就職先はAUOの秘書でした。 (疾走する人)
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スカウトされました。

ついつい書いてしまった。

今投稿してる作品のネタが思い浮かばなかったから気晴らしに書いてみた。


突然だが、俺は転生者だ。

 

俺の今の名前はライガ。

 

前世の名前は、忘れてしまった。

 

俺は転生するときに、よくあるテンプレ展開よろしく、神に会った。

 

何でも神は、人間の書類を整理していたときに、間違って俺のことを殺してしまったらしい。

 

そのお詫びとして、特典を付けて転生させてくれるそうだ。

 

これもテンプレ。

 

ちなみに俺は、テンプレよろしく、

「とある魔術の禁書目録」の中に出てくる、アクセラレータの能力、「一方通行」にした。

 

まあ、俺はテンプレな感じで、異世界で俺TUEEEEEEE!みたいなことはやるつもりはなかった。

 

俺の前世からの夢は働かないことでさ、せっかく異世界で第二の人生おくるんだから、働かないでダラダラ暮らそうと思ってた。

 

そんなこんなで転生させてもらって、普通の民家の子に生まれて、10才になった。

 

そしたら、親が働けって言ってくるんだ。

 

当然俺は働いたら負けだと思っているので、親が何度しつこく言ってきても無視して引きこもり続けた。

 

俺の体は、そうして引きこもっていたのと、転生の特典の影響で、真っ白になっていた。

 

当然体が真っ白になっても引きこもり続けたんだが、12才になったときに、ついに親がしびれを切らした。

 

何をしたかっていうとさ、勝手に俺の働き場所を決めつけて、そこで働けって言うんだ。

 

俺の働き場所は、布を作る所だった。

 

ニート生活をしていた俺がそんな繊細な事をできるわけが無く、俺は一緒に働いている奴の中でも一番仕事ができなかった。

 

同僚からもそういうことでイジメを受けるし、かと言って家にも帰れないし。

 

不器用すぎて布を作る仕事から外されて俺は布を売る係になった。

 

当然、ニート生活をしていた俺がまともに接客なんてできるわけがない。

 

ついに接客業の同僚からもイジメを受け始めた。

 

もう働くのが心底嫌になってさ、俺は街で自分が座っている所に布を広げて売りながら、ずっと「働きたくない…働きたくない…」と連呼し続けていた。

 

そして、もう限界になって、ある時、街中で俺は思いっきり「働きたくなーい!!!」と叫んでしまったんだ。

 

大声を出したせいで一瞬俺に視線が集まったが、すぐに散らばって行った。

 

そうして憂鬱な気分になって下を向いていたら、俺の頭の上から声がした。

 

「このご時世に働きたくない人なんて珍しいですね。面白い人だ。君、ボクの所に来ませんか?」

 

俺が頭を上げると、金髪赤眼の美少年、というか前世でやってたゲームの中に出てきていたキャラクターの小ギルがいた。

 

正直ギル様のところになど行きたくなかったが、働きたくない気持ちは変わらない。

だから、藁にもすがるような気持ちで俺は小ギルについていった。

 

しばらく歩いたあとに、俺は小ギルに王宮の中に入らされた。

 

王宮の中の小ギルの部屋であろう部屋に案内され、中に入ったら、ドアを閉められた。

 

は?どういうこと?と混乱している俺をみながら、ニコニコとしながら小ギルが言った。

 

「ボクはこの国の王子、ギルガメッシュです。よろしくお願いします。」

 

国の王子と言うことには突っ込まず、俺は聞いた。

 

「これからよろしくお願いしますとはどう意味だ…?何だか嫌な予感がするんだが…」

 

「ボクが王子だということには突っ込まないんですね…。まあいいでしょう。答えてあげましょう。」

 

そう言って、そいつ、ギルガメッシュは笑いながら俺にとっての死刑宣告を言いやがったんだ。

 

「君にはボクの秘書になってもらいます。あ、ちなみに拒否権はありませんよ?もうすでに父さんにも報告しといて、君のご両親にも話は付けてありますから。」

 

コイツ。外堀から埋め立てて来やがった。

 

思いっきり引き攣っている俺の顔を見ながら、アイツはニコッととってもイイ笑顔で言い放った。

 

「君には、今日からボクの秘書としてみっちり働いてもらいます♪」

 

これが、後に「英雄王の唯一の抑止力」と言われることになる俺と、人類最古の英雄王の出会いだった。



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修行させられました。

意外と好評でビックリした。

これからも頑張っていかなければ。


 

これまでのあらすじ

 

死ぬ

転生してウルクへ

 ↓

働きたくない!

 ↓

働かされる

 ↓

王子の秘書にスカウトされる

 ↓

働きたくない!←いまここ

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺がギルガメッシュに無理矢理秘書にさせられてから、 2日が経った 。

 

ギルガメッシュが俺に、「ちょっと修行して来てくださいよ!」と、どこか愉悦を感じられるイイ笑顔で言ってきやがった。

 

確かFate/シリーズの設定では、小ギルは人格者だ、とかいった感じのことが書いてあったが、絶対に嘘だわ。なんか笑顔から愉悦がひしひしと伝わってくるもん。

 

まあ、アイツのdisりはいいとして、俺は今、最悪な環境にいる。

 

どこかって?

 

 

ライオンたちの群れの中さ。

 

あの野郎、これも修行のためです、とか言って、俺をライオンの群れの中に突っ込みやがったんだ。

 

「ああ、そうそう、このあたりは女神の領土だから、たまに野生の女神が出現するらしいですから、気を付けてくださいね〜。」

 

野生の女神って、ポケモンかよ!

と突っ込む時間もないまま、俺はアイツにこのライオンの群れの中に突っ込まれた、という訳だ。

 

あれ?確か女神って、ものすごい危険で、天災のような存在だって俺の母さんが言ってた気がするんだけど。

 

あのヤロウ、最悪な言葉を残していきやがった。

 

どうせアイツのことだから、俺の姿を水晶玉で見て、愉悦に浸っているのだろう。

 

マジふざけんな!

 

 

 

……あ。

 

……ふざけんな!と思って思いっきり振り上げた俺の腕が、ライオンの顎を殴り上げてしまった。

 

………。

 

……優しく、してね?

 

 

 

 

 

ーーーーーギャアァァァァァァ!

 

 

 

 

 

 

結局、ライオンにリアルに齧られそうになったが、転生特典の事を思い出し、能力を使って衝撃を反射しまくっていた。

 

俺が能力を持っていることを知らないギルガメッシュが驚いている顔が目に浮かぶぜ。ザマア。

 

等と思っている間に決着はついたらしく、俺に降り注いでいたライオン達の攻撃が止まった。

 

とりあえず謝るだけでもしておくかな、と思ってライオン達の方に向き直ると、

 

 

ライオン達がこちらに向かって平伏していた。

 

 

おそらく、俺が自分たちよりも格上の存在だと気付いて、謝っているんだろう。

 

私達は貴方の配下に入ります、的な。

 

やったね。

 

部下ゲット。

 

初めての部下だから、俺はライオンをモフりながら、考えてみた。

 

 

そういえば気づかなかったけど、もしもギルガメッシュが言っていたように、ここら一帯が女神の領土だったとしたら、このライオン達は神獣な訳だ。

 

それでもって、その神獣達を俺が平伏させてしまった、ということは……。

 

 

 

もしかして俺、女神の敵?

 

 

 

そういう結論に至って俺が顔を真っ青にした瞬間、俺の前に空から何かが降ってきた。

 

なんだろうと目をこらしてみると、そこには、

 

 

怒り心頭、といった顔をした女神らしき女性が立っていた。

 

 

これ、決定ですやん。

 

俺、女神の敵ですやん。

 

いや待て、目の前の人が女神である確証などあるまい?

 

でも、女神殺したら、神殺しの称号をもらって、権能とか手に入れるのかな〜。

 

かっこいいな〜。

 

 

等と俺が現実逃避していると、目の前の女神(?)が話しかけてきた。

 

「私の名前はイシュタル。

絶対神アヌの娘にして、美を司る女神よ。」

 

「」

 

これ、マジですやん。

 

俺の、女神じゃなかったらいいな〜、という淡い願いを簡単に破壊してきやがったよ、チクショウ。

 

とりあえず黙っていたら立場が悪くなる気がしたので、何か喋って見ることにした。

 

「ど〜も、NH◯の者で〜す。お宅は集金払っていないようなので、取り立てに来ました〜。」

 

「うわ、マジ?宝石で足りる?…じゃなくて!N◯Kなんて私は知らないわよ!?」

 

あ、意外とノッてくれた。女神って、良い人なのかもしれない。

 

「それじゃあ、その女神イシュタルが、なんの御用で?」

 

「ん?私の領土で私の神獣を無理矢理従わせようとしている不届き者がいたから、天罰として殺してあげようかと思ってね〜。」

 

訂正。女神は悪人、これ絶対。

 

あ、そもそも人じゃなくて、神か。

 

まあいい、そんな事をいちいち言っていたらしびれを切らして殺されてしまう。

 

何か喋らなくては。

 

「も…申し訳ございません!

知り合いにいきなりこの群れに放り込まれまして!

この責任は、ソイツが取りますんで!」

 

さり気なくギルガメッシュに責任をなすりつけてやっておいた。やったぜ。

 

「ふぅ〜ん、そうなんだ。

でも、あなたがやった事に変わりはないから、責任はあなたとその人に取ってもらいましょうか。」

 

な、なんてこった!

 

すでに俺の受刑は確定していたというのか!

 

ええと…、ここからの自分の立場の立て直しをするには…。

 

ハッ!思い出した!そうだ!ここは、俺が前世でよく見ていたアニメのように、口説けば何とかなる!(錯乱)

 

「ああ、確かに俺は罪深い事をしてしまったのかもしれないね…。」

 

「な、何よ!急に口ぶりなんて変えちゃって!

口ぶり変えたって、許してはあげないんだからね!」

 

「俺は確かに天に殺されてもいいのかもしれないな…。」

 

「そうよ!だから、さっさと死「でも、それはそれで幸福なのかもしれないな…。」!?!??」

 

「だって、俺は君を一目見るために来たんだから。

ごめんな、子猫ちゃん。

君が怒ったかわいい顔を見てみたくて、ついついやってしまったんだ…。」

 

「!!?!??…オホン。ま、まあ、そういう事ならば、仕方ないのかも知れないわね…。」

 

ホッ、命は助かった…。

 

だが、その代償に、心に負った傷は大きい。

 

帰ったら、ギルガメッシュにこの事であと一年はイジられる気がする。

 

「それじゃあ…今日の夜、空いてる…?」

 

イシュタルが、顔を赤らめながら言った。

 

は????

 

なぜそこでそういう話になる?

 

いや、口説いたんだから、当たり前か。

 

それにしても、チョロすぎないかね?

 

まあ確かに、美人と一緒になるのは嬉しいし、大人の階段を登るのもやってみたかったが、それでもイシュタルだけはヤバイ気がする。

 

確か、コイツと一緒になった人は、散々な最期を迎えてしまったと聞いている。

 

ここは何とかやんわりと断らなければ。

 

「ごめんな、ハニー。俺はウルクの秘書をしていてな。仕事があるから、ここしばらくは無理だ。ホントにごめんな。」

 

「ふ、ふーん、そう。なら、仕方ないわね。

そういえば、私もお父様に呼ばれてるんだった。

それじゃあね〜!」

 

そう言って、天災は消えていった。

 

ふぅ〜、助かった。

 

帰ったら、あのヤロウを一発殴ってやる。

 

 

 

 

 




始まってから二話で女神と邂逅する主人公。

どうしてこうなっのだろうか。

あと、感想でもあったけど、文字数が足りない。

どうやったら増やせるんだよ。


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就職完了しました。


主人公、就職完了。

前回の修行的なモノは、一日で終わりました。


前回のあらすじ

 

小ギル「修行です!」

 ↓

主人公、ライオンの群れに突っ込まれる

 ↓

ライオンを部下にする

 ↓

イシュタル降臨

 ↓

口説く

 ↓

イシュタル、落ちる

 ↓

帰還←いまここ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺は今、ようやくウルクの王宮の前にいる。

 

女神との会話は、かなり俺の精神にストレスをもたらした。

 

だから、今の俺の表情は、社長にいきなり話しかけられて、世間話を延々と聞かされた後のサラリーマンのような表情なのだろう。

 

心なしか、ここにつくまでにすれ違ってきた町の人たちが憐れみの視線を送ってきていたような気がする。

 

そんな事を考えながら俺は王宮に顔パスで入り、ギルガメッシュの部屋のドアの前に立ち、部屋のドアを開けた。

 

「あ!お返りなさい!ボクの秘書クン!」

 

と言ってギルガメッシュが近づいて来たから、俺はニコッと微笑んでから、

 

ヤツの顔面に右ストレートを繰り出した。

 

クリティカルヒットしたので、もう一回殴ってやる、と思い、両腕で拳の雨を降らせる。

 

ギルガメッシュは余裕そうな顔で悠々と交わしているが、それでは俺も格好がつかないというもの。

 

もう本気で力を込めて、連打、連打、連打、連打、連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打。

 

あれ?ニートは何十回もパンチを連発することなんてできないんじゃないの?

