桃水晶の六尾姫 (ココスケ)
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幼少期編
目が覚めると戦時中でした。


尾獣って可愛いよね。



消毒液のツンとした匂い。

目に飛び込んで来た、白で統一された部屋と申し訳なさそうな顔をしたおじさん2人。

 

体中に走る痛みで目を覚まし、入ってきた情報に混乱を隠せない。

 

私は…電車に轢かれ、確実に死んだはずなのに。

天国というのは、こんなに現実感に溢れる所だったのか。

 

「目が覚めたか…トウカちゃん、今回の件…申し訳なかった。

儂が部下の教育をしっかりしておれば…」

 

「トウカ…って誰ですか?」

 

聞き慣れない名前に思わず首を傾げる。

私の名前は、そんなに可愛い物では無かったはずだ。

きっと、このおじさんの人違いだ。

 

そして、言葉を発した事で自分の声が子供のように高くなっている事にも気付いた。

 

「…?トウカちゃんは…君だろう?」

「私…トウカって言うんですか?」

 

私の言葉に、おじさん2人は目を見開いて固まった。

 

「まさか…記憶が…?青、医者を呼べ!」

「はっ!」

 

青と呼ばれた眼帯を付けた人が目で追えないほど早く病室から出ていく。

そして、青と言えば…NARUTOの登場人物だったハズだ。

 

「トウカちゃん…すまぬ…記憶を失うほど…辛い思いをさせてしまった。

儂が至らないばかりに…。」

「水影様、医師を連れてまいりました。」

 

白衣を着た女性が私の体を診察していき、記憶に関する質問もされていく。

 

驚く事に目を覚ました瞬間の痛みは時間と共に消えており、傷は薄れていた。

 

「流石…人柱力とも言える治癒力ですね。」

「人柱力?」

 

人柱力…って、え?

ここって…本当にNARUTOの世界なの?

 

「その身に尾獣を宿した者の事だ。

尾獣は全部で9体…一尾から九尾までおる。

トウカちゃんは六尾の人柱力。尾獣達は人知を越える強さをもっているため、人柱力も…迫害される事が多い。

トウカちゃんも…儂の部下が暴走し、入院に追い込まれる程の暴力と罵倒を受けてしまった。

…済まない…。」

 

水影様(仮)の懺悔を聞きながら、原作を思い出す。

 

六尾…骨格があるナメクジのような尾獣だったハズ。

原作ではウタカタが人柱力…つまり、原作より前の時代?

それとも、原作とは乖離してしまっているのだろうか。

 

「六尾と友達になれるかな?」

「…え?」

「どうやったら会えるんですか?」

 

「…尾獣と人柱力は精神世界で相見えると聞くが…。」

 

水影様(仮)が帰り、1人になった病室。

目を閉じて、精神を落ち着かせる。

 

周りの空気が変わったのを感じ、目を開けると、目の前にはヌメリがある白い壁…ではなく、六尾の体があった。

…近すぎて顔が見えないため、少し離れて見上げる。確か、上の触覚の様なものが目だったハズだ。

 

周りを見渡すと、湿気の多い洞窟の様な場所であった。

 

「初めまして。私…」

『トウカ、やね。

外での会話聞いてたやよ…俺の姿を見ても…友達になりたいと思えるんけ?』

「ん。

貴方が友達になりたくないと思うならそれで構わない。

何をやれば友達なのかは分からないけど…でも、貴方とは死ぬまで一緒にいるんだから信頼関係を築きたいと思ってる。」

 

『…俺もやよ、犀犬ってんだ。

色々教えたるけんね。』

「よろしくね、犀犬。」

 

手の大きさが違いすぎる事に驚くが、握手をする。

犀犬の手はフニフニと柔らかく、冷たかったけれど嫌な感じはしなかった。

 

--------------------------------------

 

「ここが私の家?」

『トウカはここで一人暮らしやったんよ。両親が亡くなってるから…。』

 

犀犬の言う通り、一軒家の中には人の気配はない。

 

意識を取り戻して2日。

トウカ()は血継限界の晶遁が使えると犀犬から聞き、手のひらに色々な水晶を出したり消したりしながら暇を潰していた。

 

具体的な術等は家にある巻物に書かれているとの事だ。

 

ふと冷蔵庫を覗くと、中身が大体が賞味期限切れとなっている。

…おそらく、まともな品物を売ってもらえなかったのだろう。

 

『買い物に出ても…品物じゃ無くて拳が来る事の方が多かったやね。

霧隠れでは、血継限界は隠避されやすいから…何かしら(・・・・)の血継限界を持ってるってのはバレてたし…余り晶遁を使いたがらなかったんよ。

晶遁は都市伝説や噂としか認識されてないから、使ったらまず目立つやよ。』

「そっか。

でも…生き残る為には血継限界だろうといくらでも使わないとね。」

 

私は4歳だから…後少しでアカデミー入学だ。

それまでに基礎はしっかりしておきたい。

 

犀犬曰く、今は第3次忍界大戦の真っ只中らしい。

この世界では、10にも満たない幼子だろうと戦場へと送られる。

人柱力で血継限界を持つ私であれば、アカデミーでの生活なんて、あってないようなものだろう。

 

 

 

寝室に鏡を見つけ、覗くと目の前の少女もこちらを見つめる。

桃色の目と、若草色の髪をした将来有望な容姿の少女だ。

 

 

子猫のような丸っこい目でこちらを見つめる鏡の中の私。

 

自分とのにらめっこを辞め、外に出る準備をする。

流石に賞味期限が1ヶ月弱も過ぎた物を食べる気にはなれなかった。

 



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防御率100%

犀犬に道を教えてもらい、お店が多い通りに出る。

 

殺気が凄い…完全に4歳の子に向ける目じゃない。

歩いただけでこれって…これをずっと受けていたら精神崩壊してもおかしくないだろう。

 

「何しに来た、化け物め…!」

 

男性がこちらに向けて拳を振り下ろすが、その拳がこちらに届く事は無かった。

 

目の前にはシャボン玉のような壁が出てきており、拳を受け止めていた。

殴ってきた男はシャボン玉の向こう側でなにか喚いているが、それを無視して相棒に確認する。

 

「(犀犬?)」

『なんにもしてへんよ?

こんな便利な機能は付いてへんし…前まではこんなの無かった…。』

 

謎の壁が守ってくれている間に、集まってきていた人混みから逃げ出す。

 

前までは無かったと言うことは、前世の記憶に関するものだろうか。

オートで守ってくれるというのは、我愛羅の砂が思いつくが…あれは我愛羅の母によるものだ。

 

「犀犬、私の前の人柱力は誰だったの?」

『トウカの母親やね。

トウカが記憶を失う少し前に病気で亡くなったんよ。父親も3歳の頃に亡くなってるし…。』

 

条件的にはビンゴだ。

まぁ、考えるのは後にしよう。

 

さっきの事を考えるに、中々ハードな買い物になりそうだ。

 

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「出ていけっ、呪いの魔女め…!」

 

呪いの魔女って…もうちょっとマシなネーミングは無かったのかと思いつつ、大人しく出ていく。

 

「また…ダメだった。」

 

40件は回り、化け物や呪われし血族などの罵倒や暴力を貰い─なお、拳などは全てシャボン玉で弾かれた─冷蔵庫のアレ(1ヶ月前の惣菜)を食べなければいけない気がしてきた。

 

正直、殺気と罵倒がここまで心に来るとは思わなかった。

原作のナルトを尊敬した瞬間だ。

 

人柱力を遠巻きにするならまだしも、殴ったり罵倒して精神的に追い詰めるのって…核爆弾でサッカーするようなもんだよね。

 

もし闇堕ちして街中で尾獣化して暴れ出したらどうするつもりなのだろうか。

 

やらないけどさ…。

そこまで考えが回らないほどのバカが殆どなのだろうか。

 

針のむしろの中で、品物を売ってもらえそうな所を探していると、背後から声がかかる。

 

「トウカちゃん、買い物?」

「…へ?」

 

紫色の目をした8歳位の少年…原作よりも幼い、4代目水影やぐらだ。

 

「…?犀犬、知り合い…なの?」

『そうやね、殴られかけた時に助けてもらって懐いてたんよ。

やぐら君、この子…色々あって記憶無くしちゃってるから…その、全部憶えてないんよ。

…ごめんね。』

「…!…何かあったの?」

 

周りに人がいない事を確認してから肩口に乗った犀犬から説明された内容に、やぐらさんは泣きそうな顔をしている。

 

可愛いな…女の子みたいだ。

 

『…聞きたい?

かなり不快になるよ?』

「そんなに酷い事があったのか!?」

『取り敢えず…今現在どこからも品物売ってもらえないから多少高くても良いから売ってもらえる所教えてくれる?

話すのはそれからでもいい?』

「勿論…トウカちゃん、こっち。」

 

手を繋ぎ、歩き出した私達。

…あれ、やぐらさんも人柱力なんじゃ…まだ違うのかな?

 

『犀犬、久しぶり〜人柱力の子と仲良くなったの?』

 

やぐらさんの肩に出てきた、3本の平らな尻尾を持つ隻眼の亀。

 

『久しぶりやね、磯撫。

トウカと友達になったんよ。』

『そっかぁ、良かったね〜』

 

間延びした喋りで幼さを感じさせる三尾。

きっと、擬人化したらショタっ子になるであろう。…人柱力もショタっ子だしね。

 

原作の時で身長143cm、驚異の可愛さを持つやぐらさんだが、原作では幻術で操られて恐怖政治を行って抜け忍が続出し、忍び刀七人衆は長十郎のみとなっていたハズだ。

 

…幻術対抗策を考えておこう。

暁に狙われるかも…いや、確実に狙われるだろうから。

 

原作でのやぐらさんは、イタチとの対戦で天照をくらって重症、そのまま行方不明だった筈だ。

(アニメのイタチ真伝参照)

 

色々と考えていると、ある店の前でやぐらさんの足が止まる。

 

「アザミさん、こんにちは〜。」

「やぐら君、こんにちは。

…あら、妹さん?」

「違いますよ、知り合いの子です。」

 

60代と思わしきおばあさんは、ニコニコと微笑んでいた。

 

「そうかい…可愛い子だね。やぐら君、今の内に女心をがっちり掴むのよ。」

「へ…い、いや…その…も、もう!揶揄わないでくだしゃい!

…揶揄わないで下さい!」

『やぐら、動揺しすぎだよ〜』

 

顔を真っ赤にして涙目で否定の言葉を噛むやぐらさんは、物凄く可愛いので眼福だ。

 

その後一通り買い物を終え、私の家へと向かった。

 

 



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モブ忍者のクズ率が異常な件

「それで、何があったの?」

 

一通り冷蔵庫を整理し終え、テーブルに座ってからやぐらさんが口を開いた。

 

『三日前、玄関前に霧隠れの上忍が待ち構えてトウカを連れ去って…大人数で暴力を加えたんよ。

それだけじゃない…2ヶ月前に亡くなった母と3歳の時に亡くなった父親からの贈り物を壊し、お前など愛されて居なかったと幻術まで使って徹底的に精神的な苦痛を与えていった。

…俺が幻術を解いてもまた別の忍びが幻術に掛け、また次の人間が続きから幻術に…って感じで全員のチャクラが尽きる直前に水影が助けてくれたけど、恐怖でパニックになって…。』

 

「そう…」

 

やぐらさんはそれっきり俯いてしまった。

初めて記憶を失う直前の話を聞き、水影様が沈痛の表情でいた事に説明がついた。

 

『トウカの亡くなった母が前の人柱力やったんよ…だから、まだ本人が人柱力だと分かってなくても、守ってやれる存在は俺だけだったのに…外に出て忍びに危害を加えると危険因子として始末されるかもって…幻術をスグに解く位しか出来なかった。

我慢出来ずに暴走しかけたし…俺もまだまだやね。』

 

「それはっ…!お前のせいじゃない…!」

 

『それでも、トウカが耐えられずに記憶を失ったのは事実やよ。

本人が人柱力とは知らなかったとはいえ…無理矢理にでも精神世界に連れて行って、怯えられる事を承知で伝えれば良かったんよ。

…モモカも、トウゲンも、トウカを愛していた。モモカの中から俺がずっと見てきたんやから間違いないって。

よく考えたら…あの泡の盾も、モモカが見てられずに出てきたんかもしれへんね。

今日初めて出てきたし…俺だけに任せられなかったんやね…。』

 

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「どちらが…化け物だ…!」

 

家に帰り、血が出るのも構わず拳を握りしめる。

帰る直前、六尾からはトウカちゃんの事を頼まれた。

 

『もしも…また同じような事があれば、磯撫経由で伝えるから…その、力になってくれる?』

 

比較的穏やかな性格の六尾だが、それでも…昔は人間に対して好意的というわけでもなかったらしい。

 

だが、トウカちゃんの母が人柱力の時から…パートナーとして、保護者として一番近くにいた。

トウカちゃんに自分が認知されて無かろうと…守ろうとしていた。

 

六尾が中にいて血継限界を持つからといって、トウカちゃんのような小さな子に余りにも酷い仕打ちが出来てしまう里人の心の方が化け物に近いだろう。

 

『やぐら〜、大丈夫?』

「あぁ、大丈夫だ。」

 

ゴツゴツとした見た目とは裏腹に、内向的で優しい磯撫は俺を心配そうに見上げる。

ひんやりとしている頭を撫で、精神を落ち着かせる。

 

トウカちゃんは、全ての記憶を失った。

仲が良かった俺の事も、愛してくれた両親の事も、何より自分の事も…全て、分からなくなった。

 

 

俺も…それなりに言われてきたが、兄がいて、親友とも呼べる友達がいて、守られてきた。

 

だが、トウカちゃんは…六尾のみだ。

 

血継限界も、六尾の力も…命を守ることは出来るが、心まで守ってくれるとは限らない。

戦時中で、幼い子供であろうと戦場へと送られるだろうトウカちゃんにとって、理解者の存在…無条件で愛してくれる存在が、何よりも支えとなる。

 

俺が…トウカちゃんを、支えよう。

 

「ただいま〜」

「あ…兄ちゃん、おかえり。」

「どうした?なんか元気ねぇけど…」

「い、いや…その…。」

 

紫色の目とアッシュの髪は同じだが、左頬の傷が無いだけの…俺とほぼ同じ顔立ち。

双子では無いのだが、後ろ姿までよく似ていると言われ間違われやすい。

 

2歳歳上なのに、俺とほぼ同じ体型だ。

 

トウカちゃんの事をどうやって説明しようか悩んでいると、磯撫が甘えるように兄の足元に擦り寄りながら説明を始めた。

 

『あのね、犀犬…六尾の人柱力の子が…』

「トウカちゃんに何かあったの?」

『うん…その子が、記憶喪失になっちゃったの。』

 

兄にトウカちゃんが受けた仕打ちを説明すると、みるみるうちに泣きそうな顔になった。

 

この里(霧隠れ)、芯から腐ってやがる…。」

 

思考回路も似通っている俺たちは、同じ結論に達した。

 

一度霧隠れを壊して作り替えなければ根元から腐り落ちる、と。



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血継限界の詳細…もしかして:超能力

やぐらさんとの出会いから2日。

私は庭に立ち、印を結ぶ。

 

「晶遁分身の術!」

 

術が発動し、煙を立てて私とそっくりの分身が10体ほど現れる。

暴力を受けようと、強度があるため消えにくいだろう。

 

9体は森での修行に回し、1体は買い物、私は変化してある場所に向かった。

 

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初代火影・千手柱間と2代目火影・うちはマダラは来たる〝予言された世界の危機〟の為、特殊な力を使い全盛期のままで寿命を伸ばしている。

 

今は4代目火影・波風ミナトが木ノ葉を守っている。

 

本に書かれた内容は…中々衝撃的だった。

うちはマダラが闇堕ちしていないと言うことは、オビトも闇堕ちしていないと言うことになる。

 

つまり…やぐらさんが操られる事も無いぜヒャッハー!って事か。

 

歴史の本を棚にしまい、晶遁について書かれている本を探すが…中々無い。

 

諦めて図書館から家路につく。

 

本格的な晶遁の修行を始めて、幾つか分かった事がある。

晶遁は、火・水・土・雷・風の性質変化を組み合わせて発動するものではなく、どちらかと言えば双魔の攻(左近の血継限界)や屍骨脈等の〝体の構造〟が根本的に違うものに分類されるということだ。

 

