耐えられるか、正直微妙だ。 だけど我慢を覚えることも大切と思い、母に心配をかけないように家で母と妹の帰りをおとなしく待つことにした。 僕は車の中こんなことを考えながら、屋敷に帰った。

 

 

 

 

それから一週間と五日後、予定日より二日間早く、母と刀奈はこの屋敷に帰ってくることになった。

その知らせが届いたのは、僕が朝稽古しているときだった。

聞いた瞬間は数秒間僕は思考停止してしまったが、我に戻るとメイドさんに喜びながら抱き着いていた。

メイドさんは抱きついたときは驚いていたが、すぐに落ち着きを取り戻し、僕の頭を撫でてくれた。

そこからは興奮が治まることはなく、学校でもずっと妹と母のことばかりを考えていた。

授業も耳に入らず、心ここにあらず状態だった。

 

 

 

 

...学校が終わり帰宅時間になると、僕はダッシュで靴箱へ向かい、上履きから靴に履き替え、家まで全速力で帰った。

 

 

 

 

学校から家まではいつも通り歩いて帰っていたなら、30分はかかっていたが、今日は僕が出せる限界の走りだったからか、10分以内に帰り着くことができた。

屋敷の中に入ると、玄関を通りかかったメイドさんが、今日は早いですね、...どうしたんですかその汗は?、と不思議がっていた。

なぜなら、今の季節が冬にもかかわらず、僕は顔を真っ赤にして尋常じゃないほどの汗をかいていたのだから。

メイドさんにタオルを持ってくるので待っててください、と言われたので、僕は玄関に座って待つことにした。

僕はメイドさんを待っている間も母と妹のことを考えていた。帰ってきてから何か個人的にしてあげることはできないのだろうか、プレゼントも買わないといけないよな。

そのあとは、タオルを持ってきてくれたメイドさんに、なぜあのような状態だったのか聞かれたので、説明し、部屋に戻って着替えた後に出かけることも伝えた。

 

 

 

 

どうしてこうなったのだろう.....

今僕は布仏さんと一緒に母と妹のプレゼントを買いにデパートに来ている。

どうしてこうなったのかと言うと...

出かける前に布仏さんが僕のことを探していると聞き、出かけるにはまだ時間があったため、僕は布仏さんの部屋に向かった。

部屋に向かう途中で布仏さんと会ったので、用件を聞いたら、一緒に母へのプレゼントを買いに行こうとのお誘いだった。

僕には断る理由はないのだが、個人的なものも買おうと思っていたので一緒に行くのは遠慮したかった。

だって、あまり人にみせられない物なんだよね...

断ろうとしたのだが、目の前で泣きそうな顔をされたら誰だって断れないよね。

結局断ることができず、こうやって布仏さんと一緒に買いに来ているのだ。

今回アレを買うのは諦めるしかないかなぁ。あまり人には見られたくないからなぁ。

そんなことを考えながら布仏さんと一緒に母と妹へのプレゼントを選んでいったのだ。

 




原作8巻まで買いました!
8巻の簪と刀奈は可愛かった!
あのしゅんとした顔は保護欲をそそられますね〜!
.....少し脱線してしまいましたが、次回は原作に追いつくために、急ぎ足で行きます。


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更識の当主

今回かなり長めです。
後半はかなり急展開になっております。
かなりの期間空けてしまい、申し訳ございません。


デパートに着いてから30分ぐらいたったが、僕は未だにプレゼントを買うどころか決めることすらできていなかった。

いろいろなところを見て回ったが、母が好きなそうな服やぬいぐるみなどはあるのだが、一つだけならまだ買えなくもないのだが、妹の分も買うとなるとさすがに金額がオーバーしてしまうので買うことができない状態なのである。

僕が迷っている間に、布仏さんはもうプレゼントを決まり終えて、今は会計を済ましているところだ。

おこずかいは父から毎月1,000円もらっていたが、好きな小説を買うことにしか使っていなかったため、お金が足りないことはないと思っていたのだが、前もって下調べしなかったのはまずかったなぁ...

所持金は5,000円あるが、デパートだからなのか、ぬいぐるみは大きいものしかなく、一番安いやつでも値段が2,600円でぎりぎり2つ買えない値段なのだ。

一応ほかのものも見たのだが、妹に渡せるものとしたら、ぬいぐるみ以外思いつかなかった。

母の場合はかわいいものであればいいのだが、こっちもかわいいものと言ったらぬいぐるみぐらいしか思いつかなかった。ハンカチやスカーフなどもあるのだがそれは去年の母の誕生日に渡してしまったものだから選べなかった。

理由としては一度プレゼントとして渡したものをまたプレゼントとして渡したくはないからである。

服に関しては一着の値段で所持金を超えてしまう服が多いため買うことすらできなかった。

 

 

 

 

「おーい、る~君」

布仏さんは会計が終わったらしく、こっちに小走りで近づいてきた。体弱いのに走って大丈夫なのだろうかと思い、こちらからも布仏さんのほうに近づいた。なぜ走ったのか理由を聞くと、布仏さんはさっきから僕が悩んでいたのがさっきから気になってしまいどうしたのかを思い走ったと言っていた。

気持ちはうれしいけど、少しは自分の体のことを考えてくださいと注意したら、またごめんなさいと言いながら泣きそうになっていた。

これはやばい!、何とか布仏さんを宥めて泣かれることは回避した。

てか、子供に泣かされる大人ってどうなんだろう?、と思いながらも、僕は布仏さんにプレゼントのことを相談した。

お金が足りず、二人分のプレゼントが買えないことを伝え、ほかに所持金で買える範囲で女性が好きそうなものがないか聞いた。

最初はお金を貸そうか?と言われたがお金の貸し借りはしてはいけないと父に言われていたため、それはすぐに断った。

そのあとにいろいろ女性が好きそうなものを布仏さんに言ってもらったが、どれもこれも、所持金で買うことができないものばかりだった。

布仏さんと悩みに悩んで出した結論が自分でプレゼントを作るということだった。そして作るのならぬいぐるみが一番喜ぶかもと言われた。

それだったら二人分作れるし、費用もそこまでかからないとも言われたので、僕は買うことをやめて作ることにした。

ただ僕は一回も裁縫をやったことがないため、お店に並んでいるようなぬいぐるみが作れるはずがない。

布仏さんは私も少しは手伝うし、教えながら作ればできると言ってくれたが、正直不安しかなかった。

だけどここで悩んで結局買わずに終わるよりいいと思い、僕は裁縫道具一式とぬいぐるみの材料を購入した。

会計の金額は、合計で4572円だった。意外と裁縫道具が高くて驚いたが、それよりも材料費の安さに驚いた。

金額が裁縫道具の約二分の一だったのである、布仏さんはこれくらいが普通だよ~と言っていたが、初めて目にする僕にとってはかなりの衝撃であった。

 

