僕のヒーローアカデミア OOO (ザルバ)
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プロローグ

台本形式はやめて


 世界総人口の約八割が何らかの特異体質を持った超人社会。

 そんな時代に生まれた少年・緑谷出久は無個性であった。

 しかしそんな少年にもヒーローへの憧れがあった。そのきっかけとなったのがNo.1ヒーロー・オールマイトである。

「かっこいいなぁ~、オールマイト!」

 出久は母・引子にパソコンを付けてもらいオールマイトのデビュー動画を目を光らせて見ていた。

「僕もこんなかっこいいヒーローに・・・・・・かふっ!」

 出久は突然吐血し、そのまま意識を失い椅子から落ちてしまう。

「出久?どうかし・・・・・出久!」

 引子は物音に気付いて部屋に入ると倒れている出久を見て慌てながらも救急車を呼び、出久は事なきを得たが医師から衝撃の事実を告げられた。

「大変申し上げにくいのですが、お子さんはとても重い病にかかっています。薬による延命を行っても二十代後半まで生きているかどうか・・・・・・」

 引子はそのことにショックを受けた。

 その日から引子は出久に外で遊ぶのは控えるように言った。

しかし出久は一度だけそれを破り、外で思いっきり遊んだ。幼馴染である勝己ことかっちゃんと遊んでいるときに思いっきり吐血した。その時はすっごく怒られた。

 病気のことが判明してから数年、出久は担当医にあることを聞いた。

「先生、僕の個性って何なんですか?」

「・・・・・・・・・・出久君、正直に言うと君は無個性なんだ。」

「え・・・・・」

 担当医の言葉に出久はショックを受ける。

「見てくれ。これは君の足のレントゲンだ。関節が二つだけだろ。今時珍しい。つまり君は無個性なんだ。」

 出久はしばらく放心状態であった。

 その日の夜、出久はずっとオールマイトの動画を見ていた。そんな出久を引子は心配そうに見ていると、出久は尋ねた。

「ねぇ、お母さん。僕も・・・・・・・こんなヒーローになれるかな?」

「っ!?出久!」

 引子は出久を抱きしめる。

「ごめんね・・・・・・ごめんね!」

 引子はそう謝りながらずっと涙を流した。

 それから月日がたち中学一年生の五月。出久は一人学校の屋上で空を眺めていた。

「もう中学生・・・・・・・・か。」

 出久は自分に残された時間を考えた。このまま高校に行ってヒーロー志望で頑張って、運よくヒーローになれた場合を想定した。

仮にデビューしたとしてもせいぜい20~22。そのころには病魔が体を蝕み、病室に籠っている状態であると。そんなことを考えてしまうとヒーローを目指していいのかどうか悩んでしまう。

 母にも迷惑をかけたくない、心配をかけたくない。そんなことを考えていると突如空に黒い穴が開いた。

「え!?な、何アレ!なんかの個性!?」

 出久は突然の出来事に困惑する。そして黒い穴は出久を吸い込んだ。

 

 あの穴に吸い込まれて二年の月日が経った。出久は穴に吸い込まれた際に記憶を失った。

 そしていろいろあって一年は外国、あとは日本で生活をした。しかし日本での生活は決して平穏なものではなかった。

 800年前の王が錬金術師に作らせた動物や虫をベースに作らせた欲望のメダル・コアメダル。

 そしてそのメダルをコアに動く怪人グリード。

 左腕だけのグリード・アンクとの出会い、そしてオーズへの変身。

 無のメダルとの一体化。

 そして最大の敵である真木清人との対決。

 そしてアンクとの別れ。

 たった一年で日本で経験したことはとても濃厚で、すごいものであった。

 そして最後の戦いを境に出久は記憶を取り戻した。

 そして出久は今鴻上ファンデーションの地下に設けられた時空転移装置のある場所で最後の別れをしていた。

「アンクによろしくね。」

「向こうに戻っても無茶をするなよ。」

「もしなんかあったらいつでも俺を呼びな。俺が診てやるからよ。」

「元気でね、出久君。」

「お元気で、出久さん。」

 今まで世話になった人たちからの言葉が送られる中、遅れながら鴻上ファンデーション会長の鴻上光生がケーキを持ってきた。

「出久君、今日は君の未来への門出を祝ってプレゼントがあるんだよ!」

 鴻上はそう言いながらケーキの蓋を取る。するとそこにはタトバを含め八つのコンボがそろったコアメダルがあった。

「会長、これって・・・・!」

「はっはっは!私も驚いているよ!まさかすべてのコアメダルが消滅した直後!我が社が管理している遺跡から隠し部屋が突如として出現し!そしてこのコアメダルが見つかったのだ!これは君が持っているべきものだ!さぁっ!君の元の世界への帰還と新たな門出を祝って!ハッピーバースデイ!」

「はい!」

 出久たちは鴻上が作ったケーキを食し、出久は次元転送装置に立つ。

「出久君、向こうの世界でも私は全面的に君を支援しよう!これは今日まで君が身を呈したことへのご褒美だ!」

「ありがとうございます、会長!皆さんも、今日までありがとうございました!お元気で!」

 装置が起動し、出久は12,000枚のセルメダルを使って元の世界へと帰った。

 

 元の世界へと帰還した出久は真っ先に家へと目指した。二年の月日、最初に会いたいのは言わずもがなである。

「はぁ・・・はぁ・・・か、母さん・・・・・」

「出久?・・・・・・・・・出久!?」

 家に帰ってきた出久を引子は強く、涙を流しながら抱きしめた。

 しばらくして出久は今日まで自分に何があったのかを話した。流石に信じられない引子ではあったが、出久が目の前でオーズに変身したことでやっと信じてもらえた。

 そして出久は引子にヒーローになるということを打ち明けた。もちろん引子は反対したが出久の粘り強い説得に負け、承諾した。

 そして学校に復帰、勝己には心配かけさせたことを怒られた出久であった。

 



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1 ヘドロとタトバ

 二年間のブランクは出久にとって大した問題ではなかった。

 向こうにいる間でも智世子や比奈、伊達が出久に勉強を教えていた。さすがに十四歳で教養がないというのは問題があるからだ。多少世界の歴史の差異はあれど、勤勉な出久はその試練を克服した。

 そして中学三年生ともなると当然のごとくやってくるのは進路である。

 就職、進学、留学などと言った者たちがいるが、大半はヒーロー志望である。

 出久が通っている折寺中学校も同じであった。

 出久は自分が力を持っていることを秘密にしている。それには理由があった。

 本来個性とは単一能力。まれに複数の個性を持つ人も現れるがそれでもせいぜい二つか三つほど得ある。

 しかし出久は別である。オーズの力は24枚217通りの変身がある。コンボはその中でもそれぞれ最強と言っても過言ではない力を発揮するがそれ以外にも組み合わせによって臨機応変に対応できる。

 しかしその力を敵が見逃すわけがないと出久は思った。教師には既に個性として伝えており、承諾してもらっている。

 今日もいつも通り学校が終わり、通学路を歩いていた。

「もうみんな雄英の勉強を始めているんだ。僕は伊達さんたちのおかげで何とかなっているけど油断はできない。それに僕の場合はこの体のブランクがある。ヒーロー科にせよ実技だと個性を使うって話だ。どんな条件でも最適のコンボを考えておかないと。」

 ぶつぶつ言いながら帰宅している出久は橋の下を通りかかった。すると突然マンホールから気配を感じた。悪意ある気配に出久はすぐさまオーズドライバーを取り出し装備、タカ・トラ・バッタのメダルを手に取る。

「Mサイズの隠れミノ・・・」

 ヘドロの敵が突如として現れ出久を取り込もうとする。

(そうは・・・・させるか!)

 出久は三枚のコアメダルをオーズドライバーに嵌め、オースキャナーで変身しようとする。すると突然マンホールが勢いよく飛び、ある人物の声が聞こえてきた。

「もう大丈夫だ少年!!」

『っ!?』

「私が来た!」

 マンホールから出てきたのは出久が憧れるヒーローであるNo.1ヒーローのオールマイトであった。

「TEXAS SMASH!!」

 オールマイトのテキサススマッシュによって引き起こされた風圧によってヘドロ敵と出久は引き剥がされる。

「オールマイト?」

 突然憧れの人物が目の前に現れたことに出久は驚きのあまり無反応になる。

「ああ、少年。少し待っててくれないか?話はあとでするから。」

 オールマイトはそう言うと空のペットボトルにヘドロ敵を詰め始める。

(そっか。液体の個性だと普通の手錠とかじゃ意味がない。ペットボトルなんかに詰めた方がより合理的だ。それにギュウギュウに詰められたらいくら勢いが強くても助走する距離もないから出てこれない。やっぱオールマイトはすごい!)

 出久は冷静に分析し、改めてオールマイトを尊敬する。

「さて、待たせて済まない少年。そして巻き込んですまなかったね。いやー、私もオフだから慣れない土地に浮かれてしまってね。HAHAHAHAHA!」

「い、いえ!こうしてオールマイトに助けてもらえただけでも僕はうれしいです!そ、それと・・・・」

 出久はカバンの中から色紙とマジックペンを取り出す。

「サインください!!」

「君いつもそれ持ち歩いているの!?」

 出久の持ち物に流石のオールマイトも驚かされた。

 

 オールマイトのサインを貰った出久はそのまま帰宅するとすぐにランニングを始めた。

 出久が向こうの世界で最も学んだこと、それは体力である。どんな敵にも勝てるようになるにはまずは相手の特徴と能力を掴むことである。それには当然体力が必要である。そのため筋トレ以外にも基本としてのランニングをしている。

「今度の休み、雄英までの道も調べておこうかな。帰り道にある文房具とかのお店も知りたいし。」

 そんなことを口にしながら走っていると人ごみに気づいた。

「なんだろう?事件かな?」

 出久は少し高い建物の中に入り様子を見る。するとそこには先ほどオールマイトがとらえたはずのヘドロ敵がいた。

(なんであそこに敵が!あれはオールマイトが!それよりアイツが取り込んでいるのって・・・・!)

 出久はヘドロ敵が起こしている爆発に見覚えがあった。それは自分がよく知っている人物の個性と瓜二つであるからだ。そしてわずかな隙間から見えたのは今にも泣きそうな爆豪の姿があった。

(かっちゃん!)

 爆豪の姿を見ると出久は急いで屋上へと上る。

「ここなら問題ないはずだ。」

 出久はそう思い変身の準備を始める。しかしその光景を陰から見ているものがいた。

「緑谷少年?いったいあそこで何を?」

 謎の人物は陰からその光景を凝視する。

 出久はオーズドライバーにタカ・トラ・バッタのメダルをセットし、傾けるとオースキャナーを手に取り振り下ろしながら叫ぶ。

「変身!」

 

【タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!】

 

 タカのようにどこまでも遠くを見通し、トラのように鋭い爪で敵を引き裂き、バッタのようにどこまでも高く飛ぶ足を持つ戦士。

 その名は仮面ライダーオーズ・タトバコンボである。

「なっ!?変身した!?」

 謎の人物は出久の変身に驚きを隠せなかった。

「はっ!」

 オーズは屋上から飛び降りるとすぐさま囚われている勝己の方へと走る。

「なんだ?新手のヒーローか?すぐにぶっ倒してやんよ!」

 ヘドロ敵はオーズに爆破の個性を使うがオーズはそれを紙一重で回避する。

 オーズはバッタレッグを使い高く飛ぶとメダルを変え、スキャンする。

 

【タカ!トラ!チーター!】

 

 オーズはタカトラーターになると勝己の手を掴み、チーターレッグを駆使してヘドロをかき分ける。

「掴まって!」

「その声っ!?くっ!」

 爆豪は出久の声に驚くが今はそれどころではないと冷静に判断しオーズの手を取る。チーターレッグの高速回転の足によってヘドロ敵は爆豪から引き剥がされ、無事に勝己を救い出した。

 オーズはメダルを交換しスキャンする。

【タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!】

 オーズは再びタトバコンボに戻ると再びオースキャナーでスキャンする。

【スキャニングチャージ!】

 オーズのバッタレッグが変化し上に飛ぶとヘドロ敵に照準を合わせるように三つのエネルギーのOが現れる。

「はぁああああああ、せいやぁあああああああ!」

 オーズ・タトバコンボのタトバキックが炸裂し、ヘドロ敵を気絶させる。

 オーズは事件を解決するとすぐさまそこから立ち去って行った。

 

 翌日、学校で勝己は有名人となった。プロからは個性がすごいとのことでスカウトの声がある一方、現場でのヒーローの発言が問題視となった。

 ヒーローが他のヒーローに頼ってしまうという話だ。

 本来ヒーローは人を助けるのが本業。だがあの時どのヒーローも無理をしてでも助けようとせず、勝己を半ば見捨てる形でいた。そのことは一夜にしてニュースにも取り上げられた。

 マスコミ各社では“ヒーローの質の低下”と言うことが報じられた。そしてあの時現れた謎のヒーローことオーズの方でも話題となっていた。

「おい、デク!」

「か、かっちゃん!な、何か用?」

「面貸しやがれ。」

 勝己は人がいない屋上へと出久を連れて行くと面と向き合って話す。

「あん時の奴、お前だな?とぼけんなよ。オメーの声をあんなクソカスと一緒にいる状況で聞き分けられねーほど俺は馬鹿じゃねーんでな。」

 出久は勝己に行方不明の間に起きたこと、そしてオーズのことを話した。

「かっちゃん、僕はこの力でヒーローを目指すよ。」

「はぁっ!?テメー自分が何言ってんのかわかってんのか!第一テメーの体は・・・・・!」

 勝己は出久が目の前で血を吐いたことをよく覚えていた。その日を境に守ろうと使命感が沸いた。

 だが出久はヒーローへの憧れを抱いていた。そんな夢を諦めさせるためにあえて出久を攻撃するようなことをしていた。

「かっちゃん、僕に残された時間が短いのも重々承知してる。だからこそ!後悔しない生き方をしたいんだ!」

「っ!勝手にしやがれ!」

 勝己はそう言うとぶっきらぼうにその場を去って行った。

(くそ・・・・・あん時決めたことなのに・・・・・・自分から危険に飛び込むんじゃねーよクソデクが!!)

 勝己は歯を強く食いしばり、階段を下りて行った。

 



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2 酸とヤミー

「私がこの世界で永い眠りについている間に、すっかり人間の欲は大きく、そしてより深くなっているようだな。」

ビルの屋上から夜の街を謎の存在が見下ろしていた。

 ヘドロ敵の事件から二か月が経った夏、出久は引子から息抜きをするようにとのことで街に出ていた。

 いくら体の調子がいいからと言っても、もしものことがあるかもしれないので、いざという時のために薬と保険証、そして応急処置の道具は常備している。

「へー、こっちにこんなお店あったんだ。でも学校から帰るとするとちょっと遠回りになるかな。それにノートも少し高いかな。他の店も回ってどこが一番安くて多く変えるかピックアップしておかないと。後書店とか・・・・・」

 息抜きと言っても出久は時間を無駄にはしない性質である。

 

 

 ところ変わって某研究所。そこでは一人の研究員が個室で手を机に叩きつけていた。

「くそっ!なんで私の考えを理解してもらえないのだ!これさえあればいかなる敵にも勝てるというのに!」

 研究員が作り上げたものは個性を強化する腕輪であった。

「実証さえできれば、きっと上も・・・・」

「なかなかいい欲望だな。」

「っ!?誰だ!」

 研究員は声の聞こえてきた方向を振り向く。するとそこには白い武者のような怪人・グリードがいた。

「い、いったいどこから入ってきた!」

「そんなことはどうでもいい。それより・・・・・・お前の欲望を開放しろ。」

グリードは手にセルメダルを取る。すると研究員の額にメダルの挿入口が出現し、グリードはセルメダルを研究員に入れる。

 研究員の体からミイラのような怪人・ヤミーが生まれる。

「お前の欲を満たすには実験に必要な被験体がいるのだな?」

「あ、ああ・・・・」

「ならば行け。そしてお前の欲を満たすのだ。」

 ヤミーはグリードの言葉に従い町の方へと歩き始めた。

 

 

 出久は少し公園のベンチで休息をとっていた。

「ふぅ・・・・・・こうして外に出たのっていつ以来だろう?」

 出久はふと顧みる。思い返せば病気と診断されて以降、全く外へ出ることはなかった。

しかしそれでは健康上の問題もあることから多少の運動はできるようになった。それでも吐血して倒れてしまうことが多々あった。

 今はプトティラのメダルによって症状自体は抑えられている。しかし病魔が完全に消滅したわけではないのである。

「今日は調子もいいし平和だといいなぁ~。」

 出久がそんなことを口にしているとどこからか声が聞こえてきた。

「おい、なんか敵が暴れてるみたいだってよ!」

「しかもヒーロー数人がかりでも手も足も出ないって話だぜ!」

「行ってみようぜ!」

 野次馬どもが事件の現場へと集まって行く。

「僕も少し行ってみようかな?邪魔にならないところで。」

 出久も興味を持っていくことにした。しかしヒーローが数人がかりでも手も足も出ない相手と聞けば近くにいるだけで邪魔になる。ならばと考え、遠い場所から見ることにした。

 出久が事件の現場付近に行くと衝撃の光景が目に入った。

(ヤミー!)

 そこには紛れもなくヤミーの姿があった。ヒーローたちはまだ変身していないヤミーに攻撃を仕掛けているが全く効いておらず、ただの怪力で返り討ちにされていた。

(どうしてこんなところにヤミーが!そもそもこの世界にグリードがいるのか!)

 出久は驚きを隠せなかった。

 そして事態は最悪の方向へと進んでいく。現場を一目見ようと来た野次馬の一人、ピンクの女の子にヤミーが憑依、そしてクモヤミーに姿を変えどこかへ連れ去って行った。

「マズい!」

 出久は急いでライドベンダーを探そうとするが、そこであることに気づいた。

(そうだった!こっちにはライドベンダーがないんだった!)

 頭をかいて最善の策を考えようとすると目の前にあるものが入った。

「これって・・・・・」

 そこには紛れもなくマシンベンダーモードのライドベンダーがあった。

「どうしてこの世界に・・・・・・あっ!?」

『出久君、向こうの世界でも私は全面的に君を支援しよう!』

 別れ際に聞いたあの言葉を出久は思い出した。

「ありがとうございます、会長!」

 出久はタカカンドロイドのボタンを押す。タカカンドロイドの缶が一つ出てくると出久は栓を開けタカカンドロイドを起動させる。

「ヤミーのところまで案内をお願い。」

 出久はライドベンダーの真ん中のボタンを押してマシンベンダーモードへと変形させるとヘルメットを装着しマシンベンダーを走らせる。

 ちなみに大型二輪免許はちゃんと持っているのでご安心を。

 

 ピンクの女の子を連れて研究所に戻ったヤミーはクモ糸で女の子を拘束し、無理やり装置をつけようとしていた。

「や、やめてくれ!被験するにはまだ若すぎる!それに調整だってできていない!」

「黙れ!」

「ぐあっ!」

 しがみついてくる研究員をクモヤミーは裏拳で弾き飛ばした。

「さて・・・・・・私のためにもこれに付き合ってもらうぞ。」

 クモヤミーは装置を起動させる。

「うぁああああああああああああああああああああああああ!」

 装置にエネルギーが送り込まれ、強制的にピンクの女の子の個性が強化される。

 そんな時であった。タカカンドロイドが窓を突き破って室内へと入ってきた。

「ここか!」

 遅れて出久も入ってきた。そして出久に続くようにスキンヘッドで筋肉ガッチリの男性が入ってきた。

「大丈夫かね?」

「マンサム所長!」

 スキンヘッドで筋肉ガッチリの男はマンサムと言う名前であった。

「いつもならあの言葉を言うのだが今はそれどころではないな。あの子は一体どういう状況なんだ?」

「それが、私の考案した個性強化装置を無理やりつけられている状態で・・・・・」

「なんだと!」

 マンサムはそこのことに驚く。

 個性の強化。それは本来であれば成長に合わせて行っていくものである。

 なぜそうしなければならないのか?それは一重に人間だからである。

 どんなに強い個性とは言えどもベースは人間。そして個性は身体能力である。どんなに強い個性でも、元となる器が弱ければ本人になんらかの後遺症や障害が発生する。

「止めようにもまずヤミーを倒さないと!」

 出久はそう言うとオーズドライバーをセットし、タカ・トラ・バッタのコアメダルをセットする。

「変身!」

 出久はオースキャナーでメダルをスキャンし変身する。

【タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!】

『!?』

 出久の変身にその場にいた一同は驚いた。

「なるほど・・・・・貴様がオーズか。ならば殺さなければな!」

 クモヤミーはオーズに襲い掛かる。

「はぁっ!」

 オーズはトラクローを出し回避するとバッタレッグでクモヤミーを弾き飛ばす。

「ふっ!」

 クモヤミーは口から糸を吐く。オーズはトラクローでクモ糸を切り裂く。

(普通ならクジャクを使うけど、ここは室内。防火対策を施しているとは思うけどあの子も助けないといけない・・・・・・・だったら!)

 オーズはクモヤミーの後ろへと飛ぶと同時にウナギをセットする。

【タカ!ウナギ!バッタ!】

 オーズはタウバへと姿を変える。

「はぁっ!」

 オーズはウナギウィップをクモヤミーに絡み付けると電撃を流す。

「ぐぁああああ!」

「今だ!」

 オーズはクモヤミーが怯んだ隙を見逃さない。オーズはメダジャリバーを取り出しセルメダルを三枚挿入、レバーを押して三枚を刀身へと入れるとオースキャナーでスキャンする。

【トリプル!スキャニングチャージ!】

 メダジャリバーの刃にセルメダルの持つエネルギーが集中する。

「はぁああ・・・・・・せいやぁあああああああああああ!」

 オーズは横一線に振るう。ヤミーごと空間を切り、空間が元に戻った瞬間ヤミーは大量のセルメダルへと戻った。

「く、空間ごと斬ったのか!」

 マンサムは目の前の出来事に驚きを隠せなかった。

「待ってて。今君を――――」

 オーズがピンクの女の子を助け出そうとした瞬間、装置が起動し始めピンクの女の子の個性である酸をオーズへと吹き掛ける。オーズは咄嗟に避けるが避けたところはものすごく溶けていた。

「ぐ・・・・ぐあぐっ!」

 ピンクの女の子は自分の個性に苦しむ。

「まさか・・・・暴走したというのか!」

「どういうことですか!」

「あの装置は個性を強化するための物なんだ。だけど私はあの子の限界値を知らない。酸が出せるといってもあの女の子は自分の個性で死んでしまう!」

「なんですって!止める方法はないんですか!」

「一つだけある。あの子につけている装置を取り外せば自動的に機能は停止する。だが・・・・」

 研究員は先ほど溶けた個所を見る。少し時間が経てば溶解液と言えどもその勢いは収まっていくものだ。しかし女の子の酸はまだその衰えを見せてはいなかった。

「防御力を持ちつつ怯まなく重い足であの子の下まで行くには・・・・・これだ!」

 オーズはカメとゾウのコアメダルを手に取りセットするとオースキャナーで読み取る。

【タカ!カメ!ゾウ!】

 オーズはタカメゾと姿を変え、女の子の方へと一歩一歩近づいていく。

 女の子の意思に関係なく出される酸をカメのシールドで防ぎながらタカの目で女の子の姿を捉え、象の足で一歩一歩近づいていく。

「もうやめて!このままじゃ君が―――」

「それでも・・・・僕は止まらないよ。」

「どうして・・・・」

 女の子は涙を流しながら問う。

 自分が傷つくのをわかっていながらも、なぜ自分のために自信を犠牲にできるのか。

 その理由を彼女は知りたかった。

「手を伸ばせるのに救えない・・・・・・・そんな理不尽を僕は壊したいんだ。なにより、君が助けを求めた目をしていたから。」

 女の子はその言葉を聞くと涙を流した。

 そしてオーズは女の子に最も近づいた。が、暴走した装置はオーズの胸に強力な酸をかける。

「ぐぅうううう!」

 オーズ自身にも激痛が走るが、その痛みに耐え、装置を女の子から外した。

 女の子は装置から解放され床に膝をつく。出久は変身を解き膝立ちになる。

「大丈夫?」

「うん・・・・・ありがとう。」

 女の子は少し恥ずかしそうに言う。

 女の子が無事なことに出久は喜んだ。

 しかしその刹那、胸の奥からこみあげてくるものに出久は思わず口を押さえる。

 ドボッ・・・・・

「・・・・・・え?」

 ピンクの女の子は間抜けな声を出した。出久が押さえている手の隙間から血が溢れ出したのだ。

(なんで・・・・・・・あ! そういえば伊達さんが言ってたっけ。調子がいい時ほど気を付け・・・・・・)

 出久はそこで意識を失い女の子に身を預ける形で前に倒れる。

「ねぇ・・・・・・ねぇ・・・・ねぇってば!!へ、返事をしてよ!ねぇってば!」

 



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3 試験とガタキリバ

 研究所にいた医者の診断により出久は命に別状はないと診断された。

 だが女の子はそんな出久が心配で今も出久が寝ているベッドのすぐ側で手を握っていた。

「・・・・・・・」

 女の子は不安でしたがなかった。そんなところへマンサムが来た。

「お邪魔しても大丈夫かな?」

「マンサムさん・・・・・」

「え!今ハンサムって言った!」

「言ってないです。・・・・・・それより、どうかしたんですか?」

「うむ。君は自分のせいでって思っているんじゃないのかな思ってね。」

「・・・・・・・・はい。」

「君のせいではないよ。こっちの方に原因があるんだ。それに・・・」

「?」

 マンサムは何かを言おうとしたがそこで止めた。

「・・・・・・・・いや、気にしなくても大丈夫だ。邪魔をしたね。」

 マンサムはそう言うと部屋を後にした。

「・・・・」

女の子は出久の顔を見る。変身して勇敢に戦ったとは思えないほど幼く、穏やかな顔で寝ていた。

「なんだかあの時戦っていた人だなんて・・・・とても思えないな。」

 女の子はそう思うとゆっくりと出久の顔を覗く。

「ありがとう。」

 女の子はそう言うと出久の額にキスをする。

「ん・・・・・」

「っ!?」

 出久は目を覚ます。

「あれ・・・・ここは・・・・・あ!」

 出久は女の子を見ると安心する。

「大丈夫?ケガしてない?」

「それはこっちのセリフだよ。本当に心配したんだからね!」

「ご、ごめん・・・・」

 心配した出久が逆に心配された。そんな出久に女の子は尋ねた。

「・・・・・・あのさ、名前なんて言うの?」

「僕?僕は緑谷出久。」

「出久君ね。アタシは芦戸三奈。気軽に三奈って呼んでいいから。」

「う、うん・・・・・」

 そのあと芦戸の両親が来て迎えに来てくれた。出久も後から研究所を後にした。

 その日の夜、マンサムはある人物に連絡を取っていた。

「はい。見ての通りメダルのようなものからこの敵‥…いえ、怪人が生まれました。我々の常識を超える出来事です。またそれに対抗できるかのように彼もメダルを持っています。もし彼が()()に入るのであれば試験後に聞いてみましょう。」

 

 

 芦戸との事件から月日は流れ、三月。

 出久は雄英高校の校門前に立っていた。今日この日までに出久はできうる限りの努力をしてきた。

「おいデク!」

「か、かっちゃん!」

「俺の前に立つんじゃねぇ!」

 爆豪はそう言うと出久の前に出て試験会場へと向かった。出久も後に続こうと思ったが自分の足に引っかかってしまい倒れそうになる。

 しばらく経っても地面にぶつかる感触がないので自分の状況を確認してみると出久は宙に浮いていた。

「大丈夫?」

「え?あ、はい!」

 出久がそう答えると出久は降ろされる。

「私の”個性“。ごめんね、勝手に。でもころんじゃったら縁起悪いもんね。」

「あ、ありがとう!名前聞いてもいいかな?僕は緑谷出久。」

「私、麗日お茶子。お互い頑張ろうね。」

「うん!」

 お茶子と共に出久は試験会場へ入る。

 雄英の試験は倍率が300を有に超えていた。そして試験会場には雄英に入るため多くの受験生が受けに来ていた。実技試験の説明にはプロヒーローであるプレゼント・マイクが説明をしていた。

「今日は俺のライブへようこそ!エヴィバディセイヘイ!」

 シーン

「こいつぁシヴィ―――!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?」

 シーン

「入試要項通り!リスナーにはこの後!10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場に向かってくれよな!O.K?」

(持ち込みは自由・・・・・・・でもさすがにライドベンダーは無理だよね。あれ元は自販機だし、と言うか・・・・個性のと言うよりただのサポートアイテムだし。)

「演習場には”仮想敵”を()()、多数配置してありそれぞれ『攻略難易度』に応じてポイントを設けてある!各々なりの“個性”で“仮想敵”を()()()()にし、ポイントを稼ぐのが君達(リスナー)の目的だ!もちろん、他人への攻撃等アンチヒーローな行為はご法度だぜ!?」

 マイクが説明するとメガネの男子が挙手をして質問する。

「質問よろしいでしょうか?プリントには()()の敵が記載されています!誤記載であれば日本最高峰の恥ずべき痴態!我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!」

 そんなメガネ男子を見て出久は思った。

(模範・・・・・・・・・ね。ヒーローの在り方なんて人それぞれなのに・・・・・・痛い現実を知らないマニュアルっ子って感じかな?)

 出久はメガネ男子を見てそう思った。

 模範となるヒーロー。そんなものは絵に描いた餅のようなものである。

 自分を犠牲にしてでも多くを救う。そんなヒーローはどれだけいるだろうか?この超人社会においてそれは数少ない。

 個性によっていい具合に生き残っているヒーローも数多い。中にはコマーシャルばかりに出るヒーローと言う名の芸能人もいる。

 なにより、最高峰であれば最高の勉強を受けれると言う話自体おかしい。

 みんなが同じ頭を持っているのではない。長所短所、得手不得手。それぞれが持っている個性である。そしてそれは必ずしも勉強環境の有無によって発揮されるわけでもない。

 要するに自分で磨いていくものだ。

 環境がどうであれ、境遇がどうであれ、その個人が磨かなければそれは発揮されないのだ。

「オーケーオーケー。受験番号7111くん。ナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0P!そいつはいわば()()()()!各会場に一体!所狭しと大暴れするよう『ギミック』よ!戦わず逃げることをお勧めするぜ!」

「ありがとうございました!失礼いたしました!」

「俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校の”校訓“をプレゼントしよう。

 かの英雄ナポレオン=ポナパルドは言った!『真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者と!!

 更に向こうへ!”Pius Ultra!!”それではよい受験を!!」

(人生の不幸を・・・・・・乗り越えるか。まるで仮面ライダーの境遇みたいだ。)

 出久は雄英の校訓を聞いてそう思った。

 

 

 出久の試験会場には助けてくれたお茶子とメガネ男子が一緒の試験会場にいた。

(他の受験生も個性を最大限で来るはずだ。これが決められたポイントの早い者勝ちだったらよかったんだけどそうじゃないならコンボは避けるべきだ。となるとメダルは・・・・・)

 出久は三枚メダルを選ぶ。すると突然―――

「ハイ、スタート。」

 突然の言葉に一同唖然とする。

「どうしたぁ!?実践じゃカウントなんざねぇんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんだぞ!!?」

 その言葉を境に受験生は一斉に走りだした。

「出遅れちゃった!変身!」

【タカ!カマキリ!チーター!】

 出久はタカキリーターに変身し試験会場内をかけ走る。

 

 

 試験会場の様子を大型スクリーンに映し出したモニタールームは多くの教師がいた。

「限られた時間と広大な敷地・・・そこからあぶり出されるのさ。」

「状況をいち早く把握するための情報力。」

「遅れて登場じゃ話にならない機動力。」

「どんな状況でも冷静でいられるか判断力。」

「そして純然たる戦闘力。」

「姿勢の平和を守るための()()能力はP数と言う形でね。」

「今年はなかなかの豊作じゃない?」

「いやー。わからんよ。」

「真価が問われるのは・・・ここからさ!」

 

 

「せいや!」

 オーズはカマキリブレードで3Pの仮想敵を破壊すると変身を解いた。

「はぁ・・・・はぁ・・・・もう・・・・限界だ・・・・」

 出久は物陰に背中を預けると座り込んだ。いくらプトティラのメダルがあるとはいえど

病魔は体を蝕んでいた。

 出久が呼吸を整えている間にも他の受験生たちはどんどんとポイントを稼いでいく。

(もし僕が・・・・・・・・・普通の体だったらもっとポイントを稼げたのかな?)

 出久が涙を流した直後、突如大きな揺れを感じた。出久は何かと思い大通りに出てあたりを見渡すとそこにはビルよりも遥かに大きい0Pの仮想敵がいた。その姿を見るなり皆一目散に逃げる。

(僕も・・・早く逃げないと!)

 出久も急いでその場から逃げようとした。だがその時であった。

「いったぁ・・・・」

 そこには校門で出久を助けたお茶子が崩れたコンクリートの瓦礫に足を取られ、身動きできずに倒れている姿があった。

「麗日さん・・・・・」

 出久はあの時の言葉を思い出す。

『転んじゃったら、縁起悪いもんね。』

(僕は・・・・・自分の体がどうなっても!試験の結果がどうなってもいい!ここであの子を助けないときっと後悔する!それに決めたじゃないか!あの子を救えなかったあの日から!この手ですくえる命を助けるって!)

