神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる (とんこつラーメン)
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オープニング ~最初から予想外~

頭にふと思い浮かんだアイデアを気分転換に形にしてみました。

先の事は本当に分かりません。







 IS学園にある1年1組の教室。

その一番前の教壇の目の前と言う、ある意味では最強の特等席とも言える場所に『私』は座っていた。

目の前には緑の髪で眼鏡を掛けた副担任『山田真耶』先生が皆に自己紹介を促している。

 

って、いきなりこんなスタートじゃ何の事だか分からないよな。

取り敢えず、自己紹介からしましょうか。

え?誰にだって?そりゃ決まってるでしょ。

これを見ているアンタにだよ。

 

私の名前は『仲森佳織』。性別は一応『女』

どこにでも……は、いないか。

私は二次創作物で言うところの所謂『転生者』って奴だ。

普通に歩道を歩いていたら、いきなり車が突っ込んできてドカーン。

ハイ死亡…ってな感じだった。当時の記憶はもう曖昧になってるけど。

 

あ、こんな風に話してるけど、実は元『男』だったりする。

さっき『一応』ってつけたのはこの為。

もう面影とか残ってないけどね。

完全に死に設定だな…こりゃ。

 

で、死んだ筈の私が会ったのは、神を自称する謎の男だった。

そいつはいきなり、『こっちの不手際でお前を死なせてしまった。それは済まない。その詫びとして、お前を転生させる。って言うか、転生しろ』と言ってきた。

こんな場合って普通は転生特典とかがあると思うだろ?

ところがどっこい。

私は有無を言わさず、いきなりのボッシュート。

こっちの意思とか完全無視よ。

落ちる瞬間に密かに『俺好みの美少女になって、最高の百合ハーレムを築いてくれよ。転生者君』って聞こえた。

これを聞いた途端、なんとなくだけど、転生後の展開が予想出来た。

こいつの意思によって俺は女にされるんだと。

だけど、こっちにはこっちの意思がある。

お前の好き勝手にさせてたまるか!

そう意気込んでいたんだけど……

 

いざ転生した世界は『インフィニット・ストラトス』の世界だった。

通称『IS』。

知ってる人は知っている、知らない人は覚えてね。

 

簡単に言ってしまえば、女性にしか動かせないパワードスーツと鈍感難聴系主人公が出てくる学園系のラノベだ。

 

私はそれなりに原作を知っているから、どんな風に行動すれば大丈夫か分かっているつもりだった。

だが、その考えは脆くも崩れ去ることになった。

 

別に女にされたことに関してはどうこう言うつもりはない。

変態じみた発言かもしれないが、前々から女性としての人生に興味があった。

だから、これは問題ないのだ。

私をTSさせる時に、どうやら神はこっちの精神にも介入してきたようで、気がついた時には無意識の内に女口調にさせられていて、一人称も『私』に変えられた。

女の体にはまだ抵抗感があるが、うじうじ言っても仕方が無いので、少しでも早く慣れるように今でも頑張っている。

 

……ここまではいいのだ、ここまでは。

問題は、この作品に登場する原作キャラたちだ。

 

簡単に言ってしまえば、ここは私が知っている『IS』の世界じゃなかった。

神によって都合よく改変された世界だった。

 

だって……この作品の大前提が無くなってるから。

それは、今私の隣の席に座っている女子を見ればよく分かる。

 

「ん?どうしたの?佳織」

 

私が見ると、向こうもこっちを見返してきた。

黒いセミロングの少女……彼女こそが、本来であればこの世界の中心人物とも言うべき原作主人公『織斑一夏』だ。

そう……あろうことか、本来なら男である筈の一夏が女になっているのだ!

しかもこれ、別に人体実験でこうなったとかじゃない。

最初からこうなのだ。

はい?なんで知っているのかだって?

そりゃ奥さん、だって私……この子の幼馴染ですから。

 

原作キャラと可能な限り関わり合いになりたくないと思った矢先、実はご近所さんでしたと言うオチ。

しかも、幼稚園、小学校、中学校と同じ所に行った。

勿論、その全てにおいて同じクラスだった。

これ絶対に神が仕組んだでしょ…。

 

一夏と知り合っているなら、当然のように彼女の幼馴染とも知り合っている。

 

窓際の一番前の席に座っている黒髪ポニーテールの少女『篠ノ之箒』

原作のメインヒロインである。

本来ならば一夏に惚れてここにいるのだが、一夏が女である時点でフラグの建ちようがない。

だから、この二人は普通の親友同士だ。

 

一夏が女になったせいか、原作前に起こる筈だったイベントがことごとく変わっている。

その一例を紹介しよう。

 

 

小学2年の時の箒のいじめ→そんなもの…最初から無かったよ。その後、普通に転校はしたけど。

 

小学5年の時に転校してきたヒロインの一人『凰鈴音』に行われたイジメ→それもありませんでした。

 

一夏の誘拐事件→そもそもモンドグロッソを見に行ってない。

 

鈴の告白→何故か私に言ってきた。マジで意味不明。

 

因みに、白騎士事件はちゃんと起こっている。

これだけは原作と同じだった。

世界的な大事件が起きて安心する自分に、心の底から辟易したのをよく覚えている。

 

こうして言っていくと、もう原型も無いな。

私の持っている原作知識は完全に役に立たないと考えるべきだろう。

 

そうそう、念の為に私の容姿も教えておこうか。

ちゃんと言わないと想像しにくいだろうし。

 

首元まで伸びた茶髪(天然)をうなじで結んでいる。

顔は……比較的整っている方だと思う。

自画自賛はしない。

 

「はぁ……」

 

一夏に付き添うような形でIS学園に入ったけど、これも絶対に神の策略だよなぁ…。

いや、もしかしたら束さん辺りの仕業も考えられる。

 

箒と一緒にいた関係で、あの人とも知り合っている。

なんでか一目で気に入られて、いつの間にか『かおりん』って呼ばれている。

あの篠ノ之束が私を気にいる理由が分からない。

絶対に神のせいだ。

 

「……おり」

 

筆記はそれなりに頑張った方だとは思うけど、実技はダメダメだった。

っていうか、今までISに関わってこなかったんだから、上手くいくわけ無いじゃん。

これが物語ならばご都合主義があるんだろうけど、今の私にとってはこれが現実。

現実にはご都合主義なんて存在しない。

あっという間にKOでした。

こんな結果なのに、どうして合格出来たのか…。

確実に誰かの意思が介入してるだろ。

 

「佳織!!」

「えっ!?」

 

な…なんだ!?

 

「なにボーッとしてるの?佳織の番だよ」

「番……?」

 

一夏に言われて一瞬だけ呆けてしまったが、目の前で泣きそうになっている山田先生を見て状況が分かった。

 

「あの~…今は『な行』まで来てて、仲森さんの番なんだよね?自己紹介してくれないかな?ダメかな?」

「あ…すいません」

 

もう私の番か…。

少しボーっとしすぎた。

 

慌てて席を立って自己紹介をしようと思ったが、さっきまで別の事を考えていたせいで頭の中が真っ白になってしまった。

 

「え~っと……」

 

まずは名前か…?

 

「な…仲森佳織…と言います。趣味は読書と音楽鑑賞です」

 

嘘は言ってない。

主に読むのは漫画とラノベで、聴くのはアニソンやボーカロイドだけど。

これも立派な読書と音楽鑑賞だよな?

 

「よ…よろしくお願いします」

 

居た堪れなくなって、急いで座った。

自己紹介なんて、こんなもんでいいよな?

 

私の番が終わり、また自己紹介が再開しようとすると、急に教室の扉が開かれた。

 

「自己紹介はもう終わったか?」

「あ…織斑先生」

 

一夏の実の姉にしてIS学園の教師。

そして、モンドグロッソ2連覇を達成した世界的有名人。

さっきも言ったが、一夏の誘拐事件が発生していないため、この人はちゃんと大会に優勝している。

けど、何故か原作と同様にドイツに行って、しかも引退している。

何が理由なんだろうか?

少なくとも、原作と同じ理由ではないだろう。

 

「悪かったな。色々と押し付けて」

「気にしないでください。これも副担任の役目ですから」

 

立派な心掛けだ。

 

山田先生がどいて、教壇に千冬さんが立った。

 

「私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。今日からお前達新人をたった一年で使い物になる立派な操縦者にすることが私の仕事だ。これから私の言うことをよく聞いて、よく理解しろ。分からない者には分かるまで、出来ない者には出来るまで指導してやる。15から16歳の間に十分に鍛えぬいてやる。別に逆らってもいいが、私の言う事には基本的にはYESで答えろ。いいな?」

 

……こうして生で聞くと、かなりの問題発言だよな…。

でも、下手に何か言えば被害をこうむるのはこっちなので、敢えて何も言わない。

 

千冬さんが発言した直後、教室は急に騒がしくなった。

キャーキャーうるさいな…。

耳がキンキンする…。

 

「相変わらず、お姉ちゃんは人気高いね」

「もう見飽きた光景だよな」

 

ここまで同性にモテる奴も珍しい。

絶対に学生時代は女子生徒からラブレターとか貰っていたに違いない。

 

「……毎年毎年、よくもまぁこれだけ馬鹿な連中を集めたもんだ。呆れを通り越して感心すらする。まさか、私のクラスにだけ集中させているんじゃないだろうな?」

 

そうかもね。

 

千冬さんの言葉は効果は無く、逆に彼女達の興奮が増す結果になった。

このままいけば声で窓ガラスが割れそうだ。

 

「静かに!!」

 

お、鶴の一声。

一気に静かになった。

 

「大丈夫か?」

「あ…はい」

 

何故に私にだけ?

隣には貴女の妹さんがいますよ~。

 

「元気があるのは若者の特権だが、何事にも限度があることを理解しろ。さもなくば、私が強制的に黙らせる」

 

出席簿を持って軽く素振りをする千冬さん。

あれが原作にもあった例の出席簿か。

あれってどんな材質で出来てるんだ?

相当に頑丈そうだけど。

 

「分かったら、自己紹介を続けろ」

 

千冬さんの言葉に従って、自己紹介が再開された。

その途中、ヒロインの一人である『セシリア・オルコット』も自己紹介をした。

高飛車な態度がムカつくから、ここでは敢えて描写しないけど。

 

(確かに綺麗ではあるけど、今はそれだけだな)

 

原作では一夏との試合を通じて惚れて、女尊男卑の考えを改めるようになった筈。

けど、ここでの一夏は女。

一体どうなることやら。

 

全員の自己紹介が終わり、また千冬さんの話が始まる。

 

「これでSHRを終了する。お前達にはこれからISに関する基礎知識を半月で覚えてもらう。その後に実習があるが、基本動作も知識と同様に半月で習得しろ。分かったならば返事をしろ。返事!!」

「「「「「はい!!」」」」」

 

立派なお返事。

これが返事だけでない事を祈ろう。

 

分かってはいても、初日からこうだと後が思いやられる。

これが当たり前の事だと分かっていても、不安は拭えない。

 

せめて、最初のイベントぐらいは穏便に終わりたい…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




完全な行き当たりばったり。

本気でどうなるか未定。


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プロフィ~ル

名前:仲森佳織(なかもりかおり)

年齢:肉体的には15歳。

身長:155cm

体重:言ったら殺す(by佳織)

スリーサイズ:シャルロット以上箒以下(自己申告)

趣味:読書(主に漫画やラノベ)と音楽鑑賞(アニソンやボカロ)とゲーム

好きな物:家族。友達や身近な人々。辛い食べ物。精進料理。

嫌いな物:空気を読まない人。しつこい人。甘い食べ物。脂っこい食べ物。

転生特典:赤い彗星を模倣する程度の能力

CV:東山奈央

 

変態で自分勝手な神によって、半ば無理矢理に近い形で転生させられた人物。

前世では男だったが、神の手によって女に変えられた。

その際に様々な所に手を加えられて、一人称を私にされた挙句、思考や仕草も女性寄りにされた。

この時点ではまだ転生特典は授かっていない。

転生当初はそのことに憤慨したが、後に女性としての生活に苦労せずに済んだことから、今では複雑な心境を抱いている。

 

最初は原作に介入する気は全く無く傍観者に徹するつもりでいたが、彼女に百合ハーレムを築かせて自分の欲を満たそうとする神がそんな事を許す筈も無く、神は原作での主要人物である織斑一夏(女)の家の近くに彼女を引っ越させて、流れで一夏の幼馴染にさせて、その繋がりで箒とも仲良くなる事に。

当然、その二人と仲良くなったのであれば、二人の姉である千冬と束とも仲良くなる。

特に姉二人とは色々とあった結果、完全に恋慕に近い感情を抱かれているが、本人は全く気が付いていない。

 

勿論、一夏と一緒の学校に入ったと言う事は、後に箒と入れ替わりに転校してくる鈴とも仲良くなる。

原作とは違って周囲に目立った男子がいなかったせいか、いつの間にか佳織に対して鈴のフラグが建っていた。

ことごとく原作とは違う展開に、いつしか自分の持つ原作知識は全く役に立たない事を悟り、小学5年生にして色々と諦めた。

 

中学の時には五反田弾とも知り合うが、二人の関係はあくまで友達同士(だと佳織は思っている)で、リア充爆発しろ的な事にはなってない。

 

一夏がIS学園に進学すると決めた際に自分もIS学園に行くことを決める。

佳織はまるで絵に描いたような平々凡々な人間なので、勉強などは本当に苦労した。

一夏と一緒に必死に勉強した結果、なんとか筆記では合格。

実技は……言わずもがなである。

 

IS適性はA+。

適性自体は非常に高いが、操縦技術は完全に素人。

よくある俺TUeeeeeeeee系の転生者ではない。

 

巻き込まれるような形ですることになったセシリア・オルコットとの試合の中で、遂に神から転生特典を貰う事になった。

それこそが『赤い彗星を模倣する程度の能力』である。

 

これはISに搭乗している最中限定で、佳織の能力がシャアを模したものになる特典。

戦闘能力は勿論、その口調も彼にそっくりになる。

だが、あくまで『模した』だけであるから、本当のシャア・アズナブルには遠く及ばない。

元々のスペックが大きく違う上に、佳織は別にニュータイプじゃない。

しかも、分不相応な力を酷使するせいで、自分の体にかかる負担も相当なものになる。

しかし、佳織が自分を鍛えて少しでもシャアの動きについていけるようになれば、あるいは……?

 

容姿は天然の茶髪を首元まで伸ばして、それをうなじの所で結んでいる。

スタイルは周囲の少女達に負けず劣らずのナイスバディで、誰もが認める美少女。

 

中身的には前世との年齢も含めて相当な事になっているが、神による改変と元来の子供と大人が綯い交ぜになったような性格と優しさが周囲にはとても可愛く見えるようで、本人や神の意思とは関係無く、着実に百合ハーレムを築いている。

 

そんな佳織が自分から誰かを好きになる日は来るのだろうか…?

 

 

 

 

 

 

                 ~専用機~

 

 

機体名:ラファール・リヴァイヴⅡ(仲森佳織専用機)

 

表向きは、デュノア社が社運を賭けて進めたプロジェクトで開発された、ラファール・リヴァイヴを再設計した正統後継機……なのだが、実際には佳織を転生させた神によって生み出されたジオン軍で最も有名なモビルスーツ『ザクⅡ』とラファールの要素を融合させた機体。

 

基本的な形状は原型機であるラファール・リヴァイヴを踏襲しているが、全体的に装甲は丸みを帯びている。

更に、追加装甲としてザクのパーツを模したスパイクアーマーとシールドも付属していて、防御力も向上している。

 

一次移行した際に機体色が原型機を基にした緑色から、まるでシャア専用機をイメージたかのような赤に染まり、機体各部にシャアのエンブレムも描かれた。

それに伴い、機体性能も一部だけ変化した。

シャア専用ザクⅡをイメージしたのか、各部スラスターのリミッターが全て解除されていて、機体本来の限界性能をフルに発揮出来るようになった。

だが、その代償として、非常にシビアな操縦技術を要求されると同時に、SEの消費量が大幅に増加。

普通に使用すればあっという間にエネルギーが枯渇して行動不能に陥るが、転生特典を得た佳織は巧みな操縦技術によって、機体を見事に乗りこなしている。

 

武装の方もザクⅡを意識したラインナップになっている。

 

IS用マシンガン(ザクマシンガン)

 

ヒート・ホーク

 

IS用バズーカA2型(ザクバズーカ)

 

左腕固定式2連装マシンガン

 

IS用対艦ライフルASR-78

 

今はまだこれだけだが、拡張領域にはまだまだ余裕がある為、これからも色々な装備や換装用のパッケージが追加される可能性がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

          ~ラファール・リヴァイヴ・バリスティック~

 

 

フランスから来た転校生であり代表候補生でもあるシャルロット・デュノアがデュノア社から持って来た、フランスとイギリスで共同開発されたラファール・リヴァイヴⅡ専用の追加武装『バリスティック・ウェポンズ』を装備した状態。

 

片手でも保持が可能な『ハンドビームガン』に高い威力を持つ『ビームバズーカ』。

長大な近接武装の『Wビーム・トマホーク』。

そして、ビット兵器の『ファンネル』。

いずれもビーム兵器で構成されている。

 

これらを装備する事によって機体性能が飛躍的に向上……は流石にしないが、実弾兵器とビーム兵器をバランスよく装備した為、汎用性と総合攻撃力が大幅に向上した。

特に、ビット兵器が追加された事は大きく、それで今まで出来なかったオールレンジ攻撃が可能となった。

 

装備を追加した事によって、機体の名称が『ラファール・リヴァイヴⅡ』から『ラファール・リヴァイヴ・バリスティック』に強制変更された。

佳織自身は別に気にしてはいないが、余りにも長すぎるために『バリスティック・リヴァイヴ』と名称を省略して呼ぶことにした。

 

 

 

 

 

                    百式  

 

 

 

 福音との死闘にて大破してしまったバリスティック・リヴァイヴの代替機として用意された、新たな佳織の専用機。

 その名の通り、一夏の専用機である『白式』の姉妹機として製造された機体……なのだが、実際は『機動戦士Zガンダム』に登場したクワトロ・バジーナが搭乗したMSを模して造られたIS。

 白式の予備パーツを使って製造されたので、機体の形状自体は白式と全く同じなのだが、機体色がオリジナルと同様の金色に染まっていて、ウィングパーツにはどこぞの書家が書いたと思われる『百』の字が描かれている。

 この色は機体表面に特殊なビームコーティング処理を施した結果、自然となったものであり、この辺はMSの百式と大差ない。

 かなり早い段階から束によって送られた佳織の戦闘データ(どうやって入手したかは謎)が製造元である倉持技研に持ち込まれていて、お陰でナイスなタイミングで本人に手渡すことが出来た。

 機体の性能も白式と殆ど変らないが、その代り武装がかなり変化している。

 と言うのも、超近接使用になった白式の反省を生かして製造された経緯があり、結果として百式の開発コンセプトは『射撃戦重視寄りの汎用型』になった。

 お陰で武装もかなりシンプルになっていて、『ビーム・ライフル』に『クレイ・バズーカ』といったオリジナルと同様の物もあれば、白式の持つ雪片弐型と同型の『雪片・改』もある。

 だが、そんなスタンダードな武装類の中でも一際異彩を放っているのが、百式お馴染みの超武装『メガ・バズーカ・ランチャー』だ。

 ガンダム好きなら知っていると思うが、兵装そのものに高出力のジェネレーターとスラスターが内蔵されており、ちょっとしたサブ・フライトシステム的な運用も可能。

 攻撃力だけならば間違いなく最強クラスだが、エネルギー効率は最悪な上に命中率が絶望的。

 大きさが大きさ故に取り回しも非常に難しい、間違いなく玄人向けの武装となっている。

 百式自体はかなり優秀な機体なのに、この武器の存在が色んな意味で駄目にしている感は否めない。

 まさに『シャア』の意志を受け継いだ佳織だからこそ運用可能なピーキーな機体となっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

              フル・フロンタル

 

 

佳織と全く同じ顔と声を持つ謎の少女。

佳織とフロンタルの違いと言えば、肌の色と髪の色と長さぐらいで、他は全て顔と全く同じ容姿をしている。

顔だけでなく体のスタイルも全く同じで、スリーサイズも同じ。

それどころか細かい癖すらも同じで、二人が並べば本当の双子のように見える。

口調がISに乗った時の佳織と酷似しており、まるで他人の心を見透かしたかのような発言をする。

身近な人間達からは『大佐』と呼ばれている、全てが謎に包まれた存在。

分かっているのは、彼女が佳織達の明確な『敵』であると言う事だけ。

CVは東山奈央

 

 

 

 

 

               アンジェロ・ザウパー

 

 

フロンタルの直属の部下と思われる、束と同じ顔と声を持つ少女。

だが、今の束よりは少し幼い体格で、佳織曰く『学生時代の束に似ている』。

容姿が酷似しているだけでなく、その頭脳と身体能力も束と全くの同等で、自分自身の手でISのコアを製造出来るほど。

故に、彼女は全く新しい、新機軸のISの開発に成功している。

フロンタルの事を完全に信用しきっていて、それは最早、尊敬を超えて信仰の域にまで経っていている。

彼女もまたフロンタルと同じように、全てが謎に包まれていて、何故か佳織と束と千冬を激しく憎悪している。

CVは田村ゆかり。

専用機は紫にペイントされたアンジェロ専用のギラ・ズール。

 

 

 

 

 

 



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第1話 再会と出会いは突然に

なんか気がついたら、お気に入り登録数が60を超えてました…。

なんじゃこりゃ。






 自己紹介タイムが終了し、そのままの流れで一時間目のIS基礎理論の授業があった。

 

このIS学園は通常の学校とは違い、入学式の日から授業が始まる。

まぁ、ISなんて代物を扱うんだ。

これぐらいは当然かもしれない。

 

で、今は丁度休み時間。

他のクラスメイトはもう仲のいいグループを形成していて、私は完全に出遅れた。

別に気にはしないけどな。

 

因みに授業の方はなんとかなった。

と言うのも、私がIS学園を受験することが決まった次の日に、いきなり匿名で私宛にISに関する参考書の類が送られてきたのだ。

普通ならば訝しむところだろうが、犯人については心当たりがあるため、そこまで動揺はしなかった。

やっぱり、事前に予習をしておくのは大事だな。

前世では全くもってそんな事をしてこなかったから、何回も痛い目を見たし。

もう二度と追試を受けるような真似はしたくない。

 

そんな感じで、少なくとも勉強に関しては問題は無い。

後は人間関係だけか。

こればっかりは一足飛びにどうこう出来るものじゃないしな。

まずは以前からの知り合いである一夏や箒を主軸に、ゆっくりと花を愛でるようにしながら交友関係を広げていけばいいだろう。

 

「ねぇ、佳織」

 

おっと、そんな事を考えていたら、早速お隣さんの一夏さんが話しかけてきましたよ?

 

「さっきの授業……分かった?」

「一応。そっちは?」

「私もなんとか…。後でちゃんと復習をしておかないと」

 

原作とは違い、私の知っているこの『一夏ちゃん』はとても勤勉で努力家だ。

少なくとも、あの口だけの鈍感男とは雲泥の差がある。色んな意味で。

 

「よかったらさ、放課後にでも一緒に勉強しない?」

「別にいいよ。私もやっておきたかったし」

 

持つべきものは幼馴染ですなぁ~。

別にボッチを否定はしないけど、孤独に勝てる奴はそういない。

少なくとも、私は無理。

 

「ちょっといいか?」

「「ん?」」

 

私が幼馴染の素晴らしさに改めて感動していると、そこにもう一人の幼馴染がやって来た。

 

実に6年振りの再会となる幼馴染、『篠ノ之箒』である。

年月を経ても、勝気な印象は変わらない。

 

「その……佳織、一夏。屋上まで行かないか?」

「今から?」

「ダメか?」

「そんな事は無いけど……」

 

今から屋上なんかに行って、次の授業に間に合うか?

全速力で走ればなんとかなるかもしれないが、廊下を走ったら確実に怒られるだろうし……。

 

「屋上まで行ったら確実に次の授業に遅れるよ?廊下じゃ駄目なの?」

「廊下……か。まぁ…別に構わないが……」

「なら、廊下に行こうよ」

 

よく言った一夏!

私じゃ下手に何か言えばどうなるか分からないからな。

コミュスキルがある人間はこんな時に頼りになる。

 

そんな訳で、三人揃って廊下に行くことに。

 

廊下もまた生徒でごった返していた。

初日と言う事もあってか。全員が浮かれているというか、浮き足立っているような印象を受ける。

 

「ひ…久し振りだな。二人とも」

「そうだね。確か6年振りぐらいになるのかな?」

「もうあれから6年か……」

 

時間が過ぎるのはあっという間。

これは何時になっても変わらない。

 

「そう言えば箒」

「な…なんだ?佳織」

「剣道の全国大会で優勝したんだってね。おめでとう」

「な…なんでそんな事を知ってるんだ?」

「新聞で読んだ」

「私は佳織に教えて貰って知ったよ」

「なんで新聞なんか読むんだ!?」

「「いや、普通に読むでしょ」」

 

そんなに顔を赤くして怒ることも無いでしょうに。

高校生は新聞を読んじゃいけないってか?

今のご時世、私達学生も政治に関心を持ってなくちゃダメなんだぞ?

選挙権を持つ歳になるのなんて、本当にあっという間なんだから。

 

「何をそんなにムキになってるの?」

「私はムキになんて……」

「あっ…そっか~」

「な…なんだ一夏……」

「佳織に再会出来た事が嬉しいんでしょ~?」

「な…ななな……!」

 

おいおい一夏さんや。

久し振りに会った幼馴染をからかうのはよくないぞ。

箒だってさっき以上に顔を真っ赤にしてるし。

 

「大丈夫か?」

「も…問題無い!」

「そ…そうか」

 

怒られた。

 

「ねぇ……箒」

「なんだ…」

 

おや?なにやら一夏が箒に近づいて話している。

私の位置からはよく聞こえない。

 

「あの時の気持ちは……まだ変わってないの?」

「……!?」

「やっぱりそうか……。時が過ぎても、佳織の事を好きなのは変わらない…か」

「わ…私は……」

 

つーか、さっきから箒の顔が真っ赤のままなんですけど。

マジで気分でも悪いんじゃ?

あ、でもまだ保健委員とか決めてないっけ。

 

「別に他の事で負けるのは構わないけど……これだけはいくら箒でも譲れないから」

「い…一夏?」

「私……負けないからね」

 

う~ん……本当に聞こえない。

もしかして、私って今ボッチですか?そうですか。

私だけがのけものですか。

いいも~んだ。私にはスマホゲームのユーザー達やネットでの友達も沢山いるもんね~(泣)

 

私が一人で寂しさを味わっていると、急に皆が教室に入りだした。

これは……

 

「二人とも、もうすぐ授業が始まる」

「な…なに?」

「やばい…!私達も早く教室に入ろう!」

 

幸いな事に、私達がいたのは教室のすぐそばにある廊下だったため、遅刻だけはせずに済んだ。

席に着いた直後に千冬さんが来た時は本気で焦ったけど。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 二時間目の授業も何も問題無く進んだ。

 

隣の一夏を少しだけ見てみると、凄く真面目に授業を受けていた。

確か、原作ではここで『全部分かりません!』って問題発言をぶちかまして、教室中をフリーズさせたんだよな。

そんでもって、参考書を電話帳と間違えて捨ててから千冬さんのありがた~い出席簿の餌食になっていた。

だが、ここではそんな事は無い。

原作とは違い、私の知っている一夏は自らの意思でここへの入学を望んだ。

故に参考書を間違って捨てるなどと言う愚行をしていないし、予習もばっちりやっている。

だから、授業についていけないと言う事は決して無い。

 

え?私はどうなのかだって?

私も大丈夫だよ~。

さっきも言ったでしょ?予習はちゃんとしてきたって。

流石に代表候補生のようとはいかないけれど、授業にちゃんとついていけるレベルには達していると自負している。

勿論、参考書も読破済み。

どんなもんだい!

 

にしても……

 

「~であるからして、ISの基本的な運用に関しては現時点では国家の認証が必須であり、もしも枠内を逸脱したIS運用を行った場合には刑法によって厳しく罰せられ…」

 

教壇の上で教科書をスラスラと呼んでいく山田先生には違和感しか感じません。

ぶっちゃけ、私達と一緒に制服を着て席に座っていてもなんらおかしくない容姿だろう。胸以外は。

なんだありゃ。一体何を食べて、どんな生活をすれば、あんな超ド級のバストになるんだ?

……こんな事を考え始める辺り、もう本格的に思考が女子寄りになって来てる…。

昔の男気に溢れた『俺』はいずこに……。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 二時間目も無事に終了し、またまた休み時間。

今度は一夏と箒と一緒に談笑をしていた。

話し慣れている人物との会話程、気楽なものは無い。

だが、ここである人物がやって来る。

 

「少しよろしくて?」

 

来たか……。

 

日本人ばかりがいるこの一組において、珍しく金色の髪を靡かせている白人の少女。

そう、原作ヒロインの一人でありイギリスの代表候補生でもある『セシリア・オルコット』である。

 

「……なんだ?」

 

おおい!箒~!?

最初っから喧嘩腰ってどうよ!?

 

「貴女には用事はありませんわ。私が話しているのは貴女です、織斑一夏」

「私……?」

「えぇ。貴女、織斑先生と同じファミリーネームですけど、もしかしてあの人の血縁者ですの?」

「織斑先生は私の姉さんだけど?それがどうしたの?」

 

一夏もそう睨むなって~!

どうして二人とも、そんなに怖いんだよ~!?

 

(佳織との話を邪魔して……!)

(何様のつもりだ……!)

 

けど、そんな二人に怯まないこの子もこの子だよな……。

もしかしたら、私の知っている原作ヒロインはここには存在しないのかもしれない……。

 

「姉……ですの……」

 

なんか一夏の事をジロジロと見てるけど、なんなんだ?

一夏が女である以上、彼女が嫌悪感を感じる理由にはならない筈だし……。

 

「あの『世界最強』の妹ともなれば、さぞかしお強いのでしょうね?」

「……!」

 

あ…言ってしまった。一夏に対する禁句を。

こいつは昔から千冬さんを通して見られるのを最も嫌う。

だからと言って、千冬さんの事を嫌いって訳じゃないみたいだけど。

 

「私は私だよ。そんな決めつけは好きじゃない」

「あら、ごめんあそばせ」

 

絶対に謝罪の気持ちなんてないな。

だって、顔が笑ってるもん。

 

「ですが、こうして一緒の学園にいる以上は、いずれ試合をする日もあるでしょうし、その時にでも貴女の実力を確かめさせてもらいますわ」

 

言う事だけ言ってから、セシリアは自分の席に戻っていった。

 

「なんだ……あいつは……」

「さぁね。ほっとけばいいよ」

 

一夏、激おこぷんぷん丸。

あんな事を言われたら仕方ないけど。

 

「確か、あの女……イギリスの代表候補生だと自己紹介の時に言っていたな」

「そんなの関係ないよ。代表候補生だろうがなんだろうが、私はあんな風にお高くとまった奴は個人的に嫌い」

「私もあまり好きにはなれんな。あいつは完全に他の生徒を見下している」

「大方、自分はエリートだって思ってるんじゃないの?」

「かもしれんな」

 

どうやら、二人のセシリアに対する第一印象は最悪のようだ。

私から見ても、お世辞にも友達になりたいとは思えない性格だけど。

 

「あんな奴よりも、佳織の方がずっと凄いよ」

「なんでそこで私を引き合いに出す?」

「だって実際に凄いじゃん!すっごい頭いいし、なんでも知ってるし!」

「頭がいいように見えるのは、ちゃんと勉強してるから。あと、私は何でもは知らない。自分が知っている事しか知らない」

 

厳密には、前世から得た知識が大半を占めてるけどな。

じゃなきゃ、ここまで有利に人生を歩めるか。

二度目の人生ともあれば、それなりに注意深くもなる。

 

「相変わらず、佳織は自己評価が低いんだな」

「事実だもん」

「なんか…勿体ないよ…」

 

そんな事を言われてもな。

こんなズルをしてるオカマ野郎が俺Tueeeeeeeeeee!しても気持ち悪いだろ。

私は今までもこれからも、お前達に埋もれるモブキャラで充分なんだよ。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「チャイム鳴った」

 

チャイムが鳴ってから、クラスの中や外にいた生徒はすぐに自分の席に着いた。

私と一夏もそれに合わせて、次の授業で使う教科書などを取り出した。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 三時間目。

今回教壇に立ったのは千冬さんだった。

 

「三時間目は実戦で使用する各種武装の特性などについての説明をしようと思う」

 

さて、また気合を入れて頑張りますか。

……あれ、何か忘れているような気が……。

 

「おっと、忘れるところだった」

 

何を?

 

「まだ再来週に行われる予定のクラス対抗戦に出る『クラス代表』を決定していなかったな」

 

そうだった……!

本来ならこれで一夏が推薦されて、それにセシリアがブチ切れて、そこから口論に発展して、最終的には決闘騒ぎになるんだよな…。

でも、今回はどうなるんだ?

全く先が予想出来ない。

 

「先生。クラス代表ってなんですか~?」

「他の学校で言うところの学級委員だ。先程言ったクラス対抗戦の他に、生徒会が定期的に開く会議や委員会への出席などが主な仕事だ」

 

うん、まんまですね。

 

「最初に言ったクラス対抗戦とは、簡単に言ってしまえば、入学時点での各クラスの実力の推移を計るものだ。現時点ではどこのクラスも五十歩百歩だが、こうした競争心は同時に向上心も生む。一度決定したら、少なくとも一年間は変更はしないつもりだから、そのつもりでいるように」

 

案の定、クラス中が騒ぎ出す。

まぁ、私は別にどうでもいいけど。

だって、私のような凡人が推薦される事なんて皆無に等しい事だから。

 

「じゃあ……はい!」

「織斑か。どうした?」

「私は佳織を……仲森さんを推薦します!!」

 

ほら、早速呼ばれてますよ~、仲森さ~ん。

 

「ならば私も!佳織を推薦します!」

「篠ノ之もか……」

 

おや、二票になってしまったね~。

何も言わなくていいのかな~……って……

 

「私ぃっ!?」

 

ヤバイ……少しだけ現実逃避してた…。

 

「少し静かにしろ、仲森」

「すいません……」

 

でも、いきなり大声を出した私は悪くないと思う。

だって、いきなり自分の名前が出るなんて、誰が予想する!?

 

「なんで私を推薦したのさ!?」

「だって……佳織なら適任だって思ったんだもん」

「だもんって……」

 

どこをどうしてそう思った?

 

「中学の時も佳織ってクラス委員をしてたし、二年の後半からは生徒会の副会長もやっていたじゃん」

「それは……」

 

あれは、私が家の用事で休んでいた時にいつの間にかクラス委員を決める話し合いで候補に挙がっていて、私の意思とは無関係に決定してしまったから、仕方なくやっただけだ。

副会長の件だって似たようなもの。

当時の会長さんと個人的に親しくて、土下座までしてきて『生徒会に入って私をサポートして!!』って言ってきたから、渋々生徒会に入っただけだ。

あの状況で『いいえ』と答える勇気は私に無かった。

 

「結構実績あるんだ……。じゃあ、私も仲森さんがいいと思います!」

「じゃあ私も!」

 

あぁ~!他の連中も二人に便乗して私を推薦し始めたよ~!

どうするんだよ~!もう~!!

 

「ふむ……今のところの候補者は仲森か。他にはいないか?別に自薦でも他薦でも構わんぞ」

 

本来ならここで抗議すべきなんだろうが、そうしたらきっと『拒否権は無い』って言われてしまうのがオチだ。

ならば、ここは他の二次小説で見た方法で行かせてもらう!

 

「わ…私は織むr「お待ちください!納得いきませんわ!!」…さんが~……」

 

そうだった~!

余りの出来事に、こいつの存在をすっかり忘れてた~!

怒髪天を衝くと言わんばかりにセシリアがいきなり立ち上がった。

 

「なんで代表候補生である私ではなくて、そんな人を推薦するのですか!?」

 

いきなりの問題発言乙。

 

「この私を差し置いて、彼女のような人物がクラスの代表だなんて……このセシリア・オルコットに一年もの長きに渡って恥辱を味わえと!?冗談じゃありませんわ!!」

 

まだ言いますか。

その辺にしておいた方がいいんじゃないかな~?

 

因みに、私は別に怒ってなんかいません。

だって、心は立派な大人ですから。

今の私を怒らせたら、大したもんですよ。

 

「実力、実績共に優れているこの私がクラス代表に選ばれるのは最早必然!!それを、ただ過去に同じような経験があるからと言う理由だけで素人の少女を選ぶなんて、そんなのは唯の恥さらしですわ!!」

 

言うねぇ~。

でも、私の沸点まではまだまだ遠いかな?

 

「いいですこと!?クラス代表とは即ちクラスの顔!それはクラスで最も実力のある人物……即ち私こそが最も相応しいのです!!」

 

御高説、ありがとうございました~。

 

でも、その発言でクラスの殆どを敵に回したね~。

ほら、お前さんの事を凄い目で睨み付けてるぞ~。

 

「アンタ……いい加減にしなよ」

「なっ…!?」

 

あ……一番プッツンしてた一夏が立ち上がった。

余計な事を言わなければいいけど……。

 

「佳織のことを何も知らないくせに、偉そうな事を言うな!!」

「なんですって!?」

「お前みたいな奴なんかより、佳織の方が100倍強いんだから!!」

 

何を言い出すか~!お前は~!!

そんな訳ないだろ~が!!

少し考えれば分かる事だろうがよ!!

 

「その通りだ!!」

 

ほ…箒まで!?

 

「佳織は貴様のような女には…絶対に負けん!!」

 

言わないでぇ~!!

混乱と羞恥心とでどうにかなっちまうよ~!!

 

っていうか、そこの教師陣は少しは止めようとしろよ!!

 

「け…け…け…」

 

こ…この流れは…まさか……

 

「決闘ですわ!!」

 

ですよね~!

言うと思いました~!

 

「仲森佳織!!」

「は…はい!?」

 

指差さないで~!

皆もこっち見ないでぇ~!

 

「この私とクラス代表の座を賭けて勝負なさい!!」

「わ…私はしt「「望むところだ!!」」…言わせてよ…」

 

私の意見を言わせてもらえない…。

 

完全完璧な素人である私が代表候補生に勝てるわけねーじゃん!!

試合をする前から負けフラグが乱立してるよ!!

 

「佳織の真の実力を見せてあげるんだから!!」

「覚悟するがいい!!」

「それはこっちのセリフですわ!!」

 

当事者を無視して話を進めるなぁ~!!!

って言いたいけど、言えない私って本当にヘタレ……。

 

「話は纏まったな」

「へ?」

 

ま…纏まった?

 

「それでは、勝負は今から一週間後の月曜日の放課後。場所は第3アリーナで行うものとする。仲森とオルコットはそれぞれに準備をしておくように」

「いや……私はですね…?」

「もう決定事項だ。潔く諦めろ」

 

そんなご無体な……。

私が何をしたっていうんだ…?

 

「大丈夫!一週間もあれば十分だよ!」

 

お前と一緒にするな~!!

私は一夏のような主人公体質の人間じゃないんだよ~!

一週間でどうにかなるなら、誰も苦労せんわ~!

 

「織斑、篠ノ之、オルコット、そろそろ座れ」

「「「あ…はい」」」

 

流石に千冬さんには逆らえないのか、三人は大人しく座った。

 

「では、今から授業を始める」

 

はぁ~……これも神が与えた試練なんだろうか…。

今から緊張で胃が痛いよ…。

これから本当にどうしよう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思うがままに指を動かしていたら、いつの間にかセシリアが原作以上に嫌な奴に…。

でも、チョロインだから動かしやすいんですよね。

佳織の機体の方は既に私の中で決定してます。

仕事中にピン!とアイデアが思い浮かんで、機体とかに関するタグを急遽消しました。


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第2話 ルームメイト

またまた気が付けば、お気に入り登録数が約3倍に……。

なんで?






 やっと初日の授業が全部終わった……。

授業自体は大丈夫だったけど、問題は私がセシリア・オルコットと試合をすることになったこと。

 

「うぅ~……」

 

どうしてこんな事になってしまったんだろう…。

私ってばどこかで何かを間違えた?

 

「えっと……その……ごめんね?」

「謝るぐらいなら、今後はもう少し沸点を高く設定してほしい……」

「本当にゴメン…」

 

隣の一夏が済まなそうにしているが、私にはそんな事を気にする余裕が無い。

 

「佳織……」

「箒?」

 

今度は箒か。

 

「さっきは悪かった…。あの女の発言についカッ!となってしまって、気が付けばあんな事に……」

 

シュン…として落ち込んでいる箒。

心なしか、彼女のポニーテールも下がっているような気がする。

 

「はぁ……。もういいよ、二人とも」

「え?」

「し…しかし!」

「決まってしまった事は仕方が無いよ。こうなったら、ウジウジと考えるより、試合に向けて何が出来るのか考えた方が建設的だ」

「「佳織ぃ~…」」

 

大体、私がこの二人に文句とか言うわけないじゃん。

経緯はどうあれ、一夏と箒は私の事を思って立ち向かったんだし。

私一人だったら、絶対にあの迫力に負けてたしね。

 

「取り敢えず、今日の所はもう帰ろうよ。IS学園の寮がどんな風になっているか興味もあるし」

 

実はアニメで見た事はあるんだけど、やっぱり生で見てみたいよね~。

 

「そうだね。噂じゃかなり高級な仕様になってるって聞いたけど」

「そうなのか?」

「うん。ネット上でIS学園の色んな噂が飛び交っていて、その中にそんな事が書かれてあったの」

 

機密だらけのIS学園が、よくそんな事を許したな。

まだ噂の段階だからか?

 

少しだけ後ろを向いてセシリアの事を見てみると、案の定と言うか、誰にも話しかけられてなくて、完全なボッチになっていた。

自業自得とは言え、見ていて何とも不憫な気持ちになる。

 

「どうした?」

「ううん。なんでもない」

 

私達はさっさと帰りの準備をして、教室を後にした。

 

今は皆が女の子なので、特別処置で寮の部屋決めをされてはいない。

私達全員が入学時に予め寮の部屋の場所は教えられている。

だから、ここで千冬さんと山田先生がやって来ることは無い。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 寮の中を見学しながら私達は歩いて行く。

 

こうして見てみると、廊下すらも高級感満載だな。

流石は、この世界の根幹を成すISを学ぶ学校だ。

細かい所にも気配りが見え隠れしている。

 

「夕食って何時からだっけ?」

「確か、18時から19時までで寮にある一年生用の食堂で食べられる筈だ」

 

一時間か~。

使う時は早く行かないと、場所取りが大変そうだな。

 

「ここには大浴場もあったな。でも、あまり使う機会はないだろうな」

「え?なんで?大きなお風呂って気持ちよさそうじゃん」

 

女になっても、一夏のお風呂好きは変わらない…と。

 

「一応、各部屋にシャワー室もあるから、嫌だったらそれを使えばいいでしょ」

「でもさ、シャワーだと体はあんまり温まらないよ?」

 

前にテレビでも言ってたな。

可能であれば肩まで湯船に浸かって体を温めた方が疲れも取れやすいとか。

 

「か…佳織は大浴場を使う気なのか?」

「う~ん……私は機会があれば行こうかな?」

 

興味が無いと言えば嘘になるし。

大きな風呂に浸かりたいと言う一夏の気持ちも理解できるしね。

 

「二人の部屋はどこなの?」

「私は1025室だ」

「え?私もだよ?」

「なに?」

 

……ここも原作と変わらないようだ。

性別が変わっても、この二人はセットなのね。

 

「佳織と一緒じゃないのか……」

「いや、こんだけ生徒がいるんだから、私と相部屋になる可能性なんて皆無に等しいと思うけど?」

「それでも願ってしまうよね…」

 

一夏よ、お前もかい。

 

「まぁ……さっきの佳織ではないが、決まってしまったものは仕方が無い。一緒のクラスであるだけ、まだマシと考えよう」

「そうだね。前向きに前向きに」

 

ポジティブシンキングですな。

後ろ向きな考えよりはずっといい。

 

話しながら歩いていると、いつの間にか1020と書かれた部屋の前にいた。

 

「む?ここが1020ならば…」

「この5つ先が私達の部屋だね」

「そうなるな。では、私達はこれで」

「うん。夕食ぐらいは一緒に食べようか」

「あぁ。時間になったら待ち合わせでもするか」

「それいいね!」

 

二人とはそんな事を話しながら一旦別れた。

 

「さて、私の部屋は……こっちか」

 

私の部屋は二人の部屋からは少し離れている。

別に苦ではないが、会いに行くには少し面倒かも。

 

私の部屋はどこかしら~♪

 

「お?ここか」

 

1047室。

かなり離れてるな~。

 

「まずはノック。コンコ~ンと」

 

軽くドアを叩くと、中からは全く返事が無い。

 

「ん?誰もいないのか?」

 

まだ来ていないのか。もしくは私の一人部屋?

まさか、寝ているってことは無いよな?

あ……もしかして。

 

(原作の一夏みたいに、シャワーを浴びていてこっちのノックに気が付いていないって可能性も……)

 

でも、女同士でそんなラッキースケベとか意味無いしな。

場合によっては私の方が『きゃ~!』って言う立場だし。

 

「鍵は……」

 

あ、開いてるし。

 

「……入ってみようか」

 

そっと扉を開けてから中に入る。

念の為に静かに入室。

 

「失礼しま~す…?」

 

抜き足差し足忍び足。

爪先を立てて歩いて行くと、中はガラ~ンとしていた。

 

部屋の中を調べてみると、シャワー室には誰もいないし、かといって他の誰かの荷物があるわけじゃない。

この状況から察するに、つまりは……

 

「私の心配は杞憂だった?」

 

自分の早とちりだったと分かると、急に力が抜けた。

適当に荷物を置いてから、ベットに倒れ込んだ。

 

「うわぁ~……ちょーふかふかなんですけど~」

 

すげ~……これならマジで熟睡できそうだわ~。

吉良吉影もびっくりだ。

 

「ま、寝ないけどね」

 

まだ寝るには早すぎる。

って言うか、全然眠気とか無いし。

 

「……本当に一人なのかな」

 

だとしたら寂しいかも。

最初は気楽に感じるかもしれないけど、きっと途中から孤独に耐えられなくなるって思う。

人は一人では生きられないから。

 

そんな感じに一人でシリアスごっこをしていたら、再び部屋のドアが開かれた。

 

「ん?」

 

誰だ?って…入学初日にここに来る人間なんて限られてるじゃん。

まず間違いなく同居人だろう。

一体誰ざんしょ。

 

「あれ~?もしかして、かおりん~?」

 

この間延びした声は……まさか?

 

「えっと……布仏さん…だったよね?」

「本音でいいよ~。そっか~…かおりんが私のルームメイトだったんだね~」

 

布仏本音。

制服の袖がやたらと長い彼女も立派な原作キャラの一人だ。

他のヒロインよりは出番は少ないが、それでも結構な人気はある。

この独特のキャラ性が人気の秘密だろうな。

何気に生徒会役員だし。

 

「えっと……これからよろしくね?」

「うん。よろしく~」

 

基本的にいい子ではあるし、よくあるテンプレのように更識簪や監視目的で生徒会長の更識楯無が来るよりはずっといい。

あの姉妹とこの段階で知り合うとか、ストレス以外のなにものでもない。

決して嫌いと言うわけではないが、こっちにだって心の準備が必要なんだ。

 

「そうだ。どっちのベットがいい?なんとなく私はこの窓側にいるけど、もしこっちがよかったら……」

「私はどっちでもいいよ~。かおりんが好きな方を選んで、残った方を私が使うから」

 

本音ちゃん……なんていい子や~!

やべぇ……本音ちゃんマジ天使。

 

「ねぇ…『かおりん』って私の事?」

「そうだよ。嫌だった?」

「そんな事は無いよ。ただ、同じように私の事を『かおりん』って呼ぶ人がいるからさ。ちょっと気になって」

「そ~なんだ~。かおりんがかおりんなのは、もう運命なんだね~」

 

運命で渾名を決められても。

 

「それじゃあ、軽くこの部屋のルールとか決める?」

「そうだね~」

 

本音ちゃんとなら、いいルームメイトになれそうだ。

きっと、この子が私の癒しになっていくんだろうな……。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 授業が終わり、私と真耶は職員室に向かって歩いていた。

 

「にしても、なんだか大変なことになりましたね。まさか、試合にまで発展してしまうなんて……」

「そうかもしれんが、これもいい機会だと思って割り切ろう」

「織斑先生は達観してますね~」

「達観と言うよりは、慣れだな」

「慣れ?」

 

束の相手をしている時は、いつもがトラブルの連続だった。

私を初めとして、一夏や箒、佳織もよく巻き込まれていたものだ。

 

「けど、仲森さんは大丈夫でしょうか…」

「と言うと?」

「だって、オルコットさんは代表候補生ですよ?これが三学期とか二年生になった時ならいざ知らず、今の段階で仲森さんが勝つのは……」

 

実に常識的な意見だ。

確かに、普通に考えればちゃんとした訓練を受けてきたオルコットに素人同然の佳織が勝利するなど、万に一つもあり得ないかもしれない。だが……

 

「そうとも限らんぞ?」

「え?」

「山田先生は、仲森の入学試験の時の実技を見ているか?」

「え……はい。一応は」

「あの時にアイツの試験官をしたのは私だった」

「はい。よく覚えてます」

 

試験の際、打鉄を纏った佳織を見て、柄にもなく興奮したもんだ。

あの歳にして中々にスタイルがいいからな、あいつは。

 

「実はな、あの時の最初の一撃だけ、私は全力だったんだ」

「えぇっ!?でも、それって……」

「あぁ」

 

結果としては佳織は秒殺に等しかったかもしれない。

だが、あの最初の一撃を佳織は完全に回避して見せたのだ。

私の全力の一撃を…だぞ?

引退したとはいえ、まだまだ腕は錆びついてはいないつもりだったが、あれには本気で驚かされた。

しかも、その後も佳織は的確に防御と回避を駆使して見せた。

まぁ…最終的には私の勝利だったがな。

それでも、今までISに乗ったことも無い少女とは思えないほどの動きを見せたのは事実だった。

 

「確かに仲森はド素人だ。だがな、それはあくまで『今』の話だ。アイツには間違いなく天性の才能がある。何かが切っ掛けとなってそれが目覚めれば、凄い事になるかもしれんぞ?」

「先輩がそこまで言うなんて……。だから、さっきも止めようとしなかったんですね?」

「そういう事だ」

 

おいおい、先生が抜けてるぞ。

今更、気にはしないが。

 

「仲森さんのIS適性ってA+でしたよね?」

「そうだ。だから、あの試験を見ていた連中が早くも仲森に関して色々と話し合っているようだぞ?」

「じゃあ、もしかして専用機が?」

「可能性は高いだろうな。仮に用意できなくても訓練機をアイツ用に貸し出すくらいの事はしそうだ」

 

今のIS委員会は将来性を重視する傾向にあるからな。

その点で言えば、私の妹の一夏も目を付けられているが。

一夏も実技試験で中々の動きを見せた上に、IS適性がAだった。

この分だと、一夏にも専用機が用意される可能性も出てくるな。

 

「兎に角、試合があるまでの一週間は少し目を掛けてやってくれないか?私も可能な限りフォローはするつもりだ」

「分かりました。どこまでやれるか分かりませんが、せめてちゃんと試合が出来るぐらいにはしてあげたいですからね」

「そうだな」

 

佳織。お前はよく自分の事を卑下するが、お前にはお前自身も知らない才能が埋まっているかもしれないんだ。

だから、自らの可能性を閉ざそうとはするなよ。

私は信じているからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




千冬の妹だからと言う理由で専用機を用意されるのはおかしいと思ったので、一夏ちゃんの適性を上げたうえで試験で活躍したことにしました。

これなら大丈夫……だよね?
なんか強引な気もするけど。





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第3話 初めての朝

予想外の事があって、ちょっと体力的に余裕が出来たので更新しようと思います。

今日は凄い雨だった……。

家に帰ってきたら、部屋の天井から雨漏りがしてたし……。







 セルジオ越後~♪(ドラクエの宿屋に止まった時に流れるBGMに乗せて)

ってな訳で、次の日の朝になりました。

 

「うぅ~…ん……」

 

ベッドから起きて、体を思いっきり伸ばす。

そしてカーテンを開けると、眩しい朝日が差し込んでくる。

実に清々しい朝だ。

 

「さて…と。本音ちゃんは……」

「すぴ~…」

 

はい、まだまだ夢の中でした。

 

しかし……彼女はどうして殆ど着ぐるみに近いようなパジャマを着てるんだろう?

別に悪いとは言わないが、寝苦しくないのかな?

 

「本音ちゃん。もう朝だよ。そろそろウェイクアップするがよろし」

「うぅ~……あと五時間~」

「そこは普通、後五分じゃないの?」

 

どんだけ寝る気だよ。

 

仕方が無い。少し強引に行くか。

 

私は彼女の体をゆすって起こすことにした。

 

「ほ~ら!早く起きないと朝ご飯を食べそこなうよ!」

「それは嫌だ!」

 

あ、起きた。

 

「ふぅ……。おはよう、本音ちゃん」

「おはよ~…かおりふぁぁ~…」

 

最後まで言えてないぞ。

 

「まずは顔を洗ってきなよ。服とかはこっちで用意しておくからさ」

「ありがと~。なんか、かおりんってお母さんみたいだね~」

「こんなに手のかかる娘はいりません」

「にゃはは~。じゃ、行ってくるね~」

 

全く…お母さんみたいって……。

実は割と言われ慣れてたりして。

どうやら、私は他から見たら少し世話好きのように見えるらしく、気が付けば同級生からもお母さんと呼ばれて、よくからかわれたっけ。

 

「おっと、こっちも準備しないと」

 

マジで早く行かないと、私まで朝ご飯を食べられなくなる。

今日の授業は確か……

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 食堂に着くと、もう既に結構な数の生徒がいて朝食を食べている。

 

「うわぁ~…本当にいる~」

「でしょ?今度からは、もう少しだけ早起きしようね?」

「は~い」

 

……本当に同年代なのか疑わしくなってくるな…。

 

ここの食堂は販売機で食券を購入し、それをカウンターに出して注文の品を貰うシステムになっている。

私と本音ちゃんも一緒に販売機の所まで行くことにした。

 

「どれにしようかな~」

「朝からガッツリしたものは食べたくないな~…」

 

なんとなくだけど。

私はご飯もパンも両方食べるけど、基本的に朝はご飯は食べない。

食べるとしたら昼か夜だな。

 

「これにしようか」

 

目についたトーストと目玉焼きセットを注文。

ついでにコーヒーも。

 

「かおりんは決めたの~」

「うん。そっちは?」

「私はね~……」

 

少しだけ悩むような仕草を見せると、私と同じボタンを押した。

 

「えへへ~…お揃い~」

 

なにこの可愛い生き物。

 

「じゃ…じゃあ、早く注文しようか?」

「うん」

 

そそくさとカウンターまで行って、食券を出す。

すると、おばちゃんがあっという間に注文の品を出してくれた。

 

「早……」

「予め用意してあるからね。けど、それだけで大丈夫かい?」

「はい。その代わりに昼と夜に食べますから」

「若いっていいね~」

 

そんな貴女も十分に若いと思いますが?

なんて言ったら、また話が長引きそうだったので、大人しく飲み込んだ。

 

トレーを持ってどこか空いている席が無いか探していると、見覚えのある背中を見つけた。

 

「あれは……」

「おりむーとしののん?」

 

……『おりむー』って一夏の事?

そして、『しののん』は箒の事か……?

 

二人は揃って座っていて、もう食べ始めているようだった。

 

丁度いいから、私達も彼女達に便乗することに。

 

「ここいいかな?お二人さん」

「か…佳織?」

「おはよう、佳織」

「おはよ~」

 

二人はどうやら和食セットを食べているようだ。

一夏はともかくとして、箒も相変わらず和食が好きなんだな。

 

「で、ここいい?」

「遠慮せずにいいよ」

「ありがと。じゃ、お邪魔して」

 

私と本音ちゃんは二人の隣に座ることに。

 

「ところで、佳織の隣にいるのは……」

「あぁ…。この子は私のルームメイトの布仏本音ちゃん。まだ完全に覚えてないかもだけど、れっきとしたクラスメイトだよ」

「そ…そうか。早く皆の顔と名前を憶えないとな……」

 

箒は昔から人の名前や顔を覚えるのが少し苦手な傾向があるからな。

ま、少しづつ覚えればいいさ。

 

「布仏本音だよ~。よろしくね~」

「篠ノ之箒だ。こちらこそよろしくな」

「私は織斑一夏。よろしくね」

「知ってるよ~。これから仲良くしようね~、おりむーにしののん~」

「お…おりむー?」

「しののん?」

 

うん、それが普通の反応だと思う。

 

「ところで、二人ともそれで足りるのか?」

「佳織はいつもの事だけどね」

「そうなのか?」

「中学の時はよく佳織の家まで迎えに行くことがあったから。その時に朝食の風景をよく見かけたんだ」

 

普通ならあり得ないかもしれないが、互いに勝手知ったる仲だったし、別に気にしてなかった。

私だってよく織斑家にお邪魔したことがあったし。

 

「佳織は朝食べない分、昼や夜に沢山食べるんだよ」

「それでよく太らないな……」

「私もそう思う。多分、体質じゃないかな?」

「佳織……たった今、世界中の婦女子を敵に回したよ」

「え?なんで?」

 

体質は仕方ないでしょ?

昨今のフードファイターなんて、その殆どが痩せてるじゃん。

それと一緒だって。

 

な~んて話しながらも、ちゃっかりと食事は進めてますよ。

我ながら、結構器用なもんだ。

 

「そう言えば、佳織達は一年寮の寮長って誰だが知ってる?」

「いいや?もしかして…千冬さんだったりする?」

「正解。よく分かったね…」

「一夏がそんな話を振ってくる時点で、なんとなくそんな気はしてた」

「佳織は本当に勘が鋭いな…」

「そう?」

 

普通に推理すれば分かりそうなもんじゃない?

 

「おぉ~…かおりんはちょーのーりょくしゃだったのか~」

「いやいや」

 

超能力って…。

偶々答えが当たった程度でそう言われてもな。

 

こっちが苦笑いをしていると、そこら辺からひそひそ声が聞こえてきた。

 

「ねぇ…あの子が…」

「うん、聞いた聞いた」

「代表候補生と試合をするんでしょ?勝ち目なんてあるのかな?」

「いや、普通に考えて勝率なんてゼロに等しいでしょ」

 

ははは……言われてますなぁ~。

 

「…気にするな佳織」

「そうだよ。あんな高飛車女になんか絶対に負けないって」

「どこからその自信は出てくるんだ…」

 

少なくとも、私には勝てる見込みも根拠もない。

無様に負けるビジョンしか頭に浮かばないよ。

 

1週間後の試合の事を考えると、ふと思い出すのが実技試験の時の事。

 

あの時の私は凄く緊張していて、手も足もガタブルだった。

しかも、その時の試験官が千冬さんだと知って、更に緊張が悪化。

最終的には胃まで痛くなった。

 

試験が始まって、千冬さんが剣を構えて凄い形相で突っ込んでくるもんだから、私は怖くなって思わず後ずさり。

その時に足がもつれて倒れそうになったのだが、それが結果として千冬さんのファーストアタックを回避することになった。

偶然って恐ろしいもんだよ。

その後も、恐怖から腕で顔を覆ったりして、その瞬間に腕の装甲に振動が走ったり、反射的に体を縮めこもうとして、自分の体があった場所を剣が通過したりと、私的には恐怖体験の連続だった。

正直な事を言うと、もう二度とISの試合とかしたくない…。

あの実技試験は私のトラウマになったよ…。

 

(でも、やるって決めちゃったしな~…)

 

自分で自分の言った事を覆すような真似だけはしたくない。

確かに私はドジでマヌケでヘタレだけど、自分に嘘をつくのは嫌だ。

やれるだけやって、後の事はそれから考えよう。

 

「って言うか、早く食べないと朝のホームルームに遅れるかも」

「そうだな…と言っても、もう食べ終わるがな」

 

私達四人の皿はもう空寸前だった。

あと一口二口食べれば終了だ。

 

ささっと食べ終えてから食堂を後にすると、案の定と言うべきか、ジャージ姿の千冬さんが食堂に行く姿を目撃した。

その後、食堂の方から『いつまでちんたら食べている!!食事はいつも迅速に効率よくとるようにしろ!!もしも遅刻したら、グラウンドを10周させるぞ!!』って叫び声が聞こえてきた。

それを聞いて、私達は早く食べてよかったと心底思ったのだった。

 

やっぱ、怒った千冬さんって怖え~…。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 早くも今日の授業の内の二時間が終了し、今は三時間目。

授業を受けながら、これから何をすればいいか考えたが、素人染みた事しか浮かばない。

体を少しでも動かして体力を付けたり、放課後に授業以外にも勉強して、知識だけでも身に着けるとか。

付け焼刃だと分かってはいても、この程度しか思いつかない自分が腹立たしいよ…。

 

けど、そんな事を考えている間も授業は進んでいくわけで。

 

「そんな訳で、ISは宇宙空間での作業を前提として制作されていますので、操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアで覆っています。また、生体機能の補助をする役割もあり、ISは常にパイロットの身体を安定した状態に保ちます。これには主に心拍数や脈拍、呼吸量や発汗量なども含まれていて……」

 

この辺りはもう予習で勉強してるから、私としてはこの授業の内容は復習に近いんだよな~。

だからこそ、私は他の事を考える余裕があるんだけど。

 

なんか女子達が山田先生に向かって変な質問をして、それに対して山田先生も慌てながら変な例えで答える。

それによって、教室全体が変な空気に晒されることに。

あぁ……これが女子高特有の空気ってヤツか。

今までは共学しか行ったことないから、なんか新鮮だな。

 

教室の後ろの方で授業を見ている千冬さんの咳払いで空気が再び引き締まり、授業が再開する。

 

そんな事が何回か繰り返された後に授業が終了。

これでいいのかと思った私はおかしいのだろうか?

 

「次は空中におけるISの基本制動の方法をしますからね~」

 

まだその辺りか。

私はもうちょっと先までやってるぞ。

 

授業が終わってすぐ、皆は各々にグループに分かれる……と思っていたが……

 

「ねぇねぇ!仲森さんって強いの!?」

「今度の試合、私は応援してるからね!」

「大丈夫!きっとなんとかなるよ!」

 

なんでか皆が私の所に殺到。

そこまで注目するような事?

 

「今朝さ、織斑さんや篠ノ之さんや本音ちゃんと一緒に食べてたけど、あの三人とは仲いいの?」

「まぁ…一応。一夏と箒は幼馴染だし、本音ちゃんはルームメイトだから…」

「へぇ~…そうなんだ~」

 

お願いだからあっち行って!

私のようなコミュ症にはこの状況は非常にキツイ!!

今はなんとか笑顔で誤魔化してるけど、実はヒクヒクしてます。

手は冷や汗でびしょびしょだし。

誰でもいいからボスケテ~!と思って一夏や箒の方を見ると……。

 

「は…入れない…」

「佳織ぃ~…」

 

二人もこの人だかりに困っているようで、本音ちゃんに至っては……

 

「す~…」

 

寝てるし!!

この喧噪でよく寝れるな!?

本気で感心するわ!!

 

おのれ~…私に救世主はいないのか!?

 

「お前達……」

「あ……」

 

お~い…みなさ~ん…後ろ~……。

 

「「「「「へ?」」」」」

 

次の瞬間、私の周りに群がっていた女子達の頭に出席簿が振り下ろされ、教室に凄い音が鳴り響いた。

 

「休み時間はもう終わりだ。とっとと席に着け」

 

ち…ち…ち…千冬さぁ~ん!!

今のこの瞬間、千冬さんが誰よりも眩しく見えた。

 

皆は蟻の子を散らすかのように、自分の席に戻っていった。

よ…よかったぁ~…。

 

「大丈夫か?」

「はいぃ~…」

「そうか」

 

なんかそっけないけど、今の私にはそれだけでも有難いですぅ~。

 

(私の佳織を困らせおって…!これからは少し厳しめにいくか?)

 

なんだろう……どこかでこのクラスのハードモードが決定したような気が……。

 

全員が席に着いたことを確認してから、千冬さんも教壇に立った。

 

授業の挨拶をして、席に座って教科書を開こうとしたら、なんか千冬さんがこっちを見ていた。

 

「授業の前に仲森と織斑。お前達に知らせる事がある」

「「はい?」」

 

知らせる事?

このタイミングなら……一夏の専用機『白式』の事か?

あれ?でも私の事も言ったよな?

 

「今回、お前達には特別にISが用意されることとなった」

「「えぇっ!?」」

 

一夏だけじゃなくて、私も!?

 

「ど…どういう事ですか?」

「入学試験の際に行った実技試験。あれを委員会のお偉いさんが見ていたらしくてな。そこで活躍した織斑に試作機のテストパイロットをしてもらいたいそうだ」

「私がテストパイロット……」

「そうだ。これは依怙贔屓などではなく、純粋にお前の実力と努力が認められた結果だと思え」

「分かりました!」

 

実技試験で活躍って……一体何をしたん?

 

「あの~…一夏は今の理由で納得しますけど、どうしてそこに私の名前も挙がるのでしょうか~?」

「その理由はいくつかある。まず一つ」

 

何個もあるのかよ…。

 

「お前のIS適性が高かったことだ」

「私の適性が?」

 

そういや、入学時に色々と調べていたっけ。

私の適性は~……なんだったっけ?

 

「先生。仲森さんのランクが高いって、どれぐらいなんですか?」

「仲森のIS適性はA+だ」

「「「「おぉ~!!」」」」

 

A+って…世界中の専用機持ちの殆どがそのレベルだったよな?

あれ?じゃあ私って適性だけは高いってこと?

何よ、その宝の持ち腐れは。

 

「それと、委員会の方々がお前の将来性に期待したからだ」

「は…はい?」

 

将来性とな?

 

「結果はどうあれ、お前の動きを見て、委員会がお前に専用機を与えてもいいと判断した」

 

いやいや、別に判断なんかしなくていいから。

私になんか期待するだけ無駄だって。

今からでも遅くないから、考え直そうよ。

 

「と言っても、お前の場合は織斑のようなワンオフの機体ではなく、量産機の改造機のようなものだがな」

 

気にするなと言っているようにも聞こえるが、私的には充分すぎるぐらいに分不相応ですから!

 

「本来ならば国家や企業に所属する人間にしか用意されないのだが、お前達二人はIS委員会から機体のデータ収集の為のテストパイロットとして起用された。だが、あくまでテストパイロット。機体はお前達に譲渡するのではなくて貸し与えるのだと言う事を忘れるなよ?」

「「はい」」

 

ISを個人で持つとか、絶対に不可能でしょ。

ISのコアは世界中に467個しか存在せず、そのコアを製造出来るのは束さんだけ。

肝心の束さんはなんでかISのコアを必要以上に作ろうとはしないし。

その明確な理由はよく分かっていない。

だからこそ、ISの専用機を持つ存在は一種のエリートのような扱いを受けている。

セシリア・オルコットも、自分の事をエリートだと思っている類の人種だろう。

 

「いいなぁ~…専用機……」

「この時期に与えられるなんて、二人ともどんな試験だったのかしら?」

「やっぱり、仲森さんって凄かったんだ…」

 

また私に対する評価が無駄に高くなりそう……。

けど、事実を知った時にその夢は醒めるだろう。

そうなれば、また静かな毎日が帰ってくる。

 

「話はここまでだ。では授業を始める」

 

あれ?ここで箒が束さんの妹だっていう話が来るんじゃないの?

でもあれって、一夏が教科書を読んで束さんの名前が出て、その流れで箒の話になったんだっけ。

今回は教科書を読んでないから、その流れにならなかったのか。

普通なら名字で気が付きそうなもんだけど、皆なりに気を使っているのか?

 

けど、専用機…か。

どう考えても面倒くさい事になるだろうな…。

神の意思はどこまで私を玩具にするきだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




基本的に原作に沿っていくため、進み具合はスローになりますね。

実は佳織の専用機は2種類考えていて、これによって展開がギャクかシリアスかに完全に分かれるんですよね。

本当に迷いましたが、結果的にギャグルートを選びました。
こっちでもシリアス展開は多少はありますけどね。


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第4話 鍛えよ 勝つために

な…な…な……なんか知らない内にエラい事になっとる~!?

お気に入り登録数がいつの間にか400突破って!

冗談抜きで驚きましたよ~…






 なんか最近、今までの人生以上に流されてる気がする…。

 

私の意思とは関係無くクラス代表の候補になって、私の意思を無視して専用機が用意されて……。

いやね?私だって流される方が楽なのは知ってるよ?

勿論、それがあまり良くないってことも。

前世では、流されるがままの人生を送ったせいで碌な目に遭わなかった。

だから、今度こそは自分の意思で色んな事を決められるようになろう!って思ってたんだけどなぁ~…。

やっぱり、理想と現実って全然違うわ…。

 

な~んて事を考えていたら授業は終わり、今はお昼休み。

私は精神的疲労から机にグテ~ンと体を預けていた。

 

「少しだけ安心しましたわ。まさか、無改修の訓練機で試合に臨もうとは思ってはいなかったでしょうけど」

 

またお前か。セシリア・オルコット。

この時期の彼女って、こんなにもウザいキャラだったんだ…。

お前さんは優雅にやって来たつもりかもしれないが、周囲のお前に対する目線は絶対零度だぞ。

 

「まぁ…勝負はするまでも無く分かりきってはいますけど、流石にあのままではフェアとは言い難いですものね」

「そ~ですか」

 

いいから、とっととどっかに行ってよ。

こちとら早くお昼が食べたいんだよ。

 

「なんですの!その態度は!このエリート中のエリートとも言うべき私と会話をしているのですよ!背筋ぐらいは伸ばしたらいかがですの!?」

 

伸ばす元気も無いんだよ。

主にお前のせいで。

 

「いい加減にしなよ」

「一夏……」

 

さっきから隣で様子見をしていたけど、我慢出来ずに話しかけてきたか。

出来れば、もうちょっと早くしてほしかったけど。

 

「佳織が迷惑してるじゃん。早くお昼でも食べに行ったら?」

「この私といる事が迷惑ですって…?どうやら、専用機の所持が認められたからって、調子に乗っているようですわね!」

「専用機は関係ないでしょ!それに、調子に乗ってるのはそっちの方じゃん!」

 

あぁ~…火に油を注ぐような真似を…。

 

「なんですって!?」

「なによ!?」

 

どうにかして止めなきゃ~!と思っていても、私が下手に話しかけたら悪化しそうだし、どうすれば……。

 

「何をしている。早く行くぞ」

「箒…」

 

ほ…箒か…。

でも、彼女はある意味では一夏以上に沸点が低いし、これはヤバいかも……。

 

「一夏も。そんな奴は放っておけばいいんだ」

「でも……」

「ここで言い合っても意味無いだろう。それに、当事者である佳織が冷静なのに、お前が熱くなってどうする」

「う……」

 

別に冷静じゃないけどね。

ただ、どうすればいいか困っていただけで。

って言うか、箒ってこんなにも落ち着いたキャラだったっけ?

私の記憶が正しければ、もう少し乱暴なイメージが…。

 

「そう言えば貴女……」

「なんだ?」

「あの『篠ノ之博士』と同じファミリーネームですけど、もしかして親族だったりしますの?」

 

どうしてソレを今ここで聞いちゃうかな~!?

私と一夏、あの千冬さんも安易に触れないようにしている事なのに~!

 

「…………さぁな」

 

小さくボソッと呟いて、箒は教室から出て行った。

やっぱり、何かしらの思うところはあるのかな……。

 

「フ…フン!とにかく!このクラスの代表に最も相応しいのは、このセシリア・オルコットだと言う事をお忘れなきように!」

 

セシリアも行ってしまった…。

 

「……私達も行こうか?」

「だね。本音ちゃんも一緒に来る?」

「いいの~?」

「勿論」

「じゃあ行く~!」

 

そんな訳で、私達は先に行った箒の後を追うようにして、揃って食堂に向かうことにした。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 途中で箒と合流した私達は、そそくさと食券(日替わり定食)を購入して注文の品を受け取った。

そして、空いている席を発見するや否や、速やかに移動して席を確保。

この時ばかりは実に見事なコンビネーションだったと言える。

 

「箒……さっきはごめんね。なんか巻き込んじゃって……」

「別に佳織が謝る必要はない。アイツが全部悪いんだ」

「でも……」

「箒の言う通り、佳織は何も悪くないよ。向こうが勝手に喧嘩売って来たんじゃん」

 

一夏はセシリアの事をめっちゃ敵視してるな~。

まさに『犬猿の仲』って感じ。

逆に箒は軽く受け流してる。

まさか、箒の方が大人の対応をするとは思わなかった。

 

「かおりんも大変だね~」

「そんな口調で言われたら、全然大変な気がしないね」

「なんだか、こっちまで脱力しそうだ」

「え~?」

 

でも、さっきまでのピリピリした空気は無くなった。

本音ちゃんは凄いなぁ~…。

まさしく、愛すべき一組のマスコットだね。

 

そんな事を話しつつ、今日の日替わり定食についてきた納豆をコネコネ~とな。

 

「納豆はいいよね~。栄養たっぷりで美味しくて、まさにリリンの生み出した文化の極みだね」

「納豆が文化の極みだったら、江戸時代辺りから日本の文化は極まっていることになるな」

 

実際そうじゃない?

過去から学ぶ事って私達が思っている以上に多いし。

 

こねまくった納豆をほかほかのご飯に投入~♡

 

「ねぇ、君が例の噂の子でしょ?」

「「「はい?」」」

 

至福の瞬間を迎えようとした時、隣からいきなり話しかけられた。

今回で二回目だな。

 

よく見ると、それは見た事の無い年上と思わしき女子生徒だった。

と言うか、実際に年上だな。

だって、リボンの色が赤…つまり、三年生の色をしていたから。

 

「噂ってなんですか?」

「あれ?知らないの?今年の新入生の代表候補生以外で唯一、IS適性がA+の子がイギリスの代表候補生と試合をするって、学園中の噂よ?」

「うぇ~…マジですか?」

「マジもマジ。新聞部の子が躍起になってたから」

 

い…いつの間にそんな事に…!?

恐るべし…IS学園の情報伝達速度…!

 

学校とは一種の閉鎖社会だ。

故に、少しでも目立つ情報が流れれば、あっという間に端まで伝わる。

そんな話を昔聞いた事があったような気がしたけど、まさかそれを我が身で実感する羽目になろうとは……。

 

「でも、大丈夫なの?こう言っちゃなんだけど、君って素人…だよね?」

「はい。紛れも無く、どこに出しても恥ずかしくないド素人です」

「そ…そこまで自信満々に言わなくてもいいけど……」

 

素人なのは本当だし。

 

「君の今までのIS稼働時間ってどれぐらいなの?」

「他の皆と大差ないですよ」

「だったら、かなり不利よ。ISはね、基本的に稼働時間が物を言うの。相手は代表候補生。間違いなく300時間は超過してるわよ?」

「でしょうね」

 

んなこたぁ~分かってるんだよ。

 

「だったらさ、私がISの事を教えてあげようか?」

 

そう言うと思っていましたよ。

けどね……

 

「悪いですけど、今回はご遠慮します」

「…え?なんで?」

「先輩の申し出は本当に有難いです。けど、最初から誰かに頼ろうとしていたら、きっとこれから先も誰かに頼ることが癖になってしまいます。別にそれが悪い事とは言いません。私は何も言おうとせずに流された結果、今の状況にいます。ここに来て、また状況に流されていたら、この流れから出られなくなってしまうような気がするんです。だから、この『最初の一歩』ぐらいは、自分の意思で踏み出したいんです」

 

なんて偉そうな事を言ってはいるけど、本格的にヤバくなったら恥も外聞も捨てて、遠慮無く頼るんだろうな。

でも、それまでは自分の足で歩かなきゃ。

 

「…君の言ってることは本当に素晴らしいわ。でも、代表候補生はそんなに甘い存在じゃないわよ?」

「分かってます。今の私じゃ勝ち目なんて全く無いってことぐらいは」

「だったら…「でも」……?」

「あの偉そうなツラに一泡吹かせるぐらいの事は出来るかもしれないじゃないですか」

 

一週間もあれば、一矢報いるぐらいは可能かもしれない。

同じ負けるでも、何も出来ずにボロ負けするよりはずっといい。

 

「ここは思ってる以上に情報の伝達が早いようだし、もしも先輩に教わったのが知られたら、相手はまた増長します。下手したら、先輩にも迷惑が掛かるかもしれない。甘い考えかもしれませんけど、そんなのは嫌なんです」

「佳織……」

「かおりん……」

 

あ~…私ってば何を言ってるのかしら。

こんなシリアスなセリフを言えるようなキャラだったかな?

 

「ふぅ……分かった。そこまで言うなら、私からは何も言わない。その代わり……」

 

あら、頭を撫でられた。

 

「頑張りなさいよ。私個人は君の事を応援してるからね」

「はい。ありがとうございます」

「それじゃあね」

 

あ……名前を聞けないままに行ってしまった。

 

「佳織は先輩からも期待されてるんだな……」

「本当に佳織は凄いなぁ~…」

「そんな事は無いって」

 

あれは単に噂の後輩の顔を拝みに来ただけでしょ。

思った以上に話しちゃったけど。

 

「けど、実際問題…これからどうしようか…」

 

私の考えなんて、所詮は素人の浅知恵。

それが効果があるとは思えないし…。

 

「なに、大丈夫だ。佳織」

「箒?」

 

何が『大丈夫』なのよ?

 

「実戦経験豊富で専用機を所持している代表候補生が相手だからと言って、素人同然でISにも碌に乗ったことが無い佳織が負けるとは限らないじゃないか」

「箒……その短い文章の中に、負けるであろう要素が山ほどあるんだけど……」

「なに!?」

 

気が付いていなかったのかよ。

 

「でも、本当にどうする気?」

「う~ん……」

 

なんであんな事を言ってしまったんだろう…。

見栄を張った結果、自分の首を絞める事になるとは……。

もうこの時点で負けフラグ建ってね?

 

「先生にでも聞いたらいいんじゃないかな~?」

「先生に?」

「うん。別に、誰かに方法を尋ねるぐらいは問題無いでしょ?それを実行するかはかおりん次第なんだし」

 

ほ…本音ちゃんの口から正論が飛び出した!?