 

 

 

家に帰りつき、僕は家に入ってすぐに裁縫セットと材料を持って布仏さんとともに部屋に向かった。

部屋に入り、早速僕は布仏さんに教えてもらいながら、ぬいぐるみ作りに取り掛かった。

小学校でも裁縫の授業はあまりないため、やり方がわからなかった僕は最初の基本から教えてもらっていった。

 

 

 

 

今の時刻は18時前、作り始めたのが16時半前だったため、約1時間半経過していたことになる。

母が帰ってくるのは18時半、までに何とかぬいぐるみは二つとも出来上がった。しかもデパートに売っているような完璧なぬいぐるみが。

布仏さんは驚きを隠せないでいた。それもそのはず、僕は最初は返し縫すらままならなかったのに、約30分、で小さいぬいぐるみぐらいまでは作れるようになった。しかも布仏さんの手伝いなしで。

そこからはプレゼント用のぬいぐるみを作り始めた。無心でやっていたのだからなのかわからないが、約一時間で僕はぬいぐるみを作り終えていたのである、それも二つ。

 

 

 

 

『この時だったのかもしれない、俺が普通じゃなくなっていっていたのは...』

 

 

 

 

そのあとは、布仏さんにすごいいじゃない!、正直完成しないと思ってたのに、プロも超えそうなぬいぐるみを作るなんて...、と言いながら5分ぐらい僕は抱き着かれながら、頭を撫でられた。

撫でられるのは嫌いじゃないけど、正直あまり長時間されるのは勘弁してほしい、と心の中で思った。

撫でられた後は、布仏さんと別れて、ぬいぐるみを別の部屋に移して、メイドさんたちと母と妹を迎える準備や宴会の準備などをした。

 

 

 

 

現在時刻は19時、もうすぐ母と刀奈が帰ってくる時間だ。屋敷のみんなは玄関に集まり、クラッカーやお祝いの花束をもってインターホンが鳴るのをじっと待っていた。もちろん僕も花束をもって皆と一緒に待っている。

まだかなと思いつつも、緊張感が少しずつ膨れていく中で、その時が来た。インターホンが鳴った。

鳴った後に母の声が聞こえ荷物を運ぶのを手伝ってほしいと言ったので、メイドさん二人が玄関から外に出て母の手助けをしに行った。

 

 

 

 

そして玄関の扉が開き、母が入ってくるとともにクラッカーが炸裂した。僕は母に近づきおかえりと言って花束を渡した、

母も最初は驚いてその場で固まっていたのだけれど、花束をもらった後からは笑って、僕を抱きしめて、皆ただいまー!と、大声で叫んだ。

それが決定打となったのか、クラッカーの音でも起きなかった刀奈が起きてしまった。

あやすのがとても大変だった、刀奈を起きてしまうようなことはしないようにしようと僕は心の中で思った。

 

 

 

 

その後は、全員が広間に集まり、改めて刀奈を更識家の家族として迎え入れた。そしてそのまま宴会となった。

刀奈は宴会が始まる前に別室に移し、メイドさんたちが交代でお守りをすることになった。

刀奈を別室に移した理由は、宴会の場にいたら、周りの声がうるさくてまた泣き出してしまうかもしれなかったためだ。

刀奈がいなかったのだからか少し寂しそうにしている人達は多少いたが、それでも宴会は大いに盛り上がっていった。

 

 

 

 

宴会の最中、僕は母に渡したいものがあると言い、刀奈のいる部屋に母と向かった。

刀がいるのは母の部屋だ。プレゼントであるぬいぐるみもそこにある。

部屋につき、母にはベットに座って目をつぶってもらい、クローゼットの奥に隠してた、ぬいぐるみを取り出し、目を開けてもらった。

母が目を開けると同時にぬいぐるみを渡し、「これは僕からの贈り物、...お母さん、刀奈を生んでくれてありがとう」と感謝の言葉を贈った。

母は少し涙目になりながらもプレゼントを受け取ってくれた。そしてありがとうと言って、僕のことを抱きしめてくれた。

 

 

 

 

抱きしめられた後、渡したぬいぐるみのことについて聞かれた。

買ってきたのかと聞かれたが、布仏さんに教えてもらいながら作ったことを伝えたら、母は驚きを隠せず、ぬいぐるみを凝視していた。

さらには、これをるーくんが?とぶつぶつ言いながら固まってしまい、自分の世界に入り込んでしまったので、体を思いっきりゆすって何とか現実に戻した。

その後、母はまだ驚きを隠せないでいたが、プレゼントありがとうと言って、ぬいぐるみをベットの上に置いて、メイドさんを呼びに部屋を出ていった。

その間にもう一つのぬいぐるみを刀奈の寝ているベットの隣に置き、おやすみと言って、僕は部屋を出て自室へ向かった。

 

 

 

 

自室に戻った僕は、改めて自分自身について考えてみることにした。

理由としては一回もやったこともなかった裁縫が少し教わっただけでできるようになったのか自分でも不思議に思ったからだ。

あの時は無意識にやっていたからだと思い、誤魔化していたが、今考えてみると普通じゃありえないことをやってしまったのだと改めて思った。

しかし、いくら考えてもそれに当てはまるような解答は見つからなかった。誰かに相談しようとも思ったが父と母には心配をかけてしまいそうだし、屋敷のメイドさんたちなんかはまず信じてくれそうになかったので相談をすることはできない。

そうなると、誰に相談しようか考えたが、屋敷以外の人に僕の相談に乗ってくれそうな人がいないことに気づいた。

僕はそもそも学校で誰かと会話をすることがなかった、というか僕自身が周りの連中を好きになることができなかったため、学校ではいつも一人なのだ。

結果相談できる人もいない、いくら自分で考えても解答になるようなものは見つからない。

もう考えても無駄なのかもしれないと思い、そのままベットに横になり眠りについた。

 

 

 

 

今日は目覚ましが鳴る前に起きた。いつもは五時半に目覚ましをセットしているのだが、昨日いつもより早く寝てしまったからか、5時前に起きた。

いつもなら道場に向かうのだが、たまにはゆっくりするのもいいかなと思い、自室の電気をつけ、目覚ましが鳴るまで小説を読んで時間をつぶすことにした。

そういえば、この小説、新巻が出てたなぁ、今度学校が終わった後こっそり買いに行こう。

昨日は別な小説の新刊を買おうとしたのだが、布仏さんがいたため買うことができなかったからな。

それに、プレゼントだけで所持金がなくなってしまったから、どうせ買うことはできなかったか...

