この素晴らしい駄目神様にお祈りを! (与麻奴良 カクヤ)
しおりを挟む

126 私、自殺しまーす

サブタイトルの数字は気にしないでください。



く、苦しい。

なにこれ、回りが水だらけ?

い、息ができないよ。

 

気がついたら私は水の中にいた。

 

く、空気を早く。

 

何とか手足を動かしてこの場から脱出して口を開いて空気を吸い込むと自然と鳴き声が出た。

 

「おぎゃあぁぁ~~、おぎゃあぁ~~」

「生まれましたよ、クインローさん。元気な女の子です」

 

ぼんやりとしか聞こえないけど、そんな会話が聞こえて来た。

頑張って体を動かそうとするけど全然動かせない。

薄っすらとしか見えない視界には巨大に見える物に人。

 

ここまで見ていれば皆さんはお分かりいただけただろうか?

いや、誰に向かって話しているんだろう私。

まぁいい、そう私は前世の記憶を持ったまま転生したのだ!

 

 

 

 

その日、私は部屋で熱心に祈っていた。誰か様に。

 

何の変哲もない女子高生だった私は勉強が平均より少し劣る以外は普通。

そう思われていた。

親に怒られることもなく何一つ不自由のない生活を送って来た私はある日、自殺を決意した。

 

だってさぁ、この世界、つまんなくない?

ただ目的もなくひたすら周りとできるだけ合わせて生きていく日々、アニメや小説の世界みたいになにもない日常、そんなの面白くもない。

なんの意味もなくひたすら作業ゲーの様に生きてた毎日に私は唯一面白いと本気で思った物に出会った。

想像の世界だ。

 

それから毎日毎日どこにいても本を読んでその中の世界に憧れていた。

色々な本を読んでいくうちに此処とは違う世界のことを本気で信じて行った。

 

高校生も後半年で終わりって時に私はまだ進路を決めていなかった。

 

私の頭じゃ大学なんて夢のまた夢。

クラスメイトが「あぁ!!受験があぁぁぁ!!」って言ってるのを見てバカだなぁって思っていた私だ。

 

進学もしないなら就職か?と問われるとそれも違う。

親は小言を言って来るけど、就きたい職業なんてない。

 

あるにはあるがこの世界ではない職業、冒険者になりたかった。

学校の進路希望調査にも希望進路には『異世界』なりたい職業には『冒険者』って本気で書き何回も怒られた。

 

そして今、ネットのにちゃんねるや転生もの小説を読みあさった結果、自殺の決意をした。

 

先生に「そろそろ真面目に考えなさい」と言われたから真面目に考えた結果、『神様が私を異世界に呼んでくれないなら自分から会いに行けばいいじゃん』計画だ。

 

遺書にはちゃんと「異世界に行ってきます~」って書いたし転生知識も空っぽの頭に何とか詰め込んだ。

心残りはない!………………いやあったわ、まだ完結前の小説の続きがあぁぁぁぁ。

だがもう決めたんだ。

今で毎日、一日一回部屋に自作の神棚を作り祈った。

今日で七百七十七日目、こんなに異世界に転生に素晴らしい日はないだろう。

 

それでは異世界に転生させてくれる何か様、お願いします!!

 

即死ではなかった為じわじわと苦しみながら私は意識が遠のいて行った。

 

 

 

 

そして、再び目が覚めた時声が聞こえた。

 

「ようこそ、死後の世界へ」

 




次回は六日後に更新出来たらいいなぁ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

137 私の最上位は女神アクア様です!!

出来上がってあったのを学校に行く直前でチェック完了、投稿します。


 首を釣って痛い思いをしながら薄れた意識。

目覚めた時には真っ白な部屋の中に座っていた。

目の前には椅子に座っている透き通った水色の髪の毛を持ち、ラノベのイラストで見たことのある女神様の様に薄紫色の羽衣を羽織っている美少女は次の言葉を喋った。

 

「桂木由仁奈(ケイキユニナ)さん、ようこそ死後の世界へ。貴女はつい先ほど自らの手で命を終わらせました。短い生でしたが、貴女は死んだのです」

 

この言葉を聞いた瞬間、私は叫んでしまった。

 

「異・世・界・転・生っキタ~~~!!!!貴女様ですね、この私を異世界に転生させてくれるのは!!ありがとうございます、ありがとうございます。転生後もこの命が尽きるまで、尽きてさえも一生、お祈りを毎日、一日三回致します」

 

座っていた椅子から飛び上がりそのまま土下座、しっかりと頭を地面にこすりつけた。

 

私の奇行を目の当たりした美少女はというと。

 

「へ?ちょっちょっと、召喚した途端にこうも祈られるのは悪くないわねぇ。そうよ、私は日本において、若く死んだ人間を導く女神アクアよ!」

 

私にここまで祈られたのが嬉しいのか上機嫌で名前を名乗った、女神アクア様。

私は頭の中で最上位に位置する人物にこの女神アクア様をインプットした。

そんな時、アクア様にお聞きしたい事が出来た。

 

「あの、差しがましいのですが、私は元の世界ではいなかった事になるのでしょうか?」

 

転生物でよくある「お前は死んでしもうた、別の世界に生き返らせるが元の世界ではいなかった事になる」がどうなのか気になってアクア様にお聞きした。

 

「いいえ、現在貴女の死体を家族が発見し足元に落ちてた遺書を見て「何バカな事を……」と嘆いています。………っていうか、異世界に転生したが為に自殺をする女子高生って貴女、面白いことするわねぇ。プークスクスクス」

 

アクア様は私の死亡動機を見て笑った。

 

親ももっと嬉しそうにすればいいのにね。

私はこうして女神アクア様の御前にいる、娘の夢が叶ったって喜べばいいのに!

 

「さて、夢の為に自殺をした貴女には二つの選択肢があります。一つは人間として生まれ変わり新たな人生を歩か、もう一つは天国的な所に行っておじいちゃんみたいな暮らしをするか」

 

え?なにこの選択し?

一つ目は生まれ変わり、新たな人生と一見転生の様に思うけど記憶が無くなるって事だよね、却下!!

もう一つは転生でっすらない、勿論却下!!!

ここに来て私の夢は叶わないって事?

そんなの噓だぁ!!

 

先ほどの嬉しさと逆転して女神に文句を言いそうになる私の前に女神アクア様は救済の手を差し伸べてくれた。

 

「うんうん、そんな選択しなんて嫌だよね。そこで貴女の夢を叶えて差し上げましょう!」

「マジですか!!流石女神アクア様、他とはやることが違う!!」

 

差し伸べてくれたアクア様を持ち上げる。物理的ではないよ!

更に気分が良くなって行くアクア様は説明を始めた。

 

この辺は記憶力の乏しい私は覚えていない。

が要約したことはこうだ。

 

私が生きていた世界と別な世界、異世界にはファンタジーの定番ぽく魔王がいるそうだ。

その魔王軍の進行のせいで人間がピンチならしい。この辺もゲームでよくある設定。

そのせいで死んだ人間が生き返るのを拒否って人口の低下、人類滅亡の危機!。

そこで、他の世界の人を呼び送るのはどうか?ってなったそうだ。

ならどうせなら、若くして死んで未練たらたらな(まるで私の様な)人間を肉体と記憶をそのまま送り込むことにした。

それも、直ぐに死なない様に一つだけ好きなものを持っていける特典付き、正しく私が夢に見た異世界転生!!

 

アクア様の話しを聞いた私はアクア様を更に持ち上げる。もい一度言うが物理t(以下略)

 

「そう、それですよ!!アクア様、最高です!!!」

「貴女、さっきから私の事を崇めてばかりで……」

 

あ!何かまずかっただろうか?

 

「最高よ!!今まで送り込んだ人たちは皆流されるがままって感じだったけど貴女は初めから崇めてばかり、私がエライって分かってるじゃない!!」

「なんと!こんな幸運な出来事を受けてから崇めもしない輩がいるのですか!!」

 

そいつら、調子に乗ってんな。

向こうの世界で会ったら、〆とくか。

 

「ここまで崇めてくれる人は初めてよ!!決めた、本当は一つだけど貴女には二つ、向こうの世界に持っていける権利を与えるわ!!」

「女神、太っ腹!!」

 

なんと!!崇めるだけで良いことが起きた。

 

「さぁ、この中から選んでちょうだい!」

 

アクア様はカタログを渡してくる。

が私は受け取らなかった。

 

「アクア様、このカタログはあくまでも参考であって決めているものがありましたら、そちらでも構いませんか?」

「何何?言ってごらんなさい!」

 

アクア様は寛大にも聞いて下さった。

 

「それくらいなら全然問題ないわ、決定ね!他の人だと時間が掛かって面倒くさいったらありゃしない、やっぱり貴女は最高ね!」

 

転生を信じて特典を三年間掛けて決めていたのが特になった。

 

「では、この魔方陣から出ないようにね。桂木由仁奈さん、貴女をこれから異世界に送ります。無事、魔王を倒した暁には贈り物を授けましょう」

 

おぉ、魔方陣!

カッコイイ、ってあれ?

今重要な事が聞こえた。

 

「贈り物ですか?」

「そうです、世界を救った偉業にあった贈り物、例えどんな願い事でも叶えて差し上げましょう」

 

マジで!?

異世界に転生するって言う夢だけでなくてその後、元の世界で視れなかったラノベやアニメが見れる様にもする事ができるって事!!?

ほんっとアクア様様だね!!

 

「じゃあ、新しい人生でもお祈りをよろしくね♪」

「勿論です!!」

 

手でグッドを表して返事をした。

 

「さぁ、勇者よ。願わくば、数多の勇者候補の中から、貴女が魔王を打ち倒す事を祈っています。……さぁ、旅立ちなさい」

 

アクア様の声援を受けて私は魔方陣の明るい光に包みこまれた。

 

 




次回は何時になるやら。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

171 紅魔族の里での暮らし、午前中

更新が三ヶ月以上空いてしまって申し訳ないです。
ゆになの日常その一です。


 あの私が自殺をし、女神アクア様と出逢い、転生から早十二年。特に語るべき事もなく、すくすくと成長していった。

 

 赤ちゃんからやり直しものだと、初めの数年は特に何もなくて何か変化起こるまで飛ばすよね!と言う、べたな展開で今まで特に代わり映えの無い日常を過ごしてきた。(本人にとって)

ではなぜ今になってこうも語っているのかと言うと、それはこれから私の物語が動き出すから。バン!!

 

 

 

 私はこの頃、ほぼ毎日ある場所へ朝から昼過ぎまで通っていた。

 

 

「………あるえ!」

「はい」

「かいかい!」

「はい」

「さきべりー!」

「はひ」

 

先生の出席確認に呼ばれた人は返事を返していく。

 

そう、前世でも十二年近く通っていた、学校だ。

普通の学校であったなら、私は直ぐに登校拒否になっていたが、この世界では違う。

 

先程から答える声は女子生徒のみ。

この学校では男女別のクラス分けになっている。

前世の女子高はこんな感じだったのだろうか?

私の前世は共学だったから分かんないや。

 

「めぐみん!」

「はい」

 

私の住む村の人たちは、人数が少ない代わりに、周りの人たちからは紅魔族と呼ばれ、目が赤い。

しかもなんと!!!紅魔族は名前からして分かる様に高い・・・

 

「ーな!、-にな!!、ーゆにな!」

「・・・・・・はい」

「何ふてくされてんだ!お前は!!まぁいい、全員揃ってるな!」

 

だって、これからという時に止めた、先生が悪いじゃないですか!

頭皮が薄くなって心配していることをクラス中に広めてやろうか!?

 

そんな事を考えている内に、最後のクラスメートの点呼も終わり、ホームルームが続く。

 

「それではテストの結果を発表する。三位以内にはいつも通り、『スキルアップポーション』を渡すから取りに来るように」

 

もうお気づきだろうか?

前世では一般的には聞きなれない物だが、私は頻繫によく目にしていた物、全てのゲームや小説ではないが当たり前のように存在するもの。

『スキルアップポーション』・・・その名も通り、技能を上げる薬だ。

 

そう、この世界ではモンスターが世界中に生息し、人々が魔王に苦しめられていると言うお約束ファンタジー世界。

あのクソ教師に遮られて言えなかったが紅魔族は高い知力と魔力を生まれつき備わっている!

 

私たち紅魔族が暮らす里は『紅魔の里』と呼ばれ、ある程度の年齢になるとこの学校で一般的な知識を学び、十二歳になると『アークウィザード』と呼ばれる上級魔法使いに就けられ、魔法の修業が開始する。

 

私が女神アクア様にお願いした通りの転生先だ。

異世界に行ったら、魔法を使いたいよね!

ここだと自然的に魔法使いになれるから最高。

 

私がいるクラスでは魔法が使える生徒は一人もいない。

落ちこぼれだとか、そういうのじゃない。

魔法を覚えたら卒業、ということになっている。

そのため、魔法を覚える為に必要なスキル、これは先ほど先生が言った『スキルアップポーション』を飲むか、モンスターを倒して経験値を得てレベルアップボーナスでスキルを取得するしか方法がない。

早く魔法を覚えたい者は勉強を頑張る。

 

もちろん私は・・・

 

「他の者もめぐみんを見習い、早く上級魔法を習得出来るよう、励むように!では授業を始める!」

 

テスト上位者になんか入れる訳がない。

 

先生の話を聞き流しながら、私の冒険者カードを見る。

 

 冒険者カードとは冒険者ギルドが登録時に発行している身分証明書のようなものであり、紅魔族の里では魔法を覚える為に学校で発行している。

 

カードには私の名前の他に、職業『アークウィザード』の文字。

レベルは4

その下にはスキルポイント25が表示されてある。

 

 更に下は初級から始まり、中級、上級魔法とスキルの一覧が見える。

習得できる初級と中級の文字は光っていて、ポイントが足りない上級魔法は薄暗い文字だ。

 

あと5ポイントで卒業出来る!

遅くても一ヶ月以内で上級魔法のポイントが貯まる。

 

「うひひひぃ」

「・・・ゆにな。お前、何気持ち悪く笑ってんだ?」

 

おぉっと!ついつい顔が緩んでしまった。

 

 

 

 

 

 その後、一時間目の授業と身体測定を乗り越えた。

 

身長も胸も前と殆ど変わらずだった。

同じクラスのめぐみんに比べたら、いくらかマシだと思うことにした。

けっして、あるえとは比べるか!!

 

すこ~しだけ、気分が堕落した後受けた二時間目

 

「お前らは、上級魔法こそ最強の魔法だと思っているだろうが・・・」

 

担任の先生がプリンを頬張りながら説明を続ける。

 

あーーープリンかぁ~~。

久しぶりに食べたいなぁ~。

あっ、上級魔法を覚え終わったら、ネタ魔法の爆裂魔法を習得しても面白いそうだなぁ。

 

 

三時間目は紅魔族にとって通り名がどれほど重要なことかを学んだ。

 

通り名か~。

大体決めているしな~。

 

こうして暇な座学も終わり、体育改め実践訓練の時間がやってきた。

と言っても戦闘前の通り名をカッコイイ名乗りを上げてポーズの研究に励むと言う内容。

 

ホントはモンスターを倒すとかやりたいのに。

まぁいいや。

さて、ペアを探さなきゃね。

 

と言っても大体決まっている。

 

あるえは・・・めぐみんとか、じゃあ今日はゆんゆんとか。

 

一人、ペアが作れずオロオロしているクラスメイトに話しかける。

 

「ゆんゆん!さぁ!私とカッコイイポーズの研究をしましょうか!!」

「ゆ、ゆになちゃん!あ、ありがとう」

 

ゆんゆんは村長の娘さんで文武両道で優秀なんだけど、紅魔族にしては珍しく、普通の感性を持っている変わり者で友達がいない。少ないのではなく、いない。大事なことなので二回言った!

私が時々、相手をしてあげている。

 

「それじゃあ私からいくよ!」

「うん!」

「我が名はゆにな!!紅魔族で唯一の禁術の使い手で、異世界より召喚されし者!!」

 

片手を腰に当て、もう一方の手でピースを作り、その間から片目が見える様にポーズをとる。

「はいチーズ」で撮るポーズだ。

 

「ゆ、ゆになちゃん、通り名で噓はいけないよぉう。あなたは禁術を使えないし、異世界から召喚された訳でもないでしょう!」

「ふっふっふっ、虚言ではない!我は禁術を操る事くらい、容易くこなせる。異世界から召喚されたのを黙っていたのは魔王軍を欺く為の罠だったのだ!!」

「おっ!ゆにな、いい名乗りじゃないか!スキルアップポーションをやろう。ゆんゆんもゆになの様にカッコイイ名乗りを期待しているぞ!!」

「せ、先生ぇ~」

 

先生からスキルアップポーションを貰い、私の番は終了。

 

「今度はゆんゆんの番ですよ。さぁ!私に村長の娘である実力を見せて下さい!!」

「わ、我が名はゆんゆん。や、やがては紅魔族の長となるもの・・・うぅ、やっぱり恥ずかしいよぉ」

 

ゆんゆんが片目を閉じ、恥ずかしそうに腕を交差させたポーズを私に見せてくる。

 

うん、ポーズはそれなりに出来ているけど、セリフがイマイチなんだよな~。「やがて紅魔族の長となるのも」ってのは確かにゆんゆんしか言えないことだけどな~」

「ゆになちゃん。声に出てるよぉ!」

 

へ?失敬、失敬。

それにしても、恥ずかしがってるゆんゆんは可愛いなぁ~。

 

その後は先生が演出しか考えずに降らした雨が土砂降りになり、授業は中止、私たちは急いで教室に戻った。

 

 

先生が自らの失敗を邪神に押しつけたお陰で、残りの授業が自習になって終わった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

194 紅魔族の里での暮らし、午後

お~ひ~さ~!


 学校が終わって、一日の半分が過ぎた。

 私は学校からそのまま、家には帰らずに森に入って行った。

 

 

 

 

 

 私の目の前で一撃熊が腕を振り回している。

 

 

 一撃熊とは紅魔族の里付近の森に生息している魔物である。名の通り、一撃で人の頭を刈り取ることが出来る強靭な前足が名前の由来名らしい。

 紅魔族の里は強力なモンスターの生息地に囲まれており、それをチャンスと見た私は女神様に貰ったチート魔法でモンスターを蹴散らしていた。

 

 

 一撃熊の攻撃を回避、回避、回避する。

 回避しながらも魔法の演唱を完成させた。

 

 

「グラビティ操作!天から地へ!!潰れろぉ!!」

 

 

 私の魔法が一撃熊を押し潰す。

 

 

 よし!今日も目標達成!!

 

 

 学校が終わってから夕食の時間までの数時間、私は森でレベリングをしていた。

 

 

 いやぁ。ここまで来るのに大変だった。

 冒険者カードを作ってから、何気に見ていたら初級魔法、中級魔法、上級魔法とは別に重力魔法というのが出ていた。

 そう、重力魔法!!私が女神アクア様に頼んで、貰った転生特典の一つだ。

 勿論、転生特典なので必要スキルポイントはゼロ!

 それからというもの、毎日コツコツと森に入り、魔法の練習。

 初めは威力が弱すぎたり、強すぎたりして大変だった。

 最近になってようやく、モンスターに合わせた重力をかけれるようになった。

 後は、さっさと上級魔法の必要スキルポイントを貯めて、学校を卒業するだけだ。

 因みに、重力魔法の事は誰にも知られていない。というか、禁術を操りし者とか言ってるけど、そういう設定だと思われている。別にいいけど!?いいけど!!??

 

 一日に魔力が半分になるまで。そう決めている私は、一撃熊と言う強敵出現による運のいいエンカウントを発動したせいか、魔力は残り半分まで後わずか。

 

 どうしよっか?雑魚モンスターを見つけるのも怠いしなぁ。今日は帰ろっか?

 

 悩んだ末、今日は帰ることに決めた。

 

 毎日コツコツとすることが大きな成果に繋がるだ!

 そう私は信じている。

 実際に、祈りを続けた結果が今の私だから!

 今日の晩御飯は何かな?楽しみだな!!

 

 こうして今日も今日とて、帰路に着く私だった。

 

 

 

 

 

「たっだいまぁっ!」

「おかえりなさい、ユニナ」

 

 私の家はお母さんと私の二人で住んでいる。

 お父さんは冒険者で魔王軍と戦う為に日々、世界中を駆け巡っているらしい。らしいというの、時々手紙は来るものの、私はお父さんにあったことがなかった。

 お元気ですかー!?いつか、一緒に冒険をしたいと思ってます。

 

「今日の晩御飯はなんと!お母さんの大好物、カモネギのネギ料理で~す!」

「やった!!って!!私の大好物じゃなくてお母さんの大好物!?そう来たか!!ならば、明日こそは私の大好物にしてもううからね!」

「残念でした~!明日の献立も決めてありますよ~だ!」

「ちっ!」

「あ!舌打ちした!悪い子にはお仕置きよ!」

「っ!!い、いらいれふ!!わかっらわかっらはら!!ほめんなはいぃ!」

 

 今日の夜は頬っぺたがヒリヒリして痛かったです。

 全く!私のお母さんは私から見ても子供みたい人だ。

 日常生活が楽しいからいいんだけどね!

 

 こうして私の一日は終わる。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

201 運命の再会

 ちょうお久しぶりです。

 暗殺教室の方を終わらせてから中々時間が取れずにいました。

 新生活が始まってバタバタしていますので次話も遅くなります。


「はっはっはっは!!前回の続きと思ったか!!残念でした。飛ばしちゃいま~す!!」

 

ゆになが紅魔族の学校を卒業してから、一年程経っていた。

 

 町の真中で相手がいる訳でも無いのに大声で久しぶりのセリフを叫んだゆにな。当然周りからは奇妙な目で見られる。

 しかし、ゆになは気にしてない。流石、アクシズ教徒である。

 

 

 

 紅魔族の里で子猫をめでたり、邪神の復活騒ぎでどさくさに紛れて邪神の手下と戦ったり、子猫をめでたり、めぐみんとゆんゆんが一足早く卒業したりと色々あったが、(殆ど猫を愛でる事しかしていなが)ゆになは無事に上級魔法を修得して卒業した。

 卒業したゆになはテレポート代が稼げずにニート化するわけでもなく、サッサと水と温泉の都アルカレティアに着いた。

 

 清らかな水とそれを使った温泉が有名なアルカレティアはアクシズ教団の総本山であることでも有名だった。

 ゆになは神の存在を信じ自殺した前世がある。そして、この世界に産まれ変わらせたのはアクア様。

 紅魔族から出たことがなかったゆになは今までアクア様の教団があるとは知らなかった。が知ってしまった。

 そこから考えられる行動は想像がつくだろう。

 ゆになはアクシズ教徒になった。

 その後、始まりの町アクセルに着いた。というわけだが…

 

 ゆになは毎日三回お祈りを捧げるのに加えて、冒険者として得た報酬を生活に困らない範囲で寄付しまくった。

 そして付いた二つ名が『狂信の魔法使い』だ。

 

 

 

 先ほど叫んだ際に奇妙な目を向けられたゆになだったが、叫んだのがゆになだと分かると、またか…と呆れられるまでになっていた。

 

 今日も今日とてゆになはご機嫌である。理由は特にない。敷いてあげるのなら、いいことが起こりそうと直感的に感じただけである。実に単純。

 

 

 町の中心にある冒険者ギルドに着くとギルド内を見渡す。端っこの方に知り合いを見つけたゆになは、知り合いが座っている者の下に向かう。

 

「おはよ~!」

「えっ!?あっ!おはようゆにな」

 

 アクセル一のボッチゆんゆんの下である。ボッチ過ぎてその内、ヒキタニとか呼ばれるようになる勢いである。と勝手にゆになは思ってる。

 

 ゆになは挨拶をすると、許可も取らずに相席する。

 

 ゆんゆんは久しぶりの相席者に心を躍らせたのだが、ゆになの顔を見て顔を引きつらせる。

 

「な、なに?」

「いやいや、ゆんゆんはまだボッチだったんだな~?って思って」

「酷い!」

 

 ニヤニヤとゆんゆんをいじるゆにな。

 そこから、同じ同郷者として、冒険者として、アークウィザードとして、話した。

 ゆんゆんはゆになのことが友達と見ていないのだろうか?周りからは友達として見えるのだが…。ゆになは友達と見てないらしい。

 

 

 

 楽しい時間は何時か終わるというが、本当に突然のことだ。

 恐る恐るという足取りで二人の男女がギルドに入って来た。

 

 ゆになはゆんゆんを向けていた視線を入って来た二人に向けて……………驚いた。

 

「ぶぅぅぅ―!」

「わっ!!汚いよゆにな!……………ゆにな?」

 

 飲んでいたジュースを噴き出してゆんゆんに怒られても、ゆになの視線は奇抜な格好をしている二人に釘付けだ。ゆんゆんも入って来た男女に向けるが、なぜこんなにもゆになを驚かせるのか解らなかった。

 

 それもそうだ。男の方はゆになやゆうゆんとさほど変わらない歳だろうか?その少年はこの世界では見たこともない素材で作られた服を着ていた。それはゆになの前世、日本のジャージであった。

 そして女性の方。あの神々しい見た目、青い髪の毛、そして羽衣、忘れるはずもない。アクシズ教が、ゆになが敬愛しまくる存在。アクア様その人だった。

 

 その二人受付に行くと直ぐに離れて、椅子に座って相談し始めた。

 

(大方、登録手数料が足りなかったのでしょうか。仕方ありません、アクア様のためです。一肌脱ぎましょう!!)

「では、ゆんゆん!私は用事が出来たので先に帰ります」

「あ、うん。またね」

 

 ゆんゆんはゆになが帰ってしまうことに少し寂しく思ったが流石コミュ障、引き留めるや付いて行くなど考えもつかない。あっさりと別れの挨拶を交わした。

 

 ゆんゆんと別れたゆになは偶然を装って二人の座るテーブル近くを通った瞬間、財布を落とした。

 

(彼が日本人なら、人が物を落として気づかない時は拾ってその人に渡すでしょう!!)

 

 ゆにながそう思った通り、少年は財布を拾った。

 

「おーい!そこの魔法使いっぽい女の子~!」

「ん?私ですか?」

「財布、落としましたよ」

 

 拾った財布を返してくる少年。

 ゆになはお礼を言って受け取る。

 

「おぉ!私としたことが。ありがとうございます。これはほんの気持ちです。」

「あ、どういたしまして」

 

 ゆになは返して貰った財布の中から入っていた金額の三分の一、一万六千エリスを取り出して少年に渡した。

 

(冒険者登録手数料は一人千エリス、あれだけ渡しておけば十分はアクア様が贅沢できるでしょう。しかし、なぜアクア様があんな男と一緒にいるのでしょうか?アクア様に手を出したらわが魔法でプツンと潰してやりましょう)

 

 物騒な事を考えながらゆになは帰宅に着いたのであった。

 

 

 

 

 

 二週間経った。

 

 あれから上手くいってるだろうか?と思いながら、ゆになは今日もアクシズ教の教会にお祈りを捧げた後、冒険者ギルドに仕事を探しに来た。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……………!!」

「……………冷やかしに来たのか?」

「ち、違うわい!!」

 

 ギルドに入るとゆになの耳に知ってる人の声が聞こえた。

 ゆになは声の主に目を向けて……………

 

「めぐみ~~~ん!!」

 

 思いっきりダッシュした。なぜなら、声の主――めぐみんの相手をしていた者達が……………

 

「あ?ゆになじゃないですか。どうしたのです?そんなにあw――――」

「ほんっとに申し訳ありません。アクア様!!」

 

 ゆになはめぐみんの頭を持つと、一緒になって頭を下げた。土・下・座である。

 

 突然現れた人が面接中の相手と共に土下座をされるアクアと少年は何のことだかさっぱりだ。

 そんなの事知ったことでないゆになは必死になってお許しを願う。

 

「罪の償いはあれです!…とりあえず此奴には常識というものを教え込むのでお許しください!!」

「いたたたたた!!痛いです、ゆにな!!」

「何なの?」

「嫌、分からん。……あっ!アクア様とか言ってたからお前関係じゃないのか?」

 

 

 「訳も分からず頭をずっと下げられるのは気持ちいいことじゃない」とのことで、ゆになはめぐみんの頭を離す。

 

「もう何なんですか!?」

「うんうん。ごめんねめぐみん。最近、私が食べ物持っていくのを忘れていたせいで、人に奢ってもらおうとしていたんだよね?今度からは忘れないようにするから、知らない人に、特にアクア様にはたかるなよ!!」

 

 最後の方はドスの聞いた声でめぐみんに言い聞かせるするゆにな。めぐみんは言いがかりは溜まったものじゃないと反論する。

 

「確かに、食べ物を奢ってもらおうなど思ってもいなかった、と言えば噓になります。がしかし!私はこの人達のパーティーメンバーの募集を見て来たのです!」

 

 真っ当な理由があってアクア様に名乗っていた。そのことを聞いたゆになはアクア様に確認を取る。

 

「へ!?そうですかアクア様?」

「何か分かんないけど、その通りよ!」

「そう言う君は、どなたなんです?」

 

 ゆになの確認に、どういう状況か解らないけどめぐみんの主張は間違っていない。と自信げに答えるアクア様。

 今度はアクア様の仲間の少年がゆになに誰だ?と聞く。

 ゆになは求められた自己紹介を考えるまでもなく、本能的に行った。

 

「我が名はゆにな!!紅魔族唯一の禁術の使い手にして、アクア様よりこの世界に転生し者!!」

 

 

 如何やらゆになも、人のことを言えなかったみたいだ。

 




 というわけで原作開始まで一気に飛ばしました。ここからゆになとアクア様の暴走劇が始まる!のか?
 お楽しみください


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

202 ゆにな激怒!!

 新生活にバタバタしていました。
 今日から初心者に戻って、毎日とはいきませんができるだけ早く更新できるように頑張ります。
 勿論、最低文字数の1,000にあなりますが、ご了承ください。


 ゆになの自己紹介に「お前もかよ!」と言う目でみる少年と女神。

 

 

「っで?駄目神、お前の関係者みたいだが?」

 

「そんなこと言われても、いろんな人を導いてるんだから覚えてないわよ!」

 

(な、なんと!さすがアクア様!!私のことなんて覚えてないのかぁ!!)

 

 

 ゆになはアクア様が覚えてないことなど想定済みだ。

 

 ゆになはアクア様に思い出してもらうため、あの時と同じようにへりくだった態度で対応する。

 

 

「アクア様、アクア様!覚えてませんか?アクア様に転生させてもらった私ですよ!!ほら、転生したいが為に首吊り自殺をしたゆになですよ!!」

 

「…あぁあ!!私を崇めてくれる貴女ね!!勿論、覚えているわよ!!」

 

「覚えて下さって光栄です。アクア様から貰った転生特典のお陰で良き人生を送っています」

 

 

 ゆになは「つまらないものですか…」と言ってお布施金と持っていたお菓子を取り出した。

 

 

「そうよ、そうよ!!これが正しい対応なのよ!分かったらヒキニートも私に物を献上しなさい!」

 

「ヒキニートは辞めろ!っと、ゆになっで良かったけ?」

 

「はい?」

 

 

 少年はゆになに近づくと小声で言ってきた。

 

 

「お前も日本からの転生したのか?」

 

「そうですよー!そういう君も転生したのですか?」

 

「そうなんだ。しかも特典はこの女神、素直にイイものを選んでおけば良かった」

 

「私の前でアクア様を侮辱ですか?ケンカなら買いますよ!?」

 

 

 あぁ?ゴラァ!!?とゆになは呪文の演唱に入る。

 

 少年は本気でヤバいと感じたのか、急いで謝った。

 

 

「わ、悪かったよ!謝るからその演唱止めてくれー!マジでやばそうな雰囲気だぞ!!アクアも何んか言ってやってくれ」

 

「仕方ないわね!私がいることに感謝しなさいよ!!……」

 

 

 少年はゆになが唱え始めた重力操作魔法に、ゲーマーとしての勘が働き、唯一止めれるであろうアクアに頼みこんだ。

 

 アクアは少年から頼まれたことに嬉しがりながらゆになを止めようとするが……

 

 

「…おいアクア!どうした?」

 

「アハハ、あの子の名前忘れちゃったんですけど」

 

「どうすんだよ!!」

 

 

 ゆになの名前を忘れてしまったらしい。

 

 別に名前など呼ばなくても「魔法をやめなさい!」とアクアが言ったらいいだけなだが、パニックになっているアクアと少年は気づかない。

 

 呪文の演唱もいよいよ大詰めになり、ギルド内にいた冒険者や職員らも「なんだなんだ?」と野次馬状態。

 

 ギルド職員のルナが急いでゆになの魔法を止めようとする。

 

 職業柄ゆになの魔法がどういうものなのか知ってるからだ。

 

 




 今回はここまで!

 ゆになの魔法がギルドを襲う!!

 次回、ジャイアントトート討伐……?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

203 ルナさんはオコです

 始めに謝っておきます。

 申し訳ないです。


 

 ゆになが魔法の発動の言葉を言葉に出そうとした瞬間、

 

 

「何やっているんですか」

 

「へっぶ!めぐみんに叩かれた!」

 

 

 ゆになの頭を持っていたスタッフでめぐみんが叩いて、魔法を止めた。

 

 流石、同じ紅魔族でさえ頭の可笑しい者同士と言われる同期だ。

 

 後ろの方でオロオロしていたゆんゆんとは違う。

 

 

「何ギルド内で魔法をぶちかまそうとしているんですか。もし物を壊してしまったら、借金を負いますよ」

 

「だ、だって!私の尊敬する女神様を侮辱されたんだよ!」

 

「あー、ハイハイ。分かりましたって」

 

 

 ゆになが放とうとした魔法は物を壊すどころの威力ではないのだが、めぐみんはゆになが放とうした魔法が唯の上級魔法だと思ってる。

 

 めぐみんに止められたゆになは言い訳を口に出してめぐみんにも共感して貰おうとする。

 

 何かいい例えがないのか考えていたゆになだったが、結局めぐみんを黙らせる魔法を知らなかった為、黙った。

 

 野次馬共もこれ以上面白くなりそうになかったので散ってしまう。

 

 なぜなら、明らかに怒っていると分かる様子のルナがゆになに駆け寄ったからだ。

 

 

「ゆになさん!!ギルド内での攻撃魔法は禁止ですよ!!」

 

「うっ!る、ルナさん。状況に、よりますっては大丈夫じゃないですか。ギルド内に賞金首が紛れ込んでいた場合とかあるじゃないですか……」

 

「今の状況がそうだと言いたいのですか!?このサトウカズマさんが賞金首だと?」

 

 

 少年、サトウカズマはルナに視線を向けられ、ブンブンと首が千切れるかのように首を振った。

 

 その隣でアクアが『犯罪者、プークスクス!」と笑っている。

 

 

「否定してるみたいですが、彼が何をしたって言うんですか?」

 

「アクア様を侮辱しました。これは死刑ものでしょう!ルナさん!!」

 

 

 ルナの何故やったのかと取調べに、ゆになはサトウカズマの罪と刑罰を当然の様に言った。

 

 ゆになの証言にルナは「そう言えばアクシズ教徒でしたね」と疲れたように呟いた。

 

 

「と・に・か・く!ギルド内での攻撃魔法は禁止です!!ゆになさんの魔法の場合、冗談抜きで無差別攻撃ですから!」

 

「……そんなの、私を怒らせたこの人に言って下さい」

 

「責任転嫁しないでくだい!……今回は未遂なので厳重注意でいいですけど、絶対にやらないで下さいね!」

 

(振りか?振りなのか!?)

 

「いいですか、振りでもないですよ!……全く、これがなかったらアクシズ教徒でもまともで優秀な冒険者だと言うのに。サトウカズマさんも、ゆになさんの逆鱗に触れない様にして下さいね」

 

 




 と言う訳で予告詐欺でした。

 時々ある予告は宛てにしないで下さいね。

 次回こそは!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

204 めぐみんの爆裂魔法

ジャイアントトード戦前編です!


 その後、三日も何も食べてなかっためぐみんは、ゆになにご飯を奢って貰い。

 

 ついでにアクア様のご飯もおごるゆにな、カズマ少年の分は勿論おごらない。

 

 ゆになに邪魔されて忘れていたが、パーティーメンバーを募集していたカズマとアクア。

 

 お試しと言う訳で、ご飯を食べるとクエストに行くことになった。

 

 ちゃっかりとゆになも付いて行く。

 

 

 

 

 

 ご飯を食べ終わったというか、めぐみんが満足した一行はジャイアントトードが出現する場所に来ていた。

 

 平原の遠く離れた場所には一匹のジャイアントトードが見える。

 

 更に逆方向からも一匹、ゆにな達に向かって来る。

 

 カズマは遠く離れた方をめぐみんに任せると、近い方をどうにかしようと走る。

 

 ゆになはめぐみんの側で突っ立って、アクアの姿を瞬き一つせずに観ている。

 

 

(あぁ!流石アクア様!!自らの身を持って足止めなさるとは!!)

 

 

 アクアがジャイアントトードに食べられるのを見て、ゆになはそう思う。

 

 普通ならアクアが食べられる前に助けるところが当たり前の行動なのだが、ゆになは何もしなかった。

 

 

 なぜなら、ゆになは決してアクアを本気で崇めているわけでない。

 

 自分を転生させてくれた、とういう点から信仰はしているが、本当のアクシズ教徒みたく頭が可笑しいだけではないのだ。

 

 アクアが見てる間は敬うし、献上物もさしだす。

 

 みていなかったら?

 

 面白くなりそうな事は全力で応援する。

 

 それがゆになだ。

 

 結局はアクアに媚びているだけだった。

 

 ギルドでの騒動はアクアが見ているから起こしたものだった。

 

 決して面白そうだったからとか、理性が吹き飛んでいたとかではないのだ。

 

 

 ゆにながアクアとカズマを見ていると、隣のめぐみんが呪文を完成させたようだった。

 

 初めて見るめぐみんの魔法に、ゆになは少し戦慄する。

 

 

(かなりの魔力が集中してる!?めぐみん、考えて使ってる?)

 

 

 あ、これこっちまで被害を受けそうだ、と思ったゆになは重力操作を行う。

 

 そしてめぐみんの魔法名と共に一筋の閃光がスタッフから放たれた。

 

 その閃光は遠くいたジャイアントトードに突き刺さると、目のくらむ光を巻き起こして周りの空気を振動させる轟音と共にすざましい爆発が起こった。

 

 

「ちょっとめぐみん!!!何の魔法を使ったあぁぁぁ!!???」

 

 

 ゆにながめぐみんに問うと、めぐみんは地面にひれ伏したまま説明した。

 

「我の奥義である爆裂魔法は威力に対して、消費魔力もまた絶大。要するに魔力不足で動けません。後は任せましたよ、ゆにな」

 

 

 ゆになは死んだような目で、めぐみんが食われるのを見届けた。

 

 




 ゆになは無事パーティーメンバーに入れるのか?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

205 カエルを殲滅

 間に合わなかった!!

 許せ。


 めぐみんの魔法で次々と地中の中からから現れるジャイアントトード。

 

 この大量出現にカズマはもう一人の紅魔族であるゆになに頼みをいれる。

 

 

「ゆ、ゆになさん!!さっきのことは謝りますので助けてくださいぃぃ!!!」

 

「…はぁ、仕方ないですね。この辺で助けでを出さないと、アクア様に使えない人だと思われます」

 

「やってくれるか!?」

 

「アクア様を助けて下さい。後は私の禁術で殲滅させます!」

 

「よしきた!」

 

 

 ゆになが指示を出すと、カズマは紅魔族でありながらも同じ日本人転生者であるゆになを信頼し、アクアを口に入れて動かないジャイアントトードを倒す。

 

 アクアが助け出されたのを見届けたゆになは集中力を高めて、魔法の演唱を唱えた。

 

 

(時間が無い!ならば高速演唱のスキルを使って!出来るだけ弱く、広範囲をカバーできるように調整して!!放つ!!)

 

 

 時間にして僅か一秒以下。

 

 ゆになから放たれた魔法はその力を発揮し、ゆにな達パーティーメンバーに群がって来るジャイアントトードの群れを押し潰した。

 

 頭上から突如として襲い掛かる重力に、ジャイアントトードは成すすべもなく、動きを止める。

 

 そして、ジャイアントトードは何が起こっているのか確認できないまま、上から押しつぶされる様にして絶命した。

 

 その原型をとどめない死体にカズマは啞然とする。

 

 

「おい、何が起こった」

 

「……」

 

「私も知らない魔法ですよ。ゆにな、どんな魔法を使ったのか教えてください。……………だんまりですか?」

 

 

 カズマがジャイアントトードから助け出しためぐみんに尋ねるが、めぐみんも知らない魔法だ。

 

 めぐみんはゆになに教えろと言うが、ゆになは「どうしようか」と迷っていた。

 

 因みに、めぐみんが食べられていたことにを忘れていたことに関しても「あのままめぐみんが助け出されていないまま、魔法を放っていたら……………」とも思っていた。

 

 そしてようやく整理がついたゆになは言った。

 

 

「だから、禁術ですってば!」

 

「その様な設定をいつも言っていましたが……まさか本当だったんですか!!?」

 

「む、昔から言ってたよね!??めぐみんは信じてなかったの~~??」

 

 

 ゆになはめぐみんをバカにする様な言葉遣いで煽る。

 

 バカにされためぐみんはゆになに飛びかかりたかったが、魔力枯渇の為地面に倒れたままだ。

 

 めぐみんが動けないのをいいことに、ゆになはめぐみんを更に煽る煽る。

 

 

「めぐみんをの…何だっけ??爆裂魔法?そんなネタ魔法、何時の間に覚えていたんだ~~~??」

 

 




 書いていたけど、投稿し忘れてました。

 申し訳ないです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

206 クエスト完了

 めぐみんを煽って遊んでいるゆになにカズマが声を掛ける。

 

 

「一先ず、帰ろう」

 

「えぇ、ではめぐみんを背負ってあげて下さい。私はアクア様を慰めると言う大役がありますから」

 

「俺がこのヌメヌメをか?」

 

「……………さっ!アクアさ、ぐへっ!!」

 

「冷静に話し合いをしようじゃないか。同じ転生者だろ?」

 

 

 アクアの下に行こうとしたゆになを後ろから根っこを掴み、引き止めるカズマ。

 

 キッ!!とカズマを睨むゆにな。

 

 

「…なぁ、ジャンケンで決めようか?」

 

「ジャンケンですかぁー?」

 

「知らないとは言わせないぞ。これなら公平だろ?」

 

 

 ニヤニヤとグーの手を出してくるカズマに、ゆになは違和感を感じる。

 

 

(確かに公平そうに見えるけど、何か策でもあるのかな~?まっ!別に負けても他の策があるから良いけどね!)

 

「いいですよ~!」

 

 

 ゆになはできる限りの笑顔で返事を返した。

 

 カズマはゆになの笑顔を見て、ドキッとするが直ぐに顔色を変えてジャンケンを開始する。

 

 

「「最初はグー、ジャンケンポン!!」」

 

「「……」」

 

「「あいこで、しょっ!!しょっ!!しょっ!!」」

 

 

 偶然か、何かの力でも働いているのか、ゆになとカズマのジャンケンは中々終わらない。

 

 通算で八回目のあいこの後、遂に決着が着いた。

 

 

「…マジか!」

 

「フッ!自分から自殺をして異世界に転生できた私の運をナメんじゃなかったね」

 

「クソッ!!初めてジャンケンで負けたーー!!」

 

 

 勝者はゆにな。

 

 実はこの勝負、両者とも負けなしだったのだが、毎日アクアにお布施やお祈りをしていたゆになに軍配が上がった。

 

 ゆになは敗者であるカズマに、もう用はないとばかりにスタスタとアクアの下に向かった。

 

 そんな背中をカズマは悔しそうに見ていたのをゆになは知らない。

 

 

 

 

 

 クエストが完了した一行はアクセルの町をトボトボと歩いていた。

 

 視線はかなり痛い。

 

 粘液塗れの女の子が二人、その内一人は少年に背負われている。

 

 もう一人の女の子は「うぅ…ぐすっ……」とめそめそと涙を流し、三人目の女の子が泣いている女の子を慰めている。

 

 

「頑張って下さいアクア様!!大浴場までもう少しですよ。それに気に病むことは何もないですって、アクア様の体を張った時間稼ぎのお陰でクエストも完了しました。かっこよかったですって!!」

 

 唯一粘液にまみれていない女の子、ゆにながアクアを慰める。

 

 もう十回は繰り返した内容だった。

 

 

「カエルの体内って臭いけど、以外と温かいんですね」

 

「よかったね、知らない知識が増えて!!」

 

 めぐみんの呟きに、可笑しく煽るのを忘れないゆになだった。

 

 




 カズマにジャンケンで負けて貰いました。
 負けて欲しくなかったと言う方は連絡ください。
 一応、ゆになが負けたバージョンも考えてあります。

 最後のセリフが誤字がりましたので修正しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

207 帰り道

 

 背負うめぐみんと歩くゆになが口喧嘩を始めてしまい、言いたいことが言えないカズマ。

 

 そんなカズマの心知らずなめぐみんは無茶苦茶な要求を出す。

 

 

「急いで魔石を買って下さい!そして私の魔力を回復させるのです!」

 

「回復させてどうするつもりだ?!」

 

「決まっています。あの馬鹿を我が最強の爆裂魔法で吹き飛ばすのです!!」

 

「っはん!私の禁術でその様なネタ魔法など抑えてみせるわーい!!」

 

「却下だ、却下!!そんな金あるか!!?ゆになもいい加減にしろ!!」

 

 

 如何やらめぐみんはゆになの煽りに切れ気味みたいだ。

 

 カズマも当然そんな金が無いと却下する。

 

 ついでにゆになも一緒に怒っておく。

 

 しかし、いいチャンスが出来たとカズマは言いたかった事を言う。

 

 

「今後、爆裂魔法は緊急時以外禁止な。これからは他の魔法で頑張ってくれよな」

 

 

 一発で魔力枯渇を起こしてしまう魔法など使えない、他の魔法を使ってくれと言うカズマの要求にめぐみんは顔色を悪くして返事を返す。

 

 

「……………使えません」

 

「「はぁ?」」

 

 

 めぐみんの回答にカズマとゆになはハモってしまった。

 

 めぐみんは白状した。

 

 自分が爆裂魔法以外の魔法を覚えていないことを。

 

 途中で泣いていたアクアがようやく泣き止み、会話に参加してくるとアクアが宴会芸スキルとプリーストスキルを全習得したことを話す。

 

 それを聞いたゆになが「今度宴会芸スキルを見せて下さい!!」とアクアのご機嫌取りをすると言う事態が起こるも、めぐみんが爆裂魔法に対する愛を熱烈と語る。

 

 すると、アクアがめぐみんの爆裂魔法愛に同調する。

 

 それを見たカズマは決心してめぐみんに言った。

 

 これからも頑張れよ!と。

 

 しかし、めぐみんはこれを逃したらパーティーメンバーがいつまで経っても作れないと引き下がらない。

 

 そんなやり取りをゆになはボケーっと聞いていた。

 

 

(めぐみんは魔法が一つしか使えなのか~。通りで冒険話が聞かないわけだな~。あっ!そう言えば後でアクア様の宿泊先を聞かないと)

 

「仲間になるならゆになの方が断然使えるわ!!ゆになもめぐみんなんて要らないだろ!!?っていうか引き剝がすのを手伝ってくれぇー!!」

 

「え!?あぁ、アクア様は何処に泊まっているんですか?」

 

 

 急に話を振られたゆになはその時考えていたことを口に出した。

 

 ゆになに必然的に見捨てられたカズマは周りの目線もあり、なし崩し的にめぐみんも仲間に加えることになった。

 

 因みにアクアは、カズマに向けられる周囲の声を聞いてニヤニヤしていたため、ゆになの質問に答えなかった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

208 アクア様は大浴場でお清めに、ゆになはギルドに報酬受け取りに

 ゆになは「あらぬ誤解を受けるから」とカズマにめぐみんとアクアは大浴場に追いやられた二人を(アクア様)を追ってカズマと別行動しようとすると、又しても止められた。

 

 

「うぁ~ん!!アクア様置いておかないで下さい!」

 

「アクア~!俺はコイツと話しがあるから」

 

「ッぐふ!!またなの~!!」

 

「分かったわ。…変なことはしないでよ、ウチの可愛い子なんだからね」

 

「するかっ!」

 

 

 アクアに付いて行こうとしたゆになを、又しても根っこを掴んで引き止めるカズマ。

 

そのことにイラッとしているゆになの身を案じて「卑猥な事はするな」とアクアがカズマにくぎを刺す。

 

 最後にアクアはゆになにこそっと忠告を重ねる。

 

 

「カズマが呼んでいるんだから行って来なさい。ああ見えても頼りになることもあるのよ。…もし、何かされたら逃げちゃっても良いからね。さぁ、めぐみん。体を洗いに行きましょう」

 

「一応、気を付けて下さいね」

 

「分かりました、アクア様!めぐみん!ちゃんとアクア様のお背中をお流しするんだよ!!」

 

 

 アクアに身の心配をされたことによって「別にカズマの言うことを聞く必要はないよね?」と思い始めたゆになだったが、アクア自身が行って来いと進言したので、イヤイヤとカズマについて行った。

 

 最後にボソッと心配してくれためぐみんに、自分がしたかったアクア様のお背中流しを頼んだが、「多分やってくれないだろうな~」とダメ元発言だったので仕方がない。

 

 

 

 

 

 カズマはゆになとの話し合いよりも、ギルドの受付でクエストの完了を報告した。

 

 

「しかし、モンスターを倒すだけで、本当に強くなるんだな」

 

「何せゲームのような世界だと、初めにアクア様が仰っていたではないですか」

 

 

 自分の冒険者カードを眺めていたカズマがふと呟いた言葉に、ゆになは「聞いていなかったのぉ~!?」と煽る様に返す。

 

 ユニナのとって、アクアの声を聞き逃す、忘れるなどは信じ難い事に当たる。

 

 カズマがゆにな言葉にイラッとくるも我慢していると、クエスト報酬が準備できたようで、ゆになは怒られずにすんだ。

 

 その後、一人考えごとを始めたカズマを放って置いて、ゆになは一人クエストが貼ってある看板に向かった。

 

 アクアが受けるクエストには付いて行くことは勿論だが、それだけでは宿泊している宿代、アクセルの町にあるアクシズ教の教会に出すお布施、アクア本人に渡すお布施(賄賂)と全て払えなくなると踏んだからだ。

 

 無論、貯金が幾らか残っているはずだが心許なく、緊急用に取って置きたいお金である。

 

 サブで一人で稼げるクエストのチェックをしに、看板を見に来たのだ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

209 話し合いの前戦

 

 ゆになはクエストが張ってある看板を見ていた。

 

 看板にはゴブリン討伐と言う簡単なクエストから、受注者を制限するクエスト難易度が高いクエストまで様々な難易度のクエストが貼ってある。

 

 

(『森に悪影響を与えるエギルの木の伐採』どっせい!!っとエギルさんだぁ~!!出来高制だから本当に困ったらやってもいいかな?『迷子になったペットのホワイトウルフを探して欲しい』探索は専門外、次!!『息子に剣術を教えて欲しい』これも専門外!『魔法実験の練習台を探しています』魔法抵抗は高い方だから受けてもいいかも。あっ、でも長い期間拘束されるのはイヤだなぁ)

 

 

 看板を見つつそんなことを考えていると、いつの間にかカズマが隣に来ていた。

 

 ゆにながカズマに気付くと、カズマは絶望した顔をしていた。

 

 ゆになはその顔を見てクスクスと笑いながら、本題であるカズマとの密会の為に隅のテーブルに向かった。

 

 

「話って何ですか?っは!まさか本当に卑猥なことの誘いですか!!?ごめんなさい無理です。私の身はアクア様に捧げているのでダメで~す!私はお返しにめぐみんを生贄に召喚ッ!!」

 

「なんでだよ!!俺はロリコンじゃないぞ。…いいかふざけるのは無しにしよう」

 

 

 着席するなり早速ふざけるゆになに「そういうのはいいから!」とカズマが真剣に言った。

 

 カズマの言葉通り、ゆになは深呼吸をすると…

 

 

「……『真剣者の死』!!」

 

「…逆になんでお前がそれを知ってるのか知りたい」

 

 

 流石ゆになである。

 

 カズマの真剣さでさえ、ネタに走る。

 

 

「俺が言ったことを理解できなかったのか?」

 

「ざんね~ん理解できます~~!!出来たから答えたんです~~~!!そっちこそ日本語大丈夫ですかぁ!」

 

「紅魔族になって頭までおかしくなったのか。そうかそうか、お前に期待した俺がバカだったよ」

 

「何よぉ~!私は真面目にやることを却下しただけですよ~。なぜなら、私からおふざけを取ったら一体何が残ると言うのですか!!?」

 

「あぁぁぁ!!もう話が全然ッ、進まねえ!いいか、勝手に進めるから余計なことしゃべるなよ」

 

 

 カズマが言ってゆにながふざけて返す。

 

 それにカズマもヒートアップして言い返すも、ゆになが更にふざけて返してくる。

 

 このままでは一行に終わらない、そう悟ったカズマは強引に話を進めることにした。

 

 正しい判断だと言える。

 

 

「それで?何で私だけ呼んだんですか?」

 

「何だよ、真面目に出来るじゃないか。あぁ、同じパーティーを組むんだし、お互いの事をある程度知っておかないといけない、と思ってさ」

 




 ゆになの口調がめぐみんと被ってしまう。もっと個性を出さないと!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

210 密会の始まり

 昨日はマジで疲れた。
 9時前には寝てしまった。
 お陰でイベントの一つを逃してしまった!!