 出久はオーズドライバーを再び装着すると三枚のメダルをセット。オースキャナーを手に取る。

「彼は一体何をするつもりだ?」

「変身!」

【タカ!カマキリ!バッタ!】

 出久はタカキリバに変身する。

「おい、あれってヘドロの時の!」

「でもなんか色が違くないか?」

 オーズの姿に注目する受験生を無視してオーズはお茶子の下へと跳んだ。

「だ、だれ?」

「動かないで。すぐに助けるから。」

 オーズはそう言うとカマキリソードで瓦礫を切り崩す。

「しっかり掴まって。」

「う、うん!」

 オーズはお茶子をお姫様抱っこするとすぐさまそこから跳んで離れる。オーズはお茶子を降ろすと0P仮想敵の方を向く。

「アレを倒さないとね。」

「ま、待って!あんなのに敵うわけないよ!逃げた方が・・・・・」

「逃げた方がいいのかもしれない。でも、目の前で助けられる命を救わずに逃げたら僕は一生後悔するから。」

「!?」

 まるで本当に経験したかのような口ぶりに麗日は驚く。

 オーズはクワガタのメダルを手に取る。

(これを使えば・・・・・確実に倒れるかもしれないね。でも・・・・・後悔しないなら、それでいい!)

 オーズはタカからクワガタへとコアメダルを交換する。緑のコンボによりメダルが光る。

「変身!」

【クワガタ!カマキリ!バッタ!ガータガタガタキリバ!ガタキリバ!】

 クワガタのように回りを視野に入れ、蟷螂のようにカマで敵を切り裂き、バッタのようにどこまでも跳んでいける緑のコンボ、オーズ・ガタキリバコンボが現れた。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 オーズはあふれ出すエネルギーに雄たけびを上げる。

 放たれる波動により土煙は吹き飛び、周りを晴らしていく。

「―――――――はぁっ!!」

 オーズは一気に吹っ切る。

 オーズは0P仮想敵に向かいかけ走っていく。

オーズのガタキリバ使用時の特殊能力である分身が発動し、一気に50人へと増える。

「「「えええええぇえ――――――――――――!!!」」」

 試験会場にいた受験生全員が驚きを隠せなかった。

「なんだアレは!」

「アレがあの子の個性なの!」

 モニタールームで見ていた教師陣も驚きを隠せなかった。

『はぁっ!』

 バッタレッグを使い0P仮想敵のキャタピラを破壊し足を止め。

『せい!やっ!』

 カマキリブレードで装甲に次々と傷をつけ破壊していき。

『はぁあ!』

 クワガタヘッドの電撃で0P仮想敵の回路をショートさせていく。

 0P仮想敵のモニターにはいくつもの警告が表示されていた。

 しばらくすると0P仮想敵は裸同然のようにボロボロの状態となっていた。

 オーズはオースキャナーを手に取ると一斉にスキャンする。

【スキャニングチャージ!】

【【【【スキャニングチャージ!】】】】

「はぁあ・・・セイヤー!」

「「「「セイヤ―――――――――――――!!!!」」」」

 ガタキリバの必殺技、ガタキリバキックが0P仮想敵に炸裂する。

 0P仮想敵はいたるところから爆発を起こし倒れる。

「終了~~~~~~!」

 ブザーが鳴ると同時に試験終了の言葉がプレゼント・マイクから発せられた。

 オーズは一人に戻ると変身を解く。

「あ!あの時の!」

 麗日は出久の姿を見て驚く。

「あいつ、なんだったんだ?いきなり飛び出して。」

「よくわからないが強化型の”個性“ってのはわかるよな。」

「でもなんであんなことしたんだ?意味もないのに。」

 他の受験生たちがそういう中、メガネ男子だけは気づいていた。

(そうじゃないだろ。そこじゃないだろ!彼はあの女子を救わんと飛び出したんだ!!残り時間・・・己の身の安全・・・合格に必要な要素を天秤にかけて・・・それでも尚、一切の躊躇もなく!)

 メガネ男子だけはそのことに気づいていた。

(試験と言う場でなかったら当然!!僕もそうしていたさ!!)

 その時メガネ男子はあることに気づいた。

(おや?試験・・・・当然・・・・!?おやおや??)

 メガネ男子が顎に手を当て考えている中、出久は麗日と話していた。

「足、大丈夫?」

「う、うん・・・・ありがとう、助けてくれて。」

「よか・・・・・ごほっ!」

「・・・・・・・・・え?」

「!?」

 出久は突然口から血を吐いた。

(やっぱ・・・・・・無茶しすぎてたか・・・・・・・)

 出久は前のめりに倒れていく。咄嗟にお茶子は支えるが出久に意識はなかった。

「ね・・・・・ねぇ・・・・起きてよ・・・・・ねぇ・・・・・・ねぇ・・・・ねぇってば!!」

 麗日が言葉をかけるが全く返事が返ってこなかった。

「い、いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 そのあと駆け付けたリカバリーガールによって治癒され、メガネ男子を中心とした数人ですぐさま保健室へと出久は搬送された。

 

 

 試験が終了して多くの受験生が帰宅したが、お茶子とメガネ男子は残っていた。リカバリーガールからは帰るようにと言われたが二人はテコでも動かないほど意地を張ったため、二人の両親の連絡先を聞いてとりあえずは残らせた。

お茶子は保健室のベッドで寝ている出久の手をぎゅっと握っていた。メガネ男子がお手洗いへと席を立った直後、出久は目を覚ました。

「あれ・・・・ここ・・・・」

「起きた!よかった・・・・・」

 お茶子は出久が起きたことに喜ぶ。

「麗日さん・・・・」

「どうして・・・・」

「え?」

「どうしてあんな無茶したん!プレゼント・マイクも言うとったやん!戦わず逃げろって!なのにどうして・・・・・・」

 お茶子は自分のせいで出久がこうなってしまったことに涙を流す。そんなお茶子を見た出久はお茶子が握っている手から離れ涙を拭う。

「君が、あの時助けてって顔をしてたから。だから助けたんだよ。」

「っ!!うぁああああああああああああああああああああああああああああ!」

 お茶子は出久の胸に顔をうずめるように泣きじゃくった。出久は優しくお茶子の頭を撫でた。

 しばらくして泣き疲れたのかお茶子は出久の胸を借りる形で寝ていた。出久もまだ体力が回復しきってないため寝ていた。

「もう大丈夫みたいだね。君はもう帰りなさい。」

「はい、そうさせていただきます。我儘を聞いてくださりありがとうございました。」

 メガネ男子は一礼すると帰宅していった。リカバリーガールは毛布をお茶子にかけてあげた。

「全く、とんだバカもこの社会に残っているもんさね。でも・・・・・あたしゃそんなバカ嫌いじゃないよ。」

 母のような笑みでほほ笑むとリカバリーガールは保健室を後にした。

 



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4 説明と入学

 試験があった翌日、出久は目を覚ますとそこにお茶子の姿はなかった。リカバリーガールによると両親が来て迎えに来たとのことだそうだ。

 出久も帰れるかと思ったがリカバリーガールに呼び止められ、ある人物へ会いに行くことになった。

「リカバリーガール、僕に会いたいって人は誰なんですか?」

「会えばわかるさね。ほら、ここだよ。」

 案内された場所には校長室とプレートが掲げられていた。

 リカバリーガールがノックして入るとそこには顔に傷のあるスーツを着たネズミのようなものがいた。

「あなたが・・・・校長先生ですか?」

「Yes。ネズミなのか犬なのか熊なのか。かくしてその正体は・・・・・・校長さ!」

 出久はリカバリーガールの方を向くとリカバリーガールは頷いた。

(ま、まぁおかしいことじゃない。なにも個性が人間だけに宿るってわけでもないんだから・・・・・)

 出久は一周回って冷静になった。

「それで校長先生、僕に話って何ですか?」

「それについてほかに二人聞きたい人がいるのさ!二人とも、入ってきて。」

 根津がそう促すと二人の人物が入ってきた。

「わーたーしーがー!ドアから入ってきたー!」

「相変わらず自己主張の強いやつだな。」

「オールマイト!それにマンサム所長!」

 校長室に入ってきたのはオールマイトとマンサム所長であった。

「え!今ハンサムって言った!」

『いえ、言ってない。』

 全員で否定する。もはやこれは恒例行事である。

「緑谷少年、先日はどうも。さて、これから君に衝撃の光景をお見せするよ。」

 そういうと突然オールマイトの体から湯気が出始めた。

「え!な、なに!?」

 出久は突然のことに戸惑う。煙が晴れるとそこにはがりがりのミイラのような人物がそこにいた。

「へ?え?へ?え?へ?」

 出久は突然のことに戸惑いを隠せなかった。目の前で憧れのヒーローが一転してがりがりな姿へと変わったのだから。

「ここにいる全員が彼のこのことを知っている。そしてなぜ、僕たちが君にこのことを打ち明けたかわかるかな?」

 根津がそう聞くと出久は首を横に振る。

「これを見て欲しいのさ。」

 根津はそう言うとリモコンを手に取りスクリーンを映し出した。そこには研究所で戦っていたオーズの姿があった。

「はっきり言うと君の個性は規格外だ。そして何よりヒーローが敵わなかったあのメダルの怪人。そして何よりその怪人を構成しているメダルを使った武器。僕たちの常識を遥か上に超える代物ばかりだ。君はこのことに知っているみたいだね。良ければ僕たちに話してくれないかな?」

 出久は考えた。

 このまま個性として通すにはあまりにも無理がある。しかもここにいるのはバックとしてはとても心強い人たちばかりである。今後のことも考えて出久は話す決意をした。

「わかりました。それでは・・・・・あ!」

「なにかな?」

「こういう時に限って大抵いいタイミングで来るんですよね。」

 出久はそう言いながら窓を見ると液晶モニターを咥えたタカカンドロイドが窓を割って入ってきた。

「やっぱり。」

「さすがだね!すばらしい予測だよ、出久君!」

 一同モニター越しに映し出される鴻上に驚く。

「やあ、異世界のヒーロー諸君!今日出久君との再会と君たちとの出会いに、ハッピーバースデイ!」

 モニター越しに相変わらずのあいさつをする鴻上に出久は安心感を抱いた。

「さて、君たちとの出会いの記念に君たちが疑問に思っていることをお答えしよう!出久君、メダルホルダーとオーズドライバーを出したまえ!」

 出久は言われるがままにオーズドライバーとメダルホルダーを出した。

 そして鴻上の口からオーズについての歴史が語られた。

 

 800年前の王の命により錬金術師によって作られたコアメダル。

 欲を満たすために生まれた怪人グリード。

 コアメダルによって変身したオーズ。

 逆らうものをすべて消していった力。

 すべてのコアメダルを取り込もうとして自ら封印の棺となった王の末路。

 800年の時を経てよみがえったグリード。

 オーズとしてヤミー、そしてグリードと戦った日々。

 戦いの中で得た強力で危険な力。

 すべてを無へと返そうとした強敵。

 そして世界を救った話。

 

 一同その内容に驚きを隠せなかった。

「まさか個性がない世界でそのようなことが起きていたとは・・・・・」

「無理もない。だがしかし!ヤミーの脅威は去っても我々の世界にはオーズ以外にも存在するのだよ!仮面ライダー・・・・っがっ!」

『仮面ライダー?』

「そう。人知れず世界の平和のために巨大な悪と立ち向かう君達で言うところの正義の味方と言うところさ。彼らは報酬を貰っているわけではない!しかし!たった一人でも多くの笑顔を守るために戦っている。それが仮面ライダーなのだよ!」

 鴻上からの説明もあって一同は出久の力を理解した。そしてそれは出久にしか制御できないことを改めて思い知らされたのであった。

 鴻上の説明が終わると出久はオールマイトと対峙する形で向かい合っていた。

 二人以外は校長室から退室していた。

「さて、緑谷少年。私の本名は八木俊典。こんな体なのには理由がある。と言っても、表立って言える内容ではない。君のような仮面ライダーが巨悪と立ち向かったように、私も立ち向かったのだ。私はそいつを倒した!・・・・・だがその代わり深手を負ってしまってね。呼吸器官半壊、胃袋全摘、度重なる手術と後遺症で憔悴しているのが現状だ。活動時間は今や三時間ほどだ。」

「さ、三時間!」

 出久はそのことに驚きを隠せなかった。

「先日君が倒したヘドロ敵、あれは私の友人に頼んでお咎め無しにしてもらっているから大丈夫だよ。」

「あ、ありがとうございます!」

「なに、礼を言うのはこっちの方さ。あの後警察に届けようとしたときにうっかり落としてしまってね。昨日試験を受けに来ていた少年に被害を出してしまった。

 そして同時に君も気づいているかとは思うが、今のヒーローの質の低下を。」

「っ!!」

 オールマイトですらも気づいていた。現状オールマイトは永遠のヒーローではない。

 無論、それは仮面ライダーにも言える。今の仮面ライダーはいずれ寿命を迎え、そして新たな世代へと引き継がれていく。

 しかしその後継者や新たなライダーが軟弱では引退もロクにできない。

「私はあの日君の変身を、いや活躍を見た時からこう決めていたのだよ。

 

 

君は“力”を受け継ぐに値する・・・・・・とね。」

「個性を受け継ぐ・・・・・ですか?」

「そう!私が持っている個性、その名は”ワン・フォー・オール“。聖火のごとく引き継がれてきたものなんだ。」

「そんな個性があるのですか!」

「あるとも。そしてこの個性の特徴、それは力を譲渡することによって力を蓄えていくものだ。一人が力を培い、その力を一人へ渡し、また培い次へ・・・・そうして救いを求める義勇の声を紡いできた力の結晶!力を引き継いでくれるかい、緑谷少年?」

出久はすぐに答えたかった。しかしここで一つ大きな問題が発生した。それは自分の体のことである。

 プトティラで抑制させているとはいえど病魔が出久の体を蝕んでいた。

(どうしたらいい・・・・・・正直この話はのどから手が出たいほどだ。だけど・・・・・僕には・・・・・・)

 そんな時であった。肩に手を置かれる感覚がしたので後ろを振り向くとそこには見覚えのある左手があった。出久はおもむろにその手の主を見るとそこにはアンクがいた。

「お前の好きなように選べ。言っただろ。お前の手の掴む手は、もう俺じゃないと。」

 アンクはそう言うと消えた。幻覚なのかわからなかったが、出久は答えを決めた。

「オールマイト・・・・・・・・・・ごめんなさい。僕には受け取れません。」

「なっ!?ど、どうしてなのだね!!」

 動揺するオールマイトに出久は自分の体のことを説明した。

「そうか・・・・・・君がそう決めたことなら仕方ない・・・・・・だが、私は君を後継者の一人だと思って、候補に入れておくことを忘れないでくれ。できれば、君に受け継いでほしいと思っているんだ。」

「オールマイト・・・・・・・ありがとうございます。」

 出久はオールマイトに一礼をして、話は終わった。

 試験の結果は合格したが編入されるのは普通科であった。試験の時の吐血と専門医からの話によって出久は普通科に入らされた。

 

 

 月日はまた流れ春。入学式当日、出久は自宅から雄英へ向かおうとしていた。

「出久!ティッシュ持った!?」

「うん。」

「ハンカチも!?ハンカチは!?ケチーフ!」

「うん!!」

「出久!」

「なァにィ!!」

「超、カッコイイよ。」

「・・・・・・・!行ってきます!」

 出久は雄英の制服身に纏い、雄英へと向かった。

 雄英は多くの生徒が通学している。

 ヒーロー科、普通科、サポート科、経営科と大きく四つに分かれている。科も分かれていればそれなりにクラスも分かれている。そのため施設は大きく、広いのである。

「えーっと・・・・・1-Cってどこなんだろ?」

「お前も1-Cなのか?」

 出久は突然声を掛けられた方を向く。するとそこには目のクマが特徴的な生徒がいた。

 名前は心操人使。個性は洗脳である。ヒーロー試験で個性が合わず普通科に編入となった。

「緑谷、お前の個性ってなんだ?」

「僕の個性は強化系かな?」

「なんで自分の個性に疑問符をつけるのかをツッコミたいところだが・・・・・・・・・着いたみたいだ。」

 大きな扉に1-Cを書かれていた。

「ドアでか!」

「バリアフリーってところか。いろんな個性持ってる奴がいるからな。」

 心操が先に入ると急に足を止めた。出久は何かと思い中を見る。すると聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「ハッピバースデーツーユー!ハッピバースデーツーユー!ハッピバースデーディアC組―!ハッピバースデーツーユー!(以後繰り返し)」

 生徒の机の上にはケーキが置かれ、バースデーソングが流れていた。

「今日ってだれかの誕生日か?」

「いや、それでも全員にケーキはないだろ。」

「これが雄英なりの歓迎なのかな?」

「にしても高そうだよな、このケーキ。」

「そうだね。あ、これ私好みの味だ。」

 C組が反応する中、出久は思った。

(里中さん、いい仕事しすぎ。別世界なのによく仕事できて逆に怖い!)

 入学式とガイダンスが終わり、そのまま下校となった。ちなみにケーキは各自で持ち帰ることになりました。

(鴻上会長・・・・・・本当にケーキ作り好きだよね。あれで仕事が出来てるって……ケーキ作りしてたら普通仕事する時間ないのに・・・・・もしかして大半を里中さんがしてたりして。)

 出久がそんなことを思って帰ろうとしているとふとグラウンドに集まっているA組が目に入った。

(あれは・・・かっちゃんに麗日さんに三奈さんだ。てことはあそこにいるのはA組と担任の先生。どうしてこんなところに?)

 出久はふと気になり近づいてみた。

「んじゃパパっと結果だけ言うな。最下位の峰田、そして葉隠は除籍な。

 まず峰田。反復横跳びは自分の個性を上手く使っていたがそれ以外はからっきしだ。

 そして葉隠。お前は透明なだけでそれ以外はほとんど無個性と変わらん。」

「く・・・・」

「そんな・・・・」

「わかったならさっさと「待ってください!」っ!?」

 除籍を言い渡そうとする相澤に出久は止めに入った。

(デクっ!?)

(出久君!)

(緑谷君!)

 麗日と芦戸は出久が入学していることに驚いた。

「お前は?」

「1-Cの緑谷出久です。入学初日に除籍ってひどくないですか?」

「自然災害、大事故。身勝手な敵たち。いつどこから来るかわからない厄災。日本は理不尽まみれだ。そういう理不尽を覆していくのがヒーロー、そして学ぶのが雄英(ここ)だ。個々の生徒の如何は先生の”自由”だ。」

 相沢の話を聞くと出久は少し考えてある提案をした。

「先生に適合されて生徒に適合されないって話はないですよね?だったら僕たちと勝負してください。除籍を賭けて。」

「お前何を言って・・・・そんなの「かまわないさ。」いいって・・・・・・・校長!」

 相沢と出久たちは突然現れた根津に驚いた。

「確かに彼の言う通り筋が通らないといけないからね。その提案、僕が公認するよ。」

 かくして生徒三人VSプロヒーローとの模擬試合が決定した。

 



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5 抹消とラトラーター

先日FGOで十連ガチャを回したらレアサーヴァントが当たりました。しかも三体。
槍トリアにモードレット、そしてアマゾネス。他にもすでに持ってる概念で☆四が二つ当たりました。
そこで気づいたんですが、半分がレアです!概念爆死でなく当たり三つの豪運です!
あと先週の土曜に呼符で赤セイバーが当たりました。これも欲しかったサーヴァントです。


 相澤先生との勝負が決まった出久、峰田、葉隠は教室で作戦会議をしていた。

「ヤベーって!絶対勝てるわけねーって緑谷!今すぐにでもお前だけでも除籍取り消してもらおーって!」

「私もそう思うよ!」

 肝心の二人は戦意を失っていた。

 無理もない。教員免許を持っているとはいえど相手はプロヒーローである。経験も個性の使い方も上手である。

「落ち着いて二人とも。それに理不尽な除籍を覆せるチャンスなんだよ!窮地に追いやられている今だからこそ動くべきなんだ!それにこっちには相手にないチャンスがある。」

『チャンス?』

 出久の言葉に二人は首を傾げる。

「そう。それは付け焼刃の実力による不意打ち。僕たちの個性のことは先生は知ってる。当然入試の時も見ているはずだ。けど一から十まで見てるかって言われればそうじゃない。試験を見ている上でポイントを重要視している。個性自体はあまり見てないんだ。

 そして相手はこっちが個性の使い方が下手だから甘く見ているってのが普通だ。僕たちが個性を発現したばかりの子供にケンカを売られたとしても同じだと思うはずだ。」

 その言葉を聞いて二人は少しばかり分かった。

 要約するとナメ切った相手の不意をついて一気に畳みかける作戦である。

「でもこの作戦には二人の協力が必要なのと生きたいっていう本能が必要だ。二人の個性を教えてくれないかな?」

「うん!私の個性は見ての通り透明。服を脱げば絶対に見えないよ。」

「オイラの個性はモギモギ。ちぎっても生えてくるしオイラにはくっ付かない。良く跳ねるし、くっ付けば体調がいい時には一日中くっ付く。ちぎり過ぎると血が出る。」

「僕の個性はメダルを使った強化個性。でも完全に使えるわけじゃない。同じ色のメダルを三枚使ったコンボがあるけど結構負担がかかる。

それにしても峰田君のモギモギは使える。それに葉隠さんの個性を合わせて奇襲をかければ勝算はある。あとは僕が先陣を切って戦うんだけど相澤先生の顔はテレビで見たことがない。けど風格からしてベテランだ。僕たちよりも年上で雄英の先生なんだからきっとすごい個性に違いない。僕が使うメダルも慎重に考えないと。でも相手の個性が分からない以上タトバの方が賢明だ。」

 出久がブツブツ言っていると峰田が止めに入った。

「おい、緑谷。ちょっと怖いからこっちに戻ってきてくれ。」

「ああ、ごめん。けど二人の個性が分かったおかげでいい作戦を思いついた。けどこれは一回きりしかできない奇襲作戦。二人とも、よく聞いて。」

 出久は二人に作戦の内容を説明する。

「二人とも、わかった?」

「おう。」

「任せて!・・・・・・・・・ところで緑谷君。」

「なに、葉隠さん?」

「どうして助けようとしてくれるの?」

 峰田も同じ思いであった。ここでヒーロー科に入れず普通科に編入になった生徒は多い。ライバルが一人でも減るなら好都合と言うのにもかかわらず出久は助けようとした。二人にはなぜそんなことをしたのか理解ができなかった。

「理由なんて単純だよ。理不尽なことが嫌だったんだ。確かに相澤先生はこの世の中理不尽まみれだって言ってた。確かにそうだよ。」

 出久の脳裏には()()()()がフラッシュバックした。

「・・・・・・けど、ヒーローってのはそんな理不尽をなくして助けるものでしょ。」

『!?』

「二人が助けを求める顔をしていた。それに、ヒーローは助け合いでしょ。」

 出久は笑顔でそう言った。峰田はその顔にどこか安心感を覚え、葉隠は胸の奥からこみあげてくる不思議な感情を抱いた。

 

 

 グランドに設けられた特設ステージ。そこで行われる模擬戦を見ようと多くの生徒が集まっていた。

「結構集まったようだね。」

「そりゃあんな放送したらそうなりますって。」

 根津の言葉にセメントスは呆れていた。放課後に校長がマイクに命じてこのことを放送させた。

 放課後にもかかわらず生徒と先生の模擬戦に興味をそそられた生徒たち。その中にはA組の生徒もいた。

(クソデクが!また無茶すんじゃねぇだろうな!)

(うぅ・・・・・心配や。)

(出久君、また血を吐いたりしないよね?)

「彼の個性は試験の時に見たが・・・・・果たして相澤先生に通じるのか?」

 爆豪、麗日、芦戸、メガネ男子が出久のことを心配する中、時間となる。

「さぁ!リスナー諸君!今日急遽開かれたライブへよーこそ!まずは選手の紹介をしよう!

 ルールは簡単。二年、三年にはおなじみの確保テープを巻きつけた方が勝ちだ。

教師側からは相澤消太!ヒーロー名は後程わかるからあえて言わないぜ!

そして生徒側からは三人だ!まずは一人目!一年A組ヒーロー科、峰田実!”個性“もぎもぎ。どこにでもくっ付いてよく跳ねるぜ!調子がいい時は一日中だ!」

 プレゼント・マイクに峰田は紹介されると緊張した表情でステージに入る。

「二人目は葉隠透。“個性”は見ての通り透明だ!体が見たいからって泥とか投げつけるなよ!」

 葉隠は分りにくいが恥ずかしがっていた。個性を最大限に活かすため手袋と靴以外は装備していない。

「そしてそして三人目はなんと普通科の緑谷出久だ!こいつの個性は・・・・・・これだ!」

「変身!」

【タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!】

『!?』

 プレゼント・マイクが紹介すると同時に出久はメダルをセットして変身する。オーズのことを知らない生徒たちは出久の変身に驚いた。

「“個性”はオーズ!三枚のメダルで変身する個性だ!メダル一枚一枚にはそれぞれ能力がある。同じ色のメダル三枚によって発揮される”コンボ”は絶大な力を持っているぜ!入試の時は緑のコンボで50人に分身して0P仮想敵を破壊したんだぜ!」

 プレゼント・マイクの解説で会場の熱は上がる。

「二人とも、わかっているよね作戦は。」

「おうよ!」

「任せて!」

「それではバトル・・・・・」

 プレゼント・マイクはゆっくりと手を上げ・・・・・

「スタート!!」

 一気に振り下ろすと同時に試合が始まった。

「はぁっ!!」

 オーズはバッタレッグを使い一気に相澤の懐まで入るとトラクローを出し斬りかかる。相澤はそれを避ける。しかし避けた瞬間に峰田のモギモギが迫ってきた。

「オイラだってー!」

 峰田は血が出るまでもぎもぎを投げつける。大した攻撃力はない。しかし相手の動きを封じるには十分な力を持っていた。

 峰田のもぎもぎが相澤の足や腕にくっ付く。膝やひじを曲げた状態で相澤の動きは止まる。

「おーっと!これはマズい!まさに手も足も出ない状況だー!」

「葉隠さん!」

「うん!」

 葉隠は確保テープを持って戦いに終止符を打とうとした。

「即席のチームとしては作戦は悪くない。だが連携が甘い!」

 相澤についていたもぎもぎが取れ、身動きができるようになるとすぐさま移動し峰田の下まで一気に走る。峰田はもぎもぎを投げて牽制するが当たったとしてもくっ付かなかった。

 そして早業で確保テープを巻きつける。

「峰田実、アウト―!」

「ほら、巻きつけられたんだ。さっさと外に出ろ。」

「ちくしょう・・・・・」

 峰田は悔しがりながら外へと出る。

(どういうことだ?確かに峰田君の個性はあの時までは発動していた。それに本人は今日は調子がいいって言ってた。まるで個性を消したかのように・・・・・・・ん?()()?・・・・・・・・・そうか!)

 オーズは相澤の正体に気づいた。

「個性を消す個性・・・・・抹消系ヒーロー、イレイザー・ヘッド。」

「イレイザー・ヘッド?」

「聞いたことがない。」

「メディア嫌いのヒーローか?」

「ほう・・・・・・俺のことを知っているのか。」

「そう!相澤消太の正体、それはなんとイレイザー・ヘッド!”個性”抹消!相手の個性を一時的に抹消することができるのだー!」

(僕の方は大丈夫。それに葉隠さんも・・・・・・あれ?なんで葉隠さんは大丈夫なんだ?個性を消すなら・・・・・・・そうか!消せる個性は大抵決められているんだ!おそらく発動型だけ!生まれつき体に現れている個性とかは消せないんだ!)

 オーズは相澤の個性の弱点の一つに気づいた。

「来ないならこっちから行くぞ!」

 相澤はオーズに向かってくる。

「牽制するなら!」

 オーズはメダルを変えてオースキャナーをスキャンさせる。

【タカ!ウナギ!バッタ!】

 オーズはタウナバになるとウナギウィップで牽制をしようとする。

(まだそんなものを隠してたのか!それにあれは・・・・電気!正面からじゃ・・・・・)

 相澤がそう思った直後であった。オーズは急に心臓に痛みを感じ、動きが鈍る。その隙を相澤は見逃さなかった。ウナギウィップをかいくぐり一気に懐にまで飛び込むと腹にキツめのキックを喰らわせる。

「ぐぁっ!」

「緑谷君!」

 葉隠はオーズに駆け寄る。

「緑谷、俺はお前のヒーロー科への編入を強く反対した。理由はお前もわかっている通りお前の体のことだ。仮にプロになったとしても迷惑をかける。そんなお前を俺はヒーローに向いていないと判断していた。・・・・・・・・・だが今日の戦いを見て、その判断は間違いだと気づいた。お前の体のこともある。お前と二人の除籍は――――」

 相澤がそこから先の言葉を言おうとした途端、オーズは言った。

「それはだめです!」

「なにっ!?」

「ここで止めれば、峰田君の奮闘も、僕たちの覚悟も無駄になる!」

「先生!私もまだやれます!」

 出久の言葉に答えるように葉隠もその意思を示す。

「緑谷―!葉隠―!がんばれー!」

 峰田もその二人を応援していた。そしてこの戦いを見ている生徒たちが応援をしていた。

「頑張れー緑谷!」

「最後まで見てやるぞー!」

「先生もがんばってー!」

 その光景に根津とマンサムは微笑んでいた。

「やはり生徒たちを集めて正解だったね。」

「ええ。彼らも気づくでしょう。ヒーローがなんのために戦うのか。その意味を。」

 ヒーローがなぜ悪と戦うのか?それは一重に人々の平和のためである。

 この世界においてヒーローは公務員であり人の味方だ。

 しかし、仮面ライダーたちの世界は違う。

 人間の自由と、平和を守るためである。個人ではなく全てを守る。たとえどんな理由があれど守るそれがヒーローなのである。

「参ったな・・・・・・これじゃあ止めるに止められないな。どうなっても知らないぞ!」

 相澤は笑いながらそう言うと目薬を差した。

(目薬・・・・・・なるほど。だったらあのメダルを・・・・・・いや、それだけじゃだめだ。負担は大きい。コンボの中で一番エネルギーが高いからね。でも勝つためには・・・・・これしかない!)

 オーズは葉隠に耳打ちをする。

「わかった?」

「任せて!」

 葉隠は前に出る。

(後ろに下がらせていた葉隠を前に?どういうつもりだ?)

 オーズは黄色のメダルを三枚セットする。黄色のメダルは輝いていた。

「まさか!」

「変身!」

【ライオン!トラ!チーター!ラタラター!ラトラーター!】

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 ライオンヘッドからまばゆい光が発せられ、オーズの周辺の地面を干からびさせる。

「出たー!オーズのコンボだー!タトバを除き、同じ色のコンボは特別な歌が流れる!歌は気にするな!

