勇者王アルトリア・ペンドラゴン (ハナネット)
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勇者王アルトリア・ペンドラゴン

内容:もしもアーサー王物語が勇者ロボ的熱血バトルのノリと勢いで構成されていたら。
ほぼ暇つぶしのノリと勢いだけで書いた作品。最近の流行りに便乗したアーサー王物語改変もの。


 

 全ては選定の剣の広場にて始まった。

「よく考えた方がいい。その剣を抜けば君は人では「いや何カッコよく座ったと思えば重々しく語ってるんですか、マーリン?」・・・・アルトリア、何事にも雰囲気というのは大事なことなんだ。例え私がいつもの調子と違っていたとしても君も空気を読んでそこは聞き入ってもらいたいん「よおし選ばれし者の剣が抜けました!!今日から私は勇者ですよーーー!」いやそれは王を選ぶ剣であって別に勇者だから抜けるわけではっというかもう抜いてるし!?だから人の話を聞いてくれお願いだからぁ!?」

 夢の中で王としての英才教育中に居眠りするというよく分からない特技をもつ少女に今日も今日とて振り回すはずが振り回されツッコミ役を強いられる花の魔術師ことマーリン。

 ただ英雄譚に憧れ、王ではなく勇者になることを無邪気に夢見ていた少女アルトリア。この時彼女はまだ自分に迫る運命に気づいてはいなかった。

 彼女が王を選ぶ剣を引き抜いたことから、源流の筋道をなぞりながらも確実に別のナニカへと物語を大きく変貌させていくこととなる。

 

 

 

 

 

 アーサー王は諦めない・・・・・その胸に燃える勇気の炎が有る限り目の前の障害に立ち向かう。

 

 ヴォーティガーンと対峙して数時間。最も勇猛な者として選ばれた騎士達と王本人、そしてそれを支えるマーリンを筆頭とした城の大広間からのサポート人員を加えたブリテン解放カチコミ軍団の総力戦は、しかしヴォーティガーンの圧倒的力の前に一人また一人と力尽き、死者はいないものの今やっとのことで立てているのはガウェイン、そして我らが王アーサー・ペンドラゴンを残すのみとなっていた。

『マーリン!アヴァロンXをこちらに転送させてください!!』

 マーリンがアルトリアに与えた通信用の魔術礼装を通して、城にいる彼へとアルトリアの絞り出すような叫びが届けられる。

「馬鹿を言うな!あれはあくまでもしかしたらの為の保険として僕が暇つぶしに聖剣の鞘を真似て作った自爆宝具そのものだ!確かに今の状況ではあれを使う以外に勝機はないかもしれないが、その後はどうする!?時間内に倒しきれなければその後の君たちは完全にただの無力な人間になる!下手をすれば本当に死んでしまうかもしれないんだ。そうなったら、この国を誰が守るというんだ!」

『今ここで負けてしまえばそれこそブリテンはおしまいです!なら完全な敗北による滅亡よりも、一パーセントでもブリテンを守り続けられる勝利に賭けます!だから、お願いですマーリン!騎士たちを、私たちを信じて!!』

 アルトリアの必死の訴えにしかし、マーリンはすぐに応えることは出来なかった。本来であれば国を守るために必要な犠牲だと割りきり肯定するべきなのが非人間な自分らしい対応と思いながらも、彼自身も気づいていない感情がそれを拒否するかのように彼の中に迷いが生まれていた。

「・・・いいでしょう、その要請、承りました」

「!?ギネヴィア!今の話を聞いていたのですか!あれを使えば彼らは・・・」

「あなたこそ聞こえなかったのですか、マーリン!?彼らの決意に満ちたあの声を・・・他でもないあなたが見続けてきた王の叫びを!彼らならきっと大丈夫です、なぜなら彼らは・・・・勇者なのですから!!」

 ギネヴィアのその言葉にようやくマーリンは自分の心配は杞憂であることを悟る。我らが王たちが必ず生きて戻ってくることを、彼女は疑うことなく心から信じている。対して自分は最も信頼すべきであるアルトリアを信じきれていなかったことに気づかされ、マーリンは彼らしくもなく自嘲するかのように微かに笑った。

「・・・分かった、だが約束してくれ。絶対に帰ってくるんだ。じゃないと僕がつまらなくなるからね!」

 わざと冗談めかして言うマーリンに応えるように、アルトリアも勇敢に笑った。

『ええ、期待して待っていてください!あなたが見たがっていた人の描く歩みを・・・・今から見せつけてあげますよ!』

 自身にとって最高の答えを聞き、マーリンはただ黙り、キャメロットの広間で最後の切り札の開帳を宣言した。

「よぉし、それじゃあ・・・アヴァロンX承認!!」

「分かりました!アヴァロンX、転送術式・・・解放!」

 マーリンの承認に応え、ギネヴィアが殴り付けるように目の前の魔方陣に手のひらを翳した瞬間、魔方陣が輝きだしアルトリアたちの元に最後の切り札が送り込まれた!

 

 アヴァロンX。それはマーリンが聖剣の鞘を参考に生み出した一度限りの切り札である魔術礼装。高い魔力を産み出す竜の心臓を持つアルトリアの魔力を瞬間的に限界まで増幅させ周囲の味方にその余剰魔力を譲渡、一時的に味方全員に限界以上の力を引き出す空間を作り出す礼装である。だが一方でリスクも大きい。魔力を生み出す側であるアルトリアは言わずもがな、魔力を供給される味方側もアルトリアの強力な魔力に肉体が破壊されるリスクを背負っている。故にここに立つ者は優れたる騎士たちでなければならなかった。アルトリアの無茶を理解し、それに頷けるほどの精神力を備える、勇者たちが!!

『貴様ら、自分たちが何をしているか分かっているのか!?』

 ヴォーティガーンは騎士たちが行った自殺紛いの愚行に驚愕を隠すことが出来なかった。

「王の決断は我らが決断と同意!貴様と戦うためにそれが必要だというのなら・・・それに賭けるのは当然のこと!」

 王への変わらぬ信頼を胸に力強く立ち上がるガウェイン。太陽の加護を失った体からは代わりにアルトリアから送られてくる魔力が満ち、再びガラティーンは輝きを取り戻した。

「全く・・・王は相変わらず人に相談もせず無茶を言う。ですがまあ、今この場においてはその判断に同意いたします!」

 変わらない無鉄砲な振る舞いに呆れつつもその行いへの不満は微塵もなく剣を構える倒れていた騎士たち。

 そして最後に、強烈なアヴァロンXによる魔力増幅のフィードバックによる激痛を省みず、巨龍に剣を構え、アルトリアは・・・・

「行くぞ騎士たちよ!勇猛なる仲間たちよ!真に勝利するのは・・・・・・・・・・・・・・・勇気あるものだーーーーーーーーーーーー!!!!!」

「「「うぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」」」

 声高らかに先陣をきって巨龍へと突撃し、それに続いて騎士たちも駆け抜けていく。

 

 今ここに、ヴォーティガーンとの最後の戦いの火蓋が切られた!

