魔法使いと無口な兵士 (nobu0412)
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兵士との出会い

魔法使い、セラスフィア・「セラ」・アロントはある時、無口な人物に助けられる。
その人物は殆ど喋らない人物だが変わった武器を使う変わり者だった。

そんな2人の出会い


ガタガタと揺れる音と振動に意識がはっきりしてくる。

そして話声も聞こえる。

声の主は壮年の痩せた男のものだった。

 

「あんちゃん、もうすぐ着くぜ」

 

「・・・」

 

「それにしてもどこで拾ったんだいこのお嬢さんは」

 

「・・・」

 

「そりゃあないだろう? いいじゃないか話してくれたって。」

 

どうして私がここにいるのか?

それをゆっくりと思い出した。

 

 

 

とある任務の帰り、小さな村が盗賊に襲われてたため多大な数の盗賊を相手に一人応戦していたいた。

 

もともと魔法使いは希少で彼女は特に強い類であった。

 

しかし一人では多大の人数を捌くのは難しく、体力にも限界が来ていた。

 

気を失い、目が覚めると薄暗くジメジメとした洞窟、盗賊の根城の牢屋にいた。

 

牢屋の外から下卑た笑みを浮かべながら私の体を舐め回すように近づいてくる男が牢屋の扉の鍵を開けようと鍵束から鍵を探し始める。

 

手を縛られ身動きが取れない、魔力が尽きて失神したためもう魔法も使えずただこの男に好きにされるのだろうと想像がついた。

 

来るであろう残酷な現実に目を瞑るとそこにいた男が突如喚き始める。

 

目を開け「それ」を見た。

乱入者、それも格好は非常に異質だった。

よく見えないが見たことのない兜、見たことのない鎧のようなもの、そして見たこともない武器、杖のようなものを盗賊の男に向けていた。

 

少しくぐもった音が数回すると盗賊の男は喚いたことが嘘のように静かになり血飛沫を撒き散らしながら地面に倒れた。

 

もう既に死んでいるであろうにも関わらずとどめを刺すように数回攻撃をした。

 

こちらを向くと目が合った。あってしまった。

 

いや、あれは目ではないのだろうが目が合った気がした。

 

兜から降りている四つの目のようなもの、それと覆面のせいで顔が見えない。

 

ゆっくり、ゆっくりとこちらに近づいて来る。

近づく距離が近くなると私の心臓が早くなるのを感じた。

 

助けに来た? でも誰が? それとも敵? 私も殺されるのでは?

 

扉を開けようとするが鉄がぶつかる鈍い音が響く。

檻は鎖と南京錠で閉められている。

 

そこにいた男が、いや、顔が見えないため性別はわからないが体格や振る舞いからして男だろう。

 

もしこの檻が開かれたら? 私も殺される?

 

ゴンゴンと何度も開けようとするが開かず、南京錠の存在に気付き武器を向けるとくぐもった音を立てて南京錠は砕け役割を果たせなくなった。

 

 

扉が開き近づいて来る。

目の前まで歩み寄りこちらを見つめるが何もしてこない。

そして私は意識を失った。



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ローブの男

今私は馬車に揺られてどこかへ向かっている。

身売り? それなら先程の拘束を解かないでそのままのはず。

こんがらがった思考をまとめようにも纏まらない。

 

するとローブの人物がこちらを向き目が合った。

 

ーーー!?

 

わかる、この男だ。

間違いない、さっきの見たことのない格好の男。

顔が見えなくともこの男の雰囲気が一緒だった。

 

何よりもあの冷たい目が、何よりも証拠だった。

 

全てを隠す様に茶色のローブを身にまとい、布で顔を隠し深くフードを被っているが目だけは出ていた。

 

気がつけば男は興味を無くした様に外の景色を見る為か首をそちらへ向けた。

 

何もしてこない男に戸惑っていると痩せた壮年の男が気づいた。

 

「おっ! 起きたな。気分はどうだ?」

 

そう言われるが今の状況がつかめない為言葉が出ず、小さく頷いただけだった。

 

「大丈夫そうだな! おい兄ちゃんもなんか言ってやれよ。」

 

男はチラリと目だけでこちらを見たがすぐに元の景色に視線を戻した。

 

「なんだよ冷てぇなぁ。なぁお嬢ちゃん、名前はなんだ?」

 

壮年の痩せた男が問いかけるとゆっくりと起き上がり答えた。

 

「セラスフィア。セラスフィア・アロント」

 

「なるほど、いい名前だ。俺はーーー」

 

すると男はあぐらから膝立ちの姿勢になりローブの前の留め具を外し何かを取り出すが何かはわからない。

 

「あ、兄ちゃん・・・?」

 

突然の行動に不安めいた声が壮年の男から出る。

すると馬車が止まった。

 

「クソ! 盗賊の待ち伏せだ!」

 

馬車を荷車の外で動かしていたであろう人物が叫ぶ。

 

「あ、お嬢さん! 無理しちゃダメだ!」

 

制止の声を無視して軋む体を動かし、四つん這いで移動して外を見ると小規模ではあるが盗賊であった。

 

先ほどの連中の仲間だろうか? 仇討ち?

 

「おい、とっとと持ってるもん寄越して消えな!」

 

そんな声を聞きつつ戦力を見ると10人は居るだろう。

 

弓やボウガンも持って居るのが多数、こちらは戦闘員はほとんどいない。

もはや絶望的だった。

 

「おい! 中にもいンだろ、出てきな!」

 

壮年の男は腰が抜けたのか震えながら両手を合わせて神への祈りを捧げ始めた

 

すると男は立ち上がりゆっくりと歩き出し声のした方向、荷台の後ろから外へ出た。

 

 

飛び降りたと同時に剣を向けられるが同じように黒い何かを盗賊の頭に向けるとくぐもった音、あの時聞いたのとは違うが同じようなものだった。

 

盗賊の男は脳漿と血しぶきを撒き散らし、絶命した。

 

その状況についていけない盗賊たちを容赦なく殺していく。

 

優先的に弓とボウガンを持つ男を殺すと見覚えのある杖のようなものを出しそれで殺して回っていた。

 

ある盗賊は荷台の陰から不意打ちをするが避けられあの杖の攻撃で膝の皿から血が吹き出し、痛みに耐えられず膝をついた盗賊は脳漿をぶちまけ死んだ。

 

あるものは荷台の壮年の男を人質にとるが同じように魔法か何かわからないが頭が吹き飛ばされ死んだ。

 

恐怖に耐え兼ね逃げた盗賊も背中に容赦なく攻撃されとどめを刺され死んだ。

 

「ひっ、ひぃぃぃぃ!」

 

一人だけ生き残っていた。

しかし足を負傷し逃げ出すこともできず、戦うこともできずにいた。

 

背中を踏み付け起き上がれないようにすると一言だけ言った。

 

「仲間は?」

 

「へぇ!?」

 

間抜けな声を出す盗賊は力強く踏み付けられ悲痛な叫びをあげた。

 

「ぎゃああああああ!! 助けて! 助けてえええええええ!!」

 

盗賊の男がそういうと足を退かし一瞬助かったように見えた。

 

しかしあの男は容赦なくあのくぐもった音を鳴らすとその盗賊は物言わぬ死体となった。

 

何度も何度もくぐもった音を鳴らしもう既に死んでいる男の体に穴を開ける。

 

あれは一体何?

 

そう考えていると男は馬車が通るために整えられた道に転がる死体たちをゴミでも捨てるように道から退かした。

 

男がまた荷台に乗ると唖然とする馬車の運転者に合図を出す様な仕草をすると馬車の男は反応が遅れるも馬車を動かした。

 

そして再び馬車は動き始める。

盗賊たちの屍を残して。

 

沈黙が渦巻くこの馬車には壮年の男性と若い男、そして私がいた。

 

壮年の男は先ほどの恐怖がまだ抜けていないのか隅で縮こまっている。

 

若い男はローブを着なおし、また同じ場所に座って外の景色を眺めていた。

 

私はさっきまでは動くのも辛かったけど回復したのか動ける様になった。

 

「さ、さあ。着いたぜ。」

 

動いていた馬車が門の前で止まると若い男は立ち上がり馬車を降りると何事もなかった様に門を通過した。

 

「さぁ、あんたらももう降りてくれ。」

 

そう言われるとまだ重い体を動かして馬車を降りた。

 

門番に身分証であるギルドカードを見せようとすると門番が声をかけて来た。

 

「アロントさん! お疲れ様です。昨日帰ってこないから心配しましたよ。」

 

「・・・えぇ」

 

「どうかしましたか?」

 

「さっき通したあの男、知ってるかしら?」

 

そう聞くと門番は難しい顔をして話し始めた。

 

「さっきの、ですか? いやぁ〜自分にはわからないですね。 ・・・なんでも、変わった魔道具を使う冒険者というぐらいですから・・・」

 

「そう・・・わかったわ、ありがとう。」

 

門をくぐり帰る場所である王都へと向かう。

 

重たい体を支えながらもずっとそのことを考えていた。

 

王都ギルドで任務の終了を報告した。次の日は怠く、動けなかったから勝手だけど休みを取った。

どうせギルドの仕事は気分で受けるものだからあまり関係なかった。

 

寝るまでずっとあのローブの人物が気になって仕方なかった。



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正体不明

翌日、すれ違う者たちの一人一人や固まってテーブルで食事を取っている者たちを観察していた。

 

「・・・どうしたんだ?」

 

明るい緑髪でショートボブ、メガネが特徴的である私の親友「セナ・フリューゲル」がお皿のハンバーグを小さく切りながら声を掛けてきた。

 

「いえ、別に・・・」

 

「いや、どう見てもおかしい。話してみろ。」

 

その男の特徴を話すと顎に手を当て考える仕草をすると思いついたのか顔を上げた。

 

「・・・たしか、下のギルドでみた・・・気がする。」

 

「いつ?」

 

「大分前だったからな。 すれ違ったとき奴は独特な雰囲気だったから覚えている。そいつがどうかしたのか? 」

 

「・・・ちょっと興味があるの。」

 

「・・・只事ではなさそうだな。」

 

 

 

城下町ギルド

 

「さて、ここで張っていればくるのか?」

 

「一緒に来なくても良かったのに。」

 

「聞いたぞ、この前盗賊に捕まってたそうじゃないか?」

 

「うっ・・・」

 

「全く、あまり無茶はするなと何度・・・」

 

そう言いかけると口を開けたまま固まっている。

その方向を見ると、目的の彼がいた。

ターバンとローブをし目だけ出していたあの男だ。

 

ターバンで顔を隠しローブを着ている、まさにあの男だった。

セナも確信を得たのか顔を見合わせて頷く。

 

受付嬢が親しげに話しをかけるが頷くだけであとはクエストの申請用紙を渡すだけだった。

 

どうやらクエストを受理し向かうようだ。

そのままクエストに向かうのか真っ直ぐ出て行こうとする。

すかさず駆け足で近づいて声を掛けた。

 

「ねぇ、ちょっといいかしら?」

 

動きを止めてこちらを振り向くと私に向き直り、ローブの前留めを外した。

 

「まって、別に貴方に危害を加えたい訳じゃないわ。 ちょっとお話したいだけなの。」

 

あの時のことを思い出し一瞬体が強張るが落ち着いて話すと向こうもそれ以上はしなかった。

 

「取り敢えず座らない? 席なら取ってあるから、いらっしゃい。」

 

さっきまで座っていた席まで案内すると3人で座る。

丸型のテーブルのため全員が向かい合う形で座っていた。

まだ警戒しているのかじっと座り何もしない。

 

「・・・取り敢えず、お礼が言いたいの。 あの時は助けてくれてありがとう。 もしかしたらもっと酷い目にあってたかもしれないから。」

 

「私からも礼を言おう。 このすぐに無茶をする友人を助けてくれてありがとう。」

 

2人の言う事を理解したように頷いた。

 

「・・・無口なの?」

 

「無口・・・というレベルではない気がするがな。」

 

「そういえばまだ自己紹介がまだだったわね。 私はセラスフィア・アロント」

 

「私はセナ・フリューゲルだ。 よろしく頼む。」

 

「・・・」

 

「もしかして、話すことができないの?」

 

首を左右に振り否定を示す。

 

「ではなぜ・・・。」

 

「おっ、おいあんたら。」

 

突如声をかけられ後ろを見ると冒険者の男がいた。

 

「あぁ、すまねぇ、ちょっといいか? うちの知り合いでな。」

 

突如意味のわからないことを言い出す。

私はこんな男とは知り合いではないし、おそらくセナも知らないだろう。

 

「ちょっと・・・!」

 

「いいから来い! この男に関してだ!」

 

小声で話しかけてくる男は少し慌てているように見えた。

 

するとターバンの男は立ち上がり去ってしまった。

 

「あっ・・・。」

 

去ってしまう彼の背中を見送りながらせめて名前だけでも聞きたかったと思う。

 

「行ったか・・・お前ら、王都の連中だろ?」

 

「・・・だったらどうする? よもや貴様は遊びに誘う為に声をかけたわけじゃないだろうな?」

 

セナが警戒をしながら聞くが冒険者の男から出たのは呆れのようなものだ。

 

「ちげーよ。 あんた等王都の人間は目立つ。 ここらでそんないい装備揃えてるのは王都の人間以外いねーよ」

 

冒険者の男は頭痛を抑えるように頭を抑えると話し始める。

 

「悪いことは言わない、あの男には関わるな。」

 

「なぜ?」

 

「あの男は謎が多すぎるからだ、いいか? あいつは・・・」

 

冒険者の男の話す内容はこうだ

 

名前はおろか素顔を見た者がいないということ、ここ最近ギルドでは初級程の依頼しか受けていないとの事だが噂では暗殺など暗躍しているかもしれないという噂だった。

 

そして彼の名はーーー

 

「ラビット、だ」

 

「ラビット(うさぎ)?」

 

「誰がつけたかは知らね。 誰かが言うにはうさぎの人形を持っていたからそうなった、とかな。」

 

「案外かわいい名前なんだな。」

 

「やってることは穏やかじゃねぇけどな。 なぜかは知らねーが貴族が目をつけてるらしい。」

 

「貴族が?」

 

「あぁ、まぁ、いろんな意味でな。 取り込もうとするのもいるし、邪魔に見られてるとかもある。」

 

冒険者の男から出る話はどれも憶測で信憑性がないが少しだけ納得できた。

 

「まぁ、とにかくあんまりちょっかいだすな。それで騒ぐのはウチらだからな。」

 

そう言うと冒険者の男は去って行った。

 

 

夕方

 

 

城下町はやっぱり柄がいいところじゃなかった、セナと一緒にお買い物でもして周る予定だったのにいちいち声をかけてくる男達が多いし、しつこくつきまとうのもいれば強引な連中もいた。

 

おかげでお昼は台無し、セナには帰ってもらって私は例の彼を待った。

 

みんな外見ばっかり、本当に嫌になるわ。

 

ギルドの受付でそんな話をギルドの受付嬢さんと話していると受付嬢が何かに気づいた顔になった。

 

後ろを見るとそこに待っていた彼がいた。

ちらりと目だけで一瞬だけ見られた気がした。

受付に依頼のものか麻袋をおいた。

 

受付嬢さんは依頼の達成を確認し報酬を渡すとすぐに立ち去ろうとする。

 

「ねぇラビット、さん?」

 

そう呼ぶと足を止め振り返ってこちらに向き直る。

 

「朝の時は邪魔が入っちゃったけど、良かったらディナーでもどう? 一緒に。」

 

一見ただ立っているように立っているがよく見ると目が動いているのがわかる、迷ってるのかしら?

 

「迷うくらいなら行きましょ? さぁさぁ早く早く!」

 

彼の背中を押し席へ連れて行く。

席に座って料理を頼みあとは来るのを待つだけ。

 

「改めて、あなたの名前が聞きたいわ。ラビットっていう通り名じゃなくて、ちゃんとしたあなたの名前を、ね?」

 

すると以外にも、素直だった。

 

「エマーソン」

 

「え?」

 

案外、素直に話してくれるとは思って居なかったから変な声で聞き返すように言ってしまった。

 

「名前だ。」

 

答えてくれた、それがなんだか嬉しくて、自然と笑顔になったのがわかる。

 

「?」

 

「いえ、なんだかちょっと嬉しくて。 そういえばどうして喋らないの?」

 

「苦手なんだ。」

 

話していると気づいた、まだ顔を見せてもらってない。

 

「それ外さないのかしら? そのまま食べるの?」

 

そういうと渋々といった様子で頭につけていたターバンを外す。

 

顔を見ると想像以上に若い男だった。少し老けている感じもあり、髭も少し濃く生えているがだいぶ若い。

 

「あなた、いくつなの?」

 

「18」

 

「・・・本当に?」

 

まだ20も超えてない子供だとわかると少し複雑な気分になった。人のことは言えないけど、どうしてまだ若いのに冒険者なんてしてるのかしら?

 

「あんたは?」

 

「私? 私は21よ。」

 

しばらく会話をしながら夕食を楽しんだ。

殆どは聞いてもらってた形だったけど、話してみれば彼も普通の人と変わらないと思う。

他愛のないお話をしていくうちになんだかちょっとだけ打ち解けた気がする。

彼のことはあんまり聞けなかったけどとっても楽しかった。



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メイン登場人物設定

現段階設定です。
ストーリーが進むにつれて更新します。


セラスフィア・「セラ」・アロント

21歳

独身

黒髪ロングヘア蒼く澄んだ瞳

身長高くおっぱいも程よく、素晴らしいスレンダー

 

瞳が蒼いのは魔力が充実している証、魔法がめっちゃ強い

魔法使いというだけで貴重なのにさらに多くの種類が使える

 

この国は黒髪は邪という信念が根付いているため迫害されがち。

彼女もその一人であったが幼い頃からある程度魔法が使えたため扱いとしてはまだマシだった。

 

16歳で魔法使いとして真価を発揮し、冒険者として活動。

19という若さで王都の上級ギルドに登りつめる実力者。

 

困った人間を助けてしまう性格でよく問題を起こしがち。

その性格で盗賊に捕まり、やばい目に遭わされかけるがラビットに助けられ彼に興味を示す。

 

最近の悩みは言い寄ってくる男どもの対応と、外見だけで寄ってくるのにうんざりしている。

 

魔法使いということでパーティ招待でよく声をかけられたりするがセラ的にはワンマンな戦いを好む。

 

ボッチな訳ではない。

 

 

 

 

ラビット

18歳

通り名ではラビットと名乗る。

城下町のギルドで噂になっている魔導具(銃)の使い手。

覆い隠すようにターバンとローブを着込んでいる。

会話が苦手なため自ら会話を振らない。

実は暗躍してるんじゃないかと噂が立つ。

何をしたのか貴族などに目をつけられている。

エマーソンと名乗る。

 

 

 

 

 

 

 

セナ・フリューゲル

18歳

明るい緑髪のショートボブでメガネがチャームポイント

おっぱいはちょっとだけセラに負ける。

セラと同じく魔法使いであり、王都上級ギルドの候補生として試験を控えている。

厳格で真面目な性格なため、少し強気なところがある。

野菜嫌い。

幼い頃から友人としてセラと一緒にいる。

魔法の実力は申し分なく。

セラには劣るが十分に強い。

めっちゃ野菜嫌い。

セラにはよくからかわれたりしている。

マジで野菜が嫌い。

 

 

 

 

 

盗賊

すぐ死ぬ。

 

 

 

 

 

王都上級ギルド

高難易度のクエストをこなし試験をパスした冒険者が所属し高難易度の依頼を受けられる地域。

国公認のギルドなので報酬すごい。

家も用意されている。

セラが所属し、セナも直になる予定

 

 

 

 

城下町ギルド

始まりとも言えるギルド

セラはここから始めた。

冒険者たちの柄は基本的に良くない、王都側からしたらお下品という表現になる。

登録は大体ここから始まる。

職のない人間が来る場所とかいう不名誉付き

報酬安い。つらい。

ラビットはここでよく薬草集めのクエストをやる。

 

王都上級ギルドと共通して非常時は呼集され緊急クエストがある。

出ないやつは殺す

国のために働け

という国のスタンス




予告
ラビットの設定はめっちゃマニアックになり


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試験

申し訳ない。
色々書き直して満足してたらあげるの忘れてました。


彼と出会って数週間が経った。

話してわかったことはあんまりないけど、どうやら喋るのが苦手で話す時も片言が多かった。

きっと地方か他の国から来たんだと思う。

 

私は王都ギルド所属の冒険者だから城下町ギルドで依頼が受けられない。

だから城下町ギルド所属の彼とは頻繁には会えない。

だからあったときはお買い物や食事を楽しむ。

そして少しずつ言葉を教えていった。

 

もう会わない方がいいかもしれないとみんなが言うけどどうしても放って置けなかった。

 

どこか私と似てたから。

 

彼もきっと独りだから。

 

 

「セラ。」

 

今日も彼を探しに城下町へと行こうとした。

最近暇さえあれば日課のように彼を探す。

 

そんな私に声をかけたのは正直顔も見たくない、城下町で私たちに言い寄って来た男達となんら変わらない男。

 

デール・チャーチルだった。

 

「何かしら?」

 

露骨に不機嫌な態度を取って返事をした。

それほど私はこの男が嫌い。

生理的に受け付けないとはこのことね。

 

「最近城下町へ行くのが多いな? 仕事ではないだろう。」

 

高圧的に、こっちを下に見るような態度、どうしても気に入らない。

 

「別に私の勝手じゃないかしら? 別にあなたとはそういう関係じゃないし、ましてや許嫁とかでもないでしょ?」

 

「随分な物言いだな? 俺が貴族、チャーチル家の人間だとわかっているのだろう?」

 

デールは私にしつこく付きまとう特に厄介な男だった。

 

貴族の地位を盾に好き放題に振舞ってる。

遊び人気質で女に手を出しては問題を起こす。

そして問題は親のコネと地位で揉み消す。

最低な奴。

 

「セラ、俺は君が欲しい。 その美しい美貌を持つ君が。 それに俺たちはきっと相性がいい。 戦いも体もな。」

 

本当に、男はみんな一緒。

結局、顔と体が目当て。

それが全部。

 

「そうね、貴方が丸々全部変わったら考えてあげる。」

 

「はははっ! 面白い冗談だ!」

 

どういう思考回路してるのかしら。

私は構わず城下町へと向かう。

 

門を過ぎれば彼は来ない。

すごくくだらない理由だけど彼は城下町が嫌いだから。

 

「セラ、今にわかるよ。 君と俺の身分ってやつがな。」

 

 

城下町ギルドではラビットに会えず結局今日は何もないしデールにあうわで運がないわ。

 

 

仕方なく依頼を受けようと王都ギルドに行くとセナがいた。

 

「む、セラ。 ちょうどよかった。」

 

セナに連れられ席に座った。

何事かと思って話を聞いてみたら、どうやら配属試験がついに来たとのことだった。

依頼の内容はゴブリンのコロニーの襲撃だった。

 

ゴブリン自体はそれほど強くないけど、コロニーを襲撃すれとなれば話は変わる。

基本的には5人以上、から10人の数でいかなければならないが、ギルドの指定では3人で行くとのことだった。

 

「それで、他の条件はなにかしら?」

 

「それが・・・」

 

条件の欄を見るとこう書かれていた。

 

『人員は3名までとする。 ただし、人員の1名は必ず城下町ギルドの人間を選定する事。』

 

「・・・どうして城下町ギルドからなのかしら?」

 

「あぁ、聞いてみたが。 少人数で、かつスキルが弱いものを取り入れることで指揮の方面も見るということだ。」

 

なるほど。・・・それなら。

 

「ねぇ、セナ? お願いがあるんだけど・・・」

 

 

 

 

「今日はよろしくね。ラビット。」

 

王都を出て集合地点に私と当事者のセナ、そして城下町ギルドからラビットが集まった。

前日にギルドに指名でラビットを選択したおかげでようやく彼に会えた。

 

一度彼とクエストをこなして見たかった。

それと同時に実力も見た見たかった

 

「・・・セラ、本当に大丈夫なのか?」

 

「大丈夫よ。 彼が盗賊に囲まれてもみんな倒しちゃったのは話したでしょ? 安心して?」

 

小声でセナが心配そうに聞いてくるけど私は心配ない。

彼の実力は間違いなく本物だから。

 

「それじゃ打ち合わせ通り、お願いね?」

 

打ち合わせとは陣形のとこである。

ラビットが前衛、中衛に私、後衛にはセナをつけた。

 

これはセナが考えたものであり、彼女の魔法は支援系が多く、指揮をとるために後衛。

 

セラは攻撃系の魔法が多いため援護に回す。

 

そしてラビットは唯一の前衛で進むと言う、基本的な動きだった。

 

 

 

門を出てしばらく歩くと森に入り、ゴブリンのコロニーと思しき洞窟を見つけた。

遠くから監視してたけどゴブリンたちの出入りが多い。

日が傾く頃には多くのゴブリンが集まった。

 

「・・・よし、待機は終わりだ。」

 

セナの合図でようやく始まった。

 

「それで、どう攻め込むの?」

 

洞窟の前には焚き火を囲い暖をとる3体ゴブリンたちのがいる。

おそらく見張りだろう。

 

「・・・まずはあの見張りたちの始末をしよう。 隠密にな。」

 

「どうやって?」

 

「・・・ふむ・・・。」

 

顎に手を当て考える。

そういえば・・・

 

「ねぇ、ラビット。」

 

ゴブリンを監視しているラビットに声をかけると首だけことらを向いた。

 

「あなた、私を助けてくれた時に使った魔道具で静かに倒せない?」

 

そう言うとあの時の、杖のようなものをローブの中から取り出した。

 

近くで見るとやはり異質なものだった。

 

ゴツゴツしていて、鉄の塊のような、とにかく変わっている物だ。

 

「おい、なんだそれは・・・」

 

セナが疑問に思うのも仕方ない。

正直私も不思議でしょうがないから。

 

 

ラビットがゴブリンたちにゆっくり静かに近寄る。

その行動の速さは正確でまさに人間離れした動きだった。

 

そして、少しの離れたためかあの時のくぐもった音も聞こえず、側から見れば突然ゴブリンが血を吹き出し死んで行ったのだ。

 

3体のゴブリンは動き出す前に殺された。

 

それもおそらく、殺されたゴブリンたちも気づかず死んで行ったのだろう。

 

見張りの他にも敵がいないか確認するとラビットは私たちに合図で来るように手を動かした。

 

 

そしてこの後、私はこの後彼の本当の実力を知ることになる。




今回まで使用してきたラビットの使用武器を置いておきますね・・・

Mk18 MOD1
EoTech EXPS3−2
KAC QD サイレンサー
PEQ15a
Sure Fire M952
Magpul RVG

Mk25
ACE1 オスプレイサプレッサー


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ゴブリン殺し

見張りのゴブリンを倒した後、ラビットを先頭にゴブリンの巣窟に足を踏み入れた。

 

夜だからと言うのも相まって洞窟の中は真っ暗。

一寸先は闇というのが最も正しい表現だった。

 

セラが光の魔法を使おうとするがラビットの持つMk18 MOD1に取り付けられたSure Fire M952v を使い洞窟を照らし、二人を驚かせた。

 

「それは照らすこともできるのか・・・本当に奇妙な道具だな。」

 

「本当にね、それは一体どんな魔道具なの?」

 

セラたちのいう杖のような魔道具、Mk18は魔道具ではなく現代兵器のため知らないのは仕方のないことだろう。

 

洞窟の足元を照らしながら進むと奥から数体のゴブリンが曲がってきた。

 

すかさずラビットがMk18をセミオートで射撃し数発の5.56mmの弾頭はゴブリンたちの体を抉った。

 

出てきたゴブリンたちは物言わぬ屍となり二度と動くことは無かった。

 

現在状況ではラビットが先行し殆どは彼が倒し2人は側面と後方を警戒し奥へ奥へと進んでいた。

 

しかし隠密行動は長くは続かず、やはりゴブリンたちが集結し襲いかかってきた。

 

狭い洞窟で挟撃を受けてしまう。

 

「まずいわ、挟撃よ。」

 

「来た道からは少ない。 まずは退路を確保するぞ。 ラビット、セラと交代して来た道を確保しろ。 セラは食い止めてくれ。」

 

セナの指示でラビットとセラを入れ替えて応戦する。

 

Mk18では捌ききるのは厳しいがセラの範囲攻撃の魔法なら全て倒せずとも足止めになる。

 

少ない方をラビットが倒してその後に足止めをしているゴブリンたちを倒すという作戦だった。

 

彼女たち2人は多くの実戦を経験しているためかこの程度の状況には取り乱さず、冷静に対処していく。

 

ラビットもその行動に合わせる事が出来るのは彼も実戦の慣れがあるのだろう。

 

3人の息はまるで一つのように整った動きだった。

 

セナが支援魔法である『エネミーサーチ』、この魔法で正確な敵の数と位置を特定し、セラが炎の魔法で焼き払いつつ進めないように炎の壁を張る。

そして手早く数体のゴブリンを射殺し、弾倉を変え、炎の壁の向こう側にいるゴブリンを倒していくと気がつけば、そこにはゴブリンたちの死体と彼ら3人だけであった。

 

「・・・ここまでうまく行くとは。」

 

 

あっけなく事が進み、行く道を阻むゴブリンをラビットが倒して進むという単調な作業のようなものになっていた。

 

ゴブリンもほとんど出てこない。

おそらくもう殆ど倒してしまったか逃げたのだろう、セナがそう判断しどこかにゴブリンのコロニーの象徴である宝箱か何かを探すことにシフトした。

 

宝箱とは聞こえはいいが中身はどうでもいいものが多い。

コロニーを結成するに当たってゴブリンたちは自分の宝物を一つの宝箱に纏めておくという習性があった。

理由は解明されていないが多くは『信用、信頼の証』としての意味があると答える。

運が良ければ価値のあるものがあるがそれは運次第。

数時間の探索の後、宝箱の中身はやはりどうでもいい物が殆どだった。

 

