インフィニット・オメガバース (蓮零)
しおりを挟む

世界観と詳細設定の紹介

初めまして、インフィニット・ストラトスに絶賛ドはまり中の蓮零と申します。


今作が初めての投稿ということで緊張しながらもやっていこうと思っております!

ぶっちゃけ言えば私はISの小説を読んだことがありません!ですのでアニメや他のISの二次小説を参考にして行きなから原作キャラ達の性格が崩れないよう書いていくので、読んでいくださる方はどうか暖かい目でお願いします。(小説も近い内に買わないと....。)


分かりずらい設定に、読みづらい文章かもしれませんが、読んでくださればとても幸いだと思っております。


今回は本編ではなく、作品の説明とオメガバースの詳しい説明についてです。


この世界には男と女以外にも第二の性別と言うものが存在する。

 

 

 

アルファ<α>、ベータ<β>、オメガ<Ω>

 

 

 

アルファ<α>は数が少なく、生まれつきエリートでありリーダーやボスの気質の持ち主。社会的や職業的にも地位の高いものはアルファがほとんどを占めている。アルファ<α>である女性や男性はオメガ<Ω>であれば、男女問わずとして妊娠させることが可能である。そのためオメガ<Ω>の発情期のフェロモンの影響を最も受けやすく、本能のままにオメガ<Ω>犯してしまい、望まない妊娠を起こしてしまうことから社会ではそれが問題とされている。

 

 

ベータ<β>は最も人口が多く、身体的特徴や行動等も一般的な普通の人間とは変わらず、オメガ<Ω>のような発情期も存在はしない。オメガ<Ω>の発情期のフェロモンに誘惑されることがある。ベータ<β>同士の子供は高確率でベータ<β>となる。

 

 

オメガ<Ω>の個数はアルファ<α>よりも少なく、絶滅危惧種として扱われることも。低い生殖能力を補うために、生殖能力の高いアルファ<α>を惹き付ける為に三ヶ月に一度、発情期を起こす。そのフェロモンはアルファ<α>を惹きつけてしまい、望まない妊娠を起こしてしまうことから社会の問題とされている。それを防ぐためにオメガ<Ω>は政府からオメガ<Ω>であるという診断書を学校や会社に提出する義務が課せられている。そのために世間からはオメガ<Ω>は劣った存在として差別を受けてしまうことも・・・。

 

 

 

 

《オメガの発情期》

 

オメガ<Ω>は低い生殖能力を補うために三ヶ月に一度、発情期が存在する。オメガの体から発せられる強いフェロモンによりアルファ<α>は男女問わずとして惹きつけられてしまう。そのためか世間では発情期を迎えたオメガに本能でアルファが襲ってしまい、妊娠してしまう事件が多いのだ。このオメガ<Ω>特有の性質が世間からオメガ<Ω>の差別、偏見がなくならない大きな理由だとされている。

 

 

 

《オメガとアルファだけに起こる番のシステム》

 

オメガ<Ω>の発情期中にアルファ<α>との性行為でアルファ<α>がオメガ<Ω>のうなじ付近を噛むことにでその二人は番になる。番となった場合、アルファ<α>のほうには変化がありませんがオメガ<Ω>は発情期中に性行為したアルファ<α>以外とは性行為が出来なくなります。他の人間と性行為をしょうとした場合、蕁麻疹、吐き気、頭痛などにおそわれます。原則としては番は解消することが出来ない。

 

 

《魂の番》

 

オメガ<Ω>とアルファ<α>が互いのフェロモン(発情期とは関係なく)惹かれることがあります。その相手とは一目見た瞬間に感じ合い、相思相愛の状態になります。しかし、これはとてつもなく稀であり、都市伝説ではないかといわれています。

 

 

«異常性フェロモンを持つオメガ»

 

オメガの中には極稀に通常のオメガの個体よりも何十倍ものフェロモンを放つ特殊なオメガが存在しています。

 

このオメガは異常性オメガ<Ω>と呼ばれています。

 

異常性フェロモンを持つオメガは<Ω>は発情期にフェロモン抑制剤や注射器が効かないことがあり、外での活動が難しくなってしまいます。

 

異常性オメガ<Ω>のもうひとつの特性は異性のアルファ<α>を強く惹き付けてしまうこと。発情期でなくとも、異常性オメガ<Ω>は異性のアルファ<α>から一目惚れに似たような気持ちを抱かれます。

 

現在は、世界の中でも一人か二人しかいないとされています。

 

 




今回ははじめてということで簡単な説明だけとさせていただきました。


オメガバースということで、話をつくるだけでも精一杯なので世界観の説明だけとして、次回の話から本編へと移させていただきます。


もし読みづらい分からないと仰る方がいれば、それは私の腕前が低いということにしていただきたいと思います・・・。


もし感想などがあればお待ちしております。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原作開始前
第一話 彼は己の性を呪う


記念すべき第一話です。

今回は主人公の心情を物語ります。

それではお楽しみください


 

 僕は授業中に突然、激しいめまいや動悸に襲われた。心臓の鼓動が激しくなり、呼吸はすることさえも苦しくて堪らなくなる。しかし、僕にとってはもう当たり前にな出来事になってきてもいた。

 

     ・・・

あぁ、またあれが来たのか....。

 

 

「すみません、先生っ…、気分が悪いので保健室に行きたいのですが...」

 

「またか堀内。行ってもよいが、大丈夫か?今年で受験なんだから体調管理もしっかりしろよ」

 

「すみません...直ぐに、...戻ります。」

 

 

僕は急いで教室から出る。クラスメイトの何人かは僕を心配している様子で見ていた気がしたが、今の僕にはそれを気にする余裕など持ち合わせてはいなかった。

 

 

  

◇◆◇

 

 

 僕が向かった先は保健室ではなく、学校の屋上だった。何故保健室ではなく屋上に向かったかと言うと、万が一でも「アレ」を服用している姿を誰かに見られる事がイヤだったからだ。あれと言うのはいずれ分かることだから、説明はしないでおくことにする。

 

 

僕は荒い息をつき、働かなくなる体にムチを打ち、ズボンのポケットから小さな箱を取り出した。その箱の表面には青い十字架の線が描かれている。

 

 

 中を開けるとカプセル型の薬が何十錠か入っており、僕は二粒ほど手にとって口の中に放り込んだ。そして屋上に向かう途中に買ったペットボトルの水で薬を体の中へと流し込む。

 

 

 薬が効いてきたのか、ようやく激しい動悸やめまいは収まり、体が楽になってきた。僕は屋上の柵に体を預ける。閉じていた学ランの制服の襟部分を開け、中のTシャツのボタンを少し外す。ーーその中から覗かれたのは、僕の白い首回りを囲む鈍く光る黒い首輪だった。それに手をかざし、思わず愚痴混じりなため息を付いた。

 

 

「朝に飲んだばっかりなのに、何で今頃こんな風になるんだろうなぁ...」

 

 

僕はそんな風に恨みがましく思いながらもその原因であるのが、自らの「第二の性」であると言うことに嘆くことしか出来ないのであった...。

 

 

 

◇◆◇

 

 

僕の名前は堀内 雪音(ほりうち ゆきね)年は14歳。来年の2月に受験を控えている中学3年生だ。

 

 

 趣味は料理と紅茶入れと花の世話。父はカフェの経営者であり実際に現場で働く店長さん。母は世界中の様々な場所を回って教鞭をとっている教師。それ以外を除けば今年で高校受験を受けるどこにでもいる普通の中学生...と言いたいところだが、僕には両親と一部の人以外には誰も知らないある秘密があったーー。

 

 

それは僕がオメガ<Ω>であると言うことだ。

 

 

オメガ<Ω>と言うのは、この世界の中で男女の性別以外に存在する「第二の性」と呼ばれる性別のなかのひとつである。

 

 

男性、女性、そして、アルファ<α>、ベータ<β>、オメガ<Ω>の5種類である。

 

男と女は元々いるが、その性別の中にいるのが「第二の性」だ。

 

 

アルファ<α>は生まれながらのエリートだ。社会的にも経済的にも高い地位についているほとんどがアルファ<α>であるため、アルファ<α>に生まれたものは人生の勝ち組だとも言われている。実質的に言えば世の中はアルファ<α>の人間によって支配されている。

 

 

ベータ<β>は比較的に平凡だ。社会的にも経済的にもアルファに使われる側の人間で人口の七割はベータ<β>の人間によって占められている。この辺りに生まれればとりあえずは普通の生活を送れることは間違いない。

 

 

そして僕自身の性でもあるオメガ<Ω>。社会的にも経済的にもアルファ<Ω>やベータ<β>のようにはなれず、社会のお荷物扱いをされてしまう。そして世間からは偏見や差別などの風当たりがとてつもなく強い。

 

 

何故オメガ<Ω>が社会のお荷物扱いを受けたり、偏見や差別が強いのかと言えばそれはオメガ<Ω>の者しか持たない特殊な性質によるものが大きな原因のひとつだからでもあるのだ...。

 

 

それはオメガ<Ω>の性を持つ人間には発情期が存在することだ。

 

 

オメガ<Ω>は元々、生殖能力が圧倒的に低く、その生殖能力の低さをカバーする為に三ヶ月に一度、体中からフェロモンを放ち、生殖能力が高いアルファ<α>を男女問わずに引き寄せてしまいオメガ<Ω>の男性や女性は相手がアルファ<α>の場合なら同性でも妊娠してしまうのだ。

 

 

しかし、オメガ<Ω>だからと言ってそれを望んでいる者は少ない。それなのに世間はオメガ<Ω>ばかりを批判し、偏見や差別の目で見てくるのだ。

 

 

オメガ<Ω>は発情期のせいで望まない妊娠をさせられてしまう、そんな事件はこれまで沢山起こっていた。僕はそのことに許せない気持ちでいっぱいになりながらも、それと同じくらいに僕は自分自身の性を呪った。

 

 

どうして僕がオメガ<Ω>なんだと、自分が何か悪いことでもしたのだろうか?自分が神様から嫌われるようなことでもしたからか?

 

 

誰か教えてください。....どうすれば..ボクは....自分の存在を呪わずに生きていくことが出来ますか...?

 

どうすれば、僕は自分の存在意義を見いだすことが、出来ますか...?

 

 

そんな風にボクが自分自身を呪うようになってから何年も経っていた。....でもこの時のボクはまだ知らなかったのだ。

 

 

ほんの数ヵ月先に彼、堀内 雪音の人生と価値観を変えていく出会い、そして彼にとっての居場所を見つけていく物語がもうすでに始まっていることをこのときの彼はまだ知らないーー。

 

 

 




途中から眠すぎて何を書いているのか分からなくなっていますが、とりあえず雪音の心情を私なりに形に出来たと思っているのでとりあえずかこれくらいで!

あれっ?でも途中から只の説明文になっている気が…?

……気のせいと言うことで。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話 僕の親友とトラウマ話

今回は一夏の登場となります!

ちなみにこの作品では一夏ハーレムは存在しません!

一夏ごめんよ!その代わりに君は主人公の一番の良心であり親友ポジションになりましたから。

今回は主人公のトラウマになった原因が明らかになります。長たらしい文章で綴られていますが、それでも許してください!


それではどうぞ。


 

「んっ....」

 

 

あれっ?...僕はいつの間に寝ていたんだろう...?

 

 

どうやら僕はいつのまにか寝てしまっていたようだ....僕は慌てて自分が眠ってしまう前の出来事を思い出そうと起きたばかりの頭を必死になって働かせ始める、ええっと...確か屋上に来てから急いで薬を飲んで..そのあとに....。

 

 

 

「おっ、やっと起きたみたいだな、気分はどうだ?」

 

 

「っ...!?」

 

 

 

ふっと、後ろから誰かに声をかけられた。その瞬間、僕は背筋に冷や汗を流した。それと同時に、僕は反射的に無防備にさらされていた自分の首周りに着けられている黒い首輪を両手で覆い隠した。

 

 

まずい、見られた。どうしょう、オメガ<Ω>だということがばれてしまった。イヤだ イヤだ、脅される、犯される。また....あの時みたいに.....!

 

             

「落ち着け、雪音。よく見ろ俺だ、織斑一夏だよ」

 

 

「えっ...いち..か...?」

 

 

「そうだ、一夏だ」

 

 

そんな風に声の聞こえたほうを振り返ると、一人の黒髪の青年、一夏が心配そうにこちらを覗き込んできた。

 

端正な顔付きに少し崩れた学生服を着こなすスラリとした体型。風か吹く度に小刻みに揺れる切り揃ったサラサラしてそうな短い黒髪。

 

普段は飄々とした印象を持たせるキリッとした瞳が、今は僕を不安そうにそして心配そうに見ていた。

 

あまりの恐怖からパニックに陥りかけた僕に一夏は、申し訳なさそうな表情で声をかけてきた。

 

 

「悪い、いきなり声をかけたら驚くよな。怖い思いをさせてごめんな」

 

 

「イヤ、大丈夫だよ、こっちもごめんね。僕が起きるまで待っていてくれてたんだね...ありがとう一夏」

 

 

「礼なんていいんだよ、俺が好きでやってたことなんだから...落ち着いたか?」

 

 

「うん、だいぶ落ち着いたよ、ありがとう」

 

 

「気にすんな」

 

 

そう言った一夏は僕を安心させるためか、頭をワシャワシャと撫でてきた。もしもここに周りに人がいてこの状態を見られていたとすれば、まるで兄に慰められる弟のような図にも見えなくはないだろう。それはそれで不満しか出てこないが今の僕はその手の温もりに安らぎを覚えるのだった....。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

一夏は僕の幼馴染みであり、唯一無二の親友だ。

 

 

その上に僕がオメガ<Ω>だということを家族以外で知っている数少ない人物の中のひとりでもあるのだ。

 

 

物心付いたころから、家が近所だった為か、自然と一緒に遊ぶことも多かった。いつも明るくて優しく、ケンカをすることも何度かあったものだが、最後にはいつも僕に手を差しのべてくれた。それは今でも変わらない。

 

 

そんな僕と一夏だったがその頃の僕はまだ自分の第二の性を知らなかった状態だった。二年前の春、中学入学を迎える前に僕がオメガ<Ω>だと言うことが判明してしまったのだ。それからは自分がオメガ<Ω>と知られれば一夏に嫌われてしまうのではないかと思い、一夏を避け始めるようになっていた...。

 

 

 

けれど、その一年後の夏休み、事件が起きたー一。

 

 

 

その日の朝から体調がおかしかった。顔は赤く、動悸も激しく、体の奥底から激しい疼きを感じていたのだった。熱を計ってみても高い訳ではなく、もう一度寝直しても、体の調子はおかしいままだった。

 

 

そんな状態の僕だったがお腹は空いていた。あいにく家の冷蔵庫には料理の材料になりそうなものはなく、食べられるものはなかった。親は仕事でいない。冷蔵庫にはなにもない。

 

 

僕は仕方なく外に出るための服に着替え、念のためマスクを装着して家からコンビニへと向かうのだったー一。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

コンビニで買った100円おにぎり2個とペットボトルのお茶が入ったビニール袋を片手に、僕は家までの道のりをあるいていた。

 

それでも、歩いている時に息苦しさや動悸に近いものは止まらずにいたのだった。そんな状態で歩いていてるとふっと、視線を感じた。チラリと盗み目で後ろを見てみると、少し離れた場所から高校生位の二人組の男たちがただ雑談を交わしながら歩いてるだけに見えたが、目線だけは僕の方をまるでそらさずにしっかりと捉えているかのようにも見えた...。

 

 

僕は一瞬、嫌な予感が胸をよぎった。急いで僕はその場から離れようとした...しかし次の瞬間、その嫌な予感は的中してしまった。

 

 

 

「ちょっと、そこの君、少しいいかな?」

 

 

「どうしたの?こんな暑いのにマスクなんて着けちゃって?あっもしかして熱でもあんじゃない?」

 

 

「それは大変だ。君、もし体調悪いんだったら僕達が病院にでも送ってあげようか?」

 

 

「おっ、つよしそれナイスアイディア!」

 

 

僕が立ち去ろうとした瞬間に高校生位の男たちは、まるで僕が去ろうとするのを塞ぐかのように僕の前と後ろに立ち、馴れ馴れしく話かけてきた。この人達は一体...?