 そして!黄色のコンボで地面が干からびた!どんだけエネルギーがあんだよ!こいつぁスゲーな!」

 グラウンドに立っていたのはどこまでも照らす太陽のようなライオンのような鬣を持ち、どんな敵も切り裂くトラの爪を持ち、だれよりも早く駆け付けるチーターのような足を持つ戦士。

 オーズ・ラトラーターコンボであった。

「行くよ、葉隠さん!」

「まっかせて!」

 葉隠がオーズの前に立つとオーズはライオンヘッドからライオネルフラッシュを放った。

「即席必殺、集光屈折ハイチーズ!」

 拡散する光を葉隠の個性で一点に集め強力な光へ変換する。

「くっ!目が!」

 ヒーローオタクである出久だからこそ知っていた。イレイザー・ヘッドは見た相手の個性を消す。しかしそれは敵に気づかれてはならない。そのため視線がどこを向いているかわからなくするためにゴーグルを装備している。

 が、出久の予想通り油断をしていたため今は首にかけている状態である。

 オーズはクラウチングの体制を取るとチーターレッグから蒸気を出し、一気にトップスピードで迫る。

「は、速い!」

 足に自信のあるメガネ男子も驚くほどの速さであった。

「はっ!」

 オーズはすれ違いざまに相澤をトラクローで斬る。オーズはトラクローを地面に突き刺し、チーターレッグを使って逆方向に加速し速度を殺すと再び相澤へと接近。今度は上に飛び体を反転させ、チーターレッグの脚の回転を利用して何十回も相沢にキックを食らわせる。

「ぐっ!」

 流石の相澤も防ぐので精いっぱいであった。その隙に葉隠が後ろからこっそりと近づき足に確保テープを巻きつける。

「確保!」

「なにっ!?」

 相澤はそのことに驚く。

「生徒チーム、WIN!」

 プレゼント・マイクの言葉で会場は一気に歓声に包まれた。

「緑谷!」

「緑谷君!」

 峰田と葉隠はオーズの下へ駆け寄る。

「ありがとう緑谷!本当にダメかと思ったぜ!ほんっとうにありがとな!」

「私も!正直ダメかと思ってたの!」

「わ、わかったから二人とも一旦離れて!変身解けないから!」

 峰田は頭に抱き着き鼻水と涙を着け、葉隠は抱き着いていた。彼女は手袋と靴以外はないため肌の感触がダイレクトに伝わってくる。

(勝ってくれたのは嬉しいんだけど・・・・・)

(なんだろう?このモヤモヤ・・・・・)

 麗日と芦戸はその光景をよろしく思っていなかった。

「とにかくよかったよ。これで・・・・・コフッ!」

「・・・・・・・・・・・え?」

 変身を解いた出久は二人に話しかけようとした途端、いきなり吐血した。吐血した血は葉隠にかかった。

(やっぱり・・・・・・無茶しすぎだっ・・・・・・)

 出久はそこで意識を失い葉隠にもたれかかる形で倒れる。

「み、緑谷!」

「ねぇちょっと!ねぇってば!」

「デクっ!」

「緑谷君!」

「出久君!」

「リカバリーガールを呼んでくる!」

 爆豪、麗日、芦戸が出久の吐血に反応しメガネ男子がすぐさまリカバリーガールの下へと走って行った。

 葉隠がゆすって反応を待つが一向に反応は返ってこなかった。

「ねぇ起きてよ!起きてってば!ねぇってば!」

 

 

「本当に心配したんだよ!」

「オイラもだ!マジでこっちの心臓も止まりかけたんだからな!」

「ご、ごめん・・・・(あれ~?前にもこんな感じあったような・・・・・・)」

 出久はすぐに保健室に連れてこられリカバリーガールによって治された。倒れてから三十分後に目を覚ますなり二人に怒られた。

「出久君助けるためなら無茶しすぎちゃうんだよね。」

「でもそこがかっこいいんだよね。」

「それわかるー!」

 芦戸と麗日は出久について話していた。

「クソデクが!もっと体を大事にしやがれ!」

「言葉は悪いが同感だ。彼はもっと自分を大事にするべきだ。こっちの身も持たない。」

 爆豪の言葉にメガネ男子も同感であった。

「葉隠さん、ごめんね。血をかけちゃって。」

「本当だよ。血を被るなんて経験アタシ初めてなんだから。許す代わりに・・・・・・その・・・・・・名前で呼んでくれる?」

「えっと・・・・・透ちゃん?」

「っ!!うん!」

 葉隠は嬉しそうにそう返事をした。

「出久君!」

「えっ!麗日さん!」

「私のことも名前で呼んで!」

「え、えっと・・・・・・お茶子ちゃん、でいいのかな?」

「うん!」

 麗日は嬉しそうに返事をすると芦戸と葉隠に視線を向け、三人の間で火花を散らした。その光景の意味が分からず出久は首をかしげる。

「けっ!」

「どうやら彼の障害は他にもあるようだな。はっはっは。」

(緑谷。助けてもらって悪いんだが爆ぜろ。)

 爆豪はその光景に呆れ、メガネ男子は微笑ましく思い、峰田は嫉妬した。

 



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6 ハンマーとサゴーゾ

先日FGOで配布された10の呼符でアルトリアの方でガチャをしました。
すると念願の青セイバーが手に入りました。そしてもう一回引くとまた青セイバーを引きました。
1000万記念でゲットしたヘラクレスと合わせてstay nightメンバーをコンプできました。
いやー、嬉しい嬉しい。
無課金でコンプってのも自分ではすごいって思ってます。
その前にやった10連では見事爆死でセイバーが当たっと思ったらラーマでした。ほんとこういう手のがあるんですよ、私。


 

 出久が相澤先生に勝った翌日、登校中も、休憩時間中も出久は注目を集めていた。

 本来であれば勝てるはずのないプロヒーローに勝ったのである。当然と言えば当然なのだがもう一つ理由があった。

 それは吐血である。

 先日の戦いで出久の“個性”は確かに強かった。だがその反面体が弱いことでマイナスへと働いている。周りはいつ出久が吐血するのではないかと不安になっていた。

 昼休み、出久が食堂で食事をとっていると心操がやってきた。

「緑谷、隣いいか?」

「構わないよ。」

 心操は出久の隣に座る。

「緑谷、お前がヒーロー科落ちたのってその体が原因か?」

「う~ん・・・・・・そうなるかな。」

「そうか・・・・・・なんかお前が羨ましく思えてきた。」

「え?」

 出久は耳を傾ける。

「お前の個性ってさ、敵に対して結構有効じゃねぇか。俺の個性って地味で周りからは”敵向きの個性”って言われてんだ。そんな経験ばっかしたせいなのか、お前みたいに実戦向きな個性が羨ましいって思うんだ。」

 うつむきながらそう言う心操に出久は言った。

「僕は心操君の個性がヒーローとしては欲しいって思うと思うよ。」

「・・・・・・・は?」

「心操君の“個性”って自分の意思を持った言葉に反応した相手を操れるんだよね?」

「ああ・・・・」

「敵がもし人質を取っていたらその“個性”で操って人質を解放して敵を確保できるし、情報を引き出すのに・・・ちょっと人道的問題はあるかもしれないけど引き出すことはできると思うよ。何より事務所としては大助かりな個性だと思う。」

「どういうことだ?」

 心操は出久の言いたいことが分からなかった。先の二つはまだわかるが事務所としての意味がよくわからなかった。

「ヒーロー事務所はヒーローの雇用を担うと同時にヒーローが戦闘で出した損害も受け持ってる。これって事務所としてはすごく負担が多いんだ。例えば最近デビューしたMt.レディ。都市部の活動には向いていなくて損害を多く出していることでも有名になっているんだ。ヒーローのためのヒーロー保険はあるけど素人目でも保険でカバーできる範囲を超えてる。活動して給料が入っても損害の方でマイナスになる。大きい事務所だったら副業が幅広いからカバーできる。だけど損害があっていいわけではない。営業にとって最も望ましいのは”損害が0”と言うこと。ここまではわかるかな?」

 出久の言葉に心操は頷く。

「心操君の個性を仮に破壊力抜群の個性にぶつけたらその個性で出るはずだった分の損害は0、加えて事務所やヒーローとしての評価も上がる。さらにこれにはもう一ついいことがあるんだ。それは“個性による差別”。わかりやすく言うと心操君の経験のように“敵向きの個性”って言われる人たちは多い。そういう人たちはその言葉に耐えきれず敵になってしまうケースも多い。この原因に関しては学校によるものや環境があるんだ。特に学校だと教師も悪ノリするからね。最近それで教師への風当たりも悪くなっているから。でも心操君がその“個性”で活躍すれば希望にもなる。直接的にも間接的にも人助けをしているんだ。」

 出久の説明を聞いて心操の表情は少しばかり明るくなった。

「緑谷、お前ってスゲーな。なんでそんなに分析できんだ?」

「僕、昔からヒーローに憧れていたから自分の将来のためにヒーローの”個性“や戦い方を研究したのをノートにまとめているんだ。この前のイレイザーヘッドの戦いもノートに記録したし。」

「スッゲーな。もしヒーローになれなかったとしてもヒーローコーディネーターになれるんじゃね?」

「そうかな?」

「そうだよ。」

 出久の話に耳を傾けていた連中もうんうんと頷いていた。

 

 

 休日、出久は引子に頼まれて買い物に出ていた。と言っても、気分転換の帰りに買ってきてということであるが。

 出久が雄英で倒れてしまっていることは引子にも知れている。出久を心配するあまりか痩せている。なぜか出久は引子がやせていることに時折違和感を感じてしまうが。

「母さんに心配させてくないんだけど・・・・・・・この体だとね。」

 出久は町を歩くのを止め、ふと自分の手を見る。

「お前の手でつかむのは、俺じゃない・・・・・・・・か。」

 出久はふとアンクの言葉を思い出した。

「・・・と、いけない。ここじゃ人の迷惑だ。」

 出久が道の脇の方へ行こうとすると後ろから声を掛けられた。

「あの、すみません。」

「はい?」

 出久は声を掛けられ後ろを振り向くとそこには長い黒髪をポニーテールにまとめている女子の姿があった。

「わたくしは雄英高校の八百万百と言います。緑谷出久さんでよろしいですか?」

「はい。でもなんで・・・・・・て、確かA組の・・・・」

「ええ。一年A組ですわ。お二人の時はありがとうございました。」

 八百万はそう言うとお辞儀をする。

「い、いえいえいえ!あれは僕が勝手にやったようなもんですし、そんなかしこまらなくてください!」

「そうですか?ではその代わりとして少し私のお願いを聞いていただけないでしょうか?」

「お願い?」

「はい。あなたの”個性“についてです。」

「僕の?」

 出久は少しばかり驚いた。大抵の人は相手の個性を知るとその個性の特徴しか見ない。詳しいことなどは知らず聞かずが多い。しかし彼女は違った。

「あ~、ちょっとごめん。その話、アタシも混ぜてもらってもいいかな?」

 二人が話していると髪をサイドテールに纏めている女子が話しかけてきた。

「失礼ですがあなたは?」

「アタシは拳藤一佳。同じ雄英一年のB組なんだ。」

 拳籐は自己紹介をする。

「じゃあここで話すよりどこかの店で話さない?邪魔になるしさ。」

 二人は出久の提案に賛成し、コーヒーショップへと足を運んだ。

 

 そのころある路地裏で一人の男が逃げていた。

「くそっ!なんでこんなことに・・・・・・なんなんだよアイツは!」

「逃げても無駄だ。」

「っ!?」

 男の目の前にはグリードがいた。理由は分からないが突如として襲われたチンピラ集団。ケンカを売ったわけでもないのになぜこんな仕打ちに合うのかが分からなかった。

「な、なんなんだよお前!いきなり俺らの前に出たと思ったら無差別に襲ってきやがって!こうなったら!」

 男は落ちてある鉄パイプを手に取ると形を変形させハンマーにする。

 その男の“個性”は金属変化。手に触れた金属を変化させることができる個性。この個性は強いイメージと変化させた場所によって脆くなってしまう部分を補う器用さが必要となる。

「喰らえ!」

 男はハンマーを振り下ろす。しかし彼はそこまで知識があるわけではない。質量保存の法則も考えず作ってしまったハンマー。例えるならば傘の骨組みに重しを付けた状態である。振って相手にぶつけるまではそのままの状態を保ってはいるがぶつかれば脆く壊れる代物である。

 そして男の作ったハンマーも正にそれであった。

 男の作ったハンマーはいともたやすく壊れてしまう。

「馬鹿にもほどがある。」

「ぐはっ!」

 男は弾き飛ばされ、気絶した。

「しかしいいものも手に入った。」

 グリードは男の作ったハンマーにセルメダルを投げる。するとハンマーは瞬く間にハンマーヤミーへと姿を変えた。

「お前の欲望は何だ?」

「は・・・か・・・・い・・・・!」

「よし・・・・・ならば破壊してこい!お前の欲望のままにな。」

「う・・・・・ん・・・・・・」

 ハンマーヤミーは表通りへとゆっくりと歩き始める。

 

 

戻って出久は二人と窓際の席で対面する形で話していた。

「しっかしあの時の緑谷、すごかったね。言ったら悪いけど変な歌が聞こえたと思ったら思いっきり速くなって相澤先生を圧倒したんだもの。」

「そこはわたくしも思いましたわ。緑谷さん、あなたの“個性”オーズを私は普通の個性とは思っていません。もちろん、私たちも自分の個性が普通とは思いませんが緑谷さんのは異常です。」

 出久はその瞬間、マズいと思った。

「もしかして何か秘密があったりするの?」

「よろしければ私たちだけにでも教えてはいただけませんか?他の方には口外しませんので。」

「え、えっと・・・・・」

 オーズの力はいわば“個性”を持つものからすれば喉から手が出るほどのものである。自身の持つ“個性”とオーズさえあれば無敵になれると思う者もいると出久は考えていた。

 しかしオーズは欲が深ければ深いほどメダルに呑まれ、そして800年前の王のように暴走をする。出久はそれだけは避けたかった。下手をすれば人がメダルへと変わってしまうかもしれないからだ。

 出久が答えるのに困っていると外の方が騒がしくなっていく音が聞こえてきた。

「なんだろう?敵かな?」

「だとしてもこれは・・・・・だんだんこちらへ近づいてきていません?」

「だとしたらヤバいんじゃない?」

 三人が話している時であった。何かが出久たちのいる方へ飛んできた。出久はすぐさま二人の襟を掴んで放り投げる形で窓から離した。その直後、窓に看板のようなものが飛んできた。衝撃によって窓が割れ、出久は弾き飛ばされる。

「緑谷さん!」

「緑谷!」

 二人は出久に駆け寄る。

「二人とも・・・・・・ケガはない?」

 出久は二人の心配をする。

「わたくしは問題ありませんわ」

「アタシも。」

「よかった。」

 出久は微笑みながらそう言うと拳藤は少し顔を赤くした。

 相澤との戦いで見せた勇気ある姿とは違って慈愛に溢れている。その二つが拳藤の心にあるものを呼び覚ました。

 出久は立ち上がると事件のある方を向く。

「ちょっと見てくる。もしかしたら逃げ遅れた人がいるかもしれないから。」

「でしたらわたくしも!」

「わ、私も行くよ!」

 三人は事件の現場へと向かう。

「ぐあっ!」

 パワー自慢のデステゴロが吹っ飛ばされ、建物にめり込む形で気絶する。

「パワー自慢のデステゴロが気絶するなんて!相手は一体・・・・・・っ!?」

 出久はハンマーヤミーの姿を見て驚く。

「ヤミー!でも動物をモチーフにしていない・・・・・どういうことだ?」

 出久は不思議で仕方なかった。本来ヤミーは親であるグリードをベースとした姿になる。鳥なら鳥形、ネコ科ならネコ、虫なら虫である。しかしベースがないヤミーは初めてである。

 そんな時、ハンマーヤミーの後ろで泣いている女の子が見えた。

出久は迷うことなくオーズドライバーにメダルをセットすると変身する。

「変身!」

【タカ!ゴリラ!バッタ!】

出久はタカゴリバに変身するとハンマーヤミーに近づき殴り飛ばした。オーズは女の子を保護するとすぐに八百万と拳藤に預けた。

「二人とも、この子と他に逃げ遅れた人がいないかお願い。その間だけでも僕が食い止めておくから。」

「待ってください!緑谷さんがしなくても他のヒーローが・・・・」

「今戦えるのは僕しかいないんだ!それに・・・・・助けられる命があるのに手を差し伸べないなんてことしてたら、僕は一生後悔する!」

「っ!?」

 出久の姿勢に八百万は心を打たれる。

 誰かが助けてくれる。他のヒーローが来るまで頑張ってもらおう。

 ヒーローが他力本願なことを言っては元も子もない。

 出久が知っているヒーローは、どんな困難にも、どんな強敵にも決して最後まであきらめず立ち向かうヒーロー。時に敗北することも、逃げることもあった。けれど昨日より今日、今日より明日へと少しずつではあるが前へと進み、勝利するヒーローを出久は知っていた。

「じゃあお願い!」

 出久はそう言うとハンマーヤミーの方へと駆け出す。

「八百万、アタシ・・・・・出久が本当の意味でヒーローに思えてきた。」

「ええ・・・・・・わたくしにもそう見えましたわ。さぁ、緑谷さんから頼まれたことをしましょう!」

「うん!」

 二人は出久から頼まれたことを始める。

 一方出久はハンマーヤミーを足止めしていた。

「お前・・・・・・・オーズ・・・・・・・はかい・・・・する・・・・!た・・・・・・おす・・・・・!」

(このヤミー、まるでガメルのヤミーだ!パワーがあってしかも固い!ゴリラでたたいているのでやっと渡り合えてる!)

 オーズはゴリラアームでハンマーヤミーに応戦しているが本来の力を発揮されていない状態では、力では対等であった。しかしバッタの脚ではそのパワーを支えるほどの力はなかった。

「ふんっ!」

「ぐあっ!」

 オーズはハンマーヤミーのアッパーに耐えきれず弾き飛ばされてしまう。

「まだだ・・・・・まだ安否が・・・・・・」

 オーズが心配していると二人が大声でオーズに伝えた。

「緑谷さーん!避難誘導と安全の確保はできましたわー!」

「だからー!安心して―!」

 オーズはそれを聞くと微笑んだ。

「ありがとう、八百万さん。拳藤さん。」

 オーズは灰色のメダルをセットする。

「これ以上被害を出さないためにも、これでケリをつける!変身!」

【サイ!ゴリラ!ゾウ!サゴーゾ、サゴーゾ!】

 サイのように強い角を持ち、ゴリラのように強い力を持ち、象のように大地を響かせる足を持つコンボ、サゴーゾコンボへと変身する。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!うおぉお!おっ!おっ!おっ!うぉおおおおおお!」

 オーズは力が溢れるあまりドラミングをする。ドラミングによって衝撃波が発生し、遠くにいる二人にも伝わってくる。

「なんて衝撃ですの!」

「こんなに遠くに離れているのに!」

 二人は衝撃を受け、踏ん張る。

「うぉおおおおお!」

「おおおお!」

 オーズとハンマーヤミーは同時に駆け出し、そして同時に拳をぶつけた。

 先ほどまでとは違い、パワーを支える象の足がある。足、腰、肩へ力が伝わり、そして発揮されたパワーはハンマーヤミーを押し返す。

「ぐぉお!」

 ハンマーヤミーは弾き飛ばされ、後ろへ少し飛んだ。

「はぁ!うぉ!はっ!はぁあ!」

 オーズは左右の拳をラッシュする。ハンマーヤミーは力負けし、倒れる。

「一気に決める!」

【スキャニングチャージ!】

 オーズはオースキャナーでスキャンする。

 オーズのゾウレッグにエネルギーが集中し、少し浮くとすぐに地面に沈む。

 ハンマーヤミーは足を地面にめり込ませた状態で徐々にオーズへと引っ張られる。

 オーズのエネルギーがサイヘッドとゴリラアームに集中する。

「はぁあああ・・・・・・・せいやー!」

 オーズのサゴーゾインパクトがハンマーヤミーに炸裂。ヤミーはメダルとなり消滅した。

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・なんとか・・・・かっこふっ!」

 オーズの変身が解けるとそこには吐血している出久の姿があった。

(ヤバい・・・・・またやっちゃ・・・・)

 出久が地面に倒れそうになるところを二人が急いで駆け寄り、間一髪で受け止めた。

「緑谷さん!しっかりしてください!」

「緑谷!緑谷ってば!」

 

 

「本当に心配しましたわ!」

「本当に心配したんだから!」

 病院に運ばれた出久は二人に同時に怒られていた。八百万は芦戸や麗日から聞いていた意味が理解できたとその時思った。

「ご、ごめん・・・・・・あのさ・・・・・」

「なに?」

「あの事件・・・・・・どうなったの?」

「ああ、あれ?それがヒーローがやっつけたって話になってるわよ。本当は緑谷が倒したのに。」

「でもそちらの方が好都合ですわ。私たちも緑谷さんもヒーロー免許を持っていませんもの。」

 ヒーロー活動する上において必要なもの。それはヒーロー免許である。自分がヒーローである身分証としてとても重要なものである。

 無許可による公共の場での”個性“の使用は法律に違反する。しかしこれはあくまで発動型の身に適応されるといってもいい。

 例えば生まれつき腕が複数ある個性の持ち主がいたとする。この時点で個性を使用している。ならばこの法律がすべての“個性”持ちに適用されるのであれば出久のように見た目も普通の人間と変わらない人だけが暮らせ、異形型は法によって裁かれるのだ。

 それに加えサイドキックなどが欲しがる個性などはヒーローが庇ってしまうケースも多い。ヘドロの時のがいい例だ。誰も人を見ず、”個性“だけを見て決めてしまっていた。

「僕はそれよりも誰かがケガしてないか心配だな。」

「ヒーローのデステゴロが全身打撲、他のヒーローも負傷を負っていますが、幸いにも死者がいませんでしたわ。」

「本当、すごいことだよね。あの敵、メダルでできていたのかわからないけどプロをも圧倒してた。」

 二人は事件を改めて確認した。間近で見ていたとはいえど受け入れるのには結構な時間が必要だった。

「でも二人ともありがとう。二人がいてくれなかったらあの状況はさらに悪化していたかもしれないから。」

 出久が笑顔でそう言うと二人は顔を赤くする。

「どうかしたの?大丈夫?」

「え、ええ!大丈夫ですわ////」

「そ、そそ、そうそう////」

「???」

 出久は分からず首を傾げた。

「み、緑谷さん!よ、よろしければ百と呼んでももらってもいいですか?」

「わ、私も一佳って呼んで。」

「わかった。じゃあ僕のことも出久って呼んでいいからね。百ちゃん、一佳ちゃん。」

「はい!」

「うん!」

 この時どこかで三人がライバルが増えたと感じ取った。

 



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7 USJとシャウタ

 オールマイトの雄英高校への赴任。それはマスコミをも騒がせるニュースであった。連日のように雄英高校の前にはオールマイトがどのような授業を執り行っているか、生徒たちがどのような心境なのかを知りたい者で溢れかえっていた。

 流石の雄英もそのことにしびれを切らそうとしていた時、その事件は突如として起こった。

 マスコミの雄英への侵入。そのことに生徒たちは人騒がせと思っているものが大半であった。しかし、出久は別の観点で考えた。

(どうしてマスコミが雄英のあの厚い壁を壊せたんだ?そんな個性の人が・・・・・・いや、マスコミでもそんな力自慢の人はふつう取材関係の役職には就かせない。だとすると別の誰かが・・・・・・・)

 出久と同じようにプロヒーローも同じことを考えていた。

 そしてマスコミの侵入事件の翌日、出久は体育の授業を終え自分の教室へと戻ろうとしていた。そんな時偶然にも相澤と出くわした。

「っ!緑谷、ちょっといいか?」

「相澤先生。どうかしたんですか?」

「確かお前のクラスこの後自習だったよな?」

「ええ。なんか先生が急な用事ができたとかで・・・・・」

「丁度いい。こっちの方で手伝いをしてくれ。

「僕でよければ・・・・・」

 出久は心操に自習時間はA組の手伝いに行くと伝え言われた場所に来た。

 相沢としばらく待っているとコスチュームを着たA組がやって来た。見覚えのある顔や初めて見る顔があった。

「よーし、お前ら集まったな。今回の訓練ではリアルさを出すために緑谷に協力してもらう。わかったな?」

 相澤の言葉にA組の面々は返事をする。

(やった!出久君と一緒や!)

(クラスとか違うから一緒にできないかと思ったけどラッキー!)

(訓練でイイトコ見せて差を広げないとね!)

(遅れている分、近づいて見せますわ!)

 四人に関しては闘志を燃やしていた。

(危ないとこにホイホイ来てんじゃねーよ、クソデクが!)

 爆豪は出久のことを心配していた。

 そんな中メガネ男子が笛を片手に指示を出す。

「バスの席順でスムーズにいくように番号順に二列で並ぼう。」

 そう言われ中に入るがバスはメガネ男子が思っている縦に席が分かれているものではない方の構造であった。

「こういうタイプだった!くそう!!!」

「意味なかったなー。」

 メガネ男子に芦戸がそう言うと出久の隣に座っていた女の子が話しかける。

「緑谷ちゃん、私、蛙吹梅雨って言うの。梅雨ちゃんって呼んで。」

「うん、よろしく梅雨ちゃん。」

「緑谷ちゃん、アタシ何でも思ったことを口にしちゃうの。あなたの個性ってたくさんあるようだけど、どのくらいあるのかしら?」

「ああ、それ俺も思った。俺は切島鋭児郎ってんだ。」

「俺は上鳴電気。」

「俺は尾白猿夫。」

「俺は砂糖力道。」

「俺は常闇踏陰だ。で、こっちが口田甲司だ。」

「僕の名前は青山優雅と言うんだ。覚えておいてくれ☆」

「俺の名は飯田天哉だ。A組の学級委員をしている。」

「俺は轟焦凍だ。」

 男子全員が自己紹介すると女子からも一人自己紹介をする。

「ウチが最後だね。ウチは耳郎響香。」

「みんな、ありがとう。僕の個性なんだけど紫を除けば結構あるよ。」

 出久はそう言うとメダルホルダーを取り出しみんなに見せる。

「結構あるな。一組だけ除けばみんな色がある。」

「なぁ、緑谷。色によって能力とか変化すんのか?」

「うん、コンボにはそれぞれ特有の能力があるんだ。緑のガタキリバだと分身による人海戦術、黄色のラトラーターだと高熱の放射、灰色のサゴーゾだと重力操作、水色のシャウタだと体を液状化させることができるし、オレンジのブラカワニだと超回復があるし、赤のタジャドルは超音速飛翔で飛べるんだ。」

 出久の説明を聞くと一同驚く。

「緑谷、お前の個性ってスッゲーな。万能じゃねぇか。」

「そんなんじゃないよ。一枚一枚の特性を理解してその場に合った使い方をするのって大変だし、それにコンボは過ぎた威力を持ってて体力も持っていかれるから。」

「なるほど。決して万能ではないというわけだな。では先ほど言っていた紫は何なのだ?それにここにはないようだが・」

「・・・・・・・・・紫は、正直言って制御できないんだ。メダルに呑まれるって言ったらいいのかな?力の制御ができなくて周りにあるものすべてを破壊する。だからもし使うとしたら命かけるときかな?」

 出久はそう言った。

(オールマイトからも紫を使ったときは生徒の安全を優先しろと言われてはいるが・・・・・・本人がそこまで言うのなら相当危険なのか。それに、こいつらは肝心なことに気づいていないな。緑谷の個性は他の個性よりも逸脱している。それにさっきの色のコンボの説明、ありゃなんだ。ただでさえメダル一枚の能力が高い上に特殊能力まで付属は反則だろ。ま、本人もその危険性が分かっているから中学までは教師には秘密にしてもらっていたらしいがな。)

 話に耳を立てていた相澤はそう思った。

 目的地に着くまでにみんなは自分の個性を話し、出久はその個性のアドバイスや応用などを話した。

 

 

 雄英公庫王敷地内に建てられているドーム。そこはまさにテーマパークを連想させるような施設であった。

「スッゲ―――――――!USJかよ!!」

 切島がみんなの思いを代弁すると一人のヒーローが説明する。

「水難事故、土砂災害、火事、etc.・・・あらゆる事故や災害を想定し、ボクが作った演習場です。その名も・・・・

U(ウソの)S(災害や)J(事故ルーム)!!」

(本当にUSJだった!!)

 一同がそう思う中、説明をしたヒーローに出久はテンションが上がる。

「スペースヒーロー「13号」だ!災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

「わー、私の好きな13号!」

 麗日もテンションが上がる中、相澤はあることを尋ねた。

「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせるはずだが。」

「それがですね、先輩。通勤時間に()()ギリギリまで活動したみたいで・・・・」

 13号はそう言いながら指を三本立てる。

「仮眠室で休んでいます。」

「不合理の極みだな、オイ。・・・・・・・仕方ない、始めるか。」

「えー、始める前にお小言を一つ二つ・・・・三つ・・・四つ・・・」

(増える・・・)

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性は”ブラックホール“どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます。この”個性“でどんな災害からでも人を救いあげているんですが、しかし簡単に人を殺せる力です。みんなの中にもそういう”個性“がいるでしょう?」

(それは分かる。僕のメダル、これは800年前の王が錬金術師に作らせたものだ。これで王は自分に逆らうものすべてを力で黙らせてきた。でも王は欲望が強すぎるあまりすべての力を求めて、そしてすべてを失った。僕の中にあるこのコアも、簡単に人を殺してしまう・・・・・)

 出久は深刻な顔をする。

「超人社会は”個性”の使用が資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます。しかし一歩間違えば容易に人を殺せる”いきすぎた個性“を個々が持っていることを忘れないでください。相沢さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では心機一転!人命のために”個性”をどう活用するのかを学んでいきましょう!君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいね。」

(・・・・・・13号、カッコイイ!!)

「以上!ご清聴ありがとございました。」

 13号はそう言うと一礼する。生徒たちからは拍手が送られる。

「よし、それじゃぁ・・・・」

 相沢が施設内に目を向けた途端、何か違和感を感じた。そして同時に出久の第六感が危険を知らせた。

「っ!?」

 出久は咄嗟にオーズドライバーをセットする。

「緑谷?」

 その直後、USJ内に黒霧のようなものが出たかと思えば、そこから全身が手で覆われている男を筆頭に多くの敵が入ってきた。

「全員一塊になって動くな!13号、生徒を守れ!」

「相澤先生、あれってもしかして!」

「お前の予想通り、敵だ!」

 相沢はゴーグルを装着する。

 敵の中の黒い人物が口を開いた。

「イレイザーヘッドに13号ですか。先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトはここにいるはずなのですが・・・・」

「やはり先日のはクソ共の仕業だったのか。」

「どこだよ・・・・せっかくこんなに大衆を引き連れてきたのにさ・・・・オールマイト、平和の象徴・・・・いないなんて・・・子供を殺せば来るのかな?」

 体中に手がある男は出久たちを見ながらそう言った。

(間違いない、こいつらは本気だ。しかも馬鹿じゃない。ここのセキュリティーをやすやす突破して入ってきてる!)

 出久はいつでも変身できるように構える。

「敵ンン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるだろ!!」

「敵もバカじゃないよ!」

「先生、侵入者用センサーは?」

「もちろんありますが・・・・!」

「現れたのはここだけか学園全体か・・・・・なんにせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういうことができる“個性(ヤツ)”がいるってことだな。」

「多分ここだけだよ。あいつが言っていたでしょ?オールマイトを狙っているって。つまり・・・・・目的があるから用意周到に画策された奇襲!」

 出久が冷静に分析をする。ここは場数を踏んでいるからこそできるものである。

「13号、避難開始!学校に電話試せ!センサー対策も頭にある敵だ!電波系の”個性”が妨害している可能性もある!上鳴、おまえの”個性”で連絡試せ!」

「っす!」

 相沢はそう指示を出すと敵の方へ突っ込んでいく。

「おいおい、大丈夫なのかよ!先生の個性じゃあの数は・・・・」

「大丈夫だよ、峰田君。それに個性にだけ頼っていたら三流だ。先生はプロ、一芸だけのヒーローじゃない!」

 出久はあの時の模擬戦で確信を持てていた。

 “抹消”の個性。それだけでは敵を制圧できない。ならばどうすべきか?足りないものを補う力を身に付けることで可能性を大きくする。それがプロヒーローと言うものである。

「射撃隊!行くぞ!」

「情報じゃ13号とオールマイトだけじゃなかったのか!?ありゃ誰だ!」

「知らねぇ!!が、一人で正面から突っ込んで来るとは・・・・」

『大間抜け!!』

 射撃系の個性を発動しようとするが個性は消されているため発動しない。

 そのことに呆けている敵の隙を相沢は見逃さず装備している包帯を二人に巻き付け頭同士をぶつける。

「ばか野郎!!あいつは見ただけで“個性”を消すっつぅイレイザーヘッドだ!」

「消すぅ~~~~~!?へっへっへ、お俺らみてぇな異形型も消してくれるのか?」

 四本腕の個性を持つ敵が相澤を狙うがそれよりも前に相澤のパンチが敵に入った。

「それは無理だ。発動系や変化形に限る。が、お前らみたいなやつらのうまみは統計的に近接格闘で発揮されることが多い。」

 殴り飛ばした敵の脚に包帯を巻きつけ後ろから来る敵の個性を身を低くして回避するとそのままぶつけた。

「だからその辺の対策はしている!」

「肉弾戦でも強く・・・・その上ゴーグルで目線を隠されていては”誰を消しているか“わからない。集団戦においてそのせいで連携が後れを取るな・・・・なるほど。嫌だな、プロヒーロー。()()()()じゃ歯が立たない。」

 全身手で覆われている男が冷静に分析をする。

 13号が引率して避難しようとするが出口に黒い敵が立ちふさがる。

(いつの間に!少し目を離してたけど階段を上ってくる様子はなかった・・・・・てことは移動系の個性!)

「初めまして。我々は敵連合。僭越ながら・・・この度はヒーローの巣窟雄英高校に入らせていただいたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことです。本来ならばオールマイトがいるハズ・・・・何か変更があったのでしょうか?まぁ・・・・それは関係なく・・・・」

 13号は警戒して人差し指の蓋を開けいつでも”個性”を発動できるようにする。

「私の役目はこれ―――」

 敵が何かを言おうとした途端、爆豪と切島が攻撃を仕掛けるが敵は回避する。

「その前に俺たちにやられることは考えてなかったのか!?」

「危ない危ない・・・・・そう・・・・生徒と言えど優秀な金の卵。」

「ダメだどきなさい、二人とも!」

 13号が注意した途端、敵の黒い靄を出久たちを覆うように広げた。

「散らして、嬲り殺す。」

(このままじゃマズい!持っててよかった!)

出久はカンドロイドの栓を開け、敵に投げつける。カンドロイドはクジャクカンで一気に敵に接近し顔にぶつかる。

「ぐっ!」

 黒い靄は若干弱まったがそれでも何人かはどこかへ転送させられた。

「っ!?」

 出久が次に目にしたのは水であった。目の前を一面水が貼ってあった。そしてそこがどの場所か出久は見当がついた。

「水難!?」

 直後、出久は水の中へと落ちる。

(奴らの狙いはオールマイトを殺すこと・・・・そしてあいつの“個性”はワープ!ここまでするなんてまるでカザリだ!)

 出久がそう思っているとボンベを装備した敵が目の前にいた。

「来た来た。」

「っ!?(しまった!敵が待ち構えていることを頭から外してた!今から変身しても間に合うかどうか・・・・・)」

「オメーに恨みはないけど、サイナラ!」

 そう言うと敵は出久に襲い掛かろうとした。だがその瞬間蛙吹が敵を蹴る。蛙吹の脇には峰田が掛けられていた。

「緑谷ちゃん。」

 蛙吹は下で出久を確保すると海面へ上昇する。

「サイナラ。」

 蛙吹は海面へ上昇し出久を船の甲板へと乗せた。

「カエルの割になかなかどうして・・・・おっぱいが・・・・くっ・・・・」

「っ!?」

 峰田がどさくさ紛れに蛙吹の胸の感触を味わっていたことに気づき甲板に投げつける形で上げた。

「ありがとう、梅雨ちゃん。」

「どういたしまして。それより大変なことになったわね。」

 蛙吹は船に上がると出久と共に身を屈める。

「カリキュラムが割れていた。単純に考えれば先日のマスコミ乱入は情報を得るために奴らが仕組んだってこと。奴らは虎視眈々と準備をしてきたんだ。」

「でもよでもよ!オールマイトを殺すなんて出来っこねぇさ!オールマイトが来たらあんな奴らケチョンケチョンだぜ!」

「峰田ちゃん・・・・殺せる算段が整っているから連中こんな無茶しているんじゃないの?そこまでできる連中に私たち嬲り殺すって言われたのよ?オールマイトが来るまで持ちこたえられるのかしら?オールマイトが来たとして・・・・無事に済むのかしら?」

 蛙吹の言葉にだんだん峰田の顔は青くなる。

「確かに、その通りだ。でも・・・・・あいつらはそれをまだ見せていない。」

「どういうことだよ?」

「相澤先生の戦闘を見て気づいたとは思うけど、あいつらは強くない。相沢先生があしらえる相手ってことはチンピラ同然。でも問題はそこじゃない。多分アイツらは捨て駒だ。」

「捨て駒!?あいつらが!」

「うん。その証拠に指揮を執っていなかった。つまりいる人材があの中にいなかったってことになる。でもそんなことよりまず僕たちが考えるのは・・・・・ここから脱出することだ。おそらくあいつらの中にしびれを切らして船を沈めに来る奴らがいると思う。そうなったら峰田君が一番危険だ。蛙吹さんの個性と僕の青のメダルのコンボで逃げ切ることはできる。でも峰田君は水中で長く息も続かないし背が低いから敵につかまってしまう。やるなら短時間で一網打尽にできる戦術をする!」

「緑谷ちゃん、その発想はいいけれど相手がこっちの個性を知っているって可能性はないのかしら?」

「断言できる。ない。」

「どうしてかしら?」

「梅雨ちゃんがいるからだよ。例えば僕が敵だとしてみんなの個性を知っているのだったら僕は火災ゾーンに蛙吹さんをワープさせる。」

 出久がそう話していると突然船が大きな音を立て揺れた。それと同時に船に大きな傷ができた。

「じれったいだけだ。ちゃっちゃとおわらそう。」

 敵の一人の攻撃が船を割った。

「なんて力・・・!船が割れたわ!」

(正直、ここでコンボは使いたくなかった。できればもう少し後・・・・・他の人たちを救出するときに取っておきたかった。でも今はそんな悠長なこと言ってられない!)

