花結いのきらめき・二人の勇者の章 (水甲)
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プロローグ

以前より書きたいと思っていたゆゆゆいの話です。基本的には主人公二人の視点でお送りします


桔梗SIDE

 

さてこれはどういう事だろうか?さっきまで海岸で絵を描いていたはずなのに、気がついたら街中にいた。

 

「一体何が起きてるんだ?」

 

讃州の街なのにどこか歪だ。一体ここは何処なんだろうか?そして一番気になるのは僕の目の前で眠っている彼は誰なのだろうか?

 

「ん……ここは……」

 

彼は目を覚まし、すぐにあたりを見渡した。そして僕と目があった。

 

「えっと………ここはどこですか?」

 

「讃州市みたいだけど、何か変な感じがする」

 

彼はすぐに自分が置かれている状況を把握していた。だからこそ近くにいた僕にそんなことを聞いたのだろうな

 

「確かに貴方が言うように変な感じという……というよりかは歪な感じですね」

 

どうやら彼も感じ取っているみたいだな。とりあえず今すべき事は……

 

「僕は神宮桔梗」

 

「上里海です………神宮?」

 

「上里?」

 

上里って乃木に並ぶ大赦のトップの家系のはずだ。僕も何度か会ったことがあるけど、確か上里海って………女の子じゃ……

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

目の前の男の人の名前には物凄く聞き覚えがある。確か上里家と乃木家よりかは下だけど大赦ではかなりの発言力がある家の人だけど、神宮桔梗って、須美と同じくらいの歳の子じゃなかったっけ?

 

「というかもしかしてバニルさんが言っていたのってこのことだったのか?」

 

「バニル?」

 

「ごめんなさい。こっちの話です。あの桔梗さん、ここに来る前に何か聞いたりしました?例えば言葉じゃない声とか……」

 

僕がこっちに来る前に聞いた言葉の後に、ここに来ていた。もしかしてそいつが原因ということになる

 

「聞きなれない言語だったけど、まさかそれが原因というわけじゃないだろう?」

 

「もしかしたらですが……とりあえずゆっくり話せる場所に行きましょう。お互い何かに対して気になっているみたいですし」

 

さっき僕の名前を聞いて、何か不思議そうにしていた桔梗さん。ここは互いのことを知るべきだと思い、提案してみた。桔梗さんもそれに賛成し、僕らはゆっくり落ち着ける場所に向かおうとしたときだった。

 

突然端末からアラームが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

このアラームは……樹海化警報!?どういうことだ?もうバーテックスは襲ってこないはずなのに……この歪な世界に関係してるのか?

 

街中の景色から色とりどりの木のが集まった世界、樹海に訪れた僕ら……

 

「お前、樹海に来れるのか?」

 

「樹海?ここがそうなの?」

 

海は樹海の事を知らないのか?さっきもアラームを聞いてすごく驚いていたのも気になる。まぁ今はそんなことを考えている場合じゃないな

 

僕らの前には30体ほどの星屑がいた。中には見たことのない星屑もいるみたいだけど……

 

「あのバーテックスは……まさか……でも、僕がこっちに来ることはないって……」

 

「何か知ってるみたいだな。詳しいことを聞きたいけど、今はこいつらを片付ける。戦えないなら下がってろ」

 

僕は勇者の姿に変わり、大鎌を構えた。久しぶりの戦いで体が鈍ってなければいいけど……

 

「桔梗さん、勇者だったんですね。それなら僕も……」

 

海もまた眩い光に包まれると白い衣装に着替え、手には白い刀を持っていた

 

「お前も勇者だったのか?でも、何で樹海のことを知らない?」

 

「詳しい話は後で、今はこいつらを片付けましょう!!」

 

「そうだな」

 

僕と海の二人は互いに武器を構え、迫り来る星屑を切り裂いていくのであった。




プロローグなのでかなり短めです。

次回は勇者たちと合流です


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01

友奈SIDE

 

少し時を遡って、勇者部。

 

「ひなちゃん、何かあったの?」

 

部室には神樹様によって召喚されたみんなが集まっていた。こうやって皆が集められたということは何か緊急事態でも起きたのかな?

 

「はい、今日皆さんを集めたのは神樹様の力が戻った影響で、新たな勇者が二人ほどこちらに召喚されたのですが……」

 

「ちょっと複雑な召喚方法でね。直接こっちに来れなかったみたいなの」

 

「複雑って……どういうことだ?」

 

若葉ちゃんが不思議そうな顔をしていた。今までだったら勇者部にみんな来たりか、樹海の中にいたりしたけど、今度はどういう理由なのかな?

 

「まず召喚されたお二人の事をお話をする前に、皆さんに平行世界についてお話をしましょう」

 

ひなちゃんが何だか難しい話を始めたけど、あんまり理解できない。えっと……

 

「樹ちゃん分かった?」

 

「えっと、あんまり……」

 

「友奈ちゃん、樹ちゃん、わかりやすく言うとね。私達が生きているこの世界の他に色んな可能性が集まった世界があるの。例えば、バーテックスが現れなくって平和な世界とか、私達の性別が逆になっている世界とか……」

 

「似たようような世界ってこと?」

 

「そうね」

 

うん、東郷さんの説明のお陰で何となく分かった。あれ?でも……

 

「ねぇ、ひなた。その平行世界とやらと二人の勇者が何か関係あるの?」

 

夏凛ちゃんも同じことを思ってたみたい。本当に何か関係あるのかな?

 

「その二人は平行世界の勇者ってなりますね。それもかなり特殊で確率としては物凄く低い世界の勇者です」

 

「どんな子達よ!?」

 

「一人は天の神との戦いを終わらせ、天の神と神樹様との道標となった境界の勇者で、もうひとりは女神様の加護を受けた勇者なの」

 

みとちゃんの言う二人の勇者のことを聞いて、何だかすごい人達だということはわかった。

 

「まぁどんな子達なのかは会ってからですね。あともしかしたら色々と戸惑うかもしれないんで、ちゃんと説明してくださいね。特に友奈さんと友奈さんのこととか」

 

「確かにこの二人を見たら双子って勘違いしそうね」

 

先輩がため息を付いた瞬間、突然アラームが鳴り響いた。これって敵が攻めてきたっていうこと!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

「これで十匹目!!」

 

三十体いたバーテックスは、僕が倒したので最後みたいだ。それにしても桔梗さんは凄すぎる。気がついたら物凄い速さでバーテックスを切り裂いていってるし……

 

「お互い怪我はないな。それにしてもお前……樹海の事を知らないのに、どうしてあの姿が変わったバーテックスのことを知っているんだ?」

 

「えっと、詳しく話すと長くなるんですけど……」

 

どう説明したものか……僕がここに来るまでの冒険の話をした方がいいかもしれないけど……

 

「まぁ、詳しい話をしている場合じゃないな……敵の第二陣が来るぞ!!」

 

次の敵が来たみたいだ。今度は鳥型と魚型、あとは棘が生えたやつ……やっぱりこいつらは造反神の……

 

「気をつけろ!あの棘付きから何かが来るぞ!」

 

桔梗さんがそう言った瞬間、数体の棘付きからビームが放たれた。避けるのは間に合わなそうだし、こっちで使えるかどうかわからないけど……

 

「借りますよ!先輩」

 

先輩の大剣でビームを防いだ。こっちでもスキルは使えるみたいだな。桔梗さんは避けられたみたいだけど、何でか驚いていた。

 

「何でお前、先輩の武器を使えるんだ?」

 

「えっと、これは………」

 

説明しようとした時、空から何かが降ってくるのが見えた。あの姿は!?

 

「「勇者キィィィィィク!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

本当にこれはどういう事だ?海は先輩の武器を使えるし、空から降ってきた二人組が星屑を一気に殲滅できたのはいいことだけど……何で友奈が二人いるんだ?

 

「大丈夫?」

 

「あれ?男の子?」

 

「何で友奈が二人いるんだよ!?いや、変身した姿はちょっと違うけど……」

 

「友奈と友奈さんか。やっぱりこっちも似たような……」

 

海は何故か驚いた様子もなく、平然と受け入れてるし……

 

「あれ?」

 

「何だかいつもと違う反応……」

 

二人の友奈も海の反応を見て戸惑ってるし……

 

「ちょっと二人共先行し過ぎ!!」

 

「少しは皆に合わせることを……」

 

今度は先輩に刀を持った女の子がやってきた。というより勇者部メンバーに見知らぬ五人、銀に、小学生時代の園子と美森もいるし……訳がわからない

 

「桔梗さん、今は考えないほうがいいですよ」

 

「いや、何でお前はそんな普通に受け入れられるんだ?」

 

「慣れてますから」

 

どんな慣れだよ

 

「あれ?どっちも男だっていうのには驚いたけど……」

 

「私と東郷さんを見て戸惑ってるのは鎌をもった人だけですね」

 

「何だか思ってたのと違う反応だね~」

 

「友奈を見ても驚いてないし、てっきり友奈がもう一人!?って反応するんじゃないかって思ってたのに……」

 

「たまっち先輩、今はそんなことを話してる場合じゃないよ。見て、バーテックスが集まって……」

 

星屑が集まって、巨大な棘付きに姿を変えている。面倒な姿に………仕方ない、使うか

 

「聞きたいことがたくさんあるから、すぐに終わらせる!!天神刀!!」

 

天の炎を纏った刀を抜き、巨大棘付きに向かって振った瞬間、炎に包まれながら切り裂いた。

 

「天の炎に燃え尽きてろ!!」

 

これで敵を全部殲滅し、樹海化が解けていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

樹海から戻ると懐かしい勇者部部室に来ていた。なるほど、何処にいてもここに戻ってこれるのか

 

「おかえりなさい。皆さん、どうやらお二人と合流できたみたいですね」

 

「うたのん、大丈夫だった?」

 

「全然ノープロブレム!!それにしてもこの二人凄かったよ」

 

「それでさ、召喚された勇者が男だっていうのには驚いたけど、何でそっちの子は戸惑ったりとかしないわけ?」

 

先輩が僕の方を見てそんなことを言っていた。いやだって、慣れてるし……

 

「それは僕も聞きたい。お前はそこの友奈二人を見ても驚かず、変身を解けた二人のことを見ても驚いてないし……あの変異種みたいな星屑を知ってるし……どういう事だ?」

 

「えっと、信じられるかどうか………」

 

本当に長い話になるんだよな……でも説明しないと駄目みたいだし……

 

説明しようと思った瞬間、突然僕の端末が震えだし、取り出すと中から……

 

『説明は私の方からしますね』

 

二頭身のひなたお姉ちゃんが出てくるのであった。

 

 

 

 

 




次回は主人公二人のお話のあらすじ紹介的なものになります


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02

今回は二人の主人公のあらすじ説明です


海SIDE

 

突然僕の端末から現れたちっちゃいひなたお姉ちゃん。他の皆も驚きを隠せないでいた。

 

「小さいひなたが……どういう事だ?」

 

「ひなちゃん可愛い~」

 

友奈が触れようとするが、すり抜けてしまい触れられなかった。というかこれはどういうことなんだろうか?

 

『こちらの皆さんはあちら側と変わりませんね。こちら側の私もね』

 

「おい、海、もう付いてこれないんだけど……」

 

「えっと、ひなたお姉ちゃん、説明して」

 

『そうでした。まず、私はそちらにいる上里ひなたと同一人物です。いうなれば平行世界の私になりますね』

 

「それは理解しています。ただどうしてそのような姿で、こちらの彼の端末から出てきたんですか?」

 

『そうですね。説明するにはこちらの世界について語らければいけませんね』

 

ひなたお姉ちゃんは僕の代わりに、あっちの世界について語りだした。

 

『私や海くんがいる世界では、死んでから女神に導かれて訪れた異世界です。そこはゲームのようなモンスターがいたりします。私たちはそちらの世界でモンスターを倒したりと、まぁ比較的平穏に過ごしています』

 

「異世界……何というかにわかに信じられないわね」

 

「あの、死んでからというと、そちらにいる……」

 

樹が僕の方を見ていた。うん、この反応は僕が初めて会ったときと同じ感じだな。

 

「とある事情で僕は死んじゃったんだけど、女神様の導きで僕は転生したんだ」

 

その際に勇者の力を特典でもらい、勇者となった。そしてその特典の力の一つに、すべての勇者の武器を使えるという能力があった。

 

「だからさっき先輩の武器を使えたのか……」

 

「でもでも、どうして私や結城ちゃんのことを見て驚かなかったの?それに須美ちゃんや東郷さんのことも……」

 

「それは僕がいる世界とこの世界でちょっと似たような状況になってるんだよ」

 

『似たような状況と言っても、須美さん達が死んでもいないのにこっちに来たということですね。その理由はこちらでも造反神と対抗するために神樹様に呼び出されたということです』

 

「そっちにも造反神がいるのか……」

 

「ん?なぁ、チビひなた。お前がいる世界っていうのは死んでから訪れる世界なんだろ?だとしたらお前がそっちにいるのは……」

 

あ、これはまずいな。聞いてる限りここにいる過去の勇者の皆は、自分たちの未来について知らないみたいだし、銀たちも同じ感じだな

 

『チビひなた!?まぁしょうが無いですけど、珠子さん、貴方が思っているとおり私たちは死んでいますが………寿命で死んで女神様の特例で導かれたからです』

 

上手く誤魔化したな。仕方ないよな。未来での出来事を話すのは色々と大変だし……

 

『海くんが友奈ちゃんたちの事を見ても驚かなかったのは、異世界で高嶋友奈ちゃんとちょっとした特例で結城友奈ちゃんが異世界にいるからです』

 

「だから驚かなかったんだね~所で何でひなたんのことお姉ちゃんって呼んでるの?」

 

「それはそう呼べって言われて……」

 

「それじゃこっちでもそう呼んでもらおうかしら?」

 

こっちのひなたお姉ちゃんがそんなこと言い出した。これはどんなに言っても聞かなそうだし、諦めるか

 

「所でそっちの異世界でどんな事が起きてるの?」

 

風先輩が興味深そうに聞いてきたので、僕は軽く説明した。

 

異世界で魔王軍と呼ばれる奴らとの戦い、その時いろいろな事が重なってバーテックスが進行してきたこと……こっちでの造反神の目的が僕ら人間について学ぶために現れたということ……

 

「デカイカエルに、毒スライム……本当にゲームみたいね」

 

「私達はそう変わらないみたいですね」

 

千景さんと杏さんがそう言う中、僕はあることを思った。なんでひなたお姉ちゃんが端末からこんな姿で出てきたんだ?

 

「ねぇ、お姉ちゃん?」

 

「『はい?』」

 

「………ちっちゃいお姉ちゃん。その姿について聞いてないんだけど……」

 

『あぁ、そうでしたね。この姿は巫女のスキル……あっ、スキルというのは異世界での能力です。そちらの私や水都さんには使えないので……』

 

「残念だわ。戦闘中に若葉ちゃんの所に出てこれたら良かったのに……」

 

「巫女スキルでそんなことも出来るの?」

 

『まぁ魔力で分身を送り出すことは出来ますけど、今回は別の世界線からでしたので、アクアさんの魔力を借りてます。一応海くんの事情はカズマさんたちには伝えてありますから安心してね。それでは私は一度下がります』

 

ひなたお姉ちゃんはそう言って姿を消すのであった。

 

「なるほどな。お前は色々な事情を知っているからこそあんまり驚かなかったんだな」

 

桔梗さんも納得してくれたみたいだな。すると夏凛がある事を聞くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

「ねぇ、さっきあんたが抜いた刀、アレは何よ!!敵を全部焼き払ったけど……」

 

「あれは天の神から貰った刀だよ」

 

「合流する前に聞いた戦いを終わらした力ってやつかしら?」

 

メガネをかけた子の言葉を聞いて、海の奴が驚いていた。そういえばそっちのことも話さないといけないみたいだな。

 

「あの刀の力じゃない。多分聞いてるだろうけど僕の世界ではもうバーテックスと……天の神と争ったりせず、今はなくなった他の地方の修復を行ってる」

 

僕は語った。僕らの戦いを……

 

東郷の暴走の後に、僕は一人天の神と話をつけるために崩壊した世界で一人で戦い続けたこと、天の神はもう戦いを終わらせたかったらしく、僕が来たことで元々そうするように決めていたということ……

 

そして天の神との戦いが終わった後に起きた魔王を作り出そうとする大赦の裏切り者との戦い……

 

「戦いを終わらしたってそういうことだったのね」

 

「それだったらこっちでも同じようにできないかしら?」

 

「美森、それはたぶん無理だな。この世界線、僕がいた世界線、海がいた世界線ではきっと天の神の考えは違うかもしれない。まぁやってみる価値はあるだろうけど……」

 

「あの、東郷って呼んでほしいのだけど……」

 

「悪い、癖でな」

 

恋人同士になってから名前で呼ぶようになったから、そっちで慣れてしまったな。こっちでは気をつけ……

 

「ほぅ」

 

「なるほどね~」

 

「うんうん~春が来てるんだね~」

 

先輩、ダブル園子が何だか感づいてるみたいだな。何か厄介なことが起きそうで嫌だな

 

「あとちょっとした理由でこういう腕だけど気にしないでくれ」

 

僕は右腕を見せた。僕の右腕は義手だ。大体最初はみんな驚いたりするからそこら辺も話しておいたほうがいいな

 

ここにいる皆も頷き、僕らのこれまでのついては話し終わった。すると友奈があることに気が付いた

 

「そういえば二人の名前、まだ聞いてない無かったよね」

 

「そういえばそうだったな。僕は神宮桔梗」

 

「僕は上里海。上里ひなたの子孫だよ」

 

ようやく自己紹介も終わり、友奈たちは僕らの部屋を用意してくれるのであった。とりあえず男同士だから特に問題がないということで、僕と海は同じ部屋になるのであった。




何だかグダグダになってしまいました。すみません


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03

今回はすごく短めです


桔梗SIDE

 

僕らがこっちにいる間住むことになる宿舎に案内されるのであった。とりあえず分担して掃除も終わらしたし、ゆっくりするべきだな

 

「それにしてもこんなところがあったなんてな」

 

「てっきり夏凛みたいに大赦が用意したアパートだと思ってたんですけど……」

 

海の言うことも分かる。僕もてっきりそうじゃないかと思っていたけど、まぁここも悪くはないから良いけど……

 

「所で桔梗さん、聞いてもいいですか?」

 

「何だ?義手のことか?話すとしたら皆に話すべきことなんだけどな……」

 

義手になった理由がバーテックスに右腕を食われたことだからな。おまけにそれが原因でとんでもないバーテックスが現れたし、というか今回の敵である造反神って僕の記憶を読み取ってアイツを復活させたりしないだろうな。それはそれで面倒だけど……

 

「いや、義手のことじゃなくって、桔梗さんって東郷の事、美森って呼んでますけど……好きなんですか?」

 

「……………」

 

こいつも中々鋭くないか?いや、確かに好きだし、付き合ってるけども……

 

「好きだからって言ってもこっちでもって言う訳にはいかないだろ」

 

同じ美森だからって、同じように接したら色々とまずいからな……僕はジュースを飲みながらそう言うと、海は少し考え込み……

 

「そう……ですよね……因みに聞きますけど、キスとかしたんですか?」

 

「ぶーー!!」

 

思いっきりジュースを吹き出した。こいつ、なんていうことを聞くんだよ!?

 

「お前……なんでそんなこと聞くんだよ!!」

 

「いや、参考までに………」

 

「参考って……お前も誰か好きなやつがいるのか?」

 

僕が聞いた瞬間、海の奴は顔を赤らめながら頷いた。もしかして付き合っているけど、いまいち踏み出せないというやつか?

 

「精々手をつなぐくらいしかしてないと……」

 

「いや、手を繋いだり、バスタオル越しだけど抱きしめ合ったりとか……」

 

どこが一歩踏み出せないんだよ。思いっきり踏み出せてるじゃないかよ。こっちはキスはしたけどそういったことは美森がお互い責任持てるようになってからって言われてるんだぞ

 

「何が一歩踏み出せないんだよ?」

 

「き、キスとか……」

 

何で抱きしめあったり出来るのに、キスが出来ないんだ?こいつは……

 

「お前、色々とおかしいからな。下手すればヘタレレベルだぞ」

 

「それ、色んな人に言われてます」

 

ちょっと落ち込む海。もうヘタレって言われてるのか……

 

「所でお前の恋人って誰なんだ?」

 

「友奈です」

 

友奈と付き合ってるのか……そっちの世界の美森はよく付き合うことを認めたな……こっちに来る前にあったラブレター事件のときなんか美森、かなり暴走してたのに……

 

「まぁ互いに意識しないようにしような」

 

「はい」

 

僕らは互いに約束するのであった。

 



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04

今回からゆゆゆいのイベントの話をやります。まず最初のイベントは……


桔梗SIDE

 

この世界に来てからそれなりの月日がたった。まぁこっちでは年はとらないらしいから月日は特に気にしない方が良いけど……

ただ、勇者部の中である話が出ていた。

 

「先輩、今日はどういった集まりなんですか?」

 

勇者部に何人か集められていた。まぁいないとしたら若葉と夏凛くらいだな。それにしても今日は一体何の集まりなんだ?

 

「何人かは知らないけど、先月みんなに誕生日祝ってもらったから、今月も誰かの誕生日会を開こうと思ってね。6月生まれの人って誰かいる?」

 

6月生まれか……それだったら僕だな。僕は挙手するが、僕以外誰もいないみたいだな

 

「桔梗だけなの?」

 

「はいはい、夏凛ちゃんも6月生まれだよ」

 

「若葉ちゃんもです」

 

6月生まれが3人もいるのか。まぁ勇者部みんなで誕生日会を開いてくれるのは嬉しいからいいな。

 

「そっか、サプライズ的なことをしたかったけど、今回はいいわね」

 

「悪い。空気読まないで……」

 

「気にしないでいいわよ。桔梗くん。サプライズ的なことって大抵バレてしまうわ」

 

いや、それはそうだけど……

 

「あの桔梗さんは何か欲しいものってあるんですか?」

 

樹にそんなことを聞かれ、しばらく考えるけど特に欲しいものってないな。まぁ誕生会を開いてもらうだけでも嬉しいけど……

 

「特にないな」

 

「あんた、あんまり欲がないのね」

 

「欲がないというより、パーティーしてもらうだけでも十分なんだよ」

 

僕がそんなことを言うと、夏凛と若葉の二人が戻ってきた。友奈とひなたの二人は同じようにプレゼント何がいいのか聞くと……

 

「そうだな……しいていうなら練習相手がほしいな」

 

「それいいわね」

 

何だかとんでもないことをいい始めたぞ。この二人!?

 

「練習相手って……トレーニングの相手ってこと?」

 

「二人共脳筋なのか?」

 

海がそう言った瞬間、若葉と夏凛の二人に頭を小突かれるのであった。思っても言わない方が良いな

 

とりあえず僕らは早速そのプレゼントのために道場へと行くのであった。でもあれ?何だか嫌な予感がしてきたのは気のせいだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなで道場に来ると早速勇者の姿に変わった。まぁちょっとした訓練をするのはいいかもしれないけど……なんで僕は若葉と夏凛側にいるのだろうか?

 

「あの、先輩、何で僕がこっちなんですか?」

 

「あんた、特に欲しいものがないって言ったじゃない。だから二人と一緒でいいかって思ってね」

 

「いや、それもどうかと思いますけど……」

 

「桔梗、私はお前とも戦ってみたいから、特に気にせず参加してくれ」

 

「とはいえ、この完成形勇者である私に勝てるかしら?」

 

「悪いな。向こうでは僕が勝ってる」

 

挑まれては全力で相手してやったからな。おまけにちょっとした脅しもしたりも……

 

「向こうでは勝てたとは言え、こっちでも同じように行くとは思わないほうがいいわよ」

 

「慢心はしないほうがいいな。それだったら私と一番最初にどうだ?」

 

どうやら若葉の最初の相手は僕になるのか……仕方ない。やるしかないな。僕は大鎌を取り出し、構えた。

 

「大鎌……千景と同じか」

 

「それじゃ行きますよ」

 

僕は開始と同時に若葉さんの後ろに回り込み、大鎌を大きく振り降ろした。だけど若葉さんは刀を抜き、僕の攻撃を弾いた。

 

「凄い速さだな。普通だったら背後に回り込まれたら一撃だが……攻撃の瞬間の殺気くらい消したらどうだ?」

 

殺気を感じ取ったのか……まぁ仕方ないか。今までの相手がバーテックスだから殺気を隠す必要はなかったからな。さてどうしたものか……

 

「狭い場所だと操作が難しいけど……」

 

大鎌を思いっきり振った瞬間、刃が若葉目掛け放たれた。若葉は同じように刀で弾くが、気がつくと若葉の体に鎖が巻き付いていた。

 

「その鎌、そんなことが出来るのか」

 

「攻撃と捕縛が同時に出来ますからね」

 

「いい武器だな」

 

「とはいえ……」

 

僕は拘束を解くと同時に今度は槍に持ち替えた。

 

「拘束して動けなくなって、はい終わりじゃつまらないよな」

 

「あぁ、そうだな」

 

僕と若葉は笑い合い、同時に動き出すのであった。

 

 

 

 




誕生会編は何話かやる予定です


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05

桔梗SIDE

 

「そこまで!」

 

ひなたの声とともに僕と若葉さんは武器を降ろした。流石は初代勇者だ。かなりの強さだった。

 

「やるな。桔梗」

 

「若葉こそ、こっちの攻撃を読まれて全然攻撃が通らなかったよ」

 

「そういうお前こそ、本気に見せかけてまだ余裕がありそうだったな」

 

余裕がありそうだって言うけど、結構ギリギリだったんだけどな。それにしてもこういった模擬戦は久しぶりだったせいか、少し休みたい。

 

「久々だったから僕は一回休むよ。若葉さんは?」

 

「私はまだまだ行ける……と言いたいところだったが、おとなしく休ませてもらう」

 

今回の主賓の二人が一回休憩するという事は、もうひとりの主賓である夏凛が誰かと模擬戦するということだな。

 

「私としては桔梗。あんたと一番に戦いたかったけど、休憩するんじゃ仕方ないわね」

 

夏凛はそう言いながら、ある人物に向けて刀を向けた。

 

「私の一番最初の相手はあんたよ!海!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

何で夏凛の最初の相手が僕なんだよ。他にも初代組で強い人とかいるのに……

 

「あんた、みんなの武器が使えるじゃない。でも武器が多いとそれを全部使いこなすのは難しいわよ。それだったら私があんたを鍛えてあげるわ」

 

「鍛えてもらうのはありがたいけど……」

 

あっちで結構鍛錬はこなしてる。とはいえ殆どは一人でやるかもしくはゆんゆんとの模擬戦だったからな。ちゃんと見て貰えるのはちょっといいかもしれない。それだったら……

 

「それじゃ一戦お願いするよ。夏凛」

 

僕は生太刀を取り出し、構えた。普段だったら白月を使うところだけど、今回は今の自分がどれ程みんなの武器を使いこなしているか知るための戦いでもあるからな

 

「それじゃひなた。開始の合図お願いね」

 

「はい、それでは始めっ!!」

 

ひなたお姉ちゃんの掛け声とともに夏凛がすぐに接近してきた。僕はすぐに生太刀を抜いて夏凛の攻撃に備えるべきだけど、ここはギリギリまで抜かないようにした。

 

夏凛の二つの斬撃が届きそうになった瞬間、僕は直ぐ様生太刀を抜き、攻撃を弾いた。

 

「若葉と同じ居合ね。でも、若葉みたいな鋭さがないわよ」

 

「居合はまだ完璧じゃないからな。さて次はこれだ」

 

樹の武器を取り出し、ワイヤーで夏凛の動きを止めようとするが夏凛はそれらを上手く回避していく

 

「樹の武器は確かに捕縛に向いているかもしれないけど、攻撃として使って私の動きを制限することだって出来るわよ」

 

「なるほどな。勉強になる」

 

夏凛の言葉を聞いて、まだみんなの武器を使いこなしていないことが分かった。あとはやるべきことは……

 

「こっちだと他のみんなの切り札と満開は使えないみたいだけど、僕自身のは使える。だけど今はそれを試す必要はないな」

 

僕は2本の刀を取り出した。

 

「私の武器を使うってことね。それだったら」

 

夏凛が接近してきた。僕は二本の刀を構えた。夏凛はまだ僕が使っているのが自分の武器だと思っているみたいだけど、それは違う。僕が今使っているのは……

 

「ハァ!!」

 

僕は攻撃を弾き、夏凛の武器を弾き落とした。突然の事で夏凛は驚いていたけど、僕が手にしているのを見てすぐに笑みを浮かべていた。

 

「……勘違いしていたみたいね。てっきり私の武器を使うんだと思っていたけど、まさか勇者の武器を二つ同時に使えるなんてね」

 

僕の手には白月と生太刀の二本を握っている。勇者の武器を同時に使うことは前々から出来たけど、いざ実践となると使いこなすのは難しいかった。

だから今までは一つの武器を使い続けるようにしていた。こういう機会だ。存分に鍛錬させてもらうぜ。夏凛

 

「それじゃやろうか。夏凛」

 

「えぇ、いいわよ」

 

 

 




今回の誕生会イベントでは海の成長会になりました。次回で6月分の誕生会イベントは終わりです


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06 

今回は6月誕生日イベントの最後とちょっとしたオリジナルの話になります


桔梗SIDE

 

夏凛と若葉のプレゼントである鍛錬は何とか終わった。まさか最後は僕、夏凛、若葉の三人で他の勇者全員と模擬戦することになるとは思っていなかった。

 

「皆強すぎだろ。というか僕も鍛錬不足かな」

 

「桔梗、お前の世界はもう平和なんだから戦う必要はない。鍛錬不足もしょうがないと思うが……」

 

若葉がそう言うけど、ちょっと鍛え直したほうがいいかもしれないな。今後の事を考えて、ちょっと鍛えたほうがいいな

 

「これで若葉ちゃんたちのプレゼントである鍛錬は終わりですね。あとは皆でケーキでも食べましょう」

 

ひなたがそう言い、僕らは部室に戻り皆にお祝いをしてもらったのであった。こうやって皆に誕生日を祝ってもらうのも悪くないな。ただ贅沢を言えば美森と二人っきりで祝いたかったな。元の世界に戻ったら言ってみるか

 

そんなこと思いながら寮の部屋に戻ろうとした時、美森に声をかけられた。

 

「桔梗くん」

 

「美森。何だ?」

 

「東郷って呼んでほしいのだけど……でも癖なんだよね」

 

気をつけてるつもりなんだけど、やっぱり名前で呼んでしまうな。

 

「それで何か用か?」

 

「うん、これ友奈ちゃんとプレゼント買ってきたんだけど、何故か風先輩に私が渡したほうがいいって言われたんだけど……」

 

いや、確かにプレゼントもらうのは美森からだったら嬉しいけど、でもこっちでは恋人同士ってわけじゃないし……これって浮気にならないよな。まぁこっちに知り合いがいるわけないから、あんまり気にしない方が良いかもしれないな。

 

「ありがとうな。開けてみてもいいか?」

 

「うん」

 

僕は早速プレゼントが何なのか見てみると、プレゼントはスケッチブックだった。

 

「前に絵を描くのが好きだって聞いたから、スケッチブックにしてみたんだけど……」

 

「ありがとう。嬉しいよ」

 

僕がそう言うと美森は顔を赤らめながら微笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寮の部屋に戻ると何故か海が疲れた顔をしていた。

 

「どうしたんだ?」

 

「いや、桔梗さんが帰ってくる前に、変な女の子が来てたんですけど……いろいろと言われて疲れましたよ」

 

変な女の子?誰だ一体?もしかしてこの世界に他の勇者がいるのか?

 

「それで桔梗さんに伝言預かってるんですけど、えっと、『別の世界に来たからって、浮気はだめだよ。あとで言いつけとくから』ですって……あの浮気って……」

 

ちょっと待て、浮気したつもりは……いやさっき美森にプレゼントを貰ったときのことを言ってるのか?だけど周りには僕と美森しかいなかった。まさかと思うが……

 

「なぁ、その女の子って、こう神秘的というか……見た目の割に何だか偉そうな感じだったか?」

 

「そんな感じでしたね。何者なんですか?」

 

「そいつが僕らの世界の天の神なんだよ。平和になって四国以外の大地を作り直すためにちょくちょく天の世界から来るんだけど……こっちに来れたのか」

 

「何だか神様って何処の世界でも自由なんですね」

 

海は誰か思い当たるのか、苦笑いを浮かべていた。そういえばこいつも神様と交流があったんだっけ?

というか美森に報告するって言っていたな………やばい、帰りたくない。絶対に怒られる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

 

誕生日会から数日後、ここ暫くの間は僕らは造反神に支配された土地の開放を行っていた。それにしてもこちら側の造反神のバーテックスはあっちと比べてそこまで強くない。ただ数が多いだけだ。

 

「これも世界の違いってやつなのかな?」

 

「何を独り言言ってるの?」

 

「今は戦いに集中しろ」

 

千景さんと桔梗さんの二人に注意されてしまった。今回の戦いは分担して敵を撃退していく作戦になり、僕ら三人で敵を撃退していった。

 

「悪い悪い。それじゃ借りますよ。雪花さん!!」

 

僕は雪花さんの槍を取り出し、迫りくるバーテックスに向かって槍を投げつけ串刺しにしていった。

 

「敵が多いな。海!!一気に殲滅できるような事はできないか?」

 

「満開を使えれば何とか出来るんだけど、こっちだと発動しなくって……僕自身の切り札はそういう戦い方に向かないんです。だけど……」

 

僕は桔梗さんの大鎌を取り出した。こういう敵の多い場合は桔梗さんの武器の特性を使えば……

 

「なるほどな。それじゃ同時に行くぞ」

 

僕と桔梗さんは物凄い速さでバーテックスを切り刻んでいった。こういう時にはスピードを活かして倒すほうが一番だな

 

「大型が来るわ」

 

千景さんがそう言った瞬間、大きな魚型のバーテックスが現れた。こういう時は……

 

「借りますよ。千景さん」

 

僕は一気に接近し、大型バーテックスの顔面を大鎌で切りつけた。

 

「とどめは……」

 

「私達が!!」

 

僕が切りつけたと同時に桔梗さんと千景さんが同時に大鎌を振り下ろし、大型を撃退したのだった。

あの大型がこの土地を支配していたボスだったのか、樹海が解けると同時に元の土地に戻っていた。

 

「これで今回の作戦は終了だな。皆の所に戻るか」

 

「えぇ……」

 

二人が変身を解く中、僕はある事に気がついた。そういえばこの二人の武器って……

 

「気になっていたんだけど、桔梗さんと千景さんって何で同じ武器なんですか?」

 

「どういうこと?」

 

「いや、時代は違うけど、似たような武器を使うのは珍しいなって……」

 

僕みたいにみんなの武器を使えるという特典を貰っているわけじゃないのに、何で似たような武器なのか気になった

 

「偶然じゃないのか?」

 

「それならいいですけど……まさか二人が先祖と子孫という関係だったりしてと思ったんですけど………そんなことないですよ」

 

僕がそう告げた瞬間、何故か場が凍りつくのであった。何だろう?余計なことを言ったのか

 

 




次回からは桔梗と千景の関係性についてやります。完全にオリスト+オリジナル設定ですね


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07

今回はオリジナル設定で、千景と桔梗とのつながりです


海SIDE

 

分担での作業が終わり、無事支配された土地を奪還できたのは良かったのだけど、僕のちょっとした発言で、部室に勇者全員が集まることになった。

 

「それで海が言っていたことは本当なのか?」

 

「郡ちゃんときょうくんがご先祖様と子孫の関係かもしれないってこと?」

 

「いや、ただもしかしたらって話だったんだけど、勇者全員集めて話すことなのか?」

 

これで違っていたらこの集まりは台無しになる。今回の件については本当にもしかしたらの話なのに……

 

「いえ、案外可能性はあるかもしれません」

 

ひなたお姉ちゃんは一枚の紙に図を書き始めた。

 

「まず私達の世界、海くんがいる世界、桔梗くんがいる世界。現状ではこの3つの世界の住人が一つに集まっています。この3つの世界は本当に似たような世界になっているのは皆さんは分かっていますね」

 

「あー、うん、何となくな」

 

「えっと、私達の世界では普通にバーテックスを倒して、今の状況になってるんだよね」

 

「各時代から勇者が集まっている状況ってことだよな」

 

友奈と珠子さんの二人も話についていけてる。すると東郷がお姉ちゃんの代わりに更に説明を始めた。

 

「海くんがいた世界は……異世界に自由に行けるってことになっているのよね」

 

「異世界に自由に行けるっていうのは、勇者部のみんなだけだけどね。まぁ僕の世界はこの世界とちょっと似たような状況になっている世界って思ってくれればいいよ」

 

「えっと、桔梗さんの世界は天の神様と和解した世界ということでいいんですよね」

 

「あぁ、だけどひなた。何で改めて僕らの世界について確認する必要があるんだ?」

 

桔梗さんの言うとおり、別に確認する必要はないのだけど……

 

「今から話す仮説に必要なことですから、改めてお互いの世界について確認したけど、この3つの世界は似ているだけで、同じとはいえない世界です」

 

「ん?同じじゃないのか?」

 

「珠子さん。同じじゃないんです。わかりやすく言うと300年後の未来の結果が違います。勇者部には海さんや桔梗さんがいないじゃないですか」

 

「そういえば………」

 

確かこういうのって平行世界ってやつだよな。前にアクアさんが説明してくれた。似ているようでぜんぜん違う世界……それが平行世界だって

 

「過去でのちょっとした出来事が未来に大きく影響するんです。もしかしたら桔梗くんのいた世界での千景さんは神宮家と何かしら関わりがあって、私と海くんみたいな関係になっているのかもしれません」

 

郡家と神宮家の関係か。僕がいた世界ではそういった話は聞いたことがない。元の世界に戻ったら、そのっちに調べて貰う必要があるかもしれないな。

ひなたお姉ちゃんは千景さんと桔梗さんの二人に勇者に変身してもらい、武器を見せてもらった。

 

「二人の武器は同じ大鎌。色や形は違いますがそれもまた千景さんの影響を受けて……」

 

「……ちょっとまってもらえる」

 

遮ってきたの千景さんだった。千景さんは少し険しい表情をしながら僕らのことを見つめて、

 

「さっきから聞いてたけど、今までの説明はただの仮説。想像の域にしかないわよね。それに私と神宮が繋がりあったからと言って、ここにいる私と神宮には繋がりがあるわけないじゃない。悪いけど帰らせてもらうわ」

 

千景さんはそう言い残して、部室から出ていった。何だか僕の知っている千景さんとこっちの千景さんってぜんぜん違うな。角があるというか……

 

「えっと……私、郡ちゃんの所行ってくるね」

 

友奈さんは心配してか千景さんの後を追いかけていくのであった。

 

 

 

 

 




短めですみませんでした。次回に続きます


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08

桔梗SIDE

 

千景が出ていき、高嶋も追いかけていった。さて、僕はどうしたものか?