 

 

「... いえ、もう帰るので僕は平気です。家も近いので遠慮させていただきます。」

 

 

「まぁ、そう堅いことなんか言わないで、体調が悪いなら無理することなんてないんだよ?だから早めに行って診てもらったら?僕達は悪い人なんかじゃないからね...」

 

 

「そうそう、君もさぁ、辛かったら頼りなって!」

 

 

「別に辛くなんてありませんが....」

 

 

むしろあなた達の相手をしている方が精神的にも肉体的にも疲れるしツラいだけなんですが・・・。とは言う訳にもいかず、僕は無理矢理男たち二人の間から帰ろうとした。しかし、何なのか男たち二人は去ろうとする僕の腕を掴んできたのだ。

 

 

「何ですか、急に!離してください!!」

 

 

「うるせぇ!人が気をつかってやってんのに下手に出てみれば直ぐに逃げようとしやがって!!俺たち二人はアルファ<α>だぞ、黙って言うことを聞きやがれ!」

 

 

どうやら片方の男は絶対的な『第二の性別主義』者のようだ。掴まれている腕に力を込められ、僕が逃げられずにいると、もう一人の男が僕の腕を掴む男の肩に手を置いて諭すように言ってきたのだ。

 

 

「まぁ、落ち着けよひろや、なぁ君、俺たちがアルファ<α>って言うのは嘘じゃないよ?俺としてはこのまま暴力沙汰にはしたくないからね。それにね...」

 

 

そう言いながら物腰が丁寧で胡散臭いもう一人の男が僕のそばに近づくと、僕の耳元で僕を絶望の縁に叩き落とす恐ろしいことを言い放ったのだ。

 

 

 

「君、オメガ<Ω>でしょ?」 

 

 

 

「なっ...!?」

 

 

 

なんで、それを....!?

 

 

「なんでって顔してるね...分かるよ。だって君からは今まで会ったオメガ<Ω>の中で他のオメガ<Ω>よりも何十倍もの甘い香りがしてきたからね。これでも今、君を孕ませたくて堪らないくらいだけど、なんとか我慢してるんだよ?」

 

 

「でもさぁつよし、オメガ<Ω>だったら普通は首輪してる筈だろ。なんでコイツはしてねぇんだよ?」

 

 

「多分、彼が発情期にまだ入っていなかったからじゃないかな?オメガ<Ω>の場合は発情期に気がつかない人もいるらしいから大体の人は始めての発情期を体験したあとに首輪を着けてるらしいからね」

 

 

「ふぇ~相変わらず何でも知ってるよな、つよしは」

 

 

「誉め言葉をどうもありがとう」

 

 

 

目の前の男二人が会話を繰り広げている内容なんかよりも僕はずっと強い衝撃を受けてしまっていた。

 

 

 

甘い香...り?孕ませた...い..?まさか、今朝から動悸や息苦しさを感じてた理由って・・・!!

 

 

                . .

そう思ったと同時に僕はこれからソレが起こるかもしれないという恐怖と不安感から、体が動けなくなってしまっていた。

 

 

そんな僕の心情を見抜いているかのような表情で、そして獲物を逃すまいとするような瞳で男は僕を見てきた。すると、もう一人の男の方に目配りをしたと思ったその瞬間ーー。

 

 

 

 

ガシャン!

 

 

 

僕は腕に手錠をかけられたのだった。

 

 

 

「なっ...!?」

 

 

「あー、大声出すんじゃないぞ、あげたらお前の首筋に噛みつくからな。」

 

 

「とりあえず、すぐ近くまで来てもらうからね。ーー声をあげないことは自分の為だと思った方が良いよ?」 

 

 

「ぐっ....!」

 

 

 

僕が為すすべを無くしたと分かったのか、男二人がニヤニヤしながら、僕の両隣から僕の手元を隠すようにして歩き始めた。僕は不安と恐怖に体を強ばらせながらも、抗うことが出来ず、ただ男達の脅迫の言う通りにするしかなかったーー。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

僕が連れてこられたのはどこか懐かしさを感じさせる公園だった。....あれっ?この場所は....昔、どこかで...?

 

 

そうだ、ここは昔、一夏と一緒に遊んだ場所だったけ、懐かしいな...。

 

 

あまりの恐怖かそれとも懐かしさからか、そんな風に現実逃避をするかのように思考の海へと僕は逃げかけていた。しかし、男二人組は公園の中に入ったと思えば、その公園内にある古びた用具倉庫のなかへと僕を無理やり連込んだのだ。カビ臭さが残る用具倉庫の中にあったホコリ塗れのマットの上へムリヤリ押し倒された。

 

 

「ひろや、誰も入って来ないように外を見張っといてくれ。しばらくは出てこないからな」

 

 

「りょーかい!でもその代わりうなじを噛んだりしたりすんなよ?次は俺が犯すからさ!」

 

 

「分かってるって。取りあえず早く外で見張ってくれよ?俺、今結構限界が来ててね」

 

 

「ヘイヘイ」

 

 

そう言って、片方の男は倉庫の外へと出ていった。すると残った男は限界が来たのか、上の服を脱ぎ捨て、ズボンを脱ぎ下着一枚の姿でこちらの足を持ち上げてきたのだった...。その目はまるで理性などもない。ただ、己の欲望を充たしたいという飢えた獣のようにも捉えられた。

 

 

恐い、とそう思った。心には嘘を付けられる余裕など、僕には出来なかった。

 

 

それでも僕は抵抗の意思を見せるためそして恐怖を直隠す為に、男を睨みつけた。

 

 

「離せ...よ!!こんなこと..して....自分がどうなるのか...分かんないのかよ!?」

 

 

「こんなこと?ーーあぁ俺が無理矢理君を犯して貞操を奪って、最後には君が警察に訴えるっていうシナリオのことかい?....実は俺には平気な方法が一つだけあるんだよね」

 

 

男はまるで僕の反応が予想通りだと言わんばかりにクククッ、と不敵に笑い出した。

 

 

「はぁっ...!?」

 

 

何を言ってるんだと思った。こんなひとを脅迫して、倉庫に連れ込んでレイプしても平気な方法がある....!?ふざけんな、そんな方法があるわけ....!!

 

 

「あるんだよね、こちらとしては都合がいいんだけど」

 

 

「…どうゆう意味だよ....。」

 

 

「僕が犯しても平気だっていったのは君がオメガ<Ω>だからだよ」

 

 

「そんなことが理由になるわけが….!!」

 

 

「首輪なし、発情期、そして君には番がいない・・言ったことの意味は君なら良くわかるだろ….?」

 

 

その言葉は僕の思考を止まらせるのには充分だった。

 

 

 

「分かったなら、黙って俺に抱かれろ、逆らったら君の首筋を噛むからな」

 

 

そう言った男は無理矢理僕の唇を奪った。口の中に自分のものではない舌が動き回り、僕の口を支配してくる。とてつもない嫌悪感と恐怖心に心がすり減る気分だった。

 

 

イヤだ、イヤだ、恐いよ、孕みたくなんてない。誰か助けて…!お願いだからだ…!

 

 

男は僕の服を無理矢理脱がせてきた。倉庫の中の為に、薄暗く、手錠をされているため抵抗も難しい。相手の姿もぼんやりとしか見えない。

 

 

僕はもう思考を放棄しかけていた。そして男が僕の下着を脱がせようとしたその瞬間ーー。

 

 

 

 

 

「おい待て、テメェ一体何の用……ガハッ!!?」

 

 

 

 

 

ドゴーーーンッッ!!

 

 

 

 

 

外からの凄まじい衝撃音が耳に響いた。

 

 

 

僕の放棄しかけていた思考を戻すのには充分なことだったようで思わず音のした方を見た。すると、しめきられていた倉庫の扉が勢い良く開かれた。

 

 

 

 

扉を開けた人物は・・・一夏だったーー。

 

 

 

一夏は僕の上に跨がっている男の姿を見るや否や、怒りの表情で男に飛びかかった。そして相手を気絶させるまで殴り続けた。男の方は反撃の余地も与えられずに気絶した。一夏は僕の無事を確認するように急いで僕に話かけてくる。

 

 

 

「雪音、大丈夫か!!怪我とかはしてないか!?」

 

 

「いち...か?、どうして君がここ....に?」

 

 

息を切らしながらも僕のことを心配してくる親友に思わずそんなことを聞いた。

 

 

「つい先、携帯に差出人不明のメールが届いたんだよ!読んだらお前が二人組の男に何処かに連れていかれたって書かれてて、お前が連れてかれた場所の名前とその二人組の男たちの顔写真が付いていて・・・!」

 

 

それを聞いた瞬間、僕は身体中に力が入りきらなくなり、一夏の胸に体を預けた。助けられた安心感と犯されかけた恐怖心が僕の中に同時に襲った。そして僕は一夏の前にも関わらず、涙を抑えることが出来ないのだった。

 

 

一夏はほんの一瞬、戸惑った表情をしたが、それでも涙が止まらず嗚咽ばかりを吐き続ける僕の頭をまるで家族にするように優しく撫でてくれた。

 

 

 

「僕は...自分がオメガ<Ω>だってことを知られるのが怖かった、一夏に...嫌われることが...イヤだったんだ...本当にごめん...。」

 

 

すると一夏はそんなことを言われるのが意外だったのかキョトンとした表情になった。すると、表情はすぐに笑顔に代わり、泣き続けてひどい顔になっている僕のほっぺたを摘まんできた、あまりのにも予想外な出来事にこちらの方もキョトンとしてしまった。

 

 

 

「ふぇ、いひはなにふぁ....?」

 

           ・・・

「よく聞けよ雪音。俺がそんなことでお前を嫌いになる?アホか、何年一緒にいたと思ってるんだよ。そんなもので俺たちの友情が壊れる?一緒にいた時間が無駄になる?....バカを言ってんじゃねぇよ!」

 

 

一夏は僕が目逸らさないように顔を固定させながらも、その真っ直ぐな瞳で、僕に自らの強い気持ちをぶつけて来た。

 

                 

「オメガ<Ω>が何だ!!俺が見ているのはオメガ<Ω>のお前じゃなくて、ずっと一緒にいた親友のお前だ!そんな事で大切な親友を捨てるほど、俺は薄情な人間じゃない。だから雪音、覚えとけよ....」

 

 

そして、このうえないくらいの強い意思を灯した表情になり、僕に宣言したのだった。

 

 

 

「俺は絶対にお前の親友であることを今ここで誓う...だからもう、独りになろうとすんな....っ」

 

 

そんな一夏の瞳から一筋の雫が頬に伝う。一夏は泣いていた。まるで、言葉にできない思いを涙が代わりに語っているかのようにも僕は見えた。そうして僕たちは二人して泣き続けたのであった。僕らが離れていた時間を埋めるかの様に....。

 

 

 

ーー蝉たちが騒がしく鳴き続けるある夏の日、それは、僕にとって一生消えないトラウマと己の第二の性を呪うことを心に刻み込まれた日、そして幼馴染みとの確執を無くし自分が心から信頼できる親友を得れたそんな日でもあったのだーー。

 

 

 

 

あれから一年と数ヵ月、僕達は平和に過ごしていた。

 

 

あの後、僕は一夏の家に保護され、一夏の通報により、男二人組は警察へと引き渡された。噂では未成年と言うことで刑務所行きは避けられたそうだが、学校を退学し、ここではない遠い場所へと家族ごといなくなったそうだが、実際のところは謎のままである。

 

 

一方で僕に起こった出来事を両親に報告すると、母さんは僕を力いっぱい抱きしめ、「無事でいてくれて、よかった...っ」と震えた声で僕を心配してくれた。父さんは無言で僕の頭を撫でてくれた。それが僕には堪らなく心に染み込んだのだった。

 

 

一夏のお姉さん、千冬さんにも起こったことを一夏は報告をしてくれた。一夏が言うには、話を聞き終えた後、まるで能面を被ったかのような表情で真剣を持ち出して何処かに行こうとしていた千冬さんを止めるのに命がけになったそうだ。そんなに心配してくれたんだと不謹慎だが少し嬉しくなっている自分がいたことは内緒だ。

 

 

そんな事件が起こった後でも、学校側には事件のことは伝えてない。これは家族や織斑家が僕の学校での立場をなくさないようにとしてくれた配慮が大きかった。未遂とはいえ、学校のみんなにまで知られたくはなかった。

 

 

 

一夏はああ言ってくれたが、やはりオメガ<Ω>に対しての世間からの認識は差別や偏見なものが多いのだ。さらに10年前、に女性にしか乗れないというISというバワーハンドスーツの登場の影響でか、世界はあっという間に女尊男卑の世界に浸透してしまい、その中でも男性のオメガ<Ω>の立場は圧倒的に弱くなってしまった。

 

 

 

それでも、ISの存在を嫌いにはならなかった。作った人がそんなつもりじゃないことは知っているし、なによりも、今は側にいない、開発者である幼馴染みのお姉さんが宇宙に行きたいと言う夢を楽しそうにそして、嬉しそうに自分に語ってくれた顔が今でも記憶の中に残っているからだろう。オメガ<Ω>であることをを隠すのは正直辛いがそれでも普通の日常を過ごすために努力をする。

それが僕に出来る唯一のことだからーー。

 

 

 

「ねえ一夏。もしよかったら今日は僕の家でご飯でも食べに来ないかい?」

 

 

「えっ、いいのか?今日は親御さんがいるんじゃ...?」

 

「どっちも仕事で忙しくて明日帰って来るってよ。それに、一人でのご飯だと味気もないしね」

 

「そこまでいってくれるんなら喜んで!雪音の料理はうまいからなぁ、千冬姉に教えてあげて欲しい位だぜ。」

 

「一夏の方が料理うまいじゃないか....」

 

 

そんな風に軽口を叩き合いながら僕たちは笑いあった。

 

 

こんな風に平和で当たり前に、そして大切な人達と笑いあえる日常が続くことを僕は密かに、そして強く心に願うのだったーー。

 




とりあえず、書き切った感が半端ないです

本当は昨日の内に投稿をしょうと思ったのですが、5000行を越えたときに間違って消してしまい、そのショックから一日遅れてしまいました。

読んでいてくださる方には大変申し訳ないと思っております。それでも自分なりのペースでこの作品を更新し続けて行きますので、応援もしくは感想やお気に入り登録など、少しでも読んで面白いと思ってもらえるように頑張っていきます!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話 僕の努力、一夏の優しさ

前回に引き続きこんな駄作を読んでくださり、どれだけの感謝の言葉を並べても足りないくらいに感謝感激です!

第二話を更新した直後にこの作品がお気に入り20件を突破しました。ありがとうございます!!

オリ主は可哀想です。オリ主が自嘲的な考え方が多いです。それでも共感をしていただければと思っています!

それではどうぞ!