犀犬曰く、父が使用した所を見た時は写輪眼のように目が〝光って〟見えたらしい。

 

晶遁の他に瞳術を持っていたのか、晶遁と瞳術はセットの物なのか…全く分からない。

 

巻物も、全ては読んでいないのだ。

膨大な量があり、今朝出した10体の他に10体は巻物の解析に充てている。

 

そこに書いてあればいいのだが…読みたい本も読めた為、家に帰って変化をといた。

 

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新しい事が分かったのは、図書館に行ってから2日の事だった。

修行が終わり、全ての分身を解くと多少の疲労感と経験値、情報が入ってきた。

 

修行組は晶遁・螺旋丸と晶遁・晶光弾を習得、今は〝転送鏡〟という相手の放った術を鏡に吸い込み、任意の時と場所に出す術を開発中らしい。

 

そして、一番の収穫は巻物組の情報だ。

 

晶獅(しょうし)一族〟の歴史や、血継限界の詳細が書かれた巻物を発見したのだ。

 

晶獅一族は、晶翠眼(しょうすいがん)と呼ばれる瞳術を持っており、余りにも強い力を持った瞳術を隠して生きてきた。

晶遁も、晶翠眼と同じく晶獅一族の血継限界であり、ひた隠しにしてきたようだ。

 

出来るだけ隠してきたため、世間では伝説、又は噂として扱われてきたのだ。

 

家系図を見ても、父以外は皆断絶してしまっている。

どちらかと言えば、血継限界を持つ一族でかなり栄えている日向一族やうちは一族の方が異端に近いのだろうが。

 

晶翠眼の開眼条件は、〝誰かを心から助けたいと願った時〟だ。

 

うちはの写輪眼はもがき苦しむ事により特殊なチャクラが放出され開眼に至るが、晶翠眼は〝他人の為に願う〟事で開眼に至る。

 

本心から他人に対して願える人間は案外少ないないため、開眼者も少ないらしい。

 

 

晶翠眼能力は、経絡系と色を見る事が出来る。

さらには動体視力も上がり、残留思念感応(サイコメトリー)精神感応(テレパシー)念動力(サイコキネシス)瞬間移動(テレポート)などの瞳術(超能力)も使えてしまう。

 

確かに多彩な瞳術が使える上に晶遁まで使えるなら、下手にばらせば周りの人間から危険因子として扱われるかもしれない。

 

父が使う時は味方がいない時に敵を皆殺しにしてきたと母に語ったらしい。

敵味方関係無しに目撃者0で任務を完遂し、母の前で初めて他人の前にその力を晒したのだ。

 

親戚が居ないことは残念だけど…瞳術の能力を知ることが出来たのは大きい。

 

取り敢えずの目標は晶翠眼の開眼だ。

 



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VS雲隠れの忍

家の中にある巻物も解析が終わり、殆どの分身を修行に回すことにした。

 

あれからやぐらさんとは会えていない。

やぐらさんがどこら辺に住んでいるのかも知らない為、こちらからやぐらさんの居場所を知ることが出来ないのだ。

 

日課になっている森への散歩は、こうして外へ出る事で、前みたいにやぐらさんと偶然会えたらいいなという気持ちもある。

街中であれば殺気を向けられすぎて疲れるため、こうして森の中へと進む。

森であれば、修行しているかもしれないから。

 

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カキンッ…カキン…と金属がぶつかる甲高い音が聞こえ、音が聞こえる方角へと走る。

 

『…磯撫から連絡が入ったやよ。

やぐらが森の中で雲隠れの忍集団に襲われてるって。』

「…助けなきゃっ!」

 

スピードを上げて音のする場所へと向かうと、開けた場所で戦闘が行われていた。

 

10名の忍がやぐらさんを取り囲んでいる。

7名は地に突っ伏しており、事切れている事がわかる。

 

状況はやぐらさんが劣勢。

半透明の赤いチャクラに覆われたやぐらさんは、右肩から大量の血を流していた。

 

向こうからは木に隠れており、私の姿はバレていないようだ。

その隙に、手にチャクラを溜める。

 

「晶遁・螺旋丸!」

 

私が投げた(・・・)桃色の螺旋丸は1人の忍を貫通し、直線上にいた忍の肩に当たり2人を水晶で覆っていく。

 

驚いた雲忍達を水晶の槍で攻撃し、水晶で覆って上から塊を落として砕く。

水晶を解除すれば、残っているのは粉々になった、雲忍〝だった〟モノであった。

 

初めて人を殺した。

後悔はしていないしする予定も無いが、確実に帰った後に吐くだろう。

 

「…やぐらさん、大丈夫?」

「あ、あぁ…えっと…え?」

 

驚きすぎて挙動不審になっているやぐらさんだが、当然だ。

 

都市伝説と言われる水晶を扱う血継限界の威力を目の当たりにしたのだから。

そして、やぐらさんが驚いているのはそれだけではない。

 

私の眼は桃色と翡翠色に発光している。

晶翠眼を、開眼したのだ。

 

取り敢えずやぐらさんに近づき、怪我の治療を開始する。

1番酷いのはやはり右肩の刺し傷だ。

 

水遁で作り出した水で汚れや雑菌を洗い流し、手にチャクラを溜めると緑の光が放出される。

 

私の手を見れば、桃色のチャクラが流れている事がわかる。

犀犬のチャクラもしっかり映っている。

 

右肩の治療が終わり、細かい怪我を治していくと同時に、残留思念感応(サイコメトリー)精神感応(テレパシー)を発動する。

 

〝水晶…?都市伝説、本当?〟

〝眼…瞳術?〟

〝どうして、なんで〟

 

色々な感情が頭に響く。

疑問が大量に出てきているらしく、固まっている。

 

襲われた時の状況もしっかりと入ってきた。

17名から襲われ、善戦していたが…体力面でも経験面でも劣るやぐらさんはあっという間に追い込まれてしまったらしい。

 

『やぐら、しっかりして〜。』

「そ、そうだ…助けてくれてありがとう、トウカちゃん。その目は…」

「…晶翠眼。

晶遁と晶翠眼は晶獅一族の血継限界だよ。」

『開眼条件は〝誰かを心から助けたいと願った時〟やよ。』

 

アカデミー入学前に開眼できたのは幸いだった。

 

「やぐらさん、目閉じて。」

「…?お、おう…。」

 

私の突然の要求に、やぐらさんはとまどいながらも目を閉じた。

…可愛いキス顔にしか見えない。

 

頭を振って雑念を振り払ってやぐらさんの家を確認し、一気に飛んだ(・・・)

 

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一瞬で景色が変わってプチパニックになったやぐらさんを宥め、私も帰ることにした。

 

自宅に飛び、部屋着に着替えてからある巻物を取り出す。

 

晶翠眼の全てが記されているらしい巻物だ。

特殊な封印術まで掛けられており、晶翠眼を開眼した者にしか見ることが許されない。

 

それ程、晶翠眼というのは大層な代物なのだろう。

いや、開眼したての今日だけでもそのチート具合がよく分かった。

 

残留思念感応(サイコメトリー)精神感応(テレパシー)で敵の動きを先読み出来る…どころか、戦わずして敵の情報を抜き取れるし、無駄な戦いに時間と体力を使わなくてもいい。

瞬間移動(テレポート)で敵を地中奥深くに生き埋めにすることも出来るし、念動力(サイコキネシス)で敵の術を使って逆に怪我を負わせる事も出来る。

 

転生者とはいえ、ただの小娘が思い付くだけでもかなり多種多様な戦法が取れる。

晶遁との組み合わせも考えれば、一騎当千と言ってもいいだろう。

 

何が書かれているのか戦々恐々としながらも、巻物を開いた。



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父との再開(初対面)

巻物を開き、書かれていた手順に従って晶翠眼を使う。

 

ドロンと煙が立ち上り、桃色の瞳に空のような髪色の…写真でしか見た事のない、父の姿が現れた。

 

「お父さん…?な、なんで…」

「大きくなったね、トウカ。

晶翠眼を開眼するのが思ったよりも早かったけど…でも、成長している娘の姿を間近で見ることが出来て嬉しいよ。

それと、辛い思いをさせたようだね。済まない…僕がしっかりしていれば…。」

『トウゲン…!死んだんじゃ…!』

「あぁ、確かにあの時俺は死んだ。

ここにいるのは、特殊な術式を組み込んだチャクラ体…魂だけ黄泉から呼び寄せた、色々と制限されている限定的な物だよ。」

 

父曰く、この巻物は一族がマンツーマンで晶遁や晶翠眼の使い方を伝えて行くための物で、最後に巻物を開いた者のチャクラが自動的に組み込まれ、組み込まれてさえいれば死んだとしても魂は呼び寄せる事の出来る高度な技術が使われているらしい。

 

読むだけの巻物だけでは技術を伝えて行くことは出来ず、先輩開眼者のいない世代ではどうしても手探りになりやすい。

隠して生きていく事を選んだとはいえ、伝えて行くことを放棄して子孫が困るのを放置する事は出来なかったようだ。

 

チャクラが持つのは約1週間。

一族の者以外の人間からは見えないようになっている。

 

一通りの説明が終わり、その日は遅かった為にご飯を食べて寝るだけに終わった。

 

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それから1週間地獄のような修行を行い、何とかお父さんの満足そうな顔を見ることが出来た。

 

…一本も取れなかったがな!

 

晶翠眼で考えを読もうとすると頭が割るように痛み、一方的に読まれてしまうのだ。

 

恐らく、私が処理しきれないほどの情報を垂れ流していると思われるが…それを出来るのは世界を探しても父だけであろう。

 

お父さんが帰る直前、聞きたくてウズウズしていた事を聞く。

 

「ねぇ、そういえば…攻撃に対して自動的に泡が出てくるのってなんで?どうなってるの?」

「あー…」

 

お父さんは言いにくそうに目を泳がせ、慎重に言葉を選んで話し始めた。

 

「トウカが記憶を失った日、余りの酷さにお母さんの堪忍袋の緒が切れてね…近くにいた子供を持つ親の魂も手伝わせて、無理矢理空間の狭間を壊してそこに居座って、精神は犀犬に任せる他無いからせめて肉体だけでも…痛い思いをしないようにって操ってるよ。」

「…え、あれ手動だったの?」

 

頷いたお父さんに少し眩暈がしてしまう。

我愛羅の母のように、不思議パワーで成り立っているのでは無かったのだ。

 

…いや、不思議パワーと言えばこちらもどっこいどっこい、団栗の背比べか。

空間の狭間って壊せるの?壊したお母さんって何者?しかも、壊すだけじゃなく居座る?

 

「お母さんって…生前からそんなだったの?」

「うん…何も変わってないよ。」

『さすがモモカやよ。

トウカを守る為なら命を掛けてでも…絶対に諦めない。』

「それと…お母さんから手紙を預かってる。」

 

お父さんは、一つの封筒を何も無いところから取り出した。

…物品まで届くってなんなの?ってかどうやって書いたのかどうやって封筒と便箋を手に入れたのなど、色々突っ込みたい所は色々あったけど、桃の花が描かれた封筒をあける。

 

〝トウカへ

お母さんは色々あったけど、黄泉と現世の狭間で何とかやっています。

トウカと犀犬が仲良くなれた事に歓喜したり、小さな子供であるトウカ(天使)に平然と暴行を働く里人達に何も無いところでコケやすくなる呪いを掛けたり、トウカとやぐら君との仲を応援したり、忙しくはあるけれどとても楽しく過ごしています。

 

 

トウカともっと遊んであげたかった。

もっと一緒に過ごしたかった。

もっと成長を見守りたかった。

私がトウカを守って抱き締めてあげたかった。

寂しい思いをさせてごめんね。辛い思いをさせてごめんね。

トウカが私達の事を全て忘れようと、私達はずっとトウカを愛しているから。

犀犬と仲良く生きてね。

お母さんより〟

 

濡れた後が残る紙と、震える文字が何よりもお母さんの気持ちを代弁していた。

手紙を置いて、いつの間にか流れていた涙を拭う。

 

「お父さん、こっちからは何も送れないの?」

「ん?送れるよ?

何かあげたいものでもあるのか?」

「うん。」

 

部屋から水晶で作られた宝物箱を移動させ、その中から1番綺麗に出来た自信作を取り出した。

 

桃の花が埋め込まれたペンダントだ。

透明の水晶は光を反射して銀色に光るようにカットされており、ラメとパールを詰め込んだような輝きを放っていた。

 

「これ…一番綺麗に出来たの。

桃の花が入ってるんだ。…お母さんに、あげる。…あと、これはお父さんに。」

 

私が取り出したのは、ブレスレットだ。

チェーンのように加工された翡翠色の水晶に、リボンのように薄い蒼水晶を通した物。

 

二つを渡し終えると、お父さんの体はうっすらと透け始めた。

 

「トウカ…うぅ…ありがとう…!

愛しているよ、トウカ…!

例えトウカが僕達の事を覚えていなくとも…トウカは、僕達の宝物だ。」

「お父さん…ありがとう。

お母さんにも、言っといてね。」

『俺からも、モモカに伝言やよ。…もう絶対にトウカを1人にはしない。

トウカの心の支えになるって。』

「あぁ…任せろ。

トウカ、犀犬…1週間、2人と過ごせて楽しかった。ありがとう…。」

 

お父さんは影のように消えていく。

お父さんがいたのはたった1週間だったのに家が広く感じ、寂しくなって犀犬を抱き締めた。

 

「犀犬…居てくれてありがと。」

『一緒に居るくらいならいくらでも出来るやよ。

…俺が、2人の代わりにトウカを守ったるけんね。』



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照美メイとの出会い

「皆の者、捕らえろ!」

 

水影様の号令で、一斉に忍達を捕らえていく。

幻術でチャクラが切れかけていた忍達は、抵抗らしい抵抗も出来ずに捕まった。

 

男達が寄ってたかって暴行を加えていたのは、恩人の子であり、お姉ちゃんと懐いてきていた六尾の人柱力、トウカちゃんだ。

 

私が整えていた髪型もボロボロになっていて、桃の花のような瞳は恐怖で揺れ焦点が定まっていない。

全身に酷い傷があり、衣服が乱れ…1部の男達の下半身の衣服も乱れていたため、何をしようとしていたかは明白だった。

 

それだけは未遂で済んで良かったと言うべきだろうが…ここまで酷い事をされるまで気づけなかった。

 

そして、付近には壊されて破片になった両親の遺品が落ちていた。

 

怯えた目でこちらを見ながらも、尾獣チャクラを出したまま警戒している。

いや、警戒しているのは…中にいる六尾だろう。

恐らく、自分の身から溢れ出すチャクラに、トウカちゃんは気付いていない。

 

こちらに敵意が無いと踏んだのか、トウカちゃんを包んでいたチャクラが収まっていく。

 

足に負った怪我で立てずに座り込んで、ごめんなさい、私なんていなければ…とうわ言のように呟いているトウカちゃんに近付いてそっと抱きしめる。

 

「ごめんなさい…私が、もっとしっかりしていれば…貴女を守るって決めたのにっ…守れなかった…!」

 

気を失った彼女の肌は青白く、人形のように血が通っていないようだった。

だが、激しい暴行による打撲痕とクナイによる刺し傷や切り傷から溢れる血によって人形ではないと感じる事が出来た。

 

医療忍者が応急処置をしていく中で、ボロボロになったトウカちゃんの姿を見る。

無事な所が無いのではと思える程傷だらけで、足の骨が折れているのが分かる。…恐らく、逃げないようにするためだろう。

 

酷い怪我を見慣れている医療忍者達も一様に顔を顰め、痛ましい物を見る目であった。

 

クズ共の行動には反吐が出る。

寄ってたかって子供を暴行し、幻術まで見せて両親の遺品を壊す事によって徹底的にトウカちゃんの心を徹底的に打ち砕いた。

 

霧隠れは…ここまで腐っていたのか。

 

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「記憶…喪失…?」

 

あれから3日、トウカちゃんの意識が戻ったと聞いて病室へ向かおうとする私を水影様が引き止めて執務室へと入れた。

 

そこで聞かされた内容に、心臓が嫌な音をたてる。

 

「あぁ。

両親の事も、君の事も、自分の事も…全て忘れてしまっている。

医師によると、思い出す可能性はゼロではないが、無理に思い出させるとパニックに陥る可能性が高いとの事だ。」

「私の、せい…っ!」

 

足が竦み、唇を噛むことで涙を堪える。

 

「照美、君のせいではない。

危険因子の上忍を見抜けず、暴挙を許した儂が悪いのだ。

責任は全て水影である儂にある。」

「でもっ…!