でも、実にごもっともな意見だ…。

 

「そうしよう……かな?特訓をお願いするわけじゃないんだし……」

「それ以前に、訓練機は予約が一杯で貸出不可らしいけどね」

「それは私も聞いた。なんでも、基本的に訓練機の貸し出しは上級生が優先されているらしいな。二学期以降ならまだしも、入学したてのこの時期に私達一年が訓練機を借りるのは非常に難しいだろう」

 

それなら私もどっかで聞いたな。

だからこそ、原作でも一夏は箒と一緒に体を動かすと言う名目で剣道をしていたんだし。

 

「訓練機に関しては私も最初から諦めていたよ。だから、ここは本音ちゃんの提案を飲んで、放課後にでも先生に聞きに行くことにするよ」

「それがいいな」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 お昼に話した通り、私は職員室まで来て千冬さんの机の傍にいる。

一夏と箒と本音ちゃんは廊下で待っている。

 

「成る程な……」

「何か私が今の段階で出来る事ってありますか?なんでもいいんです。教えてください」

「そうだな。まずは基礎トレーニングと知識の習得。それが一番だろう」

「ですよね……」

 

流石の私も、それは真っ先に思いついた。

でも、なんとなくそれだけじゃ駄目な気がしたんだ。

 

「知識もそうだが、ISは本人の身体能力が大きく関わってくる。お前はお世辞にも動ける方じゃないだろう?だから、例え付け焼刃と分かっていても、何もしないよりははるかにマシだと私は思うぞ」

 

千冬さんの口から言われると、物凄い説得力があるな。

 

「それでも不安なら……そうだな。実際の試合の映像を見てイメージトレーニングでもしてみたらどうだ?」

「映像でイメトレ…ですか?」

「ああ。お前が思っている以上にイメージトレーニングは大事だ。国家代表に選ばれた選手の殆どがイメトレを絶対に欠かさない」

「織斑先生も…ですか?」

「当然だ。私も現役時代は試合の前には毎回のように頭の中で相手選手と戦ったものだ」

 

イメトレ……か。

それなら私にも出来そう…。

 

「映像資料ならば『資料室』に保管されている筈だ。あそこには過去にこの学園で行われた様々な試合の模様が記録されているDVDがある。中にはモンドグロッソを初めとした世界規模での公式戦の映像もあった筈だ」

 

にゃんと……!

それは本当にレアな代物じゃないですか!

 

「放課後ならいつでも出入りは可能だ。今からでも行ってみるといい」

「分かりました。教えてくれて、ありがとうございます!」

「気にするな。生徒の相談に乗るのは教師の役目だからな」

 

何気にちゃんと『先生』をしてるんだな~…。

 

「それにな…」

「ふぁ!?」

 

い…いきなり抱きしめられた!?

しかも、顔がすぐ横にあるんですけど!?

 

「私はお前に期待しているんだ…。だから、頑張れよ……佳織」

 

耳元で囁かれちゃったよ……。

息がかかって凄くくすぐったかった…。

 

余りにも恥ずかしくなって、慌てて職員室を出た私の耳に、去り際に千冬さんが言った一言は聞こえていなかった。

 

「お前ならきっと勝てるさ…。私の愛する佳織…」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 職員室から出てきた私が息を切らせているのを見て、待っていてくれた三人は驚いていた。

 

「ど…どうした!?一体何があった!?」

「な…なんでもないよ」

 

あんな事、もしも言ったら…また騒動に発展しそうな気がする。

ここは黙るが吉と判断する。

 

「顔真っ赤だよ?大丈夫?」

「だいじょぶ、だいじょぶ」

「でも、照れてるかおりんは可愛いね~♡」

 

いや、私的には君の方が可愛いからね?本音ちゃん。

 

「で?何か聞けたのか?」

「うん……」

 

私はさっき千冬さんに教えて貰った事を報告した。

 

「やはり、基礎トレーニングは必須か…」

「それと勉強も…だね」

「この二つは基本だよね~」

 

そこら辺は皆の共通認識だったようだ。

 

「しかし、イメージトレーニングと言う言葉が出てくるとは思わなかったな」

「でも、姉さんなら普通にしてそう」

「実際に試合の前によくしていたって言ってたよ」

「「やっぱり」」

 

だよね。

 

「なら、早速行くとするか」

「善は急げ…だね」

 

いつ資料室が閉まるか分からないから、急いだ方がいいかも。

かと言って、廊下を走るわけにはいかないので、早歩きで行くことに。

でも、本音ちゃんの歩行スピードに合わせていたら、結局は普通に歩く羽目になるんだろうな~。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 資料室に到着し中に入ると、そこは金属製の棚に沢山のDVDや紙製の資料が保管されている、文字通りの『資料室』だった。

部屋の奥にはパソコンがあり、そこでDVDの再生や情報の検索が出来るようになっているようだ。

基本的に生徒の寮の各部屋にもパソコンは設置されているが、ここのパソコンはIS学園のサーバーに直結しているみたいで、より多くの情報を知る事が出来るのだ。

 

「まさか…これ程とは……」

「どれがいいのかな…?」

 

私達の他にも生徒はちらほらと見かけてはいるが、そのいずれもが静かにしている。

この空気の中で声を出せる程、私は大物じゃない。

私の心臓は蚤の心臓、ガラスのハートなんですよ。

 

棚に貼られた項目のシールを見ながら探していくと、『公式試合』と書かれた場所にたどり着いた。

 

「ここか……?」

「探してみよう」

 

すると…出るわ出るわ、色んな試合が記録されたDVDが。

幸いな事に、殆どの資料が貸出されていなくて、私は必要と思ったDVDを借りる事にした。

 

カウンターにいる係の人に話かけて、私は借りる予定のDVDを出した。

 

「これを貸してください」

「はい、分かりました……って、貴女は……」

「ん?」

 

このパターンは……

 

「そう…成る程ね」

 

なんか一人で納得したんですけど。

 

手元にあるパソコンを操作して、私にDVDの束を渡してくれた。

 

「応援してるわ。頑張ってね」

「ははは……どうもです」

 

こんな所にまで話は広まってるのか……。

 

無事に資料を借りる事が出来た私達は、資料室を出てからこれからの事を話した。

 

今日の所は、このDVDを部屋で見ることにした。

明日から本格的に頑張る事に。

 

放課後に学園内にあるトレーニングルームなどで体を動かして、夜には部屋で勉強。

休憩の合間にDVDを見てイメトレ。

トレーニングは箒が、勉強は一夏が一緒にすると言い出した。

最初ぐらいは自分で頑張ると言ったのに、つき合わせたら悪いと言ったら、二人は……

 

「「私達が勝手にやっている事だから問題無い!!」」

 

って言ってきた。

それは屁理屈でしょ…。

滅茶苦茶嬉しいけどさ。

 

え?本音ちゃんの役目?

あの子は疲れた私を癒す存在。

その場にいるだけでヒーリング効果があるからいいの!

 

こうして、私の試合に向けてのトレーニングが始まった。

どこまでやれるか分からないけど、0%の勝率を少しでも引き上げる事が出来ればいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか行動が矛盾してるように見えますが、それこそが人間らしさだと思います。

転生者であることを除けば、佳織はどこまでも一般人なんです。
今はまだ『転生特典』も無いですし。

今はまだ……ね。


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第5話 専用機と初試合

最近、この作品の事を自分の中で『おれゆり』と略している自分がいます。

一瞬だけ『かみゆり』と迷いました。






「ふぁ~…」

 

瞼を擦りながら目を覚ます。

隣のベットにはルームメイトの本音ちゃんが寝ている。

 

「……………」

 

少しだけボーっとした後に覚醒。目が覚めた。

 

「あ……そうか……」

 

部屋の壁に掛けてあるカレンダーの今日の日付の所には赤いペンで丸が書かれている。

今日はセシリアとの試合の日。

遂に来ました、原作での最初のイベント。

試合をするのは一夏じゃなくて私だけど。

 

この日の為にやれる事は全てやった……と思う。

 

一夏と一緒に勉強をして、箒とはランニングや、時には剣道の打ち込みにつき合わされたり。

そして、部屋では借りてきた試合のDVDを見てイメージトレーニング。

それをこの一週間ずっと続けてきた。

 

まぁ…こんな事で代表候補生に勝てたら誰も苦労はしないけど、それでも、前に名も無き先輩に言った通り、一矢報いる事ぐらいは出来るかもしれない。

そうすれば、彼女も少しは自分の高飛車な態度を改めるかもしれない。

今はそれに賭けるしかない。

 

原作通りに相手が油断をしていてくれれば尚良し。

より一層、こっちがジャイアントキリング出来る可能性が生まれるってもんだ。

 

差し当たって、今するべき事、それは……

 

「本音ちゃん。朝だよ~」

 

この、隣で爆睡中のお姫様を起こすことだ。

 

「うぅ~ん……」

 

こうして彼女と一緒に暮らすようになって少し経つが、彼女は自力で起きると言う事を一切しない。

もしかして、これまでもずっとそうだったのだろうか?

確か、本音ちゃんには二つ上の姉がいた筈。

私的には結構厳しいイメージが強いが、この世界では違うのかな?

 

「で、起きないと」

 

これもいつもの事。

この短期間で既に慣れてしまった。

慣れとは恐ろしいものだ。

 

「仕方が無い……」

 

また『あの手』で行きますか。

 

「本音ちゃん。早く起きないと、君の分の朝ごはんも食べちゃうぞ」

「それだけは嫌だ!!」

 

はい、起きました。

 

「あれ~…?かおりん~?」

「目が覚めた?」

「う~ん……」

「まだだったら、顔でも洗ってきなよ。サッパリするから」

「わかった~」

 

未だに眠たそうしながら、本音ちゃんはゆったりとした足取りで洗面所へと向かう。

 

「その間に準備をしておくから」

「は~い」

 

……学生を子どもに持つ母親って、毎朝こんな事をしているんだろうか……?

だとしたら、マジで尊敬するな…。

ちゃんと親孝行でもしてから死ぬんだった…。

前世では私って碌な子供じゃなかったし。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 今日の授業が全て終了し、今は放課後。

 

私は第三アリーナのAピットにて待機していた。

既に着替えは済ませていて、恰好は入学の際に学園から貰った学園指定のISスーツ。

と言えば聞こえはいいが、実際にはちょっとだけ洒落たスク水である。

実技試験の時と合わせてこれで着るのは二回目だが、やっぱり慣れそうにはない。

だって、この恰好で人前に出るとか、普通に羞恥プレイじゃん!

よく皆は平気でいられるな!?

割り切ることが大事ですってか!?

 

「おぉ~…」

「気のせいかな…。また佳織…一段と大きくなっている気が……」

「やはり、何度見てもいいな…」

「せくすぃ~だねぇ~」

 

そして、さっきからこっちを舐めまわすように見ている四人。

流石に勘弁してください。

めっちゃ恥ずかしいです。

 

「あの……姉さん」

「なんだ…一夏」

 

あ、まだ放課後なのにプライベート用の会話をしてる。

いつもなら怒るのに、今日は怒らないんだ。

 

「実技試験の時さ……揺れてた?」

「あぁ……ばっちり揺れてたぞ」

「そう……」

 

揺れてた!?何が!?

 

自分であまり言いたくはないが、私の胸は目の前にいる女性陣に負けず劣らずのサイズになっている。

恥ずかしいから細かいサイズまでは言いたくないけど、分かりやすく言うなら…そう……

 

箒以下、シャルロット以上…ってところかな。

 

え?カップ?言いませんよバカ野郎。

それこそ、ご想像にお任せしますってやつだ。

 

「そう言えば、佳織のISはまだ到着していないんですか?」

「ああ。少しだけ搬入が遅れているようだ。今は山田先生が確認に行っている」

 

この辺は原作と似てるのね。

 

「因みに、織斑のISは近日中に届く予定だ。その時は今回のようにぶっつけ本番ではなくて、ちゃんと事前に準備をしてからの試運転となる」

「分かりました」

 

ははは……なんで私だけ……。

今の私は『ド素人』から『素人に毛が生えた程度』にランクアップした…と思う。

物凄く微々たる差だけど。

 

「ねぇ~…かおりん」

「な…なにかな?本音ちゃん」

「おっぱい揉んでもいい?」

「ストレートだな!?ダメに決まってるじゃん!」

「えぇ~?」

 

なんでそこで不満そうな顔になる!?

君の方が胸は大きいでしょうが!

 

「ならば、担任である私ならばいいな」

「担任でも駄目ですよ!?」

 

なんで担任ならいいと思ったんだ!?

 

「じゃあ、幼馴染の私なら?」

「幼馴染でも駄目!」

「ちぇ……じゃあ、私もダメか~」

「アンタもかい!」

 

箒だけじゃなくて一夏も狙ってたのかよ!?

そんなに胸を揉みたければ、自分のを揉めよ!

ここにいる皆がご立派なものを装備してるんだからさ!

 

「な…仲森さん!仲森さん!仲森さん!」

「あ」

 

山田先生が奥の方から駆け足でやって来た。

今にも転びそうな足取りだけど。

この辺は結構凸凹が多いから気を付けないとダメですよ?

 

「山田先生、落ち着いてください。こんな時は波紋の呼吸法ですよ。ほら」

「そ…そうですね。コォ~…」

 

いや、本気でしないでよ。

一夏も、なんでここで波紋な訳?

ISの試合で波紋疾走でもやらせる気?

 

「あまり山田先生をからかうな」

「すいません。つい……」

 

つい、で波紋をやらせるな。

 

「も…もういいですか~?」

「いつまでしてるんですか……」

 

普通にやめようよ…。

 

「って!こんな事をしてる場合じゃなかったんだった!来たんですよ!仲森さんの専用ISが!」

「やっとか」

 

き…来たんだ……!

こうなったら、マジで逃げ場が無いぞ…!

 

奥の方にあるピット搬入口が重い音を上げながらゆっくりと開いてゆく。

その向こうに現れたのは……

 

「これは……?」

 

そこに鎮座していたのは、見た事のあるフォルムのISだった。

全身が緑色に装飾してあるその機体は……。

 

「ラファール…?」

 

そう、この学園にも何体か配備してある第二世代型の量産型IS『ラファール・リヴァイヴ』だった。

でも、よく見たら、このISは私が知っているラファールとは少し違った。

 

確かに機体の構造などはラファールそっくりだが、なんて言うか……全体的に丸い。

角ばった場所が殆ど無くて、装甲が丸みを帯びている。

しかも、肩の辺りに本来のラファールには存在しないパーツがあった。

右肩には逆L字型のシールド、左肩にはどこかで見た事があるような丸いスパイクアーマー。

 

うん、思いっきりザクⅡをイメージしてますね。

 

あぁ……これ絶対あの『神』の仕業だわ……断言できる。

 

「これが仲森さんの専用IS『ラファール・リヴァイヴⅡ』です!」

「ん?」

 

ツー?

 

「えっと……カスタムⅡ…じゃなくて…ですか?」

「はい。この機体名には『カスタム』はつきませんよ」

「え?」

 

ど…どゆこと?

これってどう見てもラファールの改造機じゃない!

 

「そこは私が説明してやろう」

「織斑先生……」

 

千冬さんが前に出て説明してくれるようだ。

 

「このISは、デュノア社が自社で開発した量産機であるラファールを再設計したISだ」

「再設計……?」

 

え?え?マジで分からない…。

 

「ラファールと言う機体を世に出したデュノア社は長い間、第三世代機を開発出来ないで低迷していた。だが、そこであるアイデアを閃いたそうだ。『新しい機体を開発出来ないのならば、元から製造しているラファールを再設計して、正当な後継機を作ればいい』とな」

「それが…この……」

「そう。ラファール・リヴァイヴⅡになるわけだ」

 

え~っと……つまり、元のラファールがザクⅠだとしたら、この目の前にあるラファールⅡはザクⅡに該当する機体って事?

これでいいのか分かんないけど。

 

「お前がさっき言ったカスタムは、文字通りラファールをカスタムした機体であって、それ自体はどこまで行ってもラファールでしかない。だが、このラファールⅡは違う。基本性能を向上させ、拡張領域も拡大、更には整備性も上がっている代物だ」

「つまり、これは現場の事を第一に考えたISなんですよ。実際、開発の際にはパイロットの意見を多く取り入れたと聞いています」

 

あ…あれ~?

デュノア社ってそんなにも殊勝な事が出来る会社でしたっけ~?

私が知る限りじゃ、かなりえげつない会社だったような気が……

 

「そして、この目の前にあるISは先行量産試作機として製造された数機のうちの一体になる。確か……」

「はい。このラファールⅡは試作1号機に該当する機体だそうです」

 

し…試作1号機…ですか。

先行量産って事は、将来的には勿論、量産を前提にしているわけであって、とゆーことは……。

 

(あれ?これって、普通に専用機を受領するよりも大変じゃね?)

 

だって、私のデータ次第で、これからの方向性が決まるわけでしょ?

それって想像以上のプレッシャーなんですけど!?

 

しかもこれ、よく見たら……

 

(シールドにジオン公国の紋章が書いてあるし……)

 

悪ふざけが過ぎるだろうに…!

 

「これ以上オルコットを待たせてもあれだ。早速準備に取り掛かろう」

「はい」

 

こうなったら腹をくくれ!私!

逆に考えるんだ。負けちゃってもいいさと。

 

私はそっと眼前にあるラファールⅡに触れる。

すると……

 

「……!?」

 

私の中で『何か』がガッチリと填まった気がした。

例えるなら、不具合だった歯車が上手く噛み合ったような、今まで空いていたパズルのピースがはまったような……そんな感覚。

 

前に普通のラファールに触れた時はこんな事は無かったのに……。

これが…『専用機』って事なのか…?

 

各部装甲のハッチが開き、まるで私の搭乗を待っているような印象を受けた。

 

「乗り方は分かるな?まずは背中を預けるようにして、座るような感覚でいい」

「こ…こうですか?」

「もう少し…こうだな」

 

千冬さんが直接搭乗を手伝ってくれた。

普段は厳しい印象だけど、根っこの部分はとても優しい人なんだよな~。

 

(ふふふ……さりげなく佳織の体に触れたぞ!しかも、今何気に尻に触ることに成功した!この手は少なくとも今日の間は洗いたくないな…)

 

今一瞬、とてつもない悪寒が背中を走ったけど、気のせいだよね…?

 

完全に私の体が入ってから、各部装甲が閉じて、同時に空気が抜ける音がピット内に響く。

すると、不思議な感覚が私を支配する。

何とも言えないような『一体感』。

本当に…このラファールⅡは私の為だけに存在してるんだと実感させられる。

 

目の前に色んなセンサー類が表示される。

と同時に、視界が非常にクリアーになる。

あぁ…これがハイパーセンサーってヤツか。

実技試験の時は色んな意味で必死だったから分からなかったけど、今なら理解できる気がする。

確かにこれは、『宇宙で活動する事』を前提としている物だと。

束さんの『夢』に、私は乗っているんだ…。

 

「ハイパーセンサーはちゃんと機能しているか?」

「はい。大丈夫です」

「そうか。いかに最終的な量産を目的としているとは言え、それはお前用にセッティングされたISだ。故にコアの方も予め初期化してある。私が言いたいことは…わかるな?」

「ええ。つまり、ちゃんと最適化処理(フィッティング)しなくちゃダメだ…ってことですよね?」

「その通りだ。お前は物分りがよくて助かる」

「それほどでも」

 

普通だと思うけどね。

 

「本当ならば、この場でやるべきなんだが、生憎とアリーナの使用時間も限られている。だから……」

「試合中にしろ……ですか」

「そうなるな。なに、お前なら出来るさ」

 

どんだけ私の事を高く評価してるんですか…。

 

「では、ピット・ゲートの方に移動してください」

「了解です」

 

ほんの少しだけ体を前方に傾けるだけで、ISは前の方に移動した。

目の前には、最適化までのタイムが刻まれている。

 

実を言うと、私の手はさっきからずっと震えっぱなしだ。

自分の腕を抑えるようにしていたから、バレずにすんでいたけど。

 

いよいよなんだよな…!

こんな時は、偉大な先人の言葉を思い出せ!

 

『本当の『勇気』とは何か!?それは『怖さ』を知る事!『恐怖』を我が物とする事じゃ!!』

『人間賛歌は勇気の賛歌!人間の素晴らしさとは勇気の素晴らしさ!!』

 

……これ、二つとも言ってる人同じじゃん…。

 

「佳織……」

 

ふと声がした方を見ると、箒が何かを言おうとこっちを向いていた。

 

「えっと……その……」

 

あれ?箒ってこんなにも初々しい顔をする子だったっけ?

ちょっと可愛いんだけど。

 

「が…頑張れよ!この一週間の努力は、絶対にお前を裏切ったりしない!」

「うん。ありがとう」

 

『頑張れ』は自分の向けるものじゃなくて、他者へのエールに使うもの…か。

箒のエール…確かに受け取ったよ!

 

「私も応援してるよ!大丈夫!佳織なら絶対に勝てるって!」

「ははは……」

 

相も変わらず、なんの根拠も無い事を言っちゃって…。

でも、だからこそ一夏って感じだ。

例え気休めでも、『勝てる』って言ってくれて嬉しいよ。

 

「かおりん。ファイト!」

「うん。自分に出来る事を精一杯してくるよ」

 

どこまで出来るかは分からないけど。

でも、言われたからにはやらないと、女が廃るでしょ!

 

「発進準備が完了しました!タイミングは仲森さんにお任せします!」

「はい!」

 

よ…よ~し!

こうなったら、少しでもそれっぽい事を言ってから発進しよう!

 

「仲森佳織!ラファール・リヴァイヴⅡ……発進します!!」

 

 

 

 

 

 

 




私の中では、ここから物語は『赤ルート』に進みます。
多分、分かる人はすぐに分かるんじゃないかと。

で、もう一つ考えていたのが『青ルート』で、こっちはギャグが殆ど無くて、シリアス一辺倒になっています。
多分、最終的には死に設定も多く出て来ていたでしょう。



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第6話 転生特典

この作品での初めての戦闘シーン。

果たして佳織は初陣を勝利で飾れるのでしょうか?







 僅かな勇気を振り絞って、自分を奮い立たせる為に格好つけて発進した私を待ち受けていたのは、優雅にステージの中央付近で専用機を纏って宙に浮いているセシリアだった。

 

「随分と掛かりましたわね。このまま来ないかもしれないと思いましたわ」

「そう……」

 

いつもなら色々と言い返したいけど、生憎と今の私のはそんな余裕はない。

 

(あれが…『ブルー・ティアーズ』か……)

 

こうして肉眼で見ると、実に美しい機体だと思う。

青い装甲に特徴的な4枚のフィンアーマー。

成る程、原作で一夏が騎士のようだと言ったのも頷ける。

流石はイギリス製のISと言う訳か。

 

そして、彼女の手にはその体よりも長大な光学射撃武器『スターライトMk-Ⅲ』が握られている。

レーザーの発射速度は多分、私が映像越しに見た時以上だろう。

一瞬でも遅れれば、間違いなく直撃だ。

 

「あら、その機体は……」

 

彼女がこっちのISをまじまじと見だした。

 

「見た感じではラファール・リヴァイヴのようですが、少し形状が違いますわね…。もしかして、改造機ですの?」

「まぁ…ね」

 

正確には後継機だけど、ここで律儀に答える義理は無い。

 

「ま、貴女の機体がなんであっても関係ありませんわ。何故なら、勝利するのはこのセシリア・オルコットなのですから」

 

本当に強気だよなぁ…。

自信に裏打ちされた実力があるんだろうけど、彼女はどう見ても油断している。

『獅子は兎を駆るのにも全力を尽くす』って言葉を知らないんだろうか?

こっちにとっては都合がいいけど。

 

「そこで、こちらから一つ提案がありますわ」

「て…提案?」

 

あ~…この展開は……。

 

「貴女だって、折角の専用機を受領したその日にボロボロにされるのは本意ではないでしょう?ですから、ここで大人しく私にクラス代表の座を譲ると言うのであれば、手加減ぐらいはしてあげてもよくってよ?」

 

うわ~…超上から目線だ~。

 

セシリアの目が細くなった。

と同時に、ISから情報が齎される。

 

【敵機、射撃モードに移行。武装のセーフティーロックの解除を確認】

 

撃つ気満々ですやん!

 

それが分かった途端、私の顔に汗が流れる。

 

くそっ……!

やってやるって心に決めたのに…どうして手が震えるんだよ!

装甲の中に手があるから周囲に気が付かれてないけど、心臓はバクバクしてるし、手は汗でびっしょり。

しかも、さっきから喉までカラカラになってきた。

 

もう試合開始の鐘は鳴ってるのに、どこまでも余裕をぶっこいちゃって…!

 

「で?お返事は?」

「………私自身は別に、クラス代表になんて興味は無いし、なりたいとも思わない」

「でしたら「でも」……ん?」

「今日までずっと、一夏や箒が私なんかの為に一緒になって頑張ってくれた。ここでその提案を飲んだら、きっと二人の気持ちを侮辱することになる。だから……」

 

何を思ったのか、私は彼女の事を睨み付けてしまった。

 

「御託並べている暇があるなら、とっととかかって来いよ……金メッキ」

「貴女……!」

 

うわぁ~!!何を言ってんだ私はぁ~!?

どうしてこうも見栄を張りたがるかなぁ~!?

私ってホント馬鹿……。

 

「いいでしょう……そこまで言うなら……」

 

く…くるっ!

 

「リクエストにお応えして差し上げますわ!!」

 

銃口がこちらを向き、そこから青白い閃光が走る。

 

「……っ!」

 

分かっていても、怖いものは怖い。

恐怖のあまり両腕で体を庇うようにした結果、レーザーは右肩のシールドに当たり、なんとか直撃だけは避けられた。

 

「なっ…!この私の攻撃を防いだ…!?」

 

多分今のは『反射的』に行ったから防げたんだと思う。

もしも今の動きの何らかの『思考』があったなら、間違いなく防御は遅れていただろう。

 

「どうやら……貴女に対する認識を改めた方がいいみたいですわね……」

 

なんか変に認められた!?

 

「ぶ…武器は……」

 

こっちも武器を装備して、反撃に移らないと!

 

咄嗟に拡張領域内に収納されている武装を確認する。

すると、そこに表示されたのは……

 

【IS用マシンガン】

 

うん、形状は完全に『ザクマシンガン』ですね。

そんでもって……

 

【ヒート・ホーク】

 

いや、どこまでザクを意識してるんだよ!

私もザクは大好きだから気持ちは痛いほど理解出来るけどさ!

 

「今はこれだけか……!」

 

まだ、このラファールⅡは完全に私の専用機になった訳じゃない。

だから、現状ではこれだけしか使えないんだろう。

ちゃんと一次移行(ファースト・シフト)を終えたら、使用可能な武装も増えるに違いない。ザクバズーカとか。

 

相手は射撃戦に特化したIS。

本当ならば機動性を活かして攻撃を回避しつつ、懐に飛び込んでの近接戦闘に持ち込むのが定石なんだろうけど、私にはそんな技量も度胸も全く無い。

だから、ここでの選択肢は必然的に一つ。

 

「来て……!」

 

私はIS用マシンガンをコールして展開、装備する。

グリップをしっかりと握りしめて、サブグリップもちゃんと持つ。

 

「ふふ……私が最も得意な射撃戦で挑もうだなんて、随分と見縊られたものですわね。それとも、貴女も射撃がお得意なのかしら?」

「別にどうでもいいでしょ!」

「それもそうですわね。では……」

 

再び相手さんが攻撃態勢に移行する。

 

「存分に舞い踊りなさい!この私と我が愛機『ブルー・ティアーズ』の奏でる円舞曲(ワルツ)で!私がたっぷりとリードして差し上げますわ!!」

「余計なお世話だ!!」

 

レーザー攻撃にマシンガンって……。

マジでどうするよ!?

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 本格的に試合が始まってから、一体どれだけの時間が経過しただろう…。

まだ一分しか経っていないようにも思えるし、もう一日以上こうしているような気さえしてくる。

それ程までに、私は肉体よりも精神の方が疲弊していた。

 

「ほらほら!さっきの威勢はどこに行きましたの!?」

「く…くそっ…!」

 

私に向かって降り注がれるレーザーの雨。

今日までの勉強やイメージトレーニングが功を奏してか、なんとかまだ直撃はしていない。

でも、それだけ。

直撃はしていなくても、装甲に攻撃が掠っている。

それが徐々に蓄積していって、結果的には結構なダメージとなっていた。

 

拙い動きでセシリアの動きについて行こうとしているが、代表候補生である彼女と私とでは動きが全然違う。

相手の方は本当にダンスでも踊っているかのようだが、私の方はどうだ。

まるでよちよち歩きじゃないか。

 

「当たれ!!」

「中々にいい狙いですが、それでは当たってはあげられませんわね!」

 

こっちのマシンガンは全く当たる気配が無い。

幸いな事に、拡張領域には予備のマガジンが結構な量あったので、弾切れだけは心配ない。

攻撃が当たらなければ、全く意味無いけどね。

文字通り、私はマシンガンの弾を湯水のように使っている。

 

「そろそろ直撃……いきますわよ!」

 

向こうが本格的にスコープを覗いた!

狙い撃つ気だ!

 

「まずは左足!」

 

やばい!今の私の態勢じゃ回避出来ない!!

 

そう思った瞬間、彼女の宣言通りにレーザーが左足に直撃し、体全体に衝撃が走った。

 

「きゃぁっ!?」

「ふふふ……」

 

くそ……このままじゃ嬲り殺しにされる…!

でも、どうしたら……!

 

(残りSEは……53。武器は破損してないけど……)

 

全く命中する気配が無いから、これを喜んでいいのかどうか……。

 

「試合開始から約27分…想像以上に粘った方ですわね。これは素直に評価に値しますわ」

「そう……ですか……!」

 

あれからまだ30分も経ってないのか…!

時間の感覚が完全に麻痺している…。

 

「仲森さん。貴女のその闘志に敬意を表して、『これ』で止めを刺してあげますわ」

「これ……?」

 

まさか……『アレ』が遂に来るのか…!

今までずっと使用してこなかった、ブルー・ティアーズの代名詞とも言うべき武装が!

 

「お行きなさい!ティアーズ!!」

 

セシリアが右腕を横に翳すと、四基のビットが本体以上の機動性とスピードで追従してきた!

 

全方位から襲い来るレーザー。

一つのレーザーを避けようと右に動けば、次の瞬間には上からレーザーが肩に当たる。

まさにこれはレーザーの包囲網…いや、牢獄と言った方がいいかもしれない。

 

「ほらほら!上手く避けないとあっという間にSEが無くなってしまいますわよ?」

 

くっそっ~!

ビットに攻撃を全部任せて、自分は高みの見物をしやがって~!

 

でも、そんな大ピンチの中、頭の片隅に冷静な私がいた。

 

(やっぱり……ビットを動かしている最中は自分は動けないのか……)

 

ここら辺は原作と同じか。

 

(私の記憶が正しければ、あのビットは攻撃の際に毎回毎回セシリア自身から攻撃命令を送らなければ動かすことは出来ない。そして、その制御に神経を集中させているから、彼女はビットを動かしている最中に動くことが出来ない……だったよね?)

 

念には念と思い、ネットで何回か彼女の試合の映像を見て、その結論に至った。

けど、だからどうしたって感じだよね。

分かるのと実際にやるのとでは大違い。

頭でイメージ出来ても、本番で出来なければ意味を成さない。

 

そんな考え事をしている間も攻撃は止む気配が無い。

右腕、右足、そして背中。

着々とダメージが重なっていき、とうとうSEが危険領域に入った。

 

「これで閉幕(フィナーレ)ですわ!!」

 

な…なんだ!?ビットじゃない物がこっちに来る!?

 

「あれは!」

 

ミサイル!?しかも二基!

 

(ヤバい!ビットを攻撃に晒されながらの状態じゃ、絶対に避けられない!)

 

形状は違っても、あれも立派なビット。

所謂、ファンネルミサイルと同等の武器。

あれなら他のビットを操りながらでも別の攻撃が出来る!

 

ミサイルが私の眼前に迫り、もう駄目だ!っと思った時だった。

 

(…………え?)

 

突然……『世界』が停止した。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

『よう……随分と苦戦してるじゃねぇか』

 

この声は……私を無理矢理転生させたくそったれな神野郎!!

 

『おいおい……仮にも俺は『神』なんだぜ?少しは敬意を払えよ』

 

敬意を払うような事を少しでもしたの?

 

『お前を転生させたじゃねぇか』

 

無理矢理だけどね……!

 

『別にいいじゃねぇか。そんな昔の事はよ。お前だってなんかかんだ言って、第二の人生をエンジョイしてるんだし』

 

……それに関しては否定しないけど。

で?一体何の用?私は今、と~っても忙しいんですけど!?

 

『忙しいって……負けそうになってるじゃん』

 

うっさい!仕方ないじゃん!相手の方が色んな意味で上手なんだから!!

 

『そいつは仕方ねぇよな。お前はどこまで行っても唯のド素人。方や相手は今まで研鑽を重ねてきた歴戦の代表候補生。最終的な実力はともかくとして、現状のお前とじゃ月とすっぽんだな』

 

分かってるよ!そんな事ぐらいは!態々口に出して言うな!もっと惨めになるわ!

 

『あははは!そう言うなって!折角の美少女顔が台無しだぜ?か・お・りちゃん♡』

 

お前がそうしたくせに……!

 

『って、こうして時を止めてる以上、表情なんて動きようがねぇか!だははは!』

 

声だけで姿が見えないのが本当に腹立つ…!

ISのパワーアシストがあれば、こいつの顔面に一発パンチをお見舞いする事ぐらいは出来そうなのに~!

 

『何気に物騒な事を考えてんじゃねぇよ。ま、こっちの業界じゃ美少女のパンチは立派なご褒美だけどな!寧ろ、俺からお願いしたいぐらいだぜ!』

 

この神はまさかの変態でした!

こんな奴に私は転生させられたのか……。

とっても複雑な気分です。

 

で?今更だけど、私に何の用なの?

まさか、単純に様子を見に来たとかじゃないでしょうね?

 

『そんな訳ねぇって。俺だってそこまで暇じゃねぇよ』

 

どうだか…。

 

『実はな、お前さんに『転生特典』を与えようと思ってな』

 

よりにもよって今かよ!?

 

『あの時はこっちも忙しくて慌ててたからな。かと言って、適当に変な特典を与えても意味ねぇし』

 

そりゃあ……ねぇ。

 

『だから、あれから俺も色々と考えて、一番面白そうな特典を思いついた』

 

面白そう!?

今こいつ『面白そう』って言った!?

 

『もう分かってると思うけど、お前が今纏っているそのISも特典の一つだ』

 

でしょうね!

それはなんとなく予想がついてたよ!

 

『俺さ、MSの中じゃザクが一番好きなんだよな~。お前もだろ?』

 

それには同感だけど、自分の好みで特典を選んだの!?

こう言うのって普通は転生者と色々と話し合ってから決めるもんじゃないの!?

 

『なにそのフィクション。超ウケるんですけど』

 

ギャルか!

って言うか、あれってフィクションだったの!?

 

『いやいや…二次小説と現実をごっちゃにしちゃダメでしょ。見た目はともかく、中身は立派な大人なんだし』

 

うわぁ~ん!変態に正論を言われたぁ~!(泣)

 

『美少女の泣き声……あざーす!!』

 

うっさい死ね!!

 

『そんな訳で、今からお前に転生時に渡せなかった特典を与えるから』

 

いきなり話を戻したやがった!

もうなんなのこいつ!?

 

『受け取りな!これが(オレ)から転生者(お前)に送る『転生特典(プレゼント)』だ!!』

 

いやいやいや!ちゃんとどんな特典なのか説明してよ!!

ちょっと!聞いてますか~!?

 

『俺がお前に接触するのは、これで最後だ。後はお前自身の手で切り開け!人類の未来を!!さらばだ!!』

 

なに散り際の早乙女博士のセリフを真似てるんだよ!

ふざけるのもいい加減にしろ!

 

『いいじゃんか!一度でいいから言ってみたかったんだから!でも、もう二度と会う事が無いのは本当だぞ。そんじゃな~』

 

え?ここで去るって事は時間が動き出して、そうなるとミサイルが当たるわけで……。

 

『そして時は動き出す』

 

DIO様かよ!?

 

そんなツッコみを言う暇も無く、セシリアの発射したミサイルが再び動き出して私の体に直撃し、大きな爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……認めたくないものだな。自分自身の若さ故の過ちというものを」

 

 

 

 

 




キリがいいので、一旦ここで切ります。

神が佳織に与えた転生特典とはなんなのでしょうか?

って、流石に分かるか。


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第7話 赤い彗星

最近、天気予報が当てになりません。

晴れろとは言わないから、せめて雨だけは勘弁してほしいかな。

湿度のせいで偏頭痛が酷いから。






「想像以上に頑張りますね……仲森さん」

 

真耶の呟きがピット内に響く。

 

私達は今、ピット内にあるリアルタイムモニターで試合の光景を見ている。

 

確かに、代表候補生相手に起動が二回目とは思えないほどの健闘ぶりだ。

あんなにも闘志に溢れた佳織の目を見るのは初めてかもしれない。だが……

 

「あいつは……緊張しているな」

「「「「え?」」」」

 

その場にいた全員が一斉にこっちを向く。

 

「ど…どうしてそんな事が分かるんですか?」

「さっきから佳織は何度も唾を飲んでいる。あいつは昔から緊張すると頻繁に唾を飲む癖がある」

 

少なくとも、私が知る限りではそうだ。

私と佳織が初めて会った時も、丁度あんな感じだった。

 

「そんな癖があったのか……」

「私も初めて知ったよ……。なんで知ってるの?」

「ほえ~……かおりんの意外な一面を発見~」

 

ふふ……私は佳織の事をよ~く見ているからな。

それこそ、体の隅から隅までずずず~いとな。

 

「なんで仲森さんの癖を織斑先生が……」

「愛する者の癖ぐらい知っていて当然だろう」

「「「「はっ!?」」」」

 

む……つい調子に乗って言ってしまったか。

まぁ、別に気にしないがな。

 

「み…見た感じだと、一進一退って感じですけど……」

「そうだろうな。だが、まだお互いに決定打を与えていない」

 

真耶め……話を逸らしたな。

 

「佳織の武装は……」

「マシンガン……か。相手とは明らかに火力に違いがあるね…」

「かおりん……」

 

上手く急所を狙えれば、ここからの逆転もあり得るだろうが、今の佳織の技量では困難だろう。

 

確かに佳織は適性値が高い上に才能もあるだろう。

だが、それはあくまで将来的な話に過ぎない。

今の佳織は紛れも無くISの初心者。

仮にここで敗北しても、誰も責めたりはしないだろう。

寧ろ、代表候補生相手にここまで操縦時間が30分にも満たないアイツがここまで粘った事を褒めるべきだと思う。

 

「あっ!」

 

一夏の叫びが聞こえてモニターに目を移すと、そこにはオルコットのレーザーによって左足を狙撃された佳織が映っていた。

 

「ヤバイ……足をやられた!」

 

しかも、そこからオルコットは更に追い打ちをかけるように、アイツの機体の第3世代兵装であるビット兵器を射出し、レーザーの包囲網を作り上げた。

 

「かおりん!」

「そんな……このままじゃ佳織が……!」

「くそっ…!」

 

今のままでは佳織の敗北は必至。

だが、どういう訳か、私には佳織がここで終わるようには思えなかった。

なんと言うか……経験者故の直観のようなものを感じるのだ。

 

「かおりん!前!!」

 

布仏が叫ぶと、モニターの向こうの佳織の眼前にミサイルが飛来していた。

ビットの攻撃によって身動きが取れない佳織には回避する術が無い。

万事休すか。

多分、私も含めて、この場にいる全員が同じ事を思っただろう。

だが、それは最良の形で裏切られた。

 

「あれ……?ブザーが鳴らない…?」

 

試合終了のブザーがいつまで経っても鳴らない。

と言う事は……

 

「ふっ……やはりお前はそうでなくてはな」

 

爆発によって生じた黒煙が晴れると、そこから出現したのは……

 

「赤……?」

 

真っ赤に染まったラファールⅡの真の姿があった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 セシリアは、今目の前で起きている事象が正しく認識出来なかった。

 

ミサイルが直撃し勝負が決したと思った次の瞬間、煙の中から声色の変わった佳織の声が聞こえてきたのだから。

 

「……認めたくないものだな。自分自身の若さ故の過ちと言うものを」

「な…何を言ってますの…?」

 

先程までの焦りと臆病風に吹かれていた少女はそこにはいなかった。

今の佳織の全身から、今までとは比べ物にならない程の『何か』が発せられている。

 

「いくら私が素人だからと言って、大切な友と恩師の目の前で、このような無様を晒すとは……」

 

煙の向こうで佳織が何か操作をしている。

それはすぐに終わり、すぐに高周波な金属音と共に真紅の光が彼女の体を包み込む。

何度も光が消えては光りを繰り返し、少しずつラファールが『変化』していく。

その光が収束し、そこから出現したのは……

 

「なっ……!?」

 

先程までの戦闘のダメージが全て消え、真っ赤に染まったラファールⅡの姿だった。

 

ラファールの純正の色だった緑から打って変わって、まるで佳織の中にある情熱を表すかのように眩い赤。

スラスターや胸部にある装甲、左肩にあるスパイクアーマーにはアルファベットの『A』に鳥の絵が描かれたエンブレムが刻まれている。

更に、頭に装着してあるセンサーの頭頂部からは一本のブレードアンテナが屹立している。

 

ラファールであってラファールではない。

 

そんな言葉が浮かび上がるような機体に変貌していた。

 

「ふっ……。脳内に直接データを送り込まれるとは……面白い」

「その姿は…もしや……一次移行(ファースト・シフト)!?貴女は今までずっと、初期設定のままで戦っていたと言うんですの!?」

「その通りだが、それがどうかしたかね?」

「どうかしたか……ですって……?」

 

わなわなとセシリアの肩が震える。

 

「分かっていますの!?初期設定のままで戦うと言う事は、全身に鉛の重りを付けて動く事と同義!明らかな自殺行為ですわ!!」

「だが、私はこうしてここに立っている」

「それは……!」

 

思わず唇を噛む。

余裕に満ちた佳織の態度が気に食わないと言うのもあったが、それ以上に自分が舐められたような気がしたからだ。

 

「さて、ではここからは私のターンと行こうか」

「え……?」

 

全ての工程が終了した事で武装が増えたのか、佳織は今まで使用していたマシンガンを収納し、代わりにIS用バズーカA2型を装備した。

 

「改めて見せて貰おうか……イギリスの代表候補生の実力とやらを!!」

「の…望むところですわ!!」

 

セシリアの周囲で滞空していたビットが再び佳織に襲い掛かる。

レーザーの雨が文字通り佳織に降り注ぐ……が。

 

「そんなっ!?」

 

その全てを佳織は見事なマニューバで回避して見せた。

装甲には掠り傷一つついていない。

 

「こんな事……こんな事あり得ませんわ!!彼女の動きが見えないなんて!!」

 

佳織の回避運動がセシリアの精神に僅かな動揺を生んだ。

それがビットの動きに直結し、明らかに動きが悪くなっていった。

 

「どうした?ビットの動きが単調になっているぞ。それでは私のいい的だ」

「なんですって!?」

「その証拠に……」

 

高機動を繰り広げながら佳織がバズーカを両手で握りしめてスコープを覗く。

そのままトリガーを引くと、バズーカから発射された弾がビットに直撃し、破壊された。

 

「私のビットが!?」

「君自身が気が付いているかどうかは知らないが、君は相手の死角から攻撃する頻度が非常に高いようだ。だが、それさえ分かれば君の攻撃を避ける事など造作も無い」

 

説明をしながらも、佳織はステージ上に赤い軌跡を残しながら一基、また一基とバズーカでビットを落としていく。

 

「確かにISの全方位視界接続は完璧と言えよう。だが、それを使用するのはあくまでも人間だ。背後や直上など、普段からあまり向かない方角を見ようとすれば必然的に直感で『見る』ことは不可能。送られてくる情報を脳内で整理する時間が生じる為、ほんの僅かではあるがタイムラグが発生する。君はそこを狙っているのだろう?」

「……!?」

 

自分の考えが全て読まれているかのように、セシリアの戦法が白日の下に曝される。

 

「逆を言えばそれは、こっちから意図的に隙さえ作れば、君の動きをある程度は誘導可能になる…と言う事にもなる。いかに鋭い攻撃でも、来る場所が予め分かっていれば、私のような素人でも回避するのは容易だ」

 

素人と言ってはいるが、今の佳織の動きは明らかに素人のそれを上回っている。

セシリアの動き……正確には目を見ながら佳織は空になったバズーカのマガジンを取り出し、拡張領域内から予備のマガジンを装着した。

 

「後はこのように攻撃すれば……」

 

最後のビットがバズーカに撃たれて撃破される。

 

「この通りだ」

 

完全に試合の流れは佳織の方に向いている。

絶体絶命のピンチからの、まさかの逆転。

まるで少年漫画の王道のような展開に、アリーナに試合を見に来ていた生徒達は一気に湧き上がった。

 

バズーカをセシリアの方にロックする。

それを見て焦ったのか、彼女は慌ててミサイルで迎撃しようとした。

 

「あり得ませんわ……こんな事!絶対に有り得ませんわ!!」

「ほぅ…?虎の子であるビットを全機撃墜されても、まだ諦めないとは…。見た目とは裏腹に存外、闘志はあるようだ。だが!」

 

バズーカを収納し、再びマシンガンをコールする。それでミサイルを迎撃した。

今までとは比べ物にならない程の精密な射撃を受けて、ミサイルは佳織に命中する事なく爆砕。

 

アリーナの中央付近が先程のように黒煙に包まれる。

 

「ど…どこですの!?」

 

ハイパーセンサーは全ての方位を確保するが、流石に視界が物理的に遮断されては手も足も出ない。

何処から敵が来るか分からない恐怖に、無意識の内に力強くスターライトMk-Ⅲを握りしめる。

 

その時、ブルー・ティアーズのセンサーが熱反応を捕えた。

 

「そこですわ!!」

 

迷わずセシリアはその反応に向かって射撃。

だが、全く手応えが無かった。

 

「甘いな」

「はっ!?」

 

それは背後から聞こえてきた。

 

煙を突き抜けるかのようにして佳織がセシリアに接近。

勿論、彼女とて黙って棒立ちにはならない。

瞬時に振り返って攻撃に移ろうとするが、そのライフルの銃身は佳織の手に掴まれて動かなかった。

 

そして、いつの間にか装備していたヒート・ホークでスターライトMk-Ⅲを一刀両断。

そこから更に追撃と言わんばかりに、セシリアの腹部に向かってキックが炸裂。

 

「キャァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

そのままセシリアは地面へと落下、アリーナの壁に激突した。

 

「うぅぅ……」

 

完全に立場が逆転していた。

ブルー・ティアーズのSEは風前の灯。

それに比べ、佳織のラファール・リヴァイヴⅡのSEは完全回復してほぼ無傷。

どう見ても勝敗は決していた。

 

地面にゆっくりと降りたった佳織は、壁に背中を預けながら地面に座っているセシリアに近づいていく。

その間にヒート・ホークを仕舞い、またマシンガンを取り出す。

 

「これで王手(チェックメイト)だ、お嬢さん(フロイライン)

 

マシンガンの銃口がセシリアの眼前に向けられる。

それを見て彼女の顔が青褪める。

 

「さて……どうする?このまま潔く敗北を認めるか、それとも……」

 

佳織の指がトリガーにかけられる。

 

いかに自尊心が強いセシリアでも、武装の殆どを失い、エネルギーさえも底を突こうとしているこの状況で逆転が狙えると思うような楽観的な考えは持ち合わせていなかった。

 

ブルー・ティアーズには最後の武器として近接用のショートブレードである『インターセプター』があるが、それ一本で今の佳織には到底太刀打ち出来ない事は、セシリア自身がよく分かっている。

 

「………降参……しますわ……」

「それでいい。時には引く事も、また勇気だ」

 

マシンガンを下して収納、そのまま後ろを向く。

 

【試合終了!勝者……仲森佳織!!】

 

終了のアナウンスとブザーを聞いた後、佳織は静かにピットへと戻っていく。

 

「ま…待ってください!」

 

去り行く佳織の背中に向かってセシリアが立ち上がって叫ぶ。

佳織も反射的に彼女の方を振り向いた。

 

「ん?なにかな?」

「貴女は……貴女は何者なんですの!?」

「何者……とは?」

「今まで碌にISに搭乗した事も無いにも拘らず、あれ程の動きをして見せる……普通では到底考えられませんわ!!」

「そう言われてもな……」

 

佳織の顔に僅かに笑みがこぼれる。

 

「私は仲森佳織。それ以上でもそれ以下でもないよ」

「答えになってませんわ!」

 

また前を向いて歩きだす佳織。

セシリアに背を向けながら、その口を開いた。

 

「最後に一言だけ言わせてもらおう」

「なんですの……?」

「ISの性能の差が、戦力の決定的差ではない。それをよく肝に銘じておきたまえ」

「………!」

 

それだけを言い残して、佳織はピットに戻った。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 モニターを見ながら、皆が目を丸くしていた。

勿論、私も。

 

「あ…あれが本当に佳織なの…?」

「明らかに常人の動きじゃない…。いや、素人の動きじゃない…!」

 

おりむーとしののんも冷や汗を掻きながら呆然としている。

 

「これは流石に予想外だ…。何か切っ掛けがあれば化けるとは思っていたが、ここまでになるとは……」

 

織斑先生も驚きを隠せないみたい。

 

ピットの中が静かになっていると、いきなり山田先生が叫びだした。

 

「お…織斑先生!!」

「どうした?」

「その……仲森さんの戦闘時のスピードなんですけど……」

「スピードがどうした?」

 

唇が震えていて、絞り出すように山田先生が話し出した。

 

「こちらに提供されたラファールⅡのスペック上の速度の三倍を計測してるんです!!」

「何っ!?」

「「「さ…三倍!?」」」

 

凄いスピードだったけど、三倍って……。

 

「こんな事ってあり得るんでしょうか……」

「分からん…。これは一度、機体を診てみる必要があるな…」

 

かおりん……大丈夫かな……?

 

「にしても、なんか途中から佳織の口調が急に変わったよね…。あれってなんだろう?」

「さぁな…。いつもの佳織からは想像も出来ないほどに自信に満ちていたが…」

 

それは私も思っていた。

まるでかおりんが別人になったような……そんな感じがした。

 

「それに関しては、仲森自身から直接聞くしかないだろう」

「そうですね…」

 

でも…なんでだろう。

試合中のかおりんを思い出すと、胸が苦しくなる…。

キュッってなって、ドキドキして……。

 

「こんな気持ち……初めて……」

 

私……どうしちゃったのかな……?

 

「本音ちゃん?大丈夫?」

「顔が赤いぞ?熱でもあるのか?」

「な…なななななんでもないよ!?」

 

うぅ~……なんか恥ずかしいよ~!

 

(((あぁ……これは堕ちたな)))

 

皆が生暖かい目でこっちを見てるし……。

 

「あ、佳織が戻ってきた」

 

どうしよう……かおりんの顔…ちゃんと見られるかな…。

はぅ~……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう言っても大丈夫だと思うので言っちゃいます。

この赤ルートの正式名称は『赤い彗星ルート』と言います。
その意味は……分かりますよね?

そして、没案となった青ルートの正式名称は『蒼い死神ルート』です。
これを予想してた方もいらしたようですね。
このルートに行った場合はEXAMを巡っての超シリアスルートになります。
進むにつれて原作から離れていって、オリジナルキャラも追加。
機体は同じようにラファールを元にしたブルー・ディスティニーになります。
そして、対になる機体として打鉄を元にしたイフリート改も登場。
もう、なにがなにやら…って感じになってました。
一応、数話分はプロットもあったんです。
でも、赤のほうが評判がよさそうなので、このルートで確定します。
青の方も見てみたいとリクエストがあれば、ダイジェスト方式でやろうと思います。
リクエストがあれば……ですけど。


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第8話 百合の花

最近、来月が待ち遠しい日々を過ごしています。

早くリバーシブルガンダム発売しないかなぁ~。






 佳織とオルコットさんとの試合は、佳織の勝利で幕を閉じた。

試合をした本人は静かにピットへと帰ってきたけど……。

 

「か…佳織?」

「大丈夫か…?」

「かおりん?」

 

ISを纏ったまま、直立不動のまま動かない。

少しした後にISが粒子化して、ISスーツ姿の佳織が降り立つ。

佳織のラファールⅡは機体に描いてあったエンブレムを模したペンダントになって、佳織の首から下がっている。

 

私達がどうすればいいのか分からずに困惑していると、千冬姉さんが前に出て佳織に近づいた。

 

「初陣にしては上出来だ。よく頑張ったな」

「……ありがとう…ございます……」

 

あれ?いつもの佳織に戻ってる?

さっきまでの強い感じは今目の前にいる佳織からは全く感じない。

 

よく見たら、佳織の顔は赤くなっていて、息も荒いように見える。

汗も沢山掻いていて、どれだけ大変だったかがよく分かる。

 

(そっか……当然だよね)

 

あれだけの動きをしたら、誰だって疲労困憊になるのは当たり前だ。

お世辞にも体力がある方とは言えない佳織ならば、猶更キツく感じているだろう。

 

「疲れているところで悪いが、少しだけ聞いていいか?」

「なんで……しょうか……」

「試合中、急に言葉使いなどが変わったように見えたが、あれはなんだ?」

「………私にもよく分かりません。ただ……」

「ただ?」

「ファースト・シフトが終わった瞬間、頭の中が急にクリアになって、思った言葉が口に出るようになって、それで……」

「……そうか、分かった」

 

姉さんはまだ納得していないようだけど、当の佳織本人の疲労がかなりのレベルだと判断したのか、途中で話を切り上げた。

 

「えっと……今、ISは待機形態になっていますけど、仲森さんが呼び出せばいつでも展開が可能です。でも、ちゃんと規則があるので気を付けてくださいね?」

「規則に関する本を本当は渡すつもりだったが、今は自分の体を休める事を優先した方がいい。本はルームメイトの布仏に渡しておく。お前もそれでいいか?布仏」

「あ……はい」

 

本音ちゃんも佳織の様子を心配したのか、珍しく呆けていたみたい。

気持ちは凄くよく分かるよ……。

 

「それじゃあ……お先に失礼します……」

 

そう言うと、佳織はゆっくりと奥に下がっていった。

 

「織斑先生……」

「あぁ……」

 

二人な何やら悩んでいる。

多分、試合中の佳織の事だろう。

 

「もしや、佳織はアレなのか?」

「アレって?」

「ほら、よく漫画やアニメなどであるだろう?車のハンドルを握ったら急に性格が変わる……」

「こち亀の本田さんみたいな?」

「そうだ。佳織もISに乗ったら性格が変わるのではないか?」

「でも、最初に乗った時は何ともなかったよね?」

「む……言われてみれば確かに……」

 

でも、箒の言った事が一番納得するかも…。

って言うか、箒も漫画とか読むんだ…。

 

「いや…存外、篠ノ之の言った事が正しいかもしれんぞ」

「「「え?」」」

 

まさか姉さんがそんな事を言い出すなんて…。

 

「仲森の試合中に見せたアレは、一種の自己暗示かもしれん」

「自己暗示?」

「そうだ。恐らく、ISの一次移行が切っ掛けになって、あのような事になったのだろう。無意識の内に自分に暗示をかけて、自らの能力を強制的に底上げしたのかもしれん」

 

一次移行が切っ掛け……。

それなら、最初に乗った時になんともなかった説明はつくけど……。

 

(だが、私の知る限りでは佳織にそんなスキルは無かったはず。だとすれば、あれは外部からの影響で……?)

 

また姉さんが真剣な顔で顎に手を当てている。

最近はよく悩む姿を見るな。

 

「かおりん……大丈夫かな……」

「心配だな……」

「うん…」

 

凄く辛そうにしてたし、倒れてたりしてないよね…?

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 頭が凄く痛い……。

目が霞む……。

足元がふらつく……。

 

混乱している頭を少しでもスッキリさせようと思い、私はアリーナに設置された共同のシャワー室に向かった。

 

ISスーツを脱いで籠に入れて中へと入る。

 

既に誰かが使用中のようだが、幸いな事に現在の使用者は私を覗けば一人だけ。

折角だし、隣を使わせてもらう事にしよう。

 

シャワーからお湯を出して、頭から流す。

すると、ボーっとしていた頭に活力が少しだけ戻ってくる。

 

(なんなんだよ……アレは……)

 

試合中に『神』の野郎が無理矢理寄越した転生特典……あれってモロに……

 

(シャア・アズナブルじゃねぇーか!!!)

 

なんでよりにもよってシャアなんだよ!?

マジで意味わからねぇよ!!

 

口調や態度まですっかりシャア擬きになってたし!!

しかも……

 

(あれは……確かに私の意思で喋っていた(・・・・・・・・・・)……)

 

傍から見たら、あの状態はまるで別の人格が乗り移ったり、二重人格のように見えたかもしれない。

けど、それは違うんだ。

あの時、私の意思は存在していた。

つまり、試合中に言った言葉は全部、私の言葉なのだ。

 

でも、体は自分の意思を完全に無視して話したり動いたりしていた…。

エロゲとかでよくある『ダメ…!体が勝手に……!』ってヤツだ。

 

更に、口調とかだけじゃなくて、戦闘能力もシャアを模していたし……。

 

だって、今の私にあんな高機動戦闘なんて絶対に不可能だし!

実際、心の中じゃずっと目が回りっぱなしだったよ。

下手したら酔ってたかもしれない…。

なんせ、無理矢理体を動かされたようなものだし。

 

けど、ISを降りた瞬間に、あの感じは無くなったんだよな…。

貰った特典は恒常的なモノじゃないって事か…。

 

つまり、総合して私の転生特典は……

 

【IS搭乗時限定で赤い彗星(笑)になる程度の能力】

 

ってことになるのか…?

 

ふざけんなよ!!

ISに乗る状況って、殆どが人前に晒される時ばっかりじゃんか!!

しかも、ISって授業でも乗ったりすることがあるんだよ!?

どうしてISに乗る度に、あんな恥ずかしい言い回しをして黒歴史を量産しなくちゃいけないのさ!!

羞恥プレイにも限度ってものがあるだろう!!

私を恥ずかしさのあまり悶絶死させる気か!!

 

「はぁ……」

 

絶対に変な目で見られてたよね……。

明日からどんな顔をして皆と会えばいいんだろう…。

しかも、試合中の出来事だったとはいえ、セシリアのお腹を思いっきり蹴ってしまったし……。

女の子の腹を蹴飛ばすとか、どこの外道だよ……。

 

あぁ~!バラの学園生活に一気に暗雲が立ち込めてきたよぉ~!!

本当にどうすればいいのさぁ~!?

 

……にしても、今日はすっごく疲れた……。

明日…筋肉痛とかになってないといいけど……。

 

「……出よ」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 シャワーの暖かなお湯が私の体を濡らす。

試合が終わってから、私は疲れた体を癒すためにシャワー室へと足を運んでいた。

 

(今日の試合……)

 

最初は私が圧倒していた。

負ける可能性なんて全く考えていなかった。

でも、実際には……

 

(負けてしまった……)

 

試合の流れが劇的に変わったのは、彼女のISが一次移行してからだった。

まさか、初期状態の機体で挑んできていたなんて夢にも思わなかった私は、少なからず動揺してしまった。

常に冷静でいようと心掛けている私にしては、実に恥ずかしい失態だった。

 

機体が真っ赤に染まってから、仲森さんの動きが一気に変化した。

ステージ全体を凄まじい速度で駆け抜けていき、動きに全く追いつけなかった。

あの姿はまるで……

 

(赤い彗星のようでしたわ……)

 

こちらの攻撃を全て紙一重で回避して、自分の攻撃は絶対必中。

しかも、私自身が知らない癖まで見抜かれた。

 

でも、仲森さんの途中から変わったあの口調……どこかで聞き覚えがあるような気が……。

なんだったかしら…?

 

「はっ!?」

 

そうだ……思い出した!

あれは確か……お母様がよく、お父様が仕事でいなくて自分が休みの日にいつもリビングで見ていたDVDで見た映像……!

お母様がよく口にしていたのを思い出す。

 

『セシリア。よく覚えていきなさい。これこそが世の女性が最も理想とする男性像よ。え?お父様?それはそれ、これはこれよ』

 

見目麗しい女性であるにも拘らず、誰よりも凛々しく雄々しい口調と姿。

あれこそ正しく……

 

(ジャパニーズタカラヅカ!!)

 

もしや……仲森さんもお母様が大好きな『ヅカキャラ』なのかしら!?

だとしたら、あの口調にも納得がいくような……

 

『改めて見せて貰おうか……イギリスの代表候補生の実力とやらを!!(キラ~ン)』

 

「……!?」

 

な…なんですの!?この胸の高鳴りは!?

彼女の言葉を思い出しただけでこのような……

 

『これで王手(チェックメイト)だ、お嬢さん(フロイライン)。(当社比120%増し)』

 

また……この胸を焦がす感情は一体……。

 

『ISの性能の差が、戦力の決定的差ではない。それをよく肝に銘じておきたまえ(キラキラキラ)』

 

ま…まさか……この私が……?

でもでも!彼女と私は同じ女性同士!

同性同士でそんな……。

 

「……出ましょうか」

 

こんな所で悶々しているなんて、オルコット家の淑女として恥ずかしいですわ。

 

あ、因みに言っておきますけど、私の両親は健在でしてよ。

今でも年甲斐も無くいちゃついてますわ。って……私は誰に言っているのかしら?

 

溜息交じりに個室を出ると、いつの間にか隣にも誰かがいたようで、同時に出てきた。

だが、その姿を見て私は固まってしまった。

 

「「あ」」

 

そこにいたのは、私と同じように一糸纏わぬ姿の仲森さんだったのですから。

 

「な…な…ななななななななななんで貴女がここに!?」

「いや……汗を流そうと思って……」

 

そ…そうですわよね!それ以外の目的なんて普通はありませんわよね!?

私は何を考えているのかしら、オホホホホホ…。

考え事に夢中で全く気が付きませんでしたわ…。

 

「ど…どうしたの?大丈夫?」

「な…なんでもありませんわ!」

 

試合中の凛々しさはどこへやら。

今の仲森さんは教室で見かけるいつもの仲森さんでした。

 

普段の優しくて可愛らしい仲森さんと、試合中に見せる格好いい仲森さん。

これがもしや……ギャップ萌えと言うヤツですの!?

 

「このままじゃ風邪を引いちゃうね。早く出ようか」

「そ…そうですわね」

 

普段は結んでいる髪が下してあって、少しだけ大人びて見えた仲森さん。

なのに、表情はどこまでもあどけなくて…。

 

あぁ~…もう!本当になんなんですの!?

 

自分の気持ちが分からないまま、私達は一緒にシャワー室を出た。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 私と仲森さんは一緒に更衣室で着替えていたが、お互いに言葉を一言も交わさない。

何を話せばいいのか分からないし、なにより恥ずかしい…。

どうしてこんな事になってしまったのかしら…。

 

「……今日はごめんね」

「え?」

 

なんでいきなり謝るんですの…?

 

「試合中に偉そうな事を言っちゃって、しかもお腹まで蹴っちゃったし…」

 

そう言えば、色々と仰っていましたわね。

何故か一言一句覚えてますけど。

あと、あの鋭いキックは本当に痛かったですわ。

 

「別に気にしてまいませんわ。あれは全て自分の未熟さが招いた事。私が反省する事はあっても、貴女が気に病む必要はありません」

「うん……ありがと」

 

なんか……沈黙が痛いですわ…。

 

「寧ろ、謝罪するのはこちらの方です」

「それは……」

「仲森さん」

 

着替え終わった私は、隣で着替えている仲森さんの方を向いた。

彼女はまだ着替えている途中で、上だけ下着姿だった。

改めてよく見ると、結構大きいですわね…!

 

「この度は…本当にすいませんでした」

「え…ええ?」

 

私は腰を折って彼女に謝罪した。

 

「自分がクラス代表に推薦されなかったとはいえ、その事を貴女にぶつけるのはお門違いでした。本当にごめんなさい…」

「…………」

「あの場で私の名が出ずに貴女の名が出たと言う事は、それはクラスの皆さんが仲森さんこそが相応しいと思った証拠。それなのに私は……」

 

あの時、私が思った感情は『嫉妬』だ。

私は選ばれた彼女に対して嫉妬しまったのだ。

けど、時が過ぎるにつれて心が冷静になって、自分の犯した過ちに気が付いた。

でも、少なくとも試合が終了するまでは引っ込みがつかない。

だから、本当は勝敗に関わらず謝ろうとは思っていた。

それなのに、試合中にまたあんな事を言ってしまうなんて……私と言う人間は……。

 

「……もう気にしてないよ」

「仲森さん?」

 

顔を上げると、そこには着替え終わった仲森さんが優しい笑顔でこちらを見ていた。

 

「きっと、今までの自分の努力が否定されたような気持ちになったんだよね?」

「私は……」

「オルコットさんは代表候補生になるまで、私なんかが想像出来ない程に頑張って来たんだと思う。多分、あの時だって代表候補生だから自分がクラス代表になって当然だって思ったんでしょ?でも、何故か選出されたのは私のような無名の女子。そりゃ、怒って当然だよ」

 

なんで……なんでそんな事が言えるんですの…?

今回の事は完全に私の子供じみた嫉妬と我儘から始まった事。

仲森さんは寧ろ被害者と言っても過言ではないのに…。

それなのに……

 

「だから、もういいよ。試合は終わったんだしさ。全部水に流そうよ。お互いにシャワーを浴びた事だし」

「それ…洒落のつもりですの?」

「あ、バレた?」

「全く…ふふ……」

「ははは……」

 

この時、私は確信した。

彼女こそが本当の意味でクラス代表に相応しいと。

 

試合中に見せた強さとカリスマ。

そして、この聖母のような包容力。

仲森さんにならば、ついて行きたいと私も思う。

 

「仲森さん。私の事はセシリアと呼んでくれませんか?私も貴女の事を佳織さんと呼びますから」

「……うん、いいよ」

 

仲森さん…じゃなくて佳織さんは私の手を握って微笑んだ。

 

「これで私達は友達だね」

「友達……」

 

私と佳織さんが友達……?

 

「そう……ですわね…」

 

私の学園生活の友達第一号が、まさか試合をした相手だなんて……皮肉ですわね。

でも、それがいいと思っている自分がいますわ。

 

「佳織さん。私……友達で終わるつもりはありませんことよ?」

「ど…どういう事?」

「さぁ?」

 

私の中に芽生えたこの気持ち……佳織さんと一緒にいる事で確かめさせて貰いますわ!

いつも彼女と一緒にいる方々にも宣戦布告しなくてはいけませんわね。

 

「まずは、クラスの皆に謝らないとね?」

「はい。分かっていますわ」

 

きっと、とても勇気がいる事だと思いますが、今の私なら出来ると信じています。

だって、佳織さんが一緒にいてくれるから。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 佳織とセシリアの試合は、アリーナで見ていた全ての生徒に色んな影響を与えた。

その中には、佳織に対して強い印象を持った人物も複数存在する。

例えば……

 

 

「仲森佳織…ね。今まで目立った噂が無い少女が、これ程の実力を隠し持っていたなんてね……。これは注視しておくべきかしら…」

 

どこぞのロシア代表と生徒会長を兼任している少女だったり……

 

「赤くて強くて格好良くて……まるで本当のヒーローみたい……」

 

その妹の日本の代表候補生な四組のクラス代表だったり……

 

「へぇ~……暇つぶし感覚で来てみれば凄いものが見れたな…。おもしれぇ…!」

 

金髪美人な三年生のアメリカの代表候補生だったり……

 

「なんか凄かったスね……。私が一年の頃とは大違いっス…」

 

その個人的なパートナーである二年生のギリシャの代表候補生だったり……

 

佳織が知らない所で、色んなフラグが乱立していることに、彼女はまだ知らない。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 次の日。

私は早朝から大ピンチに陥っていた。

 

「う…うぅぅ……」

 

い…痛いよぉ~…。

 

「うぅ~ん…?かおりん~?」

「本音ちゃ~ん……」

「か…かおりん!?」

 

あ…珍しく一人で起きて、しかも私に気が付いてくれた…。

本音ちゃんはマジで女神なのかもしれない。

 

「ど…どうしたの!?大丈夫!?」

「大丈夫……じゃない~(泣)」

「えぇぇぇぇっ!?」

 

慌ててこっちに来てくれた。

こんな時は本当に有難い。

 

「じ…実は……」

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 朝のホームルーム。

いつものように千冬が教壇に立ち進めていき、真耶が隣に立っている。

 

「と言う訳で、昨日の試合の結果、一組のクラス代表は仲森に決定した」

「「うんうん」」

 

一夏と箒は嬉しそうに頷く。

 

「で、当の仲森本人はと言うと……全身筋肉痛で今日は休みだ」

「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~!?」」」」」

 

就任当日にクラス代表がまさかの欠席。

流石にこれには全員が驚かずにはいられなかった。

 

余談だが、この日にセシリアはクラスの皆に謝罪した。

少し渋った面々もいたが、当初とは打って変わっての誠心誠意の謝罪を聞いて、結果として彼女の謝罪を受け入れた。

一夏と箒は微妙な顔をしていたが、謝罪の提案が佳織からだと聞くと、仕方が無いと言った感じの顔をしていた。

 

実は佳織は勝敗に関わらずクラス代表を辞任する気満々だったが、色々とあって完全に忘却していた事に、復帰してから気が付くのだった。

 

そんな佳織はと言うと…?

 

「にょ…尿意がぁ~……。でも動くと体が痛いぃ~…」

 

人知れず別の意味で再びピンチになっていた。

 

佳織の明日はどっちだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと無理矢理でしたかね…?セシリアの改心と和解。

一般人の素人の少女がいきなりシャア様と同じ動きをしたら、そりゃあ筋肉痛になりますよね。

それと、これだけは言っておきます。

佳織は決してチートではありません。
確かに、今回の試合は勝ちましたが、それだけです。
いかに特典が凄くても、負ける時は負けます。
常勝はあり得ません。
強くはなりますが、一定以上の敵に対しては苦戦は必至でしょう。


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第9話 お空をビューン

少しだけ迷いましたが、気が済むまでは自分の内なる衝動に従って更新しようと思います。

多分、ストックが無くなるまではこっちに集中します。






 私…織斑千冬が仲森佳織と言う少女と出会ったのは、もう随分と前の事になる。

 

あれはそう……私達姉妹の両親が突如として蒸発した頃か。

私達の家の近所に新しい家族が引っ越してきた。

当時の私は色々と必死で他の事に気を向ける余裕なんて無かった為、どんな家族が来たかなんて全く把握していなかった。

 

だが、私の妹である一夏が友達として佳織を家に招待し、その時初めて私は佳織と邂逅した。

あの頃はまだ何も佳織の事を知らなかったから、私からすれば容姿を除けば至って普通の少女と言った印象だった。

 

佳織との出会いを切っ掛けにして、私達は仲森家の人々と知り合うようになっていった。

人々と言っても、佳織は一人娘だから、他にいるのは彼女の御両親だけだがな。

 

それまでは束や箒の両親である篠ノ之夫妻になんとか支えて貰っていたが、正直言ってそれだけでは苦しかったのが現実だった。

当時はまだ私も学生。

バイトをしたいと思っていても、学校側が簡単には許可してくれない。

だからと言って、流石にそんな事を面と向かって言うつもりは毛頭なかったがな。

私もそこまで失礼な女ではない。

 

だが、そこに仲森家の援助が加わってから、ようやく生活が安定しだした。

 

一夏が箒だけでなく佳織とも遊ぶようになったのを見て、とても嬉しく思ったのは今でもよく覚えている。

箒とも知り合ったと言う事は、当然のように束とも顔を合わせる事になるわけで…。

 

優れた頭脳を持つが故に他人を見下す傾向にある束は、最初は当然のように佳織の事も見下していた。

だが、どんなに辛辣にされても佳織は決して諦めなかった。

 

私と束は自分でも他人よりどこか突出している部分があると自覚している。

特に束はその傾向が顕著だ。

だからだろうか、どうしても同年代の人間とは仲良くなりづらい。

気が付けば二人で一緒にいる事が殆どだった。

だが、そこに佳織が加わることで私達の生活が劇的に変わった。

 

他の連中は私達の事をどこか色眼鏡で見ている節があった。

都合のいい時だけ利用出来ればそれでいい……そんな感じだ。

別にそれを否定するつもりはない。

私だってそんな部分はあるからな。

けど、佳織は違った。

 

佳織は何と言うか……どこまでも優しかった。

私がイライラしていて辛辣になった時も、日頃のストレスで苦しい時も、辛くて泣きそうな時も、いつも傍にいてくれた。

まるで本当の母親のような包容力を持っていたんだ。

 

勿論、佳織は優しいだけじゃない。

怒る時はちゃんと怒る。

特に私や束の部屋が散らかっていた時は凄かったな。

まるで鬼のような形相で叱りつけてきたっけ。

あれから、佳織を本気で怒らせてはいけないと言う、私達の中での暗黙の了解が出来てしまった程に。

 

だけど、だからこそ、私は段々と佳織に惹かれていったのかもしれない。

私の事をちゃんと『私』として見てくれたから。

私の心をずっと支え続けてくれたから。

気がついた時には、自分よりもずっと年下の少女の事を本気で好きになっていた。

多分それは束も同じだろう。

アイツもいつの間にか佳織の事を『かおりん』と渾名で呼んでいたからな。

束にだけは絶対に渡さん…!

 

そんな平凡を絵に描いたような能力しかない筈の佳織が、まさかISに於いてあれ程の才能を発揮するとは夢にも思わなかった。

誰にでも一つは取り柄があるとはよく言ったものだが、まさか、佳織の場合はそれがISだったとは…。

世の中、何があるか本当に分からないものだ。

 

佳織が筋肉痛から復帰して、早速アイツのISを調べてみた結果、驚くべき事が判明した。

機体の色と頭部のブレードアンテナ以外は、特に機体の形状に変化は無かった。

なにやら特徴的なエンブレムは描かれていたが。

ま、佳織によく似合っているから私は気にしないがな。

 

話が逸れたな…。

ごほん。実は一次移行を終えた佳織の専用機『ラファール・リヴァイヴⅡ』は、各部スラスターの出力リミッターが強制解除されていて、機体の限界性能が極限まで引き出されていたのだ。

かと言って、別に武器の威力自体に変化は無い為、ルール上は支障は無いのだが、それでも凄いと言う他無かった。

あんな出力では操縦性は恐ろしく神経質になるだろうし、そこら辺の素人ならばあっという間にSEを消費して機動不能に陥るだろう。

だと言うのに、実際の佳織は私達の目の前で卓越した操縦技術でアレを完璧に乗りこなしてみせた。本当に驚愕すべき事だ。

途中から口調が変わったのにも驚かされたがな。

あれはあれでとても恰好よかったから、私的には充分、許容範囲内だが。

 

あの試合の光景を見た一部の生徒達が、アリーナを赤い軌跡を残しながら駆け抜けていく様を見て、佳織の事を『赤い彗星』と呼ぶようになったとか。

まさか、入学して早々に異名で呼ばれるようになるとはな。

流石は私の佳織だ。

……なに?まだ彼女は私の物ではない…だと?

何を言う。最終的には私の物になるのだから、別にいいだろう。

これだけは誰にも譲れないからな。

それが例え実の妹であったとしても……だ。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 春も麗らかな4月下旬。

今日も今日とて、皆と一緒に楽しい授業の真っ最中。

 

私が筋肉痛で寝込んでいる間に、いつの間にか一夏の専用機の受領は完了していて、復帰した時には彼女の左手首に見慣れない白い腕輪のような物が装着されていた。

どんなISか聞こうとしたけど、それは授業の時までお楽しみと言われちゃった。

多分、白式だとは思うけど、もう原作知識は当てにならないからなぁ~…。

どこでどう変化しているか分かったもんじゃない。

 

で、今日の授業はグラウンドでの実習になる。

私達はISスーツを着てグラウンドに並んでいる。

千冬さんと山田先生は揃ってジャージ姿。

私的には見慣れた光景だけど。

 

「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。…が、その前に……」

 

……ん?なんでこっちを見るんですか?千冬さん。

 

「仲森。そのISスーツは何だ?」

「こ…これは……」

 

実は、私が今着ているISスーツは、この間の試合の時に着ていた学校指定の物じゃない。

まるで私のラファールⅡと同じように真っ赤に染まったスーツを着ているのだ。

お腹の部分にはご丁寧にシャアのエンブレムまで描かれているし。

 

「えっと……あれから私でも少しISを見てみたら、いつの間にか、このISスーツが拡張領域内に入っていたんです。で、試しに取り出してみたらなんでか私にサイズがピッタリで、それでどうしようか迷っていたら、なんでか皆が『着た方がいい』って言ってくるもので…。その勢いに負けてしまって、こんな事に……」

「そうか…」

 

これもどう考えたって、あの『神』の仕業だろう。

全く…!あのターニャちゃんが存在Xを心の底から嫌悪する気持ちがよく理解出来るよ。

けど、これが見つかった時の皆も凄かったな~。

グイグイ迫って来るもんだから、完全に迫力負けしちゃったし。

特に一夏と箒とセシリアが凄かった。

三人とも鼻血を流しながら来るんだもん。

本気で泣きそうになったよ。

最終的には本音ちゃんの懇願に折れたんだけど。

 

「お前達……」

 

お?何を言う気だ?

 

「よくやった」

 

真剣な顔でサムズアップするような事か!?

 

「あの織斑先生……授業……」

「おっと、そうだったな。私としたことが……」

 

山田先生に言われて、ようやく授業に戻った。

こんなんで本当に大丈夫だろうか…?

 

「織斑、仲森、それとオルコット。三人とも前に出てISを展開。その後、試しに飛行してみろ」

「「「分かりました」」」

 

本当は抵抗感ありまくりだけど、ここは授業だと割り切って我慢しよう。

お願いだから、また恥ずかしい発言はよしてよね…。

 

私達は揃って列の前に出て、ISを展開する。

 

私は自分の専用機である『ラファール・リヴァイヴⅡ』を。

セシリアは『ブルー・ティアーズ』。

そして一夏は……

 

「よし、出来た」

「三人とも一秒未満か。中々に筋がいいな」

「えへへ……」

 

嬉しそうに頬を緩ませちゃって。

 

純白の装甲に翼状の非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)

間違いなく、私が知っている一夏の専用機『白式』だ。

 

「それが一夏の…?」

「そう。私の専用機の『白式』だよ!」

 

自慢げに胸を逸らす一夏。

今一瞬、確かに揺れたぞ。

 

「そうか。仲森はまだ見ていなかったんだな」

「はい」

「まぁ、これから幾らでも見る機会はあるんだ。今は授業に集中しろ」

「「はい」」

 

そうだな。

流石にこれ以上は授業から脱線するわけにはいかないよね。

 

「よし。ならば飛べ」

 

そう言われると同時に、私三人は一斉に飛行を開始する。

上昇するスピードは、一番は私でその後ろに一夏とセシリアが並んでいる形だ。

 

「うわ……。間近で見たら、佳織ってこんなにも早いんだ…」

「ふふ……当然です!この私に勝ってみせたのですから!」

「それって自慢するような事?」

 

話しながら出来てる時点で、二人とも余裕がある証拠だよ。

それだけでも私は凄いって思うけどね。

 

ある程度の高さまで上がると、私達は停止した。

 

「ふっ……。普段は見る事の出来ない上から見る学び舎と言う物も、存外悪くないな」

「そ…そうですわね!(また佳織さんの『ヅカキャラモード』を見れましたわ~♡)」

「う…うん。偶にはいいよね。(キャ~!ISに乗ってる時の佳織って、やっぱりカッコいい~♡)」

 

気のせいかな…?変な幻聴が聞こえたような気が…。

 

「と…ところで佳織さん?」

「ん?どうした?セシリア」

「これからは放課後に訓練等をするのでしょう?」

「そうだな。私はまだまだ未熟。体も心も操縦技術も、鍛えなければならない事は多々ある。これからはアリーナが空いている時は基本的にISの操縦訓練に放課後を費やすだろう」

「で…でしたら!是非とも私と一緒に訓練しませんこと?」

「君とか?」

「はい!」

 

それは嬉しい申し出だ。

勝負に勝ちはしたけど、私が未だに素人なのは変えられない事実。

代表候補生であるセシリアから学べる技術は非常に多い筈だ。

 

「ならばお願いするとしようか。君からは多くの事を教わりたいと思っていたしな」

「はい!」

「む~…」

 

あ、一夏がふくれっ面になってる。

なんかしたっけかな?