「・・・少しでも期待した私がバカだった。」

 

「どうするの? 正直、いらないものばかりよ?」

 

「そうだな・・・とにかくコロニーを潰せばもうそれでいいが・・・」

 

「・・・!」

 

突如、地響きに近い揺れと音が洞窟に響く。

 

「まさか・・・!」

 

「ビッグゴブリン、だろうな。」

 

段々と近くなりそこに現れたのは数メートルもの巨体を持つビッグゴブリンがいた。

おそらくこのコロニーの長なのだろう。

様子から見てもとても穏やかではない。配下を殺され、住処まで荒らされることなど耐えられないだろう。

 

ビッグゴブリンの持つ巨大な棍棒をふるモーションを察知し全員がそれを回避した。

その威力は風圧だけでも当たればタダでは済まないことを容易に察する事が出来た。

 

Mk18で頭を狙うが棍棒を盾に防がれてしまう。

5.56mmの弾丸では分厚い木の塊に吸い込まれてしまう。

 

ちょうどMk18に装填しているEMAGの残弾が0になりボルトストップが掛かりチャンバーが開いたままになる。

ここでMk25を抜いても変わらない。9mmでは先ほどの二の舞になってしまう。

 

Mk18をスリングを使い背中に回すとローブの中から斧を取り出した。

その斧は長めのハンドルが特徴で格闘戦も想定し重めに作られたdemoko社 all steel Tomahawkだった。

 

ビッグゴブリンはラビットに棍棒を振るもモーションが大きすぎるため全く当たらず、摑みかかろうとするが足元に潜るように侵入される。

 

両足の健をトマホークの重い斬撃に切られ自らの体重を支えられなくなったビッグゴブリンはその場に仰向けで倒れてしまう。

 

そしてラビットが勢いを止める事なくビッグゴブリンの手首を切り落としビッグゴブリンの頭にトマホークが深く深く刺さった。

脳を破壊され断末魔をあげるとビッグゴブリンは二度と動くことはなくなった。

 

その様子を2人の魔法使いたちは唖然とした様子でみていた。

冒険者が束になっても逃げる選択をするあのビッグゴブリンを一人で、しかも銃ではなく斧で殺したのだ。

セラたちもビッグゴブリンとは戦わず避けていたため殆ど戦ったことなどなかった。

それも高々数秒、数分でだ。

 

「ラビット・・・あなたは何者なの・・・?」

 

その問いにラビットは答えなかった。

その場の雰囲気が、その行動が彼が只者ではない証明だった。



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宴会でもお静かに

あれから数日、ゴブリンのコロニー襲撃の調査が入り見事壊滅させたことを証明して今日は正式に着任する儀式が今始まろうとしていた。

もちろん私も出席している。

 

白が基調で高貴な印象を与える王都ギルドの制服を身に纏いセナが壇上へ上がる。

 

そして王都ギルド専用のギルドカードと勲章バッジを受け取り拍手喝采を受け正式にセナは王都ギルドの一員になった。

 

 

「じゃあ、セナの王都ギルド就任を祝って、かんぱーい!」

 

「「「「かんぱーい!」」」」

 

「セナさん、王国ギルド就任おめでとうございます!」

 

「おめでとう。先を越されてしまったな。」

 

その夜、城下町のギルドではセナを祝う宴会が始まった。

 

なぜ王都ではなく城下町でしているのは王都はちょっとお上品な店が多くて羽目を外しきれないからである。

 

宴会にはパーティでセナの後輩のリーエや先輩であるフィリスが来てくれた。

ちなみにフィリスは私の後輩でもある。

 

「ほら、ラビットも飲みましょ?」

 

もちろんラビットも捕まえた。

それに応えるようにお酒の入ったグラスを少し上げてから飲んだ。

 

「セラからも聞いたがやっぱり噂で聞いた通り無口だな。」

 

「本当に喋らないんですね・・・」

 

フィリスとリーエの言葉に頷いた。

 

「それにしても、本当に素晴らしい働きだったぞ。お前でなければ私はこうして制服もバッジももらえなかったろうな。」

 

セナが左胸につけているバッジを撫でるように触った。

まだ真新しいバッジは金色の輝きを放ちその存在感を表していた。

 

「それにビッグゴブリンを一人で倒すなんて、本当にあなたは何者なのかしら?」

 

「なに!?」

 

「え!?」

 

フィリスとリーエが驚愕の声を上げる。

無理もない。並みの冒険者なら束になっても勝てるか怪しいビッグゴブリンを倒せばそんな反応をするだろう。

 

 

その後も楽しく飲み明かしてた。

フィリスとリーエはいつもより早いペースで飲んでいた。

セナはお酒が飲むペースが遅いからいつも通り。

ラビットはあんまり飲んでいない。

けどやっぱり・・・

 

「お酒最高〜!!!」

 

「やっぱり始まったな。」

 

「始まった・・・酒乱モードのセラ。」

 

「もうダメおしまいです。」

 

セラはお酒が大好きなのである。

だがしかし、弱い癖にペースが速く、最後は寝ている。

そして目をつけたものに執拗に絡むのである。

前回はリーエだった。

 

席を立ち上がり向かい側に座っていたラビットのところまで千鳥足で歩くとラビットに左手側から抱きつくように倒れこんだ。

 

「んふふふ〜! らびっとぉお! あんまりのんれないれひょ、のみなひゃあ〜い!」

 

ラビットが酒が注がれたグラスを手に持ち少しだけ飲んでグラスを口から離した。

 

「れぇんれぇんろんれらいららい!! もぉ〜!」

 

全然呂律が廻っていないほどすぐに回ってしまっている。

ちなみに今のは「全然飲んでないじゃない!! もぉ〜ッ!」と言ったようだ。

 

「うわ、かつて無いほど酔ってるぞ!」

 

「なに言ってるか、全然わかりません!」

 

フィリスもリーエも酔いが回って来たのか声が大きく周りの注目を浴びている。

 

普段騒がしい酒場だが今日はもっと騒がしかった。

 

「こ〜らてのむのよ〜!」

 

ラビットからグラスを取り上げグイッと口をつけ飲んでるように見えるが、グラスを取った時とのむ時にむせて口からこぼれている。

ほとんど飲めてない。

 

「けほっ、けほっ・・・こほひりゃった・・・ふえぇ・・・! おひゃけにきらられた〜!! ふあああああああああああん!!!」

 

突然セラが大きな声で泣き始めるとフィリスとリーエが大笑いし始める。

セナは申し訳なさそうな表情をしていた。

 

「すまない・・・いつもより酷いんだ、これは。」

 

いつもより酷い惨状に周りのドン引き具合が目に見えてわかる。

 

これはもう帰って休んだほうがいいかもしれない。

セナがそう思いセラをどうするか考えているとその横ではラビットが大泣きするセラをあやしていた。

 

「フィリス、リーエ、もうお開きにして帰るぞ。」

 

「いや、まだ私はいけるぞ!」

 

「酔ってまシェーン! 酔ってまシェええええええエン!!」

 

セナが2人の酔っぱらい共を連れて行く脇でセラはすぅすぅと寝息を立てて寝ていた。

 

「はぁ・・・すまないラビット、この酔っ払いどもは私が引っ張る。 そこの酒乱を頼む。」

 

ラビットが頷くとゆっくりとセラを背負った。

 

ここ日の宴会はここで終わった。

 

 

「・・・ラビット、すまないがセラと酔っ払いどもを家まで送る。 家までは私が案内する。」

 

2人の酔っ払いを引っ張りながらセナとセラを背負うラビットが王都へと向かった。

 

王都の検問を通りそのまま真っ直ぐセナたちはセラの家へと向かう。

 

セラの自宅は王都ギルドで用意された自宅がある。

セナも就任されたばかりであり、まだ家は用意されていなかった。

それまではセラの家に泊まっていた。

 

賑わう王都を通りながらセラの家に到着し5人は家に着いた。

 

セラを寝室のベッドに寝かせ、リビングのソファにフィリスとリーエを寝かし毛布を掛けた。

 

しかしラビットはローブを掴まれ身動きが取れないでいた。

 

「・・・ラビット。」

 

セナがラビットに声をかけた。

その声は真剣そのものだった。

 

「酒場でも言ったがビッグゴブリンを一人で、それも数秒で倒すなど、常識外れも良いところだ。」

 

歩きながら話す。

しかし隣を歩く男は何も言わない。

 

「改めて聞く。 お前は何者だ?」

 

沈黙、静寂

それが2人を取り巻いていた。

窓の外の夜の王都は賑わう。

しかしその騒がしさが嘘のように、セナには感じなかった。

 

ここ男が敵になれば間違いなく私は死ぬ。

私だけじゃない、セラやフィリス、リーエも秒で全員殺されてしまうだろう。

だからこそこの男の中を知る必要があった。

 

しかし答えない。

いつものように、この男は沈黙を貫き通していた。

 

「答えないか・・・。 『答えれない』『答えることができない』、か?」

 

「・・・」

 

「だんまり、か。 ラビット、こう見えても私は興味のある人間とは良い関係になりたいんだ。 だからセラを助けてくれたお前とは仲良くしたいんだ。」

 

そう言うと隣に座り眠るセラにイタズラするように漆のように黒く長い髪をいじる。

 

「昔からの付き合いで、本当に変わらないんだ。 無茶はする、お人好しですぐ損をする。」

 

懐かしむように話すが次第に辛そうな顔をする。

 

「見てわかる通りセラの髪は黒い。 黒の髪は邪の象徴、髪が黒いだけで差別を受けるなど馬鹿げている。 セラは魔法が使えたからまだマシだが、それでも酷い扱いをされていたんだ。」

 

次第にしんみりとした雰囲気になってゆく。

セナは幼少の頃からセラとの付き合いがあり、今に至る。

彼女の受けた辛さをセナはよく理解している。

 

「きっとセラは心から気を許せる人間にまだ出会っていないんだ。 最近ではお前の話ばかりだがな。」

 

セナはセラの頬をくすぐる様にいじると少し唸る。

 

「セラが私以外の人間とあんなに楽しそうにするのは初めて見たんだ。 だから、これからも仲良くしてやってくれ。」

 

そう言うとセナは立ち上がった。

 

「さて、私はもう寝る。 ラビットも今日は泊まっていけ。 」

 

最後におやすみと言うと部屋から出て行った。

 

「・・・」

 

ローブを掴む手を、ただ見つめていた。



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宴会の翌日

近状が忙しくてなかなか進まない。orz


心地いい。

 

誰かが側にいる。

 

その人はただそこにいる。

 

誰なのかしら。

 

心が安らぐ・・・ずっとこうしていたい。

 

 

ゆっくり目を開けると見覚えのある天井があった。

 

そこには誰かがいた。

規則正しく呼吸しているのかすぅすぅと息遣いが聞こえる。

 

ローブを身に纏う人物、それは一人思い浮かぶ。

 

ゆっくり手を顔に伸ばすとピクリと体が強張ったように動くと首がこちらを向いた。

 

「あっ・・・ごめんなさい、起こしちゃった?」

 

ターバンで顔を隠した男。ラビットがそこにいた。

 

そういえば昨日は・・・あああああ〜!! やっちゃった・・・!

今ここで声をあげれば間違いなく変な女として見られるわ・・・!

平常心を保ち会話を切り出す。

 

「昨日は飲みすぎたわ・・・もしかしてラビットがここまで?」

 

何も言わずに頷くと大体全貌が見えた。

 

きっとセナに案内をしてもらって送ってくれたようね。

 

すんすんと自分の匂いを嗅ぐ・・・やっぱりお酒くさい・・・。

 

「・・・ごめんなさいお酒臭くて。 あとで水浴びに行ってくるわ。」

 

さすがに私でもお酒くさいのが気にならないほど女は捨ててはない。

朝ごはんを食べたらすぐに行こうと決意した。

 

 

リビングに行くとセナが朝食を作ってくれていた。

フィリスとリーエは飲みすぎたのか辛そうだった。

準備を整え出発をする。

目指すは外壁の外にある場所、洞窟の奥に滝がある。

 

「なぁセラ、わざわざ外れにある滝まで行く必要があるのか?」

 

セナは合理的主義者で無駄なことは嫌いな人間だ。

 

王都には浴場があり少しのお金を払って行けば温かいお湯につかれる。

 

「私の性格知ってるでしょ? 私はあそこ嫌いなの。」

 

私はあんまり人が多い場所は苦手で、一人で行くには気がすすまない。

一人で静かに綺麗な水を浴びたい気分だからというものもあるけどね。

 

それに正直王都はあまり落ち着かない。

デールやその取り巻きがウロチョロしてるしね。

 

「ふーむ・・・ラビット?」

 

セナの視線の先にはラビットが立っていた。

 

 

あれから少しの時が過ぎた。

と言っても大した時間じゃないけどね。

ラビットについてくるように指示されてついて行くと、外壁の近くにある森に入って行った。

ラビットが立ち止まり茂みを掴んだ。

 

ラビットが掴んだのは茂みではない。

網と葉っぱなどの自然を編み込んだもの、偽装網を外すとそこには改造が施されたハンヴィーがあった。

 

通常のハンヴィーのボンネット部に有刺鉄線が装備され、ところどころが鉄板の装甲が追加され窓の類は遮光が施されている。

 

そして大きな特徴である射手席にはブローニングM2重機関銃が装備され。さらに荷台部にはMK19自動擲弾銃が装備されていた。

 

「すごいわ・・・鉄かしら・・・? 荷車? 馬で引けるの?」

 

興味津々に見慣れぬハンヴィーの外装を見ているとラビットが助手席の扉を開き中に乗るよう促す。

中に乗ると今度は内装を見た。

 

そのほとんどは弾薬がほとんどであり、兵員輸送車と言うよりは即興で作った装甲車だった。

 

セラがシートに座るとラビットが扉を閉め運転席に乗るとエンジンをかけ車体が動き始める。

 

エンジンがしどうすると

 

「ラビット、もしかしてこれは生きてるの!?」

 

驚く彼女をさらに驚かせるように速度を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「9−0、9-4だ。 ハンヴィーを発見した。 オーバー。」

 

茂みに隠れ周りの景色と一致している服装をしスポッタースコープ、Bushnell Excursion 20-60x80を使いハンヴィー発見の旨を無線機を使い報告する。

 

『ハンヴィーだと? それは確かか?』

 

「9-0。あぁ、確かだ。 対処は?」

 

『9-4。兵員及び武装を確認できるか? 』

 

ここから約3キロ離れた場所でも、このスコープの性能は非常に優秀で細部を確認できた。

 

「乗員は2名。 女が1人確認できるがあと1人はわからない、2人は現地人のように見える。 武装はMGに自動擲弾銃だ。」

 

『9-4。 手は出すな。可能な限り監視を続行せよ。』

 

「了解、アウト。」

 

通信を切ると、隣で伏せて.338ウィンチェスターマグナム弾を装填しNight Force製NXSスコープを搭載したMK13を構えている相方が口を開く。

 

「寄せ集めにしては厄介な兵装だな。」

 

「あぁ・・・リモートMGにグレネードガンだと? マジで気にいらねぇ。」

 

「今の武装じゃ無理だな。 こっちの最高火力はフラグぐらいしか無いしな。」

 

「近いたら死ぬだけだ。 狙撃で片付けた方がいいだろ。」

 

「兵装で通常より遅いとはいえあれは難しい。 それにまだ敵かもわからない。」

 

「・・・なぁ『スタンプ』。」

 

「あぁ。」

 

「ぶっちゃけ、あれスゲー見覚えあるんだが。」

 

「奇遇だな『ブリーダー』。 俺もだ。」

 

「・・・とりあえず、乗員だけでも確認するぞ。」

 

「了解。」

 

2人の男は装備を纏め移動を始めた。



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連れ去られた魔法使い

なかなか進まない・・・


「・・・つまりこれは生きているわけじゃなくて、魔道具の一種なのかしら?」

 

冷静さを取り戻し、案内を受け滝まで移動している最中にセラはハンヴィーを推察していたがセラの解釈とは当たらずも遠からずというものの仕方がないだろう。

窓の外の景色を見ると案内した通り洞窟の入り口についたことに気づいた。

 

「・・・今日のお昼に着く予定だったのにもう着いちゃった。」

 

彼女の立てていた計画に大きな時間の余裕ができてしまったようだ。

 

 

 

 

ハンヴィー内で準備を終わらせると扉から出て行く。

持っていくものといえば着替えぐらいだが。

ラビットはここで待機して待ってくれるようだ。今は車内で箱のようなもの、車載された無線機を使い無線を傍受している。

もっとも、受信すらしないが。

 

「じゃあ行ってくるわ。 ラビットも来ない?」

 

からかうように車内で無線機を弄るラビットに言うと窓から黒の革でできているが甲の部分だけカーボン素材で覆われた手袋、OAKLEY pilot globes に覆われた手がハンヴィーの扉の窓から出し中指を突き立てた。

 

どう言う意味かわからないがセラとしては行かないということを察し一人で洞窟へ入った。

 

洞窟に入ると蒸発しきれない水分がジメジメとした空気になり肌を通して伝わる。

一本道の洞窟をしばらく歩くと大きく、広く、澄んだ水が流れてくる滝と湖が広がっていた。

 

いつも使っている身軽なローブ、黒の胸当てと大きくスリットの入ったブルーのスカートを脱ぐと身につけているものを全て外す。

ストッキング、ガーターベルトをなどのものを全て脱ぎ終えた頃には彼女は一切の物を見に纏わぬ姿になった。

ゆっくりと湖に浸かると体の汚れや気になっていたアルコールの匂いがなくなってゆく。

 

「んんん〜! 気持ちいいわぁ〜!!」

 

歓喜の声をあげ湖の水の冷たさを見に感じた。

水浴びをしていると視界の陰に何かが動い他のが見えた。

 

「・・・誰?」

 

ラビット? いえ、ラビットなら私が気付けないように動く。

もしかしたら蛮族か盗賊の類かもしれない。

急いで湖から上がりローブだけに身に纏う。

 

セナほど正確じゃないけど、気配を感知する魔法を使う。

・・・おかしい、全く反応がない。

人はいなくても小動物などにも反応する。

そして何よりラビットにすら反応しない。

 

そして後ろから迫る何者かに気づかず意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

ラビットは帰ってこないセラの様子を見に来るが湖の周辺には誰もいなかった。

しかし視界の端になにかがあった。

近寄って確認するとそれはセラが着ていた服だった。

 

「・・・」



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否定

すいません! 仕事で完全に更新が止まってしまった。
多分つぎは12月ぐらい


「・・・っ・・・?」

 

まだ朧げな意識の中誰かに運ばれていた。

 

「良い女だよなぁ・・・ほんと」

 

「手ェ出してェのはおめぇだけじゃねえよ」

 

「わーってらンなモン」

 

どうやら何処かへ担がれて運ばれる最中でいま手足を縛られていた。

 

「こんな上玉の女達とヤれねぇなんてついてねぇなぁ・・・」

 

「生殺しもイイとこだぜ」

 

「貴族も汚ねぇよなぁ。 まっ俺としちゃ金がもらえりゃそれでいいが」

 

「こいつは黒髪だし、ヤってもばれねーんじゃねーの?」

 

「とうの昔に使用済みってか?」

 

「「「はははは!!」」」

 

・・・こんな奴らに捕まるなんて私も大概マヌケね。

幸いあの時みたいに魔法が使えないわけでもなく、魔封じもされてない。

うまくいけば逃げれるわね。

 

「んで? この砦で待ってりゃくるんだっけか?」

 

「あぁ、それまでちょっと堪能でもするか?」

 

「いいねぇ。」

 

ようやく立ち止まり私を下ろした。

ふと隣に私と同じように捕まった女性がいた。

身なりとしては・・・貴族みたいね。

でも、一緒に出なきゃ・・・!

 

「んじゃあ、ご開帳〜!」

 

ゲラゲラと笑いながら私の着ているローブを剥ぐ。

そういえば私・・・最悪、慌てて着たからローブしか着てなかった。こんな連中に裸を見られるなんて、最悪。

 

「ほぉ〜? やっぱいいカラダしてるなぁ?」

 

「触るくらいならまぁいいだろ!」

 

男が私の胸に手を伸ばしてくるのがわかる。

でもこんな連中には触らせたりしないわ。

 

私が拘束の魔法をかけると男は動けなくなりその隙をついて手と足の縄を炎の魔法で焼いた。

焼いた時にやけどをしてしまったが軽傷で済んだ。

 

他の2人の男が驚いたがすぐに腰に下げた剣を抜くが遅い。同じように拘束魔法をかける。

 

ローブを着直すがやはり変な感じ、まるで変態みたい・・・

適当な一人を選んで持っていた短刀を奪って首に突きつけた。

 

「貴方達は誰? 何が目的なの?」

 

「て、てめぇ魔法使いか! この忌子め!」

 

「・・・質問に答えてくれないかしら?」

 

少し刃を首に食い込ませると男の首から血が流れ地面に滴る。

 

忌子と呼ばれ続けたセラにとってはその扱いは気分がいいものではない。

先ほどまではなかった殺意現れ始める

 

「ま、まて! わかった!」

 

そういうと男は話し始める。

この男達は傭兵パーティでとある貴族から金をもらい若い女を攫い、連れてくることだという。

 

「その貴族は誰?」

 

「・・・いえねぇ」

 

先ほどまでは潔く話していたがこの質問には口を固く閉ざした

 

「それより、いいのかよ? こんなところでのんびりしててよ?」

 

「そろそろ俺らの仲間が来るぜ」

 

先ほどまで黙っていた2人が口を開く。

窓の外を見ると集団で何人か来ているのが見えた。

しまった・・・!時間をかけすぎたわ

 

急いでまだ寝ているのか起きない女性に呼びかける。

 

「ねぇ、起きてちょうだい! お願いよ!」

 

少し唸るがなかなか起きない。

ようやく目を覚まし目を開けた。

 

「う・・・んぅ・・・ここは?」

 

「よかった・・・! 大丈夫? すぐにここから・・・」

 

「・・・黒髪!? あなた、まさか」

 

そういうと女性は汚いものを見るような目で私を見ると私から逃げるように後ずさりをした。

 

「触らないでください! 汚らわしい! これは貴女の仕業ですね!?」

 

「ちがうわ! ねぇ、それよりも早くここから逃げないと!」

 

「黙りなさい! 忌子の分際で!」

 

だめだ、取り合ってくれない。

完全に私のことを警戒してる。

 

すると拘束していたはずの男が私たちを力で抑えつける。

 

「オラっ! 大人しくしてろ!」

 

「いや! 放しなさい!」

 

そうしてるうちに沢山の足音が聞こえる。

その足音はだんだんと近くなりついに来てしまった。

大勢の傭兵、それが来てしまった。

 

「おっと、こりゃめんどクセェな」

 

「な、なんですか貴方達は!」

 

「どうでもいいだろうがよ、んなもん」

 

威嚇で炎の魔法を撃とうとしたが力が入らない。

まさか・・・!

 

「魔法使いか、珍しい。 だが、この魔封じの結晶がありゃただのひ弱な女だな。」

 

どうすればいいの? こうなってしまったら絶望的、もう打つ手がない。

 

「あ、兄貴!」

 

「ヘマしやがって。 まぁいい、渡すのは黒髪じゃねぇ方で。黒髪はお楽しみ用とするか」

 

兄貴と呼ばれた男とその後ろにいる数十人が舐め回すように私を見る。

気持ち悪い、本当に気持ち悪い。

男はみんなそう、私をそんな目でしか見ない。人間は私を汚物のようにしか見ない。

 

なんで? どうしてよ? どうして私を受け入れてくれないの?

 

「さぁ〜て、大人しくしてるなら美味しくいただくと・・・」

 

その言葉を遮るように轟音が響く、何事かと思い入ってきた入口側の廊下から外を見るとそこには異質ななにかがそこにいた。

四角い箱、鉄の塊がそこにいた。

 

その鉄の塊は乾いた音を撒き散らしこちらを攻撃して来る。その攻撃は頑丈な岩でできた壁をたやすく崩し数人が血を吹き出し、体の一部がなくなる者もいた。

魔道具なのだろうか?

 

「あ、兄貴!」

 

「慌てんじゃねぇ! あれ1体だけなら大したことはねぇだろ! 迎え撃つぞ!」

 

数十人の男達はそれを迎え撃つべく数人と兄貴と呼ばれた男を残し下へと降りていった。

 

この後、無残に殺されることも知らずに。



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襲撃者

あげれるときに、あげないとね!


ローブの男(死神)ラビットは追跡をしていた。

大人数の足跡、切り刻まれた植物、ひっくり返った石。

それらを辿りある砦にたどり着いた。

 

一度ハンヴィーまで戻りハンヴィーのエンジンをかけ先ほどの砦に近づく。

助手席側にに無理やり付けたリモートコントロールのカメラ、ブローニングM2に付けられたカメラ越しに外を見ると数十人の人数が砦でに向かうのを見つけた。

セラを連れ去った仲間なのだろう、砦に入っていった男達を観察していた

 

 

 

 

 

「はあっ、はあぁっ、なんなんだありゃあ・・・」

 

その場を逃げ出し、砦内で隠れていた男は息を切らしながら先ほどのことを思い出していた。

 

砦から飛び出した5人は一直線にハンヴィーへと突撃した。

近くで見れば大型モンスターなどとは比較にもならない程度だった。

相手にもならないと思ったのか剣を抜き突撃をした。

 

しかし、彼らは次の瞬間には死んでいた。

砦の入り口から見ていた人間からすれば異常だった。

轟音を響かせると仲間たちが血と肉片を撒き散らし死んでいった。

あまりにもスプラッタな光景を目の当たりにして吐き出す者もいた。

 

「クソ! な、なんだありゃ!?」

 

「あっ、あいつ頭が・・・」

 

「お゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」

 

5人が死んでも攻撃はやめてはくれない。

牽制するように撃ち続けてくる、あれに当たれば死は免れない。

顔を少しだけ出して見ると段々と近づいて来る。

もうだめだ、そう思ったその時突然攻撃が止まった。

 

「攻撃してもねぇ・・・?」

 

「チャンスじゃねーか!?」

 

何事かと思い覗くと攻撃は止まりただノロノロ近づいて来ているだけだった。

好機と捉え突撃をした。

ボウガンによる援護を受け1人2人と突撃をする。

 

ボウガンの矢は装甲に弾かれ刺さらない。そして突如スピードを上げ近づいて来た。

2人の男は突然のことに驚きそのままハンヴィーに轢かれてしまう。

1人は下敷きになり、もう1人はボンネット部に付けられた有刺鉄線で磔のようにされそのまま入口へと突っ込んで来た。

入り口に立っていたボウガンの男がハンヴィーで吹き飛ばされると中からローブとターバンを身につけた男が出てきた。

 

その男の手には武器なのか見慣れない物を持っていた。

それがくぐもった音を立てると男達は死んでいった。

その光景を見て多くの男達はその場を逃げ出した。

あのローブの男はとんでもない男だ。

きっと見つかれば殺される。

先程影から不意をついた仲間がなにもできず殺されたのを見たからだ。

きっとここもすぐ見つかる。離れようと思ったその時だ。

 

そこにはローブの男(死神)がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数十分。

送り出した連中が帰ってこない。

突破されたのか下が騒がしかったが今じゃなにも聞こえない。

ここも離れるべきか判断を決めかねていた。

限界を迎えその場を動こうとした時だ。

 

「ひぃあああぁあああぶべっっ」

 

怯える声と走る音が聞こえた。その正体は急いでいるのか仲間だった。

しかしその彼も部屋に入る直前に突如倒れて動かなくなる。

 

そしてその仲間を殺したであろうローブの人物、ラビットが現れた。

 

「ラビット・・・! 来てくれたのね!」

 

希望がやってきた。

ラビットは私を見捨てずに助けに来てくれた。

でもどうしてここがわかったのかしら?

 

「て、てめぇ!」

 

「おっと、動くな! この女が大事なんだろ?」

 

現れたラビットとここにいる3人の男たちが対峙する。

男2人はセラともう1人の女性を盾にしていた。

 

「お前の女か? 安心しとけ。 俺が可愛がってやるよ」

 

私のローブをナイフで切り裂いて剥ぐと私を裸にして胸を弄る。

最悪、嫌、嫌嫌嫌。

かつてない嫌悪感が体に走る。

助けて、助けて・・・

 

ふと、ラビットと目が合った。

ラビットは私を盾にしているリーダー格の男にあの魔道具を向けて固まっている。

いえ、もしかしてあれは狙って・・・?

 

私は刃を避けるように、この男の頭から自分の頭をなるべく離す。

彼を信じて。

 

そして1発の銃声が響くとリーダー格の男は脳を銃弾で抉られ、即死した。



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過ぎ去った嵐

即死した男は脳を貫かれ後ろ向きに倒れた。

そして間髪入れずただたっていた男も女を盾にしていた者も倒した。

その速さは正確で神業とも取れる繊細かつ大胆な行動だった。

 

私は未だ体に手を掛けている男の手を振り払った。

そういえば私裸で・・・!

