東方妖精録 (きりたんぽ)
しおりを挟む

第一話『神原竜斗と幻想郷』

気が向いたので書いてみました。

嫌だな、と思ったらすぐにブラウザバックしてね。


蒼い空に白い雲、豊かな自然に澄んだ空気。

 

そして背後には、しばらく忘れていた『和』を感じさせる一軒の神社が…。

 

そう、この場所は…!

 

 

 

「………何処だ?」

 

 

 

俺の知らない場所であった。

 

 

俺はなんでこんなトコに居るのだろうか?

 

残念ながらこの神原(かみはら)竜斗(りゅうと)、全く記憶に無いのである。

 

昨日は、普通に学校行って、普通に帰って、普通に就寝したはずなのだが……。

 

 

 

「不思議な事もあったもんだな。」

 

 

 

此処に居ても何も始まらないので、とりあえず神社を訪ねることにした。

 

 

 

「すませーん!どなか居ませんかー?」

 

 

 

…………成る程、これが『しーん…』ってヤツだな?なんとも虚しいものである。

 

それはそうと誰もいないのだろうか?それともただ気が付いていないだけなのか?

 

 

一向に人が来る気がないので、回り込んで縁側の方から失礼しよう。

 

怒られたらどうしようかと思ったが、まぁ許してくれるだろう。

 

 

 

「………お?」

 

 

 

縁側に行くと、中に人影が見えた。

 

横になっている……。寝ているのだろうか?

 

しかし、時間的にはもう8時頃……。そろそろ起きてもいいのではないか。

 

 

 

「あのー。すみませーん。」

 

 

 

…………起きない。本日二度目の『しーん…』である。

 

仕方ないので上がらせてもらおう。

 

そうだ、寝ている人の顔を覗き込んでみよう。

 

 

………なんということだ、美少女ではないか。

 

少女は寝返りをうって仰向けの姿勢になる。

 

可愛らしい寝顔、そして、少しはだけた胸元に俺の視線を誘導されてしまった。

 

そのお手頃サイズのパイ乙が俺の思春期な男心をくすぐってくる。

 

 

 

「ちょっと、何してんのよ。てか何処見てんのよ。」

 

 

 

なんてタイミングだ。

 

一番起きて欲しくない時に起きるなんて悪運でしかない。

 

怒ってはいないだろうか?怒ってたら嫌だなぁ……

 

とりあえず何もなかったかの様に話しかけてみよう。

 

 

 

「わり、起こしちまったか?」

 

 

「別に、ただ起きただけよ。で、アンタどちら様?」

 

 

 

特に怒ってはいない様だ。良かった良かった。

 

 

 

「俺は神原竜斗だ。目が覚めたら鳥居んトコに居た。此処が何処だか教えて欲しくて訪ねたんだが。」

 

 

「成る程…外来人って訳ね。私は博麗(はくれい)霊夢(れいむ)。この博麗神社の巫女よ。」

 

 

 

博麗神社……?聞いた事もない神社だ。

 

つーか外来人って何だ?此処は日本じゃないのか?けど、霊夢は日本語だしな……

 

 

 

「霊夢、此処は何なんだ?」

 

 

「此処は幻想郷(げんそうきょう)。貴方がいた世界とはまた別の世界……異世界ってヤツよ。」

 

 

 

幻想郷……異世界だぁ?

 

マジかよ、そんな事リアルにあんのかよ。

 

普通なら霊夢の頭がおかしいと思うところだが、そんな冗談を言っている様な表情ではなかった。

 

それに、まだ会って一時間にも満たないが、霊夢が厨二病を拗らせてる様には思えない。

 

 

 

「あー……一応聞いとくけど、それマジ?」

 

 

「大マジよ。私はこんな嘘はつかないわ。」

 

 

 

やはり本当らしい。これはこれは、楽しくなってきましたな。

 

 

 

「向こうに帰らすこともできるけど、どうする?」

 

 

 

驚いた事に、向こうに帰れるっぽい。

 

だがしかし、俺に帰るなどという選択肢はこれっぽっちも無かった。

 

 

 

「帰らねぇよ。異世界転生なんて胸アツな展開、そうそう無いだろ?」

 

 

「そういうものかしら?まぁいいわ、これからどうするの?」

 

 

 

確かにどうしよう。ノリで帰らないなんて言ったが、俺には行く宛が無い。

 

今の俺は、家も無ければ食糧も無い。てかそもそも金が無い。

 

 

 

「仕方ない。暫くはホームレス生活だな。」

 

 

「待って、それはダメよ。この幻想郷には危険な妖怪がウジャウジャいるわ。野宿なんて自殺行為よ。」

 

 

 

流石は異世界。妖怪が居るなんて普通か……

 

しかし、困った。早速詰んでしまった様だ。

 

 

俺が悩んでいると霊夢が一つ案を出してきた。

 

 

 

「仕方ないわね、特別にウチに置かせてあげるわ。」

 

 

「………え?」

 

 

 

つい間抜けな声が出てしまった。

 

置かせてあげるってどういう事だ?居候させてくれる、という事だろうか?

 

 

 

「えっと、霊夢?それは俺が此処に居候するって事か?」

 

 

「えぇ、そうよ。」

 

 

 

何という事だ。年頃の女の子が提案する事じゃないぞ。

 

しかしそれ以外に案が無いのも事実……。此処はお言葉に甘えさせて貰おう。

 

 

 

「じゃあ、お言葉に甘えてそうさせて貰うよ。」

 

 

「タダで住まわせる訳じゃ無いわよ。しっかり働いて貰うわよ。」

 

 

「もとよりそのつもりだ。これから宜しく頼む、霊夢。」

 

 

「宜しく、竜斗。」

 

 

 

こうして、俺の幻想郷での長い生活が始まった。

 

 

 




最後まで読んでくれた心優しい人はいるかな?


次回予告的なヤーツ

魔理沙とか他のキャラ登場するかも……?


次回いつ投稿するかわかんないから気長に待っててね。
高評価が多かったら出すかも?

こうして欲しい!ってのがあったら教えてね。(採用するかも)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話『魔理沙と竜斗の能力』

二話目です。
どうぞ。


 

「………。」

 

 

 

 オレがいた世界とは異なる別の世界……。幻想郷へと来てしまった俺。

 来て早々、博麗神社の巫女である博麗霊夢と出会ったオレ、神原竜斗は、霊夢の手伝いをする事を条件に、博麗神社に居候させて貰うことになった。

 さっそく霊夢に掃除をするよう頼まれたので、俺は黙々と作業をしている………

 

 

「………暇だ。」

 

 

 イヤ、別に掃除が嫌な訳では無いのだが、話し相手がいないとつい暇に感じてしまう。何かアクシデントでも起きないものか……。

 あ、でもせっかく掃除したから何も無くて良いかもしれない。

 

 

『〜〜〜ッ!』

 

 

「ん?」

 

 

空の方からなにやら声が聞こえた気がする。気のせいだろうか?

 

 

『霊夢ー!』

 

 

 気のせいではなかった。

 空を見上げると其処には、如何にも魔女!って感じの恰好をした少女が箒に乗って此方に向かって飛んで来た。

 少女が凄い勢いで着陸すると、俺が掃いた落ち葉等が吹き飛んでしまった。そう、全てやり直しである。

 

 

「イヤー、勢い付け過ぎちまったぜ!………ん?お前誰だ?」

 

 

 何故か男口調の少女は、どうやら俺の存在に気が付いたらしい。取り敢えず自己紹介をしておこう。

 

 

「俺は神原 竜斗だ。今朝幻想入りした外来人ってヤツだ。」

 

「竜斗か。私は霧雨(きりさめ)魔理沙(まりさ)だぜ。で、何で掃除なんてしてるんだ?」

 

「色々手伝う代わりに神社に居候させて貰うって話になってな。」

 

「そうか。それで、霊夢は何処にいるんだ?」

 

 

 俺の事よりも霊夢の居場所の方が気になるらしい。なんか悲しい……。

 

 

「霊夢なら中でお茶飲んでるよ。」

 

「アイツ!人に働かせといて自分はゆっくりお茶かよ!?」

 

 

 魔理沙はこの状況を見て、霊夢ひでぇ!的な事を思ってる様子だ。しかし俺からすれば、ゴミを吹き飛ばした魔理沙も大概だ。

 

 

「そういや魔理沙、さっき空飛んでたけどやっぱりアレって魔法なのか?」

 

「そうだぜ!なんてったって私の能力は【魔法を使う程度の能力】だからな!」

 

 

 能力?魔法とは別なのだろうか?

