ゾロさん、あなたを愛してます!! (ぞろおし)
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プロローグ
一目惚れ




初めまして、梅木空です

ノリと勢いで書いてます、見切り発車です

どうぞ


 

 

短く刈った緑色の頭髪

 

左耳に輝く金色ピアス

 

筋肉質な体つき

 

意思の強そうな三白眼

 

彼が振るう三本の剣により舞い散る血しぶきの中、私、フローレス・アリスは名も知らぬ彼(ロロノア・ゾロ)に恋に落ちた

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

目をさますとそこは見知らぬ天井でした。

ゆったりと体を起こすとどうやらここは誰かの家らしく、少し開いた窓から暖かな日差しと柔らかな風が吹いていた。

いい天気ですね、と目を細めベッドから起き上がり、外に目を向ける。

微睡んでいるとドアがゆっくりと開き小さな女の子が部屋に入ってきた。

 

「あ〜、お、おとぉーさん、お姉ちゃんが目を覚ましたよ!」

 

と元気に叫んでバタバタと走りさっていった。

さて、一体ここはどこなんですかね……

 

 

 

 

 

 

 

「お、ようやく目を覚ましたか、嬢ちゃん」

 

そういって大柄な男性が部屋に入ってきた。どうやら先ほどの女の子の父親でこの家の家主らしい。

 

「はい。事情はわかりませんが、こんな見ず知らずの小娘を泊めていただき感謝いたします」

 

「いや、朝漁に出ようとしたら壊れた小舟に金髪のべっぴんさんが眠っててな。あんときゃびっくりしたわ。」

 

「ふむ、どうやら遭難したみたいですね。あなたのような親切な人に助けていただいて、幸運でした。」

 

ぺこりと頭をさげる。

まぁそもそも小舟で航海術もあまり学んでない女の一人旅なんて危険づくしでしたしね。本当に親切な人たちでよかったです。

もしも海賊などに見つかっていたならロクな目にあってなかったと思いますしね。

 

「なんだい嬢ちゃん、1人で旅してんのか?度胸あんなぁ」

「いえ、もともとは仕事仲間と一緒だったんですけど、仲違いしてしまいまして、会社も辞めてしまったんです」

「そこで一人旅してて遭難しちまったのか、災難だったな」

 

あはは、苦笑しながら身の上を話す。本当に困りましたね。この島にたどり着けたのは不幸中の幸いでしたが、船も壊れてしまいましたし、路銀もどこかに流されてしまいしたし。いえ船はもう一度()()()()()んですけれど、今出せそうな船は使うとなると一人じゃ無理ですし。

ふむ、どうしたものですかね、八方塞がりです。

 

「んで、嬢ちゃん、これからどうすんだい?故郷にでも戻るのか?」

「あ、いえ、私の故郷は少し遠いところにありまして自力で帰るのは困難なんです。これからについては……正直あまり目処が立っていません」

 

本当にどうしますかね。職なし船なし一文なしのないないづくしですし、頼るようなツテなんてどこにもないですし。

 

「そうなのか……。よし、嬢ちゃん、あんたが良いならなんだが」

「?はい」

「いくあてもないなら、しばらくうちに住まないか?」

「え……?いえ……いいんですか?」

「おう、いま俺とこいつの2人で暮らしててな、部屋も余ってるし、こいつも綺麗な姉ちゃんが一緒に住んでくれるなら嬉しいと思うしな。なぁルカ?」

「うん、お姉ちゃんさえ良ければルカたちのお家に泊まって欲しいな」

 

な、なんと親切な方達でしょう。今まで私が接してきた汚い大人や頭のぶっ飛んだ人間どもとは天と地の差です。

 

「ではすみません、しばらく住まわせてもらいます。本当にありがとうございます」

 

ぺこりと深々と頭をさげる。

 

「これからよろしくな、えーっと……」

「あ、すみませんまだ名乗っていませんでしたね。私、フローレス・アリスと申します」

 

 

 

* * * * * 

 

 

 

 

突然ですが私には前世の記憶というものがあります。

 

といってもそう幸せなものじゃなかったですけどね。両親は育児放棄一歩手前でしたし、家庭もそこまで裕福じゃなかったですから。

友達もそんなに多いわけでもなく、いえ、見栄を張りましたね。いませんでしたので私の友達は《本》だけでした。

毎日毎日図書館へ足を運びミステリー・サスペンス・冒険・アクション・青春・恋愛小説時代・歴史・ホラー・幻想・経済・軍記・エッセイ・詩歌ノンフィクション・科学・テクノロジー・コンピュータ・IT・歴史・地理・児童文学・絵本etc……ひたすら唯一の趣味である読書に邁進し、没頭しました。

ちなみに漫画も興味があったんですけどお金も友達もなかったのでほとんど読んだことはなかったです。

 

そんな程度しか記憶にない薄っぺらな人生でした。死因も覚えてないですし。

 

そして気がついたら第二の人生を歩んでいました。

 

髪も目も黒だったというのに、気がついたら髪は金髪、目は碧眼と変わり、体も小さくなっていました。最初は戸惑いましたが前世とは違い裕福な家庭で、礼儀作法が厳しいこと以外は概ね不平はありませんでした。

しかし、前世からの悪癖といいますか、唯一やっていた趣味であったせいか、私は文字が読めるようになると本を読むことに夢中になりました。

それも最早趣味と言えず常軌を逸して病的なまでに本を読みました。

そんな私を両親は奇妙なモノを見るような目で見つめていました。

 

私がようやく自分がどんな目で周りから見られているかも気づいた時には手遅れで、私とは違い、いたって普通であった双子の妹に愛を注ぎ、私は家から追い出されました。

 

それから懸命に一人で生き抜きました。

 

 

 

 

* * * * * 

 

 

二週間後

 

 

ふわぁ〜と大きく伸びをしてあくびをする。そうして布団から出て金髪を左右に三つ編みに結い、メガネをかける。

あ、メガネはちなみに度なしです。

前世でかけていた習慣でかけているだけなので視力自体は良いです。三つ編みも習慣なんですけどね。

 

 

 

「アリスお姉ちゃん、もうお昼だよ、お昼ご飯だよ〜」

「はい、今行きますね」

 

すっかりこの島での生活に慣れて、優しい親子とゆったりした生活を送っています。

あれからルカさんとタケオさん━━ルカさんのお父さんのご厚意に甘えてしばらく住まわせていただき、しかも知り合いの酒場で働かせてもらっています。

島のみなさんは皆親切で新参者にも優しく気軽に、アリスちゃんと話しかけてくれます。

今日からしばらく遠くまで漁にタケオさんが出るそうなので2、3日ほどはルカさんと2人きりの生活です。

 

「そういえば、ルカさん。今回みたいに遠出の漁でタケオさんが不在のときは今までどうしてたんですか?」

「近所のおばさんの家に泊めてもらってたの。でも今はお姉ちゃんと一緒にいられてうれしいよ」

 

そういってルカさんが微笑む。

何でしょうこの天使、可愛すぎませんか?

悶えてると私の様子に首を少し傾げながらルカさんが料理をもってきてくれました。

 

「今日はボンゴレビアンコだよ」

「美味しそうですね〜」

 

ルカさんのお母さんは三年前に病気で亡くなってしまったらしく、それ以来こうしてルカさんがご飯を作っているらしいです。

ちなみに私は今までろくに料理ということをしたことが無かったので、試しにルカさんたちにご披露してみたところ、心優しき親子が無言で固まりそっと吐いてしまったので、それ以来台所に入ることはやんわりと拒否されてます。

 

「いただきまーす」

「いただきます」

「美味しいね、お父さんのお友達がこのアサリくれたんだよ」

「へぇーそうなんですか、今日も美味しいですよ、ルカさん」

 

2人で和やかにご飯を食べていると、にわかに外が騒がしくなっていた。

一体どうしたんでしょうか?席を立ち、窓の外を見ようとすると勢いよく玄関のドアが開かれました。

 

「ルカちゃん、アリスちゃん?!タケオさんいるか?!」

 

そういって入ってきたのは酒場でもよく見る近所のおじさんでした。

 

「タケオさんは今日から遠くへ漁にいってますよ」

「そ、そうか。まいったな」

「どうしたの、おじちゃん」

 

ルカさんが少し怯えた様子で尋ねると、どうやら今海賊船がこの島に近づいているらしく、一応海軍にも連絡したがすぐに来れるような艦が今無いらしい。

間に合わない可能性が高いので、島の男たちを集めて抵抗を試みようとしていると聞きました。

 

 

ふむ、仕方ありませんね。

 

「私も海賊退治に参加します」

「おい、アリスちゃん?!何いってんだ?!危険だぞ」

「そうだよ、お姉ちゃん!いっしょに逃げようよ」

「いえ、こう見えて荒事には慣れておりまして。私がいれば百人力ですよ」

 

不安そうな顔をふたりの方を向いて

 

「それに今までナイショにしてましたが、私《魔法》が使えるんです」

 

そう言ってにっこり微笑み、静止の声を後にして海岸へと走った。

 

 

 

* * * * * 

 

 

 

海岸へと向かう途中出会った人たちに話を聞くと、どうやらもう島に海賊は着いているらしい。

が、たまたま島にいた一人の賞金稼ぎが20人ほどの海賊と戦っているようだが、島民は相手の船長が賞金首ということもあり加勢に行くかどうか悩んでいたので先回りすることにした。

 

 

 

海岸に近づくにつれて金属同士がぶつかるような戦闘音と怒鳴り声が聞こえてくる。

 

「クソッ!!俺は500万の懸賞金 "青槍”のナーバンだぞ!!」

「知るか、雑魚の名前に興味はねぇよ」

 

どうやら戦闘も終盤ですね、私が来る必要なかったかもしれません。そう思いながら走り、海岸が全体を見通せる開けた場所に着いた。

 

 

 

私がそこで見たのは━━━━私の<運命>だった。

 

 

 

光る三本の刀

 

 

短く刈った緑色の髪

 

 

左耳に輝く金色ピアス

 

 

男らしい筋肉質な体

 

 

意思の強そうな三白眼

 

 

 

銀色の風により舞い散る血しぶきの中、私、フローレス・アリスは名も知らぬ彼に生まれて初めて恋に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





読んでいただきありがとうございます

主人公はスレンダーな美人で原作知識はほとんどないです。

作品のタイトルは某映画からとりました、といっても作者はその映画タイトルしか知らないんですが笑

作者はテキトーに書きたいシーンのプロットだけ練って若干満足してしまったので次回の更新は何か反響があればします。



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海賊狩り

思っていたより用事が早く終わって暇だったので書けました

改訂 ゲンさん→ガンさん
ゲンさんについて忘れてましたすみません。


「急げ、野郎ども!」

「アリスちゃんがいっちまったそうだぞ!」

「ためらうな、加勢に行くぞ」

 

島の住民が各々武器を手に取り、海岸へと急ぐ。

賞金稼ぎが向かったが、海賊は20人と聞いておりとても一人で対応できる人数とは思えない。

その上、最近島に住み始めた礼儀正しく見目麗しいアリスもどうやら戦いに向かったらしく、彼女を救うべく全力で駆け出し海岸へとたどり着く。

 

「え……!?」

「どういうことだ、こりゃ?」

「一体何があったんだ?」

 

島民が到着するとそこには不可解な状況が広がっていた。

 

 

血まみれとなって倒れこんでいる海賊たち

 

地面に倒れている賞金稼ぎと思われる緑髪の剣士(ロロノア・ゾロ)

 

そして剣士を押し倒し、馬乗りになっている金髪の少女(アリス)

 

 

事態は少し前にさかのぼる。

 

 

* * * * *

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

そういって彼は刀を鞘にしまい、一息つきました。

その様子を見ながら私の体は勝手に動いていきました。

 

 

獣のように腰を落とし体勢を低くし

 

砂が舞い散るほど勢いよく大地を蹴り

 

賞金稼ぎの青年のもとへと風の如く疾走する。

 

「……!?チッ、新手か」

 

すっ、と慣れた様子で刀を一本鞘から引き抜きこちらへと振るわれる。

 

刀の軌道を見切り体をずらしたが髪にかする。

どうやらゴムが切られたようで三つ編みが一房ばらけ髪が宙に舞う。

がそんなことも気にならないほど私の心は浮き上がっていた。

 

「何?!」

 

驚いた顔もいいですね、そんなことを思いながら彼の懐へと飛び込む。

再度振ろうとした腕を押さえ、もう片方の腕で肩を掴み、勢いをのせ地面へとぶつかるように押し倒す。

 

「がっ!!……てめぇ、な」

 

 

「私、フローレス・アリスと申しますの。身長168センチ、誕生日は10月27日血液型はS型出身は北の海ですが家を追い出され家族とは絶縁状態です年齢は18歳好きな食べ物はアップルパイ嫌いな食べ物はなすときゅうり職業は今は酒場で働いていますが作家志望でスリーサイズは秘密です今まで恋愛をしたことがありませんので好みの異性のタイプはわかりません好きな言葉は有言実行と不言行動嫌いな言葉は自己中心チャームポイントは泣きぼくろです趣味は読書で苦手なことは料理です勤め先をクビになり最近乗っていた船が難破しこの島に住むようになりました。突然ですがあなたに一目惚れしました、結婚を前提に私とお付き合いしてください。」

 

 

 

『恋はいつでもハリケーン』そんな東の海のことわざが頭をよぎった

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

海賊たちに応急手当をしたあと拘束し島のおじさん━━ガンさんの船へと投げ込む。

ぐえとか悲鳴が聞こえましたが気のせいです。

 

あのあと斬られた海賊たちは海軍へと渡すということで縛りあげ親切な島民の方々は侵略しようとしてきた彼らの傷を手当てし近くの海軍が駐屯する島まで行くことになりました。

 

私は愛しの彼、ロロノア・ゾロさんとともに島を出て行くことを決心し、皆さんに別れを告げてきました。

 

皆さん心から祝福してくれまして、出港の際も「元気でな〜」「お幸せに!」「またおいでね〜」「いつでも帰ってきてくれていいからね」「達者でな」「アリスちゃ〜ん」と声をかけていただきました。

 

うう、最後までなんてやさしい方達だったのでしょう。ルカさんも

 

『お姉ちゃんと別れるのは辛いけど、好きな人と離れ離れになるのは悲しいもんね』

『ルカさん……』

『アリスお姉ちゃん……』

 

その後熱い抱擁を交わし、タケオさんにもありがとうございましたとの言伝を頼み、再会を約束し別れました。

 

皆さんとの別れを思い出し遠くなって行く島を見ながら溢れてきた涙をぬぐい、振り向く。

 

「さぁ、これから幸せな生活を送りましょうゾロさん!!」

「ヒュ〜お熱いね〜」

「やめてくださいよ〜ガンさん。恥ずかしいです」

「いや、なんでだ」

 

そうでした。二人っきりではないんでした。少し舞い上がってましたね。

 

「それで、こ、子供は何人欲しいですか?」

「積極的だね〜アリスちゃん」

「いや、話聞けよお前ら」

 

そうですね、いささか早かったですね。

ここは

 

「ご趣味はなんですか?」

「初々しいねぇ〜」

 

ガンッと鞘を甲板へと突き立て大きな音をゾロさんが鳴らす。

そしてその鞘を私の首へと向ける

 

「テメェは何者だ」

 

ふむ、なぜこんなに警戒されているんでしょうか?原因が全くわかりませんね、先ほどの自己紹介は早口すぎましたかね。

 

「私の名前はフローレス・アリス。身長は168センチ、誕生日は10月27日血液型はえひゅ」

 

ぐっと鞘が首に押し当てられる。ぐえ、痛いですね。

ハッ、これはもしやSM趣味がゾロさんにお有りという意思表示なんですかね?

恋愛初心者にはハードルが高い気がしますが、相手に合わせることも大事ですしね

……というかガンさんこっちを振り向きもしないんですが、マイペースですね。

 

「冗談、言ってんじゃねぇ。真面目に答えろ」

 

ぎろりと野性味に溢れた三白眼に睨まれる。

はう、胸がどきりと高鳴りました。

なるほど古今東西様々恋愛小説で感情の描写に心臓が使われている理由を実感しました。

無言で幸福感に浸っていると鞘にさらに力が押し込められる。

ふむ、ふざけている場合じゃないですね。

 

「正真正銘ただの一般人ですよ。小説家志望の」

「納得すると思ってんのか?自惚れじゃねぇが一般人に避けられるような太刀筋はしてねぇ」

 

む〜、困りましたね。確かにあの太刀筋は見事でした。

 

「はぁ……仕方ありませんね。……私昔ゾロさんと同じく賞金稼ぎをやっていましたので。それなりの修羅場はくぐっててきました」

 

そう聞いてゾロさんは少し納得したようでゆっくりと鞘を私の首から下ろしました。

それでも警戒は強いようで近づかせてもらえそうにないですが。

なにがいけなかったですかね。

 

「余計な真似をしたら斬る」

 

そう言ってゾロさんはしゃがみこみ、目を瞑って寝てしまいました。

どうしましょう、近づけない分会話を通じて仲良くなろうと思ったんですがね。

いえ、しょぼくれてはいけません。まだ出会ったばかりですからこれからより親密になっていけば良いのです。

 

この不肖フローレス・アリス、ゾロさんの心を射止めるため精一杯努力します。

 

 

……先ずは料理でもしますかね、胃袋から掴みにかかりましょう。今ならゾロさんへの愛で料理が上手くなっているかもしれません

 

 

 




愛によりパワーアップした手料理(劇物)

基本こんな感じで一方通行です



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東の海編
手料理


前回のあらすじ

アリス「ゾロさん好きです」
ガンさん「お熱いね〜」
ゾロ「こいつ何者?」

* *  *

思っていたより多くの方に読んでいただき驚いている作者です。
感想をいただき執筆速度が上がりました。
どうぞ


あれからゾロさんはずっと眠ったままであり、ダメ元で話しかけても応じてくれなかったのでキッチンを借りて料理することにしました。(ちなみガンさんがお昼ご飯を作ってくれました、おいしかったです)

料理は出来上がったんですが、さすがにいきなりゾロさんに食べてもらうのは勇気がいるのでガンさんに食べてもらいましょう。

そう思い甲板に出で操舵しているガンさんに料理を提供しようとすると

 

「いや〜さっきご飯食べたばっかりで満腹なんだよね。ごめんね、アリスちゃん」

 

そう言って断られてしまいました。残念ですね。

ガンさん丸っとした愛らしい体型をしており、普段の酒場での様子からまだ食べられると思ったんですが満腹ならしょうがないです。

……はてさて、一体どうしましょうか?

ふむ、と思案しているとそういえば私、ゾロさん、ガンさん以外にもこの船に乗っている方々がいるじゃないですか!