トウゲン様とモモカ様の忘れ形見であるあの子を守る事が出来なかった!私が、もっと異変に気が付いていれば…!」

「落ち着けっ!」

 

水影様の声に、深呼吸をして気をなだめる。

 

「あの子は、人柱力として幼かろうと戦場へと送られる運命を辿る事になる。

大人が始めた戦争に実力があるからといって幼い子供を送り出す事はしたくないが…今すぐにでも送り、尾獣の力を使えといった声も大きい。

私としては、トウカちゃんのアカデミー卒業時期に合わせ、やぐら君も下忍として同じ班にしておきたい。

 

トウカちゃんには、実力がある。アカデミーも最短で卒業できるだろう。

…その時に、照美が導いてくれ。」

「…!はいっ!」

 

水影様の執務室を出た私は、今まで以上に闘志に燃えていた。

 

担当上忍として、あの子の近くで守る事が出来るように。

 

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犀犬を肩に乗せ、水晶にするための花を探す為、森の中を晶翠眼を発動したままゆっくりと歩いていた。

 

「…ん?」

『誰かおるやね…あ、メイさんやよ。』

「知り合いなの?」

『モモカが血継限界を理由にいじめられていたメイさんを助けてよく家に遊びに来てたんよ。…記憶喪失になってからは見てないけど…。』

 

気のそばで佇むメイさんを見やり、精神感応(テレパシー)で心を読むと後悔と悲しみ、自責の念と強い決意が伝わってきた。

 

〝担当上忍になれるよう頑張らなきゃ〟〝今度こそ、守る〟〝私のせい〟

 

私が記憶喪失になった事件で、異変に気付いていれば守れたかも知れないと責めているようであった。

 

水影様からは私のアカデミー卒業後に担当上忍に、と言外に伝えられたらしい。

 

ふとメイさんの周りに目をやると、綺麗な椿が咲いている。

 

そっと近付いていくと、メイさんと目があった。

 

『メイさん…話すのは初めてやね。

モモカの中にいた、六尾やよ。』

「尾獣…?」

 

なんで、と驚きで目を見開くメイさん。

原作より若く、15、6歳に見える。

 

『今はトウカが人柱力やから、森の中とか人に見られる心配が無い所では外に出てるやよ。』

「そう…トウカちゃん、私は貴女のお母さんにお世話になった照美メイよ。宜しくね。」

「宜しく、メイさん。」

「トウカちゃんは…どうしてここに…?」

「お花、取りに来たの。

水晶に閉じ込めるんだ。」

「…?水晶?」

「見てて」

 

晶翠眼を発動させ、念動力(サイコキネシス)で赤と白の椿を傷つけないように取って青みがかった水晶に閉じ込めていく。

 

ダイヤモンドのようにカットして、最終的にハート型にする。

 

隣でポカンと固まったメイさんの方を向き、赤椿の方を手渡す。

 

「メイさん、上手く出来たから上げる。」

「…へ?」

「白の方がいい?」

「い、いえ、赤い椿、好きよ。…綺麗ね。」

 

角度を変えて見るメイさんの目は、キラキラと輝いていた。

 

「水晶を操る一族…本当にいたのね…初めて見たわ。」

『トウゲンの一族からの遺伝やよ。

あまりにも目立つから、代々一族の者は隠れて…目撃者をほぼ0に抑えて生きてきたらしい。』

「そう…」

 

 

メイさんと別れ、瞬間移動(テレポート)を発動させる。

 

「一瞬で帰れるって便利…チートよね。」

 

何から何まで規格外だ。

消費チャクラも少なく、瞳術も多彩で、闇に堕ちれば落ちるほど強くなるなんてめんどくさい事もない。

 

よく考えたら一族単位で見れば日向が最強な気がする。

安定的に白眼が現れ、情緒不安定でもない。

つまり、早死したくなければ…

 

「犀犬、目標が決まった。

日向一族全員を相手にして勝てるくらい強くなるわよ!」

『もうなってr…ゲフンゲフン、なんでも無いやよ。

うん、まだまだ改善の余地はあるもんね。』

 



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さぁ、入学式でガチムチ達と踊ろう!

「これからアカデミー生として─…」

 

壇上に立っているアカデミーの校長の有難い長話がやっと終わり、初めてのホームルームがある為案内に記されていた教室へと向かった。

 

私が歩けば距離を取られ、誰かと目線が合うこともない。

周りからは私への得体の知れない恐怖や、関わりたくない拒絶感が〝入って〟きた。

まぁ、私はすぐに卒業するハメになるだろう。

戦時中に人柱力をアカデミーで眠らせるなど、上層部が許すはずもない。

 

お父さんとの修行により瞳力が上がった結果、周りの人間の強い感情が何もしなくとも入って来るようになった。

 

あくまでも強い感情だけだし、正確に分かるわけでもない。

伝えたい、とその人が思っていれば別だが。

 

悪意の類は分かりやすいため、奇襲は効かない。

これでまた、強くなれた。…気がする。

 

お父さんから一本も取れずしまいだったため、余り実感は湧かないけれど。

 

それはともかく、教室へ入って椅子へ座る。

 

「みんな、席につけ!

このクラスの担当となったミシマだ。

まずは自己紹介から、廊下側の一番前の席に座ってる奴からだ!」

 

…最初ってツイてないな。

席を立ち、どうせ一年しかいないだろうし必要最低限でいいかと口を開く。

 

「私の名前はトウカ。…将来の夢は強くなって大切な人を守る事。」

 

犀犬と、写真の中の両親と、家の巻物、メイさんとやぐらさんかな。

 

…思ったよりも多い。

本当に霧隠れが嫌になれば、山奥に家ごと転移してやろう。

 

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「晶遁・翠晶結界の術!」

 

私を中心に、半径2mの地面が水晶のように輝き、そこに入ってきた暗殺者と思わしき者が水晶の鎖に繋がれる。

 

外そうともがく事も出来ない暗殺者の額宛は、岩隠れの物だ。

 

…忍者なのに、一発で所属が分かる額宛をしているのはどうなんだろう。

忍者と名乗るなら、敵国の下忍を殺して額宛を手に入れて紛れ込むくらいはして欲しい。

簡単に所属をバラすとは…他国で秘密裏に活動する時くらい、額宛は隠すなりしないと無駄な戦闘が増える事が分からないのだろうか。

 

だから忍者ではなくNINJA風魔法使いって言われるんだ。

 

それはともかく、残留思念感応(サイコメトリー)で確認してみれば、土影からの〝六尾の人柱力が実力を付ける前に始末しろ〟との命令で動いている事が分かった。

 

とりあえず精神感応(テレパシー)であるグロ映像を叩き込む。

下手な幻術よりお手軽簡単確実な物だ。

 

襲ってきた忍は、白目を剥いて穴という穴から色々な液体を出し、ピクピクと痙攣しながら「あへぇー…」などと口走っており、精神崩壊を起こしてしまっている。

 

…ちなみに何を見せたのかと言えば、〝カイリキー&ゴーリキー集団(♂♀混同ガチムチ集団)に替わる替わる(自主規制)(アッー!)な事をされる〟というものだ。

 

『なぁ、あのガチムチ達は何でお揃いのパンツ穿いてるん?』

「あれ、パンツじゃなくて模様らしいよ。♂も♀も一緒とかおかしいでしょ?」

『つまり…安心してください、穿いてませんよってことやね。』

 

…ちなみに公式設定だ。

それはともかく、晶遁分身を飛ばして水影へ手紙で言い訳を伝える。

 

〝岩隠れのおじさんに襲われて返り討ちにしたら(精神的に)壊しちゃった(てへっ)〟

 



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看病には卑遁が一番

精神的に壊しちゃった(てへっ)事件から1ヶ月。

 

何をしたのかと聞かれ、(簡易)幻術を見せたら壊れたの一点張りで通した。

 

そして、あの事件以来精神感応(テレパシー)を使った簡易幻術の研究を重ねていた。

 

前世ではネットでグロ画像なども見てきた為、それを思い出して晶遁で作ったノートに書き留める。

 

他の人から見れば乳白色の水晶盤、私にはノートに見える物だ。

 

タブレット風のこのノート、かなり重宝している。

前世の知識を覚えているだけ書き留め、それを元に術や物作りに活かすのだ。

 

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「メイさん、大丈夫?」

「えぇ、大丈夫よ。…トウカちゃんがぎゅってしてくれたら楽になるかも。」

「ぎゅー!」

 

メイさんのフカフカなマシュマロに飛び込み、スリスリと猫のマーキングのような行為をする。

優しく頭を撫でてくれる手は熱く、それでも普段通り慈愛の篭ったものであった。

 

メイさんが過労で熱を出してしまったのだ。

 

冷却機能がある泡を出し、額や脇の下を冷やせばメイさんの苦しそうな息遣いも落ち着いてきた。

 

メイさんの家に泊まる事にして、家から着替えなどを取り寄せる。

 

晶翠眼(卑遁)お取り寄せ(囮寄せ)の術!」

『血継限界の無駄使いやね。』

「効率的な使用方法と言ってほしいな。

使わずに腐らせるより、こうして使った方がいいに決まってるじゃない。

卑遁は晶遁より強いんだから。」

『へぇ、卑遁のチカラってすげーやよ!』

 

着替えと馬鹿なやり取りも終わり、後は寝るだけとなった。

メイさんと同じ布団に潜り込み、頭を撫でられる。

 

「髪…伸びたわね。

トウカちゃんの髪、私が切ってたのよ。…また切ってあげる。」

「ホント?メイさん、早く良くなってね。」

「勿論、すぐにでも良くなるわ。」

 

肩を越してショートボブからセミロングとなった髪を愛おしげに撫でながら約束してくれた。

 

私が眠りにつく直前、小さな声が聞こえた。

 

「大好きよ、トウカちゃん。

私が、貴女を守るから。」

 

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「ふぅ…スッキリ〜…。」

 

肩よりも伸びていた若草色の髪は、顎辺りで切りそろえられていた。

 

メイさんの家から帰り、森の中を進む。

瞬間移動(テレポート)を使えるようになり、長距離を歩く事が少なくなったため、花探しの時は自分の足で歩いているのだ。

 

『うんうん、可愛いやよ。』

「本当に…可愛いね、トウカちゃん。」

 

突如後ろから掛けられた声。

 

「…やぐらさん?あれ?」

 

やぐらさんと似た容姿の…左頬の傷が無いだけの男の子が立っていた。

私がやぐらさんと口にすれば、困ったように苦笑いを浮かべる。

 

「良く間違われやすいんだけどね。

やぐらの兄、ユウムだよ。因みに、やぐらの2歳上。」

「初めまして。私、トウカ。」

 

「初めまして、か…。」

 

苦しげな顔を見せたユウムさんだったが、近づいて来たと思えばいつの間にか抱き締められていた。

 

「済まない…俺…守ってやれなかった。」

「ユウム、さん?」

 

記憶を失ってから出会う、私を知る人達は皆が責任を感じているようだった。

後悔や自己嫌悪などが一様に伝わって来る。

 

〝守ってやれなかった〟

 

皆が口を揃えて言う言葉だ。

 

もしも、記憶を失う前の私に何か言えるとしたら。

 

こんなにも大切に思ってくれる人が沢山居るんだよ、ひとりじゃないから大丈夫だと伝えたかった。



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戦争編
下忍の第一歩


「トウカちゃん、一緒に帰ろ?」

「うん!」

 

教室のドアの所から顔を出して私に話し掛けて来たのは、やぐらさんだ。

やぐらさんは時折こうして一緒に帰ろうと言ってくれるのだ。

 

入学から約半年。

未だにぼっち生活を続け、学年首位をキープし続けている私を誘う人間はおらず、やぐらさん達がこうして誘ってくれるのは有難くもあった。

 

〝可愛い〟〝トウカちゃん、好き〟〝言えない、嫌われたくない〟

 

瞳力も上がって晶翠眼を発動して居なくともある程度は心を読めるようになった。

遮断する事も可能だが、奇襲に対して先回りする事が出来なくなる為最小限に抑えている。

 

やぐらさんの好きは、まぁ…〝そういった〟好きなのだろう。

手を繋いで私の家まで送って貰い、名残惜しそうに帰っていくやぐらさんを見送ると、家の中に入る。

 

私達のアカデミー卒業も近い。

同じ班に配属され、戦場を駆け抜けるハメになるだろう。

人を殺す事に慣れているとは言えない。

だけど、初めて人を殺したあの日から、既に覚悟は決まっている。

 

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「収穫無し、か…。」

 

晶遁分身を変化させ、図書館へと情報収集へと向かわせていた。

大まかな歴史が原作とは変わり、各里の状況も変わっている事だろう。

 

だが、他里の情報はそれほど多くない。

 

柱間とマダラのようなビックネームが公表している物ならまだしも、他里においそれと情報を垂れ流す里はない。

 

この世界ではネットなんてない。

スマホで簡単に世界中の情報が集められる前世は、本当に恵まれているのだろう。

 

情報一つにしても命懸けだ。

 

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卒業試験が近づき、不安で目に見えて元気を失くすやぐらさんに、ある物を手渡す。

 

「これは?」

「…お守り。」

 

私が手渡したのは、紫水晶のネックレスだ。

(やぐらさんにとって)効果抜群のお守り。

 

証拠に、歓喜の気持ちが入ってきた。

 

〝嬉しい〟〝トウカちゃんからの贈り物〟〝家宝〟

 

「ありがとう、トウカちゃん。」

 

やぐらさんの後ろに花が咲いているのが見えた気がした。

…それほど、可愛い笑顔だった。

やぐらさんの背中を見送り、犀犬がポツリと呟く。

 

『気持ちがどんどん強くなってる…これは、トウカであっはんうっふんな事を考えるのももうすぐやよ。…ピンクな映像にも慣れとくんよ?』

「…考えないかもしれないし」

『やぐらも一応男で立派な象さんがついてるんよ?』

 

やめれ、象さん言うなし。

まぁ、男性の生理現象にとやかく言うつもりもないが…最初のうちは気まず過ぎて目を見れないであろうことは、簡単に予想できた。

 

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「トウカちゃん、俺が…トウカちゃんを守るよ。」

「なら、やぐらさんの事は私が守る。」

 

私がそう返すと、複雑そうな表情を見せる。

私のような5歳児だろうと、容赦無く下忍として任務に着くことになった。

9歳であるやぐらさんも、本来ならば…守られるべき子供だ。

 

それでも私を守ると言ってくれた彼を守りたい。

 

「あなた達の担当上忍、照美メイよ。

知っての通り、今は戦時中で…実力があれば、ドンドン戦場へと送られる。

下忍であろうと、あなた達はハードな任務をこなす事になるわ。

絶対に…私より先に死なないで。あなた達には、長生きする義務があります。」

 

私達3人はしっかりと頷き、上忍としての任務へと向かったメイさんの背中を見送る。

 

―やぐら、トウカ、君麻呂。

 

後に幼き実力者として歴史に名を刻む事となる3人の英雄が、忍としての一歩を踏み出した―。




戦争が始まれば、殆どの人間が卑遁・手の平返しの術を使うようになりますですよ


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初任務は命懸け

忍としての初任務は、木ノ葉との戦いの最前線への物資補給だ。

 

一通り目の能力を―精神感応(テレパシー)以外―メイさんに伝え、瞬間移動(テレポート)で指定の位置へ物資と共に飛んだ。

 

転移先で待っていたのは、2小隊8名であった。

部隊長の男がこちらに話し掛けてきた。

 

「お前達が物資補給の班か。

荷物は俺が預かる。任務完了を水影様へ―」

「メイさん…この人、木ノ葉の忍。

霧隠れの下忍の額宛を奪って補給の断絶の任務に当たっているらしいですよ?」

 

晶翠眼を開眼した私がメイさんに伝えると、木ノ葉の忍は舌打ちして額宛を捨てる。

ここで他里に物資を奪われると、霧隠れにとってもかなりの痛手だ。

 

「ここで…死んでもらうぜ、人柱力共!