 

と思った方も多いだろう。

 

確かに、一般的に、ニートは体力がない。

 

だが、それは普通のニートのみだ。

 

俺のようなニートの中のニートともなると、それは全くと言っていいほど違う。

 

俺はもはや筋肉などの力はいらないのだ。

 

なぜかって?

 

ずっと周りの評価も気にせずに引きこもりを続けられるほど強い意志を全て相手への恨みに変換する事によって、筋肉の弱さなど関係なしに行動を続けられるのさ。

 

だが、そんな無限の可能性を持っているニートでも、目の前にいる神の肉体には勝てなかった。

 

結局、ギルガメッシュに当たったのは、最初にクリティカルヒットした右ストレートのみだった。

 

いや、もしかしたら神の肉体のスペックだったら、俺の最初の右ストレートでも難なくかわせたのではないか、と思って、殴り終わったあとギルガメッシュに聞いてみたら、

「ボクも流石に君には悪いことをしてしまったと自覚はしていますからね。一発くらい殴らせるのが道理だとおもいまして。」

なんて事を言ってた。

 

あらやだ、イケメン。

 

でも騙されないぞ。

 

そもそもお前が俺をライオンの群れの中なんかに突っ込まなきゃ、こんなことにはならなかっだろうが。一発じゃ足りない気がする。

 

そう言ったら、ギルガメッシュは愉快そうな顔をして、

「おや、気づかれてしまいましたか。

残念です。君なら簡単に騙されて、この事に関する恨みはなくなるだろうと思ったのですが。」

なんてことをぬかしやがった。

 

やっぱりコイツ、腹黒い系のイケメンだわ。

 

性格がマジでイケメンじゃねぇ。

 

等と考えて俺がギルガメッシュを非難の目付きで見ていると、唐突に、ギルガメッシュが何かを思い出したように言った。

 

「そういえば、すごかったですね。

まさか君が女神イシュタルを口説いてしまうとは。」

 

コノヤロウ、覚えていやがった。

 

これは100%、黒歴史になること確定だから、どうにかして話をずらしておこうと考えていたというのに。

 

ヤバイ。

 

コイツに弱みを一つでも握られたら、どうせずる賢いコイツのことだから、絶対にこれを餌にして後々俺に無理難題を押し付けてくる。

 

そう思った瞬間に、ギルガメッシュが俺の内心を見透かしていたかのように言った。

 

「あ、そういえば、君は今日から正式にボクの秘書になる事に決まりましたから。

モチロン、断ったとしたら…。

どうなるかわかりますよね?」

 

コノヤロウ…早速脅迫してきやがった。

 

あれ?でも、コイツはウルクの王子なのに、なんで俺みたいなただの平民なんかを秘書に欲しがるんだ?

 

そう疑問に思った俺は、 とりあえずギルガメッシュに聞いてみることにした。

 

「なあ、ギルガメッシュ。」

 

「なんでしょうか?」

 

「なんでウルクの王子のお前が、ただのニートな平民の俺なんかを秘書に欲しがるんだ?」

 

「そうですね…。ぶっちゃけると、君がいろんなところで不幸なことにあって絶望した顔になったり、それでも頑張って乗り切ろうとして、それでもまた不幸なことになって絶望した顔になるのを想像すると、とても愉しみになったからですよ。」

 

コノヤロウ、ホントにぶっちゃけやがったよ。

 

もうこれ決定したわ。

 

ギルガメッシュは、大人バージョンでも、子供バージョンでも、某愉悦神父と同じくらいに性格がねじまがってやがる。

 

やべえわ。この愉悦型AUO、大人になったらどんなことになるんだろう。

 

ウルクの国の家臣たちの心労が計り知れないわ。

 

そうこう考えているうちに、なぜか俺はギルガメッシュに王宮の中で、王族や家臣たちが集まっているホールに連れこまれていた。

 

壇上に、司会者らしき人が立っている。

 

その人が喋り始めた。

 

「え〜、皆さん、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。

本日は、我らがウルクの第一王子、ギルガメッシュ様の秘書が正式に決まりましたので、ここに紹介したいと思います。

それでは、出てきて頂きましょう。

ライガ君!」

 

あれ?ライガ?オカシイな。王宮の中に俺と同姓同名の人がいたなんて。

 

しかもギルガメッシュの秘書かぁ。何という偶然!

 

 

俺が現実逃避していると、後ろからギルガメッシュが俺の肩を叩いて、振り向いた俺に、「アレ、君のことですよ!」なんて言ってきやがった。

 

 

 

図ったな。

 

 

まさかそこまで俺に嫌がらせをしたいとは。

 

しかし、この静まり返った場で俺が思いっきり反論することなどできるわけもなく、俺は渋々と壇上に上がっていった。

 

「さあ、ライガ君。挨拶をしてください。」

 

そう司会者の人に言われたので、俺は渋々口を開いた。

 

「え〜、皆さんこんにちは。俺は、この度ギルガメッシュ王子様の秘書になることになった、ライガと申します。ふつつか者ですが、どうかよろしくお願いしましゅ。」

 

かんでしまった。何人かの王族らしき人たちは笑いをこらえていて、ギルガメッシュに至っては後ろの方で爆笑してやがる。

 

「え〜、ライガ君は、ギルガメッシュ王子が街で出会った、非常に才ある子供で、此度、試験としてイシュタル神の領土に行かせたところ、無事に帰って来ており…………」

 

司会者の人の説明が続いていく中、俺が思ったのは、ただ一つであった。

 

 

 

ギルガメッシュ、後で殴る。

 

 

 

 




ようやく書き終わった。

ネタ切れがヤバイ。

誰かネタを恵んではくれないか……。


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社畜にさせられました。

主人公、社畜になる!

お気に入り100件突破。

ご愛読ありがとうございます。


前回のあらすじ

 

ギル「おかえり!」

 ↓

右ストレート

 ↓

ギルに大広間に連れて行かれる

 ↓

正式に秘書にさせられる

 ↓

働きたくない!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺がギルガメッシュに無理矢理就職させられてから一週間が経った。

 

この一週間は、マジで地獄だった…。

 

皆さんに、俺のスケジュールを教えてやろう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

朝: 7:30分起床

 

まず最初に俺の前に立ちはだかる難関がこれだ。

 

この時代は電球も無いし、ましてやゲームやアニメ等の娯楽すら存在しない。

 

娯楽といえば、最近開発されたらしいボードゲームくらいなものだ。

 

普通のニートであれば、睡眠欲に負けて、早めに寝てしまうだろう。

 

しかし、俺は普通のニートとは一線を画した最上位のニートだ。

 

俺はそんなことで早めに寝つくような事はしない。

 

だったら何をするって?

 

簡単だ。

 

アニメやゲームがが無いなら、作ってしまえばいいではないか。

 

俺は最上位のニートであるため、常人よりも遥かに高い感性と想像力(妄想力)を持つ。

 

ここまで言えば、俺が何を言いたいのかわかるだろう。

 

そう。

 

俺は、自分の脳内で、昔見たアニメを完全に再生したり、昔プレイしていたゲームの敵キャラや仲間、戦闘パターンでさえも再現して楽しめるのだ。

 

これについては、俺を転生させた神様でさえも気付かなかっただろう。

 

実は神様は、世界にはびこるダメ人間達を更生させるために、世界のニートたちを転生させるので、その実験段階で俺をこの世界に飛ばしたらしい。

 

「特典で超能力を手に入れたのですから、もうニートなどに憧れてはいけませんよ。」

 

なんてことを言っていたが、残念だったな。

 

ニートの力は無限なり。

 

 

まあ、そういうことで、俺は早めに寝つく事はしない。

 

と言うよりも、そういう生活を続けたせいで、俺の体が半分夜行性になっているのだが。

 

ちなみに、普段の俺は夜の3時に寝て、昼の12時に起きる。

 

 

そういうことをギルガメッシュに訴えて仕事を辞めさせてもらおうとしたのだが、あのクソ王子、その話を聞いたら、

 

「想像以上にくだらない生活をしていますね…。

まあ、ボクは君の絶望したような顔が見られれば満足なので、関係ないですよ。

君には、絶対に早起きしてもらいますから。」

 

なんて言いやがった。

 

俺はもう、生命の危機を感じられたね。

 

毎日規則正しい生活なんてしてしまったら、俺の魂が腐って働くなってしまうよ。

 

こらそこ。今でも働く事を嫌がってるだろ、とかもうすでにお前の心は腐ってるだろ、とか言わない。

 

しょうがないじゃないか。

 

体は常に定休日、心は常にハードワーキングが俺のモットーなんだから。

 

別に早起きを命令させられたとしても、無視して寝てればいいんじゃないの?

 

と思った人もいるだろう。

 

俺も最初の方はそう思っていたさ。

 

でも、俺は舐めてたんだ。

 

ギルガメッシュの愉悦に対する追求心を。

 

ギルガメッシュは、召使いに俺を起こす事を命令し、もし起きなかったらどんなことをしてでも起こせ、等と言いやがったのである。

 

それから毎朝、その召使いは俺を叩き起している。

 

しかも比喩ではなく、リアルに叩いて起こされているのである。

 

それのせいで毎朝無理矢理起こされて、俺が絶望したような顔をしていると、召使いは愉悦の表情を浮かべるのである。

 

召使いまで人の不幸に愉悦を感じる性格だったのだ。

 

従者は主人に似る、とは聞いたことがあるが、最悪の従者だな。

 

まあ、これで一つ目の難関は説明し終えたんだが、俺の地獄はまだまだ続く。

 

さあ、次に行こう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ギルガメッシュ起床:9:00

 

これは、俺の心にグッとくるものがあった。

 

ギルガメッシュのヤロウ、召使いに俺を朝早く叩き起こす事を命令しておきながら、自分は長い時間寝やがるんだ。

 

それだけなら、まだ少しは許せたかもしれない。

 

だが、ギルガメッシュは召使いに俺を叩き起こした後、すぐに自分が寝ている部屋に無理矢理連れ込むように命令したのである。

 

つまり、俺は眠い中を叩き起こされて、無理矢理ギルガメッシュが寝ている部屋に連れて行かれ、そこで1時間30分も、幸せそうに眠るギルガメッシュの顔を見させられるのである。

 

しかも、もう嫌だ!等と叫ぼうものなら、容赦なく召使いから木刀を打ち込まれる。

 

気分はさながら、寺で座禅をさせられる一般人である。

 

そして、起きたギルガメッシュは、1時間30分耐久をようやく終えて疲れ切っている表情をしている俺を眺めて、召使いと一緒に愉悦の笑みを浮かべるのである。

 

もうイヤだ。この世界。

 

だが、こんなものでもまだ序の口。

 

さあ、次に行こう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ギルガメッシュの朝食:9:30

 

ギルガメッシュは、起きてから大体30分で朝食を食べ始める。

 

起きてから30分くらい経つと、食欲が出てくるらしい。

 

だが、なぜか俺まで調理に参加させられるのである。

 

もともとニートで、精神力と妄想力くらいしか取り柄のない俺は、当然のごとく料理ができない。

 

だから、毎朝ギルガメッシュと同じように、人の不幸に愉悦を感じる召使いに手ほどきを受けて、料理を作るのである。

 

朝食作りは、その召使いと二人きりで行う。

 

召使いは女だから、女性と二人きりなんて、興奮しないのか!

 

と言う人がいるかもしれない。

 

考えても見給え。

 

相手は、他人の不幸に愉悦を感じるヤツだぞ?

 

手ほどきの仕方がまともな訳がない。

 

少しでも手の洗い方が雑だとバッシング。

 

卵焼きを作るときに、殻を割るのに手こずっているとバッシング。

 

目玉焼きにかけるソースの量が少しでも違うと、バッシング。

 

トーストの焼き加減が少しでも悪いと、バッシング。

 

ジャムの運び方が少しでもみっともないと、バッシング。

 

そして、朝食を完成させてギルガメッシュの前に置いたあとに、疲れ切っている俺の顔を見て、ギルガメッシュと同時に愉悦の笑みを浮かべるのである。

 

もう地獄だ。

 

辞めたい、と何度思ったことか。

 

だが、俺は辞めることができない。

 

なぜかって?