 

「私もする!」

「え?」

「私も一緒に放課後の訓練する!私だってまだまだ未熟だもん!」

 

明らかにムキになってますね。分かります。

 

「抜け駆けは許さないんだからね…!」

「ぐぬぬ~…!」

 

なんでそこで睨み合うの?

 

『お前達。今は授業中だと言う事を忘れてないか?』

「「「あ」」」

 

千冬さんからの通信回線で我に返る。

すっかり忘れかけていたよ…。

 

下を見てみると、箒と千冬さんが恨めしそうにこっちを見上げている。

本音ちゃんは相変わらず眠たそうだ。

流石に実技の最中の居眠りはやめた方がいいよ?

 

『そこまで余裕があるのならば、今から急降下と急停止をしてもらおうか。目標は地表から10cmとする』

 

10cmか…。

中々にシビアかも。

 

「了解しました。では私から」

 

こっちに目配せをした後、セシリアは来た時と同じ要領で一気に降りていく。

結構なスピードが出てるけど、見事に急停止に成功したようだ。

 

「むむむ……やっぱり凄いなぁ~…」

 

私からすれば、一夏も充分凄いからね?

 

「じゃあ、次は私が行っていい?」

「勿論だ。気を付けろよ」

「任せといて!」

 

私の一言で笑顔になった一夏は、セシリアと同じように急降下、そしてギリギリの所でなんとか急停止に成功したようだ。

基本スペックが違うせいかな、やっぱり原作のようにグラウンドに見事なクレーターは作らなかったか。

 

「最後は私か」

 

この機体は所謂シャア専用にバージョンアップされてるから、スピードには細心の注意を払わないと。

 

「では…行くぞ!」

 

なんて言ってる傍から全力降下ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?

なんでそうなるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?

 

「む……!」

 

ち…地表がもう目の前にぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?

ぶつかるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!

 

「ここだ!」

 

と…止まった…?

体を捻って態勢を整えてからの急停止。

凄い勢いで降りたにも拘らず、クレーターどころか砂煙すらも碌に立ってない。

よ…よがっだぁ~…(泣)

 

「実に見事だと言っておこう。だが……」

 

千冬さんがやって来て、出席簿で軽く頭をポンと叩かれた。

 

「もう少し速度の調節を心掛けるようにしろ。見ているこっちが冷や冷やする」

「これは失礼しました。これから気を付けるようにしましょう」

「う…うむ。それでいい…(か…佳織の凛々しい顔が傍に~!ニヒルなお前も素敵だ…佳織…♡)」

 

また幻聴か…?

 

「佳織……♡」

「うぅ~……」

 

そんで、箒は目をキラキラさせてこっちを見て、本音ちゃんは顔を真っ赤にして両手で胸を押さえている。

どこか具合でも悪いのだろうか?

 

「で…では、三人とも列の前に来い。次は武装の展開をしてもらう」

「「「了解です」」」

 

武装…ね。

白式の武装ってやっぱり『アレ』だよね…。

 

少し浮遊して移動し、皆の前に立つ。

 

「まずは織斑。武装を展開して見せろ」

「は…はい!」

 

右手を僅かに開いて、一夏は精神を集中させるように目を瞑る。

すると、右の掌から光が発せられ形となり生成される。

光が収束すると、そこには真っ白な一本の剣が握られていた。

この間、僅か1秒にも満たない。

 

「出来た…!」

「0.5秒。及第点だな」

 

それで及第点なの!?

 

「ふむ…。一夏、それが君の武装か?」

「そうだよ。雪片弐型って言って、姉さ…織斑先生が昔使っていた雪片の後継に当たる剣なんだって」

「ならば、まさか零落白夜も…?」

「まさか~!そこまで都合よくできてないよ~!」

 

…………え?

今…なんて仰いました?

 

「織斑先生。少し佳織に説明してもいいですか?」

「構わん。だが、他の連中にも聞こえるように説明しろ」

「分かりました」

 

れ…零落白夜が使えないってどういうこと?

白式は最初から使えるんじゃないの?

 

「この雪片弐型は、この実体剣と光学兵器であるレーザーブレードを状況によって使い分ける事が出来るんだよ。勿論、レーザーブレードを使用の際はエネルギーを消費するけどね」

 

れ…零落白夜の代わりにレーザーブレード…?

本当はこっちの方が普通なんだろうけど、下手に原作知識を知っていると、こっちの方に違和感を感じるよ…。

 

「一応、これは初期装備なだけであって、拡張領域にはラファール程じゃないけどそこそこの空きはあるみたいで、そこに他の武装を入れる事は可能みたい」

 

え~と…つまり?一撃必殺の零落白夜が無くなった代わりに、エネルギー効率がよくなって、しかも他に武装が装備出来るようになって汎用性も増した…と。

攻撃力は低下したかもしれないけど、これって……

 

総合的に見れば、原作よりもずっと使いやすさがアップしてない!?

っていうか、こっちの白式の方がずっと強いような気がする…。

 

「最初でそれだけ説明出来れば上等だろう」

「ありがとうございます」

 

まさか白式すらも変化しているとは……。

どこまで変化しているのか、見極めるのも馬鹿馬鹿しくなってきたよ…。

 

「次はオルコット。やって見せろ」

「分かりましたわ」

 

セシリアは真横に右腕を突き出すだけで、あっという間に武装を展開して見せた。

光ったのも一瞬だけだ。

その手には前にも見た『スターライトMk-Ⅲ』が握られている。

しかも、ちゃんと銃身にはちゃんとマガジンがセットされていて、いつでも発射可能な状態になっていた。

う~ん…こっちも見事だ…。

 

「流石は代表候補生……と言いたいところだが、そのポーズはやめろ。真横に銃を展開して佳織に当たったらどうする気だ」

「す…すいませんでした…」

 

今、私の事を名前で呼んだよね?

なんで誰もツッコまないの?

 

「これからは正面に展開できるようにしろ。いいな」

「はい…。精進しますわ…」

 

展開時間は合格点でも、他が駄目なら意味無いって事か。

これはこっちも油断できないな。

 

「では、次は近接用の武装を展開しろ」

「りょ…了解です」

 

少し慌てたセシリアはライフルを収納し、次の武装を展開しようとした……が、中々に出てこない。

展開の光はセシリアの手の中で光り続けるだけだ。

 

「まだなのか?」

「も…もう少しですわ…!」

「いっその事、名前で呼んじゃえば?」

「それは……」

 

確か、頭でイメージするよりは直接名前を呼んだ方が早く呼び出せるって教科書にも書いてあったね。初心者用らしいけど。

 

「ああ~…もう!来なさい!インターセプター!!」

 

我慢の限界だったのか、最終的には名前を呼ぶ羽目に。

すると、彼女の手に小型のナイフが握られていた。

 

「はぁ……。馬鹿者。一体何秒かかっている。ご丁寧に展開するまで対戦相手に待ってもらう気か?」

「ち…近づかれる前に倒せば問題無いですわ!」

「阿呆が。戦いとは常に最悪の事態を想定しろ。お前の弾幕を突破してくる相手なんぞ、探せば幾らでもいるぞ。お前の隣とかにもな」

「う……」

 

それって私ですね。そうですね。

 

「これからは近接用の武装もちゃんと短時間で展開出来るように訓練しろ。分かったな?」

「はい……」

 

あらら。すっかり意気消沈。

 

「最後は仲森。出来るな?」

「当然」

 

どうして私はここまで自信満々かな。

 

「ではまずは……」

 

IS用マシンガンから始まって、次にIS用バズーカ。更にヒート・ホーク。

ここからは今まで出した事のない武装に移りま~す。

まずは左腕の前腕に固定式の2連装マシンガン。

そのまま一番大きい武装である『IS用対艦ライフルASR-78』を展開。

 

「これでよろしいですか?」

「ああ。全部合わせて約1.5秒。実に見事だ。お前達もこれを手本にしろ」

 

お手本は言い過ぎでしょ。

私の場合は単純にザクの武装が脳裏にこびり付いているから出来た芸当だし。

そうじゃなかったら、絶対に遅かったよ。

 

「で?今、お前が握っているのは何だ?初めて見るが」

「これは所謂『対艦ライフル』です。本来は対艦戦において使用される武器で、艦の装甲を貫いた際に弾子を撒き散らして内部から艦を破壊する特殊弾を高初速で発射するのですが、流石にIS同士の試合では使用しません。ちゃんと通常弾頭を使用するつもりですよ。そこはご安心を」

「そ…そうか」

 

因みに、対艦と言っているだけに威力は保証済み。

直撃すればかなりのダメージが期待できる……と思う。

 

キーンコーンカーンコーン……

 

あらチャイム。

 

「もう時間か。今日の授業はここまでにする」

「「「「「ありがとうございました!」」」」」

 

やっと終わりか…。

今日はなんとか恥ずかしいセリフは出なかったな。

この調子が少しでも続けばいいんだけど。

イベントがあったりしたら、そうもいかないだろうなぁ…。

はぁ~…前途多難だよ。ホント。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




またしても、予想外に長くなってしまった…。

もう、この癖をマジでなんとかしないとダメですね。

いつもいつも、終わった時には文字数が凄い事に…。


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第10話 セカンドと就任パーティー

どうしよう……なんか、軽くではあるんですけど、『おれゆり』のR-18の話を思いついてしまった自分がいます…。

どこかタイミングを見計らって、書いてみようかな…。






「ここがIS学園……ね」

 

すっかり暗くなったIS学園の正面ゲート前に、私は一人静かに立っていた。

ここから見えるIS学園の校舎を見つめているけど、なんか肩から下げているボストンバックが重くなってきたから、そろそろ行こうかしら…。

 

「え~っと~…受付ってどこにあるって言ってたっけ…」

 

確か、上着のポケットにメモ紙が入ってたわよね。

メモメモ~っと。

 

「あ、あった」

 

すっかりくしゃくしゃになってるけど、読めればよし!

 

「本校舎の一階総合事務受付………いや、分からんし」

 

今日初めてここに来たのに、いきなり場所の名前だけ教えられても分かるわけないっつーの。

 

「まぁ…いいや。分からないのなら、足で探せばいいのよ」

 

刑事ドラマとかでも、情報は足で探すの基本だ的な事を言ってた気がするし。

どんなドラマかは忘れたけど。

 

「って言うか、出迎えが無い事は予め聞かされていたけど、それでも少し乱暴すぎやしない?もうちょいこっちに配慮とかしてくれても罰は当たらないと思うんだけど」

 

なんて言ってても仕方ないんだけど。。

今まで散々IS学園に行くことを断っておいて、今になって手の平を返すようにOKサインを出したんだもの。

向こうも色々と思うところがあるんでしょ。

 

当初、私はお上の方から専用機の実践テストとデータ収集の為にIS学園に行くようにずっと言われ続けていた。

けど、私からすれば、何が悲しくていきなり転校をしなくちゃいけないんだって話よ。

今までもずっと転校転校のオンパレードだったのに、また転校だなんて。

しかも、今度は日本にあるIS学園。

どうせ、いる奴らは全員がお高く止まったエリート様ばかりなんだと思って、代表候補生としての権限をフルに利用して断り続けていた。

そんなある日、私の元にある情報が流れ込んできて、それを聞いた途端に私はIS学園に行くことを決めた。

 

ついこの間、IS学園で模擬戦が行われたらしい。

それ自体は別になんでもない。

ここはISの事を学ぶ為の学園だもの。

模擬戦ぐらいしたって不思議じゃないわ。

でも、問題は…その模擬戦をした選手だった。

 

イギリスの代表候補生を圧倒的な技量で打ち負かした、IS適性A+の女の子。

彼女自体はどこにでもいる平凡な少女だったらしいが、それがまさかのジャイアントキリングをしてしまったから、さぁ大変。

IS学園にいる生徒からの情報であっという間にネット上に広まって、その試合の内容を見た連中はこぞって彼女の事をこう呼んだ。

 

『赤い彗星』……と。

 

それが誰か気になって、私も試しに映像を見てみたら、そこに映っていたのは……。

私の大好きな幼馴染の女の子『仲森佳織』だった。

 

もう驚いたなんてもんじゃないわよ。

赤い彗星の正体が佳織だって知った時、私ってばマジで椅子から転げ落ちたし。

まさか、佳織がIS学園に行っていたなんて思いもしなかった私は、すぐに上の方に掛け合って、IS学園に行くことを了承した。

で、今に至る……って訳。

 

(誰か都合よく通りがかったりしないかしらね~。佳織とか佳織とか佳織とか)

 

流石にそこまで都合よく出来てないか。

これから一緒の学園に通うんだし、会う機会は幾らでもあるわよね。

 

「しゃーない。こうなったら適当に歩いてみるか」

 

歩いていればいつかどこかに着くでしょ。多分。

 

「やっぱり……さんは凄いです…ね…」

 

ん?なんか声が聞こえたような気が…。

向こうから?

 

視線を向けると、そこにはISの訓練施設が見えた。

少し暗くて視界が悪いけど、どうやら複数人の女子が出て来たみたい。

丁度いいから、あの子達に場所を聞こ~っと。

 

少し小走りで彼女達の元に行くと、少しづつ彼女達の姿が見えてきた。

って!あれってもしかして…!

 

「そんなことないよ。まだまだセシリアには及ばないって」

 

やっぱり……間違いない!佳織だ!

まさか本当に来日初日に佳織に再会出来るなんて!

これもきっと、日頃の行いがいいせいね!

もしくは、アタシと佳織が運命の赤い糸で結ばれてるかのどっちか。

愛の力って偉大だわ~。

 

「でも、私達の中じゃ操縦技術は間違いなく佳織が一番じゃない?」

 

この声は……一夏!?

あの子もこの学園にいたの!?

まぁ……一夏の実力なら入学出来ても不思議じゃないけど…。

 

「そうだぞ。もっと自信を持て、佳織」

 

……何?あのポニーテールの女の子は?

しかも、見た感じでは結構仲良さそうだったし…。

 

「ISに乗っている時は、あんなにも凛々しいですのに…。でも、そのギャップが佳織さんの最大の魅力なんですけど…♡」

 

あの金髪もなんか仲良さげだし…。

 

「はぁ~…かおりん。私……」

 

あのツーサイドアップの子なんて、完全に佳織に対して恋煩いしてるじゃない!

あの顔は間違いなく、恋する乙女の顔!

 

「どうしたの?本音ちゃん。まだ調子悪い?」

「いや佳織。本音は別に調子が悪いと言う訳じゃなくてだな…」

「ある意味では、かなり厄介な病気だけどね」

「???」

 

あぁ~…完全に分かってない。

佳織は無駄に鈍感な所があるから。

 

「辛かったらいつでも言ってね。なんでも力になるから」

「う…うん……」

「あ~もう!本音ちゃんは可愛いな~!」

「ふにゃ~!?」

 

あぁ~!?佳織があの子に抱き着いた~!?

一夏や他の二人も驚いてるし!

 

って言うか、あの四人組って全員が『規格外』じゃない?

なんか歩く度に、ある一部分が揺れてるし。

どこかは敢えて言わないけど。

言ったら負けな気がするし。

 

私が驚いているうちに、佳織達は校舎の中に入って行ってしまった。

 

それからすぐに本来の目的地である総合事務受付は発見できた。

実は佳織達が出て来た場所からすぐ近くにあったのだ。

これも佳織に早々に再会出来たからだと信じたい。

 

「え~っと…これで全ての手続きは完了しました。IS学園にようこそ、凰鈴音さん」

 

事務の人は愛想よく話してくれたが、今の私にそれに対応する余裕は無い。

 

「あの……仲森佳織さんって何組ですか?」

「仲森さん?あぁ~!例の『赤い彗星』の子ね!」

 

どうやら、こうした人達にも佳織の異名は伝わっているようだ。

流石は私の佳織♡

 

「仲森さんなら一組よ。で、貴女は二組。丁度お隣さんになるわね。確か仲森さんは一組のクラス代表を務めている筈よ」

 

クラス代表……。

昔からリーダーシップはあったし、少し予想出来たことかも。

 

「じゃあ、二組のクラス代表ってもう決まってるんですか?」

「決まっていたと思うけど、それがどうかしたの?」

「いえ……ちょっとO・HA・NA・SHIしてクラス代表を譲って貰おうかな~って思って…」

「ひぃっ!?」

 

待ってなさいよ佳織~…。

アンタを一番愛しているのは誰なのか、改めて分からせてあげるわ!

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「てな訳で、仲森さん!クラス代表就任おめでとう~!」

 

…………なんでこうなった?

 

私は今、学生寮の食堂にいる。

夕食後の自由時間はゆっくりとネトゲでもしようかと思っていたのに、クラスメイトの一人(鷹月さん…だったっけ?)に連行されるように食堂に来た。

で、待っていたのはクラスの皆とデカデカと『赤い彗星クラス代表就任パーティー』と書かれた大きな紙だった。

せめて中二病溢れる異名じゃなくて本名を書いてほしかった…。

これじゃあ、いい恥さらしだよ…。全然おめでたくないよ…。

 

そこかしこでクラッカーが鳴り響き、私の頭の上にもいくつか紙テープが降ってきた。

ははは……もう知らね。

 

って言うか、よく見たら明らかにクラスの人数よりも多いんですけど?

これ絶対に数人は他のクラスの子が混じってるよね?

 

「いや~!まさか仲森さんがあれ程の才能を隠し持っていたなんてね~!」

「うんうん!人は見た目によらないってよく言うけど、本当だったね!」

 

それに関しては私自身が一番驚いてるから。

 

「流石は『赤い彗星』!」

「お願いします、それだけは勘弁してください」

 

その名を呼ばれる度に、私の心が悶絶するんだよぉ~!

 

私は食堂にあるソファーの中央に座っていて、その両隣にセシリアと本音ちゃんが座っている。

一夏と箒はその二人の隣。

なんか悔しがってるけど、なにか欲しい食べ物でもあったのかな?

テーブルには皆が持ち寄ったと思われる色々なお菓子やジュース類があるけど。

 

「かおりんは人気者だね~」

「そうかな?」

 

皆が望んでいるのは『赤い彗星』の方じゃないの?

 

「佳織さん。ジュースのお替りはいかがですか?」

「え?じゃあ貰おうかな?」

「わかりましたわ」

 

そして、セシリアはさっきからずっと私にくっついてお菓子を取ってくれたり、ジュースをついでくれたりしてくれている。

一体いつから君はそんなに献身的な女の子になった?

 

「ぐぬぬ……!ここからでは佳織に近づけん…!」

「我慢…我慢だよ箒…!まだ戦いは始まったばかりだから…!」

「そ…そうだな。まだ始まったばかりだよな」

 

なにがだよ。

 

両隣で挟んでの会話だから、いくら喧騒に紛れていても全部聞こえてるんですけど?

 

「はいは~い!どうも、毎度お馴染みの新聞部で~す!」

 

毎度お馴染みじゃないでしょ。

今回が初めてだよ、色んな意味で。

 

「噂に名高い『赤い彗星』こと仲森佳織ちゃんに特別インタビューをしに来ました~!」

「「「「おぉ~!」」」」

 

おぉ~!じゃねぇよ。

少しはこっちの身にもなって。

 

「あ、因みに私は二年生の黛薫子。こう見えても新聞部の副部長をしてま~す。これからよろしくね。はい、これ名刺」

「あ…どうも」

 

思わず名刺を取ってしまった。

と言うか、今この人『これから』って言った!?言ったよね!?

 

「それでは早速お聞きしましょう!まずは、入学早々に『赤い彗星』と言う異名で呼ばれるようになった佳織ちゃん!今の心境をどうぞ!」

「恥ずかしいの一言ですよ」

「デスヨネ~。うん、それはよ~くわかる」

 

なら聞くなよ。

って、おい!?その手に持っているのはボイスレコーダーじゃないですか!?

この人、録音する気満々だよ!

 

「でも、それだけ君が凄いって証拠でもあるよね。最初の試合から、あれだけ派手に大立ち回りをすれば、そりゃあ有名にもなるよ」

 

急に正論を言われてしまった…。

でも、あれは私の本来の力じゃない。

本当の私はどこにでもいるへっぽこ三等兵だ。

 

「じゃあ次ね。クラス代表になった感想でも聞かせて貰おうかな?」

「感想……」

 

そう言われてもな~…う~ん…。

 

私が何を言おうか悩んでいると、急に頭にラファールⅡのヘッドセンサーが部分展開された。

 

「……!」

 

やばい…!部分展開だけでもシャアモードになるのか…!

しかも、頭に展開したせいか、誰も気が付いてない!

 

「私は所詮、どこにでもいる一介の女子高生に過ぎない。だが、そんな私でも何かが出来ると言うのであれば、それを全力でやらせてもらおう。私はここで、一組のクラス代表に恥じない働きをすると皆に約束する」

 

言ってしまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

よりにもよって、この最悪のシーンでこの口調とか、絶対に黒歴史確定だよ~!!

 

「……………」

 

あ…あれ?黛さん?急に静かになってどうしたんですか?

皆も黙りこくってるし。

 

「あ!ご…ごめんね。なんか急にボーっとしちゃって。あはは~…」

 

黛さんの顔が赤いぞ。まさか、熱でもあるんじゃ…。

 

(うわ~…。噂には聞いてたけど、これが佳織ちゃんの『ヅカキャラモード』ってやつか~…。不覚にも少し見惚れちゃったよ…)

 

あ、ヘッドセンサーが消えた。

ふぅ~……よかった。

 

「仲森さん……素敵……♡」

 

はい?

 

「ヤバ……私、マジになっちゃうかも……」

「私も…。まさか自分が『そっち』の道に踏み込んじゃうなんて……」

 

ちょ…ちょっと!?みなさ~ん!?

大丈夫ですか~!?

 

「セシリアもなんとか言ってあげて……って!」

 

は…鼻血!セシリアの鼻から鼻血が出てるって!

それに反して目は凄くキラキラしてるし!

 

「あぁ……やはり、私の目に狂いはありませんでしたわ…♡佳織さんこそが私の理想の……」

 

理想の!?理想の何よ!?

 

「ふにゃ~…かおりん……♡」

 

そんで本音ちゃんは顔が完全に蕩けて私の腕に抱き着いてるし!

 

「そうだ!一夏と箒は!?」

「はぁ~…佳織ぃ~…♡」

「完全に撃墜されちゃったよぉ~…♡」

「えぇっ!?」

 

いつの間にか二人は私の両足にしがみついて、頬を摺り寄せてる!

 

「ちょ…!二人とも!これじゃあ身動き取れないから!」

「「佳織ぃ~…♡」」

「聞いてないし!」

 

この場にまともな人間は誰もいないのかぁ~!?

 

「本当はここでセシリアちゃんにもインタビューをしようと思っていたけど、もういいや……」

「それがいいですわ……」

 

いやいや!セシリアにもインタビューしようよ!

私だけなんて嫌だよ!?

 

「取り敢えず、佳織ちゃんに惚れた事にしとくね」

「間違いじゃないから大丈夫ですわぁ~…」

 

間違いじゃないのかよ!?

 

「しっかし、まさか本音ちゃんも……ねぇ~…」

「本音ちゃんの事を知ってるんですか?」

「うん。この子のお姉さんとは知り合いでね。その関係で本音ちゃんとも顔見知りなんだ」

 

思ったよりも顔が広い本音ちゃん。

意外な一面が次々と明らかになる…。

 

「頑張ってね佳織ちゃん!色んな意味で応援してるから!」

「色んな意味とな!?」

 

そんな事を言われても心配しかないよ!?

 

「んじゃ、最後に皆で記念写真でも撮ろうか。当初は専用機持ちだけで撮るつもりだったけど、こうなったらもういっその事、皆で撮った方がいいような気がしてきた」

 

黛さんが一旦離れて、少し遠くにあるテーブルに自分のカメラをセットする。

あれ、彼女が撮影するんじゃないの?

 

「ついでだから、私も入るね」

 

マジですか…。

しかも、何気に私の前にいるし。

 

それを合図にして、その場にいた全員が私を中心にして集まった。

ぶっちゃけ、窮屈で暑いです…。

 

「それじゃあ皆~。ジョナサン・ジョースターの必殺技と言えば~?」

「「「「「「山吹色の波紋疾走(サンライトイエロー・オーバードライブ)!!!」」」」」」

 

パシャ!

 

「なんでやねん!!!!!」

「お!見事なツッコみ!」

 

そりゃツッコみもしますよ!

つーか、皆ジョジョ好きだな!?

セシリアも一緒に叫んでたぞ!?

 

「ジョジョ第一部の舞台はイギリス。その主人公であるジョナサン・ジョースターはアーサー王にも並ぶイギリスの大英雄ですわ!」

 

すげーなジョナサン!

いや、確かに凄い人物だけど、なんで漫画の主人公が円卓の騎士王と並ぶんだ!?

 

その後も私のクラス代表就任パーティーは続いていき、終わったのは夜の22時を過ぎた頃だった。

 

私も本音ちゃんも一夏も箒もセシリアもすっかり疲れたのか、最後の方になるとすっかり大人しくなっていた。

 

別に何かをしたわけじゃないのに、すっごく疲れたよぉ~…。

図らずも今日もぐっすりと眠れそうだよ…。

 

でも、この時期って言えば何かがあったような気が…なんだったっけ…?

ま、いいや。明日考えよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まさか、前半だけで結構な文字数になるとは…。

と…とにかく、次からは例のチャイナ娘が登場です。

まだまだ、佳織の周りは賑やかになりそうですね。


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第11話 もう一人の幼馴染と恋する少女達

ここから原作第一巻の後半に突入です。

さぁて、どうなるどうなる?






「うぅ~ん…?」

 

早朝。

なにやら奇妙な違和感を感じながら、私はそっと目を開けた。

 

「ん……?」

 

なんか重い?

何かが体に乗っかかっているようだ。

その証拠に、私の体の上にある掛布団が少し膨らんでいる。

しかも、胸の辺りに変な感触もあるし。

 

「一体何なの…さ!」

 

勢いよく布団を取ると、そこにあったのは……

 

「すぴ~…かおりん~…」

「本音ちゃん!?」

 

私の上に乗って熟睡している本音ちゃんでした。

っていうか、いつ抜け出して私のベットに忍び込んだの!?

 

「ちょ……胸胸!」

 

現在、本音ちゃんの顔は私の胸に収まるように埋没していて、その両手はしっかりと私の両胸に触れている。

つーか、何気に揉もうとしないで!

 

「本音ちゃん!いい加減に起きて!」

「えへへ~♡かおりんのおっぱい……ふにふに~…♡」

「寝言で感想を言うな!」

 

なんとか態勢を整えてから、体を揺さぶりまくった。

それを10分ぐらい続けて、ようやく起きてくれた。

 

「あれ~…?なんで私ってばかおりんのベットにいるの~?」

「寝相だったの!?」

 

いやいや…これまでそんな事は無かったよね!?

どうして今になって、そんな寝相の悪さが露呈するのさ!?

 

「と…とにかく!今は早く準備をするよ!急いで!」

「は~…いふぁ~…」

 

最後まで言えてないし!

 

その後、なんとか食堂に到着して朝食を食べたが、急いでいた為どんな味だったか全く思い出せなかった。

 

……今度、超強力な目覚ましでも買ってこようかな…。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 なんとかして遅刻の回避に成功した私達は、教室についてから即座に席に着き、いつものように皆が私の席の周りに集まる。

 

「なんだか今日は慌ただしかったな。一体どうした?」

「本音ちゃんが寝坊しかけたんだよ……」

「にゃはは~……ゴメンね~かおりん~」

「そう思うのなら、せめてすぐに起きてほしい…」

「あはは……」

 

苦笑いをしても誤魔化されないからね。

 

「佳織も大変だね……」

「本音さん。淑女たるもの、一人で起きれなければいけませんわ」

「私は別に淑女じゃないんだけど~…」

 

多分、セシリアの中じゃ女性は皆、淑女なんじゃないかな?

 

「あ、仲森さん。おはよ~」

「うん、おはよう」

 

他のクラスメイトからも挨拶をされる。

あの試合以降、私に話しかけてくれる子が一気に増えた。

私がクラス代表になったと言う事も大きいのだろうが、それ以上に試合のインパクトが大きかったんだろう。

実に不本意ではあるけれど……。

 

「そうそう。仲森さんはもう転校生の話って聞いた?」

「「「「転校生?」」」」

 

こんな時期に?…って、あれ?

この時期の転校生って……何かが引っかかるような……。

 

「なんでも、隣の二組に中国からの代表候補生の子が転入してくるんだって」

「「中国……」」

 

私と一夏の言葉が重なる。

その瞬間、私の頭に稲妻が走った!

 

「あっ!」

「ど…どうしたんだ?いきなり」

「い…いいや?なんでもないよ…」

 

やっば~!今完全に思い出したよ~!

この時期って言えば、『あの子』がやって来る時期じゃん!

いや、この場合は『戻ってくる』の方が正しいのかな?

 

「代表候補生……」

 

あ、セシリアがなんか反応してますよ。

 

「もしや、この私の存在に危機感を覚えたが故の転入かしら?」

 

ま~たこの子は…。

 

「セシリア。慢心はダメだって。織斑先生もよく言ってるでしょ?」

「そ…そうでしたわね……。失言でしたわ」

 

反省の意思があるならよし。

 

「まぁ、別にこのクラスに転入してくるわけじゃないんだ。そこまで気にする程の事でもないだろう」

「箒の言う通りだね。でも、一体どんな子なんだろう?」

「一夏は気になるのか?」

「うん。だって、隣のクラスってことは、今度あるクラス対抗戦で佳織と戦うって事でしょ?」

「そうだったな…。そんなイベントが控えているんだったな」

 

多分、一夏も転入生の正体を知ったら驚くだろうなぁ~。

 

「ならば!クラス対抗戦に備えて、今日からはより実践的な訓練をしましょう!私とならば必ずや佳織さんの成長に尽力出来ますわ!なんせ、私は専用機持ちですから!」

「む~……私も一応、専用機を持ってるんですけど~…」

「そうかもしれませんが、実力はいざ知らず、知識や技術の方はまだまだ勉強する事が多いのでしょう?でしたら、貴女はご自分の事に集中して、佳織さんの事は私の任せてはいかがですの?」

「なんですって~…!」

 

あぁ~あぁ~!

なんか朝から火花が散ってるし~!

 

「二人は仲良しさんだね~」

「「仲良くなんて無い(ですわ)!」」

「息ピッタリだな」

 

箒にツッコまれたよ。

こりゃまた珍しい。

 

「喧嘩するほど仲がいい…ってやつ?」

「佳織さんまで~…」

 

セシリアが泣きそうになりながらこっちを向く。

 

こんな風な会話が一番楽しい。

なんつーか…青春してる~!って気になるから。

 

「取り敢えずは、やれるだけやってみるよ。昨日、皆の前で宣言もしちゃったし」

 

図らずも…だけど。

 

「なに、佳織なら大丈夫さ」

「そうそう!きっと勝てるよ!」

「かおりんが勝つと、皆がハピハピだよ~♡」

 

本音ちゃん……そのセリフって、どこぞの背の高いアイドルさんを真似てない?

 

「そう言えば、対抗戦の優勝賞品ってなんだっけ?」

「確か、学食デザートの半年間のフリーパス券じゃなかったか?」

「デザートかぁ~…」

「あれ?仲森さんってデザート嫌い?」

「そうじゃないんだけど……甘すぎるのはちょっと苦手かな~」

 

別に食べれないわけじゃないけど、少し気分が悪くなる。

個人的に好きなのは、モンブランとかビターチョコとかの甘さ控えめのデザート類だ。

 

「でも、皆が欲しいって思うのなら、頑張って優勝を目指してみるよ」

「その意気だよ!現在のところ、専用機を所持しているのは一組と四組だけだから、優勝する確率は結構高いって思うよ」

 

四組…ね。

いずれは『あの子』とも接触するんだろうか…。

でも、その場合ってどうなるんだ?

白式の詳しい開発経緯を知らないから、何とも言えないな~。

 

「その情報……少し古いよ」

「「「「え?」」」」

 

いきなり、教室の入り口付近から声がした。

あ~…この声は……。

 

「つい最近だけど、二組も専用機持ちがクラス代表に就任したの。簡単に優勝が出来ると思ったら大間違いよ」

 

いかにも『かっこつけてます』って感じのポーズで立っていたのは、原作ヒロインの一人にして、私にとってはもう一人の幼馴染とも言うべき少女『凰鈴音』だった。

 

(ふふふ…。再会早々に私の成長をアピール大作戦は成功のようね。佳織も驚いたようにこっちを見てるし)

 

……なんか、こっちを見ながらニヤニヤしてるんですけど、あの子。

 

「もしかして……鈴なの?」

「そうよ一夏。改めて自己紹介をしてあげる」

 

そう言うと、腕を組んでいきなりの仁王立ち。

 

「私は凰鈴音。今度二組に編入した中国の代表候補生…そして、二組のクラス代表でもあるわ。(決まった!これで佳織もアタシにメロメロね!)」

 

なんで『勝者の笑み』を浮かべてるの?

 

「そして……」

 

ん?鈴が教室に入ってきて、こっちに来たんですけど?

 

「佳織の事を世界で一番愛している者よ」

 

え……えぇ~!?

って言うか、しれっと私の首に腕を回して抱き着かないでくれますか!?

 

「「「「「えぇ~!?」」」」」

 

ほらぁ~!案の定、教室が騒がしくなった~!

 

「か…佳織がががががががががが」

 

ほ…箒が壊れたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?

 

「おのれ~…!佳織さんは誰にも渡しませんわ~…!」

 

で、セシリアはメラメラと炎を燃やしてるし。

 

「あわわわわ~…かおりんが…かおりんが~…」

 

本音ちゃんは派手に震えてる。

そう言えば一夏は?

 

「ふふふ……」

 

何故にそこで笑う?

 

「私の佳織に対する思いは、そんな言葉には負けない!」

「へぇ~…言うじゃない。流石は昔からのライバルね」

 

今度は一夏と鈴の間で火花が~!?

 

「「「あ」」」

 

瞬間、私達は冷静になった。

何故かって?そりゃ……

 

「おい、貴様等」

「「え?」」

 

二人の後ろに千冬さんが来たからに決まってるじゃん。

 

勿論、睨みあっていた二人の頭には。伝家の宝刀である出席簿アタックが炸裂。

見事なたんこぶを作り上げて、そこからギャグ漫画のような湯気が出ていた。

 

「もうSHRの時間だ。早く自分のクラスに戻れ」

「わ…分かりました……」

 

顔を青くしながら鈴は教室から出ようとする。

昔からあの子って千冬さんの事が苦手みたいだしね。

 

「また後で来るから!愛してるわ!佳織!」

 

去り際の一言が余計だよ!

 

「早く行け」

「は…はい!」

 

今度こそ完全に行ったようだ。

下手に教室に入らなければ、痛い目を見ずに済んだのに…。

 

「全く……佳織を世界で一番愛しているのは、この私だ」

 

この人、最初から全部聞いてたな!?

 

「お前達も、早く席に着け」

「「「「は…はい」」」」

 

皆、何かを言いたげな顔をしていたけど、千冬さんの迫力には勝てなかったようで、大人しく席に着いた。

 

また、一段と騒がしくなりそうだぁ~…。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

(一体、今朝のあの女は何者なんだ…!?私の佳織にべたべたと抱き着きおって!)

 

くそっ…!あの一件の事が頭から離れない…!

これでは授業に集中できんではないか!

 

しかし…あのツインテール女が抱き着いた時、佳織は全く抵抗する様子を見せなかった。

と言う事は、少なからず佳織の方も、あの女に対しての感情があると言う事か!?

だとしたら、これは由々しき事態だ!

 

(佳織……)

 

少し佳織の方を見てみると、真面目に授業を聞きながらノートを取っていた。

 

(本当に真面目だな……佳織は。どんな時も誠実さを失わない。そんなお前だから私は……)

 

そうだ、ここで諦めてどうする!

一夏も言っていたではないか!

あんな言葉程度で佳織への想いは揺らがないと!

私だって、佳織に対する気持ちは誰にも負けていない!

よし!早速、今日の放課後から頑張らねば!

 

「篠ノ之。ここの答えは何だ?言ってみろ」

「え……?」

 

こ…答え?

 

「二度も同じ事を言わせるなよ」

 

そ…そうだった…!今は織斑先生の授業だった…!

私としたことが、なんと言う事を…!

 

「き…聞いてませんでした…」

 

教室に強烈な打撃音が響き渡った。

 

後で『分かりませんでした』と言えば、少しは威力を軽減して貰えたかも…と思ったが、完全に後の祭りだった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 あぁ~…もう!一体彼女はなんなんですの!?

佳織さんに馴れ馴れしく抱き着いた揚句、愛してるだなんて!

私だってまだ言った事が無いと言うのに!

 

唯でさえ、現状では幼馴染である一夏さんや箒さん、ルームメイトの本音さんと言う強力なライバルがいると言うのに、そこから更に謎の転校生が来て、それが佳織さんと仲がいいだなんて!

こっちは幼馴染でもなければ同室でも無い。

私の今のアドバンテージと言えば……

 

(同じ専用機持ちであり、佳織さんと剣を交えた事がある…と言う事ぐらい…)

 

これでは手札としては余りにも微妙ですわ!

なんとかして、逆転の一手を打たなくては…!

 

相手は私と同じ代表候補生と言う属性を持ち、しかも佳織さんとは旧知の仲。

 

(……完全にズルですわね)

 

相手の手札は非常に強力だ。

今までのようにISの訓練や模擬戦だけでは、今いち決定打に欠ける。

ならばどうするか?

いざとなったら、最後の手段に打って出るしかないのかもしれない。

 

「既成事実さえ作ってしまえば……ふふふ……」

「オルコット」

「佳織さんのあの柔らかな肌を……」

「…………」

 

いきなり強烈な衝撃が私の頭を走りました。

 

うぅ~…痛いですわ…。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

(かおりん……)

 

かおりんのあんな顔、私は初めて見たかもしれない…。

 

なんだか安心したような、そんな顔。

とても自然な笑顔だった。

 

きっと、あの子はかおりんにとって家族同然の存在だったんだろう。

 

「はぁ……」

 

私も…いつか、かおりんにあんな顔をして貰えるような存在になれるのかな…?

ううん……なりたいな…。

 

かおりんの事も考えると、いつも胸が苦しくなる。

息も途切れ途切れになって、顔も熱くなって…。

 

「あ……」

 

そっか……これが『好き』って気持ちなんだ…。

 

自分でも不思議だけど、なんとなく分かった…。

 

しののんやおりむーは、いつもこんな気持ちなんだ…。

そして、さっきの子も……。

 

私は……かおりんが好きなんだ……。

 

「~~~…!」

 

うぅ~!自覚しちゃうと、急に恥ずかしくなっちゃうよぉ~!

 

「はぁ……」

 

ふえ?溜息?

 

ふと上を向くと、織斑先生が私に向かってポン…と非常に軽く出席簿で叩いた。

 

(全然痛くない…?)

 

どうして?二人には凄い威力だったのに…。

 

「ちゃんと授業に集中しろ。布仏」

「す…すいませんでした…」

 

それだけを言うと、先生は手に持った教科書に目線を落とした。

 

「…………精々頑張れよ、小娘」

「え?」

 

織斑先生…?

なんか去り際に何か言ったような気が……。

 

それからは、なんとか授業に集中することが出来た。

不思議と気分は晴れ晴れとしていたけど、なんでだろう…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まずはここまで。

次から鈴が本格的に絡んでくる?

そして、何故か本音が可愛い事に…。


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第12話 女達が寄ればかしましい

今日も今日とて天気が悪い。

こうも晴れないと、ちょっと気分が落ち込みますね。







「えっと……大丈夫?」

「「うぅ~…」」

 

昼休み。

私を初めとしたいつもの面々は、揃って食堂に向かっていた。

 

実はこの二人、午前の授業中に二人揃って6回も出席簿の餌食になっている。

それと言うのも、授業中に箒とセシリアはなんだかずっと『心ここに非ず』状態だったみたいで、妙にポケ~っとしていたようなのだ。

最初は本音ちゃんも似たような状態だったらしいが、途中からいつもの調子に戻った。

 

「ははは~…。二人とも、姉さんの授業で呆けるなんてなかなかに度胸があるんだね」

「なんで一夏さんは大丈夫だったんですの!?」

「そうだそうだ!お前はアイツについてなんにも思わないのか!?」

 

アイツ?ああ……鈴の事ね。

 

「別に?鈴のああいった態度は今に始まった訳じゃないし」

「昔からなのか…」

 

そうだったね~。

なんつーか、行動派なんだよね、あの子って。

思い立ったが吉日っていうか、なんて言うか。

 

「それに、朝も言ったでしょ?私はあんな言葉一つで揺らぐほど、軟な想いは抱いてないって」

「それは……」

「私達も同じつもりですけど……」

 

一夏は昔から一途なところがあったからね~。

良くも悪くも真っ直ぐなんだよね。

そこら辺は性別が変わっても一緒みたい。

何に何の想いを抱いてるかは分からないけど。

 

「で、本音ちゃんはさっきからなんでニコニコしているの?」

「ん~?ないしょ~♡」

 

……なにこの子可愛い。

持ち帰ってもいいかしら?って、同じ部屋だった。

 

そんな事を話しているうちに、気が付けば食堂前に到着。

食堂はお昼時と言う事もあって、非常に賑わっている。

けど、結構早めに来たお蔭か、まだまだ席に余裕はあった。

 

いつものように券売機にて食券を購入。

今日の私のお昼ご飯はかつ丼定食。

午後からに備えてガッツリといきたい。

 

因みに、箒はきつねうどん、セシリアは洋食ランチ、一夏は日替わり定食、そして本音ちゃんはTKGセット。

TKGとは、T(たまご)K(かけ)G(ご飯)の略。

御飯に味噌汁にお漬物。そこに獲れたて新鮮な生卵とTKG専用の醤油が付いている。

前に私も試しに一回食べてみたが、これが滅茶苦茶美味しかった。

本気でTKGにハマりそうになったっけ。

 

「待ってたわよ佳織!ついでに一夏も!」

 

そんな叫び声と共に私達の前に現れたのは、既に昼食のラーメンを注文し終わった鈴だった。

手に持っているトレーの上には湯気が立っている出来立てのラーメンが鎮座している。

 

「私はついでなんだ……」

「当たり前じゃない。アンタだって、私の立場なら似たような事を言ったんじゃない?」

「それは否定しないけど…」

 

しないのかよ。

 

「待っててくれたのは純粋に嬉しいけど、別に先に食べててもいいんだよ?ラーメン、のびちゃうでしょ?」

「だ…大丈夫よ!多少のびたぐらいでラーメンの味は変わらないわ!」

「いや、結構変わると思うが…」

 

ナイスツッコミ、箒。

 

「そもそも、別に佳織さんは貴女と待ち合わせなんてしてませんわよ?」

「べ…別にいいじゃない!そんな細かい事を一々気にしてたら大成しないわよ?」

「えぇ~?」

 

なんか微妙に会話が噛み合ってないような…。

 

「と…とにかく、私達はこの食券を出して来るから」

「わかったわ。じゃあ、アタシは先に行って空いている席を確保しておくから」

「ありがとう」

 

私は鈴のこういうところが好きだったりする。

なんていうか……阿吽の呼吸?って言うのかな?なんとなく、お互いの言いたいことが分かるって言うか…。

 

「な…なんですの…今の…」

「まるで、熟年の夫婦みたいな会話だったぞ…」

「私はもう慣れたけど」

「ふえ~…。リンリンは凄いんだね~」

 

リンリン?あぁ…鈴のこと?

もう早速、鈴の渾名を考えたのか、本音ちゃんは。

 

揃って食券をカウンターに出して、注文の品を受け取る。

 

「おや、噂の『赤い彗星』のお嬢ちゃんかい?」

「こんな所にまで浸透してるんだ…」

 

一体何処まで広まってるんだ…?赤い彗星の名前は…。

 

「こっちこっち~!」

 

少し離れた場所で鈴が手を振っている。

どうやら、あそこが確保した席のようだ。

確かに、今いる皆が座っても余裕がある広さだ。

 

そこに向かって私達も歩いて行くことに。

 

「こ…ここいいわよ」

「んじゃ遠慮無く」

「「あぁ~!?」」

 

鈴が譲ってくれた席は、丁度彼女の隣だった。

で、箒とセシリアはなんで叫んでるの?

 

「余裕があるのかないのか」

「だね~」

 

本音ちゃんにまで言われてるぞ、二人とも。

 

「にしても、本当に久し振りだね。あれから一年ぐらいになるんだっけ?」

「そ…そうね。一年と言っても、私にとっては凄く長く感じたけど」

「そう?」

 

大袈裟だな~。

私にとってはあっという間な一年だったよ。

 

「でも、佳織の元気そうな姿を見れて安心したわ」

「それはこっちもだよ。何も変わってないようで、ちょっと嬉しかった」

「あ…ははは……そう…なんだ……。(嬉しかったって言われちゃった…♡)」

 

言えません!鈴の事は本当に忘れなかったけど、君がこの時期に転校してくることをすっかり忘れていただなんて言えません!

 

「にしても、佳織には驚かされたわよ。なんなの?あの『赤い彗星』って」

「それに関しては、こっちの方が聞きたいぐらいだよ…」

 

本当に…一体誰が言い出したんだ?

別に私は家族を殺されてはいないし、復讐なんて物騒な事も考えてない。

ましてや、変な仮面なんてつけたくも無い。つける理由も無いし。

勿論、後に名前を変えてサングラスを付けたりもしないし、総帥になって隕石落としなんかもするつもりはない。

 

「あれって誰が言いだしっぺなのよ?」

「さぁ?いつの間にか色んな人から言われてたんだよ」

「そうなんだ。ま、異名なんてそんなもんでしょ」

 

軽く片付けられてしまった。

昔から鈴はサッパリとした性格の女の子だったが、それは今も変わらないようだ。

 

「あ~…佳織?もうそろそろソイツとどんな関係か話してほしいんだが…」

「そ…そうですわ!佳織さん!もしやこの方とお…お付き合いをしていらっしゃるのではないでしょうね!?」

「「お付き合い?」」

 

なんの?過去に買い物の付き添いなら何回も行った事があるけど。

 

「残念だけど、まだそこまでには至ってないわ。告白はしたけど」

「「こ…告白!?」」

 

もうそろそろマジで食べ始めようかな。

一夏と本音ちゃんはもう食べてるし。

 

「へ…返事は?」

「まだよ。っていうか、私の方から言わないようにお願いしたの」

「なんでだ!?」

「だって、こっちだけが一方的に好きになっても仕方が無いじゃない。アタシは両想いになりたいの。だから、佳織が私の事を好きになってくれたら、改めて告白するつもりでいるの」

 

んん~♡

ここのかつ丼は最高だな~♡

出来ればおかわりがしたいぐらいだよ~♡

って、この三人は何を話してるの?

食べるのに夢中でよく聞き取れなかったけど。

 

「お…大人ですわ…!」

「く…悔しいが、こいつの方が私達よりも一枚も二枚も上手だ…!」

 

何を話してるか知らないけど、早く食べないと時間が無くなっちゃうぞ~。

 

「というか!なんで一夏さんと本音さんは平気そうに食事をしてるんですか!?」

「いや、私も鈴と同じ気持ちだし」

「私は~、今はまだかおりんと一緒にいられるだけで幸せかな~」

 

まさに三者三様の反応だな。

見てて面白い。

 

「あのさ、なんか話しが逸れてない?私と鈴がどんな関係か話そうとしてなかったっけ?」

「「「あ…」」」

 

完全に忘れてたな…。

 

「鈴は私の幼馴染だよ」

「お…幼馴染…だと…!?」

「そうそう。丁度、箒が転校した後に入れ替わるようにして転校生として来たんだよ」

「懐かしいな~。あの頃は私と佳織と鈴とで一緒に遊びまわってたっけ」

「そうね~」

 

いやはや、高校生ともなれば、半分子供で半分は大人だ。

昔を懐かしむような余裕さえ生まれるか。

 

「って事は、このポニーテールの子が?」

「そう。前に私と一夏が話した篠ノ之箒。一夏と千冬さんが通ってた剣道場の師範の娘」

「ふぅ~ん……アンタが……」

 

鈴はまるで舐め回すかのように箒を見ている。

……気のせいかな。鈴の視線が箒の胸に集中してるような…。

 

「初めまして。これからどうぞよろしく…とだけ言っておくわ」

「こちらこそ。これから先、お前とは色々と顔を合わせる事が多くなりそうだ」

「奇遇ね。私もそんな気がしてるわ」

「「ふふふ……」」

 

な…なんかこの二人が怖い!?

鈴の背後に龍が、箒の背後に虎が見るんですけど!?

 

「んん!私の事をお忘れではなくて?凰鈴音さん?」

「え?アンタは……」

 

おや?鈴はセシリアの事を知ってるのか?

 

「思い出した!確か、佳織との試合でボコボコにされてた奴でしょ!」

「ボコボコになんてされてませんわ!……苦戦はしましたけど…」

「それを世間一般ではボコボコって言うのよ」

「クキィ~!!」

 

マンガみたいな反応したよ、この子。

 

「って、なんで私が佳織さんと試合をしたと知ってるんですの?」

「あれ?知らないの?二人の試合はネット上に動画として流れてるわよ。アタシもそれを見て知ったんだし」

「「ええっ!?」」

 

そ…それって大丈夫なの?

 

「なんかヤバくない?機密の保持とか、色々と問題があるんじゃ…」

「その辺はIS学園やIS委員会がちゃんと規制をすると思いますけど……」

「そ…そうだよね?大丈夫だよね?」

 

流石に、そこまで学園も馬鹿じゃないか。ははは……

 

「と…とにかく!一応の自己紹介はさせてもらいますわ。私はイギリスの代表候補生のセシリア・オルコットと申します。以後お見知りおきを」

「こっちこそよろしく。ま、同じ代表候補生でも、アタシの方が強いと思うけど」

「へぇ~……言いますわね……」

「事実でしょ?」

 

今度はセシリアと鈴の睨み合いなの~?

セシリアの後ろにはペガサスが見えてるし。

 

「いつか雌雄を決してあげますわ…!」

「望むところよ」

 

勝手に試合の約束までしてるし。

当人同士がいいのなら、私は別に口出しはしないつもりだけど。

 

「そんで、そこで幸せそうな顔で卵かけご飯を食べてる子は誰なの?」

「もぐもぐ……ゴクン。私は「本音ちゃん、口の周りに卵ついてる」え?どこどこ?」

 

ご飯粒もついてるし…。

 

「ほら、こっち向いて」

「は~い♡」

 

テーブルに備え付けの紙で拭いてっと。

 

「布仏本音だよ~。これからよろしくね~、リンリン~」

「アタシはパンダか!?」

 

おう……鋭いツッコミ頂きました。

 

「ねぇ…一夏。この子って……」

「うん。今のところ、一番のダークホース」

「やっぱり……」

 

二人して何をこそこそと話してるの?

 

「よ…よろしくね?本音って呼ばせて貰ってもいいかしら?」

「いいよ~」

「なんか調子が狂うわね…」

 

気持ちは分かる。

けど、慣れちゃえばこれも可愛いよ。

 

「そう言えば聞いたわよ。佳織ってクラス代表なんですって?」

「だ…誰に聞いたの?」

「事務のお姉さんに」

 

この学園……情報の伝達速度が速すぎじゃなかろうか?

 

「よかったらアタシがISの訓練を見てあげようか?」

「「!!!」」

 

いきなりだな…。

箒とセシリアが面白い顔でフリーズしてる。

 

「う~ん…実に有難い申し出だけど……」

「…?どうしたのよ?」

「いやね、私達ってお互いにクラス代表な訳じゃん」

「そうね」

「と言う事は、今度のクラス対抗戦でぶつかる可能性が非常に高い」

「うん」

「そんな二人が一緒に訓練してたら、周りの皆はどう思う?」

「あ……」

 

どうやら気が付いてくれたようだ。

鈴は物分りがいいから、とても話しやすくて助かる。

 

「はぁ……しゃーないわね。じゃあ、クラス対抗戦が終わるまでは自重するわ」

「それがいいよ。お互いの為にもね」

「でも、訓練じゃなかったら問題無いわよね?」

「そりゃあ……まぁ…」

 

クラス代表って言う称号が無ければ、私達は同級生になるんだし。

 

「じゃあ、それまでは『普通』に接する事にするわ」

「うん…?」

 

なんで『普通』を強調した?

 

「「はっ!?」」

 

二人が戻った。

 

「よ…よく言った佳織!」

「それでこそ、一組のクラス代表ですわ!」

「何を慌ててるのやら」

「だね~」

 

……本当に、見てて飽きないな。このメンバーは。

 

「いつもこんな感じなの?この子達って」

「えっと……その……うん」

 

としか言えない。

 

「そうだ。弾は元気にしてるの?」

「そうじゃない?少なくとも、最後に会った時は凄く元気だったよ」

「その言い方だと、まるで弾が死んじゃったみたいだよ、佳織」

 

彼の場合は殺しても死なないでしょ。

元気だけが取り柄みたいなもんだし。

 

「今も『彼女が欲しい~!』って言ってるんじゃない?」

「へぇ~…。(この様子……弾の気持ちを全く知らないっぽい?アイツも哀れね)」

 

鈴はなんで哀愁に溢れた目でこっちを見るの?

 

「今日も訓練をするの?」

「そのつもり」

「ふ~ん……そっか~…」

 

この表情……何かを考えてる時の顔だ。

 

「その通り。佳織は放課後も忙しいんだ。残念だったな」

「特に私は佳織さんと同じ専用機持ちですから、佳織さんとはいつも訓練をしていて忙しいんですのよ」

「密かに私を勘定から外さないでくれるかな」

 

一夏も立派な専用機持ちですよ?

 

「あっそ」

 

そっけなく答えると、鈴はいつの間にか食べ終えかけていたラーメンのスープを一気に飲み干して、トレーを持って立ち上がった。

 

「もう食べたから行くわ。これからよろしくね、佳織。後、一夏と本音も」

「「私達は!?」」

 

完全に存在無視だったな…。

 

二人のツッコみに反応せずに、鈴は食器を片づけて食堂を後にした。

 

「「佳織(さん)!!」」

「は…はいっ!?」

「彼女にだけは絶対に勝ってくださいね!」

「今日もガンガン訓練するぞ!いいな!?」

「りょ…了解……」

 

こ…この二人には逆らえない……!

今の箒とセシリアは、一度『やる』と言ったら絶対にやる『凄味』がある!!

 

「一夏ぁ~…本音ちゃ~ん…」

「大丈夫。私がちゃんと二人のブレーキになるから」

「がんばれ~、かおりん~」

 

うぅぅ~…一夏の言葉と本音ちゃんの応援が嬉しいよぉ~。

 

でも、クラス対抗戦と言えば……『アレ』が来るのかな…?

私的には、鈴との試合よりもそっちの方が心配だな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そんな馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?

まさか、食堂の話だけで一話潰れるだなんて!

こんなつもりじゃなかったのにぃぃぃぃぃぃ!!


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第13話 セクハラはやめましょう

来週が憂鬱です。

なんでかって?

忙しくなって、私の体力が更新を許してくれるか謎だからです。

本当に大丈夫かな…?






 放課後になって、本音ちゃんを除いた私達は揃って第3アリーナに行って、いつものように訓練をしようとするが、今日はいつもとは違った。

 

「そ…そんな馬鹿な…!」

 

そこまで驚くか?

 

因みに、本音ちゃんはなんでも生徒会室に用事があって、今日は不在になっている。

あの子って生徒会役員だったっけ。

普段の様子からは想像も出来ないけど。

 

「へぇ~。よく借りられたね」

「ダメ元で行ってみたら、私が来る少し前に急遽キャンセルが出たらしくてな、奇跡的に借りる事が出来た」

 

この会話からもう分かった方もいると思うが、今日は箒が学園に配備してある訓練機である日本製の量産型第二世代機である『打鉄』を装着して、この場にいるのだ。

確か、開発したのは倉持技研……だったよね?

私の記憶が正しければ、一夏の白式や、後に遭う可能性がある『4組の彼女』の専用機も、そこで製作された筈。

 

「そんなご都合主義があるなんて……!漫画やアニメじゃないんですから……」

「ふん。なんとでも言うがいい」

 

自慢げに胸を張る箒。

けどね、その瞬間に密かに、その高校一年生に不釣り合いな大きな胸が揺れたのを確認しましたよ。

え?お前も人の事は言えないって?

んな事は分かってる。

最近になって、またブラがキツくなってきたし。

 

「これで訓練にもより多くのバリエーションが生まれるだろう。早速始めよう」

「だね。あまり時間も無いし」

 

アリーナの使用時間は予め決められている。

私だけがアリーナを独占するわけにはいかないからね。

次に待っている人達の為にも、早く、そして効率よく訓練しないと。

アリーナが使えない時には、トレーニングルームを利用して体を少しでも鍛えればいいだけだし。

 

「まずは佳織と手合わせをしてみたい。いいか?」

「私は別に構わんよ」

 

はい。私は既にISを展開済みです。

初っ端からシャア様モードで登場です。

 

「ま…まぁ、いいでしょう。箒さんのお手並み拝見と参りますわ」

「佳織は強いよ~。油断しちゃ駄目だよ~」

「分かっている。今の私では佳織に勝つなど夢のまた夢と言う事はな。だが、だからこそ、今の私と佳織との間にある『差』をこの身で確かめたいんだ」

 

流石は箒…。

この身は向上心で出来ている…ってか?

 

「ふっ……いいだろう。ならば、こちらもその期待に応えられるよう、全力を尽くすとしよう」

「是非ともそうしてくれ」

 

微笑を浮かべながら、箒は打鉄の拡張領域にデフォルトで搭載されている近接戦闘用ブレード『葵』を展開し、両手で保持して構えた。

正眼の構え……だったよね?

 

それに応じるように、私の方はヒート・ホークを出して構える。

 

……この瞬間だけは、私は流れに身を任せようかな。

 

「では……いざ参る!!」

「見せて貰おうか……剣道全国大会優勝者の実力とやらを!!」

 

……なんか、この言葉が決め台詞みたいになってない?

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「もうそろそろ時間だな。今日はこの辺りにしておこう」

「「はぁ……はぁ……」」

 

夢中になっていると、時間が過ぎるのはあっという間で、いつの間にかアリーナの使用時間が終わる10分前になっていた。

 

で、箒とセシリアは息も絶え絶えと言った感じ。

 

箒との模擬戦は、特典のお蔭で私が圧勝。

もし特典が無かったら、よくて互角だっただろう。

その後、セシリアとも模擬戦をして、またまた私の勝利。

今度は一基もビットを破壊せずに、レーザーの包囲網を潜り抜けてながらの砲撃戦で勝ってみせた。

しれっと高機動戦闘が上手になっている自分に驚きを隠せなかった。

 

「ふむ……出来れば一夏とも手合わせをしてみたかったが……」

「時間が無いんじゃ、仕方が無いね。それはまた今度にしようよ」

「それしかないな。二人とも、立てるか?」

「大丈夫……ですわ……」

「わ…私もだ……」

 

明らかに強がってますね、はい。

 

「無理をするな。ほら、手を貸そう」

 

私は二人に手を貸してから起き上がらせた。

 

「す…すまない…」

「お手数をおかけしますわ…」

「気にするな。我々の仲ではないか」

「「佳織(さん)……♡」」

 

あ…あれ?顔が急に赤くなった。

思った以上に疲れていたのかな?

 

「ほら!早くピットに行こう!」

「一夏は何を怒っている?」

「別に怒ってない!」

「そうか…」

 

女心は複雑ですなぁ~。

って、今は私も女でした。

 

ISを展開解除して、地面に降り立つ。

 

「ふぅ~……」

 

疲れはしたけど、実に爽やかな気分だ。

こんな気持ちは久し振りだ。

でも、汗でベタついたから、後でシャワーを浴びないとな。

 

((え…エロい!))

 

なにやら邪な視線を感じた気がする。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 ピットに戻り、まずはタオルで汗を拭く。

こうしないと風邪を引くからね。

 

私の隣では箒とセシリアが同じようにタオルで汗を拭いている、

一夏は私の後ろにいる。

 

「まだまだ佳織さんには敵いませんわね…」

「全くだ。まさか、佳織の実力があれ程だとはな。幼馴染として誇らしくはあるが、同時に末恐ろしくもあるな」

「たはは……」

 

下手に何か言えば、また変な事を言われそうだから、ここは適当に笑っておこう。

 

「佳織って確実に強くなってるよね。今回はあのレーザーの包囲網を完全に潜り抜けてみせたし」

「あれは単純に目が慣れたからだよ」

「僅か数回で目が慣れるって…」

「その発言自体が凄いですわ……」

 

え?マジで?

 

「一夏。今日はどっちが先にシャワーを使う?」

「別にどっちでもいいよ。汗を掻いたのは一緒なんだし」

「では、後でじゃんけんでもして決めるか」

「そうだね」

 

結構適当だな~。

二人がそれでいいのなら、私は何も言わないけど。

 

「本音さんはもう戻っているのでしょうか?」

「どうだろう?用事が長引いているのなら、まだだろうけど……」

 

生徒会の用事と言うのがよく分からない。

普通に考えれば、書類仕事とかだろうけど……

 

(あの本音ちゃんが書類に向き合って仕事をしている姿を想像出来ない…)

 

書類を見た瞬間に眠りそうだ。

 

「佳織~!いる?」

 

私達が話していると、いきなりピットの扉が開いて、そこから意外なお客さんが登場。

 

「鈴?なんでここに?」

「差し入れをしに来たの。別に訓練を一緒にしたわけじゃないから、いいわよね?」

「へ…屁理屈ですわ……」

「屁理屈も理屈の内よ」

 

反論乙。

 

「ほらこれ。ドリンクはスポーツドリンクでいいでしょ?」

「ありがと」

 

鈴は、手に握られている籠からスポーツドリンクが入っている入れ物を取り出して渡してくれた。

 

汗を拭いた後は水分補給。これ大事ね。

体を動かした後はスポドリがお薦め。

適度に糖分と水分が補給出来るから。

因みにこれ、千冬さんから教えて貰った事だったりする。

 

「しかもこれ、ちゃんと適度な温度になっている」

「ふふ~ん!佳織の体の事を考えれば、これぐらいの気遣いは当然よ!」

「頭が上がらないなぁ~」

 

こう言う細かな気遣いが一番嬉しかったりするんだよねぇ~。

 

「ちゃんと人数分用意してきてるから。アンタ達も、ほら」

「す…すまんな…」

「ありがとうございますわ……」

「さんきゅ」

 

なんだかんだ言って、心の中じゃもう、箒とセシリアの事をちゃんと友達認定してるんだよね、鈴は。

 

「あれ?本音はどうしたの?」

「本音ちゃんなら生徒会室に行っている」

「生徒会室?もしかして本音って生徒会の役員だったりするわけ?」

「そうみたい。会計だって言ってたよ」

「「「「会計……」」」」

 

あ、今皆が何を考えているのか分かった。

 

「「「「いやいやいやいや」」」」

 

全員同時に首を横に振って否定したし。

 

「あんなのんびりとした子じゃ、いつまで経っても仕事が終わらないじゃない」

「「同感」」

「ですわ」

 

そこまで言うか……と言いたいけど、私も同感です。

ゴメンね、本音ちゃん。

 

「ねぇ、お昼に聞きそびれたんだけど、佳織のルームメイトって誰なの?ここにいる誰かだったりする?」

「私のルームメイトは本音ちゃんだよ。で、一夏と箒が一緒。セシリアは知らない」

「あの子が……」

 

おや、急に顎に手を当てってどうしたのかしらん?

 

(一夏か箒、もしくはセシリアが佳織のルームメイトなら、無理矢理にでも部屋を変わって貰おうと思ったけど、あの『のほほ~ん』とした本音と一緒だったなんてね…。あの子から無理矢理にでも部屋を代って貰ったりしたら、罪悪感で私の胃が大ダメージを受けそうだわ……)

 

一体何を考えているのやら。

 

「それならいいわ。変な事を聞いて悪かったわね」

「う…うん…」

 

なんだったんだろう?

本人がいいっていうのなら、別に追及はしないけど。

 

「アタシはそろそろ行くわね。その容器は別に返さなくてもいいから。それじゃ!」

「あ……」

 

行っちゃった……。

 

「いきなりやって来て、いきなり去って行ったな…」

「差し入れは素直に嬉しかったですが、なんだったのでしょうか…?」

「相変わらず、鈴は動き回るのが好きだよね~」

 

……深く考えても仕方ないか。

 

とっとと着替えて部屋に帰って、それからゆっくりとシャワーでも浴びようっと。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「てなわけで、遊びに来たわよ!佳織!」

「「わぉ」」

 

夕食後。

私と本音ちゃんが部屋でのんびりと過ごしていると、いきなり鈴がやって来た。

 

「入ってもいい?」

「う…うん。いいよ」

「ありがとね。じゃ、お邪魔しま~す」

 

あの時、考えていたのはこれだったのか?

遠慮無くベットに座ってるし…。

 

「思ったよりも小ざっぱりとしてるのね。もうちょっと荷物が多いと思ってたわ」

「私も本当はもうちょっと持って来たかったんだけど、最初は持って来れる荷物が限られてたから」

「私も~。だから、今度の休みの日にでも家に一回帰ってから、色々と持ってこようって思ってるんだぁ~」

「成る程ね」

 

今部屋にある私の私物は、自分の私服や教科書を初めとした勉強道具の他にはパソコンしかない。

連休になったら、実家から色々と持って来ないとな。

主にゲームとか漫画とかラノベとか。

 

「鈴はどうなの?何か持って来たの?」

「別に。最低限の荷物しか持ってきてないわ」

「それで大丈夫なの?」

「平気よ。必要な物があったら、こっちで買えば済む話だから」

 

昔から鈴はこうだ。

無駄な荷物を持つ事を極端に嫌う。

常に軽装備を好む傾向にある。

 

「それよりも気になる事があるんだけど……いい?」

「え?あぁ……いいけど」

 

気になる事ってなんじゃろほい。

 

「佳織……」

「な…なんですか?」

 

真正面から見つめられて、妙な緊張感が……。

 

「アンタ……アタシが中国に戻ってから、胸が大きくなった?」

「は…はいぃっ!?」

 

いきなり何を言い出すんだ!?

 

「ほほ~ぅ?それは私も聞きたいなぁ~?」

「本音ちゃんまで……」

 

いくらTSしてても、恥ずかしいものは恥ずかしいんだよぉ~!

 

「ほらほら、ちゃっちゃと白状しちゃいなさい」

「かおりんのお母さんが泣いてるよ~」

 

別に泣いてないよ!

私は人質をとって立て籠もった犯罪者か!

 

「………分かったよ。でも、あまり大声で言いたくないから、二人とも耳を貸して」

「はいはい。別にここにはアタシ達しかいないんだから、気にしなくてもいいのに」

「部屋の外で聞かれてるかもしれないじゃん」

「初心だね~」

 

……本音ちゃんがそれを言うの?

 

「それじゃあ……言うよ?」

「「うん」」

「えっと………………だよ」

 

羞恥心を抱えながら、私は二人に向かってそっと呟いた。

 

「えぇっ!?」

「へぇ~」

 

はぁ~……これが本当の女子トークなのか…。

女の子って世の男子が思っている以上にアグレッシブなんだな~。

 

「まさか……あれから3センチもアップしてるなんて……。アタシなんて全然……」

「成長期だねぇ~」

「それはここにいる全員が該当するでしょ」

 

私達全員が同い歳なんだから。

 

「この胸か!?この胸なのか~!?」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

い…いきなり鈴が胸を揉んできたぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 

「うぐぐ……確かに大きくなってる…!気のせいか、肌触りも良くなってる気が…」

「服越しに分かるの!?」

 

なにそれ怖っ!?

 

「私もかおりんのおっぱい触る~♡」

「本音ちゃんまでっ!?」

 

っていうか、君は前に触ったでしょうが!

覚えてないかもしれないけど!

 

「もみもみもみ~♡」

「ビニャァァァァァァァァァ♡♡」

 

もうやめてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?

 

私が二人から解放されたのは、それから一時間後だった。

 

うぅ……本当に大変だった…。

鈴ってば、一体何処であんなテクを……。

 

 

 

次の日、校舎内に設置してある掲示板に、クラス対抗戦のトーナメント表が設置された。

 

一年生の部の一回戦第一試合は一組と二組。

つまり……私と鈴の試合だった。

 

ここだけは原作と変わらなかったか……。

じゃあ、『アレ』も乱入してくるんだろうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




              ~その日の生徒会室~


「でね、その時かおりんがね~♡」
「ねぇ……虚ちゃん…」
「なんですか……お嬢様……」
「私達は一体いつまで、本音ちゃんの惚気話を聞かされ続ければいいのかしら…?」
「それはこっちが聞きたいですよ…」
「今は紅茶よりもコーヒーが飲みたいわ…。それもとびっきりに濃いのを…」
「私もです。ご用意しましょうか?」
「お願いするわ…」
「もう~!二人とも聞いてるの~?」
「「ちゃんと聞いてますよ~」」
「前に一回、偶然にかおりんの寝顔を見た事があるんだけど、それがすっごく可愛くて~♡」
(本音ちゃんがここまでベタ惚れする佳織ちゃん。私も一回接触してみた方がいいかしら…?) 


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第14話 水色の姉妹

今回はオリジナル回。

少し早く『あの姉妹』を出そうと思います。







 五月。

鈴が転校してきて数週間が経過して、来週にはクラス対抗戦が始まる。

 

今日も今日とて私は皆と一緒に訓練をしよう……と思っていたが……

 

「すまない。今日は剣道部に顔を出そうと思ってるんだ」

「私も一緒に行って、ちょっと見学をしようかな~って。本当にゴメンね!」

 

箒は少し前に入部した剣道部に行って、一夏はそれに付き添って見学に。

 

「先程本国から連絡があって、今日はレポートを作成しなくてはいけないんです。この時期にこんな事になってしまい、本当にすいません…」

 

セシリアは代表候補生としての仕事。

国家に所属している人間は大変だ。

 

このように、今日に限って皆はそれぞれに用事が出来てしまった。

それならば一人で訓練しようかなって思ったけど、アリーナは全部が使用されていて使用不可能。

じゃあ、トレーニングルームにでも行って体を動かそうと思ったら、そこには見知らぬ先輩が沢山。

そんな中に堂々と入っていける程、私はコミュ力高くない。

 

だからと言って何もしないわけにはいかないし、私自身が時間を無駄にしたくないと思った。

今日はどうしようかと考えていると、なんと本音ちゃんから提案が出て来た。

 

「それじゃあ、今日はISの整備でもしたらいいんじゃないかな~?」

「それだ!」

 

そう言えば、私はラファールⅡを受領してから、まだ碌に整備もしていない。

いい機会だから、ちゃんと整備してクラス対抗戦に備えるのも大事だと判断した私であった。

それに……

 

(これから先もISの整備をする事はあるだろうから、ちゃんとやり方を学んでおくのも大切だよね)

 

確か、整備マニュアルが入った端末を前に貰ったっけ。

軽く見たけど、複雑すぎてすぐに端末を置いちゃった。

 

そんな訳で、私は今、本音ちゃんと一緒に整備室に向かっている。

 

「でも、私に出来るかな?」

「だいじょう~ぶ。私もついてるから~」

「え?」

 

ど…どゆこと?

 

「私ね~、実は整備班なんだよ~」

「せ…整備班?」

 

な…なんですと?

 

「整備班って……整備をする人の事……だよね?」

「それ以外にあるの?」

「いや……ないけど」

 

あ…あれ?原作でも本音ちゃんって整備士だったっけ?

よく思い出せない……。

 

「む~…かおりんってば疑ってるな~?」

「そ…そんな事は無いですよ?」

「目が泳いでるよ~」

 

ごめんなさい。

 

「じゃあ、かおりんの目で直接確かめればいいよ~」

「う…うん」

 

本音ちゃんに背中を押されながら整備室に足を進める。

せ…背中に本音ちゃんの密かに大きな胸ががががががが~!

 

余談だが、鈴も今日は忙しいようで、昼食時以外には姿を見かけなかった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 自動式の重厚なドアが開き、整備室に足を踏み入れる。

 

「おぉ~…」

 

ここが整備室か~…。

色んなロボットアニメに出てくるような、絵に描いたような場所だ。

なんか……『これぞ整備室!』って感じ。

 

機体を固定するハンガーが幾つもあって、そこには訓練機であるラファールや打鉄が幾つも並んでいて、それ以外にも空いているハンガーがある。

あそこはきっと、私を初めとした専用機を固定して整備するために設けられた場所なんだろう。

 

壁側にある棚には色んな整備の為の道具が置いてあって、名前は分からないけど、うかつに使えないような雰囲気を漂わせている。

 

「本音ちゃんはここにはいつも来るの?」

「いつもって訳じゃないかな~。でも、入学してからはアリーナ以上に来る事が多かったかな?」

「わぉ……」

 

本音ちゃんがここの常連……。

今日から彼女を見る目が変わるかも…。

 

「それじゃ、早速かおりんのISを整備しよっか?」

「わ…わかったよ」

 

『はじめてのおつかい』ならぬ『はじめてのせいび』だな。

すっごく緊張する……。

 

取り敢えず、適当に空いているハンガーに行って、そこにある機器にラファールⅡの待機形態であるペンダントをセットする。

 

「あれ~?」

「どうしたの?」

「隣……」

 

隣とな?

よく見てなかったけど、誰か先に来てたのかな?

 

「誰かいるの?」

「うん」

 

誰ざんしょ?

ちょこっとだけ見てみよう。

 

「「そ~っと」」

 

隣にいたのは、どこかで見た事のあるような水色の髪の女の子だった。

 

「かんちゃん?」

 

あれ?本音ちゃんが『かんちゃん』と呼ぶ人間と言えば……

 

「ほ…本音?」

 

あ、こっち向いた。

 

「あっ!?」

 

え…えぇ?私を見た途端に驚いた?

 

「あ…あ…あ…あ……」

「「あ?」」

 

凄く目を見開いてこっちを見てる。

例えて言うなら、街中で大好きな芸能人を見たファンの女の子のような反応。

 

「赤い彗星の仲森さん!?」

「またそれか……」

 

もういいや……好きなだけ言ってくれ。

 

「ど…どうしてここに!?」

「かおりんはISの整備に来たんだよ~」

「せ…整備に?」

 

顔を真っ赤にして体を震わせて、もう彼女の目線が別の意味で痛い…。

 

このままでいるのはちょっと失礼だと思って、ちゃんと彼女の前に出る。

 

「えっと……本音ちゃん、この子は……」

 

一応知ってるけど、ちゃんと聞いておいた方がいいだろう。

これからの為にも。

 

「えっとね~、この子は~「さ…更識簪って言います!」…だよ~…」

 

被せるように言ってきたし…。

こんなにこの子って自己主張が激しい女の子だったか?

 

まさか、この時期に彼女と会うなんてね…。

原作には無い行動をとっている時点で、ある程度のイレギュラーは覚悟していたけど、まさか、後になって登場する筈の更識簪と会うとは思わなかった。

でも、こんな所にいるって事は、まさか専用機は……

 

「え…えっと……更識さん「簪って呼んでください!」あ……うん。簪さん「呼び捨てでいいです!!」……簪はここで何をしていたの?」

 

原作通りなら、名字で呼んで欲しくないのは彼女の姉である更識楯無の妹として見てほしくないからって予想出来るけど、この目は……

 

「機体の整備をしてました…。(キラキラキラキラ…)」

 

この、まるで特撮番組のヒーローを見るような純粋無垢な子供のような目からは、全くそんな感じがしない。

 

「ねぇ…本音ちゃん。この子は一体どうしたの?」

「かんちゃんはね~、あのせしりんとの試合があってからずっと、かおりんのファンなんだよ~」

「ちょっと本音!それは言わないでって言ってるでしょ!」

「え~?」

 

ファ…ファン?

誰の?私の?

 

この現実から目を逸らそうと思い、ふとハンガーの方に目を向けると、そこには薄い水色のISが鎮座していた。

 

「このISは……」

「わ…私の専用機の『打鉄弐式』…です……」

「かんちゃんはね~、日本の代表候補生なんだよ~」

 

うん、それは知ってます。

 

「か…完成してるん……だよね?」

「…?はい、そうですけど……」

 

やっぱりそうかぁ~!

なんとなくだけど、そんな気がしてたんだよな~!

 

「えっと……他のISに開発スタッフが取られて機体の完成が凍結されかけたって事は?」

「ないですけど……」

 

あれぇ~?

もしかして、白式と打鉄弐式はほぼ同時期に開発されて、そして完成したって事?

そんなにうまく行くもんなの?

 

「この打鉄弐式はね、倉持技研が開発した打鉄の正当後継機で発展機でもあるんだよ~」

「正当後継機って事は……」

「うん。かおりんの『ラファール・リヴァイヴⅡ』と同じだね」

 

私のラファールⅡも、ここに配備していあるラファールの後継機だからね。

 

「二人は同じだね~」

「お…同じ!?」

 

簪の顔が一気に真っ赤に。

同時に顔を伏せてしまった。

 

「ど…どうしたの?」

「恥ずかしいんじゃないかな~?」

 

私見て恥ずかしいって思われてもな……少し複雑。

 

「あ…あの…その……えっと……」

 

モジモジしてどうしたのよ?

 

「サ…サインください!!」

「ふぇっ!?」

 

サ…サインだって!?

 

今度は私が驚いていると、簪はどこからか色紙を取り出してから、こっちに差し出してきた。律儀にペンまでついている。

 

「急に言われても……」

「駄目……ですか……?」

 

そんなウルウルとした目で見ないで~!

罪悪感でどうにかなっちゃうから~!

 

「してあげれば~?」

「で…でも、私サインなんてしたことないし……」

 

しかし、ここで下手に断れば、連鎖的にあのシスコンの生徒会長を敵に回す事になる!

それだけは絶対に避けなくては!!

 

「変になると思うけど……いい?」

「はい!」

 

そんなハッキリと言わなくても…。

 

「じゃ…じゃあ……佳織いきます」

 

震える手で色紙とペンを受け取りキャップを取る。

 

(お…思い出せ…!家には確か、昔貰った某有名漫画家のサイン色紙があった筈!それを参考にすればなんとか…!)