 

 

 

 

 アーサー王は人の心が分からない・・・・・いや、人の話を聞いていない。

 

「王よ・・・無計画に物事を進めるのはあまりよろしくないのではとこのトリスタン、不忠を覚悟で進言させていただきたいのですが・・・」

「何を言ってるのですかトリスタン!蛮族の進行が早くて村が襲われそうになってるんですよ!?一刻も早く私達が行かずして誰が民を守るって言うんですか!私だけじゃ手が足りないから円卓皆総出で他の村も兵士たちの応援が来るまで持ち堪えるんですから出来るに決まってます!なぜなら私たちは・・・・勇者なのですから!!」

 そう言って目をキラキラさせながら純度100%の期待の眼差しを向けるアルトリア。彼女は疑っていない。円卓の騎士たちの力が一騎当千など軽々とこなすと疑っていない。自分が出来るのだから皆もきっと出来るとその目は言葉以上に雄弁に騎士たちに語りかけていた。

「・・・・ええ、そうでしたね。あなたは民や兵士は心配しても、私たちの場合絶対に大丈夫だと思っていますからそう言うでしょうね、ははは・・・・私は悲しい・・・」

「というわけで、あとの兵たちの応援の手筈はお任せしましたよ、アグラヴェイン卿! あなたなら最良の采配を振るってくれると期待しています!さぁ我が国民を救いに行きますよぉ!!」

「ええ、了解しております王よ。後のことは気にせず存分に円卓と共にお力をお振るいください・・・(そうして弱ったところで今度こそ亡きものとして差し上げましょう、短慮な無能王め)」

 円卓の騎士としてのハードワークに思わず弱音を吐くトリスタンはしかし、『出来るよな』と信頼感MAXの清々しい笑顔を向けるアルトリアにそれ以上何も言うことは出来なかった。

 一方、アグラヴェインは本筋と違い完璧な王ではない彼女の、役割を弁えず暴れまわる振舞いに失望を禁じ得ず、母親であるモルガンからの使命を果たそうと裏でアルトリアを亡きものとする策謀を巡らしていた。しかし大概がアルトリアの勇気理論による力業で破られ、計画した張本人がポーカーフェイスの裏で苦虫を噛み潰した表情を見せるところまでがいつもの流れ。しかもそれがおかしな方向で状況と噛み合い結果として最高の成果に繋がってしまう為、アルトリアの中での彼の評価がどんどん上がり、任される仕事を増やす原因となっていることを本人は気づいていないのであった。

 

 

 

 

 アーサー王は完璧ではない・・・故に多くのキャメロットの人間たちは全力で彼を支えようと尽力した。

 

・キャメロット内円卓での軍議にて

 

「・・・ということで、話を進めていますが・・・王よ、いかがいたしましょうか?」

 アルトリアは瞑目し、暫くしてカッと目を見開き告げた。

「・・・・・・・・・つまり、どういうことですかガウェイン卿?」

 その言葉に円卓一同がテーブルに突っ伏した。代表してガウェインがヨロヨロと頭を上げて答えた。

「ようするに・・・ピクト人の軍勢をひたすらエクスカリバればよろしいかと!!私もひたすらガラティバる所存です!」

 もはやヤケクソとばかりにこの王にもっとも伝え易い表現で説明するガウェイン。さすがの王(脳筋)もこれには得心した。

「なるほど、さすがガウェイン卿!実に分かりやすかったです。そういうことなんですね、モードレッド卿!」

 話を振られたモードレッドは、さすがにこのままではいけないのではと忠言を試みた。

「ま、間違ってはいませんが、王が先行し敵陣に突入ってのはいかがなものかとは思われますが・・・」

「何を言うのですか!国の上に立つ王が率先して前に出ずしては我が国が軽んじられてしまう。勇者たるもの常に皆の先頭に立って進むのが通りではないですか!王が敵を蹴散らし兵の損失を抑える。混乱した敵兵を我らが兵士たちが討つ。実に見事な流れです!」

 この王、そのやり方を過去幾度となく行い戻ってきているから始末が悪い。その道理、あなたにしか通用しないのでは・・・・突っ込みたい衝動を抑える円卓一同。グダグダな会議を終わらせるべく、アグラヴェインが一喝した。

「そこまでにしておこうか、モードレッド卿。王の判断は絶対だ。そこに間違いを問うとは不敬ではないか?(くれぐれももしもの事態が起こらないよう王から目を離すな!あと、残された兵たちの統率も任せる!)」

「あ、ああ。お前の言う通りだ、アグラヴェイン卿。この方針で進めていこう(了解した、あの人兵そっちのけで暴れまわるしなぁ・・・。後のことはオレが何とかするからお前は城で横になってろよ)」

 王の相変わらずの勇者馬鹿な発言に口では王を擁護する発言をしながらもモルガン仕込みの念話でモードレッドへと影で胃痛に耐えながら指示を出すアグラヴェイン。王に対する不信が拭い去られ、今は王の側近として真摯に尽くすようになったというのにやってることは以前と全く変わらないのが悲しい。

 苦笑いを浮かべながらその身を案じ答える、いい加減アーサー王のやり方に自分がいなきゃこの人早死にするだろうなと裏の立ち回りが上手くなっていくモードレッド。(この時点でアルトリアよりも兵たちの士気はともかく指揮が一番上手くなっていた)もう父親に対して尊敬の念よりも手のかかるペットの世話をしているような心持ちである。

 

 アルトリアの円卓は大体こんな感じで王の穴を埋めることから意図せず結束が強まっていったのであった。

 

 

 

 

 王は遊び心あふれる者だった。ゆえに執務の合間を縫っては城下の者たちと語らい、交流していた。

 

・キャメロット城下街の広場にて

「・・・・アーサー何してんだよ、早くこっちにボール渡してよ!」

「こっちだってアーサー!こっちこっち」

「待っててくださいね、はい、シュートですよトマス!」

 パスを送られた少年がゴールに向けてボールを蹴る。キーパーの少年の足の間をすり抜けて木の棒で作られた簡素なゴールの中にボールが転がっていった。

「お見事ですトマス!さすがは勇者たるものです。一瞬のチャンスを見逃さないその目、是非将来は円卓の席に座れるほどの騎士を目指してほしいですね!」

「いや、さすがに大げさ過ぎると思うんだけど。それに騎士は憧れるけど円卓はちょっと遠慮しておきたい。なんかあの人たち皆死んだ魚の目をしててちょっと怖いし・・・」

「そんなことはありません!皆この国の人々の為に粉骨砕身で力を振るう最高の騎士たちなのですから!ですからもしよければ是非・・・」

「こんなところで何をしているのですか、アー・サー・王・様」

 未来ある少年を円卓に勧誘するアルトリアの背後からぬっと大柄の騎士が姿を現した。

「げぇ!?ケイ卿!?なんでここに!?」

「城の窓からアーサー王が飛び降りてるところを見たなどと聞けば一発だろうが。さっさと帰って執務に戻れ」

「筆跡真似るの得意なんですからケイがやってくださいよう。私は書類仕事より体を動かす方が得意ですから」

「ならば存分に腕を動かせ、馬鹿。さっさと行かないと書類がどんどん増えていくぞ馬鹿」

「はぁ、仕方ないですね。それではまた次の機会に遊びましょうかね、皆さん!」

「次は巨人と戦った時のこと聞かせてくれよなー」

「アーサー!オレはトゥルなんとかって化け物と戦って投げ飛ばしたって話もう一回聞きた~い」

「また今度聞かせてあげましょう!って痛い痛いケイ兄さん頬を引っ張らないで下さい!」

「ケイ卿と言え。いいから・・・・来い馬鹿!!」

 暇を見ては城下に下りて子供たちと遊んだり街の人々と交流して武勇譚を聞かせて楽しんでいたアルトリアであった。

 

 

 

 アーサー王は慈悲深き王だった・・・・故に、それによって起こる悲劇もまた避けようのない未来であった。

 

・カムランの丘にて

「どうですか、アーサー王!あなたの国はこれで終わりです!勇者と褒め称えた円卓の騎士たちもバラバラとなり、あなたを慕った兵士たちも死に絶えた!!残ったのは私とあなたのみ。あなたを倒して、私が次なる王となる!さあ、剣を取れアーサー!あなたの、いやお前の敵は今ここにいるぞ!!」

 幾多の兵たちの死体が折り重なる血に染まったカムランの丘。そこで素顔を曝したモードレッドは自身が最も大切に仕えていたはずの王、アーサー・ペンドラゴンに向けて剣を向けた。

「・・・・・・・・・・・・」

 全てが嵐のように駆け巡りキャメロットを蹂躙した。自身が国外での対応に追われている間に状況は与り知らないところで悪化、ついにはモードレッドの叛逆による円卓同士での内乱が起こったことに彼女自身状況に振り回され混乱していた。そうして互いに血で血を洗う闘争の中、この丘に立つのはいつの間にか彼女とモードレッドだけになっていた。