 

ギルガメッシュの根回しが完璧だからさ。

 

俺の絶望を長々と語るのもここまでにしておいて、次に行こう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ペットとみんなで触れ合いタイム:10:30

 

ギルガメッシュは、俺を散々疲れさせて愉悦を感じているものの、経営者として自覚は持っているらしく、休み時間はしっかりくれる。

 

だが、休み時間の分だけ、俺の苦労は増えるのだ。

 

ペットとの触れ合いなんて楽しいもので、動物アレルギーだったとしても、多少は癒やされるのではないだろうか?

 

とみんな思ったことだろう。

 

だが、考え直して欲しい。

 

ここは、ウルクなのだ。

 

現代日本ではないのだ。

 

だから当然、ペットでさえも悠々と俺達の想像を超えていく。

 

何がペットなのかって?

 

ほら、Fate/シリーズの中で、ギルガメッシュが獣と触れ合っている描写があっただろう?

 

その動物を思い出して見ろよ。

 

思い出せたかな?

 

そう。

 

ギルガメッシュのペット、それは…。

 

 

 

ライオンなのだ。

 

 

いや、冗談とかじゃなくて、リアルにライオンなのだ。

 

しかもどういう仕組みかは分からないが、ギルガメッシュのような、他人の不幸に愉悦を感じる人間には襲いかからず、そうでない人間には襲いかかるというまさかの特性持ち。

 

 

 

触れ合い時間は、王宮内のすべての王族と従者が広場に出てくるのだが、なぜか半分以上の人間が襲いかかられないのだ。

 

そして、残った半分以下の人間が、襲いかかられる。

 

まあ、襲いかかられると言っても多少甘噛みされたり、体をくっつけて来る程度なのだが、猫がやるならまだしも、ライオンがやるのだから、その恐怖はものすごいものなのだ。

 

ライオンが甘噛みしようと口を開くと、自分がその口に飲み込まれるところを想像してしまい、体をくっつけられると、ライオンの獲物と認定されたかと、震えが止まらない。

 

そして、人間の半分以上の愉悦体質の人々はその光景を見て、口元に薄っすらと愉悦の笑みを型づくるのである。

 

その光景には、一種の寒気を感じた。

 

もしかしたらライオンは、人間に甘えたいけども、王宮にまともな人間があまりいない事に対して生理的な恐怖を与えられているのではなかろうか。

 

 

さあ、どんどん次の受難に行こう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

王宮の住人全員での昼食:12:30

 

俺達使用人(王宮では、秘書も使用人にカウントされるらしい)は、恐怖のペット触れ合い会が終わったあと、震える体を動かしながら、昼食を作る。

 

ここが、唯一の俺の癒やしである。

 

なぜかって?

 

ここには、俺と同じように、無理矢理王宮に連れて来られ、毎日王族の愉悦に使われる使用人がたくさんいるのだ。

 

同類同士は仲良くなれるらしく、俺と彼らはすぐに仲良くなった。

 

各々が己の主人の愚痴を言ったり、自分がどうして王宮に連れて来られたのか、など、俺達使用人は、ここで日々のストレスをぶちまける。

 

それによって若干軽くなった気持ちで、残り数時間も頑張ろう、と決意を抱くのである。

 

 

次の受難に行こう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

書類仕事:14:00

 

王族の昼食は長く、不規則ではあるがそれに従って使用人の休憩時間も長くなる。

 

そして休憩時間が終わったあとに、俺の最大の難関が立ちはだかるのだ。

 

そう。

 

書類仕事である。

 

 

いやいや、ライオンと触れ合うほうが辛いだろ。

 

と思ったことだろう。

 

だが、それは一般人の話だ。

 

俺は誇りを持った、れっきとしたニートである。

 

故に、ライオンと触れ合うことも苦痛ではあるが、それよりも働く、という行為自体が、俺の精神に傷を作り、傷口に毒を塗っていく。

 

書類仕事?

 

そんなの、最も会社員らしい仕事ではないか。

 

そんな事をしたら、俺のピュアなハートが、汚れて真っ黒になってしまう。

 

そうギルガメッシュに反論したかったけれど、ギルガメッシュは俺が苦しんでいるその表情を愉しみそうだったから、やめておいた。

 

あ、ちなみに、粘土板に文字を掘るようなことはしない。

 

なぜかこの世界では、王宮にも民間にも紙が広まっているのだ。

 

神話だとか、伝説的なものだけ粘土板に書き写して、後世に残るようにするらしい。

 

なるほど。古代には粘土板しか無かったと言うのは俺の勘違いで、実際に紙はあったけど、現代まで残っていなかっただけだったのか。

 

歴史家たちが聞いたなら、白目を剥きそうな内容である。

 

 

まあ、そんなこんなで最大の難関である書類仕事を乗り越えた俺に、神はさらなる苦痛を課す。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

夕食:18:00

 

書類仕事にも、意外と時間はかかる。

 

そのせいで、夕食は少し時間が経った後に始まる。

 

この夕食も、王宮内の王族全てが食べるため、使用人は、また一緒に料理を作る事になる。

 

別に他の使用人と駄弁れるからよくね?

 

と勘違いしてしまうこともあるだろう。

 

俺も、最初はそうだった。

 

だが、夕食は一味違う。

 

俺達使用人が料理をするのを、愉悦体質の召使い達が見張っているのである。

 

そのせいで、他の使用人と喋ろうとしたらバッシング。

 

朝食と同じように、動作の一つ一つにバッシング。

 

精神にダメージを食らって他の人に話しかけたくても話しかけられないという地獄を体験し、絶望した俺達使用人を見て、召使い達は一斉に愉悦の笑みを浮かべるのである。

 

気分はさながら、監獄の獄卒と囚人。

 

もう嫌だ。この職場。

 

お家に帰りたい。

 

 

 

まあ、これで今日の俺の仕事のスケジュールは終わりである。

 

俺達ウルクの王宮の使用人な苦労がわかって頂けただろうか。

 

ホント辛い。

 

俺のメンタルが崩壊しそうでコワイ。

 

いつの日か俺達がこの地獄から解放されることを祈るばかりである。




意外なところで主人公が転生させられた理由が判明。

スケジュールみたいなのを書いてみたら、意外と筆が進んだ。

文字数も結構いったんじゃないかな?


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エレシュキガルに会いました。

お気に入り200件突破。

ルーキー日間に載っているのをみて、驚いてしまった。

ご愛読ありがとうございます。


前回のあらすじ

 

俺のスケジュールを発表するぜ!

 ↓

7:30 叩き起こされる

 ↓

9:00 ギル起床

9:30 朝食

 ↓

10:30 ライオンと触れ合い

 ↓

12:30 昼食

 ↓

14:00 書類仕事

 ↓

18:00 夕食

 ↓

もう嫌だ!

 ↓

働きたくない!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

さて、今日の一日も、俺の絶望と、ギルガメッシュ達の愉悦の笑みで始まった。

 

だが、叩き起こされて、ギルガメッシュの幸せそうな寝顔を見させられて、朝食づくりでバッシングされまくったあとの俺のスケジュールは、いつものものとは少し違った。

 

いや、通常のスケジュールなんかとは天と地ほども離れた素晴らしい一日だった。

 

ニートの俺が満足するスケジュールなんてそうそう無いが、今日の俺は、スケジュール通りに動いたわけではない。

 

俺が朝食を作り終わったあと、俺は少しだけ街の様子を見に行こうかと思って、王宮を出て、使用人仲間と街の方に歩いていった。

 

…瞬間に、俺の足元にいきなりギャグ漫画のような落とし穴が開いて、俺はその中に落ちていった。

 

使用人仲間の、ポカンとした顔が印象的だった。

 

落とし穴から下に放り出されて、俺が見たものは、おどろおどろしい感じで人の屍らしきモノがポツポツと落ちているところだった。

 

俺の頭の中に、ギルガメッシュが前に俺に言った言葉が浮かび上がった。

 

『ウルクの近くにはたまに落とし穴が空きましてね。

その落とし穴をの下には、冥界があるそうです。

もしも君が落とし穴に呑み込まれたら…。

そのときは、盛大に葬儀をおこなってあげましょう。』

 

イヤ、そこは助けてくれよ!

 

とツッコミを入れたのは、いい思い出だ。

 

あれ?ということは、俺ってもしかして、冥界に来てるん?

 

なんでや。

 

なんでこんなに神様は俺に試練をよこすんや。

 

あ、そういえば神様が俺を転生させた理由って、働いてほしいからだった。

 

いくら働いて欲しいからって、流石にこれはハードワークすぎやしませんかね?

 

俺が自分の運命に嘆きながらも周りを見渡すと、そこには大きな宮殿らしきものがあった。

 

しかも、なぜか日本建築。

 

寝殿造りみたいな感じの。

 

そして、その少し向こうには江戸城の魔界バージョンらしきものが建っていた。

 

あ、魔界じゃなくて冥界バージョンか。

 

まあいいや。

 

とりあえず、ここにいても始まらないので、あの城の中に入ってみるとしよう。

 

そう思って、俺はまず、日本建築のお屋敷の門を叩いた。

 

 

門が開いた。

 

 

骸骨がたくさん、そこにはいた。

 

 

 

「ヒィヤァァァァァァァ!」

 

何故骸骨が動くのかということを疑問に思う暇も無く、俺は、ウサイン・ボルトでも追いつけないんじゃないか、と言うくらいに走った。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■!!」

 

後ろから骸骨が何か叫んでいるが、そんな事を気にする余裕などなかったため、俺は城の方に走った。

 

幸いにも後ろから追いかけてきてはおらず、城の跳ね橋も下がっていたので、俺は城の中には入り込んだ。

 

 

そしたら、そこには大きめのオッサンがいた。

 

なんだか礼儀正しそうで、話を聞いてくれるかも知れないと思ったので、俺はその人に話しかけた。

 

「あの〜、ここは冥界ですよね?何とかして地上に帰りたいんですが…どうしたらいいですかね?」

 

「ほう、お客人。あなたはたまたま開いた落とし穴に落ちて冥界に来たものであったか。

ならばまず最初に、名乗らせてもらおう。

私は冥界の首相、ナムタルである。」

 

いきなりビッグネームに遭遇してしてしまった。

 

ナムタルといえば、ウルクでは有名な疫病神。

 

どうして俺は、まともなやつに会えないんだろうなぁ…。

 

俺が死んだ目をしていると、ナムタルさんは訝しむように俺を見ながら言った。

 

「そなたが地上に帰ることを望むのならば、冥界の主、女神エレシュキガル様に会って頼むがいい。あのお方ならば、そなたを地上に戻すことができる。」

 

訂正。ナムタルさんは、まともな良い人だった。

 

それにしても、女神か。

 

俺、女神との遭遇率が異様に高くないかね?

 

ありがとうございますとナムタルさんに深く頭を下げ、俺はナムタルさんの横を通って城の奥に進んでいった。

 

しばらくしてある事に気がついたため、俺はもとの場所に戻ってきた。

 

未だにその場にたっているナムタルさんが、

 

「どうしたら帰れるかはもう伝えたはずですが。

何か御用でしたかな?」

 

と聞いてきたので、俺は答えた。

 

「あの、大変申し訳ないんですが、そのエレシュキガルさんがどこにいるか教えてくれませんかね?」

 

ナムタルさんは呆れたような顔をしてから、

「この城の一番上の階で引きこも…いや、過ごしておられます。」

と言った。

 

あれ?今、ナムタルさん、引きこもっているって言いかけなかった?

 

そのエレシュキガルとか言う人は、俺と同類かもしれない。

 

冥界にも同類がいるというのは、嬉しいものだね。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

城の最上階までようやく登り終えたあと、俺は大きな襖の前に立っていた。

 

深呼吸をして緊張を抑え、ノックをする。

 

 

コンコン。

 

 

返事はない。

 

 

コンコンコン。

 

 

返事はない。

 

 

 

コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン「あ、あの…その…や…、辞めてもらえないですか…?」

 

金髪の美少女が出てきた。

 

この子がエレシュキガルだろうか。

 

 

「君がエレシュキガルさんかい?」

 

「は…はい…。わ、私がエレシュキガルですけど…。

あの…。なんの御用でしょうか…。」

 

なんと。

 

この、半分コミュ症な感じがする美少女が、女神エレシュキガルだったらしい。

 

イシュタルとは真逆じゃねーか。

 

等と俺が考えていたら、エレシュキガルが声をかけてきた。

 

「あ、あのう…。立ち話もなんですから…、部屋に入ったらどうでしょうか…。」

 

俺はお言葉に甘えて部屋に入り込み、俺の事情を話した。

 

「地上に送り届ける事はいいんですけど…。あの…、その…、少しだけ…、その…、おしゃべりしていきませんかね…。」

 

エレシュキガルは、顔を赤くしながらそう言った。

 

何この子。かわゆい。

 

モチロンOKさ!カワイイ子と喋るのなら大歓迎!