僕が読んでいる小説は俗にいう恋愛小説である。今読んでいるのは学園に閉じ込められた男女二人が絆を深めながら脱出するという内容の小説だ。

意外と学校や二人の秘密や関係などがかなり深く設定されてるため、個人的にはかなり面白いと思っている。

だが、この小説はやっと単行本になったばかりなので今のところ新刊と合わせても二巻しかないのである。

新刊がどのような展開になるのかを想像しながら読んでいたら、いつの間にか時間が来てしまい、目覚ましが鳴った。

集中してると時間が早く感じるのは本当なんだなぁと思いながら、僕はベットから体を起こし胴着に着替え、道場へ向かった。

 

 

 

 

いつもと同じ時間に稽古を終えた後、シャワーで汗を流し、メイドさんと母が作ってくれた朝食を食べ学校へ登校した。

そして学校が終わり、帰宅した。帰宅した後は授業で出された課題などを自室で済まし、刀奈がいる母の部屋へ向かった。

 

 

 

 

母は夕方はメイドさん達と一緒に夕飯の支度をするため作り終わるまでは僕が刀奈の世話をすることになった。

というか、母に頼まれたのだ。夕方はメイドさんたちも屋敷にいる全員分の食事を作ったり、朝終わらなかったことを終わらせたりと忙しいのである。それは俺が生まれてくる前からだったと聞いているから、俺が生まれてきたときはたいへんだったと聞いた。どう大変だったのかは深くは聞かなかったけど...

それはそれとして、つまらない学校でたまった疲れを癒してくれるのは刀奈だけだなぁ、と思いながら刀奈の世話をしたのだ。

その後は、屋敷のみんなで夕食を取り、片づけをした後僕は風呂に入り、上がった後自室に戻って寝むりについた。

そして、そんな日常が1年続いた...

 

 

 

1年後、僕は11歳にになり、刀奈も1歳になった。そして、僕たちには、もう一人妹が出来た。

名前は更識 簪、刀奈の一つ下、僕とは10も年が離れた妹ができた。

刀奈もかわいいが、簪もかわいいな、と思いながら僕はいつも通り課題を終わらせた後、母の部屋で二人に世話をしたのだ。

 

 

 

 

5人家族になってから父の仕事はさらに忙しくなったが、そんな中でも時間を作って、家族で過ごす時間を作ってくれた。

僕にとって父の存在はかけがえのないものだった。

優しくも厳しくもある父を僕は心の底から尊敬していたからである。

だが、父は刀奈や簪を溺愛しており、刀奈と簪の事になると仕事をほったからしにして駆けつけてくれるほどだった。

その度に母に怒られているので、その姿を見るたびに僕は苦笑いをし、しょうがない父だな、と思っていた。

僕の場合はそんな問題になるようなことが無かったし、逆に問題を解決する側だったため、父からの信頼が厚かった。

だからなのか、父と会うたびに何度も「俺が死んだら家族を頼んだぞ」、と言われていた。

まるで自分はもうすぐいなくなると言っているかのように聞こえた。

僕はそれが冗談だと思い、いつも適当に流していた。

父が僕達の前からいなくなることはないなと思っていたからである。

 

 

 

だがそれから二年後の夏、父は僕達の目の前からいなくなった。

理由は日本政府の命令で麻薬を密輸している奴らの主な取引場所を調べるという仕事だった。

父はこの任務を1人でやった。本当ならば部下にやらせるのが普通なのだが、部下の人たちはほかの任務を受け持っていたため、父がやることになったのだ。

それが凶と出たのか、日本政府には密輸組織のスパイがおり、その事が密輸船に伝わっており、待ち伏せされた父は殺されたのである。

その事を聞いた母は、その場で泣き崩れてしまったらしい。

僕も聞かされた時は現実を直視出来なかった、すぐに父から言われ続けた言葉を思い出した。

「家族を頼んだぞ」、ここからだ、僕が更識の長男として、父の代わりを務めなければならないのは...

父の代わり、それは楯無の名を継ぎ、更識家の当主となることだ。

 

 

 

 

後日、更識の関係者が集まり、新しい当主を決めた。

当主に選ばれたのは先代楯無の息子であり長男である、この僕であった。実力もあるからか、関係者のほとんどは了承した。

だが反発した者もいたため、そこは僕との決闘で決めることなった。

そこから道場に移動し、決闘のルールを聞いた。

ルールは簡単で単純であった。相手が降参するか、気絶するまで続けるということ、武器も刃物や重火器以外なら使用していいこと、そして相手を死なせてはいけないことだった。

ルールを聞いた後、お互い武器を取り、向き合った。相手が持っているのは木刀、僕が持っているのは木で作られたナイフが二本、相手は父の右腕だった人の息子で剣道の大会でも優勝しているらしく木刀も使い慣れてるようだった。歳もあっちのほうが10も上だ。

だからなのか、僕と相手が別々の更衣室で着替えているとき思った。関係者たちも僕に勝ち目がないと思っている人がほとんどだろう。

そんなことを考えていたら、部屋に母と刀奈そして簪が入ってきた。そして僕に近づき、母は僕に抱き着いて、「無理しないでね」といい、刀奈たちは「お兄ちゃん、負けないでね」と言ってくれた。

母と刀奈そして簪は、家族であり兄である僕のことを信じていてくれた。家族の思いを裏切ることは絶対にしないと伝え、更衣室を出て相手と向き合った。そして、決闘が始まった。

 

 

 

 

決闘はすぐに決着がついた。決闘を見ていた関係者たちが全員固まっていた。理由としては予想していた結果とはかけ離れたことになったからだろう。

結果を言うと、僕が相手を一方的に叩き潰し、降参する暇を与えず気絶させたからである。

審判は声を震わせながら、勝者、更識 瑠璃夏、と言い、決闘が終わった。

後日、僕は更識家当主、更識楯無となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とるべりあさん、誤字報告ありがとうございます。
次回もかなり急展開です。


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大天災との出会い

お久しぶりです。葛城です。
今回は私事とはいえ、こんなにも遅れたことをお詫びします。
誠に申し訳ありませんでした。

お気に入り登録50件超えました!そしてUAも4000を超えました!
たくさんの方に見ていただき光栄です。
正直こんなにも見てもらえるとは思っていなかったので、うれしくてキーボードを打つ手が震えております。

本編についてですが、タイトル通りあのマッドサイエンティストが出てきます。
他にもでてきますが、そこは本編で!