 

「色々と急ぎすぎましたね」

 

ひなたは落ち込んでいた。まぁ確かに無理やり結びつかせるのもどうかと思うけどな……

 

「ひなたお姉ちゃん、そうそう僕らみたいな関係はいないからね」

 

「海くん、そうね」

 

海はそう言う中、僕自身もちょっと自分の先祖について気になった。実際問題本当に関係あるのかな?

とはいっても、僕がいた世界とこっちとじゃ歴史がぜんぜん違うし、調べる方法なんて……

 

「気になっているみたいだね」

 

突然部室のドアから声が聞こえ、振り向くとそこにはフードをかぶった女の子がいた。若葉と夏凛の二人が変身し武器を構え、警戒した。

 

「何者だ!!」

 

「ただの迷子よ」

 

「ただの迷子にしては、声が聞こえるまで気配を感じなかったけど……」

 

「気配を自由に消せる迷子よ」

 

若葉と夏凛の二人をおちょくっているのか、少女はクスクス笑っていた。

うん、こいつ、まさか……

 

「若葉ちゃん。落ち着いて」

 

「ほら、夏凛も落ち着きなさい。あんた、私達と似たような状況なのかしら?神樹様と造反神の喧嘩に巻き込まれて、呼び出された別の世界の勇者?」

 

先輩がそう言う中、少女は笑みを浮かべていた。

 

「勇者ね………」

 

「いい加減、正直に答えたらどうだ?」

 

僕は少女の頭を叩こうとするが、触れられなかった。前に海の端末から出てきたひなたみたいなものか

 

「ふふ、影で君の様子を見ているだけにしとこうと思っていたけど、どうにも気になることが出来たみたいだね。それに私について、そっちの巫女二人は気がついてるみたいだけど」

 

少女はひなたと水都の方を見た。どうやら巫女の力なのか正体に気がついてるみたいだな

 

「神格的なものを感じる。それに……」

 

「バーテックスと似たような気配も……」

 

二人の言葉を聞いて、その場にいた全員が身構えた。確かにバーテックスと似たような気配を感じると言われたら身構えるのは当たり前だけど……

 

「みんな、こいつは敵じゃない。それに戦っても勝てるかどうか……」

 

「まだ自己紹介はまだだったね。私は境界の勇者の世界で、天の神をやっているもの」

 

「……別世界の天の神がどうしてこんな所に?」

 

「さっきも言ったように、彼の様子を影で見ているだけよ。今回は面白い話をしているから関わりにきたのよ」

 

「えっと、関わりにきたって?」

 

友奈がそう言うと、天の神は一冊の古い書物を取り出し、僕に渡してきた。僕は園書物を見てみるとそれは……

 

「これって……神宮家の家系図?何であんたが……」

 

「君の知り合いから探すように言ってね。届けに来た。それだけ……それじゃ私は帰るわ。あぁ、それと……」

 

天の神は海の事を見つめた。そして笑みを浮かべていた。

 

「そっちの君はいつか選択しなくてはいけなくなる。もし間違った選択の場合は……まぁここまで言う必要はないか。あと造反神は記憶を読み取ることもできるから気をつけるように……」

 

そう言い残して、姿を消すのであった。本当に家系図を渡しに来ただけなのか?まぁいい。これで色々と分かるかもしれないな。

早速見てみようとした時、突然端末からアラームが鳴り響いた。これって、樹海化警報!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景SIDE

 

近くの河原まで来た私は、ただ呆然と景色を眺めていた。すると高嶋さんが私を追ってきた。

 

「郡ちゃん!」

 

「高嶋さん………」

 

「何だか怒ってる?」

 

高嶋さんは心配そうにそう言うが、私は首を横に振った。

 

「怒ってないわ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「もし神宮が私の子孫だとしたら、可哀想かもしれないって思って……」

 

「可哀想って?郡ちゃんが先祖だから?そんな事……」

 

「可哀想よ……だって私みたいな愛されたことのない子が先祖だもん。きっと神宮も………」

 

「そんな事ないよ!だって………」

 

高嶋さんが何かを言いかけた瞬間、突然端末からアラームが鳴り響き、樹海に引き込まれた。

 

「こんな時にバーテックスが……」

 

「あれ?でも反応が一つしか……」

 

高嶋さんの言うとおり、端末に映し出されたマップには反応が一つだけ……もしかして……

 

「新種かしら?」

 

私がそう告げた瞬間、突然背後から衝撃を受け吹き飛ばされた。私は何とか受け身を取るとそこには全身真っ白の人型の何かがいた。

 

「くっ!?」

 

「郡ちゃん!?」

 

高嶋さんが私の所に駆け寄ろうとしたが、そいつに首を捕まれ捕まってしまった。

 

「うくっ………」

 

そいつは不思議そうに高嶋さんを見て、思いっきり地面に叩きつけた。私はそれを見て、怒りのあまりそいつに斬りかかるが、そいつは刃を片手で受け止めた。

 

「………何者なの?あなた……」

 

「?」

 

そいつは刃を掴んだまま、私のお腹を思いっきり蹴り続けた

 

「ぐっ、がっ、かはっ」

 

何発か蹴りを食らわしたそいつは、手を離し、お腹を抑える私を見ていた。そして倒れ込んだ私を更に蹴り続けた。

 

「やめて!!」

 

高嶋さんが咄嗟にそいつを殴り、そいつは私から離れた。

 

「郡ちゃん!?大丈夫?」

 

「だ、大丈夫よ……」

 

私たちはそいつを見ると、何故か不気味な笑みを浮かべていた。それに何だかさっきよりはっきりと人の形をしてきた。でも、何で………

 

「えっ?」

 

「ど、どうして……」

 

私たちはそいつを見て、ただ驚いていた。何でこいつの見た目が私に似ているの?

 

『私は……愛されてない。そのとおりよ。だからこそ貴方は……』

 

「や、やめ……」

 

『両親があんなだから……私は愛されてない。だから皆にいじめられた』

 

「やめて!?」

 

私はそいつに斬りかかるが、そいつは右腕を変化させ、私と似たような鎌を生み出し、私の首筋に刃を当てた。

 

『死ぬしかない。死ぬしかない。殺すしかない……殺す……全て……故郷の皆を、乃木さんたちも、高嶋さんも……どうせ私のことなんて……』

 

「そ、そんなこと……」

 

「そんなことないよ!郡ちゃんが愛されてないなんてそんなことない!!それに私は郡ちゃんのこと大好きだもん」

 

『嘘、嘘、嘘……』

 

そいつは私の頭を掴み、地面に叩きつけ、高嶋さんにゆっくり近づいていった。このままじゃ高嶋さんが……

 

「嘘じゃない!!」

 

『嘘、嘘つき!嘘つき!!』

 

そいつが大鎌を振り上げた瞬間、もうだめかと思った。だけど突然黒い何かがそいつの腕を切り裂いた。

 

「天の神から記憶を読み取るって聞いたから、まさかと思ったけど………似たような奴を生み出すのか……」

 

そいつの前には黒い大鎌を構えた神宮がいた。

 

 

 

 

 




次回あたりで桔梗と千景の話は終わりです。その後は海水浴の話になります


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09

桔梗SIDE

 

少し遡ること十分前、僕らは樹海に訪れるが、敵の姿を確認できないでいた。

 

「敵がいないみたいね?」

 

「どういうことだ?敵がいないというのに樹海化が起きるのはおかしいだろう」

 

先輩と若葉がそんなこと言う中、僕は前にも似たような事があったのを思い出した。あの時も敵の姿はなく……いや、敵はいたんだ。だけど……

 

僕は思わず義手を抑えると心配そうに樹が声をかけてきた。

 

「桔梗さん?どうかしたんですか?」

 

「ちょっとな……千景と高嶋の二人がどこにいるか分かるか?」

 

「お二人でしたら、少し離れた場所にいるみたいです」

 

「ん?何だ?千景の所が何だかダブって見えるぞ?」

 

珠子の言葉を聞いて、僕は嫌な予感がしてきた。まさかと思うけど奴みたいな存在があらわれたというのか?だとしたら……

 

「僕は先行して二人と合流する!!」

 

「ちょっと、待ちなさいよ。勝手な行動は……」

 

「悪いけど詳しいことを話す時間はない。ただ、厄介なバーテックスが出現したんだ」

 

僕はそう言い残して、前鬼の力を使い、二人の元へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

海SIDE

 

物凄い速さで先へと行く桔梗さん。一体何があったんだっていうんだ?それに厄介なバーテックスって……

 

「仕方ない。私達も行きましょう。海、悪いけどあんたは先に行ってもらえない?」

 

「どういう事ですか?」

 

「桔梗の奴があそこまで熱くなるのって、おかしいからね」

 

まだ短い付き合いなのによくそこまで分かるな……流石は勇者部部長というべきだな

 

「了解しました。追いかけます。みんなも気をつけて……」

 

僕は桔梗さんの武器を取り出し、物凄い速さで先へと進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

二人がいる所まで来ると、倒れた千景と高嶋の二人を見つけた。更に二人の前には全身真っ白の千景がいた。やっぱりあいつは……

僕は直ぐ様ヤツの腕を切り裂き、二人の前に出た。

 

「……神宮……」

 

「桔梗くん……」

 

「怪我は大丈夫みたいだな」

 

僕は二人の怪我を確認し、目の前の奴を睨みつけた。

 

『貴方は?貴方は?貴方は………知ってる……あの時の……』

 

「僕はお前のことは知らないけど、お前が何なのかは知っている。キキョウと同じ存在だろ」

 

『キキョウ?』

 

「キキョウって……」

 

「何か知ってるの?」

 

「詳しい話は後でする。今は休んでろ」

 

僕がそう告げた瞬間、奴は切られた腕を再生させ、僕に襲い掛かってきた。

 

『キキョウ……キキョウ……知ってる。私の大切な人……』

 

「あんな奴が大切な人か……趣味が悪いな」

 

僕はヤツの攻撃を大鎌で防ぎながら、思いっきりヤツの腹に蹴りを食らわした。奴は攻撃を喰らった瞬間、後ろへと下がり、攻撃を喰らったお腹に触れた。

 

『痛い……痛い……』

 

そんな事を言いながら、千景の顔で笑みを浮かべていた。本当に不気味なやつだな

 

「面倒なやつだ。ここは一気に……」

 

僕は精霊の能力を発動させようとした瞬間、突然横から衝撃を受け吹き飛ばされた。僕は何とか受け身を取るとそこには僕そっくりの奴がいた。違いがあるとしたら全身真っ白というところくらいだな

 

『お前は………俺か?』

 

「似たようなやつを作り出せるみたいだけど、記憶自体は引き継がないのか」

 

『そうか……俺とお前は前に会ったことがあるのか?』

 

「あぁ、元の世界で僕の右腕を食らった」

 

「桔梗くんの腕を……!?」

 

「食べたって……」

 

『知らない………でも、俺はお前を殺さないといけない』

 

『私も私を殺さないと……』

 

奴らは武器を取り出し構えだした。一人だけだったらまだしも、二人に増えたとなると守りながら戦うのは……

 

そう思った瞬間、どこからともなく黒い影が奴ら二人を吹き飛ばした。今のってまさか……

 

「追いついた……って何だか厄介事だな」

 

「海……」

 

「桔梗さん、何を熱くなってるか知りませんが、落ち着いてください」

 

「落ち着いてるぞ」

 

「落ち着いてる人が一人で先行しませんよ。まぁ後で先輩と若葉さんの二人にお説教でも……今はこいつらを倒すことが先決みたいですし……」

 

海は武器を変え、刀を一本取り出した。奴らは海の姿を見て何か呟いていた。

 

『神樹とは違う?』

 

『女神の加護……』

 

奴らはそう言い残して姿を消したのだった。ここは追うべきなのだけど、止めておいたほうがいいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室に戻り、僕はみんなに囲まれていた。

 

「それであんた、何か知ってるの?千景と友奈が戦ったバーテックスについて?」

 

「何故奴らはお前と千景の姿をしているんだ?そこら辺教えてもらうぞ」

 

仁王立ちする先輩と若葉の二人、一応後々話すべきことなのかもしれないから話さないでいたのだけど……

 

「奴らは白い鰻みたいなバーテックス……僕らの世界では星屑って呼んでいたけど、その星屑の一体が僕の腕を食べ、進化した姿があのバーテックスだ」

 

「腕を食べたって……それじゃ桔梗さんの義手の理由って……」

 

「樹が思っているとおりだ。奴に食べられたのが原因だ。ただ今回遭遇したのは造反神が作り出したバーテックスだからなのか、以前戦ったやつとは違うみたいだけど……」

 

「あの、千景さんの姿をしていたのは何故でしょうか?特に千景さんはその……」

 

そこが僕も気になっている。もしかすると造反神の力なのかもしれない。

 

「とりあえず今後はあの二体に注意が必要ね」

 

「あぁ、特に千景と桔梗は気をつけろ。奴らはお前たち二人を狙っている」

 

「分かったわ……」

 

「僕も分かった。そういえば神宮家の家系図は?ひなたに預けたけど……」

 

僕はそう告げると、何故かひなたは顔を赤らめていた。

 

「え、えっと、一応私と水都さん、園子さんの三人で読んだんですが……」

 

「何ていうか~幸せだったんだね~」

 

「その、家系図の他に日記があったので、そちらを読み終えた後、まとめますね」

 

日記か……どんなものが書かれているか気になるけど……というか幸せってどういう事だ?

 

「神宮……」

 

「ん?千景、どうしたんだ?」

 

「一応礼を言っておくわ。ありがとう」

 

顔を背けながらそう告げる千景。何だか心をひらいてくれたのか?

 

「どういたしまして……とりあえず先祖だの子孫だのは気にしないでおこう。あの三人が調べ終えるまでな」

 

「……そうね」

 

僕と千景は握手をかわすのであった。それにしても厄介な敵が増えたな




一旦桔梗と千景の関係の話は終了します。あとオリジナルバーテックスのキキョウとチカゲについては前に自分が書いた話で出てきたオリジナルの敵です。

次回はイベントの海水浴の話になります


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10

今回から海水浴イベントとなります


海SIDE

 

新種バーテックス、キキョウとチカゲが現れてから数日が経った。あれから二人は姿を見せなかった。桔梗さんが言うにはどこかで力を蓄えているのではないかということだった。だとしたら本気で厄介だな。

 

そんな中、僕らは勇者部に集められていた。

 

「今回、皆さんを呼び出したのは、新たな神託がありました」

 

「神託?またどこか解放するのか?」

 

また新しい場所の解放か……確かにあの二人を探すことよりも今自分たちが出来ることをやったほうがいいな。

 

「いいえ、今回は防衛戦になります」

 

「先日解放した場所を敵が取り返しに来るみたいです」

 

この間解放した場所って、海岸だっけ?奴らにとってそこまで重要な場所なのかな?

 

「守りって、私は攻めるほうが得意なんだけどな~」

 

「銀、ちゃんと話を聞きましょう」

 

「それでお姉ちゃん、水都さん、作戦は?」

 

「ひなたさんと話して、先にこちらから攻撃を仕掛けた方がいいということになりました」

 

「なるほど、有効な手だな。わざわざあっちの準備が終わるのを待つのは馬鹿馬鹿しいな」

 

「おまけに油断もしてるだろうしね」

 

桔梗さんと雪花さんの二人が言う中、更に話が進んだ。

 

「そこで陣地として海辺で野営を行います」

 

「あの、野営って?」

 

「いっつん~野営って言うのはお泊りだよ~」

 

「わ~い、お泊り~」

 

ダブルそのっちが嬉しそうに言っていた。まぁ野営って言うなればキャンプみたいなものだしな

 

「おっ、キャンプか。それだったらタマに任せタマえ」

 

 

「それに海って、海水浴もできるんだよね」

 

「友奈ちゃん、遊びに行くんじゃないんだよ。でも……海水浴も……出来るんですよね?」

 

みんなが海水浴の話に盛り上がる中、桔梗さんが僕の肩を叩き、部室から出るように促した。

 

何だろう?何か大切な話でもあるのかと思い、一緒に部室に出た。

 

「悪いな。海」

 

「いえ、それで部室から出た理由は?」

 

「いや、皆が海水浴の話で盛り上がってるから、多分自然に水着の話になるだろうから……ちょっと……」

 

あぁ、何だか居づらくなるから部室から出たのか。確かに中学生からしてみれば女子の水着の話は聞いていて恥ずかしくなるからな。でも……

 

「桔梗さん、どんだけ純情なんですか?」

 

「お前はどうなんだよ!?」

 

「僕は……水着ぐらいでは……」

 

あっちで水着以上に刺激のある夢を見せてもらったりしているから、耐性ついてるのかな?

 

「お前……凄いな……でも、確かに一緒にお風呂に入ったりしてるくらいだもんな」

 

「そんなにすごくはないですよ。というか風呂の件は………」

 

「何をしてるの?」

 

気がつくと千景さんと友奈さんの二人が僕らの後ろにいた。一体どうしたんだ?

 

「二人共、廊下で何してるの?部室に戻らないの?」

 

「いや……ちょっとな」

 

「桔梗さんいわく男にはちょっと刺激が強いからって……」

 

「おまっ!?」

 

特に隠す必要がないから話したのだけど、友奈さんは苦笑いをしていた。

 

「あ~ごめんね。二人のこと気を使わなくって……」

 

「いや、大丈夫だけど……高嶋と千景はどうしたんだ?話が終わったんなら部室に戻るけど……」

 

「え、えっと……」

 

「別に……ちょっと海で遊ぶっていうのに興味がなかっただけよ」

 

海に興味がないって言うけど、何だか嘘っぽいな……でも、何だか少しだけ心当たりがある。傷のことかな?

 

「あの……千景さん、もしかして傷のこと気にしてます?」

 

「!?」

 

「「傷?」」

 

桔梗さんと友奈さんは何のことか分からないみたいだった。というかこっちの友奈さんって傷のこと知らないんだ。

 

「……なんでそのことを知ってるの?」

 

「ちょっとした事情で……」

 

「…………あんまりそういうことを言ってほしくはないわ。ただ貴方が思っているとおりよ」

 

千景さんはそう言い残して、僕らと別れるのであった。うん、余計なこといったかな?

 

「ねぇ、海くん。郡ちゃんの傷って?」

 

「ちょっと詳しくは話せないんですけど……」

 

「というか何でお前はそういう事を知ってるんだ?」

 

「そ、それは……ちょっとした事情で……」

 

あの時は友奈さんが教えてくれたのだけど、流石にお風呂の一件を話すのはまずいと思うので、話さない方が良いと思う僕であった。



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11

海SIDE

 

海水浴の話から次の日のこと、何故か僕と桔梗さんの二人は先輩に言われて、水着売り場に来ていた。

 

試着室の前には僕らの他に、先輩、千景さん、友奈、友奈さん、東郷の五人が来ていた。

 

「なぁ、海」

 

「なんですか?桔梗さん」

 

「何で僕らも付き合わされてるんだ?僕らの場合、水着はもう準備終わってるし……」

 

「知りませんよ。僕らを連れ出した先輩に言ってください」

 

「ほら~そこの男子二人。何を話してるかわからないけど、千景の水着見て上げなさい」

 

先輩に言われるまま、僕と桔梗さんの二人は水着の試着をした千景さんの方を見た。

 

「………あんまりジロジロ見てほしくないのだけど……」

 

「あっ、ごめん」

 

「すみません」

 

桔梗さんと僕は顔を背けた。流石にこういった場面で気の利いた言葉を言うべきなのだろうけど……全然思いつかない。というか僕としては温泉での出来事を思い出してしまい、余計顔を見れない

 

「その水着だったら、傷も見えないだろうし、おまけに男子なんてそんなことよりも千景の魅力で目を背けるしね」

 

「そ、そんな事は……」

 

「グンちゃん、可愛いもんね」

 

千景さんと友奈さんが楽しげに話す中、先輩、友奈、東郷は僕ら二人に小声で話してきた。

 

「悪かったわね。付き合わせて」

 

「郡さんの件もだけど、二人共、昨日突然いなくなったから、友奈ちゃんが心配してたのよ」

 

「もしかして海くんと桔梗くん、海水浴とか嫌いなのかなって?」

 

「いや、嫌いではないし……桔梗さんが水着の話とかになると僕らの肩身が狭くなるからって……」

 

「仕方ないだろう。でも、友奈や美森に気を使わせて悪かったな。それに先輩もお疲れ」

 

何だか色々と気遣ってくれる辺り、世界が変わっても友奈は変わらないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水着も無事買い、僕らは一旦学校に戻ろうとしたときのことだった。突然僕らの横を何かがものすごいスピードで通り過ぎた。

 

「何だ?」

 

「今のはバーテックス!?」

 

「待って、ぐんちゃんの水着が!?」

 

「「はい?」」

 

どういうわけかバーテックスが水着泥棒を!?というか通り過ぎた時に引っかかったのか?

 

「とりあえず追うわよ!!」

 

僕らは勇者に変身し、バーテックスを追いかけるのであった。

 

 

 

樹海に入り、水着泥棒のバーテックスを追うが、物凄い速さで追いつけない。

 

「こういう時樹がいれば捕まえられるのに!?」

 

「そうだ!海くんなら……」

 

「任せろ!!」

 

僕は友奈さんの指示通り、ワイヤーを取り出し水着泥棒を捕縛しようとした瞬間、空から突然何かが降ってきて僕の攻撃を遮った。

突如現れたのは僕に似たバーテックスだった。あれって………

 

「桔梗さんと千景さんみたいな………」

 

「こういった場面で出てこないでほしいものね」

 

先輩が呟くと、そいつ……ウミは僕の方をじっと見つめた。

 

『お前は……僕?僕なのか?』

 

「似たような感じですね。とりあえずこいつの相手は僕がするんで皆は先に行ってください」

 

「でも、海くん一人で……」

 

「友奈。安心しろ。負けるつもりはない」

 

「友奈ちゃん。行こう」

 

「うん」

 

皆が先に行くのを僕とウミはただ見届けていた。てっきりこいつ邪魔をするんじゃないかって思ったけど……

 

「邪魔はしないのか?」

 

『邪魔?するつもりはない。ただお前と俺の戦いを邪魔をするやつがいなくなるのは都合がいい』

 

「都合がいいか…それだったら!!」

 

僕は白月を取り出すと、ウミも白月に似た刀を取り出した。まさかと思うけど、こいつも僕と同じ能力を持ってるのか?

 

「行くぞ!!」

 

僕は斬りかかろうとした瞬間、咄嗟に友奈の鉄甲に変え殴ろうとしたが、奴は大剣を取り出して防いだ。やっぱりこいつの能力……

 

「武器の切り替えの速さも同じか……」

 

『同じ能力……それが俺たちの力だ』

 

桔梗さんから奴らのことをある程度聞いていたけど、本当に同じ力を持ってるんだな。

 

「お前らは造反神に作られた存在なんだろう?何が目的だ?」

 

『………数多くある世界の中で僕らは生まれた。キキョウやチカゲ、他の奴らも同じだ』

 

他の奴ら……まさかと思うけどこの世界にいる勇者に似た奴らがいるって言うことか

 

『キキョウや俺は数多くある世界で勇者になり、そして散った存在。造反神は俺達に肉体を与え、新たな人生をくれた。だけどお前たちは邪魔なんだ』

 

奴は樹の武器を取り出し、生太刀、大剣、夏凛の刀、銀の斧にワイヤーを縛り付けて自由自在に操っていた。僕は攻撃を避け続けるけど……

 

「能力の使い方が僕よりも上だと!?」

 

『同じ能力が使えるだけじゃない。経験的には俺のほうが上だ!!』

 

4つの武器の攻撃を僕は大剣で防ぐが、中々重い一撃だった。本当に厄介な存在だな。

 

『数多くある可能性の中でお前は異質。女神の加護を受けて、勇者の力を使えるみたいだが……それでも俺はお前よりも上だ』

 

奴はそう告げて、姿を消すのであった。本当に厄介な存在だな。

 

とりあえず周辺に敵がいないか確認し、僕は皆と合流しに行くのであった。それにしても僕にも奴らみたいなものが現れた。どうにかしないとな

 




ウミ・バーテックスの登場でした。次回もまだまだ海水浴回は続きます


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12

千景さんの水着は後からやってきた若葉さん、夏凛、樹の三人と協力して取り戻すことに成功したが、僕はウミに出会ったことをWひなたお姉ちゃんと水都さんに話した。

 

「なるほど、桔梗くん、千景さんの他にも海くんのバーテックスが……」

 

『それに彼はこうも言っていたのね。数ある世界の中で勇者になり、散った存在だと……そしてそれは海くんも……』

 

「平行世界の自分ということだよね。おまけに僕の場合は異質だって言うし……」

 

「もしかしたら、世界の数だけああいうバーテックスがいるってことかな?」

 

水都さんの言葉を聞いて、嫌な想像をしてしまった。自分と似たような姿をしたやつが大量にいて、襲い掛かってきたら……

 

『海くん、もしもまたやつと遭遇した時は一人で戦わず、皆と協力して下さいね。下手すれば命だって……』

 

「一人で戦う気はないよ。桔梗さんの話じゃ、満開も使ってきたっていう話だし……」

 

桔梗さんがそいつと戦った時は、満開同士の戦いになったらしい。もしかすると奴らも満開や切り札を使ってくるかもしれない。

僕も自分の切り札と満開は使えるけど、あっちみたいにすぐに後遺症が治ったりするとは思えないからな……

 

「とりあえず今は防衛戦に集中しましょう」

 

「そうだね。海さんも防衛戦について考えてください」

 

「分かりました。それと小さいお姉ちゃん」

 

『なんですか?』

 

「ちょっとあることを頼みたいんだけど……」

 

『?』

 

今後の事を考えて、対策を練る必要がある。そういう事を考えられる人は一人だけ思い当たる。まぁ、考えてくれるかどうかはわからないけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、僕らは海へとやってきた。みんな、海だからかいつもとテンション高めで、珠子さんと銀は思いっきりはしゃいでるし、棗さんなんて服を着たまま海に入っていくし……

 

「なんでこう、皆団体行動が出来ないのかしらね?」

 

先輩はため息をついた。何だかんだ勇者部の部長だな……色々と苦労がたえないみたいだ

 

「先輩、テントとかの設営はやってきますから、遊んできていいですよ」

 

「こういう時は男の僕達を頼ってください」

 

「海、桔梗………ありがとうね。でも、あんた達は遊ばないの?」

 

「僕は泳いで遊ぶよりのんびりしてる方がいいので……」

 

「僕はそもそも泳げないです」

 

桔梗さんって泳げないんだ。もしかして義手のせいとか?

 

「ありゃ、義手で泳げないとか?」

 

「いや、元々泳げないです。海は?」

 

「僕はまぁ泳げますけど……今日のところは準備とかに集中しますんで……」

 

「そう、それじゃ頼むわね」

 

先輩は僕らにテントとかの準備をお願いし、着替えに向かった。僕と桔梗さんは準備を直ぐ様終わらせ、テントなかでのんびりと過ごしていた。

 

「海、別に僕に付き合うことはないんだぞ」

 

桔梗さんはスケッチをしながら、そんなことを言ってきた。

 

「あの、邪魔でした?」

 

「いや、そういう訳じゃないんだが………もしかして気を遣ってるのかと思ってな」

 

「う~ん、気を遣っていると言うわけじゃないんですけど……ちょっと色々と恥ずかしくって……」

 

「恥ずかしい?」

 

「なんでこうみんな、水着って言うと露出が高めになるのかなって……」

 

変な所に目線がいってしまい、遊ぶに遊べない。何だか僕ってまだまだ子供なのかな?

 

「………お前、友奈と混浴してる割にはそういうの気にするのはどうかと思うぞ」

 

「いや、あの時は緊張していて……」

 

よくよく考えれば、水着よりもアレは恥ずかしいよな……だとしたら……

 

「あれ?桔梗くん、海くん、遊ばないの?」

 

すると水着にパーカーを羽織った友奈と水着の東郷の二人がかき氷を持ってやってきた。

 

「僕は元々泳げないから、荷物番とスケッチを楽しんでるよ。海は……」

 

「ぼ、僕は準備とかで疲れたから……少し休んでる」

 

ごめん、無理だ。温泉のときよりも余計緊張してしまう。というか何なんだよ友奈の水着は……可愛すぎだろ

 

「そっか……じゃあ戦いが終わったら遊ぼうね」

 

「桔梗くん、絵ができたら見せてね」

 

「あぁ…」

 

二人が去っていくのを見届けると、桔梗さんは僕の肩を叩き、

 

「海、ヘタレだな」

 

「うるさい!!」

 



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13

皆で海水浴もとい防衛戦に来てから次の日、ひなたお姉ちゃん、水都さんの指示で敵の動きが微妙のため待機を命じられた。

 

「それにしても場所が場所だから樹海に海があるのかな?」

 

「どうだろうな?私達もこういった場所での戦闘はやったことはないからな」

 

若葉さんにもわからないみたいだけど、もしも樹海に海があったら水中戦とかやる羽目になるのかな?

 

「何でこういう時に水関係が得意なあの人がいないんだか……」

 

水の女神だったら殆どの場合、無双できるんじゃないのかな?いや、あの人の場合怯えたりしてそうだな……

 

そんなことを思っていると突然樹海化警報が鳴り響いた。僕らは勇者に変身して樹海へと行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

敵の数は多いが、何故かいつも以上に棗さんが張り切っていたおかげで、そこまで苦戦はしなかった。

 

「何だか鬼気迫るって感じですね」

 

「いつにもなく張り切ってるしね」

 

「多分、棗さん。海を守りたいって気持ちでいっぱいだからじゃないかな?」

 

「だとしてもあの調子じゃ持たなそうだな」

 

僕、樹、雪花さん、友奈の四人でそんなことを言っていると、更に増援が現れた。

 

「ハアアアアアアアア!!」

 

「待て!!」

 

敵に突っ込もうとした棗さんを若葉さんが止めに入るが、棗さんは若葉さんを突き飛ばした。ちょっとこれはまずいかもしれないな

 

「あっ!?すまない」

 

「いや、大丈夫だ。棗さん、少し落ち着いたほうがいいんじゃないのか?海を守りたいという気持ちはわかるが、貴方一人で戦ってるんじゃない。ここはチームプレイで……」

 

「そうだな……すまなかった」

 

棗さんは素直に謝る中、海の中から巨大なバーテックスが出現した。というかこの大きさは反則だろ

 

「敵は海の中から攻撃してくるし、おまけに厄介なことにアイツが動く度に波が……」

 

「海、お前は異世界で水中戦とかやったことないのか?」

 

「ありませんよ。水が得意な人がいましたけど……でも、こういう時は……」

 

僕は樹のワイヤーを取り出し、海の中に入れた。

 

「海くん、何を?」

 

「なるほどね。それだったら樹!手伝いなさい」

 

「えっ?夏凛さん、どういうことですか?」

 

「いいから、早く」

 

「は、はい」

 

夏凛は僕のやろうとしていることに気が付き、樹にそんな指示を出した。流石は夏凛だな。

しばらくしてから僕と樹の二人のワイヤーが何かに引っかかった。

 

「樹!!」

 

「はい!!」

 

「「せーーーーーのっ!!」」

 

僕と樹の二人が同時にワイヤーを引き上げると、海の中にいたバーテックスが一本釣りされた。こういう海の中にいる奴らは一本釣りが一番だな。

 

「後は任せろ!!」

 

「行くわよ!!」

 

空に上ったバーテックス目掛けて、若葉さんと先輩の二人が同時に切りつけ、更には追撃に夏凛と千景さんが斬撃を喰らわした。

 

「棗!!とどめ!!」

 

「あぁ、行くぞ!!」

 

棗さんがバーテックスに接近し、凄い一撃を喰らわし、巨大バーテックスを消し去った。

 

「残りは星屑だけだな」

 

桔梗さんは大鎌を構える中、僕は何かの視線を感じ、辺りを見渡すと遠くの方に3つの影があった。3つの影は僕が気がついたことが分かると直ぐ様姿を消した。

 

(様子見って事か?本当に厄介だな……)

 

僕はとりあえず迫りくる敵を撃退するのであった。現状奴らを倒すにはあの人の作戦が必要だからな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事バーテックスを倒し、防衛戦は僕らの勝利で終わり、みんなが海水浴を楽しむ中、僕はと言うと……

 

「連絡はないか……」

 

あっちのお姉ちゃんから連絡を待っていたけど、未だに来ない。何だかあの時の奴らをみてから、だんだん焦ってきた。まさか時間が経つにつれて、強くなっていく存在だったら厄介だな。

 

「どうしたものか?」

 

「何が?」

 

突然声が聞こえ、振り向くとそこには水着姿の友奈がいた。僕は咄嗟に胸の方に目をやってしまい、顔を背けた。

 

「い、いや、ちょっとな……」

 

「もしかして桔梗くんや千景ちゃんみたいに、海くんのバーテックスが現れたこと気にしてるの?」

 

「ま、まぁそんなところだよ」

 

「大丈夫だよ。もしも戦うことになったら皆で力を合わせよう。ね」

 

友奈は笑顔でそう言うのであった。確かに皆で力を合わせれば……

 

「所で何で顔を背けてるの?」

 

「いや………」

 

言えない。水着姿を見て、緊張しているって……

 

「も、もしかして水着ズレてる?」

 

「そういうことじゃない。ただ……皆とこういう風に海水浴とかあまり経験がなくって、水着姿とか見慣れなくって……」

 

「あっ、そっか……海くん、男の子だもんね」

 

友奈は顔を赤らめながらそう言うのであった。いや、正直には言えないよな。好きな女の子の水着がまぶしいって……

 

「でも折角だから一緒に遊ぼう。遊べば気にならなくなるから」

 

友奈は僕の手を引きながら浜辺まで連れて行くのであった。やれやれ、これは本当になれるしかないな。

 

 

 

 

 




今回で海水浴イベントは終了です。次回はちょっとした日常編をやります


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14

今回は日常編をお送りします


桔梗SIDE

 

ある日のこと、僕はとある事を海、美森、千景の三人に問いかけた。

 

「なぁ、三人共、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」

 

「どうしたんですか?」

 

「聞きたいことって?」

 

「貴方が私たちに何か聞くなんて珍しいわね」

 

いや、珍しいことなのか?でも僕が今悩んでいることを考えるとこの三人には丁度いいかもしれない。

 

「お前らどうやって友奈を見分けてるんだ?」

 

「「「…………」」」

 

僕の問いかけに三人が黙りこくった。こっちに来てから大分経っているけど、未だに僕は二人の友奈の見分けがついてない。いや見分けが全くつかないことはない。勇者の時の服装や髪留めとかで何とか見分けているけど、後ろ姿とか見ると全然見分けがつかなくて、ちょっと苦労している。

他の皆に聞いてみたけど、他の皆も僕と同じ感じだった。

 

「友奈と友奈さんの見分けですか?」

 

「多分だけど桔梗くんが求めている答えは出てこないと思うわ」

 

「……ここ最近悩んでいたのは、そのことだったの?」

 

「千景、僕としてはかなり重大な悩みなんだぞ。それでどうやって見分けてるんだ?」

 

「「「なんとなくだけど………」」」

 

全く参考にならなかった。この三人ならそれなりに良い答えが出るとは思っていたのに……

 

「まぁ、僕は最初友奈さんと会った時は本当に見分けつかなかったですし、それで色々と千景さんと一悶着あったくらいだし……」

 

「貴方がいた世界の私と?」

 

「本当にあの時はちょっと怖かったですけど……」

 

海は遠い目をしながら、その時のことを思い出していた。一体何があったんだ?

 

「付き合いが長くなればそれなりに分かると思うわよ」

 

「そうだろうけど………」

 

何だか答えらしい答えを聞けなかった。これは時間が解決するのを待ったほうがいいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は三人と別れ、一人、趣味であるスケッチを公園でやっていた。僕の絵は風景画が多く、あんまり人を描くことはしない。まぁ何度か人を書く機会はあったけど……

 

「あれ?桔梗くん?」

 

聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くとそこには友奈がいたが……この友奈はどっちだ?

 

「えっと……悪い、どっちの友奈だ?」

 

「あっ、高嶋友奈だよ。桔梗くん、結城ちゃんと見分けつかないの?」

 

「あの特殊な三人と同じにするな」

 

「あはは、グンちゃんと東郷さん、海くんのことだよね。若葉ちゃんたちもたまに間違えるのに、あの三人は本当にすごいよね」

 

友奈はそう言いながら、僕の隣に座り込んだ。本当に友奈と性格も似てるよな………ちょっとこの二人の関係が気になってしょうがない。

 

「桔梗くん、絵が描くのが得意なんだよね。見せてもらっていい?」

 

「あぁ、いいぞ」

 

僕は友奈にスケッチブックを渡すと、友奈は楽しそうに絵を見ていた。何だか絵を見てもらうのって、ちょっと恥ずかしいようで嬉しかったりする。

 

「桔梗くんって絵を描くの本当に好きなんだね。この間東郷さんから貰ったスケッチブックがもう少しでいっぱいになりそうだよ」

 

「最初は右腕のリハビリで始めたんだけど、描いているうちにな…………」

 

「それじゃ将来は絵描きさんになるの?」

 

「将来か………」

 

将来のことなんて考えたことはなかったな。というか考える暇なんて無かった。勇者部のみんなと一緒にバーテックスと戦ったり、戦いが終わった後は神樹様と天の神との間をつなぐ境界の勇者としての使命もあって、考える時間はなかったな。

 

「まぁ、絵を描くのは趣味だから……将来なるっていうのは考えてないけど、候補のひとつにしておくか」

 

「そうだね。楽しみにしておくね」

 

楽しみにか……友奈は自分が来たのが僕がいる時代よりはるか遠くの過去からだということを忘れてないか?