血継限界持ちと人柱力を一気に処理するチャンスだ、いくぞ!」

 

私達の倍の人数で、私達に襲いかかる。

忍術、体術、クナイや手裏剣が私達に降り掛かった。

 

だが、私達に人数は関係ない。

メイさんと私で武器を溶かし、君麻呂が骨で体術使いの体を抑え込み、やぐらさんが水で火遁を鎮火する。

 

「晶遁・破晶降龍!」

 

桃色水晶で作られた龍が、木ノ葉の忍を襲う。

ある者は逃げようとして足をもつれさせた隙に水晶の粉となり、その様子を見た隊長らしき人物は撤退を叫ぶが、晶遁・翠晶牢で拘束される。

 

他の忍も、3人に拘束されたり殺されたりしている。

 

『尾獣を狙う任務に当てられるくらいやから実力者かと思ったけど…大したこと無かったやね。』

「いえ、全員上忍の実力者よ?

ここにいるのが規格外な人間ばかりなだけで…。」

 

まぁ、尾獣からしたら確かに生ぬるい相手でしょうね、とメイさんは付け加える。

 

確かに、戦時中とはいえ幼くして戦場へと送られるような人間ばかりだ。

そこらの下忍と同じな訳がない。

 

閑話休題

 

捕虜となった忍の記憶を読み取ると、本来ここに来るはずであった霧隠れの忍は、殺されていた事が分かった。

 

一旦霧隠れへと戻って捕虜を牢に入れ、前線へ直接向かう事になった。

 

尚、そのまま最前線の戦闘に巻き込まれた為、そのまま木ノ葉の忍達を壊滅させておいた。

木ノ葉の忍780名に対して、霧隠れは400と劣勢だったのだが、私達が無双して木ノ葉の忍は撤退も出来ずに死んで行った。

1人、重傷の忍が逃げていったが…まぁ、木ノ葉…いや、他里全体に晶遁の事を知らせてくれればいい。

私が晶遁で目立てば目立つほど、相手は未知の力に恐れをなして逃げるだろう。

 

また、戦後に狙われる事を防ぐ意味もある。

 

確かに、出る杭は打たれる。

だが、誰も打てなくなるほど出ると逆に尊敬を集める事になる。

 

柱間ァ…や、フルフルニィ…が忍界で尊敬を集めるのは、誰にも到達出来ぬ…打てない杭になり、その力を里を守る為に使っているからだ。

 

人柱力として、血継限界持ちとして、蔑まれて生きていくなんて面倒な事はしない。

 

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「ん…なるほど、よく分かった。

報告、ありがとう。」

 

霧隠れとの最前線が崩壊し、命からがら逃げ出せた上忍の報告に、思わずため息をつく。

 

都市伝説でしか語られていなかった晶遁や、謎の瞳術、前線に人柱力が2人もいた事…さらに、血継限界を持つ者が他に2人もいた事。

何よりも、六尾の人柱力がまだ5歳…クシナが命懸けで産んだ息子のナルトと4歳しか変わらない子供が、大人が始めた戦いに巻き込まれていることが虚しく、無力感に襲われた。

 

だが、火影として部下に情けない顔は見せられない。

 

表情を切り替え、晶遁という血継限界と謎の瞳術の事を聞くため、木ノ葉の守護神とも言えるお二人を呼ぶ。

 

「晶遁、か…」

「何か…ご存知ですか?

水晶を扱うとしか情報を得られませんでした。晶遁が掠りでもすれば、たちまち水晶に覆われて死ぬらしいですが…。

瞳術も、突然姿が消えたり背後まで見え、先読みの様な能力を使うとしか…。」

 

2人は、険しい表情を見せる。

 

「晶遁と晶翠眼は…晶獅一族の血継限界だ。うちはの写輪眼とは、対極に位置する瞳術ぞ。

経絡系を見抜き、チャクラの色を見分ける以外にも、ミナトが言ったように多彩な瞳術を扱うとしか…情報が残っていない。

断絶したと思っていたが…。」

「まぁ、霧隠れが出来た辺りから目撃者が居ないことは確かぞ。

恐らく…血継限界嫌いの霧隠れで生きていくために隠して来たんだろうな。」

 

霧隠れの血継限界嫌い。

それは、他里にも伝わる程有名なものだ。

人柱力と同じように、周りから冷遇されると聞く。

 

なぜ彼女は今までと同じように隠して…いや、木ノ葉の忍を皆殺しにしてこなかったのか。

幼いとはいえ、やろうと思えば一人で簡単に全滅させることが出来るのに。

 

彼女は、伝説にもなっている晶遁を使うことで自分に目を向け、他の班員達の血継限界に向けられる白い目を少しでも減らそうとしたのだろう。

 

人柱力でもある彼女が未知の血継限界をド派手に使えば…敵味方関係無しに、頭の中で晶遁の情報で溢れかえり、他の血継限界についての分析が間に合わなくなる。

 

現に、他の血継限界については余り分かっていない。

 

お二人もおなじ意見だった。

5歳でここまで頭が回るとは、と…。

 

緑髪、桃色の眼を持った幼い忍を見つけたらすぐに逃げろと通告を出す。

晶遁や瞳術を破る方法も分かっていないため、下手に交戦すれば被害が拡大する。

 

「早く…戦争を終わらせる為に、頑張らないとな。」

 

いくら頭が回るとはいえ、彼女が守られるべき存在である子供なことには変わりない。

 

戦争を終わらせ、友人の風影殿と子供自慢をしたいものだ。



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人柱力捕虜化大作戦始動…!

たまたま居合わせた物資補給班が戦闘で無双し、木ノ葉の前線の崩壊に貢献した…というよりも、物資補給班が殆ど片付けた事により、前線にいた霧隠れの忍達は血継限界を持つ者への認識を改める事となった。

 

「メイ上忍、君麻呂、やぐら、トウカちゃん…本当に、助かりました。

あなた達がたまたま居合わせなければ…ここにいる仲間たちの半数は木ノ葉に減らされていたでしょうし、生き残った者達も消耗して体にも心にも傷を負っていたでしょう。

里の者達がなんと言おうが…あなた達は、私達にとっての英雄です。

本当に…ありがとうございました。」

 

『ありがとうございました!』

 

「皆さんを守る事が出来て、本当に良かった。

私達が居合わせる事が出来たのも、最前線で必死に戦ったあなた達がいたからです。

疲れて後処理は大変かと思いますが…後は、よろしくお願いします。」

「はっ!」

 

聖母のような笑みを浮かべるメイ上忍。

彼女がいると、いい所を見せようと男達の仕事効率が上がる。

…普段から、彼女のいる時のように頑張ってくれればいいのだが。

 

閑話休題

 

トウカちゃんの目が発光し、一瞬で消えた物資補給班一行。

 

あの3人は、これが下忍になって初めての任務だというのだから驚きである。

まぁ、今回の働きにより特例で中忍へと上がるだろう。

 

10歳にも満たない子供が前線へと送られる事に大人として情けない気持ちになるが、一上忍が上層部へ直訴するなんて出来ない。

 

出来るとすれば、これからの霧隠れをあの子達が肩身の狭い思いをしないように少しずつ変えて行くことだけだ。

 

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「早速で悪いが、次の任務へ向かってくれ。

雲隠れの人柱力2人が、戦闘地域へと向かう動きが確認できた。

雲隠れの周辺で先行部隊が待機しているので合流し、現地で説明を受けてくれ。」

 

1週間前の木ノ葉との戦いでの功績により、特例措置で中忍になり、初めての戦い。

 

相手がまさかの人柱力だ。

雲隠れでは恐らく、キラービーと二位ユギトが人柱力だろう。

 

キラービーは完璧な人柱力、ユギトもある程度力をコントロール出来る。

 

苦しい戦いになりそうだ。(負けるとは言っていない)

 

「トウカちゃん、合流地点はここよ。

木ノ葉のように霧隠れの忍に扮しているかも知れないから、確認お願いね。」

「はい。」

 

撫で撫でしながら説明するため、緊張感を持てないでいるが、一応戦場へと向かう直前である。

 

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『トウカ、そういえば…今まで尾獣化はした事無かったやね。』

「まぁ…する機会が無かったし、簡単に修行出来るものでも無いしね。」

 

里の近くで尾獣化なんてしたら大問題だ。

そういった意味では、人柱力としての戦いの経験値は向こうの方が多いのだ。

 

任務の準備をする為、一時間後に門の前に集合と言われ、5分前に来てみると、君麻呂しかいなかった。

 

「トウカ、無差別に毒ガスをばら撒くなよ?

下手したら味方への被害の方が多いって事になるからな?」

「む〜…私を何だと思って…」

「…手のかかる妹?」

 

君麻呂の不安そうな言葉に、私は頬を膨らませる。

同じ班で、修行も3人でするようになってから、手加減をしない私達(私とやぐらさん)のフォローは君麻呂が行っている。

 

私が5歳、やぐらさんが9歳、君麻呂が10歳。

君麻呂が手のかかる妹と弟の面倒を見ている形だ。…因みに、メイさんは私を猫可愛がりしている。

 

閑話休題

 

時間ギリギリに来たメイさんとやぐらさんと一緒に、指定された場所へと飛ぶ。

 

近くに先行部隊が待機しており、任務の詳しい説明を受ける。

 

目的地(最前線)へと行かせないようにすることが、私達の役目だ。…捕虜に出来たら一番いいらしいが。

護衛の忍は殺し、人柱力達は捕虜が最善と言われ、エンカウント後のシミュレーションを頭の中で行う。

 

現場へと向かい、奇襲の準備をする。

 

相手人数は10を超えるのに対して、私達は4人で戦う。

 

その差をカバーする為の奇襲だ。

モブ忍者10名を相手取るのとは訳が違うのだ。

人柱力とその護衛小隊は、原作でも名前が出てくるような実力者の可能性が高い。



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幻術・犀犬の記憶流しの術!

霧隠れとの戦闘区域へと向かう最中、ある違和感を覚えた。

ビーとのアイコンタクトで違和感を覚えているのが私だけでは無いことがわかった。

 

「…ユギト」

「あぁ…私達以外の(・・・・・)尾獣チャクラが空気中に拡散しているな。」

 

私の言葉に、周りの者達も最大限の警戒を顕にする。

私達以外の尾獣チャクラが拡散しているということは、敵に人柱力…それも、ある程度は尾獣の力をコントロール出来る忍がいるのだという証明だ。

 

警戒させて何がしたいのかは分からないが…今の所、何かを仕掛けてくる様子は無い。

 

暫くして、辺りに霧が立ち込め始めた。

 

「霧隠れの術か!風遁・大…っ!」

 

風遁の術で吹き飛ばそうとした忍が血を吐いて倒れ込んでしまった。

それを見た私達は毒ガスだと判断し、急いで霧の外へと向かう。

 

瞬身を使おうとしたのだろう、中忍がチャクラを練り始めた瞬間、先程と同じく血を吐いて倒れた。

 

練り上げたチャクラに反応する毒ガス…こんな芸当を出来るのは、毒などの攻撃が得意な尾獣である六尾しか居ない…だが、六尾の人柱力はまだ幼い子供だった筈だ。

 

「全員…チャクラを練るな!

…いるんだろう、出て来い!」

 

私が言い終えると、尾獣玉を撃ってくる気配を感じた。

私とビーは瞬時に尾獣化し、仲間を守るようにしてその攻撃に備える。

 

合成尾獣玉同士がぶつかり合い、かなりの爆風が吹いた。

それに伴って毒ガスも晴れ、後ろに爆風で気絶し、倒れてしまった忍と敵の姿を確認できた。

 

2人の体は赤黒いチャクラに覆われ、顔を見ることは叶わない。

尻尾を最大まで出しているが、暴走する様子は見られない。

 

『霧隠れ所有の尾獣の六尾と三尾♪厄介で面倒な人柱力♪』

『霧隠れの人柱力は2人共まだ子供だと聞いたんだがな。

特に、六尾の前任の人柱力であるモモカが亡くなってまだ3年も経って居ないのに…暴走していない。

…2人共和解しているというのか。』

 

信じられない、と思わず思ってしまう。

私だって、完全に二尾と和解している訳でもなく、私の理性で暴走を抑え込んでいるだけだ。

子供の人柱力は、平時でさえ暴走を抑える事が出来れば御の字だと言うのに。

 

『友達に力を貸してもらうのに、暴走もクソもないでしょう?馬鹿じゃないの?

大人なのにその程度の事も分からないの?』

『同感だな。尾獣を何だと思ってるんだ…そうやって尾獣を兵器としてしか見れない様なクズには負ける訳にはいかねぇな。』

 

返ってきた言葉は、私の予想以上だった。

尾獣と友達だと即答し、尾獣を兵器として見ていない。

私が目指したかった姿に、私より幼い子供が到達している。

 

その事実に軽くショックを受けながらも、戦闘が始まったため意識を集中させる。

 

猫火鉢を出すが、三尾の水に掻き消されて牽制にもならない。

 

相性が悪い上に、後ろには気を失った仲間がいる。

どうやってこの2人を退けるかと考えていると、突然頭が割れる様に痛み始めた。

ビーも頭を抱えている。

 

痛みがマシになったかと思えば、ある映像が流れはじめた。

 

モモカ…六尾の前任の人柱力が、同じ髪色をした赤ん坊を大切そうに抱き締める。

横では、空を切り取ったような髪色をした男性が2人を見守っていた。

 

これは…六尾の、記憶?

六尾も、相棒の子供が生まれた事に心から喜んでいる。

 

場面は流れ、何らかの血継限界を持つという理由で避けられて虐められ泣いている2、3歳の子供をモモカが抱き締める場面。

六尾も近寄って慰めたいと思いつつも、自分の身体を見て、彼女の前に姿を晒す事に不安を感じている。

 

その後、3歳で父が亡くなり、追うようにモモカも病に倒れた。

六尾は娘であるトウカに引き継がれ、彼女は益々孤立しただけでなく、暴力に晒され、満足に食事も食べられない日々。

 

幼い子供が毎日泣き続ける様子が映る。

自分が味方だと、君の事を2人の代わりに守ると伝えたいのに、強引に精神世界へ連れてくる勇気など持てない。

 

トウカが霧隠れの上忍に連れ去られ、無事な所が無いほどにボロボロにされるが、クナイが体に突き刺さり足の骨を折られて居るため逃げる事も叶わない。

 

両親の形見を破壊され、変化で両親に化けてお前等愛していない、面倒事を運んでくるお前を恨んでいると言い続けた。

 

代わる代わる幻術を見せられ、六尾が必死に解いているが…幼い人柱力の精神は追い詰められていく。

 

もう少しで性的暴行を加えられる、という所で助け出され、トウカは意識を手放した。

 

そして、目を覚ました時には…トウカは、全ての記憶を失っていた。

 

激しい後悔、守れなかったという悲しみ、自己嫌悪…六尾の苦しみ。

映像が終わると、いつの間にか尾獣化も解けていた。

 

体が何かに押さえられているかのように動かない…目の前に立つ4人組の内の1人、緑髪のトウカの目が桃と緑に光る。

 

先程の映像も含め、何らかの瞳術だろう。

周りの仲間は殺され、ビーと私だけが生き残った。私達はその様子を見ている事しか出来なかった。

 

体が何かに覆われ、意識を手放した。

 

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「幻術を見せたのか?」

「うん、尾獣でも解けない幻術。」

 

精神感応(テレパシー)で犀犬視点の私の半生を見せただけだが、人柱力で似たような境遇であった2人には効果抜群だ。

 

念動力(サイコキネシス)で動きを止め、目の前で雲隠れの忍を殺して無力感を味わわせておく。

 

晶遁の術で2人を捉えて連れていき、任務完了を先行部隊へ知らせ、そのまま里へと戻った。



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VS火影

「犀犬って…骨あるの?」

『一応あるやよ、柔らかいけど。』

 

小型の犀犬を揉むと、ふよふよしていてスライムのようだ。

骨無さげなんだけどな…。

 

犀犬をモチモチしていると、任務続きで疲れた心が癒される。

 

人柱力捕虜化大作戦から10日。

毎日のように任務をこなし、敵を葬って来た。

 

雲隠れとは停戦協定を結び、捕虜となっていた2人は解放された。

だが、だからと言って戦争が終わるわけではない。他の国との戦いはまだ続いている。

 

『…木ノ葉や岩、砂との最前線に送られるのも時間の問題やね。

今までは本部隊の援護やったけど…。』

「ま、仕方ないよ。

晶遁使いの人柱力って他国でも広まって来てるしね。

木ノ葉では私達を見たらすぐに逃げろって司令も出てるみたいだし。」

 

(恐らく)世界でただ一人の晶遁使い。

対策なんて分からない、逃げる事も難しい。

 

そんな忍の正体がこんなちんちくりんである。

 

ナルトが生まれて1年。

戦争はまだ終わる気配が無い。

 

----------------------------------------

 

「トウカちゃん、これ食べる?」

「うん。」

 

やぐらさんからクッキーを受け取り、かぶりつく。

 

会いたかったからと、やぐらさんが私の家にやってきた。

好き好きオーラを向けられ、やりづらいと思いつつもやぐらさんの膝の上でティータイムを楽しむ。

 

…順調に餌付けされつつあるな。

何故か自然に膝に乗せられ、そのままクッキーを食べるハメになった。

 

〝トウカちゃん…可愛い〟〝閉じ込めたい…俺以外、トウカちゃんに触れさせたく無い〟〝トウカちゃんに俺以外考えないでほしい…俺でいっぱいにしたい〟〝でも、そんな事をして嫌われたくない〟

 

ヒェッ…がっつりヤンデレじゃ無いですかー…この年齢から下手したら監禁√ってハードモード過ぎでしょ…。

 

「トウカちゃんは俺にこうやって触られるの…嫌、か?」

「嫌じゃないよ?