更識の当主になってから4年が過ぎ、俺は高校2年生、刀奈は小学生、そして簪も6歳になった。

俺は学生生活を送りながら、更識の当主としての仕事をしていた。まだ学生ということもあり、自ら現場に赴くことはないが、部下に命令し、現地に向かってもらう形になっている。

日本政府からも、任務は部下にやらせるようにと通達があったため、どんなことがあろうが、自ら現地に赴き任務を遂行することはできなかった。

 

 

 

学校での生活は一年生の時は穏やかだった。目立たずゆったりと生活していた。

だが二年生の二学期中旬、俺は生徒会長になった。こう言うとあれなのだが、なりたくてなったわけじゃない。今のクラスで一年の時の同じクラスの奴と担任の推薦で生徒会選挙に半ば強制的に出ることになった。推薦理由は成績が優秀でリーダーシップもあるからと言うことだった。

俺は拒否したが、ほかに立候補者がいないということで結局俺が生徒会選挙に出ることになった。家に帰った後出迎えてくれた本音と簪を抱きしめたことは黙っておこう。

学校でのストレスで鬱になっていたとはいえ、自分から抱きしめたのは恥ずかしいのである。(これはあくまでも俺の解釈だがな)

そして当日、俺は適当なことを言って終わらそうと思い、壇上に上がったのだが、そこから見える生徒と教師の態度があまりにもひどかった。

演説を聞こうともせず寝てる奴、喋ってる奴、そしてばれないように(見えているけど)スマホをいじってる奴、怒りを通り越して呆れてしまった。

 

そのせいで俺の中の何かがプツンと切れ、更識家当主の顔が出てしまい、その場にいる全校生徒、そして全教師に一喝し、屁理屈を言ってくる連中を全員正論で論破し何も言えなくした後、学校をどのようにしていくべきかを語り俺は演説を終えた。

その演説のせいで全生徒や教師陣さらには校長にまでも変な信頼を置かれた。その時の投票では俺一人にしか票が入っていないというありえないことまで起きた。

そして俺はなるつもりのなかった生徒会長になってしまったのだ。

 

 

 

 

生徒会長になってから俺の学校生活は一変した。俺は授業に出席することがなくなり、学校生活のほとんどが生徒会の仕事や部活の大会の助っ人として駆り出されていた。

部活の助っ人も最初は断っていた、少し運動神経がいいくらいで助っ人をやらされるなんて冗談じゃない。しかも柔道は一回もやったこともないのだ。

だが何度断ってもお願いされ、俺はこれ以上付きまとわれるのは嫌だったため、嫌々助っ人を引き受けた。

大会当日、俺は胴着を貸してもらい、そして基本的な技を教えてもらい大会に臨んだ。ルールは頭に入れてきたが、正直未経験者の俺が勝てるはずないだろう、と思っていたのだが...

俺は一人で一本も取られずに他校を圧倒し、優勝してしまった。柔道部の奴らは喜んでいたが俺はやってしまったと後悔した。

大会が終わった後、俺は柔道部に手伝ったことは絶対に口外するなと念押しに言い屋敷へと戻った。

だが、現実はそううまくいかないのであった。部員には言ったのだが、顧問には言っていなかったため、教師の間で広まり、最終的には校内全体に広まってしまい、そしていつの間にか生徒会長は何でもできる超人から誰が聞き間違えたのか、生徒会長に頼めば助っ人として来てくれるという噂に代わりそれが学校中に広まった。

その噂が流れてからは、俺に部活の助っ人の依頼が殺到してきた。だが助っ人だけだったならよかったのだが...

 

 

 

 

助っ人の依頼が殺到する中、弓道部の先生に助っ人としてはなく一週間だけ指導者として来てくれと言われた。俺は人に教えるのは得意だし、自分がやるよりは楽だと思い、OKをだした。

だがその選択がまた自分に負担をかけてしまうとは思いもしなかった。

うちの弓道部は大会では二回戦敗退や三回戦敗退などのパっとしない結果で終わっていた。だが俺が一週間指導した後の大会では決勝まで勝ち残るという好成績を残したのだ。

今回も柔道部の時と同じになると思い、指導初日に部員全員と顧問そして副顧問にもこのことは公にしないようしなければやらないと伝えていた。

だがそれは意味をなさなかったのである、大会が終わった三日後に生徒会長の指導により弓道部準優勝!、という記事が校内新聞で大きく取り上げられた。

俺はそれを持って新聞部を問い詰めた。俺の覇気に驚いたのか、おびえながらも知った経緯を俺に話してくれた。

たまたま弓道場を通りかかったら生徒会長の声がしたから気になって、中を見たら指導しているところを目にしたのでスクープと思いつい、ということだった。

俺は笑顔で頷き、とりあえず新聞部の部長に軽く拳骨を入れ、今回は厳重注意にしておく、次からは本人の許可を取ってからけいさいすることを伝えて部室を出た。

だがそのせいで、助っ人だけでなく指導者としても引っ張りだこになってしまったのである。

 

 

 

 

生徒会の仕事が終わり時計を見ると、あと少しで部活指導の時間になりそうだった。

俺は生徒会室にだれも残っていないのを確認すると、盛大なため息をした。

「はぁぁぁぁ、高校に来れば少しはまともな奴がいるとは思ったが、正直期待外れだったな」と思いながら、席を立ち、部活指導に向かうため生徒会室を出ようとしたとき、窓が思いっきり開けられた音がした。

はぁ、とため息をつき後ろに振り返ると窓から入ってきたと思しき、女性がそこにいた。その恰好は学校指定の制服ではなく、更識の屋敷のメイドさんたちが来ているような服を着ていた。

あえて、窓から入ってきたことにはツッコまず、何をしに来たのかだけを聞くことにした。いちいちつっこむのもめんどくくさいしな。

ここに急用があるのだろうかどうかはわからないが、指導に遅れるため、正直早く終わらせたかった。

服装から部外者か、と思いもしたが、顔を見てその考えは消えた。なぜなら、一年生の名簿で見た顔あったからだ。一人だけ何故かウサ耳をつけていたので一年生の中で彼女だけは印象強く頭に残っていた。

確か名前は...