「出来ません・・・・・・私にはあなたを斬ることは出来ませんっ!息子だとか後継者とかは関係ない、共に戦ってきた仲間なんです!」

 だが、アルトリアにはどうしてもその所業がかの騎士のものであることにこの期に及んでさえ信じ切れずにいた。何時だって自分の後ろを支え続けてくれたこの騎士が、王の座を欲しいが為にこのような惨状をもたらすとは思えなかった。なにより、アルトリア自身が彼が息子であることを打ち明けた際、いつの間にか出来ていた息子に驚きながらも次の王の座にはモードレッドが相応しいと彼に再三にわたって提案していた。その度に彼が「オレにはまだ何もかも足りないんでいいですよ。それに・・・父上の後ろを守る立場がまだ気にいっているんで・・・」と嬉しそうに笑っていた姿がまだ目に焼き付いて離れないのだ。

「・・・・どうしてだ、どうしてそこまで裏切り者のオレをそこまで気に掛けるんだよ、アーサー!?皆死んじまったんだぞ!?アグラヴェインを殺して、ランスロットを唆して誤解させ合い円卓同士で相争わせた。ガウェインを罠にはめてあいつに不利な状況を作って死なせた!あんたの国をボロボロにしたこれ以上ないほど憎むべき怨敵だろうが!!」

「それでも私はあなたが叛逆者だなんて信じたくない!!だって・・・あなたは勇者であり・・・・円卓の騎士であることに誰よりも誇らしく笑っていて・・・・なにより・・・・・・・優しい騎士じゃないですかっ!!!!私は、私の知るそんなモードレッド卿を信じたいんですっ!だから、教えてください・・・あなたに何があったんですか・・・」

 その言葉に、モードレッドは今までの焚きつけるような声色から一転し心底疲れ切ったように言葉を漏らし、膝をつき頭を垂れた。

「・・・もう遅いんだよ、父上。やっぱりオレはマーリンの野郎の言う通り呪われた子だったんだ。オレにはもう・・・・・こうされる以外にあんたに報いるべき道がない。それなのに・・・あんたが斬れないというのなら・・・・・」

 右手に握っていた剣を返し、自分の首元へと添える。

「!?モードレッド止めなさい!お願いだ!やめろーーーーーーーーーーー!!!?」

「・・・・オレが自分を斬るしか・・・・ないよな・・・・・・」

 自身をクラレントで切り裂き自害するモードレッド。アルトリアがすぐさま駆け寄り彼を抱え傷口を押さえるも命の流出を止めることは出来なかった。

「なんでですか!?なんで・・・・」

「ごめんなさい、皆。ごめん・・・なさい、ごめん・・・なさ・・い・・・ちち・・う・・え・・」

 アルトリアの悲痛な声ももはや聞こえず、光を失った目から静かに涙を流し、モードレッドは事切れた。息絶えるまで円卓やアルトリアへの謝罪を口にし続けたその最後は、キャメロットを崩壊させた叛逆の騎士というにはあまりにも弱弱しく、泣きじゃくる子供のような様であった。

 アルトリアにとって、全てが現実味がなく、まるで悪夢の中にいるようだった。呆然とその最後を見届けた彼女は、背後から近づいてくる気配に気づき振り返った。そこにいたのは・・・

「・・・・無様な子。私の言うことを何一つ聞かず、ようやくまともに働けるようになったと思えば、最後にまた私を裏切って・・・・本当に、出来の悪い息子ばかりでいい加減にしてほしいわ」

 彼女の異母姉であるモルガンだった。真っ白になった頭でアルトリアは、ようやく全ての元凶がなんであるのかを朧気ながら気づき、我知らず口にしていた。

「モル・・ガン・・・・・モードレッドに、何をしたのですか?」

 そんな彼女の姿に、モルガンは嘲笑し全てを語った。

「全部手遅れになってから気づくのは本当に間抜けとしか言いようがないわ、アルトリア。大したことはしてないわよ?あの子が仲良くしていた領民たちを人質にとって私の指示に従うよう命令しただけなのだから。まあもちろん素直に従うとも思わなかったから、何人か見せしめに殺してみせてからギアスをかけさせたのだけど。あの子が命令に反する行動を一つするごとにそれに連動して子供が一人死んでその光景をあの子の視界に送っていたわ。面白かったわよ、その様を見て狼狽するあの子の姿!あなたを虐めてるみたいだったわ!

 キャメロットを崩壊させた道筋はあの子自身が考えて実行したもの。そのシナリオに私がいくつか手を貸してあげて、見事あなたの理想の国は仲間同士で殺し合って滅びましたとさ、おしまい♪」

 仕掛けたいたずらが成功した子供のように無邪気に微笑んで、自身の所業を明かすモルガン。今までキャメロットで起こった一連の崩壊の元凶の言葉に、空っぽになっていたアルトリアは一瞬で怒りと悲しみで染まり、モードレッドの体を静かに下すと振り向きあらん限りの力で叫んだ。

「・・・・・・モルガァンっ!!!無関係なものを大勢巻き込んで!自分の息子まで駒として利用して!!初めから、私だけを排除していればここまでの犠牲は必要なかったはずでしょう!?あなたいったい・・・・何をしたかったんですか!!?」

 アルトリアの激情に任せた叫びに対して、先程の喜色に染まっていたモルガンの表情は瞬時にどこまでも冷え切った無感動なものとなり、彼女は淡々とひた隠しにしてきた暗い感情を吐き出した。

「・・・私の願いは、ウーサー・ペンドラゴンが理想とした国の崩壊だからよ。私は・・・・憎かったわ。資格がないと切り捨てたウーサー・ペンドラゴンが・・・私をただの舞台装置としてしか最後まで見ていなかった夢魔風情(マーリン)が・・・そして・・・・媚びへつらう国民の前で何の苦労も感じていない顔で馬鹿みたいに笑うあなた、アルトリア・ペンドラゴン、私の忌々しい妹が。・・・ウーサーは私に何の期待もしていなかった。全部、全部全部全部全部全部・・・あなたの為に用意された世界だった。私の居場所なんてどこにもない世界だった。でも、どうかしら、アルトリア?あの男の理想の国は無くなった。あの男に必要とされていたあなたは、国を救うことさえ出来なかったのよ。み~んな、無駄になった!」

 そう言ってモルガンは嬉しそうに、だが空しさも滲ませて笑った。ウーサー・ペンドラゴンが国を守る為にマーリンと計画して生み出したアーサー王。存在そのものを否定された彼女にとってアルトリアの全てを台無しにすることが自分を見ようともしなかったウーサーに対して彼女の出来る最大の復讐だった。初めて見せた異母姉の本心の吐露に、アルトリアは思わず言葉を失った。なんという皮肉だろう。国を救うために生み出されたアーサー王の存在が、国を崩壊させた女を生み出す切欠となっていたのだ。

「次のブリテンの支配者には私がなるわ。それが気に入らないとほざく連中は全部潰すだけよ。そうして、あなたが積み上げてきたこの国の全ても念入りに壊してあげる。そのために・・・最後の仕上げをしなければいけないわよね?」

 次の瞬間、モルガンの体躯がすさまじい勢いで盛り上がっていき、アルトリアを見下ろす小山にような影を現した。それは紛れもなく、かつて対峙したそれよりも威圧感は見られずともヴォーティガーンと同質の龍の姿だった。

「なっ!モルガン、あなたは一体何を・・・!」

『幻覚ではないわよ?正真正銘かのヴォーティガーンの心臓を礼装として編み上げ私が変身した姿、邪龍モルガンとでも名乗りましょうか。

 精々私の溜飲が下がるまでしぶとく生きていてちょうだいね、アルトリア。私ね、この瞬間ずっとを楽しみにしていたの。ホントはね、あなたのことをずっとずっとズットズットズットズット・・・・・・

 

 