と俺が言うと、エレシュキガルは

「か…、かわいい…。そ、その…。ありがとうございます…。」

と言って頭を下げてきた。

 

どことなく小動物感が漂っている。

 

マジでかわいいんだけど。

 

まあ、そんなこんなで、その後俺は、エレシュキガルといろんなことを話した。

 

働きたくないこと、ギルガメッシュに雇われたこと、働きたくないこと、イシュタルと出会ってしまったこと、働きたくないこと…。

 

イシュタルの話題が出たときにかすかにエレシュキガルの顔が歪んだのを、俺は見た。

 

エレシュキガルとイシュタルは姉妹だと聞いたことがある。

 

姉妹仲は悪いのかも知れない。

 

最後になって、エレシュキガルが俺に話しかけてきた。

 

「そ…、その…、これからも…、こうして時々、話しに来てくれませんか…?」

 

「えっ?」

 

「あ、いや、その…、嫌ならいいんです…。だけど、その…、できれば来てくれると嬉しいな…、と思ってしまって…。」

 

「うん、い〜よ〜。好きなときに落とし穴を開いて、俺を落としてくれて構わないよ。」

 

「えっ、私が好きなときに来てもらっていいんですか…?」

 

「おう、OKOK。久しぶりに見たニート仲間だからな!好きなときに呼んでくれ!」

 

そう俺が言ったときのエレシュキガルの顔は、とても綺麗だった。

 

イシュタルにフラグを建てたくはないけど、この子になら普通にフラグを建てたいかも知れない。 

 

ハッ。いかんいかん。

 

ニートは恋愛などしないのだ(偏見)。

 

最後にそんな会話をしてから、俺は地上に送り出された。

 

俺が出てきたのは、王宮の広場だった。

 

そこでは、なぜか俺の顔が書かれた紙が飾られていて、その周りにはたくさんの白い花が…。

 

というか、まんま葬式だった。

 

アレ?

 

なんで葬式?

 

 

 

 

 

…あ。そういえばおれ、落とし穴に落ちたから、死んだと勘違いされてるのか?

 

 

 

あ。ギルガメッシュが、俺に気がついた。

 

ビックリした顔をしている。

 

 

ここぞとばかりに俺は、ギルガメッシュに見えるように愉悦の笑みを浮かべてやった。

 

ギルガメッシュが俺に気づくまで、悲しい表情をしていたのが意外だった。

 

後で聞いてみたら、

「ああ、あのときはいいオモチャが無くなってしまったなぁ、と思うとかなしくて…。」

なんて返された。そんなことだろうと思ったよ、ちくしょうめ。

 

ちなみに、俺が見つかったあと、王宮内は大騒ぎになり、なぜか俺はみんなに不死身の人間だと思われるようになった。

 

なんでさ。

 

 

俺が不死身の人間だと言われて困っている俺を見て、ギルガメッシュが浮かべた嬉しそうな愉悦の笑みは、なんだかムカついた。

 

それにしても、エレシュキガル可愛かったな。

 

それはそれとして、

 

働きたくない!

 

 




エレシュキガルを登場させました。

主人公に口説かれたイシュタルと、主人公に仲間認定されたエレキシュガルで修羅場に…。(なりません。)

イシュタルは、ターゲットにしている男がたくさんいて、その中の一人が主人公ですから。


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勝手に護国の宰相にされました。

前回の話の続きみたいな感じのお話。

感想で、エレシュキガルの性格が違うと言われたが、二次創作とはそういうものだと開き直った。

ほら。

たまに、おしとやかなイシュタル書いてる人とかいるじゃないか。


前回のあらすじ

 

街に行こう

 ↓

落とし穴に落ちる

 ↓

冥界へ

 ↓

エレシュキガルと仲良くなる

 ↓

地上に帰る

 ↓

なんか俺の葬式やっとる

 ↓

見つかる

 ↓

大騒ぎ

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

勘違いで行われた俺の葬式中に俺が見つかって大騒ぎになったあと、俺はなぜかウルクの人たちに不死身の英雄と見られるようになった。

 

なんでそうなるのかわからなかったからギルガメッシュに聞いてみたら、

「冥界に落ちた後に、地上まで戻ってくる人間なんて本来ありえないんですからね?

おそらく、君の能力が無意識に働いたため、君は生き残ることができたのでしょう。」

 

あれ?なんでギルガメッシュが能力の事を知ってるの?

 

と思った人の為に、説明しておこう。

 

この前、俺がイシュタルにあってから王宮に帰り、ギルガメッシュを殴った後に強制的に就職させられた後に、俺はギルガメッシュに、俺の能力の事について根掘り葉掘り聞かれたのである。

 

なんでもギルガメッシュは、俺をライオンの群れの中に突っ込んだ後、その場に監視カメラもどきを設置し、俺の苦悩を全て笑いながら見ていたのだそうな。

 

俺がライオンの群れに突っ込まれた後に俺がしたことの中で、唯一笑えなかったのが、俺がライオンが噛み付いてくきた衝撃を、一方通行を使って反射していた時らしい。

 

ギルガメッシュによれば、一方通行のような魔術は存在せず、興味が出たらしい。

 

情報の開示を拒否したら、

「イシュタルを口説いたこと、王城のみんなに教えちゃおっかな?」

と、愉悦を滲ませたような笑みで迫られ、渋々と能力の詳細を教えることになったのだ。

 

俺が自分の能力について話している時、ギルガメッシュは研究者の顔をして、「ふむふむ…」だの、「なんと…。」だの感心したような言葉を口にし、最後には

「これまた解剖のしがいがある素体ですね。」

なんて言いやがった。

 

実際にギルガメッシュはいつも愉悦の笑みを浮かべているだけではなく、しっかり勉強や魔術の工房を王城の地下に持っているのだから、シャレにならない。

 

「解剖のしがいがある素体」等と言われたときには、ホルマリン漬けにされた自分の頭部が急に頭の中に浮かんできて、本気で背筋の凍る思いがした。

 

魔術関連でギルガメッシュに目をつけられたら、人生が終わる。

 

ここ最近で、俺が心に刻んだ教訓だ。

 

まあ、俺の能力関係の話は、今はいいんだ。

 

今現在大切なのは、なぜか俺が護国の宰相、等と呼ばれてしまっていることである。

 

なんでも冥界には人の魂そのものを死に至らしめてしまうほどの猛毒の空気がそこらに漂っており、冥界に入った人は、必ず死ぬんだそうな。

 

おそらく、ギルガメッシュが言っていた、能力が働いたお陰で死なずに済んだ、というのは、俺が能力で無意識に冥界の空気に混じっている毒のみを反射していたからなのだろう。

 

わ〜お。

 

一方通行ってスゴーイ。

 

原作の一方通行には、こんな能力は付与されていなかったのだろう。

 

なんでこんなにハイスペックになったのだろうか。

 

不思議である。

 

だが、ウルクの人々は、そんな事を知っている訳がない。

 

彼らにとっては、俺は冥界の空気の毒で殺されかけても、それに抗い続けてついに打ち勝った、無敵の人間に見られているのだろう。

 

まあ、一方通行がある時点で、ほぼ無敵だから、あながち間違ってはいないんだけども。

 

それでもって、俺はギルガメッシュの秘書である。

 

だから、将来的には宰相の地位を約束されているようなものなのだろう。

 

個人的には、

「宰相になる、だと…?

だが断る!」

と言ってやりたいが、俺はニートだけども周囲の人間はニートではなく、ニートという概念すら存在しない。

 

だから、働きたくない、宰相なんてメンドクサイ、という俺の意見を理解してくれる者は、ほとんどいない。

 

エレシュキガルなら、

「た…確かに、働くなんて、ちょっと面倒くさいかも…です…。」

なんて言ってくれると思うが、王宮の人たちはそんな事は言わない。

 

大体の人が、

「やったじゃないか!宰相になれるなんて!」

とか、

「羨ましいなぁ…。俺も宰相になりたかったよ…。」

なんて事を言うだけである。

 

ニートというものにも、デメリットはつきものなのだ。

 

まあ、そんな理由で、俺は「護国の宰相」なんていう恥ずかしい名前で呼ばれることになったのである。

 

俺が「護国の宰相」という名前に恥ずかしくなって悶えていたら、ギルガメッシュが愉悦の笑みを浮かべてこちらを見てきた。

 

 

まさか「護国の宰相」なんていう名前をつけたのは、お前じゃないよな?

 

 

そんなこんなで、俺は今式典会場だ。

 

式典の名前は、「死に戻りを果たした宰相殿の復活祭」である。

 

死に戻りとかいう言い方はやめてほしい。

 

どこぞの魔女の寵愛を受けている人に重なって聞こえるから。

 

式典が始まった。

 

「え〜、死に戻りを果たされた我らが護国の宰相、ライガ様のご復活を祝って!

今日は王宮の食料庫を開け放ちます!

ご存分に食べていってください!」

 

もう式典とかじゃなくて、ただの宴会になりかけてるじゃねーか。

 

何やってんだよ。

 

等と考えていたら、みんなが見てる前で、俺の足元に漆黒の穴が空いた。

 

よりにもよってこんなタイミングでか〜!?

 

と思いながら、俺は穴に落ちていった。

 

遠くの方で、

「お、おい!また宰相様が落ちていっちまうぞ!」

「彼、不死身なんでおそらく大丈夫でしょう。」

「それもそうだな!気にしないで飲むか!」

等と聞こえてくる。

 

いつの間にか、誰も俺を心配しなくなってた事にビックリだよ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あ、あのぅ…今お呼びして、大丈夫だったでしょうか…?」

 

エレシュキガルが、おずおずと聞いてくる。

 

「おう!大丈夫だぜ!

さて、エレシュキガル、今日はどんなことをする?」

 

俺の一日は、まだまだ始まったばかりだ。

 

 




なんだかもう、ヒロインエレシュキガルでいいんじゃないかな?

ヒロインエレシュキガルにすべきか、エルキドゥにすべきか、はたまたヒロインなしにするのか迷うが

もうなんとでも成れって気がして来た。

あと、一方通行の能力がハイスペックになってる理由は、主人公が最上位のニートで、その膨大な想像力(妄想力)が無意識に使われている、という設定で。

設定考えるのも意外と難しいのだよ…。


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そうだ。冥界に住もう。

お気に入り400件突破。

感想の方からたくさんの意見をもらって、ヒロインはエレシュキガルに決定しました。

ちなみに、ギルのヒロインはエルキドゥです。

エレシュキガルが人気で驚いた。

やっぱ、引きこもり属性でコミュ症の美少女っていうのは、結構ストレートにくるものなのかね。


前回のあらすじ

 

俺の葬式が取りやめになる

 ↓

「護国の宰相」とかいう恥ずかしい名前で呼ばれるようになる。

 ↓

なぜか、俺の復活を祝う式典が開かれる。

 ↓

式典が、宴会に変わる。

 ↓

エレシュキガルに冥界に呼ばれる。

 ↓

やっぱかわゆい。

 ↓

働きたくない!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

俺がギルガメッシュに無理矢理秘書にされたり、なぜか「護国の宰相」なんて恥ずかしい名前で呼ばれるようになったりと色々あったが、俺が王宮に来てからすでに二年が経った。

 

俺がスカウトされてから半年後に、ギルガメッシュはウルクの王として即位した。

 

そのときはもう大変だったよ。

 

ギルガメッシュは、あの性格でも、半神半人だから見た目だけはいいし、俺も「護国の宰相」とかいって有名になっていたから、より良い治世を期待して、毎日意見書だのファンレターだのがたくさん送られてきた。

 

ギルガメッシュは、俺にはともかく民には優しい王でありたいらしく、毎日徹夜をして目の下に隈を作りながらも、しっかり意見書に目を通していたようだった。

 

かく言う俺も、毎日意見書を読むために休み時間を費やしていたのだが。

 

あ、ちなみに俺は、ギルガメッシュが即位する儀式の時に、ギルガメッシュに正式な宰相として任命されたため、

「あ、やっぱりチェンジで。」

等と言えるはずもなく、場の流れに流されて宰相になってしまった。

 

宰相になった後の俺の仕事は、それはもう大変だったよ。

 

ギルガメッシュもそれなりに書類仕事をしているらしいが、俺の比ではなかった。

 

俺は、ギルガメッシュの何倍もの量の書類を毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日…。

 

ハッ!