 

季節は木枯らしが吹き付ける秋から、冬へと移り変わらせる。秋には感じられないような冷たい風を吹かせ、町ゆく人達はマフラーやコートなどを身に纏い、白い吐息を吐きながらも歩いて行くだろう。

 

 

冬という季節は何だか他の季節よりも特別な行事などが多い。クリスマス、大晦日、バレンタインなど様々だ。今の時期は12月の上旬。その為かどこのかしこもクリスマスムード一色で染められている。家族と過ごす者、友人と過ごす者、恋人と過ごす者などーー。今の時期は大切な人達と過ごすのにはうってつけの季節だと断言できる事は間違いないだろう。

 

 

しかし、僕と一夏は違う。今年の冬を楽しめない理由が存在していた。

 

 

 

それはーーー。

 

 

 

カキカキカキ

 

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

 

 

カキカキカキ

 

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

 

 

カキカキカキカキカキカキ

 

 

「…もう無理だぁ!!俺にはこの悪魔のごとくの魔術式の解き方なんて分からないんだぁぁぁぁ!!!」

 

「落ち着いて一夏。それは数学の公式だからね。分からないからって問題集を投げ出そうとしないでね?」

 

 

絶賛、受験前の追い込み(悪あがき)の真っ最中だからである。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 僕と一夏は現在、灰色真っ只中の高校受験生である。

 

そんな僕らは学校が休日の日である事を利用し、現在は一夏の実家でもある織斑家で僕達二人の志望校である私立藍越(あいえつ)学園の入試に向けての入試対策の勉強中なのであった。

 

 

しかし開始から早一時間。・・・一向に進む気配を感じさせません。原因ですか?そんなの決まってますよ。一夏の奴が分からないと言って中断させてくるからに決まってるじゃないですか!!

 

 

 

「…ちょっと一夏、さっきからまったく進んでないよね?このままのペースじゃ不味いんじゃ….」

 

「ああ、俺も今まさに同じことを考えてるよ....」

 

「一応、君にもちゃんと自覚があることには感心だね」

 

「お前は俺を一体どんな風に見てるんだよ….。」

 

 

どんな風に見てるかって?そんなの決まってるよ。

 

 

「鈍感唐変木でどうしょうもないくらいのシスコン」

 

「それはただの悪口じゃないか!?」

 

「事実だからしょうがない」

 

「しょうがない要素なんてどこにもないだろ!?」

 

「ほら、さっさと続きやるから集中だよ集中~。」

 

「話をそらされた….っ!!」

 

 

とりあえず一夏をからかって遊ぶのはこれくらいにしておくとして、さっさと勉強を再開させないとね。進むものまで進まなくなっちゃうからね。

 

 

すると、一夏は少し不服そうな表情をしたまま、問題集を睨みつけながら愚痴を言い始めてきた。

 

 

 

「だいたい、俺には分からないところが多すぎるんだよなぁ…..雪音は頭が良いから羨ましいぜ。」

 

「何言ってるの、僕だって復習を何度もしてるからついていける状態なんだよ?頭が良い訳じゃないからね」

 

「....毎回、テストが行われる度に学年トップを取る奴のセリフじゃないと思うんだけどそれ....。」

 

「まぐれだよ、まぐれ」

 

「....雪音が相手だからかなぁ?嫌味だとはあまり思えねぇんだよなあ........」

 

 

一夏はそう言って、深い溜め息を吐いていた....。自分には無理だと言った感じの雰囲気をかもしだす一夏に、僕は少しばかりのアドバイスを送った。

 

 

「一夏、最初から何でも分かる人なんていないよ。みんな誰かから教わって、そして間違えて、それで学習して覚えといくんだよ。勉強もそうだし、人間関係だって同じことが言えるからね。一夏だって剣道をやってた時は、努力をして覚えたことはいっぱいあるだろ?」

 

「....確かにな。あの頃は剣道を教わるのが楽しかったからなぁ、夢中になって技を学んで強くなるのが嬉しかったから」

 

「そう。僕は人にとって一番大事なことは『向上心』だと思うんだ。だって学んで覚えたとしても、それを上げていこうっていう気持ちがなきゃ結局は意味がないからね。だから僕は、しっかりと覚えて知識になるように復習をしているんだよ。」

 

「とても同い年の考え方には思えないんだが…。お前は本当に大人びてるな....羨ましいぜ。」

 

 

 一夏はそういうが、僕はその言葉に少し苦笑いしながら、自嘲気味に言葉を返した。

 

「....僕はオメガ<Ω>だからね。オメガ<Ω>はどんな事にも、アルファ<α>やベータ<β>には勝らないのが当たり前な世の中になってるからね、...別にアルファ<α>やベータ<β>の人が嫌いなわけじゃないよ。でも、せめて才能や立場で勝てない分は、努力でなんとかしたいんだ。叶う訳ないって分かっているけども....」

 

 

そんな風に哀しそうにそして自嘲気味に笑う雪音を見て、一夏は先程、自分が不用意に放った言葉を恥じ、己に怒りを感じるのであった。

 

   

「(何が羨ましいだよっ…俺の馬鹿野郎…っ!!)」

 

 

 雪音が自身の性を呪うようにしていることは知っていた。自分はそれを気にせずに雪音の傍にいれている。親友として、雪音を支えていると思っていた。

 

それなのに、自分は彼を意識なく傷つけた。彼がこの年でこの様な大人びた考え方をそして努力をするようになったのは考えればわかるずなのに。

 

 

「....悪い雪音、俺はお前の気持ちをちゃんと....」

 

「平気だよ。むしろこっちが気を使わせてごめん」

 

「でも、俺はお前の気持ちを知ってるのに...それなのに俺は考えなしに....っ!」

 

「一夏....。」

 

 

 一夏自身は自分の軽率な発言で雪音を傷つけたと思っているようだが、雪音はそうは思わなかった。

 

 

普段は飄々として余裕を持たせている態度や無意識に女の子をときめかせるような発言をしている鈍感唐変木だが、その本質は熱い心を秘めていて曲がった事が大嫌いでとても他人の心の痛み(恋愛以外)を分かってくれる、自分にとっては傍にいてくれてすごく息抜きが出来る大切な親友だ、少なくとも雪音はそう考えている。

 

 

「(君は、....優しすぎるよ)」

 

自分の事よりも人の世話をかけたり、自分が傷つくよりも相手が傷つく事をいやがり、相手が悲しんでいたら手をさしのべてくれるところも、自分が傷つけられて、酷いことを言われたとしても...見捨てたりしない。

 

 

僕にとっては君が羨ましいよーー。

 

 

 そんな風に思うが、それ以上にそんな一夏だからこそ、自分は傍にいて居心地が良いと思えるのだった。

 

 

「一夏、勘違いしないで。君は考え無しに僕を傷つけたって言ったけど、違うよ?むしろ君からそんな風に言ってもらえたことが、僕はよかったと思っているよ」

 

「....そうなのか?」

 

「うん、だって、僕が努力していることを、形が違うとは言え、君は僕を認めてくれたんだ。ーー親友からそんな風に言われて嬉しかったよ。」

 

 

そんな風に僕は一夏に言った。これは本心だ。自分を分かってくれる人に認められたことがよかったと、心から言えるんだからねーー。

 

 

そう言って、一夏を見ると、少し申し訳なさそうに、そして安心したような笑顔で僕を見て言ったのだった。

 

 

「....ありがとう、雪音…お前が友達でよかった。」

 

 

その言葉に雪音は少しばかりキョトンとしたが、すぐさま嬉しそうに、そして照れくさそうな笑顔を一夏に向け、言葉を返した。

 

 

「ーーこちらこそ、君が友達でよかったよ。一夏」

 

 

 そうして、彼らは笑い合うのだ。冬と言う季節にも負けないような優しい温かさを覚えるような感覚に二人は呑まれるのであった。

 

 

「雪音、早速勉強の続きをはじめようぜ!分かんないところは何度も聞くことになると思うけど...大丈夫か?」

 

「もちろんだよ!絶対にふたりして受験に勝とうね!」

 

「よっしゃーー!俺はやってやるぞー!」

 

「その意気だよ!一夏!」

 

 

そうして彼らはまた勉強に取り組むのである。ふたりなら絶対にやれると互いを信じてーー。

 

 

 

 

 

余談だが、この後、一夏が真面目に勉強をしている所をたまたま実家に帰宅した世界最強の姉が見たところ...。

 

 

『....あんな真面目な表情の一夏は初めてだった。これも雪音のおかげだ....さすがだな』

 

 

と、言っていたそうだ。何故だか、雪音の名前を口に出した時の顔が優しさに満ち溢れていたようだが…。

 

 

 

雪音本人はもちろん、弟である一夏もそんな事は知らないのであったーー。

 

 




いかがでしたでしょうか?

前回投稿したときから時間がかかり過ぎてしまい、申し訳ありませんでした!

なぜだか、私が文を打つと暗い感じや、長すぎる心情ばかりで、読んでいても退屈に思わせてしまうのではないかと心配になっております!

ですが、この作品を応援していただける人がいてくださるかぎりは絶対に更新をやめることはありません! 

次回は番外編になりますので、速めに更新をさせていただきます。


これからも、応援よろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 織斑千冬の恋煩い

この作品はオリ主の争奪戦というタグがつけていますが、読者の皆様としては争奪戦とかは見たいと思うのだろうか・・・?

タイトルのとおり、千冬さん視点のお話です

千冬さんが純粋に雪音に恋している姿と同時に彼を自分の番にしたい欲望を持つ姿。

理性と本能の間で揺れ、罪悪感に苛まれる千冬さんを書きたかっただけです。



私がアイツにこの感情を抱くようになってから、私の世界は変わった。アイツの事を考えるだけで胸が燃えるように熱く、そして破裂しそうなくらいにドキドキが止まらなくなる....。キッカケなどを聞かれてしまえば私は答えられないだろう。

 

     

ただひとつだけ言えることがあるとするのならば…。

 

        

 私はこの先、....幼馴染みで私の弟の親友であると同時に、私を本当の姉のように慕ってくれる彼…堀内雪音以上に愛しく、自分のものにしたいと本気で思える相手にこの先、出会う事はないだろうとーー。

 

 

 

◇◆◇

 

 

私と雪音が知り合ったのは当時、まだ幼稚園児だった一夏が、家が近所だった雪音をウチに招いたことがキッカケだった。

 

 

 初めて会った時の雪音の印象は控えめで、とても可愛らしい少年と言った感じであった。しかも、初めて会ったばかりの私に対しても礼儀正しく、そして無邪気な笑顔で挨拶をしてくれた、その表情が少し照れくさそうにしていたことは今でもよく覚えている。

 

 

 その当時の私は初めて会う子供などから目付きが怖い。怒っているのではないかと思われてしまい、大抵は恐がられたり、泣かれてしまうことが殆どだったため、弟である一夏以外の子供の接し方が分からなくなっていた。しかし、雪音は違った。初対面の私を恐がらずに普通に接してくれたのだ。

 

 

 だからだろうか、初めて会ったというのに私は雪音にたいして強い感心と興味を持ち始めていた...あの頃の私なら理由が分からなかっただろうが、今の私ならばあの頃から雪音に惹かれていただろうと確信して宣言することが出来るだろう....今は言うつもりはないがな....。

 

 

それからと云うものの、家が近い為か雪音はよく我が家に来ては一夏と一緒に遊ぶようになっていた。私としても一夏に仲が良い友達が出来たことに安心し、遊んでいる二人を横目に自然に口元に笑みが出ていたくらいだ。

 

 

 そんな風にしている年月の中でも雪音との間には様々な思い出があった。

 

 

一夏と雪音が始めて一緒になって私の為に作ってくれた料理の味。

 

 

雪音と一夏がお互いの家族の良いところを言い合ってた所をこっそりと聞いていた私が恥ずかしい思いをしたこと。

 

 

 道場で剣道の修練をしている時、束が乱入してきたのでコブラツイストを掛けて撃退したところ、慰めを求めた為か、どさくさに紛れて雪音に抱きついた束にアイアンクローをかまして沈めたこと..。

 

 

 焼きいもを焼こうとした一夏が、落ち葉を集めて燃やそうとした時に家の周りにまで火が移りかけ、雪音と一緒になって慌てて火を鎮火しようと躍起になったことなどや…。

 

 

 そんな日々を過ごしていく中で私は雪音に対して感謝の気持ちともう一人の弟ができたかのような気持ちになっていた。私はとても幸せに満たされていた...。

 

 

 

 

しかし、それは突然変わってしまった。

 

 

 

 

 

 それは、私がまだISの日本代表時代の頃、その当時まだ小学6年生になったばかりの雪音との間に起こった、私が雪音に対しての気持ちを自覚してしまった日の出来事であるーー。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ただいま」

 

 

 

 

 その日の私はいつもより早く帰宅をしていた。連日のように行われるIS関連の仕事に日々身を尽くしていた。IS通称《インフィニット・ストラトス》というマルチフォームスーツが世界中に発表されて早5年になった。

 

 

 

当初は宇宙での活動を想定して開発されたものだが、『ある事件』がきっかけでその高い性能が従来の武器を遥かに凌駕してしまうことが世界中に知れ渡ってしまったことから、今では宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして世界の軍事力の要として変わって行ってしまった。

 

 

 

 これには開発者であり、私の古くからの親友である篠ノ之束(しののの たばね)は嘆いていた、自分が開発したのはそんなくだらないことの為じゃないのにと。この時ばかりは束に同情の念を抱かずにはいられなかった。普段の束を知る者からしたらよく分かるであろう。あいつにしてみれば落ち込みっぷりは半端ではなかっただろうから。

 

 

 

その後からは束は行方不明となった。世界中でもISの稼動力になるコアを作れるのは世界でただ一人、束だけだからであるからな。なぜかその後もちょくちょくこちらに顔をだしてはバカな事を仕出かしていたが・・・。そこはもうあきらめるしかないのが腹立たしいくらいだ。

 

 

 そんなこんなで規格外な親友が居たおかげか、 ISの知識に関しては束の次ぐらいまでは覚えられていた。それに加えてISの適正試験では最高値であるSを叩き出し試合でも一度も負けずにいたためか、私は瞬く間に日本代表操縦者へと道を駆け上がっていた。

 

 

 何年か前に両親が失踪してからはバイト三昧で一夏との生活を切り盛りしていた私にとっては、高い収入が入るために、一夏を養っていくにはこれ以上ないくらいに都合がよかった。しかし、その仕事は多忙を極め、オマケに日本代表になり、ISの世界大会で優勝してしまってからは連日のように公式の試合、ISの取材や雑誌のモデルなどに引っ張り回されて休みがなく、家にもマトモに帰れる状態ではなかった....。

 

 

そんな状態の中で、その日は珍しくIS関連の雑誌の取材だけしか入っておらず、午後は全て空いていたために、久しぶりに我が家へと帰って来たのだった。

 

 

「一夏?....いないのか?」

 

 

久しぶりに帰ってきた我が家に、いるはずである弟の名前を読んだが返事が帰って来なかった。少し疑問に思いつつも、私は靴を脱ぎスリッパを履いてリビングへと向かった。

 

 

リビングの扉の前に着き、扉を開けた。そこには一夏の姿はなく、いつものように綺麗に掃除されている状態だった。そんな中でふっとした瞬間、私は妙な甘い香りが室内に漂っていることに気がついた。

 

 

甘い匂いの発生源の方を見ると、そこにはリビングに設置されているソファーがあり、そこから誰かの頭が見えた。私は一夏が寝ているのかと?思いながらも、ゆっくりとソファーに近づいていった。

 

 

しかし、そこに寝ていたのは全く違う人物だった。

 

 

「雪音...?」

 

 

そこにいたのは、しばらくは会っていなかった、わたしにとっては幼馴染みであり、もう一人の弟のような存在であり、一夏の親友でもある雪音だった。何故我が家で寝ているのかと思ったが、それよりも彼に近づくたびに何故か甘い匂いの強さが増したのだった。

 

 

 

「(なんだ..この感覚は....?急に息がしずらく..?それに雪音を見ているだけで、体中が熱くて、動悸が激しく....なって、きて..?)」

 

 

そんな風に体調がおかしくなりながらも、千冬は雪音の方へとさらに近付くのだった。しかし....。

 

 

 

ドクンッーー。

 

 

 

雪音の姿を直で目にした途端、心臓が強く脈を打つかのような錯覚を千冬は覚えた。否、実際に錯覚ではなかった。千冬は強い何かの感情に襲われた。

 

 

「(なんだ..さっき、....よりも..激し....く!?なんだコレは、...目眩が、動悸が....早く..!顔が....熱い..。)」

 

 

 

千冬は体調がおかしくなった理由に気付いていなかった。しかし、本能でそれを直感をしていた。そう、彼女のアルファ<α>としての本能が.....。

 

 

 

ーー千冬は、雪音に欲情をしたのだ。

 

 

 

今までも、恋愛に関しては千冬はモテる方だった。しかし、ISが世界に浸透してからは、男性の方に言い寄られることは少なく、むしろ女性の方からはその圧倒的な強さと、その美しい容姿に魅いられ、国を越えてまでの人気ぶりを発揮していたのだった。

 

 

その中で、オメガの女性や男性が近づいていた来たことも何度もあったが、千冬は欲情どころか、フェロモンによる誘惑も効なかったのだ。アルファ<α>である彼女としては、誘惑されないで助かったようであったが…。

 

 

それなのに彼女は今、目の前でスヤスヤと眠るまだ小学生である雪音のフェロモンにやられたのだ。今の彼女の状態は目の前に獲物がいるのに、手が出せない肉食動物のような状態に陥っていたのだーー。

 

 

 

「はあっ....はぁっ...!..うっ....落ち着け..!私..!..クソ..絶対..に....駄目.....だ!」

 

 

 

千冬は欲情していながらもその鋼の如く強い理性で本能に必死の思いで抗がっていた。しかし、彼女の本能は甘い誘惑に身を捧げてしまえと語りかけていた。

 

 

 

«何をしている?早く彼を襲ってしまえばいいのに?»