 すると、顔に出ていたのか魔理沙がその『能力』について教えてくれた。

 

 

「霊夢から聞いてないのか?幻想郷の住人たちはそれぞれ違った能力を持っているんだぜ。まぁ持ってない奴もいるけどな。で、竜斗は何か持っていないのか?」

 

「え?俺も持っているのか?」

 

「それはわからないな……さっきも言ったけど持ってない奴もいるからなぁ。」

 

 

 能力か……。炎や氷を操るとかだったらナツとかグレイの真似できて最っ高なんだけどなぁ。

 

 

「そんなに気になるんだったら霊夢に調べてもらおうぜ。」

 

「お?霊夢ならわかるのか?」

 

 

 

「えぇ、わかるわよ。」

 

 

 縁側の方を見ると霊夢が歩いてきていた。これが噂をすればなんとやらってヤツか。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「別に、竜斗の様子を見に来ただけよ。それで、竜斗に能力があるか見て欲しいんだったっけ?」

 

「あぁ、今頼めるか?」

 

「良いわよ。見てあげるから少し静かにしてなさい。」

 

 

 そういうと霊夢は、俺の額に手を当てて目を瞑った。集中している様子だ。

 少しすると霊夢は目を開けて呟いた。

 

 

「何コレ?意味わからないわ。」

 

「どうだ霊夢。竜斗に能力はあったのか?」

 

「あったわよ。【フェアリーテイルの魔法をコピー・アレンジする程度の能力】だって。」

 

「えっ!?」

 

 

 期待していたよりも凄い上をいく能力に俺は驚いてしまった。

 つまり、ナツの『火竜の鉄拳』も出来るって事か?

 

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「うわっ!?急にどうしたんだぜ?!」

 

「フェアリーテイルは俺の大好きな漫画だぞ?!それの魔法を使えるってヤベェよ!」

 

 

 するとテンションMAXな俺に霊夢から強烈な平手打ちが放たれた。

 

 

「チョット落ち着きなさい!」

 

「グベェッ!?」

 

 

 女子の平手打ちとは思えない程の威力。だがそのおかげで俺は正気に戻った。

 

 

「わ、悪い二人とも、つい興奮しちまって……」

 

「別に気にしてないぜ。それより能力を試してみたらどうだ?」

 

「そうね。何か必殺技的なの無いの?」

 

 

 技かぁ……。記念すべき最初の技だからやっぱり『火竜の鉄拳』だな。

 

 

「よし、じゃあやってみるよ。」

 

 

 俺はパンチの姿勢をとり、右手に意識を集中させる。

 お、何かがキテる気がする。魔力的な何かが。そしてそれを一気に放出する——

 

 

 

「『火竜の鉄拳』!!!」

 

 

 

 …………あれ、何も起きない?どういうことだ?火が起きないぞ?

 

 

「ん?何かしたのか竜斗?」

 

「え?イヤ………え?」

 

「失敗したのね。他のヤツでやってみたら?」

 

「うーん………じゃあグレイの造形魔法をやってみるか。」

 

 

 俺は両手を合わせて目を瞑り、造形する物のイメージをする。

 ……お、また力が湧いてくる気がする。俺は湧いてくる力を一気に解き放つ———

 

 

 

氷造形(アイスメイク)(シールド)』!!」

 

 

 

 目の前に氷の盾が造形される。どうやら成功の様だ。

 だが何故『火竜の鉄拳』は出来なかったのに、造形魔法は出来たのだろうか?

 

 

「おぉ!いきなり氷の盾が出来た!」

 

「今度は成功の様ね。」

 

 

 魔理沙は驚いた表情をしているが霊夢の表情はあまり変わらない。もう少しリアクションしてくれても良いんじゃないか霊夢?

 

 

「うーーん………なんで『火竜の鉄拳』は出来なかったんだ?」

 

「それってどんな魔法なの?」

 

「手に火を纏って相手を攻撃する単純な魔法だ。ただしコレは【滅竜魔法】と言って、ドラゴンの力を付加させた者、『滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)』しか扱えない竜殺しの魔法……………てあれ?」

 

「どうしたんだぜ?」

 

「俺は、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)じゃないから滅竜魔法を使えないのか?」

 

「え?つまり…どういう事?」

 

「つまり特定の魔法はある程度の条件が必要になるって事。例えば、特殊な魔力が必要だとか特定のアイテムが必要だとかな。逆に言えば、さっきの造形魔法とかの特別必要なものは要らない純粋な魔法はいくらでも出来るって事。」

 

 

 なんかオーガストの魔法と似てるな……。ホルダー系の魔法はコピー出来ないトコとか。

 

 

「成る程ね……。ちょっと面倒な能力ね。」

 

 

 否定は出来ない。

 だがその条件を満たす事さえできればその魔法は俺のモノになるって事だから、強力な能力には変わりないだろう。

 

 

「けどま、慣れるまではしばらく修行かな。」

 

「そうね。確かにそれが良いと思うわ。それじゃあ、話もひと段落ついた事だし掃除に戻ってくれる?」

 

「………完っ全に忘れてたわ。つーか魔理沙も手伝え!俺が掃いたヤツ全部吹き飛ばしたろ!」

 

「べ、別に良いだろそれくらい!女の子に手伝わせるのか!?」

 

「うっせ!ちょうど箒持ってんだから良いだろ!」

 

「こ、コレは空を飛ぶ用の箒だ!」

 

「箒は掃除に使う道具だっつーの!」

 

 

 俺と魔理沙が言い争っていると背後からとてつもない寒気を感じた。

 振り返って見てみると其処には静かに怒っている霊夢が居た。

 

 

「………二人とも………」

 

「「………はい。」」

 

 

 怖い!怖いよ霊夢!『ゴゴゴゴゴゴゴ』って文字が見えちゃってるよ!

 

 

「早く掃除をしなさい………。」

 

「「………はい。」」

 

 

 この時俺は、初めて実感した。女性は決して怒らせてはいけない………と。

 

 

 

 あ、でも魔理沙は別かな?

 

 

 




魔法使用時とかの表現って難しいね。

自分はその時の思い付きでストーリーを考えているのでこれからは次回予告ナシです。てか無理です。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話『八雲 紫』

いや〜気が進まず結構サボってしまった。

はい、という訳で三話目です。どうぞ……。


 

 

 ——午後六時ごろ。

 俺たちは掃除を終え、魔理沙は自宅へと帰り、霊夢は夕食の支度をし、俺は能力に慣れる為に氷の造形魔法の修行を行っていた。

 

 

氷造形(アイスメイク)大槌兵(ハンマー)』!!」

 

 

 俺は両手を使って構え、空中に巨大なハンマーを造り出す。

 

 

「………やっぱりだ。昼間にやった時とは感覚が少し違う。威力も大きさも造形する速度も、昼間の時より衰えている。しかし魔法を使用する度に感覚が元に戻っていく………これらを踏まえて考えられるとしたら———」

 

 

「竜斗ー!夕飯出来たから戻って来なさーい!」

 

 

 能力について考察をしていると霊夢の声が聞こえてきた。夕飯が出来たらしい。

 俺は修行を中断し、神社の方へ向かった。

 

 

 

〜少年移動中〜

 

 

 

「あら、来たわね。」

 

 

 居間に着くと、霊夢が座って俺のことを待ってくれていた。俺は食卓に並べられている料理に目を向けた。

 

 

「おぉ、意外としっかり出来てるな。」

 

「意外は余計よ。どんなのだと思ってたのよ?」

 

「いやさ、さっき賽銭箱の中を見たらあんまり入ってなかったし、もうちょいアレな感じだと………」

 

「生活できる位の分はあるわよ。——ホラ、早く食べましょ。」

 

 

「「いただきます。」」

 

 

 挨拶をし、俺は料理を口に運ぶ。味の感想はというと………

 

 

「ん、結構美味いじゃん。上手く出来てるよ。」

 

「そ、ありがと。」

 

 

 リアンクションが薄いぜ霊夢さん……。君も年頃の女の子なんだからもっと喜ぶべき場面じゃないか?まぁ別にいいけど………。

 すると霊夢が俺に話しかけてきた。

 

 

「それで?能力について何か分かった?」

 

「あー………まぁ、まだ考察の段階だけど結構分かってきたよ。」

 

「へー、何が分かったのかしら?」

 

「まず一つは昼間に言った通り、滅系の魔法などの特殊な条件が必要な魔法は条件をクリアする事が必要になる。」

 

 

 例えれば、滅竜魔法を使うには『竜の魔力』の入手が必要となる。星霊魔法を使うには『星霊の鍵』を入手しなければならない。——といった感じだ。

 

 

「確かにソレは昼間に聞いたわ。他には?」

 

