ベルの兄がチートで何が悪い!! (シグナルイエロー)
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オラリオ到来前
01:物心×祖父


HUNTER×HUNTERを10年分くらい一気読みしたい


【転生】

これには大きく分けて二つのパターンがある

一つは何かが原因で死亡後に同じ世界、もしくは別の世界で赤ん坊から人生を別人になってやり直すというもの、

もう一つは何かがきっかけで前世を思い出し、結果的に転生したということに気づくパターンだ、

ちなみに俺の場合は後者だった。

 

=====================================

 

片田舎の何てことはない普通の平屋、そこで老人が孫であろう男の子を膝に乗せて本を読んでいる

 

そんな、見ているだけで平穏という言葉が頭によぎる光景の中で俺は唐突に何の前触れもなく前世を思い出した

 

そのときの衝撃は凄まじいもの、というほどでもなかったな、うん

 

まぁびっくりはした、受験日に会場で受験票を忘れたくらいの衝撃だ、一瞬頭が真っ白になるだけで済む

 

ん、洒落にならない? 大丈夫大丈夫、来年もあると思えば開き直るから

 

まぁ、最初はびっくりしたけど持ち前のポジティブ感でもって開き直ったって話だ。

 

 

 

==========================

 

 

 

「っえ!?」

 

なんじゃこりゃ、え?待って、ナニコレ、は?

 

「どうした『カイト』、突然声を上げて?」

 

見上げると髭もじゃのじいさんが俺を見下ろしていた、

 

誰あんた・・・いや俺の祖父だわ、あぶね声に出すとこだった

 

んでもってカイトって・・・カイト、そうだ、そうだった今の俺の名前だ

 

「・・・んーん、何でもない、それよりも早く続き読んでー」

 

「?・・・ま、ええじゃろ、どこまで読んだかのぉ、おお、ここじゃったな・・・『そうしてー英雄であるアルスターは―――』」

 

あっぶねーセーフセーフ、いきなり前世のことを思い出しましたー、なんて言ったらこの世界でなくとも間違いなく痛い子扱いだ、最悪、気味悪がられて捨てられかねない、まぁ、今までのカイトとして生きてきた記憶からこのじいさんが孫を捨てるとは思えないけど、変な子扱いされるよりは何も言わない方が双方のためだろう。

 

しかし、まいったねこりゃマジで転生って奴なのか、完璧ではないが何となく前世の地球人であった頃の記憶が今のカイト、俺の記憶に追加されている

 

えーと、前世の死因は――ひき逃げっすか、しかもリア充っぽいヤンキーカップルに挽肉みたいに念入りに殺られたと、クソがっ!

 

こいつら絶対許さん、文字通り死んでも許さんぞ、とりあえず末代まで祟っておこう南無南無

 

 

――――閑話休題

 

 

さて一旦落ち着こう、とあえず今ままでカイトとして生きてきた5年間の記憶からこの世界の情報をまとめてみると――

 

Q1:ここはどんな世界?

A1:剣と魔法の世界、時代は中世♬

 

Q2:家庭環境は?

A2:祖父が一人、両親いない、弟一人、裕福ではないが特別貧しいわけでもないZe!

 

Q3:お名前は?

A3:かいとくらねる、ごさいです✰

 

以上だ。

 

さすがに5歳児ではこの世界についても自身についても、持ってる情報が少なすぎるな、今後は情報収集に努めよう

 

まぁ、死んだのは残念だがこうやって生まれ変われたわけだから前向きに行こう

 

ただ、問題があるとすればここが異世界であるということだ、もし地球の現代なら色々と子供の頃から勉学やスポーツで無双できたんだが、剣と魔法の世界となると勝手が分からない、子供の頃から二次方程式や三次方程式が解けたところで役に立ちそうにない、っていうかよく考えたら前世で社会人になってからも役に立った事なんかねぇな、英語がペラペラで筆記もOKでもここでは意味がないっぽい、いや、だっって、そもそも文字自体が違うことが目の前の絵本を見れば分かってしまうし

 

前世の知識を活かせる気がしない・・・詰んでないか、これ。

 

こんなことならもっと転生ものの小説とかコミックを読んどくべきだったなぁ

 

俺ってばコミック派でラノベとか転生系の小説とかはほとんど読んでないからこういうときどうすればいいのかよくわからない、転生もので読んだのは無職転生と幼女戦記、あとは本好きの下克上・・・のコミック版

 

全く役に立たないわけではないが原作に比べれば明らかに情報量は少ないだろう

 

とりあえずこの三作品で共通してるのは子供の頃から一定以上の努力で魔法なり内政なりを鍛えているという所だ

 

フィクションを見本とするのは褒められた話ではないが、実際にフィクションがこうしてこの身に起こってしまっている以上、今更といった感じだ

 

それに前世では親孝行の一つもせずに死んでしまったから今世ではちゃんと親孝行をしてやりたい、してやりたいが、このじいさん見た目的には結構歳がいっている感じだ、急がねば親孝行する前にあの世にあばよと、なりかねない

 

・・・ふむ。

 

先ほどは詰んだ、と思った今世だが翌々考えてみたら色々とやりたいことが出てきたな

 

おかげでかなりやる気が出てきた、やはり人間、明確な目標を持てば自然と力が漲ってくるもんだな

 

 

「『―――めでたし、めでたし』と、ここまでじゃな、そろそろ畑を見に行かにゃならん、カイト、ベルの面倒を見ててやってくれ」

 

考え事をしていたらじいさんが本を読み終わってしまった

 

色々調べたいことがあるんだが・・・適当に何か言ってみるか

 

「じいちゃんっ!た、たいへんだ!!」

 

「ん、何がじゃ?」

 

「さっきちょっと声上げたときな」

 

「うむ」

 

「物心付いた」

 

「・・・・は?」

 

じじいがポカーンとしてたが、これからの俺の変な行動はしばらくはこれで押し通そう

 

あれ、でも物心ってこんなだっけ?

 

 

 

=====================================

 

《side:ゼウス》

 

×1年〇月△日

 

最近、上の方の孫、カイトの様子がおかしい

 

急に物わかりが良くなり、今まで何度も読んできたお伽噺話の本ではなく、地理やこの世界の一般的な事に関する本などを読んでくれとせがむようになった

 

それだけではない、今までより弟の面倒もしっかりと見るだけじゃなく、儂の畑の手伝いや、体を鍛えると言って村の周囲を毎朝走り、筋トレまでするようになった

 

最初は急に物心が付いたとか言っておったが、人とはそんな感じに物心が付くものじゃったかのう?

 

まぁええか、人の子の成長はとにかく早い、こういうこともあるじゃろうて

 

 

 

 

 

―――――――――――とか、考えてた時期もありました

 

 

 

 

 

×3年〇月△日

 

あれから、2年が経ち、ある日カイトが毎朝日課にやってる素振りを見たんじゃが、

 

ナニアレ

 

何回も振ってるはずの木刀が残像を残して気づけば振り下ろされているんですけど!

 

ていうか何その引き締まりすぎた細マッチョは!?

 

しかも最近は弟の方のベルまで兄のカイトの真似なのか細い棒を持って庭で振っている

 

ベルの方はさすがにまだ年相応の速度なことに安心した――――――――――儂がアホじゃった

 

 

 

 

×5年〇月△日

 

あれからさらに2年、カイトは9歳、ベルは5歳になった、

 

最近は素振りじゃなく、二人並んで正拳突きをしたり、瞑想したりと、どこの修行者じゃと言いたい程に鍛えまくっておる、

 

あと、わしの眼と耳がおかしくなったのか、カイトの正拳突き、たまにだが、音の方が若干遅れて聞こえるような気が・・・いや、さすがに気のせいジャロ、気のせいだよね?

 

ベルの方も普通に正拳突きをしとるが拳を放つたびに空気を切り裂くような音がしとるし

 

これで修行ばかりにかまけて畑仕事を疎かにしておったら何か言えるんじゃが、そういうわけでもないので何も言えん、むしろ「兵農一体ーーーー!!Foooooooooo!!」と言って喜んで畑を耕しておるし、最近は逆にすることがない。

 

他にも、前から儂の昔の女性達が偶に尋ねてくるんじゃが、最近はカイトやベルばかり構うもんじゃからちょっと寂しいのぉ、それだけでも精神的にくるというのにカイトやベルに「あの人みたいにならないように」とか吹き込むのもやめてほしいんじゃが

 

その後の苦笑いしながら儂を見るときのカイトの目が・・・

 

『でもそんなじいちゃんでも僕の大切なじいいちゃんなんだ』的な優しい目が逆にいたたまれない、良心の呵責に押し潰されそうじゃ・・・

 

さらにその後ベルに「浮気物ってどんな物なの?」とか聞かれたときは本気で昔のことを後悔したのぅ

 

はぁ、やはり男手一つで子を育てるのは思っていた以上に大変なのかもしれん

 

こんな昔の女達にボロクソに言われているじじいのことを孫はどう思っているのだろうか・・・

 

やばい、尊敬される要素や理由が思い浮かばない

 

ヤバイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

×5年〇月◇日

 

うおおおおおおおおおんうおおおおおおん儂は幸せ者じゃったーーーーー!

 

先日、何故そんなに強くなろうとするのかカイトに聞いてみたら冒険者になって金を稼ぎ、儂の暮らしをもっと楽にしてやりたいと言ってきた、なんという親孝行!いや祖父孝行な子じゃーーー!!

 

 

こんないい子を少しでも怪訝な目で見ていた儂は最低じゃーーーーうおおおおおおん

 

 

・・・よし、冒険者になりたいのであれば儂が色々と・・・教えるのはさすがにまずいのう、うーむ・・・

 

そうじゃ、ヘルメスの奴に冒険者とは何たるかを孫に色々教えてもらおう、うん、そうしよう

 

そうと決まれば奴に手紙を書かねば、さっさと来んと昔の恥ずかしいことを神達に匿名でばらすと言えばすっ飛んでくるじゃろ

 

 

×5年〇月アホ日

 

手紙を書いてからしばらくしてから、ヘルメスが訪ねてきた

 

何のために姿を隠してるんですかと、小言を言われたが、知るか!

 

儂のかわいい孫のためならそれくらいは些事じゃい!

 

ほれ、とっとと今のオラリオのことや冒険者のことについて教えてやらんか!

 

まぁ、少々文句を言っていたが、カイトとベルの修行を見ると、急に態度を変えてぺらぺらと今のオラリオについて話し出した、怪しい・・・こやつ、何か企んだりしとりゃせんだろうな?

 

まぁ、ヘルメスのアホが何か企んでてもこのかわいい孫達ならその企みごと食い破りそうじゃから、心配せんでもええかの

 

 

×6年〇月ヘル日

 

あれから、二月ごとにヘルメスが家を訪ねてくるようになった、ついでに水色の髪のかわいい少女も一緒に連れてくるようになった、ヘルメスから聞いた話ではどうもこの少女どこかの王族らしい、王族の生活に嫌気がさしていた所をヘルメスが連れ出したらしい、まぁ無理矢理ではなく少女の方から懇願してきたそうなのでええか

 

それにこのアスフィと名乗った少女、どうもカイトに少々気があるらしい、さすがはわしの孫、たった数回の逢瀬で身持ちの固そうな女子を陥落させおった

 

この分じゃとオラリオに行ったらすごいことになりそうじゃのう

 

それにしても、カイトとアスフィのやりとりは見てて微笑ましいのう

 

ベルもアスフィのことを姉のように慕っておるようじゃし、ええのう、ええのう、何かこの感じええのう、ほっこりするわい

 

このような平穏をあと幾ばく見ることができるじゃろうか・・・おそらく、あと数年の内にカイトはオラリオに旅立つじゃろう、じゃがヘルメスから聞く今のオラリオは酷い状況だ、儂とヘラが居ったときとは比べものにならんほどに闇派閥(イヴィルス)が幅を利かせ混沌と恐怖の日々に市民達は怯えて暮らしているそうだ、口惜しい、せめて儂かヘラの派閥が十全であったならそのようなことオラリオで起こさせんというのに、いや、今の儂がいくら悔しがろうがただの負け犬の遠吠えじゃな、儂に何か言う資格などもはやありはしない。

 

オラリオに行けば新人のカイトはおそらく様々な事柄に忙殺され村に帰ることもままならないじゃろうて、だがそれまでこのような穏やかな日々を良き記憶として胸に納めておいてほしいのう

 

 

 

×7年〇月メス日

 

数年以内にオラリオに旅立つじゃろうとは思っていたが、その翌年に旅立つとは思わなかった

 

何でもアスフィも11歳で冒険者になったらしく、なら自分も11歳で冒険者になろうと前から思っていたそうじゃが、おそらく背中をさらに押したのはアスフィのランクアップのせいもあるんじゃろう

 

ヘルメスのアホから聞いた話ではアスフィが最近Lv.2になり、超の付く希少スキル【神秘】にも目覚めたと聞いた、わずか2年足らずでランクアップとは、数年間Lv.1のままの冒険者が数多く居る中でこれはかなりの成長速度じゃ

 

やっぱ、あれかのぉ、惚れた女にこれ以上実力を離されたくないといった感じかの

 

ほっほっほ、カイトは年の割に大人びすぎていると思っていたが、存外ちゃーんと男の子じゃった

 

カイトのこういう所が見れてじじいちょっと嬉しいぞい

 

だがなカイトよ油断するでないぞ、オラリオには富も名声も何でもある、何でもはあるが、それは綺麗事ばかりではない、この世全ての悪意すらもその中には含まれるということじゃ

 

油断すればどんな者でも見えない何かに食い潰されることになるじゃろう、だから油断せずに前に進め、振り返らずに前に行け

 

儂はベルと共にここからお主の活躍する噂を期待して過ごすとしよう

 

ほっほっほ、泣くでない、せっかくアスフィからもらった帽子にシワが付いてしまうぞい

 

 

 

「・・・じいさん、ベル、行ってきます!」

 

 

 

うむ!良い顔じゃ!・・・いってらっしゃい。

 

 

 

 

PS

先日ベルが岩を何発も拳で殴り、その岩にヒビを入れておるのを目撃した・・・何で拳が無傷なのだ、ベル曰く自分は全力でこれだがカイトの方はもっとすごいらしい・・・オラリオでもカイトなら余裕かもしれん

 

 




ベルの念能力何系にしよっかなー(^^)


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02:天才×愛弟

私のお気に入りはラウルだったりします


○1年×月キン日

 

とりあえず、身近のことからコツコツと親孝行していくことにした

 

弟のベルの面倒はもちろん、(むしろかわいいので積極的に愛でます)家事の手伝いから畑仕事までこなす傍らで、基礎体力を養うために早朝ランニング及び筋トレを行う。

 

この世界は魔法なんてものがあるだけじゃなく、〈冒険者〉なんていう現代ならお巡りさんに職務質問されそうな職業があるくらいファンタジーに溢れている。

 

最近では「最後のファンタジー」なんて名前なのにバリバリ機械感丸出しの飛空挺や車が出ているというのに、この世界では主な移動手段がいまだに馬車であることからどれだけ文明が発達していないかがわかる、

 

つまりこの世界では戦国時代よろしく、暴力に溢れているということだ、自衛のためにも体を鍛えるのは当然なことだろう、

 

まぁ、贅沢を言えば強くなって、職務質問されない方の冒険者とやらになって金を荒稼ぎしたい

 

もちろん稼いだ金でじいさんに楽な暮らしをさせてやりたいからだ、便利な都会に移り住んで、のんびりセレブライフってのをさせてやりたい。

 

 

 

○2年×月ニク日

 

前世を思い出してから早いもので一年も経ってしまった、あれから日々身体を鍛えたり家事をしたりベルを愛でまくったりして過ごしていたわけだが、この生活サイクルを続けて1年以上経ってから筋トレ中に自分の体の回りに何か、こう、モワッとした何かが纏わりついていることに気付いた、

 

最初は運動後の熱放射と周りの気温差で体から湯気でも出ているのかと思ったが、どうも違うようだ

 

そこで俺は気付いたわけだ、これは、まさか、忍者的に言う所の〈(チャクラ)〉という奴ではないのかと

 

もしそうなら全男子の憧れの一つである水上走りや壁走りができるのでは!?

 

さっすが異世界!

 

そう思った俺はその日の内に早速、近くの小川へ向かった

 

結果

 

普通に川に沈んだ、水に対して微塵も反発する気配がない

 

ちくしょーそれなら壁走りはどうだおらああああ、と木に向かって蹴りを放つように脚をかけて見たら

 

足裏で踏みつけた部分の木がベキリととんでもない音と共に陥没した

 

当然俺の足は木に埋まり、そのまま逆さ吊りの状態になって頭部を強打

 

痛みにのたうち回った後になんとか四苦八苦して木から抜け出すことに成功、

 

その後、改めてこのモヤっとした〈(チャクラ)〉(仮)について考える

 

 

おかしい、木が陥没するくらいの〈(チャクラ)〉が練れているのなら水の上に立つか反発力くらい感じてもいいはずだ、つまり・・・

 

 

 

・・・どゆこと?

 

いや、俺はアホではない、はず

 

もちっと発想を柔軟にするんだ

 

このモワっと、というかどちらかと言うとネチョっとしてる俺の〈(チャクラ)〉(仮)

 

もしかしなくともそもそも〈(チャクラ)〉じゃないのか?

 

これに似たような力って他の漫画で・・・あった、あったあった、そーだわ、何で思いつかなかったのか

 

あまりに作者が仕事をせず、スッカリ雑誌からご無沙汰になってしまったせいですっかり忘れていた

 

 

たぶん、これ〈念〉だ。

 

 

 

 

○2年×月ニクニク日

 

 

〈念〉、人気コミックであるHUNTER×HUNTERで今では必須とも呼べる能力の総称

 

人が本来なら無意識に垂れ流している生命力を自身の意思で支配し操る秘技だ。

 

ってことは―――だ。

 

 

〈念〉、俺の容姿、白髪、そして俺の今世でのカイトという名前―――――決定的だ。

 

どうやら、俺はHUNTER×HUNTERの主人公の恩人にしてハンターを目指すきっかけになった男―――、カイトの身体を持って転生したようだ

 

そうか、カイトかー・・・・・・ヤバくないか?

 

えっだって、主人公と再会後にすぐに片腕と首がなくなってから性転換しちゃった人だよ?

 

もしかして、今世でも同じ目に遭うんじゃ、いや、早計は良くない、この世界はそもそもHUNTER×HUNTERの世界とも異なっている感じだ、証拠に一般人にまで魔法の存在とか知れ渡ってるし、あの世界はこの世界よりも遙かに、下手をしたら俺の居た地球より文明が先を行っているかもしれない世界観だったはず。

 

今居る世界の文明はどう見積もっても中世といった感じだ

 

だが、この身体がカイトと同一もしくは似ているだけだとしても同じ運命を辿ることになるかもしれない

 

それを回避するためにもこれまで以上に訓練に励まねば、とりあえず念の基本四大行の内の、(てん)(ぜつ)(れん)を基本に今後訓練をしていこう

 

ちなみに

 

(てん)は体内の精孔と呼ばれる気穴からあふれ出ているオーラを肉体の周りにとどめる技術。

 

(ぜつ) は纏の真逆、体内の精孔を閉じてオーラを絶つ技術で気配を消したり極度の疲労を癒すときなどに効果がある、注意点としては防御力が紙装甲並に脆くなることだろうか

 

(れん)は体内の精孔を広げ纏の状態よりも多くオーラを生み出す技術だ

 

わかりにくければ纏で通常のサイヤ人に、練が界王拳、絶がヤムチャになると覚えてくれ

 

まぁ、念を発動させる「纏」はできてるっぽいので残りのヤムチャと界王拳を集中的にやっていくとしよう

 

他の応用はもっと〈念〉の扱いに慣れてからだな

 

 

 

○3年×月トリコ日

 

念に気づいてから、一年たった。

 

毎日の訓練で何故かオーラを出さないようにする「絶」だけはかなり上達した、おかげで森の野鳥とかを楽に狩ることができるようになった、毎日の食卓に肉が並ぶだけでじいさんもベルも喜んでくれるので嬉しい

 

逆に「練」の方は微々たる進歩だ、俺の理想的なイメージとしてはスーパーサイヤ人みたいに『ドン!シュインシュイン』みたいな感じでオーラを纏いたいのだがどうも上手くいかない、

 

一応、量自体は増えているには増えているのだが相変わらずネヴァ~とした感じで体にまとわりつくだけだ、ましになったのは持続時間くらいだろう、最初は1分ともたなかったが1年で1時間くらいには延ばすことができた。

 

もうちょっとしたら応用に手を出してもいいかもしれない

 

そんなことを考えていた矢先のことだった、

 

いつもの日課となった訓練の一つ、練を纏いながら木刀での素振りをしていたら

 

かわいい我が弟のベルが兄である俺の!かっこよくて頼れる兄である俺の!!ああもうっ、なにそのくぁわいい顔は!?とてとてと俺の周りを不思議そうに回らないでえええええ、あああああ今すぐ訓練を止めて、頭を撫でくりまわしてえええええ、ちょっ、こら、首をかしげるんじゃない!これ以上俺の心をピョンピョンさせてどうするつもりだ⁉

 

と、まぁ俺の心中など知らずにベルが俺の訓練をじっと見ていたときのことだった

 

 

「?・・・にぃちゃんのまわりがもやもやしてる、なにそれー」

 

 

・・・・・・・え、オーラが見えてる?

 

 

ベル三歳、俺が七歳の春のことだ

 

======================================

 

《side:べる》

 

 

○3年×月はれ日

 

きょうはにいちゃんに〈ねん〉というのをおしえてもらいました

 

これができるとすごいのだそうです

 

ぼくはみえるだけでその〈ねん〉というのはつかえません

 

でもがんばればつかえるようになるとおしえてもらいました

 

ぼくはにいちゃんみたいにつよくなりたいからあしたからにいちゃんといっしょにがんばります。

 

 

 

○3年×月はーれ日

 

なつになりました。

 

あれからにいちゃんといっしょにがんばって〈ねん〉がつかえるようになりました

 

にいちゃんはてんさいじゃてんさいじゃとおじいちゃんみたいなことばでよろこんでます

 

でもにいちゃんにくらべるともやもやのおおきさがぜんぜんちがいます

 

もやもやはたくさんだせるとすごいじゃなくてすんごいんだそうです

 

はやくにいちゃんみたいにたくさんだせるようになりたいです。

 

 

○4年×月はーれー日

 

にいちゃんにおしえてもらった『ぜつ』がぜんぜんできません

 

でも『れん』といういっぱいもやもやだすのはちょっとだけできました

 

そしたらまたにいちゃんがてんさいじゃてんさいじゃとおじいちゃんみたいなことばでよろこんでます

 

『ぜつ』がぜんぜんできないのでどーやったらできるのかにいちゃんにきいたらかくれんぼをすることになりました

 

『ぜつ』ができました

 

やっぱりにいちゃんはすごいです、にいちゃんのいうとおりにしたらすぐにできました

 

でもあいかわらずにいちゃんはてんさいじゃてんさいじゃと―――――――――――

 

 

○5年×月はーれー日

 

さいきんはおじいちゃんのともだちのおばちゃんがいっぱいきます

 

ほかにもさいきんはほんもののぼうけんしゃのアスフィさんがいえにあそびにきてくれます

 

とかいのおはなしやほんとうのぼうけんのはなしはとてもおもしろいです

 

にいちゃんはしょうらいぼうけんしゃになるそうです

 

にいちゃんならぜったいにつよいぼうけんしゃ、えいゆうになれるといったら

 

にいちゃんはぼくならもっとすごいだいえいゆうになれるといってくれました

 

でもぜんぜんにいちゃんよりつよくないから、がんばってはやくにいちゃんみたいにつよくなりたいなあ

 

 

○6年×月ぎっぷる日

 

さいきんはあすふぃねーちゃんとあそぶことがおおいです

 

あそんだあとににいちゃんのすきなものやほしがってるものをよくきかれます

 

そーいえばもうちょっとでにいちゃんのたんじょうびです

 

もしかしたらなにかぷれぜんとをかんがえてるのかもしれません

 

なのでにいちゃんがぼうしをほしがっていることをおしえてあげました

 

ぼくは木で作ったてづくりのねっくれすをあげようとおもいます

 

 

○6年×月ぎっぷりゃ日

 

だんじょうびのひからにーちゃんとあすふぃねーちゃんのようすがおかしいです

 

かおをあわせるとふたりともかおがまっかになります

 

おじいちゃんはそれをみてわらっていますがふたりはけんかでもしたのかな?

 

おじいちゃんにきいたらいずれわかる、とだけいわれました

 

にーちゃんみたいにつよくなったらわかるかなあ

 

よし、きょうもくんれんがんばります。

 

 

○7年×月泣き笑い日

 

今日、兄さんがオラリオに旅立ちました

 

さすがの兄さんも少し寂しかったのかちょっと悲しそうな顔をしていました

 

でもおじいちゃんに元気づけられて笑顔で馬車に乗り込んでいけました

 

僕はおじいちゃんがいるからこの村でしばらく修行しつつ過ごそうと思います

 

おじいちゃんは将来行きたければベルも行っていいぞ、と言っていますがおじいちゃんを一人残してはいけません

 

それに兄さんの足下にも及ばない僕の念程度で冒険者なれるとは思えないから、もしなるのならもっと修行して強くなってから兄さんを追いかけようと思います。

 

さて、それじゃ日課の岩割りをやるとしましょう。

 

 

 




ちなみにここではカイトは特質、ベルは変化系にしてみた


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オラリオ到来!
03:幼女×剣姫


大体一話当たり5000文字位を目標に頑張ります


村から旅立ち馬車に揺られること数日

 

普通なら間違いなく尻が痛くなるだろうが、そこは便利な念能力者

 

(ぎょう)』という体の一部にオーラを集中させる技を応用して尻にオーラ座布団をまとうことで退屈だが比較的快適な旅を過ごすことができた

 

暇つぶしに『流』というオーラを大体の分量で各部位に配分する練習をするだけで意外と暇を潰す事が出来た

 

俺の尻も守れて念の練習もできて一石二鳥である。

 

ちなみにこれをさらに高度な技に昇華させると『(こう)』になる、本来の『(こう)』は集めた部分以外には一切のオーラが出ない状態を指すが、同じ念能力者が今の俺を見たら、尻を中心に全身からローションを垂れ流す未熟者だ、俺の今の実力で完璧な『(こう)』を使用するにはまだまだ修行不足だ

 

(こう)』は念の基本技を4つ同時発動させ、体中のオーラをすべてを体の一部に集める複合高等技術だ、ゴンさんはこれをほぼ一発で成功させていたが、俺は数年かかってようやく形になっているかな?といったレベルだ、さすがゴンさん、天才すぎる。

 

俺に念の才能がないわけではないと思うのだが俺のオーラは何故かドロドロしてる上に妙に圧縮しにくいせいで制御が非常に難しい、ここまでオーラの制御訓練のみを集中的に行うことはなかったので旅の間は意外と有意義な時間を過ごせたと思う。

 

そんなことをしていると御者のおっちゃんが声を掛けてきた

 

「おーい坊主、見えてきたぞ」

 

ようやくか、そう思って馬車の幌から顔を出すと、かなりの距離があるにも関わらずその巨大さがわかる街壁が見えてきた

 

「おー、あれがオラリオ、世界の中心都市と謂われる街かぁ」

 

ヘルメスとアスフィから聞いてはいたが、マジででっけーなぁ

 

巨人が進撃してきても大丈夫なくらいの広さと高さがある

 

「坊主、オラリオは初めてかい?」

 

「ええ、というより村から出る事が初めてかな」

 

「はっはっはっはっは!それなら驚いただろうな」

 

「他の街もあんなにすごい壁が?」

 

「いやいや、一応他の街もそれなりの壁があるがここまでの街壁は世界でもここだけだよ、それを最初に見れた坊主はラッキーだな、村からって事は・・・坊主の目的は出稼ぎかい?」

 

世間知らずが冒険者を目指しにきたとはなんか言い出しにくい

 

「・・・ええ、まぁ、似たようなもんですかね」

 

「そうかい、ただ最近のオラリオは物騒だから気を付けないといけないよ?」

 

「話には聞いていますけどそんなに酷いんですか?」

 

「ああ、元々はそこまでじゃなかったんだけどねぇ・・・」

 

そんな風に意外と気の良いおっちゃんと適当な会話をしながらも馬車はオラリオに向かって進んでいった

 

その後、特に何のトラブルもなく検閲を終えて街に入ることができた

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

「お、おおう、この人混み前世以来のなつかしさ」

 

右を見ても左を見ても人、人、人、前世ならいざ知らず今世では見ることのなかった光景だ

 

「まぁ、あそこは村だし、当たり前か」

 

この人混みのせいで村の穏やかな光景が、というかベルが恋しい・・・あとじいちゃんも。

 

ま、この数年で当初より色々と目的が増えたため村に帰るわけにはいかない

 

「まずは、ヘルメスがお勧めしてくれたファミリアから行ってみますかね・・・大丈夫かなあいつのお勧めって」

 

悲しいかな、田舎者の俺にはオラリオにコネなどなく、あの胡散臭い男神(やつ)しか頼る者がいない、アスフィがあいつの眷属じゃなければ信じてなかっただろう

 

初っぱなから不安だ・・・だが、俺の夢を叶えるためには冒険者として頑張るしかない!

 

うっし行くか

 

そう意気込んで俺のオラリオでの初めての活動が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――翌日。

 

 

結果

 

不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用何でもするなら採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用不採用

 

不況期の就職活動かよ!?

 

やめてくれぇ!!、「前世のトラウマ」と言う名の(トラップ)カードが発動しちゃうだろうがぁ!!

 

思い出される、不採用通知の嵐、うう、ヤ、ヤメロー、もう履歴書は書きたくない、なんで全て手書きじゃないと駄目なんだあああ!

 

 

 

――――間。

 

 

 

orz・・・マジか―、全部入団拒否された、一部OKそうなところがあったが、最後に言われた採用条件が怪しすぎたのでこちらからお断りさせてもたった、さすがに何でもは無理だ、ナニをされるかわからん。

 

俺が入りたいのはダンジョンの探索をメインとするファミリアなのだが、このひょろっとした見た目と年齢のせいで中々採用してくれるファミリアがいない

 

ちっくしょー覚えとけよ、いつか有名になって勧誘されてもお前らの所だけは絶対受けねぇ、とりあえず拒否られたファミリアはメモっとこ、俺は結構根に持つタイプなのだ

 

 

しかし、本当にどうしようかな、さすがにどこにも受かりませんでしたー、コネでヘルメスファミリアに入れてくれませんかねぇ、うぇっへっへっへと、ゴマを擦れたら楽なのだが、男のプライドに掛けてそんなかっこ悪いとこアスフィに見せられない、

 

ヘルメスにお勧めされたファミリアは全滅、となると直接自分で探すしかないか-・・・

 

なんか業績の上がらない企業戦士(サラリーマン)の気分だ

 

 

 

―――――――――三日後。

 

 

見つかんねえええええ!

 

もう、ヘルメスんとこに入れてもらおうかな・・・

 

・・・は?

 

男のプライドはどーしたかって?

 

なにそれ、おいしいの?

 

プライドじゃあ腹は膨れねぇんだよ!

 

路銀がもう尽きそうなんだよ!!

 

しかも泊まった宿に帰ってきたら闇派閥とか言う奴らに宿部屋ごと爆破されちゃったYO!!

 

幸いにも?荷物は瓦礫の中から救出できたが・・・オラリオ治安悪すぎぃ!!

 

さすが世界の中心都市だね☆クソがっ!!

 

・・・・・・はぁ、とりあえず入れるファミリア見つけるまでバイトでもするか。

 

あ、ちなみにヘルメスを訪ねたらアスフィ共々留守だった

 

胡麻すら擂れない、都会って怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――1ヶ月後。

 

 

 

 

 

 

 

そこは街中であるはずだ、だがその一角だけ今は静寂に包まれていた

 

「――――・・・いくぞ」

 

その中心に居る男が小さな声で呟いた瞬間

 

手に持っていたジャガイモを中に放り投げる!

 

「シャシャシャシャシャシャシャアアアアアア!!!」

 

一瞬でジャガイモだったものは小さく切り裂かれていく

 

「・・・っおばちゃん!!」

 

「あいよおおおお!」

 

かけ声と共に女性が所定の位置にボウルを持って立つ、するとそこに吸い込まれるように切り裂かれたジャガイモだったものが投入されていく

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

 

細かくなったジャガイモを残像すら残るスピードで潰しつつ調味料を投入し混ぜる、その間、僅か5秒フラット!

 

「ショオアアアアアアアアアアア!!」

 

次におばちゃんと共に潰したジャガイモをもはや多重影分身のレベルで一口大に丸めていくこれは10秒フラット!

 

「そいそいそいそいそおおおおおおおおおい!!」

 

それをすかさず男は高温の油に投入していく、しかし驚くべき事に勢いよく入れているはずの油は一滴として周りに飛び散ることはなくノースプラッシュで揚げられていき、そして終に!

 

「完・成!!」

 

 

「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

それを見ていた周囲から惜しみない拍手喝采がスコールの如く降り注ぐ

 

人を魅せる、しかし無駄のない動きで無駄に盛大に『じゃが丸くん』を作る充実した顔の男がいた。

 

 

 

・・・っていうか俺だった。

 

 

 

 

 

 

「まいどーまたいらっしゃいませー。」

 

どーも、お久しぶりです、意気揚々と村を出てから早いもので一月が経ちました、今では立派な一人のじゃが丸職人やってます

 

俺の大道芸じみた調理を見ていた人々が笑顔で次々とじゃが丸くんを買っていってくれるおかげで売り上げは上々です

 

最近のオラリオは物騒すぎて人々の笑顔が少なくなってきているが、俺の大道芸で少しでも笑顔が戻ってきてくれれるのは喜ぶべきことだ

 

うん、それはいい、それはいいんだが・・・

 

・・・・・・・・何やってんだ俺。

 

もう一度言おう、何やってんだ俺!!

 

 

 

 

あれから、バイトを募集していた「じゃが丸くん」を屋台売りしているおばちゃんに何とか雇ってもらえたまではいいのだが、そこから「じゃが丸くん」作りにちょっと熱が入りすぎた、一応買いに来てくれる客にそれとなくファミリアの情報とか聞くのだが、あまりいい情報はない。

 

「いやーカイトのおかげで今日も完売!ここんとこ売り上げが上がってきて助かるよ、まぁちょっと忙しすぎるのが難点だけどね」

 

「ははは、すんません」

 

「ばーか、謝らなくていいんだよ、お前さんのおかげで新しい『じゃが丸くん道』に目覚めたからね」

 

なんですか『じゃが丸くん道』って、あきらかにそんな道走っていったら「スーパーサイズミー」みたいな末路にまっしぐらじゃねーか

 

「それより、良いファミリアは見つかったのかい?」

 

「いや、それが全然ですねー・・・」

 

「・・・まぁ、店主としてはあんたみたいな売れっ子看板が居てくれる分には何も文句ないからいいけどさ、・・・いっそのことこの店に永久就職でもしてみるかい?」

 

「最近はそれ、洒落じゃないレベルで頭をよぎるんで勘弁してください」

 

惚れた女が魔物と戦っている一方で男の方はじゃが丸くん作ってますとか、かっこ悪すぎる、マジで勘弁してくれ・・・・・・あれ、待てよ?

 

・・・今まさにこの状況がそうなんじゃね?

 

いやいやいやいや、違うから、まだ俺はスタートしてないだけだから、ノーカンだよノーカン!!

 

 

 

そんな風に屋台の片づけをしながらあばちゃん(店長)と談笑しつつ自らの境遇に絶望しかけていた所に、息を切らして一人の女の子が店に向かって猛スピードで走ってきた

 

腰に届きそうな長い金髪を垂らした、かわいい少女だ

 

ただ、そんなかわいらしい少女が猛ダッシュしてくる、しかも無表情で

 

その様は「※ヒソカ」みたいな注意書きが必要なくらいには恐い、軽くホラーだ。

 

しかし、今では慣れたので特にビビることもない

 

「おー、今日も来たのか」

 

実はこの子、最近毎日ここにじゃが丸くんを大量に買いに来てその場でそれを全て食べ尽くすプチ常連さんだ

 

あの小さな体のどこに大量のじゃが丸くんが消えているのか、世の中不思議で一杯である

 

 

「う、うん、あ、あの、・・・もしかして今日の分のじゃが丸くんは」

 

「わりぃ、売り切れちまった」

 

「あう・・・」

 

ガーーーンと音が聞こえてるくらいにショックを受けている

 

いつも無表情の娘がここまでショックを受けているのを見ると罪悪感が半端ないな

 

うーむ、どうにかしてやりたいが材料がなければどうにもできんしなー・・・あ、そうだ。

 

ナイスなアイデアと共に電球が頭に浮かぶ

 

「おばちゃん、今日はもう上がっても大丈夫?」

 

「いいよいいよ、あとは荷物まとめるだけだし、・・・常連さんに接待してやんな」

 

わぁお、俺の考えてることばれてーら、さすが店長

 

ならば善は急げだ

 

「嬢ちゃん、今から時間ある?」

 

「?・・・大丈夫ですけど」

 

「うっし!じゃあ店長にも言われたので常連さんにサービスだ、嬢ちゃんさえよければ、材料買ってどっかでじゃが丸くんを作ってやろう」

 

「!!!!」

 

暗かった顔がみるみるうちに明るくなった

 

「ほんと!?ほんとにほんと!?」

 

「ああ、男に二言はない・・・ないんだが材料は買えばいいとして問題は調理する場所なんだ、嬢ちゃんどっかいい場所知らないか?」

 

「知ってる!」

 

「よっしゃ、じゃあ材料買ってそこで調理といこう、まだ店に並んだことのない新作じゃが丸くんを試食させてやろう」

 

「し、新作!?は、はやく!はやく材料買おう、はやく!」

 

「おわっ、ちょっ引っ張るなって、(ちから)つよくね!?」

 

 

 

そのまま引きずり回されるよう様にして市場で買い物を済ますと、嬢ちゃんの知るじゃが丸くんを調理できる場所とやらまでやって来た

 

・・・来たんだが目の前の建物に呆気にとられる

 

「・・・なんだこの建物」

 

何と言えばいいのか、そこそこの敷地に本来なら広大な城と塔をぎゅうぎゅうにくっつけてあちこちにサザエさんハウスをはめ込んだような、まさに混沌(カオス)と呼ぶにふさわしい建築物だ

 

しかも一応お城という体裁のつもりか、いっちょ前にきちんと門番までいるし

 

「あ、おかえり”アイズ”」

 

「た、ただいま、です。」

 

「ん、後ろの人はどちら様?部外者を入れるわけにはいかないんだが」

 

「えっと、この人は・・・」

 

なんかいきなり雲行きが怪しくなってきた、せっかく材料まで買ったのに作れませんでしたー、という展開だけは回避したいところだ

 

ここはお得意の口車でどうにかすんべ

 

「・・・どーも料理人(シェフ)です、今日はお嬢さんや他の方々に出来たての料理を食べていただくように上の方(店長)に言われてやって来ました」

 

「え、そうなの?こんな小さい子が調理人?」

 

忘れてるかもしれないが俺の年齢は12歳、見た目は成長期に入るか入らないかくらいの子供だ、門番が怪しむのも当然だ

 

確認を取るように門番がお嬢ちゃんを見る、その際に口裏を合わせるよう軽くウィンクしておく

 

「えっと、はい、今日は料理人さんに直接来て作ってもらうことに」

 

「いやぁ門番さんも大変ですねー、料理ができたらあとでお裾分け持ってくるんで楽しみにしていてください」

 

「おお!助かる!いやぁ、門番って退屈でしかたがないんだが褒美があると思えばがんばれるな!」

 

「ご期待に添えられるように頑張りますねー」

 

ははははは、とお互い笑ってから、隣でボーとしているお嬢ちゃん、アイズと一緒に城に入る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先を行くアイズの後に続いて廊下を歩いて行く俺

 

「「・・・・・・・・・・・・・・」」

 

・・・だ、大丈夫なんだろうかこれ、自分でやっといて何だが不法侵入とかにならないだろうな、いや大丈夫のはず、なんたってこっちにはここの身内(のはず)のアイズがいるのだ、最悪の事態だけは避けられるはずだ

 

「着いた、ここが調理場」

 

考え事をしていたらいつのまにか調理場まで来ていた

 

って、おお、めっちゃ広い!すげぇな、ほとんどの調理器具がそろってる 

 

確かにこれなら思う存分調理できそうだ、

 

・・・ただその前に、ちょっと気になることができた

 

「お嬢ちゃんの名前はアイズ、で合ってるよな?」

 

「うん」

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン?」

 

「うん」

 

「・・・マジかよ」

 

マジかよ、田舎から来たばかりの俺でもその名前は知っている

 

わずか8歳、しかも所要期間1年で冒険者Lv.2になった最年少かつ最速ランクアップの世界記録保持者(ワールドレコーダー)

 

オラリオに存在する無数のファミリアの中でも最大手のファミリアであるロキ・ファミリアに所属する『剣姫』という二つ名持ちの正真正銘の天才、ここ最近はその話題で街中が賑わっていたが、まさかこの子のことだとは・・・

 

ということはつまり、だ

 

このヘンテコな建物は当然ロキ・ファミリアの拠点ってことか

 

ハァ、こんな俺より4つも年下の子ですら冒険者に、それも大手のファミリアの団員として冒険者になれているのに、俺はじゃが丸職人か、グスン

 

・・・悲しくなってくるので深く考えるのは止めておこう

 

じゃが丸、そう俺にはじゃが丸があるのだ、剣姫でさえ首を垂れるじゃが丸が!!

 

べ、別に悔しくなんてないんだからね!

 

「うっし、じゃあ早速作るか!早く食うためにも手伝ってくれよ、剣姫?」

 

「うん、まかせて、でも何で泣いてるの?」

 

ほっといてください心の汗です。

 

 

 

 

 

 

 

そして現在、目の前にうず高く積まれたじゃが丸くんをハムスターの様に、しかしダイソンよりも衰えない吸引力で一心不乱に食すアイズがいた

 

調理は結局、俺が一人で全部やった、この子に料理をさせてはいけない、じゃがいもと一緒に台座ごとぶった切るような不器用さだ、俺の方から早々に戦力外通告をさせてもらった。

 

「はぁ、しっかしまぁ・・・」

 

「・・・?」

 

「うまそうに食べるもんだねぇ」

 

「じゃが丸くんは最高、あなたのじゃが丸は至高」

 

「なはは、うれしいこと言ってくれるねぇ、ほれ気にせず好きなだけ食え」

 

そう言うと黙々と食事を再開する

 

(こんなに嬉しそうに食べてくれるなら世界一の料理人を目指すのもありかもなー、アスフィごめんなー俺ってば主夫になるかもしれん)

 

そんな悲観的ではあるけど精一杯ポジティブに未来を考えている所に声が掛かった

 

「よう、坊主、家のファミリアに入らへんか?」

 

何か糸目の女性?からの突然の勧誘だった。

 



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04:剣姫×殺芋

《side:あいず》

 

 

 

〇6年X月つよい日

 

きょうもダンジョンにいってきた

 

だけどまだまだ私は弱い

 

もっと強くならないと、

 

もっと強く

 

もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと

 

 

 

〇6年X月つよ日

 

足りない足りないぜんぜん足りない、はやく!

 

もっとはやくつよく!

 

足りない足りない!

 

もっと敵を、わたしが強くなるための敵をもっと!

 

 

 

 

〇6年X月つ日

 

ロキとフィン達にダンジョンへ行くことを二日も禁止された

 

なんでじゃまをするの?

 

わたしは、わたしはつよくならないといけないのに

 

 

 

 

〇6年X月つよ日

 

訓練も禁止された

 

リヴェリアに何のための休暇だと怒られた

 

わたしのじゃまをしないでほしい

 

ロキに無理矢理連れられて外で食事を取ることになった

 

余計なことをしないでほしいと思ったが、そこで初めてじゃが丸くんという食べ物を食べた

 

 

こ れ は うまい!!

 

 

じゃが丸くんをたくさん食べた!

 

ロキが財布を見ながら泣いていたが、今日は好きなだけおごったるでーとか言っていたので遠慮しない

 

もっとじゃが丸くんをロキにせがんだら財布ごと店主に渡していた

 

初めてロキが偉い神様に見えた。

 

 

 

〇6年X月つよわ日

 

ようやく今日からダンジョンに潜ることができる

 

モンスターを倒してもっと今よりももっと強くなる

 

今日は朝からすごく体の調子がいい休んだおかげだと思う

 

 

 

 

 

 

 

 

〇7年X月つよ日

 

Lv.2になった

 

大変だったけど、色々と大切なことに気付けた

 

私はこれから変われるだろうか

 

 

 

〇7年X月つよわい日

 

Lv.2なってまたダンジョンに潜るようになって三日ほどたった

 

なんだが調子が出ない

 

どうしてだろう。

 

 

 

 

 

 

〇7年X月よわい日

 

原因がわかった

 

じゃが丸くんだった

 

じゃが丸くんを食べてからダンジョンに潜ったら最高に気分がいい状態でしかもいつもより多くのモンスターを倒すことができた

 

さすがじゃが丸くん、なんてすごい食べ物なのだろうか

 

今度からじゃが丸くんを食べるのを私の日課にしよう。

 

 

 

 

〇7年X月■ ■ ■日

 

敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸敵殺じゃが丸

 

 

 

〇7年X月気づいた日

 

ここ最近、体の調子がすごい良い

 

やはりじゃが丸くんはすごい

 

しかも先日、最高にハイなじゃが丸くんを売っている露店を見つけた

 

いくら食べても飽きない

 

ここのじゃが丸くんを食べるために最近は朝日が昇る前からダンジョンに潜り、昼過ぎには探索を終えるようにしている

 

フィン達からは今のような生活サイクルを続けるように言われた

 

早く強くなりたいけど、じゃが丸くんがないと私は弱体化するようになってしまったようだからしかたない、しかたないったらしかたない。

 

 

 

〇7年X月ふぃーばー日

 

ああ、なんてことだろう

 

ここのじゃが丸くんはおいしい

 

だからしかたないのかもしれない

 

でも急いでダンジョンから戻ってきたのに今日の分がぜんぶ売り切れだなんて、神はわたしを見捨てたのかもしれない

 

帰ったらロキをとりあえず絞めよう

 

そう思っていたら、わたしより少し年上でいつも至高のじゃが丸くんを調理している男の子がわざわざ材料を買って作ってくれるとのことだ

 

しかもわたしが買った材料の分だけじゃが丸くんを作ってくれると言ってくれた

 

おお、神はわたしを見捨てたりしてはいなかった

 

ロキに今度すこしやさしくしてあげようと思えた。

 

 

 

 

 

======================================

 

 

 

 

 

《side:ロキ》

 

 

 

〇6年X月黒潮日

 

うちは女神ロキ、泣く子も黙る天界の奇術師(トリックスター)や!

 

天界(むこう)はヒマでヒマでしょうがないからあちこちに喧嘩ふっかけて暴れ回ってたんやけど、いやー地上(こっち)は楽しいことも一杯、かわいい子供達も一杯と、まるで果てまで続く豪華料理のフルコースが並ぶかのようで飽きることがなくてもう最高や!

 

でもなー、最近ちょーっと悩み事があんねん

 

うちファミリアの中でも特にお気に入りの子にアイズって子がおるんやけど、

 

この子は自分の限界超えてもダンジョンに潜ってモンスターと闘い続けて、今までも何度も死にかけたりしてるんよ

 

最近は更にひどくなってきてんねん

 

ダンジョンに言って傷だらけになって帰ってきて、風呂と飯食って寝たと思ったら次の日の午前中から夜までダンジョンに潜りっぱなし

 

こんな生活が長く続くはずない、遠くない未来に必ずどこかで折れる

 

巷じゃそんなアイズの姿を見て、「人形姫」や「戦姫」なんて読んでる奴もおるらしい

 

うちのかわいいアイズをそう読んだ奴は絶対にとっちめたるけどな

 

でもそう呼ばれてもしかたないと思えてしまう程に今のアイズは危うい

 

フィンとリヴェリア(ママ)とガレスに相談してどないかせんといかんなー

 

 

 

 

 

 

〇6年X月白波日

 

とりあえずフィン達と相談してダンジョンへの行くことを二日禁止させた、これでちっとは体を休めるやろ

 

朝にアイズを見かけたら庭で剣の素振りをやっとった

 

まぁ、体が鈍らない程度の訓練は冒険者として必要やからええか、と思ってその場は邪魔しないように部屋に戻ったんやけど

 

夕方にまたそこを通ると、アイズが庭におった

 

しかもまた素振りをしとる

 

・・・もしかして一日中そこで剣振ってたんか?

 

他の団員達にアイズを見かけた時間を聞いてみたらどうやら朝からずっとらしいということがわかった

 

おっふ、アイズたん、堪忍してや~

 

ダンジョン禁止させた意味がないやーん

 

ママーーーー!ヘルプミーーーーー!!

 

って言いながらリヴェリアの部屋に突っ込んだら着替え中やった

 

おっほ、ラッキーすけbぁべし!?

 

リヴェリアに事情を説明する間もなく一時間以上めっちゃ怒られた

 

 

 

〇6年X月黄桜日

 

フィン達との再度の話し合いの結果、うちが無理にでも外に連れ出して気晴らしさせることにした

 

ふひひひひひ、これで大義名分の元アイズたんとイチャイチャデートができるでー

 

さっそく、アイズを連れ出して遊ぶ前に腹ごしらえしよ思て軽くつまめるもんでも食べるかってことで屋台名物のじゃが丸くんを食べたんやけど

 

アイズがこれをめっちゃ気に入ったらしい

 

めずらしくアイズがキラキラした飛びきりの笑顔(妄想)でうちにお願いをしてきた!

 

ここで子の願いを無下にしては女神の名が廃る!

 

そう思ったうちは気づけば財布ごと屋台の店長に投げ出していた

 

あぁ・・・あれでソーマの酒を買おう思てたんやけどなー

 

しかもアイズたんそのまま日が落ちるまでじゃが丸くんを食べ続けて結局デートができんかったorz

 

っていうかあれだけの量のじゃが丸くんがどうやったらこの小さな体に収まるというのか

 

これも子供達の無限に広がる可能性の一つなんやろか

 

いや、これはアイズ限定やろな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇7年X月黒とんぼ日

 

ついにアイズがLv.2になった、世界記録になるほどのランクアップ速度や

 

なにかご褒美でもあげよかなーと思ってたら廊下を歩いてるアイズたんを発見!

 

なんか一人でアイズたんがブツブツ独り言つぶやいとったから話しかけよ思て近づいたら

 

「じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺じゃが殺」

 

逃げました

 

きっと真昼間に見た白昼夢やな

 

かわいいアイズたんがあんなにごりきった目であんなこと言うはずがないわー

 

ありえんわー

 

今日は酒飲んで寝るわー

 

 

〇7年X月黒とんぼ日

 

 

アイズたんふぁLv.2になってしばらくしてから、アイズの生活サイクルに変化が現れた

 

早朝からダンジョンに行くのは相変わらずやけど、帰宅する時間が夕方になる前には帰ってくるようになった

 

いっやほほーい、これもうちやフィン達がアイズたんをどれだけ大事に思っているかわかってもらえたからやで!!

 

抱きつくといつも殴られるけど!

 

ペロペロしようとすると切られそうになるけど!

 

きっと小宇宙(コスモ)的な何かを感じ取ってくれたんよ!!!

 

 

 

 

 

 

〇7年X月赤霧島日

 

今日も今日とて、うちは新たな酒とかわいい子を見つけにあっちまでぇ!!

 

いやー、アイズたんが無茶なダンジョンアタックせんようになったおかげで心配事が一つなくなったわー

 

めっちゃ嬉しいわー

 

だからお酒に財布の中身全部使ってしもうたのもシカタナイワーアヒャヒャヒャヒャ

 

これでアイズたんのかわいい笑顔とか見れた・・・ら?

 

 

 

食堂ですごくうれしそうに何かを食べてるアイズがおった、しかもとびきりの笑顔付きで

 

 

 

うぇえええええええええ!?

 

アイズがめっちゃいい笑顔でじゃが丸くん食べとる!?

 

いや、なんでじゃが丸くんがあないに大量にあるん!?

 

いやいやいやそんなことよりアイズたん萌ええええええ!

 

リスみたいに一心不乱にじゃが丸くんを頬張るアイズたんキャワワ!!

 

うっひょーーー脳内に永久保存やあああああ!!

 

お?坊主ええ所におるなー

 

今、めっちゃ気分ええねん!

 

うちのファミリア入ってみんかー?

 

 

 

 

〇7年X月森以蔵日

 

・・・あったまイタイ、飲みすぎたみたいや

 

なんか昨日の記憶が曖昧なんやけど・・・

 

ん?

 

なんやこれ

 

ステイタスの写しやなこれ、

 

名前は『カイト・クラネル』?

 

んんんんんんん?

 

そんな奴うちのファミリアに―――あー・・・これ昨日うちが酔った勢いとアイズたんのキャワワな笑顔見てテンションがマックスハートになって身近にいた坊主をそのままの勢いで入団させたんやったなー・・・。

 

フィン達に何の相談もなく入れてもうたけど大丈夫かなー・・・

 

・・・・ん!気にしなーい!

 

きっと大丈夫やろ、うちの勘がそう言うとる!

 

 

そんなポジティブに考えてる自分の肩を誰かがガシッとつかんだ

 

 

「ナ ニ ガ ダ イ ジ ョ ウ ブ ナ ン ダ?」

 

 

 

氷点下も真っ青のリヴェリア(ママ)の声が・・・っていでででででで、肩に指が食い込んどる食い込んどる!

 

あかん、無理やてこれ、後ろを振り向けんって、これ逃げ―――

 

「コッチヲミロオオオオオオオオオオ」

 

ぎゃあああああああ堪忍してえええええええええええ

 

 

 

 

 

 



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入団試験!
05:期待×疑惑


 

《side:フィン》

 

 

僕は小人族(パゥルム)の 「フィン・ディムナ」、ロキファミリア団長を務めている

 

自他共に認めるオラリオでも数少ないLv.6の第一級冒険者だ

 

僕の夢は世界規模での小人族(パゥルム)の復興だ

 

そのためにもオラリオで最大派閥の片割れでもあるこのロキファミリアの団長という役職は意味のある地位だ

 

ただ、団長という役職は多忙を極める、特にうちみたいに団員だけではなく主神の癖も強いファミリアの場合は特に。

 

「それで?」

 

目の前には副団長でもあるリヴェリアの前で正座をさせられ憔悴しきっている我らが主神ロキの姿

 

「今度は何をしでかしたんだいロキ?」

 

 

 

  

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

聞き出した内容はロキが僕たち幹部に無断で団員を増やしたという内容だった

 

そこまで重大なポカではなかったことに、とりあえず安堵の息を漏らす

 

しかし、こんなことが続くとファミリアの人員がすぐにパンクする

 

それに団員には最大大手ファミリアとしての自覚を持った行動が常日頃から求められるため、よほどの実力者でもない限り入団試験と面接を行うようにしている

 

今回ロキが入団させたのは村から出てきたばかりの屋台でバイトしている少年とのことだ

 

・・・これはまた微妙に困った問題だ

 

現在の団員は他のファミリアから改宗(コンバーション)してきた第三級以上の実力者か厳しい試験と面接を経て入団してきた者たちが多い

 

そんな彼らはロキファミリアに入団できたことを誇りに思ってくれている

 

そこに実力もなく試験も受けていない者が主神の鶴の一声で入団してきたとなったらどうなるか・・・胃が痛くなりそうだ

 

それでも既に恩恵(ファルナ)を刻んだ紛れもない家族だ

 

団長として皆に当たり障りないように説明しなければならない、そう言うと

 

「いや、その必要はないかもしれんで」

 

正座のままでロキがあっけらかんと言いながらポケットから取り出した紙をリヴェリアに渡す

 

「・・・なんだ」

 

「ええから見てみぃ」

 

「・・・ふむ・・・ほう、スキルか・・・・・これは・・・」

 

それに目を通したリヴェリアの目付きが何かに気付いたように見開かれる

 

「・・・なるほど、確かにこれなら皆も納得するだろう、ロキよ、これも神の勘というやつか?それともわかっていて恩恵(ファルナ)を刻んだのか?」

 

「いや、どうやろなー、昨日はけっこう飲んでたせいで泥酔状態やったし無意識のうちに勘が囁いたかもしれんけど、それに気付いたのもリヴェリアの説教が落ち着いてからでな、気づいたときは驚いたで、なにせ最初からスキルが発現してるなんて滅多にないからなー」

 

ニシシシと笑いながら棚からぼた餅ってあるんやな~とロキがつぶやく

 

2人が見たのはおそらくその少年のステイタスの写しだろう、この2人が驚くほどのスキルに興味が湧く

 

「リヴェリア、僕にもそれを見せてもらってもいいかい」

 

そう言ってリヴェリアから受け取ったステイタスの写しには彼の名前と初期のステイタス

 

通常の恩恵(ファルナ)を刻んだばかりの者であればここまでだ、

 

だが『カイト・クラネル』の場合はそこからさらに下のスキル欄にさらに追記があった

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

カイト・クラネル Lv.1

 

 力:I 0

耐久:I 0

器用:I 0

俊敏:I 0

魔力:I 0

 

アビリティ

 

【   】

 

 

魔法

 

【   】

 

 

スキル

 

【念能力】

・魔力を身体能力へ能動的に上乗せできる、熟練度次第で効果は倍増する。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そのスキル説明を読んですぐには気付かなかった、だが()()に気付いた瞬間、僕も目を見開いて驚きを禁じ得ずにいた

 

このスキルと似たような効果は存在する

 

身近な例を挙げればアイズが使う【付与魔法】が一番近い、あの子の場合は風を武器や自身に纏わせることで攻撃力や身体能力を底上げすることができる

 

実際カイトの【念能力】も似たような効果だ、属性付与がない分他人には劣っている様にも感じることだろう、だが注目すべきはそこじゃない、本当に注目すべきはこれが【魔法】ではなく【スキル】であるということだ

 

【魔法】というのは発動させるために魔力を練りつつ呪文を詠唱しなければならない、これは絶対であり例外はない、さらにそれが強力であればあるほど詠唱時間と必要な魔力はねずみ算式に膨れあがる

 

だが、これが【魔法】ではなく【スキル】であった場合、それが必要でなくなる

 

冒険者というのは一瞬の選択ミスが死に直結する、その中で魔法と同じ効果を詠唱なしでスキルとして発動できるというのは破格の能力だ

 

「これは・・・確かに皆の説得は必要ないみたいだね」

 

それどころか彼が成長すればロキファミリア最強の近接戦闘士(アタッカー)にもなりうる

 

そこでロキが小さい声で笑い始める

 

「2人とも気付いとらんの?」

 

「魔法ではなくスキルとして付与魔法が使える以外に何かあるのか?」

 

「教えたるから正座止めてもええかな」

 

リヴェリアに目線で合図する、確かに勝手に団員を増やしたのは良くはないが、今回はそれが悪くない結果として残ったのでここら辺で勘弁してあげてもいいだろう、説教はリヴェリアがたっぷりとしてくれたようだし

 

「・・・いいだろう、それで私とフィンが気付いていないこととは何だ」

 

あだだだだ、足がシビれる~と言いながら立ち上がりつつロキがとびきりの悪戯顔で僕の持っているステイタスの写し紙を指し示す

 

「スキルの念能力の欄をもちっとよく見てみぃ、まるでこれから何かが追加されるような空欄があるで」

 

そう言われて改めて紙を見ると、確かに【スキル】の欄に明らかに不自然な空欄が目立つ、これはつまり―――

 

「スキルそのものが成長する可能性があるか、もしくは―――――」

 

「本来のスキルの一部のみが発現している、か・・・ありえるのか?」

 

「ありえるんやろうな~、くーーーーー!!これやから下界は止められん!!神達(うちら)もわからん未知の可能性!!いつだって神達(うちら)を興奮させるのは子供達やで!!」

 

その未知に狂気すら孕んで喜びを表すロキ

 

「ロキ、とりあえず落ち着いて、それよりもこれだけ希少な能力なら誰かを直接指導につけた方がいいね」

 

「スキルといえど魔力を使用するなら私の方でも指導は可能だが、どうする?」

 

そんな風にリヴェリアと今後の彼の指導について話していると

 

 

突然の乱入者が現れた

 

 

「ならば、あやつの面倒は儂に任せてもらおうか!!」

 

 

そう言って扉を勢いよく開けて入ってきたのは最後のロキファミリアの幹部ガレスだった

 

しかもなにやら大分機嫌が良い、ただ気になるのは右目に包帯を巻いていることだろうか

 

これはもしかして件の彼と何かあったかな?

 

 

 

 

 

======================================

 

 

 

《side:ガレス》

 

儂はドワーフの「ガレス・ランドロック」 一応ロキファミリアの幹部を務めておる

 

今日も庭で他の者達と訓練をしていたらリヴェリアが儂とフィンに招集を掛けた

 

何でもロキのアホがまた何かやらかしたらしい

 

やれやれ、前回は自分の分では飽き足らず賭博場(カジノ)に団員から借りた金まで使って遊びに行ったとかだったかの

 

何でも交換景品に幻の酒が入ったというのが切っ掛けだったが思いの外、賭博にはまってしまったらしい

 

最後には目的を忘れて賭博に夢中になってしまたとか

 

アホじゃのう、せめてその幻の酒とやらを手に入れておれば少しは庇ってやったんじゃが・・・その場合はもちろん庇った分の分け前(酒)はもらうがの。

 

とりあえず訓練はここまでにして会議室に向かうとするかの

 

そう思い訓練を切り上げてフィンの部屋に向かっている途中で見慣れぬ坊主が門から(ホーム)に入ってきた

 

話しかけてみると、儂を見てかなり驚いていたようじゃが、落ち着かせてから素性を聞いてみると、つい先日ロキにスカウトされ恩恵を刻んでもらったとのことだ

 

証拠に背中を見せてもらうとロキのエンブレムが確かに刻まれていた

 

・・・今回の招集内容に予想が付いた、多分この坊主のことじゃろうな

 

まぁいいか、確かに儂らに相談もなく団員を増やすのは褒められた話ではないがそこまで問題視するものでもあるまい、

 

リヴェリア辺りは激怒してそうじゃが、フィンが無難な解決策を考えるじゃろ

 

それにしても、先ほど背中のエンブレムを見せてもらったときに坊主の体付きも見ることになったが、年齢の割にかなり鍛えられていた

 

どれ、今の段階でどの程度見込みがあるか軽く試してみるか

 

ついでに今まで何をしていたのかと聞いてみると、一月程前にオラリオに初めて来てからは屋台でバイト、その前は村で祖父と弟の3人で畑を耕しつつ冒険者になるために体を鍛えていたということらしい

 

実戦経験は偶に森に現れたゴブリンを数匹討伐したくらいとのことだが、恩恵を刻んでいない状態の子供がゴブリンを討伐していたというのは驚くべき事だ

 

・・・ふむ、ロキの気まぐれにしてはこの坊主、当たりかもしれん

 

 

 

======================================

 

《side:貧乳リヴェリア》

 

私はエルフの「リヴェリア・リヨス・アールヴ」、ロキファミリアの副団長だ・・・なんとなくだが今笑った奴に災いあれ

 

今回はまた主神であるロキが厄介事を起こした

 

つい最近、新たに団員を増やしたばかりだというのにファミリアの幹部に無断で団員を一人増やしたという

 

恩恵を与える代わりに神々が好き放題に生きるのは神代の時代が始まってから人が背負うべき対価ではある

 

だが、仕方がないとは言ってもこうまで次々と問題が起こると頭を抱えたくなる

 

 

不幸中の幸いなのは今回ロキが入団させた少年が希少なスキルに目覚めているということだ

 

これならば多少特別扱いということで入団させても他の者に説明しやすいし、その子に対するやっかみも少なくてすむだろう

 

それにどうやらこの子のスキルは魔力を鍛えればそのまま他のステイタスの底上げに繋がる能力だ、多少であれば私が指導することもできるだろう、そう考えてフィンと話し合っている所に横槍が入った

 

 

「ならば、あやつの面倒は儂に任せてもらおうか!!」

 

 

ガレス・ランドロック、私やフィンと同じく、ロキファミリアの最古参にして幹部の一人だ

 

昔はよくこいつとは気が合わずに喧嘩したが、今では気心の知れた仲となった

 

そんなこいつが随分と嬉しそうに部屋に入るなりカイトの直接指導員になると言ってきた

 

ただ少し気になるのは頑丈さでは右に出る者のいないこいつが右目に包帯を巻いていることだろうか

 

カイトとは間違いなく何かがあったんだろう、酒と相撲や力比べの好きなこいつが気に入るとなると、模擬戦か何かでもしたのだろうか

 

だが、その右目は何だ、まさかカイトが付けた傷なわけではあるまい

 

 

「ガレス、遅刻だよ」

 

「おおう、すまんすまん、ちょっと意気のいい坊主の相手をしとったら思いのほか時間を忘れてしもうたわい」

 

「その意気のいい坊主というのはカイトのことか?」

 

「おう、そうじゃ、そのカイトじゃ!あやつ見所があるぞ、わしに育てさせてくれ」

 

ガレスがここまで入れ込むとは、どうやら思っていた以上にカイトという子は優秀なのかもしれない

 

そうやって三者三様で思惑に入ろうとしたとき、パンパンと手を叩いてロキが注目を集める

 

「とりあえず、カイトの情報を共有しよか、まずうちらの方から、その後にガレスがカイトと何があったか」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

私達がカイトのスキルとその特殊性について説明するとガレスは納得した様に相づちを打った

 

「なるほど、どうりでLv.1であの動きというわけか、それに成長する可能性のあるスキルか・・・なるほど」

 

「なんやガレス、やっぱカイトと模擬戦でもやらかしたんか?」

 

「おう、どの程度の実力か試験代わりに見てやろうと思ったんじゃが、多少油断してたとはいえ・・・いいのを一発喰らっちまったわい」

 

そう言って右目に巻いた包帯に触れる

 

「「「っ!?」」」

 

その言葉に私だけでなくロキやフィンも呆けた顔になって言葉をなくす

 

ありえない、Lv.6のガレスに昨日恩恵を刻んだばかりのLv.1が一撃を、しかも負傷を追わせるほどの攻撃を決めた?

 

バカなという言葉が思わず漏れてしまった、カイトという少年は一体何者なのだ

 

「・・・ロキ」

 

「んー、そやな一応、うちの前で軽く面接といこか」

 

神の前では地上における人々は嘘をつくことができない、さすがにカイトが何者なのか問いたださねば成るまい

 

最悪の場合、ファミリアに害を為す存在になり得るなら即刻除名もありうる

 

剣呑なことを考えているとガレスがカイトを庇ってきた

 

「おいおい、カイトは何か後ろめたいことをしてきた奴じゃないと思うぞ、あの動きは日頃の鍛錬で磨き上げたものだったぞ」

 

「だとすれば、彼はアイズに並ぶ将来の幹部候補かな?」

 

「そう思ったからこそ儂が名乗り出たんじゃろうが」

 

「こりゃ、棚からぼた餅どころか万能薬(エリクサー)でも降ってきた気分やな」

 

まったくだ、だからといって今度から勝手に団員を増やすのは許さないが

 

「わかっとるがな、今回はちょっとした事故みたいなもんや、まぁ転んでもただでは起きないのがうちやで~」

 

どうやら、あまり懲りていない様なので正座を一時間再開させてやった、ロキが悲鳴を上げたが知らん、いいかげん反省しろ、次同じ様なことがあったらギザギザの板の上で正座させてやろう・・・

 

「まぁ、とりあえず、面接はここにいる全員で食事前には行うとしよう」

 

フィンがそう言ってとりあえずは解散となった

 

カイト・クラネルか、怪しいところもあるが私も興味が出てきた、午後の面接が楽しみだ。

 



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06:面接×物理 前編

どーもどーもカイトです

 

世の中何が起きるか分かりませんね

 

幼女(強)に、じゃが丸くんを作ってあげたら何故か最大大手のファミリアに入団できました

 

その際の、記念すべき初めての恩恵を刻まれた時の記憶は酒臭い女神にゲロを吐かれながらというものでした・・・最悪です

 

そのせいで、この女神は前世のアニメでちらりと見た水の駄女神と同類なのではないかと戦々恐々しています

 

きっと女神は無能でもファミリアのメンバーが非常に優秀なのでしょう

 

上が駄目だと下が非常に優秀に育つのは異世界でも同じようです

 

人を導くはずの女神が反面教師って大丈夫だろうか、そう思っていたときに前世の知識からロキという神は確か悪戯の神様だったなと、ろくでもないことを思い出し今から不安で一杯です

 

大手だからと大丈夫と根拠もなく浮かれていた昨日の自分に腹パンしてやりたいです

 

とりあえず昨日は恩恵を刻まれた後、屋台の店長にロキ・ファミリアというビッグ中のビッグなファミリアへ入団できたことを伝えてバイトを辞めることを伝えることにしました

 

急な辞職の報告に何か言われるかと思っていましたが店長は笑顔でこれから頑張りなと応援してくれたときには涙が出そうになりました、この人本当にええ人や、拾ってくれたせめてもの恩返しに暇なときはロハで手伝いにくる事を伝えて店長の屋台を後にして一ヶ月世話になった激安宿に帰りました

 

元々そこまでの荷物があるわけでもないので荷物をまとめて宿から引き払う準備には大して時間がかからなかったです

 

 

 

 

-------------------------------------------

 

 

 

 

 

 

翌朝、ロキファミリアの本拠である「黄昏の館」に向かいました。

 

昨日のうちに門兵には挨拶ついでに約束通りじゃが丸くんを渡し、談笑できる程度には仲良くなったので顔パスで入れた。

 

入ってからはとりあえずどこに行きゃいいのだろうか、とりあえずそこら辺ウロウロして誰かにゲロキの場所を聞けばいいかなー

 

最悪門兵の人の所に戻って場所を聞けばいいや、と行き当たりばったりなことを考えながら館の中に入ろうとしたら―――

 

「おい坊主、ここはファミリア関係者以外は基本的に立ち入りを禁じている所なんじゃが?」

 

そこで化け物みたいなおっさんに声を掛けられた

 

その存在を自覚し目にした瞬間、全身の毛穴が開いて冷や汗が止まらなくなった

 

姿はずんぐりむっくりした典型的なドワーフの姿をしている、これだけなら問題ない、問題は

 

(なんちゅーオーラ量だよ!?)

 

そう、今の自分のオーラがただの燃えかすにすら感じられないほどの圧倒的なオーラをその身に宿していることが感じられることだ

 

やばい、なんか怪しい奴を見る剣呑な雰囲気を感じる、弁解を!

 

何も悪いことしていないけど早く説明せねばマズイ気がする!!

 

「えええええっと、一応昨日こちらのファミリに入団した者で、す」

 

「何じゃと、昨日入団した?」

 

はい、と答えると確認のために背中のエンブレムを見せるように言われた、逆らう意味もないので大人しく服を真っ昼間からストリップ、ちょっとだけと言わず上半身全てを脱いで背中のエンブレムを晒す

 

「間違いないのう、ロキの奴めまた勝手なことを・・・」

 

その言葉を聞いて自分の入団は気まぐれなロキの予期せぬ行動であったことが伺えた、

 

あれ、もしかして俺ってばこのファミリアにとって厄介事になる感じなのか? 

 

第一印象が悪くなるような事態は勘弁願いたい、そんな風に不安を感じていると

 

「・・・まぁ、いいか」

 

と、思ったより軽い返しをされた

 

「え、大丈夫なんでしょうか、入団させてもらった身でこう言うのは変かもしれませんが・・・」

 

「大丈夫じゃないか?・・・儂あまり考えるのは苦手じゃし」

 

ああ、見た目通りの脳筋系なのね

 

「それにしても中々いい体をしとるのう、かなり鍛えていると見える、名前は何と言うんじゃ?」

 

「カイトです、カイト・クラネル」

 

「そうか、・・・いきなりで悪いがカイトよ少し付き合え」

 

「え、何ですかいきなり、ていうか、どこに?」

 

「何、普通とは順序が逆になってしまうが軽い模擬戦形式で一応現時点でのお主の実力を測らせてもらおうと思っての」

 

(あーなるほど、確かに新人の実力もわからないままでは訓練とかで色々と不都合があるんだろうな)

 

「ただし、あまりに不出来な結果じゃと即退団になるかもしれんが・・・」

 

「うええええ!?」

 

「くっくっく、なので死ぬ気で頑張れ、やる気だけでも見せればどうにかしてやる」

 

(冗談じゃない!バイト先の店長にもかっこよく送り出されといて翌日に出戻るとか情けなさすぎる!)

 

「・・・わかりました、未熟者ではありますが死ぬ気で頑張るので一手お相手お願いします」

 

「お主かったいのー、もうちょっと年相応の話し方の方がかわい気があるぞ」

 

「初対面というだけでハードル高いのに、あんな脅しの様なこと言ってきた相手に無茶言わないでください、慣れたらもうちょっと砕けた話方になると思いますけど・・・」

 

「ま、それもそうじゃの、ほれこっちじゃ、裏に訓練もできる広場がある」

 

 

そう言って歩き出すおっさん、てか俺あんたの名前聞いてないんだけど

 

歩きながらおっさんにこれまでの経緯と出身や年齢を聞かれたので素直に聞かれた内容について話した

 

そんな風に雑談しながら歩いていると、見えてきたのは結構な広さのある広場の様な庭だった、俺たち以外にも団員がちらほら訓練しているのが見える

 

なるほど、これだけ広ければ多少は暴れても大丈夫そうだ

 

「では、お互い少し離れてから開始といこうかの、審判は・・・お、ちょうどよい、ラウルお主がやれ」

 

「へ?」

 

おっさんが声をかけたのはいかにも、ザ・平凡といった感じの少年だった

 

 

 

==============間

 

 

 

 

「――――――というわけで、こいつの後日試験みたいなもんじゃ」

 

他の訓練をしていた同い年くらいの少年におっさんが事情を説明し審判に命じる

 

「・・・なるほど、そういうことなら任せてください、自分が審判を務めさせてもらうっす、カイトって言ったすね、俺はラウルって言う者っす、頑張るっすよ!」

 

「お、おう」

 

あ、暑苦しい

 

なんか体育会系の部活によくいそうなしゃべり方だなこいつ、まぁ悪い奴じゃなさそうだけど

 

「とりあえず、ハンデとして儂がこの半径一メートルの円から出たら儂の負け、その前にカイトが戦闘不能になったらカイトの負け、ということにしておくか、ラウル、こっちはいつでもいいぞ」

 

そう言いながらガリガリと木の棒で周りに円を描いてその中心に立つおっさん

 

「え、そんなにこっちが有利な条件でいいんですか?」

 

「「は?」」

 

そう言った俺の言葉におっさんとラウルがキョトンとした顔になる

 

「ガハハハハハハハ!!この条件でもお主には荷が重すぎるわい、それを有利とは!」

 

こちらに有利すぎるその条件について聞いて逆に笑われてちょっとムカッっときた

 

俺ってば舐められてない?

 

確かに最初はおっさんのオーラに気圧された

 

ぶっちゃけ、今でも勝てる気はしないけど、それでも円の中から動かずにカウンターかこっちが力尽きるまで相手をして持久戦でも勝てると思われているのはちょっと面白くない

 

いや、しかたないとは思うよ、なにせ恩恵刻んだのは昨日だし、先人が自分の力に自信を持つのも悪いことじゃないけどさ、舐められて怒らないほど俺は人間ができていない

 

だって12歳だしー、子供だしーーー大人げない~?子供でぅぇ~す!

 

 

「えっとあんま無理しない方がいいっすよ、とりあえず始めるんでカイトの方も準備はいいっすか?」

 

「ちょっと待ってくれ、すまないけど帽子を預かってくれないか、・・・とても大切な物なんだ」

 

アスフィからもらった大切な帽子だ、その重要度はかの海賊の麦わら帽子に匹敵すると言っても過言ではない、激しく動く模擬戦なんかで汚したくない、雑魚相手なら脱がずともいいだろうが今回は相手が相手だ、そんな余裕微塵もない。

 

「いいっすよ、もしかして彼女からもらったプレゼントとかっすか~?まっさk」

「よく分かったな、とても大切な奴から誕生日にもらった物なんだ」

 

「・・・ハジメテイイッスカ」

 

あれれ、なんか急にラウルの目が死んで元気がなくなったぞ?

 

「?・・・あ、ああ、いつでもいいぞ」

 

俺の言葉を確認したラウルが少しふらつきながら審判として少し離れた中間に立つ、去り際に「――ジュウバクハツシロ」とか聞こえたような気がするがどうしたのだろうか

 

ま、いいか、先人に新人が勝てるわけがないと思っているであろう、常識をぶち壊してやろう

 

 

 

おっさんと俺がお互い数メートル離れて対峙したのを確認したラウルが俺とおっさんを確認して開始の合図を放つ

 

「では、模擬戦始めっす!!」

 

(最初っから【練】全開!!)