 

「あと、もし私と結城ちゃんの見分けがつかないなら、桔梗くん、私に何かあだ名着けたら?そうしたら、呼ばれた時すぐにどっちがどっちなのか分かるしね」

 

「あだ名か……それじゃ高嶋友奈だから、高奈で」

 

我ながら簡単なあだ名をつけてしまったな。高奈はしばらく考え込み、すぐに笑顔で……

 

「うん、何だか新鮮でいいよ。それじゃ今度からそう呼んでね」

 

「あぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで結局見分けの話はどうしたんですか?」

 

その日の夜、寮の部屋に戻ると海にそんな事を聞かれた。

 

「まぁ、時間が経てばそのうちにな……今は呼び方を変えるくらいにしておくよ」

 

「桔梗さんがそう言うのであればですけど……僕らっていつまでこっちにいるんですかね?」

 

いつまでか……そうだよな。いつかは元の世界に戻らないといけないんだよな。それはこの世界にいる勇者全員にも言えることだ。だけど……

 

「まぁ離れていても、いつかはまた会えるから大丈夫だろう」

 

「そうですね」

 

 

 

 




次回も日常回になります


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15

前回に続き、日常回ですが、話的には苦手な人がいるかも


海SIDE

 

ある日、僕は勇者部の部室を訪れると何故か机の上には一本の栄養ドリンクが置かれていた。

 

「誰のだろう?」

 

誰かが買ってきて、置き忘れたのかと思ったが、よく見ると瓶にはこっちの世界の言葉ではなく、あっちの言葉が書かれていた。おまけに手紙も添えられてるし……

 

「えっと……『カズマさんたちからお話は聞きました。そちらでの戦いは大変だと思います。手伝うことは出来ませんが、少しでも疲れが取れるように栄養ドリンクを送りました。ウィズより』か……こっちとあっちでは時間の流れが違うって聞いてるけど、あっちだとどれくらい経ってるんだろうな……」

 

元の世界に戻ったら、100年後とかだったら嫌だな……でも、友海や牡丹の話を聞く限りだとそこまで時間は進んでないみたいだけど……

 

「考えるのはよそう。折角送ってもらったんだし、早速……」

 

ドリンクを一気に飲み干すと、何故か体が熱くなってきた。何だ?毒でも入ってたのか?嫌々、そんな事は……でもウィズさんのことだから、うっかり栄養ドリンクと毒薬を間違えたりとか………

おまけに何だか段々と意識が………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……い、お………おいっ!!大丈夫か?」

 

「ん……僕は……」

 

誰かの声が聞こえ、目を覚ました僕、目の前には若葉さんとひなたお姉ちゃんが心配そうにしていた。

 

「目を覚ましたか。部室に来たら知らない人が倒れているからびっくりしたぞ」

 

「知らない人?若葉さん、何を言ってるんですか?」

 

「ん?私のことを知ってる?」

 

「……若葉ちゃん、この子、もしかして……ちょっと鏡で自分の姿を見てみて」

 

お姉ちゃんは僕に鏡を渡してきた。自分の姿を見ろって、一体どういうことかなと思いながら確認すると、何故か鏡には知らない女性が写っていた。

 

「………えっと……」

 

「一応確認するけど、貴方は海くん?」

 

「海?ひなた、何を言ってるんだ?」

 

「僕、海です」

 

僕がそう答えた瞬間、若葉さんは驚いたまま固まっていた。何でだ。何で急に女の子になってるんだ?それ以前に何でお姉ちゃんは僕だとわかったんだ?

 

「お姉ちゃん、何で分かったの?」

 

「何となく海くんの面影があったから……あちらの私でもすぐに気が付くと思うわ」

 

そういうものなのか?というか本当に何でこんなことに……まさかと思い、僕は端末を取り出し、あっちのお姉ちゃんに連絡を取った。

 

『はい、どうしま……えっと海くん、バーテックスの攻撃でも食らいました?』

 

「やっぱり気がつくんだ。あのお姉ちゃん、ウィズさんがこっちに何か送るようにって頼まれたりとかは?」

 

『え、えぇ、頼まれたけど……まさかと思うけどそれを飲んでとか……』

 

「そうとしか考えられないんだけど……でも手紙も添えられていたし……」

 

『と、とりあえず聞いてみるわ』

 

あっち側のお姉ちゃんとの通信を終えると、僕は改めて自分の体を確認した。髪はお姉ちゃんと同じくらいの長さで、身長もお姉ちゃんと同じくらい……胸は……それなりか

 

「海くん、流石に自分の胸を揉むのはどうかと思うけど………」

 

「いや、確認のためだし……というかコレ戻るのかな?」

 

「それは……あちらの私がどうにかしてくれることを信じましょう。今は………着替えましょうか」

 

着替えるって、まさか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は無理やりお姉ちゃんが持ってきた讃州中学の女子の制服に着替えさせられた。何で僕がこんな目に……

 

「やはり似合ってるわ。海くん、可愛いわよ」

 

「あんまり可愛いとか言わないでほしんだけど……」

 

「海、大変だな」

 

若葉さんは僕の事を同情の目をしながら、そんな事を言うのであった。というか助けてほしかった

 

「それにしても海くん、本当に可愛いわ」

 

お姉ちゃんはお姉ちゃんで僕の写真を取りまくってるし、出来れば写真は消してほしいのだけど……

 

「まぁ、元に戻るまでの辛抱だな。その姿じゃ寮に戻れないだろうし、ひなたの部屋に泊まっていったほうがいい」

 

「それは……そうだけど」

 

「私は構わないですよ。今の海くんは安全そうですしね」

 

「安全そうって……別に襲ったりとかしないんだけど……」

 

「まぁ、そうですけど……」

 

とりあえず元に戻るまで、お姉ちゃんの所に匿ってもらうのが一番だな。この姿だと桔梗さんに迷惑かかると思うし……

 

「後出来れば他の皆にはこのことは内緒で……多分戸惑ったりするだろうし……」

 

「そうですね」

 

「私の方で風さんに話しておく。海は部屋であっち側のひなたの連絡を待ったほうが……」

 

突然樹海化警報が鳴り響いた。こんな時に何でまた……待機した方がいいのだろうけど、じっとしていられないな。

 

 

 

 

 

 

 




短めで、中途半端な所ですみません。次回に続きます。


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16

性別逆転回とイベントの話となります


バーテックスの進行のため、僕は女性の姿のまま出撃をしたのだが、変身した姿が何でスカート履いてるんだよ。

 

「中にスパッツ履いてるからいいけど、結構恥ずかしくないかコレ?」

 

「海、無理はするな。お前は下がっていても……」

 

「いや、僕だけじっとしているだけっていうのは嫌なんで……とはいえ、遠くからの援護でいいですか?」

 

何だか皆にこの姿を見せるのは恥ずかしいし……

 

「分かった。頼んだぞ」

 

「はい」

 

僕は若葉さんと別れ、東郷の銃を取り出し、狙撃の準備を始めた。

敵の数は大体30くらいか……皆もいるから苦戦するようなことはないだろうけど……ここは一番遠くにいる敵を倒していったほうがいいな

 

 

 

 

何発か銃弾を放つが、殆どが掠めるくらいで、別の場所にいる東郷に助けてもらったりしている。

 

「狙撃はまだまだだな。あっちでもスキルを覚えれば何とかなるんだけど、僕自身覚えられないしな……」

 

ため息をつきながら、敵を撃退していくと大型のバーテックスが現れた。アレは見たことがないタイプだな。甲殻類と見た目が似てるし……

 

「狙撃じゃ弾かれるな……皆がいるから大丈夫かと思うけど……このままだとまずいな」

 

皆もあのバーテックスの硬さに苦戦しているみたいだし、ここは……

 

「仕方ない。あの甲羅を割るために……」

 

僕は力を込めると同時に、白い神秘的な衣装に変わり、白月も白く輝いていた。

 

「切り札発動!白月!!」

 

僕は白い刃を思いっきり振った瞬間、刃が長く伸び、遠くにいるバーテックスの甲羅に突き刺さると同時に、バーテックスの甲羅にヒビが入った。

それを見た瞬間、若葉さんと桔梗さんの二人が同時に斬撃を食らわし、大型バーテックスを撃退した。

 

「これで終わりだな」

 

「海くん?」

 

僕は安心して、切り札を解除すると同時に後ろから誰かに声をかけられ、振り向くとそこには東郷がいた。

 

「え、えっと、人違いじゃ……」

 

「海くんだよね。勇者衣装も似てるし、何だか雰囲気も……」

 

東郷は僕のことをじっと見つめていた。何でこう鋭いんだよこの子は……

 

「海くん、女装の趣味ってわけじゃないよね。何かあったの?」

 

「はぁ、東郷には負けるよ。ちょっと贈り物のせいで……この姿になったんだよ」

 

「贈り物?もしかして性別が変わるっていう薬でも飲んだの?海くんの世界って変わってるね」

 

本当に色々と鋭いな……

 

「ほとんど東郷の言うとおりだよ。おまけにこの姿だと色々と恥ずかしくって……」

 

「海くん……とりあえず戻ったら皆に相談しよう。さっき友奈ちゃんが海くんが来ないことを心配してたし……」

 

「そっか……」

 

皆に心配をかけてしまっていたか……仕方ない。戻ったら相談するか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いを終え、僕は改めて皆に僕に起きていることを伝えた。

 

「にしても海がいた世界って、本当に変わってるわね。そんな薬があるなんてね」

 

「それにしても海が女の子になったらこんな風になるなんてな」

 

「それにちゃっかり女物の服を来てるしな」

 

銀と珠子さんが僕を誂うけど、これを着せたのはお姉ちゃんなんだけど……

 

「何だかひなちゃんと東郷さんを足した感じだね」

 

「うん、女の子になったらこんな風に変わるんだね」

 

W友奈が僕の髪をいじりながらそう告げるが、これはこれで結構恥ずかしいし……

 

「まぁ一生って言うわけ無いだろう。しばらくしたら戻るんじゃない?」

 

「そこら辺は今、調査中で……」

 

言いかけた瞬間、突然体がまた熱くなり、体が急に元に戻った。もしかして時間で戻る感じだったのか?

僕は女子の制服から元の制服に着替えた。それにしても本当に厄介な薬だった。

 

「あら、元に戻っちゃったんですか?ちょっと残念ですね」

 

お姉ちゃんはお姉ちゃんで少し残念そうにしているけど、もう女の子になるのは勘弁してほしい。

すると端末から小さなお姉ちゃんが出てきた。

 

『お待たせしました。あら、戻ったんですか?』

 

「何とかね……それであの薬って?」

 

『アレは時間が経てば戻るみたいです。ウィズさんいわくちょっとした手違いで送ったみたいですよ。今度お詫びとしてちゃんとしたものを……』

 

「いや、止めるように伝えておいて……」

 

また女の子になるのは勘弁してほしいものだ。

 

「まぁ海が無事元に戻ったみたいだし、万事解決みたいね」

 

先輩がそう言い、次の議題に入った。それは……

 

「ちょっと皆にお祭りの準備を手伝うようにって言われてるのよ。まぁ友奈たちと……海と桔梗の二人は経験したかどうかは……」

 

「祭りの準備だったら僕がいた世界でもやりましたよ」

 

「僕の方もです」

 

祭りの準備だったら勇者部の依頼でもやったし、おまけに家の都合上、準備を手伝ったりしたしな

 

「因みに手伝ったお礼として、屋台の無料券がもらえるわ。みんな、張り切ってやるわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻神社周辺

 

「ふぅ、いきなり何で神社に来てるのかしら?」

 

少女はため息をつきながら、辺りを見渡しあることに気がついた。

 

「どうにも景色が変わってる気がするわね……それに……」

 

少女は自分の隣りにいる困った顔をしているもう一人の少女の方を見た。

 

「貴方は誰?」

 

「え、あの、私は……」

 

「因みに私は姫野四葉」

 

「鈴藤灯華です……」

 

「灯華ちゃんだね。灯華ちゃんは光りに包まれてここに?」

 

「はい、急に……姫野さんもですか?」

 

「えぇ、それにしても本当にここはどこかしらね?少し調べてみよっか」

 

 




最後の最後で追加で四葉と灯華の登場でした。灯華は鈴藤灯華は勇者になれないの主人公で、四葉は姫野四葉は勇者であるの主人公です。

次回、更に二人ほど追加予定です


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17

桔梗SIDE

 

先輩が持ってきた夏祭りの準備の手伝いという依頼。先輩が皆の役割を振り分けてる中、

 

「どれも力仕事ばかりですね」

 

「非力な私達では無理そうですね」

 

ひなたと水都の二人がそんなことを呟いていた。まぁ確かにこの二人だと力仕事は無理そうだな。

 

「あぁ、巫女二人にはある仕事を頼まれてるわ。神社の神事の手伝いをしてほしいって」

 

「神事の手伝いですか。それだったら」

 

「私達にも出来ますね」

 

「それと東郷、あんたって巫女の素質があるって言われてたわよね。あんたもやってみない?」

 

「私もですか?」

 

「わぁ、東郷さんの巫女姿見てみたい」

 

うん、友奈の意見には賛成だ。僕も美森の巫女装束は見てみたい。

美森は何故か僕の方を見ていた。やってみたいならやればいいのに……

 

「まぁ何事も経験って言うし、やってみたらどうだ?」

 

「そ、そうね。友奈ちゃんと桔梗くんが言うなら……」

 

「何だか~わっしー」

 

「きょうくんは対わっしーキラーだね~」

 

「乃木、あんたらが言おうとしていること分かるけど、東郷の事を怒らせないようにね。でも、巫女服、東郷の分まであるかしら?」

 

「いや、神社なんだから余分にあったりするんじゃないか?」

 

「桔梗、言い方を変えるわ。東郷サイズがあるかしら」

 

あぁ、うん、一部大きいからな……きつかったりしたら大変だからな……

 

「桔梗くん、変なことを思ってるでしょ」

 

「桔梗、あんたは……」

 

美森は胸を抑えながら、夏凛は殺気のこもった目で僕のことを見ていた。すると雪花はというと……

 

「まぁ、桔梗も男だからね。それにね」

 

「雪花、何を言いたいかわからないけど、黙っててくれないか?」

 

「ありゃ、ごめんなさいね」

 

雪花の奴、分かってて言ってるから、正直疲れる。すると海がいつの間にかいなくなってることに気がついた。

 

「なぁ、海は?」

 

「あれ?そういえばいつの間に?」

 

「何だ?薬の影響がなくなってて、また女になったのか?」

 

「それなら着替えにでも……」

 

「いや、女になってないし、着替えもしてないからな」

 

海は何かを持って、部室に入ってきた。一体何処に行ってたんだ?

すると海は持っていたものを東郷に渡しあることを告げた。

 

「一応試着してみてくれないか?」

 

「試着?」

 

「巫女装束の」

 

『んん!?』

 

その場にいた全員が驚きの声を上げていた。海、一体どういうことだ?東郷は部室から出ていき、少しした後に……

 

「あの、海くん。この巫女服……サイズぴったりなんだけど……」

 

「急いで作ったからどうかと思ったけど、ぴったりなら大丈夫だな」

 

「なぁ、海、作ったっていうのはどういうことだ?」

 

「まさかと思うけど、あの巫女服……」

 

若葉と千景の二人が海にそんなことを聞くと海は……

 

「僕が作ったんだけど、サイズとかもだいたい見れば分かるし……」

 

海の発言を聞いた瞬間、若葉、夏凛の二人に頭を叩かれるのであった。というか見ただけでサイズが分かるって、色々と凄いな海のやつ……

 

「ま、まぁ、衣装に関しては何とかなったからいいんじゃないの?それと海、そう言うことはあんまり人に言わない方が良いわよ」

 

「わ、分かりました………」

 

海は頭を抑えながら、そう呟くのであった。それにしても夏祭りか……ちょっと懐かしいな……

 

「あれ?」

 

「あら?」

 

ひなたと水都の二人が急に何かを感じ取っていた。何かあったのか?

 

「気のせいかな?」

 

「どうでしょう?気配は感じましたが……どうにも感じ取りきれないですね」

 

まさかと思うけど、二人が感じ取っているのって、また新しい勇者がこっちに来た関係なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうにもここは歪ね……」

 

街中を歩く灯華と四葉の二人は、この世界のことを調べていた。

 

「歪……ですか?」

 

「えぇ、何となくだけどね……それで貴方は何か分かった?」

 

「はい、この街並み……私がいた時代ですね」

 

「やっぱりね……さてどうしたものかしら?この世界の一部だけど、どうにも行けそうだけど行っちゃ駄目なところもあるし……」

 

「どういうことですか?」

 

「ある区域の前に行くとやばいかなって……」

 

本当に何となくだが、四葉はこの世界の何かを感じ取っていた。これが自身に宿した精霊の力の影響なのかもしれないと四葉は思うのであった。

 

「とりあえず今は何かしら事情がわかってる人を探しましょう」

 

「そうですね……」

 

二人は先へと行こうとすると、曲がり角で誰かとぶつかったのだった。ぶつかった相手は四葉と灯華と同じくらいの少女二人だった。

 

「あいたた、大丈夫?」

 

「あ、ごめんなさい」

 

「もう友海は……本当にすみません」

 

「大丈夫だよ。でも、曲がり角は走ったりしたらぶつかって危ないから気をつけてね」

 

「はい」

 

「ん?ねぇ貴方、友海ちゃんだっけ?誰かに似てる気が……」

 

「はい?」

 

「あれ?そういえばそっちの子も……誰かに……」

 

「ねぇ、牡丹、この人達……もしかして……」

 

「うん、私達と同じ状況の……」

 

 




短めですみません。

更に追加参戦として友海と牡丹の二人登場です。この二人は海の時間軸的にはちょっと未来から来たことになります


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18

みんなで夏祭りの準備のため、神社に集まる僕ら、それにしてもちょっと気になることがあった。

 

「ひなた、水都。お前らさっき何か言ってたけど、何かあったのか?」

 

「それが……」

 

「どうやらまた新しい勇者がこちらの世界に送られたみたいなんですが、どうにも感じ取れないといいますか……」

 

「何だか神樹様に呼ばれたんじゃないみたいなの」

 

神樹様に呼ばれず来たというのか?それはそれで気になるな……

 

「ですがその方々からは悪しき力は感じませんので、今は準備に集中しましょう」

 

「そうだな」

 

ん?今方々って言わなかったか?来たのって一人だけじゃないんだ……

 

「ほら、そこの三人、準備を始めるわよ」

 

「分かりました」

 

先輩に急かされ、僕らは祭りの準備を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

ひなたお姉ちゃんたちが神事を行うための舞台の修繕等をやっている僕と歌野さんの二人

 

「いや~海くんも中々手際が良いね~」

 

「あっちでこういう作業とかやっていたので」

 

ある程度の技術とかは街の人達に教わっていたからな……でもこういう技術って覚えておいても損はないし、戻ったらカズマさんあたりにでも教えてもらおうかな

 

「あの……すみません」

 

突然誰かに声をかけられ、振り向くとそこには長い赤髪の少女がいた。何か用なのかな?

 

「何か?」

 

「困り事だったら、聞きますよ」

 

「いえ、何というか話しても信じてもらえるかどうか……なんといいますか……」

 

一体この子はどうしたんだろうか?話して信じてもらえるかどうかって……

 

「そういえば今ってお祭りの季節でしたっけ?」

 

「ん?まぁ季節的には……」

 

「私達からしてみればちょっと季節外れだったりするけどね」

 

「季節外れ……そうですね」

 

何だか彼女は思い詰めた表情をしていた。何だろう?何か気になるなこの子……

 

「お~い、灯華ちゃ~ん」

 

「あっ、すみません。連れが呼んでいるので……これで失礼します」

 

彼女はそう言って、どこかへと走り去るのであった。

 

「何だったんだろうね?」

 

「さぁ、ただ何だか気になるけど……」

 

「気になるって?」

 

「さっきあの子が……」

 

突然端末から警報が鳴り響いた。まさかこんな時に敵の襲撃だなんて……

 

「作業一旦中止、敵を倒しに行くよ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

突然の敵の襲撃。まさかと思うけど神社の準備のジャマをするつもりなのか?

 

「タイミングとしてはよすぎるよな」

 

「あんたもそう思う?だとしたら厄介ね」

 

夏凛もそのことに気がついていた。こういったお祭りとかは神樹様の力を強めることが出来る。もしバーテックスがそのことを知っていれば邪魔をしてくるのも当たり前だ

 

「えっ?どういう事?」

 

「友奈、説明したいのは山々だけど、今は敵の襲撃に備えろ」

 

「後でたっぷり教えてあげるわ」

 

「そこ!!話してる暇はないぞ!!」

 

若葉の掛け声とともに大量の星屑が迫ってきた。僕と夏凛と友奈の三人は前に飛び出し、敵を撃退していく

 

「数が多いな。それにいつもだったら大型の奴の姿があるはずなのに、今回は姿がない」

 

僕は槍を取り出し、回転させながら敵を撃退していった。今回の敵の動きがどうにもおかしい。何か企んでいるのか?

 

「もしかするとあんたの分身が関わってるんじゃないの?」

 

「それだったらみんなで力を合わせて……」

 

「いや、奴がいるなら僕だけを狙うはずだ。そのために僕を孤立させるつもりだし……」

 

敵の動きは特に変わった様子もないから、今回は奴は関わってない。

 

すると他のみんなが僕らと合流してきた。

 

「あぁもう、どうにも厄介ね」

 

「敵さん、数だけは多いしね……」

 

先輩と雪花の二人がそう言う中、奥の方から大型のバーテックスが現れた。

 

「敵の親玉みたいだ……」

 

「それだったらタマが一撃で倒してやる!!」

 

「珠子さん、付いていきます!!」

 

「待て!珠子、銀!!様子がおかしいぞ!!」

 

大型の方を見ると何故か背中から何十体もの星屑を呼び出し、こっちに向かってきた。そして星屑はボール状のものを僕ら目掛けて落としてきた。

 

「ボール?」

 

友奈は特に警戒する様子もなく、そのボールに触れた。その瞬間、ボールが爆発し、辺りを煙で包み込んだ。

 

「毒ガスか!?」

 

「けほっ、けほっ」

 

「友奈ちゃん!?」

 

「ちょっとこの煙どうにかして」

 

目がしみてまともに開けられない。おまけに動きを封じられている間にバーテックスの侵攻を許してしまう

 

「ここは一気に……」

 

「トルネード!!」

 

僕は天神刀を抜こうとした瞬間、誰かの声とともに竜巻が現れ、煙を晴らした。一体これは……

 

「誰かは知らないが、煙が晴れた。これなら……」

 

「まずいです!動きを封じられていた間に敵の進行が……」

 

杏の言うとおり、敵は僕等がいる位置からかなり離れた場所にいた。このままだと……

 

「先へは行かせないよ」

 

また誰かの声が聞こえた瞬間、バーテックスの前方に勾玉が無数に繋がった網が現れ、バーテックスを捕獲した。

 

「捕獲完了と、牡丹ちゃん」

 

「はい!!ライトオブセイバー・アロー!!」

 

一本の矢が捕獲されたバーテックス一匹に当たった瞬間、黄色い閃光とともに全て切り裂かれた。

 

「さっきのって……まさか!?」

 

「はあああああああああああ!!」

 

海は何か気がついた瞬間、大型バーテックスがいる方からまた声が聞こえた。大型バーテックスの上の方には一人の少女がいた。

 

「爆裂!!勇者パァァァァァァンチ!!」

 

少女の拳が大型バーテックスに当たった瞬間、まばゆい閃光とともに樹海中に爆発音が響いた。何者なんだ?

 

「よし、敵撃破!」

 

「どういう状況なのかわかりませんが、あの方々を助けられてよかったですね」

 

「あら?何だか見覚えのある人達がいるんだけど………」

 

「あっー!!牡丹、見て見て、パパたちがいるよ」

 

「お父様も……」

 

三人の少女たちは僕らの方を見ながらそんな事を言ってるけど、誰がパパとお父様なんだ?

 

「やっぱり………なんであの二人が……」

 

海は頭を抱えながらそう告げた。もしかして知り合いなのか?




というわけで合流回でした。


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19

突然現れた三人の少女と共に僕らは樹海から戻ってきた。するとひなた、水都、園子と一緒に見覚えのある少女がいた。

 

「灯華?何でお前が……」

 

「えっ!?桔梗くん、どうしてここに……」

 

「桔梗くんの知り合いでしたか」

 

「それにそっちも何人かと合流したみたいだね」

 

「そうなのみーちゃん、特にこの子なんて殴った瞬間、敵がバーンってなってね」

 

「バーン?」

 

歌野の説明を聞いても、よく分かっていない園子たち三人。というか僕らも何で殴っただけであんな風に爆発したのかわからないし、それにそっちの弓をもった子も風や電気とか自由自在に操ってたし……あとはもうひとり、勾玉を持った子はどことなく誰かに似てる気がするし……

 

「これで全員揃ったのかな?」

 

「あぁ、勇者、巫女含めてな。それでお前たちは一体誰なんだ?海は何だか知ってるみたいだけど……」

 

若葉は海の方を見ながら言うと、海は何かを悩んでいた。

 

「そうね。自己紹介すべきね。私は姫野四葉。若葉ちゃんたちと勇者をやっていたわ」

 

「姫野!?」

 

勾玉を使っていた子の名前を聞いた瞬間、僕は大声を出してしまった。姫野ってまさか……

 

「きょうくんの知り合いなの~」

 

「いや、何というか……その……」

 

正直に言うべきなのだろうけど、言っていいものか……それに彼女は300年前の人間だしな……

 

「ちょっとした知り合いだけど……いやまさか……そんなわけは」

 

「私と知り合いみたいだけど、私は知らないわね」

 

「桔梗、話しにくいなら無理に話さなくていいわよ。言いたくなさそうなのはあんただけじゃないみたいだし」

 

先輩の言うことは分かる。僕もそれに海も多分言いにくそうだしな……

 

「えっと、私は鈴藤灯華です。桔梗くんと同じ世界から来たんですけど……」

 

「灯華もこっちに来るなんてな……」

 

「でも灯華さんは勇者でも巫女の力はないみたいですね。ただ、別の力が……」

 

「えっとそれは……」

 

灯華の場合は、勇者になれなく悪しき心を持った人に利用されて、簡易の勇者システムを使ってたりしてたからな…‥…多分だけどそれの力をひなたと水都の二人は感じ取ってるのだろうけど……

 

「次は私だね。私は………」

 

「ちょっと待った。友海、牡丹、ちょっと来い」

 

海は突然二人の少女の自己紹介を止めると、何か三人で話し始めた。

 

「ここでは僕と東郷の子供って言うことは話さない方が良い」

 

「どうして?パパは私のパパだよ。パパじゃないって言えないよ」

 

「友海、こちらの世界は私達がいた世界とは別の世界だからよ。ここにいる友奈おば様をママなんて言ったら何が起きるか……」

 

「牡丹、わかってるじゃないか。それよりも僕が知ってるお前たちよりも成長してる理由は何だ?」

 

「それは後で説明します」

 

「パパ……やっぱりパパじゃないって言えないよ。パパやママの事、パパとママ以外の呼び方なんて……牡丹だってそうでしょ」

 

「私は………」

 

「くっ、どうすれば……」

 

「海おじ様……負けないでください」

 

何だか小声で何か話してるみたいだけど、何を話してるんだ?すると海はひなたの事を呼んで、四人で話し合いを始めた

 

「どうかしたんですか?」

 

「簡潔に言うとこの二人は僕と友奈の子供で、東郷の子供なんだけど……」

 

「……正直に言うべきではないでしょうね。こちらの友奈さんにそんなことを言ったら意識し始めますから……」

 

「でもひなたおばあちゃん。私、パパのこと……」

 

「おばっ!?これは本当にどうしたものでしょうか……」

 

「もう諦めたほうがいいのでは、友海も頑固ですから説得するのは難しいでしょうし……」

 

「牡丹、諦めないでくれ」

 

しばらく話し合いが続き、海とひなたの二人は何だか疲れた顔をしていた。一体何があったんだ?

 

「私は上里友海です」

 

「上里って……まさかと思うけど、海の子供って事!?」

 

「でも何だか誰かに似てる気がするんですけど……」

 

樹が友海の事を見つめた。すると海はというと……

 

「ま、まぁ、仕方ないだろ。僕の子供なんだから……はは、樹は全く何を」

 

何だか棒読みだぞ海。何かしら隠してるのだろうけど、無理に聞く必要はないだろうな。

 

「なるほどね~」

 

「まぁお二人にぴったりの子供ですね」

 

何故か雪花とひなたの二人は何か納得していた。そしてひなたは最後の一人の方を見ながら、そう言った。この子もまさか誰かの子供って言うわけじゃないだろうな

 

「えっと東郷牡丹です。よろしくお願いします」

 

「あら、もしかして私の?」

 

「はい、子供って言うことになります」

 

「なぁなぁ、それってつまり須美の子供ってことになるよな」

 

「銀、やめなさい」

 

「わっしーのお相手は誰かな~」

 

銀と園子(小)が須美の事を誂う中、僕は別の事で頭がいっぱいだった。

 

(待て、三森の子供……海のいた世界から来たみたいだけど、そっちだと相手は誰なんだ?いや、別に気にするようなことじゃないのだけど、何で苛ついてくるんだ?いやいや待てよ。この牡丹って子、最初に会った時お父様って言ってたよな。それってつまり………)

 

僕はゆっくりと海の方を向き、大鎌を取り出した。

 

「お前、まさかと思うけど……」

 

「桔梗さん、ちょっと待った。何で斬りかかろうとしてるんですか!?」

 

「えっと、何だか勘違いしてますけど、海おじ様は私のお父様じゃないですよ」

 

牡丹がそう言って止めに来た。海じゃないとしたら誰なんだろうか?

 

「まぁお二人については細かいことは聞かないことにしましょう。知ったら知ったで多分ですが、色々と大変ですからね」

 

ひなたがそう言い、彼女たちの自己紹介は終わったのだった。それと同時に海は直ぐ様友海と牡丹の二人を連れて裏の方へと行くのであった。

 

「何だか積もる話があるみたいだし、海は放っておきましょ。私たちは私達で準備を続けましょう」

 

先輩の掛け声とともに僕らは祭りの準備を続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

僕は友海と牡丹の二人を連れ出し、ある事を聞いた。

 

「ずっと気になってたんだけど、お前ら二人、成長してないか?」

 

僕がここに来る前の二人は確か12歳位だったはずなのに、今ここにいる二人14歳位だ。これってつまり……

 

「やはりおじ様はあの時のおじさまなんですね」

 

「じゃあ今はパパと同じ年なんだね」

 

「私たちがここに来たのは神樹様に導かれて何ですが……」

 

牡丹は何故か作業をしている桔梗さんのことが気になっていた。そういえば合流した時にお父様って言ってたけど……まさか……

 

「パパ、あの人、牡丹のパパだよ」

 

「………はっ!?」

 

いや待て、牡丹が桔梗さんの子供?と言うことはあっちでも東郷と桔梗さんは結婚するって言うことなのか?でもそんな確率……ありえるのか?

 

「あのあんまり悩まないでください。私としてはここでお父様って呼ぶわけには……皆さんに迷惑がかかりますから」

 

牡丹は少しさみしそうな笑顔でそう告げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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20

海SIDE

 

友海と牡丹、そして四葉さんと灯華さんが来て次の日、僕らは祭りの準備を続けていた。

この四人も祭りの準備を手伝ってくれている。最初は先輩が断ったのだが、これから先一緒に戦うのだから、自分たちも手伝ったほうがいいと言うのであった。

 

「……なぁ、海」

 

「どうしたんですか?桔梗さん」

 

「あの牡丹って子、何だか僕に対しておかしい気がするんだけど……」

 

「おかしいって?」

 

「何かこう……避けられてる感じが……」

 

こういう場合なんと言えばいいのか、正直に言ってしまえばいいのだけど、牡丹にそれはやめてほしいって言われてるし……友海曰く牡丹は物凄く父親に甘えたいらしいけど、物凄く遠慮がちらしいし……

 

「まぁ来たばかりですし、男がいるって言うだけでちょっとなれてなかったりするんじゃないんですか?」

 

「そういうものか?」

 

「そういうものです」

 

僕は桔梗さんと別れ、作業の続きをしようとしていると今度はそのっち(中)が声をかけてきた。

 

「カイく~ん、見てみてまつぼっくり~」

 

「そのっち、お前……いや突っ込んだら負けなんだろうけど……」

 

「えへへ~」

 

そのっちに対してまともに対応したら負けなんだろうな……

 

「所でカイくん」

 

「何だよ」

 

「さっきね。ひなたんに言ってきたんだ~なるべく勇者から離れないようにって」

 

「………どういう事?」

 

勇者から離れるなって、戦いになれば樹海での戦闘になるし、巫女は巫女で樹海に入ってくる必要がないから、勇者の側にいる必要はないのだけど……

 

「昨日の敵、狡猾だって話聞いたよね~」

 

上空からの攻撃、しかも毒ガスで僕らの動きを封じてきたし……まぁ友海たちのおかげでなんとかなったけど……

 

「神社の裏手は未開放地区なんだって、もしかしたら………」

 

何というかそのっちって色々と鋭いというか……仕方ない

 

「作業少しの間代わってもらえるか?」

 

「任せて~」

 

僕はそのっちと交代し、ひなたお姉ちゃんがいる境内に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

境内に行くとひなたお姉ちゃんと水都さんの二人が何かを話していた。どうやら今のところは無事みたいだけど……

すると突然端末からアラームが鳴り響き、神社の裏からバーテックスが現れた。

本当にそのっちの言うとおりになったのか。僕は勇者に変身し、飛び出した。

 

「「「ハアアアアア!!」」」

 

僕と同時に飛び出した若葉さんと歌野さんと一緒にお姉ちゃんたちを襲おうとしてきたバーテックスを撃退した。

 

「大丈夫か!ひなた」

 

「お待たせみーちゃん」

 

「二人共来るの早くないですか?」

 

「若葉ちゃん、海くん」

 

「うたのん」

 

「悪いがバーテックス。二人には手を出させない」

 

僕らは樹海へ行き、襲ってきたバーテックスと戦い始めた。僕は生太刀を取り出し、迫ってくる敵を切り裂いていくが……

 

「流石に三人だと数が多いですね」

 

「確かに……この人数だと……」

 

「若葉、何かナイスなアイディアない?」

 

「ナイスな……」

 

若葉さんが考え込んでいると突然襲ってきたバーテックスが蜂の巣になっていた。それと同時に他の皆も駆けつけてきた。

 

「とりあえず乱射してみました」

 

「みんな……」

 

「パパ、大丈夫?」

 

「友海、あぁ、大丈夫だ。それにみんなが来たんだから、負ける気はしないしな」

 

僕は白月と生太刀を構え、バーテックスへ向かっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

数は多くないけど、何でまたこいつらは襲ってきたんだ?もしかして昨日の巫女による浄化が関係してるのか。だとしたら美森も危ないかもしれないな。

僕は黒い影になりながら、敵を切り裂いていきながら念のため、美森のところへ行こうとした時、空から降ってきた何かに邪魔をされた。

 

「ちっ!」

 

「久しぶりだね。俺」

 

「キキョウか……今回巫女を狙ったのはお前の作戦か?」

 

「いや、俺は何もしてない。今回はこいつらが考えて行動したんだよ。知性がないように見えて凄いだろ」

 

キキョウの攻撃を受けながら、反撃を食らわせるが決定打にならない。本当に厄介だな……

 

「さぁさぁ、どうしたんだ?その程度じゃないだろ!!」

 

キキョウの連撃を僕は受け続けていくが、一撃一撃が重すぎてかなりきついな……

そう思った瞬間、炎をまとった矢がキキョウ目掛けて飛んできた。だが、キキョウは矢を弾くとそこに牡丹が駆けつけてきた。

 

「お……桔梗さん、大丈夫ですか?そいつは……」

 

「こいつは簡単に言えばバーテックス版の僕だ。しかも知性も人間とそう変わらない」

 

「話に聞いてましたが、本当に厄介な存在なんですね」

 

「ほう、新しく来た勇者か……だからか……」

 

キキョウは笑みを浮かべていた。そして狙いを僕ではなく牡丹に定めてきた。牡丹は避けようとするが、キキョウの動きが早く、首を掴まれてしまった。

 

「うくっ……」

 

「なるほどな。お前はそいつの……」

 

キキョウは牡丹を地面に叩きつけ、足で踏みつけた。

 

「かはっ」

 

「やめろ!!」

 

「やめてほしいだろうな。なにせこの娘はお前の娘なんだからな」

 

キキョウは倒れた牡丹を蹴った。今、こいつなんて言った?牡丹が僕の娘って……だからなのか?だからこそ、僕は……

 

僕は大鎌から槍へと変え、キキョウの右肩に突き刺した。

 

「怒ったか……そうだろうな!!」

 

「いい加減倒されろ!!キキョウ」

 



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21

海SIDE

 

敵の数はそう多くはないけど、ちょっと妙だな。敵の攻撃が僕らに集中しているみたいだ。

 

「海、気づいてるか?」

 

「若葉さん、うん、何だか足止めされている感じがして……」

 

「あの桔梗さんの姿が見えないんですけど……」

 

樹がそう言った瞬間、僕はあたりを見渡すと確かに桔梗さんと牡丹の姿が見えない。まさかと思うけど……

 

「あいつらが来たって言うことかしら?」

 

千景さんが敵を切り裂きながらそう告げた。あいつらって、まさかと思うけど僕らのバーテックスって言うことか?だとしたら今回巫女を狙うように指示を出したのも……

 

「それじゃ何か、私達の動きを止めて桔梗たちを倒すっていうことか?」

 

「それってまずいですよ。珠子さん、ここは一気に……」

 

「銀!待ちなさい!!」

 

須美が止めようとした瞬間、僕らの所に大型のバーテックスが現れた。足止めにしちゃ力入りすぎだろ。仕方ない。ここは切り札を発動させて……

 

「はい、ちょっと待って。海くん」

 

切り札を発動させようとした瞬間、四葉さんが止めに入った。四葉さんは手にした勾玉の形を変え、両手に装備させた。

 

「焦りは禁物よ。見た感じ貴方は特殊な感じだけど、それを知った上で大型を出してきたんじゃないかな?」

 

敵の攻撃を避けながら四葉さんは大きく跳び上がり、大型の頭目掛け拳を振りかざし、強力な一撃を喰らわし、撃破していた。この人、どんだけ強いんだよ。

 

「切り札は何回も使えるものじゃないんだから、もうひとりの特殊な人間が頑張るしかないわね」

 

勾玉を鞭に変え、回りにいるバーテックスを倒していく。そういえば四葉さん、何者なんだ?300年前の人間だとか名前くらいしか明かしてないけど……

 

「海くん!?危ない!?」

 

友奈さんの声が聞こえ、僕は咄嗟に後ろへ下がると、さっきまで僕がいた場所に誰かが降ってきた。手にしているのは先輩の大剣だけど、こいつは……

 

「久しぶりだな。僕」

 

「お前か……」

 

「こいつが海のバーテックスか」

 

「本当にうり二つね。でもこの場にいる全員で戦えば……」

 

「夏凛さん!?後ろ!!」

 

樹の声に反応して、夏凛が頭を下げた。夏凛の後ろにいたのは千景さんのバーテックスだった。まさかと思うけど……

 

「本当に厄介だな………」

 

目の前にいる僕らのバーテックスは笑みを浮かべていた。邪魔をするなって言うことだよね。それに多分だけどこいつら前に戦ったときよりも強くなってる気がするし……

 

「なるほどね。別世界だとこういうバーテックスが出現するんだね……」

 

どう戦うべきか悩んでいると四葉さんが前に出てきた。まさかと思うけど一人で戦う気か?