「この能力には『初回サービスシステム』が存在するっぽい?」

 

「初回サービスシステム?何よそれ?しかも何で疑問形?」

 

「俺もまだよく理解出来てないんだよ。俺の頭脳は平均よりちょっと上ぐらいだからな。」

 

 

 俺の学校での成績は学年の中の上辺りだ。であるからして俺の理解速度は遅くはなくとも速くもない。

 つまり!能力の理解が出来ていないのは致し方なし!って訳だ。

 

 

「貴女の頭のデキなんてどうでもいいから早く説明しなさいよ。」

 

「わーったよ。——まず確認だけど、俺が昼間に魔法を見せた時はちゃんと魔法使えていたよな?」

 

「ええ、特に問題は無い様に見えたわよ。」

 

「ところがドッコイ、掃除を終えた後にもう一度使ってみると、昼間とは比べ物にならない程に性能が劣化していたんだ。で、その後に何回か魔法を繰り返していると性能がだんだんと良くなってきた。『コピー能力』って言うモンだから俺はてっきり直ぐに使える様になると思ってた。けどそれは間違いだった。ちゃんと一から修行しなければならなかったんだ。しっかり汗水を流してな。それであの時に魔法を完成状態で使えたのは———」

 

「その魔法を使用する時の感覚を体に覚えさせる為………?」

 

「ま、そんなとこだろうな。これが今考えられる事だ。」

 

 

 現状で考えられる事はこれが限界だ。むしろこれだけの情報でここまで推察できた事に称賛を与えたいくらいだ。

 これ以外にも何かあるかもしれないがそれは後に分かるだろう。

 

 

「あー、頭使ったらなんか疲れたわ〜………。」

 

「理解が遅いって言う割には結構分かってるじゃない。本当に中の上なの?」

 

「ん〜?俺の頭のデキなんかどうでも良かったんじゃないのか?それとも気になってきちゃったか?」

 

 

 俺はおふざけ気分で少々挑発的な事を霊夢に言う。正直自分でもウザいと思ってしまった。

 

 

「………別に、どうだっていいわよ。貴女になんて微塵も興味が湧かないわ。」

 

 

 それを聞いた霊夢は本気で拗ねてしまった様だ。ヤバい、凄い罪悪感が俺に襲い掛かってくる……。

 

 

「すまん霊夢。今のは自分でもウザいと思った。ちょっと調子に乗っちまった、悪い。」

 

「………謝るんだったら最初から言わないでよ。」

 

「いや、本当に悪かっ———ん?………そこに居るの、出て来い。」

 

 

 俺がそう言うと、空中に奇妙な空間が開かれる。

 その空間には『眼』が点々と浮かんでおり、その中から一人の女性が現れた。

 その女性はフリルの付いた紫色のドレスを着ており、頭にはリボンが付いた帽子を被っている。髪は金髪のロングヘアで、毛先には幾つかリボンが付いている。

 女性を口元に扇子を置き、俺の方を向き話し始める。

 

 

「私の気配に気付くなんて、中々やるわね君。」

 

「そりゃどうも。で、貴女はどちら様ですか?」

 

「あら、人に名を聞く時はまず自分から名乗るモノではなくて?」

 

 

 出た、マンガとかでよくあるセリフだ。まさかリアルで聞くとは思ってなかった。

 

 

「………俺は神原竜斗。外界出身の人間です。」

 

「竜斗くんね。まぁ知ってたけど。貴女をここに連れてきたのは私だし………。」

 

 

 ………ん?今この人なんて言った?『ここに連れてきたのは私』って言ったのか?

 

 

「え?アンタが俺を幻想郷に?」

 

「そうよ、私は八雲(やくも)(ゆかり)。貴方を幻想郷に連れてきた者よ。ちなみにさっきの空間は『スキマ』と言うのよ。」

 

「やっぱりアンタだったのね……。一体何のために竜斗を連れて来たのよ?」

 

 

 霊夢は俺を連れて来た理由を紫さんに聞く。確かに気になるな……。

 すると紫さんは予想外の返答をする。

 

 

「別に?食事用の人間を適当に捕まえたら彼だっただけよ。」

 

「………んん〜?食事用の人間?それってどゆこと?」

 

「竜斗、紫は人間に見えるけど実は人喰い妖怪なのよ。」

 

「………え、嘘?こんな美人さんが妖怪なのか?めっちゃ人間やん?」

 

 

 とても信じられない。

 妖怪ってもっと人間とはかけ離れた化け物みたいな容姿かと……。

 

 

「幻想郷の妖怪はこういうパターンが多いから気を付けなさい。人間だと思ったら妖怪だったみたいなパターンがあるから。」

 

「りょ、了解。」

 

「あ、ちなみに言っとくけど、紫って容姿は若いけど実は何百年も生きてるBBAなのy——」

 

「——ッ!?」

 

 

 俺は急にとてつもない殺気を感じた。

 発生源は紫さんだ。紫さんの方を見てみると、ドス黒いオーラを身に纏っていた。どうやら『BBA』という単語は紫さんの前では禁句の様だ。

 

 

「霊夢ー?いくら貴女でも容赦しないわよー?」

 

 

 アカン!女性がこの殺気はいろいろとアカンですよ!冷や汗が止まんねぇってば!

 

 

「ゆ、紫さん……俺は年齢なんて気にしませんよ?紫さんってとても綺麗ですし、むしろ気にする方が難しいっすよ。ホラ、笑いましょ?紫さんは笑顔の方が似合いますよ。」

 

 

 俺は冷静に紫さんを説得させる。咄嗟に喋ったが、別に嘘は言ってないしきっと大丈夫………と思いたい。

 

 

「………仕方ないわね。ここは竜斗くんに免じて許してあげるわ。」

 

 

 良かった、なんとか冷静になってくれた様だ。これで一安心だ。

 

 

「ところで竜斗くん。私、貴女のことが気に入ったわ♪『竜くん』って呼んでもいいかしら?」

 

「あ、はい。好きな呼び方でどうぞ……。」

 

 

 なんか気に入られてしまった……。まぁ別に嫌じゃないし全然構わないんだけどな。

 

 

「話を戻しますけど、さっき食用として俺を捕まえたって言いましたよね?なら何故俺は今こうして生きてるんですか?」

 

「別に大した理由じゃないのよ。ただ貴方を一目見て、何となく貴女は食べない方が良いと思ったの。それは、特に根拠も無いただの気紛れ………。」

 

 

 ——つまり、俺は適当な気分で死にかけ気紛れで生かされているのか……。なんか虚しいぜ。

 

 

「ところで竜くん。貴女はこれからどうするのかしら?外界に帰る?」

 

「いや、向こうに帰るっていう選択肢は絶対に無いですね。明後日くらいから万屋でもやろうかと……。」

 

「万屋ぁ?しかも明後日から一人で?」

 

「今んトコはそのつもりだけど。」

 

 

 俺はまだ幻想郷に来て間もない。一緒に仕事をしようなんて言える者がいないのだ。

 

 

「けどまぁ魔法の修行とか地理の把握をしないといけないし、まだ先の話になるんすけどね。」

 

「それまではどこで生活するのよ?」

 

「博麗神社に置いてくれたら一番手っ取り早いんだけど………流石に迷惑だよな?」

 

「いや、明日だけでしょ?別に一日くらい構わないわよ。」

 

「そうか?じゃあお言葉に甘えさせて貰うよ。」

 

 

 なんだかんだ言って霊夢は優しい。

 こんな出会ったばかりの俺を二日間も家に置いてくれるなんて普通はしない。ましてや霊夢は女の子だ。正直、女子の家に滞在するなど俺も気が引けてくる。

 

 

「あ、そういえば紫さんにお願いがあるんですけど………」

 

「あら、何かしら?」

 

「向こうから俺の衣服とかお金とかの生活用品を持ってきてもらせませんかね?無いといろいろ不便なので……。」

 

 

 さっきまでの話からすると、紫さんは俺が元いた世界——つまり外界と幻想郷を自由に行き来出来るっぽい。俺を幻想郷に連れて来たくらいだし……。

 

 

「あぁ、そういう事ね。いいわよ、明日の朝までには持って来といてあげる。」

 

「あ、でも向こうのお金ってこっちでも使えますかね?」

 

「問題無いわ。コッチとアッチの通貨は同じだからね。———それじゃあ私はそろそろお暇させて貰うわ。」

 

「あ、はい。改めてこれからよろしくお願いします。」

 

 

 これから何回か関わることもあるだろう、という事で俺は紫さんに挨拶をする。

 

 

「えぇよろしく♪それじゃおやすみ、竜くん♪」

 

 

 紫さんは再びスキマを開き、消えていった……。

 

 

 




能力の説明が難しくて何を言ってるのかイマイチ分からなくなってしまった……。

それではまた次回に……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話『人里』

久しぶりに書いた〜。

めっちゃサボりました。
不定期にも程がありますね f^_^;)


 

 

 幻想入りから2日目。

 起床したオレは辺りを見渡すと衣服や財布、FAIRYTAILの単行本などといったオレの私物が置かれていた。約束通り紫さんが持ってきてくれたのだろう。

 

 オレは歯磨きや着替えを済ませ、両手で顔を叩き気合いを入れる。

 

 

「ふぅ……さっそく修行するか!」

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

 

〜霊夢side〜

 

「———ぅん……ふぁぁあ。いま、なんじ…?」

 

 

 目を覚ました私はそう言いながら時計の方へと目を向ける。

 

 

「……7時半。私がこんなに早く起きるなんて……。」

 

 

 二度寝をしようとしたが何故かうまく寝付けない。仕方ないから顔を洗ってこよう。

 

 

「……あ、竜斗。」

 

 

 洗面所へ向かう途中、外で何かをしている竜斗を見かけた。何をしているのかしら?