 

 

「イヤだ....!わたし..は..襲いたく..なん....て!!」

 

 

«だが、お前は彼のフェロモンに惹かれている。ーー今までお前が出会ったオメガでは絶対になかったことだ、彼がお前の運命の番かもしれないんだぞーー?»

 

 

「ちが...う!..雪音...は、わたし..の、弟のような....存在..なん....!」

 

 

«まだ、そんな見栄すいた嘘をつけるんだな…彼の姿を見て欲情したのだろう?彼の匂いを思いっきり嗅いで、あの無防備なうなじに強く噛みついて自分だけの物にーー本当はしたいんだろ?»

 

 

「っ....!わたし..は!....そんな...こと...など...!」

 

 

しかし、そんなことを言っている千冬だが、内心では全てを見透かされている気持ちになっていた。

 

 

千冬は、ソファーでいまだスヤスヤと眠る雪音の姿が目に入ってきた。

 

 

一緒に過ごした中でも何度も見てきた可愛らしい顔立ちは、まだ子供らしい幼さを残しつつも、整った顔立ちをしており、閉じられている目は切れ長で、長いまつげをしている。

 

柔らかな髪は白い首筋にまでかかるほどの長さをしており、天井の光に反射しているためか、まるで絹糸のような艶やかなな光を帯びている。

 

体は程よく、そして無駄かないくらいに細めでありながらも、服から除かれる腕や足にはつけすぎない程度にしなやかな筋肉がついている。

 

そして、規則正しい寝息が聞こえてくる、その柔らかなそうでそしてハリがある唇をみているだけで、千冬の喉からゴクリと生唾を飲み込むような音が聞こえてきた。

 

 

 

そして、千冬はこう思ったのだーー。

 

 

 

ーあの全てがわたしだけの物になったら、どれだけの幸福感がわたしの中に与えられるのかーー?

 

 

そう思った時には、もう遅かった。千冬は眠る雪音が起きないように、そっと彼の上に跨がった。彼のフェロモンがより強く、そしてより激しくなり、千冬の欲情と支配欲、何よりも彼女自身の興奮を煽った。

 

 

雪音の首筋に近づきその匂いを嗅いだ、それだけで、より一層、雪音のフェロモンの虜になっていた。そして、千冬はその無防備にさらされた首筋に、自身の鋭い歯で深く、そして噛み跡が残るように噛みつこうとした、その瞬間ーー。

 

 

 

「ただいまー!雪音~!今、帰ったぞ~。」

 

 

 

玄関から聞こえて弟の声に千冬は一緒で正気に戻った。それからの彼女の行動は速かった。

 

 

千冬はすぐさま雪音の上から降りると、たまたまソファーに掛けられていた毛布をとり、眠っている雪音の体へと急いでかけた。そしてすぐさまに雪音から少し距離をとり、キッチンに向かい備え付けられた冷蔵庫から水を取り出して慌ててコップに注ぎ込み、口の中へと流し込んだのだった、少しばかりむせてしまったが。

 

 

するとリビングの扉が開かれ、買い物袋を片手に下げている一夏が入ってきた。どうやら夕飯の買い出しに出ていたようだった。

 

 

「あれ?千冬姉、今日は早かったんだな。お帰り」

 

 

「あ、あぁ、今日は午前中だけだったからな、やることもないし、早めに帰ってきたんだ....ただいま」

 

 

「そっか、久しぶりにゆっくり出来るんだから、よかったな。....あれ雪音、寝ちゃてんじゃん。だから返事がなかったのか」

 

 

「そ..そうだな、きっと雪音も疲れているんだろう...しばらくしてから起こしてやってくれ、....私は部屋で少し、休んでくる」

 

 

「了解。あっ、千冬姉、夕飯の時には呼びにいくからな!」

 

 

「わかった、そうしてくれ....。」

 

 

そう言って、千冬はそそくさとリビングから退散した。階段をかけ上がり、すぐさまに物が散らかりかえっている自身の部屋の中に駆け込み、ベッドに身を預けた。

 

 

そしてすぐさまに千冬の中には雪音に対しての尽きない罪悪感が募らせた。

 

 

「(私は....いったい、..何をしょうとして....っ!!)」

 

 

わかっていたのに、あんなことをしてしまえば雪音に嫌われるどころの話ではない。あの場で一夏が来てくれていなければ、きっと自分は欲に身を任せて雪音を犯していただろうと、欲望のままに彼を傷つけかけたのだ。 

 

 

それなのに、私は彼に嫌われてしまうのが恐い、話せなくなってしまうことが嫌で仕方がなかった。だからこそ、気づいたのだ、自分の本当の気持ちに....。

 

 

「(そうか、私は弟として雪音のことが好きなんじゃないんだ....)」

 

 

千冬は長く、そして深いため息をはくと同時にその瞳に涙をためながらもぽつりと呟いたのだった。

 

 

 

「私は...雪音のことが....異性として好きなんだな...」

 

 

そういった千冬は涙を流し、雪音の笑顔を思い出しながらも、心の中でけっして言葉に出来ない、雪音への懺悔の言葉が並べられたのだった。

 

 

 

ーこの日、世界最強と呼ばれる女性は恋を知った。そして、同時にけして許されない永遠の業を自ら背負うのであったのだーー。

 

 

そして、彼女は知る。この先、雪音と自らの関係が変わっていくことを、彼女はその先でなにを得て、何を失うのだろうか...。

 

 

 

 

 雪音、私はお前に許されないようなことをしてしまった。それでも私が抱くこの感情はきっとお前以外には抱くことは永遠にないだろう。だからこそ、今はお前の姉として傍にいて、一夏とお同じようにお前のことを守り抜いて支えていこう...。

 

 

 

 

そしてーー

 

 

 

 

いつか必ず、お前自身を手に入れるためにーー。

 




速めに更新するとか言っておきながら結局、一週間になっていました....。

大変申し訳ありませんでした!!!(土下座)

どうか書き始めたばかりの素人が調子に乗ってしまったと思い、水に流して頂きたいと心から思っています!

この番外編では、千冬さんらしさを残したいと思いつつもアイディアが出てこず、一週間もかかるはめになりました!それでも作者としては渾身の回だと自負しております!

感想や評価など、それが貰えれば作者はもっとやる気を出すことができます!

これからも、どうかこの作品をよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話 そして始まる僕の運命。

前回の千冬さんの番外編を更新してからお気に入りが40件に突破しました!

イヤ、本当にありがたいという言葉以外浮かばないくらいですね・・・。

これからもあんな感じで雪音に恋心を寄せているヒロインたちの話を書いていくと思いますので・・えっ?次は誰の話を書くかって・・・?

それはまぁ、創作の神様が降ってきてからですかね・・・。



「一夏、体調は平気?緊張してるのはわかるけど、そんな状態じゃ、試験は受けられないんじゃ....」

 

「あぁ...、大丈夫...だ。少し吐き気がするけど…雪音、お前は大丈夫なのか…?」

 

「僕はもう、昨日の内に散々緊張したからね..いざ当日となってみると案外平気ものだよ?」

 

「....なんで前日に緊張したからって平気なんだよ..?俺の受験へのメンタルはそこまで強くねぇよ..」

 

「人間は考え方次第で何事も適応が出来る生き物だからね、一夏もきっとこの先はなれてくる日がくるよ!」

 

「イヤ、俺は絶対無理。」

 

「そんなはっきりと否定しないでほしいんだけど!?」

 

 

僕と一夏は現在、私立藍越学園の入試試験を受けるために、2月の中旬になりながらも未だに降り積もった雪が残る藍越学園の受験会場までの道を二人一緒になって歩いていた。

 

そんな日にもかかわらず僕と一緒になって試験を受ける幼馴染の織斑一夏は現在、入試試験当日というせいなのか、電車に乗っている最中もガチガチに緊張したような状態が続いていたため、目的の駅に着いたと同時にグロッキーな状態になりさがっていた。

 

まぁ、緊張する気持ちも分からなくはないが、何事も人間は考え方次第でどうにかなると言うからね、一夏にはあっさり否定されてしまったが、緊張するよりも楽に考えてしまえばなにごとも大丈夫!(あくまで雪音個人の意見です)

 

とりあえず未だ気持ち悪そうな表情が抜けきらない一夏の背中を擦り続けながら歩き始める。そうしているうちにか、いつのまにか僕と一夏は目的地である藍越学園の受験会場がある建物の前に辿り着いていた。

 

 

なんでも、藍越学園で過去の入試試験時に、不正行為を行った人がいたため、カンニング防止対策として、どこかの建物の一室を借り入れ、そこを受験会場としているらしい。

 

 

「ここが受験会場か~。なんか無駄にでかい気がするよな」

 

「確かにね。そういえば今日はここで藍越学園以外にも入試試験をやってる学校があるって聞いたよ。」

 

「そうなのか、まあどこだとしても俺たちには関係ないことだけどな」

 

「それもそうだね、それよりも早く中に入っちゃおうか?一夏」

 

「おう、了解だ。」

 

 

そう言って僕と一夏は建物の中へと入っていくのだった。この時、まさか自分達が何気なく行った言葉がフラグになるとも知らずに....。

 

 

◇◆◇

 

 

「...なぁ、雪音」

 

「...なんだい、一夏?」

 

「気のせいだと思いたいんだけどさ....。」

 

「うん、それならきっと気のせいじゃないかな」

 

「....じゃあ、一応言うけどよ....。」

 

「一夏、駄目だよ?その先を言ったらどうなるかーー」

 

 

 

 

「俺達ふたり共、絶対に迷子になったよな?」

 

「言わないでって言ったじゃん!?そんな現実を僕につきつける感じで言わないでほしかったよ!」

 

僕は思わず、自分が必死になって目を反らしていた事実をあっさりと言い切った親友に対して非難の言葉を漏らしてしまう。

 

「まぁ、落ち着けよ。別に迷子になっただけですんだじゃないか、まだ時間だってあるし、あと、お前なんで涙目になってるんだよ...?」

 

「一夏が変なところに行っちゃうから迷子になったんでしょ!どうするの!?これで試験会場に行けなかったら、僕たち完全におしまいだからね!!あと涙目なのは誰のせいだと思ってるのかな!?」

 

「まぁ、とりあえずそこら辺を探してみようぜ。おっ、あそこになんかでかい扉があるぜ!行ってみるぞ。」

 

「ちょっ..一夏!!人の話を..待って!勝手に入ったら不味い気がするんだけど!?」

 

しかし、もう遅かった。雪音の制止の声を聞かずして、一夏は目の前の扉を開いてしまった。

 

 

するとーー。

 

 

「...あれ、コレって..。」

 

「..ISだよね..?」

 

 

一夏によって開かれた扉の先にあったのは、まるで中世時代に存在するかのような鉛色の東洋甲冑をメカメカしく模様したような機械が室内の中心に二機おかれてた。

 

そして、好奇心せいか恐る恐るといったように雪音と一夏はその二機の方に近づいていくのだった。鉛色のISを見ながらぽつりと雪音は呟いた。

 

「..この機体、純日本産第二世代型IS打鉄(うちがね)じゃないか...なんでこんなところにあるんだろう?」

 

「よくISの正式名称なんて覚えてるよな、雪音は」

 

「昔から束さんに色々と教えてもらったおかげだからだよ。でも、なんでこんなところにISがあるのかな?」

 

「なんでだろうな。俺にはさっぱりだよ」

 

「まぁ、普通はそうだよね....。」

 

そんな風にキョトンとした様子の一夏に苦笑しつつも、雪音は自分の顎に手をやり、頭の中に思考を張り巡らせた。

 

「(どうしてこんなところにISが?見たところ展示用に飾ってある訳でもなさそうだし..それに活用するにしてもこんな建物の中なんかじゃ装着しづらいのに...)」

 

そんな風に思考の渦を展開させている中で雪音は気がつかなかった。鈍感で唐変木な自分の親友がISに触れようとしていたのを、そして、それがキッカケで雪音の人生が変わってしまうことなどもーー。

 

 

キュイイン

 

 

 

「....えっ?」

 

 

突然、雪音の耳には何かを起動させるかのような音と誰かの呟きが響いた。雪音が慌てて後ろを振り向くと、そこに居たのは女性にしか起動させることが出来ないと言われている筈のISを纏っている自分の親友の姿が目に飛び込んできた。

 

「一夏....なんで、君が...ISを纏ってるの....?」

 

「イヤ、せっかくだから記念に触れてみようと思ってさ..軽く触れたら、いつの間にか起動させたみたいで」

 

「起動させたって....そんなバカな..」

 

「それにしても、これどうやったら解除できるんだ?」

 

「いや、どうして一夏はそんなに冷静に受け入れてるんだい!?」

 

あまりにもいつも通りな一夏を前に思わずツッコミを入れてしまう雪音。しかしそうするしかなかった…。目の前の現実を直視することなど、雪音には出来なかった。むしろ、混乱とこれは夢なのではないかと言う気持ちの方が強いのが原因でもあるからだ。そうしているうちにーー。

 

 

バタバタバタガチャ!

