碧陽学園生徒会の生徒会庶務男子と広報女子(凍結中) (ラインズベルト)
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生徒会の一存 生徒会メンバー

現生徒会原作メンバー

 

桜野くりむ(さくらの くりむ)

生徒会長であり3年生でA組所属。前年は生徒会副会長。血液型はA型。4月2日生まれ。身長は原作では140cmだが、アニメ版だと142cm、漫画版では145cmと表記されている。 花粉症持ち。

知弦には名前の「くりむ」からクリムゾン(真紅)を連想して「アカちゃん」、鍵からは「会長」、深夏と真冬からは「会長さん」と呼ばれる。

ピンク色のショートボブにアホ毛が生えており、ワンポイントとしてワインレッドの色をしたリボンを左側の髪の毛に結んでいる。身長も胸もないため見事な幼児体形であり、その容姿からロリ扱いされ、しまいには小学生と間違われることもある。胸が小さいため「ぺったんこ」と言う言葉に弱い。

 

杉崎鍵(すぎさき けん)

生徒会の日常を綴る筆者。血液型は典型的なA型。私立碧陽学園生徒会副会長を務める2年生でB組所属。

容姿はそれなりに良い。生徒会の会話では基本的にツッコミ役であるが、自身もボケをかましてメンバーからツッコまれることも少なくない。彼のボケは狙ってやっているように見せかけて、天然という部分が9割であり、深夏と自分がそれぞれのブレーキ役となっているために互いが存分にボケられている。

入学当時の成績は底辺レベル(アニメ版では最下位)だったが、美少女揃いの生徒会に入るため一年の間の猛勉強の果てに年度末でトップの成績を取り、成績優秀者が希望すれば生徒会入りできる「優良枠」 で現在の役職に就いた。

 

紅葉知弦(あかば ちづる)

生徒会書記であり3年生でA組所属。前年は生徒会副会長。血液型はAB型。11月22日生まれ。くりむとはクラスメイトで親友。

長く滑らかでサラサラとした黒髪のロングヘアに長身かつ巨乳という、非の打ちどころがない抜群のプロポーションの持ち主で、くりむとは正反対の大人びた容姿と落ち着いた物腰を持つ。とても高校生とは思えないほどの大人の魅力を振りまいている。

頭の回転が速く、趣味が勉強といっても過言ではないくらいこなしているため、成績は3年でトップの超優等生である。中学時代でも頭は良く、学年トップを取り続けており2位の奏とは大きな差をつけていた。

基本的に同級生は苗字で、下級生は呼び捨てで呼ぶ。そのため彼女にあだ名で呼ばれることは珍しいのだが、「別に友好度で区別しているわけじゃない」らしい。

 

椎名深夏(しいな みなつ)

生徒会副会長で鍵のクラスメイトである2年生でB組の委員長。前年は生徒会会計。血液型はO型。9月6日生まれ。

鮮やかな色をした長い髪をまとめたツインテールが特徴で、髪を解くとまるで別人のように印象が変わり、鍵でさえ一目で気付かない。スタイルは抜群。

特定の部活動には所属していないが、運動神経抜群なので助っ人としてよく顔を出している。真冬とは対照的に体を動かすのは、真冬の分まで自分が縦横無尽に暴れて、それを見ている真冬に少しでも充実感を分け与えてあげたいと思っているためである。外では体を動かすのが好きだが、家ではすることが勉強位しかないので、成績は学年5位以内を取る優等生でもある。

 

椎名真冬(しいな まふゆ)

生徒会会計で唯一の1年生でC組所属。血液型はA型。2月22日生まれ。深夏の妹。

色素の薄いストレートヘアに白い肌を持ち、頭にちょこんと乗せたリボンが特徴的な儚げな容姿に、男性が苦手(鍵は平気)な男性恐怖症であり、かつ一人称が「真冬」と少し子供っぽい所もあり、姉とは正反対の大人しく引っ込み思案な性格。