 

「え…ええい!ままよ!」

 

私はそれっぽいやつを適当に書き殴った。

ついでに端っこの方にジオン公国のマークを書いておいた。

 

「これでいいかな…?」

 

……泣いたらどうしよう。

 

「あ……あ……あ……」

 

こ…今度はどうした?

 

「ありがとうございます!!一生の宝物にします!!」

「そこまで大切にしなくてもいいよ?」

 

私みたいな素人の小娘のサインなんて、一銭の価値も無いでしょ。

速攻で押し入れに放り込んでほしい。

 

「よかったね~、かんちゃん」

「うん……うん……♡」

 

泣く程の事か?って、結局は泣くんかい。

見られてないだろうな?

 

「ねぇ……整備は?」

「「あ」」

 

忘れてたんかい。

 

「時間も限られてるし、早くやろうか?」

「そうだね~」

「お…お詫びにお手伝いします!仲森さん!」

「助かるよ。それと、私の事は佳織でいいよ」

「そ…そんな恐れ多い!」

 

私はどこのお偉いさんだ?

特典の元になったキャラは最終的に総帥まで上り詰めるけどさ。

 

その後、整備マニュアルと睨めっこをしながら、なんとか頑張った。

その最中に本音ちゃんや簪がアドバイスを何回もしてくれて、本当に助かった。

簪はともかくとして、本音ちゃんの秘められた才能の一片を垣間見た気がする。

 

整備の最中、簪ってばずっとこっちを見てなかったか…?

すっごく熱い視線を感じたんだけど…。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 四苦八苦しながらの整備はなんとか終わり、私は廊下にてトイレに行った本音ちゃんを待っている。

因みに簪は、まだもうちょっとだけ整備をしておきたいらしく、整備室に残った。

 

「ん?」

 

なんか……どこからか視線を感じたような気が……。

 

「気のせいか?」

 

色々と注目されるようになってから、少し視線に敏感になりすぎているのかも。

こんなんじゃ、まともな生活は送れない。

もうちょっと余裕のある心を持たないと。

 

「あら?気が付かれちゃったかしら?」

「え?」

 

この声は……。

 

「はぁ~い♡」

 

物陰から出て来たのは、簪によく似た二年生で、その手には機械的な扇子を持っていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 密かに噂に聞く仲森佳織ちゃんを付けていたら、なんと気が付かれてしまった。

これでも尾行にはそれなりに自信があったんだけど、まさかバレるなんてね…。

ちょっと侮っていたわ…。

 

「ふぅ~ん……」

「な…なんですか?」

 

少し近づいて観察してみる。

こうして見てみると、確かに美少女ではあるわね。

 

「えっと……貴女は……」

「あら失礼。自己紹介がまだだったわね」

 

適当に咳払いしながら離れて、彼女と向き合う。

 

「私は更識楯無。このIS学園の生徒会長をしているの」

「知ってます」

「え?」

 

な…なんで?私と彼女って会うのは初めてよね?

 

「だって、入学式の時に壇上に上がって挨拶してるのを見ましたし」

「うっ!」

 

そうだった…!

 

「あと、入学の時に貰ったパンフレットにも写真が載ってましたよ」

「そうだった……!」

 

それもあった……!

 

「ついでに言うと、貴女ってロシアの国家代表でもありますよね?」

「そこまで知って!?」

「いや…IS学園のウェブサイトに軽いプロフィールが載ってましたよ?」

「……………」

 

は…は…は…は…恥ずかしぃ~!!!

完全に忘れてたぁ~!!!

 

「よ…よく見ていたわね!合格よ!」

「はい?」

「よく入学した事に浮かれて、パンフレットとかを見てない生徒が多いから、佳織ちゃんをテストしたのよ!おほほほ……」

 

ご…誤魔化せた…わよね?

 

「なんで私の名前を?」

「あぁ…それ。貴女って今や、学園中の有名人よ?一年生はいざ知らず、二年生や三年生にも知れ渡ってるのよ?」

「う…うへぇ~…」

 

あ、心底嫌そうな顔。

気持ちはよ~く分かるけど。

私も自由国籍でロシア代表になった時は同じ感じだったし。

 

見てる感じでは至って普通の女の子ね。

本当にこの子が、あの超人的な動きをしたのかしら?

今でも信じられないわ…。

 

「ところで……」

「はい?」

「貴女……さっき整備室にいたわよね?」

「はい……」

「そこで、私の妹の簪ちゃんと会ってたわね?」

「い…妹……見てたんですか?」

「ばっちりと」

 

この私が簪ちゃんを見逃すわけないじゃない。

って、今はそれはいいのよ。

 

「簪ちゃん……泣いてたわね?なんで?」

「それは……」

 

いかにこの子が人気者でも、私の大事な妹である簪ちゃんを泣かせたとあっては許せない。

さぁ、理由を聞かせて貰おうかしら?

 

「お待たせ~かおりん~。あれ?かいちょ~?」

「「本音ちゃん」」

 

このタイミングで本音ちゃんの登場か…。

さて、どうなるかしら?」

 

「どうしたの?」

「いや、さっきの整備室の事でちょっとね……」

「あぁ~!かんちゃん、かおりんのサインを貰って感動で泣いてたね~」

「サ…サイン?」

 

え…?どういう事?

あの時、私からはよく見えなかったけど、そんな事をしていたの?

声から簪ちゃんが泣いていると判断したんだけど、あれは感動の涙だったの?

 

「なんで言っちゃうかな~…」

「え?言っちゃ駄目だったの?」

「別にそんな訳じゃ……」

 

ここは空気を呼んで、適当な言い訳をする場面だったわよ、本音ちゃん。

ここだけは佳織ちゃんに同情するわ…。

 

「ご…ごめんなさいね?なんか誤解してたみたいで…」

「別に気にしないでください。姉として実の妹を心配するのは当然ですし、私も怒ったりとかしてませんから」

「佳織ちゃん……」

 

何この子……いい子過ぎる!

どうして佳織ちゃんが皆に慕われているのか、分かった気がするわ。

これはクラス代表に推薦されるのも分かる。

こっちが仕入れた情報だと、中学時代も学級委員をしながら生徒会役員もしていたらしいし。

私には無い、独特のリーダーシップがあるんでしょうね。

 

「ん~……決めた!」

「何が?」

「佳織ちゃん。お詫びに今度、生徒会室に招待するわ!」

「え……?いいんですか?」

「いいのいいの!私が生徒会長なんだから!」

 

職権乱用って言われればそれまでだけどね。

でも気にしないわ!

だって私、佳織ちゃんに興味が出てきちゃったし!

 

「え?かおりん生徒会室に来るの?」

「そうよ!本音ちゃん!」

「やった~♡」

 

ふふ……これで本音ちゃんもこっち側ね!

 

「えっと……クラス対抗戦が終わってからでいいですか?」

「勿論。今は貴女も忙しいでしょうし」

 

ふふ……暇があれば佳織ちゃんの試合を見に行こうかしら?

赤い彗星の公式戦デビュー、今から楽しみだわ!

 

「それじゃ、今日はここで失礼するわね」

「あ…はい。お疲れ様でした…」

「それじゃあ、かいちょ~。またね~」

 

二人に別れを告げながら、私はその場を後にした。

 

私としたことが、少しテンションが上がってる?

こんな気分になるなんて、もしかしたら生まれて初めてかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まずは軽くフラグを。

簪はまだ憧れ、楯無は興味の対象でしかありません。
ここから佳織に対する姉妹の想いがどう変化するのか?
それはこれから次第ですね。


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第15話 龍VS彗星

原作第一巻の佳境に突入です。

先の事を少なからず知っている佳織は、果たしてどうするのでしょうか?






 やってきました、クラス対抗戦当日。

私こと仲森佳織は現在、IS学園第二アリーナのピットにて待機をしています。

周りにはいつものように、一夏と箒とセシリアと本音ちゃん、そして、担任として来たのか、千冬さんと山田先生も一緒だ。

 

「さて、準備はいいか?」

「はい。問題ありません」

 

ISスーツを着て、臨戦態勢はばっちりです。

 

「凰は強敵かもしれんが、お前なら必ず勝てる。頑張れよ」

「はい!」

 

担任にそう言われちゃ、頑張らないわけにはいかないよねぇ~。

 

皆から少し離れてISを展開。

毎度のように私の意識がクリアになり、シャア様モードに変身。

そのままカタパルトに向かって歩いて行き、脚部を固定。

 

「では、行ってくる」

「気を付けてね!」

「かおりん、ガンバ!」

「佳織なら大丈夫だ!気楽にな!」

「いつもと同じようにやればいいだけですわ!平常心をお忘れなく!」

 

皆からそれぞれに激励の言葉を貰った。

お蔭で増々やる気に火がついちゃったよ。

 

私は無言で頷いた。

 

「発進タイミングは仲森さんに譲渡します!いつでもどうぞ!」

「了解した」

 

腰を低くして、頭の中でカタパルトデッキからモビルスーツが発進する様子をイメージする。

 

「仲森佳織!ラファール・リヴァイヴⅡ!出るぞ!!」

 

私はいざ、幼馴染が待っている戦場へと飛び立った。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 ステージに出ると、そこには既に鈴がISを纏って待機していた。

機体のモニターに相手のISの情報が表示される。

 

(近・中距離両用型の第三世代型IS『甲龍(シェンロン)』…か。やっぱり、独特のネーミングセンスだよなぁ~…)

 

見た目もそうだが、名前からインパクト重視にしているのか?

でも、これって初見で正確に読める人…いないでしょ。

 

「待ってたわよ、佳織」

「それは済まない事をした」

「……成る程ね。実際に見るまでは信じられなかったけど、確かに別人みたいだわ…」

「何がかね?」

「アンタの全てよ」

 

多分、学園中に流れている噂を聞いたんだろうな…。

どんな内容か気になるけど。

 

「ISに乗ると、まるで別の人間になったかのような口調と実力を発揮するって。セシリアにもそんな感じで勝ったのかしら?」

「さぁな?」

 

うわぁ~…すっげー挑発してるし~。

 

「本当に佳織?マジで疑うレベルで変化してるんだけど…」

「口調がどうあれ、私が仲森佳織であると言う事実に変わりは無いよ」

「……それもそうね。変な事を言って悪かったわね」

「気にしてないさ」

 

鈴のサッパリとした性格は、こんな時には本当に助かる。

変に追及されたら、こっちが困るからね。

 

「にしても……」

「どうした?」

 

急にこっちの事をジロジロと見だして。

 

「私の『甲龍』の『紅』とは全く違う、綺麗なまでの『赤』…。ISスーツまで真っ赤だなんて、それが佳織が『赤い彗星』って呼ばれている所以かしら?」

「恐らくな。私自身は何とも思っていないのだが」

「それが普通よ」

 

鈴と試合前の会話をしながら、ふと観客席に目線を映すと、アリーナの全ての席が生徒を初めとした観客で埋め尽くされていた。

多分、転入したての中国の代表候補生である鈴の実力を見ようと思っているのと同時に、私の噂を聞きつけてやって来た連中も多分に含まれているんだろう。

なんつーか、嫌になるね。

 

『それでは両選手、既定の位置まで移動をしてください』

 

アナウンスに従って、私達二人はゆっくりと近づいて向かい合う。

まだ、私達の手には何も装備されていない。

 

「一応、本国からも佳織の実力を測って来いって言われてるんだけど、それとは関係無しに佳織との戦いが楽しみな自分がいるわ」

「仮にも代表候補生がそんな事を言っていいのか?」

「いいのよ。私って無駄に偉そうにふんぞり返っている大人が大嫌いだから」

「……変わらないな、お前は」

「アンタの方はビックリする位に変わったけどね。少し見ないうちにカッコよくなり過ぎよ」

 

こんな風に話しているが、互いに緊張は隠しきれない。

私達の空気に当てられたのか、いつの間にかアリーナ全体も静かになっていた。

 

『それでは…………試合開始!!!』

 

ブザーと同時に、鈴はその両手に大きい青龍刀(名前は【双天牙月】と言うみたい】)を二本展開、装備して突っ込んできた!

 

「甘い!」

 

まずはヒート・ホークを右手に展開し、それで鈴の一撃を防ぐ。

だが、私のヒート・ホークはひとつだけ。もう片方の攻撃には対処できない。

 

「左側ががら空きよ!」

「だろうな」

 

そんな事は想定済みだ。

左手にはIS用マシンガンを展開。

 

「しまっ…!」

「この距離ならば外すまい!」

 

迷わずトリガーを引く。

鈴は咄嗟に離脱するが、完全回避は出来なかったようで、何発かは食らっていた。

 

「や…やるじゃない…!まさか、こっちの初手が読まれていたなんて…」

「戦いとは常に二手、三手先を読んで行うものだ。様々な状況を想定してイメージトレーニングをしてきたからな。この程度は造作も無い」

「成る程ね…!」

 

早くも汗を掻きながら、鈴は二本の双天牙月を連結させた。

 

「合体しただと?」

「これは元々こういう武器なのよ。それじゃあ……」

 

頭上で勢いよく回し、遠心力を付加して威力を上げようとしてるのか?

 

「こっちも様子見は終わろうかしらね!!」

 

連結した双天牙月を振り回しながら、再び突貫してきた!

 

「二度も同じ手が通用するとは思わんことだ!」

「分かってるわよ!」

 

ヒート・ホークを収納し、マシンガンを両手で保持する。

 

鈴の斬撃を紙一重で回避するが、耳元でブォン!って音が聞こえた。

下手なジェットコースターよりもずっと怖ぇ~!!

 

回避と同時に鈴に向かって反撃。

 

「甘いわよ!」

「ちぃ!」

 

だが、鈴はまるでバトンのように眼前に振り回して、こっちの銃撃を全て弾いた。

 

「それだけじゃないわよ!」

「来るか!」

 

向こうの肩アーマーがスライドし、中にある球体が光る。

間違いない……『アレ』が放たれる!!

 

「やらせるか!!」

 

完全にズルだけど、原作知識から『アレ』の発射タイミングは予め分かっている。

だから、後はタイミングよく体を捻れば……!

 

「う…嘘でしょ!?なんで!?」

 

回避に成功した私の後ろの地面が大きく爆発し、まるで何かに当たったかのような小さなクレーターが出来上がっていた。

 

「情報収集は大事だからな。そして!」

「やば…!」

 

瞬時にマシンガンを収納し、バズーカを取り出す。

そして、すぐにロックオン。

 

「くらえ!!」

 

だが、鈴も黙って棒立ちはしない。

攻撃直後の硬直が僅かにあるとはいえ、決して動けないわけじゃない。

鈴は咄嗟に手に持った双天牙月を盾代わりにしてガード。

だが、バズーカの威力に踏ん張りきれなかったのか、そのまま吹っ飛んだ。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

こ…これってダメージ入ったのかな…?

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「な…何が起こったの…?」

 

ピット内で試合の光景をモニターで見ていた私達は、驚くを隠せなかった。

だって、いきなり佳織の背後にある地面が吹き飛んだんだよ!?

 

「あれが噂に聞く『衝撃砲』ですわね…」

「「「衝撃砲?」」」

 

セシリアが答えてくれたけど、聞いた事ない武器だ。

 

「ええ。あれは空間自体に圧力をかけ砲身を生成し、その余剰で生じる衝撃そのものを砲弾にして撃ち出す、謂わば『見えない弾丸』ですわ」

「み…見えないだと!?」

「で…でも、かおりんは回避したよね…?」

「それが一番の驚きですわ…。あれは砲身も砲弾も完全な不可視。しかも、斜角に制限が無いに等しく、その気になれば360度の全てに攻撃が可能な代物。それを初見で回避して見せるなんて……」

 

見えない攻撃を初めて見て回避って……凄すぎるよ…佳織……。

 

「抜け目のないアイツの事だ。予め情報収集をしていたんだろうさ」

「姉さ…織斑先生……」

 

危な~!思わず姉さんって言いそうになっちゃった。

でも、気付かれてなかったみたい。

だって姉さんの顔、すっごくニヤけてるもん。

 

「攻撃の瞬間さえ分かっていれば、いかに初見と言えども回避は可能だ。…相当にタイミングはシビアだがな」

 

姉さんがここまで言う事を、ああもあっさりこなしちゃうなんて…。

やっぱり佳織って凄い!

 

その後も、モニターの向こう側では佳織と鈴が互角に等しい試合を展開している。

 

「鈴も凄いな……」

「悔しいですけど、鈴さんの実力も相当ですわね。あの佳織さんの攻撃を何回も防いでいる……」

「だが、決して互角ではないな」

「「「え?」」」

 

モニターを見ながら姉さんが呟いた。

 

「よく見てみろ。佳織の方はまだ表情に余裕が見えるが、凰の方は……」

「あ……」

 

佳織以上に汗を掻いて、心なしか疲れているようにも見える。

 

「アイツの切り札とも言うべき衝撃砲が回避された以上、凰に残された手段は近接戦のみ。だが、それが完全に分かりきっている佳織が、そう簡単に懐に潜り込ませると思うか?」

「確かに……」

 

さっきから佳織はマシンガンを使って牽制をしながら、隙を見て着実にバズーカでダメージを与えている。

鈴は佳織の弾幕に押されて、思うように動けないでいるようだ。

 

「同じように試合をしていても、近接戦と射撃戦とでは明らかに体力の消費量は異なる。なんせ、射撃を撃っている方は銃の反動などを押え狙いを定める事に集中し、いざという時に備えていつでも回避出来るようにしておけばいい。だが、近接戦ともなればそうはいかなくなる」

「そっか……。相手の懐に飛び込むって事は、それだけ多く動かなければいけない。それに、近づくと言う事は同時に相手からの反撃も考えないといけなくなる」

「そのプレッシャーがより多くの体力を消耗させるのか…」

 

だから、佳織よりも鈴の方が疲労が蓄積しているように見えるのか…。

 

「衝撃砲の威力が最大限に発揮されるのは、初見の相手に対する奇襲だ。多少、攻撃力は低いが、それでも何も知らない相手からすれば、見えない攻撃をいきなり喰らうのは驚きしかない。物理的ダメージと精神的動揺を誘発できる見事な武装ではあるが、あれは同時に諸刃の剣でもある」

「と言うと…?」

「今の佳織やオルコットのように、相手に情報が知られてしまえば攻略が想像以上に容易になってしまうと言う点だ」

「攻略…?」

「そうだ。恐らく佳織の奴も、衝撃砲の最大にして唯一の弱点に気が付いている筈だ」

「弱点って……」

 

そんなのあるの?

 

「いつもならば自分達で考えろと言うところだが、今日は特別にヒントをくれてやろう」

「なんですの?そのヒントとは……」

「衝撃砲攻略のキーワードは…『色』だ」

「「「色?」」」

 

もう、完全に織斑先生のIS講座になってる気がする…。

 

「ああ。見えないのであれば、見えるようにすればいい…と言う事さ」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「あ…当たらない…!」

 

さっきから、ほんの僅かな隙を狙って衝撃砲【龍砲】を放っているが、一向に命中する気配が無い。

最初の一撃は何とか回避って感じだったのに、二発目からはひらひらと回避するようになった。

まるで、こっちの動きを先読みしてるように感じる。

 

かといって、下手に双天牙月で斬りかかれば、速攻でマシンガンの餌食になるし…。

 

もう~!幾らなんでも隙無さすぎ!!

ある意味、龍砲以上に死角が無いじゃない!!

 

私だって、伊達に代表候補生をやってるわけじゃない。

だから、ある程度戦えば相手の技量ぐらいは把握できる。

 

佳織は強い。多分、今まで私が戦ってきたどんな相手よりも。

 

少なくとも、同じ中国の代表候補生達にこれ程の実力者は一人もいない。

 

その場その場に応じた適切な判断と武器選択。

そして、それを十全に使いこなす優れた技量。

成る程、この子が『赤い彗星』なんて呼ばれるのも頷けるわ。

だって、今目の前で佳織は赤い軌跡を描きながら飛びまわっているのだから。

一つ一つの行動が全て計算されているかのような動きに、観客は魅了されている。

 

「どうした?動きが鈍くなっているぞ」

「な…なんでもないわよ!」

 

悔しいけど、かなり疲れてるのよね…。

ぶっちゃけ、喉カラカラよ。

 

「では、そろそろ自慢の衝撃砲を封印してしまうか」

「なんですって!?」

 

ま…まさか、佳織は衝撃砲の弱点を知って……?

 

「そこ!」

「ちっ!」

 

少し斜め上にいる佳織が、こっちに向かってマシンガンを撃つ。

必死に動いて何とか回避するけど、それが不味かった。

 

外れたマシンガンの弾は地面を抉り、そのまま土煙を生み出した。

 

「しまった!!」

 

私の周囲が完全に土煙で覆われてしまった。

これじゃあ、迂闊に衝撃砲が使えない!

 

衝撃砲は空間を圧縮して撃つ武装。

故に透明なんだけど、地球上で使用する以上は圧縮される空間には必ず空気が含まれる。

空気はその気になれば幾らでも色を付ける事が可能。

だから、煙幕弾などを使って何らかの煙を発生させてしまえば、本来は無色透明である衝撃砲に『色』を付けられる。

こうなってしまったら、もう衝撃砲は単なる威力の高い空気砲と大差なくなる。

回避は今まで以上に容易になってしまう。

 

「ここまでやるなんて……。別に見縊っていたわけじゃないけど、完全に予想外だったわ……」

 

心のどこかで、私は昔の佳織のイメージを払拭出来ていなかったんだろう。

けど、こうしてISを纏って試合に出ているって事は、佳織もそれ相応の実力と自信を身に付けて来たって事なのよね。

 

(私の中にある昔の佳織のイメージは完全に忘れるべきね…)

 

この一年で私も佳織も色んな意味で成長した。

たった一年と言ってしまえばそれまでだけど、私にとってのこの一年は凄く長く感じた。

だからこそ、私は……。

 

「ふぅ~……」

 

神経を研ぎ済ませ……精神を集中させろ……。

 

甲龍の残りSEは僅か84。

あと2~3回ぐらい直撃を受ければ終わりだ。

次の一撃だけは何としても防ぐか避けるかしないと…!

 

「………………」

 

どこ…?どこから来るの……?

 

ハイパーセンサーをフルに使って、全ての方位を警戒する。

すると、視界の端に何か光るものが見えた。

 

「そこだぁぁぁぁぁ!!!」

 

迷う事無く、その光った方向に向かって双天牙月を振るう!

すると、確実に何かを斬ったような手応えがあった。

 

「これは……!」

 

私が斬ったのは、かなり大きな弾丸だった。

けど、これはバズーカの弾じゃない。

 

「なんだと!?」

 

刃を振った勢いで煙が晴れて私の視界に映ったのは、かなり大きなスナイパーライフルのような銃を構えた佳織だった。

さっきの弾丸はあれから発射されたのね…。

 

「よもや、あの視界の中で対艦ライフルの弾を切り裂くとは…。やるな!鈴!」

「当然じゃない!代表候補生は伊達じゃないのよ!」

「ふふ……それでこそ私の幼馴染だ!!」

 

驚いた顔から一変、嬉しそうな笑顔に変わった佳織。

あぁ~…これは間違いなく『戦士』の顔だわ。

 

「この流れに乗って逆転してあげるんだから!行くわよ佳織!!」

「いいだろう……来い!!」

 

私達が再び激突しようとした……その時だった。

 

「「!?」」

 

突如として、アリーナ全体に大きな衝撃が走った。

思わず私も佳織も動きを止めてしまった。

 

「これは……」

「なんなの……?」

 

よく見ると、ステージの中央付近から煙が上がっている。

その上を見てみると、いつもならアリーナ全体を覆い尽くしている筈の遮断シールドに大きな穴が開いている。

 

「どうやら、さっきの衝撃はあそこからやって来たもののようだな…」

「そうみたいね…」

 

私だって代表候補生として訓練はしてきたから、それなりに事態の対処は出来るけど……

 

「全く状況が読めないわ……」

 

一体全体何がどうなってるのよ…?

 

私が密かに困惑していると、煙の中で何かが赤黒いものが光った気がした。

 

次の瞬間、私の目の前に真っ赤なビームが迫ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんとかVS鈴は一話に収める事が出来ました。

次は例の無人機戦です。

ここからが本番ですね。


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第16話 黒い異形

余りにも疲れすぎていると、逆にハイになってしまう私。

なんでかしらん?






 とうとう来ました、無人機戦。

 

原作同様にいきなり天井(?)をぶち破っての派手な登場をしやがった。

そして、いきなりの先制攻撃ときたもんだ。

 

「ちぃっ!!」

 

鈴に向かって放たれた赤いビームを躱しつつ、私は咄嗟に鈴を抱きかかえてその場を離れた。

 

「か…佳織!?」

「大丈夫か?」

「う…うん(こ…こんな時に不謹慎かもだけど、佳織にお姫様抱っこして貰っちゃった~♡)」

 

鈴の顔が赤い。

さっきまでの試合の疲労といきなりの襲撃にパニックになっているのかもしれない。

 

「これでは試合は中止だな」

「当たり前だけどね。にしても……」

「あぁ。さっきからISのモニターに同じ言葉が出続けている」

 

【ステージ中央に高熱源反応確認。機体登録無し。未確認のISと推定されます】

 

んな事は分かってるつーの!

問題は、アレをどうやって倒すかだよ!

 

「どうする?佳織……」

「本来ならば、ここは教職員に任せるのが得策だろうが……」

 

チラッと観客席を見る。

いきなりの出来事に、案の定と言うべきか、アリーナ全体がパニックに陥っている。

 

「恐らく、今はあの混乱を鎮めると同時に、生徒達の誘導に手一杯に違いない。あまり期待は出来んな……」

「それじゃあ……」

 

鈴が不安そうに話し出した……その時だった。

急に私達二人に通信が入った。

 

『な…仲森さん!凰さん!聞こえてますか!?私です!山田です!』

「山田先生……」

 

今にも泣き出しそうな声ですけど。

 

『今すぐにアリーナから脱出してください!すぐに先生達がISに搭乗して鎮圧に行きますから!!』

「と言っても、今は他の事で忙しいのでは?」

『そ…それは……』

「ですので、ここは我々でなんとかします」

『えぇっ!?だ…駄目ですよ仲森さん!!危険すぎます!!もし貴女に万が一の事があったら……』

「大丈夫です。ここは私達を……貴女の教え子を信じてください」

『うぅ~……』

 

こんな時になんだけど、山田先生の反応が可愛い。

 

「そう言うわけだ。鈴、君は一旦ピットに戻れ」

「はぁっ!?いきなり何を言ってるのよ!?まさか、私におめおめと逃げろって言う訳!?」

「そうではない。お前の機体のSEはさっきまでの試合で枯渇寸前だろう?」

「それは……」

「私とて、一人でどうにか出来るなんて思いあがってはいない。だからこそ、お前には一度戻って補給をしてきてほしいのだ」

 

原作では一夏と鈴の二人でどうにかなったが、今回も同じように行くとは限らない。

だから、私はこの時に備えて色々と考えてきた。

寧ろ、この無人機との戦いこそが本番と言っても過言じゃないかもしれない。

鈴には悪いけどね。

 

「頼めるか?」

「で…でも、その間アンタはどうするのよ?」

「私か?私は……」

 

鈴を降ろしてから、私はバズーカを携えて煙の中の無人機と向き合う。

 

「時間稼ぎをしつつ、相手の分析でもするさ」

 

どこまで出来るかは分からないけど、これだけは言える。

 

逃げ回れば……死にはしない。

 

「私が相手を引きつける。行け!!」

「わ…分かったわよ!その代わり、絶対に負けるんじゃないわよ!!」

「無茶を言う」

 

鈴がピットに向かって飛んでいくのを確認した後、私は彼女を護るように前に出る。

すると、無人機が煙の中から出てくるようにして飛び上がった。

 

「やはりか……」

 

全身が装甲に覆われていて、全身にスラスターがある。

腕だけが異様に長くて、そこには先程ビームを撃ったとされる砲口が左右合わせて四砲並んでいる。

そして、頭部はまるで昆虫の複眼を彷彿とさせるカメラアイになっていて、真紅に光っているのも合わせて不気味さを演出している。

 

「こっちの声が聞こえているかは分からないが、私には分かるぞ(・・・・・・・)見ているのだろう(・・・・・・・・)?」

 

無人機は何も言わない。

無言のまま、無慈悲な機械兵は私に向かって銃口を向けた。

 

「ならば見せて貰おうか!天災の造った無人機の性能とやらを!!」

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 それは、まさに怒涛の展開だった。

 

佳織ちゃんと中国の代表候補生である凰さんとの試合は熾烈を極めた。

 

当初は互角と思われていた試合だったが、途中から一気に佳織ちゃんがリード。

凰さんの敗北は時間の問題かと思われ、試合も佳境に差し掛かった……と思われたが……

 

「なんなのよ……あれは……」

 

いきなり落下してきた謎の存在。

土煙に覆われていて姿が見えない。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「そこどいてよ!」

「何言ってんの!私が先よ!!」

 

分かってはいたけど、荒事に慣れていない生徒達は混乱して出口にごった返している。

このままじゃ、遅かれ早かれ怪我人が出てしまう。

生徒会長として、それだけは絶対に看過できない!

 

「皆落ち着いて!!慌てずに一列に並んで!!」

 

先生達も皆を鎮めようと頑張っているけど、効果は薄いようだ。

この調子じゃ、あの存在の制圧にも行けないわね…。

 

その時、私は視界の端に見た事のある姿を見つけた。

 

「簪ちゃん!?」

 

私の妹である簪ちゃんが人込みに揉まれて右往左往していた。

 

「なんでここに!?」

 

って、試合を見に来たに決まってるか。

簪ちゃん、一目見た時から佳織ちゃんにご執心だったしね。

 

私は人込みを掻き分けながら簪ちゃんの元に急いだ。

 

「簪ちゃん!!」

「お…お姉ちゃん?」

「大丈夫?怪我してない?」

「わ…私は大丈夫。だけど……」

 

簪ちゃんが不安そうにステージを見る。

そこでは、佳織ちゃんが凰さんと何かを話している。

作戦でも立てているのかしら?

 

「取り敢えず、ここは危ないわ。急いで脱出を…」

「お姉ちゃんはどうするの?」

「私は先生達と一緒に生徒達の誘導をするわ」

「じゃあ、私も一緒にする!!」

「えっ!?」

 

い…いきなり何を言い出すの!?

普段の内気で人見知りなこの子からは考えられないセリフだった。

 

「佳織さんも頑張ってる…。私もあの人みたいに頑張りたい!だから!!」

 

……凄いわね……佳織ちゃんは。

今までずっと私に出来なかった事を、こうも簡単にしてしまうなんて……。

 

自分でもおかしいと分かっているけど、不思議と……佳織ちゃんに賭けてみたくなっちゃうじゃない!!

 

「分かったわ。その代わり、私の傍から離れないでね」

「うん!」

 

これぐらいの困難、越えられないぐらいでロシア代表や生徒会長や更識家の当主はやってられないのよ!!

今の私には簪ちゃんもいるんだから、百人力よ!!

 

頑張ってね!佳織ちゃん!!

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「鈴!!大丈夫!?」

 

鈴が疲労を隠しきれない表情のまま、ピットに戻ってきた。

一夏を初めとした面々が鈴に駆け寄る。

 

「わ…私の事は今はいいから!早くエネルギーの補給をお願い!!」

「補給だと?どういう事だ?」

 

まさか、また出る気か?

 

「佳織が言ったんです。自分が引きつけている間に補給をして来いって。だから…」

「成る程な。分かった」

 

本来ならば真っ先に動くべき教師陣は生徒の誘導を行っていて出撃できない。

かと言って、あのまま戦闘を継続すれば最悪、二人揃って共倒れも考えられる。

だからこそ、少しでも勝率を上げるために鈴を補給に行かせたのか…。

実弾ばかりを使っている佳織はスラスター以外にエネルギーを消費していない。

故に佳織が殿を務めた…と言う訳か。

 

「織斑、オルコット。二人で凰のISの補給を手伝え」

「わ…分かりました!」

「了解ですわ!」

 

あの二人ならば大丈夫だろう。

次は……

 

「……………」

 

箒が悔しそうに俯いて拳を握っている。

この一大事の時に何も出来ない自分に憤慨しているんだろう。

 

いきなり箒が顔を上げてどこかに行こうとした。

まさかあいつ……

 

「お…おい「しののん!!」なっ……!?」

 

あの布仏が大声を出した…?

 

「しののん……どこに行くつもり?」

「私は……」

「駄目だよ。ここでしののんが行ったりしたら、かおりんが悲しむよ」

「だが…私は!」

「私だって!!」

「……!?」

 

泣いている……のか?

 

「私だって……かおりんの為に何かしてあげたいよ…。でも、私はISの操縦は上手くないし、しののんのように運動神経があるわけじゃない」

「……………」

 

普段は何も感じて無いように振る舞いながらも、心の中では密かにコンプレックスを抱いていたんだな…。

 

「私に出来るのは整備だけ。そんな私でもね……かおりんの為に祈る事ぐらいは出来るんだよ?」

「本音……」

「しののんがしようとしている事はここじゃ出来ない事?」

「…………」

 

箒の動きが止まった…?

 

「……すまない。私が馬鹿だった…」

「しののん……」

「私はダメだな…。いつも、衝動的になって後先を考えようとしない…」

 

激情的と言えばそれまでだが、布仏の言葉で留まったところを見ると、こいつも成長しているんだな…。

 

「ならば、お前達も凰の補給作業を手伝え。今は少しでも人手が欲しい」

「「はい!」」

 

これで少しでも時間を短縮できればいいが……。

一応、念には念を入れておくか…。

私の手元には、学園から与えられた私専用にセッティングされた打鉄の待機形態である腕輪がある。

見た目は同じだが、機体性能は大幅に向上している。

 

私が密かに決意をしていると、佳織からの通信があった。

 

『一夏!セシリア!そこにいるか!?』

「う…うん!私ならここにいるよ!」

「私もいますわ!」

『よかった。ならば、鈴の補給が終了し次第、二人も一緒に来てほしい』

「わ…私達も?」

『そうだ。機動性はともかく、私一人では圧倒的に攻撃力不足だ。かと言って、この場に高火力の武器があるわけではない。ならば、少しでもこちらの手数を増やして総合的な火力を向上させるしかない。現状、今すぐ動けるのは専用機を所持している二人だけだ。頼めるか?』

 

この緊急事態においても、非常に的確な情報分析だ。

一体何処まで冷静なんだ、佳織は…。

 

「わ…分かったよ!」

「私も了解ですわ!」

『感謝する。それと、箒と本音はいるか?』

「な…なんだ!?佳織!?」

『……勝利の美酒を君達二人に捧げる。だから、信じて待っていてほしい』

「「……!」」

 

あいつめ……そんな事を言われたら……

 

「「うん!」」

 

こうなるだろう?

そんなセリフを言われて堕ちない女はいないぞ?

 

『では、こちらは戦闘に集中する。通信終了』

 

切れたか…。

 

「お…織斑先生!本当にいいんですか!?」

「本人達がやると言っているんだ。任せるしかないだろう。それに現状…これ以上の方法が思いつくか?」

「……いいえ。悔しいですけど、仲森さんの判断は的確です」

「ならば、今はアイツに託すしかあるまい」

「でも……歯痒いです。本当ならば守るべき立場である私達が生徒達に託すしかないなんて……」

「私もだ。だからこそ、我々は冷静でいなければいけない。今はコーヒーでも飲んで落ち着け」

 

傍の棚にあったインスタントコーヒーをカップに入れて、近くにあったポットからお湯を入れてスプーンで混ぜる。

その後に砂糖を適度に入れる。

 

「あ…あの~…織斑先生…?」

「なんだ?」

「それ……七味唐辛子ですけど……」

「なに?」

 

な…なんでこんな場所に七味唐辛子があるんだ?

本気で意味不明だぞ?

 

「…………出来たぞ」

「私が飲むんですか!?」

「嫌なのか?」

「それは……」

「私が態々淹れたコーヒーが飲めないと?」

「うぅ~……分かりました!飲みますよぉ~!」

 

それでいい。

真耶は涙目になりながら一気に辛味コーヒーを飲みほした。

 

「辛いコーヒーなんて初めてですよぉ~…」

「滅多に出来ない体験が出来てよかったな」

「それを貴女がいうんですか~…」

 

恨めしそうにこっちを見るな。

私だって態とじゃないんだ。

 

「あっ!?」

「どうした?」

「ア…アリーナ内の扉が次々とロックされていきます!」

「なんだと!?」

 

まさか……あのISの仕業!?

こちらからの増援を警戒しているとでも言うのか!?

 

「遮断シールドのレベルが2に上昇…!このままでは、こちらから出撃出来なくなります!!」

「くそっ!!」

 

これでは佳織の作戦が無意味になってしまう!!

 

「まだ補給は終わらないの!?」

「もうちょっと待って!」

「あと少しですわ!」

 

アイツ等も焦っているな…。

 

「織斑先生。アリーナにいた三年生がシステムのクラックをしているようです。これで少しは時間が稼げれば…」

「どうだろうな…」

 

別に生徒達を信じていないわけではないが、あまり期待は出来ないだろう。

こうなれば、時間の勝負になってくる。

凰の補給が終わるのが先か、それとも、遮断シールドが完全に閉じて袋の鼠となるのが先か。

もしくは……佳織が力尽きるのが先か。

 

いくらエネルギーに余裕があっても、佳織自身の体力は別問題だ。

佳織にとっては二つの戦いを連続で行っている事になる。

蓄積された疲労とプレッシャーは計り知れないだろう。

 

(こうなったら私だけでも行くべきか?いや、今私だけが下手に動けば全体の士気に関わる。仮に行くとしたら一夏達と一緒の方がいいだろう)

 

こんな時に立場が私を苦しめるとは…!

 

「一応、先程から政府に助勢の打診はしていますけど、正直言って……」

「今の政府に過度の期待は禁物だ」

 

アイツ等は己の保身しか考えていないからな。

私が最も嫌うタイプだ。

 

「もうちょっと……もうちょっと……」

 

まだか……まだ終わらないのか……!

 

モニターの向こうでは佳織が致命傷を避けながら謎の機体と高機動戦闘を繰り広げているが、いかんせん攻撃力が違いすぎる。

ビーム兵器と実弾兵器とでは性質上、威力が段違いだからな。

このままではジリ貧だ。

 

「ほ…補給が終わったよ!リンリン!!」

「よっしゃぁ!!」

 

やっとか…!

 

「それじゃあアンタ等!行くわよ!!」

「「了解!!」」

 

鈴がステージの方に移動し始め、そこにISを展開した一夏とオルコットが続いた。

 

「待て」

「「「え?」」」

 

やはり、待っているだけなんて私の性には合わない。

 

「私も行こう」

「で…でも、姉さんのISは……」

 

一夏め、私の心配をするのはいいが、何気に私の事を『姉さん』と呼んだな?

まぁいい。今は特別に許してやろう。

 

「大丈夫だ。学園側から用意された打鉄がある」

「そんなのがあったんだ……」

 

本来ならば使わないに越したことはないんだろうがな。

だが、私の目の前で佳織がたった一人で戦っているんだ。

ここで行かないでいつ行くんだ!今でしょ!!

 

「織斑先生!!ピットの出撃ゲートが!!」

「ちっ!」

 

私は急いで打鉄を展開して纏う。

服の下に予めISスーツは着こんでいたからな、問題無い。

 

「お前達!急ぐぞ!!」

「「「はい!!!」」」

 

私達は閉じかけている出撃ゲートに向かってスピードを上げて飛行する。

 

今いくぞ!佳織!!

お前は絶対に死なせない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思ったよりも長くなってしまい、無人機との戦いは次回が本番に。

千冬の参戦は書いている途中から思いつきました。
その方が面白そうなので。

皆があたふたしている間に佳織が何をしていたかは次回で。


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第17話 反撃開始

今週は本当にクタクタです…。

でも、来週も忙しいんだよな……今週以上に。






 鈴を補給の為に一回下がらせて、無人機に私一人で立ち向かう事に。

今更ながら、なんでこんな無謀な事を考えたんだろう…。

 

「くっ…!だが!」

 

シャア様専用(?)にカスタマイズされているお蔭か、機動性はなんとか互角。

けど、やっぱり火力は向こうの方が圧倒的に上だった。

 

私がいた場所を真っ赤なビームが通り過ぎていく。

その熱量は、以前に体験したセシリアのレーザーライフルの比じゃない。

同じ光学兵器でも威力が違いすぎなんですけど~!?

 

「流石は……と言うべきか」

 

なんて余裕ぶっこいてる場合じゃないだろ私!!

 

さっき、私は自分達の不利を早々に悟って、ピットにいる一夏とセシリアにも増援を要請した。

二人は快くOKを出してくれたが、鈴の補給を手伝っているみたいで、それが終わらない事には二人も出撃出来ない。

つまり……

 

「ここが正念場か」

 

なんとかして、皆が来るまで頑張らないと!

 

「ちぃっ!」

 

向こうの砲門は4つ。

威力も桁違いではあるが、無人機なだけあって動きが単調になっている。

それだけが唯一の救いと言うべきか、私が何とか致命傷を避けられている要因でもある。

 

向こうのビームは一直線にしか飛ばない。

故に、まずは回避に専念しながら隙を窺う。

そして、相手がほんの少しでも隙を見せたら、すかさず……

 

「そこっ!」

 

こっちの攻撃を叩き込む!!

昔…っていうか、前世でエクストリームバーサスシリーズで鍛えた腕、舐めんなよ!!

 

すぐにバズーカの標準を合わせて引き金を引く!

弾頭は真っ直ぐに向かって命中。だけど……

 

「くっ…!」

 

装甲が厚くて思うようにダメージを与えられない…!

人が乗っていないせいなのか、あの無人機にはシールドエネルギーのような物を感じられない。

元来、シールドエネルギーや絶対防御はダメージ等から操縦者を保護するのが役目となっている機構だ。

だが、その操縦者が最初からいない以上、つける理由も無い。

つまりは……

 

「余計な機能をオミットして、その分のエネルギーを火力や機動力の増加に利用したのか……」

 

無人機ならば操縦者の安全を考慮しなくてもいい。

だから、私達が使用している有人機には決して真似が出来ない芸当も易々と可能になる。

 

「厚い装甲に高い機動性能……まるでトールギスだな…」

 

トールギスはアレとは違って真っ白だったけどね。

どっちにしても、基本的な開発コンセプトは同じと見るべきだろう。

本来なら相反する物を、色々な事を度外視する事によって無理矢理実現させた。

なんとも、『あの人』らしい機体だよ、全く…。

 

原作からの知識で無人機の挙動はなんとなく読める。

あいつはこっちが動かなければ動こうとしない。

だから、弾薬の補充などは想像以上に容易に行える。

え?だったら増援が来るまでジッとしてればいいだって?

何を仰るウサギさん。

倒せる可能性が少しでもあるなら、倒す方がいいに決まってるでしょう?

 

私は壁の方に移動して地面に降りる。

そして、無くなったバズーカのマガジンを外してから、右肩のシールドに取り付けてある予備のマガジンをセットする。

 

「これで予備の弾倉も最後か…」

 

え~と?マシンガンの弾はまだまだ余裕があるけど、無人機相手じゃダメージなんて期待するだけ無駄無駄無駄無駄無駄ぁっ!!

ぶっちゃけ、雀の涙程度しか装甲に傷をつけられません。

対艦ライフルにはまだまだ弾の余裕があるけど、この状況じゃ上手く狙いを付けられない。

まぁ、これは最初から私が使うつもりはないんだけど。

後々に備えて弾もちゃんと『別の物』に交換してあるしね。

で、残ったのはヒート・ホーク。

うん、アイツに近接戦を挑むとか、私には無理っす。

私は一夏や千冬さんのような剣道馬鹿じゃないのデ~ス。

 

「残り3発。これでなんとか…」

 

ちょっち本気で覚悟を決めようとした、その時だった。

 

「佳織!!!」

「なに?」

 

この声って……まさか?

 

「待たせたな!」

「お…織斑先生?」

 

どういう訳か、千冬さんが打鉄を装備した状態で一夏と鈴とセシリアを先導してきた。

え?ええ?マジで状況が分からない。

呼んだのは後ろにいる三人だけだよね?

 

私が内心、困惑している中、四人は私の傍に降り立った。

 

「ここからは私も協力する」

「貴女と言う人は…」

 

大方、生徒だけにやらせるのは心配だったから…的な理由で来たんだろうな。

この人って昔から過保護な所があったし。

 

「お待たせしましたわ、佳織さん」

「大丈夫だった?怪我は無い?」

「私は大丈夫だ。まだ致命傷も直撃も受けていない」

 

あのままじゃ時間の問題だったけどね。

本当にナイスタイミングだった。

 

「四人とも、まずは一旦武器を仕舞ってから私の近くに来てくれ」

「武器を仕舞う?何故だ?」

「それを今から説明します」

 

不思議そうな顔を浮かべながらも、四人は武器を収納してから私の傍に近寄ってくれた。

 

「私があいつと交戦して分かった事を手短に報告する」

「分かった」

「まず、あいつは無人機だ」

「「「「は?」」」」

 

だよね~。鳩が豆鉄砲喰らったような顔になりますよね~。

 

「いやいやいや、無人で動くISとか聞いた事ないわよ」

「その通りですわ。ISとは人間が動かす事を前提にした機械。それが無人で動くだなんて…」

「やはりか……」

 

否定的な意見を出す鈴とセシリアを尻目に、千冬さんだけが一人で納得していた。

 

「私も最初に見た時からおかしいとは感じていた」

「ど…どういう事?」

「アイツの動きは機械的と言うか、単調な気がする。それに、時折佳織の攻撃を人間の動きを無視したかのような機動で回避した時もあった」

 

流石は千冬さん。こんな時でもよく見ていらっしゃる。

 

「佳織。お前があいつを無人機と思った根拠はそれだけではないだろう?」

「はい。機体の構造がおかしすぎる」

「構造?」

「そうだ。分厚い装甲に高い機動力を保持する為の高出力のブースター。こんな事をすればどうなると思う?」

「そりゃ……いくら絶対防御があっても、中の操縦者は唯じゃ済まないでしょ……って、まさか!?」

「その『まさか』だ」

 

鈴も気が付いたか。

 

「厚い装甲に高機動……機体としては理想的ではあるけど、そうすれば中の人間の事を完全に無視する事になる。でも……」

「中に人がいなければ話は変わってくる……ですか…」

「あぁ。操縦者の事を考慮しなくて済む分、かなりの無茶が可能となる」

 

それでも強い事には変わりないんだけどね。

 

「それと、この状況で何か気が付かないか?」

「へ?なによ?」

「分からないか?私達がのんびりと話していると言うのに、どうして攻撃がこないんだろうな(・・・・・・・・・・・)?」

「「「「!!!」」」」

 

またまた皆の驚いた顔を頂きました~。

 

「アイツの動きは『鏡合わせ』なんだ」

「か…鏡合わせ?」

「そうだ。こっちが攻撃態勢に移行すれば、向こうも攻撃態勢に。逆にこっちが戦闘状態を解除すれば、向こうも?」

「攻撃してこなくなる…」

「正解だ」

 

単純であるが故に強い。

シンプル・イズ・ベストとはよく言ったもんだ。

 

「けど、そんな単純なら……」

「付け込む隙は必ずある筈だ」

 

あの装備から考えて、恐らく敵さんは複数の相手との交戦を前提としていない。

多分、アレの狙いは最初から……

 

(私……か?)

 

一夏がクラス代表になっていない以上、もしも一夏が狙いであるなら無人機を送り込む理由が無い。

けど、私がターゲットだったら……

 

(色々と納得できてしまう…)

 

こんな風に歪んでいるのも、十中八九『神』の仕業に違いない。

あんにゃろ~!こうなったら、絶対に無人機をぶっ倒してやる~!

 

「け…けど、あれが無人機だとしても、これからどうするの?」

「向こうが圧倒的な火力で来るのならば、こっちは連携で対抗するほかあるまい」

「連携……」

「と言っても、そこまで複雑な事を要求するつもりはない」

 

それ以前に、私に作戦立案能力とか無いからね?

 

「まずはセシリア」

「はい」

「君は我々の中で最も狙撃能力が高い。故にコイツを頼みたい」

「これは……!」

 

私がセシリアに渡したのは、対艦ライフルARS-78だ。

 

「お前のレーザーライフルでは過度なダメージはあまり期待できない。だが、今回こいつの弾は本来装備される筈の貫通式の炸裂徹甲弾を装填してある。戦艦の分厚い装甲すらも易々と貫通してしまう代物だ。これならばあの無人機にも有効な一撃を与えられるだろう」

「し…しかし、ダメージが与えられると思っているのでしたら、どうしてご自分で使用なさらなかったんですの?」

「お前ならばきっと、私以上に有効に使えると判断したからだ。勿論、ちゃんと使用者権限のロックは解除してある」

 

ISの武装は基本的には他の機体が使う事が出来ないようになっている。

でも、今回の私のように予めロックを解除して、別の機体を登録しておけば、本人以外でも武器の使用が可能となる。

 

「セシリアの銃の腕を見込んでの依頼だ。頼めるか?」

「私の腕を見込んで……」

 

あ…あれれ?急にどうしちゃったの?

 

「分かりましたわ!このセシリア・オルコット、見事に佳織さんの期待に応えてみせますわ!!」

「任せたぞ。私達の背中はお前に預けた」

「はい!」

 

いい返事だけど、ちゃんと分かってるのかな~?

 

「次に一夏と鈴」

「え?あ…はい!」

「な…何かな?」

「二人には隙を見ての近接戦をやってもらいたい」

「近接戦?」

「そうだ。アイツの主武装は両腕に固定武装として装備されたビーム砲だ。だが、見た限りではそれ以外に装備していないように見える。つまり…」

「上手く懐に飛び込めれば…」

「こっちのもの…か」

 

理解が早くて助かるよ。

私の拙い頭で考えた作戦で悪いとは思うけど。

 

「だが、決して無理はするな。自分達が確実に攻撃出来ると思った時にしてくれればそれでいい。深追いは禁物だ」

「「分かった」」

 

中途半端な私よりも、総合的な戦闘力は絶対にこの二人の方が上。

だからこそ、こんな危ない役目を任せる事も出来る。

罪悪感が無いと言われたら嘘になるけど。

 

「私はどうしたらいい?」

「織斑先生は……」

 

う~ん……流石の私も、ここで千冬さんが参戦するなんて夢にも思ってなかったら、なんにも思いついて無かったよ。

そうだなぁ~…。

 

「ならば、先生には遊撃を頼みたい。ここにいるメンバーの中では間違いなく貴女が最強だ。無理の無い範囲で好きに動いて貰いたい」

「了解した。それと…」

「ん?」

 

急にどうした?

 

「今は別に私の事を『先生』と呼ばなくていい。いつものように呼んでくれて構わない」

 

ん~?どーゆー事?

 

「……了解した。千冬さん」

「それでいい」

 

何故にそこで嬉しそうにする?

 

「肝心の佳織は何をする気なのよ?」

「私の役目は最初から決まっている」

 

敢えて私はマシンガンを装備して構える。

 

「私は陽動を担当する」

「よ…陽動!?一人で!?」

「陽動は一人で充分だよ」

 

それに、一人だからこそ出来る事もある……ってね。

 

「ん?」

 

音が聞こえた。

まさかと思って振り向くと、無人機が攻撃態勢に移っていた。

なんで?って…あ、説明の為に武器を出したの忘れてたや。

 

「全員散開!」

「「「「了解!!」」」」

 

あ…あれ?なんで私が指揮官みたいな事をしてるの?

なんか自然と皆に命令的な事を言ってしまったけど…。

 

皆が散らばって、さっきまでいた所にビームが命中する。

 

あっぶな~!ビームが当たった場所が真っ赤になって融解してるじゃん!

あのままでいたら一網打尽だった。

 

「では……行かせてもらおうか!」

 

マシンガンを両手で持って、態と不規則に動きながら無人機に迫る。

 

「こちらだ」

 

碌なダメージなんて入らないのは分かっているけど、敢えてマシンガンで攻撃。

私の役目は相手に向かって積極的に攻撃する事じゃない。

あくまで無人機の狙いを私に向かせて隙を生み出す事。

だから、弾数にまだまだ余裕があるマシンガンが最適なのだ。

 

装甲に僅かな掠り傷を与えると、無人の顔がこっちを向く。

よしよし……私に狙いを定めたか。

 

その不自然なまでの腕がこちらを向き、銃口にエネルギーが充填されていく。

数瞬の内にビームが発射されるが、体を回転させながら紙一重で回避。

 

「鈴!」

「分かってるわ!」

 

無人機がこっちを向いた隙を狙って、一夏と鈴が武器を構えて迫る。

ふと見ると、一夏の手には雪片以外にも、もう一本別の剣が握られていた。

 

(あれは……打鉄に装備されている筈の近接ブレード『葵』か?)

 

どっちも近接戦闘に向いているから、武器の相性はいいだろうけど…。

 

だが、無人機は射撃直後の硬直を無理矢理振りほどいて動き、二人の方に銃口を向ける。

けど残念。こっちには優秀なスナイパーがいるんだよ!

 

「そう簡単にいくなんて……思わない事ですわ!!」

 

セシリアに渡した対艦ライフルから放たれた特殊弾が、一夏と鈴の二人の間をレーザーライフルにも匹敵する速度で通り過ぎ、撃つ直前だったビームの銃口にめり込んだ!

次の瞬間、銃口の内部で弾が炸裂し、ビーム砲を一つ破壊、爆散した。

 

「やりましたわ!」

 

喜びながらもセシリアは次の弾を装填する。

 

「この隙は!」

「逃さない!」

 

爆発の余波で少しだけ体が倒れかけた瞬間を、二人は決して見逃さなかった。

一瞬で無人機の懐に潜り込み、一夏と鈴がXを描くように斬りつけて、そのまま離脱。

 

やっぱり……下手な実弾兵器よりも近接武器の方が効果的みたいだ。

無人機の装甲に確かな傷跡があった。

 

無人機はその場から移動し、態勢を整えようとしたのだろうか。

空中に浮いて離脱を図ろうとしたが、その背後に人影があった。

 

凄まじい音と共に無人機が地面に叩きつけられた。

 

「逃がすと思うか?」

 

わぉ……凄い顔で睨み付けながら千冬さんが剣を構えている。

あれで攻撃したのか…。

 

(つーか、いつの間に?全然分からなかった…)

 

一線を退いても、まだまだ規格外って事ね…。

 

だが、無人機も黙ってやられはしないようで、地面に這いつくばりながらも銃口を千冬さんに向けている。

だと言うのに、千冬さんはいつものように佇んでいるだけ。

心なしか顔も笑っているような気もするし。

 

「やらせんよ」

 

バズーカに持ち替えてから無人機の腕に向かって発射。

弾速はそこそこだけど、あの体勢では上手く動けないようで、見事に命中。

こっちは射線さえ逸らす事が出来ればいいと思っていたけど、なんと銃口に直撃。

私の攻撃で相手の攻撃手段を潰せてしまった。

 

「佳織ならばやってくれると信じていたぞ」

「光栄の至り」

 

偶然ですけどね。

 

「火力は確かに向こうの方が上かもしれん。だが、それだけだ。機械には絶対に出来ない人間の戦いと言うものを奴に見せつけてやろう。なぁ、佳織?」

 

そこで私に振りますか。

 

「勿論。ここで負けては人間の名折れ」

 

こうなったら自棄だコンチクショ~!

バズーカからマシンガンに持ち替えて、スコープを覗く。

 

「護るべき者を護る為に貴様を鉄屑(スクラップ)にしてやる。だから……」

 

私はまた陽動をする為にスピードを上げて相手に突っ込む。

 

「かかって来い……無人機(ガラクタ)

 

 

 

 

 

 

 

 




一話で戦闘が終わらなかった…。

ある意味、私あるあるですけど。

次回で決着かな?


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第18話 決着

気が付けば、もう10月になってるんですよね…。

一年って本当にあっという間……。






 いきなり乱入してきた無人機に対して、複数人での連携で挑む事になった私達。

 

私と一夏と鈴にセシリア、そして…まさかの千冬さんの参入によって戦局は一気にこちら側に傾いた。

 

機動力に優れた私が陽動を行い相手の隙を作り、その間に近接戦に優れた鈴と一夏が斬り込む。

後方ではセシリアが私の渡した対艦ライフルで援護射撃。

一番の熟練者でもある千冬さんは下手に行動を制限しないで自由に遊撃をしてもらう。

 

まさか、即席で組んだこのチームがここまで上手く機能するとは想像にもしていなかった。

 

既に4砲中の2砲を破壊され、総合的な攻撃力はかなり低下した筈。

このまま押し切れれば申し分無い。

今の流れだけは絶対に手放すわけにはいかない!

 

ギギギ……と動く無人機だが、さっきの千冬さんの背中の一撃でブースターをやられたのか、動きに精彩さが無くなっていた。

 

「皆、戦況はこちらに向きつつあるが、最後まで決して油断するな。余裕と油断は全くの別物だと思え」

 

念の為に言った一言に全員が頷く。

千冬さんに関しては心配してなかったけど、他の皆はなんか油断して手痛い目に遭いそうな気がするんだよなぁ~…。

原作を知っているが故の先入観ってやつなのかもしれない。

 

無人機は残ったビーム砲を私に向けている。

どうやら、あいつなりにいつの間にか指揮官役になっている私を最優先目標に設定したようだ。

たしかにそれは賢明な判断だ。

どれだけ強大な部隊でも、頭が潰されれば一気に弱体化する。

士気は下がるし、何をすればいいか分からなくなった部隊員は場で混乱する。

最悪の場合は内部分裂で自滅……なんてオチも考えられる。

だけどね……

 

「そう簡単に、私の首が取れると思われては困る」

 

こっちに向いたビーム砲の射線を変えるために、私はジグザグに動きながら接近、そこからマシンガンの連射をぶちかましてやった。

 

ダメージは殆ど無いに等しいが、それでも相手の動きの阻害ぐらいは出来る。

攻撃の際はずっとマシンガンのトリガーは引きっぱなしになっているから、弾薬は湯水のように消費するけどね。

 

結果として、ビーム砲の射線は誰もいない真上に行った。

既に発射態勢にあったみたいで、ビームは彼方の方へと無駄撃ちさせられた。

当然、そんな大きな隙を見逃す私達じゃない。

 

「よぉ~し……今なら!!」

 

一夏の気合と共に、彼女が手に持っている雪片の刀身が開いて、そこから一刃の光の刃が出現した。

 

「あれが……」

 

零落白夜の代わりに搭載されたって言うレーザーブレードか。

見た目的には零落白夜と遜色無いように思えるけど……。

 

「「いっくわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」

 

ふ…二人揃っての『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』!?

凄い迫力だけど、、一夏はいつの間に習得したの!?

 

凄まじいスピードで迫る二人に気が付いたのか、すぐさま無人機は体の向きを変える。

だが、その先には我らが誇るスナイパーの銃口が待っていた。

 

「よくぞこちらを向いてくれましたわ…!」

 

その刹那、再び対艦ライフルから炸裂徹甲弾が発射。

鈴の脇の下と一夏の股の間を潜り抜け、音速の壁を越えて直進。

その一撃は無人機の腰に命中し、大きく炸裂。

その威力で無人機の上半身と下半身は永遠の別れを告げる事になった。

 

壊れた部分から多くのコードを初めとした機械部品が飛び出したり露出したりしたが、そんな事を気にしている余裕は無い。

 

「狙うは!!」

「一点のみ!!」

 

一気に懐へと飛び込んだ二人は、その刃を無人機の肩関節へと突き刺した!

 

「「これでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」

 

一夏と鈴の全力の一撃は、見事に無人機の腕を両肩から切断する事に成功。

これで奴に攻撃力は無い!

 

「佳織!!」

「了解!!」

 

千冬さんの声と同時に私も接近する。

私は咄嗟にマシンガンからバズーカへと武器を持ちかえた。

 

「フフフ……ダメ押しの一撃……ですわ!!」

 

優雅な笑みと共に、またまたセシリアの対艦ライフルが火を噴いた。

その弾丸が向かう先は……

 

「ほぅ…」

 

なんと、奴さんのど真ん中…つまりは胸部だった。

 

「一夏!」

「うん!」

 

弾丸が炸裂する前に二人は速やかに離脱。

その直後に大きな爆発音と共に無人機の胸部が爆裂した。

 

「この一撃で!!」

 

落下速度と両手持ちから放たれた千冬さんの真っ向唐竹割りが無人機を真ん中から両断した!

 

「終わりだ」

 

最後に私が大きく口を開いた胸部に向かってバズーカを撃ち込む!

 

吸い込まれるように弾頭は命中し、そして爆発。

いかに装甲が厚くても、内部に直接打ち込めば一溜りもないだろう。

 

「や…やった…の……?」

「そう……みたい……」

 

文字通り、完膚なきまでに叩きのめした無人機は完全に沈黙。

所々から火花を散らして、見事なスクラップと化していた。

 

「「やったぁっ!!」」

 

嬉しそうに一夏と鈴がハイタッチ。

その後ろではセシリアも安心したように地面に座り込んだ。

 

「よ…よかったですわ……」

 

その顔には幾つもの汗が滲んでいる。

冷静そうにしていても、その心の中は相当なプレッシャーがあったに違いない。

そう言えば、狙撃手には冷静な判断力と緻密な計算力が要求されるってどこかで聞いたな。

何処だったっけ?

 

「佳織」

「先生……?」

 

で、千冬さんが一緒に戦ってくれたお蔭で士気も向上した。

本当にもう……マジで頭が上がりません。

 

「見事な指揮だった。やはり、お前にクラス代表を任せて正解だったな」

「偶然ですよ。私のした事などたかが知れています。今回の勝利は、チームの連携とこれ程のメンバーが揃った幸運。それから……」

 

ピットの方を見る。

そこには、もう扉が開くようになったのか、箒と本音ちゃんがこっちに向かって手を振っていた。

 

「待っていてくれる者達がいたからです」

 

護るべき存在がいるから人は強くなれる。

こんな歯の浮くようなセリフを言うつもりはないけど、なんとなく気持ちは分かったような気がした。

 

誰かが待っていてくれるって思うだけで、不思議と勇気が沸いてきたし。

じゃなきゃ、私のようなヘタレが頑張れるはずないもん。

 

「そうかもしれん。だが、お前には確かな才能がある。お前にしかない才能が…な」

「そうでしょうか…」

「私が言うんだ。間違いないさ」

「成る程。一理ある」

 

世界最強……ですもんね。

昔から、人を見る目はあったし。

 

「にしても、本当に無人機だったのね……」

「だね…。完全に集中していたから、途中で機械的な部品が見えても気にも留めなかった…」

「ですが、なんだか不気味ですわね…」

 

一夏とセシリアと鈴がやって来て、破壊された無人機の残骸を覗きこんでいる。

 

「人の形をしているのに人じゃない。なんとなく、あの子の気持ちが分かりますわ…」

 

ん?あの子とな?

 

「それってどういう意味よ?」

「あ……実は、私の幼い頃の友達の一人に、『お人形が怖い』と言っていた女の子がいるんですの」

「ふぅ~ん……珍しいね。お人形が怖いだなんて」

「当時の私も同じ事を思いましたわ。幼い頃の女の子は誰もが一度はお人形で遊んだ経験があると思いますけど、その子に限っては一度も遊んだ事がありませんでした。それどころか、お人形に近づこうとすらしなかった」

 

珍しくシリアスな顔になっているセシリアの話に、全員が聞き入っていた。

 

「それで、私はある時、その子に聞いてみたんですの。『お人形の一体何が怖いんですの?』って」

「その子は何と答えたんだ?」

 

一度だけ唾を飲んでから、セシリアは口を開いた。

 

「『人間じゃないのに人間の顔を持って人間の形をしているなんて、気味が悪くて仕方が無いわ』……彼女はそう言いました」

 

人間じゃないのに人間のような顔や形……か。

確かにそうかもしれない。

 

「今なら彼女が言っていた事の意味が分かりますわ」

「だね…。今まさに私達は『人間じゃないのに人間の形をした物』と戦っていたわけだし…」

「うん……」

 

場の空気が急に重くなった…。

 

「そろそろ撤収するぞ。この残骸は後で回収させる。勿論、今回の事は誰にも言うなよ。学園内にもすぐに箝口令が敷かれる筈だ」

「「「「分かりました」」」」

 

こんな事件……世間に知らせるわけにはいかないもんね。

もしもバレたりしたら、大変な事になってしまうよ。

 

「では、解散!」

 

千冬さんの一言で皆はISを解除する。

 

「ふぅ………あれ?」

 

私も皆と同じようにISを解除したけど、急に頭がフラッとなって地面にちゃんと降り立てずに座り込んでしまった。

 

「か…佳織!?」

「大丈夫ですか!?」

「う…うん……」

 

な…なに…?急に眩暈が…?

 

「今まで蓄積してきた疲れが、戦闘が終わって気が抜けたせいで一気にキたんだろう。この中で佳織だけが唯一、連戦したんだ。無理も無い」

 

あぁ……そっか。

そう言えば、私ってば全く休憩してなかったや…。

ははは……道理で体がだるく感じる筈だよ…。

 

「仕方があるまい」

 

はい?ち…千冬さん?

 

「うわぁっ!?」

 

い…いきなり千冬さんにお姫様抱っこされた!?

 

「佳織は私が保健室まで連れて行く。お前達は先に戻れ」

「えぇ~…」

「なんだ、その顔は」

「姉さん……送り狼にならないでよ?」

「保証は出来んな」

「「「「出来ないの!?」」」」

 

私は一体どうなっちゃうの!?

大人の階段を爆走しちゃうの!?

 

「ほれ、さっさと行け!」

 

誤魔化すように言ってから、千冬さんは私を抱えてピットに向かった。

 

(これ……戻ってからも色々と言われそうな予感がする……)

 

一難去ってまた一難……か。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 仄暗い室内。

モニターの明かりだけが部屋を照らす中、一人の女性が机に突っ伏していた。

その傍には銀髪の少女が一人、困惑していた。

 

「あ…あの…束様?どうしました?」

「か……か……」

「か?」

「私の大好きなかおりんがカッコよくて強すぎて生きてるのが辛い」

「えぇ~!?」

 

ゆっくりと起き上がると、彼女……篠ノ之束は鼻血を垂れ流していた。

 

「色々と様子を見て、かおりんの強さを直に感じたいな~って思って『アレ』を向かわせたけど、まさかチームで撃破するなんて思わなかったよ~」

「ですね。しかし……」

「うん。悔しいけど、見事なまでの連携だった。ちーちゃんも参戦するのは完全に予想外だったけど」

「あの人がいた時点で負けフラグは立ってましたよね…」

 

銀髪少女が言った途端、束の頭に青い筋が出てズ~ンとなった。

 

「だよね~……でも」

 

ムクッと起き上がってモニターを見る。

 

「かおりんの凄さはよく分かったよ」

 

その目はとてもワクワクしていて、まるで新しい玩具を見つけた子供のようだった。

 

「かおりんには間違いなく才能がある。ISの……戦闘の才能が」

「戦闘の才能……ですか?」

「うん。だって、即席のチームをあそこまで見事に指揮出来るなんて、常人には凄く難しいよ?」

「そうですが……」

「そして、あのとんでもなくピーキーな機体を、まるで手足のように扱う技量。冷静沈着な心に観察眼。更には異常ともいえる勘の良さ。まるで、どこぞの異能生存体のように…才能の全てが戦闘に特化している(・・・・・・・・・・・・・・・)

「……………」

 

沈黙が場を支配する。

 

「私が知っているかおりんは、勘が鋭い事を除けば至って普通の女の子だった。とても優しくて、包容力があって…」

 

真剣に話しているように見えるが、束の顔は完全に緩みきっていた。

 

「今なら分かるよ。かおりんの持つ天才的な才能は、日常生活はおろか、表側では決して発揮されない物ばかり。道理で私にも分からない筈だよ」

「束様……」

「多分、ちーちゃんも今回の事で理解したんじゃないかな?」

「あの方も鋭いですから」

「だね……って!あ~!?」

 

ふと見たモニターでは、千冬が佳織を横抱きにして運んでいた。

 

「いいないいな~!私もかおりんをお姫様抱っこしたい~!いや、私の方がしてもらった方がいいかな…?」

「変な事で真剣になりますね」

「そりゃ真剣にもなるよ!クーちゃんもかおりんに会えば分かるって!あの子は底なしに優しい……どんな人間にも絶対に手を差し伸べる子だって」

「どんな人間にも……ですか…」

 

束の言葉を聞いて、少しだけ考える『クーちゃん』。

 

「大丈夫。きっとクーちゃんの事も受け入れてくれるよ。私みたいに捻くれている人間の手も取ってくれたんだし」

「そう…ですね。束様がそう仰るのでしたら、私も信じてみます」

「うんうん!」

「仲森佳織様…ですか。私も会える日を楽しみにしております」

 

そう呟いた彼女の目は、好奇心に満ちていた。

そして、束は……

 

「ゴーレム程度じゃかおりんの相手としては少々力不足だったかな…。やっぱり、かおりんの秘めている才能を最大限に発揮させるには、それ相応の相手を用意しないと……」

 

様々な感情を綯い交ぜにしながらブツブツと呟いていた。

その目は怪しく光り、これからの波乱を予感させるようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まさかの束とクロエの初登場。

何気に変なフラグが幾つか立ってましたけど…。

まぁ、気にせずに行きましょ~。


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第19話 タイミングは大切

休みの日だからこそ頑張って更新しなくちゃ、と思ってしまう私。

その分、たっぷりと休息が出来ているからいいんですけどね。






 突如として乱入してきた無人機を辛くも撃破した私達は、それぞれに解散した。

 

ピットに戻った私達を迎えたのは、今にも泣きそうな顔の山田先生と心配そうに駆け寄ってきた箒と本音ちゃんだった。

で、なんでか楯無さんと簪もいたんだよね。

なんでも、二人は先生達と一緒に生徒達の避難誘導を行っていたらしい。

なんと言うか……凄いなこの姉妹。

普段はあんなんでも、ちゃっかりと生徒会長っぽい事をしている辺り、やっぱり凄い人なんだなって思った。

 

私が千冬さんにお姫様抱っこされている様子を見て、一瞬で場が凍りついたけどね。

 

その場にいる全員がもれなく顔を真っ赤にしていたんだけど、それぞれに反応が違っていた。

 

箒はなにやら狼狽えてしたし、本音ちゃんはポケーッとしていた。

山田先生は手で顔を覆ってはいたが、隙間から何気に覗いていたし。

楯無さんはニコニコと笑っていたけど、なんだか複雑な顔をしていた。

簪に至っては立ったまま完全にフリーズしていたし。

 

私はそのまま、千冬さんに抱えられたまま保健室に行く羽目になった。

廊下で誰にも会わない事を祈るばかりです、はい。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「本当に大丈夫?」

「大丈夫だって。単なる過労だって言われたし」

 

まさか、保健室のベットを利用する事になるなんてね…。

ちょっと大袈裟じゃない?

ま、千冬さんがベットまで真っ直ぐ連れて来たんだけど。

 

けど、あの時の千冬さん……なんか目がギラついてなかった?

なんつーか……昔見た動物番組で見た獲物を捕食する直前に見せる獣のような目をしていた。

思わず身の毛が立ったけど、その直後に本音ちゃんと箒が来たから難を逃れた。

あのまま誰も来なかったら、一体どうなっていた事やら…。

想像もしたくない…。

 

因みに、千冬さんは山田先生に呼ばれてどこかに行って、箒はジュースを買いに行ってくれた。

保健室を去る際、千冬さんの舌打ちが聞こえた気がしたけど、気のせいだって信じたい。

 

「かおりんなら大丈夫だって信じてたけど、それでも…やっぱり心配だったよ…」

「……ゴメンね。でも、心配してくれてありがとう」

 

それだけ想われているって証拠だしね。

 

「かおりん~…」

「なんで本音ちゃんが泣きそうなのよ?」

「だってぇ~…」

「ははは……」

 

本当に面白い子だよなぁ~。

見ていて飽きないって言うか、なんて言うか。

 

「兎に角、今日はゆっくりと休んでね。かおりんは休まずに二回連続で試合をしたようなものなんだし」

「りょ~かい。私だっていつまでもベットの上にはいたくないし」

 

こうして横になっていると、本当にリラックスできる。

あ……なんか眠たくなってきた…。

 

「かおりん?」

「ん……ちょっと眠気が……」

「寝てもいいよ。私がここにいるから」

「うん……そうさせて…もらう…よ……」

 

ここに来て溜まった疲労がピークに達したのか、私があっという間に夢の世界に入った。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「……寝ちゃった?」

「…………」

 

どうやら、かおりんはあっという間に寝てしまったみたい。

まるでのび太君さながらの就寝スピードだ。

 

「しののんは……」

 

どこまで買いに行ったのか、まだ戻ってくる気配は無い。

他の皆も来る様子は無いし…。

 

目の前には無防備なかおりんの寝顔…。

実は今まで何度も部屋で見た事のある寝顔だけど、こんなシチュエーションは初めてかもしれない。

 

「す~…」

 

静かな寝息だけが保健室に木霊する。

本来、ここにいる筈の保健室の先生は別の用事で不在中。

今この部屋にいるのは、私とかおりんだけ。

 

(私とかおりんだけ……なんだよね……)

 

あ…あれ?あれれ?

なんでこんなにも緊張するの?

私とかおりんはルームメイトなんだから、二人っきりになるなんてことは日常茶飯事の筈なのに…。

 

目の前に晒されるかおりんの寝顔。

かおりんの寝顔は本当に可愛い。

改めてかおりんの顔をまじまじと観察すると、この子は本当に美少女なんだと思わせられる。

 

綺麗な肌に長い睫毛。

プルプルに潤った唇に整った目鼻立ち。

そして、窓から入ってくる夕日に反射する綺麗な髪。

 

気が付けば、私はかなりの至近距離でかおりんの顔を見ていた。

 

「わ…私ってば何を……?」

 

思わず離れるけど、そこでピタッと止まった。

 

「今なら……誰もいないから……」

 

ゴクリと唾を飲む。

少しずつ顔を再び近づけていく。

 

「いい……よね……?」

 

かおりんからとてもいい匂いが漂ってきた。

私の大好きな匂いだ。

 

心臓の音がドクドクと鳴り響く。

心なしか、凄く大きく聞こえる。

 

「かおりん……私……」

 

私とかおりんの唇がくっつきそうになる……その瞬間。

 

「待たせたな。買ってきた……ぞ……?」

「あ…………」

 

しののんと目が合っちゃった…。

 

「ほ…ほほほほほ本音!?お前は一体何を!?」

「し――――――――!!」

 

いきなり大声を上げようとしたので、慌てて止める。

 

「かおりんは今寝てるの!静かにして!」

「あ……すまん…」

 

出来るだけ小声で言ってから、なんとか収まりがついた。

 

「で?今お前は何をしようとしてたんだ?」

「そ…それは~……ははは~…」

「笑って誤魔化そうとするな」

 

ですよね~。

 

「全く……気持ちは分かるが、抜け駆けは禁止だ。あの千冬さんだって我慢してるのに…」

「でも、私達がいなかったら間違いなく織斑先生は行動に移してたよ?」

「だろうなぁ~……」

 

どうやら、しののんも保健室を出ていく時に見せていた、あの捕食者のような目を見逃さなかったみたい。

 

「ある意味、最強のライバルがあの人だから、厄介極まりないんだよな…」

「だね~」

 

も…もしもかおりんが年上趣味だったりしたらどうしよう~…。

 

「にしても、ぐっすりと眠っているな」

「うん。かおりんが一番頑張っていたからね~」

「そうだな…。別に他の皆が頑張っていなかったと言う訳ではないが、最初からずっと戦い続けていたのは佳織だけだったからな」

 

きっと、私には想像が出来ない程に心も体もクタクタに疲れ切っているんだろう。

 

「このまま静かに寝かせてやろう」

「そうだね…」

 

今日は本当にありがとう、かおりん。

私に出来る事なんて微々たるものだけど、それでも、かおりんの専用機の整備ぐらいは出来るから。

私に出来る範囲で精一杯にサポートするから。

 

また保健室が静寂に包まれた……と思っていたら。

 

「佳織~…大丈夫~?」

 

今度はリンリンやおりむー達がやって来た。

 

「あら本音ちゃん」

「あ……」

「かいちょーにかんちゃん?」

 

なんでこの二人まで一緒に?