慌てて大事なところを隠すと何かが被せられた。

ラビットが近づきローブを脱ぎ私に投げ渡してくれた。

それはローブ、当然ラビットのだろう。ありがたく着させてもらう。

 

ローブを脱いだラビットの姿に、唖然とした。

上下が明るく茶色が基調で同じ柄のような服を着込み、皮鎧にしては素材が皮ではなさそうな、面積が小さく物入れのようなものが多く着いている。

そしてあの黒く、ゴツゴツした杖のようなものが紐でぶら下げられていた。

 

「ラビット・・・?」

 

ぼんやりと思い出す、この姿。初めて助けてもらったあの時の格好に近かった。

差し出された手を取り立とうとするけど体に力が入らない。

それを察したのかラビットはMk18を片手にセラを担ぎあげた。

 

「・・・私はタイアニア家長女のユミール・フォン・タイアニアと言います。 助けていただきありがとうございます。」

 

どうやら貴族の娘だったようだ。

埃を払いながら立ち上がるとラビットに対しお礼を言う。

 

「それにしても先ほどの攻撃、見事でした。 それはそうと、その忌子も助けるのですか?」

 

どうやら彼女は私を助けることに反対なのかしらね。

 

ラビットはちらりとユミールを見るがどうでもいいのか私を担いでそのまま移動を始めた。

 

「あ! お待ちになって!」

 

その後をユミールも付いて来た。

 

 

道中を警戒しながら進みハンヴィーまでたどり着いた。

もうほとんど敵はいないのか襲われなかった。

助手席にセラを乗せとりあえずといった形で後部座席にもユミールを乗せる。

 

「これは一体・・・!?」

 

「細かい説明はあとよ、早く乗って!」

 

バック走行で来た道に戻ると炎の弾がハンヴィーに被弾したが大した威力ではなかったのか被害は特になかった。

生き残り達が火の玉を放つ魔術師と弓矢でこちらを撃ってきていた。

 

弓矢はともかく魔法が装甲やエンジンに影響しないとは思えない。

M2はリモートコントロールが故障してしまい今は使えず悠長に直している場合ではない。

一度車を止め矢に当たらぬように車両後部についているMk19を使い砦を攻撃し始める。

 

40mm×53のグレネード弾が容赦なく敵を襲う。

破片効果と爆風で死傷させ、すぐにその場を離れた。

 

 

「なんだったのだ、あれは・・・」

 

どうにか生き残った魔術師が去ってゆくハンヴィーを呆然と眺めていた。

雇われの身でいつも彼ら傭兵たちと行動してとある貴族に言われた通り仕事をしていた。

 

もっともその仕事は合法なものではないが金払いもよく自身もあまり立場のないしがない魔術師だったためどうでもよかった。

今回生き残ったのは一重に運だろう。

もしラビットが砦内を捜索や迫撃をすればおそらく彼は生き残ってはいなかったからだ。

生き残っている数名を集めてその場を逃げるように去った。

 

ハンヴィーを走らせ元の位置に着くとラビットが降り、助手席と後部座席の扉を開けると2人は降りた。

ハンヴィーに偽装をし背景に偽装する。

 

どうやらここからは歩くつもりらしい。

 

「なんなのですか・・・この乗り物は」

 

ブツブツとユミールが言うがどこ吹く風とラビットは聞いてない。

私はただ先を歩くラビットについていくだけだった。

車内で服を受け取りそれに着替えるとローブは返した。

さっきの服は一体なんだったのかしら・・・

街に入る前に衛兵に止められるとユミールは衛兵たちが顔を知っていたのか保護された。

 

私とラビットは今は私の家へと向かう最中だ。

やっぱり彼は何も喋らない、ただ黙って隣を歩いていている

私の家に着いた

今はもう日も暮れ夕日が景色を照らす。

ラビットはもう行ってしまうわ、きっと私の知らないどこかへ

 

気がつけば私はラビットのローブを掴んで止めていた。

 

「ねぇ、ラビット。 今日は泊まって行って・・・?」



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余裕あるお姉さんとはいったい

すいません、1月ギッチギチ過ぎて辛かった。
コレからも亀更新でいきます・・・


返さずに呼び止め家にあげたものの正直どうすればいいかわからず奥まで案内するがラビットは立ったままだ

取り敢えず座らせると沈黙が続く

セナは仕事でこの時間帯はまだ仕事中で家にはいない

 

どうすればいいのかわからなかった

セナ以外の人間とは深く関わってこなかったし、異性なんて以ての外

話題を必死に探して話そうとするが出てこない。

あの動く箱の時は外の景色に見とれた所為で話せなかったし、今になってセナがいないから本当に困る

ギルドの時は意識してなかった所為で今になって恥ずかしさと緊張がこみ上げる

 

「紅茶を用意するわね」

 

取り敢えず平静を装いその場を離れる

手が震えて止まらない

カップを用意しようとするが手がおぼつかない

突如肩に誰かが優しく肩に手を置く

そこにはラビットがいた

 

「・・・ラビット、待っているよう言ったじゃない」

 

構わずセラをリビングに送り出しラビットが用意し始める

物を探していたのか少し掛かったが紅茶が入ったカップをソーサラーに乗せて持ってきた

 

「ごめなさい、私がしなきゃいけないなのに・・・」

 

「気にするな」と言うように首をゆっくり横に振った

しばらくボーッとしながら淹れてもらった紅茶を飲む

味なんか、よくわからなかった

 

ラビットが鞄から何かを取り出した

それはチョコバーだった

非常携行食に付属しているチョコバーがあるが彼は市販されている通常のものを渡した

 

セラからすれば変わった何かを渡されたため困惑している。無理もない、この世界にはコンビニやスーパーマーケットどころかチョコレートすら存在しない

もう一つ取り出して食べ始めるとおずおずとセラも食べる

 

すると彼女の味覚が一気に刺激される

少しビターな味がするチョコバーはセラに未知の世界を開いた。

 

「おいしい・・・! ラビット、これはなに!?」

 

先ほどまでどこか沈んだ表情をしていたがそんなものはどこかへと消えまるで子供のようにはしゃぎ、チョコバーについて問い詰めた。

 

 

ある程度時間も進み外は暗くなっていた

ラビットがつけているデジタル式の腕時計はちょうど19時を過ぎた頃だった

電波時計だがこの世界にはGPSなどもないため正確な時間かは分からなかった。

 

「はぁ〜、いいわぁ。 これ癖になっちゃいそう・・・」

 

初めて食べるチョコバーの虜になってしまったのか恍惚とした表情でラビットにもらった2本目のチョコバーを味わうように食べる。

それを流し込むように紅茶を飲むと満たされたような気分になった

チョコバーを食べ終えると名残惜しそうに紅茶を飲み干した

 

「・・・そういえばラビット、その服窮屈じゃないの?」

 

傭兵たちから助けてもらったことを思い出す

軽装であってもやはり邪魔なものは邪魔だ、外せるなら外した方がいいと考えラビットに言うがラビットは首を横に振る

た。

 

「・・・ねぇ、ラビット。 さっきのことだけど・・・あなたは一体何者? あの格好は一体・・・?」

 

そういうと彼は自分の口に人差し指を立て首を横に振った

どうやら知って欲しくないことのようね・・・

 

「どうしても、だめ?」

 

再び首を横に振る

 

「そう・・・でも休む時に休まないと疲れが取れないわ。 気が済んだら脱いじゃいなさい?」

 

そう微笑むと「わかった」と言うように頷いた

 

「そういえば、お礼を言ってなかったわね。 ありがとう、助けてけれて。 私ね、もうダメだと思ってたの・・・だから・・・」

 

声が萎み始めたとき肩に手を乗せられた

「大丈夫だ」と言うような行動になぜか安心できた

 

「ありがとう、あなたに助けられてばっかりね」

 

静かで、温かい、そんな空間を甘えるように過ごした

 

そういえば、セナが帰ってこない・・・そういえば今日は泊まりでクエストって言ってたかしら・・・と言うことは・・・

 

セラは今現在の状況と引き止める時に言った言葉を本当の意味で理解した

 

いい歳の男女が一つ屋根の下にいればあんなことの一つや二つ起こりかねない。

そんな乙女の思考(妄想)を始め顔を赤く染め上げる

 

ラビットもきっと呼び名とは裏腹に肉食獣のように襲うに違いない

 

「ご、ごめんなさい、せ、席を外すわね!」

 

そんな妄想が肥大化しすぎ耐えられなくなったセラは上ずった声で所々ぶつけて自室に戻った

 

「・・・」

 

 

「・・・はぁ〜〜〜! どうしよどうしよどうしよう!? まさか本当に、本当にアブナイんじゃないかしら!?」

 

ベッドの布団に包まりバタバタ暴れ始め妄想がさらに加速していく

 

『セラ、盗賊に穢されたんだろう? 俺が清めてやるよ・・・!』

 

※超絶美化されたラビットくんですがそんなことは言いません

 

「ああああああああ!! こわいいいいいいいいいい!! でも、ラビットなら・・・ダメダメダメ〜〜〜!!!」

 

・・・30分後・・・

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

・・・その頃ラビットはMk18とMk25を整備していた

 

 

 



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厄介な依頼

失踪してないよ本当だよ


「・・・ん・・・・?」

 

窓の外から陽の光が差し込む

その光が彼女の意識を覚醒させる

寝ぼけつつも起き上がり顔を洗うため井戸から汲んでいた水の元へと向かう

顔を洗い昨日のことを思い出す

 

そういえばラビットが来ていた

 

「・・・そうだわ・・・! ラビットが・・・あら?」

 

私、何もされてない?

服も昨日着ていた物で別にあんなことやそんなことをしたようには思えなかった

 

部屋中を見て回るがラビットがいない

ふとリビングのテーブルを見るとチョコバーが1本放置されていた。忘れ物かしら?

もうすでに出発してしまったようね・・・

 

チョコバーを手に取って見ると何か文字が書かれていた

『See You Again』

なんて書いてあるかはわからない

きっとラビットの故郷の言葉ね

でも・・・

 

「ちょっと腑に落ちないわ・・・」

 

複雑な心境だった

 

 

あれから1週間程だろうか?

本当に何処かへ消えてしまったのだろうか

考え事をしながら彼を探すように街を歩く

するとフィリスとリーエがいた

 

「あ、セラさん! お疲れ様です!」

 

「む、セラか。 彼氏は連れてないのか?」

 

「彼氏って、そんなのいないわ。調子はどう?」

 

「順調さ、それより折り入って話がある」

 

2人は重要人物護送のクエストを受けたらしいのだが頭数がもう少し欲しいらしくフィリスとリーエは私とセナを加えたいらしい

 

「できれば、ラビットも加えて行きたいんだ。 彼の実力を見たいしな」

 

「残念だけどラビットはどこかへ行っちゃたの。 セナには私から言っておくわ」

 

「了解した。 リーエと同じようにボウガンの遠距離武器と聞いていてな。 まぁ仕方ないか」

 

「う〜、残念です。見て見たかったのに・・・」

 

2人は少し残念そうだった

コレばかりは仕方ないわ、当人がいなければ話にすらならないから

ここで横槍を入れるようにデールに会ってしまった。しかも取り巻きを連れている。

 

「お困りかな、お嬢さん方」

 

気障な台詞と声で私自身顔が強張った。フィリスもリーエも嫌悪が剥き出しだった

 

取り巻きたちもジロジロと見てくる。舐めるように、品定めされてるようだった

 

「これはこれはチャーチル様。 ご機嫌麗しゅう。 ではさようなら」

 

帰ろうとする私たちを取り巻きたちが遮るように邪魔する。

 

「邪魔よ。 どきなさい」

 

「頭数が足りないんだろう? 俺が助けてやろう」

 

「そんな事はセラもリーエも私も求めていない。 さっさとどけ」

 

「そうです! ど、どいてください!」

 

フィリスとリーエの言葉の取り巻きたちが手を出しかけるがデールが止める

 

「ではこうしよう、俺たちは君達と同じクエストを受けるだけ、と言うことにしよう」

 

「何を言ってるのかしら? 意味がわからないわ」

 

「なに、そのままだよ。 じゃ、クエスト当日に。俺はギルド長に用があるんでね、失礼する」

 

そう言うと取り巻きを連れて去ってしまう

おそらく権力かコネか何かで私たちをクエストから外せないようにするつもりだろう

そうなってしまったら手も足も出ない

 

「クズ共め」

 

「わたし、あんな奴らに良いようにされるくらいなら自殺します」

 

「奇遇ね、みんな同じ意見よ」

 

もちろんセナもデールが嫌いだ

理由は不誠実で不真面目、無能と酷評だった

 

「それで、どうするんだ? クエストは投げれなくなったぞ?」

 

「仮に行かなかったらまた権力が振りかざされるわね」

 

「違約金ならいいんですけどね・・・」

 

3人の空気が暗くなる

 

「ほかの男性冒険者はどうでしょうか?」

 

「無理だ。 ほとんどデールの手下みたいなものだろう」

 

「城下町の冒険者は・・・ダメね、レベル差があるわ」

 

今回のクエストは国のものではなく王都公共クエストでどのランクでも参加できるがもちろん実力が伴わなければあっけなく死んでしまう

城下町の人間がこっちで受ける事はほとんどない。命知らずか無知な人間だけだろう

 

「ん? あれって・・・セナさん!?」

 

「なに? 本当だ、セナ・・・に、あれは、ラビットか?」

 

2人の言葉にそっちを向くと楽しそうに喋るセナがラビットと歩いていた

 

「セナさーん!」

 

リーエが呼ぶと2人は気づいてこっちにきた、やっぱりラビットだった

 

「どうした、3人も揃って。 井戸端会議か?」

 

「そんなんじゃないですよ! それより聞いてくださいよ!」

 

リーエはセナに依頼のことを話すと嫌悪感が表情になった顔で話を聞いていた

 

「・・・ラビット?」

 

ターバンで隠された顔がこちらを向く

 

「セナと何してたの?」

 

不機嫌そうな声で、まるで子供が拗ねたような声で聞くと話が終わったのかセナが答えた

 

「あぁ、ついさっき偶然会ってな。 一緒に食事でもと思ってたんだ」

 

「ふ〜ん、そう」

 

プイッとそっぽを向くセラはとても子供っぽかった

 

「なんだなんだセラ、ジェラシーか?」

 

「セラさんにも春が来ましたねぇ」

 

「ほぅ? ・・・やはりか」

 

「ちょっと、 変なこと言わない。それより依頼だけど・・・」

 

全員の視線がラビットに向く

 

「彼がいれば怖くないわね?」

 

 

 

〜当日〜

5人は集まって集合場所に行くが中々デールたちが来ない

鐘が鳴り時間は既に過ぎている。ラビットの時計で言う30分ほどオーバーしていた。

原則、依頼主をまたせないと言う暗黙のルールがあるがデールは見事にルーズな対応だった

 

「私たちだけで行く?」

 

「無茶だが。ラビットがいる」

 

「奴らと行くくらいなら私は一人で行く」

 

「死んじゃいますけどまだマシです」

 

そんな話をしているとぞろぞろと引き連れてデールがきた

体操ご立派な甲冑をつけてガチャガチャと音を鳴らしている

 

「またせたな・・・そいつは誰だ?」

 

「関係ないでしょ? 早く依頼主のところに行って出発準備が出来たのを報告してきてくれるかしら? 貴方達のせいで時間が押してるから早く」

 

捲くし立てるように言うとデールはラビットを睨んで依頼主のところまで行った

 

「ラビット、今回は人数が多い。遠距離から援護ということで馬車の上から見回してもらうが、準備はいいか?」

 

コクリと頷くとローブの上から背負っていた細長い布の様なものの入れ物からいつも見る杖の様な物よりも長くて、砂色と土色の杖、確か、ジュウを出した

 

ラビットがナイロン製のガンケースから出したのはMacMillan Tac300 だ

VX-6HD 4-24×52mm SF スコープにバイポッド、そしてサプレッサーをつけた物を持ってきていた。もちろんローブの中にはMk18 も持ってきている。

 

デールが帰ってくる、どうやらもう出発する様だ。

 

「じゃあみんな、行くわよ」

 

セラのその一言に全員が気合を入れる

デールたちの視線に気にもとめず意気込み気を張った

馬車の車列は門を通り過ぎると広大な自然の平原が広がった



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車列護衛任務

タイトルっていざ考えると難しい
ちょくちょく変えるかもしれない


 

馬車の車列は先頭に私たち護衛隊、重要人物の馬車、荷物の馬車が2台と縦列で並んで平原を進んでいた

 

私としてはラビットの動く鉄の荷車の様なもので行けばすぐ着くがこれは何日もかかるから退屈だった

 

セナたちが後方警戒要員で一番後ろの馬車にいる

私は最前列の馬車でラビットの隣に座っている

別に必要はないけど私がここに座りたいから座ってるんだけどね

 

ラビットから借りた遠くが見える小さな箱みたいな形、スポッティングスコープをずっと眺めている

これを使えば待ち伏せや周囲の観察が非常に容易になるわ

ただやっぱりジュウは触らせてくれなかった

興味があるのに・・・

 

何事もなく時間が過ぎて行く

デールの取り巻きがセナ達に絡んで無視されてたりデールがずっとこっちを睨んできていた。

内心いい気味だと思ったわ。

 

 

 

陽も落ち移動に難があると見て一度野営をする事にした

今回は荷物用の荷車に寝れるから寝袋だけで充分で食料も持ってきていた

暗くなる前に火をつけ焚き火を始める

火を囲んでようやく一息ついてラビットのスコープのお話をしていた

 

「いやぁ、こちらは雰囲気が和やかでよろしいですな」

 

声のする方を見ると依頼主の初老の男性、ジャン・マクスウェルと淡い水色の髪をした小さな女子がいた

 

「依頼人、外は危険だ。 早く馬車の中へ」

 

「いやいや、大丈夫さ。 それよりも少しだけお嬢様の相手をしてやってくれないかな?」

 

トコトコと物静かな雰囲気で近づいてきた

正直ものすごくかわいい、お人形みたいで愛でたい一心だった

 

「お嬢様はあまり外に出る機会もないので少しでも外の人間と接するのを望んでいるのです。 ・・・控えめに言っても彼らに務まるとは思えませんからな」

 

みんなは小さく笑う

確かにあのチンピラの集まりには無理だろう

 

「少しだけで良いのでお願い致します」

 

そういうと男性は馬車へと戻った

内心私が黒髪だから何かされると思ってヒヤヒヤしてたけど杞憂だったわ

 

「はじめまして。 私はセラっていうの。 あなたは?」

 

「・・・ユリス・ブーゲンビリア」

 

恥ずかしがりやのか顔を伏せて小さな声で言う

モジモジする姿を見てるとみんなの表情が和らいだ

そうだ、ラビットも呼びましょう

呼びに行こうと決めたその矢先に厄介な連中がきた

 

「よぉ〜お嬢さん方。 俺たちと遊ばねぇ〜かぁ〜?」

 

「あのローブのやつはどこ行ったんだ? まぁどうでもいいけどな」

 

デールの取り巻きが数人でぞろぞろと押し寄せてくる。

本当に神経を逆撫でされてイライラさせられる

礼儀を知らないのかしら?

下品な言葉遣いや視線を使わなきゃ気が済まないのかしら?

お陰でユリスちゃんが怖がって私の後ろで震えてるじゃない!

 

「女に寄ってたかって大人数で来るなんていささか無礼じゃないか?」

 

「そうです! ユリスちゃんが怖がってます! 帰ってください!」

 

フィリスの言葉に便乗するようにリーエも怯えながら言うがそんなことを気にかける連中じゃなかった

 

「あ? なんでこんなとこにガキがいるんだ。とっととママのとこにでも帰りな」

 

「俺たちはこのお姉さん達とイイコトするんだからなぁ?」

 

怒りの臨界点が限界を越えようとしたところにで依頼人のジャンとラビットがやってきた

 

「これはこれは勇敢なる冒険者同士で親睦ですかな? しかし今日はもう遅いのでおやすみになられては?」

 

「あん? なんだジジイ」

 

「こっちがどうしようが勝手だろうが」

 

「いやしかし、依頼主としても問題を起こされると困るのですよ」

 

「んだと?」

 

一人がジャンに掴みかかろうとしたがラビットが腕をひねりあらぬ方向へと曲げようとしていた

 

「あぁあいでででででで!?」

 

「て、テメェ!」

 

一人がラビットに殴りかかるが捕まえている男を盾にして殴らせその男を殴ってきた男にお返しした

 

「ぐぉお!?」

 

「て、てんめぇえ!!」

 

一人が剣を抜いた時だった

剣が何かに弾かれ男の手から離れた

そこにはサプレッサーから硝煙揺らめかせるMk25が向けられていた

何が起きたのか分からず固まったように動かない男たちはラビットからの攻撃に恐怖を感じていた

 

「な、なんだ、ありゃあ・・・」

 

男たちの誰かが呟いた

そしてラビットが一歩すり足で近づこうとした足元に1発撃ち込み再び向けるとジリジリと下がり帰っていった

 

 

「それが噂の魔道具・・・すごいです、私いらない子じゃ・・・」

 

「遠距離攻撃に加えて格闘も出来るとは。 万能戦士もいいとこだな」

 

リーエとフィリスが興味深そうにしているが気にしてないように焚き火の前に腰を落としただ日を眺めていた

 

なんとなく話しかけづらい雰囲気でユリスちゃんがチラチラとラビットを見ていた

 

「ラビット、この子はユリスちゃんっていうの。 ちょっと相手して上げて?」

 

おずおずとユリスが近づくとラビットが小さな袋、チョコバーの袋に似てて小さいものを出し袋を開けてユリスに渡す

これは粒状のチョコだった

 

それを受け取りセラの元へ戻り一粒食べると花が咲いたように笑顔になった

 

「ありがとう・・・!」

 

ユリスがお礼を言うとラビット少しだけ手を振って返した

 

フィリスとリーエ、セナも興味深かそうにそれを見ていた

セラは正直少しもらいたい気持ちがあった

それを察してかユリスが袋を差し出して「食べてもいいよ」ということでそれぞれが一粒ずつ口に入れると味わったことのないものに興奮した

 

リーエはラビットにチョコの入手方を聞き出そうとしたがラビットが立ち去ってしまい聞けずじまいだった

 

「ラビット・・・」

 

セナが心配そうに彼の背中を見送っていた

 

「珍しいな。 セナが他人を心配するなんて」

 

「奴を見ていると、昔のセラを思い出す。 一人で飛び出すのは変わらないがな」

 

「・・・そうね」

 

気がつけばユリスちゃんは寝息を立ててセラにくっついて寝ていた

 

「そろそろ休むとするか。 見張りはリーエと私でしておこう」

 

フィリスとリーエが見張りをしてくれるそうなので私とセナは寝ることにした

ラビットはジャンの使命で付きっきりで警護するらしい

 

寝る前に馬車の屋根に座るラビットにおやすみといい手をを振ると首だけこちらをむけすぐに直った

 

 

 

 

 



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危機迫る

何事もなく翌日になり目的地へと向かう

夜は特に何もなく終わった

少しだけ眠くうつらうつらと首を揺らす

 

隣に座るラビットと私の間にはユリスちゃんがちょこんと座っている

その姿が可愛らしくてどうしても愛でたくなる

 

私とラビットに懐いてくれたのか可愛くてしょうがないわ

 

そんなことを多少夢心地で味わっていると肩を叩かれた

慌てて軽く叩いてきたであろうラビットに目を向けるとスポッティングスコープを渡してきた

覗いてきた先には小型の恐竜、レクスが数匹いた

 

レクスは群れで狩りをする肉食獣だ

4〜7m程のものが一般で10mを超えるものは長の階級に属する

 

そのレクスがこの先の道にいる

どうやら獲物を捕まえて食事をしている最中で動きそうもない

このままいけば戦闘になるだろう

 

「ラビット。 できるかしら?」

 

ラビットがMacMillan Tac300 を構える

倍率、ピント、肩づけ、風の動き、移動速度、距離、狙いを見定めると安全装置を外し引き金に指をかけ、息を吐き、ガク引きしないようにゆっくりとトリガーの遊びを最大まで殺し、撃つ

 

1発のくぐもった音がセラとユリスの隣で鳴った

サプレッサーのおかげで発射ガスとマズルフラッシュそして銃声は抑えられ静かな射撃だった

一瞬ユリスがビクっとしたが大したものではなかった

 

セラはスポッティングスコープでレクスの5匹の群れの中で一番大きな個体を見事に頭を撃ち抜いた瞬間を見た

食事の最中に横から頭を撃ち抜かれると力なく倒れた

ボスが殺されたことに残りの4匹は動揺しその場をキョロキョロしなが彷徨っている

 

ラビットがボルトを引き薬室から空薬莢を取り出すと装填された新しい弾を送り込む

真鍮製の空薬莢が弧を描き宙に舞い地面に落ちた

続けてもう一度狙いをつけて撃つと今度は体に当たった

鱗のような外殻を貫通し弾は体内に入り込むと撃ち込まれたレクスは倒れた

ジタバタと痛みにのたうち回るとほかのレクスはその場を散り散りに逃げ去って行った

さらに1発撃ち込むとそのレクスはもう2度と動かなくなった

 

「・・・すごいわ、あそこは距離にすると相当よ? それを3回攻撃しただけで撃退するなんて」

 

それは距離にして600m程

動く安定しない馬車の上で正確に当てる腕は確かなものだった

ボルトを引き空薬莢を排出すると4発目を装填した

 

周りは怪訝な目で何かしている程度の認識だったがどうでもいいことだろうと思い気にしてはいなかった

 

「ねぇ、ラビット。 それは魔道具の一種なのかしら?

 

今まで疑問に思っていたことを聞いてみると首を横に振った

魔道具は魔力を流し込むか込めておき使用するものであるがどちらにせよ魔力が必要なため魔力適正のない人間には使えない代物だった

魔力を使わないと言うことは普通の人でも使える武器だと言うことだった

 

「ふーん・・・でも、ラビットのお陰で私たちの仕事がなくなっちゃうわね?」

 

小さく笑うとラビットも肩を竦めた

レクスの死体を通り過ぎるとき何人か騒いでいたが気にはしなかった

最近は盗賊の類は出ないらしく今の脅威はモンスターだけだった

 

休憩に入り食事をとることにした

デールの取り巻きたちは昨日の出来事でラビットを完全に警戒している

本来なら休憩でも周囲を見張るのだがチラチラとラビットを見ていた

見るからに敵愾心がむき出しだった

デールは初日からラビットを睨み続けている

 

みんなでお昼を食べているとユリスちゃんがやって来てラビットのとなりにちょこんと座って一緒に食べていた

 

夜になり焚き火を囲んでいた

もちろんユリスちゃんと依頼主のジャンさんも来た

ジャンさんは私たちと遊ぶユリスちゃんを見て微笑ましい表情だった

 

「いやぁ〜お嬢様がこれほどまでお楽しみになられるとは、やはりあなた方に頼んで正解でしたな! モンスターも不思議と襲って来ませんので上々ですな」

 

ジャンさんの機嫌はすこぶる良く、ユリスちゃんも私たちも楽しい、変わった依頼になった。これもラビットのおかげね

 

そして最悪の事態が起きた

 

「おい、貴様。 ・・・田舎者め、返事ぐらいしたらどうだ」

 

いつの間にかそこにいるデールだった

高圧的な態度に怖かったのか私とラビットの裾を掴む

私は睨み返すけどラビットはちらっと目を向けただけですぐに周囲の警戒に戻った

 

「なんだ? 何か言ってみたらどうだ腰抜け」

 

何も反応しないことに面白くないのか口調をさらに強めて言うがチラリと見て終わっていた

 

「貴様っ・・・まぁいい。 それより貴様、面出しをしろ」

 

親指で後ろを指して首を少し振る

何かやるつもりなのかお見通しだった

 

「ラビット、行く必要ないわ。 どうせロクでもないことよ」

 

「怖気付いたか腰抜けめ。 大した仕事もしていないくせに随分偉そうにしているが大したことはないな」

 

鼻で笑いラビットを挑発するとユリスちゃんを見て『仕方ないな』と言わんばかりに立ち上がりデールについていった

 

「お兄ちゃん・・・!」

 

「大丈夫よ。 ラビットはすっごく強いから。ね?」

 

今にも泣き出しそうな声でラビットを心配する

私も少し心配だった。デールが何をするかわからない以上油断はできなかった

そしてしばらくすると待っていたように取り巻きたちがやってきた

 

「ヨォお嬢さん方、今夜こそお楽しみと行こうぜ〜?」

 

・・・なるほど、この為ね

昨日はラビットが助けてくれたけど、今日は自分たちでなんとかするしかないわね

 

「お楽しみ? 何を言ってるんだ貴様等は。 今はクエストの最中そんなことをしている場合か。 阿呆が」

 

「気の強い女だな。 ヒィヒィ言う様をみてやりてぇぜ」

 

「俺はそこのオドオドしてるボウガン使いがいいな」

 

「そこの剣士も見てみろ、引き締まっていい体してるぜ?」

 

「黒髪には手を出すなよ? デール様にやられちまうぞ」

 

ほんとクズばかりね。こんな奴らでも実力はそれなりにあるから気に入らないわ

 

でもそれに負けないくらい私たちは修羅場を超えて来た。

フィリスが剣を抜きリーエがボウガンに弓を装填した

二人も限界らしい

対抗するように取り巻きたちも剣を抜く

 

取り巻きの一人が駆け出すとフィリスの素早い身のこなしで鎧の脇を剣のグリップで殴ると痛みに負け剣を離した

相手は重いプレートアーマーに対しフィリスは剣士にしては装備も少なく軽装のスピード重視だった

ポニーテールで纏めた銀色の長い髪を靡かせながら蝶のように舞い、蜂のように刺すという言葉が当てはまる剣さばきだった

 

リーエも剣を抜いているものに対してボウガンを撃ち無力化していた

彼女のボウガンの腕は中々の物で的確に撃ち抜きつつ体に当たっても急所は外していた

一本づつでしか撃てないが錬成して来た早業で素早く多く放った

 

セラとセナで同時に風の魔法を凪ぐように放つと取り巻きたちはそれに怯んだ

 

4人の実力を目の当たりにし怯んで後ずさりをすると突然ニヤリと笑い合図を出すように手を挙げた

 

「ほらこっち来い!」

 

「やぁああ!!!」

 

「お嬢様!」

 

後ろに回り込んでいた一人がユリスちゃんを攫った

ジタバタと暴れるがナイフ突き立てられる

 

「貴様・・・!」

 

「ユリスちゃん!!」

 

「おっと動くな! このガキがどうなってもいいってんなら話は別だがな」

 

ユリスちゃんを盾にすると笑い始める

 

「お前たち正気か!? 今はクエストの最中なんだぞ!!」

 

「あ〜? 依頼なんかどうでもいいんだよ。 俺はお前等上玉とヤれりゃもうどうでもいいんだからな!」

 

高らかに笑って剣を向けてくる

 

「ほら、武器をよこしな。 魔法で変なことするんじゃねぇぞ」

 

剣先を振りながら武装解除の要求をする

仕方なくフィリスとリーエが武器を投げ捨てセラとセナもおとなしくしていた

 

「へっへっへっへっへっ、従順じゃねぇか最初からそうしてりゃいいんだよ」

 

武器を回収するとまだ足りないのかさらに要求をしてくる

 

「んじゃあ、まず服を脱ぎな」

 

「貴方達・・・!」

 

「なんだ? ガキがどうなってもいいのか?」

 

射殺すように4人が睨むが飄々とした様子で服を脱ぐように要求する

4人が嫌々服を脱ぎ始めようとした時だった

 

「がっ!?」

 

突如誰かが変な声を出して倒れる

その先にはラビットがいた

 

「ラビット!」

 

「て、てめぇ! デール様達はどうした!?」

 

そんな言葉御構い無しにかけると次々と顎を打たれてたり、鳩尾を突かれ気絶するか悶絶するかのどちらかだった

剣に対しては確実によけるかmk18で受け流して避けるとすぐに剣を弾かれ地面に沈んだ

 

「て、てめぇ、ガキ----がぶっ!?」

 

ユリスを抱えて人質にとっている男にはその場にあったそこそこの大きさの石を投げると反応できなかったのか見事に頭に直撃し転げ回った

 

「うわあああああああんっ!」

 

ユリスちゃんが私に飛び込んで来るとわんわん泣いてしまう

 

「ラビット・・・もうっ、もうちょっと早く助けなさいよ」

 

からかうように言うと「めんぼくない」と言うように頭を掻いた

 

「銃を使って殺しても良かったんじゃないか?」

 

セナがそういうと一瞬チラリとユリスちゃんを見た気がした

 

「・・・なるほどな。 優しいところがあるじゃないか」

 

セナがにこやかに笑う

こう言う表情は私もあまり見たことがなかったから一瞬驚いちゃった

 

「それより、どうするんですかこれ」

 

リーエがゴロゴロと横たわる取り巻き達を蔑む目で見下ろす

 

「縛っておいていけばいいんじゃないか?」

 

「それもそうだな」

 

「ねぇラビット、デールの方はどうしたの?」

 

ラビットがさっき連れていかれた方を親指でクイっと指す

やっぱり敵じゃなかったわけね

 

「・・・死ねヤァああああああ!!」

 

ラビットの後ろから声がした

撃ち漏らし!?