やぐらさんの事、大好きだもん。」

「そ、そうか…!」

 

私が言うと、やぐらさんは花が咲くような可愛い笑顔を見せる。

 

ハード(外側)は完璧なんだけどなぁ…ソフト(内面)がヤンデレだからプラマイゼロだ。

まぁ、ヤンデレ好きな人間には堪らないのだろう。

 

〝トウカちゃん…大好きって〟〝これから男として見てもらう〟〝トウカちゃんに…もっと好きって言って欲しい〟

 

やぐらさんからの好感度が上がったのがわかる。やぐらさんはヤンデレでもあり、チョロインでもあったらしい。

 

ご機嫌で帰っていくやぐらさんを見送った後、犀犬がポツリと呟く。

 

『トウカ、好感度上げすぎたらやぐらが年頃になった時にR15で収まらなくなるやよ?』

「…ぁ」

 

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「な…なんでここに…!」

「出来るだけ離れろ!

メイ班に任せておけ!」

 

木ノ葉との最前線に配置された私達は、黄色い閃光との異名を持つ彼を見やる。

火影になり、最前線へと向かうような立場では無いはずなのに。

 

霧隠れの忍達も逃げ腰だ。

 

晶翠眼に切り替え、何時でも動けるように警戒する。

 

波風ミナトを相手にするには、先読みが出来てオート防御(自動とは言ってない)がある私が良いだろう。

メイさんも同じ事を思ったらしく、君麻呂とやぐらさん、メイさんは他の忍…約200名と交戦しはじめた。

 

〝こんな小さい子が…〟〝戦争、早く終わらせる〟

 

刹那、ミナトはクナイを放ち、ミナトの姿が消えて私の目の前に迫って私に斬撃を放つ…事無く、泡に阻まれる。

 

「晶遁・破晶降龍!」

 

素早く印を結び、桃水晶で出来た龍を3体出してミナトを襲う。

 

ミナトはクナイで攻撃するが、攻撃した側からクナイが水晶で覆われ、手を離す事で難を逃れる。

 

〝厄介〟〝何か穴が無いか〟

 

ミナトの手に青いチャクラが集まり、球状へと変化していく。

 

「螺旋…っ!」

「螺旋丸って…意外と簡単ですね。」

 

私の手に晶遁・螺旋丸が出ると、かなり動揺している。

 

〝コピーか…写輪眼と同じ〟

 

いえ、人海戦術(水晶分身)です。

 

私が投げた螺旋丸を間一髪で避けた…が、避けられた螺旋丸は鏡に吸い込まれてミナトの後ろに現れ、脇腹に直撃する。

 

ミナトは水晶の縄で簀巻きにされ、身動き出来ない。

 

モブ忍者との戦闘が終わり、集まったメイ班に最前線の部隊長が近寄る。

 

「皆様、お疲れ様でした。

…何も出来ず、申し訳ございません。」

「いいえ、皆様が後ろに居ると分かっているから安心して戦えるのです。

…この子が火影を捕虜にしたみたいなのですが…。」

「チャクラを乱す水晶に被われてるから飛雷神も使えないよ。」

「そうか…ありがとう」

 

後処理(面倒事)は他の忍に任せ、私達は捕虜(火影)を連れて霧隠れへと飛んだ。

 

 



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大ピンチの木ノ葉の決断

最前線が2度も崩壊し、霧隠れに火影まで捕まった木ノ葉は最悪の危機に瀕していた。

 

「最前線の生き残りは2名のみ。

その2名も、大怪我を負って戦闘が出来る状態ではありません。

三尾の人柱力である〝水鏡〟のやぐら、骨を扱う血継限界を持つ〝骨舞踊〟の君麻呂、溶遁と沸遁の血継限界を持つ〝全溶〟の照美メイ、何より…六尾の人柱力で、晶遁と晶翠眼を持つ〝桃水晶〟のトウカ。

この4人がいる限り、霧隠れとの戦闘は避けるべきかと。

火影が捕えられ、霧隠れからは停戦、戦後協力同盟、賠償金の要求がありました。

…お二方、ご決断を…。」

 

守護神とも呼ばれる2人の英傑は、難しい顔をしながらも口を開いた。

 

「…俺達が木ノ葉を立ち上げたのは、子供が…未来を担う新世代が苦しまないように、大人達の盾にされないようにと考えたからぞ。

人柱力だろうが血継限界を持とうが実力を持っていようが…幼子が戦場に送られる戦争は一刻と早く…終わらせるべきぞ。なぁ、マダラ。」

「あぁ。

俺達の世代はな…自分たちより幼い子供が死んでいく事も珍しく無かった。

だが…それを良しとしている訳ではない。弟達が死ねば悲しいし、気分が悪い。…霧隠れからの要求を呑もう。

ミナトにはまだやるべき事があるのだ。」

 

2人の言葉に、否を唱える者は居なかった。

 

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「それにしても…前回とは大違いぞ。

前回の六尾の人柱力は男で、晶遁を持っていなかった。」

「俺達が色々と違う動きを見せているからな。

晶遁だって、前回の生では確認できてなかった。九尾…九喇嘛も、あんなに協力的になれるとは思わなかったぞ。」

 

マダラから言われた言葉に、そりゃそうだと返した。

マダラの両目は輪廻眼となっており、今回の転生を頼んできた六道仙人を彷彿とさせた。

 

最初から…生まれた時から千手柱間としてもう一度やり直す事になるとは、人生は分からない物だ。

 

〝桃水晶を扱う者が、危機を救う事となる〟

 

「マダラよ、六道仙人が言っていたのは…」

「桃水晶のトウカ、だな。

予言も抽象的過ぎて分かりずらいが…それを見守るべきなのだろう。」

 

六道仙人により、時が来るまでは老化が止まり、寿命も引き伸ばされている。

この事が良いのか悪いのかは分からないが…今世では、マダラとも仲直り出来たので、前世ではマダラの月の目計画で犠牲になった…不幸になった者を救うことが出来た。

 

「マダラよ、霧隠れとの戦いは木ノ葉の惨敗だ。

2度の敗北で人手不足になり、これからの戦争は厳しい戦いとなる。」

「だからこそ、俺達の踏ん張りどころなのだ。1人の少女にプライドを粉々にされ、木ノ葉の忍達の士気も低い。

柱間と俺が前に出ることで、下がった士気を上げなければ。」

「そうだな、柱間。」

 

霧隠れとの決着がつこうが、大戦が終わる訳でもない。

 

忍び耐える他無いだろう。



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VS土影

卑遁・手の平返しの術がNARUTO世界の住民ほぼ全員に標準装備されてる件


「塵遁・原界剥離の術!」

 

出来た…出来てしまった。

 

塵遁・原界剥離の術は、接触した部分を分子レベルでバラバラにするガード不可能のチート忍術だ。

 

私のチャクラ性質が風・土・火・水だと分かってからダメ元で人海戦術で練習してきた。

 

手元にある白いブロックが、完全犯罪をも可能にしてしまう。

形は自由自在に操れ、ビームにする事も可能だ。…これを里へ瞬間移動(テレポート)させるだけで、五大国を…いや、チャクラ量的に大陸自体をも壊滅に追いやれてしまう。

化け物って言われても否定出来ないレベルだ。

 

『岩隠れとの最前線に行っても安心やね。』

「まぁ、確かにそうね。

原界剥離(コレ)に対応出来るのは原界剥離(この術)だけだしね。

コピーしたって主張すれば大丈夫でしょ。」

 

晶翠眼に写輪眼と同じようにコピー能力があるという火影の見立ては、ある意味では正しく、ある意味では正しくない。

 

写輪眼と晶翠眼の共通点は、高い動体視力による見切り能力やチャクラの色見分けなどだ。

 

コピー能力というのは、印を瞬時に見切り、真似る事で出来る物だ。

だから、遺伝子に依存する血継限界はコピー出来ないし、コピー出来ても体が追い付かないレベルの体術なんてのも再現出来ない。

 

まぁ、せっかく〝桃水晶〟なんて中二臭い異名を貰ったのだから、塵遁よりも晶遁をメインに使用する事になるだろう。

 

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「次は岩隠れか…」

「不確定情報だけど、土影と人柱力が参戦するという噂もあるわ。

土影が原界剥離を放つ前に、全員を連れて転移して頂戴。」

「うん、頑張る。」

 

岩隠れとの戦いの場所へと飛び、部隊長とメイさんが挨拶をしている。

 

一小隊に部隊長が挨拶をしている。

しかも、超低姿勢で。

 

至る所で無双し過ぎたらしく、私達がいれば味方の士気が上がるそうだ。

 

200VS4で勝利を収め、更には火影を捕虜にして木ノ葉との戦いを有利な条件で停戦させた為、私達…人柱力と血継限界に対する認識は改められてきている。

 

不確定情報ながら塵遁が使える土影と人柱力2人が参戦するという噂が流れ、戦力で劣るため士気が下がり続けていたこの戦場は、私達が着いた途端に表情が明るくなった。

 

何が言いたいか表情でわかる。

 

〝火影と人柱力✕2を捕虜(生け捕り)にした小隊がきた〟

 

お前ら本当に忍者かと問いただしたいほど分かりやすい。

 

閑話休題

 

岩隠れの忍1500人に対し、霧隠れは500名という圧倒的不利な状況であった。

 

塵遁には数は関係ない。

一瞬で全員を避難させる事ができる私をここへ投入するのは妥当であった。

 

戦闘が始まり、岩隠れのモブ忍者達への蹂躙が始まった。

 

晶遁で粉々にしたり、瞬間移動(テレポート)で一気に首無しにしたり、泡で骨まで溶かしたりやりたい放題。

 

メイ班全員がこんな感じだ。

規格外が4人居るだけで、圧倒的に不利な状況だろうとひっくり返る。

 

「土影…土影が…!」

 

近くにいた忍が絶望した表情で上を見る。

 

手には原界剥離のブロックが作られている。

私は瞬時に空へと飛び上がり、それよりも大きな物を作って戦場に放たれる前に相殺した。

 

「桃水晶のトウカ…!

どうやら、その瞳術はコピー能力もあるようじゃぜ。」

「土影殿に覚えられているとは光栄です。」

「フン…木ノ葉のエリートが集まる前線をたった4人で2度も全滅させた要注意人物じゃぜ。」

 

〝ここで刺し違えてでも殺さなければ…岩隠れに未来はないじゃぜ〟〝幼少期に暗殺に失敗したのは痛い〟

 

そう言ってまた塵遁のブロックを放って来た。

 

「晶遁・転送鏡の術!」

 

ほぼ全てのチャクラを注ぎ込んだであろう大きな原界剥離の術は、転送鏡へと吸い込まれ、土影の真後ろに転送された。

 

反応が遅れ、対処出来なかった土影はそのまま自分の術の餌食となって遺体さえ残さずに生涯を終えた。

 

下からは大歓声が上がり、霧隠れの忍は勢いづく。

逆に、岩隠れの方からは動揺が伝わって来る。

 

私が原界剥離をコピーしたのも大きいだろう。

 

そして、既に完全尾獣化した人柱力が2人いた。

 

五尾と四尾の周りには岩隠れの忍も近づかず、やぐらさんが尾獣化して1人で抑えている。

四尾が得意とする熔遁とは相性が良いやぐらさんだが、2人の人柱力に決定打を与えるまでには至っていない。

 

私は迷わずやぐらさんの方へと飛んだ。

 



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VS人柱力

「塵遁・原界剥離の術!」

 

私が放ったビームは、機動力がある2匹に余裕で避けられる。

当たった地面にはその部分だけが大きなスプーンでくり抜かれたような穴が空いていた。

 

「犀犬!」

『あいよ!』

 

私の体が大きな6本の尻尾があるナメクジ─犀犬へと変わり、視点も大分高くなっている。

 

そういえば、初めて完全尾獣化したな…と小さく見える人間を見やりながら思いつつ、四尾が放った溶岩を泡で消し、やぐらさんに並ぶ。

 

『やぐらさん、私も一緒に戦う。』

『あぁ、助かる!

どうやら、向こうは尾獣の名前も知らないクズ野郎らしいぞ。

尾獣を兵器としてしか見てない。

尾獣化した時も、自爆だとかこの身が滅びようともだとか言ってたな。』

『うわ…最っ低…力だけ借りて名前さえ呼ばないなんて…。

尾獣をなんだと思ってるのかな。犀犬と磯撫と友達になってる私達とは大違いね。』

 

尾獣化して意識は尾獣側に変わり、暴走して無差別に攻撃される事を恐れて味方である岩忍も距離を置いているようだ。

 

恐らく、土影がやられて劣勢を打破するには尾獣化しかないと思ったのだろう。

 

〝友達…?〟〝人間と友達?〟

 

私の〝友達〟という言葉に、尾獣達は反応する。

 

『貴方達も大変ね…相棒である筈の人柱力にまで名前を呼んでもらえないなんて…。』

『なんなら霧隠れに来るか?

俺らなら…お前達と友達になれる。俺らはまだ子供で若いからな。

変に年齢だけ重ねて頭でっかちになっている奴らとは違うんだよ。』

 

『ウキキーッ!俺らの人柱力と違って良く分かってんじゃねぇか!

俺様は水簾洞の美猿王、六道仙人より孫の法号を与えられし仙猿の王、孫悟空斉天大聖だ!』

『私は穆王。…ハンも、貴方達の様に歩み寄ってくれれば…いえ、ここで言っても仕方ないですね。

なんだか…戦う気が失せました。』

 

なんか満足気な2匹。

闘気が失せた2匹に、私達はそっと手を出す。

お互いの手を合わせてチャクラを流される。恐らく、2匹の力を借りて沸遁と熔遁が仕えるようになる筈だ。

 

2匹の満足そうな表情を最後に尾獣化は解け、赤髪でヒゲが生えている小柄なおじさんと赤鎧を身にまとって肌の九割が隠れている大男が2匹がいた所に現れる。

 

私達も尾獣化を解いて辺りを見渡せば、君麻呂とメイさんが無双した痕跡があちらこちらに残り、士気が上がっていた霧隠れが形勢逆転を果たして戦いは粗方終えて後処理に追われていた。

 

私達は岩隠れの人柱力2人に向き合う。

 

「別に殺しても支障はないけど…」

「ま、捕まえたら賠償金も増えるらしいからな。」

 

とりあえず晶遁で簀巻きにして野営地へと飛ぶ。

 

私達でほぼ全員揃ったらしく、キラキラとした目線が私達に降り注ぐ中、人柱力2人を部隊長に引き渡す。

 

〝英雄だ〟〝あの子達のお陰で死亡者ゼロか…〟〝やぐらきゅんハァハァペロペロ〟

 

HENTAI(ショタコン)がいる…キョロキョロと見渡すと、ショタコン臭い目線を向ける男達(・・)がいた。

 

そう、男達(・・)だ。

 

その目線に気付いたやぐらさんが怯えた表情を見せると、それにHENTAI(ショタコン男)共が興奮してねっとりとした視線が強くなる悪循環に陥っていた。

 

やぐらさんの手を安心させるようにそっと握り、ニコニコとしてじっと見つめる。

 

〝トウカちゃん可愛い〟〝大好き〟

 

「トウカちゃん、行こっか。」

「うん!」

 

メイさん達の元へ手を繋ぎながら歩いていった。

私達を見詰める2人の岩隠れの忍は、何とも言えない表情を浮かべていた。

 

 



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久しぶりの散歩

岩隠れとも停戦協定が結ばれ、残すは砂隠れと小国のみとなった。

もうひと踏ん張りで第三次忍界大戦も終わる。

 

4代目土影にはオオノキの息子、黄ツチが就任した。

 

「なんか…久しぶりに花探しに出るね。」

『最近忙しかったしね。

まぁ、英雄って言われて歩いてるだけで殺気を向けられる事も無くなったし良かったやよ。』

「そうだね。」

 

6歳の誕生日を明日に控え、今日から2日間の休日を与えられていた。

 

「孫と穆王も出てきて良いよ。」

『ぇ…良いのか?』

「人も居ないしね。岩隠れでは出れないでしょ?行ってらっしゃい。」

『ウキキーッ!

