東方滅紅伝〜名も無き『紅』は何を見るか (如月睦月)
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1話

暗転した視界。

 

俺は死んだ…はずなんだが。

俺の目の前にテンプレよろしく、信号待ちをしていた俺のところへトラックがドーン。

さらば現世よ、だったのに

「おーあんちゃん。お前死んだけどもう一回生きたい?」

なんだこのオッサン。いい歳いってんじゃね?40代?

「おいおい。俺はオッサンじゃねぇ。神様だぞ。敬意を払いやがれ」

いや、すらっと神様言われても…

「現実味がないって?そりゃ仕方ない。死んでんだし」

お、おう。

「まー、死んだのは俺の同僚のミスだ。これはお前に謝らなければならないことだ」

同僚?フツーはソイツが詫びをいれるんじゃ?

「あー…今そいつは『上』からのお仕置き食らって動けないんだ。だから代わりに俺がな」

つまり、とばっちりと。

「そうなるな」

お疲れ様です。

「そうだな、ってそうだそうだ。話を戻すぞ。お前、人生やり直したいか?」

そうだな。だってそっちのミスで死んだんだし。

「まー、でも普通ってのは俺としては嫌なんだよ」

要約すると?

「お前を別世界へ転生させる」

あ、お約束ですね。分かります。

「メタ発言するな。ま、お前には(俺の趣味趣向にあった)東方プロジェクトの世界に行ってもらうわ」

おい待て、オッサン。別の思惑があって俺を飛ばす気だろ。

「何のことだ。さてとりあえずお前もわかってる通り、特典をくれてやる、が……」

が?なんだよ歯切れ悪…いな……ん?な、んか、目の前が……………

「悪 が お の き くは でだ。 ぜい りな ……」

お、おい…なん………だ、こ…………れ…………………

 

俺の視界が再び暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

『俺』は起きる。目の前を見る。

目の前には

「はい…?」

今に焼け落ちていく村が視界に入る。

というか、何だこれは。まずそもそも『俺』は誰なんだ?

とりあえず立ち上がって色々記憶を探るが分からない。まず()()()()()()()()

「何なんだこれ…」

訳の分からないまま村を少し歩いていると、半壊していた家の隙間から誰かしらの声が聞こえてきた。

俺はすぐさまそこに行った。

「お、おい…大丈夫か?」

「ふふふ、坊ちゃん…無事…だったんですね……」

いたのは女性。かなり美人の人だった。

「あ、なたも運が……無いですね…」

「え?」

()()()()ここに宿を取られたその日に賊の襲撃だなんて…」

話からするとこの人はこの宿の女将さんだろう。

だが、野盗が狙った感がすごく感じているのは何故なんだろう。

「は、早く…すぐ裏にある森へ…逃げてください…」

「わ、分かりました」

俺はすぐさま森へ向かって走っていった。

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…」

俺は森の中を走って、走って、走って。

「くそ…森どんだけ広いんだ……」

走っても、全く森を抜ける雰囲気はしない。

むしろどんどん深くなっていく気がする。

その中にはおよそヒトではない気配もする。

「…怖くなってきた」

その時だった。

『へぇ、美味しそうなモノね』

真後ろから聴こえてきた妖美な声。

その声に対して俺は

 

 

 

 

 

 

素直に

 

 

 

 

 

 

冷静に

 

「ぎゃあああぁああ!!!」

悲鳴をあげたと同時に

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃあああああああ!?!?」

瞬間、女の悲鳴が森にこだました。

 

 