 

「【堅】!!」

 

【練】は通常より多くのオーラを体から発する念の基本だが、これよりさらに全力でオーラを噴出させる技がこの【堅】だ、練との戦闘力を比べればその差は最高で数倍に達する、長年の修行でようやく数分間だけこの状態で戦闘行動が取れるようになった、なにせ最初は動かずに数分間【堅】を維持するだけに二月もの時間がかかったのだ、ただし以前にも言ったように自分のオーラの質はなんかネチョっとしているのでいつもの『ネバァ』が『ゴポォ』といった感じになる・・・ぶっちゃけこれって本当に【堅】なのか?と思った人、大丈夫その疑問は俺も思ってることだが、大丈夫だ問題ない・・・タブン

 

さらに今回はそれよりもどうしようもないレベルの問題として、今の俺の【堅】の状態よりもはるかに質も量も化け物級なおっさんが相手だということだ

 

まず間違いなくガチの戦いでは今は絶対に勝てない、だが試合としてのルールでこのおっさんの鼻を明かすくらいはやってやる!

 

おっさんは俺が念を使えるということを知らない、なりたてホヤホヤのただのLv.1のガキだと思ってるはずだ、付け入る隙があるとすればそこしかない

 

故に先手必勝!

 

全身を今出せる限界のオーラで包みながらおっさんに突進、全力で殴りかかる、殴る瞬間にオーラの部位量を【流】で制御、拳を70、全体防御30にして俺の動きに驚いているおっさんの顔面に向かって拳を放った

 

(もらったぁ!!)

 

辺りに破裂音が響き渡る

 

「っっっ!!??」

 

「・・・なんじゃ、この程度か?」

 

俺の拳はニヤリと笑ったおっさんの顔の直前で手の平によって難なくガードされてしまっていた

 

「マジかよ!?っどらあ!!」

 

すかざす蹴りを数発たたき込むが全て腕で防御される、しかも蹴った足に鉄でも蹴ったような感触が返ってくる、

 

(攻撃したこっちの方がダメージを受けるとかどんだけ頑丈な肉体だ!?)

 

防御している腕に蹴りを放った反動を利用して一旦距離をとる

 

(クッソ、なんだよ今の!?)

 

冷や汗が止まらない、今出せる最高に近い一撃を難なく防がれた事実とその後の防御力に思考が止まりかける

 

一方おっさんの方はガードした自分の腕を見てからゆっくりとベガ立ち体勢に戻って俺を見据える、ベガ立ちってのは腕を組んで直立不動の体勢のことだ、この体勢は見た目からも分かる通り腕を組んでいるので初手が遅れる上にまっすぐに立っているせいで不意の攻撃によってすぐにバランスを崩す、およそ実戦では使うことのない立ち方だ、だがおっさんはその体勢で俺の攻撃を完璧に防ぎきった、、腹が立つが堂々とした絶対的な強者のみに許される余裕の姿だ、どうやら実力に驕っていたのはこちらの方だったようだ

 

(蹴りの方は納得できるにしても拳は当たる直前だった、普通に防御が間に合ってもそのまま貫く勢いだったてのにベガ立ちのまま片手で完全に防御されるとか・・・どんだけだよ)

 

しかもこっちはおっさんが防御する際の動きが全然見えていない、おっさんの実力は過大評価していたつもりだったが、それでもまだ足りなかったようだ、更におっさんの実力を三段上に上方修正する、そこから出される結論としては―――ヤッベ、常識をぶち壊す!とか、かっこつけたのに無理っぽいぞ、自分で自分が恥ずかしい、赤っ恥も良いところだ

 

残念なことに奇襲はもう使えないだろう、動きを見るだけの模擬戦ということで今回はお互い武器無しの徒手空拳、そのせいで距離を取っておっさんの手の届かない位置からの攻撃も無理となると残るは―――――

 

(あれに近接戦闘かぁ、・・・うわぁ超やだぁ)

 

 

こっちの攻撃はほぼ完璧に防御される上にたとえ攻撃が届いても効くかもわからない存在と殴り合いとか、それもう死ねって言ってるようなもんじゃん

 

(・・・負けて元々、だったら一か八かの一発勝負の作戦で行くしかない!)

 

確率は百分の一か千か万か億か、ヤケクソだこんちくしょう、こんな勝ち目の薄い勝負が模擬戦でよかったと無理矢理ポジティブに考えておっさんに向かって全力で突っ込む

 

「ッシ!!」

 

ただし、できるだけ低く地面をすべるかのように疾走する、狙いは足下、足を刈り取るような鋭い下段蹴りを放つ

 

「ふん!!」

 

だがこれをまるで踏みつけるように足裏で迎撃されて止められるが―――

 

(これは狙い通り!)

 

「ぬううりゃあああああああ」

 

脚と足裏が接触した状態のままでそのまま全力で振り抜いた、自然とおっさんの片足が高く上がりその自重を支えるのが左足一本になる、その残った左足に向かって下段の後ろ回し蹴りを放つ

 

「甘いわい」

 

「ッガァ!?」

 

蹴り上げたはずのおっさんの右足が俺の蹴りよりも早く、咄嗟にガードした左腕ごと俺の体を吹っ飛ばした

 

これだけで軽く10メートル以上吹っ飛ばされた

 

「くっそ、っ!?痛っ~~~~!!」

 

すぐさま起き上がるが蹴りを受けた左腕に激痛が走った、折れてはいない様だがこの痛みはヒビくらいは入ったかもしれない、左腕はこの試合中は使い物にならないだろう

 

(となると残りの右腕だけでおっさんの相手をするしかない・・・・・・・・・・無理でしょ)

 

おっさんの体が少しでも浮いたらその隙にぶん殴って円外に吹っ飛ばす算段だったのが既におじゃんになった今、文字通り万策尽きたような状況だ

 

おっさんは円内で未だにベガ立ちしている、その姿勢好きなのか?

 

いや、そんなことどうでもいい、それよりマジでどーすっかな、

 

さっきおっさんに言われたが不出来な結果を出せば即退団なんて言われてしまっている、降参なんて下手な真似をしたらおそらく即退団だろうな

 

でもなー、ぶっちゃけ、もうやりたくなーい、腕とかアホみたいに痛いし、そろそろオーラが底を尽きそうでキッツい、・・・・・・けど、合格・不合格関係なくこのじじいの鼻を明かすのは死ぬほど気持ちいだろうなぁ

 

そんな弱気なのか強気なのかわからないことを考えていたら俺があきらめたと思ったのかじじいが話しかけてきた

 

「・・・まだやるかの?」

 

挑発するかのように、ニヒルに笑いながら言ってくるじじいにかなりイラつく、あれだな、上から目線って人によってはこんなにムカつくんだな

 

「当たり前だくそじじい、老い先短い老人が未来ある若者になんてことしやがる、もちっと手加減しろや」

 

色々と脳内麻薬がドバドバ出ているせいかおっさんに対する敬語がなくなっていた

 

 

「年寄りの方を労わるのが普通じゃろ、あと儂はまだそんな歳じゃないわい」

 

「言ってろ、くそじじい」

 

とはいえ、マジで手詰まり

 

 

そこで問題だ! この片腕でどうやってあのじじいをぶっ飛ばすのか?

 

三択、一つだけ選びなさい  

 

答え

1:オサレなカイトは突如新たな能力に目覚めてオラオラ

2:突如、友情に目覚めたラウルやその他団員が駆け付け参戦してオラオラ  

 

3:このまま負ける。 現実は非情である。オラオラ

 

 

「どうした、さっさと掛かかって来んか」

 

じじいが指でちょいちょいと挑発してくる、いいぜぇその挑発乗ってやらぁな!

 

「選択その4!真っ正面からぶっ倒す!!」

 

こうなったら右拳に全オーラを集中、時間は掛かるがこれを防御なりなんなりで受けてもらって円外に少しでも出てくれることを祈ろう、かわされたり反撃されたら?そん時は知らん、どーにでもなぁ~れというやつだ。

 

玉砕する覚悟を決めて右拳にオーラを集中し始める

 

『そいつはお勧めできねぇなぁ?』

 

だがそこに人を馬鹿にするような声が待ったをかけてきた

 

(まさか!?)

 

そう、俺には一つだけ思い浮かぶ事象があった

 

この本来の身体の持ち主であるカイトには固有の能力があった、その名を【気狂いピエロ(クレイジースロット)

 

1から9までの数字がスロットによって表示され、その数字によって特殊な武器を使えるようになるという念能力だ

 

 

(ピンチによる能力覚醒キタァーーーーーー!!)

 

 

そう思って横を見ると俺の横にフワフワと浮いていたそれはまるでロキファミリアのエンブレムであるピエロがデフォルメ化され実体化したような存在・・・ではなく

 

「・・・なんだお前」

 

『おいおい、俺ってばかなり有名なはずなんだが、もしかして自意識過剰だったりする?』

 

「いや、知ってはいる、めっちゃ知ってはいるんだけど・・・名前を知らない」

 

『あちゃーそーいうパティーンかー、まぁたしかに知名度はあるけど名前は知らないってのはあるかもなー俺ってば黒板消しの正式名称よりも名前だけは知られてないっぽいし、じゃあ覚えとけよ俺様の名前は「ジャンプパイレーツ」天下の大人気週刊少年誌のロゴマークだZe!!よろしくな御主人様(マスター)?』

 

まさかのジャンプマークのアレだった。

 

 

 

 

+++++++++

 

 

この片腕ででどうやってあのじじいをぶっ飛ばすのか?

 

三択、一つだけ選びなさい  

 

答え

1:オサレなカイトは突如新たな能力に目覚めてオラオラ

 

2:突如、友情に目覚めたラウルやその他団員が駆け付け参戦してオラオラ  

 

3:このまま負ける。 現実は非情である。オラオラ

 

 

選択肢1・・・になるのだろうかこの場合。

 

 

 

 

 

 

 



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07:面接×物理 後編

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《side:ラウル》

 

〇7年X月平凡っす日

 

初めまして!自分はラウル・ノールド、今年で13歳になったっす、田舎暮らしの三男坊で日々親に兄弟にと、こき使われる毎日に嫌気が差して、男として一旗揚げるために世界の中心、ダンジョン都市オラリオに来たっす

 

来た当初は右も左もわからなかった所をロキに誘われ、ちょうど行われる入団試験で見事合格、おかげでロキファミリアの一員になれたっす

 

ただ自分が思っていた以上に冒険者というのは過酷なものなんすよ

 

まず単純に神に恩恵を刻んでもらってもすぐにダンジョンに潜れるわけじゃなかったっす

 

最初の2週間とちょっとは先輩方との訓練とダンジョンに関する様々な知識をつけるための勉強尽くしで、生まれてこの方農業しかしてこなかった自分には頭から煙が出るかと思うほどキツいもので、ああ、思い出すと涙が・・・

 

中にはさっさとダンジョンに潜りたいと言う反発心を持った奴も出て来たっす、原因はアイズさん、アイズさんはLv.2の冒険者で正真正銘の第三級冒険者しかも世界最速のランクアップの世界記録保持者・・・なんすけど何と年齢がわずか8歳、しかも見た目からはとてもじゃないけど自分達よりも強い様には見えないんすよね、でもそういう奴は大抵がアイズさんに身の程を体に叩き込まれたっす、

 

おかげで反発心を持っていた奴らは全員が大人しく訓練と勉強に打ち込むようになったのは怪我の功名って言うんすかね?

 

入団して3週間後にはようやく、初めてダンジョンに潜ることになったすけど自分は緊張で何も出来なかったっす、他の皆はそれなりに闘えてたんすけど自分はビビッてゴブリン相手に終始逃げ回ってそのままその日のダンジョンアタックは終わったっす

 

悔しかったっす、皆がモンスターと闘えている一方で自分だけが逃げ回った

 

悔しくて悔しくて、その日は与えられた自室で夜中まで泣いたっすよ、同室の団員がいなくてよかったっす

 

 

 

〇7年X月脱っす日

 

あれから一月、最初の悔しさをバネに訓練とダンジョンアタックを超頑張ったっす、ステイタスももう少しでIからHに上がりそうなものもあるっす、おかげで少しは自信が付いて3階層まで到達階層を伸ばせたっすよ

 

先輩方やガレスさんに実力よりも精神を鍛えるように言われてから、度胸を付けるために遥かに各上の先輩方やガレスさん相手にボコボk、いやリンt・・・訓練をしてもらったおかげっす!

 

さぁ今日もダンジョンアタックをがんばるっすよ!じゃなきゃあの訓練ががががががっががががが

 

・・・モンスターヨリミカタガコワイデス。

 

 

 

〇7年X月驚っす日

 

今日も訓練に励んでいたらガレスさんが昨日入団したばかりの新入りを連れてきたっす

 

事情があって入団試験なしで入ったらしく、そのための後日試験とのことみたいっす

 

その試験として軽く模擬試合をするので審判役を務めるように言われたっす

 

まぁ、断る理由もないし、(というかガレスさんに逆らうとか無理)快く引き受けたっすけど

 

試合が終わった後に自分は驚きすぎて放心状態になっちゃう程だったっす、彼、カイトは一体何者っすか?

 

 

 

 

模擬戦形式で始めた瞬間に文字通り目にも止まらぬ速さでカイトはガレスさんに殴りかかったっす、それでもガレスさんには通じず一旦距離を取ったみたいっすけど・・・ありえねーっすよ、何なんすかカイトは!?

 

あの動きはとてもじゃないけど昨日今日に恩恵を刻んだ者の動きじゃねーっすよ、むしろ2ヶ月も訓練してきた自分所よりも明らかに上、下手したら先輩方とタメを張れるほどの速度っす

 

しかも先輩方でも受ければ気絶必至のガレスさんの蹴りを受けて起き上がるだけじゃなく、そこからさらに反撃をしてきて、あのLv.6のガレスさんに傷を負わせたっす

 

試合を遠巻きに見ていた先輩方も顔に驚愕の表情を貼り付けて固まってたっす

 

ああ、せっかく後輩ができたと思ったんすけど、カイトには先輩面できそうにないっす

 

でも先輩としての意地もあるんで負けないように頑張るっす!

 

 

 

 

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《side:ガレス》

 

 

「なんじゃあ・・・あれは?」

 

カイトとの模擬戦は最初から驚きの連続じゃった、最初の一撃は余裕そうに見せたが危うくもらいかけた、その後の追撃も素晴らしい物じゃった、全てが的確に人体の急所を狙ってきおった、とてもではないが先日恩恵を受けた者の動きではない

 

続く攻撃には思わず反撃してしまったが、かなり手加減したとはいえLv.2でも受ければ気絶するであろう儂の蹴りを咄嗟に防御し立ち上がりおった!

さすがに無傷とはいかなかったようじゃがそれでも驚くべき反射神経と防御力じゃ、それにこの状況で儂に生意気な言葉を言い返す度胸もある

 

 

じゃが、これは今日一番の驚きじゃ、カイトの横にわけのわからん下手なおっさんの絵? の様な小さい何かが浮いておった

 

『ヒィィィイイーーーハァァーーーー!!それじゃいくぜえええええ?良い目が出ろよぉ!!』

 

しかも喋っておるし

 

不思議な物体の口にあたりであろう部分から何かがスライドして出てきたと思ったらカジノにあるスロットの様に回り始め、数字の3が止まった、一体何の意味があるのだ、いやそもそもあれは何なのだ

 

困惑するこちらを見て不敵な笑みを浮かべるカイトの姿が不気味に見えた

 

「・・・おい、じじい覚悟しろよ、とびきりの物を喰らわせてやる」

 

カイトが体の正面に手を合わせるとその手の間に何か黒い何かが現れた、その禍々しさは筆舌に尽くしがたいほどだ

 

それを手にしつつ、こちらに今までで一番の速度で突っ込んでくる

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「むう!?」

 

(まさか伝説に聞く魔法、その中でもさらに異質と呼ばれる闇属性の魔法か!?)

 

だとすれば、あれは闇属性唯一の魔法!!

 

「『暗黒物質(ダークマター)』を無から生み出したというのか!?」

 

本能がアレに触れるのは不味いと警鐘をならす、直感に従い回避を選択、儂の顔面に向かって放たれるそれを最小限の動きで避ける、本来であれば距離を取ることで難なく避けられるが今はルール上この円の中から出ることが出来ない、そのせいで避けられる範囲が狭められているが、これでも儂は現役の冒険者、それくらいの芸当は朝飯前のはずじゃった

 

(っ避けられん!?)

 

だがカイトから放たれた黒い塊は追尾機能でも付いているかのように避けたはずの儂の顔に向かって追尾して来た

 

(っ・・・やむを得んか)

 

左腕を犠牲にする覚悟で『暗黒物質(ダークマター)』を腕で振り払う

 

『パン』という音と共に『暗黒物質(ダークマター)』が粉々に砕け散った、だが予想していたようなダメージは何もなく拍子抜けしてしまう

 

(何もないじゃと?)

 

「何じゃったんじゃこれは・・・」

 

儂が黒い何かに気を取られている間に背後へと回ったカイトが裏拳を放ってくるが軽く腕で止める

 

暗黒物質(ダークマター)じゃねぇ、卵焼きだよ」

 

卵焼き?何を言ってるんじゃこいつは

 

カイトがそう言うと同時に儂に、向かい風が吹く、カイトが握っていた拳を開くとそこには黒い塊の残滓が残っていた、それは風のせいで儂の右目に向かって飛び散り、そのかけらが目に入った

 

「これのどこが卵やkぐあああああああああ!?目があああああ目が焼けるううううううう!!??」

 

まるで眼球が焼けるかのような激痛に襲われる

 

「見たか、これが卵焼きの実力だ!」

 

マジで何を言っとるんじゃこいつは!?

 

こんな卵焼きがあるかぁ!!

 

「隙ありぃいいいいいい!!」

 

儂が激痛にのた打ち回っているのを好機と見たのか再びカイトが飛び掛ってきた

 

「ぬおおおおおおおおお!!」

 

「おべぇし!?」

 

あまりの激痛に手加減を忘れて振り回した腕がカイトに命中した、

 

「しもうた!?」

 

本気ではないとはいえ手加減抜きのLv.6の豪腕をその身に受けたカイトは先ほどとの倍の距離を水平にすっ飛んでいき、庭の木にぶち抜いて壁に激突することでようやくその身を止めた

 

まずい、やりすぎた!

 

「ラウル!急いで回復薬(ポーション)を持ってこいっ、とびきり高い奴じゃ!なければ儂名義で万能薬(エリクサー)でもかまわん!!」

 

「っ!? は、はいっす・・・って・・・嘘だろ!?」

 

ラウルに言いつけてから急いで吹っ飛んだカイトの元に駆け付けようとしたが、信じられぬものを見たような顔をしたラウルがカイトが吹っ飛んだ方向を見て呆けていた

 

儂とカイトを遠巻きに見学していた他の団員も同じ方向を見て呆けておる

 

まさかと思い、儂もラウルや他の団員の見ている方向に目を向ける

 

「・・・なんと」

 

まるで体中が錆び付いたかのように、ゆっくりとだが確実に立ち上がりつつある姿があった、

 

十秒以上かかっただろうか、本物の戦闘なら致命的な隙だが、Lv.1がLv.6の手加減無しの攻撃をまともに受けた場合は本来なら良くて危篤状態重傷必至、最悪という可能性などなく、普通で死ぬ

 

だというのにこいつは死ぬどころか立ち上がった

 

Lv.6の豪腕を受けたにも関わらず成り立てのLv.1の冒険者は立ち上がっていた

 

おそらく防御に回したのであろう両腕は紫に腫れ上がり、もはやぶら下がっているだけの様にダラリと垂れている

 

肋骨か内臓もやられたのか口からは血を吐いたような跡が今もアゴから血の雫を落としている

 

その姿はまさに満身創痍

 

だがその目から放たれる威圧感をして一体誰がこの姿に満身創痍等という戯れ言を彼に被すことが出来るというのか

 

儂の方を見たカイトはまるで不気味な半月状の口で笑いながら言葉を搾り出してきた、その声は喉に血でも詰まったのか酷く掠れている、Lv.6の聴力がそれを拾い不思議と良く儂の耳に通った

 

 

「・・・ぇ、円・・内・・から・・・出た・・・な・・・」

 

「!?」

 

気付けば儂は決められた円内から出ていた、今から駆け付ける所だったのでカイトを助けに行こうとして出たものではない

 

「・・・ぁ・・まぁ・・だ・・・やるか・・い?」

 

いくら目が死んでいなくともその身に刻まれた傷は本物である、だというのにこの言葉(セリフ)

 

 

「・・・・くっくっくっくっくっくっ」

「・・・・しっしっしっしっしっしっ」

 

どちらかが笑いだし釣られるようにもう片方も笑い出す

 

「「ガッハハハハハハハハ!!イヒッヒッヒッヒッヒッヒ!!」」

 

ダメだ笑いが止まらん、こんな楽しい馬鹿者は久しぶりじゃ。気に入った!気に入ったぞ!!

 

此奴は儂が育ててやろう、いや儂が育ててみせる!

 

おっとその前にそのための一区切りの宣言をしてやらねば

 

「儂の負けじゃあっ!!」

 

儂がそう言うとこの馬鹿は文字通り糸が切れたかのように顔面からぶっ倒れおった、元々限界を超えたダメージを受けていつ倒れてもおかしくないのを、精神力だけで支えて立っておったのじゃろう、くっくっく、なんちゅー意地っ張りじゃ、アイズ以上じゃの、これは

 

ほれ、ラウル何をボサッとしとるんじゃ、さっさと回復薬か万能薬でももってこんかい

 

おっとそうじゃった、リヴェリアに呼集されとったのをすっかり忘れておった

 

おそらく呼集内容は間違いなく此奴の事じゃ、何か勝手に決められる前に儂が割り込まねばせっかくの此奴の教育係を別の誰かに取られかねん、

 

そこからはラウルの持ってきた回復薬を全てカイトに使わせて治療を行い、儂は包帯を巻く程度の軽い治療だけですませ急いで招集された場所まで足早に向かっていった

 

あれ程の激痛だったはずの右目が時間が経つごとに痛みも引き、視力も戻ってきた

 

本当にアレは一体何だったのか、断じて卵焼きではないということだけは確信を持っていえるのだが・・・本当に卵焼き等と言うのなら今度から卵焼きが食えなくなりそうじゃ

 

まぁええか、今度改めてカイトに聞くとしよう

 

しかしまいった、完っ全に遅刻じゃな、リヴェリアとフィンに小言を言われそうじゃ

 

 

《side out:ガレス》

 

 

 

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目が覚めたら激痛が急に襲ってきた、ということもなく快適な目覚めだった

 

場所は先程と変わらず訓練所兼庭の様な場所

 

どうやらあの後、邪魔にならないように隅っこに寝かされていたらしいな

 

起きてから自分の現状を把握し始めて、体のどこからも痛みがないことに気付く

 

あれ、俺ってばかなりの重傷だったよね?

 

腕とか痛みがズンガズンガだったし呼吸はまともにできないし血が噴水みたいに口からあふれるしで結構ヤバかったはずなんだが、今の俺の体には文字通り傷一つ付いていない、服はボロボロなのにその下にある皮膚だけが妙にツヤツヤして綺麗な状態に違和感を覚える

 

自分の状態を不思議に思ってると先程審判をしてくれていたラウルという少年が声を掛けてきた

 

「お、早いすっねもう起きたっすか、どこか体に異常とか違和感を感じたりしてないっすか?」

 

「いや、逆にどこにも異常がないことに違和感を感じるんだが、どれくらい寝てたんだ? いや、その前に俺って模擬試合でおっさんにちゃんと勝ったんだよな? 実は夢でしたー、とかじゃないよな?」

 

実は最初の一撃の後にカウンターでノックダウン、そっから先は

 

――――という夢をみたのさ、良い夢見れたかよ?

 

とかだったら悪夢だぞ。

 

「安心するっすよ、カイトはちゃんと()()()さんに勝ったすよ、怪我とかは回復薬(ポーション)ですぐに治したっす、治した後カイトは2時間くらい寝てたんすよ」

 

ラウルの話を聞いてとりあえず夢ではなかったことに安堵する

 

それにしても、すげーな回復薬(ポーション)って、あんだけの傷がすぐに回復すんのか、現代医学もビックリだ、さすがファンタジー!

 

村ではお目に掛かることすらなかった初めての回復薬の効果に多少浮かれていたが、今のラウルの台詞におかしな単語が混じっていたことに気づき頭に電撃が走った

 

寝ていた時間ではない、俺と試合をしたおっさんの名前に関してだ

 

これが聞いたこともない名なら良かったのだが、ガレスというのはロキファミリアにおいて1人しかいない・・・はずだ

 

もしかしたら俺が知らないだけで同じ名前の者が居るだけなのかもしれないので一応ラウルに聞いてみた

 

「なぁ、ラウル」

 

「どうしたんすか?」

 

「ガレスってもしかしてガレス・ランドロック?」

 

「そうっすよ」

 

重傑(エルガルム)の?」

 

「し、知らないで試合してたんすか・・・」

 

スンマセン

 

あまりの事実に頭痛がしてきて頭を抱える

 

「普通、Lv.6が模擬試合の相手とか思わないだろ・・・」

 

Lv.6とかガチで世界中を見回しても両手の指だけで数えられる位の第一級冒険者じゃねーか

 

「まぁ、名乗らなかったガレスさんもガレスさんっすけど、ここに入るのに幹部の顔も知らないカイトもカイトっすよ?」

 

返す言葉もないっすわ

 

「まぁいいや、それで俺ってばこれからどうすりゃいいだ、このままここでキャンプでもすりゃいいのか?」

 

「ホームの庭で一人キャンプって悲しすぎるっすよ・・・」

 

うん、自分で言ってて悲しくなってくる

 

「まぁ、冗談はここまでにしてマジでどうすりゃいいか聞いてたりしないか?」

 

「一応、『目が覚め次第、カイトの容態が大丈夫そうなら団長室で軽い面接だ』って、さっきガレスさんが伝えにきたけど・・・大丈夫そうっすね」

 

俺の様子を見て安堵したように言っているが、無理

 

「いや、無理、できれば三日後とかにして欲しい」

 

「あれ、やっぱりまだどこかがすごく痛むとかっすか?」

 

違う、そうじゃない、俺の想像通りなら精神が持たん、発狂するぞ

 

「いいかラウル」

 

俺はできるだけ声を落として呟くように声を吐き出す

 

「な、何すか?」

 

「俺はな、おっさんに()()模擬戦って言われてこうなったんだ・・・つまり面接ってのはアレだろ?何かの隠語で実際には精神的な拷問とか尋問とかが待ってるってことだろ?」

 

模擬戦でコレだ、きっと精神と肉体の限界に面会とかそんな感じではないだろうか

 

「いやいやいやいやいや!あそこまで激しい試合は自分の入団試験の時でもなかったっすよ!」

 

ナヌ!?

 

「え?じゃあ何であのおっさんあそこまで俺のことボッコボコにしたの、OKもらうまで死にものぐるいだったんだが」

 

「それはわかんないっすけど、少なくとも団長はそんなことするような人じゃないっすよ、それに元々ガレスさんだって普段の訓練はそりゃあもう厳しいっすけどここまで怪我を負わせるほどのことはしたことないっす」

 

「じゃあ、何で俺だけスダボロにされたんだよ」

 

「さぁ?、案外気に入られてとかじゃないっすか?」

 

このファミリアは気に入った奴を半殺しにするのか、こえーよ

 

それにしても面接かー、しかも団長の部屋、ラウルの発言からも間違いなく面接相手はこのファミリアのトップ

 

「今度は『勇者(ブレイバー)』フィン・ディムナ・・・か。」

 

確かに噂では相当な人格者であると聞いているが、はてさて

 

「あ、面接は幹部全員とロキの前で行うらしいっす」

 

「・・・それってラウルも入団試験のときに全員と面接したのか?」

 

「そういや、自分のときはロキとだけだったすね、全員暇なんすかね?」

 

珍しいなー、とかラウルがお気楽に言ってるが幹部全員ににファミリアの主神ががん首そろえて面接

 

・・・それは尋問というのではないでしょうか?

 

やっぱ拷問とかが待ってそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[模擬試合](条件付き)

 

カイトVSガレス

 

カイトの勝利

両腕骨折 肋骨骨折 内臓中度損傷 全身重度の打撲複数

 

ガレス敗北

右目負傷 

 

 

ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)

3『お妙の卵焼き(ダークマター)』new!

顔面への命中補正

口内摂取の場合、即死以外の様々な状態異常をランダムで引き起こす

状態異常は毒・麻痺・発熱・腹痛・記憶障害 等多岐に渡る

口内摂取を長年続けた場合、状態異常への耐性が出来る代わりに失明まではいかないが視力が落ちる(某弟が眼鏡を掛けているのはこのせいだと言われている)

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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08:面接×正常

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《side:フィン》

 

カイトが意識を取り戻し、面接を行うのに問題がないとの報告を受けてから1時間後

 

今、僕達の前に椅子に座っているカイトが居た

 

見た目は年相応より少し背が高く、白い雪のような髪を背中まで伸ばしている、そしてまるで鋭い目付きを隠すかのように帽子を深めに被っている。

 

こんな子がガレスに負傷を負わせたとは、直接本人から聞いたのではなければ信じられなかっただろう。

 

ただそれ程の子でも緊張はするのか椅子に座った状態で微かに震えているのがわかる

 

「あまり緊張せずに気を楽にしてくれてもかまわないよ」

 

「・・・無理っすぅ」

 

緊張を解きほぐすために気楽な感じを装って声を掛けるが帰ってきたのは拒否の声だった

 

「フィン、無茶言うたるなや、うちに加えてここの幹部が勢ぞろいなんやで?そりゃ緊張の一つもするんやろ」

 

確かにこの状況で緊張するなという方が無茶な話かと、そう思っているとロキの言葉に対しても否定の言葉が出てきた

 

「・・・正確には違ぅ…います」

 

「「「「?」」」」

 

「俺が緊張してるのは、この面接とは名ばかりの尋問もしくは拷問試験に気後れしてる、ます。」

 

・・・カイトが言っている意味がわからない、尋問?拷問試験?

 

何をどうすればそのような考えが出てくるのか・・・まさか何か後ろめたい事情でも抱えているのだろうか

 

「自分はつい先程の軽くと言われた模擬試合で両腕と肋骨をバキバキに折られた上に全身打撲に加え内臓が破裂して血をドバドバと吐いて、生死の境をさ迷う目にあった、だからこの面接でも同じことが起きるのではないかと戦々恐々としてい、ます」

 

「「「・・・・・・・・・・」」」

 

おそらくではあるがカイトがこのような考えに至る原因のとある人物に僕達の視線が集中する

 

プイと顔を背けるガレス

 

・・・ガレスそれは君がやってもかわいくない

 

君がそれで誤魔化すのは無理があるよ

 

その証拠にカイトの話を聞いたリヴェリアの目付きが鋭くなってるしね

 

「ガレス、確かカイトはお前と軽く試合をしてその時にお前に負傷を負わせるために自らも負傷してすぐには動けない程度、と聞いていたが?」

 

咎めるような視線にガレスが小さくなる

 

そして僕からしか見えなかったが、二人のやり取りを見たカイトが突然ニヤリと笑った

 

「あー・・・その、なんじゃ、ちーっとばっかしやりすぎたのは認めるがーーー」

「あいたたたた、いたーいめっさいたーい!Lv.6の英雄さんがLv.1になりたての新人に容赦なく攻撃を加えた所がいたたたたたたた!」

 

「おい!傷は万能薬で治っとるじゃろうが!・・・あ」

 

どうやら、カイトは僕達の会話から先の試合の結果はガレスのやり過ぎと察したのだろう、自分を殺しかけたガレスに意趣返しのつもりか明らかにわざとだとわかる様に煽ってきた

 

それに対してガレスも要らぬ失言で自らの立場を悪くしてしまう、万能薬は本来なら気軽に使用できない超が付くような回復薬だ、その効果は死んでしまうような傷も瞬く間に完治させてしまう程だ、そして今回の模擬戦でガレスはカイトに万能薬を使ったということはそれほどの重傷を負わせてしまったということだ

 

「ガレス、万能薬を使わざる得ない程の状況にした君の負けだ」

 

「うぐぅ!?」

 

それを見たカイトがピューピューピュピューと口笛を吹いてすっきりしたかのように余所見をしていた

 

いや、一応この場は君の面接の場だったはずなんだけどね?

 

最初のは演技だったのか今は随分と余裕に見える、と思っていたらここが面接の場だあることを思い出したのか真面目な表情に戻った

 

・・・なんというか、読めない子、というより喰えない子といった感じだ。

 

これが僕、フィン・ディムナのカイトに持った第一印象だった

 

 

《side out:フィン》

 

 

 

 

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《side:リヴェリア》

 

まったく、この馬鹿は何を考えているのだ

 

入団したばかりの団員にファミリアの幹部が瀕死の重傷を負わせたなど、都市の新聞記者達の格好の的になるネタだぞ

 

ただでさえ私たちのファミリアは都市の注目を集めているというのにその自覚があるのかと後でしっかりと問い詰めてやろう

 

入団した翌日、しかも同じ団員の幹部に殺されかければ怯えるのも無理はない

 

かわいそうだとは思うがとりあえず今はカイトの面接が優先だ

 

ガレスの話をとりあえず置き、フィンがカイトへといくつか質問を重ねていく

 

出身や年齢と言った基本的なことから順番に聞いていく

 

ふむふむ、オラリオから北の山間部にある名前もないような村が出身、年齢は12歳、両親は幼い頃に他界しそれ以後は祖父がカイトと弟の面倒を見ていたとの話だ

 

壁に寄りかかるようにしてカイトを見ているロキの反応から嘘は含まれていないようだ

 

これでカイトがどこかのファミリアや国のスパイである可能性はなくなったな、懸念が一つ消えホッとする

 

「なるほど、じゃあ最後の質問だ、君は何のために冒険者になりたいんだい?」

 

これは新入りの団員に必ず最後に聞く質問だ、大抵の者は名誉や生活のためと答えるが・・・

 

「将来を約束した相手と一緒になるため」

 

カイトからは少々意外な答えが返ってきた、将来を約束・・・つまり婚約者?

 

まだ12歳の子供が言うにはませていると言われてもしかたがない台詞だ

 

「なるほど、君はその年で既に相手が居るのか・・・でもそのためだったら別に冒険者にならなくてもいいんじゃないかな、むしろ冒険者というのはいつ命を落とすか分からない、本当に相手と一緒になる未来を考えるのならもっと安全な職業に就くことを僕はお勧めするよ?」

 

フィンの言うことは正しい、冒険者はどれだけ安全策を事前に練ろうともダンジョンの気まぐれで意図もたやすく命を落とす

 

そうなってしまえば残された者は悲しみに暮れるしかなくなる

 

この子は冒険者になる道しか選べなかったアイズとは事情が違う、他の選択肢もあったはずだが

 

「・・・相手は普通の身分じゃないんだ、ただの平民の俺が相手と一緒になるには世界に轟くくらいの名誉と財力がいる」

 

なるほど相手は貴族かどこかの大商人の娘といった所だろうか・・・

 

「失礼を承知で聞かせてもらいたい、それは本当に相手も君の事を想っているかのかい?」

 

フィンがこのような質問をするのにも理由がある、貴族となると一時の気まぐれや遊びで平民をたぶらかすことも多いことを思っての質問だ、大抵の場合は男の貴族がそのような下種なことをすることが多いが、逆のパターンがないわけではない

 

「そういう懸念はもっともだけどそういった心配はない、相手は家出同然で家を飛び出たって言ってたし、そもそも向こうから『別に冒険者にならなくても私が養う』とか言ってきたし」

 

なんとも豪気な相手だ、だがそれなら尚更冒険者になる理由が分からなくなってきた

 

相手は家を出ているのですぐにでも一緒になるのに障害は何もないように感じるのだが・・・

 

そう思っているとカイトがこちらの疑問に答えるかのように理由を述べてきた

 

「俺に両親は居ない、でもあいつの両親は健在だ・・・祖父が居たおかげで俺と弟はこれまで生きてこれた、もしあいつの両親の許可なく一緒になれて子供ができたとしてもその子にとっての祖父母に認められないなんてことは嫌なんだ、俺はあいつの両親に認められて、その上で幸せな家庭を築きたい」

 

なんとまぁ、この年齢でこれ程までに将来のことを見据えているとは

 

ここまできちんと将来のことを考えた上でならばこの子は大丈夫だな、どこかの戦闘狂の娘にも見習って欲しいくらいだ

 

「とりあえず、冒険者を目指した理由はこんな感じなんだけど駄目だろうか?」

 

「いや、予想以上にしっかりとした目標があって関心したくらいだよ」

 

「っ・・それじゃあ!!」

 

「うん、文句なしの合格だ、これからよろしくねカイト」

 

うむ、この子は私が予想していたよりもしっかりしているようだ、これからの成長が楽しみだな

 

「ふむ、とりあえず面接はこれで終わりかの?」

 

「ああ、一応これで全部になるね」

 

「ならばワシからカイトに質問がある、お主が模擬戦で見せたあれは何じゃ、お主のステイタスの紙を見たがあのような能力があるとは書いておらんかったぞ」

 

どういうことだ、カイトが明記されていない能力でも使ったというのか

 

「ああ、それか、えっとロキ・・・様?」

 

「ロキでええよー」

 

「じゃあロキ、ちょっと俺のステイタス更新してみてくれないか」

 

何事もなく面接が終わったはずなのだが、どうやらまだ何かあるようだ

 

そう思ってカイトのステイタス更新を見守っていると

 

「・・・オーマイゴッド!!」

 

ロキが突然叫んだ

 

いや、女神のロキがオーマイゴッドて大丈夫かこいつは・・・いや大丈夫な奴ではなかったな。

 

 

 

《side out:リヴェリア》

 

 

 

 

======================================

 

 

 

 

《side:ロキ》

 

 

うーむ、フィンが適時質問していく内容には嘘偽りがなかったんやけど、どーもまだ何か話してないことがあるような感じがする

 

まぁ、自分の子供に隠し事全部話せなんていう無理矢理な感じは好かんし、隠し事の1つや2つくらい誰にでもあるやろうからええか

 

 

そんな風に思いつつこれからのことにも考えていたら、カイトがステイタスを更新して欲しい言うてきた、よぉ考えんでもLv.1がLv.6との模擬戦で、しかもLv.6のガレスに負傷させる程の戦闘となればダンジョンの上層なんかで得られる経験値なんかよりはるかに多いはずやんな

 

そう思ってカイトのステイタスを更新してみたら――――

 

ナニコレ

 

いつもの口調が変わるくらいおかしいことがカイトに起きとった

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

カイト・クラネル Lv.1

 

 力:I 0 ⇒ H 102

耐久:I 0 ⇒ H 180

器用:I 0 ⇒ I 80

俊敏:I 0 ⇒ I 98

魔力:I 0 ⇒ H 110

 

アビリティ

 

【   】

 

 

魔法

 

【   】

 

 

スキル

 

【念能力】

 

・魔力を身体能力へ能動的に上乗せできる、熟練度次第で効果は倍増する。

 

 

ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】※念能力のチェインスキル

 

・ルーレットの数字に対応した武器・スキルを一時的に具現化・習得する。

 

・出現した武器・スキルは最低一度以上使用しなければ消すことができない、ただし出た目の数字×100のステイタス値を生け贄に捧げることでキャンセルが可能

 

 

英雄達の星の下(アーカーシャ)】※ジャンプの海賊印のチェインスキル

 

・架空・実在を問わず本人が知る様々な武器・スキルを発現できる。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ええええええええええええええええ!?

 

ステイタス上昇値がトータル570!?

 

いや、それはギリギリ納得するっ!

 

さっきも言ったけどLv.1がLv.6に傷を負わせるってのはそれくらいの偉業や、それを踏まえてもこの上り方は凄まじいの一言に尽きる

 

けどそれ以上になんやねんこのスキルは!?

 

新たなスキルが発現しとる!

 

しかも二つも同時に!!

 

なんやねんチェインスキルって!?

 

っていうか三つ目のこのスキルヤバすぎるで!?

 

まじかこくsdsfl;あどいあsdfjk:あsdpfk

 

 

 

______________間。

 

 

 

 

 

・・・ハァハァハァ、うちがここまで混乱するなんて中々ないで?

 

 

とりあえず、うちの見たステイタスの写しを他の三人にも見せるとガレスは大笑い、リヴェリアは驚愕、フィンに至ってはいつも被っとる仮面が剥がれて昔みたいな好戦的な笑みを見せとる

 

 

三者三様の反応を見てようやく落ちついてきたわ、あれやな、自分以上の反応を見ると逆に落ち着くな

 

それと、ようやく冷静になってきたおかげで腑に落ちない点がいくつか浮かび上がってきた

 

まず、一つ目がカイトがスキル【念能力】を使ってガレスとやり合えたというのがそもそもおかしい、スキルの内容には確かに習熟度によって効率が上がるとは書いてはある、でもカイトがこのスキルを発現させたのは昨日のはずや、それなのにスキルを使いこなしてガレスとやり合えたということ

 

二つ目はガレスの話の内容から推測するにカイトがステイタスの更新無しで新たなスキルを使用できたと言うことや、基本的にスキルや魔法はうちら神々がステイタスの更新をして子供達の中にある実現できる可能性を引っ張り上げることで発動できるようになる、なのにカイトはそれをすっ飛ばして新たなスキルを使用した、はっきし言って前代未聞、うちら神々の地上での存在意義が疑われるで

 

そして三つ目がこの【英雄達の星の下(アーカーシャ)】というスキルや、スキルちゅーのは魔法と違うて、本人の心の奥底にある願望や、自身でも知らない本質が現われる、新たに現れた二つ目の【ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】はガレスと闘ってるときに何かを犠牲にしてでもどうしても勝ちたいとでも思ったんやろ、たしかに強力やけどその分の失敗したときのデメリットとしてステイタスを最低でも100も犠牲にせなんあかん、このスキルだけでも十分凶悪なのに三つ目のこのスキルは更にヤバイ、【英雄達の星の下(アーカーシャ)】というスキル、これの名は別名「根源の渦」「宇宙の記録層」「アカシックレコード」と呼ばれる神の力(アルカナム)すら超える存在のことを指す、この存在を知るのは神だけの筈や、もしかしたらどこぞの神が子供たちに教えた可能性もあるから-------ああああもう面倒臭いことになりそうやでぇ・・・ともかく、この三つ目のスキルはカイト自身以外からの加護か何かで発現した可能性があるっちゅーこっちゃ!

 

 

色々な可能性と考えなあかんことが次々に浮かんでくるけど、とりあえずカイトに三つ目のスキル以外の質問をすることにした

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

質問の答えを聞いてから、うちの自制心に我慢の限界がきた

 

カイトが部屋を出て行った後で笑いが止まらんかった

 

オモシロい!面白すぎる!!

 

まさか本当の()()()()()()、その卵とも言える存在がうちのファミリアに入ってきた

 

ああ、間違いない間違いない ま ち が い な い!!

 

くるでくるで()()()()()が!

 

そしてその中心足り得るであろう存在がうちの所に転がり込んできた!!

 

なんやこれは!なんやこの楽しい世界は!?

 

アハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハ

 

 

 

 

 

――――――ああ、下界に降りてきて本当によかった。

 

 

《side out:ロキ》

 

 

 

 

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09:面接×異常

ロキにステイタスを更新してもらったら予想通りに新たなスキルがステイタス紙に記載されていた

 

だが、やはり自分の知るカイトの本来の能力である【気狂いピエロ(クレイジースロット)】とはかなり違う能力になっていた

 

自分の元ネタであるカイトの【気狂いピエロ(クレイジースロット)】は1~9までしか数字がなく、しかも武器のみを具現化させるものだったはずだ、なのに俺のは武器を具現するだけでなくスキル、おそらく何かの能力まで使えるという、上位互換みたいな能力になっていた、ただしその分のデメリットもキッツい、今回500以上ステイタスが上昇しているが、もし6以上の数字をキャンセルしたらマイナスになる、そしてこれは本能のような直感だがおそらく0を割ってマイナスになった場合・・・・・・・死ぬ

 

ヤバいなこの能力、発現させても扱いきれないような能力がきたらキャンセルするしかない、そんなことが続けば破産してリアルゲームオーバーだ、今後この能力は気軽に使わないようにしよう

 

そして完全に予想外の能力が三つ目の【英雄達の星の下(アーカーシャ)】というスキルだ、おそらくだが【気狂いピエロ(クレイジースロット)】が亜種みたいな異常変化を起こして【ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】なんてものになったのは間違いなくこのスキルのせいだ、そうでなければ何が悲しくてあんなかわいそうな卵を無から生成せにゃならんのだ

 

たしかアーカーシャって世界の意思とかそんな感じじゃなかったけ?

 

昔何かの漫画かアニメでちらりとそんな単語が出てきたような気がする

 

まぁ細けぇことはどうでもいいや

 

とりあえず【ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】はよっぽどステイタスに余裕があってピンチにならない限りは使用しない方向で頑張っていこう

 

そう考えると今回の模擬戦でいきなり使用したのはかなり危なかったかもしれない、もし扱いきれない能力や武器が出てきたら自滅して死んでいた可能性もある、むしろ数字も少なく扱いやすい・・・もの?が出てきてラッキーだったかもしれないな・・・まさかあんなかわいそうな物体に感謝する日がこようとは。

 

色々と考え事をしているとロキが質問をしてきた、面接が終わった後の質問なので気張らずにあっけら感と答えられるので楽でいいな

 

「カイトはガレスとやり合った際に、スキルを使用したんは間違いないか?」

 

当然だ、むしろ念能力無しでこの化け物みたいなおっさんとどうやってやり合えというのか、というか全開で向かって返り討ちに遭いましたが何か?

 

「いや、そもそもそれがおかしいねん、何で昨日発現したばかりのスキルを使用できるだけじゃなくて使いこなしとんねん」

 

は?

 

いや確かに【ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】や【英雄達の星の下(アーカーシャ)】は発現したばかりだけど念能力は最近じゃなくて6年前に自力で目覚めてましたけど何か?

 

村でのことなどを掻い摘まんで説明する

 

「はぁ!?スキルを自力で発現させたやて!?」

 

ロキだけでなく幹部3人の視線が厳しいものに変わる

 

・・・え、なんかマズった?

 

「それ、ホンマか?」

 

誓って本当なんだけど

 

「・・・マジみたいやな」

 

信じるの早すぎないか?

 

あ、そうか人は神に嘘がつけないんだっけか、最強の嘘発見器だな

 

そう思っているとあまり発言のなかった副団長のリヴェリアが信じられないといった風にしてロキに問いただす

 

「ロキよ、そんなことがありえるのか? 魔法種族が弱くとも恩恵なしで魔法を使用できるのは割と有名な話だが、ヒューマンが自力でスキルに目覚めたなどとエルフの国の書物ですら見たことも聞いたこともないぞ」

 

「・・・かなり前の話になるけど前例は確かにあるで、ホンッットにかなり昔の話になるんやけどな」

 

なんだ前例がいるんじゃん、でもこの3人が知らない位って事はかなり珍しいんだろうな

 

「ハァ~~~~、とりあえずカイトは先に部屋に行って・・・ってそういやカイトの部屋どこになったんやっけ」

 

「カイトならラウルと同室にしといたぞ、あやつは儂との模擬戦の審判役もやっとたから無用な諍いもないと思ってな」

 

ああ、あの地味な少年か、少ししか言葉を交わしてないけど善良であるとわかる少年だった、歳の離れたおっさんとかより100倍ましだ。

 

「ラウルならまだ庭で訓練中のはずじゃから部屋に案内してもらえ、ここから庭までの道はわかるか?」

 

それはさすがにわかる・・・と思う。

 

「じゃあ、皆へのカイトのお披露目は夕食のときに僕の方から行うとしよう、食堂へはラウルと一緒に来ると良い、初めての人は高確率で迷っちゃうからね」

 

りょーかいです団長閣下

 

「フィンでいいよ」

 

了解フィン

 

「変な語尾みたいになってるぞ、ついでに私もリヴェリアでかまわない、これからよろしくなカイト」

 

了解、リヴェリア

 

「ちなみに儂は―――」

 

おっさんはおっさんでよろしく

 

「おい、儂だけ扱いがおかしくないか!?」

 

今更、呼び方変えるのも変だからいいじゃん

 

あ、そうだ夕食時に紹介されるときに関してお願いがあるんだけどいいかな?

 

 

 

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《side:ガレス》

 

カイトが出て行った後、それぞれが色々な意味を含んだため息をつく

 

「・・・それにしても、自分のファミリーネームは秘密にして欲しいとは珍しい頼みをする奴じゃな」

 

カイトが部屋を退室する前に妙なことを頼んできた、普通はそんなことはせん、むしろ家族がおるならその名声が届くことを誇りにするものだ

 

「今のオラリオの現状を考えれば、闇派閥の手が家族に届く可能性を少しでも減らすためだろう」

 

むぅ、なるほどの、確かに奴らなら団員の家族を人質にとって何かをさせるくらいのことはやりかねんな

 

「それにしても、去年はアイズ、今年はカイトか、もしかしたら来年はもっとすごい新人が入ってくるかもしれないね」

 

「アイズだけでも手を焼かされているのだぞ? これ以上は勘弁してくれ」

 

最近は大分マシになったとはいえ、まだまだやんちゃなアイズに手を焼いているリヴェリエは疲労をにじませる様な顔でぼやく

 

「大変じゃのう、ママ?」

 

基本的にアイズの面倒はリヴェリアが主に見ておる、儂も偶に面倒は見るが精々ダンジョンでの御守くらいじゃ

 

「誰がママだ!私はまだ未婚だ!!」

 

お決まりの様な口論だ、此奴はこう言われるのが気にいらんらしい、面白いから最近はこれでおちょくることが多い

 

「はいはい、ミニコントはいいから話を戻そう、カイトに関してはガレスが面倒を見てくれるんだろう? それにカイトはあまり手が掛かるようには思えないから楽だと思うよ」

 

確かに、あ奴はあまり手が掛かりそうではないな、まぁそれでも当分はリヴェリアによるダンジョンに関する勉強会が待っとるから何かしら根を上げそうだが・・・ん?

 

ロキが顔を押さえるようにして突っ立ておった、まるで何かを堪えるように震えておる

 

ロキの異常に気付いた2人も声を掛ける

 

「・・・ロキ?」

 

一向に反応しないロキを訝かしんでリヴェリアが近づいた瞬間

 

「アッハハハッハハハハハハッハッハハハッハキャハハハハッハハハハハハハハイヒヒヒヒヒヒヒヒヒクハハハハイッヒヒヒヒヒヒヒイヒヒヒヒヒイヒイイヒヒイイイイクククククククククク・・・・・・・やったあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああやったでええええええええええええうちやぁ!うちの子やああああああうちが手に入れたんや!!あははははっははははははははははははははははははげっほげっほ、あかん気管に入ってもうた!?げっほひょひょひょひょひょひょひょひょひょ」

 

な、なんじゃ!?

 

ロキが普段は決して漏らすことはない神としての神威が狂笑とともに溢れ出してきた

 

「ロキ!!正気に戻れ!!おい!!!」

 

一番近くに居たリヴェリアが狂ったように笑い続けるロキの肩を揺らしてようやく笑いと神威が止まる

 

「ってスマンスマン、自分ちょっと正気を見失ってもーた、でもなクククク、あーあかんわこれまだ感情のコントロールがおかしゅうなりそうやクケケ」

 

ロキの奴いったいどうしたんじゃ

 

「・・・カイトが自力でスキルに目覚めたのはそこまでのものなのかい、ロキ?」

 

フィンはこの状況でも落ちついとるのう、もうちょいあせらんかい

 

「ああ、そやで、こんな奇妙奇天烈なことが連続で起きてもうて思わず神威お漏らししてもうたわ、キャ、恥ずかしいわー」

 

ようやく普段のロキに戻ったように感じるが、見開かれた目と口が笑みの形から戻っておらん、カイトが自力でスキルに目覚めたというのはワシも聞いたときは信じられなかったがロキ自身が前例があると言うたはずじゃ、前例があると言ったのはお主じゃろうに何をそんなに興奮しておるんじゃ?

 

「ガレス、確かにロキは前例があると言ったがそれは随分前の話だと言っていたはずだ、寿命に関しては超越存在のこいつがそうとう昔と言っていたのだぞ? 少なくともここ数百年のエルフや一般の書物でそんな記述は見たことがない」

 

それを聞いたロキがまた笑い出す

 

「リヴェリア大丈夫かーボケるにはまだ早いで? ここにいる全員がその前例を知っとるはずやでぇ」

 

ケッケッケと、さも面白おかしそうに笑うロキ

 

・・・どういうことじゃワシも知っとるじゃと?

 

フィンもリヴェリアも思い当たる節が無いのか眉を潜めている

 

「灯台元暗しって奴やなー、ヒントは『子供の頃』や!」

 

子供の頃?

 

わからん、考えるのは苦手じゃ・・・こういうのはフィンやリヴェリアにお任せじゃな

 

「子供・・・前例・・・遊び・・・読み・・ん?」

 

む、フィンは気付いたのか?

 

「ロキ、質問だけどその前例ってもしかして千年以上前のことだったりするかい?」

 

千年以上前・・・暗黒期の話じゃと?そんな馬鹿な!?

 

「なんやもう気付いたんか-、早すぎておもろないで、そっちの2人はギブアップかー?」

 

「・・・・・・・ああ、お手上げだ」

 

儂は元からあまり考えとらんかったぞ

 

「「「・・・・・・」」」

 

「アホはほっといて、とりあえずカイトがスキルを自力で発現させたことの何が問題なのか聞かせてくれ」

 

誰がアホじゃ!!

 

「ままま、ガレスも落ち着きぃな、・・・つまりやな、今まで自力でスキルに目覚めた存在っちゅーのはスバリ【英雄】や!! みーんながよぉ知っとって、子供が大好きな御伽話、そしてうちら神々が認めた実在の英雄達の話『ダンジョン・オラトリア』!! そこに出てくる英雄達のほぼ全てがうちらが降りてくる前に自力で何らかの力に目覚めとる」

 

なんと、ではカイトはそんな者達と同じだと?

 

「間違いないでぇ、うちの勘もビンビンに訴えまくっとる、それにそう考えるとカイトがうちのステイタスの更新無しで新たなスキルを使用できた理由もわかるんよ」

 

なるほど、元から自力で使えたスキルの派生の能力なら更新無しで使えるのも納得できるな

 

「つまり、カイトは英雄足り得る存在である・・・ということか」

 

「これからでどうなるかはわからんけど、うちらの育て方次第でとびきりの第一級になるで、間違いなく」

 

ふむ、聞けば聞くほど育て甲斐があるのう

 

「ガレスに教育係を譲ったのはもったいなかったかな?」

 

「なに、別に教育係だからといって四六時中尽きっきりではないのだ、私達からも何かしら教えてやればいい、アイズと同じ要領でいけば問題ないだろう」

 

「まぁ、当分はそんな感じでいこか、あと勿論このことはここに居るメンバー以外他言無用や、カイトにもスキルを自力で使えるようになったこともしゃべらんように上手く説明したってや」

 

むぅ、めんどくさいがロキの様子からしても間違いなくカイトは神々の格好の玩具にしか見えぬであろうな

 

食後にでも事情を説明してスキルのことを口外せぬように伝えておくか

 

この後はロキを含めた4人で新人とカイトの訓練のスケジュールについて話し合い一旦解散となった。

 

 

 

 

《side out:ガレス》

 

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冒険者開始!
10:歓迎×一歩


「まじでガレスさんに勝ったのか、すげーなお前!?」

「マジもマジっすよ、審判をしてた自分が証人っす」

「こんなちっこいのにねぇ?」

「アタシも見てたけどすごかったよ~?」

「試合に勝って勝負に負けたといった感じだったがな」

「お前さん酒は飲めるか?」

「おい、この子にはまだ早い」

「俺とも闘ろうぜ!!」

「いや俺が先だ!」

「いいや、俺だね!」

「「「どーぞどーぞ」」」

「・・・あれ~?」

 

 

飯を食いつつファミリアの先輩方にもみくちゃにされる俺

 

や、やかましい、飯を食わせって、おいやめろ酒をコップにつぐな、俺は未成年だぞ!?

 

ガレスのおっさんとは別のドワーフが酒を並々と注ぎ、それをエルフが止めようとするよりも先に酒が注がれ、されるがままに先輩に肩を組まされ、コントに巻き込まれる

 

うう、歓迎されないよりはいいが歓迎されすぎも困るものとは知らんかった・・・

 

 

 

 

現在は夕食時、ラウルに部屋を案内してもらい荷物整理をしている間に飯の時間になったのでラウルと共に食堂へ

 

食事前に団長であるフィンに紹介されたのはいいが、その際に俺がおっさんに試合で勝ったということを面白おかしく伝えた

 

そのせいでこの惨状である。

 

だが、俺がこの惨状に辟易していると先輩が気になることを言ってきた

 

「それにしても重傷を負うくらいの模擬戦をしたなら『高位の経験値(エクセリア)』が結構貯まったんじゃないか?」

 

あまり聞きなれない単語が耳に入った、アスフィからも聞いたことがない言葉だ

 

「高位の経験値?・・・普通の経験値とはちがうのか?」

 

俺がそう疑問の声を出すと、先輩はヤッベとでもいうかの様な表情になった、周りも、あのバカ、とでも言うかの様な雰囲気になっている

 

え、何この空気、俺なにか変な質問でもしたのか?

 

「高位の経験値とはランクアップに必要な、通常とは異なる経験値のことだ」

 

俺の疑問に対する声が後ろから返ってきた

 

「リヴェリア様!?」

 

周りのエルフが跪こうと席を立とうとするがそれをリヴェリアが手で制す

 

「楽にしていろ、別にもう教えてもかまわんさ、隠すことでアイズの様な二の舞はゴメンなのでな」

 

「それは・・・ですが、大丈夫でしょうか」

 

「ああ、この子はそこまで聞き分けのない奴ではない・・・おそらくだがな、少し隣を失礼するぞ」

 

「あ、じゃ、じゃあ俺がどきますね!」

 

肩を組んでいた先輩が顔を真っ赤にして恥ずかしそうにそさくさと去って行く

 

先輩ウブすぎるだろ、いや確かにリヴェリアは俺から見てもとんでもなく美人ではあるけどさ

 

だが、アスフィがいる俺にはあまり気にならない・・・フッこれが彼女持ちの余裕という奴か

 

 

・・・それにしてもアイズの二の舞ってのはどういうことだ?

 

「アイズに何かあったのか?」

 

「ああ、実は少し前にあの子がやらかしてな・・・」

 

リヴェリアからの説明によると冒険者が強くなる手っ取り早い方法はランクアップすることなのだが、それには通常の経験値とは異なる、自分よりも強いモンスターや人を打倒することでしか手に入らない特別な経験値が必要になるらしい、それを偉業といい、それを数多く、もしくは質の高い偉業を達成することでランクアップ可能になるらしい

 

それをアイズには隠してこの一年間、冒険者としての経験を積ませていたらしいが、中々上がらないレベルにアイズは大分イライラしていたらしい、どこかから聞き出したランクアップの条件を知って、さらにその条件を隠していたフィン達に激怒、危険なダンジョンアタックで死にかける目にあったらしい

 

なるほどなー、ランクアップって大変なんだな、きっとアスフィも実は相当な苦労を・・・いや、ちょっと待て

 

「え、じゃあもしかしてランクアップって今日の模擬戦みたいなことを何回もしなきゃいけないってことか!?」

 

命がいくつあっても足らんわそんなの!

 

「安心しろ、通常は十分に経験値を積んだ後に複数人のパーティを組んで、強者を打倒し高位の経験値を貯めるものなのだ、もちろんランクアップできなくとも通常の経験値も貯まるのでランクアップするための偉業が貯まるまでアビリティを上げつつ、それを繰り返すことでレベルを上げることになる」

 

それを聞いてホッとする

 

「よ、よかった、さすがに今日みたいなことを何回もやるのはキツい」

 

「重ね重ね、あの馬鹿がすまんな」

 

本当に申し訳なさそうな顔をしてこちらに言ってくる、別にリヴェリアのせいじゃなかろうに、なんかこっちが悪いような気がしてくる

 

「いやいやいや、でもおかげで新しいスキルが生えたからどっちかというと得した感じだから!!」

 

「そう言ってもらえると助かる」

 

「そ、そういえば俺ってば明日からどうすればいいんだ?そこら辺を全く聞いていないんだけど」

 

何か変な空気になったので無理矢理話題を変えてみる

 

「うむ、さっきこちらに来たのは実はそれを伝えるためにきたのだ」

 

随分と話は脱線してしまったがな、と苦笑するリヴェリア

 

「とりあえずカイトは明日の朝食が終わったら、フィンと一緒にギルドに行って冒険者としての登録をしてもらう、なに、簡単な書類手続きだ、一時間もかからんさ」

 

なるほどなるほど冒険者ってのはギルドのバックアップがあって初めて十全に活動できる、そのためにもギルドへの冒険者としての登録は必須であるとバイト中に仕入れた情報やアスフィから聞いた話で知ってはいるのだが・・・

 

「わざわざ、団長のフィンが付いてくるのか?」

 

「ちょうどギルドに用があるそうなのでそのついでだな、私もガレスも別でやることがある」

 

「な~る」

 

「登録が終わったら軽く二時間ほどダンジョンに潜ってみろ」

 

「え、いいの?」

 

普通はダンジョンに関する知識とかを得てから潜るんじゃないの?

 

「ああ、フィンが一緒なら上層ではよほどのイレギュラーが起こっても問題ない、要はダンジョンのお試し体験みたいなものだな、百聞は一見にしかずという奴だ、ただし二時間だけだ、それと帰ってきたらダンジョンに関する勉強会に参加してもらう」

 

あ、やっぱそういうのあるのね

 

「それと明後日からは午前中はガレスや他の者との訓練、午後からは私の座学に参加してもらう」

 

「あれ、ダンジョンは?」

 

「明日はお試しだと言っただろう、明日を除けばしばらくは探索無しで訓練と座学漬けだ」

 

まぁ、仕方ないか安全第一だしな

 

「了解だ」

 

「・・・・・・・」

 

納得しているとリヴェリアがこっちをじーっと見てきた

 

「な、なに?」

 

「いや・・・聞き分けが良すぎて本当に分かっているのか不安になってな」

 

「安全第一って大切じゃん」

 

ダンジョン探索ってのは命がけだ、焦って命を粗末に扱うわけにはいかない

 

俺が今、命を掛けるのはアスフィとベルとじいちゃんのためだ、そのためにも簡単に死んでなどやるものか

 

「最初ここに入ったばかりの者はそれが理解できず不満を言う者が多いのだ、特にアイズなんかは他の者達よりもさらにひどくてな、登録初日から―――――」

 

その後リヴェリアから日頃の愚痴をぶちまけられた

 

苦労人やねこの人

 

 

愚痴を聞き終わった後は仲良くなった他の団員とも軽く談笑し、ラウルと共に部屋に戻り床についた

 

床についてようやく体から力が抜けていくのわかった、やっぱかなり緊張していたみたいだな

 

真っ暗な天井を見ながらこれからのことについて思いを馳せる

 

色々あったけどようやくスタートラインに着けた

 

明日のダンジョン、そして訓練、座学、やることが一杯だがこれからの生活にワクワクが止まらない

 

暗闇の中で天井に向かって手を伸ばす、まだ何も見えはしない、それでもいつか夢を掴み取ってやる

 

そう意気込みつついつの間にか襲ってきた睡魔に身をゆだねて眠りについた。

 

 

 

 

――――――――――翌朝

 

 

朝食はパン派のおれはむしゃむしゃとパンにかぶりついていた

 

さすが大派閥のファミリアは食事から違いますわ~

 

贅沢にジャムを塗りたくれる環境、これだけでもここに入って良かったと思う

 

今まで朝食は具のないスープやクッソ硬い黒パンだったからな、白いパンとか久々に見たわ

 

俺の前には食パン一斤と肉の山、ポテトサラダに野菜の山、そして米!

 

米ですよ皆さん米!!

 

前世が日本人の俺からすれば久しぶりの米はいくらパン派といえど見逃すわけにはいかなかったのでこれまたてんこ盛り、そして最後に大皿にスープとフードファイター並みの食事量だ

 

贅沢を言うならここで味噌汁が欲しいがないものは仕方がない、米があるならきっと味噌もどこかで売っているはず、俺の食事当番のときに味噌汁を振舞ってそのままここのソウルフードにしてやろう

 

そうやってロキファミリア和食化計画などを考えている間にも俺の腹からでかい腹の虫の音が鳴り響いてきた

 

いつもはこんなには食べないのだが、なぜか今日は朝から激しくお腹の虫がハングリーと絶叫してきたのでこんな量になってしまった。

 

まぁ原因に心当たりがあるっちゃあるのだが確証がないので考えるだけ無駄だ、それよりもこの腹の虫を沈めることの方が急務である、

 

そして本日()()()のいただきますをして食事に集中した

 

ちなみに食事は団員が交代制で作るらしい、今のと同じ量を再度のおかわりにきた俺を先輩方が目を丸くして見ていたのが印象深かった

 

 

 

 

 

「・・・すげー食欲っすね」

 

俺の食事風景を見たラウルが胸焼けしそうな表情で言ってきた

 

「何言ってんだ、朝食は一日の行動の基本エネルギーなんだぞ、どれだけ朝食えたかで一日の行動量が決まるんだ、それに朝食った分はいくら食べても脂肪にもなりにくいって言うしな、逆に夜に多く食べて朝が小食だと太るんだよ」

 

まぁ今日みたいな量は例外だとは思うがな

 

「へー、カイトって結構博識っすね」

 

ラウルが感心している横で俺の話を聞いていたのか多くの女性団員がガタガタと動き出した

 

「おかわりお願い、夜の分まで溜め込むわ!!」「こっちもお願い!」「私も!」「くっ最近の腹の肉は夜のケーキが原因か」「それは当たり前でしょ」

 

 

「「・・・・・・」」

 

俺とラウルがその女性達の行動力にあきれる

 

「・・・何で女ってのはこの手の情報には敏感なんすかね」

 

「モグモグ・・・ンッグ、別に太ってるようには見えないのになぁ」

 

 

「いつまでも綺麗でいたいからじゃないかな?」

 

ラウルと女性の理解できない行動ついて話していると、トレイにパンやサラダにスープにソーセージとバランスの良いメニューを載せたフィンが隣に座ってきた

 

「だ、団長!?」

 

「おはようふぃん」

 

「うん、おはよう、でもまた僕の名前が語尾みたいになってるから言葉を切って発音してくれると嬉しいかな」

 

へーい、と返事をしつつ食事を再開する、しばらくお互い食事に集中していると

 

「・・・それにしてもすごい量だね」

 

呆れたような声でフィンが話しかけてきた

 

「それ、さっきラウルにも言われたよ」

 

「あはは、食べる量に反してカイトって全然太ってないからすごい違和感だよ」

 

「いつもはこんなに食べない、多分スキルのせい・・・かも」

 

今朝からの猛烈な空腹感にはそれしか心当たりが無い

 

「へぇ、あれって使うとお腹がすくのかい?」

 

「んー、昔から使いすぎると体の中からゴソッと何かが持っていかれる感覚はあるけど、昨日みたいに全力で使い続けたことってないからなー、空腹の原因だとは思うけど確証はできないって感じ、また全力で使う機会があったら確定できると思うけど、当分は勘弁して欲しいなぁ」

 

そんな風にフィンと何気ない会話をしていると隣でオロオロしていたラウルが我慢できないとでもいうように俺とフィンの会話に突っ込んできた

 

「っていうかカイトは何で団長と普通にため口で会話できるんすか!? しかもカイトがスキルを使えるとか聞いてないっすよ!?」

 

「あ、そういや言ってなかったか、俺のスキルは―――「ちょっと待った!」」

 

俺が自分のスキルを説明しようとしたら慌ててフィンが止めてきた

 

「カイト、君のスキルはおそらくレアスキルだ、同じ団員でもおいそれと吹聴していいものじゃない」

 

「ありゃ、そーなの?」

 

「レ、レアスキルッ!?」

 

フィン曰く何でもレアスキル持ちってのはそれだけで他派閥から個人的な勧誘だけじゃなく色々な意味で狙われるようになるらしい

 

特に今は闇派閥の勢力が幅を利かせているのでバレると冗談抜きで俺の身が危ないとのことだ

 

「あ、もしかしてギルドの登録にフィンが付いてくるのってそういう理由?」

 

「それももちろんあるけど、ギルドに用があるのも本当だよ、それとラウル、今聞いたことは他言無用だ、いいね?カイトもこのことは同じファミリアの団員であってもあまり教えないように」

 

「は、はいっす!!」

「あいよ~」

 

びしっと敬礼して返事をするラウルを横目に俺は軽く返事をしつつ食事を進める手を休めない

 

それから数分間は黙々と衰えない空腹感を満たすために一心不乱に食事に集中した

 

周りがドン引きしていたが気にせず吸引力の衰えないダイソンとなる

 

そのおかげもあってあれほどの空腹感が大分満たされた

 

あれからおかわりに3回行って合計5回もおかわりしてしまった

 

「ふぃ~、余は満足じゃ」

 

「こ、ここの食事には満足できたかい?」

 

さすがのフィンもこの食事量に少し引いていた

 

「満足も満足、大満足!これで今日も一日頑張れる!!」

 

「そ、そうかい、じゃあ準備が出来次第ギルドに向かおうか」

 

「おう!!・・・って準備? 準備って何すんの?」

 

よく考えたら俺ってば丸腰なんだけど、ゴブリン程度なら素手で倒す自信はあるけど装備ってどうすんだ

 

『武器は持ってるだけじゃ意味はないぞ、装備するのを忘れるな』ってのは有名な台詞だが、そもそも何も持ってねぇよ

 

「一応、倉庫に君の先輩方のお古の装備が大量にある、ギルドで新人に有料で渡す装備よりも格段にマシなはずだからそこから一式そろえようか」

 

「助かるわー」

 

さすが大派閥!至れり尽くせりだな!!