 ……見たところ、修行をしているようね。魔法を何度も繰り返してるのが伺える。

 

 

「朝っぱらから良くやるわね……。」

 

 

 暇だし朝食でも作ってあげようかしら。何がいいかな?

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

 

~竜斗side~

 

 

 現在、オレと霊夢は朝食を食べている。霊夢が作ってくれていたようだ。白米に味噌汁に卵焼き、特に変哲のない朝食だが、味付けもしっかりされていてなかなか美味い。

 

 

「いやー、朝食を作ってくれて助かった。ちょうど腹が減ってきてたんだ。」

 

「まぁ、いつもより早く起きちゃって暇だったからね。」

 

「普段はいつまで寝てんだ?」

 

「10時くらいまで。」

 

「……寝すぎだろ。」

 

「私の勝手でしょ。………それで?この後は何するか決めたの?」

 

「んぁ?あー、そうだなぁ……」

 

 

 そういえば何も考えてなかった。とりあえず万屋を建てるのに良い土地を探そうかな。

 

 

「霊夢、どっかに人間が住んでる集落みたいな場所は無いのか?」

 

「え?ここから西の方へ進めば人里があるけど……」

 

「人里、か。よし!じゃあそこに行くか!」

 

「そう。じゃあ私もついてってあげる。道案内が必要でしょ?」

 

「お、サンキュー。よろしく頼むわ。」

 

 

 なんだか世話になりっぱなしだな。今度なんか恩返しができると良いな。

 

ーーーーーーーーーー

 

「——よし、んじゃ行くか。」

 

 

 準備を終えたオレと霊夢は外に出た。すると、霊夢が何かを思い出したのかオレに問いかけてきた。

 

 

「あ、竜斗は空飛べないわよね?だとすると、結構時間かかっちゃうわよ。」

 

「ん?んー……いや、飛べないこともないな。」

 

 

 そう言いながらオレは両手を合わせ、造形魔法の構えをとる。

 

 

氷造形(アイスメイク)(ウィング)』!」

 

 

 オレの背中に氷の翼が造形される。うん、やっぱり便利な魔法だ。霊夢も少し感心した様な表情を浮かべている。

 

 

「へぇ、そういう使い方もあるのね。」

 

「ま、造形魔法は自由の魔法って言われるくらいだからな、発想力が豊富であればそれだけ用途も増えるわけだ。」

 

 

 そんな会話を交わしながらオレ達は人里へ向かった。

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

 

 ——博麗神社を出発してから10数分。特に問題もなく人里に辿り着くことができた。

 

 人里。建物は基本的に木造で建てられていたり、住民たちのほとんどが着物をその身に纏っていたり、子供たちが集まって楽しそうに遊んでいる様子を見たオレは、まるでタイムスリップでもしてしまったかの様な感覚に陥ってしまっていた。

 

 

「さてと、何からすればいいのかしら?」

 

 

 いつまでも突っ立っているオレに痺れを切らしたのか、いよいよ霊夢が口を開く。

 我に返ったオレは首を横に振り気を改める。

 

 

「とりあえず里の責任者に挨拶しに行かねーとな。」

 

「責任者…ね。確かこっちの方に……」

 

 

「おや?そこに居るのは霊夢じゃないか?」

 

 

 オレと霊夢は声がした方に振り向く。 するとそこにはオレより少し低い背丈の銀髪女性がこちらに……というより霊夢に向かって来ていた。

 女性は周りの者たちとは違い少々現代的な衣服を着ており頭には青い帽子を被っている。見た感じはオレと大して変わらない容姿だが、それ裏腹に大人びた風格が感じられる。

 

 霊夢とも知り合いっぽいし、悪い人じゃないだろう。

 

 

「あら、慧音先生じゃない。久しぶりね。」

 

「そうだな………ん?そこの青年、見ない顔だな。霊夢の彼氏か?」

 

「はぁ!?」

 

 

 霊夢は頬を紅く染める。意外とそういうのに弱いのか。

 にしても出会って間もなくしてなんてことを言うんだこの人は……。しかも霊夢が叫ぶからなんか注目されてるし。

 こういう話は誤解されたら面倒だしオレも否定しとくか……。

 

 

「昨日に外界から来た神原竜斗です。わからない事が多いんで霊夢にいろいろ付き添って貰ってるんすよ。」

 

「そ、そうよ!別に彼氏とか、そうゆうのじゃないから!わかった!?」

 

 

 霊夢……動揺しすぎだ。そんなリアクションすると余計に弄られるぞ。

 

 

「ほう?しかしそこまで必死だと余計に怪しいな……ホントはどうなんだ?」

 

「だから違うっての!」

 

 

 ほれみろ言わんこっちゃない。あの人も凄いニヤついてるじゃないか。

 仕方ない、そろそろ助け舟を出してやろう。

 

 

「えーっと、あの、もう終わってもらってもいいすか?」

 

「ははっ、悪い悪い。それで自己紹介がまだだったな。私は上白沢(かみしらざわ)慧音(けいね)。寺子屋で教師をやっている者だ。……竜斗くんだったか、今日は何しに人里に?」

 

「人里で商売をしたいんで許可貰うついでに土地探しを、とね。」

 

 

 そう言うと慧音先生は顎に手を当て何かを考える。少しして慧音先生が口を開く。

 

 

「なるほど。それなら先程あちらの方に阿求を見かけたぞ。まだ近くに居るだろうからそちらに行けばいい。」

 

「阿求?どんな人ですか?」

 

「稗田家の9代目当主さ。簡単に言えばお金持ちな家の責任者さ。」

 

 

 確かに、それなら権力も持ってそうだしあまり歩かなくても済みそうだ。

 

 

「んー……じゃあその阿求さんに会ってきます。いろいろあざっした。」

 

「うん。これからもよろしく頼むぞ。」

 

「うす。ほれ、行くぞ霊夢。」

 

「……わかったわ。」

 

 

 まだ不貞腐れているのか。そんなに嫌だったか?結構傷つくわ〜。

 すると最後の最後に慧音先生がこんな言葉を残す。

 

 

「霊夢!良い殿方を見つけたな!」

 

「うっさい!!」

 

 

 そんなやり取りをしながらオレたちは慧音先生とお別れし、稗田阿求の元へと向かった。

 

 

 




いやー後先考えないで書くと不便ですね。

少しくらい先のことを考えておこうかな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話『竜神の加護』

今回はそこそこ早めに出せました!

まぁ珍しくやる気が続いただけなんですけどね



 

 

 慧音先生と別れたオレ達は、稗田阿求という人物を探し歩いていた。

 先ほど慧音先生が言っていた場所にも行ってみたが、どうやらすでに移動してしまったようだ。

 

 

「うーん、いねぇなぁ。」

 

「そうね……」

 

 

 霊夢は素っ気ない返事を返す。まだ拗ねているのか……。

 

 このまま宛ても無く探しても仕方がない。目撃者がいないか町民に尋ねてみようか。オレはすぐそこに居た男性に声をかける。

 

 

「スマセンそこの兄さん。阿求って人を探してんすけど見かけませんでした?」

 

「阿求〜?あの稗田家の嬢さんのことか?」

 

「はい。見てませんかね?」

 

「いや、さっき鈴奈庵(すずなあん)に入ってくのを見たぜ。まだそこにいるんじゃねぇかなぁ。」

 

 

 鈴奈庵?何だそれ?