しかし、生徒会のメンバーには心を許して気持ちを素直に表現出来るようになっており、相手の傷口に塩を塗りこむ(失礼に当たる)言動を発することもあるが、本人に悪気は全く無い。

 

真儀瑠紗鳥(まぎる さとり)

『二心』で生徒会顧問に就任した新任の国語教師。顧問教師の権力をもって生徒会に介入する。

攻撃的な美を表したような容姿の持ち主で、艶やかな闇色の髪をアップに纏めており、普段はスラリとした体躯を強調させるタイトな紺色のスーツを着ている。

くりむと同じような唯我独尊タイプの自信家で傍若無人な性格だが案外打たれ弱く、漢言葉を使用する。生徒会メンバーに劣らない個性派で、メンバーの会話に割って入っては場を引っ掻き回すことが多い。本人のスペックは非常に高く、口では知弦ですら敵わないほどである。鍵は一目見た瞬間に一枚上の相手だと推測していたが、今では鍵に「知れば知るほど駄目な人」と言われている。

 

オリジナルメンバー

 

神崎健吾(かんざき けんご)

生徒会庶務で、鍵の親友で2年生でA組所属。血液型はA型。5月17日生まれ。身長は175㎝。

短く、赤黒い髪の美青年。典型的な委員長タイプで、大抵のことはそつなくこなす。

鍵とは中学からの付き合いで、お互い信頼しあっている。葵とは幼馴染で、昔からよく一緒にいる。知弦とはほとんど話すことはなく、お互い距離があるが、時折気が合うときがあるらしい。教員、生徒から絶大の信頼がある。そのため優良枠とは別に教員推薦により生徒会へ入った。

 

姫川葵(ひめかわ あおい)

生徒会広報であり2年生でA組所属。血液型はB型。一応鍵の親友。8月20日生まれ。

背中まである薄い水色の髪が特徴的。見た目は病気がちな少女だが、どんなことにも冷静に対処できる。絵を描いたりすることが得意で、生徒会の広報紙には自作の絵を掲載している。

基本的に無口で、鍵か健吾と話すとき以外で喋ることはほとんど無い。基本的にはうなずいたり、首を振ったりして合図をする。そのミステリアスさが人気に火をつけている。



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駄弁る生徒会①

「世界がつまらないんじゃないの、貴方がつまらない人間になったのよ!」

 

会長が無い胸を張ってまた本の受け売りを偉そうに語っていた。それに杉崎はなぜか頷き、深く考え出した。鍵は変なとこでマジメだからな……。

 

俺は世界がどうとか考えたことがない。今さら考える必要もないと思う。世界なんて不条理だ。いくら願っても、努力しても、成功しないことだって、山のようにあるんだから。

 

「じゃあ童貞も悪くないってことですか?」

 

「ぶっ!?」

 

杉崎の信じられない返答に会長はお茶を盛大に吹き出してしまった。汚なっ!拭いておこう……。俺はポケットからティッシュを取り出し、テーブルを拭いく。会長は涙目になりながら杉崎を睨む。

 

「どうしてそうなるのよ!?」

 

「甘いですね会長。俺の思考回路は基本、まずはそっち方向に直結します!」

 

「なにを誇らしげに!杉崎はもうちょっと副会長としての自覚をねぇ……」

 

「自覚ならありますよ、ここが俺のハーレムだっていう自覚なら十分―――」

 

「ごめん、副会長の自覚はいいから、そっちの自覚を捨てることから始めましょうね」

 

相変わらず二人はコントのようなやり取りをしている。面白いって言えば面白いかもしれない。

 

一人はこの生徒会の会長・桜野(さくらの)くりむ。どこからどう見ても小学生としか思えない容姿&頭脳のスーパーお子様。どうして高校3年生になれたのか不思議でならないが、全校生徒に人気のある女性だ。

 

もう一人は、この生徒会の数少ない男子の片割れの杉崎鍵(すぎさき けん)。見た目はかっこいいのに、常日頃からハーレムハーレム言っているせいかそこまでモテない二枚目半な男。一応、俺の親友でもある。