 

なんでも倉庫は地下にあるらしい、ってかここ地下なんてあんのかよ・・・。

 

 

食堂を出てからいくつかの通路を曲がり下に続く階段に到着、螺旋階段になっているそれを降りること三階分

 

途中には「書庫」と書かれた部屋もあった

 

フィンに聞いたら団員であればいつでも使っていいらしい、ただし持ち出す場合はロキか幹部、もしくは上位団員に許可をもらわないといけないらしい、暇潰しや見聞を広めるのに役に立ちそうなので今度利用させてもらおう

 

そんなことを考えていたらようやく着いた

 

螺旋階段の終わりがそのまま倉庫の入口になっていた

 

フィンが鍵らしきもので扉を開けてから入ると、あるわあるわ、樽に無造作に突っ込まれた剣や槍を初めとした武器の数々、武器だけでなく木箱から溢れるくらいに積まれた防具が所狭しと並んでいた。

 

 

「じゃあ、とりあえずカイトの戦闘スタイルは近接って聞いているけどそれで間違いないかな?・・・なければ近接を中心として装備を決めていこうか」

 

 

フィンから具体的にどんな装備がいいのか聞かれたので防御よりも回避を念頭に置いた軽装備がいいと言ったらパッパッと動きやすい皮装備を見繕ってくれた、これに加え念のために軽くて最低限の急所を守ってくれるライトプレートも選んでくれたのでそれを装備することにした

 

「武器はどういったもの使うんだい?」

 

「んー・・・これと言ったこだわりはないんだけど、ん?」

 

俺の目に付いたのは奇妙な籠手だった、肘の先から指先までを一つとしたような一体型の防具にも見えるが、よく見ると右は指先から指の付け根まで刃物が付いていて、付けたまま素手の相手と握手でもしようものなら相手の手をズタズタに引き裂けそうな機構になっている、一方左の方は指先だけが鋭利な爪のように尖っていて抜き手にすればそのままモンスターを貫けそうな形になっている

 

他にも色々と武器はあるのだが妙にこの武器?に目が行く

 

(こういうときは勘に従ってみるか)

 

「・・・これでいい」

 

「また珍しい装備を選んだね、・・・でもカイトがいいならそれで行こうか」

 

その後、篭手は常時装備するのは危ないので紐で腰にぶら下げてから倉庫を後にした

 

「それじゃあ、さっそくギルドに向かおうか!」

 

「おうよ!!」

 

 

 

 

 

オラリオに入ってから約一ヶ月、俺はようやく冒険者としてダンジョンに潜ることになった

 

 

 

 

――――――――道中

 

(初のダンジョンか~、何も起きずに無事に終えられるといいなー)

 

と、あえてフラグを立ててみる(笑)

 

いや、大丈夫大丈夫、フラグってのはあえて立てると叶わないものって言うし。

 

 

 

 

 

そう、今の俺はそんな風に軽く考えていた・・・・・・なんちゃって

 

 

 



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11:登録×冒険

劇場版かぁ・・・肩すかし食らいそうで恐いなぁ・・・


ロキ・ファミリアの拠点である『黄昏の館』はオラリオの北に建っている、そしてギルドの位置は北西、そのため最も早く行くには北のメインストリートと北西のメインストリートの間である第八区画を突っ切って行くのが近道になる。

 

「――――――ただし、遠征なんかで荷物が多い時は街の中心、バベルを経由してからギルドで換金を行うんだ」

 

「なーる、確かに大荷物を引いてこの狭い道を通るのは住民の迷惑だろうな」

 

雑談をしつつアスフィやヘルメス(アホ)から聞いたことの無い情報を頭の中で補完していく

 

大派閥だからこそのダンジョン豆知識を道中でフィンから聞くのはかなり楽しかった。

 

そんな風に色々と聞きつつ歩いていると北西のメインストリートに出た、しかもちょうど目の前がギルドだ

 

さすがはオラリオで長く生活しているだけはあるな、この街でまだ一ヶ月しか生活していない俺ではまだまだ道が未知でいっぱ・・・ゲフンゲフンいや、なんでもない

 

 

くだらないことを考えている間にも俺とフィンはどんどんギルドの中に入っていく

 

お上りさんよろしく、キョロキョロと辺りに目を配る

 

「カイト、こっちだ」

 

数ある受付の中でも目的の受付口でもあるのかそこに真っ直ぐに向かっていくフィンに大人しく付いていくと、赤髪のお姉さんが受付嬢の窓口に着いた

 

「やぁ、ローザ、ミッションの報告に来た、手続きを頼む」

 

「はいはいっと、相変わらず仕事が早くて助かるよ、そっちの子は?」

 

「うちの新人団員さ、この子の登録も一緒に頼むよ」

 

強気そうな受付嬢がこちらを見てくるので軽く頭を下げて挨拶とした

 

「・・・この前、団員を大勢補充したばかりのはずじゃなかったのかい」

 

「ロキの気まぐれって言えばわかってくれるかい?」

 

「はぁ、まーた神の気まぐれかい、苦労してるねあんたも」

 

「はは、君程じゃないさ」

 

「うっさい、ほらそっちの子はこの紙に必要事項を書いてちょうだい、その間にフィンは奥で部長に細かい報告をしてきな」

 

「はいはい、じゃあカイト、ちょっと行ってくるからその間に手続きをしといてくれ」

 

「了解だ、早く終わったらそこら辺で時間を潰しとく」

 

「そうしてくれ、じゃあローザ、カイトを少しの間頼むよ」

 

「わかったから、早く行きな」

 

シッシッと追い払うような仕草でローザと呼ばれた受付嬢がフィンを奥の部屋に送り込むが、そこには長年による見知った相手への気軽さを感じた

 

とりあえず、登録のための書類にざっと目を通してから自分の情報を書き込んでいく、フィンがいなくなった途端に会話が途切れて微妙な雰囲気なので空欄を埋めながらこちらを見ているローザさんに話しかけてみる

 

「フィ、・・・うちの団長とは付き合いが長いんですか?」

 

「・・・まぁね、私がここに就職してからすぐの付き合いになるからもう5年か6年の付き合いになるね」

 

「そりゃまた結構長い付き合いですねぇ」

 

「フフ、そうね、・・・こんなに長い付き合いはあいつらだけね、冒険者ってのはすぐにいなくなっちゃうけどずっといるのはあいつらくらいかな」

 

(そっか、受付嬢ってのは一番新人冒険者と顔を合わせる・・・必然的に死んでいった冒険者とも・・・)

 

少ししんみりしたが、その会話をきっかけにポンポンと言葉のキャッチボール、フィンやリヴェリアだけじゃなくガレスの昔の話も聞かせてくれた、以外な話として、ローザも人伝に聞いた話らしいが、あの3人はファミリア結成当初相当仲が悪く口喧嘩ばかりだったらしいとうことだ・・・信じられん、しかもフィンは今とは違いかなり生意気な性格だったとか・・・これは聞かなかったことにした方がいいな、いつもニコニコしている奴ほど切れたときの反動は怖いからな、あっそうだ、これ聞いといた方がいいか

 

「ここに書いた情報って後で変更は出来るんですか?」

 

「具体的には?」

 

「名前とか家族構成とか」

 

「無理じゃないよ、基本的に冒険者ってのは無数にいるからね、大雑把に言えば名前と所属ファミリアがわかっていれば問題ない、脛に傷を持った奴なんてめずらしくもないし」

 

「な~る・・・じゃあこれでいっかな」

 

名前を書き込む部分で家名だけを書かずに書類をローザさんに渡す

 

「・・・ふーん、じゃこれで受理するよ、おめでとうこれで正式にあんたはこの街の冒険者だ、後はフィンが戻ってくるまでそこ等辺で大人しくしてな・・・これから頑張りなよ」

 

最後に優しげな感じで叱咤されたので、へーい、と軽く返事をして広いロビーの中に数本立っている太い柱に背中を預けて目の前の人並みを視界に入れていく、バイトのときは忙しくて眺める暇なんてなかったけど、【凝】を使って見ると、見た目とまったく異なる冒険者の強さがわかって意外とおもしろい、ただやはりフィン達ほどのオーラを纏っている者はいなかった

 

それからボケッとしていると5分もしない内にフィンが奥から出てきた

 

「すまない、待たせちゃったかな?」

 

「いや、5分も待ってない」

 

「それじゃあ、これからダンジョンだ、準備は良いかい?」

 

「おっけー」

 

そんなわけでギルドを出る前に軽く装備の確認をしてから街の中央のバベルへ、そしてその下に広がるダンジョンへと向かった、バベルに入ると最初に巨大な螺旋階段そして東京ドームかよと勘違いする程の広いドーム状の空間に出た、そこから30人が手をつないで並んでも余裕がありそうなダンジョンへの本当の入り口が見えてきた

 

自分達以外に何人もの冒険者が出て行ったり今から入って行ったりしている

 

(おお~、なんかそれっぽい雰囲気あるなー)

 

地味に感動だ、向こうの世界では一生お目にかかれないような光景だからな

 

「カイト、今回僕は基本的に手を出すことはないから自分の判断で進んでみてくれ、幸い上層の浅い階層ならソロでもほとんど問題ないはずだ、まぁ、問題があったとしても僕がいるから最悪の事態は避けられると思って緊張しつつ適度にリラックスしてくれ」

 

「んな無茶な、何だよ緊張しつつリラックスって・・・」

 

「はは、まぁ、習うより慣れろってことだよ、じゃあ行って見よう!」

 

「・・・おー。」

 

 

そんなこんなでついに、というかようやくダンジョンに突入です。

 

 

 

 

 

======================================

 

 

 

 

 

《side:フィン》

 

 

(困ったなぁ・・・)

 

現在、フィンは小走りで、といっても一般人からすれば短距離走における全速力に近い速度でカイトと共にダンジョンを走っていた

 

カイトと共にダンジョンに潜ったのはいいが目の前で起きていることに頭を悩ませる

 

「ほいほいっと、そりゃ!~♪」

 

曲がり角から急に現れたゴブリンをカイトはまるで見えていたかの様に回避し、即座に反撃、しかも巧みなフットワークでモンスターの死角から鋭利な篭手による抜き手で魔石を直接抉り出すという容赦のない、しかし無駄のない動きでしとめている

 

 

現在の位置は2階層、本来なら1階層が限界のはずの新人団員はまるで熟練のLv.1冒険者のような立ち振る舞いでダンジョンを突き進んでいた

 

(普通はもうちょっと気後れしたりするんだけどなぁ・・・)

 

それどころかフィンは聞いてしまった、見てしまった、初めてなら誰でも緊張するはずのダンジョンでカイトは鼻歌をしながらまるで楽しむかの様に闘う光景を。

 

 

『異常』『規格外』

 

フィンの頭によぎるのはそういった言葉だ

 

昨年、初めてアイズがダンジョンに潜った際にリヴェリアがアイズの戦闘を見たときの気分がようやくわかった気がした、ただ違うとするなら―――

 

(カイトにはアイズと違って戦闘に対する不慣れや油断がない、しかもさっきは無理だなんて言いながらきちんと気を張りつつ適度にリラックスできている、というところだろうね、でも―――)

 

 

だからこそ困った、とそう思う。

 

今のカイトを他の新人団員と共に訓練に参加させていいものか思案する

 

明らかに他の新人団員との実力に差がありすぎる、はっきり言って入ったばかりのカイトの動きや実力を目の当たりにした他の団員がやる気や自信をなくしてしまう可能性がある

 

道中で話した限りではまだまだダンジョンに関する知識はそこら辺の一般人よりは詳しいものの、新人冒険者に毛が生えた程度だったため、座学は一緒でもかまわないだろう

 

二日、いや三日程度で訓練を切り上げさせてダンジョンに潜らせた方がいいかもしれないな・・・

 

他の新人は午前を訓練にしてその間にカイトは勉強、入れ違えるように午後は他の新人団員が勉強会、カイトはダンジョンに、いやでもそんなことをしたら他の団員との交流が――――――

 

 

「おーいフィーン」

 

思考の海に浸かっていたところにカイトから声がかかった

 

見ればカイトが3階層へと続く階段の前にいた

 

(しまったな、考え事に夢中になりすぎた)

 

フィンの実力からすれば上層の、しかも2階層など昼寝所か熟睡しながら突破出来る程度の階層ではあるが、新人であるカイトがこれ程早く進むとは計算外であった

 

(正直彼がどこまでいけるのかを見てみたいという気持ちもあるけど、初めてのダンジョンで3階層は早すぎる、ここは―――)

 

「フィン、今日はここまでで戻ってもいいか?」

 

自分が言う前にカイトから撤退を進言されたことに内心で少し焦るが、それをおくびにも出さすに返答する

 

「・・・まだ余裕があるように見えたけどいいのかい?」

 

「ああ、確かにまだ余裕はあるっちゃあるけど『まだ行ける』って思った時点でそれは危険サインだと思ってるんでな、それにこのあとお勉強会とやらもあるし勉強中に居眠りしてどやされるのは勘弁願いたい」

 

軽くおどけて見せるカイトは確かにまだ余裕があるように感じるが、それでも撤退を選択したカイトの判断に舌を巻く

 

(この年齢で、この実力にこの判断力か・・・末恐ろしい、いや・・・これからが頼もしいと思うべきだね)

 

「え・・・あれ、撤退だめなのか?」

 

無言の自分を勝手に勘違いしたカイトが慌て始める、先ほどまでの異常な姿とはかけ離れたその姿に苦笑を禁じえない

 

「ふふ・・・いやすまない、うん、かまわないよ、午後の勉強会で居眠りをされたら監督役だった僕までリヴェリアに怒られそうだしね」

 

「うわ~、もしかしなくてもリヴェリアって勉強とかに対してスパルタだったりする?」

 

「まぁ、そこそこかな・・・ちなみにアイズは二日で逃げ出した」

 

「・・・マジでか」

 

そこからは軽く談笑しつつ元来た道を逆走することに、もちろん帰り道でもしっかりとモンスターと遭遇するのでカイトがそれを一掃、その光景を見つつ改めてこの鬼才とでも呼ぶべき子を見いだした己が主神の昨夜の取り乱し方に納得する

 

(Lv.1のそれも初期の状態でこの実力・・・ロキ、君が興奮する理由がよくわかったよ、でもこれなら僕が遠征で最前線に専念できる日も近いかもしれないね・・・ふふ、今から楽しみになってきたよ)

 

今ではオラリオでも屈指の大派閥となったロキ・ファミリア、団員も実力者が多くダンジョンの遠征も人数が増えたことで昔に比べ遥かに大規模となった、だがその弊害として団長であるフィンやリヴェリア、ガレスといった幹部は団員たちへの指揮が主な役割となり、昔のように前線に立つことは少なくなってしまった。

 

Lv.6に到達してから数年、もうそろそろ自身のためにも、そして何より一族再興のためにさらなる名誉を求めて前線に戻りたいと思い始めていた、そしてそんなことをふと思い始めた矢先に逸材とも呼べる人材が文字通り転がり込んできた

 

(アイズの実力は問題なくこれからも上っていくだろう、だが全体を見通せる指示を出せるようになるかと言われると、今の状態を見るに難しい、でもカイトなら・・・)

 

現時点でこれほどの視野と判断力を持っているのなら、幹部、もしくは自分の後釜として育成するのはありだ

 

(この子は稀有な人材だ、逃さないように多少の事は多めに見るつもりで接していこう・・・そしてゆくゆくはすべて押し付けオッホンゲッフン・・・任せる。・・・ふふふロキ・ファミリアの未来は明るいなぁ)

 

心の中でケケケと笑う

 

カイトの知らない内に実は腹黒い勇者が真っ黒なそろばんを叩き始めていた

 

 

 

 

《side out:フィン》

 

======================================

 

 

コボルト2匹を悠々と相手をしている最中に一瞬寒気を感じたが特に何もなく討伐が終わったので気にしないことにした、というかそんなことがあまり気にならない程に今の俺はテンションが高かった

 

(神の恩恵という奴は最高だな!!)

 

昨日までの自分とは全く異なる程の身体能力には自分自身で驚きと興奮が隠しきれない、おっさんに殺されかけたのは最悪だったが、それに対する見返りはでかかった、身体能力が上がっただけではなく、あれ程制御が難しかったオーラの部位量制御を行う【流】が少し楽になっているということに加えてオーラを自身から円形状に展開しその中での全ての動きを知覚することが出来る【円】というチート級の技が使えるようになっていた、まぁ使えると言っても半径4mが限界だったけど・・・ノブナガさんちょりーっすwww!!

 

だがそれでも上層のモンスターを相手にするには十分すぎたようで俺TUEEEEEEEE!といった状態だ

 

そんな精神状態なので先程自分から撤退を進言させてもらった、命の取り合いでは調子に乗った者から死んでいくとどっかの偉い人も言っていた気がするし

 

その後は何事もなく無事にダンジョンから地上に帰還

 

ギルドで魔石を換金して3000ヴァリスを受け取り、初の冒険者としての稼ぎを喜びつつ本拠に戻った、ちなみにじゃが丸くんの屋台でのバイト代は日給平均600ヴァリスなので一気に所得が5倍になったことになる、やったぜ!

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

本拠に戻ったあとは食堂で昼飯を済ませてから軽く休憩を取った

 

そして今は他の団員と共にお勉強中である。

 

他の団員やラウルもウンウンと唸りながらやっているが、受験戦争体験者にとってこの程度は特に苦にならない

 

パッパッと要点や重要な所を押さえてから細かい所は関連付けで覚えていく

 

暗記系というのはいかに覚えるかではなく、いかに自分に思い出させるかが勉強のコツなのだ

 

 

「・・・リヴェリアこれで全部できたと思う」

 

「ふむ、では採点をするので少し待て」

 

本日の勉強会最後の締めである確認テスト、一番に解き終えたので先生役のリヴェリアに採点をしてもらう

 

「・・・どう?」

 

「・・・ふむ・・・むぅ・・・合格だ」

 

「いや、なんで面白くなさそうに言うんだよ」

 

「間違えすぎるのも腹が立つが、余裕綽々で一発合格されるのもテストを作った者としては面白くないものでな」

 

「副団長すげぇめんどくせぇ!」

 

そんな風に話しているとテストを解き終わった他の団員がチラホラとリヴェリアに採点を頼みに来た、採点の邪魔をしては悪いので机に戻って今日教えてもらったことを軽く復習しているとラウルが肩を落として採点から帰ってきた

 

「どうだった―――・・・てのは聞くまでもないみたいだな」

 

「うぅ、夕食の後に再試験って言われたっす」

 

どうやら不合格者は再試験らしい、おそらく合格するまで続くんだろうなぁ・・・

 

「はぁ、カイトは一発で合格だったすけど何かコツとかあるんすか?」

 

「んー・・・まぁコツかどうか分からんが覚えたことをどういう風にすれば思い出しやすいのか自分で色々試してみるのがいいと思うぞ?」

 

この後ラウルに効率の良い勉強方法を教えつつ勉強を見てやったらあれよあれよと他の団員にまで教えを請われてしまった

 

め、めんどくせぇ・・そう思っていたらリヴェリアに人手が足らんのでこれからも確認テストに合格した後は手伝えと言われてしまった

 

あれ~俺ってば入団したばかりのヒヨコちゃんなのに何で先輩方の勉強も見ることになってんだ・・・解せぬ、その後、結局夕食の後も勉強会に付き合わされた

 

この日、新人団員ですらこき使う現状に俺の中でロキファミリア、ブラックファミリア説が浮上したのは仕方がないと思うわけだよ、うん。

 

まぁ、他の団員との交流がてらに教えてやるとしますか!

 

 

 

 



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12:思惑×日々

孔明チャレンジ!!レインボーからのオリオーーーーン!!WRYYYYYYYYYYYYYYY!!
・・・チクショウ


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《side:ロキ》

 

今は夕食が終わり、それぞれの団員がゆったりと過ごす時間帯

 

うちの部屋にはフィンとリヴェリアとガレスの幹部メンバーが集合しとる

 

ただしその内のフィンとリヴェリアだけが頭を抱え、うちとガレスだけは笑いを堪えるのに必死やった

 

「いやー、それにしてもカイトは予想の斜め上に突っ走るなぁ?」

 

「ガッハッハッハッハ!当たり前じゃ儂が認めた男じゃぞ!それぐらいわけもないわい!!」

 

今、フィンとリヴェリアが頭を抱えとる理由はカイトが何か問題を起こしたからやない

 

むしろその逆、何も問題がなさすぎる、端的に言って()()()()()ということが問題になってもうた

 

 

 最初のフィンからの報告では既に上級レベルでの探索が可能な実力に加え、自分の実力に驕らず油断もせずさらに余裕のあるうちに撤退を選択できるほどの判断力まであるとのことや、それを見てフィンは早急にカイトの訓練の質を上げて、ダンジョンに潜らせた方が本人のためにも良いということやった、将来的には最低でも幹部、できれば自分の後釜に納まって欲しいほどの人材らしい、カイトの訓練の質やダンジョン探索を積極的に行うというのにも驚いたのに最後の自分の後釜候補発言にはうちら全員の動きが固まってもうた

 

そんなフィンの報告の後にカイトに勉強を教えたというリヴェリアからの報告では、驚く程に知識の覚えが良く、また面倒くさいと言いつつも他の者に勉強を教えるくらいには面倒見が良いとのことや、カイトより先に勉強会に参加してた子たちですらカイトに教えてもらっているくらいには優秀とのことや、そんなカイトを見て今度はリヴェリアが自分の補佐として育てたいと言ってきた

 

これに対して教育係の主導を任されたガレスが何か言うかと思たら、戦闘面を自分が育てられれば他は別にかまわないと言ってきてるので現在ファミリアの団長と副団長が武をメインにするか文をメインにするか、それとも欲張ってどっちも英才教育するかで悩んでるっちゅー状況や

 

文武両道、天は二物を与えたっちゅー奴やな、チートここに極まれりや!

 

さてここで問題なのがカイトのこれからの育成方針についてや、カイトが才能に恵まれた子だとしてもあからさまな贔屓は他の団員との無用なトラブルを引き起こす、かといって他の団員と同じようにしてもせっかくの人材を腐らせるだけじゃなく、その才能を目の当たりにした他の団員のやる気を削ぐことになってまうかもしれん

 

あっちを立てればこっちが立たずな状況にうちらは頭を悩ませとる

 

どないしたもんかなーとうちらが頭を抱えとると

 

「・・・一応、儂には良い考えがあるぞ」

 

意外にもガレスから発言があった、ただ発言するときの顔がものすごく悪巧みをしているときのうちの顔とそっくりやったことからカイトに対しての意趣返し的な意味もあるんやろうなー、ただそれが良かろうと悪かろうとそのアイデアは確かにかなり無茶ではあるものの妙案とでも言うべきアイデアやった

 

他にも良い考えが思い浮かばないのでとりあえずしばらくはガレスのアイデアで行くことになった。

 

さーて、これが吉と出るか凶と出るか、神のみぞ・・・いや、神すらもわからんなぁ?

 

まぁ、カイトはここ数週間は地獄を見ることになるやろうけど頑張ってなー?

 

 

《side out:ロキ》

 

 

======================================

 

 

 

入団してから早くも四ヶ月が経った

 

そしてようやく気付く、ブラック・・・ではない、もはやこのファミリアはそれを超越したブラッド(鮮血)ファミリアだということに!!

 

なぜかって?

 

・・・それはね、

 

 

 

幹部の悪魔共がものすごい笑顔で俺に試練という名の拷問を仕掛けてくるんだよ!!

 

 

 

 

 

他の団員との訓練に加え俺にだけ人一倍、いやもうあれは10倍くらい厳しい、そんなおっさんとの訓練に加え、さらに勉強会で俺にだけ倍の量の課題を押しつけてくる海龍(リヴァイアサン)さんのように怖ろしいリヴェリア、そして笑いながら俺をモンスターの群れに突っ込ませる団長とか!!

 

 

逃げた

 

 

当たり前だろうが!!村での修行や生前含めてここまで働かされた記憶はねーよ!!

 

せっかく大手ファミリアに入れたのにもったいない?

 

ふざけんな!夢を叶える前に過労死するわ!

 

そんな生活が数ヶ月続くものだから、一度弱音を吐いてそれとなく退団すっぞ的なことを言ったら訓練と課題が倍になりフィンの笑いがより一層濃くなり威圧感増し増しで倍のモンスターの集団に突っ込まされた

 

そのうえ「おやぁ、カイト?君の婚約者を思う気持ちはその程度なんだねぇ(笑)」

 

といった感じでこちらを挑発してきやがる

 

騙されてはいけません奥さん、実は三十歳を超えたアラサーショタの腹は真っ黒でした

 

 

 

 

そんなわけで現在脱走中、時間は深夜の丑三つ時

 

コソコソと夜逃げのように逃げ出す、ほとぼりが冷めてから戻ってこよう、

 

あ、ちなみに先程俺は逃げると言ったが違う、そう、これは・・・一時的な撤退である!

 

十分な休息を取りしかるべきときにアイウィルビーバックするための対処療法なのだ!

 

(夢を叶える前に俺の身体が保たない・・幸いスマイルデビルな団長との無茶なダンジョンアタックのおかげ・・・とは言いたくないが資金は十分、これで――――)

 

 

「おやぁ? こんな夜更けにどこに行くつもりなのかな・・・カ イ ト?」

 

!!??

 

振り向けばどこぞのセーラー戦士の様に月をバックに屋根の上に立つ影

 

「げぇ、フィン!?」

 

驚く間もなく別の方向の屋根から声が掛かる

 

「まったく、子供は寝る時間だぞ・・・カ イ ト」

 

「リ、リヴェリアまで・・・いや、これはちょっと夜風に当たって散歩を」

 

 

さらにまたまた別の方向の屋根ry

 

「そんな大荷物を持ってかの?・・・カ イ ト ?」

 

「おっさん!?」

 

(ックソ!やっぱバレたか!!)

 

ここにきて俺の企みが三人にモロバレだったことに気付く、だが俺はそこであきらめたりはしない、即座に三人のいない方向に反転し自由への一時撤退を敢行する

 

「ぬおおおおおおおおおおおお!!」

 

走れ!!走るんだ俺!!

 

誰よりも早く光の速さで駆け抜けりゅんだあああああああああ

 

 

 

「「「逃がさん」」」

 

 

 

異様に目がギンギラギンの悪魔共がニヤリと笑いつつこちらに向かって跳んでくる

 

「くそがああああLv.1の新人にLv.6が三人がかりとか恥ずかしくねぇのかあんたらは!?」

 

おれの全力疾走もむなしくあっさりと地面に叩き付けるように拘束される

 

だがそれは予想済みだ!!

 

「ぬおおおおおおおおおお」

 

蛇の脱皮が如く、重ね着していた服を脱ぎ脱出!!

 

「甘いわ!すぐに捕らえうおお!?」

「おい!引っ張るな!?お前が引っ張るとこっちがぬわぁ!?」

 

ちなみに脱いだ服には強力接着剤を塗布して動きを封じるようにしてある

 

「ふははははははは、これぞ忍法”空蝉の術”じゃあ!!さらばブラックすぎる職場!そしてこんにちは自由!!」

「まだまだ甘いよ」

「なぬぅ!?」

 

どうやらフィンはお馬鹿なおっさんとリヴェリアとは違い引っ掛からなかったようだ

 

「だが、喰らえ!!コショウ弾!!」

「ははははは効かないなぁ、そりゃ!」

「う、打ち返すだtげっほげっほぎゃあああ」

 

それからこっちが次々と飛び道具を出すも全て交わされるか逆にこっちが喰らい、そんなことをしている間に復活した怒りと恥辱やその他もろもろの感情により鬼と海龍に覚醒したLv.6により俺は捕縛された・・・ちょっやめ、無理だから人間の関節はそっちに曲がらnカヒュ・・・・

 

 

 

 

======================================

 

 

《side:ラウル》

 

『ピギィィィイイイイイイイイイイイ』

 

屠殺される豚の様な悲鳴が聞こえてくるっす

 

現在自分は吹き抜け廊下からもはや8()()()になる脱走劇をボケッと見ていたっす、ちなみに一人ではなく自分以外にもギャラリーがチラホラ見えるっす、中には今回カイトが何分持つか賭け事を始める者もいたっすよ

 

「ふわぁ~ぁ・・・なんのさわぎよー・・・」

 

渡り廊下の入り口から同期で猫人(キャットピープル)のアキが眠そうにしながら来たっす

 

「あれっすよ、またカイトがさぼり脱走しでかしたんすよ」

 

「また~? これで何度目よ、いいかげんあきらめればいいのに・・・」

 

アキは呆れてるけど自分は仕方がないのではと思うんすよね

 

なにせカイトが入団してから数日して徐々にっすけどカイトに対しての訓練や教育が倍々で厳しくなって、今では自分を含めた他の団員もあまりのスパルタっぷりにドン引きしてるっす

 

ただすごいと思うのは団長達のスパルタっぷりだけじゃなく、それを全てギリギリでもクリアするカイトの負けず嫌いな所っす

 

イヤだイヤだと泣き言を言いつつも結局ボロボロになりながら団長達の訓練や課題を次々とこなしていく姿は自分たちも頑張らねばと奮起させてくるっすよ

 

ただ問題があるとすれば団長達が予想以上にカイトが無理難題をクリアしていくのを面白く感じてしまったのか、ただでさえ厳しい内容にさらにとんでもない訓練を最近は課すようになり、そしてそれに負けじとカイトがクリアし、そしてさらに厳しい課題が――、というように負のスパイラルが発生し、ついにその我慢の限界を超えたカイトが脱走劇を一月と半前に起こしたのが始めとなり、それ以来このようなイベント?が起こるようになってしまったすよ

 

「それにしても、ガレスさんはともかく団長や副団長まで一緒になってこんな無茶をカイトに課すなんてらしくないと思わないっすか?」

 

「さぁね、とりあえず私は今のカイトを見て生まれて初めて自分に才能とかがなくてよかったと思ったわ、まぁでも偶にその才能に嫉妬やあこがr『WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!』」メキメキメキ

 

 

「「・・・・・」」

 

 

「また悲鳴が・・・最近カイトって人間やめてないっすか?」

 

「・・・いや、ほんと才能がなくて良かったと心の底から思うわ」

 

「普通が一番すよ、普通が」

 

うんうん、とお互いに頷いてからお互い自室に戻ったす

 

騒ぎが終わってしばらくした後に自室で寝ていたらガレスさんが泡を吹きながら簀巻きにされたカイトをベットに放り出して去って行ったっす・・・南無。

 

 

《side out:ラウル》

 

 

======================================

 

 

 

 

ネバーギブアップという言葉がある

 

決して諦めずに何度でもリトライするということだ

 

つまりはゲームとかでよくあるコンテニューのことなのだが

 

何度もクリアできないラスBOSSを倒すにはどうすればいいのか・・・答えは簡単だ。

 

 

『レベルを上げて物理で殴ればいい』

 

 

だが悲しいかな・・・この世界でレベルはゲームの様には簡単には上らない、むしろそんな簡単に上ったらえらい事になるがな

 

レベルというのがどれくらい大事なのかというと、そうだな・・・わかりやすく別の漫画で例えるなら、科学と魔術が交差する的な超能者達の基準だと思えば分かりやすい

 

最高Lv.のLv.5、その第一位で『圧縮ゥ♪圧縮ゥ♪』『クケケケケケケケ』「ッイッーーーーーー!!」とか頭のおかしい発言なのだ、ならばLv.6と呼ばれるフィン達がもっとおかしいのも当然な話ナわけだ

 

 

 

------閑話休題

 

 

 

今現在、俺は呼び出しをくらってロキの部屋にいた

 

大方昨夜の脱走もとい一時撤退の件に関してだろう、だが俺にもきちんと言い分がある、入団してからの周囲とは明らかに異なる訓練内容と量に今まで無言の圧力ではぐらかされてきたが今日こそは文句の一言や二言は言わせてもらう

 

「まーた、訓練サボろうとしたんやって?」

 

「サボりじゃない、一時撤退だ」

 

「いや、一緒やからそれ」

 

「後ろに向かって前進しようとしただけだ!」

 

「やから、意味一緒言うとるやろが!!」

 

ぎゃーぎゃーと言い合いをするが今日こそはロキに問いただすと決めているのだ

 

「おいロキ・・・ちょっとマジな話しようぜ」

 

「・・・なんや」

 

俺の真面目な雰囲気を感じ取ったのかロキがとりあえず黙ってくれた

 

「正直、最近・・・というか最初からだが俺の扱いがおかしすぎるだろ、訓練も勉強も他の奴らより倍ってのはよ?」

 

「それだけ、フィン達が期待しとるっちゅーことやろ」

 

「それでも最近はやりすぎだろうが!」

 

念能力を全開でフルブッパしてもかなりキツイ、俺じゃなかったら死んじゃってるよ

 

「ただのかわいがりにしても限度がある、せめてここまで急激に訓練を課す目的を教えてくれないとこっちのモチベーションが維持できないんだよ」

 

俺だってフィン達がただの面白半分でこんなことをさせてくるとは思わな・・・いやどーだろうな、やりそうな気がする、いやでも・・・だがしかし、毎度毎度、俺がギリギリより少し無理な感じの課題をさせるのは相当俺のことを見ていなければできないわけだから---

 

そんな風にドS幹部達の少ない良心について考えているとロキが観念したように口を開いた

 

「・・・・・・・んーーー・・・はぁ、そやなぁ、カイトは口が堅そうやからええかなぁ・・・」

 

 

ーーーーーーーーーーー間。

 

 

「なめてんのかごらぁ!!」

 

 

ようやくロキから聞き出した内容はアホみたいな内容だった

 

「特別扱いすると他の団員のやっかみがあるかもしれないからって、文句も出ないくらいの厳しい訓練ってなんじゃそりゃあ!?」

 

いらんわそんな扱い!!

 

「あははー、まー絶対文句言われると思うて言えなかったんよ」

 

「あーはいはい、短い間でしたがお世話になりましたー」

 

「ちょ!?カイトどこ行くねん!」

 

「うっさい黙れ!実家に帰らせて頂きます!!」

 

「後生やああああ!うちんこと見捨てんといてやあああ!!」

 

「は な せ え ぇ ぇ え え !!」

 

部屋を出て行こうとする俺の腰にへばり付くロキを引きはがそうとするも中々剥がれない、なめくじかこのアホ神は!

 

「まって!まってや!!まだ他にも理由があんねんて!」

 

「・・・んだよ、他の理由って」

 

一応聞くだけ聞いたやるために部屋を出る、というかファミリアを出て行くことを一旦保留にしてやる

 

「あんな-、その、あれや、アイズの新しいお目付役が早急に欲しいんや・・・最近のアイズは多少は落ち着いたけど、それでも一般の冒険者の視点からすればまだまだ過剰なダンジョンアタックを繰り返しとるのと変わらなくてな? それを押さえる人材、もしくはこれからの成長次第でアイズの相方を務められるようなんがカイトくらいしかおらんねん」

 

「お嬢のお目付役にはフィン達がいるだろ」

 

実際ここ数ヶ月俺に訓練(拷問)をしていないときはお嬢に付き添ってダンジョンに行っていたはずだ

 

ちなみにお嬢というのは俺がアイズを呼ぶときの愛称みたいなものだ

 

「無理や、今まではそれでよかったんやけどな-・・・ここ最近闇派閥達の行動が激しくなってきてな、正直今でもフィン達の手が届ききっとらん」

 

それも知っている、オラリオに来る前からはチラリと、そして来てからは実体験を持って闇派閥の厄介さは身にしみている

 

爆破テロから殺人、暗殺、良派閥ファミリアへの過剰なまでの攻撃、弱小ファミリアへの一方的な虐殺とも言える攻撃など、奴らが犯した悪行を挙げればキリがない

 

そいつらを捕縛し闇派閥に所属するファミリアの主神を天界に送還、もしくはオラリオから永久追放するのがオラリオでも最大派閥の片割れでもあるロキ・ファミリアの暗黙の義務となっている、有名というのはなまじっか良いことだらけではなく余計なしがらみも付いてくるということだ。

 

ガレスのおっさんも、奴らのせいで中々大規模遠征に行ける時間が作れないとぼやいていた

 

実際、俺が入団してから未だに遠征が一度も行われていない

 

案外遠征に行けないストレスも俺の訓練(拷問)にぶつけていたのではなかろうか・・・

 

だが、お嬢の面倒を俺に押しつけるため、早急に訓練のレベルを挙げるってことは

 

「・・・もしかして近いうちに闇派閥への大規模作戦でもあんのか?」

 

ロキの表情は変わらない、だが腰にへばり付いているロキの身体に一瞬力が入ったことで疑問が確信に変わる

 

「・・・カイト、それマジのマジで外でもホームでも口に出すんやないで、思わせぶりな事を言うことも禁止や、主神権限での絶対命令や」

 

ロキの目が開いて瞳孔が丸見えのマジ顔モードで言ってきた

 

さすがにマジもんの神様なのか真面目モード迫力は背筋に氷柱でもぶち込まれたかのようなプレッシャーだ

 

「・・・わかってる」

 

萎縮するのは悔しいのでぶっきらぼうに返事をする

 

「カイト、重く感じるやろ思て口に出して言わへんかったけど、うちやフィン達は正直な所カイトにはめっちゃ期待しとるんよ、アイズに続く将来のエース級候補の団員、しかも今はまだアイズよりレベルは低くても冷静な思考や分析力はアイズより上や、これでレベルがアイズと同じになれば諸手を挙げてアイズの面倒を任せられる、期待するなって言う方が無理な話やっちゅーねん」

 

今度は先程の威圧感を感じさせない、むしろ真逆である母性を感じさせるような優しい声で背中がむず痒くなるような事を言ってくる

 

「だったら、もう少し大切に扱えや! 訓練で身体がぶっ壊れそうなんだが!?」

 

「ダイジョウブ!ダイジョウブ!フィンタチヲシンジテ!!」

 

「何で片言やねん!!」

 

うっかり関西弁でツッコんでしまった

 

 

 

 

 

とりあえずこの後フィン達にも事情を説明し、お互いの情報をすり合わせたおけげで以前より多少は訓練内容がマイルドになった

 

ただ今回の案を発案したと言うガレスのおっさには例の卵焼きを今度はきちんと食べさせてやると脅したら青い顔をしていた、ザマァw。




FGO夜に再チャレンジだ!!

PS:全然小説に関係なくてスマナイ(・ω・)


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襲撃編!
13:倍増×倍増 前編


まさか残りの石4個と呼符1枚で孔明が来るとは・・・


オラリオ南東・第三区画、時間は既に日も大分前に落ちた時間帯

 

色欲の街区とも呼ばれる第三区画を一手に牛耳るイシュタル・ファミリアの本拠『女主の神娼殿(ベーレト・バビリ)』で二柱の神が対峙していた

 

対峙していると言っても片や冷や汗をかき、もう片方の神はニヤニヤとしてはいるが全身から今にも吹き出しかねない憤怒が漏れ出し、飄々としている普段からは想像できない威圧感を放っている

 

「それでぇ、この落とし前どうやってつけたろか、おどれらは滅ぼされる覚悟は勿論あるんやろなぁ?」

 

威圧感を放っているのはロキ、言わずと知れたオラリオの双璧を為すファミリア、その片翼である、そして冷や汗をかいているのは美の女神イシュタルである

 

「ま、待てロキ、今回の件、私は完全に関与していなっ『ガン!!』ひっ」

 

「・・・イシュタ~ル、うちはいい訳聞くためにわざわざ足運んだんとちゃうんよ、お前んとこのガキがうちの子に手を出した、しかも襲われた4人のうち2人は重傷、その内の1人に至っては瀕死で万能薬(エリクサー)使うてもまだ生死の境をさ迷うくらいに衰弱しとる」

 

ロキは今でこそ大人しくなったが、かつての天界では領土を無視して誰それかまわず、文字通り見境なく殺し合を吹っかけてくる手の付けられない暴れん坊であったのは神々なら誰でも知っている、そしてかつてのその姿を実際に目の当たりにしたこともあるイシュタルは焦りに焦っていた

 

(くそっ、どうしてこんなことにっ、あのガマガエル女なんて事をしでかしてくれたんだい!?)

 

 

 

―――――――――事件が起こったのは今から二日前。

 

 

イシュタル・ファミリアの団長、『男殺し(アンドロクトノス)』フリュネ・ジャミールによるロキ・ファミリア所属の『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン及び下級団員3名への襲撃

 

しかし、駆け付けたフィン達のおかげで襲撃は失敗。

 

ちなみに、フリュネの動向を怪しんでいた同じイシュタル・ファミリアの構成員からイシュタル本人に密告があり、その報告を受けたイシュタルはすぐさま事の顛末をロキに知らせた、おかげでフィン達の救援は間に合ったが事は既に起こった後であった。

 

ただ、死者が出なかったことが不幸中の幸い、そうでなければロキはこのような話し合いの場など用意することなく問答無用でここを襲撃してきていただろう

 

 

(下手な手打ちを行えば、こちらが潰されるか・・・くそ)

 

 

 

数日後、

 

ロキ・ファミリアはイシュタル・ファミリアから多額の賠償だけでなく、希少なマジックアイテムや魔剣を譲渡させることで手打ちにした

 

余談だが、このときの賠償のせいでイシュタルのとある目論見は大幅に遅れることになる

 

 

 

 

 

===============================

 

 

 

 

―――――――二柱の神が話し合いの場を設ける二日前

 

 

 

 

場所は上層の10階層

 

「お嬢、前方1時方向にオーク3、同方向45度にインプ2」

 

「ん!」

 

『円』でいち早く相手の構成を読んだ俺がパーティメンバーに報告するやいなやアイズが相手に向かって飛び出す

 

独断専行気味だがもう慣れたのでこっちがお嬢に合わせる様に動く

 

「オークは俺とお嬢、インプはラウルとアキで対処、こっちが済み次第すぐに来るから最悪時間を稼げ、もしくは倒せるならそのまま倒してくれ」

 

「「了解!」」

 

お嬢に遅れること数秒、着いたときには3体の内一体が腕を切り飛ばされて頭をかち割られていた

 

「おいおい、あんまはりきりすぎないでくれよ、俺の分の獲物がなくなっちまう」

 

お嬢の後ろに迫っていたオークを抜き手で魔石を抜き出して瞬殺しながら愚痴る

 

「早い者勝ち」

 

「さいですか、じゃあ残りは――――」

 

俺がもらっちゃうぞ、と言い切るまえに文字通り目にも止まらぬ速さで残りの一体をアイズが袈裟切りにする

 

「だああああ、早すぎるだろ!?」

 

獲物を先に倒されたのは悔しいがそれよりもラウル達の方の救援に向かう

 

「ってこっちも終わってるし!?・・・あれ、ラウルどうした」

 

現在のステイタスでは2人がかりでも相手にするのが厳しいはずのインプを倒しきったというのに何故かラウルだけが項垂れていた

 

「うう・・・アキに踏み台にされたっす」

 

「しかたないでしょー、最後のインプが飛んで逃げようとするんだもん、仲間とか呼ばれたら厄介じゃん」

 

「だからって何も顔面を踏み台にしなくていいじゃないっすか-」

 

顔を上げたラウルの顔面には綺麗な足跡が残っていた

 

「「・・・ぷっ」」

 

「カイトはともかくアイズさんまでヒドい!?」

 

 

現在俺たちはパーティを組んで上層の中でも中層に近い10階層にきていた

 

アイズを除く、俺を含めた三人は本来ならこの階層はまだ早すぎる、だが俺がパーティに入るという条件でなら9階層まで、さらにアイズが加わった場合は11階層までの進出が認められていた。

 

無事に戦闘を終えてひとまず弛緩した空気が流れる、もちろん最低限の警戒は維持したままだ。

 

 

 

 

そのおかげで誰よりも早くこちらに迫ってくる()()に気付けた

 

 

(な!?)

 

 

『円』を張りっぱなしにしていたおかげで全員の顔面に向かって飛んでくる拳大の石を関知

 

しかも当たれば大怪我ではすまない速度、声をかけていてはとてもじゃないが間に合わない

 

(やばい!?)

 

判断は一瞬、気付いたと同時に身近に居たアキを押し倒してなんとか回避、だが残りの2人には声を掛けることすら出来ていない、一瞬最悪の光景を想像する

 

(ラウルとお嬢は!?)

 

お嬢の方を見るとラウルを突き飛ばし、自らは屈むことで難なく回避していた

 

「さっすがお嬢、そこにシビれる憧れるってな!」

 

「ちょっ、カイト!?なにすん「敵襲!!」!?」

 

押し倒したことでアキが文句を言ってくるが俺の言葉を聞いてすぐさま寝たままで体制を立て直し、すぐにほふく前進でその場から移動する、移動してからすぐさま先程まで居た位置に凶悪な速度の投石が襲ってきた

 

「っ・・・なによこれ!?」

 

ほふく前進しながらアキが悪態をついてくる

 

「だから敵襲だって、しかもたぶんモンスターじゃなくて人の」

 

この階層でこの速度の投石が出来るようなモンスターは存在しない、そこからおのずとこれが人による襲撃であると説明する。

 

「まさか、闇派閥(イヴィルス)じゃないでしょうね・・・」

 

「ひぃぃぃいいい死ぬっすまじヤバイっす!?」

 

いつのまにかラウルとお嬢も合流していた、ってかラウル無駄に洗練されたほふく前進だな・・・

 

「落ち着けってラウル、ちったぁお嬢を見習え、あと騒がしいと集中的に狙われるぞ」

 

「~~~~~~~!!!」

 

「ちなみに、お嬢、こんな感じの襲撃に心当たりは?」

 

「んーー・・・わかんない」

 

「さいですか・・・」

 

まさか、ダンジョンでの初ピンチがモンスターではなく人の手によるものになるとは

 

(それにしても闇派閥(イヴィルス)の襲撃? こんな浅い階層でわざわざ低級の俺たちを? なんの意味があるんだ、人質とか? くそ、せめて9階層ならまだ楽に対処できるんだが)

 

10階層からは初のダンジョンギミックとして霧が発生するようになってくる、そのためこのような遠距離からの襲撃の場合、目視での確認が困難になる、ちなみに俺の『円』の半径は初のおためしダンジョンから数ヶ月、リアルに血のにじんだ努力の結果半径20メートルまでは伸びた、だがこの程度の範囲では遠距離の相手を感知するのは不可能だ、放ってきた何かを感知して何とか避けるくらいが精一杯だ

 

(このままじゃ、相手に一方的に攻撃されて嬲られるな・・・)

 

石が飛んできた方向から相手の位置を移動していることを含めて大凡で推測する

 

(問題はどうやって相手の遠距離からの攻撃をいなしつつ接近・・・は駄目だ、先程の攻撃から相手はおそらく格上・・・逃げるしかない)

 

状況分析から現在の最善手は一つのみと判断する

 

「全員聞いてくれ、相手はおそらく格上の冒険者、しかも複数の可能性もあるんでここから全力で逃げる、異論はないな?」

 

全員が俺の提案に頷いてくれる

 

「よし、じゃあ――――」

 

「逃がさないよぉぉぉぉぉおおお」

 

ズドン、という衝撃音と共に全身鎧を着込んだ、おそらく今回の襲撃をしたであろう敵が逃げようとした方向を塞ぐように降ってきた

 

「ゲッゲッゲッゲっゲ、最初のでやられてりゃいいものを生意気だねぇ」

 

鉄仮面の中から聞こえてくる不気味な声はつぶれたガマガエルを想起させるような醜い声だ、手に持っている強大なスパイクと相まって余計に嫌悪感を与えてくる

 

 

「はああああああーーーー!!」

 

問答無用でお嬢が斬りかかる、おそらく相手は上級の冒険者、この中ではお嬢のレベルが一番高いため先手必勝は正しい判断ではあったが・・・

 

「甘いんだよぉおおお!!」

 

「くぅっ!」

 

「お嬢!」「アイズ!?」「アイズさん!?」

 

Lv.2のお嬢があっさりと吹き飛ばされた

 

(やっぱLv.3以上か!)

 

「アキ、ラウル!!全速で救援を呼んできてくれ、時間は俺とお嬢で稼ぐ!!」

 

いつもの余裕もかなぐり捨てて全力で叫ぶ、こいつ相手にはマジで余裕はない

 

「で、でも!!」

 

「行け!早く!!」

「させると思ってんのかい!」

 

お嬢が復帰する間、先にこちらを仕留めると決めたのか襲撃者が襲ってくる

 

 

(オーラ!!全!!!開!!!!!)

 

「早く行けえええええーーーーーーーーーーーーーー!!」

「ぬがぁ!?」

 

こちらをただのLv.1と思い油断していた所に後先を考えないくらいオーラを込めた体当たりをぶちかます

 

「でりゃああああああーーーーーーーーーー!!」

 

そのままの勢いでアキとラウルから襲撃者との距離をとらせるためにオーラを噴出させるようにして一緒に吹っ飛ぶ

 

「ぎ、ぐ、こ、このっ・・・調子に乗るなこの雑魚がぁああああああ!!」

 

「ぐばぁ!?」

 

吹っ飛んだ勢いが無くならない内に地面に叩き付けられる

 

「雑魚がこのアタシに何してくれてんだ、このクソビチグゾ野郎があああーーーー!!」

 

「ぐぅぅぅぅぅぅああああああーーーーーがはっ!?」

 

地面を紅葉下ろしよろしく引きずられて振り回されたあげく、投げ飛ばされてダンジョン内に生えていた木に叩き付けられた

 

(ぐぉ・・・やっべぇ、まじで死ぬ)

 

 

後先考えずにオーラを全開にしていたのが功を奏したのか、幸いなことに深刻なダメージはそれ程なかったがそれも時間の問題だった、このままでは早急にオーラが尽きてしまい立っていることすらままならなくなってしまう、そうなれば後はただの人間サンドバックだ。

 

だが身体を張ったかいもあってアキとラウルは離脱に成功したようだった、すでに先程居た場所にはその姿が確認できなくなっている、おそらく襲撃者の方も一緒だろう

 

「ちっ、面倒な、すぐに追いかけて殺してやろうか」

 

「させない」

 

アキとラウルを追いかけようとする襲撃者の前に復活したお嬢が立ちはだかる、かっこいいなおい・・・ちなみに俺は現在死んだふりをしている

 

「・・・ゲッゲッゲッゲッゲ、まぁいいさ、元々の目的はあんただからねぇ」

 

「わたし?」

 

「そーさ、最近調子に乗ってるガキがいるって聞いてねぇ、世界記録だかなんだか知らないが男神を含めた男共がうるさいったりゃありゃしない、その不細工な面ズタズタにして二度とダンジョンに潜れないくらいに痛めつけて、ガキに世の中の厳しさを教えてやろうと思ってねぇ~ゲッゲッゲッゲ」

 

(うっわ、くっだらねぇそんな理由で襲撃したのかよ・・・)

 

どうやら闇派閥(イヴィルス)ではなく敵対ファミリアによる襲撃のようだ、しかもファミリアというか個人的で理不尽な怨恨によるものっぽい、しかも口調や会話の内容から襲撃者は女のようだ

 

・・・・・・あれが女? 

 

ゴリラに豚の贅肉を十倍にしてくっつけたような体系、声を聞いた者に不快感しか与えないような・・・あれが女!?

 

 

 

「そんなことのためにこんなことを?」

 

「そーさ、あんたはそんな理由で潰されるただの雑魚って事だ!おらぁ!!」

 

 

俺が目の前の現実にフリーズしている間にもお嬢と敵の戦闘が激化していく

 

 

『おい、どーすんだこれ、呼びだされて出てみりゃ大ピンチじゃねーか』

 

死んだふりの俺の横に居る『ジャンプパイレーツ』が小声で話しかけてくる、

 

何を隠そう、お嬢に全部丸投げで死んだふりをしていたわけではない、実はこっそりこいつを召喚していたのだ

 

ちなみに既にスロットの方も回し済みだ

 

「それで数字は?」

 

『6だな』

 

「6か・・・」

 

初めての数字だ、というか今までデメリットがやばすぎるので初めて使って以来フィン達から使用を禁じられていた、暇なときに話し相手としてこいつを呼ぶことはあってもスロットを回すことはなかったがさすがに今回は緊急事態だ、デメリットを鑑みても使用をためらう理由はないだろう。

 

そんなことを考えている間にスロット番号『6』の能力についての知識が頭の中に染み込んでくる

 

・・・こいつは、また、なんというか、えーー・・・

 

強力なのは間違いないが俺の身体が耐えらえるかわからない能力だった。

 

だが、目の前で徐々に、しかし確実にお嬢を追い詰めていくこの格上の襲撃者をどうにかするには多少の無茶はしなければならない

 

覚悟を決めて起き上がる

 

 

幸い、敵はこっちに気付いていないので『練』を全開にしつつ能力を使用する

 

「第一開門・・・開!!」

 

纏うオーラの総量が一気に倍になる

 

俺の頭の中に刻み込まれてきた『6』の能力は『八門遁甲の陣』

前世ではおそらく世界一有名な忍者漫画に出てきた禁術の一つ

その能力は単純明快、本来なら身体に負荷がかからないように無意識にセーブしている力を強制的に解除し、文字通り限界を超えた動きができるというものだ

 

(やっぱ、この技けっこうキッツぅぅぅ~)

 

ただし、この技は先程も言ったように無意識のブレーキを外すため身体に多大な負荷がかかるというデメリットが存在する、身体にかなりの負荷がかかるのがわかるが止めるわけにはいかない

 

「ぐっ・・・続いて第二休門・・・開!!」

 

(ぐぴゃああああ痛いいいいいいいいいい!)

 

 

この技、思ってた以上にヤバかった

ガイ先生もリーもすごいなぁと僕は思いました。

 

 

 

 

===============================

 

 

《side:アイズ》

 

 

「ゲッゲッゲッッゲッッゲ、おらおらどうしたぁ!チマチマ避けるだけかい『剣姫』!」

 

(くっ・・・)

 

 

現在アイズは明らかに自分より上のレベルの冒険者を相手に防戦一方の状況を余儀なくされていた

 

それでも格上の相手に対して薄皮一枚の攻防が出来ているのは相手が動きにくいフルプレートの鎧を着ているのが原因だった、おそらく正体を隠すための全身鎧だろうが、今回はそれがアイズに味方した。

 

小柄な体型を活かして相手の攻撃を何とか避けていくが追い詰められているは誰の目にも明らかだった

 

(せめて、風を溜める時間があればっ!!)

 

それが出来ないことに対して歯嚙みをしていると

 

 

「おらああああああああああああ」

 

誰かが敵の背後から頭に跳び蹴りを放ってきた、完全な不意打ちのため敵も避けることができずに自分の頭上を越えて吹っ飛んでいった

 

「ヨォ!ブジかァおジョーーー!?」

 

「カイト!?」

 

乱入してきたのは先程まで気絶していたはずのカイトだった・・・・声が裏返っているのは何で?



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14:倍増×倍増 後編

早く原作最新刊出ないかなー


現在フィンはダンジョン上層を自身の持てる限りの速度を持って全力疾走していた

 

(Lv.3、それもLv.4にランクアップ間近の冒険者に襲撃されればカイトやアイズが居てもかなりマズイ)

 

事の起こりは自分がギルドでガレスとリヴェリアと共にギルド員と今後の闇派閥(イヴィルス)の対策について部屋で話し合いをしていたとき

 

ロキから使いとして言づてを頼まれた上級団員が息を切らせてノックも無しに部屋に飛び込んできたことから始まる

 

言づての内容は要約すると、とあるファミリアの第二級冒険者がアイズの襲撃を目論んでいるという内容で、その計画の首謀者である男殺し(アンドロトロノス)が先日から姿を消したという内容だった

 

イシュタル・ファミリアの団長フリュネ・ジャミールと言えば、あまり良い噂を聞かない冒険者の例として挙げられる程度には悪名が轟いていた、そんな者に狙われていると聞いた途端に、常に下の団員に冷静さを説いているリヴェリアが部屋を飛び出し、それに続くように自分とガレスも飛び出した

 

 

アイズには下級団員とパーティを組んでいるときは11階層までの進出を許可している、しかし上層、と一口に言ってもかなり広い、なにせ1階層から12階層までの広さを合わせればおそらくオラリオそのものの広さに匹敵する、それを手がかり無しで即座に探し出すのはいくらLv.6といってもかなり難しい、だが今日に至っては手がかりはゼロでは無かった

 

(確か、今日はパーティメンバーにカイトがいたはず、ならギリギリ許可されている11階層にいる可能性が高い)

 

 

そう目算を付けて、2人に今考えていた内容を話す、

 

「つまり、私達は11階層付近を探せば良いということか」

 

「儂は一応9階層辺りから虱潰しにアイズ達を探してみよう」

 

「頼む、僕は10階層から、リヴェリアは11階層を念入りに探してみてくれ」

 

「「了解(じゃ)」」

 

そこから散会して、それぞれの持ち場の階層をとにかく走り回る

 

 

2人と途中で別れてから数分もしない時にそれは起こった

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

 

(何の音だ!?)

 

 

音源はおそらくこの10階層からだろう、即座に音源に向かって疾走する、なぜならその爆撃音の様な音を聞いた途端に親指がうずき始めた、今まで何かがあるたびに自分に危機を教えてくれたうずきが、何かがあると言っていた、今の状況ならば間違いなく――――――

 

確信に近い思いで音源だった場所を探す

 

(くっ、せめてあと一度音が聞こえれば――――――)

 

そう歯嚙みしているとフワリとフィンの髪を風が撫でていった

 

(風?こんなところで――――――)

 

次の週間に先程の衝撃の倍はあるであろう爆音が辺り一帯に響く

 

「これは――――――」

 

思考する時間も惜しいと、風が吹いた方向に向かって走る、そしてとあるルームに入った途端に今日ダンジョンに潜ってから一番の衝撃が襲ってきた

 

 

「ぐっ!?・・・っな、何だこれは・・・っ!?」

 

 

衝撃により巻き起こる砂塵を堪えて目をなんとか開ける

 

そこで自分の目に飛び込んできたのはアイズが膝を突き、全身を血に染めた満身創痍のカイトが吹き飛んでいるという最悪に近い光景だった。

 

 

 

===============================

 

 

 

 とりあえずお嬢は何とか無事だったらしい、とりあえず三門まで開けてから敵を蹴り飛ばしてみたが思いの外吹っ飛んでいった。多少は効いていてくれないだろうかという願いも空しく、ムクリと敵が起き上がる。

 

「ちなみにお嬢、あいつを倒せるような奥の手とか必殺技とかないか?」

 

「ある」

 

「だよねー、そんな都合良く・・・ってあんの!?マジで!?」

 

 

とりあえず望み薄いよなーといった感じで聞いてみただけなんだがまさかの返答にこっちがビビった

 

「でも、使うには時間がかかる」

 

あーはいはい、元気玉的な感じで撃つのに時間が掛かるタイプの必殺技なんかねー?

 

ってことは俺は足止めのベジータ役か・・・ボコボコにされそう

 

「・・・カイト1人じゃアレの足止めは無理」

 

俺のスキルを知らないお嬢が心配してくれる

 

「そこら辺は心配しなくていいぞ、ちょっと奥の手使って時間稼ぎくらいならできる、だからお嬢は気兼ねなく奥の手とやらの準備を頼むわ」

 

「本当にできるの?」

 

「まーかせろ!だからいっちょ派手なのを頼む、外すんじゃねーぞ?」

 

「大丈夫、ちゃんと狙う」

 

・・・敵をだよね?こちらを見ながら言われると若干不安になるんだが

 

「・・・一応言っとくけど俺ごとバーンとかは勘弁だぞ」

 

「?・・・当たり前」

 

で、ですよねー、疑ってすまん、素直なお嬢に心の中で謝罪する

 

「う、うっし、じゃあ気合い入れて行きますかね!・・・第四傷門・・・開!・・・ぐっくぅ・・・つ、続いて第五杜門・・・開!!」

 

(無理無理無理無理無理無理無理無理無理かっこつけすぎたぁぁぁぁああああおろろろろろろろ)

 

体中に激痛を通り越した向こう側の何かが全身の筋肉、神経を蹂躙していく、正直三問当たりで許容限界を超えたのか体中から蒸気が吹き出しそうな訳の分からん感覚まで襲ってくる

 

「ぐっ・・・お嬢、何分だ?」

 

「え」

 

「時間を稼ぐっつたろ!何分くらい稼げば良い!?」

 

「2、ううん、1分で良い、それまでに何とか溜めてみせる」

 

「おっけ、じゃあその60秒死ぬ気で行ってみますか!!」

 

 

 

 

「がああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

タイミングよく肉ダルマが突っ込んできた

 

 

「うるせぇぞ雌豚がああああ!!」

 

 

痛みもあって脳内麻薬がドバドバだぜ!!

 

 

 

 

===============================

 

 

 

 

フリュネは怒りを通り越してぶち切れていたが、腐っても第二級冒険者、相手の異常さを感じると次第に冷静さを取り戻していった

 

(下級の雑魚があたしと互角だと!?)

 

普段とは違う装備のせいで動きが制限されているとはいえレベルの差とはその程度で覆されるものではない

 

(・・・いや違う、こいつの動きは後先を考えていない奴の動きだ)

 

こちらの戦闘スタイルは言ってみれば長距離走、対して向こうは超短距離走

 

実際よく見れば攻撃を避けてダメージを受けていないにも関わらず相手は血反吐を吐きながら自分と攻防を繰り返している

 

(何が目的だい!?いや、待て剣姫はどうした!?)

 

自分の拳と相手の蹴りが衝突しお互いが弾くように一旦距離を取ると同時に周囲へ視線を走らせる

 

(見つけた!)

 

だが見つけた瞬間に剣姫の纏っている風とその身に練られていく魔力に対して本能が警報音を特大で鳴らしてきた

 

(この雑魚は時間稼ぎが目的かい!!)

 

そうとわかればフリュネの動きは早かった、勝手に自滅していく雑魚よりも自分が敗北する可能性の高い何かを放とうとしている剣姫を先に打倒するのが正解だと思ったからだ

 

 

「死ねぇえええ剣姫ぃいいい!!」

 

 

この判断は通常であればフリュネの勝ちで終わっていただろう

 

だが

 

例外は何事にも存在する

 

 

「第六『景門』開」

 

 

あと一歩で攻撃が届くと思った所で、またしても先程と同じように邪魔が入り剣姫の前から蹴り飛ばされる

 

「くっそがあああ何なんだ手前はぁ!!」

 

10

 

吹き飛んだこちらを雑魚だと思っていた奴が追撃してくる

 

 

「  朝  孔  雀  !!」

 

 

「チィ!!」

 

 

まるで孔雀が羽を拡げた様な形をした炎とそれを作り出すほどの目にも止まらぬ拳撃が津波のようにフリュネを襲う

 

 

「鬱陶しいんだよ雑魚がぁ!!」

 

 

炎と拳の速度は厄介だがフリュネの耐久値で耐えられない程ではない

 

 

相手の攻撃が自分の耐久力に対して力がが足りていないのが分かる、この技は明らかに時間稼ぎが目的だろう

 

 

(まずいまずいまずいまずい!!)

 

 

だが、それが分かったところで身動きを取ることは出来なかった、このまま被弾覚悟で剣姫に辿り着いたとしても、かなりの痛打をそれまでに受ける、一撃一撃は軽くともその量は津波と評する程なのだ、敗色は濃厚となってしまう可能性があった

 

 

故に、フリュネは決心を固め、剣姫の技への妨害を諦める

 

 

(邪魔できねぇってんなら、正面から回避か防ぎ切っちまえばこちらの勝ちだ!!)

 

 

 

 

かつて、アイズがLv.2にランクアップする際に倒したモンスターの名は「ワイヴァーン」適正Lv.2以上、しかもその異常個体であった。(推定ではLv.3ではないかと推測されている)

 

そして今のアイズはLv.2

 

フリュネのレベルはLv.3

 

 

「あああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

溜めに溜めた暴風をアイズが身体と剣に纏わせ一気に爆発させる

 

それは後にアイズ自身が名付ける必殺の技『リル・ラファーガ』、その速度は閃光

 

とてもではないがLv.2では考えられない速度だった。

 

 

「ぎゃああああああああああ!?」

 

 

Lv.1時のアイズでもLv.2以上のモンスターに通じたその技をフリュネが完璧に回避するなど不可能、アイズの持つ剣がフリュネの左肩に深々と突き刺さった

 

 

だが

 

 

アイズにとって誤算だったのはフリュネはモンスターとは違う、多くの戦闘経験を有した人間であったことだろう

 

 

(・・・っ!?こ、この人自分から私の剣に刺さりに・・・違う! まさか、急所をだけを外してあえて私の剣を受けた!?)

 

「っがあああ、ゲゲゲゲゲ捕まえたぞこの雌ガキャアアアアアアアアア」

 

(剣が肩から抜けない!?)

 

「くぅっ!?」

 

戦闘では(特にダンジョンの中では)武器を手放すことは死に直結しかねない、そのため何があっても武器を手放さないようにするという本来なら自身を守るための習性がここにきて仇となった

 

 

「この!クソガキ!がぁ!!あたしにぃぃぃぃぃいいいい傷を付けやがってぇえええええ」

 

「が!く!!うあっ!?」

 

 

フリュネの無慈悲な攻撃がアイズに次々と叩き込まれみるみるうちにボロ雑巾の様になっていく

 

 

「お嬢ーーーーーーーーーーー!!」

 

 

「いい加減しつこいんだよぉぉぉーーーーー!!」

 

 

不意打ちで後ろからカイトがフリュネに迫るがカウンターの様にアイズを投げ飛ばし二人をまとめて吹き飛ばされてしまう

 

ようやく勢いが止まった頃には2人の姿は全身打撲と擦り傷だらけになっていた

 

 

(仕留めきれなかった・・・早く立たなきゃ、早く・・・)

 

 

投げ出されてしまった身体をすぐさま無理矢理動かそうとするも膝立ちするのがアイズには精一杯であった

 

それでも敵はそんなことはお構いなしにこちらに向かってくる

 

 

「グゲゲゲゲゲ死ねぇええええ剣姫ぃいいいいぃぃ」

 

 

一直線に自分に向かってくる敵、いや、今や2人にとっての死そのもの

 

 

しかし、それからアイズを庇うように前に立ちはだかる男が一人

 

 

「『切り札は先に見せるな、見せるなら更に奥の手を持て』」

 

 

「・・・え?」

 

 

「俺の好きな言葉だよ、お前も覚えとけ」

 

 

ポン、と頭に手を乗せてからニカッと笑いながらそう言ったカイトの姿がかつての父の姿と重なる

 

「あ……」

 

「じゃ、ちょっくら行ってくるわ」

 

そう言って自分と同じくらいダメージがあるにも関わらず敵に向かって走り出す

 

 

その光景が今でも夢に見る、悪夢と重なる

 

 

―――――――――ダメ

 

 

またしても届かないと分かっていながら手を伸ばす

 

「第七・驚門」

 

二度とそんな景色を見ないように、起こさないように強くなったのにも関わらずまたしても手だけを伸ばすしかない

 

――――――――――――イッチャダメ

 

「開」

 

 

 

敵はアイズの眼前に立つ男に躊躇無く手に持った凶悪なスパイクを振り下ろす

 

 

そしてそれ以上の躊躇遠慮容赦一切無く、男はたった一つの究極の正拳を突き出す

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――昼虎――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

その時、その瞬間、世界から確かに音が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さっさとベルとかアスフィ出したいのに書きたい話が多くて出せない(´д`)ウゴゴゴゴ

PS:ストック切れたので更新遅くなります。


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15:後悔×前進

ネロ祭ではなくギル祭か・・・ふ、しかし今の俺に敵はいない
※内容とは100%関係ない作者の独り言でっす☆


============================================

 

《side:リヴェリア》

 

 

 

 

「やっほー、出迎えあんがとなーリヴェリア」

 

オラリオ南東・第三区画、イシュタル・ファミリアの本拠『女主の神娼殿(ベーレト・バビリ)』の入り口からロキが歩いて出てくる

 

例の事件から既に10日、その事件の落とし前を付けるために数日前からロキは神イシュタルと会合という名の喝上げに来ていた

 

「ふん、さっさと帰るぞ。ここは居心地が悪い」

 

エルフは基本的に心を許した者以外に肌の接触を許さない、過度な者であれば見せることすらしない

 

自分はさすがにそこまででは無いがエルフが見世物として当たり前に居るここは心地良い場所では決して無い

 

「・・・この様な場所、潰してしまえればよいものを」

 

「えー、できんことはリヴェリアの方がようわかっとるやろ?」

 

「わかっているさ、これはただの個人的な感情だ」

 

「それにしても、ここにいる娘達どれも際どい格好で眼福やで~」

 

「おい」

 

「ええやん、見るだけならタダやし」

 

「・・・はぁ」

 

これが私の主神かと改めて思うと頭が痛くなる

 

「・・・それに、ホンマなら今頃ここを火の海にしとったのに・・・それ止めたんはリヴェリアやろうに」

 

そう言っていつもとは違う剣呑な目付きで『女主の神娼殿(ベーレト・バビリ)』を睨み付けるロキ

 

 

個人的にはこの区画は好きではない、だが潰すわけにはいかない理由があった

 

この歓楽街はオラリオの大事な収入源の一つにして、住人達(これは男女含む)のストレス発散場所でもある、そんな所を潰してしまえば住人の反感を買うだけになってしまう

 

それ以上に闇派閥が暴れている今のオラリオの状況で歓楽街を取り仕切るイシュタル・ファミリアを潰してしまえばギルドからの重いペナルティだけでなく、ただでさえ治安が悪くなっている今のオラリオを無用に混乱させるだけだ

 

以上の理由からイシュタル・ファミリアへの直接的な報復は断念せざるえなかった

 

先程の言動からもわかるように最後までイシュタル・ファミリアを直接潰すと言って止めなかったは実はこのロキであったりする

 

ちゃらんぽらんに見えて自分の眷属への愛情は深い

 

ロキが感情を全開にして憤怒を表したおかげでフィンとガレスと私も冷静になれたと思っている・・・まぁ、このような事決して口に出して言わないが。

 

「それで、カイトはまだ目ぇ覚まさないんか?」

 

「ああ、かなりの精神力(マインド)を消費したようだからな、それだけでなく怪我をした際のショックも少なからず影響があるだろう」

 

「うちが見たときはもう怪我が治療されて綺麗になった後しか見てないんやけど、そんなに酷かったん?」

 

「あれは…酷いというレベルのものではなかったぞ、特に両手首から先は骨しか残っていない損傷・・・いや、もうあれは損壊状態と言ってもいい状態だろう、万能薬(エリクサー)を使ってもキチンと肉と神経が再生するか不安になる程だったぞ」

 

「うへぇ・・・」

 

「それだけでなく両手首から吹き出す出血もさることながら・・・」

 

「いや!もうええから!ちょっストップストップ!想像するだけでもキツいから堪忍してくれ!!」

 

「ふむ、そうだな・・・まぁとりあえず応急処置を済ませた後に私が背負って回復魔法をかけながら地上に急いで帰還、その後すぐにディアンケヒト・ファミリアに預けたおかげで何とか一命を取り留めたわけだな」

 

 

今思い出しても何もかもがギリギリだった

 

あの時

 

フィンが駆け付けて吹き飛ばされたカイトを受け止めなければ、

その直後に着いた私の回復魔法が無ければ、

その後駆け付けたガレスの高級ポーションが無ければ

そしてディアンケヒト・ファミリアで輸血用の血が足りなければ。

 

このどれかが欠けているだけでカイトは今頃神々の言うところの天界とやらに向かっていたことだろう

 

カイトは運というものには恵まれているのかもしれない

 

(いや、そもそも運が良ければこのような事件に巻き込まれることはないか・・・それと――――)

 

「まだ目覚めぬカイトの方も問題だが、それよりも問題は・・・」

 

「アイズたんやなー・・・」

 

「アイズだけではない、ラウルとアキも・・・特にルームメイトのラウルは相当ショックを受けている」

 

 

今回の件で助けを呼ぶためとはいえ、カイトとアイズを残して逃げる様になってしまったラウルとアキはかなりの責任を感じてしまっている

 

「でも2人が途中でガレスと合流できたおかげでカイトの応急処置に使うポーションが足りたんやろ? 大手柄やん」

 

「そう言ってはいるのだがな・・・」

 

「言葉でわかれば苦労はない、かぁ・・・」

 

未熟な内は誰しも足手まといにならぬ様にと、自分よりも実力が上の冒険者に負けじと無理をするものだが、今回のラウル達の行動はそのように無理せず、正しい判断だったと間違いなく言えるものだ、しかし理屈と感情というものはそう都合良く一致するものではない、もし自分が強ければ、逃げなければ、今現在ラウル達はそういった後悔に苦しんでいるのだろう。

 

「アイズに至っては――――」

 

「せっかく良い感じに精神が落ち着いてきとったのに、ちょっと前に戻ってもーたな-・・・」

 

そう、ガレスからの報告で今回の事件以来、アイズはランクアップ前の様に無茶なダンジョンアタックをまた繰り返し始めたらしい

 

理由は私もロキも解っているが止めなければいけない、しかし、どうしても事件があった夜に、あの子が私達の前で叫んだ慟哭が忘れられない、それを思い出すたびに止めるのを躊躇ってしまう

 

 

 

『私はまだ弱いままだった!守らなきゃ行けないのにっ!!今度こそ守らなきゃいけなにのにっっ!!私はっ・・また・・・っ』

 

 

 

膝を抱えて泣き続けるアイズに掛ける言葉が思いつかず、泣き疲れて眠るまでただ頭を撫でることしかできなかった

 

 

「『また、守れなかった』かー・・・」

 

「・・・・・・そんなことはない、と言ったところで本人がそう思えなければ誰の言葉でも虚空を切るのみだろう」

 

「はぁ~・・・神様言うても自分の子供一人の悩みも解決できひんとは・・・無力な神やなぁ、うち・・・」

 

その後は、私もロキもそれぞれ思うことがあり会話が途切れ、そのまま大通りの街道に出た所で都市内馬車を拾った、馬車内では軽い雑談とイシュタル・ファミリアとの交渉内容に関することのみに留めロキと共に本拠まで帰還した。

 

「んじゃ、あんがとなリヴェリア、明日は別のもんに護衛頼むからアイズとカイトのこと頼むな~」

 

そう言って手をヒラヒラ振ってロキはそのまま自分の部屋に帰って行った

 

(・・・様子を見に行ってみるか)

 

ロキに言われたからではないが、少し気になったので自分の部屋に帰る前にアイズの部屋を見に行ってみることにした

 

 

 

 

『コンコン』

 

扉の前まで来たのでノックをする

 

「アイズ、今時間はあるか?少し話があるのだが。」

 

返事がない

 

(寝てるのか?)

 

「アイズ、入るぞ」

 

仕方がないので許可はないが部屋に入らせてもらったが部屋は物気のからだった

 

(・・・いない?)

 

既に日が落ちて大分経っているにも関わらず未だアイズは部屋に帰ってきていなかった

 

(まさか、まだダンジョンに!?)

 

今のあの子のならやりかねない最悪の予想をしてしまう

 

急いでダンジョンに行こうと、ロビーに出たところで声が掛かった

 

 

「アイズならカイトの見舞いに行ったよ」

 

 

焦っているところに後ろから見知った声が掛かってきた

 

 

「フィン!? いや、そうか・・・カイトの所ということはディンアンケヒト・ファミリアの療養所か」

 

教えてもらった内容にホッと安堵するが何故かフィンがニヤニヤしていた

 

「なんだ」

 

「ふふ、いやぁ、ロキじゃ無いけど本当に母親みたいだなー、って思ってね」

 

「わ た し は 未 婚 だ !!」

 

カクンと膝から崩れ落ちそうになるのを堪えて叫ぶ、つ、ついに、こいつまでそのネタで私をイジリにくるとはっ!

 

新たな頭痛の種に眉間にシワを寄せつつ文句を言おうとしたところに真面目な口調の言葉が帰ってきた

 

 

「・・・リヴェリア、アイズの方は任せてもいいかい」

 

「何だ、藪から棒に・・・」

 

「実は昨日からアイズだけじゃなくラウルのダンジョンアタックも自暴自棄になりかけてるって報告があってね、それこそまるでアイズみたいに、彼らしくなく我武者羅にモンスターを狩ってるってね、アキの方は大丈夫みたいなんだけど・・・」

 

どうやら先程ロキと話した内容と似たようなことのようだ

 

「ラウルの方はこっちでケアしておく、代わりに――――」

 

「分かっている、ちょうどここに来たのもアイズと今回の件について話をするためだったからな」

 

「助かるよ、やっぱり男は男同士、女は女同士じゃないと相談しにくいことや、わからないことってあるからね」

 

「なんだ、えらく弱気じゃないか、そんなことだと嫁とやらを捕まえることはできんぞ?」

 

「耳に痛い話だねぇ」

 

さっきの意趣返しにからかってやるが軽く肩をすくませるだけで受け流される

 

そんな風に気心の知れた同士で軽口を叩いていると

 

『だ、だだだだだだだ団長ーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

本拠(ホーム)の入り口からフィンを呼ぶ声が聞こえてきた

 

「なんだ?」

 

「この声、ラウルかな?」

 

 

噂をすれば、と言う奴だろうか、ラウルが全力疾走でこちらに向かって走ってくる

 

 

「ラウルこっちだ」

 

「だ、団長!あの、カ、カイカカ」

 

「落ち着かんか」

 

ズビシ!と音がする程度の軽いチョップを食らわせる

 

「イタイ!?あ、副団長も、ちょ、ちょうど良かったっす!」

 

「なにがだ?」

 

私が居てちょうど良いこと?

 

 

 

 

「カイトが!カイトが目を覚ましたんすよ!!」

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

 

暗い内容ばかりだった所に来た、ようやくの朗報にフィンと顔を見合わせる

 

「ふ、随分と寝坊助だったなカイトは、ようやく目を覚ましたか」

 

「カイトが目を覚ましたのは間違いなく本当のことなのかい?」

 

「はい!何せ起きたカイトとちゃんと話もしたんすかから! 今はディアンケヒト・ファミリアの団員とアイズさんと・・・その-・・・」

 

何故か最後の方でラウルが口ごもる

 

「まだ、誰か一緒に居るのかい?」

 

誰だ?思い当たるのはガレスや他の団員だが口ごもる理由が解らない

 

「その、・・・カイトの知り合いだって言う男神ヘルメスと、カイトの婚約者?って言ってるヘルメス・ファミリア所属の子が一緒に・・・」

 

「「・・・・・・は?」」

 

いやいやいやいやいやいや!なんだそれは!?

 

婚約者がいるというのは聞いていたが冒険者!?しかも別のファミリアの者だと!?

 

ラウルから話を聞いてからフィンが胃の辺りを押さえ始めた

 

「うぅ・・・胃が痛くなってきた・・・」

 

「私もだ・・・」

 

せっかく朗報だと思って聞いた内容の後に余計な情報が付いてきた、2人そろって胃がキリキリと締め付けられる感覚に襲われることになるとは、寝てても起きても心配を掛けるのは変わらない困った奴だと改めて認識させられた。

 

 

 

「ラウル、とりあえずこの事を今すぐロキにも伝えてやってくれ」

 

「了解っす!」

 

敬礼しながら元気に走り去っていく姿からは先程フィンから聞いたような雰囲気は感じ取れない

 

「目が覚めたカイトと何かあったのかな?」

 

フィンもラウルの変化に気付いたようだ

 

「ラウルの変化も気になるがあの様子なら一旦保留にしても問題ないだろう、とりあえず、我々もカイトの様子を見に行くぞ、これだけ心配を掛けたんだ、愚痴の一つくらいは言ってやらねば気が済まん」

 

「一応、重傷の怪我人扱いだから程々にね?」

 

「分かっているさ、それよりもヘルメス・ファミリアか・・・」

 

イシュタルの次はヘルメス、前の問題が解決しない内に次々と新たな問題が積み上がっていくな・・・

 

 

しばらく待っているとロキとガレスを連れたラウルが降りてきたのでラウルに事情を聞きながらディアンケヒト・ファミリアの療養所に5人で向かうことにした。

 

 




FGO始めた日付けが9/6・・・去年はイベントクリア無理やったなぁ・・・


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16:誤解×前進

ギル際が始まったら間違いなく更新止まる、でも仕方がないよね☆


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《side:名無しの団長》

 

 

 

私はヘルメス・ファミリア団長の▇▇▇▇▇▇・▇▇▇▇ だ!!

 

何かモザイク的な物が入った様な気がするが気にするな、神々の言う所の設定上の都合という奴だ!

 

さて、そんな私だが現在、ありえなさすぎる目の前の光景に対して完全にフリーズ状態だ

 

え?全然フリーズしてない?

 

いやいや、このように思考していることさえ目の前の光景からの現実逃避なのだよ

 

 

で、だ。

 

 

私が何故フリーズしているのかというと・・・目の前で主神であるヘルメス様がアスフィに顔をボコボコにされたあげく吊るされていたからだ

 

「・・・おい、これはどういった状況だ?」

 

私の近くでその光景を遠巻きに見ていた他の団員に事情を聞いてみる

 

「ヘルメス様が金庫からお金をちょろまかして遊びの金に使ったそうです」

 

・・・全てを把握した

 

「な、なるほど、それでアスフィがあんなに怒っているのか」

 

 

アスフィはLv.2の時点でこのファミリアの将来を、いや次期団長として期待されるほどの優秀な冒険者だ

 

その腕と明晰な頭脳を買われて今ではファミリアの財政責任者を担っている

 

アスフィの計算された財政手腕のおかげでファミリアの収入はウナギ登り、しかし時たま我らの主神が金をちょろまかすせいでアスフィの完璧に計算された財政計画に綻びが生じたのだろう

 

「だ、団長~ た、たすけてくれ~・・・」

 

ヘルメス様が自分に向かって助けを求めてくる、自業自得だと思いつつもさすがに哀れみの気持ちが湧いてくる・・・いや、それ以前に主神だしな

 

「ア、アスフィ、ヘルメス様も反省しているようだし、もうその辺で・・・」

 

「では、次の遠征での団長の分け前から捻出を――――」

 

「てめぇ、こらボケ神もっと反省しろやぁ!!」

「裏切り者ぉ!?」

 

すまないヘルメス様、この次の遠征で儲けた金で高級娼館にいこうと思ってるんだ、殴られて吊るされるだけでアスフィの気が済むのなら耐えてくれ

 

 

「ア、アスフィ、等価交換といかないか?」

 

なにやらヘルメス様がささやかな抵抗を試みている、アスフィは物等で釣られる様な性格をしていないのは重々承知のはずだが?

 

「何とです、金庫からちょろまかした金を今すぐに倍にして補填するというのなら降ろしますが?」

 

「ば、倍はさすがにちょっと・・・でもこの情報は中々のものだぜ?」

 

そこでヘルメス様がニヤリと笑った・・・逆さに吊るされた状態で顔が腫れてなければ様になっていただろう

 

「いや、俺が娼館で手に入れた情報と――――オボボボボ!?」

 

「なるほど、私達が血を流し、汗水流して稼いだお金を娼館(そのようなこと)に使った・・・と」

 

ちなみに逆さ吊り状態であるヘルメス様の頭のすぐ下には水の入ったでかいバケツが設置してあり、アスフィの作り出した力のいらない魔道具の滑車と連動、アスフィの意思一つでヘルメス様が上下して水責めも出来るようになっている

 

だが、さすがにこれはやりすぎでは?

 

そう思ったのは私だけではないようで、他の団員もさすがに止めに入る

 

「ア、アスフィ、これって拷も――――「お仕置です」」

 

「いや、どうみても、ごう「ただのお仕置です」」

 

「・・・・・・」

 

「ただの()()お仕置です、それともあなた方がこのアホが散財した分を補填してくれますか?」

 

「ちなみに、どれくらいの金額なの?」

 

「・・・これくらいです」

 

「「「「・・・っっ!?」」」」

 

アスフィが懐から出した紙に書いてある金額を見て私達は何も言えなくなった

 

我らが主神ヘルメスよ、無力な私達を御許し下さい。

 

「オボベデェェェェェェ!!」ゴボゴボゴボ

 

 

 

――――――――――――――――――間。

 

 

 

しばらくの間、拷m・・・お仕置を見て見ぬ振りをしていると

 

 

「な ん で そ れ を 早 く 言 わ な い ん で す か!!!」

 

 

今日一番の怒声が本拠(ホーム)中に響き渡った。

 

言わずもがなヘルメス様とアスフィだった

 

先程ヘルメス様が口にした娼館で手に入れた情報とやらだろうか?