  チョクセツコノテデコロシタクテシカタナカッタンダカラ!フフフ、ハハハ、ハハハハハハハハハハハハハ!!』

 

 やっとのことで餌にありつけた飢えた獣の如く哄笑を上げながら襲い掛かってくる邪龍モルガン。かつて大勢の仲間たちと協力して討ち取った邪龍に迫るその脅威とたった一人になってしまったアルトリアとの絶望的な、しかしどこか空しく悲しい戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 未練もある、後悔もある、悲痛もある。されど、アーサー王は逃げることも避けることも、そして足を止めることも絶対にしなかった。なぜなら彼は・・・・・騎士たちの先頭に立ち続けた勇者だったからだ。

 

 邪竜モルガンの圧倒的な力に成す術もなくアリのように弄ばれボロボロになっていくアルトリア。その胸に去来したのは・・・後悔の念だった。モルガンの企みにもっと早く気づいていたならば・・・皆を、自分の国をもっとより良い結末に導けたかもしれない。だが、それも愚かな王のせいで全て手遅れになってしまった。自分さえ王でなければ・・・

 

 

『全く、本当は手を出す資格なんてないんだろうけど、これではあまりにもモルガンばかりが一方的過ぎる。だから、見ていられないだろう君たち。そう思うのならもう少しだけ王に手を貸してあげようとは思わないかい?なあに、元より手伝うことには慣れきってるんだ。我らが王を、最後まで面倒みてあげようじゃないか』

 

 

 しかし、心が折れようとした彼女の頭に、いくつもの声が響いてくる。それは・・・この騒乱の中で散っていった、もしくは離れたどこかへと行ってしまった円卓の騎士たちや兵士たち、その他にも自分を支え続けたキャメロットの人々の声だった。

 アヴァロンXの使用後、アルトリアは周囲の人間の心が四六中聞こえてくる後遺症に悩まされた。幸い、マーリンの秘薬により症状は治まり、その後は問題なく過ごせるようにはなった。今聞こえてくる声はその時のものによく似ていた。

 彼らは言う、確かにあなたは王に相応しくはなかったかもしれない。けれどそれを承知で自分たちはあなたを支え続けた。なぜなら・・・あなたの勇気ある行動こそ自分たちの道標であり、常に先頭に立ち続けたあなたの声に私たちもこの国を守る勇気を与えられたのだから、と。

 アルトリアは、ようやく自らの始まりを思い出し、自らの勘違いを恥じた。王に相応しくないなど初めから分かっていた。自分は・・・ただ勇者になりたかっただけだった。人々を助けたいだとか、国を救いたいだとか考える前に、何も考えず勇敢な英雄の姿を追っていただけのただの馬鹿だった。それでも、皆に求められるのが嬉しくて分不相応でも期待に応えようと走り続けた。そんな成り行きで王になってしまった馬鹿に希望を見出してくれた人たち。自分は彼らのおかげでやっと王としてあれたのだ。そんな彼らにこんなことを言われてしまえば、このまま無様を曝すような真似を続けるわけにはいかない。

 国は亡びた、だけど不甲斐なく、支えられるばかりであったとしても、王を名乗った以上その責務だけは最後まで果たさなければ・・・皆が信じた勇気ある王を・・・最後まで張り続けなければ・・・!

 

 

 

 結ってあった髪がほどけ全身に血の滴を滴らせボロボロの体を竜の心臓から送られる魔力で継ぎ合わせ、アルトリアは最後の手段としてエクスカリバーとロンゴミニアドを重ね合わせると、次の瞬間エクスカリバーを起点として遥か頭上の雲にまで届かんばかりの光の大剣が形成、周囲に光の渦を散らしながら光輝いた。本来のエクスカリバーの黄金の光ではなく、白銀の光。槍の魔力を聖剣に纏わせたマーリンから絶対に使用するなと固く禁じられた、アルトリアの最後の兵器が解放される。

「終わりですモルガン。もう・・・この国の未来に私もあなたも必要はない。ここで私たちの全てを終わらせて、この宿縁に終止符を打ちましょう」

 強大な力の奔流を押さえ込みながら、アルトリアは静かな声で姉だったものへと告げる。

『ナメルナァーーー!!ワタシハオワラナイ!ゼンブゼンブゼンブダイナシニシテヤルマデワタシハァ!!』

 元の邪龍の力に飲み込まれたのか、もはやそこに理性の光は存在せず暴走しアルトリアに向かって突進してくる邪龍モルガン。最後まで分かり合うことが出来なかった異母姉の姿にほんの刹那悲しみの感情を覚えたが、すぐに決意の意思が戻り手にした剣を上段に構える。

 光の超大剣と化したエクスカリバーはますます輝きを強くし、同時にアルトリアの体も徐々に剣から発せられる光の色に染まっていく。この剣の力は、触れたものを全て魔力の光に変換する。それは使用者自身も例外ではない。自分の体が別のナニカに置き変わっていく感覚に恐怖の感情が襲ってくるのを止められない。元々彼女は勇敢な気質のものではなかった。それを皆の力と物語の勇者への憧れで上書きし蛮勇を気取っていた鍍金の勇者だった。力尽き果てそうであり、たった一人で邪龍を打ち倒そうとするにはこれしか方法がないとはいえ、怖かった。手足が震え、歯が我知らずカチカチと鳴っている。

 

 それでも、彼女は今もその場に立ち続けられている。なぜなら・・・

 

 

『勇気を・・・信じて』

ランスロットの声が聞こえる。

 

『勝ってください』

ギャラハッドの声が響く。

 

『負けないで』

ガウェインの声が力を与える。

 

『最後までお供することが出来ず申し訳ありません、王よ。ですが、どうかあなたの御心のままに・・・』

アグラヴェインの不甲斐なさを滲ませながらも王を気にかける声が伝わる。

 

『勇気は・・・不滅です』

ベディヴィエールの声が支えてくれる。

 

『行ってこい、勇者馬鹿。行って全部終わらせて・・・さっさとこっちに来ちまえ』

ケイの素直じゃない温かな言葉に胸が熱くなる。

 

 多くの騎士たちや兵士たち、キャメロットの仲間たちの声が、今も自分の心を震わせている。一つ一つ声が響く度に、体の震えが消え、恐怖の嵐の先へと一歩また一歩と心が進んでいく。

 

『父上・・・・・』

 そして最後に、モードレッドの、どこか躊躇いながらの、それを振り切って叫ぶ勇気の声が前に進ませる!

『やっちまえーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』

 

 その一振りで自身の全てが消滅する。しかしアルトリアは去来する全ての感情を突き破ってその剣を振り下ろした!

 

 

「私は・・・一人じゃないっ!私たちは・・・・・・・・・・・・・・一つだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 背中を支える温もりに応えるように、裂帛の気合と共にアルトリアの光の剣がモルガンをその恩讐諸共に光の粒子へと消し飛ばした。

 

 

 

 

 その日、全てを白く、白く染め上げる遥か遠い剣線の輝きが、ブリテンの大地を染め上げた。そしてそれ以降、アーサー王の姿を見たものは、誰もいない・・・。

 

 

 

 

 

 

 後にアーサー王の不在に悲しむ国民たちの前に隻腕の騎士ベディヴィエールが現れ、次の言葉を伝えた後どことも知れず消え去ったという。

『王はその身を犠牲に血で染め上げられた大地の穢れと共にこの世を去られた。ですが、悲しむことはありません。この地ブリテンこそかの王の体となり、この地に生まれ来るあなたたちもまた一人一人がアーサー王の一部です。だからブリテンに生きる者たちよ、忘れないでください。王の勇気はあなたたちに確かに受け継がれているのだと。どんな苦難があろうと勇気をもって進みなさい、キャメロットの騎士たちやアーサー王・・・いや・・・勇者王の示した勇気ある誓いとともに・・・』

 

 こうしてアーサー王はブリテンの伝説として語り継がれる存在となった。常にこの地ブリテンと共にありブリテンに危機が迫る時円卓の騎士たちと共に現れる守護の王、『勇者王アーサー・ペンドラゴン』と・・・。