 

「杉崎も神崎を見習ったらいいよ。あと神崎、拭いてくれてありがと」

 

「いえいえ」

 

あ、言い忘れていたが俺の名前は神崎健吾(かんざき けんご)。役職は会長補佐。先生曰く、桜野会長だけでは心配だから、だそうだ。

 

まぁ、仕方無いと思う。あの見た目じゃあ……。まぁそれは置いておく。この生徒会室には桜野会長や杉崎の他に、生徒会役員がいる。

 

今のところ全く喋らずに、ポツンと隅に用意された椅子に座って、パソコンで作業をしている。彼女は庶務の姫川葵(ひめかわ あおい)。基本的に無口。かなりの美少女なのだが、態度はそっけない。

 

「かいちょー」

 

「なによぉ」

 

「好きです。付き合ってください」

 

「にゃわ!」

 

桜野会長に対する杉崎の唐突な告白に、桜野会長は取り乱し、ゴミ箱に投げ入れようとしていたであろう紙くずをゴミ箱から外した。

 

「なんで杉崎はそんな軽薄に告白できるのよ!」

 

「本気だからです!」

 

「嘘だ!」

 

「『ひ○らし』ネタは古いですよ会長…」

 

「大体杉崎にどこに本気があるのよ…生徒会に初めて顔出しした時のせりふ、覚えてる?」

 

「えっと…なんでしたっけ?『俺にかまわず先に行け!』でしたっけ?」

 

相変わらずこの二人はコントのようなやり取りをしている。いつもいつも飽きずによくやるよ。俺は興味ないけど、たまに面白いと思うからこのままでも良いんじゃないかと思う。

 

「あれ?違いますか?じゃあ…『ただの人間には興味ありません。宇宙人、未来人――』」

 

「危険よ杉崎!いろんな意味で」

 

「大丈夫です。原作派ですから」

 

「何の保障!?あとアニメの出来は神だよ!?」

 

桜野会長も見ていたらしい。まあ俺はどっちでも良いんだけどな。楽しめればそれで良くないか?とはいえ、本は好きだからよく読むが。

 

「皆好きです。超好きです。皆付き合って。絶対に幸せにしてみせるから。」

 

鍵がこの生徒会に顔を出した時の言葉を言う。俺と葵はその時いなかったけど。いきなりそんな言葉を発するのはさすがにどうかと思う。

 

「そうよそれ!まったく…誰でもいいから付き合ってなんて誠実じゃないわ!」

 

「一途なんです!美少女に!」

 

「括りが大きいわ!」

 

「希少種ですよー美少女。それによくないですか?最初から「俺は!ハーレムエンドを目指す!」って宣言するの」

 

「あんたはそこらのギャルゲ主人公とは基本スペックが違いすぎるわ」

 

「キモい」

 

確かに。葵や桜野会長の言うとおり、杉崎は主人公と言いがたい。てか言いたくない。

 

「……杉崎は主人公の友人かギャグ要員の方が似合ってるよな」

 

「おい健吾、葵!お前らなんでほとんど喋らないの!?そして俺の親友だよな!?酷くないか!?」

 

「「事実だろ(だよね)?」」

 

「そ、そうよ!神崎たちの言うとおりよ!」

 

鍵が「顔はいいのにー!」とか言っているが無視すれば良い。杉崎はろくなこと言わないから。

 

若干涙目になりながら鍵はゴミ箱の前にあった会長の捨てそこなった紙くずをゴミ箱に投げ入れる。

 

「…杉崎ってさ、さりげないところで優しいわよね…無意識に」

 

「え?…こういうギャップって好感度上がるでしょ?」

 

「狙い!?しまった!あたしの中の杉崎への好感度は若干上昇してしまったわ!?」

 

本当、最近見てて飽きなくなってきた。仲良いな、2人とも。そんな時、生徒会室の扉が開かれた。

 