 

 

突然、扉が開かれたと思うと同時に、ISを起動させた音を聞きつけた職員らしき人物たち数名程が、部屋の中へと入り込んできたのだ。

 

 

「ちょっと貴女達!ここは立ち入り禁止のところなのよ!!試験を受けるんだったら正規の...ところ....で?」

 

「....主任、自分には男がISを纏っている姿が見えるのですが...」

 

「同じく、私もです。」

 

「なっ、なんで男がIS..に!?とっ、とりあえず、貴女たちは本部に連絡を入れて!あとそこにいる貴方もISに触れてみなさい!」

 

「えっ、僕もなんですか!?」

 

「そうよ!だからさっさと触りなさい!」

 

「わっ..分かりました。」

 

 

雪音は職員の女性に言われるがままに、ISに触れた。

 

 

そしてーー。

 

 

 

キュィィン

 

 

なんと雪音自身までもがISを纏ってしまったのだ。

 

 

「まさか、こっちの男も....!?とりあえず、本部にはもう一人も起動させたって報告を..!!なんでこんなことが..!」

 

バタバタと職員達が慌ただしく出ていく背中を見送りながらも雪音はどこか疲れきった表情で、小さく声を出して言ったー。

 

 

「…受験勉強が全部無駄になった...。」

 

 

しかし、そんな少年の響きは部屋の中へと、虚しく吸い込まれていくのだったーー。

 

 

 

この日、世界で初めてISの男性起動者が現れた。それも二人も。一人は世界最強と呼ばれるISの操縦者である織斑千冬を姉に持つ少年、織斑一夏。もう一人は一般人でありながらもISを起動させた少年、堀内雪音とーー。

 

 

そして堀内雪音の運命を変えてしまう歯車が回り始めたのだったーー。

 

 

 

 




とりあえず、次回からは原作編が始まります。

原作に行くまでの導入が長くて申し訳ありません。

次回も楽しみにしてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原作開始
第五話 女だらけの花園に、その笑顔は最大の殺し文句


本当に…申し訳ございませんでした!!!

まじでごめんなさい、ここのところ、テストと重なってしまいまともに文を打つ余裕がなく、やっと終わったところでした。

この話を読んでくれる読者の皆様、申し訳ありませんでした!!

だから、どうか見捨てないでください!



「…いよいよアイツらに会えるんだな」

 

木から舞い散った桜の花びらが風によって何処かに吹かれ行く光景を目にしながらも、長い黒髪をポニーテールにした少女はそんな事を呟いた。

 

そんな少女の目線の先に見えるのは、限りなく青く、そして、どこまでも広がる空と海。その相反する二つの青の中心に存在する一つの島。ーーその島にはまるで島全体に広がるようにして建てられている、ひとつの巨大な建造物が存在していた。

 

IS学園。それは、世界中から集まるIS操縦者の育成用の特殊国立高等学校のことである。操縦者に限らずIS専門のメカニックなどISに関連する人材はほぼこの学園で育成されている。また、学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、干渉も受けない。そのために、他国とのISとの比較、新技術などの試験などにも適している為、そういった面では重宝されているのだ。

 

海の彼方から見えるIS学園を視界に入れながらも、少女は自身が着ているIS学園の制服のポケットから、一枚の写真を取り出した。

 

そこに写っていたのは、幼いながらも鋭い目付きをしていて、竹刀を片手に胴着を纏い、少し照れ臭そうな表情をした黒髪の少女と色素が薄く、新雪のような灰色の髪に、見るもの全てを惹き付けてしまう淡い橙色の瞳をしている。整った幼い顔立ちに、可愛らしい笑みを浮かべた少年だった。

 

 

「やっとお前に会えるんだな…雪音」

 

 

6年ぶりに再会を果たすことになる幼馴染の名前を呟きながらも、少女はポケットの中に写真をしまい直し、その足をIS学園の方へと向けて歩き始めるのだったー。

 

 

 

◇◆◇

 

 

「…なぁ、雪音さん」

 

「…どうしたんだい?一夏さん」

 

「俺達、なんでこんな場所にいるんだろうな」

 

「…自分の胸に手を当てて、よく考えてみてよ」

 

「…ごめんなさい」

 

 

なんだか一種の漫才コンビのようなやり取りになってしまっているが、断じて違う。雪音は誰と知れずにため息を吐きながらも、自分と一夏がどんな現実に直面しているかを見るために、あらためて周りを見渡した。

 

現在、このIS学園の一年一組の教室にいる男子は僕、堀内雪音と親友である織斑一夏の二人のみであった。そのほかの生徒は全員、女子なのだ。世の中の男性からしたら天国じゃないかと言われてしまいそうな空間かもしれないが、実際にそんな現場に放り込まれてしまったら苦痛と苦労と心労でしかないと思う。

 

現に僕の隣にいる一夏は、教室中から突き刺さる数多の女子からの視線に耐え切れずに、疲れきったオーラをかもしだしながら机に突っ伏したまま、僕と会話をしている状態になっていたくらいなものだしね。

 

そんな一夏に同情の念を抱きながらも、僕自身も自分に向けられる視線に胃痛を起こすかのような錯覚に見舞われ、完全に疲れきっていたくらいなのだ。

 

 

雪音はどうにかして気を紛らわせるために、視線を窓側の席の方へと向けた。ーすると、視線を移した先にいた、黒髪ポニーテールの女子の生徒と目が合ってしまった。ーしかし、雪音にはその女の子に何処か見覚えを感じのだった。

 

「(もしかして、あの子、箒ちゃん…?)」

 

篠ノ之箒(しののの ほうき)、雪音と一夏の幼い時を一緒に過ごした幼馴染み。ISを開発した篠ノ之博士の妹である箒は、そのISが原因で6年前に別れて以来、会うことがなかったのだ。幼馴染みを前に、雪音は懐かしいさと嬉しさが同時に混じったかのような気持ちになり、自然と頬を綻ばせた。

 

 

雪音は箒の方へと目を向け、満面の笑顔で小さく手を振った。しかし、箒のほうはそんな雪音を見た途端、瞬時に顔を紅く染めてしまい、雪音は全力で目を逸らされてしまうのだった。

 

 

「(…僕、何かしたのかな……?)」

 

 

少しばかり、目を逸らされたことにショックに受け、落ち込んでしまう雪音であったのだった。そんなこんなで過ごしている内に、いつの間にか教室の扉が開かれ、サイズが合わない丸メガネかけた、穏やかそうな女性が入ってきた。

 

「全員揃ってますねー。それではSHRを始めますよー。」

 

その女性はサイズが合わない大きな丸メガネに、学生にしか見えない童顔で緑色のショートカットの髪をしている。胸が大きすぎる為か、それ以外のサイズが合っていない服が、少しダボついている所を見ると、あまり先生には見えてこないという皆の心の声が、雪音には聞こえてきたような気がしたは、気のせいにしておこう…。

 

「このクラスの副担任をすることになりました。山田真耶(やまだ まや)と申します。」

 

山田先生は、穏やかな表情を浮かべながらクラス全体を見渡して自己紹介を始めた。

 

「それでは皆さん、1年間よろしくお願いしますね。」

 

「よろしくお願いします、山田先生。」

 

 

シーーーン

 

 

…あれ?なんで僕以外の皆は無反応なの?普通ここは先生に返事を返すところだよね?いや、みんな返事を返してあげようよ!?なんか山田先生が僕のことを救世主をみるような目で見てくるんだけど!?

 

「っ!…は、はい!よろしくお願いしますね!堀内君!」

 

「あ、あはは…よろしくお願いします、山田先生」

 

涙目になりながらもこちらをみて、本当に感謝されていることがヒシヒシと伝わってきた。…大丈夫ですよ。山田先生、その気持ちは僕にはよーく分かりますから…。

 

「そ…それでは、皆さんの自己紹介に移りたいと思います…出席番号順でお願いします」

 

自己紹介かぁ…どんな風に言えばいいのかな?あまり変な感じにならないようにしないと…出席番号順だから、僕の紹介はしばらく先になるはずだけ…。

 

そんな風に僕は自分の番が来たときのために、しばらく自己紹介の内容を考えているとー。

 

 

「…お、織斑くん、織斑一夏くんっ!」

 

「へっ!?は、はい!」

 

「あ、あの、大声出しちゃってごめんね?うるさかったよね?お、怒ってる?怒ってますか?」

 

 

 突然、隣の席から声が聞こえてきた。どうやら一夏の番が来たようだが、反応がなかっただけなのに山田先生があたふたとしていた。なぜか山田先生には人に保護欲を沸かせる要素か何かを持っていると思うのは僕の錯覚なのだろうかと?思い始めてくるくらいだ…。

 

「いや、そ、そんなに謝らなくても…っと言うか自己紹介しますから、山田先生落ち着いてください!」

 

「ほ、本当ですか!?約束ですよ?絶対にしてくださいね!?」

 

 

 一夏がやるのか、どうせなら僕の時の参考にもなるだろうし、しっかり聞いておくとしょう。

 

 

「え、えっと…お、織斑一夏です。よろしくお願いします…」

 

 

 立ち上がって自己紹介を始めた親友にクラス中の女子の視線が突き刺さる。ここから一夏がどんなことを言うのかと興味津々と言った様子で、次の言葉を待つ。

 

 すると、一夏は無言のまま、深呼吸をし始めた。一体どんな事を言うのだろうかーー

 

 

「以上です!」

 

 

ガタガタガタッ!

 

 

あまりにも簡潔的すぎる自己紹介に僕を含めたクラスの半数以上の女子がずっこけた。

 

イヤ、一夏!?もう少し何か言うべきでしょ!ここまであっさりすぎると流石に親友の僕でもそれには驚きだよ!

 

よく見てみなよ!?君の自己紹介のせいで山田先生がどうすれば良いのか分からなくなって、涙目でオロオロして困惑している姿を!

 

 

しかし、自分の今の状況を分かっていないのかキョトンとした表情の一夏に、僕はあたふたとしてしまっていた。しかし、僕は気づいてしまったのだ…一夏の後ろに、いつの間にか出席簿を片手に装備したあの人がいたことをーー。

 

 

スパァーーーン!!

 

 

「ぶへっらぁ!?」

 

 

 雪音はその一瞬をこのように思った…まるで疾風の如くの一瞬だったーーっと。

 

 あまりにも綺麗に一夏の頭にクリーンヒットしたのは、学生の皆さんには馴染みがあるであろう、出席簿だった。それを片手に携えていたのは黒いスーツにタイトスカートを着こなす抜群のスタイルに、まるで狼のような鋭い目付きをした黒髪の美女だった。

 

しかし、雪音にとっては昔から知っている馴染み深い人物でもあった。

 

「千冬さん!?」

 

「げえっ、関羽!?」

 

「久しぶりだな、堀内…あとそこの馬鹿者、誰が三国志の英雄だ!!」

 

 バゴォン!!先程よりも凄まじいほどの威力が込められた一撃が、一夏の頭へと振り下ろされた。自業自得とはいえ、見ていると一夏の頭がいつか禿げ上がるのではないかと少し心配なくらいだった。

 

「あ、織斑先生。もう会議が終わったんですね」

 

「あぁ、すまなかったな、山田君。生徒達への挨拶を押しつける形になってしまって」

 

やっぱり千冬さんはさりげなく優しいな、一夏には厳しいけど、それは家族だからこそなんだろうね。あんな姉さんが僕にもいたらよかったのになぁ~。

 

「い、いえ!副担任としては、これくらいの事はしないといけませんから…」

 

 千冬さんの言葉に、嬉しそうな表情で返事をする山田先生。なんか癒されますね~。

 

「諸君、私が君たちの担任の織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になるIS操縦者にすることが役目だ。私の言うことは良く聞き、良く理解しろ。分からない者や出来ない者には、分かるまで、そして出来るまで指導してやろう。私の仕事は若干十五歳の君たちを十六歳までに鍛えあげることだ。逆らっても構わんが、私の言うことは絶対だ。いいな?」

 

 イヤ、千冬さん?流石にそのセリフは少し無茶苦茶な気がするんですが…。

 

しかし結果は雪音の予想とは真逆へと変わった。

 

 

「「「キャアアアアアアア!!!」」」

 

 

「「うわ、耳があ!?」」

 

 

 雪音と一夏は突然クラスの女子の歓喜にも似た、悲鳴に咄嗟に耳を塞いだが、あまり効果がなかった。

 

 

「きゃあああああああ!千冬様よ!本物の千冬様よー!!」

 

「私、ずっと貴女の大ファンでした!!」

 

「お姉さまに憧れて九州地方から来ました!」

 

「あの、千冬様にご指導頂けるなんて幸せです!」

 

「お姉さまの為なら私、死ねます!!」

 

凄まじいほどの千冬さんの人気ぶりに唖然とするしかなかった。…これが千冬さんのカリスマ性の高さ…後、最後の子、さすがにそれは言い過ぎだと思うよ…。

 

「…毎年、何故私のクラスにはこんなに馬鹿者ばかりが集まってくるんだ?私に対しての嫌がらせか何かの為なのか?」

 

呆れたように、そして疲れたようにそんなに事を言う千冬さん。普通の人なら怒るべきところなんだけど…。

 

「きゃああああああ!!もっと叱って!」

 

「でも時には優しくして!」

 

「そして付け上がらないように躾をして!」 

 

もはや、敬語で話すことさえもままならないようだ。恐るべし、千冬さん。

 

すると、千冬さんは一夏の前まで来ると、鋭い目付きで一夏を見てきた。

 

「それで、織斑。お前は挨拶さえもマトモにやれないのか?」

 

「いや、千冬姉、俺はーー」

 

 

スパァーン!!

 

 

どうやら一夏には、慈悲などは存在しないようだ。

 

 

「織斑先生と呼べ。馬鹿者が」

 

「……はい、織斑先生」

 

 

一夏が可哀想だったが、今の千冬さんとのやりとりで、二人が姉弟であるということがばれてしまった。

 

 

「えっ…?織斑君って、千冬様の弟…?」

 

「それでISが使えるのかな?」

 

「いいなぁ~、変わってほしいくらい!!」

 

チラホラと女子達からの反応もあったようだが、おそらく変わったところで、私生活の千冬さんをみたら発狂をするのではないだろうか…一夏も僕も慣れているから平気だけど。

 

「…堀内、いまなにか失礼なことを考えていなかったか?」

 

「いえ、何も考えていませんよ。千冬さん」

 

なんで僕の思考を読み取れるんだろう…?この前は束さんにまで思考を読まれていたこともあったし…。

 

「まぁいいだろう、それと、学校では織斑先生だ。いいな?」

 

「はい、分かりました。」

 

「そうだ、ちょうどいいから、次はお前の自己紹介だ」

 

「えっ!?」

 

あまりにも突然すぎることに、僕は固まってしまった。いや、だって、さっきの一夏と千冬さんのやりとりのせいで、まったく自己紹介の内容を考えていなかったからである。しかし、千冬さんが言ったからにはやらなければいけないだろうし…。

 

「…分かりました。自己紹介をさせて頂きます」

 

「頼むぞ」

 

僕は一夏がしていたように、自分の席から立ち上がる。すると、千冬さんと一夏に向けていた視線のすべてが僕のほうへと向けられてくる。うっ、思った以上にきつい…。

 

お腹に力を入れ、一呼吸してから、僕は言葉を口に出し始めた。

 

「初めまして、堀内雪音と申します。趣味は花の世話に紅茶を入れること、特技はフラワーアレンジメントです。ISに関しては知識でしか知りませんが、それでも自分に出来ることは頑張りたいと思っています。」

 

そして、僕は自分が出来る限りの満面の笑みで紹介した。

 

 

「どうぞ、よろしくお願いします。」

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

 

教室に響く、沈黙。えっ?なんでこんなに静かなの…?僕、なにかやらかしたのかな…?

 

「…堀内、自己紹介としては上出来なんだが…その満面の笑顔は控えてくれ」

 

「えっ?…僕の笑顔なにかおかしかったですか…?」

 

「おかしくはないが、その、…おまえがすると色々とまずいからだ。」

 

「…?よく分かりませんけど、分かりました」

 

なんだか千冬さんの顔が赤くなっている気がするような…。それに、山田先生もなぜか僕の顔を見ないようにしてるし、クラスの大半の子の様子もおかしいような…?