 

「勇者の姿を模したバーテックス。確かに厄介だけど……あなた達は気がついてるの?私が何者かって……」

 

「あぁ、気がついてるさ」

 

「境界の勇者、女神の勇者とは違って、貴方はかなり特殊……造反神と同じ力を感じる」

 

同じ力を感じるって……まさかと思うけど四葉さんは神様だっていうのか?

 

「この二人は私が相手するから、海くんは桔梗くんのところに行ってあげて」

 

「分かりました」

 

この場を皆に任せ、僕は急いで桔梗さんの所へと走った。だけどそれは僕一人だけじゃなく、友海も一緒だった。

 

「友海?」

 

「牡丹のことが心配だから……パパの邪魔はしないよ」

 

「邪魔だって思ったことは一度もないんだけど……」

 

「そっか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

怒りに任せてキキョウに攻撃を繰り返すが、全部奴に防がれてしまう。海の言うとおりこいつ、強くなっている

 

「ほら、どうした!!俺を倒すんじゃないのか!」

 

キキョウの一撃で槍を弾き落とされた僕は、距離を起き体制を整えた。でも距離を取りすぎると牡丹が………

 

「お前の娘が気になるか……そうだよな。世界は違ってもお前の娘には変わりないんだから」

 

キキョウは倒れた牡丹に更に蹴りを喰らわした。本気でこいつをどうにかしないと……

 

「お、お父様………」

 

牡丹は弱々しく手を伸ばしていた。このままだと……

 

「気になって戦いにならないな。折角だ。このまま殺してやる」

 

キキョウが大鎌を振り上げた瞬間、僕は止めに入ろうとしたけど、このままだと間に合わない……

 

そう思った瞬間、大鎌が緑色のワイヤーに縛り付けられた。これって……

 

「ママ直伝!勇者パンチ!!」

 

鋭い一撃がキキョウに当たり、吹き飛ばした。そして倒れた牡丹の側には海と友海の二人が駆けつけていた。

 

「お待たせ、桔梗さん」

 

「海………」

 

「よくも牡丹をいじめて……許さない!!」

 

友海が怒りの篭った声でそう告げた。この子、こんな風に怒ることがあるんだ……ちょっと吃驚だな。

キキョウは殴られた場所を押さえながら、立ち上がり笑みを浮かべていた。

 

「分が悪いな。悪いけど目的は達成したし、逃げさせてもらうよ」

 

キキョウがそう告げた瞬間、樹海が解け始めた。目的って何なんだ?それを聞こうと思ったけど、一瞬の内に現実の世界に戻ってしまった。

 

「……なぁ海。あいつが言っていたことは本当か?」

 

「何を言われたんですか?」

 

「牡丹が僕の娘だって………」

 

「…………えぇそうらしいですよ。僕もこっちに来たばかりの友海に聞かされて初めて知りましたけど」

 

本当に娘だったんだ。僕はそっと倒れた牡丹のそばに寄り、

 

「大丈夫か。牡丹」

 

「……うん、お父様」

 

牡丹は僕に心配かけまいと微笑んでいたけど、僕はそんな牡丹をギュッと抱きしめた。

 

すると遠くの方からみんなが駆け寄ってくるのが見えてくるのであった。それにしてもキキョウの目的って………何なんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かはっ、あの一撃………避けるべきだったな」

 

「その痛みはあの子の攻撃を喰らった痛みかしら?」

 

「チカゲ……どういう意味だ」

 

「僕らが出張った理由、改めて話した方が良いかな?」

 

「………ふん、余計な事を……お前の方は良かったのか?」

 

「僕はいいさ。その内に……な」

 

 

 

 




次回で夏祭り編は終わりです


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22

海SIDE

 

皆が夏祭りを楽しむ中、僕は友海と一緒に出店を歩いていた。

 

「パパ、こうして一緒にお祭りまわってくれてありがとう」

 

「友海、お前、僕が知っている友海より歳上なんだよな」

 

「うん、そうだよ」

 

それにしては、こう年相応に反抗期とかないものか……というかいつかは言われるんだろうな……パパの洗濯物と一緒に洗わないでとか……

 

「ハァ……」

 

「パパ、どうしたの?」

 

「いや、そういえば今のお前って何歳なんだ?」

 

「14歳だよ~」

 

14歳ってことは、僕が知っている友海の二年後……二年でこんなに成長するんだな

 

「ん?何だ海と友海は二人で回ってるのか」

 

「流石は親子ですね」

 

後ろを振り向くと若葉さんとひなたお姉ちゃんと出くわした。この二人も世界が違うのに、仲がいいな……

 

「未来のパパって結構忙しいから、こうやって一緒にいてくれることって少なかったから……今はすごく嬉しんだよ」

 

「そうか……」

 

「海くん、子供のことはしっかり面倒を見ないとね」

 

「はい……所でちょっと気になってるんですけど、何で杏さんとWそのっちは頭を抑えてるんですか?」

 

若葉さんとひなたお姉ちゃんの後ろで何故か頭を抑えているそのっち二人と杏さん。何かやらかしたのか?

 

「ちょっと、この二人はな」

 

「まぁ若葉ちゃん、いい加減赦してあげましょう」

 

「だけどひなた……ん?あそこにいるのは……」

 

若葉さんは僕らの前を歩く桔梗さんと牡丹の二人を見つけた。二人も親子水入らずで楽しんでるのか?

 

「仲いいね~そのっち」

 

「そうだね~でも何だか固いね~」

 

「「それじゃ様子を見に……」」

 

いや、二人共怒られたばっかりじゃないのか?それにしても本当に固いな……

 

「牡丹って甘えたりしないから……」

 

「とりあえず様子を見ようか」

 

「こら、海、お前まで……」

 

「まぁまぁ若葉ちゃん、いいじゃないですか。私も二人のことが気になりますから」

 

僕らは二人の後を……様子を見ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

牡丹についてきてほしいところがあると言われて、僕は人気のない場所に着ていた。

それにしても何が始まるんだ?

 

「あ、あの、桔梗……さん」

 

「別に二人っきりの時はお前の言いやすい呼び方でいいぞ」

 

「で、でも……」

 

何というか美森の血を濃く引いているのか、固いな……いやなんというか須美の方だな

 

「それで話って何だ?」

 

「え、えっと、その……お願いしたいことがあって……桔梗さんは絵が上手って聞いて……」

 

誰から聞いたんだろうか?というか海の世界の僕は絵は描かないのか?いや仕方ないよな。僕の場合は腕のリハビリで絵を書き始めたんだし……

 

「私のお父様も絵が上手なんです。暇な時にいつも描いてくれるんですけど……出来たら桔梗さんにも描いてほしいなと思って……」

 

「何ていうか……お前……いや言わなくていいか。いいぞ」

 

僕はスケッチブックを取り出した。すると何故か牡丹はキョトンとした顔をしていた。

 

「えっと、いいんですか?」

 

「あぁ、」

 

「えっと……ありがとうございます」

 

書き始めて、しばらくしてようやく完成し、僕は牡丹に絵を見せた。

 

「えっと……これが私ですか?その……私こんなに綺麗じゃないですよ」

 

「そうか、僕は見たまましかかけないんだけど……」

 

そう言った瞬間、牡丹は思いっきり顔を真赤にさせていた。一体どうしたんだろう?

 

「素敵な絵を書いてくれてありがとうございます……あのこの絵……大切にします」

 

溢れんばかりの笑顔で僕が描いた絵を大事そうに握りしめるのであった。それに素敵な絵をかいてくれてありがとう……か。それにこの笑顔……本当に似ているな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

「何だか影で見ているのが申し訳ないな」

 

「というか若葉さんまで一緒に来る必要はなかったんですよ」

 

「いや、だけどな……」

 

「まぁまぁあの二人は放って、私達も祭りを楽しみましょう」

 

「たんちゃん幸せそうだね~」

 

「ご先祖様~私達も何か楽しませて~」

 

「乃木……お前らな……」

 

「ふふふ、それじゃ皆で祭りを楽しみましょうか」

 

僕らは皆で祭りを回ることになった。たまにはこういうのも悪くないよな……

 



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23

今回はオリストになります


海SIDE

 

「はぁ」

 

ちょっと早めに部室に来ると何故か灯華さんがため息を付いていた。そういえばこの人って勇者じゃないんだっけ?そして巫女でもないし……何でこっちに呼ばれたんだ?

 

「あの……」

 

「あっ、はい。あっ、上里くん」

 

「海でいいですよ」

 

「それじゃ海くん。どうかしたの?」

 

「いや、灯華さんこそ、ため息なんて付いてどうしたんですか?」

 

「えっと……何というか……私、ここに呼ばれた理由が分からなくって……」

 

呼ばれた理由か……確かにどうしてなんだろうか?何かしらの理由があるとは思っているけど……

 

「えっと灯華さんは……」

 

「海くん、無理しなくていいよ。私もわかってるから、自分が勇者じゃないのに何でここにいるんだろうって……」

 

勇者じゃないからか……僕もそこら辺悩んだ覚えがあるな……どうして自分は勇者じゃないんだって…

 

「あの、桔梗さんから聞いたんだけど、変わった方法で勇者になれたって……」

 

「あれは勇者なんかじゃないよ」

 

灯華さんはポケットからひび割れた端末を取り出して見せた。

 

「それは?」

 

「これは私達の世界の友奈ちゃんに壊されたもの……これには勇者に対を成すシステムがあったの」

 

勇者にに対を成すシステム?そんなものまで作られていたのか……そこら辺も世界の違いってやつかな?

 

「勇者システムはバーテックスを倒すためのもの。私のこれはバーテックスと勇者を倒すシステム……大赦は魔王システムと呼んでいるの」

 

魔王システム……勇者を倒すために作られたものか……よくそんなものを作れるな。というかこれを作った人は悪意を持っていたのか?

 

「このシステムで私は大切な友達を傷つけたりした。もう処分しようとも思っていたんだけど……いつまでも持ったままなの」

 

灯華さんが処分できないのはちょっと分かった。もしかしたらいつかきっとこの魔王システムが起動した時、今度はみんなと一緒に戦いたいって思っているからだ。

そう言うべきなのだろうけど、今は言わない方が良いかもしれないな。

 

「あの、灯華さん、それは処分しないほうがいいですよ。もしかしたら奇跡とか起きるかもしれないから……」

 

「奇跡?」

 

「はい」

 

我ながら変なことを言うな……でもそう言うべきだと思ったから仕方ないよな。

 

「ふふ、そうだね。いつか奇跡が起きるかもしれないね」

 

灯華さんは笑顔でそう言うと、部室に四葉さんとひなたお姉ちゃんが入ってきた。

 

「あら、珍しい組み合わせね」

 

「二人で何を話していたの?」

 

「あぁ、実は……」

 

僕は灯華さんの持っている端末について話すとひなたお姉ちゃんは少し残念そうな顔をしていた。

 

「魔王システム……何というかそういうものが作られているなんて私としては少し悲しいわね」

 

「あ、ごめんなさい」

 

「灯華さんが謝る必要はないわ。きっとそれを作った人は勇者に対して明確な敵を作りたいとか考えて、そういう名前をつけたんでしょうね」

 

「そんな事をよく考えられること……というか魔王システムを使わずに一度だけ変身したって聞いたけど、その時はどうしたの?」

 

「あ、あれは……桜を助けようとしたら……後々になって天の神様が力を貸してくれたって言ってましたけど……」

 

何というか天の神は優しいのかな?それとも何かしら考えがあったのか?

 

「そう、まぁ海くんが言ったようにいつか必要になるかもしれないから、持っていた方がいいですよ。それに灯華さん、戦えなくってもできる事はありますよ」

 

ひなたお姉ちゃんはそう言いながら、灯華さんの手を握った。

 

「それは皆におかえりっていうことですよ。若葉ちゃんが言ってました。帰りを待っていてくれる人がいるから私たちは頑張れるって……」

 

「皆におかえりって……」

 

「それに急がなくっても、何かしら出来ることは見つかるからさ。無理はしないほうがいいよ」

 

「はい」

 

灯華さんの悩みは何とか解決したのかな?それにしても魔王システムか……どんなものか一度見てみたいものだな

 

「そういえば四葉さんはひなたお姉ちゃんと一緒に来てたみたいですけど、偶々ですか?」

 

「いいえ、違うわよ。ちょっと聞きたいことがあったの。彼らのことをね」

 

「彼ら?」

 

「君たちの姿をしたバーテックスよ。彼らは君たちのあったかもしれない未来から来たって言うけど……どんな未来だったのかなって?」

 

僕らのバーテックス……本当に奴らはどんな未来から来たんだろうな……




何だかグダグダですみません。次回は温泉イベントになります。

あと今回の話は勇者の章にちょっと関わってきます。


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24

今回は温泉回となります


桔梗SIDE

 

今日はみんなで温泉旅館に来ていた。その話を聞いたときはてっきり勇者部の依頼かと思ったけど、話を聞く限り、度重なる戦いや勇者部の活動で疲れた身体を癒そうとのことだった。

 

「それにしても、よくこんな旅館見つけましたね。先輩」

 

「私が見つけたわけじゃないわよ。大赦が用意してくれたのよ」

 

「お姉ちゃん、何度も大赦に連絡して頼み込んでましたから」

 

何というか大赦も変に拒否していたら、ストでも起こされるだろうと思ったんだろうな……

 

「あの、お父様。本当に旅行とかいいのでしょうか?」

 

「牡丹、休める時に休まないと大変だから……」

 

「そうですね……」

 

それなりだけど牡丹と仲良くなれてよかったかもしれない。まぁずっとギクシャクしているよりかはマシだけど……

 

「ん?何かしら?神宮くん」

 

僕が見つめているのに気がついた姫野。この人との関係もな……でも、あんまり似てないし……

 

「いや、知り合いと同じ名前で……」

 

「知り合い?お互い別世界の人間なんだから同じ名前の人がいるんじゃない?あんまり気にしない方が良いわよ」

 

姫野の言うとおりだけど……でもな……

 

「それよりあっちどうにかしたら?」

 

姫野が指差した方を見ると、何故か風先輩が怖がっていた。何でまた……

 

「あの、ただこの山に伝わる話をしただけなんですけど……」

 

「この山の紅葉は、昔とある恋人同士が心中した時に出た血で染め上げられたものっていう伝承が残ってるんだよ~」

 

「ロマンチックなお話なんですけどね……」

 

まぁ受け取り方次第ではロマンチックには聞こえるし、ホラーにも聞こえるな……というか本当の話なのかちょっと気になるけど……

 

「先輩、とりあえず今日はのんびりしましょう」

 

「そ、そうね。せっかく来たんだから怖がってたら駄目よね。よーし、温泉楽し……」

 

突然みんなの端末から樹海化警報が鳴り響いた。何でタイミング悪いんだ……仕方ない。がんばりますか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

襲ってきた敵は星屑のみだった。特に中型や大型、キキョウたちの姿はなかった所、大きな目的はないみたいだな。

 

「とはいえ、数が多いな」

 

僕は大鎌を振りながらそう言う中、姫野はポケットの中から手鏡を取り出した。

 

「面倒ね……杏ちゃん、東郷ちゃん、須美ちゃん。鏡に攻撃を当てて」

 

「えっ?どうして……」

 

「いいから、他の子達は下がっているように」

 

「よくわかりませんが……」

 

「やってみます」

 

三人が姫野の言うとおり鏡に攻撃を当てると、当たった攻撃を鏡が反射した。反射した攻撃は敵を貫き、更に現れた鏡に当たり、また反射した。三人の攻撃が反射を繰り返し、無限に続いていった。

 

「鏡の反射を利用した攻撃よ。ある程度の敵ならコレで殲滅できる」

 

鏡が消えると同時に周辺に集まっていた敵を殲滅し終わっていた。何というか本当にすごい攻撃だけど、姫野って何者なんだ?

 

「姫野のおかげでなんとかなったわね」

 

「あれ?夏凛ちゃんの姿なかったけど……」

 

友奈の言うとおり、夏凛の姿がなかった。確か敵が来る前にトレーニングに行くって言ってたけど、合流できなかったのかな?

 

「戻ったら探してみよう」

 

樹海化も消え、僕らは夏凛を探すことになった。旅館周辺には姿はなく、山の方を探すと夏凛が倒れているのを発見した。

 

「夏凛ちゃん!?どうしたの!?」

 

「結城ちゃん、待った。動かさないで……」

 

夏凛を抱き起こそうとした友奈を止める姫野。姫野はそっと夏凛の体に触れると……

 

「息はしている……特に命に別状はないけど……とりあえず頭を打った様子もないから、運びましょう」

 

「う、うん」

 

僕らは夏凛を一旦旅館に運ぶのであった。



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25

海SIDE

 

気を失った夏凛を旅館に一旦運び、救急車を呼ぶことになったのだけど……

 

「どうにもがけ崩れで救急車がここに来れないみたいなんです」

 

「ということは救助待ちということか……」

 

皆がそう言う中、僕はこの場に二人ほどいないことに気がついた。

 

「そういえば友海と珠子さんは?」

 

「そういえば珠子さん、夏凛さんを探す時に別れたきりだ……まさか……」

 

「そんな……たまっち先輩も……友海ちゃんも……」

 

急いで探しに行こうとするが、突然警報が鳴り響いた。こんな時にバーテックスかよ!?

 

「とりあえず今は敵に集中ね。もしかしたら合流できるかもしれないし……ひなたちゃんたちは彼女のこと頼んだわよ」

 

「はい」

 

僕らは急いで樹海へと向かうのであった。出来れば友海、無事でいてくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

どうしよう。夏凛さんを探していたら迷子になるし……おまけに敵も攻め込んできた。

こういう時ってあんまり動かないほうがいいけど……

 

「でも、皆心配してるよ。何とかして合流しないと……」

 

樹海化したんだから戦いの音が聞こえる方へと向かえば何とかいけるかもしれない。そう思いながら、先へと進もうとしたときだった。

 

「きゃ!?」

 

突然空から何かが私の目の前に落ちてきた。それはパパに見えるけどパパじゃなかった。

 

「……」

 

「貴方は……パパじゃないよね。パパのバーテックス?」

 

「……ユミか。こんな所で何をやっている」

 

バーテックスは私に触れようとしていた。私は咄嗟に身構えるとバーテックスは何故か悲しそうな顔をしていた。

 

「敵だからこその対応だな。それでいい」

 

バーテックスはそう言いながら、どこかへ行こうとしていた。私は何故か咄嗟にバーテックスの腕を掴んだ。

 

「……何だ?」

 

「えっと……バーテックスなんだよね」

 

「あぁ、そうだ。僕はあいつのバーテックス……いずれたどるはずの未来だ」

 

いずれたどるはずのってどういう事?よく分からないけど、このバーテックスはパパとしか思えなかった。

 

「教えて……貴方はパパなんだよね。なのに、どうして皆と戦うの?造反神に利用されてるから?」

 

「……違う」

 

違うって……何が違うのかわからない。だけどこのままじゃダメだ。私は腕を力強く握りしめた

 

「教えてよ。どうして貴方は……そんなに悲しそうにしているの?」

 

「………………それはな」

 

私はバーテックスの言葉を聞いて、耳を疑った。それって私が過去に行ってから起きた出来事の……でもそれって……

 

すると突然、首に何かの衝撃を受け、私の意識は消えるのであった。

 

「………いい加減決着を着けるべきだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

襲ってきたバーテックスを倒し、僕らは分かれて二人の捜索を行っていた。僕は姫野さんと一緒にあたりを探すと……木にもたれかかった友海を見つけた。

 

「友海!?」

 

「眠っているだけね。のんきなものね」

 

「………いやただ眠ってるんじゃない」

 

僕は友海のポケットの中に入っている一枚の紙を見つけて、書かれていた文字を読んだ。

 

『いい加減、決着をつけようか』

 

「………姫野さん、悪いんですけど……友海の事お願いします。それと皆にはこの事は……」

 

「………今の状況で嘘が通じると思ってるのかしら?」

 

「それでもこれだけは皆を巻き込みたくないんです」

 

「そう……」

 

僕は姫野さんに友海を預け、ウミが待つ場所へと向かうのであった。勝ち目があるかどうか分からないけど……ここに来る前に教えてもらった秘策がある

 

「待ってろ。ウミ!!」

 

 

 

 

 

 

 

姫野SIDE

 

何というかそんな役回りだ。危険を承知で彼を一人で行かせるなんて……

 

「あの子がひなたちゃんの子孫………思った以上に暴走しやすい子ね」

 

とりあえず頼まれた以上は彼女の安全を確保しないと……

そう思い、彼女を背負おうとすると彼女が突然目を覚ました。

 

「ここは………あの人は!?」

 

「あら、起きたの?何があったか覚えてるみたいだけど……」

 

「姫野お姉ちゃん……パパは?」

 

「海なら自身のバーテックスと戦いに……」

 

「だ、ダメ……急いで止めて……パパは……あの人は……」

 

私は彼女の言葉を聞き、驚きを隠せないでいた。まさか彼らのバーテックスはそのために……

 

「急がないとね。動ける?」

 

「うん」

 

「止めに行くわよ。一応皆には事情を話しておくわ」

 

私はひなたちゃんにある方法で連絡をするのであった。それにしても彼らがいた世界は……それと同時に千景ちゃんのバーテックスがいた世界って……

 

「私がいない世界か……守り神失格ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は指定された場所へと来るとそこにはウミが待っていた。

 

「来たか」

 

「待たせたな」

 

ウミは僕を見て、笑みを浮かべていた。笑っている状況なのか?今の僕は……

 

「ユミの事で頭いっぱいだな。娘を傷つけられて怒ってるな」

 

「当たり前だろ!!それと……」

 

僕は一瞬でウミとの距離を詰め、海の首筋に生太刀の切っ先を当てた。

 

「気安く友海の名前を呼ぶな!!」

 

「あの時より成長はしているな」

 

ウミは切っ先を掴むと僕ごと持ち上げ、地面に叩きつけた。パワーも以前より上がっているというのか?

 

「決着を着けるために僕はまず、自分の呼び方を俺から僕に変えた」

 

何とか起き上がろうとした瞬間、横から蹴りが近づいてくるのに気が付き、咄嗟に防御するが思いっきり蹴り飛ばされた。

 

「この世界に来て、お前は切り札も満開も上手く使えないみたいだな。だけど僕は……」

 

ウミの身体が黒く輝くと白い衣装に身を包んだ姿に変わった。あれって……僕の切り札使用時の……

 

「切り札発動!!白月!!」

 

白く輝く切っ先が僕に迫ってきた。僕は咄嗟に生太刀で防ぐが生太刀が折られ、僕の肩を貫いた。

 

「ぐうううううう!!」

 

「お前は僕に勝てない。なぜなら……切り札発動!!酒呑童子!!」

 

黒い光とともに友奈さんの切り札を身にまとい、巨大な鉄甲で僕の腹部を殴った。

 

「がはっ!?かはっ!?」

 

ものすごい痛みが体中に走った。これがウミの本気……

 

「なぜならお前は……一人だからだ」

 

ウミは僕の首を掴み、離すと同時に思いっきり殴り、僕は壁に激突した。このままだと……意識が……

 

『いいか。ウミ、自分自身との戦いだったら……』

 

そんな時僕の頭にカズマさんの言葉が過ぎった。

 

 

 



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26

『一番いいのは、他の奴らに戦ってもらうとかじゃないのか』

 

これって走馬灯なのかな?少し前にカズマさんに教えてもらった必勝法が頭のなかに思い浮かんできた。

 

『それが一番なのだろうけど、何というかあいつとは僕自身が決着をつけないといけないから……』

 

『あ~お前ってめんどくさいやつだな。それじゃアレだ。よく漫画とかである戦いの中で成長すればいいんじゃないのか』

 

『戦いの中で………それもいいかもしれないですね』

 

『おい、間に………』

 

戦いの中でこいつより成長するか……そんな漫画みたいなこと起きるかどうか分からないけど、案外出来るかもしれないな。

 

僕は腹を抑えながら、立ち上がった。

 

「………そのキズでまだ戦うのか?」

 

「当たり前だ!!」

 

僕は白月を取り出し、ウミに切りかかった。ウミは鉄甲で斬撃を防ごうとした瞬間、斬撃の方向を咄嗟に変え、ウミの腹部を切った。

 

「………フェイントか」

 

ウミは自分のキズに触れ、嬉しそうにしていた。何だ?切られたっていうのに……

 

「まだ僕を倒せるまでは行かないな!!」

 

ウミが放ってきた拳の連打を僕は白月で受けきっていく、威力は強いけど何でか受けきれる。これって、本当に戦いの中で成長とか?まさかな……

 

「ふふ」

 

「何がおかしい?」

 

ウミは笑みを浮かべている。一体どうしたんだ?さっきから様子がおかしい気がするし……

 

「大きなダメージを受けながら、諦めずに立ち上がり、戦い方も変えてきた………それでいい」

 

「………なんとなくだけどお前、まさか」

 

「だが次はどうする?」

 

ウミは大きく拳を構えた。一撃で決めるつもりなのか?こいつがやろうとしていることがだんだん分かってきた。それなら答えてやらないとな。

 

「こっちで白月しか上手く使えなかったけど、今の状態なら……切り札発動『大天狗』」

 

黒い翼に白く長い太刀、これが若葉さんの最強の切り札……結構身体への負担が大きいな。だからこそ、一撃で決めないとな

 

「くたばれ!!海!!」

 

「これで終わらせる!!」

 

僕らは同時に駆け出し、ほぼ同時に攻撃を仕掛けようとしたが、傷の痛みのせいで一瞬出遅れてしまった。

 

「パパぁぁぁぁぁぁーーーー!!」

 

やられそうになった瞬間、友海の声が聞こえ、ウミがそれに気を取られていた。

 

「ハアアアアアアアアアアア!!」

 

その隙を突き、ウミの身体を切りつけ、ウミはそのまま地面に倒れ込んだ。

 

「はぁ、はぁ、悪い……隙をついたりして……」

 

「いや、これでいい」

 

ウミの身体が見る見るうちに崩れていく。こいつの目的ってもしかして……

 

「パパ、大丈夫?」

 

「怪我ひどいみたいね。ちょっと失礼」

 

友海を連れてきた姫野さんがポケットから剣型のアクセサリーを取り出し、僕の身体に刺した瞬間、体中のキズが一瞬の内に治ってしまった。

 

「これって……」

 

「まぁ神様の力ってやつよ。それでそこのバーテックス、貴方のキズは……」

 

「いや、治さなくていい。僕はこのまま消えるさ」

 

「ウミ、お前は僕がいた世界とは違う世界から来たんだよな」

 

「あぁ」

 

「パパ、あのね。このパパは……」

 

友海が何かを言いかけるが、僕はそれを止めた。僕もこいつの目的に気がついている。

 

「自分が守れなかった未来を、僕に託すってことか?」

 

「………そうだ。僕はお前がいずれたどる未来………大切な人を……大切な子を守れず、死んだんだ………」

 

「………そのために僕を鍛えるようにしていたのか?」

 

「あぁ、キキョウやチカゲもな。いずれたどるかもしれない未来から逃れられるように心と身体を鍛えるように……造反神もそれをわかった上で僕らを作り上げたし、この世界の神樹もだ」

 

これからさきの未来を回避するために……一体どんな未来が起きるっていうんだ?

 

「教えてくれ。これから先のことを……」

 

「………悪いが言えないな。だが……いずれお前は……………」

 

ウミは何か言いかけるが、そのまま消滅してしまった。僕らのバーテックスの目的がわかったけど、いずれたどり着く未来って……

 




海のたどる未来は、この素晴らしい勇者に祝福をのあの戦いです。

次回で温泉編は終わります


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27

今回で温泉編終了です。


ウミとの戦いは終わったあと、駆けつけてきた若葉さんたちに色々と事情を話すと、若葉さん達もどうやら小さな結界を発見し、バーテックスを倒したらしい。

夏凛も特に問題なく目が覚め、僕らはゆっくりと温泉に浸かることになったのだった。

 

「それにしてもあいつらの目的がな……」

 

「いずれ来る未来に向けてか……それがどんな未来なのかわからないけど……」

 

一体この先何が起きるのかわからないけど、それでもウミの気持ちに答えないとな。

 

「そういえばキズの方は大丈夫なのか?戦った割には無傷みたいだし」

 

「それが姫野さんの剣で治ったんです。あの人……何者なんですか?」

 

「さぁな。ただ言えることは墨の世界では僕の保護者だっていうことだな」

 

「保護者……」

 

桔梗さんの家庭については一応聞いている。身内がいないけど姫野さんが保護者役だなんて……

 

「後々教えてもらうしかないな」

 

「そうですね」

 

そんな話をしながらゆっくりと温泉に浸かっていると、隣の方から声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

姫野SIDE

 

「何というか勇者全員で温泉なんて……これは同じ女性として目のやり場に困るわね」

 

成長はみんなそれぞれだけど明らかに年齢的にあってないようなきがするよ。特に鷲尾ちゃん、東郷ちゃん、牡丹ちゃん、ひなたちゃん、杏ちゃんは

 

「姫野さんもわかりますか。勇者部のこの巨乳率を」

 

「まぁタマと銀はこの山脈を登ったけどな」

 

「登りたくなる気持ちはわかるけど……」

 

何だか同じ女性として自信がなくなるよ。というか下手すれば私、もう成長しないんだよ。何、この可哀想なことって……

 

「な、なぁ、姫野。そんな風に落ち込むなって」

 

「まぁ姫野が落ち込むのも無理はないってさ。所でさ、姫野っちって何者なの?」

 

雪花ちゃんがいきなりそんなことを聞いてきた。もしかして気づいてる?

 

「な、何者って?」

 

「いやーなんとなく人間離れしてるし……」

 

「確かに巫女である私から見ても貴方から感じるものは神樹様に似ている気が……」

 

ひなたちゃんにまで感じ取られているか……誤魔化せそうだけど、いい加減話さないと……

 

「私のことは後で話すわ。出来ればこの旅行が終わってからね。今はゆっくりと楽しみたいもの」

 

私のことを、ここにいる目的を……

 

ただ今は……

 

「所で温泉の定番といえばさ」

 

「恋バナ?それだったら私に任せなさい」

 

「風ちゃん、それも定番だけど一番の定番覗きよね~」

 

私の言葉を聞いた瞬間、全員が思いっきり隣の男風呂の方を見た。いやあの子達はそんなことするようには思えないけど……

 

「もう姫野さん、桔梗くんがそんなことするわけないじゃないですか」

 

「そうだよ。海くんは………」

 

「あら、誰も彼らが覗くと言ってないわ。覗きが男の特権だなんて思わないほうが良いわ。というわけで、男子二人、ちょっと覗いていいかしら」

 

「「覗くな!!」」

 

思いっきり断られた。ちょっと残念だな。まぁこういう空気は悪くないな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼は役割を全うしたのね」

 

「あぁ、自分のな」

 

「どうする?私達も早めるべき?」

 

「いや、俺らよりも彼女たちが先に……」

 

「………私たちの役割」

 

「そのためだけに呼ばれた」

 

「お前たちの役割はわかっているな。ヒメノ、トモカ」




短めですみません。次回は四葉と灯華メイン回になります


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28

前回の後書きで、姫野と灯華メイン回やる予定でしたが、とあるイベントの話を書きたくなったのでそちらの方からになります。時系列的には前回よりちょっと先のお話になります


海SIDE

 

「注目~2月といえば~」

 

部室でまったりとしていた僕らだったけど、突然そのっちが何かを始めようとしていた。

 

「2月……節分だな」

 

「ご先祖様、違うよ~」

 

「そうね、2月といえばアレよね」

 

風先輩もそのっちが何を言いたいのかわかっているみたいだな。まぁ僕もなんとなく想像がついている

 

「分かった。針供養だな」

 

なんで針供養なんだよ。若葉さんって意外と抜けている

 

「若葉、あんたね……バレンタインよ。乙女の祭典よ!!」

 

「若葉ちゃん、毎年あげてるのに」

 

「すまない。もらってばかりだから思いつかなかったんだ」

 

「まぁ若葉って後輩女子とかからいっぱいもらってそうよね」

 

雪花さんの言うとおり、若葉さんって男性より女性……特に年下の子に人気とかありそうだな。

それにしてもバレンタインか……

 

「折角のバレンタインだからみんなでチョコを渡そう~」

 

そのっち(小)がそう言うけど、そのみんなって僕と桔梗さんも入ってるのか?いや女性が男性にチョコを渡すのは日本独自の風習だから、別に気にしなくていいけど……

 

「因みにチョコをあげるのは二人~一人はお世話になってる人に、もう一人は本命にあげてもいいんだよ~」

 

「あと一つは誰にも上げたことのない人限定で」

 

なるほど勇者たちの絆を深める感じなイベントとしてはいいかも………いや、これ碌でもない企画だよな。特に本命の人が誰にあげるのかが物凄く気になることじゃ……

 

「面白いイベントね~因みに園子ちゃん、二人限定なの?」

 

「そうだよ~ひめちゃん」

 

「そっか~」

 

姫野さんは何だか残念そうにしているけど、どうしたんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、僕と桔梗さんは部屋であることを話していた。それは誰にチョコを上げるかではなく、

 

「こういうのはやっぱり手作りとかのほうが良いのか?」

 

「どうでしょう?売っているものでもいいんじゃないんですか?そのっちは特に指定はしてないし……」

 

「でもこういったイベント何だし、手作りの方が良いんじゃないかって思うけど……」

 

「桔梗さんは誰に……いや、決まってますよね。東郷と須美の二人ですか?」

 

「一応あの二人同一人物だからな……まぁそこら辺は秘密だ。お前は?」

 

僕は……もう決まってる。上げたほうが良いよな……だったら手作りのほうが良いよな。でも……

 

「桔梗さん、チョコ作りの経験は?」

 

「ないな。作る機会はなかったし……」

 

う~ん、僕も作る機会なかったな。誰かに教わったほうが良いかもしれないけど……そういうの詳しそうなのって……

 

「一人、得意そうな人がいますね」

 

「誰だ?」

 

「友奈さんです」

 

「高奈か……料理できるのか?」

 

桔梗さんは知らないけど、僕がいた世界では結構お菓子作りをやっていたりして、たまに僕らの所に持ってきてくれている。先輩的にいうなら女子力が意外と高い。

僕は早速連絡を取ってみるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈さんに連絡を取るとOKをもらえ、僕らは友奈さんの部屋を訪れるとそこには千景さんも来ていた。

 

「千景さんも教わりに来たんですか?」

 

「違うわ。偶々遊びに来ていただけよ」

 

「高奈、悪いな。急に頼み込んで」

 

「ううん、大丈夫だよ。でも私そこまで得意ってわけじゃないんだけど、お菓子作りの方見ながらでもいいかな?」

 

「それでも十分ですよ。助かります」

 

「えへへ~何だか海くんに頼りにされて嬉しいから頑張るよ」

 

僕らは友奈さんにチョコ作りを教わるのであった。とはいえ千景さんの目線が少し痛かったけど……

 

 

 




次回もバレンタインイベントになります。因みにネタバレ的な事を言うと桔梗、海の二人は本命には渡しません


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29

バレンタインイベントその2。オリキャラ陣が誰に渡すかがメインです。

今回のメインは……


園子ちゃんの企画で、チョコを二人あげないといけないのか……何というか普通だったら好きな人に上げなきゃいけないのだろうけど、私なんて思春期真っ最中に神様になったから恋愛やら何やできずに終わったんだよな~

 

「その点、千景ちゃんが羨ましい!!」

 

悲しい結末にさせないために、神宮さんも千景ちゃんも犠牲にならないように、私が力を貸した。でも後々話を聞くと場所を選ばずにいちゃついていたとかって……

正直桔梗がそこら辺気をつけてほしいな。

 

「あ、あの、姫野さん、どうかしたんですか?さっきから考え込んでは大声で叫んで……」

 

「ふっ、少しね……灯華ちゃんは誰にチョコを渡すか決めたの?もしかして好きな人にとか?」

 

「いえ、好きな人はいないですよ。ただ……」

 

灯華ちゃんは私にチョコを渡してきた。これはどういうことだ?そんなに会って間もないのに、なんでこの子は私に渡すのかしら?

 

「相手間違えてるわよ」

 

「いえ、こっちに来てから姫野さんには沢山お世話になってるんで、それにあの時私の役目を改めて教えてくれたじゃないですか。その御礼です」

 

あの時のことか……あれはただ本当に思ったことを言っただけなのに……何というかいい子だな……

 

「ありがとう。灯華ちゃん。私も渡さないとな~」

 

二人で裏庭でそんなことを話しているとこっちに美森ちゃんが駆け寄ってきた。

 

「姫野さん、灯華ちゃん」

 

「どうかしたの?東郷さん」

 

「慌ててるけど」

 

「えっと、色々と事情があって……できれば部室に戻って欲しいんですけど」

 

何かしらあったのだろうな……多分だけど園子ちゃんあたりやらかしたのだろうな。

 

「部室に戻るって、風先輩たちも戻ってますか?」

 

「え、えぇ」

 

もしかして灯華ちゃんがチョコを渡すもう一人って風ちゃんかな?それだったら私も丁度いいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室に戻ると何故かW園子ちゃんが正座をさせられていた。うん、やっぱり何かしらやらかしたのだろうな。まぁ助けるべきなのだろうけど今はやめておこう

 

「若葉ちゃん」

 

「ん?どうしたんだ?姫野」

 

私は目的の人物である若葉ちゃんにチョコを渡した。若葉ちゃんは私からもらうのが意外だったのか驚いた顔をしていた。

 

「ひ、姫野……お前からもらえるとは……」

 

「別世界だけど色々とお世話になってるからね。まぁ若葉ちゃんだけお世話になってるわけじゃないから、みんなで食べられるようにね」

 

私が買ってきたのは沢山のチョコが入っているものだった。みんなで分けるようにって言えば園子ちゃんが決めたルールを破ったことにはならない

 

「姫野さんは優しいですね」

 

「ねぇ、うたのん。一瞬だけどひなたさんから何か感じ取ったんだけど」

 

「奇遇だねみーちゃん。私もだよ」

 

「ねぇ姫野。そのみんなって私達も入ってるのかしら?」

 

風ちゃんがちょっと不満そうにしているけど、でも特に問題はない。だって……

 

「はい、風ちゃん。これもみんなで分けてね」

 

「あ、あんた……よくやるわね」

 

「こっちに来てからみんなには救けられてるからね。それに……もしかしたら」

 

私はあることを言おうとしたけど、やめるのであった。きっと彼女たちなら私が思いを託したあの子のことを支えてくれるはずだから……

 

「もしかしたら……どうしたのよ」

 

「う~ん、秘密かな」

 

「秘密ね~まぁ話したくなったら話しなさい」

 

「あ、あの、風さん。これ……お世話になっているお礼です」

 

灯華ちゃんも私と同じように風ちゃんにチョコを渡した。まぁチョコを渡したみんなってほとんどの場合感謝の気持ちだったりするわよね。

 

「そういえばあの子達は誰に渡すのかしら?ちょっと気になるな~」

 

「あの子達って、姫ちゃん先輩、あの人たちのことですよね~」

 

「うんうん、気になるよね~一緒に覗きに行こうよ~」

 

「お前たちは……いい加減懲りたらどうなんだ」

 

覗きに行く気はないけど、気になるのは本当だな……



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30

今回でバレンタインイベントは終了です


桔梗SIDE

 

「あのお父様、良かったらどうぞ」

 

「ん、ありがとう」

 

図書室で牡丹からチョコを貰っていた僕。何というかこういうとき牡丹と友海は羨ましいな。ちゃんと上げる相手が決まってるし。

ん?でも一つは僕でもう一つは誰にも上げたことのない人なんだっけ?誰に上げたんだ?