 

「場所は!?いえ、その前に彼は無事なんですか!?」

 

「く、詳しいことまでは、わ、わからな―――――グベェ!?」

 

 

ぶおん、という音と共にヘルメス様が宙に舞い潰れたカエルのような声を出して着地した

 

 

「・・・・・・団長」

 

「は、はい!?」

 

 

その時のアスフィの迫力は得も言えぬ迫力があり、何故か敬語になってしまう程だった

 

「ちょっと休暇を取ります、ついでにこのアホもお借りします」

 

「え・・・ちょ、それは困」

 

「・・・イ イ デ ス ヨ ネ ?」

 

普段あまり表情を動かすことのないアスフィのキラキラと輝くとびきりの笑顔が逆に怖かった

 

「イエス・マム!!」

 

私はその時初めて知った、女性の笑顔とは威嚇なのだということを。

 

 

 

《side out:名無しの団長》

 

 

 

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《side:ラウル》

 

 

 

 

〇7年X月ボックス日

 

情けないっす悔しいっす

 

自分は友を、家族を見捨てて逃げ出したっす

 

救援を呼ぶためと行っても自分たちの足じゃダンジョン10階層からじゃどう頑張っても片道1時間以上かかるっす

 

それがわかっててもその場を離脱するしかなかったっす

 

途中でガレスさんと出会えた時は奇跡とは存在するって思ったっすよ・・・でも自分たちが駆け付けたときには全てが終わっていて・・・ルームメイトのカイトは文字通りぐちゃぐちゃになっていて

 

団長や副団長、ガレスさんの焦ったような声が周りに響き渡るっすけど頭に入ってこなくて、自分は・・・自分は・・・

 

 

カイトはその後、何とか一命を取り留めたみたいっすけど、あの時の地に足が着いているのにまるで浮いているかのような気持ちの悪い感覚は一生忘れることが出来ないっす・・・

 

その日、カイトのいない部屋で寝ようとしても、今日のカイトの姿がまぶたの裏に焼き付いて眠れなかったっす。

 

 

 

 

 

 

 

〇7年X月金りんご日

 

あれから三日経ったっす

 

自分はゴミっす、ただの生ゴミ、いや、それ以下のタダ生きてるだけの血袋の塊

 

 

ゴミが少しでも価値を上げるには強くなること

 

 

 

もう、あんな思いはしたくない。

 

 

 

 

 

 

〇7年X月銀りんご日

 

今日、ダンジョンでモンスターを狩っていたらガレスさんにアイズさんみたいだと言われたっす

 

・・・どこがっすか?

 

自分とアイズさんとでは実力が違いすぎて話にならないというのに。

 

 

 

 

 

 

 

〇7年X月銅りんご日

 

カイトの見舞いに言ったらバッタリ、アイズさんと出会ったっす

 

そのまま流れで一緒にカイトの病室に行くことになったっすよ

 

病室のベットで寝ているカイトの姿はすっかり元通りになってるっすけど、自分にはまだあの時のカイトの姿が忘れられないっす

 

しばらくの間、病室はカイトを見つめる自分とアイズさんの間で静かだったっすけど

 

「ごめんなさい」

 

突然アイズさんが謝ってきたっす

 

何故謝るのか事情を聞いたら、一番レベルの高い自分が守らなければならなかったのに守ることができなかったからと言われたっす

 

 

 

 

昨日のガレスさんといい今日のアイズさんといい

 

 

 

 

なにを言ってるんすか

 

 

 

 

 

自分は・・・守るどころか一緒に闘うことすらできなかったというのに・・・っ

 

 

 

 

 

〇7年X月聖晶石日

 

今日はカイトが目を覚ましたっす!!

 

目を覚ましたカイトに今回の件を謝ったらデコピンを喰らってお説教までされて・・・でもその後の言葉で何もかもが救われた気分になったす、それは自分だけじゃなくアイズさんも同じ様な感じになってたっすよ!

 

なんていうか、カイトはやっぱ色々でけー男っすね、同期なのに器の違いってものを感じたっす。

 

あ、あとカイトが目を覚ましてからすぐ後にちょっとしたゴタゴタもあったんすけど、カイトの彼女って、めちゃくちゃかわいい娘だったすよ!・・・ウラメシイ

 

まぁ、別のファミリアの眷属ってことでロキと相手の神ヘルメスと一悶着あったみたいっすけど・・・自分は外で人払い兼、見張り役を命じられたので詳しい内容までは聞かせてもらえなかったっす

 

 

まぁ、とにかくカイトが無事でよかったっすよ!!

 

 

・・・本当に良かったっす、神は既に地上に居るけれど・・・それでも、もし今回の奇跡を起こした神が居るのなら

 

ただ、ありがとう。

 

そう伝えたいっす。

 

 

 

 

《side out:ラウル》

 

 

 

======================================

 

 

 

 

 

 

 

 

 




俺は金りんご108個食べきるまで止まらねぇからよ……お前らも…止まるんじゃねぇぞ……( ˘ω˘)スヤァ…


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17:幸運?×不運?

塵よこせやぁぁぁーーーー!!全力だ!!全力で回せぇぇぇーーー!!

PS:俺はギルPUを回したんだ・・・何で孔明先生がくるの?あなた先週来たばっかでしょ?


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た

 

 

 

 

 

 

 

何故か俺の手首から先だけが妙に美肌で超美白になる夢だ

 

 

(・・・ナニコレ)

 

 

何故に手首だけ?

 

 

いやいや、それ以前に俺は確か敵を倒すために、今の俺では撃てないはずの『昼虎』という超を付けても足らないような技を『念』+『八門遁甲の陣』の二重発動というオーバードーピングの様な無茶をして本来の威力より大分弱体化したとはいえ強制発動したはず・・・まさか!?

 

 

 

 

『昼虎』に美白効果が!?

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

ふむ・・・何故だろう、『 チガウ ソウジャナイ 』と、たくさんの天の声が聞こえる気がする。

 

 

 

とりあえず改めて自分の手を良く見てみると俺の手は美白効果で白く   

 

 

なったのでは、もちろんなく、ただ単に――――――――――

 

 

  骨 になっていただけだった♡。

 

 

 

 

===============================

 

 

 

 

 

「アインズさまぁあああ!?」

 

荒い息と共にベッドから起き上がると、そこは見知らぬ部屋だった、ちなみにそれなりに広い

 

(!?っ!????)

 

知らない部屋で寝ていることに混乱するも、すぐに先程見た映像を思い出した

 

(それよりも手だ!! 俺の手は!?)

 

急いで自分の手を確認すると

 

「・・・ある、骨じゃない、普通の手だ・・・」

 

ためしに握ったり開いたりするが、何の問題もなく動くいつも通りの手があることに落ち着く

 

「ゆ・・・ドリカム?」

 

すまん、ウソだ、まだめっちゃ混乱してました

 

 

そんな感じで、まっっったく現状把握ができずに戸惑っていると、俺しか居ないと一目でわかるこの部屋唯一のドアが開いた

 

「っ!?」

 

警戒し、【円】を張るのに一瞬

 

(ん? これ・・・ラウルか?)

 

たが、そこから入ってくるのがラウルとわかりホッと気を抜く

 

「わ わ わ、忘れ物~♪」

 

ラウルが変な歌を歌いながら部屋に入ってくる、てか何でその歌知ってんだ・・・歌の内容からして先程までここに居たのだろうか?

 

とりあえず、声を掛けて見る

 

「オッス!」おら悟空!!といっても通じないので前文だけ言ってみる

「・・・エ」

 

元気に声を掛たはずなのに何故かラウルが固まった

 

「「・・・」」

 

お互い微動だにしないという微妙な空気に・・・え、なんで?

 

 

「ちょっ、ラウルなn―」

「ほああああああああ!?あ、あ、あアイズさあああああんん戻ってきてくださいっすうううううカムバァァアアアアックハリィイイイイイイ!!」

 

短い沈黙の後、ラウルが奇声を上げて部屋から飛び出していった

 

「なんだあいつ・・・カルシウム不足か?」

 

ストレスが相当溜まっているのだろう、今度一緒にどっか遊びに連れて行くか、と考え

 

時間が経つこと数十秒

 

外の廊下からこの部屋に向かって走ってくる音が聞こえた

 

(結局、戻ってきたのか)

 

程なくして、部屋のドアが勢いよく開く

 

そこに居たのは先程奇声を上げて部屋を出て行ったラウル

 

 

 

ではなく

 

 

 

「・・・アスフィ?」

 

 

俺の愛しの恋人だった。

 

 

 

======================================

 

 

 

 

《side:ラウル》

 

 

「はぁ、はぁ・・・こ、こっちっす!」

 

 

「わかってる・・・!」

 

アイズさんと一緒にカイトの見舞いに行ったんすけど、まさか、その後の帰り道で気付いた忘れ物を取りに病室に行ったらカイトが目を覚ましてるとか、何てドッキリっすか!?

 

さっきは気が動転して病室を飛び出してアイズさんを呼びに行っちゃったっすけど、もうちょっと何か話をすべきだったっす・・・

 

「ア、アイズさん、先に行ってくださいっす、俺は後で追いつきますから」

 

「・・・ん、・・・ありがとう」

 

俺の速度に合わせて走ってくれていたアイズさんが一気に加速して見えなくなったっす

 

「ぜぇ、ぜぇ、げっほ、はぁ」

 

全力の走りから小走り程度に抑える

 

こちらは全力疾走でもアイズさんからしてみれば全然遅い速度、それが今のアイズさんと俺の実力差

 

(これのどこが似てるんすか、ガレスさん・・・)

 

先日言われたことに対して改めて疑問しか湧いてこない

 

そうやって、アイズさんに遅れること十数分、ようやくディアンケヒト・ファミリアの療養所に着いたっす

 

・・・着いたんすけど

 

「あの、大丈夫っすか? もしも~し?」

 

なんか療養所の前で見知らぬ男神がボコボコにされた状態で野晒しにされてたっす、早くカイトに会いたいっすけど・・・さすがにこれを無視して行くのは、ちょっと気が咎めて無理だったっす。

 

 

「うぅ・・・犯人・・・は・・・ヤス・・・」ガク

 

「ちょっ!?遺言みたいなこと言って気を失わないでください!?」

 

仕方が無いので手持ちの安いポーションを飲ませてあげたっす

 

 

 

 

 

「んぐ・・・んぐ・・・ぷっは!生き返ったぁ!!」

 

「そ、そりゃよかったっすね・・・」

 

安いと言っても俺の手持ちじゃそう易々と買える物じゃないんで、そう一気飲みされると複雑っす

 

「いやぁ、おかげで助かったよ!あのままじゃ下手したら死んでたぜ、まったくアスフィの奴め、加減を知らんのか、ちょ~っとファミリアの金をちょろまかしたくらいでボコボコにするとか、まったく酷いと思わないか!? 親切な少年!!」

 

「めちゃくちゃ自業自得じゃないっすか」

 

俺のポーションは基本的に体力回復なので相変わらずこの男神はボロボロっすけど、とりあえず会話できるくらいまで回復できたみたいっす

 

「ふむ、それにしてもここは・・・ディアンケヒトの療養所?ってことはアスフィの奴、()()()に会いに行ったのか」

 

「っ!?」

 

男神の口からカイトの名前が出てきたことに驚き、警戒心が煽られる

 

そんなこちらの様子に気付いた男神がこちらを見てニヤリと笑う

 

「おいおい、そんなに警戒しなくてもいいじゃないか」

 

「あんた・・・一体何者っすかっ!?」

 

「俺は無力なただの神だぜ?地上じゃ君達の方が遥かに強いんだ、もっとリラックスしてくれてもいいと思うんだが? なぁ、()()()()()()()()君?」

 

「!?」

 

(何で俺の名前を知ってるっすか!?)

 

 

お互い、・・・いや自分にだけ緊張が走る、相手は先程からまったく警戒も緊張もしていない、この男神が言ったように地上では神力を自ら封じている神々のほとんどは人より、特に恩恵(ファルナ)を授かった地上の人間より弱い

 

 

そして今、正体不明の男神に対して自分は敵意に近い感情を発しているというのに、この神は今だに余裕の表情を変えない、それがブラフなのかそれとも別に何かあるのか・・・不気味な雰囲気に気押されて身動きが出来なくなる

 

そんな風に硬直していると

 

「ぷっ、・・・ククククク、あっはっはっはっはっは」

 

突然目の前の神が大笑いし始めた

 

「何がおかしいっすか!?」

 

「い、いや、すまないラウル君、ちょっとからかったんだけど、あっっはっはっはっは『あんた!いったいなにものだぁ!?』ってぶっ!あっはっはっはっはっはっは」

 

この神、マジで笑ってたっす

 

「マジでなんなんすか・・・」

 

明らかに向こうはこちらへの敵意がないと感じられた

 

「~~~はぁー、笑った笑った、いやすまないね、本当に警戒はしなくていいぜ、俺はカイトの敵じゃあない、ちなみにカイトとの付き合いの長さでいえばかれこれ数年の付き合いになる、ルームメイトである君の数倍はあいつのことを知ってるぜ?」

 

嫉妬しないでくれよ?といいつつウインクしてきたっす

 

「はいぃ!?」

 

「さて、改めて自己紹介だ、俺はカイトの恋人であるアスフィの所属するファミリアの主神ヘルメス!、よろしく、ラウル君!」

 

「え、は、恋人!?はぁ!?えええええ!?」

 

脳の処理が追いつかない情報内容に驚くことしか出来なかったっす。

 

「ほらほら、ボーッとしてないでカイトの部屋まで案内してくれ、まだ入院中なんだろ? 意識の無い彼と会っても面白くないが顔を見るくらいはしてやらないとね」

 

「え、いや、実はさっきカイトの意識が戻って」

 

「ほう!そいつは重畳だ!なおさら会いたくなってきたよ、久しぶりだな~、何ヶ月ぶりだろう、アスフィとはコソコソ会ってたみたいだけど・・・」

 

 

案内しろって言いつつズカズカと療養所に入っていく神ヘルメス

 

仕方が無いのでカイトの部屋まで案内したんすけど・・・

 

「・・・んなっ!?」

 

「はっはっはっはっは!相変わらず面白いなカイトは!!」

 

俺と神ヘルメスが着いたカイトの部屋では

 

入り口のドアが細切れになり

 

何故かアイズさんが正座でカイトに説教されてたっす。

 

 

「い、一体何が・・・」

 

 

《side out : ラウル》

 

 

 

======================================

 

 

 

「・・・アスフィ?」

 

 

ラウルかと思ったら部屋に入ってきたのはアスフィだった

 

 

「久しぶりだなアス――――――――!?」

 

久しぶりの再会に喜びを隠しきれずに挨拶している最中にツカツカと足早に歩み寄ってきたアスフィにいきなりベットに押し倒されたあげく馬乗りされた所でキスされた

 

あ、ちなみにアスフィとのキスはこれが初めてではない

 

 

「んんんんんんん~~~~!?」

 

 

え、ナニコレ なんてご褒美?

 

「んん!?しああ!はいっへんんんんん!?」

 

あまりの速攻に大混乱

 

脱しようにもアスフィがこちらの頭をガッチリとホールドしているので動くことすらできない

 

しばらくはそのままお互いの唇を押しつけ合う淫靡な音だけがお互いを認識させていたが、それも徐々に感覚が短くなり、ようやく離れてたころにはどちらのかわからない膵液の橋が架かった

 

「―――――――――――――ん。」

 

(・・・なんか・・・もう・・・どうでもいいでひゅ・・・アヘがおダブルピーしゅぅー・・・)

 

恋人の奇行にフリーズ、というか昇天させられていると

 

 

「ふん!!」

「あべし!?」

 

ビンタされた

 

ナニコレ、やだコレ 

 

俺ってば目が覚めてから何回ナニコレって言えば良いの? 

まだあんの? 

こんな理不尽な展開がまだあんの?

 

「あ、あのですね、アスフィさん?キスは嬉しいんだけど、別に俺は叩かれて喜ぶ趣味は」

そこから先は言葉が続かなかった

 

殴られた頬をさすりながらこちらを見下ろすアスフィを見上げると

 

 

 

 

泣いていた。

 

 

 

 

もちろん俺が―――――ではない。

 

いつも気丈でプライド高く、美しさを持ちながらもかわいらしさも併せ持つ俺の愛しい人が

 

―――――泣いていた。

 

ポロポロ、ポロポロと真珠のような大粒の涙を止めることなく、隠すこと無く

 

―――――泣いていた。

 

その姿はまるで、迷子の幼子がようやく親を見つけたときの、それまでの恐怖を思い出して泣くときの様な、そんな困ってしまう表情で。

 

「え・・・と・・うぉ!?」

 

呆然としているところに泣いている顔を隠すように、俺の胸に押しつけるようにして抱き付いてきた

 

「・・・アスフィ?」

 

「わ・・・わ・たし・・・あ、あなが意識不明のじゅうた・・・い、でここ・・・に、運び込まれたって・・・きいて・・・心配で・・・死ぬほど心配でぇ・・・よかった、無事で・・・よか・・・たっ 生きてて・・・よかっだ・・・っ」

 

そこから先は言葉にならず、ただただ涙を流す声と嗚咽のみが続いた

 

「え・・・う・・・えっと」

 

混乱しつつも胸の中のアスフィの背中に手を伸ばす

 

泣き止まない赤子をあやすように、俺はただ、ゆっくりと背中をさすることしかできなかった

 

 

その時になって、まだ俺が村に居た頃に、じいちゃんが言っていたことを今更ながら思い出す

 

「カイト覚えておけ、女の涙はのぅ、ありゃもう男性特攻を持った兵器じゃよ、男があれに勝てないのは世界の理と言ってもええじゃろうなぁ・・・」

 

ああ・・・違いない、じいちゃんの言うとおりだ

 

卑怯すぎるだろ、これ

 

 

 

惚れ直しちまったじゃねぇか。

 

 

 

 

・・・惚気かよって? ああ、そうだよ惚気だよ、文句あっか!

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「・・・ン」

 

返事の代わりに俺の腕の中で頷くようにアスフィの頭部がモゾモゾ動く 

 

・・・かわいいかよっ!!

 

 

―――――――閑話休題

 

 

 

ようやくアスフィが落ち着いてきたので話を切り出す

 

「・・・すまん、心配掛けちまったか」

 

当たり前です

 

今度は小さな声できちんと返事が返ってくる

 

「ありがとな・・・でも・・・そっか」

 

「・・・?」

 

「いや、実はついさっき、意識が戻ったばかりみたいでな? たぶんアスフィが会いに来てくれるぞ~!って何となく俺の勘が囁いてくれたのかも、だから目覚めたのかもしれないな・・・ふふ、アスフィはやっぱ俺の女神だな」

 

「~~~~~~~~~~~!!」

 

恥ずかしくなったのか、アスフィが俺の胸にさらに顔をゴリゴリと押しつけて顔を隠そうとしてくる

 

(ナニコノ かわいい生き物!?)

 

恥ずかしがっているアスフィを微笑ましく思いつつも、現在の状況をようやく再認識した瞬間

 

 

脳に電撃が走る―――――。

 

 

 

彼氏と彼女

 

密室

 

時間は夜

 

雰囲気は最高ボルテージ

 

 

何も起こらないわけがなくっ!!

 

そんな事を考えているとどこからか声が聞こえてきた

 

ゆけぇぇぇぇぇカイトォォォォォ! 今こそ大人の階段を昇るときぞぉぉぉぉぉ!!

 

じいちゃん!?

 

そのままいくのじゃぁぁぁぁぁ、今こそ最終戦争(ラグナロク)の時ぃぃぃぃ!!

 

俺の中のじいちゃん?が俺の背中を後押ししてくる

 

でも、じいちゃん俺まだ13歳なんだけど!アスフィとか14・・・いやもう15になったんだったか・・・15歳なんですけど!?

 

安心せよぉぉぉぉぉ、この世界では12歳から成人扱いじゃぁぁぁぁぁ

 

マジかよじいちゃん!?

 

マジのマジじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ

 

おなごに恥をかかせるなぁぁぁぁあきらかに相手もわかっておるぅぅぅぅぅ

 

なぬぅ!?

 

そこで顔を桃色に染めたアスフィと目が合う、その瞳は確かに艶を持って俺を見つめていた

 

・・・ゴクリンコ。

 

喉が鳴る!

 

鳴ってしまう!!

 

いやさ、鳴らいでかぁ!!!

 

ゆけぇぇぇぇぇぇぇ我が孫よぉぉぉぉぉぉ

 

うおぉぉぉぉ!行くぜじいちゃん!!俺はいくぜ!!!

 

 

 

「・・・アスフィ」

「・・・カイト」

 

 

寝ている体勢のまま、上に乗ったアスフィのリボンをはずす

 

それだけで年齢に見合わない程に大きく育った胸の一部が露出する

 

初めての緊張と焦りで手が震えてくるが、今度はお返しとばかりに潤んだ瞳でアスフィが俺の服のボタンを外していく

 

お互いの荒い息づかいのみが妙に響き、心臓にいたっては息をつく間もないくらい早鐘を打っている

 

 

 

 

 

 

そこで

 

 

 

 

 

 

聞き取れないほどの斬激音と同時にドアが細切れになり―――――――

 

「カイトから離れて!!」

 

今からまさにというタイミングでお嬢が部屋に突っ込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼氏と彼女 ただし事情を知っている者は少ない

 

密室 ではあるものの鍵が掛かっているどころか半開き状態

 

時間は夜 といっても陽が沈んだばかり

 

雰囲気は最高ボルテージ のせいでお互い周りが目に入らなくなってる

 

 

確かに・・・何も起こらないわけがなかった・・・

 




周回に疲れたら息抜きに小説を執筆、小説の執筆に疲れたら息抜きに周回を、どっちも疲れたら小説を書きながら周回を・・・あれれ?おかしいぞ?俺はなにを言って・・・??


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18:羞恥×会合

礼装『C.K.T』 が全然ドロップしない・・・


《side:アイズ》

 

 

 

今日もカイトは目を覚まさなかった。

 

ダンジョン帰りに見舞いに寄ってはみたけど昨日と変わらずその瞳は閉じたままだ

 

私と同じように見舞いに来ていたラウルさんと帰路に着く

 

途中でラウルさんがカイトの部屋に忘れ物をしたらしく取りに戻っていった

 

 

 

 

 

 

その姿を見送ってから十数分後、本拠(ホーム)への距離が半分を切ったところだったと思う

 

「アイズさああああああああん!」

 

大声で私を呼ぶ声が聞こえてきた

 

(ラウルさん?)

 

どうしたのだろうか

 

「カ、カカカカッ・・・カイトが! カイトが目を覚ましたっす!!」

 

「!?」

 

(カイトが目を覚ました!?本当に!?・・・でも)

 

「アイズさん!何してるっすか!? 行くっすよ!!」

 

その事実に呆然となるがラウルさんの声で正気に戻る

 

「・・・うん!!」

 

その後はラウルさんに言われ、足の速い私が先んじてカイトに会いに行った

 

何も考えずに、とにかくカイトの部屋を目指してただ走る

 

しかし、療養所の中に入り、いざカイトの部屋へと向かおうとしたところで足が止まってしまう

 

 

(何を話せばいいんだろう・・・)

 

 

今回の事件で昏睡状態になってしまった原因は自分が未熟だったせいだ

 

本来なら守るべき立場の自分が逆に守られてしまった、そして実は、負い目を感じている理由はそれだけではない

 

そのことを改めて考えてしまい、どのような顔をして会えば良いのか今更になって怖くなってくる

 

(・・・でも)

 

ここで立ち止まっていても仕方が無い、まずは意識の戻ったカイトに会うわなければ何もできない

 

止めていた歩みを再開させ、カイトが居る部屋の近くまで来たとき

 

扉が半開きになっていることに気付く

 

(ラウルさん開けっ放しで来たのかな?)

 

今思い返しても先程までのラウルさんは相当焦っていたように見えたので仕方が無いのかもしれない

 

 

 

だが

 

 

「っ・・・!?」

 

 

 

開いた扉の隙間から見えた光景に息が止まる

 

何者かがカイトに馬乗りになり首を絞めている様に見えた

 

弛緩していた考え、思い、全てが冷め、それが一気に殺意へと切り替わる

 

 

 

 

 

実は、今回の件でアイズが必要以上に罪悪感を感じていたのには理由があった

 

初めて人との本気の殺し合い、それは、まだ幼いアイズに攻撃を躊躇わせるには十分であった、そのためフリュネ・ジャミールに放った最後の必殺の一撃も無意識ではあるが手加減した威力となり、結果としてそれがカイトが今回の昏睡状態に陥ってしまうことに繋がってしまった

 

故に

 

今のアイズは敵と認識すれば手加減という枷が外れていた

 

人であっても敵であれば一切の躊躇をしないと固く誓っていた

 

(もう・・・同じ過ちは犯さないっ!!)

 

 

「カイトから離れてっ!!」

 

相手に防御も反撃の隙も与えない、障害になる扉を切り刻み相手の意表を突いた速攻

 

 

しかし、それでも相手はこちらの攻撃を躱してきた

 

――――――違う。

 

見間違いで無ければカイトが何故か相手を突き飛ばした様に見えた

 

いや、敵の注意がこちらに向いた隙を突いて相手を突き飛ばしたのだろう

 

タイミング悪くこちらとカイトの攻撃が被ってしまったことによる失敗と判断

 

即座に追撃を―――――。 

 

そう思ったところでカイトが何故か敵との間に割り込んできた

 

どうして邪魔するの!?

 

「カイトどいて!そいつ殺せない!!」

 

「お、お嬢、落ち着けぇ! こいつは俺の知り合いだから!! 敵じゃないから!!!」

 

「・・・え?」

 

カイトの発言で一瞬、頭の中が真っ白になる

 

「え・・・でも・・・その人、カイトの首を絞めてた」

 

そう、確かに自分は何者かがカイトの首を絞めているのを見たのだ

 

「誤解!誤解だって!むしろ逆でアスフィは俺のボタンを外そうとしてただけで・・・あ」

 

「ボタン・・・?」

 

言われてみればカイトの入院服であるシャツのボタン部分が中途半端に外れていた

 

わざわざあんな体勢で?

 

そこで、敵だと思われた人物に目を移す

 

どうやら相手は女性のようだ、薄水色の綺麗な髪に眼鏡をかけたカイトと同じか少し上くらいの女の子だ

 

私と目が合うと、何故か顔を真っ赤にして目をそらされた

 

どうやら本当に敵ではないらしい

 

「・・・でも、何であんな体勢でボタンを?」

 

「うぇ!?・・・あ-・・・それはだな、その、ほら・・・俺ってばさっき意識が戻ったばかりでちょっと寝苦しくてさボタンを外そうと思ったんだけど起きたばかりで身体を動かしにくいなーって思ってるところにちょうどアスフィが見舞いに来てくれたからついでにちょっとボタンを外してもらおうと思ったらアスフィが思いの外不器用でな全然はずせないんだわそれで色々やってる内にあんな体勢になっちまっていやー大変だったよなアスフィ!!」

「え!?・・・ええ!!そうですね!!我ながらマジックメイカーであるというのにこの不器用さには辟易してしまいます、不器用すぎて何故か私のリボンまで外れてしまって本当に困ってしまいますねわたしもちょっとはずせないくらいでムキになってしまってあんな体勢でボタンを外すことになってしまうなんてええもう自分の不器用さにはあきれてしまいます!!」

 

「「はははははははははははははっ!!」」

 

すごい勢いで2人が事情をしゃべりだし、お互い納得し合って何故か笑い出した

 

 

(・・・?? でも、まぁ・・・いいかな)

 

 

「よくわからないけど、・・・カイトが無事でよかった」

 

何故だか分からないけど・・・このとき私は久しぶりに自然に笑えた気がした

 

 

「っっぐ!!」

 

 

カイトが突然、胸を押さえて苦しそうな表情になった

 

「カイト!?どうしたのもしかしてどこか痛むの!?」

 

「・・・いや、大丈夫だ・・・ちょっと良心の呵責に押しつぶされそうになっただけだから」

 

「・・・???」

 

またしてもよく分からないが、とりあえず大事ではないようだ

 

「・・・えっとそれでこっちの人は?」

 

「ん?・・・ああ、すまんすまん紹介が遅れたな、彼女は――――」

 

「こほん!・・・初めまして『剣姫』、私はアスフィ・アル・アンドロメダ、ヘルメス・ファミリア所属の者です、先程は誤解を与えられる様なことになってしまい申し訳ありません。」

 

ヘルメス・ファミリア?

 

いや、疑問に思うのは後だ、まずは先程のことを謝らねばならない

 

「は、初めまして・・・あの、こちらこそ さっきはごめんなさい、勘違いで斬りかかってしまって・・・」

 

「あなたはカイトの身を心配してあのようなことをしたのでしょう? なら私はあなたを怒ることは出来ません・・・もし私が同じ光景を見たら・・・そうですね、私は見間違いなどしませんから・・・自分を抑える自信がありませんねぇ・・・」

 

何やら意味深な感じで最後の方はカイトの方を見ながら言っていた

 

カイトの方は、そんな事しねーよ、と軽くあしらうように手を振っていたがどういう意味なのだろうか?

 

「それにしても、お嬢的には久しぶりって言えばいいのか?」

 

「うん、10日ぶり」

 

「はぁ!?・・・俺そんなに寝てたの!?」

 

「知らなかったのですか?」

 

アスフィさんが呆れたようにため息を着いている

 

「いや、さっきも言ったけどマジで目が覚めたばっかなんだよ、お嬢、この10日間で何か変わったこととかあったら教えてくれないか?」

 

「うん」

 

 

その後に私は、この10日の間に何が起こったのかを、私が知る限り説明していった

 

事件後カイトが瀕死でここに運びこまれたこと

 

首謀者はイシュタル・ファミリアのLv.3、それもランクアップ間近の『男殺し(アンドロトロノス)』ことフリュネ・ジャミールであったこと

 

今のオラリオの状況ではイシュタル・ファミリアに直接的な報復ができないこと

 

現在、ロキがイシュタルに対して報復の代わりの制裁を加えるために神イシュタルと直接話し合いをしているということ

 

そして最後に、ラウルと自分が責任を感じていること

 

 

「・・・ごめんなさい」

 

全てを話し終わった後に改めて私は頭を下げて謝った

 

何故謝る必要があるのかと、カイトに聞かれたので頭を下げたまま答える

 

今回、自分が相手に手加減を加えてしまったせいでこのような事態になってしまったこと等を伝えた。

 

そしたら―――――

 

「お嬢、顔を上げてくれ」

 

そう言われたので顔を上げると

 

ビシ!!

 

「あう」

 

額にデコピンをされた

 

「馬鹿野郎・・・とりあえずお嬢、ちょっとここに正座なー」

 

「・・・」

 

罰か何かだろうか、でもその程度の罰で許されるものではない

 

「いいか? あの時の俺たちはパーティだ、そんでもってLv.1とはいえ一応俺がリーダーだ、その俺の判断でこうなったんなら・・・そりゃ俺の責任だ」

 

「―――――でも!「確かに!・・・お嬢やラウル達が責任を感じる必要は全く無いとは言わない、だが責任の感じすぎはダメだ」

 

「でも私はLv.2で、守らなきゃいけなかったのに」

 

「別にいいだろ、お嬢―――――、俺たちは全員生きてダンジョンから帰れたんだ、それでいいじゃねぇか、でもそうだなそれでも言うべき事があるとしたら」

 

カイトの手が私の頭を優しく撫でてくれる

 

―――――――――お疲れ様。

 

こんくらいのもんだろ? あの時の様にニカッと笑いながらそう言った。

 

 

「――――――あ」

 

それだけで心の闇が晴れ渡っていく

 

事件後からずっと私を縛って苦しめていた何かが霧散していく

 

何故だろう、とてもポカポカするのに目がぼやけるのは

 

何故だろう、とても気分が良いのに涙が流れるのは

 

 

何故だろう、何故だろう、何故だろう

 

幸せだった昔を、父を、母を、皆を思い出すのは

 

不思議な感覚だった、まるで自分に兄が出来たような、そんな変な感じ

 

不思議な感情に困惑している内に、ラウルさんと神ヘルメスが現れ、ラウルさんも私と同じようにカイトと今回の件の話をして説教されていた

 

お疲れさん

 

ラウルさんも私と同じことを言われたようだ

 

心なしかさっきよりもラウルさんの顔が晴れやかになったような気がした。

 

 

 

 

 

《side out:アイズ》

 

 

 

==============================================

 

 

 

アスフィとヘルメスのことをアイズとラウルに簡単に説明した後、ラウルにはロキ達へ俺の意識が戻ったことを伝えに、一旦本拠へとひとっ走りしてもらった

 

そして現在、この病室にロキ、フィン、ガレスのおっさん、リヴェリア、ヘルメス、アスフィ、そして最後にこの部屋の仮初めの主である俺の、総勢7名が雁首を揃えていた。

 

ちなみにお嬢とラウルは、今から行われるであろう話し合いを聞かれないように廊下で人払兼護衛をしている

 

 

「そーれーでーカイト~・・・これはいったいどういうこっちゃねん」

 

こちらの頬をゴムのように引っ張りながら好き放題にしつつロキが聞いてくる

 

「にゃにがだ」

 

扉のことなのか、それともヘルメスのことなのか、アスフィのことなのか、代名詞が指す()()が多くて特定できない

 

っていうか俺の顔で遊ぶのをいい加減止めろ

 

「せやなー、それじゃまずこの胡散臭い神との関係からやな」

 

「別にそんなに大した話じゃない、この胡散臭い馬鹿との出会いは数年前からでな・・・」

 

「ねぇ、ナチュラルに俺をディスるの止めてくんない?」

 

 

無視して俺はヘルメス(バカ)とはオラリオに来る前、住んでいた村の近くにある遺跡の調査とやらで訪れた際に何度か会っていたことを話した

 

そしてその際に同行していたアスフィと何度か会う内にお互い恋仲になり将来を約束した仲であるということもついでに話す。

 

 

話し終わった後で、ほとんどの者が顔を苦渋に染める

 

その中でロキが口を開く

 

「カイト、知っとる思うけどな、異なるファミリアの者が一緒になるいうんはかなり難しいことなんやで? そりゃ例えばファイたんとこの子とかとやったら、うちとファイたんの仲がええから問題ないかもしれんけど、それですらかなり難しいんや」

 

「知ってる」

 

ちなみにファイたんと言うのは世界一の規模と実績を誇るオラリオ最大の鍛冶ファミリアである、ヘファイストス・ファミリアの主神、燃えるような灼髪に右目の眼帯が有名な神ヘファイストスのことだ

 

「やったら、何でうちのとこに入ったんや? その子がヘルメスんとこの眷属なら・・・嫌やけど!めちゃくちゃ嫌やけど!!・・・そのままこいつのファミリアに入った方がよかったんちゃう?」

 

自分の眷属に、他の派閥のファミリアに入った方が良かったのでは、そう言ったときにロキの顔はとても嫌そうで苦しそうな表情だった

 

そんなことを実は眷属への愛が人一倍強い女神に言わせてしまったことを申し訳なく思う

 

反論するために、ロキが来てから静かにしていたアスフィにアイコンタクトで確認を取る

 

「・・・かまいませんよ」

 

話しても言いという許可が出たので全てを話すことにする、最悪このファミリアを出て行くことになるかもしれないが覚悟の上だ。

 

「入団での面接でも言ったが俺は婚約者、そこにいるアスフィと一緒になり、アスフィの親にも認められたい、そのためには世界に轟くような名声がいる、ここまでは話したよな?」

 

確認を取りつつ話を続ける

 

「ヘルメスのファミリアはダンジョン探索がメインじゃない、色んな商売にも手を出してるから、強くなりたい俺の目的とは微妙に合致しないんだ、そりゃあ、ヘルメスの所でもダンジョンには潜れるには潜れるが、俺が求める名声ってのは中途半端な名声じゃ駄目なんだ・・・何故なら、アスフィの親は、()()()()()()()、つまりアスフィは()()()()()()()()なんだ、ただの村人だった俺が認められるには冗談とか、目標とか、夢じゃない、俺は・・・本当の意味で世界に轟くほどの栄誉が欲しいんだ・・・」

 

俺の話した内容に全ての事情を知らなかったロキ・ファミリアの面々が絶句

 

特にアスフィが王族であるということ、そして俺が夢物語のような()()になりたいという台詞に唖然としている

 

だが、俺は本当にそれを目指しているんだ

 

「・・・ロキ、もしアスフィとの仲が認められないなら、俺は・・・」

 

そこから先は言葉にできない、したくない

 

まだ半年とはいえ家族同然・・・いや、もはや自分にとっての第二の家族と言ってもいい帰るべき場所になっているとこを辞めるなど・・・

 

だが

 

それでも

 

課程のために目的をあきらめるなど本末転倒もいい話だ

 

―――――――――それだけは絶対に出来ない。

 

 

・・・・・・・・・・・。

 

 

部屋に沈黙が続く

 

 

それを破ったのは意外にもヘルメスだった

 

「・・・ロキ、取引と行こう」

 

「・・・なんやねん」

 

「今後、俺たちのファミリアはそっちのファミリアの依頼を優先的に受ける、もし眷属の中に遠く離れた家族に手紙や物を贈りたいといったものもあれば他よりも優先しよう、どうだい? 2人の仲を認めるとはいかなくとも黙認するくらいはしてもらえないか、どうせ今すぐどうこうなるものではないだろう?」

 

「ヘルメス・・・お前・・・」

 

「気にするな俺と君の仲だろう?」

 

感謝の言葉を言おうと思ったがこちらに向かってウインクしてきたので言う気が失せた

 

「・・・なんか気持ち悪」

 

「はははははは!!照れるな照れるな♫」

 

「照れてねーよ!」

 

たとえ照れていてもこいつにだけはそんな事言いたくない

 

そんな風に少し場の雰囲気が弛緩し始めたとき

 

「・・・~~~~っだぁああああああああああ、わかった!うちの負けやぁ!!好きにせぇ!!」

 

ロキが折れてくれた

 

「・・・ロキ」

 

「ただしや!さっき言ったヘルメスの条件は全部飲んでもらうで!うちには森から出てきたエルフの子がぎょーさんおるから覚悟せぇよ!!」

 

ビシィっとヘルメスに指を指して宣言するロキ

 

「わかっているさ、俺はヘルメスだぜ?約束は守るよ」

 

それに対して軽い調子で返答するヘルメス

 

軽く受け流されたロキは不機嫌になり、乱暴に椅子に腰掛ける

 

「・・・ふん、それにしてもお前が眷属のために・・・いやそれ以外の者のためにも動く甲斐性があったとは思えないんやけどなぁ」

 

「なに、偶には子供の機嫌を取ってやらないとね、これでも自分の子を俺なりにではあるが大切に思ってるんだぜ?」

 

まだ、神々の間で確執がありそうだがとりあえず話はまとまったと判断してもいいのだろう

 

(・・・やったなアスフィ)

 

(はい・・・カイトもお疲れ様です)

 

アスフィと無言で目を合わせお互い、喜びをあらわにする

 

 

 

そうやってようやく話が平和にまとまり後は解散かと思われたとき

 

「それはそうとカイト、さっきは聞きそびれてしまったんだが・・・何で扉が細切れになってるんだ?」

 

ヘルメスのバカがとんでもない爆弾を投下してきやがった

 

(くっ、誤魔化せたとおもったんだが・・・)

 

「あー・・・それな、いや、実は俺の部屋に居たアスフィを襲撃に来た敵対派閥の刺客と勘違いしたお嬢が――――――――」

 

仕方が無いので嘘を混ぜず、そうなってしまった原因を話さないようにいい訳をする

 

 

「・・・ふーん、『剣姫』がねぇ?」

 

「アイズたんったら・・・お茶目やなぁ☆」

 

 

ロキ達の後ろでは今の話を聞いたフィン達も苦笑い、リヴェリアは例によって例の如く、頭痛を堪えるように眉間のシワをもんでいる

 

「まぁ、そういうわけで扉がご臨終なさってしまったというわけだ」

 

(ヨッシャ!イケる!このまま誤魔化しきれる!)

 

そう勝利を確信してしまったのがいけなかったのか

 

「ん~?・・・それは本当のことなのかなぁ~」

 

ヘルメスの野郎が何かに気付きやがった

 

(こ、こいつ 余計なことを言うんじゃねぇ!!)

 

 

「カイト~ちょ~っと、質問に答えてくれるかな、一つだけでいいんだよ、うん一つだけ」

 

「な、なんだ、よ」

 

ニヤ~っとでも聞こえてきそうな笑みでこちらを向くヘルメス、嫌な予感しかしない

 

「アスフィと何か『いや~ん♥』 なことでもしてた?」

 

「「ブッ!?」」

 

俺とアスフィが同時に吹いた、まさかここまでド直球な質問が来るとは!?

 

「っ・・・・・・・」

 

それに対する俺の答えは沈黙、

 

地上の子は神々に対して嘘をつくことが出来ない、より正確に言うならば嘘をついてもすぐにそれが嘘とわかってしまう

 

そのためここで、それを拒否してもすぐに嘘だとバレる

 

だが、真っ正直に、「ハイしてました、でも未遂なんで無罪です」

 

―――――なんて言えるわけがない。

 

かといってこのまま沈黙を続けるのは肯定しているのとさほど変わらない

 

(助けてクラピカァ!!得意のクラピカ理論で助けてくれぇ!!)

 

非情なるかな

 

偉大なクラピカ理論の提唱者、クラピカの「沈黙こそが正解」もここでは通じない

 

 

(もう・・・万事休すなのかっ・・・俺に救いの手はないのか!?)

 

そう絶望しかけたとき、俺の肩に優しく触れる手が置かれた

 

「・・・ロキ?」

 

唯一の希望に一縷の望みを懸け、振り向いた先で見たロキの顔は―――――――――

 

「ホッホーウ? それでそれで? カイトー? わいも続き聞きたいわ~、ほほう?ほほう?」

 

悪戯小僧・百割増しみたいな顔でこちらを煽ってきた

 

「ロキィィィィィィイイ!? 貴様もかぁ!?」

 

まさかのロキの裏切りである。

 

「ほほう?ロキ、君も気になるかい?」

 

「ほほう?何、当たり前のこと言うんねん、自分の子供の貞操やぞ?こんなおもしr・・・大変な案件見逃せるかい!!」

 

最悪のタイミングで最悪な奴らが意気投合しやがった

 

「てめぇ、ロキ! 今確実に面白いって言いやがったな!? てかお前らさっきまで険悪な雰囲気だったじゃねぇか、なに結託してんだボケ共がぁ!!」

 

それから俺の周りをほっほーう、ほっほーうと言いながらウロチョロするアホ共

 

フクロウかてめーらは!?

 

 

ちなみにフィン達は呆れて部屋を出て行った

 

アスフィに至っては部屋の隅で体育座りでうずくまり、耳を塞いで自閉・・・というか現実逃避に走ってるし

 

 

「「ほっほほーうカイトほっほほーう?」」

 

 

「うぜぇええええええええええ!!!」

 

 

 

こうして俺の久々の目覚めは最悪のまま終了し(結局この後、全部がバレた)

 

一連の事件は騒がしいままで終了した。

 

 

 

 




ちなみに主人公カイトのカリスマはMAXです。後半はノリノリで書けたw。

PS:金リンゴ・・・シャクシャク・・・周回周回・・・
  (^o^)<オメデトウゴザイマース 金リンゴ追加でーす
  (0д0∥)イヤァァァアアアアアアア

  リンゴ・・・減らない・・・。



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様々な出会い編
19:昇格×降格 前編


長くなったから前編と後編に分けるね☆・・・・・・80箱ナウ(´д`)


《side:フィン》

 

今日は10日に一度のロキ・ファミリア幹部会--------と仰々しく言ってはみたけれど、要はただのお互いの情報交換と既知情報の確認といった報告会だ

 

今回のメインの情報は大きく分けて四つ

 

最初は闇派閥(イヴィルス)への討伐作戦の計画に関して、まずはこれがメインだろう

 

二つ目は新人団員及び下級団員の育成状況

 

三つ目は遠征に関してだが、現状では難しいので愚痴や雑談だけで終わるだろう

 

そして

 

最後の四つ目が、カイトに付随して着いてきたイシュタル・ファミリアとヘルメス・ファミリアに関することになるだろう

 

そう思案しつつ、もはや自室と言っても差し支えない団長室に入ると、既にリヴェリアとガレスが待っているところだった

 

「おや、やっぱり僕が最後かな?」

 

「いや、ロキがまだだな」

 

リヴェリアに言われて部屋を見渡すと確かにロキだけが見当たらなかった、けっこうギリギリだったので自分が最後だと思っていたがどうやらロキはまだ来ていないようだ

 

「まぁ、あやつのことじゃその内来るじゃろ」

 

主神抜きで報告会はできないのでしばらく待つこと数分、雑談をしつつ時間をつぶしてはいたものの、姿を見せないロキにリヴェリアが愚痴を流し始めそうになったとき

 

バン!!

 

「いや~!スマン!!遅れてもうたわ、堪忍してや~!」

 

ロキが扉を勢いよく開けつつ駆け込みように入室してきた

 

「・・・遅いぞロキ」

 

リヴェリアが不機嫌そうに言ってくる

 

「いや、ホンマすまんて、カイトに療養所まで呼ばれてステイタスを更新したんやけど・・・そこでちょっとなー?」

 

またか、と 思うのは早計だろうか、それともやはり、と言うべきか

 

ちなみにリヴェリアは前者の様に考えたのかため息を

ガレスは腕を組んだまま面白そうに笑っている

 

「もしかして、()()何かあった?」

 

こと、ここに至る少し前から僕は、カイトを常識や普通といった枠組みに当てはめるのを諦めている、逆に次はどんな面白いことをしたのかと興味深く思うようになった、我ながらそれは団長としてどうなのかと思うがカイトに関しては好奇心の方が勝ったようだ

 

「まぁ、これは会議の最後に話すとするわ」

 

僕の質問に対して楽しそうにニッシッシと笑いながらロキがはぐらかしてきた

 

ふむ、・・・どうやらメインの議題に五つ目が追加されたようだ

 

議題のタイトルは何だろうか 『~今日のカイト~』とかだろうか?

 

いや、彼はそんな可愛い感じは似合わないか・・・

 

「じゃ、はじめよか~」

 

そんなどうでもいい戯れ言を考えつつ会議は始まった。

 

 

 

「―――――――――――では、ヘルメス・ファミリアとは同盟では無く良好な取引相手ということで今後対応していくことでいいな?」

 

「それがええやろな、あいつは癖もんの多い神々の仲でも指折りや、さすがにカイトのためとはいえ同盟を組むのはちょっとなぁ・・・幸いあっちもそれを望んどるようやし、よほどの大問題でも抱えん限り同盟はしとうないなー」

 

同盟というのは言ってしまえば一蓮托生、いくらカイトのためとはいえ、たった一人の団員のために他派閥のファミリアと同盟を結ぶことはできない

 

「・・・ま、そんな所じゃろうな」

 

決定した内容にガレスも賛同する

 

「とりあえず予定通りの議題はこれで大体は話おわったね」

 

闇派閥、団員の育成状況、次回の遠征、そしてイシュタルとヘルメスのファミリアとの今後の付き合い方についての意見も全員の賛同を得てとりあえずではあるがファミリアの行動方針がとりあえず決定した

 

「・・・じゃあロキ、君が先程から話したがっている内容を聞いてもいいかい?」

 

ロキが会議の最中もどこがずっとソワソワしていたのはここにいる全員が気付いていた、他の団員なら気付かないささいな違いだが、付き合いの長い僕たちにはわかりやすすぎる違和感だ。

 

「ありゃ、やっぱばれてもうた?」

 

ロキが笑いながら舌を出して茶目っ気たっぷりにあっけらかんと答える

 

「バレバレだよ、僕たちに隠し事をするならもっと上手くやらなきゃ・・・それで?」

 

「ニヒヒヒヒ! いやな~カイトが面白すぎてな?・・・言う前に聞いとこか? カイトに関して、めちゃくちゃええ話が1個、そこそこ悪い話も1個、面倒くさそうな話が2個・・・いや、やっぱちょい待って・・・面倒くさそうな話が1個におもろそうな話が1個や、さてどれから聞きたい?」

 

面倒くさいという話が途中で2個から面白い話とやらに分かれたのが気になったが

 

(結局は全部聞くことになるからどれからでも良いかな、他のメンバーの意見に合わせるとしよう)

 

「別にどれでもいいが・・・儂は良い話とやらから聞きたいのう」

 

「・・・僕も良い話からがいいかな」

 

「私はどれからでも・・・いや、やはり他の二人と同じで良い話とやからが良いな、悪い話から聞いた場合その場で私の胃に穴が空きかねん」

 

「あれ、僕の胃の心配は?」

 

「お前は既に奴のすることを[面白い]ですませて、事前の問題解決を諦めているだろう・・・」

 

「あいかわらず心配性だのう」

 

「小言を言う者が一人くらい居らねば、このファミリアはとっくの昔に混沌と化しているぞ・・・」

 

三者三様の反応をロキが確認して口を開く

 

「ほな、決まったな! でな?でな?良い話ってのは・・・カイトのランクアップや!!所要期間半年!最年少とはいかんけどアイズの最速記録を抜いて新たな世界記録保持者の誕生や!!」

 

ロキの発言に全員が絶句する、だが、最初からそれなりに覚悟を決めていたのですぐに我を取り戻して嘆息する

 

「ふぅ・・・さすがは僕が選んだ次期団長候補、とでも言うべきかな?」

 

さすがの僕でも乾いた笑いしか出てこない

 

「信じられん・・・あのアイズでさえ一年、それすら異常すぎる速さだったというのに」

 

リヴェリアに至っては未だ半信半疑のようだ

 

「ガッハハハハハハ、彼奴ほどの男が死の淵に立たされる程の死闘をしたんじゃ、通常の経験とはわけがちがったんじゃろう、むしろ今回のランクアップに儂はむしろ納得じゃぞ!!」

 

カイトを推しているガレスはむしろ自慢げな様子だ、一番期待しているカイトが期待していた以上の成果を出したことが嬉しいのだろう

 

それにしても、確かにこれはビッグニュースだ、限りなく低い可能性の一つとして考えてはいたが本当にランクアップを果たすとは・・・

 

「じゃあ、サクサク次いこか、悪いニュースはカイトのステイタス値がおかしなことになっててなぁ・・・」

 

「・・・例のスキルか?」

 

この場に居る全員が心当たりのある原因を思い出す

 

目が覚めたカイトから後日に聞いていたが、やはりカイトは僕たちが使用を禁じていたスキルを使用していた、だが今回は使わなければ死んでいたであろう状況なのでさすがに不問としていた

 

「本当にスキルの影響でステイタス値が下がるのか・・・ロキ、ステイタスの写しは持っているか?」

 

「あるでー」

 

そういってポケットから折りたたんだ紙をリヴェリアに渡す、それを見たリヴェリアの顔が曇る

 

「なんだ・・・これは・・・さすがに初めてみるぞこんなステイタスは・・・色々な意味で意味がわからん」

 

「儂にも見せてくれ」

 

リヴェリアからガレスに渡ったステイタス紙を横から僕も一緒に見せてもらう

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カイト・クラネル Lv.1

 

 

 力:C⇒D 612⇒514 (-98)

耐久:D⇒C 545⇒634(+89)

器用:C⇒C 671⇒660(-11)

俊敏:C⇒C 680⇒658(-22)

魔力:A⇒S 890⇒982(+92)

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・・・・ロキ?」

 

ナニコレ

 

上昇しているステイタスの上昇具合も異常だがプラスとマイナスがぐちゃまぜになっていた

 

「やから言うたやろ-?わけがわからんことになっとるってー」

 

カイトのスキルは出た目に従い何らかの能力が発現する、そしてそれをキャンセルするには出た目の数×100のステイタス値が下がるというのは初期の段階でここに居る全員が知っていたが、この紙を見る限り上がっている物もあれば下がっている物もある

 

 

「これはいったい・・・・・・あ」

 

そういうことか

 

「ガレス、ちょっとその紙を貸してくれ」

 

あまりに異質なステイタス紙の内容に当たり前のことを忘れていた

 

「さっすがフィンやで!もう何か気付いたんか?」

 

「ああ、たぶん本当の・・・というか、わかりやく書き直すとこう言うことだと思うよ」

 

気付いたことを、ステイタス紙に訂正して書き込んでいく

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

カイト・クラネル Lv.1

 

 

 力:C⇒D 612⇒514(-200)(+102)

耐久:D⇒C 545⇒634(-100)(+189)

器用:C⇒C 671⇒660(-100)(+89)

俊敏:C⇒C 680⇒658(-100)(+78)

魔力:A⇒S 890⇒982(-100)(+192)

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「割り当ては適当だけと、たぶんこういうことだと思うよ」

 

当たり前のこと

 

ランクアップするほどの戦闘をしたのならそれに見合うほどのステイタスの上昇もあって当然のことだ、おそらく最初の数値はカイトの上昇値からスキルの影響で下がったステイタスを合算した数値なのだろう

 

「あ~~~、あかんボケてたわ、確かにステイタスも上昇するわなぁ、スキルにばっか目がいってそんな当たり前のことも忘れてたわ・・・」

 

ロキが灯台もと暗しの様な状態に天を仰ぐ

 

「まぁ、ステイタスが下がるなんて現象は彼奴だけじゃろうからなぁ、ロキ、お主も、物珍しくてはしゃぎすぎたんじゃないか?」

 

確かに、ガレスの言うとおり初見では僕もこのステイタスには面食らってしまい、すぐには意味がわからず混乱してしまったのでロキを馬鹿にはできない、だが これよりもさらに見落としていることがあるのを皆は気付いていない

 

「ここでの問題はステイタスが下がったことよりも、何故下がったのかだ」

 

「・・・どういう意味だ? カイトはスキルをキャンセルしたからこそステイタスが下がったのだろう?」

 

リヴェリアですらこれには気付いていないようだ

 

「いや、カイトからそんな事・・・スキルをキャンセルしたとは聞いていない、というよりそんなことに意識を割く余裕は無かったはずだよ」

 

「確かに、彼奴から聞いた話では最後の技を出してからの記憶が無いと言っておったな」

 

「つまり、自動でスキルがキャンセルされたっちゅーことか?」

 

「たぶんね・・・しかも、だ カイトがあんな状態になってまで放った技を使用してもカイトのスキルはそれでは[使用していない]と判断したということになる」

 

「強力な分、やっかいなスキルじゃのう」

 

まったくだ、[使用した]ということになるのにも何か条件があるのかもしれない・・・明日、もしくは近い内にでもカイトに使用する際での条件に何か心当たりが無いか呼び出してでも聞かねばならないだろう・・・まぁ、今の彼はかなりヒマを持て余しているだろうから、こっちから出向けば喜んで答えてくれるかもしれないが

 

「そういえば、そのカイト自身の容態はどうなのだ? もちろん怪我の方ではないぞ・・・」

 

リヴェリアが眉間にシワを作りながらあきれ声でロキに質問しているが・・・無理もない

 

そもそも、カイトが目覚めてから既に一週間、本来ならとっくに退院している頃合いなのだが、カイトは未だにディアンケヒト・ファミリアの療養所に入院している

 

原因はカイトが目覚めたその日の晩に起こった、あろうことかカイトは絶対安静の身であるにも関わらず夜中に療養所を脱走、着の身着のまま、ロキ・ファミリアがひいきにして飲み会や祝い事での食事会を行う「豊穣の女主人」に突撃、顔見知りで店主でもあるミアを説得しツケで大量の料理を注文し、さらにそれを完食

 

当然のことながらカイトは目覚める10日間は意識不明の昏睡状態、食事は点滴のみであった、そんな状態の人間が起きたその日に大量の食事を取ればどうなるか・・・

 

店主のミア曰く、全てを食べ終わって数秒後、とてつもない笑顔で「ごちそうさま、生き返った気分だぜ!!」と言うと、白目を剥きながら泡を吹いてぶっ倒れたそうだ、ちなみにこのときのカイトの状態は割と本気でヤバかったらしく、現在カイトにはまた脱走しないように24時間体勢でディアンケヒト・ファミリアの団員が監視についている

 

「生き返った気分の瞬間に死ぬとはのう・・・」

 

ガレスが髭を撫でながらシミジミとつぶやく

 

「いや、生きてるから」

 

ちなみに、次の日の昼には驚異的な回復力でカイトは目を覚ました

 

「でも、マジでぶっ倒れた後に心肺停止してたみたいやで~」

 

ケラケラと面白そうに語るロキ

 

「カイトは頭が良い奴だと思っていたのだがなぁ・・・」

 

至極残念そうにため息を吐くリヴェリア

 

 

「・・・とりあえず話を戻そうか、残りは面倒と面白そうな話だったよね?」

 

内容が脱線しかけたので話を戻すように誘導する

 

「ん~、まぁここまできたら順番に話そか・・・面倒ってのはカイトに発現した発展アビリティなんやけど」

 

「ほう、やはり何かを発現させたか、それで? 何が出てきた?」

 

発展アビリティというのは、レベルへのランクアップ時のみに発現する専門職の能力だ

 

例えば鍛治師なら鍛冶に関するアビリティが、魔法使いなら魔法に関するアビリティ等々、それまで本人が何に関わりどのような経験をしてきたかによって発現する特殊な能力、ランクアップするまで本人がどれだけ頑張ったのかという特典ボーナスみたいなものだ

これは複数のアビリティを発現する者もいれば1つも出てこない者もいる上にその種類は千差万別、だが凡庸性の高い人気のアビリティや希少なレアアビリティを発現できれば、それからの冒険者としての活動が飛躍的に楽になるので慎重に決めねばならない、何しろ一定のランクから上がるときにしか手に入らないアビリティも存在するからだ。

 

「とりあえず、3つも出てきててなぁ・・・」

 

3つ、1つも発現できない者からすれば羨ましいことこの上ないだろう

 

「多いな・・・それで?」

 

「1個目は【狩人】や」

 

ロキが指を一本立てつつ話す

 

【狩人】一度でも勝利したモンスターと戦闘する際にステイタスが上昇するというレアの人気アビリティだ、このアビリティは取得条件が判明しているにも関わらず発現させる者は少ない、なぜなら取得条件が〈短期間の内に大量のモンスターを倒す〉という達成するのが困難なものとなっているからだが、カイトは見事にこのアビリティを発現させることに成功したようだ

 

「まぁ、あれだけモンスターの群れに突っ込ませれば当然かな?」

 

「お主、笑顔でえげつないことをするのう・・・」

 

 

間。

 

 

「2個目は【対人】やで」

 

【対人】は文字通り人間を相手にした際、ステイタスに上昇補正がかかるアビリティだ、これも取得条件がわかっており、〈激しく人同士で闘争を行う〉というものだ、ただしこの闘争は生半可なものでなくそれこそ生きるか死ぬかくらいの戦いをほぼ毎日行わなければ発現しない、これを発現する者が一番多いのはコロシアムで闘う剣奴であったりする

 

「ガレス?・・・お前は一体どれだけカイトを・・・」

 

このアビリティを発現したことに対して、カイトの訓練のほぼ全てを担っているガレスにさすがのリヴェリアもドン引きしていた

 

「フツウノクンレンヲシタダケジャ」

 

何でカタコト?

 

「いや、だってこれかなりの殴り合いとかしないと・・・」

 

さすがの僕も一言出てしまう

 

「フツウノクンレンヲシタダケジャ」

 

「「・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

今度からカイトの訓練には僕かリヴェリアも参加(監視)することになった

 

 

「・・・・・・チッ」

 

 

僕は何も聞かなかった、うん

 

 

 

間。

 

 

「最後の三つ目は【奇運】や、ちなみに文字は〈奇妙〉な方の〈奇〉や」

 

 

 

 

「なるほど【奇運】か・・・」

リヴェリアが頷き

 

「【奇運】・・・のう?」

ガレスが髭を撫で

 

「【奇運】かぁ・・・」

僕は天を見上げた

 

 

「「「・・・ナニソレ?」」」

 

()しくも長年の付き合いである三人の口調が消え去り、言葉が重なる貴重な一瞬だった。

 

 




週1~10日くらい間隔での投稿を目指しますねー(・ω・)

PS:それにしてもHP1000万の敵とかやべぇっすねぇ・・・


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20:昇格×降格 後編

ハーレムヒロイン二人目登場(・ω・)

いつもの独り言☆
ギル祭は130箱くらいで終了、超高難易度?楽勝でした(ただしジャガーは除く(´д`))


《side:ロキ》

 

 

「――――――で? 結局、この三つ目のアビリティについての情報は全くなしってことか-・・・どうすっかねぇ」

 

場所はディアンケヒト・ファミリアの療養所、その中のカイトが監禁・・・もとい入院しとる病室

 

うちの前にはベットから上半身を起こした状態のカイトが頭を悩ませとる

 

 

 

カイトのステイタスの更新とファミリアの会議から二日

 

あれからフィン達とカイトについて話した後、ギルドで珍しい発展アビリティについて聞いてはみたがやはり【奇運】という名のアビリティどころか〈運〉という字が付くものすら見つからなかった。

あまりしつこく聞いても逆にこちらの情報を探られる可能性があるためそこまで深くは聞けなかったが、少なくともギルドではあまり聞かない・・・というより聞いたことのない新アビリティである可能性が高いということが判明した。

 

(それにしても【奇運】てなんやねん、これが【幸運】とか【不幸】とかならわかりやすいんやけどなぁ・・・)

 

「ロキ的にはこのアビリティ、当たりだと思うか?」

 

「んー・・・どやろなぁ、でも字から考えて間違いなくクセの・・・それも相当尖り方が強いアビリティやないかなぁ・・・〈奇〉と付くものにまともなもの期待せーへん方がええ、なにせ自分、天界じゃ異名で奇術師(トリックスター)って呼ばれててな? 自分で言うのもなんやけどろくでもなかったで?」

 

「なるほどぉ~、つまりこのアビリティはロキ並に駄目でクズでダメダメダメダメダメダメ――――」

「そこまで言っとらんわ!?」

 

この子はもうあれやな!?うちのことなめきっとるな!?

 

 

「カイト、うち主神な?偉い神様な?忘れとらんよね?」

 

親しき仲にも礼儀ありやで?

 

She(シー)テルよ?」

 

「・・・・・・」

 

嘘や無いとわかるけど・・・何やろかこの騙された感じは

 

「はぁ~・・・とりあえずや、このアビリティを選ばなくても【狩人】なんてレアアビリティも発現しとるんや、わけのわからんもん選ぶより、こっちを選ぶのも全然アリやで? むしろ普通ならそうするやろな」

 

実際、この【狩人】のアビリティは手っ取り早く強くなるのに最適なアビリティという理由だけで人気なのではない、このレアアビリティはLv.2にランクアップするときにしか発現しない限定アビリティでもあるからだ、故にいくら未知のアビリティといえどこれから先のことを考えると【狩人】を選択しないという判断は非常に難しい

 

堅実に【狩人】か、それとも大博打に出て効果のわからない【奇運】という謎のアビリティにするのか、こればかりはカイト自身が決めねばならないことだ

 

(幸い、考える時間はあるからなぁ・・・カイトには言うてないけどな、ニヒヒヒ)

 

悪戯心から珍しくカイトが悩む姿を楽しもうかと思っていると

 

「じゃあ【奇運】でいいや」

 

カイトがあっけらかんと言うてきた

 

「は?・・・いやいやいやいや! もちょっと考えた方がええやろ!? なに今日のお昼を決めるみたいなノリで決めとんねん!?」

 

うちの話聞いてたんかこの子は!?

 

何も考えてないのではなかろうかと、さすがに口を出してしまう

 

「ロキがさっき言ってたじゃん、()()()()って・・・俺の目標は普通じゃたどり着けないからこそのこの選択だ、俺の夢は時間制限も付いてんだぜ? アスフィはいつまでも待つって言ってくれてるけど俺はあいつを行き遅れにするつもりはねーんだよ」

 

こちらを見返すカイトの決意とその目があまりに真摯すぎて一瞬気圧される

 

「そ、そやな・・・・・・・いや、そやったな」

 

先日のアスフィちゃんとの告白からこの子がどれだけ途方もない夢に向かって走っているのかを思い出す

 

文字通りのお伽話の様な夢

 

ただの村人が冒険者になり、そしてそこから成り上がって一国の姫を娶るという、聞く者が聞けばどこの作り話だと馬鹿にされるような夢だ

 

「んじゃ、さっそくランクアップの更新よろしく~」

 

うちがこの子の目指すものの難しさに複雑な思いをしているというのに、カイトは軽そうに言って上着を脱ぐために着ている服のボタンに手をかける

 

(この子はホンマにもう、いきなり真面目モードかと思うたらこれやもんなぁ、調子が狂うわぁ・・・あ)

 

おちょくろうと思ってカイトにわざと言わなかった内容を思い出す

 

「あ!? ちょっ、まち、カイト!」

 

「ん?」

 

「あー・・・実はこの前の会議でフィン達とカイトのランクアップについても話したんやけど・・・後二ヶ月くらいランクアップ待たへん?」

 

「え・・・なんで」

 

カイトが疑問に思うのももっともやけど、これにはちゃんと理由がある

 器を昇華させれば人の子は格段に強くなれる、だがLv.1時のステイタス平均がAとCの冒険者が同時にランクアップした場合、ステイタス平均がAだった者の方が強い、うちら神々はこれを〈貯金〉言うとる、この貯金の差が大きければ大きいほど同じレベルの者でも差が出てくる、そのためランクアップをするのはステイタスが上昇しにくくなる時こそが最もベストなタイミングとなるわけやな

 ちなみに弱小の零細ファミリアなどはこういうことを知らずに即ランクアップをさせたせいで後になってから泣きを見ることが多かったりする

 

「――――――ってなわけでや、ちょうどカイトがぐっすり寝ている間に神会(デナトゥス)も済んだばかりやねん、ランクアップは次の神会に合わせて行った方がええ、て話になってな?」

 

「それは初耳だったな・・・うん、まぁ、それなら仕方が無いかぁ・・・」

 

たぶんランクアップを楽しみにしていたのか、カイトがあからさまに意気消沈していく

 

「そんな訳で明日から三日くらいは鈍った身体を鍛え直すために訓練、その後の二ヶ月間はほぼダンジョンでステイタスを上げるのに集中ってのがこれからの予定やな まぁ、カイトなら二ヶ月もステイタスの上昇に集中すればステイタス平均をBくらいまでは持って行けると思うで?」

 

 なにせカイトはまだLv.1、あまりのはちゃめちゃさに忘れそうになってまうけど一番ステイタスを上げるのが楽な初期レベルや、これまではダンジョンに関する勉強会にも他の団員との交流という目的で参加させてはいたがしばらくはお休みや、既にうちのファミリアでカイトを知らん者はおらんからこそステイタスを上昇させるためにダンジョンに集中させることができる、これも今まで入団してから無理して二足の草鞋履いてでもカイトが頑張ってきたからこそできることや

 

「それってつまり、今まで以上にお嬢と一緒にモンスターの群れに突っ込まされるってことだよなぁ・・・うわぁ」

 

数日後からの地獄を想像しみるみるうちにカイトがしぼんでいく・・・フィンも結構な無茶させとるって聞いとるからなぁ・・・まぁ頑張り-、と他人事のように考えていると

 

コンコン

 

と、控えめにドアをノックする音

 

どうぞー、とカイトが入室を許可すると、めっちゃかわええ娘が入ってくる

 

「げっ!アミッド!?」

 

「こんにちはカイトさん、お昼の時間になります・・・神ロキもいらしてたんですね」

 

この娘はオラリオ最高の治療師「アミッド・テアサナーレ」Lv.2のディアンケヒト・ファミリアの構成員・・・なんやけど、先日フィン達との会議で最後に話した〈面白い話〉いうんがこの子に関してだったりする、というのも―――――――――

 

 

「はい♡カイトさん、あ~ん♡」

 

「いや、自分で食べれるし・・・」

 

「何を言ってるんですか?カイトさんは病人ですよ?食べさせてあげるのは普通じゃないですか、はいあ~ん♡」

 

「明日には退院なんだけど・・・んぐ!?」

 

問答無用とでも言うようにしゃべるために開いた口に料理を突っ込むアミッド、ただそのせいで食べた物が喉に詰まったのかカイトが咳き込む

 

「げっふぉ!?いきなり食べ物を突っ込む奴がいるかぁ!?」

 

「ご、ごめんなさいやはりまだ固形物は早かったみたいですね・・・では失礼して・・・」

 

何を思ったのか、何故かアミッドがカイトの料理を口に含み咀嚼しはじめる

 

「お、おい・・・お前 何を・・・」

 

「ふぁい、口移しで食べさせてあげまふ」

 

「ロキィ!ヘルプミィィィィィイイ!!・・・っ!? ぬぐぁあああおおおおお!?」

 

Lv.2のアミッドがLv.1であるカイトの顔面をホールドして今まさに親鳥が子にエサを与えるように微笑ましい・・・とは明らかにかけ離れた光景が展開される

 

 

見て分かるように・・・いやこれ見て分かる奴おるかなぁ?・・・まぁとりあえず、何があったのかよーわからんけど、この一週間で『戦場の聖女(ディア・セイント)』と名高い彼女はカイトにべた惚れになってもうたらしい

 

・・・ちなみにカイトはこの娘の激しいアタックをつい昨日まで異常な看護愛と勘違いしとったが、それも先日カイトに恋人がいるということを知ってアミッドが暴走、なんでも夜這いにきたらしいがカイトはこれを全力拒否し一悶着あったとかなかったとか

 

カイト曰くアミッドはどこぞの狂戦士の看護師くらいヤバイとか、てか誰やねん狂戦士で看護師て存在が矛盾しすぎやろそれ

 

 

(それにしても・・・こんなとこアスフィちゃんに見られたら修羅場待ったなしやなぁ・・・ん、ありゃ?なんや急に寒気が・・・)

 

 

「・・・・・・カ イ ト ?」

 

ロキがゆっくりと振り返ると手には花束、しかしバックには絶対零度の吹雪(ブリザード)を連想させる程の鬼気をまとったアスフィがいた

 

(あかぁ―――――――――――――ん!!??)

 

「あ、あんな?これは、違うで、カイトは―――――――あり?」

 

固まったワイそっちのけでツカツカとカイトに歩み寄るアスフィちゃんとアミッドの目が合う

 

「んのにぬままぬすか」

 

「しゃべるならせめて口の中のもん飲み込んでからしゃべれ!あと、い い か げ ん 離せえええ!!」

 

「んぐ・・・どちら様でしょうか?」

 

「ゼェ、ゼェ・・・た、助かった・・・」

 

つい先程までのカイトとの攻防を感じさせぬ顔でアミッドがカイトのベット越しにアスフィちゃんと対峙する

 

「初めまして、『戦場の聖女(ディア・セイント)カイト恋人のアスフィ・アル・アンドロメダと言います、どうやら体調のよろしくない彼氏のために余計な世話をさせてしまったようで、でも御安心下さい、ここからは私が代わりに面倒を看ますので」

 

アスフィちゃん、こわぁ・・・所々でカイトとの関係を強調したいのか声のトーンが一部強めで言われとる、しかも最後は逆読みしそうなとびきりの笑顔付きやった

 

ピキリ

 

あ アミッドのこめかみに青筋が・・・

 

「カイトさんに恋人が居るというのは知っていましたが、あなたでしたか『全能者(ペルセウス)』・・・患者の面倒を看るのは看護師の務めですのでお気になさらずに、それに既にカイトさんのあーんなとこやこーんなとこまで面倒を見ているのでお気になさらずに」

 

「アミッド誤解を生みかねない言い方はやめてくれ!?」

 

「意識のないカイトさんの下の世話をしたのは本当ですよ?・・・立派でした♡」

 

頬に手を当てててモジモジし始めるアミッド、それに対して絶句するアスフィちゃん

 

「私ですらまだ見ていないというのにっ・・・!!」

 

アスフィちゃん、突っ込み方がおかしいて、つかあんなもん見たいんか・・・思春期やなぁ

 

何故か勝ち誇った風のアミッドがアスフィちゃんを見ながらお返しの様に満面の笑みで言い返す

 

「まぁ、今は付き合ってていてもこれから何が起こるかわかりませんし・・・そういえば先日他の神々からNTRという言葉を教えて頂きましてね?・・・ふふふよろしくお願いしますねアスフィさん?」

 

そういって握手を求めるアミッド

 

「何がよろしくなのかわかりませんが、ええ、こちらこそ」

 

そう言ってアミッドの手を取る

 

ミシミシギシミシ

 

そして部屋に響くのは手を握ってから二人の手首の骨が軋む音

 

「「ふふふふふふふふふふふふふふふ」」

 

(カイトォ!?いいかげん止めてやれや!!・・・っていないーーーー!?)

 

一体いつのまに抜け出したのかベッドどころか部屋からもカイトの姿が消えていた

 

 

《side out:ロキ》

 

 

 

=============================

 

 

 

現在俺は全世界の男子がもっとも落ち着くであろう場所 個室トイレに立て籠もっていた、というのも俺をめぐってアスフィとアミッドが険悪な雰囲気になったからだ

 

(『絶』が得意でよかった~・・・)

 

不味い雰囲気を察知したので即『絶』を発動し全力で離脱、見事に気付かれることなく脱出に成功、このときほど己の才能に感謝した日はないかもしれない・・・部屋から出る際に俺の監視を命じられていたであろうディアンケヒト・ファミリアの団員が簀巻きにされていたのは何かの見間違いだと思いたい

 

(あいつ強行突破してきたのかよ・・・)

 

俺の何がアミッドをあそこまで狂行に走らせるのかわからないが応じるわけにはいかない、俺はピュアな男、アスフィ一筋だ。

 

なら、もっと強めに拒絶すればいいのではないか、と思う者もいるだろうがさすがに()()()()を無下に扱うことはできない

 

なにせ俺がここに運び込まれた際に輸血用の血を貧血寸前まで提供してくれたのがアミッドなのだ、なぜアミッドがそれほどに大量の血液を提供することになったのかというと、どうやら俺の血液型は相当珍しかったらしく適合する血液保持者がアミッドしかいなかったというのが理由だ

 

この事実はこれから、もしも俺が今回と同じような怪我で運び込まれたとき、アミッドが血液を提供してくれなければ死んでしまうことを意味する

 

つまり、あまり拒否しすぎてプラスの感情が反転してマイナスの感情になってしまった場合、アミッドが俺への輸血を拒否してくるかもしれないという思惑もあるために最低限の否定しかできないというわけだ

 

(っていうか、何で振られたのに翌日には再アタックしてくるんだ・・・メンタル強すぎ。 女って皆こんなに図太いのだろうか・・・・・・ん?)

 

 

気付けば何故か共同トイレの個室の中が少し薄暗くなっていた

 

(ランプの魔石が切れたのか?)

 

 

そう思い上を見上げると――――――

 

「カイトさん見ぃぃぃぃiiiIIIいいつけたぁああAAAAAaaaaaaaaaaa!!」

 

「ほぎゃぁぁぁあああああ!?」

 

アミッドがいた

 

入り口の上から這い上がり、男の聖域に嬉々として侵入しようとしてくるその姿は軽くホラーである。

 

俺氏、前世を含めて恐怖感からここまでの絶叫を上げたのは初めてであった。

 

「ってアミッド何やってんだぁこらぁ!?」

 

「何って、逃げたカイトさんの臭いを追いかけただけですけど?」

 

「獣か何かかお前は!?」

 

それが何か? とでも言いたげなアミッドと問答をしていると

 

「ここか、この泥棒猫!!って何やってんですか!? 下 り な さ い!!」

 

「痛だだだだ!? ちょ!?足を引っ張らないで下さい!!」

 

どうやら救援(アスフィ)がきたようだ、ずるずるとアミッドの姿が見えなくなり、ホッと息をつく

 

「『戦場の聖女(ディア・セイント)』を確保―――――!!」

 

アスフィの掛け声と共に複数の足音が近づいてくるのが聞こえてくる

 

「なぁ!?あなたたちまで何故私の方を捕らえるのですか!?捕らえるのはそっち!『全能者(ペルセウス)』の方ですよ!!裏切り!?裏切りですか!?」

 

個室のドアを少し開けて覗いてみたら、どうやらディアンケヒト・ファミリアの団員も駆け付けてアミッドの捕縛を手伝っているようだ

 

「いやアミッド、お前さんディアンケヒト様から彼の部屋への入室は禁止されていたのに破っただろう? しかも見張りをしてくれていた団員の意識を奪ってまで・・・さすがにやりすぎだ」

 

「・・・な、なんのことでしょう か」

 

同僚であろう男性からの質問に対して、ここからでも分かるくらいアミッドの目が泳ぎまくっているのが見えた

 

「アミッド、お前さんこんなことする奴じゃなかっただろう、一体どうしたんだ・・・」

 

「カイトさんへの愛が私を変えたのです!!」

 

(俺のせいみたいに聞こえるからその言い方は止めろ!!)