 

「お互いの事を知っていなければいけないなと思ってさ」

 

 

 やっとこさ真面目になったゆになに、少し怒りを覚えるカズマだったが、ここで怒りぶちまけても、折角上がったゆになの真面目メーターが下がってしまうだけだと、カズマは話を続け。

 

 「お互いの事を知っておけなければいけない」というのは建前で、ゆにながどんな転生特典をアクアから貰ったのか気になったのだ。

 

 自分の使えないと思っていたアクア(転生特典)がゆになに効果抜群だと知ったカズマはそれを使ってゆになを使いこなせると考えてもいる。

 

 ゲームなどで使えないと思っていたアイテムが、あっと驚く状況で効果が発揮する状況にカズマはゲーマーの血が騒いでいた。

 

 なので、転生者であることを言えないめぐみんはアクアに任せて、同じ転生者同士知っている情報を交換し合おう、という目論見もある。

 

 カズマが提供できる情報が少ないことは些細な事で済ませよう。

 

 

「そうなのかー」

 

「もう、突っ込まないぞ。それで?ゆになはいつ転生したんだ?何で紅魔族になっている?あの異常な魔法は何だ?」

 

「無視させるとボケた意味がないよ。ってか質問多すぎる」

 

「いいから答えろよ」

 

「はぁ、答え終わったら私の番だからね」

 

「答えれることならな」

 

「なんか裏がありそうな言い回しなのは、ほっておきましょう」

 

 

 答えられるこなら、と言うカズマが誤魔化して言った答えに、ゆになは気づいたが特に追及はしなかった。

 

 ゆになも出来るだけ自分の情報はカズマに渡したくなかったからだ。

 

 その相手がアクアであったなら、スリーサイズさえも教えることを躊躇わないのは、誰もが想像できる。

 

 

「一個ずつ答えましょうか。いつ転生したか?と言う質問の答えは、大体13年前です」

 

「13年!?……転生特典は新しい肉体からのやり直しなのか?」

 

 

 ゆになの答えにカズマは自分よりも幼いゆになの体を見てそう論ずける。

 

 

「まぁ、そうですねー。魔法が得意な種族への転生を要求しました」

 

「じ、実年齢とかおいくつなんですか?」

 

「肉体年齢13歳!精神年齢30歳程度!!思考年齢は16歳位!!って何言わせるんですか!!?」

 

「勝手にいったのはそっちだろ。これも狙ったのか?」

 

 

 出来るネタがあればする。

 

 そんな精神なゆになはテンプレネタが出来てご機嫌だ。

 

 

「思考年齢の16歳と思って接してくれて構いませんよ。おばさんとか思わないでよ、カズマ君」

 

「っ!君付け、やめろ」

 

「あれぇ~、照れてる!!君付けされる機会無かったのぉ~~!!??」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

211 密会は一方通行

 ゆにながカズマを君付けしておちょくるが、話は続く。

 

 

「はっはっはっはっは!!笑った笑った!」

 

「俺の犠牲でだけどな」

 

「勝手に傷ついただけでしょ?カ・ズ・ま・君?」

 

 

 終わったと見せかけて更におちょくるゆにな。

 

 如何やら、カズマは君付けで決定されたようだった。

 

 

「…はぁ、もういいや。疲れた。次だ、あの魔法は?」

 

「私だけが使えるユニークスキルです。覚えようと思えば、見せてもらえてスキルポイントさえあれば覚えれる爆裂魔法とは違って、私だけの魔法です」

 

「そんなのって存在するのか?」

 

「いいえ?私が知ってる範囲だと、職業によって覚えれる覚えれないはあるけど、一人の人間しか覚えれない魔法はありませんが?」

 

「じゃあ、何でお前がそんな魔法を覚えている……転生特典とかじゃないよな?」

 

「転生特典ですが何か?」

 

「おい、さっき転生特典で紅魔族に生まれ変わったって言ってなかったか?」

 

「転生特典を二つ貰いました」

 

 

 ニコッと言い放ったゆにな。

 

 啞然とするカズマが驚きの末、ゆになに掴みかかったのは誰でも気持ちが分かるだろう。

 

 記憶が正しいならアクアは「転生特典を一つだけ」と言ったはずだ。

 

 なのに、カズマの目の前の少女に見える三十路女は二つ貰ったと言ったのだ。

 

 一体どうして?

 

 カズマの頭はそれだけを考える。

 

 

「えっと、転生する事に嬉しすぎて、アクア様を崇めまくったらアクア様が二つ良いとおっしゃいましたが?」

 

「…そんだけ?」

 

「そんだけですよ~」

 

 

 まさかの回答にカズマは「そんな抜け道があったなんて」と思うが、アクアだから出来た抜け道だ。

 

 カズマが俺の苦労は一体…と嘆いているとゆになが追撃を放つ。

 

 

「今度はこっちの番ですね~~」

 

「な、何だ?笑顔が怖いんだが……」

 

 

 ゆになはカズマに言いたかった事があった。

 

 ついにそのことについて物申せる、とゆになは意気込んでカズマに詰め寄る。

 

 

「何でアクア様がこんな下界にいて、カズマ君と行動しているの?私は別に怒ってないですよ~!!??アクア様とまたお会い出来てラッキーですし」

 

「そ、それは……」

 

「んー?」

 

 

 カズマはゆになに本当のこと言ったら何かされそうだと考えた。

 

 

(アクアをモノ指定したと知ったら、こいつは俺を殺さないだろうか?侮辱だけでヤバい魔法を放とうとしたし)

 

「んー?戸惑う位、私に言えないような事情があるんですか?それじゃあ、拷問にかけてみようかな~?時間経過と共に重くなる仕様で」

 

 

 「どこまで耐えれるかな~?」と笑顔で言うゆになに、ビビったカズマは白状した。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

212 話し合いはまだ続く

 ゆになの恐ろしい拷問を聞いたカズマは、アクアがこの世界にいるのは自分の転生特典に選んだと話した。

 

 

「…俺の転生特典に選んだのがアクアなんだ」

 

「……で?」

 

「お前が言えって脅したんだろうが!!」

 

 

 身を決して白状したカズマにゆになは怒った様子もなく「それが何か?」と言いだたげな態度だ。

 

 いつの間にか頼んでいたジュースをちゅーっと飲んでいる興味の無さ。

 

 まるで、ハチャメチャな三兄弟の1人が隠していた秘密を聞いた時に、鼻をほじりながら反応したのこりの二人にそっくりである。

 

 違うのが、元ネタの様に何も考えずにそう反応したわけではなく、考えがあってボケたところだ。

 

 

(カズマ君のお陰でこうしてアクア様とお会い出来たわけだし、もう良っか?アクア様は楽しそうだったし)

 

「アクア様が何も言ってないのならどうでもいいのです。ところで、転生特典がアクア様と言う事はアクア様はカズマ君に逆らえないんですか?」

 

「いや、俺に不満だらけだと思うよ。自由はしばってないし」

 

「だけど、アクア様は何も言ってきませんよ。なら構いません。アクア様が何も言わないのなら、私も何も言いません」

 

「そうか……で、ユニーク魔法ってどんな魔法だ?」

 

 

  ゆにながちゃっかりと言わなかった魔法の内容に付いて、追及してくるカズマにゆになは舌打ちをしそうなった。

 

 

「ちっ!」

 

「舌打ちしてんじゃねぇ。まぁ、お前が言わなくてもアクアに聞いたらいいだけだけだからな。自分の口で話すか、お前の敬愛するアクア様にお手を煩わせるか、のどっちかだぜ。俺はどっちでもいいぞ」

 

「ひ、人質とは卑怯な!!?」

 

 

 カズマは短期間でゆになの手綱の握り方を覚えていた。

 

 アクア様のお手を煩わせるという人質を取られたゆになは、内心でカズマに対する復讐の仕方を考えていた。

 

 

(クエストの最中に「モンスターと間違えてたー」と言って重力で潰すか?それとも、気のせいとしか感じない程度に弱めた重力を何日間もぶっ通しで掛け続けるか?ってなんで私がアクア様のお手を煩わせることが確定しているのだ!!…まぁアクア様はアクシズ教徒には優しい方だから、謝ったら許してくれるはず)

 

 

 そう思いながらも、自分の魔法を隠すデメリットがないので、ゆになは素直に要求に応じた。

 

 

「私の魔法は重力です」

 

「重力!!?」

 

「イエス!グラビティマジック!!!」

 

「何で片言になる!!?それは置いておいて……隕石とか落とせるのか??」

 

「あー、それは難しいですよ」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

213 不意に終わる密会

「あー、それは難しいですよ」

 

 

 ゆになは一言で、カズマの期待に満ちた表情を殺した。

 

 カズマは腑に落ちない表情でゆになに難しい理由を訪ねる。

 

 

「理屈じゃあ出来なく無さそうだけど?」

 

「考えてみて下さいよ。宇宙空間に漂っている手頃な岩まで引力を届かせるのに、爆裂魔法なんか比じゃない位の魔力を使うんですからねー。後、運よく引き寄せられたとしても、コントロールが殆ど出来ないから周囲諸共ドッカンッ~~~~!!ってなります。奥の手レベルです」

 

「……そんなに現実は甘くないよな」

 

「ですねぇ」

 

 

 カズマは考えなかった理屈をゆになから教えられ、はぁと溜息が出る。

 

 カズマが考えた重力魔法のテンプレ『メテオストライク』はご存知、隕石を引き寄せて地上に落とす殲滅レベルの魔法だ。

 

 もし本当にメテオストライクをゆになが起こせば、小型なら地形破壊、大型なら星の崩壊を引き起こすだろう。

 

 中型でも、星の軌道がずれて、別の意味で人類が滅亡してしまう。

 

 幾らゲームのような世界だとしても、小説の中にあるように上手くいかないのだ、現実とは。

 

 

 その後は、地球の話をした。

 

 カズマがニートだったことにゆになが羨ましがったり、ゆになが転生したいが為に777日間に及ぶお祈りの末自殺したことに引いたり、ワイワイと話をしてゆになのジュースが二杯目を飲み終わった。

 

 

「ふぅー、結構話をしましたね。もうお腹がタプタプです~」

 

「何でそんなになるまで飲んだんだよ」

 

「いやー、いけるかな~?って…………っとちょっと席を外してもいいですか?」

 

「ん?トイレか?」

 

「うむ、セクハラ発言だが、尊大である妾は許そうぞ。……って違います~~!知り合いを見つけたのでからかいに行ってきます」

 

 

 ゆになはそう言うと、席を立ってギルドを出ていった。

 

 

(あれ?知り合いって見かけるとからかいに行くような関係だったけ?)

 

 

 残されたカズマはゆになの「知り合いを見つけたら、取り敢えずからかう」と言う行動原理について考え始めた。

 

 一方でゆになと言うと、

 

 

「いつもニコニコあなたの背後から這い寄る混沌、ゆになちゃんで~~す!!」

 

 

 そう言うがと共に、とぉお~っ!!と言う掛け声を発して、知り合いに背後から背中に飛び乗った。

 

 

「っわぁぁぁぁああああ!!だ、誰!!?」

 

「だぁ~れだ?」

 

「そ、その声はゆにな!!脅かさないでよ!」

 

 

 ゆになの知り合い一号、『ボッチの極み』ゆんゆんである。

 

 ゆんゆんに飛び乗ったゆになはそのまま、目隠しをして遊んだ。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

214 朝の騒動?大丈夫だ、問題ない!

 ゆんゆんに当てられたゆになは、よっと!と声と共にゆんゆんの肩を使って逆立ちすると、その勢いのまま前に倒れて地面に着地する。

 

 無駄に優れている身体能力だ。

 

 

「うわぁぁっ!!急に危ないよ、もうっ!!」

 

「あー面白かった!!ゆんゆんは今日も一人?」

 

「今日もって何んで決めつけるのよ!!!」

 

「ほうほう、なら誰かといたんですか?」

 

「……今日も一人だった……………。そ、そう言えばゆになは、めぐみんと一緒に臨時のパーティーでクエストの手伝いに行っていたんだよね?」

 

「あそこでゆんゆんも登場してくれたら、なし崩し的に一緒にクエストに行けたと思うけど?」

 

 

 ゆんゆんはいつも冒険者ギルドで一人遊びをしながら、声を掛けてくれる冒険者を待っている為、今日のめぐみんとゆになの行動を知っていた。

 

 朝の『ゆにな冒険者ギルド破壊未遂事件』も当然見ている。

 

 そして、ゆんゆんが人混みに紛れて見ていたことも、ゆになは気が付いていた。

 

 朝の騒動中に「ゆんゆん!!さぁ、乱入して来いッ!!」と期待していたゆになであったが、結局のところヘタレゆんゆんは来なかった。

 

 

「そ、そんな!!初対面の人もいたんだよ!!ってゆにな!!!」

 

「ん~?なに?」

 

「朝に騒動を起こしたでしょ!!」

 

 

 ゆんゆんはゆになに騒動について問い詰める。

 

 当の本人は特に気にした様子は見当たらない。

 

 

「めぐみんと言い、ゆになと言い……そんなんだから、私たち紅魔族が頭の可笑しい連中と誤解を受けるんだよ!!」

 

「誤解?ゆんゆんは里にいた頃に思っていた紅魔族のイメージと世間が抱いているイメージで誤差があるの?」

 

「……ないかも」

 

「でしょ~~!!」

 

 

 結局のところ、世間が見る紅魔族とゆんゆんが見た紅魔族のイメージは『考え方がちょっと可笑しい』と言うことだ。

 

 しかし、その世間のイメージの『ちょっと』を更に加速させているのがめぐみんとゆになである。

 

 

「あんな事して、ギルドに目を付けられるよ?」

 

「ふっ、心配入りません。私もめぐみんも既に目を付けられているから!!」

 

「それ、笑顔で言うことじゃないよね!!?何その手!!?」

 

 

 清々しく笑顔で「ギルドに目を付けられている」とサムズアップで白状するゆにな。

 

 そんなゆになに、ゆんゆんは顔を覆いたくなる。

 

 いや、既に覆っていた。

 

 ゆになは、そんなゆんゆんを安心させる様に見せる追撃を放つ。

 

 

「大丈夫だから!私の場合は貢献度が並みの冒険者の比じゃありませんから、相殺している。…めぐみんはダメかも知れないけど」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

215 変態はお断りです

 

「ダメじゃん!!ねぇ知ってる!!私が紅魔族の次期族長になるんだよ!!」

 

「知ってますが何か?」

 

「苦情とか苦情とか苦情とか苦情とか苦情が私の下にいずれ来るんだよ!!私はめぐみんとゆになの保護者じゃないなのに~!!!」

 

 

 ゆになの攻撃を防ぎきれず、遂に泣き出してしまうゆんゆん。

 

 ゆになは珍しく「やり過ぎた……」と反省する。

 

 

「分かった!!ごめんって言い過ぎたから。ちゃんとゆんゆんに苦情が行く前に始末はするからねっ」

 

「うぅ~。っぐすん、……………全く反省してない気がするのは私の勘違いなのかな~?」

 

「あれ?ゆんゆん?泣いていたんじゃ?……って笑顔が怖いよぉ!!」

 

 

 ゆんゆん、遂に壊れる。

 

 ゆになをもって怖いと思わせる笑顔を貼り付けるゆんゆんに、ゆになは必死で謝り倒した。

 

 最終的にめぐみんを見張ると言うゆになの提案で落ち着いた。

 

 

(は、初めてのゆんゆんが怖いと思ったぁぁ。普段はオドオドしてるのに、吹っ切れると豹変するのか。あぁあ、余計な仕事が増えた~!)

 

 

 ゆになはゆんゆんから逃げ出すように冒険者ギルドに戻って行く。

 

 しかし、批難して来たと思えば、そこでもゆになの心情をボロボロにしていく奴らがいた。

 

 

「むしろ、望むところだっ!!!!!」

 

「へ、変態がいる!!?」

 

 

 ゆになはそう叫ばずにはいられなかった。

 

 ゆにながカズマの下に戻ったら、カズマの手を握り、顔を紅潮させる騎士様がいたのだ。

 

 一見、カズマの手を握って顔を赤くしている風に見えるこの光景。

 

 ゆになが変態だと言った訳は会話の内容が原因だ。

 

 カズマが気を遣ってか「酷いことになりますよ?」と言うにも関わらず、一行に引かない騎士様。

 

 カズマがカエルに捕食されて粘液塗れになる、と女性にとって最悪に入る状況に陥るかもしれないとの説明に、騎士様は更に望む。

 

 この会話を聞いたゆになが、騎士様を変態呼ばわりしたことに、誰が咎められるだろうか。

 

 それ程、騎士様の顔がアレだった。

 

 

「お、ゆにな!!戻って来てくれたか!?」

 

「た、ただいまです。……………戻って来て颯爽と何ですが、今日はもう帰りますね」

 

「待て待て!!この状況で俺を置いて帰るのか!!俺達仲間だよなぁ!!見捨てるのか!!」

 

 

 カズマがゆになに気付き、巻き込もうとしてくる。

 

 ゆになは何かと理由を付けて帰ろうとするが、本日何度目かの根っこを掴むがゆになを襲った。

 

 ゆになはカズマに捕獲された。

 

 

(マズイマズイマズイマズイ!!アレは関わってはいけない人種の類だ。何か、何かこの危機を回避できる考えを!!)

 

 




 今回は深夜テンションで書いています。

 おかしな言い回しがあれば、報告していただけると幸いです。(今話に限らず)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

216 変体騎士様を撃退

 

 この変態を追い返す方法をゆになは考える。

 

 ゆになは「何かとないか?」と周りを見渡して、クエスト終わりの夕食を食べる冒険者達を見つけた。

 

 「これだ!」とゆになは変態騎士様に話しける。

 

 

「興奮しているところ悪いのですが、今日はもう遅いので、また明日、と言う事にしませんか?私たちはクエスト終わりで疲れていますし」

 

「こ、興奮などしていない!!そうだな、クエスト終わりだったか。ならば、また明日出直して来るとしようか」

 

 

 ゆになが示した解決策とは、問題の先送りだ。

 

 今思いつかないなら、時間を作ろうと言う戦法である。

 

 戦略的撤退とも言える。(違います)

 

 ゆになの「疲れている」に反応したのか、変態騎士様は帰って行った。

 

 

「…ナンパをしたら変態が釣れたわけですかぁ?」

 

「違う、断じて違う!あいつから声をかけられたんだ!!」

 

「ほほぉ!アクア様、めぐみん、私と言う存在がありながら、逆ナンに付いて行こうとしたのですか?カズマ君がww逆ナンとかwww!!有り得ないww」

 

 

 カズマに「場を離れた時に何やってんですか?」と聞いたゆになは、勝手に予想を立ててツボに入って笑い転げた。

 

 カズマはいつまでも自分をからかい続けるゆになに呆れの表情だ。

 

 一通り笑い終わったゆになは改めて、カズマに何があったのか聞く。

 

 

「あぁw、面白かったw!ふぅ、それで?何があったの?」

 

「初めからそう聞けよ。何かパーティーの募集要項を見て来たそうだ。それで、俺の危機感地センサーがアクアやめぐみん、お前と同類のニオイを感じたから、やんわりとお断りしようと言った訳だが」

 

「引き下がるどころか引き寄せてしまったと?」

 

「あぁ、どうすんだよ?」

 

「さぁ?リーダーはカズマ君だから、君が決めたら?でも、報連相は大事だよ。一人で食べたらダメだからね~」

 

「日本人特有のネタか。久しぶりだなぁ」

 

 

 何があったのか聞いたゆになは問題と言うか、本題(あの変態騎士様を仲間に加えるのか?)はカズマに丸投げた。

 

 日本人特有のネタを楽しんだゆになは、カズマに別れを告げる。

 

 

「じゃあ、今日はこれくらいで」

 

「ん?帰るのか。何処か行くのか、ご飯はどうすんだ?」

 

「アクシズ教の教会に今日のお布施を届けにです。その後、露店なんかで何か買って食べながら帰ります」

 

「お布施って変なところで律儀だな。そうか、また明日ギルドでな」

 

「分かりました。……あとこれを」

 

「……?何の金だ?これは」

 

「アクア様に渡すワイロです。頼みましたから」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

217 宿泊先のおば…お姉さん

オリジナル回ですが、直ぐに終わる予定です。


 

  カズマと別れたゆになは、教会に今日のお布施を届け、露店で安い果物を買うと、泊まっている宿に帰った。

 

 ゆになが泊まっている宿は家族経営の普通より割安なところだ。

 

 住民の家と全く変わらない玄関ドアを開けると、帰って来たと経営者に伝える。

 

 

「ただいまです!!おばちゃん」

 

「お帰り、ゆになちゃん。今日もお布施をしてきたの?」

 

 

 ゆになを出迎えてくれたのは、二十代後半の女性だった。

 

 決して、おばちゃんとは言えない外見である。

 

 

「はい、欠かさずやらないと意味が無いですからねー。『継続は力なり』と言う言葉が古い古い故郷にありましたから!」

 

「古い…故郷?」

 

 

 ゆになはセミロングの黒髪に赤い瞳を持っている。

 

 どう見ても紅魔族の娘に見えるゆになが言う「古い古い故郷」におばちゃん(二十代後半)は疑問を抱く。

 

 

(故郷は確か、紅魔の里だったはず。でも、古い古い故郷ってどこの事を指してるのかしら?紅魔族が紅魔の里に住む前の話?それとも、ゆになちゃんには誰にも言えない様な秘密が!?)

 

 

 おば、ねえさんは「ゆになには物凄い秘密があるんじゃないかな?」と予想を立てるが、あながち間違っていない。

 

 古い古い故郷とは勿論、日本の事だ。

 

 ゆになは肉体を初めからやり直した為、故郷と言ってしまえば紅魔の里になってしまうのだ。

 

 そこでゆになは、日本を表す時は古い古いと枕詞を入れる。

 

 紅魔族相手に言うときは考えた設定いう風に、我が記憶に残る前世の地では!という風に言っている。

 

 勿論、誰もが設定だと思っているが、それはゆになの狙い通りなのだ。

 

 

 しかし、その凝った設定が仇となってしまった。

 

 普通の人ならそこまで気づかないのだが、このお姉さんは一体何者なのだろうか?

 

 読書が趣味なごく普通のお姉さんです。

 

 

 「いつかゆになちゃんの秘密を!!」と燃えているお姉さんの気を知らず、ゆになは部屋に戻ろうと、階段に足をかけた。

 

 はっ!としたお姉さんが、ゆになにいつも通り聞いた。

 

 

「ゆになちゃん、今日の夕飯はどうする?」

 

「…今日も大丈夫です。これを買ってきましたので……………」

 

 

 「いらない」と答えたゆになは心なしか元気がない。

 

 そのことに気付くお姉さんだったが、ゆになは先ほど買ったばかりの果物をお姉さんに見せた。

 

 値段が低いものを買った訳で、普通のサイズよりも小さい。

 

 

「……ゆになちゃん?」

 

「ごめんなさ~い!!日課のお祈りをしなきゃ!!また明日の朝で」

 

 

 ゆになの小食に納得がいかないようだったが、ゆになが強引に階段を駆け上がった。

 

 




知ってた?ゆにははセミロングなんだってー!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

218 お姉さんはゆになちゃんが心配です

 久しぶりにワンピースを書きたいなぁ、と思っているこの頃です。


 

 ダッダッダッダッダッ!

 

 ゆになが階段を上がる音だけが部屋に響く。

 

 ゆになが空元気気味にお姉さんの元から出ていき、部屋に戻った頃、お姉さんはゆになの心配をしていた。

 

 

「ゆになちゃん、どんどん食べなくなっているわ。今日なんて特に少ない」

 

 

 お姉さんはゆにながここに来た時の事を回想する。

 

 思い出すのは元気な様子で食事を取るゆになちゃんを思い出すのみ。

 

 

(あの時はまだ食欲もあったし、沢山食べていたわ。やっぱり仕事が上手く行ってないのかしら?それとも、教会へのお布施が多過ぎるのではないのかしら!?)

 

 

 お姉さんはゆになに教会に渡すお布施の金額を聞いたことがあった。

 

 その額は生活に困らない額だったはず。

 

 昨日までは少なくとも果物一個ではなかった。

 

 食事代を払える位のお金は手元にあったという訳だ。

 

 

 お姉さんは知らないがゆになの今日の晩御飯が少ない理由はキチンとあった。

 

 ゆになは、今日のお布施の額は減らしていなかった。

 

 もともと、今日の収入-お布施=ゆになが自由に使えるお金だ。

 

 しかし今日は収入がいつもよりいつも少ない。

 

 そして、アクアにワイロを渡している。

 

 ゆになが使えるお金は赤字だった。

 

 

 仕事が上手く行ってない、と言う予想が当たっているとは思いもよらないお姉さんは、少し的外れな事を考えていた。

 

 

(アクシズ教なんて、町の迷惑にしかなっていないのに。そんな奴らにお布施だなんて……司祭におこずかいをあげている様なものじゃない!!)

 

 

 そう考えるお姉さんだったが、ゆにながお布施を差し出しているのは「アクア様にだ!」と言い張るだろう。

 

 そして「アクア様に渡っていなくても、アクア様に渡す気持ちがあればアクア様はお恵みを与えてくださるはず」と続けるはず。

 

 

(はぁ、普通の人よりはユーモアに溢れた子だけど、ゆになちゃんがエリス教徒だったら良かったのに)

 

 

 そこまで考えて「これ以上考えても仕方ない」と結論を出したお姉さんはある準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 ゆになはバタンと音を立てて、部屋のドアを閉めた。

 

 そしてそのまま、備え付けのベットに倒れる。

 

 

「ハァ・・・一体いつまで続ければいんだろう……………」

 

 

 外に出ている時とは真逆のテンションだ。

 

 ゆになはベットに倒れたまま動かない。

 

 お姉さんに食べると言った果物も、荷物と共に放置されている。

 

 グぅ―とゆになのお腹が鳴ったが、それでもゆになは動こうとしない。

 

 

(お腹が空いた。でも、食欲が湧かない。昔と一緒だ。……………何もしたくないな)

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

219 ゆになの本性

 

 (折角地球という世界から逃げれたと思えば、まだ生きて行かなくちゃいけなのか……………)

 

 

 グルグルと今までのゆになでは考えない様な内容を頭の中で繰り返す。

 

 

 

 ここで、ゆになと言う人物に付いて振り返って見よう。

 

 ゆになは普通人として生活を送っていた。

 

 親に怒られる事も殆どなく、友達と呼べる存在もいた。

 

 ゆになを知っている人に「ゆになはどんな人?」と聞けば、ほとんどの人がこう答えるだろう。

 

『元気のいいユーモア溢れる女の子。ちょっと考え方がズレてるけど……………』と。

 

 本当にどこでもいる女の子。

 

 

 

 だったらよかった。

 

 ゆになの場合、ちょっと考え方がズレている。そのズレがちょっとどころではないのだ。

 

 普通の女の子だと思われているゆになの本性は、空っぽ。

 

 何もないのだ。

 

 

 何も理解出来ない。

 

 子供の頃から、人が楽しいと感じることが楽しいと感じられない、悲しいと感じることが感じられない。

 

 運動会や学習発表会、社会科見学、修学旅行で思ったことは、

 

 

『何で他の人はこんなことで喜ぶんだろう?』

 

『何でこんなことをしなきゃいけないのだろう?』

 

 

 小学生の頃はそう考えて過ごしていた。

 

 中学に上がると、勉強を頑張る生徒が増えてくる。

 

 それに対しても、

 

 

『何で点数なんか気にするんだろう?』

 

『何で必死になってまで高校に入りたいの?』

 

 

 おおよそはそんなことを考えて過ごした。

 

 勿論、心の奥底でしか考えず、親しい人には微塵も悟らせなかった。

 

 ゆになは元気のいい女の子を演じて生きていった。

 

 誰にもゆになの本心を見抜けない。

 

 そんなゆになは学年が上がるに連れて社会というものを知っていくと、こう考える。

 

 

『どうして生きて行かなきゃいけないの?』

 

『この世界に生まれたから?』

 

『望んだわけでもないのに?』

 

 

 一体いつまでこの演技を続けなければいけないのだろうか?

 

 そう思ったゆになは、周りに合わせる演技の為に高校生になると、ある本に出会う。

 

 地球で死んだ主人公が異世界で本気で生きる話だ。

 

 これを読んだゆになは、オタクを演じ始めた。

 

 

 そして自殺に至るのだが、実際に異世界に行けるとは思ってもいなかった。

 

「異世界に行けると信じて自殺をした」そう周りに見せかけて、唯の自殺をして自分と言う存在を消してしまいたかったのだ。

 

 そう考えて自殺を諮ったゆになだったが、世界はそう簡単には行かなかった。

 

 異世界転生が起き、今度は女神を拝めるという演技を始めた。

 

 ゆになはまだ、演技をして生きていかなければならない。

 




 何を言いたいのか分からない?

 大丈夫だ、自分にも分からん!

「ゆになの行動は全て演技。ホントは何も感じない人形のような存在だった」そう思って下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

220 晩御飯

追記、サブタイトルうぃ入れ忘れていました。


 ゆになが冒険者という職を選んだのも、周りに合わせていると見せかけて、事故死が起こりやすいからだ。

 

 そんな毎日に、ゆになは疲れたのだ。

 

 楽しく明るい自分を演じなければならない、そう考えると、誰も見ていない所ではボケーっとなる。

 

 

(このまま消えてしまえればいいのに。栄養失調で死ねないかな?)

 

 

 冒険者として仕事に出る。

 

 そして収入のほとんどをアクシズ教とアクアにつぎ込んで、自分は時々食べ物を食べるだけ。

 

 まるで日本の社畜の様だった。

 

 しかし、それがゆになの現状だ。

 

 このような様生活が続くとなると、いづれ倒れるのは明確だった。

 

 

 

 ベットに倒れて、ごちゃごちゃと考えていたゆになの耳に、誰かが階段を登ってくる音が聞こえる。

 

 

(誰だろう、おばちゃんかな?それとも他の宿泊客?)

 

 

 足音は段々と近づいて、ゆになの部屋の前で止まった。

 

 ゆになは素早く起き上がり、身なりを整えた。

 

 演技三十年の変わりようは素早い。

 

 そして、コンコンとノックと共に、お姉さんの声が聞こえる。

 

 

「ゆになちゃん起きてる?入るわよー」

 

「どうしたんですかぁ?………それは?」

 

「夕飯よ。ゆになちゃん何も食べてないでしょ?」

 

「でも、お金が………」

 

「いらないわ。ゆになちゃんがご飯を食べて、元気になってくれたら、それが一番の報酬になるのだから、食べて元気になって」

 

 

 ご飯を全然食べないゆになを心配してか、タダでご飯を持って来てくれたお姉さんにゆになは、しまった!と焦る。

 

 

(油断していた!ご飯を食べないと周りの人は心配するのか)

 

 

 反省をしたゆになは自分に暗示をかける。

 

 自分は出来る、普通の女の子を演じられる。と心の中でお姉さんにばれないように。

 

 

「ごめんなさい、今日はちょっと収入が少なくて。それにかなり疲れてしまいまして。……………ご飯、頂きます」

 

 

 ゆになは即興で、それでもあながち間違っていない言い訳を言った後、晩御飯を頂いた。

 

 お姉さんは少しだけ「ホントに大丈夫なのかしら?」と思うが、ゆになが元気よくご飯を食べる姿を見ると、いつも通りのゆになだと勘違いすると、微笑んだ。

 

 ゆにながご飯を食べ終わると、お姉さんはゆになに言った。

 

 

「ゆになちゃん、辛いことがあったら、何時でも頼って良いのよ」

 

「ありがとうございます。出来るだけ収入を得れる様にしますが、少ない時は頼らせてもらいますね!」

 

 

 何時でも頼れと言ってくるお姉さんにそう言って、ゆになはその場を過ごした。

 

 

 

 その夜、ベットの上でゆになは今後の方針を考える。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

221 朝の受付にて

 今後の方針はこうだ。

 

(アクア様を元の場所に戻す目標を掲げて。その過程で魔王軍幹部との戦いで死ねると良いなぁ。よし、それで行こう……………また明日から頑張ろう。誰にも気づかれないように)

 

 ゆになは方針を決めると、明日に備えて眠った。

 

 

 

 次の日の朝、昨日カズマと約束した通り、ギルドに向かった。

 

 昨日の反省として、朝ご飯は食べている。

 

 ゆになは同じ失敗はしないのだ、日々成長しているのだ。

 

 

「るなさ~ん!おはよ~ごぜ~ます!!」

 

 

 まだ人が少ないギルド内で、ゆになは元気よく受付嬢のルナに朝の挨拶を交わす。

 

 

「はい、おはようございます、ゆになさん。今日から正式にカズマさんのパーティーに入るのですか?」

 

「アクア様がいるので当然ですよ!!」

 

「そうですか……………」

 

 

 ルナはゆになに聞こえないくらい小さな声でこう言った。

 

 

(アクアさんは名前が一緒なだけで、本当の女神ではないのですが……………)

 

「ルナさん何か言った?」

 

 

 ゆになの聴覚はルナの小声を捉えていたみたいだ。

 

 しかし、ルナは平常心で乗り切る。

 

 

「いいえ。でも、ゆになさんはギルドに少なくない貢献をしていますので、少し残念です」

 

 

 ルナの心情はこうだ。

 

 ゆにながカズマ、アクアパーティーに入ることによって、これまでゆになが受けていた高難易度のクエストの消費率が下がってしまうと言う落胆。

 

 余り稼ぎが良くないカズマ、アクアパーティーの収入が安定するかもしれないと言う安堵。

 

 ルナはゆになの行動に落胆と安堵の板挟みになっていた。

 

 

 実はゆにな、アクセルの町一番の稼ぎ頭だった。

 

 始まりの町と言うくらい魔王軍との戦いの戦線から遠いこの町でも、高難易度のクエストは存在する。

 

 何故か高レベル冒険者が多くても、高難易度クエストは出来る冒険者は限られる。

 

 そんな中、重力魔法と言うチートを持ったゆになは高難易度のクエストを快く引く受けるアクセルのエースだった。

 

 そんなエースが初心者パーティーに引き抜かれる。

 

 理由は至って簡単、信仰である。

 

 どう上に報告しようと、頭を悩ませるルナにゆになはあっけらかんと言い放つ。

 

 

「ルナさん、パーティーが活動しない日に単独でクエストを受けるので、一日で出来そうなクエストがあったらキープお願いしま~す」

 

「はい?ゆになさんそれは……」

 

 

 ゆになが言った言葉に、ルナは理解が追いつかない。

 

 

「私のこれまでの収入をルナさんは知っていますよね?」

 

「ゆになさんがギルド以外で稼いでいなければ、ですが知っていますが」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

222 ゆにな飛ぶ

 ギルドの受付は職業故に、冒険者個人の収入を知っている。

 

 年に一度の税金徴収などがある為だ。

 

 ルナはゆになの収入を思い浮かべた。

 

 

(確か、結構な金額を稼いでいたはず)

 

「そんなベテラン受付嬢のルナさんは、初心者パーティーの収入も当然知ってますねぇ?」

 

「まさか!収入が下がると知ってパーティーに入ったのですか!?」

 

 

 ルナはこの街に着いた時から、高難易度のクエストをバンバン完了しているゆになが初心者パーティーの収入を知らないと思っていた。

 

 だから、こそっと教えて「考えて貰えないかな?」と思っていたのだが。

 

 知ってるゆになが、それでもパーティーに入るのが考えられない。

 

 普通、誰が自分から収入が下がると知って、これまでの現状を変えるだろうか?

 

 ルナのそんな考えは、次のゆになが言った一言で吹き飛んだ。

 

 

「そこで!秘密(公然)の単独クエストです!」

 

 

 そこでルナはやっと理解が及ぶ。

 

 それだけで下がるなら、空いてるときに副業でやれば良いだろう?と言う考えだ。

 

 もっとも、高難易度のクエストを副業と言うには少し舐めているのだが、流石チート転生者。

 

 普通の冒険者とは違う。

 

 

「はぁ、特に規定違反ではないので、大丈夫です。ギルドとしても高難易度のクエストを受けてくれるゆになさんは重宝していますし」

 

「じゃあ、お願いしな~す!」

 

 

 ルナに良いクエストのキープを頼んだゆになは、隅の方で期待する様な目で見てくるゆんゆんを無視して、別のテーブルに座った。

 

 

 

 

 

 そこから何時間経っただろうか?

 

 ゆんゆんがゆになに声を掛けようと、席を立ち直ぐ座ると言う奇行を数えること五回繰り返した頃、ゆになのアクア様レーダーがピンっ!と反応した。

 

 その反応を受けたゆになは飛んだ。

 

 文字通り”飛んだ„

 

 無駄に洗練された重力魔法を使い、自分の周りだけをGを軽くして、一歩でふわぁと宙に浮かぶ。

 

 それだけでも、ギルド中の視線を釘付けにするのだが、それだけでは終わらないのがゆになだ。

 

 宙に浮いたゆになは自分だけに効果が及ぶ様に調整して、真横のGを掛ける。

 

 宙に浮いたまま真横に移動するゆになに、ギルド中の冒険者は開いた口が塞がらなかった。

 

 もし、この場にカズマが居たのならこう言うだろう。

 

 「武空術かよ!!?」と。

 

 隅のテーブルでゆんゆんが「また、奇行をおおぉぉぉ!!!」と嘆いているが、ゆになは知っちゃこったない。

 

 そして……………

 

 

「おはようございます!アクア様!!」

 

「うぉぉぉ!!」

 

 

 最敬礼姿でアクアを出迎えた。

 

 




 注:「お願いしな~す」は誤字ではありませんよ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

223 お昼下がりのギルドにて

 

 カズマが驚いているが、ゆになは無視だ。

 

 ギルドに入った途端、最敬礼姿のゆになに出迎えられたアクアはと言うと。

 

 

「ふぁああ、おはよ~」

 

「む!?アクア様はまだ眠いのですか!?カズマ君カズマ君、アクア様をたたき起こしたりしてないですよね?」

 

「おい、まさかそれだけで怒るなよ」

 

「ハハハ、まさか。夜道にはちょっと気を付けないといけない様になるだけですよ~!」

 

 

 「やる。此奴ならやる。絶対にバレないようにしなくては!」とカズマは心に決めた。

 

 時間的にもうお昼ご飯なので、ゆになはアクアをテーブルに案内して、好きなものを頼ませた。

 

 途中でめぐみんも合流して、皆でお昼を食べる。

 

 ゆになとカズマは普通に一人前分を食べ終わると、残りの二人が食べ終わるのを待っていたのだが、今アクアはお代わりを頼みに店員を捕まえ、ゆになが何日間か放置していた為、食べれなかった分を補給するように一心不乱に食べ物にがっつく。

 

 それを見ていたカズマにゆになはこっそりと言った。

 

 

「今何を考えているか、当てましょう。ハーレムパーティーなのに、色気がない。でしょ~!」

 

「何で俺の心が分かるんだ!…それよりも、聞きたいんだがスキルの習得ってどうやるんだ?」

 

 

 カズマの質問にフォークを握りしめたまま答えた。

 

 ゆになはそのやり取りをボケーと聞きながす、アクアの食事シーンを脳内に記憶するためである。

 

 

「誰が宴会芸スキルを教えろつったぁぁ!!!!」

 

「えーーーー!!」

 

「アクア様アクア様!こんなクズ、ほっときましょう。それよりもほら」

 

 

 ゆになが頭の上に水の入ったコップを置くと、何処から取り出したのか、種を指ではじいてコップの中に入れる。

 

 すると、種は水を吸い上げ、にょきにょにと育っていく。

 

 スキルの話の過程でアクアが宴会芸スキルをカズマに見せると、ゆになは速攻でそのスキルを習得したのだ。

 

 職業の壁?そんなのは信仰心の力には通用しない。

 

 ゆになが教えて貰った宴会芸スキルを披露しながら、アクアを慰めていると、横から声がした。

 

 

「あっはっは!面白いねキミ!ねぇ、キミがダクネスが入りたがっているパーティーのひと?有能なスキルが欲しいの?だったら、盗賊スキルなんてどうかな?」

 

 

 ゆになも突然の声に、宴会芸スキルを止めて声の方を振り向くと、そこには。

 

 

「へ、変態にエンカウントした!!」

 

「失礼だろうが!!」

 

 

 思わず声に出してしまったゆになに、カズマは頭を叩く。

 

 なぜなら、頬に傷を持った軽装備の銀髪女の子の後ろには、昨日の変体騎士様がいたのだから。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

224 口喧嘩

どうしてこうなった。


 ゆになが頭を叩かれて撃沈している内に話が進んだのか、カズマと盗賊職の女の子、そして変体騎士様はギルドを出て行った。

 

 

「ロリっ子。私がロリっ子………」

 

「何でなのよ。スキル教えろって言ったから、女神であるこの私の可憐なスキルを教えてあげようとしたのに……」

 

「アクア様~、あのクズの言うことを真に受けてはダメですよ~。後、めぐみんは属性が付いて良かったじゃない」

 

 

 三人は揃って撃沈していた。

 

 ゆになはそれでも、アクアを慰め、めぐみんをおちょくる。

 

 どこまでも『ゆにな』だった。

 

 しかし、ゆにながおちょくった事で、撃沈してためぐみんの怒りに火がつき……。

 

 

「そんな属性は要らないです!!」

 

「ふっ、属性とは知らず知らずのうちに付いてくるもの、めぐみんはロリっ子からは逃げれない」

 

「何おう!!ゆになだってカズマの事を君付けなんかして、気でもあるんですか??」

 

「はぁぁぁぁぁ!!???何で私が、カズマ君と書いて、ヒキニートと読むクズなんかを好きにならなくちゃいけないの~~??」

 

「ほらそうやって、昨日知り合ったばかりの人をあだ名で呼ぶことが、ですよ!!」

 

「アレがあだ名??めぐみんはどう聞いたら、あだ名なんて思うの??どう見たって、見たままの姿を述べているだけじゃね??」

 

「ふんっ!またそうやって。昨日だってゆになだけお呼ばれされていたじゃないですか?ゆになには無くても、向こうには気があるかもしれませんよ?良かったですね、男が出来て!!」

 

 

 知らない所で引き合いに出されるカズマ。

 

 紅魔族の二人によって、カズマには不名誉な称号が、ギルド内に広まってしまう。

 

 遠く離れた席で、ゆんゆんが頭を抱えていたのに、同居人の二人は気づかない。

 

 

 

 二人の言い合いは段々とヒートアップしていく。

 

 

「大体、何なの~?爆裂魔法??アレは学校でネタ魔法だと習ったはず。それなのに、そんな魔法一本でやって行こうだなんて、これでも同期の首席だなんて……ゆんゆんの方がよっぽど主席に見えますよ~っだ!!」

 

「爆裂魔法をバカにしないでください!!それに、ゆんゆんは主席に相応しいかもしれませんが、見てくださいよ!!今でも一人でしかクエストに出かけた事がない様なボッチですよ!!」

 

「間を取ったら私が主席に相応しいと言いたい事ですよ!!」

 

「あぁ!!?どの口が聞いているんですか!?あなたは学校では座学平均点以下じゃないですか?よくもまぁ、主席なんて口に出せれましたね!!?」

 

 




ゆになとめぐみんの口喧嘩が楽し過ぎました。てっへ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

225 口喧嘩2と女神の奇行

 

 今度は火種を変えて、ヒートアップするゆになとめぐみん。

 

 

 

「同期の中では一番、稼ぎもいいし、冒険者レベルも高いですよ~っだ!!」

 

「ふんっ!我の爆裂魔法を使うまでもない敵しかいないからです!!強い敵が現れたら、我が爆裂魔法で一撃粉砕ですよ!!」

 

「そんなに強い敵と戦いたいなら、最前線でも行ったら?それとも、怖いの~!!?」

 

「こ、怖くなんてないですよ!!最前線に向かうまでのお金がないのです。そ、それに、何事にでも用意周到なのです!!気分で行動するあなたとは違うのです」

 

 

 そう言いながらも、めぐみんの足は少し震えている。

 

 ゆになはそれに気付き、「足、震えてる…っふ」と笑い、めぐみんは「武者震いです」と言い返す。

 

 この二人は、混ぜたら危険な薬品みたいな様だった。

 

 

 

 次第に二人は

 

 

「つべこべ言わずに、かかって来なさいよ!!」

 

「あぁいいですね、いいですね!!町の外で決着です!!我が爆裂魔法で一撃必殺!!」

 

「長い演唱を完成させる前に抑え込めばいいだけ!!簡単簡単ん~」

 

「その減らず口、直ぐに――」

 

 

 「町の外に出て決闘をやるかぁ!!」と言うまで熱くなった二人に雷が落ちる。

 

 特に、ゆになにとっては特大の。

 

 

「うるさい!!!!人が落ち込んでいるっていうのに!!隣でぎゃーすかぎゃーすかと、いい加減にしなさいよ!!」

 

「す、すみません」

 

「も、申し訳ございません、アクア様!!この通りでございます。ははぁ~」

 

 

 アクアがキレた。

 

 それもそうだろう。

 

 テーブルに撃沈している所を隣でぎゃーすかとケンカだ。

 

 アクアでなくてもキレる。

 

 キレたアクアに怒鳴られ、我を取り戻すめぐみんとゆにな。

 

 ゆになはひれ伏して、大げさに謝った。

 

 珍しく、常識人のアクアだった。

 

 ………だったのだ。

 

 

「もぉぉぉ!!頭来た!!ゆになもめぐみんも、今から私が宴会芸スキルを披露するから、よ~く見るように!!」

 

「は、はぁ」

 

「はい!瞬きせずに拝見いたします」

 

 

 どういう思考回路をしたら、宴会芸スキルを披露するという事になるのだろうか?

 

 全く不思議であるが、アクアの勢いにゆになは勿論、めぐみんまでもがアクアに物申せない。

 

 そこからがカオスの始まりだった。

 

 アクアが次々と披露する宴会芸スキルに興味を惹かれてか、続々と集まってくる冒険者達。

 

 しかも、如何やら宴会芸スキルは覚えれる人が少ないスキルだったらしく、珍しいのだ。

 

 

 

「アクア様、お金を出すので、もう一度『花鳥風月』をお願いします」

 

「バッカ野郎!!アクアさんには金よりも食い物だ!ですよね、アクアさん!!」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

226 ゆになマネージャーとパンツ追い剝ぎ魔

 学校で下書きしていたんですが、本を持って行くのを忘れてしまい、帰ってから本を見ながら推敲していると、半分以上の追加で書かないと行けなかった!