 

「なぁ、牡丹。チョコはもう一つ誰に上げたんだ?」

 

「もう一つですか?友海ですよ」

 

「それ園子が出したルールに反しているような……」

 

「それは大丈夫です。ここにお父様と私がいる世界のお父様は別人ですから」

 

それってありなのか?確かに別世界だから良いのだろうけど、結局のところ同一人物だしな……

まぁそこら辺細かくは指定してないから大丈夫だろ。

 

「おっと、そうだった。牡丹。僕からも」

 

「あ、ありがとうございます」

 

チョコを上げただけなのに何で牡丹は顔を真っ赤にさせてるんだよ。歳が近いからそういうふうに思われてたりするのか

 

「あ、あの大切にしますね」

 

「いや食べろよ」

 

「見つけた」

 

二人でそんなやり取りをしていると美森が慌てて入ってきた。どうしたんだ?急に……

 

「桔梗くん、牡丹ちゃん。悪いんだけど急いで部室に戻って」

 

「あの何かあったんですか?もしかして敵の進行が……」

 

「いえ、そういうわけじゃないんだけど、戻れば分かるわ」

 

美森はそう言って直ぐ様何処かへ走り去るのであった。本当に何かあったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

部室に戻ると正座させられている園子二人。うん、すぐに何があったのか理解できた。

 

「あら、桔梗は牡丹ちゃんにあげたのかしら?」

 

「あぁ、あとほら」

 

僕は姫野にチョコレートを渡すと、姫野は驚いた顔をしていた。そんない僕がお前に上げるのが意外だったか?

 

「ど、どうしての。私はてっきり……」

 

「てっきり何だよ。本当は元の世界で渡すべきなんだけど、姫野、あんたは僕の……」

 

「うわ、何事?」

 

あることを言いかけようとした瞬間、海と友海の二人が部室に入ってきて、驚いた声に遮られた。なんというかタイミングが悪いな。

 

「牡丹~見てみて、パパから貰ったの~」

 

友海は嬉しそうにしながら海からもらったチョコを見せていた。こいつも僕と同じ考えだったのか。だとしたらもう一個は先輩に渡すのか?それとも元の世界で指導してもらっている若葉にでも渡すのか?

 

「あと、お姉ちゃん」

 

「何ですか?海くん」

 

「はいこれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

正直好きな人にチョコを上げるべきなのだろうけど、そういうのはちゃんとした機会に渡すべきだと思った。

だったら誰に渡すべきか悩んだ。悩んだ結果、娘である友海とあっちの世界でもこっちの世界でもいつも心配してくれているお姉ちゃんに渡すべきだと思った。

 

お姉ちゃんはと言うと思いっきり顔を真っ赤にさせていた。

 

「こ、これはどういう意味で……その……」

 

「まぁ日頃の感謝の気持ち……かな」

 

何だか僕も恥ずかしくなってきた。お姉ちゃんはもじもじしながらも優しい笑顔で……

 

「海くん。ありがとうね。出来たらその……ね。貴方の世界の私にも同じ思いさせてね」

 

「うん、分かったよ」

 

「これは~」

 

「予想できなかった展開だね~」

 

何だか横からの声が気になるけど、この二人は本当に反省しているのか?

 

 




桔梗は牡丹、姫野

海は友海、ひなた

と言う感じになりました。本来は東郷と友奈の二人に渡すべきなのだけど、あえてのこの二人でした。

次回は……時間を遡って姫野と灯華のオリストになります


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31

今回は姫野SIDEのお話になりますが、今回花結の章で新たに追加されたストーリーで出てきたあの人も登場です


姫野SIDE

 

私達がこの世界に来てからどれくらい経ったかわからないけど、私たちは今、愛媛奪還作戦を指導していた。

 

巫女の力を使っての移動手段『カガミブネ』と呼ばれる力で移動もかなり楽になった。というかカガミブネってもしかして私が四国から諏訪に移動したときに……いやまさかね

 

「どうかなさいました?四葉さん」

 

「ひなたちゃん。ううん、別に何も、ただいっぱい頑張らないとな~って」

 

「そうですね。所でこの間温泉に行った時に貴方、自分のことを話すと言っていましたが……いつになったら話すんですか?」

 

ひなたちゃんが物凄くいい笑顔でそう言うけど、ごめん、色々とありすぎて忘れてた。

 

「と、とりあえず落ち着いてからかな?なんて……」

 

「そうですか。ちゃんと話すまで待っていますからね」

 

これは急いで話さないとな~というかひなたちゃんは私が何者か気がついてそうだけど……

 

「四葉さん、買い出し行かないんですか?」

 

ひなたちゃんに睨まれる中、救いの女神である灯華ちゃんが部室にやってきた。そうだった、そうだった。次の戦いまで時間があるから今のうちに食材を買いに行かないかって誘われてたんだっけ。

 

「うん、今すぐ行くね。それじゃひなたちゃん」

 

「はい、行ってらっしゃい」

 

私と灯華ちゃんは一緒に街に買い出しに行くのであった。

 

「全く……本当に話してくれるのでしょうか……」

 

ため息を付いた瞬間、ある神託が下され、その内容を聞いて驚きを隠せないでいた。

 

「まさか……倒されたからって補充を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体何の話をしていたんですか?」

 

ある程度の買い出しを終え、学校に戻る帰り道、灯華ちゃんに私とひなたちゃんが何の話をしていたのか聞かれた。正直話して良いものか……いや話すと言ったんだから話さなきゃいけないけど、信じてもらえるかどうか……

 

「灯華ちゃんには先に話しておくかな。信じられるかどうか……」

 

私が言いかけた瞬間、世界が樹海に変わった。何というか空気を読めないわね。どんな時代でも……

 

「よ、四葉さん……」

 

「安心して、守るから」

 

勇者に変身して辺りを見渡すけど敵の姿がない。まだ攻めてこないっていうのかな?だけど気がついた瞬間、私達の後ろに一人の少女がいるのに気がついた。

 

「えっ……」

 

「ウミが倒されて、補充したみたいだけどまさか……」

 

「………」

 

そこには勇者の……いや彼女的には魔王の姿というべきか。変身した灯華ちゃんのバーテックスが立っていた。だけど特に武器を構えている様子もない。どういうことだ?

 

「あ、貴方は……私なの?」

 

「……そうだよ。辛く悲しい思い……後悔し続けてきた貴方が私……」

 

「その姿……魔王システムだよね。もしかしてみんなを殺しちゃった未来から来たの?」

 

「ううん、みんなに救ってもらったよ。だけど親友のあの子は……私が」

 

トモカの言葉を遮るように私は勾玉で彼女を縛り上げた。今度は精神的に追い詰めようとしてるっていうのかな?だとしたら……

 

「四葉さん、大丈夫です。心配しなくても……」

 

「そうそう、あんたは邪魔なんだよね~」

 

突然赤い影が現れ、首を捕まれたまま何処かへ連れてかれてしまうのであった。

 

 

 

灯華SIDE

 

突然何かに連れ攫われた四葉さん、今の声ってまさか……

 

「行かないと……」

 

「貴方が言っても無駄。戦う力がないのに」

 

トモカにそう言われ、私はうつむいた。確かに今の私には戦う力はない。だけど……

 

「確かに戦う力はないよ。どうして私がここに呼ばれたかわからない。でもそれでも私には出来ることがあるから……みんなの帰りを待つことだって、みんなの無事を祈ることだって……そしていまは!!」

 

私がそう叫んだ瞬間、私の前に黒い影現れ、トモカに何かを向けていた。そう今、出来ることは……

 

「助けを呼びに行くことだって出来るから……」

 

「ウミの次はトモカか……目的は同じなのか?」

 

助けに来てくれた桔梗くんは大鎌をトモカに向けると、トモカは満足そうな顔をしていた。

 

「流石は私だね。正直必要なかったかな。ねぇ私、貴方はもう魔王システムには支配されない。きっといつか……貴方が祈り続ければ……みんなを……」

 

トモカは光の粒になって消えていった。もしかして私の試練はこれで終わりって言うことなのかな?

 

「……灯華」

 

「何?桔梗くん」

 

「お前は強いよ。僕達よりもずっとな」

 

「えへへ、ありがとう」

 




灯華の試練的なものは終わりましたが、次回、姫野vs彼女の戦いになります


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32

今回は姫野VSあの新キャラの戦いになりつつ、衝撃な展開が……


謎の影に引っ張られ、そのまま投げ飛ばされた私。私は謎の影の姿を見た瞬間、驚きを隠せないでいた。

 

「あ、貴方は……」

 

赤い装束、褐色の肌、そして見覚えのある姿……どうして彼女たちに似ているの。

 

「友奈ちゃん?」

 

「あはっ、半分正解だよ。でも貴方が思っているのは私が彼女たちのバーテックスだと思ってるよね」

 

彼女は一瞬で私との距離を詰め、殴りかかってきた。私は勾玉で彼女の腕を縛り上げ、攻撃を止めるけど、なんで彼女はこんなにうり二つなの?

 

「私は赤嶺友奈。初めましてでいいよね。守り神ヒメノ様」

 

赤嶺……もしかして彼女は神世紀始めに起きたあの事件を解決に導いた彼女だって言うの。それに私のことを知っている。もしかして私がいた世界から……

 

「戦いの最中に考え事したら危ないよ!!」

 

彼女の声が聞こえた瞬間、右腕に強い衝撃を受け、そのまま倒れ込んでしまった。

油断していた。さっきのは蹴りみたいだけど、全然見えなかったし……厄介だな……

 

「ふぅ、神様相手に加減はしてくれないんだね」

 

「神様ね……未熟な神様に加減はしないよ」

 

私は鏡を取り出すと彼女は拳と蹴りの連撃を繰り出してきた。鏡で防いでるのに反射した攻撃を弾いていってる。ここまでなんて……

 

「やっぱり神様でも人間同士の戦いには慣れてないんだね」

 

「私は守り神だからね。人を襲うつもりはないわ」

 

「そう……じゃあ」

 

彼女から何かしらの気配を感じた。これはまずい。下手をすれば……

私は距離を取ろうとした瞬間、どこからともなく現れた鎖に縛られた。そして私を縛った鎖に見覚えがある。まさか……

 

「ナイスだよ」

 

彼女の拳が私の顔面寸前で止まった。よく見ると彼女の身体に何かが巻き付き止められている。

 

「急いできたけど、ギリギリだったな」

 

「大丈夫ですか?姫野さん」

 

「あっ、あれって……」

 

「3人目!?」

 

ギリギリの所で桔梗以外の勇者全員が駆けつけてきた。もしかして桔梗は灯華ちゃんの所に向かっているのなら安心だけど……

 

「何だ。もう来ちゃったんだ。でも良かった。会いたかった四人が来てくれて」

 

彼女は二人の友奈と棗ちゃん、そして何故か海くんのことを見つめていた。会いたかったって彼女たちに?何の目的で……

 

「気をつけなさい。こいつの笑顔、悪いこと企んでる顔だからね」

 

「雪花さん、よくわかりますね」

 

「色々とね」

 

「ひどいなー悪いことなんて企んでないよ。ただ……」

 

彼女はワイヤーの拘束をいつの間にか抜け出し、海くんにゆっくりと近づき…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故かキスをしていた。

 

その場にいた全員が固まりつつ、彼女は人を誂うような笑顔をしていた。

 

「キスしちゃった。どんな感じだった?海くん」

 

「な、ななな……」

 

突然のキスで戸惑う海くん。彼女はそんな彼を見て、笑みを浮かべながら彼の肩を掴み……

 

「短すぎてわからなかったかな?それじゃもう一回……」

 

「だ、だめぇぇぇぇぇぇーーーーー!!」

 

彼女がもう一度キスをしようとした瞬間、友海が飛び出し、彼女と海くんの間に割って入った。

 

「ダメ、ダメ、パパとキスして良いのはママだけなの!!」

 

「えー、何?邪魔するのー誰だか知らないけど、邪魔しないでほしいかな」

 

「邪魔するもん!!」

 

友海の鉄甲にまばゆい光が集まってきていた。あれってあの爆発する拳を出すつもりなの?こんなに人がいる場所で撃ったらまずいんじゃ……

 

「面倒だな~まぁ今日のところは彼女と神様の顔合わせの付き添いだったから目的は達成したから、帰るね。じゃあね、先輩、後輩、お姉さま、それに海くん」

 

彼女はそう言い残して姿を消すのであった。顔合わせって一体何のことなの?

 

「姫野、無事みたいだな」

 

「えぇ、何とかね。所で海くんは?」

 

「海は……固まってるな」

 

「男の子だからね……」

 

「なぁ、姫野、さっき言ってた神様って……」

 

どうやら聴き逃してくれなかったか。仕方ない。戻ったら説明しないとな。私のことについて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「付添なのに随分と派手にやったみたいだな」

 

「えへ、ついね。それでどうだった?貴方に憑いている神様に会った感想は?」

 

「あの人が守り神様……」

 

「……どうして彼女はこちら側に呼ばれたのかしら」

 

「それは簡単な話だよ。神様と彼女を鍛えるためにこういう形を取ったんだと思うよ」

 

「そう……」

 

「それにしてもまた会いたいな。海くんに……何せ異世界に来て初めて好きになった人だもん」

 

 

 




小悪魔系ってこんな感じなのかどうかよくわかりませんが、こんな展開になってすみません


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33

部室に戻り、私はみんなに自分のことを語ろうとしていたのだけど……

 

「なんでまだ海くん固まったままなの?」

 

「いきなり過ぎて思考停止してるんじゃないのか?」

 

「むぅ~あの人嫌い」

 

友海ちゃんは赤嶺友奈がやったことに対して怒っていた。まぁ仕方ないことなんだろうけど……

 

「とりあえず海くんには後で私の方で伝えておきます。姫野さん、お話の方を」

 

「うん、ハッキリ言うとね。私は人ではなく神様なの」

 

そう告げると何故か全員、意味がよくわかっていないみたいだった。ちゃんと説明したほうが良いかな?

 

「神様っていうのは……神樹様みたいに土着神が人の姿に変わったのが姫野さんって言うことでしょうか?」

 

「ひなたちゃん、私は神樹様とは別系統で、何というか……」

 

『女神。それと同じですね』

 

別の方向からひなたちゃんの声が聞こえ、振り向くとそこには小さなひなたちゃんがいた。彼女が海くんの世界のひなたちゃん……本当に同じ姿なんだ。

 

「そうだね。元々私の家はヒメノって言う女神。言うなれば守り神を祀っていたの。そして私はその守り神の力を扱うことが出来る」

 

「神の力を……」

 

「それはすごいな。それじゃバーテックスなんて楽勝だったんじゃないのか?」

 

珠子ちゃんはそう言うけど、私は首を横に振った。

 

「人の身で神の力を扱うということは、身体に大きな負担がかかる」

 

私はそれを知った上でも人類を、みんなを守るために戦った。そして私の身体はもう戦うことが出来ないくらいボロボロになった。

それでもみんなを守るために私は……

 

「人の身を捨て、守り神となった。それが今の私」

 

すべてを話し終えると部室内は沈黙に包まれていた。

 

「………四葉。お前は寂しくないのか?」

 

「寂しいよ。守り神になって一緒に戦ったみんなと会うことが出来なくって……でも今はこうしてみんなと居られる分、寂しさはないよ」

 

「そうか……」

 

「ねぇ、四葉ちゃん。これから先、みんなと別れるまでの間、四葉ちゃんが寂しいって思いを感じなくくらい楽しい思い出を作ろうよ」

 

結城ちゃんがそう言った瞬間、その場にいた全員が同じ思いだった。寂しい思いをしないくらいの楽しい思い出か。それも良いかもしれないな

 

「とりあえずこれからは四葉のことはこれまで通りに接するように。変に神様扱いしないように」

 

風ちゃんの言葉を聞いて、みんなが頷いた。本当にみんなはいい子だな……

 

「あとは例の……」

 

「パパを誘惑する人のこと?」

 

何というか友海ちゃんはどれだけ彼女のこと嫌いなんだろうか?彼女の名字を聞く限り勇者であるのは間違いないはずなのに……

そんな事を考えていると、突然突風が吹き込んできた。

 

「あはは、みんな集まってるね」

 

気がつくと赤嶺友奈が現れていた。今のは彼女の能力ということか?

赤嶺友奈は笑顔で海の方に近づくと……

 

「もしかして嬉しすぎて固まってるのかな?それだったらもっと嬉しくなることを……」

 

「だから!!ダメだって!!」

 

友海ちゃんが赤嶺友奈を殴ろうとするが、赤嶺友奈はいとも簡単に避け、笑みを浮かべていた。

 

「邪魔しないでほしいかな?いい年なのに親離れできないのかな?」

 

「むぅ~」

 

 




短めですみません。

次回は赤奈ちゃんvs友海になります


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34

桔梗SIDE

 

僕らは樹海でバーテックスの群れと戦っていた。何でいきなりこんな事になったかというと遡ること数十分前

 

「邪魔ばっかりする子だね~ここで私を倒すっていうのかな?」

 

「そうだよ。勝ってもうパパに近づかせないから」

 

「いいね。でもここじゃ狭いからちゃんとした場所で戦おうか」

 

赤嶺が指を鳴らした瞬間、樹海化警報が鳴り響いた。造反神の勇者だからバーテックスを操れるっていうことなのか?

 

「ここにいるみんな、対人戦闘になれてないみたいだし、折角だからルールを設けるよ。ルールは簡単、私が負けを認めたらあなた達の勝利、色々と気になってるだろうし質問に答えてあげるけど、そう簡単に私と戦わせないから」

 

赤嶺は笑顔でそう告げ、姿を消した。そして僕らは樹海に訪れると同時にバーテックスの群れが迫ってきていた。

 

「前哨戦に勝利すれば戦ってあげるっていうことか」

 

「それにしては数が多すぎない?」

 

先輩の言うとおり、数が多すぎる。僕らを弱らせるのが目的か?とはいえ……

 

「勇者パンチ!!」

 

友海が迫り来るバーテックスを殴り倒していく。このまま全滅させることも可能だな

 

「上里くんは大丈夫かしら?」

 

千景が敵を倒しながらそう言う。未だに固まったままの海は部室に置いてきたけど、どんだけショックだったんだよ。

 

「あいつ、女の子にキスされて固まるってどうなのかしら?」

 

「意外と純粋なんですね」

 

「純粋なのか?」

 

樹が言う純粋と僕が思っている純粋はちょっと違う感じがするな。というかあいつの場合彼女に似ている女の子にキスされて、浮気してしまったとか思ってるだろうな

 

「………妙だな」

 

「若葉も感じた?」

 

若葉と雪花の二人が何かを感じ取っていた。何だ?なにかおかしなことでもあるのか?

 

「ふたりとも感じたんだね。敵の動きがおかしいってことに」

 

「姫野……あぁ、どうにも敵は私達を倒そうとしていると言うより……」

 

「足止めしてるって感じよね」

 

足止め……ということは赤嶺の目的は……

 

「やばいぞ!?赤嶺の狙いは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

園子SIDE

 

「皆さん大丈夫でしょうか?」

 

「きっと無事戻ってきますよ」

 

「何だか戦えないって一番辛いよ~」

 

私は未だに固まったままの海くんの様子を見ていた。どれだけショックだったんだろうか?でも女の子にとってはこういう反応は結構傷つく

 

そう思っていると突然突風が部室内に吹き、気がつくと赤嶺友奈ちゃんがいた。

 

「やっほ~みんな思ったとおり出払ってるね~」

 

「赤嶺友奈さん!?まさか……」

 

「そう上里ひなたさん。貴方の思っている通り、私の狙いはあなた達巫女だよ。挑発に乗せやすい子がいて助かったよ」

 

「それじゃみんなは……」

 

「今頃気がついてるだろうけど、私が放ったバーテックスに足止め喰らってるよ」

 

赤嶺友奈ちゃんはゆっくりと私達に近づいてきた。ここはやっぱり私が頑張るしかない。

私は赤嶺友奈ちゃんの前に出た。

 

「何?勇者に変身できないくせに出しゃばるの?」

 

「実はそうじゃないんだよね~変身」

 

私は勇者に変身し、槍を赤嶺友奈ちゃんに向けた。

 

「あれ?出来るようになってたんだ。まぁいいか。一番の目的の海くんを連れ去るのを優先しようかな」

 

「させないよ!!」

 

私は槍で攻撃をするが、ひらりと赤嶺友奈ちゃんは避け、海くんに近づいた。

 

「会いたかったよ。海くん。貴方に……」

 

海くんに触れようとした瞬間、赤嶺友奈ちゃんの身体がワイヤーで縛り上げられていた。

 

「ふぅ、捕縛完了」

 

「あれ?気がついてたの?」

 

「あぁ、少し前からな。人にいきなりキスするなよ」

 

「だって好きだから……」

 

「悪いけどお前のことは全く知らないんだが……」

 

海くんはそういった瞬間、赤嶺友奈ちゃんは悲しそうにしていた。

 

「そっか、まだ出会ってないんだね。ううん、出会うことはないんだよね」

 

「どういうことだ?」

 

「海くん、私はね」

 

「見つけた!!」

 

突然部室の扉が開き、ゆうちゃんがワイヤーに縛られた赤嶺友奈ちゃんを殴り倒した。

 

「ひなた!?」

 

「みーちゃん、無事?」

 

「若葉ちゃん」

 

「うたのん、それにみんな……」

 

「たくっ、倒すのに苦労したわよ。まさか狙いが巫女だなんてね」

 

「ありゃ、もう追いついちゃったか」

 

いつの間にかワイヤーを抜け出した赤嶺友奈ちゃんが指を鳴らした瞬間、世界が樹海に変わった。

 

「パパに近づけさせない!!師匠直伝!!爆裂・勇者パンチ!!」

 

まばゆい閃光とともに爆発が起き、赤嶺友奈ちゃんが包まれた。何だかやりすぎな気がするけど……

 

「友海、やりすぎよ」

 

たんちゃんが注意する中、ゆうちゃんは険しい表情をしていた。この子、こんな顔できるんだ

 

「外れた……」

 

「ふふ、流石は未来の勇者だね。でも未来の勇者だけの特権じゃないんだよね。その魔法は……あと外れてないよ」

 

あの爆発の中、無傷の赤嶺友奈ちゃん。まさかと思うけど……

 

「お前、まさか……」

 

「海くん、貴方の思っているとおりだよ。私はあの世界に来て、自身の勇者システムを改造して……扱えるようになったんだよ。でも今回は引き分け。またね」

 

赤嶺友奈ちゃんはそう言い残して、姿を消すのであった。あの子は本当に何者なのだろうか?

 

「……出会うことがない……まさか」

 

かいくんは彼女が言った言葉を聞いて、何か思い当たっていた。

 

「次は負けないんだから」

 

友海ちゃんは悔しそうにしながら、彼女が消えたほうを見つめるのであった。




赤嶺友奈のことは追々やるつもりです。

次回からの誕生日イベントの話をやる予定ですので、お楽しみに



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35

今回は誕生日イベントになります。誰の誕生日かはもちろん


海SIDE

 

赤嶺友奈と僕との関係を調べているときのことだった。突然端末から聞いたことのない音が鳴り響き、見てみると緊急招集と書かれていた。

コレは一体何が起きたんだ?

 

僕は慌てて部室に行くとみんながすでに集まっていた。

 

「何が起きたんですか?」

 

「海、私達にもわからない」

 

「ひなたと水都は何か聞いてないの?」

 

「いえ、何も」

 

「神託もないですし……」

 

「その件について私の方から説明します」

 

遅れて入ってきた東郷がそんな事を言いだした。東郷はこの場にいない友奈以外を確認し、

 

「今回皆さんを集めたのは緊急会議を開くためです」

 

「緊急会議?一体何が……」

 

杏さんがそんな事言う中、僕と先輩はあることに思い当たった。もしかして……

 

「海、今月って3月だっけ?」

 

「はい、それに東郷のこの暴走は……」

 

「今回の議題は今月21日に友奈ちゃんの聖誕生日です」

 

やっぱりか……もしかしてこの緊急招集も東郷がハッキングかなにかしたのか?よく怒られないな……

 

「結城の誕生日か。それだったらいつもどおりサプライズとかでいいんじゃないのか?」

 

「若葉さん、却下です」

 

却下されて落ち込む若葉さん。落ち込まないで下さい。今の東郷は思いっきり暴走していますから

 

「友奈ちゃんの誕生日ですよ。ここは盛大な祭りにしないと」

 

祭りに昇格されたよ。僕としては普通にパーティーを開くっていうのは良いかもしれないけど……

それに気がついてないけど今月って友奈だけじゃないんだよな……

 

「美森、ちょっといいか?」

 

「桔梗くん、何か案があるの?」

 

「いや、案というか今月は友奈だけじゃなくって海も今月じゃないか?」

 

桔梗さんの言葉を聞いて、全員が僕の方を見た。いやだって、言いにくいから言わないでおいたんだけど……

 

「パパ、お誕生日おめでとう」

 

「友海、ありがとうな。僕の場合はもう過ぎてるし気にしなくても……」

 

「駄目よ。海くん」

 

却下されたよ。東郷の中では今回の主役は友奈だし、気にすることないのにな……

 

「海くんの誕生日を祝わないって知ったら、友奈ちゃんはとても悲しむわ。だったら海くんも含めて盛大にやらないと」

 

う~ん、本当に気にしなくていいのに……

 

「というわけで海くんには悪いけど、少し出ていってもらうわ」

 

話し合いに参加することを許されず、僕は部室から追い出されるのであった。何というか暴走東郷は本当にすごいな……

 

「さてどうしたものか……友奈でも足止めしたほうが良いか?」

 

とりあえず友奈のところへ行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈に居場所を聞くと教室にまだ残っているみたいだ。僕は教室に行くと友奈は何かを作っていた。

 

「友奈」

 

「あれ?海くん、どうしたの?何か御用?」

 

「いや、用ってほどのもんじゃないけど、姿がなかったから探しに来たんだよ。何作ってるんだ?」

 

「あっ、えっと……あのね、こうして二人っきりの所で渡すのって何だか恥ずかしいけど……」

 

顔を赤らめている友奈。どうしたんだ?まさか僕の誕生日のこと知ってたのか?

 

「海くんって私と同じ21日だよね。だからちょっと早いけど……」

 

おずおずと友奈が僕にプレゼントを渡そうとした瞬間、突然後ろに衝撃を受けた。

 

「うーみーくん」

 

「あれ?赤嶺ちゃん?」

 

「赤嶺!?何しに来たんだ!?」

 

こいつ、突然姿を現すから、気配とか読めないんだよな。というか邪魔しに来たのか?

 

「何って、海くんに会いに来たんだよ」

 

「あ、もしかして赤嶺ちゃんもプレゼント渡すの?」

 

「あら、結城友奈、そういうあなたは……何だか邪魔しちゃったね」

 

「ううん、大丈夫だよ。折角だから一緒に渡そう」

 

「いいの?」

 

「うん」

 

何というか敵だっていうのに、友奈はそんなの関係なしって感じだな。まぁそこが友奈の良いところだけど……

 

「「はい、海くん」」

 

僕は二人からプレゼントを貰った。友奈からは沈丁花の押し花で作った栞を、赤嶺は水色の宝石がはめ込まれたペンダントをくれた。

 

「栞と……ペンダント?」

 

「海くんが勇者に変身した時に、沈丁花の花の紋章だからいいかなって」

 

「3月の誕生石はアクアマリンだからね。それのプレゼントだよ。あと結城友奈にはこれ」

 

赤嶺は友奈にあるものを送った。それは花の種?

 

「貴方が作る押し花はすごく素敵だから……」

 

「わぁ、ありがとう。赤嶺ちゃん。大事に育てて、綺麗な押し花を作るね」

 

「ありがとう。それじゃ、私はこれで」

 

赤嶺はそう告げて、姿を消すのであった。それにしてもあいつは本当に僕にプレゼントを渡しに来ただけみたいだな。

 

「何だか普通に話しちゃったけど、いい子だったね」

 

「そうだけど……」

 

というか僕はある事を思い出した。友奈の誕生日プレゼント買わないと……普通だったらみんなと一緒に企画したから良いと思っていたけど、今回は外されたし、個人的に送らないと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思い出さないか……仕方ないよね。海くんは、私が知っている海くんじゃないし……でももしかしたら記憶が継承してくれたら……いいのに」

 

 

 

 




次回も誕生日イベントです。


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36

海SIDE

 

友奈へのプレゼント、全然考えてなかったな。友奈に何を送ればいいのやら……

一人で悩んでいる中、あることを思いついた。そうだ。こういう時、一番助かるのは……

 

僕はある人に連絡を取り、しばらくしてから僕の部屋に来てもらった。

 

「どうしたの?パパ」

 

「友海。ちょっと聞きたいんだけど、僕って友奈にいつも誕生日に何を送ってたんだ?」

 

「誕生日に?いつもは花を送ってるよ」

 

「花を?」

 

未来の僕は花を送ってるのか。一体何の花だろうか?

 

「どんな花か分かるか?」

 

「うん、分かるよ。あっちでは咲いてないけど、こっちでは咲いてる花だから」

 

「なんて花だ?」

 

「えっと、赤いアネモネだよ」

 

赤いアネモネか……探してみるか。

 

「ありがとうな。友海。そういえばみんなは?」

 

「みんなは樹海に行ってるよ。ちょっと一日だけでも解放しておきたい場所があるんだって」

 

「僕も手伝うか?」

 

「ううん、風おばちゃんは今回主役の二人に手伝ってもらうのは悪いから大丈夫だって」

 

「そっか、頑張れよ」

 

「うん」

 

僕は友海と別れ、アネモネの花を買いに行くのであった。それにしても何でアネモネの花なんだ?

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

パパ、ママにプレゼント上げるんだ~本当にパパはママのこと大好きだな~

パパからしてみればちょっと未来で、私とママを助けたり、別世界のママも助けたり……本当にすごいよ

 

「そういえば赤嶺友奈……あの人、どうしてパパにちょっかい出すんだろう?私がいた世界にいなかったはずなのに……う~ん?」

 

「友海、ここにいたの?」

 

悩んでいると牡丹が迎えに来てくれた。もしかしてそろそろ出発の時間なのかな?

 

「何してたの?」

 

「パパに、ママに送るプレゼントについて相談されていたの」

 

「そうだったの……もしかして赤いアネモネ?」

 

「うん、綺麗だよね。どうして赤いアネモネなんだろう?」

 

「もしかして……気がついてないの?友海は……」

 

「何に?」

 

牡丹はうつむき、考え込み始めていた。一体どうしたんだろう?あの花になにか意味でもあるのかな?

 

「わかってないみたいね。でも、友奈おば様が知っているわけ……でも」

 

本当に何が何だか分からない。物凄く気になるんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

赤いアネモネの花を買いに行き、友奈の居場所を聞くと部室に行くとのことで僕も部室に向かった。すると部室にはひなたお姉ちゃん、水都さん、友奈の三人しかいなかった。もしかしてみんな、樹海に行ってるのか?

 

「あっ、海くん。みんなどこに行ったか知らない?」

 

「みんな?僕もわからないんだけど……それで友奈」

 

「何?」

 

「これ、誕生日プレゼント。花束で何だか申し訳ないけど……」

 

「えっ、そんな事ないよ。ありがとうね。海くん。これ……アネモネだね」

 

「うん、ちょっと相談して、これがいいんじゃないかって思って……」

 

「えへへ、嬉しいな」

 

喜んでもらえた。するとひなたお姉ちゃんが僕の肩を叩いた。

 

「海くん、普通にプレゼントとして買ったんですよね」

 

「うん、未来の僕がいつも送ってるって言うから……」

 

「あぁ、なるほど……まぁ友奈さんも気がついてないみたいですからいいですけど……」

 

なんだろう?この花になにかあるのか?僕は考え込むと水都さんが顔を真赤にさせながら耳打ちをしてきた。

 

「あのね、赤いアネモネの花言葉は……」

 

僕はそれを聞いて、物凄く恥ずかしくなった。やばい、それって告白しているみたいだ。

友奈は嬉しそうにしているしけど、気がついてないみたいだから大丈夫かと思うけど……本当に恥ずかしい。未来の僕と友奈ってどんだけラブラブなんだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、無事に友奈の誕生会も終え、僕は桔梗さんに昼にあった話をしていた。

 

「まぁ、実際友奈が喜んでいたからいいんじゃないのか?」

 

「そ、それはそうですけど……ところで桔梗さん」

 

「何だ?」

 

「来月、どうするんですか?」

 

「来月………あっ!?」

 

「頑張って下さい。桔梗さん」

 




これにて友奈の誕生会イベントは終わり、次回は花結いの最新話の精神の対話についてやるつもりです


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37

今回は花結いの章の話をやります


桔梗SIDE

 

僕たちは今、愛媛奪還のため必死に戦っていた。赤嶺友奈の妨害があるだろうと思っていたけど、特に姿を見せず愛媛を難なく開放できたけど……

 

「妙だな」

 

「桔梗もやっぱりそう思う?泳がされてる感じがするよね~」

 

雪花も同じことを感じていたみたいだった。何かの目的があって攻撃を仕掛けてこないのか……

それに気になることがある。それは海との関係についてだ。あいつは会ったことがないって言うけど、赤嶺友奈はどうにも海に執着している。過去になにかあったっていうのか?

 

「赤嶺友奈が動きを見せないとは言え、今のうちに愛媛奪還を進めれば先手を打てるはずだ」

 

若葉の言うとおりでもある。動きを見せない以上奪還に集中できる。

 

「それじゃ一気に終わらせるか」

 

僕は大鎌を構え、バーテックスの群れに突っ込んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石にやるな~もう半分以上奪還されちゃったか」

 

「あの動かなくていいのかな?」

 

「いいの。元々これが出来上がるまで奪われる予定だったしね」

 

「精霊ですか……」

 

「まぁ完成したし、そろそろ動き出すよ。貴方は彼女の足止め頑張ってね」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛媛奪還のため、樹海に訪れると敵の姿がまったくなかった。隠れているなら気配くらい感じるが、それすらない

 

「なんか嵐の前の静けさって感じね」

 

「ということは敵がものすごい数で攻めてくるって感じかしら」

 

先輩と夏凛の二人がそんな事を話していると僕らの前に突風が吹き、いつの間に赤嶺友奈が現れていた。

 

「こんにちわ~みんな油断してないみたいだね~」

 

「こんにちわ。赤嶺ちゃん」

 

「結城ちゃんは元気だな~私はちょっと低血圧気味なんだ~」

 

「いや、友奈。呑気に敵と話してないで……」

 

海いわくこの間の誕生日でどうにも仲良くなったみたいだけど、今は別だ。僕らは武器を構えると赤嶺友奈は笑みを浮かべた。

 

「残念だけど、今回は趣向を変えさせてもらうよ~えい!!」

 

赤嶺友奈が指を鳴らした瞬間、突然僕は意識を失うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

姫野SIDE

 

「こ、これは……」

 

赤嶺友奈が指を鳴らした瞬間、夏鈴ちゃん、須美ちゃん、桔梗くん、若葉ちゃん達西暦組(珠子ちゃん、歌野ちゃん以外)が動かなくなった。この感じ……精霊の力を感じる。

 

「何をしたの?」

 

「今からみんなに自分自身と戦ってもらうことになったの。戦うって言っても、自分自身との対話ってやつかな」

 

「普通に戦って勝てないからって、精神攻撃ってことね。だけど私には」

 

「神様には別の相手を用意してあるから安心して」

 

赤嶺友奈がそういった瞬間、突然何かが飛んできた。私は勾玉で弾いた瞬間、相手が誰なのか理解した。

私と千景ちゃんにそっくりで持っている武器は私と同じ勾玉……こういう世界だからあり得るのか。

 

「は、初めまして。守り神様ですよね」

 

「まさか姫野家の子を連れてくるなんてね。しかもそっちに……」

 

「何だかよく分からないですけど、仲間を……友達を守るためにはこちらに着いたほうがいいって……」

 

「戦わせて鍛えるって感じね。それだったら……相手してあげる」

 

 

 

海SIDE

 

四葉さんと四葉さんに似た人が戦いを始める中、赤嶺は僕に近づいてきた。

 

「やっほ~海くん」

 

「精神攻撃を仕掛けに来たのか?悪いけど僕はこういう攻撃は慣れてる。どっかの悪魔に心を読まれてはバカにされてるからな」

 

「知ってる。バニルさんだよね」

 

やっぱりこいつは僕がいた世界から来たのか?でも会ったことがない。友海と牡丹みたいに未来から来たっていう感じか?

 

「いい加減思い出してくれないから。教えてあげようと思ってね」

 

「パパに近づくな!!」

 

友海が後ろから攻撃を仕掛けようとするが、赤嶺は指を鳴らした瞬間、友海が動きを止めた。

 

「自分自身と対話しててね。あぁ因みに負けるとこの世界から脱落しちゃうから………それじゃ海くん、見せてあげる。私と貴方のつながりを……」

 

 



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38

今回は桔梗と友海の精神の対話についてやります


桔梗SIDE

 

気がつくと奇妙な空間に来ていた。真っ白な世界……ここに来る前に赤嶺友奈が精神攻撃がどうのとか言っていたけど、これがそうなのか?