「え~と、確か、一年生の篠ノ之 束さんだっけ?、生徒会室に何か用かな?」

 

「そうだよ~、私が束さんだよ~、よく知ってたね。確か初対面のはずだけど?」

 

「生徒会の仕事で一度だけ写真付きの名簿を確認したことがあったからな、それで知った。それでここに何か用があるから来たんだろ?早く要件を言ってくれ。」

 

「ここには別に何もないよ~、私が用があるのは、生徒会長である君だよ!更識 楯無先輩、いや、更識 ()()()先輩」

俺は一瞬で彼女の背後に近づき、逃げられないように腕の関節を固めた。

 

「なぜ俺の本名を知っている、今知っている理由を話せば腕は折らずにしてやる」

 

もし本当のことを言ったとしても意識を刈り取ってから更識の屋敷に連れていき、拘束してからこと細かく説明してもらうがな。

 

「いたたた!、痛い痛い!、本当に何もないんだってば!、少しぐらい人の話を聞いてよ、楯無先輩!」

 

いくら女とて、暗部である更識家の情報を知っている限り、表向きの人間じゃないのは分かってはいるが、言っていることは嘘ではないと感じる。

本当に話だけと言うなら、一体何の用があるのだろうか...、こればかりは聞いてみないとわからないな。

束、に話は聞いてやるが、少しでも怪しいと俺が判断したら意識を刈り取ることを伝え、拘束を解き、話を聞くことにした。

 

 

 

 

「それじゃあ、さっそく、お茶もらっていい?」

 

俺が今でも警戒心を解いてないのをわかっているのにこいつは、とほんの一瞬イラッときたが何とか冷静になり、意識を刈り取ることを我慢できた。

 

「お前、自分がどういう立場にいるのかわかってて言ってるのか?」

 

束を威圧するように言ったのだが、「そんな今でも噛付きそうな目で見られると、怖くて言えないからお茶で落ち着こうとしようとしてるだけなんだけどなぁ~」

と言われ、そんな目になるのは警戒しているからだと言いそうになったが、ここでツッコんでしまうと負けのような気がしてしまい、逃げるなよと言い、生徒会におかれている電気ポットでお湯を沸かし、いつも持参しているハーブティーを淹れた。

 

「ほら、ハーブティーを淹れてやったからこれ飲んで少しは落ち着け、あと俺も少し警戒しすぎたな、すまん。」

 

ハーブティーを束の前に置き、少し警戒しずぎたことを謝った。謝った後すぐに俺が謝る必要あったか?と思っていたが、俺は警戒を緩め、束はハーブティーを飲んだ。

俺が謝ったのが効いたのか、束は声のトーンが変わり、さっきまで笑っていたが、今はさっきとは別人のような真面目な表情に代わり、俺の本名を知った方法、そして会いに来た理由を淡々と説明していった。

 

 

 

 

本名を知った理由に関して俺は度肝を抜かれた、更識の屋敷にある監視カメラを暇つぶしにハッキングしてそこから過去のデータを見ていたら、知ったという。まず七年も前の映像が残っていることにも驚いているが、それよりも更識のセキュリティをやすやすと通り抜け、映像を入手していたことに驚いた。

俺もセキュリティのほうは毎週確認しているが、ハッキングされていたのは分かったが、重要なデータは何一つ取られていなかった。てか七年前の監視カメラの映像なんてさして重要でもないからな、そこまで目が行き届くはずないし、取られても仕方ないか。

まぁ、そっちは過ぎたことだし、どうでもいいが、こっちはどうするかなぁ。束はもう生徒会室にはいない。「ちーちゃんを待たせてるから帰るね~、あっ、それの返事は明日聞かせてよ~、また来るから、バイビ~」と言い、窓から帰っていった。

束が俺に会いに来た理由、それはこのつまらない世界を変えてみないかと言う誘いだった。正直胡散臭い話だとは思ったが、あんなの見せられたらなぁ。どうするか...てか明日ってもう少し猶予をくれよと思いながら、部活の指導へと向かった。

 

 

 

 

今日は剣道部とバスケ部の指導をした。いつも思うが俺が指導に来たとき、女子はテンション上がって、男子はあんなにテンションが落ちるのだろうか?俺にはわからないことだからどうでもいいか。

家に帰り着き、俺はすぐに自分の部屋に向かった。いつもなら、広間で当主の仕事を済ますのだが、今日だけは学校で部下に連絡を取り、明日まとめてやると伝えていたので今日はやらなくていいのである。

そして自分の部屋に入ってすぐに、ベットに転がった。束から言われたことが頭から離れないのである。

「世界を変えないか」か...、つまらない世界をねぇ...

確かに俺自身もこの世界はつまらないし、面白くもないとも思ってる。

だけどそんな世界でも欝にならずにやっていけるのは多分更識の屋敷の人たちと何より妹たち、そして母がいるからである。

この人たちがいなかったら、俺は精神的に潰れたのかもしれないな。

若くして更識の当主となったが、実際仕事は楽だった。

殆どが書類仕事であって任務らしい任務はなかったからなのである。

書類仕事はすぐに終わり、余った時間も妹たちと一緒に買い物に行ったり、遊んだりすることだ、最近は遊べていないが。それ以外だと母やメイドさんたちの仕事の手伝いくらいだ。

それでも潰れない時はだいたい小説を読むか、武道の鍛錬くらいだ。

屋敷では暇を潰せるからいいのだが、学校は正直つまらない。

今日は別だったが...、束を監視することも入れて、計画に乗ってみるのも悪くないかもな。

俺は日常を少しでも変えるならいいかなと思い、考えに乗ることにした。

考えがまとまったのを見計らったのか、部屋の扉が開いたのである。

 

「お兄ちゃんいる?」

 

「お姉ちゃん、勝手に入ったら怒られるよ」

 

「そうですよ、お嬢様!私もいきなり開けて入るのはダメかと思うのですが...」

 

「お姉ちゃんも、かんちゃんも気にしすぎだよ〜」

 

「そうよ!、お兄ちゃんがこれぐらいで怒るはずないもの!」

 

言い合いしながら俺の部屋に入ってきたのは、俺の妹の刀奈と簪、そして布仏さんの娘の虚と本音である。

なんとなくこっちに来る気配があったから、どうしたのかと思ったが心配してきてくれたのだろう。

俺が当主の仕事をしなかったから、母から見に来るように言われたのかもな、本音は付いてきただけかもしれんが。

刀奈達はそのまま部屋に入り、俺のところに近づいてきた。

 

「お兄ちゃん、お母さんが心配してたよ」

 

「気分、悪いの?」

 

思った通り、母さんが刀奈たちに頼んだのか、いつもは香月さんか無月さんに頼むのになぁ...

いつも母が伝言を頼む相手が来なかったことを不思議に思ったが、それは後で確認することにして、今は刀奈たちの相手をした。

 

「なんでもない、ただ考え事をしてただけだ。」

 

「本当!、それじゃあ、遊べる?」

 

「お嬢様、考え事をしているのに邪魔をしては...」

 

「虚ちゃんは遊びたくないの?」

 

「私だって、お兄様と遊びたいですよ!、だけど邪魔をしてはいけないじゃないですか」

 

虚がちょっと拗ねかけてるな、拗ねるとあやすのが大変なんだよな、刀奈たちもだけど。

ともあれ、最近かまってやれてなかったからな、今日は遊んでやるか。

 

「虚、考え事は終わったから大丈夫だ。刀奈たちも心配かけてごめんな。」

 

心配させたことを謝り、刀奈と虚の頭をなでた。

それを見ていた、簪と本音も「私も~」とねだってきたので、簪たちの頭もなでた。

俺は刀奈たちが満足するまでなで続けた。

 

「それじゃあ、お兄ちゃん、買い物に行こう!」

 

「ん、買い物?、遊ぶんじゃないのか?」

 

「それが...」

 

虚が俺の部屋に来た理由を説明してくれた。なるほど、なるほど、買い物を頼まれたけど量が量で持ちきれないからか。

買い物のメモを見ると、そこにはびっしりと食材の名前が書いてあった。小学生に持たせる量じゃないしな、もしかしたら...