 

「な…なんでその二人まで…?」

「なんだか佳織ちゃんの事が気になっちゃって」

「右に同じ…」

 

かんちゃん……端折りすぎだよ…。

 

「もしかして、寝てるの?」

「そうだ。だから静かにな」

「分かっていますわ」

 

皆は静かにこっちに来た。

 

「おぉ……」

「まぁ……」

「これは……」

「あら……」

「…………」

 

ん~…なんとなく、次の皆の反応が予想出来ちゃった。

 

「「「「「か…可愛い…♡」」」」」

 

だと思ったよ。

 

「佳織の寝顔とか始めて見たわよ…」

「天使の寝顔ですわ…♡」

「これを毎日見れるのか~…本音ちゃんが羨ましいなぁ~…」

「これはまた…なんとも……」

「うわぁ~…うわぁ~…」

 

皆、顔を真っ赤にしてる。

実は私としののんもさっきからずっと真っ赤だけど。

 

「佳織ちゃんは今日の事件の最大の功労者ですもの。静かに労わってあげましょう」

「同感です」

 

そう言ったかいちょーの扇子には『可愛いは正義』って書いてあった。

言ってる事と真逆な気がする…。

 

「取り敢えず、今の私達がするべき事、それは……」

 

皆が一斉に頷く。

 

「佳織ちゃんのこの寝顔を写真に収める事よ」

 

全員が同時に携帯を取り出して、カメラ機能でかおりんの寝顔を撮った。 

途中、シャッター音で起きちゃうかもって思ったけど、予想以上に熟睡してるみたいで、全く起きる気配が無かった。

 

結局その日、かおりんは保健室で一晩を明かす事になった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 IS学園の地下50m。

そこにはレベル4の権限を持つ特定の関係者しか入室を許可されない隠された空間が広がっている。

 

そこで、千冬と真耶の二人は、破壊されここに運び込まれた無人機の解析作業を行っていた。

 

「解析の結果、やっぱりこれは仲森さんの予想通り、無人機のようです」

「そうか……」

 

実際に戦って実感はしているが、それでも俄かには信じられなかった。

未だに世界中のどの国でも完成していない…否、理論すら確立していない技術。

佳織はこの機体にAIが搭載されていると判断したようだが、千冬はそれとは別に、この機体の製作者による遠隔操作の可能性を考えていた。

 

「織斑先生は実際に戦ってみてどう感じたんですか?」

「そうだな……あれにはなんと言うか……『人の意思』のようなものが感じられなかった」

「人の意思……ですか?」

「あぁ。もしもあれが何者かによって遠隔操作されていたとしたら、何らかの挙動のようなものが感じられる筈だ。だが、これはどこまでも無機質だった」

 

まるで実体のある幽霊を相手にしているかのような感覚。

歴戦の操縦者である千冬でも初めての経験だった。

 

「これが一体どうやって動いていたかは不明です。最後の皆さんの連携攻撃で完膚なきまでに破壊されましたし。機体の中枢機能は仲森さんが放ったバズーカの直撃を受けて粉々になっています。この状態だと、修復も不可能でしょうね」

「だろうな。オルコットが開けた穴に直接叩き込んだからな。内部にバズーカを撃ち込まれれば、どんなに頑強な機体と言えども一溜りもあるまい」

 

目の前で残骸と化した無人機を見ながら、自慢げに語った。

 

「コアの方はどうだった?」

「……どこにも登録されていない物でした」

「矢張りか……」

 

腕組みをして唸る千冬。

その眉間には皺が寄っている。

 

「それにしても、今日の仲森さんは本当に凄かったですね…。まるで、本物の指揮官のようでした」

「あれもアイツの才能の一つかもな」

「才能……ですか?」

「仲森にはISの操縦だけでなく、戦闘に関する様々な才能が眠っているのかもしれん」

「なんだか皮肉ですね…。荒事に巻き込まれて初めて発揮される才能だなんて…」

「確かにな。だからこそ、私達教師が頑張らなければいけないのさ」

「そうですね!」

 

千冬の言葉にやる気が復活したのか、真耶の顔に活気が戻った。

 

「そう言えば、ここに入ってくる時に悔しそうな顔をしていましたけど、どうしたんですか?」

「あぁ~…あれか」

 

なんでも無いように反応する千冬。

 

「なに。もしも保健室にあいつ等が来なかったら、あのまま佳織とラブラブ出来たかもしれないと思うと、何とも言えない気持ちになってな……」

 

千冬の言う『ラブラブ』には言葉とは別の意味が含まれているのだが、真耶は知る由が無い。

 

「本当に仲森さんの事が大好きなんですね…」

「当然だ。私の全ては佳織の為にあると言っても過言ではないからな」

「過言じゃないんだ……」

 

ジト目になりながら呆れる真耶であった。

 

そんな二人の解析作業は深夜にまで及んだ。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

夜。

IS学園の学生寮の廊下に、箒は一人で佇んでいた。

なんだか寝付けない箒は、気晴らしをする為に寮内にある自販機で何か飲もうと思って部屋を出て来たのだ。

 

「はぁ~…」

 

箒の頭の中にあるのは、佳織の活躍と恋のライバルたちの事。

 

「佳織はどんどん先に行っていく…。そして、他の皆も……」

 

今回、本音が止めてくれなかったら、取り返しのつかない事になっていたかもしれない。

自分の身勝手な行動で佳織を身を危険に晒すなどは論外だった。

 

箒と同じように佳織の事を想っている面々は、佳織の隣で戦える程の実力を有している。

代表候補生であるセシリアや鈴は言うに及ばず、スタートラインは同じ筈の一夏すらも、いつの間にか彼女達と遜色無いレベルに達しようとしている。

そして、本音はその類稀な優れた整備スキルで佳織の事を見事に支えている。

 

彼女達に比べて自分はどうだ?

 

実力は中途半端でISの整備が出来るわけでもない。

今の箒にあるのは、佳織の幼馴染と言うステータスだけ。

 

「このままでは駄目だ…!このままでは完全に出遅れる…!」

 

更に、今の箒には他の懸念材料もあった。

 

「生徒会長の更識先輩と、その妹である簪…。あの二人も恐らく……」

 

唯でさえライバルが多いと言うのに、そこから更に二人増加。

圧倒的不利な状況にある箒にとっては見逃せない事態だった。

 

「こうなったら、恥ずかしがっている場合じゃない!」

 

自販機の前で気合を入れる箒。

傍から見たら変な光景だった。

 

適当にホットココアを選んでボタンを押す。

少しして紙コップに入ったココアが出てきて、それを取り出す。

 

「クラス対抗戦の後にある全員参加型の学年別トーナメント……あれで優勝したら、佳織に告白しよう!うん!」

 

なんだかんだ言って、結局は告白する切欠が欲しい箒だった。

 

だが、その事を自覚せずにグッ!っと拳を握りしめる箒。

そんな事をすれば当然……

 

「熱っ!?」

 

こうなる。

紙コップは潰れて、中のココアが零れる。

 

だが、箒はある事を失念していた。

ここは学生寮。

当然、箒の他にも生徒は沢山いるわけで……

 

「フフフ……♡いい事聞いちゃった♡」

 

その中でも、最も聞かれてはいけない人物に聞かれていた。

彼女が持っている扇子には『恋は戦争!』と書かれている。

 

後に箒はこう語っている。

 

「私の人生の中でも最大級の不覚だ…。穴があったら入りたいとはこの事か…」

 

この時の出来事が箒にとって間違いなく黒歴史となったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 




これでやっと原作一巻が終了です。

もうすぐ原作ヒロインが全員集合しますね。


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第20話 私の父は『白い狼』

な…なんか、いつの間にかお気に入り登録数が1000を超えてたんですけど…。

最初見た時、ガチで二度見しました…。






 6月初頭の日曜日。

私こと仲森佳織は久し振りに一日限定で実家へと帰省していた。

 

ウチは簡単に言えば、中流家庭だ。

極端な金持ちではないし、かと言って貧乏でもない。

至って普通な一般家庭……のつもりだ。

 

そう言えば、私の家族についてまだ話して無かったっけ。

 

家族構成は父と母と私の三人。

前にも言ったかもしれないが、私は一人っ子なのだ。

だからだろうか、一夏と千冬さん、箒と束さんと言った姉妹を見ていると、時々羨ましくなる。

 

父の名前は『仲森信(しん)』

これを聞いたある特定の人種(ガンダムマニア)は、この作品の展開からして、種運命の不遇主人公が父親か!?なんて思ったかもしれない。

でも残念でした~!私のお父さんはイケメンと言うよりは、お髭が素敵なナイスガイなんで~す!

なんでも、父さんは婿養子らしく、結婚してから名字が変わったんだとか。

前の名字は確か、松永だった筈。

あれ?松永…?

なんだろう…どこかで聞き覚えがあるような気が……。

そんな父さんは今、どこかの学校で教師のような事をしているらしい。

らしいと言うのは、私も詳しい事は知らないから。

親子とは言え、深く追求するのはよくないって思うから。

 

母の名は『仲森ゆかり』

私と同じ茶髪がよく似合う女性で、かなりの若作り。

ぶっちゃけ、母さんと一緒に街とかを歩いていると、よく姉妹に間違われる。

絶対に私の茶髪ってこの人譲りだ。

昔は弓道をしていたらしく、今でも時々弓道教室に通っている。

アバウトなようでしっかりもしていて、私とはとても気が合う人だ。

 

そんな私たち家族が住んでいる家は、織斑家から家を二軒離れた場所に位置している。

大きさは……そこそこかな?

新築だから、結構綺麗ではあるけど。

因みに、今日は一夏も途中まで一緒だった。

なんでも、彼女も久し振りに家に帰って、暫く放置しておいた家の掃除とかをしてしまいたいらしい。

生真面目と言うか、なんて言うか…。

 

そんな懐かしの家の前に立つと、不思議な懐かしさがある。

まだIS学園に入って数か月しか経過していないのにね。

 

さて、それじゃあ入りますか!

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「ただいま~!」

 

久し振りとは言え、いや、久し振りだからこそ挨拶は忘れずに。

 

「ん?」

 

ふと足元を見ると、玄関には見慣れない靴があった。

父さんの靴と見比べても凄く大きい。

 

「誰だろう?」

 

お客さんかな?

 

「あ!佳織~!おかえり~」

「ただいま、お母さん」

 

いつものような笑顔で出迎えてくれたお母さん。

変に気を使わないでくれて嬉しい。

 

「佳織がIS学園に入ってから一か月以上経つって言うのに、思ったよりも懐かしく感じないもんね」

「そう?私は懐かしさを感じたけど」

「それはきっと、アンタが帰って来たからよ。私達はずっとこの家にいるんですもの」

「そう言うもんかな?」

 

個人の感性はそれぞれだしね。

 

「ところで、お客さん?」

「ええ。お父さんの昔の知り合いなんだって」

「へぇ~…」

 

お父さんの昔馴染み…か。

どんな人だろう?興味あるな…。

 

「取り敢えず部屋に荷物置いて来たら?」

「うん。そうする」

 

母さんに言われて、私は自分の部屋に荷物を置いて、ついでに着替えてくることにした。

今はまだ制服だしね。

私の部屋はとても綺麗で、いつもお母さんが掃除してくれているのがよく分かった。

後で『ありがとう』って言おう。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 私服に着替えてからリビングに行くと、そこではお父さんがソファーに座って対面越しに誰かと楽しそうに話していた。

 

「がっはっはっ!そんな事もあったな!」

「はい。懐かしいものです」

 

あのお父さんが楽しそうに話している…。

って、あの姿はどこかで見た事があるような気が……。

 

「おお!佳織か!おかえり!」

「う…うん。ただいま、お父さん」

 

今日は妙にテンションが高いな…。

 

「んん!?この子は…」

「私の娘の佳織です」

「そうかそうか!大きくなったなぁ~…」

 

そう言ってこっちを向いたお客さん。

そ…その顔は……まさか……!

 

「お…お父さん……この人は……」

「ん?もしかして、覚えないのか?」

「はい?」

 

覚えて……はい~?

こんなに体が大きくて、顎の辺りに傷跡がある人なんて、そうそう忘れないと思うけど……。

 

「この方はお父さんが昔大変お世話になった人で、『ドズル・ザビ』中将だ」

「『元・中将』だ。俺はもうお前と同じ退役軍人だぞ?」

「そうでしたな。どうも昔の癖が抜けなくて…」

「ははは!なぁ~に、気にするな!俺もよくある!」

 

ド……ド……ド……ドズル・ザビですとぉ~!?

ドズルって、あのザビ家のドズルさん!?

ギレン・ザビの弟のドズルさん!?

マジで!?なんでそんな人がここに!?

って言うか、この世界に実在してたんかい!?

なんでやねん!!!

 

しかも、なんかさっき気になる単語が飛び出たような……。

 

「た…退役軍人って……?」

「おや?もしや信。娘さんには何も言ってないのか?」

「そう言えば言ってませんでしたな。別に隠すような事でもないので、聞いてくれれば遠慮無く話したんだが……」

 

なんで聞こうとしなかったんだよ!昔の私!!

 

「父さんは昔軍人をしていてな。この人はその時の上官だったんだ」

 

ドズル・ザビが上官で、軍人で……父さんの旧姓は松永……。

 

松永信→マツナガ・シン→シン・マツナガ

 

シン・マツナガ!?

あの『白狼』の異名で知られたジオンのエースパイロットの!?

 

「軍を辞めた私は、その時の伝手で今は士官学校の教官をしているんだ」

「因みに俺が校長だ!」

 

士官学校の教官……。

確かに『学校』ではあるな……。

そこの教官ならば半分教師みたいなもん……か?

私は詳しくないからよくは知らんけど。

 

つーか、私のお父さんって滅茶苦茶有名で凄い人じゃん…。

なんで今まで分からなかったんだよ…!

馬鹿か私は!?

 

「しかし、本当に覚えていないのか?」

「何を?」

「ドズル中将……じゃなくて、ドズルさんはお前が幼い頃に何回か会っているんだぞ」

「えぇっ!?」

 

ヤバい……全っ然記憶にない……。

 

「その頃の写真がどこかにあった筈だ。どこだったかな?」

「これかしら?」

 

ニコニコ顔で母さんがリビングに入ってきた。

その手には本のような物が握られている。

 

「それって……」

「昔のアルバムか。懐かしいな」

 

テーブルにアルバムを置いて、中を開く。

そこには沢山の写真が貼り付けられていた。

 

「ほら、これだ」

「え?」

 

お父さんが指差した場所には、幼い私が見知らぬ女の子と一緒にドズルさんの肩の上に乗っている写真があった。

 

「覚えていないのも無理はない。あの頃はまだ2~3歳ぐらいだったしな」

 

そんな昔の事だったのか…。

 

「あの……この女の子は…」

「この子は俺の娘のミネバだ。丁度、今年でお嬢ちゃんと同い年になるか」

「ミネバ……」

 

ミネバって…あのミネバだよな?

劇中でのドズル・ザビの忘れ形見で、ユニコーンではバナージとリア充してた子。

 

「佳織とミネバちゃんは、幼馴染になるのかしら?」

「そうかもしれんな!」

 

一夏……箒……鈴……。

私達の知らない所で、いつの間にか幼馴染が増えてたみたいです…。

しかも、私的にはミネバこそが正真正銘のファースト幼馴染じゃんか!

ついさっきまで顔はおろか、存在すら知らなかったのに!

なんか、めっちゃ申し訳ないんですけど!

 

「いつか機会があったら、こっちに連れてこよう。あいつもきっと喜ぶに違いない!」

 

私としても、一度ちゃんと会って話をした方がいいとは思うけど、、会ったら会ったで罪悪感で胃がどうにかなりそう…。

 

「そうだ!お嬢ちゃんの噂は聞いてるぞ!」

「噂?」

 

この流れは……まさか……

 

「IS学園の『赤い彗星』。IS業界や軍関係者の中では相当な有名人になってるぞ」

「そ…そうですか……」

 

またこのネタかよ!!

家でくらい『赤い彗星』の事は忘れさせてくれませんかねぇ!?

 

「これで佳織の将来は安泰ね」

「うむ。卒業後は各企業や各国からスカウトされるかもな」

「今から将来が楽しみだな!」

 

スカウト……か。

もしそうなれば、少しは親孝行出来るかな…。

 

~♪

 

「おや?」

 

私の携帯に着信が来た。誰からだろう?

そう思って画面を見てみると……

 

「一夏だ」

 

どうしたのかしらん?

 

携帯を持って廊下に出て、そこで通話に出た。

 

「もしもし?」

『あ、佳織?今大丈夫?』

「うん。問題無いよ」

『よかった~。ついさっき家の掃除が終わって、お腹が空いちゃったから、昼食ついでに弾の家に行こうと思ってさ、一緒に行かない?』

「弾の家か…」

 

原作同様に食堂を営んでいるんだよね。

あそこの御飯って美味しいんだよな~♡

 

『あ……でも、折角の家族団欒を邪魔しちゃ悪いかな?』

「大丈夫だよ。今、こっちはお父さんのお客さんが来てるから」

 

想像以上に超大物だけど。

 

「それに、今日は泊まっていって、明日の早朝に学園には戻るつもりだから」

『そうなんだ。じゃあ、家の前で待ってるから』

「分かった。すぐ行くね」

 

はい、ポチッとな。

 

んじゃ、早速両親に許可を取りますかね。

まずはリビングに戻ってっと。

 

「さっき一夏から電話があって、今から弾の家に行かないかって誘われた」

「行くの?」

「そのつもり」

「じゃあ、ご飯は向こうで食べてくる?」

「うん」

「分かったわ。気を付けていってらっしゃい」

「いってきます」

 

さて…と、部屋に戻って軽く準備をして…

 

「待ちなさい、佳織」

「お父さん?」

 

いきなりどうした?

 

「別に遊びに行くのは構わない。だがな……」

 

な…なんだ……この迫力は……

 

「男女交際は私の目が黒いうちは絶対に認めんからな!!」

「いきなり何を言ってるんですかね!この人は!!」

 

あの弾と男女交際?

いやいやいや……絶対に有り得ないから!

 

「確かに彼は誠実でいい少年だ。だが…」

 

あ、これは話が長くなるフラグだ。

 

「はっはっはっ!あの『白狼』も、娘の事となると形無しだな!」

 

完全に他人事だ…。

 

「しかし!同じ娘を持つ身として気持ちは分かる!」

 

分かるんかい。

 

「やはり、ミネバに相応しいのは今時のチャラチャラしたような奴じゃなくて、もっとこう…しっかりと将来のビジョンを見据えた…」

 

この人も同じ穴のムジナでした。

 

「この二人の事は放っておいて、さっさと行った方がいいわよ」

「だね……」

 

ここで足止めを食らうのは御免だ。

 

てなわけで、とっとと部屋に戻って準備をして、れっつらご~!

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「てな事があってさ~…」

「あはは……災難だったね」

「全くだよ…」

 

道中、一夏に愚痴を零しながら歩いていた。

 

「でも、そう言って貰える相手がいるだけいいと思うよ?」

「一夏……」

 

……軽率だった。

一夏と千冬さんには……

 

「ゴメン……」

「あ!別に責めてるわけじゃないよ!ただ、普通にそう思っただけだから」

「うん…」

 

はぁ~…どうして私って奴は…。

 

少しだけ場の空気が重くなったところで、今回の目的地である『五反田食堂』に到着。

 

「ここに来るのも久し振りだね」

「全寮制である以上、頻繁には来れないから」

 

その通り。

生徒の安全を第一に考えているIS学園は、外出の際にもちゃんと『外出届』を寮長に提出しなくてはいけない規則になっている。

私達の場合は千冬さんだね。

 

「じゃ、入りますか」

 

一夏がいつものように食堂の扉を開ける。

 

「お邪魔しま~す」

「らっしゃ~せ~…って!?」

 

店内は実にシックな感じで、今時では珍しい。

けど、この感じが逆に私は好きだ。

 

食堂では弾が形だけの接客(お客さんが殆どいないから)をしていて、厨房では弾の祖父にして五反田家の対象とも言うべき存在である『五反田厳』さんが調理をしている。

 

「か…佳織に一夏!?」

「「やっほ~」」

 

あ、ハモった。

 

「厳さんも、お久し振りです」

「おう!二人とも久し振りだな!」

 

う~ん…相変わらずワイルドな人だ。

これで既に80を超えているんだから凄い。

迫力だけなら、私のお父さんやドズルさんにも負けてない。

 

「と…取り敢えず二人とも入れ!」

「「分かった」」

 

またハモった。

何気に息ピッタリだな、私達。

 

「適当に座れよ。席なら空いてるから」

「「は~い」」

 

これで三度目だ。

流石に凄い。

 

「こっちに来るなら来るって言えよな」

「あはは……てっきり一夏から連絡が行ってると思って」

「ビックリさせようと思って」

 

サプライズだったのか。

 

「「「んん?」」」

 

なんか二階からドタドタと聞こえてきたような……。

 

「この声って、もしかして佳織さん!?」

 

叫びながら降りてきたのは、弾の妹である蘭ちゃん。

今時風のチャラい弾とは違って、実に元気な女の子だ。

けど、今の恰好は……

 

「ひ…久し振り~」

「ど…どうも……あっ!?」

 

自分の恰好に気が付いたか。

家だからラフな格好でいたい気持ちは分かるけど、タンクトップにショートパンツはやりすぎじゃ?

 

「ちょ…ちょっと待っててください!!」

 

またドタドタと二階に戻っていった。

 

「あの子も変わらないね~」

「お前もな…」

「え?」

 

そりゃ、そう簡単には変わらないでしょ。

 

「はぁ~……」

 

ありゃりゃ。実に盛大な溜息だこと。

 

(ホント、こっちの気持ちなんて全然気が付いてないんだろうな…。今の状態じゃ、仮に佳織に告白しても、絶対に意味は伝わらないな…)

 

何か悩み事かな?

彼もお年頃だしね~。

 

(プププ……弾、哀れな奴…♡実にワロス)

 

で、一夏は一夏で邪悪な笑みをしてるし。

二人はマジでどうした?

 

「お待たせしました!!」

 

あら、降りてきた。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

真っ白な半袖のワンピースにフリルのついた黒いニーソを履いている。

さっきとは完全に真逆だ。

 

(負けませんからね……一夏さん!!)

(それはこっちのセリフだよ!!)

 

え?え?なんで二人は見つめ合ってるの?

火花が散ってるの?

 

「「フフフフフ……」」

「……なんなの?」

「さぁな……」

 

で、弾君は弾君で呆れた目でこっちを見てるし。

 

「弾。仕事はもういいから、嬢ちゃん達を二階に連れていけ」

「いいのか?」

「馬鹿野郎。折角遊びに来てくれた美少女二人を放置する気か?」

「爺ちゃんの口から美少女って言葉が出て来た…」

 

驚くところってそこ?

 

「昼頃になったらまた降りて来い。飯を用意しておいてやる」

「「は~い」」

 

意気揚々と来たのはいいけど、まだお昼には早いからね。

 

「じゃ、取り敢えず俺の部屋に行くか」

 

これもいつもの事だね。

 

「な…何言ってんのよ!お兄!女の子を二人も部屋に連れ込むなんて!」

「人聞きの悪い事を言うな!!何もする気ね~よ!!」

「って言うか、もししたら私がぶっ飛ばす」

 

一夏の目……本気だ…!

ゴゴゴ…って効果音も見えるし…。

 

「一夏さん。男は狼なんですよ。だから、私も一緒に行きます」

「いや来るなよ。唯でさえ狭い部屋がもっと狭くなっちまうだろうが」

「お兄に拒否権はありません」

「なんでだよ!?」

「「弾……」」

 

相変わらず、五反田家でのヒエラルキーが一番下なんだね~。

 

弾の立ち位置を哀れに感じながら、私達は二階に上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんと、まだまだ五反田家での話は終わりません。

次回に続きます。

今回出て来たドズルは、ある意味フラグです。

彼が登場したと言う事は、他の一年戦争で活躍したジオン軍のエースパイロットも……?


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第21話 思春期の少年の葛藤

なんか今日…川沿いの道を歩いていたら、黒い蛇に遭遇して、めっちゃ威嚇されました。

急いで逃げて、少ししてからもう一度同じ場所を通ると、既にいなくなってました。

まだ、あの付近に潜んでいるのかな…?






 いきなりウチに遊びに来た佳織と一夏を爺ちゃんに言われるがまま、俺は自分の部屋へと案内した。

なんでか妹の蘭も一緒についてきたけど…。

 

「だって、お兄が二人に何かしたら大変じゃない」

「どんだけ信用無いんだよ俺は!?」

「え……?」

「お願いします。いきなり真剣な顔にならないでください」

 

どうして俺だけこんな……。

 

「わ~…変わらないね~」

「変わってたまるか」

 

まだお前等がIS学園に入ってから数か月しか経ってねぇんだぞ。

そう簡単に部屋のレイアウトが変わるかよ。

 

「あはは~!ばた~ん!」

「お…お前……ちょっ!」

「ん~?何~?」

 

佳織の奴!なんでいきなり俺のベットにダイブするんだよ!?

幾らなんでも図々しくないか!?

 

「佳織ってば、はじけてるね~」

「だって~、家以外にリラックスできる場所って言えば、ここしかないもん」

「あ~……」

 

……そんなにあの学園は大変なのか?

何気に一夏の奴も納得気味な顔してるし…。

 

「つーか!とっとと降りろよ!」

「え~?別にいいじゃん。減るもんじゃなし」

「(主に俺のSAN値が)減るんだよ!」

「ぶ~ぶ~」

「あざとくしてもダメ」

「ちぇっ。前はこれさえすればよかったのに」

「弾も成長してるんだよ…………多分」

「多分!?」

 

お…俺だって少しは大人になって………あれ?

 

(冷静に考えたら、別に高校生になっても俺の生活に劇的な変化って無くね?)

 

いつものようにクラスの連中とばかやって、授業や勉強に追われて……そして、家じゃ手伝いと称してのバイトに勤しんで……

 

「俺って……なんにも変ってねぇ……」

「あら。急に落ち込んだ」

「今日の弾は緩急が激しいね」

「全く…お兄は……」

 

で、仕舞には妹からは溜息を吐かれる始末。

 

「ところでお兄。折角来てくれた佳織さんと一夏さんにお茶は?」

「え?」

 

お…お茶?

 

「はぁ~…それぐらいの気遣いも出来ないから、いつまで経っても彼女が出来ないんだよ」

「余計なお世話じゃ!」

 

ここで兄の心を抉りに来るな!

 

「しょうがない。私が持ってきてあげる。感謝してよね」

 

なんて言ってはいるが、本当は……

 

(ふふふ~♡ここで『出来る女』アピールをして、佳織さんに見直して貰えば、あるいは……)

 

なんて事を考えてるんだろうな。

だって、モロに顔に出てるもん。

伊達にこいつの兄をずっとしてきたわけじゃない。

 

ニヤニヤしながら、蘭は一旦部屋を出ていった。

 

「あの子も変わらないね」

「だね~。確か、今は学校の生徒会長をしてるんだっけ?」

「へぇ~…凄いな~」

 

アイツを生徒会長に立候補した連中の頭を本気で心配する今日この頃。

 

「そういや佳織。お前いつの間に、あんなにも有名になってるんだよ」

「う……」

 

あ、なんか不味い事を聞いたか?

 

「その情報のソースは…ネット?」

「まぁな。動画の再生数とか凄い数になってるぞ」

「マジで?」

「マジで」

 

ほんの数日で100万再生突破してたしな。

久方振りに本気で驚いたわ。

 

「俺も動画見たけどよ、あれってどういうことだよ?」

「どういうって言われてもな……」

 

誤魔化すように頭を掻く佳織。

こいつがこんな風にする時は、大抵が本気で困っている時だ。

 

「……やめとくか」

「え?」

「だって、お前もこの話題が嫌なんだろ?」

「まぁ……ね。学園じゃずっと騒がれるし……」

「じゃあ佳織って、あの事も知らないの?」

「あの事?」

 

なんだなんだ?

 

「実はね、学園で密かに佳織の非公式ファンクラブが設立したらしいって噂」

「ファンクラブとな!?」

 

それは…またなんとも……。

 

「と言うかさ……誰が最初に私の事を『赤い彗星』って呼びだしたのかな~?」

「さぁ?少なくともオタク気質の人である事は間違いないと思う」

「俺もそう思うわ。完全に中二病全開の異名だしな」

「や~め~てぇ~!!」

 

っておい!悶絶するのは勝手だけど、俺のベットの上でゴロゴロするな!

唯でさえ薄着なのに!

 

大体な!佳織も一夏もスカートが短すぎるんだよ!

少しでも風が吹いたら中が見えそうじゃねぇか!

お前等な、自分の姿を鏡で見た事あるのか!?

二人共、そこら辺の読者モデルが裸足で逃げ出すレベルの美少女なんだぞ!

スタイルも抜群だし!

正直言うと、お前達の私服って目のやり場にすっごい困るんだよ!

 

「どうしたの?急に黙って」

「なんでもない」

 

くそっ…!意識したら俺のムスコが急に元気になりやがった…!

耐えろ……耐えるんだ俺!!

静まれ~!!!

 

「変な弾」

「いつもの事じゃない?」

 

言いたい放題言いやがって…!

 

「お……」

 

ち…沈静化してきた…。

やっと落ち着ける……

 

「あ、そーだ」

 

ぬ…ぬを!?

 

「久し振りに一緒に皆でゲームでもしようよ」

 

か…佳織が急に俺の背中に抱き着いてきやがった!?

 

「ちょ……佳織?」

「どったの?」

 

お…おっぱいが背中に当たっとります……!

 

拝啓 父上様 母上様

 

海はどうして青いんだろう。

FFは一体何処までシリーズが続くんだろう。

スパイダーマンはマスクを付けている間って息苦しくないのかな?

ストⅡのリュウって普段はどんな生活をしてるんだ?

KOFの京はいつまで高校生をしてるつもりだ?

弾はもう佳織のおっぱい攻撃に耐えられそうにありません。

先立つ不孝をお許しください。

 

五反田弾。

 

「今度は動かなくなった」

「本当にどうしたの?具合でも悪い?」

 

今度は一夏が俺の隣に来て前屈みになりやがった。

胸の谷間が見えとります…。

 

このままいったらもう……俺は狼さんになっちゃうぞ?

 

「お茶持って来たよ~……」

「げ」

 

よりにもよって、このタイミングで戻って来るのかよ!?

 

「何をやってるの…?お兄……」

 

マジ切れしとりますがな~!

 

思ったよりも冷静みたいで、床に四人分の麦茶が乗ったお盆を床に置いてから、こっちに来た。

 

「佳織さん、そんな風にしてると赤ちゃんが出来ちゃいますよ」

「「「いやいやいやいや」」」

 

んなわけあるか!

お前は俺をなんだと思ってるんだ!

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 少しして、ようやく佳織は俺から離れてくれた。

まだ背中に感触は残ってるけど…。

 

「危うく実の兄を警察に叩きだすところだった…」

「本当に危ねぇな!?」

 

問答無用かよ!?

 

「佳織。少しは慎みを持てよ」

「十分持ってるつもりだけど?」

「普通、慎み深い女子は男の背中にいきなり抱きつきません」

「弾なら別にいいんじゃない?だって友達でしょ?」

 

完全に俺の事を異性として見てないな…。

多分、一夏も。

だって、二人ともミニスカートを履いて生足晒してるのに、全く動揺してないし。

 

「そ…そういや、一夏からメールで知らせて貰ったんだけどよ、鈴が転校してきたんだって?」

「うん。私達の隣のクラスだけどね」

 

いつの間にとは思ったが、今は大して気にしてない。

それよりも……

 

「これで、あの頃一緒にいたメンバーが揃ったな」

「そうだね。いつか皆一緒に遊びに行こうか?」

「それいい!」

 

鈴もこの二人に負けず劣らずの美少女だしな。

中学時代はよく同級生に凄い目で見られたもんだ。

 

「鈴さんがこっちに……」

 

で、蘭はまた凄い顔になってる…っと。

こいつにとっては鈴も一夏も立派なライバルだしな。

 

俺が中学で一夏や佳織、鈴と知り合った頃に、俺を通じて三人は蘭とも仲良くなった。

最初は至って普通の関係だったが、佳織が蘭によく勉強を教えるようになってから、少しずつ懐くように。

そして、俺が佳織の学校での様子……主に生徒会副会長やクラス委員を兼任して頑張っている事を話したら、あっという間に尊敬の眼差しに。

それがいつしか禁断の恋心に発展した…って訳だ。

こいつが生徒会長になろうとしたのも、佳織を完全に意識しての事らしい。

佳織も厄介な奴に背中を追いかけられてるな。

 

「IS学園って全寮制なんだろ?二人はどんな奴と一緒なんだ?」

「私は幼馴染の箒と一緒だよ」

「あぁ~…前に話してた剣道が得意って言う…」

 

その子もかなりの美少女らしく、当然のように佳織LOVEみたいだ。

しかも巨乳。

 

「佳織は?」

「私は、クラスメイトの布仏本音ちゃんって女の子と一緒。ほら、この子だよ」

 

そう言って携帯の写真をこっちに見せてくれた。

 

「へぇ~…」

 

背は佳織同じか少し小さいぐらいか?

この子もかなりの美少女だ。

けど、それよりも気になるのは……

 

「「なんで抱き着いてるんだ(ですか)?」」

 

写真の中で、佳織はルームメイトの女の子と仲良さげに抱き合っているのだ。

ぶっちゃけ、すげー絵になる。

 

「だって可愛いんだもん」

 

気持ちは分かるが……それは腐った女子共や一部の女子にやる気を起こさせるだけだぞ。

現にほら……

 

「い…いつの間にこんな写真を……!」

「IS学園……噂には聞いてたけど、まさか本当に(女の子の)レベルが高いだなんて……!」

 

一人は戦慄して、もう一人は驚愕してる。

 

「……私……決めました」

「「何を?」」

 

なんだろう……猛烈に嫌な予感が……

 

「来年……IS学園を受験します!」

「はぁ~!?」

 

って、驚いてるの俺だけかよ!?

 

「え?でも…蘭ちゃんの今通っている学校って、大学までエレベーター方式で行けて、その上、かなりのネームバリューがある所じゃないの?」

「問題ありません。別に他の学校を受験してはいけないって規則はありませんし」

「まぁ…そうだよね」

 

なんとなく予想はしていたとはいえ、実際に言われるとこう……何とも言えなくなるな。

 

「言っとくけどな、IS学園には推薦なんて無いからな?佳織も一夏も猛勉強の末に入学できたんだ」

「分かってるわよ。でも、私はその佳織さんに勉強を教えて貰ってたのよ?筆記ぐらい余裕よ」

 

一体何処からその自信が出てくるんだ…。

なんとかして蘭を諦めさせるには……そうだ!

 

「い…一夏!あそこって確か、実技試験もあったよな!?」

「うん。適性が無い子はそこで振り落されるって姉さんが言ってた」

 

よし!あの千冬さんの言葉なら信用出来る!

 

「残念でした。これを見て」

「これ?」

 

徐にポケットから一枚の紙を取り出した蘭。

そこに書いてあったのは……

 

「IS簡易適性検査結果……判定A」

 

な…なんだと…!?

 

「へぇ~…Aランクなんて凄いね!」

「大抵はBかCなのに……」

 

ま…まさか…俺の作戦が裏目に出るなんて…!

 

「そんな訳で、そっちの方も問題無しです」

 

希望は絶たれた……のか?

 

「これって希望者が受けられるやつだよね?確か、政府がISの操縦者を募集する一環として定期的に開催してるって言う」

「はい。実は少し前にうちの学校で行われたんです」

「そんな……」

 

そんなの聞いてねぇよ!?

 

「そ…それでですね。入学した暁には是非とも佳織さんにご指導ご鞭撻のほどを…」

 

どこでそんな言葉を覚えたんだよ……。

 

「いやいやいや!私なんてまだまだだって!つーか、私だって現在進行形で勉強中だし!」

「え?そうなんですか?あんなに強いから、てっきり……」

「ISの試合で勝ってるからって、勉強が出来てるって訳じゃないよ。一応、基本5教科は大丈夫だけど、IS関連の勉強となると話は別。本当に難しいんだよ。専門用語のオンパレードだし」

「うんうん。私も受験勉強の時は苦労したよ。佳織と一緒に姉さんに色々と教えて貰ったしね。あれが無かったら、かなり苦戦してただろうなぁ~…」

 

こいつ等って結構成績はいい方だったよな?

それでも苦戦するって……どんだけ学業のレベルが高いんだよ、IS学園。

 

「まぁ、その時は私の友達を紹介するよ」

「友達?」

「私ね、代表候補生の友達が出来たんだ。今も何回か勉強を教わってるんだよ」

 

多分、その子も佳織に恋心を抱いてるんだろうな…。

 

「か…佳織さんがそう言うなら……」

 

蘭も妥協したし。

ホント、佳織の前じゃ借りてきた猫だよな。

 

「もう説得は無理そうだな……」

「そもそも、最初から弾に勝ち目ってあったの?」

「しれっと酷い事言わないでくれませんかね?一夏さんや」

 

俺の心はもうボドボドだ~!

 

完全にアウェーな空気になった時、部屋の扉がコンコンとノックされた。

 

『入るわよ~?』

 

この声は……母さんか?

 

声だけかけて入って来たのは、我が母の五反田蓮。

自分で言うのもなんだが、相当な美人。

佳織のお母さんにも負けてねぇ。

一応、自称『看板娘』

母さんに年齢の事を聞いて生き延びた奴はいない。

 

「佳織ちゃんに一夏ちゃん。いらっしゃい」

「「おじゃましてま~す」」

 

なんでこうも息ピッタリなんだろうな……この二人って。

 

「今、御飯が出来たから、下に降りてきなさいな」

「もうそんな時間か?」

 

携帯を見てみると、時計は11時58分を示していた。

 

「時間が過ぎるのは早いね」

「楽しい時間はあっという間に過ぎるって本当だね」

 

それって、少なくとも俺と一緒にいる事を『楽しい』って思ってくれたって事か…。

 

「……………」

 

おい母さんや。

一体何処を見てるか。

 

「佳織ちゃんか一夏ちゃんのどっちかがウチに来てくれれば、この店も安泰なんだけど……」

「「???」」

 

こいつら……絶対に意味分かってないな…。

 

「蘭もそう思うわよね?」

「うん!!!」

 

力強い頷きだこと。

 

「お腹空いたし、早く行こうよ」

「「「賛成」」」

 

さてと、今日の昼飯はな~にかな~?

 

けど、佳織がウチに来るって、つまりはそう言う事だよな…?

例え低くても、可能性はあるって思っていいんだよな?

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 その日の夕食。仲森家。

 

「てな事があったよ」

 

楽しそうに話す佳織とは裏腹に、両親二人は……

 

「流石は蓮さん……もう先手を打ってきたか…!」

(この人はこの人だし、佳織も絶対意味を理解してないわね…)

 

親バカな夫と鈍感な娘に呆れるゆかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から本格的に2巻に突入。

やっとヒロインが全員集合ですね。


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第22話 金と銀の転入生

なんか、ISの新しいゲームが出るようですね。

詳しい事は知りませんが。





 月曜日の朝。

目が覚めると、そこはもう見慣れたIS学園の敷地内に存在する学生寮の私と本音ちゃんの部屋。

けど、今日からは少しだけ部屋の様子が違う。

何故なら……

 

「ふわぁ~……。やっぱり、色々とあると落ち着くなぁ~…」

 

私と本音ちゃんが実家から持って来た私物が並べてあるからだ。

 

本音ちゃんは家から様々なぬいぐるみを持って来たみたいで、色んな動物のぬいぐるみが棚などに置いてある。

犬や猫などと言ったオーソドックスな物もあれば、鰐や鯨と言った、なんとも言えないような物もある。

どんだけ好きなんだよ…。

 

で、私が持って来たのは勿論、各種ゲーム機に家にある好きなソフト一式。

そして、好きなラノベや漫画等々。

兎に角、二人揃って趣味全開の部屋に仕上がった。

 

「さて…と。今日も一日頑張りますか」

 

先立ってまず行う事は……

 

「本音ちゃん。朝だよ~」

「ん~…?」

 

私の可愛い同居人を起床させることだ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 最早お馴染みのように、私と本音ちゃんは、途中で合流した一夏と箒とセシリアと鈴の四人と一緒に食堂へと足を運ぶ。

すると、なにやらいつもとは違って食堂が騒がしかった。

 

「朝から元気ですこと」

「若者の特権だね」

「佳織……ちょっと爺臭いわよ」

「時々、佳織は顔に似合わない事を言うよな」

 

早速ボコボコです…。

私は普通の事を言っただけなのに…。

 

「あそこなんて、なんだか変な集団になってるよ」

「ホントだ」

 

本音ちゃんが指差した所には、十数人ぐらいの女子がスクラムを組んでいた。

今から何かあるのか?

 

「ねぇ……聞いた?アレ…」

「ばっちし聞いたし!」

「え…?何の話?」

「だ~か~ら~!例の仲森さんの話よ!」

「あ~…あの『赤い彗星』の」

「いい話?それとも悪い話?」

「極上にいい話!」

「ふむ……是非とも聞こうか」

「なにカッコつけてんのよ…」

「それって、試合中の仲森さんの真似?」

「う……。だって、IS装備してる時の仲森さんって、すっごくカッコいいんだもん…」

「わかる~!」

「っていうか、話が先に進まないから」

「ゴメン……」

「で?実際にどんな話な訳?」

「それがね、なんでも……今度ある学年別トーナメントで……」

 

う~ん……喧騒に紛れてよく聞こえない。

流石に、入り口付近からじゃ難しいか。

 

「う…嘘でしょ!?それマジ!?」

「マジもマジも大マジよ!」

「そっか~……」

 

……深く気にしたら負けな気がしてきた。

 

「まずは朝ご飯を食べようか…」

「賛成ですわ」

「うん…」

 

私も今は立派な女子だけど、未だに女子高生特有の空気には慣れそうにない。

なんつーか……独特すぎるんだよね~。

 

そんな私の朝ごはんは『トーストセット』。

今日はなんとなくパンな気分なのです。

 

他の皆も朝食を注文してから受け取る。

そして、適当に空いている席に座るが、その直後に視線がこっちに集中した。

 

「あ!仲森さんだ!」

「え?どこどこ!?」

 

私は街中であった芸能人か。

 

「もはや、この学園内にて『赤い彗星』の名を知らない者はいないようですわね」

「凄いね~」

「名誉な事なのか、それとも恥ずべきことなのか……それが問題だ」

「今度は哲学者っぽい事を言い出したし」

 

別にいいじゃん。

って……箒?妙に元気が無いような……。

 

(今、学園中に流れている噂……なんだか、あの夜に私が一人で口走ってしまった事に似ている気がする…。ま…まさか!あの時…私の他に誰かがいて、私の独り言を聞いていたのか!?そして、それを学園中に広めて…それが途中で変化して今に至っているのでは……)

 

さっきからずっと百面相してるし。

ちょっと面白い。

 

(ヤバイヤバイヤバイ!幾らなんでも、ライバルが一気に増殖しすぎだ!!)

 

今度は焦りだしたし。

なんとも新鮮な反応を見た気がする。

 

「ねぇねぇ仲森さん!あの噂ってほんt……ぎゃぴぃっ!?」

 

あ、一瞬で制圧された。

 

「あ…はははは~!別になんでもないから~!気にしないで朝ご飯を食べててね~!」

 

集団はそそくさと食堂の端の方に。

 

「あんたバカじゃないの!?っていうか、リアルバカ!!」

「ゴメ~ン。つい口が滑って…」

「あの噂は本人にだけは内緒だって、暗黙のルールがあったでしょ!?もう忘れたの!?」

「うぅ~…」

「けど、あの様子からして、仲森さん自身は何も知らないっポイね」

「それなら一安心……なのかな?」

 

ほんと、月曜の朝っぱらから元気が有り余ってますなぁ~。

 

「なんだったのかしら?」

「さぁ?」

 

どうやら、ここにいる面々も何も知らないみたい。

だったら、聞いても無駄か。

 

「そういや、日曜に一夏と佳織って弾の家に行ったんでしょ?あいつ元気にしてた?」

「元気と言うか…なんと言うか……」

「変わってない?」

「は?どーゆーこと?」

「昔のまんまだってこと」

「あぁ~…」

 

これで納得出来るんだから凄い。

 

「ねぇ~…弾って誰~?」

「簡単に言えば、私と一夏と鈴の共通の友人」

「中学の時に一緒のクラスだったのよ」

 

今は違う高校になってるけど、未だに繋がりは切れてない事に感動してたりする。

友情って尊い……って、男の子の話をセシリアの前でするのはヤバかったかな?

 

「?どうしましたの?」

 

あ…あれ?なんにも変化なし?

 

「あの…さ。今の話で何か思った事は……」

「特には何も。佳織さん達のご友人の方なのでしょう?名前の響きからして男性のようですが」

 

え……ええ?ど…どうして?

原作のようになってないから、セシリアは女尊男否的な思考のままじゃ……。

 

(ま…まさか!?)

 

今にして思えば、最初の会話の時も…それっぽい発言を一切してない!

この世界線のセシリアは最初っから男に対して否定的な考えを持ってない!?

 

「佳織?手が止まってるよ?」

「え?あ……そうだね」

 

今更、こんな変化を発見するなんて……。

 

(この分じゃ、後でやって来る二人もどう変化してるか分からないな…)

 

だって、一夏が女性である時点で男装の必要性は無いし、一夏がモンドグロッソに行ってないから、誘拐はされてない。

 

マジで先が読めません……。

 

「そうそう。その時にさ、蘭ちゃんがいきなり『IS学園に行く!』って言いだして、弾がめっちゃ困ってた」

「へぇ~…あの子が。絶対に佳織がいるからでしょ」

「間違いないよ」

 

え?なんでそこで私の名前が登場するの?

 

「蘭ってば、頭はいいから大丈夫なんじゃないの?」

「簡易適性でAを出してたし」

「うわぁ~……それってなんか、マジで来年には来そうじゃない?」

 

蘭ちゃんならあり得るかも。

何気にIS学園の制服も似合いそうだし。

 

「なんか……三人だけで盛り上がってますわね…」

「だな…。完全に置いてきぼりだ」

「もぐもぐ……」

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 朝食を食べ終えてから教室に向かうと、クラスの皆がワイワイと何かを話していた。

 

「やっぱ、ハヅキ社のやつが一番かな~」

「そう?なんかハヅキのって、デザインだけって気がするけど」

「それがいいんじゃない!」

「私的にはミューレイのが一番かな?特にスムーズモデルが」

「あれか~…。確かに性能は悪くないけど、いかんせん値段がね~」

 

ふむふむ……どうやら皆はISスーツの事について話しているみたいだ。

 

「皆、おはよ~」

「おはよ~!って、丁度良かった!仲森さんの、あの赤いISスーツってどこ製の?かなりカッコよかったけど」

「あ~…あれね~…」

 

寧ろ知りたいのはこっちなんだよな~。

あれってリヴァイヴⅡの中にあったヤツだし。

 

「た…多分、デュノア社製じゃない……かな?知らないけど」

「そっか~。あそこも悪くないもんね~」

「でも、エンブレムまで入っている特注製って凄いよね。やっぱ赤い彗星だから?」

「それは関係ないでしょ」

 

あったらこっちが驚くわ。

 

「赤いISスーツ……。青いISスーツを愛用している私と佳織さんが並べば、きっといいアクセントになりますわね!」

「赤と青だもんね~」

 

色的にはそうかもね。

ここに黄色でも来ればもっと完璧。

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知する事により、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達し、ISはそれによって必要とされる動きをします。更に、このスーツは耐久性にも優れていて、一般的な小口径拳銃の銃弾ぐらいなら余裕で受け止められます。でも、流石に衝撃を完全に消す事は出来ませんから、そこには注意が必要ですね」

 

おぉ~!山田先生が教室に入りながらスラスラと説明をしてくれた~!

思わずパチパチパチ~と拍手をしてしまった。

 

「流石は山ちゃん!」

「それほどでも~……って、山ちゃんっ!?」

 

いつの間に渾名が……。

それだけ親しみやすいって事かな?

 

「山ピー見直したよ~!」

「今度は山ピー!?」

 

二つ目だ……。

生徒に二つも渾名を与えられる先生ってのも貴重な存在だな…。

 

「と…とにかく!今日が皆さんのISスーツの申込み開始日になります。忘れないでくださいね!」

「「「「「は~い!」」」」」

 

本当に分かってるのかな…?

 

「山田先生。ドンマイです」

「仲森さぁ~ん…」

 

泣きそうな顔でこっちを見ないでください。

保護欲が刺激されると言うか…。

妙に頭を撫でたくなる。

 

「あのさ……皆。渾名で呼ぶのも悪くは無いけど、こうして学校にいる時はちゃんと『山田先生』って呼んであげようよ。ね?」

 

一応、フォローぐらいはしておくか。

私だってクラス代表なんだし。

 

「う~ん……仲森さんがそう言うなら…」

「確かに、公私の区別はつけなくちゃ駄目だよね…」

 

あら、意外と素直。

 

「ありがとうございますぅ~…」

「あはは……」

 

本当にこの人って大人なんだよね?

私達と一緒に制服を着て並んでても違和感無いんですけど?

 

「とうとう教師にまでフラグが立ち始めたよ…」

「かおりん……恐ろしい子!」

「油断も隙もあったものじゃありませんわね…」

 

なんでそこで呆れた目で見られるの!?

 

「おはよう、諸君」

「「「「「おはようございます」」」」」

 

さっきまでのほのぼのとした空気が一瞬で因果地平の彼方へ。

織斑先生のおな~り~。

一気に教室中が引き締まる。

同時に、一斉に自分の席へと一直線。

 

「日直」

「起立!礼!着席!」

 

いつもこの調子ならどれだけいいか。

 

「本日から本格的な実技訓練に入る。訓練機ではあるが、きちんとしたISを使用する授業になる為、各々気を引き締めるように。それぞれのISスーツが届くまでは学校指定の物を使うので忘れないように。あと、万が一にでも忘れた場合は学校指定の水着で訓練を受けて貰うからな。それすらも忘れた場合は……最悪下着でもいいだろう。ここには同性しかいないのだからな。と言う訳で佳織はドンドン忘れていいからな」

「なんでやねん」

 

最後に私の事を名指しで呼ばないでください。

それと、私は絶対にISスーツは忘れないから!

っていうか、忘れてたまるか!!

何が悲しくて下着でISに乗らなくちゃいけないねん!

 

そういや、ここの指定水着ってオタクにとっての黄金聖衣とも言うべき由緒正しい紺色のスク水なんだよね…。

いつの日か、あれを着る日が来るのだろうか…。

布面積的にはISスーツと大差ないけど。

 

「では山田先生。お願いします」

「あ……はい」

 

山田先生にバトンタッチ。

 

「えっとですね……実は、今日はこのクラスに転校生が来ます!しかも二名です!」

「「「「「「ええええぇ~!?」」」」」」

 

来たか……。

一体どんな風に変化しているのやら。

 

「ねぇ……ちょっとおかしくない?同じ時期に転校生が二人も来たらさ、普通は別々のクラスに分散させるんじゃない?」

 

隣の一夏がひそひそ声で常識的な意見を言ってきた。

 

「私もそれには同感だけど、多分、生徒には知らされないような事情があるんだよ。きっと」

「なんか嫌だね……」

 

一夏が嫌悪感を抱く気持ちは分かる。

でも、世の中には汚い大人がいるのもまた事実なんだよ。

悲しいけどね。

 

「では、入ってきてください」

「「失礼します」」

 

教室のドアが開き、廊下から二つの人影が入ってくる。

片方は金髪、もう片方は銀髪だった。

表情、髪の色共に対照的な二人だ。

けど、それよりも気になったのは……

 

(やっぱり、ちゃんと女子の制服を着てるんだな…)

 

それもそっか。

男子の制服を着る理由が無いもんな。

 

「それじゃあ、自己紹介をお願いします」

「分かりました。なら僕から」

 

山田先生に促されて、金髪少女が一歩前に出た。

 

「皆さん初めまして。フランスから来たシャルロット・デュノアと言います。一応、フランスの代表候補生を務めると共に、デュノア社の専属IS操縦者をしています」

 

二つを兼任してるのか…。

 

「この度は、二つの理由でIS学園に来ました。一つは僕自身の研鑽の為。。もう一つはデュノア社からの出向で来ました」

 

デュノア社からの出向…?

 

「デュノア社って事は、もしかして仲森さんと関係あるのかな?」

「そうなります。詳しい事はここでは話せませんが…」

 

私がリヴァイヴⅡを専用機としているからか…。

成る程、シャルロットは私の機体の為に来た…と。

それを隠す様子が無いって事は、今回は会社から正式な仕事として来日したのね。

見る感じ、何も企んでいるようには見えない。

 

「これからよろしくお願いします」

 

クラスからの拍手が鳴り響き、それと同時にシャルロットは一歩下がった。

 

「では、次は私か」

 

今度は銀髪少女が前に出る。

 

「私はドイツから来たラウラ・ボーデヴィッヒだ。ドイツの代表候補生をしている」

 

おや、思ったよりも話すね。

原作じゃ名前だけ言って引っ込んだのに。

 

「今回、このIS学園にはある目的を持って来た」

 

目的?

 

「ん?」

 

あ、なんかこっち来た。と思ったら、隣に行った。

 

「お前が織斑一夏か?」

「そ…そうだけど?」

「そうか……」

 

ビ…ビンタか!?って、それだけ?

なんにもしないの?

 

「織斑教官。仲森佳織と言うのはどこにいますか?」

「仲森ならばお前の左斜め前にいる。それと、ここでは私の事は織斑先生と呼べ。私はもう教官ではないし、今のお前はここの一生徒にすぎん」

「了解です」

 

見事な敬礼ですこと。

つーか、お前も私が目的かい!

一夏の事を逆恨みしていないのはよく分かったけど、だったらなんで日本に来たの?

 

「…………」

 

やべ、目線があった。

こ…こっちに来るよ!?

 

「お前が『赤い彗星』の仲森佳織か」

「い…一応そうです…」

 

その異名はドイツにまで知れ渡っているんだ…。

もう、この事に関するツッコみは諦めたほうがいいかもしれない。

 

「単刀直入に言う。私はお前をスカウトしに来た。私と一緒にドイツに来て、我が隊に入ってくれないか?」

「………………ひゃい?」

 

あ、驚きのあまり噛んじゃった。

 

「今……なんて?」

「聞こえなかったのか?もう一度言うぞ。私と一緒にドイツに来て、我が隊に入ってほしい」

 

うん、聞き間違いじゃなかったっぽい。

どうしようか。

 

「「「「「「えぇ~~~~~~~~~~~~!?」」」」」」

 

皆は驚いてるけど、私は一言だけ言わせてもらうよ。

 

「なんでやねん!!!!!」

 

今日だけで何回言ったか分からないツッコみは、騒がしい教室に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そんな訳で、今回の金銀コンビが来た理由は割と穏やか(?)です。

シャルロットが来た詳しい理由は次回辺りに。


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第23話 実習も楽じゃない

やっと…やっと…リバーシブルガンダムGET~~~~!!

あと、バリスティックウェポンもGET~~~~~!!

と、言う事は……分かるな?







 ラウラのいきなりの衝撃発言で朝のホームルームはなし崩し的に終了。

千冬さんの号令で授業の準備をし始める私達。

なんでも、今日の授業は二組との合同で、行うようで、内容はISの模擬戦闘らしい。

あぁ~…山田先生が大活躍するアレね。

実はちょっぴり楽しみだったり。

あの『ほんわか』とした山田先生の隠れた実力が見られると思うと、少しだけワクワクする。

 

教室で皆揃ってISスーツに着替えているが、案の定と言うかなんというか、転校生の二人は皆に質問攻めにあっていた。

 

シャルロットは元々から社交的な性格をしているお蔭で、皆の質問にも難なく答えている。

意外だったのが、ラウラが想像以上に皆に溶け込んでいる事。

あの原作での唯我独尊オーラはどこに行ったのか。

少し戸惑いながらも、皆とちゃんと会話をしている。

その内容の殆どが、さっきのスカウト発言についてだけど。

 

「さっきは本当にびっくりしたね」

「うん…。まさか、開口一番にあんな事を言われるとは思わなかった…」

 

自分の知識がもう通用しない事は重々承知してはいたが、まさかここまでのバタフライエフェクトが起きているなんて、誰が想像するだろうか。

 

「聞くだけ野暮だとは思うけど、ドイツに行くつもりは……」

「無い無い!まだまだ日本でやりたい事が一杯あるもん!」

 

つーか、ドイツになんて行ったら……私の数少ない楽しみの一つである『アキバ散策』が出来ないじゃないか!

長期の休み(主に夏休みや冬休み)の時にいっつも欠かさずに行う、私にとって最も大事な行事。

勿論、夏コミ&冬コミも行きます。

 

「それを聞いて安心したよ~。万が一って事があるからさ……」

「大丈夫だって。少なくとも、皆に黙ってどこかに行くような事は絶対にしないから」

 

な~んて言ってると、これがまた嫌なフラグになったりするんだよね~。

……ならないよね!?なりませんよね!?

お願いだからそうだと言って作者様!

 

「ふぅ~……日本の学校って凄いな……」

 

いつの間にかISスーツに着替えて、汗を拭いながらこっちに来たのは、件の転校生の一人『シャルロット・デュノア』

本来ならば悲劇のヒロインな彼女だが、今回は全くそんな気配を漂わせない。

 

「え~っと……君が仲森佳織さん?」

「そう…だけど…」

「そっか。よろしくね。僕の事は気軽に『シャルロット』って呼んでくれていいから」

「了解。これからはそう呼ぶことにするよ。私の事も『佳織』って呼んでくれていいから」

「分かったよ。これからよろしく、佳織」

 

う~ん…笑顔が眩しいですな~。

まさに正統派美少女って感じ。

でも、今回のシャルロットってデフォで僕っ娘なんだな。

個性的で悪くは無いけど。

 

「そう言えばさっき、デュノア社の出向で来たって言ってたけど、それって……」

「うん。君の機体『ラファール・リヴァイヴⅡ』についてだよ。今は時間が無いから詳しくは話せないけど…」

 

そういやそうだ。

早く着替えないと、千冬さんの出席簿が脳天に直撃する!

なんでか私は未だに一撃も貰ってないけど、

 

「今日の放課後って時間あるかな?」

「放課後……」

 

私の放課後は基本的にアリーナでISの訓練か、アリーナが使えない時はトレーニングルームで基礎トレをするぐらい。

勉強は夜する派だから。

 

「多分、大丈夫だと思う」

「よかった!佳織の専用機の事で話があるから、放課後に僕と一緒に格納庫まで行ってくれないかな?」

「格納庫か……。うん、別にいいよ」

 

一体何の話かな?

全く想像が出来ないざんす。

 

「む~……」

 

で、そこでむくれている一夏さんはどうしたのよ?

 

「あ…あれ?なんか僕…睨まれてる?」

「あはは……あまり気にしないで」

「そ…そう?」

 

そうそう。気にしたら負けだよ、シャルロット。

 

な~んて話してたら、本格的に時間が迫って来たので、急いで着替えてグラウンドに直行した私達であった。

 

余談ではあるけど、シャルロットが女子として来たお蔭で、原作のように移動中に女子の集団に道を塞がれる事は無かった。

もしも塞がれてたら、完全に遅刻だった…。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「全員集まったな?では、本日より格闘及び射撃を含んだ実践訓練を開始する!」

「「「「「はい!!」」」」」

 

なんとか遅刻せずにグラウンドに集合した私達。

千冬さんの言葉に力強く挨拶する。

 

「早速ではあるが、今日の授業はまず、目の前で戦闘の実演を行ってもらう。そうだな……」

 

列をじ~っと眺める千冬さん。

でも、私の予想が正しければ、今回戦わされるのは……

 

「よし。凰にオルコット。二人とも前に出ろ」

「「はい!」」

 

だよね。

うん、なんとなく分かってました。

 

「って、なんでアタシ?」

「デモンストレーションをするのは大いに結構なのですけど、余りモチベーションは上がりませんわね…」

 

あくまで授業の一環だしね。

 

「はぁ……仕方あるまい」

 

お?このパターンは……。

 

「お前等。少しはやる気を出せ。ここでカッコいい姿を見せれば、少しは佳織がお前達の事を意識するかもしれんぞ?」

「「!!!」」

 

ぜ~ったいに何か言ったな。

二人の耳元で囁くように呟いてたから。

でも、ここからじゃ流石に聞こえなかった。

一体なんて言ったんだろう?

 

「こ…ここはやはり、栄光あるイギリスの代表候補生である、このセシリア・オルコットがやるしかありませんわね!」

「もうそろそろ…アタシの本気って奴を見せるいい機会だと思ってたのよね!」

 

急に気力150ですか。

それともテンション『超強気』かな?

 

そして、二人がこうなった切っ掛けを生んだ張本人は……

 

「ふっ……ちょろいな。私の佳織がそう簡単にお前等に振り向くわけが無かろう」

 

なんかニヒルな笑みでこっちを見てるんですけど~!?

 

「それで?肝心の対戦相手は何方ですの?もしや、鈴さん?」

「あら。別にアタシはそれでも構わないわよ。アンタとは一度、白黒をはっきりさせたいと思ってたし」

 

うぉう……やる気スイッチがONになった途端、急に好戦的になったな。

 

「そう慌てるな。対戦相手ならばちゃんと用意してある」

「「え?」」

 

お?来るか?

 

私は頭上に注意を払いながら見上げる。

すると、そこには……

 

「ど…どいてくださぁ~い!!」

 

案の定、山田先生がラファールを身に纏った状態で自由落下しているじゃありませんか。

やっぱ、一夏の所に落ちるのかな?

な~んて呑気に構えていたら、猛烈に嫌な予感がした。

 

「あ…あれ…?」

 

これ……私の方に落ちてきてない!?

どうして何故私の所に!?

 

「佳織!!危ない!!」

「かおりん!!」

 

箒と本音ちゃんの叫ぶ声が聞こえたと同時に、私は咄嗟にISを起動。

衝撃に備えようとしたが、私の中のシャア様はそれだけで終わらせてはくれなかった。

 

山田先生が真っ直ぐにこっちに向かって落下してくる。

それを、なんと私は……

 

「はぁ!!」

 

あろうことか、膝を曲げて衝撃を吸収しながらのダイレクトキャッチ!

しかも、どういう訳か、お姫様抱っこになってる!

どんな仕組みでこうなった!?

やってる私自身が一番意味不明なんですけど!?

 

「か…佳織!?大丈……夫……?」

「ほぅ……これは……」

 

一夏の表情が凍りつき、ラウラは感心した様子でこっちを見る。

 

「大丈夫ですか?山田先生」

「あ……はい……」

 

あれ?山田先生の顔が真っ赤だ。

もしかして、抱えた時の衝撃でどこか怪我でもしちゃった!?

 

「しかし、顔が赤いように見えますが……」

「な…なんでもないんですよ!?本当に!」

「そうですか……」

 

目の前で必死に手を振りながら否定する山田先生。

まぁ……大丈夫って本人が言うのなら、こっちからは何も言えないけど…。

 

「兎に角、貴女が無事でよかった」

「はいぃ!?」

「先生の身に何かあっては大変でしたから」

「心配……してくれたんですか?」

「当然です(クラス代表ですから)」

「はうぅ~……」

 

あ…あれれ?今度は頭から湯気が出てる!?

 

「「「「「「ちっ!」」」」」」

 

なんか舌打ちが6つ程聞こえましたけど!?

 

「降ろしますね」

「はいぃ~…」

 

どうして残念そうな顔になるんですか?

 

「山田先生。これからはもう少し気を付けて頂きたい」

「すいませんでした…」

 

ありゃありゃ。山田先生がまるで雨に濡れた子犬みたいに落ち込んじゃった。

 

「それから……」

 

山田先生に近づいて、その耳元で呟く。

 

「佳織に手を出すと言う事は、私を敵に回す事と同義だと思えよ?」

「ひぃぃぃぃっ!?」

 

何を言ったかは知らないけど、怖がらせちゃいけないでしょ。

 

「さて、では始めるか」

「始める…?」

「それって……」

「そうだ。今回の模擬戦の相手は山田先生だ」

「「えぇっ!?」」

 

まぁ……普段の山田先生を見ていたら、そんな反応するよね。

 

「あの……もしかして、2対1で…ですの?」

「それは流石に……」

「なんだ…不満か?それならば……」

 

あ、こっち見た。

 

「山田先生の相棒(バディ)として仲森を入れよう。それならば文句あるまい?」

「「そ…それは……」」

 

わ…私が!?

山田先生のパートナーを!?

 

「仲森もそれでいいか?」

「私でよければ」

 

拒否権なんてないだろうし。

変に抵抗するだけ無駄無駄。

 

そんな訳で、私は山田先生の隣に行った。

 

「ところで、山田先生の実力は?」

「私が誰かをパートナーに選べと言われたら、真っ先に彼女を指定する…と言えば分かるか?」

「成る程」

 

近接戦が得意な千冬さんと、遠距離戦が得意な山田先生。

タッグとしての相性はこの上なく抜群だろう。

ハッキリ言って、無敵じゃね?

 

「佳織と組むなんて……」

「これは、一気に油断出来なくなりましたわね…!」

 

まだ山田先生を過小評価してるな?

いいでしょう。この試合で山田先生の真の実力を知るがよい!

 

「では…行くとするか。山田先生、よろしくお願いします」

「こ…こちらこそ、よろしくお願いしますね!仲森さん!」

 

顔を向けると、照れながらもにっこりと微笑んでくれた。

なんつーか、普通に可愛い人だな。

 

「では、始めろ!」

 

千冬さんの号令と共に、私達四人は一斉に空へと飛翔し、模擬戦を始める。

さぁ~て……どうなるかな?

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 結果から言えば、模擬戦は私と山田先生コンビの勝利。

 

お互いに即席のコンビではあったが、向こうは向こうで思った以上に息が合っていた。

少なくとも、原作のようにいがみ合って足を引っ張り合う…なんてことは無かった。

けど、私達の方が上手だった。

正確には、山田先生の実力が上手だったと言うべきか。

 

あろうことか、山田先生はとことんまで私のサポートに徹してくれた。

私が近接戦を仕掛ければ、山田先生は後方援護を。

逆に私が遠距離からの射撃戦に移行すれば、山田先生が前に出て囮役をしてくれた。

ここまで楽しいと思ったISの試合は初めてかもしれない。

 

そういや、試合中に下ではシャルロットが皆にリヴァイヴの説明をしていたっぽいけど、内容は原作と同じだろうから、別に気にする必要はないよね?

 

「これが……山田先生の実力……」

「アタシ達がまるで赤子扱いなんて……。いつも以上に佳織の実力が引き出されてる気がしたし……」

 

試合が終わって、私達は揃って地面に降りたっている。

鈴とセシリアは疲労困憊って感じだけど、こっちは思ったよりも疲れてない。

なんか……体力ついてきた?

だとしたら嬉しいな。

 

さてっと、試合も終わった事だし、ISを収納しますか。

他の三人もISから降りてるし。

 

「仲森さんは本当に凄いですね…。こうして一緒に戦って、改めて実感しました」

「そ…そんな事はないですよ。私なんてまだまだ未熟者です」

「謙虚なんですね」

「そんなつもりはないですけど…」

 

事実を言ってるだけだし。

 

「今度は是非、対戦相手として相対したいですね」

「はは……その時が来た時は、どうかお手柔らかに」

 

今の私じゃ速攻で負けそうだけど。

 

「これでお前達もIS学園の教職員の実力が理解出来ただろう。これからはちゃんと敬意を持って接するように」

 

鈴とセシリアには悪いけど、この試合自体が山田先生の株を上げる為のものだったんだよね、きっと。

これからは少しは皆の山田先生に態度が変わればいいけど。

 

「さて…と。今この場にいる専用機持ちは仲森に織斑、オルコットに凰、デュノアにボーデヴィッヒか。では、それぞれに7人グループになって実習を行う事にする。各グループのリーダーは専用機持ちが行うこと。分かったな?では、分かれろ」

 

千冬さんが言い終わると同時に、皆がそれぞれの場所に分かれた。

 

原作みたいに1~2か所に固まるって事は無かった。

流石に、千冬さんの逆鱗に触れるリスクと天秤にかけたら、当然の行動だよね。

 

「かおりん~。丁寧に教えてね~」

「よ…よろしく頼む…」

 

私の所は本音ちゃんと箒がいた。

普段から話す人がいると、こっちもやりやすい。

 

他の所も……

 

「織斑さん!よろしくね!」

「うん。こっちこそよろしく」

 

「セシリア…ねぇ。まぁ、実力は認めるけど……」

「褒められてるんでしょうか…?」

 

「凰さんか~。ま、仲森さんと凄い戦いはしてたから、大丈夫…かな?」

「なんで疑問形!?」

 

「デュノアさんね~。お互いに未知数だから、どうなるか予想出来ないわね…」

「あはは~…。まぁ、頑張るよ…」

 

「えっと……よろしくね?」

「任せておけ。私にかかれば楽勝だ」

 

……大丈夫……かな?だよね?ね?

 

「え~っと、皆さんいいですか~?これから訓練機を一班につき一機ずつ取りに来てください。数は『打鉄』が3機にリヴァイヴが3機です。どっちか好きな方を班で決めて取りに来てくださいね~。当然、早い者勝ちですからね~」

 

早い者勝ち……ね。

私としては、自分もリヴァイヴを使用しているから、同型機の方が教えやすいけど。

 

「えっと、私はリヴァイヴにしようって思うけど、それでいい?」

「私はいいよ~。かおりんが好きな方で」

「私もだ。お前の判断に任せる」

 

二人はOKっと。

他の子にも聞いたら、他の子達もそれでいいっぽい。

てなわけで、迷わずリヴァイヴを取りに行った。

因みに、ISは手押し可能な小型ハンガーに固定してある。

 

「まずは何からしたらいいのかな…?」

 

教えて貰う事はあっても、誰かに教えるなんて滅多にしないからな~。

最後に教えたのだって、前に蘭ちゃんに教えたっきりだし。

 

「各班長の人は、まずはISの装着を手伝ってあげてくださいね。一応、全員にやってもらうつもりなので、設定でフィッティングとパーソナライズはちゃんと切ってあります。取り敢えず、午前中は実際に動かすところまでやってくださいね~」

 

またまた山田先生の声が響く。

今日は張り切ってますなぁ~。

 

「だって。じゃあ、分かりやすく出席番号順にやろうか?最初は……」

「はいは~い!私だよ!」

 

おう……元気ですな。

 

「相川さん……だよね?」

「そう!出席番号一番の相川清香!やっと出番だよ~(泣)」

「メタ発言はやめようね」

 

皆が困惑するだけだから。

 

「んじゃ、早速始めますか。相川さんってISの搭乗経験は……」

「授業で何回か」

「それなら問題無いかな。装着から起動、それから歩いてみようか。もしも時間内に出来ないと、どうなるか分からないからね……」

「そ…そうだね…。よし!真面目にやりますか!」

「態々、宣言するような事?」

 

と、まぁ……相川さんから始まって、次々と装着から起動、そして歩行と順調に進んでいった。

だけど、箒の番になった時にちょっとしたアクシデントが発生した。

 

「あ……」

「どうしたの?って…あ……」

 

どうやら、前の人が降りた時にしゃがまずに降りてしまったみたい。

 

訓練機の場合は、降りる際に必ずしゃがまないといけない。

そうじゃないと、次に乗る人が上手く乗れないから。

 

「……どうしようか…」

 

実は、私の中では答えがある程度出ているんだけど、実際にやっていいのかどうか……。

 

「………………」

「佳織?」

 

仮にここで私が渋っても、いずれ山田先生がこっちに気が付いて、結局は同じ事をする羽目になるだろう。

だったら、いっその事…!

 

「箒」

「な…なんだ?」

「ちょっと待ってて」

「え?」

 

私はリヴァイヴⅡを再び展開。

 

「では箒。失礼する」

「な……ななななななっ!?」

 

そのまま箒をお姫様抱っこ。

恥ずかしくはあるけど、こっちの方が楽なんだよ。

 

少しだけ宙に浮き、そのままコックピットに箒を運ぶ。

 

「ん?何故腕を絡ませる?」

「い…嫌か?」

「そうではないが……」

 

君の高校一年生らしからぬバストが私に押し付けられるんです~!

自分で言うのもアレだけど、私と箒の胸が押し付け合って、凄くエロい事になってる…!

 

「しののん……いいなぁ~…」

 

本音ちゃん?

 

「よし、到着だ」

「え……?」

 

何故に残念そうにする?

 

「箒は私達と一緒に訓練の経験があるから問題無いな?」

「ま…まぁな!」

「なら、いつも通りにな。大丈夫、お前になら出来る」

「そ…そうだな!私に任せておけ!」

 

意気揚々と箒は装着、起動、歩行を済ませた。

実にスムーズだったから、かなり早く終わった……のはいいんだけど……。

 

「何故にまた立ったまま降りた?」

「いや……なんと言うかな……本音にも……と思ってな」

「???」

 

本気で意味が不明。

箒は何が言いたいの?

 

「ほ…ほら!本音が待っているぞ!」

「あ…あぁ……」

 

なんか分かんないけど、まずはこれを終わらせようか。

 

「では本音。私に掴まってくれ」

「は~い♡」

 

今までで一番嬉しそうに、本音ちゃんが私にしがみついた。

 

「えへへ~♡(ありがとね~しののん~♡)」

「ふふふ……。(気にするな。こう言う時はお互いさまだ)」

 

そして、二人はどうして見つめ合ってるの?

 

「か~おりん♡」

「なんだ?」

「なんでもな~い♡」

「フッ……変な奴だ」

 

さて…と、とっとと終わらせますか。

 

(((((仲森さんと本音ちゃんが思いっきりリア充してる……)))))

 

あれ?なんで皆して生暖かい物を見るような目でこっちを見るの?

 

こうして、私達の班は想像以上に早く実習を終わらせることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと長くなってしまいましたが、これはきっとリバーシブルガンダムを手に入れてテンションが上がっているせいだと思います。

だって、めっちゃカッコいいんだもん!!


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第24話 リヴァイヴ強化

まだまだ雨が続きます。

気持ちが落ちがちになりますが、なんとか頑張っていきましょう。




「なんで……なんでこんな事に……」

「何が?」

 

お昼休み。

私達は屋上にいた。

爽やかな青空が広がっていて、絶好の日向ぼっこ日和と言える。

しかも、運のいいことに、今日に限っては他の生徒が人っ子一人いない。

 

で、私の隣で何故か落ち込んでいる箒。

屋上に設置してある丸テーブルに揃って座っている私達だが、他にはセシリアに鈴、一夏と本音ちゃん、そしてシャルロットがいる。

 

何故こうなったのか。

それを話すには、午前の授業が終わる時に遡る。

 

午前の授業が終了し、全ての道具やISを片付けていると、徐に箒が話しかけてきた。

なんでも、今日は久し振りに弁当を作ったのだが、少し作りすぎた為、私に食べてほしいとのことだった。

私としては断る理由も無いし、快くOKを出したのだが、その時にセシリアと鈴と一夏と本音ちゃんがやって来て、私が行くなら自分達も一緒に食べる!と言い出したのだ。

で、それなら折角だし、少しでも仲良くなるためにシャルロットも誘ったのだ。

本当はラウラも誘いたかったけど、彼女はいつの間にか姿を消していた。

 

「アタシ達を出し抜こうだなんて…」

「10年早いですわよ」

「ホント、油断も隙も無いね」

「しののん~。ちょっと詰めが甘かったね~」

「うぅ……」

 

何の事かは知らないけど、皆から一斉攻撃を受けてるな。

 

「な…なんか、凄く場違いな気が……」

「少ししたらすぐに慣れるよ」

「そうなの?」

「多分」

「多分なんだ…」

 

少なくとも、同じ転校生である鈴はすぐに馴染んだ。

彼女の性格もあるだろうけど。

 

「と…取り敢えず、早く食べようよ。時間も限られてる事だし」

「そう……だな」

 

よし、なんとか食事の空気に持ち込んだぞ。

 

箒の手元には包みにくるまれた弁当箱と思わしき箱がある。

他にも、セシリアの所にはバスケットが、鈴もタッパーを持ってきている。

一夏も手元には弁当箱を持参している。

因みに、本音ちゃんは購買部で菓子パンを購入して、シャルロットも同じで、私は手ぶら。

本当は私は箒が用意してくれてるっぽいから、敢えて手ぶら。

 

そうそう、一応言っておくけど、私も料理ぐらいは出来るからね。

流石に一夏レベルとはいかないけど、一般的な家庭料理ぐらいならある程度はマスターしてる。

なんせ、小学生の頃からお母さんに徹底的に教え込まれたから。

なんでも、『女なら、料理ぐらい出来なきゃダメ』らしい。

どうしてか聞いたけど、なんでか教えてくれなかった。

過去に何かあったんだろうか?

 

「はい、佳織」

「おぉ~」

 

鈴が私に渡してくれたタッパーに入っていたのは、彼女の十八番とも言うべき料理の酢豚だった。

嘗て鈴が日本に住んでいた時、彼女の実家は中華料理店を営んでいた。

その流れかは知らないが、鈴は昔から料理が上手い。

レパートリーは豊富だが、やっぱり中華料理が一番得意みたい。

 

「今朝、久し振りに作ってみたの。食べてくれるでしょ?」

「勿論!」

 

鈴の酢豚って本当に美味しいから、私好きなんだよな~♡

 

「しまった……!」

「早い者勝ちよ…!」

 

なんか言ってるけど、今は酢豚を食べましょう。

 

「んじゃ、いただきます」

 

一口パクリ。

 

「ん~!美味し~♡」

 

あぁ~!猛烈に白米が恋しい~!

 

「つーか、普通に前よりも上手になってる気がする」

「そりゃそうよ。別に向こうでISの訓練ばかりをしていたわけじゃないもの」

「そりゃそっか」

 

ISの訓練と並行して、料理の特訓もしてたのか~。

やっぱ、鈴は隠れた努力家だな~。

私も見習わないと。

 

「あ…あの…佳織さん?実は私も作って来たのですが……」

「え?」

 

セ…セシリアも?

でも、彼女の料理は……

 

思わず一夏の方を振り向く。

すると……

 

(コクン)

 

無言で頷いてくれた。

 

あんまりこういう事は言いたくないが、セシリアの料理のセンスは壊滅的と言っても過言じゃない。

前に一度、セシリアの作ってくれた料理を試食した事があるけど、あの時はマジで死にかけた。

一夏が傍にいなければ、本気でもう一度の死を迎えるところだった。

 

それ以来セシリアも反省したようで、極力キッチンに立たせないようにしていたけど、流石に不憫に感じてしまって、一夏の監修の元でセシリアの料理の特訓を密かに行った。

その結果はまだ知らされてないけど。

今日、それが分かるのか…?

 

「ど…どうぞ」

 

そう言って、静かにバスケットを開けるセシリア。

中には、サンドイッチが綺麗に並べられている。

 

「これ……試食はした?」

「はい!それはもう!」

「そう…なんだ」

 

なら大丈夫……かな?

 

「い…いただきます」

 

少しトラウマがあるけど、セシリアの好意を無駄には出来ないし、ここは勇気を振り絞っていきましょう!

 

「あむ…」

 

…………んん?これは……

 

「………美味しい?」

 

なんて言うか……普通に食べれる。

少なくとも、不快感は全く無い。

 

「よ…よかったですわ…!」

「へぇ~。やるじゃない」

 

鈴が感心した様子で笑う。

この子も間近で嘗てのセシリアの料理の破壊力を見た人間の一人だからね。

 

「本当に……本当に苦労したよ…。多分、受験の時以上に頑張ったかも…」

「そこまで言うか」

 

受験以上に困難な料理教室って……。

 

「それじゃ、次は私かな?」

 

お、遂に本命ですか。

一夏の料理はマジでプロ級だから楽しみなんだよね~♡

 

「はい、これ」

「おぉ~!」

 

一夏がテーブルに置いた弁当箱を開くと、そこには色鮮やかな料理の数々が。

どれもこれも実に美味しそう。

 

「くっ…!やっぱり、料理じゃ一夏には敵わないか……」

「凄いですわ……」

 

料理漫画的に言えば、弁当箱が輝いてる感じ?

こう『ピカー!』って。

あ、別にピカチュウの鳴き声じゃないからね。

 

「ほら、箒も早く出しなよ」

「し…しかし……」

「出さないと、昼休みが終わっちゃうよ?」

「分かっている!え…えぇ~い!」

 

なんでそんなに気合を入れるの?

 

最後に出した箒の弁当箱が開かれた。

そこにも、一夏の料理に勝るとも劣らない料理の数々が並んでいる。

 

「う…嘘…!箒もこのレベルなの…!?」

「まさか……このような……!」

 

うん、なんかさっきからずっと、鈴とセシリアが食戟のソーマに登場するモブキャラみたいな顔になってる。

この状態で美味しい料理を食べたら、裸になっちゃうんじゃ?

 

「それじゃあ、まずは箒のお弁当の唐揚げから頂こうかな?」

「い…いきなりか?」

「うん」

 

どうして動揺するの?

 

んじゃ、パクリとな。

 

「お?」

 

これはこれは……。

 

「美味しいね!でも、随分と凝ってるような気がする。これは……」

「生姜と醤油におろしニンニク。それからコショウを予め混ぜてあるんだ。隠し味は大根おろしだな」

「へぇ~。隠し味まであるなんて、なんか凄いね!」

「そ…そうか?」

「私が教えたんだけどね~」

「それを言うな!」

 

あ、一夏直伝なんだ。

それでも美味しい事には違いないけど。

 

「へぇ~…日本料理って凄いんだな~」

「あれ?アンタも料理が得意なの?」

「得意って言うか…趣味かな?この機会に料理部とかに入って日本料理を勉強したいなって思ってるんだ」

 

なんと、シャルロットは日本文化に興味があるお人だったか。

日本人としては実に嬉しい事だ。

 

「そう言えば、シャルロットの部屋割りってどうなってるの?」

「私は同じ時期に転校してきたボーデヴィッヒさんと同じ部屋になるみたい。今の時期に改めて部屋割りを決めるのは大変みたいだから」

「当然でしょうね」

 

原作では、この部屋割りで山田先生が本当に苦労してたっぽいし。

少しは負担を軽減できたのだろうか?