ヒャッハー!森だぜやっほーい!』

 

私が言った途端に木々を飛び移り、森の中を駆けずり回り始めた孫を見ながら、穆王が呆れたような顔を浮かべる。

 

『あ…孫!もう…すいません。』

「良いの、穆王はどこか行きたい所ある?

さすがにまだ街中で堂々と出られる情勢でも無いけど、まとまった休みがあれば人がいない所だったら外で遊べるよ。」

『いいえ、こうして一緒に歩くだけで幸せです。

今までは精神世界で閉じこもるのみでしたから…。』

「そっか…いつか、里でみんな一緒に歩けるくらい尾獣と人間が仲良く出来たらいいね。」

 

意外ともふもふとした顔を撫でながら、将来の夢を口にする。

その為には尾獣全員と友達にならなければいけない。

 

花畑にたどり着き、腰を下ろす。

念動力(サイコキネシス)で花を摘み、色とりどりの水晶へ入れていく。

 

『桃水晶のトウカって言われてる割に節操ない色だな。』

 

いつの間にやら近づいてきていた孫がボソっと呟く。

 

「あぁ、色を指定してなかったら桃水晶になるよ。

戦闘でわざわざ色指定なんてしないから桃水晶って言われ始めたんだと思うよ。」

『綺麗ですね〜戦いに使うだけでなく、芸術にも使える…晶遁って良いですね。』

 

穆王の目がキラキラしている。

こういうの、好きそうだもんな…と思いつつ、水晶であるものを作っていく。

 

「出来た。

犀犬、穆王、孫悟空のミニチュア人形。

こうしてみると…みんな可愛いよね。」

 

両手に乗るくらいのミニチュアを作り、本人達の前に置く。

色もしっかりと似せてある。

 

『ウキキーッ!

すげぇ、めっちゃ似てるじゃねぇか!

誰だ、晶遁は危険って言ったの…こんなに綺麗なモン生み出せるんだから、さすがトウカだ!』

『うわぁ…凄い…!』

『よう似てるやよ。』

「ありがとう。

また今度、尾獣全員を作れたらいいな。」

 

帰宅した私はフィギュアを玄関先に飾る。

その後、磯撫のフィギュアも増える事になるのは想像に難く無いだろう。

 

 



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無双快進撃の終幕

砂隠れとの戦場にその4人組が突如現れた瞬間、霧隠れ側からは歓声が、砂隠れ側からは悲鳴が上がる。

 

悲鳴を上げている間に、砂隠れの忍達の数は減っていく。

一部の者は戦場へ出てきていた風影を守る為に陣形を取ろうとするが、呆気なく一瞬で命を散らす。

 

4人が取りこぼした瀕死の者を後ろにいた霧忍がトドメをさしていく。

 

蹂躙。

その言葉がピッタリとハマる戦いを見せる4人の内、3人はまだ子供と言っていい年齢だ。

 

骨を巧みに扱い、攻防共に高い能力を見せる〝骨舞踊〟の君麻呂。

小さな体に似合わぬ鍵針長棍棒を振り回し、相手の術を相殺する三尾の人柱力、〝水鏡〟のやぐら。

相手を跡形も無く溶かす妖艶なくノ一〝全榕〟の照美メイ。

晶遁と晶翠眼で敵を翻弄し、水晶で閉じ込めて粉々に砕く六尾の人柱力、〝桃水晶〟のトウカ。

 

霧隠れの英雄となっている4人がこちら側よりも人数が多い砂隠れの忍達を返り血さえ浴びずに倒していく。

 

「トウカ様が風影を捕らえたぞ!」

「磁遁も封じて…すげぇ、本当に一騎当千だぞ!」

 

本部に捕虜である風影を連れてきた4人は、水影様に報告する為に立ち去っていった。

 

「ほら、お前達!

あの人達が砂隠れの忍を片付けてくれたんだ、撤収の準備をしろ!」

 

台風のように立ち去った4人にポカンとしている部下達に激を飛ばす。

 

部隊長を任され、敵の数を見た時は軽く絶望したが…あの4人を送ると言われた時の安心感は異常だった。

流石、幼いながらも英雄と言われるだけの事はある。

 

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「ほら、歩けるなら自分で歩いて下さい。そこまで面倒見切れませんよ。怪我は無いはずです。」

「…済まない、砂隠れでは見ないものばかりでどうしても立ち止まってしまう。」

 

捕虜である風影にチャクラを乱す水晶で作った手錠を掛け、縄を引いて歩く私達。

 

門の前に転移後、手続きを終えたら中心部にある捕虜が捕えられている場所へと飛ぼうとすると、歩いて行きたいと要望があった。

メイさんとやぐらさんと君麻呂は水影様に報告する為に転移させ、私達はゆっくりと観光…と言うほどでもないが、街の中を歩く。

 

基本、五影や人柱力を捕らえると捕虜の中でも丁重に扱われる事になっている。

酷い扱いをすると、後の戦争の火種になりかねないためだ。

 

「風影様、砂隠れって砂漠が多いんでしょう?お水はどうしてるんですか?」

「オアシスがあるからそこの水を分け合っている。

だから、風呂なんて余程で無ければ入れないから基本は水拭きだ。」

 

砂隠れは一尾の守鶴を所有している。

この時期であれば、我愛羅が人柱力のはずだ。

 

風影(羅砂)が私に対して父のような柔らかい表情を見せる。

 

「…君は、何歳なんだ?」

「少し前に6歳になりました。」

「そう、か…」

 

表情を曇らせ、思案顔の風影(羅砂)

 

〝テマリやカンクロウ、我愛羅やナルト君と対して変わらない…〟〝実力があるとはいえ…気持ちのいい物ではない〟

 

「トウカちゃんは…平和になったら、何がしたい?」

「友達(尾獣)と一緒にお出かけしたいです。

海も山も友達と行きたい所がいっぱいあるんです。」

 

〝戦争…終わらせる〟

 

何か決意したように前を見据えた風影の目には、力が戻ってきていた。



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五影会談編
五影会談


五大国間の和平条約が霧隠れ完全勝利の形で結ばれ、第3次忍界大戦が終わった。

小競り合いはあるかもしれないが、時とともに収束していくだろう。

 

終戦と同時に上忍になった私達は、忙しい日々を過ごしていた。

いつの間にか2年が経ち、私達は水影の執務室に呼ばれた。

 

「五影会談ですか…」

「うむ。

終戦後2年が経って初めて五影会談を開催する事となった。

五影会談の際は、人柱力も付いていく事が多い。初代火影千手柱間の方針でな。

メイ班は全員名が知れ渡っておる事もあり、護衛としてメイ班が選ばれた。」

 

まぁ、確かに全員中二風の異名持ちだ。

一人一人が五影を玩具に出来る程の実力を持つ。

水影より強い上にネームバリューもある。…その上移動時間がゼロになるのだから、私達以外の名前を挙げろと言われても挙げる事が出来ない。

 

出発は明日、私の瞬間移動(テレポート)で木ノ葉へと向かう。

 

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「やぐらさん、どこか行きたいところある?」

「可愛いトウカちゃんがいれば、どこでも…っ!

あ、その…あっ!あそこに団子屋があるから行ってみたい!」

 

自然に私を口説こうとしていた事を誤魔化すかのように、繋いでいた手を引っ張って団子屋の方へと向かう。

 

五影会談に同伴できる護衛は2名。

メイさんと君麻呂が会談の護衛に立ち、私達は午後から開催される人柱力の集まりまで暇になったため、木ノ葉を観光(デート)していた。

 

〝好きって伝わってトウカちゃんに嫌われないだろうか〟〝嫌だ〟〝トウカちゃんに他の男を見て欲しくない〟〝俺だけの事しか考えられないように〟

 

ごめんなさい、もう伝わってます。

まぁ、やぐらさんを嫌う事は出来ないだろう。何だかんだでやぐらさんの事が大好きだし。…監禁√だけはゴメンだが。

 

閑話休題

 

当たり前のように隣に座り、お団子を食べながら雑談していると、店にある集団が入ってきた。

 

2mを越す大柄な身体に、赤鎧と笠、マスクなどで肌の九割が隠された男性─穆王の人柱力、ハン。

小柄な身体に赤髪、ヒゲが特徴的な30〜40代のおじさん─孫悟空の人柱力、老紫。

背が高く、金色に輝く長い髪を後ろで纏めている女性─又旅の人柱力、二位ユギト。

クリーム色の髪を後ろに流し、鍛え上げられた身体を持つ暑苦しい男─牛鬼の人柱力、キラービー。

 

…この店は人柱力ホイホイなのだろうか。

恐らく、五影会談の度に人柱力も集まっていたのだろう。4人に面識があってもおかしくはない。

 

「トウカとやぐら?

何でここに…」

「「お団子食べたかったから。」」

 

やぐらさんの前に座りながら当然の事を聞くユギトに、声を揃えて答える。

やぐらさんはちらりと4人を見遣ると、視線を私に固定する。

 

「…それもそうね。」

「やぐらさん、どうかした?」

「え、あ…いや、何でもない…。」

 

しどろもどろになりながら目線を逸らすが、チラチラとこちらを見る事は辞めない。

 

〝好き好きオーラ振り撒きすぎでしょう…〟〝やぐらはトウカに夢中♪俺達(外野)には興味を示さずアウトオブ眼中♪〟〝…儂にもこんな初々しい時期があったな〟〝完全に恋する男の目だで〟

 

4人の視線が生暖かい物に変わっている。

 

その後、時間が迫っていた為全員で指定の場所へと飛び、私達を待っていた案内役の忍を驚かせる事となった。

 

 



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フルフルニィ…

案内された部屋へと入れば、私達6人以外の人間は到着していた。

 

4代目火影、3代目雷影、3代目水影、4代目土影、4代目風影の5人は原作とはメンバーが違うが、いずれもかなり強い者達だ。

 

我愛羅とナルトはまだ4歳だ。ちょこんとお座りしている姿に、父である風影と火影がデレデレしている。

フウは私と同じ年頃である。

 

…人柱力の中で原作と違うのは私だけだ。

ウタカタがどこへ行ったのか気になる所ではあるが、ある方向からの強烈な視線が怖い。

 

「トウカァ…!」フルフルニィ…

〝待っていたぞ、トウカ。五影を相手取って不足ない実力、後程手合わせしようぞ〟

 

「ヒィッ…」

 

興奮して逆になってやがる…!

ってか輪廻眼出すな、フルフルニィするな!

 

思わずやぐらさんの後ろに隠れ、やぐらさんの服を握り締める。

やぐらさんもフルフルニィ…の圧力に怯えつつ、ちゃっかり私の頭を撫でている。

 

「マダラ、フルフルニィするでない!俺でも怖いのに幼子ではトラウマになるぞ!」

 

ハリネズミのような剛毛のマダラ(フルフルニィ)の後頭部を引っ叩くのは、黒髪黒目の男性─千手柱間だ。

 

「すまぬ…マダラは実力者を見るとフルフルニィをしたくなる持病を抱えていてな。」

「は、はぁ…」

 

なんだか微妙な空気になりつつも、席について自己紹介から始まった。

 

「一尾の我愛羅って言います。」

 

小さな体でぺこりと頭を下げる我愛羅は、固まった空気を解していく。

 

「二尾、又旅の人柱力、二位ユギト。

雲隠れの上忍よ。」

 

16歳頃で原作よりも若い美人さんのユギト。

 

「三尾、磯撫の人柱力のやぐらだ。」

『磯撫だよ〜。』

〝トウカちゃんトウカちゃんトウカちゃんトウカちゃんトウカちゃんトウカちゃんトウカちゃんトウカちゃんトウカちゃん〟

 

…やぐらさんは私に向けて強烈な好き好きオーラを発しながら、バレてないと思っているらしい。

肩に乗る磯撫も挨拶をしている。

 

「四尾、孫悟空の人柱力の老紫だ。」

 

赤髪のおじさん(老紫)…そういえば、うずまき一族となにか関係あるのかが気になる。

 

「五尾の穆王を飼っているハンだで。」

 

ここにいる中で…いや、原作の中でもトップクラスで背の高いハンも、老紫と同じく穆王の名前を口にした。

いい傾向、かな?

 

『えぇ、トウカとやぐらのお陰です。』

『お前らが尾獣を友達だと言ったことがかなり強烈だった見たいだぜ。』

 

私の中にいる2匹も、感謝の念を口にする。

 

「六尾の犀犬の人柱力、トウカ。」

『犀犬、トウカの友達やよ。』

 

「あっしは七尾の人柱力、フウっす!

みんな友達になって欲しいっすよ!」

 

そういえば、フウも髪が緑色だな…フウはどちらかといえば水色に近いが。

 

「八っつぁんの人柱力キラービー様だ!ウィィィィ!」

『うっせぇ…恥ずかしいから辞めろ』

 

「俺ってば、九喇嘛と一緒にいる波風ナルトだってばよ!」

『…ふんっ。』

 

「司会進行を務める、千手柱間ぞ。」

「同じく、うちはマダラだ。

第…何回かは忘れたが、初めての者達に伝えておくことがある。

この場は里で冷遇を受けやすい人柱力達が親交を深める為にこの場は設けられている。」

「のんびりお茶会をするのもよし、里の外での模擬戦で日々の鬱憤を晴らすのもよし、皆で買い物に出るのもよしぞ。」

 

2人の言葉に、ナルトが手を挙げて疑問を口にする。

 

「あのさ、あのさ、ここにいる皆から修行を付けてもらうのもあり?」

「うむ、若い世代を育てるのも年寄りの務めぞ。」

「じゃあさ、俺ってば皆一緒に修行したいってばよ!我愛羅、俺達同じ年だろ?どっちが強くなれるか競走だってばよ!」

「うん!」

 

…ショタナルトとショタ我愛羅が可愛すぎて辛い。

太陽と月みたいで対照的ではあるが、正反対だからこそ気が合うのかもしれない。

 

 



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ツンデレ狐と混浴

やぐらさんがナルトに修行をつけるのを見つつ、具現化した九喇嘛の前に2つの水晶像を置く。

 

「うん…中々似てる。」

『ふ…ふんっ…まあまあだな。』

 

目を逸らしつつ言う九喇嘛の九本の尻尾は左右に揺れている。

このモフモフ感も忠実に再現するために、毛の一本一本までこだわった。

 

2つの内1つは家に送り、もう1つの九喇嘛像は九喇嘛の人柱力であるナルトにプレゼントする事にした。

 

『…手を合わせろ。特別に(・・・)俺様のチャクラをくれてやる。お前の為じゃない、俺様が(・・・)霧隠れの幸を食べる為にお前を利用しているだけだ。』

「ふふっ、ありがとう。」

 

…ツンデレ狐は正義だ。

 

これで友達になれていないのは、1、2、7、8である。

 

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目の前に迫っていた棍棒を水晶の槍で逸らす。

やぐらさんは棍棒を一回転させて右脇腹を狙うものの、間一髪で避ける。

 

一進一退の攻防戦は引き分けに終わり、ギャラリーと化していた五影や人柱力達の息を吐く音が聴こえてきた。

 

晶翠眼無し、晶遁無し、尾獣化無しの武器による組み手が終わり、息を整えたやぐらさんは私の頭を撫でる。

なぜ撫でられたのかは分からないが、とても幸せそうな顔をしていたので問い詰めないようにした。

 

「目で追うので精一杯だった…影ってなんだっけ…まだ10になったばかりの子供の動きも目で追うのでギリギリなんて…」

「ミナトよ、俺もだから気にするな。

あの子達が規格外(バケモノ)なんだ。」

 

羅砂とミナトが地面にのの字を書きながらいじけている。

確かに、子供に手も足も出ないまま負けて捕虜となる影なんぞ前代未聞だ。

 

修行はそのままお開きとなり、メイさん達と共に宿へと飛んだ。

 

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「トウカちゃん、混浴の露天風呂に行くわよ!」

「…へ?え、まって…」

 

20歳になっても恋人のこの字も見当らないメイさんは、秘かに処女である事を気にしているらしい。

英雄と言われるようになり、美人でスタイルが良くて稼ぎも下手な上忍よりも良い為、霧隠れでは高嶺の花なのだ。

 

…なんでも筒抜けって怖いよね。

 

閑話休題

 

身体にタオルがしっかりと巻かれている事を確かめて露天風呂へと繋がる扉をあけ、混浴のゾーンへと向かった。

 

「あ、トウカちゃん、メイさん!」

 

声が聞こえる方を向くと、君麻呂とやぐらさんがお湯に浸かっている。

声がちょっと嬉しそうなのは気にしない。気にしたら負けである。

 

近くに置いてある桶にはお湯が張られ、磯撫が気持ち良さそうに浸かっている。可愛い過ぎる…どうしよう、お持ち帰りしたい。…もれなく飼い主(やぐらさん)が付いてきそうだが。

 

私も大きめの桶にお湯を移し、犀犬、穆王、孫を出してやる。

 

「2人ともやっぱり来てたのね。やぐらがトウカちゃんのバスタオル姿を眺む機会を逃す筈は無いもの。」

「な…ち、違いますよ!ただトウカちゃんが可愛い…いや、そうじゃなくて…その、俺が変態みたいに言わないで下さいよ!」

 

顔を赤くして慌てながら否定しているやぐらさんは可愛い。

 

〝トウカちゃん…色白いな…〟〝色気がやばい〟

 

やぐらさんは露出している肩や首筋、タオルを撒いている胸、尻などにもちらりと目線を向ける。

…まだ8歳でツルペタに近いのに目線を向けて、色気(笑)がどうのこうの言っている時点でアウトな気がしないでもない。

 

そして、やぐらさんに気を使った君麻呂とメイさんが少し離れ始めた。

そりゃそうだ。2人にはやぐらさんが初心な恋する男の子にしか見えないのだから。

 

「やぐらさん?」

「…はっ!

