仮面ライダーエグゼイド:クロスエンディング~スーパーゲーム大戦~ (GAP)
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第一部 邂逅篇
第1話


※仮面ライダーエグゼイドをメインにした、クロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗のリセットが本編で失敗した世界線の物語です。
※SAOの時間軸は劇場版の後となっています。

ALOの特殊クエストに参加していたクライン率いるギルド「風林火山」は、クエスト中に謎の敵と遭遇する。
その敵の正体と目的とは?


【VRMMOゲーム ALO 森林:夜】

 

月明りの差し込む森の中で、和風な赤い装備に身を包んだ6人のプレイヤーたちが一頭の獣と戦っていた。

 

彼らの名は「風林火山」。ALOでも名の通った中堅ギルドで、メンバーはみんな1年ほど前に起きたSAO事件の帰還者、通称「SAOサバイバー」で構成されており、リーダーのクラインを筆頭に腕利きが揃っている。

 

クライン「これでトドメだ!」

 

リーダーのクラインが両手に持った刀を突きたてると、獣は断末魔の叫び声をあげ、そのまま消えていった。

 

カルー「中々のクエストだったな」

 

クライン「だな。でもおかげで…」

 

クラインがそういってステータスウインドウを開くと、アイテムボックスにめったに手に入らないレアアイテムがドロップされていた。

 

クライン「っしゃ!」

 

クラインがガッツポーズをすると、他のメンバーも自分のステータスウインドウを開いてアイテムボックスを確認し、それぞれ満足げな声をあげる。

 

ジャンウー「しかし、運営も太っ腹だよな!いきなりこんなレアアイテムが手に入るクエストをするなんて」

 

トーラス「しかもそんなに難易度も高くないしな。こりゃ期間中は大儲け出来そうだぜ!」

 

現在、ALOでは運営が特殊クエストを開催しており、手ごろな難易度でレアアイテムが手に入ると話題になり、連日多くのプレイヤーが参加しているのであった。

 

クライン「それじゃあアイテムも手に入ったし、ホームに戻って打ち上げと行くか!」

 

風林火山メンバー「おー!」

 

そう言ってメンバーがホームに帰還しようとしたとき、突如アラームが鳴り響きステータスウインドウが強制展開される。

 

全員がその通知を確認すると、そこには赤い文字で「緊急クエスト発生」とだけ書かれていた。

 

クライン「緊急クエスト?」

 

クラインが首を傾げたのと同時に、6人の前に同じ数のNPCと思しきエネミーキャラが現れる。しかし、その見た目は通常のALOで出現するモンスターなどではなく、シンプルなデザインの、茶色とベージュを基調とした人型のキャラクターだった。

 

アクト「なんだこいつら?!」

 

アクトの言葉に全員が相手のステータスを確認する。

 

そこには「ライドプレイヤー」という文字だけが表示されており、通常表示されるはずのHPなどのステータスが表示されていなかった。

 

その異常さに、風林火山のメンバーは戸惑うが、ライドプレイヤーたちはお構いなしに襲い掛かってくる。

 

クライン「よく分からねぇが、やるしかないな」

 

トーラス「ああ!とっとと終わらせて打ち上げと行こうぜ!」

 

2人の言葉を皮切りに、風林火山メンバーがライドプレイヤーを迎撃し始める。

 

通常のエネミーとの戦闘と同じく、挙動を読んで反撃しようとするが、ライドプレイヤーたちの動きはNPCとは思えないほど洗練されており、まるで本物のプレイヤーを相手にしているようだった。

 

オプトラ「くそっ!こいつら中々やるぞ!」

 

トーラス「まるでプレイヤーみたいだ!本当にエネミーかよ⁉」

 

クライン「だったらデュエルの時と同じようにすりゃいいだけだ!」

 

クラインはそう叫びながら飛びかかってきたライドプレイヤーのわき腹を刀で切り裂く。

 

すると、他のエネミー同様、ライドプレイヤーは消滅した。

 

それを見た他のメンバーも次々とライドプレイヤーに攻撃を加え、やがて全てのライドプレイヤーを倒した。

 

アクト「何とかなったか」

 

ジャンウー「だな。しかし、こいつら一体何だったんだ?」

 

クライン「もしかしたら今回のクエストから実装された新エネミーなのかもな」

 

メンバーが言い合っていると、背後から拍手と声が聞こえてきた。

 

???「さすがはSAOサバイバーの風林火山。見事な腕だ」

 

その声に、メンバー全員が振り返ると、新たなエネミーと思しきキャラクターが立っていた。

 

その顔は先ほど戦ったライドプレイヤーと似ているが、頭には角が生えており、漆黒のボディにメタリックグリーンの幾何学的な模様が入っている。そして、腹部にはゲームのコントローラーのようなグリーンのアイテムがついていた。

 

そして何より、まとう雰囲気や体から発するオーラが違っていた。

 

クライン「なんだ⁉新しいエネミーか⁉」

 

クラインの問いに、そのエネミーは応える。

 

クロノス「私の名は仮面ライダークロノス。このALOの新たな管理者にして、ここから生まれる新たな世界の…ルールだ」

 

クライン「ALOの管理者⁉」

 

アクト「それに新たな世界って…」

 

クロノスの言葉にメンバーは困惑する。

 

クロノス「君たちには私の作る新たな世界の礎になってもらう。そしてそこから始まる、最高のゲームの幕開けを担っていただこう」

 

カルー「ふざけるな!」

 

オプトラ「ルールだか何だか知らねぇが、打ち上げの邪魔すんな!」

 

2人が叫びながらクロノスに向かっていく。

 

クロノス「やれやれ」

 

クロノスはそういうと、腹部に付けていたアイテム―――バグヴァイザーⅡを取り外し、右腕に装着する。すると、アイテムの尖った部分がチェーンソーのようになり、それで向かってきた2人を薙ぎ払う。

 

クライン「てめぇ!」

 

クラインが叫ぶと同時に、残っていたメンバーもクロノスに向かっていくが、ライドプレイヤーとは比べ物にならないほどの動きと腕に付けたバグヴァイザーⅡで、クロノスは風林火山のメンバーを蹂躙していく。

 

ジャンウー「こいつ、強ぇ!」

 

クライン「囲んで一気に攻めるぞ!」

 

クラインの号令で、メンバーがそれぞれクロノスを囲むように輪になる。

 

クライン「手加減は抜きだ!全員の必殺を叩き込む!」

 

そして風林火山のメンバーが持った武器が赤く輝き始め、必殺技の発動準備に入る。

 

しかし、その様子を見てもクロノスに焦りはなく、むしろ余裕を見せながら腕に付けていたバグヴァイザーⅡを再び腹部に装着する。

 

クライン「風林火山の必殺奥義、受けてみやがれ!!」

 

クラインの合図とともに全員一斉に必殺技を発動させながらクロノスに飛びかかる。

しかし、クロノスは余裕を持ったまま、

 

クロノス「愚かな」

 

と言いながら腹部に装着されたバグヴァイザーⅡの左右にあるボタンに手をかけ、同時に押す。

 

『PAUSE』

 

腹部のアイテムからその音声が流れた瞬間、目前まで迫った風林火山メンバーの攻撃が静止した。

 

それだけではなく、フィールドに舞っていた微細な土埃や、吹いていた風まで全てが静止している。

 

ただ、クロノス1人だけがその空間で動いていた。

 

クロノス「さて…」

 

クロノスはそう言うと、再びバグヴァイザーⅡを右腕に装着してチェーンソーを起動させ、

 

クロノス「ハァッ!!」

 

と叫びながら回転し、風林火山のメンバー全員を薙ぎ払うかのように攻撃を加え、その後、右腕のバグヴァイザーⅡの上下を逆にして付け替えながら、離れた所へ移動する。

 

クロノス「これで最後だ」

 

そう言い放ったあと、クロノスはバグヴァイザーⅡの先を風林火山メンバーに向け、そのまま光弾を発射した。

 

光弾が命中したのを確認すると、バグヴァイザーⅡを腹部に戻し、再び2つのボタンを同時に押した。

 

『RESTART』

 

アイテムからその音声が流れると同時に、静止していたものが動き出し、攻撃を食らった風林火山のメンバーが火柱を上げて吹き飛んだ。

 

クライン「ぐわぁぁぁぁぁぁ!」

 

クライン含め、風林火山のメンバーたちが声をあげながら地面に転がる。

 

全員、HPゲージが赤くなり、残り僅かな量しか残っていなかった。

 

クライン(なにが起きた!?俺たちは確かにあいつに攻撃していたはずなのに!?)

 

目の前で起きた現実にパニックになりながらも、クラインは考えようとする。

 

しかし、そんなクラインの考えなどお構いなしにクロノスはゆっくりとメンバーに近づき、手に出現させた小さいものを投げつけるとそれが風林火山メンバーの体に手裏剣のように突き刺さる。

 

よく見ると、それは取っ手の付いたレトロゲームのカセットのような形をした物体だった。

 

全員にそれが刺さったことを確認すると、クロノスはバグヴァイザーⅡを取り外し、右手に掲げてボタンを押す。

 

すると、クラインたちの体から青い光の粒子のようなものが浮き出て、先ほどのカセットのような物体に集まっていく。

 

それに合わせて、クラインたちの意識が遠のいていく。

 

クライン(体から力が…抜け…て…)

 

その言葉を頭に浮かべると同時に、クラインの意識は消失し、体も光の粒子となってカセットの中に消え、ほかのメンバーの体も消滅した。

 

その後、カセットは宙を浮いてクロノスの手元に戻ると、1つの赤いカセット―――ガシャットとなり、取っ手の部分に「風林火山」というタイトルロゴが浮かびあがる。

 

クロノス「フフフ…。これでデータは揃った。あとはアレを手に入れれば、私の世界が誕生する!フフフハハハハハ!ハーッハハハハハハハハハ!!」

 

邪悪な高笑いを上げながらクロノスはその場を後にする。

 

そこには、風林火山メンバーが繰り広げた戦いの跡だけが、寂しく残っていた。

 

 

 



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第2話

※仮面ライダーエグゼイドをメインにした、クロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗のリセットが本編で失敗した世界線の物語です。
※アクセル・ワールドは原作準拠の世界観です。

無制限中立フィールドで修行をするシルバー・クロウとブラック・ロータス。
お互いに技を磨き、高め合う2人だが、そこで思わぬ事態に遭遇する…。


【VR格闘ゲーム「ブレインバースト」 無制限中立フィールド 荒野:昼】

 

太陽が照り付ける灼熱の元、2人のデュエルアバターが技を競い合っていた。

 

一方は鋭い剣のような四肢を持った漆黒のアバター、ブラック・ロータス。もう一方は背中に翼をもつ銀のアバター、シルバー・クロウである。

 

この2人はブレインバースト世界で「親と子」と呼ばれる関係であると同時に、黒のレギオン「ネガ・ネビュラス」のリーダーとそれを守る騎士という間柄である。

 

なお、現実世界では同じ中学に通う先輩・後輩で、ブラック・ロータスこと黒雪姫はシルバー・クロウこと有田ハルユキに恋心を抱いているが、それはまた別の話。今は純粋にお互いの技を高め合う戦友として相対していた。

 

ロータスの剣のような腕に、クロウは手刀で応戦し、激しくぶつかり合う。

 

ロータス「どうしたクロウ!脇が甘いぞ!」

 

ロータスはそう言って、鋭い四肢による連続攻撃をクロウに浴びせる。

 

クロウ「くっ!」

 

あまりに早いその攻撃を捌ききれないクロウは背中の翼を少し展開させ、一度距離をとる。

 

ロータスはすぐさま距離を詰めようとするが、クロウは翼を動かし、体を少し浮かせた状態で向かってきたロータスを迎撃する。

 

クロウ「エアリアル・コンボ!」

 

そう叫びながら、クロウは先ほどロータスが自身に見舞った連撃の意趣返しと言わんばかりに蹴りや拳、手刀などの連撃を叩き込む。

 

意識が完全に攻めに傾いていたロータスは不意を突かれるが、すぐさま防御に意識を切り替え、クロウのエアリアル・コンボを捌いていく。

 

ロータス「いい判断だが、それで不意を突くにはまだ甘いぞ!」

 

クロウ「まだまだ!これからです!」

 

そういうと、クロウは右足に力を込めた蹴りでロータスの体をガードごと弾き飛ばす。そして休む間もなく右腕に力を集中し、ブレインバーストの奥義である心意技(インカーネイト・システム)を発動する。

 

そしてそのままロータスに向けて右腕を腰だめに構え、

 

クロウ「レーザー・ランス!」

 

と叫びながら、力強く一気に前へと突き出す。

 

すると、クロウの右腕から先のとがった光のエネルギーが発射され、ロータスめがけてすさまじい勢いで伸びていく。

 

しかし、ロータスはその光が届くか否かのギリギリで体勢を立て直し、

 

ロータス「はぁっ!」

 

という気合と共にクロウの技を右腕ではじく。

 

そのまま迎撃しようと前方に目を向けるが、先ほどまでいたはずのクロウの姿が消えていた。

 

ロータス「何っ!?」

 

ロータスがそう言うと同時に、頭上からクロウの声が大きく響く。クロウはレーザーランスを囮に使い、ロータスが技をはじく一瞬の隙をついて空中へ飛び上がり、自身の本来の必殺技である「ダイブ・キック」でロータスを仕留めようとしていた。

 

クロウ「そこだぁぁぁぁぁ!!」

 

咆哮と共にクロウのダイブキックが炸裂し、地面にクレーターができる。しかし、仕留めたと思ったロータスの姿はそこになく、ただ土煙だけが上がっていた。

 

クロウ「あれっ?」

 

クロウが間抜けな声を上げると、

 

ロータス「隙ありだ!」

 

という声と同時に、両腕をクロスさせたロータスの一撃がクロウの背中に入れられ、大きく吹き飛ばされる。

 

クロウ「ぐあっ!」

 

地面に叩きつけられたクロウはうめき声をあげるが、すぐに立ち上がろうと腕に力を入れる。しかし、そんなクロウの目の前にロータスの剣のような腕が突きつけられ、勝敗は決した。

 

ロータス「素晴らしい闘いだったよクロウ。最後のダイブキックはさすがの私も焦ってしまった」

 

クロウ「いや、まだまだですよ。先輩の最初の連撃も捌ききれませんでしたし」

 

闘いを終えた2人は休む間もなく、お互いの技を分析し合う。

 

ロータス「そうだな。攻めの技術はかなり磨かれれているが、防御の技術は詰めが甘い。今度私が中華街での修行で会得した守りの技を教えよう」

 

クロウ「はい!お願いします!…って、中華街の修行って何ですか⁈」

 

ロータス「ふふ。まぁいろいろとね。その話も含めて伝授するよ」

 

クロウ「…楽しみにしてます」

 

ロータス「うむ!…それにしても、遅いな、レインのやつ」

 

そう言いながら、ロータスは腰に両手を当てる。

 

本来、今日は同盟を組んでいる赤のレギオンのリーダー、スカーレット・レインと同じく副長であるブラッド・レパードと共にタッグ戦形式でトレーニングをする予定だったが、2人が定刻になっても現れなかったため、2人で先にトレーニングを始めたのだった。

 

クロウ「そうですね。レインはともかく、あのせっかちなパドさんが時間に遅れるなんて…」

 

ロータス「…もしかしたら、何かあったのかもしれないな。最近流行っている噂もある」

 

クロウ「それって、いきなりバトルに乱入してくるっていう謎のアバターのことですか?」

 

クロウの問いに、ロータスは静かにうなずく。

 

ここ最近、ブレイン・バースト内で1対1のバトルに乱入し、無理やり対戦相手を倒して立ち去っていく謎のアバターが話題となり、乱入方法や正体がつかめないことから一部では「幽霊アバター」などと呼ばれていた。

 

クロウ「でも、あれって確か通常バトルフィールドでの話ですよね?無制限中立フィールドには出ないんじゃ?」

 

ロータス「奴のレベルが4を超えていればこの無制限中立フィールドに来たとしてもおかしくはない。それに、これまでの事件を分析するに、奴はどうもレベルの高い、腕の立つプレイヤーを狙っていた節があるからな。レインがもし狙われていたら…」

 

ロータスがそこまで話した瞬間、2人から離れたところで大きな爆発があり、土煙が舞い上がる。

 

クロウ「あの爆発って…まさか!?」

 

爆発を見たクロウの脳裏に、スカーレット・レインの持つ強化外装「インビンシブル」のことが浮かび上がる。今見た爆発はスカーレット・レインの必殺技であり、インビンシブルの「ヘイルストーム・ドミネーション」の爆発と酷似していた。

 

ロータス「悪い予感が当たったようだな!行くぞクロウ!」

 

クロウ「はい!」

 

クロウはそういうと、ロータスの体を抱きかかえ、背中の翼を全力で作動し、爆発のあった地点へ向かう。

 

風を切るような速さで飛翔し、すぐさま爆発地点へ到着したクロウとロータスの目に映ったのは、強化外装をバラバラにされ、地面にうずくまる赤のレギオンのリーダー、スカーレット・レインと、全身に痛々しいダメージを負った副長のブラッド・レパードの姿だった。

 

クロウ「レイン!パドさん!」

 

ロータス「何があった!?」

 

クロウとロータスが急いで駆け寄ろうとするが、レインとレパードは2人を見るなり、

 

レイン「来るな!逃げろ!」

 

レパード「奴は強すぎる」

 

と声をかけてくる。

 

クロウ「奴って…」

 

クロウがそういうと同時に、土煙の中からレインとレパードを痛めつけたらしきアバターが現れる。

 

それは、これまでに見たこともないデザインの、異質なアバターだった。上半身が裸で背中に光の輪をいくつか背負っている。まるで、インド神話に登場する闘神のようなデザインで、顔は邪悪な笑みに歪んでいる。

 

明らかに、これまでブレインバーストに登場してきたどんなアバターとも合致しない、異質なアバターであった。

 

???「キキキ…」

 

謎のアバターはいたずらっぽく笑うと、右手を宙に掲げる。すると、光の粒子がそこに集まって、巨大な鍵のような武器に変化した。

 

その鍵のような武器を掴み、謎のアバターはバラバラになったインビンシブルにその尖端を向ける。すると、インビンシブルが光の粒子へと変換され、一つの球体となった。そしてその球体は、そのまま謎のアバターの背中に背負った光の輪の中に吸収されていく。

 

クロウ「インビンシブルが!」

 

レイン「強化外装だけじゃねぇ!パドの変身能力も奪われた!」

 

ロータス「バカな!?強化外装だけならともかく、アビリティまで奪うなんて、ダスク・テイカーくらいしかできないはずだぞ!?」

 

レパード「でも、それが現実」

 

クロウたちが言い合っているうちに、謎のアバターはこちらに向かってくる。

 

レイン「すでに俺たち以外にもかなりのプレイヤーがあいつにやられてる!ここは俺とパドで時間を稼ぐからお前らは早く逃げろ!お前らがやられちまったら、うちのレギオンも終わりだ!」

 

レパード「後をお願い」

 

そういうと、レインとレパードは謎のアバターに突撃していった。

 

ロータス「待て!2人とも!」

 

ロータスが叫んだその瞬間、謎のアバターは向かってきたレインとレパードをこともなげに薙ぎ払い、地面にたたき伏せる。

 

レイン「うあぁっ!」

 

レパード「くぅっ!」

 

うめき声をあげる2人に、謎のアバターは先ほどの鍵のような武器の尖端を向ける。

 

すると、レインとレパードはインビンシブルと同様に光の球へと変換され、謎のアバターの背中に収まった。

 

クロウ「パドさん!レイン!」

 

クロウが叫ぶと、謎のアバターがまたしても笑う。まるでこの状況を楽しんでいるかのようだった。

 

ロータス「どけ!クロウ!」

 

背後からロータスに叫ばれ、クロウは思わず振り返る。

 

すると、そこには心意技を使おうとするロータスの姿があった。

 

クロウが思わず身を引くと、ロータスは一気に技を放つ。

 

ロータス「くらえ!ヴォーパル・ストライク!」

 

ロータスの右腕から、必殺の一撃が謎のアバターに向けて打ち出される。しかし、謎のアバターは手に持った鍵のような武器を一振りし、あっさりとその一撃をかき消してしまう。

 

ロータス「な…⁈」

 

クロウ「そんな…」

 

2人が唖然としたすきに、謎のアバターは鍵のような武器を頭上に掲げる。すると、そこから光があふれだし、クロウとロータスの視界が封じられた。

 

そして再び目を開けた2人は謎のアバターに視線を向けようとするが、そこにいたはずのアバターの姿はきれいさっぱり消えていた。

 

クロウ「そんな…。一体どこに?」

 

辺りを見回すクロウに、ロータスが声をかける。

 

ロータス「一度、バーストアウトしよう、クロウ。今後の対策を練らないと」

 

クロウ「バーストアウトって…。何言ってるんですか!?パドさんとニコが、消えちゃったんですよ!?」

 

ロータス「だからこそだよ、クロウ。あんな特殊な消え方をした以上、現実の世界でも彼女たちに何か起こっているかもしれない。それを確認しなければ」

 

ロータスの言葉に、クロウは冷静さを取り戻す。

 

クロウ「すいません、取り乱して…」

 

ロータス「気にするな。それより急ごう!2人が心配だ!」

 

クロウ「はい!」

 

クロウがそう返事をすると、2人はバーストアウトコマンドを口にし、現実世界へ戻る。

 

しかしそこには、残酷な真実が待ち受けているのであった…。



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第3話

※仮面ライダーエグゼイドを下敷きにしたクロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。
※基本的に仮面ライダークロニクル後の設定は本編準拠にしています。

檀正宗を倒し、仮面ライダークロニクルを終わらせた宝生永夢たちCRのドクターは、平和になった世界でそれぞれの道を歩んでいた。
そんな中、CRに緊急通報が入る。
現場に急行した永夢たちの前に現れたのは、これまで見たこともない、全く新しい新種のバグスターだった。

ここから、史上最大の物語の幕が開き、物語は加速する。


【日本 聖都 聖都大学附属病院 CR】

 

明るく整頓されたオフィスで、宝生永夢はノートPCに向かい、レポートを作成していた。

 

永夢は人々をバグスターウイルスの脅威から救った「仮面ライダー」の1人ではあるが、医療の世界ではまだ研修医で、正式な医師というわけではない。

 

檀正宗の野望を阻止し、世界は平和になったが永夢の医師になるための戦いはまだ続いているのである。

 

永夢「う~ん…。終わった~」

 

何とかレポートの作成を終え、椅子の上で大きく伸びをした永夢に、後ろから声がかかる。

 

ポッピー「永夢、お疲れさま」

 

永夢が振り返ると、そこにはいつものカラフルな衣装に身を包んだ少女、ポッピーピポパポが笑顔でコーヒーを差し出していた。

 

彼女はリズムゲーム「ドレミファビート」から生まれたバグスターでありながらCRの協力者で、一時は敵になったりしたものの、永夢たち仮面ライダーを最後まで支え続けた功労者であった。

 

永夢「ありがとう、ポッピー」

 

永夢はそういいながらポッピーからコーヒーを受け取り、一口含む。

 

ポッピー「研修、もうちょっとだね」

 

永夢「うん。これで僕も恭太郎先生と同じ道を歩めるよ」

 

恭太郎とはCRの上層部となる政府機関「衛生省」の審議官で、かつて医師として活動していた際に交通事故にあった幼い永夢の命を救い、永夢の医師を目指すきっかっけを作った人物であった。

 

ポッピー「研修が終わったらみんなでお祝いしようね!」

 

永夢「楽しみにしてるよ」

 

2人がそんな話をしていると入り口のドアが開き、アロハシャツにレザージャケットを肩にかけた九条貴利矢が入ってくる。

 

彼も永夢と同じく仮面ライダーで、元は監察医務院に所属する監察医だったが、戦いの中で一度命を失い、その後ポッピーと同じバグスターとして復活し、CRに協力した。

 

平和になった今では正式にCR所属のドクターとなり、バグスターウイルス根絶のため日々研究を重ねている。

 

貴利矢「はいただいま~」

 

ポッピー「おかえり、貴利矢」

 

永夢「作さんとの話はどうでしたか?」

 

貴利矢「とりあえず、今出せる分のデータはほぼ全て出してもらったよ。今後新しいデータが出てきたときはその都度連絡をくれるって話になった」

 

そう言いながら、貴利矢は手に持っていたバッグから書類の入った分厚いクリアファイルを出す。

 

現在、貴利矢は元幻夢コーポレーションの開発主任で、新社長になった小星作の協力を得てバグスターウイルスの研究を進めており、データを提供してもらっていた。

 

永夢「それじゃ、あとは分析次第ですね」

 

貴利矢「ああ。だが、これが結構な量でな。書類以外の電子データもあるから骨が折れるぜ」

 

ポッピー「それじゃあ黎斗の出番だね」

 

ポッピーがそう言いながら、部屋の隅にあるドレミファビートの筐体に目を向ける。

 

そこの画面には、電子の檻に囲まれた取調室のような空間で不遜な態度をとっている男がおり、ポッピーの言葉に大きく反論する。

 

黎斗神「黎斗ではない!檀黎斗神だ!」

 

この男こそ、幻夢コーポレーション前社長であり檀正宗の実の息子、檀黎斗である。

 

貴利矢と同じく仮面ライダーであり、一度命を失ってバグスターとして復活を果たした人間で、仮面ライダークロニクルをはじめ、バグスターウイルスの関する事件は今でこそ檀正宗がすべての元凶ということになっているが、元を正せば一連の事件は全てこの男が始めたものなので、まさに諸悪の根源ともいえる存在なのである。

 

しかし、復活してからは仮面ライダークロニクルの攻略と檀正宗の打倒に大きく貢献したことで衛生省から特例措置を受け、ゲーム筐体の中でのみ自由が許されることを条件に今はCRの一員となり、神を自称している。

 

黎斗の叫びに、永夢とポッピーが露骨に面倒くさそうな顔をすると、貴利矢が自分のノートPCを操作しながら黎斗に声をかける。

 

貴利矢「それじゃあ、その神の偉大かつありがたいお力で、このデータの分析、お願いできる?」

 

言い終わると同時に貴利矢はエンターキーを押し、筐体内にある黎斗のパソコンに作からもらってきたデータを送る。

 

黎斗神「フフフ。神の力が必要になったか!いいだろう!」

 

黎斗は満足げに話すと、すぐさまパソコンを操作し、データの分析を始めた。

 

ポッピー「貴利矢って、本当に黎斗の扱い上手いよね」

 

永夢「さすが人を乗せるのが得意なだけあるよ…」

 

ポッピーと永夢がそう話していると、不意に永夢の首からかかっている聴診器、ゲームスコープのアラートが鳴る。

 

永夢「緊急通報!?」

 

貴利矢「やれやれ、これから忙しくなるって時に!」

 

永夢「行きましょう!貴利矢さん、ポッピー!」

 

永夢がそういうと、3人は現場に急行するべく部屋を飛び出そうとするが、そこに黎斗が綺麗な声をかける。

 

黎斗神「私も行こう!」

 

ポッピー「ダーメ!黎斗は衛生省の許可がないと出られないんだから、おとなしくここでお・留・守・番!」

 

ポッピーはそう言い残すと、永夢と貴利矢と共に部屋を飛び出していく。

 

黎斗神「おい待て!神をないがしろにする気か!?ここから出せェ!ぶぅぅぅぅぅん!!」

 

画面の中から絶叫する自称・神だったが、その言葉に耳をするものはいなかった。

 

 

 

現場は病院からほど近い屋外のショッピングモールで、3人が駆け付ける時には買い物客が逃げ惑うパニックに見舞われていた。

 

永夢「一体何が…?」

 

逃げてくる人たちをかき分け、奥に進んでいく永夢たちの前に、このパニックを起こしていると思われる3人のバグスターたちの姿が現れる。

 

しかし、それはこれまで相手にしてきた、どのバグスターとも違った外見をしていた。

 

1人目は青いマスクをかぶり、右手に星のマークが入った丸い盾を持っており、2人目は全身を赤いアーマーに包んだロボットのような外見をしている。そして3人目は全身に漆黒のスーツをまとった、まさにクロヒョウのような見た目だった。

 

ポッピー「こんなバグスター見たことないよ!」

 

永夢「僕もだ。でも確かにバグスター反応はある!」

 

永夢がそう言いながらゲームスコープを3人に向ける。確かにバグスターウイルスの反応は出ているが、これまで倒し、治療してきたどのウイルスにも合致しない。

 

その事実に、戸惑うポッピーと永夢だったが、貴利矢は3人を見て表情を硬くし、

 

貴利矢「こいつらまさか…!?」

 

と言った。

 

永夢「知っているんですか貴利矢さん!?」

 

貴利矢「作社長から貰ってきたデータの中に、こいつらが出てくるゲームのことが載ってた。幻夢コーポレーションは他社が制作したゲームもいくつかガシャット化しているからな」

 

貴利矢の言葉に、永夢は思い出す。かつてDrパックマンとの戦いの後、「ゼビウス」や「ファミスタ」、「ギャラクシアン」など、幻夢コーポレーションが発売したゲーム以外のガシャットを使って戦ったことを。

 

ポッピー「それで貴利矢、これはなんていうゲームのキャラクターたちなの!?」

 

ポッピーが問うと、貴利矢はゆっくりと答える。

 

貴利矢「こいつらはアメコミヒーローたちが活躍する格闘ゲーム、『マーヴル・スーパーヒーローズ』に出てくるキャラクター、というかヒーローだ。あの盾を持っているのがキャプテン・アメリカ、赤いのがアイアンマン、クロヒョウみたいなのは確かブラックパンサーってやつだ。幻夢コーポレーションが台頭する前、日本に存在していたカプコンって会社が制作したゲームだが、見たところ本来はゲームに登場しないブラックパンサーも混じっているから、原作から多少魔改造されてるみたいだな」