 

いかんいかん。危うくおぞましい記憶に侵食されるところだった。

 

ちなみに俺が書類仕事をこなすということは、ギルガメッシュが公約的なものの内の一つにしており、民は

「あの護国の宰相様が情報を取り扱うのならば、この国はもう安泰だな!」

等と口をそろえて言っているが、俺の気持ちも考えてほしい。

 

俺の本職はニートなのだ。

 

誇り高きニートなのだ。

 

最上位のニートなのだ。

 

こらそこ。

 

ニートは職についてないからニートなんだろ、とか言わない。

 

ニートは立派な職業です。

 

まあ、ギルガメッシュが民に大々的に発表して、民も喜んでいるんだから、断ったら絶対に厄介なことになるな。

 

と思いながら死んだ目で仕事頑張るぞ〜、と言っている俺を、ギルガメッシュが珍しく哀れなものを見るような目つきで見ていたような気がする。

 

先に言っておくが、ニートは決して哀れなものではない。

 

ニートとは、太陽の光を浴びずにも生き長らえることが可能であり、なおかつ一晩飯抜きでも生きていけるほどの超高等人種なのだ。

 

ちなみに、ギルガメッシュの仕事は、町並みの構想やら法律の構想やらといったものである。

 

羨ましい。

 

そういう仕事は、想像力がものを言う。

 

だから、想像力(妄想力)が高い俺にはピッタリの仕事なのだ。

 

俺の頭は常にハードワーキングだから、そういう仕事なら疲れないし、楽しそうだったのに。

 

「なんでギルガメッシュが楽しそうな仕事をやってるのに、俺は毎日地獄のような書類仕事に追い回されなければいけないんだよー!」

 

と中庭で叫んでいた俺を、ギルガメッシュが疲れた顔で、でも愉しそうに微笑んでいたのはいい思い出だ。

 

 

まあ、俺も一応は宰相なので、ギルガメッシュにいろんなアイデアを与えた。

 

例えば、

 

「憲法を作りたいのですが、どうしたらいいでしょう?」

 

と聞いてきたギルガメッシュにうろ覚えの日本国憲法を教えてやったり、

 

「町並みが悩みなんですよ。キレイで、なおかつ実用的な町並みとかのアイデアありますかね?」

 

と聞かれた時には平安京みたいな町並みを提唱したり、

 

「この王冠は純金製だと聞いたのですが、この王冠に銀が混じっている、という噂を聞いたことがあるんですが、どうやったら確かめられますかね?」

 

なんて質問をされたときには、アルキメデスみたいなことをやって見せたり。

 

 

俺の現代知識は大変役に立ったらしく、俺は一層高い権限を与えられていって、民も俺の事を神の生まれ変わりだと言って拝み倒す始末。

 

やめてください。

 

俺は、ニートに憧れていたただの学生の生まれ変わりなんですけど。

 

とにかく、俺の胃にかかるストレスがマッハを超えてきた。

 

ここ最近もたまにエレシュキガルは俺を冥界に呼んでくれて、彼女のオドオドとした態度と、それでいてどこか思いやりを感じる優しさのみが、今までの俺の癒やしだ。

 

でも、それでも疲れが完全に抜けたわけではなく、簡単に言うとヤバイ状態。

 

それが、現在の俺。

 

かなり体と精神が参まいってきているらしく、最近の俺は、顔色が悪すぎて死人と勘違いされたほどだ。

 

勘違いした奴は、

「まあ、あの方は一度ならず何度も冥界に行ってらっしゃるから、死人に見えたのも当然か。」

等と勘違いしていたが、その言葉で、俺は現在俺がどれくらいひどい状態なのかを自覚してしまった。

 

そうして俺は、どうすべきか考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて。

 

ようやく結論に至った。

 

「そうだ。京都に行こう。」

 

「京都って何処ですか。」

 

真顔でギルガメッシュが質問してきたから、俺はギルガメッシュに今の自分の状態を詳しく伝えた。

 

ギルガメッシュは珍しくすまなげな顔になって、俺に聞いてきた。

 

「それではライガは、休息を取りたい、と言いたいのですね?」

 

「ああ、そのとおりだ。」

 

俺が答えると、周りの大臣たちが反論して来た。

 

「ライガ殿がいなくなられたら、この国の力は大きく落ちてしまいますぞ!」

 

「そうじゃそうじゃ!」

 

だが、ギルガメッシュの鶴の一声で、彼らは静まった。

 

「ではみなさんは、このままライガを無理矢理ここに置いておいて、ライガがこの国に嫌気がさしてこの国を抜けることは考えておられないのですか?」

 

そう語るギルガメッシュの顔はいつになく真剣で、俺に対する思いやりが少しだけ滲み出ているような気がした。

 

「ですが、ライガ様を何処で休ませるとおっしゃるのです!我が国には、そんな場所は存在しないはずでありますが!」

 

「ッ…。それは…。」

 

答えに詰まったギルガメッシュに、俺は言った。

 

「俺が行く場所ならあるぞ?」

 

「なんですと!」

 

「まさか、女にでもふけられるのではあるまいな!」

 

老人たちが騒ぎ立てるが、俺はあえて言った。

 

「おう。女のところに世話になるつもりだ。」

 

「なんと!国政を女で揺らがすおつもりか!」

 

「そのようなものは、宰相等と名乗る価値なし!」

 

先に言っておくが、老人達の言葉が、家臣の総意ではない。

 

俺の部下たちは、日頃から俺がブラック企業な従業員以上に働いているのを知っているし、他の家臣たちも俺が休むのには賛成してくれたりする。

 

だからこそ、彼らの期待に報いる為に、俺は言わねばなるまい。

 

彼女に受け入れてもらえるかはわからんけど。

 

これで拒否られたら、俺死んじゃうわ。

 

恥ずかしさと悲しさで死んじゃうわ。

 

まあいい。

 

どうにでもなれ。

 

とある伝説的なニートが残した言葉(残してません)を胸に、俺は言い切った。

 

「おう。女だぞ?俺、冥界の女神のエレシュキガルに養ってもらうわ。」

 

ごめんよ、エレシュキガル。

 

養ってもらうとか、もろクズの発想じゃねーか。

 

だが、周りは養うと言う言葉よりも、エレシュキガルの名前に対して驚いているようだ。

 

あのギルガメッシュでさえも、目を開いて驚いている。

 

「な…、なら、仕方ないでしょう。

賢い彼のことです。おそらくとっくに話をつけている事でしょう。

もしここで逆らえば、それは冥界の女神に喧嘩を売ったことになってしまいますから、ここは一旦諦めましょう。」

 

俺が休息を取ることに反対していた奴のうちの一人が言う。

 

その声に釣られて、みんなが「そうだな…。」「なら仕方ないか…。」なんて事を言っている。

 

ここでもし、

「まあ、別に約束を取り付けたわけでもないから、強制力なんてないんですよね☆」

等と言おうものなら、この場の全員にボコボコにされてからもっと激しい書類仕事が待っている気がする。

 

ボロを出さないうちに帰ろうとして、俺に現在家がないことに気づく。

 

仕方ないので、エレシュキガルが気づいてくれることを祈って、叫ぶ。

 

「おーい、エレシュキガルー!冥界に引っ越したいから、連れてってくれー!」

 

シーンと周りが静まる。

 

十秒が経つ。

 

なにも起こらない。

 

しまった。ボロを出さないようにした事が、逆にボロを出している気がする。

 

二十秒経って、周囲の目が胡散臭いものを見るような目つきに変わり始めた瞬間に、俺の足元に漆黒の穴が空いた。

 

周りは驚いている。

 

まさか、ホントに冥界と地上を行き来できるとは思わなかったんだろう。

 

「ギルガメッシュー!あと三年経ったら戻ってきてやるよー!」

 

と叫んでから、俺は穴に落ちていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

穴から出たところには、顔をほんのり赤くした俺の癒やしが待っていた。

 

エレシュキガルは、俺の顔を見ると、顔をもっと赤くしながら頭を下げた。

 

「そ…、その…、これから三年間ですが…、その…、不束か者ですか…、よ、よろしくお願いします…。」

 

「おう!よろしく、エレシュキガル!」

 

ナムタルのオッサンが、微笑ましそうなものを見る目でエレシュキガルを見ていた。

 

わかるよ。その気持ち。

 

エレシュキガルは、なんだか心を暖かくする魅力があるもんな。

 

 

そんなこんなで、俺の冥界生活が始まる!

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

…若干、というかほとんどヒモだが、そこには突っ込まない。いいね?

 

 




一日に二回投稿。

結構時間を食ってしまった。

まあいいか。(適当)


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同棲生活始めました。


お気に入り500件突破。

ご愛読に感謝。

これから数話は、エレシュキガルとの日常にします。


前回のあらすじ

 

ギル、王になる

 ↓

宰相にされる

 ↓

仕事が増える

 ↓

俺の胃に穴が空く

 ↓

休暇をもらう

 ↓

エレシュキガルに養ってもらおう!

 ↓

エレシュキガルかわゆい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺がエレシュキガルに養ってもらい始めてから、すでに二週間が経った。

 

いや〜、楽しい時間っていうのは、早く流れるもんだね。

 

俺が冥界に住むことをナムタルのオッサンに話したら驚いていて、理由を聞かれたからありのままに

「エレシュキガルに養ってもらうことになったわ。」

と言ったら、ゴミを見るような目で見られた。

 

「おぬし…。」という、心底憐れむような声音の言葉付き。

 

まあ、俺も自分でクズだと思ってますから。

 

でも、俺の精神と体がすでにボロボロなんだ。仕方ないじゃないか。(言い訳)

 

あと、冥界の裁判官だという七人と会った。

 

みんな、中年のオバサンとか、オッサンだった。

 

その人たちによると、エレシュキガルは彼らが育てたらしい。

 

あの子をよろしくお願いします、と頭を下げる姿は、子供を愛する親そのものだった。

 

羨ましいな。俺の親は、俺に対して酷いことしかしてこなかったからな。

 

と言うと、裁判官たちは、どんなことをしてきたのか、恐る恐る聞いてきた。

 

俺は働きたくないのにもかかわらず、無理矢理働かせてきたんだ、と答えると、何人かはゴミを見るような目で見てきて、残りはなぜか同類だ、と喜んでいた。

 

こんなところにも同類(ニート)がいた。

 

まさか冥界にまで存在するとは。

 

やはりニートは偉大なり。

 

新たにできたニート仲間達は、俺にとってとても新鮮な事で、アニメの話とか、ゲームの話とかをした。

 

あれ?なんで冥界にゲームやアニメがあるんだろう?

 

と疑問に思って聞いてみたら、冥界では、ちょうど俺が生きていたときの物を取り寄せることができるらしい。

 

何それハイテク。

 

え?嘘だろ?

 

未来に干渉できるのなんて、某国民的青ダヌキか、座くらいなものだと思ってたんだが。

 

冥界がハイテクだったことに感心しながらも、俺達はその後約一時間、進◯の巨人の中の伏線について話し合った。

 

とても有意義な時間だった。

 

まあ、そんなこんなで充実している俺のスケジュールを教えてやろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

11:30起床

 

ウルクの王宮に居た時よりもずっと遅くに起きることができる。

 

この冥界の城の住人は、現在7人の裁判官とナムタルのオッサン、エレシュキガルに俺である。

 

合計10人。

 

その中で、裁判官の内の3人とエレシュキガル、俺は半夜行性(ニート)なので、この城の中では、俺達のニート生活は全面的に認められる。

 

朝早くに叩き起こされていたウルクの王宮とは大違いである。

 

諸君にわかるかい?社畜がニートへと進化(退化)する事の素晴らしさが。

 

ちなみに、俺はニート仲間達の中でも一番起きるのが遅く、毎朝エレシュキガルに起こされている。

 

役得である。

 

想像して見給え。

 

朝起きたら、目の前に金髪美少女の顔があり、「お…、起きた…?」なんて聞いてくるのを。

 

間違いなく、萌え死に決定である。

 

実際に、俺が初めてそれをされたときには、思わず吐血してしまった。

 

「び…、病気に…、なっちゃったんですか…?」

 

と本気で心配されて、それを見てさらに吐血してしまった。

 

エレシュキガルがあわあわして室内を歩き回っていたのには、本気でほっこりした。

 

惚れそう。

 

 

これが王宮だったら、竹刀で無理矢理叩き起こされ、吐血しても、

「血を履いたところでなんだというのです!男子たるもの、血を履いても戦わなければ!」

なんて言われるだろう。

 

ホントに天国だわ、ここ。

 

ここが天国(冥界です)ということはひとまず置いておいて、次に行こう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

12:00

 

 

朝ご飯(昼ご飯)は、まさかのホテルの食事みたいな豪華な物。

 

しかも、誰も調理をしているらしいそぶりはない。

 

どうなっているのかと聞いてみると、未来に空間をつなげて、美味しい料理があるホテルなどから少しづつパクってきているらしい。

 

冥界、素晴らしきかな。

 

ちなみに今日のご飯は、有名所のオムライスにスクランブルエッグ、ステーキにフルーツポンチだった。

 

完全に昼ご飯ではない、と思ったのは俺だけだろうか。

 

でも、感動した。まさか古代で、自分が昔食べていた物を食べられるとは思わなんだ。

 

さあ、次に行こう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

13:00エレシュキガルと遊ぶ

 

さて、エレシュキガルと遊ぶ、等と言うと、まるで幼児の世話をしている保育園の先生のようだが、エレシュキガルと遊ぶ時、俺の心は荒れに荒れている。

 

エレシュキガルの部屋は最上階で、一人部屋だ。

 

まあ、みんな一人部屋なんだけども。

 

ところで皆、ゲームやらアニメやら、二次元に嵌まったニートが、リアルの女の子、しかも美少女になんの関心も持たないと思うだろうか?