 

「……精神攻撃ってどんな事してくるんだ?」

 

「……やぁ、僕」

 

突然僕の目の前に僕そっくりなやつが現れた。最初はキキョウかと思ったけど、感じ的にどうにも違う。見る限り僕自身みたいだ。

 

「赤嶺友奈から話は聞いてるけど、僕は彼女が作り出した精霊だよ」

 

「精神攻撃のために作られた精霊ってことか……面倒なものを作るなアイツは……」

 

「赤嶺友奈自身、君たちを試しているからね」

 

試す?どういうことだ?何を試すっていうんだ?

 

「まぁ色んな事情は彼女を倒して聞くんだね。それじゃ始めようか。対話というやつを……」

 

「精神攻撃か。悪いけど僕自身そこら辺強いと思って……」

 

「君の右腕……乃木園子を庇った時にバーテックスに食われたんだよな」

 

「あぁ……」

 

僕は右腕の義手に触れた。あの時咄嗟に園子を助けて、腕を食われ、バーテックスがキキョウに姿を変えた。今更それがどうしたっていうんだ?

 

「お前は乃木園子を心の奥底で恨んでいる」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

「ここって……」

 

「まぁ限定的な空間だと思ってくれればいいかな。それじゃ早速……」

 

限定的な空間ということは、なんでも出来るって言うことなのかな?それだったら……

 

私は拳に力を込め、思いっきりなにもないところへ向かって拳を振った瞬間、ものすごい爆発が起きた。

 

「ね、ねぇ何してるの?」

 

「何って……必殺技の特訓だけど……」

 

「いや、今から精神攻撃を……」

 

「えぇ~こういう空間だったらいっぱい特訓できると思ったのに」

 

不満そうに言うと精霊の私はため息を付いていた。

 

「精神攻撃とか本当に効かなそうだね。でもとりあえず……ねぇ私、特訓を続けていけばいずれ師匠を越えられるって思ってるんだよね」

 

「そうだよ」

 

「血が滲むような努力をして師匠を超えるんだよね」

 

「うん」

 

「それじゃ師匠を超えたあとはどうするの?次は何を目標にするの?もしかして魔王にでもなるの?」

 

師匠を越えた後……考えたことなかったな。師匠は何時だってカッコよくって綺麗で……私に色んなことを教えてくれた。その師匠を越えたあとなんて……

 

「考えたことなかったな……でも私が師匠を超えたら……」

 

「どうするの?」

 

「そんな私を師匠がまた越えてくれるはず。そう信じてるもん」

 

きっと私が思いもしなかった感じで更に師匠は強くかっこよくなってくれるから……師匠なんて通り越してきっとライバルになるはずだから

 

「……やれやれ、本当にすごいことを言う子だね。そこまで師匠のことが大好きなんて……私って本当にすごいね」

 

精霊の私はそう言って消えていき、気がつくと元の世界に戻っていた。

 

「友海ちゃん、大丈夫だった?」

 

「うん、大丈夫だよ。友奈さん」

 

「ありゃ、まぁ足止めのために攻撃したから十分だからいいか」

 

赤嶺ママがそんな事を言う中、他のみんなも次々に復活していった。残ってるのは牡丹のパパとパパだけ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

「僕が園子を恨んでる……」

 

「彼女が星屑の接近に気がついていれば、君は腕を食われなくってすんだんだ。そしてその後起きたキキョウとの戦いで君はつらい思いをしなくてすんだ。そうだろ」

 

こいつの言うとおりそうかもしれない。僕は心の奥で園子のことを恨んでいたかもしれないけど……

 

「確かにそうかもしれないな。だけどあいつは……園子はずっと僕に謝りたくって悲しい思いをしていた」

 

あの時、園子が真実を話してくれた。真実を話し終えた後、あいつは泣きながら謝り続けていた。僕は彼女を許した。だって……

 

「ずっと後悔し続けてきて、泣きながら心の底から謝ってきた女の子を許さない男じゃないんだよ。僕は……」

 

「ふぅ、やれやれ。君には精神攻撃は効かないみたいだね。まぁ本来君の相手は僕じゃない」

 

精霊の僕はそう言い残して消えていき、僕は元の世界に戻った。

 

「きょうくんも戻ってきたね~」

 

園子(中)が嬉しそうに言う中、僕は園子の頭をなでた。

 

「ふぇ!?ど、どうしたの?」

 

「いや、何となく……」

 

「そのっち顔真っ赤~」

 

園子(小)が誂う中、僕はまだ戻ってきていない海を見つめた。こいつも精神攻撃を受けているのか?

 

「海くんには精神攻撃はしてないよ。今回の戦いのご褒美として彼にいいものを見せてあげているんだ」



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39

海SIDE

 

気がつくと真っ白な空間に来ていた。一体何なんだ?この世界は……

 

「やぁ、来たみたいだね。僕」

 

僕の目の前にもうひとりの僕がいた。なるほど自分自身と対話させる気なのか?でもここに来る前に僕と赤嶺の関係を話すって言っていたはずだよな。

 

「僕は彼女の精霊。この姿は君に話ししやすいようにした映し身みたいなものさ」

 

「話……僕と赤嶺の関係……」

 

「今から話すのは彼女の記憶に基づいたものだ」

 

精霊は語り始めた。僕と赤嶺の関係を……

 

 

 

 

 

 

 

 

「カエル狩りはコレくらいにしておくか……」

 

僕はこの世界に来てすぐに受けたクエストをこなしていた。流石にあの大きさのカエルには吃驚したけど、異世界だからと言い聞かせれば納得してしまうな。

 

「さて戻るか」

 

街に戻ろうとした時、後ろから気配を感じて振り向くとそこにはまたカエルが現れた。地面に隠れていたっていうのか。油断した。

 

カエルは大きな口を開けて僕を飲み込もうとした瞬間、頭上からなにか降ってきて、カエルを潰した。

 

「ふぅ、危ないところだったね」

 

赤い衣装に褐色の肌。だけど僕はその人物に見覚えがあった。何で似ているんだ。

 

「大丈夫だった?」

 

「友奈?友奈がどうしてここに……」

 

「えっと、初めましてだよね。どうして私の名前を知ってるの?」

 

やっぱり僕が知ってる彼女じゃないのか……なのにどうしてそっくりなんだ?

 

「ごめん。知り合いに似ていて……僕は上里海。勇者だ」

 

「上里……巫女の血縁者かな?私は赤嶺友奈。私も勇者だよ」

 

赤嶺友奈……同じ名前だし、赤嶺っていう名字も聞いた覚えが有る。昔世界を救った勇者だって……

もしかして過去の勇者がこっちに転生してきているっていうのか?これは後でエリスさんに聞いてみないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが彼女との出会いだった」

 

「赤嶺友奈は僕がいた世界の平行世界から来たのか……ウミ・バーテックスも似たような存在だったもんな」

 

「あぁ、それから君と彼女は共にパーティーを組み、彼らと共にあの祝福に満ちた世界を過ごしていたのだよ」

 

「だとしてもどうして彼女は僕に対して……その……」

 

「あぁキスされたんだっけ」

 

ハッキリ言いやがって……精霊だから恥じらいっていうのはないのか?

 

「彼女からしてみれば、君に会えたことが凄く嬉しくってついしちゃったみたいなんだよね」

 

「ついって……というか赤嶺とそっちの僕は付き合ってるのか?」

 

「もちろん、そりゃ燃えカスくらいになるくらいアツアツだったからね」

 

「だったら僕に執着することは……」

 

僕は言いかけた瞬間、ある考えがよぎった。まさか……

 

「そっちの僕は死んでるのか」

 

僕がそう告げた瞬間、精霊は何も言わず頷くのであった。一体何があって僕は死んだんだ。普通だったらアクアさんが蘇生させてくれそうなのに……

 

「何があったんだ……」

 

「それは君がいつか訪れる未来だから言えないな。彼……ウミ・バーテックスも同じことを言っていただろ」

 

「いつかたどる未来……僕の大切な人も大切な子も守れなかった未来……」

 

「赤嶺友奈……マスターのいる世界では君が犠牲になり、世界を救った。だけどマスターは後悔したんだよ。助けられなかったってね」

 

僕の未来……本当に何が起きるっていうんだ。だけど先のことを考えても仕方ないよな。今のことだけを考えないと

 

「赤嶺の目的は何だ……」

 

「マスターはもう一度大切な人に合うために、君を依代にするつもりだよ。だけど彼女に対して怒ったりしないように……彼女は愛する人のためにやってるからね」

 

「あぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと元の世界に戻っていた。みんなも精神との対話が終わらせたみたいだな。

 

「おかえり、海くん。私のことわかったんだよね」

 

「あぁ……お前の目的も知った。もしかして造反神か?もう一度会う方法を教えたのは……」

 

「そうだよ。君に彼が残してくれたこのペンダントを使えば彼にもう一度会えるんだよ」

 

赤嶺が見せたペンダントは前に僕にくれたペンダントに似ているものだった。やっぱりそうだよな

 

「会いたいもんな。もう一度……どんなことをしても……」

 

僕は白月を取り出し、赤嶺に向けた。

 

「みんな、悪いけどここは僕が……」

 

「一人でやる必要はないだろ」

 

僕の隣に桔梗さんが立ち、大鎌を構えた。そうだった。ここは助け合わないとな

 

「先輩、僕と海の二人で赤嶺を倒します」

 

「あんたら……仕方ないわね。雑魚は任せなさい」

 

「雑魚か……大型の子たちをそんなふうに言えるなんて余裕みたいだね。だけど、そう簡単にはいかないよ!!」

 

 

 




次回、精神の対話編が終わります。その後は誕生日イベントをやります。

因みに海×赤奈の話でしたが、次回あたりもう一つのカップリングについてもやります


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40

「「ハアアアアアアア!!」」

 

「おっと!?」

 

僕と桔梗さんの攻撃を後ろに飛んで避ける赤嶺。後ろに飛び着地の瞬間、桔梗さんに接近し、思いっきり殴り飛ばした。

 

「ぐぅ!?」

 

「どうしたの?二人とも、この程度じゃないよね」

 

「力が上がってるな……」

 

「僕らが精神攻撃を受けている間、力を蓄えていたっていうのか?」

 

「海くん、正解だよ。この間より強くなってるから気をつけてね」

 

赤嶺の拳のラッシュを僕は大剣で、桔梗さんは大鎌で防御するが、威力が強すぎて防御していてもダメージが入っている感じがした。このままだとガードが崩されそうだ

 

「どうします?桔梗さん?」

 

「そうだな……お前アレを使えるか?」

 

「あれ?」

 

桔梗さんが僕に耳打ちをした瞬間、僕は笑みを浮かべた。こっちに来る前に使えるようになっていたのは覚えている。

 

「初めて使うんですけど……」

 

「あぁそれなら僕がお前に合わせて……」

 

「いいえ、何とか桔梗さんの動きに合わせます」

 

「お前……まぁいい」

 

僕は大剣をしまい、桔梗さんの大鎌を取り出した。

 

「行くぞ」

 

「はい」

 

僕と桔梗さんは黒い影になり、赤嶺の周辺を駆け回った。

 

「すごいね。パワー上がった私に対して、スピードで撹乱か……だけどコレぐらいの動き見えてるよ」

 

赤嶺がある方向に打撃を放つが、空振リに終わった。

 

「あれ?勘でやったのに外れちゃったか……」

 

勘で攻撃って、こいつどんだけだよ。強すぎだろ

 

「海!!」

 

「はい!」

 

影になりながらも、桔梗さんのアイコンタクトを確認し、僕は真正面から突っ込んだ。

 

「正面突破!!変わらないね。海くんは!!」

 

赤嶺は両手を構え、大鎌と僕の腕を掴んで動きを止めた。

 

「やっと捕獲できたよ。海くん」

 

「捕獲?何言ってるんだ?」

 

「ん?まさか……」

 

赤嶺が上を向いた瞬間、炎の柱が襲ってきた。僕を捕獲した赤嶺は簡単に離すことはしない。まぁ僕が巻き込まれるけど、それでもなんとかなる

 

「くっ!?」

 

炎の柱が迫り来るギリギリの所で、赤嶺が僕を突き飛ばした。こいつ、僕を盾にしたり出来るのに、助けたのか?

 

「天神刀の威力を弱めたけど、モロに攻撃を食らって大丈夫なのか?」

 

「桔梗さん、こいつ、僕を……」

 

炎が消えると同時に赤嶺の衣服があちこち焼け焦げていた。

 

「うくっ……ちょっと油断しちゃったな~」

 

「油断?違うだろ。お前は僕を助けるために……」

 

「あはは、大切な人を傷つけたくないからね。私も、結城友奈も、そして高嶋友奈もいくら大好きな人が敵でも傷つけたりはしたくないからね」

 

ん?なんか変なこと言わなかったか?赤嶺と僕が付き合っていたというのは知ってるし、友奈と僕も付き合っているし……

 

「友奈さんが何だって?」

 

「だから、君のバーテックス。ウミだっけ?彼は高嶋友奈とお付き合いしてた世界から着たんだよ」

 

「何だって!?」

 

「それじゃ今回はここで逃げるよ。今度は手に入れるからね。海くん」

 

赤嶺は突風のように姿を消すのであった。それにしても何という衝撃事実を……

 

「海……お前、どんだけ友奈キラーなんだよ」

 

「ちょっと待ってください。他の世界線のはなしじゃないですか!?僕は好きなのは友奈だけですから」

 

「まぁとりあえず戦いは終わったんだ。みんなの所に戻ろう」

 

「うう……」

 

何というか色々と落ち込むんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫野SIDE

 

「赤嶺ちゃん、逃げちゃったか」

 

私の前に現れた子孫。何というか私と同じ力……ううん、それ以上だけど、経験の差か何とか私のほうが優勢だった。

 

「どうする?子孫はここで投降するのかしら?」

 

「ううん、ここは逃げるよ」

 

子孫がそう言いながら、姿を消した。彼女も何かしらの理由で造反神に協力しているということかしら?

 

「何というか色々と厄介なことが起こり始めてるわね」

 

私はため息をつくのであった

 




これで今回の花結いの話は終わりです。次回は誕生日イベントをやる予定です


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41

今回から誕生日イベントになります


桔梗SIDE

 

「さて今月の誕生日は誰かしら~」

 

「はい、東郷さんです」

 

「わっしーも同じ誕生日だよ~」

 

「まぁ一緒の人間だから同じなのはしょうがないけど……」

 

何というかお決まりになってきたな。このやり取り……

 

「桔梗さん、桔梗さん」

 

海が僕の肩を叩きながらあることを聞いてきた。

 

「東郷に何をプレゼントするんですか?」

 

「お前、先月の仕返しか?」

 

「そういうわけじゃないんですけど……」

 

プレゼントか……確かに何をあげるべきか悩みどころだよな

 

「東郷って言ったらやっぱり国防?」

 

「国防……つまり軍艦。戦艦のプラモとかどうでしょう?」

 

ひなたがそう言うけど、女の子がプラモとかもらって嬉しいのか?

 

「でも東郷さん。売ってるプラモとか全部持ってたような……」

 

「須美も似たようなものだぞ」

 

友奈と銀の二人がそういうのであった。すでに持っているとか……どんだけ美森は軍艦とか好きなんだよ。いや、確かにデートとかしたときとかそういった話をされた覚えが有るけど……

 

「そうね~あとは……」

 

「モデルガンとかどうなんすか?東郷さん、自分の銃にシロガネって名付けてたし」

 

「今更銃なんて……武器とか銃だし」

 

「銃……そうだ。エアガンとか使ってゲームをするというのはどうかしら?」

 

「それってつまり…」

 

僕はサバゲーって言いそうになったけど、何となくやめておこう。まぁあとで個人的にプレゼントを用意するとして……

 

「それでしたら大赦に聞けば場所なども用意してくれると思います」

 

「それじゃ早速聞いてみましょう」

 

誕生日イベントが決まり、ひなたが大赦に連絡を入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、大赦が用意したフィールドに来ている僕ら。流石にエアガンだと怪我する恐れがあるため、水鉄砲で行うことになった。

 

「それにしても色々と種類があるな」

 

「大赦が用意したものですから……拳銃タイプ、マシガンタイプ、ライフルタイプ。それに迫撃砲と水風船ですね」

 

「それにゴムナイフまで用意してくれるなんて……」

 

「というわけで東郷、須美。あんた達の誕生日を祝うために勇者部対抗サバゲー大会を始めるわ」

 

サバゲーって言い始めたよ。でも僕自身、興味あったしやってみたいっていう気持ちもあった。

 

「とりあえずチーム分けだけど……くじ引きで」

 

先輩が用意したくじを引き、僕たちのチーム分けが済んだ。

 

国防隊

 

美森、須美、高奈、千景、樹、若葉、ひなた、園子、風、僕、四葉、友海

 

敵国軍

 

友奈、銀、雪花、杏、珠子、棗、歌野、水都、園子(中)、夏凛、海、牡丹、灯華

 

の二チームに別れた。そして早速ゲーム開始……

 

「ちょっといいですか?先輩」

 

海が急に止めに入った。何だ?何か気に入らないことがあるのか?

 

「ありゃ、何?」

 

「ルール確認なんですけど、勝利条件は?」

 

「えっとそれは……」

 

「普通でしたら相手チームを全滅させるのと相手チームの旗を奪うかね」

 

「今回はその2つの内一つを達成していくというのはどうでしょう?」

 

「そうね。ソッチのほうが面白いわね。海、他には?」

 

「あとは……一応ゴムナイフもあるんだから、それも使用しましょう。ゴムナイフに三回当たったらアウトというのは?」

 

「うん、それもOKよ」

 

「それとトラップは?」

 

「おい、海、何を言ってるんだ?」

 

「いや、こういうのはちゃんとはっきりさせておいたほうがいいかなって……」

 

「そうね……トラップは用意されたもので相手に水をかけるというもの以外は禁止でお願いします」

 

「例えばバケツで水をかけたりとかですね」

 

「わかった。あとは大丈夫だ」

 

何だろうか?ただ楽しいサバゲーがものすごくやばいことになりそうなのは僕だけか?

 

「それじゃ海も納得したことだし、全員所定の位置についてから五分後に開始ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて美森、どうするんだ?」

 

「そうね……まずは迫撃砲で相手をあぶり出しましょう」

 

「そうすれば相手は統制も取れなくなって仕留めやすいですね」

 

この二人の軍師……なんだか怖いのだけど……

 

「東郷ちゃん、須美ちゃん。ちょっといい?」

 

「何ですか?四葉さん」

 

「海くんがトラップどうのとか言ってたからさ。こっちは仕掛けないの?」

 

「罠ですか……ありですね」

 

「それだったら水風船を借りてくよ。設置関係は任せて」

 

「わかりました。四葉さん、お願いします」

 

「了解」

 

四葉は僕らと離れ、罠を設置しに行くのであった。

 

「それでは四葉さんが戻り次第、迫撃砲を放ちます」

 

「なんだか偉いことになってきたわね」

 

「先輩、今更ですよ」

 

 



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42

海SIDE

 

みんなが水鉄砲の準備を整えている間、僕はゴムナイフを手にとっていた。

 

「あれ?海くんは水鉄砲使わないの?」

 

「いや、使うよ。ほら」

 

僕は友奈に拳銃型の水鉄砲を見せた。すると銀が不思議そうな顔をしていた。

 

「サバゲーなのに銃がそんなんで大丈夫なのか?」

 

「銀、ナイフとかでも当たったらアウトに出来るんだぞ。そこら辺のルール確認も終わらせてあるし」

 

「ということはカイくんはナイフで戦うの~」

 

「あはは、どんだけだよ海」

 

珠子さんが笑う中、僕は笑みを浮かべた。

 

「こういうサバイバル的なことはある程度学んでるから大丈夫ですよ。とりあえずあっちがどう攻めてくるか考えましょうか」

 

「そうですね。お……東郷さんたちのことですからまずは迫撃砲で牽制+撃破を狙ってくると思います」

 

「だとしたらバラバラに動いたほうがいいか?」

 

「いいえ、それを狙った上の行動だと思うので……ここは」

 

牡丹は迫撃砲を取り出し、構えた。

 

「撃ち落とします」

 

さすがは親子だな。母親の行動をうまく読めている。さて牡丹が頑張るって言うなら僕も頑張らないとな

 

「な、何というか……」

 

「みんなでワイワイやる感じかと思ったのですが……」

 

「夏凛ちゃん、水都ちゃん、多分だけど相手チームもガチでやるつもりだよ」

 

何だか灯華さんが呆れた感じでそんな事を言っていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

美森と須美の二人が迫撃砲を放ち、牽制を試みるが。こっちが撃った瞬間に相手の方からも水の塊が飛んできて相殺してきた。

 

「今のは……」

 

「牡丹さんですね」

 

「行動を読まれているということね」

 

千景が冷静に分析する中、美森はもう一度迫撃砲を放つが、また相殺された。

 

「ふむ」

 

「牽制はこれ以上無理ですね。四葉さんは戻ってきていますか?」

 

「はいはい、戻ってるよ。須美ちゃん」

 

「設置箇所は覚えていますか?」

 

「もちろん、みんなに連絡済み」

 

「わかりました。東郷さん」

 

「えぇ、全員、進軍!!罠に注意しながら撃破お願いします」

 

美森が指示を出す中、風先輩が呆れていた。

 

「何だかちょっとしたお遊びになると思ったのに……」

 

「お姉ちゃん……」

 

「まぁ東郷さんたちがいるからこうなることは読めましたが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず僕、友海、四葉の三人で進んでいくが、特に遭遇したりとかない感じだった。

 

「友海ちゃん、気をつけてね。仕掛けてある罠に引っかかったら申し訳ないから」

 

「大丈夫です。罠感知スキルを覚えてるので」

 

「海たちのいる世界での特殊能力か……便利だな」

 

「便利だけど、自分にあったスキルを見つけるのが大変かな?まぁでも私には爆裂魔法があるからいいんだけど」

 

「一撃必殺だっけ?本当にすごいわね」

 

「えっへん、師匠直伝の最強魔法ですから」

 

何というか二人の話を聞いてるとちょっと気が緩んできた。美森の熱気に当てられて気を引き締めていたからかな?

 

「こっちには相手が来る様子もないし、一旦戻るか」

 

僕がそう言って、引き返そうとした瞬間、上から葉っぱがひらひらと落ちてきた。風もないのに落ちてくるのは何だかおかしい。そう思った瞬間、上から何かが降ってきた。

 

「あれは!?」

 

「パパ!?」

 

「ちっ!?」

 

四葉が僕らを突き飛ばそうとするが、僕と友海の腕に何かしらの感触が感じられ、気がつくと四葉に水がかかっていた。

 

「四葉さんアウト、桔梗さんと友海はゴムナイフ一回当てたからな」

 

「木を渡ってきたっていうの……やるわね」

 

「しかもナイフで……だからあの時ルールの確認をしていたのか」

 

「流石だね。パパ。でも二対一だよ。どう逃げる?」

 

「こうやってだ」

 

海はどこから取り出したのか水風船をこっちに目掛けて投げつけてきた。僕と友海はそれを避けた瞬間、海の姿がなかった。

 

「あいつ、逃げるの早くないか?」

 

「やっぱりあの話は本当だったんだ……」

 

「何がだ?」

 

「パパが昔訓練と称して、勇者候補たちの人たちとサバゲーやって一人勝ちしたって」

 

どんだけだよ。海のやつ……というかあいつもガチすぎないか?

 

「やれやれ、早速アウトか……まぁいいや、トラップ設置に貢献したし」

 

「四葉……」

 

「二人とも後は頼んだわ」

 

僕と友海は一旦陣地に戻るのであった。何というか楽しいイベントがガチバトルになってきそうで不安でいっぱいだ。



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43

桔梗SIDE

 

サバゲーが始まって30分ほど経った。美森と須美のおかげで難なく相手チームを減らすことができたけど、こっちも海の活躍で大きく減らされ、現状残っているのは僕と海だけになった。

 

「海のやつ……どんだけマジでやってるんだよ」

 

「というかもうみんな、ゲーム関係なしに水遊びしてるわよ」

 

先輩の言うとおり、これ以上は戦っていてもしょうがないだろうし……

 

「終わりにしますか」

 

木の上から海が降りてきた。こいつ、ほとんどの移動を木から木を渡って来ていたのかよ。

 

「全くガチバトルになるなんて思っても見なかったわよ」

 

「いや~昔のことを思い出して……つい」

 

ついってこいつ……まぁ何だかんだで主役の二人が楽しんだから良いとしようか。さて後は……

 

「とりあえず僕は一回帰ります」

 

「ありゃ、あれに参加しなくていいの?」

 

「えぇ、ちょっとやることがあるので」

 

「やること?」

 

「先輩、気にしない方が良いですよ」

 

海の奴はある程度理解してくれているから助かるけど、何でニヤニヤしてるんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、僕は美森と須美の二人を呼び出した。

 

「どうしたの?急に?」

 

「何か御用ですか?」

 

「いや、まだ二人にプレゼント渡してなくって……」

 

僕は二人にある絵を見せた。何というか誕生日プレゼントに絵を送るっていうのはどうかと思うけど……

 

「この絵……」

 

「桔梗さん、私はこんな風に可愛らしくないですよ」

 

何というか同じ反応をするのだな。二人とも顔を赤らめてるし、というか未来の子供である牡丹も同じ反応だったから、これは血筋みたいなものなのか?

 

「桔梗くん、ありがとう」

 

「素敵なプレゼント、ありがとうございます」

 

二人が喜んでくれて何よりだ。

こうして二人の誕生日は終わりを告げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誕生日から数日後のこと、部室に入ると一冊の本が置いてあった。

 

「これって前に天の神が持ってきた神宮家の家系図と日記だっけ?ひなたのやつが解読してたって言うけど、終わったのかな?」

 

僕は読んでみようと手にとった瞬間、部室に千景が入ってきた。

 

「神宮、貴方一人なの?」

 

「あぁ、まだみんな来ないみたいんだ」

 

「それって……」

 

千景は僕が手にして本に目をやった。折角だから見せたほうが良いよな。僕と千景の関係が分かるかもしれないし……

 

「えっと………」

 

「これは………」

 

僕らは日記を見て、固まっていた。これは……

 

「………もう少し詳しく読みましょう」

 

「あぁ、そうだな」

 

僕らはそそくさと部室を後にするのであった。

 

「ん?あれって……桔梗と千景ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

部室に入ると何故かめちゃくちゃにされていた。コレは一体……

 

「驚くわね~私も来たらこうなっていたもの」

 

四葉が僕の後ろでそう言っていた。一体何があったんだ?もしかして赤嶺が攻めてきたのか?

 

「海くん、貴方が想像していることじゃないわ。犯人は彼女よ」

 

四葉が指を指したほうを見るとお姉ちゃんが正座し、その前に先輩と若葉さんがいた。

 

「一体どうしたっていうんだ?部室をめちゃくちゃにするなんて……」

 

「全く何があったのよ」

 

「すみません。ただ探しものをしていて……」

 

「お姉ちゃん、どうかしたの?」

 

「海くん、実は……前に神宮家の家系図と日記を受け取ったことを覚えていますか?」

 

あぁ、桔梗さんと千景さんの関係がわかるかもしれないって、天の神が持ってきたやつか

 

「そういえば解読するってお姉ちゃんが持ってたんだよね。あれからどうなったの?」

 

「実はいうと……部室においてあったのが、無くなっていて……必死に探したのですが」

 

無くなったって、何でまた……もしかして誰かに取られたっていうのか?

 

「あれは本当に他の人には見せられないんです。だってあれは……」

 

「そういえばさっき来る前に桔梗と千景ちゃんの二人が出ていったけど……もしかして……」

 

四葉がそういった瞬間、お姉ちゃんが四葉に詰め寄った。

 

「それは本当ですか!?だとしたらまずいですよ。かなりまずいです」

 

「そんなに大変なことなの?」

 

「だって、あれはお二人に見せられないものです。何せ……」

 

お姉ちゃんは顔を真赤にさせていた。一体どうしたっていうんだ?すると四葉は何か察した。

 

「あぁ、もしかして二人のイチャイチャ日記だったとか?」

 

「「「はぁ?」」」

 

四葉の言葉を聞いて、驚きを隠せないでいた。お姉ちゃんはと言うと黙ったまま頷いてるし……

 

「そのとおりです。あの日記は桔梗くんの先祖と千景さんのいちゃいちゃが……というか四葉さんはどうして知っているんですか?」

 

「だって私がいた世界でも似たような感じだったし……なるほどね~桔梗の世界でもそんな感じなんだ~」

 

いちゃいちゃって、かなり気になるけど……とりあえず二人を探し出さないといけないのかな?

 

 



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44

『☓月☓日、今日はあの人のために料理を作った。普段はレトルトとかそういうので何とかしてみたいけど、上里さん曰く男子は手料理を作ってあげると嬉しいものだと言う。なので頑張って作ってみたけど………味見してわかった。これは失敗だ。こんな失敗したものを彼に上げるというのはどうなのだろうかと思っていると、彼が帰ってきた。彼は私の料理をつまみ食いすると、笑顔で「おいしい」と言ってくれた』

 

『☓月☓日、今日は彼に一緒に寝たい。でもそれを伝えるのはかなり恥ずかしい。だけど彼は帰ってくるやいなや突然私を抱きしめ、押し倒してきた。何でこんなことをするのか聞くと私のぬくもりを感じたいらしい。私は彼にもっと……』

 

千景が日記を途中で閉じ、思いっきり壁に投げつけた。これは確かに投げつけたくなるけど……

 

「えっと……千景」

 

「何!!」

 

顔を真赤にさせながら怒ってる。いや、これはなんというべきか……やっぱりここは……放っておくべきか……

 

「な、なんでもない」

 

僕と千景の間になんとも言えない空気が流れていた。本当にこういう時ってどうすればいいんだよ。というか僕のご先祖様はどんだけイチャイチャしてるんだよ

 

「………桔梗」

 

「な、何?」

 

「貴方と私の関係はこれでわかったわね」

 

「う、うん。僕は千景さんの子孫でもあったんだね。ただ……千景さんの……」

 

未来に残っていないのだろうかと言おうとしたけど、僕は言うのはやめた。きっとこれは千景さんからしてみれば、未来の出来事が関係しているんだ。だからこそ言うべきではない。

 

「まぁいいわ。貴方の世界での私があんな日記を残したということは、私は幸せだったって言うことでいいのね」

 

「そうですね。未来に僕がいるんですから……」

 

これから先の事はまだわからないけど、僕として千景には幸せになってほしい。

千景は投げつけた日記を拾い、土を払った。

 

「これは上里さんに返しましょう」

 

「そうですね」

 

僕らはそう言って部室に戻ろうとした瞬間、端末から樹海化警報が鳴り響いた。僕らは頷きあい、樹海に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海へと行くとそこには千景のバーテックス、チカゲが待ち構えていた。

 

「久しぶりね」

 

「ずっと赤嶺友奈が出張っていたから……」

 

チカゲと千景は大鎌を構えると、僕は二人の間に立ち、大鎌を構えた。

 

「チカゲ、あんたはどんな未来を迎えたんだ?」

 

「私がむかえた未来……」

 

「赤嶺は海の世界の未来から……ウミもだ。どちらも大切な人を救えなかった未来から来たはずだ。お前はどんな未来から来たんだ?」

 

「………」

 

チカゲは黙り込むと千景がゆっくりと近づき、手を握った。

 

「いずれ来るかもしれない未来だって言うなら、私は聞いても構わない。だって未来は変えられるから……」

 

「未来を変えられる……」

 

「えぇ、変えられる。ううん、変えてみせる」

 

「………この世界の私は強いね。もしもこの世界に来なかったら貴方は、私と同じ未来を歩んでいたかもしれない。だからこそ……」

 

チカゲはそっと自分の首筋に大鎌を当て、

 

「変えてみせて」

 

首に刃を突き刺すのであった。

僕らはただそれを見届けることしかできなかった。彼女は消滅し、僕と千景は元の場所に戻ると

 

「行きましょう。そして頑張りましょう。彼女が願った未来にするために……」

 

「協力しますよ。千景……いや海達にならってお姉ちゃんって呼んだほうがいいか?」

 

「それはやめて……普通に今までどおりでいいわ」

 

「そうですね。あいつはよく普通に呼べるよ」

 

海はどんだけすごい神経をしているのやら……

 

「……戻りましょうか。きょう」

 

「ん?今……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室に戻るとものすごい荒れていた。部室の中にはひなた、若葉、四葉さん、海の四人がいた。

 

「千景さん!?桔梗くん!?あの、もしかして……」

 

「えぇ、読ませてもらったわ。私ときょうの関係がよくわかったわ」

 

「そ、そうですか……隠すつもりは……ただ刺激が……」

 

「気にしなくていいわ。私も覚悟は決めたから……」

 

「さっき樹海化していたが、何かあったのか?」

 

「あぁ、何とかチカゲは倒したけど……いや倒したと言うより」

 

わかりあえたと言うべきだな。

 

「ん?千景さん、さっき桔梗さんのこと……」

 

「貴方みたいに姉呼びするつもりないわ。子孫と認めた上で彼のことを『きょう』と呼ぶことにしただけよ」

 

「そうですか……」

 

「というかお前はよく姉呼び出来るな。普通に恥ずかしいぞ」

 

「大丈夫です。慣れれば何とか……」

 

「そういう問題なのか?」

 

こうして僕と千景の関係が明かされ、僕らの距離が縮まるのであった。

 

 




次回はイベントか花結いどちらかにするつもりです。


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45 

今回はイベントの写生大会か花結いの最新話で悩みましたが、花結いの方にします


海SIDE

 

愛媛奪還作戦も大詰めになり、僕らは気合を入れ直す形で特訓をすることにした。

 

「いっくよ~爆裂勇者パンチ!!」

 

友海が放ったパンチが地面を大きく抉った。何というか許可された場所とは言え、環境破壊じゃないのかこれ?

 

「パパ、どうだった?」

 

「すごいけど……怒られないよな」

 

「まぁ程々にと言われてますが、友海ちゃんの必殺技は樹海以外では使えませんね」

 

「えぇ~もう少し発射速度と威力を強めたいのに~」

 

何というかめぐみん、未来の弟子がものすごい爆裂狂になっていて父親として心配なんだけど……

 

「海くんはどうですか?特訓?」

 

「お姉ちゃん、それなりだね。前に編み出した必殺技はうまく繋げられるようになったけど……もう一つの……」

 

僕は切り札を発動するが、この世界じゃ自分自身のものしか使えないから、新しいものを考えないと……

 

「まぁ実践でなんとかするしかないよな」

 

僕は武器を切り替え続けるが、なんとかなるのか心配だ。

 

「とりあえず今は訓練に集中して下さい。次の神託が来た瞬間に戦いが始まるので」

 

「次のか……赤嶺と残ったキキョウと姫野さんに似た女の子と一気に来そうだな」

 

何というか最終決戦に近いけど、その三人を倒してもまだ造反神が残ってる。戦いはまだ終わらないか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉SIDE

 

「まさか子孫と戦うことになるとはね~」

 

私は灯華に訓練に付き合ってもらいながら、彼女について考えていた。まさか子孫と戦うことになるなんて……彼女自身、何だか自分を鍛えるためにって感じがするけど……

 

「何だか待っているだけで申し訳ないです。本当なら……」

 

灯華はこわれた端末を見つめた。彼女自身戦いたいのだろうけど、力がない。待っているのも辛いか……

 

「大丈夫よ。きっといつか必要になる時が来るわ」

 

「そうでしょうか?」

 

「守り神様が言うのだから大丈夫よ」

 

「ふふ、ありがとうございます。姫野さん」

 

灯華が笑顔になった。やっぱり女の子は笑顔が一番よね。さて、私はこれを起動できるようにしないとね。

あの戦いで作り出した3つの武器を合わせた剣がきっと役に立つはずだから……

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

「ハアアアアアアアアア!!」

 

僕は千景と訓練をしていた。僕の攻撃を千景は受けきると、ため息を付いていた。

 

「張り切っているわね」

 

「奪還作戦も大詰めだからな。張り切るさ。それに……」

 

僕は天神刀を取り出し、見つめた。きっと次の戦いで必要になるはずだ。だからこそ……

 

「きっと僕が次の戦いで切り札になるかもしれないからね」

 

「切り札……ね。頑張りすぎてあなたの大切な人を悲しませないでね」

 

「千景、気づいてるのか?」

 

「さぁてね」

 

僕の大切な人って美森か?それとも牡丹か?いや、どっちも大切だよな。千景の言うとおり悲しませないようにしないとな

 

「続ける?」

 

「お願いします」

 

僕は更に訓練を続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤嶺SIDE

 

「ふふ~ん、順調順調」

 

「機嫌がいいな」

 

私があるものを見つめているとキキョウが声をかけてきた。そんなに機嫌がいいように見えてるかしら?