 出久はメダルホルダーからメダルを三枚取り出すと閉じて蛙吹に渡した。

「緑谷ちゃん?」

「二人とも、よく聞いて。」

 出久は自分が考えた作戦を二人に言う。

「緑谷!またあの時みたいに血を吐いちまったら元も子もねぇじゃねぇか!」

「峰田ちゃんの言う通りよ。もっと他に・・・・・」

「ごめん。だけど今はこれしかないんだ!敵が水中にいる可能性だってある。このコンボならあいつ等よりも早く移動できる。それに・・・・・ただ、手が届くのに手を伸ばさなかったら死ぬほど後悔する。それが嫌だから手を伸ばすんだ。それだけ。」

 出久は二人に微笑みながらそう言うとオーズドライバーにメダルをセットする。

 セットされた水色のメダルが光ると、出久はオースキャナーでスキャンする。

「変身!」

【シャチ!ウナギ!タコ!シャ・シャ・シャウタ!シャ・シャ・シャウタ!】

 シャチのようにどんな暗いところにいる敵を見つけ、ウナギのように絡み付き、そして電気を流し、タコのように吸い付く足で敵を捕まえることの出来るコンボ、シャウタコンボへと変身する。

「はっ!」

 オーズのシャチヘッドが光るとオーズは水のようになり湖の中へと飛び込む。

「こいつ自分から突っ込んでききやがった!」

 敵はオーズに攻撃を仕掛けるがオーズは見なくてもわかっているかのように避ける。

 シャチヘッドの能力である超音波で敵の位置を把握し、ウナギウィップで敵を捕縛すると電撃を流し弱らせ、遠くにいる敵をタコレッグの八本足で捕縛し一点へ集めると一気に船の上へと急上昇する。

「梅雨ちゃん!峰田君!」

「わかったわ!」

 蛙吹は峰田を抱えて上へと跳ぶ。

 オーズはオースキャナーで読み込む。

【スキャニングチャージ!】

「はぁあああ・・・・・せいやあああああ!」

 オーズのタコレッグがドリルのように回転し放たれる必殺技、オクトバニッシュが船を貫き炸裂する。

 船を簡単に貫く威力に水柱が立ち、そして水は元に戻ろうと収縮を始める。それと同時に船が沈むことにより渦潮が発生した。

「なんて馬鹿でけぇ威力だ!これじゃぁ逃げられねぇ!」

「馬鹿!感心するな!」

 敵が悠長に話している中、峰田はやけくそ気味にモギモギを投げつける。

「オイラだって・・・・・オイラだってぇえええええ!」

 峰田のモギモギによってくっ付いていく敵は逃れる術は無く、そのまま一塊になって身動きが取れなくなった。

「とりあえず()()()()突破って感じね。すごいわ、二人とも。」

 



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8 暴走のプトティラ

最近あるSSのことを思い出して探しているのですがなかなか見つかりません。知っている人がいれば教えてください。
NARUTOでオリキャラが出てるものです。物語の中でサクラのおじいさんが出たりイタチが木の葉に無事に戻ってサスケとサクラが罪人扱い。サスケはオリキャラによって写輪眼を子供にも継がせられないようになる話です。
特徴的な話で祭りの時にナルトと日向が湖の上で御三家と共に演武みたいなのをするってのがあります。


「今朝は快便だし、奴らは一日中くっ付いたまんまだぜ!」

「・・・・・・・・」

 敵に勝利したことに喜ぶ峰田に対し出久は深刻な顔をしていた。

「どうしたの、緑谷ちゃん?」

「敵がこの程度だと、相澤先生は苦戦しない。けど・・・・・・」

「やっぱりオールマイトを倒せる手立ての方が危険度が高いって思っているのね?」

「うん。純粋に相澤先生の抹消だと全ては対処できない。だからできればどこかで撤退するための一瞬を作ろうと思うんだ。このまま水辺に沿って歩いて出口を目指すついでにね。」

 出久の言葉に峰田が反応する。

「なに言ってんだよ緑谷!相澤先生はプロなんだぞ!お前が言ってたようにチンピラだったら問題ねーじゃねーか!それに先生の“個性”さえあれば問題ねぇって!」

「それは違うよ。確かに発動系の個性は消せてもベースが鍛錬を積んでいたら話は別になる。」

 出久が最も恐れていること。それは個性使用者本人が鍛えていることだ。

 相澤先生は技量や個性の面では敵にとっては脅威である。ではその脅威に打ち勝つにはどうするべきか?答えはいくつもあるが大きく分けると力と知恵。この二つと言えよう。

 個性を消されたとしても圧倒的力を使ってねじ伏せるか、もしくは知恵を振り絞り相手の弱点を突いたとたんに自分のできうる限りで倒す。どちらも有効と言える。

 

 

 山岳ゾーン

「うぉらっ!」

 上鳴は八百万に作ってもらった通電性の高いスパイクバットで敵と応戦していた。

「緑谷のアドバイス貰って助かったぜ!」

「ウチもっ!」

 耳郎はイヤホンジャックを八百万に作ってもらった模造刀に差し振動を伝わせ敵を倒していた。

 出久は二人の個性を生かせる簡単なものを提案した。

 上鳴の場合は電気を()()だけである。纏った電気のキャパが越えるとショートしてしばらくは使い物にならないのは自覚している。なら最大限に生かせるものは何か?

 それはつまり纏った電気を外へと最小限に放出し、敵に最大限のダメージを与えることである。だからと言って棒では意味がない。当たる面積によって電気の威力は左右されてしまう。当たる箇所がどこであるとしても敵に有効であること。

 それでスパイクバットなのである。当たればスパイクから筋肉へと電気が伝わり、痙攣を起こす。それだけでも肉体系敵にとっては有効である。また電気が通じない相手にも武器によって多少のダメージを与えられるのだ。

 そして耳郎の武器は音波カッターをベースに出久は考えて考案したものだ。電動髭剃りは細かく振動をさせることによって短くなった毛をも剃ることができる。しかしそう言ったものには電池が必要ではあるが耳郎は違う。自分の心音と言う武器がある。後はそれを武器と掛け合わせ使えば敵に有効に活用できる。

「ですが早く皆さんの下へ戻らないといけませんわ!それに・・・・・」

 八百万は一番心配していることがある。それは出久の身体のことである。

 彼女が知っている限りコンボを使えば必ずと言っていいほど吐血している。もしこの戦いの中でコンボを使っていれば彼は死んでしまうかもしれない。それだけは嫌であった。

()()()()

 八百万の背中から大きなものが出てくる。

「時間がかかってしまいますの。大きいものを創造するのは。」

「シート?」

「なんのつもりだ?」

「厚さ100mmの絶縁体シートです、上鳴さん。」

「後のフォロー頼むぜ、二人とも!」

 上鳴は最大出力で放電する。その周辺にいる敵は感電し、気絶する。

「さて・・・・早く合流しましょう。」

「つか服、超パンクに・・・・」

 心配する耳郎に八百万は言った。

「また創りますわ。」

 そう話している中、地中から謎の手が出てきた。

 

 

 出久たちが相澤が戦っている場所付近に近づいてみるとそこには驚くべき光景があった。脳がむき出しの敵が相澤の片腕を握りつぶしていた。その光景に蛙吹と峰田は恐怖し、出久にはある光景がフラッシュバックした。

「死柄木弔。」

「黒霧、13号はやったのか?」

「行動不能にはできたものの散らし損ねた生徒がおりまして・・・・・一名、逃げられました。」

「・・・・・・・・は?」

 死柄木は間抜けな声を出す。

「は――――――・・・・」

 溜息を吐くと顔を掻き始める。

「はぁ――――――」

 両腕で首をガリガリと掻き続ける。

「黒霧、おまえ・・・・お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ。さすがに何十人ものプロ相手じゃかなわない。ゲームオーバーだ。あーあ・・・・()()()ゲームオーバーだ。」

(ちょっと待て・・・・・・・()()()()()()()?アイツは・・・・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?)

 出久の中で何かが壊れ始めた。そしてそれに反応するかのように出久の中にあるメダルが今か今かと待ちわびていた。

「けどその前に、平和の象徴の矜持を少しでも・・・・」

 死柄木は一瞬で出久たちの下へ近づき、手を伸ばす。

「へし折って帰ろう!」

 死柄木の手が蛙吹の顔を捉えようとした瞬間、出久の胸から三枚のメダルが飛び出し死柄木を弾き飛ばした。

「っ!なんだよこれ・・・・・イッテェ・・・・・」

 死柄木は弾き飛ばされ、当たった個所に手を当てる。

「・・・・・・・梅雨ちゃん、峰田君、聞いて。今から時間を稼ぐからその間に相澤先生を連れてみんなの下まで運んで。それとこれ。」

 出久はメダルホルダーを蛙吹に手渡した。

「これって・・・・・・緑谷ちゃんの大事なメダルを収めているものじゃない。それにここにあるメダルがないと変身は・・・・・・」

「大丈夫。もう一組持っているから。」

 出久はそう言うと陸に上がり、オーズドライバーをセットする。

 紫の三枚のメダルがオーズドライバーにセットされる。

「殺せ、脳無。」

 脳無は死柄木の指示で出久に襲い掛かってくる。しかしその前にオースキャナーがひとりでにメダルをスキャンする。

【プテラ!トリケラ!ティラノ!プ・ト・ティラーノザウルス!】

 発せられる冷気に脳無は動きを止められた。いや、凍り付かされた。

 はるか昔に大空を制した翼を持ち、はるか昔に優れた防御と攻撃を持ち、はるか昔に王者として君臨した足を持った恐竜のコンボ、プトティラコンボである。

「うぅぅ・・・・・・・・・・うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 オーズの目が光り、謎の波動が発せられ、凍り付いていた脳無は解放されると同時に弾き飛ばされた。脳無の片腕と片足は吹き飛ばされたときに引きちぎれるが、すぐに再生する。

「あの敵・・・・・・再生の個性でもあるのかしら?でも今はそんなことよりも緑谷ちゃんから言われたお願いをしないといけないわね。峰田ちゃん、行くわよ。」

「お、おう・・・・」

 二人は相澤先生の下に向かい、麗日たちのいる方へと運んでいく。

「梅雨ちゃん、出久君は?」

「見ての通りよ。でも何のメダルなのかしら?緑谷ちゃんのメダルはここにあるのに。」

 蛙吹はそう言うとメダルホルダーを見る。それを見て麗日はメダルホルダーを手に取ると中身を確認する。その中にはバスで見せたメダル全てが入っていた。

「ちょっと待って!これってあの時見せたメダル全部入ってない?だとしたら出久が使ってるのって・・・・・・・」

 その時その場にいた誰もが気付いた。決しておいそれと使わないと本人が言った紫であるからだ。

 一方オーズは脳無と激しい戦闘を繰り広げていた。

 オーズが殴ろうとすれば脳無も殴りで相殺する。

 一発、一発。重く、重い一撃がぶつかり合い衝撃波が発生する。

「ふっ!」

 ダンッ!

「はっ!」

 ガッ!

「うぉお!」

 ガンッ!

「っ!?」

 脳無はオーズの攻撃を受けるたびに腕がグチャグチャになる。その度の再生を行うが攻撃の速度が速くなるにつれてその再生は間に合わなくなってきていた。ショック吸収をも使ったとしても対処できるものではなかった。

「おいおい・・・どうなってんだよ黒霧?脳無は先生の最高傑作じゃないのか?」

「あの少年の個性、強力ですね。しかしあの戦いぶりからして感情的に戦っているようです。そう長くは持たないはずです。」

 黒霧は冷静に分析をした。しかし彼は知らなかった。紫は無のメダル。全てを無にするまでその暴走は止まらないことを。

「ふっ!」

 オーズのプテラヘッドが光り、エクスターナルフィンが広がり脳無に向かい一気に飛ぶと肩を掴み、一気に急上昇。上へ放り投げるとティラノレッグのテイルディバスターを使い巨大な尻尾を出すと何度も脳無を縦横無尽に叩く。

「はぁあ!」

 オーズは脳無の頭上に位置するとティラノレッグで脳無を掴み一気に地面へ急降下する。

「ぐぁあっ!?」

 脳無は声を上げる。オーズは脳無から離れると地面へ向け片腕を突っ込んだ。地面から紫色の光が発光し、地面から引き抜くとその手にはメダガブリューを手にしていた。オーズはセルメダルを一枚挿入すると飲ませる。

【ゴックン!プ・ト・ティラノ・ヒッサツ!】

「うぉおおおお!」

 メダガブリューをバズーカモードにしたオーズは圧縮したエネルギーを脳無に向け放った。脳無に直撃し、四肢を失い吹き飛ばされた。しかし再生は行われず、まるで意識を失ったかのようにピクリとも動かなかった。

「っ!?死柄木弔、脳無が機能を停止しました!」

「なっ!オールマイト用に作りだしたんだぞ!なのに倒されるって・・・・・化け物かよ・・・・」

 死柄木はそのことに驚くがそれどころではない問題が起きた。

「うぅう・・・・・・・・・っ!うぉおおおおおおおおおおおお!」

 オーズは死柄木たちに目をつけるとメダガブリュー片手に襲い掛かってくる。

「やっば・・・・・お前たち、俺たちを守れ。」

 その指示に従い死柄木を守るように敵たちがオーズに向け個性を発動する。しかし今のオーズにはそれは通じず、アックスモードのメダガブリューを振り回し、敵たちを次々と倒していく。

「こんの!」

 オーズの後ろから電気系の個性の敵が電撃を放つ。その攻撃はオーズに直撃するが効果は全く持って皆無であった。オーズは敵の方に気づくと一瞬で近づき片手で顔を掴むと地面へ叩きつける。

「うぅぅ・・・・・・・・・・うぉおおおおおおおおおおお!」

 オーズの理性が吹き飛び、冷気を周辺へ放つ。周辺にいた敵は氷漬けにされ、動けなくなった。

「おい、助けに来たけど大丈夫みたいだな。」

「ああ・・・・・だがアイツ、大丈夫なのか?あれってコンボだろ?」

(それもあるが・・・・・・・・あのクソナード、どんだけ使ってんだ?コンボは相当負荷がかかるんだろ?ましてやあれはどう見ても紫色してやがる・・・・・・・下手したらアイツ・・・・・!)

 敵をあらかた倒したオーズは次の標的を探すようにあたりを見渡す。そしてオーズは麗日たちの方を向いた。

「お、おい・・・・・・ヤバいんじゃないのか?」

「もしかして次はアタシたち?冗談でしょ!」

「出久君・・・・・」

 一同が心配する中、爆豪たちは出久を止めようと駆け出そうとした時であった。重く閉じられていたUSJの扉が勢いよく壊された。

「もう大丈夫だ、みんな。私が来た!」

 



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9 アンク

お待たせしました。
時間はかかって雑な感じですがUSJ片はこれでおしまいです。


 山岳ゾーン。敵の一団を上鳴の電気で一掃した八百万たちは今、両手を上げていた。

「手ぇ上げろ。“個性”は禁止だ。使えばこいつを殺す。」

「上鳴さん!」

「やられた・・・・・緑谷からも注意されていたのに・・・・」

 上鳴はキャパを超えた電気を流したためアホの状態になっていた。そんな上鳴は敵にとって格好の的となり、電気系の個性の敵に人質にされていた。

「そこの耳の長い奴。間違っても足にある武器にそれを繋げようとするんじゃねぇぞ。こちとらお前たちの戦い見てんだからな。」

「くっ!」

 耳郎は最初脚に装備している装備で上鳴を巻き込む形でイヤホンジャックによる攻撃を考えていたが先に敵に読まれていた。

「敵の攻撃を読んで事前に防ぐ・・・・・悪くない戦い方だな。」

「だろ。・・・・・・・ん?今の誰だ?」

 敵が後ろを振り向いた途端、敵の腕から上鳴が引き剥がされ八百万たちの下へ投げられる形で解放された。

「テメッ!どういうつもりだ!」

「どうも何も・・・・・俺は初めっからお前たちの仲間じゃないからな。」

 男はそう言うと敵の雷を放とうとする手の小指を逆に曲げた。

「―――――――――――――――っ!?」

 声にならない悲鳴を上げる敵。

「情けねぇな。()()()ならこの程度で悲鳴を上げずに一矢報いるぞ。」

 男はそう言うと右腕を赤い怪人の腕に変身させ、炎を敵にぶつけた。その攻撃は直撃し、敵は気絶した。

 八百万たちはその男の容姿よく見た。金髪で赤のズボンに白のシャツを着ていた。敵であるならば自分たちを助けるわけではないと思うが一応警戒はしていた。

「安心しろ。お前たちに危害とか加えるつもりも必要もない。それより緑谷出久って奴はここにいるか?」

 出久の名前が出た途端、八百万は反応した。

「緑谷さんを知っているのですか?」

「まぁな。それよりアイツは今どこだ?と言うか、ここどこだ?」

 そんな男に対し八百万は場所と事情を説明した。

「なるほどな・・・・大体は分かった。それで?アイツに会うにはどうすればいい?」

「まずは皆さんと合流する方が先決ですわ。きっと出久さんも相沢先生のいる方へ向かっているはず。わたくしたちも向かいましょう。」

「こっからじゃ時間がかかるな。」

 男は一同がいる方を見る。山岳ゾーンは火災ゾーン同様にセントラル広場から最も遠い所に位置していた。ましてや山岳ともあって足場は悪い。訓練場とはいえど13号がこだわって作った場所でもあるのだ。

「ねぇ、ちょっといい?」

「なんだ?」

 耳郎が男に話しかける。

「ウチらを助けてくれたことにはマジ感謝してる。それであんたの名前、うち等に教えてくれない?」

「そういや名前がまだだったな。俺は・・・・・・・っ!?」

 男は急に広場の方を見た。

「あのバカ!紫のメダルを使いやがったな!」

 男はそう言うとなぜか近くにあったライドベンダーにセルメダルを入れタコカンのボタンを何度も押した。ライドベンダーから大量のタコカンが出ると男はその内の一つを手に取り栓を開けるとタコカンドロイドへと変形する。

 すると他のタコカンもタコカンドロイドへと変形する。タコカンドロイドは逆さになりセントラル広間への道を作った。

「話は後だ。とにかくテメーらの仲間と合流して状況を聞いた方がいいらしい。それと俺の名はアンクだ。覚えておけ。」

 

 

「助けに来たのだが・・・・・これってどういう状況?」

 流石のオールマイトも今の状況には困惑していた。

 敵が攻めてきたと飯田から聞いて駆けつけてみれば敵のほとんどが倒されていた。そして立っているのはプトティラ姿のオーズ、死柄木、そして黒霧に生徒たちであった。

「うぅ・・・・・」

「あの紫の姿をした人物は・・・・・・・もしや緑谷少年なのか?しかしあの色は紫・・・・・」

 オールマイトは出久から紫のメダルについては聞かされていた。

 

『オールマイト、もし僕が紫のメダルのコンボで理性を失っていたら倒す気で止めてください。』

『なっ!自分が何を言っているのかわかっているのか!下手をすれば君は・・・・・』

『わかってます。けど紫のメダルは他のメダルと違って別個で封印されていました。当時の錬金術師が滅んだ恐竜をメダルにしました。そして紫のメダルは当時の僕に反応しました。欲がない状態の僕に。』

『つまりそのメダルは・・・・・・無欲に反応した。ということはそのメダルの力によって!』

『ええ。全てを無に帰す。だけど・・・・それはすべてを破壊します。僕はできればこの力を制御したいと思っているんです。』

『なるほど・・・・わかった。いざとなれば私が君を止めよう。』

 

「こういうのは出来ればあって欲しくないと思っていたのだが・・・・・・致し方ないか!」

 オールマイトはファイティングポーズをとる。

「うぅぅ・・・・・・・・うぉお!」

 オーズはオールマイトへ向かい跳ぶ。

「ふっ!」

 オールマイトもオーズに向かい跳ぶ。たがいに拳を突き出し、拳をぶつけあう。

「ぐっ!(マジ痛い・・・・・・いくら私でもこれはちょっとヤバいかも!)」

 オールマイトですらそう思ってしまうほどの威力であった。

 互いのパンチで衝撃波が生まれ、空気を揺らす。

「うぉっ!」

(なんつーバカ力だよ!)

(あの姿でオールマイトと互角なのか?これで普通科かよ!)

 切島は衝撃のあまり声を上げ、爆豪と轟はその光景に驚かされる。

「うぉお!」

 オーズはメダガブリューをオールマイトに向け振り下ろす。オールマイトは咄嗟に体をそらして避ける。

(おいおい・・・・・話には聞いていたが本当に躊躇ないな!これは本気でかからないとこっちが殺されてしまうな。)

 オールマイトはメダガブリューが振り下ろされた地面を見て冷や汗をかきながらそう思った。地面に入った大きく、深い傷はその破壊力を示していた。

「うあっ!らぁっ!」

 オーズはオールマイトへ再度攻撃を仕掛ける。荒々しく、力任せでありながらも急所を狙ってくるオーズの攻撃。オールマイトはその攻撃を避け、隙を見ては拳を叩きこんで動きを止めようとした。

 しかし拳を叩きこんでもオーズは止まることなく戦おうと前に出てくる。

「「出久君・・・・・・」」

 その光景を見ていた麗日と芦戸は手を握り、心配そうに見ていた。

「っ!」

 その戦いを見ていた爆豪があることに気づいた。出久が攻撃をするたびに周りに何かがポタポタと落ちていた。目を凝らしてよく見るとそれは血であった。オールマイトの血ではないかと一瞬思ったがそうではなかった。出久が腕を振りぬいた方向から血が飛んでいた。つまり、今出久は血を出しながら戦っているのだ。

「あんのクソデク!何バカやってんだ!」

 爆豪が飛び出そうとすると轟が止めに入った。

「止せ、爆豪。邪魔になるだけだ。」

「ンナのやってみねぇとわかんねぇだろうが!」

「オールマイトのパワーと互角に渡り合っている状態なんだぞ。俺たちが入っても巻き込まれるだけだ。」

「だが早くしねーとアイツ死ぬぞ!ただでさえアイツはアブネーのによ!」

 二人がそうこうしている間にオールマイトは片腕でオーズのメダガブリューを受け止めた。

「ぐっ!(片腕を痛めるのは致し方ない・・・・・・・だが君を救うためなら、私はこの身を犠牲にしよう!仲間のため、大切な人を守るために自らの犠牲をも厭わない。君は本当に私の個性を受け継ぐに値する人間だ!この先きっと、私がいなくなり混沌とした社会を導くヒーローになってくれる。そして君の背中に付いて行くヒーローや有精卵たちもいるだろう!ならば私は、その希望をここで消すわけにはいかない!)」

 オールマイトは鳩尾に拳を叩きこんだ。オーズは吹っ飛ばされた。さすがのオールマイトも激戦であるがため肩で息をしていた。

「これでおとなしく・・・・・・・・・なっ!」

 オールマイトは驚きを隠せなかった。目の前にはいたるところから血を出しながらもなおも立ち上がるオーズの姿があった。

「出久さん!」

 タコカンドロイドの道から見ていた八百万は飛び降り、オーズとオールマイトの間に着地した。

「三奈ちゃん!」

「うん!」

 麗日と芦戸も階段を下りてオーズの下へと向かう。

「うぅ・・・・・・」

 オーズはゆっくりとオールマイトの方へと向かおうとする。そんなオーズに八百万は声を掛ける。

「出久さん、もうやめてください!それ以上戦えばあなたが死んでしまいます!」

 八百万が必死に声を掛けるがオーズは全く聞く耳を持たなかった。

「どうしても戦うのでしたら・・・・・・私を倒してからにしてください!」

 八百万はそう言うと両手を広げてオーズの前に立ちはだかった。

「危険だ、八百万少女!危ないから下がっていなさい!」

「いやです!出久さんが苦しんでいるのに、何もしないなんて無理です!それに出久さんは誰かのために常に自分の身を犠牲にしてきています。出久さんが皆さんのために体を張るのであれば、私が出久さんのために体を張ります!」

 八百万の思いはまっすぐであった。

 そんな八百万にオーズはメダガブリューを振り下ろそうとする。八百万は覚悟をして目を閉じた。しかし、しばらく経っても痛みは来なかった。恐る恐る目を開けるとそこには顔の前で止められているメダガブリューの刃があった。

「う・・・・・うぁ・・・・・・・・・・うぉお!」

 必死に抑え込んでいるのが八百万にも分かった。

「出久さん・・・・・っ!」

 八百万はオーズに抱き着く。

「もういいんです。オールマイトが来てくれましたからもう戦わなくても大丈夫なんです。」

 あとから来た麗日と芦戸もオーズに抱き付き止めに入る。

「もう無茶しないで!出久君が死んだら、私たち悲しいよ!」

「だから戻ってきて!優しい出久君に!」

 二人は涙を流しながら出久に訴えかけた。

 するとオーズの変身が解けた。

「百ちゃん・・・・・・お茶子ちゃん・・・・・・・三奈ちゃん・・・・・・ありがとう・・・・・・」

 正気に戻った出久に三人はうれし涙を流した。

「まさか愛の力で助けるとはな・・・・・・さて。」

 オールマイトは死柄木の方を見る。

「待たせたようだが、今度は君たちを捕まえるとしよう。」

「冗談だろ?こんな状況で戦うか?悪いけどゲームオーバーだ。バイバイするね。」

 死柄木はそう言うと黒霧のワープで撤退しようとする。オールマイトはスマッシュを叩きこみ食い止めようとするがスマッシュが届くときには死柄木はそこにはいなかった。

「SHIT!」

 オールマイトは悔しがるがすぐに気持ちを切り替え出久たちの方を向いた。

 出久は体中に浅いながらも多くの傷を作り、そこから血を出していた。幸いと言っていいのかまだ吐血だけはしていなかった。

「とにかく君たちは相澤君たちと一緒に・・・・・」

 オールマイトが指示を出そうとした時であった。突如USJ全体を揺らす地震が発生した。

「WHAT!私の携帯には地震速報の通知が来ていないぞ!」

 オールマイトは自分の携帯を見るが地震速報は入っていなかった。そして地震の震源は徐々に上へと向かい、そして地上に姿を現した。

 そこに現れたのは巨大な蟹のはさみを持ったアリの巨大ヤミーであった。

「な、なんだこの生き物は!君たちは早く緑谷少年を連れてここから離れるんだ。君たちも早く!」

 オールマイトはその場にいた全員に指示を飛ばす。爆豪もその言葉に従い退避を始めた。

「なんだよアレ?アレがオールマイトを倒せるっていう敵なのか?」

「アホかクソ髪!あんなもんあるんだったら最初から出し惜しみしねぇよ!」

「言葉は悪いが爆豪の言うとおりだ。俺も敵から聞き出した情報だが脳がむき出しの敵が対オールマイト用に作られたとかの敵らしい。あのバケモンに関しては何も話してなかった。知らなかったのか黙っていたのかと言えば前者だろうな。その証拠に首謀者がトンズラしたんだ。どっちのていでも味方じゃねぇのは明白だろ。」

 切島の言葉に爆豪が反応し、轟が冷静に分析する。

 一同が階段手前に差し掛かった時に飯田が連れて来た教師陣が到着し、巨大ヤミーと戦闘を開始した。

「だめ・・・・・だ・・・・・・ヤミーには・・・・・」

 出久は持てる力で振りほどくとヤミーの方へ走り始める。

「出久さん!」

「「出久君!」」

「デクっ!」

「「緑谷!!」」

 一同出久の行動に声を上げる。

「あのバカ!こんな時でも相変わらずのお人好しだな!」

 その光景を見ていたアンクがそう吐き捨てると蛙吹の持っているメダルホルダーに気づいた。

「おい、そいつを寄こせ。」

「ちょ、ちょっと!」

 アンクは強引に蛙吹からメダルホルダーを取る。

「一応全部揃ってるな。今のアイツには・・・・・・これが限界だろ。」

 アンクはそう言うと三枚のコアメダルをメダルホルダーから取り出し、叫んだ。

 

「おい、出久―――――――――――――!」

 

「っ!?アンク!!」

 出久はアンクの声がする方を振り向いた。

「っ!!」

 アンクは出久へ向けメダルを投げる。投げられた三枚のメダルは横一列に並びながら飛ぶ。出久は右腕を大きく振りメダルを三枚手にすると巨大ヤミーの方を向きオーズドライバーにメダルをセット、オースキャナーでメダルを読み込む。

「変身!」

【タカ!トラ!バッタ!タ!ト!バ!タトバ!タトバ!】

 出久はオーズへ変身すると再度オースキャナーで読み込む。

【スキャニングチャージ!】

 オーズのバッタレッグが変形し一気に巨大ヤミーの頭上へ急上昇する。プロヒーローたちもその光景に目を奪われた。

 そして照準を定めるように三つのエネルギーのOが形成される。

「はぁああああああ・・・・・・・・・・せいやぁあああああああああああ!」

 オーズのタトバキックが巨大ヤミーに炸裂し、爆発と同時にセルメダルへと変わった。

「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・がふっ!」

 オーズの変身が自動的に解けると出久は大量の吐血をし、仰向けに倒れた。

「やっぱり無茶してやがったか!」

 アンクは背中から羽を出し急いで出久の下へ飛んだ。

「おい、バカ。こんなところで死ぬんじゃねぇ。」

「アン・・・・・・ク・・・・・」

「こいつをお前にやる。こいつを持ってりゃ普通の人間並みに動けるらしいからな。」

 アンクはそう言うと金のコアメダルを取り出し、出久の体へと入れた。

「アンク・・・・・・比奈さんからの・・・・・・伝言・・・・・」

「あ?」

「ありがとう・・・・・・て・・・・・。僕からも・・・・・ありがとう・・・・・・・・」

 出久はそこで気を失った。

「・・・・・・・・・・・たく、礼を言うんだったらまずテメーの状態をよくしてから言え。」

 アンクはそう吐き捨てるとその場から去ろうとした。するとオールマイトが止めに入った。

「待ってくれ!君は緑谷少年とどういう関係なのだ!」

「あ?まぁ・・・・・・仲間だな。」

「仲間・・・・・か。では君は一体何者なのだ?」

「グリードのアンクだ。それとこの時間に長くいられないんでな。」

 アンクがそう言うと突如空に大きな穴が現れた。

「時間だ。これ以上いるとタイムパラドックスが起きるからな。じゃあな。」

 アンクはそう言うと穴の向こうへと消えて行った。

 



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10 事件後と体育祭直前

「16・・・17・・・・18・・・・重症の彼を除いてほぼ全員無事か。」

 敵連合USJ襲撃、巨大ヤミーの襲撃後の雄英には警察が来ていた。A組の生徒全員がいることを刑事の塚内直正は確認していた。

 しかし皆浮かない顔をしていた。

 その理由は出久である。本来普通科である彼がヒーロー科と一緒に授業を受けた。それによって巻き込まれたならまだしも体に多大なダメージを受けて吐血して倒れたのだ。すぐにリカバリーガールによる応急処置が行われ一時的に命は取り留めているがまだ油断を許さない状況に変わりなかった。

「刑事さん・・・・・相澤先生は・・・・」

「両腕部粉砕骨折、顔面骨折・・・・幸い脳系の損傷は見受けられず無事。しかし眼窩低骨が粉々になっていて目に何かしらの後遺症が残る可能性があるそうだ。13号の方は背中から上腕部にかけての裂傷がひどいが命に別状はない。だが問題は緑谷君だ。彼の中にメダルが入っているとの話だがレントゲンを何度撮ってもその影や形のかけらすら捉えられていない。医師からは彼の今の状態が信じられないとのことだそうだ。」

「どういうことなんですか?」

 麗日がそう聞くと塚内はこう答えた。

「前より健康な人間の状態に近づいているって話だそうだ。」

 その情報を聞いて爆豪以外の全員が疑問に思った。今確かに塚内は()()()()()()()()()()()()()()()と言った。つまり出久は元々体が弱いという程度の話ではないということである。一同は爆豪の方を見る。

「・・・・・・事情は知っているが俺からは言えねぇ。第一、個人情報流出になるからな。聞きてーんだったらあのクソナードに聞け。」

 爆豪はぶっきらぼうにそう答えた。さすがに本人の許可なしでは言えないことである。

(デク・・・・ぜってー目を覚ませよ。じゃねぇと俺は・・・・・・!)