 

 

 

・どこにでもありどこにもない、讃えられた魂が記録される幽界にて

 

 お疲れさまでした王よと、皆に言われた。

 

 ありがとう、だけどまだ終われないと、私は答えた。

 

 それはなぜ?と、皆が言った。

 

 私は勇者王だから、これからもブリテンを見守りたい。それに・・・・と、私は口を一旦閉ざす。

 

 それに?と、皆が問う。

 

 もっと冒険がしたい!もし次の機会があれば勇者としての力を奮い、もっと色んな場所を駆け回りたいです!と、私は言った。

 

 そうですか・・・・そうですか・・・・・と、皆は呆れながら、どこか変わらない私の姿を見て眩しそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

・いつかどこかの場所、英雄たちが相争う闘争の地にて

 

「サーヴァント『セイバー』、召喚に応じ参上した。まず初めに聞こう。召喚者よ、あなたは勇気ある者ですか?」

 ブリテンの守護神『アルトリア・ペンドラゴン』の戦いは続く。そこに勇気ある呼び声がある限り・・・。

 

 

 

 

 

次回予告

 君たちに最新情報をお伝えしよう。英霊の座で眠る勇者王アルトリア。しかし突如として人理が崩壊、彼女は十字軍遠征が起こった時代のエルサレムに召喚される。そこで彼女を待ち受けていたのは獅子王率いる円卓の騎士たちの苛烈なる襲撃であった。不完全な召喚により全力を出せないことでついに倒れる勇者王。勇気潰える時かと思われたその時!円環の輝く空より世界最後の勇者たちが降臨する!

 

            次回!勇者王アルトリアNEXT!

                「人理を守る者」

                君も最終再臨承認!

 

             これが勝利の鍵だ!!〈メジェド様〉

 

 

 

クラス:セイバー

真名:アルトリア・ペンドラゴンまたは守護神キャメロット

イメージ:初期霊基:獅子王の鎧にアルトリアオルタ(ランサー)の兜(白銀)を被ったアルトリア(セイバー)。

第二霊基:兜が外れた獅子王鎧のアルトリア(セイバー)

第三霊基:獅子王の兜を被り、円卓の騎士たちの各宝具が鎧に組み込まれたフルアーマー勇者王。右腕にフェイルノート、左腕にロード・キャメロット、右足にガラティーン、左足にアロンダイトが形状を変化させて組み込まれている。その他の円卓の宝具も状況に応じて組み替え可能。

最終再臨(イラスト):第二霊基の姿の勇者王を中央に全円卓の騎士たちがキャメロットを背に立ち並ぶ姿。アルトリアの表情は満面の笑顔があり、他の円卓たちはどこか疲れた様子はあるものの笑みを浮かべたものとなっている。

 

解説:勇者成分が過剰に加わった結果、超熱血勇者馬鹿の勇者王となったアーサー王であり、ブリテン島の守護神。そのため英霊の側面だけでなく神霊としての側面も持ち合わせている。完璧な王ではなく圧倒的に不完全であるがゆえに多くの人々に支えられた王。後に語り継がれる伝説の影響によりその身にキャメロットの自身を支えてくれた人間たちや円卓の騎士たちの意識も内包されており、多重人格ならぬ多重霊格者となったキャメロットの擬人化。本家アルトリアよりも脳筋で単細胞だが人の気持ちには聡くキャメロットでの評価は悪くなかった一方、人に共感しやすい性質から問題を大きくするトラブルメーカーな面もあり、マーリン以上にいい意味で厄介者に思われていた模様。政治や戦略的面では本家より苦手としており、アグラヴェインが大っっっっ変苦労した(戦況的不利をアルトリアのデタラメ戦力を上手く誘導して覆してきたなど)。

 人間であることを捨てられなかった少女。その本心はただ英雄に憧れていただけのどこにでもいる欲深くただ善良な人間だった。好きなものはマッシュポテトだった。

 

宝具1:猛り進め円卓の騎士たちよ(ナイツオブラウンド・オーバークロッシング)

 このアルトリアが信頼し力を預け合い、心を共有した騎士たちとの絆と勇気の宝具。邪龍ヴォーティガーンを倒す為一つとなり倒した逸話から宝具に昇華した。その身に宿している円卓の騎士たちの霊格を一時的に顕現させ対象をコンビネーション攻撃する対城宝具。(元ネタイメージ:FF7に登場した召喚獣ナイツオブラウンド×源頼光宝具演出)。完全開放状態でアルトリアを支持した騎士たちや一般の兵たちも召喚できるが、召喚時の魔力が全てアルトリアが負担することになるので王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)の劣化版ともいえる。そのため通常は円卓のみの召喚に留めている。

 

宝具2:辿り繋いだ勇気の光(エクスカリバー・ファンタズマルライト)

 アルトリアの最終兵器。本来は星を守ること以外に完全な威力を引き出せないエクスカリバーにロンゴミニアドを重ね合わせ都市一つほどに亘る光の仮想大剣を形成、攻撃対象とその周辺をマナの光に変換、消滅させる対界宝具。アルトリアの魔力を注ぎ込む必要はなく槍からあふれる魔力を纏わせているため魔力負担はないが、即席の宝具であるため兵器としての安定性は極めて低いが、瞬間的に最大の破壊力を引き出すことが出来る。相手を強制的に星の裏側へと連れて行く誘拐宝具ともいえる。これの使用の際、攻撃の余波で彼女自身も肉体をマナへの変換に曝される為、使用後は彼女自身も現実世界から消失する。勇気が試される最大の瞬間としての死への恐怖に打ち克つこと。彼女は生涯における最大の試練を乗り越えたことで宝具としてこれをしようする際は必ず消滅しなければならない誓約を背負うこととなった。アーラシュのステラやジャンヌダルクのラ・ピュセルと同様の自爆宝具に近い。使われたのは第二の邪竜として立ちはだかったモルガンとの最終決戦時のみ。(元ネタ:ガオガイガー必殺兵器「ゴルディオンハンマー」)

 

 

 

 

 

 




 自分の拙い妄想をここまで見ていただきありがとうございます。
 ぶっちゃけヒロインXとリリィがフュージョンしてシリアス成分増し増しにした感じと書き終わってから思った。どうしたらアルトリアにナイツオブラウンドが使えるようになるかを考えた結果「完璧な王」じゃなく円卓が一つになるほど「人間味のある手のかかる王」になればいいのではという妄想からこんなのが出来ました。ガオガイガー要素は完全に自分の趣味。マーリンが本家同様アルトリアを気に掛けているのは、本当はある程度国が安定した段階で次の完璧な王にすり替えようと画策して彼女に対してほぼ遊び半分の付き合い方しかしてこなかったが逆に人間味のある彼女に絆されてしまったということで。モーさんはこんな王だったので確執はもちろんなく、逆に感化されて粗暴ではあるものの優しい心根の持ち主になったことが悲劇へと繋がってしまったという感じ。
 最終決戦の時ロンゴミニアドそのまま使えば良かったんじゃないかって?・・・・オーバードウェポン的デカイ剣で叩き斬るシーン書きたかっただけです。
 続きは考えていない模様。


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勇者王アルトリア・ペンドラゴン(カルデア召喚編)&小ネタまとめ

 まさかここまで反応があるとは思いませんでした(゚Д゚;)また書きやすいネタを拾って投稿してみました。相変わらず幕間のエピソードの拾い集めですが、よろしければ見て行ってください。
※運営から注意受けたのでタグにクロスオーバーを追加しました。投稿マナーに十分気をつけます。


※本来のイメージは第六特異点人理修復後にストーリーガチャ追加の流れですが、ピックアップ召喚での登場というIFの展開での設定。大体第四か第五特異点のあたり。

 