 

「次の戦いは激しいものになるからね。この子も完璧に仕上げないと。貴方の方は?」

 

「俺の方は大丈夫だ。造反神が力を与えてくれた」

 

キキョウは黒い炎を纏った刀を取り出してみせた。あちらの世界の天の神と大赦が与えた最強の刀と同じ力を持ったもの……

 

「本当に激しいものになるね」

 

私はそういいながら、バーテックスを見つめるのであった。




短めですが、今回はこれで終わりです


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46

桔梗SIDE

 

愛媛奪還も大詰めになってきて、僕たちは訓練をしている中、新たな神託が来たということで部室に集まっていた。

 

「新たな超大型バーテックスの進軍、神託では愛媛奪還後に出現予想が立てられています」

 

「ここに来て新しいバーテックスか……」

 

赤嶺は愛媛を捨て、次の場所で決着をつける気なのか?だとしたらかなり厳しいことになるかもしれない

 

「神樹様はなんて言ってるの~」

 

「進軍という神託ではないので、堅守に徹するべきと思います」

 

「なぁ、ひなた。ちょっと待ってくれないか?」

 

珠子が何か気になることがあったのか、話を遮ってきた。

 

「神樹様って、四国全土を守れるってわけじゃないんだろ。無理な範囲は見捨てるって……言い方はおかしいけど、超大型が動き出せば愛媛を奪還しても破壊されちまう可能性があるってことだよな」

 

「え、えぇ、そうなります」

 

「それだったらさ……攻め込まないか?確かに守りに徹するべきかと思うけど、今は戦力も充実してるんだ。そう簡単に負けることはないって」

 

「珠子の言うとおりだな。出来る限りのことをしておくなら、今のうちに超大型を潰しておくべきかと思う」

 

珠子の意見に若葉も、他のみんなも賛成だった。確かに今の戦力なら堅守ではなく攻めに入るべきだけど……

 

「若葉、一応聞いておくけど……」

 

「桔梗、驕っているつもりはない」

 

今更だったな。ここにいるみんなは驕ってるような奴らはいない。

ひなたも若葉の言葉を聞き、ため息を付いた。

 

「わかりました。ですが条件付きで今回攻め込むことに賛成です。退ける時に退くようにして下さい。撤退することもまた勇気です」

 

「あぁ、わかった」

 

さて、今後の作戦も決まった。僕たちは早速超大型がいる場所へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海の奥へと進んでいくと繭に包まれた超大型バーテックスの姿を発見した。

 

「流石にでかすぎだろ」

 

「見て、動いてる」

 

「成長途中ということは、まだ大きくなるということでしょうか?」

 

須美がそういう中、僕は銃を取り出した。

 

「さっさと倒しておくべきだな」

 

「そうね」

 

「それじゃ、行くわよ」

 

みんなで繭に眠るバーテックスを攻撃していく。攻撃が通っていく以上続けていけば、破壊できるはずだ。

 

そう思いながら、攻撃を続けていった瞬間、何故か攻撃が防がれた。

 

「刺激したせいか。目覚めてきたのか?」

 

「ちょっと待った!!」

 

どこからともなく赤嶺が現れた。様子を見る限り慌てているとうことは今回の作戦は赤嶺からしてみても予想外のことだったみたいだな。

 

「てっきり堅守するものかとおもってたのに、攻め込んでくるなんてね。予想が外れちゃったよ。海くん、会う時はちゃんと事前に連絡して……」

 

「連絡すれば破壊してもいいのかよ」

 

「それはそれ、これはこれだよ」

 

「というかわざわざ連絡するような奴がどこにいるんだよ!!」

 

海が赤嶺に向かって、白月を振り落とすが、赤嶺はその斬撃を受け止めた。

 

「みんな、こいつは俺が止めるから……超大型の方を!!」

 

「させないよ。他の子達、来ちゃって、それに君も目覚めなさい」

 

赤嶺の指示に応えるかのように超大型の一体が繭を突き破り出てきた。そして他のバーテックスもかなりの数が出現してきた。

 

「戦う以上は本気でやるしかないな。全てを燃やす尽くせ!!天神刀!!」

 

僕は天神刀を取り出し、迫り来るバーテックスを焼き払い、更に超大型に向かって炎纏った斬撃を放った。だが超大型に当たる寸前、何かに遮られ、放った炎が僕の方に迫ってきた。僕は咄嗟に避けるが、急に身体に力が入らなくなった。

 

「うぐぅ……これは……」

 

「桔梗くん!?」

 

美森が声をかけてくるが、どうにも動けそうにない。超大型がゆっくりと僕に狙いを定め、ビームを放ってきた。僕は避けるすべがなく、諦めかけた瞬間、珠子が僕の前に出て、ビームを防いだ。

 

「おおおおおおおお!!どうだ!!その程度の攻撃……防げるんだよ!!」

 

「珠子……」

 

「桔梗、大丈夫か?」

 

「少し休んだおかげか……少しは楽になった」

 

「それだったら……」

 

「あぁ」

 

僕と珠子の二人で超大型に向かっていった。超大型は攻撃を仕掛けていくが、僕は炎で攻撃を全て焼き尽くし、距離を詰めた珠子は武器を思いっきり振りかざした。

 

「これで終わりだァァァァ!!」

 

珠子の一撃をくらい、超大型は苦しみだした。さっきは攻撃を反射したのに……もしかして近接系の攻撃を反射できるけど、遠距離の攻撃は……それだったら……

 

「トドメだ!!」

 

炎の形を変え、巨大な炎の鳥に変え、超大型を焼き尽くした。超大型は苦しみながら消えていった。

 

「これで一体!!もう一体は……」

 

僕がもう一体の方を見ると、すでに姿がなく赤嶺もいなくなっていた。

 

「悪い。逃した」

 

「いや、深追いしなくてよかったかもな。とりあえず一旦作戦完了だな………とはいえ……天神刀はやっぱり……」

 

長時間の使用で身体への負荷が大きいせいか僕はそのまま倒れ込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤嶺SIDE

 

「やれやれ、危ないところだったな……」

 

「だが、お前のおかげでよくわかった」

 

「……天神刀の使い方を?それは良かったね」

 

 

 



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47

海SIDE

 

超大型を一体倒した僕らは、次の戦いが愛媛奪還の決戦になると思い、今まで以上に訓練を積んでいた。

そんな中、樹だけが何だか張り切っていた。

 

「海さん、お聞きしたいことが……」

 

「聞きたいこと?」

 

「はい、実は……」

 

樹は自分の武器の可能性を更に高めるために色んなことを試していた。ワイヤーを束ねて拳にしたり、鞭にしたり、盾にしたり、有線付きの槍にしたりいろいろと試していたけど、まだ他にできることがないか僕に聞いてきたみたいだ。

 

「話はわかったけど、何で僕なんだ?他にもみんなにいろいろと聞いて……」

 

「海さんは私達の武器をすべて使えるじゃないですか。だからもしかしたら私以上にこの武器について何か使い道があるんじゃないかって思って……」

 

気合い入りまくりだな。僕は樹の武器を取り出した。

 

「僕はまだ練習不足だから樹みたいに難しい操作はできないけど……」

 

目の前に有る的をワイヤーで縛り上げ、一気に切り裂いた。

 

「拘束して攻撃っていう感じになるな。それはお前のほうがよく分かってるだろ」

 

「はい……」

 

「あとは……まぁ単純な動きだけど……」

 

僕は生太刀と白月を取り出し、ワイヤーで柄を縛り、目の前の的に突き刺した。

 

「こんな感じで他の武器と組み合わせるくらいかな」

 

「他の武器と……」

 

とはいえ現状3つしか同時に取り出すことができないから、これが限界だけど……でも樹ならあれを伝授してもいいかな

 

「もし樹が良ければ、僕との合体攻撃があるんだけど」

 

「海さんとの合体攻撃……」

 

僕は簡単に樹に説明した。これはあっちの世界で僕が編み出した『勇者乱舞弐式』の応用でも有る。うまくやればかなりの威力を引き出せるはずだ

 

「と言う感じだけど……どうかな?」

 

「海さん、やってみます」

 

「それじゃ早速練習だな」

 

僕は樹と合体攻撃を訓練するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日が経ち、ついに決戦の日を迎えた。僕らは樹海へと訪れるとそこにはバーテックスの群れとその中心に超大型の存在があった。

 

「やっほ~ついに決戦だね~」

 

「赤嶺!!」

 

「あれ?桔梗くんに珠子ちゃんはもう回復したんだ。ちょっと足りなくなるけどいいよね」

 

赤嶺がそう告げた瞬間、何体もの精霊が現れ、僕らに張り付くと身動きができなくされた。これはトリモチ!?

 

「勇者専用の捕獲精霊。動きさえ止めれば……」

 

赤嶺がゆっくりと拳を構えた瞬間、どこからともなくワイヤーが飛んできて赤嶺に向かって攻撃を仕掛けた。

 

「樹!?」

 

「どうして樹ちゃんだけ取り逃がしたの?」

 

「言ったでしょ。足りなくなるって、てっきり今回の戦いは桔梗くんと珠子ちゃんの二人は参加しないと思ってたんだけど、復活してるからね。一番戦力的に要らない子だけを避けてたんだ。それに海くんは特別に二体付きでね」

 

「海くんに拘らなければよかったんじゃないんですか?」

 

「そうだけど、でも彼女は簡単に攻略できるからね。勇者パンチ!!」

 

赤嶺が勇者パンチを喰らわせようとしたが、その瞬間樹がワイヤーを束ねて盾にして防いだ。

 

「防いだ!?」

 

「行きます!!」

 

拳、鞭、槍へとワイヤーの形を変え、赤嶺に喰らわしていった。赤嶺は防御していくがこのまま行けば押し通せる。

 

「やるね。甘く見ていたよ。だけど……これは防げないよ!!爆裂!!」

 

「させないよ!!爆裂!!」

 

「「勇者パンチ!!」」

 

友海と赤嶺の爆裂勇者パンチが同時に放たれ、攻撃を防ぎきった。捕縛って言っても短時間だけだから抜け出すこともできたのか

 

「海さん!!」

 

「あぁ、切り札発動!!七人ミサキ!!」

 

切り札を発動させ、七人の僕が現れ、それぞれ西暦組の武器を持たせた。

 

「数を多くしていくのは予想できたよ!!行け!バーテックス!!」

 

超大型が僕に向かっていくが、七人の僕らは持っていた武器を上に放り投げた。赤嶺も含めた全員が何をしているのか驚いていたが、樹だけは理解してくれた。

 

樹は投げた武器をワイヤーで縛り上げ、超大型に向かって攻撃を仕掛けていき、撃退した。

 

「これぞ。合体攻撃『勇者乱舞参式』ってとこかな?」

 

「うまく行ってよかったです」

 

「樹の頑張りがあったからな」

 

「ふ~ん、やるね……でもこれで私は負けたとは思ってないよ。天下分け目の決戦だからね。こっちも切り札を使わしてもらうよ」

 

赤嶺が指を鳴らした瞬間、どこからともなく黒い炎が僕らに襲いかかってきた。僕らはそれぞれ避けていくと赤嶺の隣にはキキョウが立っていたけど、その手には黒い天神刀が握られていた。

 

「お前、その刀は……」

 

「天下分け目の戦いにふさわしいだろ。桔梗、それに牡丹」

 

 

 

 

 

 



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48

桔梗SIDE

 

突然現れたキキョウ。奴の手には天神刀と似た刀が握られていた。もしかしてあの刀は……

 

「天神刀だっていうのか?」

 

「あぁ、そのとおりだよ。桔梗。お前が持っているのは天の炎を操る刀。俺の持っているのも天の炎を操る刀」

 

キキョウは天神刀を軽く振った瞬間、黒い炎が僕たちに向かって襲いかかってきた。僕は咄嗟に天神刀を抜き、炎で防ぐが、この間の戦いの疲労がまだあって、膝をついてしまった。

 

「どうやら病み上がりというわけだな。そんな状態でのお前を倒しても面白くないな。行くぞ。赤嶺」

 

「それじゃ、みんな、バイバイ~」

 

赤嶺とキキョウの二人は一瞬で姿を消すのであった。こうして愛媛奪還作戦は終わりを告げるのであったが、もしもキキョウがもっているものが本当に同じものだとしたら………

 

「本当の決戦になるな……」

 

僕は一人、そう呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

愛媛奪還作戦も終わり、次の作戦に移る前に暫くの間敵の動きを読んだほうが良いと神託があり、僕らは少しの間休息に入るのであった。

 

そんな時に僕はお姉ちゃんにあることを聞かれていた。

 

「僕のいる世界での神との関わり?」

 

「はい、確か女神様が二人いるのですよね。海くんはどのような付き合いをしているのかと……」

 

付き合いって言われても、特に変な付き合い方はしてないし……

 

「ここと同じだよ。みんなで楽しくワイワイしてるだけ、まぁ仲間の一人が女神様を誂ったりしてるけど」

 

だけどアレは大体アクアさんが悪かったりするからな……

お姉ちゃんは僕の話を聞き終えると何故か難しい顔をしていた。

 

「神とは言え、私達人間と同じようなものなのでしょうか?普通なら天罰を与えたり……」

 

お姉ちゃんは何かをつぶやいてるけど、何かに気がついたのかな?だとしても……

 

「今は考えても仕方ないんじゃないの?」

 

「海くん……でももしかしたら天の神が人類を滅ぼしてきた理由がわかるかもしれないんですよ」

 

「あくまでお姉ちゃんの予想だよね。だとしたら今は深く考えずそこら辺の事情を知ってる赤嶺あたりに聞いてみたほうが良いだろう」

 

「………後々答え合わせをするということですか?」

 

「あぁ」

 

天の神が人類を滅ぼした理由……か。お姉ちゃんは何かに気がついたのかもしれないけど、僕としては人間に分かってしまうような理由とは思えない気がする。まぁ近くにいる女神様のことを考えるとそんな高尚な理由じゃない気がするけど……

 

「何というか海くんは海くんらしいと言いますか……」

 

「何ですか?」

 

「海くんはすぐに答えを求めようとしないんですね」

 

「求めないわけじゃないよ。ただ答えをだすのにはしっかりとした確証を得てからじゃないと行けない気がしてね」

 

じゃないとどっかの仮面の悪魔に変な方へと唆されそうだし……

 

「そうですね。今は深くは考えないようにします」

 

「それが一番だよ」

 

僕はお姉ちゃんと別れ、自分の部屋に戻るのであった。それにしても天の神が人類を滅ぼした理由か……

 

「神々の考えはわからないけど、案外本当に簡単な理由だったりしてな……そんなわけないか」

 

 




短めですみません。次回はイベント話をやるかもしくは前々からやりたかったある話をやるかのどっちかです


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それぞれのカップリング
49


久々の更新ですみません。

中々書きたいと思うイベント話がなかったのですが……

少し前に手に入ったSSRそのっち(水着)が可愛かったため、勢いに任せてとある話を書きます


海SIDE

 

ある日の部室にのんびりと本を読んでいると杏さんとそのっち(中学生)の話が聞こえてきた。

 

「あんずんも中々書けるようになってきたね~」

 

「そんな……園子先生ほどじゃないですよ……」

 

二人で小説について話をしてるのかと思いながら、気にせず本を読んでいた僕。すると園子はある事を言い出した。

 

「でももう少し想像力が足りないかな~」

 

「想像力ですか?」

 

「そうイマジネーション!例えば……」

 

何だかそのっちが僕の方を見ている気がした。何だ?僕を見て……

 

「カイくんの彼女がもしも誰だったら~とか」

 

「ぶほっ!?」

 

思いっきりお茶を吹き出した。そのっち、何ということを……

 

「海くんの彼女……そうだよね。友海ちゃんたちがいるから彼女さんくらいいるもんね」

 

「因みに~カイくんの現在の彼女さんは~」

 

「そのっち、頼むから言わないでくれ……」

 

何でこんな公開処刑を受ける羽目になったんだ?頼むから止めて欲しい

 

「しょうがないな~じゃあカイくんといっつんが付き合うとしたら?」

 

「樹ちゃんと海くん……」

 

「僕からしてみれば樹は妹みたいな感じ思ってるから想像できないな……」

 

そのためか恋愛対象として見ることができない。いや、確かに健気で可愛いけど……

 

「それじゃあんずんとカイくん」

 

「わ、私と!?」

 

杏さんとか……確かに容易に想像ができてしまうけど……

 

「わ、私はその……付き合っても楽しくないと思いますよ」

 

「杏さん、あくまで想像ですから……」

 

「そ、そうだよね……」

 

「それじゃ……」

 

それから色々な想像を聞かされていく。まぁ気を使って友奈と友奈さんの名前を出さなかったのはいいけど、ちょっと想像で弄ばれるのはいい加減にしてほしくなった。こうなったら……

 

「因みに私とカイくんはどう思う?カイくん」

 

「いや、ありというか……元の世界じゃ僕と付き合ってるぞ。そのっち……」

 

「えっ!?」

 

「ふぇ!?」

 

僕の発言に驚く二人。僕はそのっちにそっと近寄り……

 

「親同士が決めた結婚で、お互い乗り気じゃなかったけど、しばらく一緒にいるようになってからお互い好きになったんだっけかな?」

 

「か、カイくんは……その……ゆ……」

 

「付き合い始めて頃は手をつなぐこともできなかったっけ?」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

「あ、あんずん、この話はもう……」

 

そのっちは思いっきり顔を真赤にさせてる。杏さんはものすごく興味津々だな

 

「元の世界だと僕は仲間と一緒に屋敷に住んでるんだけど、ほぼ毎日一緒に寝てたりしてるし……」

 

「お、大人ですね」

 

「あの……もう……」

 

「因みにキスをされたときは……」

 

「わああああああーーーーーー!!」

 

話を遮るようにそのっちは大声を上げ、僕の口を手で塞いだ。よく見ると顔を真赤にさせ、思いっきり泣いていた。

 

「とまぁ、全部冗談だけどな」

 

「冗談だったんですか……」

 

「そのっちの言うところの想像力を働かせてみたんだけど……えっと、そのっち……」

 

「カイくん、ひどい」

 

「お前が僕を使って話のネタ出しにしたのが悪い。にしてもそのっちにも恥ずかしいって思うことがあるんだな」

 

「当たり前だよ~」

 

「でも海くんは今付き合ってる人が一筋なんですね」

 

「う~ん、そうかな。好きっていう気持ちを知ったときからずっと片思いだったりするし……」

 

ようやく告白したけど、もう会えないかと思ったりもしたけど……

 

「意外と海くんは年相応の恋愛をしてるんですね」

 

「でもカイくんが彼女さん一筋でよかったよ~」

 

「まぁでも、そのっちは可愛い方だと思うけど……何かのきっかけで付き合ってる可能性があるかもな」

 

この世界には似たような世界があるし、聞く限りじゃ僕と友奈さん、僕と赤嶺が恋人同士だったりするし……もしかしたら他のみんなと付き合ってる可能性もあるな。

 

「その可能性の中にハーレムがあったりしてね~」

 

そのっちは笑顔でそう言うのであった。ハーレムって……何だか大変な思いをするかもしれないな

 

「まずハーレムを作ろうとする事自体最低だと思いますよ」

 

「僕にはありえないからな。因みにそのっち……」

 

「何?カイくん?」

 

「好きだよ」

 

もう一度からかってみると、そのっちは僕の袖を掴み……

 

「カイくん……私も好き……ずっと好きだった。だから好きって言ってくれてありがとう」

 

顔を紅潮させ、上目遣いで返してきた。もうからかいは通じないか

 

「と言う感じかな?私とカイくんは~」

 

「あ、あのものすごくドキドキしたんですが……」

 

「というかさっきの会話、誰かに聞かれてたら誤解されそうだな……」

 

突然何かが落ちる音が聞こえ、振り向くとそこには友海が持っていた鞄を落として呆然としていた。

 

「ぱ……」

 

「「「ぱ?」」」

 

「パパが浮気!?」

 

「誤解だ!!」

 

それから僕は誤解を解くのに数時間使うハメになるのであった。

 

 




うん、もう上里友海は勇者である完結したら、ただひたすらいちゃいちゃする恋愛ものを書きたくなりましたね。



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50

久しぶりの更新となります。

今回は花結いの章の話……ではなく一年に数回起こる誰かとのイチャラブを書きたいという発作が起きました。

という訳で今回のメインはひなたと前回に引き続き海となっております。

時系列的には国土亜弥が参戦、赤嶺ちゃんとの一騎打ち終了後、ひなたの誕生日会終了後、防人組参戦前となっています


海SIDE

 

ある日のこと、僕はため息を付いていた。

 

「どうかしたんですか?海くん」

 

隣にいるお姉ちゃんが心配そうにしていた。

 

「ため息をつくと幸せが逃げちゃいますよ」

 

いや、ため息の原因はお姉ちゃんと言うか……この現状というべきか……

 

「本当に明日には取れるんだよね」

 

「はい、そうみたいですよ」

 

僕とお姉ちゃんは手を握ったまま離れることが出来なかった。そもそもの原因は赤嶺だったりする

 

 

数時間前

 

買い物に出かけているとお姉ちゃんと出くわした。

 

「お姉ちゃん、一人?」

 

「はい、海くんは買い物ですか?」

 

「そんなところ……それにしても」

 

お姉ちゃんが一人でいるところは珍しいな……いつもだったら若葉さんと一緒にいるのに……

 

「それにしても……なんですか?」

 

「いや、なんでもないけど……」

 

「おかしな海くん……海くん、聞きたいことがあるのですが」

 

「聞きたいこと?」

 

一体何の話だろうと思っていると突然突風が起き、気がつくと僕らの前に赤嶺がいた。

 

「やっほ~海くん、久しぶりだね」

 

「何しに来た?」

 

「警戒心丸出しだね……今回は搦手を使おうと思ってね……行っちゃって!」

 

赤嶺がそう指示を出した瞬間、変わった姿の精霊が現れ、こっちに向かってきた。僕は避けようとするがお姉ちゃんが狙われると思い、咄嗟に庇った。

 

「いたっ……くない?」

 

「これは……」

 

気がつくと僕とお姉ちゃんの手がくっついていた。これは……赤嶺が僕の動きを封じて出撃させないように……

 

「……失敗しちゃった。えへっ」

 

可愛く言う赤嶺。いや、失敗って……

 

「本当だったら海くんと私をくっつかせようと思ったのに、上里ひなたとくっついちゃったか……」

 

「赤嶺さんはまだ海君のことを諦めてないんですね」

 

「とりあえず失敗ならどうにかしてくれないか?」

 

「そうだね~って言いたいけど……ごめんね~それはすぐに解けないようになってるの」

 

こいつ……

 

「解除条件は一日経たないと駄目なんだ。ごめんね」

 

赤嶺はそう言い残して姿を消すのであった。本当にこいつは……

 

「さて海くん、どうしましょうか?」

 

「とりあえずみんなに相談しないとな」

 

 

 

 

みんなに相談した結果、一日経てば元に戻るとのことで僕とお姉ちゃんが我慢することとなった。後は宿舎の空いてる部屋で過ごすこととなった。同室の相方に迷惑がかかるからとお姉ちゃんがそういうからだった。

 

「赤嶺さんは嘘はつかないと思いますよ」

 

「それはそうだけどさ……」

 

赤嶺の場合は確かに嘘をつくということはなさそうだけど……信じていいんだよな……

 

「所で海くん、気になったことがあるのですが」

 

「何?」

 

「お風呂どうしましょうか?」

 

笑顔でそう告げるお姉ちゃん。考えてみればそうだよな……どうしよう……

 

「……僕の腕を切り落とすのと目を潰すのどっちがいいだろう?」

 

「発想が物騒ですよ」

 

いやだってお姉ちゃんと呼んでいるとはいえ、本当の姉弟という訳じゃないし……というかお互い年頃だし……

 

「私は気にしないよ」

 

「お姉ちゃん、僕は男の子だよ……」

 

「えぇ分かっていますよ。信頼できる男の子だって……襲ったりしないって信じていますから」

 

何というか僕はなんでこう信頼されているのだろうか……だけどここで変に駄々をこねるよりかは諦めたほうがいいな

 

 

 

 

 

 

 

 

着ている服は鋏で切ることにした。まぁ元に戻ったら僕が直すからいい。あとは……

 

「本当に気にしなくていいのに……」

 

「気にするからね……」

 

僕は目隠しをしながらお姉ちゃんとお風呂に入ることになった。やっぱり男として恋人以外の裸を見ることは出来ない……

 

「あっちの世界の私とは一緒にお風呂に入ったりはしなかったんですか?」

 

「したことないからね。普通に」

 

「それじゃ今度あちらの私と話す機会があったら話してみますね」

 

何でそうなるんだよ……というかお風呂くらい一日休んでも良かったんじゃ……

ため息を付きつつ僕は諦めながら一緒にお風呂に入るのであった。

 

 

 

 

 

 

それから特に問題はなく、お姉ちゃんと一緒のベッドに寝ることとなった。

 

「海くん、狭くないですか?」

 

「大丈夫……」

 

「そうですか……」

 

何というか沈黙が続くな……そういえばお姉ちゃんが僕に聞きたいことがあるって言ってたけど……

 

「ねぇ、お姉ちゃん。そういえば聞きたいことって?」

 

「聞きたいこと……そういえば忘れてました」

 

忘れていたのかよ……

 

「これは私の誕生日の時に園子さんから聞いたことなんですが……本来は他の人に話すべきことではないって言われているんですが、園子さん曰く海くん、桔梗くん、姫野さん、友海ちゃん、牡丹ちゃん、灯華さんには話しても大丈夫そうです」

 

「何?」

 

「私たちはすべてが終わった後、この世界での出来事……思い出についてです」

 

「……もしかして忘れてしまうかもしれないってこと?」

 

「知っていたんですか?」

 

「知っていたと言うよりかは何となくそう思って……何で僕らだけには話していいの?」

 

「これはあくまで想像ですが……海くん達は私たちがいた世界とは別の世界の住人……それも数多くある世界の中の存在するのが低い確率の世界から生まれた人間……例外的な存在だからです」

 

「例外……」

 

「例外な存在は記憶等が失わないと思って……」

 

そうなのかな?でも戻ってみないとこれははっきりしないよな……あれ?でも赤嶺も下手すれば例外的な存在だから記憶とか……深くは考えないようにするか

 

「私は園子さんからこの先の皆さんの未来について聞かされています……正直聞きたくないことが多かったですが……」

 

「お姉ちゃん、それでも……」

 

「分かっています。回避できるかどうかはわからない以上は聞くべきだと思いました」

 

お姉ちゃんは悲しそうな顔をしていた。何というかどの世界でもお姉ちゃんは無理をしてる気がするな……

僕はそっとお姉ちゃんの頭をなでた。

 

「くすぐったいですよ。海くん」

 

「ごめん……ただこうするべきかなって……」

 

「ふふふ、ありがとうございます」

 

こうして僕らは眠りにつき、翌朝、無事に離れることが出来たけど……一日中一緒にいてお姉ちゃんは本当に気にせずにいつもどおりだったな……

 

 

 

 

 

 

 

ひなたSIDE

 

海くんと離れられて本当に良かった。姉という立場としては大人の余裕を見せないと思っていましたが……

 

「お風呂とか……一緒に寝るのはやりすぎたかも……」

 

お互い年頃だと言うのに一緒にオフロに入ったり(海くんは目隠しをしてくれたけど)一緒に寝たりするのは正直言うとドキドキして頭がおかしくなりそうだった。

 

「海くんの手……暖かったな……私の将来の結婚相手は……」

 

海くんみたいな人だったら……なんてね

 

 

 

 




多少のイチャラブだったかな?

次回は防人組参戦回を書くかまたイチャラブにするか……イチャラブは書くとしたら海くんが犠牲になっているので桔梗と誰かですね……


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51

またまたイチャイチャものです。本編の話よりかはこちらのほうが書きやすかったりしますね

そして今回は……


桔梗SIDE

 

バーテックスが襲撃してきたため、僕らは戦っていた。

 

「ハァ!!」

 

大鎌で星屑を切り裂いていく中、後ろで援護していた須美が近寄ってきた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だけど……どうかしたのか?」

 

「いえ、ただその……桔梗さんの動きが何だか悪い気がして……」

 

動きが悪い?特に調子が悪いってわけじゃないんだけどな……

そんなことを考えていると須美の後ろに星屑が現れた。咄嗟に僕は須美を突き飛ばし、大鎌を振ろうとした瞬間、右腕が壊れてしまった。

 

「なっ!?」

 

「桔梗さん!?」

 

須美が叫んだ瞬間、誰かが星屑を切り裂いてくれた。今のは……

 

「大丈夫ですか?桔梗さん」

 

「須美ちゃんも」

 

海と樹の二人が助けに入ってくれたのか、僕は二人に事情を話し戦闘から離脱するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いも無事に終わったみたいだけど……ちょっとした問題が発生した。

 

「義手の破損ですか……」

 

「あぁ大赦に連絡をしてほしんだけど……」

 

ひなたに頼んで義手の修理を大赦で出来ないか聞いてもらうことにした。この義手は元々は大赦が作ってくれたものだからもしかしたら修理できるかもって思った。

 

ひなたが連絡し終えると……

 

「とりあえず修理の方は出来ますが、その間戦闘、日常生活などに支障が出るのでは?」

 

「それはまぁ仕方ないと思ってるし、そこら辺は海に迷惑がかかるけど……」

 

「海くんでしたら忙しいみたいですよ」

 

「忙しいって?」

 

「ほら、この間の私との……」

 

ひなたは顔を真赤にさせていた。あぁそういえば赤嶺の仕業で手がくっついたんだっけ?

 

「海くんは赤嶺さんを探して怒ってやるって言ってましたから……戻ってくるのは遅くなりますね」

 

「それじゃ……どうするかな?」

 

「あ、あの桔梗さん!」

 

すると突然須美が大声を上げた。どうしたんだ?

 

「わ、私がお世話します!」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

須美の強い希望で義手が治るまでの間身の回りの世話をしてくれることになった。それにしても……

 

「お前、荷物多くないか?」

 

僕の部屋にやってきた須美は何故か大荷物を持ってやってきたのだった。

 

「義手がどれくらいで治るか分からないので泊まり込みで……」

 

「いや、海がいるから……」

 

「海さんには暫くの間別室に移動するようにってひなたさんが言ってくれましたから大丈夫です」

 

海の奴……何というか可哀想に……まぁこの間僕が追い出されたから仕方ないか……

 

「まずは夕食を作りますね」

 

「手伝おうか?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「お、おぉ」

 

きっぱり断られてしまった。さてどうしたものか……絵を書くのもこの腕じゃ大変だしな……折角だからこっちで描いてきた絵を見てるか……

 

 

 

 

しばらくしてから須美が夕食のうどんを作ってきた。

 

「おまたせしました。絵を見ていたんですか?」

 

「あぁ、こっちに来てから沢山描いたなって思って……」

 

「風景の絵ばっかりですね」

 

「まぁ誰かを書くっていうのは機会がないと……」

 

「でも素敵な絵です……ってうどんが伸びちゃいますから早く食べ……」

 

須美が突然何かに気が付いたみたいだった。一体どうしたんだ?

 

「ど、どうしましょう……その腕では……」

 

「あぁいやだいじょ……」

 

「待っていて下さい!」

 

須美が僕の器を取り、僕に向けて……

 

「あ、あーん」

 

「………」

 

いや、これはかなり恥ずかしんだけど……というか須美も恥ずかしがってるなら無理しなくていいのに……

 

「いや、これぐらいは……」

 

「駄目です!あ、あーん」

 

頑固だ……いやまぁ美森も頑固だったし……いやまぁ同一人物だから仕方ないんだけど……というかこうしてあーんをしてもらうのは美森にも……

ごめん、やってもらったけど、あいつは恥じらいとかなく普通にやってくるからな……

 

ここは諦めて僕は一口うどんを啜った。

 

「どうでしょうか?」

 

「美味しいよ。ただ須美、僕は左手でも食べられるぞ」

 

「へっ?」

 

「右腕が無くなって、義手ができるまでの間は左手でご飯を食べていたし……」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

ものすごい勢いで謝る須美、にしても本当に昔の美森は暴走しやすいな……いや今もだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食を済ませて僕はお風呂に入ることになった。まさかと思い一応扉に鍵を締めておいた。絶対アイツのことだ。背中を洗いに来るはずだと思った。

 

「気を使うのはいいことだけど……使われすぎるのはちょっとな……」

 

そう思いながらお風呂でのんびりしていると脱衣所の方から気配を感じた。すりガラス越しだけど須美が服を脱いでいる……いや待て、侵入は出来ないはずだ。鍵がかかっているのを知ったら諦めるはず……

 

ポンッ

 

精霊が浴室に出現

   ↓

鍵を開ける

   ↓

精霊が消える

   ↓

須美が入ってくる

 

「っておい!?」

 

「どうかしたんですか?」

 

「どうかって……」

 

「あぁ鍵は前に東郷さんから聞いた方法で……」

 

いや、不法侵入だからな。というか美森、精霊の扱いが上手いけどまさかと思うけど友奈の部屋とか侵入してないよな……

 

「お背中を流します」

 

「いや、大丈夫だから……」

 

「駄目です」

 

バスタオルを巻いた須美がそう言ってきた。だから色々とまずいからな……

 

「須美、はっきり言うが……気を使い過ぎだぞ」

 

「そ、それは……」

 

「今回の義手の件はお前が責任を感じることじゃないんだから……しっかり整備をしていなかった僕のせいでも……」

 

「そ、それでも……やっぱり原因は私なんですから……ちゃんとお詫びしないといけないと思って……でも迷惑だと思うのでしたら……帰ります」

 

泣きながら須美が浴室から出ていった。僕はすぐさま追いかけ、須美の腕を掴んだ。須美は必死に抵抗するとそのまま須美を押し倒す感じになってしまった。

 

「あ、あの……」

 

「あのな……迷惑だとは思ってないからな!」

 

「でも……」

 

「気を使い過ぎだから怒ったんだ。できることはやる。出来ないことはお前に頼むから……変に責任を感じすぎなんだよ」

 

「す、すみません……」

 

「とりあえず泣きやめ。泣き止んだら一旦着替えて……」

 

「………」

 

視線を感じ、二人で振り向くとそこには海、園子(小)銀の三人がいた。

 

「えっと……義手が届いたから届けに来たんだけど……」

 

「須美が迷惑をかけてないかと思ったんだけど……」

 

「二人のいちゃいちゃ邪魔しちゃったね~そのっちに言っておくから安心してね~」

 

三人はそう言い残して部屋を出ていった。須美は顔を真赤にさせたまま動かなかった。僕は海が持ってきた義手をはめ、

 

「寝るか」

 

「は、はい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

園子には後でお説教をすることになり、僕らは布団に入った。すると須美があることを聞いてきた。

 

「桔梗さん……今日はほんとうにごめんなさい」

 

「いや、気にするな」

 

「あ、あの…桔梗さんは元の世界では私たちと一緒にいたんですよね」

 

「あぁ……須美とはクラスメイトだったけど……」

 

「その、好きな人とかいたんですか?」

 

「好きな人……まぁいたっていうか……彼女がいるっていうか……」

 

「……そうですか」

 

本当の事を言いたいけど、変に気を使われるのは嫌だからやめておこう。ただ暗くてわからないけど何となく須美が落ち込んでいる気がした。

 

「須美……僕の初恋なんだけど……お前なんだ……」

 

「…………」

 

返事がない。もしかして寝ちゃったか?

 

 

 

 

 

 

 

須美SIDE

 

今のって聞き間違いじゃないよね……だとしたら桔梗さんの初恋は私?

それって……

 

ど、どうしよう。それにもしかしたらお付き合いしているのは東郷さんだということは私と将来的に……

 

「桔梗さん……」

 

名前を呼ぶけど完全に眠っている。私は何を考えたのかそっと桔梗さんにキスをした。

 

「私のこと幸せにしてくださいね」

 

 




もうこれからはイチャラブを書いたほうがいいかもしれないですね。後で章の方を付けておきます。

次回は桔梗で、国土亜弥か千景にするか、海で杏か樹でも書こうかと思います


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コラボ回
52


今回は、せっかくのリリスパとのコラボイベントのため、コラボ回になります


海SIDE

 

ある日の僕らは樹海でバーテックス討伐をしていた。

 

「今回は特に赤嶺が出てきたりしないな」

 

「あら、残念そうね。海」

 

「先輩、からかわないでくださいよ」

 

敵を撃退していくとある違和感を感じた。それは芽吹も気がついた。

 

「敵が団子状に集まっている……あそこに何かあるのかしら?」

 

「アンビリバボー!?誰かが戦ってる」

 

もしかしてまた誰かが召喚されたって言うことか?だとしたら……

 

「助けに行きましょう」

 

「海、当たり前のことを言わないの」

 

 

 

 

 

 

僕らはバーテックスが集まっている所に行くと、見知らぬ女の子たちが襲われていた。

 

「勇者パーーンチ!!」

 

友奈は直ぐ様助けに入ったけど、この子達は誰なんだ?