 話が滅茶苦茶かもしれません。


 カズマがギルドに帰って来ると、そこはカオスだった。

 

 

「アクアさん『花鳥風月』をお願いします!」

 

「ほらこれ、キンキンに冷えた奴です」

 

「バカ!俺が先だぞ、順番守りやがれ!!」

 

「あぁ!!やんのかゴォラァ!」

 

 

 沢山の冒険者経ちに囲まれるアクア。

 

 そして、

 

 

「はいは~い、そこちゃんと並んで下さ~い。貢ぎ物は一人一個で一回までだよー!もし、アクア様に迷惑かけた奴は、もれなく私の『段々と重くな~る』の刑だからね~!!」

 

 

 ゆにながマネージャーの様に冒険者達を捌いていた。

 

 「何が起きた……」と呆然と立っていたカズマに、「宴会芸スキルとは何か!?」と力説していたアクアが気が付いた。

 

 

「あ!ちょとあんたの所為でえらいことになってるんですけど!……ってどうしたのその子?」

 

「ん?カズマ君戻って来たんですか?はいはい、解散解散、帰った帰った!また今度アクア様の気が向いたらね~~!!っとこれで良し!…どうしたの?」

 

 

 アクアに群がってくる男どもの整理を付けたゆになも合流。

 

 二人の視線は銀髪の盗賊職の女の子に向いている。

 

 そんな2人にカズマが説明する前に、同行していた変体騎士様が話してくれた。

 

 

「うむ、クリスはパンツを取られた挙句、有り金をむしり取られて落ち込んでいるだけだ」

 

「おい!待てっ!間違っちゃっいないが、変な誤解が!!」

 

「ふむふむ。クズニートが遂に犯罪者になったと言う訳ですか」

 

「ゆにな!頼むから言い訳を言わせてくれぇ!!」

 

 

 変体騎士様の言葉に引いてるアクアとめぐみんに、完全に面白がっているゆにな。

 

 カズマはどうしようか慌てていると銀髪の盗賊職の女の子、クリスが顔を上げて、あらぬ誤解を加速させてクエストに出かけた。

 

 クリスはクエストに出かけた訳だが、ツレの変体騎士様はテーブルに座ったままだ。

 

 それを疑問に思ったカズマは疑問をそのまま質問してみている。

 

 そんな二人を放っておいて、ゆになはジャラジャラとなる袋をテーブルの上に置いた。

 

 中に入っているのは当然、

 

 

「アクア様~!!こんなに貢ぎ金が稼げましたよ!!」

 

「ちょっと待て!!」

 

 

 変体騎士様、ダクネスとめぐみんと話していたカズマがゆになが出したお金を見て、突っ込んだ。

 

 

「なんですの!?」

 

「さっきの金取ってたのか?」

 

「勿論ですよ~!搾り取れる所から干からびるまで取るのがモットーですから!」

 

「おい、冒険者!商人じゃないだろ、お前は!!」

 

「私のお金じゃないですよ!このお金はアクア様の献上金なのです」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

227 信者に優しいアクアさんとめぐみんのパンツ

 ジャラジャラと鳴る袋の中を覗き込んだアクアは叫ぶ。

 

 

「えぇ!!こんなにもあるの!?ってゆにな、貴女の分もちゃんとあるんでしょうね?」

 

「そんな!滅相もございません!これはアクア様がお稼ぎになったお金!私如きが手にしても良いお金ではございません!!」

 

 

 アクアがゆになの分は?と聞くと、芝居がかった口調で無いと答えるゆにな。

 

 そんなゆになを見て、「どうしてアクアにはへりくだるのでしょうか?」とめぐみんは呟いた。

 

 

「駄目じゃないの!!ヒキニートならともかく、私の可愛い信者の筆頭たる貴女には優しくしないと、ダメなのよ!なんたって女神なのだから!!!ハイこれ、ゆになが働いてくれた分よ!」

 

「あ、ありがたく頂戴します。流石アクア様です!」

 

 

 アクアが適当に袋から、少なくない金額をゆになに渡すのを見ていたカズマは、一人呟いた。

 

 

「何で宴会芸スキルなんかで、こんなにも稼げるんだよ……」

 

 

 それ程までに、アクアとゆになが稼いだ金額が多かった。

 

 昨日の一人分のクエスト報酬を軽く上回るくらいはあった……。

 

 

 

 

 

 その様な茶番があったが、一行はようやくカズマが覚えたスキルについて話せることが出来た。

 

 どこかで「女の子のパンツを追い剝いだ挙句、有り金を全て巻き上げる鬼畜野郎が出た」と噂になっているが、ゆにな達はカズマをジト目で見るだけにスルーするー。

 

 

「それで、ちゃんとスキルを覚える事が出来たのですか?」

 

「あぁ、見とけよ。『スティール』!」

 

 

 めぐみんの問いに答える様にスキルを発動したカズマ。

 

 そしてゆにな達はカズマを軽蔑する目で見る。

 

 スティールで取った得物が『めぐみんが履いていたパンツ』だったからだ。

 

 暫くは他と同様の目で見ていたゆになだったが、次第に違った感情に変わっていく。

 

 

「もしかしてめぐみん…今、パン――――」

 

「それ以上言わないで下さい!!それにカズマも、スース―するので返して下さい!!」

 

「可笑しい!!取れる物はランダムのはずなのに!!?」

 

 

 とカズマが言い訳を述べていると、女の子のパンツを剝ぎ取る、と言う鬼畜行為に走ったカズマを見たダクネスが椅子を蹴って立ち上がり、バーン!と両手をテーブルに叩き付けた。

 

 

「やはり私の目には狂いが無かった!こんな少女の下着を剝ぎ取る鬼畜、是非とも私をパーティーに入れてくれ!!」

 

「いらない」

 

「お断りで~す!」

 

 

 ダクネスがの熱い想いを、即答で返すカズマとゆにな。

 

 ダクネスの変態性を見抜いている二人だからこその、即答お断りだ。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

228 カズマの説得

 しかし、変態は二人の想像を遥かに超える反応を見せる。

 

 頬を赤らめて、ビクッと身を震わせたのだ。

 

 明らかに『感じて』いる。

 

 カズマとゆになは改めて、この変体騎士様がヤバいと感じ取った。

 

 だが、現実は悲しい。

 

 カズマとゆになが知る、ダメな性格筆頭者である二人、アクアとめぐみんが何でもない様に言った。

 

 

「ねぇカズマにゆにな、この人誰?昨日私とめぐみんをお風呂に誘導させてから、二人が密会をしている時に面接に来たって人?」

 

「ちょっとこの方、クルセイダーではないですか!?断る理由などないのでは無いでしょうか?」

 

 

 ダクネスを見て、勝手なことを言ってくる二人に、ゆになは頭を悩ませた。

 

 

(今の反応を見なかったのかな~?それとも、目が節穴?困った、アクア様が変体騎士様を仲間に加えようをおっしゃったなら、私は断れないんだけどなぁ)

 

 

 そんなことを考えていると、カズマの方は対策を考え付いた様だったので、ゆになはカズマに任せてみた。

 

 

「ダクネス聞いてくれ。俺とアクアはこう見えて、ガチで魔王を倒したいと考えているんだ」

 

 

 ダクネスへの説明は関係ない、と言わんばかりの顔をしていためぐみんとゆになにも、カズマから注意が飛んできた。

 

 

「丁度いい、めぐみんもゆになも聞いてくれ。俺達は魔王を倒したくて冒険者になったんだ」

 

(何で私まで聞かなきゃいけないんですか。転生したら日本人が魔王討伐に向かうのは当然の行動。あのクズニートは私が面白可笑しく生きていければ良い、と考えていると思っているのでしょうか?)

 

 

 ゆにながそんなことを考えている間、カズマはダクネスとめぐみんの説得に失敗、アクアが怖気づくと言う結果になっていた。

 

 

「ゆになは――――」

 

「モチのロンで付いて行くに決まっているじゃあないですか~!アクア様のいる所なら、例え火の中水の中、魔王城の中だって付いて行きます!!!」

 

「あー、何と無くお前の反応は分かっていたわ」

 

 

 と全員一致でパーティーを組むと言う感じになっていたその時、

 

 

『緊急クエスト、緊急クエスト!!街に居る冒険者各員は至急冒険者ギルドに集まって下さい』

 

 

 スピーカーを通して、ルナが緊急放送を繰り返す。

 

 それを聞いたカズマが慌てた様子でメンバーに聞く。

 

 

「おい!緊急クエストってなんだ!!?モンスターが街に攻めて来たのか!!??」

 

「キャベツ狩り!キャベツ狩り!!報酬ザクザク、ギルドはお金が足りるのかい!?」

 

 

 ゆになはカズマの疑問に答えるべく、歌を即興で歌いながら、クルクルと回った。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

229 楽しいキャベツ狩り

短いがお気になさらず!
書き方を変えただけです!


 

「なるほど分からん」

 

 なんですと~!渾身の踊りが通じないのか!

 私はカズマ君が「緊急クエストってなんだ!!?」と聞いてきたので、お答えしたまでなのに!

 理不尽な!

 

 そう怒っていると、変体騎士様もといダクネスさんとめぐみんがカズマ君の疑問に答えていた。

 なんか、釈然としない。

 この二人に負けた気がする。

 

 

 

 

 

 今、街の外に出て、キャベツ狩りをしている。

 私も初めて聞いて、見た時はビビった。

 「キャベツが空を飛ぶか!!」って。

 だけど、慣れって怖いな。

 それに、日本産よりも美味しいし、経験値も溜まる。

 ついでにお金も。

 だから、皆必死になってキャベツ狩りをしている。

 

 アクア様はどこで手に入れたのか、虫取り網を持ってキャベツをカブトムシ如く捕まえている。

 あ、今アクア様が取ったのって、キャベツじゃなくてレタス……………。

 

 気を取り直して、他のメンバーを見てみよう!

 めぐみんは開始早々、爆裂魔法をキャベツが密集している所に打ち込んでダウン中。

 呆れるしかないね!

 

 ダクネスさんは………うん。

 絶好調ですね。

 嬉々としてキャベツのアタックを受けています。

 

 そんなパーティー内で一番凄いのは、なんと!

 乗り気ではなかった、最弱職のカズマ君!

 潜伏スキルで気配を消して、敵感知スキルでキャベツの動きを読む。

 そして、スティールでキャベツを捕獲!

 冒険者の中で一際目立っている。

 この方、うちのリーダーなんですよ!

 

 ん?私はって?

 勿論、こんな金づるクエストを逃してなるまいか!

 と重力魔法を展開、片っ端からキャベツを地面に落としているよ!!

 

 

 

 皆で楽しくキャベツ狩りをしている時だった。

 モンスターの大群が押し寄せて来たのだ。

 

 あーあー、めぐみんが爆裂魔法なんてネタ魔法を使うから。

 音に惹かれて、モンスターがやって来たじゃない。

 元凶のめぐみんは地面に倒れているし……………。

 

「おい、どうすんだよこれ!!」

「あんなにもモンスターの群れが。ハァハァ、ちょっと私行ってくりゅぅぅ~~~!!」

「おいぃぃぃ!!」

 

 あ、ダクネスさんがモンスターの群れに特攻した。

 嬉しそうな笑みだなぁ。

 お子さんには見せれない顔だけどね。

 

 ダクネスさんの特攻も虚しく、もう直ぐ冒険者達と接触してしまう。

 これだとキャベツ狩りどころでは無くなってしまう。

 アクア様が楽しんでいるのに!!

 なんか、ムカついてきたんですが!!

 

「皆さんはキャベツ狩りを続けていてください。私が何とかします!」

「……何言ってくれてんだ!!私が、じゃなくて私達が、なんだろ!!」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

230 説明片手間に殲滅

 私が大声を出して「任せろ!」と言うと、冒険者達は任せてくれた。

 私が今までに積み上げた実績が役に立った。

 カズマ君は知らないのか、ガクガクと揺らしてくるが……。

 幾ら知らないからっていい加減鬱陶しくなってきたぞ!

 

「いい加減にしてくださいよ!!私は一人でって言いましたよ!!」

「こんな大群、一人で相手出来る訳ないだろうが!!アクアの前だからって見栄を張んな!」

「はぁ、カズマ君には私の転生特典を教えたはずですが~?それに、ギルド職員も安心して任せてくれています。カズマ君がど~しても手伝いたいと言うのなら、手伝ってもらうこともやぶさかではないのですけどね~。」

「誰が好き好んで手伝うか!」

「よっしゃ!」

「何で喜ぶんだよ!お前もモンスターの群れに突っ込む変態なのか」

 

 カズマ君は私の目論見が分かっていないようで、ダクネスさんの方を向いて同類なのか?と言って来た。

 あんな変態と同じにして欲しくないんですけど…。

 全く分からないカズマ君に全部説明してあげましょう!

 

「そんな訳ないじゃないですか~」

「お前はどこぞのあざとい後輩生徒会長かって!」

「あれれ?ネタが分かりましたか?って、お喋りをしている内に私の間合いに入って来ました。ので、殲滅しながら話しましょうか」

 

 私は重力魔法を展開、キャベツ狩りをする時よりも少しだけ重くする。

 すると、モンスターの群れは止まった。

 何匹かは動いているが、もう一段階上げると生命活動を停止させた。

 いぇーい!私の大・勝・利!!

 

「っと殲滅完了!」

「えげつねぇ~!お前はこの程度のモンスターの群れだど問題ないって分かったけど、一人でやった理由は?」

「それはもう、キャベツに比べたら劣りますが、あれだけの経験値を独り占め出来るチャンス!誰もがキャベツに気を取られて受けない、一般モンスターの群れの討伐でギルド職員からの評価はうなぎ登り!そこまで考えた行動なんですよ!」

「へぇー。で、本音は?」

「アクア様が楽しくしているのに、茶々を入れるあいつらが気に入らなかった」

「やっぱりな」

「誤解してるみたいだから言っておきますが、全部wひっくるめての行動ですからな!」

「あーはいはい」

 

 カズマ君は素っ気ない返事をしながら、モンスターの群れの残骸に向かっていきました。

 何があるのでしょうか?

 まさか!火事場の泥棒!

 アレは全部私の物ですよ~!

 「パーティーリーダーだから少しよこせ!」とかでしょうか?

 ギルドに訴えるぞゴォラァ!

 

 と、カズマ君は何かを引き上げた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

231 被害者とアクア様とお出かけ

 

 カズマ君が引っこ抜いたそれは何処か見覚えがあるような……………………。

 人型ですねぇ。

 綺麗な金髪で見る影もない位ボロボロにさせた鎧は、さぞかし高価な鎧だったのだろうな~?

 ……………………。

 

 ダクネスさんでした。

 そう言えば「中々潰れない奴がいるな~?」って思ってたけど、もしかしてダクネスさんでしたか?

 ボロボロになりながらも、ダクネスさんの顔は嬉しそうですね。

 

「あ~、ドンマイ!!」

「……それで済むお前は大物だよなぁ」

 

 一旦、動けないめぐみんの下にダクネスさんを連れて行き、キャベツ狩りを再開しました。

 勿論、ダクネスさんはカズマ君に運ばせましたがなにか?

 

 

 

 キャベツ狩りが終わるとギルドの酒場に戻って、取ったばかりのキャベツを使った料理が振る舞われた。

 その席で、アクア様が正式にダクネスさんをパーティーメンバーに認めた。

 取り敢えず、壁役をゲットだぜ!

 

 何と無く指揮が出来るカズマ君に、回復役のアクア様、一点集中のめぐみん、壁役のダクネスさん、最後に万能のこの私!!

 五人中四人が上級職と言う豪華な顔ぶれになってきましたね。

 問題があるとしたら、私とめぐみんの「紅魔族、アークウィザード」と言うキャラが被っている所ですかねぇ?

 

「そこの所、どうお考えですか?カズマ君」

「……どうでもいい。それより、お前が一番しっかりしてくれよな。これだけの問題児を一人で抑えられるな自信がない」

「はっはっは!任せなさい!」

「何でこんな奴が一番頼りになりそうなのか」

 

 あー、キャベツ美味し~!

 

 

 

 

 

 この世界には経験値を溜めるとレベルが上がる世界である。

 その時に得るスキルポイントを使って職業にあったスキルを覚えていくと言うシステムなんですよ!

 何が言いたいかと言いますと、レベルが上がりました!

 キャベツのおかげで!

 

 言う訳ですやって来ました防具ショップ!

 久しぶりですねぇ。来たことないけど。

 

 えっ!?

 なんで防具ショップにようがあるのかわらないって?

 そ・れ・は・!

 

「で?何でゆになまで付いて来てんだよ?アクアは薄いっ羽衣をなんとかしなきゃ行けないし、俺はジャージをどうにかしないといけないと思ったからだけど?」

「アクア様のいる所なら、どこにだって現れますよ!それに、ベテラン冒険者たる私がいれば、アドバイスが出来ますよ」

 

 アクア様は神々しい今の装備で大丈夫だと思いますが、カズマ君のジャージはどうかと思うんですよね~。

 適当な鎧と剣を紹介すればいいかな?

 小物のカズマ君だったら、それだけで満足するでしょう!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

232 私って必要ありました?

 私がカズマ君の装備を見ていると、カズマ君はアクア様の神々しい装備品を売ろうとうか抜かしてきやがった。

 オイオイ!ふざけてんのか!?

 アクア様が生活に困ったら、私がお金を献上するから売らなくてもいいんだよ!

 あ、カズマ君はその辺で野垂れ死ねば良いけどね!

 

 ムカついた私はカズマ君の頭を叩いておく。

 

「バッチっこんっ!」

「痛ッ!!なにすんだよ!}

「アクア様を泣かすな。アクア様、困ったらいつでも言ってくださいね。お金なら幾らでも差し出せますから」

「ぐっすん。ありがとね、ゆにな。……ゆになを見て勉強しなさいカズマ!この子の対応が正しいのよ!!」

 

 アクア様、機嫌が直って良かった。

 おのれカズマ君め!

 アクア様を苛めるなんて許せない。

 これはもう、適当な装備をあてつけるしかないね。

 更に仲介金をいただいで……ぐふふふぅ。

 

 と考えている内にカズマ君にぴったしの装備を見つけた。

 これはそれらしく言って、八つ当たりだ!

 

「カズマ君カズマ君、これなんてどうでしょう?値段も頃合いですし、カズマ君のレベルならこれくらいが丁度いいですよ♪」

「却下、明らかにボロ品だろうが。その隣のこれだな。それと、剣を一本選んでっと。おっちゃんこれ下さい」

 

 ちっ!

 ハマってくれないか。

 と、あれ?

 盾はいいの~?

 

「はぁ、どうでもいいですけど、盾は買わないんですか?っていうかカズマ君は剣を使えるの?」

「せっかく初級と言え、魔法を覚えたから魔法剣士スタイルでいこうと思ったんだ。だから片手はスキル発動のために残しておいたんだ」

 

 へぇー、カズマ君にしては考えたじゃないか。

 魔法剣士、いいよね!

 異世界の主人公にぴったしだ。

 まぁ、カズマ君がそこまで剣術が使えて、魔法も上級を扱えたら、の話だけど。

 

 結局、カズマ君はその装備に決めてしまった。

 アクア様はステータス的と金銭的に装備はそのままでいいとのこと。

 私って必要あった?

 冷やかしに来ただけになってない?

 

 そう疑問に思うこともあるが、防具ショップを出たカズマ君について最近たまり場化しているギルドに向かった。

 

 

 

 カズマ君は新しく買った装備をめぐみんとダクネスさんに見せて、感想を頂いている。

 そして「新しい装備とスキルを試したい」とカズマ君が言ったので、クエストに行くことになった。

 

「それなら、ジャイアントトードが繁殖期に入ったそうで、街の近くまで出現するそうだから、それを…」

「「カエルは止めましょう」

 

 言いかけたダクネスさんに強い口調で、アクア様とめぐみんは拒絶した。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

233 アクア様を泣かされた!

 連続投稿一か月です!
 まだまだ頑張りますよ。


 あー、ですよねー。

 めぐみんとアクア様はカエルに軽いトラウマを持っていますから。

 その反応も当然でしょう。

 

 ダクネスさんが正論を述べると、カズマ君が二人がカエルに食われた事を説明する。

 あれれ?

 ダクネスさん、また興奮してましたよね?

 カズマ君が連鎖して興奮するから、止めてもらってもいいですか。

 興奮の果てにアクア様を襲ったら、折角友達になった転生者をこの手で地を血で染めなきゃいけなくなるんで。

 

 カズマ君が「手頃に倒せる楽なクエストがいい」と言うと、ダクネスさんとめぐみんは仲良く、掲示板へ物色しに行った。

 アクア様はそんなことを言うカズマ君を小馬鹿にした様に言っていた。

 

曰く、カズマ君は最弱職だから慎重なのも分かるけど、私たち上級職が四人もいるからバンバン高難易度のクエストを受けて、お金を儲けてレベルをドンドン上げて、サクッと魔王を倒しましょう。

 と、アクア様はおっしゃった。

 が、カズマ君はアクア様の事を「役に立たない」と言った。

 

 ……………………何を言ってんだコイツ?

 アクア様は女神様!

 ここに存在するだけで私のやる気を向上させる。

 故にアクア様は役に立っている、と言える。

 

 そんな風にカズマ君に反論したんだけど……。

 逆にカウンターを喰らって、言葉が出ませんでした。

 カズマ君の意見を聞いて「一理あるな」と思ってしまい、申し訳ございません。

 ごめんなさいアクア様、言い返せないです。

 それもでアクア様のお力になろうと声をかけるが……

 

「あ、アクア様…大丈夫ですよ。私が付いて―――――」

「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「わああ、泣き止んで下さいアクア様!!カズマ君もカズマ君もカエルに食われる事しかない脳と、宴会芸しか取り柄がない穀潰しとか言っちゃダメですよ!!……終いにゃ、ぶっ殺すぞ、ゴラァ!!」

 

 私は必死になってアクア様を慰めた。

 そのお陰か、アクア様はカズマ君に言い返すまで復活してくださった。

 

「わ、私だって回復魔法と回復魔法とか回復魔法とかあるのよ!!このままちんたらやっていたら、魔王討伐まで何年かかるか分かってんの!!?何か考えがあるなら言って見なさいよ!!」

「……プロゲーマーだった俺が、この手を考えなかったとでも?」

 

 回復魔法、とても重要ですよ、アクア様!

 そのおかげで私たちは怪我を気にせずに戦えるのですから!

 それに、カズマ君は前世はプロゲーマーだったのか~。

 その年でプロって凄いなぁ。

 死因は動かなさすぎの、運動不足と寝不足、それと栄養失調かな?

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

234 アクア様は泣き崩れてしまいました

 そう考えながら、私はしれっとその場を離れた。

 アクア様には悪いけど、カズマ君は意外とキレる奴だ。

 飛び火が来ない内に、撤退するのは間違っていないはず。

 逃げたのはない、戦略的撤退と言うのだ!

 

 私は掲示板にいるめぐみんとダクネスさんの元に向かった。

 さて、いいクエストはないかな??

 

「お二人さ~ん、何か良いクエストはありました?」

「あぁ、ゆになですか。見ての通りです」

「ジャイアントトードにも苦戦する様だったのなら、それよりも簡単で楽なクエストと言うと、報酬が低くなるかなら」

 

 ん~ん!?

 やっぱりカエルが簡単なクエストなのか。

 私はゲームとかでは、割に合わなくても簡単なクエストを何時間もかけて周回プレイして、レベルをコツコツとあげてから一気にクリアまで突っ走るタイプだったからなぁ。

 カズマ君やアクア様とは正反対のタイプ

 危ないけど、王都のギルドに行くのも手かも。

 危ない代わりに、報酬は段違いと聞くし。

 ……ってそれだと本末転倒か。

 

 私は掲示板を一通り見ると「カズマ君に相談しよう」と結論を出して、ケンカしているカズマ君とアクア様の元に戻った。

 二人の元に戻ると、アクア様はカズマ君に言い負かされたのか、テーブルに泣き崩れていた。

 カズマ君への攻撃はめぐみんとダクネスさんに任せて、私はアクア様の慰めにかかった。

 

「アクア様!!何をされたのですか!!?」

「ゆ、ゆになぁ~~~!!!か、かずまがね、私の回復魔法を覚えさせろって言うの!!それに、冒険者以外にも儲けれる仕事を考えろって!!ゆになはそんなこと言わないよね!!!??」

「勿論言いませんよ!!アクア様が使うからこその回復魔法ですもん!私はまだ受けたことがないですが、きっとそこら辺のプリーストよりも性能が良いに違いありません!!アクア様は女神様なんですから、自信を持って下さい」

 

 

 アクア様を慰める。

 自信に満ち溢れたアクア様をここまで泣き崩すなんて、クソニートはどれだけ鬼畜なのでしょうか?!

 一回、お話をする必要があるみたいですね。

 

 アクア様は今まで通りでも取り柄がある。

 カズマ君がちゃんと見てないだけだ。

 そんな感じで慰めていると、落ち着いたアクア様は泣き疲れて寝ていしまわれた。

 

 その時、カズマ君の相手を任せていたダクネスさんがこっちを向いた。

 話がまとまったのでしょうか?

 カズマ君の声が聞こえる。

 

「おーいアクアー!いつまでメソメソしているんだー。今、お前のレベルについて話して―――」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

235 アクア様のレベル上げクエストをやろう

 今度はカズマ君の声が聞こえました。

 アクア様が起きてしまうでしょう。

 なので、アクア様に代わって、私が要件を聞きます。

 

「どうしました?アクア様は泣き疲れて寝ていますよ」

「そ、そうなのか」

「子供か、こいつは!」

 

 カズマ君は寝ているアクア様を見て、呆れ顔になった。

 しょうがないじゃないですか。

 アクア様ですもん。

 

「んで?アクア様に代わって私が要件を聞きます」

「アクアでもお前でも、後から先かの違いだけだ。俺は考えたんだ、アクアのレベルを上げるとそれに並行して、知性ステータスが上がってくれて、少しはまともになるんじゃないのかって?って思ってな。ゆになはどう思う?」

「なるほど~ですね。ステータスの上がり具合は人それぞれですが、それに掛けてみるのもありかも」

 

 カズマ君の提案はアクア様のレベルを上げて、知性ステータスを上げようということでした。

 少しでもまともになれば、と言う理由はアレですけど、アクア様のレベルを上げるということには私も賛成します。

 知性的なアクア様………………想像しただけでも笑えるwww。

 

「分かり…まし……たww」

「何を急に笑っているんですか?遂に頭が可笑しくなってしまいましたか」

 

 急に笑い出した私を見て、めぐみんが喧嘩を振ってくるが、今の私はそれどころない。

 だって……知的な…アクア様wwwって。

 めぐみんは何で想像しないのww。

 

 笑っている私をほっといて、話は進む。

 

「それで?どんなクエストでアクアのレベルを上げるのですか?」

「そこなんだよなぁ。ダクネスはどんなクエストが、アクアのレベルを上げるのに最適か知ってるか?」

「アクアはアークプリーストなんだろう?だったら、アンデットモンスターの討伐とかはどうだ?アンデットモンスターの討伐には、アークプリーストの浄化が必須だ」

「それなら、先ほど見た掲示板に『共同墓地のアンデットモンスターの討伐』がありましたよ」

「なら、それにするか。アンデットモンスターは夜に出没する。っで良かったよな」

「なに当たり前のことをいってるんですか?」

「か、確認だよ確認!」

 

 あ~あ、やっと笑いの発作が収まった~!

 何々、共同墓地のアンデットモンスターの討伐ですか?

 ゾンビとかかぁ~。

 私は浄化を使えないから、アンデットモンスターと戦ったことがないんだよね~。

 やっぱり、バイ〇ハザードみたいなのかな?

 ちょっと楽しみになって来た!!

 どっかにFN SCARとか落ちてないかな?

 一番好きな銃なんだけどな~。

 




 SCAR良いですよね。
 PUBGやる時はそれを使います。
 奴で、ソロドン勝したことあります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

236 キャンプでダクネスさんとお話

 危なかった!
 何とか間に合いました。
 誤字脱字あればよろしくお願いいたします!!


 私は今、何処にいるでしょ~か??

 正解は、街から離れた丘の上で~す!

 もっと正確にいえば、丘の上にある身寄りのない人やお金の無い人が埋葬されている共同墓地前。

 そこで皆とキャンプに来ています。

 あ、噓。

 クエストですね。

 

 クエスト内容はアンデットモンスターの討伐もとい、ゾンビメーカーと呼ばれるゾンビを操るモンスターの討伐。

 なので、夜にしか遂行できない。

 だから、あの後、アクア様をカズマ君が叩き起こして、少しの準備をしてから直ぐに街を出発した。

 

 今は夕方をちょっと過ぎるくらい。

 アンデットモンスターが活動を開始するのは深夜頃だ。

 つまり、早く着き過ぎた。

 

 だからこうやって、時間潰しと夕食を兼ねて、バーベキューをしている。

 肉が美味い!!

 あ、カズマ君がアクア様の肉を取った。

 へー、カズマ君は野菜が焼いてる最中に、跳ねるから嫌いなんだ。

 今度嫌がらせに、沢山の野菜をお土産に持って行こうっと!

 

「アクア様、私のお肉を食べて下さい。私は野菜を食べますので」

「ホント!ゆになは良い子ね!ヒキニートとは違うわ」

「アクア様は女神様、お好きな物をお食べ下さい。我々下界民はそのお残りで十分です」

 

 とか言って、ちゃっかりとめぐみんのお肉を頂いています。

 当の本人は気づいていません!

 でもなんでなんだろう?

 今もがっつくように肉に喰らいついているけど、全く成長しないよね~。

 流石ロリコン属性持ち。

 

 

 

 私がアクア様の食べ物を焼き、隙をついてめぐみんの物を食べる。

 そんなことをしていると、ダクネスさんが話しかけてきた。

 

「気になっていたんだが、ゆになはどうしてアクアのことを様付で読んだり、そうやって色々とお世話をするのだ?アクア様といったらアクシズ教のアクア様だろう?何か関係でもあるのか?」

 

 どうなのだ?と聞いてくるダクネスさんに私は真実を言える訳がないので、噓は言わない方で質問に答えた。

 

「そ・れ・は・ですね!昔、アクア様に助けられたからです!いわゆる恩人様になります」

「そうだったのか。今まで見ていると、あのアクアが人を助けるとは思えないが……深くは尋ねまい」

「そうですよねー。聞かれても、あんまり話せることはないし。でも、救われた話なら、一応カズマ君もアクア様に助けられた、と言わないこともないですよ。とらえ方の違いです!!」

 

 そう言ったら、ダクネスさんは納得してくれた。

 

「ふむ、納得した。私ばかりの聞いても悪い。ゆになも私の事で聞きたいことがあったら遠慮なく言ってくれ!」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

237 ダクネスさんに連れられて

 話が全然進まないのが我が作品


 何でも聞いちゃっていいのですか!?

 ふっふっふっふ!

 私もダクネスさんに聞きたいことがあったんですよ~!!

 名前を聞いた時から、あれ?って思っていたんだよね。

 変態ってイメージが強すぎて,忘れていたが……………そう言えば変な性癖を持ってる人が多いって言うもんね!

 でも、間違っていてはいけないから、耳打ちで、少し濁して質問する。

 

「ダクネスさんってお貴族様か何かですか?」

「ッ!!ななな、何を言っている!!?」

 

 あ、完全に動揺してますね。

 私の予想は当たったみたいだ。

 やったね!

 貴族に借りを作ってやったぜ!

 

 動揺したダクネスさんは慌てて、私の腕をひぱってバーベキューの輪の中から引っ張りだした。

 

「何処か行くのか?」

「ちょっとゆになと話がしたい。なに、すぐ戻る」

「あんまり遅くならないで下さいよ」

「むってあむあい(言ってらっしゃ)」

「あれれれ~~~~お助けを~~~!!」

 

 上からのカズマ君、ダクネスさん、めぐみん、食べ物を口に入れたまま手を振って下さるアクア様、最後に私。

 それぞれが言いたいことはを言って、ダクネスさんと私の話し合いを認めてくれた。

 カズマ君、私を被害者を見る目で見るな!!

 

 ダクネスさんは他の人達がこっちの声が聞こえない位離れた所でようやく腕を離してくれた。

 ダクネスさんって意外と力あるんですね。

 捕まれた所が真っ赤かですよ。

 痛かった~。と腕をプラプラさせていると、ダクネスさんは謝ってくれました。

 

「す、すまない。動揺して、力加減が出来なかった」

「良いですよ。痛かったアピールってよくやりません?当たってもいなのに、痛ッ!!っていう奴ですけど?」

「??そんなものがあるのか……って痛くなったのか!!?」

「私のステータスを舐めないでください!!」

 

 多分だけど、魔力はめぐみん、筋力はダクネスさん、運と知力はカズマ君、並みはあると思う。

 そんな高ステータスの私を遥かに超えるのがアクア様!

 知力と運は誰よりも低いですが。

 

「ゆになは実は隠れた実力者なのか」

「別に隠れてませんよ。アクセルの冒険者ギルドには街一番の冒険者って言われてますからね!」

 

 褒めるな褒めるな。

 照れちゃうじゃないか!

 王都から指名依頼が来ちゃう」

 

「別に、そこまでは言ってないぞ。ってこんな話をしに来たのではない!」

「そっちが勝手に盛ってくれたんじゃないの~」

 

 私がダクネスさんがネタ提供をしてくれたんだよ~、といるとダクネスさんの雰囲気がガラリと変わった。

 さて、私も気合いを入れるとしますか。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

238 借り一つ売ってやったぜ!

 気合いを入れ直した私にダクネスさんが突っかかって来る。

 

「なぜ私が貴族のダスティネス家だと分かった!!?言え!」

「近い近い、ステイステイ、落ち着いて下さい?」

「あぁ、すまない。また取り乱してしまった」

 

 ダクネスさんは深呼吸を数回繰り返して、ようやく落ち着きを取り戻したみたい。

 後、私は何処の家とは言ってませんが……。

 そんなに慌てるってことは誰にも話していない事情なのかな?

 ……「秘密を知ったからには生きて返す訳にはいかない」とかにはならないよね。

 流石にお貴族様を大地の染みにするのは私でも躊躇してしまう。

 いざとなれば遠慮なくやりますけどね!

 

 そんな感じで悩んで?いると、ダクネスさんが私に聞きいてきた。

 どうして気が付いたか?と。

 

「だって、ダクネスさんはお綺麗ですし、何処か貴族様っぽいな~?って勘もあります。でも決定打は、昔に国の事を調べた事があるんですよ。その時に「王家の懐刀」としてダスティネス家が出てきた覚えていたんです。名前が少し似ていたのでそうかな?って」

「勘って恐ろしいな。そうだ、私がダクティネス家長女。本名はダスティネス・フォード・ララティーナと言う」

「ふむふむ、ララティーナちゃんっと」

「ララティーナ言うなっ!!!!」

 

 ダクネスさんをからかおうと名前+ちゃん付で呼んで見ると、ダクネスさんは物凄い大声で拒否して来た。

 っみ、耳がキーンってなる~~~!!!

 

「ダクネス~!ゆにな~!何かあったのか~~!!」

 

 そんなに大声だったらしく、バーベキューの方から何事か?と心配された。

 そんなに嫌だったのか……………弱点発見。

 

「分かりましたよ。これからもダクネスさんって呼ぼまーす」

「是非ともそうしてくれ。それと、私が貴族であることは私が言うまでは黙っていてくれないか?」

「はいはーい。お幾らで黙っていたらいいんでしょうか?」

「ありがとう……ってお金を請求するのか!?分かった。幾ら払えばいいのだ?」

 

 マジですか!?

 冗談で言っただけなのに!

 ここできっぽりと搾り取るのも悪くない。

 

 ニヤニヤと幾ら貰おうかなぁ?って考えるが私は拒否した。

 

「冗談ですよ~もう!戦闘になったら盾役で私を守ってくれるだけで十分です」

「じょ、冗談だったのか。あぁ、遠慮なくモンスターの前に突き出してくれ。そして、あの不思議な魔法で敵諸共押しつぶしてくれたら良い」

「あ、ハイ」

 

 最後のが無かったらいい人なんだけどなぁ。

 ともかく、ダクネスさんに借り一、貸してやったぜ!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

239 初級魔法の間違った使い方

 

 ダクネスさんとのお話が終わると、カズマ君がコーヒーを作っていた。

 え?

 カズマ君っていつの間に魔法を覚えたの!?

 てか、それ初級魔法だよね?

 そんな使い方があったのか。

 流石知力が高いだけはありますなぁ。

 

 めぐみんもカズマ君から水を恵んで貰っている時に、私は戻ってこれた。

 ので、私もカズマ君から貰うことにしよう!

 

「ただいま~!!カズマ君、私もオレンジジュースちょ~だい!」

「おかえり、待ってろ。『クリエイト・ウォー』……ってオレンジジュースなんか出せるか!!?」

「え!?」

「何だ、その「カズマ君なら出来ると思ったのに!?」って顔は!!」

 

 ちぇ、ダメだったか。

 残りのお肉を頂くとしよう。

 モグモグモグモグ

 冷めて美味しくない。

 

 冷たい肉を食べていると、カズマ君が私とめぐみんの魔法使いコンビに聞いてくる。

 

「『クリエイト・アース』これって何に使う魔法なんだ?」

「えっと確か。その魔法で創った土は畑などに使用すると、いい作物が採れるそうです。……これだけでしたっけ?」

「まだあるよめぐみん」

「え?他にありまし、ギャァァァァ!!!」

 

 私がめぐみんに向けて『クリエイト・アース』と唱えると、創られた土がめぐみんの目に直撃した。

 ふっふっふっふ、これが私の必殺。

 

「目潰し!」

「わざわざ見せなくてもいいじゃないですか!!」

「ほら、『クリエイト・ウォーター』ゆになも、よくんなの思い付いたな」

「初級魔法は嫌がらせに、消費魔力が丁度いいくらいですからね!それに、鬼畜のパンツ脱がせ魔のカズマ君だったら私が言わなくても自分で思いつきそうですけどね~。だから先に著作権を出しといただけですよ」

「鬼畜でもパンツ脱がせ魔でもないし!!」

 

 「思いつきそう」のところは否定しないの?

 と顔で伺ってみると、否定しなかった。

 カズマ君は今後も初級魔法を使いこなしそうだな!

 

 ということで、初級魔法の『ティンダー』でお肉を焼いて食べていると、私の話しを聞いていたアクア様がカズマ君を笑っていらっしゃる。

 農家は盲点でした!

 カズマ君にぴったしの職業ではないですか!?

 

 と二人して笑っていると、カズマ君が土を手のひらに乗っけて

 

「『ウインドブレス』」

「ふぎゃぁぁ目がぁぁ、アレ痛くない?」

「この手が読めなかったとでも?」

「クッソ!」

 

 カズマ君が飛ばした土ぼこりは私とアクア様の目に直撃する事はなく、宙を舞った途端に地面に落ちた。

 私の重力魔法だ。

 言ったじゃないですか?

 嫌がらせの為に初級魔法を覚えたって。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

240 ローブの人影

 夜も更けて時間が深夜に差し掛かった頃、墓場にと足を運ぶ私たちにアクア様が警告を発してきた。

 

「私達の受けたクエストってゾンビメーカーの討伐よね?私、そんな小物じゃなくて、もっと大物アンデットが出そうな予感がしてくるんですけど」

「おい、何フラグを立ってているんだよ!今日はゾンビメーカーの討伐、それだけだ。それ以外の事が起きたら速攻で帰る。いいな」

 

 アクア様はフラグっぽい事をポツリと呟いた。

 それが聞こえたカズマ君が、アクア様の言ったフラグをへし折ろうとする。

 

 誰かがフラグを言って、別の誰かがそのフラグをへし折ろうとするか、話題に上げる。

 これもフラグなんですよね~。

 それにカズマ君。

 アクア様が間違った事をいうものか!!

 

 私達は。敵感知スキルを持っているカズマ君を先頭に進む。

 墓場の中見えるくらい近づくと、カズマ君が敵を感知した。

 

「何だろう、ピリピリ感じる。敵感知に引っかかったな。いるぞ、一体、二体……三、四体?」

 

 カズマ君が私たちに敵の数を教えてくれる。

 

 ふむふむ、四体ですか。

 問題は無いですね。

 ゾンビ如きだったらひき肉にしてやんよ!

 

 そんなことを考えていると、墓場で青白い光が走った。

 ……魔力も感じられる。

 遠目に見えるアレは、魔法陣でしょうか?

 そばにはローブを被った人影が見えます。

 なんだかアレ……

 

「ゾンビメーカー……ではない……気がするのですが……」

「突っ込むか?ゾンビメーカーでなかったとしても、こんな時間に墓場にいる以上、アンデットに違いないだろう。アークプリーストのアクアが居れば問題はない」

 

 めぐみんが私が考えた事と同じことを自信なさげに言うと、カズマ君が行動を提案する。

 だけど、私はそれに反対した。

 ダクネスさんも、どうどう。

 

「いえ、待ってくださいな。なんか物凄い魔力を感じるので、ここは慎重にいきましょう」

「そうなのか?だったらもう少し様子を――――」

 

 私が「慎重に行動しよう」と言うと、カズマ君は私の意見を聞いて様子見を再提案しようとして……。

 

「あぁ―――――――――ッ!!」

 

 アクア様が突然立ち上がると、叫び声を上げながらローブの人影に突撃した。

 アクア様は何をそんなに慌てているのでしょう?

 

「ちょっ、おい待てアクア!!」

 

 カズマ君がアクア様を呼び止めるが、アクアは止まらない。

 そしてアクア様は、ローブの人影をビシッと指差して言いました。

 

「リッチーがこんなところにノコノコとやって来て!!成敗してあげるわ!!!」

 

 ローブの人影がリッチーであると。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

241 問答無用に浄化するアクア様

 アクア様はローブの人影がリッチーであると言った。

 

 リッチーって確か、魔法を極めた大魔法使いが人間の身体を捨てて、意思のあるアンデットモンスターになり果てた姿、そうだった気がする。

 ゲームなんかで言う、中ボスかラスボス級のモンスター。

 どうりで高い魔力を感じた訳だ。

 

 本来だったら、私が本気の威力を込めた重力魔法で足止めをしなければならない相手。

 その間に、アクア様に浄化してもらう。

 そして今日の朝にはリッチーを倒した冒険者として街の英雄に。

 

 本来、だったらだ。

 

「やめて~~~~!!!誰です??いきなり現れて何をするんですかぁ!!あぁ、私の魔方陣を消さない~!やめ、やめて下さいいいい!!」

「うっさい、黙りなさいアンデット!どうせこの魔方陣でロクでもない事を企んでいたんでしょう!こんなもの、こうよ、こう!」

 

 アクア様はリッチーの制止も聞かずに、魔方陣をグリグリと踏んでいる。

 私も参戦した方がいいのでしょうか?

 それとも、アクア様とリッチーをボーっと眺めている取り巻きゾンビどもを倒した方がいいのでしょうか?

 

 私がどう行動しようか悩んでいると、リッチーが魔方陣の説明を必死になってしている。

 

「やめてー!この魔方陣は迷える魂を天に還す為の物なんです~!!ほら、たくさんの魂がこの魔方陣で空に昇っていくでしょう!?」

 

 あ、本当だ。

 確かに魂らしい物体が、ひゅるるるぅぅぅっと空高く昇って行ってますね。

 私はなんだか、このリッチーが良い人に見えてきました。

 

 だが、アクア様はリッチーと言うアンデットモンスターと言うだけで許せないらしく。

 

「リッチーの癖に生意気よ!そんな善行をチマチマとやってないで、アークプリーストであるこの私に任せなさい!墓地ごと浄化してあげるわ!!」

「えっ!ちょ、ちょっと待っ」

 

 アクア様は墓地ごと浄化すると宣言なさいました。

 

 アクア様、その行いはとても素晴らしい事ですが、もうちょっとリッチーの話を聞いてあげてもよろしいのでは?

 問答無用で攻撃魔法を放ってくる訳でもなさそうですし。

 まぁ、そう考えるだけで私はアクア様の行動を止めませんが。

 

「『ターンアンデット』!!」

 

 アクア様はリッチーの制止を無視して、浄化魔法を唱えました。

 

 あぁ、アクア様が神々しく光を放っています。

 アクア様の前では取り巻きゾンビどもは一溜まりもないのですよ!!

 ってそれだと、リッチーにも被害が及んじゃいますよね。

 やっぱり、リッチーの話は聞かないおつもりですか。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

242 美人リッチー

「きゃぁー!身体が消えるぅ!!やめて、消えちゃう、成仏しちゃう!!」

「あははははは!!愚かなリッチーよ。神に欺くアンデットよ!さぁ、私の力で一欠片もなく消えてしまいなさい!!」

 

 アクア様……これじゃあどっちが悪役か分かりませんよ。

 

 

 そう呆れていると、いつの間にかアクア様の後ろに立っていたカズマ君がアクア様の頭を剣の柄で小突きました。

 

 うむむ!!

 複雑な気持ちです。

 アクア様にはそれ以上のやらないで止まって欲しい、と言う思いの為に止めてくれたカズマ君への感謝と、そのやり方はどうかと思う怒り。

 私はどっちに傾けばいいのでしょうか?

 

「ゆにな、何を考えているのですか。私達も行きましょう」

「あぁ、壁役は必要なかったのか……」

 

 二つの感情をどっちを現したらいいのか悩んでいると、様子を見ていためぐみんとダクネスさんが「移動しよう」と言ってくる。

 二人に従い、カズマ君とアクア様の下に移動している間に、私はカズマ君への感情を決めた。

 

 うんイーブイ。

 ……間違えた、イーブンの方だった。

 カズマ君へのお咎めは無しに決定!

 

 

 

 私達がカズマ君の下に着くと、カズマ君は代表してリッチーに話しかけました。

 

「おい、大丈夫か?……えーっとリッチーで良いんだよな?あんた」

 

 リッチーはアクア様の浄化魔法を食らったせいで、足元は半透明になっていて少し消えかかっている。

 徐々に戻って行くその姿をを見ていると、アクア様が私に泣きついてきました。

 

「ゆにな~!かずまがまた叩いたぁ!」

「お~よしよし、アクア様。痛いの痛いの飛んでいけ~~~です」

 

 私はアクア様の頭を撫でて、大人が子供の傷をあやすときに言葉を使って慰める。

 

 なんか、アクア様の保護者化してませんか?

 まぁ、GO・HO的にアクア様に触れれるので、不利益はないのですが……。

 

 などと考えながら、リッチーの話を聞きます。

 

「はい、大丈夫です。危ないところを助けて頂きありがとうございました。えっと、おっしゃる通り、リッチーのウィズと申します」

 

 リッチーのウィズさんはそう自己紹介すると、ローブのフードを取りました。

 綺麗な茶色のロングヘアで、ウェーブがかかっています。

 

 おぉ!美人さんじゃないですか!!?

 リッチーと言うと、なんか細々とした弱っちい体をしていると思っていたのですが……真逆ですねー。

 顔良し、胸も巨乳と言える程ある、お尻はムチっといい肉付き。

 カズマ君が赤くなってる!!

 何気にハーレム気質でもあるんじゃないかと言うくらい、カズマ君の周りには美人さんが多いですよねー。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

243 私はアクア様の保護者?

アクアがどんどんと幼児化していく。


 私はカズマ君の周りにいる女性を思い浮かべる。

 

 女神でおられるアクア様にロリコン属性のめぐみん、Ⅿ貴族様のダクネスさん、おっぱい超デカい受付嬢のルナさん、最後に何でもできるアクセル頭一の冒険者であるこの私!

 私が知ってるだけでも、五人の可愛い女の子とカズマ君はお知り合いである。

 この先、もっと知り合いになる方が増えるのでしょうか?

 ゆんゆんとか、ゆんゆんとか、ゆんゆんとか!!

 アレ、ゆんゆんしか思いつかなかったわ。

 

 とまぁ、カズマ君のハーレム気質について考えている間にも話は続いています。

 

「ウィズ…でよかったか?ウィズはどうしてリッチーなのに、墓地で魂を天に還す行いなんてやっていたんだ?アクアじゃないが、お前もやるべき事があるんじゃないのか?」

「ちょっとカズマ!リッチーとなんか喋っていると、腐るわよ!ほら、私に『ターンアンデット』させなさい!!」

 

 私に泣きついていたアクア様はいつの間にか立ち上がり、ウィズさんに浄化魔法をかけようとする。

 そんなアクア様に怯え、ウィズさんはカズマ君の背後に隠れてしまった。

 

 アクア様、やっぱりアンデットには並ならぬ嫌悪感があるのですね。

 女神様だからでしょか?

 ……………あの~カズマ君、目線で「コイツをどうにかしろ」と言ってくるのは辞めてもらってもいいですか?

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………はぁ、アクア様どうどう。アンデットだからって誰構わずに浄化するのは良くないですよー」

 

 カズマ君との無言の争いに負けてしまった私は、アクア様の保護者化する。

 これじゃあ、信者を返上する日は近いかな?

 

「ゆになまでそんなことを言うの!?ねぇ私の信者じゃなかったの~??!!」

「信者です信者ですから、そこは間違えないでください!!アクア様がアンデットを浄化したいのは分かりましたけど、もっと状況を考えましょう」

「うぅ、そうやってゆになもカズマと同じようにいじめるんだわ」

 

 アクア様がなんだか聞き分けのない子供のように見えてくるのは私だけだろうか?

 それでも、そんなアクア様もグッジョブ!

 

 私はアクア様が飛びつきそうな餌を持って機嫌を直すことにした。

 

「はぁ、分かりましたよ。分かりました!このリッチーは良い人っぽいので浄化はなしですけど、今度一緒にアンデットモンスターの浄化クエストに行きましょう」

「…………っすん。ホント?」

 

 リッチーは浄化してはダメだと言った所で、目から涙が出そうになったが、私がアンデットモンスターの討伐クエストに行こうと言ったら、泣き出しそうになるのを我慢して私に聞いてくる。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

244 アクア様はボランティア活動をするそうです(強制)

 

 泣きそうな顔をして私に聞いてくるアクア様に私は答える。

 

「私がアクア様に噓を付いた事がございますか?」

「……………………ない。お金をくれる良い子」

「そうでしょう?だったら今日は大人しくしていてください。今回で貰えるはずだった報酬は、私がアクア様に払います」

 

 後でアクア様と二人っきりでクエストに行けるご褒美と、アクア様とにお小遣いを献上すると言うことで、私はやっとアクア様の暴走を止める事が出来たのであった。

 

 お小遣いなのに献上って、私は子供王女様に個人で使えるお金を出すおじいちゃん宰相か何かか!!?

 あ、カズマ君とウィズさんの話を聞きそびれた!

 まぁ、帰り道にでもカズマ君に聞けばいっか。

 カズマ君がアクア様を私にポイしたのが原因だし。

 

 

「おーいアクア!ちょっと定期的にこの墓地で浄化するボランティアを任せてあげるわー」

「はぁあ!!?ちょっと勝手に決めないでくれる!!?私には何の話か分からないんですけど!!」

 

 アクア様をカズマ君が呼ぶと、アクア様はカズマ君とウィズさんへとすっ飛んで行った。

 私はそれを追いかけることはせずに、聞こえてきたボランティア活動について、めぐみんとダクネスさんに聞く。

 

「私がアクア様を慰めている間に、何の話をしたのですか?」

「リッチー、ウィズがどうしてこんな時間に墓地で魂の浄化をやっているか?です」

「その訳とは?」

「この街のプリーストがお金にケチすぎて、後送りになっているからウィズが天に還してくれているそうだ」

「で?なんでアクア様が定期的に墓地の浄化をする羽目に?」

 

 何となくカズマ君が思いつきそうな事は分かるが、聞いてみる。

 アクア様が出歩くなら、私も夜中でもお供しなければいけないからね!

 

「アクアを使うのだろう」

「そうですね。問題はめんどくさがりのアクアがちゃんと働くかどうかですが……頼みましたよゆにな」

「あっはははは!めぐみんは可笑しな事を言うな~!パーティーメンバーである私とめぐみんは一蓮托生、……ついてこい」

「嫌です」

 

 私だけが犠牲になる物か!

 とめぐみんを引きずり込む。

 ダクネスさん?

 お貴族様を夜中にお家から連れ出せるものですか!?

 ……今深夜でしたね。

 兎に角、ダクネスさんは巻き込めない。

 

 私はめぐみんを標的に捉えた。

 

「まぁ、めぐみんはお子様ですから、深夜はお眠の時間ですもんね~!」

「何よう!!むぐぐぅ!そんな手には引っ掛からないです」

「沢山おねんねして、早く身長を伸ばさないとね!ついでにその、あるかないか判らないまな板も膨らむ事を祈ってますよ~!!」

「むきぃ~~~!!身長はともかく、まな板とは何ですか!!ゆになだって私とそんなに変わらないじゃないですか!!!」

「ひがんでる?ひがんでる?ひがんでいるのめぐみん!!?」

 

 あ~楽しい!!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

245 クエスト失敗

 朝から、頭が痛いのにシフト、夕方過ぎに帰って薬を飲んで、この話を書いてる内に大分良くなった。
 平日よりも土日の方が辛いのは何故だろう?