 

「皆すごいね~」

「そう言う本音はどうなのよ?料理出来るの?」

「出来ると思う~?」

「その発言だけで分かった」

 

そう、本音ちゃんは料理関係はからっきしなのだ。

本人曰く、『私は食べる専門だから』らしい。

実際、私が作った料理の試食をよくしてるし。

 

「佳織はどうなの?料理の方は」

「私は人並みかな?流石に一夏とかには敵わないよ」

「佳織も十分に凄いと思うけど?」

「そう?」

 

鍛えられてるとはいえ、この領域にはまだまだ及ばない。

もっと精進しなくては!

 

「つーか、さっきら佳織しか食べてないじゃない。私達も食べましょうよ」

「それもそうか」

 

ようやく気が付いたか。

早く食べないと、午後の授業に遅刻してしまう。

 

なんて言っていたが、結局はワイワイしながらの昼食になった。

主に、転校してきたシャルロットに対する質問が多かったけど。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 放課後。

私は約束通りにシャルロットと一緒に格納庫に行くことに。

その際、私の整備を担当してくれている本音ちゃんと、なんでかセシリアも同席する事に。

セシリアの参加はシャルロット言い出した事なんだけど。

 

「本当にいいんですの?私も一緒に来て」

「大丈夫だよ。と言うか、一緒に来てもらった方がいいと思う」

「???」

 

一体何が格納庫で待っているんだ?

 

頭の上に疑問符を浮かべながら、私達は格納庫の扉を開く。

 

シャルロットを先頭に格納庫内を歩いて行くと、とあるハンガーに色んな装備群が置いてあった。

 

「あ、あったあった」

 

これが今回、私を連れてきた目的?

 

「でゅのっち。これは~?」

 

『でゅのっち』って……。

本音ちゃんの考える渾名って独特だよな~。

ここだけは束さんにも負けてないかも。

 

「これは、佳織の専用機である『ラファール・リヴァイヴⅡ』専用に製作された追加兵装だよ」

「追加兵装……」

 

つまり、これがデュノア社から出向してきた理由?

 

「説明する前に、まずはこれを見て」

 

シャルロットが私に武器の一覧が表示された端末を渡してきた。

そこには、色々な武器の名前や姿が映っていた。

 

「ハンドビームガンにビームバズーカ……それに、Wビームトマホーク…そして……」

「ビ…ビット兵器!?フランスはもうここまで来たんですの!?」

「慌てないで。それも今から説明するよ」

 

急に息が荒くなったセシリアだったけど、シャルロットに宥められて落ち着いたみたい。

 

「ここにある武器は全て、欧州連合の統合防衛計画である『イグニッション・プラン』で造られたんだ」

「確か、一時期フランスはイグニッション・プランから外されそうになったと聞きましたけど……」

「まぁね。でも、ラファール・リヴァイヴⅡの開発に成功した事で、なんとか除名を免れたんだ」

 

イグニッション・プランについてはセシリアからも聞いたけど、結構ギリギリだったのね…。

 

「で、その最初の一歩として、まずはフランスとイギリスで合同の新型武器開発計画が持ち上がったんだ。それで造られたのが…」

「ここにある武器類…なんだね」

「その通り。ここにあるのは後に量産が確定しているリヴァイヴⅡの専用武器なんだ」

「イギリスとの合同…。だから、ビーム兵器やビット兵器があるんですのね…」

 

詳しい事はよく分からないけど、色々と大変なんだぁ~。

 

「私が連れてこられた理由がようやく分かりましたわ。これが理由ですのね?」

「うん。こっちも、一度IS学園にいるイギリスの代表候補生と顔を合わせておけって言われてたから」

 

代表候補生も苦労が多いんだな。

私は絶対になりたくない。

特に興味も無いしね。

 

「それじゃあ、ISを出してくれないかな?装着してみて、不具合が無いか確かめないといけないから」

「了解」

 

私はいつものようにリヴァイヴⅡをハンガーに展開。

 

「うわぁ~…。こうして近くで見ると、本当に綺麗な赤なんだね…。佳織が『赤い彗星』って呼ばれる理由も分かる気がするよ」

「そう?」

 

私なんて所詮はパチもんですぜ?

本当の赤い彗星は私なんて目じゃないぐらいにチートだから。

 

「じゃ、早速装着して見ようか」

「私も手伝う~」

「ほんと?じゃあお願いしようかな?」

 

本音ちゃんが手伝うなら早いだろう。

 

思った通り、作業自体はあっという間に終わった。

 

ハンドビームガンとビームバズーカは拡張領域に入れて、Wビームトマホークは折りたたんだ状態で腰の辺りにある装甲に装着。

そして、ビット兵器である『ファンネルポッド』は右肩にあるシールドに装着された。

ってか、ファンネルって…あのファンネル?

形状自体はサザビーのファンネルと似てるけど…。

 

「あ」

 

装着する前は成形色である灰色だったのに、装着された途端にファンネルが機体と同じ色赤に変わった。

 

「実際にはそこまで劇的に変わった訳じゃ無いのに、不思議と変わった印象を受けますわね」

「だね~。なんか力強く感じるね~」

 

ホント、二人が言うように変な存在感がある。

 

「あれ?」

 

端末に表示されている機体の名前が変わった?

 

「ねぇ、シャルロット」

「どうしたの?」

「これ……機体の名前が…」

「名前?」

 

取り敢えずはシャルロットに見せてみる。

 

「これは……」

 

機体の名称が『ラファール・リヴァイヴⅡ』から『ラファール・リヴァイヴ・バリスティック』に変わっている。

随分と長くなってしまった…。

 

「多分、この武器類の名前が『バリスティック・ウェポン』って言うからだと思う」

「成る程……なのか?」

 

それだけで名前が変わるものなのか?

なんかこれって、スパロボの機体換装に似てる気がする。

 

「気にする程じゃないと思うよ。別に支障があるわけじゃないんだし」

「それもそうだね」

 

私が気にしなければ済む話か。

じゃあ、これからは『バリスティック・リヴァイヴ』と省略するとしよう。

 

「これで、佳織のリヴァイヴはかなり万能な機体になったね」

「遠距離に中距離に近距離にと、全ての武器がバランスよく並んでいて、しかもビーム、実弾と使い分けも出来る。これで佳織さんの強さに更に磨きがかかりますわね。私としては嬉しいような悲しいような、微妙な気持ちですけど」

 

ライバルが強くなって喜ぶのは、典型的な戦闘狂か、爽やかイケメンなラノベ主人公だけじゃなかろうか?

 

「シャルロットの仕事はこれでおしまい?」

「まさか。僕の仕事は寧ろこれからだよ」

「と言うと?」

「僕のもう一つの仕事は、佳織のリヴァイヴⅡから得られた戦闘データを本社に送る事だから」

「あぁ~…」

 

そういや、私の戦闘から得たデータが、これからのリヴァイヴⅡの量産に使われるんだっけ?

最近忙しかったから、すっかり忘却してたや。

 

「父さんも『赤い彗星』の戦闘データをこれからの開発に役立てられるって、凄く喜んでたよ」

「父さん?」

「うん。僕の父さんはデュノア社の社長なんだ」

「おぉ~!でゅのっちは社長令嬢なんだ~!」

「一応…ね」

 

ま、知ってたけどね。

 

「あれ?そうなると、佳織さんもデュノア社所属になるんですの?」

「希望ではそうだけど、そこは本人の意思を優先するって言ってたよ」

 

……本当に、ここのデュノア社は普通にいい会社になってるな…。

 

「あの…さ。シャルロットってご両親と仲はいい?」

「そうだね。仲は良い方だと思うよ。仕事柄、お互いに話す機会は少ないけど、休みの日とかはよく一緒に食事に行ったりするし」

「それは……お母さんとも?」

「うん。今のお母さんは再婚した継母なんだけど、僕の事は実の娘のように可愛がってくれてるよ」

 

やっぱりか……原作とは真逆になってる。

驚くレベルで家族の仲がいい方に変わってる。

 

「なんだか複雑な事情があるみたいですけど、家族仲が良好なのはいい事ですわ」

 

家の事情が複雑なのは君も同じだしね。

 

「さて、出来ればこれから試運転をしたいけど……」

「それはちょっと難しいかも。さっき聞いたけど、今日はどこのアリーナも既に予約で埋まってるって山田先生が言ってたし」

 

だから、今日の放課後は一夏達は部活に顔を出したりしてるみたい。

空いた時間は有効活用しないとね。

 

「そっか~。じゃあ、次の機会でいいかな?別に焦る必要はないし」

「そうした方がいいね」

 

場が完全に終わりの空気になりかけた時、セシリアがふと声を上げた。

 

「あら?そう言えば……佳織さんのビット適正は大丈夫なんですの?」

「それに関しては問題無いよ。父さんに聞いたんだけど、入学時にIS適性とは別にビット適正も調べてるんだって。それによると、佳織のビット適正はSらしいよ」

「え…S!?イギリスでもSなんて一人も……」

「最近になって判明した事だからね。無理も無いよ」

 

あの……私の事は放置ですか?

つーか、ビット適正がSって……これも転生特典か?

シャア様を模しているから、ビット兵器の扱いもそれに準じてるってか?

確かに、あの人はサザビーに搭乗した時にはファンネルをまるで手足のように扱っていたけど。

 

「だから、ビットの扱いに関しては問題無いよ」

「後は私の練習次第?」

「そうなるね」

 

ビットの練習か~。

何をしていいか、全く分からん。

 

「……ねぇ、セシリア」

「なんですの?」

「今度の訓練の時にさ、私にビットの扱い方を教えてくれないかな?」

「わ…私がですの?」

「というか、セシリアじゃないとダメだと思う」

「私じゃないとダメ……」

 

ど…どうした?急に静かになって…。

 

「分かりましたわ!このセシリア・オルコットにお任せくださいまし!!」

「う…うん。お願いね…」

 

急に大声を出すからびっくりした…。

 

「ビット兵器の整備ってどうすればいいのかな~?」

「それなら、ちゃんとマニュアルがあるから、それを見ればいいよ。本音が佳織のISを整備しているの?」

「そうだよ~」

「それじゃあ、後で整備マニュアルを渡しておくよ」

「ありがと~」

 

本音ちゃんなら、きっとすぐに整備の仕方を覚えるだろう。

 

じゃあ、私の方も新しい武器を使いこなせるように頑張らないとね!

 

 

 

 

 

 

 




そんな訳で、リヴァイヴⅡがパワーアップするの巻。

これはリヴァイヴⅡをザクⅡを模した機体にすると決めた時から考えてました。

っていうか、寧ろこの為にザクⅡにしたようなものでして…。

ビルドファイターズ バトルローグでのバリスティック・ザクの活躍が余りにもカッコよくって、思いっきり衝動に駆られました。


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第25話 試射

きゅ…急に寒くなった…。

鍋が恋しくなりました…。

因みに私は水炊き派。





 金銀コンビが転校してきて早数日。

今日は土曜日。

 

土曜も授業はあるにはあるんだけど、午前だけで、午後からは完全に自由時間になっている。

だからだろうか、私達が今いる第3アリーナには結構な数の人がひしめき合っている。

アリーナの数や訓練機の数は基本的に限られているから、チャンスがある時に訓練をこなそうと試みる生徒が数多い。

因みに、箒もそんな生徒達の一人。

 

今日はいつものメンバーに加え、シャルロットが加わっている。

けど、鈴だけがクラスの用事で少し遅れてる。

 

今回の訓練は、この間、私のリヴァイヴⅡに加わった新たな武装の試射だ。

ISを展開している私の隣には自分の専用機を纏ったシャルロットが待機している。

 

「それが君の専用機か?」

「そうだよ。『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』。佳織のラファールの前身となった機体だね」

「ほぅ……」

 

所々にカスタマイズを施された形跡はあるけど、基本的な形状は変化していない。

まさに、ラファールの正当な進化って感じ。

 

しかし……見事なまでにオレンジですなぁ~。

知ってはいたけど、こうして改めて見ると、あれを思い出すと言うか……

 

「あ~…失礼な事を聞くかもしれないが、もしやシャルロットは二重人格だったりしないか?」

「僕が?なんで?」

「いや……なんとなくな。違うならばいい。変な事を聞いて済まなかった」

「ん~?」

 

思わず聞いちゃったよ…。

もしかしたら、彼女の中に『シャルル』って言う男の人格がいたり~…なんて想像しちゃったけど、流石に考えすぎか。

 

「ところで、新しい武器の具合はどう?」

「そうだな……」

 

自分の手にあるハンドビームガンを見てみる。

 

「手にしっくりきていて握り心地も悪くない。なにより重量が軽い為、取り回しがしやすそうだ」

「それは威力よりも連射性と精密性を重視しているからね」

 

質より量って事か。

 

「それじゃあ、試しに撃ってみてくれる?あそこに丁度、的があるから」

「了解した」

 

現在、訓練している皆に少しだけどいてくれるようにお願いして、私は真ん中に立った。

眼前にはカラフルに彩られた的が浮いている。

 

「では…いくぞ!」

 

一気に上昇して、視界にターゲットを映す。

そして、ロックオンの後に即座にトリガー!

 

「はっ!」

 

黄色く細いビームが発射され、真ん中に命中。

それを見届ける事無く次のターゲットを見る。

 

「ふっ!」

 

息を吐くようにしながらもう一発。

 

「そして!」

 

振り返りながら最後のターゲットも撃つ!

 

「……こんなものか」

 

使い勝手は上々……ってか?

 

ハンドビームガンの試射を終えた私は、皆の元に戻った。

 

「どうだった?」

「いい感じだ。これならば、牽制や弾幕を張るのに向いている。マシンガンと併用すれば、使い勝手も増すだろう」

「そう言って貰えてよかったよ」

 

やっぱ、片手で使えるっていいよね。

攻撃力もマシンガンよりは上みたいだし。

 

「ねぇ……さっきの見た?」

「うん……見た」

「全部真ん中に命中してたよね…」

「しかも、動きながらだよ?マジで凄すぎ…」

 

なんか離れた場所でひそひそと話してますぞ。

ひそひそ話は女子高生の特権とは言え、あまりいい気分はしないな。

 

「次はビームバズーカをお願い出来るかな?」

「分かった」

 

ハンドビームガンを収納し、ビームバズーカを取り出す。

これは結構な大きさで、片手で持つには少し重い。

両手で保持するのがベストだろう。

 

「ず…随分とでかいな…」

「大きい事はいいことだ!って、誰かも言ってたよ」

「誰ですの……それ……」

 

こら一夏。女の子がそんな事を言っちゃいけません。

 

さて…と。体全体で支えるように持って、銃口をターゲットに向けて…と。

 

「では……発射する!」

 

トリガーを引いた途端、大きなビームの閃光が発射され、ターゲットを丸ごと飲み込んでいった。

その衝撃で、少しだけ後ろに下がってしまった。

 

「うわぁ~…データでは知ってたけど、こうして実際に見ると凄い迫力だな~…」

「ふむ……」

 

これは、さっきのハンドビームガンとは完全に真逆に位置している武器だな。

 

「典型的な『量より質』な武装だな。威力は非常に高いが、発射までのラグが大きい上に、両手で保持しなくてはいけないから、万が一回避されて接近でもされたら終わりだ。少なくとも、1体1の戦いで使うような代物じゃない。最低でも前衛で相手を引きつける役がいて初めて効果を発揮するだろう」

 

な~んて偉そうに言ってるけど、これって完全にゲーム知識ですから。

オタクってこんな時に限って無駄に博識だったりするんです。

 

「そこまで的確に……。ありがとう!とっても参考になるよ!」

 

うぅ……笑顔が眩しいデス…。

私みたいに『転生』なんてズルをしている人間には眩しすぎる光だ。

 

「お次はビット兵器の『ファンネル』をいってみようか」

「あぁ」

 

とうとうコレの出番か…!

上手く扱えるかどうか、すっごく心配…。

 

そんな私の不安を感じ取ったのか、セシリアから声が届いた。

 

「大丈夫ですわ!先程の私の言葉を信じてください!」

 

ついさっき、私はセシリアからビット兵器を扱う際のコツを聞いた。

なんでも、ビットは操縦者の脳波を感知して稼働するようで、本人のイメージが大事になってくるらしい。

そこら辺はガンダム世界のビット兵器と大差ないんだな…。

ただ、サイコミュがあるかどうかの違いになるのか。

 

「イメージ……か」

 

オタクにとって妄想……じゃなくて、イメージは日常茶飯事の事と言っても過言じゃない。

毎回毎日、色んな妄想を脳内で形にしている。

 

「ふぅ~……」

 

息を吐き、目を閉じて、精神を集中させる。

 

(イメージ…イメージ……ビットが飛んで行って的を撃つ……)

 

初めてヤクト・ドーガに乗ってファンネルを使用したクェスもこんな気持ちだったのかな?

よし……やるぞ!

 

カッ!と目を思いっきり見開いて、的を見る。

そして、ファンネルに『命令』する!

 

「いけ!ファンネル!!」

 

シールドに装着されたファンネルポッドから三基のファンネルが飛び出して、それぞれに的に向かって行く。

ファンネルの小さな銃口から一筋のビームが放たれて、三つの的をそれぞれに撃ち抜いた。

 

「やった……のか……」

「凄いですわ!最初にしてこれだけ動かせるなんて!」

 

セシリアが自分の事のように喜んでくれた。

そこまで言われると……なんか照れるね。

 

「ビットの挙動も問題無し…と」

 

シャルロットはシャルロットで、なにやらレポートのようなものを端末に打ち込んでいる。

会社に所属するのも代表候補生と同じぐらいに大変みたい。

暇があれば労ってあげるのもいいかも。

 

「しかし……少し頭が痛むな…」

「大丈夫?佳織」

「ほんの少しだけだ。そこまで深刻に考えなくてもいいだろう」

 

偏頭痛みたいなもんだし。

 

「先程も言った通り、ビットは脳波で動かす兵器。故に、慣れないうちは頭が痛くなるのは仕方が無い事です。私もブルー・ティアーズに乗って、初めてビットを使った時は頭痛に悩まされましたから」

 

私だけじゃないのか。

 

「こればかりは慣れるしかありませんわね。何回も使っていってビットの操作に慣れていけば、自然と頭も痛くなくなると思います」

「それを聞いて安心した」

 

これからはビットの訓練もこなさなくちゃいけないってことね。

こりゃ大変だ。

 

「では、ビットに関してはこれからもセシリアにコーチして貰おうか」

「わ…私が!?」

「IS学園広しと言えども、生徒の中で最もビットの扱いに慣れているのはセシリアしかいない。これは君にしか頼めない事だ」

「佳織さん……♡」

 

ちょ……ええ?なんで目がキラキラしてるんですか?

 

「お任せください!必ずや佳織さんのご期待に応えてみせますわ!!」

「よろしく頼む」

「はい!!」

 

なんちゅー力強い返事……。

心なしか、鼻息も荒くない?

 

「ビットか……こればっかりは私達じゃどうしようもないね…」

「くっ……!まさか、こんな事になろうとは……!」

 

なんか端の方で箒と一夏が話してるけど、ここからじゃよく聞こえない。

 

さて、ビットを戻してから、最後のヤツをしますか。

 

ビットに戻るように命令すると、三基のビットは真っ直ぐにポッドの中に戻っていった。

 

「よし。最後は……」

 

腰についているWビーム・トマホークに手を伸ばそうとすると、急にアリーナ内が騒がしくなった。

 

「なんだ?」

 

皆の視線が一点に集中する。

そこにいたのは……

 

「ラウラ?」

 

一組に来たもう一人の転校生。

ドイツからやってきた銀髪の美少女、ラウラ・ボーデヴィッヒその人だった。

ただ、今回の彼女はいつもとは違う。

何故なら……

 

「あれって……」

「うん。ドイツ製の第3世代型のISだ…」

「まだトライアルの段階だって聞いてたけど、もう実戦配備されてたんだ…」

 

大きな銃身(あれがきっと例のレールガンだろう)を携えた、漆黒のISを身に纏っているからだ。

え~っと……確か名前は~……シュ…シュ……シュヴァなんとかレーゲンだったっけ?

名前が長すぎてよく覚えてないよぉ~!

 

「仲森佳織、少しいいだろうか?」

「どうした?」

「折り入って、お前に頼みがある」

「なんだ?」

「私と模擬戦をしてほしい」

 

…………にゃんですと?

 

「スカウト云々の前に、まずは噂に名高い『赤い彗星』の実力を肌で感じておきたいんだ。駄目だろうか?」

 

超がつく程の馬鹿真面目さんだ……この子。

急に可愛く見えてきたぞ。

 

周りを見てみると、ラウラのいきなりの登場に戸惑っているようだ。

一夏と箒とセシリアは警戒していて、シャルロットもいつでも出られるように構えている。

 

「別に模擬戦自体は一向に構わない」

「それじゃあ「だが」……ん?」

「私は今、新しい武装の試運転をしていてな。少しばかり忙しい。それに……」

 

私はラウラに示すように周りを見渡す。

 

「この状態ではお互いにやりにくいだろう?また日を改めてくれると助かる」

「それもそうだな…」

 

おおっ!?なんか聞き分けがいい!?

 

「邪魔をしたようで悪かった。では、また日を改めるとしよう。失礼する」

 

大人しく帰っていった……。

なんだろう……虎とかライオンみたいな猛獣が急に懐いてくれたような感動が……。

 

「い…意外と言う事を聞いてくれますのね……」

「てっきり、問答無用で撃ってくるとか思ってた……」

「話せば分かる奴なのかもしれんな……」

 

私の中でもラウラの対する評価が上方修正されたよ。

今度からはもっと色々と誘ってみようか?

 

「あれで彼女は結構素直でいい子だよ?」

「そう言えば同室だったな」

「うん。部屋では思ったよりも話す事が多いよ」

 

なんか……想像以上にラウラが社交的になってる件。

これはとてもいいことなんだろうけど……これからどうなるの?

 

「ごめ~ん!おまたせ~!……って、あれ?皆どうしたのよ?」

 

遅れてやって来たISを纏った鈴が、場に流れる何とも言えない空気を感じて目が点になっていた。

 

「え?え?マジで一体何があったの?」

「まぁ……色々とな」

「色々?」

 

一言じゃ難しいかもな~。

 

「……彼女の事は後で考えるとして、今は最後の武器を試すとしよう」

「そ…そうだね」

「ならば、折角来たんだ。鈴、このWビーム・トマホークの試運転に付き合ってくれ」

「別にいいわよ。って、随分とデカい得物ね……」

 

折りたたんであるWビーム・トマホークを展開する。

 

適当に空いている場所に並んで、両手で構える。

 

「では、始めるぞ」

「いつでもいいわよ!」

 

高速で飛び出して、私の持つビームの刃と鈴の持つ鋼鉄の刃がぶつかり合い、火花を散らした。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「……と言う事があってさ~」

「へぇ~、ラウラウって素直でいい子なんだね~」

 

夕方。

私は自室でベットに寝っころがりながら、本音ちゃんと話していた。

疲れたんだから、これぐらいはいいよね?

 

「みたいだね。ラウラの事を見ていると、近所の小学生を彷彿とさせたよ…。少なくとも、私にはあんな純粋無垢な目はもう出来ない…」

「かおりんって妙な所で大人だよね~」

「それって老けてるって事?」

 

私って、そんなにも言動が老けてるのかな~?

と言うか、本音ちゃんもラウラに負けないぐらいに純粋な目をしてるよね。

 

因みに、本音ちゃんは午後はずっと生徒会室にいたみたい。

もしかして、意外と書記としての仕事を頑張ってる?

 

「流れで模擬戦をする約束をしちゃったけど、大丈夫かな?」

「かおりんなら大丈夫だよ~」

「ははは……気楽に言ってくれちゃって」

 

でも、こんな風に言われると、本当になんとかなるって思うから、不思議なんだよな~。

これが言霊の力ってヤツ?

 

コンコン

 

「おや?」

 

誰が来たのかな?

 

『佳織さん?いらっしゃいますか?ご夕食をまだ取られていないのでしたら、ご一緒にいかがですか?』

 

お客さんはセシリアみたいだ。

 

「はいは~い。少し待っててくれると佳織ちゃんはとってもハッピ~」

 

ガチャリとな。

 

「あ……佳織さん」

「夕食でしょ?丁度、お腹も空いてきたし、行こうか?」

「えぇ!」

「本音ちゃん、夕ご飯に行くよ~」

「は~い」

「はっ!?」

 

え?なんでそこで戦慄するの?

 

(そうだった……!佳織さんは本音さんと同室でしたわ…!浮かれていて完全に失念していました……!)

 

まるで、テストでケアレスミスをした時みたいな顔をしてる。

なにかミスでもしたの?

 

「どうしたの?」

「な…なんでもありませんわ!おほほほほ……」

「??」

 

乾いた笑いが却って怪しいぞ?

 

「早く行こ~?」

「そうだね」

 

部屋の電気を消して廊下に出ると、途端に本音ちゃんが腕に抱き着いてきた。

 

「どうしたの?」

「なんとなく~♡」

「そう」

 

別に重く感じないから、歩くのに支障は無いけど。

 

「な…ななななな……!」

「なに~?」

 

あ…あれ?なんか本音ちゃんの目が据わっているような気が…。

 

(本音さんがこれ程までに積極的だなんて……!)

(これだけは負けないよ~?)

 

……多分、気にしたら負けだな。

 

食堂に向かう為に階段を下りると、そこである人物に遭遇した。

 

「お…お前達!?」

「箒」

 

廊下の向こうから早歩きでこっちに来る。

その手には棒状の何かが握られていた。

 

「しののん~、やっほ~」

「ほ…本音!?なんで佳織の腕に抱き着いている!?」

「なんとなく~」

 

ぶれないな~…。

 

「これから夕食なんだ。箒は?」

「私は実家からコレが送られてきたから、受け取りに行っていた」

 

その手に持っている物を私に見せる。

 

「そ…それって……日本刀?」

「名は緋宵。かの名匠・明動陽晩年の作だ。…と言っても分からないか?」

「「「ははは……」」」

 

さっぱり分からにゃい…。

 

けど、日本刀なんて帯刀して大丈夫なの?って、このIS学園は法律上も国際上も『どこでもない土地』なんでした。

ここでは今までの常識は通用しないんだよね。

確か、セシリアも自室に何丁か銃を置いているらしいし。

 

「さて、では行くとするか」

 

って、しれっと箒も空いている腕に抱き着いてきたんですけど!?

 

「ほ…箒さん!?貴女まで!?」

「なんとなくだ」

「ぐうぅぅぅ~……」

 

ま~た火花が散ってるよ…。

 

(ぐずぐずしていたお前が悪い!)

(これから佳織さんと一緒にビットの練習を通じて、あ~んな事やこ~んな事をするつもりでしたのに……!)

(そうは問屋が卸さないよ~?)

 

く…空気が重い……。

 

ほら、廊下を歩いている皆も変な目で見てるじゃんか。

 

「ゆ…百合だわ…!百合の花が咲いているわ!」

「IS学園では割と頻繁にあるって聞いたけど、こうして実際に目で見ると……」

「しかも、中心にいるのは赤い彗星の仲森さん!これはまたいいネタが手に入ったかも……ぐへへ~…」

 

おいこらそこの女子共!お願いですから私をネタにするのだけはやめてください!

 

その後、食堂でも何故か注目の的になっていて、実に気まずい食事となった。

 

私が一体何をした…?

 

 

 

 

 

 




ラウラが普通にいい子に……。

いや、世間知らずなだけであって、本当は純粋でいい子なんですよ?

ただ、原作の初登場シーンがインパクトがありすぎて、印象が悪く映るだけで…。

私も嫌いじゃないですし。


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第26話 噂と約束

前回は本当にすいませんでした!
今回の反省を生かし、これからもっと精進できるように邁進していきたい所存です。
これからも、私のようなゴミクソ蛆虫作者の作品をほんの僅かでも読んでくださると、非常に嬉しいです。
今一度言います。
本当に申し訳ございませんでした!!!!!


 月曜日の朝。

教室に入った私と本音ちゃんとシャルロットが最初に聞いたのは、鈴とセシリアの大きな声だった。

 

「そ…それは本当に本当に本当ですのね!?」

「もしも嘘だったら針一億本飲ませるわよ!」

「い…一億!?」

 

朝っぱらから何を話しているのやら。

 

「元気だねぇ~」

「同感」

「IS学園っていつもこんな感じなの?」

「血気盛んな十代だからね。少しの事でも盛り上がれるんでしょ」

「……佳織って大人だよね…」

「君までそれを言うの?」

 

これからは少し自重した方がいいのかな…。

 

「本当だって!この噂はね、もう学園中で持ち切りなの!今度ある学年別トーナメントでもしも優勝したら、あの仲森さんと付き合……」

 

…………なんか断片的に聞こえたような気がしたけど、ここは聞かなかったことにした方がいいかもしれない…。

 

「本音ちゃんは、あそこで皆が話している事について何か知ってる?」

「ううん。変な噂が学園中で蔓延してるのは知ってるけど、詳しい内容は知らないな~」

「そっか……」

 

非常~に嫌な予感しかしないけど、下手に顔を突っ込めば、それはそれで私が痛い目に遭いそうで怖いんだよね…。

 

「……よし!ここは流れに任せよう!」

「いいの?」

「どうせ私が聞いたって教えてくれなさそうだし、だったらせめて、例の学年別トーナメントが終わるまでは大人しくしてるよ」

 

つーわけで、今私が言うべき言葉は一つ。

 

「そこの皆、もうそろそろ朝のSHRが始まる時間だよ。特に隣のクラスの鈴は早く戻った方がいいんじゃない?」

「か…佳織っ!?」

「い…いつの間に!?」

「さっきからいたよ…」

 

気が付かなかったのかよ…。

 

「ほらほら!解散解散!」

 

千冬さんのように手をパンパン!と叩いて、皆を促す。

 

「最近、佳織が少しだけ千冬さんに似てきた気がするわ……」

 

鈴、ちゃんと聞こえてるからね。

 

「クラス代表も大変なんだね…」

 

会社所属や代表候補生程じゃないと思うけどね。

 

さて、私も自分の席に着きますか。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「はぁ……」

 

やっぱり、私の危惧していた通りだったか……。

 

(どこのどいつかは知らないが、間違いなく私の独り言を聞いた人物が面白半分で学園中に広めたに違いない…)

 

どうしてこうなってしまった……。

私は単純に、もしも優勝したら佳織に告白しようと思っただけであって、そこから先の事なんてまだ全然考えていないんだぞ!

そ…そりゃ……私としても、行けるところまで行ければ最高だとは思うがな…。

 

(それにしても…優勝……か)

 

正直言って、専用機を持っていない私が学年別トーナメントで優勝するのは難しいだろう。

 

セシリアに鈴に一夏。

そして、最強の相手が想い人である佳織だと言うのが皮肉としか言いようがない。

 

(幾らなんでも、前途多難すぎるだろ……)

 

いや……待てよ?確か、教室に来る前に見た掲示板にこんな事が書いてあったような気が……。

 

【今月開催される学年別トーナメントは、より実践的な戦闘を想定するために、ツーマンセルでの参加を必須とする。猶、開催までにペアが決定しなかった生徒については、抽選によって選ばれた生徒同士でコンビを組むことにする。締め切りは……】

 

ツーマンセル……つまりはコンビで戦うと言う事だな。

ならば、私が佳織とコンビを組めば非常に高い確率で優勝出来るのではないか!?

だが、その場合はどうなるんだ…?

いや、私には関係ない!

噂の有無に関係無く、最初から優勝したら告白するつもりなのだからな!

 

大会に優勝し、夕日が眩しい屋上で私が佳織に告白……。

 

(フフフ……♡最高のシチュエーションではないか!)

 

よし!これならいける!!

このトーナメントで一発逆転ホームランだ!!

 

「な…なんか篠ノ之さんが怪しく笑ってる……」

「何を考えてるんだろ……」

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 廊下の端。

普段はあまり人通りが少ない場所に、千冬とラウラが向き合っていた。

 

「それで?用とは何だ?私も暇ではないのだが?」

「実は、教k…織斑先生に聞きたいことがあるのです」

「なんだ?授業で分からない事でもあったのか?」

 

冗談交じりに言う千冬とは違い、ラウラはどこまでも真剣だった。

 

「仲森佳織とはどんな人物なのですか?」

「何?」

 

佳織の名前が出た途端に、千冬の眉間に皺が寄った。

 

「そう言えばお前……転校初日から仲森に言い寄っていたな。もしや、『上』からの命令か?」

「……………」

「言えないのか?」

「いえ……貴女にならば」

 

少しだけ迷ったが、嘗て教官として指導してくれた千冬ならば大丈夫だと判断し、口を開く。

 

「上層部から命令を受けました。『赤い彗星をスカウトし、ドイツに連れて帰れ』…と。無論、無理矢理ではありません。極力、本人の意思を尊重しろと言われました」

「あの堅物共にしては随分と寛容な判断だな」

「彼女が貴女や篠ノ之束とも関係が深い事を知って、逆鱗に触れる事を恐れたのでしょう」

「ふん…。普段は傍若無人を絵に描いたような連中なのに、変な所で臆病な奴等だ」

 

以前ドイツににいた事のある千冬は、あまりドイツ軍の上層部に対してあまり良い印象を持っていないようだ。

 

「ですが、今は私個人的としても彼女に興味があります」

「ほぅ?」

 

まさか……とは思ったが、まだ好意を抱くまでには至ってない事を、ラウラの表情を見て一瞬で悟った。

伊達に長い間、佳織の事を想っていないのだ。

 

「そうだな……アイツは……」

 

窓から見える空を見上げながら、そっと話し出した。

 

「簡単に言えば、底なしのお人好し…だな」

「お人好し…ですか?」

「そうだ。目の前で誰かが困っていたら、迷わず手を伸ばす。例えそれがどんな人物であってもだ」

 

佳織の優しさは、見ようによっては諸刃の刃と言える。

だが、その優しさに救われた人間が多いのも、また事実だった。

千冬や束も例外ではない。

だからこそ、彼女達は佳織の事をどこまでも好いているのだ。

 

「それでいて、一度ISに乗れば、まるで人が変わったかのように冷静になり、凄まじい戦闘力を発揮する」

「それは噂で聞いています。これまでに代表候補生と幾度か戦闘し、いずれも圧倒したと」

「しかも、あいつには不思議なカリスマがある。私があいつをクラス代表として認めているのも、それが最大の理由だ」

 

仮に転生特典などが無くても、佳織のカリスマ性は決して薄れはしないだろう。

彼女のリーダーシップは、本人が元々から持っていた物だから。

 

「少なくとも、佳織自身は何と言われようとドイツに行くとは言わないだろう」

「どうしてですか?」

「さっきも言っただろう。アイツは身内を放置はしないと。そんな奴が一人で外国に行くと思うか?」

「それは……」

「佳織を説得したければ、ドイツ側も相当に譲歩しなければいけないだろう」

 

それ以前に、束がそんな事を聞かされて黙っているとは思わないがな……と密かに思った千冬だった。

 

「話は終わりか?」

「あ……はい」

「ならば、早く教室に行け。今ならば少しぐらいは廊下を走っても黙認してやる」

「りょ…了解です」

 

去っていくラウラの背中を見ながら、千冬は静かに呟いた。

 

「ドイツが動き始めたか…。これから他の国も『赤い彗星』を獲得しようと躍起になるかもしれんな」

 

図らずも騒動の中心となりつつある佳織を想い、心配を隠せない千冬であった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「「あ?」」

 

放課後の第3アリーナ。

偶然にも鉢合せをしてしまったセシリアと鈴は揃って間抜けな声を出す。

 

「もしかして、アンタも学年別トーナメントの訓練?」

「そう言う貴女も?」

「勿論じゃない。優勝は私が頂くから」

「それはこちらのセリフですわ」

 

ニヤリと笑う二人。

その間には確かに火花が散っていた。

 

「そうだ。いい加減にアンタと決着つけたいと思ってたのよね。この機会にどう?」

「あら、それはいいですわね。私も丁度同じ事を考えていましたわ」

 

二人が完全に臨戦態勢に入った……その時だった。

 

「ん?そんな所で二人揃って何をしてるんだ?」

「「え?」」

 

やって来たのは、ISを纏ったラウラだった。

 

「貴女も訓練に来たんですの?」

「そんなところだ。で、お前達は……」

 

ラウラが次の言葉を言おうとすると、ふと鈴の目線がある一点に集中しているのを感じた。

 

「な…なんだ?」

「……………………」

 

以前は授業の時だった為、よくラウラの事をよく見ていなかったが、鈴は今初めてラウラの体形をよく観察した。

 

「…………」

 

自分の体(正確には自分の胸)を見る。

 

「…………」

 

次にラウラの体(当然胸)を見る。

 

「…………」

 

最後にセシリアの体(と書いて胸と呼ぶ)を見る。

 

「あぁ……そっか……」

 

何かを納得したのか、鈴は静かに歩きだし、ラウラの隣に移動した。

 

「な…なんだ?」

 

ツインテールを振り回しながら前を向く。

その目はかなり鋭くなっていた。

 

「とっととかかってこいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

「「え~~~~~~!?」」

 

いきなりの状況にセシリアもラウラも揃って目が点に利ながら驚く。

 

「ど…どういうつもりですの!?」

「どういうつもり…?決まってるじゃない。今回はこのラウラと組むことにしたのよ」

「「はぁ~~~!?」」 

 

鈴の発言にまたまた驚く二人。

その顔は、まるでワンピースのギャグシーンで目玉が飛び出したような顔になっていた。

 

「今回のトーナメントがタッグマッチになったのは知ってるわよね?」

「え…えぇ…」

「最初は誰と組むか考えてたけど、この子を見た途端にピン!と来たのよ」

「な…何を言ってるんだ…?」

「神は言っている……この子と組むべきだと…」

「貴女本当に大丈夫ですの!?」

 

完全におかしくなった鈴を本気で心配し始めるセシリア。

それ程までに彼女の発言はぶっ飛んでいた。

 

「因みに、もうチーム名は決まってるから」

「な…なんだ?」

「その名も『ボインスレイヤー』よ!」

「頼むからそれだけはやめてくれ!!」

 

泣きながら懇願するラウラ。

世間知らずの彼女でも、それがどれだけ恥ずかしい名前なのは一瞬で分かった。

 

「それ以外には『ボインキラー』か『ボインブレイカー』しか……」

「ボインは外さないのか!?」

 

完全にツッコみ役になりつつあるラウラだった。

 

「兎に角、もうこれは決定事項だから」

「拒否権は無しか!?」

「何か文句でもあるの?」

 

その時の鈴からはラウラすらも完全に委縮する程のプレッシャーが放たれていた。

 

「い…いや……」

「だったら返事!!」

「イ…イエスマム!!」

「ちゃんと『サー』を付けなさい!!」

「サ…サー!イエスマム!!」

「なんなんですの……一体……」

 

もう呆れるしかないセシリアだった。

 

「こうなったらもう、トーナメントで雌雄を決するしかないようですわね…」

「雌雄を決する?何を言ってるのかしら?アンタとは生まれた瞬間から既に敵同士よ」

「……もう何も言いませんわ……」

 

ジト目で鈴を見るセシリアにはもう、呆れしかなかった。

 

「なんだか興が削がれましたわ……。後はお二人でごゆっくり」

「ちょっ……セシリア・オルコット!?私を一人にしないでくれ!!」

「ほら!早く訓練を開始するわよ!!」

 

ラウラの訴えは空しくアリーナに響いた。

 

もしかしたら、今回の最大の被害者はラウラかもしれない。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 今日の訓練をする為に第3アリーナに向かう私と箒と一夏とシャルロット。

すると、アリーナ側からセシリアがやって来た。

その顔はとても疲れ果てている。

 

「ど…どうしたの?セシリア」

「なにやら、凄く疲労しているよう見えるが…」

「何かあったの?」

 

私達が尋ねると、セシリアは盛大な溜息をついた。

 

「はぁ~……なんでもありませんわ」

「そ…そう?」

「あぁ……それと、今は第3アリーナにはいかない方がいいですわよ」

「な…なんで?」

「見れば分かる……と言いたいですが、今は見ない方がいいかも……」

「どっちだよ」

 

普段は歩き方すらも優雅なセシリアがここまで疲れているなんて……マジで何があった?

 

「とにかく、今日はもう疲れましたから、これで失礼致しますわ…」

「あ……」

 

背中を丸めながら去っていってしまった…。

 

「……どうする?」

「今日は……やめとこうか?」

「それがいいかもしれんな…」

「少し見てみたくはあるけどね」

 

そんな訳で、今日の訓練は中止にすることに。

 

後に、第3アリーナで銀髪の少女がツインテールの少女にしごかれていたと言ううわさを聞いた。

それって……いや、何も言うまい。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 アリーナから引き返していると、なんだか道が振動しているように感じた。

 

「……ねぇ……一夏……」

「何も言わないで……佳織」

 

いつでも逃げだせるように構えていると、廊下の向こう側から生徒の集団が押し寄せてきた。

 

「「き…来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」

「な…なんだ!?」

「こ…これって!?」

 

生徒達の目は凄い事になっている。

簡単に言えば、目が血走ってる。

 

「「「「「仲森さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」」」」」

「「「「織斑さん!!!」」」」

 

彼女達の目的はなんとなく想定できる。

だから、下手に逃げようとしても逆効果だと判断した。

 

「「「「「「私と組んでください!!!」」」」」」

「「組む?」」

 

生徒達が一斉にこっちに向かって手を伸ばす。

その手の一つに一枚の紙が握られていた。

 

「これは?」

 

あ、一夏が取った。

 

「なになに?……これって、学年別トーナメントの……」

「なんて書いてあるの?」

「今度のトーナメントはタッグになるんだって」

 

あ~…あれか。

そういや、まだ誰と組むか考えてなかった。

 

「私と組んでください!仲森さん!」

「いやいや!是非とも私と!」

 

私を狙う目的は明白だな。

でも、そこに一夏もくるなんて。

今の一夏は女の子なのに…。

 

「あの……佳織はともかく、なんで私?」

「だって!織斑さんって何気に実力者だし!」

 

それと、千冬さんの妹って言うネームバリューにも引かれたんだろうな。

魂胆が見え見えだっつーの。

 

「ふぅ……一夏」

「うん」

 

この場を一番穏便に乗り切る方法……それは。

 

「ごめんね!私はもうシャルロットと組んでるから!」

「因みに私は箒と組んでる」

 

この二人を巻き込むことだ!!

 

「えっ!?か…佳織!?」

「おい!一夏!?」

 

本当に悪いとは思うけど、今回だけは勘弁してほしい。

 

「そっか~……それじゃあ仕方ないね~…」

「他に誰か実力者っていたっけ?」

「探せばきっと見つかるよ!」

 

お、意外とすんなりと去ってくれたぞ。

 

「「危機一髪…」」

 

さて、次の問題は……

 

「えと……僕でいいの?」

「うん。私達ってお互いにラファールを使ってるじゃない?相性はいいと思うんだけど」

「そう言えばそうだね。それじゃあ、組もうか?」

「タッグ結成だね」

 

ま、仮に彼女達が来なくてもタッグパートナーはシャルロットにするつもりだったけど。

理由はさっきと同じ。

同系統の機体なら、連携もしやすいだろうし。

 

「一夏~…」

「本当にゴメンって~!隣にいたからつい…」

「全くお前って奴は…」

 

なんて言いつつも、しっかりとやるのが箒なんだよね。

私は知ってるよ。

 

「言っておくが、私と組んだからにはビシバシ行くからな!」

「は~い」

 

ははは……早速イニシアチブを握られてるし。

 

(予定は大幅に狂ったが、仕方あるまい…。こうなったら、どんな結果になろうとも私が勇気を振り絞るほかあるまい!)

 

お?なんか決意に満ちた目をしてますなぁ~?

これはトーナメントが楽しみだ。

 

 

 

 

 

 




実は今回の原作2巻に該当する部分、相当にぶっ飛んだ内容になる予定です。

色々とプロットを練っていたら、アホ丸出しに内容になったので。

ちゃんとシャルロットのフラグ…立てられるかなぁ~…?


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第27話 上級生達

皆さんの温かい言葉のお蔭で、なんとかメンタルを保てそうです。

本当にありがとうございます。

今回は、学年別トーナメントに入る前に少し話を挟もうと思います。

所謂、オリジナル回ですね。






 私がシャルロットとコンビを組んでから約一週間。

あの日から私達は一緒に訓練をして、コンビネーションの確認などをしていた。

で、今日は小休止をしようと言う事で、訓練は中止にすることにして、それぞれに放課後をのんびりと過ごす事にした。

あんまり根を詰めてもいい事は何もない。

適度な休憩も大事な訓練……と、シャルロットが言っていた。

代表候補生の言葉は心に響きますなぁ~。

 

で、そんな私が今いる場所は……

 

「ほぇ~…」

 

全体的に機械的な印象が強いIS学園において、なんとも違和感タップリな木製の扉。

まるで、どこぞの大会社の社長室を彷彿とさせる佇まいだ。

 

「ここが?」

「生徒会室だよ~」

 

隣には本音ちゃんが一緒にいる。

私一人じゃ生徒会室の正確な場所は分からないから。

 

前々から楯無さんから招待はされていたんだけど、想像以上にごたついて、来る機会が全く無かった。

いい機会だから、訓練を休むこの日に来ようと思ったのだ。

 

「え~っと……取り敢えずノックだよね…」

 

私が手を丸めて扉を叩こうとすると、それを完全に無視して本音ちゃんがドアノブに手を伸ばした。

 

「かいちょ~。かおりんを連れてきたよ~」

「ほ…本音ちゃん!?」

 

い…いいのか!?

一応、親しき仲にも礼儀ありって言葉もあるんだよ!?

本音ちゃんが知ってるかどうかは分からないけど。

 

「あら、いらっしゃい」

 

中には、楯無さんが大きなテーブルの中央に優雅に座っていた。

手元には紅茶の入ったティーカップが置いてある。

湯気が出ているって事は、まだ淹れてから時間は経っていないようだ。

 

「その……お邪魔します」

 

一応、色々と挨拶の言葉は考えてきたんだけど、本音ちゃんのいきなりの行動で全部パーになっちゃった。

っていうか、頭から飛んでいっちゃったよ。

 

「ようこそいらっしゃいました」

 

楯無さんの他には、眼鏡を掛けた三つ編みの生徒がいた。

リボンの色からして三年生だ。

 

「え…あ…そ……初めまして」

 

だ…誰だっけ?なんか見た事があるような気がするんだけど……。

 

「貴女の事はよく本音から聞いてます。仲森佳織さん」

「私の名前を……」

「言ったでしょう?本音から聞いてると。それに、仲森さんは色々と有名ですから」

「ははは……有名ですか」

 

『どんな意味で有名なんですか』って聞きたかったけど、怖くて聞けなかった。

 

「私は布仏虚。本音の姉です。いつも本音がお世話になってます」

「は…初めまして。仲森佳織です」

 

すっごく丁寧な人だ…。

思わずこっちが恐縮してしまう。

 

「本音はこの通り、のんびりとした性格をしてるから、色々と迷惑を掛けてないでしょうか?」

「もう~…お姉ちゃん~」

 

流石の本音ちゃんも、虚さんの前では形無しみたい。

 

「迷惑だなんてそんな。寧ろ、私の方が本音ちゃんによく助けられてるぐらいです」

「え?」

「彼女がいてくれるだけで場が明るくなるし、なにより、私に整備のノウハウを教えてくれたのは本音ちゃんですから」

「あら……」

「へぇ~…やるじゃない、本音ちゃん」

「えへへ~…♡」

 

うん、照れてる本音ちゃんも可愛いです。

 

「今じゃ、私のISをいつも整備してくれるようになってるんです」

「それじゃ、本音ちゃんは佳織ちゃんの専属整備士って事になるのね」

「かおりん専属……」

 

専属整備士……なんかいい響きの言葉だ。

本当のプロにでもなったような気分になれるな。

ちょっと照れくさいかも。

 

「って、折角来てくれたのに立ち話ってのは流石に失礼ね。適当に座って頂戴」

「はい。それじゃあ失礼して…」

 

適当って言っても、殆ど座る席は決まっているようなもんだけどね。

私は迷わず楯無さんの正面に座った。

だって、彼女の目が『私の前に座って~!』って訴えてたんだもん。

因みに、本音ちゃんは私の隣。

 

「それじゃあ、紅茶をお出ししますね」

「わ~い♡お姉ちゃんの紅茶~♡」

「本音はお茶請けのケーキを出して頂戴」

「は~い!かおりんの為ならえんやこ~ら」

 

二人揃って奥の部屋に行ってしまった。

残されたのは私と楯無さんだけ。

 

「なんかすみませんでした。結構前に誘われていたのに、中々来れないで…」

「別にいいのよ。こっちは全然気にしてないわ。佳織ちゃんだってクラス代表として忙しかったり、訓練に明け暮れていたりしてたんでしょ?」

「一応は……」

 

正確には、振り回されてたって言った方が正解だけど。

 

「そうそう。噂で聞いたわよ。佳織ちゃん、例の二人の転校生の片方と組んだんですって?」

「え?なんでそれを……?」

「学校って場所は、想像以上に噂の拡散が早いのよ。特に佳織ちゃんは学園では知らない者がいない程の有名人。嫌でも噂は耳に入ってくるわ。私のような役職についていると特にね」

「あぁ~…」

 

忘れがちだけど、この人って生徒会長なんだよな…。

最初のヘッポコぶりを見てしまった私的には、なんとも微妙な会長様だけど。

 

「でも、そう言うのってなんか分かります。生徒会って学校の中心にいるから、いい噂も悪い噂も真っ先に入ってくるんですよね」

「中学の時の経験?」

「はい。一応、副会長でしたから」

 

なんて言っても、完全に名ばかりの副会長だったけど。

あの頃にやった事と言えば、殆どが雑用だった気がする…。

 

「それじゃあ、また副会長をしてみる気はない?」

「……はい?」

 

ふ…副会長?私が?

 

「入学して早々に結果を残して、人望、人柄、実力共に言う事なし。しかも、中学の時に生徒会の経験もある。こんな逸材、そうそういないわよ?」

「いやいや、結果を残せたのは完全に偶然ですし、人望と人柄は普通だと思いますよ?昔の経験だって、殆ど流されてやったようなもんだし…」

「はぁ~……ここも噂通りって訳ね」

「え?」

 

また噂?

 

「佳織ちゃんって妙に自分の事を過小評価する傾向がある……って、先生達が言ってたわよ?」

「えぇ~…」

 

先生達も噂をしてるんかい。

 

「もう少し自分に自信を持ったら?」

「そう言われましても…」

 

私がこれまでやってこれたのは、完全に転生特典のお蔭。

悔しいけど、あのクソ神がくれた特典が無ければ、私なんて当の昔に学園中の笑いものになって、皆から見放されていたに違いない。

別に全てが特典の恩恵とは言わないけど、少なくとも戦闘に関しては間違いなく特典の影響が大きい。

私は謂わばズルをしているのだ。

そんな人間がどうして自信を持てるだろうか。

ましてや、私が模しているのはかの『赤い彗星』と呼ばれた最強クラスのエースパイロットのシャア・アズナブルその人だ。

そんな凄い人物の力を借りるなんて、私には余りにも分不相応過ぎる。

学園では私の事を『赤い彗星』なんて言ってるけど、私にその異名は絶対に相応しくない。

寧ろ、赤い彗星の名を汚しているんじゃないかと言う気にもなってしまう。

本物のシャアが私の事を見たらどう思うだろうか…。

絶対に失望するだろうな…。

 

「佳織ちゃん?どうかした?」

「えっ!?」

 

しまった…ちょっとボーっとしてた。

 

「なんだか元気が無いように見えたけど…」

「あ……なんでもないです。大丈夫です」

「そう……」

 

咄嗟に誤魔化したけど、大丈夫かな…?

 

(あの表情……普段は明るく振舞ってるけど、心の奥底には人には言えないような悩みがあるのかしら…。もしかして、彼女が異常なまでに自分を卑下するのもそれが関係して…?)

 

な…なんか楯無さんにジ~っと見られてるんですけど…。

 

「お待たせしました……って、一体どうしたんですか?」

「かいちょーがかおりんを見つめてる……」

 

ナ…ナイスタイミング!

布仏姉妹が戻ってきた!

 

「お嬢様?どうなさったんですか?」

「ううん。なんでもないわ。って、学園じゃ会長って呼んでって言ってるじゃない」

「これは失礼を」

 

あ、これって絶対に心からの謝罪じゃないな。

だって、虚さんの顔が笑ってるもん。

 

「それよりも、仲森さん。紅茶をどうぞ」

「あ…ありがとうございます」

「ケーキもあるよ~♡」

 

虚さんが紅茶を置き、本音ちゃんがケーキを置く。

勿論、二人分。

 

「それじゃあ、いただきます」

「いただきま~す♡」

 

いつの間にか座っていた本音ちゃんと一緒に、まずは紅茶を口に運ぶ。

少し熱いけど、飲めない程じゃない。

 

「お…美味しい……」

 

いつも本音ちゃんが虚さんの紅茶の事をべた褒めしていたけど、これは納得だわ…。

私は紅茶の専門家じゃないから詳しい事は分からないけど、これだけは言える。

……これを飲んだらもう、市販のティーパックは飲めないわ…。

 

「でしょ~?お姉ちゃんの紅茶はちょ~美味しいんだよ~♡」

「虚ちゃんの淹れる紅茶は世界一だもんね」

「全く…二人して……」

 

文句を言いつつも、その顔は完全に照れてますよ、虚さん。

 

「けど、本当に美味しいです。これなら毎日でも飲みたいですね」

「あら?早速告白?」

「なんでそうなるんですか…」

 

素直に褒めただけなのに。

 

「む~…いくらお姉ちゃんでも、かおりんは譲らないよ~?」

「馬鹿な事言わないの。仲森さんも困ってるでしょ?」

「でも、虚ちゃんの顔、真っ赤よ?」

「えぇっ!?」

 

あらホント。

どうかしたのかな?

 

「あの……布仏先輩」

「な…なんですか?」

「私の事は名前で結構ですよ。本音ちゃんのお姉さんに他人行儀にされるのって、なんか悲しいですから」

「そ…そうですか?じゃあ、私も名前で……」

「分かりました。虚さん」

「こ…これからよろしくお願いします、佳織さん」

「こちらこそ」

 

よかった…。

本音ちゃんのお姉さんなら、これからも接する事は多いだろうし。

いつまでも他人行儀なのはお互いに気まずいからね。

早いうちに打ち解けられれば、それに越したことはない。

 

「あらあら……意外なライバルが出来ちゃったわね?本音ちゃん」

「私だって負けないもん~…」

 

ライバル?なんのこっちゃ。

姉妹で何か競い合ってるのか?

 

「兎に角、さっきの話は考えておいて。無理強いをするつもりはないけど、私はいつでも大歓迎だから」

「そうですね…。そうさせてもらいます」

 

それからも、私は楯無さん達と雑談をして過ごした。

 

この日から、私の放課後の予定に『生徒会室に行く』と言う選択肢が増えた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 6月も中盤に入り、本格的に学園中の生徒がトーナメントの為の訓練を頻繁に行うようになる。

 

そうそう、この間本音ちゃんに聞いたんだけど、整備班の人達はトーナメントには参加しないらしい。

その代わり、自分が整備したISを出場する生徒に使ってもらい、そのISの挙動で成績を決めるとの事。

つまり、私の場合は、私の成績がそのまま本音ちゃんの成績に直結する訳だ。

これは増々負けられませんな。

 

この日、私とシャルロットはトレーニングルームにて体を動かしている。

と言うのも、今日はアリーナが全部予約で埋まっていて、使えなかったのだ。

かと言って、何もしないのは論外。

せめて、こうして体を動かして少しでも体力を付けようと考えた。

 

「ふぅ~…」

「少し休憩する?」

「そうだね……」

 

今まで使っていたルームランナーから降りて、予め持ってきていたタオルで顔を拭く。

 

「少し飲み物を買ってくるよ」

「分かった」

 

タオルを首にかけながらトレーニングルームを出る。

すぐ近くにある自販機に向かい、コインを入れようとすると、後ろに誰かの気配を感じた。

思わず後ろを振り向くと、そこにはどこかで見たような金髪の生徒がいた。

このリボンの色は……3年生か。

胸元が肌蹴ていて、妙に色っぽい。

 

「ふぅ~ん……こうして近くで見ると、中々……」

「はい?」

 

え~っと……どなた様?

 

なんて考えてると、いきなり自販機を背中に壁ドンされた。

 

「なっ…!?」

「結構スタイルもいいし、肌も綺麗で……」

「あ…あの……」

 

わ…私はどんな状況にいるの?

 

「オレは三年のダリル・ケイシー。お前が『赤い彗星』の仲森佳織だろ?」

「え……っと……」

 

ダ…ダリルって……確かアメリカの代表候補生で、そして……

 

「こうして汗を掻いてる姿を見ると、こっちの方もなんつーか…昂ぶってくるな」

「た…たかっ!?」

 

そ…そう言えば、この人って典型的な百合な人だった!!

や…ヤバい!?もしかしなくても狙われてる!?

 

か…顔が近づいてくる…!

 

「………にひ」

 

わざとらしく笑うと、ダリル先輩がいきなり私の顔に流れた汗を舐めた!

 

「ひゃう!?」

「へぇ~…可愛い声を出すじゃん。増々気に入ったよ」

 

そして、トドメの顎クイ!

先輩の目が私の目を見つめてくる……。

 

「オレに全てを委ねてみないか…?」

「何を……」

「オレなら……お前に最高の快楽を与えられるゼ?」

「いや……私はですね……」

 

先輩の唇が私の唇に近づき、その距離がゼロになろうとした……時だった。

 

「何をしてるっスか~!!」

 

いきなり黒髪の女子が私達の間に割り込んできた。

 

「もしかしてって思って警戒していたら、案の定だったっスね!」

「なんだよ…。折角いいところだったのに…」

「なにが『いいところ』っスか!完全にダリルの方から一方的に迫ってたじゃないっスか!」

「いや…だって、こいつみたいな奴はこっちからリードした方がいいと思って」

「リードってなんスか!リードって!」

 

あ…危なかった…!

割と本気で貞操の危機だった…。

 

つーか、このいきなり来た人は……

 

(あの色は2年生。黒い長髪を三つ編みにしてる)

 

でも、背は私よりも小さい?

先輩だと分かっていても、可愛く見えてしまう。

 

「ほら!早く行くっスよ!」

「はいはい。分かったから、そんなに引っ張るなよ」

 

な…なんだったんだ……?本当に……。

 

「アンタ……仲森佳織っスよね?」

「そ…そうですけど……」

「私は2年のフォルテ・サファイア!アンタにだけは絶対に負けないっスからね!」

「何が!?」

 

いきなりの宣戦布告!?

本気で意味不明なんですけど!?

 

「ダリルも!私と言う者がありながら、浮気なんて許さないっスよ!」

「え~?別に愛人ぐらいいいじゃねぇか~」

「絶対に駄目っス!!」

 

痴話喧嘩をしながら二人の上級生は行ってしまった…。

 

ヤバい……心臓のドキドキが止まらないよ……。

 

「はぁ……はぁ……」

 

それからのトレーニングは、あまり身が入らなかった。

シャルロットに心配されたから、今日だけは早めに切り上げる事にした。

 

女の人にあんなにも迫られたのって、生まれて初めてだよ…。

前に千冬さんや束さんに、この少し手前ぐらいの事はされた事はあるけど。

流石に汗を舐められた事は無かったな…。

 

ダリル・ケイシー……か。

これからも今日みたいに迫られたりするのかな…。

 




いつか佳織と接触させたいと思っていた、虚とダリル&フォルテを出してみました。

虚は少しだけフラグが立って、ダリルは完全に狙ってますね。

逆にフォルテはライバル視。

佳織の学園生活はまだまだ大変そうです。


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第28話 黒い雨VS赤い彗星

今日は訳あって休日出勤してました。

その代わり、夕飯は水炊きでした。

お蔭で心も体もポカポカです。






 やってきました学年別トーナメント当日。

 

試合会場となるアリーナは満員御礼と言った感じで、試合を見ようとする生徒や外からのお客さん、果ては各企業や各国から来たVIPの方々の誘導で先生達や係の生徒が忙しそうに走り回っている。

 

そんな中、私達は選手専用に用意された更衣室にて着替えを行っていた。

ここには私とシャルロットの他にも、一夏と箒、セシリアも一緒にいた。

それ以外にも色んな生徒が沢山いて、なんとも賑やかな感じになっている。

因みに、鈴とラウラは別の更衣室にいる。

 

「うわぁ~……凄い人の数だね……」

「そうだな…。私が嘗て出場した剣道の全国大会でも、これ程の観客はいなかったぞ……」

 

一夏と箒が驚くのも無理は無い。

私だって驚いてるし、他の子達だって観客席の事を映しているモニターを見て、改めて緊張しているみたいだし。

 

けど、そんな心境とは無縁の人物が二人程いたりする。

 

「3年生にはスカウトが、2年生には去年1年の成果を確認しに来ている人々がいるからね。ある意味では当然だよ」

「1年生は?」

「今はあまり関係ないけど、取り敢えずは能力の確認ってところじゃないのかな?」

「でも、注目している生徒は少なからずいるでしょうね」

 

そう、私達の隣で現在進行形で説明をしてくれているセシリアとシャルロットの二人だ。

この二人はきっと、お互いに代表候補生と言う事もあって、こう言ったイベントには場慣れしているんだろう。

うん、慣れって怖い。

 

「注目している生徒だと?」

「織斑先生の妹である一夏さん。剣道で全国の頂点にまで上り詰め、尚且つ篠ノ之博士の実妹でもある箒さん。そして……」

「今や『赤い彗星』の名で世界中のIS関係者に一目置かれている佳織……だね」

 

なんつーか……溜息しか出ないな。

 

「姉さんの妹だからって理由で注目されてもね……」

「私もだ。なんだか複雑な気分だ」

「でも、このトーナメントはそれを払拭するいい機会じゃないかな?」

「そうですわ。お二人の実力を実際に見せつければ、お偉方も少しは静かになるでしょう」

「セ…セシリアって結構過激だね……」

「それはきっと、皆さんの影響ですわ」

「「「えぇ~…」」」

 

私達って、そんなにも粗暴なイメージなの…?

 

そんな事を話しながらも、ちゃっかりと着替えは済ませている私達だったりする。

 

「さて、もうそろそろトーナメント表が発表されるんじゃない?」

「当日に発表って言うのも、なんだかサプライズ感があっていいよね」

「その代わりと言ってはなんですけど、トーナメント表を製作した先生方には激しく同情しますわ」

「そうだな……」

 

本当なら、これまで通りに専用の機械でトーナメント表を作る予定だったらしいけど、なんでかそれが突然の故障。

仕方なく、先生達や一部の生徒の手によってトーナメント表が一から造られて、結果としてギリギリのタイミングでの発表になってしまったわけだ。

早く故障の原因が判明する事を祈ろう。

 

「お?出るみたいだぞ」

 

箒の言葉に皆が会話を止めて、モニターに注目する。

 

「どれどれ~?って……」

「あら……」

「ほぇ~…」

「にゃんと」

 

モニターには一年の部のAブロックの一日目のトーナメント表が表示された。

そこには一夏や箒、セシリアの名前は無い代わりに……

 

(やっぱり……これだけは変えられないのか……)

 

私とシャルロット、ラウラと鈴の名前が表示されていた。

 

 

 

           一年生の部 Aブロック第1試合

 

 

 

   仲森佳織&シャルロット・デュノアVSラウラ・ボーデヴィッヒ&凰鈴音

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「まさか、こんな形でお前との試合が実現するとはな」

「皮肉……と言うのかな、これは」

「かもしれんな」

 

思った以上にラウラは落ち着いている。

原作での『一夏殺るオーラ』は全くない。

 

それとは逆に鈴は……

 

「見せてあげるわよ……貧乳の意地ってやつをね!!」

「なんで彼女はあんなにも殺気立ってるの?」

 

めっちゃ殺る気デス……。

一体、この短期間の間に何があったの?

 

「……鈴は一体どうしてしまったんだ?」

「聞かないでくれ……」

「は?」

「頼むから…聞かないでくれ……後生だから…」

「あ…あぁ……」

 

あのラウラがここまで落ち込むなんて……非常に気になるが、今は目の前の試合に集中しよう。

 

【これより、一年生の部のAブロック、第1試合を開始します。選手は所定の位置まで移動してください】

 

お、遂にか。

 

私達は会話を止めて、それぞれに移動した。

 

私達4人は勿論、会場全体が急に静まり返る。

 

私はハンドガンを握りしめ、シャルロットはアサルトライフルを構える。

ラウラはいつでもレールガンを撃てるように腰を低くし、鈴は双天牙月を両手で持つ。

 

【それでは……試合開始!!】

 

試合が始まると同時に、私は手に持ったハンドガンを収納し、対艦ライフルを構えた。

それを合図にするかのように、シャルロットが一気に前に出る。

だが、こう簡単には行かせないと言わんばかりに、鈴がシャルロットの進路を妨害してくる。

 

「残念。ここは通行止めよ」

「そんなのは最初っから分かってるさ」

「なんですって?」

「試合前に佳織が言ってたよ。『どちらかが前に出ようとすれば、ほぼ間違いなく鈴が迫ってくる筈だ』って」

「流石は佳織……!いくら前の試合でこっちの武装を完全に把握してるからって、そっから私の行動予測までするなんて!」

 

つーわけで、私の作戦通りに綺麗に1体1が2つ出来上がり~。

後は確固撃破すればオールオッケー。

 

私は私でスコープを覗きながら狙いを定めて……

 

「……!」

 

撃つべし!!

 

対艦ライフルの銃身から、大きめの弾丸が高速で発射される。

ラウラのリボルバーカノンに勝るとも劣らないスピードで飛んでいくが……

 

「ふん!」

 

それは、彼女が翳した手によって空中停止した。

 

「ほぅ……」

 

ラウラが翳した手を中心に、何か不思議な力場が形成されている。

あれが試合直前にシャルロットが言っていた『A・I・C(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)』。

正式名称『慣性停止結界』か。

 

「まさか、こんな分かりやすい攻撃で私に一撃を与えられると思ったんではあるまいな?」

「まさか」

 

こうなる事は想定済みですよ。

だからこそ、こっちだって『ソレ』を撃ったんだし。

 

「だが……いいのか(・・・・)?」

「何?」

そのままでいいのかと聞いている(・・・・・・・・・・・・・・・)

「どういう意味だ?」

「私が撃ったのは対艦用の弾丸だぞ(・・・・・・・・)?」

「はっ!?」

 

次の瞬間、空中で止まった状態だった弾丸が弾子を撒き散らして炸裂した。

 

「ぐあぁぁぁぁっ!?」

 

当然、至近距離にいたラウラに弾子は殺到し、命中する。

 

AICを発動中だったラウラに防御する術は無く、直撃を受ける事に。

 

「くっ……!まさか、こんな形で先制攻撃を受けるとは……!」

信じていたからな(・・・・・・・・)

「なんだって?」

「こっちがあのように弾丸を撃てば、お前が必ずAICを使うと私は信じていた(・・・・・・・)

「信じていた……だと?私を?」

 

あ…あれ?肩を震わせて……怒らせちゃった?

 

「ククク……ははははははははは!!!!まさか、対戦相手にそんな事を言われるとはな!予想もしなかったぞ!」

 

わ…笑った?

何かおかしなことを言ったかな?

 

「赤い彗星……噂通り、いや…噂以上だ!どうやら、お前レベルの戦士になれば、AICなど玩具に等しいようだな!」

 

なんか戦士認定されたんですけど…。

 

「いいだろう!もう小細工は無しだ!ここからは真っ向勝負だ!!」

 

笑いながらラウラは両手甲部からプラズマ手刀を出現させる。

 

「ふっ……面白い!」

 

ならばこっちはWビーム・トマホークで勝負だ!

 

「「いくぞ!!」」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「あっちはあっちで盛り上がってるみたいじゃない…!」

「そうみたいだね…!」

 

衝撃砲とアサルトライフルの撃ち合いをし続ける鈴とシャルロット。

一進一退の攻防に、二人は苦笑いをしていた。

 

「くっ……なんで龍砲が直撃しないのよ!アンタは初見の筈でしょ!」

「これも佳織から事前に教えられてたんだよ!一緒に作戦を練っている時に、佳織の方から自分の持っている情報を開示してくれたんだ!」

「ホント……抜かりなさ過ぎて逆に驚くわ…!」

 

いついかなる時も万全を尽くす。

それが佳織流の戦いだった。

 

「射撃戦で不利なら……」

 

衝撃砲を停止させて、一気に突貫する鈴。

 

接近戦(こっち)で勝負よ!!」

「だろうね!」

 

だが、シャルロットがそう簡単に相手の得意な距離での戦いを許すわけがない。

 

一瞬で両手に握っていたアサルトライフルがショットガンに変わる。

 

「なっ!?」

 

散弾を発射するショットガンは、距離が近づけば近づくほど威力が増す。

迂闊に接近すればいい的だった。

 

「そこっ!」

「きゃぁぁぁっ!?」

 

予想外の反撃に防御が疎かになってしまい、結果として鈴はショットガンの直撃を受ける事に。

 

「く……こんな事で!!」

 

咄嗟に態勢を整えて衝撃砲で弾幕を張りながら後退。

 

「まさか、シャルロットが『ソレ』の使い手だったなんてね!」

「『高速切替(ラピッド・スイッチ)』僕の得意技さ」

 

距離が離れたと同時に、再びアサルトライフルに持ち替えて距離を保つ。

 

「しつこい!」

「逃がさないよ!」

 

下手に接近すれば近接ブレードや近接用の射撃武器に瞬時に変更され迎撃、かと言って間合いを取れば遠距離用の銃に変わり弾幕を張られる。

 

どのような状況でも常に一定の距離と攻撃のリズムを保ち続け、攻撃と防御の両方で非常に安定した鉄壁の陣。

 

「『砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)』。資料で読んだ事はあったけど、実際にやられると、ここまで厄介だったなんて!」

「時間稼ぎ、消耗戦、陽動、使い勝手は抜群だからね!」

 

二人の戦いは加速する。

だが、鈴の不利は否めない。

ここが彼女にとっての正念場であった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 アリーナにある管制室。

そこでは千冬と真耶が試合の様子をモニターで見ていた。

 

「見事ですねぇ~…。まさか、あんな形で戦力の分担を図るなんて」

「あれは仲森の作戦勝ちだな。凰の性格をよく理解し分析した結果だろう」

「仲森さんって心理戦も得意なんですね」

「単純に古い仲だからだろう」

 

幼馴染故に分かる事もある。

身内を大事に思う佳織は、その傾向が特に顕著だった。

 

「しかも、ボーデヴィッヒさんのAICを逆手に取った攻撃でファーストアタックをするなんて。私には思いつきませんよ」

「発想の転換だな。AIC発動中は対象も動けないが、アイツ自身も動けない。それを利用したんだろう」

「簡単に言いますけど、普通はその発想に至りませんよ…」

 

やはり、どこかで佳織と千冬は似た者同士なのかもしれない。

 

「即席のタッグによる連携は、却って互いの動きを制限する可能性もある。それを考慮して試合開始直後にああいった行動に出たんだろうな」

「でも、それって…よっぽど自分に自信が無いと出来ませんよね?」

「それと、相手に対する信頼もな」

「デュノアさんが転校してきたのって、ついこの間ですよね。なのに、もうそんなにも信頼してるなんて…」

「デュノアが仲森に新武装を持って来たのが大きいんじゃないか?あれで仲森の中でデュノアに対する信頼度が上がったのかもしれん」

 

淡々と語る千冬だったが、その心の中では……

 

(おのれ~…!佳織を物で釣るなど!だが、そう簡単に佳織が堕とせれば、私がとっくに実行している!甘い…甘いぞデュノア!!)

 

嫉妬と安心が混ぜこぜになっていた。

顔では無表情を装いつつも、こんな事を考えられるのは、ブリュンヒルデの成せる技か。

 

「今のところ、仲森さんとデュノアさんのコンビが優勢みたいですね」

「やはり、近~中距離戦に特化した凰のISでは、汎用性に優れているラファールの相手は厳しいだろう。それは以前の仲森との戦いでも証明されている」

「あの時も仲森さんが凰さんを圧倒してましたよね」

「あぁ。それに加え、デュノアが持っているスキルが大きな武器になっている」

「『高速切替』と『砂漠の呼び水』。今の世代にアレを同時にこなせる子がいたんですね~…」

「そうだな。一昔前でも使い手は希少だった。だからこそ強力だとも言える」

 

実力だけならば互角に等しい鈴とシャルロットだが、いかんせん機体の相性が悪かった。

これが二人の勝敗を分けていた。

 

「さて、ここからどう転がるかな…」

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「はぁっ!」

「このっ!」

 

プラズマ手刀とWビーム・トマホークがぶつかり合い、火花が飛び散る。

単純なパワーは向こうの方が上だけど、出力ならこっちも負けてない!

 

高速で接近と離脱を繰り返しながら鍔ぜり合う。

離れた瞬間にはハンドビームガンで牽制する。

当然、向こうも大口径リボルバーカノンで攻撃してこようとするけど、その発射までにはコンマ数秒のタイムラグがある。

だから、その気になれば発射を阻止する事が出来る。

 

(この試合の短い間で、こっちの武装のウィークポイントを的確に把握された?私の遠距離攻撃が殆ど封殺されている!これが赤い彗星の実力か!)

 

ラウラのリボルバーカノンを防げるのは大きい。

あの攻撃力はこっちとしても看過できないからね。

一回でも直撃を受ければ、不利は免れない。

だからこそ、攻撃の一つ一つを慎重にしなくちゃ!

 

「リバルバーカノンが撃てないのならば……これだ!」

 

成る程……リボルバーカノンが発射不可能ならワイヤーブレードってか!

けどね、それを予想してなかったって思うのかい?

 

「ならば……ファンネル!!」

 

そっちが有線式のオールレンジ攻撃なら、こっちは無線式のオールレンジ攻撃で!

 

「ビット兵器か!」

「それだけではない!」

「なんだと!?」

 

ファンネルを動かしながらのハンドビームガンで攻撃!

これなら手数の上でこっちが上になる!

 

「並列思考!?」

 

え?なにそれ?

私は無我夢中でやってるだけだよ!?

 

「そこ!」

「しまった!」

 

驚きで操作が疎かになったのか、ワイヤーブレードの動きが鈍った瞬間を狙ってファンネルで迎撃!

4基あるワイヤーブレードのうちの3基の撃破に成功した!

 

「そして!」

 

残った最後の一基もハンドビームガンで撃つ!

 

「これすらも…!」

「今だ!!」

 

呆けている場合じゃないですぜ!

 

私はラウラが怯んだ一瞬の隙を狙って瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に接近し、シャア様十八番のキックをぶちかます!

 

「はぁぁぁっ!!」

「がはっ!?」

 

派手にぶっ飛ぶラウラに追撃のファンネル!

 

「このままでは……はっ!?」

「この一撃で……戦いは終わる」

 

そして、おまけのビームバズーカ!

 

以前、私はこのビームバズーカは威力と引き換えに隙が大きいと言ったが、それはファンネルと併用すれば改善できるんじゃないかって思った。

まぁ、実際に出来るかどうかは微妙だったんだけど。

こうしてやってみると、意外とイケるっポイ?

 

「照準が定まらんか……だが!」

 

その威力の余波だけでも充分な筈!

つーわけで、遠慮なく発射!!

勿論、撃つと同時にファンネルは退避させるけどね。

 

「これが……赤い彗星の力か……」

 

よし!完全な直撃とはいかなかったけど、命中はした!

でも、ビームが当たる直前にラウラの表情が穏やかだったような気が……。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 なんという力か……。

 

この私がまるで手も足も出ないではないか…。

 

本来ならば悔しがるところだろうが、不思議と穏やかな気分になっている。

 

ここまで見事に敗北すれば、逆に清々しさすらも感じてしまう。

 

あの教官が認めるのも納得だ。

 

確かに赤い彗星……いや、仲森佳織は強い。

 

もしかしたら、並の代表候補生程度ならば相手にすらならないのではないか?

 

そう思わせるほどの実力を見せつけられた気がする。

 

だが、本国になんて説明しようか…。

 

いや、それはその時になってから考えるか。

 

『願うか……?』

 

は?いきなりなんだ?

 

『汝、自らの変革を望むか?』

 

何を言っている?

意味が分からんぞ。

 

『より強い力を欲するか?』

 

何が言いたいかは知らんが、そんなものは不要だ。

 

確かに強くなりたいと言う願望はあるが、それは誰かに与えられるものじゃない。

自らの努力と研鑽によって得る物だろう。

よって、私の返答はNOの一択だ。

 

『………………』

 

今度は急に黙ったな。

本当になんなんだ?

 

『ならば、汝はより良い『体』を求めるか?』

 

か…体?何のことを言っている?

 

『あ~…もう!つまりは、スタイルが良くなりたいかって聞いてんの!分かる!?』

 

突然口調が変わりすぎだ!

と言うか、別になりたいとは思わん!

私は私の体形の事を不満に思った事なんぞ一度も無い!

 

『なら、スタイルのいい女の子に嫉妬とかもしないわけだ』

 

当たり前だ。何を今更……。

 

『なら、貴女には貧乳女子の代弁者になって貰おうか』

 

一体何を言って……

 

『これよりVTシステムの書き換えを開始します…………………………………………完了』

 

は?

 

『BSシステム……発動します』

 

ビ…BSシステム?

衛星放送の事か?

って、なんだ!?体が……ISが!?

やめろ……やめろ……!

 

やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、今こそ目覚めよ……ボインスレイヤーよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、色んな意味でぶっ飛びます。

どんな意味かは読んでもらえば分かると思います。

では、次回までサヨナラー!


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第29話 偽りの復讐者

うぅぅ……台風怖かったよぉ~!

窓はバンバン鳴るし、家は滅茶苦茶揺れるし!

自宅なのに全く落ち着きませんでした~!






 学年別トーナメント1年生の部の第一試合。

私とシャルロットVSラウラと鈴コンビの試合になった。

 

初手で私はラウラと、シャルロットは鈴にそれぞれ分かれての確固撃破作戦を敢行。

 

激しい攻防の末、私はラウラにファンネル→キック→ファンネル→ビームバズーカのコンボをぶちかます事に成功。

これだけすれば、少なくともSEは枯渇寸前か、もしくはゼロになったかしただろう。

なんて思っていた時期が私にもありました。

 

「な…なんだ!?」

 

ビームバズーカを受けたラウラの体がいきなり痙攣したように震えだし、次の瞬間には彼女のISがどろどろに融解し、ラウラの体を覆い尽くした。

 

「これは……!」

 

この現象は……間違いない!VTシステムだ!