 

 

そう思い出し、私はこの船に乗ってから一度しか訪れていない大部屋、捕らえた海賊たちの部屋へと料理を片手に歩き出しました。

 

 

 

* * * * *

 

 

料理を海賊に振る舞うと悲鳴をあげながら倒れてしまいました。なぜか料理がパワーアップしてしまいました、悪い方向に。

ゾロさんに振舞おうと作ったため、難しそうな料理をやめスープを作り、古今東西ありとあらゆる滋養強壮に良いもの混ぜたので元気になると思ったんですが。

 

 

ガンさんがもうすぐ着くというので甲板に出たとところゾロさんがようやく起きていました。

ゾロさんを見る度に胸がときめくという感情を身をもって知る。

小説ではなんて陳腐な表現でしょうと思っていましたが体感すると素晴らしいものですね。

……そういえばゾロさんに少し疑問に思っていることがあるんですよ。

 

「ゾロさん、質問がありまして」

「なんだ電波女」

「いやですね、ゾロさん。電波女なんて遠回しにお呼びくださらなくても、アリスと呼び捨てにしてくださって結構ですよ。ええ、是非ともそうお呼びください」

 

愛称というのにも憧れますがまずは素直に名前を呼んで欲しいですね。

いえ、二人っきりの時は愛称がいいですかね。なにがいいでしょうか

 

「『あーちゃん』、『あーりん』、はたまた『ハニー』……パッと思いつくのはこれくらいしかないですね。ゾロさんはどの愛称がお好みですか?」

「おい、会話をしろ。質問ってなんだ?」

「え、あ、はい。……あの私たちって以前どこかでお会いしたことありますか?」

 

すごく胡乱げな視線を送られました。

いえ、別に口説くアプローチを変えたというわけではなくててですね。

最初にお会いした時は恋に落ちた衝撃できづかなかったのですが、どうも既視感があるのですよね。

どれだけ記憶を遡って見ても思い出せませんし、そもそも、もしも以前にお会いしたことがあるならその時に恋に落ちていたと思いますし。

私の勘違いですかね。

それにしても

「そんなに見つめないでください。て、照れてしまいます」

「見つめてねぇよ、呆れてんだよ」

「二人とももう着くよ〜。準備しな〜」

「はい、わかりました」

「はぁ……」

 

 

* * * * *

 

 

「それじゃアリスちゃん、元気でね」

「はい、ガンさんありがとうございました。島のみなさんにもよろしくお願いします。」

 

ガンさんが乗った船が遠くに行くのを見送る。

さて、それでは

 

「賞金首の明け渡しに行きますか」

「なんでお前までついて来ようとするんだ」

「未来の夫の仕事について行こうとしてるだけですよ」

「…………」

 

会話をしても無駄かと思ったのかゾロさんは無言で歩き出してしまいました。

まぁどちらにせよついて行くだけですし構いません。

ちなみに私は今海賊の方々を拘束した縄を持っていますので、なんというかはたから見たら奴隷商人のような出で立ちになっています。

そんな状況とゾロさんの強面が合間って道ゆく人々は視線を逸らし、避けて行きます。

……まぁ歩きやすいのでいいですけどね。

 

「ゾロさん、出身はどちらで?」

「…………」

「好きな食べ物は?」

「…………」

「誕生日はいつですか?」

「…………」

「血液型は?」

「…………」

「ズバリ、私のことどう思いますか?」

「…………」

 

ムムム……。徹底的な無視ですか。どうすべきですかね。

よくよく考えてみたら私全くゾロさんのことをしらないんですよね、愛する人だとういうのに。

知っていることは賞金稼ぎで『海賊狩り』という二つ名があり三本の刀を使う剣士であるということ。

あと身長は178センチ(目測)、大食いかつ酒好き(お昼の食事の様子)、意外と子供等に優しい?(島での様子を聞きました)、鍛錬をよくしている(私が料理をするためキッチンに行ってる間していたのをこっそり見ました)ということぐらいですかね。

ふむ、もっと知りたいですね、好きな人のことですし。

さて、どう話しかけてみたらいいものですか?

あーでもない、こーでもないと考えていると気づいたら海軍基地についていました。

……正直、私海軍に対して余りいい感情を抱いていなんですよね。

まぁお金は大事ですし、愛する人の仕事ですし、私情は抜きにしなくては。

さて、換金しますか。

 

 

 

* * * * *

 

 

基地に入り換金所の窓口へと歩く。

「私、賞金稼ぎの妻でして、賞金首の取引に来ました。」

 

ぐっとロープを引っ張り海賊たちを引き寄せる。

驚いた様子の兵士さんに視線で早く引き換えを、と促す。

 

「は、はい、照会させていただきますので、少々お待ちください」

 

バタバタと慌てた様子で数人の海軍兵が現れて海賊を連行していきました。

妻というのはすこし誇張した表現ですが時間の問題ですしね。

 

 

 

しばらく待っていますと最初に相手してもらった海軍兵がトランクケースを持って来ました。

 

「照会が完了しました。500万ベリーの賞金首 "青槍”のナーバンですね。こちら現金500万ベリーです。」

「はい、ありがとうございます。………はい、確かに確認しました。」

「それにしてもお強い旦那さんですね」

「はい、自慢の夫です」

「今日も稼ぎにどこかに行ってるんですか?」

「はい?旦那はこちらに……あら?」

 

近くにいるのに何を言っているのかしらと思い、あたりを見回すとゾロさんの影はどこにも見当たりませんでした。

ふむ、逃げられたんですかね?

ひとまず

 

「急用を思い出しました。失礼します」

 

パッとトランクケースを奪うように取り海軍基地をでる。

私からそう簡単に逃げられませんよ、ゾロさん!!!

 

 

* * * * *

 

 

 

海軍基地を出てすぐに懐から一枚の紙を出す。

ケータイもGPSもない不便な環境ですが、この紙はそれらよりも人探しという点では便利ですねよね。

私が取り出したのはビブルカード。この世界に存在する便利な紙で知人から譲っていただいたものです。

 

ビブルカード、別名「命の紙」。爪の持ち主の生命力を啓示する特殊な紙。一部を破りとって床などに置くと、カードの親紙の方に向かってジワジワと動いて行く紙で濡らしても燃やしても問題ありません。

 

初めてお会いし、押し倒した際(今思い出すと大胆でしたね、恥ずかしいです)、こっそり爪の切れ端をいただき混ぜて作りました。それを隠密にゾロさんに忍ばせてました。

 

カードが動く方向に進んで行くと町の一角にゾロさんをようやく見つけました。

相変わらずの凶相のせいか避けられていますね。

ふむ、なんて声を掛けましょうか、と迷っていると特徴的な髪型をした男性とリードも繋いでいない大型犬、いえ、あれは狼ですかね、まぁどちらにせよ放し飼いをするには些か獰猛そうな動物が現れました。

町の皆さんはそそくさと足早に避けていきます。

はて、注意しないんですかね?と傍観していると狼が近くを通りかかった女の子に襲いかかろうとしました。

 

「ひっ……!」

 

女の子は恐怖で腰を抜かしてしまったようで動けないようです。

危険ですね、ひとまず退治してから飼い主に注意しなくては。

私が口を開く前に、ゾロさんが走り狼を切りつけます。

狼から血が飛び、後ろへと下り怯えたように走り去っていきました。

 

さ、流石ゾロさんです、私の目に狂いはなかったですね!かっこいいです!!

キン、と涼やかな音が鳴り鞘に刀が納められる。

 

 

見た目は狂暴な様子ですが心はやはり優しい方ですね。やはり子供もお好きなのですかね、子育てもしっかりとしてくれるかもしれません。家は一軒家で海岸近くがいいですね、できれば沈む夕日が綺麗なところで。子供は2人ですかね男の子と女の子が1人ずつ欲しいです、いえもちろんゾロさんがもっと子供を望むのではあれば、やぶさかではありませんが。仕事から帰って来てゾロさんと私とゾロさんの愛の結晶である子供たちと幸せに暮らすのです。そのうち娘が結婚相手を連れて来たなら「お前に娘はやらん」とかゾロさんは言うんですかね。

 

 

えへへへ、と私が幸せな未来予想(もうそう)にふけっている間、ゾロさんが海軍基地に連れて行かれていることにそのときはまったく気がつきませんでした。

 

 

 




お読みいだだきありがとうございました。

ちなみにゾロは逃げたのではなく迷子で、アリスがどこかに行ったものだと思っています。

次回はルフィを出したいです。



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麦藁帽子

前回の話を読み直したら想定よりやばいやつにアリスがなっていました。
だが書き直しはしない

どうぞ



あの女の子、リカさんをゾロさんが助けてから9日経ちました。

ゾロさんは一ヶ月磔にされれば解放されるそうです。

海軍なんて斬って倒してしまえば良かったのにと思ったのですが、それだとリカさんにも危険が迫る可能性がありますからね、だから抵抗しなかったのでしょう。

 

私は今宿を取りゾロさんが解放されるのを待ってます。

海軍本部でもなく、ましてや最弱とされる東の海の大佐なんて一瞬で倒せると思いますが、ゾロさんの気配りを無下にするわけにはいかないですし。

 

宿の近くの喫茶店でぼんやりと待ち合わせ相手を待っているとようやく現れました。

 

「お姉ちゃん、ごめんね。待ったでしょ?」

「いえ、私も今来たところですよ、リカさん」

 

あの後妄想から復帰したら目の前のゾロさんがいなくなっていましたのでリカさんに状況を聞くと親切に教えていただきました。

 

そして今日、なんでも助けてくれたゾロさんにお礼と挨拶に行きたいとリカさんがいうので私も同行することにしました。

というか、「罪人に肩入れし者同罪とみなす」と立て札があるのによく行こうと思いましたね。怖いもの知らずというか、肝がすわっているというか。

 

「お母さんにはこのことを伝えましたか?」

「ううん、お母さん怒るんだもん。お姉ちゃんに会っちゃダメだし磔場にもいっちゃダメって」

 

リカさんを助けた後1人の女性、リカさんのお母さんが駆けて来てお礼を言ってくれましたが自分たちが巻き込まれたくないようで、私がゾロさんの恋人であると告げたらどこか腫れ物に触れたような対応になりました。それは町の皆さんも同じですが。

まぁ誰だって巻き込まれたくないですよね。

 

「あ、そうだ、わたしオニギリ作ってきたの!お兄ちゃんがお腹空いてると思って」

「あら、それはゾロさん喜ぶと思いますよ。さて、行きますか」

 

お金を払い店を出て磔場へと向かう。

手料理を振る舞うというのは考えてませんでしたね。今からは間に合いませんし、次回にしますか。……そもそも食べてくださるかしら、捕まってからも会いに行っているのですが会話をしてくれはするんですが、未だに警戒されているんですよね。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

リカさんと談笑しながら歩いて磔場に着くと、先着の方々がいました。麦わら帽子の青年とメガネの青年がいました。何やらゾロさんと会話してるようですが、何が目的ですかね?ここ何日か村でぶらぶら歩いて過ごしていますが見たことありませんし旅人ですかね?

 

「あ、お姉ちゃん、どうしよう。わたしの背じゃ塀に届かない……」

「あら、何か登れるものを持ってくれば良かったですね」

 

ふむ、仕方ありませんね。私が出してあげましょう。

 

「リカさん、心配ありません。お姉ちゃんが魔法で出してあげます」

「魔法?」

「《はしご》」

 

まぁ、魔法というか悪魔の力なんですがね。

私がそういうと目の前に()()()が現れました。

現れたはしごを塀に立てかける。

 

 

「え⁈わーすごい!!お姉ちゃん魔法使いなんだね!」

「はい、それではゾロさんに会いに行ってあげてください」

「お姉ちゃんはいいの?」

「私が行くと警戒され……いえ、私はちょこちょこ会いに来れるので大丈夫ですよ」

 

リカさんがトコトコとゾロさんに会いに行きますが、ゾロさんは偽悪的な態度で早く帰るように促します。

全く素直じゃないですね、心配だから帰れと言えばいいんですのに。

いえ、そこも可愛くてまた魅力ですが。

2人のやりとりに和んでいると特徴的な頭をした諸悪の根源、ヘ、ヘルメッ……ト?だかなんだか名前は忘れましたが七光りのバカ息子(クズ)が現れました。

 

そしてあろうことか七光りのバカ息子(ゴミ)はリカさんのオニギリを取り上げその上不味いとまでぬかしやがり、海軍兵士に命じてリカさんを塀の外にぶん投げさせました。

幸いにも麦わらの彼がキャッチしてくれましたが、あの七光りバカ息子の何しやがるんでしょうか。

……八つ裂きにしてやりますかね。

いえ、そんな物騒なことは考えてはいけませんね、せめてゾロさんが解放されてからにしませんと。

 

「リカさん、お母さんが心配します。先に帰っていてくれますか?」

私がそういうと涙目になりながらもこくりと頷き静かにリカさんは家に向かいました。

七光りは約束は守るとゲラゲラと下品な笑い声をあげて帰って行きました。

……ふふふ、その約束が守られたときがあなたの最後ですよ、ふふふふふふ……

 

黒い思考をやめ、ゾロさんと会話しようとそちらを見ると、すでに麦わらの彼と話していました。

なんでも麦わらの彼は海賊なようで、仲間を探しておりゾロさんにその白羽の矢が立ったそうです。

見る目がありますね、彼は。

それにしても海賊ですか。もしゾロさんが海賊となったら私は海賊の妻ですか……

海軍よりはまだマシですかね。

 

「ゾロさん、大丈夫ですか?」

 

2人の会話に割り込むように話しかける。

 

「なんだ、電波まだ居たのか」

「ですから、電波と呼ばずアリスとお呼びください。いえ、そこではなくてですね、リカさんはあなたにお礼を言いたいと言ってましたのでその代わりに」

「あぁ、そうかい」

「はい、本日の要件はそれぐらいです。また明日もお伺いしますね」

「おい、ちょっと待て」

 

帰ろうとするとゾロさんに引き止められました。

なんでしょう!ここ何日か通って初めてですよ、引き止められたのなんて!!!

 

「はいっ!なんでしょうかゾロさん!!!!結婚の約束ですか?!」

 

グイっと勢いよく振り返り近くに早足で駆け寄る

 

「違ぇよ、なんでそうなる。それ……とってくんねぇか」

 

目線の先を見るとぐしゃぐしゃになってしまったオニギリがありました。

取ろうとすると先に麦わらの彼が拾ってしまいました。私が頼まれたというのに!

 

「食うのかよ、コレもうオニギリじゃなくてドロのかたまりだぞ?いくら腹減っててもこりゃぁ……」

「ガタガタぬかすな、黙って食わせろ。落ちてんの全部だ」

 

そういってゾロさんは口を大きく開ける。

拾ったものを麦わらの彼がゾロさんの口へと運ぶ。

あ、あーんしてます!私でもまだしたことないというのに、羨ましいです!!!

バリバリとおおよそオニギリからしてはいけない音がしてますがゾロさんは完食しました。

 

「おい、電波」

「はい、なんですかゾロさん?」

 

にっこり微笑みながら視線を向ける。

 

「あのガキに伝えてくれ、『うまかった、ごちそうさまでした』ってよ」

「〜〜〜〜っ!はいっ!わかりました!この不肖アリス、しっかりと伝えさせていただきます」

「!……はは!」

 

ゾロさんからの初めての頼まれごとですね。やはりゾロさんは優しい方です!

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

磔場から去り、麦わらの彼とメガネの青年とお互いに自己紹介することになりました。リカさんに感謝の言葉を伝えに行きました。

 

「私、フローレス・アリスと申します。アリスとお呼びください」

「おう、おれはルフィ、海賊王になる男だ!」

 

彼にそう自己紹介されてようやく私は気づきました。

 

__ここはO()N()E() P()I()E()C()E()()()()なのか__と

 

 

漫画はほとんど読んだことのない前世でしたが、ONE PIECE、この作品は唯一の例外として少しだけ知っています。

麦わら帽子をかぶった主人公が大海賊時代と呼ばれる舞台で海賊王を目指す物語です。

といっても本当に知っているのはその情報とぼんやりとした彼の仲間の姿の情報のみ。

思い出すことも困難な中学生時代、席が隣だった男子生徒がやたらと話を振ってきました。宿題なんだっけだの、昨日見たテレビが面白かったよねだの、好きな人はいるのだの。薄っすらとしか覚えてないですが鬱陶しかったですね。

そのおぼろげな記憶の中の腹立たしい会話の中の一つに彼がハマっている漫画とかでONE PIECEについて話をしたことを覚えています。

……なるほどゾロさんに感じた既視感はこれが原因だったんですか。

 

 

そう納得しているとメガネの彼が自己紹介してくれました。

 

「ぼ、ぼくはコビーです。海軍志望です」

 

……へぇ…………

 

「……コビーさん、本当に海軍なんてものになりたいんですか?」

「え、いや、やっぱり、ぼくなんかには無理ですよね。ハハハハ……」

「なんだよ、コビーでもやるときはやるんだぞ」

 

なれないと否定されたと勘違いしたようでコビーさんがしょぼくれ、ルフィさんが擁護する。

 

「いえ、そういった話ではありません。海軍()()()()()に本当になりたいのですか?」

「え……?」

「どういうことだ?」

「そうですね、例えば……」

 

今この町がモーガン大佐によって実質的に支配されていることや横領や海軍が賄賂を受けて海賊を見逃す例などを上げる。

 

「そ、そんなことが……」

「ありますよ。というか現に今この町では起きていますし、今あげた例はあくまで一例ですし。海軍に限らず肥大化した組織には必ず膿のようなものが湧きます。あなたは海軍(そんなもの)になりたいのですか?」

 

そう言うとコビーさんはひどく傷ついた様子でした。ですがガバリと顔を上げて宣言した。

 

「な、ならぼくがそんな海軍を変えてみせます!!!」

 

おや、流石に驚きましたね、もっと見た目から気弱な人だと思いましたが意外と気丈ですね。

ルフィさんは大笑いしてます

 

「ルフィさん、こんな海軍、ぶっ潰してやりましょう」

 

……変なスイッチ押してしまったかもしれません。

手を振り上げて、やる気に満ちた様子で立ち上がる。

 

「おう!わかった!それに俺はゾロを仲間にするって決めたんだ!」

 

……なんて単純なんですかね、この人たち。

まぁいいです。

 

「私もお手伝いささていただきます。本音をいえば恋人が捕まった上に海軍はクズでしたので腹わた煮えくり返しそうなほどブチ切れてますし」

 

そういって不敵に笑った。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

ルフィさんは刀を探しにいき(ド派手に)、コビーさんと私でゾロさんを解放することになりました。

がしかし、

 