 

貴利矢の言葉を聞いて、永夢はもう一度3人のバグスターに目を向ける。確かに外見的にはヒーローだが、今彼らが行っていることはヒーローとはとても言えない。

 

永夢「たとえ原作でヒーローだろうと、今やっていることはヒーローのすることじゃない!」

 

永夢はそう言ってゲーマドライバーを取り出し、腰につける。

 

貴利矢「だな。それじゃあさっさと片付けるか!」

 

そういいながら貴利矢もゲーマドライバーを腰につけ、

 

ポッピー「ヒーローがこんなことするなんて、許せないよ!」

 

と言ってポッピーも2人続いてバグルドライバーⅡを腰につける。

 

それから3人同時にそれぞれマイティアクションX、爆走バイク、ときめきクライシスのガシャットを取り出し、ボタンを押して起動させる。

 

『マイティアクション!エーックス!』

 

『爆走!バーイク!』

 

『ときめき!クライシス!』

 

起動音が鳴ったあと、3人は各々の変身ポーズに入る。

 

貴利矢「ゼロ速…」

 

ポッピー「ポパピプペナルティ…」

 

永夢&貴利矢&ポッピー「変身!!」

 

掛け声とともに、永夢は仮面ライダーエグゼイドへ、貴利矢は仮面ライダーレーザーターボへ、ポッピーは仮面ライダーポッピーへと変身する。

 

レーザー「さーて、ノリノリで行こうか!」

 

エグゼイド「ああ!ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」

 

永夢と貴利矢がそういうと、ポッピーも含めた3人はバグスターたちに向かっていく。

 

その結果、エグゼイドVSアイアンマン、レーザーVSキャプテン・アメリカ、ポッピーVSブラックパンサーといった対戦カードに分かれた。

 

エグゼイドはガシャコンブレイカーをハンマーモードにし、アイアンマンに殴りかかるが、アイアンマンはすぐさま空中へと飛び上がり、手からレーザーを発射して地上のエグゼイドに攻撃を加えていく。

 

エグゼイド「だったらこれだ!」

 

そういうと、エグゼイドは腰にぶら下がっていたゲキトツロボッツガシャットを取り出し、ゲーマドライバーに差してレベルアップする。そして、右腕についたロケットパンチを発射してアイアンマンを追尾し、そのまま地面へ叩き落した。

 

エグゼイド「地面に落とせばこっちのものだ!」

 

そういいながらエグゼイドは発射したロケットパンチを戻しながら墜落したアイアンマンに突撃し、猛攻を加えていく。

 

一方のレーザーは得意の蹴りを主体とした格闘戦でキャプテン・アメリカに挑むが、攻撃はすべて盾によってはじき返されてしまい、さらにキャプテン・アメリカが盾をブーメランのようにして攻撃してくるため、防戦一方となった。

 

レーザー「ブーメラン勝負、乗ってやろうじゃないの!」

 

レーザーはそういうと、プロトシャカリキスポーツガシャットを使ってレベルアップし、両肩についたトリックフライホイールを投げて、キャプテン・アメリカのシールドブーメランに対抗する。

 

ブーメランとなる盾が1つしかないキャプテン・アメリカに対し、レーザーは2つのフライホイールを使っているので必然的に有利となり、さらに隙をついて距離を詰め、格闘戦で圧倒していく。

 

そしてポッピーも変則的な動きでブラックパンサーに立ち向かうが、それ以上に変則的かつ鋭い攻撃を受け、苦戦を強いられる。

 

ポッピー「こうなったら、奥の手だー!」

 

ポッピーはそう言うと、腹部に装着していたバグルドライバーⅡをバグヴァイザーⅡへと分離し、チェーンソーモードにして右腕に装着する。

 

ポッピー「いっくよ~!」

 

そう言いながらポッピーは体を高速で回転させ、竜巻のような状態でブラックパンサーに攻撃する。

 

さしものブラックパンサーもこの攻撃には不意を突かれ、やがて大きく吹き飛ばされた。

 

有利な状況となった3人のライダーが肩を並べる。

 

エグゼイド「このまま一気に決めるぞ!」

 

レーザー「ああ!」

 

ポッピー「オッケー!」

 

ライダーたちがそれぞれ必殺技の体制に入ろうとした瞬間、空から稲妻が落ちて3人に命中する。

 

エグゼイド「うわぁぁぁぁ!」

 

レーザーターボ「ぐわぁぁぁぁ!」

 

ポッピー「きゃぁぁぁぁ!」

 

突然の雷撃に3人の体は吹き飛ばされ、地面を転がった。

 

エグゼイド「今の攻撃は…?」

 

エグゼイドが顔を挙げると、先ほどまで闘っていた3人のバグスターの後ろに、新たなバグスターが出現していた。それは、緑の肌をした巨人と、銀のハンマーを持った戦士、そして赤と青にクモの巣のような模様の入ったスーツを来た細身の男だった。

 

ポッピー「バグスターが…増えた!?」

 

レーザー「あいつらも同じゲームのヒーローだ…。緑の巨人ハルクに雷神ソー、そしてスパイダーマン、だったかな…」

 

エグゼイド「こっちは3人なのに…!」

 

エグゼイドは立ち上がりながらうめくように言う。

 

しかし、レーザーターボはポッピーに肩を貸して一緒に立ち上がると、エグゼイドの肩に手を置いて余裕を持ちながら声をかける。

 

レーザー「大丈夫だ。こっちも援軍が来た」

 

レーザーがそう言った瞬間、エグゼイドの背後から砲撃と光の斬撃が飛んできて、敵のバグスターに命中する。

 

その攻撃が飛んできた方にエグゼイドが振り返ると、そこには同じCRのメンバーで、天才外科医の鏡飛彩が変身した仮面ライダーブレイブ・レガシーゲーマーと、元CRの医師で、5年前よりバグスターと戦ってきた歴戦の勇士、花家大我が変身する仮面ライダースナイプ・シミュレーションゲーマーが駆け付けていた。

 

エグゼイド「飛彩さん、大我さん!」

 

ブレイブ「待たせたな、研修医」

 

スナイプ「またとんでもねぇのが相手らしいな」

 

2人はそういいながらエグゼイドたちの隣に並ぶ。しかし、来たのはこの2人だけではない。

 

バグスターたちの両サイドからはCRで閉じ込められていたはずの檀黎斗が変神…もとい変身した仮面ライダーゲンム・ゾンビゲーマーと、ポッピーと同じバグスターであり、永夢の分身ともいえるパラドが変身する仮面ライダーパラドクス・パーフェクトノックアウトゲーマーが飛び出してくる。

 

パラドクス「うおりゃあ!」

 

ゲンム「ハアッ!」

 

そう叫びながら、ゲンムはソードモードにしたガシャコンブレイカーで、パラドクスはガシャコンパラブレイガンで大技を放ち、6人のバグスターに奇襲攻撃で吹き飛ばす。

 

エグゼイド「パラド!それに黎斗さんまで!」

 

合流した5人と共に、エグゼイドがゲンムとパラドクスに駆け寄りながら声をかける。

 

パラドクス「永夢のピンチに、俺が来ないわけないだろ?」

 

パラドクスがおどけるようにエグゼイドに言う。

 

ゲンム「ブハハハハハァ!君たちが出て行った後、永夢のゲームスコープから転送されたデータから新型のバグスターということが分かったからなァ!衛生省の許可が下りたのさァ!」

 

そうして不遜な態度をとった後、ゲンムはソーの方をにらみつける。

 

ゲンム「ゲームのキャラとはいえ、この私を差し置いて神を名乗ることは許さん!貴様は私自らの手で削除してやろう!」

 

ゲンムのブレない、というか空気を読まない態度に、その場の全員が少しあきれる。

 

レーザー「ハイハイ。分かったから、とっとと終わらせようぜ、神!」

 

レーザーがそう言ってゲンムの肩を叩くと、ほかのメンバーも同調する。

 

ブレイブ「ああ。新たなバグスターの存在など、ノーサンキューだからな!」

 

スナイプ「こいつら全員、さっさとぶっ潰すぞ!」

 

ポッピー「そうだよ!永夢の研修修了のお祝いもしなきゃいけないんだから!」

 

エグゼイド「よし!みんな行くぞ!」

 

エグゼイドの掛け声と共に、7人のライダーが一斉に駆け出す。

 

エグゼイドはパラドクスと共にハルクへと立ち向かう。

 

パラドクス「うおおおおおお!」

 

エグゼイド「はああああああ!」

 

パラドクスはパラブレイガンをガンモードにして撃ちまくり、エグゼイドは先ほど同様、ロケットパンチを発射してハルクに連続攻撃を加えてながら距離を詰める。

 

そしてハルクの胸元にロケットパンチが当たったのと同じくエグゼイドが間合いに入り、胸元のロケットパンチに絶妙なタイミングで右のパンチを繰り出し、合体と同時に攻撃をする。

 

エグゼイド「とおりゃあ!」

 

その衝撃にハルクがよろけ、少し距離が開くと、エグゼイドの背後からパラドクスが飛び出し、アックスモードにしたパラブレイガンでハルクを連続で斬りつける。

 

パラドクス「うりゃあ!」

 

そして最後は2人の、

 

エグゼイド&パラドクス「うおりゃああ!」

 

という叫びと共にキックがハルクに炸裂し、その巨体が倒れた。

 

少し離れたところでは、ブレイブとキャプテン・アメリカが戦闘を開始。

 

ブレイブのガシャコンソードを巧みに捌き、キャプテン・アメリカに攻撃を加えるが、盾に斬撃を阻まれてしまう。

 

ブレイブ「その盾、切り裂かせてもらう!」

 

ブレイブはそういうと、ガシャコンソードのオレンジのボタンを押し、刀身をファイヤーモードに切り替える。

 

ブレイブ「ハァァァッ!」

 

ブレイブが気合と共に渾身の斬撃を加えると、盾は真っ二つに切り裂かれ、キャプテン・アメリカは防御手段を無くす。

 

ブレイブ「俺に斬れないものはない!」

 

そう言って、ブレイブはマントを翻して光の短剣を出現させ、無防備になったキャプテン・アメリカに連続攻撃を叩き込み、彼を地面に倒れさせた。

 

地上と空中に分かれたスナイプとアイアンマンは、ビームと砲撃による激しい打ち合いを展開している。

 

弾幕はスナイプが上だが、空中で自由自在に飛び回るアイアンマンにうまく命中させることができない。

 

スナイプ「ならこいつだ!いけ!」

 

スナイプがそう叫ぶと、両手についたガンユニットの甲板部分から小型戦闘機が飛び出し、空中にいるアイアンマンに攻撃を加えていく。

 

小さく、動きが捉えづらい戦闘機にアイアンマンは翻弄され、そこに隙ができる。

 

スナイプ「くらえ!」

 

その隙をついて、スナイプは全身についている10門のスクランブルガンユニットを一斉に発射し、アイアンマンに最大火力の砲撃を叩き込む。

 

その威力に、アイアンマンはあえなく墜落し、勝敗は決した。

 

一方、ポッピーはスパイダーマンの手から出す糸につかまり、体の動きを封じられていた。

 

ポッピー「なにこれー!はーなーしーてー!」

 

ポッピーは必死に体を動かし、糸をはがそうとするが、スパイダーマンは決して放そうとしない。

 

その時、横合いから2つのフライホイールが飛来し、1つはポッピーの体の糸を切り、もう1つはスパイダーマンに攻撃を加えて吹っ飛ばす。

 

レーザー「あれれ~?油断大敵ってやつじゃないか?ポッピー!」

 

レーザーが両手でフライホイールをキャッチしながら、いたずらっぽくポッピーに声をかける。

 

するとポッピーは、バグヴァイザーⅡをガンモードにし、その銃口をレーザーに向けた。

 

レーザー「え!?ちょっ、タイムタイム!冗談だって!!」

 

ポッピーの予想外の行動に、レーザーは慌てるが、ポッピーはお構いなしにビームを高出力でレーザーに向けて発射する。

 

思わずレーザーがしゃがみ込むと、ビームはその背後から襲い掛かろうとしていたブラックパンサーに命中し、そのまま撃墜した。

 

それを見て唖然としているレーザーのもとにポッピーが駆け寄ってきて、さっきのお返しと言わんばかりに声をかける。

 

ポッピー「貴利矢も油断大敵なんじゃない?」

 

その言葉に、レーザーはフライホイールを肩に戻しながら苦笑し、

 

レーザー「こいつは乗せられちゃったな」

 

と言って右手を上げ、ポッピーとハイタッチをした。

 

そして我らが神ことゲンムは、北欧神話の雷神ソーに凄まじい…もといウザったいくらいの猛攻を加えていた。

 

ソーはその攻撃を手にしたハンマーでこともなげに捌いているが、当のゲンムはそんなことお構いなしにガシャコンブレイカーを振り回す。

 

ゲンム「ブゥハハハハハァ!どうした、防戦一方じゃないかァ!それで神を名乗るとは片腹痛いぞォ!」

 

そんなゲンムの攻撃は当然隙だらけで、その隙をついてソーはゲンムの頭にハンマーで強力な一撃を叩き込む。

 

ゲンム「ぐ、ぐぅぅぅ…。こんな攻撃ィ…」

 

口では強がっているが、ゲンムの頭上にはピヨピヨとヒヨコが輪を描いて飛んでおり、俗にいう「ピヨった」状態になっている。

 

そんなフラフラのゲンムの腹に、ソーは至近距離からハンマーを投げるようにブチ当て、ハンマーごとゲンムを遠くに吹っ飛ばして壁にたたきつける。

 

するとゲンムの胸に刻まれたHPゲージが一気に0になり、

 

『GAME OVER』

 

の音声と共にドット絵が崩れるかのようにゲンムの体が消える。

 

ソーは自分の手に戻ってきたハンマーをキャッチすると、次の敵のもとに向かおうとするが、目の前にいきなり「CONTINUE」と書かれた紫の土管が現れ、その中から先ほど自分が倒したはずのゲンムが飛び出してくる。

 

ゲンム「フォーゥ!」

 

ハジけた叫びと共に、ゲンムは手に持っていたガシャコンブレイカーでソーを斬りつける。

 

ゲンム「ブハハハハハハハハハァ!たとえ何度死のうとも蘇るのが真の神だァ!」

 

ゲンムがそう高らかに宣言するが、やっぱり隙だらけなのは変わりなく、ソーのハンマーによる極大の雷が直撃する。

 

ゲンム「ブゥワァァァァァァァァァァ!!」

 

その断末魔と共にゲンムのHPは再びゼロとなり、本日2回目となる

 

『GAME OVER』

 

の音声が響き渡る。しかし、すぐさまのソーの背後から先ほどの土管が出現し、

 

ゲンム「プゥゥゥゥゥハァァァァァァァァァァァァ!」

 

というこれまたハジけた声と共にゲンムが復活し、ソーの背中を思い切り斬りつける。

 

そこからパーリナイと言わんばかりにゲンムの猛攻が始まるが、先ほどと違い、背後を取られたためソーは本当に防戦一方となり、追い詰められていく。

 

ゲンム「神はァ!何度でもォ!蘇るゥ!私はァ!不滅だァァァ!」

 

ゲンムの叫びと共に会心の一撃が決まり、ソーが膝をつく。

 

しかし、我らが神に敵への慈悲の心は無く、ゲンムは遠慮なく顔面に全力の蹴りを叩き込み、ソーを仰向けに倒した。

 

ゲンム「この世界に神は2人もいらない…私こそが唯一にして絶対!真の神なのだァ!思い知ったかァ!ぶぅぅぅぅぅぅん!!!」

 

締めの台詞まで完璧に決めたところで、エグゼイドの掛け声が響く。

 

エグゼイド「ここで一気に決めるぞ!」

 

ライダーs「ああ!」

 

そして全員が「キメ技」に入ろうとしたその時、倒れていたバグスターたちの体が光の粒子となっていき、空中に流れていく。

 

ブレイブ「なんだこの現象は⁈」

 

ポッピー「みんな!アレ見て!」

 

ポッピーが空中を指さす。その先には、禍々しいデザインをした機械のボディをもった何者かが、ガシャットらしきものの先端を地上にいるバグスターたちに向けており、光の粒子を吸収していた。

 

光の粒子をすべて吸収すると、ガシャットの持ち手の部分に「MARVEL SUPER HEROES」のタイトルロゴが浮かび上がる。

 

エグゼイド「アレも同じゲームのヒーローなのか!?」

 

レーザー「いや、あいつはヴィラン。悪役だ。名前は確か、ウルトロン。ゲームに限らず、マーヴル世界屈指の強敵らしい。ただ、あいつもスーパーヒーローズには出ていないはずだがな」

 

レーザーがそう説明すると、空中にいたウルトロンはそれにこたえるかのように口を開く。

 

ウルトロン「その通り。私はバグスターなどではない。別の世界の地球から来た者だ。そして、私のもたらしたデータがあったからこそ、このガシャットは完成した」

 

ウルトロンの言葉に、ライダーたちが驚愕する。

 

スナイプ「別の世界…だと!?」

 

パラドクス「どういうことだ!?」

 

スナイプとパラドクスが疑問を口にするが、ウルトロンは答えない。代わりに、レーザーがウルトロンに質問する。

 

レーザー「別の地球だか何だか知らないが、おたくの目的って何?」

 

レーザーの言葉に、エグゼイドが続ける。

 

エグゼイド「そうだよ…。何の罪もない、平和に暮らしてた人たちをゲームの中のヒーローに襲わせるなんて!一体何の目的があってそんなことをするんだ!!」

 

ポッピー「永夢…」

 

怒りのまま叫ぶ永夢をポッピーが案ずる。

 

しかし、怒りをぶつけられたウルトロンはあくまで冷静に、永夢の口からぶつけられたことに答える。

 

ウルトロン「1つは貴様たち仮面ライダーをひとつの場所に集めるため。そしてもう一つは、これから始まる…史上最大のゲームのためだ…」

 

エグゼイド「史上最大の…ゲーム…?」

 

その言葉に、我らが神、檀黎斗神が反応する。

 

ゲンム「偉大なる、神の才能を持つゲームマスターたるこの私の前で、史上最高のゲームなどという言葉を口にするなど、許さんぞォ!」

 

ゲンムの叫びを華麗に無視し、ウルトロンはおもむろに右手を空中に挙げる。

 

ウルトロン「7人の仮面ライダーが揃ったこの瞬間、全ての準備は整った…。貴様らを、ゲームの舞台となる新たなる世界へと招待しよう」

 

ウルトロンがそう言った瞬間、突如として空中に穴が開き、その場にあるものを全てを吸い込んでいく。

 

レーザー「なんだこいつは⁈」

 

スナイプ「何が起こってやがる⁈」

 

ゲンム「神に対してで無礼だぞォ!ぶぅぅぅん!!」

 

ポッピー「わ~!ピプペポパニックだよぉ~!!」

 

エグゼイド「みんな何かに捕まって!じゃないと…」

 

エグゼイドが全員に叫ぶが、時すでに遅く、その場にいる全員の体が浮き上がり、空中にあいた穴に吸い込まれていく。

 

エグゼイド「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

その叫びと共に、エグゼイド、ブレイブ、スナイプ、レーザー、ゲンム、パラドクス、ポッピーたち7人の仮面ライダーは姿を消した。

 

そしてこの瞬間から、これまでに経験したことのない戦いの幕が下されたのであった…。



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第4話

※仮面ライダーエグゼイドを下敷きにしたクロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。

ALO、ブレインバースト、そして聖都と別々の世界で起こる怪事件。
その元凶は、ALO世界にある世界樹にいた。

ここから、異世界から来た者たちによる新たな戦乱が巻き起こされる


【VRMMOゲーム ALO 世界樹上部 玉座の間:夜】

 

荘厳な雰囲気の広間、その一番奥に位置する玉座に、銀色のスーツを着た男が座っていた。男は右手に「風林火山」と書かれた赤いガシャットを持ち、それを満足げに眺めている。

 

それはかつて、こことは違う別の世界で最悪のデスゲーム「仮面ライダークロニクル」を支配し、その頂点に君臨して多くの人を苦しめた仮面ライダークロノスこと檀正宗であった。

 

元の世界で正宗は、自分に歯向かうCRの仮面ライダーたちと激しい戦いを繰り広げ、さらに自分の息子である檀黎斗の開発した「ハイパームテキガシャット」の力を得たエグゼイドの前に敗れ去り、「私が世界の、ルールだぁぁぁぁぁぁ!」という絶叫と共に消滅した…はずだった。

 

消滅するかと思われた瞬間、正宗の中にあったバグスターウイルスと正宗自身の持つ執念が反応を起こし、人間もバグスターも超えた新たなる存在へと進化した。

 

そのことにより、正宗は次元を飛び越える力を手に入れ、やがてある男の導きによりこの仮想世界ALOに召喚され、無人であった玉座に君臨したのである。そして、今度こそ自分が唯一絶対のルールとなる世界を作るため、行動を起こしたのだった。

 

正宗はガシャットを持った右手をおろし、ゆっくりと目を閉じる。

 

そして脳裏に、これから始まる最大のゲームと、それを支配する自分の姿を思い浮かべ、恍惚の笑みを漏らした。

 

そんな正宗に、正面からさわやかな声がかかる。

 

???「ずいぶんと嬉しそうですね」

 

正宗が目を開け、正面を見るとそこには黒い祭服の上から赤い独特のマントを羽織った、白髪の青年が立っていた。

 

青年「何を、考えていたのですか?」

 

青年の問いに、正宗は喜びにあふれた声で答える。

 

正宗「これから始まる新しい世界についてだよ。私こそを絶対の秩序とする世界…。まさに理想郷だ!そこならば、君の悲願である『全ての人々の救済』も可能だよ。シロウ神父」

 

正宗の言葉に、青年ことシロウは微笑を浮かべる。

 

シロウも正宗と同じく別の世界の人間で、今正宗の口にした「全ての人々の救済」という願いのために聖杯大戦と呼ばれる魔術師と英霊たちによる戦いに身を投じたが、あと一歩というところでその戦いに敗れ、悲願を果たせずに散っていった。

 

しかし、それでもなお己の悲願を捨てきれなかったシロウは、その強い思いによって次元の壁を越え、正宗をこの世界に導いた男の手によってALOの世界に召喚されたのだった。

 

そしてシロウは、その男によって引き合わされた正宗を含む3人と手を組み、新たなる世界で今度こそ自分の願いを果たそうとしているのである。

 

シロウ「こちらの準備はすでに整っています。あとは、あの2人の帰りを待つだけです。とはいっても、うち1人は人とは呼べないものですが」

 

正宗「これから生まれる新たな世界では、そのような価値観は些末なものだよシロウ神父。彼らもまた、私のルールの一部となるのだから」

 

シロウ「そうでしたね。以後気を付けますよ」

 

シロウがそう言うと、広間の一角で突如ポリゴン型の粒子が集まり、人の形になっていく。

 

やがて完成したそれの正体は、無制限中立フィールドでスカーレット・レインとブラッド・レパードを襲った謎のアバターだった。

 

そのアバターに、正宗は満足そうに声をかける。

 

正宗「戻ったか、ラブマシーン」

 

正宗の言葉に、謎のアバターことラブマシーンは「キキキ…」という不気味な笑い声で答える。

 

シロウ「もう1人も戻ったみたいですよ」

 

シロウがそう言った瞬間、ラブマシーンが出てきたところとは逆の空間に穴が開き、そこからエグゼイドたちを襲ったウルトロンが姿を現した。

 

ウルトロンとラブマシーンも正宗、シロウと同じく別の世界から来た存在だが、2人と違って導かれたのではなく、あの男の手によって復元された存在だった。

 

それゆえに自我が薄く、2人の協力者というよりは部下のような扱いとなっている。

 

ウルトロン「奴らはすべてこの世界に連れてきた。これでいつでも始められるぞ」

 

ウルトロンの言葉を聞いて、正宗は満足そうにうなずく。

 

そんな正宗を見てから、シロウは手を宙にかざした。すると、そこに赤い光が集まっていき、大きめの杯の形になっていく。

 

疑似聖杯。シロウのいた世界で魔術師と英霊たちが奪い合った、あらゆる願いを叶える願望器のレプリカで、シロウの魔術知識に正宗やウルトロンのいた世界などの技術を加えて作られた代物だった。

 

杯を完全に具現化させると、シロウはそれを抱えて隅に置いてあった小さいテーブルを広間の中央に置き、その上にさらに杯を置く。

 

その様子を見て、正宗が玉座から腰を上げ、そのテーブルの前にやってくると、ラブマシーンとウルトロンもそれに続き、全員がテーブルの前に集まった。

 

そして、シロウが3人に声をかける。

 

シロウ「それでは、この聖杯の中に集めていたものを入れてください」

 

その言葉を受け、ラブマシーンが背後に曼荼羅のようなパネルを展開し、そこからいくつかの光球を聖杯の中へ入れていく。

 

それは、スカーレット・レインやブラッド・レパードのように、無制限中立フィールドでラブマシーンに敗れた者たちの末路だった。

 

それに続いて、正宗が懐からガシャット取り出す。先日の夜、自身で手に入れた風林火山ガシャットのほかに、SAOサバイバーを中心として、ALO世界で腕利きのプレイヤー、もしくはギルドのガシャットがある。

 

そして正宗はそれらをまとめて聖杯の中に入れた。

 

シロウ「ではウルトロン、お願いします」

 

シロウはそういうと自分の右腕を聖杯の上にかざし、ウルトロンもそれに続く。

 

すると、ウルトロンの手のひらから電子的な光が、シロウの手のひらからは赤い禍々しい光がそれぞれ聖杯の中に降り注がれていく。

 

その光によって聖杯が満たされるとシロウが、

 

シロウ「仕上げです」

 

と言ってかざした右手に力を込めた。

 

すると広間全体が、いや、世界そのものが揺れ始める。

 

その様子を見て、正宗は邪悪な笑みを顔いっぱいに浮かべた…。

 

 

 

【ALO 始まりの街 ギルドホーム】

 

洋風のバーカウンターのような部屋に、7人のプレイヤーが集まっていた。

 

キリト、アスナ、シリカ、リズ、シノン、エギル、リーファ。いつもALOで共に冒険を続けてきたメンバーである。

 

いつもならここに、風林火山のリーダーであるクラインも加わっているはずだが、先日のクエスト中に起きたあることによって、今はログインしていなかった。

 

そのこともあり、全員重い表情になっている。

 

そんな雰囲気の中で、エギルが口を開く。

 

エギル「しかし、意識不明とはな…」

 

エギルの言葉に、みんなの顔が一層硬くなる。

 

クラインは先日、自分が率いているギルド「風林火山」のメンバーと現在ALOで行われている特別クエストに参加していたが、そこで起こった謎の緊急クエストに巻き込まれた。

 

その結果、メンバーともどもゲームオーバー寸前まで追い込まれたあとなぜか強制ログアウトさせられ、現実世界の肉体は意識不明の重体となってしまったのだった。

 

キリト「クラインだけじゃなく、この前のクエストに参加していたプレイヤーのうち、SAOサバイバーや名の通ってるプレイヤーはほとんどこの被害にあっている。原因は不明で、目撃者もいないことからゲーム内で何が起こったかもわからないらしい」

 

そう言ったキリトに対して、シノンが冷静に質問する

 

シノン「でも、クエストは運営が催してるものなんだから、すぐに原因は判明するんじゃない?」

 

キリト「いや、それがそうでもないらしい。俺も気になって菊岡さんに連絡してみたんだが、どうやら1週間くらい前、ALOの管理サーバーに何者かが侵入し、すべてのシステムを掌握してしまったらしいんだ。運営元のユーミルのシステム班が総出で奪還を試みているが、進捗は思わしくないらしい」

 

キリトの発言を聞いて、リズが口を開く。

 

リズ「ってことはALOは外からハッキングを受けて、そのまま乗っ取られちゃったってこと!?」

 

キリト「乗っ取られたのは確かだが、菊岡さんによればハッキングとは違っていて、どちらかと言えばコンピューターウイルスに近いものらしい。ただ、これまで確認されているどのコンピューターウイルスとも違う、かなり異質なタイプみたいだけどな」

 

キリトの発言に、アスナが続く。

 

アスナ「ユイちゃんの話だと、ウイルスというか、人工知能にも近いみたいだけど…」

 

ユイ「その通りです、ママ」

 

アスナのそう言った途端。部屋の中に小さな妖精の姿をした少女、ユイが現れる。

 

彼女はSAOを作り出した茅場晶彦の手によって生み出されたトップダウン型AIで、SAO時代に森で倒れているところをキリトとアスナによって助けられ、それ以来2人をパパ、ママと呼んで本当の親子のように接している。

 

現在はALOにてナビゲートピクシーとして存在し、キリトやアスナの助けとなっている。

 

ユイ「メインコントロールルームには入れませんでしたが、データの一部に触れることはできました。その時に、意思というか思念というか、そう言ったものを感じることができました」

 

リーファ「つまり、ユイちゃんと似たようなAIかそれに似たようなものがこのALOを乗っ取っているってことなのかな?」

 

ユイ「そこまでは私にも分かりませんが、普通のウイルスやハッカーによる仕業でないことは確かです」

 

ユイのその言葉を聞いて、これまで押し黙っていたシリカが小さく声をあげる。

 

シリカ「私、怖いです…。また、SAOの、あの時みたいなことになっちゃうんじゃないかって思っちゃって…」

 

シリカの放ったその言葉に、その場にいた全員が黙り込む。

 

ここに集まったメンバーはシノンとリーファを除いて皆、SAOサバイバーであり、ゲームオーバー=死というデスゲームを体験した者たちだった。

 

それゆえに、VRMMOゲームでのこういった事故、事件に関しての恐怖はほかのプレイヤーたちよりも身に染みている。

 