 

「はぁ・・・とりあえず彼が正式に退院するまで謹慎と神命が下った・・・連れて行け」

 

「え?うそ?うそですよね!?ちょ、運ばないで下さい!?カイトさん助けてええええっぇぇぇぇぇぇーーー・・・・・」

 

ビチビチとはねる巨大魚の様な必死の抵抗も空しくアミッドはどこかに運ばれていった

 

「脅威は去りましたか・・・カイト、もうそこから出てきても大丈夫ですよ」

 

アスフィがこの場が安全になったことを教えてくれるが忘れる事なかれ、ここは男子トイレ、女人禁制の男の聖域である

 

「お、おう・・・マジで助かったサンキューなアスフィ・・・つかここ男子トイレなんだが・・・」

 

「そ、そうでした・・・すみません外で待ってますね」

 

ここがどこか忘れていたのかアスフィがそさくさとトイレから出て行く、その後ようやく個室から出て手を洗いアスフィと無事に合流、部屋まで一緒に帰ることにした

「すまん、改めて助かった・・・マジで」

 

「もう少し強めに、彼女を拒否すればいいだけなのでは? そうすればこのようなこと・・・」

 

「まぁ、カイトにも色々事情があるんやで?」

 

ちなみにロキの奴は部屋で見舞品である果物を騒動そっちのけでムシャムシャと食べながら俺のベッドでだらけてやがった

 

 

「あんな女を許容する程の事情があるのですか?」

 

「一応あるんだよ、しかもこれがまた死活問題でな・・・」

 

場所は俺が入院している個室、アミッドのことに対して強く出られない理由を説明するとアスフィの眉間にみるみるうちにシワが出来ていく・・・これはこれでかわいい

 

「―――――と、まぁこういう理由でなぁ・・・機嫌を損ねすぎると今後のことが恐くてなぁ」

 

「むぐぅ、カイトの命には代えられませんが・・・理解はしても納得したくないですね・・・あの変態の血がカイトに入っているのかと思うと、なんでしょうね・・・言葉に出来ない腹立たし感情が、こう・・・沸々と湧いてきます」

 

「だからって俺の血を抜こうとしないでくれよ?・・・ま、どっちにしろ明日には退院だし、今後あいつと関わり合いになることも激減するだろ、さらば退屈な入院生活!さらばアミッドってな!!」

 

「そうだといいのですが・・・」

 

―――――余談ではあるが、数日後からギルド経由でディアンケヒト・ファミリからロキ・ファミリアのとある団員へ名指しの指名依頼(依頼の品は直接ディアンケヒト・ファミリアの本拠に届けるのが絶対条件)が連日舞い込むことになることを俺はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 その後はアスフィとお互いのファミリアの話や久しぶりにベルやじいちゃんのあまり変わっていないらしい近況を教えてもらった

 

「・・・そっか、ベルもじいいちゃんも変わらず元気か」

 

「ええ、お爺さまもこちらは気にせず頑張れと言ってましたし、ベルの方に至っては心配する必要も無いくらい元気な様子でした」

 

「また今度、村の近くまで行くときは教えてくれ、手紙と一緒に仕送りとなにか日持ちするお菓子でも贈りたい」

 

「ふふ、任せてください・・・あ、もう時間ですね、カイトと話しているとあっという間に時間が過ぎ去ってしまうのが難点です」

 

「まったくだ、楽しい時間ってのはどしてこんなに過ぎ去るのが早いかな」

 

「我慢した分だけ楽しい時間は濃密に感じる物ですよ・・・またお互い頑張って時間を作ったらどこかで食事でもするとしましょう」

 

「喜んで・・・ん」

 

最後に一時の別れを惜しむ軽いキスをする

 

「ん・・・・・・では、また」

 

「ああ、またな」

 

精一杯伸ばして繋いでいた手が離れる

 

お互い名残惜しいがそれぞれやることがあるため仕方が無い、まぁ今の俺は休むのが仕事で働いているアスフィには少し申し訳ないが・・・あれ?俺ってばヒモみたいじゃね?

 

そんな俺の葛藤に気付くことなくアスフィが退室

 

しばらくしてから入れ代わるようにしてロキが入ってきた、ただしニヤニヤと形容しがたい表情で。

 

「ロキ、盗み聞きとは趣味が悪いぞ」

 

「ちょっとくらいええや~ん、いやぁしっかしアッツアツやな~、最後の方は聞いてるこっちが恥ずかしゅうなったわ」

 

ちなみにロキは先程から気を利かせて席を外してくれたのだが、どうやら外で聞き耳を立てていたようだ・・・というか悪戯が大好きなこいつはおそらく最初からそのつもりで席を立ったのだろう、くそ、予想して『円』を張っておくべきだったか・・・己の迂闊さを悔やむ

 

「それで? まだ明日以降の予定で何か言ってないことでもあるのか」

 

「んにゃ、一応それは全部伝えたで、戻ってきたのはアスフィちゃんにも聞かせられない身内の話があるからや」

 

「・・・【ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】の〈使用した〉ことになる条件についてか?」

 

「そーや、なんやうちが聞いてくるの予想できとったんかい」

 

ロキの質問は予想はしていたがやはり俺のスキルに関してだった、俺としてもこれは気になることなので一応ではあるが俺の予想を話しておきたかった

 

「まだ、『3』と『6』しか出てないが大まかな予想はできてる、『3』の方はたぶん出したものを誰かの体内に・・・とにかく何でもいいから体内に取り込むこと・・・だと思う。」

 

「あぁ、ガレスの言ってたくっそやばい卵焼きやったっけ?・・・うーん今でも信じられへんなぁLv.6のガレスの耐久や耐状態異常をぶち抜いてくるような卵焼きて・・・いや絶対それ食べ物ちゃうやろ」

 

ロキよ、もしその台詞、卵焼きを生み出した原作の張本人に聞かれたらその卵焼きのフルコースが待ってるぞ

 

「まぁ、ある意味チートだよなこれ」

 

食わせて良し、投げて良し、ぶつけて良しの三拍子がそろっている、ある意味これが一番万能かもしれない

 

「で、今回こんななった原因の『6』・・・『八門遁甲の陣』やったっけ? これの条件の予想もできてるんか?」

 

「予想としては2つくらい思い浮かんだな、一つ目は単純に俺の練度不足で使いこなせなかったからって理由だ、これだったら今まで通り修行でもすればいいから気が楽なんだが・・・」

 

「なんや、もう一つの予想はやばいんか?」

 

「ああ、『八門遁甲の陣』ってのは身体にある一般的には常に閉じてる八つの門を順番にこじ開けてリミッターを徐々に開けてから最大解放するんだ、そんでもって最後の八門目の〈死門〉を開けるとさらに爆発的な力を一時的に得られるって術なんだけど・・・〈死門〉って名の通り、開けちゃうと死ぬんだよねこれが」

 

「んなぁっ!?」

 

「〈死門〉まで開けるのが条件だとやっべーよなこれ」

 

さすがに予想した二つ目の条件にロキの顔が真っ青になる

 

「ヤバイどころやないわぁ!?カイトおまっ!?なんちゅー技使てんねん!?」

 

「いや、前も言ったけど使わなきゃ死んでたぞ」

 

「それでもや!ええか!?以後この数字が出たら即キャンセルや!!」

 

「え~・・・もったいないからちょっと使ってからキャンセルした方が良くないか?」

 

「だーめーやーーーー!!カイトのことやからそのまま勢いとノリで最後の門まで開けかねんやろうが!!」

 

確かに、ガレスのおっさんとの模擬戦や今回の襲撃でも追い詰められると頭のネジがかなり緩くなってることが多い気がする

 

「ん-・・・仕方が無いか・・・わかった、今後この数字か出たらキャンセルするよ」

 

「ホンマか!? その場しのぎのウソやないやろな!?」

 

「誓う、誓う。『6』の数字を引いたら即キャンセルする・・・これでいいか?」

 

神々にウソは通じない、ロキには俺の言ったことが本当だとわかったはずだ

 

「うう、まぁ分かったならええねん、一応このことはフィン達にも伝えとくで」

 

「頼むわ」

 

俺が『6』の能力を使わないと誓ったことでロキも落ち着きを取り戻してくれたようだ

 

 

「あ、そやカイト、もう一個、伝えなあかんことがあったわ」

 

「まだ、あんのかよ」

 

ロキがポケットから何やら紙を取り出してこちらに渡してくる

 

ざわ   ざわ

       ざわ        ざわ

 

             ざわ        ざわ

   

紙にはたくさんの「0」が並んでいた、何故だろう心が ざわざわ する

 

「・・・ロキサマ・・・コレハ・・・ナンデショウカ」

 

「カイトの入院費に加えて怪我に使うた高級回復薬(ハイポーション)万能薬(エリクサー)だけやのうて万能薬入り点滴とか諸々の諸経費やな」

 

「・・・自費?」

 

「自費や、これでも結構な額をファミリアが負担しての額やで?」

 

ファミリアでも負担してもらってコレ?

 

「慈悲は?」

 

「ないなぁ」

 

「・・・・・・」

 

この後にロキは頑張り~と軽く言って帰って行った

 

当然ながらロキが帰ったあとも俺の気は決して休まることがなく、ぐ~にゃ~という音と共に世界がねじ曲がっていく感覚に朝まで襲われ続けた

 

 

 

 

オラリオに来て半年

 

借金返済生活スタートのようです。

 

 

 

 

 

 

 




さーて、三人目のハーレム要員は誰にしよっかなー♫


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21:神会×称号

今回は主人公の称号に関してよ(´ω`)


オラリオの中心にそびえ建つバベル

 

今から千年前に「暇なので」と言うしょうもない理由で神々が降臨した最初の地でもあり、世界の暗黒期を終わらせた始まりの地でもある

 

その塔の高さは世界最高峰を誇り今でもダンジョンからモンスターが地上に溢れないようにするための蓋という重要な役割を持つ

 

そのバベルでは一定の階層からは神々しか立ち入ることが許されない、そのとある階層のフロアを丸ごとぶち抜き行われるのが神会(デナトゥス)である。

 

開催は基本的に三ヶ月に一度、参加は自由であるがその神会の内容に自分の眷属が関わっていた場合は必ず参加しなければ自分の子供が確実にイタイことになってしまうので要参加となる

 

ちなみに例外的に延期されることもままあるので開催は絶対ではない。

 

 

今宵はその神会が行われていた

 

「最近あいつらウザくねー?」「それよりラキアでまーた何か動きがあるってよ」「闇派閥(イヴィルス)どもめ・・・」「今日はフレイヤ様いないのー?」「イシュタル様もいないじゃん俺帰るー」「私がガネーシャだぁ!!」「はいはい」「ガネーシャガネーシャ」「怠慢ですね」「まっじめ~」

 

だが神会とは言ってもその実は、ただの神々の井戸端会議に近い情報交換会であった

 

これを知らない人の子は神々同士による厳かな会議が開かれていると勝手に思っている。

 

 

そこそこの時間が経ち情報の交換が終わり喧騒が落ち着いてきたところで今回の司会役の神が宣言する

 

「では!情報交換はここまでとする、闇派閥に対してはこれまで通り厳粛に対処するということでいいな!!」

 

「「「「異議なーーーーーーし!!」」」」

 

一旦、司会役の神が周りを見渡し宣言する

 

「では、これより命名式を始める!!」

 

「「「「「ヒャッハァアアーーーーーー!!!」」」」」

 

 

 

命名式

 

ランクアップし、己の器を昇華させた者に神々が贈る称号を決める儀式、もとい遊びである。

 

神々から贈られる称号は様々なものがあるが、そのほとんどが悪ふざけによって付けられた痛恨の名がほとんどであった

 

しかしまだまだ神々のセンスに追いつけない地上の子供たちはその痛恨の二つ名を誇らしげに名乗るのである

 

これが愉快型の神ならば共に笑い転げるであろうが、神格者であれば嘆き悲しみ、己の眷属がその痛恨の二つ名を誇らしげに名乗るたびに胸を引き裂かれそうな苦しみを味わうことになる

 

ただしこの呪縛から逃れる方法は存在する、その方法は三つ

 

一つ目は自らのファミリアをオラリオでも有数のファミリアに育て上げ影響力、要は発言力を得ることだ

 

二つ目は強力なファミリアの傘下として保護してもらえた場合

 

三つ目はその容姿や達成した偉業から神々に好感を得られた場合だ

 

 

 

そしてロキは都市に二つ存在する二大派閥、その片割れ

 

この女神の眷属に面白おかしい称号付ける命知らずの神はいない、故にロキは他の古参の神々と同様に全力で真面目にふざけていた

 

「うっひょーこの子、名前がバルムンクとかめっちゃかっこいいやんけー!よっしゃ二つ名は『漆黒の風(ダーク・ファキナウェイ)』で決定や!!」

 

「「「「いてぇええええええええwwwwww!!!!」」」」

 

「いやぁぁあーーーー!!やめてぇぇええええええ!?」

 

バルムンク、もとい『漆黒の風(ダーク・ファキナウェイ)』の親である女神が顔を覆いつつ絶望の声を上げる

 

 

次々とランクアップした子供達の称号が決まり、その中には泣き崩れる者、安堵する者、泰然としている者と様々であるがロキの眷族の順番となり、そのランクアップした子供の資料に目を通した神々全員の表情が一変する

 

「おいおい、ランクアップの所要期間が8ヶ月って・・・」

「またロキの所かよ」

「つかこれ世界記録(ワールドレコード)じゃん」

「・・・だよな?」

「最年少記録こそ破れないが、最速の世界記録(ワールドレコード)なのは間違いあるまい」

「ロキよ、これ程の逸材をどこで見つけてきたのだ?」

 

その場の神々が親であるロキに問いただすがロキの表情は変わらない、いつものニヤケ面である

 

「ニッヒッヒッヒ、すごいやろ~?つい最近見つけたうちの秘蔵ッ子やねん、将来的にはうちの懐刀になるかもしれん、せやからや・・・なめた称号(もん)付けたらぶち殺す☆」

 

「「「「イエス・マム!!」」」」

 

ロキに脅された神々が手元にある資料と似顔絵を元に比較的真面目に称号を考え始める

 

(ま、一応脅しといたから下手なもんは出てこんやろ・・・最悪でも、うちが考えたもんを押し通してもええしな)

 

 

そう考えつつ話し合っている神々を眺めていると

 

「―――――ロキ」

 

「んぁ? おぉ、ファイたんやないか、どないしたん?」

 

声の掛かった方を見ると灼髪隻眼のヘファイストスが隣まで来ていた

 

「さすがにちょっとロキの子に興味が湧いてね? それにしてもこの子のランクアップの所要期間が8ヶ月って本当なの?」

 

「マジもマジやで~、まぁランクアップの原因は今日はここにおらんアホの子の第二級に襲われたせいなんやけどな~」

 

「もしかして・・・それを倒しちゃった?」

 

「せやで、もちろん一人じゃ無くて複数で相手してやけどなー」

 

「それでもとんでもない逸材ね、巡り合わせの多いロキが少し羨ましいわ」

 

「いくらファイたんでもカイトはやらんで~?」

 

「そんなことしないわよ・・・まぁでもうちの子と専属鍛治氏の契約を結んでくれたりとかは狙ってるかもだけど・・・ね?」

 

「お、それええなぁ、実は最近カイトが刀とか使いたがってるみたいでな? 詳しい子とか紹介してくれると助かるわぁ」

 

「あら、そうなの? じゃあこっちもそれなりの子を紹介しようかしら・・・刀だったら・・・椿がお勧めだけど」

 

「その子、確かガレスと契約結んでたんとちゃうん? あ、ちなみにカイトはガレスの弟子みたいな関係やで」

 

重傑(エルガルム)の弟子? んー・・・師弟そろって椿と契約ってのも面白いかしら?」

 

神友との実りのある話に花を咲かせているところで

 

 

「「「「決まったぁああーーーーーーーーーー!!」」」」

 

 

カイトの称号を考えていた神々から歓声が上がる

 

「じゃあ、この話はまたあとでねロキ」

 

「せやな、詳しい話は後で煮詰めよか」

 

ヘファイストスが空気を読んでロキの隣から退席する

 

一方、ロキの方はズカズカと神々の喧噪の中に入り込んでいき決まったカイトの称号を確認する

 

「おらぁ見せてみぃ、お前らのセンスこのロキが見定めたるわ!」

 

 

「どーよロキ俺たちのこのハイセンス&クオリティの称号!」

「ふぅ・・・難産だったZE!!」

「いや、お前の考えたの全部却下されたけどな」

「ロキーこいつ巫山戯た名前言ってましたー」

「やめてぇチクらないで!?出来心だったんですぅ!!」

 

 

「とりあえず後でそこの奴は締めるとして、いいから決まったのを見せろや」

 

一柱の神が悲鳴を上げる中、ロキの手の中に話し合いで決定した称号の書かれた紙が渡される

 

そこに書かれた称号名に目を通すと、いつもは細く閉じられ気味なロキの目が薄く見開かれる

 

 

 

ゴクリ

 

 

 

それを見た神々が緊張の余り喉を鳴らす

 

最大派閥の片割れ、ロキが本気になればそこら辺のファミリア等、冗談抜きで消される

 

故にロキの反応に短い静寂が生まれたのだが――――――

 

「・・・ほぉ、ええやんけ、見直したでお前ら!!」

 

どうやら予想以上に気に入られたらしく、かなり上機嫌な反応が返ってきた

 

「っしゃぁあああ合格出たぞーー!!」

 

「じゃあこの子の二つ名は―――――――――」

 

 

 

 

 

===========================

 

 

 

 

 

 

「くそっ!?引け!引けー!!」

 

 

屈強そうな男と女性の入り乱れたパーティが脇目も振らずに一目散に逃げ出していた

 

「「「「GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」」」

 

それを追いかけるのは子牛程の大きさをもつ超大型犬ヘルハウンド 人程度であれば骨まで焼き尽くす炎を口から吐き『放火魔(バスカビル)』とも呼ばれる、中層でもパーティ全滅の原因のトップをひた走る厄介なモンスターである

 

 

 

ここは中層の始まりにして最初の死線(ファーストライン)とも呼ばれる13階層

 

とあるパーティが運悪く怪物の宴(モンスターパーティ)に巻き込まれ、逃げ出している最中である

 

「よりにもよってヘルハウンドの集団かよ・・・って危ねぇ!!」

 

盾持ちの前衛である男がヘルハウンドの吐いた炎を持っている盾で防ぎ仲間を庇う、しかし

 

「どわっちゃーーーー!?」

 

ヘルハウンドの炎が瞬く間に盾を赤熱させ、男に盾を捨てさせる

 

せめてもの抵抗にと、盾をヘルハウンドに向けて投げつけるがあっさりと避けられる

 

「ちくしょう!予備の盾は後何枚ある!?」

 

「んなもんとっくに捨てたわ!!」

 

「はぁ!?」

 

「あんな重い物を持ってこの速度を維持できるわけないだろうが!!」

 

「こんな時にケンカをしてる場合か!急げ!!」

 

このパーティのリーダーであろう女性のエルフが叱咤し改めて全力での逃走が再会する

 

ダンジョン内だからこその理不尽に皆が歯噛みしていると前方に人影が見えてきた

 

「しめた!フィルヴィスあいつらに押しつけるぞ!いいな!?」

 

「なっ!? 待てそのようなことっ」

 

「馬鹿野郎!仲間と身知らずの他人!てめぇが優先しなきゃならんのはどっちかわかってんだろうが!」

 

言い合っている間にも、逃げる先に居る冒険者との距離が縮んでいく

 

「っ・・・・・・わかった、皆あの者達には悪いが怪物進呈(パスパレード)を行う!私に続け!」

 

目先にいる冒険者は三人しかも

 

(まだ、少年少女と言ってもいい子供ではないか・・・こんな子供に私は・・・)

 

己の行う行為に嫌悪感を感じつつ二人の横を駆け抜ける

 

「すまないっ・・・!」

 

 

 

このとき通常なら聡明なこのエルフ

 

このパーティのリーダーにしてデュオニソス・ファミリア団長「フィルヴィス・シャリア」は気付いていなかった

 

ここは中層の入り口13階層、

 

そもそも付き添いが居たとしても少年や少女程度では簡単に足を踏み入れることすらできない階層であること

 

そして三人がこちらに気付いているにも関わらずそこから動かず、視線は自分たちではなくヘルハウンドの群れに向けられていることに

 

 

(都合の良い考えかもしれない・・・でもどうか無事でい――――――

 

そんな風にせめて彼らの無事を祈っていると

 

「おっしゃぁぁぁーー!!魔石置いてけ犬っころーーーー!!」

 

「ギャウン!?」「ギャン!?」

 

経験値(エクセリア)置いてけ・・・」

 

「キャイン!?」「ギャウ!?」

 

「アイズさん、またカイトの真似してたらリヴェリアさんに怒られるっすよー?」

 

その有り得ない声とモンスターの悲鳴を聞き、全員が振り返ると10匹以上いたヘルハウンドの群れの半数が頭を砕かれ、もしくは真っ二つにされて息絶えていた

 

こちらが呆然としている間にも年端もいかない少年と少女二人によって瞬く間に血袋の塊にされていくヘルハウンド

 

「あ、あの金髪に金眼、見たことがある、ありゃ『剣姫』だ・・・」

 

パーティメンバーの一人が二人の戦闘に畏怖をもって呟く

 

(あれが例の『人形姫』か・・・凄まじいな)

 

自分と同じLv.2だというのにその実力は明らかに向こうの方が上だとわかる、目にも止まらぬスピードで自分たちを死に追いやりかけたモンスターが次々となます切りされて文字通りバラバラになっていく光景を遙かに年下の少女が作り出していることに驚きを禁じえない

 

(凄まじいのは、こっちも一緒か・・・)

 

そしてそれ以上の苛烈さをもって少年が繰り出す拳と蹴りがヘルハウンドの頭を爆散させ、また吹き飛ばし壁に叩き付け血の芸術(アート)へと変えていく、だが真に驚くべきはこの攻撃を間合いの調整などと言った『剣姫』へのサポートをしながら行っていることだろう、まるでこの場の全てを把握しているかのような立ち振る舞いは既に熟練の冒険者の動きを連想させる

 

「た、助かった・・・で、でもよあれって」

 

「ああ、世界最年少記録の『剣姫』と一緒にいるということは・・・あの少年が最近噂のランクアップの世界最速記録保持者、ロキ・ファミリアの――――」

 

 

切札(ジョーカー)

 

 

大派閥の新人冒険者に付けられたその大それた称号が決して誇張では無いということを、戦闘を目撃した全員が己の眼を持って証明した。

 

 

「っていうか、これヤバくね?」

 

パーティメンバーの内一人が焦り出す

 

「何がだ?」

 

「いや、だって俺たちロキ・ファミリアに怪物進呈(パスパレード)しちゃったんだよね・・・」

 

「「「「「あ」」」」」

 

戦闘の終了した方を見ると『剣姫』は無反応

 

サポーターであろう地味な少年はこちらを哀れむような目で

 

そして『切札(ジョーカー)』の方は何か企んでいそうな笑みを浮かべつつこちらに向かってきていた

 

「わ、私が対応する・・・皆、余計なことは言うな」

 

この時、フィルヴィスは先程の逃走時とはまた別の意味で死を覚悟した

 

 

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ジョーカーはババ抜きじゃハズレ、ポーカーなら何にでもなれる、大富豪なら最強というイメージから付けてみました(^ω^)


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22:巫女×外道

能力にジャンプSQも入れちゃおうかしら(ー_ー)。o O (思案中)


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《side:ラウル》

 

 

どうも・・・ラウルっす・・・。

 

え、元気がない?

 

そうっすねぇ・・・なんかもう最近疲れるというか何というか

 

『『むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ』』

 

「むぉ? ラウル、ボーッとしてどうした、早く食べないとスープが冷めるぞ?」

 

「お腹でも痛い?」

 

いや、原因は朝から目の前で山盛りの御飯を掻き込んでいるカイトと、カイトの食べる食事量には遠く及ばないっすけど、それでも負けじと年齢と体格に見合わない量の朝飯に齧り付いてるアイズさんのせいなんすけどね・・・

 

最近、同期のカイトがアイズさんの記録すら抜いてランクアップの世界記録保持者になったんすよ

 

それ自体は非常に喜ばしいことで、カイトのランクアップの時には普段は闇派閥(イヴィルス)のせいで忙しそうな先輩や団長達まで参加してファミリア全員で行きつけの酒場『豊穣の女主人』で盛大にお祝いを行たっすよ、いやぁあれは楽しかったっす!

 

ただ、問題があるとすればランクアップしたことでカイトが本格的にアイズさんのパートナーとして扱われることになったこと・・・いや別に寂しいとか嫉妬とかではなくて、自分が言いたいのは――――――

 

「ふぅ~・・・ごちそうさまでした! よっしゃあ!! ラウル!お嬢! 今日もダンジョンで稼ぎまくるぞ!!」

 

「お~!」

 

「おー・・・っす」

 

な~ぜか自分までカイトとアイズさんの死の行軍(デスマーチ)に付き合わされているということなんすよね?

 

2人にサポーターとして指名されたのは最初は嬉しかったし、付いて行くだけでガンガンステイタスが上がるんすけど、この2人の規格外っぷりに自分の身体が保たないっすよぉ・・・

 

あぁ・・・今日もまたモンスターの群れに特攻するんすねぇ・・・

 

あ、アキ、もし自分に何かあったら故郷の家族に・・・え、面倒くさい?

 

 

 

優しい同期が欲しいっす・・・。

 

 

 

《side out:ラウル》

 

 

 

=========================

 

 

 

 

 

早いものでランクアップから既に一月

 

あまりの怒濤の日々に過ごしている日常が加速するような感覚に襲われている

 

ランクアップが可能になってからステイタスを上昇させるための二ヶ月はマジでキツかった・・・

 

中層の入り口とも言える13階層でフィン達、そしてフィン達が忙しい時は他の上級団員の監視下の中で延々とアルミラージや他のモンスターを狩り続けた

 

当初はベルに似ていて狩りづらかった兎型モンスターのアルミラージもいまや作業の様に狩れるようになった・・・なってしまった・・・慣れとは恐ろしいものだ。

 

その血がにじむ・・・いや、もうあれは血が吹き出す程の努力と根性だったな、と我ながら思う・・・そのアホみたいなダンジョン漬けのおかげでランクアップ前のステイタスがこれだ

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カイト・クラネル Lv.1

 

 

 力:A 856

耐久:B 702

器用:B 780

俊敏:A 801

魔力:S 999 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

【念】の修練は部屋でも毎日やってるので魔力とかは早々にカンストしてしまった、逆に耐久の方は俺の戦闘スタイルが回避中心なのであまり上がらなかった、器用もかなり上がるには上がったが他のステイタス程は伸びなかったのが残念だ

 

ロキから言わせれば後半のステイタスがこれ程伸びるのはそれでもとんでもないことらしい

どうせなら全ステイタスをカンストとかさせてみたかったが、そんなことは現実的ではないので事実上不可能だろう

 

ちなみに発展アビリティは当初の予定通り『奇運』にした

 

まぁ、アビリティとして出るくらいだ、自分にとって不利になりすぎる様な能力ではないと思うが、

 

「カ、カイトーーーーーー!? ()()怪物の宴(モンスターパーティ)っすよーーー!?」

 

と、まぁこのようにランクアップしてからモンスターとの遭遇率が倍以上になってるんだよなぁ・・・

 

(ま、今の俺にとっては都合が大変よろしいから良いんだけどさ)

 

「うっし、行くぞお嬢!ラウルは下がっていつも通り弓で牽制を頼む!」

 

「ん!」

 

「りょ、了解っす!」

 

普通の冒険者であれば一日で数回も怪物の宴(モンスターパーティ)に会うこと等なく、もしそのようなことになれば己の不運を呪うだろうが、そこはモンスターを斬るのが大好きなお嬢と借金返済のために金が入用な俺

 

これ幸いにとバッタバッタと来るもの拒まず去るもの殺すのスタンスでモンスターを滅殺

 

おかげで魔石がガッポガッポ! 俺の借金もドドドドンと減ってグヘヘヘヘ

 

さらに経験値(エクセリア)もいつもの倍ゲットできて、お嬢もホックホクでエヘヘヘヘ

 

ラウルは巻きこまれてトホホホホ・・・なのはマジですまん

 

 

戦闘がサクッと終了し三人がかりでモンスターから魔石を取り出していく

 

「カイト、そろそろバックパックが魔石とドロップアイテムで一杯になりそうっすよー?」

 

「もうか・・・仕方が無い、一旦上に戻るか」

 

こればっかりは持つ量に限界があるので仕方が無い

 

「魔石よりも経験値・・・」

 

金にあまり興味の無いお嬢が愚図りだす

 

「勘弁してくれ・・・帰りのモンスターは全部お嬢に譲るからさ」

 

「むぅ・・・なら、いい・・・カイトと居るとモンスターが向こうからたくさん来るから楽」

 

ちなみにお嬢が俺と積極的にパーティを組んでくれるのはランクアップしてからの、この異常なモンスターとの遭遇率のおかげであったりする

 

(これってやっぱり『奇運』のせいなんかねぇ?)

 

そんな事を考えながら三人で荷物をまとめて撤退の準備を始める。

 

 

 

そこから、えっちらおっちらと地上に向かって急ぎめで移動していると

 

「「「「GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」」」

 

と、どこからか複数の同種モンスターの雄叫びが聞こえてきた

 

「ひぃ!? なんすか!? また怪物の宴(モンスターパーティ)っすか!?」

 

ラウルが焦り出すが聞こえてきた声はそこそこ距離がある、おそらく別の冒険者が襲われているのだろう

 

「落ち着け、ラウル、こいつはたぶん別の冒険者が相手にしているモンスターの声だ」

 

「・・・助けに行く?」

 

お嬢が一応聞いてくるが目的は救助よりモンスターを殲滅することだろう

 

「いらんだろ」

 

「冷たいっすね-・・・」

 

ラウルが少し意外そうな顔をしているが別に俺は聖人君子じゃないんだ、面倒くさけりゃ見て見ぬ振りくらいすることはある、だが今回の場合は―――――

 

「いや、だってよー・・・あいつら俺たちに怪物進呈(パスパレード)する気満々だし・・・」

 

 

「「え」」

 

 

お嬢とラウルが振り返って見た先の道からは、こちらに向かって一直線に逃走してくるパーティの一団の姿が見えてくる

 

(ん? あの後ろのモンスターは・・・おっほ! ラッキー!!)

 

「お嬢、運が良いぞ、後ろから来てる集団、ありゃヘルハウンドの群れだ」

 

「!?・・・狩る!!」

 

「応よ!」

 

「うへぇ・・・勘弁して欲しいっすよ~・・・」

 

ヘルハウンドは中層の中でも魔石的にも経験値的にも非常においしいモンスターだ、相手が進呈してくれると言うのなら見逃す道理はない

 

――――――――すまないっ

 

怪物進呈(パスパレード)をされる時にすれ違った女性のエルフが申し訳なさそうにしていたのが少し気になったが、すぐに頭を切り換え、お嬢と二人でヘルハウンドの群れに突っ込み蹂躙を開始する

 

「おっしゃぁぁぁーー!!魔石置いてけ犬っころーーーー!!」

 

「ギャウン!?」「ギャン!?」

 

経験値(エクセリア)置いてけ・・・」

 

「キャイン!?」「ギャウ!?」

 

「アイズさん、またカイトの真似してたらリヴェリアさんに怒られるっすよー?」

 

そういや何故か最近お嬢が俺の真似をする事が多くなった、俺は別にかまわないのだが、それを見たリヴェリアからお嬢の前で教育に悪そうな言葉遣いを止めるように言われていたりする、本人はママとか言われると激怒するけど傍から見れば教育に厳しい母親にしか見えないとは俺を含めたファミリア全員の意見である

 

(っていうかお嬢先走りすぎだっての!)

 

ヘルハウンドは灼熱の炎を吐くやっかいなモンスターではあるものの、炎を吐く際の予備動作状態の時に邪魔をすればただのでかい犬の魔物にすぎない

 

そのため炎を吐く動作に入った瞬間に初動を邪魔してさえやれば楽に狩ることができる

 

(まぁ、それも周囲の全てを把握できる『円』が使えるからなんだけどねっ!!)

 

「ギャン!?」

 

お嬢に死角が出来ないように、もしくは死角が出来たらそれを埋めるように立ち回る

 

最優先はお嬢とラウルの安全だ、特にLv.1のラウルに注意が向かないようにせねばならない

 

「お嬢!かがめ!!」

 

「っ!!」

 

間髪入れず、お嬢の上半身があった所を死体となったヘルハウンドが猛スピードで吹き飛んでいき、今まさに炎を吐こうとしていた個体にブチ当て、死体諸共爆散させる

 

「ラウルの方だ」

 

「ん」

 

入れ替わるようにして立ち位置を代わり、ラウルを襲うために横を抜けこちらに背後を見せたヘルハウンドがお嬢に切り刻まれる

 

逆に引いたお嬢を追って飛びかかってきた個体を入れ代わった勢いでそのまま拳で潰していく、空中で出来上がった死体がもったいないのでそのまま投擲武器のように他の個体に投げつけて数をさらに減らしていく

 

ラウルの方も地味に弓矢で応戦して囮とサポート役を全うしてくれる

 

これがこの三人の中層での連携だ、一月以上も三人でダンジョンに潜り続けたおかげでそこそこの連携が出来つつある

 

そして、それを繰り返しているうちに10匹以上居たヘルハウンドの群れがあっという間に全滅

 

だがここで油断はしない、戦闘が終わったと思ったらすぐに『円』を限界まで拡げ、周囲に隠れている個体などがいないかを確認

 

(・・・よし、OKだ)

 

安全であることを二人に伝えようやく一息つけた

 

「ふぅ、毎回の戦闘が心臓に悪いっすよぉ・・・ってあれ? さっきのパーティまだ居るっすね?」

 

ラウルの言う通り彼らは俺たちが戦闘を始めてから足を止めてこちらの戦闘を見ていた、一応モンスターを横取りされないように『円』で感知し続けていたが、こちらに害を為す様子は見受けられない、だが彼らがここから去らない、いや去れない理由なら何となくわかる

 

「俺たちがロキ・ファミリアって気付いたんだろ・・・都市最強と言ってもいい派閥に助けを求めるならまだしも、怪物進呈(パスパレード)をしたんだ、ここで逃げても後々バレれば報復が恐いことになるとか考えて動けないんだろ」

 

「あー・・・確かに」

 

「ってことでラウル、これから荷物持ちのお手伝いさんが5人も増える予定なんで上に帰るのはキャンセルでこのまま探索続行な」

 

「え"!?」

 

「彼らには俺たちに怪物進呈(パスパレード)をした罰として一日荷物持ちをしてもらう」

 

さすがに、ここで相手に何もしない、もしくは要求しなければ「あそこのファミリアは怪物進呈(パスパレード)しても何もしてこない」等と言われてしまいロキ・ファミリア全体がなめられることになる、そうなってしまえば俺達以外のダンジョンに潜っている他の団員にも結果的に迷惑を掛けることになってしまうので必要な処置だ

 

向こうからすればモンスターに襲われ、それをようやく押し付けたと思った相手が都市最強派閥の片割れとか災難すぎるが、こちらとしては魔石と経験値をゲット、ついでに荷物持ち用の人手もゲットで一石三鳥だ

 

「交渉は―――――」

 

お嬢  ← 基本無口

 

ラウル ← 逆に言い負かされそう

 

「・・・俺だな」

 

「ん」

 

「なはは、お願いするっす」

 

「まぁ、仕方が無いか・・・その分ラウルにはこの後の探索で気張ってもらうとするけどな」

 

「うぇ!?」

 

「安心しろ、彼らをラウル以上に扱き使うから少しは楽になる・・・はず」

 

「うわぁ・・・どっちにしろ碌でもないっすよそれ」

 

「ぷっ・・・っくっくっく・・・かもな? そんじゃまぁ、行ってくるわ」

 

 

というわけで先のパーティの所まで来たわけだが

 

『ガタガタブルブルガタガタブルブルガタガタブルブル』

「モウオシマイダァ」「ファミリアオワタ」「ミンナゲンキデナ…」「ウウウ、フコウダナァ」

 

めっちゃ怯えられてて草

 

「先程はすまない! 謝って済む事ではないがまずは謝罪を受け取って欲しい」

 

ただ、パーティのリーダーであろうエルフの女性だけは頭を下げつつも毅然とした態度だった、無闇矢鱈に怯えられるよりかは好感が持てる

 

「謝罪は受け取ろう、だが、俺たちロキ・ファミリアに怪物進呈(パスパレード)をしておいて謝罪だけで許されるなんて思ってないだろうな?」

 

俺の言葉に後ろのメンバーと目の前のエルフの顔が苦渋に変わる、ファミリアの威厳のために仕方が無いとはいえ心苦しいなぁ・・・

 

「おっと、そういや自己紹介がまだだったな、俺はカイト、ロキ・ファミリアの団員で一応 Lv.2だ」

 

このままじゃ交渉しにくいので、とりあえず自己紹介から始める

 

「知っているとも、後ろにいる『剣姫』と・・・もう一人は知らないが、君の二つ名である『切札(ジョーカー)』の名を知らぬ者は今のオラリオには存在しない」

 

まぁ、分かっちゃいたがやはり俺のことを知ってたか

 

「噂をされる本人には自覚しにくんだが、それでもあんたの様な綺麗な人にまで知っていてもらえるのは光栄だな、まぁ実際には名前負けしないようにこっちは必死なんだがね」

 

「それは謙遜だろう、先程の戦闘を見させてもらったが君の動きはその名に恥じぬ、いやそれどころか噂以上のものだった」

 

なんていうか、ここまで真っ直ぐな感じで言われたのは初めてだ

 

「あー・・・あんま褒められるのに慣れてないからちょっと照れる、そっちは、えっと――――――」

 

「フィルヴィス、『フィルヴィス・シャリア』だ、レベルは2、未熟ながら『デュオニュソス・ファミリア』の団長を務めさせてもらっている」

 

団長さんかー、ただデュオニュソス・ファミリアねぇ?

 

デュオニュソス・・・デュオニュソス? ダメだ、聞いたことがないファミリア名だ、Lv.2のフィルヴィスが団長を務めていることからおそらく下級の零細ファミリア、派閥の等級はおそらくF、どんなに良くてもE、ギルドからフィン達みたいに強制任務(ミッション)が言い渡されることもない、まだ小さいファミリアなのだろう

 

「後ろのメンバーは全員Lv.1か?」

 

「いや、Lv.2は私以外にもう一人だ」

 

Lv.2が二人にLv.1が三人か

 

「Lv.2が二人も居ればヘルハウンドの群れくらいどうにかできたんじゃないか?」

 

「馬鹿を言うな! 普通はLv.2が二人いてもあれ程の数は捌ききれない、その上Lv.1の団員をフォローしながら等とても・・・君たちの戦闘力が異常なのだ」

 

「そうか?」

 

モンスターの群れの相手とか日常茶飯事なんだが・・・腹黒いうちの団長のせいでな・・・

 

しかし、そうだとすると困った、荷物持ちだけをさせたとしてもその程度の実力だと強敵に出会ってもギリギリ突破できるかどうかのバランスになる

 

っていうかぶっちゃけ足手まといにしかならない

 

とは言っても何もさせないわけにもいかない

 

うーん、どうしたもんかね?

 

(比較的安全な上層で荷物持ちをしてもらうか? いや、でもそれだと中層(ここ)より大分、魔石も経験値もおいしくない、何より時間の無駄だ、ならどうするか――――――)

 

そんな風にこれからのことについて長考していると何かを勘違いしたのかフィルヴィスが焦ったように話しかけてきた

 

「『切札(ジョーカー)』、今回の怪物進呈(パスパレード)は団長である私の判断で行ったことだ、故に団員に責任はない、あいつらは私の命令に従っただけだ、全ての責は・・・私に有る」

 

「なっ・・・フィルヴィス!?」

「「「団長!?」」」

 

他のデュオニュソス・ファミリアの団員がフィルヴィスの言に驚きを顕わにするが

 

「お前たちは黙っていろ!!」

 

フィルヴィスの一喝で押し黙ってしまう

 

「これも団長の務めだ・・・任せてくれ」

 

何だろ、なんか声を挟みにくい雰囲気なんだが・・・

 

何かを決意したかのような顔でフィルヴィスがこちらに向き直る・・・いやさすがにちょっと大袈裟すぎないか?

 

こっちはきちんとそれなりの罰を与えたという体裁が取れれば良いから、そこまで大それた事をやらせるつもりじゃないんだぞ?

 

ちょ、やめて!?

 

そんな目でこっち見んといて!

 

ナニその今から生け贄になるみたいな決意を秘めた乙女の顔は!?

 

魔王や竜王にクラスチェンジした覚えはねぇよ!?

 

「『切札(ジョーカー)』、取引だ」

 

内心で戸惑うこちらにお構いなく勝手にそれっぽい話を勧めてきた

 

「今回の事を不問とする代わりに」

 

いや、さすがに無かったことには――――

 

「私にできることなら ()()()()()()!!

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・ん?

 

 




きっと最後の台詞を聞いたときの主人公はゲス顔
(◞≼●≽◟◞౪◟◞≼●≽◟)


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23:巫女×秘密 前編

今回は短めなんで早めに投稿よー(・ω・)


バンバンバンバン

 

肉がぶつかる音が辺りに響き渡る

 

「ジ、『切札(ジョーカー)』これ以上は、もう・・・無理・・だ・・・壊れ・・る」

 

『デュオニュソス・ファミリア』の団長であるフィルヴィスが汗だくになりながら息も絶え絶えに己の限界を訴えてくる

 

バンバンバンバン

 

だが、その間にも肉がぶつかる音は決して止まらない!

 

「アアッっんんん・・・これ以上はほんとにっ・・・もうダメ―――――――」

 

 

 

 

 

=========================

 

 

 

《side:フィルヴィス》

 

拝啓・デュオニュソス様

 

ご機嫌いかがでしょうか?

 

私は今――――――――

 

 

「「「ウヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」

「ホギャアアアア無理っす死ぬっすマジっすよこれ!?」

「さすがにこの数のミノタウロスは無理いいいいい! 全力で退くぞお嬢ーーーーー!!」

「ん!」

「いや、退くんだってば!なに突っ込もうとしてんだぁ!?」

 

地獄にいます。

 

 

早いものでロキ・ファミリアの『切札(ジョーカー)』、カイト達と出会ってから一週間経ちました

 

あの時、まるで何かの誘惑を断ち切るような表情をしたカイトが、苦渋の末に搾り出すような声で私に出した条件は『自らのパーティに一ヶ月だけ参入する』という意外にも軽く感じる条件でした

 

私はその時、軽率にも飲んでしまったその条件を正直後悔しています。

 

何しろ彼ら、というか『切札(ジョーカー)』『剣姫』が規格外すぎます

 

何なんですか『剣姫』のあの付与魔法は? 効果もさることながら魔法の詠唱が私よりも短いですし・・・

 

そして『切札』、彼も色々おかしいです、後ろに目でも付いていなければ説明がつけられないような動きです、何故見えてない攻撃や相手の位置を完全に把握できてるんですか・・・

 

・・・自分は本当に彼らと同じレベルなのか自身がなくなりそうです。

 

同じLv.2でも前衛と後衛では直接的な近接戦闘では実力に差が出やすいとはよく聞きますが、あの二人は明らかに通常の冒険者の常識や実力を逸脱していると断言します

 

 

本人達に異常性を説いても

 

「これくらい普通だよなぁ?」

 

「ん・・・ふつー」

 

このように言葉が通じません

 

 

というか、そうそう巡り会うことのない怪物の宴(モンスターパーティ)に1日で、それも連日でほぼ絶え間なく何度も襲われるということ自体が異常すぎます、そのことについて詰問したら、

私の中で常識人カテゴリーのラウル・ノールドという人間(ヒューマン)の少年にポンと肩を叩かれ

 

「いずれ・・・慣れるっすよ・・・ハハッ」

 

全てを諦めたかのような光のない目、もしくは東方に伝わる菩薩のごとく悟りを開いた目で諭されました

 

彼らと今まで一緒に居た彼の気苦労を思うと涙を禁じ得ません。

 

この四人の中で唯一のLv.1である彼は『切札』や『剣姫』と違い本当に何もかもが普通です、むしろよくこの二人を相手にしていてそこまで普通を貫けることに一種の尊敬の念すら抱かせます。

 

少し話が逸れてしまいましたね、話を戻すとしましょう

 

あれからカイト達とパーティを組み、ダンジョン探索を行っているのですが、現在の階層は15階層

 

デュオニュソス様はご存じでしょうか?

 

15階層からは厄介な、とあるモンスターが出てくることを

 

その名を「ミノタウロス」

 

牛頭人体、身長は2mを超え、その力と速さはLv.2であろうとも倒すのが困難、Lv.1であれば死は免れず、階層主に次ぐ程に悪名が轟くモンスターです。

 

そして今現在、私達は

 

「ぬぉおおおおお!? さすがにミノタウロスの怪物の宴(モンスターパーティ)は洒落になんねぇええーーー!?」

 

30を超えるミノタウロスの群れに追われています

 

さすがの『切札』と『剣姫』でも数に圧倒され撤退を余儀なくされてしまいました

 

 

 

デュオニュソス様・・・私の冒険はここまでかもしれません

 

 

 

 

《side out:フィルヴィス》

 

 

 

=========================

 

 

 

 

 

(逃げるとか、久しぶりだな!?)

 

Lv.2に恩恵をランクアップさせてからというもの負け無しだったせいかちょっと自惚れていた

 

ミノタウロスでも4体か5体くらいなら一人でも対処できるが、さすがに30体以上を同時に相手をするのは無理だ。

 

 

(・・・・っ!・・むぅ)

 

というか普通にヤバい

 

『円』を限界まで拡げて分かったが、今走っている曲がりくねった一本道をこのまま行くと広間(ルーム)に出る、しかもそこは行き止まりの袋小路

 

(使うしかないか・・・)

 

最後に【ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】使用したのが4ヶ月前、久々の使用に少し不安が残るが背に腹は代えられない

 

ちなみにこのスキルは【念】と違い、動きを止めて集中しないと出せなかったりする、移動しながら使うには魔道師で言うところの『並行詠唱』クラスの鍛錬がいるだろう

 

 

「全員聞いてくれ!もうすぐでかなり広い広間(ルーム)に出る、そこでこいつらを殲滅するための奥の手を使う!ちっとばっかし準備に時間が掛かるんだが広間の入り口で時間稼ぎを頼めるか!?」

 

広間(ルーム)の広さに対して入り口はミノタウロスが精々2体並んで通れるかどうかだ

 

「俺には無理っすよーーー!?」

 

「私も難しい・・・相手の勢いと重さで突破されると思う」

 

Lv.1のラウルは当然としてお嬢でもやっぱキツいかー

 

「どれくらいで、その奥の手とやらは使えるのだ!?」

 

意外にもフィルヴィスから質問が飛んできた

 

「10秒あれば十分だ!!それでも上手くいくかどうかはわからんがな!!何か打つ手でも持ってるのか!?」

 

「私の魔法に超短文型の魔法障壁がある!それなら十数秒だけだがミノタウロスの猛攻を止められる!!」

 

マジかよ、フィルヴィスと出会えてマジでよかったと心の底からそう思った。

 

「素晴らしい!サイコーだ!!俺に恋人がいなけりゃ惚れてたな!!」

 

「冗談はこの危機を乗り越えてからにしてくれ! それと『剣姫』!ほんの少しで良い、風でミノタウロスの勢いを削いでくれ!」

 

「ん・・・わかった」

 

話しながらもドンドン広間(ルーム)への入り口が近づいていく

 

「全員、タイミングを合わせろ!!」

 

そしてゴールである広間(ルーム)に突入と同時に反転

 

「あだぁ!?」

 

ラウルだけは息が切れたのか突入と同時にハデにすっ転んでいたが、むしろよくこの行軍に遅れずに付いてきてくれたと褒めるべきだろう

 

後は俺たちの仕事だ

 

「『剣姫』!今た゛!!」

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!!」

 

この広間(ルーム)唯一の入り国から通路の奥へ物理的な圧力を持った風が吹き荒れる

 

「「「ブモォオオオオオオ!?」」」

 

逃げていた獲物からの突然の反撃に先頭部分を走っていたミノタウロス数匹が意表を突かれて転ぶと、運が良いことに後続がそれに足を取られてもつれるように一緒に転んでくれた

 

おかげでほぼ完全にミノタウロスの特攻の様な行軍が止まってくれた

 

「後は私に任せろ! 入り口に蓋をする! 『―――――盾となれ 破邪の聖杯(さかずき)』」

 

詠唱と同時に強力な魔導師たる証しである、魔法円がフィルヴィスの足下に展開される

 

この1週間、一緒に探索をしていて知ったがフィルヴィスは魔法種族(マジックユーザー)であるエルフに多いように魔法を所持している、しかも魔法の威力を増幅させる魔法円を展開できるようになるアビリティ『魔導』も習得している優秀な冒険者だ、さすがに二つも魔法を所持しているのは知らなかったがここに来て嬉しい誤算だ

 

(ミノタウロスもフィルヴィスとの出会いも『奇運』のせい・・・おかげなんかな?)

 

混乱から復活したミノタウロスの群れが再度こちらにむかって行軍を開始する

 

「ひぃいいいいい来たっすよ!?」

 

 「【ディオ・グレイル(魔法障壁)】!!」

 

「ブォオオオオオ!?」

 

透明な壁が入り口を塞ぎ、間一髪でミノタウロス達が入ってこれないように防いでくれた

 

バンバンバンバンバンバンバンバン!!!!

 

それでも目の前の獲物を狩るためにミノタウロス達がその膂力に任せて障壁を叩き始める

 

「『切札(ジョーカー)』急げ!長くは保たんぞ!」

 

「了解! 出ろ! 【ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】!!」

 

目の前に久々のロゴマークの様な不思議生物?が現れる

 

「な!?」

 

「ん?」

 

「お、久しぶりっすね」

 

初めて見る不思議生物にフィルヴィスだけでなく、お嬢まで驚く

 

(そういや、お嬢はこいつを見るの初めてだっけか)

 

ちなみにラウルには一度見られて以来、何回か部屋でこいつを召喚して話し相手になってもらっていたりするので驚きはない

 

「いきなりで悪いが、早速頼む!スロットを回してくれ!!」

 

『・・・・・・』

 

「おい、急いでくれ!!」

 

『四ヶ月モ放置シトイテソレカヨ、アーア、オレノマスターハ薄情ダナー』

 

なんかイジケテル!?

 

「今はマジでピンチなんだ、文句は後で聞くからさっさとスロットを回してくれ!」

 

『・・・プイ』

 

おいいいいいいいいい今はマジで時間ないんだって!?

 

バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!

 

そんな問答をしている間にもミノタウロスの障壁を破ろうとする攻撃の勢いがが増していく

 

「ジ、『切札(ジョーカー)』これ以上は、もう・・・無理・・だ・・・壊れ・・る」

 

障壁への魔力を込めたフィルヴィスの腕がぷるぷるし始めてるうううう!?

 

「わ、わかった!じゃあ、後で酒を飲ませてやるから、ついでにつまみもつける!俺渾身のじゃが丸くんだぞ!」

 

「カイト渾身のじゃが丸くんっ・・・」ジュルリ

 

お嬢の方が釣れてしまった

 

「お嬢には帰ったら作ってやるからそっちに集中な!?」

 

バン!バン!バン!バン!バン!

 

ついに障壁に亀裂が入り始める

 

「アアッっんんん・・・これ以上はほんとにっ・・・もうダメ―――――――」

 

(ヤバイヤバイヤバイ!?これは洒落にならん!?)

 

『・・・チッ、アトマッサージもツケロ、ソレデカンベンシテヤル、ククク肩デモ揉んでモラオウカネェ?』

 

空気を読んでくれたかはわからないが、ようやく【ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】が折れてくれた・・・ってか、おめーの肩どこにあんだよ!?

 

「わかったから、マジで急ぎで頼むって!?」

 

『ワーッタヨ、・・・ったくオラァ! 久々のスロットダァ! イイ目がデロヨ!! ドゥルルルルルル!!』

 

なんとか説得が上手くいきスロットを回してもらうことに成功する、にしてもこいつ放置しとくと俺の言うこと聞かなくなるのか・・・今後はこまめに召喚してやらねば

 

そうしてスロットに表示された数字は『11』だった、当然ながら初の数字だ

 

(『11』かぁー・・・キャンセルしたら、かなりキツいなぁ・・・ん?)

 

『11』が表示されると【ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】の姿が前世で見たジッポライターの形に変化した

 

(何だ? こいつが何かに変化するなんてパターンは初めてだな、武器・・・なのか?・・・ライターが?)

 

空中から落ちてくるそれを掴んだ瞬間に『11』の能力がすぐさまに俺の脳内にインストールされる

 

「こいつは・・・」

 

 

「くぅううう!?」

 

「フィルヴィスさん!?」

 

その瞬間、ついにフィルヴィスに限界が来たのか障壁が完全に破砕する、倒れるフィルヴィスをラウルが抱き止める

 

だが俺は焦らない、何故なら今回のこの能力は―――――

 

 

「・・・当たりだな」

 

「「「ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」

 

なだれ込むように次々と広間(ルーム)に入ってくるミノタウロス、入り口に一番近い所にいたフィルヴィスとラウルに襲いかかろうとしているが

 

 

「焼き肉にしてやらぁ、畜産物共が」

 

 

もはやこちらは獲物ではない

 

お前らは今この瞬間、狩る方から狩られる側に回ってしまったことを教えてやる

 

ミノタウロスに向かって走り出すと同時にジッポライターに付いている針を自らに突き刺す

 

「行くぞ―――――――」

 

針を突き刺した部分から俺の血が吹き出す

 

 

         

 

         

 

         

 

         

 

         

 

         

         

         

         

 

刃 身 の 弐

 

 

         

 

         

 

         

 

        

         (かく) (わん)  (ばく)  !!

 

意思を持った血糸が全てのミノタウロスに絡みつき一纏めにして拘束した

 

 

「炙りチャーシューの準備完了ってな!!」

 

 




主人公が使えるのはカグツチだけよ 
シナトベは・・・どーしよっかなー?ヾ(´ε`○) ノルンルン♪ ♪♪


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24:巫女×秘密 中編



キスからは先は浮気、おっぱいまではセーフと言われたことがある筆者。

女性の価値観って……


……最高だな!!(^ω^)




=========================

 

 

 

「ぬぎぎぎぎ」

 

 

かっこよく決めて拘束したはいいが、さすがにミノタウロス30体以上を一気に拘束するのは骨が折れる作業だ

 

上手く絡めて力が分散する様に拘束しているというのに、あまりの力に操っているいるこっちの腕の方が持っていかれそうになる

 

(さすがにこの数だと、力の差はざっと見ても人とトラックってとこかねぇ・・・)

 

しかも、およその目算ではあるが拘束したこいつらを一気に倒すには俺だけでは少し火力が足りないときた、俺だけだと良くて半数といったところか

 

こいつらを一気に倒せないと少々面倒くさいことになる

 

なにせこっちにはミノタウロスの相手が出来ない人員が二人、辛うじて戦闘可能の人員も二人、そんな状態で庇いながら残った10体以上のミノタウロスの相手は正直キツい

 

ならどうするか?

 

今回限定ではあるが―――――――

 

お嬢の力を借りる

 

俺のこの『11』の技の特性上、あの子の『風』は俺の火力を倍加させてくれるはずだ

 

「お嬢!まだ『風』は使えるな!?」

 

「ん、いける!」

 

頼りになる小さな相棒の力強い返事が返ってくる

 

「ハッ上等! 今から馬鹿でかい技をぶっ放すからタイミングを合わせて威力が分散しないように『風』で囲んでくれ!!」

 

それなら間違いなく奴らを殲滅できるはずだ、そう思っていたのだが・・・

 

「え・・・私の風は離れた場所に発生させることはできない・・・」

 

「ぐっはぁ!?マジか!?」

 

さすがにお嬢の風もそこまで万能では無いか・・・

 

どうしたものかと迷っている間にも血糸がギシギシと嫌な音を出し始める

 

(だーーー!?どうするどうする!? 奥義をぶっ放した後にお嬢を火に投げ込んで――――ってんなことできるかぁ!?・・・・・・ん? 投げ込む?)

 

そこで思い出すのはこの技の元となった作品、そして斗流血法(ひきつばしりゅうけっぽう ) ・火のカグツチと風のシナトベ

 

俺が今使っているのはカグツチ、風のシナトベは同じ流派でも使うことはできない

 

だが、風のシナトベがどのようにして使われていたかは覚えていた

 

(たしか、風のシナトベを使うあの魚類は武器をぶん投げてから風を発生させたりしていなかったか? だとしたら――――――)

 

「・・・だったらその剣にありったけの魔力を込めた風を付与してから中心に投擲するとかじゃダメなのか!?」

 

「!!・・・それなら多分いけると思う!」

 

「うっし!・・・じゃあそれで行く! お嬢は急いで風を貯めてくれ!」

 

時間が無い、今見えている紅い糸は全て俺の血液で出来ている、そのため血糸をこれ以上巻き直したら俺が貧血で倒れて動けなくなる

 

その前に何としても決着を付けねばならない

 

「お嬢、景気づけだ、俺が「 ■ ■ 」って技名言ったら「 ■ ■ ■ 」って叫んでみな、威力が上がるからさ」

 

「威力が上がるの?」

 

「おう、気合いも出るし威力も上がる一石二鳥だ」

 

「わかった・・・んー・・・そろそろ貯まる・・・・・・・・・ん、いつでもいけるよ」

 

「んじゃいくぞ!炎があいつらを包んだ瞬間中心に向かってありったけの風を込めたその剣をぶん投げろ!!」

 

「ん、まかせて!」

 

準備は完了後はやるだけだ

 

「ふー・・・お嬢、構えろ」

 

「・・・ん」

 

タイミングが命の攻撃だ、集中し、気を高める。

 

「・・・行くぞ」

 

カチンという小気味良い音を立ててライターに火が灯る、

 

     

 

      「 七 獄 !!」

 

      

 

 

その火が血糸を伝って全てのミノタウロスを地獄の業火で囲い込む

 

「「「「ブガァアアアアアアア!?!?」」」」

 

当然、ミノタウロス達は炎から逃れるためにその場から逃げようとする

 

 

(お嬢!今―――――――)

 

――――――――――――ザシュ!!

 

今だ。

 

そう言おうとしたときには既に剣を投擲した後だった

 

「逃がさない」

 

(ヒュー、さすがはお嬢、最高のタイミングだ)

 

中心に居た一体のミノタウロスにお嬢が投げた剣が突き刺さった瞬間―――――――

 

         「偽・天 羽 鞴 (あまのはぶき)!!」

 

 

「「「「ゴァアアアアアアアーーーー・・・・――――――――ァ―――――」」」」

 

突風と爆炎が混ざり即席の炎の竜巻が目の前に広がる

 

本来ならばお嬢自身の身を守るために展開される風の壁が、今回は逆にミノタウロス達を閉じ込める檻と化した

 

獲物を決して逃さない煉獄の檻はミノタウロス達の最後の悲鳴すらも飲み込んでいく

 

まぁ、この威力も当然だ

 

なにしろ通常は一つの属性でしか攻撃できないところを二つの属性を合わせて威力に相乗効果を生む超が付く必殺技だ。

 

 

 

俺が今回、『11』で宿した能力は発火性の血液を操る斗流血法(ひきつばしりゅうけっぽう )のカグツチと言う能力だ そして目の前に広がる地獄のような光景を作り出した技、本来の名を「七獄 天羽鞴」と言う

 

前世での漫画に出てくる吸血鬼退治のスペシャリスト、その超人達の中の技でも一際派手な技が斗流血法(ひきつばしりゅうけっぽう )のカグツチだ、しかし、実はこれ一つでは十全な威力を放つことが出来ない

 

カグツチの炎の威力を最高にするには同じ斗流血法(ひきつばしりゅうけっぽう )の風を操るシナトベの使い手が必要となる

 

本来 「七獄 天羽鞴」はカグツチとシナトベの合体技だが、シナトベまではさすがの【ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】でも使わせてはくれないらしい・・・まぁ、無理もないか、二つを同時に使う場合は二種類の血液を体内で混ざらないように循環させねばならないとか言ってた気がする、さすがにそんなアホみたいな芸当はできん

 

今回はシナトベの代用としてお嬢の風を使用し、なんちゃって斗流血法(ひきつばしりゅうけっぽう )

「七獄 偽・天羽鞴」として使用してみたが思いの外威力が出た

 

まぁ、こいつは本来なら不死身の化け物に使う技だ、エセ奥義であったとして、不死でも何でも無いミノタウロスにはほんのわずかな抵抗が関の山といったところだろう

 

ただ、少し誤算があるとすれば―――――

 

(あ、あぶね~、お嬢の風で囲って範囲を限定してなかったら自分の炎で焼け死んでたかも・・・)

 

と自らの技の威力を甘く見ていたことだろうか

 

そんな風に反省している間にようやく風と炎が止む

 

数秒前までミノタウロス達が居たその場に残ったのは地面に突き刺さったお嬢の剣のみだった

 

 

「ふー・・・何とかなったかぁ・・・お嬢」

 

「・・・なに?」

 

隣に居る相棒に拳を突き出すが、拳を見たお嬢に不思議そうな顔をされた

 

(女の子じゃ、こういうのはわからんかな・・・)

 

「こういう時は拳を合わせるんだよ」

 

「?・・・・・・ん」

 

軽く尽きだしたお嬢のグーとコツンと触れる

 

「お疲れさん、だ」

 

「!!・・・フフ、うんお疲れさん!」

 

うむ、どうやらお嬢にもこの何となくの良さが伝わったようだ

 

(さてと、ゆっくりもしていられんな・・・まずは休憩、その後にまだ消えないこの『11』の能力をどうにかして解除だな・・・)

 

俺の手の中には未だに()()()()ジッポライターがあった、つまりスキルは俺が使用済み条件を満たしていないと判断しているようだ

 

しばらくは危機を乗り越えた余韻に浸っていたいが、そうもいかないらしい

 

「お嬢、とりあえずしばらく休憩したいから広間の壁を壊そう・・・ラウル!ピッケルを持ってきてくれ!!」

 

フィルヴィスの介抱をしていたラウルに声を掛ける

 

「了解っす! 休憩のために壁を壊すんすね?」

 

リヴェリアの勉強会で学んだことだが、ダンジョンにはモンスターを産むことよりも自らの修復を優先するという特性があるらしい

 

その特性を利用して休憩する際にはモンスターが生まれないように壁を壊してから休むというのが冒険者達の常識となっている

 

 

「ああ、それとフィルヴィスの容態はどうだ?」

 

「ちょっと精神疲弊(マインドダウン)と、その・・・」

 

「ん?どっか怪我でもしちまったのか」

 

こっから見た限りではそこまで大それた怪我をしているようには見えないが

 

「いや、カイト達の魔法?を見てから放心状態になってるっすね・・・まぁ仕方がないと思うっすけど」

 

「なんじゃそりゃ」

 

「まぁ、常識人カテゴリーの自分たちには色々あるんすよ、いろいろ・・・」

 

「ハハッ、それだと、俺とお嬢に常識がないみたいじゃねーか」

「え?」

「ん?」

 

「「・・・・・・」」

 

 

「おい、まて―――――「そ、それじゃあ、壁を壊すのはフィルヴィスさん以外の全員でいいっすかね!?」

 

誤魔化された

 

(・・・まぁいいか)

 

「・・・お嬢とフィルヴィスは先に休ませる、ここは男手の俺たちが踏ん張る――――――――――

 

『No.11ノ完全習得ノ報酬トシテ ■ ■ ■ ■■ ■ヨリ 識別番号No.11ノ情報ガ開示サレマス』・・ぞ?」

 

 

ラウルと会話している最中に突然、無機質な音声が聞こえてきた

 

(・・・・・・は? え? 何だ今の声は・・・報酬?情報開示? 何のこ・・・痛だだだだ!?)

 

疑問に思った直後、脳内に『11』能力、そのより詳しい情報、それも最悪と言っていい【使用済み条件】までもが激しい頭痛と共に無理矢理流れ込んでくる

 

(おいおいおいおいおい!? って、な・・・なんじゃこりゃぁあああ!?)

 

 

 

=========================

 

 

 

《side:フィルヴィス》

 

 

人というものは理解できないものを目の前にしたとき

 

空っぽになるということを今、初めて知った。

 

 

私は後衛の魔導師だ、故に近接は最低限の自衛程度しか習得していない

 

それでいいと思っていた

 

前衛が崩しきれない敵を必殺の魔法で屠り、時には防ぐ

 

それを誇りに思っていた、魔法を使えることで前衛に出来ないことができるのだと、そう思っていた。

 

だが

 

そんなちっぽけな誇りもこの1週間で・・・特に、今日をもって崩れ去った

 

本来は前衛であるはずの者達が魔導師の私より強力な魔法を使う、当然ながら近接攻撃など私が比肩することすらおこがましい程に差があるというのに

 

これが私よりもレベルが上の者ならば自分を誤魔化すこともできただろう

 

だが、あの二人は私と同じレベル、しかも遙か年下で片方に至っては幼女といっても差し支えない年齢で、だ。

 

呆けた私の目に入るのは『剣姫』と『切札(ジョーカー)』と談笑する()の姿だ

 

(すごいな・・・彼は・・・何故あんなもの見た後に普通に接することが出来るのだ・・・)

 

彼・・・『切札(ジョーカー)』のことではない、

 

ラウル・ノールド

 

化け物のような同期と年下の少女とパーティを組む平凡すぎる少年

 

もしかしたらあの三人の中で最も異常なのは下手をすれば彼なのかもしれない

 

実力は並だとしても、その精神力だけは恐らくそこらの上級冒険者よりも遙かに上であろう、並の神経では彼らと共に居るのには耐えられまい

 

(はは・・・何だ、この中で一番弱いのは私じゃないか・・・いや)

 

先程の魔法を見たせいか、それとも精神疲弊(マインドダウン)のせいなのか、悲観的な考えしか出てこない

 

そんな、私らしくもないことを考えていると

 

少し離れたとこに居る『切札(ジョーカー)』が急に頭を抱えたかと思うと

 

ツカツカと足早に私の方まで歩いてきた

 

「・・・? 急にどうしたのだ『切札(ジョーカー)』?」

 

休憩のために壁を崩すという話はこちらまで聞こえていたが・・・

 

「フィルヴィス・・・最初に会ったときの『できることならば何でもする』というのはまだ有効だろうか・・・もしそうならた、頼みが・・・あるっ・・・」

 

「な、なんだ藪から棒に・・・」

 

かなり深刻な話なのか、まるでこの世の終わりのような顔で言ってきた

 

急にどうしたのか疑問に思っていると、いきなり『切札(ジョーカー)』が私に向かい正座した上で、手のひらを地に付け、額が地に付くまで伏せそのまま地面に亀裂が入るほど額を叩き付けた

 

(こ、これは・・・東方に伝わるという、交渉における最も相手に敬意と深い謝罪や請願の意を表す時にのみ使われるという DOGEZA!?

 

そのあまりに見事なDOGEZAに呆気にとられてたが肝心の内容を聞かないことには返事のしようがない

 

「ジ、『切札(ジョーカー)』まずは事情を説明してくれ、そうでないと、一体何が何だが・・・」

 

地に額を着けたままの状態ではこちらが困ってしまう、というか彼と『剣姫』の視線が痛い、一体何事かとこちらを見ている

 

「事情はあまり詳しくは言えない、だが俺の命に関わることなんだ」

 

「なっ!? 命!?」

 

「ああ、そしてそれから俺を救えるのは、この中ではお前だけなんだ・・・だから頼むっ・・・俺を・・・助けて下さいっ・・・」

 

搾り出すような心の底からの嘆願

 

この『切札(ジョーカー)』の口調と声の真剣さは嘘や冗談ではないとはっきりわかる・・・どうやら私が思っていた以上に自体は深刻のようだ

 

「それは私が命をかけなければならないほど難しいものだったりするのか?」

 

「いや、そこまでではない、だが・・・お前の誇りを傷つけることになる」

 

エルフの多くはプライドが高く誇り高い一族だ、

 

だが、それでも命の恩人を無下にするほど私は薄情では無いつもりだ

 

「もし、私が断ったらお前は確実に死ぬのか?」

 

「今回は死ぬ確率の方が圧倒的に・・・高い・・・っ」

 

「・・・・・・」

 

(今回は、か・・・理由はわからないが私達をミノタウロスの群れから救うために何かしたのだろうか?・・・先程の強力な魔法は何か代償がいるものという可能性も・・・・・・はぁ、展開が急すぎで頭がついていかん)

 

私が先程まで恐れていた少年がどういった経緯か、今は私に助けを求めているという光景に戸惑しか感じない

 

だが、『切札(ジョーカー)』が、カイトがいなければ私達は全滅していたのは間違いない

 

(ならば、迷う必要など最初からないではないか・・・)

 

「カイト、顔を上げてくれ」

 

「・・・・・・」

 

そういってようやく顔を上げたカイトの顔は何かに迷い、そして苦しみに耐える、苦渋に満ちた顔だった

 

「私は・・・私は何をすれば良い? お前にはいくつも借りができてしまったからな・・・出来ることなら何でもしよう、『我が友』よ」

 

それを聞いたカイトの顔がようやく少し明るさを取り戻してくれた

 

「ああ、やってほしい・・・というか、正確には、やらせてほしいことは実際には簡単なんだが・・・難しいというか・・・」

 

「・・・やらせてほしいこと?」

 

その言葉に一抹の不安と嫌な予感、私の第六感が今すぐに逃げろと継承を鳴らし始めた

 

 

「ああ、お前の・・・」

 

「私の?」

 

おっぱいを揉ませてくれ!!

 

 

奴は決め顔でそう言った。

 

 

ふむ・・・さて、切れ味の良さそうな私のナイフはどこいったかな?

 

目の前のクズを処分せねば

 

 

《side out:フィルヴィス》

 

 

=========================

 

 

 

ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)

 

No.『11』 ← new

斗流血法(ひきつばしりりゅうけっぽう)・カグツチ》

 

使用すると全身の血液が一時的に発火性の血液となる

さらにその血を糸・剣・刀等の武器に固めて使用することが可能

 

※備考

『風』の属性を使用できる術者と技を複合させることで火力が増幅する

 

 

 

【以下、第三級機密情報】

 

〈使用済み条件〉

戦闘終了から30分以内にセクハラを行う

条件失敗で強制キャンセル

 

※警告

生贄(サクリファイス)に使用するステイタス値が足りません。

至急、経験値(エクセリア)を溜めるか条件の執行を行って下さい。

 

 

 




『度し難い人間のクズ』の能力だからねぇ
条件も『度し難いクズ』の様な条件よ~Ψ(`∀´)Ψヶヶヶ


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25:巫女×秘密 後編

( ゚∀゚)o彡゜おっぱい!おっぱい!( ゚∀゚)o彡゜おっぱい!おっぱい!

無乳? 貧乳? 巨乳? それがどうした!!

(ω・´ )━━(・ω・´)━━スベテガセイギダ!!

ただし男の乳てめーはダメだ。


=========================

 

 

 

《side:ラウル》

 

 

「アイズさん・・・あの二人何かあったんすかね?」

 

「ん?」

 

「いや、カイトとフィルヴィスさんっすよ」

 

 

場所はダンジョンの中層 16階層

 

自分とアイズさんは見張り、逆にカイトとフィルヴィスさん達は自分たちと交代して休憩をとってるっす

 

 

 

ミノタウロスの怪物の宴(モンスターパーティ)

 

あれから既に三日が経ったっすよ

 

あの災厄の後は早めにダンジョン探索を切り上げて、翌日は丸一日休みにして昨日からまた探索を再開したんすけど・・・

 

昨日の探索時から二人の、特にフィルヴィスさんの様子がおかしい

 

どれくらいおかしいのかと言うと

 

「カイト、その・・・クッキーでもどうだ?」

 

「おぉ、サンキュー・・・んぐ・・・へぇ美味いなこれ、クルミか何かか混ざってて香りも良いな、どこで売ってる奴だ?」

 

「いや、それは私の手作りなんだ、私の故郷でよく作る奴でな、その、そうか・・・美味しいか、ンフフ」

 

なんかあからさまにカイトへの熱烈アタックが始まったんすよ、しかしカイトの方は普通な対応

 

(あれってフィルヴィスさんの好意に全然気付いてないっすよねぇ・・・それにしてもこの変貌ぶり、やっぱ()()()に何かあったんすかねぇ、カイトに聞いても何も答えてくれないんすよねぇ・・・)

 

こんなキャピキャピした雰囲気を醸し出す男女を見ると、いつもなら負の感情がメラメラ無限に湧いてくるんすけど、今回はどちらかというとハラハラして心臓に悪いというか・・・

 

「・・・2人の仲が悪いの?」

 

「いや、むしろその逆なんすけど・・・」

 

「んー? 仲が良いのは良いことだよ?」

 

「そーなんすけど・・・何か後々まずいことになりそうな気がするっていうか後が恐いというか・・・」

 

アイズさんにはまだこういった男女の機微とかは早かったみたいっす

 

そんなこっちの心配をよそに向こうは益々雰囲気が良い感じに

 

「お、お茶もどうだ? 故郷の森で飲んでいたのと似たような茶葉を最近見つけてな」

 

「助かるわー、ダンジョンだってのに贅沢だなぁ~、おぉこれも美味しい!」

 

「そ、そうか美味いか、よかった・・・フフ」

 

「いや~、将来フィルヴィスは良い嫁さんになるなぁ」

 

「んなぁ!?・・・そ、そういうのはまだ早いというかなんというか

 

「ん? 何か言った?」

 

「いや!何でも無いぞ!? うん、平和だなぁ、と言っただけだ!」

 

「はっはっは!ダンジョンに平和も何もないだろうに、フィルヴィスも面白いことを言うなぁ」

 

「そ、そうか?・・・そうだな、まったく自分は何をいってるんだか、は、ハハハハ」

 

(こ、これは一体何がおきてるっすか・・・?)

 

カイトとフィルヴィスさんの間で会話が噛み合っているようで噛み合っていないようなもどかしい声が聞こえてくるっす

 

「ラウル、見張りにしゅうちゅう!」

 

「す、すんませんっす!」

 

 

(こ、こんな気になる会話を聞きながら見張りに集中できるわけがないっすよ~~・・・)

 

 

 

《side out:ラウル》

 

 

=========================

 

 

ラウルが2人の雰囲気を訝かしみ始めるころより、時を遡ること三日

 

つまりはミノタウロスの怪物の宴(モンスターパーティ)に遭遇した事件当日

 

災厄を凌ぎきってから数十分後の出来事になる

 

 

=========================

 

 

《side:フィルヴィス》

 

 

「フィルヴィス、だ、大丈夫か・・・?」

 

「ら、らいじょうぶらぁ」

 

「その、なんか・・・すまん・・・」

 

 

 

 

ビクビクと微かに痙攣し、息も絶え、顔を恥辱と悦楽で混ぜた表情で横に倒れ伏すエルフの姿があった・・・というか私だ

 

 

(しゅ、しゅごかった・・・)

 

このような状態になってしまったのは、カイトによるセクハラが原因である。

 

 

 

 

 

 

 

カイトに『胸を揉ませてくれ!』と言われたときは、即座に切って捨てようと思ったが、この1週間共にダンジョンを駆け巡って多少はこの男の性格は分かったつもりだ、そしてこいつはいきなりそんなアホなことを言う奴では無かったはずだと、なけなしの理性を掻き集めて斬りつけるのを我慢した

 

何故そのようなことをする必要があるのかカイトを問い詰めると、数秒ほど沈黙と共に葛藤したかと思うと絶対に他言無用ということでカイトから掻い摘まんで説明された内容はかなり荒唐無稽な話だった

 

 

 

要約するとこうだ

 

 

・先程の魔法に見えた炎はスキルによるものであるということ

 

・スキルはランダムで何が出るかわからないということ

 

・スキルには代償が必要で、ステイタス値を最大で1000以上失わなければいけないこと又、代償を支払えない場合は死が待っているということ

 

・ステイタス値を捧げる以外でスキルを消すには特殊な条件をクリアしなければならないということ

 

・そして今回の条件はセクハラを行うという信じがたい条件、しかも30分以内・・・この時点で既に10分経っているので実質20分以内にセクハラを行わなければ死ぬということだ

 

 

はっきし言おう・・・信じられん!!

 

なんだそのスキルは?

 

見たことはもちろんだが聞いたことすらない

 

セクハラなら『剣姫』にでも・・・と思ったが

 

『8歳』『幼女』『セクハラ』

 

この三つの単語が並ぶだけで犯罪臭が凄まじい

 

仮にそんなことを強要しようものなら私は自責の念で首を吊る

 

そんなことを悩んでいると

 

(いや・・・待てよ?)