 そんな事を考えていると表情に出ていたらしく、霊夢がオレに言う。やっと機嫌が治ったか。

 

 

「この人里唯一の貸本屋のことよ。彼女、そこの娘さんと仲良かったから確かにそこにいる可能性は高いわね。」

 

「なるほーどね。じゃそこ行ってみます。あざっした。」

 

 

 男性に一礼をし、オレ達は鈴奈庵を目指す。

 

 

「なぁ霊夢、その阿求って歳いくつくらい?」

 

「さぁ?わかんないけどまぁ……アンタよりは年下ね。それがどうかしたの?」

 

「いや、当主だの何だの言うからてっきり大人の人かと……ま、別に問題もないし良いんだけどな。」

 

「あっそ……あ、着いたわよ。」

 

 

 おしゃべりをしてる間に到着したようだ。今目の前には『鈴奈庵』と大きく書かれた建物があった。扉を開き鈴奈庵の中へと入っていくと、オレの視界に二人の少女の姿が映る。

 すると、鈴の髪留めを付けた飴色ツインテールの少女が立ち上がり、接客をし始める。

 

 

「いらっしゃいませ〜、鈴奈庵へようこそ。……あ、霊夢さん!お久しぶりです!今日はどうされたんですか?」

 

「久しぶりね小鈴ちゃん。今日はちょっとこの人の付き添いでね。」

 

 

 霊夢がそう言うと小鈴と呼ばれる少女がオレの方を向く。

 

 

「あ、えーっと、本居小鈴と言います。お兄さんは?」

 

「神原竜斗だ。稗田阿求さんに用があって来たんだけど……ここに居るか?」

 

「阿求に?阿求ならそちらに座っているのがそうですが……」

 

 

 小鈴が指を指す方を見ると、そこには花の髪飾りを付けた紫髪の少女が気品のある姿勢で座りながらこちらを見ていた。

 少女は首を傾げながらオレに問いかける。

 

 

「あの、私に何かご用でしょうか?」

 

「ん、人里で商売をしたいんで許可を貰いに来たんですが……」

 

「商売、ですか?あ、どうぞお座りになって下さい。」

 

 

 オレは言われるがままに座る。霊夢と小鈴も腰を下ろした。

 阿求さんは正座に座り直し、話を聞く姿勢をとる。

 

 

「私のことをご存知のようですが改めて自己紹介をさせて頂きます。私は稗田家九代目当主の稗田(ひえだの)阿求(あきゅう)と申します。以後お見知り置きを。」

 

「オレは神原竜斗、昨日外界から来た外来人です。本日は先ほども申した通り、この人里で商売をさせて頂くための許可を貰いに来ました。」

 

「あ、そんなに堅くならなくても結構ですよ?恐らく竜斗さんの方が年上ですのでもっと気楽にしてください。……それで、商売とは具体的にどのようなものでしょうか?」

 

「万屋というか何でも屋というか……困ってることを人から依頼として貰ってそれを解決する、みたいな感じだよ。」

 

 

 阿求は成る程、と呟いた後に顎に手を当てる。少しした後、阿求は白紙と筆を手に取り何かを描き始めた。

 何かを描き終えた阿求は俺にその紙を渡す。

 

 

「人里で商売を行うことを許可します。この紙に使われていない空き家の位置を描いておきました。是非そこを拠点にしてください。」

 

「うぇ、それっていくら払えば……」

 

「竜斗さん。」

 

 

 オレが値段のことを気にしていると阿求がオレの名を呼んで遮る。

 まさか、とてつもない額を口にするんじゃ……?そんな事を考えてしまいつい身構えてしまう。

 

 

「依頼人として貴方にお願いします。今後、何かしら大変なことが起きたその時は、その身を挺してこの里および町民たちを護ってください。」

 

「……ふん?」

 

 

 予想外な発言につい間抜けな声が出てしまう。阿求は口元を抑えながらもクスクスと笑っている。

 

 

「ごほん、つまりどういう事だ?」

 

「はい、それを約束してくれるのであれば、タダで土地と空き家をお譲りします。」

 

 

 ……成る程な、そうゆう事か。つまり彼女なりの気遣いなのだろう、多分。そう思う事にする。

 オレはふっと笑い拳を自身の胸にドンと当てる。

 

 

 

「いいぜその依頼、引き受けてやるよ。命を賭けてこの里を護ることを約束しよう。」

 

「ふふっ。はい、よろしくお願いします。」

 

 

 阿求は上品な笑みを浮かべている。すると小鈴がオレに問いかける。

 

 

「竜斗さん竜斗さん。名前はどうするんですか?」

 

「名前?」

 

「万屋の名前ですよ!そうゆうのがあった方がいいでしょう?」

 

 

 ……やっべ、何も考えてなかった。いっそのことFAIRYTAILにしてしまおうか?イヤ、それは止めとこう。

 頭を抱えて悩んでいると、霊夢が一つ提案してくる。

 

 

「『竜神の加護』ってのはどうかしら?」

 

「竜神の……?それはどういう意味が?」

 

「竜神は『神原竜斗』から神と竜をとったのよ。それで万屋って人助けをするものでしょ?だから竜神から加護を受けるって意味で『竜神の加護』よ。」

 

「お、おぉ……おお!なんかイイじゃん!それに決定!」

 

「わっ、急にテンション上がんじゃん。」

 

 

 竜神の加護、か。竜……ドラゴン……!やば、愛着湧いてきた。

 

 

「よし!んじゃあ今ここに、万屋『竜神の加護』の誕生だ!」

 

 

 




もっと良いネーミングありましたかね?

俺的には『竜』という単語を使えたのでケッコー満足してます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話『荷物の運び方』

最近暇です。


 

 

「ほっへー……なかなか良い家じゃん。」

 

 

 オレと霊夢は、阿求に渡された地図を見ながら拠点となる建物へと向かった末、その建物へと辿り着くことができた。

 建物は二階建てで、一人暮らしには勿体無いとも思える物件だった。

 

 

「ほら、早く入りなさいよ。」

 

 

 霊夢に背中を押されたオレは戸を開き中へ入る。

 中は思ったよりもキレイだった。空き家と言うもんだから掃除をしなければと思っていたが、案外その必要はないようだ。

 すると霊夢も同じことを考えていたのか、ぼそりと呟く。

 

 

「誰かが定期的に掃除をしてくれてたのかしらね。」

 

 

 成る程そうゆうことか。確かにその可能性はあるな。

 

 

「とりま神社に戻るか、荷物とか持って来ねーといけねぇしな。」

 

「そうね。」

 

 

 ということで再び外に出ようと戸を開けた瞬間、空からある少女の声がオレの鼓膜を刺激する。

 

 

「お、竜斗じゃん!そこで何してんのぜ?」

 

 

 空を見上げるとそこには箒に跨った魔理沙がいた。そしてゆっくりと降下しスタッと着地する。

 

 

「よう魔理沙、昨日ぶりだな。オレ商売することになったからさ、その為の家を下見に来てたんだ。」

 

「商売ぃ〜?」

 

「あぁ。『竜神の加護』っていう万屋……まぁ、何でも屋みたいなモンさ。」

 

「何でも屋かぁ。じゃあ今度困ったことがあったら竜斗を頼ることにするぜ!」

 

 

 魔理沙は手をオレの肩にポンと乗せながら濁り気のない笑顔で言う。その笑顔に釣られ笑顔で了承する。

 

 

「おうよ。任せとけってんだ。」

 

 

「はいはい、話はその辺にして早く神社に行くわよ。」

 

 

 霊夢は待つことに痺れを切らしたらしく口を開く。すると魔理沙は何かを疑問に思ったのか俺たちに問いかける。

 

 

「ん?なんか急ぎの用でもあったのか?」

 

「竜斗の外界の荷物をここまで運ばなくちゃいけないのよ。けっこう量もあったし何往復かしないと運びきれないのよ。」

 

「いや、多分何往復もする必要ないぞ。」

 

「えっ?」

 

 

 霊夢は軽く驚いていた。別に驚く要素はないと思うんだけど……。

 

 

「あの量を一気に運ぶの?アンタそんなに力持ち?」

 

「……あっ、流石に手で運ぶわけじゃないぞ?魔法を使うんだよ。でっけぇ氷の箱を造ってそれに荷物をいっぺんに乗せて運ぶ、それだけだ。」

 

「けどベッドとか本棚とか机とかもあってけっこう重さもある筈よ。たかが氷で運べるとは思わないけど……」

 

「昨日の盾を造形したときを思い出してみろ。あの質量の氷を空中に浮かして造形したんだぞ?その時点で大抵の重量なら耐えられることが分かる。」

 

 

 そんなオレの説明に魔理沙は「なるほどぉ。」と頷いている。

 

 