 

「(やはり、雪音の笑顔は危険だ…。昔、幼い雪音の笑顔をみた道場の奴らのほとんどが、雪音の事を襲おうとしていたくらいだからな…もちろんひとり残らず沈めてやったが、あの時は私自身の理性もやばかった…)」

 

「(な、なんで堀内君の笑顔にこんなに胸がドキドキするんですか!?さっきも傍にいた時なんて、すごくいい匂いがしてきましたし、思わず襲ってしまいたく…って、私はなんて事を考えているんですか!?)」

 

「(ちょっと、もうひとりの男子もやばくない?)」

 

「(うん、あの笑顔は本気で反則だと思うよ…)」

 

「(それになんか、すっごく、あの人からいい匂いがしてくるし…)」

 

「(やばい、襲いたいかも…)」

 

 

なぜだろう、すごく寒気がしてくるのは気のせいかな?オメガ《Ω》のことは一夏と千冬さん以外にはばれてないはずなんだけど…ばれてないよね…?

 

すると、千冬さんが教卓の前にまで来ると、次のように言葉を出した。

 

 

「…とりえず、SHRは以上だ。諸君らには半月でISの基礎知識を覚えてもらうことになる。その後は自習となるが、基本動作も半月の内に叩き込んでおくことだ。いいな、よくなかろうと返事はしろ」

 

 

「「「「はっ、はい!!!」」」」

 

 

どうやら様子がおかしかったクラスの大半の子達は大丈夫そうだった。

 

 

これから、僕の学園生活はどうなっていくんだろうーー。

 

 




どうでしょうか?メチャクチャ難しかったですが・・・。

次回は冒頭で出たあの、幼馴染が登場します。もし書けるのならばあの金髪淑女も早く出したいところですね・・・。

感想、お待ちしております!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話 剣道少女との語らいを、触れた手は何よりも離しがたく。

前回の話を更新してからお気に入り登録やUAが急激にアップして驚きました・・・。

お気に入りは100件を突破しました!ありがたいです。

しかも評価バーに色がつきました…これは夢ですか?一瞬、自分の目を疑いました。

この結果を受け止めて、もっと頑張ろうとおもいました!

やはり本編の話を皆さんは読みたかったんですかね…。これからは自分のペースで更新を始めていきますが、これからも読んでくだされば幸いです。



「はぁ、……」

 

「大丈夫か、雪音?ため息なんてらしくないな」

 

「こんな状況でため息が出なかったら、逆にすごいよ…」

 

騒がしかったSHRが終わり、先ほどまで行われていた一時間目の授業が終わったばかりだと言うのに、雪音は机に手をおいた状態のまま深いため息を吐いていた。

 

それもそのはず、雪音達のクラスである一年一組には休み時間ということで、他クラスの女子達のほとんどが押しかけてきて、たった二人だけの男子生徒をヒソヒソと見ている状態だった。

 

その中には同学年だけではなく、上級生までもが混じり入っていたほどだった。それに加え、クラスの女子達の視線さえもこちらに向けられているのだから、鋼のメンタルの持ち主でもないかぎりは、誰だってため息ぐらいは出てしまうであろう。

 

 

「まぁ、確かに雪音の言う通りだな。なんか動物園にいるパンダになった気分だぜ。」

 

「あながち間違ってないけど…どっちかって言うと、珍獣扱いじゃないかな?」

 

「それだけ俺たち男子二人の存在が珍しいって言うのも、あるからだと思うぜ?」

 

「…多分、それだけじゃない気がするよ…。」

 

 

雪音は一夏の顔を見ながらもそんな風に思う。おそらくここに来ている女子達のほとんどが、世界でたった二人だけのIS男性適正者を見たいと同時に、一夏のことも見に来たのであろう。

 

一夏が世界最強である千冬さんの弟であるのだから、その注目度は半端なものではないではないはずだ。加えて一夏自身の整った顔立ち。その二つが重なれば本人にその気がなくても異性からの注目は高いものだ。

 

 

「(中学の頃はそれで、どれだけ苦労したことか…。)」

 

 

そんな風に自分はあまり関係ないといった様子の雪音だが、実際のところは半分正解で半分不正解といったところであった。

 

確かにここに来ている女子は世界で二人しかいないIS男性適正者を見に来たのは事実だ。しかしその後の、一夏だけを見に来ているというのは間違いである。一夏を見に来ているものが女子の半分だとすれば、もう半分は雪音のことが目当てであったのだ。

 

雪音自身はまったくの無自覚であるが、彼自身の容姿も一夏に負けず劣らずなくらいの高レベルである。

 

絹糸のように艶に帯びており、色素が薄い為か、新雪のような白に近い灰色の髪。少し垂れ目ながらも女性が羨むくらいに長い睫にまるで、淡い夕焼けの空をひとつの宝石に閉じ込めたかのように美しい橙色の瞳。

 

先ほどSHRで見たものならば分かるであろう、そのすべてが揃った彼が笑うだけで男女共に一度は沈黙し、その美しさに見惚れてしまう。ぶちゃっけ言えば、その笑顔を忘れることが出来なくなってしまうのだ。

 

はっきり言おう、そう、可愛いのだ。かっこいいが一夏ならば可愛いが雪音である。

 

中学の頃は、一夏のモテぷっりに隠れていてあまり知らないだろうが、彼に好意を寄せていた女子もかなりいたくらいだ。まぁ、雪音はちょうどオメガ<Ω>の発覚とトラウマの時期と重なってしまい気づいてないが…。

 

おまけに雪音がオメガ<Ω>ということの為かその身からは発情期ほどでないにしろも、普段から少量のフェロモンが漂わせている。

 

そのせいで雪音は一般人でありながらも一夏同様に、女子からの注目を浴びる羽目になったのである。もちろん、雪音自身はそんなことなどは露知らずだ。

 

ぶちゃっけ言えば、彼も人のことが言える立場ではないのだ。

 

 

そんなこんなで、一夏と雪音が女子達の視線に堪え続けている中ーー。

 

「すまない、少しいいだろうか?」

 

ふと、誰かに声を掛けられる雪音と一夏。そこにいたのは先ほど、雪音と目を合せて思いきっり目を逸らした、篠ノ之箒その人であった。

 

「あれ?…もしかしてお前、…箒なのか?」

 

「久しぶり、箒ちゃん」

 

「あぁ、久しぶりだな。雪音、一夏」

 

一夏は6年ぶりに再会した幼馴染みに驚きの表情を隠せず、雪音はやっぱりと言った様子で口元に笑みを浮かべた。

 

すると、箒は雪音のほうへと目を向け、喋り始めた。

 

「すまないが、雪音。少し付き合ってもらいたいんだが、今は平気そうか?」

 

「…?うん、別に大丈夫だよ。なにか話でもあるのかい?」

 

「あぁ、だがここでは話づらいからな…少し場所を移そう」

 

「分かったよ。じゃあ一夏、少し行って来るけど、大丈夫かい?」

 

「あぁ、俺は平気だぜ。とりあえず行ってこいよ」

 

「ありがとう!」

 

そう言って、箒と雪音の二人は、一夏とクラスの女子達に見送られながら、教室から出たのだったーー。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

箒が雪音を連れて向かった先は、IS学園にある屋上だった。潮の匂いが漂う海風に当たりながらも、二人は屋上に備え付けられているフェンスに手を置いた。

 

「改めて言おう…、本当に久しぶりだな。雪音」

 

「こちらこそ、久しぶりだね箒ちゃん。元気だった?」

 

「まぁ、…何とかな」

 

なんだか急に暗い雰囲気と憂いを醸し出した箒。なんだかまずい事を聞いてしまったかな?そう思い、雪音は慌てて話題を変えたのだった。

 

「…そっか、そういえば剣道の全国大会で優勝してたよね?いまさらだけど、おめでとう」

 

「…っ!な、なんでそれを知ってるんだ?それに、もう一年半も前の事なのに…。」

 

「新聞で読んだからだよ。こうしてまた会えたから、どうしても直接言いたかったんだ」

 

「そっ、そうなのか…ありがとう」

 

 

少し照れくさそうな様子の箒だったが、どうやら話を逸らすことが出来たようで、雪音は少しほっとするのであった。すると、箒は落ち着きを取り戻したようでこちらを見て、話はじめるのだった。

 

 

「それにしても、ニュースでお前と一夏がISを動かしたと知った時は驚いたぞ。あの時は姉さんがなにかしたのではないかと思ってしまったくらいだからだ。」

 

「まぁ、僕の場合は動かしたというより、完全なとばっちりで動かしちゃたんだけどね…」

 

「…とばっちり?それはどういうことだ?」

 

「実は、こんなことがあって…」

 

 

雪音は、自分が一夏と一緒に行った受験会場先で、一夏がうっかりISを動かしてしまい、自分もそれに巻き込まれる形で動かしてしまったことを箒に話したのだった。

 

 

「それはまぁ…なんというか、…災難だったな。」

 

「まあね…、いまさら僕がどうこう言える立場じゃないんだけどね…けど、よかったこともあったよ。」

 

「よかったこと?、話を聞いても完全にお前は不幸でしかないと思うのだが?…私が言うのもなんだが、こんな女しかいない学校に放り込まれたというのに、お前はISを恨んだりしないのか…?」

 

「あははっ、恨んだりなんかしないよ。だって…」

 

 雪音は穏やかで優しい表情になり、そして箒の顔を見て微笑みながら言葉の続きを口に出した。

 

「…だって僕がISを動かせたから、こうして6年ぶりに箒ちゃんとまた会えたんだよ?僕にとってはそれが何よりの幸福だったよ。…それに、束さんが夢のために作ったものに乗れたんだからね。」

 

 その言葉を聞いた瞬間、箒の顔は一瞬で紅く染まり、思いっきり動揺してしまうのだ。

 

「…っ!?なっ、何を言ってるんだ、お前は!?」

 

「…え?言葉通りの意味だと思うけど…何か気に触ったかな?」

 

「気に触ったって、お前は!……い、いや、なんでもない、気にしないでくれ。」

 

「…?気になるけど、分かったよ」

 

 僕は箒ちゃんが顔を紅くしていることが気になったが、あまり深く聞いてはいけない気がしたので、何も言わないことにしておく。だけどなんかブツブツと言っているけど大丈夫かな?

 

「まったく、無意識にも程があるぞ…。それにあの笑顔は何なんだ?…あんなこと言われたら心臓が持たないではないか…。」ブツブツ

 

「箒ちゃん、そろそろ戻らないと。もうすぐ予鈴のチャイムが鳴ちゃうよ?」

 

しかし、箒ちゃんの意識は完全に別のところにあるようで、僕の声が聞こえていないようだ。

 

「い、いや落ち着け私。雪音は天然だからな。昔からあんなことばかりを言っていたではないか…そうだ、本心を言っただけなんだろう…」ブツブツ

 

「箒ちゃん…。」

      . . . .

「決して、そういう意味で言っているわけじゃない…だから勘違いをしてはーー」

 

「ーー箒ちゃんてば!!」

 

「ふぁ!?、なっ、なんだ?雪音、急に大声を出されたら驚くじゃないか!」

 

「…さっきから、ずっと呼んでるんだけどなぁ…てっ、そんなことよりも!!」

 

 

 雪音は慌てて、屋上に設置されていた時計の時間を見やる。ーー時刻はちょうど次の授業が始まる5分前の時間に差し掛かっていたのだ。それにより雪音の表情は一気に青ざめた。

 

 

「まずい!…もうすぐで予鈴のチャイムが鳴ちゃうじゃないか!?…箒ちゃん!、申し訳ないけど…ごめん!」ガシッ

 

「お、おい、雪音!?」

 

そう言った瞬間、なんと雪音は箒の手を掴んだと思いきや教室に向け、全力で走り始めたのだ!

 

「ゆっ、雪音!?たっ、頼むから離してくれ!私は自分で走れるぞ!?」

 

 顔を真っ赤にした箒にそんなことを言われるが、余裕のない雪音はそれに気づかない。箒の手を取った状態のまま、走るスピードを緩めることはしなかったのだ。

 

「今、止まったら予鈴に間に合わなくなっちゃうからね!僕に手を握られるのは嫌かもしれないけど…時間がないから、少しの間だけ我慢してて!」

 

「…っ!い、イヤな訳ではない!!…ただ、はっ…恥ずかしい…」ボソッ

 

「(…なにか最後に聞こえたような?)よかった、それは安心したよ。…よし、スピード上げるから足元に気をつけてね!」

 

「ばっ…だからと言って、それと今の状況とは別の訳で…!、たっ、頼むから止まってくれーーー!?」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「なっ…何とかセーフ!!」ゼェゼェ

 

「雪音、…すこし…は、コチラの身にも…なって欲しいのだが…!?」ゼェゼェ

 

「あっ、ご、ごめんね?…箒ちゃん」

 

「まったく…そうやって夢中になると、周りが見えなくなるところは相変わらずだな…。」ハァ

 

「うぅっ……、返す言葉もありません。」シュン

 

「イ、イヤッ…そんなに気にすることか…?(うっ…どうしてコイツは表情ひとつ変わるだけでも、こんなに可愛いと思うんだ…!?)」

 

 箒に痛いところを突かれた雪音は、まるで飼い主に叱られてしょんぼりとしている子犬のような表情をして、俯き加減のまま箒の顔を見ていた。そんな表情の雪音を見ているだけで、箒は表面上は冷静に、しかし裏では雪音の目の前で悶えかけそうになる自分を抑えるのに必死になっているのだった。

 

 

するとーーー

 

 

「おい、そこの生徒二人、なにをしている?もうすぐ次の授業が始まる…堀内と篠ノ之、なぜお前らは手を繋いでいるんだ……?」

 

 

「「えっ…うわっ!織斑先生!?」」

 

 

 ふたりの前に現れたのは、自分たちのクラスの担任である織斑千冬だった。なぜか二人が手を繋いでる所を見た後に続いた千冬の言葉が、不機嫌そのものだったことを雪音だけは気付けなかった。

 

千冬に指摘されたことで、今の自分と箒がどんな状況なのかを理解することに、雪音は時間は掛からなかった。

 

 

「…ご、ごめん!箒ちゃん!!いきなり手とか掴んじゃって…!」バッ!!