 爆豪は拳を強く握った。血が出るほどに。

 

 後日雄英高校は臨時休校となった。テレビには敵連合のことが報道されたがあまり世界に影響を与えるものではなかった。

 そして出久が入院している病院には麗日、八百万、芦戸、葉隠、拳藤がお見舞いに来ていた。ベッドには出久が眠っていた。

「出久君・・・・起きてよ。じゃないと私たち・・・・・」

 麗日が俯きながらそう言うと八百万が肩に手を置いた。

「麗日さん、そんな顔をしてはいけませんわ。」

「でも出久君、私たちを守ろうと無茶をして・・・・・!」

「今に始まったことじゃないけど・・・・・・・・確かに言えるよね。」

 芦戸がそう言うと各々思い当たる節があった。

 出会ってまだ少し。それでも濃い出来事が起こった。

 芦戸の誘拐、入試の0P仮想敵、入学初日の除籍を賭けた戦い、街中での事件、そしてUSJ。どれもこれも大変な出来事である。

「私たち、出久君に守られてばかりは嫌だと思う。」

 葉隠がそう言うと拳藤は頷いた。

「そうね。もっと自分の個性を理解して実力をつけて出久君に恥じないヒーローにならなくちゃね。でも今は・・・・・」

 拳藤は出久の手を握った。

「こうして手を握ってあげることがベスト・・・・・かな?」

「・・・・・うん。」

「ええ。」

「だね。」

「私も。」

 拳藤の言葉につられて麗日、八百万、芦戸が出久の手を握った。

「ん・・・・・・」

 出久が少し声を出すと徐々に目を開け始めた。

「あ・・・・・・・・・れ・・・・・?」

『出久君/さん!』

「みん・・・・・な?どうして・・・・?ここは・・・・・」

 出久が目を覚ましたことに一同喜んだ。

 その後医師と引子が来た。引子の姿を見て一同驚いていたがそれはまた別の話。

 引子は出久を思いっきり抱きしめ泣いた。

 医師の診断で体は前よりも良くなり、普通の人並みに動いても問題ないと診断された。

 

 そして二日後、再び出久が雄英に通うなりC組全員から心配された。

「緑谷大丈夫か!」

「なんか大変だったみたいだがどこか体に変化はないか?」

「何かあったら頼ってくれ!できる限り協力するから!」

 突然そんなことを言われ戸惑う出久。昼休みに心操に聞くとこう言われた。

「そりゃそうだろ。お前は実力だったらA組に入れてもおかしくないからな。お前がもしA組に編入できれば俺たちにとって希望だ。みんなお前に期待してんだよ。」

「でも心操君の個性もヒーローに向いていると思うよ。」

「だが個性だけじゃ・・・・・」

「じゃあ相澤先生とかに相談してみたら?相澤先生の戦闘を間近で見たけど体術が得意だから。後筋トレとか他のヒーローの戦い方を見て学習するとかがいいんじゃないかな?」

「・・・・・わかった。そうさせてもらう。」

 食堂で聞き耳を立てていた生徒もさっそく自分ができる範囲での行動を始めた。

 そして雄英高校体育祭二週間前になる朝のSHRで担任の先生からあることを告げられた。

「みんなも知っての通り、二週間後は雄英名物の雄英体育祭だ。これはヒーロー科の連中が活躍する場だと思っている奴もいるだろうがそうじゃない。普通科からのヒーロー科への編入、卒業後にサイドキック見習いへのスカウトと言う可能性もある。最も、他のクラスは多少あきらめ気味の奴もいるがこのクラスは違うな。特に緑谷、お前のおかげでな。」

「へ?」

 出久は突然言われたことに自分を指さし戸惑った。

「そんな・・・・・僕何の役にも・・・・」

「そんなことないって緑谷!」

「そうそう!個性だってすごいけどそれだけに頼らず体術とかもすごいし!」

「それにヒーローオタクって点で情報収集からの分析がうまいし!」

「俺たちの個性の使い方のアドバイスも上手だし本当に緑谷には感謝してるよ!」

 謙遜する出久にクラスメイトは尊敬と感謝の言葉を述べる。

「緑谷、お前は自分を過小評価しているようだが先生はそうは思わない。みんなの中にも敵向きだと言われた奴もいるだろう。だが先生から言わせればヒーローと敵もコインのようなものだ。13号も自分の力についてよく理解しているから同じことを言っている。

 いいか、お前ら。これまで馬鹿にしてきた奴らをあっと言わせてやれ!お前たちにはヒーローになれる可能性がある!最後に、結果を残してみろ!先生からは以上だ!」

 その言葉で各々大会へ向け自分にできることを始めた。

 そして時間はあっという間に流れ、ついに雄英体育祭当日を迎えた。

 



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11 雄英体育祭、開幕

「雄英体育祭!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせテメーらアレだろ、こいつらだろ!!?敵襲撃を受けたにもかかわらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!ヒーロー科!!一年!!!A組だろぉお!!」

 プレゼント・マイクとその隣に座っているミイラ状態の相澤がいる雄英高校に作られたドーム。それは大きく三つに分けられていた。それは一年、二年、三年と学年ごとに分けられていた。

「B組に続いて普通科C・D・E組・・・!!サポート科F・G・H組も来たぞー!」

「俺らって完全に引き立て役だよなー。」

「だねー。でも・・・・」

 C組の面々は出久を見る。

「こいつのおかげでたるいって思えない。それに、出久を見習ってヒーロー科を見返してやろうぜ!」

「ああ、そうだ!それにヒーロー科じゃなくてもヒーローになれる可能性だって俺たちにはあるんだからな!」

 本来であれば引き立て役となっている彼らではあるが出久のおかげもありやる気に満ちていた。

「静かに!選手宣誓!!」

 主審を務めるのは18禁ヒーローのミッドナイトであった。ミッドナイトのヒーローコスチュームはヒーロー業界でも波紋を呼んだ起源となっている。

「18禁ヒーローなのに高校にいてもいいのか?」

「いい!」

 常闇の疑問に峰田は叫んで言った。

「静かにしなさい!選手代表!!一年A組、爆豪勝己!!」

 爆豪が選手代表のことに周りは驚いた。

(そういやかっちゃん、昔から陰で努力してたもんな―。でもこれが()()()()()ってのが少し問題なんだけど。)

 出久が指摘したのはヒーロー科優遇の今の時代であった。

 個性にしろヒーロー科にしろどこの高校でも優遇されている。成績は普通科がよくても個性の面や将来活躍するであろう生徒に対しての優遇は大きい。

「せんせー、俺が一位になる。」

「絶対やると思った!!」

 爆豪の発言に切島が盛大にツッコミを入れた。

「調子に乗んなよA組オラァ!」

「なぜ品位を貶めるようなことをするんだ!」

「ヘドロヤロー!!」

 爆豪へのヤジが飛ぶ中、当の本人は言った。

「せめて跳ねのいい踏み台になってくれ。」

 そんな光景に心操は小声で出久に話しかけた。

「お前の幼馴染って結構クセがあるんだな。」

「うん・・・・・・・・・でも・・・・・・」

「?」

「自信があって言っているんじゃない・・・・・・以前のかっちゃんだったら笑って言っているけど、今は自分を追い込んでいるんだ。・・・・・・・・・・・A組を巻き込んでいるのがかっちゃんらしいけどね。」

 最後辺りで出久は苦笑いをする。

「さーて、それじゃあさっそく第一種目行きましょう。」

「雄英ってなんでもさっそくだね。」

 ミッドナイトの進行に麗日がツッコミを入れる。

「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!!さて運命の第一種目!!今年は・・・・コレ!!」

 モニターには障害物競走と表記されていた。

「障害物競争・・・・!」

 出久は文字をそのまま読み上げる。

「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはスタジアムの外周約4km!我が校は自由が売り文句!ウフフフ・・・・コースさえ守れば()()()()()()構わないわ!さあさあ位置に付きまくりなさい・・・・」

 ミッドナイトの言葉で一斉にスタートラインに立つ雄英高校一年生徒全員。そして三つのランプが光った。

「スターーーーーーーーーーーーーート!」

 一斉にスタートする一年。しかし通路に対し数が多すぎた。まるで300のスパルタの戦術のようである。

 スパルタが2万の軍勢を立った300で戦い、一週間持ち堪えさせたという偉業は今なお歴史で語り継がれている。単純に戦士一人一人の力が強いからではない。頭を使った賢い戦い方をしたからである。例えるならペットボトルが分かりやすい。仮に1Lのペットボトルに水が入っているとする。そこから水を出すために逆さまに向ける。何も手を加えない状態であれば水は一定の量落ちる。

これは500mLであろうが同じである。

 つまり数で勝る敵を倒したのは知と力であった。しかしどんな日と力があったとしても日に日にたまる疲労と減っていく兵力ではあまりにも差がある。それゆえに300のスパルタ兵は敗れたのである。

 そしてここにも一人、自分の個性を活かし勝ち上がろうとする生徒が一人いた。

 一年A組、轟焦凍である。

「最初のふるい。」

 轟は右の氷結を使い地面を凍らせる。

(そう来るのは分かってた!こっちも!)

 出久はオーズドライバーにコアメダルを三枚セットする。

「変身!」

【タカ!カマキリ!バッタ!】

 出久はタカキリバに変身するとバッタを活かし高くジャンプ。轟の氷結圏内を軽々と跳び超える。

「緑谷!相澤先生の件やUSJで色々助けられたが今は敵同士だ!」

 後ろから峰田が迫りくる。

「くらえ!オイラの必殺・・・GRAPE・・・」

 技を繰り出そうとした途端、突如大きな拳が峰田を殴り飛ばした。

「ターゲット・・・・大量!」

「入試の仮想敵!」

 一年生生徒たちの進路を阻むのはなんと0~3Pまでの仮想敵であった。

「さぁいきなり障害物だ!まず手始めは・・・・第一関門、ロボ・インフェルノ!」

 0P仮想敵が何体もいてゆく手を阻む中、轟は思った。

「(どうせならもっとすげえのを用意してもらいてぇもんだな。)クソ親父が見ているんだから。」

 轟は右の氷結を使い0Pを凍らせ、動きを止める。その隙に轟は0P仮想敵の下を通る。

「あいつが止めたぞ!!あの隙間だ!通れる!」

 轟の空けた穴を通ろうとする生徒に轟は忠告した。

「やめておけ。不安定な体勢ん時に凍らしたからな。倒れるぞ。」

 そう言った途端、0P仮想敵は倒れた。

「1-A、轟!攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィー!!!」

 プレゼント・マイクがノリノリで開設する中、オーズはコアメダルを手にする。

(出し惜しみなんてしてられない・・・・・・みんな必死なんだ。理由はどうであれ、僕も全力で勝ちに行く!それに・・・・・)

 オーズは自分の胸に手を当てる。そこにはプトティラメダルとアンクからもらったメダルが体の中に入っていた。

(アンクがくれたこのメダルのおかげで前よりもずっと戦える。ありがとう、アンク・・・・・)

 オーズは未来で会うアンクに礼を言う。

(絶対に約束は果たすよ。だけどその前に・・・・)

 オーズはロボット・インフェルノの方を向く。

(この試練を突破するんだ!)

 波乱の幕開けとなった雄英高校一年の部。果たして二次予選にどれほどの生徒が進めるのか、だれも予想できない。

 



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12 障害物競走の勝者

ドライブヘッドを見ていて思ったのがあります。
主人公たちに給料はちゃんと支払われているのかってところです。どうでもいいだろって思う人もいるかもしれないですけど社会人の立場から見ると気になります。もし払っていなかったらドライバーが主人公たちってバレた時に機動救急警察がマスコミに思いっきり叩かれますよね?
それとかたくなに秘密にしようとしてますけどそれやってた方が逆に怪しまれますよね?一部の人には公開して理解者を作っておいた方が後々楽って思うんです。
だってトイレって名目で抜けていたらいつか行動と事件が起きた時間帯を照らし合わせられて正体がバレるのは必衰じゃないですか。それに前の話でドライバーが先生につかまってドライブヘッドに乗れないって話がありました。
だったらいっそ一部の人間茨した方が正しいて思います。


「第一種目は障害物競走!この特設スタジアムの外周を一周してゴールだぜ!!ルールはコースアウトしなけりゃなんでもありの残虐チキンレースだ!!各所に設置されたカメラロボが興奮をお届けするぜ!」

「おい、俺いらないだろ。」

 一年生の部障害物競走をノリノリで解説するマイクの隣で相澤はツッコむ。

 出だしから大技を見せた轟は0P仮想敵を凍らせ障害を排除、そして同時に妨害をした。その際に約二名の生徒が下敷きになった。誰もが死んだかと思われたがその予想は大きく覆された。

「死ぬかぁ―――――――!轟の野郎!ワザト倒れるタイミングで!俺じゃなかったら死んでたぞ!」

 0P仮想敵の下から出てきたのは切島であった。

「A組のヤロウは本当嫌な奴ばっかりだな!俺じゃなかったら死んでたぞ!」

「B組の奴!」

 切島と同じように出てきたのは全身銀色状態で個性を発動しているB組の生徒、鉄哲徹鐵であった。彼の個性はスチールであり切島とほぼ同じである。

「”個性“ダダ被りかよ !緑谷のおかげで自信はあるけど地味だから男泣きするわ!」

 切島は男泣きしながら走り出す。

「僕も負けてられないね。」

 オーズはメダルをセットする。

「最初から出し惜しみは無しだ!変身!」

 オーズはオースキャナーでメダルを読み込む。

【クワガタ!カマキリ!バッタ!ガ~タ・ガタ・キリ・バ・ガタキリバッ!!!!】

 オーズはガタキリバに変身するとすぐにオースキャナーで読み込む。

【スキャニングチャージ!】

「はぁっ!」

 オーズは一気に跳び上がるとキックの構えを取る。するとガタキリバの能力で50体に一気に分身し仮想敵をせん滅する。

「セイヤ―!」

「セイヤ―!」

『セイヤ―――!』

 オーズは着地と同時に一人に戻るとメダルを変えスキャンする。

【タカ!ウナギ!チーター!】

 オーズはタカウーターに変身すると走り始める。

「こいつぁ驚いた!まさか入試に使ったコンボをここで一瞬で使って仮想敵を一掃しやがった!おい、イレイザー。コンボって体力ごっそり持っていかれるからヤバいんじゃなかったのか?」

「それはあくまで長時間の戦闘だ。一瞬だけなら大して奪われん。アイツは自分の個性をよく理解して走ってる。今のところは問題ないな。」

 マイクが絶賛し、相澤が冷静に解説する。

 第一関門を切り抜けると次に待っていたのは足場がわずかしかない場所であった。

「オイオイ、第一関門チョロイってよ!んじゃ第二はどうだ!?落ちればアウト!!それが嫌ならはいずりな!!ザ・フォーーーーーーーーーール!!!」

 マイクがノリノリで実況をする中、蛙吹は綱を渡り始める。

「大げさな綱渡りね。」

 麗日と芦戸が立ち止まっている隣でサポート科の生徒がその状況を喜んでいた。

「フフフフフフ、来たよ来ましたよアピールチャンス!私のサポートアイテムが脚光を浴びる時!見よ、全国のサポート会社!ザ・ワイヤーアウト&ホバーソール」

「サポート科!」

「えー、アイテムの持ち込みいいの!!?」

 驚く二人にその生徒は説明をした。

「ヒーロー科は普段実践訓練を受けているでしょう?()()()()()()私たちは自分の開発したアイテム・コスチュームに限り装備オッケー!と言われています。むしろ・・・」

 その子はワイヤーを対崖の方へ跳ばす。

サポート科(わたしたち)にとっては己の発想・開発技術を企業にアピールする場なのでスフフフフフ!!」

 そう言うとその子は飛び降りる。断崖をホバーソールで登りスムーズに進んでいく。

「さぁ見てくださいデカイ企業―!!私のドッ可愛いぃ・・・ベイビーを!!」

 その光景に呆気を取られていた二人は我に返り追いかけ始める。

「すごい!負けない!」

「くやしー!悪平等だ!」

 オーズもバッタレッグを最大限に活かし跳び進んでいた。

(落ち着け、大丈夫。タカの目で着地地点を捉えてバッタで跳ぶ。足りない部分はウナギで伸ばして引っ張ってカバーだ!)

 出久は冷静に対処する。

 最初に切り抜けたのは轟、次に爆豪であった。その後を飯田が続くがバランスを取るために両手を広げ直立と理にはかなっているがカッコ悪い姿であった。

「先頭が一足抜けて下はダンゴ状態!上位何名が通過するかは公表しねぇから安心せずにつき進め!!そして早くも最終関門!!かくしてその実態は―――――・・・一面地雷原!!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!目と足、酷使しろ!!!ちなみに地雷!威力は大したことねぇが音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!」

 ノリノリで解説するマイクに相澤は「人によるだろ。」とツッコミを入れた。

 少し遅れて到着したオーズ。爆豪と轟は既に先を行っていた。このまま慎重に行ったとしても追いつけるかどうかは怪しい。かといって今ここでコンボで飛行しても後の競技が何かわからない以上使うリスクが大きすぎる。

(考えろ・・・・・・考えろ・・・・!この状況を打開できる方法・・・・・・・・はっ!)

 その時オーズの目に爆破の個性で加速している爆豪の姿があった。

(一個一個の威力は大したことない地雷でも集めてやれば・・・・・・いける!)

 オーズはメダルを変えスキャンする。

【タカ!トラ!ゾウ!】

 オーズはタカドラゾに変身するとトラクローで地雷を掘り始める。

「なにしてんだ、アイツ?」

 遅れてきた耳郎はオーズの行動が理解できなかった。

 数分してある程度の地雷が集まった。その間にも他の生徒は慎重に進みながらも地雷を踏んでしまう。飯田に関しては足よりも速く地雷が爆発して転倒、そして連鎖反応と言う形である。

「タカ!カメ!ゾウ!」

 オーズはタカカゾに変身するとカメアームのシールドを展開する。

「行くぞ!爆発跳飛!」

 オーズは盾から地雷へ突っ込む形で飛び込む。爆発によってオーズは跳び、一気に爆豪と轟の前まで飛ばされる。

(よし!後は転がりながら着地してチーターで・・・・・)

 そう考えるオーズではあるがそう簡単に許さない二人が後ろから迫ってきた。

「クソデクが―!俺の前走るんじゃねぇ!」

「悪いな緑谷。俺も負けられないんでな!」

 二人が迫った途端、出久は短時間で作戦を考える。

(どうする?ここは妨害を・・・・いやそれだと後続の人に追い抜かれる。なら・・・・・・もう一度爆発を利用する組み合わせをすればいい!)

 オーズはメダルをセットすると変身する。

【クワガタ!ゴリラ!チーター!】

ガタゴリーターに変身するとゴリラアームのバゴーンプレッシャーを地面に向け発射。発射の反動で宙を一回転し態勢を整える。バゴーンプレッシャーが地面に直撃すると爆発、その影響で周りの地雷も爆発する。轟と爆豪はそれにより体勢を崩す。

 クワガタヘッドのクワガタから電撃を放ち着地地点予想場所の地雷を除去。前転して着地するとすぐさま立ち上がりチーターレッグでゴールに向かい一直線に走り出す。

「さぁさぁ序盤の展開から誰が予想出来た!?今一番にスタジアムに帰ってきたその男――――・・・緑谷出久の存在を!!」

あまたのヒーローたちも予想できなかった。しかし出久は普通科でありながら一位を取るという偉業を成し遂げた。

雄英高校体育祭始まって以来、前代未聞の快進撃である。

 



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13 本選、騎馬戦開始

 出久が予選一位を通過したことに観戦に来ていたプロヒーローは出久の活躍に驚いていた。

「あれで普通科なのか?」

「雄英も見る目ないんじゃないのか?」

「でもきいた話じゃあの子、何か事情があるみたいだぞ。」

「それにしてもすごい個性だよな。」

「ああ。後から通過してきた奴らも大したタフネスだが特にあの二位と三位。爆破の個性の奴は自分の個性を上手く活かしてるし、もう一人はあのエンデヴァーの息子だぜ!」

 その観戦に来ていたヒーローたちの声に相澤は溜息を吐く。

(こいつら・・・・・・本当にプロか?個性の方だけ見て人間って面を全く見ていねぇ。全く不合理な観戦だ。)

 相沢は今のヒーローたちに呆れていた。

 今のヒーローは派手だなんだと個性の方しか見ていない。しかしどんなに個性が強力でも自分に不利な状況であったり実力が足りなかったりするヒーローたちが多い。結局は人を見ていないのだ。

 そして続々と選手たちが通過し、ゴールする。

「予選通過は上位42名!!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されているわ!!そして次からいよいよ本選よ!!ここから取材陣も白熱してくるよ!気張りなさい!」

 ミッドナイトが選手に激励を送る。

「さーて、第二種目!!私はもう知っているけど~~~~~~~何かしら!!?言っている側からコレよ!!!!」

 ディスプレイには”騎馬戦!と表記されていた。

「騎馬戦?」

「個人競技じゃないけどどうなっているのかしら?」

 上鳴が読み上げ、蛙吹が疑問に思う。

「参加者は2~4人のチームを自由に組んでもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど一つ違うのが先ほどの結果に従い各自にP(ポイント)が振り当てられること!」

「入試みてぇなP稼ぎ方式か、わかりやすいぜ。」

「つまり組み合わせによって騎馬のPが違ってくると!」

 砂糖と障子が理解するとミッドナイトがバラ鞭を鳴らす。

 ちなみにバラ鞭は思ったほど痛くありません。理由は力が拡散するからです。

 では仮に100の力を持った人がいます。それに対しバラ鞭の先は10に分かれています。これを割り算すると一本につき10の力となります。しかし一本鞭であればどうでしょう?そのまま100の力が伝わります。

 それすごいの?て思う人へ、刃の代わりにひも状のものになっている電動草刈り機を連想してください。たった一本なのによく切れるじゃないですか。それと同じです。

 ちなみに一本鞭が鳴る音ってのは軽く音速を超えている音です。なのでむっちゃ痛い。

「あんたら、私が喋ってんのにすぐ言うね!!!ええ、そうよ!そして与えられるPは下から5Pずつ!42位が5P。41位が10P・・・・といった具合よ。そして・・・1位に与えられるPは1000万!!!!」

 その言葉に出久も、選手一同も驚く。

「上位の奴ほど狙われちゃう――――――下剋上サバイバルよ!」

 その言葉を聞くと出久はふとグリードと戦っていたころを思い出した。

 これも変わりはないのだ。

 コアメダルをめぐる戦い。今の出久はまさにアンクと一緒にいたあの頃、他のグリードから狙われる状況と同じであった。

「上に行くものにはさらなる受難を。雄英に在籍する以上、何度も聞かされるよ。これぞPlus Ultra!予選通過位1位の緑谷出久君!!持ちP1000万!!」

 周囲の目が出久へ集中する。

「制限時間は15分。割り当てられるPの合計が騎馬のPとなり、騎手はそのP数が表示された“ハチマキ”を装着!終了までにハチマキを奪い合い保持Pを競うのよ。取ったハチマキは首から上に巻くこと。取りまくれば取りまくるほど管理が大変になるわよ!そして重要なのはハチマキを取られても、騎馬が崩れてもアウトにはならないところ!」

「ということは・・・」

「42名からなる騎馬10~12組がずっとフィールドにいるわけか?」

 八百万と砂糖が疑問に思う。

「いったんP取られて身軽になっちゃうのもアリだね。」

「それは全体のPの別れ方を見ないと判断しかねるわよ、三奈ちゃん。」

 芦戸の案に梅雨が注意をする。

「“個性”発動アリの残虐ファイト!でも・・・・・あくまで騎馬戦!!悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード!一発退場とします!これより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」

『15分!!?』

 突然の時間制限に一同個性がすごい人へと交渉へ向かう。出久も交渉しようとするが避けられてしまう。

(う~ん、わかっていたけどこれ結構辛い!こうなったらもっと単純に考えよう。リスク承知で戦ってくれる人は・・・・・)

 出久が考えようとしていると一人声を掛けてくる人がいた。

「おーい、出久―。」

「あ、一佳ちゃん。」

 出久に声を掛けて来たのは拳藤であった。

「まずは一位通過おめでとう。ちょっとしか活躍見てなかったけどすごかったね!特にあの緑の変身!入試の時にプレゼント・マイクが言っていた姿ってアレだったんだ!」

 拳藤は興奮しながら出久と話す。

「あ、話だいぶ脱線したね。あのさ、良かったらアタシと組んでくれない?」

「え?いいの?僕の1000万だから絶対集中的に狙われるよ。」

「大丈夫だって。出久強いし、何よりアタシが守ってあげるからさ!」

 拳藤はそう言うと拳で自身の胸を叩いた。その時胸が揺れて出久は顔を若干赤くする。

「う、うん!よろしく/////」

 すると二人の後ろからもう一人声を掛けてくる人物がいた。

「そこの1位の人、私と組みましょ!!」

「わっ!・・・・・て、君は確かサポート科の人だよね?」

「はい!私サポート科の発目明!あなたのことはあまりよくは知りませんが立場を利用させてください!」

「り、利用!?」

「あなたと組むと必然的に注目度がNo.1になるじゃないですか!?そうすると必然的に私のドッ可愛いベイビーたちがですね、大企業の目に留まるってわけですよ!それってつまり、大企業の目に私のベイビーが入るってことなんですよ!」

「なるほど・・・・・つまりwin winでいいかな?」

「はい!その通りです!」

 ここまで欲望の忠実な下部の発目を見て出久は思った。

(この人、絶対会長と馬が合いそうな気がする。)

「それでですね、あなたの方にもメリットがあると思うんですよ!サポート科はヒーローの”個性”をより扱いやすくする装備を開発します!私、ベイビーがたくさんいますのできっとあなたに見合うものがあると思うんですよ!」

 発目はそう言うとサポートアイテムを広げ、一つのアイテムを手に取る。

「これなんかお気に入りでして、とあるヒーローのバックパックを参考に独自の解釈を加え・・・・・・・」

「それってひょっとしてバスターヒーロー“エアジェット”!?僕も好きだよ。事務者が昔近所でね・・・・」

「本当ですか!ちなみに私の個性は・・・・」

 白熱する二人に拳藤は頬袋を膨らませていた。

(なんか初対面なのにあんなに楽しそうに話してる・・・・・・・・)

 そして出久はもう一人に声を掛ける。

 

 そして時間はあっという間に経ち、各チーム臨戦態勢に入る。

 爆豪チーム

・爆豪200P

・切島170P

・芦戸120P

・瀬呂175P

 TOTAL665P

 

轟チーム

・轟  205P

・飯田 185P

・八百万130P

・上鳴 95P

 TOTAL615P

 

 緑谷チーム

・拳藤 75P

・発目 10P

・常闇180P

・出久1000万P

 TOTAL1000万265P

 

「よォーし組み終わったな!!?準備はいいかなんて聞かねえぞ!!いくぜ!!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!」

 プレゼント・マイクがノリノリで進行を促す。

「3!!」

「狙いは・・・・」

「2!!」

「1!!」

「START!」

 出久のチームに向け一斉に襲い掛かってくる。

「実質、それ争奪戦だ!」

「はっはっは!出久君頂くよ――――――!」

 B組の鉄哲と上半身裸の葉隠を先頭に襲い掛かってくる。

「葉隠さんはともかくB組の人は・・・・・」

「あいつは鉄哲。体を金属みたいに固くする個性の持ち主よ!」

 拳藤が鉄哲の個性を教える。

「切島君とは別種の硬化系の個性。でも悠長に今は対策を考えている暇はないから逃げるよ!」

 その時であった。突如地面が沼のようになり沈み始めた。

「骨抜の“個性”!このままだとマズいよ出久!」

「二人とも、頭を避けて!」

 出久はそう言うと手元のスイッチを押す。するとバックパックジェットが吹き、空へ脱出する。

「飛んだ!?サポート科のか!追えぇ!」

「耳郎ちゃん!」

「わかってる。」

 耳郎はイヤホンジャックを出久へ伸ばすが常闇のダークシャドウがブロックする。

「いいぞ黒影。常に俺たちの死角を見張れ。」

「アイヨ!!」

 常闇の言葉にダークシャドウは答える。

(常闇君の個性でも敵を把握するのは容易じゃない。となると使うのはこれとこれ・・・・もう一個はこれだ!)

 出久はオーズドライバーにメダルをセットする。

「変身!」

【シャチ!ウナギ!バッタ!】

 オーズはシャウバに変身する。

 オーズはシャチヘッドの力を利用し音波によるソナーを使い着地地点に障害物がないか確認する。

「足場は大丈夫。着地しても大丈夫だよ。」

「わかった!着地するよ!」

 拳藤がそう言うと三人の脚に装備されているホバーでソフトに着地する。

「どうですかベイビーたちは!!可愛いでしょう!?かわいいは作れるんですよ!」

「機動性バッチリ!すごいよベイビー!ハツメさん!!」

「でしょー!?」

 その言葉を聞くと少し拳藤はふてくされた。

「言葉だけだと羨ましい・・・・・」

 そんなことを話しているとオーズのソナーに反応があった。

「ストップ!足元に何かトラップみたいなのがある!」

「え?」

 オーズの言葉で一同足を止め、辺りを見回す。

「これ?」

 拳藤がいる先には紫のボールがあった。

「これは峰田君のくっ付くモギモギ!」

「ちぃ・・・・・緑谷は騎手だから気づかないと思ったんだがな。だが緑谷、容赦はしねぇぞ!」

 峰田の声が聞こえ、その方向へ振り向くとそこには障子が複製腕で何か覆いながら走っていた。

「障子君!?それに中から二人分の反応が・・・・・もう一人は一体?」

 オーズが疑問に思うと障子の腕の中から何かが伸びて来た。オーズは咄嗟に避ける。

「さすがね、緑谷ちゃん!」

「梅雨ちゃんも中に!すごい、障子君の筋力!」

 オーズは障子に感心する。

「峰田チーム、圧倒的体格差を利用してまるで戦車だぜ!」

 プレゼント・マイクが熱弁する。その間に出久はもう一度バックパックを使い空へ逃げる。するとそこへ爆豪が襲ってきた。

「させるか!」

 拳藤が左手を”個性”で大きくし爆豪を弾く。その時拳藤の手を爆豪の爆破が襲い、やけどを負わせる。

「一佳ちゃん!」

「大丈夫!ちょっと痛いけどね・・・・」

 拳藤は痛みに耐えながら出久に笑顔を見せる。

 爆豪が空中でバランスを崩すと瀬呂のテープで回収される。

「おおおおおお!?騎馬から離れたぞ!?良いのかアレ!」

「テクニカルなのでオッケー。地面に足ついてたらダメだけど!」

 プレゼント・マイクの疑問にミッドナイトは親指を立てて回答する。

「やはり狙われまくる一位と猛追してくるA組面々共に実力者揃い!現在の保持Pはどうなっているのか、7分経過した現在のランクを見てみよう!」

 モニターにランクが映し出されると観戦に来ていた全員も声を失った。

「・・・・・・・・・・・あら?ちょっと待てよコレ!C組緑谷以外パッとしてねえ・・・・ってかあれ、爆豪?」

 そこには一位~六位までのチームがポイントを保持していたがそれ以下のチームは0Pであった。そしてその中には爆豪のチームも入っていた。

 そして物間が爆豪のハチマキを取りそして爆豪がヘドロ事件にあったことを話し挑発。これによって爆豪も目標は出久から物間へと変わった。

「物間の奴・・・・・・・もっかい頭殴った方がいいかな?」

「そんなにひどいの?」

「いっつもクラスでA組に対して敵意識むき出しだからね。おかげでこっちは手を焼かされるわ。」

 出久も拳藤に同情する。

「となると最大の障害になるのは・・・・・・」

 出久が言おうとした途端、轟チームが前に立つ。

「・・・・・・・やっぱり来ると思ってたよ。」

「悪いな緑谷。俺も負けられねぇんでな。」

 

 



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14 騎馬戦、決着

 雄英体育祭本選、騎馬戦。

 出久の1000万265Pを狙う争奪戦が繰り広げられる中、出久チームは轟チームと対峙していた。

「もう少々終盤で相対するのではと踏んでいたが・・・・ずいぶん買われたな、緑谷。」

「そうみたいだね。でも時間はもう半分!足止めで来ているんじゃない!仕掛けてくるのは・・・・一組だけじゃないよ!」

 常闇の言葉に出久はそう返すと轟が指示を出す。

「飯田、前進!」

「ああ!」

「八百万、ガードと伝導を準備!」

「ええ!」

「上鳴は・・・・」

「わかってるって!しっかり防げよ!」

 轟チームを筆頭に複数のチームが出久めがけて襲い掛かってくる。

 しかしそこへ上鳴の無差別放電130万Vが流される。轟達には放電が浴びないように八百万の“個性”で絶縁シートが創造された。

 そしてその放電によりオーズの背負っているバックパックとダークシャドウが悲鳴を上げる。

「残り6分弱、後には引かねぇ。悪いが我慢しろ。」

 轟は右の氷結を使い八百万に作ってもらった伝導の棒で地面を凍らせ後ろの動きを完全に封じる。

「なんだなにをした!?群がる騎馬を轟、一蹴!」

「上鳴の放電で()()に動きを止めてから凍らせた・・・・さすがと言うか障害物競走で結構な数を避けられたのを省みているな。」

「ナイス解説!」

 相澤の解説にプレゼント・マイクが親指を立てる。

 そして轟は出久チームへ向かう際に二組のチームからハチマキを奪った。

「一応もらっておく。」

 轟はそう言うとハチマキを二つとも首へ回す。

「バックパックがダメになったみたいだね。」

「ベイビー!!!改善の余地あり!!!」

「牽制する!」

 常闇のダークシャドウが轟へ襲い掛かろうとするがそれを八百万が作った即席の鉄板でガードする。

「“創造”厄介すぎる・・・・・・が、それ以上に厄介なのは上鳴だ。あの程度の装甲、()()()なら破れていた。」

「っ!?」

 その時出久は初めに常闇の個性について聞かされたことを思い出した。

 常闇の個性は影を生き物に具現化した個性。影が強ければ強くなるがその逆だと弱くなる。つまり日中と強い光の前では弱くなってしまうのである。

「常闇君、上鳴君って許容量の放電をしたらアホになるんだよね?」

「そうだ。」

「・・・・・・・・()()()の場合も適応されるのかな?」

「っ!?」

 その時オーズの考えを常闇は気づいた。

(飯田君のお兄さん、インゲンニウムは飯田君と同じような個性を持ってる。場所は違うけどもしインゲンニウムに憧れているのなら・・・・・・)

 オーズは飯田が出す必殺技を警戒する。

「みんな、下手に動き回らず一定の距離をキープ。チャンスに賭けるよ!」

 そしてそれから5分間、出久チームは何とか逃げ切っていた。

(そろそろかな?)