口にこそ出さないが、全員がシリカと同じ不安を抱えていた。

 

そんな雰囲気を吹き飛ばすように、エギルがわざと明るく言う。

 

エギル「まぁ、これから運営の発表っていうのがあるんだ。例の事件についても、何かいい話があるだろうさ」

 

リズ「そ、そうだよね!もしかしたらもう解決してるのかもしれないし!」

 

キリト「そうだな。内容はわからないがまず間違いなく例の事件の話になる。話はそれを聞いてからだ」

 

キリトがそう言った瞬間、突如ギルドホームを巨大な揺れが襲った。

 

アスナ「な、何これ!」

 

ユイ「皆さん、気を付けてください!ALOのシステムが、改変されています!」

 

キリト「改変だって!?」

 

エギル「とにかく、全員何かに掴まれ!じゃないと…」

 

エギルが叫んだと同時に、ギルドホームを含め、その場にいた全員が、赤い光に包まれた。

 

 

 

【現実世界 有田ハルユキのマンション リビング】

 

重苦しい空気が、室内を支配していた。

 

現在、部屋には家主であるハルユキの他に、黒雪姫、倉嶋チユリ、黛タクム、倉崎楓子、四ノ宮謡、のネガ・ネビュラスのメンバーと、所属レギオンは違うが楓子の弟子である日下部輪が集まっている。

 

バーストアウトした後、ハルユキたちはすぐさまスカーレット・レインこと上月ユニコとブラッド・レパードこと掛居美早に連絡を取るがつながらず、美早が店主を勤める洋菓子店に向かった。そして、店の奥にあるVIPルームで意識を失っている2人を発見し、救急車で病院に搬送したのである。

 

黒雪姫もハルユキも途中まで付き添い、精密検査の結果を待ったが、2人とも意識不明の重体であり、しばらくは経過観察のため面会謝絶となってしまうため渋々病院から帰ってきたのだった。

 

その後、事態を重く見た黒雪姫の発案でネガ・ネビュラスのメンバーを集め、ハルユキの自宅で会合を開くことになり、黒雪姫の口からすべての事情が説明されたのだった。

 

その説明を聞き、全員がショックを受ける。

 

ここにいる全員が、レインとレパードとは同盟を結んでいるレギオンのメンバーというだけではなく、プライベートでも遊んだりするほど仲だったので無理もないことだった。

 

そんな空気の中、タクムが静かに口を開く。

 

タクム「何者なんでしょう、そのアバター。マスターやタクの話を聞く限り、バーストリンカーとは思えない」

 

黒雪姫「動きも、他のリンカーにはない変則的なものがあった。もしかしたら、我々の知らない新たな神獣級エネミーなのかもしれないな」

 

その言葉に、ハルユキが驚愕する。

 

ハル「先輩でも知らないエネミーなんて存在するんですか!?」

 

ハルユキの言葉に、楓子が諭すように言う。

 

楓子「鴉さん、いくら私やサッちゃんでも、加速世界のすべてを網羅しているわけではないんですよ。それに、不定期ではあるけれどアップデートだってなされています。その際に、新種のエネミーが現れることだってあるんです」

 

楓子の言葉に続いて、謡がニューロリンカーのテキスト画面に文字を打ち込む。

 

彼女は幼いころにあったある事件がきっかけで、言葉を話すことができなくなってしまったため、会話するときはこのような手段をとっているのであった。

 

謡『確かに、その可能性はあります。というか、私たちのような古参のリンカーが知らないとなると、新種のエネミーとみるのが一番自然じゃないでしょうか?』

 

タクム「問題は、さらわれた、というより取り込まれたレインたちをどうやって取り戻すか、ですね」

 

タクムの言葉に、その場にいる全員の顔が引き締まる。

 

チユリ「やっぱり、バトルに勝つしかないんじゃないかな?リンカーでもエネミーでもまずは闘ってみないことにはわからないよ」

 

黒雪姫「闘うにしても、作戦がいる。何といっても奴は私のヴォーパル・ストライクをかき消したほどの実力を持っているからな。生半な攻撃では倒せないだろう」

 

黒雪姫がそういうと、それまで黙っていた輪がか細い声を上げる。

 

輪「そんな相手に、私たちで勝つことができるんでしょうか…?」

 

弟子の弱気な発言を聞いて、師匠である楓子がたしなめるように言う。

 

楓子「輪、そんな弱気はだめですよ。レパードもレインも私たちの大事な友人です。大丈夫、不安なら私がまた鍛えてあげますから」

 

楓子の言葉を聞いて、輪が若干おびえながら居住まいを正す。

 

輪「すみません師匠。私も、できる限り頑張ります」

 

楓子「よろしい!」

 

その様子を見てから、ハルユキが黒雪姫に尋ねる。

 

ハル「先輩、具体的にはここからどうするんですか?」

 

ハルユキの問いに、黒雪姫は少し考えたあと、

 

黒雪姫「まずは情報を集めよう。あのアバターは通常バトルフィールドにも現れていたようだからな。そこから、奴の足取りを追うことにしよう」

 

黒雪姫の言葉に、ハルユキが返事をしようとした途端、バチバチィッ!という音と共に、視界にあるものがいきなり青く変わっていく。

 

それは、ブレインバーストにアクセスする「バースト・リンク」の時に起こる現象と同じだった。

 

しかし、アクセスには自分の口でバースト・リンクのコマンドを発声する必要があり、今のような状態で勝手に発動することなどあり得ない。

 

ハルユキ「こ、これって一体⁈」

 

ハルユキが戸惑いながら周りを見渡すと、他のメンバーも自分と同様に、いきなりブレイン・バーストへのアクセスが始まっているようであった。

 

黒雪姫「みんな、気を付けろ!原因は不明だが、強制的に加速世界にアクセスされるぞ!」

 

黒雪姫の叫びを聞いて、全員がそっと体を身構える。

 

その瞬間、ハルユキたちの視界は赤い光に覆われ、加速世界ではない、まったく別の世界に飛ばされたのであった。

 

 

 

 



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第5話

※仮面ライダーエグゼイドを下敷きにしたクロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。
※ゲームなどでコラボしていますが、SAOキャラとアクセルワールドのキャラはキリトとハルユキ以外に接点はないという設定になっています。

赤い光の乱流に巻き込まれたキリトたちと、強制的にブレインバーストへアクセスさせられたハルユキたち。2組のキャラクターたちが目を覚ました場所は、2つの世界が混ざり合った歪な世界だった。
そこに聖都から飛ばされてきたエグゼイドたちも加わったことで、ついに史上最悪のゲームが幕を開ける…


【VRMMOゲーム ALO 森林地区:夜】

 

誰もいない、静寂に支配された森。

 

その木々の間に、突如として歪みが生じ、巨大な穴が開き、何者かが飛び出してくる。

 

エグゼイド「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

それは、聖都でアベンジャーズのバグスターと闘い、ウルトロンの開いた時空のはざまに飲み込まれたエグゼイドだった。

 

そのまま、エグゼイドは思い切り尻を叩きつけながら地面を転がる。

 

エグゼイド「痛ててて…」

 

エグゼイドはそう呟きながら、強打した尻をさすりながら立ち上がり、辺りを見渡した。

 

そこは、鬱蒼と木々が生い茂る夜の森で、夜空には大きな月と、満天の星空が広がっており、明らかに先ほどまでいた聖都とは違うことが分かる。

 

エグゼイド「ここは一体…。どこかのゲームエリアなのか…?」

 

エグゼイドは状況を推察しようと少し考え込み、そして重要なことに気付く。

 

エグゼイド「そうだ!他のみんなは⁈」

 

急いで自分の周りの確認するが、暗い森の中にいるのは自分1人だけで、先ほどまで一緒にいたはずのポッピーやレーザー、ゲンム、パラド、ブレイブ、スナイプの姿はどこにも見当たらない。

 

エグゼイド「ポッピー!貴利矢さん!飛彩さん!大我さん!パラド!黎斗さん!」

 

森の中にエグゼイドの声がこだまするが、どこからも返事は聞こえない。

 

エグゼイド「とにかく、みんなを探さないと。話はそれからだ」

 

そういって森の中を歩きだそうとしたエグゼイドだが、その瞬間に大きな揺れに襲われる。

 

エグゼイド「こ、今度は一体何だ!」

 

そう叫びながら揺れに翻弄されるエグゼイドだったが、やがて大木の根元にある穴を見つけて入り、安全を確保する。

 

そこから数秒し、揺れが収まると、エグゼイドは穴から出て身の回りを確認し、

 

エグゼイド「な、なんだこれ…⁈」

 

と驚愕する。

 

まず、空が赤く染まり、先ほどまで明らかに夜だった世界は昼か夜かもわからないような歪な世界となっていた。

 

エグゼイド「一体何が起きているんだ…?」

 

そういいながら、エグゼイドは状況を確認するため、視界が聞くようになった森の中を急いで駆け抜ける。

 

すると、視線の先に森の出口がみえ、大きな草原地帯に出た。

 

やっと開けたところに出て、安心するエグゼイドだったが、そこで衝撃の世界を目撃するのだった。

 

 

 

【??? ギルドホーム跡地】

 

アスナ「みんな大丈夫!?」

 

赤い光の乱流が通り過ぎた後、アスナはそう言いながら立ち上がった。

 

そして辺りを見回して、驚愕する。

 

赤い光の乱流に飲み込まれる前、自分たちは確かにギルドホームで過ごしていた。

 

しかし、今キリトの目の前に広がっているのは見慣れたギルドホームではなく、ファンタジーの世界に荒野や廃墟が融合した、異質な景色だった。

 

シリカ「うぅん…」

 

リズ「一体何が…?」

 

アスナの背後で、大切な友人たちの声がする。

 

アスナ「リズ!シリカちゃん!」

 

アスナは声のした方にすぐさま近づき、友人たちの姿を見て絶句する。

 

友人たちの格好は、先ほどまでのALOでのものではなく、1年前に起きた、SAO時代の格好になっていた。

 

アスナ「そんな…何でその格好に…?」

 

アスナがそう言うと、シリカとリズは自分たちの格好の異変に気付き、狼狽する。

 

シリカ「なんでSAO時代の格好に⁈」

 

リズ「そういうアスナも、血盟騎士団の衣装になっちゃってるよ!」

 

リズの指摘に、アスナは自分の両手をあげ、その後自分の全身を確認する。

 

リズの言う通り、アスナの格好は先ほどまでのウンディーネの衣装ではなく、SAO時代に身にまとっていた血盟騎士団の隊服になっていた。

 

3人がお互いに驚愕していると、少し離れたところから3人に向かって駆け寄りながらエギルが声をかける。

 

エギル「お前ら無事か⁈」

 

アスナ「エギルさん!…やっぱりその格好!」

 

エギルもアスナたちと同様に、SAO時代の斧戦士の衣装となっていた。

 

エギル「ああ。どういう訳かは分からんが、目が覚めたらこの格好だった。ところで、キリトはどこだ?」

 

エギルの言葉に、アスナたち3人はあたりを見回す。

 

先ほどまで確かに一緒にいたはずのキリトの姿が、忽然と消えていた。

 

リズ「もしかして、はぐれた⁈」

 

シリカ「シノンさんとリーファちゃんも見当たりませんよ!」

 

リズとシリカの言葉に、エギルが少し考えてから答える。

 

エギル「どうやら、さっきの乱流で離ればなれになっちまったみたいだな」

 

アスナ「探さなきゃ!」

 

そう言って駆けだそうとしたアスナを、エギルが止める。

 

エギル「落ち着けアスナ!この状況じゃどこに行ったかも分からないし、何より危険だ!」

 

アスナ「でも!」

 

アスナがそう叫んだ瞬間、空に運営が大規模イベントなどの告知に使用するスクリーンが展開される。

 

リズ「こんな時に告知!?」

 

エギル「一体何が始まるってん言うんだ!?」

 

エギルの言葉に、その場にいた全員が身を固めたのであった。

 

 

 

 

【??? 廃墟+平原地区】

 

強制ログインから目覚めたハルユキことシルバークロウは、目の前の景色に絶句していた。

 

ファンタジックな平原に、加速世界の荒廃ステージが混ざり合っている。

 

まさに魔界と言っても差し支えない光景である。

 

クロウ「加速世界じゃ…ない…?」

 

クロウが呆然としていると、後ろから声がかかる。

 

パイル「ハル、無事かい!?」

 

クロウが振り返るとそこには自分の親友である黛タクムのデュエルアバター、シアンパイルが駆けてくるところだった。

 

クロウ「タク!」

 

パイル「良かった、合流できて!マスターたちやチーちゃんは一緒じゃないのかい?」

 

パイルの問いに、クロウは首を横に振る。

 

強制ログインとはいえ、全員ハルユキの自宅からダイブしたので通常の加速世界ならば一緒の場所に現れるはずだが、クロウとパイル以外のメンバーは見当たらなかった。

 

パイル「どうやら、いつもの加速世界とは違う場所に来てしまったみたいだね」

 

クロウ「ああ。こんな異常なフィールドは見たことも聞いたこともない!何が起こっているっていうんだ!!」

 

叫ぶクロウをたしなめるようにパイルが優しく声をかける。

 

パイル「とにかく、他のみんなを探そう!何があるかわからない以上、合流しなくちゃ!」

 

パイルの言葉にクロウがうなずき、すぐさま行動を開始しようとするが、そんな2人に横合いから声がかかる。

 

???「おたくらも仲間たちとはぐれちゃったクチ?」

 

クロウとパイルが声のした方を向くと、そこには2人が見たこともないアバターが立っていた。

 

全身は細身かつスタイリッシュで、胸に旧世代に流行したTVゲームのコントローラーのようなデザインの装甲がついている。

 

それは、聖都市でマーヴルヒーローのバグスターと闘っていた、九条貴利矢こと仮面ライダーレーザーターボの姿だった。

 

パイル「そうですけど、あなたは…?」

 

パイルの問いに、レーザーは軽やかに答える。

 

レーザー「自分は九条貴利矢。今の状態だと、仮面ライダーレーザーターボって名前になる。自分の住んでた街で敵と闘ってたんだが、いろいろあってこの変な世界に飛ばされたってわけ。それで、おたくらは?」

 

レーザーの問いに、クロウは戸惑う。ブレインバーストの世界では現実世界での襲撃を避けるために本名を隠すものだが、レーザーははっきりと自分の本名を明かしているため、ブレインバーストの世界の者ではないということが分かる。

 

訳の分からない世界に飛ばされ、さらに得体のしれない人物との遭遇したことで、クロウの警戒心は高まっていた。

 

そんなクロウの不安をよそに、親友のパイルはレーザーの質問に答える。

 

パイル「僕の名前はシアン・パイル。格闘ゲーム『ブレインバースト』のプレイヤーです」

 

クロウ「おいタク!」

 

パイルが答えたことに驚き、クロウが小声でたしなめようとする。

 

しかしパイルは落ち着いた声で、クロウを逆にたしなめる。

 

パイル「大丈夫だよハル。本名を名乗ったということはブレインバーストのプレイヤーじゃない。つまり、僕らのバーストポイントを奪うことが目的じゃない」

 

クロウ「でも、それにしたって!」

 

パイル「何が起きているか分からない状況なんだ、情報は多い方がいい。それに、九条さんから敵意は感じられないだろ?」

 

パイルがそういうと、クロウは渋々ながらも納得し、レーザーに自己紹介をする。

 

クロウ「僕はシルバークロウ。えっと、こっちにいるタク…じゃなかったパイルの相棒で、2人とも黒のレギオンに所属しています」

 

クロウの紹介に、レーザーはさらに疑問をぶつける。

 

レーザー「黒のレギオン?何それ?」

 

クロウ「僕らのプレイしているゲーム『ブレインバースト』内で結成されるチームのようなもので、大体のプレイヤーはどこかのレギオンに所属しているんです」

 

パイル「本来なら、僕とクロウは他のレギオンメンバーと一緒に強制的にこの世界にログインしたんですが、どうやらはぐれてしまったみたいで、これから探そうと思っていたんです」

 

クロウとパイルの言葉に、レーザーはうなずきながら答える。

 

レーザー「なるほど。つまり自分と同じってわけだ」

 

クロウ「九条さんも、仲間と一緒にいたんですか?」

 

レーザー「ああ。自分と仲間はさっきも言ったように自分の住んでる街で『バグスター』って敵と闘っていたんだが、その敵の親玉が空に穴をあけてな。それに吸い込まれて、気付いたらここにいたってわけ」

 

パイル「何だか、大変な目に合っていますね…」

 

パイルが少し同情したように言う。

 

レーザー「まぁな。だけど、それで救われる命があるんだから苦とは思わないけどな」

 

レーザーの言葉に、クロウとパイルは重みを感じる。

 

それは、レーザーがこれまで自分たちでは想像の付かないような、命を懸けた戦いに身を投じてきたことを肌で感じ取ったからであった。

 

その時、空に突如巨大なスクリーンが出現する。

 

レーザー「何か始まるみたいだぜ」

 

レーザーのその言葉に、クロウとパイルは静かに身構えた。

 

 

 

【??? 世界樹 玉座の間】

融合した世界の姿を見て、檀正宗の顔に笑みが浮かぶ。

 

あとは、自分の口からこの世界にいる全ての人間に告げるだけだ。

 

そう、自分を秩序とする最高のゲームの始まりを。

 

シロウ「さぁ、出番ですよ、正宗さん」

 

シロウはそう言いながら、正宗をあるモニターの前に誘導する。

 

正宗はモニターの前にゆっくりと立つと、大きく息を吸って、ゲームの開幕を宣言し始めた。

 

正宗「ブレインバースト及び、アルヴヘイム・オンラインをプレイしている諸君に告ぐ。私の名は檀正宗。今、君たちのいる世界を管理している者だ。本日をもって、ブレインバーストとアルヴヘイム・オンラインは幕を閉じ、代わりに新たなゲームがスタートとなった…。新たなゲームの名は『ヒーローズ・クロニクル』!プレイヤー1人1人がヒーローとなり、己の力で頂点を目指すゲームだ!」

 

空中のスクリーンを通して、正宗の言葉が異世界全土に響き渡る。

 

正宗「君たちには、世界樹の頂点にいるラスボス、『ラブマシーン』の討伐を目指してもらう。そのためにはまず、この世界に散らばった、仮面ライダーと呼ばれる7人のキャラを倒さねばならない」

 

正宗がそういうと、スクリーンの画面が切り替わり、7人の仮面ライダーの姿が映し出される。

 

そこには、かつて正宗が敗れ去った、CRの仮面ライダーたちの姿が映っていた。

 

正宗「キャラの名前はエグゼイド、ブレイブ、スナイプ、レーザー、ゲンム、パラドクス、ポッピーだ。このキャラを倒すと、それぞれのライダーから『ガシャットロフィー』というアイテムが放出され、7つ全てを集め、世界樹にたどり着くことが最初のミッションだ」

 

正宗がそういうと、また画面が切り替わる。

 

今度はウルトロンとマーヴルヒーローたちのシルエットが映し出された。

 

正宗「世界樹までたどり着いたなら、その前にいる門番を倒し、門にガシャットロフィーをかざすことで内部への扉が開かれる。そしてその最上階にいるラブマシーンを倒せば、晴れてゲームはクリアだ」

 

そこまで言うと、画面がまたも切り替わり、正宗の言葉に続いてルールの文が追加されていく。

 

正宗「そしてこのゲームのルールだが、まず、ログアウトは不可能。たとえゲームオーバーになっても、君たちの意識とデータはこの世界の世界樹で管理され、コンティニューはもちろん現実世界への帰還はできない。帰還する方法はただ一つ。ラブマシーンを倒し、このゲームをクリアすることだけだ。だが、あくまでも目覚めないというだけでSAOのように命を失うわけではないから安心したまえ。そしてもう一つ、先日までブレインバーストとアルヴヘイム・オンラインで起こっていた事件の被害者の意識とデータも世界樹で管理されている。それらもラブマシーンを倒せば解放されることを覚えていてくれたまえ」

 

そう言って、正宗は満面の笑みを浮かべながら最後の一言を口にした。

 

正宗「最後に、オプション面の話だが、よりゲームの臨場感を味わって貰うために、SAOサバイバーや他のゲームのアバターを持っている諸君には、一番自分を活かせるコスチュームを用意させてもらった。それと、ブレインバーストのプレイヤーの諸君はデュエルアバターを通常アバターに切り替えることができるようにしてあるので必要に応じて使い分けてくれたまえ。では、諸君の健闘を祈る」

 

正宗がそういうと、空中のスクリーンは消え去り、毒々しいまでに赤く染まった空が広がる。

 

演説を終えた正宗は、シロウやラブマシーン、ウルトロンなどその場にいた者たちに向かって高らかに宣言する。

 

正宗「さぁ、終わることのない、新しい世界の始まりだ!ハァーッハッハッハッハッハッハッハッ!!」

 

その場にいた全員が、口元に邪悪な笑みを浮かべていた。

 

 

 

【??? ギルドホーム跡地】

 

正宗の説明を聞いたアスナたちは皆絶句していた。

 

誰の脳裏にも、あのSAOが開始されたときの、チュートリアルを受けた時の場面が思い出されている。

 

シリカ「また…こんなことになるなんて…」

 

シリカの弱々しい声に、エギルが答える。

 

エギル「死ぬことはないとはいえ、ゲームオーバーになって誰もクリアできなきゃ一生この世界に閉じ込められる。くそっ!」

 

リズ「私たち、これからどうすれば…」

 

リズの言葉に、アスナが凛とした声で答える。

 

アスナ「決まってるわ。戦いましょう!」

 

アスナの力強い言葉を聞いて、3人が彼女を見つめる。

 

アスナ「倒すべき敵も分かっているし、何より戦わなければ何も変わらない。こんな世界に、私は負けない!」

 

アスナが自分の決意を口にすると、3人はフッと口元に笑みを浮かべる

 

エギル「そうだな。そうやって、俺たちはあの地獄を生き抜いてきたんだよな」

 

リズ「それに、もうあの頃のあたしたちじゃない!今は、仲間だっているし!」

 

シリカ「そうですよね!みんなで力を合わせれば、きっと今回だってクリアできますよ!」

 

3人の言葉を聞いて、アスナは力強く頷いてからから提案する。

 

アスナ「まずははぐれたキリトくんとしののん、それにリーファちゃんを探しましょう!」

 

そういうと、アスナを先頭に全員が力強く歩き出した。

 

 

 

【??? 廃墟+平原地区】

 

正宗の演説が終わった後、クロウとパイルはレーザーの方に向き直り、体を硬直させる。

 

あの説明が本当ならば、レーザーはゲームクリアのために倒さねばならない存在である。しかし、先ほどの一言からレーザーが命の重みと大切さを知る、心優しき戦士であることを感じ取った2人に、レーザーを倒す意志は芽生えない。

 

レーザー「やれやれ、檀正宗め。自分、賞金首みたいな扱いじゃないか」

 

そう言って首を困ったように傾げた後、レーザーは2人に視線を合わせて問いかける。

 

レーザー「で、どうする?おたくら自分を倒さないと、元の世界に帰れないぜ?」

 

レーザーの言葉に、2人は迷う。しかし、少し考えたのちに警戒を解き、

 

パイル「僕たちの答えは…」

 

クロウ「これです!」

 

と言って2人はデュアルアバターから通常アバターへとその姿を変えた。

 

その結果、クロウは小さいブタのアバターに、パイルはブリキの鎧を着た木こりの姿に変わった。

 

レーザー「2人とも、見た目変わりすぎだろ!」

 

レーザーが思わず突っ込むと、子ブタになったクロウことハルユキが答える。

 

ハルユキ「すみません。でも、この通常アバターで戦闘行為は行えません」

 

ハルユキに続いて、パイルことタクムも口を開く。

 

タクム「僕たちにあなたと闘う気はありません。むしろ、協力してほしいと思っています。この姿はその証明です」

 

ハルユキ「貴利矢さん、僕たちに力を貸してください。一緒に、このゲームをクリアしましょう!」

 

ハルユキとタクムの言葉を聞くと、レーザーは頭をポリポリとかいたあと、

 

レーザー「しょうがない。その話、乗せられてやるよ」

 

と言って、腰につけたゲーマドライバーからガシャットを抜いて変身を解除する。

 

そして、2人に近づき笑顔を見せた

 

貴利矢「これからよろしくな、クロウ、パイル」

 

ハルユキ「こちらこそ、よろしくお願いします!あ、この姿の時はハルって呼んでください。そっちが本名なので」

 

タクム「僕のことはタクでお願いします」

 

貴利矢「了解。それじゃ、さっそく行くか、ハル、タク」

 

ハルユキ&タクム「はい!」

 

そう言って、3人は歩きだした。

 

 

 

こうして、次元を超えて集まった戦士たちのゲームが、開幕したのであった。

 




疑似聖杯によって混ざり合った2つの仮想世界。
しかし、それは現実世界にも影響を及ぼし始めた!

その異変は、エグゼイドたちのいた聖都から始まり、やがて多元世界崩壊の危機へとつながっていく…。
その危機に立ち向かうのは宝生永夢に次いで天才ゲーマーと呼ばれた少女と、誇り高き竜の戦士だった!!

クロスエンディング外伝「仮面ライダーニコ&竜戦士グラファイト」、近日連載開始!


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第6話

※仮面ライダーエグゼイドを下敷きにしたクロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。
※キリトの性格が若干原作と異なっている部分があります。

いよいよ始まってしまったデスゲーム「ヒーローズクロニクル」。
自分が標的となったことに驚愕するエグゼイドだったが、そこにSAO、ALOと2つの世界を戦い抜いた黒の剣士が現れる。

互いの信念のため、2人の戦士がぶつかり合う…


【ヒーローズクロニクル 草原+未来都市ブロック】

 

空に展開されたスクリーンから流れた檀正宗の演説を聞いて、エグゼイドは立ち尽くしていた。

 

自分たちが死闘の末に倒した敵が、実は生きていてほかのゲームの世界を侵食している。

 

何より、そのゲームで自分たちが攻略対象にされてしまっているという事実に対して、エグゼイドは驚愕し、そして怒りを感じた。

 

頭が沸騰し、叫びそうになるエグゼイドであったが、何とか理性を保ち、次なる行動へ移ろうとする。

 

エグゼイド「檀正宗…!こんなふざけたゲーム、絶対に止めてやる!」

 

そう言った時、不意にエグゼイドの背後から声がかかった。

 

???「見つけた…」

 

エグゼイドが振り返ると、そこには全身黒の衣装に身を包んだ、1人の少年が立っていた。

 

少年の双眸には、何か冷たい決意のようなものが浮かんでいる。

 

???「アンタがエグゼイドだな?」

 

少年がエグゼイドに問いかける。

 

エグゼイド「そうだけど…君は?」

 

エグゼイドが問いかけると、少年は右手で背中に背負っていた黒い片手剣を引き抜きながら答える。

 

???「俺の名はキリト。恨みはないが、友達のために、アンタを倒す!」

 

そう言うと、少年ことキリトは一気にエグゼイドとの間合いを詰め、手にした剣でエグゼイドに斬りかかる。

 

エグゼイド「うわっと!」

 

エグゼイドは間一髪で避けるが、キリトはすぐさま剣を横なぎに振るって追撃し、エグゼイドを追い詰める。

 

エグゼイド「ちょっ・・・やめろって!」

 

そういいながらエグゼイドはとっさにガシャコンブレイカーをソードモードにしてキリトの剣を防ぐが、細身の体とは思えない力で押し込まれる。

 

エグゼイド「君たちは騙されてる!本当に倒すべきは、あの檀正宗だ!」

 

エグゼイドがそう言うと、キリトは冷たく言い返す。

 

キリト「そんなこと分かってる。恐らくあいつがすべての元凶で、ラブマシーンってのじゃなくあいつを倒さなければこのゲームが終わらないことも!」

 

キリトはそういいながら右腕に力を込め、ガシャコンブレイカーを押し切ってエグゼイドを切り裂く。

 

エグゼイド「うわぁぁぁ!」

 

叫び声をあげながら、エグゼイドは地面に転がった。

 

エグゼイド「ぐ、ぐぅぅ…」

 

エグゼイドはうめき声をあげるが、キリトは顔色一つ変えず、剣の切っ先をエグゼイドの顔に向ける。

 

キリト「あいつを倒すにしても、たどり着くまでにはアンタを倒して得られるガシャットロフィーが必要だ。だからアンタには、ここで倒れてもらう」

 

そう言いながら、キリトはエグゼイドに1歩ずつ近づいていく。

 

キリトの言葉と行動から、敵である自分を必ず倒すという明確な意志が感じられる。それを悟ったエグゼイドは、立ち上がりながら覚悟を決める。

 

エグゼイド「そうか…分かったよ…。そっちがその気なら、こっちだってやってやる!ここで倒れてたまるか!」

 

そう叫ぶと、エグゼイドはゲーマドライバーに差さっていたマイティアクションXガシャットを左手で引き抜き、右手に新たなガシャットを手にし、起動ボタンを押す。

 

『マキシマムマイティ!エーックス!』

 

ガシャットからその音声が響くと、エグゼイドは高らかに声を上げた。

 

エグゼイド「マックス大変身!」

 

すると、空中からマキシマムマイティXの強化アーマーが現れ、エグゼイドはその中に収納される。

 

そして頭部を出し、アーマーから手足が伸びると、エグゼイドはマキシマムゲーマー:レベル99へとパワーアップした。

 

エグゼイド「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」

 

そう言いながら、エグゼイドはガシャコンキースラッシャーを手に取って構える

 

するとキリトも剣を構えなおし、

 

キリト「この世界のためにも、アンタはここで倒す!」

 

と叫ぶ。

 

そして2人は同時に駆け出し、互いの剣をぶつけ合わせた。

 