 

ふと天啓が降りてきた

 

・・・別にセクハラをするなら女に限らないのでは?

 

セクハラは同性にも通用するはず!!

 

それをカイトに伝えると

 

「その手があったか!!よっしゃぁーーーーラウルゥーーーーちょっと胸揉ませろーーーー!!」

 

と言い残すと土埃を上げながら彼に向かって走って行った

 

その反応にどうやら先程の話は真実だったのかもしれないと思い始めた、そうでなければ同性の胸を嬉々として揉みに行きはしないだろう

 

(どちらにしろ、助かっ「なんでだぁぁーーーーーーーーーーーーー!?」・・・なんだ!?)

 

カイトが突然大声を上げたのでそちらの方に視線を向けると、ラウルと『剣姫』が壁を壊すのを中断し広間の入り口に向かって走って行くのが見えた

 

(何かあったのか?)

 

と、疑問に思っていると

 

今度はカイトがドドドドドドドドという凄まじい勢いで今度はこっちに向かって来ていた

 

(な、なんだ!?どうしたのだ!?)

 

 

 

 

《side out:フィルヴィス》

 

 

=========================

 

 

 

フィルヴィスから女がダメなら男の胸を揉めば良いじゃない!

 

と助言をもらい、さっそくラウルにセクハラをしにいく

 

成る程!

 

確かにセクハラは同性でも成立するはずだ!ナイスアイディア!!

 

正直、お嬢の胸を揉むのは倫理的に完全アウトだ、フィルヴィスに事情を説明して犬に噛まれたとでも思ってもらえないかと苦しい言い訳を考えていたがこれもぶっちゃけアウトだ、だがしかーし!ラウルになら同性の友同士の悪ふざけですむ!

 

(フハハハハハハ!この『11』の能力大当たりじゃん!)

 

同性の胸や尻を揉んだり撫でるくらいなら、気分は非常によろしくないが破格の能力だ!無闇矢鱈に異性にセクハラを行うよりは大分ましと言えるだろう、事情を説明しておけば異性に頼むより抵抗感も少なくて済む!

 

問題があるとすれば同性でもアッチの気がある奴には気をつけなければならないって事ぐらいか、誤解から俺の貞操が奪われる事態になったら目も当てられん

 

(残りの時間は・・・・)

 

 

00:16:36

 

00:16:35

 

00:16:34

 

(16分半!これだけあれば間に合う!!)

 

ちなみに先程から意識を少し集中させると残り時間がタイマーの様に頭に思い浮かぶようになった、地味に助かる。

 

ちなみにラウルはお嬢と一緒に壁を壊すためにこちらを向いていない

 

つまり後ろから不意打ちで胸の部分を鷲掴みにすればいける!!

 

 

「ラウル~~~~~!!」

 

「どぅわぁああ!?何すかぁ!?」

 

 

ぐわし!!

 

モミモミモミモミと後ろからラウルの胸部を鷲掴みにして揉みしだく

 

(これで条件クリアのはずだ!タイマーは・・・)

 

00:16:01

 

00:16:00

 

 

罰則事項(ペナルティ)

 

 

00:08:00

 

なんか半分になった。

 

 

「なんでだぁぁーーーーーーーーーーーーー!?」

 

「ちょ、いったどうしたっすかカイト!?」

 

(なんでだ!?・・・まさか同性だとダメなのか!?)

 

ラウルが困惑しているがそれどころではない、リアルに俺の命のタイムリミットが10分を切ったのだ

 

アホみたいな理由だが今世で一番の命の危機かもしれない、もはや手段がどうのこうの言うような状態ではなくなった

 

わかってはいたつもりだったが、自分のスキルのアホさとヤバさを改めて思い知らされる

 

「ラウル、お嬢、リーダー命令だ!今すぐ作業を中断、広間の入り口の警戒に入ってくれ」

 

「はい?なんなんすかさっきから?」

 

「ん・・・説明」

 

「スキルの後遺症で後8分足らずで俺が死ぬ!それを確実に回避できるのはこの中じゃフィルヴィスだけ!」

 

「!?・・・わかった」

 

「え?死ぬ?は?―――いててて!?」

 

 

かなり端折って説明したが、お嬢は即座に理解はしなくとも状況をわかってはくれたようだ、今だ混乱しているラウルを引きずりながら入り口に向かってくれた

 

(ほんと頼りになるわ・・・)

 

入り口に向かうラウルとお嬢を確認したので急いでフィルヴィスの元にダッシュ

 

「フィルヴィスゥーーーー!! まじでやばい!」

 

ラウルにセクハラっぽいことを行った瞬間に制限時間が半分になったことを説明

 

「はぁ!?なんだその男にとって都合が良すぎる展開は!?」

 

「俺が知るかぁ!?ってか時間が7分を切ってるんだ、頼む!!胸でも尻でも何でもいいからセクハラと判断できる何かをさせてくれ!!このままじゃ死ぬぅ!?」

 

「・・・・・・・っ」

 

フィルヴィスが数瞬だけ迷った顔を見せた後、覚悟を決めた顔をした

 

「カイト、私も覚悟を決めて、その、なんだ・・・お前のセ、セクハラ を受けてやる! だがその前に答えろ、今回のことが全て嘘ではないと我が主神デュオニュソス様の前で釈明することはできるか!?」

 

「やる!釈明でも説明でもプレゼンでもやってやるから、だから・・・頼む!!」

 

それくらいなら喜んで説明してやるわ!

 

それにそれなら俺の無罪とまではいかないが仕方のない行動であったことの釈明もできる一石二鳥!

 

「ならば・・・こい!さっさと揉め!!」

 

そう言って後ろを向いた、さすがに正面から揉まれるのは恥ずかしいのだろう

 

「恩に着る!」

 

フィルヴィスの脇から手を伸ばし胸に触れる

 

「・・・いくぞ!」

 

「いいからさっさとやれ!」

 

モミングモミングモミング

 

「・・・あ・・・・く・・・」

 

できるだけ痛くしないよう円を描くように優しく揉み込む

 

(ふむ・・・手の平サイズ・・・)

 

自ら身体を差し出してくれたフィルヴィスには申し訳ないが俺も男、さすがに女性の胸を揉んで何も思うなという方が無理だ

 

(いや、それよりも時間は!?)

 

00:06:21

 

00:06:22

 

00:06:23

 

(時間が増えてる!?・・・・・・まさか!?)

 

ためしに揉むのを一旦止めてみる

 

「ん・・・あ・・・?」

 

00:06:26

 

00:06:25

 

00:06:24

 

揉むのを止めた途端に制限時間が減り始めた

 

(ウソだろおい!?)

 

即座に揉むのを再開

 

「んん・・・く・・・」

 

そうすると時間がまた増え始めた、っていうかフィルヴィス、その色っぽい声止めて!?

 

胸の小さい者は他よりも感度が高いと聞いたことがある、フィルヴィスもそうなのだろうか?

 

「あの、フィルヴィスさん・・・ちょっと問題が発生しまして」

 

「こ、今度は・・・あ・・・何だ?・・・というか・・・あ・・・説明・・・するなら・・・んぁ・・・一旦手を止めて・・・あ」

 

「そうすると後々、二度手間になるからこのまま話すな」

 

揉みながらフィルヴィスに今判明したことを話す

 

「な・・・んく・・・・では・・・一体いつまで・・・あ・・これは・・続くんだ?」

 

「・・・たぶん、元のタイムリミットまでだと思う」

 

「・・・ん・・・元の?」

 

「ああ、元が30分だから、後23分くらい?」

 

「~~~~~~~~~~~~~~!?!???」

 

・――――――――――――23分後。

 

「フィルヴィス、だ、大丈夫か・・・?」

 

「ら、らいじょうぶらぁ・・・あ・・う・・・」

 

「その、なんか・・・すまん・・・」

 

思った通り、タイマーが30分になった途端、スキルによって出ていたライターが消え、タイマーも表示されなくなったが

 

犠牲は大きかった・・・具体的に言うとフィルヴィスの尊厳とか・・・。

 

 

それにしても胸を揉んでいる最中に何故か所々で記憶が飛んでいるのが気がかりだ

 

(なんか途中でじいちゃんの声が聞こえてきたような・・・『北〇珍拳』がどーとかこーとか・・・)

 

 

それからさらに数分

 

「よ、ようやく落ち着いた・・・」

 

いつも通りのフィルヴィスが再起動した

 

「改めて助かった、ありがとうフィルヴィス」

 

「ふん、気にするな・・・まぁ私の貧相な胸を揉んだところで悦ぶ者は少ないだろうがな」

 

かなり不機嫌でいらっしゃるようだ、まぁ俺がやったことを思えば当然だが・・・

 

確かにフィルヴィスの胸はひn・・・慎ましやかな大きさの胸だったが、そこまで卑下するものではあるまい・・・代わりに感度は抜群のようだし

 

「んなこたねぇよ、男ってのは惚れた女の胸なら・・・大きさなんて関係ねぇよ」

 

とりあえず、少しでも機嫌を良くしてもらうためにもよいしょしておこう

 

「うぇ!?・・・そ、そそそそそ、それはいったいどういう!?」

 

「とりあえず、そちらの主神に挨拶に行かないとな」

 

先程フィルヴィスが出した、今回のことを神の前で釈明するという約束を果たさなければ

 

「あ、挨拶!?あわわわわわ、いやそれはちょっと早すぎる!私達は別のファミリアだしもっとお互いのことを知ってから」

 

 

「何言ってんだ?俺はきちんと約束や責任を果たす男だぞ?」

 

「しぇ責任!?あわわわわ」

 

 

この後フィルヴィスから神への挨拶と釈明には来なくていいと言われた

 

俺の言っていたことを信頼してくれたのだろう、神の前で証明する必要はないと判断したようだ

 

ありがたい、俺はこの人生で一生の内でも中々得がたい友に巡り会えたようだ。

 

 

 

 

=========================

 

 

正妻:アスフィ

 

変態:アミッド

 

妹 :アイズ

 

愛人(勘違い):フィルヴィス ←New

 

 




めっちゃ難産な話だった ε-(´・`) フー


次回は一年くらい時間が飛びます
ようやく書きたかった部分の執筆ができそうです、更新が遅くなったらごめんね(・ω・)

次回「卍解」!! 


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26:日常×風呂

でかい話に入る前に思いついたカイトの日常を何話か少々(^_^)



=========================

 

 

 

《side:ラウル》

 

 

場所はロキ・ファミリアの本拠(ホーム) 黄昏の館、その中にある浴室っす

 

「ふぃ~、今日の探索もキツかったす~」

 

近頃はカイトとアイズさんの探索に連れ回されて毎日ヘトヘトになって帰ってくるのが日常になってしまったっすよ

 

シャワーを浴びて汗を流してから湯船に浸かると一日の疲れが抜け出て行く

 

「あぁ~・・・この感覚は何度味わってもたまんねぇっすねぇ~極楽極楽♫」

 

もし、一念発起せずに今も村にいたら、自分はこの湯船の存在すら知らずに一生をあのへんぴな村で過ごしていたんすかねぇ?

 

そんなどうでもいいことを考えながら天井を見上げる

 

微妙な時間帯なおかげか風呂場には自分一人だけ、――――――ピチョンと天井から雫の落ちる音が響くことすら心地良い

 

(・・・今日も何とか付いて行けたっすねぇ)

 

あの2人の戦闘はサポートするだけでも一苦労させられるっすよ

 

先日、団長達に自分以外にもサポートを増やして欲しいと言ったら

 

 

『あいつらはちょっとアレじゃからな・・・頑張れ』

 

『既に他の団員はあいつらの異常性に気付いてしまったからな・・・まぁ、その、なんだ・・・頑張れ』

 

『う~ん、彼らのデスマーチについていける人員は任務(ミッション)で出払ってるからちょっと難しいかな? ハハでも君なら大丈夫だよ!うん!根拠はないけど大丈夫!大丈夫!!』

 

 

ありがたい激励のお言葉だけをいただいたっす・・・いや言葉じゃなくて人をよこせと言ってるんすよ

 

(でも、確かに今のオラリオの状況じゃ、無理は言えねぇ・・・すか・・・ね・・・ZZZZZZ)

 

と考えても仕方がないことを延々と頭の中でグルグルと思考していると疲れから眠気が襲って寝入ってしまったっす

 

 

「う・・・次は・・・」

 

「んーーー」

 

(あれ?・・・自分、寝ちゃってたっすか?)

 

誰かの話す声で飛んでいた意識が徐々に覚醒する

 

「お、ラウル起きたか? 風呂に入りながら寝るとのぼせるぞー?」

 

「風邪ひく・・・よ?」

 

「あれ? カイトにアイズさん?いつのまに・・・」

 

いつの間にか湯船の中で寝落ちしてしまったみたいっす

 

声を掛けられた方を見ると洗い場の方でカイトとアイズさんが・・・

 

「うーし!じゃあ髪の泡を洗い落とすから目をつむれ~」

 

「ん!」

 

「ほ~れジャバ~」

 

「ん~~~!」

 

全裸のカイトがスッポンポンのアイズさんの髪に付いた泡を桶に溜めたお湯で洗い流していた

 

まるで本当に仲の良い兄妹の様な光景をのぼせた頭でボーッと眺める

 

「・・・・・・あれ?」

 

その光景をのぼせた脳が認識するのに時間が掛かる

 

 

 

『ラウル(ブレイン)・・・再起動中・・・Now Loading・・・Now Loading・・・Now Loading・・・自分男 カイト男 アイズさん女←超重要!警告警告警告警告警告警告警告警告警告警告警告警告警告警告!穢れたバベルの塔 自分所持 カイト所持 アイズさんNo所持!浴室男女共同 されど 時間によって男女別危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険!女性陣にバレたら? 処刑!リヴェリアさんにバレたら? 消し炭!ロキにばれたら? ・・・それは割とどうでもいい』

 

 

 

思考に掛かった時間は僅か0.1秒・・・一気に目が覚めたっす。

 

 

「な、なななななな!!」

 

絶句とはまさにこの事

 

「「ん?」」

 

「何やってんすかぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」

 

驚きの余り浴槽の隅っこまで全力で後退しつつも、叫ばずにはいられなかったっす

 

 

「ちょ!? ラウル風呂場で大声あげんなよ!? 響くだろうが!?」

 

「ん・・・うるさい」

 

「いやいやいやいやいやいや!!!?何で自分の方が非常識みたいに言われてるんすか!?」

 

自分の驚きは至極全うだというのに二人から非常識な人間を見る目で見られたっす

 

「アイズさんは女の子っすよ!? 何で男の入浴時間に、のほほ~んと一緒に風呂に入ってるんすか!?」

 

「いや、女の子って・・・お嬢はまだ8歳の幼子だぞ? 別に一緒に入ったところで問題なくね?」

 

「いや、それでも一応男女の」

 

「カイト、もっかいジャバーやって、泡が落ちてない」

 

「ん? おぉすまんすまん、ほれ念入りに後二回ジャバーするぞ~目をつむれー、ほ~れジャバ~」

 

「ん~~~!」

 

「え~~~~~・・・・・・」

 

あれぇ・・・自分は正しい事を言っているはずなのに逆にこっちが間違っているかのような対応をされてしまったす

 

そしてあれから数分

 

「バ〇ンバ バン バン バン ♫ 」

 

「ばば〇ば ばん ばん ばん」

 

「バ〇ンバ バン バン バン ♫ 」

 

「ばば〇ば ばん ばん ばん」

 

「はぁ~~」

 

「ビバノ〇ン ♫ 」

 

「「い〇湯だな~~♫ 」」

 

そして今は二人が湯に浸かって暢気に歌を歌ってるっす

 

ノリノリのカイトに対してアイズさんはなんか事務的な感じっすけど・・・つか無駄に良い声っすね二人とも

 

「・・・っていうかこれ大丈夫なんすか?」

 

「何がだ?」

 

「いや、だからアイズさんのことっすよ」

 

「・・・んー?」

 

アイズさんの方を見ないようにしつつ質問すると相変わらず 何言ってんだこいつ? みたいな反応が返ってくるっす

 

 

「うぇ・・・ま、まさかラウルお前ロリコン・・・いやペドフィリアかよ!?」

 

「違うっすよぉ!? 何でそうなるっすか!?」

 

「おいおいおい、お嬢、もうちょいラウルから離れろ、危ねぇぞ・・・」

 

「ん?・・・ロリってなに?」

 

「だから違うっす!誤解っすよ!?」

 

アイズさんの事に対して執拗に疑問を投げかける自分にまさかの変態疑惑、濡れ衣にも程があるっすよ!?

 

「はぁ~~・・・もういいっすよ、自分は先に上がらせてもらうっすね・・・」

 

・・・なんかもう色々諦めたっす

 

「おう、湯冷めしないように気をつけろよ~」

 

「よ~」

 

「わかったっすよ~・・・」

 

まぁ本人達は全然気にしてないみたいだしこれでもいいんすかね?

 

それとも自分が気にしすぎなのか

 

やはり、あの二人は色々な意味で規格外だなと再認識した日だったっす。

 

 

 

それから数ヶ月後、突然予定していたカイト達との探索が中止になった日があったっす

 

その日に庭を見ると

 

(あぁ・・・やっぱり・・・)

 

リヴェリアさんにボコボコにされ簀巻き状態で木に吊るされたカイトと、隣で正座に加え頭に巨大なコブを作って貞操観念や常識について怒鳴られているアイズさんの姿があったっす。

 

 

「やっぱ、普通が一番ってことっすかね?」

 

鬼のようなリヴェリアさんに折檻を受けている二人を見てそう思ったっす。

 

 

 

 

《side out:ラウル》

 

 

 

=========================

 

 

 

 

 

 




長編の息抜きに執筆した短い話なんでボリュームは期待しちゃだめよ?(´д`)

あとこんなのが二つくらい考えてある


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27:大神×武神

【様々な出会い編】最後の話よー(・ω・)


☆久々の独り言☆
FGOの星4サバ配布チケットにはバサスロを選択
これでスカスカシステムが組める! (๑˃̵ᴗ˂̵)و ヨシ!






時はカイトがミノタウロスの怪物の宴(モンスターパーティ)に遭遇する少し前に遡る。

 

 

オラリオから北の山間部にある名前もないような村

 

馬車に乗って数日もかかるような辺鄙な村に二柱の神が対面していた

 

一人はゼウス

 

かつてのオラリオでは最大最強の名を欲しいままにしたゼウス・ファミリアの主神

 

しかしそれも過去の話、世界三大クエスト『隻眼の黒竜』討伐失敗により落ちぶれ、今ではベルとカイトの祖父として振る舞うただの好好爺だ

 

 

もう一人はヘルメス

 

ゼウスの手となり、時には足となってオラリオ中を駆け回った腹心の部下でもある

 

 

そして現在、ゼウスは開いた口が塞がらぬ程驚いていた

 

「8ヶ月でLv.2になったじゃと!?」

 

「ええ、実際には半年でランクアップできたようですがステイタスを限界まで上げるために二ヶ月遅れたそうです」

 

「~~~~~~~っ・・・」

 

(さすがにこの方でもすぐには信じられな――)

「さっすが儂の孫!!」

 

「信じるの早いですね!?」

 

あまりのジジ馬鹿っぷりにずっこけそうになった

 

だが、よくよく考えればとある事情で身を隠していなければならないのに、危険を顧みずに自分を呼び寄せる程にこの大神は孫を溺愛していたことを思い出す

 

「は~・・・まぁいいか・・・それよりもこれをどうぞ、その自慢のお孫さんからの手紙ですよ」

 

「おお!それを待っとったんじゃよ!」

 

渡された手紙を嬉々として開け、手紙に目を通す

 

それなりに長い内容なのか何度も頷きながら手紙を読んでいる、そして全てを読み終わったと思ったら

 

 

ニッコリ

 

いきなりの笑顔

 

(嫌な予感しかしない・・・)

 

「よ~し!ヘルメスー・・・イシュタルぶっ殺そう☆」

 

いきなり物騒なことを言ってきた

 

「できないし、しませんよそんなこと」

 

自分のファミリアにはイシュタルと争えるほどの子はいないし、その前に間違いなく数で圧倒される

 

ファミリアが壊滅してもはや存在しないゼウスに至っては何を言わんやといった話である

 

「カイトを瀕死に追い込んだんじゃぞ!?カイトに直接手を下したメス豚共々万死に値する!!」

 

どうやら手紙にはランクアップの経緯も書かれていたらしい

 

「落ち着いて下さいよ、一応そのおかげでランクアップもできたんですし、おあいこで良いじゃないですか、それにそんなことしたら身を隠してる意味がないじゃないですか・・・あなたの命をどれだけの闇派閥(イヴィルス)が狙っていると思ってるんですか」

 

「ぐぬぬぬぬ」

 

「ぐぬぬぬぬ、じゃないですよ」

 

 

その後、何とかなだめて落ち着きを取り戻してくれた

 

 

ちなみに、一緒に来たアスフィにはゼウスとの話し合いが終わるまでベルの話相手をしてもらっている

 

大方、カイトのオラリオでの活躍を話してあげているのだろう、先程も外から

 

『やっぱり兄さんすごーい!!』

 

と無邪気な声が聞こえてきた

 

 

 

 

 

 

―――――――――――間。

 

 

 

 

 

 

 

「うーむ・・・それにしても困ったのう」

 

「今度は何ですか・・・」

 

ようやく落ち着いたかと思ったら今度は手紙を見ながら唸りだした

 

「それがのう、将来オラリオが平和になったら、金を貯めて儂とベルがオラリオに住めるようにすると書いてあってのう」

 

「それは・・・・・・確かに困りましたね」

 

カイトとしては親孝行のつもりなのだろうが、本当にそんなことをしたらゼウスに恨みを持つ者達に間違いなく殺される、大神ゼウスには元々の権能として神威を消し、市井の者に紛れる能力があるが、それでもゼウスを直接知っている神々に姿を見られれば速攻でバレる

 

「断るしかないのでは?」

 

「そうじゃなぁさすがに死ぬのは・・・ん?・・・死ぬ?・・・そうじゃな・・・ふむ」

 

何かを思いついたのか一人で何かブツブツと呟きだした

 

「よし・・・決めたぞヘルメス」

 

「碌でもない事じゃないでしょうね」

 

「なに、大したことではない、後数年したら儂は死んだことにするってだけだ」

 

「はぁ? 何のためにそんな・・・あぁいや、成る程・・・確かにそれならベル君もオラリオに行くかもしれませんね」

 

また突然何を言い出したのかと思ったがすぐに大神の思惑を看破する、伊達にゼウスの部下を長年やっているわけではない

 

「うむ、ベルには常々、儂のことは気にせずにオラリオに行ってもかまわないと行っとるんじゃが、あの子は優しすぎるからな、儂だけを置いて行くことはできんじゃろう・・・儂は二人の枷になるつもりはないからの」

 

「二人を騙すのは気が引けますねぇ」

 

「ウソをつけ、お主はこういった悪戯は昔から好きじゃったろうに」

 

 

こうして人知れず、二人の孫のために数年後にゼウスが死を偽装することが決定した。

 

 

 

 

―――後に、この判断が歴史に名を残す英雄と大英雄になる兄弟を生み出すことになるとは

 

大神ですら予想だにしなかった。

 

 

 

 

================

 

 

 

 

 

 

極東のとある社で一人の男神が手紙を読んでいた

 

「・・・うーむ」

 

周りには幼子達がドタドタと元気に走り回っているが騒がしいのに慣れているのか気にせずに手紙の内容に目を走らせている

 

男神の名はタケミカヅチ

 

角髪(みずら)の美丈夫であり、天界では武神と呼ばれ戦いを得意とする神々の中でも並ぶ物なしとまで呼ばれた豪傑である。

 

だがそんな武神も

 

「タケミカヅチ様~」

 

「ん?どうした命?」

 

「あやめがおしっこ漏れそうって」

 

「どわぁああああ!?待て待て待て!?今連れて行くから我慢だぞあやめーーー!?」

 

今では孤児達の優しき父として(やしろ)を経営していた。

 

 

 

「ふー・・・あぶなかったな、命、よく教えてくれた」

 

「はい!」

 

「あやめも今度からもっと早く言うんだぞ?」

 

「はーい!!」

 

「うむ!良い返事だ!では怪我しないように遊んでおいで」

 

「「はーい!!」」

 

いつもの一騒動が無事に解決し二人の娘が庭に一緒に走って行くのを見送り一息つく、その目線の先には先程まで目を通していた手紙

 

「あら、タケ?どうしたの?いつもの貧乏臭いため息とはちょっと違ったアンニュイなため息なんてついちゃって」

 

「誰が、貧乏臭いだ」

 

「実際私たち貧乏よ?」

 

「そうでした・・・」

 

話しかけてきたのは共にこの社で孤児達の面倒を見ている女神、月読(ツクヨミノ)

 

「それで?悩みの種はその手紙?」

 

「ああ、ヘルメスのアホ経由の手紙でな・・・」

「燃やしちゃう?」

 

「待て待て!? ヘルメスを経由しただけで手紙を書いた本人はあいつとはあまり関係ない奴だ!」

 

「そうなの? でもタケが難しい顔してるのはその手紙のせいなんでしょ~?」

 

ヘルメスは天界にいた頃からタケミカヅチをおちょくることが多かったため仲の良かった月読や他の女神の心象はあまり良くはない

 

「難しい顔をしていたのは、この手紙にどう答えたものかと考えていただけだ・・・読んでみるか?」

 

「え・・・いいの?」

 

「別に読まれても困る内容ではないからな」

 

 

そう言って渡された手紙には共通語(コイネー)で、しかもわざわざこちらに合わせたのか文字が筆で書かれていた

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

拝啓、タケミカヅチ様

 

まずは突然の手紙を差し上げたことをお許し下さい

 

私はロキ・ファミリア所属のカイトと申します。

 

今回はタケミカヅチ様に折り入ってお願いがあり筆を執った次第です

 

私は最近まで徒手空拳でダンジョンに挑んでいたのですが、ダンジョンに深く潜るにつれて打撃だけでは通用しないモンスターが出現し始め、苦戦をしている次第でございます、

 

そこで本格的に武器を扱うことにしたのですが、私が選んだ武器は『刀』

 

最初の内は剣と同じように扱っていたのですが鍛治氏曰く『剣』と『刀』では鉈とカミソリくらい扱い方が異なると聞き『刀』を教わる師をオラリオにて探していたのですが、その最中にアホ 神ヘルメスから『刀』を教えることに掛けては世界一というタケミカヅチ様の話を聞きこうして手紙を嗜めた次第でございます。

 

私はタケミカヅチ様の眷族ではございませんが、どうか刀の扱い方とは言いません、どのような訓練を行えば良いのかだけでも伝聞でもかまいませんので御教授頂けないでしょうか

 

改めて、突然の手紙と不躾なお願い、申し訳ありません。

 

 

 

追伸

 

神ヘルメスからタケミカヅチ様は孤児を養う社を経営していると聞きました

 

自分も物心が付いた頃には両親は既に亡く、自分と弟を祖父が男手一つで育ててくれなければ孤児として育っていたと思うと他人事とは思えません

 

微力ながら私も社に役に立ちそうな品等をこれからも贈らせていただきます。

 

 

 

ロキ・ファミリア所属

 

カイトより

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

手紙を読み合えた月読がタケミカヅチに向き直る

 

「ん~つまりタケに武器について教わりたいってこと?」

 

「まぁ、そういうことだな」

 

「でも、眷族でもない子にそういったのを教えるのは―――」

「ちなみにかなりの額の金も一緒に送られてきてな」ズシャリ

 

「―――いいんじゃない?」

 

「・・・・おい」

 

熱い手の平返しであった。

 

「だってこれだけあれば味噌と米が買えるわよ!あの子たちが採ってきた山菜も嬉しいけど!それでも!育ち盛りの子達にひもじい思いをさせずに済むなら良いじゃない!」

 

実際、この社の家計は常に火の車・・・どころではなく燃える車輪すらないような状態なのだ、慈愛に溢れるこの女神と男神は常に自らの無力さと闘いながらも子供達を飢えさせぬように各方面の知り合いなどに援助を頼みに行っている、そのような状況の中でも孤児を見つければ拾わずには居られない性分もあって援助に対して資金が常に足りていない

 

ギリギリのギリギリのギリギリのギリの生活という限界のギリギリという言葉がゲシュタルト崩壊するような生活を余儀なくされていた

 

「タケが武術教室でも開ければいいんだけど、そんなことさせるわけにもいかないし・・・」

 

もしも武神であるタケミカヅチが有料で武術を教えるとなれば、それこそ極東中から人を集めることが出来る

 

だが、それは国の戦を激化させる事へと繋がりかねない、そもそも孤児達が生まれるのは戦事で親を失ってしまった子という場合が多いのにそれでは本末転倒であるという理由からタケミカヅチは己の眷族以外には武術を教えるつもりはなかった。

 

だが

 

現在、この社はとある子供達の行動によって経済的危機にさらされていた

 

具体的には、とある貴族からの援助が打ち切られてしまったのだ

 

原因は年長組である桜花、命、千草達を筆頭に、そのとある貴族の箱入り娘、春姫という少女をこっそりと連れだし一緒に遊んでいたことが春姫の親にバレたためだ

 

本来なら桜花達を怒らなければいけないところだが、タケミカヅチと一緒に自分もその娘、春姫のあまりにも自由を知らなさすぎる境遇の不憫さを思い、むしろ率先して煽ったため怒ることはできなかったし、それを後悔してはいない

 

しかしながら現状は先立つものがなければこのまま飢えてしまう、といった状況なのだ

 

子供達のためにもどうにかしてこの武神を説得しなければと月読が決意していると

 

「誰が断ると言った」

 

「え、いいの?」

 

「この手紙の主・・・カイトはダンジョン探索のために刀の訓練方法を聞いているからな、全くないとは言えないが、人に対して使うことは早々あるまい、それに春姫の件で桜花や命が責任を感じるようなことがあっては事だからな・・・」

 

「タケ・・・ありがとう」

 

「なに、これぐらいの手間はかまわんさ、それに・・・」

 

「それに?」

 

「手紙をよく見ると訂正してはあるが・・・ヘルメスのことをアホ呼ばわりする奴は信用できる」

「確かに」

 

 

 

こうして武神タケミカヅチは手紙による伝聞のみではあるがカイトの刀の扱いにおける師となった。

 

 

 

===========================

 

 

 

「あれ?カイトまた手紙を書いてるんすか?」

 

本日はダンジョン探索の休息日

 

二人部屋でもある自室にラウルが入ると机に向かってカイトが何やら手紙を書いていた

 

「また例のタケミカ何とかっていう神様に?」

 

「タケミカヅチ様だ、いやタケミカヅチ様への手紙は少し前に書いたばかりだ、今は祖父への手紙を書いてる最中でな」

 

 

ちなみにタケミカヅチとの文通による刀術指南が始まって既に数ヶ月の時が過ぎている

 

毎回手紙には訓練方法やこれができたら次の訓練といった風にステップアップ式の指示が書かれていたのだが、この前の手紙には孤児の何人かが支援金のお礼を書いた手紙が同封されていて自然に頬が緩んでしまった。

 

こそばゆいが孤児達が飢えなくて済んでいるのならそれにこしたことはない、ちなみに入院やらで数百万あった借金はデスマーチの様なダンジョン探索のおかげで既に完済している。

 

「あれ?カイトっておじいさんと弟にこの町で暮らせるように家を買うとか言ってたような気がするんすけど、孤児院に支援とかしてる余裕ないんじゃないっすか?」

 

「いや、それなぁ・・・じいさんが都会暮しよりも田舎でのんびりしたいから別にいいって断られてさ-・・・」

 

「へー、まぁでも確かに年寄りは騒がしいオラリオよりも、のんびりできる田舎の方が好ましく思うのかもしれないっすねぇ」

 

「ラウルは家族に手紙書かないのか?せっかくヘルメス・ファミリアが優先して届けてくれるって言うんだ、利用しないと勿体ないぞ?」

 

「え~自分っすか? 家出同然で村を飛び出したっすからねぇ・・・返事が恐くってちょっと」

 

 

そんな事を神々の事情を知らずに、雑談しつつのほほんと過ごす二人だった。

 

 

 

 




次章は【悪夢の英雄編】ってな感じで行きます。


主人公が無双・・・できるといいなぁ(´д`)


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悪夢の英雄編!!
28:悪夢×前夜


ちょっと原作改変とオリ展開を混ぜていくよー(・ω・)







オラリオの冒険者、魔石の流通や都市の治安を管理するために全てのファミリアから独立し絶対中立を謳うギルド、その特性上からギルドは24時間その門を開いている。

 

「怪我人を移送する場所の確保は!?」「住人への説明への報告書作成にかかれ!!」「各ファミリアへと協力を要請しろ!急げ!」「確認がとれました!ソーマファミリアが場所を用意するそうです!」「今回犠牲になったファミリアの主神に生存の確認の要請はどうした!?」「回復薬(ポーション)を買い占めてもかまわん怪我人へ回すよう手配だ!」「ディアンケヒト・ファミリアから薬と材料の催促がきてますがどうしますか!?」「かまわん回してやれ今は緊急事態だ!」

 

時間は夜間、草木も眠る丑三つ時、通常なら、24時間開いているギルドでもこの時間帯は半休状態であるにも関わらず、今は全ての職員が総出で出勤し慌ただしく()()()()()の対応に追われていた

 

今回の事件―――――――

 

後に『27階層の悪夢』と呼ばれ、闇派閥(イヴィルス)が今までに起こした事件の中でも最も凄惨な事件とも言われることになる、オラリオ史上でも凄惨極まる事件である。

 

さらに事件はダンジョン内だけに限らず、それに連動するように同時に地上でも起きていた

 

そのせいで現在ギルドはダンジョン内での事件、地上で起こった事件、しかも、どちらもこれからのオラリオの運命を左右しかねない案件に忙殺されていた

 

「部長、とりあず簡潔にですが上への報告書になります、確認をお願いします!」

 

「わかった!すぐに目を通す!」

 

 

ギルド部長が部下の作成した、簡潔にだが要所をまとめた今回の事件のあらましに目を通す

 

そこには今回の事件のおおよその経緯、犠牲者数と生き残った人数及び人名、壊滅したファミリア名だけでなく天界に送還された神々の名前までもが記載されていた

 

オラリオ史上でも類を見ないほどの大事件、それが二つも同時に、しかも僅か一日で起こったというのだからギルドからすればたまったものではない

 

「とりあえずこれを現状の簡易報告書として上に通す、その間にさらに詳しい調書を作成していてくれ!」

 

「わかりました!」

 

「頼む、私ははこれから直接現場に向かう、そこの君!こいつをロイマン氏に持って行ってくれ!」

 

「は、はい!」

 

いつもなら愚痴の一つでもこぼすであろう部下が何も言わずに指示に従うことが事態の緊急性を表していた

 

(それでも、今回の事件はこの都市にとって決して悪い方向に向かうものではないっ・・・ここが踏ん張り時だ!)

 

この都市に住みこの都市を愛する一人の住人として中間管理職なギルド部長が事態の究明と解決のため奔走していた。

 

 

 

―――――――同時刻

 

 

場所は変わり、ダンジョンの入り口であるバベル、その地下

 

本来ならダンジョンへと大勢が行き来するために広く取ってあるはずの広場が今は怪我人と救護士であふれかえっていた

 

その中にロキ・ファミリアの主神ロキ、そしてフィン達幹部だけじゃなくアイズやラウル、アキといった姿も確認できる

 

全員が顔を心配に染めて1人の男に駆け寄っていた

 

 

 

 

そこには、

 

服や髪を赤黒く染め

 

涙を流す男――――――――

 

 

 

 

 

()()()()()()カイトの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

=======================================

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――『27階層の悪夢』数日前

 

 

事の起こりはギルドがとある情報を手に入れたことから始まった。

 

 

 

 

 

 

=======================================

 

 

 

 

《side:フィルヴィス》

 

 

「下層への調査・・・ですか?」

 

「ああ、派閥の等級ランクがDに上がったことによるギルドからの強制任務(ミッション)という奴らしい」

 

 

ギルドは一定の等級に達したファミリアに任務を課す、それは本来なら到達階層の記録更新など何かしらギルドに取って有益な情報や成果を求められるものだ、だが今回は異なるらしい

 

 

場所はデュオニュソス・ファミリアの本拠、その一室

 

そこで団長である私と主神であるデュオニュソス様は明日からの団員達とのファミリアとしての今後の行動について話していた

 

強制任務(ミッション)の事については知っていましたが・・・何か訳ありですか?」

 

「実は先日ギルドが闇派閥(イヴィルス)が下層で怪しい動きをしているとの情報を得たらしい、そしてそのために多数のギルド傘下のファミリアが投入されるそうだ」

 

「それに私達も加われ、ということですか・・・私を含めてもLv.2以上の団員は5名しかいませんが」

 

「それでも、ということらしい・・・なにせ調査する場所が場所だ、大方付いてこれるサポーターが欲しいのだろう、それに今回その調査を主導するのは()()アストレア・ファミリアの全団員だそうだからね、直接的な危険は彼女たちが振り払ってくれるだろう」

 

「アストレア・ファミリアが・・・確かに彼女たちとなら戦力はそれだけでも十分ですね」

 

 

【アストレア・ファミリア】

 

団員の全てが女性によって構成されており、構成団員は僅か11名のみという少数のファミリアだ

 

しかし全団員11名の内9名がLv.4、残りの2名もLv.3といった、ただの少数のファミリアではなくそこに精鋭という言葉が付く、オラリオでも名の知らぬ者はいないとされる程の上位派閥ファミリアである

 

正義を司るアストレアの神意の沿って、団員達は率先してオラリオの安寧と秩序を守るために奔走する、まさに闇派閥(イヴィルス)の真逆を行く者達である。

 

そのため闇派閥(イヴィルス)の中には闇派閥(イヴィルス)殲滅を主導しているロキ・フレイヤ・ガネーシャ・ファミリアよりも敵対視している者達もいるほどだ。

 

 

 

 

「ふぅ、ギルドもやっかいな任務を押しつけてきたものだ」

 

「す、すみません」

 

「?・・・なぜフィルヴィスが・・・いや勘違いしないでおくれ、別に私はそういう意味で言ったのではないよ」

 

「・・・はい、ですが」

 

「むしろ私の眷族(こども)から初の第二級冒険者が誕生したことはとても誇らしいことなのだからね?」

 

今回の強制任務(ミッション)が言い渡された原因は間接的にだが私にある、派閥の等級ランクが上がったのは私のレベルがつい最近になってLv.3にランクアップしたためだ

 

「ふふふ、それにしても・・・」

 

「っ・・・な、何でしょうか?」

 

何だろうかディオニュソス様がニヤニヤと意地の悪い笑みを向けてくる

 

「いや、なに・・・()()()()と揃ってランクアップ、運命を感じてるんじゃないかな?と思ってね」

 

「~~~っ!? デュオニュソス様!!」

 

「はははははは! 顔が真っ赤のフィルヴィスも可愛いなぁ、その表情で彼に詰め寄ればすぐに落とせると思うぞ?ほ~らフィルヴィスNTRについて教えてあげるぞ~?」

 

「なぁ!?なななななな何を言っておられるのですかーーー!?」

 

 

からかわれていると分かっていても恥ずかしさから来る顔の熱りが止められない

 

 

 

時の流れは早いものだ

 

カイト達と出会ってからもう少しで一年と半が経つ

 

 

 

あのミノタウロスとの事件の後、カイトの告白染みた台詞は私の勘違いだったことに気付いた

 

・・・半年くらいしてからな

 

めっちゃ落ち込んだ、凹んだ、1週間部屋から出なかった程だ

 

だがそんな私を見かねたデュオニュソス様が私の部屋に来て言ったのだ

 

「フィルヴィス!相手に婚約者がいるから何だ!君は美しい私の眷族(こども)なのだ!ならば君自身の魅力で相手を振り向かせて見せろ!!フィルヴィスいいかい!?愛とはな!奪い取るものなのだ!!それとも君の愛はその程度だったのか!?ならばそれこそ相手に失礼だろう!!愛して愛して究極まで愛し!突撃して砕けて砂になるまで決して諦めるんじゃない!!君は私の美しく誇り高い眷族(こども)なのだから!!!」

 

その言葉に雷が落ちたような衝撃を受けた

 

愛とは奪い取るもの

 

私は誇り高いエルフだ、恋した者に相手がいるのなら身を退くのが潔い、そう思っていた

 

だが、今のデュオニュソス様の言葉で目が覚めた気がした

 

恋した者に相手がいるのなら身を退くのが潔い・・・本当にそうだろうか・・・いやそんなことはない!!

 

諦められない程、既にカイトに惹かれているのだ、そうでなければこうして1週間も落ち込みはしない!!

 

このままあきらめるのはそれこそ闘わずして敗北を認める様なものだ!そんなことわたしのプライドが認めはしない!!

 

死んでいた心に今まで感じたことがない活力が漲ってくる!!

 

「フィルヴィス!私に続けて叫べ!!」

 

「!?―――――はいっ!!」

 

 

「恋人がなんだぁあああ!!」

「恋人がなんだーーーー!!」

 

「婚約者がなんだぁあああ!!」

「婚約者がなんだーーーー!!」

 

これが一時間も続いた

 

最後の方ではデュオニュソス様の喉はガラガラに枯れてしまった

 

眷族である私のためにここまで身体を張ってくれたこの方に私は改めて忠誠を誓った。

 

その翌日からディオニュソス様の助言の元、カイトへのアタックがさりげなく始まったのだが中々上手くいかなかった

 

デュオニュソス様の誤算は思ってた以上に()()()()()()()が奥手であったということだろうか

 

あの時の私は1週間も部屋に引きこもり、その上食事も禄に取っていなかった、そのため脳がフワフワのポワポワ状態、そこに尊敬するディオニュソス様登場と同時に熱い激励

 

言ってしまえばハイな状態だったのだ、私が正気に戻ってしまえば積極的なアタックなど出来るわけがなかった

 

その上、カイトとのダンジョン探索は危険もあったが非常に楽しく、今の関係を壊すのを恐れて決定的な一線を越えることが出来なくなってしまった

 

そしてそれがズルズル続いて気付けば2人そろってLv.3にランクアップ

 

ちなみに『剣姫』は私達の半年前には既にLv.3、所要期間はなんと2年!・・・ちなみにわたしは5年かかっている

 

サポーターのラウルはその少し後にLv.2にランクアップしている、そしてこれも所要期間2年と少し!

 

2人に比べれば倍近く掛かっているが普通はもっとかかる、そもそも一生をLv.1で終える者がいる中ではこれでも凄まじい速度だ

 

そして私とほぼ同時にランクアップしたカイトの所要期間は驚きの1年半!!

 

改めて思う、このパーティにいると感覚が狂いそうだ

 

 

「・・・色々な常識が通じないなぁここは」

 

「突然なんだ?」

 

「カイトおかわり」

 

「おう、ちょっと待っとけ」

 

目の前にはモキュモキュとじゃが丸くんなる揚げ物を衰えることなく食す『剣姫』と、じゃが丸くんを残像を残しながら素早く作るカイトがいた

 

デュオニュソス様と下層への調査に関して話した翌日、私はロキ・ファミリアの本拠の中に招かれていた

 

しばらくの間は下層への調査で共にダンジョンに潜れないことを伝えに、ロキ・ファミリアの本拠まで来たのだが、ちょうどカイト達もダンジョン探索が休息日ということであれよあれよ建物の中に連れ込まれ今に至る

 

他のファミリアの食堂という慣れぬ状況に少々落ち着かない

 

「それでしばらく探索に行けないって?」

 

「あぁ、実はな・・・」

 

昨夜デュオニュソス様と話した内容を掻い摘まんで説明する

 

「あ~、それフィルヴィスの所が参加することになったんか、一応調査の話だけはチラッと聞いたな」

 

「らいじょうぶ?」

 

「お嬢、口に物をいれたまま喋ると、ま~たリヴェリアに怒られるぞ?」

 

「むぐむぐ!?」

 

戦闘中では決して見せない『剣姫』のあどけない姿に少しホッコリする、カイトと一緒だと本当の兄妹みたいだ

 

「一応、アストレア・ファミリアの全団員が主導で指揮を執ることになっているからな、滅多なことにはならないだろう」

 

「まぁ、あそこは全員が第二級以上しかいない精鋭オンリーの特殊なファミリアだからなぁ、下層までなら問題ない・・・か?」

 

「あぁ、帰ってきてからすぐは勘弁してほしいが、休息を数日取ったらまた探索に呼んでくれ、喜んで付き合おう」

 

「応、そん時は頼む、・・・ちなみに今揚げてるじゃが丸くんはリヴェリアも絶賛のじゃが丸くんだ、エルフでも食べやすい『柚風味じゃが丸くん』一個食ってみ」

 

「あのリヴェリア様が!?・・・ご相伴に預かろう」

 

「私は小豆クリーム味」モキュモキュ

 

「・・・何だそれは」

 

明らかに胸焼けするであろう揚げ物を食す『剣姫』に戦慄しつつ、カイトの作ったじゃが丸くんを食べた、リヴェリア様が絶賛するだけはあって非常に美味しかった

 

「・・・くっ・・・・旨いっ・・・」

 

「何で悔しそうに食ってんだ・・・」

 

・・・前々から思っていたがカイトは女子力が高すぎないか?

 

女性としての私のアイデンティティがががががが

 

 

 

 

う・・・だん・・

 

「・・・ん?」

 

「団長? 出発みたいですよ?」

 

「む?すまない少しボーッとしていた」

 

「なっはっはっは、珍しいな!?お前が上の空とか!」

 

「お前らうるさい、置いて行くぞ」

 

「おいおいそりゃあないぜ!?」

 

今は下層への調査へ向けてアストレア・ファミリア主導でダンジョンに向かう直前だ

 

考えにふけっていた私に気の弱そうな団員が声を掛け、付き合いの長い同僚達が茶化してくる

 

(数日前のカイトとの夢を見るとは・・・気持ちを切り替えねばな)

 

色ボケモードはここまでにしておかねば、なにせ今回の調査に参加するファミリアはアストレア・ファミリアを除けば総勢8、人数は50を超えている

 

これだけの大規模な人数でダンジョンに挑むのは初めてで無意識に緊張していたのかもしれない

 

なにせ数だけならばロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアといった大派閥の遠征する際の数とほぼ同等だ、意識するなと言う方が無理な話だ

 

 

ちなみに人数が多いので部隊を二つに分けて18階層で合流する手筈になっている

 

他の冒険者の迷惑にならないように、少しずつダンジョンの入り口に進んでいく他のファミリア

 

「では、次のパーティも進んで下さい」

 

後続部隊の指揮を任されているアストレア・ファミリアのエルフから声が掛かり私達の順番になる

 

(・・・彼女が『疾風』か)

 

素顔の下半分を覆面で隠しさらにフードまで被って人相がわからないようにしているにも関わらず同じ同胞のエルフとわかるのは、そのあまりに素顔を晒さないことが有名になりそれが逆に目印になっているからだ

 

「名高き同胞と共に出来ること光栄に思う」

 

「いえ、こちらこそ今回は協力感謝します」

 

すれ違う前に一声掛けてみると思っていた以上の柔らかい声が帰ってきたことに驚いた

 

(どんな偏屈者かと思ったが・・・綺麗な声だ)

 

「それよりも後ろが詰まりますのでお急ぎを・・・」

 

「あ、ああ、すまない・・・」

 

『疾風』に急かされてから眺めるダンジョンの入り口はいつも通りだ

 

後ろに控えていた団員達に目を配ればやる気に満ちた顔で全員が頷く

 

「・・・よし!デュオニュソス・ファミリア!出陣するぞ!!」

 

「「「「応!!」」」」

 

パーティの志気は上々、これなら予定通り進めそうだ

 

 

 

《side out:フィルヴィス》

 

 

 

 

 

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フィルヴィスは知らない

この先には悪夢が待っていることを

 

他の者達は知らない

二度とこの地を踏むことがないことを

 

女神アストレアは知らない

眷族から最凶の復讐鬼が生まれることを

 

そして、とあるエルフは知る

己が身に巣くう暗き激情を

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱ書きたかった話は書いててワクワクすっぞー(* ´ω`*)むふー


PS
申し訳ありません、年末は仕事が大量に襲ってくるので大分更新遅れます。m(_ _)m


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29:悪夢×進呈

今回は気付けばいつもの1.5倍の文章量だったよ(・ω・)オドロキ!


【いつもの作者の独り言】
うっひょーFGO第三章キタコレヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ

うっひょー来月から29日まで休日出勤キタコレ(゜∀。)ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャ


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《side:フィルヴィス》

 

18階層での合流は特に問題なく予定通りに行われた

 

この階層はダンジョンでも極めて珍しい、モンスターが生まれない 安全階層(セーフティポイント)

 

別名『迷宮の楽園(アンダーリゾート)

 

水晶と大自然に満たされた地下世界の中でも一際美しいとされる場所だ

 

天井は全て結晶(クリスタル)で出来ており時間に合わせて結晶の光がなくなり夜になる

 

そして驚くべき事にこの階層には街があるのだ

 

街と言っても冒険者達が勝手に寄せ集まって作った集落に近い

 

それでもダンジョンでは補給できない貴重な食糧や飲み水、装備や回復薬といったアイテムが手に入るこの場所はどれほど法外な値段であろうと需要がなくなることはない

 

だが大規模集団による遠征の場合は人数に任せて持ってきた荷物で付近の森で簡易テントを建ててキャンプを行うのが主流だ

 

そして例に漏れず、私達もそれに倣ってキャンプを行った。

 

キャンプ中は団長として今回参加したいくつかのファミリアと軽く交流しつつ談笑を行う

正直面倒だが今回の下層への調査は好き嫌いでこなせるものではない、何かあった際に少しでも生存確率を上げるために他のパーティの実力や構成を頭にたたき込んでおくことは必要なことだ。

 

 

そして翌日

 

中層19~24階層『大樹の迷宮』をアストレア・ファミリアの指揮の下進んでいた

 

「弓兵は斉射!とにかく足を止めろ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

10名以上による弓の斉射がモンスターの襲撃の勢いを削っていく

 

「壁役は弓への前へ出て護衛を、打ち終わりにそのままモンスターにシールドバッシュを喰らわせてやれ!!」

 

「「「応!!」」」

 

 

さすがは上位派閥といったところか、最終到達階層が41階層と言うだけはある

 

他のファミリアであっても物怖じせずに冒険者に指示を出していく、おかげで指示された者もその自信に満ちた声に応えるように的確にモンスターを討伐していく

 

(ふむ・・・指示の出し方一つとっても色々と勉強になるな・・・だが・・・)

 

後衛の魔道師部隊に組み込まれたため少々暇を持て余す、これがカイト達となら逆に一瞬の油断もできないのだが、これだけの人数がそろうとどうしても気が緩みかける

 

「今回も私の出番はなさそうだな・・・」

 

「魔法は文字通りの切札だからね、使える人はできるだけ温存しときたいの」

 

ポツリと呟いた私の言葉に後ろから声が帰ってきた

 

「アリーゼ殿・・・」

 

「殿なんてやめてよー、あたし堅っ苦しいの苦手だから、アリーゼでいいって、はい、リピートアフタミー?」

 

振り返ると、アストレア・ファミリア団長アリーゼ・ローヴェルが立っていた、

赤髪を後ろで一本にまとめ、眩しく輝く太陽を彷彿とさせるようなイメージを持たせる女性だ、実際に今回の調査の件で昨日、何度か話をしたがイメージ通りの明るい女性のようだった。

 

「・・・アリーゼ」

 

「オッケー!」

 

カイトとは異なる距離の詰め方だ、あっちは気付けばといった感じだが、彼女ははっきりとグイグイくる、そしてそれが不快に感じない不思議な雰囲気を持った人物だ

 

「あなたののことは『切札(ジョーカー)』からチラッと話しだけ聞いてたのよ~?」

 

「!?・・・か、彼と知り合いだったのか?」

 

「ん~まぁ、都市の治安を守るために一緒に駆けづり回ってるファミリア同士だもの、ちょっとした交流くらいあるの、そこで世界記録保持者の彼と何回か話す事があってねー」

 

成る程と納得した、確かにロキ・ファミリアとアストレア・ファミリアは闇派閥(イヴィルス)と明確に敵対している、おそらくこれまで何度となく共同戦線を張ったことがあるのだろう

 

(そういえばカイトがLv.3になってから強制任務(ミッション)に連れ出されることが増えたとぼやいて―――――)

 

「でね-?彼と話してるときにあなたのことを彼が話すことがあってねー?」

「!??」

 

(カイトが私のことをっ!?あわわわわわ!?)

 

「・・・・・・」

 

心中で大混乱しつつもなんとか表情を崩さないことに成功したが

 

「あなた『切札(ジョーカー)』こと好きでしょ?ラブってやつ?」

 

「ぶぅーーーーーーーーーー!!??」

 

・・・続くアリーゼの言葉で無意味になった

 

「な、ななななななにゃにを言ってるんだ!?」

 

「ぷっ、あっはっはっはっはっは! だって彼の話を聞いたらバレバレよ?」

 

「なんだとぉ!?」

 

「ねぇねぇ彼のどこに惚れたの?顔?性格?それとも全部?」

 

「い、いや、そ、それはちが・・・」

 

「ねぇねぇ教え アダァ!?」

 

「!?」

 

凄まじい勢いでこちらに詰め寄ってくるアリーゼの脳天に重そうな拳骨が降ってきた

 

「とっくにこちらの戦闘は終わっているのに、なにを乙女トークしとるのだ・・・」

 

「か、輝夜(かぐや)、いきなり拳骨はやめて・・・これぜったいコブができてる」

 

(た、助かった・・・)

 

涙目で訴えるアリーゼを無視して輝夜(かぐや)と呼ばれた女性がこちらに近づく

 

「うちの馬鹿が迷惑を掛けてしまったな」

 

「誰が馬鹿よ~誰が~」

 

「い、いやあまり気にしていないでくれ」

 

東方の格好をしたアストレア・ファミリアの団員が頭を下げてくる

 

「助かる、うちの団長は子供っぽい所が玉に傷、というか傷だらけでな・・・ほらアリーゼさっさと進むぞ、今日中に27階層まで行けないと食料の割り振りが面倒になる」

 

「わかってるって~・・・じゃ。そういうことだから、またね!」

 

「あ、ああ・・・」

(できれば今回のような詰問は勘弁して欲しいが・・・)

 

 

そんなちょっとしたトラブルもあったが二日目の昼には()()()()()()下層領域である27階層まで到着した・・・いや

 

言い直そう

 

―――――――――――到着してしまった、と。

 

 

 

《side out:フィルヴィス》

 

 

 

 

 

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《side:アリーゼ》

 

 

 

 

27階層は深層まで到達している上位派閥であっても油断することは決してできない

 

なぜならここは階層主が生まれるエリアでもあるからだ

 

27階層階層主『アンフィス・バエナ』、堅い竜鱗に加え前後に首の長い二頭白龍のモンスター

 

ギルドが設定した強さは推定でLv.5、得意な水辺であればLv.6に届くのではないかと揶揄される程の強さを誇る化け物だ

 

もし奴を討伐しなければならないとしたら、他のファミリアの指揮を捨ててアストレア・ファミリアの総力を結集して相手をしなければならない

 

だが今回はその心配はいらない

 

事前にギルドから私達がダンジョンに潜る数日前に階層主の討伐が確認されたという報告を受けたからだ

 

階層主を気にしなくてもいいということもあって、これだけの人数でありながら二日という短時間での行軍ができた

 

だが、ここにきて明らかな違和感を感じずにはいられなかった

 

 

「アリーゼ気付いとるか?」

 

「ええ、おかしいわね、()()

 

私達アストレア・ファミリアと他派閥の混成集団は何事もなく27階層まで到着した

 

だが、そもそもその状況がおかしいのだ

 

私達は闇派閥(イヴィルス)が下層で何かを企んでいるという情報を得てここまでやってきた、だというのに向こうから何も反応がない

 

「途中で闇派閥(イヴィルス)の妨害が必ずあると思っていたのだけど・・・それがないとすると・・・」

 

「・・・情報に間違いがあったか、それとも」

 

 

――――――罠か。

 

 

お互いの頭に最悪の可能性が浮かび上がる

 

「どうする・・・今すぐ撤退をするか?ワシとしては面倒事は勘弁だからぜひそうしたいが」

 

「輝夜はどっちがいいと思う」

 

「そうだな・・・」

 

うちのファミリアでも輝夜の実力はリオンと1、2を争うほどの腕前だ、そしてそれ以上に彼女はこういったキナ臭いことには勘がよく働く

 

「罠だとしても食い破ってみせよう・・・と言いたいところだが、今回は預かっている他のファミリアもおるからなぁ・・・撤退を提案させてもろうか」

 

「これだけの数を揃えて撤退かぁ~、ギルドから何かしらの小言でも言われそうね」

 

「はぁ・・・小言ではすまんじゃろうよ、下手をすれば何かしらの罰則もあり―――――・・・アリーゼ」

 

会話が途切れて剣呑な雰囲気を纏わせた声で名を呼ばれる、もちろん彼女とはファミリア創設以来の付き合いだ、この状況でいきなり名前を呼ばれただけなどとは思わないし、数舜遅れて私もそれに気づいた

 

「ええ、・・・空気が変わった、これは・・・かなりまずいわね」

 

長年の冒険をしていると、何かが起こる前というのは何かしらのサインがある、それは音、臭い、湿度、気温、地面の震動から風の流れまで様々な物が今までに経験した危機と総合的に合わさり第六感として警告してくる

 

そして今の状況と直感が告げている

 

即ち ”逃げろ” と

 

「アリーゼ!!」

 

その直感を証明するかのように後方部隊で指揮を任せているリオンの声が響いた、声色からただのモンスターの襲撃ではないと即座に察する

 

「後方を要警戒!他も―――――」

 

「アリーゼ!こっちからもだ!!9時方向!!距離500!!」

 

「3時方向!敵襲!!距離300!!」

 

次々と上がる敵襲の報告

 

前方は下層の中心でもある滝壺の最終地点である巨大湖

 

後方からの奇襲かと思われた敵の動きはこちらを包囲するかのように展開してきたらしい

 

(・・・まずい!?)

 

反転しても後方以外は敵、そしてその後ろも水場で逃げ場がない、まさに背水の陣とはこのこと

 

泳いで逃げようにもこの階層、正確には25階層からこの27階層は大瀑布『巨蒼の滝』(グレートフォール)で繋がる水の楽園、当然モンスターは水棲系が多く、この階層で水の中を泳ぐのは自殺するのとそう変わりがない

 

 

「最悪のタイミングでおいでなすったわね、東方だと噂をすれば何とやらって奴かしら?」

 

こういった緊急事態のときこそ余裕を忘れてはならない、それが虚勢であっても現場の指揮官が自信を失う姿を見せればこんな寄せ集めの即興大部隊等すぐに瓦解する

 

「噂をすれば影、だ。 それよりも・・・それぞれの舞台の指揮者は敵の人数の報告をせい!!」

 

輝夜がこっちの掛け合いに軽く乗ってきてくれる、これだけでも私の心にいくばしかの余裕が生まれる

 

だが、他ファミリアからの続く報告で一気に余裕が吹き飛ばされた

 

「敵襲は人だけじゃない! あいつら自滅覚悟で大量のモンスターを引き連れたままこっちに向かって突っ込んできてる!!」

 

「なっ!? 自滅覚悟の怪物進呈(パスパレード)!?あいつらなんてこと考えてんのよ!?」

 

狂信者の理解できない行動にパニックになりかけたが

 

「アリーゼどうする!?」

 

「・・・っ!!」

 

仲間の声、そしてこの部隊の総責任者としての立場が私に瞬時に我に返させた

 

(驚くのは後!まずはこの状況から生き残ることだけを考える!!)

 

「湖の方に後退しつつ弓を使えるものと魔法を所持している人は少しでもいい、敵の数を減らして!!」

 

「抜けたモンスターはどうする!?」

 

「そこは私たちに任せなさい!・・・・・・全員傾聴!抜けたモンスター及び闇派閥(イヴィルス)は私たちアストレア・ファミリアで対処する!その間はあなたたちの護衛はできない!無責任かもしれないが各自奮闘し生き残れ!!敵の第一陣を凌ぎ切った後に一転突破で敵の包囲を抜ける!・・・いいな!?」

 

「おう、まかせろ!」

「やってやらぁ!!」

「行くぞおめーら!!」

「了解した」

 

予断を許さない状況もあってかすぐに各自のファミリアから承諾の旺盛が上がる

 

 

「リオン!あなたの魔法を最後の突破に使う!魔力は使用しないように肉弾戦のみで戦って!」

 

「了解しました!輝夜!敵陣の中に私たちだけでも突っ込んで掻き回します!」

 

「ふふふ、いいのう、うち好みの展開じゃな。アストレア・ファミリアのツートップの実力を披露するとしようかのう!」

 

(全員準備はいいみたいね・・・)

 

今回引き連れてきた全ての冒険者がそれぞれの武器をを手にし戦闘態勢に入る

 

「・・・総員!行くぞぉーーーーーーーーー!!」

 

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」

 

 

 

 

そこから先は乱戦に次ぐ乱戦だった

 

自分も参戦し、少なくとも20を超えるモンスターを切り捨てたが、そこから先は無我夢中で数えるのを止めてしまった

 

(な、なんとか耐えきったか・・・)

 

闇派閥達が連れてきたモンスターはどうやって連れてきたのかはわからないが、中層のモンスターまで混じっていた

 

私達も奮戦したがそれでも撃ち漏らしというのはどうしても出てくる、敵の第一陣を防ぎはしたものの、少なくない怪我人を出してしまった、だがその無茶のおかげで敵の波のほとんどを一旦ではあるが退けることに成功した、だが安心はできない、既に第二陣と思われる者達の姿が遠目にも確認できる

 

「リオン!!魔法をお願い!ここから一気に安全圏まで突っ走るわよ!」

 

「了解しました!【―――――今は遠き森の空。無窮の夜天に」

 

 

「な!?並行詠唱!?」

 

「あれほどの高速戦闘を行いながらだと!?」

 

「マジかよ・・・」

 

 

味方がリオンの絶技とも呼べる並行詠唱に驚く

 

オラリオ、広しと言えどこれほど高速で動き回りながら詠唱を行える者はそうはいない、さらにリオンは魔法の威力が全種族の中でもずば抜けているエルフ、加えてリオンは動くだけでなく攻撃や回避、反撃を目にも止まらぬ俊敏で動いているにも関わらずその剣の技にも一切の曇りを見せない、並行詠唱に加えてこの動き、こればかりは同じファミリアの人間でも舌を巻く

 

 

だが

 

 

「――――――――【汝を見捨てし者に 光の――――――!!??」

「させねぇええええええよぉおおーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

闇派閥の怪物進呈(パスパレード)第二陣と思われる者達の中からリオンに向かってとんでもない速度で飛び出してきた者がいた

 

通常戦闘のリオンならば反応できただろうが、詠唱というリオンにとっては僅かな足枷が敵への反応を遅らせた

 

リオンへと敵の剣が届きかけたその時

 

ガキン という武器が激突する太刀音が響き渡る

 

「ちぃ!?邪魔すんじゃねーよ!!」

 

「するに決まっているじゃろうが阿呆、相変わらず頭の中は空っぽじゃなぁ!!」

 

されど私達はアストレア・ファミリア

 

今のリオンの隣には頼もしいライバル兼リオンの剣の師匠でもある輝夜がいた

 

「うぜぇ―――んだよ!!」

 

「ぐぬっ!?」

 

だが、いくら輝夜と言えど相手が悪かった

 

なにせLv.4の私達ですら初手の反応に遅れるほどの速度で突っ込んできた相手は闇派閥幹部筆頭・【殺帝(アラクニア)】ヴァレッタ・グレーデ

 

柄の悪い毛皮付きの長外套にズタズタのジーンズといった荒々しさを全身で表した女だ

 

だがその実力はLv.5

 

ここにいる誰よりもレベルが高く強い、そしてそれ以上に厄介なのが執念深さだ

 

この女は一度でも根に持った相手は地の果てまでも追いかけて殺すくらいは当然のようにやってのける

 

「はぁ!!」

 

「ちっ!?アリーゼてめぇ!?正義の味方が不意打ちしてんじゃねぇ・・・よ!!」

 

「くっ!?」

 

輝夜に参戦するために不意打ちで後ろから斬りかかったというのにあっさりと対処されてしまう

 

(腐ってもLv.5か・・・でも)

 

「輝夜、アリーゼ、助かりました」

 

「気にしない気にしない♫」

 

「ふふん、まだまだ隙だらけじゃのうリオン」

 

「ぐっ、うるさいですよ輝夜」

 

こちらが軽い小競り合いをしている隙にリオンは魔力を拡散させてこちらの戦線に加わってくれた

 

(この人数ならなんとか抑えられる・・・けどこれじゃ他の戦線が維持できなくなるわね・・・こうなったら)

 

「あなた【勇者(ブレイバー)】の追っかけだったんじゃないの?それともこちらに鞍替えしたのかしら?全然嬉しくないんだけど、浮気するならフレイヤ・ファミリアとかにしなさいよ。ここは女しかいないわよ?それともそっちの道にでも目覚めちゃったのかしら?あらヤダ怖い」

 

わざと罵詈雑言に近い挑発を行う、これでヴァレッタは私に対して特に敵意が向くはずだ、回避と防御に専念すれば私一人でも時間くらいなら稼げるはず――――――――そう思っていたのだが

 

「・・・・・・ククク」

 

(・・・何?)

 

 

「ぷっ・・・あははははははははは! おいおいアリーゼどうしたどうした?良い子ちゃんのせいかお前の罵詈雑言には切れがねぇんだよ、それともあまりに余裕がなくてあせちゃってるのかぁ?ギャハハハハハハハハ!!」

 

いつもこれくらい言われたら間違いなくキレてこちらに向かってきたであろう言葉を言ったというのに軽くいなされてしまった・・・ヴァレッタのこの余裕に薄ら寒いものを感じる

 

「・・・でもまぁ、ちょっとカチンとくるものもあったからなぁ、ちっとばかし早いがてめぇらにさらに絶望をくれたやるぜぇええーーーーーーーー!!オリヴァス!!()()()を抑えている魔法を解除しろぉ!!」

 

ヴァレッタから出てくる他の幹部の名前に身構える

 

白髪鬼(ヴァンデッタ)】オリヴァス・アクト ヴァレッタと同じく闇派閥の幹部 実力はLv.3

 

個体としての脅威度ではヴァレッタには劣るもの、爆破テロや殺人などで都市に混乱を巻き起こす最上位の賞金首にもなっている

 

『ふっ、よかろう、少々早いがこいつらの絶望に染まった顔は私も早く見たいのでな』

 

どこかに潜んでいるのか、それともマジックアイテムでも使っているのか声が辺りに反響するよう発せられているため居場所が特定できない

 

周囲に気を配るも、近づいてくる怪物進呈(パスパレード)の第二陣の地響き音で気配を探ることすらできやしない

 

 

 

ドン

 

 

 

だが、その地響きすら細音に感じるほどの衝撃に近い音と共に25階層からこの27階層までを貫く巨大な滝壺でもある中央の湖が爆ぜた

 

 

「Guaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

(な!? あれは討伐されたはずでしょう!? 何でいるのよ!?)

 

中から姿を現したのは階層主「アンフィス・バエナ」だった

 

「馬鹿な!?」

 

「これは・・・さすがに予想外じゃなぁ」

 

絶句したのは私達だけではない、奮戦していた周りの冒険者たちにもこの状況に対するさらなる追い打ちに呆然となる

 

ズンズンという地響きを響かせながらこちらに向かってくるアンフィス・バエナ、安全なはずだった後方の湖からまさかの階層主の登場に全員が絶望に顔を染める

 

 

「ギャハハハハハハハ!!そうだよ!それだよ!!アタシが見たかったのはァ!!苦労したんだぜぇ?あいつの偽情報をギルドに流させるのも、あいつをバレないように他の冒険者の目に止まらないように誘導したりすんのはよぉ?」

 

(どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする!?)

 

立て続けに襲ってくる不測の事態に対処するために、頭が湯立ちそうなほど回転するも全て空回りに終わり同じ言葉が脳内で堂々巡りする

 

「ヒャハハハハ!!いいぜいいぜ!!アリーゼ!その顔最高だぁ!!もっとその顔を・・・・・・あぁ?・・・なんだあいつは?」

 

 

こちらを見て嬌笑を上げていたヴァレッタの笑いが止まる

 

(・・・今度は何!?)

 

ヴァレッタの見ていた方向に目を向けると誰かが25階層から飛び降りてきている所だった

 

百メドル以上もある高さからの飛び降り、第二級以上なら下が水なら耐えられないこともないが、それでもモンスターが無数にうごめく巨大湖に飛び込むなど正気の沙汰ではない

 

一体誰だ?という疑問には他の冒険者、今朝話したばかりのフィルヴィスが答えてくれた

 

「カイト!?」

 

切札(ジョーカー)!?何故ここに、いやその前にいくら彼でもあんな所から飛び降りたらタダじゃすまな――――――)

 

 

そう思った瞬間

 

距離はかなり離れているはずのこちらにまで聞こえてくるほどにカイトが叫んだ

 

 

 

「卍・解!!」

 

()()はまるで最初からそこにいたかのように姿を見せた

 

「「「「なぁぁあああ!?!?!?」」」」

 

驚声は闇派閥を含めたその場にいる全員

 

切札(ジョーカー)のいた場所にいきなり巨人が現れたのだ

 

それもただの巨人ではない、頑強な東方風の鎧に身を包んだ身の丈五十メドルはあるのではなかろうかと思われるほどの巨大な鎧武者だ

 

 

「『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』!!」

 

 

ズドン

 

という先程以上の衝撃音と水しぶきを上げて鎧武者が滝壺に着地し、そのまま階層主と対峙した

 

大きさの対比で言えば大型犬と大の大人ほどだろうか

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・」」」」

 

 

あまりの事態にヴァレッタまでもが口を開けて呆然としている

 

そんな中でたった一人、この状況を作り出した彼が鎧武者の肩に乗ったまま声を上げた

 

 

「皆無事か!? 助けに来たぞ!!」

 

 

それは援軍という言葉では足りぬ、あまりに眩しすぎる希望だった。

 

 

 

 

《side out:アリーゼ》

 

 

 

 

 

=======================================

 

 

 




新しい能力はBLEACHのかっこいい、かませいnゲフゲフン・・・ワンコ隊長の能力よ~(・ω・)

個人的にあれって一対一じゃなくて巨大さに任せた面制圧が可能な一対多で本領を発揮すると思うので出してみた☆

見た目だけなら一番好き、ちなみに番号は『10』



PS
勤労感謝の日なのに勤労してたわ~(´д`)


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30:双頭×明王

ふぃ~、久しぶりの投稿C=(^◇^ ; ホッ!


======================================

 

 

 

《side:フィン》

 

 

 

「・・・これは罠だな」

 

ギルドの最奥にある作戦室に僕の呟いた言葉が響く

 

「あの・・・この作戦に何か?」

 

ギルドの職員が僕の呟いた言葉に疑問を投げかける

 

 

 

 僕とリヴェリアの他にもギルドの上級職員でこれからの対闇派閥への攻勢について考えるために今現在分かっている闇派閥に関する全ての情報をまとめている際に、最近の闇派閥の動きからアストレア・ファミリアが今行っている下層の調査が罠だと気付いた

 

そのことを伝えると全員が一斉に狼狽え始めた

 

「早く救援に!」

 

「・・・ダメだ、おそらく今から救護隊を組んでいたら間に合わない」

 

既にアストレア・ファミリアが下層に出発してから一日、とてもではないが間に合わないし誰かを単独で向かわせるにはあまりにも危険すぎる

 

だが、これは同時にチャンスでもある

 

下手をすればこのオラリオ暗黒期と呼ばれる今に終演の幕を下ろすことが出来るほどの千載一遇の機会

 

「全員聞いてくれ・・・救護隊を組むのは今から話す作戦が成功してからだ」

 

「なっ!?調査隊を見捨てるのですか!?」

 

これは大のために小を切り捨てると見られても仕方がない、冷酷な判断と思われるかもしれない、だがそれでもこのオラリオの未来がこれからも闇に飲まれ続けるか、それとも少しでも早く光を迎えることが出来るかの分水嶺だ

 

「元から間に合わないかもしれない可能性に兵を割くくらいなら、僕は確実に勝てる方を執らせてもらう・・・今から作戦を伝える」

 

 

そして僕が話した作戦は単純明快だ、現状でオラリオにいるロキ、フレイヤ、ガネーシャ、それ以外の地上に残っている全てのギルド傘下のファミリアの人員を投入しての一大攻勢作戦

 

狙いは闇派閥の首魁である神々の強制送還

 

資料から察せられるのは敵の人員・資材・物資の動きアストレア・ファミリアを罠に嵌めるためにかなりの戦力を投入しているであろうということ、そしてそれは同時に奴らの防御がこれまでにないくらい手薄になっているということだ、この機会を逃せば次はいつになるかわからない

 

「カイト、大至急でフレイヤとガネーシャ・ファミリアのホームまで行って今の話の内容をそのまま伝えてきてくれ、機密情報ランクは『SSS』って言うのも忘れずにね、こう言えば否が応でも幹部クラスが出てきてくれくるはずだ」

 

今回のような伝達事項があったときのために会議室の壁際で待機していたカイトに言伝を頼む

 

「・・・了解・・・伝達が終わった後はうちのLv.3以上の団員に戦闘準備とLv.2以下には半々でサポートもしくはホームで待機ってことでいいのか」

 

話が早くて助かる、指令が終わった後に関することを言う前に伝えたいことを先読みして確認してきてくれる、おかげで支持が出しやすい

 

「いや、下級団員は全員ホームで待機、現場にはアイズと数名のLv.2の団員を除いた全戦力を投入する、それ以外は君が言った通りでいい、本当なら全ての戦力を投入したいところだけど、さすがにホームを本当の意味で空にするわけにはいかないからね」

 

大人しく聞いていたカイトの表情が『アイズを除く』と言った部分で眉間に皺がよった

 

「ちょっとお嬢を甘やかしすぎじゃないか、お嬢はあれでそこそこ度胸はあるし、戦力で言うならかなりのもんだぞ?」

 

「そうかもしれない・・・でもさすがに今回はちょっとね・・・なにせ」

 

 

 

今回は過去類を見ないほどの殺し合い

 

 

正義と言う名を借りた一方的な

 

 

 

虐殺だ

 

 

 

幼子に見せるのはあまりに惨いだろう?

 

そう言うと、嘆息しつつ一応納得はしてくれた

 

「・・・俺もギリギリ純朴な少年って言っていい年齢なんだが」

 

「ははははは、うん、それおもしろいね、ウィットの効いたナイスジョークだ」

 

特に純朴というところが笑いのポイントが高いね、ここがホームの食堂なら座布団でもあげていたかもしれない

 

「えー傷つくわー・・・はぁ・・・んー・・・じゃまぁ、行ってくるわー・・・」

 

そう言うと仕方がないとでもため息をつき、やる気のないような言葉とは裏腹に急いで会議室を飛び出していった

 

 

一時間もしない内にカイトに呼び出しを頼んだ人物が会議室に集結した

 

 

フレイヤ・ファミリア団長:オラリオ唯一のLv.7【猛者(おうじゃ)】オッタル

 

ガネーシャ・ファミリア団長:Lv.5にして都市最多の構成員を誇るファミリアを束ねる女傑【象神の杖(アンクーシャ)】シャクティ・ヴァルマ

 

さらに僕ことロキ・ファミリア団長:【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナ

 

 

言わずもがな、構成員の質と量はこのオラリオで五指に入る大派閥の団長三名が一同に会することになった

 

「・・・それで?」

 

腕を組んだままの状態のシャクティが口を開く

 

時間がないこともあって二人とも既にここに着くまでに事情はあらかた案内役の者に聞いたそうだ

 

「・・・フィン、単刀直入に聞くぞ、作戦は?」

 

シャクティに続くように武人気質の強い、都市最強の戦士が言葉少なく聞いてくる

 

オッタルやシャクティ、特にオッタルとはライバル関係にあるファミリアの団長ではあるが、これも腐れ縁というのだろうか、10年以上も競い合っているとファミリアの家族とはまた別の奇妙な信頼関係できていたりする、おかげで遠慮なく伝えたいことだけを端的に伝えることができる

 

「それぞれのファミリアの投入できる最大戦力を一気に集めて、敵の拠点と思われる場所を全て叩く」

 

「隊はいくつまで分けるつもりだ? お前らの所と違って私のファミリアの最大戦力はほとんどがLv.4だ、できればどちらかに混ぜる形で編成してほしいのだが」

 

ガネーシャ・ファミリアは団員の数も多く実力者もそろってはいるが、それでも団長であるLv.5のシャクティが最高レベルだ、Lv.6を複数所持しているフレイヤ、ロキ・ファミリアには質という点で一歩劣るためこの要望は妥当な意見ではあるが、今回の作戦ではそんな心配はする必要がない

 

「いや、隊は分けない、全ての戦力で持って一気に敵の拠点を叩きつぶす、潰した後は最低限の人員を後始末に回して次の拠点潰しに向かう、これを5回繰り返して、さらにキナ臭い所も潰す」

 

「・・・電撃戦か」

 

「うん、ここで一気に僕たちと闇派閥の天秤の趨勢を一気に傾ける」

 

「そのための私達、ということか・・・わかった、「群衆の主」としても、ガネーシャ・ファミリアとしても今回の作戦に全力で参加させてもらう」

 

「協力感謝するよ・・・オッタル、君の所はどうする?」

 

「・・・ここに俺自身が出向いたこと事態がフレイヤ様の神意だ、『目障りな羽虫を駆除せよ』とお言葉を頂いている」

 

「それはフレイヤ・ファミリアも全面的に協力してくれるというこでいいのかな?」

 

「・・・ああ、それでかまわん」

 

(・・・よし!)