「皆、残り1分弱・・・・()()()()()使()()()()()()頼んだぞ。」

「飯田?」

 突然の飯田の言葉に轟は戸惑うが、飯田はある覚悟を決めていた。

「しっかり掴まっていろ。奪れよ轟君!トルクオーバー!レシプロバースト!」

 飯田のエンジンを一気に最大減まで引き上げる捨て身の技が炸裂し、オーズからハチマキが取られる。

「その瞬間、待ってたよ。そう来るってのは予想できてた。正直、シャチの頭でできるかどうか不安だった。けど体が覚えてくれていたからこれができる。」

「へ?」

 間抜けな声を上げたのは上鳴であった。

 よく濡れたウナギウィップが上鳴の脚に絡まっていた。

「上鳴君の弱点を、突く!」

 ウナギアームから電気を送り込まれる。

「アバババババババババババババババババババババババババ!」

 上鳴は咄嗟に手を離し、足りない支えを八百万の個性で補った。上鳴に許容以上の電気が流されアホの状態になる。

「ウ、ウウェ~イ・・・・」

「くそっ!緑谷君は予想していたのか!」

「ですがこちらが勝っていますわ!」

 悔しがる飯田に八百万が補足を入れる。

 オーズはメダルを変えるとスキャンする。

【タカ!トラ!コンドル!】

 オーズはタカトラドルに変身すると指示を出す。

「皆、奪い返すよ!」

「うん!」

「わかってる!」

「承知!」

 出久チームは轟チームへ特攻をかける。

 肝心の飯田はエンジンが故障、上鳴は動けない状態。となればできることは轟がオーズとタイマンを張ることであった。

 オーズの右手が轟の首のハチマキに目掛け伸ばされる。轟は咄嗟に左を使い防御しようとするがその時オーズはトラクローを展開。峰の部分で左腕を払い除けると左手でハチマキを二本獲得する。

「他のハチマキを取った時点で囮に使うのは分かってた。でも、僕のこのタカは、どんなに隠れているものでも見通す目を持ってるんだ!」

 出久が手にしていたのは70Pのハチマキと1000万265Pのハチマキであった。

「くそっ!緑谷のメダルを甘く見ていた!」

 残りカウント15秒を切っていた。しかしそんな状況でも執念深くトップを狙ってくるものがいた。

「クソデクー!」

「やっぱりくるよね、かっちゃん!」

 爆豪が爆破を使用してオーズに迫ってくる。

「一佳ちゃん!」

「オッケー!」

 オーズは拳藤の巨拳の手のひらに乗る。拳藤はオーズを爆豪へと投げ飛ばす。

「はっ!」

 コンドルの足技で爆豪を蹴り飛ばした。

「ぐっ!」

「ダークシャドウ!」

「アイヨ!」

 常闇のダークシャドウがオーズを回収した瞬間、試合終了のブザーが鳴り響いた。

「TIME UP!早速上位チーム見てみようか!4位心操チーム!3位!爆豪チーム!2位轟チーム!そして1位!誰がこんな事予想出来た?1位緑谷チーム!」

 こうして騎馬戦は終了した。そして教師はおろかヒーローも、そして生徒たちも驚いていた。

 予選1位通過、そして騎馬戦も1位通過。

 事実上出久が1位であることに。

 



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15 組み合わせ発表

今日初めてFGOで課金しました。
エレキシュガルが欲しいので。本当に出る率が低すぎて。
無料で貯めに貯めた石30投入しても☆4概念だけで後はダメ。
正直心折れそうになった。
なので最終手段に出ました。
正直こういった金の使い方は初めてです。
そんでもう一個、次で血界戦線二期最終回!できれば激情版化して欲しい!ヒロアカのように!それか第三期の放送を強く願望します。
まぁ、アニメ化して欲しい話がアニメ化してくれたんでいいんですけどね。


 騎馬戦が終わり、一時間の小休憩を挟んで午後の部が行われることがプレゼント・マイクの口から言われた。

 出久は心操と少し話をしていた。

「心操君も勝ち残ったんだね。」

「ああ。麗日、尾白、青山って奴らとな。だが尾白は辞退するってよ。」

「え、どうして?」

「今回のは俺の個性と体術のおかげで自分は何もできていないだからそうだ。律儀というか真面目と言うか・・・・・・」

「そうなんだ。でも、こっからは甘いだけじゃ通れない道だね。」

「ああ。」

 二人は互いに拳を合わせる。

「まさか出久さんがあんな戦術で来るとは思いませんでしたわ。」

「うぇーい(意表を突かれたな、あれ。)」

「でも流石って感じだよね。個性に頼り切ってなくて戦ってるってのが。」

「わかるわかる。」

 八百万は出久の戦術に感心し、上鳴はアホ状態で同意、芦戸の言葉に葉隠も相槌を打つ。

「でも出久君、大丈夫かな?ほら・・・・・」

 麗日がそう言うと女子一同不安となった。が、そこで飯田が言った。

「大丈夫だと俺は思う。彼はみんなが知ってる通り無茶はするが、決してバカではない。俺も前に勉強で分からないところを教えてもらったしな。」

「アイツ、きっとヒーロー科にいたら間違いなくトップだろうな。」

 砂糖の言葉にうなずく一同。

「で、その出久君はどこに?」

 

 その頃B組の拳藤は周りの女子に称賛を浴びていた。

「やったね、拳藤。最終種目への進出おめでとう!」

「ありがとう。でもほとんど出久の指揮が良かったおかげなんだけどね。」

「っ!!ふ~ん、ほ~。」

 女子たちはニヤニヤする。

「え?なに?」

「い・ず・くね~。ずーいぶん親密なことで。名前で呼び合うだなんてな~にかあったの~?」

「べ、別になにもないよ!むしろあいつにある方だし!」

「ほほー、例えば?」

「アタシが誘ったときに顔赤くしてたし。」

「その時あんたはなにしたの?」

「え?普通に胸をドンって・・・・」

 拳藤はそう言いながら出久の前でやったように胸を叩く。すると拳藤の胸が揺れた。その胸を羨ましそうにクラスメイトは見る。

「え?なに?」

「この・・・・・・・・・幸せもんが――――――――――!」

「きゃあ――――――――――――――――――!」

 クラスメイトは胸を鷲掴みする!

「なにこの胸は!恋までしてさらに胸大きくなるってか!無自覚に男のような対応して男落とすってか!可愛い上に恋までして胸もあるって・・・・ケンカ売ってるのか!」

「ま、待って待って!私恋なんかは・・・・・・」

「じゃあ今から緑谷のこと考えなさい!他の女子と一緒に仲良く話しているところを想像して!」

 拳藤は言われるがまま想像する。そうすると自然と嫌な気分になる。

「アンタ、今嫌な気分になったでしょ?」

「っ!?」

「リア充が羨ましいんじゃー!」

「だから胸揉まないで―!」

 

 心操と別れた後出久は轟に呼ばれ人気のない場所へ連れてこられた。

「話って何かな?早くしないと食堂が込みそうなんだけど・・・・」

 轟は壁に背もたれをしながら左手を見る。

「気圧された。あの時、俺は左は使わないと誓約してたのによ。」

「・・・・・・それ・・・・・・・つまりどういうこと?」

 出久は轟の意図が分からなかった。

「お前同様に何かを感じ取ったってことだ。なぁ・・・・・・オールマイトの隠し子かなんかか?」

「・・・・・・・・・・・・はい?」

 出久は言っていることが分からず戦力で首を傾げた。

「えっと・・・・・・・何を言いたいのかわからないけど、なんでそう思うの?」

「・・・・・・・俺の親父がエンデヴァーってことは知っているよな?」

「うん・・・・」

「万年No.2ヒーローだ。お前がNo.1ヒーローの何かを持っているなら俺は、尚更勝たなきゃいけねぇ。」

 どういうことなのか出久には理解できなかった。

「ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが、それだけに生ける伝説オールマイトが目障りで仕方なかったらしい。自分ではオールマイトを超えられねぇ。親父は次の策に出た。個性婚、知っているよな?

「――――っ!!」

「“超常”が起きてから第二~第三世代間で問題になったやつだ。自分の“個性”をより強化して継がせるためだけに配偶者を選び結婚を強いる。論理の欠落した前時代的発想。実績と金だけはある男だ。親父は母の親族を丸め込み、母の”個性”を手に入れた。俺をオールマイト以上のヒーローに育て上げることで自分の欲求を満たすってこった。うっとうしい・・・・!そんな屑の道具にならねぇ!

 ・・・・・・・・・・・・・記憶の中の母はいつも泣いている・・・・・『お前の左側が醜い』と、母は俺に煮え湯を浴びせた。」

「っ!?」

 言葉にならない衝撃が出久を襲った。そんなこと想像するだけでも恐ろしい。

「ざっと話したが、俺がお前に突っかかんのは見返すためだ。クソ親父の”個性”なんざなくったって・・・・・・・・いや・・・・使わずに”一番になる”ことでヤツを完全否定する。」

 その言葉を聞いた瞬間、出久は驚きと同時に()()も湧き出て来た。

「時間取らせて悪かったな。それだけだ。」

 轟はそう言うとその場を離れようと歩き始めるが出久は轟の背中を見ながら言った。

「僕は・・・・・・・今まで多くの人に助けられてきた。時には自分を見失った。でも周りの皆が、助けてくれた。今だってそうだ。僕はみんなに助けられてここにいる。だから轟君、僕は君に勝つよ。今日まで助けてもらった人たちの期待に応えるためにも!」

 出久は決意ある目で轟を見た。

 

 そして轟と別れた出久は食堂の方へと向かったが、轟と話していたためか人でいっぱいになっていた。

「やっぱそうだよね~。母さんに作ってもらった弁当忘れるし、どうしよう・・・・・」

 出久がそう考えていると突然大きな声が聞こえて来た。

「出久さーん!!」

 手を振って大声を出したのは八百万であった。

「こちらの席が空いていますわー!こちらへどうぞ―!」

 周りの生徒たちはクスクスと笑う。出久は好意を無駄にできないためそこへ向かった。席にはA組女子たちが固まって座っていた。

「なんかごめんね。」

「気にせんでええよ。」

「そうだよ。それにこんな状況だからむしろ頼ってよ。」

「うんうん!」

「出久さんが気を使うことはありませんわ。」

 礼を言う出久に麗日、芦戸、葉隠、八百万の順に言葉を掛けた。

「あら、緑谷ちゃん料理は?」

「実はまだ食券買ってなくて・・・・・先に席を確保してからの方がいいかなって。」

「そうだったんだ。んじゃ食券買って――――」

 蛙吹が出久が食事を持ってないことに気づき耳郎が促そうとすると心操が話しかけて来た。

「緑谷、ちょっといいか?」

「どうかしたの、心操君?」

「お前のお姉さんが探してたぞ。」

「お姉さん?」

 出久は首を傾げるが麗日たちはもしやと思っていた。

「ほら。」

 心操はそう言いながら引子の方へ手を向けた。

「出久、あなたお弁当忘れてたでしょ。」

 誰が見てもスタイルがいいボディに豊満な胸を持った美女がそこにはいた。

「あ、ごめん。()()()。」

「・・・・・・・・・・・・・・は?」

「ケロ?」

「・・・・・・・・・・・・マジ?」

 心操、蛙吹、耳郎の順に間抜けな声を出す。そしてそれを聞いていた生徒全員が驚いた。

「嘘だろ!」

「あの人どう見てもお姉さんだよね!」

「むしろアタシたちよりちょっと上としか見えない!」

「どんなDNAしているわけ!」

 皆それぞれ驚きを隠せていないが出久と引子は気にしていなかった。というか慣れていた。

「緑谷のお母さんってすっごく若く見える・・・・・」

「ケロ・・・・・私、お姉さんだと正直思ったわ。」

「普通そうだよね。」

「わたくしたちも最初見た時はそう思いましたわ。」

「ホントびっくりしたもん。」

「子供産んでいるのにあのスタイルだもんねー。」

 驚く耳郎と蛙吹に対し同感する麗日たち。

 引子はお弁当を出久に渡すと食堂を去って行った。

「出久君、二回戦進出おめでとう!」

「うん、ありがとう。お茶子ちゃんも百ちゃんも三奈ちゃんも二回戦進出だよね。」

「うん!」

「ええ!」

「そうだよ!」

 出久の言葉に三人は元気よく答える。

「私は予選落ちしちゃった。他の組にハチマキとられちゃったみたいなんだよねー。」

「でも透ちゃんは自分の個性活かそうとしたよね。・・・・・・・・・・その、倫理的問題はあったけど///////」

 出久は少し顔を赤らめながら言う。その出久の言葉に耳郎は首を縦に何度も振った。

(峰田に爪の垢煎じて点滴形式で注入させたい。正直、緑谷が純情なのはこの反応でもわかるし。)

 耳郎の出久へ対する好感度は高かった。

「でも緑谷ちゃん、コンボ使って戦おうとしなかったけどどうして?確かコンボの中には超回復のコンボもあるから問題ないのじゃないかしら?」

 蛙吹がふと疑問に思ったことを口にした。

「確かにコンボも使ってよかったんだけど・・・・・・・・コンボばかり頼ってたらダメだと思うんだ。コンボが強いからってそればっかりに依存するといざ使えなくなるって時に他が疎かじゃ話にならないでしょ?だからコンボばかりに頼るんじゃなくてその場その場に合った組み合わせを考えて戦おうと思ったんだ。」

「ケロ。緑谷ちゃん、結構勤勉なのね。正直見習うわ。」

「そんな大げさな。」

 そんな言葉を負う出久に周りからも「いやいやいや、そんなことない」と反応する声が上がる。

「緑谷ちゃん、貴方気づいてないかもしれないけど一年生の中で秀でていると思うわ。個性の使い方も上手だし、できれば私も少し教えてもらいたいわ。」

「梅雨ちゃんの個性って蛙だよね?蛙の生態系を少し調べれば梅雨ちゃんが知らない能力もあるかもしれないからそこからヒント貰えるかも。」

「なるほどね。ありがとう、緑谷ちゃん。」

「ねえねえ、緑谷。ウチは?」

「耳郎さんは・・・・・・・足の使い方に工夫をしたらいいんじゃないのかな?」

「どういうこと?」

 耳郎は首を傾げる。

「耳郎さんのコスチュームって足だけに使ってるよね?でも場合によっては格闘戦になるかもしれないし広範囲の攻撃で民間人を巻き込んじゃうかもしれない。だとしたら至近距離で小規模の範囲で威力が高い戦い方ができたら戦い方の幅が広がると思うよ。」

「そっか。ありがとう、緑谷。」

 出久が蛙吹と耳郎にアドバイスを送るともう一人来た。

「あー、よかった。ごめんなんだけどここ座らせて。」

「一佳ちゃん!」

「出久じゃん!偶然だね!」

 拳藤が出久の隣に座る。

「今から?」

「うん。おんなじクラスの子にもみくちゃにされて・・・・・」

 拳藤は苦笑いをしながら話す。

「でもすごいじゃん、出久。今回の大会で実質一位じゃん!これで優勝飾られたらアタシらヒーロー科の名が廃るって感じだね!だから全力で阻止させてもらうよ!」

「僕もそれに全力で挑ませてもらうよ!」

 二人は拳をぶつけ合う。

(なんかスキンシップ軽くていいなぁ~。)

(わたくしもアレくらいできたらうれしいのですが・・・・・・・)

(すっごい羨ましい。私は落ちちゃったから出久君と戦えないし・・・・)

(私も本選残ったから出久君に挑むチャンスあるよね!)

 麗日、八百万、葉隠、芦戸の順に思う。

 

 そして時間は過ぎて昼休みは終わった。

「最終種目発表の前に予選落ちしたみんなへ朗報だ!あくまでも体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!本場アメリカからもチアリーダーを呼んで一層盛り上げ・・・・ん?ありゃ?」

「なーにやってんだ?」

 プレゼント・マイクと相澤が見る先にはA組女子一同がチア一式装備していた。

「どーしたA組!!?」

「峰田さん!上鳴さん!嵌めましたわね!」

 これを仕込んだのはこの二人であった。

「なぜこうも峰田さんの策略に嵌まってしまうの、私・・・・・」

「アホだろ、アイツ等!」

 落ち込む八百万を横にボンボンを地面へ投げつける耳郎。

「まあ本選まで時間空くし張り詰めててもしんどいしさ、いいんじゃない!やったろ!それにさ、ヤオモモ!この格好で出久君にアピールしようよ!」

『っ!?』

 その言葉に四人は反応する。

「まさかこうも大胆に出るとは・・・・・・・・コスチュームでも思ってたけど葉隠すごいな。」

「そうね。私たちもみんなみたいな恋をしたいわ。」

 四人を見て耳郎と蛙吹は思ったことを口にした。

「さァさァみんな楽しく競えよ!レクリエーション!それが終われば最終種目!進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!!一対一のガチバトルだ!!!と、ここで重大な発表だ!心操チームの尾白は自分から辞退を申し出た!よって、五位の鉄哲チームから一人選んでくれ!」

 プレゼント・マイクの言葉で鉄哲のチームメイトは鉄哲を見る。

「鉄哲が出ろよ。」

「そうですね。何より一番A組に勝とうという思いが強いですし。」

「頑張れよ。」

「お、お前らぁあああああああああああああ!」

 鉄哲は漢泣きする。

「こういう青臭いの・・・・・・・・・・・好み!」

 その光景を見ていたミッドナイトはバラ鞭を鳴らした。

 そして組み合わせはこうなった。

 

一回戦

第一試合

C組 緑谷出久 VS B組 鉄哲徹鐵

 第二試合

C組 心操人使 VS A組 切島鋭児郎

 第三試合

A組 八百万百 VS A組 常闇踏陰

 第四試合

A組 麗日お茶子 VS A組 爆豪勝己

 第五試合

A組 芦戸三奈 VS A組 青山優雅

 第六試合

A組 上鳴電気 VS B組 拳藤一佳

 第七試合

A組 飯田天哉 VS H組 発目明

 第八試合

A組 瀬呂範太 VS A組 轟焦凍

 



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思い付きネタ

設定が結構細かくて好きなゴーバスターズを見て思いついたネタです。
他のスーパー戦隊と大きく違ってエネルギーの残量だったり技術だったり設定だったりと割と細かい設定で好きなんですよね。
大人が見て夢中になるって感じです。


 幼少にして突き付けられた現実。

 『無個性』

 超常が日常となった社会では大きく差別されるものであった。そして同時にヒーローへの憧れを抱く出久にとってそれは悲しいものであった。

 放心状態でオールマイトの動画を見ている出久はふとその動画を見るのを止め、おもむろに昔のヒーロー特撮を見た。

 超常が日常になるずっと前の世界ではヒーローとは大抵変身しているものであった。

「いいなぁ・・・・・・僕もこんな風に・・・・・・・ん?」

 出久はそこでふとあることに気づいた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うことに。

「そっか・・・・・・・そうだよ!別に()()をもっていなくてもヒーローになれるんだ!この人たちのように僕もそういったヒーローになればいいんだ!」

 その日から緑谷出久の人生は大きく変わった。

 

 月日が大分経ち、出久は雄英高校の廊下を歩いていた。

「おい、クソナード!」

「ん?ああ、かつりんか。」

「そのあだ名で呼ぶなクソが!」

 廊下で出くわしたのはA組に所属している出久の幼馴染である爆豪であった。

「お前が何でここにいるんだよ!サポート科って無個性の癖にいるんじゃねぇ!俺の人生設計が狂うじゃねーかよ!」

「なに?何意識しちゃってんの?かつりん、俺がここにいるからってかつりんの人生に支障をきたすことなんてほぼないよ。もしかしてナルシストなの?」

「こんの・・・・・・・クソが!」

 爆豪は“爆破”の個性で出久を襲うとする。

《Transport.》

 発音のいい音声と共に爆豪ののど元にブレードが突き付けられた。

「っ!?」

 爆豪がそこから身動きができなくなる。

「あのさ、すぐ気に食わないことでキレるなんて子供って証拠じゃん。いい加減にしてくれる?それに、俺はヒーローになる夢諦めてないよ。今の常識に昔の常識を入れる形でね。」

 出久はそう言うとブレードを収めて教室に戻ろうとする。

「待てやクソが!」

 爆豪は後ろからもう一度襲おうとする。しかしそれはある人物によって止められた。

「待て。人をいきなり後ろから、ましてや“個性”で襲うなんてするのはヒーロー志望として問題があるぞ。」

「んだてめぇは!」

 爆豪を止めたのは銀と黒を主体としたボディに頭部がクワガタとカブトムシを掛け合わせたようなロボットであった。

「俺の名はビート・J・スタッグ。出久の相棒の一人だ。」

「さっすがだな、J。」

 出久はJの方を見て褒める。

「今回は先生の方には何も言わないけど今度してきたら―――」

「報告させてもらうからな。」

「被るな!」

 コンッとJの頭を叩く出久。

 その光景をはたから見ていたA組の面々は驚いていた。

「あの爆豪とため口ってすごくない?」

「てかかつりんって・・・・・・」

「ネーミングセンス、スゴ!」

 耳郎、尾白、芦戸の順に驚く。

「爆豪君には困ったものだ。」

「ヒーローとしてあるまじき行為ですわ。」

 飯田と八百万は呆れる。

「お茶子ちゃん、あの武器どうやって取り出したか見えた?」

「ううん、全然。それにいつの間にか消えてたよ。」

「すごかったねー。ホント一瞬だったよ!」

 蛙吹、麗日、葉隠の順に感心する。

 

 出久が教室に戻ろうと発目が詰め寄ってきた。

「緑谷さん!私の発明の企画書を見てください!」

「ン?どれどれ?」

 発目に手渡された設計図を見る。

「ほほー、なるほどなるほど。でもこれじゃあ面白くないな。」

「やはり完璧に誰でも使えるってのがマズいですかね?」

「災害救助だったらそっちに求めてもいい。が、ヒーローのサポートアイテムだとしたら面白みに欠けるうえに欠点がない。完璧じゃつまらないって言ってるでしょ

 欠点があるアイテムだからこそヒーローってのはそこを補うために努力する。それがヒーローのおごりを押さえて向上心を上げるってもんだよ、発目ちゃん。」

「なるほど~。じゃあもう一回設計図を見直して改善点を考えてみますね!」

「おう!」

 発目はそう言うと自分の席に戻った。

「出久、俺も不完全だがいいのか?」

「いいのいいの。完璧じゃないところが面白いんだよ。それにな、俺たちを紹介するのにもうすぐ体育祭が始まる。そこで俺たちの力と技術を見せつけてやろうぜ。そして、常識を思いっきりぶち壊そうぜ!」

「了解だ。」

 

 そして始まった雄英高校体育祭。第一種目である障害物競走で大半の生徒が入り口で足止めを喰らっていた。

「やっぱりこうなったか。轟君の“個性”は広範囲攻撃が売りだから。」

「緑谷さんの予想通りですね!では私たちもドッ可愛いベイビーを見せつけていきましょう!」

「そう―――」

「そうだな!」

「だから被るな!」

 Jを押しのける出久。

「んじゃ、行きますか。」

 出久たちが正面ゲートを抜けるとそこには仮想敵が行く手を塞いでいた。

「おー、いいねいいねー。正に俺のための用意された舞台!んじゃちょっとみんな退いて退いて。」

 出久が図々しく前に出る。

「俺がすべて蹴散らす!」

「だから被るな!」

 前に出てくるJを払い除ける出久。

「行くぞ、J!」

「了解。」

 二人は突然携帯電話を取り出すと銃へと変形させる。

「なにをするつもりだ?」

 誰もが疑問に思う中、二人は気にすることなくバイザーを展開しトリガーを引く。

《It’s Morphin Time !》

 発音のいい機会音声と共に出久の体に金のスーツ、Jには銀のスーツが纏われ、ヘルメットが装着される。

 Jに関してはゴツゴツボディがスレンダーになった。

「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」

 その場にいた全員だけでなくテレビを見ていた人、会場にいたヒーローも驚いていた。

「「Let’s Morphin!!」」

 二人同時にトリガーを引くとバイザーが装着される。

「ビートバスター。」

「スタッグバスター!」

 そこに現れたのは金と銀の戦士の姿であった。

《transport.》

 二人の手にハンドルをベースとしたブレードが転送される。

「レディ・・・・」

「ゴー!」

「先に言うな!」

 二人は仮想敵の中へ突っ込む。

「よ!あらよっと!」

「ふっ!はっ!せい!」

 軽くあしらうように仮想敵を蹴散らしていく二人に一同目を奪われた。

「この0Pは厄介だな。J、一人で簡単に倒せるだろ?」

「問題ない。」

 二人は銃を手に取ると0Pの方を向き、トリガーを引く。

《Boost Up for Buster!》

「「Come on!」」

 二人は同時に言うとバイザーを展開し照準を合わせるとトリガーを引く。

 銃から放たれた光弾が0Pを貫き破壊した。

「よっし!出だしとしてはまずまずだな。J、行くぞ!」

「ああ。」

 二人は前に進み始める。少し遅れて他の選手たちも動き始める。

 

 これは個性ではなく、日本元来の特撮の方法でヒーローになるまでの物語である。



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16 一回戦第一試合 出久VS鉄哲

FGOを非課金から無(無理のない課金)に方向転換しました。


レクリエーション種目。出久は本戦に出る身でありながらも出ていた。

 大玉転がし、玉入れ、借り物競争。

 そんな出久に瀬呂と上鳴が訪ねた。

「なあ、緑谷?本選に出るのに結構出てるけど・・・・・・なんでだ?」

「ああ、俺も思った。」

「うん・・・・・・・・僕昔から激しい運動すると吐血するから先生とお母さんから「もう出ないで」って懇願されてさ・・・・・・・・一人だけ体育祭を見学って空気が嫌だから特別に欠席にさせてもらってよくオールマイトの動画を・・・・・・・」

 徐々に暗くなっていく出久に聞いていた生徒たちは自然と涙を流した。

「緑谷、体育祭終わったらどっか食いに行こうぜ。」

「俺も。俺たちで奢るからよ・・・・」

 二人は涙を流しながら出久の肩に手を置いた。

(緑谷、お前スッゲー苦労してんだな・・・・・)

 周りにいた生徒たちもすっごく出久に同情した。

 

 そして時間は過ぎてセメントスによってスタジアムが出来上がっていた。

「サンキューセメントス!ヘイガイズ!アァユゥレディ!色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!頼れるのは己のみ!ヒーローで無くてもそんな場面ばっかりだ!わかるよな!心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!」

 プレゼント・マイクが会場を盛り上げる。

「一回戦第一試合!!普通科でありながらも他を圧倒する実力の保有者!普通科、緑谷出久!(ヴァーサス)漢気一筋ど根性!ヒーロー科!鉄哲徹鐵!」

 出久と鉄哲は対峙する。

「お前がUSJで活躍したっていう緑谷か。拳籐からお前のすごさはよく聞いてる。」

「あ、どうも。」

「だがな!どんな奴にも俺は負けるつもりもねぇし手加減するつもりもねぇ!相手に対し全身全力で挑んでこと漢だ!お前も全力で来い!」

「鉄哲君・・・・・・・・・・うん!」

 出久はオーズドライバーとメダルを準備する。

「ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にする。あとは”参った“とか言わせても勝ちのガチンコだ!!喧嘩上等、怪我上等!!こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから!!道徳倫理は一旦捨て置け!!だがまぁもちろん!!命にかかわるようなことはクソだぜ!!アウト!!ヒーローとは敵を()()()()()()に拳を振るうのだ!」

 その言葉を聞いて出久は少しおかしいと思った。

 仮面ライダーが戦う理由。それは人間の自由と平和を守るために戦う。決してその力は誰かに振るうための物ではないのである。

「そんじゃ早速始めようか!」

 出久はオーズドライバーにメダルをセットし、鉄哲は全身を鉄化する。

「レディィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」

「変身!」

【タカ!ゴリラ!チーター!】

「START!」

 出久はタカゴリーターに変身すると一気に鉄哲の懐に潜り込み腹に連続してゴリラアームのパンチを叩きこみ。しかし鉄哲はそれを読んでいたかのようにガードを取っていた。

「そう来るって思ってたよ。お前が体弱いってのは相澤先生の時から気づいてるからな。速攻で決めてくるってのは予想済みだ!」

「くっ!」

 オーズがガードを取る。

 鉄哲は足を力強く踏ん張り腰を入れ、一気に右のストレートを叩きこむ。

「ぐおっ!」

 オーズは吹っ飛ばされる。

「あのパンチが腰が入ってたらヤバかったが腕だけだったらなんの脅威にもならねぇぞ!」

(そりゃそうだよね。一佳ちゃんから聞いていたから一気に勝負を仕掛けようとしたのがまずかったかな。でも相手は拳を使った相手。どうせだったら拳で応えたい!)

 出久は相手に対して対等に勝負をする覚悟であった。それは出久自身の性格ともいえるが、仮面ライダーとしての意地ともいえるものであった。

 敵は仮面ライダーではない相手を攻撃しないように、怪人となっていない相手を仮面ライダーが攻撃するのは大問題である。

(正面からがダメならアウトボクサースタイルで!)

 出久はチーターの脚を活かし鉄哲の周りを走っては殴るを繰り返す。

「ボクシングのアウトボクサーのように動いて鉄哲を猛攻!しかし大したダメージは見受けられない!」

「アウトボクサーは手数で相手を弱らせる。が、それは素人が真似できる技じゃない。ましてやゴリラの方はパワータイプ、つまりインファイター向けだ。今後のことも考えてそう選択したのは間違っていないが相手の個性をよく知らなかったってのが仇となっているな。」

 プレゼント・マイクが実況し相澤が開設をする。

(やっぱり付け焼刃の真似事じゃ太刀打ちできない・・・・・・・なら!)

 オーズはメダルを交換しスキャンする。

【タカ!ゴリラ!ゾウ!】

 オーズはタカゴリゾに変身すると今度は真正面から突っ込み足を強く踏み込みゴリラアームのパンチを叩きこむ。

「ぐっ!(さっきより重くなってやがる!方向性を変えて正面から攻めてきやがった!ははは、こういうやつは好きだな。だったら俺も正面からぶち当たってやる!)」

 鉄哲は拳をぶつける。

 互いに力は対等であると思われたがオーズの方が押された。

「ぐっ!パワーが足りないけれど!」

 オーズは怯む事無く拳を叩きこむ。

一発一発がぶつかるたびに押されていくオーズ。徐々に後ろに後退していた。

会場もその光景に白熱していた。

「緑谷がんばれー!負けんなー!」

 峰田が応援する。

「頑張って出久君!」

「アタシがアンタの優勝阻止するんだから負けんじゃないわよ!」

 葉隠も拳籐も応援する。拳籐が応援している様子に物間以外温かい目で見ていた。

「随分慕われているな、緑谷。正直ヒーローになってないのにそんなに慕われているのが羨ましいぜ。だが・・・・・・・俺も負けられねぇんでな!」

「僕も!」

 オーズはゴリラアームのゴリバゴーンを鉄哲へ放つ。

「なんだよそれ!ロケットパンチか!うおっ!」

 鉄哲は吹っ飛ばされる。

「モロに喰らった―!てかあれ反則じゃね?」

「大丈夫だ。事前に緑谷から自分のメダルに関する能力とコンボに関する能力のレポートを貰っている。」

「なにそれ!俺にも見せて!」

「見せるか。」

 プレゼント・マイクと相澤がコントをする中、オーズはメダルをセットする。ドライバーのメダルが光っていることに相澤が気付いた。

「まさかアイツ・・・・・コンボを使うつもりか!」

「変身!」

【サイ!ゴリラ!ゾウ!サゴーゾ!サゴーゾ!!】

 オーズはサゴーゾコンボに変身する。

「うぉおおおおおおおおお!」

 オーズは雄叫びを上げながら胸を鉄哲へ突き出す。オーズの胸から衝撃波が発生し鉄哲の足を止める。

「ぬぉっ!なんだこりゃ!」

「出たー!オーズの最大の特徴であるコンボ!今回は灰色のコンボだー!」

「灰色のコンボはパワーに加え特殊能力があるらしい。ええっとこの資料によると・・・・・」

 相澤が資料と照らし合わせて確認しようとする間にオーズの衝撃波が止むと鉄哲はオーズに突っ込もうとする。するとオーズは地面に両拳を叩きつけた。すると数メートルの範囲にあった瓦礫も宙に浮く。

「嘘!うちと同じ能力!」

「でも規模が違いますわ!」

 その光景を見ていた麗日と八百万は驚く。

「はっ!」

 オーズはもう一度拳を地面にたたきつける。すると今度は無重力がなくなり地面に叩きつけられる。

「ぐっ!スゲーな緑谷。だが俺も負けられねぇ!」

 鉄哲は正面から突っ込み拳を振るう。

「うぉおおおおおおおおおお!」

 オーズは拳を鉄哲の拳へぶつけた。

「ぐ・・・・・ぐぉおおおおお!」

 鉄哲は拳を押さえる。

 サゴーゾコンボのオーズのパワーは他を圧倒するものであった。

「ふっ!は!おりゃ!」

 オーズは拳を次々と叩き込んでいく。その拳に対しガードを取る鉄哲であるがそのパワーに押されていた。

(先生からは聞いていたがスゲーな。コンボも使われたんじゃ仕方ねぇ・・・・・・・だがただでやられるわけにはいかねぇ!せめて一矢報いてでも!)