「ま、全部が全部すぐに持ってかなきゃならん訳じゃないし、持ってけなかったヤツは別の日にまわすよ。いいだろ霊夢?」

 

「別にいいけど…あんまり先延ばしにすると私が貰うか処分するから。」

 

「霊夢、捨てるのは勿体無いだろ!何なら私が貰ってやるぜ!」

 

「いやあげねーよ。」

 

 

 まったく、何故そうゆう発想になるのだろうか?実は泥棒の経験があったりするのだろうか?………いや、流石にそれはないか。

 

 

「あそうだぜ竜斗!魔法、しっかり使えるようになったのか?」

 

「あ?まぁそれなりに使えるようになったな……そろそろ実践練習もしたいトコだけど、それが何か?」

 

「竜斗!私がその実践練習、弾幕ごっこの相手になってやってもいいぜ!」

 

 

 ……は?実践練習の相手を魔理沙が?てか何故上から目線?いきなり過ぎて状況がイマイチ掴めんな。

 返答に困っていると目を輝かせた魔理沙が急かしてくる。

 

 

「ほら!どうなんだぜ竜斗!」

 

「どうって……魔理沙は女の子だしそうゆうのは気が引けるんだが……」

 

「魔理沙相手にそうゆうことは気にしなくていいわよ。見た目に反してけっこう強いから。ちなみに私もね。」

 

「そ、そうなのか。じゃあ、うん、よろしく頼むわ。」

 

「へへっ!そうこなくっちゃな!」

 

 

 てな訳でオレたちは博麗神社に戻ることにした。

 

 

 

〜博麗神社〜

 

「そういえば霊夢、竜斗にスペルカードのこととか教えたのか?」

 

「あ」

 

「ん?スペルカードとはなんぞい?」

 

「あぁ、そっからか。——竜斗!これを見るんだぜ!」

 

 

 そう言うと魔理沙はポケットから何らかの絵が描かれた一枚のお札を取り出す。

 

 

「これはスペルカードって言うんだ。スペルカードってのは、自分の能力とかを何も描かれていないお札に念じて作る、謂わば必殺技を放つ為のトリガーみたいなモンだぜ。」

 

「ふむ、それがさっき言ってた弾幕ごっこ?とか言うのに必要なのか?」

 

 

 その疑問に霊夢が答える。

 

 

「弾幕ごっこは幻想郷での決闘方法よ。ルールは能力やスペルカードを駆使して相手を降参させること、先にスペルカードの枚数を決めて、それらを攻略されれば文句無しで負けを認めること。ただ相手を殺したりするのは禁止。」

 

「んー、なんつーか面倒くさいルールだな。」

 

「まいいや、今回はスペルカードとかは無しにするぜ。勝敗は相手に『参った』っ言わせるだけ。霊夢、審判頼むぜ。」

 

「面倒くさいわね。竜斗、後で賽銭入れなさいよ。」

 

 

 何故オレが?別にいいけどさ……。

 

 オレと魔理沙はある程度の距離をとる。魔理沙は箒に乗って宙に浮いている。

 霊夢がオレたちが位置についたのを確認した後、右手を上げ——

 

 

「それじゃ始めるわよ……。

 

 

 

 

 

——始め!」

 

 

勢い良く振り下ろすと同時に、オレの幻想郷初の闘いが始まる。

 

 

 




今回内容が無さすぎてサブタイトルに困ってしまった…w

次回はいよいよ戦闘シーンかぁ…
きっと変になるだろうなw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話『vs魔理沙』


原作をプレイしてないのって意外と辛い




「よーい………始め!」

 

 

 霊夢の合図で勝負が開始する。——しかしオレも魔理沙も動かなかった。

 

 

「どうした? 来ないのか?」

 

 

 笑みを浮かべながら言ってくる。余程自信があるんだろうが……ナメられてるなぁ。

 

 

「悪いな。オレは幻想郷の闘い方を知らない、だから少し様子見をさせてもらう。」

 

「そうか。じゃあ……こっちから仕掛けさせてもらうぜ!!」

 

 

 魔理沙は星の形をした気の塊? のような物を作り出しオレに向かって飛ばしてくる。

 少し反応が遅れてしまったがオレは地面を蹴って後退をしながらなんとか避ける。

 

 

「ひゅ〜、危ねぇ危ねぇ。なんだ今の? 魔法?」

 

 

 疑問を口にすると霊夢から解説が入ってくる。

 

 

「今のは弾幕よ。自分の力を込めて作る気の集合体。モロに喰らえばけっこう痛いから気をつけなさい。」

 

「そういうことだ! ホラ、休んでる暇はないぜ!」

 

 

 気がつくと先程よりも多数の弾幕が飛んできていた。

 

 

「こうすりゃ防げるかな?——氷造形(アイスメイク)槍騎兵(ランス)』!!」

 

 

 両手を合わせ無数の氷の槍を造形する。そしてその一つ一つを魔理沙の弾幕に衝突させながら相殺する。さらにすかさず攻撃を加える。

 

 

氷造形(アイスメイク)『白鳥』!」

 

 

 氷で造られた白鳥八羽ほどが魔理沙を目掛けて高速で飛んでいく。油断していたのか、魔理沙は慌てて回避する。

 

 

「うわっ、ちょちょちょ!」

 

「チッ、この距離だと流石に当たんないか……。」

 

 

 現在オレらの間はかなり距離が開いている。これでは幾ら速い攻撃を仕掛けても回避されてしまう。

 

 

「なかなかやるじゃないか竜斗! 今のはケッコー危なかったぜ!」

 

「それはお前が気を抜いてただけだろ。」

 

「ゔっ、確かにそうだが………それを差し引いても強いと思うぜ!」

 

「そりゃどうも。」

 

 

 オレは魔理沙の称賛を素っ気なく返す。

 

 さて、一気に距離をつめたいトコだがきっとそんな隙を与えてくれないだろう。どうしたものだろうか……。

 すると魔理沙がポケットから一枚のお札を取り出す。

 

 

「スペルカードかッ!?」

 

「そう……私のとっておきだぜ。お前に敬意を払ってお見舞いしてやるぜ。」

 

 

 そしてスペルカードをオレに向け、宣言する。

 

 

 

 

「恋符『マスタースパーク』!!」

 

 

 

 

 魔理沙のスペカから高密度で広範囲のレーザーが飛んでくる。オレは再び両手を合わせて構える。

 

 

氷造形(アイスメイク)防護壁(プロテクト)』!!」

 

 

 オレは盾よりも面積が広く魔力を込めた防護壁を造り出す。そして直撃する。

 

 

「グッ! なんてパワーだよ!?」

 

 

 ピキッ!

 

 

 マズイ、氷壁にヒビがッ! このままだと押し負けちまう!

 

 

「だったら……! もう一枚!!」

 

 

 オレはもう一枚防護壁を造り出す。その数秒後に一枚目の壁が破壊されてしまったが……確実に威力が弱まってきてる!

 

 そしてまた数秒経つとレーザーが収まっていった。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 レーザーを防ぎきったオレを見て魔理沙と霊夢は驚きの表情を浮かべている。だがそれも束の間——

 

 

「スゴいぜ竜斗! まさかマスパが防がれるとは思ってなかったぜ! けどまだ勝負は終わってないぜ!」

 

 

 しかし魔理沙はすぐに笑顔に戻り、弾幕による攻撃を続ける。

 だがオレもまだ集中を保っている。これで勝ちだなんて思っちゃいない。

 

 

氷造形(アイスメイク)巨人の(タイタンズ)(ハンド)』!」

 

 

 巨大な氷の手を造り出し、オレ自身がその手のひらに乗る。そして魔理沙に向かって思いっきり投げる。

 

 

「なっ!?」

 

 

 急接近したオレに驚いた魔理沙は体勢を崩した。

 

 

「これで終わりだ魔理沙ッ!!」

 

 

 オレは二本の剣を造形し、両手で握りしめる。そしてすれ違いざまに十字に切り裂く——

 

 

 

 

「『氷魔剣(アイスブリンガー)』!!」

 

 

 

 

 確実に攻撃が入った。

 どうなったのかを確認しようと振り向くと、魔理沙は足場にしていた箒から崩れ落ち落下しそうになっていた。

 

 

「魔理沙ッ! 氷造形(アイスメイク)(ウィング)』!」

 

 

 オレはすぐに方向転換をして魔理沙の方へ飛んでいく。そして地面に衝突するギリギリのタイミングでキャッチする。

 

 

「悪りぃ、熱くなりすぎちまった。大丈夫か?」

 

 

 地面に着地し、体を軽く揺すって安否を問う。

 すると魔理沙は目を開け、笑顔でこう言う——

 

 

「参った、私の負けだ。」

 

 

 その言葉を聞いた霊夢は、勝負の結果を言う。

 

 

「この勝負———

 

 

 

 

 

竜斗の勝ち!」

 

 




初の戦闘シーンどうでしたかね?