・人理継続保障機関カルデア 召喚ルームにて

「勇者王アルトリア・ペンドラゴン、召喚に応じ参上しました。まず初めに問いましょう。あなたは、勇気あるものですか?」

カルデアのマスターにとっていつもの召喚タイム。七色の輝きと共に現れたのは・・・見飽きるくらい見たアルトリアさんだった。頭部のランサーアルトリアっぽい竜の意匠の兜をを外し、予想通りのアルトリア顔を曝した彼女は開口一番にそう藤丸立香少年に問いかけた。

「・・・えーと、初めまして。今回はどのアルトリアさんなのでしょうか?」

 サーヴァントは英霊の座にある本体からある程度召喚された時の知識を共有している。勇者王という聞き慣れないフレーズに違和感を覚えながらその前提を踏まえて話しかけた立香だったが、すこし相手の様子がおかしい。まるで初対面かのような反応で新しいアルトリアは立香の対応にむくれ再度問いかけた。

「・・・もう一度聞きます。あ・な・た・は!勇気あるものですか!」

「はい!!あっありますあります!」

「そ、そうです!先輩はそれはもう戦場に裸で飛び込むのなんか余裕なくらいの鋼メンタルの持ち主です!!」

「マシュ!?」

 あまりの剣幕に驚き反射的に答える立香。それに便乗し隣で召喚を見守っていたマシュもどこかピントのズレたフォローをする様子に二人を見ていたアルトリアはその返事に満足げに納得した。

「なるほど!マスターは勇気溢れる方であることはよく分かりました。良いことで「セイバー死すべし慈悲はない!!」」

 例のごとくカルデアの必殺セイバー仕事人がアンブッシュしてきた。勇者王の左横の影となった空間から跳躍し回転しながら手に持つ聖剣を叩きつけようと迫ってくる。

「ちょっ!!ヒロインX察知するの早過ぎない!?」

 実は立香たちが召喚ルームに入った段階で対セイバー限定の直感が無駄に働きずっと部屋の中でスタンバってたという話は本人以外にはどうでもいい話だろう。また一人アルトリアがヒロインXの手によってマナプリズムへと変換されてしまうのか?折角の星4以上のサーヴァントが消えてしまうと俗っぽいことを考えながら令呪で止めようとしたその前に、ヒロインXの聖剣は新アルトリアが左腕に掲げた黒い盾によって完全に防がれた。

「・・・いきなり斬りかかるとは勇気がないのですか?どうやらその装いから察するに・・・別の可能性の私でしょうか?ですが、勇者でないものに私を倒せるとは思わないことですね」

 敵対者には慈悲はなし。先ほどの親しみやすそうな雰囲気から一転、彼女の体を中心に重々しい威圧感が周囲へと拡散された。英雄王に近しい格の違いが本能として察してしまうレベルの王気が室内を満たした。

「うむむ!?なんという覇気!!いや怒気?私とこのセイバー、どうやら世界観が違い過ぎると見ました!ロマンスではなくヒャッハーな感じはそこはかとなく感じられます!勝てない相手には即時撤退!次の夜道では気を付けることですね、破壊神な私!」

 あれ?これギャグ的ノリで生きては帰れないのではと本能で察知したヒロインX(ギャグ時空存在)勇者王(超勇者神話存在)から戦略的撤退。ドアを蹴破り退散していった。一方、新アルトリアは脅威が去ったのを確認するとさほど気分を害したわけでもなくむしろ称賛するかのように笑みを浮かべていた。

「逃げましたか!ですが、絶対に倒すと思いながらも自分と相手との力量を量り苦渋の撤退を選ぶ・・・・実に勇気ある決断です、気に入りました!」

 一連の流れに置いてけぼりになっていた立香とマシュはしかし、ヒロインXのいつもの恒例行事は目に入らず新アルトリアの一点を見つめたまま驚愕を隠せなかった。思わずマシュは彼女に問いかけていた。

「あ、あの!先ほど左腕に顕現させていました宝具って・・・」

 先ほどの王気を霧散させ、新アルトリアは笑顔で自慢するように先ほどの盾のことを説明した。

「ああ、これですか?私の誉れある勇者の一人であるギャラハッド卿の宝具『ロード・キャメロット』です!彼の守りは円卓一!私はともかく私の内にある彼の心に一転の曇りがない限り(キャメロット)を傷つけられる存在はいません!」

「ギャラハッド卿の宝具ってその形マシュの・・・えと、ちょっと待って、アルトリ・・・うん、紛らわしい!勇者王さんはいったい幾つ宝具を持ってるの?」

 なんか色々すっ飛ばして判明してしまったマシュに力を与えた英霊の正体も驚愕だが、なにより新アルトリアがエクスカリバーではなく円卓の宝具を使用していたという事実から立香は嫌な予感を感じながら新アルトリア改め勇者王に聞いてみた。

「宝具ですか?個人所有のものですとエクスカリバーとロンゴミニアドと所蔵している幾つか、それから我が円卓の騎士一同のもの一式ですが」

「・・・・・ついにパーフェクトアルトリアが来てしまったかぁ」

 アルトリアはついにインフレを重ねて完全体にまで手を届かせてしまったのかとあまりの宝具フルセットの様相に何かの到達点を垣間見たかのように逆に冷静になってしまう立香。

「あまり期待されるほど凄いことではありません。マスターが善良な人間であるから詳しく話しますが、あくまで宝具の性能を引き出せるのは所有者本人に他なりません。供給される魔力量のことも関係しますが、英霊としての今の私個人が各々の真名解放出来たとしても宝具本来の性能の50%までが無茶をしても限界でしょう。それと、エクスカリバーとロンゴミニアドなのですが・・・宝具として使用すると死にます」

「死ぬの!?」

「はい、死にます。英霊なので消滅するだけで済むのですが、戦いにおいて非効率的過ぎますので使用を命ずるのであればここぞという時にお願いしますね」

「いやしないから!?そんな命令さらっと言わないから俺・・・って、勇者王さん分かっててからかってますよね」

 途中からニヤニヤし出した勇者王に慌てていた立香は半目で睨む。

「すみません、随分と純粋そうでしたのでついやってしまいました・・・ケイ兄さん、真似したからってむくれないでくださいよ。いつの話をしているんですか」

 突然何もない虚空に向かって喋りかける勇者王。立香とマシュが疑問符を浮かべるみるとコホンと咳払いして気を取り直すとマスターを正面に見据えた。

「王としての責務は生前に全うしました。今の私は冒険に憧れるただの勇者のつもりです。あっもちろん世界を救うことも立派な仕事なので蔑ろにはしませんよ」

 そう言って、右手を前に出し、

「そういうわけで、ここでは新人となりますがよろしくお願いしますね、マスター」

 立香が見せてくれる何かに期待するような笑顔を浮かべた。他のアルトリアとは違う「勇者王」という称号への疑問が解決しないままであったが、それでも分かることはあった。この短い時間ではあったけど、彼女は自分を信頼し期待してくれている。今はそれで十分だ。

 出された右手に自分の右手を重ねた。

「こちらこそよろしく!ええと、じゃあこれからはなんて呼べばいいかな?」

「勇者王のままで構いません。ここには多くの英霊がいると言うのに恐れ多いですが、その方が分かりやすいでしょう。どうやら、別の私というのも多そうですしね」

はははと苦笑いを浮かべる立香とマシュに対し、そう言って楽しそうに笑う勇者王アルトリアだった。

 

・ヒロインX襲撃時の心境

 本音:ありがとうございますギャラハッド!気づいてはいたのですがなんかおかしなスキル特性的に面倒くさそうだったので対応を中の騎士の皆に丸投げしましたけど、大丈夫だったでしょうか?