「ア、アリスさん手伝ってくださいよ」

 

縄を解く作業はコビーさんのみでやっていました。

いえ、そうは言われましても……

 

「あ、あの改めて触れていいといわれると恥ずかしくてですね」

「誰もそんなこと言ってないですよ⁈」

 

だ、だって縄を解くとなると体に必然的に触れるじゃないですか、まだ触れていないのにドキドキで心臓がおかしくなりそうです。

 

「ともかく、早く解くの手伝ってください。いつこっちに気がついて攻撃されるかわからないんですから」

「遅かったですわね、コビーさん。見つかりました」

 

基地の屋上をみると狙撃手が銃を構えているのが目に入りました。

 

「《壁》」

 

私がそう言うと私たちを基地から隠すように壁が現れる

 

「な、な、なんですか?!これ?!そういえば昼間にもはしご出してましたよね?」

「私、悪魔の実を昔食べまして」

「の、能力者?」

「ええ、コトコトの実の言霊人間です」

「言霊?」

「はい、詳しい説明を省きますが、端的にいうと言葉を物質化する能力です。例えば、そうですね長い《棒》」

 

そう言うと棒が目の前に現れる。コビーさんは目を丸くしていました。

出した棒を驚いているコビーさんに手渡す。

 

「はい、これで最低限自衛してください」

「へ?あ、はい、ありがとうございます」

「便利な能力だな」

「いえいえ、ゾロさん意外と制限があるんですよ」

「あ、あのアリスさん」

「はい、なんですかコビーさん」

「初めからナイフとか出して拘束してたロープ切れば良かったのでは?」

「……………その発想はなかったです」

 

ほ、ほんとですよ、別に素手なら触れるなとか思ってなかったですよ。

ジト目で見られながら弁解してると

文字通りルフィさんが刀を持って飛んできました。

 

そこからルフィさんがゾロさんを海賊になるように脅し、ゾロさんが了承して共闘して描写する価値もないほどあっけなくモーガン大佐を倒しました。

 

 

 

 

 

 

 

 



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夢語り

ゆるりと更新

早速評価をつけてくださる方もいて嬉しく思います。
読んでいただきありがとうございます。

どうぞ




 

 

 

モーガン大佐を倒すと海兵たちは諸手をあげて喜び、町は見違えるほどの活気を見せ始めた。

 

モーガン大佐を倒したという2人には遠くから人だかりができている。そんな2人はというとバカみたいにリカさんのお家で食事をとっていた。

 

「はぁ、食った食った……!流石に9日も食わねぇと極限だった」

 

ゾロさんはそう言って少なくとも5人分の食事を平らげてます。

むぅ、どうせなら私が手料理を振る舞いたかったんですが、リカさんのお母さんに「恩人であるみなさんにせめて料理ぐらい振舞わせてください」とやんわりと断られてしまいた。

 

「おめぇ、なんで俺より食が進んでんだよ」

 

気づいたらルフィさんがゾロさんの倍くらい食べていました。

異次元にでも彼の胃袋はつながっているんですかね。

流石にこれは材料費的な意味でまずいと思ったので材料費を出しました。

 

話しているとコビーさんと偉大なる航路に行くか行かないかで揉めた後に、コビーさんは自分が海軍の将校となり内部から正しい組織にと作り出していくと宣言をしました。

変な影響を与えてしまいましたかね?

 

その後海軍が入ってきて海賊は町に置いておけない、本部に連絡はしないが出て行くように通知をうけた。

 

まぁ、正しい海軍の在り方ではありますね、仕方ありません。コビーさんをちゃんと海軍に入れるためルフィさんが一芝居をうち、リカさんの家をあとにしました。

 

さて、出発しますか、と港に出ると町民、海軍と町の人総出で声援が送られ海賊だというのに、みなさんの様子に思わず笑みが出ました。

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

さて、出発してから30分しないうちに一つの事態に気づきました。

海図を誰も持っていないじゃないですか!どうするんですか!

周りを見渡しても広がるのは海と空の青のみで本当になにもないです。

たまに水面に海王類や魚の影が見える以外なにも変化がないまま流されて行きます。

 

「だいたいお前がなんで航海術もってないんだよ、海賊だろ」

「おかしくねぇよ、漂流してたんだもん、俺は!お前こそ海をさすらう賞金稼ぎじゃねえのか」

「俺はそもそも賞金稼ぎと名乗った覚えはねェ、ある男を探すために海に出たら帰れなくなっちまったんだ」

 

どうしてか2人の会話を聞いていたら少し頭痛がしてきました。

何なんでしょうか。この2人はどうして海に出たんでしょうか、普通は少しは航海術を身につけるものでしょう。

 

「そういえば、ゾロは世界一の大剣豪を目指してんだよなぁ?」

「おう」

「じゃあアリスはなんか夢あるのか?」

「ありますよ、ゾロさんのお嫁さんですよ」

 

にっこりと微笑みそう言った。するとゾロさんが呆れたようにハァと溜息を漏らす。

 

「ははは、おもしれぇなお前」

「まだ言ってんのかそれ」

「もちろん、何度だって言いますよ。私はゾロさんに一目惚れしました。愛しています。まぁゾロさんの奥さん以外にも夢があります」

「なんだ?」

 

ルフィさんが改めて尋ねる。ゾロさんも先程の呆れたような表情から少し興味を出してこちらを見た。

 

「私は作家なんですが、いずれ世界の誰もが羨むような物語を書き上げたいのです」

 

そう、これは前世から夢なのだ。

いつと本ばかり読んでいた私にはふと自分でも物語を書いてみたくなり、書き上げてみました。

が、できたのは酷い駄作。読むにも耐えないものでした。

そこで私は自分の文才のなさにちょっぴり傷つき、同時に燃え上がりました。

 

いずれ世界の誰もが知っているような本を書いてみたい、と。

 

前世では中二病というか思春期真っ盛りでしたので、高校生にもなると恥ずかしくなってその夢は捨ててしまいましたが、今世では違います。

そもそも物語の絶対数が少なく、本というのも前世よりも手に入りにくいものでした。

もしかしたらこの世界ではその夢が叶うかもしれない。仕事を辞めた時にそう思いました。

 

「へぇ〜本が書けんのか、すげぇなお前」

「えぇ、と言っても今の所オマージュだけですけどね」

 

私はいまグリーン・アンバーのペンネームで物語を書いています。

ファウンテン社という出版社で前世で読んだ物語を執筆して書いている。

本というものは素晴らしいものであるからもっと世界の皆に知ってもらいたいのです。

流石に自作ではないのでお給料をもらうのは拒否してますが、それが返って評判を呼んでいるようで謎の女作家としてマニアの間では人気らしいです。

ゾロさんには作家志望といったのは自作ではないとことが理由です。いずれ完全オリジナルの物語をかけたなら、真の作家を堂々と名乗りましょう。

 

「なぁ、あとさ、お前も悪魔の実の能力者なんだろ」

「ええ、そうですよ、コトコトの実の言霊人間です」

「言霊?」

 

ルフィさんとゾロさんの頭の上に疑問符が浮かんで見える。

 

「言霊とは古今東西に存在する概念で、言葉に内在する力のことです。声に出した言葉が、現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発すると良いことが起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされています。こういった言葉に宿る力を引き出したり、放った言葉を物質化させるのがコトコトの実の能力です」

「なるほど、不思議能力か」

「万能だな」

「絶対理解してませんね、2人とも」

 

ポケーっとした様子で2人揃って海を眺めだし始めました。

 

「それにゾロさん、そんなにわりと便利ですが万能でもないんですよ」

「そうなのか?武器とか肉とか肉とかなんでも出し放題じゃねぇのか?」

 

ルフィさんが欲望を前に出しながら疑問をあらわにする。

 

「ええ、《肉》とか単純なものは自由に出せますけど」

 

ぽんと片手に肉が現れ、ルフィさんに渡す。

目を輝かせそれを頬張る様子を尻目に解説を続ける。

 

「《銃》、《電伝虫》」

 

そう言ってみるが目の前にはなにも現れない。

 

「複雑だったり、生き物は出せねぇってことか?」

「はい、そうです。流石はゾロさん理解力に溢れてますね」

 

キラキラとゾロさんに目を向け、顔を近づけるが同時に離れられてしまう。

あう……若干傷つきました。

 

「……まぁ、生物はどうやっても無理ですが、複雑な物なら面倒な手順を踏めば出せますよ」

 

そういって、息を吸い込み口を早口で回す。

 

「……海軍が主に使用しており、前装式の銃で、熟練した射手でも射撃速度は1分に2発程度、ライフリングを持つ銃であればさらに遅くなる。滑腔式である通常のマスケット銃は口径より小さい径の弾丸は銃身に密着せず、発射ガスが漏れることで有効射程が非常に短く、条件が良くて平均80m程度、条件が悪ければそれ以下で殺傷力がなくなってしまうもので、手作りのために銃により微妙に口径が異なる、弾丸も球形が主流であるため、集弾性を上げるためには精度や工夫が必要であるものであり、一般的には精度が悪く、飛距離も無く、更に黒色火薬の燃焼時に生じる煙と刺激性ガスで視界も悪くなる為に、相手の白目が見える距離という至近距離といえる距離での集団戦術で用いられるもので……」

 

 

タラタラとマスケット銃の特徴を述べ、説明がある程度終わると目の前に突然一挺《銃》が現れる。

 

「はぁ口が疲れました……。とまぁこのように特徴を詳細に述べることで出すことはできます」

「ヘェ〜」

「こりゃ戦闘には使えねェな」

「ええ、このままでしたら無理です。ので……」

 

出した銃を手に取り舌でペロリとマスケット銃を舐める。

するとシュンッと銃が目の前から消える。

 

「このように物体の味を覚えること、私は辞書登録(インストール)と呼んでいますが、これを行うことでショートカットできます、ショートカット《銃》」

 

そういうと先ほど全く同型の銃が現れる。

 

「まぁこんな感じの能力ですよ」

「へぇ、おれのゴムゴムとは全然違うな」

「ゴムゴム?」

 

そのあとお互いの戦闘スタイルや悪魔の実について話をしばらくしていました。

 

 

 

あれ、結局海図については……?

 

 

 

 

 




説明回でした。

能力は夜桜四重奏の五十音ことはをイメージしてます。
銃の説明は大分テキトーです。



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お誘い

主人公の見た目は金髪の三つ編み、青い目にメガネのスレンダー美人です(貧乳)


どうぞ


さて、一通りお互いについて喋っていましたが海図はないままですし、漂流してる状態は変わっていません。

 

どうしますかね?このままどこかに辿り着くのを待つしかもはやできませんが

ボケーっと諦めたように三人で空を眺めていると大きな鳥が飛んでいました。

 

「美味そうだな、あの鳥」

「デケェなわりと」

「何鳥でしょうかね?」

「俺捕まえてくる!」

「?どうやって」

「お待ちください、ルフィさん鶏肉が欲しいなら」

「ゴムゴムのロケット!!!」

 

私が出しますので、と言い切る前にルフィさんは船を飛び出してしまいました。

 

「なるほどな……」

「……どうやって戻ってくるつもりなんですかね、いえ、やはりどうでもいいです。……やっと二人っきりですね、これからの海賊生活を続けていくと二人っきりの時間はなくなりそうですしね。」

「おい、何するつもりだ」

「近寄るだけですよ、そう逃げないでください」

「信用できるか!」

「……私を嫁にするともれなく国が一個に手に入りますよ」

「嘘つけェ!!というかいるかァんなもん!!」

 

ジリジリと寄るも同じ距離だけゾロさんが離れていってしまう。

一進一退の攻防を繰り広げていくと上空でルフィさんが鳥に頭を咥えられ、どこかへと連れ去られて行きました。

 

「は⁈」

「……こんなこと起こりうるのですね。『人生は小説より奇なり』とはよくいったものですね」

「ぎゃーー助けてーーーっ!!」

「あほーーーーっ!」

 

みるみる遠ざかっていくルフィさん目掛けてゾロさんが船を漕ぎ始める。

 

「ショートカット《双眼鏡》。……どこいくつもりなんですかね、あの鳥」

「一体何やってんだ、あのアホはァ!!!」

「あら、ゾロさん。前方に障害物ですよ」

「アァ?ん?!遭難者か、こんな時だってのに!!おいテメェら船は止めねぇ、勝手に乗り込め!」

「な!!なにぃっ⁈」

 

まぁワイルドですね、カッコいいですが。

引きそうな勢いで船を動かしましたが、ギリギリで三人が乗り込む。

 

「殺す気か⁈」

「こちらにも事情がありますので」

「お、なかなかの上玉じゃねえか、胸はちっと寂しいが」

 

ほう、こいつら言ってはいけないことを言いましたね。

 

 

 

━━殺す。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

「あっはっはっはっー、いやまさか貴方方が海賊狩りのゾロさんとその奥さまとはつゆ知らず、申し上げありませんでした。」

「こいつは恋人でもなんでもねぇ、にしたってテメェらのお陰で仲間を見失っちまった、とにかくあいつのことだ陸でも見えりゃ自力で降りるだろ」

「照れなくてもいいんですよゾロさん」

「誰が照れるか!」

 

 

その後彼らをボコボコにして説明を求めると、自分たちが道化のバギーの一味で、海上目掛けで女に騙されてしまい、難破したそうです。

……沈んだままでよかったのに。

 

三人に漕がせていると港が見えてきました。

なんでもバギー一味がこの港町を占拠しているらしく、町には人気がありませんでした。

三人と別れルフィさんを探すことにしましたが、効率のため残念なことにゾロさんと手分けをして探すことにしました。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

しばらく町を探し回っていると、小さな白い犬と会いました。

首輪を見るとシュシュと書いてあります。

 

「シュシュさん、麦わら帽子を被った青年を見ませんでした?」

 

そう話し掛けますがワンと答えるだけで特に何も分からなかった。

まぁそりゃそうですが、どうしたものですかね。

しばらく犬と戯れて待っていますと

 

「あらゾロさん!と……ルフィさんどうしたんですかその檻」

 

なぜかルフィさんは鉄の檻の中に入ってました。

 

「ちょっと捕まっちまった」

 

あははとルフィさんは笑っていますが、そもそも鉄製の檻の中でよく笑えますね

 

「はぁはぁ、もうダメだ血が足りん」

 

そう言ってゾロさんが倒れこみました。

よく見ると脇腹に深い刺し傷がゾロさんにありました。

 

「ど、どうしたんですか?ゾロさん、何があったんですか!」

「バギーにやられたのよ」

 

そう言われ、声が出た方向を振り向くとオレンジの髪をしたスタイルの良い女性が現れました。

 

「おう、航海士」

「よぉ航海士」

「誰がよ!!」

 

どうやら新たにルフィさんが勧誘した航海士だそうです。

ですが……

 

「私は認めません!!!」

「アリス?」

 

だって……

 

「だって、こんなスタイルが良くて性格の悪そうな女、ゾロさんに色目使うに決まってます!!!」

「誰が使うか!!!」

 

ぐぬぬぬ、歯噛みしてるとぽいと鍵を投げられました。

 

「はぁ、一応助けてもらったからね。お礼だけはしとくわ」

「……事情は分かりませんがありがとうございます」

 

鍵を受け取り、ルフィさんを檻から出す

解放されたルフィさんは諸手を上げて喜びをあらわした。

 

「出れたーーーーー!」

 

その後ルフィさんが女性、ナミさんというらしいです、に勧誘を仕掛けてます。

なんというか既視感ですね、ゾロさんのときを少し思い出しました。

……でも確か女性は2人仲間にいて1人は奇抜な色をしていましたのでおそらくこの方も仲間に入るのでしょう。

 

「なぁ、俺の仲間になれよ」

「いやよ、海賊の仲間なんて。そこの彼女も拒否してたじゃない」

「……いえ、別にいいですよ?ゾロさんに色目使わなければ」

「だから使わないわよ、それに何よ、その温かい目は?」

「いえ、別になんでもないですよ、ショートカット《消毒液》、《包帯》っと」

 

 

いえ、いずれ仲間になるのに抵抗しても結局ルフィさんの勧誘に負けると知っていますので……

 

ルフィさんの勧誘攻撃とナミさんのお断りの言葉を背にゾロさんの応急手当をしてました。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

しばらくお店の前で喋っていると鎧を着て即席の槍を用意したおじさんがたっていた。

なんでもこの占拠された町の町長だそうで、シュシュさんにご飯をあげに来たようです。

 

町長さんにシュシュさんがなぜここにいるかについての説明を聞く。

なんでもこのお店は亡くなった飼い主さんの形見だそうで、シュシュさんにとっての宝物だそうで。

同じように宝物_麦わら帽子を持っているルフィさんは共感してるようです。

 

そうやって談笑していると、

 

ドゴォオオオンと家をなぎ倒し、砲弾が店を襲った。

 

「っ《壁》!!」

「きゃあああああ」

「うおっ!!」

 

私はとっさにゾロさんと町長さんをひき壁をだす。

 

すると街の拡声器から男の声が聞こえてきた。

 

『お〜い、麦わら〜〜〜出てこい!!』

 

なるほどこれは挑発ですかね。

後ろの町長さんがむくりと立ち上がった。

 

「無事か、皆?」

 

そういって町長さんは私たちを見渡し、無事を確認すると憤りをあらわにした。

 

「胸をえぐられる様な思いじゃ……。町を潰され! 住民を傷付けられる!!!わしの許しなくこの町で勝手な真似はもうさせん!」

 

 まっておれ道化のバギー、みたいな事を叫びながら、穴の開いた壁から外に飛び出て駆けて行きました。

 

「熱い御仁ですね」

「そうだろ。おれ、あのじいさん好きだ」

「なら止めなさいよ! なんで行かせてるのよ!」

 

激怒するナミさん。ですが、

 

「無駄だな、あのおっさん死んでも抵抗するつもりだったぞ」

「ええ、言っても聞き入れてくれる様子ではなかったですね」

「大丈夫。じいさんは絶対死なせない」

 

麦わら帽子を手に取り、遠い目をして見つめながら言うルフィさん。

 

「バギーは、俺が倒す」

「……なんでそんなあっさり言えるのよ。相手は海賊よ?」

「俺達も海賊だ」

 

自身に満ちた表情でルフィさんがそう言った。

 

「それに俺達が目指すのは偉大なる航路(グランドライン)。これから、その海図をもう一度奪いにいく。ナミ。仲間になってくれ。海図いるんだろ、宝も」

「……私は海賊にはならないわ」

 

 そういいつつ、ナミさんはもう決心しているように見えました。

 

「手を組むって言ってくれる?お互いの目的のために!」

「ああ。行こうか!!」

 

 

全員で拳を突き合わせ、歩き始める。

目指すはバギー一味へと。

 

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございます。
ようやく一巻が終わりました。


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手合わせ

すごくたくさんの方に読んでいただき感謝感激です。

戦闘描写は難しいですね

どうぞ


バギー一味がいる酒場へと向かうと、町長さんが1人で特攻し死にかけていましたので、ルフィさんが救出がてら説得(物理)して助けました。助けました?いえ、結果的にあってるので良しとします。

 

「約束通り、お前をブッ飛ばしに来たぞ!!デカっ鼻!!!」

「フハハ、よくぞ来たな貴様ら!ハデに撃て!!!バギー玉ァ!」

 

大砲がこちらへと向けられ、砲弾が放たれる

いきなりですか、もう少し会話をしようという心意気はないのですかね!!