 

 

 

 

今、刀奈、簪、虚、本音の5人でスーパーに買い物に来ている。

あのメモは無月さん達が刀奈たちに渡すはずのメモを間違って持って行ってしまったらしく、連絡を取ったがもう買い物が終わったところだったので結局刀奈たちと一緒に買い物に来ているのだ。

無月さん、普段から結構気が抜けてるからなぁ、いろんなことで間違うことが多いのは問題だな。これから無月さんにはだれか行動してもらうようにしてもらおうかな。

女の人を叱るというのは男としてはあまりやりたくないしな。叱るのがダメとなると、さっき考えたことしかないか...

無月さんのことを考えていると、歩き疲れたのか本音が立ち止ってしまった。

 

「ん?、どうした本音?」

 

「つかれた~、るりにぃ~おんぶ~」

 

「本音だらしないですよ、あと少しなんですから歩きましょう」

 

「おねぇちゃんと同じにしないでよ~」

 

「はぁ、ほら本音」

 

「わーい!、るりにぃ~ありがとう~」

 

俺が腰を落とすと、本音は背中に飛びついてきた。久しぶりにおんぶしたけど大きくなったなぁ~。

昔はおんぶやらだっこやら肩車をやってあげていたのだが、学校が忙しくなってしまい中学三年から遊んであげることができなかったのだ。

こんなに喜ぶならたまにやってもいいかもな、と思い老けていると、

 

「お兄様すいません、本音が迷惑をかけて」

 

虚が謝ってきたが、俺は微笑みながら、

 

「いや、謝るのは俺の方だよ、最近本音や刀奈たちにかまってやれなかったからな。それに」

 

俺は少し自分の本音を出しそうになったが何とか堪えた。

危ない...、今の俺の生きがいは屋敷の家族たちと一緒にいることなんだからと言いかけた。

 

「それに、なんですか?」

 

「それに、虚たちといた方が楽しいからな、虚も甘えてもいいんだぞ」

 

何とか誤魔化せたが、こっちも本音と言えば本音なんだよな。

この言葉が決定打になったのか、本音を見て我慢していた虚が甘えてきた。刀奈たちが道の先にいるのを見計らって。

 

「それなら、帰るときに、できたらなのですか、私もお兄様に抱っこ、してもらいたい、です//」

 

そう言い終わると、虚は恥ずかしそうに下を向いたまま黙り込んでしまった。

あぁ、かわいいなぁ、こう甘えられるとこっちも今までの疲れが吹っ飛ぶほどうれしいのですよ。

思わず抱きしめたくなったが本音をおぶっているし、何しろ人目がある場所でそんなことしたら、周りの目がやさしいものからきついものになる、それだけは何としても避けなければならない。

というか、人目がなくてもしないけど、ロリコン判定されたくないしな。

今日一番の試練を俺は我慢した。

 

「確約はできないな、荷物があるし、何しろ刀奈たちにもせがまれたら、対処できなくなるからな。」

 

「そうですか...」

 

虚がしょんぼりして泣きそうな顔になってしまった、甘えていいと言った手前これはちょっとやばい。

焦りながらも俺は何とか言葉を絞り出し、なぐさめたのだが

 

「なら、今度お出かけに連れて行ってください!」

 

「それはみんなでってことかな?」

 

「いえ、二人っきりです!」

 

「それはまた無茶なお願いだな」

 

「だめ、ですか?」

 

そんな捨てられた子犬みたいな目をされたらいいよとしか言えるわけないじゃないか。

俺は虚に来週の日曜日一緒に出掛けることを約束した。

約束した後の虚はとても楽しそうにしていた。そんな姿を見ていた、俺は自然に微笑んでいた。

その後はメモに書いてあったものをすべて購入し、軽い荷物を刀奈たちに持ってもらい、俺は本音を抱っこして片手で大量の食材が入ったエコバックを持って帰った。




誤字報告について
とるべりあさん
リア主さん
4話にて誤字報告ありがとうございます。

今回は二回見直し訂正したのですが、誤字脱字がないとは言えないので
気づいた方がいれば誤字報告お願いします。


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大天災と大天才

どーも、お久しぶりです。
葛城瑠璃です。
一年以上投稿できなくてほんと申し訳ありません!
自分のリアルがいろいろごたついてしまい書くことができませんでした。
今もいろいろと忙しいのですが、リアルが少しの間落ち着いたので投稿させていただきました。




買い物から帰った後、無月さんにこれから買い物に行くときはほかの人と一緒に行ってください、と伝えた。

今回に関しては俺だったからよかったものの、この量を女性一人で持つとしたら酷だしなぁ。

無月さんはすいませんでした、次からは気をつけます。と何度も頭を下げた後自分の元の持ち場に戻っていった。

無月さんが戻るのを見てから、俺も刀奈たちがいる自室にもどった。

 

 

 

 

...俺は部屋に近づくにつれて妙な違和感を感じていた。帰り着いた後、確か刀奈たちは俺の自室で遊びながら待っとくと言っていたのだが、部屋からは遊び声どころか刀奈達の声すら聞こえなかったのである。

どうしたのかと思い、急いで部屋に向かい、扉を開けた。

扉を開け、部屋を見渡すと、俺の部屋のベットで四人で仲良く眠っていた。心配して損した気分だが、まぁ何事もなくて何よりだと思いながら部屋に入り、音を立てないように扉を閉めた。

そして刀奈たちが寝ているベットに近づき、刀奈たちの頭をなでた。

はしゃぎすぎて疲れたんだろうな、夕食の時間が来るまでは寝かせておくか。

全員をなで終わった後、俺は刀奈たちから離れ、椅子に腰かけ、明日まとめてやるつもりだった更識の仕事を終わらせることにした。

 

 

 

 

そのころ束の方では...

 

 

「なぁ、束」

 

「ん、どうしたのちーちゃん?」

 

「あの人...、更識先輩は協力してくれそうなのか、お前の計画に」

 

「確率でいうとね~、99%協力してくれるよ!」

 

私がそう言うとちーちゃんは首をかしげながら難しい顔をしていた。どうせ初対面の人間がそんなやすやすと協力するわけがないとか思ってんだろうねぇ。

ん?、なんで人の心の中が分かるのかって?