「キー君、アカちゃんをいじめないの」

 

 この人は紅葉知弦(あかば ちづる)先輩。おこさまな会長とは違い出るとこは出てる綺麗な先輩で、クールビューティーという言葉が合う人だ。ほんとに二人が親友って言われても不思議だよな。

 

「やだなぁ知弦さん、弄ってるんじゃなくて辱めてるんです」

 

「余計に悪質よ?それ」

 

紅葉先輩は半ば呆れたように鍵をみる。鍵はいつものようにシレッと言う。

 

「大丈夫です同意の下ですから。てか今日集まり悪いですね俺のハーレム」

 

すかさず桜野会長が「嘘だっ!」と叫ぶがスルーされてしまっている。

 

「ハーレムじゃなくて生徒会ね。それにキー君のそういうところ直せないのかしら?ねぇ、」

 

「分かってないですねぇ、、知弦さん。基本的に好感度は直接会わないと上昇しないんですよ。ほら、ギャルゲだって、よく移動場所でヒロイン決まるでしょう?」

 

「当然の知識のように言われても困るけど」

 

「スギにとって私たちとの会話はゲーム感覚ってことなんだね?」

 

「違うよ!?」

 

あ、違うのか。なーんだ、みんなに言いふらそうと思ってたのに。つまらないじゃないか。しかし葵がいつになく喋ってるな。

 

「俺が言いたいのはですね?生徒会室に来ないことには俺との愛を育めないわけで――」

 

「だから来ないんじゃないかしら。むしろ」

 

遮るように紅葉先輩からさらりと酷いツッコミが飛ぶ。知的でクールなイメージが強い紅葉先輩から飛ぶツッコミは、鍵にとって大ダメージになったみたいだな。

 

「でも、知弦さんは俺との愛を育みに来てくれたわけですね!」

 

「……………。……あ、うん、そうね」

 

酷い仕打ちに鍵は泣きそうだ、泣くなよ?それと、あの人追い討ちに出たぞ。否定よりも酷いダメージになるな、あれは。しかもなんか勉強し出したし。

 

「く……。しかしこういうクールキャラこそ惚れたら激しいに違いない!」

 

「あ、それは正解。私小学校のころに好きな人に1日300通送ったりして最終的に精神崩壊まで追い込んだりしたし…あなたはどうかしら」

 

細目で口元に薄ら笑いを浮かべながら鍵を見つめている紅葉先輩。そのことを聞いた俺たち四人全員青ざめた顔で知弦先輩を見る。

 

「分かりました…」

 

「あら、それを聞いても私を受け入れてくれるの?いま私の中のキー君に対する好感度がぐんと「知弦さんとは、体だけの関係を目指します!」……」

 

はぁ、こいつは馬鹿なんだな?どうしようもなく馬鹿なやつだな」

 

「やっぱお前俺を親友とか思ってないのか!?」

 

あれ?喋っちまったのか?え?ミスったな。

 

そんな鍵とのやり取りをしているうちに、会長がどこからかお菓子を出して食べようとしていた。

 

「「太りますよ」」

 

鍵とセリフが被った。まぁ誰しもが思う事だ。あんなに甘いお菓子を毎日のように食べてたらな……。

 

「ふ、太らないよ。私、太りにくい体質だし」

 

そう言いながら会長はお菓子を口の中に放り込む。その刹那、紅葉先輩と俺はアイコンタクトを交わす。よし、やるか。

 

「えっとこの問題は…『メタボリックシンドローム』ね、よし正解っと」

 

「近年多いですよね、太ってる人。俺の昔からの同級生にもいますし」

 

「…………」

 

この会話を聞いた会長が涙目の状態で椅子から崩れ落ちる。その間に俺は知弦先輩とほくそ笑む。ま、痛い目に遭ってほしくはないし、これでいいはず。

 

そのとき鍵がこっちを引きぎみに見ていたように見えるけど、気のせいだろう。そして鍵が桜野会長に近づいていく。

 