 

「ちょっ、いきなり」

「おいルフィ逃げるぞ!」

「吹き飛びますよ!」

 

それでも、ルフィさんは動こうとせずに不敵にニヤリと笑った

 

「そんな砲弾(もの)が俺に効くかっ!ゴムゴムの風船」

「?!」

 

すううっと大きく息を吸い込み体を大きく膨らませると、腹に砲弾がめり込み、反動で大きく弾き返す。

真っ直ぐと跳ね返された砲弾はそのまま酒場を直撃し、爆破しました。

 

「よっし、敵が減ったぞ」

「あんた一体なんなのよっ!?」

「ゴム人間だ」

「はぁ!?」

「人騒がせな……」

「肝が冷えましたよ……」

 

ゴムゴムの実、意外と便利ですね。いえ、この場合はルフィさんの発想がすごいんですかね。普通そんな実ハズレだと思いますし。

 

爆発による煙が晴れると幹部と思われる三人を除き見事に倒れていました。

 

お互いに相対して様子を伺う。

 

か弱いと自称しているナミさんを除けばちょうど3対3対ですね、ならば

 

「私があの毛皮のコスプレ男を相手しますので、他2人はお任せします」

「おう!」

「なら俺はあの剣士とやるぞ、ルフィ」

「わかった、任せたぞゾロ」

 

散開してそれぞれの相手へと攻撃を仕掛ける。

 

「さて、こちらも派手に行きますか。ショートカット《大砲》」

 

ぽんと砲台があらわれコスプレ男に砲口を向ける。

 

「開けた場所でないと戦い難いので、発射」

「ちょ、待っギャアアア」

「モージ!!」

 

真っ直ぐ飛び出た砲弾が直撃しコスプレ男、モージというんですね、とライオンが吹き飛んでいく。

 

「さて、みなさん頑張ってください、それでは」

 

そういって吹き飛ばした方向へと駆ける。

一応バギー一味が既に壊した街並みの方角に向けて撃ったのでそこまで被害は出てない……はずです。

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

やはり町を少し壊してしまったかもしれませんね、あとで賞金首と換金した報酬金の残りを少し置いていきますか。

そう思いながら壊れた町並みを見ながら走る。

 

「いきなり何しやがる!このアマ!」

 

おおよその位置へと向かうと、ガバリと瓦礫の中からモージとライオンが起き上がりました。

……吹き飛ばすためだけの砲弾だったとはいえ、直撃してピンピンしてるとは本当にこの世界の人間の耐久はぶっ飛んでますね

 

「いきなり砲弾撃ってきたのはそちらでしょう、仕返しをしただけです。《剣》」

 

虚空に剣を2、3本浮かべ相手へと発射する。

 

「クッ、このッ、いくぞリッチー」

 

さっと避けられライオンが迫り、爪が振るわれる。

 

「《弾幕》」

 

余裕を持ってそれを回避し空中に弾を浮かべ、一斉に発射すると慌てたように回避する。

 

「あぶねぇな、テメェ船長と同じく能力者か」

「ご安心を。ただの弾丸の形をした『衝撃波』みたいなものです。当たると死ぬほど痛いですが、死にはしませんので」

 

流石に蜂の巣の死体は作りたくないので……。

 

こういったところもコトコトの実の便利なところである。物質化するものに対してイメージによってある程度変えることができるのだ。

 

「海賊とはいえ、命までは奪いませんよ」

「舐めやがって。だがそんな余裕がいつまで持つかな、俺はこの世の動物ならなんでも操れるんだぜ」

 

そういってモージが口笛を吹くと酒場の方から狼が5匹が現れる。

……なんだか海賊というよりかは戦うサーカス団もしくは手品師みたいですね。

 

「行けっ!」

 

その声と共に狼たちとライオンが一斉に襲いかかる。

 

「大勢いればいいというとものではないんですがね、《盾》」

 

爪や牙に注意しながら動物たちの猛攻をときに躱わし、時に盾で防ぐ。……ライオンの攻撃はさすがに重いですね、腕が痺れます。

 

「フハハ、防戦一方じゃないか!」

 

そういってニヤニヤと笑うモージの声だけが向こうから聞こえる。腹立たしいですね。余裕がなくなったのではなく、どうすれば被害を抑えて無力化できるか考えていただけなんですが。

ん〜どうしましょうか。重火器だとここら辺の建物も壊しそうですし、動物たちが危ないですしね。

思案していると再び口笛の音が聞こえる。

増援ですかね?疑問に思うと

 

「ハッ」

「ッ痛!」

 

そんな掛け声が聞こえたと同時に何かが腕に当たり、バシィイイと音がなる。

攻撃どこから?何で?

 

「ふん、どうやら当たったようだな?どうかな数々の動物を手なずけたムチの威力は」

 

なるほど、ムチでしたか。先ほどの口笛は動物たちへの合図ですか。にしてもペラペラ武器について喋るとはバカなんですかね?

まあ、結構な威力でしたし、長引かせるのも危険ですかね。

 

……こういう使い方は頭が疲れるんですがね、仕方ありません。

 

「……《凍》」

 

私がそういうと周りに氷が張っていき、気温が下がり動物たちの手足も凍った。

運よくムチを振って来たタイミングだったようで避けるとムチが地面に当たり半ば凍りつく。

 

こうやって現象を引き起こすこともできるのですが、とても想像力を使い精神的に疲弊するので軽く頭痛がしてくるんですよね。

 

「ぐっ、なんだコリャ」

「私の能力の一環ですよ、《杭》」

 

空中に杭を数本出し投擲する。モージの周囲へと見事刺さり身動きを封じました。

 

「ひぃっ」

「それではおやすみなさい《弾》」

 

一発の衝撃弾が眉間にあたり衝撃でモージさんが気を失った。

 

「全く乙女の柔肌を傷つけるとは言語道断ですね。跡が残らないといいんですが……」

 

そもそも折れたりしてないですよね?腕を気にしながら私はゾロさんたちがいる場所へと向かった。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

ゾロさんたちの方へと向かうとどうやらちょうど決着がついたようでした。

 

「勝った!!」

 

ルフィさんが倒れたバギーの近くでどーんと手を挙げて喜んでいます。

どうやら、そちらも終わったようですね、ルフィさん

 

「お、アリス、戻ってきたのか」

「ええ、ちょうど今。きっちり勝ってきましたよ。ゾロさんは?」

「そこ」

 

指さされた方を向くと地面に横たわったゾロさんがいました。

急いで駆け寄ると脇腹に先ほどよりも深い刀傷があります。

 

「きゃああ!!どうしたんですかこの傷!ル、ルフィさん、ゾロさんの相手はそんな強かったのですか?」

「いや、別に」

 

なんでも格の違いを見せつけるとかで自分で脇腹を斬ったのだとか……。

ば、バカなんですか?!ドMですか?!

 

……いえ、取り乱しました。とりあえず手当をしましょう。

ゾロさんの意図は掴めませんが彼の夢のために必要なことだったのでしょう。

私はできた嫁となるためにも、何も文句はいいませんよ。

これもゾロさんが世界一の大剣豪となるためなのでしょう。

とりあえず起こしましょうか。……いえ、寝ている今がチャンスですかね、膝枕でもしましょうか?

 

そう思ってるとルフィさんがゾロさんを起こしてしまいした。

……なんだかルフィさんにことごとく良い所を邪魔されてる気がします。

 

 

 

 

どうやら海図も宝も手に入ったようなので出発するようです。

 

「あーダメだ、歩けそうにねェ」

「当たり前よ、それで歩けたら人とは認めないわよ、あんた達」

「何で俺も入ってるんだ?」

「あんたが1番疑わしいわよ!!!」

 

なんか仲良くなったんですかね?ナミさんとルフィさん。正式な加入も近いのでしょうか。

それはさておき……

 

「ルフィさん、私がゾロさんを運びますよ」

「お?そうか。じゃあ任せた」

 

許可も下りたので、るんるんとゾロさんに近づくと苦虫を噛み潰したような表情をしてました。

ゾロさんに目を合わせる。

 

「何もすんなよ」

「………………なにもしませんよ」

「おい、今の間はなんだ」

 

い、いえ、本当になにもしませんよ。怪我人ですし。

しぶしぶといった表情で私の肩に腕を回すゾロさん。

 

あぁ!!ゾロさんの!!!腕が!筋肉が!!私の肩に!!!!

私が喜悦に浸りとろけてると、ナミさんが訝しそうにルフィさんに話しかけてました。

 

「ねぇ大丈夫なの、あの子」

「ん?何がだ?」

「……はぁ、なんでもないわ」

 

べ、別にいいじゃないですか、普段警戒されてる好きな人に触れてるんですから多少は変にもなりますよ!

 

その後町民さんたちが現れ、倒れた町長さんとルフィさんの海賊宣言で町を追われ逃げるように港町を出て行きました。

 

 

 

 

 

 

 

 




急に読者が増えてビックリしつつ、期待に応えられるかビクビクしてる作者です。

感想お待ちしてます。

あと申し訳ありませんが原作だと次の話に当たる珍獣の島はカットします。原作と変わらない流れになると思いますし。


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閑話 アリスの日記1

ゆるっとした日常回です
日記形式にしています
読まなくても大丈夫だと思います。

……疑問なんですが暦ってどうなってるんですかね

どうぞ


○月×日天気

 

ナミさんが仲間に加わり(本人いわく手を組んだ)、二隻の船で航海しています。

といっても私たちはナミさんの指示通りに船を動かしているだけですが

ルフィさんの人選は間違っていなかったようで、ナミさんはかなり凄腕でした。

航海士という存在の大切さが身にしみましたね。

さて、ゾロさんの本日の様子は

 

(あまりに長いので中略)

 

そういえばナミさんがおっしゃっていたのですが、このペースだと明日には島に着くとのことです。

 

一体どんな島ですかね?ルフィさんなんてすでに目を輝かせています。

 

 

○月#日

 

今日は島に着きましたがキメラのような珍獣が生息してる島でした。

 

そんな動物たちを保護するかのように一人の男性、ガイモンさんが住んでいました。

彼は22年前、仲間と共に宝の地図を元に無人島へ上陸し、三週間経って、引き上げようとしたときに偶然空の宝箱にはまり気絶し、そのまま島に取り残されてしまったようです。

 

なんというか、小説にもなさそうな展開ですね

 

宝箱にはまって以来、髪を切っていないため、巨大なアフロヘアーになっており、眉毛もつながってました。

 

その容貌からルフィさんは「タワシのおじさん」と呼んでいました。

 

宝や珍獣目当てに上陸してくる海賊を「森の裁き」と称して撃退し、私たちにも攻撃を仕掛けて来ましたが、通用せず、互いに無害であることが分かり、親しくなった。

 

彼は20年守り続けた宝箱が空だったことをルフィさんから伝えられ仲間に誘われるが、「森の番人」として長年の友である珍獣の島にいる動物を守るため誘いを断り島に残りました。

 

旅は一期一会ですね。

 

 

 

○月%日

 

 

 

 

今日は何もなくただ海を行く航海の日でした。

 

ほのぼのゆったりゾロさんを眺めているとナミさんに話しかけられました。

 

なんでも私の能力に興味があるのだとか。大まかな能力について説明すると、急に目を輝かせ(ルフィさんに際限なく肉を出してくれと頼まれたときを思い出しました)、宝石などは出せないかと聞かれ、「出せる」と答えると試しに「なんでもいいから出して欲しい」と言われました。

 

試しに《ダイヤモンド》、と出してみると盗むかの勢いで宝石を取られました。別にいくらでも出せるのでいいですが……。ナミさんはしばらく手に取ったダイヤマジマジと観察し、そして一言、「ダメね」

 

頭に疑問符が湧きました。知識も想像力も十分に足りているのでキチンとしたダイヤだと思ったのですが。

 

そう抗議すると「これは只のダイヤで品質は並みね」とのことで、言ってる意味が分かりません。

疑問符を浮かべていると、やれ4Cがどうだの綺麗なブリリアントカットじゃないだの散々ダイヤについて抗議され、何度も出すように言われました。

鬼畜です。

その日嫌というほどダイヤを出して最後に出したものを見て、ナミさんが「ん、まぁ及第点ね」とのことで、この人は悪魔かと思いました。

しばらくダイヤモンドというか宝石がトラウマになるような1日でした。

ちなみに出したダイヤは全てナミさんが持って行きました。

 

 

 

○月&日

 

 

昨日に引き続き今日もただ海を以下略

 

朝ご飯となる食材を出し、ナミさんに調理してもらいました。

うー、料理といいスタイルといい女性として負けてますね。

 

うんうん唸っているとナミさんの船に呼ばれました。

 

……宝石ならもう絶対に出しません、絶対にだ!そんなこと思っていると顔や雰囲気に出ていたのか苦笑され、「今日は宝石じゃないわよ」と言われました。

 

なんでも今日は服だそうです。

 

ふむ、なるほど服ですか、ならばやりましょう!

女性としてファッションは大事ですよね!!

ゾロさんもダサい女性よりも綺麗な女性の方がいいでしょう。

 

ちなみに私はファッションセンスというものが皆無なので基本的に無地の白いTシャツとタイトパンツというシンプルで動きやすい格好です。

 

ナミさんいわく雰囲気にはあっているが、シンプルすぎるということで、持っている服を見せて欲しいとのことです。

持っている服というか、これだけなんですけど……

そういうと呆れたような顔をされました。

仕方ないじゃないですか!一人旅で余計なものを持つ余裕なんてなかったのですから!!基本なんでも能力で拵えてましたし!

はぁ、とナミさんが溜息をつきました。

普通に傷つきます……

「なら私がデザインしてあげる」そうナミさんがいってペンを取り紙に服を描き始めました。

それから色鉛筆やら色ペンを具現化してナミさんが服を描いてくれました。

 

ですが……ちょっと露出が多くないですかね?!私恥ずかしくて着れませんよこんなの?!!

そうナミさんに抗議するも暖簾に腕押しで聞き入れてもらえず、しぶしぶデザインされた服を出しました。布の材質まで細く書いてあって疲れましたが

 

しばらく出した服を着て着せ替え人形と化していましたが、やっぱり無理です、こんなの着れません!!

 

それから口論しまして折衷案として服にフリルをつけたり、可愛いイラストを描いたり、せめて背中を見せるなどになりました。

 

ちなみに出したのに着れなかった服をナミさんに差し上げると言うと、服をマジマジとみて「下はともかく、上は胸がきつくて」とのことでした。

 

殺意の赴くまま着れない服は燃やして灰にして、海に投げました。

 

 

 

 




日常回でした。

お陰様でお気に入りが400件を超えました。
今後とも拙作をよろしくお願いいたします。

感想お待ちしてます。


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嘘つき


旅行先から無事帰りました。
長らくお待たせいたしました。

どうぞ


 

 

 

 

 

「本当についたな、島に」

 

そういってルフィさんが感動したように言う

 

「何言ってんのよ、地図通り船を動かしただけじゃない」

 

呆れたようにナミさんはいいますが、実際ルフィさんの感動に共感してる私がいます。

なにせ、二人とも元々迷子だったらしいですから。

 

まぁ、そんなことよりゾロさんを起こしましょう。

 

「ゾロさんゾロさん、島に着きましたよ。起きてください」

 

ゾロさんどれだけ寝てるんでしょうか、一日の大半が船の上とはいえほとんどを寝て過ごしているのではないでしょうか?

声をかける程度では起きないので、肩をさする。

 

……服の上からでも分かるほどしっかりした筋肉ですね。

無言で肩をさすり続ける。

ふむふむ前運んだ時も思いましたが、中々鍛えている男らしい体つきですね。

 

「……何やってんだお前」

「ッ!!……………起こそうとしていただけですよ」

 

ゾロさんは訝しげにこちらを一瞥した後、船から降りて行きました。

あぁ、もう少し寝てても構いませんのに。

くわぁと大きく欠伸をしながら久方ぶりの地面を踏みしめるゾロさん。

かっこいいです。

ナミさんとともに船を海岸に固定したのち船から降りる。

 

ふう、久々の地面ですね、足場が揺れないというのはやはりいいものですね。

 

「とりあえず、ここら辺の海図とできれば大きな船を入手しましょう」

「そうですね、小舟ですと不安ですし」

「アリス、船って出せねぇのか?」

「出せるには出せるんですが、辞書登録してるのは事情があって出せないので……」

「ふーん」

「なぁ、さっきから気になっていたんだが、あいつらなんだ?」

 

ゾロさんは、海岸の先にある崖を指差し、こちらを覗き見している連中がいることを指摘する。

すると、崖の上にいる人たちは、悲鳴を上げながら逃げていった。

子供の声でしたね。

 

あら、よく見ると一人残ってますね。

鼻がやたら長いのですが、果たして鼻長族なんていましたかね?

疑問に思いつつみんなで眺めていると彼は

 

「俺はこの村に君臨する大海賊団を率いるウソップ!!!人々は俺を称え我が船長、キャプテン・ウソップと呼ぶ!!」

 

とまぁ、こんな感じで長鼻の青年、ウソップさんはこうして私たちを追い返そうと見え透いた嘘をつき始めました。

 

ナミさんには見破られルフィさんには大爆笑されています。

ゾロさんは呆れた様で興味なさげです。

そんな冷静なところも素敵ですよ、ゾロさん!!

 

どうやら彼は私たちをバギーの一味と勘違いした様子だったので、その誤解を解くと一気に安心した様子で態度を改めました。

……これで私たちが本当にバギーの一味だったらどうするんですかね?