 

これで戦力は十分に揃った、戦力過剰とも言われるかもしれないが、犠牲なしで圧倒するにはこれくらいがちょうどいい、たとえ生き残りがいたとしても復讐心など芽生えぬくらい心も身体も叩き潰す

 

「じゃあ、さっそく―――――――」

 

これからの作戦のための命令系統に関する話をしようとしたときだ

 

「団長、入ってもいいですか!?ちょっと問題が発生してしまいまして・・・」

 

カイトの同期 猫人(キャットピープル)のアキがノックとほぼ同時に入室を求めてきたので、許可する

 

入ってきたアキは会議室にいるオッタルやシャクティを気にすることなくまっすぐに僕の元にやってくる、だが、そのときの表情は非常に申し訳なさそうな顔をしているのが気になった

 

「団長・・・カイトがこの手紙を残して消えました」

 

「・・・え?」

 

差し出されたのは二つに折りたたまれた紙

 

とりあえず内容に目を通してみた

 

「・・・おっふ」

 

見なければ良かった・・・おかげで変な声が出てしまった

 

「・・・フィン?」

「ちょっ、【勇者(ブレイバー)】顔がえらいことになってるぞ・・・」

 

「いや、すまないちょっと眼球を潰されてから頭を叩き割られたような衝撃に襲われただけだよ、うん、・・・大丈夫だ」

 

「一般的にそれは大丈夫とは呼ばないと思うけど・・・」

 

急に眼精疲労に襲われると同時に頭痛がし始めたが、目頭を押さえてから天井を見上げることで何とか耐える

 

 

「何があった?」

 

オッタルが困惑顔で聞いてきた、彼が表情を崩すとは珍しいこともあるものだ・・・いやそれだけ手紙に目を通した際の僕の表情が不味かったのだろう

 

僕は黙って手元にある紙を二人に見えるように広げる、そこには

 

   ちょっとお嬢と散歩に行って来ます。

 

 

   PS:晩御飯は外で食べてくるのでいりません

                           』

 

 

と端的な事が書いてあった

 

 

「「・・・なんだこれは」」

 

まぁ、カイトのことをよく知らないとこの突飛な手紙の内容はわからないのも当然か・・・理解してしまえる自分が恨めしい

 

「たぶんだけど、カイトがアイズを連れて27階層に向かったってことだよ、目的はおそらくアストレア・ファミリアの救援なんだろうけど・・・んー・・・?」

 

「なんだ?」

 

「いや、カイトがあそこのファミリアのために指示を無視してまで助けに行くとは考えづらいんだよねぇ、確かにそこそこの交流はあったんだけど」

 

カイトも今回の作戦の重要性はわかっているはずだ、それでも独断で救援に向かったとすると考えられる可能性の中で一番ありそうなのは――――――

 

「アキ、ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」

 

「え、は、はい」

 

「今回の下層の調査に参加しているファミリアの中にカイトと仲が良い人物とかがいたりするかい?」

 

「えっと・・・あ、そういえばラウルが何か言ってたような・・・あ!・・・」

 

アキに質問すると、どうやら心当たりがあったようだ

 

「昨日の夕食のときにラウルが『カイトとよくダンジョン探索で組むことがあるフィルヴィスっていうエルフの女性が今回の調査に参加するからいつもよりカイトとアイズのサポートが大変っすよ~』ってぼやいてたような・・・」

 

 

これで確定だ、間違いなくカイトとアイズは下層に向かったのだろう

 

「アキ、急いでリヴェリアかガレスにこのことを報告、今すぐにカイトとアイズを連れ戻して――――――――」

「待ってくれ」

 

 

貴重な戦力を抜けさせるわけにはいかない、そう思いアキに指示をだそうとした所に待ったの声がかかった

 

「フィン、【切札(ジョーカー)】と【剣姫】を向かわせてやって欲しい」

 

待ったを掛けたのはシャクティだった

 

ガネーシャ・ファミリアとアストレア・ファミリアは幾度となく共に闇派閥と闘ってきたことは知っているが、理由もなく個人的な感情で貴重な戦力をわざわざ危険な場所に送り込むことは承諾できない

 

「・・・二人を向かわせる理由でもあるのかい?」

 

「二人を向かわせるのは・・・若干であるが私事も入ってはいる・・・だが、ここで本当に一切の救援を送らなければ後々難癖を付けてくる者たちがいるかもしれん、今ここで二人を送り込むことで最低限の戦力は救援として出した、という理由付けにできる」

 

(なるほど、悪くはない・・・か)

 

帰ってきた答えは確かに悪くないものだった、派閥というのは大きくなれば成る程敵が多くなる、それは闇派閥だけではない、一番厄介なのはこちらの足をわざと引っ張り最大派閥の座から引きずり下ろそうとする無能な味方だ

 

(そいつらに対する言いがかり回避するのに今回のカイトの行動は都合がいいか・・・だが、それを差し引いたとしても二人もLv.3の団員が抜けるのは・・・)

 

頭の中で作戦後のことを優先するか、それとも目の前の作戦かを天秤に掛ける

 

個人的にはカイトの行動を黙認してやりたいが、団長としての立場がそれを拒否する

 

シャクティに目を向ける

 

気丈に振る舞ってはいるが、やはり知古のアストレア・ファミリアが心配なのだろう、眉間は似つかわしくない程に寄っていた

 

(ここで、シャクティに借りを作らせた方が作戦には都合が良いか・・・ガネーシャ・ファミリアの構成員数は包囲網の要だ)

 

 

 

結局このとき考えたことが決めてとなり、カイトとアイズをこのまま救援に向かわせることになった

 

 

 

 

 

 

《side out:フィン》

 

 

 

======================================

 

 

 

 

 

 

唐突だが階層主について話をしよう。

 

 

階層主とはその名の通り、先へと進もうとするダンジョンの敵を排除する一定階層の主である

 

 

その強さはギルドが定めた階層レベルからプラス1をしても足りないとも言われる正真正銘の化け物であり、階層適正レベルの冒険者が数十人以上で挑むのは当たり前、適正レベル以上の冒険者でも単独で相手取るのは危険とされている

 

ましてや適正レベル以下の者が単独で相手をするなど自殺以外のなんでもないと断言できる

 

そして、その数少ない階層主の中でも、その能力と唯一の習性、そして特にその周りの環境によって適正レベルが跳ね上がる階層主がいる

 

 

その階層主こそが下層27階層の主

 

「双頭竜」アンフィス・バエナ

 

その名が指すように2対の首が生えている階層主であり、モンスターの中でも強力な竜種型という凶悪な化け物である

 

このモンスターの厄介なところは確認されている階層主の中でも唯一の移動型階層主ということだろう

 

この巨体のままで移動できる所なら下層の陸と海中どこにでも現れる

 

この階層主を攻略するにはいくつかの条件をクリアしなければ戦闘にすらならず、一方的に蹂躙されることになる

 

 

一つ目は闘う場所

アンフィス・バエナとの戦闘は水上で行われる、そのため水上にできるだけ多くの足場があるルームに誘導しなければならない

 

二つ目 物理的な攻撃

アンフィス・バエナの首の片方は魔法を大幅に減衰させる霧を吐いてくる、そのため基本的にこの階層主への攻撃は水上の足場からの飛び移りつつの近接攻撃か、遠距離から弓などによる攻撃しか通じない、首を切り落とせば魔法も使えるようになるが、それまでの攻撃手段の確保は必項である

 

三つ目 消化剤の準備

魔法減衰の霧を吐いてこない方の首からは可燃性の液体と共に灼熱のブレスが放たれる、この液体と炎は水でも消えることはなく、専用の消化剤を使用しなければ鎮火させることはできない、そのためこの炎をまともに喰らってしまった場合は消化剤がなければ死ぬまでその身を炎に焼かれることになってしまう

 

 

地に足を付けてできない不慣れな戦闘環境

 

ダンジョンで切札であるはずの魔法の無効化

 

巨体から放たれるその身を使用した攻撃と燃え続ける灼熱のブレス

 

まさしく『凶悪』

 

 

今までこの理不尽な状況と化物自身の力によって多くの冒険者がその身を骸に変えてきた

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

 

だがだがだが!もしも!もしもである!!

 

水辺であろうとも地に足を付けることができ、尚且つ、近接攻撃で有りながら遠距離にも匹敵するリーチを持ち、ブレスなど吹き飛ばすほどの膂力を持つ様な存在がいたらどうなるだろうか!?

 

 

 

こ の 世 に は!

 

 

ど ん な こ と で あ ろ う と も!

 

 

圧倒的な例外というものが存在する!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――水深15メドル以上の湖など、その身の巨大さをもって踏破し!

 

 

「はぁあああああああああ!!」

「Graaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

巨大な竜と鎧武者によって水柱が上の階層まで立ち昇る

互いが自らに有利な立ち位置を取るためにその巨体に見合わぬ速度で動く、ただそれだけで周りに台風のような豪風と立ち上がった水柱が豪雨となり周りの冒険者達の肌を打ち付ける、それは、さながら小さな台風の様だったと後の冒険者は語る。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――その手に持つ太刀による圧倒的な物理で脅威を破砕し!!

 

 

「がぁぁぁぁあああーーーーーー!!」

「Gyaaaaaaaaaaaaaaa!?」

 

鎧武者に握られた太刀が堅剛な龍鱗に守られているはずの片首を半ばまで断つ

それは刀でありながら切り裂くといった流麗なものでは決してない、純粋な力のみによって断ち切られていた

 

魔法を減衰させる霧などこの鬼神の前には真の意味で無意味

 

何故なら、この武者にあるのは絶対的な物理!超然的な破壊力!!

 

ただただ、それだけなのだから

 

だがこの竜にとっては今はそれこそが何よりも脅威であった

 

武者の攻撃は首を切り裂いただけでは止まらない、胴体の方にも無視できぬ程の裂傷が次々と刻まれていく

 

 

「Gooooaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

ダンジョンに生み出されてから初めて感じる恐怖、アンフィス・バエナは後先を考えぬほどの最大量・最大威力の炎を吐き出す

 

 

だが―――――――。

 

 

「ぶっ飛ばせ!明王!!」

 

 

その手に持つ巨大すぎる刀を内輪の如く振り抜き、豪風によって敵の攻撃を文字通り吹き飛ばし、跳ね返された炎と液体がそのままアンフィス・バエナに襲いかかる!!

 

「Pigyaaaaaaaaaa!?!?」

 

 

 

あまりの理不尽に階層主の思考は困惑一色に塗りつぶされた

 

 

ナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダナンダ

 

 

 

 

 

――――――――ナンダコイツハ!?

 

 

 

 

 

ダンジョンに生み出されるようになってから幾千年、初めて体験する類いの恐怖に、今や片首となってしまった双頭竜は萎縮した

 

母に仇為す害虫、それはどれも葉クズの如き小さきゴミでしかなかったはずだった

 

それがどうだ!?

 

自らよりも巨大な体躯

 

そうであるにも関わらず速さは我と変わらず

 

あまつさえ我の炎すら吹き飛ばしてきた

 

 

――――――――アツイ

 

アツイアツイアツイアツイアツイアツイ!!

 

 

本来なら自らの炎すら通じないはずの龍鱗が、目の前の理不尽な存在によって剥がされたせいでその身を焦がしてくる

 

 

 

―――――――ユルサヌ

 

 

 

生まれ出でてからは、わけのわからぬもので動きを制限され、解放されたと思えば理不尽に襲われる

 

 

「GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 

迷宮の孤王(モンスターレックス)とまで呼ばれる竜王は痛みも熱さも感じなくなるほどの憤怒にかられ忌々しい敵に向き直った――――――――――だが

 

 

 

―――――――――――イナイ!?

 

 

辺りを見回すが先程までいた場所にその巨軀が見当たらない。

 

双頭竜は一瞬でもその巨軀から目を離すべきではなかったのだ、相手は自らの炎に苦しむ隙だらけの姿を見逃すほど決して甘い存在ではないのだから

 

 

――――――カゲ!?

 

 

双頭竜がようやく気付いて見上げた空には

 

宙に身を躍らせ、太刀を上段で振り上げた鎧武者が全身を使って今まさに振り下している

 

その瞬間だった。

 

 

 

 

======================================

 

 




いやぁ、それにしてもダンまち最新刊の14巻はおもしろかったなぁ~(* ̄ω ̄)≡3

個人的にはMVP1位はヴェルフだと思います。(表紙もかっこいい!!)

次点で文字通りいのちを削って双頭竜に致命傷を与えた桜花と命の胸熱コンビプレー!!

っていうか全員かっこいいーーーー!!

次の巻で全員ステイタスがヤベぇことになってそうですよねー(-_-;)

PS:カイトもこれ以上に追い込まなきゃ(使命感)


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31:殺帝×明王

すんません、親父が病気で入院しまして更新がかなり遅れました。
幸いペットで早期に発見できたおかげで命に別状はなく手術も成功しました。

しかしダヴィンチ手術ってすごいですね、手術して10日で退院してきましたよ。

まだ親父は現場に直接出れないけど指示出ししてくれる人が一人でも多いと仕事の負担的にもすごく助かる


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《side:冒険者》

 

 

目の前で双頭竜が三頭竜になった

 

正確に言うならば巨大な鎧武者によって残っていた首が縦から真っ二つに切り裂かれたのだ

 

 

 

 

・・・誰も

 

・・・誰も動けない

 

神話、もしくはそれに準ずる闘いというのがあるのならこれがそうだ

 

今、自分たちが見たのはおそらくその一旦

 

双方が動くだけで嵐のような豪風

 

攻撃を放てばその影響で湖の水が間欠泉の様に舞い上がり自分たちを叩き付ける豪雨となる

 

地形、いや階層そのものが崩壊しかねない、文字通り格の違う闘争

 

その圧倒的な光景に敵も味方も動きを止めてしまっていた

 

何よりも驚くのはその光景を作り出していた片翼はLv.3の冒険者だと言うのだから驚きを禁じ得ない

 

戦闘が終わり先程までの轟音しかなかった喧噪から落ちるような静寂の中、誰かがポツリと呟いた

 

 

 

 

 

「・・・あれが『ジョーカー』・・・ハハ・・・化け物じゃねぇか」

 

 

 

 

その言葉に同意するかのように自分を含めた数人の冒険者が畏怖からか喉をならして唾を飲み込む

 

(あれが最大派閥の片割れ、ロキ・ファミリアに所属する期待の新人・・・・・・新人?・・・あれが?)

 

どこの世界にLv.3でLv.5相当以上の階層主を単独で撃破する新人冒険者がいるというのか、こんなこと、第一級冒険者であっても出来る奴はそうはいない、いたとしてもできるのは『猛者』くらいだろう

 

鎧武者が階層主を叩き切った体勢からこちらに向き直る

 

―――――――その肩に一人の男を乗せて

 

 

 

トレードマークになっている藍色のキャスケット帽

 

竜尾の様に長い白髪

 

そしてその目

 

階層主を倒したばかりだと言うのにその目には一切の油断は無く、

 

遠目からも感じる圧倒的強者のオーラには微塵の隙も感じられない

 

 

 

「ひぃ!?」

「こ、こっちを向いたぞ!?」

 

 

「・・・Gryuuu」

 

「Pigii・・・」

 

その姿に気圧されたのか闇派閥だけでなくモンスターまでもが気圧されている

 

 

(味方・・・なんだよな?)

 

 

現れた時にジョーカーは『助けに来た』と言っていたがその後のあまりの暴れっぷりに味方とわかっているこっちまでブルってしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――二つ名に偽り無し

 

 

ランクアップの記録を塗り替えた世界記録保持者、そしてそれを祝福するかのように付けられた彼の二つ名

 

当時、熟練の冒険者達はその新人の冒険者に付けられた二つ名を大げさすぎると鼻で笑っていた

 

 

 

だが

 

 

ここにいる者達はそれがこれ以上ないほど彼に相応しい名であると目の前で見せられ、魅せられた。

 

 

あれぞまさにロキ・ファミリアの秘蔵っ子

 

 

戦況を引っ繰り返すワイルドカード!

 

 

まさしく『切札』!!

 

 

神々はその身に相応しすぎる名を知ってか知らずか与えたようだ

 

その場にいたほぼ全ての冒険者がこの一人の冒険者同じ思いを抱き、彼に対して尊敬と畏怖、そしてほんの少しの嫉妬を感じていた。

 

 

 

 

 

《side out:冒険者》

 

 

 

======================================

 

 

 

 

 

 

―――――――階層主をぶった切った直後

 

 

 

 

(あぶああああぶ!?ビビッたぁぁあああ~~~~~~~~~!?)

 

 

実は心中ではビビりまくり、心臓バクバクな状態だった

 

目の前の脅威を一旦退けたことでようやく周りを見る余裕と自らが行ったハチャメチャさに

 

 

 

『やっちまったゼ キリッ』

 

 

というような心境が戻ってきた。

 

 

 

なにせ下層までの強行軍を敢行して、何とか間に合ったか、ふーやれやれ、と思った途端にまさかの階層主登場

 

無我夢中になって数十メドルもあるにも関わらずアーイキャンフラァァ~イとヒモ無しバンジー

 

というか端から見たらただの飛び降り自殺だぞこれ

 

下が水だから大丈夫?

 

ノンノン、一定の速度で水に飛び込んだ場合水はコンクリートと同じ硬度になると、昔、大地っぽい名前の自衛隊員が言っていた

 

よしんば助かったとしても水の中には肉食の水棲型モンスターがわんさかで助かる確率は限りなくゼロ

 

そりゃ焦るっての

 

おかげでいきなり奥の手まで発動してしまった

 

ただあそこで無茶をしなければかなりの人的被害が出ていたのは間違いないのでギリギリ及第点だろうと自らを納得させる

 

それに奥の手といってもこの某死神バトルオサレ漫画の『No10』の能力

 

黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)

 

これにはさらに奥の手があるのでただの卍解までなら見せても問題はないだろうと自分を納得させる

 

(うむ、大丈夫大丈夫!セーフだセーフ!!)

 

―――――――――ちなみに、このような自分にとって不都合な事実などを、一見すると少し論理的であるようにも見えるが実際は不合理な説明によって覆い隠そうとする心の働きを合理化と言う・・・

 

 

 

 

 

―――――――――閑話休題

 

 

 

 

・・・先ほどから姿の見えないお嬢に関してだが、実は途中で分断された

 

別にダンジョンの罠とかではなく、あの一年前に襲ってきたイシュタル・ファミリアのガマ蛙女ことフリュネ・ジャミールとダンジョンの中でバッタリ遭遇、そこから無茶苦茶理由のイチャモンをつけられて襲われたのだが―――――――――

 

 

 

「ここは私に任せて先に行って!」

 

 

 

時間がない事もあってお嬢がガマ蛙とバトルことになった

 

 

でもお嬢、そのセリフは死亡フラグだからやめれ

 

「私もすぐに追いつく!」

 

さらにフラグを建てていく!?

 

いや、最近はフラグを建てまくれば逆に安全とか言われてたし大丈夫だろう・・・大丈夫かなぁ・・・

 

なんてことを考えている間にもカエル女がこちらにも攻撃を仕掛けてくる

 

 

「ゲゲゲゲゲゲ!行かせるわけねぇだろうがぁああああ!!」

 

「『目覚めよ(テンペスト)』!!」

 

「くそがぁ!?」

 

 

相変わらずお嬢の風の付与魔法は俺から見てもかなりチートな威力と燃費の良さだ

 

情報通りならこのフリュネは既にLv.4にランクアップしたはずだというのにそれと互角にやり合えている

 

 

(これならばマジで大丈夫そうだな)

 

「カイト!早く!!」

 

「・・・うっし!じゃぁ任せたぞお嬢!キツくなったら全力で引けよ!!」

 

「ん!!」

 

お嬢がフリュネを吹き飛ばした合間に駆け抜ける

 

「待ちやがれぇええええクソがぁああああーーーーーーー!!!」

 

(待てと言われて待つ馬鹿がいるかアホウ)

 

そういって武器同士の激突する戦闘音を背にして『念』も全開のフルブーストで戦線を離脱した。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――なんてことがあったのが半日前

 

そこから中層の街で軽く補給と最低限の休息を取ってここまで駆けつけたわけだが、間に合いはしたがぶっちゃけコンディションは全快時の七割ってところだ、この状態で階層主相手にほぼ無傷で勝利はかなり運が良い

 

「・・・さーて、と・・・そいじゃいっちょ運が良い勢いに乗ってこのまま派手に雑魚掃除と行きますかねぇ?」

 

 

 

――――――――――などと調子に乗ったのがいけなかったのだろうか

 

「っっづぁ!?」

 

俺の腕から突然血が噴き出した

 

 

俺が直接攻撃を受けたのではない、攻撃を受けたのは『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』だ

 

この能力、というか刀は大きく分けて二段階の変化がある

 

まずは始解と呼ばれる第一段階『天譴』

こいつは俺と動きがリンクする巨大な腕と刀を一時的に出現させるという単純明快な能力だ

 

そして第二段階の卍解『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)

これは始解で出現する部分を全身状態にしたものだ、始解時に比べその力は数倍というとんでも能力なのだが、結びつきが強力になりすぎて顕現した明王が傷つくとそれとリンクしている自分もダメージを負ってしまうというデメリットも存在する

 

 

そしてその明王に傷を付けたのは――――――――

 

 

 

「ひひっ」

 

その口に怒りと狂気を孕ませつつ歪な笑みを浮かべるのは闇派閥筆頭

 

「ひはははははは!!なんだぁ!?こいつはぁ!?ただの木偶の坊じゃねぇか!?さっきの階層主との戦闘はマグレか何かだったか!?」

 

【殺帝】ヴァレッタ・グレーデ

 

人でありながら直接的な戦闘力なら先のアンフィス・バエナと同等とされるLv.5

 

それが次々と明王の身に傷を付けていく

 

「っつぅう!?あいつまさかヴァレッタかよ!?」

 

 

明王の弱点は簡単である、その巨大さに任せた力を活かすことができない自らよりも遙かに小さい相手だ

 

それが単騎であれば人がハエ相手に包丁を振り回すようなものだ

 

加えてその相手がLv.5となればハエではなく猛毒を所持している蜂といったところだろう

 

しかもその蜂は頭が回り常にこちらの動きを読んで回避と攻撃を仕掛けてくるときたら、もはや一方的なリンチだ

 

 

 

(よりにもよってこいつか!明王と相性悪すぎるっ!?)

 

 

 

まさか、襲撃にこいつが参加していたとは予想していた中でも最悪のパターンだ

 

 

 

ただし、このままならという条件でならだが

 

 

 

「ぬぅっ・・・づうぅう!?」

 

「ひゃはははははオラオラオラアアアアどうしたアタシはこっちだギャハハハハハ!!」

 

身体中に決して浅くはない傷が次々と生まれていくが何とか根性で耐える

 

(タイミングが大事だ・・・耐えろ俺!)

 

 

「おらぁあああああァ!」

横腹から鮮血が舞う

(ぐっ!?・・・・まだだ!)

 

 

 

太股の後ろに突き刺すような痛みが突き抜ける

「っづうう!?」

(まだ、だめだ!)

 

 

 

そして背中からも血が飛び散る

(もう少し!!)

 

 

何とか耐えて身体中が血に染まるのではと思ったとき

 

攻撃の癖とタイミングをようやく掴んだことで好機が訪れた

 

(っ今だ!!)

 

「始解・『天譴』!」

 

肩口に下から上に走る傷が生まれた瞬間を狙って卍解状態を解除する、

 

そうするとどうなるのか?

 

「っなんだと!?」

 

答えは簡単だ、今まで明王を足場にしつつ斬りかかっていた所でその足場の消失、

 

しかも最も高い場所での足場の消失のため滞空時間は他の部位にいた時よりも長い

 

その結果、比較的長い時間、空中にヴァレッタだけが取り残されることになった

 

そしてギルドやフィンから聞いた情報が確かならヴァレッタには空中で素早く動けるようなスキルや魔法は持っていない

 

つまり

 

「断ち切れぇぇええええ『天譴』ーーーーーー!!」

 

「てめゲァ!?」

 

無防備な背中から()()()()()ということだ。

 

 

 

======================================

 

 

 

 

《side:リュー・リオン》

 

 

()()を見て

 

故郷にある森でよく見かけた光景を思い出した

 

二股に分かれた見た目が特徴の珍しい気に生える葉っぱだ

 

根元に近い部分が二股に分かれているせいで木から散る際にクルクルと回転しながらゆっくり落ちる

 

そういった光景が特徴の見る者を飽きさせない木だ

 

散った葉は風が吹けば回りながらかなりの距離まで飛んでいくおもしろい木だった

 

 

ただし

 

 

今自分が見た光景ははそんな幼少の頃の可愛げのあるものでは決してない。

 

人の上半身が先ほど語った木の葉のようにクルクルと回って遠くまで吹き飛ばされる陰惨なものだ。

 

 

(・・・あっけない)

 

 

「長年、と言ってもいい怨敵であっても死ぬときはあっさり逝くもんじゃなぁ」

 

 

全員が息を止めるような光景の中、輝夜のあっけらかんとした声が響く

 

「リュー、ボケッとするな、今だ戦闘中であるぞ」

 

「む・・・わかっています」

 

その声に周りの闇派閥達に対して改めて警戒するがあまり意味がない

 

「ヴァレッタ様が死んだ!?」

「馬鹿な!?」

「すぐに指示を仰ぎに・・・」

「馬鹿者このまま奴らを皆殺しにするのが先だ!!」

「待て!?うかつに動くな!!」

 

なにせ既に向こうの最大戦力であったであろう、階層主とヴァレッタが消えたのだ

 

この戦いの趨勢はこちらに大きく傾いたのは誰の目にも明らか、その証拠に闇派閥の下級団員は見るからにうろたえ始めていた

 

 

「っ!?待てお前ら!なんかくるぞ!?」

 

そんな混乱の最中、私の隣に『彼』がどこからか跳躍してきたのか音もなく着地した

 

「よっと、・・・おまたせ」

 

「あ、ジョーカー、おひさ~!」

 

「おひさ~」

 

「「「ぎゃああああああああああああ!?」」」

 

闇派閥の団員が一斉に後ずさる中、アリーゼとジョーカーがのほほんとした会話を繰り広げていく

 

「アリーゼ、死者と怪我人はどんくらい出た?」

 

「あなたのおかげで幸い死者はゼロ、ただし怪我人は多数ってとこねー」

 

「仏さんが出てないなら僥倖だろ・・・ちなみにフィルヴィスは?」

 

「あら?あらあら?やっぱそういうこと?え、そういうこと~?」

 

口に手を当ててウフフフフとでも言うかのようにジョーカーに詰め寄るアリーゼ

 

(あぁ・・・アリーゼの悪い癖がこんなときに・・・)

 

人の恋路に口を出すのが大好きなアリーゼが極上のネタに食いつく

 

(というか、先ほどまでの緊張感はどこへ行ったのか・・・)

 

ついさっきまで自分たちは死闘を繰り広げていたはずなのに今のこののほほんとした空気は何なのだろうか

 

「何を勘違いしているのか知らんがあんたの考えているようなことはないと断言しておくぞ、普通に大事な仲間が心配で助けにきたってだけだ」

 

「え~~~?ほんとに~~~~?」

 

「ほんとに~~~」

 

(なんでしょうかこれ、なんでジョーカーはこんなにもアリーゼと打ち解けているのでしょうか・・・)

 

そんなキャッキャッウフフな空気が辺りに蔓延しそうになったとき---------

 

『同士達よ!!撤退せよ!!その後予定通りに例の物を起動させるのだ!!』

 

声が響く

 

「ちっ、白髪鬼(ヴァンデッタ)か!!」

 

「え、なに?あいつまでいんの?こりゃマジで上の方はハチャメチャになってんな・・・」

 

(・・・上の方?)

 

「どういうことじゃ?」

 

闇派閥の構成員が撤退する中、残った大量のモンスターを掃討しながら会話は続く

 

「あー・・・今回の襲撃にかなりの規模の人数が割かれるって気づいたうちの団長がさ、フレイヤとガネーシャ、その他複数のファミリア共同で大規模な電撃掃討戦を展開中でな、たぶん今回の騒動で闇派閥の連中かなり痛手を被るぞ」

 

日常的な会話のように話しているがそれと同時に聞こえてくるのはモンスターによる断末魔の重奏

 

ジョーカーのスキルなのか魔法なのかはわからないが、先ほどの巨人の腕と剣が現れ瞬く間に大量のモンスターが両断されていく

 

「ふん・・・儂らは囮といったところか、気にくわんのう!」

 

輝夜を囲おうとしたモンスターが飛びかかってくるが居合いによって細切れになる

 

「まぁまぁそう言わない、一応こうやってジョーカーが救援に来てくれたんだから」

 

アリーゼの剣がそこからさらに襲いかかってきた敵を切りつけ

 

「ふっ!!」

 

入れ替わるように私が隙間なく攻撃の手を加える

 

「そう言ってくれるとこっちとしても精神的に助かる」

 

そう言ったときのジョーカーの顔は非常に複雑な表情だった

 

 

 

そうやって残ったモンスターを掃討しきるのにはジョーカーという戦力を持ってしても数分を要した

 

「ようやく終わったかー」

 

「なに、お主のおかげでこれでもずいぶん早く終わった方じゃ」

 

(確かに・・・彼がいなければ危なかったかもしれない)

 

「あちゃ~、今から追ってもさすがに追いつけないか-・・・って!?」

 

既にかなり遠くまで退却している闇派閥の者たちを追撃できずに傍観していると突如の爆音が連続で辺りに鳴り響いた

 

(入り口が!?・・・いや、それだけじゃない、これはかなりの広範囲で爆発が起きている)

 

「うっわ~やることがみみっちなぁ・・・あいつら作戦失敗したからって最後の嫌がらせに入り口や通路を爆破していきやがった」

 

「あのまま追いかけてたら巻き込まれてたわね~」

 

「モンスターに足止めされたおかげで逆に助かるとは、いやはや素直に喜べんのう」

 

「それにしてこの爆発どんだけの火炎石仕込んでたんだよ、まだ連爆してん・・・ぞ?」

 

ジョーカーがそう言った後すぐにようやく爆発音が病んだ

 

「ようやく火炎石が尽きたみたい―――――――」

 

ね、とアリーシャが言おうとした瞬間

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――ダンジョンが哭いた。

 

 




はやく最新刊が読みたいなぁ


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32:最後×正義

早くベートとかレフィーヤ出してぇなぁ~('ω')


次の話が長くなりそうだからちょい短めだけど投稿!


 

ようやく一息つけるかと思った矢先の異常

 

異常事態(イレギュラー)の前に起きる地震ではない

 

黒板に爪を突き立てたかのような不快な高周波は下層全体を巻き込んで発せられていた。

 

 

 

その場の全ての生きとし生けるものがその音から感じるのは『悲鳴』『慟哭』そして最も強い感情

 

 

――――――――――――――――『憤怒』

 

 

 

どうしようもない自然から一定の個人に対してにのみ向けられる殺意は全ての生き物を恐怖で動けなくしてしまう。

 

 

これから起こるのはただの狩猟 殺戮 虐殺 蹂躙 

 

対して希望は一つのみ

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――これにハッピーエンドなどあり得ない 。

 

 

 

 

 

=================================

 

 

 

 

 

 

それは下層でも中層に近い、しかし、誰もいない広大なルームの壁から染み出るように産まれた

 

 

「――――――――――――――」

 

産声はない

 

その代わりに発するのは全てに対する殺意のみ

 

 

「――――――――――――――!」

 

身体を動かす

 

まるで油を差していなかった鉄細工の引き絞る様な音が鳴り響く

 

それはまるで睡眠から目覚めたばかりの獣がする伸びにも見える光景だった

 

「――――――――――――――・・・・」

 

後に静寂になったかと思われた瞬間

 

 

「■ ■ ■ ■ ■ ■ ーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

砲口

爆発

 

 

強大な水柱を上げてその場から姿を消す。

 

向かうは上ではなく下

 

踏み荒らすかのような進軍が開始した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろくるなぶぇぁ!?」

 

それの最初の獲物になったのは闇派閥の構成員、それもただの構成員ではない

 

地上でフィン達の作戦によって自らの主神が天界に送還されたためにステイタスが一般人と変わらなくなってしまった哀れな者達だ

 

彼らは逃げる同胞の中でもその脆弱さから脱出の際に取り残され、それから逃げることを優先した『白髪鬼(ヴァンデッタ)』によって脱出口を閉じられたせいで真っ先に殺されていった

 

「助けてく開けぁアピュ!?」

「くそgゲア!?」

「おわりだおわrpぃ!?」

「ああアアアアアハハハハハハハハハハハプひ!?」

 

 

助けを求める者、抵抗する者、諦める者、狂う者

 

砕かれる者、裂かれる者、食われる者、弄ばれる者

 

皆一様に最終的に同じ結末を迎えていく

 

 

 

そして絶望はついに下層の最下層

 

 

巨蒼の滝(グレート・フォール)』の壷の底へ―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

===============================

 

 

 

 

それに気付けたのは偶然ではない

 

 

ダンジョンの異常鳴動

 

そして先ほどから『巨蒼の滝(グレート・フォール)』の底であるこの滝壺の水が流れてくる血肉

 

それにより真っ赤に染まる巨大湖

 

全員が感じさせられた

 

まるでキツい香水の原液を頭から被せられたかのような感覚だ

 

香りは当然『死臭』というなの激臭だ

 

ただそこにいるだけで不意に身体がブルリと震える

 

――――――――今にも迫り来る死の香り

 

「アリーゼ、こいつは・・・」

 

「ええ・・・かなりヤバい、すぐにここから脱出するわよ」

 

 

アリーゼ達と短い協議の末、早急に下層から脱出することを決めても誰からも反対意見が出なかったのは不幸中の幸いだったのだろうか

 

「アストレア・ファミリアは前衛と中衛を頼む、俺はフィルヴィス達と殿を勤める」

 

「大丈夫なの?」

 

「ああ、幸い俺は索敵系のスキルがあるんでな半径150から200メドルくらいからの奇襲なら知覚できる、一緒に殿を勤めるなら俺の動きを知ってるフィルヴィスがいた方が他の奴らも守りやすい」

 

それを聞いて驚く者もいれば呆れる者もいる

 

「先ほどの攻撃手段に加えてそんなことまでできるのか・・・お主が『切札(ジョーカー)』と呼ばれるわけだ」

 

「それでもさすがに一人じゃキツいでしょ、・・・リオン、カイトと一緒に殿をお願い、輝夜は殿寄りの中衛で二人をサポートしてあげて」

 

「・・・了解しました、『切札(ジョーカー)』よろしくお願いします。」

 

『疾風』がペコリと頭を下げてきたので、こちらも軽く挨拶する

 

「おう、こっこそよろしく頼む」

(そういや『疾風』の声、初めて聞いた気がすんな・・・つーか本名はリオンって名前なのか・・・知らんかった)

 

「くくく、『切札(ジョーカー)』そやつは無愛想だがよろしくしてやってくれ」

「うるさいですよ、輝夜」

 

ギロりとリオンが輝夜を睨むと、おぁこわ!と言って輝夜は中衛パーティに混じっていった

 

「・・・カイト」

 

輝夜とすれ違うように近くに待機していたフィルヴィスがこちらに向かってくる

 

「フィルヴィス、話は聞いていたな?」

 

「あぁ、私たちとお前、そして『疾風』とで殿を勤める」

 

「そういうことだ・・・すまんな、勝手に損な役回りを回しちまって」

 

「かまわんさ、どうせ誰かがやらねばならないことだ、それなら最も索敵能力の高いお前、そしてそれを熟知している私がサポートに回るのは最も無駄のない編成だ」

 

「助かる」

 

「それと・・・」

 

「ん?」

 

「・・・た、助けに来てくれて・・・あ、ありがとう」

 

「「「「!!??」」」」

 

そんな素直すぎる言葉を聞いたデュオニュソス・ファミリアの面々が固まる

 

(おいおいおいうちの団長顔が真っ赤だぞおい)(うわ団長かわいい)(え?まじで?あれ団長?)(うわぁ団長やべぇぇええ)(どsふいあそいdjf;あs;!?)(団長、頑張りましたね ホロリ)

 

「フィルヴィス」

 

「な、何だ・・・ん!?」

 

ポフンとかるく頭に手を乗せる

 

「お前さんと俺は所属するファミリは違えども大事な仲間で親友(ダチ)だと思ってる、助けに行く理由は無数にあっても助けに行かない理由なんてありゃしねーよ」

 

「ピョ!?」

 

気にすんな、とでも言うかのように軽く笑っただけなのだが

 

何かがフィルヴィスにクリーンヒットしたらしく

 

ボボボンとフィルヴィスの顔からなんか出た

 

「ちょ、フィルヴィス!?大丈夫か!?まさかさっきの戦闘でどっか怪我を――――――――」

 

「ひゃわぁ!?大丈夫!大丈夫だからぁ!?」

 

 

 

 

そんな光景を見ながらアリーゼが呆れる

 

「うっわ、大変ねぇフィルヴィスちゃんも」

 

「・・・何のことですかアリーゼ? 美しい友情ではないですか」

 

「リオンあなたもカイトと同じ側か~・・・」

 

「?・・・それよりも急ぎましょう」

 

「そーね、空気もいいかんじになったし・・・急ぎましょうか」

 

 

 

そんな危機的状況で短いながらも少し和やかな会話が交わされた

 

 

 

彼ら彼女達はこのときの会話は忘れるだろう

 

彼らはこの後のことは永遠に忘れられないだろう

 

彼女はこのときのことを忘れたいだろう

 

 

 

――――――――下層の調査団は『最期の日常』を楽しんでいたのだから

 

 

 

 

 

 

そこからはとんとん拍子で事が進んだ

 

メインに爆破された通路とは逆の通路なら生きているかもしれないと考え移動を開始

 

運の良いことにその考えがドンピシャ当たり、かなり遠回りではあるが上に行く道を見つけることができた

 

 

なんとか通れる通路を見つけて脱出している最中

 

 

「カイト、これを飲んでおけ」

 

「お、サンキュー」

 

フィルヴィスから手渡された試験官には精神回復役(マインドポーション)が入っていた

 

手持ちのポーションは先ほどの階層主とヴァレッタとの戦闘で全て使い切ってしまったのでかなり助かる

 

精神力(マインド)の消費はどんな感じだ?」

 

「常時張ってるからな、ちときつい感じだな」

 

「?・・・なんの話ですか」

 

気心の知れたフィルヴィスとの会話の内容がわからないのか

 

『疾風』ことリオンが質問をしてきた

 

「俺の索敵スキルは精神力(マインド)を結構な量消費するからな、いつもは距離や時間を基準に一定間隔で使ってるんだよ」

 

「なるほど、つまり今はそのスキルを」

 

「あぁ、範囲を全開にして常時使用して――っフィルヴィス!」

 

「ぐ!?」

「な!?」

 

近くまで来ていたフィルヴィスとリオンをまとめて突き飛ばす

 

何かがヤバイという雰囲気は異常な高周波を聞いてから感じてはいた、だからこそ普段はやらないオーラの消費を無視した全開の『円』で警戒していた

 

だから気づけた

 

 

気づけた

 

 

なのに

 

 

気づけたのに間に合い切れなかった

 

 

フィルヴィスは守れた、リオンも無事だ

 

だが

 

 

「っっううううああああああーーーーーーーーー!?」

 

 

俺の左腕が宙に舞っていた。

 

 

 

 

 

=================================

 

 

 

《 side:『疾風』リオン 》

 

 

アリーゼと『切札(ジョーカー)』の協議により殿を任されることになった

 

道中では『切札(ジョーカー)』と『白巫女(マイナデス)』ことフィルヴィス・シャリアの違和のない立ち回りやお互いを支えあう会話等には一種の羨望を覚えた

 

自分たちの村の外を下に見る故郷の雰囲気が嫌でオラリオまで来たのにも関わらず、顔を隠し、他人との接触を嫌ってしまう自分との違いに憧れを禁じ得ない

 

だから私は勇気を出して会話に入ってみた

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――だからなのだろうか

 

 

 

 

輝夜はよく言っていた

「馬鹿が珍しいことをすると雨や雪、ひどければ大嵐が起きる」と

 

私が珍しいことをしてしまったからなのだろうか

 

 

 

まず最初に

 

 

切札(ジョーカー)』が左腕を切り飛ばされた

 

 

 

私のせいで『切札(ジョーカー)』が重傷を負った

 

私のせいで輝夜は利き腕を斬り落とされた

 

私のせいでギリギリだった戦線が崩壊した

 

私のせいで仲間が次々と殺されていった

 

 

 

 

私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで--------------

 

 

        私が

 

             アリーゼを

 

                        殺した

 

 

 

 

《 side out:『疾風』リオン 》

 

 

 

 

=================================

 




次回はガッチガチのバトル

前後編に分けるかも?

('◇')ゞ


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33:絶望×切札 前編

うーむ、めんどい仕事が済んだだけで心のゆとりが生まれた

スラスラPCのキーが打てるわ~(・ω・)


クルクルと切断面から血をまき散らしながら宙を舞う腕が一本

 

 

まぁ、俺の何だが

 

「っっづううううう!?」

 

(知覚してからあれだけあった距離を一瞬で詰められるとかどんな速度だ!?)

 

()()を『円』で知覚した瞬間、尋常ではない気配とその速度に一気に身体の中のスイッチが強制的に切り替わった、そのおかげで咄嗟にフィルヴィスとリオンを突き飛ばす・・・というか吹っ飛ばしたが正解だった、そうしなければ今頃二人はこいつに三分割にされていただろう

 

その代償に俺の肘から先を持っていかれたが。

 

(腕一本で二人の女の命、お釣りがくらぁな・・・とりあえず切り落とされた方の腕は『念』のオーラで止血――――――――――)

 

正直、未知の痛みに先程は叫んでしまったが頭の芯の方は自分でもドン引きする程キンキンに冷えていた

 

 

「うわぁああああぶgys!?」

「た、たすk」

「ぎゃ!?」

「ごぇあぁあぇ!?」

 

俺の腕が宙に舞っている数秒の間だけでも後続組の冒険者が次々と八つ裂きにされ阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていく

 

皮肉にも()()()()は俺の腕をぶった切ったことで、いつでも殺せると判断したのかとどめを刺すことなく他の冒険者を殺すことを優先したようだ

 

おかげで助かりはしたものの、決して気分の良い話ではない

 

(くっそ!相手の速度は自分以上、近接は不利、だったら距離を取りつつ中距離か遠距離攻撃!)

 

自分一人でこの化け物をどうにかしようとは思わない、アストレア・ファミリアがこっちに気付いて駆けつけるまで少しでも時間稼ぎをする。

 

 

「『天譴(てんけん)』!!」

 

(こいつを無理してでも解除しなくて正解だったな・・・)

 

 

何かあったときのためにオーラの消費を無視し実体化させたままにしていた刀の名を解放し、今まさに殺されそうであった冒険者と化け物の間を分かつように顕現させる

 

 

「―――――――――――!?」

 

「ジョ、ジョォカーーーーーー!?」

 

助けられた者達が助かった安堵と感謝から二つ名を叫ぶがそれに答える余裕は微塵もない

 

(まずは相手を牽制!他の冒険者から遠ざける!!)

 

突如現れた巨大な刀に相手が意表を突かれ動きが止まる

 

(好機!)

 

動きの止まった相手に全力で刀を振り抜いた

 

 

 

 

 

ガ ギ ン

 

 

だが、帰ってきたのは鉄がぶつかり合う鈍い硬質音

 

 

「・・・マジか」

 

 

こちらの全力を相手は片方の手?にある爪で受け止めていた

 

 

「 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ―――――――――――!!!!」

 

それどころか、こちらの巨大な刀を吹き飛ばす勢いで押し返してきた

 

 

(うぉぉお!?)

 

 

俺の身体がその勢いでルームの壁に向かって吹っ飛ばされる

 

足で地面を削り取るようにして無理矢理ブレーキを掛けることで何とか静止しようとするが()()に気付く

 

(・・・ウソだろおい!?)

 

止まりきる前にオーラを瞬時に集められるだけ脚に集中

 

(・・・ぐぅぅう!!)

 

慣性を無視した動きをしようとするせいで身体が悲鳴を上げるが全てを無視する

 

足裏を爆発させるようにして体勢も着地も何も考えず、とにかくなりふり構わず全力で前へと突っ込んだ

 

 

「ぐあっ!?」

 

 

前に跳んだ瞬間、背中の薄皮一枚が裂けた

 

なりふりかまわない回避のせいで前に向かって前転するような体勢になってしまったが、その体勢のせいで自分の居た場所が視界に入る

 

(あ、あっぶねぇ!?)

 

一瞬前までいた場所に鋭利な爪が振り下ろされていた

 

 

 

「「――――――――!!」」

 

 

 

天地を逆にした俺とそれの目が会う、何となくだが殺戮を邪魔されたことに苛立っているような気がした。

 

 

(速い!?・・・でも!)

 

 

その化け物は振り下ろした体勢のまま、すぐさまこちらを追撃してきたが、それはこちらにとって絶好のチャンスであった

 

 

「『天譴(てんけん)』!!」

 

 

こちらに飛び掛る化け物に対して股下から頭頂まで一刀両断するかのように下から上に向かって刀を振り上げる

 

俺の手にある刀と同調するようにして顕現した巨大刀が化け物の死角から斬りかかる

 

(今度こそもらった!)

 

回避不能の空中、しかも下からの奇襲に近い攻撃に必中を確信した

 

 

 

だが

 

 

「■ ■―――――――――― !」

 

「なっ!?」

 

 

あろうことか、そいつは下から迫る刀を尻尾で打ち付け、こちらの斬線を乱してできた刀の側面を足場に回避

 

その場から少し離れた場所に何でもないかのように着地し改めてこちらと対峙した。

 

 

「・・・・はは、冗談でもキツいぞ、おい」

 

 

確信した攻撃をこうもあっさり回避されたことに対して、もはや驚きを通り越して笑いしか起きない

 

(正直、こいつ相手に次はないかも・・・)

 

速さは圧倒的に向こうが上、パワーの方も速さよりましとはいえそれでもかなり上だとわかる

 

今と同じような対処をこいつ相手にもう一度やれと言われると無理ではないだろうがかなり分の悪い賭けになるだろう

 

 

パキ

 

パキン

 

(!?)

 

そんな中で唯一の成果は相手の爪と尻尾の表面がほんの僅かに欠けたことだろう、どうやら耐久の方はそこまでないらしい、何度も当てれば押し切れる、

 

しかし

 

たった十秒にも満たない攻防で見せ付けられた相手との単純なステイタスの差に対してこちらが見出した希望のなんと儚いことか

 

(・・・嫌な予感の正体は間違いなく()()()だ・・・何なんだこいつは?)

 

見た目はまるで餓死寸前の骨と皮だけの翼を失った翼竜

 

高さはざっと見で3メドル、全長は尻尾まで含めて10メドル、紛れもなく大型級と呼ばれるタイプ

 

だというのにこいつはあろうことか、こちらがギリギリ知覚できる様な速度で攻撃をしてくる

 

想像してみてほしい、大型トラックが狭い室内で跳ね回るスーパーボールの様な動きで襲いかかってくるという悪夢の様な光景を

 

 

(まいったな~・・・ちょっと勝てない)

 

 

 

ましたや今の俺の状態は片腕

 

万全の状態でも絶望的な戦力差だと言うのにこんなのと対峙できている今の状況が奇跡に思える

 

幸運なことに先程の攻防で多少はこちらを脅威と認めたのか睨み合いが続いてくれていた

 

 

 

 

そこに声が響く

 

 

 

 

「カ、カイト!?」

「・・・・!?」

 

 

俺に吹き飛ばされたフィルヴィスがこちらの状況、というか俺の状態を見て悲鳴を上げた、一緒にいるリオンも数秒で作り出されたこの凄惨な光景に絶句している

 

 

「 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ――――――――!!!」

 

 

そしてその悲鳴を合図の様にしてこちらに突っ込んでくる化け物

 

「らぁあ!!」

 

咄嗟に巨大化した刀で迎え撃つが

 

「はぁっ!?」

 

相手はその刀を足場のようにして数十メドルある天井まで跳躍

 

(あの巨体であの高さまで!?あり得ねぇだろうが!?)

 

巨大トラックがビル6階くらいまで高速で飛び上がるような光景に顔が引きつる

 

(これ――――っやば!?)

 

天井を足場としてこちらに向かって、見るからに凶悪な『破爪』を振り上げつつ突っ込んできた

 

目ではギリギリ追えている

 

だが、化け物自体の速度に重力の力も加わったそのスピードに身体反応が追いつかない

 

その速度は思考すら置き去りにしていた

 

(死―――――――――――――)

 

 

「させないわ!」

 

「らぁああああ!!」

 

自分の死の予感を覆したのは二人の女性

 

アリーゼと輝夜だった

 

二人が空中で横から突撃、化け物が壁際まで吹っ飛ばされた

 

 

「カイト、無事!?」

 

「じゃないだろどー見ても、団長の目は節穴か?」

 

「団長!」「やべーなこれ・・・」「うひゃぁなにこれ!?」

 

アリーゼと輝夜以外のアストレア・ファミリアの団員も続々と集結してきてくれた

 

その中にはフィルヴィスとリオンも居た

 

「カイト、腕を出せ、気休めかもしれないが傷口を縛る・・・それとお前の腕は一応こちらで回収しておいた。」

 

ギリギリ間に合った救援への安堵と死を免れた現実に一気に疲労感が襲ってきた

 

「っ・・・はぁはぁ・・・すまん頼む・・・それと二人とも助かった、マジで死ぬとこだったわ」

 

「助かるかどうかはまだわからないけどね・・・」

 

「そういうことだ・・・『切札(ジョーカー)』まだ闘えるか?というか、だ・・・あれはお前がおらねば私たちでも対処できんぞ」

 

「まかせろ、こちとらまだまだピンピンしてらぁ・・・それにどのみち闘えなきゃ、ここにいる全員――――――」

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ―――――――――――!!!!

 

 

化け物

 

後に『災厄』と呼ばれることになる『ジャガーノート』が大咆吼を上げる

 

 

 

 

()()に殺されるだけだ。」

 

 

 

絶望との第二ラウンドが始まる。

 

 

 




そういや、フィルヴィスが外伝であんなことになったけどレフィーヤってまだフィルヴィスの魔法使えんのかね?

どこかでフィルヴィスの魔法がまだ使えたことで精神的に持ち直す感動ストーリーとかありそうよねー(・д・)


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34:絶望×切札 後編

最近はプリコネとかいうゲームにハマってきてます

ん?・・・FGOはどうしたかって?・・・(๑´ºั ₃ºั๑)~♬


     

 

 

「『天譴(てんけん)』!!」

 

開幕は顕現した超大太刀による一撃からだった

 

高速で縦横無尽に跳び回るジャガーノートに対してこの能力は決定打にはならない

 

攻撃は避けられ、ジャガーノートがカイトに向かって攻撃を仕掛けてくる

 

「 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ―――――――――――!!」

 

だが

 

「させん!」

 

「じゃなぁ!!」

 

「はぁああああ!!」

 

刀によって進路を制限されたジャガーノートの足止めに専念するという条件だけならばアストレア・ファミリアのほぼ全ての団員を投入することで可能であった。

 

決定打にはならない『天譴(てんけん)』であったが、牽制方法としては最高の手札だった

 

 

Lv.4 11名

Lv.3  5名

 

対するは『災厄』ジャガーノートのみ

 

もしも自分が居なければアストレア・ファミリアでもこいつの相手は困難だっただろう

 

 

 

(((いける!これならいける!!)))

 

 

 

その時は確かな希望を持って誰もがそう思い闘っていた、

 

闘えていた

 

誰かがそのときのその思いを、判断を、間違いだったと言うだろう

 

だが当人達からすればそれは間違いだったと言われたくはない、その時はそれしか希望がなかったのだ

 

まさか希望に向かうカウントダウンが真逆の絶望へと向かっているなどと一体誰が想像できるのか

 

 

忘れてはいけない

 

ここはダンジョン

 

冒険者を気まぐれと悪意のみで食い殺す

 

怪物どもの坩堝なのだと言うことを。

 

 

 

 

======================================

 

 

 

《 side:『疾風』リオン 》

 

 

 

 

 

(急に何を!?)

 

私と同胞であるフィルヴィス吹き飛ばすという『切札(ジョーカー)』による突然の奇行

 

「けっほっけほ!・・・っ」

 

「無事ですか?」

 

「あぁ、すまない、それよりも一体なに・・・を・・・!?」

 

「これは・・・」

 

その意味を理解したのは、見た事もないモンスターによって後続組みがほぼ殺された後

 

(私たちは彼に助けられたということか・・・)

 

そう言って隣の彼女に目を目向けると、彼の隻腕の状態にかなり狼狽していた。

 

(腕を犠牲にしてまで・・・いや、私は彼女のついでか)

 

隻腕になった『切札(ジョーカー)』が文字通り化け物のような強さのモンスターと対峙しているときだった。

 

 

「カイト!」

 

フィルヴィスの声を開始の合図の様に両者が激突

 

(まずい!?)

 

そう思い参戦しようとした瞬間

 

「何を呆けているのだ馬鹿者!」

 

脇を通り抜ける二つの影

 

 

 

「輝夜!アリーゼ!!」

 

切札(ジョーカー)』の危機を救ったのは輝夜とアリーゼの二人だった

 

そこから迅速に私や他のアストレア・ファミリアの団員がちょうどアリーゼの元に集結したとき

 

 

「 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ーーーーーーーーー!!」

 

 

二人に攻撃されたことで激昂したのかモンスターが大咆吼を上げた。

 

 

 

「サンキュー、フィルヴィス・・・お前は下がってろ、さすがにあれの相手はお前じゃキツい・・・つーかぶっちゃけ俺でもかなりきついからな、あれの相手すんの」

 

「・・・ああ、悔しいがそのようだ」

 

「できれば私たちがあれの相手をしている間にフィルヴィスちゃんはここにいるLv.2以下をまとめあげて逃げてくれるとありがたいわ!」

 

「了解したアリーゼ・・・先に18階層で待っているぞ」

 

そう言ってフィルヴィスが生き残った者達の方へ向かっていく

 

 

(奴は・・・動かないか・・・)

 

私たちの集団から抜けていくフィルヴィスを化け物が狙うことも考え構えていたが、どうやらこの化け物は完全に私たちに照準を合わせているらしい、先程からこちらを凝視して動かない

 

「ちなみに一応聞いておくけど魔剣のストックとかまだあったりする?」

 

フィルヴィスの介抱が終わった『切札(ジョーカー)』が化け物が沈黙している隙に輝夜とアリーゼに聞いてくる、目線だけは微塵も奴から逸らさずにではあるが

 

「あるわけないだろそんなもん、先の戦いでとっくに使い果たしてるにきまってるだろうが!」

 

「はは・・・ですよねー・・・」

 

おそらく最初から予想はしていたのだろう力のない抜けた笑いをあげる

 

輝夜の言うとおり先程の戦いは今回の全戦力を投じても生き残れるかどうかの戦いだったため、出し惜しみをしている余裕などなかった、魔剣どころか弓矢すらほとんど残っていない

 

「カイトってあれね!片腕なくなってるのに軽いわね!!おかげで緊張感なくなっちゃいそう!!」

 

(それは確かに・・・いや、そんなことよりも・・・)

 

「・・・『切札(ジョーカー)』、魔剣はありませんが私の魔法があります、『九魔姫(ナイン・ヘル)』程の範囲はありませんが一点突破の威力は引けを取らぬ自信があります。」

 

「おお!そいつは結構、なら作戦は―――――――」

 

「私たちはリオンが魔法を放つまで時間を稼ぐ!単純ね!!」

「お、俺の台詞ぅ・・・」

 

アリーゼが『切札(ジョーカー)』の台詞を奪う・・・そのせいなのか『切札(ジョーカー)』が少ししょげている

 

「魔力を込めるために今回は威力を一点突破に絞ります、援護をお願いしますね」

 

「ま、そういうことだな」「まぁよくある作戦だ」「だねー」「じゃあ、いつも通りちゃっちゃと済ませましょう」「やるぜーあたしゃかなりやるぜー!」

 

皆が私を援護するという内容に意気を吐く

 

(相も変わらず頼もしいですね)

 

 

そんな中で一人肩身の狭そうな者が一人

 

「・・・なんか女所帯に男一人で疎外感を感じるんだが」

 

なんか隣に並び立つ輝夜に愚痴を垂れていた

 

「くっくっく、まぁ気にするな・・・・・・それよりも『切札(ジョーカー)』」

 

輝夜の身に纏う雰囲気が一変し周りの者達もそれを皮切り一気に意識を警戒からさらに深く意識を落としていく

 

「貴様のその攻撃が奴と渡り合うための突破口だ、こちらも先程の動きを見るにあれの相手に余裕はない、怪我を気遣ってもらえると思うなよ・・・・・・行くぞ」

 

「へいへい、精々気張らせてもらうとしましょうかねぇ――――――――『堅』!!」

 

「「「!?」」」

 

切札(ジョーカー)』の身に纏う気配が一気に数十倍にまで膨れあがった

 

(っ!?・・・この殺気、彼は本当にLv.3なのでしょうか?)

 

私だけではなく他の団員も彼の発する気に目を見張っている、

その中で最も知覚で彼の殺気を感じ取っている輝夜とアリーゼだけは笑っていた

 

「ふん、中々の気合いだ、やれ!!」

 

「開幕はど派手にいくわよ!!」

 

「任せろ!」

 

 

「『天譴(てんけん)』!!」

 

 

 

そして戦闘が『切札(ジョーカー)』の声で再開された

 

 

 

 

そこからは順調だった

 

 

「 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ―――――――――――!!」

 

「させるかぁ!!」

 

「――――――――――!」

 

切札(ジョーカー)』が顕現する巨大な太刀でモンスターの進路や攻撃を妨害し

 

「はぁ!!」

 

「りゃあああ!!」

 

そこにさらにアリーゼ達による間髪入れぬ攻撃が相手に何もさせない

 

 

「―――――――――――――――!!!!」

 

「いぃいいい!?あっぶない!?」

 

「ライラ!?」

 

「『天譴(てんけん)』!!」

 

たとえ反撃されてもすぐさま『切札(ジョーカー)』の攻撃が妨害だけでなく盾となり相手の思惑を外していく

 

 

「った、助かったぜ!『切札(ジョーカー)』あたしの婿候補にならねぇか!?」

 

「「「言ってないで逃げろーーーー!?」」」

 

 

 

順調

 

―――――――そう、()調()()()()

 

 

 

 

 

 

私の魔法が放たれるまでは。

 

 

 

 

《 side out:『疾風』リオン 》

 

 

 

======================================

 

 

 

 

(あー・・・なーんか嫌な予感がするなぁ・・・)

 

イレギュラーの魔物の相手は順調すぎる程に順調だった

 

そして、だからこそ俺は不安を感じていた

 

 

 

―――――調子に乗った者から死んでいく。

 

 

 

初めてダンジョンに潜ったときから自らに戒めている言葉だ

 

このイレギュラーに対して一切の油断はない

 

それ故にこの格上の魔物相手にどうにかこうにか殺り合えている

 

だというのにこの拭えない気持ち悪さは何なのか

 

警報ボタンは押されてランプはグルングルンと回っているのに音だけが鳴らないようなもどかしさ

 

そんな言葉にできない感覚をこらえて魔物の相手をすること3分といった所だろうか

 

(――――――来たか!)

 

今日、一番の魔力の圧を感じた

 

 

「『切札(ジョーカー)』、アリーゼ!撃てます!!」

 

リオンの詠唱が終わり、いつでも打てる準備が整った

 

後は外れないようにこっちが相手を誘導する必要がある

 

 

「総員、伏せろぉおおお――――――――――!!」

 

 

今あるオーラのほとんどを注ぎ込んで最速最大の太刀を顕現させそれを横凪に振り払う

 

 

「■ ■ ―!?」

 

「ちょ!?」「あっぶな!?」

「ぬぃおお!?」「ひぃいい!?」

「いぃいい!?」

 

リオンを除いたアストレアファミリア全員がその言葉に咄嗟に伏せる

 

だが言葉のわからぬイレギュラーは回避が遅れ、ギリギリで空中に跳ぶことで難を逃れる、咄嗟の事だったためか身体は空中に留まることになる

 

(どんな強者であっても空中は必ず隙が生まれる瞬間―――――今だリオン!!)

 

 

 

 

「【ルミノス・ウィンド】!!」

 

 

大小、30は超える数の光団が相手を逃さぬように四方八方から魔物に襲いかかる

 

その一つ一つにかなりの魔力が込められているのが感じられる

 

 

(これで、終わ――――――――――!?)

 

 

その瞬間に俺は見た

 

(嗤った?)

 

誰が

 

この魔物に決まっている

 

表情など作り様のない顔の構造で口角から無数の牙を覗かせて

 

まるで嘲り嗤うかのように

 

獲物が罠に嵌まったことをほくそ笑む猟師の様に

 

 

何がヤバいのかはわからなかった

 

何をすれば良いのかもわからなかった

 

だが俺の中にあるちっぽけな生存本能なのか

 

 

気づけば俺は

 

 

「『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』!!」

 

 

明王を召喚していた

 

(何かわからないがやべぇ!?)

 

その直感を証明するかのように魔物に当たったはずの光弾がこちらに向かって跳ね返ってきた

 

魔法反射(マジックリフレクション)だと!?)

 

先ほど言ったようにリオンの魔法の光弾はその込められた魔力から一発一発が必殺の威力を秘めている

 

その半数がこちらに向かって跳ね返ってきていた

 

「うぉおおおおおおあああぁあああぁぁあ!?」

 

刀で弾けた光弾が壁を抉り周囲の景観を変えていく

 

だが、弾ききれなかった光弾はそのまま俺達を襲ってくる

 

「ぐうううぅううそおおがあああぁあああ!?」

 

「『切札(ジョーカー)』!?」

 

黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』は俺とリンクしているためか俺と同様に左腕が肘から先がない

 

(せめて反撃のために右は残さねぇとっ・・・!!)

 

明王は巨大だ、その体表面積で盾となるだけでここにいる全員を庇う事が可能だが、んなことをすればさすがに死ぬ、俺は自殺するつもりもない

 

故に、もはや肘から先のない左腕を切り捨てるつもりで文字通り肉盾として使用することで光弾を防ぐ

 

(いっっ痛ううううあだだだだだだ!?)

 

致命傷になりそうな光弾は残っている肘から上の部分を肉盾として防いでいくが、これがまためっちゃ痛い

 

とにかく無我夢中で光弾を捌いていく

 

激しい破壊音が止み、土煙が晴れる

 

すると向こうに()()無傷のモンスターの姿があった

 

「くっそ・・・やっぱ無傷・・・ん?」

 

最初に俺の攻撃で亀裂を入れた爪と尻尾の部分のみが抉れていた

 

どうやら魔法を反射するのは表面の装甲のおかげのようだ

 

(つまり、あの表面の装甲を引きはが・・・しさえすれ・・・ば・・あり?)

 

思考にもやがかかり目がかすむ

 

足下を見ればおびただしい量の血が広がっていた

 

(あ・・・やば・・・これ全部俺の血か?)

 

「さすがに・・・血を流しすぎ・・・た・・・」

 

(やば・・・意識が・・・だめだ・・・今は―――――――・・・)

 

 

 

俺は倒れた。

 

 

 

 

炎華(アルヴェリア)!!」

 

身体に直接響き渡る爆発音で意識が戻った

 

「【空 を 渡り】」

 

「・・・ん・・・俺・・・は?」

 

目が覚めて先ほどまでの状況が一気にフラッシュバックする

 

「――――――――――――――!?!?」

 

(気絶してたのか!?この事態に!?いや、それよりもあいつらは―――――――!?)

 

俺のスキルの力でようやく拮抗状態だったのだ、俺が抜けてしまえばどうなってしまうのか、最悪の予想が頭をよぎる

 

そしてそれはすぐに現実として突きつけられた

 

「【荒野を  駆け】」

 

「・・・あ・・・・あああ・・・ああ・・・」

 

目の前が血肉の海だった

 

 

誰かの血肉が辺りに広がっていた

 

 

さらに最悪なのは今まさにこの瞬間

 

アリーゼが奴に身体を貫かれたことだろう

 

明らかに致命傷だ

 

そのアリーゼと目が合った

 

震える唇でこちらに向かって口を動かす

 

読唇術なんて心得はないが、それでも何を言っているのか不思議と伝わった

 

 

 

 

 

 

    リオン  を  お願い  ね

 

 

 

 

 

 

 

 

流した血を涙で流すかのような綺麗で

 

それでいて晴れやかな表情で言ってきた

 

 

 

 

待て

 

待ってくれ

 

 

「【何者 より も 】」

 

 

今、俺の意識が戻ったんだ

 

諦めないでくれ

 

ここから俺がどうにかするから

 

「【疾く 走れ】」

 

 

だから

 

 

頼むから

 

 

リオン

 

「【星屑の光を  宿し】」

 

その詠唱を  止めてくれ

 

「【敵を 討て】」

 

そんな願いもむなしく最後の詩が紡がれる

 

 

――――――――――――【ルミノス  ウィンド】――――――――――

 

 

 

爆発

 

 

閃光

 

 

そして

 

「ああ・・・ああああああ・・・・あああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 

慟哭

 

 

俺のではない

 

自らの手で仲間を

 

友を

 

ライバルを

 

家族を手に掛けてしまった

 

妖精の泣き声

 

そこに含まれるのは悲しみと絶望のみ

 

だというのに

 

それだけの代償を払ったにも関わらず

 

 

「なっ!?」

 

 

奴は生きていた

 

 

片腕片足を失った半死半生の様な状態でそしてそのまま奴は

 

 

 

(・・・!?おい!!おいおいおいおいおいおい・・・)

 

「っふっざけんなぁあああーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

奴は、あろうことかこの広間の外へ向かって脱出するために逃走を始めた

 

 

怒りで頭がどうにかなりそうだった

 

 

これだけのことをしでかしておいて逃げる?

 

俺の左腕

 

参加した冒険者

 

そしてアストレア・ファミリアの命

 

そしてリオンの絶望

 

 

何もかもを全部引き起こしておいて 

 

 

ニゲルダト?

 

 

煮えたぎるマグマが頭の中に現出したかのように怒髪に駆られる

 

目の前が紅い

 

耳も何も聞こえない

 

だが、聞こえないはずの声が聞こえた

 

昔、ベルと一緒にじいさんかに抱き上げられながら聞いた

 

今でも俺の中に芯としてある言葉だ

 

 

 

『英雄とは―――――――――――』

 

『何かを成し遂げた者を指すのではない』

 

『己を賭した者こそが英雄なのだ』

 

懐かしい

 

とても懐かしい記憶だ

 

『――――――仲間を守れ』

 

ごめん、じいちゃん、俺、守れなかったよ

 

目の前にいたのに守れなかった

 

『――――――女を救え』

 

 

――――――そうだ

 

まだ救えるかもしれない女が残ってる

 

――――――アストレア・ファミリアはまだ死んじゃいない

 

 

『――――――己を賭けろ』

 

ああ、そうだ、まだ俺は全てを賭けていない

 

まだ()()()はあるんだ

 

なら―――――それを賭けよう

 

 

アストレア・ファミリアは命を賭けてくれた

 

 

自分の死の間際になってまで友を心配する極上に良い女

 

アスフィに出会わなければきっと惚れていたかもしれないくらいのいい女

 

きっと他の団員達もそれに負けないくらいいい女だったのだろう

 

それを殺したこいつを逃す?

 

 

 

 

 

ア   リ   エ   ナ   イ

 

 

 

 

 

ケジメはつけなければならない

 

 

 

 

「逃がすかこのボケがぁあああぁぁぁあああーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

「『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』!!」

 

 

瞬時に巨大な鎧武者が顕現する

 

だが奴のスピードをこの明王では捉えることはできない

 

 

だから、本当に最後の奥の手

 

 

 

「『断鎧縄衣(だんがいじょうえ)』!!!!!」

 

 

 

明王の鎧が音を立てて崩れていく

 

 

そして残ったのは身体の中心から黒き縄を生やした禍禍しい一匹の巨大な鬼

 

 

 

 「■ ■ ■ ―――――――――――!?」

 

 

「 ■ ■ ■ ■ ■ ■■ ■ ■■ ■ ■■ ■ ■■ ■ ■―――――!!」

 

 

もはや俺の声なのか奴の声なのか、それとも明王の叫びなのかもわからない

 

 

とにかく斬った

 

「ああああああああああああああああ!!」

 

一閃

 

「がぁあああああああああ!!」

 

 

二閃

 

「ああ亜アーーーーー―――――」

 

三閃

 

「渦ぁああっっっっかああああああ」

 

四閃五閃六閃七閃八閃九閃―――――――――――・・・・

 

「■ ■ ■ ■ ■ ■■ ■ ■■ ■ ■■ ■ ■■■ ■ ■ ■ ■ ■■ ■ ■ーーーーー!!!!」

 

 

斬って斬って斬って

斬って斬って斬って

斬って斬って斬って

斬って斬って斬って

斬って斬って斬って

斬って斬って斬って

 

斬りまくった

 

狙いなど適当だ

 

とにかく奴を切り刻まねば気が済まなかった

 

 

いままでの怒りをすべて叩き付けるかのようにとにかく斬りまくった

 

 

そして情けないことなんだが・・・

 

 

俺はそこからの記憶がない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

======================================

 

 

 

No.10←New

 

◇『天譴(てんけん)

 

始解と呼ばれる状態の斬魂刀の1つ

巨大な腕と太刀を数秒間だけ顕現させることができる

その破壊力は言うに及ばず。

 

 

◇『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)

 

天譴(てんけん)』の第二段階、通称「卍解」

巨大な鎧武者を顕現させる、その力は『天譴(てんけん)』の数倍

身体の大きさをある程度までなら調整できる。

 

 

 

◇『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)断鎧縄衣(だんがいじょうえ)

通常卍解の亜種解放とも言える形態

明王が鎧を脱いだ姿、俊敏性だけでなく力も爆発的に上昇する

しかし、その代償としてその身に受ける攻撃全てが致命傷になってしまうほど防御力が下がる

(下がるというかゼロになる)

 

というか、ぶっちゃけ攻撃を受けたら死ぬ

 

元の持ち主は不死身になることでこの弱点を克服したが

カイトはそんなの無理なので普通に一撃受けたらガチで死ぬ

普通に死ぬ

 

ハイリスクロウリターンな形態

 

 

 

□ 解除条件 □

 

短時間内に敵を1000体以上撃破

or

『断鎧縄衣』の解放

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公が気絶している間は原作と同じ事が
だいたいおこったことにしといて下さい


さーて後は後始末を二話くらい書いてさっさと仲間との日常編的なのんびりに突入したい


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35:失意×再起

いやぁ、最近びっくりする出来事がありました。

詳細は後書きにて(´д⊂)

ちなみに今回は雑談回

めっちゃ書きたかった話は次話なんで気楽に読んでね


闇派閥(イヴィルス)への大粛正、並びに27階層への調査隊への襲撃事件

 

どちらもオラリオの正と負の歴史に刻まれることになった

 

片や『光への一歩』

 

片や『27階層の悪夢』

 

全くの真逆性な出来事がほぼ同日のうちに起こったことで忘れることのできない事件としてこのように称されことになる

 

そんな大事件から三日

 

 

 

 

場所はギルドの地下

 

ここは祭殿と呼ばれ、オラリオ創設神の1柱である、とある神がその強力な神威を常に祈祷によってダンジョンに捧げることでモンスターの地上進出を防いでいる最重要防衛箇所である

 

そこにある石造りの椅子に鎮座する者が1柱、言わずもがな今述べた創設神の1柱 神ウラノスである

 

二メートルある巨体に彫りの深い荘厳な表情は微動だにしない

 

そのせいで老人のように見える姿からは年相応の雰囲気は微塵も感じられない

 

そんな神が誰も居ないはずの広間へ向かって口を開く

 

 

「・・・フェルズか」

 

「あぁ、とりあえず報告だ、今回の事件の後始末はできる範囲で済ましてきたよ、ウラノス」

 

「・・・そうか」

 

誰もいなかったはずの暗闇から突如、影が現れる

 

全身を覆うローブは黒一色

 

それ以外で唯一見えるのは両手のガントレットのみ

 

怪しさ満点の人物ではあるがウラノスは気にせず会話を続けていることから二人?が知己であることが窺い知れる

 

「ロイマンの提出した今回の報告書は()()()()()を除けば概ねその通りのようだったよ」

 

「そうか」

 

「ただ・・・やはりアストレア・ファミリアが壊滅したのは痛い損失だね」

 

「あぁ、アストレアの眷属(こども)達ならあるいはと思っていたが」

 

「正義を司る彼女たちならば()()()受け入れてくれる可能性があったかもしれないというのにね・・・」

 

「既にない可能性の話をしても仕方あるまい・・・・フェルズ、それで細かい部分とは何だ」

 

「あぁ、今回のダンジョンで起こった異変の原因に、おおよその予測ができたかもしれない」

 

「!?」

 

「これは生き残った『切札(ジョーカー)』と『勇者(ブレイバー)』の会話を盗み聞きをして手に入れた情報になる、どうやら闇派閥(イヴィルス)が大量の火炎鉱石を使用して下層を超広範囲にわたって爆破したらしい、そしてその直後に――――――――――」

 

「ダンジョンで何かしら異常が起こった」

 

「あぁその通りだよ、何でもまるで悲鳴のような音が下層全域にわたって鳴り響いたようだ」

 

「・・・なるほど、このような事は初めてだが私の祈祷が届かなくなった理由がわかった、・・・ダンジョンは生きている、おそらく許容範囲内のダメージに修復よりも原因の排除を優先したのだろう、そして―――――――」

 

異常種個体(イレギュラー)・・・『災厄』の獣、ジャガーノートの誕生、いや出現となってしまったということなのだろうね」

 

「このことは機密扱いにせねならないだろう」

 

「それがいいと私も思うよ、下手に知れ渡ってしまえば誰が悪用するかわからないからね・・・それと話は変わるんだが――――――」

 

「何だ?」

 

「いや、今回の功労者である『切札(ジョーカー)』が義手を作ることになったそうなんだが・・・すこし面白いことになっていたよ」

 

「ほう」

 

「私も少し興味が湧く内容でね、先達として影ながら少しだけ手伝うことにしたよ、かまわないかな?」

 

「かまわん、お前のプライベートにまで口出しする権利は私にはない」

 

「ありがとう、ウラノス」

 

「礼を言われるようなことではない、それに『切札(ジョーカー)』には何か報いねばならないとも考えていた」

 

「そうだね・・・それにしても彼の新たな通り名が『悲劇の英雄』か・・・どうか今回の事件が最後の悲劇になることを祈るばかりだよ・・・」

 

「・・・ああ」

 

 

 

そう言うと黒衣のローブを纏った人物の姿が消え、残った老神はいつものように目をつぶり祈祷に集中する

 

微動だにしないその姿はまさしくオラリオが世界の中心であるという地位を不動であると表わすかのようだった。

 

 

 

 

=======================================

 

 

 

 

ウラノスとフェルズの怪しい会話の二日前

 

つまりは事件の翌日

 

場所はダンジョンの入り口の大広間

 

そこでは今回の下層調査隊で生き残った者達が駆けつけた救護員達によって治療を受けていた

 

全員が憔悴し疲弊している

 

怪我も大小様々であまりの怪我人の多さに怪我を治すための高級(ハイ)ポーションが足りず応急処置として包帯を巻いている者が多数見受けられる

 

そんな中で

 

 

パーン

 

 

と乾いた音が鳴り響いた

 

 

響いた音の元へ全員が目を向けると、とある小人族(パルゥム)と隻腕の人間(ヒューマン)が目に入った

 

「どうして僕に叩かれたか・・・わかるかな?」

 

音の正体は『勇者(ブレイバー)』フィン・ディムナ

 

彼が同じファミリアである『切札(ジョーカー)』の頬をひっぱたいた音だった。

 

 

 

 

 

=======================================

 

 

 

 

 

《side:フィン》

 

 

地上での闇派閥(イヴィルス)への電撃戦は大成功といっても過言ではない結果となった

 

今回の襲撃で闇派閥(イヴィルス)勢力の半数、いやそれ以上を削り取ることができた

 

臨時で建てた天幕で事後処理をしていると

 

「団長!!カイトがっ!カイトがっっ!!」

 

血相を変えたラウルがテントに飛び込んできた

 

その表情から読み取れるのはとてもではないが良い報告とは思えない

 

(まさか・・・いや、もしそうならロキがすぐに気づくはずだ)

 

「ラウル、落ち着きぃや、他のファミリアの子達もおるんや、ゆっくりとでええからきちんと報告しぃや」

 

主神は己の『神の恩恵(ファルナ)』を刻んだ眷属の生死を感覚で掴むことができる

 

そのロキが自分の隣にいるのに何も言ってこないはずがない

 

だが、このラウルの焦りよう、嫌な予感をぬぐうことができない

 

「えっと、その・・・」

 

少し落ち着いてようやく周りに気づいたのかラウルがしどろもどろになった

 

なにせ今ここには各ファミリアの団長

 

さらにその主神までもが一同に介している

 

バベルから滅多に姿を現さない、あの女神フレイヤまでもが参加しているのだ

 

先程までの醜態を思い出すと固まってしまうのは無理もない

 

「・・・すまないシャクティ、少し席を外してもかまわないかな?」

 

「問題ない、当面の問題や対処は今さっき話し終えたからな、今回の事件の影の功労者に何かあったのなら早く行ってやれ、たとえ何かあっても我々だけでもどうにかするさ・・・まぁ都市最強のLv.7のいるここに殴り込みを掛ける命知らずはいないだろうがな」

 

そう言ってチラリとオッタルに目線を向けるが当の本人は女神フレイヤのそばに直立不動

 

女神フレイヤもどこ吹く風・・・というかあきらかに退屈そうにしている

 

だが、ここに何かあればそれはすなわち女神フレイヤへの危険でもある

 

なにも言わずとも彼は己が女神のために動いてくれるだろう

 

「ふふ、確かにそうだね・・・それじゃあラウル、事情を聞きながら移動しようか、ロキは――――」

 

「うちも、もちろん行くでー?当ったり前やろー!」

 

「はは、だよね」

 

駄々をこねる子供のように言ってくるロキに苦笑しつつ共に天幕を出て行った

 

 

 

 

 

 

 

 

道中でラウルから事情を聞いてからは急いでダンジョンの入り口に向かう

 

そして長い螺旋階段を降りて目的地に到着した

 

そこで目に入るのは大勢の負傷者とそれを看護する救命士達

 

彼はその最奥に居た

 

全身を自身の血なのかそれともモンスターなのかわからないほどに真っ赤に染め

 

左腕を失ってしまったカイトの姿があった。

 

そばには既に僕たちを除いたロキ・ファミリアの主要メンバーがそろっていた

 

全員が心配そうにカイトを看ている

 

 

 

「・・・カイト大丈夫かい?」

 

「ん・・・あぁ・・・フィンか・・・」

 

 

声を掛けるが、カイトの顔色は良くない

 

怪我が原因ではあるだろうがそれだけではないのだろう、恐らく精神的なもの

 

腕を失ったショックか

 

それとも

 

それ以外か

 

 

「・・・とりあえず、それなりに集まったみたいだし、アイズと分かれた後にダンジョンで何が起こったか聞いてもいいかい?」

 

「ああ、まぁ大変だったよ・・・色々と―――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ふー・・・これは・・・また」

 

「まぁ、その後に意識を無くして気付けば18階層のリヴィラの街でな、フィルヴィスが18階層まで来ていたギルドの救援隊を連れてきてくれなきゃ今頃モンスターの腹の中だ、まぁその中に椿()がいたおかげで地上まで戻ってくるのは楽だったな・・・まぁあいつにはちょっとだけ俺の秘密がばれたがな」

 

「まさか、スキルのことを話したのかい?」

 

「少しだけな・・・安心しろ、椿に教えたのは全部じゃない、一つだけだ」

 

ちなみに今カイトの口から出た椿という名前はカイトと専属契約している上級鍛冶師の名前だ

 

世界にその名を轟かせる武器・防具メーカーの鍛冶ファミリア

 

そのヘファイストス・ファミリア次期団長筆頭候補

 

椿・コルブランド

 

隻眼のハーフドワーフの少女でガレスとカイトの二人と契約している

 

今回迅速に救助が出来たのも彼女の力に寄る所が大きいと聞いている

 

 

それにしても

 

 

言葉が出ないとはこのことだ

 

カイトから聞いた話はむちゃくちゃだ

 

 

(双頭竜とヴィレッタの単独撃破、そしてアストレア・ファミリアを壊滅させるほどの

異常種個体(イレギュラー)を犠牲を出しつつも討伐・・・か・・・・・・・・・・今回地上の方でヴィレッタの姿を見かけなかったのはダンジョンの方にいたからか・・・あいかわらずとんでもないなカイトは・・・)

 

 

常識と己の耳を疑う

 

周りの表情も僕の心中と似たり寄ったりだ

 

僕はなんとか団長としての矜持もあるので気合で冷静を装ってはいるが、それもいつ剥げてしまうかわからない

 

そんな中で例外があるとすればアイズと・・・ラウルくらいだ

 

二人とも驚くには驚いてはいるが、絶句して空気を求める魚類のように口をパクパク動かしている他の者達と違い

 

 「へー・・・すげーなー・・・」程度にしか驚いていない

 

カイトと最も行動を共にしていたのはこの二人なのだが、この二年間で一体何があったというのか

 

むしろ何があったらその程度の驚きで済むようになるのだろうか

 

というかラウル、君は先ほどまでかなりうろたえまくっていたはずなのに、何でそんなに落ち着いているんだい?