ダメ、間に合わない!

ラビットが仕方ないと判断しMk25を振り向き様に構えて引き金を引こうとした

 

ゴスッ!! っと鈍い音がすると倒れて動かなくなった

そして全身が斑点の服を着て無精髭を生やした男がいた

その姿はまるであの時みたラビットと同じような姿だった

 

「撃ち漏らしとは珍しいな。 体調でも悪いのか?」

 

もちろん私たち4人が驚いて警戒したのは言うまでもない

 

「おっとお嬢さん方、そう怖い顔しなさんな。 ラビット、通訳頼む」

 

無精髭の男が自己紹介を始める

 

「俺はブリーダーって呼んでくれ。 何者かって言うのは・・・ラビットの仲間ってところだ」



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正体不明の味方

「ラビット・・・仲間?」

 

「あぁ、そんなところだ」

 

「・・・根拠は?」

 

「ラビットが俺をとっくの昔に惨殺してないからって言えば納得してくれるか?」

 

「・・・それもそうだな」

 

「おい、今ので納得するのかよ」

 

「やれやれ」と言ったようにため息をつく

ブリーダーはPACAソフトアーマーの上に着ているMBAVの端に取り付けられたPTTスイッチを押す

 

「スタンプ、とりあえず大丈夫だ。 出てこい」

 

Mk48を下ろし暗視装置PVS15が取り付けられたMICH2000ヘルメットとCOMTAC2を外した

しばらくするとまた一人やってきたのでラビットの通訳の元自己紹介をする

 

「俺はスタンプと呼んでくれ。 ラビットとは部隊の同期だ」

ブリーダーと同じようにマルチカムのBDUを着込みOPS COREヘルメットやCPCプレートキャリア、そして目を引くのが背中にスリングで背負ったMk13mod7と手に持っているMk16 PDWだった

 

「んじゃ、こいつら片付けるか」

 

横たわっている取り巻きたちをうつ伏せにさせて後ろ手で腕を縛っていった

 

「ラビット、そういえばいつの間に連れてきたの?」

 

セラが素朴な疑問を呼びかける

出発した当初2人をは当然いない。ならいつ合流したのだろうと

 

〜数分前〜

 

デールに連れられると林の中に入り少し奥に入った

立ち止まり振り返えると口笛えを吹き合図を出した

するとラビットを取り囲むようにぞろぞろと出てきた

 

「貴様は目障りなんだ。 役立たずの平民の分際でセラに手を出すなどな」

 

デールも剣を抜きラビットに向ける

 

「あの女のローブの下を見たことがあるか? いい体をしているぞ、黒髪の忌子には勿体ないくらいにな」

 

薄気味悪い笑みを浮かべるデールにラビットは言葉を発しない

 

「はっはっはっはっはッ!!! 恐怖で口元開かないのか? 俺がセラを犯したら貴様にも譲ってやろう。 数十人後に輪まわしたあとだがなぁ!?」

 

ゲラゲラとデールと取り巻きが笑う

ラビットはMk18を静かにローブから出した

 

「ほう? それが例の魔道具か? だがなぁ! この魔封じの結晶があれば」

 

ーーーバシュバシュバシュバシュ!!

 

話を遮るようにMk18でデールの隣にいた取り巻きの男に4発撃ち込む

何が起きたかわからない様子で口と撃たれた場所から血を流しビクビク痙攣をしていたがやがて動かなくなった

 

「て、てめぇ! そりゃ魔道具じゃねぇのか!?」

 

「慌てるんじゃねぇ! 奴を殺して持ってるもん全部奪うぞ、宝の山だぜ!」

 

後ろから接近してきた2人の剣戟をMk18で受け流し1人は頭に2発撃ち込み絶命させもう1人の男の武器を弾き首に腕を絡め拘束し盾にした

 

「何をやっている! 隊列を組んで立て直せ!」

 

この男が実力者なのはしっている

だから賄賂で買った騎士団や騎士団崩れの選りすぐりの兵を用意した

訓練をしてきた身であってその動きはこの世界で確立され考え出された型になっていた

盾で前を固め槍で刺す、これなら弓でも剣でも太刀打ちできず安全に敵を倒せるというものだった

しかしそれはこの世界での話

ラビットがMk18を2発盾に撃ち込むとぐらりと盾が倒れ持っていた者も倒れる

胸に2発あたりショック死してしまったのだろう

そんな光景を目の当たりにして取り巻きが青ざめた

 

ーーー死にたくないと言う感情が吹き出てきたのだ

 

それに気づくのは今更すぎた

絶対にかなわない、化け物が、死神がそこにいた

 

「い、いやだ・・・ひぃいいいいいいいい!!」

 

奇声をあげ情けない声で奥の林へと逃走を図った

取り巻きもその様子に唖然としたがそれは命取りだった

10人いた取り巻きが4人殺され上官は逃げ脳内処理が遅れたせいだったかもしれない

 

構わず1人に対し2発づつ撃ち込む

気がつけばそこには死を流し倒れる者で溢れかえった

 

「うぅっ・・・がっ・・・ギャッ!?」

 

奇跡的に生きているものがいたしかしこの銃槍は手遅れだ

せめてもの情けか、生きていることが不都合なのかMk18で2発頭を撃ちこみトドメをさした

 

デールの逃げた先に何があるかわからないがこの際生かしておくわけにもいかない

追いかけて始末しにいくかと言うように弾倉を変えデールの逃げた方へ足を進めようとしたその時

 

「動くな」

 

後ろから声をかけられた

威圧満載で普通の人間なら耐えられないものだろう

しかしラビットには聞き覚えがある

その言語は英語、そして長い間聞けなかった声

 

警告を無視してゆっくり振り返った

そこにはMk48 mod1を構えたブリーダーがいた

 

〜回想終了〜

 

 

ラビットが一人になるのを待っていたらしくなかなか合流できなかったと言う

ターバンにローブという格好のためラビットだと分からなかったのだ

 

しかし改造されたハンヴィーを見てラビットの可能性があると考えていた

過去にそれを作ったから

 

取り巻きたちを縛り上げた後にジャンとユリスが乗る馬車で話していた

中にはラビット、セラ、セナ、ブリーダー、ジャン、ユリスが乗っていた

 

フィリスとリーエ、スタンプが外の見張りになっていた

スタンプがリーエに『馬車の上へ』と英語で言ったためフィリスとリーエが頭を傾げると『もういい』と言うと自分が登った

OPS COREに取り付けられたGPNVG18の電源を入れてMk16PDWを手に周囲を見渡した

 

馬車の中ではラビットとの合流の経緯を話し終えるとセナが違う話題に切り出した

 

「わかった、では私の疑問に答えてくれ。 ラビット、お前には前に聞いたがもう一度聞く。『お前達は何者だ?』」

 

一瞬の静寂

すると雰囲気が重くなり先程のフランクさがなくなった声で何か言う

ラビットが通訳として言う

 

「お前達に『それ』を知る必要はない。 この仕事が終わればもう会うことはないからだ。 敵対行動を取ると言うなら遠慮なく始末する。いいな?」

 

ただ事ではないと悟りセナは口を閉じた

 

「わかった。 だが来たるべきときが来たら教えてもらおう」

 

「好き好んで深海のリヴァイアサンを眺めることはない。 命は大事にするものだぜ」

 

ブリーダーが装具を外し、姿勢を崩した

 

「悪いが少し寝させてくれ。 こっちはラビットの追跡で3日寝てねぇんだ。 それにそこのお嬢さんもぐっすり寝てら」

 

指差す先にはユリスがぐっすりとねむっていた

ラビットがブリーダーの方を軽く叩くとラビットが馬車から出て行った

少し話し声が聞こえるとスタンプが入れ替わりで入り

同じ様に装備を外し数秒で眠った

 

「なんなんだ、こいつらは」

 

どうしたもんかと悩むセナの横でどうすればいいかわからないジャンと考え事をしているセラがいた

 

「(ラビット、あなたは・・・)」

 

夜は更け気がつけば馬車の中で寝ていた

 

「・・・」

 




ブリーダー
ヒゲもじゃのおじさん
ラビットの上官で色々教え込んだ
「どうしてこうなった」
のちに語る

武器はMk48mod1 と グロック19Gen3
装具はPACAソフトアーマーとMBAVと超重量級



スタンプ
ハゲ
狙撃も通常戦闘もできる万能くん
ラビットはこいつに似たのかもしれない

武器はMk16PDW or Mk13mod7 と Mk25
装具はCPCのプレキャリとウォーベルト



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護衛任務終了

デールの取り巻き達を縛り上げ放置し大幅に人数が減ったため荷物用の馬車を1台放棄していく

ラビットが放棄した荷車の馬に乗って偵察に行く算段ができていた

デールの取り巻き達が何かわめいていたが気にせず置いていった

 

「ラビット、また1人でやってるらしいが。大丈夫か?」

 

ラビットが平気だと応えるようにサムズアップをした

ブリーダーも「そうか」と言いそれ以上何も言わなかった

 

「PRC(無線)はさっき周波数を合わせたから大丈夫だな? 何かあったら連絡しろ」

 

コクリと頷く

そしてMac Milan TAC300が入ったナイロンケースを担ぎ直した

 

「ラビット・・・そいつはまさか」

 

ブリーダーの言葉など聞こえてなかったように馬で早足に駆けて行ってしまった

 

「あ、おい・・・行っちまったか」

 

「どうした?」

 

「いや、あのガンケースとマクミラン見てちょっとな」

 

「あぁ、なるほどな。 ここにいない、ラビットが奴の銃を持ってる、充分すぎる」

 

ブリーダーとスタンプが2人で喋っているがセラ達には何を言っているのかさっぱりわからなかった

 

「・・・まぁ、近いうちにだな。 よし、行くぞ!」

 

ブリーダーの言葉は伝わらなかったが意味は動作で理解でき車列が進み始めた

 

 

 

車列は順調に進み先に進んでいたラビットと合流した

 

「ようラビット、ご機嫌か?」

 

ブリーダーとラビットが拳と拳を軽くコツンとあてる

スタンプもラビットの肩をパンパンと叩きラビットも同じようにスタンプの肩を叩いた

言わば挨拶だった

 

休憩に入りブリーダーとスタンプ、ラビットがわいわいとしていた

長らくあっていなかった仲間に会えたことがラビットにも純粋な喜びが出ていた

そんな雰囲気に女性陣が入れるはずもなく、そのまま休憩は終わった

 

再びラビットが偵察にいこうと馬を準備しているときだった

 

「お嬢様! お待ちください!」

 

ワタワタとユリスを追いかけるジャンが視界に移った

ユリスがラビットの裾を掴み見上げている、どうやら一緒に連れて言って欲しいのだろう

 

「お嬢様! 危険です! お戻りくださいませ!」

 

ラビットが2人を交互に見る

するとじわりとユリスの目尻に涙がたまっているのが見えた

 

仕方ないと言ったようにユリスを馬に乗せた

 

「ら、ラビット殿!?」

 

「いいのか?」

 

「死ななきゃ問題ねぇさ。 大丈夫だろラビット」

 

結構適当なオペレーター2名だった

 

「私も行くわ」

 

ラビットが馬に乗った直後セラが出てきた

 

「いいでしょ? ラビット」

 

そういうとラビットの手を借り馬に乗った

 

「よし、行ってこい!」

 

ラビット達を乗せた馬は駆け出す

3人乗っていてもなかなかの速さで駆けていった

一番前で落ちないようにユリスが初めての荒々しい乗馬ではしゃいでいる

後ろのセラは落ちないようにしっかりとラビットに掴まると行った様子だった

 

「・・・一見したらいい家族だな」

 

「憧れますね〜!」

 

「・・・そうだな」

 

フィリスとリーエの2人の声とは裏腹にセナの声は少し不機嫌そうだった

 

 

 

ユリスちゃんがはしゃぎながら馬に乗っているのを落ちないようにラビットが掴んでいる

何だかんだラビットは面倒見が良くて子供に優しいのがわかった

段々と速度を落とし今はゆっくりと馬を歩かせている

偵察といってもここの周辺には何もなく待ち伏せもモンスターも来ないだろう

 

ここまで森が続いているからそろそろ出て行きたかった

そして太陽の光が差す出口へ行くと

目的地である大都市アカンサスへ続く草原が目の前に広がり、大都市を囲む高い城壁が遠目で見えた

 

「わぁ〜!!」

 

こうやって見渡すのは初めてなのか声を上げて目をまるで宝石のように光らせた

 

「あまり離れすぎると合流できなくなるから、この辺りで引き返しましょう?」

 

私がいうとコクリと頷くときた道を引き返した

 

 

 

合流した後は特に何事もなく無事に着く頃だった

 

「止まれ! 彼の者、何の用だ!」

 

2人の衛兵が馬車の車列を止める

馬車から出てきたジャンを見て気をつけの姿勢になる

ジャンが書類と身分証を見せると門が開いた

 

「お疲れ様でした!」

 

大きな声をかけて敬礼をする

ジャンもそれに応えていた

 

「今更だが俺たちも通ってよかったのか?」

 

「大丈夫だ。 後でマクスウェル氏から通行証が貰えるはずだ」

 

街の様子は賑やかで下から上に至るまで穏やかで平穏な暮らしをしていた

そしてこの大都市最大の特徴は芸術の国と呼ばれるがため町を彩る全てが日を重ねるごとにより美しくなることだった

 

そうこうしているうちにブーゲンビリア国王が住まう城、ブーゲンビリア城へと到着した

通行後客間でくつろぐようにジャンに指示された

 

しばらくくつろいでいると不意に少しだけ扉が開いたのに気づいた

チラリと覗き込むようにユリスがいたのだ

服装は着替えたのかドレスになっていた

 

女性陣がおずおずと入ってくるユリスにメロメロになってしまう

 

「はわぁ〜、ドレス姿も可愛いわね・・・!」

 

「これは、中々にいいな・・・」

 

「凄く綺麗なドレスだ。 羨ましいよ」

 

「私もこんなドレスを着てみたいです!」

 

撫でられ抱き上げられ散々弄られ解放されるとラビットが座るソファーの隣に座った

寝ていたのか少し遅れ気味にユリスを見た

そんなラビットとわちゃわちゃと遊び始め場の雰囲気は和やかになっていった

オペレーター2名はぐっすり寝てます

 

「お待たせしました。 これより・・・お嬢様、なぜここに?」

 

ジャンが戻って来たがユリスが一緒にいることがおかしいのか少し困惑している

 

「マズイか?」

 

「いえ、御当主様と御婦人様の元で食事を摂られるとお伺いしたもので」

 

すると「失礼します」とメイドが入ってきた

 

「お嬢様、お食事の準備が整いました。 こちらへ」

 

ユリスがメイドのもとまで歩み寄ろうとしたが止まってしまう

ラビットのローブの裾とセラのスカートを掴んだまま離さず行こうとしたからだ

ユリスは幼子だが賢い子だ。しばらく離れていた大好きな父親と母親と摂る食事は楽しみにしていた。

だが短い旅の中で出会った兄と姉のような存在も同じように大好きで一緒に居たいから掴んでいたのだ。

要は両親とご飯を食べたいし2人からも離れたくないからどうすればいいかわからないということだった

 

「少々お待ちください」

 

メイドは一礼して退室するとどこかへ行ってしまった

 

「・・・それでは報酬のことですが、とりあえずお掛けになってくださいませ」

 

ジャンからもらった報酬は非常に多く、護衛任務をするには割高な報酬だった

 

「マクスウェル氏。 こちらとしては有難いが、これは多すぎではないか?」

 

「フリューゲル殿、確かにそうです。 しかし25人居た護衛が7人となったのでこうなりました。」

 

「なるほど、奴らの分か」

 

「左様でございます。 こちらとしては彼らから違約金を頂きたいほどですぞ」

 

「俺たちもいいのか?」

 

「勿論でございます。 少し少ないですが、御容赦くだされ」

 

「いや、いいさ。ラビットを拾うついでだ。 小遣いもらったようなもんだよ」

 

「恐れ入ります」

 

報酬の話が纏り解散というところに差し掛かると先ほどのメイドがやってきた

 

「失礼します。 ご当主様は彼の勇敢な護衛団とのご会食をご所望です。 突然で申し訳ありませんが本日は当家でご食事を摂られてくださいますようお願い申し上げます」

 

「な!?」

 

一同は驚きを隠せない、遅れてオペレーター2人も驚いたような反応だった

彼女たちとて一介の冒険者であり特別な役職などではない

それはラビット達も同じだった

 

「フロスト様は大変開明的なお方です。 ご遠慮なさらずにお越しくださいませ」

 

セナや他の面々が悩んでいるとき、ふとセラがユリスをみた

期待して目を輝かせている、もし失望するようなことがあればきっと笑顔は消え去るだろう

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん! みんなもいっしょにたべよ!」

 

そんなユリスを誰一人失望させることなどできなかった



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城での休息

また空いてすまぬ・・・仕事つらすぎてつらい


結局押し切られ身なりを整えるためメイドを先頭に更衣室へと向かっていた

服は貸してくれるそうなので甘えさせてもらう

ユリスはメイドに連れられ先に食堂へと向かった

 

向かい側から何やら貴族と思しき人物、セラには完全に見覚えがあった

いつか助けたユミールと言う名の貴族だった

隣には側近なのか男もいる、彼も身なりからしていい立場なのだろう

こちらに気づいたのか2人が嫌悪感剥き出しの表情になった

 

「あなたは・・・! なぜここに忌子がいるのですか! 衛兵は何をしているのですか!!」

 

ユミールが叫ぶと巡回していた兵士達が駆け寄ってきたが敵襲などの非常事態でないと理解するも状況がつかめず混乱していた

 

「クエストでここに来ただけよ。 もう帰るから気にしなくていいわよ?」

 

「貴様! このユミール家の御息女、ユミール様に対して何たる無礼か!」

 

男が加勢するように怒鳴り散らす

あまつさえ冒険者を、ここにいる仲間も貶す事を言いはじめる

 

「ふんっ! 薄汚い冒険者風情どもが、立場をわきまえろ!」

 

ユミールが何か言おうとしたがラビットの存在に気付き固まった

そして慌てて言葉を出す

 

「あ、ら、ラビット殿!? ここ、これはご機嫌麗しゅう・・・でなくて、今までどこに? お礼をしに城下町まで行っても見つからないものなので・・・」

 

ラビットは動かない、精々ブリーダー達に伝わるよう通訳をした程度だった

先ほどの男が言ったことも全て

「あぁ、はいはい」と言っただけで特にもしない

 

ブリーダーとスタンプからすればどうでもいいことだった

彼らはついででここに来ただけでましてや冒険者でもない

完全に部外者で関係ないと判断したのだ

 

「ユミール様!? そんなに引け腰ではいけません! おい貴様! ユミール様がお話をされているのだぞ!」

 

肩を一瞬竦めるが何もしない

男が怒りを露わに飛び出しそうになるがユミールが止めた

 

「やめなさいクロッソ、彼は命の恩人なのです」

 

「しかし・・・!」

 

クロッソが渋々と引き下がった。 ラビットから矛先はセラへと向いた

 

「ふんっ、この世界でそんな汚らわしく邪悪な髪をしているのは貴様だけだろうがな! さっさと消え失せろ、害悪め」

 

クロッソの言葉にセナやフィリスが咎めようとした

それより早くラビットがターバンを外す

すると今まで隠して来た顔が露わになった

緩くつり上がった暗い瞳、高くもないが低くもない鼻、特徴もない唇、そして一番に目を引くのが手入れをしていないのか少しボサボサした黒髪だった

 

クロッソと呼ばれた男はもちろん、ユミールも酷く驚いた顔をしていた

 

「ら、ラビット!?」

 

「ラビットさん、黒髪だったんですか!?」

 

ラビットがクロッソの胸ぐらを掴んだ

腕力に対抗できずなすがままとなるクロッソ

ラビットは空いた腕を振りかぶった

 

「ラビット!! やめーーー」

 

「諸君、そこまでだ」

 

声がした方へ目を向ける。

多くの衛兵と使用人を従わせ佇むその男、見まごうことはない、ブーゲンビリア国王のフロストだった

 

「フロスト陛下・・・!」

 

ユミールが頭を下げて挨拶を始める

セラ達はもはやどうすればいいかわからず戸惑っていた

 

「面を上げよタイタニア殿。 して、そなた達がユリスの護衛を?」

 

視線をユミールからこちらへとシフトした

全員が固まるがセナが答える

 

「は、はい! 我々がクエストを受け護衛を・・・」

 

「はっはっは。 そこまで硬くならなくても良い。 娘が世話になった」

 

今度はまだクロッソを掴み上げ殴るために振りかぶったままのラビットに近づく

 

「君も放したまえ。 頭にくるのはわかるが殴っても不毛なことだろう?」

 

ラビットは投げるように解放するとクロッソは少し咳き込むとようやく立ち上がった

 

「君も言葉を慎みたまえ。 ここが誰の城かわかっているのか?」

 

陛下直々に咎められ言葉もでず、完全に真っ白になっていた

 

「な、なぜ陛下が此処に・・・?」

 

戸惑うのも無理はないだろう

フロストはセナの言葉を丁寧に返す

 

「娘に早く早くと急かされたのだよ。ともかく諸君よ、これから食事をするのだろう? この城の料理は絶品だと私が保障しよう。 ではまた、食堂で逢おう」

 

そういうと来た道を戻っていった

 

「あれがブーゲンビリア国王・・・」

 

「なんていうか、凄いお方でしたね・・・」

 

それぞれが感想を口にするがセラにはそんなことはどうでもよかった

同じ黒い髪の人間が存在していたのだ

今まで孤独に、自分だけだったがやっと同じものが現れた感動、戸惑い、様々な感情が入り混じったのだ

 

時間をかけて服装を整えると個が個でそれぞれの特徴を引き出していた。

 

初めて着るドレスにリーエやフィリスは戸惑いと興奮を隠せないでいた

しかしセラだけは先ほどのことが強烈すぎて未だ脳内での処理が追いついていないのだ

 

「セラ・・・セラ!」

 

セナが少し声をあげ呼びかけるとゆっくりと首を向け驚いた顔だった

 

「な、なにかしら?」

 

「なにじゃない。 行くぞ。」

 

「・・・えぇ」

 

メイドたちに連れられ食堂へと向かうと待っていたようにフロストとユリスが座っている

ユミールの他にも重鎮なのか高位の人間と思しき人物たちがいる。

 

そしてひとりのメイドの連れられた男、礼服を着たラビットがやってきた。

なぜかブリーダーとスタンプが来ていない

 

先ほどよりも清潔になりボサボサだった髪も綺麗になり黒髪の艶が現れる

 

やはりさっきのは夢ではなかった。

ラビットが黒髪であったことが事実だった

ラビットに声をかけようとしたその時ユリスの声が食堂に響く。

 

「お兄ちゃーん! お姉ちゃーん! こっちこっち!!」

 

視線を向けると上座に鎮座するフロストがユリスの頭を抑え「こら」と少し怒っていた。

すぐに「ごめんなさい」と謝ると大人しく座っていた

 

気づけばラビットがのんびりといった足取りでユリスの下まで歩み寄っていたためそれに続きセラたちもついて行く形で後を追った

 

 

 

食事はどうやら穏やかな空気で進み問題もなく進む

あるとすればユミールがこちらを睨み続けることだけだろう

最初こそは押さえていたがやはり我慢できずはしゃぎながらラビットと食事をしていた

 

ラビットがフォークで野菜を取りユリスに向ける。ユリスが残していたものだ。

すると少し嫌そうな顔をしてラビットを見るとゆっくりとした動きで口に含み苦いものを食べている顔になった。

実際今食べている野菜は栄養価は高いが苦味があるため子供には大変嫌われている野菜だった。

 

口に含みしっかり噛んでいることが確認できたのか今度は甘い果実をスプーンですくいユリスへ差し出した

それを見たユリスがぱくっと口に含み先ほどの苦い顔が嘘のように幸せそうな顔になった

 

「はっはっはっ! 娘の扱いが私より上手いな」

 

愉快そうにフロストが笑いをあげる。

それはとても嬉しそうな様子で満足げとも取れた。

 

「君たちを待っておる間に娘に君の話をされてな。 これなら娘がなつくのも頷ける」

 

フロストとラビットが話しているのをセラたちは眺めていた

 

「夢ではないよな? 王国の城で食事をとり仲間が国王と親睦を深めているよな?」

 

「はぃ、夢なんかじゃありません・・・!」

 

「落ち着け、冷静になれ。 とりあえずこれはおいしいな・・・」

 

そんな3人はよそに、セラはやはりぼぅっとしている。

視線の先にはやはりラビットがいる

 

「(私と同じ・・・)」

 

セラには食事や国王の御前ということなど頭になくそればかり考えていた。

 

 

 

 

 

時刻は夜になる。

なんとフロストが、国王が今夜は城へ泊まれというではないか。

最初はこそ断ろうとしたが小声で「私の顔を立ててくれ」といわれなんとなく察した

 

城では暖かい湯で入浴ができるため女性陣は皆で集まって湯に浸かった。

 

「おねーちゃん、どうかしたの?」

 

やはりセラはぼんやりとした様子でユリスに声をかけられ慌てて返す

 

「そ、そんなことないわよ? 私は大丈夫だから」

 

「むぅー! 嘘はダメ! お姉ちゃんごはんの時も元気なかった!」

 

「そうかしら?」

 

「どういう時は・・・こうするんです!!」

 

突如、リーエがセラの胸を後ろから揉み始めた

リーエのバストサイズは察してほしい。

それ故に彼女はこのような行動をとるのだ

 

「ちょ、ちょっとリーエ!」

 

「わぁあ! お姉ちゃんすごくやわらかい!」

 

「ちょ、やめっ」

 

リーエとユリスに揉みくちゃにされるセラがそこにいた

 

 

〜その頃、男湯は〜

 

「・・・」

 

「・・・」

 

筋肉隆々、数多の戦いを潜り抜け傷だらけに成りつつも王の座を取った男と素性がわからないが若くも同じように戦い抜いて来た男が睨み合うように入浴していた

 

※あくまで平和な入浴シーンです

 

 

 

 

 

リーエにお仕置きした後全員ネグリジェに着替えて明日の出発に向け眠ろうとした

 

「お兄ちゃんとも一緒に寝たい・・・」

 

流石に彼女たちとしても困るだろう、乙女の園へ男が入る、というのは

実際フィリスとリーエは困り気味だった

セナは顔を赤らめ何か言っているが聞こえはしなかった

そうこうしているうちにユリスがうつらうつらと船を漕ぎ始める

 

「ユリスちゃん、もう寝よう? お姉ちゃんたちも一緒だから、ね?」

 

「ん〜・・・おにいちゃん・・・」

 

ついにはパタリと眠ってしまった

毛布をかけて寝顔を見ると誰もが見入るかわいい寝顔があった

 

「かわいい寝顔だ」

 