エグゼイド「うおおおおおおおおおお!」

 

キリト「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

お互い気迫ともに激しく剣を打ち合わせる。

 

エグゼイドとキリト、2人の譲れない想いと信念が交差していた。

 

しばらく近距離で打ち合った後、キリトが一度距離を取ろうとジャンプする。

 

エグゼイド「逃がすか!」

 

エグゼイドはそう言いながらキリトの足を掴み、

 

エグゼイド「うおおりゃああああ!!」

 

という咆哮と共に腕を伸ばしながらキリトの体を壁や地面に叩きつけていく。

 

キリト「くそっ!」

 

キリトは剣でエグゼイドの腕に強めの一撃を入れ、この攻撃から逃れる。

 

そして、先ほど自分が叩きつけられた壁を両足で蹴り、凄まじいまでの加速でエグゼイドに突撃し、

 

キリト「てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

という叫びと共に強化アーマーの右腕を切り落とした。しかし、キリトはそこで止まらない。

 

キリト「まだだぁぁぁぁぁ!」

 

そう叫びながら、キリトは剣を返して強化アーマーのもう一本の腕も切り落とした後、素早く剣を構えなおして胴体を突きで貫こうとする。

 

エグゼイド「うおっとぉ!」

 

キリトの剣が本体に寸前のところでエグゼイドは強化アーマーから脱出し、素早くガシャコンブレイカーを手に取り、ソードモードにして背後からキリトに斬りかかった。

 

しかし、ガシャコンブレイカーの刃が当たる瞬間、鞘に納められたもう一本の剣が背中に出現し、キリトはわずかに刀身を引き出してエグゼイドの一撃をガードする。

 

エグゼイド「何⁉」

 

不意に現れたもう一本の剣によってエグゼイドの動きに隙ができると、キリトは強化アーマーから剣を引き抜くと同時に横なぎに振るい、エグゼイドの胸に傷をつけた。

 

エグゼイド「くっ・・・!二刀流か!」

 

エグゼイドがそう言うと、キリトは無言で背中に出現した剣を左手で引き抜き、静かに構える。

 

キリト「ここからは本気で行かせてもらう」

 

エグゼイドがその言葉を聞いた次の瞬間、目の前にいたはずのキリトの姿が消えた。

 

そしてエグゼイドは背後に鋭い痛みを感じ、思わずよろける。

 

後ろを振り返ると、先ほどまでとは比べ物にならない速さでキリトが近づき、2本の剣を振るってきた。

 

その攻撃をガシャコンブレイカーで何とか捌こうとするエグゼイドだったが、キリトのあまりの手数の多さに攻撃はおろか防御すら間に合わない。

 

やがてキリトの剣戟がボディに叩き込まれ、エグゼイドは大きく吹き飛ばされる。

 

エグゼイド「くそっ!だったらこっちも二刀流だ!」

 

エグゼイドはそう言うと、近くにあったガシャコンキースラッシャーを左手に取り、キリトと同じく二刀流の状態で立ち向かう。

 

しかし、SAO、ALOと2つの世界を二刀流で戦い、固有のスキルとして磨き上げてきたキリトの二刀流とは比べるべくもなく、あっという間にガシャコンブレイカーとキースラッシャーを弾かれ、丸腰の状態となってしまう。

 

エグゼイド「しまっ・・・!」

 

エグゼイドは咄嗟に両手でガードしようとするが、それよりも早くキリトの一撃が決まり、

 

エグゼイド「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

という叫びと共に大きく吹き飛ばされ、そのまま地面を転がった。

 

エグゼイド「う、ぐぅぅぅ…」

 

うめき声と共に、エグゼイドの胸にあるHPゲージが減っていき、赤い部分までダウンする。

 

キリト「悪いが、とどめを刺させてもらう」

 

ダメージに喘ぐエグゼイドに、ゆっくりとキリトが近づく。

 

そして剣を振り上げ、エグゼイドへ最後の一撃を加える準備に入った。

 

エグゼイド(ここで、終わりか…)

 

エグゼイドが覚悟を決め、キリトが剣を振り下ろした瞬間、2人の間に人影が割り込み、キリトの一撃を防御する。

 

それは、十字の巨大な盾を持つ、ピンクの髪の少女だった。

 

予想外の展開に戸惑うエグゼイドだったが、背後からさらに女性の声がかかる。

 

???「大丈夫ですか!?」

 

エグゼイドが振り返ると、白い服に身を包んだ少女が駆け寄ってきて、エグゼイドに手を当てる。

すると、失ったHPゲージが見る見るうちに回復し、やがてマックスまでになった。

 

エグゼイド「ありがとう…えーっと、君たちは?」

 

エグゼイドがそう言うと、少女は自己紹介をする。

 

立花「私は藤丸立花。人理継続保証機関・カルデアから来た魔術師です。彼女はマシュ・キリエライト。私のパートナーで今はデミ・サーヴァントとして一緒に戦っています」

 

エグゼイド「カルデア?デミ・サーヴァント?」

 

立花の説明に、エグゼイドは何が何やらといった感じで困惑するが、その疑問を遮るようにキリトが声をかける。

 

キリト「誰かは知らないが、邪魔をするなら容赦はしない!」

 

そう言って、キリトは再び剣を構える。

 

マシュ「マスター!指示を!」

 

マシュが立花に向かって叫ぶ。

 

立花「大丈夫よ!マシュ!」

 

立花がそう言うと、剣を構えたキリトに向かって銃弾が放たれ、その構えを崩す。

 

???「全く、いつも言ってるが、お前さんたちは少し突っ込みすぎだ」

 

そう言いながら、立花の後ろからライダージャケットを着て、顔に傷を負った屈強な男が水平散弾銃に弾を装填しながら近づいてくる。

 

立花「助かりました、獅子劫さん」

 

獅子劫「礼には及ばないさ。今は俺もサーヴァントだからな。マスターや同僚を守るのは当り前さ」

 

そう言いながら、屈強な男は懐からタバコを取り出し、火をつけて一服する。

 

キリト「くっ、新手か…!」

 

キリトがそう言うと、獅子劫が不敵な笑みを浮かべながら声をかける。

 

獅子劫「言っておくが、もう1人いるぞ」

 

獅子劫がそう言ったと同時に、赤い服に2本のナイフを持った男がキリトに斬りかかり、マシュとの間にあった距離を広げた。

 

マシュ「エミヤさん!」

 

マシュが表情を明るくしてナイフを持った男に声をかける。

 

エミヤ「君の防御力は確かに優れているが、あまりこういった敵と対峙するのは控えた方がいいな」

 

マシュにそう言うと、エミヤは次に立花へ声をかけた。

 

エミヤ「それでマスター、この後はどうする?」

 

エミヤに問われると、立花は前に出てキリトに話しかける。

 

立花「黒の剣士、キリトさん。ここは一度、剣をひいてくれませんか?あなたの想いは分かりますが、こんな方法では何も解決しません」

 

立花の言葉に、キリトが反論する。

 

キリト「このゲームの主催者、檀正宗のところへたどり着くには、そこにいるエグゼイドを倒す必要がある。友達や世界を救うためにも、俺はそいつを倒さなきゃならないんだ!だからそこをどいてくれ!」

 

胸に秘めた非情な決意を、キリトは叫ぶ。

 

しかし、その言葉を聞いたエミヤが深いため息とともにキリトへ声をかけた。

 

エミヤ「口ではそう言うが、君はそのエグゼイドを倒すのをためらっていたのではないか?今しがた少し打ち合って、君の剣から迷いを感じたが?」

 

キリト「そんなことは…!」

 

エミヤ「君を見ていると、過ちを犯そうとしたかつての自分を思い出すよ。何でもかんでも1人で背負い込み、自らが世界を救うと気負っていたころのな。そんな自分から目をそらすために、君は非情に徹しようとしている。違うかね?」

 

エミヤの言葉に、キリトは何も言い返せず、黙り込んでしまう。全て、図星だった。

 

エミヤに続き、立花もキリトに声をかける。

 

立花「あなたも分かっているはずです。こんな方法が間違っているって。だから、ここからは私たちに協力してくれませんか?私たちは、この世界を元に戻す、明確な方法を知っています」

 

立花のその言葉に、キリトではなくエグゼイドが反応する。

 

エグゼイド「この世界を元に戻せるんですか!?」

 

エグゼイドの問いに、立花が答える。

 

立花「はい。この世界がこのような歪な状態になったのは、私たちが回収している聖遺物、『聖杯』またはそれに類するものの力が原因だと考えられます。この世界のどこかにあるそれを破壊、もしくは回収して制御すれば世界は元の状態に戻るでしょう。そして、世界樹の門を開けるガシャットロフィーについてですが、あくまでも必要なのはエグゼイドさんのデータなので、本人さえ連れていけば特に問題なく開くとカルデアの解析で判明しています」

 

キリト「それじゃあ何で、檀正宗はあんなことを!」

 

憤るキリトに、エグゼイドが答える。

 

エグゼイド「檀正宗は元々、僕らの世界で『仮面ライダークロニクル』というデスゲームを支配していた人だ。そのため、ゲームが盛り上がるためなら手段を選ばない。さらに今回は、自分の野望を潰し、ゲームオーバーへと追いやった僕たちへの復讐の意味も込められているんだと思う」

 

エグゼイドの答えを聞いて、キリトは膝をつく。自分がしようとしていた事が間違いだったと気づいたショックのためだった。

 

そんなキリトに、獅子劫が優しく声をかける。

 

獅子劫「まぁ、お前さんもまだ若いんだ。間違ったなら、やり直せばいい。なぁエミヤ?」

 

エミヤ「…そうだな。先ほど言った通り、私も間違いを犯しかけた身だが、今はこうして新たな仲間と共に戦っている。だから、君もそうすればいい」

 

キリトの周りに、立花たちが集まってくる。

 

そして最後に、エグゼイドが変身を解いて近づき、キリトに手を差し伸べる。

 

永夢「キリトくん、ここからは、一緒に戦おう。世界を救うために!」

 

言いながら、永夢は笑顔を浮かべる。

 

キリトは一瞬ためらったが、すぐに顔に決意の表情を浮かべ、

 

キリト「ああ。よろしく頼む、エグゼイド」

 

と言って永夢の手を握り、立ち上がった。

 

永夢「それじゃあ改めて。僕は宝生永夢。永夢って呼んでくれ」

 

キリト「分かった永夢。俺のことはキリトでいい」

 

2人がそういうと、カルデア組も続いて自己紹介する。

 

立花「私は藤丸立花。さっきエグゼイド…じゃなかった永夢には言ったけど、人の紡いできた歴史を守り、継続させる人理継続保障機関・カルデアから派遣された魔術師で、英霊である彼らサーヴァントのマスターです。今回の事件を解決するために来ました」

 

マシュ「マシュ・キリエライトです。マスターと同じくカルデアに所属する職員で、人間に英霊の魂を憑依させたデミ・サーヴァントとしてマスターと共に戦っています」

 

エミヤ「エミヤだ。先ほど話にあったサーヴァントの1人で、クラスはアーチャー。マスターの護衛としてきた」

 

獅子劫「獅子劫界離だ。元は俺もマスターと同じ魔術師だったんだが、とある戦いの中で死んじまってな。何の因果か今はサーヴァントとしてこの場にいる。クラスはアサシン。主にマスターたちの監督役みたいなものだ」

 

カルデア組の自己紹介を聞き終わり、永夢が質問をする。

 

永夢「あの、アーチャーとかアサシンとか、クラスって何ですか?」

 

立花「サーヴァントにはそれぞれの能力に会った階級が存在しているんです。まぁチェスの駒のようなものだと思ってください」

 

獅子劫「またざっくりした例えだな…」

 

獅子劫が立花に突っ込むと、今度はキリトが聞く。

 

キリト「これからどうするんだ?」

 

立花「そうね…。まずは、仮面ライダーたちを探しましょう。彼らが倒されると、後々厄介なことになるかもしれないから、早めに見つけないと」

 

永夢「じゃあ行きましょう、皆さん!」

 

永夢の言葉に続き、他のライダーたちと合流するべく全員が歩き出した。

 

しかし、立花の危惧したように、他のライダーたちもまた、ターゲットとしてそれぞれ苛烈な戦いに巻き込まれていたのであった…。

 



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第7話

※仮面ライダーエグゼイドを下敷きにしたクロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。

エグゼイドとキリト、そしてカルデアメンバーが合流していたその頃、ポッピーピポパポはあるレギオンに襲われていた。
数と容赦ない攻撃にさらされ、絶体絶命の窮地に立たされるポッピーだったが、そこに時代を超え、ある男が助けに来るのだった。


【ヒーローズクロニクル 岩場ブロック】

 

ポッピー「はぁはぁ…」

 

永夢たちと離れ離れになったポッピーは、岩に隠れながら必死に逃げていた。

檀正宗の声明を見て、永夢たちと合流しようとした矢先にこの世界のゲームプレイヤーたちに発見され、即攻撃対象となってしまったのだ。しかも、そのプレイヤーたちは何かのギルドで、1人や2人ではなく、少なく見積もっても20~30人近い人数で攻撃してくる。

 

仮面ライダーに変身しているとはいえ、ポッピーはほかのライダーたちと比べて戦闘能力は高くない為、すぐさま追い詰められてしまったのだ。

 

岩陰に身を潜め、息を整えながらポッピーはつぶやく。

 

ポッピー「永夢、貴利矢、飛彩…どこに行ったの…」

 

涙声で今にも泣き出しそうになった時、ポッピーの背後の岩が轟音とともに爆発する。

 

ポッピー「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

爆発の衝撃で大きく吹き飛ばされたポッピーの体が地面にたたきつけられ、変身が解除される。何とか立ち上がろうとするポッピーだったが、そこに下卑た耳障りな声がかけられた。

 

???「逃がしませんよぉ。あなたはこのゲームをクリアするためのアイテムなんですから」

 

ポッピーが声の方へ視線を向けると、黄色いピエロのような恰好をしたプレイヤーと、彼の引き連れている大勢のプレイヤーの姿が見えた。

そして、手下と思しきプレイヤーたちはすぐさま、ポッピーの周りを取り囲む。

このピエロのようなプレイヤーは加速世界において最強とされるバーストリンカー「純色の七王」の1人で、イエロー・レディオ。そしてその取り巻きは彼が率いるレギオン「クリプト・コズミック・サーカス」の精鋭たちである。

 

何とか地面から立ち上がると、ポッピーはイエロー・レディオに向かって言う。

 

ポッピー「私を倒しても、意味なんてない!あなたたちは騙されているんだよ!」

 

イエロー・レディオ「ええ。確かに、そうかもしれませんねぇ。でも、そんなことはどうでもいいんですよ」

 

ポッピー「どうでもいいって…。あなた、何を考えているの?!」

 

ポッピーの叫びに、イエロー・レディオはおどけた調子で答える。

 

イエロー・レディオ「確かに、不可解なことが起きて我々の世界が別の世界と合体してしまったのは由々しき事態です。でも、言ってしまえばこれもゲームでしょう?ならば少しは楽しまないと損というものですよ」

 

ポッピー「ゲームって…。あなたたち、負けたら消滅しちゃうんだよ?!それでもいいの?!」

 

イエロー・レディオ「良くはないですが、我々が元いたゲーム『ブレインバースト』もそのようなルールでしたのでねぇ。対してリスクは変わりません」

 

ポッピー「そんな…」

 

イエロー・レディオの言葉に、ポッピーは絶句する。このプレイヤーは誰かのためや世界のためという理由ではなく、純粋にゲームを楽しむために自分を標的にしてきている。

その事実にポッピーは愕然とするが、イエロー・レディオは気にする様子もなくさらに言葉を浴びせる。

 

イエロー・レディオ「それに、あなた自分を悲劇のヒロインか何かだと勘違いしていませんか?」

 

ポッピー「え…」

 

イエロー・レディオ「運営を名乗る檀正宗に何の目的があるかは知りませんが、私たちからすればあなたはいきなり自分たちの世界に入り込んできた異物…つまりイレギュラーな存在なんですよ?」

 

ポッピー「私たちだって来たくて来たわけじゃない!」

 

ポッピーは言い返すが、イエロー・レディオはポッピーの意見など歯牙にもかけない。

 

イエロー・レディオ「確かにそうかもしれませんが、異物であることには変わらない。何なら侵略者と言い換えても良い。そんな人を野放しにできますか?」

 

ポッピー「それは…」

 

イエロー・レディオ「そして何より!そのすべてを知る運営サイドがあなた方を明確な敵として設定した!つまり、その時点であなた方この世界にとっての敵というだけではなく、このゲーム敵キャラ…攻略される存在になったということなんですよォ!つまり!あなたがいかに正論を述べようが、この世界にとってあなたは敵であり、悪ということに変わりはない!」

 

イエロー・レディオの言葉が、ポッピーの心の傷を抉る。

かつて、仮面ライダークロニクルが開始された際、ポッピーは永夢たちを裏切ってバグスター側についた。その結果、ただのゲームの敵キャラとなり、心無いプレイヤーたちや仲間だった飛彩や大我にすら狩られる側となってしまったのだ。

 

ただ人間と仲良くゲームで遊びたいだけなポッピーにとって、その状況は何よりもつらいものであったが、現在、その時と同じ…いや、その時以上に敵視されている。ましてや、イエロー・レディオの言う通り、自分はこの世界に突然入り込んできた異物であり、世界の敵として認識されていてもおかしくない。その事実が、ポッピーの体から力を奪っていった。

 

弱々しく地面へへたり込むポッピーに、イエロー・レディオが声をかける。

 

イエロー・レディオ「自分の立ち位置が身に染みたでしょう?さぁおとなしく私たちに倒されてください。大丈夫、我がレギオンの高火力攻撃にかかれば、痛みを感じずにゲームオーバーになれます」

 

その言葉を聞いても、ポッピーに言い返す気力は残っていない。それを肯定ととったイエロー・レディオは、すかさず手下に命じ、高火力攻撃の準備に入る。

 

様々なエフェクト音が聞こえる中、ポッピーの目から涙があふれ出した。

 

自分は、人間もバグスターも関係なく、みんなでゲームを楽しみたいだけなのに、ここまで敵視されている。その事実がポッピーの心を深く傷つけた結果だった。

 

イエロー・レディオ「さぁ、これで最後です!」

 

イエロー・レディオがそう叫んだ瞬間、ポッピーは心の中で叫んだ。

 

ポッピー(誰か…助けて!)

 

その時、ポッピーの背後から突如悲鳴が上がる。その悲鳴を上げたのは、ポッピーの背後で攻撃準備をしていたイエロー・レディオの部下3人が放ったもので、ポッピーが振り返ると、その3人は光の粒子となって消えていくところだった。

 

そして、3人がいたはずの場所には、朱色の装束に身を包んだ、1人の男…いや、武者が刀を片手に立っていた。

 

イエロー・レディオ「何者ですかあなたは!」

 

イエロー・レディオが男に声をかける。

 

???「オイか?オイの名は…」

 

武者は答えながらポッピーの前まで歩みを進め、そして仁王立ちで口を開く。

 

???「島津中務少輔豊久!薩摩ン兵子ぞ!!」

 

武者こと豊久が威風堂々と名乗ると、イエロー・レディオたちはざわつく。

 

イエロー・レディオ「島津豊久って、関ヶ原の退き口の…」

 

愕然とするイエロー・レディオだったが、当の豊久は気にする様子もなく進める。

 

豊久「そげなことはどうでもよか。こん場の大将は誰じゃ?名乗り出い」

 

豊久の言葉に、一瞬圧倒されるイエロー・レディオだったが、すぐさま調子を戻し、一歩前に出て名乗る。

 

イエロー・レディオ「お初にお目にかかります、豊久殿。わたくしがこのレギオンを率いているイエロー・レディオでございます」

 

豊久「いえろー・れでぃお?なんじゃ、けったいな格好と名前じゃのう。して、これは何ぞ?」

 

イエロー・レディオ「…は?」

 

豊久の問いに、イエロー・レディオが意味が分からないといった感じで答える。

 

豊久「女子1人によってたかって、何ばしよるかと聞いとるんじゃ!!」

 

豊久がイエロー・レディオに向かって怒鳴る。そのあまりの怒声に、イエロー・レディオ含め何人かが圧倒されるが、平静を装いながらイエロー・レディオが答える。

 

イエロー・レディオ「何をしているかって…。その女はゲームのアイテムでありこの世界の敵なんですよ?狩るのは当然じゃないですか?」

 

豊久「げえむだのなんだのは知らん!いかな理由があろうとも、女子1人をよってたかって嬲り者にして、お前ら恥ずかしくないんか⁉そいでも男か⁉」

 

イエロー・レディオ「あのね、豊久殿。これはゲーム、遊びなんです。この女を倒さなければ、我々の世界は救われないんですよ。あなたはいきなり自分の土地に知らない者が攻め込んできたらどうしますか?倒すでしょう?それと同じなんですよ」

 

イエロー・レディオが言い終わると、その場に沈黙が訪れる。

成り行きで命拾いしたポッピーがその様子を見守っていると、豊久が口を開く。

 

豊久「よく分かった」

 

その言葉に、ポッピーは再び絶望する。この人も私を敵視する。そしてイエロー・レディオと共に私を狩るのだろうと。

しかし、次に豊久の口から出てきたのは、全く予想だにしない答えだった。

 

豊久「ぬしゃが将器にあらぬことと、ここに集まった連中が皆、糞だということが。ぬしゃら全員…」

 

言いながら豊久がゆっくりと刀を持ち上げ、肩に構えていく。そして、

 

豊久「根切りじゃ。なで斬りじゃ。1人も生かさん」

 

そう言った瞬間、豊久は一足飛びにイエロー・レディオに斬りかかる。

 

イエロー・レディオ「くっ」

 

とっさに近くにいた2人の手下を盾にし、難を逃れるイエロー・レディオだったが、豊久はその2人を一刀のもとに叩き斬った。

 

豊久「味方を盾にするとは、ぬしゃ芯まで腐っとるのう」

 

そういうと、豊久は再び、刀を肩に構える。

 

イエロー・レディオ「な、なにしてる!早くやつを倒せ!」

 

イエロー・レディオが手下に命令するが、その瞬間、豊久の口から巨大な雄叫びが響く。

 

豊久「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 

そしてそのまま、豊久は敵の密集しているところへと切り込み、

 

豊久「チェストォォォォォォ!」

 

という声とともに1人2人と切り捨てていく。黄のレギオンのメンバーも必死で応戦するが、みんな豊久の気迫と鬼気迫る強さに圧倒され、あっという間に切られていく。そして、全員が豊久に切られ、残るはイエロー・レディオのみとなった。

 

イエロー・レディオ「こうなれば…!」

 

イエロー・レディオが自分の必殺である幻惑攻撃を繰り出す。しかし、豊久はそんなもの意に介さず、一目散にイエロー・レディオに突撃し、

 

豊久「遅い。そして、オイにまやかしは効かんど」

 

その言葉と共に、イエロー・レディオの首を跳ね飛ばした。

 

イエロー・レディオ「ひぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

首から情けない断末魔を上げ、イエロー・レディオの体が光の粒子となり、消えていった。

 

豊久「フン!さてと…」

 

豊久そういいながら刀を鞘にしまい、呆気にとられるポッピーに近づく。

 

豊久「大事ないか?」

 

手を差し伸べられながらそう声をかけられると、ポッピーは正気に立ち戻り、すぐに答えた。

 

ポッピー「えと…大丈夫。助けてくれてありがとう。豊久…さん?」

 

豊久「さんは付けんでよか」

 

ポッピー「そっか。それじゃトヨちゃんだね」

 

ポッピーは言いながら豊久の手を取り、その力を借りて立ち上がる。

 

豊久「そんでおんし、名はなんという?」

 

ポッピー「ポッピーピポパポだよ!」

 

豊久「ぽ、ぽっぴぃ…?この世界はけったいな名前のやつが多いんじゃのう。呼びにくいからぽぴと呼ぶぞ」

 

ポッピー「ちょっと不満はあるけど、助けてもらったからそれでいいよ。それで、トヨちゃんはどこから来たの?やっぱり関ヶ原?」

 

ポッピーの問いに、豊久は首を振ってから答える。

 

豊久「いや、オイは関ヶ原の捨てがまりのあと変な扉ば潜って変なオッサンに会ってな。気が付いたら全く知らん土地に出ちょった。そんで、そこで織田信長とか那須与一と一緒に国盗りばして、ヴェルリナってとこで戦ン準備ばしちょったら変な光に当たって、気が付いたらここにいた」

 

ポッピー「な、なんだか色々とんでもない目に遭ってるんだね…」

 

ポッピーがそういうと、豊久は不敵に笑いながら答える。

 

豊久「どんな世界でも、薩摩兵子ならやっことは1つ。戦で首を上げることじゃ」

 

ポッピー「あははは…ところでトヨちゃん、どうして私を助けたの?さっきのやつの言う通り、私、この世界の悪者だよ?」

 

ポッピーの問いに、豊久は迷いもなく答える。

 

豊久「どんな理由があろうが、女1人を男が寄ってたかって嬲り者にするなんぞ、男ンするとじゃなか。それに、戦場での女首は恥じゃ。武士ならそんなこつはせん。それに…」

 

ポッピー「それに?」

 

豊久「おんしは敵になりとうてなっちゅうわけじゃなかろう?だったら堂々としてればエエ。自分の思うように、飛っ跳べのがよか」

 

豊久の言葉に、ポッピーの心が救われる。たとえ、檀正宗が何を言おうと自分の道を歩んでいけば良い。改めて心にそう決意する。

 

ポッピー「ありがとう。トヨちゃんのおかげで、元気が出たよ」

 

ポッピーが感謝すると、豊久が怪訝な顔をする。

 

豊久「おいはなんもしとらんど。大体、戦に正も悪もなか。ただ、意地や義がぶつかり合うだけよ。だからこそ、己の道だけはしっかり決めとかなきゃいかんがじゃ」

 

ポッピー「そうだね…。それで、これからどうするの?」

 

ポッピーの問いに、豊久は少し考えた後、

 

豊久「おそらく、オイの仲間のノブや与一も来とるはずじゃ。奴らを探す」

 

ポッピー「私も仲間とはぐれて探そうと思っていたから一緒に探そうよ!もしかしたらトヨちゃんの仲間と一緒かもしれないし!」

 

豊久「オイは別に構わんど。ほんなら行くかぽぴ!」

 

ポッピー「うん!よろしくね、トヨちゃん!」

 

そういうと、2人は並んで歩き始めた。

 

その頃、別の世界にある扉の並んだ廊下のような部屋では、眼鏡をかけた中年の男が、新聞を片手に渋い顔をしていた。

 

その見出しには、「島津豊久、別の世界へと乱入!いきなり大将首を獲る大手柄!」とある。

 

中年の男、紫はそれを見ながら1人つぶやく。

 

紫「やれやれ、『あの男のゲーム』に我々も巻き込まれてしまったか。だが、まぁ…それもいいだろう。その世界のことも、大いに回せ、漂流者(ドリフターズ)たちよ…」

 

そういって、紫は新聞を閉じた。

 

そして、ここからヒーローズクロニクルはさらに加速していくことになるのだった。



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第8話

※仮面ライダーエグゼイドを下敷きにしたクロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。
※今回、シノンの武器や戦闘スタイルを一部脚色しています。

檀正宗による最悪のゲームが開幕し、仲間たちの安否を心配した花家大我は、他の仲間とは合流せずに1人で檀正宗を倒すべく世界樹ユグドラシルを目指す。しかし、その行く手を阻むべく、銃の世界からやってきた孤高のスナイパーが大我の前に立ちふさがるのであった…


【ヒーローズクロニクル 廃都市ブロック】

 

聖都市から飛ばされた仮面ライダースナイプこと花家大我は、1人崩れた都市を歩いていた。

目指しているのはもちろん、檀正宗のいる世界樹ユグドラシルである。

この世界に飛ばされた直後、大我は正宗による放送を聞き、自分が狙われる立場にあることを知った。しかし、幸いなことに周辺に敵らしき影は存在しなかったため、己一人でユグドラシルに乗り込み、決着をつけようと決意したのである。

 

他の仲間たちはおそらく、他のプレイヤーたちの相手に追われ、苦戦するであろう。さらに、あの性格ならばろくに反撃もできないに違いない。

そう考えた大我はあえて仲間とは合流せず、1人で決着をつける道を選んだのであった。

 

大我「檀正宗…どこまで俺たちをもてあそべば気が済む」

 

そうつぶやいた大我の目には、大きな怒りがうかがえた。自分たちの世界だけでは飽き足らず、他の世界に渡ってまで害をまき散らすことが大我にはどうあっても許せなかった。

 

一刻も早くユグドラシルにたどり着くため、大我が足を速めようとしたその時、背後から足元に一発の銃弾が飛んできた。

すんでのところで避けた大我が振り返ると、そこにはミリタリー調の衣装を着た、水色の髪の少女が立っていた。

 

大我「何だてめぇは?」

 

大我が問いに、少女が答える。

 

シノン「私はシノン。あなた、仮面ライダーでしょ?」

 

大我「フン。そんな証拠がどこにある?」

 

大我がこういうのも無理はない。あの放送の後、大我はいち早く変身を解除し、ゲーマドライバーが見えないようにしていた。そう簡単にばれることはない。

だが、シノンはそんなこと関係ないと言わんばかりにはっきりと言い切る。

 

シノン「あなたたちのキャラデータはすでにこの世界にいる全プレイヤーに通達されている。たとえ姿を変えていても、すぐに分かるわ」

 

シノンの言葉を聞いて、大我は舌打ちする。檀正宗はどうやら徹底的に自分たちを追い詰めるつもりらしい。

 

大我「そこまでバレてんなら、隠す必要はねぇな。大方、俺を倒しに来たんだろ?」

 