 

雪音は慌てて、箒の左手を離した。

 

「あっ…イヤ、気にしないでくれ…」

 

「…?(なんか…様子が変な感じがするような…?)」

 

しかし、手を離した後の箒の表情はどこか残念そうなものだった。けれど、雪音にはその理由に辿りつくことは出来ず、頭に???を浮かべるばかりだ。

 

「…取り合えず、お前たちは早く教室に入れ。席に着いていないのは、お前たち二人ぐらいなものだぞ。」

 

どこか痺れを切らしたかのような千冬に声を掛けられ、二人は返事を返す。

 

「分かりました。箒ちゃん、早く入ろう!」

 

「あぁ、分かっーー「篠ノ之」えっ…」

 

すると、千冬は箒を引き寄せ、耳元で何かを囁いた。雪音にはその内容は聞こえなかったが、分かったことは、その瞬間に箒の表情が変わったことだけだった。

 

「早く、教室に入れ」

 

「…っ!!はっ、はい…。」

 

「…?」

 

 

 二人の間に流れる空気が一変したようだが、雪音がそれに気付くことはなく、三人一緒になって教室の中へと入っていくのだったーーー。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

生徒の皆が授業に真剣に取り組みを果たしている中、篠ノ之箒だけは何処か浮かない表情を浮かべたままであった。原因は休み時間に千冬に言われた言葉に思考を持っていかれているためである。

 

 

「(…先程の千冬さんの言葉。)」

 

 

あの時、千冬が箒に向けて耳打ちして言ったのはこのような内容だった。

 

 

『雪音は絶対に渡さないからなーー。』

 

 

その時の千冬の表情を思い出す。

 

 

「(あの時の千冬さんの目、…本気だったな。)」

 

 

あの言葉はおそらく、自分が雪音に対して抱いている想いを見破られていたのだろう。その上で、あの人は自分の想いを打ち明けて私に宣戦布告をしたのだろう。

 

 

「(正直...相手が強敵すぎる...)」

 

 

6年間、それが自分と雪音が離れていた時間。その間に雪音の側には千冬さんがいたのだろう。それだけで、再会したばかりの自分が圧倒的に不利な立場にいることを、イヤでも自覚してしまう。自分ではこの恋は叶えられないのかもしれないと…。でもーー

 

 

「(それでも…雪音は私のことを覚えていてくれた。)」

 

 

箒はそっと、自分の左手を見る。

 

 

 彼が先ほどまで握ってくれていた自分の手。いきなり掴まれた時は驚いたが、それでも自分の心臓は、正直なくらいに喜びと恥ずかしさの両方でドキドキしていた。

 

「(昔よりも、大きな手をしていたな)」

 

 再会した時は、嬉しさで一杯だった。昔の面影を残しつつも、美しく、そして色気がある姿に成長した雪音に、自然と自分の心と体が強く、彼を求めていることに気が付いた。6年ぶりに再会して彼をもっと好きになっていたーー。

 

 

「(好きだ、雪音…私は諦めないからな。例え、世界最強が恋敵だとしても…必ず、お前を振り向かせて見せる…だからどうか…。)」

 

 

私だけを見てくれーー。

 

 

少女は決意する。自らの想いびとを振り向かせるため。そして、自分だけを見てもらうためにーー。

 

だが、少女はこれから先、その想いが彼を傷つけ、悩ませることになることを、少女はまだ知らないのだった…。

 




何か、先抜け感が半端ない感じですが、取り合えず今回はこれまで!

感想等があれば、どうかお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話 英国淑女は愚弄する。炸裂する彼の怒り

お気に入り150件&UA8000突破しました!

本当に応援してくださる皆様に感謝感激の言葉しか出てきません!!ありがとう!

そういえば、もうすぐでISの新作ゲームが出てきますが、新キャラもいるそうで…。

公式サイトで見ましたが、みんな可愛い子しかいなかった。特になんか、鈴ちゃんと同じ苗字の子がいたけど…可愛かった。

とりあえずこれくらいで、本編へどうぞ!


 

二時間目の授業も終わり、僕の隣の席に座っていた一夏がなにやらニヤニヤしたような表情で話しかけてきた。

 

「なぁ雪音。さっきの休み時間の間、箒と何を話してたんだよ?」

 

なぜか笑顔でニヤニヤしている一夏の顔を見ているだけで少しイラッとしてきたので、ちょっと意地悪をしょうと思う。

 

「えっ、特にふつうの世間話をしたくらいだよ?…あっ、あと話したのは僕と一夏が一緒にいた中で、一夏が失敗した出来事やエピソードくらいかな?」

 

「お前は鬼か何かよ!?なぜそこで俺の失敗話を話す必要があるんだよ!?あと、一体何を喋ったんだよ!?」

 

僕の言った言葉に慌てたようにツッコミを入れてくる一夏。うん、これが見れただけでもスッキリだね。

 

「あははっ、ごめんごめん。今言ったことは全部冗談だからさ。安心してよ」

 

「お前の冗談は冗談には聞こえねえんだよ!?はぁっ、心臓に悪いから勘弁してくれ・・・。」

 

「そんな大袈裟な」アハハ

 

 

そんな風に一夏をいじりながらも、一緒になって話していると_____

 

 

「ちょっと、よろしくての?」

 

「ん?」

 

「はい?」

 

 

突如として二人の前に現れたのは一人の女子生徒だった。長く光沢のあるブロンドの金髪を巻き毛にしており、その青い双眸はまるで青空を思わせる美しさを放っていた。しかしながらもそんな魅力を持っているというのに、当の本人が自分の腰に手をおいた状態のままポーズを取り、ふんぞり返ってどこかこちらを見下しているように思えたため、どうしても偉そうな貴族の淑女といった感じにしか見えないのであった。

 

 

「(なんだろうこの子・・・。どうして僕達を見下してくるんだろう・・・?)」

 

「ちょっと、あなたたち聞いてますの?」

 

「あっ、うん。ごめん、ちゃんと聞いてるよ」

 

「俺達に何か用か?」

 

「まぁ!何ですの、そのお返事は?わたくしに話しかけられるだけでも光栄なことなのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・えっと、」

 

あまりにも強烈すぎる売り言葉に一夏は黙り、雪音は唖然とするしかなかった。まさか初対面の人間からこのような態度で話かけられるとは思っておらず、雪音は少しばかり何を言えばいいのか迷ってしまう。

 

 

「悪いな、俺は君のことは知らないし」

 

「(一夏・・・、よくあっさりとそんなことが言えるよね・・・。)」

 

雪音は心中でそんなことを思ったが口には決して出さない。

 

しかし、そんな一夏の返事が気に入らなかったのか、彼女はますます僕達二人を見下すように見てきた。

 

「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットをですの?イギリス代表候補生にして、入試主席であるこのわたくしをですの!?」

 

・・・どうやら彼女は今の時代にはよくいる女尊男卑の思考を持った女性のようだ。僕としては少し苦手な部類にはいる人間とも言える。相手のことを容姿だの性別など表面だけで判断するだなんて、僕は好きではない。人の価値がそれだけで決められるだなんて、悲しいことだ・・・。

 

「あ、ちょっと質問いいか?」

 

そんなことを思っていると、なにやら一夏がオルコットさんに質問をしょうとしていた。

 

「ふふん、何ですの?下々の者の要求に応えるのも、貴族としての務めですわ。よろしくてよ?」

 

少し、偉そうに胸を張ってそんなことをいうオルコットさん。正直、貴族の務め以前にそんなことを言ったら人の気分を悪くさせると思うのは、きっと間違っていないだろう。まぁ、一夏は機嫌を損ねた様子はないようなので大丈夫だとは思うけどーーー。

 

 

「代表候補生って、何だ?」

 

 

ガタタタ!!朝のSHRの時のように僕を含め、聞き耳を立てていた女子の半数ほどが再びずっこける。目の前の机に頭をぶつけたせいでか、額に痛みが走る。一夏・・・なんでこう、君はいちいち爆弾を投下するのかなぁ・・・?

 

「・・・あっ、あなた、本気で言っていますの!?」

 

まさしくその通りすぎて何も言えません、オルコットさん。(泣)

 

「あぁ、さっぱりだぜ」

 

そしてその言葉に追い討ちをかける一夏君。あれっ、僕は何を言っているんだろうな・・・?

 

「信じられませんわ・・・この極東の島国にはテレビすらないのかしら。だとしても、世間知らずにしても程がありますわ・・・」ブツブツ

 

さすがに日本にだってテレビくらいはありますよ!一夏が特殊な例なだけですからね!?

 

とりあえず、僕は一夏に簡単に説明を入れることにした。

 

「えーっと、一夏?代表候補生って言うのは・・・それぞれの国には国家代表って呼ばれるIS操縦者がいるんだけどね。オルコットさんはそのISのイギリス代表の候補生てことなんだよ。まぁ、要するに・・・・」

 

「エリートなんですわよ!!まったく、そこの男には多少の知識があるというのに、織斑先生の弟である男が知らないだなんて。本来ならばわたくしのように選ばれた人間と一緒のクラスになれただけでも奇跡に等しいのですから、その現実をもう少し理解していただけないかしら?」

 

 僕が一夏に説明中にも関わらず、横から説明を奪うようにして入ってくるオルコットさん。というか貴女はただ、一夏に自分の存在を知られなかったのが悔しかっただけですよね?それに、奇跡に等しいというなら自分のクラスの担任の先生が世界最強のIS操縦者の千冬さんだという方がすごいと思うけどなぁ・・・。

 

 

「そうか、それはラッキーだな。あっ、雪音。説明ありがとな、よく分かったぜ」

 

「それはよかったよ。それにしても、代表候補生を知らないだなんて・・・そういえば一夏。入学前にもらった参考書があったよね?その中に代表候補生の事とか書いてあったでしょ?」

 

「えっ、参考書?そんなもの貰ったっけな・・・?」

 

「イヤ、なに言ってるんだい。もの凄い分厚くて大変だなーって、愚痴ってたじゃないか・・・?」

 

「・・・あー、あれのことか・・・。」

 

 なにやら一夏が少し気まずそうに、そして苦笑いをしながらもこちらに視線を向けようとはしてこなかった。僕は怪しく思い、自分よりも目線が少し高い一夏の肩に手を置いて力を込めて、逃げられないようにしてからニッコリと一夏に向けて微笑みかける・・・クラスの女子の一部がその光景になにやら鼻息を荒くしていたのは、きっと気のせいだろう。

 

「一夏、聞くけどさ・・・もらった参考書はどこにやったんだい?」

 

「イヤ、それは「言い分けは聞かないからね。」はい・・・。」

 

 

 覚悟を決めたようだが、一夏は自分の手を頭の後ろに置き、どこかとぼけたように、そして困ったような笑顔で宣言した。

 

 

「________古い電話帳と間違えて捨てました!」

 

 

スパァーーーン!!

 

 

「あいってぇ!!?」

 

「・・・必読と書いてあっただろうがっ、この馬鹿者が!!」

 

「あれっ、千冬姉!?なんで俺の後ろに!?」

 

「学校では織斑先生だ!」

 

 ズッガン!!うっかり千冬さんをプライベートの時のほうで呼んでしまった一夏の頭に、再び叩き込まれる出席簿。・・・千冬さん。怒るところそこなんですか?というか、いつから一夏の後ろにいたんですか。

 

目の前で繰り広げられた世界最強の強さ。千冬さんからすれば、おそらく数十人がかりで攻めたとしても、出席簿ひとつで撃退できそうな気さえもするくらいだった・・・。まぁ、それは置いておくとしょうか。

 

「とりあえず、お前達三人は早く席に着け。・・・織斑、貴様の分の参考書はあとで再発行しておいてやる。一週間以内で覚えろ。いいな?」

 

「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと・・・。」

 

「やれと言っているんだ」

 

「・・・・・・はい。分かりました」

 

ギロリと一夏を睨みつける千冬さん。こればっかりは一夏が悪いので、僕はフォローをいれない。

 

シュンとしている一夏を慰めつつも、僕は一緒に席に着いた。オルコットさんは「また来ますわよ!」と言って自分の席にさっさと戻っていてしまった。正直、千冬さんが途中で入ってきてくれたことに深く感謝しながらも、僕の耳には三時間目の始まりを知らせるチャイムの鐘が響いてきたのだった_______

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「____それではこの時間では実戦で使用する各種武器装備の特性について説明をしょう。」

 

 

 一、二時間目の授業と違い、なんと教壇には山田先生ではなく、千冬さんが立っていた。千冬さんが教壇に立った影響のせいなのか、声には出さなくてもクラスの女子の様子がソワソワとし始める。先ほどまで教壇に立っていた山田先生については、ノートを片手に真剣な表情で千冬さんのほうに目を向けていた。

 

 まぁ、僕もISを動かしてしまった身なので、こういった授業はしっかりと聞くことに越したことはない。ISは宇宙に行くために開発されたものだが、今の世の中では女性の象徴や兵器と言った印象が強いから、間違っても、しっかりとした使い方を覚えて悪用しないようにするのが一番だね。

 

「あぁ、その前に再来週に行われるクラス対抗戦にでる代表者を決めなければいけないな。クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけに限らず、生徒会が開く会議や委員会への出席・・・まぁ、クラス長みたいなものだな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力を測るためのものだ。今の時点で大した差は無いが、競争は向上心を生むものだからな。一度決まると一年間変更は無いから代表者はそのつもりで。誰か立候補はあるか?推薦でも構わんぞ?」

 

 

 代表者か・・・、分かりやすくいうなら学級委員みたいなものかな?うーん、あまり僕はやる気ないかな。中学の頃はやっていたけど、あれは完全に流れで決まっただけなものだし・・・。まぁ、多分だけど一夏が推薦されると思うな。男性で最初にISを動かし注目される人物だしね。僕は黙って聞いていることにしょう。

 

 

「はいっ!私は織斑君を推薦します!」

 

「わたしもそれがいいと思います!」

 

やっぱり、予想どおりだった。この調子なら僕が選ばれることは無さそう_____

 

「じゃあ、わたしは堀内君を推薦します!」

 

「わたしも堀内君に一票をいれます!」

 

・・・・・・・・えっ、あれっ?

 

「って、俺なのか!?」

 

「ぼっ、僕も何ですか!?」

 

「お前たち二人とも、静かにしろ。さて、他に推薦はいないのか?いないのならばこの二人の中から多数決で決めさせてもらうことになるが?」

 

「い、いや、織斑先生!僕は辞退しま・・・」

 

「堀内、自薦他薦は問わないと私は言ったのだ。他薦された者に拒否権などはない。選ばれた以上は覚悟を決めろ」

 

「そ、そんなぁ・・・」

 

 千冬さんの発言のせいでか、完全に一夏と僕のどちらかという二択となってしまった。まずい、僕は別にやりたいわけじゃないのに。このままじゃ_______

 

「待ってください!納得がいきませんわ!!」

 

 僕が困惑に陥っている中で、耳に響いてきた声の主はオルコットさんだった。このタイミングで言ってくれるだなんて・・・もしかして、僕と一夏が困ってそうなのを見越してくれて・・・?

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ!わたくしに、・・・このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

・・・・・・・・・はい?

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気など毛頭ございませんのよ!?」

 

・・・確かに僕達ふたりが男でISを動かしたからと言って、代表に選ぶのはどうかと思うけど・・・いくらなんでも自分に実力があるからって、日本人を猿扱いするのはどうなのかな・・・?

 

「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛でしか____」

 

おい、途中からISなんて関係ないじゃないか、さすがに今の聞き流せないぞ。

 

「____イギリスだって大したお国自慢なんてないだろ。世界一まずい料理で何年連覇中だよ」

 

僕がそんなことを思っている間に、席から立ち上がった一夏が不機嫌そうな表情をしてそんなことを言った。

 

「あっ、あなた!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

一夏に言われた言葉がよほど頭に来たのか、顔を真っ赤にさせて鋭く睨みつけてくる。イヤ、君だって人のことが言えるような立場じゃないだろ?よく周りを見たほうがいいよ、このクラスの大半が日本人の生徒だからみんな、オルコットさんの言葉に怒っているのを。普段は冷静な千冬さんでさえも、無言のまま体から怒気を含んだオーラを放っていたくらいだった。

 

「っ・・・、決闘ですわ!!」

 

バンッ!と机に手を叩きつけて叫ぶオルコットさん。

 

「いいぜ、やってやるよ」

 

そんなオルコットさんの言葉に、一夏が頷く。おそらく、この提案はオルコットさんが有利だということを、一夏は理解してなくて頷いたんだろう。さすがに止めなくては・・・。

 

「一夏、落ち着いて。その決闘には無理して乗らなくても・・・」

 

「なにを他人事のように言っていますの!あなたもやるんですのよ!」

 

「はい!?」

 

なにを言ってるんだこの英国淑女は。確かに猿扱いやら、日本の技術などを侮辱されたのには腹は立つけど、だからと言って僕までもがなんで決闘に巻き込まれることになってるの!?