 

答えは当然、否である。

 

もうおわかり頂けただろうか?

 

そう。俺は、それなりに大きくはあっても、一人部屋の中に、超絶美少女と二人きりである。

 

俺は鈍感系の主人公では無いから、エレシュキガルが自分の部屋に初めて異性を入れたので緊張している、みたいな感じの赤い顔もよく見えるのだ。

 

そんなものを見せられてしまっては、陥落しない男などいまい。

 

実際にエレシュキガルは俺のタイプ…。

 

ハッ!危ない危ない。

 

危うく自分の本音を漏らしてしまうところだったよ。

 

ほとんど漏れているも同然なんだけども。

 

まあ、そんな感じで二人揃って部屋の中で顔を赤くしてチラチラとお互いを大体20分くらい見たりしながら過ごす。

 

このままでは只々時間が流れていくだけなので、エレシュキガルに声をかけて、何かすることを考え始める。

 

やることがないわけではない。

 

むしろ有り余っているほどだ。

 

なにせここでは、様々な物を現代から引っ張り出してきている。

 

しかも、現代から持ってきた物は、箱に入れて城の蔵に保管してある。

 

何かやりたいときは、それを取りに行くのだ。

 

だから、やることがたくさんあるのだが…。

 

いかんせん、裁判官の中のオタク仲間の一人が、エロゲとか恋愛ゲームとかを買いまくっているのだ。

 

たまにそういう物が入っている箱を開けてしまうことがあり、そういうものを見てエレシュキガルと一緒にしばらくフリーズすることになる。

 

だから、開ける箱は慎重に選ばなければならない。

 

そんなこんなで四苦八苦して遊ぶものを決めてから、俺達は遊び始める。

 

遊ぶものは色々あって、あるときはモン◯ン、またあるときはポ◯モン、たまにスマブ◯をやったりする。

 

そういうゲームをやるだけではなく、アニメもたまに見たりする。

 

俺とエレシュキガルの最近のお気に入りは、Fate/stay night unlimited blade works だ。

 

エレシュキガルの好きなキャラは凛で、俺はアーチャーこと英霊エミヤ。

 

ギルガメッシュはどうしたって?

 

アニメを見て、こんな風に育たなければいいなぁと思っただけだよ。

 

「なんだか…、ライガさんのところのギルガメッシュ王子も、ああなる気がする…かも…。」

 

なんて呟いていたエレシュキガルの言葉に不安を少しだけ覚えてしまった。

 

マジでそうなったらどうしよう。

 

あんな爆撃みたいな攻撃を毎日食らうとか、シャレになんねぇ。

 

怖っ。

 

 

そうして楽しい時間は終わる。

 

次に行こう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

19:00夕食

 

こちらもウルクの王宮とは違って、遅い夕食。

 

まあ、ここの住人の半分がニートなんだ。

 

半夜行性なのだから、夕食の時間も、少しは遅くなる物なのかも知れない。

 

夕食も、現代から引っ張り出してくる。

 

最近では、盗みの腕が上がり、三ツ星ホテルからも食べ物を盗めるようになったらしい。

 

極たまに、五ツ星ホテルから盗んできたものが食卓に並ぶ。

 

本当にうまかったよ。

 

味覚のパラダイスって感じ。

 

冥界最高だわ。

 

さあ、次に行こう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

20:00入浴

 

夕食を食べ終わったあと、俺達は風呂に入る。

 

と言っても、男湯と女湯にわけられているから、混浴などはない。

 

すまない。サービスシーンがなくて、本当に済まない。

 

風呂は、露天風呂だ。

 

正直言って、最初の方は冥界の赤黒い空を見ながら風呂に入るなんて、と思っていたが、実際にやってみると、意外と気持ちよかった。

 

向こうの方で雷が落ちたのをみて、今度はここに落ちるかもしれない、という恐怖で寒くなった背筋を温泉が温めていくのが。

 

嫌な趣味だと思うかもしれないが、こらえてほしい。

 

意外と背筋にくる寒気が、温泉とマッチするんだよ。

 

ほらそこ。

 

可哀想なやつだ、とか言ったの、聞こえてるからな。

 

風呂から出たあとは、好きな飲み物を飲むことができる。

 

ちなみに俺は、コーヒー牛乳とフルーツ牛乳だったら、フルーツ牛乳派だ。あの甘さと冷たさがハマる。

 

さあ、次に行こう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

20:30遊ぶ

 

夜からは、お待ちかねのヒャッハーな遊び時間だ。

 

ここでは、遊びたいやつ(主にニート仲間達)が集まって、ゲームやアニメで馬鹿騒ぎする。

 

こういう騒ぎは嫌いではない。

 

まあ、毎日馬鹿騒ぎしているのだが。

 

ある者はコーラをラッパ飲みし、ある者はポテチに手を伸ばしまくり、みんなで宴会状態である。

 

宴会しながらのゲームやアニメは、夜遅くまで続く。

 

まさに、この世の天国である。

 

冥界だけど。

 

 

我が一生に一辺の悔いも無くなりかけているが、これからも俺はここで生きていこうとおもう。

 

 

 




あっさりと冥界に馴染んでいる主人公。

違和感があるかもしれないが、しょうがない。

異論は認める。





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現代に旅行に行きました。

すまない。更新遅れて本当にすまない…。

リアルが忙しかったんだ。

こらそこ。ニートは何時でも暇だろとか言わない。


前回のあらすじ

 

冥界に来る

 ↓

ナムタルのオッサンにゴミを見る目で見られる

 ↓

冥界の技術ヤベェ!

 ↓

11:30 起床

 ↓

12:00 朝ご飯

 ↓

13:00 天国の時間(エレシュキガルとの時間)

 ↓

19:00 夕食

 ↓

20:00 風呂

 ↓

20:30 夜のヒャッハーな遊び時間

 ↓

我が生涯に一辺の悔いなし

 ↓

エレシュキガルかわゆい!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今日は、ナムタルのオッサンが「たまには外に行ってみてはいかがですかな?」なんて言ったので、俺とエレシュキガルはウルクに行く…ことはせず、冥界の技術を使って現代に行くことになった。

 

ホントなんなの、冥界の技術。

 

もはやドラえもんですらも超越したような技術に俺が白目を剥いていると、冥界の裁判官の内の一人が着替えを持ってきた。

 

「ホラホラ、今日はせっかくのデートなんだから、ちゃんとおめかししていかなきゃダメでしょ!」

 

なんて言いながら、俺の「ゆとり世代」と書かれたシャツとエレシュキガルの「I LOVE人類」と書かれたシャツを無理矢理着替えさせてマトモな格好にした裁判官は、俺達の姿を見て言った。

 

「あらまあ、アナタたち、最高の恋人みたいじゃない!」

 

「うう…こ…、恋…、恋人…。」

 

エレシュキガルが顔を赤くして恋人という言葉を連呼しているのを見て俺の心は萌えと寂しさに満たされた。

 

「そっか…。エレシュキガルもいつかは恋人を作るんだもんなぁ…なんか寂しいかも…」

 

そう呟く俺を見てその裁判官がなぜか鈍感な奴を見ているような目つきで見てきた。

 

なぜだ。

 

俺は鈍感とかじゃなくて、むしろ鈍感ハーレム系の主人公には死んでほしいと思うタイプの人間なのに。

 

そんなことを考えていたら、冥界の技術の結晶、タイムマシンが俺の目に入ってきた。

 

「ふえ?」

 

呆けたようなその声は誰のものであっただろうか。

 

俺達の目の前に出てきたのは、白い装甲にV字型のアンテナを持つ人型のロボット。

 

そう。

 

 

 

ガンダムだったのである。

 

「えっ?ちょっと待って?あれってどう見てもガンダムだよな?」

 

俺の問いに困惑したようにナムタルのオッサンが答える。

 

「あぁ…。そ、そのはずなのだが…。」

 

困惑している俺達の前にまた別の裁判官が出てきて言った。

 

「フーハハハハハハ!見給え!これに乗ったら、まるで人がゴミのようだ!」

 

どこぞの天空の城の大佐のようなことを言っている裁判官を無視して俺はナムタルのオッサンに聞く。

 

「な、なあ、ナムタルのオッサン。あれって、どこから入れば良いんだ?コクピットか?やっぱりコクピットだよな?」

 

ガンダムに変わり果てたタイムマシンを見たことによるショックをニートの強靭な精神で立ち直らせた俺に目を見開きながらもナムタルのオッサンは答える。

 

「あぁ…、おそらく、エネルギーの感じから見ると、おそらくコクピットから入ればガンダ…、タイムマシンを使えると思うぞ。」

 

その言葉を聞いて俺はエレシュキガルと顔を見合わせ、同時に頷いてからコクピットの方まで飛んでいった。

 

俺が一方通行の能力をうまく使って飛べるのは良いとして、なぜエレシュキガルが飛べるの?と思った人もいるだろう。

 

そんな人のために説明しておくと、エレシュキガルはなぜか冥界の死のエネルギーを操れるので、それを具現化させてジェット噴射させて飛んでいるのだ。

 

正直言って、俺の能力よりもカッコイイ気もするが、そこはスルーで。

 

そんなこんなで俺達はコクピットの中に入り込んでナムタルのオッサンの声を待った。

 

待ち始めて一分ほど経った後に、ナムタルのオッサンが合図を出した。

 

「タイムマシン、発射用意!」

 

その言葉を聞いて俺とエレシュキガルは頷き合ってから言う。

 

「「ライガ、エレシュキガル、行きまーす!」」

 

いや〜、ガンダム風に言ってみたかったんだ。

 

 

そんなことを考えながら、俺の意識は光に飲まれていった。




お気に入りが800を超えてたことには驚いた。

ご愛読感謝。ニイハオ。

あ、シェシェか。


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ニート取り扱い説明書

お気に入り900突破。

感謝感激。


前回のあらすじ

 

ナムタルのオッサンに現代に行くように言われる

 ↓

タイムマシンを見る

 ↓

なぜにガンダム?

 ↓

コクピットに入る

 ↓

アムロ、行っきまーす!

 ↓

エレシュキガルかわゆい。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

今日は、俺の心の中でニートの取り扱い説明書みたいなのをナレーションしてみようかな。

 

そんなことを考えていたので俺とエレシュキガルの回復した目に入ってきたのは、照りつけんばかりの太陽だった。

 

「うわぁぁぁぁぁ!目がぁ!目がぁ!」

 

「グフッ…」

 

俺は某天空の城の大佐のごとく目を抑えてその場にうずくまり、エレシュキガルは吐血する。

 

なぜそんなことになるのかって?