 

「あ、あれ?誰?」

 

「大丈夫?私、結城友奈です」

 

「あ、源モモです」

 

「百地、本名を名乗るのはダメよ。誰かはわからないけど、相手が姿を表した以上は!!」

 

「えっ?」

 

何か思いっきり勘違いしてるな。片目の子が友奈に向かって刀を抜いた瞬間、僕は咄嗟にワイヤーで片目の子の腕を縛り上げた。

 

「とりあえず落ち着いてくれないかな?」

 

「ワイヤー!?それにこれは……」

 

「師匠!?ハァ!!」

 

今度はモモって子が襲ってきた。すると若葉さんが僕の前に出て攻撃を防いでくれた。

 

「まずは話を聞いてくれないか?私達は敵じゃない」

 

「えっ?」

 

「敵じゃないって……」

 

「あの化物みたいな奴らの親玉じゃないの?」

 

黒髪の子とオレンジ髪のサイドテールの子は冷静みたいだった。

 

「敵じゃないって……」

 

「楓ちゃん、ここは私が」

 

するとモモって子が友奈に近寄り……

 

「失礼します」

 

突然手をなめ始めた。というか何で舐めてるの?というかそんな事をしたら……

 

「…………」

 

東郷から思いっきり殺気を感じるんだけど……とりあえず東郷を押さえつけるように珠子さんにアイコンタクトを送るのであった。

 

「師匠、この子達は嘘はついていないです」

 

「そうか……」

 

「今ので分かるの?」

 

「はい、私は人の肌を舐めるとその人の体調が分かるので……」

 

特殊能力的なものか……どっかの騎士が見たら、大喜びで舐めてくれって頼み込みそうだな……

 

「とりあえず色々と話をしたいんだけど……」

 

「そうね……見る限りじゃ勇者じゃないみたいだし」

 

「勇者?私達はツキカゲだが……」

 

そこら辺の詳しい話をしておくべきだしね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室に戻り、ひなたお姉ちゃんたちに何かしらの神託が来ていないか確認を取ると……

 

「特にはないですが……」

 

「イレギュラー的なものですね」

 

「姫野さんみたいな感じでしょうか?」

 

「にしてはこの子達は特には変わった力を持っていないけどね」

 

まぁ姫野さんと比べたらだけど……とりあえずお互いの自己紹介を済ませ、片目の人……半蔵門 雪さん、眼鏡の人……青葉 初芽さん、サイドテールの人……八千代 命さん、黒髪の子……石川 五恵さん、背の低い子……相模 楓さん、あとはモモさん……みんな高校生で、僕ら勇者とは違い、一応一般人みたいだな

 

「つまりここは四国で……未来だということか……」

 

雪さんが説明を聞き、それとなく理解はしてくれた。まぁ四国以外はないとかは伝えてないけど……

 

「まぁ色々と複雑な世界だったりするけどね。ちなみに、海、桔梗、姫野たちはこの子たちのことは?」

 

「「「知らない」」」

 

知り合いってわけじゃないし、本当に別の世界から来たみたいだけど……

 

「神樹様からの神託があればいいのですが……」

 

「いや、もっといい方法があるぞ」

 

桔梗さんは何かを思いついたみたいだけど……あぁこういうときに便利な人がいたな……

 

「天の神ですね」

 

「あぁ彼女だったらね」

 

「「「「「?」」」」」

 

 



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53

桔梗SIDE

 

突然現れたツキカゲの一行。彼女たちがなぜ召喚されたのか分からないため、そこら辺、詳しそうな天の神に聞いてみようという話なったけど……

 

「桔梗さん、どうやって呼び出すんですか?」

 

「そこら辺考えてなかった……」

 

「それだったら私が呼び出してみるわ」

 

四葉はそう言って、何か唱えた。それを見てツキカゲの一行は……

 

「あの人達、神様を呼び出すって……」

 

「何者なのかしら?」

 

「私達をからかってる?」

 

モモ、楓、五恵の三人が思いっきり疑いの目で僕らのことを見つめている。するとひなたは……

 

「彼らの場合は私達とはちょっと違うので……」

 

ひなた、その言い方は別の意味に聞こえるからな……四葉は唱え終えると……

 

「すぐに来るって」

 

笑顔でそう告げた瞬間、雪、初芽、命の後ろに一人の少女が突然現れた

 

「全く人を急に呼び出すなんて……私だって暇じゃないんだけど」

 

どこからともなくやってきた天の神。それを見て雪達は咄嗟に武器を構えた。

 

「こいつ、気配もなく……」

 

「この部屋には隠し通路などはなかったはずですが……」

 

「何者なの?」

 

「見知らぬ少女たちにいきなり武器を構えられるとは……驚きだわ」

 

「ちょっと落ち着いてください。私が説明します」

 

ひなたが天の神に事情を説明すると……

 

「なるほどね……西暦世界からやってきた子たちね……見た感じでは勇者ではないみたいね」

 

「何で彼女たちがここにやってきたのか知りたいんだけど、なにか分かるか?」

 

「そうね……神樹の方もちょこっと聞いてみるわ」

 

天の神はそう言って姿を消し、すぐに戻ってきた

 

「聞いてきたわよ。どうにもこの世界に不穏分子がいるみたいでね。勇者たちでは対応が難しいみたいだから、彼女たちを呼んだみたいなの」

 

なんだか軽い感じで言われたんだけど、不穏分子って……

 

「まぁもしも手が足りなかったら、こっちで勝手に色々と連れてくるから~それじゃ」

 

天の神はそう言い残して姿を消すのであった。

ツキカゲメンバーはそんな天の神を見て、ただただ呆然としていた。

 

「何というか……自由ね」

 

「まぁあいつは色々とあって、位が他の神様より上になってるからな……」

 

「だがやつが言っていた私達じゃ対応が難しいという言葉が気になるが……」

 

「勇者にできないことを彼女たちが?」

 

若葉と千景の二人がそういう中、雪はあることを告げた。

 

「私の中での想定だが……君たちは諜報活動や対人戦などの経験は?」

 

「「ちょーほー?」」

 

歌野と銀の反応は当たり前だな。僕らの場合はバーテックス退治しかしていなかったから、そういったことは不慣れだ

 

「海、お前の方は?」

 

「僕も似た感じですよ。そういった事をしていた人は知ってるけど……」

 

「クリスおばちゃんだね」

 

「あの人の場合は……諜報というべきでしょうか……」

 

とりあえず、みんなはそういった経験がないみたいだな。僕らはツキカゲメンバーに協力して、その不穏分子について調べることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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54

桔梗SIDE

 

それぞれ分かれて不穏分子を探すことになった。僕は、小学生トリオ、友海、牡丹、命、楓と行動することになった。

 

「何組かに分かれて行動するのは良いとして、なぜ私達は、商店街に?」

 

「敵の手がかりが全く無いって言うからよ。諜報活動の基本は、街での聞き込みからだからね」

 

まぁなんとなく分かる気がするな。情報を得るためにはまずは聞き込みをしないと分からないことが多いからな

 

とりあえず改めて自己紹介をすることになった僕ら

 

「神宮桔梗」

 

「私は三ノ輪銀っす」

 

「鷲尾須美です」

 

「乃木園子(小)で~す」

 

「上里友海です」

 

「東郷牡丹って言います」

 

「小?そういえばサイズ違いの同じ顔がいたけど、三姉妹なの?」

 

命がそう言うけど、姉妹じゃないからな。というか知らない人間からしてみれば姉妹に見えなくもないけど……

 

「え~と、はい~そのような感じです~えへへ~三姉妹~」

 

姉妹って感じでいいのかよ……

 

「そんじゃ、長女、次女、三女って感じだね。了解、そういえば須美くんと牡丹くんも似た顔の人がいるね。お姉さん?」

 

「えっと……東郷さんのことですよね。姉妹というか……」

 

「何と言いますか……」

 

「苗字が違う……師匠、もうその話題は……聞いたら色々と……」

 

思いっきり誤解されてるけど、これ、本当に大丈夫か?

 

「お父様、どうしましょう?」

 

「まぁ全部話すと一気に混乱するから止めておこう……」

 

「そうですね……」

 

一旦誤解を解くことは諦める僕、須美、牡丹の三人であった。すると命と楓の二人は八百屋を見つけて、聞き込みを始めるのであった。

 

聞き込みをしている二人。引っ越してきたばっかりの姉妹という設定だけど、中々のものだった……これが諜報活動に特化した人間なのか……

 

すると小学生三人も混ざり始めたけど、あれって、邪魔になってないか?

 

「牡丹パパ、私達はどうする?」

 

「まぁどうするって言われても……」

 

「皆さん、戻ってきたみたいですね」

 

聞き込みを終えた一同、話を聞く限り、どうにも妙な男たちが野菜の流通について聞いてきたみたいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫野SIDE

 

私、若葉ちゃん、歌野ちゃん、雪華ちゃん、棗ちゃん、初芽さん、五恵さんで港方面の調査を行っていた。

 

瀬戸大橋が無い以上は陸路、空路での移動などは無理と判断し、残った海路で聞き込みを行うことになった。

 

「にしても園子ちゃんが言ってたけど、悪いことを企む人がいないっていうのは以外ね」

 

西暦時代ではそういうことをするような人がいたけど、神世紀の人たちからしてみれば、悪巧みをする人は噂程度のものらしい。

これも時代の違いなのかしら……

 

「姫野さんは何というか他の人達とは違う感じがするのはどうしてでしょうか?」

 

初芽さんがそんな事を聞いてきた。正直神様的な存在だからといって信用してもらうかどうか……

 

「まぁ私、桔梗、海、灯華、友海、牡丹は友奈ちゃんたちがいた世界とは全く違う世界から来たからね……色々と経験しているのよ」

 

「違う世界……平行世界ということですか……」

 

「理解が早くて助かるわ」

 

平行世界とはいえ、もしかしたらバーテックスの侵略がない世界があったかもしれない……それだったら私達はどんな風に暮らしていたのかしら?

 

とりあえず聞き込みをしに五恵さんが向かい、漁師の人に聞き込みを行うと、どうにも黒い服の男たちが潮の流れについて聞いてきた。

 

その不穏分子は何を企んでいるのかしら?

 

 

 

 



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55

海SIDE

 

僕、友奈、東郷、そのっち、雪さん、モモさんと一緒にショッピングモールに来ていた。

 

「何でショッピングモール?」

 

「こういった人が集まる場所なら情報が集まりやすい。それにちょっとした不審な行動をしているものも見つかるかもしれない」

 

不審な行動か……見る限りはみんな普通な感じだけど、するとそのっちがあることに気がついた

 

「それだったらあの人達かな?」

 

そのっちが指を指したほうを見るとそこには黒服の男が歩き回っては立ち止まり、メモをしている。確かに怪しい気がするけど……

 

「もしかしてお仲間かな~」

 

「仲間って勇者の?」

 

モモさん、そのっちの言う仲間は意味が違うんだけど……すると雪さんが確かめに行き、男の一人にぶつかり、ころんだ。すると男は雪さんを助けようとせず、すぐにその場を立ち去り、代わりに周りにいた人たちが雪さんを助けに入った。

その隙にモモさんが直ぐ様男を追いかけていった。

 

「一瞬でいなくなったよ!」

 

「そういったプロだからじゃないかな?」

 

「あとはモモの帰りを待つだけだが、さっきのでわかったことがある。この世界の人々はみんな優しい……」

 

「まぁ基本的には悪人っていうのはいないからな」

 

とはいえ悪人がいないからとはいえ、ちょっとした考えの違いがあるからな……

しばらくしてモモさんが戻ってきた。モモさんは不思議そうな顔をしていた。

 

「すみません。師匠。尾行に失敗したのですけど、友奈ちゃんは……一緒にいました?」

 

「あぁ、いたが」

 

「さっきの男たちが友奈ちゃんと似た子と話していたんですが……」

 

友奈と似た子?それに怪しい奴らと話していると言うと……

 

「もしかしたら……」

 

「あぁ、一度戻るぞ」

 

とりあえず僕らは一旦部室に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室に戻るとモモさんは友奈さんに話を聞いていた。

 

「えっ?私はそんなところに行ってないよ」

 

「でも確かにこの目で……」

 

友奈さんを疑っているみたいだけど、まぁツキカゲメンバーは彼女のことを知らないからな……

 

「モモ……」

 

「はい、失礼します」

 

モモさんは友奈さんの首筋を舐めた。その瞬間、千景さんから殺気が漏れ出した。

 

「……海」

 

「はいはい」

 

僕は先輩に頼まれ、千景さんをワイヤーで縛り上げた。

 

「ちょっと離しなさい!あの女……」

 

「良いからおとなしくしてましょう。千景さん」

 

この場で暴れだしたら、部室が倒壊しかけないからな……

 

モモさんが確かめた結果、嘘はついてないことが分かった。

 

「でも友奈ちゃんにそっくりな子がいた事は真実です」

 

「……だとしたら赤嶺だろ」

 

「またなにか企んでるのか?」

 

「赤嶺?というかそっくりなやつがまだいるの」

 

楓さんがそんな事を言うけど、まぁそういった世界だから仕方ないことなんだけど……

 

「初芽」

 

「はい、パソコンをお借りしてもいいですか?」

 

「いいですけど、何を?」

 

「さっき男と接触した際に小型の発振器をつけておいた。これを使って居場所を確認すれば……」

 

初芽さんがパソコンで居場所の確認をしていると、その場所が判明した。そこは……

 

「ここって、大赦……どうして……」

 

不穏分子の居場所が大赦にいるという事を知り、亜弥はショックを受けていた。でも他のメンバーも

 

「待って、隠し事はするけど基本的には世界平和を願う団体よ!」

 

「僕と灯華がいた世界ではちょっと違うけどな」

 

「はい、色々とやばいことをしようとした人がいましたから……」

 

桔梗さんたちはそう言うけど、とりあえずこっちではそういう事を考える人はいないかもしれない

 

とりあえず今後どうするか話し合うことになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話し合いをしているうちにバーテックスが出現し、僕らは戦うことになったが、ツキカゲメンバーの協力を得て、何とか撃退し、例の不穏分子が0時に大橋の近くに集まると情報得た僕らは、大橋に来ていた。

 

「見つけた!」

 

大橋にたどり着くと、赤嶺と神官数名が集まっているのを見つめた。

 

「あれ?どうしてここに?」

 

「あ、あなたは初代勇者!?乃木若葉様!?」

 

神官たちが若葉さんを見て、ひざまついていた。何というか初代勇者ってだけで凄いな……

 

「勇者全員……どうしてここに?」

 

「お前の悪巧みもここまでだ」

 

「悪巧み?これはただのパーティーだよ」

 

明らかにパーティーには見えないんだけど……

 

「赤嶺ちゃん、本当のことを言って、私達はちゃんと調査をしたんだよ」

 

「調査?それこそ嘘じゃない?あなた達にはそんなことできないはずだけど」

 

「なんでよ!」

 

「脳筋だから」

 

赤嶺の言葉がその場にいたほぼ全員に突き刺さっていた。いやまぁ確かに脳筋はおおいけど……

 

「私達がその調査を行ったんだ」

 

「誰?新しい勇者が来たことは聞いてないけど」

 

「勇者ではなくツキカゲだ。諜報活動に関しては特化しているつもりだ」

 

雪さんがそう言うと、赤嶺が驚いた顔をしていた。

 

「なるほどね。確かにそういったことが得意な人がいたらバレちゃうか。でも私は悪いことはしてないよ。調査したのならわかってるよね。食料の流通とかそういった些細なことしか調べてないよ」

 

確かにここまでの調べた結果はそういうものだったけど……言われてみれば悪いことは……

 

「いや、僕と灯華には覚えがある」

 

「そういうことの裏で、何か企んでいるんだよね。もしかして世界の真実をみんなに教えるとか」

 

「……あぁなるほどね。君たちはそうだったね。それ正解だよ。境界の世界から来た人たち。でも勇者たちには神官たちを攻撃することはできないよ」

 

「……僕らだと攻撃したら殺しちゃうからか」

 

「加減とかできないよね。それに桔梗くんや海くんに対しては女性神官は攻撃はできないよね。何せ、男女平等主義みたいなものを持ってるから」

 

「くっ!?」

 

みんながうかつに動けない中、僕はというと、ちょっと後ろに下がり、軽く跳んでいた。

 

「あの何してるの?」

 

五恵さんが僕の行動を疑問に思っていた。僕はと言うと……

 

「ん?ちょっと準備体操をして……」

 

とりあえず僕は思いっきり駆け出し、女性神官に思いっきりドロップキックを喰らわした。

それを見たその場にいた全員は……

 

『えぇーーーー』

 

思いっきり引かれていた。すると友海と牡丹は

 

「パパ、やって大丈夫?」

 

「多少加減に失敗するかもしれないですけど、骨折程度ですから大丈夫ですよね」

 

「あぁ」

 

「いや、海くん、何をしてるの?女性相手に手を挙げるなんて」

 

「いや、赤嶺は知らないのか?だったら教えてやるよ。ある人が教えてくれたんだ。真の男女平等主義者なら女性に対してドロップキックをぶちかませって」

 

「……忘れてたよ。あの人のことを思いっきり信頼してたんだっけ?」

 

「と、とりあえず海、友海、牡丹は対人戦になれているなら、協力する」

 

「分かりました。雪さん」

 

「はぁ、何だか面倒事になってきたね。とりあえず私はここで逃げるかな……」

 

逃げようとした赤嶺をモモさんが咄嗟に手を掴み、舐めた。

 

「ひゃ!?何?」

 

「……赤嶺ちゃん、もしかして……」

 

「もうここで撤退」

 

とりあえず僕らは残った神官をボコボコにするのであった。



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56

今回でコラボ回は終わりとなります


桔梗SIDE

 

赤嶺の企みを打ち破った僕らとツキカゲ一同。

 

神樹からの神託で、ツキカゲたちはもう少しで帰るとのことで、各々遊んでいた。

 

僕はというと一人で絵を書いていた。

 

「やっぱり渡したほうがいいか……」

 

記念ということでツキカゲメンバーの絵を書いたけど、前に雪華からある話をされた。

記憶や持ち物は帰還した際に持って帰れるのかどうかということを……

 

「さてどうしたものか……」

 

一人で悩んでいると不意に誰かに声をかけられた。

 

「こんな所で何をしているの?」

 

「モモさんこそ」

 

てっきり夏凜たちと模擬戦をしている雪さんを応援していると思ってたんだけど……

 

「ちょっと休憩時間になったんで、外を見に行こうと思ったら見かけたの」

 

「そっか……」

 

モモさんは興味深そうに僕のスケッチブックを見ていた。

 

「絵を書くの好きなの?」

 

「まぁリハビリに始めたのが、今は趣味になってるくらいだから……」

 

「リハビリ?」

 

「諜報活動が得意な割には気が付かなかったのか?」

 

僕は義手を見せた。てっきり人とは違う音がするとか感じ取れると思ってたんだけど……

 

「う~ん、言い訳をするなって師匠に怒られちゃうけど、まだまだ未熟だから……」

 

未熟とか関係あるのか?まぁいいか

 

「そういえば東郷さんたちから聞いたけど、桔梗くん、海くんは特殊な方法で勇者になったんだっけ?」

 

「まぁそんな感じかな?僕はある人が願ったおかげで……」

 

海の場合は一度死んでからなってるっていうのは言えないけど……

 

「そっか……でも桔梗くんたちはみんなのためにがんばれているんだね」

 

「モモさんだってそうじゃないのか?町の人達のためにってツキカゲとして頑張ってるんじゃないのか?」

 

僕がそう告げると、何故かモモさんは嬉しそうにしていた。

 

「そうだよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

僕は何故か初芽さんと話をしていた。初芽さん曰く何故か僕の名前に惹かれるものがあるらしい。因みに東郷は声に惹かれてるとか……

 

「なるほど、海くんの世界ではスキルというものがあって、いろいろと覚えられるんですね」

 

「まぁそうなりますね。魔法とかもそういった感じで……」

 

「魔法ですか……何だか興味が尽きません。一度でいいからそちらの世界に行ってみたいですね」

 

何だか楽しそうにしている初芽さん。本当に興味があるんだな……

 

「でも僕の場合はちょっと変わってるから……諜報活動に向いているのは盗賊職とかですけど……」

 

「なるほど……でも海ちゃ……くんは身体能力とかいいので、ある程度指南すればすぐに対応できますよ」

 

何だかいま『ちゃん付け』しようとしてなかったか?でもそういった技術を覚えるのは良いことかもしれないな

 

「それじゃちょっと指南、お願いできますか?」

 

「いいですよ」

 

僕は初芽さんからスパイの指南を覚えることになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからみんなでカレーを食べたり、お別れ会を開いたりとして、ツキカゲのメンバーの帰還する時間となった。

 

「モモさん、帰ったらでいいけど……」

 

「はい、ちゃんと渡しますね」

 

モモさんは桔梗さんから何かしらの封筒をもらったみたいだけど、もしかして絵かな?

 

「ある程度の指南をしましたけど、海くんなら大丈夫そうですね」

 

「ありがとうございます。活かせることができたら活かしてみせます」

 

僕らもそれぞれお別れを告げる中、モモさんは友奈に何か耳打ちをし、帰っていったけど……

 

「あれ?何で私達こんな所に?」

 

何故かみんな、ツキカゲの人たちのことを忘れていた。これって……

 

「桔梗さん……」

 

「多分だけど忘れてしまうようになってるんだろうな。僕らの場合は……」

 

特殊な勇者だから覚えているって言うことでいいのかな?

 

 




コラボ回はここで終わりです。

また機会があったら更新するので、お楽しみに

因みに海の名前に初芽が惹かれたのは、あの作品ネタです



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最終章
57


最終章を書こうと思い、いろいろと飛ばしながらの話となります


始まりとしては誰が残るか誰が帰るべきかの選択の話となります


桔梗side

 

四国の地を全て奪還することができ、赤嶺とその協力者である四葉を捕縛したが、赤嶺から聞かされた世界の真実……そして元の世界に帰れば、この世界での出来事を忘れてしまうということ……

 

「まぁ記憶が消えないままでいられるのは、特殊な方法で召還された、桔梗君、海君、灯華ちゃん、姫野、四葉ちゃん、未来から来た二人だけだね」

 

「何で僕らだけ?」

 

「桔梗君たちはこの世界とは別の世界の人間。まぁ正直な話、神樹様や天の神、造反神とは別の神様の加護を大きく受けているからね」

 

「僕は加護を受けているわけじゃ……」

 

「天神刀。それが加護……ううん、天の神の力そのものなんだよ。だからこそ……」

 

天神刀……確かにそうかもしれないけど……

 

「姫野ちゃんたちはわかっているよね。元々そういった素質があるっていうことを……」

 

「えぇ、そうね」

 

「私も……そうですよね」

 

「海君は……」

 

「僕は精霊の影響が大きいってことだよな。何となくわかっていたけど……」

 

「あの、私は……」

 

「灯華ちゃんは新たな可能性を宿した存在だからね。神様に近いことをしたことが理由でね」

 

魔王システムのことか……あれも言うなれば神様に近づこうとした副産物みたいなものだよな

 

「それを踏まえたうえで、選択したほうがいいよ」

 

そして僕らはみんなの意見を聞くことになった。残るべきと決めたのは、高奈、千影、雪花、須美、園子(小)、勇者部面々、雀。

そして……

 

「私は神様みたいなもの。悪いけど、私はみんなの決定に従うから……」

 

「私もご先祖様と同じで……」

 

姫野の二人はそう告げた。この二人らしいというべきだろうか……

 

「私は……残りたい。できる限りのことがあるなら、最後までやれることをしてから……」

 

灯華は決意した顔でそう告げた。できる限りのことか……

 

「私は……残りたい。みんなのことを救いたいから……」

 

「でも友海、私たちは知ってるはずだよ。みんながやってきたことを……それが全部後悔してなかったことを……」

 

「変えられるなら、変えたいから……意見割れちゃったね。牡丹」

 

「うん、でも……」

 

未来から来た二人の選択も聞き終え、残ったのは僕と海だけか……

 

「僕は帰るべきだ。このままこの世界にいたら、ずっとここにいたいって思い始めて……いつか帰ることを忘れてしまうから……」

 

「桔梗……あんたらしい答えだね」

 

「海君、あなたは?」

 

赤嶺の問いかけに、海は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海side

 

「僕は残る」

 

僕の答えを聞き、桔梗さんは更に問いかけを続けた

 

「何でだ?」

 

「僕はこの場にいる勇者たちの運命を知っているし、誰がどのようにって言うことも知ってるからこそ……もしも記憶を残せる方法があるなら……最後まで探し続けたいから……」

 

「海……」

 

意見が割れてしまった。みんな、どうするべきか考え始めていると、赤嶺があることを告げた

 

「それだったら、お互いぶつかり合ったら?話し合いだけじゃ進まないならね」

 

「互いにぶつかり合って、消耗したところを狙うということじゃないだろうな」

 

若葉さんがそう言うけど、赤嶺は首を横に振った

 

「今更そういうことはしないよ。ただみんなならそうするだろうなって思ったんだよ」

 

ぶつかり合うか……たまにはそういうのも悪くはないな

 

「桔梗さん」

 

「あぁ、みんな、できればコレは僕と海の二人だけでやらしてほしい」

 

「あんたらが代表してって……」

 

「それで私たちが納得できるのかしら?」

 

「正直、どうなるか分からないけど、でもこれは僕らがやるべきことだから」

 

「みんな、悪いけど……」

 

「いいわ。あんたら二人に任せるわ。ただしどっちも本気でね」

 

「「はい」」

 

僕らが戦うことが決まると、赤嶺は指を鳴らした

 

「それだったらふさわしい場所で……普通の場所だとかなりやばいことになるからね……影響が出ないところで戦ってもらうよ」

 




海は西暦組と銀の最後を知っているからこそ、残りたいと願い、桔梗は忘れてしまうことを恐れているからこその選択です


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58

桔梗side

 

樹海で僕と海は向き合った。確かにここなら全力を出しても問題はないけど……

 

「みんなが見てる前か……」

 

「手加減とかできそうにないですね」

 

「する気だったのか?」

 

「まさか……本気でやりますよ!!借りますよ!!若葉さん!」

 

海は若葉の武器を取り出し、切りかかってくる。僕は槍で斬撃を防ぐ。本気でやるっていうことなら……

 

「槍とか銃とかじゃなく……こっちだろうな」

 

僕は大鎌を取り出し、陰のような姿で海を切りつけていった。海は先輩の大剣で攻撃を防いでいくが、僕は大きく振った瞬間、海の大剣を弾き飛ばした

 

「防ぐだけで……僕を倒せると思うなよ!!」

 

「倒せると思っていない!!借りますよ!!桔梗さん!!」

 

海は僕の鎌を取り出し、同じように陰になって、僕とぶつかり合った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海side

 

パパたちの戦い。お互い譲れないからこそのものなんだろうけど……

 

「パパ……」

 

私は心配でしょうがなかった。パパが無理をして倒れなければいいと思っていた。

 

「牡丹。ちゃんと見届けよう。お父様たちの……戦いを」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

海side

 

桔梗さんと何度もぶつかり合う。だけど明らかに僕のほうが押されている。僕の力は借り物の力。本来の使用者みたいに扱うことができない。

 

「それでも……僕は…」

 

「それでもお前は……どうしたいんだ!!」

 

桔梗さんは距離を置き、両手をかざした。手の先から力が集まっていく

 

「僕は辛い未来を知っているからこそ……変えたいんだ!どんな世界でも……」

 

「誰かがそれを望んでいるのか?望んでいないことでもお前は……」

 

望む望まないことは関係ない。僕がそうしたいから……

 

「天神刀!!」

 

真っ赤な刀から放たれる炎を僕は受けるのみだった。こんな所でまだ負けるつもりはない。だからこそ……

 

「はあああああああああああああああああああ!!」

 

体中から力があふれ出した。まだ僕は諦めない。最後まであがきたいから……

 

 

 

 

 

 

 

 

赤嶺side

 

海くんの姿が変わり始めた。あれは満開の姿?でも切り札を使ったときと似ている

 

「あの姿は……」

 

「待って、友海、あれって……」

 

「まだパパは行き着いてないのに……」

 

「ちょっと未来組は何か知ってるの?」

 

「あれはパパの全力の姿……全部混ぜ合わせた姿なの……」

 

まさか海君は……満開と切り札を混ぜ合わせた?海君は高嶋友奈の切り札と結城友奈の満開を混ぜた姿に変わり、桔梗君に迫った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗side

 

お互いの全力がぶつかり合い、爆発が起きると……僕はボロボロになりながらも立っていた。海は……

 

「……もう動けないですよ……」

 

倒れたまま、満足そうにしていた。お前の全力……見せてもらったよ

 

「決着でいいのか?」

 

「はい……」

 

海も満足そうにしている。お互いの気持ちも分かった。だからこそ海が出した答えがこれなんだろうな。

 

すると赤嶺が僕らのとこに来ると……

 

「海君、きっと運命は変えられるよ。この海君なら……見せてくれるはずだから……見られなかったものを」

 

赤嶺も満足にしていると、あることを告げた。

 

「みんなに全部話すね。今回の事件の真実を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室に戻ると赤嶺は語った。今回の事件の真実。それはいつか来るであろう出来事に向けての演習みたいなものだった。

 

「いつかくるかもしれない出来事?」

 

「それが何なのか分からないけど、造反神は元々造反なんてしてなかった。勇者たちを鍛えておきたかったんだよ。私はそう聞かされた」

 

「それじゃ赤嶺の世界の僕を復活させるって言うことは?」

 

「ちょっとした理由がほしかったからね……でもそれができたらいいかなって思っていたけど……」

 

全部神様が僕ら人類を試したって言うことか……

 

「でも見られてよかったよ。海君の可能性と桔梗君の本気を……これならあなたたちは運命を変えられる」

 

赤嶺は何だか嬉しそうにしていた。こいつの未来は一体どんなものなんだろうか?

 

すると地響きが鳴り響いた。

 

「最後の試練だよ。造反神に勝って見せて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕らは樹海へ行くとそこには円盤型のバーテックス。造反神。天の神を模した姿だ。

 

「本気の姿って言うことか?」

 

「だとしても僕らは負けるつもりはないですよ」

 

「そうだな……海!!」

 

「はい!!」

 

僕らは造反神へと向かっていくのであった。




次回、最終回となります


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59

海side

 

造反神の前に立つ僕ら。あの姿は天の神を模しているのか

 

「僕が知ってる天の神とは違う感じだけど、真の姿で良いのか?」

 

「桔梗君の知り合いの神様と同じではないかもね。世界によっては姿が違うし、違う存在だったりもするかもね」

 

赤嶺の言う通りだとしたら、僕はいつかあの姿の天の神と戦うかもしれない。

それならいい練習台だな

 

「最初から全力で行くぞ‼」

 

「全部終わらせます‼」

 

それから僕らは全力で戦いに挑み、造反神に力を示すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗side

 

造反神との戦いは僕らの勝利で終わった。僕らは戦いに勝利し、ちょっとした祝勝会をしている中、ある異変に気がついた

 

「牡丹、お前……」

 

「花びらに……」

 

「どうやら帰るみたいだね」

 

もう帰還する時間になったか。牡丹は少し寂しそうにしていたけど……

 

「また会えますよね」

 

「あぁ未来で……」

 

「きっと乗り越えられるはずです。私たちは見届けていましたから……」

 

「パパたちの未来を……まだあっちにいる私のこと、お願いね」

 

「任せろ」

 

満足そうな笑顔で帰っていく牡丹たち。すると今度は姫野二人だった。

 

「私たちはまだね」

 

「はい、まだ戦いが終わってないですけど……」

 

「ちゃんと全て守って見せようね」

 

「はい」

 

姫野たちの戦いは終わってないけど、この二人ならきっといつか……

 

「力を貸せたら貸すよ」

 

「こうして会えたんだからね」

 

「期待してるわ」

 

「短い間でしたけど、ありがとうございました」

 

姫野二人はそう告げて消えていった。そして次は……

 

「私だね」

 

灯華だった。てっきり一緒に帰ると思ったんだけど……

 

「私にも宿った力……魔王と勇者がいつか力を合わせられる日を待っています」

 

「待っているんじゃなくって、作り上げていこう」

 

「はい」

 

「灯華さん、きっと実現できますよ。魔王じゃなくって勇者のあなたなら」

 

「……はい」

 

灯華は笑顔で帰還し、残った僕らも花びらになっていく

 

「海、頑張れよ」

 

「はい。まだ僕の戦いは終わってないですからね」

 

「僕も訪れる未来を乗り越えてみせる」

 

「またいつか会いましょう」

 

「あぁ」

 

お互い握手をすると赤嶺が海に近寄った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海side

 

「海君」

 

「赤嶺……お前の世界の僕は……」

 

「海君は世界を捨てて、仲間のために戦ったんだよ。全てを出し切って……魂ごと消えていった。今から言うことは忘れてしまうかもしれない」

 

赤嶺は泣いていた。友奈と友奈さんがそっと寄り添った。

 

「大丈夫だよ」

 

「きっと海くんならね」

 

「うん、海君は仲間たちの言葉を聞こうとしなかった。だからこそ、ああいう未来になった。だから……仲間の声を聞いて」

 

「仲間の声を……」

 

「きっと力を貸してくれるから……そうでしょう?」

 

そうだよな。カズマさんたちならきっと力を貸してくれる。間違った道を歩んでも……手を引いてくれるはずだよな

 

「またいつか……会えたらいいな」

 

「そうだね……もしかしたらそっちの私が迷惑をかけるかもしれない。それに他の世界の勇者たちにも迷惑をかけるかもしれないけど……私はちゃんとした理由があるから……」

 

「あぁ」

 

僕は赤嶺と握手を交わした。

 

「未来でも見せてね。海の全力を……そして救ってね……あの子達のことを……友奈を悲しませないでね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗side

 

元の世界に戻ったのか。僕は学校の屋上にいた。

 

「戻ってこれたんだな」

 

夢かと思っていたけど、ポケットの中に一枚の写真が入っていた。これは最後にみんなで撮った写真……

 

「夢じゃない……海、いつかまたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海side

 

ある日、屋敷で写真を見ていると、めぐみんが興味深そうにしていた。

 

「ウミ、その写絵は何ですか?」

 

「これか?これはある世界で撮った思い出の写真だよ」

 

「前に急にいなくなった時ですね。それにしてはユミとボタンが少し大きいですが………」

 

「まぁ、未来から助けてくれたんだよ」

 

「?」

 

めぐみんは何の事なのか分からないでいたけど、いつかちゃんと話そう。

 

そしてあの時、赤嶺に言われた言葉………忘れてしまったけど、何か大切な事だった。

 

「ちゃんと思い出さないとな」

 

じゃないといつか取り返しのつかないことが起きそうだな。

 

でも……

 

「何ですか?ウミ?」

 

僕には何だかんだ言って助けてくれる仲間がいる。だから大丈夫だよな

 




急ぎ足ですみません。海と桔梗はそれぞれの世界に戻りましたが、彼らのその後があの話に続きます。

桔梗は大切なものを取り戻すために

海は愛する人を助けるために


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きらめきの章
きらめきの章 プロローグ


海side

 

気がつくと夜の学校にいた。見覚えがある。

 

「讃州中学だよな」

 

普通なら何でこんな所にいるのとか、何が起きてるのかとか考えるべきなのだけど…………

 

「またあの天の神か?パシらされるな……」

 

ため息をつきながら、肩を落とす。ここ最近天の神にパシらされる事が多いから、またその類いだろうなと思っていると…………

 

「ここは…………」

 

光に包まれてやって来たのは桔梗さんだった。

 

「海、お前も…………って何か疲れてないか?」

 

「色々とあって…………因みに最後に会った時のこと覚えてますか?」

 

何でそんなことを聞くかと思うと、僕が来たのは桔梗さんの世界でのあの騒動、僕の世界の天の神がある人物に恐怖し、四国の外が戻り、新たな別世界での騒動に巻き込まれた後から来た。

 

「お前とは…………先輩との卒業式以来だな」

 

だとすれば互いに色々と乗り越えた後か

 

「とりあえず他に誰かいないか探そう」

 

「ですね。その前に事情を聞きませんか?」

 

「事情?」

 

「大体の原因と言うか…………」

 

「失礼ね。私が全ての元凶みたいに」

 

突然現れたフードの少女。桔梗さんの世界の天の神。神としてのランクが高いため、自由に動いている。

 

「何か知ってるのか?」

 

「えぇ、この世界の中立神に頼まれてね」

 

中立神。聞いた覚えがある。天の神、神樹、造反神に並ぶ神。中立の立場のはずだけど…………

 

「また試練みたいなものか?」

 

「えぇ、そして改めて見てみたいらしいわよ。彼女達の力を、そして貴方達の運命を変える存在の力をね。まぁ、巻き込まれた人が数人いると思うけどね。貴方達の娘や同一の人が、そして別の世界戦の娘とかね」

 

天の神はそう言いながら消えていく。そして気がつくと僕らの手にはあの神の力が宿る刀が握られていた

 

「必要なら使えか」

 

「そうみたいですね」

 

にしてもまた巻き込まれているのかあの二人は…………でも同一の存在と別の世界線の娘…………何かやな予感がする

 

「あっ、海くん」

 

「きょう。貴方たちも来ていたのね」

 

すると向こうから友奈さんと千景さんがこっちに向かってきた。

 

「久しぶり…………でいいのか?」

 

「友奈さんたちからしてみたら、違うと思いますよ」

 

「どういうこと?」

 

「貴方たちはまた特殊な召喚で来たみたいね。みんな来てるわよ。それと海に会いたがってる子がいるわ」

 

「海に?」

 

何だろう?予感が的中してる気が…………

 

 

 

 

 

 

 

 

部室に行くと勇者部のみんなが集まっていた。その中には友海、牡丹の二人。そして見覚えのある二人がいた

 

「海お兄ちゃん、お久しぶりです」

 

「そのお兄ちゃんは止めろ。海」

 

「パパ~」

 

同一の存在と別の世線の娘はやっぱりこの二人か

 

「あんたらも来てたのねって言いたいけど、海、事情を話して貰うわよ。特にみゆのこと」

 

風先輩がそう言う中、そのっちが顔を赤くしていた

 

「ね、ねぇカイくん。この子が言う事、本当~」

 

「それに友海ちゃんと牡丹ちゃんの事も改めて聞いていいかしら?」

 

詰め寄る東郷。話したいけどややこしいんだけど…………



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01 再会とその後の説明

牡丹side

 

気がつくと勇者部の部室に来ていた。何が起きているのか分からないけど、もしかして前の造反神の関係かと思った。

 

「牡丹と友海の二人も来たみたいね」

 

「うん、お久しぶりです」

 

友海がそう言うけど、久しぶりでいいのかな?こっちのみんなは前回からどれくらいの時間が経っているんだろう?

 

「二人からしてみれば、久しぶり…………二人と言うより特殊組はだね」

 

「赤嶺さん、久しぶり」

 

赤嶺さんもいるけど、今回は味方側らしい。

 

するとまばゆい光が現れ、そこから二人の少女が現れた。一人はお父様の世界の友海の父親…………上里海(女子)ともう一人は…………みゆ!?

 

「ここは…………なるほど以前聞いた造反神の…………」

 

「んん、あれここどこ?」

 

「新しい子達だね。赤嶺ちゃんの知りあい?」

 

「ううん、見覚えがないね」

 

「お二人は知り合いですか?」

 

ひなたさんがそう訪ねてきた。私は説明しようとした瞬間、みゆが…………

 

「ママ~」

 

園子さんに抱きついてそんなことを言った。私と友海は固まった。

 

「ママ?えっと誰かと間違えてない~」

 

「ううん、ママだよね。こっちの人は友海お姉ちゃんのママだよね」

 

友奈おば様を指差してそう告げるみゆ。みゆの発言で私、友海、赤嶺さん、海さん以外の全員が固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗side

 

海から改めて友海達の事を聞くことになった。

聞き終えてかなりややこしい。

 

友海→海と結城友奈の娘。

 

牡丹→海の世界の僕と東郷の娘。

 

海(女子)→僕の世界の上里海。中一で大赦の巫女

 

みゆ→別の世界線で海と園子が結婚して出来た娘。勇者と巫女の素質を持ったハイブリッドな子

 

 

 

「えっと、ややこしいけど、海は色々と手を出してるってこと?」

 

「先輩、お願いですから変なことを言わないでください!!」

 

「にしてもお前たち特殊組は前の戦いから少し時間が経っている感じなのか?」

 

若葉の質問に僕は頷いた。僕は前の戦いの後、勇者部にとってかなりきつい戦いを経験している。あの時は海と海の仲間の助けがあってなんとか出来た。

 

「色々とあったけど、その色々のお陰で今は凄く平和だ」

 

「僕の方は桔梗さんみたいにきつい戦いは…………多くあったけど、色々とあって僕の世界の天の神はもう人類を襲うことは無くなったかな」

 

「お二人はかなり大変な思いをしたみたいですね。因みに海くんの言う天の神が人類を襲わないと言うのは?もしかしたら…………」

 

ひなたの言いたいことは分かる。もしもこの世界の記憶を維持できたら、自分達の時に活かせるかもしれない。

僕も気になっていた。海はどんな風に和解したのか…………

 

「………………あまり信じられないことかもしれないし、参考にできないですけど、僕の世界の天の神は、ある魔導師に恐れて、和解と言うか逃げたと言うか…………」

 

うん、意味が分からないけど、ある魔導師って…………あいつか?

 

「神が恐れる?」

 

ひなたも意味が分からないみたいだな。すると友海が手をあげて、

 

「私の師匠だよ。凄くかっこよくって、綺麗で大人っぽくって、パパが絶対的な信頼を得てる人だよ。街の人には神が恐れた存在って呼ばれてるよ」

 

「は、はぁ」

 

友海の説明で更に困惑してないか?と言うかあいつだよな。確かにあの時、天の神が作ったシステムに大ダメージ与えてるし…………

 

「詳しくは言えないけど、まぁ、神が恐れた魔導師がいるのは確かだね。友海と赤嶺が使ってる爆裂勇者パンチもそいつの影響だし」

 

「まぁ、あの子は極めてるからこそだね。でもあの子がそんな重要な鍵になってるなんてね…………」

 

赤嶺も知ってるのか…………

 

 

そういえばこの場にあの三人がいないけど、遅れてるのか?

そんなことを思っているとアラームが鳴り響いた。

 




あの三人は次回登場します。三人と言うか二人と一体と言うか…………

そして神が恐れた存在…………出すかどうか迷っています


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