「納得いかないわ!」

 

 アクア様が怒っていらっしゃる。

 時刻は既に空が白みがかってくる頃、私達は墓地から街へと歩いていた。

 

「しょうがないだろ?あんな良い人を討伐なんかする気にはならないだろうに」

 

 アクア様の愚痴に、カズマ君が正論で返す。

 

 私達はカズマ君の一存で、ウィズさんを見逃すことになった。

 モンスターを見逃すことに抵抗があったダクネスさんとめぐみんは、カズマ君を通してウィズさんが一度も人間を襲った事がない、と説明する事で説得。

 ついでに、私とめぐみんがギャーギャーと楽しいケンカ中にアクア様がウィズさんの代わりに墓地の浄化をする事が決まった。

 少し解せないのは気のせいだと信じたい。(私がアクア様の援護に周らなかったせい)

 

「しかし、リッチーが普通に街で生活しているとか、この街の警備はどうなってんだ?」

「前線から離れた街だし、警備兵がリッチーを見抜けないのは当然だと思うけどね?」

 

 カズマ君が、持っている紙切れをみながら呟いたので、私が反応してあげた。

 

 カズマ君が持っている紙切れにはウィズさんの住所が書かれている。

 小さなマジックアイテムショップを経営しているみたいだ。

 今度、買い物に行こうと思う。

 アクア様には内緒でね!

 

「でも、穏便に済んで良かったです。もし戦闘になったら、幾らアクアがいると言えど、私とカズマ、それにゆになは死んでいたかもしれませんよ」

「げ、そんなにヤバい奴だったのか!?」

「ヤバいなんてものじゃないです。リッチーは強力な防御魔法、武器以外での攻撃の無効化。相手に触れるだけで様々な異常状態を引き起こし、その魔力や生命力を吸収する伝説級のアンデットモンスター。そんなのに何故アクアの魔法が効いたのか不思議なくらいですよ」

 

 あれれれ~?

 リッチーってそんなにも、ヤバいモンスターだったのか。

 そんなこと、学校で習ったけ?

 まぁいいや、私が勉強できないのは仕方がない。

 それにめぐみん、アクア様は女神様だよ!

 魔王ですら軽く凌駕するに決まってるじゃん。

 って私がリッチー如きに殺される?

 

「誰がリッチーに殺されるって?」

「い、痛いです!!肩を思いっきり掴まないでくださいよ!!」

「で、めぐみんは兎も角、誰が殺されるって?」

「ゆにながですよ!!先ほど言いませんでした?強力な防御魔法に加えて、武器以外での攻撃無効化ですよ。幾らゆになの魔法が強いからってリッチーには効きませんよ」

「わはっはっはっは!!誰がそんなこと決めた!禁術は使いようによっては魔法以上の力をみせるのだぁ!!」

 

 私はめぐみんに「リッチーには勝てる!」と剛雄していると、ダクネスさんがポツリと呟いた。

 

「そういえば、ゾンビメーカー討伐のクエストはどうなるのだ?」

「「「あ」」」

 

 うん、気づいた。

 が、敢えて言わなかったんだよ。

 クエスト失敗だねー、とは。




 ゆになが言った、「魔法以上の力を見せる」技は考えています。
 いつ披露させるかは未定ですが、デストロイヤー戦以降かな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

246 野菜スティック

 深夜のクエストから何日か経った頃、いつも通り冒険者ギルドに集合していた。

 

 私とめぐみん、ダクネスさんとアクア様は四人でテーブルの中央に置いた野菜スティックをポリポリとかじっていた。

 あ~野菜スティックは美味しいなぁ。

 口に咥えて、少しずつポリポリとかじるの感覚がクセになっちゃうのだ。

 

「カズマ楽しそうですね」

「一人だけシュワシュワを飲んで。私達は野菜スティックだけよ!?」

「あ~、アクア様、シャワシャワなら私が払って上げますので、頼んでいいですよ?」

「全くゆになは、アクアに甘いのだな。……それにこうもカズマに置いてけぼりにされているとは、んっ!これはこれでそそるぞ」

 

 今、私達が着いているテーブルにはリーダーであるカズマ君がいない。

 カズマ君はゲームっぽい事をしたい、と言って他の冒険者相手に情報収集に行っている。

 全く、仲のいい友達のように話しているカズマ君を見ると、「コイツ、こんなにもコミュ力があったのか!!?」と驚いてしまう。

 

 カズマ君はヒキニートではなかったのでは?

 こんなにもコミュ力があるのなら、何故引きこもりなどになっていたのだろうか?

 疑問だぁ。

 それにしても野菜スティック美味しい、おかわりもういっちょ!

 

 カズマ君がいないと話は始まらない為、私達のパーティーメンバー四人はする事がなく、暇そうに野菜スティックを齧りながらカズマ君の帰りを待った。

 

 

 

「どうした?」

「別にー?カズマが他のパーティーに入ったりしないか心配なんてしてないし」

 

 カズマ君が帰って一番初めの会話だ。

 ツンデレアクア様!!

 可愛いです!!

 カズマ君なんかよりも私にもっとツンデレアクア様を見せて欲しいよ!

 ってカズマ君、野菜スティックの摘まみ方を知らないの?

 

 カズマ君がアクア様野菜スティックに手を伸ばすけど、野菜スティックに避けられる。

 

「何やってんのよカズマ」

 

 アクア様はテーブルをバンッと叩くと、一瞬動かなくなった野菜スティックを掴み取って口に運ぶ。

 

「むぅ、楽しそうでしたね。楽しそうでしたねカズマ。他のパーティーと楽しそうでしたね」

 

 一度、二度とならず三度強調して、カズマがこのパーティーといるよりも楽しそうだったのをカズマに問い詰める。

 拳を握って、テーブルを叩いて、野菜スティックを口に運びながら。

 

「なんだこの新感覚は!?カズマが余所のパーティーと仲良くやっている姿を見ると、胸がモヤモヤしてくる反面、何か新しい感覚が……これが寝取られ!!」

 

 違う、絶対に違う。

 そんな例えを言いながら、顔を紅くしてダクネスさんはコップを指でピンっと弾き、ひるんだ野菜スティックを取った。

 

「カズマ君、こうやるんですよ?」

 

 私は野菜スティックの正しい食べ方をカズマ君に教える為、野菜スティックに軽く重力を当ててから掴みとって口に運ぶ。

 

 この世界での野菜は生きが良いですからね!

 地球とは根本的に常識が違うんですよ!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

247 スキルの話し合い

 野菜スティックを食べる私達四人を見たカズマ君は、テーブルをバンッと叩いて野菜スティックを掴もうとして……………ひょいっと避けられた。

 これは笑わずにいられない。

 

 正しい食べ方をしても、避けられるカズマ君ってwww

 あ~!お腹痛いw!

 

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

「や、やめてー!!私の野菜スティックに何すんのよ、食べ物を粗末にしてはいけないのよ!!」

 

 カズマ君が野菜スティックに避けられた事にキレて、掴みそこなった手をコップに伸ばして、コップごと壁に叩きつけようとしたが、アクア様が阻止する。

 ナイスですアクア様!

 

「野菜スティックに舐められてたまるか!-て言うか、何で野菜が動くんだよ!!」

「何言ってんの、お野菜もお魚も新鮮な方が良いに決まっているでしょ?イキの良い作り方ってのがあるのよ」

 

 カズマ君が遂にキレて、野菜が動くことに怒鳴る。

 それに対して、アクア様「何言ってんだコイツ?」という風にカズマ君に語る。

 

 今、カズマ君は「イキが良くなくてもいいから、動かないのを出せよ!」とか思っちゃってるのかな?

 まぁ、言いたいことは分かります。

 この世界での常識が分からなない元日本人達は、確かにこの世界での常識は辛いでしょうに。

 え、私ですか?

 赤ちゃんからやり直したお陰で、直ぐに溶け込めましたが何か?

 

 カズマ君は野菜スティックを死んだような目で見ていた後、不意にこう言った。

 スキルについて、

 

「はぁ、野菜スティックはもうどうでも良い。それよりも、お前らに聞きたいことがあるんだよ。レベルが上がったから、次はスキルを覚えていこうと思ってな。ハッキリ言ってバランスが悪いからな、このパーティーは。自由の利く俺がみんなの穴を埋めようと思う。そこで、お前らはどんなスキルを覚えているか教えてくれ」

 

 なるほど、確かにまだ自分以外がどんなスキルを覚えて、知らない。

 私も、アクア様やダクネスさんの覚えているスキルには、興味がありますから、良い提案です!

 

 と、カズマ君に反応して最初に答えたのはダクネスさんだった。

 

「私は『物理耐性』と『魔法耐性』、後は『状態異常耐性』を各種、その三つが占めてるな。あ、『デコイ』と言う囮スキルを持っている」

「あれれ?攻撃系スキルは持ってないの?」

 

 ダクネスさんのスキルを聞いた私が、耐性系スキルしか持ってないことに疑問を抱き、ダクネスさんに聞いてみる。

 私の記憶が正しければ………

 

「『両手剣』とか覚えて、武器の命中を上げる気は無いのか?」

 

あ、カズマ君に言いたいこと言われた!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

248 みんなのスキル

 自分は今更気づいた。五十話を超えていることに!
 前作の「本好きの暗殺教室」が五十二話だから……………。まだ一巻も終わってないんですね。
 取り敢えず、一巻分まではこのまま続けるつもりです。これからもよろしくお願いします。


 両手剣スキルはソードマスターやクルセイダーといった剣を扱う職業の人が覚えるれるスキルで、それを持っていると攻撃の命中率が上がる。

 持ってなくても剣が扱えないことはないけど、あった方が断然強い。

 アークウィザードである私には覚えれないスキルだ。

 

 さて、ダクネスさんの答えは如何に?

 

「無い。言ってなんだが、体力と筋力はある。攻撃が当たるなら、無傷で倒してしまう。かと言って――――」

 

 あ、はい。

 いつものⅯネスさんですね。

 カズマ君が「もういい」と言うと、更に頬を赤らめるダクネスさん。

 もう放置で問題無いですよね!

 

 ダクネスさんを見切ったカズマ君が向けた視線の先はめぐみん。

 あ、これは展開が読めたわ。

 

「私はもちろん爆裂魔法です。それに爆裂魔法威力上昇、高速演唱と最高の爆裂魔法を撃つ為のスキルしかありません。これまでも、これからも!」

「……………中級魔法を覚える気は――」

「ありません」

 

 だよねー。

 めぐみんが爆裂魔法以外に浮気するわけないし。

 優秀なのに……………。

 

 さて、お次は我らがアク――

 

「えっと、私は―」

「お前はいい」

 

 ―ア様、って一番楽しみにしていたのに!!

 確かに、宴会芸スキルとか宴会芸スキルとか宴会芸スキルとか回復系スキルがあるってのは私でも分かっていますよ。

 でも、私はその詳細が知りたかったのに!

 

「何でこう纏まりがないんだよ、このパーティーは。……………本当に移籍を」

「「「!!?」」」

 

 カズマ君が本気で移籍を考え始めると、他の三人がびくりとなった。。

 

 ふっふっふっふ、カズマ君は私のことをお忘れなのかしらん?

 いいでしょう、いいでしょう!

 私のスキルを見せてあげましょう!

 

「カズマ君カズマ君、移籍は私のスキルを見てから考え方が良いですよ」

「そうよ、そうよ!私達にはゆになが居るのよ!」

「なんでお前の持ち物のように言うんだよアクア!で、なんだ?ゆになは重力魔法だろ?」

「カズマ君、一つ勘違いしてませんか?」

「な、なんだよ?」

「私はアクア様の持ち物でも一向に構わない!!」

「「「「……………」」」」

 

 だって女神様の持ち物だよ!

 自分自身が神物になるんだよ!

 地球でいうと、聖人よりも立場が上なんだよ!

 

「ごほん。いつから私が重力魔法魔法だけの女の子だといいました!?」

 

 私は微妙になった空気を誤魔化す様に咳をした後、カズマ君に向かってビシッと差しました。

 食べかけの野菜スティックで!

 

 「お前もⅯなのか?」とカズマ君が呟いているのは聞こえないふりだよ!!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

249 ゆになのスキル

 

 そんな私にダクネスさんが聞いてきました。

 

「ゆにな、一つ良いか?」

「はいはい。なんでごぜえましょう?」

「その、重力魔法というのはどんな魔法なのだ?キャベツ狩りの時に私が受けた不思議な現象がそうなのか?」

「そう、人はその不思議な現象のことを重力を呼ぶ!ま、正確には重力を一定区間だか、下に向けて強くした現象があれですけどね」

「……………」

 

 ダクネスさんが黙り込みました。

 何かいけないことでも言いましたっけ?

 

「ゆになはそんな魔法をどうやって覚えたのだ?見たことも聞いたこともない魔法なんだが?」

「ゆにな曰く、家に伝わる禁術だそうですよ。私も詳しくは知らないのですが、ゆになの家は至って普通の家庭です。禁術があるなんて里の大人達もゆになの母親も「聞いたことがない」と言ってました。そこのところ、どうなんですか?」

「え、っとー」

 

 冷汗がダラダラと流れているのが分かります。

 心なしか、足元に水たまりが出来ている気もしなくない。

 アクア様に貰ったと言えるわけないし、かと言って都合の良い言い訳も思いつかない。

 なので、

 

「禁術です」

「「え?」」

「だから禁術です。読んで字のごとく、禁じられた術です」

 

 禁術と言って押し切ります。

 だって、押し切るしか方法が思いつかないし!

 ステータス的にはそこそこある知力も、こんな時には全く役に立たないよ!!

 

 と私が困っていると、なんとカズマ君が助け舟を出してくれます!

 

「もうよくないか?不思議な術ってことで。それよりも俺は重力魔法以外について知りたいんだがけど?」

「重力魔法以外についてなんてっ!私のあわれもない秘密が知りたいというのですか~?」

 

 昔のアニメのようにクネクネと体を動かして、テレたアピールをする。

 勿論ネタなので、本当にテレた訳でもないですよ。

 あ、「折角助けたのにふざけるな」と言う目でカズマ君が見てきます。

 分かりました、分かりましたよー!

 

「ジョーク!ジョークですから、その手をおさめて下さい。もぉ、ネタに一々怒らなくてもいいじゃない」

「なんだ?ホントにスティールがお望みか?」

「NO言います!私が覚えているスキルは『初級魔法』『中級魔法』『上級魔法』『魔法威力上昇』『高速演唱』『初級回復魔法』『魔力回復速度上昇』『魔量変換』『集中』『ラッキーガール』『初級創作魔法』『炸裂魔法』『爆破魔法』ekusutra……………」

 

 カズマ君が本気でパンツをスティールしてきそうだったので、私は覚えているスキルをペラペラと口に出してしまいました。

 この世界にないスキルも言ってしまったが、「ゆになだから」で誤魔化せないかな?

 

 




 なんか面白そうなスキル『魔王回復速度上昇』
 自分で打った時でも「何このスキル!?」となりました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

250 私の味方はアクア様だけです

 

 みんなは私のスキルの多さに驚いていましたが、カズマ君は私の肩をガッチリとホールドしました。

 

「強姦ですか!?」

「んなわけあるかっ!なぁ、おい。初級創作魔法ってなんだ?お前の特典は肉体のやり直しと重力魔法じゃなかったのかよ!!」

「ふっふっふ、二つ貰ったと言いましたけど、二つしかとは言ってませんよ!」

 

 私はドヤ顔でカズマ君に言いました。

 

 実は転生特典を三つ貰っていたのです。

 初級創作魔法、簡単な魔法しか作れないけど、私が覚えたいと思った魔法を魔力と引き換えに作れるのだ!

 ってあれ?

 カズマ君、急に力がなくなりましたよ?

 

 私が転生特典を二つならず三つ貰っていることに、カズマ君は力なく項垂れている。

 まぁ、そんなカズマ君は放って置いて、他の三人に振り返る。

 そして、サムズアップ!

 

「勝った!」

「流石私のゆになね!」

「私はゆにながアークウィザードには思えなくなってきたのですが……………思い違いでしょうか?」

「安心しろめぐみん、私もそう思う。……………最前線に立つべき実力なのに、なぜこんなところに」

 

 アクア様は私を称賛して下さり、めぐみんは私を奇妙な人を見る目で、ダクネスさんは首を思いっ切り傾げて、それぞれ反応してくれました。

 

 

 

 

 それぞれのスキルを語り合った日から数日後、キャベツ狩りの報酬が支払われた。

 ダクネスさんはキャベツの突撃と私の重力魔法で壊れてしまった鎧を直したようで、喜々としてカズマ君と私に見せて来る。

 

「見てくれ、報酬が良かったから、修理に出していた鎧を強化してみたぞ!」

 

 「どうだ!?」と見せてくるダクネスさんに、私とカズマ君はハモって言いました。

 

「成金貴族のボンボンが着てる鎧みたい」

「いよ!肉壁のダクネスお嬢様!!」

 

 ダクネスさん、その鎧は明らかにお金がかかっていると分かるよ。

 貴族レベルでないと、そろえれない位はお金がかかっている鎧を見せつけるとは。

 本当にお貴族様である事を隠そうとしてますか?

 でも、そんな鎧も私達を守る肉壁になるとは……………。

 鎧が泣いていそうだなぁ。

 

「カズマとゆになはどんな時でも容赦ないな」

 

 私とカズマ君の感想を聞くと、ダクネスさんは少し凹んだ。

 いや、私はボケに走っただけですから。

 カズマ君も思った気持ちをそのまま言っただけみたいだし。

 「素直に褒めて欲しい時もある」って言われても、ダクネスさんはMさんなので対応の切り替えが難しいのですよー。

 

 チラチラとカズマ君と私を交互にみるダクネスさんだったが、実は今はダクネスさんに構っている余裕はないのですよね。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

251 変人ブリーダー

 私達をチラチラと見てくるダクネスさんには、構っている暇が無い理由とは。

 

「そんなことよりも、今はお前よりもヤバい奴がいるから、構ってやる余裕がないんだよ。変人ブリーダーのゆにな、何とかしろ」

「はいはーい、お任せあれ……………って誰が変人ブリーダーだよ!?」

 

 いやまぁ、言いたいことは分かるよ。

 アクア様の保護者でめぐみんを弄り倒す者、更に前世が同居人に変体貴族様ついでに最強のボッチのお友達。

 私の交友範囲には変人が圧倒的に多いからね!

 まともな知り合いがルナさんしかいない、シクシク。

 

 で、肝心な私にどうにかされないといけない人物は?というと……………

 

「ハァ、ハァ……………た、たまらない、たまらないですぅ!!魔力溢れるこのマナタイト製の杖の色艶。……………ハァ…ハァ…ハァ……っ!!」

「この人はもうダメですねー」

 

 私は、新しい杖にスリスリ、クネクネと身を寄せているめぐみんを見ると、「諦める」を選択したのであった。

 

 めぐみんの気持ちは分かりますよ。

 マナタイト鉱石は魔法威力を向上させる希少な金属です。

 私の杖もマナタイト制ですし、魔法使いだからめぐみんがこうなるのも分かりますよー!

 だけど、朝からずっとこのテンションなのは、流石にちょっと引くよ!

 始まりの街であるアクセルでは、既にオーバーキル状態など爆裂魔法をこれ以上強くするのは、どうかと思うけどね。

 

 

 

 話は変わりますが、今回のキャベツ狩りの報酬をパーティーで山分けでなく、個人で取ったキャベツがそのまま個人の取り分にしよう、と言い出したのはアクア様です。

 アクア様、他の冒険者よりも段違いに取ったキャベツの数が多かった私とカズマ君に、匹敵するくらい沢山取ってましたからね。

 多いため、換金も時間がかかっているのでしょう。

 私達はパーティー最後の換金者であるアクア様を待っている最中なのですが……………

 

「何ですってぇぇぇぇ!!!」

 

 あぁ、アクア様の悲鳴がギルド内に響き渡りました。

 何かあったのでしょうか?

 カズマ君が「行って来い」という目で命令してきます。

 行ってこいじゃなくて、逝ってこいだよね、この場合。

 まぁ、行ってきますけど。

 

 アクア様の下に向かうと、受付嬢のルナさんと揉めていました。

 アクア様がルナさんの胸ぐらを掴んで、いちゃもんをつけています。

 そのたんびにアクア様がるなさんが揺らすから、ルナさんの巨乳がブルン、ブルンと揺れる。

 

 なんか無性に苛立ってきました。

 私も参戦してもいいのでしょうか?

 誰も止める人はいませんね!

 では、

 

「ゆにな、いっきま~す!!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

252 アクア様の報酬

 

「ゆにな、いっきま~す!!」

 

 と某機動戦士のパイロットをマネしながら、アクア様とルナさんに向かって飛び込む。

 

「アクア様~!どうかなさいましたか?」

「あ、ゆにな!ちょっときいてよ!私の報酬が五万ぽっちしかないのよ!どんだけキャベツを捕まえたと思っていんの!?十や二十じゃ足りないはずよ!!」

 

 アクア様が私に説明してくださいました。

 ってルナさん?

 「まためんどくさい人が来た……………」って目で見ないでください。

 

「それで?ルナさんの言い分は何ですか?」

「私のというより、正当な報酬の理由ですが、申し上げにくいのですが…」

「何よ!」

「そ、それが、アクアさんの捕まえたのは、殆どがレタスですして……………

「……なんでレタスが混じっているのよ!!」

「わ、私に言われましてもっ!」

 

 私にとカズマ君に匹敵する量のキャベツが、実は殆どがレタスだったなんて!?

 アクア様、どれだけ運がないのですか……。

 

「アクア様、これ以上ルナさんに言っても報酬は増えないですよ。どうしたんですかそんなにも必死になって?」

「……………がいるの」

「はい?」

「お金がいるの!!」

「あいつが持ってますよ、アクア様」

 

 お金がいるらしいアクア様に、私はカズマ君を紹介してあげた。

 勿論、アクア様が本気で頼んでくるのなら、私はお金を貸すことをためらわない。

 ちょっと面白そうだから、私の前にカズマ君に頼んでみてはいかがでしょうか?

 とアクア様に言った訳だ。

 

 私の紹介を聞いたアクア様は手を後ろに組み、にこやかな笑顔でカズマ君の下に向かって行った。

 

「カーズマさん、今回のクエスト報酬、お幾ら万円?」

「百万ちょい」

「「「なっ!?」」」

「ちぃっ!」

 

 カズマ君って変な時に運が良いんだから。

 ちくしょう!

 負けた。

 私の報酬は百万ぴったし。

 あとちょっとで、カズマ君に勝てたのになぁ。

 

 小金持ちだと知った途端にアクア様は、カズマ君をおだて始める。

 が、特に褒めるところが思いつかなかったらしい。

 

 アクア様、無理しなくてもいいのに。

 カズマ君も、もうお金の使い道を決めていたなんて、小賢しい手をっ!!

 

「アクア様、もうその辺にしておいて……………」

「カズマさぁぁぁん!!私、今回の報酬がかなりの額になるって踏んでおいて、数日で持っていたお金、全部使ちゃったんですけど!?っていうか、大金が入り込んでくるって見込んで、この酒場に十万近いツケがあるんですけど!!?」

 

 あぁ、だからアクア様はこんなにも必死何ですか。

 十万近いツケ……………うん、払える、と思う。

 アクア様、出来ればカズマ君に払って貰って下さい!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

253 アクア様は脅迫に出ます

 十万近いツケ、出来ればカズマ君に払って貰って欲しかったけど、カズマ君は今回の報酬の使い道を決めてるそうだ。

 

「今回の報酬はそれぞれにって言い出したのはお前だろ!?俺は、いい加減拠点を手に入れたいんだよ!いつまでも馬小屋暮らしじゃあ落ち着きがないだろ?」

 

 ちょっと待て、今聞き捨てならぬ言葉が聞こえたのですが?

 馬小屋暮らし?

 まぁ、転生して来て一か月もないですし、最弱職だから納得も行きます。

 それはカズマ君だけですよね!?

 そうですよね?

 

「カズマ君、カズマ君」

「あ?なんだよ?出来ればコイツを止めてくれると助けるんだが?もっと言えば、お前が金を負担しろ」

「嫌に決まってるじゃないですかやだー。それよりも、アクア様はちゃんとした部屋で寝泊まりしているのですよね?」

「あいつが?無理だろ。今でも借金に追われているのに、宿とか。俺と一緒の区間だぞ。俺は早く馬小屋暮らしを抜けたい。そのために拠点を構えるつもりなんだよ」

 

 

 なんと!

 アクア様は今まで馬小屋暮らしを強いられていたそうです。

 くぅーーー!

 この際カズマ君に投資したら、家を買ってくれないですかねー?

 

「カズマ君、良いですね~!私も投資するんで住ませてもらいます」

「そうか、それは良かった。俺とゆになのお金があれば……………」

 

 カズマ君が私の提案に乗ってくれている。

 そんな時だった。

 アクア様が我慢しきれずに、カズマ君にすがりついたのは。

 

「そんなぁぁぁ!!カズマぁぁぁぁぁ、お願いよ、お金貸してぇ!ツケ払う分だけでいいから!!そりゃあ、カズマも男だから、夜中にゴソゴソしているのは知ってるし、プライベートな空間が欲しいのは分かるけど!!」

「よぉし!分かった。五万でも十万でも安物だ!!だから黙ろうか!!」

 

 アクア様、見たんですか?

 思春期に入った男性特有の、アレ、を!

 っていうか、カズマ。

 アクア様と同じよう部屋に居ながら、アレをするなんて。

 

「死ねばいいのに」

「聞かれてたぁぁ!!おいゆにな、忘れろ!」

「忘れろ?」

「頼むから忘れて下さい!!いや、それよりも言いふらさないで下さい!!」

「もうひと声~」

「金か?金なのか!!?幾らだ?」

「いえ、拠点の話を早く進めろ!」

「ありがとうございます」

 

 アクア様と同じ空間にいるのに、カズマ君にアレをさせる訳にはいかない。

 そう思って、拠点の話を早くしろと言って「勿論お金をお前持ちな」と言う事を言葉外に混ぜました。

 

 早くカズマ君から、アクア様をお救いしないと。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

254 クエストは高難易度しかなく…

 

「カズマ、早速討伐クエストに行きましょう!それもザコやモンスターが沢山出てくるやつです!」

 

 カズマ君がアクア様のツケを肩代わりした後、めぐみんが「新調した杖の威力を試すのです!」と言い出した。

 カズマ君もめぐみんの提案に乗り気です。

 

「まぁ、俺のゾンビメーカーの討伐じゃ、覚えたてのスキルを全然使えなかったからな。安全で無難なクエストでもやるか」

「いいえ!お金になるクエストをやりましょう!私ツケを払ったせいで、今日のご飯を食べるお金も無いから!」

 

 アクア様はお金になるクエストに行きたい模様。

 アクア様の食事代位出してあげますのに、私に甘えないアクア様、立派です。

 

「ここは強敵と戦うべきだ!一撃が重くて気持ちいい、凄いモンスターをっ!!」

 

 ダクネスさんが又しても違うクエスト方針を言う。

 ならば私も!!

 

「ならば私は護衛クエストを選びます!!旅行気分で行けますし、運が良かったら何もしなくても済む超簡単クエスト!!」

 

 ザコモンスターの殲滅クエストのめぐみん、実の入りの良いクエストのアクア様、強敵の危ないクエストのダクネスさん、数日掛けて行う護衛クエストの私、と十人十色とでも言える程纏まりのないことを提案する私達四人に、カズマ君は呆れ顔で纏める。

 

「取り敢えず、掲示板の依頼を見てから決めようぜ」

 

 はーい、と私達四人はぞろぞろとカズマ君について掲示板に移動する。

 そこで私は、最近の掲示板の状況を思い出した。

 

 確か……………

 

「……何だこりゃ?依頼が殆どないじゃないか!?」

 

 そう、ここ最近は依頼の数が一気に減っていたのだ。

 しかも、

 

「カズマ!これだ、これにしよう!山に出没するブラックファングと呼ばれる巨大熊を―」

「却下だ却下!なんなんだよ!高難易度クエストしかないじゃないか!?」

 

 この街では私くらいじゃないと受けない高難易度クエストしか残っていなかったんだっけ?

 っと、私達が掲示板にいることを見たのであろうルナさんが、受付から駆けつけて来てくれる。

 さてルナさん?

 高難易度クエストしかない理由を教えてたもう!

 

「ええと…………申し訳ございません。ただいま、この街付近の廃城に魔王軍の幹部らしき者が住み着かれまして……………。その影響か、弱いモンスターは軒並みに隠れてしまい……………仕事が激減しています」

 

 ふむふむ。

 で、来月までにはその幹部とやらを討伐する為、国から騎士団がくるから、それまで待てと言うわけですか。

 

 ルナさんの説明を聞いたアクア様は絶叫した。

 アクア様、今文無しですもんね。

 カズマ君もこればっかりは、アクア様に同情してくれているみたいだねー。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

255 仲間になりたそうにこっちを見ている

 アクア様に同情しているカズマ君を見ていると、ルナさんが話しかけてきた。

 私に用とは何でしょうか?

 

「それで~、ゆになさんにお願いがありまして……………」

「ゆになにお願い?ゆになが受けれるクエストがあるのですか?」

 

 ルナさんが下手に出ながら申し訳なさそうに言うと、めぐみんが「私達が受けれそうなクエストがない癖に、ゆになが受けれるクエストがあるのですか?」と不満に思ったらしい。

 

「何々?めぐみん、また嫉妬?」

「だから、嫉妬なんかじゃありません。あの、ゆになに頼むくらいなら、私達に頼んでも大丈夫ではないのしょうか?」

 

 私がめぐみんをいじると、慣れた様に素っ気なく返されて、ルナさんに質問を投げかけるめぐみんがいました。

 これくらいじゃ動じなくなったか!

 強くなったなぁ、お主よ。

 

「えーっとゆになさん?よろしいでしょうか」

「あ~はい!何のご用でしょう?」

「先ほど、高難易度クエストくらいしか依頼がない、と言いましたね。それで今、冒険者の活動が停止して高難易度クエストが溜まっていくばかりなんです」

「ちょっと待ってください!」

 

 説明をしていたルナさんに、めぐみんが待ったをかける。

 はてはて、めぐみんは何を気づいたのかな~?

 私、わかんな~い?

 

「ギルドはゆになに、高難易度クエストを幾つもやらせようと考えているのですか?」

「…………申し訳ございませんが、ゆになさんしかこんな事を頼める冒険者はこの街には居ないので……………」

「幾らゆになでもそれは――」

「別に構いませんよ?」

 

 カズマ君が話の中に入ってきて言い出した、「無理だろ~それは」的な事を遮って、私はルナさんのお願いを承諾した。

 勿論、考え無し受ける訳ではない。

 

「そ・の・か・わ・り、報酬は弾んでくれるのですかぁ~?」

「勿論です。ゆになさんにお願いしている立場上、報酬の上乗せくらいは大丈夫です。全部とは言いませんが、出来るだけクエストの消化、よろしくお願いします」

 

 ルナさんは私に頭を下げてから、受付カウンターに戻った。

 

 さて、勝手に一人クエストを受注した私に、パーティーメンバーの反応はどうでしょうか?

 

「ゆにな、私も連れて行ってはもらえないだろうか?ゆになが接近される必要のない、壁役になるぞ」

「お前はそのどうしょうもない性癖を満たしたいだけだろうが。俺は行かないからな、勝手にやってろ」

「いつの間にゆになが、ギルドから信頼を置かれる冒険者になったのですか?なんか悔しいです。私も行きます。そして、我が爆裂魔法がゆになよりも優れていることを証明して見せましょう!!」

「カズマさん、怖気づいちゃった訳?クスクス、お金が無いから、勿論私も行くわ!回復はまかせなさい!!」

 

 なんと、四人中三人が仲間になりたそうにこっちを見てるではないですか?

 どうしよう?

 これじゃあ、お荷物が増えるのと報酬が減っちゃう。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

256 私に指名依頼?パート1

 あの後、私は四人の好意を丁重にお断りした。

 

 アクア様、申し訳ございません。

 報酬の一部は後でお渡しします。

 

 その後、バイト雑誌を必死になってめくっているアクア様に、二、三日は食べていけるお金を渡してパーティーを一時離脱した。

 そうして迎えた次の日、私は高難易度クエストを受けようと、掲示板で依頼を選んでいる最中だった。

 ルナさんが再び私を呼んだのは。

 

「えーっと、私にお話ですか?」

「はい、昨日の件と別という訳では無いのですが……………。ここでは話難い依頼なので、別室にお願いします」

「あ、はい」

 

 なんということでしょう!

 個室での依頼説明は指名依頼と言うこと。

 一体誰が私に依頼をしてきたのでしょう?

 昨日話した内容とは別件、しかし全く別と言う訳でもない。

 まぁ、個室に着いたらルナさんが話してくれるでしょう。

 勿論、お茶の準備は出来ていますよね?

 

 そんなことを考えながらルナさんの後をついて行く。

 やがて個室に辿り着きました。

 フカフカなソファーにドガッと座る私に、ルナさんが苦笑い状態。

 苦笑い状態のルナさんに、私は追撃を仕掛けます。

 

「ルナさ~ん」

「?何でしょうか?」

「お茶とお菓子はどこですか?」

「こんな時にふざけないでください!」

 

 あらら、怒られちゃいました。

 流石にお茶とお菓子を強請るのは図々しかったですかね?

 

 私は一人笑って、ルナさんに謝りました。

 すると、ルナさんは諦めたような顔になって、私を残して個室を出ていちゃった。

 

 ん~?

 少しおふざけが過ぎましたか?

 まぁ、どうでもいいや。

 私はこの世界で、面白可笑しく生きる演技を続ければいいだけ。

 今まで転生特典のお陰で負けた事がないけど、もし負けたのならその壁をぶち破ることなどせず、壁に沿って行けばいい。

 楽に生きれるのなら、それでいい。

 楽に生きようとして死ぬのなら、それもいい。

 

 結局私は、生きる理由を見つけれないでいた。

 アクア様がその理由になってくれれる期待はない。

 あぁ、一人の時間は、こんなにも考えさせてくれる。

 

 久しぶりに一人になった私は一人、ポジティブな雰囲気を醸し出しながら思考の渦潮に身を投じていた。

 しかし、ルナさんが戻って来た時には、何時ものニコニコした混沌ゆになちゃんが戻ってきます!

 

「ゆになさん、お待たせしました」

「あ、はい。勝手にくつろいでいましたのでお構いなく」

 

 瞬時にどうしたら面白いか?と考えた結果、ここは冒険者ギルトの個室、つまりは緊張するべき場所と言うこと。

 そんな場所でどうやったら緊張とはかけ離れた空気に出来るか?を考えた私は、

 

「ソファーに寝っ転がるのはどうかと思いますよ!自宅では無いので、もう少し場をわきまえてください!!」

 

 ソファーに寝っ転がることが限界でした。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

257 私に指名依頼?パート2

 静かに緊迫する部屋の中、ズズぅ~とお茶を啜る音が鳴り響く。

 私の目の前には微妙な顔のルナさん。

 

 はい、お茶を啜ったのは私だよ!

 結局、ルナさんに用意してもらえました丸!

 

「あの~そろそろお話してもよろしいでしょうか?」

「あ、はいどうぞ。勝手に聞いていますので」

「それでは、お話させていただきますね。実はゆになさんに、偵察を頼みたいとギルドは考えています」

「偵察?どこにですか?」

 

 何で私なんかに偵察をやらせるのでしょう?

 偵察なら、敵感知や気配遮断、暗視と言ったスキルを持った盗賊職の方の方が適材適所ではないでしょうか?

 

「昨日話した、魔王軍の幹部らしき人物が根城にしている廃城にです」

「それは……偵察じゃなくて、討伐を依頼したいと?」

「幾らゆになさんでも、それは難しいのではないでしょうか!?」

 

 むぅ!!

 勝手に決めつけるのはどうかと思いますよ!

 それに、私は最前線で活躍している元日本人と同じ転生者なんですからね!

 とは、言えないよねー。

 それに、あくまで私はアクセルの街で活躍している一冒険者だ。

 地方で強いからって、中央で強い訳じゃない。

 

「まぁ、私が討伐出来るかは置いておいて。何で私に指名依頼が?」

「討伐部隊が行くまでに敵の情報を得ておけ。国がそう指示をだしたのです。討伐期間を延ばさない為にも討伐部隊が行くまでに敵の偵察をしておいてくれ。とのお達しで、ゆになさんが選ばれました………」

 

 あーなるほどね。

 つまり、国からの依頼で、私が生贄に選ばれたっと。

 まぁ、生贄かはともかく。

 何で私なのか?が聞いてません。

 私ではなく、偵察の理由しか話してないですよね?

 

 と言った事をルナさんに伝えると、

 

「魔王軍幹部への偵察なんて、普通はそうそう出来るものではありません。腕の低い盗賊で偵察に行かせると、呆気なく捕まって拷問、もしくは即殺される。ここは高ランクの冒険者があまりいらっしゃらない最前線から離れた場所ですから。わざわざ普通の盗賊職の冒険者を死地へ送るのはどうか?とギルドで考えた結果、ゆになさんが選ばれました」

「選ばれましたーって笑顔で言うところじゃないよね!私、アークウィザードなんですけど!?」

 

 そんな腕の良い盗賊を行かせるべき場所に偵察、ましてや侵入なんぞやできるかぁ!!

 とルナさんに講義。

 返ってきた言葉は、

 

「ゆ、ゆになさんなら、なんとかしてくれそうな気がしまして……………。ほら!ここに来てからも、あらゆる高難易度クエストを解決してきたじゃないですか!?」

 

 なんとかしてくれそうだから、と言う答えになっていない答えが返ってきました。

 これ、辞退出来るのでしょうか?

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

258 私に指名依頼?パート3

 結局断れない依頼でした。

 何が指名依頼だ!

 強制依頼の間違いじゃないか!!

 

 と起こっても仕方がない。

 私は宿に帰って準備をすることにした。

 

「ただいまー」

「あら?お帰りなさい。どうしたの?朝出ていったばかりじゃない?」

「それが…………指名依頼を受けてしまって、かなり面倒な依頼なので、準備のために一回戻ってきました」

「指名依頼!?凄いわねぇ!!待ってて、お弁当作ってあげるから!!」

 

 私が指名依頼が入ったと説明すると、お姉さんはお弁当作りに取り掛かり始めた。

 

 お弁当を作ってくれるのは助かります!

 では私も準備の為に、一旦店巡りをしましょう。

 面白そうな魔法具があったら買って、魔王軍幹部に使って嫌がらせしてやるぜよ!

 

 お弁当を作っているお姉さんに、また戻ってくることを伝えてレッツゴー!

 先ずはよく使っている回復薬や魔石を扱っているお店に行って、予備の補充っをしましょう

 

 

 

 

 

 一通り知ってるお店を周った後、あまり来たことのない区画に足を運んでいます。

 この辺りは人通りも少ないし、隠れた名店があるかもって思って来てみたけど、やっぱりない……………

 

「あ!?」

「あ!!!」

「こんにちは。私のお店に来て下したのですか?」

 

 はい、ありました。

 それも知り合いのお店!

 そういえばウィズさんってお店やってるって言ってましたね。

 これはチャンスです。

 是非とも物色していきましょう!

 

「ハイ~!ちょっとした嫌が…ゴホン、ピクニ…んん!クエストに行くことになりまして。使える物はないかな~?って色んなお店を巡っていたんです」

「そうなのですか!でしたら、是非家の店を見て行ってください」

 

 そう言う訳で、ウィズさんのお店を物色です!!

 

「ウィズさんのお店は何屋さん何ですか?」

「前も言った通り、マジックアイテムを扱っています」

「そうですか、では忙しくなかったら、商品の説明をお願い出来ますか?」

「勿論です!えーっとですね、こっちにある物が割れたら爆発するポーションで、あっちのは水に濡れたら爆発、それからこれが体力を使って魔力を回復する魔道具で……………」

 

 私のお願いで、棚に飾ってある商品の説明をしてくれるウィズさん。

 だけど、どこかで聞いたことのあるような商品が幾つか……………。

 何だたっけ?

 

「――でこれが」

「ウィズさんちょっといいですか?」

「はい、なんでしょう?」

「この商品ってどこで仕入れているのですか?」

「主に紅魔族の里の道具職人からですよ」

 

 あ、この商品、めぐみんのお父さんが作っている奴だわ。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

259 私に指名依頼?パート4

「ありがとうございました。またいらしてください」

「あ、はい。機会があったら寄らせて頂きます」

 

 取り敢えず、何か使えそうな魔道具を幾つか買ったら、ウィズさんに喜ばれた。

 「やっと売れた!」とか言ってたけど、あの品揃えだったらね。

 私みたいな変人以外は買わないよ。

 まぁ、嫌がらせ目的の魔道具は沢山買えましたから、よしとしましょう。

 

 と、そろそろ戻った方が良い。

 私は宿に戻ってお姉さんからお弁当を受け取ると、廃城に向けて出発した。

 今回の目的地の廃城は、街を出てから帰るまでの往復で、午前の日課としての時間程度の距離にあるらしい。

 クエスト期限は討伐部隊が来るまでなので、一か月ある。

 私は散歩機嫌で森を歩く。

 

「ふんふん、っふん!」

 

 鼻歌を歌いながら森を歩いても、モンスターが襲ってこない。

 如何やら、魔王軍幹部の影響っていうのは正しいんですかね?

 その代わり、モンスターに会ったら強い奴って訳ですか。

 何か、ゲームの『モンスターが強力な奴しか出ないイベント期間』みたいな感じだ。

 

 そんなことを考えていると、あっという間に廃城が見える所までたどり着いてしまった。

 しまったって、嫌々行ってる見たい。

 まぁ、この辺でお弁当でも食べますか。

 

「先ずは、『簡易結界』っと」

 

 初級創作魔法で創った結界で、周りから見えずらくなるバリアーを張る。

 これでザコモンスターにお弁当タイムを襲われる心配はなくなった。

 

「はむはむ、んくん。ぉー!これ美味しい!また今度お願いしよーっと」

 

 簡易結界で作った安全地帯で、のんびりと昼食を食べる私。

 しかし、本当に初級創作魔法は便利だよねー。

 作れる魔法は、あくまで初級レベル、良くても中級。

 それでも幅広く魔法が創れるのは勝手が良い。

 特にこの世界にない魔法とかね!

 

 お弁当タイムを終わられた私は、廃城にと歩き出す。

 この辺りからは見張りがいるかもしれない、と考え慎重に進むが……………。

 あっさりと廃城までたどり着きました。

 

「……何か思ってたのと違う」

 

 もっと、見張りみたいのを後ろからとうっ、ってやってから、他の敵に見つかって警戒態勢を取られる。

 それで、そして中ボスっぽいのと戦闘がありつつ幹部の下に辿り着く。

 見たいのを想像してたんですけど?

 

 そう不機嫌になりながらも、『ステルスヒッキー』を発動。

 某ボッチの最高者と言っても過言でもない人物のマネである魔法だ。

 これの面白い所は、相手に認識されにくくなるだけの魔法というところである。

 見えてるけど、分からない。

 これぞボッチの実力。

 家のボッチさんとは格が違うね!

 

 と、廃城に侵入したのであった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

260 私に指名依頼?パート5

「こちら廃城内に侵入しているゆになちゃんで~す!かれこれ三十分近くは歩いていますが、第一住人も発見できておりませ~ん。何か状況が変化するまで、一旦スタジオにカメラを戻したいと思います。バイバイ!?」

 

 ニュースキャスターの真似事をやってみている。

 そのくらい暇だ。

 な~んにも出てこない。

 ザコ敵がいる訳でもなく、敵を惑わすトラップがある訳でもない。

 城らしく複雑な構造をしてますが、迷路と言うには惜しい。

 『マップ機能』もあるせいか、迷うことは先ずない。

 あ、『マップ機能』も初級創作魔法で生み出した。

 SA〇の奴みたいな感じで創ってみました~!

 

 ん?

 『初級』創作魔法だろ、って?

 使ってて分かったんだけど、初級は神様にとっての初級らしい。

 この世界での初級は、覚える価値もない物。

 つまり、神様にとって片手間でパッパッとできちゃうような魔法が初級であると、ゆになは結論付ける。

 だから、この世界の輪廻や真髄、人間や生物の構造に関わるような魔法以外はある程度のチート能力を無限に創れる訳であ~る!

 

 と、やっとこさ登って来たぜ、最上階!

 流石にここはいるでしょうな。

 時間は夕暮れを通り越して、夜になちゃった。

 うむ、今日は疲れましたな~。

 ではセーブと行きますか。

 

 簡易結界を張って、テントも張って。

 お水とパンを用意したら出来上がり、ボス前に食べる最後になるかもしれない食事の完成です。

 まぁ、負ける気は無いけどね!

 

 その後は何時も通り、夕食を終えて道具の整理をしたら寝袋に入っておやすみなさい!

 長旅に出た時の様に、早寝早起きは超大事。

 そんな感じで、指名依頼の一日目は終わったのであった。

 ボス部屋前で……………。

 

 

 

 そして朝。

 

 およーございます。

 今日も頑張ってきましょうい!

 

 日の出……は城内なので見えないから、多分そのくらいに起きる。

 ちょっとくらい過ぎてても問題はない。

 だって、定時出勤とか無い冒険者様だもん。

 

 そんなことを考えてたら、朝食の準備ができた。

 ベーコンエッグをパンんで挟んだら出来上がり。

 美味しんだよなぁこれが。

 昨日の夕食は寝る前だから軽めだったけど、今はあさイチ!

 一日、動くためのエネルギーを蓄えないとね。

 もしかしたら、一日中幹部と戦ったりするかもしれない。

 くぅーーー!

 楽しみだなぁ~!

 

 そういえば昨日の夜、「うぉぉぉ!!!何かつまずいた!!!あ、頭がぁぁぁl!!!!」って聞こえた気がするけど、ボスじゃないよね?

 ま、そんなバカみたいな声を出すボスはいないか。

 

 朝食を食べ終えると、テントを片付けて結界を解く。

 よぉし!

 今日のボス戦、頑張るぞ~!!

 

 と私は、目の前にある扉を開けた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

261 私に指名依頼?パート6

 キィーと音を立てて開く両開きの扉。

 元々は越権の間なのか、中央に王様が座るっぽいゴテゴテした古椅子が一つ。

 そして、椅子には禍々しい鎧さんが座っていました。

 

「似合わない~~!!!」

「誰だ貴様はあああああ!!!」

 

 鎧さんが私の声に反応して、私のことを聞いてきます。

 なので、キチンと返してあげましょう。

 

「名前を聞くときは、自分から名乗るものだと学校で習いませんでしたか?」

「あ?s、そうだったな。それはすまない。俺はベルディア、魔王軍幹部をやっている者だ。……………それで貴様は何者だぁぁぁ!!?」

「ご丁寧にどうも、私は桂木と申します。旅の者でして、恐れ入りますがこの廃城にお泊りさせていただきました」

 

 やっぱり魔王軍幹部だった鎧さんに、嘘ではない偽名を教える。

 敵に自分の情報を与える程、私はバカじゃない。

 

「そ、そうなのか?ってそんな訳あるかあああぁぁぁっ!!結界はどうした!?普通の人間には破れない程強力なものを張ってあったはずだぞ!!?」

「??」

 

 首を傾げて、はてなマークを頭上に浮かべます。

 はてはて?

 結界なんて物、あったかしら?

 ……………あ、あれかな?

 廃城に近づいた時に、透明な壁に当たったんだよねー。

 あれが結界だったのか~。

 

「透明な壁なら適当に殴ったら消えたので、何だったかな?って思ってましたが、結界でしたか~!それはすみません。最も強力な物に張り替えておきますねっ!」

「あぁ、頼んだぞ。……………?あぅれぇぇ!!!??」

 

 結界を張り替えはするが、適当に殴ったら消えたと言うのは噓だ。

 透明な壁に当たった時に、結界だと気付いた私は『破符 結界ブレイカー』を発動。

 チート能力の前では、何者も無力なのさぁ!!

 

 簡易結界を五重くらいに張って上げた私は、奇声を上げる鎧さんを見守ります。

 悲しい人を見るような目線で。

 

「貴様が、俺にそうさせる程のことをしてくれたんだろうが!!っていうか、貴様は本当に何者だ!!魔王軍で噂になってる冒険者リストには、桂木などという者は居なかったはず!!」

 

 あぁ、危険な冒険者がリストアップされているんだ。

 では、私もその中に載れるように頑張りますか。

 てか、まだブツブツ言ってるよこの鎧さん。

 

「ならば貴様が、魔王様が感じた強大な力とやらか?」

「はい?私はごく普通の冒険者ですが?」

 

 この鎧さんは何を言っているのでしょうか?

 強大な力?

 思い浮かべるのはアクア様くらいですし、結界の破壊なんて元日本人という名のチート集団でも出来ますよ。

 

 結構声が面白い鎧さんに私はドウスレバイイのでしょうか?

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

262 私に指名依頼?パート7

 

 ここで分かった事をおさらいしよう。

 一つ、噂は本当で、魔王軍幹部は確かにいる。

 二つ、廃城の付近には結界が張ってあり、破るのは困難。

 三つ、廃城内には敵が一体もいなくて、幹部だけである。

 四つ、幹部の名前はベルディアで、禍々しい鎧さん。

 以上の四つの事である。

 

 もう、これで良くね?

 私、頑張ったよ?

 大した努力はしてないけど。

 もう帰ろう。

 これだけでも十分な成果と言えるでしょう。

 

 そう思った私は、テレポートの発動準備をする。

 

「それでは、私はこの辺で……………」

 

 鎧さんに帰りの挨拶をしようとした所で、昨日のルナさんの言葉が甦った。

 

『幾らゆになさんでも、それ(幹部の討伐)は難しいのではないでしょうか!?』

 

 なんかムカついてきた。

 これでもし私がルナさんに、鎧さんを倒したと言ったら、ルナさんはどういう表情をする?

 どんな顔をするのか見てみたい。

 ……………ならば倒そう、鎧さんを!

 

 急に言葉を止めた私に、疑問を抱いた鎧さんが心配して声をかけてくれる。

 

「お、おい?急にどうした。大丈夫か?」

「ん?親切にどうも。ちょっと思考の渦に入っていただけです。それでは私はこの辺で……………………目標を討伐するよん!!」

「ふぁっ!?」

「『グラビティ』!!」

 

 不意打ちで、鎧さんに向かって横方向の重力を喰らわせる。

 私の攻撃を食らった鎧さんは広い部屋の壁まで吹き飛ばされる。

 が、何とか態勢を整えて、腰に差してあった大きな剣を私に向けてきた。

 

「不意打ちとは感心しないな。それに、なんださっきの魔法は?」

「禁術ですよ!知らないんですか~?」

「禁じられた術を知る訳がないだろ!!」

 

 相手のペースにはさせない。

 取り敢えず、鎧さんを煽ってみた。

 うん、結構な乱れっぷり。

 煽り作戦は使えるっと。

 

 鎧さんを煽りながらも、作戦を立てる。

 未知の攻撃にも反射で耐えた。

 流石幹部と名乗る程の実力があるね。

 まだ、一ターンも終わってないけど。

 

「ふん!変な魔法を使うのだな?俺に攻撃を当てた事を褒めてやろうではないか。しかし、貴様はそれまでだ」

「それまでかどうかは……ってええぇぇぇぇ!!!」

 

 鎧さんはかぱぁ、と自分の首を引き千切った。

 いや、引き千切ったと言うのは違う。

 だって千切った音がしなかったもん。

 取ったと言う方が正しい。

 

「まさか人間じゃない!?」

「魔王軍の幹部と言っただろう!?」

 

 人間じゃない種族で首が取れる種族?