「会長、心配しないでください。もし、もらい手がいなくなったら……」

 

「え、す、杉崎、太って醜くなった私も好きでいてくれるの?美少女じゃなくても?杉崎……あなた……」

 

「もらい手がいなくなったら、その時は……仕事に生きればいい」

 

「リアルアドバイス?!」

 

「俺、陰ながら応援しますから!ブログに匿名で励ましのメール送りますから」

 

「陰からなんだ!匿名なんだ!太ったら見捨てるんだ!」

 

「頑張れ!俺のハーレムに留まるために!」

 

「あ、なんか急に太ってもいい気がしてきた」

 

そうこうしていると、また生徒会室の扉が開いて残り二人のメンバーが入ってきた。



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駄弁る生徒会②

「おっくれましたぁー」

 

「す、すみません」

 

対照的な態度で入ってくる二人。どちらも生徒会に所属する女子生徒だ。

 

前を歩く元気な少女は椎名深夏(しいな みなつ)。鍵と同じ副会長で、更には鍵のクラスメイトで、長い髪をツインテールに分ける快活な少女。特定の部活には所属していないが、運動神経抜群で、よく助っ人に呼ばれている。口調は男勝りで、基本的に男嫌い。若干百合気味ではあるが、悪態をついたりしないのでかなり人気がある。

 

そしてその背後からペコペコ頭を下げつつ、恥ずかしそうにしている少女が、椎名真冬(しいな まふゆ)。深夏の妹で一年生。色素の薄いストレートヘアーに白い肌、ピンク色のリボンをつけている。深夏に元気を吸われて生まれたかのように儚げで、その上男性が苦手。どうやら鍵によると深夏の毒牙にかけられ、そのような百合のような子になってしまったのだとか。

 

「いいよ、少し遅れたくらい」

 

「まだあんまり活動してないしな」

 

そう言って二人を迎える。とりあえずお茶を出し、椅子へ催促しておく。今日の生徒会も始まったばかりだ。ただ、鍵だけは平常運転だけど。

 

「こら鍵!あたしの前で妹口説こうとすんな!」

 

いつの間にか鍵は真冬ちゃんを口説いているらしい。流石は女たらし、いや、美少女たらしだな。鍵は嘆息し、隣の席の深夏の肩に手を置く。

 

「まあまあ、嫉妬すんな深夏よ。……お前もちゃんと魅力的さ!」

 

「いやいや、嫉妬じゃねーから」

 

「深夏にも、結婚すれば真冬ちゃんが義妹になるという大きな魅力が――」

 

「しかもあたしの魅力じゃねぇ!」

 

深夏は怒った。当たり前だ。深夏自身には魅力が無いと言ったようなものだから。鍵は時々酷いやつじゃないかと思う。まあ、冗談だろうけど。

 

「ヤキモチじゃねぇって!」

 

どうやら鍵は深夏がヤキモチを焼いたと思ったらしい。深夏はそれに気付いたようだ。もう夫婦漫才みたいになってきたな。

 

「おお!ついに以心伝心まで!ゴールインは近い!」

 

「怖いよもう!思い込みが激しすぎて怖すぎるよ!!」

 

「思い込み……?ふふふ、仕方ない。そういうことにしておいてあげるよ。照れ屋さん♪」

 

「こ、殺したい……」

 

一方で鍵は誇らしげに生徒会メンバー(俺を除く)を見渡し、悦に入っていた。葵が完全にPCで顔を隠してしまっている。鍵、ちょっと引くぞ……。

 

「ううん、ハーレム万歳。いつ見てもいいねぇ、この光景。頑張って生徒会入って、本当に良かったなぁ」

 

なんだよこいつ。ハーレム、ハーレム言ってるから、皆距離を置くんだぞ。ある意味、本人は気にしてないから言わないが。鍵は嬉しそうだ。どちらにせよ、こいつは不純だな。

 

まだまだ会議(?)は続く。



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駄弁る生徒会③

「そういえば、鍵は《優良枠》で入ってきたんだっけ」

 