正直言って戦闘シーンは苦手なんで不安です……
改善点など言ってくれると嬉しいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第八話『弾幕、ルーミア』


久しぶりに書いたぁー
春休みなのに全然書いてない。

まぁとりあえず第ハ話どうぞ



 

 魔理沙との闘いを終え、オレ達は博麗神社にて休憩をとっていた。

 

 

「あぁーくそぉ!負けたぁー!」

 

 

 魔理沙はそう言いながら仰向けに寝っ転がる。

 本当に悔しそうにしている。きっと魔理沙は負けず嫌いな性格なのだろうな。

 

 

「それにしても魔理沙に勝つなんてね……正直驚いたわ。」

 

「正直なトコ私も負けるとは思ってなかったぜ。」

 

 

 そりゃそうだ。

 幻想郷に来て間もなく能力も発現したばかりのオレが勝つとは普通思わない。

 それに聞いた所じゃ、魔理沙は幻想郷の中でもかなり強い方の部類に入るらしい。

 

 

「つーか思った以上に能力が強力だったな。これからは出来るだけ乱用は控えよう……スペルカードもしっかり作って正式な弾幕ごっこを出来るようになんねーと。」

 

「あ、それじゃあ今のうちに弾幕の出し方を教えておくわ。」

 

 

 そうか。弾幕ごっこは基本的に弾幕を飛ばし合ってやるモンなのか。

 

 

「おう、よろしく頼む。」

 

 

 オレがそう言うと霊夢は頷いて説明を始める。

 

 

「さっきも言ったけど、弾幕っていうのは気の集合体、自身の力を具現化させた物よ。私だったら霊力、魔理沙だったら魔力、みたいな感じでね。」

 

「霊力と魔力って何か違いがあったりするのか?」

 

「ほぼ無いわ。他にも妖力と神力ってのもあるけどそれも特に違いは無いわ。妖怪が持つ力だから妖力、神様が持つ力だから神力って感じで、ただの呼び方の問題だからね。」

 

「なーるほど」

 

 

 つーかさらっと『神様』って言ったな。幻想郷には神様までいるのか……まぁ別にどうでもいいけど。

 

 

「少し話が脱線したわね。それで弾幕の出し方だけど、アンタ、自分の力をちゃんと感じれてる?」

 

「ん? あぁ、大丈夫だ。身体の中に何かを感じる……多分これがそれだと思う。」

 

「それなら話が早いわ。適当な形をイメージしながらそれを放出してみなさい。感覚的にはさっき魔法を使った時に似ていると思うわ。」

 

 

 うーん、どんな形にしようか。最初は無難に球型にしようかな。

 そんでしっかりイメージをして魔力を放出、か。

 確かに造形魔法と感覚は同じだな。

 

 オレは前方に手を伸ばす。すると一つの蒼色の弾幕が出来上がる。

 

 

「あ、できた。」

 

「うん、問題無いわね。後は慣れの問題よ、何回も繰り返して実践で使えるようにしときなさい。」

 

「りょーかい。教えてくれてサンキューな。」

 

「どういたしまして。」

 

 

 霊夢の説明が意外にわかりやすかったお陰で案外簡単に出来たな。

 早く慣れる為にもさっそく練習しとこう。

 

 

「なるほどね〜。これをさらに工夫をしてスペルカードになるのか。」

 

 

 ヤバイな、オレこうゆうの考えるの苦手なんだよね。困ったモンだ。

 

 

「お、おい竜斗……お前、弾幕の出し方………覚えたばっかだよな……?」

 

 

 悩んでいると魔理沙が体を起こして俺に言う。

 

 

「? オレが霊夢に教わってるのをお前も見てただろ?」

 

「じゃあコレは一体どーゆーコトだぜ……?」

 

 

 魔理沙は空の方を指差す。指差してる方に目線を向けるとそこには——

 

 

 

 

 ——大量の弾幕がシャボン玉の様に宙を舞っていた。

 

 

 

 

「…………え? ナニコレ? オレがやったの? いつの間に?」

 

 

 全く気付かなかった……確かに早く慣れようと思って弾幕を出してたけど、いつの間にこんな大量に作ったんだ?

 ……とりあえず消しておこうか。

 

 

「アンタ……習得するの早すぎない? いくら簡単なことだからってコレはさすがに早すぎよ。」

 

 

 霊夢は何というか、呆れた雰囲気で言う。

 

 

「造形魔法と感覚がほぼ……と言うか全く同じだったしなぁ。きっとそのお陰だろ」

 

 

 霊夢と魔理沙には勿論のこと、自分自身にも納得させるように言う。

 

 

「……まぁいいわ、もう少し休んだら荷物を持って行きなさい。」

 

「お、そういやそうだったな。すっかり忘れてた。」

 

 

 オレは先に荷物をまとめておこうと思い、一度借り部屋へと戻ることにした。

 

 

 ——

 

 —

 

 〜10分後〜

 

「さてと、そろそろ行くかな。」

 

 

 荷物は氷の箱の中に全て詰め込んでおいた。予想した通り、氷に乗せれば多少大きい物でも楽々と運べるようだ。

 ちなみに魔理沙はもう少しここでゆっくりしてるらしい。

 

 

「あ、ちょっと待ちなさい。これあげるわ。」

 

 

 そう言いながら霊夢は竹皮に包まれた何かをオレにくれた。

 

 

「これなんだ?」

 

「おにぎりよ。昼食まだでしょ? 5個も作っておけば十分だと思うけど。」

 

 

 本当に霊夢は優しい……やっぱりなんだかんだ言って面倒見が良いんだよなぁ。

 

 

「ありがとな、お礼にオレからはこれを……」

 

 

 オレは財布を手に取り5千円を中から取り出す。

 

 

「お礼が現金ってのはヘンな話だけどさ、まぁ……生活費に足しといてくれ。」

 

「えぇ、私にとっては最高のお礼よ。」

 

「あはは、そりゃよかったよ。仕事がうまくいったらお賽銭を入れに来る。」

 

「ま、当然ね。」

 

 

 オレと霊夢がある程度話し終えたところで次は魔理沙が話し始める。

 

 

「竜斗!早くスペカ考えておけよ!」

 

「わかってるよ。今んとこ1つだけ思い付いてんだ。」

 

「え!そうなのか!?」

 

「さっき急に閃いてな、けっこー面白いやつだから期待しとけ。それと、今度はやる時はちゃんとした弾幕ごっこで闘おうぜ。」

 

「へっ!次は負けねーぜ!」

 

「次も負けねーよ。」

 

 

 今からでも魔理沙との再戦が楽しみだな。しっかり修行しとかねーと。

 

 

「ほら、早く行きなさい。」

 

「わーってるよ。んじゃ!またなお前ら!」

 

 

 オレは2人に挨拶をした後、人里へ向かって飛んで行った。

 

 

 ——

 

 —

 

 博麗神社をあとにして数分後。

 オレは一旦林の中に降り、一本の木を背もたれに胡座をかきながら休憩をとっていた。

 

 

「あー、おにぎりウマ。」

 

 

 霊夢に貰ったおにぎりを食べてみた。塩加減が絶妙でけっこう美味い。

 天気も良いし風もそよそよと吹いてきてとても気持ちいい……心が安らぐ。

 

 

「……ん? なんだアレ?」

 

 

 2つ目のおにぎりを食べ終えたタイミングで空の方に妙なモノが見えた。

 それは人1人が入れるくらいの影の塊のようなボール型で、徐々にオレの方に近づいてきていた。

 地面に着くと、影はパッと消え去り、中から金髪の少女が現れた。

 

 そしてその少女はこう言う。

 

 

「ねぇ………

 

 

 

 

 

 貴方は食べてもいい人間?」

 

 

 オレはその一言で悟った。

 目の前にいる少女は人間ではなく妖怪であると。

 しかし——

 

 

「いや、オレは食べちゃいけない人間だぞ。」

 

 

 オレは特に態度を変えることなく少女の質問に答えた。

 

 

「そーなのかー……」

 

 

 少女はオレの返答にガックリと肩を落とした。

 なんか可哀想だから残りのおにぎりやろうかな。

 

 

「腹が減ってんのか? このおにぎり食うか?」

 

「いいの……?」

 

「おういいぞ、こっち来い。」

 

 

 チョイチョイと手招きをする。少女は小走りでオレの元に来ると、膝の上に座りおにぎりを頬張り始めた。

 

 

「それ人に作って貰ったモンなんだが、美味いか?」

 

「スゴくおいしぃよぉ〜♪」

 

「そっか、それを聞いたら喜ぶと思うよ………あ、そういや名前聞いてなかったな。教えてくれるか?」

 

「私はルーミアって言うんだぁ、貴方はなんて名前?」

 

「オレは神原竜斗だ。まぁ好きな風に呼んでくれ。」

 

「じゃあ『リュウ』ってことで、よろしくねぇ〜」

 

「あぁ、よろしくなルーミア。」

 

 

 挨拶を済ませたオレは優しくルーミアの頭を撫でる。

 

 

「わふ〜♪」

 

(ナニこの癒し系メッチャかわい〜ん)

 

 

 ——

 

 —

 

 

「あーお腹いっぱい♪ありがとねリュウ。」

 

 

 3つ分食べ終えたルーミアは幸せそうにしている。

 こうゆう顔をしてくれると親切にした甲斐があったってモンだ。

 

 

「どいたま。んじゃあオレはそろそろ行くよ。縁があったらまた会おうぜ。」

 

「うん、またねぇ。」

 

 

 ルーミアに別れを告げオレは人里へ向けて再出発した。

 

 





今回は今までで一番文字数多いかな?