シノン「おとなしくしてれば、一瞬で終わらせてあげる」

 

大我「なめんな。お前みたいな小娘にやられるほど、俺はヤワじゃねぇ」

 

そういって、大我は隠していたゲーマドライバーを取り出し、腹部に装着する。

その大我の様子を見て、シノンもストレージを開き、近距離用の小型マシンガンを取り出す。

 

シノン「手加減はしないから」

 

大我「上等だ!第二戦術!」

 

大我は言いながら、バンバンシューティングガシャットを取り出し、

 

大我「変身!」

 

と叫ぶと同時に、仮面ライダースナイプシューティングゲーマーレベル2へと変身し、愛用の武器であるガシャコンマグナムの銃口をシノンに向ける。

 

それと同時にシノンもマシンガンの銃口をスナイプに向け、そこから激しい銃撃戦が始まった。

 

スナイプ「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

シノン「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

互いに叫び、走りながら銃を連射しまくる。しかし、スナイプもシノンも銃を使った戦闘のプロフェッショナルであるため、決定打は決まらず、ある種の膠着状態に陥る。

 

スナイプ「ちっ!多少のダメージは無視するしかねぇな!」

 

膠着状態を嫌ったスナイプが、両手を交差しガードしながら無理やりシノンと距離を詰める。

 

シノン「ちょっ…!そんなのあり?!」

 

マシンガンによる銃撃をものともせずに突撃してくるスナイプの行動に、シノンは面食らう。そして格闘戦の間合いとなり、スナイプの荒い蹴りがシノンの腹に突き刺さった。

 

シノン「かはっ…」

 

無理やり肺から空気を絞りだし、マシンガンを手から落としながら、シノンが地面を転がる。

 

スナイプ「形勢逆転だ!」

 

スナイプがそういいながらガシャコンマグナムの銃口を這いつくばるシノンに向けるが、それよりも早くシノンは腰のホルスターに収めていたハンドガンを引き抜き、スナイプに向かって引き金を引く。

先ほどのマシンガンと違って単発ずつの発射だが、威力はその分強まっており、さしものスナイプも体勢を崩し、数歩下がってから膝をつく。

 

シノン「高かったけど、買っておいて正解だったわね」

 

そう言うと、シノンは先ほど自分がやられた戦法の意趣返しと言わんばかりにハンドガンを撃ちながら、膝をつくスナイプまで接近する。そして、

 

シノン「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

という叫びと共に、腰に装着していたレーザーソードを振りかぶり、スナイプを斬りつけた。

 

スナイプ「ぐあぁっ!」

 

という叫びと共に、今度はスナイプが地面を転がる。

すかさずレーザーソードで追撃するシノンだったが、スナイプはそれを何とか避け、大振りになったところに合わせてガシャコンマグナムでガードする。

 

スナイプ「そんな技もあるとはな。だが、俺の知ってる剣士に比べりゃまだまだだ!」

 

そう叫びながらスナイプは体格を利用してシノンを押し返し、一度距離を取る。

スナイプのパワーに押されたシノンはぐらつきながら、

 

シノン「やっぱりキリトのようにはいかないか」

 

とつぶやき、再び銃を構えようとした。しかし、スナイプはそれより早く腰のホルダーから新たなガシャットを取り出し、

 

スナイプ「地上でダメなら空中からだ!」

 

といってガシャットのボタンを押す。

 

『ジェット!コンバット!』

 

ガシャットから流れるその音声の後、

 

スナイプ「第三戦術!」

 

といってスナイプはガシャットをセカンドスロットに挿入し、コンバットゲーマーレベル3へと姿を変え、背部のブースターを起動して飛翔する。

そして備え付けられた2つのガトリングユニットを使って空中からシノンを攻撃し始めた。

 

シノン「ちょっと!さっきからずるいでしょ!」

 

空から攻撃するスナイプにシノンは抗議するが、スナイプは

 

スナイプ「こっちも負けてられねぇんだよ!」

 

と言い返して空中を旋回し、多方向からシノンに銃弾を浴びせる。

 

シノン「こうなったら…」

 

空中からの銃撃に打つ手がないと判断したシノンは一度スナイプに背を向け、少し離れたところにあった廃屋の中に飛び込む。

 

スナイプ「逃がすか!」

 

そう言ってスナイプもシノンを追って建物に突撃するが、建物に入った瞬間、すぐ脇に隠れていたシノンの投げたレーザーソードによってブースターを貫かれてしまう。

 

スナイプ「しまっ…」

 

そういった瞬間、シノンのハンドガンの弾が見事に突き刺さったレーザーソードのエネルギー供給路である柄を撃ち抜き、誘爆によってブースターが凄まじい爆発を起こした。

 

スナイプ「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

という声と共にスナイプは建物の外に放り出され、それと同時にコンバットゲーマーレベル3から元のシューティングゲーマーレベル2へと戻ってしまう。

 

スナイプ「アイツ…!」

 

そう言いながらふらつく体を何とか起こしたスナイプの胸元に、鋭い銃弾が直撃する。

 

スナイプ「くそっ!」

 

と言ってスナイプは銃弾の飛んできた方に素早くガシャコンマグナムの銃口を向けて発射するが、そこにシノンの姿はなく、ただ無駄弾を使うことになる。

あたりを見渡し、

 

スナイプ「どこだ!?」

 

と叫ぶと、今度は背中に銃弾が当たる。

すぐさま後ろを振り返り、反撃しようとするがすぐに右の肩を撃たれ、その拍子にガシャコンマグナムを手放してしまった。

 

スナイプ「くっ」

 

スナイプが撃たれた右肩をおさえた瞬間、また背中に銃弾が当たる。

 

スナイプ「精密射撃か!」

 

敵の戦略に気づいたスナイプは一度その場から移動し、近くにあったビルの中に身を隠した。

そして窓から外の様子をのぞこうとした瞬間、飛来する弾丸に気づいてとっさに避ける。

 

スナイプ「相当な腕前だな…」

 

スナイプはそう言うと、壁に背を預けてその場に座り込んだ。

 

一方その頃、敵であるシノンはスナイプのいるビルの反対側の廃墟に身を隠して陣取り、愛銃のヘカートⅢの照準を合わせていた。

 

シノン(本当は使いたくなかったけど、相手も相当な手練れみたいだからね…)

 

そんなことを考えながら、シノンはスコープからスナイプの動向を探る。

このゲームが仕組まれたことであることは最初から分かっていたため、シノンはもし仮面ライダーを見つけてもゲームオーバーにするようなことはせず、戦闘不能レベルに留めて協力を仰ぐつもりだった。

しかし、いざ出会った仮面ライダーは自分と同じ射撃の名手にして手加減できるような相手ではない。そうなれば、自身の安全を守るためにあたりどころが悪ければ相手を即ゲームオーバーにしてしまうヘカートⅢを使うしかなかった。

さらに言えば、先ほどのような運動戦は自分の得意分野ではなかったが、早期決着を望むシノンにとっていつも自分が使う精密射撃では時間がかかりすぎるため、あえてあの戦法を取ったのだった。

 

シノン(次で足に当てて、決着をつける…!)

 

スコープをのぞきながら、シノンは静かに決意を固めた。

 

そして、そのシノンから狙われるスナイプも考えていた。女であり、しかも自分より年下の少女を傷つけることをためらい、レベル2で闘ったものの、相手の技量は自分のはるか上を行く。そして何より、彼女の姿を見ていると、聖都市に残してきた自分の患者(パートナー)のことを思い出し、どうしても攻撃にためらいが生じてしまっていた。

 

スナイプ「俺もあいつらのことは言えないな…」

 

そういいながら、スナイプは己の切り札ともいえるガシャットを取り出す。

 

スナイプ「女のしかも子供相手に使いたくはねぇが、ここで負けるわけにはいかねぇ!」

 

そう言うと、スナイプはそのガシャット―――ガシャットギアデュアルβのダイヤルを回す。

 

『バーンバーンシミュレーション!』

 

ガシャットからその音声が鳴ると、

 

スナイプ「第五拾戦術!」

 

と小さく叫び、バンバンシューティングガシャットを抜いて、ガシャットギアデュアルβをゲーマドライバーに差し込む。そしてシミュレーションゲーマーレベル50になると、両手のガンユニットから小型の戦闘機を発進させ、

 

スナイプ「いけ!」

 

と言って窓の外へと解き放った。

小型戦闘機は静かに外を偵察し、やがて向かい側のビルにいたシノンを発見すると一斉に攻撃を開始する。

 

シノン「しまった!」

 

スコープに集中し、反応が遅れたシノンだったが、間一髪のところで戦闘機からの攻撃を避けて場所を移動しようとする。

 

しかし、時すでに遅く、戦闘機からの情報によりシノンを捕捉したスナイプは、

 

スナイプ「そこか!」

 

と叫びながら、全身に装備した10門のスクランブル・ガンユニットの砲門をすべて開き、シノンがいるであろうあたりを狙って一斉に砲撃した。

 

シノン「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

シノンの叫びと共に、元いた廃墟は崩壊し、瓦礫の山と化す。

間一髪で脱出し、立ち上がろうとしたシノンだったが、その眼前にスナイプの右手の砲門が向けられ、

 

スナイプ「勝負あり、だな」

 

と宣告された。圧倒的火力と自分の戦法が通用しないことを悟ったシノンは、持っていたヘカートⅢを地面に置き、ゆっくりと両手を上げる。

 

シノン「私の負けよ。さぁ、煮るなり焼くなり、トドメを刺してゲームオーバーにするなり好きにして」

 

シノンのその言葉を聞くと、スナイプはガシャット抜いて変身を解き、元の大我の姿に戻る。そして、シノンに向かって、

 

スナイプ「邪魔する気がないなら、さっさと失せろ」

 

と言い放った。その一言に、シノンが言い返す。

 

シノン「見逃すっていうの?」

 

 

 

大我「俺の目的は檀正宗だ。それを邪魔する奴ならぶっ潰すが、邪魔をしない奴の命を奪う気はねぇ。これでも一応、医者だからな」

 

シノン「…町のチンピラかと思った」

 

大我「白衣を着てんだろうが!」

 

大我のツッコミを聞いて、シノンがプッと吹き出す。その姿を見た大我も、思わずフッっと笑みを漏らす。

 

シノン「あなた、優しいのね」

 

シノンの言葉に、大我が照れ隠しのように答える。

 

大我「無駄なことが嫌いなだけだ」

 

シノン「ふーん。ねぇ、質問してもいい?」

 

シノンが、真顔になって大我に尋ねる。

 

大我「なんだ?」

 

シノン「あなたたちは、何の目的があってこの世界に来たの?」

 

シノンのまっすぐな視線を受けて、大我も真顔になって答える。

 

大我「俺たちの方にはこの世界に目的はねぇ。目的があるのは、この世界の運営とか言ってる檀正宗の方だ。あいつは俺たちのいた世界で最悪のゲームを作って、そのルールであり頂点として君臨し、多くの人たちを苦しめた。この世界でも、同じことをするつもりらしい。最も、今回は元の世界で奴のゲームをぶっ潰した俺たちへの復讐も兼ねているみたいだがな」

 

大我のその答えに、シノンは少し自嘲気味に答える。

 

シノン「そっか…。やっぱり君たちは、悪い人じゃなかったんだね」

 

シノンのその答えに、大我が皮肉っぽく言う。

 

大我「お前らプレイヤーにとって運営はまさに神みたいな存在かもしれねぇが、そう簡単に信じるもんじゃねぇぞ。知り合いに様々なゲームを開発して、自分のことをゲームマスターだ神だとほざいてる奴がいるが、とんでもねぇロクデナシ野郎だからな」

 

大我の放ったその言葉には、不器用ながらも「気にするな」といった優しさを感じ、シノンはフッと微笑む。

 

シノン「ありがとう…。それで、あなたはここからどうするの?」

 

大我「決まってる。ユグドラシルに行って、檀正宗をぶっ潰す!」

 

大我の答えを聞くと、シノンは立ち上がり、

 

シノン「それじゃ護衛役として、私もいっしょに行くわ」

 

と言った。

 

それを聞いた大我は即座に反対する。

 

大我「いらねぇよ。俺に負けるような奴は足手まといだ」

 

シノン「でも、序盤では私の方が押してたよね?」

 

大我「それは、油断してたからで…」

 

シノン「今回は私1人だったけど、次は集団で襲われるかもしれないんだから負けたとはいえ用心棒がいれば心強いでしょ。それに、この世界のこと、何も知らないんでしょ?ガイドはつけておいた方がいいと思うけど」

 

その言葉を聞いて、大我は納得しかけたが、やはり巻き込むわけにはいかないと再度突っぱねようとする。しかし、シノンの目にはたとえ死んでもついていくという固い意思が宿っており、何を言っても無駄だと思い知らされる。

 

大我「…足手まといになるんじゃねぇぞ」

 

大我のその答えに、シノンは笑って答える。

 

シノン「当然。それで、今更だけど、あなたの名前は?」

 

大我「花家大我だ」

 

シノン「そう。それじゃ行こうか、大我」

 

そう言うと、シノンは傍らにあったヘカートⅢを担ぎ、先に歩き出す。その姿を見て大我は、

 

大我「…あいつにそっくりだな」

 

と小さく漏らすと、シノンに続いて再びユグドラシルを目指して歩き始めた。



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第9話

※仮面ライダーエグゼイドを下敷きにしたクロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。
※パラドクスの能力を一部改変してます。

相棒の永夢とはぐれたパラドは、仮面ライダーパラドクスとして自分を襲ってきた相手を次々と倒しながら、永夢を探していた。そんな戦いを続けるパラドの元に、ある少年が現れる。それは、かつて源平合戦で名をはせた、伝説の弓手だった!ゲームの天才と弓の天才が、ここにぶつかる!


【ヒーローズクロニクル 遺跡ブロック】

 

朽ち果てて野ざらしになった古代の城跡に、ALO、ブレインバーストのプレイヤー複数人が集まり、戦闘を開始していた。

相手は言わずもがな、運営である檀正宗が敵として発表した仮面ライダーである。

ALO、ブレインバーストのプレイヤーは総勢で20人ほど集まっているが、仮面ライダー側は1人。普通に見れば仮面ライダーが不利であるはずだが、この戦闘では違う。

押しているのは仮面ライダーで、ブレインバーストとALOプレイヤーが逆に圧倒されていたのである。

 

「くそっ!なんなんだアイツ!」

 

「そんじょそこらのプレイヤーとは違うぞ!」

 

ALOプレイヤーがそう毒づいた瞬間、

 

パラドクス「隙ありだ!」

 

と言って仮面ライダーパラドクスパーフェクトノックアウトゲーマーがパラブレイガンで2人を狙撃し、ゲームオーバーにした。

パラドクスはそのままパラブレイガンを肩に担ぎ、自分を取り囲むプレイヤーを見渡しながら言う。

 

パラド「お前ら、この程度で俺にゲームを挑んできたのか?話にならないな」

 

パラドのその言葉に、ALOとブレインバースト、それぞれのリーダー格の男が叫ぶ。

 

「あんな奴になめられてたまるか!」

 

「一斉攻撃で仕留めるぞ!」

 

その一声で、周りのプレイヤーたちが大技の準備に入る。

 

しかし、パラドクスは特に慌てる様子もなく、

 

パラドクス「こっちも早く永夢を探さなきゃいけないからな。付き合ってる暇はない」

 

と言って右手を空中に掲げる。

すると、空中に複数のエナジーアイテムがまるでパズルゲームのように展開され、パラドクスの右手の動きと共に場所が入れ替わっていく。

 

パラドクス「こいつで行くか!」

 

パラドクスはそう言うと右手を空中にタッチするかのように揺らし、3つのエナジーアイテムを自分の体に吸収した。

 

『高速化!』『高速化!』『マッスル化!』

 

という音声が鳴り終わった瞬間、パラドクスは超高速で移動し、大技の準備に入っていたプレイヤーたちをなぎ倒していく。

そして、プレイヤーたちを吹っ飛ばして一か所に集めると、

 

パラドクス「これで止めだ!」

 

と叫び、パラブレイガンにゲーマードライバーに刺してあったガシャットを装填した。

 

『キメ技!パーフェクト!クリティカルストライク!』

 

パラブレイガンからその音声が響いた瞬間、高出力のビームが放たれ、集められていたプレイヤーたちに直撃する。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

という断末魔と共にプレイヤーたちはゲームオーバーとなり、光の粒子になって消えていった。

 

パラドクス「全く、俺の邪魔をするからだぜ」

 

つまらなそうにそう言うと、パラドクスはその場を後にしようと踵を返した。

 

パラドこと仮面ライダーパラドクスは、他の仮面ライダーやプレイヤーと同様に、この世界へ飛ばされた直後にあの檀正宗の放送を聞き、すぐさま永夢と合流、正確には融合するべく自分の体をウイルス化しようとしたが、なぜかうまくいかず、同時に複数のブレインバーストやALOのプレイヤーたちに襲われ、仮面ライダー状態のまま戦いを続けており、すでに10組近いプレイヤー集団を倒していた。

その中には各ゲームで幾分か名の通ったプレイヤーもいたが、永夢の中にある天才ゲーマーMの人格そのものであり、天才的なゲームセンスを持つパラドにとっては取るに足らない実力で、集団で襲ってきたとしても苦戦することもなくここまで来たのであった。

 

遺跡を出て、とりあえず街へ向かおうとしたパラドクスに、物陰から拍手と声が送られる。

 

???「いやはや、御手前御見事」

 

パラドクスが声のした方に顔を向けると、弓を手にし、長髪を後ろで束ねた美少年が遺跡の壁に寄りかかっていた。

パラドクスと目の遭った少年は、壁から背を話してパラドクスに近づいてくる。

 

???「先ほどから見させていただいておりましたが、天性の勘と変則的な動き、そして妖術に似た技と、楽しませていただきました」

 

パラドクス「何だお前?プレイヤーか?」

 

怪訝な反応をするパラドクスに、少年は笑みを浮かべながら答える。

 

???「あなたのいう『ぷれいやあ』というものは分かりませんが、元いた世界では『漂流者(ドリフ)』と呼ばれていました」

 

パラドクス「ドリフ?それがお前の名前か?」

 

???「いえ、それは我らのようなものの総称を成す呼び名。私の名は与一…那須資隆与一でございます」

 

そう言うと、少年こと与一はゆるく持っていた弓を持ち直す。

 

パラドクス「ふーん、与一か。それで、お前も俺に遊んでほしいのか?」

 

パラドクスの問いを聞いて、与一の顔に不敵な笑みが浮かぶ。

 

与一「ご明察。是非とも言ってお手合わせ願いたい」

 

その言葉に、パラドクスはため息をつきながら、

 

パラドクス「どうせ断っても仕掛けてくるんだろ?だったらさっさと片付けてやる」

 

と言って手にしたパラブレイガンを構えた。その姿を見て、与一は笑みを浮かべたまま、

 

与一「お手間を取らせて申し訳ない。最初に言っておきますが、私は先ほどの連中とは一味…違いますよ?」

 

と言って神速の速さでパラドクスに矢を放った。

 

パラドクス「くっ!」

 

与一の神業ともいえる早射ちを、パラドクスはかろうじてパラブレイガンで弾く。

 

しかし、その一瞬の隙をついて与一はパラドクスから適度な距離を取り、矢を神速ともいえる速さで連射してきた。

 

パラドクス「速いが全部見切れるぜ!」

 

そういってパラドクスはパラブレイガンをアックスモードにし、矢を薙ぎ払いながら与一との距離を詰めていく。

そしてアックスの間合いに入ると、

 

パラドクス「もらった!」

 

といって与一の脳天めがけて思い切りパラブレイガンを振り下ろした。

しかし、与一はその一撃をヒラリとかわして宙に舞い上がり、

 

与一「連射でダメなら、これでどうでしょう?」

 

と言って思い切り弓を引き絞った矢をパラドクスに向かって放つ。

 

パラドクス「弓矢程度じゃこの体に傷なんてつかな…」

 

そこまで言ったパラドクスの胸に、与一の放った矢が突き刺さる。

 

パラドクス「なに!?」

 

予想外の事態にパラドクスが狼狽すると、

 

与一「隙あり、です」

 

といって与一の矢が次々とと飛んできて、パラドクスの体に突き刺さった。

 

パラドクス「ぐああっ!」

 

矢によるダメージにより、パラドクスが膝をつく。そのパラドクスを見ながら、与一は得意げに語る。

 

与一「確かにあなたの体は硬い…。私の知るどんな鎧よりもね。しかし、こうして力を調節すれば…」

 

そういって、与一は再び弓に矢をつがえ、思い切り引き絞ってからパラドクスに向かって放つ。

すると、パラドクスの胸にその矢が深く突き刺さり、それを見た与一が続けた。

 

与一「その体を貫くことも可能です。最も、私もここまでの威力とは思いませんでしたが、この世界にきて何かの力が働いているようですね」

 

そう言い終わると同時に、再び与一の連射が始まった。先ほどと比べ、若干速度は劣るものの、威力は段違いに上がっており、与一の技量の高さを思い知らされる。

 

パラドクス「くそっ!」

 

パラドクスはそういいながら地面を転がって連射を避け、体に刺さった矢を無理やり抜いていく。そして、

 

パラドクス「こいつならどうだ!」

 

と言って手早く空中にエナジーアイテムを展開し、右手を素早く動かしていく。そして先ほどの集団戦同様、3つのエナジーアイテムを体に取り込んだ。

 

『鋼鉄化!』『鋼鉄化!』『鋼鉄化!』

 

その音声が鳴るとパラドクスの体が一瞬銀色に変わり、防御力が増す。

先ほどまで当たり前のように突き刺さっていた与一の矢は、もう刺さらなくなっていた。

 

パラドクス「もう矢は効かないぜ!」

 

そう叫ぶと、パラドクスはゲーマードライバーに刺さっているガシャットギアデュアルのダイヤルを回す。

 

『ノックアウト!ファイター!』

 

という音声がガシャットから響くと、パラドクスの腕に巨大なボクシンググローブのようなものが装着される。

 

パラドクス「格闘戦で勝負をつけてやる!」

 

パラドクスはそう言って与一との間合いを一気に詰めて、両手でパンチを打ち出していく。

しかし、与一はそのパンチをすべて見切り、こともなげに避けていった。その様子は、さながら舞を舞っているかのようである。

 

与一「中々の速度と手数ですが、動きが荒いですね」

 

パラドクス「うるさい!こうして近づいていれば、お前も弓は使えないだろ!あとはスタミナ勝負だ!」

 

ゲーマーであり、自らもゲームキャラであるパラドクスらしい戦法だった。しかし、与一はパラドクスの言葉を聞いてフッと笑みをこぼす。

 

与一「ほう…。確かに、矢を放つことはできませんが…」

 

そう言うと、与一は一度足を止めてパラドクスの正面に立ち、動きを止める。

 

パラドクス「もらったぜ!」

 

そういって、パラドクスは渾身のコンビネーションを与一に向かって放つ。しかし、与一は弓を両手で持ち、自分の正面まで持ってくると回転させ、パラドクスのコンビネーションを弾いた。

 

パラドクス「なっ…!?」

 

パラドクスが大きく体勢を崩す。その隙を見逃さず、与一は宙に高く舞い上がるとパラドクスの頭上を通って背後に立ち、弓矢を使って後ろからパラドクスの首を裸締めのように締め上げた。

 

パラドクス「くそっ!放せよ!」

 

パラドクスが与一の締め技を解こうと体を動かすが、与一は両足で地面を蹴るとそのまま足をパラドクスの胴体に絡みつかせ、背中から地面に倒れこむ。

完全に寝技を決めた与一が、パラドクスの耳元でささやく。

 

与一「あなたは弓の特性をよく知っているようですが、それはあくまで表面上のもの…。真の弓術とは、こうしていかなる局面にも対応できるのですよ」

 

言い終わると、与一はさらに腕の力を込めて、パラドクスの首を締める。

 

パラドクス「ぐうぅぅっ!」

 

低くうめき声をあげるパラドクスに、与一は耳元で降伏勧告を告げた。

 

与一「このまま降参すれば、命までは取りませんよ?」

 

その言葉に、パラドクスは反論する。

 

パラドクス「悪いが…俺は永夢以外のやつに…負ける気はないんでな!」

 

その瞬間、パラドクスは左手を動かしてガシャットギアデュアルのダイヤルを回し、もう一つの能力を発動する。

 

『パーフェクトパズル!』

 

という音声と共に両手のグローブが消え、パラドクスは先ほどよりも手早く右手を動かしてエナジーアイテムをそろえると、すぐさま自分の体に取り込んだ。

 

『マッスル化!』『マッスル化!』『マッスル化!』

 

という音声と共に、パラドクスの筋力が上がり、

 

パラドクス「うおりゃあ!」

 

という声と共に与一を力づくで引きはがすと、すぐさま立ち上がって息を整える。しかし、与一は間髪入れずにパラドクスに迫り、

 

与一「とった!」

 

と言って超至近距離から弓を発射しようとする。しかし、パラドクスはすぐさまガシャットギアデュアルのダイヤルをノックアウトファイターに合わせ、

 

パラドクス「こっちのセリフだ!」

 

と言って、再びグローブを付けた右の拳で与一の体を打ち抜いた。

 

与一「ぐふっ!」

 

与一はうめき声をあげ吹っ飛ばされるが、空中で体勢を整え、地面に激突することなく着地する。

 

与一「ふふっ…。中々楽しませてくれますね…」

 

パラドクス「そっちもな。永夢以外でこんなに遊べる奴は久しぶりだ」

 

パラドクスは笑いながら言う。すると、与一の体にまとっていた気の質が変わった。

 

与一「あなたになら、本気を出してもよさそうだ…」

 

その一言の後、与一の全身から禍々しい殺気がほとばしる。

そのあまりの凄まじさに、パラドクスが警戒を強めたその時、

 

???「やめい!!」

 

という声が2人の横から聞こえてきた。パラドクスと与一がそちらに目を向けると、長髪を後ろに流し、眼帯をしたいかにも邪悪そうな男がこちらに歩いてくるところだった。

 

???「与一、本来の目的を忘れるでない!」

 

男は与一に向かってそう言うと、パラドクスの方を向き、声をかける。

 

???「すまんのぉ。パラドクスとか言ったか?ウチのもんはどうも加減というものを知らなくてな」

 

男の言葉を聞いて、パラドクスが当然すぎる言葉を投げかける。

 

パラドクス「お前誰だ?」

 

???「俺か?俺は織田…織田前右府信長。第六天魔王とは俺のことよ」

 

パラドクスの問いに、邪悪な男こと信長は不敵に笑う。与一の名は知らなかったパラドクスであるが、この男の名は知っていた。天才ゲーマーMとして永夢の中にいたころやった歴史のゲーム、特に戦国時代を舞台にしたゲームには必ず出てきたからだ。

 

パラドクス「…お前も、ゲームのキャラなのか?」

 

パラドクスの問いに、信長が不敵に答える。

 

信長「お前の言う『げえむ』とやらが何かは知らんが、俺は俺よ。それ以上でも、以下でもない」

 

信長の答えに、パラドクスは目の前にいるこの男がゲームのキャラではないと確認する。ゲームのキャラならば、自分がしっかりとゲームの中にある存在であることを認識しているはずなのだが、この男にはそれがない。

そして何より、ゲームのキャラとは思えないほどの気迫と野心が感じられた。

そこまで考えたパラドクスに、信長が来やすい感じで声をかける。

 

信長「それでなぁパラドクス。お主、俺らと組まないか?」

 

パラドクス「…は?」

 

信長の唐突すぎる誘いに、パラドクスが呆気にとられる。

すると信長は、セールスマンのような口調でパラドクスに話をした。

 

信長「いやいや、君タチってほら、狙われる立場じゃーん?それに、仲間とも離れ離れだし、このまま1人で行動すると危ないし、俺たちが護衛役としてお主についていくってわけ。その代わり、こっちのことにもちょーっと協力してもらいたいんだけど?」

 

パラドクス「協力ってなんだよ?」

 

パラドクスの問いに、信長は邪悪な笑みを浮かべながら答える。

 

信長「この国を盗る。あの頂点から全てを見渡しているような気になっている檀正宗とかいうやつを地べたに這いつくばらせて、その後釜に俺たちが座るのよ!」

 

信長の放った言葉に、パラドクスの心が躍る。

つまり、この男はこのゲームの世界で、壮大なシミュレーションゲームをやろうとしているのである。ゲーマー気質のパラドの胸が熱くならないわけがない。

 

信長「無論、道中でお主らの仲間は探して集めるし、最終的にあの檀正宗を倒して国を盗ったときには、おぬしらを元の世界に返すこともできよう。それに、お主も、その仲間もどの道奴を倒そうとしているのであろう?ならば味方は多いに越したことはない」

 

信長の話に、与一が続く。

 

与一「決して悪い話ではないと思いますが?いかがしますか?」

 

その問いに、パラドクスは敵意を解いたことを示すため、変身を解きながら答える。

 

パラド「いいぜ。その話、乗っかってやるよ。ただし、俺の仲間の永夢を探してからだ」

 

信長「それはもちろん。俺らも仮面ライダーは1人でも多く戦力に加えたい。それと同時に、俺たちの御大将も探して引き入れる」

 

パラド「お前が大将じゃないのか?」

 

パラドの問いに、信長は一瞬寂しそうな顔をした後、ニヤリと笑って、

 

信長「俺はあくまでも軍師。影ですべてを動かすのが好きなのよ!」

 

と声高に言った。それを聞き終えると、与一が2人に声をかける。

 

与一「この先に街があります。まずはそこを目指しましょう」

 

パラド「ああ。心が躍るな!」

 