 中の騎士たち:王がまた変な方向に暴走するから余計なことするな!!っと実感のこもった怒り(王気)。

 

 

 

・英雄王と勇者王

 

「ふん、またぞろ新しい騎士王が現れたと思えば・・・随分と担いでもらっているものだな。王たるものが臣下に平伏し神輿を担がせるとは・・・・ふん、容姿は我好みだというのにこれならばまだ騎士王の方が愉しませてくれる」

「・・・あなたの言う通りです、英雄王。私一人はきっとここにいる私の中でも一際弱い。彼女たちは一人でも立ち上がれるだけの覚悟を持っているのに対し、私のそれは人に依って立つことでしか真価を発揮できないものでしょう。しかし、それでもこれが私の王道です。私の中にいる騎士たちが私に失望しない限り、どれだけ情けない様であろうと王を張り続けます」

「・・・精々励むがいい、民の象徴となった王よ。その輝きは貴重な宝石には程遠いガラスのようにありふれたものだが、気まぐれに摘まむ程度にはなかなか見応えがありそうだ」

 

・裏切りの魔女と勇者王

 

「あら、また新しい騎士王様?あの子も随分とバリエーション増えたけど今度の子はあまり露出が少ないのね?ねえあなた、ちょっと新しい服を作ったんだけど試着をお願いしてもいいかしら?」

「なぜ女性ものの服など私に着せようなどと思うのですか?そういった服は私ではなく淑女の皆さんにお願いするべきでは・・・」

「大丈夫よ〰。他のアルトリアと同じ素材自体はとってもいいんだから。ちなみになんでそんなに自信なさそうなの?」

「元々着飾る趣味はありませんでしたが、生前いつもの出かける時の男物の服装から一度だけ気の迷いで町娘の格好をして城下町に出てみました。すると『アーサー王が女装して町を駆け回っている』『アーサー、それ女性の着る服なんだぞ変なのー』『王様〰酒飲み過ぎだぜー』などと皆に言われ、ケイ卿からも「今は必要ないから預かっておく」と城に戻ってから服を隠されてしまいました。それ以来二度と着るものかと意固地になっていましたが・・・・」

「あ、あなたの国どんだけ目が腐ってるのかしら!?(あとこの子の兄どんだけ回りくどいことしてるのよ。王じゃなくなったら着れなんて意味わかるわけないでしょうが!!)」

 あまりにも男性的振る舞いが堂に入ってしまい女性姿の方に違和感を覚えられてしまった勇者王だった。

 

 

・クランの猛犬と勇者王

 

「おう、あんたが勇者王ってやつか!俺は・・・」

「クーフーリン、アイルランドの光の御子・・・。はっす、すみません!話しかけられたのに遮るような真似をしてしまい失礼しました」

「へえ、どうやら俺のことをよく知ってるようじゃねえか。だが、お上りな嬢ちゃんにしちゃあ随分とギラギラした目をしているじゃねえか」

「・・・・ええ、当然です。幼き頃はあなたの英雄譚を何度も読み返しその在り方に憧憬を覚えていた時期もありました。ですが今の私は・・・叶わずとも願った思いがありました」

「へえ、そりゃあ何だ?」

「クーフーリンと戦ってみたい。生前は夢見るだけで終わったものが今こうして目の前に存在しているのが嬉しくてたまらない!今、時間はありますか?」

「・・・くはははは!何だよ、見た目は騎士王のまんまだけど中身はむしろ俺好みじゃねえか。いいぜ、シミュレータルームに来い!殺し合いとまではいかねえが、お前との死闘は楽しめそうじゃねえか」

「ええ!私がどこまで登れたのか、その証を立てさせてください!」

 かつて憧れた物語に謳われた英雄。英霊の末席に加わり遂に辿り着いたその先、彼女はかつて夢想するだけだった英雄との対決に胸躍らせた。

 

 

・正義の味方と勇者王

 

カルデア食堂にて

「エミヤと言いましたか。あなたの料理の味はとても素晴らしい。かつてのキャメロットでもこれほどのものは味わったことがない。ですが・・・あなたには決定的に欠けているものがある」

「ほう、やはり新しいアルトリアともなればおかしな偏食属性が追加されるのは予想していたが、さて何がご不満なのでしょうか、勇者王様?」

「手が込み過ぎています!!聞けば人理焼却のよって外からの供給は絶望的であり施設の備蓄から捻出しているというのにこのような手間を掛けた品を出すとは何事ですか!マスターやここの局員の皆さんが無理せずお腹一杯になれる料理といえば・・・やはりこれです!!」

「そ、それは!?」

 その時エミヤはどこかの時空で似たような経験をしたような既視観を覚えた。

「マッシュポテトです!愛好会のガウェイン卿も垂涎、私の得意料理であり大好物です!生産性もよくこれならお腹一杯食べても大丈夫!!」

 満面の笑みで山盛りのマッシュポテトを差し出す勇者王。満腹に成りさえすればそれでいい。そのアピールにエミヤのプライドが刺激された!

「すまないが、少し黙って私の話を聞いてくれないか?」

 その後、あまり手間暇をかけずとも出来る数々の料理を紹介された井の中の蛙であった勇者王は敗北を認め悔し泣きしながらもマッシュポテトへの愛を捨てきれず、究極のマッシュポテトを生み出すべく暇さえあればエミヤに頭を下げ料理指南を受けているという。

 

 

・騎士王と勇者王

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 時空を異にする二人のアルトリア。カルデアの談話スペースで偶然鉢合わせた二人は方やぎこちなく、もう一方は興味深々にお互いのキャメロットについて話し出したのだが、段々と雲行きが怪しくなり、最後には互いに口を閉じたままの膠着状態に陥っていた。それを偶々目撃したセイバーリリィはどうにかしなければと慌ててどこぞへと駆けていった。そして今、ついに開けてはいけない扉が開かれてしまった。

「私はあなたのことを受け入れられない」

「私はあなたのやり方が納得出来ない!!」

「独り善がりの蛮勇で暴れまわり騎士たちに尻拭いしてもらうなどやっていることが蛮族と変わりがないではないですか。大局でものを見れていれば兵たちの消耗は減らせたはずです」

「完璧な王?欠点の無い人間なんてありえません!誰もが欲を持ちそれゆえに間違いを抱えてしまうのが人じゃないですか!理解されないやり方を貫いてるんじゃあ騎士たちが戸惑ってしまうのも当然ですよ!どうしてもっと人に歩み寄ろうとしなかったのです!?」

「疲弊した国に余裕などなかった。全てを効率的に迅速に行わなければ何もかもが手遅れになる。あなたの余分な行いでどれ程の負担を民に強いたと思っているのですか」

「民に頭を下げ、窮状を打ち明け、マーリンや騎士たちも含めて打開策の知恵を出し合いました!確かに行いとしては遅いものとなりましたが、民は理解し手を取ってくれました。あなたは・・・確かに私なんかよりも正しい執政を行ったのでしょう。ですが!そこに民の意見が何もないじゃないですか!民を思いながら民を無視しているなんて、そんな押し付けられた善意では誰も納得なんて出来はしませんよ!」

 騎士王は静かな口調で苛立ち気味に、勇者王は熱くどこかモヤモヤした感情を持て余して口論が続く。

 次第にボルテージの上がっていく二人の会話。しかしここで救いの百合が到着する。

「は、はい!そこまでですよお二人とも!クッキー焼いてきましたので皆で一緒に食べましょう!」

 少しビクビクしながら笑顔で机の上にお菓子を置きそそくさとその場を後にするリリィ。彼女の差し入れで水を指された二人はしばし黙々とクッキーを頬張る。互いが熱くなりすぎていたことに気づきしばし沈黙した空間が続く。暫くしてから騎士王が口を開いた。

「・・・・すみません、つい熱くなってしまいました。つまらない嫉妬です。別の時空とはいえ私が得られなかったものを持っていたあなたに対して、自身でも分からないほど動揺していたようです。今さらあなたにどうこう言う資格などないというのに・・・」

「・・・私の方こそすみません。勇者らしくない女々しい嫉妬心は私にもありました。私なんかよりもずっとなんでもこなせるあなたに、頼らなければ何も出来ない自分を比較してしまいつい・・・・。この話はとりあえずここまでにしておきましょう。・・・最後に聞かせてくれませんか?」