 オーズは鉄哲を吹っ飛ばし距離を取る。

「一気に決める!」

 オーズはオーズスキャナーでスキャンする。

【スキャニングチャージ!】

 オーズは少し浮くと一気に地面へ練りこむように着地、鉄哲の脚が埋まり強制的に引っ張られていく。

「うぉ!なんだこれ!動けねぇ!」

 鉄哲はもがくが全く身動きができない状況であった。

 そしてオーズのサイヘッドとゴリラアームにエネルギーが集中する。

「はぁあああああああ!」

(ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!どうする?逃げるのは不可能だ。反撃するか?いやそんなことする前に倒される。ここは全力でガードするしか手がねぇ!)

 鉄哲は全力でガードを取る。

「せいやぁあああああああああああああ!」

 オーズのサゴーゾインパクトが炸裂し、鉄哲は吹っ飛ばされる。

(畜生・・・・・・・・流石って言うべきか・・・・・・・・次戦う時は負けねぇように固く、そして強くなってやる。いい勝負だったぜ、緑谷。)

 鉄哲は気を失う直前にそう思った。そして鉄哲は場外に吹っ飛ばされ、気を失った。

「鉄哲君場外!緑谷君の勝利!」

 ミッドナイトが宣言した瞬間、会場が歓声により大きく揺れた。

 



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17 一回戦第二試合 切島VS心操

皆さんあけましておめでとうございます
今年もやってきましたお正月。そして呼符20枚使って☆3のサーヴァントや概念ばっかが19、最後の一枚に望みをかけてみたらなんと新宿アヴェンジャーゲットです!
でも二枚目です。
今年もこの未熟者をよろしくお願いします。
それではどうぞ。


 一回戦第一試合が終わった直後、出久は通路の陰に隠れて壁に背中を預けていた。

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・」

 肩で息をする出久。さすがにアンクからもらったメダルがあるとはいえど体力の消耗と肉体への負担は大きかった。

「緑谷、大丈夫か?」

 次の試合に出る心操は廊下で出久を見つけ、声を掛けて来た。

「心操君・・・・・・・大丈夫だよ・・・・・」

「嘘つけ。バレバレだぞ。もし何ならリカバリーガールのところに行けよ。」

「うん・・・・・・」

 心操はそう言うと試合会場の方へ向かう。

(緑谷の奴、無茶してるな。元から体弱いってのは分かってたが今回は吐血しなかった。だがもし次コンボなんか使ったら・・・・・・いや、今は目の前のことに集中だ。緑谷が俺たち普通科の希望ってみんな思ってるが、それじゃダメだ。俺やみんなが緑谷バッカに頼ってたら、アイツばっかり負担が大きくなっちまう!俺も活躍してアイツへの負担を減らすんだ!)

 心操は出久ばっかりに頼ってはいけないと思っていた。

 そして心操は試合会場へ踏み出した。

「さぁ!白熱した試合の熱はまだ冷めていねぇリスナー共!次の試合さっきと同じ普通科VSヒーロー科!

 これと言った活躍はねぇが緑谷が高く買っている普通科、心操人使!そして地味な個性だが肉弾戦では有利に働く!漢気一筋ど根性!切島鋭児郎!」

 プレゼント・マイクが紹介する中心操は切島に話しかける。

「いいよな、ヒーロー科は。色々優遇されてさ。心のどこかで見下してんだろ?ヒーロー科に落ちた普通科の奴とかさ。」

「・・・・・・・・・・・」

 心操は()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことによって洗脳ができる条件付きの個性。相手をあえて怒らせるような口調で話したりして自分のペースに乗せるのが心操のスタイルである。だが切島はあたかも知っているかのように答えなかった。

(どういうことだ?俺の個性のことは他に知っている奴でもごく限られてる。誰かから聞いたのか?)

 心操が考え込んでいると切島が声を掛ける。

「悪いな。お前の“個性”、緑谷から聞いているんだ。相手をあえて怒らせたり自分のペースに乗せて洗脳することで被害を最小限にすることができるって緑谷がスッゲー褒めてたからな。だが俺は正面からぶつかるぜ。」

 切島そう言うと両腕を硬化させる。

「やっぱ緑谷のアドバイス通りになっちまったな。ホント、緑谷には頭が上がらねぇ。だからこそ、それに応えてやらねぇとな!」

 心操もファイティングポーズを取る。

「それじゃあ一回戦第二試合!START!」

 プレゼント・マイクが試合開始の合図を出すと同時に切島は心操手ツッコみ右こぶしを叩きこもうとする。

 切島の一直線に来る動きに対し心操は一気に懐に入ると腕を掴み地面に叩きつけようとする。

「ふんっ!」

 切島は左腕を地面に突き刺すと心操を地面にたたきつける。

「ぐっ!」

 倒れる心操の両足を掴み大きく振り回し、投げ飛ばす。心操は背中から地面に叩きつけられる。

「いってぇ・・・・・・だがまだ立てる。」

 心操は痛む背中に耐えながら立ち上がる。

(やるじゃねぇか。さすが緑谷がアレだけ褒めるだけのことはあるぜ。俺も全力で応えてやる!)

 切島は構えを取ると一気に心操にまで近づきジャブを放った。硬化の個性で硬くなった拳は生身の体にダメージを与える。

「ふっ!ふっ!はっ!ふっ!ふっ!はっ!」

 左、左、右とリズムよく拳を叩きこまれる心操。心操はクロスアームガードで凌ぐが長くは保たないものであった。

(圧倒的不利なのにも関わらず尚も立ち向かおうとする。ヒーロー志望の奴とは聞いていたがこれほどとはな・・・・・・・・・・いや、違う。それだけじゃない。おそらく緑谷も一枚かんでいるな。アイツは個性の分析も趣味でやってる奴だ。おそらく心操が緑谷からアドバイスを聞いているなら硬化などの肉体変化形の個性の()()を突いてくるはずだ。)

 相澤は心操の動きを見てそう思った。

「おいおい、あの普通科の生徒、結構粘るな。」

「でも何で個性使わないんだ?」

「使っちまったら早く片付くのによ。」

 観戦に来ていたヒーローたちはそんなことを口にする。

「ここで普通科心操人使の個性について紹介だ!個性は“洗脳“。自分の意思を持った言葉で相手を洗脳することができる個性だ!」

 そうプレゼント・マイクが解説すると一部のヒーローはこう口を開いた。

「洗脳って・・・・・・敵向きじゃね?」

「確かにな。」

「つーかそれでヒーローになれんのか?」

 そんなことを言うヒーローに心操は唇をかみしめる。

「おい、今バカな発言をしたやつはさっさとこっから出て行け。」

 心操のことをバカにしたヒーローを怒ったのはなんと相澤であった。

「お前ら勘違いしていないか?個性でヒーローか敵かなんて決まるんだったら、俺の個性も当てはまる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!ちゃんと人を見ろ!!」

 いつも面倒ごとや非合理的なことを避ける相澤がそこまで言うことにA組の面々は驚くと同時に共感もしていた。

 その理由は出久にある。出久がUSJへ行く途中で心操のことを話したからである。

 誰からも「敵向きの個性」と言われて傷つかないはずがないと、そんな言葉や行動が敵を生んでしまっているのではないかと出久は言ったのだ。その言葉を聞いて誰しもそう思えた。

 罪を憎んで人を憎まずという言葉がある。が、それを作ってしまっているのは自分たちにも原因があるのではないのかと出久は言いたかったのだ。

「流石だな。緑谷がヒーローに向いているって言ってるだけのことはある。けどな、俺だって負けられねぇ!そもそも勝負に負けるつもりがある奴はいねぇ!俺もなりてーんだ、憧れたヒーローのように!だからこれで終わらせる!」

 切島が右腕に力を込めると同時に硬化の個性を集中させる。その瞬間を心操は見逃さなかった。

「うぉおおおおおおおおおおお!」

 心操の渾身の右拳が切島の顔面に炸裂した。

「一矢・・・・・・・・・一矢報いたぞ!」

 心操は肩で息をしながらそう言った。体中には打撃による痣、腕は血が出ていた。当然その拳は本来の力よりもはるかに劣る。しかし心操の渾身は切島に叩きこめたのだ。

「・・・・・・・・・いいパンチだぜ。だから俺も、それに応える!」

「・・・・がっ!」

 切島の拳が心操の顔を捉え、そして吹っ飛ばされ気を失った。

 本来切島はあの時顔の方を個性で硬化することができた。しかしそれを切島はしなかった。それは全力で挑んできた相手に対する敬意でもあった。

「心操君気絶!切島君、二回戦進出!」

 ミッドナイトの宣言と共に歓声と拍手が送られた。

 しかし拍手は切島に対するものではなかった。圧倒的不利でありながらもチャンスを見逃さず最後まで挑んだ心操に対するものであった。

「さっきの変身する子と言いあの子と言い、あれで普通科なのか?」

「雄英もバカだよな。あんな奴が普通科だなんて。」

「戦闘経験の差は仕方ないがそれを補う努力を彼はしていた。それにあの精神力、サイドキックにするには申し分ない。」

 他のヒーローたちが心操を褒めたたえる。

「心操、お前スゲーよ。負けちまったけど、お前も緑谷と同じ普通科の希望(ホープ)だぞ!」

 同じC組の生徒が担架で運ばれている心操を見てそう言った。

 気を失っている心操の顔はどこか満足そうな顔をしていた。

 



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18 一回戦第三試合 八百万VS常闇

 一回戦にも関わらず会場は盛り上がっていた。

「さっきの奴もすっごいタフだったな!」

「頑丈で地味かと思ったけどあの能力、警護の方に向いているな!」

「普通科の奴も洗脳だけじゃなくて体術も身に着けていたな!」

「戦闘経験の差は致し方ないがそれでも最後まであきらめず立ち上がっていた。」

「全く、アイツをバカにした奴らの気が知れないぜ。」

 会場の多くのヒーローが二人を称えていた。

「試合どうだった?」

 遅れて戻ってきた出久がクラスメイトに聞く。

「心操の負けだったよ。でも多くのプロがアイツの事、褒めちぎってたよ。」

「逆にアイツのこと貶したヒーローはイレイザーヘッドが思いっきり注意していたぜ。こりゃ全国的に人気が落ちたな。」

 忘れているかもしれないがこの雄英体育祭は全国中継されている。そのため多くの視聴者やヒーローが見る。会場での発言は人気や支持率に大きく関わるものである。

「会場の熱気が更にヒートアップしてんな!んじゃ次の試合行くぜ!体からいろんなものを創造すんぞ!ヒーロー科、八百万百!

ヴァーサース!影が自分の意思を持って手足のように動くぞ!ヒーロー科!常闇踏陰!」

八百万と常闇が対峙する。

「八百万、お前も、そして他のA組の皆も同じ思いだろう。故に俺は負けるわけにはいかない!」

「常闇さん、それはわたくしも同じですわ。わたくしも負けるわけにはいきません!全力でお相手させていただきますわ!」

「一回戦第三試合!レディィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!START!」

 八百万は棒と盾を創造すると常闇に向かい進む。

「行け!ダークシャドウ!」

「アイヨ!」

 常闇の指示でダークシャドウは八百万に向かい特攻する。

「常闇さんの弱点は既に知っています!出久さんがチームを組んだ時点で傍聴していましたので!」

 八百万は盾の陰に隠していた物を落とす。八百万は腕で目を隠す。すると落としたものが突然発光する。

「ギャンッ!」

 八百万が落としたものは閃光弾であった。

 ダークシャドウは閃光によって弱る。

(先ほど目を閉じたときに常闇さんの位置は把握していました。目を閉じてどのくらい前に進めばいいのかは頭に叩き込んでいますわ!)

 八百万は目を閉じて常闇の近くまで走ると目を開ける。まだ閃光弾が光を発し、まだ視野がはっきりとしていなかったが、常闇の顔が見えていた。

「そこですわ!」

 八百万は常闇の喉に目掛けて棒を突く。

「こはっ!?」

 常闇はのど押さえ倒れる。

「目がショボショボするわね・・・・・・・ん?ちょっと失礼。」

 ミッドナイトが常闇の下へ近づく。

「常闇君、戦える?」

 ミッドナイトの言葉に常闇は首を横に振って応える。

「常闇君戦闘不能!八百万さんの勝利!」

 ミッドナイトの宣言に会場は歓声で揺れた。

「スッゲー!作り出す”個性“の子、どんな状況にも必要なものを準備できるな!」

「不測の事態にも助かる有望なサイドキックだな。」

「あの影を使った奴もすごいな。騎馬戦の時も見ていたがあの個性って攻撃力も防御も備わってるし、即戦力になるな。」

 会場のヒーローたちが称賛する。会場はセメントスが点検しそれが終われば第四試合が始まる。次の対戦相手は爆豪VS麗日。

 個性の相性は最悪の対戦であり、見るに堪えない試合であると知っているものは誰も予想した。

 選手控室で麗日は一人椅子に座るじっと手を握って俯いていた。

「麗日~、いま大丈夫・・・・・・て、全然麗日じゃない!眉間シワシワだよ!」

 様子を見に来た芦戸が控室に入るとそこには眉間にシワを思いっきり寄せて緊張しているお茶子の姿があった。

「あー、ちょっと緊張してね。」

「相手爆豪だもんね。仕方ないよ。」

 二人がそう話していると八百万が入ってきた。

「どうかしましたか芦戸さん?あら?麗日さん。確かもすぐ次の試合でしたわよね?」

「うん・・・・・・・・・でも相手爆豪くんなんだよね。」

「なるほど。それで・・・・・・・・・」

 八百万は麗日の様子を見て納得する。

「・・・・・・でも、たとえ負けるとしても最後まで諦めず戦いましょう。」

「・・・・・・・そうだね。爆豪にはアタシも勝てるかどうかと聞かれれば自信ないけど・・・・・・・・でもせめて一矢報いたいって思う。」

「二人とも・・・・・・うん!ありがとう!それに・・・・・」

 そこから先はあえて口にしなかった。

 あの日、USJ襲撃事件の日に目撃した出久の覚悟。

 自分の命を懸けてみんなを守ろうとしたあの雄姿を目に焼き付けていた。

 あの戦いを見ていなくても担架に運ばれている出久の姿はみんな見ていた。

 体中傷だらけになりおまけに喀血までしていた。そんな出久の姿を見て一同思った。

 

“出久を助けられるほど強くなりたい!”

 

 A組一同、そして拳籐も思っていた。

 同い年でありながらも誰よりも勇敢で強く、そして優しい。正に理想ともいえるヒーロー像である。

「そうだね。私たちもあの日から頑張って来たんだもん!出久君に少しでも追いつくためにね!」

 麗日はそう言うと立ち上がり、試合会場へと向かおうとする。

「そうだ二人とも、これ葉隠さんにも拳籐さんにも言えることだけど・・・・・・」」

 

 ―――――出久君のことも、負けないから。

 

 すれ違いざまに麗日がそう言うと二人は微笑み、そして言った。

「「もちろん!」」

 



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19 一回戦第四試合 麗日VS爆豪

更新遅くなってすみません。
正直正月ボケが抜けていない状況でヤバいです。これで仕事に司法出たら笑えないです、いやマジで。
それと最近動画でキルラキルを見てたら女体か出久が鮮血を身に着けてヒーロー活動したらって考えました。
あとpixivで短編で書かれたアイアンマンやスパイダーマンバージョンも誰かが連鎖ししたら面白いのになーって思いました。
私の場合同時連載が二つが限界なので無理です。それにスパイディーの悠長な口調も思いつきません。


「一回戦第四試合!中学からちょっとした有名人!!堅気の顔じゃねぇ!ヒーロー科、爆豪勝己!(ヴァーサス)!!俺こっち応援したい・・・・ヒーロー科麗日お茶子!」

 プレゼント・マイクが私情を混ぜた実況をする。

「緑谷、どう思う?」

「正直普通のやり方だと麗日さんは不利だ。でももしかっちゃんが個性をぼんぼん打ってくれれば・・・・・」

 心操の問いに出久が答える中、二人は対峙していた。

 怖い顔をする爆豪に対し麗日の顔には覚悟があった。

「START!!」

「うぉおおお!」

 麗日は爆豪に向かい突っ込む。

「おらぁ!」

 爆豪は右フックの要領で爆破を使う。しかし麗日は前転して爆豪の左を転がった。

「なにっ!」

「爆豪君はおおざっぱなようで意外とみみっちいってのはよく知っとるからね!」

 麗日は爆豪の足元を足払いしようとする。

「あめぇ!」

 爆豪は左手を爆破させ体を少し浮かすと体を左に回るように右手を爆破させ、そして麗日に向け直接“個性”を発動させる。

「ぐぅっ!」

 麗日は地面を転がる。

「まだ・・・・・・・まだ!」

 麗日は上着を脱ぐと軽く固めて爆豪へ投げつける。

「邪魔だ!」

 爆豪は薙ぎ払う。するとそこに麗日はいなかった。

「こういう時は・・・・・・・上しかねぇよな!」

 爆豪は上を見ようとする。

「こっちだよ!」

「なっ!」

 爆豪は驚いた。声がしたのは後ろからなのであった。

(上手い!勝っちゃんが予想している行動の一歩先を読んで行動していた!お茶子ちゃんの個性だったら走った勢いを殺さずに自分を軽くすることができる!走りながら前宙して後ろに回った!)

 出久は麗日の行動に驚かされた。自分が予想していた以上に動いていた。

(出久君に聞いておいてよかった!)

 麗日は前々から自分の個性ではヒーローとしていくには無理があるということは分かっていた。戦闘向きではない個性。もともと本人もレスキュー系のヒーローを目指しているのだがそれだけではやっていけないと思っていた。そこで出久に相談したところ出久はすぐさま格闘スタイルを主体としたヒーローを押して来た。いろんなヒーローの格闘スタイルを見て自分に合ったスタイルを確立していく。

 麗日にとってそれは二つの意味で嬉しかったが、同時にその好意に応えようと思った。

「おりゃ!」

 麗日は爆豪の背中に蹴りを入れる。

「っ!効かねぇなぁ・・・・・・・・もうちょっと腰入れろや!」

 BOOM!!

 爆豪の爆発が麗日に炸裂する。

「まだ・・・・まだぁ!!!」

 麗日は何度爆豪に地面に伏されても立ち上がる。

 見ている観客も見ていられなくなってきた。

「見てられねぇ・・・・!おい!!それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力差があるなら早く場外にでも放り出せよ!!」

「女の子をいたぶって遊んでんじゃねー!」

「そーだそーだ!」

 ヒーローたちからのブーイングに出久は怒りをあらわにするかのように強く拳を握っていた。

「緑谷、言っていいぞ。」

 心操がそう言うと他のクラスメイトも同意するかのように頷いた。

「・・・・・・・・ありがとう。」

 出久は立ち上がると思いっきり息を吸って叫んだ。

「うるせぇええええええええええ!黙ってろ―――――――――!二人は本気でぶつかってるんだ――――――!そんな二人を、バカにするな―――――――――!」

「あ゛?誰がバカにしてるだと!」

「お前だ、バカ。」

 出久の言葉に反応したヒーローを怒ったのは相澤であった。

「今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?シラフで物言ってんなら試合を見る意味はねぇ。帰って転職サイト見てろ!ここまで上がった相手を、自分とは圧倒的に不利な相手をアイツは認めているんだ。認めているから警戒してんだろ。本気で勝とうとしているからこそ手加減も油断もできないんだろうが!!」

 その言葉に出久はうれしくなった。

 この大会にはみんな本気で挑んでいる。たとえ一年生であっても夢への切符を手に入れられるのであればたとえ一年であろうと本気で挑む。

 正に命がけで挑んでいるのである。

(こいつ・・・・・・・・まだ死んでいねぇ。)

 爆豪は警戒をする。戦いの中で一番疑問に思ったのはあの時である。

 後ろからの攻撃の時なぜわざわざ声を掛けたのか。あのまま個性を使えば最悪でも場外まで追い込めたかもしれないのに。

「そろそろ・・・・・・・・・いいかな?ありがとう・・・・爆豪くん・・・・・・・最後まで油断しないで!」

 麗日は指先を合わせて個性を解除する。

「全く・・・・・・・・さっきまで僕も気づかなかったよ。とんでもない作戦だね、麗日さん。」

 出久は二人の上を見る。そこには麗日が浮かした瓦礫が浮遊していた。

「確かに気付かなかった・・・・・・・・・さっきまではな。ちょっと影があったからちらっと見たがまさかこんな使い方するとは・・・・・・・正直驚いた。だがな!俺も負けられねぇんでな!」

 爆豪は左手で最大出力で爆破を発動させ上から降り注がれる瓦礫を消し飛ばす。

(後は・・・・・)

 向かってくるであろう麗日の方を見る。しかしそこに麗日の姿は見当たらなかった。

(馬鹿な!アイツ程度の考えならふつう突っ込んで来るはずだ!どこに・・・・っ!?)

 爆豪は視線で左右を探すがどこにも見当たらなかった。そこで爆豪は自分の視野を一回下へ向けた。するとそこには掌底を打ち込む体制の麗日の姿があった。

(せめて勝てなくても・・・・一矢・・・・むく・・・・・)

 下半身から上へと上がるように体を動かそうとした時であった。許容量が限界に達し、力が入らなくなり、そのまま地面に倒れた・

 ミッドナイトは近づき麗日を見る。

(・・・・・・・・・・・このまま戦わせたら間違いなくこの子の体は壊れる。教師としては欠場させたいわ。でもさっきまで捨て身覚悟の彼女を見ていたら・・・・・・・正直引かせたくないわ。でもここは教師として、審判として言わせてもらうわね。)

「麗日さん行動不能。二回戦進出、爆豪くん!」

 ミッドナイトが宣言すると歓声が沸いた。

 そんな中出久は麗日が心配であった。

「おい、緑谷。」

 心操が声を掛ける。

「行って来いよ。後の試合で他の奴の個性見ておくからよ。」

「心操君・・・・・」

「そうそう。この試合テレビ中継されているからあとで個性の分析もできるでしょ?それに小休憩もあるからその間にでもアタシたちが取った動画見ればいいんだから。」

「行って来いよ、緑谷。」

「みんな・・・・・・・ありがとう。」

 出久は深くお辞儀をするとリカバリーガールの元へと向かった。

 

 出久はリカバリーガールのいる保健室へと足を運ぶ。

「おや、緑谷君かい。どこか体の調子でも悪いのかい?」

「いえ・・・・・・・・麗日さんは?」

「ああ、今は寝てるよ。」

 リカバリーガールはそう言うと書類を掻き始めようとする。

「おや、こりゃ参ったね。間違った書類持ってきちまったよ。すまないけど緑谷、しばらくいてくれるかい?」

「わ、わかりました。」

 リカバリーガールの言葉に従い出久は保健室に残る。出久はふとベッドの方を見る。するとそこには上半身を起こしている麗日の姿がった。

「あ、麗日さん起きた?」

「うん・・・・・・・さっきね。」

 麗日は作り笑顔をする。

「・・・・・・」

「あはは、ダメだねアタシ。爆豪君に勝てなかったよ。」

 麗日は頭を掻きながら言う。

「・・・・・・でもあの時、かっちゃんは身動きできなかった。麗日さんが倒れた時、勝っちゃんはしばらく固まってた。麗日さんはあの時、かっちゃんに勝ってたよ。」

「ありがとう・・・・・でも負けちゃったんだし・・・・・」

 そこから先を言おうとすると出久は麗日を抱きしめた。

「い、いいいいいいい、出久君!」

「・・・・・・・・無理しなくていいよ。」

「え?」

「本当は誰よりも泣きたいはずだよ。全力を出しても勝てなかった。悔しくないわけがないよ。」

「っ!」

「無理に頑張らなくていいんだよ、今は。だから・・・・・・・泣いていいんだよ。」

「うぅ・・・・・出久君、もうちょっとこのままにしてもらっていい?」

「僕で良ければ。」

 麗日はしばらく出久の胸の中で泣いた。

「やれやれ、手のかかる子供たちだね。」

 外で対入り禁止の立て札を立てたリカバリーガールはその場を去った。

 



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20 一回戦第五試合 芦戸VS青山

どうも皆さんお待たせしてすみません。消月ボケで仕事が大変だったのと昨日一日かけてある食玩を探したのですが最後の一ピースがなくて結局AMAZONで購入することになって各時間をお幅に削ってしまいました。FGOもあるんですけどね。
探してた食玩はウルトラマンVS5.1~4まではあったんですけど5がなかったんです。イオンに行って纏め売りの箱が置かれてたんで手に取ってみたら開けられてて、中を見たらなんと5だけが抜かれていたんですよね。之って絶対転売屋の仕業ですよね。だって本当にマニアだったら全種コンプするのが普通ですし、5は拡張用のパーツでウルトラマンと怪獣・宇宙人本体がないと意味を持たないものなんですから。ホント転売や死ねって思いました
。ヤフオクとか見たら普通に転売されていましたし。
あれってどうにかならないんですかね。
里長々と愚痴をこぼしましたが、作品をどうぞ。



「第四試合は・・・・・・・・うん、爆豪の勝ちだった。」

「私情を挟むな。」

 プレゼン・マイクの実況に相澤がツッコミを入れる。

「んじゃステージも元に戻ったことだし第五試合!お茶目な見た目だが個性はエグいぞ。ヒーロー科、芦戸三奈!VS(ヴァーサース)!緑谷と違ってベルトはあっても変身しないぞ。ヒーロー科、青山優雅!」

 芦戸と青山は対峙する。

「君はこの僕が華麗に倒してあげるよ☆」

「あいにくアタシも勝ちたいからね。それに青山の弱点分かり切ってるから!」

「バトル、STAAAART!」

 プレゼント・マイクの掛け声と同時に青山が先手を打とうとする。

「先手、必勝!」

 青山のベルトからレーザーが放たれる。芦戸は弱めの酸を靴にあけている穴から出すとスライディングの要領で青山に接近し足を絡めて倒す。

「ほっ!はっ!はっ!はい!」

 芦戸はすぐ立ち上がると青山の四肢を粘着性のある弱めの酸で拘束しベルトに普通の酸を掛けて使えなくする。

「NOoOOOOOOOOOOOOO!こんな恥ずかしいところをさらすだなんて!」

「青山君行動不能!芦戸さんの勝利!」

 その瞬間会場が一気に歓声に沸いた。

「秒殺だー!酸でやたらめったら溶かしたりして攻撃するかと思ったらまさかの鮮やかな格闘技!」

「芦戸は体力が高いことは実証されている。さらに自分の個性についても理解を始めている。ま、これは緑谷のおかげでもあるがな。」

「なーる。つーか緑谷すごくね?」

「あいつは一種の天才だ。自分にできることを最大限に理解しそれを最大限に発揮できるよう善処する。他人へのアドバイスも的確だ。」

 プレゼント・マイクが芦戸の行動に驚き相澤が解説をする。

「やっぱうち等のクラスってなんだかんだ言って緑谷に助けられているよね。」

「そうね。特に一見して地味に思える個性とかの子には特に。」

 試合を見ていた耳郎が思ったことを言うと蛙吹が相槌を打った。

「俺も緑谷のおかげで血糖値とか気にしなくて済んだしな。」

 そう言ったのは力道であった。

 力道の個性の発動条件として糖分を摂取する必要がある。がそれは同時に健康面においても深刻な影響を与える物であった。

 糖分の過剰摂取による糖尿病。これになってしまえば毎日のカロリー計算、糖分摂取量などが制限されてしまい一般的には窮屈な生活になるのである。

 力道の個性を聞いてまず緑谷はそこが心配になった。自分の体のこともあるため他人には人一倍気を使い心配するのだ。

 出久は考えに考えた末、ブドウ糖による接種を推奨した。

 ブドウ糖は脳や筋肉を正常に動かす働きもある。また果糖ということもあって健康面においてのリスクは砂糖よりも低い。

 個性発動時のリスクとして脳の機能が低下してバカの状態になる。しかしブドウ糖であればその逆の効果が働いて実質+-0となる。それも出久は考えたのだ。

「・・・・・・・・正直に言うとね、私緑谷ちゃんにこの体育祭に出て欲しくなかったの。だって緑谷ちゃん身体が弱いでしょ?爆豪ちゃんがかたくなに言おうとしないのには何かわけがあるんだからだと思うからきっと何か言えない事情があるんだと思っているわ。

 だからこそ、緑谷ちゃんには応援に回って欲しいって思ったの。・・・・・・・でも緑谷ちゃん、ヒーローになりたいって言ってたわ。この体育祭で活躍してヒーロー科に編入したいって。」

「梅雨ちゃん・・・・・」

 心配する蛙吹に耳郎は声を掛ける。

「ウチもそんな感じかな。あんとき緑谷の戦いちょっとだけ見たけど無茶し過ぎって思った。体中傷だらけになって、血まで吐いて、助けようと思ってる人たち心配させて・・・・・・・・・・でも、それがヒーローなのかなってちょっと思った。うち等に今できるのは・・・・・・・緑谷が無事にこの体育祭を終えることを祈るくらいだと思う。だってうち等本選落ちしちゃったわけだし、応援とか祈るとかそれくらいしかできないから。」

「耳郎ちゃん、ありがとう。」

 蛙吹は耳郎に礼を言った。

 



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21 一回戦に二試合飛ばして第八試合 瀬呂VS轟&第二試合組み合わせ発表

 芦戸の試合の後に行われた第六試合では上鳴が放電する前に拳籐の巨拳による張り手で一気に場外。続く第七試合の飯田と発目の試合は飯田がいいように利用されて飯田の勝利に終わった。出久は欲望に忠実な彼女の姿を見て“やっぱ鴻上会長と馬が合う”とあらためて思った。

 そしていよいよ一回戦第八試合轟VS瀬呂。

「お待たせしました!!続きましては~、こいつらだ!!優秀!優秀なのに拭いきれない地味さは何なんだ!ヒーロー科、瀬呂範太!!(ヴァーサース)連続一位と並び立つ男!同じくヒーロー科、轟焦凍!」

 プレゼント・マイクが実況する中瀬呂は軽い柔軟運動をする。

(正直俺の個性じゃテープを凍らされたり焼かれたりする。細かい戦術なんか俺の頭じゃ考えられねぇ。勝てる気もしねぇが・・・・せめて一矢報いてやる!)

「START!」

「これでどうだ!」

 瀬呂は素早く左のテープで轟の腕を封じ右のテープで足を拘束して一気に場外へ引きずり出そうとする。

「悪ィな。」

 轟がそう言った途端であった。一瞬にして外からでもわかる大きな氷の塊が形成された。

「や・・・・・・・・やりすぎだろ・・・・」

 轟はテープを凍らせて脆くし、自由になる一方瀬呂は氷の塊の中にとらえられていた。

「・・・・・・・瀬呂君・・・・動ける?」

 念のためミッドナイトが訪ねる。

「動けるはずないでしょ・・・・痛てぇえ・・・・・」

「瀬呂君行動不能!」

 瀬呂の頑張りもむなしくあっさりと終ってしまった試合に観客からはどんまいコールが送られる。

 そんな中出久の目には轟の姿がどこか悲しいように見えた。

「さー!これで第一回戦の試合がすべて終了した!続く第二回戦の組み合わせは・・・・・・・・・・これだ!」

 二回戦

第一試合

 C組 緑谷出久 VS A組 切島鋭児郎

第二試合

 A組 八百万百 VS A組 爆豪勝己

第三試合

 A組 芦戸三奈 VS B組 拳籐一佳

第四試合

 A組 飯田天哉 VS A組 轟焦凍

「そんじゃ小休憩挟んでステージの整備が終わったら早速開始だ。」

 

 出久は一人控室で頭を抱えていた。

(あ~~~~~も~~~~~~~!何やってんのさ僕!見ておけなかっとはいえど麗日さんを抱きしめるだなんて!あんなのまるで・・・・・・こ、恋人みたいじゃないか!)

 冷静になった出久は麗日にした行動を思い出すと恥ずかしくなっていた。

(恋人・・・・・・・・か。)

 ふと出久は冷静になった。

(こうして雄英にはいってヒーローになろうと頑張ってる。けど・・・・・・恋はまだだったな。)

 出久の体は病魔によって蝕まれていた。幸いにもこの病気は遺伝性ではない。

 が、それでも出久はもしもの可能性があって不安であった。

 そもそも自分が恋をして結婚、そして子供を授かるなんてことはできるとは思っていなかった。

 仮に20歳で結婚して子供を授かったとしよう。その頃には新人として忙しい毎日だ。けど同時に病院には定期的に通院しなければならない。そうすれば治療費だけでも生活を苦しめてしまっている。そして生まれるまでの診断や出産時の費用、その後の養育費。

 そしてまだ自我が芽生えて間もないころになれば病魔が本格的に蝕み病院で寝たきりの状態になるだろう。そうすれば妻と子を残して先に死んでしまう。

 そんなことだけは絶対にしたくなかった。

 ヒーローはヒーローである前に人間である。

 これはあるヒーローもののスタンスである。

 出久はヒーローである前に人間である。だからこそ大事な人を悲しませたくない、泣かせたくないと思っている。しかし自分が死ねば悲しむ人だっている。できればその傷を小さくとどめたいと出久は思っていたのだ。

「・・・・・・・・・・・ははは、おかしいよね。今になってこんなこと思うなんて。ホントおかしい。・・・・・・・・でもよかった。こんなバカげたことに気づけて。」

 出久はそう言うと立ち上がり試合会場へと向かった。

(先の不安なんて考えるのはやめよう。今は・・・・・全力で目の前のことに集中だ!)