「……とてもそうは見えないのに」

 

思い出したことを言うと、俺が紅葉先輩がそう呟く。

 

「そうだよなー。コイツ、どう見てもただの色ボケ男だよなー」

 

深夏が同意し、真冬ちゃんは苦笑していた。鍵が反論しようと口を開きかけたとき、会長がバンッと机に手を置く。

 

「散々言ってきたことだけど、やっぱりこの学校の生徒会役員選抜基準はおかしいわよっ!人気投票からしておかしいけど、《優良枠》にしても、成績だけじゃなくメンタル面も評価に加えるべきだわっ!」

 

会長は、既に何度も言っている文句を言った。杉崎は決まっているかのように返す。

 

「俺はこのシステム、最高だと思いますけどね」

 

そりゃ頑張りゃ人気者のやつらの仲間入りだからな。下心が丸見えだぞ、お前。

 

この学校の生徒会役員選抜基準は変わっている。まず、《人気投票》による生徒会メンバーの選抜。一位から順に役職が決まっていく。大抵容姿で決めるので、女子ばかりが入る(一部例外はあるが)。ミスコンに近い。

 

しかし、理にかなっている部分もある。毎年、生徒達の「憧れる人」が上位にいるわけだ。そうなると、選挙活動が無いにせよ、自分達の「憧れる人」が指揮を取る訳で、案外スムーズに進む。容姿で決めるといっても、カリスマ性で補われ、問題は滅多に無い。

 

かくして、生徒会は美少女が多くなる。妥協点は杉崎の《優良枠》だ。各学年の成績優秀者………年度末試験のトップ生徒は、本人が希望すれば、生徒会に入ることができるようになっている。これにより、優秀な人材も取り入れるようにしているわけだ。

 

普通、それほどの優秀者なら、まず生徒会には入らない。勉強の妨げになるからだ。鍵は異常だといっても過言ではないだろう。その《優良枠》で生徒会の一員になったわけだから。

 

「しかし、鍵もよくやるよなぁ。そのパワーは尋常じゃねーぞ」

 

「まったくだ」

 

俺と深夏はあきれた視線を鍵に送る。会長も嘆息し、「本当にね」と呟いた。鍵は胸を張っている。

 

「俺は、《自分以外全員美少女のコミュニティ》に入るためなら、なんだってしますよ。ええ。入学当初殆ど最下位の成績でも、一年でトップに上り詰めるぐらい、朝飯前です」

 

「《自分以外全員美少女のコミュニティ》に、ならなかったな」

 

「そうね。神崎君がいるものね」

 

俺も紅葉先輩も苦笑しつつ、呟く。とんでもない努力だ。それは認めないとな。真冬ちゃんは鍵を眩しそうに見つめている。

 

「成績がいいってだけで入れちゃうのは、やっぱり変だよ!そのせいで、杉崎みたいな問題児が入ってきて……」

 

「生徒会の皆をメロメロにしちゃったのは悪いと思ってますが……」

 

悪いと思ってたのかよ!?てっきり当然とか思っているのかと……。まあ、見てくれは悪くないからなぁ。

 

「誰一人なってないわよ!」

 

「ええっ!」

 

「なにその新鮮な驚き!自信過剰も甚だしいわね!」

 

「まさか……そんな……。……まだ会長だけしかオチてなかったなんて……」

 

「会長はともかく、まだってなんだよ………」

 

「私はともかく!?」

 

会長が何やらうるさいが、スルーしておこう。

 

「ていうか、私もオチてないわよ!」

 

「ええぇっ!」

 

「マスオさん的な驚き方、やめてくれる?」

 

「そんな……会長。じゃあ、あの夜のことは無かったことにするというんですか……」

 

まーた始まったよ。会長もスルーしておけばいいのに。

 

「な、なによそれ」

 

会長は必死に記憶を探っているようだ。皆が見守る中、鍵は言い放った。

 