今後のストーリーを考えてみたんですけどあんま良いのが思い付きません……
そういえばヒロインすらまだ決めてないんだよね。

なんか希望あったら言ってください。

ではでは。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第九話『瀟洒なメイド、そして妖精』

久しぶりに書きましたー。
九話です。どぞー。


 あれから3日が経った。

 この3日間だが、コレといったことは特になかった。強いて言えば新しいく天体魔法を覚えたこと、それに伴ってスペルカードを1枚作ったことくらい。

 ちなみに万屋業は今のところうまくいっている。と言っても、内容は畑作業の手伝いだったり赤ん坊の面倒を見たりと、けっこう地味なものが多かったが……生活がかかってるしそんなことも言ってられない。

 ついでに言うと、営業時間は午前10時から午後5時までということになった、てな感じ。

 

 

 

 現在オレは里のはずれで新魔法の修行をしている。重力魔法だ。

 重力の向きや強弱を変えることができる。こんな能力なだけあってオレの周辺には小さなクレーターがいくつか出来ている。

 

 

「ふぅ……なかなか上手くいかないな。」

 

 

 さっきから強弱の調整を試しているのだがどうも上手くいかない。少し力を抜くと弱くなり、力を入れると強すぎになってしまう。初期段階に比べれば幾分かマシになった方なんだが……

 

 

「おっと、そろそろ時間か……戻んねぇt「貴方が噂の万屋さんですか?」——ッ!?」

 

 

 突然耳元で聞こえた女の声に反応したオレは咄嗟に裏拳を振るって牽制する。が、そこに声の主の姿はなく攻撃が当たることはなかった。

 

 

(幻聴……? んなわけねーか。確かに気配を感じたんだがな……)

 

「ふふっ……素晴らしい反射神経をお持ちですね。」

 

 

 また女の声だ。今度は左後方にある木の枝の上から聞こえた。

 振り返るとそこには、青白のメイド服を身に纏った銀髪の女性がオレを見下ろしていた。

 

 オレは警戒心を保ったまま女性に尋ねる。

 

 

「アンタ……何者だ?」

 

「そう睨まないで下さい。(わたくし)は貴方様にご依頼があって来たのです。」

 

「依頼? ——って、だからアンタは誰かって聞いてんだが?」

 

「私は十六夜(いざよい)咲夜(さくや)紅魔館(こうまかん)にてメイド長を務めています、以後お見知り置きを。」

 

 

 紅魔館……吸血鬼が住む屋敷だとかなんとか。吸血鬼がオレなんかに何の用なのだろう?

 

 

「とりあえず場所を変えようか。話はそっからだ。」

 

 

 ——

 

 —

 

「ほれ、茶。」

 

 

 話を聞くためにオレは咲夜さんを連れて家に帰ってきた。

 

 

「ありがとございます。その警戒心も解いてくれるともっと嬉しいのですが……」

 

「あぁー…あんな登場をされたからな。ま、善処するよ。——じゃあ話聞こうか。」

 

 

 椅子に座り話を聞く姿勢をとる。

 

 

「今回の依頼の内容ですが、貴女様には妹様のお遊び相手になって頂きたいのです。」

 

「妹……? 吸血鬼のか?」

 

「はい、紅魔館の主であるレミリア・スカーレットお嬢様、その実妹のフランドール様です。本来は私の責務なのですが、他の仕事もあって時間がとれず……」

 

「ふーん、そゆことか。まいいや、その依頼受けるよ。」

 

「……っ」

 

 

 依頼を受諾すると咲夜さんはほんの一瞬表情を曇らせた。

 

 

「ん? どうかしたか?」

 

「いえ、なんでもありません。それでは早速行きましょうか。少々距離がありますので。」

 

「……そうだな、案内頼む。」

 

 

 はぁ……今回の依頼はとんでもない事になりそうだなぁ。

 

 

 ——

 

 —

 

「なぁ咲夜さん。そういやアンタって人間なのか?」

 

 

 現在オレ達は紅魔館に向かって幻想郷の空を飛行中だ。

 

 

「はい、人間ですが……それがどうかしましたか?」

 

「いや、ただ気になっただけだ。幻想郷の人間は妖怪とほとんど見分けつかねぇから。」

 

「そうですか。もし私が妖怪だったらどうしましたか?」

 

 

 咲夜さんは笑みを浮かべながら聞いてくる。

 そんなこと聞いて何になるんだか。

 

 

「何もしねぇよ。オレはそうゆう下らない差別はしない主義の人間でな。」

 

「……心がお広いのですね。」

 

「普通だよ。オレにとっちゃな。」

 

 

 

 それから少し移動すると途端に霧が濃くなってきた。

 

 

「んー、視界が悪いな。何も見えねぇ。」

 

「この辺りは霧の湖と呼ばれる地帯です。ここを越えれば紅魔館までもうすぐです。」

 

 

 そんなことを話していると地上の方から弾幕が突如オレたち2人を目掛けて飛んで来た。

 が、冷静に弾幕の軌道を見極め難なく躱す。

 

 

「何だいきなり?」

 

「やいそこの人間!このチルノ様に無断で湖を通ろうなんて良い度胸じゃない!」

 

「チ、チルノちゃん……いきなり攻撃なんかしちゃ駄目だよ……」

 

 

 耳に響くような高い声とともに2人の少女が霧の中から姿を現した。

 しかしその2人が人間ではないことが背中の羽からすぐにわかった。

 

 

「あの2人……妖怪か?」

 

「いえ。彼女たちは妖精と呼ばれる妖怪とは異なる種族です。」

 

 

 …………は?

 

 

「…………は?」

 

「どうかしましたか?」

 

「……今、妖精って言ったか?」

 

「? はい、言いましたけど……」

 

 

 それを聞くとオレは無言のままチルノと呼ばれていた少女の前に降り立った。

 

 

「な、何よ……!」

 

 

 そして両手で少女の肩を掴んだ。

 何故か手が凍りついていくがそんなのもお構いなしだ。

 

 

 

「お前!尻尾生えてるか!?」

 

 

 

「「「は?」」」

 

 

 唐突な質問に状況をのみ込めない3人は気の抜けた声を出すばかりだ。

 

 

「尻尾はあるのか!? どうなんだ!なぁ!?」

 

「ちょ…!体ぐわんぐわん揺らさないで……!大ちゃん助けて……!」

 

「え? ……えっ?」

 

 

 もう1人の少女は状況についていけず困惑している様だ。

 

 

「お前はどんなトコに住んでる? 普段は何を食ってる? どのようにして生まれた? 寿命はどれくらいだ? 闘えるのか? 他にどんな奴がいる!?」

 

 

 オレは怒涛の質問で問いかける。

 体を揺らされているチルノが声を上げる。

 

 

 

「いい加減に……しろぉぉ!!!」

 

 

 すると手を凍らせていた氷が急速に広がり始めた。

 そしてとうとう全身が凍りついてしまった。

 

 

「はぁ…はぁ……頭がぐらぐらするぅ〜……」

 

「チルノちゃんやりすぎだよ……」

 

「だってコイツが悪いんだからいーじゃん。」

 

 

 今までの様子を見ていた咲夜さんは頰に手を当ててボソッと呟く。

 

 

「これは…どうしたものかしら……?」

 

 




3日間の出来事がすこし雑だったかな笑
妖精が出てきましたけど特に何もありませんよ。
次回はいつになるか…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。