 …………いた。

 種族と言っても良いかわからないけど、アンデットモンスターの一つに首が取れるのが。

 ウィズさんと同じくらい強くて、未練のある騎士の鳴り果てたアンデットモンスター。

 

「鎧さんじゃなくて、デュラハンさんでしたか」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

263 私に指名依頼?パート8

戦闘描写は難しい。


 ここで分かっている事が一つ追加された。

 鎧さんではなく、デュラハンさんだったということ。

 

 そんな事考えていると、鎧さん(こっちの方が言い易い)は頭を上に投げた。

 はぁ?って思った時にはもう遅い。

 

「ひぃ!!危なっ!!」

 

 宙に浮いた頭に気を取られた瞬間、胴体が剣を突き立って来た。

 それを身を引く様に緊急回避。

 鎧さんは連撃で私に攻撃をしてくる。

 それを回避、回避、ガード、回避、ガード、またガード。

 不意に鎧さんはバックステップで頭を投げた位置に戻った。

 

「ふっ、中々やるようだな」

「危なかった~!!剣が当たったらどうしてくれるんですか!!怪我しちゃうじゃない」

「怪我をさせるつもりで攻撃したんだァ!」

 

 さてさて、回避ばかりだと私もいい加減飽きてきました。

 今度はこっちの番ですよっ!

 

「『ライトニング!』」

「うぉぉ!人が喋っている時にがみがみがみがみ!!」

 

 私が撃った上級魔法『ライトニング』は鎧さんに避けられてしまった。

 クソッ、こうなったらもう一度!

 

「隙ありぃ!!」

 

 鎧さんが頭を投げて、私に剣を振ってくる。

 ひかかった!!

 

「『グラビティ』」

「ハッハッハ!!どこに向かって撃っている!!ほらほら、どうしたその程度か!?」

 

 鎧さんの素早い連撃で、私は回避するのがやっとだ。

 微力な重力を操って右に、左に、下に、上に、斜めに、三次元移動で回避する。

 え!?実は余裕なんかじゃないですか?って。

 えぇ~!?ソンナワケナイジャナイデスカセンパイ~。

 

「お前ふざけてんのかぁ!!」

「おぉ~!そのツッコミは間に合ってます」

「知るかぁぁ!!!ってなんだその魔法は!!完全に空中に浮いて………お前、人間じゃないな!!」

「失礼な!!れっきとした人間ですよ!!」

 

 この鎧さん、ツッコミもボケも両方イケるとは!

 と、そろそろ良いですかねぇ。

 

「……いてもいいんですか?」

「あぁ!?なんか言ったか怪しい奴!!」

 

 いや、怪しいのはアンタでしょ?

 あ、魔王軍幹部と言う身元が分かっているから怪くはないか。

 

「そんなに吞気に喋っていても大丈夫ですか~?って言ったんだよ!!」

「はぁ、何を言っぐぉぉぉぉぉぉ!!!わぁぁあぁぁぁぁぁっぁ痛い、超痛い!!何が起こって!!」

「ふぃ~、私に気を取られ過ぎてましたね。おかしいと思わなかった?こんなにも長時間、投げた頭が宙に浮いていることを」

 

 鎧さんが外れたと思った二回目の『グラビティ』。

 実はあれ、鎧さんの頭が目標だったのだ。

 重力操作で鎧さんの頭を長時間空中に浮かせる。

 その間に三次元移動をして、鎧さんの意識を私の行動に向ける。

 鎧さんの意識が完全に私に向いた瞬間、超重力を頭に加えるとあら不思議。

 鎧さんの頭は床を突き破って、何階か下に落ちていった。

 




そう言えば、連続更新二か月達成!もう少し頑張って行きます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

264 私に指名依頼?パート9

 「とぉ!」とこえを口に出して、頭の痛みに悶えている鎧さんの身体部分を穴に落とす。

 

「痛ぃ!!ってなんか体に変な浮遊感を覚えるんだがぁ!!」

「そこに追撃『グラビティーストライク』!」

 

 下の階に落下していく身体に向かって、重力を加えた速度で私は乗っかりました。

 ライダーキックの要領です。

 私の重力操作も加わって、物凄いスピードで落ちて行く。

 そして~、狙いを定めて~、相手の頭に身体をシュート!!

 超エキサイティング!!

 

「グヘェっ!?」

「よっと。どうだ、ゆになちゃんの力、思い知ったか!」

 

 カエルが潰れたような断末魔をあげた鎧さんに向かって、ドヤ顔でVサイン。

 と、鎧さんにが行動不可な内に、バックから水に触れると爆発するポーションを取り出して、鎧さんに振りかける。

 

「鎧さん大丈夫ですかー?」

「お前がやったんだろ!!!ったく、頭を狙うか?普通」

「何言っているんですか?弱点を狙うのはボス戦の基本ですよ」

「そのボスからしたら迷惑極まりないんだが!!」

 

 私が慰めてあげているのに。

 全く、自分勝手なボスですね。

 

「じゃあ、鎧さん鎧さん。喉が乾いていませんか?」

「は?なんだコイツ?敵に施しかって「『クリエイトウオーター』」ってうぉぉぉ!!急に何しやがる!」

 

 気を遣って初級魔法を使って水を出しぶっかけてあげたら、焦ったように避けられてしましました。

 それを見て、私は「もしかして、水が弱点?」と思いました。

 

「『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』!!!!!!!」

「ま、待て!!連発するな。頼むから正々堂々と勝負をしようではないか!?」

 

 水が弱点だと分かった私は、水の初級魔法を連発でぶっ放なした。

 差し詰め水の弾幕、そう表現できる程の水を鎧さんは避けますが、流石は数の暴力。

 飛沫くらいは当たります。

 飛沫、つまり水が当たったと言う事は…………………

 

 ドッガ~~ン!!

 

 はっはっはっはっは!

 水に濡れると爆発するポーションが功を奏したようだ。

 どんな生物にも爆発は効く。

 あ、鎧さんは生物じゃなかった。

 

「死ぬかと思ったぞ!!いや、死にはしないがな!!」

「っち、死ねば良かったのに」

「面と向かって言われると、かなりキツイんですが!この子ホントになんなんだよ!」

 

 鎧さんは爆発を受けてもピンピンと立ち上がり、私に向き合いました。

 相当怒らせたっぽいし、生きて帰れるかな?

 

 と私は第四ラウンドに向けて、呪文の準備を進めた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

265 私に指名依頼?パート10

 全部で三回。

 上級モンスターでも瀕死になるような攻撃を三回も喰らっても、まだ起き上がって私と対峙する鎧さん。

 流石、魔王軍幹部だなぁ~!

 やっぱり今のレベルじゃあ倒すまでは行かないか。

 一応、最後の嫌がらせとして、聖属性の魔法を使おう。

 

「では、行くぞ!!」

「『ターンアンデット』!!」

「浄化魔法か……………………そんなレベルの低いものは効かんぞ!!」

 

 くっ!

 やっぱり意味がなかったか。

 ならばそろそろ潮時ですね。

 

 とその時です。

 有り得ないくらいの振動が私達を襲ったのは。

 

「はわわわわ!!」

「な、何が起こっている!!」

 

 地震?

 いや、それも考えれるが、私の耳には聞こえますよ~。

 爆発音の余波の音が。

 現に、窓から外を見ると黒い煙が舞っているのが分かります。

 私が張った結界を破るまではいかないようですが、かな~り強力な爆発であることが分かる。

 

「そこの鬼畜野郎!!これもお前の仕業かぁ!!」

「野郎じゃないし!!ゆになちゃんだし!!っと、取り敢えず、この機に脱出させてもらいますね~!」

「はぁっ!ま、待て。この状況で逃げるとは騎士道精神に――――――」

「『テレポート』」

 

 鎧さんが何か言っていたが、私は構わずテレポートで逃げる。

 情報は沢山得たし、ダメージを少しは入れた。

 これ以上あそこにいる意味がない。

 逃げるが勝ちって言葉もあるしね!

 

 テレポート特有の光エフェクトに包まれる中、最後に見えた鎧さんに手を振って別れの挨拶を。

 

「機会がありましたらまた今度会いましょう!」

「だから待てと言っ――」

 

 鎧さんが最後の抵抗!と何か言ってましたが聞こえません。

 だって私の視界はテレポートのエフェクトで一杯でしたもん。

 

 

 

 

 

 視界に光が戻り始めると、そこは良く知った景色。

 アクセルの街の正面入口前でした。

 私がテレポートで帰って来たことに驚いた門番さんが、声をかけてくれます。

 

「どうした?テレポートで帰って来るなんて珍しいな」

「ちょっと厄介ごとに巻き込まれまして…………。歩いて帰るのも面倒だったのでテレポートになちゃいました」

 

 「気を付けろよ。って言っても『狂信者』には意味の無い言葉か」と言ってくる門番に、今日一日だけ身体が重くな~る魔法をかけてあげた後、私は冒険者ギルドに報告しに行った。

 冒険者ギルドに向かうと真っ先にルナさんの下に。

 

「ルナさ~ん!ただいま戻りました!!」

「え、ええ。おかえりなさい。……魔王軍幹部の偵察に行ったのに、どうしてゆになさんは短期間でそれの元気でいらっしゃるのでしょうか?」

「何か言いました?」

「いいえ。クエストお疲れ様です。それでは別室で報告をお願いしますね」

 

 ルナさんにそう言われて、私は昨日の朝と同じ部屋に連れて行かれたのであった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

266 私に指名依頼?パート11

 私は別室に連れてこられた。

 

「今日は初めからお茶とお菓子が出るんですね」

「出さないと文句を言いますからね」

「文句じゃないですよやだー。催促です!」

 

 席に着くなり、初めから出ているお茶とお菓子の話から始める。

 

 お~お菓子が甘い!

 昨日はお菓子を食べる暇が無かったから、更に美味しく感じるな~。

 働いた後のタダお菓子は最高やな!

 

「あの~、そろそろ話してもらっても良いですか?場合によっては、素早く行動しないといけない事もありますし」

「モグモグ、ズズゥ~、っくん」

 

 今度はルナさんに催促されてしまいました。

 もう少し労わってくれてもいいのに。

 ほら、つい三十分前までは幹部と戦ってたんだよ?

 お菓子をもう一口~。

 

「ごっくん。はぁ~美味しかった~。仕事後のお菓子は美味しいと思いません?」

「私に聞かないで下さい!と言うか、早く報告をお願いします!」

「ルナさんってば、せっかちなんだから。まぁ、もう満足だからいいか?」

「はぁ、やっとですか?」

 

 ルナさんや、もう少し心にゆとりを持ちましょうね。

 さて、どういった風に伝えましょうか?

 

 そう困った私ですが………

 

「廃城に侵入した結果、幹部は鎧さんした。鎧さんは強いモンスターで私の攻撃が全く効きませんでしたまる」

「まる。じゃないですよ!もっと詳しくお願いします!!」

「えーっと昨日のギルドを出てからの説明をしますね。宿に帰った私は―――――」

 

 詳細をプリーズと言ってくるルナさんに私は、ルナさんと別れてからの行動やその時に思った事を、思い出せる限り話しました。

 途中からノリが乗ってきた私は、最後の方はノリノリで話しちゃいました。

 ノリノリだった割には全て真実!

 噓一つない物語の完成です。

 これはもう、自伝として本になるべきでは!?

 と思わせる語りぷりでした。

 問題は話し始めて二時間位経っちゃった事ですが、そこは気にしない。

 だって、ルナさんが全て伝えろと言ってきたのが発端ですからね!

 

 と、冒険者ギルドに帰ってルナさんに会うまでの事を伝え

「適度を考えて喋ってください!!初めの方の宿での話しやマジックアイテムショップの下りは関係ないじゃないですか!それに、幹部ですら強力と言った結界を破ってから張り直すって本当にゆになさんはアークウィザードなんですか!!更に幹部の部屋の前でテント張って寝るって、どんだけ肝が備わっているんです!!後、幹部はデュラハンのベルディア!!大物賞金首です!!それくら覚えてください!!」

 

 おぉ、話し終わってから一気にツッコミが来た!

 さすがルナさん!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

267 私に指名依頼?パート12

雨が凄かった。庭が浸水状態。膝まで浸かりながらバイトから帰ったよ。


 一気にツッコミを言ったルナさんは、肩で息をしている。

 私のせいだと言う事を理解した上で、ルナさんの肩を叩いてお茶を勧めます。

 すると、ルナさんはジト目で私を見ましたが、深い深~い溜息をつくと私が差し出したお茶を奪い取る様にして手に取ると、中身を一気にあおった。

 

「心は落ち着きましたか、ルナさん?」

「落ち着いたも何も、そうやって気遣う事が出来るなら、初めからぶっ飛んだ行動を起こさないようにしてください」

 

 それは無理で~す。

 ぶっ飛んだ行動が私の個性だから仕方がないの。

 そんな濃い個性が無かったら、私はただの紅魔族のアークウィザードになります。

 あ、紅魔族生まれなだけで、濃い個性が普通の種族的な個性に変わるだけだった。

 まぁ、生まれながらの個性については今更悩んでも仕方がない。

 これからも平常運転でいきたいと思います!

 

 と、お菓子をモグモグと食べている内に、ルナさんの気持ちがサルベージされた。

 結構深い所まで沈んでいたんだね。

 私が沈めたのだけど……………………気にしない、気にしな~い。

 

「それにしてもゆになさん、良く戻って来られましたね」

「え、そんなにヤバい奴だったんですか?」

「えぇ、先ほども言った通り大物賞金首です。でも、そんな方が何故この様な場所に………ゆになさんは何か思い当たる節がありませんか?」

 

 えーっと、思い当たる節ねぇ。

 確か鎧さんは「魔王様が強大な力を感じ取ったとおしゃったから、命令で来たものの………」とか言って無かったけ?

 一応ルナさんに説明したはずなんだけどなぁ。

 色々とツッコミどころが多すぎたからか、伏線的な情報を聞き逃している?

 仕方がない!

 もう一度説明してさんぜよう。

 

「ありますよ。この辺りに強大な力がどうとかって言ってました」

「そんなに簡単にないですよね………ってあるんですか!?」

 

 ルナさんったら、反応が遅れて返ってくるのはテンプレ過ぎるよ。

 余程期待して無かったんですね。

 期待が無い、私が持っている情報は貴重だと思うのに!!

 こうなったら後になって「何で言わなかったんだよ!?」と言わせる様な情報を教えて上げないぞ。

 

「ん~?強力な力、ですか。私が思うにこの辺りで一番強い力を持っているのは、ゆになさんだと思いますが?そこはどうなのでしょうか?」

「やだな~ルナさんってば、私よりも強力な力なんてすぐそばにいるではありませんか!?」

 

 そう、あの方である!

 ルナさんなら気付いてくれるはず!!

 そう期待の意味を込めた私の言葉は………

 

「すぐそばにいらっしゃる?………ごめんなさい。誰の事か全くわかりません」

「ズゴーー!!!」

 

 欠片も応えてくれませんでした。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

268 私に指名依頼?パート13

 欠片も応えて下さらなかったルナさんに、私は当然のことの様にその名を言った。

 

「アクア様ですよ!ア・ク・ア・様!!この街にこの方以上に強大な力を持つ人なんて存在しません!!」

「あ、アクアさんですか……」

 

 何だその「以外な人だった!?」って目は!!?

 アクア様だぞ!

 アクシズ教の御神体のアクア様だよ!

 女神様本人なんだよ!!

 って言いたいけど、グッと我慢する。

 

「ゆになさん、幾らアクシズ教徒で、御神体と同じ名前の彼女を敬おうと、強大な力を持っていると言うのは言い過ぎではないでしょうか?」

「言い過ぎじゃないし!アクア様はちゃんと強大な力を持った女神様だし!!」

 

 はい、我慢出来ませんでした。

 私は悪くない、ルナさんが悪い。

 

 アクア様が女神様である、とカミングアウトしてしまった私だけど、ルナさんの目は「また此奴はおかしなことを」って目になっている。

 私にとっては都合のいい事ですが、何か釈然としないのは気のせいじゃないよね!

 

「女神様?ゆになさん私は、アクアさんが女神様には思えませんよ?ギルドでウエイトレスのバイトをしているアクアさんが女神様な訳がないですよ!!」

「お、おぅ?」

 

 何故か逆に力説されてしまった。

 まぁ、ルナさんの言ってる事が分からなくもないよ。

 初めてお会いして時は神々しかったんだけどなぁ~。

 何で残念な性格になってしまわれたのでしょう。

 元々残念な雰囲気があったと言え、これもかれもカズマ君のせいだな!

 後でとっちめておこう。

 

 それにしてもアクア様、此処でウエイトレスのバイトをしているんだ!!

 これは見に行かなければ。

 アクア様に給仕してもらい、チップを渡す。

 完璧な作戦だ!

 

 と私が妄想トリップしている間に、今回の指名依頼の報酬額が決まった。

 高難易度クエストよりも高額な報酬額だが、鎧さんの賞金額よりは少ない額。

 キャベツ狩りに匹敵するよ!

 難易度も高難易度クエストよりも簡単だったから、実にラッキー。

 これは、教会に寄付するお金と宿などの生活費、アクア様への賄賂と払っても、一か月は働かなくてもいいや。

 わ~い!

 

 と思っていたその時、ルナさんが絶望を投下する。

 

「では、明日からもよろしくお願いします」

「へぇ!?明日から?」

 

 明日から?

 何なんでしょう?

 ワタシは全くワカラナイヨ~!

 

「あ、ごめんなさい。お疲れと思いますし、明日からでは無くても結構ですが高難易度クエストの件よろしくお願いしますね」

「あ、ハイ。明後日から取り組みます」

 

 私が一人で行動する発端を忘れてた。

 あ~っ!

 移動が怠いんだよな~。

 まぁ、未来の事は置いておいて、アクア様のウエイト姿を拝見しに、いざ出陣!!

 




今回で「私に指名依頼?」編は終了です。長かったなぁ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

269 第一次鎧さん襲撃事件パート1

先日の大雨の影響で出れない人が出たから、急遽シフトに入る事に……………………。
休みが欲しいよ~!


 指名依頼が完了した日から五日程経った。

 指名依頼から帰った次の日、一日だけ休んだ後私はルナさんに言われるがまま連続で高難易度クエストを受注してクエストに奮闘していた。

 

 そんな日の朝。

 今日もクエストかぁ~。

 と溜息をつきながらもギルドに向かっていると、キャベツ狩りの時の様に緊急用の放送が流れた。

 

『緊急!緊急!!全冒険者各員は至急装備を整えて、戦闘態勢で街の正門に集まってください!!!』

 

 ルナさんの焦った声だ。

 それにしても、「戦闘態勢」って何ででしょうかね?

 一応、これから高難易度クエストを受ける予定でしたので、戦闘準備は整っています。

 でも今回はキャベツ狩りじゃなさそうだし、ゆっくり行っても問題はないかな?

 

 そう思った私は、お散歩速度で街の正門に向かいます。

 結構遅く歩いたけど、街の正門は近い方でして、直ぐに辿り着きました。

 と言っても、既に事は起こっているみたいだけどねー。

 

 来たのは良いけど、他の冒険者が邪魔で前の様子が見えないし!

 っは!

 ここは面白い登場をしてやろう!!

 

 重力魔法を展開。

 ビューっと空の彼方に飛び上がる。

 そうして上から狙いを定めて、着地!!

 

「は―い!みんなのアイドルゆになちゃんだよ~!!」

「……………………」

 

 決まったっ!

 ……………ってあれ?

 何か空気が凍ってない?

 もしかして私のせい!?

 うぅ~、格好いい登場をしたつもりだったのにな。

 っ完全に逆効果だよ。

 ドンマイ私。

 

「お前、空気読めよな」

「あれ?カズマ君じゃん!どうしたんですか……………花道?」

 

 私が着地した場所から左側を向くと、カズマ君達が立っているのが見えました。

 集団の中心の方に居たであろうカズマ君達は、周りにいた冒険者達から道を作るようにして避けられている。

 

「ゆにな遅いですよ。さぁ、彼方の方の下に「私がやりました」って言いながら言って来てください」

「おい、何自然にゆになに擦り付けてんだ」

「えーっと、これはどういう状況?」

 

 私と目が合った瞬間、めぐみんが私から見て右側を指差して「行って来い」と言ってくるが、カズマ君が止めてくれた。

 あれ?めぐみんは「この空気を作った事を謝って来なさい」と言ったもんだと思ったが、カズマ君の態度を見るには違うらしい。

 

 おのれめぐみん!

 この私を騙そうとするなんて!!?

 しかし、今の状況はどういった物なのでしょうか?

 

 気になった私は、カズマ君とめぐみんの後ろに隠れる様にして居たダクネスさんとアクア様に説明を求めました。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

270 第一次鎧さん襲撃事件パート2

 

 空から登場した私でしたが、状況が呑み込めていません。

 そこで、話の通じそうなダクネスさんとアクア様に説明を求めました。

 

「これはどういった状況で?」

「あ、ゆにな。昨日も奢ってくれてありがとね。うんーっと、何かあのアンデット風情がめぐみんに用があるみたいなの」

「いえいえお気になさらず。それで、アンデット?」

 

 アクア様に言われるがままに右側を向いたら、そこには……………………。

 

「……何で此奴がこんなところにいるんだよ。普通、俺と渡り合えるくらい強かったら王都が拠点だろ!」

「あ、先日はどうも」

「いえいえこちらこそ……………………ってお隣さんかよ!!てか、何でお前がここにいんの!!!??」

 

 そこに居たのは、先日お会いした魔王軍幹部のベルディアこと鎧さんでした。

 

 あーこの方だったんですね。

 しかし、折角丁寧に挨拶をしてあげたと言うのになんて無礼な態度!!

 無礼な態度には無礼な態度で返してあげましょう。

 

「えー!!ゆになちゃんと鎧さんの仲じゃん!この世の中、お隣さんでも他国(お隣さん)でも、他種族(お隣さん)でも仲良くしなきゃダメなんだよ!!」

「お隣さんの範囲が大き過ぎるわ!!」

 

 顔を合わせていた時間は一時間もないのに、私は鎧さんの反応が面白過ぎて、遊ぶや遊ぶ。

 と、遊んでいる間に私はある疑問が浮かんだ。

 

 っていうか、何で鎧さんはこんな辺境の街を襲撃しに来たのでしょうか?

 もしや!!?

 鎧さんが廃城に引っ越して来る発端となった、強大な力というのがアクア様であるとバレた!!?

 でも、アクア様は「めぐみんに用があるみたい」とおしゃってたからな~。

 アクア様が噓をつくはずないし。

 

 この状況について、断片的な情報を基に考えていると、今まで黙っていたダクネスさんが声をかけてくる。

 

「ゆになはこの幹部と知り合い、なのか?」

「知り合いって言ったら知り合いですね」

「ッな!ゆになが魔王軍幹部と……………」

 

 何か、ダクネスさんの頭の中で、私があらぬ誤解を招いている様な気がするんですけど!?

 私の言い方が悪かったですね。

 

「そんなんじゃないんで。実はちょっとした依頼の時に、戦うことになりましてー」

「戦って!!?ゆになはあの強そうなのと戦って逃げれるんですのですか!!!?」

 

 私の言葉を聞いて、突然会話の中に入って来ためぐみん。

 私は「思わぬ者が釣れた!ニヤリ」と思いました。

 

「ふっふん~!!所詮めぐみんとは大違いってとこかよ!!」

「どこが大違いなんですか!!ホントはテレポートで逃げたんでしょう!?そうなのでしょう?」

 




実は前回と今回で合わせて一話だったんですよ。下書きから清書にかけて増えるは増える。結局分けちゃいました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

271 第一次鎧さん襲撃事件パート3

ね、眠ぃ……………………


 

 私に対して言いたいことがたくさ~ん有るらしい鎧さんを放っておいて、私は久しぶりの皆とのお喋りに花を咲かせます。

 鎧さん?

 知らないよ、勝手にしやがれ!!

 

 そう思ったが、事は簡単に進まない。

 鎧さんが邪魔をしてきます。

 

「おい、ケイキとやら!!お前の仲間が俺の城に毎日毎日毎日、爆裂魔法を打ち込んでくるんですけど!!?」

「???…………………………あ、私のことかっ!?」

 

 突然鎧さんが桂木とか言って来たから、誰の事かわかんなかったじゃん。

 っていうかめぐみん、毎日毎日爆裂魔法を打ち込んでいるって、何やってんの!!

 これが嫌がらせ目的でやっていたなら「ナイスグッジョブです!」と褒めれるのに、めぐみんはめぐみんだからねぇ。

 

 と、ここでケイキ呼ばわれされた事に疑問を抱いためぐみんが質問してくる。

 

「ゆにな、ゆにな」

「ん?どったのめぐみん?」

「あの幹部、ゆになの事をケイキって言いましたけど?」

「あ~、本名を言ったら不利になるかな~って考えて偽名を使いました!」

「そ、そうですか。…………意外に頭が廻るんですね」

 

 おい、最後のはぼそって言ったつもりなのかな?

 聞こえていますけど。

 

 ちょんちょんと肩を叩かれた。

 振り向くとカズマ君が小声で話しかけてくる。

 

「なぁ、ケイキってお前の前世の名前か?」

「ん?そうだけど。桂木由仁、それが私の前世の名前だよ。小学生の頃のあだ名は『ケーキ』」

「それはネタなのか?それともマジ?」

「ヒ・ミ・ツ」

 

 さぁ、どっちでしょうねー。

 と言うか話が全然進んでいないじゃん!!

 私の登場で場の空気が変わったせいか、他の冒険者もカズマ君達も、鎧さんも目線が私に集まっているよ。

 これドウスレバイイノ?

 

 と、思った私は、私が注目を集める前は誰が注目されていたかを思い浮かべる。

 そうして、その者の背中を押して……………………鎧さんに差し出しました。

 

「そ~らめぐみん!!とっとと用事を済ませなさい。鎧さ~ん家のめぐみんに用があるんじゃないの~~!!?」

「ゆになな、何をしてっ!!ひゃっ!!っとと」

「はっ!!そうだった、この俺とした事が………………。それで、貴様が俺の城に爆裂魔法を打ち込んでくる大馬鹿者かぁ!」

 

 油断していためぐみんを掴んで、鎧さんに向かってポイっと差し出した。

 

 めぐみん(私のいじり相手)と鎧さん(私のいじり相手)はどんな化学反応を見せてくれるのかっ!!?

 

 私にポイされためぐみんは一度私を振り返って来たが、私はサムズアップで対応。

 私の態度を見ためぐみんはため息をついてから、バサっとマントを翻して鎧さんにコンタクト開始!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

272 第一次鎧さん襲撃事件パート4

暑いわ~、ホンっト暑い。あるなら逃げたい『仮想空間』


 めぐみんは二歩前に踏み出して、マントをばさりと翻して名乗った。

 

「我が名はめぐみん。アークウィザードにして爆裂魔法を操るもの!!」

「…………めぐみんってなんだ?からかっているのか!?」

「ち、違うわい!!」

 

 鎧さんナイスツッコミ!

 

 ツッコミされためぐみんはそれでも引かない。

 紅魔族特有のカッコイイ名乗りを続ける。

 その内容は噓ばかり。

 

 めぐみんは誰の許可を得て、アクセル頭一の魔法使いを名乗っているのかな~?

 しかも、爆裂魔法を打ち続けていたのが作戦?

 自分の要求を満たしていただけだよね!?

 

 とカズマ君が私達に耳打ちをしています。

 

「あいつ、あんな事言ってるぞ。爆裂魔法を打たないと死ぬとか言ってた癖に、いつの間に作戦になってんだ?」

「うむ、しかもサラッと、この街一の魔法使いと言い張っているな」

「デスヨネー。ちょっと分からず屋に身の程を教えて上げよう」

「しーっ!二人共止めてあげて。今日はまだ爆裂魔法を使っていなし、後ろに沢山の冒険者が控えているから、強きなのよ。私のゆになだっているし、ここは見守るのよ!」

 

 『私のゆにな』だなんてっ!!

 私はものですか!?

 はい、者でーす。

 しかし、アクア様のもの呼ばわりはこんなにも嬉しいなんて、私知らなかった!

 ってあれれ~?

 めぐみん、もしかして照れてる?

 テレてるの~~!??

 

 一方で鎧さんといえば……………………紅魔族と聞いて、めぐみんふざけた名前に納得していた。

 それでまた、めぐみんがヒートアップしていたが、鎧さんは『どこ吹く風』状態だ。

 流石魔王軍幹部、きっと鎧さんはアクセルの街には興味が無いのだろう。

 そう思ったのだが……………

 

「ふん、まぁいい。俺はお前らみたいなザコには興味が無いのでな。この地には、ある調査をしに来たのだ。もう少しあの城に滞在する事になると思うが、いいか!爆裂魔法は使うなよ!!あとケイキ、お前も遊びに来るなよ!!」

「それは私に死ねと言っているのですか!!?」

「あれはクエストだから仕方なくやったんだよ!!」

 

 何故かめぐみんだけでなく、私まで警告されてしまった。

 これじゃ、めぐみんと同列に思われてしまう。

 

「二人で同時に反論してくるな!!なんだ?日に一度爆裂魔法を打たないと死ぬって?聞いたことがないぞ!それにケイキも生き生きとして俺と戦っていただろうがぁ!!この愉快犯が!!」

 

 また、ろくでもない追撃をペラペラと……………………。

 あぁ、他の冒険者の視線が痛い。

 それに私の仲間が『もっとこの掛け合いが見たい』って目で見てくるのが、辛い。

 




 追記、サブタイトルに『第一次』が抜けていましたので修正してます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

273 第一次鎧さん襲撃事件パート5

 

 私が後ろを向いて、他の冒険者を威嚇する目で見ていると、鎧さんがめぐみんに殺気を当てる。

 しかしめぐみんは勇敢にも啖呵を切る。

 

「迷惑なのはこっちの話です。あなたがあの城に居座っているせいで、私たちは碌に仕事が出来ないんですよ!!ふっ、余裕ぶっていられるのも今のうちです。こっちには対アンデットのスペシャリストと何故か苦手意識持っている者がいるのですから!!先生、ゆにな!!よろしくお願いします」

 

 た、啖呵を切るだけ切ってから後は私とアクア様に丸投げだと……………。

 めぐみんとは後で、オ・ハ・ナ・シ・☆をしなくちゃね。

 まぁ、アクア様が乗り切りだから、私もお手伝いをしますけど。

 

「しょうがないわね~!!魔王の幹部だか知らないけど、この私が居る時に来たのが運の尽きよ!だいたいね~…………」

 

 めぐみんに先生呼ばわれしてもられたアクア様は、まんざらでもなさそうに鎧さんの前に出た。

 最後の方が愚痴になっているのは、鎧さんのせいだと言いたい。

 アクア様がバイトばかりしなくてはならない状況になった犯人が、ようやく鎧さんだと気付いた私は「鎧さん殺すべし」と殺意の目を込めて睨む。

 

 あの時は本気じゃなかったし!

 今度はアクア様がいらっしゃるし、本気の重力魔法に加えて初級創作魔法の自重もためらわないぞ!

 よってこの勝負、鎧さんの負け決定。

 相手の実力を測れなかったのが敗因だぁ!

 あの世で後悔しても遅いんだからね~~!!

 

 と、余裕ぶっていた私がバカでした。

 アクア様が浄化魔法を演唱するよりも、私が重力魔法を展開するよりも早く、鎧さんが右手の人差し指をめぐみんに突き出した。

 そして鎧さんは叫ぶ。

 

「汝に死の宣告を!お前は一週間後には死ぬだろう!」

 

 鎧さんが呪いを発動すると同時に、私の重力魔法が展開する。

 私の重力魔法が鎧さんを捉えるが、呪いは止まらない。

 そして、呪いがダクネスさんに当たった。

 

 ダ、ダクネスさん!!

 めぐみんを庇うなんて流石クルセイダーですね。

 と、見た目は変わっていないね。

 でも確かに鎧さんは言った、「一週間後に死ぬ」と。

 鎧さんの言葉を信じると、ダクネスさんは一週間後には死ぬだろうね。

 

 

 そう私が考えていると、鎧さんがご丁寧にも説明してくれる。

 

「その呪いは、今は何ともない。若干予定が狂ったがこっちのほうがお前たちには効くだろう。よいか!」

「貴様が俺の言う事を聞かないから、仲間があんな目に遭ったのだぞ。一週間後仲間が苦しんで死んでいく様を見て後悔するがよい。くっはっはっはっはっはっはー。鎧さん、それは引きますわ~」

「だから、お前はもう、黙っていてくれませんか!!?」

 

 説明してくれる鎧さんのセリフ、余りにも予想が出来たので真似して見たら、更に怒られた私だった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

274 第一次鎧さん襲撃事件パート6

三連休?ナニソレオイシイノ?そんな状態のカグヤです。
連休だからって人が多い!コンビニなんか来ずに、家でゴロゴロしとけよ!!そう思ってしまう店員さんは自分だけじゃないはず……………。


 

 私が鎧さんをおちょくる為に言った言葉が本当だとしると、めぐみんが顔を青ざめてた。

 しかし、そんなめぐみんや他の人の心情をぶち壊しにする声があがる。

 

「な、なんてことだ!つまり貴様は、私に死の呪いを掛け、呪いを解いてほしくば俺の言うことを聞けと!!そう私に言うのだろう!?」

「ふぁ?!」

 

 ダクネスさんの言葉に、意味が理解出来なかったのか素で返す鎧さん。

 私は、あぁ、変体騎士様の登場だぁ~。とやけになって見ている。

 私の隣では、カズマ君がダクネスさんが言った意味を理解できるのだが、理解したくない。そんな顔になっていた。

 私達が遠い目で見ているのも知らず、変体騎士様は変態的な行動を続ける。

 

「私は屈しない。屈しないが……………どうしようカズマ!!あのデュラハンの仮面の下の眼つきを!あれは絶対に私を城に連れて帰り、呪いを解いてほしくば……………と私に厭らしいプレイを要求してくるのだぁ!」

「……………………えっ?」

 

 大衆の面前で、変体呼ばわれされた鎧さんはポツリと呟いた。

 鎧さん、ドンマイ。

 更に変体騎士様の追撃は止まらない。

 私だったらとっくに心が折れているよ。

 

「しかし、身体が屈しても、心までは落とされないぞ!!城に囚われアレコレされるとは……………とても燃えるシチュエーションだっ!!行きたくはない、行きたくはないんだが、ギリギリまで抵抗して見せる。では行ってくりゅ~!!」

 

 抵抗すると言った途端に落ちる変体騎士様を見て、鎧さんが絶叫する。

 絶叫する鎧さんを言い分に、カズマ君が変体騎士様を羽交い締めで拘束。

 鎧さんがほっとしている姿が見えた。

 それが、なんかムカついたので、重力魔法で嫌がらせ開始。

 

「……………………グラビティ」

「ほぉぉぉうぉぉ!!!身体が重いぞ!!!!、またあいつかぁぁぁ!!!」

 

 ふ~んだっ!

 鎧さんなんか、変体騎士様とキャッキャウフフしてれば良かったんだ!!

 

「ねぇぇ!!いつになったらこの嫌がらせ止めてくれんの!!!?もう一回誰かに死の宣告をやってやるぞ。俺は本気だからな」

「……………………だが断る」

「こ、此奴!分かった、お前が望むものは分かったからな。こんなもので俺の動きを止められるとは……っとっと、わぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁ」

 

 話の途中にズゴッとこけてしまう鎧さん。

 私は可笑しくて笑ってしまう。

 

「よ、鎧さんwww。ズコーって頭からダイブなんてww、何?芸の練習ですか~wwwww??」

「お前が急に魔法を解いたからだろうが!!!」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

275 第一次鎧さん襲撃事件パート7

 私の重力操作によって、力加減を誤って顔から地面にダイブするという曲芸を見せてくれた鎧さんに、私は大爆笑。

 腹筋が死にそう。

 

「鎧さん、身を徹しての芸をありがとうございます。ぷっぷ」

「まだ笑っておるのか!!えぇい!!もういい!!キサマを――――――――」

「だからなにぃを言っていぎゅべ」

「ゆにな、もういい加減にしろよなっ!!ホントに!!」

 

 私が鎧さんを更に煽っていると、遂にキレた鎧さんは剣の柄に手を持って来て剣を抜こうとする。

 それを見た私は、すかさずあおりながら戦闘態勢に入ろうとして、カズマ君に止められました。

 

「カズマ君離して!!意地でも鎧さんと弄り倒すの!!」

「それをやめろって、いってんだよ!!お前といいめぐみんといい、紅魔族はこんなのばっかか!?」

「「めぐみん(ゆにな)と一緒にするな(しないでください)!!!」」

 

 私を抑えるカズマ君が、私をめぐみんと同レベルだ!と発言した事を言い返すと、ダクネスさんを抑えていためぐみんとハモってしまう。

 完全に言葉が揃ってしまった私とめぐみんは、顔を合わせると…………

 

「ちょっとめぐみん。おんしは私と同レベルとは嫌なのかい?」

「あぁ嫌ですよ。敵をおちょくる事しか脳がない、ゆになと同レベルは!!」

「だったら、めぐみんは爆裂魔法しか脳がないから、私よりも下だよね~??」

「どうやったらそういう考えになるのやら。やれやれですね」

「なにおぅ??じゃあめぐみんは高難易度クエストを一人で連続でこなせれるの???こなせれないよねぇ??」

「はあぁ!??別に高難易度クエストが優秀な冒険者に基準ではありませんよ!!攻撃力こそが一番です。故に、最強の攻撃魔法である、爆裂魔法を撃てる私が最強です!!」

「爆裂魔法ってネタ魔法じゃん。何々、ネタ魔法覚えたら最強なの?なら私も覚えてみよ~と」

 

 お互いの体を掴んで、ボコボコと喧嘩を始めた。

 自分でやっておいてなんだけど、完全無視のカズマ君と鎧さん、超哀れだな。

 

「だから、いい加減にしろって、言ってるだろ!!」

「「はぅっ!!」」

 

 な、殴られた。

 頭を思いっ切り、ゴンって殴られた。

 殴られた頭を抱えていると、カズマ君が私とめぐみんの頭を掴んで地面にキスさせた。

 二人して、土下座状態。

 

「この度は申し訳ございませんでした。このバカ二人には言い聞かせるので、この辺で勘弁してやって頂けないでしょうか?どうぞお広い心を見せてください。…………ほら、お前らも謝罪しろっ!!」

「「オネガイシマス」」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

276 第一次鎧さん襲撃事件パート8

あ、気が付けば80話に。でも、一話一話が短いから長編といった気がしない………。


 カズマ君に頭を抑えられて、二人揃って謝罪を言う私とめぐみん。

 それを見た鎧さんが慌てた様にして、言葉を言う。

 

「と兎に角だ、これに懲りたら爆裂魔法を撃つのを辞めろ!そして呪いを解いてほしくば俺の城にやって来るがいい、最上階の俺の部屋まで来る事が出来たのなら、呪いを解くことも考えようではないか。しかし、ケイキは来るなよ!!一度突破しているんだし、お前がいると試練にならないからな!!いいか、絶対に来るんじゃねぇぞ!!分かったか!??ふっふっふ、くっはっはっはっはっはっは、それはお前たちが城の最上階に来れる事を祈っているぞ」

 

 そう言って、哄笑しながら首から先がない馬に乗って、鎧さんは去って行きました。

 私は鎧さんが言った事を考えてます。

 

「来るな、来るなって二回も言われるとは……………………これは振り!?」

「振りな訳あるかっ!デュラハンさん真底迷惑そうだっただろ。つか、魔王軍の幹部様にあれだけ言わせるとか、お前マジで何やった!?」

「お城に入ってボス部屋前でキャンプをした後、鎧さん相手におちょくりながら軽~い運動をちょっとしただけですてっば」

「…………俺はその時のデュラハンさんに同情するよ」

 

 私の説明にカズマ君は深く深~く、溜息を吐いた。

 そんなカズマ君の態度に、私は舌を出してベーっとすると、慰めてもらうためにアクア様の下に駆け出した。

 

「アクア様~!!何やっているんですか?」

「あ、ゆになおかえり。これはね、ダクネスがかっかちゃった呪いを調べているのよ」

 

 アクア様はダクネスさんの体をペタペタと触っていました。

 私が聞くとアクア様は答えてくださいます。

 

「アクア様治せそうですか?」

「んー、ちょっと待ってて、今解析してるから」

 

 ダクネスさんの呪いを解こうと頑張っているアクア様、ステキです!

 これ以上邪魔をしてはいけません。

 そう思った私はダクネスさんに今の気分を聞いておく。

 

「ダクネスさん、気分は大丈夫ですかー?」

「うむ、特にこれといった痛みなどは感じないな」

「そうですか。私のミスですねー。もうちょっと早く魔法を展開しておけば良かったのになー」

「そう自分を攻めるな。起こってしまったことは仕方ないだろ?…………そ、それに、呪いというものを受けてみたかっ……ゴホンッ、めぐみんを助けられたからな」

 

 ……今、呪いを受けて見たかったって言わなかったですか、ダクネスさん?

 めぐみんを守ろうとして動いたかのように見えた原動力が、実は呪いを受けて見たかったという変体騎士様の方だったなんて……………………。

 カズマ君が聞いたらどんな表情をしてくれるのかしら?

 少し楽しみだなー。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

277 第一次鎧さん襲撃事件パート9

 

 ダクネスさんとお話していると、アクア様が呪いの解析が完了したみたいです。

 

 

「うん。これくらいなら、私がちょちょいっとすれば簡単に解けるわ!」

「流石アクア様です!良かったですね、ダクネスさん。一週間の寿命が元に戻りましたよ」

「ちょっと待て、アクアは本当に呪いを解けるのか?仮にも魔王軍の幹部がかけた呪いだぞ?」

 

 

 本当に解呪出来るかどうか不安になったダクネスさん。

 私とアクア様はごり押しで説得します。

 まぁ、説得できなくても強引に解呪するんですけどね。

 

 さぁ、いざ解呪と言った時に私を捨てたカズマ君がこちらを振り返って、何か言って来ました。

 

 

「ダクネス~!呪いは俺たちが何とかしてやるからな!安心―――」

「『セイクリッド・ブレイクスペル』」

 

 

 カズマ君の声を遮って、アクア様はダクネスさんに解呪の魔法を唱えます。

 解呪魔法を受けたダクネスさんは体が淡く光った。

 良し!解呪成功です!

 だけど、ダクネスさん。

 ちょっと残念そうな表情をしてません?

 

 しょんぼりしているダクネスさんと対照的に、喜々としているアクア様が自慢げに言う。

 

 

「ふっふん~!!この私にかかれば、デュラハン如きの呪いなんて朝飯前よ!!どう?どう?私凄いプリーストっぽいでしょ!!?」

「そうです!そうです!!アクア様、物凄いプリーストしてますよ!!仲間の危機にちょちょいっと解呪。流石頼れるプリーストアクア様です!!」

 

 

 ダクネスさんの解呪が成功したことと、パーティーの役割を全うしたことに喜ぶ私とアクア様。

 そんな私たちに、カズマ君とめぐみんが啞然とした表情で、

 

 

「「え!?」」

 

 

 と、声を揃えて「嘘やん!」て顔になっていた。

 

 

 

 

 

 後日お二人に聞いてみた所、なんかカズマ君とめぐみんがお城に乗り込んで鎧さんの部屋に行き、ダクネスさんの呪いを解いてもらおうと、二人して盛り上がっていたらしい。

 周りの冒険者達も、カズマ君とめぐみんの決意を見て感動していたそうです。

 そんな時にアクア様の『ブレイクスペル』。

 私たち、空気を壊したらしいですね!

 

 でも、アクア様のお陰で鎧さんお城に行かなくて良くなったじゃないですか?

 結果オーライです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけのようなもの

 

 

 

 アクセルの街に出向いた魔王軍の幹部ベルディアは首なし馬に乗って、帰り道を走っていた。

 走ることを馬に任せて手綱で進路を取るその姿は何処か苛立っている。

 

 

「あの小娘、これで懲りたらいいが…。早く帰って城の守りを強化しなければ……………………」

 

 

 一週間の内に来るであろう頭の可笑しい爆裂娘を思い出しながら、城の強化に付いて考えるベルディア。

 その頭に、ふともう一人の紅魔族が現れる。

 ある程度の警備をくぐり抜けて自身の部屋まで辿り着き、幹部であるベルディアと戦いながらも余裕の表情で逃げおおせた少女ケイキ。

 ニヤニヤと自分をおちょくってくるその姿を思い出すと、ベルディアは怒りと不安を抱く。

 

 あれだけきつく言ったんだ。

 来るはずがないに決まっている。

 ……………………来ないに………。

 

 ケイキの行動を思い出すと、そうとも言い切れないベルディア。

 そして、

 

 

「一応、城の強化を五段階くらいあげておこう。それに魔王様への報告も」

 

 

 保険を掛けておくことにしたのだった。

 




今回で『第一次鎧さん襲撃事件』は終わりです。流石にオリジナル編は前回よりも長くならなかった。次回は『アクア様の湖浄化』編です。

おまけは文字数が足りなかった為、本当におまけで書いた奴です。来ないのに強化する鎧さん、マジ哀れ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

278 勇者(笑)襲撃事件パート1

勇者(笑)とは一体、ダレノコトカナ?


 

 鎧さんがアクセルの街に来てから、一週間程が経った。

 その間、高難易度クエストも大分消化して、ようやくアクア様と一緒に冒険が出来る様になりました。

 そんなある日、アクア様が我慢の限界とでも言うように叫んだ。

 

「クエストよクエスト!!キツくてもいいから請けるのよ!!」

「「えぇ……………………」」

 

 高らかに言い張ったアクア様に、カズマ君とめぐみんが嫌そうに声を出した。

 しかし、その不満も当然だと思う。

 

 キャベツ狩りのお陰で、アクア様以外の懐は潤っているからね!

 私も連続で高難易度クエストを請けたせいか、懐は潤いどころか湯水の様にある。

 が、アクア様のお願いです。

 断る訳がない。

 

 と思っていると、ダクネスさんが参加表明をしてくれた。

 

「私は構わないが、私とアクアでは火力不足だろ?」

 

 ダクネスさんはそう言うと、チラチラとカズマ君とめぐみんを見る。

 私には見向きもされないとは…………断らない事が確定しているのか、単に忘れているだけなのか。

 後者でしたら泣くぞ!

 

「そんな目で見るな!!火力が欲しいならゆにながいるだろ!!?」

「そんなのは当然よ!!ね、ゆにな?」

「もちろんです、アクア様の為なら。お金が欲しいなら、今からでも鎧さんのお城に遊びに行きましょうか??」

「それは名案よ!!私もあのデュラハンは調子来いてると思っていたところなのよ!!」

「私も賛成だ!!是非肉壁として使って欲しい!!あぁ、どんな強烈な攻撃をされるのだろう!??」

 

 クエストでは無くて、鎧さんの討伐をすることに賛成な私とアクア様にダクネスさん。

 三人でワイワイと盛り上がっていると、カズマ君とめぐみんのひそひそ話が耳に入ってきます。

 

「カズマ、カズマ」

「何だめぐみん?」

「素直にアクアのクエストに付き合った方が、後々面倒ごとにならなくて済むと思うのですが…」

「奇遇だなめぐみん。俺もコイツらを野放しにして置いたらやばいと判断したとよ」

「「………しょうがねえな(ないですね)」」

 

 あ、カズマ君とめぐみんが「クエストを手伝わない」という選択肢を諦めたみたい。

 諦めは肝心ですからね。

 え?鎧さんのお城に遊びに行くと言って、カズマ君とめぐみんを釣った?

 そんなことは偶然だと言いたい。

 だって、本気で鎧さんのお城に遊びに行くつもりだったもん。

 カズマ君が着いて来る以上、鎧さんのお城訪問はお預けかな?

 

「おいアクア。クエストに付き合ってやるから、いいと思うクエストを持って来い」

「えー!折角あのデュラハンを成敗してあげようと、計画してたのに!」

「それが迷惑だからやめろって言ってんだろ!!?」

 

 ほらね、やっぱりこうなった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

279 勇者(笑)襲撃事件パート2

 

 カズマ君の言葉に、アクア様はしょんぼりと掲示板に向かって行った。

 

「………一応、カズマもクエストを見に行ってくれませんか?アクアに任せると、とんでもないのを持って来そうなので」

「だな。…私はとんでもないのでも一向に構わないが……」

 

 めぐみんとダクネスさんに言われて、動くカズマ君。

 私はその背中を見て呟いた。

 

「…私でも良かったじゃない」

 

 その呟きを聞き取っためぐみんがここぞとばかりに追撃してくる。

 

「ゆになに任せると、アクアのとんでもないクエストを喜々として請けるでしょう。だからカズマに任せたのです。」

「それは私が後先考えずに行動をしている。みたいな言い方だけど?」

「みたいな、では無くてそう言っているんですよ。まぁ、とんでもないクエストとふつうのクエストを判別出来ない様なのでわかる訳ありませんか」

「判断できるし~!!それに、ネタ魔法しか覚えようとしなかっためぐみんに言われる筋合いはないですよ~っだ!!」

「ね、ネタ魔法じゃないです!!!それに、ゆになはいつまでも同じ内容で私を怒らせようとして、子供ですか」

「子供で間違っていませ~ん。まだ13歳で子供だよ~っだ。それともめぐみんはその姿で大人とか言っちゃうんですか???」

「それは私がちっこいと言う意味ですか?ケンカを売っているなら買いましょう!えぇ、紅魔族は売られたケンカは買うものです。今こそ高魔族一のアークウィザードを決める時!!」

「ふっはっはっは、何をほざいているめぐみん!私がキサマに負ける未来など、ありはせん!瞬殺だよ瞬殺!」

 

 久しぶりのめぐみんとの言い荒らそいは、カズマ君とアクア様がクエストを受注してくるまで続いた。

 その時まで続いていたケンカに、カズマ君から痛いタンコブを貰った。

 防御壁を張らなかったのは、大声でめぐみんとケンカしていた罰を受けるためだ、と言っておこう。

 決して、ケンカで我を失っていたわけじゃないもん。

 

 

 

 

 

 アクア様とカズマ君が選んだクエストは湖の浄化だった。

 場所は街から少し離れた大きな湖で、街の水源と言われている名に相応しく、湖からはな小さな川が街に向かって流れている。

 湖の水はすぐそばにある山から絶えず流れて来ていた。

 クエストの内容は湖の浄化。

 湖を見ると、澄んだ透明色では無く、濁り切った緑色の水が溜まっている。

 私達が湖を見ていると、背後から不安そうなアクア様の声が聞こえてきた。

 

「ねぇ……………ホントにやるの?」

 

 背後を振り向くと、檻の中央に体育座りで座っているアクア様がいた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

280 勇者(笑)襲撃事件パート3

この作品には関係が無いけど一応、『祝、ワンピース連載二十一周年』!!