 

考えても見給え。

 

俺やエレシュキガルは、ニートの中でも最上位の存在なのだ。

 

故に、家や自分の部屋から出ることはあんまりないし、もしも家から出てみたとしても、冥界だから太陽なんてないのだ。

 

まあ、なにが言いたいのかというと、あれだ。

 

普通のニートに限らず、最上位のニートにとっても日光は天敵、ということ。

 

ニート取り扱い説明書その一。

 

ニートに日光は当てないようにしましょう。

化学反応を起こして大爆発します。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

痛む目を抑えながらも、俺とエレシュキガルは近くのカフェに入った。

 

「よ…、ようやく解放された…。」

 

「マジで死ぬ…!日光に当たったらマジで死んじゃうよ、俺たち…!」

 

そんなことを言いながらも、俺とエレシュキガルはカフェのメニュー表を見る。

 

「そんじゃ俺はコーヒーゼリーで。」

 

「お…。それ美味しそうかも…です…。それじゃあ、私も…。」

 

注文するものを決めて、店員に二人してコーヒーゼリーを頼んでからアニメ談義を始めようとしていた俺とエレシュキガルの耳の中に、隣の席のカップルの言葉が入ってきた。

 

「ねーねー、最近、ニート、とかいう奴らいるじゃん?」

 

「あー、いるねー。」

 

「アイツラってさ、マジで社会のゴミじゃない?」

 

「「グフぁッ!!」」

 

隣の席のカップルの言葉に俺とエレシュキガルは一斉に吐血する。

 

「だよねー、ずっとずっと保護者の脛をかじりまくって、ホント何様だって話ー。」

 

「ゲボラッ!」

 

「ケフカハッ!」

 

結局、それ以上ニートのことについてそのカップルたちが何か言うことはなかったが、カップルの言葉は俺とエレシュキガルの心の中に深く突き刺さり、深い傷を残した。

 

ニート取り扱い説明書その二。

 

ニートにを言葉で攻めるのはやめてあげましょう。

 

言葉のダメージによって、精神、及び肉体に大きなダメージが与えられます。

 

今回は俺やエレシュキガルのような最上位のニートだったから吐血程度で済んだものの、俺たちよりも下位のニートだったら、かなりの傷を負っていただろう。

 

ニートのガラスは心なのだ。

 

あ、間違えた。

 

ニートの心はガラスなのだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

コーヒーゼリーを食べ終わってから俺とエレシュキガルは店を出て日光を避けながらどこかいいところを探すことにした。

 

「なあ、どこらへんに行けば良いところがあると思う?」

 

「わからないけど、その前に今どこにいるのかを把握するほうが先だと思います…。」

 

「確かに。」

 

エレシュキガルの提案によって今どこにいるかを確認することになったので、俺はナムタルのオッサンに渡されたスマホを取り出す。

 

「えっと…、今の位置はっと…。」

 

グーグ◯マップで調べると、俺の目に「幕張」の文字が入ってきた。

 

「ファッ?幕張?せめて秋葉原じゃなくて?」

 

行くならせめて秋葉原にしたかったが、そのためにわざわざ電車なんて使って移動するのはめんどくさかったので、俺とエレシュキガルは仕方なく幕張で楽しむことにした。

 

ニート取り扱い説明書その三。

 

ニートはめんどくさがることが多い種族です。

 

ニートにめんどくさいことをさせないようにしましょう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「幕張といえば…幕張メッセ…ですよね…」

 

というエレシュキガルの一言によって、俺は幕張メッセに行くことに決めた。

 

「あの…、今日は…、なにがあるんでしょうか…?」

 

「ああ、調べてみたら、ゲームフェスティバルみたいなのがあるらしいぞ?」

 

「やった…。」

 

ガッツポーズを取っているエレシュキガルを見てほっこりしながら俺はエレシュキガルと共に幕張メッセの中に入る。

 

そこにあったのは、目もくらむばかりの色とりどりの光と、光を出しているたくさんのゲームだった。

 

「おお…!」

 

「これは…、すごい…です…!」

 

俺たちはその後、ヒャッハーなテンションのまま中に入ってゲームで遊びまくった。

 

ニート取り扱い説明書その四。

 

ニートにはできるだけゲームを与えましょう。

 

化学反応を起こして大爆発(いい意味で)します。

 

え?

 

ゲームをしているときの描写がほしいって?

 

ゲームの光に照らされて喜ぶエレシュキガルの顔は、見惚れるほどに綺麗なものだったと言っておこう。

 

ニート取り扱い説明書その五。

 

ニートには、できるだけ美少女を近づけましょう。

 

ニートは、それだけで天国よりもいい気分になれるのです。

 

この世界って、サイコー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、ゲームイベントが終わってから、俺とエレシュキガルはしっかり冥界に戻りました。



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ネルガルをぶっ潰しましました。

フッ、待たせたなっ!

という調子に乗った前書きはさておき、楽しみにしてくださっていた皆様、更新遅れて申し訳ありませんでした。


前回のあらすじ

 

ニート取り扱い説明書

 

目が、目がァ!

 ↓

言葉で責められると精神、及び肉体に莫大なダメージが与えられます。

 ↓

一々面倒くさいことをさせるんじゃねェ!

 ↓

やっぱり、ゲームは最高だぜ!

 ↓

美少女サイコー!

 ↓

この世界、サイコー!

 ↓

エレシュキガル、サイコー!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最近、というか三日前からナムタルのおっさんがメッチャイライラしてる。

 

具体的には、いつも額に青筋を浮かべて「あの小僧が…」と小声で呟きまくっている。

 

これを美少女がやっているならまだ恋敵が現れた恋する少女だとかそんな感じで微笑ましく思えるのだが、なにせやっているのは立派な口髭と顎髭を生やしたいい年したオッサンだ。

 

ヤンデレ系オッサンとか、誰得だよ。

 

と、ふざけるのはここまでにしておいて、流石にナムタルのオッサンのあのイラツキ具合は少し、じゃなくてかなりヤバイ。

 

普段からイライラしているのだが、食事のときは特にそれが顕著だ。

 

モ◯バーガーから盗み出してきましたハンバーガーを皆で夜ご飯に食べていた時なんて、あまりにもイライラした雰囲気を出しているので「何かあった?」と聞こうとしていきなり咳き込んでしまい、ナムタルのオッサンの顔面に俺の食いかけバーガーをぶちまけてしまった程だ。

 

いや、それは190%俺が悪いか。

 

まあそれはともかく、最近のナムタルのオッサンは色々とヤバげなのだ。

 

なので、ナムタルのオッサンに直接話を聞いてやろうではないか。

 

というわけで、俺は今ナムタルのオッサンの目の前にいまーす。

 

「どうした、ニートのゴミ。」

 

オイ、なんでサラッとごみ扱いしてるんだよ。

 

心配した俺がバカみたいに思えてきたんだが。

 

「ニートはゴミじゃねえよ!」

 

思わず反論してしまう。

 

そうニートはゴミではない。

 

別に働かなくてもいいだけの金を持った保護者がいる。

 

アニメがある。

 

ゲームがある。

 

ラノベがある。

 

そうだ。俺たちがニートなんじゃない。社会そのものがニートを欲しているのさ(暴論)。

 

そんな事を考えていたのが見抜かれたのだろうか。ナムタルのオッサンはますますゴミを見る目でこちらを見てくる。

 

勘弁してください。

 

精神的なダメージがヤバイんだが。

 

そんな事を考えて若干泣きそうになっている俺を見てナムタルのオッサンはため息を吐いた。

 

「ハァ…。まあ、お主にも迷惑をかけたな…。」

 

あれ?なんで俺の考えてることが分かるの?

 

…ハッ!もしかしてテレパシーでも持っていると言うのか!

 

なんて奴だ…。

 

このまま黙っているのもなんだか尺に触るので、とりあえず反論させてもらおうか。

 

「べ、別にアンタのためを思っていってるんじゃないんだからね!」

 

あれ、なんだかますますナムタルのオッサンの視線が冷たくなった。

 

あれれ〜、おっかしいぞー。

 

思わず某少年探偵の声を脳内で出してしまった。

 

いや、ホントにおっかしいぞ〜。

 

ここはホラ、「あ、コイツもコイツなりに心配してくれてたんだな」みたいな感じで親友ルートかヒロインルートに入るとこじゃない!?

 

いや、オッサンがヒロインとかマジで勘弁してほしいんだけど。

 

とりあえずナムタルのオッサン。いや、ナムタル様。

 

とりあえず、その冷たい目線をやめてください。

 

俺は別に冷たい視線に喜ぶような人種じゃないから。

 

そんな俺の内心を知ってか知らずか、ナムタルのオッサンはもう一度ため息を吐いた。

 

「ハァ…。分かった。分かった。心配してくれてるのはありがたいんだがなぁ…」

 

「っていうか、そこまで落ち込むなんて珍しいな。何があったんだ?」

 

先程までのギャグ空間が一気にシリアスな空気に変わる。

 

ハッ、もしかしてナムタルのオッサンにはギャグをシリアスに変える特殊能力があるのでは!?

 

っていうか、ホントにナムタルのオッサンがここまで落ち込むのは珍しい。

 

この前エレシュキガルのセーブデータを間違って消してしまい、エレシュキガルに「ナムタルのおじさん、もう一ヶ月は喋ってあげない!」と言われたときの落ち込みようと同じくらいだ。

 

「それがな…。この前、ワシは地上に行っただろ?」

 

「あぁ、そうだったな…。」

 

そう言えば、ナムタルのオッサンの機嫌が悪くなり始めた前日、ナムタルのオッサンは地上に行っていたのだ。

 

確か、神様の宴会に冥界の食事を持っていかなければいかず、ルールでエレシュキガルは冥界から出れないことになっているので仕方なくナムタルのオッサンが出席したのだとか。

 

「そこでなんかあったのか?」

 

ナムタルのオッサンは忌々しそうな顔をして下を向きながら頷く。

 

そして、三秒ほど黙ったあとに口を開いた。

 

「ああ。そこで、戦の神であるネルガル、という男にイチャモンをつけられまくってな…。」

 

ほうほう。

 

イチャモンとな?

 

イチャイチャモンスター。

 

いや、ちょっと違うか。

 

…オホン!

 

ふざけるのはここらで止めておいて、真面目にナムタルのオッサンの話を聞いてやるか。

 

「ワシが持っていったマク◯ナルドのチーズバーガーSサイズを『メッチャ粗悪品じゃねえか!』と貶して来たのだ…」

 

「えっ」

 

いや、それはナムタルのオッサンが完全に悪い気がするのは俺だけだろうか。

 

あまりにも下らなくね?と呆然としている俺の表情を見てネルガルの行動が悪いものだと思っている、と捉えたのだろう。

 

ナムタルのオッサンの口調は少し激しくなる。

 

「それで仕返しにあの…、シュール…ストレミング、だったか?とにかく、世界一臭い食べ物を奴の酒にぶち込んでやったのだ。」

 

なぜか満足げにナムタルのオッサンは語る。

 

いや、それ完璧にアンタが悪ぃーじゃねーか。

 

俺はナムタルのオッサンにジト目を向けるが、ナムタルのオッサンは気づいてない。

 

「それでネルガルが怒ってな。喧嘩になりかけたので、知恵の神であるエア様が仲直りをしろと言ってネルガルを冥界に送り込んでくることになったのだ。」

 

幼稚園生の喧嘩か!

 

そう叫びそうになった俺は悪くないと思う。

 

「それで、ネルガルの奴がエレシュキガル様にまでちょっかいを出さないか心配でな…。」

 

ヤバイ。

 

ナムタルのオッサンがただ単に幼稚なオッサンなのか良い親がなのか分からなくなってきたぞ。

 

……。

 

……。

 

……。

 

「む?どうした?」

 

急に黙り込んだ俺を見てナムタルのオッサンが困惑したような声を出す。

 

だが、今はそれどころではない。

 

俺も、前世では一応大学は出ていた、…と思う。

 

いや、前世の記憶が物凄く曖昧なせいでホントに微妙なのだが、それでも一応神話とかは偶に読んでたのだ。

 

…あれ?

 

ネルガルって、どこかで聞き覚えがあるようなないようなあるような。

 

ちょっと待てよ。

 

ネルガル、宴会、怒る、冥界、エレシュキガル…。

 

………。

 

………。

 

………。

 

ハッ!?

 

「ヤッベエエエエエエエエエエ!」

 

城の中に響き渡りそうな声で俺は叫ぶ。

 

反射的にナムタルのオッサンが耳を抑えたが、そんな事はどうでもいい。

 

ヤバイ!ヤバイよ!

 

昔読んだ本の中に書いてあったよ!

 

『水浴びするエレシュキガルに魅せられ屈してしまい、エレシュキガルと六日間に渡る行為に及んだ』

 

とかなんとか!

 

ヤバイ!ヤバイ!

 

エレシュキガルがネルガルに襲われてR-18展開とか何それ羨ま…洒落にならん!

 

「ヤッベエエエエエエエエエエ!このままだとエレシュキガルがネルガルに取られてしまうううう!」

 

エレシュキガルはまだ寝ているからいなかったが、大声を出した俺の周りにはすでに裁判官が全員揃っていた。

 

「ほうほう…」

 

「なるほど…」

 

あ、ヤベ。

 

そう思ったときには時既にお寿司。じゃなかった、遅し。

 

裁判官の皆々様方は、ニヤニヤした表情を浮かべながらコチラを見ている。

 

「取られる、ねぇ…」

 

「ヤバイ、ねぇ…」

 

「青春だねえ…」

 

全員の生暖かい視線が俺に突き刺さる。

 

いや、待ってくれ、なにか勘違いしてるから!