「何ですか?」

 勇者王は俯き、しばし何か迷う素振りを見せた後、意を決して騎士王に問いかけた。

「王になったことを、後悔していませんか?」

 騎士王は迷うことなく懐かしむかのような笑みをもって答えを返した。

「はい。悲しいこともたくさんありましたが、王になったことを自身に責める気持ちはもうありません。素敵な出会いも沢山ありましたから。あなたはどうなんですか?」

 勇者王は少しの間逡巡し、いつもの快活な様子は鳴りを潜め弱気な様子でポツリポツリと語った。

「情けない話ですが、未だにもっと相応しい王がいたのではないかと迷ってしまうことがあります。元々王に向いていない自覚がありましたから・・・。ですが、騎士たちや民たちは今も私が王であることを誇りに思ってくれている。その期待に応えたいと舞い上がって毎回そんなつまらないことがどうでもよくなってしまいます。あなたよりも単純なんですね、私。だから・・・後悔の気持ちは消えることはありませんが、逃げはしません。私はこれからも未完成な王としてあり続けますよ」

 今まで勇者王としてあるために隠してきた未熟な本音を曝け出したせいか、その表情はどこかスッキリしたものに騎士王には見えた。

 同じ民を思う心を持ちながらその根本の部分を違えた二人の王。その方針が重なりあうことはないだろうが、王であることを誇りにしている点を同じくした二人の苦笑混じりに笑い合う姿をリリィは羨ましそうに通路の影から見つめていた。

 

 

 

●勇者王別クラス設定

クラス:クラッシャー

真名:勇者王アルトリア・ペンドラゴンまたは破壊神ブリテンの赤き龍

第一霊基:ランサーアルトリア(オルタ)の兜に真っ黒になった獅子王の鎧、背中にカラスの羽を背負ったフルアーマー勇者王。胸の中央には黄金に輝く獅子の意匠が飾られており、鎧全体が刺々しい様相となっている。

第二霊基:兜が取れ、超然とした素顔を見せる後ろ髪をほどいたアルトリア。二の腕や腿の鎧が外れ獅子王のものと似た赤いインナーが見え隠れしている。

第三霊基:鎧が全解放され、赤いインナーだけの姿となったアルトリア。手足には鱗が生え爬虫類のような形状へと変化、その背中には龍の翼、そして頭部に角が2本対称に鋭く伸びている。体には赤い紋様が脈動し、胸部インナーの中央に獅子の紋様が描かれている。右手には白銀の光が迸る聖剣が握られている。彼女の表情は荒々しく、どこか暴力的な笑みが浮かべれらている。

第四霊基(イラスト):ブリテン島の草原の中央で聖剣を突き立て泰然と一人仁王立ちする赤き姿のアルトリア。赤き龍の化身は今も島の守護者として島を害する者を阻み遥か彼方を見渡している。

 

 

解説:辿り繋いだ勇気の光使用後の消滅を回避するため、「人の形をした龍」である自身を反転させ「龍の形をした人」へと変貌した姿。人として死に、デミドラゴンとして新生するという過程を経ることで誓約の問題をクリアしている。あり方が大きく変わった為、セイバーから特殊クラスである「クラッシャー」へと変更。(クラス別攻撃倍率はアヴェンジャー以外のクラスに対し攻撃力1.5倍、アヴェンジャーに対しては弱体化し攻撃力0.5倍となる。他クラスからの被ダメージ倍率は補正なし。ただしアヴェンジャーからは2倍となる。民の為に破壊者となった彼女には敵側の民から生じた復讐者の刃が致命の効果を示す)

 人である限りマナの光への変換に耐えられず消滅する運命から逃れられない。そこで神霊としての側面をより強くし、人以上の幻想種たる龍としての在り方を顕現させることでそれに耐えられる強力な霊基へと変貌した。この姿でいる際、龍としての本能、破壊と殺戮衝動が強くなり暴走の危険を孕んでいる為、内にいる騎士たちが全力でアルトリアに働きかけ制御している。この制御にアルトリアは全く関わっていない。そもそもそんな細かい制御が出来る器用さが彼女にはない。よって彼女は思うがままに龍の威を奮う。時には羽目を外してやり過ぎてしまったりするかどうかは中の人たちの頑張り次第。彼女の中で今日もブラック企業キャメロットの戦士たちは超過勤務を強いられるのであった。

 戦い方はセイバーの頃とは違い徒手空拳。鎧のときは籠手と脚甲で殴る蹴る、龍の手足のときはその鋭い爪で切り裂く戦法を使用する。聖剣と聖搶は時々顕現して使用するが基本は宝具解放するまでは下げられたままである。

 勇者王の歴史において彼女はブリテンの守護神として語られる一方で、敵対者となった者たちの伝承においては敵となった者に対し一切の容赦なく蹂躙する嵐のごとき破壊者、暴龍の化身として表現を変えて語られている。この姿の彼女はそうした逸話の要素も混じっている。

 この姿の最大の危険は神霊としての側面が強くなり破壊に通じる自然現象を体現するシステムに近くなること。自我が神性に飲み込まれ、下手をすれば第六特異点の別の可能性の神霊と化したアルトリアの再来となる危険を孕んでいる。だが、彼女に限っていえばそれは絶対にあり得ない。なぜなら彼女は一人ではなく皆で一つの勇者王。自身と共にある勇者たちがいる限り、彼女は何度となく堕ちかけようと彼らの手に引き上げられ這い上がり、『人間』にしがみつく。神ではなく人に縋った勇者王は、人ではないものになる方がずっと恐ろしいのだ。

 

 

●宝具詠唱イメージ

辿り繋いだ勇気の光(エクスカリバー・ファンタズマルライト)

 勇者たちよ、赤龍因子全力制御開始!これより私は勇者の身を捨て、赤き破壊の龍となる。しかし勇気は不滅。誓いがこの胸にあるかぎり、獅子たる私はここにある!神威召喚!人龍反転!(鎧を全パージ、人である勇者王の姿から第三霊基の竜人の姿に変貌)

 聖剣・・・・接続!星の祈りを踏みにじり、私は人の意に依りてこの力を振るう。最果ての輝きよ、安らかな終わりの微睡みへと導け。

辿り繋いだ勇気の光(エクスカリバー・ファンタズマルライト) !! 光に、還れーーーーーー!!!

 

猛り進め円卓の騎士たちよ(ナイツオブラウンド・オーバークロッシング)

 勇者たる騎士たちよ、共にあり、共に進め。全ての迷いは王たる私が背負い祓う。勇気ある・・・誓いと共に!!!猛り進め円卓の騎士たちよ(ナイツオブラウンド・オーバークロッシング)!!

 

 




 勇者王が着込んだので破壊神では脱がしてみた(おい)。予想以上に皆勇者王気に入ってくれてありがとうございました!Fate流行ってるのもあるけどガオガイガーも好きな人多すぎるだろ(誉め言葉)感想には全部目を通していましたが、筆不精なんで本投稿をもって返信に代えさせていただきました。ここから色々話を興すには遅筆過ぎるので書きやすかった話とネタだけを投稿しました。真面目に獅子王VS勇者王は妄想捗るんですが実際の文に興すのがなかなか・・・。またイメージが固まったら書いてみたいです。
 クラッシャーはもろにガオガイガーまんまでネタをブッコんでみました。第一霊基はもろにジェネシックガオガイガー、第三霊基は昔やったブレスオブファイアVドラゴンクォーターより主人公の竜人化した姿をイメージしています。(まあエリちゃんやらジークやら竜化の先輩が既ににいますが)
あと、破壊神バージョンは騎士王じゃ幼過ぎるし獅子王じゃ年ま(ゴホゴホ)なので間を取って17から20くらいのアルトリア(身長も間をとった感じ)をイメージしてます。暴れるんならリーチがないと見栄えしない気がするという変な拘りでした。
 FF14のナイツオブラウンド・・・確かに第六特異点に通じる言い回しとかもあり凄いかっこいいですね!


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