「そうですね・・・私たちももう寝ませんか?」

 

「あぁ、明日は帰る準備もして出発だ」

 

明かりを消し寝静まる

しかしセラだけは起き上がり部屋を出て行った

 

部屋の外は大きな窓から月光が差し込む

ふと窓に近づき中庭を見ると人影が見えた

セラはそのまま下へと階段で降り中庭に出てその人影を探した

 

人影の正体は体格からして男で見慣れない緑が基調の斑点柄の服を上下に着込み月に照らされていた

 

「・・・ラビット?」

 

絞り出すように出た声で名を呼ぶとその男は振り返った

見間違えるはずはない、私と同じ黒髪の人間がそこにいた

 

 



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遅くなった出発

キリ良く書いたら短くなってしもた・・・次回こそ皆さんお待ちかね、チームプレイになります(暗黒笑み)


振り返った男は紛れもなくラビットである。服装こそ、ブリーダーやスタンプと同じようなものを着ていたがなぜかそれが妙にしっくりとしていた。

 

ゆっくり近づくと挨拶なのか手を肩のあたりまで上げ手のひらを見せた。

その手に触れると確かな暖かさが、体温がを感じ取れた。

 

感極まり思わずセラが抱きついてしまう。ラビットも驚いたのか一瞬表情が変わった気がした。

ラビットも同じように片腕で抱きしめセラの黒く、漆のような髪を撫でる。

 

「ほんとに・・・本当に、あなたはここに・・・いるのね? 嘘、なんかじゃ、ないわよね?」

 

震える声で聞くセラはぼろぼろと涙を青く澄んだ瞳から零していた。

いつか出会える同じ身の者を、望んで止まなかった希望を、いつまでも消えなかった孤独感をすべて涙に替えるように泣いた。

 

『黒髪の忌子め!』

 

『気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!』

 

『体だけはいいなぁ? 忌子のくせに』

 

今まで重なって来た全ての負の感情は溢れて止まることを知らない。

1人の男の存在によって、全てが清められるようだった

しばらく胸の中で泣きじゃくり気がつけば長い時間が経っていた。

 

 

 

「あの、ごめんなさい。 今までこんなに嬉しい事なくて・・・」

 

近くのベンチに座り少し気まづい雰囲気でセラはもじもじしていた。

目元が真っ赤になり、そういえば服もネグリジェしかきておらず割と恥ずかしいことになっていたことに気づいた。

そんなセラの心情を察してか知らずか頭に手を置き優しく撫でた。

 

「・・・もぅ、私の方がお姉さんなのよ?」

 

それでも心地よさそうに撫でられると眠気がやってきた。

泣き疲れたせいで眠気には抗えないようだった

それでもまだラビットと一緒にいたいという願望から抗い続けているとラビットによりかかるように眠ってしまった。

 

ラビットはセラを抱き上げるとどこから現れたのか食事の際に案内してくれたメイド(寝巻き)と遭遇し「御案内します」と小声で言うと一室に通した。

そこは小さな部屋でベッドが一つあるだけだったが十分な部屋だった。

メイドが「ごゆっくりとお楽しみくださいませ。」というと扉を閉めた。

ラビットがセラを下ろして立ち去ろうとした時、今着ているマルチカムパターンのコンバットシャツの裾を掴まれる。

 

「・・・ラビット・・・!」

 

「行かないで」とも言いそうな、寂しさを含んだ寝言にラビットは耳を傾けた

 

意図的か無意識か、ラビットとしてもどんな気を起こしそんなことをしようとしたかは彼にしかわからないだろう。

少なくとも優しさがあったのは確かだ。

同じようにベッドに入り「・・・すぅ・・・すぅ・・・・」と心地好さそうに眠るセラの寝息を聴きながらラビットは目を閉じた。

 

 

 

 

 

翌朝

一番に起きたリーエがセラが居ないと騒ぎ、フィリスとユリスが飛び起きセナに頭を引っ叩かれるという異様な朝を迎える。

 

「全く、いきなり騒ぎ始めたと思ったら・・・!」

 

「まぁまぁ、落ち着けセナ。」

 

「うぅ〜本当にごめんなさい〜!」

 

ユリスはメイドに着替えのため連れて行かれると3人でセラを探していた。

偶然かそこに居たメイド、昨日食事の案内をしたメイドに声をかけた。

 

「すまない。 黒髪の・・・」

 

「セラスフィア様とラビット様でございますね。 こちらで御座います」

 

なぜラビットの名が。 それを聞く前に扉を開くと一緒のベッドで眠るセラとラビットが目に飛び込んで来た。

 

困惑する一同に加えさらにラビットの装具と荷物を持ってきたブリーダーとスタンプがやってきたのだ

 

「んぁ? 何して、oh・・・マジか」

 

見てはいけないものを見たような顔をするとニヤニヤと笑い始めた

するとセナがつかつかと2人に歩みシーツを取り払う。

 

「きさまらああああ!!!」

 

いつもの冷静沈着なセナがとるような行動ではない。

そんな光景を見ているフィリスとリーエはさらに混乱し始めた。

 

「んぅ? ・・・え、セナ?」

 

連鎖するようにラビットが起きる。どうやら深く眠って居たため寝ぼけているようだ。

セナが2人の肩を掴みガッタンガッタンと揺らす

 

「したのか!? 本当にしたのか!?」

 

「した!? なんのこと!?」

 

「なるほど、これは断定と見て間違いなさそうだな・・・」

 

「一等兵曹! ヤったにしては現場が綺麗すぎると思われます!」

 

「まぁ落ち着け2等兵曹。 ラビットなら片づけてから寝ると見る。とりあえずやることは一つだ」

 

2人が3人の乗るベッドを持ち上げガッタンガッタン揺らす

 

「「ヤったんだろ!? 白状してみろ!!」」

 

完全に愉快犯のノリで場をかき乱していく。

派手に揺れるベッドで3人がもみくちゃになりあられもない姿になる

 

「ちょ、やめ、きゃああ!?」

 

「貴様ら! 覚えていろよ!」

 

朝にしては騒がしすぎる出来事であった。

 

 

昼頃

色々あったが準備を整え出発する時だった。見送りの際にユリスが泣き出してしまうがセラが抱きしめる。

 

「大丈夫よ。 また絶対来るから、ね?」

 

一通り泣くとユリスも泣き止む。するとラビットにも何か言って欲しいのかもじもじと見上げて居た。

それを察したのかラビットがローブの中に手を入れ中を漁ると出て来たのはラビットフットのキーホルダー、幸運を招くお守りを渡した。

城で洗ったとはいえやはり汚れが目立つローブに反して、お守りは真っ白で柔らかいものだった。

 

それを受け取ったユリスは花が咲くように笑顔になるとラビットに抱きついた。

 

「お兄ちゃん! 絶対また来てね!」

 

同じく抱きしめ返すとしばらくそのままになり漸く離れたところフロストが口を開いた。

 

「また是非とも城に来てくれ。 いつでも歓迎しよう。」

 

「いつでもお嬢様の相手を、どうかよろしくお願いします。」

 

2人とジャン、数多くのメイド、多くの重鎮に見送られるという異様な光景だった。

そんな光景にたじろぎながらも全員が馬車に乗り見送られながらアカンサスを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「田舎者め・・・見ていろ、絶対にこの俺に刃向かった事を後悔させてやる・・・!

 

 

 

 

 

 

 

憎悪を露わに待ち受ける者が居ると知らずに・・・



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本質

だいぶ遅くなってすまぬ、調子も出ないし割りかし忙しい・・・鬱ぅ


アカンサスを出発し馬車を揺らしながらただ広がる草原の向うへと進み続けて居た。

 

目的地である王都、ロッサムへと向う。

木造の馬車で乗って来た時のとは違い歩きで進む人員はおらず、操縦が1人、警戒が2人で外に出ていた。

ラビットが操縦しそこにセラとセナの2人が挟むように座っていた。 やや距離は近めだが。

 

「あら? ちょっと近すぎるんじゃないかしら? ラビットが困るわよ、セナ?」

 

「そのセリフはそのままセラに返してやる。 少し離れたらどうだ?」

 

不思議と乙女の戦いが始まっているのを馬車の中から4人は見ていた。

 

「なにこれ」

 

「ラビットが名前に因む時が来ちまったな」

 

※子供いっぱい

 

「むぅ・・・やはりわからん」

 

「こっちでもわかるように話して欲しいです・・・」

 

後ろでMk18をラビットから借り後方を警戒するブリーダーとちょうどラビットの後ろの辺りにいるスタンプは英語で喋っていた。

そんなくだりをしばらくずっとやっていた。

何事もなくただ進み続ける中で人はやはり退屈をしてしまう。

そしてどこかしらで刺激を求めるのが人間の性だった。

 

「ラビット、通訳頼む。 黒いの、ラビットとの出会いは?」

 

「黒いのって、私?」

 

「あ、それ聞きたいです!」

 

ラビットが通訳しながら話すと割と盛り上がり結局何やかんや交代しながら見張りや操縦をしていた。

 

 

 

 

夜になり一度野営をすることになり見張り役以外は仮眠を取っていた。

セラが体を揺すられ意識が戻り始める

目を開けるとフィリスが私の体を揺らしていた

 

「セラ、交代だ。 私ももう限界だ」

 

欠伸をし持ってきた毛布にくるまるとすぐに寝てしまった

私も準備して荷台から出る

荷物運搬用の荷車のため遺憾せん乗り心地はもちろん、寝心地も良くない

まだある眠気を覚まし荷台から出た

 

空を見上げると星が煌びやかに、まるで空の装飾品のように存在感を放ち輝いていた

 

そんな夜空は明るいが地上は暗く、あまり視界は良くない

慣れれば別だがそれまでに何か起こらないか不安である

 

ふと馬車を見上げるとそこには誰かが座っていた

星の光が影を作るように、その存在感を放っていた。

ラビットだ

 

中で寝ているみんなを起こさないようにゆっくり静かに馬車に登ってラビットの隣に座る

 

「星が綺麗ね・・・」

 

暗くてわかりづらいが頷いた気がする

静かに時間が流れていく。

こんな時間がいつまでも続けばいいと願うがそうは行かなかった

 

ラビットのPRC152がスタンプから受信したのだ。

 

『ラビット、お客さんだ。 ブリーダーを呼んでんでくれ。』

 

ラビットから敵襲の兆候があると聞き馬車の中で眠る全員を静かに起こして周り

全員が起きると馬車の後ろに集まった。

 

「よし、今の状況は前方開けた場所で前から大勢来そうな気配だ。 側面、後ろに回るのが少数。 」

 

地面に簡易的に状況を確認できるように描いた。

 

「賊の可能性が高いな。 夜襲で大勢の場合此方が圧倒的に不利だな。おそらく後ろにも回るだろう。」

 

「あぁ。 だが仕掛けられる前に気づけたのは良かった。 スタンプに感謝だな」

 

「ど、どうするんですか? あんな数捌ける自信ないですよぅ・・・」

 

「弓矢か飛び道具を防ぐために馬車は前方に対しての盾に使う。横は少数だ、先に片付けて前のを殲滅しよう。 スタンプ、ラビット、後ろをやってから脇をやれ。そのあと前に来い。他は待機だ。」

 

ブリーダーがMk48を構える。 PVS -15越しに敵が見える。

PEQ15の赤外線照準を起動した。

目に見えない光線がどこに銃口を向けているのがわかる。

 

ラビットがtac300にサプレッサーとCNVD、銃につける暗視装置を付けている際にセラが近寄った。

 

「ラビット、私ができることはない? 少しでもあなたの力になりたいの。 お願い・・・」

 

必要ないと意思表示するがセラは頑なだった。

 

 

 

すると考え込むと持っていたTEAM Wendy カーボンヘルメットをセラに被せた。

スタンプと同じGPNVGを下ろすとセラの視界が緑を基調に明るくなって見えた。

驚いてはいたがそういうものと理解しラビットを見ると差し出されたのはスポッティングスコープだった。

 

 

 

 

「よし、回り込んだぞ・・・」

 

1人の男が呟く。

事の発端としてはとある人物が馬車を襲撃しろと命令を下し総勢40名が駆り出された。

中には普通の冒険者や賞金稼ぎなどがいるがほとんどは裏で作られた部隊のようなものだった。

 

4人で行動し両脇を固めてから合図を出し最後に背後に回り4方から攻める作戦だった。

こちらは左から回り後ろに到着した2人だった。

向こう側から2人の仲間が合流して合図である灯を出そうとした時だった。

 

 

 

 

合図を出される前にその男の脳幹は吹き飛ばされたのだから。

 

 

 

 

 

「命中よ。」

 

ラビット、セラ、スタンプが並んで伏せ初弾はラビットの一撃だった。

距離にして200m。 風もなく狙撃するにはあまりに短い距離のため苦など感じなかった。

敵としても離れすぎるわけにはいかない。

その分移動距離が長くなるからだろう。

しかしこっちからすれば格好の的以外なんでもなかった。

 

ボルトアクションのライフルで静かに真後ろの4人組を殺害した。

 

「よし、向こう側は頼んだぜ。」

 

少し離れ右側面の敵を索敵した。

ラビットも少し離れ左側の敵を索敵する。

セラもいるため早く見つけることができた。

 

「ラビット、林の中にいるわ」

 

小声で伝えるとラビットが照準を合わせ4発撃ち込むとTAC300をスリングで吊るしMk18に持ち直した。

 

『ラビット、終わったな? 前に行くぞ。』

 

無線でスタンプが連絡を入れ移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ・・・合図が来ねぇ。 まさかやられたのか?」

 

「そんなわけあるかよ。 それならもっと騒いで馬車に動きがあるはずだろ?」

 

前方の林の中、というより森の入り口で40名近くの集団は来るはずもない合図を待っていた。

「馬車の連中は寝静まってる。 今行ってもいいくらいだ。」

 

「ならいいが、合図はどうする?」

 

「そのうち来るさ。 あんまりにもこねぇなら・・・」

 

そんな会話をしていると突如少し離れた場所から悲鳴が聞こえる。

 

「ひ、ひいぃ!?」

 

「なんだ? どうした」

 

「こ、こいつがいきなり死んだんだ!」

 

そこには心臓付近から血を流し倒れる者がいた

 

「・・・クソッ! 攻撃だ! 突撃しろ!」

 

その合図で待機していたものたちが動き始めた。

 

 

 

 

 

 

「どうだ、様子見の1発は」

 

「待て・・・動いた。 アホどもがやってくるぞ」

 

ナイトビジョンの先には横一列に広がり突っ込んで来る者たちだった。

その数おおよそ40名

 

「いい的だ。 俺は右から、ラビットは左をやれ。」

 

その場に伏せてバイポッドを立て射撃を始めた。

ラビットたちと違いMk48は大きな破裂音とマズルフラッシュを立てベルトリンクで繋がれていた7.62mm×51弾とリンクが排出しながらバースト射撃をしていた。

 

その音を聞いた彼女たちはあまりのうるさい音に耳を塞ぐ。 リーエに至っては地面に伏せるほどだった。

 

「なんだこれは!?」

 

「すごい音です!!」

 

バースト射撃は非常に効果的に突っ込んで来る人間たちに弾丸を撃ち込んでいた。 命中率の悪い軽機関銃でもやりようによってはよく当たるのだ。

 

対照にラビットはTAC300で端から確実に一人一人仕留め100mm圏内に入るとMk18に切り替えセミオートで射撃をする。

当然Mk48よりも精度がいい銃のためどんどん人影は倒れて行く。

 

スタンプはMk13mod7で遠距離攻撃隊を仕留めて行く。

 

負け戦と踏み引き返すものもいたが遠慮なく3人の銃弾が襲いかかる。

結果はあっけなく終わり敵方で動く人影はもういなかった。

近づかれる前に全員殺害してしまったのだろう。

 

「あぁ、しまった。 1人くらい生かしておくべきだったな。 情報聞くために。」

 

「探しに行くこう。」

 

「よしラビット、俺と来い。 スタンプは後ろで見ててくれ。」

 

2人が弾倉を買えると彼女たちを置いて行くように敵陣に向かおうとする。

 

その後ろをセラとセナが付いて行こうとするとブリーダーが「お好きにどうぞ」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

相手側は悲惨な光景が広がる。

死体と血の池が辺り一面を地獄絵図に仕立てていた。

 

立ち込める血の匂い、虚空を見続ける瞳、銃撃の際に千切れた体の四肢、剥き出しの内臓。

 

その光景に2人は吐き気を隠せず、顔を顰める。

彼女達も冒険者である以上は人の死体を見ることはある。

モンスターに食い殺された者、盗賊に殺され身ぐるみ剥がされた者、転落事故などにより死んでしまった者、そして自衛のため自分たちが殺した者。

 

 

これほどの大量の死体を前にどうかしないはずはない。

たとえ人死を見慣れていてもこの光景は余りにも残酷で狂気を感じるのだ。

 

しかし先を歩く2人はそんな中を平気で歩いている。

この2人にはそんなこと露ほども感じないのだろうか?

この光景を作った3人の男たちはある種狂っているのかもしれない。

 

 

「だめだ、みんな死んでやがる。」

 

ブリーダーが死体の一つ一つを調べている。

セラがラビットに何をしているか聞くと「生き残りを探している。」と答えた。

 

ブリーダーが死体を小突くように軽いトゥーキックをしていると、ある死体から呻き声が聞こえた。

 

「うぅ・・・」

 

「生きてるな。 ラビット、頼む。」

 

ブリーダーが死にかけの男にラビットを通じて尋問を始める。

 

「おい、起きろ。」

 

「ぐぅっ!? ぅぅぅ・・・」

 

「おっ、おい! あまり乱暴にすると死ぬぞ!」

 

「任せとけ。お前の雇い主は? 早く言え、失血死するぞ。」

 

「・・・ちゃ、チャー・・・ル・・・」

 

「あ? 聞こえねぇんだよ。」

 

傷口に体重をかけて踏みつけると叫び出し必至に叫ぶ。

 

「チャーチル!! チャーチルだ!! デール・チャーチル!!!」

 

出て来た名前はまさかの貴族のデールだった。

その名を聞いた2人が表情を怒りに染め上げる。

どうせ身勝手な理由で自分たちを殺しに来たのだろう。

 

「デール・チャーチル、聞き覚えは?」

 

ラビットが頷くと足を退ける。

一瞬助かったように見えたがブリーダーがMk48で数発撃ち込み男は絶命した。

 

その光景はセラは一度見たことがある。

初めて出会った時にラビットがしたことと同じだった。

 

容赦も情けもないその行動に恐怖を感じる

何事もなかったかのように帰ってきた2人が馬車へと歩を進めるのに気づき2人はそれについていった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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逃避行

いい感じに切ろうと思ったのに長くなってしまう・・・


現在ロッサムにに帰還し受付嬢に依頼達成を報告した。

ロッサムに帰還した際門を通ろうとしたブリーダーとスタンプは呼び止められてしまい現在身分証もといギルドカードを作成している。

格好はもちろんBDUではなくラビットが用意した現地の服装になり違和感がないようにしている。

ラビットが2人に付き添いセラたちは帰ってくるのを待っていた。

 

「どうしたものかな・・・これから」

 

ふとフィリスの言うことが耳に残る。

そう、今自分たちは狙われの身であり、いつどこで何をされるかわからない。

家か、街中か、ダンジョンか、ここでなのか。 間違いなく手段を問わない、それこそ周りを巻き込むことも厭わないだろう。

そんなことでうんうん唸っていると3人が帰って来た。

 

「何やってんだ?」

 

「これからのことだ。 どうしたものかとな。」

 

ラビットの通訳の元、会話をする。するとブリーダーがこんなことを言い始めた。

 

「しばらくは大人しくしてるか。この街を出た方がいいぞ。」

 

「なに?」

 

「さっき聞いたんだが、『最近ボヤ騒ぎや強盗が多いらしいからな』」

 

確かに何日かここにはいなかったがそんな噂など耳にしたことがない。 口ぶりからしても白々しいと言った様子だ。

 

「・・・何をする気なの?」

 

セラがラビットに向かって言い放つ。 それはどこか後ろめたい、聞き辛さそうにしていた。

 

「俺たちには俺たちのやり方がある。 それこそ野蛮ではあるが、これだけは認識してくれ。 『先にやってきたのは向こうだ』ってな。」

 

スタンプがラビットの代わりに言い放つ。といっても結局訳すにはラビットが必要だが。

 

「まぁそういうことだ。 心配すんな、こっちにも仲間はいる。 みんなでお邪魔させてもらうだけだ。」

 

「・・・そういえばラビットが生きてたの報告してなかったな。」

 

「帰った時でいいさ。それよりも、あのデールだったか。」

 

「やはり、始末するのか?」

 

「意見でも?」

 

「いや、それはいいんだが。 殺すにしてもやはり無謀じゃないか?」

 

デールは貴族故に当然護衛も多い。 選りすぐりの精鋭に魔導師団。 下手をすればおそらく軍も動くだろう。

さらには後ろ盾もいるため下手殺して刺激してしまうのは悪手だった。

 

「なるほどな。 ひとまず場所を変える。 お前の家でいいか?」

 

「え? まぁ、いいけど」

 

現在はギルドの広場の片隅で井戸端会議しており、セラの家へと場所を変えることにした。

 

「よし。 3組に分ける。 スタンプは2人、俺はコイツ、ラビットはそいつと行け。」

 

組み分けをして3組に分かれズレた時間に出発し違うルートで向かうことにした。

 

「なぜそんなことを?」

 

「・・・このギルド、だったか。妙にキナ臭え奴らがいやがる。」

 

「・・・! 奴らの回し者か・・・!」

 

「きっと追ってくるだろうから撒いてから目的地に行け。 あまり目立つな。場合によっちゃ・・・」

 

ブリーダーがローブの中でサイレンサーを装着したグロック19 Gen3のスライドを引き薬室に弾を込める。

 

「上手くやれ。」

 

スタンプとラビットが返事をするように頷く。

そしてセラたちも覚悟を決め気を引き締める。

 

「そんじゃあ皆の衆。 短い付き合いかもしれんが頼むぞ。」

 

最初に出て行くブリーダーとセナの2人が扉を開け外へと出て行った。

しばらく時間が経ち3人組のグループが出て行く。

 

「それじゃあよろしく頼むぞ。」

 

「お、お願いします!」

 

「まぁ、何言ってるかわからんが。 よろしくな。」

 

そして最後にラビットとセラの2人だった。

 

「ラビット・・・離れないでね?」

 

ラビットは肩を2回トントンと軽く叩いた。

きっと意思表示のうちの一つなのだろう。

 

「それじゃあ、行くわよ」

 

扉を開けて外へと出た。

外はから差し込む日差しを浴びながら歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

案の定、追尾が来た。

この手の状況は慣れてはいる、しかし問題があるとすればこの女が大丈夫か否かだった。

 

大通りを歩きながら指でジェスチャーし追尾がいることを知らせる。

伝わるか不安だったがちらりと後ろを確認してこちらを横目に頷いた。

どうやら頭が回るのかすぐに理解してくれた。

 

いまは大通りであるため仕掛けては来ないだろう。

もしくはただ見張り役だけであることもあるかもしれない。

なんにせよこちらのことを逐一掌握されるのは都合が悪い、なんとしてでも排除せねばならない。

 

路地裏に指をさして入ると追尾して来た2人組も足早に裏路地に入る。

しかしそこには2人の姿はない。 奥行きは少なくすぐに行き止まりだったのだ。

慌てた2人は近くのドアに逃げたと思い裏路地に一つだけあるドアを開こうとしたが開かなかった。

 

なんの店かわからないが裏路地の勝手口から入り鍵を閉めた。

店員が何か言おうとしたがブリーダーがグロック19を向け口元で人差し指を立てる。

店員も顔を青ざめ首を上下に振っていた。

一度外に聞き耳を立てるとドアをこじ開けようとしてるのかガチャガチャとドアノブをいじっている。

足早に店から出てその場を後にするとどうやら撒いたのかあっちこっちを慌てて探す2人組がどこかへと消えて行くのが見えた。

 

 

 

 

スタンプ、フィリス、リーエたちは人混みの多い市場で人混みに紛れている。

治安があまり良くないせいか押し売りのようなやり方をするのが多い。

 

「お兄さんこれ2つどうよ! お得だよ!」

 

ガラクタのようなものを押してけてくるように買わせようとする商人を押しのけながら3人はなかなか前に進めない。

尾行してきている者も同じだが捕捉が解けないという現状だ。

 

そこでスタンプは3方に分かれ近くに目的地を設け集結することにした。

 

「おい! あの黄色の看板を目的地に進め!」

 

ジェスチャーで『散開』と『集合場所』を設けることを伝えるとリーエはあたふたし始めるがフィリスが理解したのか手短に説明した。

 

3方に分かれたのが功を奏したのか追っては目標を絞れず、人の海に飲まれながら3人を逃してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

セラはラビットの手を引きながら走る。

運悪く通ったルートは人通りも少なく、どうしても目立つことになってしまう。

ラビットは自分より土地勘があるセラを頼りについて行くがどうしても追っ手を撒けない。

相手もプロだ、体力は勿論連携も取れるためどんどん追い込まれて行く。

 

「・・・! こっちよ!」

 

ラビットの手を引き裏路地に入る。

ここは入り組んだ構造で迷路のようになっている。

しかしそれだけ待ち伏せも多いリスクが大きい茨の道だった。

 

裏路地を潜るように進んでいるとラビットがセラを引っ張り止めた。

ちょうど目の前の角に差し掛かる時に止まった。

 

ラビットはセラと変わり前に出る。

そして曲がり角で止まりわざとブーツを地面に擦り砂利で音を立てた。

すると突然曲がり角の先から鋭い軌道のナイフがラビットを襲うが当然のように躱しナイフが石材の壁に深々と刺さると顔面に蹴りを当てた。

一撃で気絶した男が吹き飛ぶように倒れると動かなくなった。

 

角の安全確認を終わらせセラを呼ぼうとしたとき、『セラの背後から迫る男と目が合った』

ラビットがMk25を抜き照準を合わせるがセラが後ろ手で風の魔法を当てると男は吹き飛ばされ動かなくなった。

 

「私が戦えるの、忘れてない?」

 

小悪魔のようにウインクをするとラビットがMk25をしまう。

 

「さぁ、早く行きましょう。」

 

再びセラとラビットは走り出す。

まだまだ2人の行く手を阻むものは多い。



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起こってしまったこと

不定期更新すぎますよ・・・
素人ながらそれっぽい事を書いて見ました・・・


「・・・よし、変なのは居なさそうだな。」

 

スタンプが周囲を確認しセラの家へ近づく。

扉を開こうとドアノブに手をかけようとしたその時扉が開きブリーダーがいた。

 

「遅かったな。」

 

「あぁ、良心的な買い物をさせられそうになってた。」

 

すでにブリーダーが到着しておりスタンプ、フィリス、リーエも合流して家に入る。

 

「追跡は?」

 

「アレだけやって撒けてなかったらキツイな。」

 

「今のところここら辺にきなクセェのはねぇが時間の問題だな。」

 

「クソッ、俺の装備の殆どはあのハンヴィーに置いてきちまったからな。グロックぐらいしかねぇ。 」

 

「重アーマーと軽機関銃なんて潜伏には向いてないせいさ。」

 

スタンプとブリーダーが外を見てそんな会話をしているが通訳であるラビットがいないため彼女たちになにはを言っているのがわからなかった。

 

「・・・きっとデールのことだ。あの2人には特にマークをつけるだろうな。」

 

「違いないな。 だがあの2人なら大丈夫じゃないか?」

 

「いい雰囲気になって帰って来るかもしれないですよ・・・」

 

しばらく家の中で待機している時だった。

玄関の扉が強く叩かれる音がする。

ドンドン、ドン、ドンと区切るように叩かれる。

2人のオペレーターには聞き覚えがある。

ラビットが合言葉で使ったことがあるパターンだった。

 

扉を開けるとラビットとぐったりした様子のセラが入ってきた。

その様子に驚きを隠せない一同だが急いで扉を閉めた。

セラの右大腿部には治療のためコンバットガーゼが巻かれ根元には止血帯のよる処置が施されて居た。

 

 

 

〜数時間前〜

 

 

裏路地を駆け抜けている時の出来事だった。

 

「ラビット、もうすぐ着くわ。 案外大したことなかったわね?」

 

私の背中を守ってくれているラビットに向けて冗談めかしに言ってみるとラビットはこちらを向き頷いてくれる。

先ほどから何回か襲われてるけど難なく倒して進むことができる。

私とラビットはまるで一心同体のようなコンビネーションで連携が取れる。

セナとも長いけどラビットは不思議としっくりくる。

背中を確実に守ってくれる安心感があった。

 

「ラビット! また来たわよ!」

 

うじゃうじゃと出てくる追っ手に辟易としたその瞬間だった。

 

「ーーーっ!?」

 

突如セラの右足に痛みが走る。

痛みが走る右足に目を向けるとスリットの入った深いブルーのスカートに血が滲んでいる。

地面には矢が鋭く刺さっており原因がこれだと気づくのはすぐだった。

思わず膝をついてしまうが敵は目の前まで迫って来ている。

しかしラビットがMk25で相手を撃ち殺しセラを介抱する。

 

「ラビット、ごめんなさい、大丈・・・」

 

ふと目の前がぼやけ始める。 焦点が合わず視界がはっきりしない。

すると足の痛みが増し体が言うことを聞かなくなる。

溢れ出てくる汗と荒れてくる呼吸を制御する事が出来ない明らかに異常があった。

 

「ぁぁああああっ!!」

 

あまりの痛さに涙ぐみ声を上げて痛みを訴えかける。

思考が混乱し何も出来なくなる。そうやって待っているのは緩慢な死だった。

 

ラビットは急いで近くの扉を見つけ扉を開けようとするが鍵がかかっており開かない。

 