あっさりと信用したウソップさんの様子に少し不安になりましたが、拗れると面倒なので何も言わないでおきました。

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

ウソップさんの案内で島のメシ屋にいくことになり、そこで今までの冒険の話などをしたりして、のほほんと過ごす。

 

代わりにウソップはこの島の状況や船ついて教えてくれた。

何でも持ち主は病弱なお嬢さんが船を持っているそうなんだが、病弱らしいのでここで船を手に入れるのは少し厳しそうですね。

私がそう言うとルフィさんが同意しました。

なんというか前々から思っていたのですがルフィさんの決断力はすごいですよね。全く迷いがないです。

 

「おお、もう時間だ。んじゃ、俺は行くところがあるからな。それじゃあな!」

 

そう言ってウソップさんは去って行きました。

 

「なかなか、元気のある方でしたね」

「そうだな、あれはあいつ気に入ったぞ」

 

ルフィさんに好かれるとは可哀想に……。

彼も麦わらの一味に入るのだろうか。いまいち記憶が曖昧ですから、はっきりとはおぼえていないのですよ。

 

そのまま4人で歓談してると

 

「ウソップ海賊団参上!!!」

 

ウソップさんと入れ違いになるようにして、三人の子供が現れました。

おもちゃの剣を片手に掲げて微笑ましいですね。ルフィさんも幼少期から海賊になりたいと仰っていたらしいのでこんな感じだったのですかね。

入ってきた子供たちはそれぞれ怯えたような表情を見せつつこちらを伺ってきます。

 

「なに、あれ……」

「さー、なんだろうな……」

 

ナミさんとルフィさんが疑問に思いながら彼らのほうを見る。

彼らは私たちを一瞥したあと、三人で小声で話始めました。

 

「?……!!、キャプテンがいないぞ?!」

「まさか、やらちゃったのか?!」

 

あぁ、この子達はおそらく崖の上にいた子ですか、キャプテンというのはウソップさんのことですね。

バギー一味と勘違いしたままでしょうから、救出しに来たのですか。

勇敢というか無謀というか。

 

「はー、美味かったな、肉!!!」

 

そういってルフィさんが食後の飲み物をゴクリと飲み、机に置く。

何を勘違いしたのかわかりませんが、なぜか子供たちは肉というのをウソップさんの肉と勘違いし慌てています。

可愛いですね、純粋無垢で。

 

「お前らのキャプテンならさっきな……」

 

ゾロさんがニヤついた表情で子供たちに語りかけました。

そんな表情もなさるのですね!ニヒルなゾロさんもかっこいいです!大好きです!!あぁ知らない表情を見るというのは心が弾みますね!!!

 

「食っちまった」

 

そう言ったゾロさんのユーモア溢れる冗談を間に受けた子供たちは絶叫してナミさんと私を見て「鬼ババァ〜〜!!?」と叫んで泡吹いて倒れてしまいました。

 

「失礼ですね、鬼ババァは私では無くナミさんだけですよ」

「アリス、ちょっと話し合いする必要があるわね」

 

しまった口が滑りました。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

その後お説教を受けてると、子供たちが目を覚まして事情を説明することとなりました。

うう、口は災いのもとといいますが本当ですね、やはりドSな鬼畜です、ナミさんは。

 

時間だ、とウソップさんは口にして出て行きましたが、その事情を聞くとどうやら件のお嬢様は精神的にも弱っているようなので励ますためにウソをつきに行っているらしいですね。

 

嘘とはいえ、人を元気にする物語を紡ぐことができるとはもう少し彼と話をしてみたいですね。

私の体験した冒険記以外のオリジナル作品の執筆の参考になるかもしれません。

 

かれこれ一年前からウソをつきに行っているようなのでお嬢様は大分元気になっているらしいです。

それを聞いてルフィさんは

 

「よし、じゃあやっぱり、屋敷に船を貰いにいこう!!!」

 

とさっきとは意見を一転。

思い切りもいいですよね、ルフィさん。

ナミさんはやめようと声をかけますが、聞く耳を持たずお嬢様、カヤさんというらしいですね、のもとへ行くことになりました。

 

「それでは、ゾロさん」

「?なんだ急に手を出して」

「手を繋ぎましょう!!」

「………………」

「あぁ、無視して先に行かないでくださいよ!」

 

ナミさんのため息聞きつつカヤさんのお屋敷へと向かう。

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

子供たちに案内されつつカヤさんの屋敷に着きました。

かなり広いですね、掃除が大変そうです。

お金持ちなので使用人がいるからとのこと、流石セレブは違いますね。

 

かなり高い塀で囲まれており排他的に見えますが、中にはしっかりとした木々や色とりどりの鮮やかな花が咲いており温かい雰囲気である。

カヤさんのために庭師が丁寧に仕事をしてるのでしょう。

大切にされてるのですね、子供たちの話からも人柄の良さそうなお嬢さんらしいですし。

 

「こんにちはーーっ、船くださーーい」

 

そう挨拶するとルフィさんは門を乗り越えてお屋敷へ入って行きました。

 

「止めても無駄なのね」

「ムダだな。つきあうしかねェだろ」

「あいさつした意味あんのか……」

 

口々に感想を述べながらついて行きます。

子供たちよ、ルフィさんの行動に意味を求めても無意味ですよ。

私は関わり始めてそう長くはないですが、学びました。

悲しいかな、人間というのは慣れてしまう生き物なのです。

 

庭をうろつくと談笑してるウソップさんと、おそらく彼女がそうなのでしょう、ベットから上半身を起こしているカヤさんを見つけました。

 

カヤさんはウソップさんが話すたびに楽しそうに声を上げて笑っています。

微笑ましいですね、私もゾロさんといつかあんな風に談笑できるようになりたいものです。

 

カヤさんは一見元気そうに見えます。ウソップさんのおかげですかね。

 

 

 

 

「君たちそこで何をやっている!!!」

 

急に怒号が聞こえてそちらを見ると、メガネをかけた執事がやって来ました。

 

「困るね、勝手に屋敷に入っては!」

「クラハドール……」

 

なるほど、クラハドールさんというのですね。

ウソップさんは彼の登場に露骨に嫌そうな顔をしています。

仲が悪そうですしね、クラハドールさんも頑固そうですもの。

 

「俺たち船が欲しいんだけど」

「ダメだ」

 

ルフィさんの空気を読まない一言も一蹴、この人強いですね。いえ、当たり前ですが。

 

ウソップさんを見つけてこちらも露骨に嫌そうな顔したクラハドールさんはウソップさんと口論を始めました。

ウス汚い海賊の息子がお嬢様に近づくんじゃないと罵るクラハドールさん。

 

ウソップさんは海賊の息子なんですか。初耳です。いや出会って間もないのですから、当たり前なんですが。

 

ウソップさんはクラハドールさんの挑発を買い、クラハドールさんに掴みかかり、思い切り顔を殴った。

彼にとって、海賊である父は誇りなのでしょう。

尊敬する父を貶されて、ウソップさんは怒りを抑える事ができず、更に殴りかかろうとしたウソップさんでしたが、カヤさんの静止により踏みとどまる。

そして、売り言葉に買い言葉でもう2度と来ないと言って出て行ってしまった。

 

その様子を見て子供たちが怒り、そして何故かルフィさんも怒り始めました。

単純ですね、ルフィさん。

良い状況とは言えません、一度屋敷から出ますか。

そんな子供4人を(数え間違いではないです)連れて私たちは屋敷を後にしました。

 

「船は無理そうですね」

「よくよく考えたらお金もないもの」

「流石に見ず知らずの他人に船をポイと渡す人もいないでしょうし」

「そんなアホではなかっだろうしな、あのお嬢様も」

 

そんな会話をしつつ首根っこ掴みながら引きずり歩きました。

 

どうでもいいですが、なんで私がルフィさん担当なんですかね、ゾロさん!代わりましょう!

いえ、やはり2人でルフィさんを持ちましょう、共同作業です。えへへへ……。

あぁ、無視しないでください!

お二人とも待ってください、ちょっとルフィさんいい加減力弱めてくださりません!?

 

 

 

 

 

 

 






評価感想お待ちしてます。
頂くとやる気が湧きます






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作戦




どうぞ


 

 

 

 

屋敷を後にした私たちは町の外れで一息をつく。

のどかな空の下、柵の近くに座り込む。

 

「あれ、ルフィは?」

「さあな、ウソップのとこじゃないのか?」

「はい、ウソップさんの方へと駆けていくのを見ましたよ」

 

慰めに行ったんですかね?いえ、失礼ですがルフィさんにそんなこと出来るとは思いませんが。

子供たちいわく、海岸らしい。ウソップさんは何かあるととりあえずそこへ行くそうだ。

 

「あれ、あなた方の友達、もう1人いましたよね。どちらへ?」

「あー、あいつすぐにどっかに消えちゃうんだよね」

「うん、そして大騒ぎして現れるんだ」

 

そう話していると噂をすれば影がさすという通り、大騒ぎながら走り現れた。

 

「へ、変な、う、後ろ向き男だぁぁぁああ!!!」

 

ドタバタ走りながらやってきて、子供たち同士で口論が始まる。

にしても後ろ向き男とはどういうことでしょうか?

子供が走ってきた方向を見ると本当に後ろ向きで(確かムーンウォークというんでしたっけ)現れました。

……確かに変ですね。歩き方といい、ハート型のサングラスといい。

 

「誰が変だ、俺は通りすがりの催眠術師だ」

 

あ、怪しいですね、肩書きに怪しさが滲み出てます。

子供たちに催眠術をせがまれて輪っか(チャクラム?)を振るうと子供たちと一緒に爆睡しました。

自分もかかる催眠術師とはてんでマヌケですね。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

あとあと彼は時計を見て起きるや否や急いでどこかへ走っていってしまった。

何だったのでしょうか?彼は。

 

しばらくするとウソップさんがどこからか走ってきました。

 

「「「あ、キャプテン」」」

「なんだルフィは一緒じゃないのか」

「まだ怒ってんのかしら」

「様子がおかしいですけど、何かあったんですかね」

 

見向きもせずに走り去っていくウソップさんに口々に感想を述べる。

どうしたんですかね、怒っているというよりは焦っているといった様子でしたね。

 

「海岸で何かあったんだよ」

「その海岸へはどうやって行くんだ?」

 

ゾロさんがそう言うとこっちだと言って子供たちが案内してくれました。

 

 

 

海岸に着くとルフィさんが爆睡してました。

 

「ちょっと何やってんの、ルフィ!」

「んぁ?!」

 

頭を殴りナミさんがルフィさんを起こす。

すごいですね、ルフィさんゴム人間なのにタンコブができてます。

 

「そうだ、大変なんだ!」

 

ガバリと起き上がり、ルフィさんは説明をはじめる。

分かりやすいとはいえない説明を簡潔にまとめると、先ほどのクラハドールさんはキャプテンクロという海賊だったらしく、カヤさんの暗殺を企んでいるらしい。

 

説明を聞いた子供たちは逃げる準備をするため慌てて村に走って行きました。

 

子供たちの後を追いかけて行くと村から戻ってきたウソップさんと子供たちが話し終わっていた様子だった。

どうやら子供たちには海賊が来るというのは嘘だと伝えたらしい。

 

子供たちと別れた後に海岸にてウソップさんは、

 

「俺はこの村が大好きなんだ、みんなを守りたい……!!だから俺はこの海岸で海賊を迎え撃ち、この一件を今まで通りウソにする!!!

それがウソつきとして、俺の通すべき筋ってもんだ!!!」

 

ウソップさんの心のこもった言葉に感動したのか、みんなが、怖がりを自称してるナミさんまでも加勢の意志を示した。

 

感謝を述べるウソップさんの足は震えていました。

怖いですよね、今まで戦ったことがない平和な村で暮らしてたんですから。

それでもウソップさんの意志は変わらず、ゾロさんたちの意志も変わりません。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

私たちは海岸の地形を確認しつつ、作戦を練ることにした。

私たちの今いる海岸から海賊は来るらしい。

 

「ウソップさん」

「なんだアリス?」

「質問なんですが、海賊たちは本当にここから攻めて来るのですか?」

「あいつらはここで話し合っていたんだ、ここから来るんだろう」

 

なるほど、確定した情報ではないと。

 

「なら、ウソップさんここ以外に島へと進入する海岸はありますか?」

「え?ああ、北にもあるぞ」

「そうですか、なら二手に別れましょう」

「は?」

「ちょっとアリスどういうことよ」

「いえ、作戦の基本ですよ。作戦がダメだった時、情報が間違っていた時を想定して動くべきです」

「でも、相手は海賊が一団くるんだぞ!ただでさえ少ない戦力を更に分けて戦うなんて無茶だろ!」

 

確かにウソップさんの言うこともあっています。

ですが

 

「ウソップさん、もしあなたの言った通りにここに海賊たちが現れなかったときどうしますか、いえ、どうなると思いますか?」

「っ!?」

「町は蹂躙され、村人は殺戮され、あなたにとって大事なカヤさんがあなたにとって憎いクラハドールに殺されます。それでもよろしいので?」

「………………」

 

最悪の状況を想定したのか青ざめるウソップさん。

酷なことを言った自覚はありますが事実であって、起こりうる可能性なのです。

村を守るためにはできるだけきちんとした作戦を立てなくてはいけない。

 

「分かった……二手に分かれよう」

「はい、分かりました」

「アリス、ありがとな」

「いえ、私は最善を尽くすべきと思っただけです」

 

冷静になったのかウソップさんがお礼を言ってくれました。

 

「さて、チーム分けを考えましょうか。まず反対側の海岸にはルフィさんとウソップさん、ここには()()()()()()()()()。その中間に素早く動けるように増援として()が待機します」

 

私がそう言うとわずかにゾロさんが、露骨にナミさんが驚いた顔をします。はて、変なこと言いましたかね?

 

「ちょっとアリス、本気で言ってんの?」

「?どうしたんですかナミさん。これが最も効率がいいと思いますけど。土地勘のあるウソップさんと戦力としては最強のルフィさん、おおよそのこの島の地図が入ってるナミさんと実力のあるゾロさん。そして機動力に関してはなにか出せば真っ先にどちらにでもいける私。布陣としては問題ないと思いますよ」

「でも、あんたがゾロと別って言い出すなんて」

「流石に人命がかかってる場合はふざけませんよ!」

 

人のことをなんだと思ってるんですかね!!!全く。

一緒に居たいのは本当ですがふざけていると人が死ぬ状況ですからね。

 

「はぁ、それとこれを渡しておきます。《信号弾》」

 

そういって手のひらに何個か生み出し、各ペアに一個ずつ渡す。

 

「敵が来た時の合図に使ってください。これをこのように打つと」

 

そういって私は出した信号弾を上空に向けて発射すると、しばらくすると赤い花火のようなものが爆音とともに咲く。

 

「このように花火が出ますので」

「おう、分かった」

 

お互いに作戦を再度みんなで確認してからそれぞれの待機場所へと向かうこととなった。

 

 

 

ですが、その前に。

 

「ゾロさんっ!!」

「うおっ」

 

愛しの人めがけて飛び込み、出会ったとき同様押し倒す。

 

「ゾロさん、私頑張りますので是非この作戦が終わったら……」

 

ぐいっ顔を覗き込み、お互いの距離を近づける。

ゴクリとゾロさんが呑み込む唾の音が聞こえました。

緊張ですかね、警戒ですかね。いえ、どうでも良いのです。私の目的は……

 

「ぜ、是非膝枕を私にしてください!!!」

「は?」

「い、いえ、別にちょっとぐらいいいじゃないですか、私の頭はそんな重くないですよ、軽いです。ちょっとした鍛錬だと思ってですね………」

 

そんな言い訳をつらつらと述べていると

 

「ちょっとアリス何してんのよ、早く持ち場に行きなさい!!」

「ぐえっ」

 

ナ、ナミさん首しまってます。行きますから行きますから放してください。

 

「くっ、邪魔が入りましたが、必ずやってくださいねゾロさん!それでは!!」

「早よ行け!」

 

ナミさんの鬼畜め!!

 

 

 

* * * * *

 

 

 

しばらくしてから言われた場所へとたどり着く。

ですが、私が思い描いた作戦では()()()()()()()()()()()()()()()のです。

 

「久々にガチで戦うことになりそうですね」

 

だがゾロさんの膝枕が私を待っていますので私は頑張れるのです!!

ふんっ!と気合を込めて私は更に駆け出しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






お気に入りが減り少し凹みましたが、元々書きたいもの書いてるだけなので、気にせず続けて行きます。

これからもよろしくお願いします。



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人殺し

今回は三人称視点を含みます。
どうぞ


 

薄く明るくなって来た空の下、目的地に向かって走る。

最悪な事態を阻止するには簡単です、クラハドール、否、キャプテン・クロを殺して海賊に晒せば良い。

 

少なくとも勢いは削がれるだろう。

……たぶん。

 

走っているとようやく屋敷に到着したのだ。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

一方その頃、南の海岸ではナミとゾロが話していた。

 

「ねぇゾロ」

「なんだ?」

「あんたとアリスってどういう関係なの?」

「は?」

「アリスがあんたに好意を寄せてるのは見てわかるけど、理由っていうか、きっかけって何なの?」

「…………知らん」

「は?」

 

ゾロは初めて出会った状況を大まかに説明する。

 

「……やっぱり、あの子ぶっ飛んでるわね」

 

呆れたように頭を抱えるナミ。

初対面で一目惚れして押し倒したのか。

恋する乙女とは強い生き物である。

 

「にしても出身が北の海ね、どうやって来たのかしらね」

「さぁ?」

 

三人で話している時も自分については夢と能力以外特に何も語っていたなかった。

 

「一度元の仕事が何やってんのか聞いたんだけどよ」

 

 

『ゾ、ゾロさんが私に興味も持ってくれるとは!?これは結婚まで秒読みってことでよろしいですよね?そういうことですよね!!』

『違ぇよ!なんでそうなる!!』

『……そうですか、残念です。でも興味を持ってくれたことは事実ですよね!これは事実ですよね!?』

『……あぁ、もうそれでいい』

『ふんふん、そうですか!そうですか!それでは私の前の職業はっ!』

『…………』

『秘密ですっ!(ウインク)』

『…………(ガシ)』

『痛い、痛いですわ、ゾロさん。無言でアイアンクローしないでくださいな。いえ、やはりゾロさんから与えられたものはこの不肖アリス全て喜んで受け取り……あら、放すのですか?』

『……で何やってたんだ?』

『ですから秘密ですよ!女は秘密を着飾って美しくなるのですよ!!あぁそんな呆れた顔でため息つかないでくれますか?いえ呆れた表情も素敵です!!!』

 

とこんな感じではぐらかされたのである。

半分くらい本気で言ってそうではあるが。

 

 

「結局何もわからなかったのね」

「おう」

 

そうこう話していると、バンと音とともに遠くの空に赤い花が咲いた。

 

「反対側の海岸に来たのね!行くわよゾロ!」

 

 

島を守る戦いの幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

「《トランポリン》」

 

目の前にトランポリンを出し、踏みつけて全力で跳ぶ。

塀を軽々と飛び越えて庭に着地する。

着地した目の前にはクラハドール、キャプテン・クロがいました。

 

「あら、探そうと思っていたのにあっさり見つかりましたね」

「……お前は昨日の海賊の」

「ええ、アリスと申します。あなたを殺す女の名前です」

「へぇ、ちょうど良い。時間を守れないクズどもにイライラしてたんだ。お前で憂さ晴らしさせてもらう」

「昨日とはだいぶ印象が変わりますね」

「あんな小娘に仕える必要があったからな」

「はっ!小悪党です、ねっ《ナイフ》」

 

虚空からナイフが生まれ、クロめがけて飛び出す。

 

「能力者かっ!」

 

手につけた五本の刀でクロは弾き、姿勢を低くしてこちらに駆け出す。

 

「《壁》《銃》」

 

遮るようにして壁をだして、迂回してからであろうクロに向けて照準を合わせようとするが、奴は現れない。

どういうことですかね?能力者ですか?いえ、それでしたら何らかの情報が賞金首だったということであるはず。

警戒をしていると

 

「ふん、便利な能力だな」

 

っ後ろ?!