 

今の話よりカイトが左腕を失った話のほうが君にとってはインパクトがあったということなのか

 

もしかしたら聞きそびれているだけで三人でとんでもない冒険を経験していたりするのだろうか

 

(いや、今はそんなことより彼を労う方が先だな・・・)

 

彼に声を掛けようとした矢先

 

「・・・すまない、フィン」

 

急な謝罪に意表を突かれた

 

「んー・・・それは何に対する謝罪だい?」

 

パッと思いつくのは待機命令を無視してアイズと共に下層に向かったことだ、結果オーライとなったがそれでも命令無視はそれなりの罰がいるだろう

 

だがカイトからはそれ以外の答えが返ってきた

 

「命令無視と()()()()()()

 

「・・・・・・」

 

パーン

 

僕はあえて怪我人であるカイトの頬をここにいる全ての者達に見えるように張った

 

それはこの場では決して口にしてはいけない答えだったからだ

 

「どうして僕に叩かれたか・・・わかるかな?」

 

「・・・命令無視と救助の」

「違う」

 

今、カイトの周りにはこのオラリオでも名の売れている者達が一同に終結している、そのため看護する者や救助された者達、そして救助された者達の主神や同じ眷属(かぞく)の者達の視線が自然と集まっていた

 

そんな中で今回の最大の功労者であるカイトの口から発せられた「救助の失敗」

 

これはダメだ

 

その言葉は今回助かった被救助者達の命を軽んじる言葉だ

 

「カイト、周りをもっとよく見ろ」

 

そう言ってカイトに改めて周りに目を向けさせる

 

「怪我人だらけだな・・・俺がもっと―――――」

 

「そうだ、怪我人だらけだ、でも―――――――――――――――君が救った命だ」

 

「っ!!」

 

「・・・そこの君、そう、腕を吊った君だ」

 

僕はこちらのことを遠巻きに見ている、おそらく腕を折ったのであろう一人の冒険者に声をかける

 

「は、はい!!な、なんでしょうか!?」

 

「今から言う質問に正直に答えてくれ、たとえその答えが酷い侮辱的なものでもかまわない、ただ正直に答えてくれるだけでいい」

 

「え?・・・う・・・は、はい・・・」

 

「・・・カイトが君たちの救援に向かったのは無駄だったかい?」

 

「えぇ!?そ、そんなわけ―――――」

 

 

「そんなわけがあるか!!」

 

 

声を上げたのは一人の女性エルフ

 

「カイトが居なければここにいる我々全員が27階層の時点で全滅している!彼のおかげで今生きていられる!感謝はすれど彼を非難する者も侮辱する者もここには誰一人としていない!!もし居るなら私がそいつを切り殺してやる!!」

 

「フィルヴィス・・・」

 

涙を我慢するかのような叫びにカイトがエルフの女性の名前をつぶやいていた

 

(もしかして、助けに言った仲間って彼女のことかな?)

 

そんな彼女の魂からの叫びに呼応するかのように他の者達も次々と声を上げる

 

「『切札(ジョーカー)』、お前さんがそんな顔をすんじゃねぇ!」「お前さんがそれならほとんど何も出来なかった俺はどうなるんだ!誇れよ!!」「お前のおかげで俺と仲間は生きてんだ!!」「そうだぜ!失敗なんかじゃねぇ!!」「あなたのおかげでこの程度で済んだ・・・感謝しかない」「あんたに助けられた恩は一生忘れない」「殺された奴らだって覚悟の上で潜ってんだ、気にすんな!」「誰が何と言おうと俺はてめぇに感謝すんぜ『切札(ジョーカー)』!!」

 

皆が口々に彼への感謝を述べる、その中には主神達による言葉も混ざっている

 

「お前ら・・・」

 

(そういえば、カイトの周りでここまで明確に死者が出たのは初めてか・・・)

 

今までカイトは様々な案件に関わらせてきたが、それをすべてうまく解決してきた

 

死者が出たとしてもそれはカイトではどうしようもない状況やもしくはその事後のことだった

 

そのため今回が初めての挫折となるのだろう

 

おそらくそれがカイトへの精神的なショックにも繋がっている

 

まぁ、初めての挫折がこれだけのインパクトのある事件だとその衝撃もすさまじかったのだろう

 

なまじカイトが優秀すぎたことによる弊害だった

 

「カイト・・・確かに救えなかった者達もいるだろう・・・だがな、こうして救えた命もあるんだ、それをまずは誇れ、お前はまだまだ若いんだ、何もかもを完璧にできなくて当然なんだ、だからこれを糧に前に進むんだ、次はもっと犠牲を少なく、そしてやがてゼロにするためにな」

 

めずらしくリヴェリアがカイトの頭を撫でながら優しい言葉を紡いでいた

 

「ああ・・・そうだな・・・そうだよな、救えた・・・救えた命だってあるんだよな・・・」

 

下を向いたカイトから震えながらも搾り出すような声が返ってくる

 

「失ったものを嘆くよりも、今だけは救えた命を喜ぶほうが建設的じゃろうが馬鹿者」

 

「ぁあ・・・その通りだ・・・おっさんの言うとおり馬鹿だなぁ俺は・・・」

 

ガレスもぶっきらぼうながらも激を飛ばしてくる

 

「――――――っふーー・・・下ばっか見てちゃ気も滅入るわなぁ・・・うっし!!」

 

下を向いていたカイトが天を仰ぎ見るように顔を上げた

 

そう言って笑うカイトの目からは止まることなく涙が溢れていた

 

けどそれは決して悲しみだけではなく、喜びも含まれた憂いの涙だ

 

前に進もうと決意するために流れる涙だ

 

きっと彼はこのことも糧としてもっと強くなれるだろう

 

どうやら狙い通り、皆の鼓舞のおかげでカイトの精神も持ち直したようだ

 

そんなカイトの横にアイズが近づくとカイトに向かって拳を突き出した・・・何をしているのか僕にもわからない

 

「ん!」

 

「・・・お嬢?」

 

無意識にだろうかカイトも同じように拳を突き出し軽く合わせる

 

「カイト・・・おつかれさん」

 

「っ!!・・・あぁ、お疲れさんだ、お嬢も無事でよかったよ」

 

「ん!!」

 

何かわからないが二人にしかわからない何かなのだろう、二人ともとても晴れやかな顔をしていた

 

 

「はは、女の子ってのは成長が早いなぁ~、ラウルもそう思わねぇ?」

 

「カイトはおっさん臭いっすねー・・・」

 

「悪かったなじじ臭くて、あれだ、ガレスのおっさん臭が移ったんだよ」

 

「移るかそんなもん!少し元気になったとたんこれかお前は!?」

 

「まぁまぁ、ガレス、今日は勘弁してあげようよ・・・・・カイト、()()()()()()()()はあるんだろうけど今はゆっくり休むんだ・・・いいね?」

 

実は今回の騒動でほぼ中心に居た人物が地上に帰還した後に主神と共に行方不明になっている

 

カイトとしても気になるそうだが今は彼の身体を縄で縛ってでも休めることが何よりも優先される

 

「・・・あぁ、悔しいがそうさせてもらう、それに――――――――ぶたれた頬も痛むしなフィン?」

 

「ふふすまないね、でもまた僕の名前が変な語尾みたいになってるよ」

 

「ふ、すまんすまんふぃん」

 

ちょっとイラッときた、僕は救助のことはまだしも、待機命令違反を許したわけではない

 

「よーし、それなら今すぐ寝かしつけてあげよう、ついでに命令違反の罰もおまけだ」

 

「えぇ!?ちょっ、ま、あぶぇ!?」

 

 

大丈夫大丈夫、加減はわかっている

 

 

・・・・・・・ギリギリのね、ふふふ。

 

 

 

 

 

この後、カイトはディアンケヒト・ファミリアの療養所にとても大人しく、それこそ死体のように大人しい状態で運び込まれた

 

ただし僕はアミットに普通に怒られた

 

「怪我人に何をしているんですかぁーーーーーー!!」

 

・・・やりすぎた

 

 

 

 

 

 

 

 

《side out:フィン》

 

 

 

 

 

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大叔母が冗談みたいな流れで亡くなりました

大叔母倒れる そのまま病院に緊急搬送され入院

翌日

大叔母:「びっくりしたぁ!?なんで私ここにいんの!?」
俺 :「倒れたんやで」
医者:「もう容態が安定しました、大丈夫ですよー」

さらに翌日

医者:「晩御飯の芋をのどに詰まらせて亡くなりました」
俺 :「ファッ!?」Σ⊙▃⊙



「事実は小説よりも奇なり」

まさにこれ(゚o゚;

89歳、本当に最後まで騒がしくて元気な方でした。

私からするとらしい最後だな、と思いましたがやはり見知った方が居なくなるのは悲しいです。

皆さんも食事の時にはよく噛んで飲み込みましょう。


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嫁と舎弟と時々妹
36:帰郷×過剰


久しぶりの日記帳的な文章よー(・ω・)


あんま何も考えずノリで書いたせいかタイプ速度が尋常じゃなかった

深夜のテンションって怖いよねー(。・ω・)(・ω・。)ネー


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《side:ゼウス》

 

×9年〇月△日

 

今日もいつも通りべルと共に畑を耕し終わり

(というかほとんどベルが高速でやった)

 

さて、ベルと茶でも飲むかと準備していると

 

コンコン

 

と家のドアをノックする音がした。

 

はて、近所の連中ならノックもなしにドアを開けてくるのだが誰だろうか

 

ヘルメスのアホが来るにしては早すぎるし・・・誰じゃ?

 

茶の準備をしているのでベルに開けさせると

 

「よっす!じいちゃん!ベル!ちょっとの間だけど帰ってきたぜ!!」

 

なんか孫がサプライズで帰ってきた

 

「兄さァアアアアあああああああああああああん!!」

 

ベルが驚きと喜びの余りにカイトに抱きついた

 

 

 

だが、そこで儂もベルも気付く

 

 

 

腕   が  ない

 

 

 

孫の左腕がなくなっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×9年〇月あの日

 

昨夜、とりあえず再会をお互い喜び夕餉を済ました後

 

カイトから腕を失ってしまうことになった経緯について聞いた

 

女を守るために腕を犠牲にしたのだ、と

 

全てを守ることは叶わなかったが、それでも救えた命があったと

 

とても真っ直ぐな瞳を宿して言ってきた

 

儂は褒めた

 

さすがは我が孫じゃ、と

 

女子(おなご)のために腕を犠牲にできる男子(おのこ)がこの世界にどれだけの数いるだろうか

 

少なくとも儂の孫は仲間のために腕も命も張って闘える勇敢な男になっておった

 

なんと誇らしいことか

 

カイトが腕を失ってしまったのは悲しい、見た瞬間に目の前が真っ暗になるほどじゃった

 

だがそれでも何度でも言おう

 

何度でも褒めよう

 

立派になったと

 

話している内にカイトは泣きながら笑っておった

 

気づけば儂も泣いておった

 

あぁ、カイトは立派な一人の男になったのじゃなぁ・・・

 

孫が完全に独り立ちできたことを実感した

 

一抹の寂しさを感じるが今日は秘蔵の酒を出して共にグラスを打ち鳴らそう

 

きっと話すことはもっとあるはずなのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×9年〇月あのとき日

 

マジか

 

・・・カイトはつい最近Lv.4になったらしい

 

マジか

 

 

 

昨夜、孫と初めて酒を飲んだ際に聞いたことが今でも信じられん

 

だが、それが嘘ではないことが儂にはわかってしまう

 

一応、儂ってば神じゃし

 

 

 

いや、儂の孫すげぇわ

 

カイトが旅立った当初はきっとオラリオでも活躍するじゃろうなぁ~、

するといいなぁ~くらいの感覚で送り出したんじゃけど儂の予想以上というか予想異常な感じで大活躍していた

 

 

っていうかカイトの煎れてくれる茶がめっちゃ美味い

 

何でも、将来、冒険者を引退してアスフィと一緒になれたら店を出したいそうじゃ

 

そのためにも結構前から料理や経営等に関して勉強中らしい

 

 

ただ・・・

 

・・・料理や経営に関して教えてくれる者の名が『ミア・グランド』と言うらしい

 

・・・え?

 

マジで?

 

もしかして、あの『小巨人(デミ・ユミル)』?

 

フレイヤのとこでスコップ振り回してたあの、おっかさん?

 

 

 

・・・マジなのか

 

すげぇな儂の孫。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×9年〇月あの場所日

 

 

 

今日はカイトとベルが久方ぶりということで手合わせといって模擬戦の様な事をしていた

 

まぁ、当たり前だがカイトの圧勝じゃった

 

 

片腕しかないとはいえ、それでもLv.4

 

神の恩恵(ファルナ)』を刻んでいないベルでは手も足も・・・

 

いや・・・・・・結構食らいついてなかったか?

 

いや、気のせいじゃろ・・・気のせいだよね?

 

 

・・・まぁええか

 

模擬戦の後はカイトがベルに色々と教えておった

 

「こう、オーラをな、一部以外を閉じてギュギューっとする感じで」

 

「ギューっ?」

 

「いやいや、ギュギュギューーッって感じだ」

 

「んー・・・ギュギュギューーッ?・・・あ、できた」

 

「天才じゃぁぁあーーーーー!?」

 

 

 

・・・あれは何を教えとるんじゃ?

 

何故かカイトの口調が儂みたいになっておった。

 

 

 

その後、カイトとベルが軽い運動をしてくると言って大猪を複数狩ってきた

 

 

「殺りすぎちゃった☆」

「ちゃった☆」

 

テヘ☆・・・じゃないわい

 

どうすんじゃこの肉の山は・・・

 

 

食べきれんので村を挙げてのぼたん鍋祭りを開催した

 

村全員がそれぞれ育てている作物を持ち寄っての鍋は料理人としても修行をしているカイトの味付けもあってか大変美味じゃった

 

「はい、兄さんあ~ん」

 

「あ~ん、・・・うむうむ・・・ベルのおかげで美味い飯がさらに美味い!」

 

「はは、兄さんの味付けのおかげだと思うよ?」

 

片腕で食べにくそうにしているカイトにベルが適宜看護するかのように食べさせてやっていた

 

相も変わらず仲がええのぅ

 

ん?

 

そういえば仲が良いで思い出したのだがアスフィちゃんはどうしたんじゃ?

 

「あー・・・アスフィならオラリオで俺の義腕を作ってるよ、何でも作るのに時間が結構かかるらしくて『どうせならたまには帰郷でもしたらどうですか?』って言われてさ、そりゃ()()()()()()()って思って帰ってきたんだよ」

 

ちょうどいい?

 

「え? あ、ほら片腕だとダンジョンに潜るのは危ないじゃん?」

 

・・・嘘じゃな

 

全てが嘘ではないが何か隠しておるのう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×9年〇月君に日

 

 

 

カイトから本当のことを聞き出した

 

何でも闇派閥(イヴィルス)に手痛いダメージを与えたが、負傷したということで闇派閥(イヴィルス)に狙われやすくなったため、義腕が出来るまでは姿を隠す方が都合がよかったそうだ

 

ギルドにはロキからの説明でカイトは都市内のどこかに身を隠していることになっているらしい

 

なるほどのう

 

確かにそれなら確かにこの村に帰ってくるのはちょうどええじゃろな

 

なにせこの村、ほとんどの地図にも載っていないし

 

それにしてもよく都市の警備網を抜けられたのう?

 

 

 

 

 

 

・・・なにぃ!? 

 

アスフィから透明になれる魔道具(マジックアイテム)を借りたじゃとぉおおお!?

 

なんじゃそれ儂も欲しい!!

 

それがあれば女湯も覗き放題じゃないか!?

 

あぁ、当時それがあればあの殺意満点の警戒網を出し抜いて悠々と覗けたものを・・・ぐぬぬぬぬぅ・・・

 

あ・・・

 

ちょ、やめて、カイト

 

そんな目で見んといて、儂が悪かったから

 

・・・でも、ちょこーっとだけ貸してくれたりとか

 

「ダメ」

 

ダメじゃった

 

いや、そんな楽な方法で覗いても達成感など得られまい

 

苦労して覗くからこその 男の浪漫 なんじゃ!!

 

 

 

 

 

 

×9年〇月出会えた日

 

連日爆弾発言をかましてくれる我が孫

 

今日もスパイシーな爆弾を炸裂させおった

 

 

何でも未来嫁がアスフィを含めて3()()になったらしい

 

 

しかも2人目と3人目を連れてきたのがアスフィとのこと

 

 

 

ナ ン ダ ソ レ

 

 

え?

 

なんなのそれ

 

嫁の方から他の女性を連れてくんの?

 

なにそれ

 

羨ましすぎるんですけど

 

儂とかなぁ!!

 

浮気しただけで頭を斧でかち割られそうになったり!!

 

貼り付けにされて弓の的にされたり!!

 

水車にくくりつけられて水責めされたりとかぁあああああ!!

 

・・・・・・どうやったら嫁公認で女ができんねん

 

 

・・・なに? 嫁が増えたのは不本意?

 

もしかして新しい嫁がすごい不細工とか・・・え、めっちゃ美人でかわいい?

 

ちょっと孫に殺意が湧いてきたぞ☆

 

 

「・・・まぁ、でもさ」

 

ん?

 

「俺にそんだけの甲斐性があるかわからんけど」

 

そう言う孫の顔はあきらめた様な顔だが

 

「娶ったからには精一杯愛しまくって」

 

その苦労を楽しむかのように

 

「責任は取るさ」

 

どこかうれしそうに笑いながら言ってきた

 

 

 

・・・ふーむ、男としての器は完全に儂の負けじゃなぁこれ

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきた孫はまじで成長しまくってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――そして月日は瞬く間に流れた。

 

 

 

 

 

《side out:ゼウス》

 

 

 

 

 

 

=====================================

 

 

 

 

 

 

 

《side:ベル》

 

 

×9年〇月◇日

 

 

兄さんが帰ってきてから一ヶ月経ったある日

 

 

 

ヘルメス様が訪ねてきた

 

 

何でも、もうそろそろ義腕が完成するそうなので呼びに来たそうだ

 

 

「そんじゃまぁ、オラリオに()()()()()()

 

 

その言葉を聞いて少し寂しくなる

 

兄さんにとってこの村は故郷に違いない

 

だけど

 

今の兄さんにとってはオラリオも故郷となっている

 

神の恩恵(ファルナ)』を刻むというのは家族になるということと同義だとヘルメス様から聞いている

 

兄さんと同じ『神の恩恵(ファルナ)』を刻んだ家族

 

その人達に少し嫉妬してしまう

 

そんな事を考えていると別れるのを嫌がっていると思ったのか(実際にまた会えなくなるのは寂しい)

 

兄さんが僕の頭に軽く手を乗せて頭の毛がクシャクシャになるような手つきで撫でながら言ってきた

 

「ベル、じいさんがその気になったらお前もオラリオに来てみると良い、あー・・・ただし来るときは手紙をくれ、まだオラリオは物騒だからな、危なくないように迎えに行くからさ」

 

行くことがあるのだろうか

 

確かに行ってみたい気持ちはすごくある

 

でも、それと同時に恐怖感も生まれた

 

この一ヶ月間、結局僕は片腕というハンデの中、兄さんに一撃も入れることが出来なかった

 

そんな兄さんが腕を失うようなことが起こるオラリオの魔境っぷりに腰が引けてしまった

 

思ったことをそのまま兄さんに伝えると

 

「ぷっ、あっはっはっははははは!!」

 

兄さんの横で聞いていたヘルメス様が大笑いしていた

 

「大丈夫!そこは心配しなくてもいいぜベル、カイトのトラブル体質は折り紙付きさ!人が一生お目にかかれるか遭遇するかの事態に何故か頻繁に巻き込まれてるだけだからね!」

 

「うるせぇぞーアホメス」

 

 

え?

 

兄さん大丈夫なのそれ

 

 

「なーに、多少の障害は俺にとっちゃちょうどいいんよ、それとヘルメスの言う通り、もしベルがオラリオに来てもそんなことは早々起こらないさ」

 

 

そ、そうなんだ よかった~・・・じゃあ、ちょっとだけ前向きに考えておこうかな

 

「おう、そうしろそうしろ!そうすりゃじいちゃんも気が変わるかもしれないしな!」

 

 

 

 

 

そこからは多少の雑談を交えてから兄さんはヘルメス様を荷物のように肩に担いでオラリオに発っていった

 

あまりの荷物扱いっぷりに見送りに来た僕とおじいちゃんもさすがにヘルメス様を哀れんだ

 

次会えるのいつになるのだろうか?

 

兄さんが見えるか見えないかの距離までになったとき

 

「ベル・・・お主もオラリオに行きたいなら行ってもええんじゃぞ?」

 

急にじいちゃんが僕に言ってきた

 

 

ううん、僕はおじいちゃんとのんびりするの嫌いじゃないし

 

おじいちゃんを1人残しては行かないよ

 

 

「・・・そうか」

 

ヤハリアノサクセンデイクシカナイカノ

 

 

最後の方は上手く聞き取れなかった

 

おじいちゃんは改めて何かを決意したかのような表情で家の中に入っていった。

 

 

さて

 

 

運動がてらに畑を耕すとしましょう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====================================

 

 

 

 

 

 

某日未明

 

とある場所でとある人物達が非っ常~~~にハイテンションになっていた

 

「にひひひひ、じゃあここをこうして!」

 

「いいですねぇ!、ついでにこんな機能とか」

 

「うふふふふふ、いっそのことこんな機能も・・・」

 

「「それいいねぇ!!」」

 

「「「アハハハハハハハハハハハ!!」」」

 

異様なテンションになっている者達がいじくっているのは銀の色をした義腕のパーツ

 

そして周りに散乱するのは中身が空っぽの酒瓶が数本

 

意味もなく笑う者たちの手にはまだ酒瓶があり、それをそのままグビグビと飲んでいる

 

 

 

そんな者達を影から見守るのは全身を黒いローブで覆った人物

 

神ウラノスの腹心、フェルズである。

 

(・・・どうしてこうなった)

 

 

 

切札(ジョーカー)』の腕を最高に仕上げるためにこの者達は連日連夜、素材を仲間や部下に集めさせ、手に入らない素材は巨額の金貨で購入しさらにそれを分解・研究

 

もはや何日徹夜したのかわからない程、義腕作りに没頭していた。

 

そんな者達の情熱にあてられ、かつて「賢者」と呼ばれてもいたフェルズは影ながら手伝うことにした

 

 

時にはこっそりと自分のアイデアを図面に混ぜてみたり

 

時には手に入らない素材を破格のクエストの報酬として用意したり

 

 

そんな影からの援助の甲斐もあって、できたのは現在出来る最高の出来の義腕・・・だった

 

 

(何故こんなことに・・・あ、ちょ、せっかく錬金できた白銀の板金にぃ変な物が混ざぁ!?・・・あぁー・・・)

 

フェルズが犯した過ちはただ一つ

 

何日も徹夜を続ける彼女たちの身を労うために最高級酒「ソーマ」と呼ばれる酒を複数差し入れという命題で贈ったことだろう

 

疲労困憊に加え、頭も曇りまくっていた彼女たちはこれを飲むやいなやこれまでのストレスと疲労からか

 

 

ひゃっはぁーーーーーーー!!な状態になってしまった

 

 

正常な意識は楽しい別世界へとファーラウェイ!!

 

その代わりに芽生えたのは愉快型のアッパラパーでアハハハ~な精神状態

 

そんな精神状態の彼女たちが偶々思いついただけのアイデアや素材をせっかく創ったパーツに組み合わせ混ぜ込んでいく

 

なまじ、一流の腕の者達であるためにそれが出来てしまうのが事態を悪化させていた

 

常識という概念を脱ぎ捨てた一流達が究極の魔改造を行っていく

 

 

「おい!ここに火炎鉱石とか仕組んでみたらどうじゃあ!?」

 

「いいですねぇ!!ついでに振動できるようにしてみますか!アハハハハハハ!!」

 

「キャーーーナニに使うんですかそれーーーー!!」

 

「・・・ナニですよ」

 

「・・・ナニですか」

 

「「・・・・・・キャーーーーーーーー!!」」

 

「キャハハハハハハハ!!」

 

 

もはや深夜の女子会のノリである

 

(あぁせっかく私も手伝ったのに・・・ちょ、今度は生体部分に何を!?それはちょっと、いやかなり洒落になら、あぁあああああぁ!?)

 

本来なら素材一つ、仕組み一つ使うにしても、入念な実験と検証がいるにも関わらず

 

頭がお花畑のマッド共によって次々とめちゃくちゃな魔改造が加速していった。

 

「「「アハハハハハハハハハハハハハ!!」」」

 

 

(あぁ・・・どうして・・・どうして私は酒など差し入れたのだ・・・あああやめてくれぇええええ、そこは私がアイデアを出した部ぶ・・・ああぁあああぁぁぁあ!?)

 

 

「あひゃひゃひゃひゃ!なんか生えたあああああ!?」

 

「ぶっはっははっはあひゃひゃナニソレ!?おもろぉおおおお!!」

 

「もっさりモッサリ!!」

 

「「あひゃーーーーーーきゃっきゃ!!」」

 

真の酔っ払いにブレーキなど存在しない、というか使う気がない

 

「こことここ繋げてみましょおおおおお!!」

 

「「いいねーーーーーあはははははは」」

 

(もう止めてくれええええええええ!?)

 

 

 

魔改造は止まらない

 

 

 

 

 

 

フェルズは後に語る

 

あのとき――――――もしも私に胃があったなら極大の穴が空いていた、と

 

最高の作品が別の何かに変えられていく

 

そしてそれを見ていることしかできないという絶望は「賢者の石」を割られたときに勝るとも劣らないものだったと

 

だが、

 

まさか、そんなものが

 

現代どころではない

 

過去・現在・未来において史上最高のものになるとは夢にも思わなかったと

 

 

 

「はぁ・・・メモしとけばよかった」

 

 

息の出来ぬはずの賢者がため息を付いていた。

 

 

 

 

 

 

 




ちなみに、最後の部分の女子会メンバーの一人はアスフィ

あの子ってストレスすごそうだから理性が剥がれるとマジでこんななりそうよね(/ω\)


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37:復活×銀腕

私がなぜアミッドをだいぶ前に登場させたのか、その理由が明かされる p( ̄^ ̄)q エッヘン!! !!


================================

 

 

 

 

27階層の悪夢と呼ばれることになった事件から一週間

 

未だに精神力(マインド)が回復しきらないことに加え怪我も酷いためディアンケヒト・ファミリアの療養所に入院していた

 

ただ、以前と違い今回の俺は意識がしっかりしているため俺は結構暇を持て余していた

 

 

なにせこの世界、スマホもなければ漫画もない

 

本ならあるにはあるが専門書のような小難しいことしか書いていない本がほとんどだ

 

そして、そういった本は既に大抵読んでしまっている

 

(まぁ、『絶』の練習でもしてりゃいいかとも思ったが・・・)

 

《※ちなみに『絶』は気配を消すだけでなく治癒力を高める効果があるので怪我を早く治したい場合には最適な修行でもある》

 

あまりに暇すぎるので『絶』ばかりやっていたが、それにも飽きたので遊び心で『・・・燃え尽きたよ・・・真っ白に』と迫真の演技で「明日のジョー」ごっこをしつつ『絶』をやっていたら

 

「きゃぁあああああああ!?死んでるぅうううーーーー!!??」

 

「え、ちょ・・ちが・・・」

 

昼食をもってきた看護師に死んだと勘違いされて大騒ぎになった

 

「じじじじじ人口!人工呼吸ぅうーーーーーーーーー!!急いで早く!!カイトさん死なないでーーー!!」

 

「いや、生きてる!!生きてるから!?」

 

その際にアミッドが人工呼吸をしようとしてきたのだが、この時はかなり真面目モードで悪意もなく切羽詰ったような表情でやろうとしてきたためこっちの方が戸惑ったくらいだ

 

「二度としないで下さい!!」プンスカ!

 

すぐに事情を説明すると涙ながらに紛らわしいことをするなと怒られた

 

まぁ、普通にこっちが悪いので謝った

 

ただ、その後に

 

「では、念のための人工呼吸を――――アダダダダダ!?」

 

「念のための人工呼吸なんてねーよ!!」ミシミシ

 

・・・これは悪意しかなかったのでアイアンクローで黙らせた

 

 

ちなみにアミッドに関しての奇行はまだある

 

昨日も

 

(左腕がないせいで不便極まりないな、小便一つ済ますのも一苦労だ)

 

そんなことを男子トイレで思っていたら

 

「手伝いましょうか?」

 

とか、アミッドが言ってきた

 

繰り返すが、女人禁制の男子トイレでだ

 

もう一度言おう、ここは聖域である男子トイレだ!

 

「なにしとんじゃぁあああああ!?」

 

「ほほう、この二年間でこっちのサイズのレベルもランクアっぷベシ!?」

 

「くたばれぇえええええその記憶も消えろぉおおぉおおおお!!」

 

「アバババババババ!?」

 

女だろうと容赦なく脳天を連打で殴りつけた

 

 

・・・男女平等って素晴らしい考えだよね!

 

 

 

 

 

話が逸れた・・・っていうかこの話は忘れたい

 

まぁ俺の左腕に関してなんだが

 

一応フィルヴィスが俺の肘から先はきちんと地上まで持ち帰ってくれた

 

だが、

 

肝心の左腕の接合部分である本体の肘から上が闘いの最中にグッチャグチャになったせいでこのままくっ付けたら左右で腕の長さが違う面白人間になってしまう

 

そんなわけで現在、接合のための施術は延長してある

 

ちなみに、切られた腕は腐らないように処置して冷凍保存してあるらしい

 

で、だ

 

今日は俺の腕が治るのか治らないのかの割と真面目なお話があるとのことだ

 

結構大事な話なので関係者が集まっているのだが

 

 

フィンやリヴェリア、ガレスのおっさんにロキ、それにアスフィ、ついでにヘルメス

 

まぁ、この面子がいるのはわかる 

いやヘルメスは超いらん、帰れ

 

問題は何故か、鍛冶の女神ヘファイストスに俺とガレスのおっさんの専属契約鍛冶師の「椿(つばき)」まで居ることだ

 

「・・・椿」

 

「ん、どうした?」

 

「いや・・・お前さん何でいんの?」

 

「なんだ、命の恩人である手前がいては悪いのか?」

 

「いや、悪くねぇけどさ・・・普通に疑問なんだよ、命の恩人っつってもわざわざ来るようなことでもないだろ」

 

ギルドの救援隊の一人として意識を失った俺を担いで地上まで運んでくれたのがこの椿だ

 

現在はLv.4でLv.5へのランクアップは間近、さらにヘファイストス・ファミリアの次期団長候補筆頭でもある

 

さらに言えば何を隠そう、俺がLv.1の頃に使っていた武器型の籠手は元々はガレスのおっさん用に椿がお試しに打ったものだそうだ

 

だが、ガレスのおっさん的にはあまり合わなかったらしくそのまま武器倉庫にお蔵入り

 

それを偶々、俺が見つけ出してそのまま使っていたというわけだ

 

知らずに使っていた武具の製作者と後に専属契約を結ぶことになるとは

 

いやはや人の縁とはわからないものだ

 

これも俺の妙なアビリティ『奇運』のせいなんかね?

 

そんなことを思っていると

 

 

「ま、疑問に思うのも当然よね、別に口止めもされていないから言うけど、私たちは呼ばれたから来ただけよ、『重要な話があるから』ってね?」

 

 

隻眼の女神、ヘファイストスがあっけらかんと言ってきた

 

「ヘファイストス様も呼ばれた?」

 

「ええ」

 

「ロキに?」

 

「いえ、私と椿を呼んだのは『戦場の聖女(ディア・セイント)』よ」

 

「え・・・アミッドが?」

 

治癒師であるアミッドが鍛冶師を呼ぶ?

 

意味が分からん

 

理由がわからず疑問に思っているとヘルメスが会話に割り込んできた

 

「ちなみに、元々来るつもりではあったんだけど、俺とアスフィも彼女から声を掛けらえた、この日この時刻に必ず来るようにってね」

 

「はぁ、嘘だろ!?」

 

アミッドがアスフィを呼ぶ?

 

ナニソレコワイ

 

どういうことかと、アスフィに目を向けるが何故かアスフィは黙したままだ

 

え、マジでどういうこと?

 

 

 

知る人は知っている

 

先程の話からもわかるようにアミッドはアスフィから俺を奪うために猛烈なアプローチをあの手この手でかけてきている

 

そのせいで二人の仲はとてもではないが良好とはほど遠い

 

 

 

一人のヒロインを巡って争う二人(ガチファイト)

 

やめてぇ!私のために争わないでぇ!という状況だ

 

ただしヒロインは男である俺。

 

 

女の子ってもっとフワフワでポワポワなイメージがあったんだけどなぁ

 

・・・もっと女の子に夢をみていたかったよ

 

 

 

話を戻そう

 

そんなアミッドが俺についての話でわざわざアスフィに声を掛ける?

 

 

 

大事件ですよ奥さん!

 

 

俺史上最大の事件の香りに戦慄していると椿が見かねて口を出してきた

 

 

「まぁ、大したことではないぞ? 手前と『全能者(ペルセウス)』それに『戦場の聖女(ディア・セイント)』の三人でお主が地上に運び込まれた後に少し話し合う機会があってな」

 

「話し合う?」

 

疑問を感じていると椿が俺の左腕を指差してきた

 

 

 

 

 

「―――――――――お主の腕に関してだ」

 

 

 

 

 

場に不思議と沈黙が降り、アスフィが痛々しい表情になっていることに気づく

 

「・・・あぁ、なるほど・・・そっか・・・そういうことか」

 

それで合点がいった

 

その時点で治癒士のアミッドが鍛治氏の椿に加えて魔道具製作者のアスフィと話し合わなければならない事態

 

つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったってことだ

 

ここに椿が居るのは義腕の制作に関してこいつが関わるからだろう

 

確かに戦闘にも使える義腕を造るとするなら、椿も交えて話さなきゃいけないわな

 

そんな風に俺が一人で納得していると

 

「衰弱している患者の精神状態を気遣うのも治療する際には重要な処置ですので」

 

俺の入院している部屋のドアを開けてペコリと頭を下げてからアミッドが入ってきた

 

「そいつはどーも、でもよー、別にあのとき言ってくれても別にかまわなかったぞ?」

 

「あのときのカイトさんは精神的にも不安定に見えたので・・・あれ以上精神的ショックを与えるのは身体にも影響が出ると判断しました」

 

「そーでも・・・あったな」

 

そういえば確かにフィン達に活を入れられるまでネガティブ思考になってた気がする・・・っていうかなってたわ

 

そのせいでフィンにビンタされたんだった

 

 

 

「・・・皆様との話し合い前に念のため熱と脈を計ります、腕を」

 

「あいよ」

 

テキパキと慣れた手つきで脈や熱を測っていく

 

俺もこのときばかりは素直にアミッドの言うことに従う

 

「ま、その気遣いには感謝しとくわ・・・つーかさ、できれば普段からそんな感じに粛々とした態度でいてほしいんだが」

 

ちなみに先ほどの話からもわかるように治癒士モードのアミッドは割と真面目モードが多い、こいつとは色々あるが治療という行為に関してだけは真摯に行うのでそこだけは信頼している

 

ただ、そうでない場合は

 

「それは今すぐに獣の様に押し倒され襲われたいということでしょうか?ハァハァ」

 

こんな感じ

 

「ちげぇよ!俺の言葉のどこからそんな意味を読み取れるんだよ!?ちょっ、息を荒げるな!そのワキワキ動かす手つきをヤメロォ!?」

 

真面目モードが終わるのはえーよ・・・もうちょい頑張れよ、ちょとでも見直した俺が馬鹿みたいじゃねーか

 

 

「こほん・・・アミッド、いい加減にしなさい、話を始めますよ」

 

「むぅ・・・わかってますよ」

 

アミッドを止めたのは俺の唯一神にして女神で恋人のアスフィだ

 

だが

 

 

(え・・・なにこれ・・・え、ウソでしょ?アミッドがアスフィの言うことを大人しく聞いた?・・・これ・・・現実か?夢なんじゃ・・・アテテテテ)

 

 

目の前の現実に俺は心の底からビビリ、夢かと思い頬をつねるが普通に痛い・・・つまりは目の前の光景は現実だ

 

「え、なんやこれ?・・・うちらが知らん間に何かあったんか?いつの間に2人とも仲良うなったんや?」

 

あのロキですら口を開けて驚き、椿以外の全員が似たような感じになっている

 

言うことを素直に聞いただけと侮るなかれ、

 

口を利けばお互いに罵詈雑言

目を合わせれば互いに唾を吐き

肩がぶつかれば無制限ファイト

 

そのくらい仲の悪かった二人なのだ

 

犬猿の仲などいう表現すら生ぬるい、そんな関係だったのだ

 

どちらかが相手の言葉に従うとか有り得ないんですけど・・・俺が知らない間に何があったんだ

 

全く把握しきれていない状況が色んな意味で怖くて仕方がない

 

 

そんな風に微妙な沈黙を破ったのはアミッドだった

 

 

「では、いつまでもだらけるのも時間の無駄ですので、僭越ではありますが私の方から説明をさせていただきます・・・既にわかってると思いますが率直に申しましてカイトさん、あなたの腕を接合することは不可能です」

 

フリーズしかけた頭に告げられる話の衝撃で頭が切り替わる

 

まぁ、わかってはいても改めて言われるとちょっとショックだな

 

「一応、細かい理由とか聞いても良いかい?」

 

フィンが口を挟んできた

 

「はい、簡単に言いますと、カイトさんの切り落とされた腕の方は保存状態もよかったので問題ありません、問題はカイトさんの身体の方の腕の接合部分です」

 

「こっちの方?」

 

「そうです、カイトさんの腕に刻まれた傷が酷すぎて万能薬や回復薬を使用してしまうと傷の接合よりも傷口を塞ぐことを優先してしまうというのが理由です、これでは接合などできません。」

 

(あちゃー・・・肉盾として使ったのはやっぱまずかったか)

 

だが、そうしなければ死んでいたので反省はしても後悔はない

 

仕方がないかとあきらめていると

 

「はぁ~・・・万能薬なのに万能じゃないとはこれいかに」

 

椅子の上で器用に胡座をかいたロキがぼやいていた

 

「ロキ、いくら万能といっても薬は薬だ、限界はあるに決まっている」

 

呆れたようにリヴェリアが言う

 

「せやなー・・・でも天界に行けばマジモンの万能薬みたいなリンゴとかはあるんやで?確か・・・デメテルが管理しとったな」

 

(あぁ、あのボインボインか・・・)

 

脳裏に一部の身体的特徴がロキと比べるとかわいそうになってしまうくらいのワールドクラスな女神が思い浮かんだ瞬間

 

(殺気!?)

 

なんかアスフィとアミッドに加えロキからも一瞬だけ殺気が

 

・・・気のせいだよね?

 

いや、じいちゃんも女の勘は侮れないと常日頃から言っていた

 

今はボインを頭から消し去って話しに集中しよう

 

 

 

----------間。

 

 

 

「地上にないものを言っても仕方ないじゃろ」

 

ロキの話にガレスのおっさんまで呆れていた

 

そんな空気の中、アミッドがとんでもないことを口に出した

 

 

「・・・実を言えば今回の話で皆さんを集めた理由は神ロキが口にしたその、()()について関係があります」

 

 

その台詞にこの場に居る二柱の女神の表情が変わる

 

「へぇ・・・どういうことかしら『戦場の聖女(ディア・セイント)』?」

 

鍛冶の女神は興味を引かれたのかアミッドの言葉に反応した

 

「私は職業柄、数多くの冒険者の怪我を相手にしてきました、ですが・・・欠損だけは治しようがありません、私は常日頃からそれをどうにかできないかと思案していました」

 

それを語るアミッドの表情は己の無力を悔やむ表情だ

 

「そんな時に、ディアンケヒト様から天界でのお話を聞きました、かつて天界で生身と変わらぬ、もしくはそれ以上の義腕を創ったことがある―――――――――と」

 

それを聞いた神ヘファイストスの残った片目が見開き驚愕の表情に変わる、ロキの細目もフルオープンになって瞳孔が開いてる、っていうかロキの目ぇ怖っ!?

 

「それってまさか、()()を地上で再現しようと言うの!?」

 

「・・・まじかいな」

 

「私は本気です・・・そして、それを再現するために神ロキ、神ヘファイストス、そしてカイトさん自身の許可を取らなければならない案件があるのです」

 

「許可?いや、何かわからんけどすげぇ義腕造ってくれるっていうのなら俺は別に全然かまわないし、むしろ有り難いんだが」

 

「・・・使用する素材に問題があります」

 

「素材?」

 

「はい、今回の義腕の素材には生体素材、つまり・・・カイトさん、()()()()()()()()()()()()()を使用します」

 

 

「!?」

 

もちろん驚いているのは俺だけではない

 

他のメンバーも顔を嫌悪や驚愕の入り交じった表情をしている

 

ただ、俺の場合はすぐに冷静になって思い返す

 

(確かに、俺の腕を素材にするっていう考えはなんか、こう、禁忌感はあるけど、どうせくっ付きもしない腕を捨てるくらいなら俺の義腕に再利用するのは全然アリアリだな)

 

リサイクル精神は大事だ

 

さすがに自分の腕をリサイクルは想像もせんかったが、いやまてよ・・・そういえば転生した俺って魂のリサイクルっていう究極のエコ的な存在?

 

そう考えれば腕のリサイクルぐらいどうってことないように思えてきた

 

「・・・俺は別にいいぞ、ロキも・・・って何その顔?」

 

ロキを見ると、そりゃもうすごい顔をしていた

 

具体的に言うと口がへの字

顔中にシワが寄り梅干でも食べたのかと言いたくなる顔だ

さらに、めっちゃ嫌だということが察せられる程に黒いオーラがみょんみょんとにじみ出てきている

 

・・・なんか臭そうだし、ばっちぃ

 

 

「え、ロキ反対なのか・・・何で?」

 

マジでわからん

 

「アホか!自分とこの子の腕を素材にしますー言われてええ顔する親がおるわけないやろ!!」

 

(あー・・・まぁ言われてみればそうだわな)

 

『親の心子知らず』とはまさにこのことか

 

自分のことしか考えていなかったがロキはちゃらんぽらんに見えて身内には激甘だ

 

そんな女神が子供の腕を利用して何かしますと言われて、はいそうですか、となるわけがなかった

 

「でもよー、どうせ治らないなら新しい腕のために使うってのは全然ありなのはわかってるだろ」

 

そう言うとロキの隣のフィンが、やれやれといった風に言ってくる

 

「カイト、ロキも馬鹿じゃない、それはわかっている、でもね・・・頭ではわかってはいても心が納得しないっていうのはこの場合仕方がないんじゃないかな、僕でも君の腕を素材にするって聞いて良い心地はしない」

 

フィンがアミッドに目線を向けるが当の本人は涼しげな表情で飄々としている

 

 

「反感は重々承知の上ですので」

 

「・・・なるほどね、それで椿だけじゃなくて私も呼んだのね」

 

素材の話を聞いてからは沈黙を保っていたヘファイストス様が嘆息しつつ呆れた声で言う

 

まぁ、主神に黙って人を素材にして義腕を造りましたー、と言ってしまうのはかなり問題有だろう

 

「主様よ、手前は了承している、後は主様の許可がもらえれば今すぐにでも打てる」

 

「・・・いいでしょう、どちらにせよ鍛冶神の私が子に何かを打つなとは言えないしね、ただし助言はしないわよ、一応私も他のファミリアの子とはいってもそれを素材にするのには良い感情を持ってはいないんだから、それでもいいならかまわないわ」

 

「おお!さすが主様じゃ!話がわかる!」

 

どうやらあっちの方は大丈夫のようだ

 

 

「ディアンケヒト様の方は何て言ってんだ?」

 

「人の怪我を癒やし、営みを守ることに繋がるのであればかまわない、と」

 

「・・・へぇ」

 

本気で感心した

 

(偏屈に見えて結構良いこと言うな、あの老神)

 

さて、残るは

 

「・・・ロキ~」

 

「うぅぅ~・・・・」

 

こっちだけだ

 

まだロキはぐずっていた

 

「はぁ~・・・片腕での冒険は大変だろうなぁ~」

 

「ぐぅ!?や、やったら普通の義腕を・・・」

 

「中途半端な義腕だと死んじゃうかもなぁ~」

 

「ぬぃう!?」

 

ロキのくちがさらに急カーブを描くへの字になっていく

 

 

「・・・神ロキ」

 

そんな風にロキを追い込んでいる最中に割って入ってきたのはアスフィだった

 

「どうか許可を!この命に代えても彼の腕を以前と同じように、いえ、それ以上の物を創ってみせます、ですからどうかっ!!」

 

 

跪き頭を垂れ懇願するようにロキに嘆願していた

 

「私からもどうかお願いいたします、神ロキ」

 

「手前も同じ気持ちだ、これほどの使い手を死なすのは惜しい、ロキよ頼む」

 

そしてそれに並ぶように、アミッドと椿が膝をつき頭を垂れる

 

「~~~~~~っ・・・はぁ~~~~~~・・・・・・わかった・・・・・・許可したるわ」

 

 

ロキもようやく折れてくれた

 

「ただ、そやな、一個だけ教えてくれ、アスフィとアミッド2人とも仲悪いんちゃうん?なんかあったんか?なんやそれが引っかかって不安なんやけど」

 

ロキの疑問はもっともだし、それは俺も若干不安に思っていることだった

 

ただ、それも彼女達の言葉を聞いて杞憂に終わる

 

 

「心配ありません、私たちは」

 

「カイトさんを危機から守るためであれば」

 

 

 

「「一つなれる」」

 

 

「・・・らしいぞロキ?まぁ、手前はここまでではないが近い思いは持っている」

 

 

真摯な目でロキを見つめ返す2人プラスαにようやくロキも納得できたかのような表情になってくれた

 

 

「・・・さよか、なら・・・ええわ、とびきりのもんをこの子にあげたってくれ」

 

「「御意」」

 

「椿もよろしゅう頼むで」

 

「おう、任された!おもしろい素材も手に入ったのでな、大船に乗ったつもりで居るが良い!!」

 

(・・・とりあえず、これで一件落着かな)

 

話がまとまり、部屋に弛緩した空気になる

 

「では、ここに宣言させていただきます、私、ディアンケヒト・ファミリア所属『戦場の聖女(ディア・セイント)』アミッド・テアサナーレ、ヘルメス・ファミリア所属『全能者(ペルセウス)』アスフィ・アル・アンドロメダ、そしてヘファイストス・ファミリア所属の『単眼の巨師(キュクロプス)』椿・コルブランド、以上の三名により義腕――――――――――『銀の腕(アガートラム)』の制作に着工いたします」

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

 

 

とりあえず、腕の制作は最低でも三ヶ月は掛かるらしいとのことだ

 

 

腕の回路や仕組みについてはアスフィ

 

生体部品についてはアミッド

 

腕そのものの金属関係やギミックについては椿

 

 

オラリオでも名の知れた者達による共同制作になるためかなりのものが出来上がりそうだ

 

完成が楽しみだなー、などと気楽に考えていると

 

「あ、そういえば言い忘れてました、カイト」

 

「んぁ?何だ?」

 

「アミッドと椿をあなたの第二、第三の妻にすることになったのでよろしくお願いしますね」

 

アスフィがふと何かを思い出したかのように、超が付く爆弾発言を放ってきた

 

「・・・・・・・・・は?」

「「え?」」

「んん?」

「はい?」

 

 

 

場が凍った

 

文字通り

 

 

 

 

 

 

 




ちなみにディアンケヒトが創った『銀の腕』って神話や諸説では逆に左腕の方が多いこともあるんだってさー ( ̄ー ̄)!!

PS:椿の嫁化の理由は別の話で明かす予定・・・


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38:奮闘×号泣 前編

めんどいから『義腕』は『義手』にするわ、よろ~(・ω・)


=====================================

 

《side:ディオニュソス》

 

 

「ですからね~・・・な~~んで『単眼の巨師(キュクロプス)』なんですかね~ヒック・・・私の方がもっとず~~~っと・・・」

 

目の前で私の愛しい子の1人、フィルヴィスが泥酔しつつ絡んでくる。

 

「う、うむ・・・そ、そうだな、ところでフィルヴィス、もうそろそろ酒を控え―――」

「ア”あ”ァん!?」

「な、なんでもないですぅ・・・」

 

「・・・でね~・・・『全能者(ペルセウス)』は前々かりゃ聞いてたかりゃわかりゅんですよ~?でも、な~んで・・・」

 

「あぁ・・・うん・・・そうだね・・・」

 

先程から同じ話が延々とループを始めている

 

(まさか、フィルヴィスが酔うとここまでの絡み酒になるとは・・・)

 

本当に普段はこんな感じの子ではないのだ

 

 

この子がここまで酒に溺れてしまっている原因は一つ

 

フィルヴィスが懸想している人物に新たな未来嫁が増えたという情報が入ったからだ

 

情報源は偶々部屋の外でその話を聞いた名も知らぬ神らしい

 

そいつはその話を面白おかしく他の神々に吹聴したそうだ

 

そうなればもはやその噂は止まらない

 

なにせ、今オラリオでは『切札(ジョーカー)』は時の人だ

 

本来なら全滅必至であった部隊の半数以上を己の腕を犠牲にしてでも救出したロキ・ファミリアの新たな英雄として囃し立てられている、その中には悪意もあってかどうあかはわからないが彼のことを『悲劇の英雄』等といって茶化す者もいる

 

そんな彼のスキャンダル

 

相手はいずれも美女ばかり、しかも求めてきたのは彼からではなく女性の方からときた

 

そんな面白そうなネタに神々が食いつかないわけがなかった

 

 

三日と経たずにその話はオラリオ中に広まってしまった

 

そして当然ながらすぐにその話はフィルヴィスの知るところとなり

 

 

「・・・ンッグンッグ・・・プハァ~~~・・・ヒック、でね~・・・ん~~聞いておりゃれましゅか~デロロレスさま~~・・・」

 

「あぁ、うん、はい・・・聞いてる聞いてる・・・」

 

 

こうなった

 

 

できればこのような事態になる前にどうにかしたかったが、私は可憐な乙女達とイチャ・・・戯れ・・・情報交換に忙しく、その噂を耳にしたのは少し遅くなってしまった

 

噂を聞いた私はすぐにフィルヴィスのことを心配して本拠(ホーム)に帰ったのだが、扉を開けて中に入った瞬間に猛烈な酒気に襲われた

 

臭いの発生源を辿っていくと食堂には酔いつぶれた、というよりも酔い潰されたであろう我が団員の死屍累々・・・

 

そしてその中心で黙々とラッパ飲みでワインを煽る酒の化身と化したフィルヴィスがいた、肩には同じエルフで同期のアウラの姿

 

肩を組み仲良く飲んでいるようにも見えるが明らかにフィルヴィスが一方的にアウラを締め上げるように抱きついていた

 

アウラの方は傍目から見てもかなりグッタリとしているのがわかる、そんなアウラと目が合った

 

「ディ、ディオニュソス様・・・お、お逃げくだ―――――――キュッ!?」

 

アウラが落とされた

 

酔ってはいてもLv.3 見事な絞め技だ・・・できればこのような状況で見たくはなかったが

 

「あ~~~~~~~~ディオニュソス様だーーーーーー!!アハハハハハハ!!一緒に飲みましょうよ~~?」

 

ゆっくりと歩み寄ってくるフィルヴィス

 

だが、その姿からは『逃げたらわかってんだろうなぁ!?』的な雰囲気しか感じられない

 

神としての直感が言っている「それでも逃げろ」と

 

だが、私もこのファミリアの主神としての矜持くらいは持っている

 

自分の子が恋路で悲しみ、そのせいで酒に溺れこのような姿になってしまっているのだ、それを受け止めきれなくて何が親だ、何が主神だ

 

 

「・・・そ、そうだな、今日は一緒に飲むとしようか」

 

まぁ・・・手の掛かる子ほどかわいい、という奴だ、偶にはいいだろう。

 

 

・・・いや、別にフィルヴィスが怖いとかそんなんじゃないから

 

「ん・・・酒、おきゃわり」

 

「あ、はい、どうぞ」

 

ほんと違うからね!?

 

 

 

 

 

 

 

こうして話は冒頭に戻る

 

 

 

 

===================================

 

 

 

「ですからね~・・・『全能者(ペルセウス)』はわかるんれすよ~百歩譲って『戦場の聖女(ディア・セイント)』も~~~・・・わかりたくれしゅるけどわかるりゅ!!・・・で~も~な~~んで『単眼の巨師(キュクロプス)』なんですかね~ヒック・・・私の方がもっとず~~~っと前から・・・」

 

「そ、そうだな・・・うん、わかるぞー・・・」

 

 

先ほどからもはや何回目になるかわからない話だ

 

要するにフィルヴィスは『戦場の聖女(ディア・セイント)』と『単眼の巨師(キュクロプス)』、特に後者の方までも未来嫁として認められたことが納得いかないらしい

 

まぁ、わからない話ではない

 

フィルヴィスが彼を想う事、数年

 

それまで恋人である『全能者(ペルセウス)』以外浮いた話一つなかった彼に突然のスキャンダル

 

しかも同時に二人

 

戦場の聖女(ディア・セイント)』については、彼の愚痴をフィルヴィス経由で聞いていた

 

その強烈すぎるアタック・・・いやもうあれは奇行・狂行の類だ

 

だが、まさかそれが成就するとは夢にも思わなかった

 

彼女が彼に行った行動を知った上で今回の話を聞いたら、全ての神が彼の懐の大きさには感服するのではなかろうか

 

 

そして突然出てきた『単眼の巨師(キュクロプス)

 

彼女に関しては優秀な鍛冶師として神会(デゥミナス)でたびたび取り上げられていたが、それ以外、特に異性との関係については言及されたことはない

 

だというのに今回のスキャンダルだ

 

 

戦場の聖女(ディア・セイント)』だけでなく、ひょっこり出てきた『単眼の巨師(キュクロプス)』に出し抜かれたフィルヴィスの心中は察するに余りある

 

だが、私が思うに彼に対してフィルヴィスに未来嫁になれるチャンスがあるかどうかと問われれば・・・

 

間違いなくある!!

 

なにせ今回、『切札(ジョーカー)』が救援に向かった切っ掛けは、共にダンジョンに潜ることが多く、親交も深かったフィルヴィスを助けるためだ

 

たとえ仲間として大事に思っていても、それだけで下層までほぼ単独で救出に向かうだろうか

 

そこに特別な思いがなかったとしても、それが男女としての感情に変わるのは難しくないはずだ

 

 

ではどうやってその切っ掛けを作れば良いのか

 

これが冒険者同士となると意外と中々難しい

 

普通の男女であれば色々思いつくのだが・・・

 

 

そんなフィルヴィスのこれからの恋路について考えを巡らせていると

 

「おじゃましてま~す・・・って、なんだこれ・・・今日は宴会か何かあったのか?」

 

扉の外に見知らぬ人物・・・というかローブで身体を隠し、顔もマスクで隠している怪しさ大爆発な者が立っていた

 

「誰だ!?」

 

「あぁ、いや、すんません、人が居る気配はあるのに外から呼びかけても誰も応えてくれなかったもので」

 

そう言ってその人物が顔のマスクをとる

 

 

「君は――――――」

 

「はは、どうも、お久しぶりです」

 

晒した素顔は少し意外な人物だった。

 

 

「あ~~カイトだーー!あはははは」

 

「おうフィルヴィス久しぶっ・・・て酒臭っ!?」

 

「カイト~カイト~」

 

フィルヴィスがよろよろと彼に近づきそのまま抱きつくと顔をグリグリと押し付ける

 

「ちょ、フィルヴィスなんかキャラが違いすぎませんかねぇ!?」

 

「いやぁ、少し飲み過ぎたみたいでね」

 

「ディオニュソス様、あんたどれだけ飲ませたんですか!?」

 

「それは、私も知りたいくらいさ、なにせ私が帰ってきたら既にこの有様だったからね」

 

「えぇ・・・マジですか?」

 

彼が少し呆れていると

 

「うわーん、なんでぇぇーーー私の方がーーーうわーーーん」

 

彼に抱きついていたフィルヴィスが今度は幼子のように泣き出した

 

「ええ、ちょっ!?」

 

「ほら、フィルヴィス、彼にあまり迷惑をかけては―――――」

 

「しゅぴ~~ZZZZ」

 

「「寝てるぅ!?」」

 

 

大量の酒を飲んでいる最中に泣くことで疲れてしまったのか、彼の腕の中でスヤスヤと寝てしまっていた

 

 

「「・・・・・・・・・」」

 

互いに顔を見合わせてなんとも言えない微妙な空気になってしまった

 

 

「えーと・・・とりあえず聞きたいんですけど、何でフィルヴィスがこんなことに?」

 

 

 

いや、原因は君だぞ君

 

まぁここだけ見て全ての情報を把握しろというのは無理があるか

 

「まぁ、乙女には色々あるらしいよ?」

 

「はぁ、そうなんですか・・・」

 

「すまないが、この子を部屋まで運ぶのを手伝ってくれないか? 私の細腕だと人一人運ぶのは骨が折れる」

 

「それぐらいは別にいいですよ、ついでに他の方々も運ぶんで部屋の場所とか教えて下さい、こっちもちょいと頼み事があって来たんでその代金代わりってことで、あ、ディオニュソス様、俺片腕なんでお姫様抱っことか洒落てるのは無理なんでフィルヴィスを背中に乗せて下さい」

 

「それくらいなら、私でも手伝えそうだ」

 

 

 

この後フィルヴィスや他の団員を部屋まで運んでくれた彼と少し話をした

 

そのおかげでフィルヴィスにとって有益な情報を手に入れることが出来た

 

多少の見苦しい姿を彼に見られてしまったがこの情報は彼女にとってお釣りが来るものだろう

 

明日、彼女にこの情報を教えてあげるのが楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――翌日。

 

 

 

 

 

私は『切札(ジョーカー)』本人から聞いた情報をフィルヴィスに伝えるためルンルン気分で彼女の部屋に向かっていた

 

この情報を聞いたときのあの子の反応が楽しみだ

 

(『切札(ジョーカー)』から聞いた、『切札』と言える情報・・・フフフ、おっと自分で言って自分で笑うのはいかんぞ私、これではおっさんだフフフフフ)

 

 

あの子のために手に入れた情報を伝えられる嬉しさに、らしくもない親父ギャグまで呟いてしまう

 

テンションが上がっているのか、あの子の部屋を通り過ぎてしまう所だった

 

 

 

コンコン

 

「フィルヴィス私だ、部屋に入ってもいいだろうか?」

 

淑女の部屋に入る当然の礼儀として部屋のドアをノックする

 

だが

 

「・・・?」

 

物音はすれど返事がない

 

(・・・考えてみればあの子は昨夜はかなりの量の酒を飲んだのだ、二日酔いで苦しんでいるのかもしれないな)

 

怪訝に思ったが昨夜の惨状を思い出し、失礼ながら勝手に部屋のドアを開ける

 

「すまないフィルヴィス、入るぞ――――――・・・!??」

 

そうして部屋に入った私の目に飛び込んできたのは自らの喉元に短刀を突きつけ様としている姿だった

 

 

「どわぁあああああああああ!?何をしているフィルヴィスーーーーーーーー!?」

 

 

咄嗟に飛びつき刃部分をあえて握る、もし無理にでも引き抜けば私をの手のひらはサックリと切れてしまうだろう

 

だが、心優しいこの子は私を傷つけないようにそんなことはしないという計算もあっての行動だ

 

「お離し下さい、ディオニュソス様!!」

 

「お、落ち着くんだフィルヴィス!?」

 

私がナイフをなんとか手放すように器用に暴れるフィルヴィス

 

「私はあのような失態を犯してまで生きては・・・」

 

その最中に動きがピタリと止まる

 

「え?嘘?ちょ!?」

 

何故ならフィルヴィスの顔がみるみる内に青白くなり

 

「オロロロロロロロロ~~~~」

 

「ぎゃぁぁぁああああああああああああああああ!??」

 

 

大惨事

 

 

まぁ、おかげでフィルヴィスの狂行がとりあえず止まったので良しとしよう

 

 

 

 

 

 

 

《side out:ディオニュソス》

 

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次回

『フィルヴィス頑張る』


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39:奮闘×号泣 中編

なんかフィルヴィス編、予想以上に長くなった。




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《side:フィルヴィス》

 

目が覚めると見慣れた自室の天井だった

 

 

(あれ?私は昨日何を―――――――――っぐうぅぅぅぅ!?)

 

 目覚めは最悪だった、身を起こした瞬間に激しい頭痛と嘔吐感に襲われる、完全に二日酔いの症状だ。

 

「確か昨日・・・ぐぅ!?」

 

思いだそうとすると激しい頭痛に襲われる

 

痛みに耐えながら昨夜のことを朧気に思い出してきた 

 

(確か、カイトの嫁の話を聞いて、自棄になって酒を―――――)

 

そう、私は昨夜、彼の話を聞いて自棄酒をした 

 

問題は途中からの記憶が穴あきチーズの様な状態になっている、この部屋のベッドに自ら身を沈めた記憶もない

 

自分で無意識に戻ってきたのか、それとも誰かが部屋まで運んでくれたのか

 

 

「・・・ん?」

 

 

枕元を見ると、見知らぬ手紙が置かれていた

 

宛名を確認すると

 

「?????・・・・カイト?」

 

彼の名を呟いた瞬間、思い出される自らが行った狂行

 

「!?!?あああああああああああああーーー!?」

 

昨夜の記憶が一気にフラッシュバックしてきた

 

自分が彼やディオニュソス様だけでなく仲間達にも晒してしまった醜態に頭を抱える

 

(酒に酔っていたとはいえ、私は何ということをっ!?)

 

仲間にはかなり強引なアルハラ

 

尊敬する主神には偉そうに上から目線で絡み酒

 

さらにはカイトに自身を擦り付ける様に抱きつき、あまつさえ子供のように泣きじゃくる姿まで見られた

 

エルフとしての誇りが普通もしくはそれ以上である私は当然の帰結としてある答えにたどり着く

 

 

「・・・・・・死のう」

 

冗談抜きでそう思った.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----------そう思ったのが十数分前

 

 

 

「フィルヴィス、落ち着いたか?」

 

「むーーー!?むむーーー!!」

 

私は他の団員達に猿ぐつわを噛まされ、拘束されていた

 

あの後、口から出す物を出してからグッタリした私はディオニュソスが呼んだ他の団員に念のためにと拘束されていた

 

実際、拘束されていなければ間違いなく自害していただろう

 

「フィルヴィス、私は気にしていない、だから私の話をとりあえず聞いて見ないかい?」

 

「むむむーーーーー!!」

 

返事をしようにもしゃべることが出来ない

 

「えっと・・・外しますね」

 

見かねたアウラが私の猿ぐつわを外してくれた

 

「くっ・・・殺せ!!」

 

「まさか、自分の子の『くっ殺』を聞くことになるとは・・・」

 

何故かディオニュソスが感慨深そうな感じで驚嘆していた

 

「昨夜の失態に続き、ディオニュソス様にあのようなこと・・・もはや死んで償うしか・・・」

 

自分の主神に私の・・・ア、アレを吐き掛けるとか

 

・・・・・・死にたい

 

思い出すだけで、羞恥と後悔、その他もろもろの感情だけでああああああああああ―――――――となる

 

そんな風に塞ぎ込んでいると

 

「ふむ、フィルヴィス・・・私は本当に気にしていないし他の者達も同様だ、どのような神であろうと人であろうとこういったことはある、だから君も気にするな、これは主命だ。君の命をこんなことで散らすことを私は決して許可しない―――――いいね?」

 

「―――――!!」

 

神威と一緒に私の身を案じる優しい言葉に拒否などできるわけがない

 

これほどの狼藉を働いた私にこれだけの言葉を掛けてもらえる、この方の眷属となれたことを誇りに思う

 

改めて己が主神の慈悲深さに感銘を覚えた

 

「―――――はい、この罪、償うためにもこれからより一層の献身を尽くすことを誓います。」

 

「ああ、期待している、私のかわいい子よ」

 

「はっ!」

 

私が改めてディオニュソスに忠誠を誓っていると

 

「――――それよりも、だ」

 

「・・・?」

 

「実は昨日、『切札(ジョーカー)』が訪ねてきたんだが・・・覚えているかい?」

 

雰囲気を変えてディオニュソス様が確認してくる、その表情からは話したくてしょうがない噂好きの神々と同じ気配を感じる

 

ちなみに他の団員は先程のやりとりの後退出している。

 

「は、はい・・・ですが途中から記憶が」

 

かなり記憶が朧気だが彼がここを訪ねに来たのは覚えている

 

(・・・いや、待て)

 

なぜ今ここを訪ねたのだ?

 

少し冷静になれたことで今の時期に彼がここに現れたことに疑問が生じた

 

今や『切札(ジョーカー)』という存在は闇派閥(イヴィルス)達にとって仇敵認定、抹殺候補の第一位

 

さらに情報や噂好きの神々にも注目され、オラリオで最も注目を集めている人物の一人となってしまっている

 

そんな彼が何故?

 

「彼がここを訪ねた理由はフィルヴィスに頼みたいことがあったからだそうだ」

 

「私に・・・ですか?」

 

「ああ、私は教えてもらえなかったが、頼み事の詳細は手紙に書いてあるそうだ」

 

「手紙・・・あ、そういえば枕元に!」

 

色々あってすっかりその存在を忘れていた

 

「おそらくそれだ、中を確認してもらってもいいかな?おそらく他言無用系の内容のはずだ、君だけが確認するの方がいいだろう」

 

その言葉に従い、蝋で固めてある封を開けて手紙の中に目を通す

 

『 拝啓 フィルヴィス・シャリア様  

 

かなり泥酔していたみたいなんで手紙に頼み事を書いておく

 

少し身を隠すついでに里帰りすることにしたんだが、闇派閥(イヴィルス)に俺がオラリオに居らず里帰りしているとわかるのは故郷の家族の身の安全的にヤバい

それを誤魔化すためにラウルに普段の俺と同じ格好をしてもらって影武者みたいなことをやってもらうことになった

 

そこでだラウルが偽物とばれないようにフィルヴィスにサポートを頼みたい、同じファミリアの連中ばかりだけだと偽物とバレる可能性があるからな 頻度は週に1回位だ

 

ぶっちゃけ他のファミリアで()()()()()()()()()()

 

報酬は別途に請求してもらってかまわないからどうにか頼む!

 

PS

フィルヴィスがあんなに酒好きとは知らなかったぞ

故郷から帰ったら、偶にはラウルも交えて三人で飲もうぜ。

あ、お嬢はジュースな、あいつ酒乱だから絶対飲ますなよ!

 

 

                         カイト 』

 

 

 

「―――――――なるほど、確かにこれは私が適任だな・・・ふふ」

 

「・・・フィルヴィス?」

 

他のファミリア所属の私がカイトに扮したラウル・ノールドと接触する所を誰かに目撃させることで影武者が本物であると信憑性を持たせる、少し心配しすぎな気もしないでもないが念には念を入れてということなのだろう

 

だが、そんなことよりも私の心をくすぐるのはとある一文

 

『頼れるのはお前だけだ』

 

「くふふ」

 

「あの・・・フィルヴィスさーん?」

 

い、いかん、けっこう重要な頼み事なのに顔の口角が勝手にせり上がっていく

 

『――――――頼れるのはお前だけだ、フィルヴィス』

 

妄想で勝手に言葉が付け足されていく

 

『――――――頼れるのはお前だけだ、俺の愛するフィルヴィス』

 

(ほああああああああ!?)

 

 

いかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかん

これ以上はいかぁあああーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!

 

 

「ちょっフィルヴィス!?顔がすごいことになってるぞ!?正気に戻れ!」

 

「はっ!?」

 

 

ディオニュソス様の声で何とか現実に帰還できた

 

あ、危なかった、もう少しで妄想の彼方に旅立つところだった

 

「手紙の内容はそんなに驚く内容だったのかい?」

 

「・・・えっと、その~」

 

まさか手紙の一文から妄想が大爆発したとは口が裂けても言えない

 

かといって嘘を言えば冗談抜きで神にはすぐにわかってしまう

 

「詳細は言えませんが・・・大まかに言うと今回の事件で動きにくくなったので、身を隠す際には協力して欲しい、とのことです」

 

嘘はいっていないし、そもそも私のテンションがおかしくなったのは依頼内容とはほぼ無関係な部分だ

 

「なるほど・・・色々と疑問もあるが何かしらの事情があるのだろう、だがあんなことがあってもフィルヴィスは彼の頼みを聞くのかい?」

 

ディオニュソス様の疑問も最もだ

 

惚れた男が他の女を次々と嫁にしているのだ、普通なら幻滅してあきらめるだろう

 

だが、私はカイトという男がそのようなことを易々と行う人物ではないことを知っている

 

きっと何かしらの事情があったのだろう

 

まぁ、昨夜はそれでも幾ばくかのショックを受けてヤケ酒をしてしまったのだが時間が経ち冷静になってみれば自然とそのように思えてきた

 

 

「はい、彼に何があろうと私の中にある気持ちに変わりはありません、どうやら私は自分が思っている以上に恋愛事についてはあきらめが悪いようです」

 

「まったく『切札(ジョーカー)』も中々罪な男だな、こんなに可愛いフィルヴィスを知らずに振り回すとは」

 

「まったくです・・・ふふふふ」

 

私も自分の気持ちを再認識したことで何故か笑いがこみ上げてきた

 

「だが、それが聞きたかった、やはり昨夜手に入れた情報は君に伝えなくてはならないようだ」

 

「・・・情報?」

 

「な~に、昨夜は彼と共同作業したおかげで色々放す機会に恵まれてね、その際に――――――――手に入れたんだよ」

 

「何をですか?」

 

「フィルヴィス!」

 

「は、はい!」

 

いきなり正面から肩を掴まれ真剣な顔でディオニュソス様がこちらを見てくる

 

「君が『切札(ジョーカー)』の第四の嫁になれるかもしれない情報をだ!!」

 

 

・・・・え。

 

 

 

 

 

==========

 

 

 

 

 

 

 

あれから二日

 

「・・・ここが彼女達の研究工房か」

 

場所はオラリオ北東の工業区、その中のとある場所に私は訪れていた。

 

 

 

 

 

ディオニュソス様がカイトから聞いた話によると今回の嫁騒動はカイトの身を守るため遂に恋人である『全能者(ペルセウス)』がぶち切れて、一線を越えたことから始まったらしい。

 

カイトと『全能者(ペルセウス)』には共通の夢がある

 

それについてはカイトから共に行く冒険の道すがら、将来は『全能者(ペルセウス)』と共に魔道具の売買もできる飲食店を開きたいと聞いていたので知ってはいた

 

他にも色々ありそうだったがそれ以上はいつも誤魔化されて聞けたことはない

 

冒険者として富を求め、それを足がかりに夢を叶える

 

よくある夢を叶えたいだけの者が酒の席で語るような話だ、まぁカイトほど実力があり稼げる冒険者であれば夢物語ではなく相応に現実味を帯びた話になる

 

だがダンジョンというのは何が起こるかわからない

 

オラリオ最大派閥のロキ・ファミリアに入団できたとはいえ探索がメインのファミリア

 

全能者(ペルセウス)』は決してカイトの前で表に出すことはなかったが日々カイトの身が心配で心配で堪らなかったらしい

 

そんな時に今回の事件

 

左腕を失ったカイトを見て彼女は思ったそうだ

 

やはり、自分が養ってでも