 

そう言いたいけれども、なぜか言えない。

 

それどころか、顔に血が集まっている。

 

先程まで絶対零度だったナムタルのオッサンの視線も今はサウナくらいに生暖かい視線を送ってくる。

 

止めてぇ!

 

その視線は止めてぇ!

 

そう言いたいけれども、なぜか言葉は出てこなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

冥界の城、その露天風呂の男湯の中。

 

俺は隣に設置されている女湯にエレシュキガルが来るのを今か今かと待ち構えていた。

 

いや、別に覗きだとかストーカーだとかじゃないからね!

 

まあ、今の不審者丸出しの俺が言っても全く説得力がないのは明らかだが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

 

ネルガルは今日の朝に来て今日の夜に帰るらしい。

 

一度会ってみたが、そこまで悪逆非道、というわけではなさそうだった。

 

だけど、あの目がなんだかおかしいんだよなぁ…。

 

例えるなら、ソードアートオンラインの須郷さんみたいな感じの目の濁り方をしてたんだよなぁ…。

 

しかも、エレシュキガルを見て薄っすらと気持ち悪い笑みを浮かべてたし。

 

コレは確定だよね。

 

もう絶対にネルガルって変態だよね!

 

そんな事を考えていた俺の耳の中に、聞き覚えのある悲鳴が聞こえてきた。

 

女湯の方から。

 

ヤベェ!

 

考え事にふけっていたせいでエレシュキガルが女湯に入っていたことに気づかなかった!

 

俺の記憶出は、確かネルガルはエレシュキガルに襲いかかる、みたいな感じでR-18展開に入るのだ。

 

ということは、もう襲われてるってことじゃねーか!

 

「ハァッ!」

 

俺は重力のベクトルを操って思い切り地面を蹴る。

 

そして、一瞬で女湯と男湯を分けている壁の上に出る。

 

「ッ、あの野郎ォ…!」

 

俺の視界に映ったのは、浴場の床に仰向けに倒れているエレシュキガル。

 

そして、エレシュキガルに覆いかぶさる格好でニヤリと笑みを浮かべ、エレシュキガルの肩に手をかけようとしているネルガル。

 

エレシュキガルが薄っすらと目に浮かべている透明な液体を見て、俺の中のナニカが切れた。

 

空気を圧縮して空中で固まらせる。

 

体内の血液のベクトルを操作して血流を早くし、無理矢理筋力を上げる。

 

そしてーー、空中に作った空気の塊を足場にして、思い切りエレシュキガルの方に急降下する。

 

ドゴォン!

 

そんな音を立てて俺の足が浴場の床にめり込むが、あいにくとそんな事を気にしている暇はない。

 

エレシュキガルもネルガルも全裸だが、見たところエレシュキガルの身体にはまだそういう貞操を奪われたような跡はない。

 

良かった。

 

安心したところで、俺の怒りが収まるわけではない。

 

というか、むしろ近くに来たことでますます殺意が上がるまである。

 

空気のベクトルを操り、開いた俺の右の掌に凝縮していく。

 

殺意を込めて。

 

安心を込めて。

 

憤怒を込めて。

 

掌の中で既に小さな竜巻が起こっているが、そんな物では俺の怒りは収まらない。

 

もっと。もっとだ。

 

空気中から酸素のみを抽出して、他の成分を取り除く。

 

ーー頭痛。

 

俺が解析できる空気の範囲を冥界全体に広げる。

 

ーー頭痛。

 

掌にますます多くの酸素を集める。

 

ーー掌から出血。

 

集めた純度100%の酸素を竜巻状に回転させる。

 

ーー目から出血。

 

冥界全体を解析し終わる。

 

ーー右腕から多大な出血。

 

解析した冥界の空気から水素のみを抽出して、左の掌に集める。

 

ーー左の掌から出血。

 

水素を右手と同じように竜巻状に回転させる。

 

ーー左腕から出血。

 

攻撃の範囲にエレシュキガルが入らないように、照準をネルガルのみに固定。

 

ーー眼球が圧迫される。

 

両腕をかめはめ波横バージョンのようにくっつける。

 

そしてーー。

 

 

発射。

 

 

さて、水素爆発、という言葉を知っているだろうか。

 

水素と酸素を組み合わせると巨大な爆発が起こるよ的な、あの。

 

俺の右の掌には酸素の塊。

 

俺の左の掌には水素の塊。

 

俺の両の掌、その先から爆発が発生する。

 

普通ならここで自爆テロみたいな大爆発を起こして終わりだろう。

 

だが、俺にはベクトル変換がある。

 

ベクトルの向きをネルガルに固定したまま、そんな大爆発を引き起こしたらどうなるか。

 

答えは簡単である。

 

「ッッ!」

 

反動に耐えながらもネルガルを睨みつける俺の掌から、青い光線が発射された。

 

青い光線は竜巻のようにぐるぐると回転しながらネルガルを巻き込み、冥界の天井まで押し上げられーー。

 

そして、冥界の天井を突き破った。

 

「ハァ…ハァ…」

 

マズい。

 

ベクトル変換を攻撃に使うことばかりを考えていて、無意識のうちに防御に割いている部分まで使ってしまったらしい。

 

もう半分感覚が無くなりかけている俺の全身からブシュウという嫌な音が聞こえてくる。

 

そして俺の視界の中には予想通り俺から飛び散る血の雨。

 

ネ先程までネルガルがいた方向から少し下へと視線を下げる。

 

そこには、ポカンとしているエレシュキガル。

 

…ああ、無事だったか。

 

巻き込まなくて、本当に良かった。

 

それにしても…。

 

ごちそうさまです。

 

俺の視界の中に映るエレシュキガルの綺麗な全身を見てから、俺は床に倒れ伏した。




何気にかなり文字数が多くなった。

すまない。ギャグパートが下手になってしまってすまない。

シリアスパートばかり書いてきたもので…。

本当にすまない。


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帰ってきました。(白目)

帰ってきました。(作者が)

え?自分の小説ほったらかして二年間もどこに消えてたのか、だって?

……。

さ、さあ本編に行きましょう!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

前回までのあらすじ

ネルガルをぶっ潰しました。

ネルガルさんがテンプレな小悪党的ムーブ。

典型的な主人公ムーブでエレシュキガルを助ける。

要するに、ネルガルをぶっ潰しました。


ーー駆ける。

 

 風が耳元を通り抜け、ゴウゴウと音を立てていった。

 それでも、走らなくちゃいけない。

 

ーー駆ける、駆ける。

 

 空から降り注ぐ日差しは鋭く、薄暗さに慣れてしまった体に突き刺さってくる。

 それでも、走らなくちゃいけない。

 

ーー駆ける駆ける、駆ける。

 

 道には人があふれかえり、町の喧騒は五年前(・・・)と変わらない。

 それでも、行かなくちゃ。

 

ーー駆ける、駆ける。

 

 人ごみをすり抜け道を何回も曲がって、俺の前にようやく見慣れた石造りの王宮が見えてきた。思わず足が重くなって走るのをやめたくなる。

 行かなくちゃ。

 

ーー駆ける。

 

 王宮の前にいる門番が俺に気づいたが、この速さで向かってくる物の識別なんてできないのだろう。緊迫した表情になって、迫りくる俺に対して槍を構えた。

 でも、今の俺には彼らをどうにかしている暇はない。警戒している門番にそのまま突き進む素振りを見せた直後にわずかに方向転換して彼らの横を通り抜け、王宮の中に入り込んだ。門番たちは俺が王宮の中に入ったのを見て必死の形相で追いかけてくる。

 でも、俺はこのまま走るのをやめるわけにはいかない。

 

 なぜならばーー!

 

 階段を突っ走り、俺は王宮の中でも最も高い位置にある謁見の間にたどり着いた。謁見の間には何人もの学者や大臣らしき人たちの姿があるが、俺の気にすることではない。

 謁見の間の最奥に安置されている王の椅子に頬杖を突きながら座っているギルガメッシュ。

 俺はほかの人々を一気に追い越してギルガメッシュの前に立ち、そしてーー。

 

「すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 立ったままの姿勢から、重力のパワーを借りた全身全霊の土下座をかました。

 

 俺が王宮の門を通り抜けてからここに至るまで、所要時間わずか十秒たらず。

 

 華麗なジャンピング土下座をかました俺に周囲が唖然とする中、しかしギルガメッシュは眉をピクリと動かしただけだった。

 

「すみませんでした、とは何のことだ、ライガ?」

 

 久しぶりに聞いたギルガメッシュの声は、おそらく成長期で声変わりしたのだろうことを加味しても恐ろしく低く、また平坦だった。

 やばい。こいつはめちゃくちゃ怒ってるな。

 

 思わず冷や汗が背中を伝う。

 

「そ、その、三年で帰ってくるって言ったのに五年も帰ってこなかったことですぅぅ」

 

 五年も帰ってこなかった、と言ったあたりでギルガメッシュの殺気が膨れ上がったので、思わず意味もなく俺は語尾を伸ばした。ギルガメッシュの目線は土下座していてもわかるくらいに冷たい。

 

 …………。

 

 沈黙が場の雰囲気を占める。さっきまで大声でギルガメッシュに自分の意見を聞いてもらおうと張り合っていたらしい大臣たちもいつの間にか静かになっている。

 

 数秒の沈黙の後、ギルガメッシュが口を開いた。

 

「で、申し開きは?」

 

「こ、これには深いわけが……」と始めようとした俺だが、ギルガメッシュのにらんだだけで人を殺せそうな視線に口をつぐんだ。

 

 い、言えない。実は深いわけなんてなくて、ただ冥界でエレシュキガルと遊びながら暮らしてたらウルクのことなんてさっぱり頭の中から吹っ飛んでて、冥界に行って三年したらウルクに帰るっていう約束を完全に忘れてたなんて絶対に言えない。これだけは何としても隠し通さなければ。

 

「深い……わけ?」とつぶやきながらギルガメッシュは自分の後ろに金色の光を放つ波紋を揺らめかせた。ゲート・オブ・バビロンである。

 

「いやマジですいませんっしたぁぁーー! 深いわけなんてありませんーー! 冥界でエレシュキガルと過ごすのがめっちゃ楽しくて、ウルクのことをさっぱりわすれてましたぁぁぁぁ!」

 

 ついさっき言うまいと決意したが、そんな決意なんて一瞬で吹き飛んだ。えー、こいつなっさけねえなー、と思っているであろう画面の前のそこのあなた。いや、仕方ないやん?殺意マシマシでこっちをにらみながら我らが英雄王がゲート・オブ・バビロンを展開してるんだぜ?これは白状するしかないですやん。

 

 俺はさらにぐりぐりと地面に自分の頭を擦り付ける。ギルガメッシュの冷たい目線はそのままだが、殺気は少し揺らいだ。気がする。

 

 はあ、とギルガメッシュがため息をつく声が聞こえた。 

 

「まあ、よい。貴様が二年間も遅れたことはあえて不問としてやろう。 これからは、怠け者の心を入れ替えてしっかり働くがいい。」

 

「あ、ああ!」

 

 自分でも、自分がいかに安心した顔と声をしているかわかる。ギルガメッシュが、あの幼いころから愉悦ムーブで俺を苦しめ続けてきたギルガメッシュが、俺をあっさりとゆるしてくれたのだ!

 

「お、俺、これからは心を入れ替えて働くことにするから!」

 

「……、ああ、そうだな。」

 

 五年ぶりの再会にしてはやけに淡白に、ギルガメッシュは返答をしてから俺の後ろに目を向けた。 そこには、いまだに困惑して顔を見合わせている大臣や学者たちが。

 

「……。 さて、大臣ども、各々の要件を話すがいい!この白髪の男のことは気にするな!」

 

 惑いが解けないまま、ではあるが大臣たちがギルガメッシュに意見や政策を述べ始め、ギルガメッシュはそばにたたずむ俺を気にせず彼らの言葉に耳を傾ける。 その顔はどこか寂しげで、苦しげでもあったけれど、何せあのギルガメッシュだ。俺の気のせいだろう。別に俺も帰ってきたし、寂しがる要素はないしな。

 

 忙しそうなギルガメッシュを尻目に俺はその場を離れ、謁見の間から階段を下りていく。

 

 でも、ギルガメッシュに許されたことでホッとしていたからか、その時の俺は気づけなかったのだ。

 

……俺に向けるギルガメッシュの視線の冷たさは変わらず、その言葉には失望が込められていたことが。




はい、というわけで何気にこの作品で初めてちょっと怪しい雰囲気になってまいりました。

今回登場した謁見の間、というのはバビロニアのアニメで出てきた、いつも王が座ってたあそこです。あれの正式名称は知らないので、ご存じの方がいらっしゃったらぜひ教えていただけるとありがたいです。


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