気がついたら背後にクロが現れて私に向けて刀が振るわれる。すんでのところでその刀を避けるが、掠めたようで服が僅かに裂ける。

ゴロゴロと地面を転がり距離を取る。

危ないですわね。

にしても今どうやって後ろに現れたのでしょうか。

 

「よく避けたな」

「どうやって移動を?能力者ですかね」

「違うさ、これは抜き足。無音の移動術だ。こんな風にな」

 

そう言うと眼前から音も無く消えて私の横に現れる。

 

「《盾》っ!」

 

素早くだした盾を構えてるとガキンと金属同士が当たる音が聞こえて体が横に飛ぶ。今度はちゃんと受け身をとり、すぐに立ち上がる。

危険です、というか相性が悪いですね。

私の能力はこういった純粋に強い相手には弱いんですよ。力が強かったり、速かったりする相手は通用しづらいのだ。

 

「速いですね、厄介な」

「お前ら能力者のような人間も今まで俺は殺してきた。こうやってなっ」

 

そういってまたクロが消える。

あぁ、もうまた消えた。

ゾロさんかルフィさんにこの役目をお願いすればよかったです。

このまま押し切られる前に何か対策を取らねば。

 

防ぎきれずに腕が切り裂かれる。

とりあえず機動力を奪わなくては。

 

「《手錠》《ロープ》《ワイヤー》《アイアンメイデン》《檻》《牢獄》《籠》《壁》《鎖》《鉄球》」

 

虚空に拘束するための道具を次々と生み出すが、どれも避けられているようで全て空を切っている。

これだけ出しても捕捉しきれないとは本当にデタラメに速いですね。

っ!危ない!

体を逸らして頭を狙った刀をギリギリで避ける、ハラハラと私の金髪が舞う。

これだけ出しても避けつつこちらを狙えるとは。

なら

 

「巨大な《檻》」

「?!」

 

屋敷を囲うようにして巨大な檻を出して下ろす。

振動で僅かに体の体勢が崩される。

 

「ふふ、とりあえずここから脱出不可能ですね」

「貴様!」

 

おお振りに繰り出された刀を今度は避ける。

出どころがはっきりしてれば避けることなど容易なのです。

続いて

 

「《地雷》」

 

ずらりと地雷が床に並べられる。地雷といっても威力はだいぶ低めだし地面に埋まってもいないのだ。

これはクロの動きを制限するためのものである。

ふふ、ようやく足が止まりましたね。

 

「さぁ、蜂の巣になりなさい。《機関銃》」

 

眼前に出た機関銃が回転し始めて銃口が火を吹く。

クロが回避行動をとるがそれを追いかけるように銃座を動かす。

弾丸と地雷が衝突して連鎖的に爆発する。

柔らかな雰囲気な庭が跡形もなく吹き飛んでいき、原型が消えていく。

 

「クソが、デタラメしやがる!」

 

うわ、まだ生きているのですか、頑丈ですね!。

爆煙を武器で切り裂きながらクロが吠える。

瞬間また姿が消えるが、煙のおかげでクロの移動が目に見える。

 

「《ハンマー》っえい!」

 

刀を避けてカウンターでクロの土手っ腹にハンマーをぶち当てる。

ゴフッと空気が胸から出しながらクロが地面へと倒れこむ。

私のか弱い力とはいえ、高速で向かってきた相手に綺麗に入ったのだ、それなりのダメージだろう。

 

ぐらつきながらもクロは立ち上がり私から距離を取る。

ふう、これでようやく優位に立てましたかね。

 

 

「クラハドール!!!」

 

えっ!どうしてカヤさんがここに?!

いえ、愚問ですね、ここは彼女の屋敷。彼女がいるのも当然ですか。

 

「メリーから全部聞いたわ」

「………ほう、あの男まだ息があったのですか」

「っ!!」

 

カヤさんがその言葉にショックを受けた表情をする。

 

「カヤさん、逃げてください!ウソップさんが海岸にいます!」

 

私の言葉にハッとしたような顔をして駆け出す。

檻を消して逃げ道をつくる。

牽制するように機関銃でクロとカヤさんの間に打ち出す。

さて、カヤさんを守りつつ逃げなくては。

 

「お、お嬢様、お逃げください!」

 

そういって血だらけになった執事が屋敷から出てくる。

大人しく屋敷に引きこもっていればいいものを!!

チッと舌打ちしたクロは執事に向けて刀を向ける。

その執事とクロの間に割り込むと私の体を凶刃が深く引き裂いた。

 

 

 

 

 

……ああ全く他人のために体をはるとは私もバカですね。

体から温かいものが流れるの感じながら意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 




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夢の中

ちょっと展開早くしすぎたかもしれません。

どうぞ


 

ああこれは遠い昔の話かもしくは夢なのだろう。

 

 

夥しいまでの本の囲まれた子供が手に取った本に目を通している。

 

「またこんなとこにいたんですか?」

 

がたりと部屋のドアを開けて1人の子供が入り込んでくる。

怒った剣幕で本を取り上げて怒鳴りつける。

 

「引きこもっていないで出てきてください。私が怒られますから」

「うるさい、今いいとこなんだから邪魔すんな!」

「またそんな言葉遣いして、怒られますよ」

 

座っていた椅子から無理やり立ち上がられせて、部屋の外へ連れ出す。

 

「おい、放せよ!やだ、行きたくない」

「駄目ですよ、お勤めです」

 

広い廊下に2人の声が響く。

ジタバタと暴れる小さな子供をもう1人が抑え込みながら、連行していく。

 

「知ってるんだぞ、お前がこっそり本を読んでんの!!」

「な、何を言って?」

「こそこそ書庫に入って行くのを見たんだよ」

「なぜそれを!?というかかなり遅い時間だったと思うんですが?」

「ふんっ!」

「あぁ、ちょっと待ってください」

 

腕から手を振りほどき走り出した。

逃げられた!と子供の表情がショックを受けたようなものに変わる。

タタタタと子供の足音が廊下に響いていった。

 

 

 

 

__これは昔の私と彼の物語

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

パチリと目を開けると綺麗な高い天井が目に入った。

……一体ここは何処でしょうか?

あたりを見渡すとふかふかのベットと高そうな家具に上品な壁紙。

……私なんでこんなところにいるのでしょうか。

確か私はクロと戦っていて、途中で執事をかばって……!?

 

「そうでした!ゾロさんたちは無事ですか!?」

「あんたねぇ、開口一番がゾロのことって……。いえ、アリスらしいけど」

 

ベットの脇には怪我のため包帯を手に巻いたナミさんが座っていた。

 

「海賊との対決はどうなったのですか?」

「あぁ、それはね……」

 

ルフィさんとウソップさんがいる方の海岸に海賊が現れたらしく、ナミさんと愛しのゾロさんが急行し、戦闘になったようです。そこそこの強敵や催眠術に困惑しつつ、なんとかたおしたようです。カヤさんが到着した頃にはほぼ片付いており、現れたクロも手負いだったので苦戦しつつも辛勝したそうです。

 

「よかったですね、ウソップさん、村も救えましたし」

「そうね、私たち以外の怪我人もいなかったからね」

「ゾロさんたちはどこへ行ったのですか?」

「町の飯屋で食事中よ」

 

なるほど、本当に平和が訪れたのですね。

私たちの頑張りも無駄にならずよかったですよ。

 

「それにしてもアリス」

「はい?」

「なんで一人でクロと戦ったの?」

「…………」

「私たち仲間でしょ、もう少し頼りなさいよ」

 

そう言って苦笑するナミさん。

そう、ですよね。私今一人じゃないんですよね。

 

「わかりました。ナミさん。なんというか、ナミさんからそんなこと言われるとは思ってませんでした。今度からナミさんにももっと頼らせていただきますね。……ところでナミさんここは?」

 

このフカフカのベットに、高級感漂う雰囲気。ここはおそらく………

 

「アリスさん、目を覚ましたのですね」

「カヤさん!」

「あら、もう動いて大丈夫なの?」

「はい、精神的なものが大きかったようですし、ウソップさんにも励まされたので。それよりみなさん、船が必要なんですよね?」

 

そういって照れたように微笑むカヤさん。

やはりここはカヤさんのお屋敷でしたか。

それにしても良い表情ですね。

むむ、これはウソップさんに惚れているのですかね?

顔が物語っています。恋する乙女は可愛らしいですね!

 

「え?うん、私たちこれからの航海のためにも大きな船が欲しいの」

「それでしたら……」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

ルフィさん、ゾロさんと合流して、カヤさんと執事さん、メリーさんというのですね、に連れられて海岸へ行くと

 

「うおーーーっ」

「へぇ……」

「キャラベル!」

「大きいですね!」

 

目の前には羊の頭を模した船首の大きな船があった。

 

「名前はゴーイングメリー号。少々古い型ですが、これは私がデザインした船でして、ガーウェル造り………」

 

メリーさんが説明をルフィさんにしてくれますが、彼は理解できませんよ。

ナミさんが代わりに船の説明を聞き、動索の方法を教わる。

その間に私たちは船の中を探索する。

台所に大砲、それと念願の屋根付きの部屋。

こんなに良いものを譲っていただけるとは、感謝感激です。

 

「航海に要りそうなものは全部積んでおきましたから」

「ありがとう!踏んだり蹴ったりだな!!」

「至れり尽くせりだ、アホ」

 

そんなコントを繰り広げつつ空を見上げる。

綺麗ですね、なんて思うとは、感傷的になっていますね私。

昔の夢を見たからですかね。

ノスタルジーに浸っていると、坂の上からゴロゴロと何かが悲鳴をあげながら転がってきます。

 

「ぎゃああああ、止めてくれーーー!!!」

「……ウソップさん!」

「何やってんだアイツ」

「とりあえず止めるか、このコースは船に直撃だ」

 

ルフィさんたちはそういうと足を上げて転がってきたウソップさんを足の裏で受け止める。

ドスゥンと結構鈍い音したんですが、大丈夫ですかね

 

「わ、わりぃな」

「「おう」」

 

 

 

 

「……やっぱり海へ出るんですね、ウソップさん……」

「ああ、決心が揺れないうちにとっとと出て行くことにする。止めるなよ」

「止めません……そんな気がしてましたから」

「なんかそれもさみしいな」

 

2人のリア充感溢れる会話を耳に入る。

あーうらやましい。

いつか私もゾロさんと……。

船の近くで2人は別れの挨拶を交わして小舟に乗ろうとする。

 

「なにやってんだよ、ウソップ」

「あ?なにって船に乗ろうと……」

「何言ってんだよ、お前が乗るのはこっちだろ」

 

そう言ってゾロさんがゴーイングメリー号を指差す。あーーーかっこいい、尊い。

 

「俺たちもう仲間だろ」

 

そういってルフィさんはにししと笑う。

やはりルフィさんは強いですね。

 

 

 

 

ゴーイングメリー号は新たに加わったウソップさんと私たちを乗せて海岸を離れて行く。

 

「なぁ、アリス宴にしよう。肉出してくれ、肉!」

「あと酒もな」

「仕方ないですね」

 

にしてもゾロさんが私に頼むとはよっぽどお酒が好きなのでしょう。

お酒と肉を大量に出すと喜んで準備を始めるウソップさんとルフィさん。

 

ああ、賑やかですね。とても楽しいです。

さて、それでは本題に移りましょう。

 

「ゾロさんゾロさん!!」

「うお!」

 

ぐいっと近づき額どうしがくっつきそうなほど顔を近づける。

あぁ凛々しい顔がお酒のせいか少し上気してますね。可愛いです。

 

「ぜひ膝枕を!」

「は?!」

「約束しましたでしょう、戦う前に!!」

「?……あれか!」

 

思い出したようですね。証人もいるのです。

 

「ナミさん」

「ええ、そういえばそんな話もあったわね」

 

とニヤニヤしたナミさんと対照的に苦虫を嚙みつぶしたような顔のゾロさん。

くッ嫌がりますか、なら

 

「《金縛り》」

 

私がそういうとゾロさんの体がビシリと固まる。

ふふふ、相手と接触していればこうして動けなくできるのですよ。

多少の頭痛を我慢しつつ、ゾロさんの足を動かし、寝転がり頭を乗せる。

 

ああ、幸せです。

 

「あんたそれでいいの?」

 

苦笑いしたナミさんの声が聞こえますがこの幸福感の前では気になりません。

お酒で上気したゾロさんの顔を下から眺めながら言葉にできない感情に浸っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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着替え

どうぞ


 

私たちはいただいたゴーイングメリー号の中で海賊旗を描いていた。

海賊旗とは海賊団の象徴。私たちの威光を表す恐怖の印である。

……ですから

 

「流石にルフィさん、その悪夢のような海賊旗はやめてください」

「え、なんでだ?俺キチンとかんがえてたんだぞ」

 

そういって広げるルフィさんの描いた海賊旗はお世辞にも上手いとは言えないものでした。

形はぐちゃぐちゃラインはぐにゃぐにゃ。辛うじて麦わら帽子を被っている骸骨ということが分かる程度である。

 

「絵心がないのか」

「一周回って芸術のようね」

「ある意味恐怖でもあるな」

 

本当にひどい絵ですね。

 

「よし俺が描いてやるよ!」

 

そういってウソップさんが筆を取り、新しく海賊旗を描く。

スラスラと躊躇いなく筆を動かし黒い布に骸骨と麦わら帽子が描かれて、おそらくルフィさんがイメージしていたものが現れる。

へぇ、上手いものですね。

 

「どうだ!」

「おぉーすげぇなウソップ!」

「器用ね」

「同じマークとは思えねぇな」

「帆にも同じの書こう」

「そうですね、《バケツ》《塗料》《筆》」

 

塗料とバケツ、人数分の筆を出して、手渡す。

そのあとみんなで協力して帆を下ろす。

こう見ると中々大きいですね。これは絵を描くだけでも重労働でしょう。

 

「んじゃ、がんばるぞー!!」

「ルフィはバケツとか渡してくれるだけでいいから」

「ナミさん、服が汚れないようにエプロンでも出しますか?」

「いーわよ、邪魔になるし」

「了解しました」

「代わりにあとでおしゃれな服出してね」

「……うう、了解しました」

「ウソップ、お前下書きしろ」

「おう、端抑えてくれ」

 

わいわいと喋りながら帆に描く。

こうゆうこともたまにはやって見ると楽しいですね。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

「はー疲れたぁあー」

「意外と大変だったわね」

「予想はしていましたが重労働でしたね」

 

みんなで甲板に寝っ転がりながら一息をつきバタンと倒れる。

身体中、服中に塗料がべったりと付いている。

 

「あれ、ルフィさんはどうしたんですか?」

「え、そういえば?」

「あいつ、確か途中で戦力外ってことで……」

 

そう途中でバケツをひっくり返したり、塗り潰す際にはみ出そうになっていたりで明らかに手伝いというよりも邪魔になっていたので一足先に休んでいてもらったのだ。

 

話をしているとドンと音がして甲板に振動が走る。

 

「ん?!」

「きゃあ」

 

音がした方に顔を向けるとルフィさんが大砲を構えていた。

 

「突然なにやってんだよ、ルフィ?!」

「大砲の練習だよ、せっかくついているんだし」

「ばかめ、俺に貸してみろ」

 

そういってウソップさんが続いて大砲を構えて岩を撃ち抜く。

お見事です、小説とかで見るより圧倒的に難しいんですよね、砲撃って。

狙って当てる、言うは易く行うは難し。なのです。

ましてや光学照準もレーザー照準もない中、目測だけで軽々と当たるとは得意というだけありますね。

 

「狙撃に関しては俺に任せろ」

「うぉーー!すげぇなぁ!ウソップ!お前は狙撃手に決まりだな!!」

 

ウソップさんがドヤ顔をしており、ルフィさんか楽しそうにはしゃぐ。

仲間が増えたのもあって元気ですね、1人で元気を持て余してたのもあるのでしょうけど。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

そんな甲板の様子はともかく、汚れましたし、着替えたいですね。

たしかお風呂があったはずです。

 

「ナミさん、シャワー浴びませんか?」

「いーわね、服も身体も塗料で汚れてるし、汗もかいたもの」

「はい、気持ちよく洗い流したいですよね。」

「アリス、先いいわよ」

「本当ですか?すみません、お先に使わせていただきます。あ、これみなさんで使ってください。《タオル》」

 

ぽんぽんとタオルを数枚だす。

 

「あんた本当になんでもほいほいだすわね、これくらいこの船にもあるわよ?」

「すみません、今までこうやって生活していたので……。もう癖というか習慣になってしまっているのですよ」

「便利な能力よね。まぁいいわ、これありがたく使わせてもらうわ」

 

そういってタオルを受け取るナミさん。

何でも能力だよりに生きていたので、『無ければ出せばいいじゃない』というマリー・アントワネットも真っ青な感覚で生活してきましたから。

どうでもいいですが、『パンがなければお菓子を食べればいいじゃない』ってマリーアントワネットが実際に言った台詞じゃないらしいですね。

 

それにしても、お風呂付きとは助かりますね。

衛生的にも清潔を保つのは良いことですし。

メリーさんナイス設計です。

 

「そういえば、アリス」

「なんですか?」

「私がデザインした服まだ一回も着てないわよね?」

「…………」

 

ギクリと体を固める。

 

「い、いえ、別に着たくなかったわけでもないのです。ただ戦闘や冒険などで服がダメになってしまうような機会が多かったですし、最近また執筆の催促が飛んで来たので作業しやすい格好しか着ていいなかっただけでですね、重ねて言いますが、決して着たくないわけではありません。汚してしまう可能性がある中で折角デザインしていただいたものを着るのは躊躇われましてですね……」

「もうこれ以上汚れるようなことは今日しないし、着ちゃいなさいよ」

「あう」

「ラウンジか女子部屋にいると思うから、お風呂空いたら声かけてね」

 

私が否定の言葉を繰り出す前にナミさんは甲板へと去って行きました。

 

うう、どうしましょうか?