そりゃあ束さんだもの、ほかの奴らの心の中はどうでもいいけどちーちゃんのことなら顔を見ればわかちゃうんだよ。

まぁ、その逆もまたしかりなんだけどねぇ~

「束、人の表情で勝手に心を読むな」

 

こんな風に毎回ばれちゃうんだよねぇ~。

 

「そんなこと言うちーちゃんも私の心読んだじゃないか、お相子だよ~。」

 

「はぁ、全くお前と言うやつは...、でなんでそこまで言い切れるのか教えてもらおうか。」

 

「ん~、そうだね~。あの人を一目見て思ったことがあったんだけど、今日話してそれが確信に変わったんだよね~。」

 

「どういうことだ?今話せるなら時間もないからさっさと話してくれ。」

 

「そんな急かさないでよ~。時間がないって言いながらほんとはいっくんに早く会いたいだけでしょ~?」

 

「これ以上一夏を一人させるわけにはいかないのでな。」

 

「しょうがないな~、私と同じ目をしてたからなんだよ、あの人は。」

 

「同じ目、な...。」

 

「あとは、自分以外の人たちが理解できない所とかね、そうゆう所とかが私に似てたからだよ。」

 

「そうゆうことか...、確認させてもらうが、その人と明日会う予定を立ててあるんだよな?」

 

「立ててるよ~、場所は決めてないけどね~。」

直接会いに行けばいいしね~、場所決めるのもめんどくさいし。

「分かった、なら行くときにまた連絡してくれ、一応実力を更識先輩がどんな人なのか見ておきたいからな。」

 

「分かった~、またね、ちーちゃん。」

ちーちゃんはそのまま分かれ道の下りのほうに走っていった。

てゆうか、実力ってまた竹刀でも持ってくるのかなぁ、なら明日は楽しめるかもね。

あんまり、まじめな話だけで終わらせたくないし、私も参加しちゃおうかな~。

明日のことを考えながら私は家(研究所)に帰った。

 

 

 

 

あのあとは仕事がひと段落した時に、母から電話がかかってきた。

俺は刀奈たちを起こさないため、携帯を部屋から出てから、電話に応答した。

 

「もしもs」

 

「るーくん、ご飯で来たよ~!、はやくきてね~!、あぁ、あと刀奈ちゃんたち見なかった買い物から帰ってきてから見てないのだけど、部屋にもいないみたいだし

 何か知らないかしら?、もしどこにいるか知ってたら、連れてきてね~!よろしく~!」

 

プツ、ツー、ツー

 

...いつもより激しかったな、まぁ慣れてるからいいけどさ。

母は夕食の時間になっても俺が広間に来ないときは、こうやって電話をかけてくるのである。

まぁ、電話というより伝言に近いと俺は思っている。

と言うか完全に伝言だろ、これ。

何でかというと、電話は話し合うものなのに、自分が言いたいことを言って通話を終わらせるのは電話じゃなくて伝言だろ?

と自分の中で解釈し、部屋に戻り刀奈たちを起こし、そのまま広間に向かった。

 

 

途中ハプニングもあったが、何とか刀奈たちを連れて広間に来ることができた。

襖を開けて広間に入ると、メイドさんたちと母がしゃべりながら待っていた。

今日、部下たちは部下たちだけで宴会に行ってしまっているため、いつも狭いと思っている広間がやけに広く思えた。

喋っている中メイドさんの一人が俺たちに気づき、その人がほかのメイドさんたちにも来たことを伝え、ほかの人たちも自分の場所へ戻っていった。

別に先に食べててもよかったのになと思いながらも、俺は刀奈たちに自分のいつも食事をとる場所に行くように言い、俺も自分の席に着いた。

そのあとはみんなで夕飯を食べ、片づけを済ましてから各自、自分の部屋に戻っていった。

俺も風呂に入るために着替えを取りに部屋に戻った。

 

 

俺は風呂から上がり、部屋に戻る途中で視線を感じた。

感じた方向を見るがそこには誰もいなかった。気のせいかとも思ったが、今日更識のセキュリティを簡単に突破するほどの技量を持った奴に会ったのだ。

俺は数秒の間、廊下に立ち止まり気配を探った。だが周りには人の気配はなく、感じるものもすべて身内の者しかいなかった。

ひとまず何もないことが分かって一安心したが、気配を探ったことでわかったことがあった。

自室から4人分の気配を察知したのである。いるのは刀奈たちであることはわかっているのだが、なぜ俺の部屋にいるのかはわからなかった。

俺は風呂には結構長く入るタイプだ、悩みや疲れがたまった時などは特に長いのだ。

今日風呂に入ったのが21時43分で上がったのが23時26分なのである。この時間帯は刀奈たちはもう自分の部屋で寝ている時間なのだ。

なのに4人とも俺の部屋にいる理由が分からなかった。

まぁ、ここで立ち止まって考えるよりまずは行ってみるか。

さっきよりも速足で俺は部屋に戻った。

 

 

部屋につきドアを開けると、いきなり本音が飛び着いてきた。

 

「るりにぃ~~!」

 

「ぐほっ!」

 

俺は本音を受け止めはしたものの、運が悪く鳩尾に本音の頭が直撃し、情けのない声を出しながら倒れてしまった。

もちろん本音に衝撃がいかないようにはしがたが、その分俺に来る衝撃が増した。

倒れた衝撃もなかなかの痛さだったが、鳩尾のほうが何倍も痛かったのは黙っておこう。

俺が倒れた後簪と刀奈が近づいてきて「「お兄ちゃん大丈夫?」」と声をかけてきた。

 

「ごほっ、あぁだいじょうb、ごほっ、ごほっ、大丈夫だよ。」

 

だが未だに本音は何かにおびえながら俺に抱き着いている。虚に関してはどうしていいのかわからなくなっているようでおろおろしていた。

 

せき込みながらも大丈夫なことを伝えると、刀奈は「そうなの?、よかった~。」と言い部屋に戻っていったが、簪は何も言わなかったがまだ心配そうこちらを見ていた。

本音を抱きながら起き上り、簪に「お兄ちゃんは丈夫だから心配しなくても大丈夫だぞ。」と、頭をなでながら言った。

簪は「うん。」と一言だけいい、少し顔を赤らめて部屋に戻っていった。

妹たちの前ぐらいはかっこいいお兄ちゃんを演じないとな。

そう思いながら、本音を抱きかかえ俺も部屋に入った。

 

 

「それで刀奈達は何でここに来てるのかな?」

 

さっきも言ったが、この時間帯はいつもならこの子達は寝ている時間なのだ。

それなのに俺の部屋に来ていたのは何かしら理由があるのだろう。

何もなければまず部屋に来ることはあっても泣きながら抱きついてくることはないもんな。

沈黙の中一番最初に口を開いたのは簪だった。

 

「えっと、私達テレビで怖い映画を見ちゃって、それで部屋に戻るのが怖くなって、それで」

 

なるほど、それでモニター室から一番近い俺の部屋に来たわけね。そこまではいい、いいんだが...。

 

「その手に持っているものはなんなのかな?」

 

部屋に入ってから気が付いたが、刀奈たちはクッションのようなものをもているのだ。

確かあれは、モニター室に完備されていたやつだったはず。

いや、まさかな、そんなことはないよな、だって今までこんなことなかんだから、大丈夫だよな、大丈夫だと願いたい...