「こっちだ! 急げ!」

「女を捕まえろ!」

 

追っ手の大声が聞こえる。

このままではまた挟まれてしまう。 ドアノブをトマホークで破壊しセラを担いですぐにその中へ入る。

 

中の様子を確認し近くのテーブルに痛みで苦しむセラを寝かせた後扉を閉め近くにあった本棚で扉が開かないように塞いだ。

 

怪我をしたであろう場所を隠しているスカートを破き傷口をみると右大腿部には切られたような裂傷がありそこから血が流れ出てくる。

セラの様子を見て毒に近い性質があることがわかった。

幸い傷口は小さいもので数センチのものだがこれだけでこんなにも苦しむのは非常に強い毒かもしれないと判断した。

 

 

 

まずすぐ使えるようにプレートキャリアにゴムでつけた止血帯を使う。

ファストエイドポーチ、メディックポーチ、ターニケットポーチしまうことが多いが輪ゴムなどすぐ切れるもので携行する事でゴムを引きちぎりすぐに使うことが出来るのだ。

 

「ーーーーいぎぃ!?」

 

傷口の少し上で止血帯をつけ強く縛る。

セラが苦悶の表情で悲鳴に近い声を上げかけるがどうにか抑えた。

想像を絶する痛みに涙が止まらず、ぼやける視界に本能的に、助けを求めるようにラビットに手を伸ばす様子はあまりにも弱々しいものだった。

 

「ーーー!」

 

ふと動かした手に体温が伝わる。

ラビットが優しく包むように手を握ったのだ。

 

「らびっ、とおぉ・・・たす、けて・・・!」

 

涙ながらに名前を呼ぶとぼやける世界でもわかる、彼は顔を覗き込んでくるようして来た。

 

「大丈夫。 絶対助ける・・・!」

 

その声ははっきりと聞こえ明確な意思があり力強いものだった。

ギュッと離さないように手を握り返すと不思議と彼女の体から一瞬痛みが和らいだ。

 

「ぁっ・・・!」

 

ラビットは傷口に口をつけ毒物を吸い取り、吐く事を繰り返す。

間違って飲み込んでしまっても強い酸性の胃液によって毒蛋白を凝固分解するので心配はないが絶対とは言えない。

しかし傷口による服毒なら蛇などの毒と同等と踏みこの処置を行った。

血が出なくなるまで吸い取ると止血帯を緩め血を大腿部に送り出しまた毒を吸い出す。

 

『どこだ!!』

『こっちには来てねぇ! 最後はここのあたりのはずだ』

 

裏路地から怒号が聞こえる

 

処置が終わり他の菌による混合感染を防ぐ為ファストエイドポーチから消毒剤で傷口を消毒し緊急外傷包帯で傷口を覆う。

 

一通りの処置が終わろうとした時だった。

本棚で塞いだ扉が音を立てて割れて行く。

斧か何かで破壊をし中が覗けるほどの穴が開いた。

 

「居たぞ! 女は重症だ! 男を殺せ!」

 

どんどん扉が崩れて行く。

包帯を巻き終わり急いでMk25を抜き意識が朦朧としているセラを横抱きにして表口から外へ出た。

ーーーそれと同時に扉が壊された音が聞こえた。

 

 

 

 

表道から裏道、時には物陰に隠れてやり過ごす事を繰り返して漸くセラの家へとたどり着いた。

セラはうっすらと目を開けているが反応が薄い。

急いで表口を殴るように叩くとブリーダーが迎える。

そしてセラの寝室へ運び込んだ。

 

それに続くようにセナ達がやってくると信じられないといった全員が様子だった。

 

「セラ! ラビット、何があったんだ!?」

 

「セラさん・・・!」

 

「セラ・・・!」

 

ぐったりとしたセラは痛々しく、見る者の目を思わず背けさせる。

 

「ラビットッ! お前が付いていて何をしてたんだ!!」

 

フィリスが声を荒げラビットに摑みかかる。

するとリーエとセナが止める

 

「フィリスさん! ダメです!!」

 

「フィリス! ラビットのせいではないだろう、止めろ。」

 

「わかっているッ!! わかって、いるさ・・・!」

 

程なくしてフィリスの力が弱まりパタリと膝から落ちた涙が抑えきれないのか嗚咽をあげ泣き始めてしまう。

それにつられリーエも涙を流して泣き始める。

 

「泣くのはいいがまだ危機は去ってない。 それにそいつは死んでねぇだろ。」

 

ブリーダーの言っていることは彼女達には解らないだろう。

だが彼が言わんとしていることはこの場の全員がわかって居た。

 

「ラビット、できる処置は全部やったんだろ? あとは回復を待て。」

 

首を一瞬振って立ち去る。

ラビットが血清と水分が必要だと説明するとセナが前に調合しておいた解毒剤を取りに行った。

ラビットが立ち去る前にフィリスが呼び止める。

 

「ラビット。 その、さっきはすまなかった。」

 

それだけ聞くとラビットは立ち去った。

 

 

「よう。ラビット。」

 

外を見張っているスタンプが一声かけるとラビットもそれに応えた。

 

「ラビット、お前はよくやったよ。 治療してなきゃ今頃神様に会ってるさ。」

 

語りかけるように言うがやはり答えない。沈黙が彼の答えだった。

 

「お前のせいなんかじゃない。 気持ちはわかるが・・・ラビット?」

 

ふとスタンプがラビットをに顔を向ける。

その時スタンプは初めて見た。

 

 

 

ーーーラビットが『怒っている』と言う様子を。

 

 

 

 



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束の間の休息

大雨なんてクソ食らえ。腹いせに投稿をば


あれから数時間経つが動きはない。

外は日常を行き交う物で溢れ日が沈むにつれ人は消えてゆく。

 

スタンプはセナと見張りを交代し休憩するために奥に下がった。

 

「ブリーダー、いいか?」

 

「なんだ?」

 

「その前に、ラビットは?」

 

ブリーダーが向いた先には容体が整い安静に寝ているセラと心配そうにその手を握るラビットがいた。

 

「・・・聞こえないように話したい。」

 

ブリーダーが無言で頷き先ほどのラビットが『怒っている』様子を伝えた。

 

「・・・何をしでかすかわからんな。 交代で目を離さんようにしよう。」

 

「あぁ、できりゃあいつらにもさせてぇんだけどな。」

 

セナ達にもラビットから目を離さないようにしたいのだがラビット抜きでは会話もままならない現状そうするしかないのだ。

 

「もし連中が来たら?」

 

「そん時は返り討ち。 まぁなんとかするしかねぇさ。」

 

「だな。」

 

襲撃を受けた際の現状、少なすぎる武装を確認した。

ないものはないし、あるものでどうにかするしかない。

コップに注がれた水を一気に飲み干した。

 

 

 

 

 

夜になり外を出歩く人間はほとんどいない。

灯りは点けず家の中は真っ暗だ。

 

ある一室、寝息を立て今も目覚めぬセラに寄り添うようにラビットが座っている。

 

「・・・ラビット」

 

見張りを終えてやってきたセナもそばに座る。

 

「・・・ラビット。その、だな」

 

セナは彼を慰めたいのだ。しかしこういう時どういう風にこえをかければいいのか分からず、言葉が途切れてしまった。

 

「お前のせいなんかじゃない。 全力を尽くしてもどうしようもなかった。全てはデールのせいだ。」

 

どうにかしてラビットの気持ちを持ち直したい。その気持ちもあったがセナとしてはラビットやセラにそんな苦しみを味わって欲しくないのだ。

 

「だから、気を落とさないでほしい。 セラが今も生きてられるのはお前のおかげなんだから。」

 

ラビットの手を握りしっかりと彼を見据えると一瞬だけ、安心したように見えた。

すると今まで寝ていたセラが小さく声を出して目をうっすらとあけた。

 

「・・・ん、 うぅん・・・?」

 

「セラ? 大丈夫か、私がわかるか?」

 

「セ・・・ナ・・・?」

 

まだ体に異常があるのか手は震えているようだった。

 

「無理をするな。 今は寝てていい。」

 

小さく頷き首をぎこちなく動かすとラビットを見た。

 

「ラ・・・ビッ・・・ト・・・!」

 

涙を浮かべながらラビットに向けてを伸ばそうとするが上手く動かない。

痺れと倦怠感により体が動かないのだ。

何よりセラとしてはラビットの足を引っ張ってしまったという罪悪感があった。

「ごめんなさい」と謝ろうとした時だった。

ラビットが手を握り頭を撫で始めた。

セラは止め処となく涙を流し始める。何度も「ありがとう」と言いながらぐずぐずと泣いてしまう。

ラビットが優しく抱きしめてしばらくして泣き止む頃には疲れて眠ってしまった。

 

 

 

 

 

「えぇい!! 女ひとりまだ連れてこれないのか!」

 

ある一室、豪華の装飾が施された部屋に怒号が響く。

セラを捕まえるように命令し未だに事態が変わらないことに苛立ちを隠せなかった。

聞いた知らせはほとんど良いものではない。追跡に失敗したか仲間がまた殺されたなど殆どが被害の報告ばかりだった。

 

「おい、サシャ。 本当にできるんだろうな?」

 

デールは金で雇った殺し屋、ボウガンの達人であるサシャに威圧的に声をかける。

退屈そうにボウガンをいじりながら椅子に座るサシャは飄々と返す。

 

「大丈夫よ、あの娘は矢がかすったから。 今も毒に苦しんでるでしょうねぇ。」

 

口唇を釣り上げ不気味に笑う女は酷く

嗜虐的で残虐なことを厭わないことを連想させた。

 

「そろそろ家を襲うけど。さて、どう動くのかしら?」

 

その日は月も見えない新月の夜だった。



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襲撃

深夜、腕時計で確認した時刻では既に日を跨いだ頃だった。

灯りもない真っ暗な外には一見すれば人はいないだろう。

しかし暗視ゴーグルを装備し監視をしていたスタンプが人影を見つけた。

この世界ではこの時間に出歩くのは危険であり誰もが出歩くことはない習慣がある。一般的に言えばの話だが。

 

「ブリーダー。 お客さんだ。」

 

無線機のプレストークスイッチを押しブリーダーを呼び出す。

なるべく声が出ないように話しかけると返事が来る。

 

『敵の規模は?』

 

「見える範囲じゃ6〜8、散らばって行く。武装は見えないがこの様子じゃさらにスナイパーがいるだろうな。」

 

『了解。 そのまま監視を続けろ。』

 

外には闇に紛れるように黒い外套を身に纏い囲むように広がってこちらににじり寄る者たちだった。

それぞれまだ武装が見えないため断定できない。

もしかすれば獲物を必要としない魔法使いであることを考慮すれば警戒を厳にし先制攻撃を防ぐことだった。

 

「さぁ、来るなら来な・・・!」

 

スタンプはローブに隠していたMk16 PDWを向けいつでも撃てるように構えた。

 

『スタンプ。』

 

ブリーダーからの通信だった。

どうやらセナが得意魔法であるエネミーサーチを使い周辺を調べた結果二階によじ登るのが2名、裏手に2名そして玄関と窓から2名づつ入ってくるようだ。

 

「了解。 俺は玄関を片ずける。」

 

『俺は二階から来るやつを片付ける。 ボウガン使いと剣士を下に送る。』

 

ゆっくりとフィリスとリーエがやってきたのを指を指して指示をすると頷いて別れた。

 

ふと、扉のノブが動いたのをスタンプは見逃さない。

音を立てずゆっくりとした動きは見逃しがちだがそうはいかなかった。

 

サプレッサーを取り付けたMk16 PDWを構えてセフティからセミオートに切り替える。

 

「ブリーダー、お客さんだ。 『こっちから出向いても?』」

 

『いいぞ、やれ。』

 

先制攻撃の許可を得てスタンプがゆっくりと部屋の隅に移動する。

こじ開けた扉から2名は入ってくると扉を閉めた。

 

サプレッサーにより小さな音で銃声を響かせる。

敵に向かって撃ち始め3発4発と撃ち続け入ってきた者は地面に力なく倒れた。

 

 

 

 

同じ階、フィリスは裏口で敵を待っていた。

フィリスの経験、本人の天からの贈り物と取れるその野生の勘は外に来ていることが正確にわかった。

わずかな衣摺れ、足音を聞き逃さなかった。

 

あえてフィリスは鍵を開けておくと案の定侵入して来た。

フィリスはいつも使っている長剣を仕舞いナイフを抜くと開かれた扉に隠れられるように移動した。

開かれた扉の陰に隠れていると2人入ってきたのちわざわざ扉を後ろ手で閉めてくれた。

フィリスは音もなく後ろからナイフで静かに、同時に倒した。

 

 

 

 

 

廊下の窓から入ってきた2人はゆっくりと廊下を歩く。

すると一人の足に何か触れた。

非常に細い糸だった。

それに触れた瞬間音がなる。その音は花瓶が割れた音で驚きのあまりそちらを見た。

花瓶が割れた瞬間だった、既に一人はボウガンの矢によって貫かれ死んでいた。

仲間が死んだことに気づいた頃には暗闇に紛れて狙撃するリーエを見つけたがもう遅かった。

声を出す前にリーエにボウガンで撃たれ意識を手放した。

 

 

 

 

『ブリーダー。 下の階はクリアだ。』

 

「了解だ。 こっちも入ってきた2人を捕まえた。第2波に備えてそのまま警戒してくれ。」

 

無線通話を終え入ってきた2人をしばりあげる。変に大声を出されないように猿轡をした。

 

「出発するか・・・待つか。」

 

日中に出れば人目もあり奴らも易々と手は出せないだろう。

しかし陽が出るまでは時間がありすぎる。

第2波か捜索隊を編成され再び責められるだろう。

 

暗闇の中で歩けば言わずもがな、襲われる可能性が非常に高かった。

視界も悪く負傷者1名を連れ出すのは厳しい状況だった。

 

「とりあえず聞くこと聞くか。 ラビット、頼む。」

 

気絶している外套の人物を一人起こすとブリーダーが捕虜の片割れに尋問を始めた。

 

「お前らの部隊の規模、動き、そして目的を言え。 曖昧な情報は嘘とみなして殺す。」

 

「だ、誰が話すかよ。」

 

無言でグロック19を抜きもう一人の人物の頭に1発撃ち込み体に2発撃ち込んだ。

サプレッサーでくぐもった音に変換された銃声は静かに男の命を刈り取る。

おそらく何も分からぬまま死んだに違いないだろう。

 

「ひっ。」

 

「早く言え。 俺は気長に話を聞く気なんてねぇ。」

 

「聞いた後殺す気だろう!?」

 

「お前が話さなくてもどうせ殺す。 だが情けをかけないこともない、話せばな。」

 

しばらく、静寂が続きラビットがMk18を向けると慌てて話し始めた。

 

「俺たちは8人だ! しばらく経っても家から出なかったら後続が来る!」

 

「スナイパーは? 後続の規模。」

 

「見張りで2人、後続は6人だ!」

 

「お前らの所属。」

 

「俺たちは傭兵だ、殺し屋のサシャってやつに雇われた。ヤツも後続で来てるはずだ!」

 

「目的」

 

「俺たちはあの女をさらうことだ、あの女の方は知らない!」

 

「そうか。もう十分だ。」

 

ブリーダーが顔面に蹴りを入れるとその男は気絶したのか白目を剥いて動かなかった。

 

「ラビット、連中が増援を呼ぶ前に逃げる。 お前がそいつを運べ。」

 

無線でスタンプに出ることを伝えるとすぐに全員集まった。

 

「今から外を突っ切る。 今なら一個大隊に襲われることなく出られる。」

 

「しかし・・・」

 

「ここにいても死ぬだけだ。 何かいい案が?」

 

全員が黙り込み静かになるとブリーダーは続ける。

 

「決行するぞ。 ボウガン使いと剣士で前衛だ。スランプはバックアップ。 俺とメガネで後ろを見る。 ラビット、そいつを運べ。」

 

ブリーダーが指示をすると全員が動き始め準備が整い裏口に着く。

 

「扉を開いたらすぐ突っ切る。 ボヤボヤしてると置いていく。」

 

リーエが合図を受け扉を開くとフィリスとスタンプが外をクリアリングする。

 

「いいぞ。」

 

フィリスが小声で言い全員が順々に出ていく。

 

「どこまで逃げる?」

 

「ラビットのハンヴィーの位置まで行く。 一応宛はある。」

 

セナの問いかけにブリーダーが答えながらついていった。

 

しばらく街路を歩いていると案の定、前から2人、後ろから2人挟むようにやってきた。

 

「さあ、行くぞ。」

 



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宛先

自分で書いておいてあれだけどガバ多くて笑うwww


現れた新手に対応をしながら道を進む。

敵も学習したのか銃の射線上に出てこなくなってきた。

 

「このまま正門まで行くぞ! 突っ切れ! 走れ走れ走れっー!!」

 

フィリスの号令に全員がペースを上げて進む。

ふと路地裏の道から出てきた敵がフィリスに剣で不意打ちをかけるが剣士としては何枚も上手のフィリスには通じずあっけなく反撃を食らわせた。

 

「やるな、あの剣士。」

 

ブリーダーがフィリスの腕を称賛しつつ後方から迫る敵に対しMk18を撃ち続ける。

そしてついに正門までたどり着いた。

 

「止まれ! こんな夜更けに何をしている!」

 

「火急の用事だ! 小口でいいから開けてくれ!」

 

「通りたくば用件を言え!」

 

2人組の門番にフィリスが対応するがあまり融通が効かないせいか停滞してしまう。

 

「殺し屋に狙われてるんだ、私たちが外に出ないと街に被害が出る!」

 

「出鱈目を言うな! 貴様ら・・・」

 

門番が槍を向けようと構えを取ろうとした時、スタンプが屋根にいたボウガン使いをMk16PDWで撃ち殺すと屋根から地面に落下し死体は無残な形になった。

 

「・・・信じてもらえたか?」

 

「・・・」

 

門番が突然起きたことに対応できず呆気にとられているとブリーダーが出てきた。

 

「ラビット、こう伝えろ。 『通さねぇなら奴みたいにしてやる。』ってな。」

 

本来武力行使や脅迫などによる突破は現地民の敵愾心を刺激してしまうが仕方ないと判断した。

それを聞いた門番が青ざめ急いで小口の扉を開き全員を通した。

 

 

 

 

 

 

 

「やるわね・・・」

 

数人の部下を引き連れ閉ざされた小口を遠目で眺めていた。

 

「あの男たちが持っているのはなんなのでしょうか?」

 

「さぁ? これと同じようだけど、あっちのがよさそうねぇ。」

 

部下の質問に持っているボウガンをいじりながら答える。

 

「さぁ、後を追うわよ。」

 

部下を引き連れ正門へと向かって行く。

獲物を追い詰める為に。

 

 

 

 

 

 

「よし、敵はいない。」

 

周辺をクリアリングし安全を確保すると大急ぎで全員ハンヴィーに乗る。

ブリーダーが運転しスタンプがM2、そしてMk19擲弾銃にラビットがついた。

 

「出発だ、行け!行け!」

 

「なんだ、これはぁ!?」

 

「うわっ、押しつぶされるっ!」

 

「うぅ・・・ぅぇ」

 

ハンヴィーのエンジンをかけその場を離れる。

ブリーダーの運転する中初めて乗るセナやフィリスが車内で振り回されリーエが吐きそうになるなど破天荒なことがあった。

 

走り抜けるハンヴィーに襲いかかるものなどおらず順調に進む。

ブリーダーの宛に向かって。

 

 

 

 

 

 

 

 

門番を殺害し追跡を続けていたが走り去るハンヴィーには追いつけなかった。

 

「サシャさん。 どうしますか、馬で追いかけますか!?」

 

「慌てちゃダメよ。 それに・・・わかりやすく残してくれてるじゃない。」

 

その場にしゃがみこみハンヴィーの軌道を触れる。

土に非常にはっきりと残っておりしばらくは消えることがないだろう。

 

「山の中なら私の十八番ね・・・」

 

不気味な笑みを浮かべてボウガンの矢を装填した。

 

「すぐに本隊から強襲隊を編成しなさい。 100人くらい。」

 

「100!? 戦力が過剰すぎます!!」

 

「最近40だったかしら? 前線に送って帰ってこなかったのだけれど?」

 

「そ、それは・・・」

 

「つべこべ言わずに早く行きなさい。」

 

威圧するように声色を変えると「は、はい!!」と部下は情けない声を出して伝令に向かった。

 

「さぁ、楽しませてちょうだい・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

現在は森の中を進んでいる。

夜の森は非常に視界が狭く、静かで、冷たいものだった。

 

「9-0、9-0。9-4、9-4。 連絡通話を行う。オーバー。」

 

車載されている遠距離無線機を使い周波数を合わせて連絡を取り始める。

先に相手を呼び出し、自分の呼び名、そして用件

 

『9-4、こちら9-0。 通信は良好だ。』

 

「今から帰投する。 20分後にハンヴィーで通る。 ラビットと一般市民4名も入る。一般市民1名が重体、搬送要求をする」

 

『了解。 無事帰ってこい。』

 

「それと、数時間以内に捜索隊か襲撃隊が来るかもしれない。 拠点を防衛線にしたい。」

 

『迎える準備をする。アウト。』

 

通信を終えて中の人員はだいぶ落ち着いてきていた。

寝る者、考え込む者、外をぼぅっと見ている者、それぞれが先ほどの戦闘で消耗してしまったせいだろう。

 

しばらく悪路を進んで行くとそこには取り残された砦があった。

セナの記憶ではここはかつて戦争があった場所であり砦や他の物が残置されているのだ。

しかしモンスターも多く危険なため近寄るものはいなかった。

 

しかしこの砦は不思議と明るい。

松明の火か光の魔法でも使っているのか魔道具の照明なのか、いずれにせよ人がいることが確かだった。

 

「門を開けてくれ! 門だ!」

 

門が開け放たれるとハンヴィーは中に入り門は閉まった。

松明で照らされている光景は異質でラビットたちと同じ斑点柄の服や茶色の目が錯覚を起こしそうな服を着ている男たちが慌ただしく荷物や銃を持って見張り台や屋上に登っている。

すると数人のが走ってこちらに近寄ってくる。

2人は担架を用意していた。

 

「ブリーダー! 屋上に武器弾薬、見張りを配置した!」

 

「よし、マーチェスはどこだ?」

 

「作戦室だ!」

 

「よし、黒髪の女が毒物で重体だ、見てやってくれ!」

 

搬送の準備も住んでいたのか担架に乗せられセラは奥の病棟まで連れていかれた。

 

「ラビット、其奴らも連れてマーチェスのところに行く! 付いて来い!」

 

大急ぎで全員がブリーダーについて行く。

忙しなく動く者とすれ違いざまに注目を浴びるがそれも気にせず作戦室へと走る。

 

木製の扉を開くとそこには髭を濃く生やす歴戦の戦士といった風格を持つ男とその数人の者が机上に広げられた地図を囲んでいた。

 

突然入って来たブリーダーたちに驚き全員がライフルを構えがブリーダーと分かるとすぐに銃を下ろした。

 

「マーチェス!」

 

「ブリーダー、スタンプ。 そして久しぶりだな、ラビット。 しかし敵が来る、再会の喜びは後だ。」

 

マーチェスと呼ばれた男は地図を指差して示す。

 

「お前たちも防衛戦に加わってもらう。 補充をして3人は直ぐA塔に行け。」

 

「サー。民間人はどうしますか?」

 

「今はどうにもできん。 ここで待機していろ。」

 

その節を伝えると異世界組の彼女たちは不満げにしていたが3人はすぐにそこを出た。

 

A等に着くと3人配置されておりいつでも来いと言わんばかりに構えいる。

 

「よぉ! 早かったな!」

 

「ラビット! 無事でよかったぜ!」

 

2、3言葉を交わしヘルメットにつけている暗視装置をマウントを使い使用位置にし銃を構える。

 

「お祭りが始まるぞ。」

 

「砦がドンパチ、賑やかになるぞ。」

 

目の前に広がるのは闇と静寂だった。

 



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籠城戦

始めてこの作品の情報見たけど結構みんな見てくれてて気持ちいい・・・ぶっちゃけ3人いればいいくらいの気持ちで書いてました。
これからもよろしくオナシャス!


暗殺者のサシャは要塞化された砦を見ている。

砦の城門は固く閉ざされ見張りの塔に立っている数人、各人が見えない球を弾き出す武器を持っている。

しかも松明を立てていないのか月明かりしか光源がない。 サシャたちにとっては都合がいいが何かきな臭い。

距離で言えばボウガンでも近づかなければ見張り台にすら当たりそうにない。

剣などの接近武器では間違いなく殺されに行く様なものだった。

盾も貫く武器の威力は底が知れない。

 

「どうしようかしらねぇ・・・?」

 

本来ならば誘拐など引き受ける気は無かったが相手が戦闘の達人並みの戦闘力と聞きラビットを追跡していた。

黒髪の男とローブの男を生きたまま連れて来いという命を受けるが予想外の展開に打開策が見当たらない。

 

「サシャ様。 総勢168名配置完了です。」

 

後ろから部下が連れて来たデールの手下と部下の混成部隊の編成完結の節を伝えるが内心これでも足りない気がした。

500、1000ほど連れて何人生き残るのか見ものだが今は自分を含め170も行かない。

正面突破なら確実に全滅は免れないだろう。

 

「まともに行くのはダメね。」

 

「そうすると、何か策が?」

 

「それを考えてるのよ。 ・・・そうだ、イイコト考えちゃった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラビットたちがA塔で見張りをしていると城門の向こうに生い茂る森から誰かが来た。

正体は男で数十人近く、一見すれば旅のものであったり冒険者などの集団に見えた。

 

「ボーダーラインアクチュアル。こちらボーダーラインA塔。 彼我不明の集団が城門に近づいてくる。 人数は8名。 対応を、オーバー。」

 

A塔に見張りで付いていた隊員が無線機を使いマーチェスと各員に連絡を取った。

 

『こちらボーダーラインアクチュアル。 武装を確認しろ。』

 

「武装は確認できない。」

 

『・・・監視に徹しろ。いつでも撃てるようにしておけ。』

 

「了解。 アウト。」

 

「どうしろって?」

 

「まだ撃つな。 敵かわからん。」

 

「人知れぬ物騒な森の中こんな時間に? まず敵に違いねぇ、そう見るのが無難だ。」

 

「ボーダーラインアクチュアル。 各棟から数名地上に回したい。」

 

『各棟は3名ずつ地上に回せ。』

 

「了解。 ラビット、タントとディックを連れて地上に回れ。」

 

ラビットと隊員2名が走って地上の門まで走っていく。

 

「おい、もう止めないと射角が取れない。」

 

スタンプが狙いをつけている男がそろそろ狙えなくなる位置まで迫って来た。

 

「そこのお前ら! 止まれ!!」

 

隊員が英語で停止を呼びかけると声がしたことに驚いたのか集団はその場で一瞬止まるが城門の目の前まで来てしまった。

 

ドンドンドンと数回城門が叩かれ拳が木でできた門を響かせる。

 

「こんな夜分に申し訳無い、私たちは旅の商人だ! 今晩だけでいい、中に入れてくれないか!」

 

しばらく何回か同じことを繰り返していると地上部隊の配置が終わる。

 

「ラビット、そいつが何を言っているのか教えろ。」

 

ラビットがそのままのことを伝えるが相手の言葉は信用に値しない。

 

「敵の偵察かもしれない。」

 

「ラビット、帰れと伝えろ。」

 

ラビットが引き返せと言った節で強めに言うが自称商人は引かない。

 

「それはできない! モンスターがもうすでにそこまで迫っているんだ! 頼む、持っているものを全て差し出す! 開けてくれ!」

 

男が大声で言うがもちろん交渉など応じない。

 

「絶対爆発物で城門を吹っ飛ばすだろうよ。 俺が聖戦者ならそうする。」

 

「城門組、城門から離れて監視しろ。」

 

ブリーダーの指示で少し離れたところで待ち構える。

男が持っていた荷物を城門に置くとすぐさま駆け出し離れていった。

すると荷物は大きく破裂し耳をつん裂く音を鳴らす、当然中には爆裂系の魔法石と呼ばれる魔力を流し爆発させるものだった。

 

「やっぱりか! 城門を壊しに来やがったッ!!」

 

「ハンヴィーを城門へ!」

 

地上で待ち受けていた数人が反撃に撃ち始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「あら、案外あっさり開いちゃったわねぇ?」

 

あっさりと開かれた城門につまらなそうにつぶやくとデールの部下たちは門へと突入した。

しかし爆発で舞い上がった煙と砂塵の中から放たれた銃弾が命を刈り取る。

5.56mm弾で体を貫かれすぐに動かなくなる。

弓は避けれても音速で飛ぶ高速弾を避けることなど人間業ではないのだ。

 

サシャはすぐに身を屈めてると近くの木に銃弾が着弾する。

すぐに銃撃は止み再び静寂が訪れた。

 

「これはだめね・・・開いたのはいいけど、近づけないわ。」

 

すぐに無理だと悟ると違う

方法を模索した。

門を開いたのはいいが近づけない。

包囲するにもこの人数ではできない相談だった。

 

「やっぱり・・・囮で行くしかないわね・・・?」

 

 

 

 

 

 

「来たぞ! 今度は40〜50以上いる!」

 

「撃て撃て! 近寄らせるな!」

 

今度は地上だけでなく見張り台も参戦し軽機関銃と狙撃、そして地上部隊のライフルによる銃撃が始まる。

 

奇声に近い声を上げながら突撃してくる敵を片っ端から銃撃するがお互い引かない。ついに場内まで到達されてしまう。

 

「防衛線を下げる! ハンヴィーの位置まで下がれ!」

 

数人がその場で応戦し数人が下がることを繰り返しながらその場を後退し二次線であるハンヴィーの位置まで下がった。

 

ラビットと隊員の一人がハンヴィーに搭載されたM2重機関銃とMk19擲弾中で応戦すると押し返したように城内へ侵入した敵のほとんどを倒した。

 

「見張り台! 状況は!?」

 

『A塔応戦中!』

 

『B塔同じく!』

 

『C塔もだ!』

 

『D塔側もいやがる! 囲まれた!』

 

響く銃撃の中聞こえる通信はあまりいい状況ではなかった。

こちらの戦闘員はおおよそ40名ほどで厳しかった。

しかし引いてばかりではない。M2とMk19の高火力で正面の敵はほとんど倒し残りは外の敵だけになった。

 

1時間に渡り繰り広げられた攻防戦は敵が撤退したことによって終わった。

 

「・・・終わったのか?」

 

「各部隊被害報告!」

 

各棟と地上部隊の被害はなかった、しかし最悪の知らせがやってきた。

 

「こちら医務室組! 敵が入ってきた! 数は10! 繰り返す、医務室に敵がいた!」

 

医務室を守っていた数人組の班だった。気づかぬうちに侵入され医務室を狙われた。

 

「待ってろ! すぐに応援を送る。」

 

『マズイ! マシューズが撃たれた! やつら女を攫った!』

 

その通信を聞いたラビットが目を一瞬見開きハンヴィーから一目散に先回りのルートへと走った。

 

「待てラビット! 一人で行くな!」

 

「待て! 第2波がくるかも知れない! 持ち場を離れるな!」

 

すると再び城門へ向け突撃する大勢のものが見えると隊員たちは反撃を始めた。

 

 

 

 

 

 

「あらあら、意外とおバカさんねぇ?」

 

サシャたちは他の人員を囮に城壁へ不可視の魔法を使いたどり着くと壁を壊し、建物に侵入し、セラを攫った。

セラの手首を拘束するものは魔封じの結晶を仕込んだもので魔法使いにとっては非常に厄介なものだった。

サシャたちが襲撃をした医務室は2人しかおらず、反撃を受けた際に半数を減らしてしまったが結果として目標の片割れであるセラは確保した。

 

 

そして入った穴から出る直前、銃撃がサシャたちを襲う。

部下が3人殺され撃たれた方向を見るとローブの男がいた。目標の片割れ、ラビットだった。

 

「あら、こんばんわ。 お姉さんと遊ばない?」

 

挑発気味にセラを盾に穴を抜ける。

ラビットはサシャの部下を銃撃し後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・クソ! ブリーダー! やつらの狙いはあの女だ!」

 

「チッ、やられた!」

 

スタンプの言葉に悪態をつきながらMk48で撤退して行く敵に撃ちまくる。

 

「マズイ! ラビットの野郎一人で行きやがった!」

 

「マーチェス! ラビットが1人で出て行きやがった! 追跡する!」

 

『待て! 追いかけるな! 一度部隊を編成して送る。 各分隊の長は司令室へ来い!』

 

硝煙が立ち込める戦闘は結果的にブリーダーたちの敗北になってしまった。

 



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山岳での死闘、その先に

おほぉおおおおお!!筆が進む進むぅ!!!