ぁ…ご、ごめん。」

 

色気(笑)にあてられてどこかへ飛び立とうとしていたやぐらさんを呼び戻す。

幸せそうな顔で私の頭を撫でるやぐらさんは可愛いのに…中身がアレ(ヤンデレ)なのが残念でならない。



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友達との出会いと別れ

「露天風呂っす〜!」

 

女湯に繋がる扉から勢いよく飛び出して来たのは女版・ナルトとも言うべき性格のフウだ。

 

「あ、トウカちゃんとやぐら!」

 

フウの目線が私達の後ろにある桶に向くと、驚きの表情を見せる。

 

「尾獣…なんでこんなところに?それに、随分と小さいっすね…。3、4、5、6…あれ?2体多いっすよ?」

 

『あぁ、俺達は忍界大戦でやぐらとトウカに会ってな…友達になった。

いつでも会えるようにチャクラを渡して置いたから、時々こうやって具現化させてくれるんだ。』

『2人との出会いがきっかけでハンと仲良くなれたんです。』

 

フウは孫の〝友達〟という単語にキラキラと目を輝かせる。

 

「友達…皆、あっしとも友達になって欲しいっす!」

『拳を合わせろ。』

「ふおぉっ…4匹のチャクラが入ってきたっすね…」

 

磯撫、孫悟空、穆王、犀犬の順に拳を合わせる。

 

『トウカ達にやったチャクラ量に比べると大分すくねぇがな。まぁ、具現化する分には問題ねぇ。』

「具現化ってどうやるっすか?」

 

フウの根本的な疑問に対し、私が答える。

 

「まず、七尾とは友達になってる?」

 

原作での守鶴や九喇嘛、キラービーと出会う前の牛鬼などは、暴走させて人柱力を乗っ取ろうとするような…それこそ、尾獣化は命懸けのものであった。

大前提として、尾獣と仲良くなければ具現化しようとすればその隙に乗っ取ってしまう可能性もある。

 

「うん、重明とは友達っすよ!

時々うざいって精神世界から追い出されるけど、話を聞いてくれるっす。」

「なら大丈夫ね。

尾獣チャクラを尾獣玉の要領で集めていくだけよ。基本、フウからはあまり離れられないけど…近くなら歩き回っても平気よ。」

「孫や穆王みたいに、チャクラを渡していれば本来の人柱力でなくとも具現化する事は可能だ。」

「2人とも、ありがとうっす!早速やるっすよ〜。」

 

フウの目の前に現れたのは、カブトムシのような尾獣だ。

羽は太陽の光でキラキラと輝いており、明るい色合いがフウと重なって見えた。

 

『お前ら久しぶりだな。ラッキーにやれているようで何よりだ。

それと、やぐらとトウカ。…ありがとな。フウは初めて里の外に出ることが出来て友達を作ろうと他の人柱力に会えるのを楽しみにしてたんだ。

フウと、それから…俺達尾獣を友達として認めてくれてありがとう。』

 

差し出された手に手を合わせると、重明のチャクラが入ってくるのが分かった。

 

「重明、少しじっとしててね…」

『ん?』

 

私の手の中に、重明そっくりの水晶像が2つ現れる。

羽の透かしとグラデーション、立派な角などがポイントだ。

 

「はい、フウちゃん。お友達だから…あげる。」

「いいんっすか!?重明、お揃いっす!これ、めちゃくちゃそっくりっすよ!」

 

それからお風呂をあがるまで…いや、あがってからも、フウのテンションは高いままであった。

 

…私達から離れている隙に君麻呂とメイさんが〝大人の関係〟になったのは余談である。

 

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「うぅっ…ひっぐ…」

「フウちゃん…」

 

楽しかった時間はあっという間に過ぎていき、帰るときがやってきた。

2人が困ったようにオロオロとしているが、どうしても涙が止まらない。

 

初めて、里の外の友達が出来た。

滝隠れの里の人達は、皆仲良くしてくれたけれど…それでも、疎外感や不安を感じていた。

明るく能天気に振る舞わなければ、抱え切れない寂しさで押し潰されそうだった。

 

同じ不安を抱え、同じ様に尾獣と仲良くなった、唯一無二の存在。

離れてしまって消えるんじゃないかって不安で苦しくなった。

 

「フウちゃん、はい。」

「…これ…」

 

手渡されたのは、あっしの髪色と瞳の色が入った、〝7〟(ラッキーセブン)のネックレス。

トウカちゃんの首には、〝6〟が掛けられていて、やぐらは〝3〟だった。

 

「フウちゃんの中に尾獣達(友達)がいるからフウちゃんはひとりじゃないよ。

それに、私達は離れていても友達でしょ?」

「そうだぞ。それに、お前の中にいる重明はラッキーセブンなんだろ?

お前が一番ラッキーにならなきゃ重明の顔に泥を塗る事になるぞ。」

 

また新たな涙が溢れるが、顔に浮かんでいる表情は正反対の笑顔だった。

 

 



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世界を救う桃水晶編
新種の尾獣(仮)


木ノ葉から帰ってきて2ヶ月。

やっと任務地獄も落ち着き、皆で遊びに行く余裕も出来た。

 

『ヒャッハー!ラッキーな気分だぜ!』

「こら、一応任務中なんだからね〜!」

『分かってるって!

滝隠れではフウが1人になれる所なんか家位だからな、こうやって飛び回れるなんて久しぶりなんだ!』

 

外で自由に飛び回る重明を仕方ないなと見守る私達。

 

平和な空気だが、一応任務中だ。

 

任務の内容は、うずまき隠れの跡地へと向かい、大暴れしている謎の生物─尾獣程大きな姿で、木ノ葉の調査団が手も足も出ないまま全滅してしまったらしい─を調査、捕獲又は討伐。

 

霧隠れが出張るのは、その生物Xが暴れた余波で津波が起き、火の国側の港町が壊滅してしまったから、水の国も他人事じゃないということと、謎の生物Xに対応出来そうなのは人柱力のみだが、木ノ葉の人柱力は3歳のナルトしか居ない。

 

子供ではあるが、実力がある人柱力の私達2人が最適だと判断され、やぐらさんと2人での任務だ。

 

瞬間移動(テレポート)で移動すれば、いきなり生物Xとエンカウントする可能性もあるため、空からの移動だ。

 

「見えてきたな。…あれか。」

「あれ…尾獣じゃない?」

『…尾獣やけど尾獣じゃないやよ。』

「なぞなぞか?」

 

私も思わずそう言いたくなる。

今では頼りにならなくなっている原作では、尾獣は10体─守鶴から九喇嘛と、十尾だ。

今は落ち着いているらしい尾獣(仮)は、尻尾が11本─十一尾だ。

 

垂れ耳白うさぎの尻尾を少し長くして、額には綺麗な桃水晶が収まっている素晴らしいモフり具合の尾獣だ。

九喇嘛並にモフモフ…いや、九喇嘛よりもモフモフっぽい。触りたい毛玉だ。

大きさは、犀犬の1.5倍位。

 

『俺達尾獣はな、元は十尾っていう六道仙人が己の中に封印した尾獣がルーツで、その六道仙人が9体に分けたのが始まりだ。

アイツは十一尾、名前は蘭寿(らんじゅ)

俺達とは違って、十尾がルーツじゃあない。』

『十一尾から十五尾までは、六道仙人の弟、ハムラが月に現れた尾獣を分割したんやよ。

多分…月に人柱力のなり手が居なくなって放置されたのがなんらかの理由でここに来たんやね。』

 

「取り敢えずモフりに…いや、事情聴取しにいこう。」

「うん、身体調査はしっかりしないとね。」

『…下心丸出しだねぇ〜。』

 

磯撫が呆れたように言っているが、モフモフは人類の使命なのだ。

蘭寿の目の前に降り立ち、話しかけた。

 

「「モフらせてください!」」

『…触りたい…の?』

 

その後めちゃくちゃモフモフした。

 

~24話 完~

 

 

 

『おい、満足して勝手に終わらせるな!』

「はっ…!

素晴らしいモフモフ具合だったな。」

「うん…うっかり昇天しかけちゃった…。」

 

孫の呼び掛けによりようやく自我を取り戻した私達は、困惑している様子の蘭寿と向き合う。

 

『人柱力、なの?』

「私は犀犬の人柱力、霧隠れから来たトウカ。」

「俺は磯撫の人柱力、やぐらだ。」

 

『突然現れた尾獣(仮)が大暴れして火の国側の街が壊滅しちゃったから、人柱力の2人が来たんだよ〜。』

 

磯撫が説明すると、申し訳ない気持ちや罪悪感が伝わってきた。半泣きになっており、少し震えている。

 

『どうしよう…僕、そんなつもりじゃ無かったのに…突然景色が変わったから驚いちゃって…遠くまで見ようと月と同じように思いっきり飛び跳ねたら水がばしゃんってなって…そしたらいっぱい人が来て怖くなっちゃったの…うぅ…ふえぇえん!!!ごめんなしゃいなの〜!』

 

何この可愛い生き物(天使)…!

 

思いっきり泣いて落ち着いたのは10分後。

 

蘭寿が言うには、人柱力のなり手が居なくなった為に月にいた尾獣全員が放し飼いにされているらしい。

眠りについて起きたらここにいて驚いた、と。

 

取り敢えず野放しにしても他国に無理矢理封印される事が目に見えて分かるため、霧隠れへと連れて行くことになった。

 



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眼の色は変わったけど、とりあえずモフモフは正義

「…新種の尾獣、か。

新しく人柱力を探さねばな。」

 

蘭寿の前で水影様が唸っていた。

 

〝人柱力の適合者が…いるだろうか〟〝六尾と三尾の人柱力でさえ、適合者が2人以外にはいなかったのに…〟〝…2人に、分割して…〟

 

「トウカちゃん、やぐら君…頼む、蘭寿の人柱力となってくれ。

陰と陽に分けて2人に入れる。適合者が居ないのもあるが、尾獣といい関係を築けている2人以外に適任が思い浮かばない…。」

「「はい!」」

 

…モフモフ、ゲットだぜ!

 

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封印はすぐに行われ、私には陽の蘭寿のチャクラが入ってきた。

 

新しく蘭寿の人柱力となり、ますますチャクラオバケとなった私達。

恐らく、地球征服も片手間に出来てしまうだろう。…闇落ちしたら、マダラ以上に手を付けられない。

 

「犀犬、蘭寿…私が闇落ちしそうになったら迷わず無理矢理にでも外に出て阻止してね。」

『大丈夫やよ。トウカやもん。』

『そうだよ、トウカちゃんはいい子だから。』

 

…うちの尾獣が優しすぎて辛い。

 

「そういえば…〝月の尾獣〟は十五尾までいるんだよね?他の子はどこに行ったの?」

『うーん…良くわかんない。

皆仲良くしてたけど、こっちに来た時にはぐれちゃったんだ…。』

「そっか。ま、すぐに見付かるよ。」

 

具現化した蘭寿をモフりつつ、そっと額の桃水晶を撫でる。

私の出す水晶と同じ色だ。

 

「桃水晶…私の晶遁と関係あるのかな…」

『僕も晶遁使えるよ。』

「…え?」

『…ん?』

「晶獅一族って…つまり、どういう事だってばよ…。」

『蘭寿の人柱力になれば、やぐらでも晶遁が使えるの?』

『うん!』

 

なん…だと…

 

「元々使える私はどうなるの?」

『…強化されると思う。あと…目が変わってるよ?』

「目?」

 

目を見れば、左目が謎の模様に変化している。

晶翠眼を発動していなければ桃色だった瞳が、水色の輪廻眼風の目─輪廻眼の様に白目の部分にまで色が付いている訳ではない─に変わっている。

 

晶翠眼を発動してみると、元々は桃色に翡翠色の花が咲いたような、万華鏡のような物だったのに、左目は元の波紋模様に加え、水色に黄色の花が咲いた瞳になっている。

いわゆるオッドアイであり、今までとは違う色の瞳に慣れない。

 

『なんか、変化したやね…』

『うーん…なんで変わっちゃったのかな…僕のせい?

月でも見た事ない目だね〜…。』

「蘭寿の人柱力になった事が原因なのは間違いない…だろうけど、まぁ…大丈夫でしょ。」

 

取り敢えず水晶分身を30体出し、家の巻物を全て調べ直す事にした。

 

「磯撫、やぐらさんは何も無いの?」

『うん、目は変わってないよ〜』

 

つまり、晶獅一族の血に反応したのだろう。

 

「ねぇ、貴方達を分けたのって大筒木ハムラだよね?」

『うん。』

「月では誰が人柱力だったの?

大筒木一族の人?」

『そうだよ〜。前の人柱力は、大筒木モウリって人だったの。』

 

日向一族の先祖は、大筒木ハムラ。

日向一族と大筒木一族のチャクラが交われば、転生眼が出てくる…だったはず。

 

月の尾獣を分けたのがハムラで代々人柱力が大筒木一族の者であれば、蘭寿の中に大筒木一族のチャクラが混じっていてもおかしくはない。

もしかして…日向一族と同じように、晶獅一族もハムラ、もしくは大筒木一族の子孫?