 

 アクア様はおっしゃった。

 「まるで売りに出される希少モンスターのようだ」と。

 アクア様は現在、希少モンスターを入れておく為の檻に入れられている。

 

 どうしてこんな事になったかというと、全部カズマ君のせいだ。

 初めは、安全な位置からアクア様が浄化魔法をかければいいと思っていたそうだが、浄化魔法が直接水に触れていないと発動しないと知ると、このままアクア様を湖にぶち込むと言った。

 カズマ君はアクア様を溺死させようとしているのでしょうか?

 アクア様がもう一歩遅くなっていたら、私が勘違いでカズマ君を、トマトの様にプチっとなってしました。

 なんでもアクア様は湖の中に沈められても、呼吸に困るどころか不快にも思わないそうです。

 普通なら演唱をしないと発動しないといけない浄化魔法も、アクア様が触れているだけで水が浄化されるらしい。

 流石、女神アクア様です!!

 

 アクア様が入った檻は、私が責任を持って湖に入れた。

 最初はカズマ君とダクネスさんが運ぼうとしていたが、アクア様が入った檻を「何を考えているか分からないカズマ君に任せて溜まるものかぁ!!」と私が重力魔法を使い、一人檻を運んだ。

 重力操作を行い、檻を宙に浮かせると、横向きの重力操作を行う。

 後は慎重に移動させて、湖に沈ませるだけ。

 準備完了です!

 後は湖を浄化するアクア様の神々しいお姿を拝見させてもらうだけだ。

 

 既にカズマ君達は少し離れた場所に避難している。

 濁った湖にブルータルアリゲーターと言う、ワニ型のモンスターが住み着いているからだ。

 アクア様は湖に完全に沈められているわけではない。

 カズマ君の指示で、湖の際にちょっと浸かる程度の場所に置かれていいる。

 ブルータルアリゲーターに襲われても、直ぐに助けられる様に、とのお考えだそうだ。

 アクア様の檻はモンスターの捕獲様に作られている奴だ。

 私もクエストで何回か使ったことがある。

 これでブルータルアリゲーターが来ても、中に入っているアクア様は無事。

 万が一檻から離れなかった時のために、鎖が伸びている。

 その鎖をここまで来る時に使った馬車につなげて、引っ張って逃げる。

 そう言う作戦ならしい。

 

 

 らしい、というのは私にはそんな作戦知ったこっちゃないから。

 なぜなら、ブルータルアリゲーターが現れたら、私が全部倒す計画だからだ。

 ふっふっふっふっ、アクア様を邪魔するワニ何か、この私が全滅させてやる!!

 

 そう思っていた時期が私にもありました。

 アクア様を湖に入れてから二時間。

 全く変化が起きない。

 




今回はほぼ説明回。……次回は会話が多くなる様に頑張ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

281 勇者(笑)襲撃事件パート4

飛ぶ飛ぶ~♪給料が飛ぶ~(^^♪


 

 アクア様が湖で浄化を始めてから二時間が経ちました。

 特に何も起こらないので、気も緩んでいます。

 初めはアクア様に群がるモンスターを蹴散らしてやる!と意気込んでいた私も、アクア様から二メートル離れた陸地にいるカズマ君等の場所でアクア様を見守っている。

 

「おーいアクアー!!浄化の方はどうだ~!それと、水に漬かりっぱなしだと冷えるから、トイレに行きたくなったらちゃんと言うんだぞ~!!!」

 

 カズマ君が叫ぶと、遠くからアクア様の声が聞こえて来る。

 

「浄化の方は順調に進んでるわ!後、トイレは大丈夫よー!アークプリーストはトイレなんか行かないから~!!」

 

 何と新常識が!

 アークプリーストはトイレに行かないらしい。

 でも、前に組んだことのあるアークプリーストは、トイレに行ってったけどな~?

 ですから、アークプリーストではなく、アクア様が女神様ですからじゃないですか?

 流石アクア様、尊敬する事柄が増えてしまった。

 

「アレでは大丈夫そうですね。因みに、紅魔族もトイレに何か行きませんよ」

 

 アレ?

 紅魔族ってそうだったの?

 ってそんなわけないよね。

 学校でもトイレはあったし、大人達も排便はしていた。

 多分、めぐみんのしょうもない意地張りでしょう。

 

「わ、私も、クルセイダーは、ト、トイレになど……」

「ダクネス、無理してこの二人に対抗するな。このクエストから帰ったら三人がトイレに行かないか見張ってやる」

 

 あれれ~?

 何で私も入っているの?

 あ、めぐみんが紅魔族って言ったからか。

 ちっ、余計な面倒に巻き込みやがって。

 そのドヤ顔、泣き顔に変えてやる。

 

強大な魔力があふれ出ちゃうらいいのあふれ出ちゃうらしいの

「なんだよ、そんな事か。だったらお前は観察対象から外してやろう」

「ありがとうございます」

「か、カズマ?辞めません?ゆになも噓を付くのはよ、よくないですよ。紅魔族はホントにトイレに何か行きませんから……………。そ!そんなことより、ブルータルアリゲーター、来ませんね。このまま何事もないまま終わればいいのですが」

 

 あ、逃げた。

 ここまで来ても、紅魔族はがトイレに行かないと言い張るのか。

 後々面倒になっても私は知らないからね。

 それはそうと、めぐみんは知らない内にフラグを立てるのかな~?

 恋愛フラグなら、私もいじれるのに、嫌なフラグは立てないで。

 

 そんな悲しいお祈りは通じず、ブルータルアリゲーターの群れが現れた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

282 勇者(笑)襲撃事件パート5

暑くて学校に行くのが……………………。


 めぐみんがフラグ的な事を言うから、ブルータルアリゲーターの群れが現れた。

 地球のワニと比べても、大きさは変わらない。

 ただし、群れで行動するらしく、数え切れないくらいいる。

 

「か、カズマー!なんかいっぱい来た!!助けてよぉ~!!」

 

 アクア様の悲鳴が聞こえる。

 とりあえず、隣にいるカズマ君に話しかけた。

 

「カズマ君、ご指名ですよー。行ってあげて下さい」

「バカ言うなよな。あの檻に入っているの以上安全なのは確かだし、俺が行ったところで何もできやしねぇよ。ってか、こういうのはお前の管理下だろうが。愛しのアクアを助けてやれよ」

「失礼な!もう助けています~だ!」

 

 喋っている間に、魔法を構築してアクア様が入っている檻の周りには、超重力の死刑場が出来上がっている。

 これを作るのは意外と苦労したよ。

 地形の事も考えて、モンスターをが近づくまで発動しない仕組み。

 センサー魔法も組み込んで、モンスターが絶命すると超重力は自然と解除される。

 しかも、敵の耐久度を自動で感知して程よい重力操作、死体が染みにならないオプション付き!

 奥さん、お家の警備にどうですか?

 今なら何と!

 一万エリスで承りますよー!

 どんな場所にも対応し、アフターケアも無料!

 お電話は、アクセルの街一の冒険者ゆになちゃんまでお願いします。

 皆様の沢山のお電話お待ちしております。

 有限会社ゆになコーポレーション。

 

 

 

 

 

 アクア様が浄化を始めてから、四時間が経過しました。

 現在アクア様は一心不乱に浄化魔法を連続で使用しています。

 初めの方は水に浸かるだけで浄化できると意気込んでいたアクア様は、ただ檻の中で体育座りでボーっとしていた。

 しかし現在、なぜこんなにも必死になって浄化魔法をかけているかと言うと……………。

 

「ゆにな、全く役に立ちませんでしたね」

「めぐみんヒドイ!全く役に立っていなかったわけじゃないもん!」

「役に立っていたのは始めの方だけだけどな」

「ほら、全くじゃないし!」

「難しい魔法を作ったのは良いが、ほんの十分で魔力が尽きたのは、何処のどいつだ」

「うぅ…………」

 

 アクア様は現在、ブルータルアリゲーターに襲われています。

 私の渾身の魔法『自動センサ付き超重力殲滅くん』の消費魔力が莫大過ぎました。

 十分稼働させるだけで、爆裂魔法並みの消費率。

 直ぐに魔力枯渇を起こした私は、地べたに寝っ転がっています。

 

 無念、これではゆになコーポレーションの商品として出せない。

 アクア様の役にも立ってなかった。

 はぁ、魔力が欲しい。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

283 勇者(笑)襲撃事件パート6

単位がががががぁぁぁ。


 

「カズマー!檻が、檻が変な音を立て始めたんですけど!!?」

 

 あ!

 アクア様が入っている檻がギシギシ言い始めた。

 ってか、カズマ君達もアクア様の手助けをしてよね!

 

「おーいアクアー!ギブアップなら言えよー!引っ張って帰るから~」

 

 何もしないらしい。

 うぅ、魔力がないから、魔力回復の魔法も使えない。

 魔力が回復したら、常備自然魔力回復魔法スキルを作ろう。

 

 それにしてもアクア様は、助けて助けてと言いながらも、浄化クエストを辞めるとは言い出しません。

 何でも、この四時間が無駄になるのが嫌だそうです。

 流石アク………

 

「何よりも報酬が貰えないじゃない!!ってああぁぁぁ!メキって言ったぁ!!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!!早く終わってよおぉぉぉ!!」

 

 デスヨネー。

 報酬の為に命を賭けるのが冒険者ですもんねー。

 

「……………………あの檻の中、少しだけ楽しそうだな」

 

 あ、アクア様を見たダクネスさんが変体騎士様に変態した。

 ハイハイ、魔力が戻ったら重力をかけてあげますから、アクア様の邪魔をしないで下さいね。

 

 

 

 

 

 アクア様が湖の浄化を始めてから、七時間が経過ました。

 アクア様が入った檻は、湖での際にぽつんと取り残されている。

 アクア様に群がっていたブルータルアリゲーターは、水にが浄化され始めたからか、それとも私の魔力がある程度戻って普通に重力魔法を使って牽制したからか、山に戻っていった。

 最後の一時間程から、アクア様から全く声が聞こえてきませんでしたが、アクア様は大丈夫なのでしょうか?

 

「おーいアクアー?ブルータルアリゲーターはもうどっかに行ったぞ?」

「アクア様ー?ご無事でしょうか?最後の方しかお役に立てなくて申し訳ございません」

 

 私達は湖の際まで駆け寄り、檻の中のアクア様の様子を窺がうと、アクア様は

 

「……っぐすっ、ひっく……………うぅ……………………」

「アクア様!!!大丈夫ですか!!?」

 

 膝を抱えながら泣いていらした。

 無理をなさるから………。

 

 カズマ君がアクア様に檻の中から出てくれ、と声をかける。

 

「ほらm浄化が終わったんなら帰るぞ。………それと、ダクネスとめぐみんとゆになの四人で話し合ったんだが、今回の報酬は全部お前のでいいから。三十万全部持っていけ」

 

 そうです。

 一人檻の中でブルータルアリゲーターに襲われているのを耐えているアクア様の無事を祈っていると、カズマ君が私達に相談してきたのです。

 流石にカズマ君も、アクア様を憐れんで、何もしてない私達が報酬を受け取るのは、どうかと思ったみたい。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

284 勇者(笑)襲撃事件パート7

 

 めぐみんもダクネスさんも、特に反論することなくアクア様に報酬を全額渡す事が決まりました。

 報酬を全額貰えると聞いたアクア様の肩がピクリと動く。

 だけど、檻から出てくる雰囲気はない。

 

「……おい、いい加減に出てこいよ!もうブルータルアリゲーターはいないから!」

 

 全く動かないアクア様に、カズマ君が切れ気味に言う。

 そのカズマ君の声に反応して、アクア様が小さな声で呟くのが聞こえた。

 

「………まま連れて……………」

「え?アクア様どうしました?もうちょっと聞こえるように言って下さい」

 

 聞こえにくかったので、もう一度行って下さるように促すと、アクア様は言った。

 

「…檻の外は怖いから、出たくない。このまま街まで連れて行って」

 

 今回のクエストで、アクア様は重度のトラウマを負ったようです。

 誰だ、こんな作戦を考えたのは!!?

 カズマ君ですね、カズマ君ですね!!

 本人は良かれと思ってやったことと言え、結果が全てです。

 後でO・HA・NA・SIしませんと。

 

 

 

 

 

 アクア様ご本人たっての希望もあり、私達はアクア様を檻の中に入れたまま、街に帰って来ました。

 現在アクア様は、

 

「ドナドナドーナドーナ……………」

 

 解体される廃列車の歌を歌っています。

 

「なぁ、街に着いたんだから、その歌は辞めろよな。ただでさえ、ボロボロの檻に入ったお前を運んでいるだけで、街の注目を浴びているんだから。っていうか、安全な街の中なんだから、いい加減出てこいよ!!」

 

 アクア様を檻に入れて運んでいる姿は、まるで奴隷商人のよう。

 住民に生暖かい目で見られているのが我慢ならないカズマ君が、アクア様にもう一度出てこいと言うが、アクア様は、

 

「……いやよ。ここは私の聖域。外の世界は怖いからしばらく出ないわ」

「……ドナドナドーナドーナ、ドナドナドーナドーナ……………」

「おい、こっそりと歌ってんじゃねぇよ!しかも楽しそうだな、おい」

 

 ちっ、歌ってたのがバレましたか。

 だって、歌っているアクア様の表情が心なしか、楽しそうだったもん!

 不謹慎ってのは分かっているんだよ?

 でも、歌いたかったもん、歌いたかったもん!!

 大事なことなので二回言いました。

 

 

 

 声に出して歌うと、また怒られそうだったので、心の中で歌っていると、後ろから大きな声が聞こえて来た。

 

「め、女神様!!?女神様じゃないですか!?こんな所で何をやっているのですか!!??」

 

 突然叫んだ男は、檻の格子まで近づいて来た。

 なんか見たことのあるような対応の仕方なんですが……………誰でしょう?

 




やっと出てきた勇者(笑)さん。ゆになはどうでるのか?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

285 勇者(笑)襲撃事件パート8

 

 突然と現れたその男は檻の格子を掴んで、あろうことかも頑丈なはずの格子をグニャリと捻じ曲げた。

 ひゃ~!この男、力ステータスがかなり高いよ!!

 

 突然のの出来事に啞然としている私とめぐみん、カズマ君を尻目に、その男は同じく啞然としているアクア様に手を差し伸べて………

 

「……おい、私の仲間に馴れ馴れしく触るな。貴様は何者だ?知り合いにしてはアクアが全く反応してないのだが!」

 

 ダクネスさんに遮られた。

 いつもの変体騎士様とは違い、凛々しいその姿は何処に出しても恥ずかしくないクルセイダーです。

 この子、うちのパーティーメンバーなんですよ~!

 と自慢したくなる姿だ。

 

 話は現場に戻り、ダクネスさんの動きで状況を理解できた私も参戦します。

 

「何勝手にアクア様に気安く触れようとしてんだぁ!!あ゛ぁ゛!!??」

 

 ちょっぴり重力操作も加えて、男に詰め寄る私。

 客観的に見ると、私って893さんじゃないですか?

 まぁ、アクア様の為なら、893にも魔王にもなりますよ。

 あ、アクア様は魔王が嫌いでしたね。

 魔王は却下と。

 

 と、私が脅した見知らぬ男と言えば、私の重力操作を物ともせずに私とダクネスさんを一瞥すると、溜息を吐きながら首を振った。

 何ですかその、自分は厄介ごとに巻き込まれたくないが仕方がない、みたいな態度は!!

 厄介ごとを作っているのは貴方じゃないですか!!?

 隣を見てみると、普段は怒ることが少ないダクネスさんが、イラって表情を出している。

 

 このままでは埒が明かないと思ったらしいカズマ君が、アクア様にそっと耳打ちしています。

 何を言っているかは聞こえないけど、この男を知らないか?と聞いているんでしょう。

 

「……あぁそうよ!!私は女神よ!!女神なの!!それで、女神たる私にこの状況をどうにかしてほしいって訳ね!!」

 

 アクア様はそう言ってようやく檻の中から出てこられましたが、何を言ったらアクア様が女神様だと再確認されるような事になったのでしょうか?

 まさか、今回のクエストがトラウマになり過ぎて、ご自身が女神様だと言う事をお忘れになられていたとか!!?

 

 私が心配している中、モゾモゾと檻から出てきたアクア様は目の前の男を見て……………

 

「……あんた誰?」

 

 知り合いじゃないよ宣言。

 よーし、なら早速この男には重力操作で重さを加えていって……………

 

「何言っているんのですか女神様!!僕です、御剣御夜ですよ。貴女様に魔剣グラムを頂いた!!」

「……ん?」

 

 アクア様は唸っている。

 御剣御夜とかいう奴が何者か分からないらしい。

 かという私も彼が何者か分からない。

 なんか引っかかっているんだけどな~。

 う~~~ん

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

286 勇者(笑)襲撃事件パート9

九十話目です。後三話で投稿作品の中でトップと並びますね!一巻が終わるまで突っ走りますよ!!


 

 なんか引っかかる感じ。

 御剣御夜……………あ、日本人の名前だ。

 よく思い出せば、女神様って言ってたね。

 要するにこの人はアクア様に魔剣グラムとかいうチートアイテムを貰い、特に苦労もせずに強くなった転生者って訳か!

 ズルいぞ。

 私は一からやり直したって言うのに。

 君と違って、努力はしているぞ。

 

 この人が転生者と分かったら、容姿に目がいった。

 アニメや漫画の主人公っぽい名前に合うように、茶色い髪の毛のイケメンですわ。

 鮮やかに輝く青色の鎧を身に付け、腰には黒い鞘に入った剣がある。

 あれが魔剣グラムなんだろう。

 後ろにはきれいな女の子を二人引き連れていてる。

 三人ともカズマ君と同じくらいの歳。

 正義感が強そうなその姿は、差し詰め『勇者』が似合いそうな人だ。

 よし、これからお前は『勇者(笑)』だ。

 

「ああ!!居たわね!!そういえばそんなん人も!!ごめんね、すっかり忘れてて。だって何人もの人を送り出していれば、忘れるのも仕方が無いわよね」

 

 カズマ君と勇者(笑)によってようやく思い出したらしいアクア様に、勇者(笑)は顔を若干引きつらせながら挨拶をする。

 そう言えば私も初めは思い出してもらえなかったよね~。

 まぁ、仕方のないことです。

 

 で、勇者(笑)の挨拶を聞くと、色々とツッコミどころが多かった。

 貴女に選ばれた?

 確かにアクア様に選ばれたかもしれないけど、アクア様に転生させて貰った転生者は何人もいるんだぞ!

 少なくともここに二人は!!

 で、レベルが三十八?

 ふっ、勝った!

 私は四十だ!!

 この世界で生きている時間が、文字通り違うのだよ!

 

 と勇者(笑)を笑っている間に、カズマ君がアクア様が檻の中にいる経緯を話した。

 

「馬鹿な!!アクア様をこの世界に引きずり込んだ上に、今回のクエストでアクア様を湖に浸からせた!!?君は一体何を考えているんですか!!?」

 

 カズマ君の説明を聞いた勇者(笑)がカズマ君の胸倉を掴んだ。

 こらこら、暴力はいかんよ。

 アクア様が慌てて止めに入る。

 

「ちょちょっちょっと!!いや別に、私は結構楽しい毎日を送っているし、ここに連れて来られたことはもう気にしてないんだけどね?それに魔王を倒せば帰れるんだし!!ゆになと言う私の信者もいるし。今日のクエストもちょっと怖かったけど、結果的には誰も怪我をせずに無事完了できたわけだし。しかも、今回のクエスト報酬三十万全額くれるっていうのよ!!」

 

 アクア様が全力で弁解して下さる。

 がしかし、勇者(笑)には違う解釈になったらしい。

 流石勇者(笑)だ。

 




ゆになのレベルが四十なのは適当です。キョウヤ君が何年か分かりませんが数年で三十八に比べて、ゆになは十四年で四十なのは、子供の頃は効率よくレベル上げが出来なかったせいですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

287 勇者(笑)襲撃事件パート10

台風がぁ!!


 アクア様が必死で弁解する言葉に、勇者(笑)は勘違いを加速させた。

 

「アクア様、こんな男にどう言いくるめられたかは知りませんが、貴女の扱いは不当ですよ。そんな目にあってたった三十万?貴方は女神ですよ!なのにそんな扱いなんて……………。因みに、今どこで寝泊まりされているのですか?」

 

 この勇者(笑)、アクア様を女神様だと崇めるのはいいけど、なんかいけ好かない。

 アクア様称えるなら、先ずはアクシズ教徒にならないと!

 この勇者(笑)はそんなことも知らないのか!!?

 

 と、勇者(笑)のアクア様に対する態度がなっていない!!と考えているうちに、話し合い(主に勇者(笑)だけが)がヒートアップしていく。

 現にダクネスさんの表情が更に磨きがかかっていたり、めぐみんが爆裂魔法の演唱を始めたりと、私達も勇者(笑)にいい思いをしていない。

 だが、勇者(笑)はそんな私達の態度を見て分からないのか、

 

「クルセイダーにアークウィザード?随分綺麗な人達だなぁ。それなら尚更だよ、君はこんな恵まれたメンバーを馬小屋に寝泊まりさせているのか?さっきの話じゃ、君は最弱職の冒険者らしいじゃないか」

 

 私達の敵対するような態度を見ても、この勇者(笑)には私達が綺麗だとしか思わないらしい。

 おぉ!!流石勘違いが激しい正義感!!

 しかも、ついでにとカズマ君を批難しているし。

だけど、綺麗だと褒められて嬉しくならないはずがない。

 

 えへへ、私って綺麗な分類なんだぁ!!

 嬉しいのは嬉しいけど、この人に言われるのはなぁ。

 って私は入って無いのかぃ!!

 この勇者(笑)私の事は見えていないのか!?

 なんか悔しいぞ。

 でも三人とも、綺麗と言われても何も反応していないし。

 何よりもこの勇者(笑)、アクア様の言い分を全く聞こうとしてない!!

 アクア様、アクア様言うても、結局は自分の都合のいいようにしたいだけじゃないの!!

 

私が勇者(笑)について怒っていると、そんなことも知らない勇者(笑)は同情でもするかのように、ダクネスさん、めぐみん、そしてアクア様を、憐みの混じった表情で笑いかけてきた。

 

「君たち、今まで苦労して来たみたいだね。これからは僕と一緒に来るといい」

 

 はぁ?

 何言ってんだ、こいつ?

 馬小屋では寝かせないし、高級な装備品も買い揃えてあげる?

 完全に不審者の言葉としか思いえない。

 それに、三人が勇者(笑)のパーティーに入ったら、良いパーティーになるだと!?

 この勘違い勇者(笑)が、自由気ままなアクア様、変体騎士様のダクネスさん、爆裂魔のめぐみんを制御できるとは思えないのですけど?

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

288 勇者(笑)襲撃事件パート11

 

 この勇者(笑)に勧誘されたアクア様、ダクネスさん、めぐみん。

 私は入ってません。

 同じく入っていないカズマ君の方を向くと、あらバッタリ。

 目線が会いました。

 きっと、思っていることは同じでしょう。(実は少しだけ違う)

 

 一方で勧誘されたお三方と言えば……集まってひっそりと囁いている。

 何を話しているのか気になった私とカズマ君は、聞き耳を立てます。

 

「ヤバいんですけど、超やばいんですけど!っていうか、勝手に話を進めるナルシストが入っている系で怖いんですけど」

「どうしよう!あの男は私でも、生理的に受けつけれない。受けの私でも、あいつは無性に殴りたくなるのだが…」

「撃っていいですか?あの苦労しらずのエリート野郎をゆにな諸共撃っていいですか?」

 

 おっと、大不評のようですよ、勇者(笑)さんw。

 っていうかめぐみん、勇者(笑)を撃つのは構わないが、何故私も入っているのでしょうか?

 この機に厄介者はまとめて?

 それとも、私が苦労知らずのエリートに見えたのかな?かな??

 勇者(笑)よりは努力したつもりだよ!!

 だてに重力魔法を使えるわけではないのだよ。

 

 とアクア様がカズマ君の裾を引っ張った。

 カズマ君よりも私にして欲しかったなぁ。

 あ、理由はカズマ君がパーティーリーダーだからですか。

 

「ねぇカズマ。もうギルド行こ?私が魔剣をあげておいてなんだけど、あの人には関わらない方がいいと思うの」

 

 当事者であるアクア様の意見を聞いたカズマ君は勇者(笑)にお断りを入れる。

 

「えーと、俺の仲間は、満員一致であなたの仲間になりたくないそうです。俺達はクエスト完了の報告があるので、これで……………」

 

 カズマ君にしては丁寧な口調で、勇者(笑)に言うと馬の手綱を引いて歩こうとして……………………勇者(笑)に立ちふさがれた。

 

 カズマ君は「逃げる」を選択した。

 勇者(笑)からは逃げれない!

 カズマ君の気持ちにイラつきが出始めた。

 

 面倒なことは嫌なので、カズマ君に勇者(笑)の対応を任せていると、面白い展開になった。

 ゲーム風に実況していきたいと思います!

 

カズマ君が再度「逃げる」を選択。

 勇者(笑)相手には通用しない。

 勇者(笑)がアクア様を引き抜こうと、当然の様に言う。

 勇者(笑)に女神が相応しいのは当然ならしい。

 勇者(笑)にカズマ君の話は通用しない!

 勇者(笑)はカズマ君に勝負を挑んだ。

 勇者(笑)が勝てばアクア様を勇者(笑)パーティーに、カズマ君が勝てば勇者(笑)が何でも願いを聞く。

 盟約に誓って、アッシェンテ!

 

 さぁ、最弱職と勇者(笑)の戦闘が今、幕を上げる!!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

289 勇者(笑)襲撃事件パート12

 今日は間に合わないかと思った!!間に合って良かったぁ~!


 

「よし載った!なら行くぞ!!」

 

 アッシェンテと始まった(私の脳内限定)カズマ君と勇者(笑)の戦い。

 カズマ君は勇者(笑)が戦いを挑むと言った瞬間、そうなることを見越していたのか、承諾と共に攻撃を開始。

 右手でショートソードを鞘ごと引き抜き、そのまま突っこんでいく。

 カズマ君、左手をワキワキさせているのは何故かしらん?

 私の動体視力では見逃せませんよ。

 

「えっ!?ちょっ!待っ!!?」

 

 いきなり斬りかけられて慌てた勇者(笑)だったが、流石高ステータスの持ち主。

 咄嗟に腰の魔剣を引き抜くと、カズマ君のショートソードを防ごうと動いて……………………。

 

「スティール!!」

 

 カズマ君の左手が炸裂した。

 あ、ワキワキしていた左手はこのためにありましたか。

 カズマ君は左手でスティールを使用。

 スティールで奪える物は完全ランダムのはずだが、流石運だけの男、カズマ君が奪ったのは魔剣グラムです。

 

「「「はっ!!?」」」

 

 間の抜けた声が聞こえてくる。

 誰が言ったのか分からないけど、カズマ君と私以外なのは確かです。

 

 魔剣を失った勇者(笑)は、一瞬前まで持っていた魔剣が手元から消えたことに驚き、目を開いて啞然としている。

 そのすきをカズマ君が逃すはずもなく、右手にもった鞘付きのショートソードが勇者(笑)の頭を捉えた。

 幾ら鞘付きのショートソードと言えど、重さは十分に鈍器レベル。

 それを頭に受けても、気を失う程度で済んだのは高ステータスのお陰とも言えるでしょうね。

 

 ざまぁっ!!

 最弱職の冒険者だからって、油断し過ぎじゃないですかぁ~~??

 カズマ君がこの街でなんと呼ばれているか、知らないんですか???

 「パンツ脱がせ魔の鬼畜なクズマさん」ですよ。

 スティールが使えることくらい、知っておくべきでしたねぇ。

 あ、この勇者(笑)は今日アクセルに着いたっぽいから、無理な情報でしたね。

 ってか、こんなにもあっさりとやられてちゃあ、魔王なんか倒せるわけないじゃん!

 

 

 

「卑怯者!!卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者!!!!」

「あんた最低!!最低よ!!この人間のクズ、正々堂々と勝負しなさいっ!!」

 

 勇者(笑)がカズマ君によって気絶させられ、勝負が着いた。

 だが、勝負の着き方に勇者(笑)のお仲間は納得が行かない様子。

 カズマ君にピッタリな罵倒でカズマ君を責めています。

 カズマ君はその罵倒を甘んじてと言った態度で聞いている。

 

 そこのお二人さん、そろそろ罵倒を言うのは止めて貰っていいですか?

 私の後ろで、ダクネスさんが変体騎士様に変態して「私にも…………」と言ってるからぁ!!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

290 勇者(笑)襲撃事件パート13

 投稿作品の中で話数最多を更新しました!!総合文字数とUAは違うのですが……………。これからも頑張って行きます。
 後、8月になりましたね。熱中症などに起きお付けて……………自分は倒れて寝たい。


 

 少しだけ奇策を使って勇者(笑)との勝負に勝ったカズマ君は、勇者(笑)の仲間の罵倒を聞き流しながら、一方的に宣言した。

 

「じゃあ、俺の勝ちってことで良いよな。こいつ、負けたら何でも言うことを聞くっていってたよな?ならこの魔剣を貰っていくますね」

 

 おぉ!!

 カズマ君、戦利品に勇者(笑)のメイン武器を奪うとか……………………流石最終鬼畜。

 

 だけど、お仲間さんは抗議を挙げる。

 どうやら、魔剣グラムは勇者(笑)専用武器だそうです。

 これについては、アクア様も正しいと認めている。

 

「じゃあ、そいつが起きたら、お前が仕掛けた勝負だから恨みっこなしだ、と伝えてくれ。……それじゃあ、ギルドに行こうか」

 

 あ、持ち主設定がされていて使えなくても、魔剣グラムは持っていくのですね。

 まぁ、とりあえずやっとこの場から動けるよ。

 と思ったのも束の間、パーティーリーダーがそうなら、お仲間も同類。

 今度は、勇者(笑)の仲間の二人が私達の道に立ちふさがった。

 

「ちょっとちょっとあんた待ちなさいよ!!!」

「そうよ!キョウヤの魔剣、返してもらうんだからね!!」

 

 そんな二人に、私はそろそろ限界が近づいてきていたため、左手をワキワキさせているカズマ君を遮って二人の前に立ちました。

 

「カズマ君はちょっと待ってて!!!そこの二人も卑怯者、卑怯者言ってないで、もうちょっと考えて行動したらどうなの!?」

「考えてって言っても!!この男が!?」

「そうよ、いきなり斬りかかって、魔剣を奪う何て勝負じゃないわ!!」

「奇襲は立派な作戦だよ?えっ、何?魔王軍幹部との戦いでも正々堂々と真正面から戦うとでも言いたい訳?まぁ、今まで大した苦労をしたこともない人が、カズマ君のような頑張っている人の気持ちなんか分からないよねぇ??」

「そ、それは……………………」

「でも……………………」

 

 私の言葉に口が開かないお二人さん。

 ふっ、勝った!

 そう喜んでいると、カズマ君が耳打ちして来た。

 

「お前、こんなことも出来たんだな。お前のことだから、重力魔法で脅して終了かと思ったわ」

 

 はぁぁ!!?

 なんですと!!!!??

 カズマ君は私が脳筋なイメージなのですかな??

 

 もう怒ったっ!

 と、うろたえているお二人への攻撃方法を変える。

 

「それに、早くこの場を離れないと貴女達が大変な目にあうよ?ほら、私の後ろで左手をワキワキさせているカズマ君は、スティールで女性の下着を奪うのが得意なんだよ?実はすでに被害者が数名でています。そうなりたくなかったら、早く引き下がる事が賢明ですよね?」

「ちょっ!!お前……」

「デスヨネー??」

 

 ちょっとは協力しろ!!?と目線で訴えた所、カズマ君は渋々と乗ってくれます。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

291 勇者(笑)襲撃事件パート14

久しぶりに学校から歩いて帰ったら、死にそうになってしまった。自転車がこんなにも便利だと改めて理解できたよ。あ、明日から夏休みだ。やっほ~い!


 

「「「うわあぁぁぁ~~」」」

 

 私の言い分に、アクア様めぐみん、ダクネスさんが引いている。

 私に巻き込まれたカズマ君も、三人に同じように引かれているのは、しょうがないよね。

 だってカズマ君、女性の下着をスティールしたことがあるのが悪いんだよ?

 

「「いやあぁぁぁぁぁぁ」」

 

 私の目線で「手伝え」と強引に協力させると、カズマ君はノリノリの左手をお二人に向けると、指を巧みに動かして、スティールをするぞ!と脅していると、二人には悲鳴を上げて逃げて行った。

 勇者(笑)も連れて帰って下さい。

 

 

 

 ようやく進路を邪魔する勇者(笑)等がいなくなった私達は、当初の目的であるギルドにクエスト完了の報告と借りていた檻の返却をしに向かった。

 報酬は全てアクア様にあげちゃうと決めていたので、出来れば代わりたっかったのですが、報告はアクア様に任せた。

 カズマ君が。

 途中、カズマ君が私達から離れて馬を返しに行った。

 そして、私とめぐみんにダクネスさんはアクア様の報告完了を待つ為、適当なテーブルに座って待っている。

 

「それにしても今回のクエストは楽で良かったですね」

「そうだな。私はもっとモンスターに…………」

「ダクネスさん!!それ以上は言っちゃダメ!!みんなの目がある所で変態的行動は辞めなさい!!」

「…………変態的行動って、あの二人に対する言い方も十分アレでしたよ?」

「むぅ~!!あれは苛立っていたからなの!!それとも何?私が言い返した事に驚いたの??爆裂魔法を撃つことにしか頭が使えないめぐみんとは大違いなゆになちゃんですよ!!」

 

 めぐみんに、ダクネスさんと同じにされるのが嫌だったので、爆裂魔法を使ってめぐみんを煽る。

 いつもならここで引かかってくれるはず。

 ほら、言い返そうと口が開いて……………………。

 

「な、何ですってぇぇぇl~~~!!!」

 

 アクア様の悲鳴がギルド内に木霊する。

 受付カウンターをみると、涙目になったアクア様がルナさんに突っかかっています。

 アクア様、一体何回ルナさんを困らせたらいいのでしょうか?

 もしかしたら、アクア様の不備ではなく、ルナさんが悪いのかもしれません。

 今度、それとなく聞いてみることにしよう。

 あ、丁度カズマ君が戻って来ています。

 アクア様、運がないですね。

 

 アクア様とルナさんの声が聞こえて来ます。

 どうやら、勇者(笑)が壊した檻の修理代を報酬から引かれるとのことだ。

 勇者(笑)め、いなくてもアクア様に迷惑をかけるのか!!

 今度会ったら、けちょんけちょんに懲らしめてやるよ!!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

292 勇者(笑)襲撃事件パート15

今更31日に二回も投降していたことに気づいた!!!予約投稿にするの、忘れてたぁ。のおぉぉぉぉ!!!連続投稿ががが!二回目が1日の分ということに…………………なりませんかねぇ。


 勇者(笑)に壊された檻の請求を求められているアクア様。

 カズマ君は大したことじゃないとでも思ったのか、アクア様を無視して私達が座っているテーブルに来ました。

 

「あれ?魔剣はどうしたの?」

「あぁ、ほれ」

 

 カズマ君そう言ってジャラジャラとなる革袋を見せてきます。

 どう見たって、大金が入っているとしか思えない。

 

「売ったんですか!?」

「俺には普通の剣としか使えないんだろ?だったら、俺にはもう剣があるし、売った方が少しは蓄えになると思ったんだが………予想以上の金額で売れた事に自分自身が驚いている」

 

 それを聞いた私は、急いで立ち上がる。

 準備には殆ど時間がかからない。

 

「ちょっと何処に行くんですか?」

「めぐみんは黙ってらっしゃい!」

 

 今はめぐみんに話している時間はないと言うと、「らっしゃいって何なんですか?」と珍しく落ち込んでいるめぐみんを放っておいて、ダクネスさんに革袋を投げた。

 

「ダクネスさん、それをアクア様に渡してください。今回のクエスト報酬の三十万エリスが入ってます」

「わ、分かったが、ゆになは何処に行くんだ?」

「帰ってからのお楽しみです。帰って来た私は更に進化していますから」

 

 私は急いで立ち上がると「楽しみしていてくださ~い」と言葉を残して冒険者ギルドを出た。

 ギルドを出ると、向かうのはこの街唯一の武器屋。

 途中、気を取り戻した勇者(笑)とすれ違ったが、私には気がついていないようだったので、私も無視した。

 

 

 

「おじさん!!入荷しました!?」

 

 そう言って入っていった私は、店内のカウンターで計算をしていたこわもての男性に話しかける。

 入店と同時に大声を聞かされた武器屋の店主は顔をしかめると、ほらよとある武器をカウンター上に置いた。

 

「聖剣、魔剣の類が入荷したら取っておいてくれと言ったのは、お嬢ちゃんだろ?まさか、入荷して一時間も経たない内にくるとは思わなかったがな」

「その売っていった人が私の知り合いだったんですよ。おじさんに保険掛けておいて良かったぁ~」

 

 カズマ君が売った魔剣グラム、それこそが私が求めていた物だ。

 弁解しておくと、魔剣グラムを狙っていた訳ではなく、神具と呼ばれるレベルの剣だったら何でも良かっただけだ。

 こんな神具レベルの剣を使って何をやりたかったは、後々お見せするとして。

 元々カズマ君が魔剣を奪った時、どうにか交渉して譲って貰おうとしたのだが、カズマ君ってば誰にも言わずに売っちゃって、二度手間だよ!

 




ゆになちゃんの進化とは!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

293 勇者(笑)襲撃事件パート16

 

 武器屋のおじさんに私は問いかけます。

 

「さぁ、この魔剣の値段はお幾らですか?」

「う~ん、幾らっつ言われてもな~。おじょうちゃん、この魔剣振り回せるのか?相当重いぞ」

「冒険者を舐めないで下さい。一般人とステータスが違うんですよ」

 

 「どうだか」と見ているおじさんに「持ってみていいですか?」と了解を得て、魔剣グラムを持つ。

 手に取った瞬間、チクリと痛みが走った。

 魔剣グラムが抵抗してるのかな?

 でも、カズマ君はそんな様子を見せなかったけどね~。

 

 チクリと痛みが走ったが、持てない物ではない。

 おじさんは重いと言ったが、ステータス補正もあって重いと感じはしない。

 

「ふっ、たぁ、そぉ!」

 

 軽く振ってみる。

 振れには触れるけど、何か馴染めた気がしない。

 私が、しっくりこない原因を探っていると、おじさんが私の思考を遮った。

 

「お~!結構様になってるじゃないか!?良いだろう、その魔剣を売ってやる。幾ら出せる?」

「え~っと、お手柔らかに?」

 

 

 

 お手柔らかにって言ったのに!!

 あんなにも大金積むかな?

 多分、カズマ君に払った倍のお金を請求されたよ!

 最近は高難易度クエストを受けていたお金があるから払えたけど……………いっそのこと鎧さんを倒しに行こっかな?

 でも、それだと聖魔法を覚えなきゃいけないし………お城に行ったらキレそうなんだよな~、鎧さんが。

 

 武器屋で魔剣グラムを買った私は、貯金残高のことを考えながらギルトに向かって歩いていた。

 もう解散したか分からないけど、一応いるかどうかの確認の為だ。

 そうやって、魔剣を肩に担ぎながら歩いていると、後ろから声がかかった。

 

「見つけたぞ!!僕の魔剣を返してくれ!!」

 

 うわぁ~。

 嫌な声が聞こえてきた。

 とりあえず、無視ししよっか。

 私、名前を呼ばれてないし、魔剣を返してって言われても、私以外にも魔剣を持っている人がいるかもしれない。

 

 そう思った私は、立ち止まる事なく足を進めて……………………

 

「無視は酷いだろ?」

「……………………」

 

 勇者(笑)に進路を遮られた。

 相変わらずムカつくイケメン顔ですね!

 

「無視と言われても、貴方は私の名前で呼ばなかったので、私が呼ばれたとは思いもよらなかった為、無視したのですが、何か問題でもありますか?」

 

 正論っぽく言い返してみる。

 決して、勇者(笑)がムカつくとかそういうのじゃない。

 

 私の言い分を聞いた勇者(笑)と言えば。

 

「そうか、それは済まない。だったら、名前を教えてくれる助かるよ」

 

 何事もなかったかのように笑顔で言い切ったぞ、この勇者(笑)。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

294 勇者(笑)襲撃事件パート17

 

 笑顔で名前を教えてくれと言い切った勇者(笑)。

 これが普通の女の子なら、ハートを射抜かれているのだが、この男にいい思いを持っていない私は違う。

 …………どうしよう、素直に名乗るべきか、それともボケに走るべきか……………。

 

 と私が、状況に合わない悩みを考えていると、取り巻きの二人の内一人が言った。

 

「キョウヤこの人は仲間から『ゆにな』って言われてたわ」

「そう、キョウヤの魔剣を取り返そうとした私達を脅したの」

 

 おぉっといきなりネタバレはないですぜ、取り巻きさん達。

 素直にお名前を名乗っておきましょう。

 

 そう決めた私は、ポーズを取って名を名乗った。

 

「我が名はゆにな!紅魔族一の冒険者で、禁術を操りし者!!……………というわけで、紅魔族に転生した元日本人の桂木由仁です。よろしくお願いします、御剣御夜君」

 

 前半は紅魔族の名乗り方に乗取って決めポーズ姿で、後半は日本人転生者をアピールした自己紹介で勇者(笑)に名乗った。

 ゼロ円スマイル付きである。

 これは好印象間違いないのではないだろうか!!?

 

「へぇ~!君も転生者なんだ。ん、でも紅魔族って言ったよね?」

 

 あ、このイケメンにはゆになちゃんのスマイルが効かないみたいですね。

 

「色々あって、生まれ変わりなんですよ。因みに、転生特典は別にあるからね」

「ってことは、僕よりも年上?それとも生まれ変わりだから年下?」

「どっちでもいいよ。キョウヤ君の接しやすい方で」

 

 勇者(笑)に合わせて、ニコニコと会話を続ける私。

 傍から見れば、イケメンな男と可愛い女の子(自分で言うか?)仲良く話し合っている風景。

 だが、勇者(笑)の取り巻き共はそうは見えなかったみたいで

 

「キョウヤ!こんな奴と話したらダメよ!知らないうちに物を巻き上げられるわ!」

「この女はサトウカズマの仲間なのよ!きっと鬼畜に違いないわ。目的を思い出してキョウヤ!」

 

 あっさりと、仮面の笑顔を見抜かれてしまった。

 何で同性だとこういった裏の顔を直ぐに見抜かれるのかなぁ?

 まさかこの二人、勇者(笑)と楽しく(見える)話していた私に嫉妬しているのではないだろうか?

 恋する乙女は浮気に敏感とも言うし、お二人さんの私を見る目が彼氏に近ずく女を見る目だ。

 なるほど、この取り巻き二人は勇者(笑)の事が好きなのか。

 

 ほうほうと勇者(笑)と取り巻きを見ていると、勇者(笑)は取り巻き達に言われて当初の目的を思い出したらしい。

 

「話が脱線してしまったね。すまないがゆにな、その肩に担いでいる魔剣グラムを返してはくれないか?」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

295 勇者(笑)襲撃事件パート18

 

 私に魔剣を返してくれ、とにこやかな笑顔で言った勇者(笑)。

 私の答えは当然、

 

「嫌です」

「えっ!?」

 

 にこやかな笑顔で返した私に、勇者(笑)は又しても断られるとは思ってなかったようで、フリーズ状態に。

 取り巻き共は、キョウヤのお願いを断るなんて信じられない、やっぱりサトウカズマの仲間ね、と言う表情で私を見てる。

 

「な、何て言った?もう一度確認しよう。それは僕の魔剣だ。返してくれないk」

「嫌です。これは私が、百万エリスもの大金を使って手に入れた神具です。それを無償で返せと言われましても、ねぇ?」

 

 あのおやじ、どんだけ私にぶっかけたと思っているの!?

 一エリスが一円と同じ金銭価値だから、日本円でも百万円だよ!!

 普通に暮らしていると、百万円なんて買い物では使う額ではない。

 そんな値段で買った剣を、元々は僕の魔剣だから返してと言われても、はいそうですかと素直に返せれるわけないじゃん。

 

 もっともな事を言えば、これはカズマ君が半正当に手に入れた魔剣。

 その半正当で手に入れた魔剣を売ったカズマ君。

 これで正当な状態で売られていた魔剣を、私が正当な方法で買ったというわけである。

 なので、この魔剣の正当な所持者は法的に私となる。

 

 私は、この魔剣を持て居ても罪にならないよね?

 とこの魔剣が辿った軌跡を振り返って、私が魔剣の法的な所有者なのを確認していると、勇者(笑)が言った。

 

「な、ならばただとは言わない。君が欲しい物を何でも買ってあげよう」

「嫌、私が欲しいのは聖剣魔剣の類なの」

「だけど、その魔剣グラム所有者は僕なんだ。君が使っても、この魔剣の性能を十全に引き出せない。どうです?他の剣に変えてm」

「い~や~だ~!!ほら帰って!!アクア様を自分の都合のいい存在にしか出来ない奴なんか帰って!」

 

 駄々をこねる子供みたいだとは分かっています。

 もしこの光景をめぐみんに見られたら、後で絶対にネタにされるとも分かっている。

 そのくらい恥ずかしかったけど、勇者(笑)を撃退する為だと割り切って、駄々をこねる私。

 そんな私を、勇者(笑)と取り巻き共は引きつった顔で見ている。

 

 ねぇ、こんなにも嫌嫌言っているんだから引き下がろうよ!

 それとも何?

 どうしてもこの魔剣が諦め切れない?

 …………っしょうがないわね~!

 引き下がってあげますよ。

 

「はぁ、だったら交換条件と行きましょう」

「交換条件?何かな、聞かせてよ」

「簡単です。この魔剣と同等の剣と交換。キョウヤ君が私が気に入る剣を持ってくるまでは、魔剣グラムの所有者は私ね」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

296 第二次鎧さん襲撃事件パート1

祝100話。念願の三ケタに突入しました。これからもよろしくお願いします。


 

 私の条件を満たすような剣を持ってくるまでは、この魔剣の所有者は私ね。

 というと、取り巻き共は何か言いたそうにしていたが、勇者(笑)は笑顔で承諾してくれた。

 ならば早く王都に戻って剣を探そうと、瞬くスピードで私の視界から去って行った。

 

 まぁ、私の条件を満たす剣なんて、王都でも中々出会えないと思うけどね。

 頑張って探したまえ勇者(笑)くん。

 王宮の宝物庫になら、良い剣が沢山埋まってそうだよ?

 

 明日から勇者(笑)の剣を探す旅の未来を描きながら、当初の目的である冒険者ギルドに戻っていると、緊急放送が流れる。

 

『緊急、緊急!全冒険者各員は戦闘態勢を整えて、正門前に集合してください!!』

 

 お馴染みのルナさんの声が響く。

 なんか焦ってるっぽい。

 てか、緊急放送し過ぎじゃない、ここ最近。

 まさかねぇ?

 

 私がいや~な未来を想像していると、再度放送がかかる。

 

『緊急、緊急!!全冒険者各員は戦闘態勢を整えて、直ちに正門前に集合してくださいっ!!特に、サトウカズマパーティーは大至急でお願いしますっ!!!』

 

 ありゃりゃ、私達のパーティー指名でお呼ばれですか?

 心当たりしかないような気もしなくもない。

 

 考えても、正門に行ったら分かるよね。

 と実に脳筋っぽい考えを発動しながら、ぶらぶらと正門に向かう。

 途中で放送を聞いたらしいカズマ君等が、後ろから走って来て合流した。

 そんなにも慌てなくてもいいのにね、と言った所で無駄だったらしく、私も走る羽目になりました。

 

 軽装備なカズマ君とめぐみん、それにアクア様は素早く走るが、重装備のダクネスさんと慣れない魔剣を持った私は走るの手こずってしまった。

 そんな私とダクネスさんにカズマ君が言う。

 

「おいダクネス、ゆにな。俺達先に行くからな。ちゃんと来いよ」

「うむ、分かった。ゆになが逃げようとすれば連れてこよう」

「えぇ!?…どうしてそこまでするのかなぁ?」

「ゆにながめんどくさがり屋なだけですよ。先に行きますね」

「別に面倒くさがりじゃないもん。……アクア様も気を付けてくださいねー」

 

 めぐみんに言われたことが腹が立ったので、否定してからアクア様に声をかけて走るスピードを落とす。

 

「済まないな」

「何がですか?」

「私を一人にさせないために、噓を付いたのではないのか?」

 

 急に謝って来たダクネスさんに、私ははてなマークを頭に思い浮かべる。

 噓?はてはて、私は嘘なんかついてませんが……………あ、そうか。

 

「別に嘘じゃないですよ。アークウィザードである私にこの魔剣は重かったみたいでね」

 

 と答えたのだった。

 




やっと一巻最後の章に辿り来ました。毎日更新のラストスパートです。八月中には終われるかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

297 第二次鎧さん襲撃事件パート2

 

 私は担いでいる魔剣をガチャンと鳴らしてダクネスさんに見せると、ダクネスさんは驚きの表情になった。

 

「そ、その剣は……………」

「御剣御夜が持っていた魔剣グラムです。カズマ君が売った所を私が買取ました」

「だ、大丈夫なのか?本人によると、キョウヤって人以外が使っても本来の力が発揮出来ないそうだが…………」

「大丈夫だ、問題ない。って言ってもこのネタは知らないか。えーと、私の場合は筋力ステータスが足りないのを重力操作で補っているからなんです」

「へぇ、そんな使い道があるんだな」

「でも、デメリットはありますよ?重力操作を行っている間は、ずっと魔力を消費し続けるし、魔力枯渇などでいきなり解除されてしまった場合は、重力が体に馴染んでしまって元に戻るのに時間がかかります」

「便利だと思っていた物にも、メリットデメリットは必ずあると言う訳か」

「まぁそういうことです。さっ、正門に着きましたよ。群がっている冒険者を蹴散らして進みますか?それとも重力操作で空から登場しますか?」

「………そういうところがゆにならしくていいと思うぞ。勿論、他の者には退いてもらって前にでるさ」

 

 あぁ、正攻法を選びましたか。

 それに、どうやら私達のパーティーが指名を受けた理由の声も聞こえてきますしね。

 ほら、耳をすませば……………

 

「何も俺が頭にきているのは紅魔の爆裂娘の件だけではない!!貴様らに仲間を助けようと思う気持ちはないのか?これでもアンデットになる前は真っ当な騎士であった。俺から言わせれば、仲間をかばって呪いを受けたあの騎士の中の騎士のクルセイダーの方が……………」

 

 冒険者をかき分けて前に出てみると、丁度ダクネスさんについて演説していた鎧さんがいました。

 そっか、鎧さんはダクネスさんの呪いがアクア様によって解呪されたことを知らなかったんだね。

 だからこうして、一週間経ってもこないカズマ君とめぐみんを りに来たんだ。

 でも、ダクネスさんご本人の登場で、鎧さんはフリーズ。

 ダクネスさんは鎧さんに騎士の中の騎士と褒められて、顔を赤くしておずおずと挨拶をいう。

 

「………や、やぁ」

「鎧さんこんにちは!ゆになちゃんだよ!?」

 

 ついでに私もこんにちはの挨拶。

 鎧さんは私を見て、ダクネスさんを見つめると……………。

 

「……………………あ、あぅれぇぇ!!!???」

 

 驚愕した声で叫んだ。

 ヤバい。

 この声超笑けるんで辞めてもらってもいいですか?