「おほんっ突然後ろから声をかけてごめんなさいね?」

「いや、本当なんなんだアンタ。突然」

現在正座している後ろから聞こえた声の主。結構美人だな。

「とりあえず自己紹介しとくわ。私は八雲紫。この『スキマ』の主よ」

「スキマ?なんだそれ」

「私の能力みたいなものよ。貴方どうやって私のこのスキマに入ったのかしら」

「知らん。森を走ってたらここにいた」

「……たまたまスキマを使ったタイミングで貴方が入ってきたのね。いいわ元の世界に戻してあげるから「いや待て」何かしら?」

「俺に元の世界の記憶は無い。そもそも名前も思い出せん。何もかも分からないんだ」

「…なるほどアテがないのね?」

「そういうこった、わかっていただけて何より」

「貴方はどうしたいのかしら?」

「ん?なんも考えてねぇ」

実際、村にいた理由も思い出せないし。家族がいるかどうかもまずそもそもの話、『俺』という存在も全く分からない。

「だったら私のところにこないかしら?どうせ行く宛がないのでしょう?」

「…いいのか?」

「ええ。あなたの他にあと2人いるしね。一人増えようが関係ないわ」

「そりゃ有難いが…本当にいいのか?もしかすると、アンタを殺すために来たかもよ?」

「全くいいわよ?」

「いいのかよ?」

「ええ。私を殺せるのは誰もいないからよ」

腰に手を当て俺に指さしての断言。正直、胸がその時に盛大に揺れたのはスルーする。

「そ、そりゃまぁ凄いことで」

「ふふん。そうでしょう?『コウ』」

「コウ?誰の事だ?」

俺は周りを見渡す。だが誰もいない。

「貴方の事よ。名無しさん、なんて呼べないわ、仮にも家族になろうとしてるんだから」

「ふむなるほど、それはありがとう。して名前の由来は?」

「私達の名前には『色』に関連してる名前なのよ、そして私は貴方を見て貴方の名前を閃いたのよ!」

「お、おう」

「貴方の目、真紅のような目ね。それでよ」

うむ。実に単純明快、簡潔だな。

 

「『八雲紅』、あなたの名前よ。宜しくね紅。さぁ行くわよ私たちの家に」

「はいはい」

てなわけで俺、八雲紅は紫について行き、家に向かった。

 



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八雲のモノ達。そして。

「さて、ここが私達の家よ。」

スキマなるものを歩いて数刻。俺、八雲紅とスキマの主八雲紫は、スキマを出て家が建っているとある土地に着いた。

「ここは私達、八雲だけしかいない所なのよ。要するに」

「八雲家の自宅ですね。わかりました。」

建っている家は、なんと言うか時代感があるというか。オモムキって奴があるぜぇ…。

「お帰りなさいませ、ゆか、り様……」

「あ、ただいまー藍。」

なんだ、あの美人は。しかもなんか尻尾生えてる!?…あの尻尾モフモフしてぇ!

「貴様何者だ、答えなければ…「ちょっと待ちなさい、藍。」チッ…紫様この人間は?」

……一瞬で俺の後ろに来たぞ…てか首の所、包丁あったよ?殺す気満々って奴ですか。

「今日からこの子、私の息子になった「どういう事ですか紫様!!」最後まで話を聞いてよ藍。」

アイヤー。こりゃ私死ぬやつですかね。

「この子の名前は八雲紅。人里で拾ってきたの。ちなみに名前は適当よ」

おい。さっき理由言ってたじゃねえか。あれ嘘かよ。

「…紫様?そろそろやめたほうが宜しいかと」

「いいえ。あの子は()()()よ。間違いないわ。藍、本気よ私は。どうする?」

「…今回だけですよ?全く…おい人間。」

「え?なんすか?」

「って貴様なぜ私の式を誑かしている!?」

「えっ?そうなの?いや、なんか撫でて欲しそうだったから撫でただけだぞ。」

何か女の子(?)が寄ってきたから、撫でてたら懐かれたよ。てかアンタら俺を無視して話すな。当人にも分かるようにしろ。だから俺は女の子(?)とじゃれあっているというのに。

「お兄しゃんの撫で、上手いですぅ…」

「そういえば君名前は?」

「私は八雲橙といいましゅ。よろしくでしゅ!」

なんか噛み噛みな喋り方だなぁ…。ま、いいか!

「俺は八雲紅。よろしくな、橙」

「どお?藍。早速橙と打ち解けてるわよ!キャー!いいわよぉ!」

「何をはしゃいでいるのですか、紫様。てか何故カメラを構えているのですか!?」

「いいじゃなぁい、息子の記録よっ!」

「紫様が壊れた!もうダメだァ!」

あっちはあっちで大変そうだな。お疲れさん。

「なあ橙。あの2人っていつもあんなんなの?」

「違いますよ?なんででしゅかね?」

「ふぅん。あ、あの藍って人紫さん殴ったぞいいのか?」

「ああでもしないと紫しゃまは止まらない時がありましゅから」

「へぇ…八雲家の常識として覚えておこう。じゃあ橙、さっきの続きしてやろう」

「エヘヘー」

結局、藍さんと紫さんは俺が満足するまで橙を撫で続けた後でようやく帰ってきた。

でも紫さんが逆にテカテカしてて藍さんがげっそりしてた。

何してたんだよあの2人。



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