 

正式名称『ヴァルキリー・トレース・システム』

 

私も詳しい原理はよく理解してないけど、確かあれって『楽して強くなりたいんだけど、どうしたらいい?』って考えに『じゃあ、強い奴と同じ姿になっちまえばいいんじゃね?』って答えを出した違法装置だったような気がする。

 

心のどこかで楽観視していた自分がいた。

この世界のラウラは一夏を初めとした特定の誰かに対して嫉妬や敵愾心なんかを全くもっていない。

だから、仮に彼女のISにVTシステムが内蔵されていても、発動なんかしないんじゃないかって。

でも、それは間違いだった。

もうちょっと色々な可能性を考えるべきだったんだ!

 

きっと、あれはSEが尽きた瞬間に感情レベルとかそんなものを無視して、強制的に起動するようにプログラムされていたに違いない!

くそっ!どうしてその可能性を少しも考えなかった私!!

 

溶けたISが地面に落下する。

状態が状態なだけに、損傷などは無いみたいだけど……。

 

それを追って私も地面に着地する。

すると、そこに試合中だったシャルロットと鈴も駆け付けた。

 

「ちょっと!あれは一体何なの!?」

「私にも分からん…。ただ……」

「ただ?」

「ラウラのISのSEが無くなった途端にあんな風な状態に陥った……としか言えない」

「そんな……」

 

本当は『VTシステムだよ~』って言いたいけど、そんな事を言ったら真っ先に私が疑われるに決まってる。

そんなのは流石に御免だ。

 

「SEが…?」

「意味分からないわ…」

 

それには激しく同感だよ。

観客席の方も現状をよく理解できてないのか、皆が目をパチクリとしてるし。

 

「兎に角、試合は中止ね。私達は大人しく退避して、先生達が来るのを待った方が……」

 

鈴の言葉が終わる前に、溶けたISに変化が訪れた。

奴が明確な形を取り出したのだ。

 

「な…なに……?」

「二人とも。気持ちは分かるが、今は迂闊に動くな」

「う…うん……」

 

冷や汗を流しながら様子を見ていると、ソレは動き出した。

 

縦長になったと思ったら、そこから手足のようなものが生えてきて、人型に変化していく。

その速度は非常に早く、まるで早送りで猿が人間に進化していく様子を見ているかのようだった。

 

(やっぱり……千冬さんの姿になるのか…!?)

 

だとしたら本気でヤバい!

確かにデットコピーではあるけど、それでもデータには全盛期の千冬さんの戦闘能力が使われている!

そんなのと正面から戦ったら、命が幾つあっても足りないよ!

しかも、相手は千冬さん本人じゃなくて、あくまで感情の無いシステム。

手加減とか容赦とかする筈もない。

 

内心、私が本気で焦っていると、なんだか様子がおかしい事に気が付いた。

 

(あれ……?)

 

なんか……体がごつくないか?

なんつーか……まるで男のような……

 

前身に皺のようなものが形成されていき、頭は頭巾のようなものに見えた。

 

「これは……まさか……!?」

 

いやいやいや!そんな事ってあり得るのか!?

 

時間にして僅か数秒。

その間に目の前にある『ISだったもの』が『全く別の存在』に変わった。

 

そう……それは……

 

「「「「「「ア……アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」」」」」」

 

漆黒の体躯を持つニンジャスレイヤーだった。

いや、『擬き』と言うべきか。

あれはニンジャスレイヤーじゃない。

本物はあんなにも無闇矢鱈と殺気を飛ばしたりしない。

 

つーか、観客の皆が全く同じ反応をしたことに誰もツッコまないのね。

 

「か…佳織……あれって……」

「あぁ……鈴。多分、お前が考えている通りだ」

「やっぱり……」

「え?ええ?」

 

私と同じ知識を持つ鈴は、即座にあれの姿がなんなのか理解出来たみたい。

一方のシャルロットは完全に状況が分からずに置いてきぼりになってるけど。

 

『ボ……こ…すべし……』

「「「え?」」」

 

今こいつ……喋った?

 

巨乳(ボイン)殺すべし!!!』

 

……………………。

 

「「「「「喋ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」

 

いや、それにも驚きだけど、喋った言葉にも耳を傾けようよ!

この似非ニンジャスレイヤーはなんて言った?

 

「………ねぇ…もう状況についていけないんだけど……」

「奇遇ね。私もよ…」

 

そこ~!諦めないで~!お願いだから戻ってきて~!

 

心の底から困惑していると、山田先生からのプライベート・チャネルが聞こえてきた。

 

『仲森さん!デュノアさん!凰さん!聞こえますか!?』

「「「山田先生?」」」

 

どうやら、この通信は私達三人に行っているようだ。

 

『今すぐに教師部隊を突入させます!だから、貴女達はすぐに……』

「なんだと?」

 

それはヤバいかもしれない…。

もしもあれが本当にニンジャスレイヤーを模しているのならば、間違いなくニンジャの掟に従うはず。

だとしたら、集団で何も言わず襲い掛かるのは非常に危ない!

 

「それはダメだ!」

『え!?何を言ってるんですか!?』

「奴が本当に姿の通りのニンジャならば、そんな事をした途端に何をするか分からない。迂闊な事はやめるべきだ」

『で…でも!だったらどうしたら!』

「大丈夫だ」

『はい?』

「相手がニンジャならば……」

 

私は少しだけ近づいて、手持ちの武装を全て拡張領域に収納した。

 

「こちらもそれ相応の対応をすればいいだけの事だ」

『な…仲森さん!?いきなり何を言って……』

 

このままじゃ埒があきそうにないので、また通信を強制カット。

 

「鈴……」

「分かってるわ。気を付けて」

「了解だ」

「ふ…二人とも?」

 

鈴はシャルロットを連れて端の方に移動した。

 

アイツが本当にこっちの予想通りの反応をするかは分からない。

でもやってみる価値はある筈だ!

 

え~っと……手と手を合わせて合掌して、それから……本名を名乗るニンジャは少なくて、大抵がニンジャネームを名乗るんだっけ?

だったら私は……

 

「ドーモ、ハジメマシテ、シャア・アズナブルデス」

 

済みません……この一時だけはこの名前を名乗らせてください…!

 

「あ…挨拶!?何を考えてるのさ!?そんな事をしてたら攻撃される!って言うか、シャア・アズナブルって何!?」

 

シャルロット=サン、ちょっと五月蠅いですよ。

 

『ドーモ、シャア・アズナブル=サン。ボインスレイヤーデス』

 

相手も同じポーズで挨拶した!

やっぱり、こいつはニンジャなんだ!

 

「なんで挨拶を返すの!?意味が分からないよ!?」

「あれが礼儀ってヤツよ」

「何気に冷静だよね凰さんは!?」

「私の事は鈴でいいわよ」

 

完全にツッコみ役が定着してますよ、シャルロット=サン。

 

………あれ?シャルロットのツッコみに夢中になっててスルーちゃったけど、こいつ…なんて名乗った?

 

「ボイン…スレイヤー……?」

 

なんちゅーネーミングだ…!

恥ずかしくないのか!?

ほら、観客の皆さんも逃げる事を忘れて顔を赤くしてるし!

 

「………………」

「なんで急に眼を逸らすの?鈴」

「別に逸らしてないし」

「いや!思いっきり逸らしてるじゃん!」

「気のせいじゃない?それよりもシャルロット、お尻出てるわよ」

「出てないよ!!」

 

もう完全にコントと化してるじゃんか。

あと、ISスーツなんだから、ある意味では半分お尻出てるよ。

 

「ボインスレイヤー=サン。何故ラウラを取り込んだ。貴様の目的を言うがよい」

『我が目的は唯一つ!巨乳殺すべし!貴様も巨乳!故に殺す!!』

「何故に巨乳を殺す?」

『それが我が使命が故!それ以外に理由など無い!!』

 

やはり、所詮はプログラムか。

こいつにはニンジャシレイヤー=サンのような信念が一切無い。

空虚な器に過ぎない。

 

「いいだろう……」

「佳織……?」

「私はニンジャではない。だが、私の大切なクラスメイトをこのまま放置しておく程、愚かでも無い」

『ならばどうする?』

「知れた事。貴様の中にいるラウラを救出する!それこそが私にとってたった一つの勝利条件だ!」

 

ISのパワーアシストとシャア様譲りの反応速度を用いれば、なんとか戦えるはず!

エネルギーはまだ少しだけ余裕があるし。

ビームバズーカとかが外部エネルギーパック式でよかったよ。

そうじゃなかったら、ヤバかったかもしれない。

 

「では……行くぞ!!」

『応!!』

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に加速、そのまま拳を振り上げる!

相手もそれに合わせるように、加速して拳を握りしめた!

 

「『イヤ――――――――――――――――!!!』」

 

オタク知識で得た私の似非カラテでどこまで通用するかは分からないけど、少なくとも、ここで逃げると言う選択肢だけは絶対に無い!!

 

私達の拳がぶつかり合い、その炸裂音がアリーナ全体に響き渡った。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 観客席で見ていた一夏達一行は、目の前の光景に言葉を失っていた。

いきなりのラウラのISの変化。

どこかで見た事のあるような姿になったISと、壮絶な戦いを繰り広げている佳織。

 

力と力。

技と技。

拳と拳の応酬。

 

それはまさに『ニンジャ』同士の戦いそのものであった。

 

実際には二人ともニンジャではないが。

それでも、その体の中にあるニンジャソウルは紛れも無く本物である!

 

「ボインスレイヤーって……」

「セ…セシリア?さっきから頭を抱えてどうしたの?」

「なんでもありませんわ……」

 

セシリアはこの中で唯一、ボインスレイヤー誕生の瞬間を目撃した人物。

それ故に色々と思うところもあるのだろう。

 

「佳織の奴……いつの間にこれ程のカラテを……」

「いや、あれは多分、見よう見真似だよ」

「なんだって?」

 

武の心得がある箒らしても佳織のカラテは見事の一言だったが、それが真似事だと知り、怪訝な表情と化す。

 

「佳織は昔から『その手』の知識は沢山持ってた。その知識と今の自分の反応速度に加え、ISのパワーアシストでなんとか戦ってるんだと思う」

「ならば……あれは全て即席で行っていると?」

「そうなるね」

「門前の小僧、習わぬ経を読む……と言うヤツか」

 

物真似だけで体格で優れている相手と互角に渡り合っている。

その事実がただただ凄く感じた箒だった。

 

物真似なのはお互い様だが。

 

そんな中、唯一ついてこれていないセシリアは……

 

「頭が痛いですわ……」

 

一人頭を押さえていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「イヤーッ!」

『グアーッ!』

 

私の拳がボインスレイヤー=サンの顔に命中し、

 

『イヤーッ!』

「グアーッ!」

 

ボインスレイヤー=サンの蹴りが私のお腹に直撃する。

 

(強い……!)

 

こうして拳を交えるとよく分かる。

例え存在は偽物でも、その実力は本物だ!

 

そういや、誰かが言っていたっけ。

『偽物が本物に勝てないなんて道理は無い』って。

全くもってその通りだよ!くそっ!

 

「イヤーっ!!」

『グ……!』

 

し…しまった!

こっちの蹴りが掴まれた!

 

『イィィィィィィィヤァァァァァァァァァッ!!!』

 

そのままジャイアント・スイングされて、地面に投げ飛ばされた!

 

「くっ……!」

「「佳織っ!!」」

 

二人の叫ぶ声が聞こえる…。

ISに守られていても、全身がめっちゃ痛い…!

 

『イヤーッ!!』

 

追撃のスリケン!!数は……

 

「ええい!面倒!!」

 

咄嗟にマシンガンを取り出して、飛んでくるスリケンを迎撃!

半ば地面に横たわっているような状態だったから当たるかどうかは微妙だけど、やらなきゃやられる!!

 

「当たれ!!」

 

迎撃……じゃないけど、スリケンを逸らす事には成功して、結果として一個も命中はしなかった。

 

『見事なワザマエ!一瞬の判断でスリケンの迎撃に最も有効な武器を選び、回避してみせるとは!』

「どうも……」

 

今のは完全に偶然だった…。

同じ事をもう一度しろと言われても絶対に出来ない…。

 

「はぁ…はぁ……」

 

膝を押えながら、なんとか立ち上がる。

少しでも気を抜けば、膝が爆笑する…。

早く救出しないと、ラウラの体力が持たない!

 

『だが、もう体の方が限界ではないのか?』

「かもしれんな……だが!」

『む?』

 

頬を落ちる汗を拭い去り、地面に払う。

 

「ニンジャの戦いとは、限界を超えてからが本番ではないか?」

『ゴウランガ…!』

 

なんて強がってはみたものの、本当はとっくの昔に限界なんて迎えてるんだよ。

それでも、救いたい子がいるんだ!!

 

「なんで佳織は武器を使わずに無手で戦おうとするの?佳織の実力なら……」

「ノーカラテ・ノーニンジャよ」

「へ?」

「ニンジャの基本は物理攻撃の戦闘術であるカラテであって、それを怠っていたら、どんなニユーク・ジツも全く意味を成さないのよ。古事記にもそう書かれているわ」

「え…えぇ~…っと?コジキ…って?」

 

鈴は腕組みをしてこっちをジッと見ている。

あんな風に見られたら、増々負けるわけにはいかなくなるじゃない!

 

体力、SE共に尽きかけてる…。

ラウラの事も考えれば、これ以上、戦いを長引かせるわけにはいかない。

 

私の状況を一言で言えば『ナムアミダブツ!』だ。

 

でも、このまま絶望的なまま終わらせはしない。

どこぞの指輪の魔法使いじゃないけど、私の手で絶望を希望に変えてやる!

 

「『イヤァァァァァァァァァッ!!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一話じゃ終わらなかったうえに、鈴とシャルロットがコント染みたことに…。

絶対に賛否両論あるでしょうが、できればオブラートに包んでくればハッピーです。

って言うか、完全に佳織もノッてます。



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第30話 お前は私を怒らせた

もう30話ですか……なんか早いですね。

それと、前回の展開に想像以上の反響があってビックリな私です。

果たして、今回はどうなるかな?






 佳織が変異したIS……ボインスレイヤーと死闘(?)を繰り広げている光景を観客席で見ているのは、一夏達だけではなかった。

 

「佳織さん……!」

 

彼女の事を誰よりも尊敬している四組のクラス代表であり日本代表候補生でもある少女、更識簪も悲痛な顔をしながら佳織の戦いを見ていた。

 

「あ……!」

 

佳織がフルスイングの末に地面に投げ飛ばされる。

その途端に周囲からざわめきが零れる。

 

「佳織さん!」

 

まるで自分の事のように涙を浮かべる簪。

彼女がたった一人で戦っているのに、何も出来ないでいる自分の事を歯痒く感じていた。

 

「本当に……私は何も出来ないの…?」

 

彼女も佳織と同じ趣味を持つ人間の一人。

故に、ニンジャの掟はよく分かっていた。

可能ならば今すぐにでも駆け付けたい気持ちで一杯だが、仮に行けたとしても自分に出来る事は何もない。

誰かが一緒に戦う事が許されるのならば、とっくに教師部隊やステージにいる鈴やシャルロットがやっている筈だから。

 

「今の私に出来る事……それは……」

 

必死に頭を巡らせる。

自分に出来る事は何か?

 

そうして考えている間にも、佳織はふらつきながら立ち上がる。

 

それを見た簪は、無意識の内に声を上げて叫んでいた。

 

「頑張れ――――――――!!佳織さ――――――――ん!!!」

 

普段の彼女からは想像も出来ない程の声量。

それだけ、簪が佳織を心配している証拠でもあった。

 

「かおり~~~~ん!!!がんば~~~~~!!!」

「ほ…本音?」

 

いつの間にか隣に座っていた本音も、同じように叫んでいた。

 

「大丈夫だよ、かんちゃん」

「本音…?」

「かおりんが誰かを守ろうとする時は、絶対に負けないから」

 

そう簪に言い聞かせる本音の顔は、とても大人びていた。

 

「その通り。私達が信じないで、誰が佳織ちゃんを信じるの?」

「お姉ちゃんまで……」

 

神出鬼没な簪の姉、更識楯無も現れ、その手に握られた扇子には『必勝』と書かれていた。

 

「と言う訳で………佳織ちゃ~~~~~ん!!!負けちゃ駄目よ~~~~~!!!」

 

楯無も二人に負けないぐらいの大声で佳織に声援を送る。

そんな彼女達の姿に、少しずつ周囲の生徒達も表情が変わっていく。

 

「そうよ……。皆、私達も応援しよう!」

「賛成!」

「あんな奴に大切な学園を荒らされるとか、絶対に嫌だし!」

 

急に顔が生き生きとしだして、活気が戻る。

 

「仲森さぁ~~~ん!!負けるな~~~~!!!」

「そうよ!!そんな奴、ガツンとやっちゃえ~~~!!」

「赤い彗星は伊達じゃないってところを見せてよね~~~~~!!」

 

次第に声援の輪は広がっていき、最終的には簪達がいた観客席一帯が佳織への声援に包まれていた。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 片方の観客席が声援に包まれたのなら、当然のようにもう片方の観客席も同じ様に声援に囲まれた。

 

「佳織~~~~~!!成せばなる!!自分を信じて!!」

「お前なら絶対にやれる!!だから、最後まで決して諦めるな!!!」

「私も信じていますわ!!佳織さんの勝利を!!!だから!!!」

「「「いっけ~~~~~!!!佳織(さん)~~~~~~!!!!」」」

 

主に一夏、箒、セシリアの三人が声を上げているが、それに釣られるような形で皆も応援をしている。

 

「負けんじゃないわよ~~~!!」

「頑張れ~~~~!!!」

「そこよ!いけ!!」

 

皆の声がアリーナ全体を包み込む。

その声が、佳織に最後の力を与えてくれた。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「凄い……!アリーナにいる皆が佳織を応援してる……」

「そうね…。本当なら逃げ出したいでしょうに、それでも佳織の事を信じてくれている」

 

やっぱり佳織は凄い。

相手の方が上手なのに、決して諦めようとしてない。

ここから見える佳織の目は……全く死んでいない。

 

「聞こえる……皆の声が……仲間たちの声が……」

 

さっきまで俯きかけていた佳織の背筋が急に伸びた?

しかも、なんか上を向いて呟いてるし……。

 

「だ…大丈夫かな?流石の佳織も、体力も機体のSEももう限界に近い筈だけど…」

「確かにね。だけど、それでもやるのが佳織って女の子なのよ」

 

昔からそうなのよね。

諦めが悪いって言うか、往生際が悪いって言うか。

兎に角、自分から背中を見せるような真似だけは絶対にしない子なのよ、佳織は。

 

『周囲からの声援がシャア・アズナブル=サンに力を与えるか…!だが!それでも越えられぬ壁が我だ!!それを思い知るがいい!!』

 

好き放題言ってくれちゃって。

あんなパチモン、私的にも許せないのよね。

 

急に佳織の体がフラ…っと前に倒れそうになる。

 

「か…佳織!!やっぱりもう限界なんだよ!!」

 

シャルロットが必死に叫ぶが、私は耐えた。

本当は私だって叫びたいほどに心配なのよ!

でも、私は黙って佳織の戦いを見守るって決めたんだから!

 

佳織の体が地面につきそうになった瞬間……佳織の体が消えた(・・・)

 

「「え?」」

 

そして、いつの間にか敵の懐に飛び込んでいた。

 

『なにっ!?』

 

流石のアイツも一瞬で間合いを詰められては、そう簡単に対処は出来ないようで、ほんの少しだけ、でも確実に隙が出来ていた。

 

「肘打ち!!イヤーッ!!」

『グワーッ!』

「裏拳!!イヤーッ!!」

『グアーッ!!』

「正拳!!イヤーッ!!」

『グアーッ!!!』

 

ボインスレイヤーの腹部に見事な三連コンボが炸裂した!

あれは流石に効いたでしょ!!

けど、佳織のターンはまだ終わらない。

 

「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤァァァァァァァァァァッ!!!!!」

『グア――――――――――――――――ッ!!!』

 

そこからまさかのオラオララッシュならぬイヤイヤラッシュ!

 

「凄いラッシュ…!だけど、今の佳織の一体何処にこんな力が……」

 

もうツッコみをしなくなったと言う事は、シャルロットも状況に慣れ始めたわね。

 

「これもある種の『フーリンカザン』なのかしら…」

「フ…フーリンカザン?」

「自然環境や周囲の状況を味方につけて、少しでも戦闘を有利にするべし……と言う教えよ」

「成る程……実に合理的な考えだね。でも、それが今の状況とどう関係が?」

「分からない?佳織は今、皆の声援を浴びながら戦ってるのよ?つまり、佳織はもう限界な自分の体力と気力、そしてISを皆の声援で奮い立たせているの。自分が負けたら後が無い。皆が大変な目にある。そう自分に言い聞かせて」

「そ…そんな……」

 

シャルロットが驚くのも無理ないわ。

自分で言ってて驚愕してるし。

でも、だからこそ、私達は皆、仲森佳織と言う女の子の事を好きになったの。

どこまでも誰かの為に頑張れる、あの子の事を。

そう、佳織はいつだって『どこかの誰かの未来の為』に戦っている。

 

『くっ…!この私が!遅れを取る事など!あって……たまるかぁぁぁぁぁっ!!』

 

なんとかガードをして威力を軽減して、佳織が見せた一瞬の隙を狙って回し蹴りを放つが、もうそこには佳織はいなかった。

 

『なにっ!?』

「イヤァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

瞬時に背後に回った佳織の拳がボインスレイヤーの顔面にヒット!

そのまま凄い勢いで地面に激突する。

 

『グアァァァァァァァァァァァァッ!?』

 

地に伏したボインスレイヤーにトドメと言わんばかりに突っ込んでいく佳織。

その目は完全に何かを狙っていた。

 

「先程の攻撃(ラッシュ)ようやく分かった(・・・・・・・・)そこにいるな(・・・・・・)ラウラ(・・・)!!」

 

分かった…?そこにいる…?

 

「ま…まさか!?」

 

さっきのラッシュは……その為に(・・・・)!?

 

『や…やめろ!!』

「イヤ――――――――――――――――――ッ!!!!!」

 

佳織の渾身の手刀がボインスレイヤーの腹部に突き刺さる!!

そして、その状態のまま、何かを引きずり出そうとしている。

 

「あ…あれは!?」

「やっぱり……!」

 

アイツの中から出て来たのは……

 

「「ラウラ!」」

 

なんでか全裸の状態のなっているラウラだった。

 

佳織は気絶しているラウラをお姫様抱っこしたまま後退し、私達の所まで来た。

 

「頼む」

「分かったわ。この子は私達に任せて」

 

シャルロットも無言で頷く。

 

向こうでは、ボインスレイヤーが腹を抱えて膝をついている。

 

『グ…グォォォォ……』

 

もうああなったらニンジャじゃないわね。

唯の化け物だわ。

 

何を思ったのか、佳織は再びヤツの元まで行った。

 

「もう勝負はついた」

『何……を……』

「最初に言ったはずだ。私の勝利条件はラウラの救出することだと。それは無事に達成された。故に、この勝負は私の勝利だ」

 

これは佳織なりの慈悲なのかしら…。

まさか、機械にまで情けを掛けようとするなんて…。

 

「で…でも、どうして佳織はラウラの居場所が分かったんだろう?」

「さっきのラッシュよ」

「え?」

「あの連続ラッシュの時に攻撃しながらラウラがどの位置に取り込まれているのか探っていたのよ」

「と言う事は……まさか!佳織が最初から無手で戦っていたのは……」

「多分、ラウラの場所をより正確に探る為でしょうね。武器越しよりも確実性はあるもの」

「そ…そこまで計算に入れていたなんて……」

「前に佳織が言ってたわ。戦いとは常に二手三手先を考えて行うものだって」

「いやいや……幾らなんでも先を読み過ぎだよ…」

「それには同感だわ」

 

なんて言ってみたものの、あれは完全に場の流れに任せた結果、無手で戦わざる負えなかったに違いないわね。

昔から佳織は信念はあっても流れには逆らえない、不思議な性格をしてたから。

まぁ…勘違いとは言え、シャルロットがそれで納得したんだから、今はそれでいいか。

 

『まだだ……我には使命が……』

 

うぅ……私が名付け親みたいなものだけに、すっごく恥ずかしい…。

誰にも知られてないって言っても、確実に黒歴史確定ね…。

 

「……いいだろう。貴様に偉大なる先人の言葉を教えてやる」

『なんだと…?』

 

……?一体何を言うつもりかしら?

 

「貧乳はステータスだ!!!希少価値だ!!!!!」

『「ナ…ナンダッテ―――――!?」』

 

あ、思わず一緒に叫んじゃった。

って、そうじゃなくて!

 

『ステータス……希少価値……だと……!』

「そうだ。嘗てこの言葉を言った女子高生は、自らの貧乳を何よりも誇っていた。誰に何を言われようとも、貧乳である事を卑下などしなかった」

 

そ…そんな子が世の中にいると言うの…!?

しかも、女子高生って……

 

「私と同じ……」

「ちょ…鈴っ!?なんで鈴もダメージを受けてるの!?」

 

最も多感な時期である高校時代にそんな言葉を残せるだなんて……。

それに比べて私は……。

 

「こんなんじゃ駄目ね……」

「鈴…?」

「決めたわ!私もう……胸が大きい子を僻むのをやめる!」

「そ…そう……」

 

なんか隣でシャルロットが呆れているけど、今は無視で。

 

私も自分の胸に自信を持つわ!

佳織が言ってくれた言葉を抱きながら!

希少価値でステータスな私の魅力で佳織をメロメロにしてみせるんだから!

 

『グォォォォォォォォォォォォォッ!!!!』

 

なんだか苦しんでるわね。

もしかして、自分の使命を否定されて、プログラムが自己崩壊をしてるのかしら?

 

「あ、隙だらけ」

 

分かってても言っちゃ駄目よ、佳織。

 

「イヤ―――――――――――――――!!!」

 

最後の一撃はWビーム・トマホークでの一刀両断。

ここまできたら、もう拳にこだわる必要も無くなったのかもしれない。

 

ボインスレイヤーの斬られた後からは火花と紫電が散っている。

 

「勝負ありだ、ボインスレイヤー=サン。潔くハイクを詠むがいい」

『ひ…貧乳も……巨乳も皆……同じ胸……』

 

何気に五・七・五になってるわね。

意外なところで律儀な奴。

 

『見事なワザマエだった……シャア・アズナブル=サン……では…サヨナラ――――!!!』

 

最後に一言言い残して、ボインスレイヤーは爆発四散した。

 

「なんで……なんで最後に俳句を詠むのさ~~~!?あと、季語が入ってなかったんですけど~~~!!」

 

佳織の勝利を祝うように湧き上がるアリーナを余所に、シャルロットの全力のツッコみが炸裂した。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

うぅ……私は……どうして……。

 

『ど…どうしたの?どこか痛いの?』

 

強いて言えば、心が痛い…。

 

『こ…心?』

 

皆に迷惑を掛け、お前を傷つけてしまった…。

本当に済まない……。

 

『いやいや!それを言ったら私も悪かったよ!』

 

何を言っている……お前は被害者じゃないか…。

 

『別に私は被害を受けたなんて思ってないんだけど…』

 

お前と言う奴はなんで……。

 

『つーか、私の方も思いっきり殴ったり蹴ったりしちゃったし…』

 

あれは完全に不可抗力だろう…。

それこそ気に病む必要はないと思うぞ。

 

『う~ん……でもなぁ~……』

 

これでクラスの皆や教官に嫌われたら……私は……。

 

『だ…大丈夫だよ!普段は厳しそうに見えても、本当は優しいのが千冬さんだし!それは君だってよく分かってるでしょ?』

 

それは……

 

『それに、クラスの皆もこんな事ぐらいで君を見限ったりはしないよ。もしも誰かが何かを言ってきても、私が何とかする!これでも私はクラス代表だもん!大丈夫!』

 

ふふ……その根拠無き自信はどこから出てくるんだ…?

 

『どこからと言われましても…』

 

あぁ……確かにこれは教官の仰る通りだ。

彼女は間違いなく『底なしのお人好し』だ。

 

周りの女子達が彼女に惹かれるのも納得かもしれない…。

 

『私だけは絶対に君の傍にいる。私は君を…裏切らない』

 

こんな風に優しくされたら……私だって……

 

仲森佳織……私はお前を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ボインスレイヤー撃破!!

そんでもって、ラウラフラグ成立?

今回もネタを盛り込みすぎましたかね?


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第31話 真の忍殺

今月、目を付けていたガンプラは粗方買ったから、次は11月に発売するヤツを待つばかりです。

狙い目はザク・ハーフキャノンとケルディムガンダムサーガです。

早く発売しないかなぁ~。






「う…うぅん……?」

 

瞼を貫通して差し込む光に反応して『彼女』は目を覚ます。

 

「ここ……は……?」

「目が覚めたようだな」

 

すぐ傍で声がする。

この声は間違えようがない。

彼女が最も尊敬している女性であり教官『織斑千冬』だ。

 

「ここは学園内の保健室。お前はあの後すぐに運ばれたんだ」

「あの後……?」

 

頭に手を当てて、少しずつ記憶が蘇っていく。

 

「そうだ……私は……」

 

思い出した。

彼女…ラウラ・ボーデヴィッヒは佳織に敗れた後、謎のシステムがラウラの意思を無視して強制的に発動し、それから……

 

「きょ…教官!彼女は……仲森佳織は……痛っ!?」

「あまり無理をするな。お前の全身に無理な負荷がかかった上に、佳織の拳や蹴りを受けたんだ。それによって筋肉疲労と打撲跡がある。まぁ、それ程酷くは無いから、回復は早いだろうが」

「そう……ですか……」

 

起き上がりかけていたラウラは、再びベットにゆっくりと寝転んだ。

その時、自分が普段から付けている眼帯が外されている事に気が付いたが、気にする程でもないと判断し、何も言わなかった。

 

「あの時の状況は覚えているか?」

「はい。私は仲森佳織に敗れ、その直後に私のISが変貌して……」

「そうだ。……これから話す事は重要案件な上に機密事項なのだが、あの場にいた全員が見ていたからな…。機密も何もあったもんじゃないか…」

 

はぁ……と溜息をこぼす千冬。

これまで、そしてこれからの仕事の事を考えると、そうせずにはいられないのだろう。

 

「VTシステムの事は知っているか?」

「あ……はい。確か、正式名称はヴァルキリー・トレース・システム。過去のモンドグロッソにおいてヴァルキリーを受賞した者の動きを文字通りトレースするシステムであり、そして……」

「あぁ。アレはIS条約において現在、どの国家や企業、組織等で研究や開発は勿論、使用も禁止されている代物だ。それがお前にISに搭載されていた」

「………………」

 

沈黙しているが、ラウラは決して沈んでいるわけではなかった。

彼女の意識が飲まれる瞬間、確かに聞いたのだ。

『VTシステムを書き換え、BSシステムにした』…と。

それなのに、実際に発見されたのはVTシステム。

この謎のズレがどうしても気になった……が、ここで尋ねても答えは出ないであろうことは明白だった。

なにより、今の自分は疲弊している。

今は体を休める事が優先だろう。

 

「……アレは実に巧妙に隠蔽されていた。本来ならば操縦者の精神状態や意思、機体の破損状態等がトリガーとなって発動する筈なのだが、今回発見された物は少し違った」

「……SEが無くなったと同時にパイロットの意思等に関係無く、強制的に発動するように……ですか」

「分かっていたのか……」

 

軍人故の洞察力か……と千冬は思ったが、実際は単純に覚えていただけの事だ。

 

「現在、学園側からドイツ軍に向けて問い合わせをしている。近いうちに委員会からの強制捜査が入るだろうな」

 

淡々と事務的に話す千冬の言葉を聞きながら、ラウラは虚空を見つめて、先程の夢の事を思い出していた。

『夢』の一言で片付けるには、余りにも鮮明な記憶。

 

「私は君を裏切らない……か」

「どうした?」

「い…いえ!なんでもないです…」

 

小声で呟いたつもりだったが、地獄耳の千冬には聞こえていたようだ。

 

「あの…先程聞きそびれましたが、仲森佳織は……」

「仲森なら、隣のベットで寝ている」

「え?」

 

千冬が隣のベットを遮っているカーテンを開くと、そこには顔や腕などにガーゼや包帯を巻いている佳織が静かに寝息を立てていた。

 

「なっ……!?」

 

明らかに自分よりも重傷な佳織を見て、言葉を失うラウラ。

 

「お前を救出した後にISが強制解除され、仲森は倒れてしまったんだ。保健の先生が言うには、ずっと張りつめていた緊張の糸が切れると同時に、今まで蓄積していた疲労が一気にきたせいらしい」

「では、あの傷は……」

「あれか?暴走したお前のISと壮絶な格闘戦を繰り広げたんだ。ああもなる」

「格闘戦……」

 

なんとなくではあるが、救出される瞬間の事だけは明確に覚えていた。

 

いきなり目の前が明るくなり、それと同時に、誰に手を握られて引っ張られた。

ISを纏っていたにも拘らず、その手はまるで生身の手のように暖かかった。

 

「………!?」

 

急に顔が熱くなった。

思わず両手を自分の胸の上で重ねる。

 

「お前……まさか……」

「え?」

 

いきなり千冬の顔が怪訝な表情になる。

 

(また堕としたのか……佳織……)

 

佳織が皆に好かれている事実に、教師として喜ぶべきか、一人の女として嫉妬すべきか、理性と本能の狭間で密かに苦悶する千冬だった。

 

「取り敢えず、今日はここでゆっくりと体を休めるように。私は事後処理がある為もう行く」

「わ…分かりました…」

 

椅子から立ち上がり、保健室のドアへと向かう。

その途中で振り返り、念を押すように言う。

 

「そうだ、お前に限ってないとは思うが、一応言っておくぞ」

「な…なんでしょうか?」

「いくら無防備とは言え、寝込みを襲うような真似だけはするなよ?(それが許されるのは私だけだからな)」

「と…当然です!」

「ならいいのだがな。ソイツは同性に妙にモテるからな」

「そうなんですか……」

 

フッ……とニヒルな笑みを浮かべ、最後にこう呟く。

 

「お前が想像している以上にライバルは多いぞ。…………私も含めてな」

「はい?」

 

それだけを言い残して、千冬は保健室を後にした。

 

佳織と二人っきりになった保健室。

急にソワソワしてきた。

 

「な…なんだ…?このモヤモヤと言うか……ドキドキと言うか……言葉では言い表せないような気持ちは……」

 

そっと隣の佳織を覗き見る。

頭などに包帯を巻いてはいるが、その美しさは全く失われてはいなかった。

本人が起きていたら否定するだろうが。

 

「お前が……救ってくれたのだな……」

 

痛む体を我慢しながら、ラウラは佳織が寝ているベットの傍まで向かう。

そして、その手をそっと握りしめた。

 

「本当に……本当にありがとう……佳織……」

 

涙を流しながら微笑むその時の彼女の顔は、とても可愛らしく、美しかった。

 

眼帯が付けられていて今まで隠れていた金色に輝く目が、静かに輝いていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「トーナメントは事故により中止になったけど、今後の個人データの指針としする為、全ての一回戦だけは行う事にする…か」

「中止の原因は絶対に今日の出来事だろうけど、完全に中止にしない辺りが、IS学園らしいって言うか…」

「何が何でもデータだけは取るぞ!と言う意思が見え見えだな」

「その辺りは仕方がありませんわ。学園側もIS委員会に各生徒のデータ等を提出しなくてはいけませんから」

「あぁ~…大人って大変ね~。私は絶対になりたくないわ~」

「なりたくなくても、時間が経っちゃえば嫌でも大人になるけどね~」

「ほ…本音さんって、意外とシビアな事を言いますのね…」

「思ったよりもリアリストなんだな…」

 

こんな会話を学食でしているのは、毎度お馴染みの佳織ラバーズの面々。

今回はそこにシャルロットも加わっているが。

 

全員の手元にはそれぞれにドリンクが置かれていて、今が食後なのは誰にも分かった。

 

「まず確実に箝口令が敷かれるでしょうけど、絶対に意味無いわよね…」

「今回は流石に目撃者が多すぎる。しかも、声援まで送っていたからな」

「まぁ…黙れと言えば皆は黙っていてくれるとは思うけど、確実に記憶には残るよね…」

「色んな意味でインパクト絶大だったからね……」

 

遠い目をして呟くシャルロットの顔は、どこか疲れ果てていた。

 

「だが、今回も佳織のお手柄だったな」

「まさか、あの佳織さんがあんな風な戦いをするとは思いませんでしたわ」

「意外と言えば意外だったけど、凄かった事実は変わらないよね」

「そうね。私とシャルロットなんか、あれを間近で見てたから、すっごい迫力だったわよ」

「同時に、佳織がどうして『赤い彗星』って呼ばれているか、実感出来た気がするよ…」

 

コンビを組んで分かった、佳織の凄さ。

恐ろしく冷静なように見えて、その心の奥底にはとても熱いものを隠し持っていた。

頭はクールに、心はホットに。

言葉で言えば簡単だが、これを実践出来ている人間は非常に少ないだろう。

 

「その佳織は今、保健室なのよね?」

「あぁ。戦いの最中は分からなかったが、実は全身にかなり無理をさせていたようでな、急いで保健室に連れていかれたよ」

「お見舞いに行きたいですけど、流石にもう時間が……」

「それ以前に、かおりんはヘトヘト~になってスヤスヤ寝てると思うから、邪魔したら駄目だよ~」

「分かってるって。佳織の睡眠を邪魔するなんて誰もしないよ」

「つーか、暗黙の了解よね」

 

鈴の言葉に全員が頷く。

 

「にしても……」

「あら?急にどうしたんですの?シャルロットさん」

「いやね……言動とか色々とツッコみどころが多かったけど、戦闘だけをピックアップすれば、今日の佳織ってカッコよかったなぁ~って思って」

「「「「「え?」」」」」

 

遠い目の次は熱のある顔になるシャルロット。

ほぅ……と息を吐く彼女の顔を、ここにいる全員が一度はしたことがある。

そう、この顔は……

 

(((((恋する乙女の顔!!)))))

 

だが、当の本人は己の抱いた感情が佳織に対する恋心の始まりだと自覚はしていないようで、それを瞬時に察した少女達は同時に密かにホッ…と胸を撫で下ろした。

約一名、撫で下ろす程の胸が無い者もいるが。

 

「あ?」

「り…鈴?どうしたの?なんか凄い顔になってるよ?」

「なんか、どっかで誰かが私の悪口を言ってる気がして…」

 

口は災いの元。

皆さんも気を付けましょう。

 

「優勝……チャンスが……消えて……」

「当然……交際も……無効に……」

「そげなこと……そげなこと~~~~!!」

 

食堂の隅で喚いていた女子達がいきなりどこかへと走り去っていった。

 

「なんだろう?」

「例の噂の件が無効になった事を嘆いている、佳織のファンの子達じゃない?」

「あ~…アレね。私は別に気にしないけど」

「アタシも。そんな噂に右往左往するよりは、真正面から挑んだ方がよっぽど健全だわ。箒もそう思うでしょ?」

「そ…そうだな!あははは……」

「ん?どうしたの?」

「なんでも無いぞ!うん!ターセル様々だな~!」

「……変なの」

 

完全に怪しまれてしまった箒だったが、今の彼女はそんな事を気にしている余裕は無かった。

 

(おいおいおい!トーナメント前の『どんな結果になっても告白しよう』と思っていた私はどこに消えた!?と言うか、こんな雰囲気になって、私だけが佳織に告白とか出来ないだろ!!完全に抜け駆けだと思われてしまう!!ここにいるメンバー全員を敵に回す事だけは絶対に避けたい!!特に本音は!下手に敵対すれば、どんな目に遭うか想像出来ない!!)

 

実際の彼女は全く『ターセル様々』ではなかった。

 

「今日は本当に疲れたから、久し振りに大浴場にでも行こうかしら?」

「いいですわね。シャルロットさんもいかがですか?」

「大浴場って、大きいバスルームだよね?いいの?」

「勿論。今日は丁度使える日だよ~」

「じゃあ、決まりだね。皆で行こうよ」

 

これからの彼女達の予定が決まったところで、一旦解散する少女達だった。

 

え?入浴シーン?

そんな事をしたら私が殺されますよ。

だから、それぞれに想像してくださいな。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 深夜の保健室。

本来ならば誰も入れない筈の閉じられた場所に、一つの人影があった。

 

深く被ったハンチング帽子にトレンチコート。

体型から、その人物が男性である事は明白だった。

 

本来なら警報の一つでも鳴りそうなものだが、そんな気配は一切無い。

それだけで、彼がどれ程の技量の持ち主なのかが分かる。

 

『フフフ……こうして態々、夜中に侵入までするなんて、よっぽど彼女の事が心配だったんですね?だって、アリーナで見ていた時だって、ずっとソワソワしてましたし』

「……………………」

『この状況での沈黙は肯定だと捉えますよ?』

「勝手にするがいい」

『では、そうします』

 

何処からともなく女性の声が聞こえてくるが、周囲には聞こえていない。

この声は彼の脳裏にのみ聞こえているのだ。

 

「しかし、こうして見れば、彼女はどこまでも普通の少女だな…」

『そうです。彼女は転生特典を無理矢理与えられた事を除けば、至って普通の女の子ですよ』

「それを聞かされれば、増々不憫に感じてしまうな…」

『はい…。彼女は『彼』の欲望を満足させる為だけに転生させられたようなものですから』

 

そう話す『彼女』の声は沈んでいるように聞こえた。

 

『やっぱり心配ですか?』

「最初はな。だが、今はもう心配はしていない」

『と言いますと?』

「お主も聞いただろう。戦いの最中、アリーナの中にいる人々が送った彼女への声援を」

『あれは凄かったですね~』

「もしも彼女が孤独な戦いをしているのならば私もそれなりの事を考えたが、この子は一人じゃない。あれだけ多くの友が、仲間が、恩師がいて何を恐れる必要がある?」

『そうですね…。特典なんか関係無しに、彼女には人を惹きつける何かがあるのかもしれませんね』

「それが俗に言う『カリスマ』なのだろう」

 

室内が暗い上に帽子を深く被っているからよく見えないが、彼の顔は確かに微笑んでいた。

 

『さて……これからどうします?『元の世界』に戻りますか?』

「そうだな。大恩あるお主に言われて『この世界』に来たが、どうやら杞憂だったようだ」

『それには同感です。私も過度な心配をしちゃいましたね。では……』

 

彼の体が透明になっていき、気配が消えていく。

 

「シャア・アズナブル=サン……いや、ナカモリカオリ=サンと呼ぶべきか。いつの日か君が君だけの『赤い彗星』になれる日を楽しみにしているぞ。それと……」

 

彼の手が優しく佳織の頭に触れ、少しだけ撫でた。

 

「今日の君が見せたカラテ……見事なワザマエだった」

『それじゃあ、元の世界に戻しますね。場所はネオサイタマでよろしいですか?フジキド・ケンジ=サン』

「頼む」

 

その言葉を最後に彼……フジキド・ケンジこと、本物のニンジャスレイヤーは姿を消した。

 

佳織のベットの傍に置いてある棚に『忍殺』と彫られたスリケン一枚が置いてあり、月明かりに反射していた。

 

 

 

 




二人のフラグが立って、しかもご本人の登場~!

もう登場はしませんけどね。

ストーリー的に次回は修羅場の予感?


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第32話 静寂無き学園生活

また台風が接近しているみたいですね。

今年でもう何回台風が来たかしら…。






 次の日。

私は早朝に自室へと戻って、顔を洗ったりシャワーを浴びて軽く体を流したり、登校の準備をしたりした。

勿論、本音ちゃんを起こさないように静かに行ったよ。

 

私が保健室で起きた時、ラウラが隣のベッドで寝ていた。

今回の彼女は完全に被害者なのだから、保健室に運ばれるのは当然だけど、まさか隣合わせとは。

保健室のベットは他にもあるのにどうして…?

 

そうそう、なんかベットの傍にあった棚にどこかで見た事のあるような文字が彫られたスリケンが置いてあった。

あれは一体なんなんだろう…?

一応、回収してからハンカチで丁寧に包んで、部屋の机の引き出しに仕舞ってあるけど。

下手に誰かが触ったりしたら怪我するしね。

 

その後、私はいつものように本音ちゃんを起こしてから、朝食を食べてから教室に向かった。

起こした時、開口一番に『かおり~ん!!』って言いながら抱き着いてきた。

なんだか泣いていたようにも見えたし、凄く心配させちゃったようだ…。

本音ちゃんには……いや、他の皆にも悪い事をしちゃったな…。

私が食堂に姿を現した時も、皆が私に注目しまくってたし。

 

にしても、まだ包帯は取れそうにないなぁ~。

動きにくくて不便なんだけど、こればっかりは仕方が無いよね…。

少し体を動かすと筋肉痛と怪我で体が痛むし…。

 

はぁ~……せめて、臨海学校までには治したいなぁ~。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 いつものように教室に入ると、食堂の時と同じように、皆の視線が私に集中した。

 

「だ…大丈夫なの!?佳織!?」

「もう動けますの!?」

「あんまり無理はするなよ!?辛かったらいつでも私達に言え!いいな?」

「そうだよ!僕達はいつでも佳織の力になるからね!」

 

その筆頭がいつものメンバーだったのは、ある意味予想通りだった。

 

「皆……」

 

そんな事を言われたら……なんか……私……

 

「か…かおりん!?どうしたの!?」

「ううん……なんでもない……」

 

涙が出ちゃうじゃないか……。

 

「ただ……皆に心配して貰った事が嬉しくて……」

 

はは……なんかカッコ悪いな…。

早く泣き止まないと。

 

「グス……。その……皆……」

「ど…どうした?」

「みんな……ありがとう…」

 

せめてお礼ぐらいは言いたいな。

私はちゃんと笑えてるかな?

 

「「「「佳織(さん)……♡」」」」

「かおりん……」

 

あ…あれ?なんか急に皆が固まっちゃったんですけど?

ど…どうしたの?マジで。

 

「と…とにかく!まだ怪我は完全に治ってはいないんだから、無理だけはしないでね!」

「分かってるって。一応『絶対安静!』って言われてるから。それを破るような真似はしないよ」

 

痛む体を押えながら、ゆっくりと席に座る。

うぅ~……着席するのも一苦労だよぉ~。

あれ?よく見たらラウラの席が空いたままだ。

まだ来てないのかな?

 

席に座った途端、後ろからチョンチョンと突かれて後ろを向いた。

 

「ん?」

「仲森さん」

「相川さん…?」

「昨日は本当にカッコよかったよ。なんだか、本当のヒーローみたいだった」

「大袈裟だよ。私はラウラを助けようと必死になってただけ。困っているクラスメイトを助ける……クラス代表として当たり前の事をしただけだから」

「それを平然と言ってのける時点で相当にカッコいいけどね…」

 

え?なんかよく聞こえなかった。

 

「皆さん……おはようございます……」

 

あ、山田先生がやってきた。

前を向かなきゃ…って、なんか疲れてる?

目の下に隈が見えたような…。

眼鏡越しだからよく分からなかったけど。

 

「あ!仲森さん!もういいんですか?」

「はい。日常生活には支障は出ません。ご心配お掛けしてすいませんでした」

「そ…そんな!こちらこそ、また貴女に助けられて……本当に申し訳ありません…。これじゃあ、教師の面目が丸潰れですよね……」

「いやいや!先生達が後ろにいるって分かってるから、私だって頑張れるんです。だから、そんなに自分の事を卑下しないでください。少なくとも、私は山田先生の事を教師として尊敬してますよ」

「あぅ~……仲森さぁ~ん…」

「泣かないでくださいよ…」

 

さっきとは立場が逆になってしまった。

泣いている教師を慰めるクラス代表って…。

 

「もしかして、昨日の事後処理で…?」

「その通りです、織斑さん…。あ…皆さん、昨日の事は勿論……」

「学園内の秘密…ですよね?前回の事もありますから、それぐらいは皆も承知してますよ。ね?」

 

試しに皆に目配せをすると、私の意図を汲んでくれたかのように頷いた。

 

「はぅ~……よかったです~…」

 

本当に疲れてるんだな…。

心なしか、言葉遣いが幼児退行してる気がするし。

 

「どうした?山田先生」

「織斑先生」

 

山田先生とのやりとりをしている間に、千冬さんもご登場。

同じ様に事後処理で疲れている筈なのに、今日も相変わらず凛々しいお姿で。

 

「む……佳r…仲森。もう怪我はいいのか?」

「完治…じゃないですけど、普通に授業を受けるぐらいだったら平気です」

「そうか。だが、あまり無理をするなよ。病み上がりが一番危険だからな」

「分かりました」

 

至って普通の教師と生徒の会話……で終わらないのが千冬さんクオリティ。

 

「今回は本当によくやった。だが、心配する方の身にもなれ。見ていて気が気じゃなかったぞ」

「はは……すいません」

 

あら、頭を撫でられた。

優しく撫でてくれたのか、怪我が痛むことは無かった。

 

「もうこんな事が起きない事を祈るばかりだな…」

 

あ~……その……ごめんなさい。

臨海学校の時に今回以上の事件が起きる……かもしれないです。

最悪、また事件の中心にいるかも…。

今度こそ本気でヤバいかな…。

 

「さて……そろそろ入ってきたらどうだ?」

 

え?廊下に向かって話しかけてるけど、誰かいるんですか?

 

「はい……」

 

あれ?この声は……

 

静かに教室に入って来たのは、明らかに落ち込んだ様子のラウラだった。

きっと、昨日の事に責任を感じているんだろうな…。

ラウラは何も悪くないのに…。

 

あ、ラウラと目が合った。

 

「な…仲森佳織!?なんでここにいる!?もう起きて平気なのか!?」

「もう何回言ったか分からないけど…私なら大丈夫だよ。流石に激しい運動とかは無理だけど、普通に授業を受けたり食事をしたりぐらいなら出来るから」

「そうか……本当によかった……」

 

心の底から安心したのか、目尻に涙が溜まってる。

 

「ボーデヴィッヒ」

「はっ!」

 

千冬さんに指摘されて、背筋を伸ばす。

 

「この度は……その……誠に申し訳なかった!!私のせいで皆を危険に晒してしまい、お前に怪我を……」

 

深く頭を下げてラウラが皆に謝罪した。

肩が震えている。

きっと、ここに来るまでに色々と言葉を考えて、教室の前で勇気を振り絞っていたに違いない。

 

短い言葉ではあったが、彼女の誠心誠意の謝罪を聞いて、責め立てるような愚か者はこのクラスには一人もいない。

 

「別に気にしてないよ」

「え?」

「そうだよ!私達も一部始終を見てたけど、明らかにボーデヴィッヒさんも被害者じゃない!」

「そうそう!だから、謝らなくてもいいよ!」

「寧ろ、ボーデヴィッヒさんも大丈夫そうでよかったって思ってるよ!」

「だね~!大事なクラスメイトに何かあったりしたら、私達の方が沈んじゃうよね~!」

「お前達……」

 

ほらね。皆はとっくの昔にラウラの事をクラスメイトの一員だって思ってたんだよ。

 

「私の言った通りだろう。謝罪など不要だと」

「はい……」

 

ついに本格的に泣いてしまった。

 

「あらら……ほら、これ使って」

「すまにゃい……」

 

あら可愛い。

私が渡したティッシュで鼻をチーンってする姿が実に癒される。

 

「ところで…少しいいだろうか?」

「どうしたの?」

「その……な?実は昨日…私が頼りにしている副官に好意を抱いた相手に対してどうすればいいのか聞いたんだ…」

「ふぅ~ん…」

 

副官って何?副隊長的な役職?

それに好意って?それって友情を感じたって意味?

 

「それってどんな……むぎゅっ!?」

 

それは一瞬の出来事だった。

ラウラの顔が急接近したと思ったら、唇にとても柔らかい感触がががががが~!

 

少ししてラウラは離れてくれたが、私の頭は完全にパニック状態に。

 

「い…いきにゃりにゃにをっ!?」

 

呂律が回らないし……。

 

「か…佳織!今日からお前を私の『嫁』とする!異論は認めん!!」

 

YOME?

 

「日本人の主食の…」

「それは米だ」

「雨雲から降り注ぐ…」

「それは雨」

「甲羅を背負った長寿の象徴とされる…」

「それは亀だ。って…からかっているのか?」

 

誤魔化せなかったか…!

 

恐る恐る周囲を見渡すと、皆の時が止まっていた。比喩でなく。

 

「か…佳織の唇が……」

「あわわわわ……」

「佳織さんががががががが~…!」

「あれ……?なんで胸がチクってするの…?それにモヤモヤして…」

「かおりん~…」

 

約3名が真っ白に燃え尽きて、シャルロットは困惑、本音ちゃんは泣きそうになってる。

 

「だ…大胆ですね……ボーデヴィッヒさん……って、織斑先生!?」

「………………」

 

ち…千冬さ~ん!?完全に白目向いてる~!?

 

「気持ちは分かりますけど、しっかりしてくださ~い!!」

「あ……ああ……」

 

朝っぱらから教室が騒がしくなっった…。

これ、どうやって収拾すればいいの…?

 

でも、ここに鈴がいなかったことが不幸中の幸いだな…。

もしもいたらどうなっていた事か…。

想像もしたくない…!

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 放課後。私は本音ちゃんを連れて整備室に来た。

目的は勿論、ラウラとボインスレイヤーとの連戦で疲弊したバリスティック・リヴァイヴの整備をする為。

 

空いているハンガーにISを展開させて、改めて状態を見る。

 

「うわぁ~……派手にやらかしたね~」

「ご…ゴメン……」

 

所々に細かい損傷が沢山あって、特に格闘戦を沢山したせいか、両腕の部分がかなりヤバイ事になってた。

 

「でも、だいじょ~ぶ!これぐらいならまだなんとかなるよ!」

「お願いしてもいいかな…?私の体じゃまだ整備は難しいみたいで……」

「言われなくてもそのつもりだよ~。例えかおりんが『自分でする』って言いだしても、私がするつもりだったから~」

「そうなんだ……」

 

ホント……本音ちゃんには頭が上がらないなぁ~…。

 

「それじゃ、早速始めますか~」

 

本音ちゃんが軍手をつけると、後ろからひょっこりと人影が出て来た。

 

「あ…あの!私もお手伝いさせてください!」

「簪……?」

 

このタイミングで来るって事は、さっきからずっと整備室にいた?

 

「かんちゃんだ~。お手伝いしてくれるの?」

「う…うん。少しでも佳織さんの役に立ちたくて……その……」

「私は大歓迎だよ。だよね?本音ちゃん?」

「勿論~!かんちゃんなら私も歓迎するよ~!」

「だって」

「本音……ありがとう」

 

うんうん。やっぱり友達同士はこうでなくっちゃ。

 

「じゃ、改めて始めようか?」

「うん!」

 

けど、またまた意外な訪問者がやって来た。

 

「ならば、私も一緒に手伝おう」

「「「え?」」」

 

次にやって来たのは、銀髪の軍人少女のラウラだった。

 

「貴女は……」

「なんでここに?」

「嫁を手伝うのは当然だろう?」

「まだ言ってるんだ…」

「よ…嫁!?」

 

あ…うん。そこに反応するよね、やっぱり。

 

「佳織は私の嫁だ」

「え……ええっ!?」

「あまり深く気にしないで」

「は…はい……」

 

なんて言って、実は私が一番困っていたりして。

彼女の『嫁発言』のせいで、またクラスが妙な事になってるし。

 

「自分のISはいいの?」

「私のレーゲンならば予備パーツで組み直した。幸いな事にコアは無事だったからな」

「それはよかった」

 

最後にド派手に爆発してたから、正直ドキドキしてたんだよね。

明らかに木端微塵になった感じの爆発だったし。

 

「あの……なんで嫁?」

「日本では気に入った者を『嫁』と呼ぶのが一般的な習わしなんだろう?私もそれを実行したまでだ」

「「それは……」」

 

私達の業界(ヲタク)の専門用語ですよ~!?

一体何処のどいつがこんな事を吹き込んだんだ!?

あ、別にドイツとどいつを掛けた訳じゃないからね?そこ重要よ?

 

「クラリッサには感謝しなくてはな…。お蔭で私は自分の気持ちを表現する方法を得た」

 

そーいや、そんな名前のキャラがいたような…。

朝は副官って言ってたけど、その人がラウラに余計な知識を……!

 

「それに、私はまだ助けてくれた嫁「佳織って呼んで」…佳織に礼をしていない」

「別に気にしなくてもいいんだけど…」

「そっちが気にしなくても、こっちが気になるんだ。だから、機体の整備を手伝わせてほしい。駄目だろうか…?」

 

そんなウルウルした目で見ないで~!

これを天然でやってるから、この子は別の意味で侮れないんだよね……。

 

「い…いいよいいよ!本当は猫の手も借りたいって思ってたし!ね?ね?」

「そ…そうですね!」

 

よし!簪は了承を得た!

後は……

 

「本音ちゃんは……」

「ワタシモダイジョーブダヨー。らうらうナラダイカンゲーダヨー」

 

本音ちゃんの目にハイライトが無いんですけど~!?

本当に大丈夫なの~!?

 

「よし!ならば張り切って手伝わせてもらうぞ!」

「「そ…そうだね~。張り切って頑張ろ~…」」

 

やる前から一気に気力を持っていかれたよ…。

ラウラ……恐ろしい子!

 

その後、ラウラも交えての修復と整備を兼ねた作業が始まった。

流石は現役軍人と言うべきか、作業がサクサク進んでいった。

途中で簪とラウラがお互いに自己紹介をしていた。

二人とも代表候補生と言う事もあってか、すぐに意気投合していたみたい。

こうして人の輪が広がっていくのはとてもいい事だと思う。

高校時代の青春はこうでなくっちゃね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作2巻……完!

案の定、ラウラは間違った知識にて佳織にキスをすることに。

純粋無垢であるが故に、ある意味では最強のライバルが誕生した瞬間ですね。



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第33話 また日が昇る

ここから原作第3巻に突入ですね。

アニメでは一番のクライマックスシーンでになりますから、ここで色々と考えてます。






「なんだかゴメンね?手伝って貰ったりして…」

「別に気にしないでいいよ。クラス代表とて、困っているクラスメイトを助けるのは当然の事だし」

 

時間は放課後。廊下の窓から真っ赤な夕にの光が差し込む中、佳織とシャルロットが一緒に歩いていた。

二人の手にはもうすぐある臨海学校に関するプリントの束があった。

 

「でも、本当によかったの?今日は予定があったんじゃ……」

「別にいいよ。シャルロットの事を放ってまで優先する用事なんて無いもん」

「え…?」

「好きな子が困っているのに他の事を優先するなんて、私には出来ないよ」

 

そう呟く佳織の顔は、少しではあるが赤く染まっていた。

誤魔化すように余所を向いてはいるが、明らかに照れている。

 

「佳織……」

「シャルロット……」

 

今この場には二人しかいない。

無意識の内に互いの顔を見つめ合う。

佳織の瞳にはシャルロットしか、シャルロットの目には佳織しか映っていない。

 

次第に二人の顔が近づいていき、そして………

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 

目の前に見えているのは佳織の顔ではなくて、もう完全に見慣れた学生寮の自分の部屋の天井。

起き上がって枕元に置いてある目覚まし時計は6時30分を示している。

 

「……………………」

 

まだ完全に覚醒していない頭で2~3程瞬きをして、ようやく完全に目が覚める。

 

「今のって……夢……?」

 

やっとの事で現状を把握したシャルロット。

その途端に盛大な溜息を吐いた。

 

「はぁぁ~……僕はなんて夢を……」

 

彼女自身は全く自覚していないが、学年別トーナメント以降、自然と佳織の事を考える機会が非常に多くなった。

授業中でも無意識の内に佳織の事を目で追うようになる始末。

もう完全に佳織の事を好きになっている証拠だった。

 

「もしもあのままいっていたら……」

 

夢の続きを妄想する。

すると、シャルロットの顔が一気に真っ赤に染まる。

 

「いやいやいや!僕と佳織は女の子同士なんだよ!?それなのに、そんな……」

 

恋愛観に関しては比較的常識人な彼女であったが、それでも佳織の事を意識せずにはいられない。

 

果たして、シャルロットが自分の恋心を自覚するのはいつの日か。

 

「……ん?」

 

ふと隣のベットに視線をやる。

すると、そこには本来いる筈の同居人の姿が全く見えないではないか。

シーツが全く乱れていない様子から見ても、最初から使用した形跡自体が無い。

 

「まぁ……別にいいか」

 

一緒に住んでいる同居人よりも、今の彼女の優先すべきは先程の夢の続きだった。

まだ僅かに残っている眠気を頼りに、再び夢の中へと行こうとする為に、静かに目を閉じた。

もしかしたら、あの夢の続きが見られるかもしれない。

そんな淡い期待を胸に。

 

「本当に僕ってば……どうしちゃったんだろう……」

 

誰に見られているわけでもないのに、己の赤くなった顔を隠すかのように、シャルロットは全身を布団で覆い隠してから己の心臓の動悸を押えようと必死に自分の事を落ち着かせようとした。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「ん~…?」

 

朝。

私は妙な違和感と共に目を覚ました。

 

もしもこれが実家ならば『あと5時間~』なんて言うところだが、ここは天下のIS学園。

そんな甘えは許されない。

遅刻しないためにも一刻も早く目を覚まさなければ。

けど……この妙な違和感はなんだ?

なんつーか……両端から何かに抑えられているような感覚が……。

 

片方は腕にとても柔らかいものが当たっていて、もう片方にはフニフニとしたものが当たっているような感じがする。

 

(なんだ…?これは……)

 

ここで考えていても仕方が無い。

いっそのこと確かめてみた方が手っ取り早いだろう。

つーわけで、一気に掛布団を剥がして見る事に。

すると、私の両隣にいたのは……

 

「「ん~…?」」

 

本音ちゃんとラウラの二人だった!

な…なんでこの二人が私の布団で寝てるの!?

 

「ちょ…ちょっと二人とも!?どうしてここにいるの!?」

「んにゃ~……かおりん~?」

「なんだ……もう朝か……?」

 

本音ちゃんは毎度のようにどこかで見た事のあるような着ぐるみ型のパジャマ(今回はどこぞの一世を風靡した某魔法少女アニメに出てくるマスコットの姿をした諸悪の根源であるあの真っ白な獣野郎)を着ていて、それに関しては別にいい。

けど、問題はラウラの恰好だ。

 

「……なんで寄りにもよって裸なのさ…」

 

そう。ラウラの今の恰好はまごうことなき全裸。

唯一付けている物と言えば、彼女のISの待機形態であるレッグバンドのみ。

それが却って凄いエロスを感じる。

 

「む……佳織か。おはよう」

「おはよう……じゃないから!まずは服を着ようよ!!」

「お~…ラウラウってばダイターン3だね~」

 

……それって、大胆とダイターン3を掛けてる?

って、ツッコんでる場合じゃないし!!

 

「何を言っているんだ?夫婦とは普段から包み隠したりしないものだのだろう?」

「いや……それにも限度ってものがるでしょ…」

 

ま~た、例のクラリッサさんとやらの間違った知識の影響だな…。

もしも会う事があったら、絶対に私の手で矯正しなくては…。

 

「そもそも、日本ではこのようにして起こすのが一般的なんだろう?将来的に結ばれる者同士の定番だとか」

「んな訳ないでしょ…。そんなんだったら、目覚まし時計の存在意義が無くなっちゃうじゃん…」

「む…それもそうだな。しかし、目は覚めたんじゃないか?」

「色んな意味でね……」

 

何が悲しくて、起きて早々に疲れなくちゃいけないのさ…。

 

「兎に角、まずは服を着て。話はそれからだよ」

「服なんて持ってきてないぞ?」

「……へ?」

 

な…なんですと?

 

「じゃ…じゃあ…もしかして……」

「このまま来た。大丈夫だ。夜中に来たから誰にも見られていない」

「そんな問題じゃないでしょ~!?」

 

年頃の女の子が全裸でうろつくとか、痴女以外の何者でもないじゃん!!

 

「そもそも、どうやって入ってきたのさ…。一応、ちゃんと部屋の鍵は閉めてあった筈だけど?」

「私にかかれば、これぐらいの鍵は5秒もあれば開錠出来る!」

「それって普通に犯罪!」

 

この子が軍人だってことを忘れてたよ…。

確かに、ラウラならピッキングぐらい楽勝かもしれない…。

 

「とりあえず、このままじゃ風邪を引いちゃうから……」

 

即座にベットから出て、クローゼットから適当に服を出す。

 

「これを着て!何も着ないよりマシでしょ!」

「おぉ~」

 

取り出した服をラウラに無理矢理着させる。

着させた後に気が付いたけど、真っ白なTシャツに『流派東方不敗は!王者の風よ!』と前に書かれてあって、後ろには『全新!系裂!天破侠乱!見よ!東方は、赤く、燃えている!!』と達筆な字で書かれている。

え?どこで入手したかだって?

普通にネット通販で売ってたけど?

結構お手軽な値段だったから、つい衝動買いしちゃった。

 

「はぁ~……まずは自分の部屋に戻ってから登校の準備をした方がいいよ。同室のシャルロットも心配してるだろうし」

「それもそうだな。私としては嫁と一緒に寝れただけでも大満足だし」

「お願いだから誤解を生むような言い方だけはやめて」

「所謂3Pだね~」

「本音ちゃんも、どこでそんな言葉を覚えたの!?」

 

この子も油断できない…!

 

「では、教室で会おう!」

 

笑顔のままラウラは意気揚々と部屋を出ていってくれた。

 

「なんかもう……休みたくなってきた……」

 

今日の朝食は少しボリュームのある盛る物を食べようかな……。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「はぁ~…」

 

目の前にあるフレンチトーストを前に、溜息を零す。

 

「どうした?食欲が無いのか?」

 

私の両隣りにはラウラと本音ちゃん。

そして、正面の席には途中で合流した箒が座っている。

 

「ラウラではないが、本気でどうした?元気が無いように見えるが…」

「あ……大丈夫だよ。まだ本調子じゃないだけだから」

「そうか?前にも言ったが、無理だけはするなよ?」

「うん。ありがとね」

 

作り笑いをしながらフレンチトーストをパクリ。

この美味しさが私を癒してくれる…。

 

「かおりんのフレンチトースト美味しそうだね~」

「一口食べる?」

「食べる~♡」

 

あぁ……やっぱり本音ちゃんが私にとっての清涼剤だよ…。

 

「はい、どーぞ」

「あ~ん♡」

 

ナイフで切り分けてから、フォークで刺して本音ちゃんに向ける。

 

「あむ……。ん~♡美味し~♡」

「「……………」」

 

んあ?二人ともどったの?

 

「よ…嫁!私も!私もしてほしいぞ!」

「前にも言ったけど、名前で呼んでね?ほら、あ~ん」

「あ…あ~ん…」

 

まるで、手のかかる子供が二人もいる気分だ…。

 

「佳織に食べさせてもらうと、美味しさが何倍にも増したみたいだ…」

「そんな大袈裟な」

 

誰に食べさせてもらっても、美味しさなんて変わらないでしょうに。

 

「あ…あの……佳織?私も……」

 

モジモジしながら箒が何かを言い出そうとしていると、食堂に誰かが走ってやって来た。

 

「あぁ~!遅刻しちゃう~!!」

「「「あ」」」

 

よっぽど急いでいたのか。

髪の毛が所々ピンとはねた状態のシャルロットがやって来た。

 

「おはよう、シャルロット」

「あ!おはよう、佳織」

 

こっちに気が付いて、迷わずこっちに来た。

 

「こんな時間に来るなんて珍しいね。寝坊しでもしたの?」

「え?ははは……そんな感じ…かな?」

「でゅのっちはお寝坊さんだね~」

「否定はしないよ…」

 

たはは……と頭を掻きながら苦笑いをしているけど、その顔は僅かに赤い。

 

「今日は軽食にしておいたら?早く食べないと本気で遅刻しちゃうし」

「そ…そうだね。そうするよ」

 

慌てて食券販売機に向かったシャルロット。

気のせいかな?妙に私を避けてた気が……。

 

「二度寝でもしたのか?あいつ…」

「かもしれないね。極稀に早く起きた時とかって、調子に乗って二度寝とかしちゃうことってあるし」

「そうなのか?」

 

軍人のラウラには分からない感覚かも。

起床時間とか就寝時間とかしっかりしてそうだし。

 

「お…お待たせ!」

 

戻ってきたシャルロットの手には、トーストにコーヒーが乗ったトレーを持っていた。

それだけじゃ足りないかもだけど、今所状況では仕方が無い。

何も食べないよりは遥かにマシだ。

 

「いただきます!あむ…」

「あらら……そんなに急いで食べたら……」

「むぐ!?」

「ほら。言わんこっちゃない。これ飲んで」

「うん…!」

 

トーストを喉に詰まらせたシャルロットに、私が持っていたココアを飲ませる。

 

「ぷは~…!ありがとう、佳織」

「困った時はお互い様だよ」

 

って…あれれ?急にシャルロットの顔が赤くなったよ?

 

(あれ…?これって冷静に考えたら、間接キスになるんじゃ!?)

 

ん~?ココアは苦手だったのかな?

 

キーンコーンカーンコーン…。

 

「「「「あ!?」」」」

 

今のって予鈴!?

 

「急がなきゃ!」

「織斑先生の出席簿が降ってくる!!」

 

幸いな事に、あと少しで食べ終えるから、一気に口の中に入れてしまう。

 

「皆!急ぐよ!!」

「「「了解!!」」」

「は~い」

 

今回ばかりは本気で急げ~!!

廊下を走ったら怒られるかもしれないけど、遅刻して千冬さんの出席簿の一撃を受けるよりはずっとマシだと判断する!!

つーわけで、精神コマンド『加速』!!

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 皆で急いだお蔭で、なんとかギリギリの所で遅刻はせずに済んだ。

息は途切れ途切れだったけど。

流石に、まだ怪我が全快してない身ではキツかった…。

 

「お前達」

「「「「ギクッ!?」」」」

 

こ…この声は……!?

 

「「「「お…織斑先生…」」」」

 

あ…あれ?時間はまだ大丈夫……だよね?

 

「揃いも揃って廊下を走るな。特に仲森。自分が怪我人だと言う自覚があるのか?」

「す…すいませんでした……」

「今回は特別に見なかったことにしてやる。だが、次は無いと思え」

「「「「りょ…了解」」」」

 

千冬さんの寛大な処置に感謝感激雨霰です。

 

私達は急いで自分の席に座る事に。

 

座った直後にチャイムが鳴った。

本当にギリギリだったっぽい。

 

千冬さんが教壇に立ってSHRが始まった。

 

「さて、今日は確か通常授業の日だったな。幾らここがIS学園とは言え、お前達は立派な高校生だ。中間テストが無い代わりに期末テストはちゃんとある。言うまでもないが、もし仮に赤点でも取った暁には夏休みの殆どが補修で潰れる事になる。そうなりたくなかったら、精々頑張る事だな」

 

テ…テストか…!

基本5教科なら問題無いけど、IS関係だけは少し心配…。

どうせこの怪我のせいで暫くはISに乗れないんだ。

ここはテスト勉強に専念した方が賢明かもしれない。

 

「それから、来週から始まる校外特別実習期間…所謂『臨海学校』だが、全員忘れ物なんてするなよ。たった3日間とはいえ学園を離れる事になるんだからな。あまりテンションを上げ過ぎて羽目を外ししぎるなよ。分かったな?」

 

臨海学校……かぁ~…。

先の事をある程度分かっている身としては、諸手で喜ぶことは出来ないんだよな~。

せめて、初日の自由時間の時ぐらいは『あの事』を忘れて遊べればいいけど。

 

(そういや、水着ってあったかな?)

 

去年の水着は……駄目だろうな。

多分、もうサイズが合わないと思う。主に胸が。

 

「では、これでSHRを終了する。今日も学生らしく勉学に励めよ」

「あの~…今日は山田先生はお休みなんですか?朝から姿を見ないんですけど…」

 

おや、鷹月さんからの質問が来たよ。

彼女の言う通り、私も山田先生の事を見てないな。

昨日の今日だし、疲れて休んでいるとか?

 

「山田先生は臨海学校の現地視察に行っていて今日は不在となっている。だから、今日は私が山田先生の仕事を兼任する手筈となっている」

 

ほえ~……一足先に…ねぇ~。

あの人も苦労が絶えませんなぁ~。

 

「山ちゃんだけ先に行っちゃってるんですかぁ~?羨ましいなぁ~」

「せめて私達にも一言言ってくれればいいのに~」

 

いやいや、言う訳ないじゃん。

あくまで仕事で行ってるんだし。

 

「お前等。一々騒ぎ立てるな。山田先生は仕事で行っているんだ。決して遊びで言ったわけじゃない」

 

はい、出ました。千冬さんの鶴の一声。

皆の『は~い』の言葉と同時に教室が静かになった。

 

「では授業を始める。日直」

「起立」

 

こうして、今日もまた騒がしくも賑やかな1日が始まる。

 

私としては、臨海学校までに一刻も早く怪我が治る事を祈るばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




佳織、早速『両手に花』状態に。

これからもきっと、こんな事が続いていくんでしょう。

そして、佳織は臨海学校でどんな水着を着るのか!?


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第34話 偶には女の子らしくお買いもの

殺意の波動に目覚めたサーバルちゃんVSシャドルーに洗脳されたカバンちゃん














 放課後。まだ怪我が全快していない私は訓練をしたくても出来ないため、必然的に暇になる。

かといって、私の都合に皆を巻き込むわけにはいかないから、今回は私を抜きにして専用機の皆は訓練をしている。

ならば、私は何をしているのかと言うと……

 

「すいません……まだ怪我が治っていないのに…」

「気にしないでください。これぐらいなら平気ですから」

 

生徒会室で書類仕事のお手伝いをしております。

こう言った事は中学の時に経験済みだし、前世でも似たような事は何回もしてきた。

デスクワークならばお任せあれ!

 

「でも、本当に大丈夫なの?その体に巻かれた包帯が痛々しいんだけど…」

「大袈裟なんですよ。確かに痛みが無いと言えば嘘になりますけど、気にする程じゃないですし…」

「貴女の場合、我慢している可能性があるから、油断できないのよね~…」

「私ってそんなに信用無いですか…?」

「こういう場面の時はね。周りに心配を掛けたくないって気持ちは分かるけど、かと言って我慢のし過ぎは体に毒よ。時には誰かに頼ったり、弱音を吐いたりしてもいいんじゃないかしら?」

「自分的には充分にしてるつもりなんですけどね……」

 

流石は暗部の人間。

私みたいな一般人の嘘ぐらいは軽く見抜いちゃうか。

楯無さんには嘘はつけないなぁ~…。

 

「本音。佳織さんの事をよく見ておいてね。また無茶をしないように」

「は~い!」

 

虚さんまで……。

バカやってる自覚はあるけど、そこまで言われるほどの事?

 

「つーか、何気に話を逸らしてますけど、なんで私が書類を整理している横で楯無さんは優雅に紅茶を飲んでるんですか?」

「テヘペロ♡」

「誤魔化さないでください」

 

私の事を労わりたいって思うのなら、まずは仕事をしてください。

今のところ、貴女が生徒会長っぽい事をしている姿を一回も見てませんよ?

 

「と…ところで、佳織ちゃんはもう臨海学校に向けての水着は買ったの?」

「また誤魔化した」

「い…いいじゃない……純粋に気になったんだもん……」

 

子供か!…って、私達は未成年でしたね。

 

「でも水着か~…。去年着ていた水着はもう入らないから、新しいやつを買わないとな~」

「あら、そうなの?」

「成長期ですからね。今回は水着だけでいいですけど、夏休みに入ったら下着とかも新しく買わないといけないかもしれませんね」

 

最近になってブラもなんかきつくなってきたし。

レゾナンスにいいランジェリーショップってあったかな?

 

「かおりんもなんだ~。実は私も~」

「本音ちゃんも?」

「うん~」

 

セシリアや箒の影に隠れがちだけど、本音ちゃんもかなりの戦闘力(バスト)の持ち主だもんね。

成長期なのも合わせて、すぐにサイズが合わなくなってしまうか。

 

「それじゃあ、今度の日曜日にでも一緒に買いに行って来たら?」

「それいいかも。一緒に行く?」

「絶対行く!!!」

「お…おう……」

 

す…凄い迫力……。

本音ちゃんって時々、普段ののんびりとした雰囲気が払拭される時があるよね…。

 

「かおりんとデート……ふふふ……♡」

 

……?なんかほくそ笑んでるけど、そんなに水着を買いに行くのが嬉しいのかな?

実は本音ちゃんってファッションが好きだったりする?

 

「いいわね~。私も二年生じゃなかったら迷わず一緒行くのに~」

「行くんですか」

「そりゃ行くわよ~。私だって佳織ちゃんと一緒にお出かけしたいもの」

 

お出かけ……ね。

生徒会長と言う立場上、忙しくて休みの日とかも忙しいのかもしれない。

 

「だったら、夏休みにでも一緒にどこか行きますか?」

「え?いいの!?」

「どうせ夏休みなんて、実家でゴロゴロするか、学園で訓練しているかのどっちかでしょうし。それだったら、少しでも貴重な夏休みを有効に使いたいじゃないですか」

「真面目ね~。……余談で聞きたいんだけど、夏休みの宿題はどうしてるの?」

「7月中に終わらせますけど?」

「「「えっ!?」」」

 

な…なに?そんなに驚くような事?

 

「う…虚ちゃん!本当に7月中に夏休みの宿題を終わらせる子がいたわよ!?」

「初めて見ました……」

「かおりんって凄いね~…」

「そう?」

 

早めに終わらせれば、後々で楽じゃん。

一応、これだけは小学生の頃からずっとやってるけど…。

 

「普通はペース配分を考えてするモノじゃないの?」

「でしょうね。一夏とかはそうするみたいですけど。私の場合は休みであることを最大限に生かして、7月中の殆どを徹夜して宿題を終わらせて、八月になってから爆睡します」

「ハ…ハードね……」

「その分、8月は遊び放題ですよ?時間に追われる心配も無いですし…」

「そう言われると、少し魅力的に聞こえちゃうわね…」

 

滅茶苦茶大変だけどね。

けど、それだけの価値はあるって思う。

 

な~んか話が逸れまクリスティだけど、兎に角、日曜日に本音ちゃんと一緒に買い物に行くことになった。

 

友達と一緒に買い物……か。

高校生になって初めてかもしれない。

ヤバ……私も少し楽しみになってきたかも。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 やってきました。約束の日曜日。

天気は快晴で、実にいい天気。

最高のお出かけ日和だ。だけど……

 

「なんで?」

 

本音ちゃんと一緒に校門を出ようとしたら、そこには毎度お馴染みのメンバーが。

今回はなんでか簪も一緒にいた。

 

「私達を本気で誤魔化せるって思ってるワケ?」

「え~?私はなんにも言ってないけど~…」

「あれだけずっとニコニコとしていたら、何かがあったと嫌でも思いますわ」

「佳織が関わっているって思っていたけど、案の定だったね」

「本音よ。我々に秘密は出来ないぞ」

「そんな~…」

「本音だけズルい…」

 

流石は天下の代表候補生(じゃない子もいるけど)。

すぐさま勘付いてきたか。

 

因みに、体の包帯を隠す為に薄手のカーディガンを着ている。

これなら大丈夫だろう。

 

「仕方ないよ。こうなったら皆で一緒に行こう?」

「うん……」

 

ありゃりゃ。すっかりしょんぼりちゃんに。

こんな時はしっかりフォローをしないと。

 

「臨海学校が終わったら、二人で一緒にどこかに行こうよ」

「え?」

「ね?」

「う…うん!」

 

皆に聞こえないように耳元でこっそりと言ったので、今度はバレずに済んだようだ。

本音ちゃんの機嫌もよくなったみたいだし。

 

「じゃ、行きますか!」

 

目的地はレゾナンス!