パラドはそう言うと、信長と与一と共に街を目指して歩き始めた。

異世界となったゲームの世界で、『国盗り』という新たなゲームが開幕する。



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番外編

※仮面ライダーエグゼイドを下敷きにしたクロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。

電脳の異世界にてエグゼイドやキリト、ハルユキ、カルデアの魔術師、そしてドリフターズの戦士たちが死闘を開始していたころ、別の並行世界でも異変が起ころうとしていた。
檀正宗の策略により、ゆがんだ野望と支配欲にまみれた男が異世界にさらなるうねりを巻き起こす。


拳願島。

日本経済の中枢を担う大日本銀行の所有するリゾート地であるここは、強さを求めて集まった「闘技者」と、それを雇用する企業の利権を争う大会「拳願絶命トーナメント」の真っ最中であった。

江戸の商人たちが幕府からの御用達の地位を得るべく発祥した拳願仕合。その後も日本の経済界の裏で脈々と続けられてきたこの仕合は、時に日本のみならず、世界経済へも影響を与えるほどまで発展していた。拳願絶命トーナメントは、その運営を担う拳願会の次の代表を決める戦いである。

すでにトーナメントは2回戦の全試合が終了しており、現在はインターバルの時間となっている。

その会場である拳願ドームの一室にて、日本の電力開発・供給を担う東洋電力の会長、速水勝正はPC画面に向かって何者かと話していた。

 

速水「依頼のデータはそちらへ送った。後の使い方は自由だ」

 

速水がそう言うと、PCの画面から声が返ってくる。

その相手は、電脳の異世界にて最悪のゲームを運営している檀正宗だった。

 

正宗「感謝しますよ速水殿。あなたがいなければ、失われたマーヴルヒーローズのデータも手に入らなかったし、このガシャットも作れなかった」

 

そう言うと、正宗は右手であるガシャットを持ち上げ、速水に見せる。そこには「ストリート・ファイター」のタイトルとロゴが刻まれていた。

 

速水「この程度のデータなど、我が東洋電力とその傘下、百人会の力を使えばたやすく手に入る。それで、例のものは?」

 

速水の問いに、正宗は邪悪な笑みと共に答える。

 

正宗「すでにこちらこのパソコンに繋がったガシャットの中に転送済みだ。後は、こちらが技術供与して作ったであろうバグヴァイザーに装填して感染させればいい」

 

速水「なるほど…。おい、河野」

 

正宗の言葉を聞いた速水がそう言いながら背後に声をかける。そこには、バグヴァイザーを持った背の低い、独特の髪型をした中年の男が立っていた。日本有数のゲーム制作会社、NENTENDOの社長、河野秋生である。

名前を呼ばれた河野は、おどおどしながら速水に返事をする。

 

河野「は、はい…」

 

速水「お前に作らせた、バグヴァイザーというのをここに」

 

速水をその命令に従い、河野は持っていたバグヴァイザーを手渡す。

PCの画面内からそれを見ていた正宗は、満足そうに微笑みながら、

 

正宗「では、こちらの世界で待っていますよ、速水会長」

 

と声をかけ、PC上から姿を消した。

 

速水「…食えん男だ。だが、利用価値はある…」

 

速水はそう言うと、バグヴァイザーを部屋の真ん中に設置した特殊な装置に装着し、配下である天狼衆に無線で連絡を取る。

 

速水「首尾はどうだ?」

 

速水が問うと、無線からすぐに返答が返ってくる。

 

『こっちの準備は完了だ。いつでも撒けるぜ』

 

その答えを聞いて、速水の顔にゆがんだ笑みが浮かぶ。

この拳願絶命トーナメントが開催される2週間前、速水の私用パソコンにあるウイルスが入り込んだ。そのウイルスこそ、次元を飛び越える力を得たバグスターこと檀正宗であり、速水に自分の存在やヒーローズ・クロニクル計画を打ち明け、協力を要請してきたのである。最初は胡散臭い与太話であろうと考えた速水であったが、正宗が自分の野望と計画を知り、それに協力をするといったことと、彼の計画自体が速水の利用できるものだったために同盟を結び、現在に至るのであった。

 

全ての準備が終わったことをを知った速水は、側近の鬼頭と咬に命令を下す。

 

速水「革命の始まりだ。全員に伝えろ」

 

速水がそう言うと、鬼頭と咬は部下たちに連絡を取り、命令を下す。そして、近くの机に置いてあったVRマシンを出して頭に装着するとチェアに横たわり、鬼頭と咬も同じくマシンを装着して横たわる。

 

速水「見ていろよ滅堂…。貴様の時代は今をもって終わりだ!」

 

そう言って、速水は手にしていた小型スイッチを勢いよく押し、正宗の待つヒーローズ・クロニクルの世界へと旅立つ。

それと同時に、バグヴァイザーが作動すると、天狼衆の仕掛けた装置によって拳願ドーム全体に特殊なバグスターウイルスが散布された。

 

すると、ウイルスはすぐに会場内にいた闘技者に感染し、次々とその威力を発揮していく。

速水勝正の邪悪な野望の幕が、電脳の異世界にて上がろうとしていた。

 



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第10話

※仮面ライダーエグゼイドを下敷きにしたクロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。

シルフ領のプレイヤーに追い詰められ、街へと逃げ込んだ鏡飛彩はそこでシルフの少女、リーファに助けられる。自分の事情を受け入れ協力すると言ってくれたリーファと共に行動を始めようとする飛彩だったが、そこでシルフ領と青のレギオン、レオニーズの連合軍に攻撃されてしまう。多勢に無勢で追い詰められた飛彩の元に、己の拳にすべてをかける男たちが現れる。


【ヒーローズ・クロニクル 元ALOシルフ領 市街地】

 

ALOにてシルフの種族が治めていた土地に、怒号が飛び交っていた。

 

「そっち行ったぞ!」

 

「手分けして探せ!」

 

プレイヤーたちはそんな声を上げながら、街中を走り回っている。

その標的となっている人物、仮面ライダーブレイブこと鏡飛彩は人気のない路地裏に身を隠しながら辺りの様子をうかがっていた。その左腕からは血が流れ、そこを右手でおさえている。

飛彩はこの世界に飛ばされた後、仮面ライダー討伐のために編成されたシルフ領のプレイヤーたちに発見された。飛彩は何の罪もないプレイヤーたちを傷つけるのをためらい、話し合いにて解決を図ろうとしたが、自分たちの世界の危機を前にしたプレイヤーたちは聞く耳を持たず、そのまま猛攻を仕掛けてきたのである。止む無く飛彩も応戦したが、いかんせん数が多い上に元はただのゲームプレイヤーということで中々攻撃に移ることができず、致命傷を負いながらも一瞬のスキをついて戦場から離脱し、近くにあったこの街へと逃げ込んだのであった。

 

飛彩「くっ…見つかるのも時間の問題だな」

 

左腕をおさえながら飛彩が立ち上がり、場所を移動しようとすると、ふいに背後から声がかかる。

 

???「あなた、大丈夫?」

 

見つかったと思い込み、飛彩が身構えながら振り返ると、そこには緑の衣装に身を包んだポニーテールの少女が立っていた。

 

飛彩「やるしかないか…!」

 

飛彩はそう言って右手で白衣のポケットからガシャットを取り出そうとするが、手を離した左腕に激痛が走り、その場にうずくまる。

 

???「ちょっと、怪我してるじゃない!見せて!」

 

痛みに苦しむ飛彩を見て、少女が近づいてくるが、飛彩は警戒から距離を置こうとする。

 

飛彩「俺に近づくな!」

 

飛彩は少女に向かって叫ぶが、当の少女は飛彩の叫びなどお構いなしに近づき、怪我をした左腕の傷を見る。

 

???「…相当深い傷だね。ここじゃ治療できないから、あたしのルームまで行こう。回復用のポーションがある」

 

飛彩「何を勝手に…」

 

???「四の五の言わない!怪我人は黙ってついてくる!!」

 

反論しようとした飛彩を有無を言わさぬ一言で黙らせると、少女は飛彩の手を引いて路地を進み、自分のルームへと向かった。

 

3階にあるルームに入ると少女は飛彩をベッドに座らせ、棚の中をあさる。

 

「えーと、確かこの辺に…。あった!!」

 

少女はそう言いながら棚の奥から薬のビンを取り出し、飛彩の前に立つ。そして怪我をしている左腕の白衣をまくり上げてやると、薬を少しずつ傷にかける。

 

飛彩「ぐっ…!」

 

薬が傷口に染みる痛みを感じ、飛彩が苦悶の声を上げると少女が、

 

???「男の子なんだから我慢して。すぐに済むから」

 

と言ってたしなめ、傷口をハンカチのような布で丁寧に拭いていく。そして、最後に何かのスペルを唱えると、見る見るうちに飛彩の傷口がふさがり、完全に治った。

 

飛彩「これは一体…。あれだけの傷が、もう治るなんて…」

 

飛彩が驚いていると、少女は笑みを浮かべ、

 

???「ハイポーションと回復魔法の組み合わせだよ。うまく組み合わせれば、瀕死状態からでもHPを最大まで回復させられるんだ」

 

と答えた。どうやら、この世界における回復手段だったらしい。

 

飛彩「すまない、助かった。それで、君の名前は…?」

 

飛彩がそう言うと、少女は朗らかな声で答える。

 

リーファ「あたしの名前はリーファ。一応このシルフ領の人間で、ギルドにも所属してる。それで…」

 

そこまで言ったリーファの顔が、急に真剣なものになる。

 

リーファ「あなた、放送にあった仮面ライダー…よね?この街で、何をしていたの?」

 

リーファのその問いに、飛彩は問い返す。

 

飛彩「君も…俺を攻撃するのか?」

 

リーファ「攻撃するなら傷を治したりなんかしないわ。私は、あなたたちに何の目的があって、何をしようとしているのかを知りたい。だから答えて」

 

リーファのまっすぐな視線に、飛彩は自分がこの世界に来ることになった経緯を話す。

 

飛彩「俺は…仲間と一緒に元いた世界でバグスター…俺たちの敵と戦っていた。その最中、銀色のロボットが現れて空間に穴が開き、それに飲み込まれて気づいたらこの世界に来ていたんだ。それから、この土地にいたプレイヤーたちに攻撃され、何とかこの街に逃げ込んだ…」

 

リーファ「ということは、あなたたち自身にはこの世界に害をもたらそうっていう意思は無いのね?」

 

リーファの問いに、飛彩が勢いよく答える。

 

飛彩「そんな意思、あるわけがない!俺たちはドクターであり、仮面ライダーだ!人を救うことはあっても、傷つけるようなことはしない!」

 

飛彩のその答えを聞くと、リーファは肩の力を抜き、優しい瞳で口を開く。

 

リーファ「そう…。ならよかった。あなたも被害者だったっていうことね」

 

リーファの言葉を聞いて、飛彩が目を丸くする。

 

飛彩「信じて…くれるのか?」

 

リーファ「今のあなたの言葉が本心であることは、目と反応を見れば分かるわ。それに、運営だって名乗っている檀正宗は疑わしいと思ってたしね。だから、私はあなたを信じる」

 

リーファがそう言うと、飛彩の心は安堵に包まれる。

この街に逃げ込む前、自分を攻撃しようとするプレイヤーにも今と同じようなことを説明したが、一切聞く耳をもって貰えなかった。ゆえに、誰かに信じてもらえたということが、飛彩は純粋に嬉しかったのである。

 

飛彩「すまない…。大きな声を出してしまって」

 

飛彩が先ほど感情的に怒鳴ってしまったことを謝罪すると、

 

リーファ「謝らなきゃいけないのはこっちの方だわ。自分たちの世界のためとは言え、仲間たちがあなたを攻撃してしまって、ごめんなさい」

 

と言ってリーファ飛彩に頭を下げた。

 

飛彩「君たちも世界を守るためだったんだ。気にしないでくれ。それと、傷の手当て、ありがとう」

 

リーファ「当然のことだから気にしないで。それで、今更なんだけど、あなたの名前は?」

 

飛彩「鏡飛彩だ。変身した後は、仮面ライダーブレイブになる」

 

リーファ「それじゃ、鏡先生だね。お医者さんなんでしょ?」

 

飛彩「飛彩でいい。君のことは、リーファと呼べばいいか?」

 

リーファ「それでいいよ。改めてよろしくね、飛彩先生」

 

そう言って、リーファは飛彩に右手を差し出し、飛彩もそれを右手で握って握手を交わす。

 

飛彩「1つ、聞いてもいいか?」

 

リーファ「なに?」

 

リーファが怪訝な顔で飛彩に尋ねる。

 

飛彩「君は俺が仮面ライダーと分かっていながら、どうして助けるような真似をしたんだ?仲間を裏切ることになるんだぞ?」

 

飛彩の問いに、リーファは微笑みながら答える。

 

飛彩「あなたが悪い人には見えなかったから…かな?それにあたし、人を見かけとか噂で判断するのって嫌いなんだよね。他の人からすれば悪い人かもしれないけど、やっぱり実際に話してみないと分からないことってあるから。私は自分でしっかりと関わって、その人のことを判断したい」

 

リーファの優しい言葉を聞いて、飛彩の頭に今は亡き恋人、小姫の姿が浮かぶ。

彼女も勉強ばかりして他人寄せ付けず、周りから変人扱いされていた自分を、他の人学生と同様に色眼鏡で見ることなく、真摯に接してくれた。今のリーファの姿は、そんな彼女とどこか被る。

 

リーファ「ん?なんで笑ってるの?私、おかしなこと言った?」

 

リーファのその問いで、飛彩は無意識に自分が笑顔になっていたことを自覚し、フッと微笑んでから答える。

 

飛彩「いや、昔いた大切な人に似ているなと思って」

 

リーファ「それって、恋人さん?」

 

飛彩「ああ。今は遠いところにいて、会えていないがな」

 

飛彩はそう言うと、一瞬寂し気な表情を浮かべる。それを見たリーファは、

 

リーファ「元の世界で、また会えるといいね」

 

と優しい声をかけた。

そう、今は会えなくとも、バグスターウイルスの研究が続けば再び会うことはできる。その思いを胸に秘め、飛彩は決意と共に答えた。

 

飛彩「ああ。必ずまた会うさ」

 

リーファ「そのためにも、まずは元の世界に戻らなくちゃね。これからどうするの飛彩先生?」

 

リーファに問われると、飛彩は少し考えてから、

 

飛彩「まずは檀正宗のいる世界樹を目指す。おそらく俺の仲間たちも同じことを考えているだろうから、途中どこかで会えるかもしれない」

 

と答えた。それを聞いて、リーファが提案する。

 

リーファ「それじゃ私が案内してあげるよ。この世界のこと、何もわからないんでしょ?それに、私の仲間やお兄ちゃんも世界樹を目指しているだろうから、途中で会えたらきっと力になってくれるよ」

 

リーファの提案を聞いて、飛彩が難色を示す。

 

飛彩「俺と一緒にいたら、君に迷惑が…」

 

リーファ「迷惑だなんて思わないよ。私たちはもう仲間なんだから、遠慮なく頼って」

 

リーファそういった瞬間、突然ルームの扉がけ破られ、何人かの剣士が部屋に入ってくる。

 

リーファ「何よ、あなたたち!?」

 

怒りと共に聞くリーファに、剣士の中の1人が答える。

 

剣士「その男はこの世界の敵、仮面ライダーだ。今、この場で討ち果たす!」

 

そう言うと、剣士は飛彩に向かって斬りかかろうとする。その瞬間、リーファが飛彩の腕を引き、

 

リーファ「飛ぶからつかまってて!」

 

と言って窓を突き破って外へと脱出した。それと同時に、背中のピクシーの羽を羽ばたかせ、街中を滑空する。

 

飛彩「いいのか!?君の仲間と敵対することになるぞ!?」

 

リーファ「あなただって仲間だよ!」

 

飛彩の言葉にリーファが叫ぶと、下から攻撃魔法が飛来し、リーファの右の羽を撃ち抜く。

 

リーファ「あうっ!」

 

飛彩「リーファ!!」

 

飛彩の叫びを聞きながら、リーファは何とか飛行を続けようとするが、片方の羽だけでは2人の体重を支えることができずにゆっくりと下降していき、やがて街から出てすぐの平原へと不時着する。

 

飛彩「リーファ!無事か!?」

 

飛彩が声をかけると、

 

リーファ「大丈夫。大したダメージじゃないから…」

 

と言ってリーファが立ち上がる。そして、2人が街の方に目を向けると、シルフ領の精鋭たちと、青いボディに身を包んだデュエルアバターの軍団が近づいてくる。

そして2人の正面を囲むと、人込みを割ってシルフ領の領主、サクヤと青いデュエルアバター軍団、レオニーズの筆頭、ブルーナイトが前に出る。

 

サクヤ「リーファ…。その男を、今すぐこちらに渡してくれ。君を傷つけたくない」

 

サクヤの言葉に、リーファが真っ向から反論する。

 

リーファ「いやよ!この人に罪や害意はない!サクヤだって分かるでしょ?!」

 

リーファの言葉を聞くと、サクヤは沈痛な顔で答える。

 

サクヤ「確かにお前の言う通りかもしれない…。だけど、この世界を救うためには仮面ライダーを倒すしかないんだよ!」

 

サクヤの言葉に、ブルーナイトも同意する。

 

ブルーナイト「サクヤさんの言うとおりだ。そいつにどんな事情があるにせよ、倒さないことには世界は救われない。だから、おとなしく渡してくれないか?」

 

サクヤとブルーナイトの言葉に、なおも反論しようとするリーファだったが、飛彩が肩に手を置いてそれを止める。

 

飛彩「もういい。君は今すぐこの場から離れろ」

 

リーファ「それじゃ飛彩先生が!」

 

リーファは食い下がろうとするが、飛彩の優しい表情を浮かべて言葉に詰まる。

 

飛彩「君は俺の怪我を治療し、追われる立場で敵しかいない俺を信じると言ってくれた…。それだけで十分だ。だから、もういい」

 

リーファにそう声をかけ、飛彩はそのまま前に進み、リーファとサクヤの間に立つ。

 

飛彩「俺はもう、逃げも隠れもしない。だが、ゲームオーバーにはなれない!」

 

そう言うと、飛彩は決意の表情と共にガシャットを構え、起動させる。

 

『タドルクエスト!』

 

その音声が響いた後、

 

飛彩「術式レベル2!変身!」

 

と叫んで飛彩はゲーマドライバーにガシャットを装填し、仮面ライダーブレイブクエストゲーマーレベル2へと変身した。

 

ブレイブ「来い!」

 

ブレイブがそう言い放つと、ブルーナイトとサクヤが同時に号令する。

 

サクヤ&ブルーソード「かかれ!」

 

そして、仮面ライダーブレイブVSシルフ・レオニーズ連合軍による戦いが始まった。

 

ブレイブ「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ブレイブは気合を込めた叫びと共に向かってくる敵を、ガシャコンソードで斬っていく。しかし、相手は50人以上からなる大軍団であり、ブレイブはあらゆる方向から攻撃を受け、ダメージを蓄積していく。

 

ブレイブ「ならばこれで!」

 

ブレイブはそう言うと、ガシャコンソードをアイスモードにして地面に突き刺し、向かってきた敵の足元を凍らせる。

そして動きを止めると、今度はガシャコンソードをファイヤーモードに切り替え、

 

ブレイブ「であぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

という声と共にプレイヤーを切り裂いた。

 

サクヤ「怯むな!ダメージを負った者たちは後方で回復!温存していた者たちと交代しろ!」

 

サクヤのその指示と共に、後方から新たな敵がブレイブに向かって攻撃を仕掛ける。ブレイブは相手がゲームオーバーにならないよう、相手のHPをぎりぎりまで削って戦っているため、一度倒しても回復して復活してきてしまう。

 

ブレイブ「くっ…!」

 

途切れることのない敵の猛攻にブレイブが膝をつく。その隙を狙い、幾人かのプレイヤーがブレイブを攻撃しようとした瞬間、そのプレイヤーたちの体が神速の斬撃によって蹴散らされる。

ブレイブがそちらに目を合わせると、自分の後ろにいたはずのリーファが剣を構えながら敵とブレイブの間に割って入った。

 

ブレイブ「何をしているんだ!?はやく逃げろ!!」

 

ブレイブはリーファに向かって叫ぶが、リーファは敵を見据えたまま言い返す。

 

リーファ「さっきも言ったけど、私たちはもう仲間なんだよ!仲間を見捨てて逃げるなんてできない!それに、こんな事絶対に間違ってる!だから私も戦う!」

 

そう言うと、リーファは敵に向かっていき、剣を振るって応戦していく。

 

ブレイブ「こうなったら、やるしかないか!」

 

リーファの姿を見たブレイブもそう言って反撃を開始し、何とか体勢を持ち直す。しかし、敵は変わらず50人以上の大軍団。たった2人でどうなる数でもなく、次第に押されていく。

 

ブルーナイト「この辺で決めるか。コバルト、マンガン!」

 

ブルーナイトがそう言うと、左右に控えていた側近の侍型アバター、コバルトブレードとマンガンブレードが飛び出し、それぞれリーファとブレイブに向かっていく。やがてコバルトはブレイブを、マンガンはリーファに鋭い斬撃を浴びせる。

 

ブレイブ「くっ!」

 

ブレイブは間一髪でコバルトブレードの剣を受けるが、リーファは完全に隙をつかれたため攻撃をもろに食らって吹っ飛ばされ、

 

リーファ「あうぅっ!」

 

という呻きともに地面を転がった。

 

ブレイブ「リーファ!」

 

ブレイブがすぐさま助けに行こうとするが、

 

コバルト「行かせん!」

 

というコバルトの声と攻撃に阻まれ、リーファに近づけない。

 

リーファ「う、うう…」

 

地べたに這いつくばり、ダメージにあえぐリーファに、マンガンブレードの非情の一撃が下されようとしている。

 

マンガン「恨みはない。だが、邪魔をするならここで打ち取らせてもらう」

 

そう言って、マンガンは持っていた刀でリーファを突く。その切っ先を見て自分の最期を悟ったリーファはとっさに目を閉じるが、いつまで待ってもその一撃は来ない。

不思議に思ったリーファがゆっくりと目を開けると、自分の目の前に長髪のパーマがかかった男が立ち、マンガンブレードの刃を指で押さえていた。

 

???「たった2人…。しかも女相手にこのやり方はねぇだろ」

 

男はそう言うと、手首をひねって指で抑え込んでいたマンガンブレードの刃の先をペキっとへし折る。

一瞬驚愕するマンガンブレードだったがすぐに気を取り直し、男を斬ろうとするが、それよりも早く男が一歩踏み込み、刀の間合いを潰したためマンガンブレードはすぐに距離をとる。

 

目の前で起きていることにリーファが戸惑っていると、不意に後ろから声がかかる。

 

???「大丈夫ですか!?酷いケガですね!おーい、英せんせ~い!」

 

リーファが振り返ると、そこにはスーツを着た冴えない中年サラリーマンが立っており、白衣を着た不健康そうな男がこちらへ近づいてきていた。

 

英「フフッ。もう大丈夫だ。先ほど調合したこの薬…もといアイテムを使えば、君の体力は元通り」

 

英と呼ばれた男はそう言いながら懐からビンを取り出し、それをリーファに振りかける。すると、リーファのHPがすぐさま全回復した。

 

リーファ「この薬、すごい…!」

 

英「そうだろう?察するに、ここはゲームの世界だ。ならば医療知識のほかに、『ゲームの鉄人はじめちゃん』と言われた経験も役に立つ」

 

???「さすが英先生!君、もう大丈夫ですよ!戦いはあの、王馬さんに任せておけばいいですから」

 

中年サラリーマンがそう言うと、長髪の男、王馬が声をかける。

 

王馬「その女を連れて下がってな、ヤマシタカズオ。こいつは引かないタイプだ」

 

王馬が構えると、マンガンブレードが問う。

 

マンガン「名を…聞いておこう」

 

王馬「十鬼蛇王馬だ。来ないんなら、こっちから行くぜ」

 

その言葉と同時に、王馬は一気に距離を詰め、マンガンに素早いラッシュを叩きこむ。

 

マンガン「くっ!なめるな!」

 

マンガンはそれを捌くと、王馬に突きを繰り出すが、王馬はそれを左腕で絡めとる。

 

王馬「二虎流水天ノ型…水草取り」

 

王馬はそうつぶやいたあと、刀ごとマンガンの体を引き寄せ、残った右腕で拳を固め、強烈な正拳突きをマンガンの胸に叩きこんだ。

 

そのあまりの威力に、刀を手放し、

 

マンガン「がはぁ!!!」

 

という声と共に吹っ飛ばされるマンガンを見送りながら、王馬は言う。

 

王馬「二虎流金剛ノ型鉄砕…。お前じゃ相手にならねぇよ。出直してきな」

 

たった一発で、勝敗は決した。

 

一方その頃、ブレイブはコバルトブレード相手に苦戦を強いられていた。相手の振るう剣が速く、手数が多いので防戦一方となっている。

やがて、ブレイブのガシャコンソードが弾き飛ばされ、丸腰の状態となる。

 

ブレイブ「くっ!」

 

コバルト「これで終わりだ!」

 

コバルトがそう言って剣を振り下ろそうとした瞬間、横から不意打ちで何者かの蹴りが入る。

その蹴りに吹っ飛ばされながらも、コバルトは体勢を整え、

 

コバルト「誰だ!」

 

と叫び、蹴りの飛んできた方を見る。そこには禍々しい気を放つ、短髪の男が満面の笑みを浮かべて立っていた。

 

???「オイオイ…ずいぶんと面白れぇことしてるじゃねぇか。俺も混ぜろよ」

 

男は言いながら、コバルトへと近づいていく。

 

コバルト「下郎が!名を名乗れ!」

 

コバルトの言葉に、男は嘲るように笑いながら答える。

 

雷庵「呉雷庵。今からてめぇをぶちのめす男の名だ。よく覚えておきな」

 

そう言って、雷庵はコバルトに襲い掛かり、王馬同様ラッシュを仕掛けた。

 

ブレイブ「何なんだ、あいつは…」

 

ブレイブが呆気に取られていると、後ろからドレッドヘアーの巨漢が近づき、ブレイブを立たせる。

 

???「大丈夫かい、アンタ?」

 

巨漢に声を掛けられ、ブレイブが答える。

 

ブレイブ「ああ。あなたは?」

 

ブレイブが尋ねると、巨漢はニッと笑いながら答える。

 

関林「俺は関林ジュン。プロレスラーだ。さっきのやつは呉雷庵。まぁ喧嘩が大好きな魔人だな」

 

ブレイブ「魔人!?」

 

ブレイブが驚きながら雷庵の方を見ると、自分があれだけ苦戦したコバルトを追い詰めている。

 

雷庵「そらそらどうしたぁ!そんなもんかよ!?」

 

雷庵が小バカにしたようにコバルトに声をかけると、コバルトは

 

コバルト「甘く見るな!」

 

と言って雷庵の胸元を切り裂く。

 

コバルト「下郎ごときに遅れをとるほど、私の腕は落ちぶれちゃいない!」

 

コバルトが雷庵に向かって言い放つ。しかし、これがコバルトの敗因となった。

 

雷庵「…殺す!!」

 

そういった瞬間、雷庵の体に変化が起こる。肌が赤褐色になり、全身の欠陥が浮かび上がった。

雷庵の一族に伝わる秘伝、「外し」。体のリミッターを外し、人間の持つ力を100%発揮する技術である。

 

コバルト「な…!?」

 

コバルトが呆気にとられた瞬間、突撃してきた雷庵の右ストレートが顔面に決まり、そこから拳や蹴りが凄まじい速度で叩き込まれていく。やがて木偶人形のようになったコバルトの首をつかむと、雷庵は思い切り地面にたたきつけ、その後ブルーナイトに向かって投げつけた。

 

雷庵「図に乗るなよ三下が!!」

 

そう言うと、雷庵は外しを解除し、そのまま他のプレイヤーたちを蹂躙し始めた。

 

関林「終わったようだな」

 

雷庵の戦いを見てそう言ってから、関林はブレイブの肩に手を置いて声をかける。

 

関林「まぁここからは俺たちに任せな。他にも、仲間が来てる」

 

その言葉に辺りを見渡すと、雷庵や王馬、関林の他にもあちこちで見知らぬ連中がシルフとレオニーズの連合軍と戦っている。

 

ガオラン「2人相手にこのような多人数でかかるとは…恥を知れ」

 

ガオランはそう言うと、周囲にいたプレイヤーたちに得意技である神速のジャブ、フラッシュを浴びせる。

 

大久保「喧嘩とイジメの区別もつかへん奴は俺が違いを教えたる!」

 

大久保はそう言ってシルフのプレイヤーの1人をヘッドロックで捕まえ、その顔面にパンチを叩きこんでいく。

 

その他にも、若槻猛や今井コスモ、鎧塚サーパイン、御雷零などそうそうたる猛者が至る所で戦闘を繰り広げ、あれだけ多かった敵を圧倒していた。

 

その光景に、誰よりも驚いていたのは、この土地の領主、サクヤだった。50人以上いた己の精鋭たちが、今や半分以下に減っている。このまま戦えば、負けるのは自分たちの方であろう。

 

リーファ「サクヤ…」

 

サクヤがその声のした方を見ると、リーファが不安げな表情で立っていた。

 

リーファ「もうやめよう。こんな戦い、意味ないよ。あなただって、分かってるでしょ?」

 

サクヤ「し、しかし…」

 

なおも意固地になるサクヤに、ブルーナイトが声をかける。

 

ブルーナイト「引き際だぜ、サクヤさん。これ以上は被害がでかい」

 

サクヤ「ブルーナイト…」

 

ブルーナイト「元から気乗りしなかった討伐戦だ。この子を信じてやめてもいい」

 

ブルーナイトの言葉にサクヤは少し考えると、

 

サクヤ「分かった…」

 