サシャたちは山を駆け抜けている。

セラを攫い現在はもう20名ほどしか残っていない部下を引き連れていた。

 

「貴方達3人はデールに届けて来なさい。 あとは私と露払いよ。」

 

「「「了解!!」」」

 

サシャは部下にセラを任せ自分を含む残りでラビットを迎え撃とうとした。

 

「さぁ、兎狩りよ。」

 

サシャがボウガンに矢を装填した。

それはまるで戦いを遊びと取るような、狂った言葉と笑顔を兼ねていた。

 

 

 

 

 

司令部や場内を動き回る状況にセナ達は混乱していた。

通訳であるラビットがいないためどうしようもない、しかしただ事ではないということがわかった。

 

「おい・・・おい!」

 

声をかけられそちらを向くとスタンプが陰でこちらを手招きしていた。

 

一瞬周りを見て3人がスタンプの元へ立ち寄るとスタンプがそのまま案内するようにそこを離れる。

そして着いた場所はサシャ達が潜り込んで来た際に使った穴だった。

スタンプが持っていたライフルケースをリーエに渡した。

 

「いいか、ラビットに渡して来い。 ラビットだ、わかるか? 俺らは、動けない。その頃にはラビットは死んじまう。」

 

身振り手振りでラビットに渡すように伝えると3人も理解できたのか頷いた。

 

「これはお前らが使え。」

 

スタンプはAN/PRC152を渡した。

使い方は見て学んだのかセナがありがとうと言いヘッドセットをつけ装備した。

 

「頼むぞ!」

 

去って行く彼女達を見送りスタンプもその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラビットは暗視装置を使い辺りを見回す。

敵が4名前方に広がるように待ち伏せをしているのを見つける。

風に乗った衣擦れの音、僅かに潰れた植物、周囲に溶け込めきれていない偽装。

確かに普通の人間に比べれば場数が違うのかも知れないが所詮素人技のようだった。

 

ラビットが先制攻撃に1人Mk18を向けて射殺しようとした時だった。

突如横から放物線を描きながら飛んで来た矢がMk18に勢いよく刺さった。

射たれた方向を見るが誰も見えない。

Mk18をスリングで吊るし一度その場を離れるように避難した。

 

「さぁ、遊びましょ?」

 

サシャが合図すると息を潜めていた数十名が立ち上がりラビットを追った。

 

 

 

 

 

 

 

「リーエ、待て。」

 

セナが前を進むリーエを止め屈むと数メートル先に数十人の男達と1人のボウガンを持った女がいた。

 

 

山の奥に進みながら周囲を確認すると足音が僅かに聞こえる。

どうやら追っ手がいるようだ。

 

「結構いますね・・・」

 

「リーエ、それは私が持とう。 ここじゃ私はあまり役に立ちそうにない。」

 

フィリスがガンケースをリーエから受け取りリーエがボウガンに矢を装填する。

 

「セナ、ラビットと話せるか?」

 

「やってみよう。」

 

セナヘッドセットのPTTスイッチを押して声をかけてラビットを呼び出すとラビットから返事が帰ってきた。

どうやら追っ手が多く動きが取りずらいようだ。

 

「わかった、私たちは背面から仕掛ける。 待っていてくれ。」

 

PTTスイッチを切りセナ達はラビットの救援のため山を登り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなかやってくれるじゃない。 楽しいわぁ・・・!」

 

先程から罠や不意打ちで仲間がどんどんやられていく。

置き去りにされたMk18を囮に手榴弾を繋げておくブービートラップやMk25の銃撃、接近攻撃など様々な方法で数が減らされていく。

やはりこの男は只者などではない。

 

「さぁ、もっと楽しませてちょうだい?」

 

不気味に笑いながらサシャは魔法でその姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

ラビットはMk25をプレスチェック、チャンバーに弾が入っているか確認した。

先ほどの戦闘でサプレッサーが壊れ、マガジンもあと入っているのを含め二本と数発あるだけだ。

手榴弾もあと一つだけ残り装備はライフルを無くした時点で非常に劣勢だった。

 

不意に、後ろから剣を振り下ろされ反応して避けようとするが剣戟がラビットの着ていたプレートキャリアを切り裂き中のバリスティックプレートがむき出しになる。

 

Mk25で胴体付近に3発撃ち込むが相手が興奮状態のせいか9mmではストッピングパワーが劣るせいで止められず、再び剣が振り下ろされ切られかけるが瞬時に出したトマホークで防ぎトドメに頭に2発撃ち込んだ。

 

弾が切れホールドオープンした時だった。2人の敵が襲いかかって来た。

Mk25を装填していたら間に合わない。

トマホークで防いでも捌き切れない。

そんな絶望とも取れる状況だった、しかし突如ボウガンの矢が1人を射抜く。

驚きのあまりラビットから目を離しボウガンの射撃位置を探った一瞬が命取りだった。

ラビットがトマホークを投げ見事心臓を貫いた。

 

無事助かりMk25をリロードしトマホークを回収した。

すると少し離れたところからセナ達がやってきた。

 

「危なかったな、ラビット。」

 

借りを作ったと言わんばかりの表情でいうセナとボウガンで助けてくれたリーエ、そして代わりのライフルを持って来たフィリスと合流し撤退を決意した時だった。

 

ラビットがセナを庇い押し倒すと気がつけば近くに木にボウガンが刺さっていた。

フィリスは急いで身をかがめるとリーエがボウガンを装填し反撃した。

 

リーエが放った一本の矢は放物線を描きサシャの頰を掠めた。

そしてサシャが放った矢はリーエのボウガンの弦を切り裂き地面に刺さった。

 

「なかなかやるじゃない・・・!」

 

頰から垂れる血を手で拭いボウガンを再装填した。

 

「ラビット! これを!」

 

フィリスから投げ渡されたガンケースにはMk12 MOD1 SPRが納められおり急いで装填しその方向に数発撃ち返した。

すると一瞬女の叫び声が聞こえた、サシャが脇腹と足に銃弾を受けたが反撃に再び矢が飛んでくるとラビットの腕に刺さってしまう。

 

勢い余ってライフルを飛ばしてしまった。

するとセナのエネミーサーチに敵が4名かかった。

残りの取り巻き、そして魔法が解け姿を現したサシャだった。

 

「3方向からくる! フィリス! ラビット!」

 

フィリスが剣で1人を倒し、ラビットが2人をMk25で殺した。

そして敵のサシャがボウガンに矢を装填し始める、爆裂の魔法石を付与した特製の弓だった。

 

「じゃあね・・・楽しかったわよ!!!」

 

「リーエ!!」

 

ラビットがMk12をリーエに投げ渡し慌ててリーエがキャッチした。

 

「狙いを合わせて引き金を絞れッ!!!」

 

「終わりよ!!!」

 

サシャが装填を終わらせトドメを刺そうとした時だった。

 

鬱蒼とした風が無くなった山奥の森に星の灯りが差し込むとリーエが覗く光学照準器によって映し出される高倍率の光景の先にサシャがいた。

長年培って来たボウガンの腕、夜目が効く目、スナイパー向けの正しい姿勢、正しい引きつけ、そして引き金を絞り、銃弾は放たれた。

 

弾丸は高速で銃口から飛び出してまっすぐ狙い通りにサシャの頭を貫く。

頭を弾丸で貫かれ脳漿が飛び散りサシャは仰け反り倒れ込もうとしたが、ボウガンの引き金が、引かれた。

 

ボウガンの射線が真下を向き爆裂の魔法石が付与された弓が地面に向かって放たれる。

何重にも付与を施された魔法石の矢の威力はサシャの死体をも消しとばし、周りの木々をなぎ倒すほど強い勢いの爆風にラビット達は

襲われた。

 

爆風に見舞われながらも全員立ち上がり月もない空を見上げた。

腕のケガを押さえるラビット。

土埃を払いながら立ち上がるセナとフィリス。

そして泥や血、土埃も払わずに力強くMk12を握りしめて立っているリーエ。

 

勝ったのだ。

 

ラビット達はあの激闘の中闘い、ついにサシャ率いる暗殺部隊を全滅させ、勝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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作戦準備

はやく、はやく突入シーンかきたぃい!!!


ラビット達がサシャの暗殺部隊を殲滅させ帰路を辿る。

朝焼けが彼らを照らすと同時に複数の影がラビット達に迫ることを感じたがそれはラビットの仲間達、飛び出していったラビットとセナ達はの捜索隊であった。

 

「9-0、9-2。ラビットを見つけた。 保護し、帰投する。」

 

仲間の隊員がマーチェスに通信を入れラビット達を保護し、囲う陣形で帰投を始めた。

何事もなく砦の拠点に帰るとあらゆる隊員から罵声を浴びながらもよくやったと賞賛の声が上がる。

ブリーダーとスタンプにはサムズアップされながら司令室に連れていかれた。

司令室ではマーチェスが待っていた。

 

「帰って来たか。 単独行動は如何なものだが、まぁいい。」

 

その他の隊員達がぞろぞろ揃う。

マーチェスが隊員の操作する小型コンソールを見せる。

 

「現在、奴らはこの屋敷に入るのを5分前に確認済みだ。 1時間で補充と出発準備を終わらせろ。」

 

一呼吸置いてマーチェスがは言った。

 

「諸君。 テロハントの時間だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラが目を覚ますと豪華な一室のベッドに寝かされていた。

手足がベッドに拘束されて身動きは取れない。

魔法も魔封じの結晶のせいで使えない。

すると扉が開き数人の取り巻きを連れてデールがやって来た。

 

「気分はどうだ、いい部屋だろう? セラ。」

 

「気安く私を愛称で呼ばないでくれるかしら?」

 

「そんな口を聞けるのも今のうちだ。 すぐに倍の部隊をもう一度送り、全員殺した後忌々しい男の前でお前を犯してやる・・・!」

 

「あら、そうなるといいわね。 頑張りなさい?」

 

「こちらにはお前がいる。 向こうはどれだけできるかな?」

 

高らかに笑いながら部屋を出て行くと部屋は静まり返る。

セラは心の中でラビットの名を何度も思い出す。

必ず来てくれるあの心優しい兵士を想いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砦拠点、補給所

各隊員達がマガジンに弾を込め、ある者は機関銃用のベルトリンクを準備し、ある者は爆発物の調合を行い、ある者はスコープの調整をしていた。

 

「よし聞け。 今から襲撃する館は3階建だ。 やるからには戦闘員は全員殺せ。」

 

マーチェスがUAVによって撮影された写真を使い概略を説明した。

 

「編成はスナイパーチーム、バックアップチーム、そして突入組だ。いいな。」

 

各隊員達が部隊独自の返事をする。

 

「「「チーム9。 腕の見せ所だ!!」」」

 

チーム9

海軍特殊作戦部隊であるネイビーシールズの欠番部隊である9番目を取る。

存在は極秘であり、各軍部から集まっての編成であり海軍はもちろん陸軍、空軍、海兵隊の混合編成部隊である。

海軍であり海軍の所属でないため不鮮明なところが多いが、基本任務は現地介入による工作活動だった。

 

レンジャー、デルタフォース、CCT、PJ、ネイビーシールズ、フォースリーコン、MARSOCなど、豪華なように見えるが最大の欠点、特殊部隊にも関わらず思想や精神的に問題がある隊員で作られている。

言わば厄介者の集まり。

 

しかしこの部隊での共通点は国と仲間を愛しているという思想はどんな人間よりも、どんな部隊よりも一層強い者達なのだ。

 

そんな部隊を現在現場指揮の形で執るマーチェスも、この任務は心を密かに踊らせているのだ。

 

「さぁ、祭りが始まるぞ・・・!」

 

襲撃に向け準備している隊員達を見ながら、誰にも聴こえないつぶやきは消えてゆく。

 

「ラビット。」

 

準備しているラビットに声をかけたのはセナ達だった。

彼女達は独自の戦闘用の装備を準備していたのだ。

 

「私たちも参加させてもらう。 嫌とは言わせない。セラを、仲間を助けたいんだ・・・!」

 

ラビットが考え込みマーチェスに相談をした。

一瞬渋る表情をしたが許可を出した。

 

「お前ら! 彼女達も祭りに参加する! 顔を覚えておけ。 誤射は無しだ!」

 

マーチェスが再び写真を取り出した。

 

「殺すのはこいつだ、覚えとけ。 敵の武装は剣に槍、ボウガン、弓。そんで魔法だ。 気張っていけよ!!!」

 

隊員達の気迫とも取れる歓声が砦中に響き渡る。

まるで宴を待つもののように。

 

 

 

 

「襲撃部隊はいつになったら整う!!」

 

「少々お待ちを、しばらく時間がかかります!」

 

「早くしろ! 早くあの男を俺の前に引き摺り出せ!」

 

デールは自室のデスクに座り上級指揮官の男に対して怒鳴り散らす。

サシャが戻ってこないのが気がかりだが残党を1人も残したくない、力を見せつけるためにここまでしているのだ。

 

「おい。」

 

「ハッ!」

 

「例のアレは順調だろうな?」

 

呼ばれた男はにいっと笑う。

 

「もちろんでございます。 すでに完了致しました。」

 

「ふん、いいだろう。よくやった。」

 

「ありがたきお言葉。」

 

デールは口唇をあげ笑う。

自分の思い通りになる未来を見て、不気味に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらアーチャー3-1。 位置についた。」

 

スタンプがMk13mod7をプローンポジションで構え、デールの屋敷の監視を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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Operation Zero Dark Thirty

まああああああああ!! 間違えて書いたの消えちゃった〜!!


デールの館では衛兵の他にデールの私設部隊が入り混じり混乱に近い状況にあった。

 

最初に20人、次に40名、そして最後は150を超え合計で210、もしくはそれ以上の者が死んでいる。

 

現在は再び砦へと攻め込む為に残りの戦力100と、彼らの切り札であるジャイアントオーガーを連れて出発しようとしていた。

 

ジャイアントオーガーは平均成人男性よりも非常に巨人でオークより大きく手には非常に巨大な棍棒を持った凶悪な魔物だ。

いつかラビットが倒したビックゴブリンでは比べ物にならないのは火を見るより明らかだ。

 

ついに集結しデールの強襲隊は砦へ向け行軍を始める。

しかし・・・陽が傾き深い夜になるが戻ってはこない。

誰一人として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砦へと向けデールの強襲隊が前進しついに砦にたどり着いた。

前回の襲撃隊との報告と同じように人気がなく明かりもない真っ暗な砦だった。

周囲を警戒しながら砦に入るが何もない、完全に無人の状態だった。

 

「誰もいないぞ・・・」

 

「隠れたのか?」

 

「いや、このジャイアントオーガーを見てビビったんだろ?」

 

「臆して逃げたか。 間抜けめ。」

 

強襲隊の大半とジャイアントオーガーが砦から出ようとした時だった。

突如城門が砕け落ち出口を塞ぐように崩れた。

 

「ぎゃああああああああああ!!」

 

「いデェ! いでぇよぉおおおおおおお!!」

 

中には巻き込まれ下敷きにされたものや爆発の影響で吹き飛ばされるもの、 破片効果の被害を受けものが続出し混乱を招く。

困難している中、飛翔音が誰かの耳に届く。

 

「なんの音だ?」

 

「わからん! そらから」

 

なにかを言い終わる前に、それはやってきた。

地面に着地すると爆発してそこにいた数10人を消しとばす。

 

「うわぁっ、なんだ!?」

 

「逃げろ逃げろ!!」

 

逃げ惑う者たちに逃げ道はない。

待っているのは死だった。

 

 

 

 

『方位角1320。 射角310。 修正射。 撃て。」

 

「撃て!」

 

「発射ァッ!!」

 

FO(前線観測)班の通信を受け諸元を修正しながらM224迫撃砲を使い60mm榴弾を発射する。

3発目が撃ち終わると通信を入れる。

 

「ハンター2-1a、 こちらハンター2-1。 3発撃ち終わり。 オーバー。」

 

『ハンター2-1。 諸元そのまま。次弾、WP。』

 

「2-1了解。 ウィリーピートを撃て!」

 

「シャァ、キタぞ!」

 

「待ってました!」

 

隊員が砲弾を半装填し号令を待った。

それは数秒も満たないうちに下される。

 

『撃てっ!!』

 

一呼吸起き射撃号令を復唱した。しかしその射撃号令は・・・

 

「汚物は・・・」

 

「「『消毒だ〜!!』」」

 

通信手の手が振り下ろされM224迫撃砲から1発の砲弾が発射される。

砲弾が空中で破裂し空中で火の粉の様な物を撒き散らす。

撒き散らされた火の粉は自然燃焼すると吸湿して透過性の極めて悪い五酸化二リンの煙を発生させる。

そう、発射したのは白燐弾であり着弾し強襲隊とジャイアントオーガーを襲い砦内を焼き払う。

 

「美しい・・・」

 

空中で散らばる白燐を見て誰かが言う。

白燐弾を幸運にも喰らわず逃れた者は砦の外で待機していた隊員に銃撃を受け反撃もままならず冷たい地面へ倒れてゆく。

 

「「「『ヒャッハァーッ!!!』」」」

 

人気のない、暗い森の中世紀末を連想させる叫び声が木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『9へ告ぐ。 時は満たされる。繰り返す、時は満たされる。』

 

デールの屋敷へ突入する者たちへマーチェスが「間も無く作戦開始」の節を伝達する。

3チームに分かれ正面、裏口の離れた場所へ向かい移動していた。

 

 

暗視装置を使い暗闇と木々を掻き分け進む。

少し手前で屋敷が見える位置までつくと姿勢を低くした。

 

「9-0。 9-3、位置についた。」

 

『了解。 待機せよ。」

 

短説に伝えると無線を切った。

 

「パッケージBだなんて安易すぎないか?」

 

「俺も思うぜ。 どうせならジェロニモとかにしようぜ。」

 

「映画飲み過ぎだ。 休憩じゃない、暗殺に変わりないがな。」

 

ブリーダーが雑談し始めた隊員を静まらせると暗視装置越しに映る屋敷を見た。

明かりはまるで現代に様に灯っており蝋燭や松明の類は見えなかった。

 

「分電盤でもあるのか?」

 

「なら、ボルトグリッパーでチョキン、だな。」

 

「ならついでにパッケージBの分電盤(心臓)とモノもチョキンしてこい。」

 

「そりゃあいい。任せろ。」

 

『9-5。位置についた。』

 

裏口側が無線で連絡を入れ後は時刻通りラビット達が動くのを待った。

 

 

 

 

先頭はラビット、フィリス、リーエ、セナと続いていた。ラビット達は屋敷の裏手へと時間をかけて周り長い道のりをついにたどり着きハンドサインでゆっくり前進し物陰に隠れる。

 

ラビットは負傷しているがライフルを使う。

HK416D 10.5インチモデルを使い、リーエにはサプレッサーをつけたMk12を持たせたままだ。

 

2組の見張りが見えリーエにサインを出す。

リーエが片方に狙いをつけラビットは反対側の敵に狙いをつける。

あらかじめセナのエネミーサーチをつかい2人以外いないことを確認しハンドサインでカウントをする。

 

3・・・2・・・1・・・

 

同時にくぐもった音を鳴らし2人の見張りは頭を貫かれ力なく倒れた。

リーエは完全に物にしたのか正確無比な射撃ができる様になっていた。

それを確認しフィリスが先陣を切り裏口へ入る。

そして目的の物を見つける。

 

「リーエ、フィリス、セナ。 準備はいいな?」

 

各人が小さく頷くとラビットが無線でマーチェスと各チームに連絡する。

 

「9へ告ぐ。 時を満たす。」

 

『実行せよ。』

 

ラビットがプレートキャリアの背中ボルトグリッパーを取り出し魔導供給装置に刃を入れ、断ち切る。

 

この魔導供給装置は魔導具の応用で魔力を定期的に補充し現代でいう電気の役割に非常に近い使い方ができる。

デールはこれで屋敷を照らし松明や蝋燭などより明るく、火災の心配がない照明を使っていた。

一部の貴族でもなかなかお目にかかれない物だが遠慮なく壊すと中の灯りが消える。

すると中が少し騒ぎ始めるとドタドタと足音を鳴らし「灯りが消えた!」と喚く者で溢れかえる。

 

『9へ告ぐ。時は満たされた。』

 

一呼吸起き作戦開始の合図が隊員の通信機に伝わる。

隊員達が待ちわびた、作戦開始のコールサイン。

 

『ゼロ・ダーク・サーティ。 諸君、戦いの時だ。』

 

現在時刻 00:30 を示し彼らの眠る闘志が起こされる。

戦いを待っていた彼らの居場所を求めて。

 




ジェロニモ=例の人
パッケージB=bastard(クソ野郎)
ゼロダークサーティ=米軍スラングの午前0時30分
こういうのよくわかんなくなる(思考停止)

ぶっちゃけ迫撃砲でヒャッハーしたかったためにこれ書いた(笑


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燃え行くもの

オッスお願いしま〜す!


ラビットがスタックを組ませ突入準備をする。

館内は明かりが消えたと騒がしく者で喧騒にあふれている。

 

月明かりもほとんど差し込まず襲撃をするにはうってつけの状況だった。

 

フィリスがゆっくりとドアノブに手をかけゆっくり捻ると鍵は開いておりゆっくり開いて中に入る。

 

ラビットがカッティングパイと呼ばれる、死角を少しずつ確認し進み不意打ちを避ける方法をとりながら中に入った。

 

中は暗いがラビットのヘルメットについているGPNVGという4つのレンズを備え広い視野を保てる暗視装置を使用しているため緑を基調として明るく見える。

 

足音を立てないようにゆっくり動いているとふと前方から歩く音が聞こえる。

それはガチャガチャと甲冑を鳴らす音でもあった。

 

暗視装置から見えるその姿は暗闇に怯えて意味もなく低く腰を下げた姿勢で壁伝いに動いていた。

 

「誰かいるのか?」

 

甲冑の男が見えないラビット達に呼びかけるが2発のくぐもった音で返事をされ男は覚めることのない闇に引きずり込まれた。

 

地面に空薬莢が敷かれている絨毯の上に落ちるが音は騒ぎによってかき消された。

 

廊下を進み扉から誰かが出て来た。

風態は貴族のようでおそらくデールの付き人の者だろう。

 

暗闇の中手探りで進むが無情にも進んだ先には死神がいた。

 

ラビットは声が出ないように後ろから口を押さえて出てきた部屋に連れて行った。

部屋に入り押さえつけるとセナが小声で話す。

 

「余計なことは話すな。 こちらが聞きたいことを聞ければ放そう。」

 

威圧感ある声で言うと貴族は恐れをなして何度も小さく首を縦に振った。

 

「デールはどこにいる。 それとセラ、黒髪の女はどこだ?」

 

「さ、3階の奥の部屋がデール様の部屋だっ、女の方は知らん!」

 

貴族の男が白状しラビットはストックで殴り気絶させた。

無線でデールことパッケージBが3階にいることを伝えた。

 

『了解。 こちらも突入する。』

 

通信を切り再び廊下を渡りセラを探した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「stack up。」

 

分隊長が号令をかけ扉に隊列を作る。

 

「ローレン、窓を見ろ。」

 

「了解。」

 

「ライル、爆破用意。」

 

バックガンという後方警戒要員はブリーチングの道具を持つことが役割でもありドアノブを破壊するための爆薬を準備した。

 

ドアノブ付近にテープで爆薬を貼り付けるとドアから離れ起爆した。

 

「な、なんだ!?」

 

「玄関からだ!!」

 

ドアノブから勢いよく少量の煙が舞うとドアを蹴破ると爆破音を聞きつけやって来た衛兵が剣を構えた。

 

1stポジション、2ndポジションの2人がHK416D で銃撃しくぐもった音を鳴らしながら衛兵を射殺し衛兵は力なく倒れた。

 

ドタドタと聞こえる大勢の足音が聞こえる。

甲冑を着た騎士が敵を探しに来たが暗いせいか敵を捕捉できない。

 

構わず『武器を持っていれば殺せ』を忠実にこなす為暗闇越しに倒して行く。

 

苦情の騒ぎごえから悲鳴のような恐怖の叫び声に変わるのは遅くなかった。

 

1階を周り襲いかかってくる衛兵を殺害しメイドや使用人、付き人の貴族などは一部屋に集めて2階へむけ前進しているとラビットたちと合流した。

 

「階段だ。 行け。」

 

階段をゆっくり登り2階へ行くと暗視装置越しでも明かりがあることがわかる。

暗視装置をマウントを使い上に上げるとどうやら魔術師が魔法を使い灯りを灯していることがわかった。

 

「ラビット、『助けて』はどうやっていう?」

 

ラビットが発音をするとブリーダーが復唱する。

 

『助けて・・・助けて・・・』

 

すると階段の先の曲がり角から顔を出して来た衛兵頭を撃ち抜いた。

何度も同じようにおびき出しては撃つ、壁越しに射撃するなどして倒す

 

ゆっくり、ゆっくりと追い詰めるように1人ずつ倒して行く。

誰一人として返さないために。

 

 

 

 

 

 

 

2階を周りある程度終わった頃だった。

 

「喰らえっ!」

 

突如、3階からやってきた魔法使いが炎の魔法を放とうとした。

外で待機していたスタンプが狙撃し軌道をずらせるが絨毯が瞬く間に燃え上がり始める。

 

3階へ登る階段と2階の床に敷かれた絨毯が燃え襲いかかる。

 

「待避しろ!」

 

急いでその場を離れるがセナ達が無理矢理3階へ行こうとするが隊員達によって取り押さえられ1階へと待避した。

 

「アーチャー3-1! 外に出る、援護しろ!」

 

『了解。 急げ、燃え上がりが激しい。」

 

「ラビット! ラビットが!」

 

「ダメですラビットさん!」

 

「戻れラビット!」

 

セナ達がラビットの名を呼ぶがすでに炎の壁で向こう側に向かえない。

 

ラビットは一瞬だけ振り向いたがそのまま3階へと向かった。

 

「ラビット・・・」

 

誰かが彼の名をつぶやくがこのままでは炎に巻かれ死んでしまう。

急いで館の外へと出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3階では残党が最終防衛線を構築していた為それなりの数の敵がいた。

 

騎士達の突撃を銃撃し、魔術師達を手榴弾で倒し扉を一つずつ突破してついに最期の奥の扉へと駆け抜けたどり着いた。

 

扉に張り付き準備を整えて蹴破ると、まだ炎がそれほど届いていない部屋の隅のベッドに縛り付けられたセラを見つけることができた。

 

「ラビット、後ろよッ!!」

 

後ろからデールがレイピアで迫って来ていた。

 

 



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決着

エメメメメメメメメメ! エメメメメメメメメメ! ヒューイッ! ヒューイッ! ぼく、わるいエメリッヒじゃないリヒー!