もし着ていなかったならナミさんにどんな言い訳してもピシャリと跳ね除けられるでしょうし。

問答無用でまたダメ出しをくらいそうです。

 

とぼとぼと女性部屋にと決められた場所へと向かい、自身のカバンを取り、中からナミさんが描いてくれた服のデザインをまとめたものを取り出す。

ぺらぺらと捲り、描かれたものの中から露出が少なく、派手ではない衣服を探します。

……あまり無いですね。

全く無いという訳ではありませんが、大半が胸元が大きく露出していたり、丈が短い服です。

動きやすくはあるのでしょうが、私には荷が重いですね……。

というか私とナミさんの戦力差(主に胸囲)を遠回しに言われているようで若干イラっときますね。

 

あ、でもこれはいいですね。

ページをその後ぺらぺらと捲り、ようやく着れそうな服が目に入る。

私が見つけたのはスカートの裾あたりが淡い桃色のグラデーションとなっており、小さな桜の刺繍が入ったワンピースです。

可愛らしく、シンプルなデザインなので目にとまり気に入りました。

……腰あたりまで背中が大きく見えてますが。

丈もそこそこ短いですが着れなくはないですかね。

まぁ、着れそうなのはひとまずこれくらいですし、吟味する時間も勿体無いのでこれにしますか。

 

タンスからタオルを取り出し、それから軽く濡らしてから塗料や汗を等身大の鏡を見ながら拭う。

よし、あらかた落ちましたかね?

全身を見回しますが特に汚れは見えません。

とりあえず出して服を出してみますか、似合わなければ消せば良いだけですし。

 

「《ワンピース》」

 

イラストを見ながら強くイメージをする。

ぽんと目の前のベットの上にイラスト通りのワンピースが現れる。

 

コトコトの実は物質を具現化するにあたって、対象の詳細な情報、例えば構造や製造過程、原材料や含有物質、使用方法といったようなもの、と目の前に確かにあると思い込めるほどの想像力を必要とします。

ですから例えば同じ言葉を発したからといってその都度全く同じ物が現れる訳ではないのです。

また、出したものは私がイメージすれば消すことができます。カヤさんの屋敷で屋敷を囲っていた大きな檻を消したように。

 

 

閑話休題

 

 

ワンピースなどの衣類を持ち、お風呂場へと向かう。

扉をあけ、服を脱ぎメガネを外してから髪を解いて、シャワーを浴びる。

 

あぁ、温水が気持ちいいですね。至福のときです。いえ、もちろんゾロさんと過ごしているときが最高の幸福ですが。

石鹸を泡立てて肌を滑らせるようにして体の汚れを落としていく。久々に体が清潔になっていくという、生き返るような感覚です。

一通り体を隅々まで洗い、再びお湯を体にかけさせて泡を流していく。キュッとシャワーを止めてバスタオルを取る

 

ふぅ、さっぱりしましたね。

体に残った水分を拭い取り、下着やメガネを手に取る。

体を拭きつつ鏡を探しますが、見当たりません。

 

困りましたね。いえ、ならば私たちの女子部屋にいけばよいのです。

ジャージを取り出して身を包み、髪の水気を切って風呂場を出る。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

ナミさんはたしかラウンジか女子部屋ですよね?先にラウンジに行きますか。

 

タオルと脱いだ衣類、着る予定であるワンピースを持って船内をうろつき、ラウンジへ着く。

小窓を覗き込むとみなさんお揃いでした。

さすがにジャージ姿をゾロさんには見られたくないのでドア越しに声をかけました。

 

「ナミさん、お風呂上がりましたよ。お次どうぞ」

「はーい。わかったわ、アリス」

 

そうナミさんが返事をしたので、女子部屋に向かう。

お風呂に入る前と同様に鏡の前に立ち、ジャージを脱いだ。

代わりにワンピースを手に取り、じっと見つめる。

……いえ、迷っていても仕方ありません。着てみましょう。

女は度胸、とワンピースに身を包みます。

 

慣れない服の構造に戸惑いつつもようやく着て鏡の前に立つ。

…………。

意外と似合ってるじゃないですか?

おぉこんな可愛い服が似合うとは!!

背中がスースーしますけど気にしたら負けですね、これは。

 

そうだ、折角なので髪の毛もいじってみますか。

そう思い、お風呂上がりでまだしっとりしている髪の毛を乾かす。

なんか甲板が騒がしいですけど、ルフィさんがなにかしたんですかね。

 

賑やかなのはいつものことですし、気にしたら負けです。

乾いた髪をハーフアップにして、メガネを外してみる。

 

……おぉ!!こうしてみるとまるで深窓の令嬢のようです。まさか自分がこんな風になれるとは。

鏡の前でくるくると回る。ふわりと裾がまわり、髪の毛がなびく。

むぅ、下着のワイヤーがおしゃれじゃないですね、見えてても大丈夫なデザインのものにしましょう。

それはともかく、……もう少し胸があればいいのですが。パッドでも入れましょうか。

 

一度ワンピースを脱ぎ、ナミさんのデザインブックを漁る。

さすがに下着のデザインはないですかね?

ぺらぺらとページをめくる。

 

「おい、壊血病とやらで柑橘系のものが必要なんだが、足りねェみたいで出してく……」

 

ガチャリとドアが開けられて入ってきたゾロさん。

固まる下着姿で本を読んでいる私。

 

「…………」

「…………」

「い」

「い?」

「いやぁぁぁああああ!!」

「ぎゃぁああああ!!」

 

船をいただいた翌日、女子部屋のドアが爆破されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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閑話 アリスの日記2

前回同様日記形式です。本編とは関係ないですので読まなくても大丈夫です。

どうぞ


#月&日 晴れ

 

ウソップさんが仲間になり船も手に入ったので、更に快適になり賑やかになりました。

 

船が手に入ったことで海賊旗を描くことになり、ルフィさんの絵心の無さや逆にウソップさんがとても絵が上手なことなどがわかりました。

 

また私たちの中でウソップさんは狙撃手という役職に決まりました。

 

船には様々な施設があり、海賊旗を描いた後に施設の一つ、お風呂を利用したのですが、その後に事件が起きました。

 

ゾロさんに下着姿を見られてしました!!!

 

あぁなんて恥ずかしい。穴があったら入りたいです。

……せめてパッド入りの下着を身につけていれば貧相な身体を晒すことがなかったはず。

いえ、むしろありのままに近い姿を見せたのです、いずれ来たる本番において落胆させるような事態は避けられたと考えるべきでしょうか?

そう考えると羞恥心などかなぐり捨ててしまえばよかったかもしれません。

むしろこれを機に既成事実を作ってしまえば……。

なんて考えてみてもやはり恥ずかしいですね!!もうこの話についてこれ以上はやめましょうか!

 

ゾロさんが部屋に来た理由はなんでもウソップさんが吹き飛ばした岩で休息をとっていた方々が報復に来たらしいのですが、どうやらゾロさんの知り合いだったようで、その上1人は壊血病にかかっていたらしくそれを取りに来たらしいです。

 

壊血病についてルフィさんたちは知らなかったらしいですが(とんでもないですね、本当に)これを機に食生活の重要性を知り、次にコックを探すことになったそうです。

 

なんでも海上にレストランがあるらしく、そこでスカウトを試みるそうです。

 

海上レストラン楽しみですね。

 

 

 

#月$日 曇り

 

 

 

しばらくはこのまま船の上らしいのでのんびりまったりと各々が過ごすことになりました。

ルフィさん、ウソップさん、ヨサクさん、ジョニーさんは釣りをしており、ナミさんは航路を見つつ読書、そしてゾロさんは睡眠と自己鍛錬をしていました。

私はというと只今絶賛締め切りに追われています。

ええ、もうそれは盛大に。

 

グリーン・アンバーのペンネームで書いているのですが、ありがたいことにかなりの人気であり、しかも私が給料をそこまで欲していないので同出版社のなかでも安い価格で売っており、様々な方に読んでいただいているようです。

 

といっても書いているのは前世に読んだ物語を文字におこしたものであり、本当の作者は私ではないのですけど。

微妙に食い違う世界観や設定の修正、翻訳をしているためにオリジナルとは多少は異なるのです。

これがなかなかに大変でただ読んだことがある本でしたら言霊で出すので済むのですが、そういった細々としたことをしているために修正に時間をかけています。

 

ニュースクーが運んでくる新聞紙に小さく欄があり、続きを望む読者の声が書いてありました。

 

その結果私は女子部屋に引きこもり、一日中本を書いています。

あぁ、読者の声というのはなんて魅力的なのですかね、意欲が湧いて来ます。

 

ちなみに書いた本は様々な島にある本屋やニュースクーのように飛んでいる出版社用の鳥に運んでもらいます。

 

そんなこんなでジャージを着て、執筆活動に勤しみ、1日は終わりました。

 

 

 

#月#日 晴れ

 

 

 

昨日はなんとか深夜までに本を書き終えて、朝日を拝むことなく眠ることができました。

 

疲労感を感じますが、今日はやっておくべきことがあるのです。

 

女子部屋から出てナミさんの元へ行く。

 

「ナミさん、おはようござます」

「おはよう、アリス。本は書き終わったの?」

「ええおかげさまで」

 

とまぁ挨拶を交わしましたがこんなことはどうでもいいのです。

私は一昨日の下着姿をゾロさんに見られた一件はナミさんのせいではないかと疑っているのです。

わざとナミさんがこちらにゾロさんを寄越したように思えてきまして、その疑問を本人にぶつける。

ナミさんのリアクションは予想と違って実にあっさりしたもので、「ええ、そうよ」の一言でした。

むしろこっちが困惑しました。そんな私の混乱が見てて伝わったのか、理由を説明していただきました。

 

なんでも折角デザインした服を着ないというのは勿体ない、今回着たとしても今後着るかどうかもわからないので、ゾロさんに私の格好を見せて何らかのリアクションがないか測ろうとしたらしいです。

 

流石に下着姿を見られると思っておらずそこは謝罪してくれました。踏ん切りがつかなかったのは事実ですので私を思ってのかですかねと考えましたが、おそらく自分がデザインした服が着られていないことが不服だっただけなのでしょう。

 

部屋を軽く爆破したのでそれでチャラということにしました。といっても火力はかなり抑えたのでドア周辺が軽く煤けるだけでしたが。

 

 

続いて私が会いにいったのはジョニーさんとヨサクさんです。

彼らには聞いておきたいことがあるのです。

 

ズバリ、ゾロさんはどういった女性がタイプなのか!!

 

これは重要です、最重要案件です!

これによって私の戦略が大きく左右されますから、ここははっきりとしておくべきです。

どうせ男同士あつまったのなら、そういった話をしているはずですので……なんかルフィさんとかは例外でしょうけど。

 

意気揚々と私はお二人に質問しましたが、返ってきた答えは2人とも「知らない」とのこと。

チッ、使えませんね。

若干殺意が湧き上がりました。

ですが2人は「そんなゾロの兄貴の好みに関わらず十分綺麗ですよ」「そのままでも全然魅力的ですよ、アリスの姉貴」とおっしゃってくれました(どこか慌ただしかったですけど)

 

ふむ、そうですよね。

私がゾロさんの好みに合わせるのではなく、ありのままの私をゾロさんに好きになって貰えばよいのです!!

なるほど、そのままの私の魅力を磨いていけば、いずれ落とせるはずと2人はおっしゃっているわけですね、一理あります。

私は相手の好みに自分を変えるような軽い女ではないのです。

さぁ、己が魅力を磨くのですアリス。そうすれば愛する人を手に入れらるでしょう!

 

天命を受けた気がしました。

 

 

 

 

 

 

 

 



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レストラン

どうぞ


船に揺れられ、ようやくたどりついたのは海上にあるレストラン、バラティエである。

 

前世ではおそらくブサ可愛いと表現するのが適切でしょうか、そんな船が海上にありました。

ここで私たちの仲間を見つけるのですね。といってもそこらへんはルフィさんの匙加減ですけど。

成り行きでこの一味に入った私にはルフィさんに誘われる基準というのがイマイチわからないですが、本能的な嗅覚でも働いているんですかね?

 

「ゾロの兄貴が探している鷹の目の男も現れたって噂ですぜ」

 

そうジョニーさんがいうと期待の表情を浮かべるゾロさん。

 

「鷹の目の男?」

 

ルフィさんの頭の上に疑問符が浮かぶ。

 

「あぁ、世界一の大剣豪の男だ」

 

なるほど世界一の大剣豪を目指すゾロさんにとっては倒すべく敵ですね。

とはいっても

 

「世界一の大剣豪とはたしか七武海だったと思うのですが?」

「シチブカイ?」

「やはりご存知ないようですね」

 

いまさら知らないことには驚きませんよ私。

 

「簡単にいいますと世界政府公認の7人の海賊たちのことです」

「何で海賊が政府に認められるんだ?」

「七武海とは収穫の何割かを政府に納めることが義務づけられる代わりに、海賊および未開の地に対する海賊行為が特別に許されている世界政府公認の7人の海賊たち。もちろん政府に認められているということはとんでもなく強いですよ。七武海には他の海賊への抑止力となりうる「強さ」と「知名度」が重要視されますので」

「へぇ〜」

「……興味ないのですね、ルフィさん。まぁとても強いということだけ覚えておいてください。私もかつて七武海の一角と戦って惨敗しましたから」

 

そういうとウソップさんとナミさんがごくりと唾を呑む。

しかし、ルフィさんとゾロさんは逆にワクワクといった雰囲気である。本当に感性がぶっ飛んでますね。

 

さて、こんな面白くない話はともかく美味しい食事と行きますか。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

メリー号を近づけてバラティエに到着する。

ルフィさんは目を輝かせてどこかに探検していきました。

あの一応ここお店なんですが、なんてツッコミを入れても意味がないのでしょう。

無意味に動くより食事にしましょう。

 

「ゾロさんゾロさん、私と一緒に2人きりでランチにしましょう」

「おい、俺たちは放置か」

「ウソップさんはどうでも良いです。ナミさんとお楽しみください」

「「おい」」

 

2人からツッコミが入りズルズル引きずられて4人のテーブル席に着く。あぁ、私とゾロさんのラブロマンスの時間が……。

諦めて大人しく注文したドリンクを飲みつつ今後の方針について話し合う。

 

「航海する上で必要な人材は、船医、海の料理人、船大工。この船には全く足りてないわ」

「料理人はルフィがここで勧誘するんだろ」

「まぁルフィさんのお気に召す人間がいればですが」

「そこらへんは考えても仕方ないだろ」

「そうね、ゾロの言う通りルフィの考えてることなんてわからないもの」

「船大工に関しては応急処置程度なら俺ができるぞ。材料とかアリスに出して貰えば」

「ええ、よろしくお願いしますね、ウソップさん」

「で、これで船大工については一応解決ね。いずれちゃんとした人が欲しいけど」

「泣き言いってもそう簡単に見つかんねェだろ」

「そうですね、船医も同様でしょうね」

「海賊船に乗りたいなんて稀有な人はそうそういないでしょうしね」

 

はぁと諦めたようにため息をはくナミさん。

こうして改めて見ると課題いっぱいですね、うちの一味。

船医なし船大工なし料理人なしに航海士は(自称)手を組んでいるだけ。

わりと詰んでますね。

 

「どうしようかしら、本当に」

「悩んでもしょうがねェだろ」

「ゾロさん言う通りです。ひとまず食事にしましょう。せっかくのレストランなんですから。ゾロさん何にしますか?」

「自分のメニュー見ろよ、お前」

「ブレねぇなアリス」

「まぁ、結局ルフィが決めることだし、悩んでも仕方ないわよね」

 

そういって各々注文するものを決めていると、黒いスーツの男性がくるくると回転しながら、ナミさんに近づいていく。

この人、確か……

 

「あぁ、今日はなんて幸運な日だろうか。まさか君たちのような麗しきレディ達に会えるとは。恋に焦がれた私に対しての運命の女神がもたらした奇跡だろう。君たちに出会えた今日という日に感謝を」

 

そう言って跪き、ナミさんと私の手を取る。

は、初めて出会うタイプの方ですね。

びきりと私が固まっていると隣でナミさんが慣れた手つきスーツの男性の手を取って微笑む。

 

「あら、かっこいいお兄さん。ここの料理とっても美味しそうなんだけど私たちにはちょっと高いみたいで」

 

するりと顔に手を回して身を覗き込むようにするナミさん。

……男性の瞳がハートマークになっていくのがわかる。

 

「もちろん、無料で!」

 

なるほど、この為にナミさんは色仕掛けを。

というかこれから頼むというのにタダにしてくれるんですね。大丈夫なんでしょうか。

男性は注文をとって厨房に戻っていきました。……とったの私とナミさんのオーダーだけなんですが。

ウソップさんが男女差別だなんだと喚いていますが、何処吹く風で彼は去っていきました。

彼も確か見覚えがあるんですよね。仲間になるのでしょうか?

 

「それにしても、アリス。あのぐるぐる眉毛に触れてたときに固まってけどなんかあるの?言いたくないなら深くは聞かないけど」

 

ナミさんは彼に手を振って見送ったあとにこちらに質問してきました。

 

「いえ、単純に今まで出会ったことのないようなタイプの人でしたから。どういう風に接するべきか悩みまして」

「ああいう風な男は便利だから、男の扱い方を練習しなさい」

「お前時々魔女のようなことを言うな」

 

ウソップさんがぽつりと漏らす。

そう言われてもナミさんは全く気に留めてもいないようで

 

「素直なだけじゃ世の中渡っていけないのよ」

 

と開き直っていました。

たくましいですね、ナミさん。

世渡り上手になるには図太さも必要ですよね。それはともかく私はナミさんに近づいて耳打ちをする。

 

「あのそういうことってゾロさんに有効ですかね」

 

そう聞くとナミさんはゾロさんの方を見る。

何だよといったような顔をするゾロさん。

その様子を見て一言。

 

「無理ね」

 

ですよね、なんとなくわかっていました。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

あの後、有名なことを裏付けるような美味しい料理に舌鼓を打ち、船へ戻りました。

魚だけかと思ったら肉料理もあり、野菜も新鮮で大変満足しました。

最近は私が出せるわずかな種類の食材をナミさんが簡単に調理したものだけで、味付けもパターンが尽きていたので良い刺激でした。

みんなで船に戻り、しばらくまた各々が自由に行動しているとルフィさんが戻って来ました。

彼は戻ってくるなり一言

 

「いい奴見つけたぞ!!」

 

と目を輝かせて言いました。

あぁ、これでルフィさんに標的にされる人物が決まったのですね。

となるとおそらく時間の問題なのでしょう。

 

ルフィさんはにこにことその仲間候補がどのような人物か語りました。

 

なんでも見た目は軽薄そうですが、中身は男気溢れる海のコックであるようで。反対する他のコックたちにはバレないように、腹を空かせた海賊に飯を出しました。"俺は、俺の飯を食いたい奴に食わせてやるだけだ"、そう言って。

 

その話を聞いたウソップさん、ジョニーさん、ヨサクさんは感動したようで男泣きしてました。

 

見た目は軽薄そう、……やはりあのぐるぐる眉毛の黒いスーツの男性ですかね?