と短く返事をした。

 

ブルーナイト「よし。それなら…」

 

ブルーナイトはそう言うと、ひときわ大きな声でこの場で戦うすべての者たちに声をかける。

 

ブルーナイト「シルフ・レオニーズ並びにそれと交戦している諸君!俺たちの負けだ!ここは撤退させてもらうぜ!」

 

ブルーナイトの声に、雷庵が真っ先に反応する。

 

雷庵「今更何ふざけてんだ?殺すぞてめぇ!」

 

雷庵はそう言いながらブルーナイトに詰め寄るが、ブルーナイトは軽い感じで返す。

 

ブルーナイト「こっちはアンタらに側近2人も戦闘不能にされてんだ。このあたりで勘弁してくれ。この通りだ」

 

ブルーナイトがそう言って頭を下げると、雷庵は舌打ちをしてから、

 

雷庵「興がそがれたぜ。好きにしな」

 

と言った。

 

ブルーナイト「…おい、みんな撤収だ」

 

ブルーナイトがそう言うと、残っていたレオニーズのメンバーはその場を後にする。

 

サクヤ「あんたたちも先に引き上げな。私はこの人たちと話がある」

 

サクヤは側近にそう命令して部下たちを引き上げさせ、その場にはブレイブ、リーファ、サクヤと乱入してきた男たちが残った。

 

サクヤ「まずは謝らせてくれ。運営に言われたとはいえ、何の罪もないアンタを襲ってしまった。すまない」

 

そう言って、サクヤがブレイブに頭を下げる。すると、ブレイブは変身を解き、

 

ブレイブ「俺が同じ立場でもそうしただろう。だから、気にする必要はない。頭を上げてくれ」

 

とサクヤに声をかけた。

 

リーファ「こっちの件はこれで片が付いたとして、後はあなたたちね」

 

リーファがそう言うと、その言葉を受けて山下が口を開く。

 

山下「いやー、と言われましても、我々もいまいち状況をつかみ切れてなくて…。あ、申し遅れました。私の名前は山下和夫。隣にいる十鬼蛇王馬さんの雇用主です」

 

それを皮切りに、男たちが自己紹介を始める。

 

王馬「十鬼蛇王馬だ。気が付いたらこいつと一緒にここにきてた」

 

雷庵「呉雷庵だ。俺も変な煙みたいなもんを浴びて、気づいたらここにいた」

 

関林「関林ジュンだ。俺も雷庵と同じく変な煙を浴びて気づいたらここにいたんだよ」

 

英「英はじめ。これでも医者だ。私も関林君と同じく変な煙を浴びてここにいる」

 

ガオラン「ガオラン・ウォンサワット。右に同じくだ」

 

若槻「若槻猛だ。俺は控室で仮眠をとって、目が覚めたらこの世界だった。いまだに夢だと思ってるよ」

 

コスモ「俺も若槻さんと同じかな。あ、名前は今井コスモ。よろしくね」

 

御雷「御雷零だ。精神統一が終わって目を開けたらこの世界にいた。そうとしか言えない」

 

御雷がそう言うと、最後にひときわ大きな声の男が雄叫びのごとく自己紹介をする。

 

サーパイン「俺はァァァァァァ!!鎧塚サーパインだァァァァァァァァァァァァァァァ!!何が起きたか知らねえが!!最ッ高に燃えるぜェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!」

 

サーパインがそう言うと、リーファが苦笑いしながら口を開く。

 

リーファ「ずいぶん元気な人なんだね…」

 

そのリーファを見て、ガオランが声をかける。

 

ガオラン「すまないな少女よ。こいつは生来うるさい奴でな。この場は勘弁してほしい」

 

リーファ「ああ、大丈夫ですよ。あと、あたしの名前はリーファっていうので、気軽に呼んでください」

 

ガオラン「承知した、リーファ殿」

 

そのやり取りを見て、飛彩も続いて自己紹介をする。

 

飛彩「自己紹介が遅れたな。鏡飛彩だ。仮面ライダーブレイブに変身している。この世界では敵のような扱いだが、俺に敵意はない」

 

飛彩が自己紹介をした後、サクヤが改めて口を開く。

 

サクヤ「今後のことだが、我々シルフ領は仮面ライダーを全面的にバックアップする。あんたを信じるよ、リーファ」

 

サクヤの言葉に、リーファの表情が明るくなる。

 

リーファ「本当に!?」

 

サクヤ「ああ。今後のことは、むやみに傷つけてしまったお詫びと新たな客人の歓迎会も兼ねてうちの城で行おう。食事も用意してあるよ」

 

王馬「そいつはいい。ちょうど腹が減ってたんだ。行こうぜ、ヤマシタカズオ」

 

山下「そうですね!我々も、この世界のことを教えてもらわなきゃいけませんから、皆さんで行きましょう!」

 

山下がそう締めると、その場にいた全員がサクヤの居城に向かって歩き始める。

 

こうして、この電脳の異世界に、闘技者と呼ばれる新たな戦士たちが参戦したのであった。

 

 



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第11話

※仮面ライダーエグゼイドを下敷きにしたクロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。

はぐれた仲間の行方や、ヒーローズ・クロニクル攻略の情報を得るため、元ALOの中央街にやってきたアスナたち。しかし有益な情報は得られず、キリトやリーファ、シノンの行方の手がかりすら掴めなかった。
気を取り直し、調査を再開しようとするアスナたちだったが、そこに突如謎の怪人軍団が現れ、街を破壊し始める。それは、自らを神と名乗るあの男の仕業だった。


【ヒーローズ・クロニクル 元ALO 中央街】

 

ALO内で一番の規模を誇っていた中央街。レンガで作られた中世的な街並みが特徴的だったが、現在はそこに加速世界のジャンクな街並みが混ざり、カオスな状態となっている。

そんな街で、アスナと仲間たちははぐれてしまったキリトやリーファ、シノンの行方と、ゲームの鍵を握るであろう仮面ライダーたちの情報を集めていた。

この街は、ALOのどの種族の領地にも属していない街なので、必然この世界の情報は集まりやすい。融合した加速世界の街もそういった立ち位置だったのか、街にはALOのプレイヤーの他に、バーストリンカーと思しきアバターの姿も見える。

そのプレイヤーたちに混ざり、アスナは街に遭ったギルドの掲示板を見るが、これといった情報はなく、静かに肩を落とす。

そんなアスナに、背後から仲間のリズとシリカの声がかかった。

 

リズ「何か情報見つかった?」

 

アスナ「ううん…それっぽいのは無かった。リズたちの方は?」

 

シリカ「ダメです…。外からこの街に入った人にも聞き込みをしたんですけど、誰も、キリトさんやリーファちゃん、シノンさんのような姿の人は見てないって…」

 

アスナ「となると、頼みの綱は情報屋に行っているエギルさんだけか…」

 

アスナがそう言うと同時に、とうのエギル本人が苦い顔を浮かべて戻ってくる。

 

エギル「ダメだ。こっちもそれらしい情報はなかった。本当にどこ行っちまったんだ、キリトのやつ」

 

エギルのその言葉を聞いて、シリカが不安そうに口を開く。

 

シリカ「ひょっとしたら、また1人で戦ってるんじゃないでしょうか…?私たちと、この世界を守るために…」

 

エギル「そうかもな…。あいつの性格上、やりかねん」

 

エギルがそう言うと、その場にいた全員が黙り込んでしまう。全員、キリトの身を案じてのことだった。

 

アスナ「…そうだとしたら、ますます早く見つけないとね。さ、みんなもうひと頑張りしよう!」

 

全員の不安を吹き飛ばすため、アスナがわざと明るい声で言う。

 

エギル「そうだな。なんか無茶をやらかす前に止めないとな」

 

リズ「そうね。そんで、勝手に行動した分一発殴ってやらなきゃ!」

 

シリカ「リズさん、乱暴は駄目ですよ!」

 

そう言って、全員が活力を取り戻したその時、街はずれの方向から轟音が聞こえてくる。

 

エギル「何だ!今の音は!?」

 

アスナ「行ってみましょう!もしかしたら、仮面ライダーとの戦闘かもしれません!」

 

そう言うと、アスナが駆け出し、そのあとにエギル、シリカ、リズが続く。そして4人は、音のした方へ向かって駆け出した。

 

アスナたちがかけている間にも、断続的に爆発音は続き、徐々にその音が近くなっていく。

そして大通りに出ると、アスナたちはその爆発の元凶と対峙した。それは、見たこともないエネミー、いや、怪人たちだった。イカのような姿をした怪人もいれば、カメレオンとヒルが融合したような怪人、そしてトラの体に大砲を背負った怪人にクモのような姿をした怪人が、黒い骨の柄の入った全身タイツの戦闘員たちを引き連れ街を破壊している。

 

エギル「なんだこいつらは!?」

 

リズ「まさか、新しいエネミーなの!?」

 

エギルとリズがそう叫んだ瞬間、怪人軍団の奥からやかましい…もとい不遜な声が聞こえてくる。

 

???「ブェアハハハハハハハハァ!その問いに答えてやろう!」

 

その声と同時に怪人たちをかき分け、我らが神こと檀黎斗がゆっくりと姿を現す。いつセットしたのか、その髪型は普段のさわやかな七三分けからワックスで塗り固めたようなオールバックに変わっていた

 

エギル「こいつ、確か仮面ライダーの1人だ、名前は確か、仮面ライダーゲンム!」

 

黎斗「その通り…。だが、その真の名前は檀!黎斗神!偉大なるゲームマスターにして神だァ!そして、この怪人たちは以前、『超スーパーヒーロー大戦』というゲームを元に私が自身の復活用プログラムとして開発したゲームに出てくる敵キャラ、ショッカー怪人。檀正宗と戦うにあたって私が復元したのさァ!」

 

そう言うと、黎斗は右手にバグヴァイザーを持ち、それをアスナたちに見せつける。

 

黎斗「この中には、私が緊急時に備えて用意したプログラムや、これまで戦った敵のデータがすべて記録されている。つまり、これさえあれば私はいくらでも自分の軍団を用意できるのさ!」

 

黎斗の不遜な態度を見て、アスナが問いかける。

 

アスナ「あなたの目的は運営の檀正宗でしょう?なぜ、こんな無意味な破壊活動をするんですか!?」

 

アスナのその問いに、黎斗は一層不遜な態度で答える。

 

黎斗「そんなことは決まっている。偉大なる神のこの私を差し置いて、最高のゲームを名乗ることなど認めない…。ましてそれが、あの檀正宗であるのなら尚更なァ!だから、ゲームごとこの世界は削除する!この神の手によって!」

 

そこまで聞いて、アスナは絶句する。この人は、単に自分が気に入らないという理由だけで、自分たちが今まで過ごしてきた楽しい思い出のあるこの世界を破壊しようとしている。

この様なわがままかつ独善的な男に、この世界を好きにさせるわけにはいかない。アスナの中でためらいが消え、完全に戦闘の意思が芽生える。

他の仲間たちも同じ結論に至ったようで、静かに武器を構え、戦闘態勢に入った。

 

アスナ「あなたのような人に、私たちの大切な世界を壊させたりなんかしない!みんな、行こう!」

 

エギル「おうよ!」

 

シリカ「任せてください!」

 

リズ「神とか言ってるあの不遜な顔を、ぶん殴ってやろうじゃないの!」

 

 

 

 

戦闘態勢に入るアスナたちを見て、黎斗はなおも不遜な表情のまま、

 

黎斗「神に逆らう愚か者が…。やれェ!」

 

と叫び、周りにいた怪人と戦闘員たちをアスナたちに向かわせる。

 

アスナ「シリカちゃんとリズは戦闘員をお願い!私とエギルさんは怪人たちと戦います!」

 

リズ「OK!」

 

シリカ「了解です!」

 

エギル「あいよ!」

 

仲間たちが返事をすると同時に、戦闘が開始された。シリカはダガーナイフを手に高速攻撃で、リズは手にしたメイスで襲い来る戦闘員たちを薙ぎ払っていく。

一方、アスナとエギルはまず最初に襲い掛かってきたクモの怪人ことクモ男の攻撃をエギルが受け、その隙にアスナがレイピアで急所を突いて仕留める。続いてイカの怪人、スペースイカデビルが触手攻撃をアスナに浴びせるが、レイピアですべて切り裂かれ、その隙に接近したエギルの斧に真っ二つにされた。

 

タイガーロイド「おのれ!」

 

そう言ってトラの怪人ことタイガーロイドが背負った大砲でアスナとエギルを砲撃し、その直後にすかさずヒルのような怪人ことヒルカメレオンが飛びかかっていくが、盾役のエギルによって砲撃は防がれており、飛びかかったヒルカメレオンはあえなくアスナの突きによって串刺しにされる。

そしてその背後からエギルが飛び出し、タイガーロイドに接近すると、

 

エギル「今のは中々痛かったぜ!」

 

と言いながら斧を振り下ろしてタイガーロイドを両断し、絶命させた。

それと同時に、リズとシリカも戦闘員を全滅させたようで、4人は揃って黎斗の前に立ち、再度武器を構える。

 

アスナ「あなたの手下はみんな倒したわ。次はあなたの番よ!」

 

アスナが怒りを込めた視線を黎斗に向けるが、黎斗は特に動じる様子もなく、むしろ余裕すら感じる表情でアスナたちを見据える。

 

黎斗「しょせんは復元キャラ…。君たちに勝てるとは思っていなかったが、その代わり、君たちの動きや癖は見れた。分析完了だ」

 

そう言うと、黎斗は静かにゲーマドライバーを取り出して腹部に装着し、右手にプロトマイティアクションXオリジンガシャットを構えてスイッチを押す。

 

『マイティアクション!エーックス!!』

 

黎斗「グレード0…変身!」

 

そう叫びながら黎斗はガシャットをドライバーに装填してレバーを開き、仮面ライダーゲンム、アクションゲーマーレベル0へと変身した。

そして武器スロットから右手でガシャコンブレイカーソードモードを取り出し、左手にバグヴァイザーをガンモードにして装着する。

 

ゲンム「コンティニューしてでも、クリアする!」

 

その掛け声と共に黎斗ことゲンムは4人へと駆け出し、攻撃を開始した。

 

アスナ「落ち着いて!みんな連携を…」

 

アスナがそう叫ぶが、ゲンムの荒々しい攻撃によって4人は完全に出鼻をくじかれる。

その動きが乱れた隙を狙い、ゲンムはバグヴァイザーをチェーンソーモードに切り替え、ガシャコンブレイカーを逆手に持つと、

 

ゲンム「ハァァァーッ!」

 

という回転攻撃によって4人を吹き飛ばし、完全に分断した。そしてシリカの方に視線を合わせると、

 

ゲンム「まずは君からだ…」

 

と言って腰のガシャットホルダーから赤いガシャットを取り出し、スイッチを押す。

 

『フルスロットル!ドライブ!』

 

その音声が鳴った後、ゲンムは空いていたスロットにそのガシャットを装填してドライブゲーマーへと変身すると、シリカに超高速による連続攻撃を繰り出す。

 

シリカ「きゃああああ!」

 

という断末魔を上げ、シリカはゲンムの攻撃によって吹き飛ばされ、やがて壁に叩きつけられて気を失った。

 

リズ「シリカ!…こんのぉ!」

 

それを見たリズがメイスでゲンムに殴り掛かるが、あっさりと避けられてしまう。

 

ゲンム「君には、このガシャットだな」

 

ゲンムはそう言いながらドライブガシャットを引き抜き、代わりに新たなガシャットのスイッチを押す。

 

『ジャングル!オーズ!』

 

そして先ほどと同じように空いていたスロットにそのガシャットを装填してオーズゲーマーへと変身すると、腕についた鉤爪を展開し、リズにトリッキーな攻撃を仕掛ける。

 

リズ「ちょ…そんなのアリ?!」

 

そう叫びながらリズはメイスで攻撃を捌こうとするが、手数の多いゲンムに圧倒され、鉤爪で体を切り裂かれた後、強烈なドロップキックを食らって地面を転がり、シリカ同様気を失う。

 

エギル「野郎、俺たちに力に合わせて、能力を変えてやがる!」

 

エギルの言葉に、ゲンムは余裕を見せつけながら答えた。

 

ゲンム「言っただろう…分析は完了したと!君にはこのガシャットだァ!」

 

そう言ってゲンムはさらに新たなガシャットを取り出してスイッチを押す。

 

『スペースギャラクシー!フォーゼ!』

 

そしてすぐさまオーズガシャットを引き抜き、代わりにフォーゼガシャットを装填してフォーゼゲーマーへと変身すると、右手にオレンジ色のロケットを装着する。

 

ゲンム「ブゥハァァァァァァァァ!」

 

その叫びと共にゲンムは右手に装着したロケットのブースターを起動し、猛烈なスピードでエギルへと突撃した。

 

エギル「ぐっ!!」

 

そう短く叫びながら、エギルは斧でガードするがロケットの推進力には敵わず、そのまま押し切られる。

しかし、ゲンムはそのままエギルごとを彼の背後にあった建物に突っ込んで壁を突き破り、そのまま空中に進路を変更して空高く飛び上がると、急降下し、エギルの体を背中から地面に叩きつけた。

 

エギル「ガハッ…!」

 

という声と共に、エギルは力なく斧を手放し、そのまま気絶した。

 

アスナ「…よくもみんなを!」

 

アスナが先ほど以上に怒りを込めた瞳をゲンムに向けるが、そんなもの意に介すこともなく、ゲンムはゆっくりと立ち上がるとフォーゼガシャットを抜き、新たなガシャットを取り出しながらアスナに声をかける。

 

ゲンム「最後は君だな…。得意分野の、剣で勝負してやろう…」

 

そう言って、ゲンムは取り出したガシャットのスイッチを押し、

 

『刀剣伝!鎧武!』

 

という音声が鳴り終わると同時にスロットに装填し、鎧武ゲーマーへと変身。右手に大橙丸、左手に無双セイバーを持ち、二刀流に構える。

 

ゲンム「神に盾突いたこと、公開させてやろう!ハァッ!」

 

ゲンムはそう言うと、アスナに向かって襲い掛かり、大橙丸で切りかかる。

 

アスナ「ハッ!」

 

という気合と共にアスナはその一撃を捌くが、すぐさまゲンムの無双セイバーによる攻撃が繰り出され、猛攻に防戦一方となる。

 

ゲンム「どうしたァ!剣は得意なんだろう!?」

 

ゲンムが高らかに、見下すようにアスナに言い放つ。その言葉に、アスナは負けん気を出して無理矢理レイピアによる連続突きを繰り出すが、

 

ゲンム「無駄だァ!!」

 

の一言と同時に切り払い、アスナを吹き飛ばす。

 

アスナ「くぅぅっ!」

 

アスナがそのまま地面に膝をつくと同時に、ゲンムは持っていた無双セイバーと大橙丸を合体させてナギナタモードにし、

 

ゲンム「これで止めだ…」

 

と言って鎧武のガシャットを腰のキメ技スロットに装填する。

 

『鎧武!クリティカール!フィニッシュ!!』

 

その音声が鳴ると、ゲンムはナギナタを振るって十字の斬撃を繰り出し、それをアスナに向かって打ち出した。

 

アスナ「ああああああああああああっ!」

 

アスナは悲鳴を上げながらその攻撃をまともに受け、その場に力なく崩れ落ちる。

 

アスナ「う、うぅぅ…」

 

かろうじて意識はあるものの、立ち上がる力は既になく、うめき声を上げるアスナに、ゲンムはゆっくりと近づいていき、やがて見下しながらバグヴァイザーを向ける。

 

ゲンム「神に歯向かったとはいえ、君たちのデータは使える…。今後、このゲームを攻略するのに有効活用してやろう…」

 

そしてゲンムはアスナをデータ化し、バグヴァイザーの中に吸収するべくスイッチを押した。

 

アスナ(キリトくん…ごめん…)

 

己の無力さを噛みしめ、アスナが静かに目を閉じたその時、横合いから突如、炎に包まれた突風がゲンムを襲い、吹き飛ばす。

 

ゲンム「この神に不敬な…。何者だァ!?」

 

ゲンムはすぐさま突風の方に目をやるが、その瞬間、

 

???「ヒャァッハァァァァァァァァァァ!」

 

という声と共にドクロのマスクを被ったライダーの操るオートバイに跳ねられ、さらに空中で漆黒のボディを持つデュエルアバターに切り刻まれる。

 

ゲンム「ブゥゥゥゥゥワァァァァァァァ!!」

 

という声と共に、ゲンムのドライバーから鎧武のガシャットが排出され、元のアクションゲーマーの姿に戻る。そして、

 

『GAME OVER』

 

という音声と共に、その体がポリゴンとなって消えていった。

 

何が起こったか分からず、困惑するアスナの目の前に、今度は緑色をした魔女のような姿をしたアバターが現れ、声をかけてきた。

 

???「あなた、大丈夫?」

 

アスナ「ええ。あの、あなたたちは…?」

 

アスナの問いに、緑のアバターは得意げに答える。

 

???「あたしはライム・ベル。そして、黒のレギオン、ネガ・ネビュラスよ!」

 

アスナ「黒の…レギオン…?」

 

聞きなれない言葉にアスナが戸惑っていると、そこに新たなアバターと先ほどゲンムを跳ね飛ばしたドクロのライダーがリズやシリカ、エギルたちを抱えて合流する。

 

???「気絶したお仲間は保護しましたよ!」

 

巫女のような恰好をしたアバターがまずは声をかけ、続いて車椅子に乗った女性アバターがライム・ベルに指示を出す。

 

???「ではベル、お願いします」

 

ベル「了解!シトロン・コール!」

 

ベルがそう叫びながら、右手についた巨大な鐘を鳴らすと、緑色の光の粒子がアスナたちを包み、ダメージが完全回復する。すると、気を失っていたエギルやリズ、シリカは目を覚ました。

 

アスナ「リズ、シリカちゃん!エギルさん!」

 

アスナは嬉しそうに仲間たちに声をかけ、お互いの無事を喜ぶ。

 

エギル「あんたらは一体…?」

 

エギルの問いに、先ほど空中でゲンムを切り裂いた漆黒のアバターが合流し、答える。

 

ロータス「お初にお目にかかる。SAOサバイバーの諸君。私の名はブラック・ロータス。この黒のレギオンを率いるマスターだ」

 

ロータスの自己紹介を皮切りに、ネガ・ネビュラスのメンバーがそれぞれ自己紹介をする。

 

レイカー「ネガ・ネビュラスの副長をやっています、スカイ・レイカーです。よろしくお願いしますね」

 

メイデン「ネガ・ネビュラス幹部、『四元素』の1人、アーダー・メイデンです。よろしくお願いします、皆さん!」

 

アッシュ「俺様の名はアッシュ・ローラー!正式なメンバーじゃねぇが、師匠のスカイ・レイカーのお供ってことで一緒に来た!よろしくな!」

 

ネガ・ネビュラスのメンバーの自己紹介が終わり、アスナは改めて礼を述べる。

 

アスナ「危ないところをありがとうございました。私はアスナ。こっちがリズで、こっちがシリカちゃん、そして、斧使いの人がエギルさんです」

 

アスナの言葉に続いて、リズたちがペコリと頭を下げる。

 

ロータス「気にしないでくれ。困ったときはお互い様だ。それで、これからだが…」

 

ロータスがそう言った瞬間、集まった面々の近くに突如紫の土管が出現する。その縁には、カラフルな電飾で「CONTINUE」と書かれている。

 

アッシュ「なんだありゃ?」

 

アッシュの言葉に、全員が首をかしげると、

 

黎斗「フォォォーーーウ!」

 

という叫びと共に先ほど倒したはずの檀黎斗が飛び出し、不遜な顔つきで全員を見回す。

 

黎斗「倒したと思ったか?ブァカめ!神は不滅だァ!ブェアハハハハハハハハハハハハハハハァ!」

 

黎斗の言葉に、全員が驚愕する。

 

エギル「復活しただと!?」

 

ロータス「…なるほど、コンティニュー能力か!」

 

ロータスの言葉を聞き、黎斗は彼女を見据えて得意げに答える。

 

黎斗「その通り!先ほど使ったプロトマイティアクションXオリジンに搭載されているのさァ!だが、私の貴重なライフを減らした罪、償ってもらうぞ!」

 

そう言うと、黎斗はプロトマイティXオリジンガシャットと、デンジャラスゾンビガシャットを構えてスイッチを押す。

 

『マイティアクション!エーックス!』

 

 

『デンジャラァス!ゾンビィ!』

 

その音声が鳴り終わると、

 

黎斗「今度は本気で行かせてもらう…。グレードX-0、変身!」

 

と言ってゲーマドライバーにプロトマイティアクションXオリジンガシャットとデンジャラスゾンビガシャットを装填し、仮面ライダーゲンム:ゾンビゲーマーレベルX-0へと変身した。

 

ゲンム「ハァアァァァ!」

 

不気味な声と共に奇妙な構えをとるゲンムを見て、アスナが一歩踏み出そうとするが、それをロータスが止める。

 

ロータス「君はもう少し休んでいろ。HPは回復したとはいえ、まだ体への見えないダメージは残っている。奴は私が相手をする」

 

アスナ「でも!」

 

アスナは食い下がるが、ロータスは仮面の下に不敵な笑みを浮かべながら言う。

 

ロータス「我々の世界では、基本闘いは1対1でやるのが習わしでね。それに、私のバーストリンカーとしての血が騒ぐんだ。だから、ここは任せてくれ」

 

ロータスの言葉を聞いて、アスナはなおも食い下がろうとするが、背後からレイカーとメイデンに声をかけられる。

 

レイカー「アスナさん、ああなってしまってからのロータスには何を言っても無駄です。黙って見守りましょう」

 

メイデン「それに、ロータスは私たちの世界で最強と言われる『純色の七王』の1人です!そう簡単に負けませんよ!」

 

レイカーとメイデンに諭されると、アスナは黙ってロータスを見送る。

ロータスは無言でゲンムの前に立つと、高らかに名乗りを上げた。

 

ロータス「我が名は黒のレギオンのマスターにして『純色の七王』が1人、ブラック・ロータス!いざ尋常に勝負だ、仮面ライダーゲンム!」

 

その名乗りを聞いて、ゲンムも高らかに叫ぶ。

 

ゲンム「偉大なるゲームマスターにして神!仮面ライダーゲンム!神の力にひれ伏せェ!」

 

言い終わると2人は、

 

ロータス「行くぞ!ハァァァァァァァァァァァ!!」

 

ゲンム「来るがいい!ぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」

 

という雄叫びを上げて一直線にぶつかっていった。



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第12話

※仮面ライダーエグゼイドを下敷きにしたクロスオーバー小説です。
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。

黒の王・ブラックロータスVS黒き神・仮面ライダーゲンム。
異世界で激突する両雄だったが、プレイヤーとしての経験値で勝るロータスがゲンムを圧倒。ゲームオーバー寸前まで追い詰めるが、再び死のデータを手にしたゲンムは本来の力を取り戻し、その禍々しい力を振りまく。
絶体絶命の窮地の中、別の異世界から来たある人物が助けに入るのであった。


【ヒーローズ・クロニクル 元ALO 中央街】

 

街はずれの広場にて、ブラック・ロータスと仮面ライダーゲンムが激突する。

 

ロータス「おおおおおおおおおおおお!」

 

ゲンム「ブゥワァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

ロータスは刃と化した腕を、ゲンムはガシャコンブレイカーソードをそれぞれ振るい、互いに致命傷を与えようと激しく打ち合った。

その剣戟を見て、同じく剣を武器とするアスナが感嘆の声を上げる

 

アスナ「すごい…。あのブラック・ロータスって人、まるでキリト君を見ているみたい…」

 

その声に、スカイ・レイカーが捕捉を入れる。

 

レイカー「ロータスの剣は私たちのいた加速世界でも随一。世界が変わったとはいえ、その実力は本物です。それに、あのゲンムという方、剣に関しては素人のようですので…」

 

その言葉を聞いてアスナがゲンムの方に目をやる。確かに、自分と戦った時よりもはるかに剣技は荒く、ロータスにいとも容易くあしらわれている。

 

アスナ「私と戦った時はあんなに鋭い技を使っていたのに…」

 

レイカー「おそらく、あのガシャットというアイテムの力でしょうね。今使っているのはあの時とは別のもののようですので、あなたと戦った時のような剣の腕は失われているとみるべきでしょう」

 

レイカーがそう説明した瞬間、ゲンムの手からガシャコンブレイカーが弾かれ、宙に舞う。

 

ゲンム「しまったぁ!!」

 

その隙を、ロータスは逃さない。

 

ロータス「貰ったぞ!!」

 

その言葉の後、ロータスは神速の連続斬撃をゲンムに叩き込み、HPゲージをあっという間に全損させた。

すると、ゲンムの姿が先ほどと同じようにポリゴン状に分解し、

 

『GAME OVER』

 

の音声と共に消え去る。

 

リズ「よっしゃあ!やりぃ!」

 

その様子を見て歓声を上げるリズを、エギルが諫める。

 

エギル「いや、例のコンティニューが出るぞ!」

 

エギルのその言葉通り、ロータスの背後に先ほどの土管が静かに現れ、その中からゲンムが飛び出してくる。

 

ゲンム「ブハハハハァ!神は不滅と言っただろう!」

 

そう言いながらロータスに襲い掛かろうとするゲンムだったが、ロータスは慌てることもなくゲンムを切り払い、その体を地に叩き落とす。

 

ゲンム「ぐぅぅ!」

 

悔しそうにゆっくり立ち上がるゲンムを見ながら、ロータスが刃を向ける。

 

ロータス「コンティニュー機能があると分かっていれば、対応するのは容易い。私にその戦法は通用しないぞ?」

 

ゲンム「黙れぇ!」

 