 って言っても「できるわけあるか~~!?」って言われるだけだよね。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

298 第二次鎧さん襲撃事件パート3

 

 ダクネスさんが呪いで死んだと思って、カズマ君とめぐみんに説教をしに来た鎧さん。

 その途中に私と一緒遅れて来たダクネスさんが現れて…………ただいま、鎧さんは驚きの表情で声をあげている。

 そんな鎧さんを煽る人物が現れた。

 

「何何?ダクネスに呪いをかけて、一週間も経つのにピンピンしているから驚いているの??」

「アクア様アクア様。鎧さんは帰った後に、アクア様に呪いを直ぐ、解呪された事を知らないんですよ。そ、それなのに、一週間も来ない人を待ち続けていたんですよ。っふっふっふわはっはは」

「そうだったの!!?プークスクス!ちょ、チョーウケるんですけど!!」

 

 アクア様と私です。

 アクア様と私は、真底楽しそうに鎧さんを指差して大爆笑。

 チラッと鎧さんを伺ってみると、表情こそ分からないけど、プルプルと肩を震わせ激怒しているのが分かる。

 煽り作戦は大成功ってとこかな。

 

「おい貴様ら。俺が本気になれば一人でこの街を壊滅出来るんだぞ?いつまでも見逃してくれると思うなよ。お前らひよっこ冒険者などではキズ一つ付けれぬわぁ!!」

 

 鎧さんの我慢ステータスの限界が来たみたいで、鎧さんが動こうとしている。

 私はアクア様に小声で作戦を伝えた。

 

「アクア様、私が気を逸らします。そのうちに『ターンアンデット』を唱える準備をしていて下さい」

「分かったわ。あのデュラハンに神の裁きを与えてあげるわ」

 

 私はアクア様に作戦(と言っても隙をついて『ターンアンデット』をしてくださいと簡単なもの)を伝えると、魔剣を携えて前に出ていった。

 

「そんなことさせると思っているの?」

「フンっ!ケイキか。約束通り俺の城には来なかったみたいだな。約束が守れる奴で安心した」

 

 あ、鎧さん的には、私が忙しすぎて完全に鎧さんの事を忘れていたことが、約束を守った、と捉えたんだ。

 まぁ、真実を教える必要はないよね。

 勝手に勘違いしているなら、そうさせておけばいいし。

 

「だが、この俺相手に勝てると本気で思っているのか?狭い城内と違いここは屋外だ。前よりも全力で戦闘をする事が可能だぞ?」

「思っています~!!私の魔法は屋外でこそ真の実力を発揮するのだ。それに、鎧さんが前よりも全力で戦闘しようと、私だって前とは違うんだからねっ!」

 

 チャキンッと肩に担いでいた魔剣グラムを鎧さんに見せつける。

 鎧さんは魔剣グラムを一瞥した後、首を傾げて聞いてくる。

 

「なんだ、アークウィザードではなかったのか?」

「いえいえ。冒険者カード的にはキチンとアークウィザードですよ」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

299 第二次鎧さん襲撃事件パート4

今回はほぼ説明回


 

「だだ、剣もいくらかは使えるだけです、よっ!!」

 

 言葉の終わりと共に、私は鎧さんに向かって走って剣を振るう。

 勿論、重力操作で体を軽くして、猛スピードで突っこんでいった後、更に重力操作を繰り返して重くする。

 軽いままだと、綿の様に吹き飛ばされちゃいますから。

 

 突っ込んでいった私の剣は、鎧さんに難なく剣を使って受け止められる。

 キンッ!!と言う音が木霊する中、鎧さんが私に囁く。

 

「ほぅ、アークウィザードにしては剣筋がしっかりしていて、重い。重力魔法とやらを使っているのか………?」

「くっ、能力は使いようと言いますしね」

 

 たった一撃で私のトリックを見破られた!

 重力魔法が使えると言う前情報が与えていたけど、この世界に重力と言う概念は難しい定義のはず。

 でも、たった一撃を受け止めただけで、私の剣技にはよく分からない魔法が使われていると鎧さんは看破したんだ。

 

 ネタバレをすると、私はアークウィザードで普通は剣を使わない。

 アークウィザードは筋力ステータスが低くて剣を扱いずらいと言う理由と、もし持てても本職の剣士や騎士と言った職業には遠く及ばないから。

 アークウィザードは片手剣スキルないし両手剣スキルを覚えることが出来ないから。

 そのスキルを覚えていると、覚えていないでは相手にヒットする確率が可笑しいくらいに違う。

 例を挙げるとダクネスさんだ。

 ダクネスさんは両手剣スキルを覚えていないから中々攻撃が当たらない。

 一方で片手剣スキルを覚えているカズマ君は攻撃が殆ど当たっているらしい。

 勿論、スキルを覚えていなくても、本人の素質によっては攻撃を当てる事が出来るそうだ。

 

 なら、なぜ私が鎧さんに剣筋が良いと褒められるのか?

 素質があったから?

 違うよ。

 答えは簡単、職業によって覚えれるスキルではななく、誰でも覚えれる剣スキルを初級創作魔法で創ったからです。

 スキルと言うシステム的にアシストによって放たれた剣技は、上級職ソードマスターに匹敵する程の威力。

 更に私は、剣を降っている時は重力操作を行い重力抵抗を軽くして、相手に当たる時は思いっきり重力を増す。

 使う度に魔力を消費するけど、そこは前回の自動感知型モンスター駆逐マシーンで起きた、魔力枯渇を喰らわないため、『自然魔力回復速度上昇スキル』を付けている為、問題はない。

 

 ただ、そんな元日本人のチートレベルでないと、一撃で吹っ飛んでしまうような攻撃を当たり前の様に受けている鎧さん、何者なんですか?

 これじゃあ、この世界人が魔王軍幹部を倒すのは難しいデスヨネー。

 

 それじゃあ、作戦を開始と行きますか。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

300 第二次鎧さん襲撃事件パート5

総投稿話数300話だぜい!!


 

 競り合っている私と鎧さん。

 そろそろ頃合いだと判断した私は、一瞬だけ鎧さんにかかる重力を最大にして態勢を崩した後、勢い良く後ろに飛び退いた。

 

「アクア様っ!!今です」

「消えて無くなりなさい!!『ターンアンデット』!!」

 

 私の合図で、アクア様が『ターンアンデット』を唱える。

 不意を突かれた鎧さんは成すすべ無く、女神様の浄化魔法に包まれた。

 だけど、アンデットにとって唯一の弱点である魔法を前にしても、鎧さんは威勢よく声をあげた。

 

 魔王軍の幹部であるこの俺が、プリースト対策をしてないとでも思ったかっ!!?残念だったな、この俺率いるアンデット軍は魔王様の加ごぉぉぉぉぉ、ぎぃやややぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!???」

 

 自信たっぷりにしていた鎧さんは、魔法の光を受けた途端に叫び声をあげて、地面をゴロゴロとのたうち回っている。

 アンデットなのに、プスプスと身体が焦げている様に見えるのは、『ターンアンデット』が少しだけ効いたからでしょう。

 でも、アクア様は少しだけ効いた、と言う効果に不満そうで

 

「ね、ねぇカズマ、ゆにな!!全然効いてないんですけど!!?」

 

 凄い効いてそうに見えたんですけど、アクア様の力を持ってしても、一撃じゃあ倒せなかったのは私でも想定外です。

 どうやったら倒せるかなぁ?と頭をフル回転させながら、鎧さんに質問?をする。

 

「ねぇ?加ごぉぉぉぉぉ、って何何??鎧さん、そんな単語が魔王軍ではあるんですか??」

「そんな単語あるかぁ!!!!説明はちゃんと聞くものだぞ、まったく。魔王様の加護を得たこの鎧と俺の力が有れば、そこら辺のプリーストの魔法何ぞ、効かぬは!!……………効かない、はずなんだが。な、なぁ、お前一体何レベなのだ?駆け出しプリーストではないだろう?ホントに何なのだ、そこのプリーストと言い、頭の可笑しい爆裂娘と言い、俺と剣を交える程の実力を持ったアークウィザードのケイキと言い!!!ここは駆け出しの街だよな!!?」

 

 あらら、鎧さんはアクア様の『ターンアンデット』を受けて頭が混乱してるみたい。

 混乱している鎧さんは、終いにはこの街を全て滅ぼせば問題ない、とか言い出し始めた。

 どこぞのガキ大将かよ!!?

 と思った時には、鎧さんは部下のアンデットモンスターを呼び出す動作を始める。

 わざわざ戦う必要がない、っておーい私の相手は誰がやるんですか??

 鎧さんでも手間取った(と自称)私を、部下如きが止めれるわけないじゃなですか?

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

301 第二次鎧さん襲撃事件パート6

 

 アクア様の『ターンアンデット』が怖いのか、部下を召喚して自分は引き下がろうとする鎧さん。

 そんなの、アクア様が見逃すはずなどなくて…………

 

「『セイクリッド・ターンアンデット』!!」

「ひぃぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 普通の『ターンアンデット』よりも強力な『セイクリッド・ターンアンデット』を使い、今度こそ消滅させようとするアクア様。

 でも、前よりは効きはしたものの、消滅までは行かない鎧さんを見て、アクア様は慌てた様子で、

 

「ど、どうしようカズマ!!やっぱりおかしいわ、私の魔法がちっとも効かないの!!」

「アクア様アクア様、ちっともは過小評価ですよ。ある程度、にしときましょう」

 

 ゴロゴロと、体に付いた火を消すかのように地面をのたうち回っている鎧さんを見て、ちっとも効いてない、と評価するアクア様を私はある程度効いてますよ、と慰める。

 そんな私を見たカズマ君が、状況を考えましょうね!?と言ってきた。

 

「ある程度どころか、かなり効いてるぞ!ってか、あの人お前らのせいで怒ってるんだけど、どうしてくれんの!!?」

 

 いやほら、私の計画だと、女神様であるアクア様の魔法で隙を付いたら消滅出来て終わるよ!

 って思ってたわけだし、その作戦が思った以上に効果が出なくて、敵を怒らせても仕方がないことだと思うよ?

 狩りゲーでも、モンスターに強い攻撃を与えると、怒り状態になるって言うし。

 あーでも、今回の攻撃で鎧さん、堪忍袋の緒が切れたっぽい。

 

「このーー!!セリフは最後まで言わせるものだぞ!!?もういい、お前らを皆殺しにしてやる!!!」

 

 鎧さんは、あちこちから黒い煙を上げながら、ゆらりと立ち上がり、右手を天に掲げて振り下ろした。

 

 

 

「クソッ、物理攻撃が効かないぞ!!」

「おわー!!プリーストだ、プリーストを呼べ!!」

「聖水よ、聖水を教会からありったけ持って来て!!」

「腕をやられた!下がらせてくれー!」

 

 

 あちらこちらから、冒険者の皆さんの切羽詰まった声が聞こえてきます。

 戦っている相手が強過ぎるのでしょう。

 鎧さんが呼び出した部下は、アンデットナイトと言うゾンビの上位互換のモンスターです。

 ボロボロだけど、鎧を装備しているアンデットナイトは駆け出し冒険者にとっては十分脅威となる。

 鎧さんの部下だけに。

 

 アンデットナイトに少しずつ押され、遂に街に侵入してくる所を何とか耐えている冒険者さん達。

 

 そろそろ、私が出た方がいいかな~。

 魔力も全回したし。

 

 そう思っていると、鎧さんの哄笑が聞こえてくる。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

302 第二次鎧さん襲撃事件パート7

 夏祭り?花火大会?海?プール?旅行?お盆休み?なにそれおいしいの?
 夏のイベントが一切エンカウントしないカグヤです。一日中部屋に引きこもって、本を読んだり、本を読んだり、アニメを見たり、小説を書いたりしているカグヤですよ。
 そろそろ毎日更新がきつくなってきたこの頃、もう少しだけ頑張ります。


 

「くっはっはっはっはっは!!さぁ、お前たちの絶望を俺に聞かせて………」

 

 アンデットナイトを何とか撃退しようと、切羽詰まった冒険者さん達の声を聞いて、鎧さんが哄笑を上げる……………………が、その中、

 

「わぁぁぁぁ!!何で私ばっかりに集まって来るのぉ!!?私、女神だから、女神だから日頃の行いがいいはずなのにぃぃぃ!!!!ゆにな助けてよぉ~~!!!」

「ああぁ!?ズルい、ズルいぞ!私は本当に日頃の行いが良いのに!!なぜアクアばかりにアンデットナイトは行くのだ!!?ゆにな、いい加減この魔法を解いてくれ!!アクアのピンチに私が助けに行かなければ!!ハァハァハァ」

「あぁ、そういうの、もういいんで。…………ダクネスさんがこんな事しなければ、私がアクア様を助けに行けれるのに。アクア様~、すみませんが、今ちょっと手が離せないです!!」

 

 はい。

 私は今、何故かアクア様ばかりを執拗に狙うアンデットナイトに特攻したい変体騎士様を、重力魔法で抑えています。

 魔法で抑えた後、アクア様を助けに行けばいいだろ?って思うけどね、ダク、変体騎士様は謎のステータス補正でも入っているのか知らないけど、重力魔法をかけた後、更に私が羽交い絞めしなければならないほどの力でアンデットナイトに向かって進んでいるの。

 いっそのこと、最大出力を使えればいいんだけど、それをやっちゃうと、ダクネスさんが耐え切れずにプチトマトになってしまいます。

 それは、嫌ですよねぇ。

 っていうかアンデットナイトは、日頃の行いが良いはずのアクア様ばかり執拗に狙うのでしょうか?

 普通は日頃の行いが悪かったり、生前に恨みを抱いている人を狙うはず…………。

 

「こ、こら!?お前たちそんなプリースト一人にかまけてないで、街の人を皆殺しに…………」

 

 ほら、指揮官であるはずの鎧さんの命令も全くの無視ですよ。

 アクア様、日頃の行いが悪かったんですかねぇ?

 はっ!?もしかして!!

 意識を持たない下級モンスターであるアンデットナイトは無意識に、女神様であるアクア様に救いを求めているのではないでしょうか?

 女神の力を殆ど失ったにも関わらず、アンデットモンスターに無意識的に救いを求められるアクア様、流石女神です!!

 

 と、アンデットナイトがアクア様を執拗に狙う理由を自分の都合のいいように解釈してると、カズマ君がこの状況をどうにかする方法を考え着いたようです。

 

「ゆにな、ちょっとめぐみんと一緒に街の外で待機しておいてくれ!!出来れば、魔王軍の幹部の気を引いていてくれると助かる!!」

「分かりました~~!!頑張ってアクア様を守って下さいよ~!」

 

 私はそう返すと、やけに張り切っているめぐみんと一緒に街の外に向かった。

 




改めて原作を見ると、アニメと微妙に違うのね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

303 第二次鎧さん襲撃事件パート8

 ちょっとしたオリジナル展開に……………直ぐ戻ります。


 

 アンデットナイトをカズマ君に任せて、街の外に出た私とめぐみん。

 めぐみんは街の外に出ると、爆裂魔法の演唱を唱え始めました。

 めぐみんがこんな大事な時に、誰構わず撃つようなバカじゃない。

 ……………………よね?

 私はカズマ君の指示通り、鎧さんの相手を開始します。

 

「ゆになちゃん、参上!!」

「フン、参上とはなんだ!?アンデットナイトはどうした?もう片付けたのか?それとも、お前だけ逃げ出して来たのか?」

「適材適所ってやつですよ。カズマ君等がアンデットナイト、私が鎧さん。いい判断だと思いませんか?」

 

 それに私、思いついたんですよ。

 一撃技(セイクリッド・ターンアンデット)が効かないボス敵の倒し方。

 少しずつ弱らせて行けば、いずれは効くんじゃないかって。

 だから私は鎧さんの相手をして、弱らせる作戦にしました。

 引き際?

 カズマ君に任せるよ。

 

 

「いい判断も何も、貴様だと俺に大したダメージを与えれる訳がない。俺と剣を交えれる程の剣術は認めよう。だが、それだけだ。何も状況は変わらん」

「そーですね。今のままだっらね『エンチャント魔法;水属性と聖属性魔法を魔剣グラムにエンチャント!』聖水剣ホリーオーエンチャントソード」

 

 創作魔法で創ったエンチャント魔法を使い、魔剣グラムに聖魔法と水魔法をエンチャントする。

 魔改造された魔剣グラムは聖水剣ホリーオーエンチャントソードに生まれ変わった。

 大きかったその姿は小さく生まれ変わり、私が片手で楽々と動かせるようになった。

 肝心の刃は実態はなく、光り輝く水がウォータカッターの様に柄の先にから勢い良く噴き出している。

 操作方法は簡単、私が魔力を剣に通すと伸びたり縮んだりして、斬撃も飛ばせる使用。

 これで一段階どろこか、一気に最終段階まで強化した気分。

 

「……………………」

「おーい!?」

「……………………」

「おーい鎧さんさ~ん?」

 

 ダメだ、私の渾身の魔法を見て、放心状態ですね。

 無論、そんな隙を私は呆然と見逃すはずありません。

 本当の悪役ってのは、ヒーローの変身を待たないもんなんだよ!!

 

「一刀両断、…ってやっ!!」

「…うぉ!!!」

 

 言葉の通り、剣を上段に構え大きく振りかぶって、聖水斬撃を飛ばす。

 イメージとしては、ワンピースの頂上戦争でミホークが初手に使った奴だね。

 放心状態であった鎧さんも、流石に命の危機を感じ取ったのか、寸前の所で回避。

 ちっ、惜しい!!

 

「ふっふっふ、ど、如何やらパワーアップをしたみたいだな。だがこれでやっと俺にダメージを入れれるようになった訳か…………。面白い、俺も本気を出してやる」

 

 鎧さんは威勢良く、そうおっしゃっているけど、足がガタガタと震えてますよ?

 




魔剣グラム、魔改造ナウ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

304 第二次鎧さん襲撃事件パート9

 今月のトレジャーマップがぁぁ、開始時間がバイト中。更には別端末でサブ垢も作ったから、忙しい忙しい。(トレクルの話です)
 因みに、25日のエピソード・オブ・空島は休みを取って時間確保。このすば関係ないね!


 

 攻防は一方的でした。

 

「おりゃおりゃおりゃおりゃ!!!」

「ッく!!まさかこれ程までとは……………………っ!!!」

 

 私が遠方から聖水斬撃を飛ばして、鎧さんがそれを避ける。

 隙を見て反撃に出ようとする鎧さんだったが、私がそれを許さない。

 隙を神速に潰します。

 攻撃の繰り返す私、それを必死に避ける鎧さん。

 

 そんな攻防が五分くらい続きました。

 ドドドドドドォォォ!!と効果音を鳴り響かせながら、アクア様とカズマ君が鎧さんが放ったアンデットナイトを引き連れて戻って来た。

 門を潜って街の外に出ると、カズマ君はめぐみんに合図を送る。

 

「めぐみん、今だ!!」

「何という絶好のシチュエーション!!感謝しますよカズマ!!我が名はめぐみん…………」

 

 めぐみんはカズマ君に感謝を述べ紅魔族のやり方で名乗った後、爆裂魔法の引き金を引いた。

 エクスプロージョンの声の後、アンデットナイトの集団の中央で爆裂魔法が発動する。

 私はその余波を受けて、鎧さんとの攻防が中断されます。

 頃合いと見た私は聖水剣のエンチャントを解除させて魔剣グラムへと戻すと、重力操作で余波を利用してめぐみんの所まで戻る。

 

 

 

 めぐみんの爆裂魔法は、町の正門前に巨大なクレーターを作り上げ、アンデットナイトと跡形もなく消し飛ばした。

 幾ら魔王軍幹部を倒す為と言え、街の目の前にドデカイクレーターを作って、めぐみん後で領主様に怒られないかな?

 そんな爆裂魔法の威力に、誰もがし~んと静まり返る中、私の隣にからめぐみんが格好付けて言った。

 

「クックックッ!!!」

「あ~~~~~~~~」

「わが爆裂魔法を見て、誰一人声が出せないようですね」

「い~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

「ふふっ、口頭と言い、凄く気持ち良かったです」

「う~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 

 爆裂魔法を撃ったせいで、魔力枯渇を引き起こして地面に倒れているめぐみんが!

 毎回、これが無ければカッコいいのにね。

 でも、これがめぐみん唯一の個性だから仕方が無いか………。

 

「で、ゆになは何故私のセリフに重ねる様に唸っているのですか?」

「いや、誰一人声が出せない状況をぶち壊しにしてやろうかと思って」

「へぇ、そうですか。喧嘩を売っているのですね。紅魔族は売られた喧嘩は積極的に買う物です。いいでしょう、いいでしょう。その喧嘩買ってあげましょう。まず初めに、ゆになの魔力を私に下さい。話はそれからです」

「いやいぃやぁ、何ちゃっかりと人の魔力を奪おうとしているのかな?もっと効率の良いスキルを取らないからこうなるんだよ?自業自得。うん、喧嘩は買われたから反撃をしましょう」

 

 鎧さんがいるにも関わらず、私とめぐみんはどこでも同じ空気に発展するのだった。

 




 魔剣グラム「エンチャント解除されてもうた~!思たけど、今の仮の主の方が強く(エンチャント進化)なれそうな気がするぞ」
 ゆにな「勇者(笑)急げwww」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

305 第二次鎧さん襲撃事件パート10

マイクラが楽しい!!(またハマった)


 

 流石に魔力枯渇中で地面に倒れているめぐみんに、一方的に攻撃を与えるような人でなしではない私ことゆになちゃんは、言葉攻めだけで許してあげます。

 そうこうしてい内に、カズマ君がやって来ました。

 

「…おんぶはいるか?」

「はい、宜しくお願い致します」

 

 めぐみんの返事を聞くと、カズマ君はめぐみんを背中に乗せた。

 こうして見ると、めぐみんが黒髪なこともあって、二人が兄妹に見えなくもない。

 勿論、めぐみんがカズマ君の妹の位置付けで………。

 外見的には通じるね!

 

 二人を見てそう思っていると、アクア様がやって来られた。

 如何やら、爆裂魔法の余波を受けて、地面に顔からダイブされたみたいで、口の中に入ったらしい砂を吐き出している。

 そんなアクア様に差しがましいことだが、『クリエイトウオーター』を使って水を提供させて貰う。

 

「アクア様、こちらで口を漱いで下さい。吐き出した水は元凶であるめぐみんの顔に向かってどうぞ」

「どうぞ、じゃないです!!大体、私が爆裂魔法を撃つ羽目になったのは、アンデットナイトを召喚した魔王軍幹部の方なのですから、そっちに吐いてください。アクアもゆになの言葉を真に受けてはダメですよ」

「そんなに心配しなくても、そんなことしないじゃない。……でも、どうしてゆになとめぐみんはこんなにも仲が悪いのかしら?」

「ほら、こう言うだろ?『喧嘩する程仲が良い』って」

「めぐみんが丁度いいネタになるからだよ!」

「ゆになが煽ってくるからです!!」

 

 カズマ君の日本のことわざのの例えに、私とめぐみんがそれぞれ答える。

 私が煽ってくるからって、めぐみんの方から煽ってくることもあるよね??

 …………………基本的に私の方が多いけど。

 

 私たちがこうして、いつもの会話を繰り広げていると、言葉を取り戻した冒険者さん等がめぐみんを称える。

 

「うおおおぉぉぉ!!やるじゃねぇか頭の可笑しい子!!」

「頭の可笑しい子がやりやがったぞ!!?」

「頭と名前が可笑しいだけであって、やる時はやるじゃないか頭の可笑しい子!」

「こうやっておんぶされてなかったら、最後まで決めれたのにね~?あ・た・ま・の・お・か・し・い・し・い・子・共・さ・ん・?」

 

 そんな冒険者の声を聞いためぐみんが、カズマ君の背中でもぞもぞと動いて言った。

 

「すみません。ちょっとそこの冒険者に爆裂魔法を打ち込みたいので、近くまで連れていってください。ついでにゆになを拘束してくれると助かります」

 

 あ、最後のは私の言葉ね。

 わざわざ、めぐみんの耳元でささやいてやりました。

 これだからめぐみんで遊ぶのは辞めれない。

 




 今回も全然進んでないなぁ。これだと、八月中に終わらない!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

306 第二次鎧さん襲撃事件パート11

 最近は深夜テンション(深夜に)で書いてる。誤字脱字が多いかもしれませんって意味だよ?


 意図的に煽る私と無意識に煽っている冒険者さん等に、爆裂魔法を撃ち込みたいと言うめぐみんをカズマ君が止める。

 

「もう魔力は使い果たしているだろうが……………………。今日は大仕事をしたんだ、ゆっくり休めよ。ご苦労さん」

 

 カズマ君がめぐみんを珍しく褒めていると、めぐみんはカズマ君の背中で再度しがみついた様に見えた。

 私には分かります。

 めぐみんがない胸を、一生懸命にカズマの背中に押しつけている事が!!

 ほら、カズマ君も感づいたようです。

 微妙な顔をしてますよ。

 それを見て、めぐみんもカズマ君が何を考えているか分かったみたい。

 別に紅魔族の頭脳は関係ない思うけど?

 あ、そんな安いお世辞を言うと……………………首を絞められて…ってもう遅かったか。

 

「あれは首絞めプレイの一環なのか?なら私も…」

「あれ、居たんですかダクネスさん?」

「んっ!!カズマに言われるのも良いが、ゆになに言われるのも、ゾクゾクとする」

 

 あ、ターゲットがカズマ君だけじゃなくて、私にまで広がっちゃいましたか?

 どうしよう、誰かSっぽい人に押し付けたいこの気持ち、誰か分かれ。

 でも、私の知り合いにSの人っていないよね?

 唯一そっち系な見た目の鎧さんも、ギャグキャラだし……………………。

 あぁ、積んだ?

 

 

 

 後ろのマウントポジションから首を絞めているめぐみん。

 おんぶして助けているはずの相手から首を絞められているカズマ。

 まだ砂が取れていないのか、ぺっぺっぺとしているアクア様。

 カズマ君を見て、更に危ない方向へと性癖を進化させようとしているダクネスさん。

 そんなダクネスさんを見て、「この人はもうダメだ~」と嘆いている私。

 

 まさしくカオス。

 そんな状況に、冒険者さん達もめぐみんを頭が可笑しい子、頭が可笑しい子と壊れた機械の様に言っている始末。

 この場にルナさんが来たら、きっと胃薬の量が増えちゃうんだろうな~。

 そして何故か私に、早くこの状況を打開しろと言ってくるに違いない。

 

 そんなカオスな光景を黙って見ていた鎧さんも、笑い出した。

 部下のアンデットナイトが全滅させられて笑い出すとか、どんな人格者なのでしょう?

 あ、駆け出し、駆け出しと言っていたのを少しは認めてくれたみたいで、本気で相手をしてあげる、とのこと。

 そんな報酬いらねぇ。

 

 と言っても鎧さんは止まらない。

 大剣を構えてこちらに走ってくる。

 私が、また受け止めてあげようかなぁ~って考えて、魔剣グラムに魔力を注ごうとして………………。

 冒険者さん達が鎧さんを囲んだ。

 私たちは守られるようにして。

 

 ………………どうしてこうなった?

 




 何か、一々原作に書いてある会話文を書くのが面倒になってきました。で、こうなった。

 一応、他の冒険者達が鎧さんから守ってくれているのは、ゆになちゃんによる一方的な鎧さんへの攻撃を、アンデットナイトの対処に追われて見ていなかったからとでも、思っていてください。



 追記
 諸事情により、毎日更新をここで区切らせて頂きます。ですが、更新ストップって訳ではありませんよ。二週間に一回を目標に更新させて頂きます。
 勝手ながら一巻の内容を終わらせる前に連続投稿を辞めてしまい、申し訳ございません。今後ともよろしくお願いいたします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

307 第二次鎧さん襲撃事件パート12





 

 アンデットナイトをめぐみんの爆裂魔法で全滅させると、鎧さんが直々に相手にしてくれるようになったよ。

 そんな中、私がもう一度相手をしようかと考えている内に、「頭が可笑しい子、頭が可笑しい子」と壊れた機械の様に垂れ流していた冒険者さん達が、私達パーティーを援護するように鎧さんをじりじりと囲んでくれた。

 

 あの~、そうやって援護しようとしてくれる気持ちは嬉しいんだけど、私と鎧さんレベルになると邪魔でしかないよ?

 援護してくれるなら、もっと他の方法がある……………………ある…あれ、何だっけ?

 ほら、鎧さんも邪魔だって言っちゃってください!

 

 囲んでくる冒険者さん達を見た鎧さんはと言うと、片手に頭を、もう片手に剣を持って肩をすくめる。

 

「ほう、俺の一番の狙いはそこにいる連中なのだが、万が一にもこの俺を倒すことができたなら、さぞ大金が支払われるのであろうな。……さぁ、一獲千金を求める冒険者よ、まとめてかかってくるがいい!!」

 

 邪魔どころか、かかって来いと言っちゃったよ。

 あ~あ、それを聞いた冒険者さん達もやる気を出しちゃったし。

 戦士風の貴方、「後ろには目が届かない?みんなでかかれば大丈夫?」そのセリフは死亡フラグだから!!

 

「おい、相手は魔王軍の幹部だぞ、そんな単純な手で倒せるわけねぇーだろ?」

 

 私と同じ事を思ったカズマ君が、戦士風の冒険者さんに警告した。

 それと同時に援護をするつもりで手を剣の柄に持っていき…………止まる。

 

 カズマ君ー?柄に手を当てたまま止まっちゃってどうしたの?

 必殺技の構えかしら?

 

 そんなカズマ君の警告に答えるように、戦士風の冒険者さんは鎧さんに突っ込んで行った。

 

「時間稼ぎができれば十分だ!!緊急の放送を聞いて直ぐにこの街の切り札がやって来る!!あいつが来れば魔王軍の幹部だろうとお終いさ!」

 

 突っ込みながら他の冒険者に四方から攻撃したら死角が出来るはず、と言って指揮を飛ばした。

 

「カズマ君、この街の切り札とやらを知ってますか?」

「おいおい、そんなの知ってたら、一目散に逃げてあいつとやらに全て押し付けるい決まってるじゃなか」

 

 ですよねぇ。

 でも、なんか引っかかってるんだけどなぁ。

 

 私が攻撃すると、味方のはずの冒険者さん達に被害が出るので、黙って鎧さんを見ていると鎧さんは、頭を空に投げた。

 あ、あれは確か………放って置いたらヤバい奴だったような気が……………。

 

 と、観戦モードで黙って見ていると、隣りのカズマ君もあれがヤバい奴と感じ取ったのか、突っ込んで行っている冒険者さん達に向かって叫ぶ。

 

「やめろ、行くな……!」

 

 しかし時すでに遅し、一斉に斬りかっかってくる冒険者さん達の攻撃を鎧さんはいとも簡単に回避した。

 そして、全ての攻撃を回避して見せた鎧さんは剣を握り直して………瞬く間に攻撃して行った冒険者さん達を切り捨ててしまった。

 

 目の前に簡単に人が死んだのに、私が感じた感情はというと、

 

 だからカズマ君が警告したのに。

 

 という、あっけないものだった。

 別に私は、人の死に慣れている訳ではない。

 寧ろ初めてだ。

 だけど、死は初めてではない。

 殆ど毎日自分の手でモンスターを殺している。

 この世界は簡単に生物を殺して、簡単に殺される世界だ。

 だから、死ぬ覚悟なんかとうの昔に出来ている。

 それ覚悟が、人が目の前で死んでも特に何も思わない感情を引き起こしているのだと思う。

 

 しかし、隣にいるカズマ君はそう簡単に人の死を振り切れる訳ではないようだった。

 そりゃそうだ。

 カズマ君がこの世界に転生してきて半年も経っていない。

 もしかしたら、この世界がゲームだと思っていたのかもしれないね。

 

 切り捨てられた冒険者さん達がどしゃりと音を立てて崩れる音を聞いて、鎧さんは満足そうに片手で落ちてくる頭をキャッチする。

 その一連の動きをなんでもないかのように気楽に鎧さんは私達に言ってくる。

 

「次は誰だ?」

 

 て、手のひらにある頭の目が心なしか、私を見ている気もしなくもない。

 全力で目を逸らしますよ。

 だって、魔剣グラムをエンチャント進化させるの疲れるもん。

 

 鎧さんの言葉に怯む冒険者さん達、そんな中一人の女の子冒険者が叫び声を上げた。

 

「あ、あんたなんか!!今にミツルギさんが来て一撃で倒しちゃうんだから!!」

 

 えっ!!??

 

 女の子冒険者の叫び声に、私とカズマ君の脳が止まる。

 そんなことも知らず、冒険者さん達は希望に縋るように言う。

 

「おい、もう少しだけ持ちこたえるぞ。あの魔剣のにぃちゃんが来ればきっと魔王軍幹部だって……」

「ベルディアとかいったな!!いるんだよこの街にも高レベルで凄腕の冒険者がよ!!」

 

 ヤバいヤバいヤバいヤバい!!

 今、冒険者さん達が希望にしている御剣御夜こと勇者(笑)は、カズマ君に勝負を挑んだ挙句負けて、魔剣グラムを取られて、めぐりめぐって私に買い取られた魔剣グラムを返してもらうために、良剣探しの旅に出かけたはず。

 つまり、この街に居ない。

 勇者(笑)、みんなの期待に応えれない希望は肝心な場面の数時間前に散ったよ。

 

 で、私が勇者(笑)に向かって合掌していると、カズマ君が肩を掴んできた。

 

「そいえば、その手に持っている剣はなんだ?」

「えーっと、魔剣グラムですね!」

「行ってこい」

「えぇ!!嫌だ。疲れたもん」

「こんな時に駄々こねるんですか?ゆになは根性なしですね」

「カズマ君の背中に背負われているめぐみんにいわれたくないし!!」

「こんな時に喧嘩するなよ!なぁゆにな頼れるのはお前だけなんだ。もう一人の頼みの綱であるアクアは死んだ冒険者のとこ行って何かやってるし」

 

 え?とアクア様の方向を向くと、確かにアクア様は死んだ冒険者さん達の顔をペタペタと触っていました。

 ……………………うん。

 きっと女神様らしく、死者に対してお祈りをしているのでしょう。

 そうです、そうに決まっています。

 

「アクア様には何か考えがあるのでしょう」

 

 カズマ君にはそう答えておいた。

 そうやって「お前行けよ」「嫌ですよ」としていると、あっさりと冒険者さん達を殺した鎧さんに怖気づいて、希望(勇者(笑)にすがっている冒険者さん達と私達を守るように立ちはだかる者が一人いた。

 

「ほう、次は貴様が俺の相手をするのか?」

 

 鎧さんは左手に持った首を、鎧さんの前に立ちふさがったダクネスさんへと突き出した。

 自らの大剣を正面に構え、堂々としているその姿は何処に出しても恥ずかしくないクルセイダーそのもの。

 

「……………………はぁ」

 

 私はその姿を見て、自分が疲れたなんて駄々こねる自分があほらしく思えてきて、ため息を一回。

 カズマ君の方を向いて………

 

「この状況でどうやって遊ぼうかと考えている自分があほらしく思えました。私も前に出ます」

「やっと出てくれるのか……。じゃあ俺達も」

「邪魔になるので近づかないでください。それと、鎧さんは聖魔法以外に水が弱点です。私に隙が出来たら援護をよろしくお願いしますね」

 

 私はそう言うだけ言うと、歩いてダクネスさんの隣に向かった。

 

「け、ケイキも出てくるのか…………今度は本気で行くからな」

「あ~そうですか、そうですか」

 

 私に向かって言ってくる鎧さんに生返事で返すと、ダクネスさんに小声で作戦を伝える。

 

「ダクネスさんは盾役に徹底してください。防御スキルを軽くみている訳ではないのですが、一応支援魔法をかけておきます。攻撃は私に任せてくださいね」

「わ、分かった。一緒に奴を倒そう!」

 

 私がダクネスさんに作戦っていうか役割を一方的に伝えると、ダクネスさんは驚きの表情になりながらも頷いてくれた。

 

 何よ、何よ、私だってやる時はやるんですよ~っだ。

 何時も何時もふざけている訳じゃないんだよ。

 これ以上鎧さんを遊ばせておけば、被害が拡大すると思ったんだよ。

 ……………………すみません、それもあるけど金目におぼれました。

 

 兎に角、第二ラウンドを終わらせますか。

 




よくあるタイプミス

『抱くん根素』

根素がひらがななら、あっち系の意味に………。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

309 第二次鎧さん襲撃事件パート13

短時間でこんなに書いたの、初めてかも。執筆時間役四時間のクオリティーだ!


 

 第二ラウンド行きますか、と呟いた私は魔剣グラムにエンチャント進化をかけようとした。が、自分の追い詰めた技を易々と使わせる訳がないらしい。

 鎧さんは私が動くよりも早く、肉弾戦を仕掛けてくる。

 

 

「易々とさせるかっ!こっちから早速行くぞ!!」

 

「え!?ちょっと待ってくださいよ~」

 

 

 くぅ~!!幾ら高速演唱スキルがあるからと言っても、エンチャント進化は時間がかかってしまうんだよ!!

 ヒーローの変身シーンを悪役が待つのは当然じゃないの??え?私?私は悪役ではないから、その定説は当てはまらないのだ!!

 

 エンチャント進化なしで受けないといけないか!?と思ったら、ダクネスさんが鎧さんの攻撃を受け止めてくれた。

 

 

「だ、ダクネスさん!?」

 

「ふふ、盾役は任せろと言ったではないか。そ、それに……この威力はゾクゾクくりゅ~」

 

 

 あ、変体騎士様の方が出ちゃってますか。でも、私が防御魔法をかける前に壁になってくれたせいで、鎧さんの一撃を受けただけでダクネスさんの鎧の一部が欠けてしまった。

 あれの鎧って、キャベツ狩りの時の報酬で新調した奴だよね?ご愁傷様です。請求は鎧さんの命でご精算してくださいませ。

 

 と、ダクネスさんの鎧が壊れる前に私は、エンチャント進化の前にダクネスさんの鎧に『耐久力上昇』『防御力上昇』をかけておいた。

 

 

「ダクネスさん、ちょっと攻撃用の魔法に時間が必要なので、時間稼ぎをお願いします。防御力上昇系の魔法をかけておいたので、そう簡単にやられる心配はないと思いますが、気をつけてくださいね」

 

「あぁ、任せておけ!何ならゆになは後方支援でも良いのだぞ?」

 

「ごちゃごちゃと作戦会議は終わったのか?生憎気が立っているので、待っている余裕はないぞ!!」

 

「ふん、では私から行くとしよう!!」

 

 

 私に時間稼ぎを任されたダクネスさんは、鎧さんに向かって走る。鎧さんもそんなダクネスさんを迎え撃つ。しかし、ダクネスさんが両手で持つロングソードを見て、受け止めるのを嫌がったのか、鎧さんは身を低くして回避の体制に入った。

 その鎧さんに向かってダクネスさんが左上の段構えから斜め切下げの攻撃を繰り出して……………………。鎧さんをたたき切るこはなく、目の前の地面に刺さった。

 

 あ、外した。ってえぇ~!鎧さんほどんど動いて無かったじゃん。回避する姿勢は見せていたけど、高速移動している訳でもない相手に攻撃を当てれないって……………………。ダメじゃん。

 

 

「はぁ…………」

 

 

 外したダクネスさんに、鎧さんが気の向けた声を上げて呆然と見つめてしまう。それどころか、鎧さんと同じ目線で他の冒険者さん達もダクネスさんをみる。

 あれだけの大口を叩いた挙句、動いていない相手に攻撃を外してしまう様子に、私は少しだけ恥ずかしくなってしまう。

 

 なぁにが「任せてくれ、何なら後方支援でも大丈夫」だ!!攻撃が当たらないアタッカーを前に置いて後方支援っておもっくそ邪魔だよ?

 あれか?敵の注意を引き付けておくから私諸共……って奴か!?あり得る、アリエルぞ!!あの変体騎士様なら!!

 

 私がダクネスさんの考えに驚愕していると、ダクネスさんは慣れているのか、一歩前に踏み出して大剣を横に水平切りを繰り出した。

 今度は確実に当たる攻撃だったみたいで、鎧さんはひょいと身を屈めて回避。そして大げさに剣を一閃。これで止めを刺したと言う自信があったのだろう。鎧さんはつまらない者を見たとばかりに言う。

 

 

「何という期待外れ。………さて、次の相手はケイキだった……、なっ!」

 

 

 ダクネスさんを排除した次は私だと目線を向けて、耳鳴りな音を立てて崩れ落ちたダクネスさんの鎧に目を開いた。鎧は無惨にも切られていたが、ダクネスさんは全くの無傷。

 ダクネスさんは一旦後ろに下がると、切り裂かれた鎧に悲鳴を上げた。

 

 

「あぁ!!私の新調したばかりの鎧がぁ!!」

 

「だ、ダクネスさんドンマイです。……ってか、すみません。私のかけた防御系魔法よりも鎧さんの攻撃力の方が上だったみたいで。もっと強力な物をかければ良かったですね」

 

「……………………いいや。ゆになが気にする事はないっ!」

 

 

 私は突然の事にエンチャント進化の魔法をかける暇もなく、ダクネスさんを慰めます。私の言葉にダクネスさんは私を一切責める事はなく、鎧さんをキッ!と睨みつけた。

 

 慰めながら確認したが、鎧は切られたもののダクネスさん本体は全くの無傷。一体どんなステ振りしているのでしょう?鎧よりも硬い肉体って……………………。

 

 私も驚いているがそれは鎧さんも同じならしく、

 

 

「な、なんだ貴様は!?俺の剣を受けて何故切れない?そこのケイキは別として……………………。この街は何なのだ!!頭の可笑しい爆裂娘に先ほどのアークプリーストといい…………」

 

 

 頭の中を整理するようにブツブツと呟ている。

 そこにめぐみんを誰かに任せたらしいいカズマ君が指示を出す。

 

 

「ダクネス!!お前ならそいつの攻撃に耐えれる!!攻撃はゆになに任せておけ、俺たちは援護をする!!ゆになは何をぼさっとしてるんだ。さっさと切り札を用意しろよな!」

 

「あ!ごめんなさ~い。前回の反省点を活かして更に強化させるつもりなのでちょっと集中しますね!」

 

「あぁ、任せたぞ。だが、出来れば私にも一太刀入れれる場面を作ってもらいたい。頼むぞ!」

 

 

 まぁ、最後の一撃ぐらいは出来るかなぁ?手足を切り落としてから突き出せば流石に外さない……………………はず。さっきの失敗を見た後だから心配だけど。

 

 そんな事を考えながら私はエンチャント進化に集中する。前のままでも鎧さんと戦えなくもないけど、今回の鎧さんは本気だ。念には念を入れてって言葉もあることだし、折角カズマ君やダクネスさん達が頑張ってくれるている。私ばかりが見せ場を奪ちゃったら嫉妬されそうだし。

 

 

 

 水属性エンチャントに聖魔法エンチャントは基本。ダブルで弱点を突く。

 今回は更に鋭さを増すエンチャントと攻撃力上昇、自動追撃、をかける。幾ら創作魔法があると言えど、魔法の構築には演唱の他にも知力が必要になっている。その為、天才であるめぐみんと違い、凡人である私の脳は多重エンチャントの処理にパンクしそうになるが、一個一個丁寧に結びあげるようにエンチャントを付属させていく。

 

 

 

 

 

 余りの精密作業に気を失ってしまいそうになるが、どうにかこらえてエンチャントを完成させていくこと数分。ようやく完成できた。この魔法構築式をコピーを取ると、私は体感時間で何時間ぶりに周囲の状況を確認した。

 

 

「『クリエイト・ウォータ』『クリエイト・ウオーター』」

 

「『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』」

 

「「「「「「「「『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』『クリエイトウオーター』」」」」」」」」」

 

 

 体感時間で数時間ぶりに見渡した周囲の戦況は、水合戦の最中であった。何があった!!?と思いながらもよく見てみると、初級水魔法を魔法使いさん達が鎧さんに当てようと必死になって連発している。

 頭上から降ってくる幾つもの水を鎧さんは器用にも全て避けている。結構体力を使っていそうだなぁ。

 

 

「では、弱体化した鎧さんに目掛けて攻撃を再開したいと思いま~す!!」

 

「ック!こんな時にケイキが出てくるのか!!?おいお前ら時間稼ぎはもういいだろう?ほ、ほら俺とケイキの一騎打ちだぞ?」

 

「そんなの俺たちが知るか!!『クリエイトウオーター』」

 

「水に濡れたら弱体化するんでしょ!!だったらあの子の援護射撃を読めないわけにはいけないわ!!『クリエイトウオーター』」

 

「『クリエイトウオーター』おい嬢ちゃん!お前が希望だ!!!俺たちの魔力もそう長くは持たねぇ早めに頼むぞ!!」

 

 

 沢山の冒険者さん達に応援されながら私は、重力操作を用いて鎧さんに向かって突っ込んで行く。時間にして一秒。瞬間移動ともとれる速度で鎧さんの懐にたどり着く。

 エンチャント進化した『神水剣 ヒュードルテオスクシフォス』を納刀した状態で魔力を込めていく。そして、限界までチャージした魔力を解き放つ様にして、抜刀。と同時に神が創り上げた水状の斬撃が繰り出された。

 

 

「これで吹き飛べ~~~!!!」

 

「お、ぐおぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

 

 

 私の攻撃を受けた鎧さんは、街を囲む壁に吹き飛んできいった。ズゴ~ンッ!!と音を立てて壁にひびが入る。

 

 やっべ!!吹き飛ばす方向考えてなかった~~!!

 魔王幹部との戦いだから不問だよね?不問にして欲しい。わざとじゃないもん。

 

 

「がはっ!結構効いたぞ。ハァ、ハァ、この俺をここまで追い詰めるとはな。だが魔王さまより贈られた鎧を完全破壊するまでは行かなかったようだな!」

 

「だったらもう一度!!」

 

 

 ピンピンとまではいかないが、それなりにダメージを与えたらしく、荒い息をしながら所々にヒビが入った鎧を自慢してくる鎧さん。私は何度でも挑戦あるのみ!!と三連技の突進突き攻撃を繰り出して鎧さんに向かって突進した。

 

 この時私は周りの状況が一切見えていなかった。援護射撃すると言った冒険者さん達の魔法が途切れていること、カズマ君と敬愛するアクア様が何やら話していたこと、神聖なる魔法が発動されたこと。

 だから私は気付かなかった。アクア様が放った魔法に。

 

 

「『セイクリッド・クリエイトウオーター』!!」

 

 

 私の突進系三連撃攻撃は鎧さんに当たる直前、頭上に現れた私の偽聖水とは全く違う、本物の神が起こした水の塊によって遮られた。

 

 




 もう前回のエンチャント進化の内容を忘れ過ぎて、殆ど変わってないかも。許してください。

 余談ですが、アクアがゆになの邪魔しなければこれで勝ったんじゃないかなぁ?って思う。でもほら、アクアとカズマの見せ場を作りたかったんです。後、サッカーも書きたかったのもある。次回ですが……………………。(今更次回予告言ってたの忘れてたとか言えない)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

310 第二次鎧さん襲撃事件パート14

 長らくお待たせ致しましてホントに申し訳ございません。ようやく完成しました。

 理由は活動報告覧に書いた通りです。ほとんど私用ですが、待ってくださっていた方には感謝しかありません。

 次話はもう少し早く書くことが出来るように努力致しますのでよろしくお願いします。




 当然頭上から降ってくる洪水クラスの水の塊。理由は勿論、アクア様が調子扱いてこんな時に女神様の本領を発揮したせいです。

 

 

「ちょまっ!!」

 

「み、水!?ゴボボボボボォォォ」

 

 

 真っ先に私と鎧さんが溺れた。洪水クラスってことで被害は私と鎧さんだけに収まらない。

 

 周囲にいた冒険者さん達やカズマ君、ダクネスさん、果てには術者であるアクア様までもが突如として現れた水に押し流される。

 

 

 い、息ができない!水中呼吸魔法を……………………って魔力の殆どを神水剣の維持に使っているんだった!!

 

 くっ、仕方ないね、解除するか。溺死とかは嫌がだからね。

 

 

 ピカンっと効果音を立てながら『神水剣 ヒュードルテオスクシフォス』が光に包まれ、収まる頃には普通の魔剣グラムに戻っていた。いや、神具である魔剣グラムが普通ってどうよ?とか思うけど、私が使っているからこんなもんで、本来の所有者である勇者(笑)の御剣御夜君が使えば、エンチャント進化レベルのパフォーマンスが出来るはず。

 

 そんな事を考えながらエンチャント進化を解くと、魔法で自分の周りに空気の幕を創り上げる。それでも勢いが強すぎて、私の呼吸を安定させるのが精一杯。

 

 何が言いたいかというと、余裕があったら水中で鎧さんを打ち取ろうと考えておりました。結果は勢いで一歩も動けなかったよ!

 

 

 

 

 

 勢いに負けないように踏ん張ること数分後、膨大な水は街の中心部に流れて行った。

 

 水が引いた直後何とか耐え切れた私が見た光景は、地面にぐったりと倒れこんでいる冒険者さん達にカズマ君、カズマ君に捕まっているめぐみん、呼吸は大丈夫だったそうですが勢いにやられたアクア様に、何故か頬を紅く染めているダク、変体騎士様。

 

 そして…

 

 

「ちょっ!!貴様ら、一体何を考えている。馬鹿なのか?大馬鹿者なのか??…ッく、あのままケイキと剣を交えていた方がマシだったわ!!」

 

「そんなに褒めないで下さいよ~~!」

 

 

 同じくぐったりと倒れていた鎧さんだったが、そこは魔王軍幹部と言うべきか?誰よりも早く立ち上がる。剣を杖にしてよろよろとしている姿は、結構ダメージが入っているように見えるけど。

 

 立ち上がると鎧さんは、あの大洪水レベルの水について愚痴る。そのついでに、私と戦っていた方が良かったと褒めてくれたのはまんざらでもない私です。

 

 

 いやはや、私と剣を交えていた方が良かったって?死に方の問題?あ、死んでたから倒され方の問題ですか?