はい、すみませんおまたせしました。最近死ぬほど忙しくやっと落ち着きかけてきました。
まぁ11月まで暇じゃないなぁ・・・


後ろからデールのレイピアの突きを避けるには遅く、その剣先はラビット頭に迫る。

 

頭を素早く左に避けるとHK416Dに取り付けられていたホロサイトを貫く。

あと少し遅ければ目を抉られていただろう。

 

ラビットが反撃しようとサイト使わず狙い引き金を引いたと同時にデールが再び突いた先が銃身に入った。

 

機関部から放たれた高速弾は銃身から放たれるが刀身によって逃げ場を失う。

その逃げ場を無理矢理作るように銃身を破裂させ大きく歪ませた。

 

その現象に2人は一瞬驚き距離を取ると再び態勢を立て直す。

ラビットはHK416Dを手離し距離が近いためトマホークを取り出す。

デールもレイピアを捨て剣を取り出すと2人は膠着する。

 

先に仕掛けたのはデールだった。

剣で切り掛かりラビットを仕留めようとするがトマホークで弾かれる。

しかし続けざまに剣戟を放ちなかなか隙を見せない。

トマホークと剣ではリーチが違い中々攻撃の範囲に届かない。

 

「くたばれ、田舎ものがああああぁあああああ!!!」

 

デールの殺意にあてられるように燃え上がる炎がより一層強くなる。

その熱は浴びるものの全てを溶かすように熱いものだった。

 

「ラビットッ!」

 

セラの名を呼ぶ叫びは悲痛なものだった。

こうして拘束されて何もできない自分が悔しかったのだ。

 

デールの剣戟を退け少し下がるとラビットはその場で構え、トマホークを振りかぶる。

トマホークはラビットの手から放たれ回転をしながらデールへと迫った。

 

しかしトマホークは寸手のところで回避され虚しく通り過ぎる。

 

「自棄になったか! そのまま死ねッ!」

 

好機と見て剣を構え突撃し斬りかかると落ちていたHK416Dで防ぐ。

職人の技により打たれた剣の切れ味は非常に鋭く、銃に装着されたPEQ15を真っ二つにし金属で作られたレイルハンドガードに深く刀身が入り銃身をも切り裂こうとした。

 

デールの剣はあと少しでラビットの頭を切り裂こうとする。

あと少し力を抜くか片手を離してしまえばたちまち刀身が皮膚を切り裂き、骨を砕き、脳幹を無残に散らすことのなる。

 

デール自身も身体強化の魔法をかけられ人間離れした体になっている。

必死に抵抗していると銃を撥ねとばすように振られ銃を飛ばされると勢いのついた斬撃がラビットの脚を捉える。

 

脚を切り裂かれ一瞬力が抜けると片膝をついてしまう。

幸い動脈などには当たらなかったが鋭い傷は激しい痛みを伴う。

 

デールが蹴りを放ちラビットは腕で防ぐが身体強化のされた威力は大きく、吹き飛ばされるように倒れると一瞬意識を失いかける。

 

「死ね! 死ね死ねえぇえええええええええッ!!!」

 

容赦無く馬乗りになり心臓を突き刺すように剣を突き立て振り下ろすが剣の刀身をグローブ越しに掴み寸手のところで止めるが先端が既に防弾プレートを貫き。数センチがラビットの肉を貫いていた。

防弾プレートがなければ既に心臓へと到達しただろう。

刺された場所から血が滲み、刀身を掴む両手のグローブが破れ血が流れ出る。

 

「しぶとい害虫め・・・! 貴様は、貴様だけは絶対に殺してやる!」

 

さらに力を込めるように体重をかけさらに深く刺さった時だった。

 

「はぁああああああああああッ!!」

 

女の声、聞き慣れた彼女の声、セラがラビットが投げ放ったトマホークを振りかぶり深く深く刺さった。

本来ならば頭を狙ったが扱い慣れていない武器と消耗した体力と気力で狙いが外れ肩に刺さる。

 

「ぐあああああぁああああああ、この、忌子めッ!!」

 

剣を離し腕を後ろに振るとセラにあたりセラが吹き飛ばされる。

 

「きゃぁっ!!」

 

セラが地面に沈み狙いを変えるようにセラに迫り剣を振ろうとした。

しかし最期の気力でラビットが立ち上がりデールに飛びかかり剣を掴む手と首を捉えた。

 

その勢いで大きな音を立てながらデールを倒して今度はラビットが馬乗りになると自らの手から溢れ出てくる血潮を撒き散らしながら拳を作りグローブの甲を守るために付いているカーボン素材越しにデールの顔面を穿つ。

 

2回3回と殴り今度は首を出せるだけの力で締め付けるとデールが苦しそうな表情で剣を手放しラビットを振り払おうとする。

 

「くあぁあああああああぁああああ!!!」

 

お望み通り首を締めるのをやめ頭を掴み今度は何度も地面に後頭部を叩きつける。

 

デールは意識が持っていかれそうになるが憎しみだけを頼りにラビットに反撃し互いに体制を立て直し文字通りの肉弾戦に突入した。

 

しかし体術による技術はラビットが上でありデールは瞬く間に押されラビットの拳が顔面に放たれ後頭部を窓ガラスにぶつけると外へつながるガラスは勢いよく割れた。

 

ラビットが左手で首を掴み右手で破片手榴弾、M67を大きく振りかぶりデールの口に無理矢理ねじ込む。

 

「ごがぁ、うごごぉごっ!?」

 

歯が砕け、顎が変形し、絶望したかのように歪になったデールにもう一度殴り込みより奥に突っ込むとM67の安全ピンとレバーを外し最後に大きく振りかぶり全身全霊の拳を放つと窓の外へ放り出される。

 

「ごぁあああああぁああああああああああああああ!!!」

 

叫びながら窓の外へと放り出され断末魔のように叫ぶが落下の最中にM67が起爆し爆風と破片効果でバラバラにされた死体、もはや肉塊が無残な形になり地面にどちゃりと嫌な音を立てながら沈んだ。

 

「・・・クソでも喰らいな(Fuck you)。」

 

燃え上がる館、決着のついた戦いに、吐き捨てるように呟いた。

 

 

 




クライマックスなのにちょっと短いか・・・?


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2人に1人

やぁ、死んだかと思った。(瀕死)
10月はドぎづい゛目にあった、まだ終わってないっ!!!
しにそう。


「ラビット! セラーッ! 返事をしろぉーっ!」

 

「ラビットー! セラー!」

 

「ラビットッ!! ちくしょう、どうなってやがる!」

 

燃え上がる屋敷に向かってブリーダーが叫ぶ。

避難した後屋敷がさらに強く燃え広がり灼熱の炎が屋敷を飲み込むように、すべてが燃えていた。

 

「ラビット、ラビット! クソッ出ねぇ! 通じてねぇのか!?」

 

必死に無線で呼びかけるが返答がない。

 

「うぉっ! クソが!」

 

「ダメだ、危険すぎる!」

 

屋敷に再度突入を試みるも炎がが強すぎるため中に入れない。

 

「ぎゃああぁあああああああああ!!」

 

「ッ!!」

 

いきなり出て来た男は鎧を身にまとい自らが燃え上がり断末魔のような声を上げて突如屋敷から出て来た。

突然の出現に反射的に射撃したがどうでも良いことだった。

どうせもはや助からないのだから。

 

すると、ふと3階の窓に人影が見えた。

その人影は窓から放り出され1階に落下数前に爆発し血肉をまき散らした。

 

「ラビット、そこか!?」

 

急いでその窓の位置まで移動した。

するとラビットと思しき姿が見えた。

 

「おい、待て。 何するつもりだ! バカやめろっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラビットが何度もセラを起こすため肩を叩いたり揺らしたり、声をかけるがセラの容体は良くない。

脱出しなければならないのだがセラを抱えて逃げる他ないようだ。

 

横抱きにして部屋を出ようとするがもう炎はラビットとセラに迫るように燃える。

 

為す術がない。 シーツなどをロープ代わりにしてもこの炎ですぐに焼き切れてしまう。

所持品にもロープのようなものはない。

 

しかし、最期の手があった。

 

窓から飛び降りるのだ。

 

しかし3階から飛び降りるのは非常に危険だ。骨折などの大怪我では済まず、最悪死に至るだろう。

それも1人ならともかく動けないセラを抱えてだ。

あまりに、無謀すぎる。

 

同時に2人助かるのは非常に困難だった。

 

だがラビットとしては1人、セラが助かればいい。

落下時自分がクッションになりセラの生存率を高めることができる。

もちろんラビットの生存率が非常に低くなってしまうが、構わなかった。

 

意を決してセラを抱え直し自分が下になるように窓から飛び降りた。

 

落下感。

あの灼熱から解放された時に感じたもの。

地面に吸い込まれるような感覚。

そして、やって来る痛みを覚悟した。

 

目を瞑り死を覚悟した。

今まで戦い散ってしまった仲間の元へ、今。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浮遊感。

風に押されるような感覚。

ふと目を開けると2人は浮いていたのだ。

あと少しでおそらく地面に衝突していただろう。

どさりと荒っぽく地面に着地し若干痛みが走るが、そのまま落下死するよりかはずっとマシだろう。

 

助かった。

助かったのだ、ラビットもセラも、一緒に助かることができたのだ。

 

燃え上がる屋敷、何もない夜空、そして胸の中で安らかに眠る彼女の頭を撫でた。

 

 

 

ーーーありがとう。

 

 

 

薄れゆく意識の中で仲間たちの声を聞き目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラビットッ! この馬鹿野郎!」

 

「ラビット! セラ!」

 

ブリーダーを始めセナ、そして仲間たちがわらわらと集い始める。

血まみれのボディアーマーを脱がせると小さな傷口から血が溢れている。

ところどころから血を流し重傷だった。

 

「おい聞こえてっか、この大馬鹿野郎! 今から帰るぞ!」

 

「車両が来たぞ! 乗せろ乗せろ!」

 

数人がかりでラビットを乗せるとブリーダーたちがセナたちを呼び寄せる。

 

「ホラさっさと乗れ。 2人を見てろ!」

 

「行け行け行け!!」

 

有無を言わせずハンヴィーに乗せるとハンヴィーは走り去った。

 

「・・・んじゃあ、皆の衆。 帰るぞ。」

 

「帰るまでが任務ってな!」

 

「帰り道を探そう。 銃弾は1回に1発だ。」

 

彼らは消えてゆく、闇の中へと。

 

 

 

 

 

 

 

「終わったか・・・」

 

ドローンで戦場の状況を逐一把握していたマーチェスは気が抜けたように「ふぅ」とため息をつき背もたれに深くもたれる。

 

「少佐。 気を抜くのはまだ早いのでは?」

 

「わかっている。 祭りが終わってしまうと考えると、寂しいものだな。」

 

「・・・確かに、もの寂しいですね。」

 

「当面は大人しくしておこう。 ラビットが起きた時の為の宴会があるからな。」

 

「はははっ! 奴には浴びるほど飲ませましょう!」

 

「お前にはビールでジャパニーズカンチョーをしてやる。」

 

「What the fu⚪︎k!?」

 

ゲラゲラと司令部に大きな笑いが響きわたる。

祭りの余韻に浸るように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荷台で眠る2人を眺めているとフィリスが声をかけて来た。

 

「終わったな・・・なんだか変な気分だ。」

 

ケラケラと笑うフィリスにリーエが便乗するように笑う。

 

「そうですね。 ようやくデールが死んでちょっとはマシになりますよね?」

 

「あれだけやって何も変わらんと流石に頭が痛くなる。 特にこの2人が報われん。」

 

グリグリと2人の頭をいじると少し唸った。

 

「まったく、お前たちは本当に無茶ばかりして。 懲りない連中だ。」

 

呆れから出て来た言葉には、嬉しさというものがあった。

 

ハンヴィーの窓から眺める景色は段々と暗くなってゆく。

闇の中に進むように、消えゆくように。

眠る2人は安らかに、お互いの手を握り合っていた。



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終わりの朝陽

もうそろ最終回で締めるかちょっと続けるか迷う


ぼんやりとした気分で周りをみわたす。

ガタガタと揺れ、話し声が聞こえるのはラビットと初めて会った馬車を思い出す。

重たい頭を動かすと見たことがある天井、なにかが動く音、そして仲間たちだった。

助手席に座るセナ、後部座席で寝ているフィリス、銃座に着くリーエ、みんながいた。

そして一番逢いたかった人を探す。

ふと隣を見ると一緒に眠っていた。

 

「ラビッ・・・ト・・・」

 

すぅすぅと規則正しい呼吸で眠っている。

愛おしいその寝顔は安らかで可愛げのある表情だった。

 

「もう、無茶して・・・」

 

ただ一言だけ呟き次第に目を閉じ意識は再び闇へと落ちた。

 

 

再び意識を朦朧とさせながら目を開けるとそこは石垣で出来た建物の中だった。

周りを見ると簡易ベッドに寝かされておりどうやら仮設の医務室のようだった。

隣のベッドにはラビットが眠っている。

 

すると誰かがやって来た。

見覚えない人物だが服装からしてラビットの仲間のようだった。

 

やって来たのはマーチェスで彼らの容体を確認しに来たのだ。

 

「お目覚めかね?」

 

言語が違うため何を言っているのかわからない。

答えず様子を伺うと顎に手を当て始めた。

 

「・・・やはりラビットがないと会話がままならんな。 君の仲間を呼んでくる、待っていたまえ。」

 

何か言い残し立ち去った。

しばらくするとセナたちがやって来て一気に騒がしくなった。

 

「セラ、やっと起きたか!」

「怪我は大丈夫か? 毒は?」

「どこか気分が悪いとかありますか!?」

 

「ちょっと・・・一度にみんなで話さないで。」

 

一度に3人も話しているため聞き取りづらい。

3人もしばらくしてようやく落ち着き始めた。

 

「何はともあれ、助かってよかった。」

 

「全くだ。 どうなるかとひやひやしたぞ。」

 

「セラさんが生きててよかったです・・・」

 

「ごめんなさい、それよりラビットは大丈夫?」

 

「ラビットは大丈夫だ。 怪我だらけで死ぬかと思っていたが。 私たちが心配するほど体はやわではないようだ。」

 

「よかった・・・」

 

セナが冗談交じりに隣ので眠るラビットに目を向けた。

どうやら大丈夫みたい。

みんなが安堵の声をあげると気が抜けたのかフィリスがあくびをした。

 

「むぅ・・・眠気に勝てそうにない・・・」

 

「さすがに、私たちも辛くなって来ました。」

 

「セラ、まだ休んでおけよ。 私たちもそろそろ休む。」

 

3人はは眠たそうに重たい足取りで医務室を出て行くと再び静寂が訪れる。

怠い体は先ほどまでより言うことを聞いてくれるがセナの言う通り休むことにした。

 

しかし散々眠ったお陰で眠気がやってこない。

ボーッと天井を見上げいると隣からモゾモゾと聞こえる隣を見るとラビットが立ち上がっていた。

 

「ラビット・・・!」

 

ローブやボディアーマーは外され着ているコンバットシャツとコンバットパンツは穴や煤、そして血が滲んでいた。

 

「ダメよ、ラビット。 あなたは怪我が・・・」

 

起き上がるラビットを止めようとするがそのままセラに近寄り横抱き、すなわちお姫様抱っこで持ち上げる。

 

「えっ・・・? ちょと、ラビット!?」

 

突然の行動に驚くも成すがままにそのままセラを医務室から連れ出した。

 

お姫様抱っこをされたまま渡り廊下をそのまま歩く。

もし誰かに見られたらすごく恥ずかしいけど、嫌じゃない。

むしろこのままで居たい気持ちもあった。

 

ラビットは何も言わない。

なんとなく何も言わない方がいいと思って私も何も言わずに、ラビットに委ねた。

 

階段を登り一番高い場所に出ると外は闇が広がって居た。

下を見ても真っ暗その闇はでまるでそのまま私たちを闇に引きずり込んでくるような気がした。

 

ラビットは立ち止まりそのまま遠くを見つめている。

私はふと空を見上げると星々が輝いているのに気がついた。

 

いつもよりもなんだか新鮮で、初めて見るような感覚になった。

 

「綺麗・・・」

 

思わず呟いた言葉は星々に吸い込まれるように響く。

次第に星が見えづらくなってくる。

ラビットが向く方を見ると次第に空が明るくなり私たちを照らすように朝焼けが差し込む。

 

太陽がその姿を見せ始める。

美しく輝かしい光を放ちながら姿を現わす太陽は大地と私の気持ちを明るくし癒しを与えてくれるようで、何処か切ない。

 

始まりを示すように、彼らにとっては終わりを示す合図なのかも知れない。

 

「もしかして、これを見せてくれるために?」

 

ラビットが小さく頷いた気がした。

ラビットからこういうことをしてくれるのは何だかんだ初めてかもしれない。

 

朝陽を眺めるラビットは何処か寂しそうな気がして今まで見せてくれなかった一面を知れた気がした。

 

「出会ってからになるけど・・・今までたくさん助けてくれてありがとう。」

 

ラビットが小さく首を振った。

不思議と「気にするな。」という気持ちが伝わる。

 

「これはほんのお礼。」

 

ラビットの首に抱きつくように腕を回し、頰に優しくキスをした。

 

ラビット胸に顔を押し付ける。

正直、自分でわかるくらい顔が熱い。

恥ずかしさが大軍で押し寄せてくるのがわかった。

一方、ラビットも顔を赤く染めて居た。

 

「おい、ラビット! 傷口が広がるだろ! 大人しく寝てろ!」

 

ラビットを探しに来た隊員が下から怒号をあげる。

その声を聞いてラビットは大人しく救護室へと向かう。

 

途中起きて来ていたのかセナとすれ違ってすごい顔をされた。




R18書ききたくなって来た。


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魔法使いと無口な兵士

あれから数時間が過ぎた

王都ではデールが火災で死んだことがすぐに広まり騒然とした

バタバタと忙しなく働く警備隊、ギルド、王都職員、皆が皆慌ただしかった

 

熱りが冷めるのを待つためしばらくはブーゲンビリア王国で過ごすことにした

 

「よし、みんな準備はいいか?」

 

「あぁ、準備完了だ」

 

「うぅ〜、重いですぅ〜」

 

「・・・」

 

セナの呼びかけにフィリスとリーエが答えるがセラだけは答えない

上の空でボーッとしていれば、気を沈めている

 

「セラ・・・セラ!」

 

「ん、 なに?」

 

「なにじゃない! 準備はいいのか?」

 

「えぇ、まぁ、そうね」

 

歯切れ悪く受け答えをするセラに深くため息をついた

怪我などが原因ではない、その理由は一つしかない

 

「心の準備ができてないじゃないか! まだ引きずってるのか?」

 

「セラ、こればっかりは仕方ない。 みんなで話して決めたろ?」

 

「セラさん・・・」

 

「わかってるわ、わかってる・・・」

 

無事撤収し何事もなく全員が無事意識を取り戻すとすぐさまに会議が始まった

マーチェス、ブリーダー、ラビット、もちろんセラたち4人もだ

 

内容はセラたちと別れるということだった

セラたちがラビットたちと一緒にいることは知れ渡っているだろう

下手に一緒にいれば何が起こるかわからない

それはセラたちも、ラビットたちにも不都合だった

 

ラビットたちも元の世界へ戻るための調査へと出ることにした

 

結果としては一度別れることが決定し、そこからセラはこの調子なのだ

 

「・・・そんな顔するくらいなら一度顔を見てこい」

 

「・・・そんなことしたら、余計辛くなっちゃう」

 

「セラ・・・どうするかはお前が決めろ。」

 

それからは各人が何も言わずに、ただ別れの時を待つ

永遠の別れにならないことを祈って

 

 

 

 

 

 

「じゃあな。 短い付き合いだったが、楽しかったぜ」

 

「相変わらず何を言ってるかわからないが、いつかあったらパーティを組もう」

 

「またよろしくお願いしますね!」

 

スタンプはフィリスとリーエに握手を交わした

互いの言葉はわからないがやはり言いたいことは伝わってるのか通訳なしでも意思疎通ができているようだった

 

「相方のこと、よく見てやれ」

 

「大丈夫だ、何年付き合ってると思ってる。 また会おう」

 

「あぁ、いつかきっとな」

 

セナは言葉が少し話せるようになったのか少し片言だが会話ができていた

ブリーダーと握手をし互いに別れを告げた

 

「・・・奴は来ないのか?」

 

「・・・そってしておいてやれ」

 

未だ来ないセラを待つがやはり来ない、互いに別れようとした時だった

 

「・・・遅くてごめんなさい、もう行くの?」

 

セラが重たい足取りでやってきた

その表情は重く、まるで沈殿物が底に溜まっているように沈んでいる

ちらちとラビットを見る、怪我の治ってきたのかいつも通りのように見えた

ラビットは何も言わない、物言わぬ石像のように何も言わなかった

 

「ラビット・・・外で待ってるぞ。」

 

ブリーダーがなにかを察したようにスタンプを連れて行った

2人が先に行くと沈黙が流れる

 

「セラ、私たちも先で待ってる」

 

3人もそこを離れて行くと2人しか残っていない

まるで取り残されたように

 

沈黙は長く続く、しかし状況はラビットが変えた

 

ブリーダーたちを追いかけるようにラビットは振り向かず歩きだそうとしたがセラが後ろから抱きしめると身動きが取れないでいた。

セラが口を開いた。

 

「・・・かないで」

 

震える声で、消え入りそうな声でセラが言う

 

「私を置いて何処にもいかないで! 」

 

それは願い、彼女が望むもの

 

魔力が非常に優れている証である澄んだ青い瞳からぽろぽろと涙が溢れ出てくる。

彼女は懇願するがラビットは何もしない。

 

「独りはもう嫌ッ!! お願いだから一緒にいてよッ!! なんでもしてあげるから、お金でも、身体でも、なんでも、私から欲しいものあげるから!! だから・・・」

 

青く澄んだ瞳から大粒の涙を流し懇願するその姿はとても弱々しく、今にも崩れてしまう危うさがあった

 

「お願い・・・よ・・・!」

 

嗚咽をあげ、背中に顔を埋める

するとラビットは優しくセラの手に自分の手をゆっくりと、優しく添える

 

落ち着いたのかセラが少しずつ力を緩めるとラビットは振り返り向き合う

 

するとターバンを外して顔を出すと、ラビットは微笑んでいた

 

そしてラビットは添えるように、セラの艶のある唇に優しくセラに口づけをした

 

セラは驚きのあまり目を見開くがそれを受け入れるように、自らの証を残すように押し付ける

 

ようやく離れた2人は見つめあった

長くも短い時を過ごし互いを愛した彼らにもはや言葉など要らなかった

 

先ほどまで泣いていたセラは柔らかく笑顔になりラビットに抱きつくとそれに答えるように抱きした

 

そして別れる時、二人は小さく一度だけ頷いて互いの道へと歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・セラ、もういいのか?」

 

ようやくやって来たセラを迎えるようにセナが問う

その表情は皆、険しいものではない

皆笑顔でセラを迎えていた

 

「えぇ、大丈夫。 ごめんなさい、心配かけちゃって」

 

「心配をかけられるなんて今に始まったことじゃないだろう?」

 

皆が笑い、道を歩く

 

「ラビットさんと何かしたんですか?」

 

「そうね、約束したわ。簡単なものよ、でも絶対守ってもらう約束」

 

「どんな約束だ?」

 

「それはねーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラビット、もういいのか?」

 

ブリーダーが聞くがラビットはいつも通り小さく頷く

 

「惚れてたんだろ? 向こうに行くなり連れてくるなりすれば良かったろ?」

 

スタンプの言葉に小さく笑いながら首を振った

 

「まぁ、いいさ。 それでよかったんだろ?」

 

肩をバシバシ叩くとラビットが振り向いた

 

「約束したさーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『また逢おう』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人生には多くの道がある

選んだ道、選ばなかった道、選べなかった道

 

その中でさまざまなことが起こる

すれ違うこと、ぶつかること、出会うこと、別れること

 

魔法使いと無口な兵士は願い歩き続ける、その時はまた笑顔で

 

 

 

「魔法使いと無口な兵士」-END-

 

 

 




いつも通りそんなに長くなく、最終回になりました
ここまでご愛読いただきありがとうございました
R18は気が向いたら書きます
短い時でしたがお気に入りや評価、UA等ありがとうございました
またなんか書いたらお願いしますね


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あとがきのようなもの

あとがきのようなもの


どうでもいい、こうなるはずだった設定、回収しきれなかった設定を置いて行きます。

 

アカンサス王都

ぶっちゃけ適当につけました

ロスサントスをモチーフに名前をつけました

国の特徴としては黒髪の人と冒険者に厳しい

つらい

 

ブーゲンビリア王国

花をモチーフに考案

めっちゃいい国

全て(犯罪等以外)を許そう

芸術の国

 

ラビット

タラタラとクエストに参加してあるヤバイクエストかボス戦で目が見えなくなる設定があった。

セラに魔法を習って武器装具召喚し放題にしようとしたがやる機会を逃した

ラビットの装備=作者装備

元ネタはMOHラビットを使用

 

 

マーチェス

現場に出たかった。出したかった

元ネタの参考はアメスナのライアンジョブから

m14EBR要員として出したかった

 

ブリーダー

人間嫌いでうさぎじゃないと勃たない異常性癖の持ち主の予定だった

しなくてよかった

 

 

スタンプ

そのまんまMOHのスタンプを参考に使用

本当は出す予定はなかった

 

エマーソン

ラビットが名乗った名前

実は相方の名前で本名はディーン・エマーソン

マクミランTAC300とトマホークは彼の物

すでに他界している。

出そうと思ったけどタイミングなくした

 

 

セラ

この娘を書きたいために書いた

この小説の元凶

作者の予定ではR18でサキュバスの呪文で発情したラビットに滅茶苦茶にされる

その逆も然りと考える

R18書こう(安直

作者の性癖が詰まりに詰まったおにゃのこ

 

 

セナ

セラの友人

書いてて思ったのが名前似ててわかりづらい

単純に考えてんかった

この子も性癖が詰まってる

メガネ属性

 

 

フィリス

その場で考えたにしては良く出来たと思ってる

ぶっちゃけMAC10とかM79とか持たせて暴れさせようか考えた

トゥーハンド的な

 

 

リーエ

同じくその場で。

ホンマこいつは書いてて気に入った。

イベントでスタンプに迫るリーエとフィリス書きたかった。

スタンプに狙撃を教わり武器変更イベントとかやりたかった。

でも個人的には結果オーライ

 

ユリス

妹的存在として登場

セラとラビットに絡ませて癒しを得た

思惑通り

 

ジャン

ユリスの付き人

割と回しやすいキャラだったためもしかしたらヤバイ依頼してくる貴族の人とか考えた

 

フロスト国王

王様。

有史時代を遡ることはるか昔。平和だった村にある日突然、鋼の秘密を狙う侵略者とその一党が襲いかかった。刀鍛冶の両親を目の前で殺害され、自らは奴隷の身となった少年フロストは悲惨な境遇の中、強靭な肉体を持つ青年へと成長を遂げる。ある日、赤毛の商人によって解放されたフロストは自由の身となり、旅の途中で盗賊と出会い、蛇を神として崇める邪教の神殿にある財宝を盗みに入る。二人は先に盗みに入ろうとしていた者と手を組み財宝を盗み出す。神殿から逃げようとしたフロストは、壁に掲げてある双頭の蛇の紋章が、両親を殺した紋章と同じことに気付く。

 

豪快な性格で革パン一丁からブーゲンビリアの王になるまでの物語を考えるが面倒になり断念。

登場させた理由は平和な入浴シーン(威圧)を書きたかった。

背中流しあいっこさせればよかった(後悔

 

ユミール

本当はヒロインの1人になるはずだった

作者自身に存在を忘れ去られてしまい出番は出す予定であろう番外編にですらもうない不憫な子

 

クロッソ

おまけ

 

失敗点

装備を明確にし過ぎてそれぞれの特性が生かせてない。説明めんどくさくなった

 

例として出すべきだった1シーン

 

 

 

ジャイアントオーガーの巨大な手がラビットを捉えようと手を伸ばす。

それに反応したラビットは回避行動をとるがフロントパネルのマグポーチを掴まれてしまう。

 

ラビットは危機を感じとると全力で何度もオーガーの拳に蹴りを入れるとレーザーカットのプレートキャリアが破れ、セラミックプレートが剥き出しになったが脱出できた。

 

MOLLEシステムと違いレーザーカットは軽量化と同時に破れやすく設計されヘリや車両に引っかかっても難を逃れるために敢えてその設計が施されている。

 

 

 

 

 

サバゲでファスピのプレキャリ着てったら身内のJPC推しの先生がそんなこと教えてくれた。

サバゲの行き過ぎで実JPCが3台目ってどゆこと・・・

 

 

めんどくさがって米軍と明確にしてしまった

これはミスった

どうせなら新旧入り混じった多国籍軍とかそういうのにすればよかった

グルカ兵出して異世界人を死屍累々にしようかも考えた

 

 

クエストとかタラタラ書くのめんどくさくて短期決戦にしてしまった。

 

どっちかっていうと恋愛要素強くしようと思ったけど俺童貞やし、そもそも彼女おらんかった事実に気付き現実から逃げ出して書けることねぇ!となった

 

ぶっちゃけ考えて書いてない。

できん。

 

クトゥルフの描写練習がてら暇つぶしにやってたヤツだから10話ぐらいで切ろうと思ってたんですが、結局それなりに続いてしまいましたが気が向いたら番外編書くかもしれないです

 

リクエストとかあったら書きます

 

キャラ絵とかほしいなぁ、かけないから(願望

 

まぁ、そんなこんなで終わりましたが気が向いたら番外編やろうと思います

 

それではまた。ご愛読ありがとうございました!



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