ゲンムはそう叫ぶと、ゲーマドライバーからデンジャラスゾンビガシャットを引き抜いて腰につけたキメ技スロットホルダーに装填し、スイッチを押す。

 

『キメ技!デンジャラス!クリティカルストライク!』

 

その音声の後、ゲンムが空高く飛び上がり、足にオーラを溜めてロータスに向かってキックを放った。

 

ゲンム「ブゥハァァァァァァァァァァァ!!」

 

高らかな雄叫びを上げながらゲンムに対し、ブラックロータスは右腕を腰にため、己の必殺技で迎え撃つ。

 

ロータス「デス・バイ・ピアーシング!!」

 

ロータスはそう叫び、右腕を勢いよく目に突き出し、ゲンムのキックを貫いた。

 

ゲンム「バカなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

という断末魔と共に、ゲンムは再びゲームオーバーを迎えるが、すぐさまロータスの頭上に土管が現れ、そこからロータスを急襲するべく姿を現す。

 

ゲンム「ブハハハハハ!今度こそ貰っ…?!」

 

そこまで言って、ゲンムの言葉が途切れる。その原因は、今まさに自分が襲撃しようとしたブラックロータスの姿が眼下になかった為だった。

 

ロータス「言ったはずだ。もうその手は通用しないと!」

 

ゲンムの背後からロータスの声が聞こえる。土管が出現すると同時にロータスは飛び上がり、ゲンムよりも高い位置で待ち構えていたのだ。

 

ロータス「食らえ!デス・バイ・パラージング!!」

 

ロータスはそう叫ぶと剣と化した四肢を目にも止まらぬ速さで振るい、神速の斬撃を矢継ぎ早に叩き込む。

 

ゲンム「アアァァアァァァァァァァァァァアァァ!!」

 

という断末魔を上げ、ゲンムの体が地面に叩きつけられた。そしてロータスもその後に続くと、地面でもがくゲンムの頭に己の右腕を突き刺し、またしてもゲームオーバーへと追い込む。

そして、本日三度目の土管がロータスの前に出現し、そこからゲンムの姿が現れる。奇襲戦法がもう通用しないと分かったせいか、その目は静かにロータスを睨みつけるだけだった。

 

ゲンム「ハァハァ…何故だ…何故私がこんな小娘に圧倒される!?」

 

ゲンムが悔しそうに喚くと、ロータスは静かに答える。

 

ロータス「お前の能力は確かに脅威だ。クリエイターとしてなら、おそらく本当に神を名乗れるだろう。しかし、プレイヤーとしては半人前もいいところだ。お前程度のやつなんて、私たちの世界にはごまんといたぞ!」

 

ロータスのその言葉に、ゲンムは激高する。それは、ゲンムこと檀黎斗が一番突かれたくない己の弱点であった。

 

ゲンム「ハァ…ハァ…黙れェェェ!神に向かってその言葉、無礼だぞォ!」

 

ゲンムがロータスに向かって吠えるが、ロータスは特に気にした様子もなく、さらに言葉を続ける。

 

ロータス「自分の弱さを認められない奴は、一生高みには登れんよ。そして、今のお前の姿で、攻略法も見えた!これで終わりだ!」

 

ロータスはそう言うと、ゲンムに向かって突撃していく。対するゲンムもロータスに向かって突撃する。

 

ゲンム「ブゥワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

雄叫びを上げて突撃するゲンムを、ロータスは華麗なる動きで捌き、すれ違いざまに腹部へ斬撃を入れる。

 

ゲンム「ぐぅぅぅぅ!」

 

そのダメージが大きかったのか、ゲンムはその場で膝をついた。その姿を見て、ロータスは距離をとると再び右腕を腰にためる。先ほどとは違い、ロータスの腕に紫色のオーラが宿り、やがて肘からエネルギーが放出された。

 

ロータス「ヴォ―パル・ストライク!!」

 

ロータスが叫び、右腕を前に突き出した途端、先ほどのオーラが鋭い形となり、ゲンムに向かって凄まじい速度で伸びていく。そして、腹部にあったゲーマドライバーを正確に撃ち抜くと、そのままゲンムを体ごと吹き飛ばした。

 

ゲンム「ぐぅあああああああああああああ!」

 

ゲンムは叫びながら地を転がり、やがて強制的に変身が解かれて檀黎斗の姿になった。

身に着けていたスーツはところどころ無惨に破け、顔にも擦り傷や切り傷ができている。

 

アスナ「どういうこと…?コンティニューしたら、ダメージはリセットされるんじゃ?」

 

アスナが疑問を口にすると、レイカーが隣で納得したように声を上げる

 

レイカー「そういうことでしたか。アスナさん、今からロータスがちゃんと説明してくれますよ」

 

レイカーの言葉を聞いて、アスナはロータスの方を見る。そのロータスは、ゆっくりと黎斗へ近づくと、口を開いた。

 

ロータス「お前のコンティニュー機能は確かにHPは回復するようだが、変身している者の体力を回復させるようなものではない。つまり、今のように連続でライフを奪われた場合には、変身者の体力が先に底を突く仕様だということだ」

 

ロータスの言葉に、黎斗は歯噛みをする。変身前状態のコンティニューであれば確かに体力の回復も可能であるが、変身後では回復対象が変身者ではなくHPに移るため、黎斗本人の体力は回復しない。かつて、クロノスと戦った際に露呈した弱点であった。

黎斗「おのれ…おのれぇぇぇぇぇ!」

 

黎斗はそう叫びながら怒りに任せてロータスに殴り掛かろうとするが、ロータスはそれを両腕の剣で切り払い、地に転がす。

 

ロータス「見苦しい真似はよせ。ここはお前の負けだ。知ってることを、全部吐いてもらうぞ」

 

ロータスがそう言って、黎斗に右腕を向ける。しかし、黎斗は地に這いつくばりながら自分の右手を見つめ、沈黙を貫いている。よく見れば、黎斗の右手はもちろん、全身がまるでノイズのかかったように不明瞭になってきている。そしてそれが収まると、黎斗の瞳に突如紫の光が宿り、口元に邪悪な笑みが浮かんだ。

 

黎斗「フフフフフ…」

 

不敵な笑みを漏らす黎斗に、ロータスが声をかける。

 

ロータス「気でも違ったか?この状況で、お前にもう勝ち目は無い!」

 

ロータスははっきりと黎斗に言い放つが、黎斗は聞こえていないように笑い声をあげた。

 

黎斗「フフフフフ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハァ!!!」

 

そしてゆっくりと立ち上がり、ゲーマドライバーからデンジャラスゾンビガシャットを取り出しながらロータスの方へ向き直る。

すると、顔にあった切り傷や擦り傷はもちろん、破けていたスーツまでが再生していき、無傷の状態まで回復した。

 

ロータス「何!?」

 

アスナ「傷が再生していく!?」

 

メイデン「一体何が…!?」

 

驚愕するロータスたちに、黎斗はゆっくりと説明していく。

 

黎斗「ブラックロータス…。礼を言おう。君のその黒曜石のような刃がァ!私の真の力を呼び戻した!君は、最高のゲームテスターだァ!!」

 

ロータスを指さしながら、黎斗が高らかに言い放つ。

 

ロータス「どういう意味だ!?」

 

黎斗「このデンジャラスゾンビガシャットは本来、人間の死のデータを持つもの、つまり一度死を体験したものが使って初めてその力を発揮する!今まではプロトマイティアクションXオリジンの力で抑制していたが、君が追い詰めてくれたおかげで、私は再び死のデータを得ることができた!つまり!君の戦いは全て!私の手のひらで、転がされていたんだよ!ハーッハハハハハハハハハハァ!!」

 

そう言って、黎斗はそれまで腹部に装着していたゲーマドライバーを外すと、バグヴァイザーことバグルドライバーをを腹部に装着する。

 

黎斗「ぶぅぅぅぅぅぅん!!」

 

そして、右手でデンジャラスゾンビガシャットのスイッチを押し、

 

『デンジャラァス!ゾンビィ!』

 

という音声の後、

 

黎斗「へぇんしぃん!!」

 

という独特の掛け声とと共に、バグルドライバーへデンジャラスゾンビガシャットを装填し、仮面ライダーゲンム:ゾンビゲーマーレベルXへと変身した。

見た目は先ほどのゾンビゲーマーと変わらないが、全身から禍々しい黒いオーラが発され、その実力は比べ物にならないことを語っている。

 

ゲンム「ブハハハハハハハハハァ!!これが!!これこそが究極にして極限の変身だァ!!!神の真の力を思い知れぇ!!!!」

 

ゲンムがそう叫ぶと、黒いオーラが地面へと伸び、そこから大量のゾンビゲーマーが生まれてくる。

 

ロータス「くっ!増殖能力か!」

 

リズ「ちょっ!そんなの反則でしょ!!」

 

リズの非難に、黎斗は悪びれもせずに答える。

 

黎斗「ハハハハハァ!ゾンビに増殖は付き物だろゥ!そして、神の前に反則などという言葉は無ぁい!!」

 

エギル「聞く耳持たずってか…」

 

不気味に向かってくるゾンビゲーマーたちを目にして、エギル、リズ、シリカと黒のレギオンの面々はそれぞれ戦闘態勢に入る。

 

レイカー「ここは共同戦線と参りましょう。よろしくお願いしますね、皆さん」

 

レイカーの言葉に、エギルたちが答える。

 

エギル「おうよ!」

 

リズ「まっかせて!」

 

シリカ「精一杯頑張ります!」

 

その言葉を聞いて、黒のレギオンの面々も口を開く。

 

メイデン「私は広域攻撃でなるべく増えたゲンムの数を減らします!」

 

アッシュ「俺様はバイクで外円から削ってくぜ!」

 

ベル「回復は任せて!」

 

レイカー「私は指揮を取りながら空中から攻撃を仕掛けます!本体のゲンムは、アスナさんとロータス、お願いします!」

 

アスナ「はい!」

 

アスナはそう言うと、ロータスの隣に並び立つ。

 

ロータス「よろしく頼むよ、閃光のアスナ」

 

アスナ「私のこと、知ってるのね」

 

ロータス「ああ。この世界での実力者を洗い出しているときにね」

 

アスナ「光栄ね。私の方こそよろしくね、黒の王様」

 

ロータス「ああ。背中は預けてもらって大丈夫だ」

 

そう言って、お互いに笑顔を向けると、アスナとロータスは本体であるゲンムに視線を向ける。

 

ゲンム「君たちに勝ち目はない!諦めて神の軍門に降るがいいィ!!」

 

ゲンムの不遜な言葉に、アスナとロータスは答える。

 

ロータス「お前の下につくなど、死んでも願い下げだ!行くぞアスナ!」

 

アスナ「ええ!私たちの世界を、あなたなんかに壊させやしない!」

 

そう叫び、2人はゲンムに向かって走り出した。そしてアスナはレイピアによる突きを、ロータスは剣となった両腕で斬撃を、それぞれ神速の速さでゲンムに繰り出す。

しかし、ゲンムはその速さを見切り、レイピアを左手で、ロータスの剣を右手で掴む。

 

ロータス「なっ…!」

 

アスナ「嘘!?」

 

ロータスとアスナがそう漏らした瞬間、

 

ゲンム「ブゥゥハァァァァ!!」

 

という叫び声と共にゲンムがアスナの腹に蹴りを入れて突き飛ばし、ロータスを持ち上げて地面に叩きつける。

 

アスナ「うぅっ!」

 

ロータス「ぐああっ!」

 

ロータスが苦悶の声を上げると同時に、ゲンムの右足がロータスの顔面に迫る。

 

ロータス「くっ!」

 

ロータスがそれを間一髪で避けると同時に、突き飛ばされたアスナがゲンムに接近して連続刺突を叩き込んだ。

 

アスナ「スイッチ!」

 

技を繰り出したアスナが合図すると、ロータスが両腕を振るって連続斬撃をゲンムに決める。

2人の技をモロに食らい、体勢を崩すゲンムだったが、倒れる直前に不気味な挙動で起き上がると、ストレージからガシャコンスパローを取り出して分割し、2人に斬りかかった。

 

ロータス「むぅ!!」

 

アスナ「くぅっ!!」

 

間一髪でアスナとロータスはそれぞれの剣でゲンムの斬撃を受け止めるが、凄まじいゲンムの膂力に押され、力ずくで切り裂かれた。

 

ゲンム「ハアァァァ!!」

 

アスナ「ああっ!」

 

ロータス「うわぁ!」

 

ロータスとアスナがそれぞれ地面に転がると、ゲンムはガシャコンスパローをアローモードにして、

 

ゲンム「食らえぇぇ!!」

 

という声と共に2人に追撃を加えた。

 

ロータス「ぐああああっ!」

 

アスナ「きゃああああ!」

 

アスナとロータスが攻撃を受け、その場に膝をつく。

 

ゲンム「フハハハハハハァ!これが神の力だァ!」

 

2人を見下しながら、ゲンムが高らかに笑っていた。

 

ロータス「見た目は変わらないのに、さっきとは比べ物にならない力だ!」

 

アスナ「ええ…全てのステータスが、これまでの倍以上になってるわ!」

 

アスナとロータスが揃って口を開く。このゾンビゲーマーレベルXはこれまでのゲンムの力が可愛く思えるほど、桁違いの力を発揮していた。

 

アスナ「こうなったら、2人の高等スキルを、連続で叩き込むしかないわ!」

 

ロータス「ああ。それで奴のHPを削りきるしか勝ち目は無い!」

 

そう言いながら、2人はゆっくりと立ち上がる。

 

アスナ「タイミングは合わせるわね!」

 

ロータス「ああ!これが最初で最後のチャンスだ。行こう!」

 

ロータスの合図とともに、2人はゲンムに向かって走り出した。

 

アスナ「やあああああああああああ!!」

 

ロータス「おおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

叫びと共に接近した2人はそれぞれ二手に分かれると、まずはロータスが技を繰り出す。

 

ロータス「デス・バイ・パラージング!!」

 

その叫びと共に、ロータスが先ほど繰り出した連続斬撃をゲンムに浴びせた。

 

ゲンム「ぐぅぅぅ!」

 

さしものゲンムもこの技には少しよろつき、隙ができる。そこを狙って、今度はアスナが空中に飛び上がり、突進刺突技であるシューティング・スターの一撃をゲンムの胸元に突き込む。

 

ゲンム「ぬぅぅぅ!小癪なァ!」

 

ゲンムはそう言いながらアローモードにしたガシャコンスパローをアスナに向けようとするが、背後からロータスに組み付かれ、動きを封じられた。そして、首元にロータスの交差した刃が当てられ、

 

ロータス「デス・バイ・エンブレイジング!!」

 

という声と共に鋭い斬撃がゲンムの首元を襲った。

 

ゲンム「ぐあァァァァァァァァ!!」

 

ゲンムが技の威力に足をもたつかせながら前に出る。すると、そこには自身の代名詞ともいえる必殺技、スターダスト・スプラッシュの発動準備を終えたアスナが待ち構えていた。

 

アスナ「やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

アスナが叫びと共に必殺の連続攻撃をゲンムに叩き込む。そして、技を終えたアスナの隣にロータスが合流すると、

 

アスナ「これで!」

 

ロータス「止めだ!」

 

と言ってゲンムの胸に鋭く、力強い突きを叩き込み、その体を大きく吹っ飛ばした。

 

ロータス「やったか!?」

 

と言ってロータスとアスナは吹き飛ばされたゲンムの方へ目をやるが、ゲンムはまたも不気味な挙動で起き上がり、何事もなかったかのように2人を睥睨する。

 

アスナ「そ…んな…」

 

ロータス「あれだけの技を叩き込んで無傷とは…」

 

絶望するアスナとロータスに向かって、ゲンムは歩みを進めながら声をかける。

 

ゲンム「ブフフハハハハハハァ!!このデンジャラスゾンビガシャットには、その名の通りゾンビの力が宿っているため、ダメージリセット機能がある!!君たちがいくら足掻こうと、絶対に私に勝つことはできないのさァ!」

 

ゲンムの言葉を聞き終わったアスナとロータスが地に膝をつく。2人とも、大技の連発により疲弊し、行動不能状態に陥っていた。

 

そんな2人の姿をよそに、ゲンムはさらに続ける。

 

ゲンム「そして増殖したゾンビたちも、今の私の力なら無限に復活できる…。君たちにはもはや、万に一つの勝ち目も無い!!」

 

ゲンムの言葉に、黒のレギオンやアスナの仲間たちが反応する

 

アッシュ「確かにこいつ等、倒しても倒しても無限に沸いてきやがる!」

 

リズ「ええいもぉ、うっとおしいなぁ!」

 

メイデン「このままじゃ、こっちのスタミナが切れちゃいます!」

 

それらの言葉にゲンムは完全に己の勝利を確信する。

 

ゲンム「安心したまえ…最初に言った通り、君たちのデータは、私がこの世界を攻略するのに有効活用させてもらう…。決して無駄にはしない。なんなら、今後私の作るゲームの登場キャラとして生き返らせてやってもいい…だからこの場は…私の軍門に降れェ!!」

 

そう言うと、ゲンムは腹部のバグルドライバーを取り外し、動けなくなったロータスとアスナに向ける。

 

エギル「アスナ!!」

 

シリカ「アスナさん!!」

 

レイカー「サッちゃん!!」

 

ベル「姐さん!!」

 

仲間たちの悲痛な叫びが響く中、2人がデータに変換されようとしたその時、突如戦場に特殊な形をした紙吹雪が舞ってきた。その紙吹雪が増殖したゾンビに触れると、ゾンビたちはデータに変換され、光の粒となって消えていく。

 

ゲンム「何だ!?何が起こっている!?」

 

あまりにも予想外の出来事に狼狽するゲンムに向かって、アスナたちの後方からガトリング銃の弾丸が飛来し、ゲンムを襲う。

 

???「おーすげぇ。本当に弾、減らないんだな」

 

やっと動けるようになったアスナとロータスが声の方に目を向けると、テンガロンハットをかぶり、口元に髭を生やした男が両手持ちのガトリング銃を持って立っていた。

 

???「後は任せろ、キッド」

 

???「そうさせてもらうよ。あんなおっかねぇ化け物、相手にしたくねぇ」

 

その言葉の後、テンガロンハットの男の後ろからポンチョのフードで顔を隠した男が飛び出し、二丁拳銃を撃ちながらゲンムに襲い掛かる。その狙いは正確で、ゲンムの頭や胸といった急所を次々と打ち抜きながら、その距離を詰めていく。

 

ゲンム「何だ貴様はァ!!」

 

そう言って、ゲンムは向かってきた男にガシャコンスパローを振るうが、男はそれをあっせり避けると、ゲンムの胸に強烈な飛び蹴りを食らわせて吹っ飛ばす。

 

???「今だ!!オルミーヌ!!やっちまえ!!」

 

男がそう叫んだ瞬間、ゲンム周りに突如石の壁が出現し、中にゲンムを閉じ込める。

 

ゲンム「何だこれはァ!!神に対して無礼だぞォ!!」

 

ゲンムが激昂していると、その頭上に先ほどの紙吹雪が集まり、やがて人の形となると、ベレー帽に特殊な服を着た男の姿になった。

男は石壁に閉じ込められたゲンムに向かって静かに言い放つ。

 

???「仮面ライダーゲンム…あなたが神を自称するのは勝手だが、神の中にも邪神というものがいる。そしてその邪神とは得てして…このように人の手によって封印されるものだ」

 

男のその言葉に、ゲンムが慌てて叫ぶ。

 

ゲンム「ま、待て!やめろォォォ!!」

 

ゲンムのその叫びを無視し、男は懐から一枚の札を出すと、

 

???「封!!」

 

と叫んで投げつける。すると、それは石の蓋となり、ゲンムを完全に石の中へ閉じ込めた。そこからさらに、男は腕を振るい、残っていた紙吹雪を操ってゲンムを閉じ込めた石壁に貼り付け、最後に筆で五芒星を描いてから仕上げをした。

そして、先ほどのテンガロンハットとポンチョの男の方を見ると、その2人に声をかけた。

 

???「よくやってくれました、ブッチ、キッド」

 

声をかけられたテンガロンハットの男ことキッドと、ポンチョの男ことブッチがそれぞれ答える。

 

キッド「俺たちは雇われの身だからな。受けた仕事はしっかりやるさ」

 

ブッチ「それに、久々にまともな銃を撃てたんだ。こっちが礼を言いたいくらいだぜ」

 

キッドとブッチがそう言うと、遠くの方から3人の男に声をかけながら1人の女性が近づいてくる。

 

???「お師匠様~!ブッチさん、キッドさん!」

 

お師匠様と呼ばれた男がその女性の方を向き、先ほどと同じようにねぎらいの言葉をかける。

 

???「オルミーヌ、あなたも良くやってくれましたね。さすが、当世一の石符使い」

 

男にそう言われ、女性ことオルミーヌは恐縮しながら答える。

 

オルミーヌ「と、とんでもない!私なんかまだまだ未熟もので…」

 

???「やれやれ…あなたはもう少し自信をつけた方がよさそうですね。さて…」

 

男はそう言って、アスナとロータスの方に目を向ける。男たちが話している間に、他の仲間たちも2人の元に合流していた。

 

???「大丈夫ですか?」

 

アスナ「はい…それで、あなたたちは?」

 

アスナの問いに、男は自己紹介をする。

 

???「私の名は晴明…安倍晴明と申します」

 

男の言葉に、リズが素っ頓狂な声を上げる。

 

リズ「安倍晴明って、あの陰陽師の!?」

 

リズのその言葉に、晴明はフッと笑みを浮かべて答える。

 

晴明「どうやら、後世において私は相当名を知られているらしいですね。あなたの良く知る、安倍晴明とは私で合っていると思いますよ」

 

シリカ「私、もっと昔の貴族が着ているような着物を着ていると思ったんですが、なんだか私たちと同じくゲームの登場人物みたいな恰好をしてるんですね…」

 

晴明「これは本来の歴史において私が着ていたものではありませんからね。正確には、私は過去から来たのではなく、こことは別の異世界から来たので…」

 

晴明の言葉に、エギルがすかさず切り込む。

 

エギル「こことは別の異世界だって?そりゃどういうことだ?」

 

エギルの問いに、晴明は苦笑を浮かべながら答える。

 

晴明「その話は長くなるので後程、ゆっくりと…。まずは互いの自己紹介を済ませてしまいましょう。こちらにいるのが私の仲間でブッチとキッド。そして弟子のオルミーヌです」

 

晴明が言うと、居並んだ面々がそれぞれ自己紹介をする

 

ブッチ「ブッチ・キャシディだ。特技は早撃ちと強盗。よろしくな」

 

キッド「ザ・サンダンス・キッド。ブッチの相棒をやってる。ガトリングの扱いなら西部一だぜ」

 

オルミーヌ「皆さん初めまして。そこにいる安倍晴明の弟子で、石符師のオルミーヌと言います」

 

3人の自己紹介が終わると、アスナたちSAO組、黒のレギオンメンバーもそれぞれ自己紹介し、お互いに顔とな名前を覚えた。

 

エギル「しっかし、まさかあのワイルドパンチ強盗団のトップ2人に会えるとはな」

 

キッド「今は強盗じゃなくて、この晴明のパシリみたいなもんだけどな」

 

ブッチ「だが、腕は落ちちゃいない。ここからは頼りにしてくれていいぜ」

 

ブッチとキッドがそう言うと、晴明が改めて全員に告げる。

 

晴明「先ほども話した通り、私たちはこことは違う異世界に、漂流者(ドリフ)と呼ばれるものとして召喚され、そこで廃棄物(エンズ)と呼ばれる連中と戦いを繰り広げていました。私たちがここに来た以上、彼らも着ている可能性が高い。彼らを放置すれば、この世界は終わりです。先ほど封印した、檀黎斗のように、この世界を滅ぼしにかかるでしょう」

 

晴明の言葉にその場の全員が沈黙する。

 

晴明「それを防ぐためにも、あなた方SAOサバイバーと、黒のレギオンの皆さんにはぜひ協力してもらいたい。その見返りと言っては何ですが、このヒーローズ・クロニクルというゲームをクリアするお手伝いを、私たちもさせていただきましょう」

 

晴明の提案を聞いて、その場にいた全員が笑顔でうなずく。

 

ロータス「それじゃあ、新たなチーム結成だな」

 

アスナ「ええ。この世界を、絶対に救いましょう!」

 

アスナがそう言った直後、エギルが石壁を指さしながら口を開く。

 

エギル「チーム結成はいいが、奴はどうする?攻略のためには、あいつを倒して得られるガシャットロフィーが必要なんだろ?」

 

エギルがそう言うと、晴明が首を振りながら答える。

 

晴明「おそらく、その必要はないかと思います。必要なのはあくまで彼ら仮面ライダーのデータ。本人さえ連れていけば問題は特にないでしょう」

 

ベル「でも、連れてくにしてもどうやって?アイツ、なんか暴れそうだよ」

 

晴明「それに関してもお任せを。彼の力は一種妖術に近いものがある。私の呪術、札術によって力を抑えることは可能です。あのようにね」

 

ロータス「ならば当面の問題は解決だな。晴明殿、あいつを運べる状態にしてくれ。とにかく、この街を出発しよう」

 

ロータスがそう言うと、各人がそれぞれ行動に移る。こうして、各世界のヒーローたちと、仮面ライダーたちの道が静かに交わったのであった。

 

そして、物語はここから次のステージへ進んでいく…。

 

スーパーゲーム大戦 第一部 邂逅篇 終了

 

第二部 集結篇へ続く!!




第二部予告

歪に融合した異世界で、邂逅するヒーローたち。それぞれの仲間との合流を目指す中、檀正宗の計画はさらに加速し、歴史から廃棄された軍団や邪なる野望を持った者たちが次々に襲い掛かる。出会うはずのなかったヒーローたちの戦いは、さらにその苛烈さを増していく!!
スーパーゲーム大戦 第二部 集結篇 近日執筆開始!!

そして、電脳の異世界での戦いが繰り広げられている頃、現実世界でも異変が起きていた!ニコたちの世界に蔓延する新種のウイルス、「A・Eウイルス」、火星から持ち帰られた謎のアイテム「パンドラボックス」と異種生命体「テラフォ―マー」。それらを用い、裏で暗躍する「学園都市」。「多元特異点」と呼ばれる世界で、戦士たちの新たな物語が紡がれる!
スーパーゲーム大戦外伝 仮面ライダーグラファイト~多元特異点:凶星戦争・聖都~
鋭意執筆中!!


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第二部 集結篇
第二部 序章


【ヒーローズ・クロニクル 世界樹ユグドラシル 玉座の間】

 

異なる世界の人物たちを呼び込み、開始されたヒーローズ・クロニクル。

 

その運営を司る人物たちが、この玉座の間に集結していた。目的は、このゲームの今後の運営方針を決めるためである。

 

正宗「そうか。そのように展開していたか」

 

全ての元凶である正宗が、シロウに声をかける。

 

シロウ「ええ。仮面ライダーたちはそれぞれ、ブレインバーストやALOのプレイヤーと協力体制を築いています。中には、それとは別の人間と手を組んだ者もいるようですが…。そして今日、旧シルフ領の領主であるサクヤという人物が、正式に仮面ライダーへの支援を発表しました」

 

シロウの言葉に、正宗は不敵な笑みを浮かべながら口を開く。

 

正宗「所詮、今までのことは時間稼ぎにすぎん。こちらの戦力も整った今、正式なプランを発動する。ご協力いただけますね?お二方…」

 

そう言いながら、正宗は視線を2人の人物に向ける。そこには、異世界から召喚された正宗の協力者である速水勝正と、ボロボロのマントを身に着け、不気味な雰囲気を醸し出す黒王の姿があった。

 

速水「無論、協力は惜しまぬつもりだ。幸いなことに元あった手駒の他にも、いくらか戦力を補強することが出来たしな」

 

速水の言葉を聞いて、奥に控えていた男たちが口を挟む。

 

???「おいおい、駒扱いとはあんまりだねぇ。まぁ、雇われた身分じゃそういう扱いでも仕方ないが」

 

???「私は雇われた身分じゃないが、駒扱いされるのはごめんだよ」

 

そう言いながら、その2にんは前に出てくる。それは、元の世界では伝説の傭兵として知られる『虐殺者』ムテバ・ギゼンガと、大量殺人鬼の死刑囚『血染めの象牙』坂東洋平だった。さらに、奥には『処刑人』阿古谷清秋や『美獣』桐生刹那なども控えているが、文句があるのは今のところ、この2人だけのようだった。

 

速水「望むものは全て与えてやる。ムテバには報酬、坂東には自由をな」

 

速水のその言葉を聞いて、2人は黙って下がる。

 

速水「見苦しいところを見せて申し訳ない」

 

速水がそう言うと、正宗は楽し気に言葉を返す。

 

正宗「むしろ頼もしい限りですよ、速水殿。それに比べて、黒王殿は先ほどから黙っておられるが、何か不満がおありかな?」

 

正宗に声を掛けられ、黒王はゆっくりと、厳かに口を開く。

 

黒王「私の目的は真なる救済による新世界の創造だ。文句など、もとよりあるはずがない。ただし…」

 

黒王がそこまで言うと、正宗がその続きを答える。

 

正宗「分かっていますよ。人類以外の種族で編成された軍団、現在用意しているところです。それが整うまでは、背後に控える方々に活躍していただきたい」

 

正宗はそう言いながら、黒王の背後に控える土方歳三、ジャンヌ・ダルク、アナスタシア、ラスプーチン、明智光秀、源義経に目を向けた。

 

黒王「無論、この者たちは好きに使ってもらって構わん」

 

正宗「結構!それでは、真のプランを発動することにしましょうか!」

 

そう言って、正宗は高らかに笑い声をあげる。

 

この計画により、異界のヒーローたちが集うこのゲームは、新たな展開を迎えることになるのであった。



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