「あの夜、会長、夢の中で、何度も激しく俺を求めたじゃないですかっ!」

 

「ここに犯罪者予備軍がいるわ!ストーカーの卵がいるわっ!」

 

「酷い!俺の純情を弄ぶなんて!」

 

「むしろ私が弄ばれているんじゃないかしらっ!」

 

会長は叫び疲れたようで、ぜぇぜぇと息を切らしながら椅子に座った。会長は小柄なだけに、体力もないのだ。口論になると簡単に押しきれてしまう。

 

その様子を見かねたのか、紅葉先輩がノートをぱたんと閉じて鍵に話しかけた。

 

「キー君。私は別に貴方のこと嫌いじゃないけれど、もうちょっと誠実に立ち回った方が利口だと思うわよ?」

 

「紅葉先輩の言うとおりだ。ハーレムを作るにせよ、誠実さで落としてこそ、王道じゃないか?」

 

「う、ううむ……。二人の意見も一理ありますけど………。しかし、どう取り繕っても、これが俺ですから!この欲望に満ちた姿が、本当の俺ですからっ!自分、不器用ッスから!そして、性欲に忠実ッスから!………あで!?」

 

俺は止まらない杉崎の頭にチョップを食らわし、言う。

 

「よくもまあ、堂々と言えるな、お前」

 

「それが俺だからな!」

 

折れないなぁ。大したものだ。

 

「芯からこってり腐っているなお前」

 

深夏が冷たい目で鍵を見ていた。対して鍵はにやけている。これからどうなることやら。

 

「ふふふ………これから次々と、生徒会メンバーは俺の魔の手に落ちていくのさ……」

 

「自分で魔の手とか言い始めたよコイツ」

 

「言い始めちゃいましたね……」

 

「魔の手……」

 

俺の言葉に同意し、真冬ちゃんは苦笑、葵は両手で体を守るように抱いていた。

 

「ま、あんまりデレないと、速やかに学園陵辱モノに」早変わりするプランも―――」

 

「清々しいほど外道だな、てめぇ」

 

深夏はあきれていた。完全に。鍵はニヤニヤしながら深夏に向かって「ちっちっち」と指を振る。

 

「大丈夫さ、深夏。はそうなら泣いては考えてある。……実はこういう系統の物語は、全員の好感度を徐々に上げるんじゃなくて、『一人一話』形式で上げていくんだよ」

 

「なに?」

 

深夏が食いついた。一人一話形式ねぇ……。ゲームならそうなるのか。あーいうゲームはしたことがないから分からないが。好感度を上げるのではなく、ルートに沿ったキャラクターのエンディングを見る感じだろうか。

 

それぞれのキャラクターの話を、一挙に見る感じなんだろう。誠実的ではないが、鍵なりの考えがあってのことなら、俺が口を出すのは場違いだ。決めたならその道を進めば良い。

 

「俺は美少女ハーレムを作る!」

 

…………いつの間にか鍵は宣言していた。良いとはいったが、こんなんで大丈夫だろうか。今更ながら、親友の頭が心配になってきた。

 

「美少女を侍らせ、美少女にも飽きたなって所までいってから妥協してやる!」

 

「………なるほどね。とりあえず行くところまで行ってみようってことね。良いんじゃないかしら。好きよ、そういうの」

 

紅葉先輩が微笑みながら言う。こういうときには、素直に好感度を上げれるな、鍵は。

 

深夏も「スタンスは悪くないよな」と笑っている。

 

真冬ちゃんも「そうですね……今から悩んでいるより、とりあえず上にいってみるのが、いいかもしれませんの」と優しく微笑んだ。

 

葵もぎこちないながら、笑顔で頷く。

 

会長はというと……。

 

「えー、あんまり頑張るのは疲れるよぅ」

 

なんて言っていた。駄目人間だ………。

 

上に行く。目標は高くて問題ない。むしろ高い方が、頑張れる。珍しく、鍵の言葉が心に響いた。

 

つづく?



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