いざ行かん!

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 はい到着!レゾナンス!

え?道中のモノレールでのやり取り?

なにそれ美味しいの?

 

私達がやって来たレゾナンスは、簡単に言ってしまうと駅前のショッピングモールだ。

交通網の中心地点にあるここは、電車や地下鉄、バスにタクシーと、色んな方法で来ることが可能。

しかも、市の何処からも来ることが出来、同時にどこにでも行くことが可能な場所にある。

故に、普段から人通りは非常に多い。

 

とにかくここには何でも揃っている。

学園からのアクセスも容易な為、IS学園の生徒もよくここを利用している。

かく言う私もその一人だったりして。

この間、予約した新作ゲームを購入した際にはお世話になりました。

 

「さて、まずはどうするの?二人は水着を買いに来たんでしょ?」

「そうだな~…」

 

思ったよりも早く来れた為、かなりのんびりと過ごす事は出来そうだけど。

今は午前10時ちょっと過ぎくらい。

それでも日曜日であるせいか、人は多い。

 

「先に水着を買って、それからゆっくりと見て回ろうか?」

「それがよさそうだな。私も丁度、新しいのを欲しいと思っていた所だ」

「あら、箒さんも?実は私もですの」

「僕も折角日本にいるんだし、新しいのを買おうかな…」

 

どうやら話は纏まったみたいだ。

 

「わ…私も大胆な水着を買って、そして佳織に……」

「私は……」

 

で、なんで鈴は怪しく微笑んでいて、簪は自分の胸を見ながら溜息をついてるの?

 

「ここが日本のショッピングモールか……」

「珍しい?」

「そうだな…。あまり基地から出た事が無い為、ドイツでもこう言った場所に行く機会は殆ど無かった」

「そっか……」

 

私達と同い年でも、立派な軍人だもんね。

そりゃ、そう簡単には外出なんてさせて貰えないか。

実際は違うかもしれないけど。

 

「それじゃあ、はぐれないようにしないとね。はい」

「なっ……!?」

 

勝手にどこかに行ってしまわないように、ラウラと手を繋ぐことに。

これなら大丈夫な筈。

 

「か…佳織の手は暖かいな……」

「そう?」

 

どこにでもある、至って普通の手だと思うけど?

 

「む~…ラウラウだけズルい……私も~!」

「本音ちゃん?」

 

空いたもう片方の手を本音ちゃんが握ってきた。

 

「さ…先を越された……」

「しれっと不覚を取る事が多いわよね…私達って」

「次の機会を待つしかありませんわ」

「前向きに……前向きに……」

 

皆して何を話してるんだろ?

どんな水着を欲しいとか話してるのかな?

 

「皆~!早く行くよ~!」

「ちょ…ちょっと待って~!」

 

え~と、水着売り場はどこにあったっけ?

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 少しうろつきながら、ようやく水着売り場に到着。

こうして話しながら歩くだけでも結構楽しかったりするよね?

 

「着いたは着いたけど……」

「結構、新作が出てるわね…」

「私にはどれも同じにしか見えん…」

 

ラウラにはそうかもしれないね。

 

「まずは店に入ろうか。色々と見てみない事には決めようがないし」

「賛成。ここでうだうだしてても時間の無駄だし」

 

そうして店内に入ると、まぁ色取り取りの水着がわんさかとあるじゃないですか。

 

「どんなのがいいかな~?」

「「「「「「「「赤でしょ?」」」」」」」」

「満場一致なの!?」

 

どんだけ私に赤のイメージがついてるのよ!?

 

「知らないの?最近じゃ『赤』『角』『三倍』で検索すると、一番上に佳織の名前が出てくるのよ」 

「マジですか!?」

 

シランカッター!

このままいくと、私服すらも赤一色に染まっていきそうだ…。

 

「ここで一旦解散して、適当に見て回りましょうか?一か所に纏まってても他のお客さんのお邪魔になるでしょうし」

「それがよさそうだな」

 

つーわけで、一度散開して店の中を見て回る事に。

店の中は思ったよりも広くて、見応えはありそうだ。

 

やっぱ……赤い水着じゃないとダメ……だよね…?

まぁ…別に嫌いじゃないからいいんだけどさ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「何かお探しですか?」

 

あ、店員さんに捕まっちゃった。

 

「えっと……赤い水着ってありますかね…?」

「赤ですか?少々お待ちください」

 

つい流れで聞いてしまった…。

けど、こういった店の店員をしてるんだから、センスは信用してもいいよね?

 

「お待たせしました」

 

早いな。もう持って来たんだ。

 

「見た感じ、お客様は非常にスタイルがよろしいみたいなので、このビキニなんていかがでしょうか?」

「ビ…ビキニ……」

 

店員さんが持ってきてくれたのは、まさに赤一色な水着だった。

肩紐で留めるタイプじゃなくて、首の所と背中で結ぶタイプ。

下の方も同じ様に腰の部分で結ぶタイプになっていて、確かに可愛いデザインだけど…。

 

(この手の水着って、ラノベとかじゃ波に浚われたりしてラッキースケベに発展する系のやつだよね…)

 

で…でも、今の私の周囲には女の子しかいないし、その心配は無い……と信じたい。

 

「試しに試着してみてはいかがでしょうか?」

「そう…ですね」

 

折角持ってきてくれたんだし、それぐらいはしないと失礼だろう。

買う買わないはそれから決めても遅くはないし。

 

「じゃあ、試着してきます」

「試着室はすぐそこにありますので」

「ありがとうございます」

 

店員さんから水着を受け取って、試着室に。

他の皆はどんな水着を選んだのかな…。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 鏡に映った自分の姿を見る。

目の前には真っ赤なビキニを着た自分が映っていた。

 

「サ…サイズがビックリする位にピッタリだ……」

 

あの店員さんは私の体をパッとしか見て無い筈…。

僅か数秒で私のスリーサイズを看破して見せたのか!?

水着専門店の店員さんは伊達じゃない!…のか?

 

「………………」

 

その場でくるっと一回り。

ふむ……悪くないかも。

 

「金に余裕はあるし……これにしようかな?」

 

見れば見る程気に入ってきたかも。

デザインも決して悪いわけじゃないし。

 

「……よし!」

 

決めた!これにしよう!

ここで迷っていたら、また延々と決めかねてしまう。

 

そうと決まったらさっきの店員さんを呼んで……

 

「すいませ~ん。私、この水着に決め……」

 

試着室のカーテンを開けて店員さんを呼ぼうとすると、私の目の前にいたのは……

 

「か…佳織…!?」

「仲森さん?」

 

並んで立っている千冬さんと山田先生だった。

 

「佳織の水着……ビキニ……」

「あ…あの……」

「せ…先輩?」

 

な…なんか痙攣してるんですけど!?

本気で大丈夫ですか!?

 

「「あ」」

 

百万ドルの笑顔で気絶している…。

鼻から鼻血を流しながら。

 

「「………………」」

 

えっと……私にどうしろと?

 

「……着替えてもいいですか?」

「あ…はい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何故かオロチの血に目覚めて暴走したツチノコちゃんが乱入して、二人揃ってフルボッコに。


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第35話 少女達と潜む者達

当たり付き自販機で当たった事ある人、この指止~まれ!







 水着から私服に着替えた後、山田先生と一緒に気絶した千冬さんをなんとかして起こした。

どうやって起こしたかは内緒で。

 

「…すまんな。みっともない姿を見せた」

「「い~え。お気になさらずに」」

 

凛とした態度で言ってるつもりだろうけど、鼻から丸めたティッシュが生えてる時点で威厳も何もあったもんじゃない。

 

「さっきの水着…よく似合ってたぞ」

「そ…それはどうも…」

 

今更言われても困るんですけど。

どう反応しろと?喜べばいいのか?

 

「にしても、千冬さn…織斑先生と山田先生が揃って外出なんて珍しいですね」

「案外そうでもないぞ?休みの日とかはよく一緒に飲みに出かけている」

「正確には『連行されている』って言うべきでしょうけどね…」

「あぁ~…」

 

そういや、千冬さんは相当な呑兵衛だったな。

一夏の話じゃ、家にも相当数のお酒を隠し持っているとかなんとか。

 

「人聞きの悪い事を言うな」

「事実じゃないですかぁ~…。いっつも最終的には私がタクシーを呼んで学園まで帰る羽目になるんですから……」

「む……それは済まんな…」

 

山田先生……結婚したら絶対にいい奥さんになりそうな人だ。

私もこんな女性を目指したいもんだ。

 

「そうだ。別に今は学園にいるわけじゃない。だから無理して『先生』と呼ぶ必要はないぞ。いつもの通りで構わん」

「じゃあ、千冬さんで」

「それでいい」

 

満足そうに頷いちゃって。

 

「山田先生はなんて呼べば……」

「適当でいいだろ」

「適当って……」

 

仮にも目上の女性に適当な事は言えないでしょ。

う~ん……そうだなぁ~…。

 

「考えるのメンドいんで、名前で呼んでもいいですか?」

「い…いいですよ?」

 

なんで疑問形?

 

「それじゃあ改めまして……コホン。千冬さんと真耶さんはどうしてここに?」

「ま…真耶さん……」

 

ちょっと、急に顔を赤くしないでくださいよ。

周りのお客さんがなんだと思って見てるじゃないですか。

 

「私達も臨海学校の水着を購入しに来たんだ。決して他の連中と一緒に買い物に行った佳織の事を着けてきたわけじゃないからな」

「はぁ……」

 

何故に念を押す?

 

「あれ?千冬姉さんに山田先生?」

「一夏か…」

 

なんつータイミング。

選んだ水着を持って一夏が千冬さん達の後ろからやって来た。

 

「二人も水着を買いに来たの?」

「そんなところだ。お前はどんなやつを選んだんだ?」

「私~?取り敢えずこれかな?」

 

そう言って見せてきたのは、一夏の専用機『白式』と同じ真っ白なビキニタイプの水着だった。

 

「なんつーか、佳織じゃないんだけど、やっぱり私も白式と同じ色がいいかな~って思って。気が付いたらこれを選んでた」

「うわぁ~……結構大胆な水着をチョイスするんですね~…」

 

一夏みたいにスタイルがいいと、どんな水着を着ても絵になるからいいよね。

 

「一夏は白か……」

 

お?千冬さんも悩んでますなぁ~。

この人もスタイル抜群だから、ビキニとかよく似合いそうだけど。

 

「…………よし」

 

どうやら決まったのか、千冬さんは目の前にある棚から二着の水着を取った。

 

「三人とも。どっちがいいと思う?」

 

千冬さんが見せてきたのは白と黒の水着で、どっちもビキニ。

この二色なら……

 

「「「黒」」」

「揃って即決か…」

 

普段から千冬さんのスーツ姿を見慣れてしまっているせいか、どうにも今の千冬さんからは『黒』のイメージが拭えない。

まぁ、黒を選んだ理由はそれだけじゃないんだけど。

 

「千冬さんって肌が綺麗だから、黒い水着の方が似合うような気がするんです。ほら、よく言うじゃないですか。深い黒は女をより魅力的にするって」

「そ…そうか……?」

 

ん?今度は千冬さんの顔が赤くなったぞ?

空調が効きすぎてるのかな?

それとも、スーツなんて着てるせいで暑くなったとか?

 

「これを素面で言える事が、佳織の一番凄い所なんだよね……」

「確かに、これは堕ちますね~…」

 

おちる?何が?

 

「か…佳織がそこまで言うのならば、これにするとしようか…」

「それがいいですよ」

 

同じ女として、この水着を着た千冬さんの姿に興味もあるし。

 

「佳織はその赤い水着にするのか?」

「はい。実際に試着してサイズもピッタリだったので」

「え?佳織も決めたの?見せて!見せて!」

 

がっつくなぁ~一夏は。

 

「ほらこれ」

「おぉ~!見事に真っ赤だね~!でも、佳織なら全然アリ!寧ろいい!」

「そ…そう?」

 

そこまで言われちゃうと、なんだか照れちゃうな…。

 

「よし、二人とも…水着を貸せ」

「「え?」」

 

有無を言わさず、千冬さんは私達の手から水着を取った。

 

「今日は気分がいいから、私が奢ってやる」

「ちょ…いいの!?自分で言うのもなんだけど、二つとも決して安くはないよ?」

「構わん。それに、IS学園教師の給料はお前達が思っている以上にある」

 

はい、大人の話来ました。

つーか、そんなに高給取りなのか……IS学園の教師って…。

 

「だから気にせず大人しく奢られろ。それに……」

 

ん?急にこっちを見てどうしたのかしらん?

 

「これぐらいはさせてくれ。佳織には返したくても返せない程に大きな借りがあるからな」

「そ…そうですよ!今日ぐらいは私達に甘えてもいいんですよ?」

「そう言うのならば、金の半分はお前が出せよ?」

「も…勿論です!(失言でした…)」

 

山田先生、口は災いの元…ですよ。

 

「ほら、行くぞ」

「はぁ~い…」

 

あらら、後ろ姿が切ない。

 

「……今度、学園のカフェで山田先生に何か御馳走してあげようか…」

「賛成。あれ見てたらなんて言うか……保護欲が掻き立てられるよね…」

 

先生としてそれはどうなのかって言う疑問は取り敢えず置いといて。

人として魅力的なのは確かだ。

 

「まぁ……これからも頑張ってください。山田先生」

「いつの日かきっといい事がありますよ」

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 佳織が千冬、真耶、一夏と合流した頃。他のメンバーはと言うと……

 

「あれ…ラウラ?」

「シャルロットか……」

「どうしたのさ?そんな所に立って」

「いや…な。私はこんな店に来るのは初めてでな……」

「あぁ~…どんな水着を選べば分からないと」

「そうだ…。くっ……こんな事では佳織の夫失格だ…!」

「まだ言ってるんだ…それ」

 

う~ん…と顎に手を当てながら、近くを見渡すシャルロット。

すると、彼女の目線がある一点に絞られた。

 

「これなんかいいかもしれない」

「ん?どれだ?」

「これこれ」

 

そう言って差し出したのは、とある水着。

どんな水着かは話の都合上まだ秘密。

 

「こ…これかっ!?」

「うん!きっと凄くよく似合うって思う!」

「そう……なのか?」

「そうだよ!」

 

鼻息の荒いシャルロットに次第に押されるラウラ。

そこにグッドなのかバッドなのか分からないが、タイミングよく本音が通りがかった。

 

「あれ~?二人してどうしたの?」

「あ!本音!ちょっとこっち来て!」

「ん~?」

 

よく状況が理解出来ないまま、シャルロットの手招きに応じる本音。

 

「これ!ラウラに似合うって思わない?」

「そうだね~。これなら私もラウラウにピッタリだと思うよ~」

「だよねだよね!?ほら、これにすべきだって!」

「し…しかし……少し露出が多すぎないか?」

 

全裸でないと寝られない少女が何を言っているのか。

 

「何言ってるの!今時の女の子はこれぐらい大胆じゃないと!」

 

そんなラウラの癖を知ってか知らずか、結構ハッキリと言うシャルロット。

 

(ラウラウの場合は、寝る時の方が露出が多い気がするけど……)

 

そして、密かに心の中でツッコむ本音。

ラウラの癖を知っている数少ない人物であるが故のセリフだった。

 

「それに……これぐらいしないと、他の子に佳織を取られちゃうよ?例えばほら……」

「ほえ?」

 

耳元でそっと囁くように誘惑するシャルロット。

その目線の先には本音がいる。

 

「本音は佳織と一緒の部屋だし、仲だっていい。ある意味、一番の強敵だって皆も言ってたよ?」

「な…なんだと!?」

 

佳織のISを一緒に整備して以降、ラウラは本音と簪の事を親友と思っている。

だが、その親友こそが最大のライバルだと知って、彼女の体に戦慄が走った。

 

「い……いいだろう!これに決めた!」

「やった!」

「ドイツ軍人として、ここで引くわけにはいかんからな!」

 

ドイツ軍人云々は関係ないと思うが、本人がそう思うのであれば、ここは敢えて何も言わない方がいいだろう。

これも一種の優しさである。

 

「では、会計をしてくる!」

「いってらっしゃ~い」

 

その途中でくるりと振り向くラウラ。

 

「本音!」

「ん~?」

「負けないからな!」

「ふえ?」

 

本音からしてみれば、全く意味不明な宣戦布告をされた事になる。

だが、鋭い彼女の事だから、すぐに理解するだろう。

 

そんな中、ラウラを焚き付けた張本人であるシャルロットはと言うと……

 

「あ…あれ……?」

 

妙なモヤモヤを胸に感じていた。

 

(な…なんで心がモヤモヤするの…?私は単純にラウラに可愛い水着を着てほしくて、それで……)

 

自分でライバルを応援してしまった事に全く気が付いていないシャルロット。

後に自分の本当の気持ちに気がついた時、後悔する事は確実だろう。

 

「どうしたの~?」

「う…ううん!なんでもないよ!」

 

慌てて手を振って誤魔化す彼女だったが、その心中は穏やかじゃなかった。

 

(本当に僕……どうしちゃったの?佳織の事を考えるとドキドキして、なのに、佳織が他の女の子と一緒にいる場面を想像したら、胸がチクッとして……)

 

その感情が『恋』と『嫉妬』だと分かるのはいつになる事やら。

 

佳織を取り巻く少女達の青春は、色んな意味で波乱に満ちているようだ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 結局、千冬さんと真耶さんに奢られてしまい、申し訳なく思いつつも、私達は買い物が終わった他の皆と合流した。

合流した時に教師二人がいた事に皆がすっごく驚いていた。

無理は無いと思うけどね。

休日に先生に会ったりすると、ちょっと気まずくなるよね。

 

「お前達はこれからどうする気だ?」

「お昼を食べてから、少しウィンドウショッピングをして帰ろうと思ってます」

「そうか。ならば、我々は先に失礼させてもらう」

「「「「「「「「「え?」」」」」」」」

 

てっきり一緒に来ると言い出すと思っていただけに、私を含めた皆が呆けた声を出してしまった。

 

「休みの日とは言え、暇があるわけじゃないからな」

「門限だけはちゃんと守ってくださいね。じゃあ、失礼します」

 

行ってしまった……。

ここまで引き際がいい千冬さんもまた珍しい。

 

(フフフ……ここはまだ勝負時じゃないからな。臨海学校でお互いに水着になった時こそが勝負!今日だけは織斑千冬はクールに去ってやる…。精々足掻くがいい、小娘共)

 

な…なんか、背筋に言葉に出来ない感覚が走ったような……!

 

「ど…どうされましたの?」

「大丈夫。問題無い」

「フラグ乙」

 

あ、簪はこのネタが分かる人なのね。

 

「先生達も行った事だし、アタシ達もお昼にしましょうか?」

「そうだね。よく見たら、時間もいい感じだし」

 

スマホで時間を調べたら、もう11時50分を回っていた。

どうやら、思った以上に水着選びに夢中になってたみたいだ。

時間が過ぎるのは本当に早いな~。

 

「どこにする?」

「ここには飲食店も沢山あるから、歩きながら考えようか?」

「それがいいと思う。ここで止まって考えてもお店の邪魔になるだけだし」

 

全員の意見が一致したところで、昼食を食べる為に出発する事に。

 

「ファミレスにファーストフード店……よく見たらフードコートまであるんだね」

「ここって私達が思っている以上に広いから、まだ全てを見回った事は無いんだよね…」

「む…?あれはとんかつの専門店か?あっちには回転寿司まである」

「ジャ…ジャパニーズスシ!?行ってみたいぞ!」

 

寿司と聞いた途端にラウラの目がキラキラモードに。

この目にはそう簡単には逆らえないんだよね…。

 

「お寿司ですか……私も興味がありますわ」

「僕も。日本に来たら一度は食べてみたいって思ってたんだよね」

 

国外組は回転寿司に興味津々ですか。

 

「………行く?」

「この空気で『行かない』とは言えないでしょ…」

「私はいいよ~。まだまだ余裕はあるし~」

 

もうこれ確定じゃね?

 

「回転寿司ねぇ~。こっちに戻って来てから、まだ一回も行ってないわね。私も行きたいわ」

「はい決定」

 

そんな訳で、私達は丁度近くにあった回転寿司屋に入る事に。

 

入った途端に海外組(鈴を除く)は、店そのものやレーンに乗って回転している寿司に目を輝かせていた。

 

集団で座れる席に座って、皆で寿司を食べる事に。

基本的にサビ抜きで安い寿司をセシリア達は食べていた。

私達のように山葵に慣れているメンバーは遠慮なくサビ有りの寿司を食べてたけど。

 

原作のように山葵を丸ごと食べて悶絶したシャルロットを見て、思わず笑ってしまった。

実際にこの目で見ると、シャルロットが芸能人かお笑い芸人にしか見えない。

少なくとも、私には同じ事は出来ないよ。

 

セシリアは生の魚類を食べる事に最初は抵抗感を感じていたが、一口食べた途端に表情が変わって、次々と食べ始めた。

日本人として喜んでもらえてなによりだ。

 

そしてラウラは箸に悪戦苦闘しながらも、なんとか食べていた。

セシリアとは違って生魚に対しての抵抗感は無いみたい。

理由を聞いてみたら『サバイバル技術を一通り学んでいるから、生魚程度にビクついたりはしない』だそうだ。

今まで一体どんな訓練をしてきたんだ…?

 

こうして騒がしくも楽しい昼食を終えて、少しだけレゾナンス内にある店を見て回ってから帰路に着いた。

 

もうすぐ臨海学校……か。

不安が無いと言えば嘘になるけど、皆がいるから大丈夫……だよね?

 

余談だけど、ちゃんと門限には間に合いましたよ。

そこら辺は真面目な女子高生ですよ?

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 佳織達が座っていた席の後ろ。

そこにも少し変わった面々が座っていた。

 

金髪と紫髪と黒髪。

髪の色だけでも特徴的な三人組の少女達で、周囲の人々もチラチラと見ている。

 

「……いかがでしたか?」

「初めての回転寿司だったが、中々に美味だったぞ」

「いえ、そうではなくて…」

 

紫の髪の少女が困惑する。

 

「分かっている。冗談だ」

 

フッ……と微笑む金髪少女。

その顔はとても優美だった。

 

「仲森佳織……一見すると普通の少女のようだったが……」

「どうされました?」

「面白い少女だったな」

「面白い…?」

 

急に紫髪の少女の顔が強張る。

眉間に皺が寄っている様子からすると、静かに怒っているようだ。

 

「フフ……実際に対峙する日が楽しみだ」

「大佐……」

 

そうして話している二人を余所に、黒髪の少女は一心不乱に寿司を食べ続ける。

よく見ると、彼女が食べているのは金色の皿の寿司。

つまりは一皿500円以上のネタばかりだった。

 

結果、会計で5桁の数字を見る羽目になった。

金には困っていない彼女達だったが、レシートに書かれた値段を見た時に目が点になったのは言うまでも無い。

 

 

 

 




私、過去に一回だけ当たった事があります。

しかも、バイトの面接の時の待合室にあった販売機で…。

その時の幸運のお蔭か、そのバイトには採用されましたけど。


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第36話 臨海学校初日

ねぇ知ってる?
納豆を食べた後にアルカリイオン水を飲むと、体がアルカリ性になって酸を中和するんだって。







 バスに揺られながら窓の外をポケ~っと眺める。

眩しい陽光に照らされた木々が高速で後方に去っていく。

 

「はぁ~…」

 

これからの事を考えると気が重い…。

この臨海学校ではこれまでで一番の事件が待ち構えているんだから。

 

「かおりん~、どうしたの~?」

「あぁ~…本音ちゃん」

 

私に隣の席に座っている、我がルームメイトの本音ちゃん。

きょとんとした目でこっちを見てくる。

 

「なんでも無いよ。少し寝不足なだけ」

「寝不足?もしかして、臨海学校が楽しみで眠れなかったとか~?」

「ん~…近からず遠からず……かな?」

「どっち~?」

 

やっぱ、下手に原作知識とか持つもんじゃないね。

先の事を知っていると、対策が立てやすくなると同時に危険が来るって分かっているって事にもなるんだし。

何とも言えない気持ちになってしまうよ。

 

「寝不足…か。佳織も意外と子供っぽい所があるんだな」

「それもまた魅力の一つでしょ」

 

好き放題言ってくれますね。前の席に座っている幼馴染コンビさんよ。

 

「あっ!みんな~!海が見えたよ~!!」

「えっ!?ホントっ!?」

「どこどこっ!?」

 

にゃはは……皆、全力ではしゃいでるね~。

私も、この一時ぐらいは何にも考えずに彼女達のように無邪気になりたいよ。

 

「海……か」

 

最後に海に来たのっていつだっけ?

よく覚えてないや。

毎年プールには友達連中と一緒に行くんだけどね。

その度に何故か一部の女子達から尊敬と嫉妬が綯い交ぜになった視線を送られるんだけど。

 

「佳織さん?何を黄昏てますの?」

「そう言うのって普通は夕方にするもんじゃない?」

「いや…別に黄昏てるわけじゃないよ。ただ、前に海に来たのっていつだったかな~…って思っただけ」

「あぁ…そうでしたの」

 

納得してくれたか。

 

「私も余り海には来た経験が無いな」

「そうなの?」

「うむ。軍務の関係上、上から眺める事は多々あっても、実際に入る事は殆ど無い。あったとしても海中訓練の時ぐらいだな」

「それは……入ったって言うのかな?」

 

ラウラの場合は境遇が境遇だからね。そこら辺は仕方が無いでしょ。

だからこそ、今回は思いっきり海を堪能してほしいって思うけど。

 

「そう言えば、佳織って泳げるの?」

「人並みぐらいには」

 

流石に遠泳とかは無理だけど。

でも、一夏と箒はそれを普通にやってのけるんだよなぁ~…。

そんな姿を見てしまうと、やっぱり二人は千冬さんと束さんの妹なんだなって実感する。

血筋に関しては私も決して他人事じゃなかったけど。

 

「もうそろそろ目的地に到着だ。お前達、ちゃんと席に座っていろ」

 

お?もう到着ですか?

千冬さんの言った通り、目の前には旅館と思わしき建物が見えてきた。

 

それから少しして私達が乗ったバスは今回の臨海学校の目的地である旅館に到着。

それぞれのバスから生徒全員がゾロゾロと降りてきて、旅館のの玄関先に整列した。

 

「ここが今日から3日間の間、我々がお世話になる花月荘だ。全員、従業員の方々に余計な仕事をさせないように心掛けろ。いいな?」

「「「「「「はい!!」」」」」」」

「では挨拶しろ」

「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」」

 

全員揃って挨拶すると、流石にかなりの音量になるな。

私達の挨拶の後、従業員の人達の真ん中にいた着物を着た女将さんと思わしき人が丁寧にお辞儀をした。

 

「はい、こちらこそよろしくお願いしますね。私はこの花月荘の女将を務めております『清州景子』と申します」

 

女将さんと言うだけあって、本当に綺麗な人だ。

こうして女として生きている以上、将来はあんな風に余裕のある大人の女性を目指したいものだ。

 

「では皆さん。早速お部屋の方に上がられてください。海に行かれたい方々は別館の方に更衣室がありますから、そこをご利用ください。もしも場所が分からなくて迷った時は、遠慮なく従業員に聞いてくださいね」

 

挨拶と同じように、丁寧な説明。

私も着物を着れば少しは大人びて見えるのだろうか?

 

皆は揃って『は~い!』と返事をしてから、一組から順に旅館の中へと入っていった。

 

臨海学校の初日は一日自由時間となっていて、ご飯の方は旅館の食堂で各々で食べるように言われている。

旅館の料理ってなると、やっぱり新鮮な魚介類かな?

やば……不謹慎と分かっているけど、口の中に涎が…。

 

「さて、私達の部屋は……」

「どこだろうね~?」

 

今回、私と同じ部屋に割り当てられたのは、本音ちゃんと一夏と箒の三人。

見知った人間と一緒だから、気楽で助かる。

 

「ここでじっとしていたら、他のクラスもやって来て込み合ってしまう。早く行くとしよう」

「箒はどこにあるか分かるの?」

「いや。だが、部屋の番号は分かっているのだし、皆について行けば大丈夫だろう」

「それって、迷路で迷った時に最終的に壁に手をついて歩こうとする人みたいだね…」

「べ…別にいいだろ!?」

 

私は気にしないけどね。

 

箒の言う通りに皆について行くと、ちゃんと部屋に着くことが出来た。

 

「私一番~♡」

「「「あ」」」

 

本音ちゃんが真っ先に扉に手を当てて開いた。

 

「「「「おぉ~!」」」」

 

部屋は畳から漂ってくる香りが鼻孔を擽る和室だった。

……別に、私の名前の『佳織』と『香り』をかけた訳じゃないからね?

 

部屋自体は数人で泊まる事を前提としているだけあって、結構な広さがあった。

窓からの景色は実に見事なオーシャンビュー。

よく見たら、トイレにバスがセパレートになっていて、洗面所まで個室となっている。

更に浴槽に至っては、大の男が足を延ばしても余裕があるほどの大きさ。

 

「もしかして……ここって高級旅館?」

「もしかしなくても高級旅館だな」

 

ダヨネ~。

 

「部屋に風呂があるとはいえ、殆どの連中は大浴場に行くだろうな」

「箒も?」

「まぁ…な。こうして旅館に来た以上、入らないと損だろう?」

 

御最も。

そんな私も大浴場に行く気満々だったりします。

私だって大きなお風呂でのんびりしたいもん!だって女の子だから!

 

「さて、とっとと荷物を置いて海に行くとしようよ」

「賛成~♡」

 

そこら辺に荷物を置いてから、私達はその中から水着等を初めとした荷物を持って、別館にあると言う更衣室へと向かう事にした。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 更衣室へ行く途中に千冬さんと山田先生に会った。

なんでか千冬さんは血走った目で私の肩を掴んで『すぐに行くからな!行くからな!!』って言ってきた。

 

その場にいる全員がドン引きしてしまった。あの本音ちゃんすらも……。

 

そうして教師二人組と別れて再び更衣室へと歩いて行くと、途中にある渡り廊下に隣接している中庭にて奇妙な光景と出くわした。

 

「「「「………………」」」」

 

目の前で起きている状況を簡単に説明しよう。

地面からウサ耳が生えている。

もう一度言う。地面から『ウサ耳』が生えている。

そう、ウサ耳だ。

僕も私も大好きな、皆に愛される犬や猫に並ぶ愛玩動物の筆頭とも言うべき、あのウサギの耳だ。

あろうことか、それが地面から生えている。

これを奇妙と言わずして何を奇妙と言うのか。

しかも、ウサ耳の近くにはご丁寧に『引っ張ってください』と書かれた張り紙付き。

 

「……どうする?」

「無視だ」

「え?でも…「無視だ」…う…うん……」

 

無視を貫いた箒は、そそくさと先に進んで、一足先に更衣室へと入っていった。

 

「……本当に無視する?」

「でも、これって……」

「うん。多分、一夏の考えている事は正解だと思う」

 

このウサ耳を埋めた犯人は間違いなく束さんだ。

つーか、あの人以外にこんなアホな事をする人間を私は知らない。

 

「って!本音ちゃん!?」

「もう既にウサ耳の所にいるし!?」

「いくよ~!」

 

私達が止める間も無く、本音ちゃんは両手でウサ耳を引っ張った。

 

「わっ!?」

「本音ちゃん!」

 

埋まっていると思っていたけど、実はそうではなかったようで、そこに立っていただけだったようだ。

そんな事とは知らない本音ちゃんは、勢い余って後ろに転びそうになった。

それをなんとかギリギリの所で支えることが出来た。

 

「大丈夫?」

「えへへ~…ゴメンね~かおりん」

「気にしないで。それよりも……」

 

これ……どうしよう?

そう思って一夏に目配せをするけど、本人は首を横に振るだけ。

 

「あら?皆さんお揃いで一体何を?」

「セシリア……」

 

なんちゅータイミングで来るかな、この子は。

 

「……佳織さんと本音さんは何をしてますの?」

「「あ…」」

 

そう言われると、今の私達の態勢はお世辞にも普通じゃない。

絶対に何かがあったと思わせる姿だろう。

 

「う~ん……これには深いような浅いような訳があって……」

「どっちですの?」

 

どっちとも言えないんだよ。これが。

 

なんて説明したらいいか考えていると、何かが高速で空から落ちてくるような音が聞こえてきた。

 

「い!?本音ちゃん!」

「かおりん!?」

 

咄嗟に本音ちゃんを庇うようにして抱きしめて背中を盾にする。

すると……真っ赤な物体が派手な音と共に地面にぶっ刺さった。

 

「いいいいいっ!?」

「な…なんなんですの!?」

 

周囲が土煙に覆われるが、少しして煙が晴れる。

そこから姿を現したのは……

 

「「「「に…ニンジン?」」」」

 

機械的なフォルムのニンジンだった。

大きさは大体、大人一人が余裕で入れるぐらい。

 

「「「「……………」」」」

 

全員がいきなりの事に呆気を取られていると、そのニンジンがパカッと中央から割れた。

その中から出て来たのは、案の定の人物だった。

 

「にゃっはっはっ~!見事に引っかかったね~かおりん!いっちゃん!」

「「は…はぁ~…」」

 

この人の辞書には『普通』と言う言葉は無いんだろうか…。

もしも無いのならば、是非とも今日から追加してほしい。

 

「いや~、以前に同じ事をしたらさ、着陸した途端に『ソロモンの悪夢』と『真紅の稲妻』に遭遇しちゃって、危うく捕縛されるところだったんだよね~!流石の束さんも、リアルチートなあの二人を同時に相手するのはヤバかったからね。あの時は急いでその場を離れたよ~」

 

そ…そんな事があったのか…。

つーか、やっぱり『あの二人』もいるのか!

束さんがここまで言うとは……この世界でも最強レベルの実力なのか…。

 

「でも、お蔭で束さんはまた一つ学習したのです!私ってばエラい!」

 

自分で自分を褒めますか。

 

「あれ?」

「な…なんですか?」

 

ど…どうしたんだ?

 

「もしかして私……お邪魔だった?」

「「はっ!?」」

 

束さんに言われて、改めて自分の恰好を確認する。

私の腕の中には本音ちゃんがいて、まるで彼女を抱きしめるような格好になっていた。

 

「あわわわわ~!か…かおりん~!これは~…」

「ご…ごめん!」

 

これは私も恥ずかしい!

抱きしめているせいか、すっごく顔が近いし……。

 

「私が目を離した隙に、またかおりんのハーレムが増えたみたいだね~」

「ハーレムってなんですか…」

 

人聞きの悪い事を言わないでほしい。

 

「君の事は知ってるよ。かおりんのルームメイトの布仏本音ちゃんでしょ?」

「え?」

「私はかおりんの事ならなんでも知っているのだ!えっへん!」

「威張る事ですか?」

 

思いっきり胸を張る束さん。

相変わらず、この人ってスタイルいいなぁ~…。

 

「しかも、かおりんのISの整備もしてるんでしょ?えらいね~!」

「あ…ありがとうございます?」

 

……あれ?あの身内以外を完全に見下す束さんが、初めて会った本音ちゃんに対して辛辣じゃない?

これってどういうこと?

 

「あ~。かおりんといっちゃんのその顔。何か変な事でも考えてるでしょ~」

 

バレた。

 

「私だってね、認めるに値する子はちゃんと評価するんだよ?」

「「えぇ~…」」

 

初耳なんですけど?

 

「と…取り敢えず、お久し振りです。束さん」

「うんうん。本当に久し振りだね~、二人とも」

 

この人に最後にあったのは結構昔だったと思うけど、何年経ってもこのテンションだけは変わらないのね…。

 

「ところで、箒ちゃんはどこかな?さっきまで一緒にいたよね?」

「箒は……」

 

言うべきか?でも、箒自身は拒否ってたしな…。

 

「ま、ここで教えてくれなくても、私が開発したこの箒ちゃん探知機『箒ちゃん見つける君』で探せばすぐに見つかるけどね」

 

色々とツッコみたい事はあるけど、まずはそのネーミングセンス…どうにかなりませんかね?

 

「それじゃ、私はもう行くね!またね~!かおりんにいっちゃんにほっちゃん!」

「「「「ほっちゃん?」」」」

 

それって…本音ちゃんの事?

って、いつの間にか彼方まで走り去ってるし!

あの速度に追いつけるのって千冬さんぐらいじゃね?

そんな人を追いつめる二人って……。

やっぱ、同じぐらいの速度で走れるのかな?

 

「あ…あの……先程の方は一体…?」

「箒のお姉さん…って言えば分かる?」

「お姉さん……って!もしかして、あの女性がISの開発者である篠ノ之束博士ですの!?」

「そ。その篠ノ之束さん」

「ええええええええ~!?」

 

昔からの知り合いじゃなければ、そのリアクションは当然だよね。

 

「あ…あの…かおりん?なんか私…その篠ノ之博士に渾名で呼ばれたんだけど…?」

「それは多分、あの人に気に入られた証拠だと思う。束さんって昔から自分が認めたり気に入ったりした人間の事を自分で考えた独特の渾名で呼ぶ癖があるから」

「癖……なの?」

 

多分ね。

 

「まぁ…今は放置しても大丈夫じゃない?目的は箒みたいだし。私達は更衣室に行こうよ」

「それがよさそうだね。ここにいるって事は、セシリアも海に行くんでしょ?」

「はい。折角の日本の海ですから」

 

イギリスの海と日本の海って何か違いがあるのかな?

海外旅行なんて行った事ないから分かんないけど。

 

つーわけで(?)皆揃って更衣室へとGO。

 

箒には……言わない方がいいかもな。

知らぬが仏って事もあるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




え?水着?次回を待て!!


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第37話 少女達の真剣勝負?

ハマーン様にスク水を着せてみたいと思う今日この頃。








 束さんとの驚きの邂逅を経て、私達は海へとやって来た。

 

海辺には既に多くの生徒が遊んでいて、みんな思い思いに過ごしている。

 

「日差しが眩しいねぇ~!」

「でも、暑すぎるって訳でもないよね~」

「うん。変な言い方だけどさ、丁度いい暑さだよね」

 

まだ夏本番って訳じゃないからね。

日本の夏はまだまだこれからですよ。

 

「私的には……佳織の方が眩しい…」

「うん……同感…」

「お綺麗ですわ……」

「ん?」

 

何を後ろでぶつぶつと言いながら突っ立ってますかね?

 

私の水着は前に買った赤いビキニ。

でも、なんでか赤い生地に白でハイビスカスが描かれたパレオもついてきたんだよね。

実際にお金を払った千冬さん曰く『おまけでくれた』だそうだ。

それを知った時、偉く興奮したらしい。

 

「水着とは……露出が多ければいいと言うものでもないんだな…」

「これはこれでエロいよね…」

「パレオのスリットから見える太ももがまたなんとも…♡」

 

いい加減に見るのをやめてくれませんかね?

そんな風にしているお三方も凄く似合ってるって思うけど?

 

一夏は私も前に見た白のビキニで、箒は薄紅色の大人しめのデザインのビキニ。

セシリアは私達と同じように機体色を意識したのか、青いビキニに水色のパレオ。

三人とも、私以上に魅力的だって思うんだけどな~。

 

「…で、なんで本音ちゃんは『ソレ』を態々チョイスしたの?」

「え~?似合わない~?」

「似合わないと言うか……」

 

それ以前の問題と言いますか…。

 

本音ちゃんはなんと、いつも彼女がパジャマとして着ているようなデザインと大して変わらない顔以外の全身を覆う感じのキツネの着ぐるみのような水着。

いや…これは水着と言っていいのか?

そもそも、こんな水着が本当に売ってあったの?

何処のブランドなの?とか、値段は幾らぐらい?とか気になる事は山程あるけど、今は最も気になっている事を聞こう。

 

「本音ちゃん……」

「な~に~?」

「その恰好……暑くないの?」

「別に?思ってるよりも通気性はいいよ~」

 

いや…通気性が良ければいいというもんじゃ……。

 

つーか、なんで後ろの三人は本音ちゃんの恰好に一言もツッコみを入れないんだ!?

この溢れ出る違和感に気が付かないのか!?

 

「これもまた……気にしたら負けなのか……」

「???」

 

まぁ…本音ちゃんらしいからいいか。

 

「あ!?」

 

ん?通りすがりの生徒の一人がこっちを振り向いたぞ。

 

「仲森さん……やっぱり水着も赤いんだ…」

「え!?ホントだ!」

「しかも、スタイル抜群ときてるし……」

 

なんか段々と視線が集まってきてるんですけど!?

 

「パシャっとな」

「そこ!何を撮ったの!?」

「仲森さんの水着姿」

「正直だな!?」

 

少しは誤魔化そうとしろよ!?

 

「………よし。これ…私の携帯の壁紙にしよう」

「お願いだからやめてください」

「写真のタイトルは『赤い彗星、渚に立つ!』ね」

 

私はガンダムか!?

 

「ありがとね、仲森さん。これで暫くはオカズには困らないわ」

「人の水着姿で自家発電は止めて!!」

 

あぁ~……行ってしまった。

唯我独尊過ぎて困ったな…。

 

パシャ!

 

「ん?」

 

シャッター音?後ろから?

 

「「「はぁ…はぁ…」」」

 

アンタ等もかい!!

 

三人揃って鼻血を垂らしながら写真を撮りおって!

少しは本音ちゃんを見習ってよね!

 

「………………」

「ほ…本音ちゃん?」

 

こっちを凝視してどうしたの?

 

「かおりんの水着姿を脳内フォルダに保管してる」

「そう来たか!!」

 

それは防ぎようがないわ!

 

「ほ…ほら!皆!折角海に来たんだよ!今日ぐらいは羽目を外して遊ぼうよ!ね?」

「そ…そうだね。私ってば何をしてたんだろ…」

「これも佳織の魅力の成せる技だな」

「そこまで言うか」

 

箒はどこまで私を過大評価すれば気が済むの?

 

「そ…それでしたら!少しお待ちいただいてもよろしいですか!?」

「う…うん?」

 

何を始める気だ?

セシリアはどこかへとダッシュで走っていって、数分後に息を切らせながら戻ってきた。

 

「はぁ…はぁ…か…佳織さん……こちらに来ていただけませんか…?」

「い…いいけど……」

 

セシリアに連れられて歩いて行くと、そこには砂浜に立てられたビーチパラソルと、そこに敷かれたシート、その上に置かれたサンオイルがあった。

 

「佳織さん!」

「は…はい!」

「私に…その…サンオイルを塗って頂けませんこと!?」

「「「「えぇっ!?」」」」

 

……一夏に箒に本音ちゃん……ついて来てたんだ。

 

「な…何を言っているセシリア!破廉恥だぞ!!」

「うわぁ~…セシリンってば大胆だねぇ~…。大胆淑女だねぇ~」

「イギリス人の女の子って、こんなにも積極的なんだ…。油断できない…!」

 

三者三様の反応、あざっす。

 

「破廉恥上等ですわ!文句がお有りなら箒さんも佳織さんに頼めばよろしいじゃありませんの!」

「そ…それは……」

 

急速に箒の顔が真っ赤に染まっていく。

リアルにこんな反応する人いるんだ…。

 

「それが出来たら苦労せんわ~~~~~~~!!!!!」

「箒~~~~~~~~!?」

 

叫びながらどっかに走っていったんですけど!?

一体何がどうしたの!?

 

「……行ってしまった……」

「しののんって足が速いね~」

「感想そこ!?」

 

もうちょっと何か言う事無いの!?

 

「これでライバルが一人脱落ですわ…!さぁ!佳織さん!お願いします!」

「う…うん…」

 

箒の心配は誰もしないのね…。

 

「箒なら大丈夫でしょ。別段危険な場所って訳じゃないし」

「それもそう……なのか?」

 

いざとなったら他の子が何か言ってくれる事を祈るしかないか。

あれじゃ、箒がどこに行ったか分からないし。

 

「でも、私ってサンオイルを誰かに塗った事なんて一度も無いんだけど…いいの?」

「問題無いですわ。誰にでも初めてはありますもの。気にする必要はありませんわ」

 

その言い方だと別の意味に聞こえるぞ…。

 

私が困惑している間に、セシリアはパレオを外してから傍に置き、同時に胸を隠している水着の紐を解いてから、それを手で押さえながらそっとシートに寝そべった。

 

その仕草が凄く色っぽくて、同性だと分かっていてもドキドキしてしまった。

 

「一応聞いておくけど……背中だけだよね?」

「佳織さんが望まれるのでしたら前の方もよろしいですわよ?」

「こっちがよろしくないのでいいです!」

 

何を言い出すかな!この子は!

イギリスは紳士淑女の国だったんじゃないの!?

 

「……で?お二人はなんでこちらをジッと見てますの?」

「佳織とセシリアが変な事にならないように監視」

「私はかおりんの傍にいたいだけ~♡」

「ま…まぁ…いいですわ。邪魔さえしなければ」

 

そうなんだ。

てっきり『向こうに行ってくださいまし!』とか言うと思ってた。

 

「うぐ……」

 

白人特有の綺麗な肌が眩しくて、真っ直ぐに見られません…。

つーか、純粋にエロいんだよ!

自分で言うのもなんだけど、今日の私はどうした!?

 

ドキドキしながらサンオイルが入った容器の蓋を開けて、中身を手の平に出す。

 

「あ、こういった時はまず手の中で少しオイルを温めるといいですわ」

「わ…分かった」

 

温める…ね。こうして手で捏ねるようにすればいいのか?

 

「か…佳織いきます」

「どうぞ♡」

 

そ~っと手を近づけてセシリアの背中に触れる。

 

「ひゃう!」

「あ…ごめん!くすぐったかった?」

「だ…大丈夫ですわ…」

 

き…緊張する…。どうして臨海学校に来て緊張しなければいけないの?

 

(うわ~…セシリアの肌ってスベスベで柔らかい……。なんか触ってて気持ちいいかも…)

(佳織さんの手が私に触れてますわ~♡勇気を出してお誘いして正解でしたわ♡)

 

顔が無駄に熱い…。

今の私の顔って絶対に真っ赤になってるよ…。

 

「お…お上手ですわ……。流石は佳織さんですわね…」

「そ…そう?」

「えぇ…。佳織さん…出来れば下の方もお願いできますか?」

「し…下の方?」

 

下ってどこまでの事を言ってる?

 

「脚やお尻などもして頂けると嬉しいですわ…♡」

「にゃ…にゃにを!?」

 

いやいやいや!幾らなんでもそこはダメでしょ!

 

「「はいダウト~~~!!」」

「えぇっ!?」

 

ダ…ダウト?

 

「セシリア。それは流石にやりすぎ」

「うんうん」

「い…いいではありませんの!実際に塗らなくてはいけませんもの!」

「だったら…「あたしがしてあげるわよ」…へ?」

 

こ…この声は……

 

「「鈴!?」」

「リンリン?」

「鈴さん!?どうしてここに!?」

「いや、それはこっちのセリフだから」

 

何処からともなくやって来た鈴は、スポーティーなタンキニタイプの水着を着ていた。

オレンジと白のストライプで、なんとも鈴らしい水着だ。

 

「さっき箒が叫びながらどっかに走っていくのを見て、何があったのか気になって箒が走って来たルートを逆に歩いて来たら、案の定…!」

「そ…そんな…去っていった箒さんの行動が仇になったなんて……」

 

仇って、そんな大袈裟な…。

 

「っていうか、アンタ等も止めようとしなさいよ」

「いや、さっきまでは普通に塗ってたんだよ。でも…」

「リンリンが来る直前にこうなって……」

「成る程。つまり危機一髪だったって訳ね」

 

危機一髪とな?

 

「佳織。ちょっとソレ貸して」

「え?」

 

私が反応するよりも早く鈴が私の足元に置いてあったサンオイルの容器を奪い取った。

 

「そんなに塗ってほしかったら……」

「り…鈴さん?何を……」

「アタシが塗ってあげるわよ!!」

 

自分の手に適当にオイルを出して、いきなりセシリアの体に塗りだした!

 

「きゃ…きゃ~~~!?」

「ほらほらほらほらほら!!」

「ちょ……やめてください!」

 

セシリアが絡みつく鈴の手を振りほどこうとすると、その拍子に体から離れていた水着が下に落ちた。

 

「「「「あ」」」」

 

その瞬間、場の空気が凍った。

 

「その…佳織さん?優しくお願いしますわ…♡」

「何の事を言ってるのかな!?」

「お母様…お父様……セシリアはとうとう…大人への階段を昇りますわ…♡」

「昇りませんよ!?昇らないからね!?」

 

完全にトリップして、こっちの声が届いてないし!!

この作品は健全な全年齢対象の作品だよ!?ここでいきなりR-18な展開はNOだよ!?

 

「何言ってんのよアンタは!とっとと着なさいよ!!」

「り…鈴さん!?」

 

鈴は落ちていた水着を拾い上げて、無理矢理セシリアに渡した。

 

「いつからアンタは痴女にジョブチェンジしたのよ…」

「佳織さんの為ならばいつでもチェンジしますわ!」

「その意見には共感しないでもないけど、今はダメでしょ。仮にも臨海学校に来てるんだし」

 

共感はするかよ!?

っていうか、正論のように聞こえて正論じゃない!

 

「全く……アタシはもう行くから。佳織、行きましょ」

「え?」

 

ちょ…ちょっと?鈴?私の手を引いてどこに行くつもり?

 

「……はっ!?鈴さん!なに自然な動作で佳織さんを連れて行こうとしてますの!?」

「ちっ!ばれたか」

 

確信犯だった!

 

「こうならやったもん勝ちよ!アンタだって同じことをしたんだし、お相子でしょ!それじゃ~ね~!」

「こら~!待ちなさ~い!!!」

「り…鈴!?どこに行くの!?」

「かおりん~!」

「私の意思は基本無視か~~~~~!?」

 

ちょ……わ~~~~~!?

鈴はどこに行きたいの~?って、呑気にネタ発言してる場合じゃないでしょ!

本気でどこに行くんだ~!?

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 そのまま鈴と手を繋いで走る事10分。

セシリア達がいた場所からかなり離れた所まで来た。

 

「ハァ…ハァ…ハァ……いきなり走り出さないでよ…」

「あはは……ゴメンゴメン。でも、こうでもしなきゃ佳織は来てくれないでしょ?」

「いや…ちゃんと言ってくれれば素直について行くよ…」

「それは…そうかもだけど……」

 

途中でモゴモゴしだしたぞ?

お蔭で何を言っているのかよく聞き取れない。

 

(そうしたら……一夏や本音までついて来るに決まってるじゃない…)

 

耳を澄ましても聞こえません。

何か機嫌を損ねるような事でもしてしまったかな?

 

「……佳織!あそこのブイまで競争しましょ!」

「え?いきなり何!?」

「負けた方は罰ゲームとして駅前の『@クルーズ』で特大パフェを奢る事!それじゃ、よいドン!」

「と…特大パフェ!?それによいドンでスタートしたし!?」

 

特大パフェって何さ!?そんなメニューあそこにあったっけ!?

つーか、私が運動関係で鈴に勝てるわけないじゃん!!

なんて言ってる間にも鈴はどんどんと離れていくし~!!

待てやごらぁ~~~!!!

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 穏やかな海を泳ぎながら私は考えていた。

 

(少し強引だったかもしれないけど、こればっかりは譲れないのよね…)

 

サンオイル…か……。

セシリアみたいにスタイルが良かったら、効果も絶大でしょうね。

実際、塗ってた佳織も顔を真っ赤にしてたし。

 

ボインスレイヤーの一件以降、自分のスタイルを卑下しないように決意したけど、そう簡単には割り切れない。

私が『例の女子高生』の領域に至るには時間が掛かりそうだ。

 

(なんか…羨ましかったな……)

 

もしも私がセシリアの場所にいたら、どうなっていたのかな…?

やっぱり、同じように大人の階段を昇りかけるのかしら…。

 

この臨海学校は佳織に自分をアピールする絶好の機会。

だけど、それは何も私だけじゃないのよね…。

 

一夏だって凄い水着を着てたし、走っていった箒だって結構可愛い水着を着てた。

セシリアも凄く似合ってたし、多分、シャルロットやラウラもかなり気合を入れた物を着てくるだろう。あの簪って子も佳織の事が好きだったみたいだし…。

え?本音?いつもならば最大のライバル認定してるけど、今回は大丈夫でしょ。

だって、あの着ぐるみじゃアピール以前の問題だし。

 

「あ」

 

そういや、千冬さんと言う最強のライバルもいたんだった…!

あらゆる意味であの人こそがラスボスだと思う。

 

(しかも、山田先生も満更じゃない顔をしてた事が何回かあったのよね…)

 

先生もライバルとか……どんだけモテるのよ、佳織…。

 

(いやいやいや!ここでめげてどうすんのよアタシ!何のためにIS学園に来たのか、もう忘れたの!?)

 

名目上の目的は甲龍の戦闘データ収集だけど、それは上の都合。

私自身は佳織に会う為に二度目の日本来日を果たしたんだから!

 

心の中で気合を入れ直した瞬間、力んだ拍子に足が攣ってしまった!

 

(い…痛っ!?)

 

足が…動かない…!しかも、その拍子に海水まで飲んでしまった!

 

(き…気管に海水が入って…!まずは海面に出なくちゃ……!)

 

でも、半ばパニックになっているアタシは思うように泳げないでいた。

足の痛みに加え息が出来ない事が重なって、完全に溺れ始める。

 

(ヤ…ヤバイ…!これは冗談抜きでヤバい!!)

 

このままじゃアタシ……!

 

(佳織……!)

 

思わず目を瞑った時、誰かの手が私の腕を掴んで引っ張り上げてくれるのを感じた。

 

ホント……敵わないなぁ~……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の事で、セシリアが少しだけリード?
でも油断は禁物だ!臨海学校ではすぐに逆転されてしまう可能性があるぞ!



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第38話 青い巨星のかき氷

浪漫兵器の魅力に勝てる人っているんでしょうか…?







「鈴!!大丈夫!?」

「げほっ!げほっ!だ…大丈夫…だと思う…」

「そう……よかった」

 

全く……目の前で鈴がいきなり沈んだ時は本気で慌てたよ。

急いで泳いでいって手を掴むことが出来たからよかったものの、もしも間に合わなかったらと思うと、背筋がゾッとするよ。

 

「んじゃ、一旦浜辺に戻ろうか。背中に掴まって」

「え?でも……」

「いいから」

「……分かったわよ」

 

恥ずかしそうにしながら背中に掴まる鈴。

助けられるのが恥ずかしいって思うのなら、最初から競争なんて言わなきゃいいのに…。

 

誰かを背負いながら泳ぐのは中々にコツがいる。

中学時代に救急救命講習を受講してなかったらヤバかったな。

学んだ知識は決して無駄にはならないって、お父さんもよく言ってたし。

 

「その……佳織」

「なに?」

「………ごめんね。んで…ありがと」

「気にしなくてもいいよ。大切な人がピンチだったんだ。助けるのは当然でしょ?」

「た…大切な人……」

 

ん?妙に首の辺りが暖かいな?

プシュ~…って音が聞こえた気もするし。

 

大切な友人が命の危機だったんだ。

いくら私の傷が治ったばかりだとしても、多少は無茶はしますよ。

本当は少しだけ痛かったけど。

 

「よし、到着っと」

 

やっと浜辺に着いたよ。

さて、どこか休める場所は……。

 

「ちょ…ちょっと!もう大丈夫よ!降ろして!」

「本当に?」

「本当よ!」

「はぁ……りょーかい」

 

渋々、私は鈴をゆっくりと降ろす。

 

「おっと……」

「ほら、少しふらついてるじゃん」

「も…もうOKよ。ホント」

「…………」

 

どう見ても無茶してるようにしか見えないな~。

 

「あら?佳織さんに鈴さん?」

「あ」

「げっ!」

 

また抱えてどこかに運ぼうかなっと思っていた時に、セシリアが通りがかった。

その顔は微妙ににやけている気がする。

 

「どうしましたの?なんだか調子が悪そうに見えますけど」

「うん。実はね…「か…佳織!」カクカクシカジカ」

「カクカクウマウマ…。なるほど、海で泳いでいたら鈴さんが溺れかけてしまったと…」

「そうなんだ」

 

途中で鈴がなんか言ってきたけど、私はセシリアに事の一部始終を説明した。

 

「それはいけませんわ!早く体を休ませないと!」

 

お…おぉ~…セシリアも心配してくれたんだ。

なんだかんだ言っても、ちゃんと鈴の事を友達だって思ってくれてたんだね。

ちょっと感動……。

 

「い…いや、セシリア。私は別に……」

「え~っと……あっ!相川さん!」

「ん~?どうしたの?オルコットさん」

 

またなんで丁度いいタイミングで相川さんが来るかな…。

 

「実は……」

 

今度はセシリアが説明。

 

「そーゆーことね!よし!じゃあ行こうか!」

「え?ちょ…ちょっと!?」

「ほら、早く休まなければ!」

 

鈴の両腕をセシリアと相川さんがガッチリホールド。

そのまま『先を行く人』状態で連行された。

 

「か…佳織~!助けて~!!」

「因果応報ですわ。諦めが肝心ですわよ」

「アンタね~!!」

 

………取り敢えず、手でも振っておこう。

 

三人は揃って別館の方に歩いて行った。

行く途中、鈴が大声でこっちに向かって叫んでいたけど、大丈夫だよね?

 

「……どこ行こ」

 

結局、一夏や本音とはぐれちゃったし。

あ…セシリアが来た時に二人の居場所を聞いておけばよかった。

 

う~ん……まだお昼には微妙に早いしな~…。

 

「あれ?佳織ってばこんな場所にいたんだ」

「ん~?」

 

いきなり呼ばれたので振り向くと、そこには水着を着たシャルロットと一緒に……

 

「え…え~っと……」

 

頭の先から爪先までをバスタオルで覆ったミイラ擬きが立っていた。

 

「……ツッコみ待ち?」

「いやいやいや。佳織だって分かってるでしょ?」

「バレた?」

 

知ってるよ。このバスタオル星人はラウラでしょ?

バスタオルの隙間から少しだけ見覚えのある銀髪がはみ出てるし。

 

「ほら、早く出てきなって。本当に大丈夫だからさ」

「そ…その判断は私が決める……」

 

多分、恥ずかしがってるんだと思うけど、そんなに気にする程の事かな?

いや……こういった感性は人それぞれだから、私からは強く言えないけど。

 

「ほ~ら。折角海に来て水着に着替えたんだから。こうしてちゃ意味無いでしょ?それとも、佳織に見てほしくないの?」

「そ…それは……だが……しかし……」

「んも~…さっきからそう言って全くタオルを取ろうとしないじゃない。僕も色々と協力したんだから、見る権利ぐらいはあるって思うんだけど?」

 

シャルロットも説得に苦労してるようだ。

ここまで頑なに見せる事を拒否するって、一体どんな水着を着てるんだろう?

シャルロットじゃないけど、私も少し興味が出てきたぞ。

 

「仕方が無い。ラウラがそこまで嫌だって言うんなら、僕だけで佳織と遊びに行こうかな~?」

「な…なんだって!?」

「ほら、一緒に行こう?佳織」

「う…うん……」

 

これが芝居なのは私も分かっているけど、だからと言ってどうしてシャルロットは私の腕にしがみ付くの?

む…胸が当たってるんですけど……。

 

「ま…待ってくれ!私も行く!!」

「そのままで?」

「あ……。くっ……やむを得ん!!」

 

意を決したのか、ラウラはバババッ!とバスタオルを全部外して水着姿を見せてくれた。

 

「おぉ~…」

「わ…笑いたければ存分に笑え……」

 

黒いビキニ系の水着で、黒いレースがふんだんにあしらってある。

いつものラウラからは考えられないぐらいに露出が多いが、だからこそいいと思う。

髪型も水着に合わせたのか、ツインテールに結んであった。

よっぽど恥ずかしいのか、さっきからずっともじもじしている。

 

「何にもおかしなところなんて無いよね?」

「うん。私は凄く可愛いって思うよ。思わず抱きしめたくなっちゃったし」

「か…可愛い……!?」

 

おぅ……急速にラウラの顔が真っ赤に。

でも、そんな表情も可愛いです。

 

「せ…世辞なんて不要だ……」

「お世辞なんかじゃないって。だよね?」

「うんうん。僕もずっと同じ事を言い続けてるのにさ、全く信じてくれないんだよ。因みに、この水着と髪型は僕がチョイスしたんだ。どう?」

「ぐっじょぶ」

 

こんな時の返事はサムズアップだと相場は決まっている。

 

「シャルロットもよく似合ってるよ。やっぱり専用機の色に合わせたんだね」

「まぁね。僕もこの色が好きだし」

 

シャルロットはセパレートとワンピースの中間みたいな水着で、上下に分かれているそれぞれを背中で繋げるような構造になってるみたい。

水着の色は黄色に近いオレンジで、今の季節にピッタリだ。

 

「私も見習いたいよ。一応着てはいるけどさ、絶対に水着に負けてるって思うんだよね」

「「そんなことない!」」

「へ?」

 

ふ…二人してどうしたの?

 

「佳織もよく似合ってるよ!断言する!」

「そうだ!嫁ほど赤を着こなせる女はそういない!」

「そ…そう?」

 

ラウラに偉そうに言っておいてなんだけど、本当は私も少し自信が無いんだよね…。

だって、こんな派手な水着なんて、着るの生まれて初めてだし。

 

「特にこのパレオがいいアクセントになってるよね!」

「流石はシャルロットだ!目の付け所が違うな!」

「なんでも出せばいいってもんじゃないんだよ!時にはこんなアプローチも必要だって思う!」

「全くもって同感だ!」

「あ…ありがとう?」

 

ほ…褒められてるんだよね……?

 

さっきとは打って変わって、ここまでぐいぐい来るとは予想外だった…。

この二人って何気に仲いいよね。同室だから?

 

「あ!かおりんってば、こんな所にいた~」

「え?」

 

この声は本音ちゃん?

 

「ご…ごめん……ね……?」

 

反射的に声のした方を向こうとすると、私の視界に入ってきたのは……

 

「ん~?ど~したの~?」

 

さっきまでの着ぐるみ姿とは全く違う、至って普通の水着姿の本音ちゃんだった。

 

エメラルドグリーンが綺麗なビキニで、デザイン自体は至ってシンプル。

だけど、逆にそれが新鮮に見えてしまった。

 

いつもとは全く印象が違う本音ちゃんに、私は完全に目を奪われていた。

 

「………………」

「わぁ~!本音もよく似合ってるよ~!」

「ありがと~、でゅっち~」

「むぅ……本音め……流石にやるな……」

 

はっ!?私は何を!?

 

「ほ…本音ってば…待ってよ……」

「あ、かんちゃんの事をすっかり忘れてたや」

「はぁ……」

 

溜息交じりにやって来たのは簪。

彼女は水色のワンピースタイプの水着を着ていた。

ラウラが着ているのと同じように、白いフリルが特徴的だ。

 

「か…佳織さん!?」

「や。その水着、よく似合ってるよ」

「あ…ありがとうございます……」

 

顔を真っ赤に染めながら声が段々と収束していった。

恥ずかしがり屋の彼女には人前で水着を着る事が恥ずかしいのかもしれない。

さっきまでのラウラのように。

 

「佳織って……いっつもそうなの?」

「何が?」

「なんでもない!」

 

……?なんでシャルロットは急に怒り出したの?

 

(佳織が他の女の子を褒めているのを見ると、どうして胸の辺りがチクチクとするんだろう……)

 

ここは機嫌を直してもらった方がいいよね…?

 

「ねぇねぇ、かおりん」

「どうしたの?」

「あそこに海の家があるから、何か食べない?」

「え?まだお昼前だよ?」

「だいじょ~ぶ!あそこにはかき氷とかもあるから!」

「かき氷か……」

 

あれなら大してお腹にも溜まらないし、食べ過ぎなきゃ大丈夫か?

 

「偶にはいいかもしれないね。皆はどうする?」

「わ…私は佳織さんが行くなら……」

「簪はOKっと。二人は?」

「僕も行ってみたいかな?日本のお菓子には前々から興味があったし」

「ならば私も行こう。その『かき氷』とやらがいかなる菓子か知りたいしな」

「はい決定。んじゃ、行きますか」

 

次の行動が決定してところで、早速行くことに。

幸い、海の家は目と鼻の先にあるから迷う事は無い。

 

「こうして見ると、結構大きいね……」

「流石は高級旅館に隣接している浜辺にある海の家…。こんな所一つとっても高級感が溢れてる…」

 

客引きの為なら金は幾らでも使います…ってか?

そう考えると、客商売って本当に大変だ。

 

「え~っと、かき氷屋さんは……あった」

 

すぐ近くにかき氷の屋台によくある赤い字で『氷』と書いてある小さな垂れ幕があった。

きっとあそこに違いない。つーわけで、善は急げだ。

 

「すいませ~ん」

「おお!よく来た!」

 

って、うぉっ!?なんかこのかき氷屋のおじさん、あの『青い巨星』と呼ばれた『ランバ・ラル』にそっくりじゃない!?

 

「え…えっと…かき氷ください」

「了解した。味は何にするのかな?」

 

味は全部で4種類。

メロン味にイチゴ味、それから宇治金時にブルーハワイ。

 

「私は宇治金時にしようかな?」

「私はいちご~♡」

「わ…私はメロン味……」

 

やっぱ、かき氷は宇治金時だよね~♡

これこそ日本の夏って感じ!

 

「う~む……どれにするべきか……」

「初めてだから迷っちゃうね…」

「ほぅ?そこの二人はかき氷は初めてかね?」

「あ…はい。何かおすすめとかってありますか?」

「それは勿論『ブルーハワイ』だ!」

 

……なんとなく、この答えが予め予想出来てしまった自分が嫌だ。

 

「じゃあ、それにしようかな?ラウラはどうする?」

「私も同じものを注文しよう」

「承知した。暫しの間待っていてほしい」

 

そう言うとラルさん(なんとなく、こう呼んだ方がいい気がした)は手際よく氷を機械にセットして、かき氷を作り始めた。

 

「今時珍しい…。これって一昔前にあったって言われている、昔懐かしのかき氷機…」

「おぉ!よくぞ気が付いたな!このラル、いかにかき氷と言えども妥協は一切したくないのでな。昔の伝手を頼りにこれをなんとかして手に入れたのだ」

 

そこまでしてかき氷を作って売りたいのか?

あと、昔の伝手って誰だよ。どんな人物がこんな骨董品を所持してたんだ?

 

「マ・クベ殿には感謝しなくてはな。後でちゃんと礼の電話をしなくては」

 

あの人かよ!?

確かに、アイツなら色んな古い物を集めてそうだけど!

 

「よし、まずはメロン味完成だ」

「わ~い♡」

「では次……」

 

そんな風に、ラルさんは私達と話しながらも器用にかき氷を次々と作っていった。

 

「よし、これで最後だ」

「感謝する」

 

あっという間に全員分のかき氷が完成。

天然の氷を使っているのか、凄くふわふわしている。

こんなかき氷ってテレビでしか見た事ないよ…。

 

「全部で1000円だ」

「と言う事は、一個につき200円なのか」

 

随分と安いな。

最近だと、お祭りの屋台でも500円は取るぞ?

 

「や…安いんですね…」

「これは趣味の一環でやっているからな。あまり値段は気にしないのだよ」

「だが、それでは赤字になったりしないのか?」

「はっはっはっ!値段は安くても数が売れれば問題無い!事実、この浜辺にいる人間の殆どが買って行ってくれたぞ」

「マジで!?」

 

どんだけ人気なんだよ……青い巨星のかき氷。

 

「ここは私が払うよ」

「え?それは悪いよ…」

「気にしないで。ぶっちゃけ、お金を持てあましてるんだよね…」

 

私が専用機であるラファールⅡを受領してから、なんでか私の口座に驚くような大金が振り込まれるようになった。

それを千冬さんに相談したら、なんでもこのお金はデータを取ってくれている私に対するデュノア社からの給料のようなものらしい。

日本円である事に驚いたけど、それは日本政府を経由して振り込まれているから…だそうだ。

本当かどうかは知らないけど。

私にそんな大人達の事情なんて知りようがないし。

 

「はい、1000円」

「毎度あり……今、胸の谷間から出さなかったか?」

「気のせいですよ」

「う……う~む…」

 

え?さっきまで海に入っていたじゃないかって?

お金は拡張領域に入れてましたけど、何か?

 

「どこで食べようか?」

「適当な木陰で……」

 

キョロキョロと周囲を見ていると、ふと視界の端に砂浜にネットを張ってビーチバレーをしている一団を見つけた。

傍にはちょうどいい感じの木陰もある。

 

「あそこにしようか?」

「いいね~」

 

ビーチバレーでも観戦しながら食べるとしましょうかね。

溶けないうちに行かなきゃな。

 

「あ!仲森さん?」

「やっほ~。ちょっと見学いい?」

「いいよいいよ!どんどん見ていって!」

「んじゃ遠慮無く」

 

陰になってるから砂浜も熱くないし。

よっこいしょっと。

 

「久し振りのかき氷、いただきま……」

「美味し~♡」

「もう食べてる!?」

 

しかも結構減ってるし!

私が見て無い所で食べてたのね…。

 

「美味しい……♡」

「ホントだ~!これがかき氷……噂で聞いた事はあるけど、冷たくてフワフワで……」

「う…うむ……確かにこれは美味だな…。氷を細かくしただけなのに、ここまで美味しくなるとは……。東洋の神秘とはよく言ったものだ」

 

別に神秘でもなんでもないけどね。

でも、満足してくれたようでなによりだよ。

 

で、ビーチバレーの方も結構盛り上がってるみたいだ。

夏らしいと言えば夏らしいけど。

 

「ほぅ?なにやら面白そうな事をしているな?」

「そうですね~。これを食べ終わったら参加してもいいかも……って?」

 

この声は……横から?

 

「待たせたな。佳織」

 

私が見上げた先には、前に私と一夏がチョイスした黒いビキニを着た千冬さんが悠然と立っていた。

 

「………………」

 

その姿は本当の美しいの一言で、冗談抜きで見惚れてしまった自分がいた。

あ…あれ…?なんか顔が熱い気がする……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだ終わらない浜辺での話。

でも、楽しいから気にしません。


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第39話 大人の魅力と和の心

よし決めた。いつか必ず何らかの形でハマーン様を出そう。







 木陰でかき氷を食べていたら、いきなりの千冬さん登場。

私もそうだが、他の皆も驚きを隠せないようだった。

 

「どうしたの?佳織」

「ふ…ふぇ?」

 

突然シャルロットに話しかけられたから、変な声が出ちゃった。

 

「かき氷を食べているのか?」

「は…はい」

「ふむ……」

 

な…なんだろう……。

別に千冬さんと話こと自体は珍しくもなんともないのに、どうしてこんなにもドキドキするのかな…。

お互いに水着を着ているから?

 

「私にも一口くれないか?」

「え……え?」

「「「「えええぇぇぇぇええぇぇ!?」」」」

 

び…びっくりした…!

なんで皆して急に大声だ出すの?

 

「なんだ、駄目なのか?」

「そ…そんな事は無いですよ?」

「じゃあ、少し失礼するぞ」

 

ちょ……隣に座るんですか!?

 

「どうした?」

「あ……いや……」

 

座ると同時にしれっとこの人、私に肩を寄せているんだよな…。

うぅ……なんかいい匂いがするし……。

 

えっと……ここからどうすればいいのかな?

このスプーンをあげればいいの?

 

「食べさせてくれ」

「………はい?」

 

なんて言いました?この人…。

 

「だから、食べさせてほしいと言っている」

「それってつまり……俗に言う『はいあ~ん』ってヤツですか?」

「その通りだ」

 

この人はなんちゅー事を言い出すかな突然!!

ほら、他の皆も目が点になってるし!

いや、ラウラだけはなんでか目をキラキラさせてこっちを見てるけど…。

 

「わ…私もしてほしいぞ!佳織!!」

「ふふ……私の後でして貰え」

「はい!!」

 

綺麗な敬礼乙。

つーか、もうすることは確定なのね…。

 

この陽気で脳がどうにかしちゃったのか?

明らかにいつもの千冬さんとは違う気がする。

 

(私の大人の魅力で一気に小娘共から引き離してくれる!見ていろよ…お前達!)

 

……これが千冬さんの本性じゃないと信じたい今日この頃です。

 

多分、するまで離れてくれそうにないし……ここは覚悟を決めるしかないのか…!

 

「わ…分かりました」

 

スプーンでかき氷を一口梳くって千冬さんの方に向ける。

 

「あ…あ~ん…」

「あ~ん」

 

あ…食べた。

 

「………やはり、お前に食べさせてもらうと、美味いな…」

「ソーデスカー」

 

もうどうにでもなれ~!ははは~!

 

「あ…あの…佳織?僕もいいかな…?」

「な…何を?」

「その…さっき織斑先生にした……」

「あ~……」

 

シャルロットよ、お前もか。

 

「かおりん~。私も~」

「はは……はいはい」

 

この流れから察して、本音ちゃんも言うと思ってたよ。

 

「あぅ………」

「………簪もいる?」

「え……でも……」

「もうここまで来たら遠慮なんてしなくてもいいよ」

「そ…それじゃあ……お願いします……」

 

結局、私のかき氷は一口ずつ皆の胃袋に収まる事になった。

これぐらいなら気にはしないけど、私も少し皆のやつを食べたくなってきた。

 

「じゃあ、私も皆のかき氷を一口食べてもいいかな?」

「「「「も…勿論!!」」」」

 

おふ……凄い反応。

試しに言ってみただけなのに……。

 

「なっ……!」

 

で、逆に千冬さんは戦慄してるし。

 

(し…しまったぁ~!!佳織に食べさせてもらう事ばかりを考えて、私が佳織に食べさせることをすっかり忘れていた!!こんな事なら私もここの来る途中でかき氷を買ってくればよかった…!)

 

やっぱり、千冬さんもガッツリとかき氷を食べたかったのかな?

今からでも遅くないから、買ってくればいいのに。

 

「あれ?皆さん揃ってどうしたんですか?」

「真耶か」

 

山田先生もご到着ですか……って、なんじゃこりゃ!?

 

「…?どうしました?仲森さん」

 

山田先生はレモンイエローのビキニタイプの水着を着ていたが、その破壊力が半端じゃなかった。

唯でさえ普段から服越しに壮絶な破壊力を誇っていたのに、それが水着姿になっただけでこうなるのか!

もう一歩一歩歩く度に揺れまくってるし!

完全にこれは反則でしょ!!

 

「こ…これは……」

「まさに規格外……」

「嘘……でしょ…?」

「わぁ~……」

 

私も結構大きい人達を知ってはいるが、これは間違いなく過去最強の大きさだ。

山田先生って本当に日本人?実は外国の血が混じってますとかって言われても驚かないレベルだよ?

 

「あ!かき氷ですか?懐かしいなぁ~」

「これなら海の家に売ってありますよ」

「そうなんですか?買ってこようかなぁ~」

 

前屈みになると谷間が強調されて、破壊力が二倍どころか二乗になってます。

 

「真耶……貴様、喧嘩を売ってるのか…?」

「えぇぇぇっ!?別に売ってなんかいませんよ!?」

 

千冬さんが凄い形相で山田先生を睨んでるんですけど…。

さっきまでビーチバレーをしていた皆も、思わず固まってしまっているし。

 

「あ…あれがIS学園の先生の実力……!」

「織斑先生も凄いけど、山田先生はその上を行くって言うの…!?」

「じ…次元が違う…!」

 

一部の女子なんて、砂浜に手をついて落ち込んでるし。

 

「……豊胸手術っていくらするのかな……?」

 

こらそこ!それに走ったら色んな意味でおしまいだぞ!!

 

「皆さんはどうしたんですか?」

「気にしない方がいいですよ」

「そ…そうですか?」

 

理由を聞いたら、また恥ずかしがると思うし。

ここは黙って口を閉じるのが優しさだ。

 

あ、早くかき氷を食べないと溶けちゃう。

急いで口の中に入れたせいで、頭がキーンとなった。

 

「くぅぅ~…。きくぅ~……」

「でも、その痛みもある意味で夏の風物詩」

「だよね~。私も分かるよ~」

 

これぞ日本の夏!って感じだよね。

 

その後、かき氷を食べていたの他の皆も同じ様にキーンを味わっていた。

 

「い…痛い…!?」

「こ…これは一体……!」

「にゃはは~!痛いね~!」

 

……本音ちゃんはなんでも楽しめるんだな~…。

それこそがこの子の最大の強みかもしれない。

 

「ん?」

 

かき氷を食べ終わると同時にお昼になったことを知らせるサイレンが鳴った。

もうそんな時間なのか。なんかあっという間に午前が過ぎていったな。

 

「お昼になったみたいだね。食べに行く?」

「うん。やっぱりこれだけじゃお腹は膨れないしね」

「日本のリョカンの料理か……興味があるな」

「お刺身は食べれるかな~?」

「それは夕食の時じゃない?」

 

でも、お昼にお刺身ってなんかブルジョワみたいでいいよね。

もしもあったら食べるかも。

 

「私達も行くか」

「そうですね。仲森さん、私達もご一緒してもいいですか?」

「いいですよ。断る理由なんてないですし」

(やった!ナイスアシストだ!真耶!)

 

なんで千冬さんは向こうを向いて小さくガッツポーズしてるの?

 

そんな訳で、皆揃って旅館の食堂で昼食を食べる事に。

その途中で一夏と箒、そしてセシリアと合流した。

一夏はあの後、箒を探していて、その後はずっと行動を共にしていたらしい。

セシリアは鈴を別館に連れて行ってから、また浜辺に戻ってきたみたい。

私達の所に向かおうとしたところでお昼になったらしい。

 

食堂では鈴とも会ったけど、どうやらもう大丈夫みたい。

セシリアの事をすっごい目で睨み付けてたけど。

 

お昼に食べたのは奮発してお刺身定食にしたが、これがまた凄く美味しかった。

まさか、口の中で蕩けるお刺身を本当に食べられるなんて…。

あれと同じようなものをまた夜に食べられると思うと……じゅるり。

おっと、涎が……。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 気が付けばもう夜。今の時間は大体19時30分ぐらい。

私達生徒は大広間を3つも繋げた大宴会場と言う場所で豪華な夕食に舌鼓を打っていた。

 

「美味し~♡お昼に食べたお刺身も絶品だったけど、これもまた最高~♡」

「確かに。こんなにも高級な食事なんて、もう二度と食べれないかも…。よく味わって食べないとね」

 

さっきから一夏は一口一口をよく味わいながら食べている感じ。

気持ちは分かるけど、そ