だがそんな願いは本音の一言で崩れ去るのだった。

 

「今日はるりにぃと一緒に寝る!」

 

その一言に俺は固まってしまった。えっ、聞き間違いだよな一緒に寝る?

冗談だよな、と言いたいのだが刀奈たちの反応を見る限りだとそんなことは言えなかった。

虚は恥ずかしそうにしてるし、刀奈もなんかもじもじしてるし、簪はすでにベットに寝転がってるし、これはもう引き返せないのではないのだろうか。

さっきから抱きついている本音はまだびくびくしてるし、どうすればいいんだこの状況!

 

 

結局、刀奈たちに押し負けてしまい、結局一緒に寝ることになった。

ベットでは全員は入りきらないので、布団を三枚敷きその上で寝ている。

刀奈たちはスーッ、スーッと寝息を立てて気持ちよさそうに寝ているが、俺は全く眠ることができなかった。

だって、刀奈たちに腕枕しているのだから...。

刀奈と虚は右腕を、簪と本音は左腕を枕にしているのは別にいいのだが、正直になれない体制だから寝ようとしても寝れない。

さてどうしたものか...、なんとか眠れる方法を考えるが何一つ思い浮かばなかった。

まぁ、目をつぶればいつの間にか眠れるだろう、そう思い、目をつぶり、眠りについた(つもり)。

 

 

・・・翌朝

結局俺は眠りについたのだが、眠りが浅かったのかあまり疲労が取れたようには感じなかった。

しかも逆に疲れがたまったようにも感じた。

顔でも洗おうかと思い、起き上がろうとするが、体に違和感を感じた。

詳しく言うと、上半身と右手に感じた。

上半身には何かが密着している感じ、右手には柔らかい感触を感じた。

おそるおそる首を起こしてみてみると、俺が着ているTシャツが膨張しているのが分かった。

ゆっくりとTシャツを左手で上げてみると、そこには自分の腹部を枕にして寝ている簪の姿があった。

はぁ、簪か...、と安心したのもつかの間、右手に異変が起きた。

詳しく言うと右手というより、柔らかい感触を持ったものが動き出したのである。

とっさに右手のあるほうへ顔を向けた。そこにいたのはパジャマの中に手を突っ込まれている刀奈の姿があった。

どうやったらこうなるのかを自分でも知りたいな。

実際、自分がこうしている訳だが……。

現在時刻は午前六時、この状況どうやって打破するか、方法は二つある。

 

1.強引に右手を引っ込抜く

2.刀奈が寝返りするのに合わせて右手を抜く

 

......どっちもどっちだよなぁ

1は間違いなく刀奈は起きてしまう、がばれるかは五分五分だ。

2のほうはばれることはないだろうが、目覚ましが鳴るあと30分の間に刀奈が寝返りするかどうかの話だ。

こっちの確立としては成功に3割、失敗に7割といったところだ。

..........すまない、刀奈、不甲斐ないお兄ちゃんを許してくれ!

と心の中で刀奈に謝り、俺は強引に右手を抜くのであった。

そのあとは結局ばれてしまい、許してもらう条件として、今日刀奈たちを学校に連れて行くこととなった。

刀奈は「お兄ちゃんが剣道してる所見るの久しぶりだなぁ。」と喜んでいるからいいのだが、正直なところ連れて行くのはとても不安だ。

今日は剣道部の指導及び練習試合なのである。

何もなければいいのだが、心配になりながらながらも学校に行く準備を済ませていった。

 

 

一方こちらはというと...

 

「千冬姉!、今日試合するんでしょ?」

「あぁ、今回はかなり手強いと束が言っていたな」

「俺も見に行っていい?」

「...しかし学校に連れて行っていいのだろうか」

「お願いだよ千冬姉!」

どうするかなぁ、と頭を抱えて考えているときだった。

「おはよー!ちーちゃん!、いっくん!」

鍵をかけていたはずの玄関から扉を思いっきりあけ、篠ノ之束が入ってきた。

「束おねぇちゃん、おはよう!」

「束...、いつも言っているが、もう少し静かに入って来れないのか?」

「だって、いっくんとちーちゃんに早く会いたかったんだも~ん、それといっくんは連れて行っても大丈夫だよ」

「なぜだ?」

「さぁ、何となくかなぁ。私としてはいっくんにも来てほしいけどなぁ」

「束お姉ちゃんもいいって言ってるからいいでしょ、千冬姉?」

束まででてきたら、私に一夏を止めることはできないな。

「...今回だけだぞ」

「やった~、ありがとう千冬ねぇ!」

私の試合を見るためだけにどうしてあそこまで必死になるのか...。

結果、一夏も一緒に連れていくことになった。

 

 

・・・・・・

 

 

午前9時

 

俺は刀奈達を連れて校内に入り、剣道部が活動している武道館へと足を踏み入れるのであった。

家で道場の決まりを知っている刀奈達は中へ入る前に「失礼します」

と、お辞儀をしてから中へと入って行った。

俺も同じく挨拶とお辞儀を済ませて、剣道部の主将の元へと向かう。

「おはようございます。」

「おはようございます。今日は指導のほど、よろしくお願いします。ですが...。」

主将が俺の背後をちらちらと見ている。俺は自分の背後を見てみると。

そこには、剣道部の女子部員であろう女子たちと楽しそうにしゃべっている刀奈たちの姿があった。

「あ~...。すいません、今日は妹たちも連れて来てしまいました。」

主将に事前の連絡もせずにつれてきてしまったことを俺は頭を下げて謝った。

俺が頭を下げると、

「次回からお願いしますね。今回はこちらから頼んでいるので今日は特別ということで」

剣道部の主将は少し苦笑いしながらも刀奈たちの同伴を許可してくれた。

「ありがとうございます。ここではおとなしくするように言い聞かせますので。

それでは胴着に着替えてきますので、また後程。」

俺は頭を上げて、主将に一言伝えてから更衣室の所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は不定期で投稿します。
また間が空いてしまいますが、こちらの事情をくみ取ってもらえると幸いです。
それではまた次回!


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