 

「取り敢えず…眼の確認…だよね。」

 



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チートを通り越してしまったが、取り敢えず犀犬は天使

「水紋晶翠眼、ね…そのまんまだね。」

 

修行の最中、水晶分身が解かれた事により情報が入ってきた。

 

休憩するために、遊び疲れて身を寄せてウトウトとしている尾獣達の横に座る。

 

家系図の一番上─晶獅一族の初代当主が大筒木ハムラの次男である大筒木トウリだった。

水紋晶翠眼を最初に開眼したのもこの人である。もっとも、私のように片目ではなく両目共開眼していたようだが。

 

「創造チートktkrってやつ…?」

『トウカ、落ち着くんやよ。』

 

肩に乗った相棒の言葉に深呼吸をして落ち着いて再確認する。

 

うちの犀犬マジ天使、と。

 

閑話休題

 

水紋晶翠眼とは、輪廻眼が〝創造と破壊〟、転生眼が〝生と死〟を司るのに対し、〝世界線調律と新世界創造〟を司る…らしい。

 

なんだか話が大きくなってきたが、「我は神である!」ということだ。

いや、例えではなく本当になる事は可能である。

 

世界線調律(・・・・・)新世界創造(・・・・・)だからね。

 

輪廻眼を持つ者が創造主であり破壊神であるなら、転生眼を持つ者は世界の復元者。

そして、水紋晶翠眼を持つ者は数多ある世界線が近付きすぎて両方共壊れてしまう事を防ぎ、壊れてしまった世界がドミノ式にバランスを破壊するのを防ぐための世界を創り出す。

 

世界線の中で順番に魔眼の類を持つ家系に現れるらしい。

 

つまり、世界線AのB一族の開眼者Cさんが亡くなった後、世界線BのC一族のDさんが、Dさんが亡くなれば世界線CのD一族のFさんが新しく開眼するといった感じだ。

 

蘭寿の中にある大筒木一族のチャクラは切っ掛けである。

まぁ、確かにそんな重要な眼を途切れさせてはならないのだろう。

晶獅一族の巻物部屋の最奥に厳重に封印されていた巻物に載っていた─恐らく、トウリが水紋晶翠眼を開眼した者のみに残した資料なのだろう。

 

それにしても、上位種だから強いんだろうなとは思ってたけど…強いどころか、人間辞めてきました♡である。

 

たかが眼一つで世界創るとかNARUTO世界に生きる者として不安になる。

 

あれだけ大規模な戦争を何度もして地球は壊れないのかとは思っていたが、こんな裏事情があったとは…。

尾獣玉とか全尾獣が頑張れば地球ごとドッカン出来そうだし、原作知識がお釈迦になっているのは世界線が違うからかもしれない。

 

閑話休題

 

水紋晶翠眼を発動し、目の前に現れたゲーム画面のようなウィンドウで世界線をみる。

…この画面のお陰で凄い事をしているとはイマイチ実感出来そうもない。

 

「やっぱり…この世界って、原作で出てきた地図の先は繋がってないんだ…。」

 

皆、気になった事はないだろうか。

風の国の、火の国の反対側はどこに繋がっていて、水の国の大陸とは逆方向はどこへと繋がっているのだろうか、と。

 

実は何らかの結界が敷かれているらしく、いつの間にか地図の上へと戻されてしまうとの事だ。

 

世界の向こう側、異世界へと落ちて仕舞わぬように設定されているようだ。

あらゆるゲーム、アニメ、マンガ、小説なども似たようなものであろう。

 

ごく希に世界線を超えて転生してしまった私みたいな存在もいるが。

 

〝世界線・474 危険度数97%〟

 

世界線・474…つまり、私達のいる世界は、かなりやばい状態だ。…まぁ、あれだけ忍やサムライ、尾獣達が地上や海上で大暴れしているのだから、当たり前と言えば当たり前である。

この状態であれば、転生眼を使おうにも使えないレベルである。

 

「ねぇ、犀犬…木ノ葉に行った時の事、覚えてる?」

『〝桃水晶を持つ者が、危機を救うことになる〟…やったね。』

「…いつの間にか巻き込まれてた。」

 

世界線調律とは言っても、この世界線は…無理ゲーである。

なら、似た世界を作ってそこに人間を転移させれば誰にも気付かれずに危機を脱する事が出来る。

 

「と言うことで、世界線475作成っと。」

 

…ゲーム感覚になってしまうのは、やっぱりこのウィンドウのせいである。



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もしかして:六道仙人

封印のクール期間の為に三日間休みを頂いていたため、徹夜で作業に当たる。

 

二日目の朝方にチャクラ不足になりつつも、何とか九割方終わらせた。

 

…そう、チャクラ不足。

私には一生縁のない言葉だと思っていたが、神に近い事をやってのけているだけあり、チャクラがごっそりと持っていかれる。

 

蘭寿と犀犬の人柱力でなければ、とっくにチャクラ枯渇で死んでいただろう。

それはともあれ、かなり眠い。

 

「もう、寝る…。」

『トウカちゃん、お疲れ様。』

『お疲れ様やよ。おやすみ。』

 

うん、やっぱりうちの尾獣達は天使である。

そんな事を思いつつ、意識を手放した。

 

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「うぅん…犀犬?蘭寿?」

 

寝たと思えば、精神世界のような場所に立っていた。

 

「桃水晶の者よ、良く来たな。」

「…ぇ…り、六道仙人…と、大筒木ハムラ…?」

 

片や輪廻眼、片や転生眼を持つ鬼のような角が生えた、人間離れしている容姿の2人。

 

「うむ、確かに儂は六道仙人こと、大筒木ハゴロモじゃ。」

「俺はハムラ、お前に生えてきた前世の記憶に間違いないようだな。」

「…生えてきた…まぁ、間違いではないか。」

 

4歳の頃、記憶を失う程の暴力を受けた(らしい)為、何故か前世の記憶を生やした、確かに間違ってはいないが。

 

『おじいちゃん!久しぶりだよ〜!』

「磯撫か。大きくなったな。」

 

ぴょこぴょこと駆け寄ったのは磯撫。

スリスリと甘えるようにハゴロモへ貼り付いている。

それを追いかけるようにして私の中にいた尾獣達もハゴロモへと向かって各々甘える。

 

『ハムラおじしゃま、また会えた〜!』

「うむ、久しぶりだな。」

 

ハムラへと向かい、撫でられてうっとりしているのは蘭寿である。

ハムラも蘭寿をもふもふとしており、表情も柔らかい。

 

ひとしきり尾獣達の相手をしていた2人は、ようやく私に向き合った。

 

「ここに呼び出したのは、世界線の事に関してじゃよ。」

「世界線の事?」

「うむ。この世界の代わりに作っている世界線に、結界外へ尾獣達の居住空間を創り、尾獣達は自由に行き来できるようにしてほしいのだ。

トウカとは友達になれたとはいえ、これから人間のせいで辛い思いをしないとは限らない。…頼む、尾獣達の安寧の空間を作って欲しいのだ。」

「はい、分かりました。

その代わりとは言ってはなんですが…。

出来れば、尾獣達全員を連れて貴方達に会わせてあげたい。だから、全員からチャクラを貰い終わったら、またここへと呼び出して欲しいんです。」

「うむ、承った。儂も皆と会いたいのぉ。」

 

そのやり取りに色めき立つのは、尾獣達だ。

 

『またお爺様と会えるのですか!?』

「みんないい子にしてたらね。」

『ウキキィー!何でも手伝える事は何でも言え!』

「なら、尾獣達と会えるように精神世界を繋げてくれる?

皆所属する国が違うから、戦争が終わった今表立って会う訳にはいかないの。

精神世界を繋げる事が出来ればそれが一番よ。

特に、国境を面してない上に風影の息子である我愛羅の中にいる一尾は難しいから。

尾獣達と接触する切っ掛けを作って欲しいの。…お願い出来る?」

『『『『『おう!』』』』』

 

「楽しみに待っておる。では、またな。」

 

ハゴロモとハムラのチャクラが薄れて行くと共に、皆悲しげな表情を見せる。

沈みがちになっている皆の雰囲気を遮るように声をかける。

 

「よし、みんな!ハゴロモ様にもう一度会うために頑張るわよ!」

 

 



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尊敬する人

あの日から1か月。

任務の合間を縫ってチャクラ切れを起こさぬように気を付けながら新しい世界線を創り終えた。

その間にも、尾獣達と一緒にチャクラを渡されていない一尾、二尾、八尾のチャクラを集めるために奔走した。…いや、実際に走った訳ではなく精神世界での話なのだが。

 

人柱力の精神世界を繋げ、その中での説得を行っていた。

二尾、八尾に関してはユギトやビーと上手くやれている事や、戦争で対峙した時の事を覚えていた為、簡単に友達になってくれた。

 

だが、一尾─守鶴は尾獣の中でも一二を争う人間嫌いな上、〝六道仙人に似ている〟人格者である分福を冷遇している所を1番近くで目の当たりにしてしまい、人間嫌いが加速してグレていた。

…この1ヶ月、守鶴の説得が1番大変だったかもしれない。

 

『なぁ、そろそろじじぃに会わせろよ〜!』

「あぁ、ごめんね。」

 

ホットケーキを食べ終えた守鶴が短い足でポテポテと近寄り、私の膝の上へと座る。

仲良くなって以来、膝の上は守鶴の定位置となっている。…丸っこくて可愛いと思いつつ、それを言えばプンスカと怒るので心の中にしまっておく。

 

目を閉じて精神世界へと意識を落とすと、目の前には2人の男性…言わずもがな、尾獣達が心から尊敬してやまないハゴロモとハムラである。

 

前回と同様、尾獣達が我先にと駆け寄っていき尾獣同士で喧嘩しながらも甘える姿は、世間で恐れられている尾獣とは思えない程可愛かった。

尾獣を怖がっている人々に映像を見せたいくらいだ。

 

みんなの気が済んだ所で2人は私に向き合う。

 

「トウカ…ありがとう。トウカのお陰で、また皆と会うことが出来た。

新世界にも…尾獣達だけのスペースを…しかも、全員が快適に過ごせる環境を作って…なんとお礼をしたらいいか…。」

「私がやりたいと思ったからやったんで、お礼は要りませんよ。」

 

尾獣の専用スペースは、砂漠や洞窟、湖など、各々が快適に過ごせる環境を整えた。

 

尾獣達がいつ解放されるのかが分からない為、尾獣チャクラを少しずつ貰って専用スペースへと放ち、解放された時には尾獣チャクラに反応して自動的に転移出来るようになっている。

さらに、封印を掛け直す度…つまり、人柱力が変わる度に漏れたチャクラを集めて尾獣区域へと送る設定もした。

 

…ぶっちゃけ、1番力を注いだのはこの区域だ。

尾獣達はみんな身体が大きいため、尾獣地域は広大な敷地が必要だった。

巨大なチャクラそのものである尾獣達は、その時のチャクラ量によって大きさも変化するため、どれ位広ければ良いのかを判断するのにも時間を要した。

 

暴れても問題ないように自動修復能力もあり、尾獣達が─主に守鶴と九喇嘛─喧嘩しても大丈夫だろう。

 

結果的に、全員が満足する場所になったはずだ。もう移動しても問題ない。

…残すは、ある一点を確かめるのみだった。

 

「ハゴロモ様、黄泉にいる母が世界の境目を壊して泡の絶対防御を操っているらしいのですが、世界を移動させたらどうなるのでしょうか?」

 

私も、黄泉の事に関しては調べる事が出来なかった。

 

「…モモカの事か。儂が黄泉と現世を繋ぎ止めてやるから安心せい。」

「ありがとうございます。」

「もう、5年になるのだな…モモカがあそこまで取り乱したのは初めて見た。

それからのモモカの行動は…母は強しの一言だった。クシナと加流羅も手伝って、強引に現世へと繋がる道を開いた。

手伝った2人も、トウカに対してのひどい仕打ちに子を持つ母として思う所があったんだろうな…3人で泣いておった。」

 

手伝ったのって我愛羅とナルトの母達だったのか。

確かに、2人とは4歳差─つまり、出産の際に亡くなったらしい人柱力の母さんズは黄泉へと行っている事になる。

…その節は心配を掛けました、はい。

 

「…お母さんとハゴロモ様が知り合ってた事にも驚きましたけどね。」

「儂も一応死人だからの。…モモカとトウゲンに伝えたい事はあるか?」

 

少しずつ存在感が薄れている2人。

ハゴロモ様が最後に、と私に問いかける。

 

「…産んでくれてありがとう、と。

お母さんとお父さんのお陰で、健康に育つ事が出来て尾獣達と友達になれたし、大切な…守りたい仲間が出来たから。

私は、2人の娘で幸せです。」

「確かに、伝えよう。モモカとトウゲンは、トウカからの贈り物を嬉しそうに身につけておったぞ。」

「ありがとう、ございます。それが聞けて…嬉しいです。」

 

涙声になりながらも礼をいい、薄れていく2人の姿を名残惜しそうに見つめる尾獣達を見守る。

 

大好きで尊敬する人に会えない、その寂しさや辛さがよく分かる…だから、全員とここまで仲良くなれたのかもしれない。

 

 

精神世界から戻ってきた私は頬を流れていた涙を拭い、皆からチャクラを貰いつつ世界の移転を始めた。



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14の誕生日

意識を飛ばした私を心配そうに覗き込む10体の尾獣。

 

意識を飛ばす前と景色が変わらない為、

寝転んだままウィンドウを開いて確かめると、ちゃんと移動は出来ていた。

 

「みんな、ありがとう。私だけだったら…こんなにスムーズに行かなかったかも。」

 

誰にも気付かれる事無く(・・・・・・・・・・・・)、危機を脱する事が出来たのは、間違いなく尾獣達がチャクラをくれたお陰だ。

恐らく、あの2人(・・・・)をこの世に留めたのは、チャクラを借りろって事だったのだろうが…救世主が他国の人柱力で自前で何とか出来てしまった為、完全に無駄足だったようだ。

 

『トウカのお陰でハゴロモと会えたんだから、力を貸すのは当然だ。

それに…俺ら友達だろ、ウキキーッ!』

『そうですよ、トウカのお陰でハンとも良い関係を築く事が出来たんですから。みんな、トウカに感謝してるんですよ。』

 

体を起こし、みんなの優しさに思わず笑みが零れた。

 

 

 

 

尾獣達全員のチャクラを宿した事により、擬似的な(・・・・)十尾の人柱力となった。

まぁ、全てのチャクラを集めた訳でも無いし、十尾となる事は無いだろう。

 

だが、十尾にならないとはいえ全尾獣のチャクラを宿した為、求道玉などは使えるし全ての性質変化が使える。

 

私に危害を加えようとしても、指一本触れる所か近づく事さえ出来ないだろう。

 

目の前が真っ暗になりかけたため、傍らにいた犀犬をむきゅむきゅと揉む。

柔らかくてほんのり冷たく、癒し系だ。

 

「犀犬、モチモチだね〜…」

(尾獣)を現実逃避に使うとは…大した奴やよ。』

「犀犬は現実逃避にて最適だからね。」

 

周りにいた尾獣達が笑う。

…忍を引退したら山奥でのんびり暮らそう。

 

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「トウカちゃん、誕生日おめでとう。」

「ありがとう、やぐらさん。」

「これは俺達からだ。…メイさんも長期任務でなければ直接祝ってたんだろうが…」

 

私の14(・・)歳の誕生日を迎え、やぐらさんと君麻呂が祝に来てくれた。

時間が飛びすぎ?…キノセイデスヨ。

 

「トウカちゃんが14…つまり、再来年には結婚出来る歳…他の男が触れる前にトウカちゃん用の檻を…」

「やぐら?…おーい。」

 

…返事がない、ただのしかばねのようだ。

 

「…はっ!

ご、ごめん…トウカちゃんの事になると…どうしても、ね。」

「……。」

 

君麻呂は面倒くさそうにしている。

…メイさんが長期任務に出ているから、恋人…いや、新婚である君麻呂はイチャイチャ出来ていないのだ。

 

やぐらさんのヤンデレ思考に慣れて─毒されたとも言える─少しキュンとする場面が増えた。…私も末期かな。

どうしよう、もうすぐで崖下に落とされそうなんだけど。

 

 

『よく14まで持ち堪えたやよ。そろそろ諦めたら?』

 

…度々送られてくるピンクな映像に当てられてるだけだ…よ?

(好きになってないとは言ってない)

 

「やぐら、トウカ…俺そろそろ帰る。

メイさんは明日には帰ってくるはずだから、家も綺麗にしてあげたいし…。」

「君麻呂、それはトウカちゃんに10年間片思いしている俺に対しての宣戦布告か?

最近中々ムラムラが治まらない俺に対して嫌がらせか?」

「…トウカ、やぐらの事好きだよな?

そうだと言え…言ってくれないと、俺の肩の骨がイカれそうだ。」

「君麻呂の骨が、イカれる…?」

 

はて、今まで君麻呂の骨がイカれる事があっただろうか?

というより、仮にイカれても君麻呂なら何とかなるのではなかろうか。

 

「君麻呂の骨はともかく…やぐらさんの事、好きだよ?」

「…トウカちゃん、俺にキスされても嫌じゃない?」

 

やぐらさん可愛すぎ警報が頭の中に鳴り響いている。

顔を赤くして、不安そうに言うやぐらさんを見て落ちない女性はいるのか?

居ない。目の前で見た私が断言する。

 

「嫌じゃないよ?」

「トウカちゃん…!」

 

「…俺の事忘れてないか?」

「「…。」」

 

…君麻呂を送ってからめちゃくちゃイチャイチャした。

 




Q.なんでかなり時間が飛んだのか。
A.作者に成長過程を書く文章力と根性が無かったから。


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