 

 溺死、もしくは大弱点を突かれて倒されるよりも単なる剣術の勝負で負けたかったとか?そう言えば、鎧さんは前世は真っ当な騎士様だったって言ってたもんね。

 

 正々堂々とした勝負で負けたのなら未練はないとか?でも、私はエンチャント進化や、身体能力強化、似非剣術スキルと言ったチートを使っております故、正々堂々とは言えないね。

 

 とは言えど、鎧さんが濡れ濡れ状態で弱体化しているのは間違いではない。私と正々堂々と勝負したかった鎧さんには悪いけど、ここは……………

 

 

「今がチャンスよ!!私の大活躍で弱っているこの機に何とかしなさいカズマ!!!早く行って、行きなさいカズマ!!」

 

 

 私が鎧さんに速攻をかけようとした瞬間、アクア様がわざわざ大声を出して攻撃のタイミングを鎧さんに教えてしまいました。しかも、ご氏名はカズマ君。私は完璧にお呼びではない様子です。私はいらない子ですかアクア様??

 

 アクア様のご指名を受けたカズマ君は、何故かアクア様を睨みながら鎧さんの前に出て来る。そして、左腕を突き出して手のひらを鎧さんに向ける。

 

 

 まさかあれは!!向ける相手が間違ってますよカズマ君?

 

 

 カズマ君が発動しよとしている魔法に「え?その魔法って女の子限定じゃなかったけ?」と驚愕する私だったが、ここは空気を読む私。

 

 

「今度こそお前の武器を奪ってやるよ!覚悟しろッ!!」

 

「やってみろ!!弱体化したと言えど、魔王軍幹部であるこの俺に駆け出しの冒険者の『スティール』如きで武器を撃ばえる訳がなかろうが!」

 

 

 カズマ君はもう何回もチャレンジしていたらしい『スティール』を鎧さんに向かって発動させる。 一方で鎧さんも負けていられない。何時もの様に首をお空高く放り投げて、カズマ君に対峙するように大剣を構えた。

 

 

 鎧さん、終わったな。カズマ君相手にスティールを喰らうのは不味いよ。

 

 

 私よりも低いとはいえ、カズマ君は幸運値が以上に高い。そんなカズマ君に対して鎧さんはアクア様の洪水で弱体化済み。

 

 どちらが勝つかは一目瞭然。そこに私はちょっとした悪戯心が芽生えてしまった。ただでさせカンストしているカズマ君に運を上げる魔法を使うとどうなるのであろうか?と。

 

 

「そ~れ、『ブレッシング』」

 

「『スティール』っ!!!」

 

「ちょっと待てっ!!ケイキ、お前っ!!今何かやっただろ!!??」

 

 

 私の幸運上昇魔法を受けたカズマ君は気にせず、鎧さんに向かってスティールを発動する。私の突然の行動に、鎧さんは何やら大焦りだが、私はそんなの知らな~い。

 

 ドキドキとカズマ君の結果を待つが、冒険者さん達が落胆する声でカズマ君が武器を奪う事に失敗したことを悟る。

 

 

 あれ?激運に上昇魔法を掛けたせいで効果が逆になった?でも、鎧さんは大剣を握りしめたまま動かないし…………。

 

 

 カズマ君は失敗した。しかし、鎧さんは動かないでいる。

 

 両者フリーズ状態に私がそろそろ動こうかな~?て考えていると、ふと思い出した。

 

 

 そう言えばお空にあるはずの鎧さんの頭はどこに行ったの?

 

 

 私はお空を見上げて見るが、鎧さんの頭を見つけることは出来なかった。じゃあ鎧さんの手の中?いいえ両手は大剣を握りしめている。ではではその辺に転がっている?と周りを確認するが、何処にもない。

 

 突然行方不明になってしまった鎧さんの頭。しかし、以外な場所から見つかった。

 

 

「あ、あの……………………首を返してもらえませんでしょうか?」

 

「……………………あ、そんなとこにいた」

 

 

 何と!カズマ君の腕の中から見つかったのだ。如何やらカズマ君はスティールで鎧さんの大剣ではなく、お空に放り投げた顔を奪い取ったらしい。

 

 見つめ合うカズマ君と鎧さん。そんな中、カズマ君が出した答えは!!?

 

 

「お~いお前ら、サッカーしようぜ!」

 

「あ~!!やるやる!!へいパース」

 

「いででで!!!お、おいやめろ!!」

 

「ひゃひゃひゃ、これおもしれえな」

 

「俺にもやらせろよ」

 

「バカ、俺の方が上手ぇに決まっている貸せ!」

 

 

 カズマ君は私の要望通り、鎧さんの頭を足で蹴ってパスしてくれた。パスを受け取った私は、足に強化魔法をかけてから、冒険者さん達にレクチャーしながらサッカーのルールを教える。

 

 すると大反響。皆さん我先にボール、基鎧さんの頭でリフティングに挑戦している。頭故にちょと蹴りずらいが、私は見本として数回のリフティングを成功させた。次の人に渡して、私は監督役に徹する。

 

 

 あ、あの人私よりも上手い!!わ、私だって重力操作を行えば、無限に出来るもん!

 

 そう言えば、「友達はボール」が名言な作品の真似事がこの世界だったら出来るかも。魔法があれば超次元サッカーも夢ではないのだ。

 

 

 そんな事を考えていると、カズマ君がダクネスさんにただ立ち尽くしている鎧さん本体に向かって攻撃を与えるチャンスを与えていた。

 

 ダクネスさんが一太刀入れたいと言っていたのを私は完全に忘れていたけど、カズマ君はちゃんと覚えていたらしい。

 

 

「おいダクネス、一太刀喰らわせたいんだろ?ゆになも、ちょっと来てくれて」

 

「はいはーい。お呼ばれしたゆになちゃんはどこにでも参上しますよ~」

 

「うん、そういうの今はいいから。それよりもダクネスのどうしょうもない剣術を、どうにかして当てることが出来るようにできないか?」

 

「あ~、ちょっと私の事何だと思っていますか?便利屋、何でも屋扱いなの??」

 

 

 最近、カズマ君の私への扱いが酷くなっているような件について。もうこれだけで、ラノベが一冊書けちゃうよ。

 

 冗談はこのくらいにしておいてっと、問題はどうやってダクネスさんの攻撃を当たるようにするか?ですか。簡単な方法はダクネスさんにスキルポイントを使ってもらい、両手剣スキルを取てもらうのだ。でも、変なところで意志の硬いダク…変体騎士様は攻撃が当たるようになることは望んでないでしょう。(今回の様に特別な理由は除いて)では問題は今回限りで両手剣スキルを発動してやること。…………結構難しいかな。

 

 

 私がこの難題について頭を捻っていると、カズマ君がしびれを切らしたのか「もういい」と私に言ってきます。この発言は喧嘩を売っているのかな?

 

 

「…出来ないならいいぞ。ダクネスがホントに攻撃を当てられる保険の様なものだから――」

 

「『スキルレンタル』対象者はダクネスさん、貸し出しスキルは初級両手剣術スキル」

 

「な、なんだこのかつてない湧き上がる衝動は!!?」(両手剣の扱いが出来るようになったからです)

 

「って、できるのかよ!!」

 

「ふっふっふっ、ゆになちゃんが出来ないと何時言いましたか?」

 

 

 結構難しかったのは方法を考えるまで。ダクネスさんにスキルを覚えて貰うのではなく、私から貸し出したらいいじゃん!と考え付いたら、後は簡単。初級創作魔法でスキルレンタルを作ってダクネスさんに私の初級両手剣術スキルを貸し出しただけ。

 

 

 私から両手剣術スキルを貸してもらったダクネスさんは、カズマ君に拾ってもらった自分の剣を大きく振りかぶり、サッカーボールにされている頭のせいで微動だにしない体に向かって切りつけた。

 

 

「これはっ!お前に殺された、私がお世話になった奴らの分だぁ!!この一撃に全てを載せるからな。まとめて喰らえぇ~!!!」

 

「ぐはっ!」

 

 

 ダクネスさんが斬りかかった瞬間、サッカーを楽しんでいた冒険者さん達の方向から鎧さんのくぐもった声が聞こえてきた。

 

 鎧さんの本体は、私が何度も攻撃を繰り返して与えたダメージとアクア様の洪水で弱ったせいか、ダクネスさんの強い一撃で魔王さまの加護が与えられている鎧の一部分が無残にも砕け散り、胸元にザックリと大きな傷を負ってしまう。

 

 そして、いつの間にか戻って来られていたアクアにカズマ君が最後の一撃を任せる。

 

 

「おし。アクア、後は頼んだ!」

 

「頼まれたわ!!」

 

 

 全快の状態でも悲鳴を上げさせたアクア様の浄化魔法。それを私の猛攻でHPとSAN値を削り、弱点の水で弱体化、ダクネスさんの一撃で魔王様から頂いたと言う加護付きの鎧も壊れた。そんなHPが赤状態な状態で女神の浄化魔法。もう、オーバーキルでしかない。

 

 アクア様は手のひらを壊れた鎧部分に向けて、魔法を演唱した。

 

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』ッ!!」

 

「ちょ、まっ!ぎやゃゃあああああぁぁぁぁ~!!」

 

 

 浄化魔法を受けたのは身体部分だけど、聞こえてくる悲鳴はサッカーを楽しんでいる冒険者さん達の方向から。シュールだなぁ、と思いつつ今度のターンアンデッドが効いていることに安心する。

 

 鎧さんの身体部分が白い光に包まれて、段々と薄くなり消えていく。範囲外であった鎧さんのボール部分もきれいさっぱりなくなり、遊んでいた冒険者さん達が困惑している。

 

 

 あの盛り上がり様、後でサッカーボールを作って売ってみるものいいかも知れないね。誰かがマネする前にバカ売れバカ売れ。

 

 ってあれ?途中から忘れていたけど、鎧さんって何でこの街に来たんだっけ?めぐみんの爆裂魔法が原因だった気が…………。

 

 

 ともあれ、こうして魔王軍幹部である鎧さんを無事に討伐する事が出来たのであった。

 




 次回『アクア様は空気を読まないお方です』

 注、予告はあくまでも予告です。更新する内容にと違いが発生する場合がございますのでご注意を。

 では、また次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

311 第二次鎧さん襲撃事件パート15

おひさ!!


 ようやく、ようやく終わった鎧さんとの戦いに冒険者さん達は歓喜の声を上げている。そんな場所から少し離れた鎧さんの本体が消えた場所で、私達のパーティーは待っていた。ダクネスさんを。

 ダクネスさんは鎧さんの本体が消えた場所で、祈りを捧げる姿で動きを止めている。そんなダクネスにめぐみんが恐る恐ると声をかけた。

 

 

 慎重になるなら後から聞けばいいのに。

 

 

「ダクネス……何をしているのですか?」

 

「………祈りを捧げている。デュラハンは不当な理由で首を落とされた騎士が、恨みでアンデットに成り下がったモンスターだ。こいつとて、なりたくてアンデットになった訳ではないのだろう。自分で攻撃をしておいてなんだが、祈りくらいはな………」

 

 

 めぐみんの問に、ダクネスさんは目を閉じたまま答えた。その様子はまるで罪を自白するように、私は見えます。

 そう答えたダクネスさんにめぐみんは「………そうですか」と呟く。しかし、ダクネスさんはめぐみんの言葉を聞いていないようす。

 私達が聞いてもいなのにもダクネスさんは話を続ける。

 

 

 ダクネスさんに腕相撲を挑んで負けた挙句、腹いせにダクネスさんが鎧を脱いだら筋肉ガチガチだと、面白そうな噂を流したというセルドさん。

 ダクネスさんの当たらない剣術を知ってか、大剣を団扇代わりにして仰いで風を送ってくれ。当たるなら当ててもいいぞ、とダクネスさんのコンプレックス刺激しまくったという勇者ヘインズさん。

 私達とパーティーを組む前にダクネスさんと組んで、ダクネスさんのモンスターの群れに突っこんでいく性癖に大変苦労したらしいガリルさん。

 ……………………………この人、どれくらいの冒険者さん達に迷惑をかけて生きてきたのでしょうか!?このパーティーに入ってから、思えば結構はっちゃけている私でも他人と組んで出かけたクエストでは大人しくしていたよ!!

 

 

 何故か今になって私達と出会う前に迷惑をかけた出来事を告白するダクネスさん。めぐみんは暗い話になっているのを察してか、慌てて話を切り上げるようにダクネスさんを促す。

 これは当分動きそうにないだろうなぁ~、と私はこの場から離れようと後ろを向いた。ダクネスさんは変体騎士様だが、変に曲げない所があるからだ。

 

 

 そして、後ろを向いた私が見たものとは!!!

 

 

 なんか、祈りを捧げているダクネスさんを見て、微妙な顔をしている冒険者さんが三人。……どこかで見たことがあるような…。あ、鎧さんに殺された方ですか?

 微妙な顔をしている理由は、この人達がセルドさん、ヘインズさん、ガリルさんだからです?

 

 

 私の推測は直ぐに証明された。

 

 

「…………あいつらにもう一度会えるなら、一度くらい酒の席で飲み交わしたかったな……」

 

「「「お、おう」」」

 

 

 ダクネスさんの悲しげの声に、照れくさそうに戸惑った声でお三方が反応したからだ。

 

 

 やっぱり私の推測は当たっていた!

 

 

 やがて、お三方の一人が前に出て、申し訳なさそうにダクネスさんをからかった事に対して謝り始めた。次々とかけられる声にダクネスさんは、祈りのポーズのまま、顔が赤くなっていく。

 

 

 これは羞恥心?それともこういうプレイに興奮してですか?

 どちらにせよ、これはやってしまいましたね~ダクネスさん。私だったら、完全引きこもるレベル。

 

 

 多分羞恥心だろう、で顔が真っ赤になっているダクネスさんに、空気を読まないお方がダクネスさんを元気づける。誰だ?勿論、アクア様に決まっている。

 

 

「ダクネス、任せて頂戴!!私レベルになると、出来立てほやほやの死体くらい、ちょちょいのチョイで蘇生出来るわ!!これでお酒が一緒に飲めるじゃない。良かったわね!!」

 

 

 なんと!死者に対してお祈りをしていると思っていたアクア様。実は死んでしまった彼らの冥福をお祈りどころか、復活の呪文を唱えていらしたとは!!!

 恐るべし女神様!!やはり私のアクア様は間違っていない!!

 ……………………………でもねアクア様、ダクネスさんには少し恥ずかしかったみたいですよ。

 

 

 アクア様には悪気がなかったのであろうが、背後に本人達がいるとも知らずに恥ずかしい独白を思い出したらしく、ダクネスさんは顔を両手で隠した。

 チラッと見えた範囲では、顔を真っ赤にして涙目になっていたよ。

 

 

「アクア様、アクア様。死体の蘇生お疲れ様でした」

 

「そうでしょう!もっと褒めてくれてもいいのよ!!」

 

「それは後でお三方に蘇生代金を要請するといいですよ。まぁ、そのことは置いておいて。蘇生が出来るならもう少し前に言って下さい。私は兎も角、カズマ君が「どうして蘇生出来るって重要な魔法を教えなかったんだ!!」って怒られちゃいますよ?そのせいでダクネスさんがご褒美とは方向が違うらしい羞恥攻めを受ける事になってますし……」

 

「ど、どどどどうしよう!!ゆにな助けてよ~!!カズマに怒られるのは嫌よ!!!えーっと……ほら!頭を撫でてあげるから私を助けて~~!!!」

 

「あー分かりました。私がアクア様に口止めしていたことにしましょう」

 

 

 私はアクア様から報酬の頭ナデナデを受けていながら、ダクネスさんがカズマ君の攻撃を受けて「死にたい」と呟いているのボーっとみる。

 どうやら、カズマ君は手加減をしないそうで、追撃を行っているようです。

 

 

 さてと、そろそろ帰りましょうかね。

 ここに居てもダクネスさんを虐めるカズマ君しか見れないし、まだ魔力枯渇で動けないめぐみんで遊ぶのもいいけど、今日は何だか疲れたや。

 鎧さんの討伐報酬も、急なことなので今日で準備出来るわけないし、私も随分と魔力を使っている。

 『魔力自然回復速度UP』を付けているけど、まだまだ時間がかかりそうな感じ。今日は帰って寝るのが一番いいかな?

 あ~、アクア様のナデナデ気持ちいい。名残惜しいけど、そろそろ。

 

 

「アクア様、そろそろ大丈夫です。たっぷりと報酬を頂きましたので、カズマ君への対応はお任せください。では疲れましたので今日はこの辺で………飲み過ぎない様に気を付けて。また明日です」

 

「っえ、来ないの?…………」

 

「はい。…………………めぐみん、私のなけなしの魔力を貸してあげるので、後日倍返しでいいですよ」

 

「えっ!?急に決めないで…ひゃうぅ!!ちょ!なけなしって言っている割には結構多いのですか!!??あっ、ちょ!もう十分です!十分ですから!!!返すのが大変になりますから!!!」

 

 

 よし、これでめぐみんへの嫌がらせは終了。心置きなく帰れるぞぉ。

 へぇっ!?魔力枯渇で動けないめぐみんとは疲れたから遊ばないんじゃなかったか?って?実は私、結構考えをコロコロと変えるのだ!

 まぁ、疲れたのは変わらないから、魔力枯渇で動けないめぐみんに大量の魔力を与えて魔力を回復させてあげると同時に、後日倍返ししてもらう約束を一方通行で取り付けて困らせる。これぞ一石二鳥(違います)

 

 

 そんな訳でめぐみんへの嫌がらせ行為も終わり、私は喜びに浮かれている冒険者さん達の脇を通り過ぎて、アクア様の洪水クラスの水害に襲われて混乱している町の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆになが街の中に帰って行き、取り残されたカズマ達一行。

 ダクネスはカズマに違うタイプの羞恥攻めを喰らい、地面にへたり込んでいる。その横でめぐみんが、ゆになから貰った魔力が多過ぎて魔力酔いを起こしてダウン。一方でアクアはこれから起こる宴会を待ち遠しそうにソワソワしている。

 そんなパーティーメンバーを空しい目で眺めながらカズマは、少し気になったことを考えていた。

 

 

 何かがおかしかったような気がしてたまらん。…………………あいつ、無理していなかったか?

 

 

 カズマはアクアにいつもよりもがっつかなかったゆになの態度を見て、何かがおかしいと考えた。ギャルゲーで鍛えた観察眼と考察力を駆使して、ゆになは無理をしていた?と考え着く。

 

 

「なぁ、アクア。何か感じなかったか?」

 

「え~、さぁ?私にはいつもと違うようには見えなかったわよ?それよりも早く宴会をしましょう!!」

 

 

 やっぱり此奴に聞いた俺がバカだった。

 

 

 カズマはアクアに聞いた自分に呆れながら、アクアが思った印象も自分の考えに入れて再度ゆになについて考える。

 アクアでも気付かない程の変化。カズマは自分の気のせいだと思えなかった。

 

 

 あいつは単純そうに見えて単純じゃないのか?兎に角、あいつの言動は今後要注意だな。

 ああいったタイプがラスボスとかよくあるパターンだし。

 

 

 カズマはそう結論を出すと、いい加減鬱陶しくなってきたアクアを黙らす為に動きだした。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

312 討伐後の翌日

一ヶ月ぶりです。長らくお待たせいたしました。最終(仮)投稿です。
長いので半分とは言えませんが、二話に分けました。


 

 朝起きると体が重かった。

 あれ?と思ったものの、昨日の出来事を思い出して納得する。

 

 

 あ、そういえば昨日は沢山動いたからな~。

 あの後、宿に帰ってから直ぐに寝たんだった。

 そっか、初めて実力を出しまくったその反動か。

 

 

 つまり、私は筋肉痛と言いうものに襲われた。

 

 前世では、適度に身体を動かしていたから筋肉痛というものは皆無だったし。

 今世でも、アークウィザードと余り動かない職業と言えど、そこは冒険者だし、しかも常に補助系魔法をかけている。

 更に言うと、私は昨日程の力を出した事がなかった。

 そう、今まで筋肉痛になりようがなかったのである。

 

 

 身体痛いなぁ。寝ていても痛いって拷問だよコレぇ。

 

 

 お布団にくるまっていても襲ってくる痛みに、私は「睡眠魔法でも自分にかけて意識を強制的に落とそっかな~?」と考えていると、部屋の前から声が聞こえてきた。

 

 

「ゆになちゃん起きてる?」

 

「あ、はい。起きてますよ?どうかしました?」

 

 

 私が返事をすると、ガチャ……キィーと音を立てて部屋のドアが開いた。

 ベットに転がったまま視線を入口に向けると、私が止まっている民営宿のおば……お姉さんが立っている。

 

 

 どうしたのかな?

 いつもは朝に来るなんてしないのに。

 

 

「ゆになちゃんおはよう」

 

「あ、はい。おはようございます。今日はどうしたのですか?」

 

「えぇ、ゆになちゃん起きるのが遅かったから…………大丈夫?」

 

「…………大丈夫?私はいつもと変わりませんが?」

 

 

 私の姿を見たお姉さんは、心配した表情を顔に浮辺ている。

 私は、え!?何か心配されるようなことしたかしら?と考えるが特に思いつかなかった。

 しいていえば昨日の緊急クエストだが、一応帰ってから無事だということを説明してある。

 全くもってお姉さんの心配の意図が分からないでいると、お姉さんがしびれを切らしたのか、指摘してくる。

 

 

「ゆになちゃん、今10時過ぎよ」

 

「…………マジですか?」

 

「ホントよ。全く起きてこないから心配したのよ」

 

「それはそれは。心配かけました」

 

 

 なるほど、いつもよりも起きてくるのが何時間も遅かったら心配して部屋に来るのは当然か。

 しかし、10時過ぎ。

 まぁ、疲れていたから妥当な時間だと言え、流石に遅すぎたらしい。

 さて、お姉さんをこれ以上心配させないためにもそろそろ起きますか…っと。

 

 

「いっ…タタタ」

 

「だ、大丈夫!?やっぱり怪我でもしているのかしら?」

 

 

 ベットから起き上がろうとした私はだったが、筋肉痛の存在を忘れていたらしく、動いた衝動に筋肉が悲鳴を上げてしまった。

 理不尽だ、と急いで強化魔法をかけようとして、辞めた。

 

 

 元々は私の運動不足が招いた筋肉痛だ。

 誠に悔しいけど、あの剣を扱う時以外は魔法に頼るのを辞めよう。

 わっはっはっ!

 私は考えるから日に日に進化するのである。

 目指せダクネスさん並みの体力と筋力!!

 ……………………やっぱり普通Levelでいいや。

 

 

 魔法に頼る事を辞めた私は、まだ痛む体を必死に動かしながら「やっぱり昨日の緊急クエストで怪我でも…!」と慌てているお姉さんに大丈夫アピールをする。

 

 

「心配ご無用!昨日の緊急クエストで疲れただけです。正確にいえば、久々に本気の一部を出してしまったので筋肉痛なのです」

 

「そ、そうなの?」

 

「そうなのです!高ランクな有名冒険者たる私はこれしきの事で敗れたりしないのだぁ~!!」

 

 

 だぁ~と掛け声と共に私は気合いを入れてベットから起き上がる。

 三度目の筋肉痛による痛みが身体を襲うが、一度起き上がると痛いながらも日常的な事が出来るまで回復した。

 オートにしてあった『自然回復』と『自然回復速度UP』が発動したのだ。

 

 

 ありゃりゃ、魔法に頼るのは辞めようを宣言した途端にこれか~。

 …………………うん。

 強化魔法は辞めるけど、オートにしてあるスキルは別だよね!

 少しのミスでオートにしてあったスキルが発動できずに、死ぬ。

 それは……………………

 

 

 少しだけそれでもいいかも知れない、と言う考えが頭の片隅に現れたが、演技演技と押し込める。

 

 オートで回復したお陰で大分動けるようになった私は、お姉さんにピースサインを送った。

 もう動けるぞ!と言う意味を込めて。

 

 

「ふっふっふ、私はアークウィザード。自分の筋肉痛を治す魔法くらい使えるのです。ご心配をおかけしました。朝ご飯はありますか?」

 

「ごめんなさい。起きてこなかったからもう下げちゃったわ」

 

 

 ガーン!!?

 朝ごはんが無いだと!!

 はぁ~、無いって分かったら余計にお腹空いちゃった。

 

 

「そうですか。ではギルドで食べることにしますね」

 

「分かったわ。それじゃあ行ってらっしゃい」

 

 

 ギルドでご飯を食べることにした私は、お姉さんに見送られて宿を出た。

 

 ギルドに向かう道をのんびりと歩きながら、私は今後について考える。

 

 

 魔王軍幹部は思ったよりも強かった。

 それでこそ、私一人では対処できない程だった。

 もっと強く……………………いや、技術を伸ばさないと。

 取り敢えずショートカットスキルで直ぐに使える様に色んなスキルを覚えていかないとね。

 ほら、熟練度を上げる的な感じ。

 

 

 そうやって考えてアクセルの街を歩く。

 いつも通りの日常。

 それを守ったのは私たち冒険者。

 昨日、あんなことが有ったのに毎日は続いている。

 この光景を見ていると、昨日の事が無かったみたいだ。

 でも、この日常が何時までも続くとは限らない。

 そして、私が何時までもこの日常を守る側に居るともかぎらないのだ。

 

 

 

 

 

 あ、カズマ君が歩いている。

 脅かしてやろう!

 

 

 少し前を歩いているカズマ君を見つけた私は、後ろからの飛びついて脅かしてやろうと考える。

 筋力強化は使わない。

 それでも人である私の体重は、ただの冒険者であるカズマ君にはある程度の被害を与えるだろう。

 そうと決まれば……………………

 

 

「かぁ~ずぅ~まぁ~君!!」

 

「うぉっ!!何だよ、ゆになか!!?」

 

 

 私はカズマ君の背中に向かってダイブした。

 顔面ダイブを決めるかと思ったけど、前に少しだけ前乗るだけにとどまる。

 少しだけ残念な感じになったのは、別に悪い感情だとは思わないでおこう。

 

 

「はぁい、そうですよ。カズマ君も今からギルドに向かっているのですか?だったら一緒に行きましょう!」

 

「行くのはいいけど、早く降りろよな!!重たいんだから」

 

「あ~!!女の子に重たいって言ったらダメなんだよ!!私はダクネスさんじゃないんだから」

 

「じゃあ降りろ!」!

 

 

 これこれ、他人との会話は楽しい。

 カズマ君は元日本人だから、あっちのネタも分かってくれるから最高。

 めぐみんとは違ったタイプの掛け合いが出来る。

 

 

 カズマ君の背中から降りた私は、カズマ君と並んで歩き始めた。

 のほのほと歩く私とカズマ君。

 カズマ君が気まずそうにしているのは、私の気のせいだろうか?

 私は思い切って聞いてみることにした。

 

 

「カズマ君、カズマ君。私に何か言いたいことがあるんだったら、言ってくださいな。答えれる事でしたら答えますよ?」

 

「あー…………お前は…………いや、何でもない」

 

「そうですか?ならいいですよ」

 

 

 カズマ君は何かを言いかけて辞めた。

 何を言いたかったのかは私には分からないし、聞き返しもしない。

 だって、それが最良だと思ったから。

 

 

 

 

 

 気まずいなら、そんな空気はぶち壊してしまえば良いの精神で、私は何気ない話題をカズマ君に投げる。

 それをカズマ君が返してくる。私がふざけた回答を投げ返す。カズマ君が声をあげる。

 本当にいつも通りの会話。

 

 そんな事を繰り返しながら数分後、私とカズマ君は目的地の冒険者ギルドにたどり着いた。

 ドアを開けるとむせかえる空気が私とカズマ君を襲う。

 

 

 うへぇ~。

 人とお酒の匂いだぁ。

 魔王軍の幹部を討ち取った記念に宴会をするのは良いけど、真っ昼間からやらなくても……………………。

 もしかして、昨日の緊急クエストが終わってから続いていたとか言わないでよね!?

 カズマ君の表情を見るに、それはなさそうだけど……………………真実はどうやら。

 

 

 人の熱狂とお酒の匂いに少しだけ頭を痛めながらギルド内に入った私とカズマ君に、アクア様が駆け寄って来られた。

 お酒の影響なのか、ただ単に宴会が楽しいからなのかは、ただの人如きである私には測れないけど、アクア様は上機嫌に笑っている。

 

 

「あっ!カズマにゆにな、ちょっと遅かったじゃない!!皆出来上がちゃってるわよ?ほら、二人ともお金を受け取って来なさいよ」

 

 

 大金を貰ったアクア様は、嬉しそうに私とカズマ君に報酬の入っている袋を開けて中身を見せてくる。

 確かに大金。私でもこの大金を稼ぐのに、幾つもの高難易度クエストを達成しないといけない。

 鎧さんの討伐報酬はこんなにも高かったのか。流石魔王軍幹部。

 

 

「分かりましたアクア様。その後は是非ともお酌をさせて下さい」

 

「分かったわ!!ぜひお願いするわ!!」

 

 

 お酒を飲んでいるせいか、既に出来上がっちゃっているアクア様にお酌をさせてもらう予約をして、カズマ君と共にカウンターに向かう。

 ギルド内を見渡したら、アクア様と同じように出来上がっちゃっている人やもう既にぐでんぐでんに酔っている人だらけ。

 

 

「この世界の飲酒に対する年齢制限はどうなってやがる」

 

「大分緩いですよ?飲んでどうなっても自己責任の世界ですから。私くらいの年で飲んでいる人も珍しくないんじゃないですか?」

 

「………言っておくが俺はお前とめぐみんには飲ませないからな」

 

「いいですよ。付き合い程度で飲んだことはあるけど、あんまり美味しくなかったから。それに、緊急事態になった時に直ぐに動けないのは冒険者として困るでしょ?」

 

「………………………それもそうだな」

 

 

 私がお酒を飲んだことがあったのが以外だったらしく、カズマ君はジト目で私を見つめた後、自分たちといる間は飲まないと分かったのか、投げやりみたいに私の建前に賛同する。

 カウンターに向かうと既にダクネスさんとめぐみんが待っていた。

 

 

「来たか。カズマにゆにな。ほら、お前たちも報酬を受け取ってくるといい」

 

「待ってましたよカズマ!聞いてください、ダクネスが私にお酒はまだ早いって、ケチな事を言っているんですよ!!」

 

「いや、ケチではなく………」

 

「そうだよ!めぐみんはお子様なんだからまだ飲酒はダメですよぉ~」

 

「誰がお子様ですか!!それならゆになだって私と同じじゃないですか!!?」

 

「誰が同じだと思っていたの??ねぇ?私はお酒くらい飲んだことありますよ~」

 

「はぁ!!?い、いったいいつの間に飲んだのですか?あれですか?私と違って頼んでも断られなかったのですか!!?やっぱり背なのですね。見た目が原因なんですか!!!?」

 

「め、めぐみん落ち着け。ゆになもめぐみんを挑発しないでくれ」

 

 

 興奮しためぐみんが私に突っかかってこようとするが、ダクネスさんがめぐみんを止めてくれる。

 めぐみんを止めるダクネスさんに「めぐみんへの挑発を辞めて」と言われたが、こちとら辞めるわけにもいかない。

 何故なら、楽しいからである。(超自分勝手)

 

 

 その位で、私達を見守っていたカズマ君が私を引っ張ってカウンター前に突き出した。

 

 

「ほら、その辺にしとけ。それよりも報酬を受け取ろうぜ。受付のお姉さんも待ってるみたいだし」

 

「だからって根っこを掴まないで!!でも、報酬を受け取ったら勝手にやらせてもらうからね!」

 

「分かったから、面倒事を起こさないでくれ」

 

 

 カズマ君に根っこを掴まれてギルドカウンター前に突き出される私。

 目の前には何時ものギルド職員、ルナさんが微妙な顔を浮かべて私達を待っていた。

 

 

「ああ、その、サトウカズマさんですね。お待ちしておりました。先ずは、そちらのお三方に報酬です」

 

 

 ルナさんは歯切れの悪い声で私とめぐみん、それとダクネスさんにお金が入っているであろう袋を渡して来た。

 めぐみんとダクネスさんが小袋に対して、私の袋の大きさは中くらい。

 ダクネスさんとめぐみんに比べて報酬金額が多いそうです。

 

 報酬について、私は特に反論は無いのだが、袋から目を離すとめぐみんがじーっとこちらを見ていた。

 なので……

 

 

「……ふん(ドヤァ)!」

 

「……………………(プルプルプルプル)納得がいきません!!どうしてこの私が、ゆになよりも報酬が少ないのですか!!?」

 

「これが実力と言う物なんだよ、めぐみん」

 

 

 勿論自慢して、めぐみんを挑発しましたが何か?

 こんなところで差がつくなんて、めぐみんは大層悔しそうだねぇ。

 仕方が無い!

 今回だって私も頑張ったんだもん。

 私にだってそれくらいの………カズマ君、分かったからその左手をこちらに向けるのは辞めて欲しい。

 まだ女の子は辞めたくないです。

 

 

 又してもめぐみんを挑発してしまった私に、カズマ君から魔の左手を向けられる。

 辞めてぇ~私が悪かったですぅ~と反応を取りながらも、魔法反射の魔法を構築して……

 

 

「もう!説明の途中なんですから暴れないで下さい!!めぐみんさんもダクネスさんも、一般の方に比べては報酬が多い方ですし。それよりもゆになさんが多いのは、魔王軍幹部を単独で追い詰めたり、偵察のクエスト報酬の上乗せと、何よりもウチのエースだからです。ゆになさんにはこちらもお世話になっているので、こういった時にちょっと色を付けているんです。分かりましたか?」

 

「………ぐぬぬ!!私だってあれくらい出来ないこともないのですから。………それにしてもいったいいつの間に、この私を差し置いてエースになったのですか」

 

「それは…………ごめんなさい何でもないです」

 

 

 私の報酬が多い理由を一気に説明してれたルナさん。

 それでも納得できないめぐみんに、私が反応しようとして、カズマ君とルナさんに思いっきり睨まれたので辞めた。

 鎧さんよりも怖いよぉ~。

 あ、あれはギャグキャラでしたか。

 

 

 私を睨んで止めたルナさんは、コホンと咳払いで雰囲気を変えた後、話の続きを言いにくそうに話した。

 

 

「……………あの、ですね。…カズマさんのパーティーには、実は特別報酬が出ています」

 

「……えっ!?俺達だけが!!?」

 

 

 私達のパーティーだけに特別報酬が出ていると聞いて喜ばしくも不思議に思ったカズマ君。

 そんなカズマ君に、特別報酬が出ていると聞いた酔っ払い冒険者が、私たちがいなければダメだったと語る。

 

 

「おいおい!VIP!!お前たちがいなければ、魔王軍幹部のデュラハンなんか倒せなかったんだからな!!」

 

 

 私達を持ち上げる酔っ払い冒険者の声に反応して、他の酔っ払い共もそうだそうだと騒ぎ出す。

 楽しいのは私も好きだけど、騒がしいのはあんまり好きじゃない。

 そんなちょっとした矛盾を抱える私は、騒ぐ酔っ払い冒険者達に顔をしかめる。

 

 

 騒がしいわ~!!

 これだから酔っ払いは嫌いなんだよ。

 ってあれ?

 カズマ君の目元が潤んでいる?

 もしかして、ジンと来ちゃった?

 今までの苦労が報われた的な?

 まぁ、今までめぐみんとかダクネスさんとアクア様の手綱を握ってきたと考えたら、苦労が報われたと涙が出るのもいな仕方なし。

 え?私も入ってるって?

 むしろ、私はカズマ君と一緒になって手綱を握っていた方だと自己弁護したい!

 

 

 私が一人でごちゃごちゃと考えている間に、カズマ君が私達のパーティーを代表して特別報酬を受けとることとなった。

 この中でカズマ君だけが報酬を貰っていないので、当然といえば当然の人選。

 後、なし崩し的なリーダーでもあるからね。

 

 格式ばった物なのか、ルナさんが咳払いをして空気を変えると、

 

 

 

「えー、それでは魔王軍幹部ベルディアを見事討ち取った事を讃えて、冒険者サトウカズマさんのパーティーには特別報酬………三億エリスを与えます」

 

「「「「「さっ!?」」」」」

 

 

 ルナさんが言った報酬金額を聞いて、私達は五人とも絶句した。

 耳を立てていた酔っ払い冒険者さん達も、金額を聞いてシンと静まり返る。

 

 それほどの金額だからだ。

 この世界では一エリスが一円程の価値がある。

 つまり、宝くじの一等に当たった程の金額なのだ。

 この世界で考えると、上級冒険者の年収がポンッと手に入ったのと同然。

 五人で山分けしても、数十年は働かなくても暮らせる。

 鎧さんの討伐報酬はそのくらい高かった。

 

 絶句している私達を差し置いて、始めに反応したのは酔っ払い冒険者さん達だ。

 

 

「おいおい!三億ってなんだよ、奢れよカズマ!!」

 

「うひょ~!!カズマ様奢って下さい!」

 

「今日はカズマの奢りで飲み明かすぞ!!!」

 

 

 嵐の様な酔っ払い冒険者さん達の奢れコール。

 それを聞いた私は、もしかして私もカズマ君に奢られる事が可能性なのでは?と騒がしい耳を塞ぎながら考える。

 

 

 自分の報酬?私そんなの知らな~い。

 私、特別報酬は要らないから、今日の飲み代だけは奢らされていただきます。

 一億くらいある私の報酬の使い道は、ちゃ、ちゃんと決めてあるから!

 

 

 そんな感じで、手に持っている金貨袋を死守している風を一人芝居していると、カズマ君が思い出したかのように宣言した。

 

 

「おいダクネス、めぐみん!お前らに一つ言っておくことがある。俺は今後、冒険の回数が減ると思う。大金が手に入った以上、のんびりとスローライフしたいからな!」

 

「おい待て!強敵と戦えなくなるのは困るぞ!っというか、魔王退治の話はどうなったのだ!!?」

 

「私も困ります!カズマについて行き、魔王を倒してゆになよりも優れている事を証明して、世界最強の魔法使いの称号を得るのです!」

 

「カズマ君カズマ君!お駄賃をくれたら、この二人の面倒を見ますがどうでしょうか?」

 

 

 カズマ君が働きたくない、と引きこもりニートを再現したセリフを言うと、ダクネスさんとめぐみんがごねた。

 そこへすかさず、私が介入。

 カズマ君は二人の面倒を見なくてもいい、私はお駄賃が貰えて良いお小遣い稼ぎ、実にうぃんうぃんな関係を提案した。

 

 

 ダクネスさん、別にカズマ君といなくても強敵とは戦えますよ?

 あ、攻撃が出来ないから、盾役としか機能しないんだったこの人。

 だったら別のパーティーに……入れないからこのパーティーに居るんだったな。

 

 めぐみんは爆裂魔法だけで魔王を倒せると考えている………頭がオワコンだね。

 そ・れ・に・、めぐみんがもし、万が一、奇跡的に魔王を倒したとしても、私が魔王を倒せれる実力があったら、魔王を倒しただけだったら私よりも優れているとは言えないよね?よね?

 

 

 私はカズマに君に提案しただけでその後は何も騒ぐようなことはなかったけど、ダクネスさんとめぐみんはまだ騒いでいる。

 しかしその声も、飲み放題だぁ!!っと騒いでいる大勢酔っ払い冒険者さん達の声にかき消されてカズマ君には聞こえていない様子。

 聞こえてないスタンスを取っているな。

 

 

 ギルド内はドンドンと騒がしくなっていく。

 そんな中、ルナさんだけが申し訳なさそうしているのを私は見た。

 

 

 見てしまった。

 せいっかうに言うなら、見えてしまったことに感謝を申し上げます。

 それほどヤバくて、事前行動を行える事に感謝しないといけない紙だったから………。

 




まだ続くよ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

313 この素晴らしい駄目神様にお祈りを!(仮)

最終回(仮)です。一話前にも投稿してあるので、お気に入りから来た人はご注意を。


 私達カズマ君パーティーに特別報酬の三億エリスが受け渡されると知って、ギルド内は大騒ぎだ。 

 そんな中、ルナさんだけが申し訳なさそうしているのを私は見た。

 

 

 嫌な予感がするのは私の気のせいだとい………………いな~。

 ってさっそうと駄目だったよ!!

 せめてもの抵抗で、私に被害が出ないように離脱を!!

 

 

 何故か私が離脱を考えるかと言うと、申し訳なさそうにしているルナさんの手元には、正規の書類っぽい物があったからだ。

 それが借金の請求書だと、私は知っている。

 ちらりと見えた金額部分には、幾つもの0が並んでいんだよ!

 

 

「それじゃあカズマ君!!私はオトモダチを見つけたので、そちらに向かいます!!今日は何だかイジ……久しぶりに会ったので帰って来ないと思いますが、気にしないで下さいね!?」

 

「あぁ、分かった…って今イジリって言おうとしたよな!?それに、この酔っ払い女神の世話はどうするんだ!!?」

 

「誰が酔っ払いよ!!ゆにな~気にしなくても大丈夫よ~!」

 

 

 サッサとこの場から離脱したいわたしの背中に、アクア様が優しいお言葉をかけて下さる。

 私はそれに感謝と黙禱を捧げながら、ギルド内の騒がしい中心から離れた。

 

 

 

 本当に借金の請求書から逃れたいんだったら、ギルドから出ていけばいい。

 でも、私はその中心から離れるだけに留めたのはちゃんと理由がある。

 それは、

 

 

「ゆんゆん、おひさ~!!」

 

「きゃっ!?き、きゅうに出てこないでよゆにな~!!」

 

 

 もぉ~!!と私に対して怒っているのは同じ紅魔の里出身で、私とめぐみんの同期であるゆんゆんだ。

 カズマ君に言ったオトモダチとは、本当にお久しぶりな登場のゆんゆんを見つけたからである。

 これで一応のアリバイになる。でかしたぞゆんゆん!

 

 

「で?鎧さんの襲撃事件の場面に居なかったゆんゆんが、どうしてこの場に居るの?もしかして、参加してないのにこの気分を味わいたかったとか?それはダメだよ、この宴は鎧さん討伐作戦に参加した冒険者でないと参加できないんだから」

 

「よ、鎧さん?誰の事を言っているのか全然わからないよゆにな。あっ!もしかして、魔王軍幹部のベルディアの事を言っているの?…………なかなか個性的な名前を付けたね。後、宴に参加できなくても冒険者ギルドに居るのは、別に違反でも何でもないんだから」

 

 

 ありゃりゃ、冷静に返されたよ。

 もしかしてゆんゆん、成長している?

 …………主に胸が!!?

 まだ成長止まって無かったのかよ。

 

 

「ちっ!」

 

「今何で舌打ちしたの!!?」

 

 

 あ、やっぱりゆんゆんだ。

 お姉さんは安心したよ。

 

 

 ゆんゆんと合流した私は、カズマ君達から出来るだけ遠く人の少ない隅っこに移動した。

 

 

 あ~、カズマ君とアクア様が叫んでいるなんて聞こえない~。

 見つからない様に潜伏スキルAを使っているなんてワタシハシラナ~イ~。

 

 

 勿論、魔法を使っている事など、ゆんゆんには気づかれるはずもない。

 

 

「それで?魔王軍の幹部討伐には参加しなかったけどその余韻には浸りたくてギルドに来たが、やっぱり私にはレベルが足りなかった状態だったゆんゆんは、魔王幹部討伐の英雄パーティー一員であるこの私にいったい何の用ですか?」

 

「何の用ってゆになから私を椅子に座らせたよね!?そ、それに!余韻に浸りたかったわけじゃないもん!!ちょっとクエストの受注に立ち寄っただけだし………」

 

「……………………悲しそうな顔を向けないでよ。「同じ紅魔族出身なのに、私の方が頭がよかったのに、大成功しているゆになちゃんに、ネタ魔法しか持ってないのになんやかんや言って仲間ができ始めているめぐみん。どうして私には仲間やお友達が出来ないのぉ!!」って顔をしないでね」

 

「こ、心を読まないでくれるかなぁ?」

 

 

 いや、心を読むなんて高度なことしないでも、ゆんゆんの今の顔を見たら誰でもわかると思うよ?

 あ、ゆんゆんのボッチ適正SS+を知っている紅魔の里の皆さんでないと分からないですか。

 良かったね、心を読まれる心配が減ったよ!?

 

 

 それから、ゆんゆんの話を献身的になって聞いてあげた。

 まぁ、案の定紅魔族ってネームバリューで中々声をかけてもらえず、逆にゆんゆんから溢れ出る根暗オーラが声をかけて貰えない事態を悪化させて、ギルドの隅っこで一人チェスで遊ぶ始末。

 ついには簡易的な大会で優勝出来る程の腕前になったらしい。

 ってそれはどうでもいい。

 

 こちらに来てもう大分経つが、パーティーでクエストに行った回数はついにはゼロ。

 冒険者としては食っていけるが仲間が出来ない。

 どうやったら出来るか考えてと頼み込まれてしまった。

 あの~ゆんゆん?

 冒険者をお友達作りのお仕事と勘違いしてない?

 

 

「単刀直入に問おう。ゆんゆんは一体何が言いたいの?」

 

「え…えっと………。私と一緒にクエストへ同行してください?」

 

「何故に疑問形。………………はぁ~、いいですよ。明日から臨時パーティーを組みましょう。となると、一応アクア様じゃなくて単純バカなダクネスさんに「少し一人行動にします」的なことを伝えて。カズマ君はいっか。帰って来ないって言ってるし」

 

「へ?……?っちょっと待って!わ、私とパーティー組んでくれるの?」

 

 

 悲しそうなゆんゆんとパーティーを臨時で組んであげることにした私は今後の行動について考え始めた。

 すると、ゆんゆんがぽけーってした顔になった後、勢いよく私の顔に自分の顔を近づけて確認を取ってくる。

 そっちの方向に興味は無いが、キスができそうな距離だ。

 

 

 こんなにも興奮するってどんだけ同行者に飢えていたんだよ。

 多分、人と会話したのも数か月振りになるとか?

 幾ら何でもそれはないよね?

 頬っぺたを何回も抓っている姿を見ると不安になってくるよ。

 

 

 私が一時的にパーティーを組んであげると言っただけで興奮しているゆんゆんに、私は「クリエイト・ウォーター」で水を頭にぶっかけて冷やしたあげた。

 その際にギルドの備品である机や椅子が濡れてしまったが、請求はゆんゆんにお願いします。

 

 鎧さんの特別報酬が入った為、今日はクエストを受ける気がなくなった私は、昨日の疲れを癒すべく宿に戻ろうと椅子を立ち上がろうとしたその時。

 ゆんゆんが私にストップをかける。

 

 

「あ、ゆになちょっと待って」

 

「何ですか?頭に水をかけたことは謝らないよ?」

 

「それはそれで言いたいことがあるけど…………。そうじゃないのよ。待って今探すから」

 

 

 ゆんゆんはそう言って脇に置いてあったカバンの中を漁り始めた。

 チラッと見えてくるカバンの中身は、チェスにトランプ、本、何故か枕。

 この子はギルドに一体何をしに来ているのだろうか?と思ったが、話が長引きそうに思えたのでいじるのは辞めた。

 ごちゃごちゃに見えるカバンの中は、本人にとっては分かるように整理されているらしく、探し物は比較的に早く見つかった。

 それをゆんゆんは私に手渡ししてくる。

 

 

「手紙?」

 

「ほら、私って村長の後継者じゃない!?だからこうやって時々手紙や仕送りが来るの」

 

 

 あ、普通の家で仕送りがない私への当て付けですか?

 よし、ケンカなら買いますよ?

 今ここで!

 

 

「…でって!?何で拳を振りかぶっているのかなぁ!!??」

 

「うん?ゆんゆんは自慢したいだけなのかなぁ~?って」

 

「めぐみんにはするかもしれないけど、ゆになにはしないわよ!」

 

 

 めぐみんにはするんだ。

 まぁ、めぐみんの家は貧乏だもんねぇ。

 それに、ゆんゆんはめぐみんを特にライバル視しているから、一つでも勝てる部分が欲しいのだろう。

 そっとしておいてあげよう。

 

 

 そう言えば私に手渡して来た手紙は何なのだろう?と私は手元にある手紙をひっくり返して宛名を確認した。

 よく考えれば分かることだけど、ゆんゆんが私に開けてない手紙を渡すって事は宛先が私であることが普通なわけで、例に漏れずこの手紙は私宛だった。

 差出人を見ると、お母さま。

 

 

「何で私宛の手紙をゆんゆんが?はっ!もしかして郵便物の偽造受け取り!?遂に犯罪に……」

 

「あのね!!私の話をちゃんと聞いてたの?私宛の荷物の中にそれが入っていたから持ってきてあげたのに」

 

「あっホントだ。「郵便代が勿体無いので村長の郵便物に混ぜておきます」って書いてある」

 

「不法投入!!?お父さんもしっかり確認してよぉ~」

 

 

 まさか自分宛の荷物にコッソリ紛れ込ませてあったものだとは思わなかった手紙に、ゆんゆんが項垂れている間に私は手紙の内容を読む。

 

 

『ゆになへ

 

   お元気ですか?お母さんは、ゆになが見知らぬ街でうまくやっていけてるかあまり心配ではありません。(じゃあなんで聞いたし!?)だってゆになは私の子ですもの!こちらは変わりはありません。今日もいつも通り、魔王軍に嫌がらせの襲撃を行って来ました。(あ~~ね)こちらの現状報告は以上です。しかし、お母さんはゆになに言いたいことがあります。それは……………………(ゴクリ)…………仕送りは何時になったら届くのかしら?(あ、仕送りを受け取る方ではなく、送る方でしたか)お母さん、もうそろそろ貯金が無くなってしまいそうなの。(………)後、偶には帰って来なさい。結婚相手を探してあるので(もう!!?気が早すぎるよ!?)ではゆになが大金と一緒に帰ってくる日を楽しみに待っています。

 

                        ゆになの母クインローMARK2より

 

 追伸:因みにお母さんは三日前まで風邪でダウンしてました。             』

 

 

 色々と突っ込ませて欲しいが、やめておこう。

 だって私がこんな性格なんだよ!?

 親がそんなのだって不思議じゃないよね!?

 取り敢えず私がすることは…。

 

 

「ゆにな、どんな内容だった?」

 

「……………………知らない方がゆんゆんの為ためですよ(主にツッコミどころが多すぎで息が持つかどうか)」

 

「そ、そうなんだ」

 

 

 手紙の存在を無かった事にすることだった。

 

 

 さてと、明日から頑張りますか。

 先ずはゆんゆんとパーティー活動。

 次にアクア様とカズマ君の借金返済の手伝い。

 その後は、また魔王軍の幹部が来るかもしれない。

 まぁ、面白可笑しく生きる努力をしよう。

 そうしたら、私にも……………………。

 

 

 私はギルドから宿までの道のりで、そんなエピローグ的な事を考えた。

 

 

 

 

 私にも

 

 駄目神様にお祈りを挙げるのではなく

 

 心の底から

 

 この素晴らしい世界に祝福を挙げられるようになるかもしれない。

 

 

 

 

 

         この素晴らしい駄目神様にお祈りを!完(仮)




 大変長らくお付き合いいただきありがとうございました。仮エンドです。また再開するかもしれませんが今までありがとうございました。
 活動報告に後書き的な事と今後について、後現状報告をしてます。そちらも宜しければどうぞ。
 では、また会える日まで。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。