 

「あたりまえでしょう!あなただって推薦されているんですから受けるのは当然でしょう!!」

 

「だからと言って、僕は決闘なんて興味な・・・」

 

「ふんっ、これだから男というのは。ここまで情けなくて根性も無いなんて。もしくはあなたのように貧弱で、料理やら紅茶やら乙女趣味の人にはプライドやらもないのかしら?こんな男を育てたあなたの親の顔が見てみた・・・」

 

「____それ以上好き勝手に言ってみなよ。そのおしゃべりな口は黙ることも知らないのかい?」

 

「・・・・なっ!?」

 

もう限界だ、これを言われてしまったら僕も怒りを我慢できそうにない。

 

「さっきから黙ってみていれば人のことを言いたい放題言ってるけど、なんのつもりで言えるんだい?僕のことをバカにしたりするならまだいい、だけど・・・」

 

雪音は沸々と沸いてくる怒りを抑えながらも、冷静に、静かに、そして感情を込めるように言い放った。

 

 

「____僕の育ててくれた親のことまでもバカにするのはどうなんだよ。料理も紅茶だって、親の仕事で僕に教えてくれた大切なもののひとつだ。それを、男だからって人のことを見下して、馬鹿にして、・・・僕の大切な人の事を侮辱する権利なんて君みたいな人にはないんだ!!!」

 

 

雪音の怒りの叫び声を聞いた瞬間、クラスに静寂が広がる。しかし、雪音の怒りはコレだけでは収まらない。

 

「・・・それに、君は日本人を猿扱いやら、日本は文化として後進的な国だといったよね?」

 

「そ、それが何だとおしゃるの!?」

 

この子はどれだけ愚かなんだ。自分の立場を考えれば分かるはずなのに。

 

「君は自分の言ったことさえも理解してないのかい、英国淑女が聞いて呆れる。」

 

「なっ、あなた、何が言いたいんで・・・!」

 

「イギリスの代表候補生である君が他国である日本の文化や人を侮辱して、外交問題に成りかねないことをしっかりと君は分かっているのかい?それに、このクラスにはたくさんの日本人の生徒に、ISの世界チャンピオンの織斑先生がいることさえも、君はわかっていなかったのかい?」

 

「・・・っっ!!」

 

 

どうやらオルコットさんは自分が言った発言の意味にやっと気がついたようで、その顔は真っ青になり始めていた。

 

 

「オルコットさん。君はイギリス代表としてこの場所にいるはずだ。それなのに君はISが生まれた国である日本を極東の島国扱い。文化的にも劣っていると馬鹿にして、そこに住んでいる人達までもを侮辱したんだ。代表以前に、人間としてどうかと思うよ。」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

僕の言葉に何も言えない様子で黙っているオルコットさん。やっぱり、気づいていなかったんだね。

 

「・・・オルコットさん、さっき君は代表を決めるのに決闘をすると言ったよね?」

 

「・・・えっ、ええ・・・そう言いましたわ」

 

「それ、受けるよ」

 

ざわっ・・・!雪音の宣言にクラス中の女子が驚きの色に染まる。その言葉に一夏までもが驚く。しかし、千冬はどこか不敵な笑顔で雪音の様子を見つめていた。

 

「お互いが気持ち悪いまで終わるのは、好きじゃないからね。だからこそ、この決闘でハッキリとさせたいんだ」

 

雪音はオレンジ色に輝く瞳をオルコットに向け、真っ直ぐに見つめてーーー。

 

 

「必ず、君の発言を撤回をさせる!!」

 

そう宣言したのだった。

 

「・・・どうやら、話はまとまったようだな。勝負は一週間後の月曜日だ。放課後、第三アリーナで行う。織斑と堀内、オルコットはそれぞれ用意をしておくように」

 

そう言って、収集をつけた千冬さんの顔はどこか、嬉しそうな様子だった。

 

 

 




セシリアの登場する話がクソ書きづらい!!出てこないよアイディアが!?

まぁ、原作の最初の彼女が苦手だったのと原作小説を読んでいないのが原因なんですがね・・・。

何とか形になって安心です・・・。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第八話 青春とは甘くなく、ハプニングとは不可抗力である。


読者の皆様お久しぶりでございます、蓮零でございます。

この度は一年も更新ができずに大変申し訳ありませんでした。身近な人が亡くなり、書く気力を失っていましたが、最近きたコメントに勇気を貰い、再び書くことにしました。

もう、読まれているかも分かりませんが、まだ見てくれている人のために頑張って書いていきますので、どうかお願いします。

それではどうぞ、お楽しみください。



「ううっ、僕はなんてバカなことを言ったんだ・・・。」

 

「いや、なに言ってんだよ雪音。そりゃお前があんなことを言って驚いたけど。お前、格好よかったぜ?」

 

 

「そのセリフ、まったく嬉しくないんだけど・・・、一夏」

 

 

 雪音と一夏とオルコットの三人によるISの決闘が決まった日の放課後。雪音は先ほどまで自分がオルコットに対して挑戦するかのように言ってしまったことに、激しい後悔と嫌悪感を抱き、項垂れている状態なのであった。

 

 

 そんな雪音とは対象的に、一夏は雪音に対して尊敬するような情念を向けて、雪音を励まし、現在のような状態に至ると言うわけなのである。

 

 

一夏からしたら、先程の雪音の言った言葉には悪いところなど一切無いと言える。むしろ雪音の言葉にクラスの大半の女子が彼のことを褒めていたくらいなのだから、しかし、当の雪音本人はと言うと_________

 

 

 

「いくら何でも、女の子に対してあの言い方は酷いよなぁ・・・。」

 

 

 こういうありさまであった。根っからの紳士&お人好しが災いしているためとしか言いようがない。そこが雪音の良いところでもあり、損をしてしまうところなのだと、一夏は優しすぎる幼馴染を見て、思わず苦笑してしまう。

 

 

そんなこんなで雪音が負のループを淡々と繰り返して抜け出せずに悶々としている途中で_________

 

 

 

「あぁ、織斑君、堀内君。よかった、まだ教室にいたんですね」

 

「はい?」

 

「ふぁ?」

 

 

 声の主の方を振り返ると、そこにいたのは柔らかな笑みを浮かべた山田先生だった。そんな山田先生の雰囲気から、まるで母親が自分の子供に優しく微笑みかけている図を雪音の中に沸騰させるには十分な物であり、雪音は机に頬杖したまま、山田先生の顔をじっと見つめた。

 

 

「どっ、どうしたんですか?堀内君、私の顔をじっと見てますけど・・・何かついてたりしますか?」

 

「あっ、いえっ・・・、山田先生の笑顔が綺麗だなあって、思ってつい・・・」

 

 

雪音はあっさりとそんなことを言い放った。

 

 

「…ッ!!?ふぇあ!?ほ、ほほほほ堀内君!?ききき急にそそそ、そんなこといわれたら・・・あっ、いえ、いやなわけじゃないんですよ!?嬉しいですし、むしろもっと聞きた…てっ、私は何を言って…!?」

 

「やっ、山田先生、なんでそんなに慌ててるんですか?」 

 

「…雪音、お前わざとやってるのか?だとしたらタチが悪いと思うぞ。」

 

「なんで僕が責められてるの!?」

 

 

顔を赤くして、なぜかテンパっている山田先生を目の前にしていると、一夏から呆れたような目で批判されてしまう。失礼な、何も変なことなんて言ってないじゃないか!!

 

 

「…っと、そんなことよりも、山田先生も少し落ちついて下さい。俺と雪音に何か用事があるんですよね?」

 

「ふぇっ!?あっ、そ、そうですね。すみません、急に取り乱してしまって(ううっ…、生徒の前なのに私はなんてことを考えて…!!)」

 

 

そう言うと、山田先生はコホンと息を吐き、改めて僕と一夏を見て言葉を続けた。

 

 

「じっ、実はですね。お二人の寮のお部屋が決まりました。」

 

 

山田先生がそう言ったが、確か少しの間は自宅から通うって言われていたような…?

 

 

「でも、山田先生。俺たちの部屋はまだ決まってなかったんじゃないんですか?前に聞いた時は、一週間は自宅から通学してもらうって、言われたんですけど…?」

 

幸い、僕が疑問に思っていたことを一夏が代わりに山田先生に聞いてくれた。

 

 

「そうなんですが、今回はお二人の事情が特殊だったので、一時的な処置として、部屋割りの方を無理やり変更したらしいんですよ。」

 

 

山田先生は申し訳なさそうな顔をして、僕と一夏に事情を説明してくれた。逆にこちらの方こそ、なんだかIS学園の人には申し訳ないことをしてしまったなぁと思いながら、一夏とふたり、顔を見合わせて苦笑を漏らしてしまう。

 

 

「ですが、とにかく寮にいれることだけを最優先に考えていたらしくて、お二人は別々の部屋になってしまったんです」

 

山田先生がさらりと、とんでもないことをいった。

 

「え?ということは、僕と一夏のルームメイトは女の子なんですか?大丈夫なんですか…?」

 

「大丈夫ですよ。一ヶ月もすれば部屋割りの方も調整が出来ると思いますので」

 

 

山田先生はそういうが、僕には一つだけ心配な事があった。それは僕が『Ω』であるということ。

 

 

もし、相手の女の子が『α』だった場合が一番怖い。夜に寝ている間、僕にもし、ヒート(発情期)が来てしまったら、その子をきっと惑わしてしまうだろう。発情期が来ないとしても、僕が抑制剤を飲んでいたり、首輪を見られたりしたら、きっと相手の子は嫌がると思う。それにただでさえ、相手は男が同室となったら、やり辛いのではないか。そう思っていても今更、仕方ないのだが…。

 

僕は諦めて、山田先生の方に向き合い、返事を返す。

 

 

「分かりました。部屋は分かったのですが、荷物は一度、家に戻らなければ準備出来ないので、僕と一夏は今日は家に帰らせて貰ってもいいですか?」

 

「俺も一度、家に戻らなきゃないけないので。」

 

「あっ、いえ、荷物の方ならーー」

 

「私が手配しておいてやった。ありがたく思え、お前たち」

 

 

そう言いながら千冬さんが教室の中へと入って来た。あまりの颯爽とした登場に僕と一夏は驚きを隠せない。

 

 

「「あっ、ありがとうございます……」」

 

 

「まぁ、堀内の荷物は既に親御さんが用意しておいてくれてな。受け取って持ってきただけだし、織斑の方は生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があれば充分だろう?」

 

「俺だけなんだか雑じゃないか!?」

 

それは僕も思ったが、口には出さないで置いた。一夏ドンマイだよ。

 

「煩いぞ、織斑。足りないものは休みの日にでも自分で取りに行け、私はこれ以上は受け付けないからな」

 

「それでは、織斑君、堀内君。時間を見て部屋の方へ行って下さいね。夕食の方は六時から七時までで、寮にある食堂を利用して下さい。ちなみに各部屋ごとにキッチンとシャワーがありますが、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど……えっと、残念ですが、お二人は今のところ、使えません。」

 

 

「えっ、何でですか?」

 

「馬鹿か貴様は!!」

 

「ぶへらっ!?」

 

あっ、また一夏の頭に出席簿が叩き込まれた。

 

 

「何で殴るんだよ、千冬姉⁉︎」

 

「貴様は同年代の女子と一緒に入りたいのか…?」

 

「あっ……」

 

どうやら一夏は自分の後頭部を撫でながらも、言葉の意味に気付いたようだった。

 

「えっ、織斑君、女の子と一緒にお風呂に入りたいんですか⁉︎だ、駄目ですよ!」

 

「えっ、い、いや、入りたくないです」

 

 

一夏は全力で首を振る。あっ、馬鹿!!そんな言い方しちゃったら…!!

 

 

「ええっ?織斑君、女の子に興味がないんですか!?そっ、それはそれで問題があるような……」

 

 

山田先生が言った言葉に、いつのまにか教室に集まっていた女の子達が目を光らせて、沸き立った。

 

 

「織斑君は男の子に興味があるの…!?」

 

「織斑×堀内…!!いや、逆に堀内×織斑も…どちらメチャクチャ滾るわね…!」

 

「織斑君は、もしかして堀内君のことを…?」

 

 

聞こえてきた女の子たちの声に、僕は思わず自分のお尻を隠しながら一夏からサッと距離を置き、千冬さんの背中へと隠れた。

 

 

「おい待て、雪音!!何で俺から離れるんだよ!?」

 

「いや、違うんだよ?一夏。僕は君がどんな性癖でも、親友だと思うし、引いたりはしないつもりだけど、さすがに君をそっちの方には考えられなくて……」

 

「一夏、貴様まさか雪音のことを狙って…!?いくら弟だとしても、それは許さんぞ!!」

 

「俺はノーマルだよ!!ふっ、二人のバカーーー!!」

 

 

そんな一夏の魂の叫びが、虚しく教室に響き渡るのだったーー。

 

 

 

♢♦︎♢

 

 

 

「えっと、確か僕の部屋は…」

 

 

一夏の魂の叫びから暫くして、僕は一夏と行動を別にして寮の自分の部屋へと向かっていた。

 

 

寮に向かう前に、千冬さんからはあることを言われた。

 

 

『大丈夫だ、堀内。お前の事に関しては私が信用できる奴と同じ部屋にしておいたから、心配するな』

 

 

千冬さんがそんなことを言っていたので、とりあえずは安心できるだろうと思いながら、僕は自分の部屋の前にと辿り着いた。

 

 

「1025室か…とりあえずノックだけでも…。」

 

 

 

コンコン。

 

 

 

しーーん

 

 

 

あれっ、反応がない…?まだ、来てないのかな…?

 

 

「失礼しまーす……」

 

 

ガチャリと鍵を差し込んで、ドアノブに手をかけて扉を開けたが、中には誰もいなかった。

 

 

中に入ってみると、その豪華さに思わず目を見開いてしまう。そこら辺のホテルよりも豪華な作りだった。部屋の中に入って最初に目に入ったのは調理するためのキッチンだ。綺麗にされており、冷蔵庫までもが付いている。それ以外に目に入ったのは、フカフカして柔らかそうな二つに並んだ大きなベッド。見ているだけで寝っ転がりたい気持ちに駆られた。

 

 

そのベッドの横に設置されている机の片方に僕の荷物が置かれていた。とりあえず荷物を整理する事にして、僕は自分のボストンバッグを手にかけた。

 

 

「あっ、父さん、ティーセットと紅茶の茶葉も入れといてくれたんだ、ありがたいなぁ」

 

 

実家がカフェである為か、幼い頃から紅茶をよく飲んでいた。父の淹れた紅茶はそこら辺の紅茶と比べられないくらい美味しく、香りもとても良い。その為か、僕は料理以外にも、紅茶の淹れ方を父に鍛えられたのだ。

 

 

思わず、笑みをこぼしながら思い出に浸っていると、後ろからガチャっと、ドアが開けられる音が響く。

 

 

僕は部屋のもう一人の住人が来たのだと思い、部屋の入り口へと振り向くが、ドアは開いていない。

 

 

あれ、開いてない…?じゃあさっきの音は一体…?辺りを見回していると……。

 

 

「ああ、もう一人の部屋の奴か、すまない。こんな格好だが、挨拶をさせてくれ。私は篠ノ之っ…!?」

 

 

思わず息が止まった。相手の女の子の言葉が途切れたのを気に、恐る恐る、後ろの方を振り返るとーー。

 

 

 

 

ーーそこにいたのは、タオルをその豊かな体に巻き付け、濡れた長い黒髪が部屋の光に反射して、美しく輝かせながらも、顔を真っ赤に紅潮させている箒ちゃんだった……。

 

 

僕はこの時ほど、ハプニングが不可抗力な物だと、言いたくなったことはないと思うのだった…。

 

 

 




久しぶりに書けました。良かった、本当に良かった×(2倍)

楽しみにしてくれている人は、本当にありがとうございます。感謝感激です。これからは必ず続きを書き続けます。

これからも、応援おねがいします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。