まぁ、ルフィさんが決めたなら誰も反対はしません。

気長に待ちますかね。

 

 

 

 




感想お待ちしております。

感想での質問多かったのですが海楼石と海水は出せません。


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逃亡

どうぞ



私の予想通りやはりあのぐるぐる眉毛の黒いスーツの男性、サンジさんを勧誘しているそうです。

そうです、という伝聞系なのは航海しないと決まってから私は再び執筆のために引きこもっていました。

ここ数日ルフィさんがサンジさんを勧誘しているらしいのですが、梨の礫だそうで、バラティエに数泊しているのが現在の状況です。

あまりのなびかなさに私は自分の記憶が本当に正しかったのか自信がもてなくなってます。

 

さて、もうそろそろゾロさんの様子でも見に行きますかね、多分筋トレが始まる時間ですし。

そう思い女子部屋を出て、小腹を満たすためにラウンジへと向かうとナミさんがお茶を作ってました。

 

「あれ、アリス。執筆は終わったの?」

「はい、一段落ついたので休憩にしようかと」

「そう。差し入れにと思って紅茶入れたけど飲む?」

「はい」

 

カップとソーサーが机に置かれる。

砂糖ほしいんですが、ありましたっけ?

まぁ出した方が早いですよね

 

「《角砂糖》《スプーン》」

 

ポトポトと3個角砂糖がカップに入り、ポチャンとスプーンが続いて現れた。

スプーンをかき回して砂糖を溶かす。

ふむ、これくらいでいいですか。口をカップの淵につけ、紅茶を飲む。

あ、ちょっと甘かったですね、角砂糖は2個でよかったかもしれません。

そんなことを考えているとナミさんがジッとこちらを見てることに今気がつきました。

 

「な、なんでしょうか?」

「うらやましいわね」

「何がですか?」

「その能力よ」

 

そういって私のカップに入ったスプーンを取ってまじまじとナミさんが見つめる。

まぁ傍から見る分にはまるで魔法のように思えるのでしょうね。

 

「うらやましいと言われても、私別にこの能力が欲しくて手に入れたわけじゃないんですよね。むしろ欲しくなかったですし」

「そうなの?」

「ええ、五歳の時食べてしまいしてそれ以来カナヅチですよ」

「カナヅチなんてどうでもいいじゃない、金銀財宝、武器、食べ物なんでも自在に出せるんでしょ。プラスマイナスでいったらプラスが圧倒的に勝ってると思うんだけど」

 

そう思いますよね、普通は。

紅茶を一口含み、カップをソーサーに戻す。

 

「そもそも貰ってすぐは全く使えなかったのですよ。知識が必要ですし、五歳には荷が重いです。最初はただ泳げなくなっただけでしたし」

「でも知識さえ詰めればなんでも出せるのでしょ?今は」

「ええ、まぁ生物と海水、海楼石以外はですけどね。ですがそれには呆れるほどの集中力と想像力が必要なんですよ。それも現実を歪めるほどの。無いものをあると思い込むのですよ、常軌を逸したイメージ力が要しますからね、初めて物を出したときは頭痛がしましたよ」

 

そういうと驚いたような顔をするナミさん。

何も言えなくなっているナミさんを尻目に私は再度スプーンを出してみせる。

ため息をつきながら喋る。

 

「家を出てから能力がどんなものかわかって、使えるようになってからもこんなスプーンを出すだけで泣き出すほどの頭痛がしました。大変でしたよ」

 

言外にこんな能力があっても望むかと問う。

ルフィさんじゃありませんし、ナミさんには伝わっているでしょう。

ですが

 

「……私はそれでもその能力が欲しいと思うわ」

 

そういって真剣な表情をするナミさん。

……なぜこんな表情をしているのですかね、彼女をここまで張り詰めた顔にする原因はなんなんでしょうか?

 

私が疑問を口にする前に外が騒がしくなっていました。

 

「どうしたのかしらね、アリス、ルフィとかが何か問題起こしてないか見て来てくれる?ジョニーとヨサクと一緒に船は見ておくから」

「はい、わかりました」

 

ドアを開けて外へ向かう。

閉める直前にナミさんから声をかけられました。

 

「アリス」

「はい?どうしました?ナミさん」

「あなたの書いた小説面白かったわよ」

「そ、そうですか、なら良かったです。面と向かって言われると照れますね」

「ふふ、じゃあ行ってらっしゃい」

 

ドアを閉めて私はバラティエに向かいました。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

私がバラティエに向かうためにドアを開けて初めて見たのはかなり大きなズタボロのガレオン船がありました。

ここのコックさんたちがやったのでしょうか?

なら途轍もなく強いですね、仲間ならば心強いです。

船を一通り観察した後にバラティエに入りゾロさんの姿を目視する。

標的確認、ロック完了!

 

「ゾロさん!!15時間ぶりですね!!」

「うおっ!!」

 

走り込んで思いきり飛びつく。

がしかし、さすがはゾロさん持ち前の素晴らしい反射神経で見事に躱されてしまいました。

私はすかさず飛び込んだ姿勢から手を床につけて体を回転させて着地する。

ナミさんデザインのワンピースやスカートじゃなくて良かったです。

 

「猿か、あいつは」

「身軽だな、アリス」

 

外野がうるさいが何を言っているかは聞こえません。

なぜなら私の全神経はゾロさんにしか集中してないですから。

なぜか引いたような視線で見つめる鋭い眼つき、きらりと輝く金色のピアス、武士のような雰囲気、男らしく筋肉質な体つき、呼吸のたびに動く胸。

はぁ〜ゾロさんですね、執筆のためにゾロさん絶ちをしていましたので反動で今とても興奮しています。

あぁ、呼吸しているだけでかっこいい……。

 

「えへへへ……っは!そうでした!ゾロさん達騒がしかったようですが、何があったんですか?」

 

そうでした、そうでした。なぜここに来たのか忘れてしまいした。

事情を聞くと、どうやらドン・クリークという東の海で有名な賞金首が料理を要求して来たらしく、それに応えるのか否かで一悶着があったようです。

結果バラティエのオーナー、ゼフさんの一言で料理を上げることが決定し、今度はおそらく攻めてくるであろうドン・クリーク海賊団に対して守るために準備をしていたそうです。

 

「なるほど、なかなか緊迫した状態でしたね」

「真剣な雰囲気はお前の登場で吹き飛んだがな」

 

うるさいですね、ウソップさん。

それはともかく

 

「戦闘でしたら私も一役買いますね、私元々対人戦闘より対艦戦闘の方が得意ですし」

 

にっこりと微笑みました。

にしてもなぜあんなに船はボロボロだったのでしようか?グランドラインからの帰りというならなんらかの天災にでもあったのですかね。

 

コックたちが着々と準備を進めて開戦しました。

数名の海賊たちが乗り込んで来た。

と、同時にドン・クリークの艦隊が爆発した。

突然の出来事て私たちも海賊たちも驚いている。

 

「え……?!」

「何だ!!!」

「?!」

「何が起きたァ!!」

 

あまりの衝撃に海面が大きく揺れてガレオン船が沈んでいく。

波が大きく発生して、バランスをとることすら難しくなる。

 

「ドン・クリーク!!本船は…………!斬られましたァ!!!」

「………んなァ馬鹿な話があるかァ!!!」

 

ドン・クリーク達が激昂している中で私たちは面へと急ぐ。

にしても斬られたと叫んでいましたね、本当でしょうか。まだ火薬の暴発と言われた方が信じられるのですがね?!

そんなことよりも今は!

 

「表の船にナミもヨサクもジョニーも乗ったままだぞ!」

「くそっ!!もう手遅れかもしれないぞ!!」

 

出口に向かって揺れ動く床を駆けて進む。

私たちが表に出るとそこにはもうメリー号の姿はありませんでした。

代わりにヨサクさんとジョニーさんが海に浮かんでいます。

 

「メリー号はどうなったのですか?!ナミさんは!?」

「ヨサク、ジョニー無事か?」

 

ガバガバと2人が泳いで木片に捕まる。

 

「すみません、アニキ……!!ナミの姉貴が宝全部持って逃げちまいましたァア!!!」

「「「な!!何だとォォオオオオ!!!」」」

 

三人の絶叫が揺れる海に響きました。

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

二人を海から引き上げて毛布を出して渡す。

話を聞くとナミさんは海賊専門の泥棒を自称して宝と船を盗んで去っていき、その直後に海面が爆発して追いかけることもできなかったらしい。

 

この話をきいてゾロさんとウソップさんは怒っている様子でした。

 

「クソッ!!あの女!!!最近大人しくしてると思ったら油断も隙もねェ!!!」

「この非常事態に輪をかけやがって!!!」

 

そんな2人の様子を見ながら私は最後に会話したナミさんを思い出していた。

どこか寂しげな表情をしていたのですが、やはり彼女には何かあるのでしょう。

2人が激昂して私が思案しているとルフィさんが海を見渡す。

 

「待て!まだ船が見えるぞ!!ゴーイングメリー号だ!!!」

「何っ?!」

 

急いで見渡すと確かに船が見えました。

 

「アリス船出せるか?」

「お時間をいただければこの世界で()()()()をお出しします」

「ゾロ、ウソップ!」

「ほっとけよ、あんな泥棒女」

「でも船は大事だろ」

 

口論を始めるウソップさんとゾロさん。

ですがそんな2人を御構い無しにルフィさんは自分の意見を堂々と述べる。

 

「俺はあいつが航海士じゃなきゃ、嫌だ!!」

「「!!」」

 

そのセリフに吃驚してから納得したような表情を見せるお二方。

そんな様子を見つつ私は詠唱を始める。

 

「小型の船舶にエンジンを搭載したものであり…………」

 

私の記憶を掘り起こして総動員して、言葉を紡ぎ、前世ですら写真でしか見たことのない物を物質化する。

 

「《モーターボート》」

 

海面に波しぶきを立てながらボートが着水する。

 

「安心して乗ってください。すぐに追いつきますよ!!」

 

そう言って私は不敵に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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迷子

ちょっと短いです。
どうぞ


ボードの乗り込んで私はみなさんの方を向く。

 

「ひとまず私と誰か一名で先行しましょう。居場所がわかる道具を渡しますので」

 

そういうと私を含めた全員の視線がゾロさんに集中する。

さぁ、ゾロさん私との二人旅を楽しみましょう!!

わくわくと表情からそんな擬音が聞こえるほどにこやかな顔をする。

が、ゾロさんは何かを見つけたように一点を集中して見ている。

 

「わりぃ、ヨサクかジョニーが行ってくれ」

 

そう言うとゾロさんは壊れたガレオン船に向かって駆けて行ってしまった。

向こうに何があるんですかね、私の位置から瓦礫が邪魔してよくみえないのですが、ゾロさんが駆け出すとは何があるのでしょう。

興味がありますが、今はナミさんを追いかけなくては。

 

「それでは誰が乗りますか?」

「それじゃ、俺が行きます」

 

ヨサクさんが船にそう言って乗り込んで来た。

たんと乗り込んだ衝撃でわずかに船が揺れる。

 

「わかりました。それでは私たちが先行して追いかけますね。ショートカット《発信機》《受信機》。はいこちらの画面に点滅する点が私たちです。この点がある方角に来てください。それでは」

 

出した受信機をウソップさんに投げ渡してエンジンをかけ、船を進めた。

 

 

 

 

* * * * * 

 

「ゾロさんは一体何を見つけて、それのどこに興味を持ったんでしょうか?」

「さぁ、アニキが興味持ちそうなのは剣士ぐらいしか思いつかないんですけど」

 

そうなんですよね、ゾロさんが戦いたいと思うほどの雰囲気のある剣士だったのですかね。

 

「案外鷹の目の男だったりして。ほらあの壊れた船はぶった斬られだったらしいですし」

「もし鷹の目の男でしたら私は命を賭してでもゾロさんを止めましたね。どうあがいても勝てないですから」

「そこまで言うほどですかね、アニキも相当強いと思うんですがね」

「いえ、七武海の強さは異次元といっても遜色ないですよ。ゾロさんどころか現時点ではルフィさんも勝てないでしょう」

 

さすがに東の海に七武海は現れないと思いますがね。

 

 

「それで話しているうちに影もなくなったのですが、ヨサクさんはナミさんがどこに向かった手がかりがおありで?」

「え?!」

「……え?」

 

お互いに顔を見合わせて固まる。

 

「いえ、てっきり自信満々にアリスの姉貴が船出発させたんで、てっきり知ってるものかと」

「え、私はただナミさんがいる方角に船を進めただけですよ?」

 

……………。あれまずくないですか?これ。

 

「あ、いや、俺はちゃんと心当たりありますよ」

「なんですか、安心しました」

 

カッコつけて出ていって即迷子はさすがに恥ずかしすぎます。

海図を出して来てヨサクさんが説明を始める。

 

「この島をナワバリとしてる魚人海賊団がいる場所、アーロンパークです」

「魚人ですか……。」

 

まさか東の海でお目にかかることになるとは思っていなかったですね。

 

「それで進路のほうは合ってますよね?」

「わかりやせん」

 

………………?。

 

「それで進路のほうは合ってますよね?」

「いや、ちゃんと聞こえてますよアリスの姉貴」

「じゃあわからないってどういうことですか?!」

「こんな速度で移動する船があるなんて初めてですし、てっきりアリスの姉貴が場所知ってると思ったんで俺には今どこらへんにいるのかも分からないです!!」

 

な、なんということでしょうか?!迷子じゃないですか!

ブレーキをかけて急いで船を止める。

 

「ええっと時速と方角から計測しておそらくこの辺りかな」

「じゃあこっちに角度を変えてしばらく直進すれば着きますね」

「はい、ではよろしくお願いします」

「え?」

「え?」

「いや、こんな複雑なもの操縦できないんですけど」

「っは!!」

 

そうでした。非常事態ということで時代感無視した物を出したせいで私以外操縦できないんでした。

しかも

 

「あ、あの私直進以外でこれ操縦できないです……」

「へ?」

 

前世では車の免許すら立っておらず、仕組みを知っていたのでエンジンをかけてメリー号がいる方向に向かって直進させることはできたのですが、他はあと止めることぐらいしかできないんですけど……。

 

 

 

仕方なくこの時代に沿った帆船をだしてヨサクさんに操縦をお任せした。まさかの落とし穴でしたね。

 

「……まさかアリスの姉貴がこんなミスをするとは……」

「うるさいですね?舌縫い付けますよ」

 

そういうと口を急いで閉じる。

それにしても周り見渡す限り海ですね、あってると信じて進むしかないですね。

 

「アリスの姉貴!海軍の船が見えます!どうしますか?」

 

そうヨサクさんが叫んでこっちを振り向く。

ヨサクさんが指をさした方向を見ると軍艦が一隻あった。

これはチャンスですね。

 

「ヨサクさん船を海軍の方に近づけてください」

「は!?」

「大丈夫です、私たちは別に海賊として顔が広まっているわけではないですし、問題ないですよ」

「そ、それはそうですが」

「それと服を脱いでください」

「はい?!」

 

 

 

* * * * *

 

 

 

海軍の船に近づいて、大声を出す。

 

「すみません〜私たち新聞記者なのですが、漂流してしまったのです〜」

「助けてくれぇえ〜」

 

私はヨサクさんをチンピラのような格好から新聞記者のような格好に着替させて武器を船に隠して大きく手を振って海兵に呼びかける。

漂流者のふりをして軍艦に拾ってもらい速やかに進もうという作戦です。

あとついでにアーロンパークの魚人どもに対して警戒させるためにも良い手段だろう。

 

「おーい」

「助けてくださぁい」

 

2人で大声を出すがリアクションはない。

 

「……なんも返事ないですね」

「聞こえてないんですかね?」

 

絶対聞こえてると思うんですがね?なんのつもりですかね。

仕方ないですね。

 

「私たち今300万ベリーもっているですが、助けてくださったのなら全額差し上げますので助けてください!」

 

私がそう叫ぶと軍艦の甲板がにわかに騒がしくなる。

 

「アリスの姉貴、そんな金どこにあるんですか?」

「ないです。適当に金銀財宝だしとけばいいです」

 

ぽんぽんと適当に高価な物をだして袋に詰める。

しばらく待っていると軍艦に上げてもらいました。

 

「チチチチ、漂流するとは災難でしたな、新聞記者さん」

「ええ、食糧も尽きてしまったので、あわゆく餓死するとこでしたよ。危険な状態から救っていただきありがとうございます」

「いえ、市民を救うことが海兵の仕事ですから。……チチチチ、それで300万ベリーはどこに?」

「ええ、実を言うと現金ではなくて。300万ベリー相当の財宝なのですがこの袋の中にありますよ」

 

そういって袋を開いて中身を見せる。

 

「ほう!それでは……」

「はい、私たちをどこか無事に近くの島に届けていだだきましたら全てお渡ししますね」

「……チチチチ、ええ、もうすぐ島に着きますので中でお待ちください」

「はい、お言葉に甘えさせてもらいますね。長旅で疲れまして」

 

ヨサクさんと一緒に案内された客室に入りました。

といってもかなり質素な作りですが贅沢を求めているわけじゃないですし、良しとしましょう。

 

「上手くいきやしたね」

「ええ、そもそもなぜ新聞記者がこんな財宝持っているか疑問に思わない馬鹿でしたが、財宝に反応するクズでしたね。扱いやすそうです」

「それで、アリスの姉貴、これからどうするんですか?」

「まぁ、近くの島といいましたがここら辺にはアーロンパークのある島以外とくに見当たりませんでしたのでおそらく着くのでしょう」

「着いてからはどうするんで?」

「成り行きに任せます」

「…………」

「まぁなんとかなりますよ、ナミさんを探して連れ戻すだけですし」

 

だからヨサクさんため息つかないでください。

人間万事塞翁が馬ですよ。

 

 

 

 




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