 



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22 二回戦第一試合 出久VS切島

いやー、さっき間違えて別の方にこれ投稿しました。
いや笑えるね、うん。
・・・・・・・・・・なんか悲しくなってきた。


「さぁ!二回戦第一試合!最初を飾るのはこいつらだ!普通科でありながらの快進撃!経験なんか圧倒的不利なのにここまで見事勝ち上がってきた緑谷出久!(ヴァ―サス)地味に見えるがやる気と根性と日々の鍛錬でここまで勝ち上がってきた!切島鋭児郎!」

 プレゼント・マイクが自供する中二人は対峙する。

「緑谷、俺も本気で行くからな!どんな事情があっても本気で来いよ!」

「もちろん!本気を出さないで勝てるなんて思ってないからね!」

 出久はオーズドライバーにメダルをセットする。

「二回戦第一試合!」

「変身!」

【クワガタ!トラ!コンドル!】

「STAAAAAAAAAAAART!」

 プレゼント・マイクの言葉を境に切島が正面から突っ込む。

「先手必勝!」

「甘い!」

 ガタトラドルに変身したオーズはクワガタヘッドから電撃を放つ。

「うぉっ!」

 向かって来た電撃に切島は足を止めてしまう。

「ふっ!」

 オーズは一気に切島へ距離を詰めるとコンドルレッグの華麗な足技で攻撃する。

「ぬおっ!」

 切島は腕を硬化させて防御する。コンボでなくとも弧を描く足技に切島は押される。

「はっ!はぁっ!」

 オーズはトラアームのトラクローで切島を切りつけようとする。

「甘いぜ!」

 切島は腕を硬化させて鋭い岩のようにするとトラクローの攻撃を相殺する。

「やるね、切島君!」

「おまえもな!おらっ!」

 切島は右腕に拳を作り左足をステージにめり込ませ踏ん張ると一気にオーズに向け振り抜いた。

「くっ!」

 オーズは腕をクロスさせて防御するが吹っ飛ばされてしまう。

「ぐっ!」

 吹き飛ばされたオーズは何とか態勢を保ちながらも着地する。

(驚いた・・・・・・・そしてまずい。)

 オーズは視線を腕に向ける。

(思いっきり痛くて思うように腕が上がらない。それにこっちよりも向こうの方が体力もあるし使い方も上手くなってる。教えるべきじゃなかったかな。)

 オーズは戦いながらそう思った。

(でもこうして戦えているんだ。僕はうれしい!)

 オーズはそう思いながら腕の痛みに耐え、トラクローを振るう。

(さっきよりも腕の振りが弱ぇ・・・・俺の攻撃が響いてるってことか!緑谷には悪いがこの勝負勝たせてもらうぜ!)

 切島はオーズの異変に気付くと両腕を”個性“で硬化させるとラッシュを叩きこむ。

「ぐっ!ぐっ!がっ!ぐっ!がっ!」

 最初は防いでいたオーズだが一気にガードが崩されボディーに拳が叩き込まれる。

「硬い拳が緑谷のボディに炸裂した―!切島鋭児郎、ここで緑谷を倒すのか!」

「硬い上に勢いのある拳を叩きこまれたんだ。普通なら最初の攻撃でガードを下げられて倒されててもおかしくねぇ。だが緑谷の場合は基礎を大事にしている分耐えれてはいるが肉体に響くダメージに体が悲鳴を上げたんだな。」

 プレゼント・マイクが熱狂し、相澤が冷静に解説する中、オーズはメダルを手に取る。

(硬い皮膚にはかみ砕く力、そしてあの攻撃に耐えれる防御力、そして何より少しでも回復するならこれだ!)

 オーズはメダルをドライバーにセットする。セットされたメダルは組み合わせがコンボのだったので光り出す。

「まさかコンボか!」

「変身!」

 驚く切島をよそにオーズは変身する。

【コブラ!カメ!ワニ!ブラ・カー・ワニッ!】

 蛇のように敵を睨み付け、亀の甲羅のように固い盾を持ち、ワニの顎のように砕く蹴りを放つコンボ、ブラカワニコンボに変身した。

「でたぁあああああああああああああああ!オーズの四つ目のコンボだー!」

「資料ではコブラ、カメ、ワニのコンボらしいな。切島相手にそのコンボとは実に合理的だ。」

 テンションが上がるプレゼント・マイクの隣で相澤が称賛する。

「姿が変わっても関係ねぇ!」

 切島は臆することなくオーズへ向かい拳を振るう。

「はっ!」

 カメアームのシールドが切島の拳を防いだ。

「か、硬ぇ・・・・・」

 切島の“個性”をもってしてもその盾を突破することはできなかった。

「はっ!」

「くっ!ぐぉぉっ!」

 カメの盾によって殴られた切島は吹っ飛ばされた。硬い盾は時として武器にもなる。

「いっけ!」

 オーズはコブラヘッドのコブラを飛ばし切島の首に巻き付く。

「ぐっ!」

 切島は咄嗟に頸から上を硬化させる。しかしコブラの締め付けは強かった。

 リアリティ番組でアナコンダの生態を調べる番組があり、自前の防御力抜群のプロテクターを着て丸呑み体験をしようとした人物がいた。しかしどんなに事前準備していたプロテクターをもってしても締め付けは本人を苦しめた。自力で脱出しようにも全身の筋肉で圧迫されているため逃げようにも逃げられない。結局スタッフによって助けられたのだが。

「ぐっ・・・・・・くそっ・・・・!」

 苦しむ切島。

 しかしここで手を緩めてしまえば相手に対する侮辱になる。全力でぶつかってくる相手に手を抜く、それは出久にとっても許せることではないのである。

 オーズはワニレッグで切島を蹴る。エネルギー上のワニが噛み砕くように何度もソウテッドサイザーが切島の体を攻撃する。

「やべっ!」

 切島は咄嗟に全身を硬化させる。しかしコンボによって引き出されたその力は切島の”個性”を圧倒するほどの力であった。

「ぐぁっ!」

 オーズはアナコンダを解くと切島を蹴り飛ばした。

「ぐぉおおおおおお!」

 切島は地面に倒れるが根性で立ち上がる。

「すっげぇな・・・・・緑谷。だがせめて‥‥必殺技を受けてから負けてぇな。まぁ、負ける気はねぇけど。」

「・・・・・・・・・わかった。」

 オーズはオーズスキャナーでメダルをスキャンする。

【スキャニングチャージ!】

「そうこねぇとな!」

 切島は全身を今出せる最大の力で硬化させる。

「はっ!」

 オーズは両足滑る体勢でジグザグに接近し一気に切島の目前にまで跳び上がる。オーズの方辺りまで大きくなったワニのエフェクトが切島を噛み砕くように攻撃する。

「ぐ・・・・・・う・・・・・・・・うぉおおおおおおおおおおお!」

 最初は耐えていた切島であるが力に圧倒され場外ギリギリで気を失った。ミッドナイトが近づき確認する。

「切島君戦闘不能!緑谷君、三回戦進出!」

 その瞬間歓声が沸いた。

「スゲー!あの普通科の生徒!」

「強固な盾を持っているか。もし自分が敵わない相手が来た時に被害を最小限にできるな。」

「それならあの切島って奴も言えてるぜ。派手さよりも被害を最小限にできるし何より根性がある。」

「一年でこれだと職場体験でどれだあいつらに教えられるか・・・・・・あいつらの今後は俺たちの指導次第だな。」

 試合を見ていたヒーローが二人を誉め、そして自分自身に責任を持ち始める。

(こういった奴らにはあいつらを任してもいいな。個性だけとか派手さとか求めてる奴らは正直あいつらを預けたくない。面倒だがふるいにかける。)

 相澤は一人そう思っていた。

 通常であれば職場体験はまだ先ではあるが今年からは別と思っていた。先のUSJ事件。それによる敵の活性化、そしていずれ訪れるであろうオールマイトの現役引退。それらを考慮しても一年の内から経験させるのは目に見えていた。

 



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23 二回戦第二試合 爆豪VS八百万

 出久と切島の試合が終わり、次の試合の選手が試合会場入場口前に立っていた。

「出久さん、おめでとうございます!」

 出久の通った入り口の前には八百万がいた。

「ありがとう、百ちゃん。百ちゃんの相手はかっちゃんだよね?」

「ええ・・・・・・・・それよりも爆豪さんのことをかっちゃんて・・・・」

 八百万は出久が爆豪を愛称で呼ぶことに気づく。

「幼馴染なんだよね。かっちゃんってさ、昔っから何でもできてた。才能もすごくて、個性もすごい。」

「でも出久さんの方がすごいですわ!」

「も、百ちゃん!」

 突然声を上げた八百万に出久は驚く。

「確かに爆豪さんは出久さんの言う通りすごい方かもしれません!しかし!他人を見下す態度や名前を覚えようとしない点、ましてやあの暴言はヒーローにあるまじきものですわ!それに対し出久さんは決して慢心することはなく日々励んでいます!そして何よりも小さいころから培ってきた分析や情報収取能力!それは誰にも負けないものですわ!自信を持ってください!」

「あ、ありがとう・・・・・」

 徐々に詰め寄りながら話す八百万に出久は後ろに体をそらしながら礼を言う。そして八百万は今の自分の状況に気が付くと顔を真っ赤にして出久から離れる。

「す、すみません!取り乱してしまって////」

「いや、いいよ。気にしないで。そりょり、ありがとう。褒めてもらえるなんて思わなかったから。・・・・・・・・・・・じゃ、じゃあ僕は戻るね!」

「は、はい!」

「あ、それと頑張ってね、百ちゃん。」

「っ!・・・・・・・・・・・はいっ!」

 八百万は笑顔でそう答えた。

 そして人気がないところで出久は壁にもたれかかる。

 息遣いは荒く、汗も掻いていた。

「やっぱり・・・・・無茶があったよね・・・・・」

 いくらブラカワニコンボの超回復があるとはいえども肉体への負担は大きかった。

 人間が体を回復させるということは体力を使うということである。ブラカワニコンボを使ったときの体力の消費は解消できたであろう。しかしそれよりも前のは回復できないのである。

 アンクからもらったメダルがあるとはいえど出久の体は病魔が蝕んでいる状態。

 だからこそ体力の回復はできないのである。

「戻らないと・・・・・・みんな心配するだろうから。」

 出久は汗を拭き、クラスの元へと戻った。

 

 出久が観客席の方に戻ると同時に次の試合が開始された。

「さぁーーーー!リスナー共―――――!準備はいいか!二回戦第二試合!創造の”個性“で爆豪にどう応戦するのか!ヒーロー科、八百万百!(ヴァーサース)爆発で容赦なく倒していくのか!ヒーロー科、爆豪勝己!」

 爆豪と八百万が対峙する。

(爆豪さんはおそらく私が創造する暇を与えないつもりでしょう。ですがそれならそれなりに対処すればいいのですわ!)

「それじゃあ試合、STARRRRRRRRRRRRRRT!」

 プレゼントマイクの掛け声と同時に爆豪は爆破で一気に八百万に接近する。しかし八百万は筒状のクラッカーを創造すると一気に引いた。するとクラッカーの中から黒煙が舞う。

「ちぃっ!」

 爆豪は急停止する。

(やはり止まりましたわ。なら次は・・・・)

(ポニーテールの考えることは分かってる。この隙に防御用の盾を構成して飛び道具で倒すって算段だ。その前に!)

 黒煙が足元の方から晴れて足が見えると爆豪は両手を構えて技を放った。

爆煙砲(ボルケーノ)

 光景を絞り一点集中の攻撃を放った爆豪。八百万のいた場所が激しい爆発を起こす。

 しかしそこに八百万の姿はなく、あったのは創造したズボンだけを履かせ即席で作ったカカシがあっただけであった。

「なにっ!」

「こっちですわ!」

 爆豪は八百万の声をした方を見る。すると眼前には円盤状の盾を前に構えてタックルしてくる八百万の姿があった。

「くそがっ!」

 爆豪は咄嗟に片腕でガードを取りながら後ろに跳んだ。

 爆豪は押し込まれたが大した距離ではなかった。

「まだっ!」

 八百万は盾を持ち替えると縁の部分を爆豪の顔に目掛け振り下ろそうとする。

「ちぃ!」

 爆豪は片手を爆破させ横に回避する。

「なっ!」

 八百万は驚くが爆豪にはそんなことはどうでもよかった。

「おらっ!」

 片手を地面につけドロップキックを八百万に喰らわせる。

「喰らえや!」

 爆豪はもう一度爆煙砲(ボルケーノ)を放った。八百万は盾をもう一度創造して防ぐが場外へはじき出されてしまった。

「八百万さん場外!爆豪くん三回戦進出!」

 ミッドナイトが宣言すると歓声が沸いた。

「イタタ・・・・・・負けてしまいましたわ。」

 八百万は打撲したところを手で押さえる。そして八百万は出久の方を向いた。

 出久は微笑みながら親指を立てた。

 それを見て八百万は微笑んだ。

「百ちゃん・・・・」

「ずるい・・・・・」

「羨ましい・・・・・」

 麗日、葉隠、芦戸が嫉妬をむき出しにし、近くにいたA組生徒は少しばかり距離を取った。

 そして拳籐も頬を膨らましていた。

 



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思追いつきネタ2(加筆しました)

今度はこう言うの作ってみました。
出久=仮面ライダーネタって結構少ないんですよねー。できればだれか作ってほしいです。
ゴーストだったりディケイドだったりWだったりビルドだったりと


 グローバル・フリーズ。

 世界規模で起きた重加速による事件。この事件で多くの犠牲者が出た。

 超常が日常となった現代社会においても異常であった。

 そしてそれを引き起こしたのがある人間によって作られたロイミュード。

 しかしヒーローも警察もロイミュード関連の事件にはまったく目を向けていなかった。

 ・・・・いや()()()()()()()()()()()()()()と言ったらいいのであろうか。あるロイミュードによって関係者すべてが洗脳状態になっていた。

 そしてその脅威が静かに人々を苦しめていく中、一人の戦士が立ち上がった。重加速の中でも戦える車に乗った仮面の戦士。その名は仮面ライダードライブ。

 約一年という月日が流れ、その事件は終わった。

 しかしそれまでに失ったものは、あまりにも大きすぎた。

 

 そして月日が流れ雄英高校USJ。ヒーロー科A組全生徒は担任の相澤と講師の13号と一緒に授業を受けようとしていたが突如として敵連合が襲来。ちりじりになったA組生徒。

 水難ゾーンにいた出久はワン・フォー・オールを使いその場を脱出。その時に少し片腕が痛みでマヒした程度であった。

 そして広場に向かうとそこには脳無によって深手を負っている相澤の姿があった。

 敵連合のリーダーである死柄木が蛙吹を個性で破壊しようとした時、第三者が突如攻撃をしてきた。攻撃をしてきた方を一同が向くとそこにはなんと数体のロイミュードがいた。

(なんでロイミュードが!それにもうロイミュードは全て壊れたはずだ!)

 状況に戸惑いを隠せない出久。そんな時聞き覚えのある声が聞こえて来た。

「まったく、愚かな凡人以下のゴミ屑共が。せっかくの貴重なサンプルを潰すというのか?」

(あいつは・・・!!!)

 出久はその声を聞いて目を見開いた。タブレットに表示されている顔で見間違いかと思っていたが、それはロイミュードを誤った方向へ導いたすべての元凶である科学者、蛮野天十郎の声であった。

「あ?何こいつら?脳無、まずこのガラクタからぶっ潰せ。」

 脳無は死柄木の指示に従いロイミュードへ襲い掛かろうとする。

 がしかし、重加速によっていかに早く動ける脳無もスローモーションのような動きになっていた。

(重加速!?間違いない、蛮野だ!)

 出久は確信を持った。その間にロイミュードによって脳無は機能停止なまでに攻撃されてしまう。

「馬鹿な!先生の最高傑作だぞ!」

「凡人には分からないよ。さて・・・・・貴重なサンプルがたくさんここにはあるようだ。早速・・・」

 ロイミュードに襲い掛からせようとした時であった。蛮野に向け他の敵たちが襲い掛かろうとする。

「全く、蛮族以下の獣畜生共が。お前たち、相手にしてやれ。」

 ロイミュードが敵たちを相手にしている間に出久たちは相澤を担いでその場を離れる。

「おい緑谷、早くここから逃げようぜ!爆豪たちだったら大丈夫だしよ!」

「いやだめだ!どう逃げたとしても重加速の中だと飯田君の個性でも逃げられない!でもどうすれば・・・・・」

 出久が考えていると突如赤い車が出久たちの目の前にドリフト停止をする。そしてその中から八百万、耳郎、そしてアホ状態の上鳴が出て来た。

「え!なんでみんな車から!もしかして八百万さん車創造したん!?」

 麗日が驚きながら訪ねるが八百万は首を横に振って否定する。

「いいえ、突然この車と誰かが通信越しに乗れと言ったので致し方なく。」

 八百万が説明する中、出久はその車に驚いていた。

「まさか・・・・・・でもなんで?」

「驚いているようだね、出久。」

 突如聞こえてきた声に一同戸惑う中、出久は冷静に話す。

「戸惑ってるのも無理もない。だがアイツは時間をおいて自身のバックアップを残していたんだ。それにこの状況、君は黙って見過ごすのかい?」

「・・・・・・・・・・・いや、できないよ。」

 出久は車の中からベルトを取り出した。

「ベルトさん、また一緒に戦ってくれる?」

「もちろんだとも。それよりも聞くが、君のエンジンはTop Gearかい?」

「ああ!」

 出久はロイミュードたちの方へと駆け出す。

「デク君!」

 麗日が声を掛けて呼び止めようとするが出久は振り返りはしない。そして出久の後を続くかのように四台にミニカーがあるものをもって出久に装備させた。

「ん?貴様はクリム!そしてお前は・・・・!」

「さーて、ひとっ走り付き合ってもらおうか!」

 出久はベルトを装着しギアを入れる。

「OK! START YOUR ENGINE!」

 出久は赤いミニカーを変形させると腕に装備していたものに装着。一回レバーを動かした。

「DRIVE! TYPE SPEED!」

 その瞬間、出久に赤いアーマーのようなものが装備され、車からは一個のタイヤが放たれ装備された。

「あれって・・・・」

「まさか・・・・・」

「都市伝説の・・・・・・」

 雄英生徒全員が驚いていた。

「仮面ライダードライブ。ひとっ走り付き合えよ!」

 そこに現れたのはかつてロイミュード事件で最も活躍したヒーロー。決して正体を明かさず、108体ものロイミュードを他の二人のライダーと共闘して倒したという存在。

 ロイミュード事件後忽然として姿を消した仮面ライダードライブであった。

「クリム・・・・・・緑谷出久!」

「蛮野、お前を今度こそ倒す。行くぞ、出久!」

「わかってるよ、ベルトさん。はぁっ!」

 タイプスピードの速さを活かしてロイミュードに接近すると一体を連続ラッシュする。他のロイミュードが指から銃弾を放つ。

「ふっ!」

 ロイミュードの脚を掴み回避する。少し距離を取るとマックスフレアを手に取りシフトブレスに装填しレバーを引く。

「タイヤ交換!MAX FLARE!」

 トライドロンからマックスフレアのタイヤが出現しドライブに装備される。

「ふっ!はっ!はぁあああ!」

 殴る、ける、殴るをロイミュードに食らわせ吹っ飛ばした。

「うぉおおおおおお!」

 ロイミュードの一体が進化隊へ姿を変える。

「うぉらぁあ!」

「ぐっ!」

 ドライブはパワーによって吹っ飛ばされる。

「ベルトさん!」

「ああ!」

 タイプワイルドのシフトカーがドライブの手元に来るとドライブはシフトブレスに装填しレバーを引く。

「DRIVE!TYPE WILD!」

 ドライブのボディーが赤から一変して黒いボディへと変わる。そしてタイヤも右肩へと装備される。

「来い!ドライブソード!」

 トライドロンからドライブソード(ハンドル剣)が飛び、ドライブの手に収まる。

「はぁああ!」

 ドライブは力強く剣を振るい、そして時にはタックルをしてロイミュードを倒すとランブルダンプを手に取る。

「タイヤ交換!RUMBLE DUMP!」

 ドライブは手に装備したドリルで一気にロイミュードに接近しドリルで風穴を開けた。ロイミュードは爆発する。

「ぐぬぬ・・・・・・ならばあいつ等を盾にするまでだ。」

 蛮野はロイミュードにA組を人質に取るように指示を出す。

「させるか!ベルトさん!」

「OK!タイプテクニックで応戦するぞ。」

 ドライブの手にタイプテクニックのシフトカーが来る。

「タイヤ交換!TYPE TECHNIC!」

 ドライブのボディーが緑に変わり胸の部分にタイヤが来る。

「来い!ドライブガン!」

 ドライブはドライブガン(ドア銃)を手に取ると正確にロイミュードを撃っていく。

「やっぱ銃って怖い!」

 そう思っていながらも出久は撃つ。しかし一体のロイミュードが銃撃をかいくぐりA組の方へ向かおうとする。

「させるか!」

 ドライブはシフトカーを手に取りシフトブレスに装備する。

「タイヤ交換!FIRE BRAVER!」

 ドライブはファイヤーブレイバーにタイヤ交換するとアームを伸ばしロイミュードを捕まえる。

「お前の相手は僕だ!」

 アームで無理やり連れてくると目の前で降ろし、ドライブガンにタイプテクニックを装填する。

「ヒッサーツ!フルスロットル!」

 テクニックを連想するエネルギーが放たれ縦横無尽に動き回りロイミュードを破壊する。

「さて・・・・・・・残るのはお前とあと一体だけだぞ、蛮野!」

「おのれ・・・・・・」

 ドライブは蛮野と残った一体のロイミュードを見る。

「行け!」

 蛮野の指示に従いロイミュードはドライブに向かってくる。

「ベルトさん、コアを何としてでも残そうと思ってる。」

「どうしてだ出久?・・・・・・・・・・そうか!そういうことか!」

 ベルトは出久の考えに気づく。

「わかった。だが上手くいく保証はないぞ。」

「でもやるだけやってみよう!」

「OK!スピードタイヤに交換するんだ!」

「わかった!」

 ドライブはタイプスピードに代わるとシフトブレスのイグナイターを押しレバーを一回倒す。

「ヒッサーツ!フルスロットル!」

 トライドロンがドライブとロイミュードの周りを片輪で旋回する。

「はぁああああああ!」

 中腰になったドライブはロイミュードに向け構えると突如反転しトライドロンの方へとキックを繰り出す。ドライブはトライドロントロイムードに乱反射するかのように蹴りを繰り出した。

 次第にその蹴りは徐々にRを描いていく。そしてロイミュードのボディーに限界が来てロイミュードはコアだけを残し爆発する。

「これに入れれば!」

 ドライブはプロトドライブのシフトカーにコアを入れた。

「よくやった、出久。後は・・・」

「蛮野・・・・」

 二人は蛮野の方を見る。

「くっ・・・・・・・今日は退いてやる。だが覚えておけ、クリム!そして緑谷出久!この屈辱は必ず返してやるからな!」

 蛮野はそう言うとその場から姿を消した。

「NICE DRIVE、出久。」

「ありがとう、ベルトさん。でもまだ終わってないよね。」

 ドライブは敵連合の方を見る。

「もうひとっ走り付き合ってくれる?」

「もちろんだとも。」

 



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24 二回戦第三試合 芦戸VS拳籐

 会場の熱気は収まることを知らず、次の試合を待ちわびていた。

「さぁー!続いては女子同士の対決だ!可愛い見た目だが“個性はトンでもねぇぞ!ヒーロー科、芦戸三奈!VS(ヴァーサス)!運動神経は負けちゃいねぇ!格闘センスも兼ね備えて”個性“を最大限に活かす!同じくヒーロー科、拳籐一佳!」

 二人は対峙する。

「こうやって対峙するのって初めてだよね?」

「ええ、そうね。でもその話はまた今度にしない?この体育祭が終わった後でも時間あるしね。」

「うん!だから当たり前だけど手加減しないよ!」

「こっちだって!」

 互いに闘志をむき出す二人。

「それじゃあレディィィィィィィィィィィィィィィィィ!STARRRRRRRT!」

 プレゼント・マイクの掛け声と同時に先に動き始めたのは芦戸であった。

 芦戸は弱めの酸で拳籐に向かい滑走する。

「狙い見え見え!」

 拳籐は右手を振り下ろすと同時に巨大化させる。

「甘い!」

 芦戸はスライディングしてギリギリで避ける。そして拳籐の脚を片手で掴む。

「うりゃ!」

 芦戸は拳籐の足を引っ張り体勢を崩そうとする。

「なん・・・・・・・・のっ!」

 拳籐は咄嗟に左手を巨大化させ転倒を防ぐ。

「もらったよ!」

 芦戸は酸を左手に大量に掛けた。痛みが来るかと思われたがそんなのは全くなく、何をしたのかわからない拳籐。

「せっかくのチャンス無駄に・・・・・・・・・ん?」

 拳籐は反撃に出ようとしたがそこで異変に気付いた。左手が上手く動かないのである。視線を移した先には先ほど芦戸が掛けた酸が目に入った。

 芦戸の酸は体内から分泌される液体である。液体であるならば濃度と粘度も操作可能であるのではないかと出久は気づいた。まだ不慣れではあるがある程度は出久のおかげでできるようになった。

 あとは自主練である。が、出久からはベースになるのは人間であるためある程度注意して行うようにと念押しされた。

「もらうよ!」

 芦戸は拳籐の後ろに回りヘッドロックを掛けようとする。

「足も使わないとダメだよ!」

 拳籐は前に体を倒し芦戸を背中から地面に叩き付ける。

 ヘッドロックを掛ける時一番危ないのはかける直前である。

 どういうことかというとヘッドロックは腕を使って相手の首を絞める技。技が決まる瞬間意識は上半身へと向かう。この時突然前に相手が倒れたとしよう。すると足元がお留守であれば簡単に相手に地面へ叩きつけられてしまう。そこで慣れてない人間は足で相手の胴体を捉えてヘッドロックを食らわせる。

 これなら理屈上前に倒されたとき地面に叩きつけられるリスクは減る。

「それと詰めが甘いよ!」

 拳籐は元の大きさに戻した右手を再び巨大化させ芦戸を押さえつける。

「ぐぅう・・・・・・・・・・・ギブアップ・・・・・・」

 芦戸は身動きできずギブアップを宣言する。

「芦戸さん降参!拳籐さん、三回戦進出!」

ミッドナイトの宣言と同時に会場からは歓声と拍手が沸いた。

「あー、負けたか―。」

「いい勝負だったよ。」

 拳籐の差し出した手を芦戸は掴み立ち上がる。

「私の右手も固められてたら勝てなかったかも。」

「あー!その手もあったか―!くっそー!くやしー!」

「あはは、ドンマイ。」

 拳籐は芦戸を宥める。

「でも勝ったんだから次の試合相手に勝ってよ!」

「もちろん!」

 



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25 爆豪の心境

実は私今日怖い夢見たんですよ。
リアル鬼ごっこみたいな話なんですけどね、テーマパークかどこかに行ってる家族がおおばあちゃんと一緒でそれぞれ楽しんでたら急に変な放送が始まってそこからリアル鬼ごっこスタート。
んでボス倒すために誰かと組むまで何度も死んでは生き返るを繰り返すんです。そして仲間と思っていた男の子が実はボスで殺されたと思ったらまたリスタート。
今度は家族にその子と話して家族静観してボスを殺したと思ったらまた振り出し。
また攻略すればいいって思ってたら後ろから変な人がついてきて後ろ振り替えたら腕ミスコールの表紙みたいな仮面の人が来て{ごめん。僕君を殺したくなったから殺しちゃいました。」と言って目つぶししたところで目が覚めたんです。
 そっから跳び起きたら壁にぶつかって何かと思ったら寝相の悪さに壁まで移動してたんですけど布団があった悪ないのに気づいてしばらく怖かったんですよね。
夢だけど詳細に覚えちゃうほどの恐怖なんですよ。いやー怖い怖い。


 拳籐と芦戸の対決が終わってセメントスによってフィールド整備されている中、出久は胸に違和感を感じていた。

 出久は急に席を立ちあがることにクラスメイトが気に掛ける。

「どうしたんだ緑谷?」

「あ、ごめん。ちょっとお手洗いに・・・・」

「そっか。早く戻れよ。・・・・・・・・・・・つってもきっと最速で終わるだろうからまあゆっくりしろよ。それに終わったら準決勝なんだし。」

「うん。じゃあ行くね。」

 出久は手を振りながらその場を後にする。

「・・・・・・・・」

 そんな出久の無理に心操は気づいていたがみんなの前で敢えて言わないように気を使った。

 

 洋式トイレの一室で出久は胸を押さえていた。息は荒く、汗も掻いていた。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・やっぱ・・・・・無理しすぎてた・・・・・・」

 少し落ち着いてトイレから出る出久。

 洗面台の水を流し水を出す。

(アンクからもらったメダルをもってしても限界はある・・・・と言うかやっぱ病気はキツイ・・・・・・・)

 出久は石鹸で手と蛇口の栓を洗う。

 これは私もやっている癖である。なぜかと言えばよく考えて欲しい。

 トイレで用を足した時に手は汚くなります。洗うために栓を開けます。そしてその手を石鹸で洗います。この時手はきれいになります。しかしよく考えてください。線は手を洗う前の状態です。自分の体とはいえ雑菌だらけです。

 ではきれいにした手でその栓を開けたらどうなるでしょうか?

 答えは手を洗っても意味がないである。

 だが栓の部分を洗えば栓を閉める時に手は汚くならないはずである。潔癖症かもしれないがパンなどの手に取って食べる時などにはこうした方がいいのは言えるであろう。

「・・・・・・でもまだ終わりたくない。なにより・・・・・」

 出久の脳裏には轟の姿があった。

「何としても轟君に気づかせないと。」

 出久は一人そう呟くと席へ戻る。するとすでに歓声が沸いていた。試合会場を見ると氷漬けにされている飯田の姿があった。

「もう終わっちゃったの!」

「おお、緑谷。今戻ったのか。」

「どんな勝負だったの!」

「おお、それが簡潔に説明すると飯田の行動範囲を轟が制限して飯田があの超速くなる奴を使って轟に一発入れて場外に出そうとしたんだが足の排気口みたいなのに轟が氷で小細工して足を止めたんだ。そんで氷漬けって状況。」

 簡潔で分かりやすい説明に出久は納得する。

「じゃあ僕は控室の方に行くね。」

 出久はそう言うと控室の方へと向かった。

 

 一方そのころ反対側の控室では爆豪が右手を入念にマッサージしていた。

(クソッ!思った以上に個性を使っちまった。丸顔と言いポニーテールと言い・・・・・・・厄介だな。)

 爆豪はそこでふと手を止めた。

(あいつらは本気で来ていた。夢への切符を掴むため・・・・・・・・か?そんな顔じゃなかったな。むしろそれよりも・・・・・誰かのために強くなるって感じだったな。)

 爆豪の脳裏には出久の顔が思い浮かんだ。

(黒目女も透明女も・・・・・・・・他の奴だってそうだ。USJ(あの時)何もできなかった自分が嫌だったんだ。あいつが一番ヤバいバケモノを相手してた。なのに俺は・・・・)

 爆豪は自分の無力さを改めて感じていた。

(あん時からあのクソナードは自分を犠牲にしやがる。)

 爆豪が一番印象に覚えているのは小さい頃、川に落ちた時に手を差し伸べる出久の姿であった。

(自分だってすぐに血吐いちまうほど弱いくせして人一倍お節介で・・・・・・・そのクセ自分のことをまともに考えもしねぇ・・・・・・・・・ああクソ!さっさとあいつ倒してこれ以上アイツの体に無理させねぇようにぶっ飛ばしてやる!)

 荒れる感情を出しながらも考えは冷静な爆豪。爆豪はぶっきらぼうに扉を開け会場へと向かった。

 



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26 準決勝第一試合 緑谷VS爆豪

 雄英体育祭一年生の部準決勝第一試合前。

 会場にいるプロヒーローたちは今か今かと次の選手の戦いを待っていた。

「緑谷って普通科の子はいろんなメダルで戦うな。」

「ああ。サイドキックとしては緊急時に市民を逃がすときの時間稼ぎもしてくれるな。」

「だが噂によると体が弱いらしいぞ。そうなると別の方向も考えないとな。」

「爆豪もすごいよな。さすが雄英入試一位と言うだけはある。」

「だが室内などでは彼の能力は発揮されない。残念だが彼が存分に個性を使える場所は限られるな。」

 冷静に分析するヒーローたち。そんなヒーローの顔が、発目が開発したシステムによってピックアップされていく。

(こんだけヒーローがいてこれだけの人数しかちゃんと見ていないのか・・・・・・・まぁ、これがあるおかげで大分助かるがな。)

 プロからの指名を受けすぐにスカウトというわけにはいかない。各々目指したいヒーロー像がある。どのようなヒーローになりたいのか、どういう活動をしたいかなどで入る場所は変わる。ホームページや公式ツイッターなのでその活躍は見ることが出来るが実際と違う場合が多い。

 例えば“個性でなく人柄を見る”というプロフィールを書いているヒーロー事務所があるが実際には個性重視が多い。そう言ったところで職場体験を失敗した生徒は多い。

 壁に耳あり障子に目ありという言葉の通り人の声を拾いカメラで見てその人の本性を洗い出す。非常に常識に欠けることかもしれないが最適な方法ともいえる。そしてヒーロー事務所から指名があったとしてもリストアップに入ってない事務所は送られるだけで個人指名リストから除外される。

 間違っても教師である相澤は最も合理的な判断を下した。

 最も、やりすぎることもあり減給を言い渡されることもあれば不審者扱いされることも多々ある。

「おいイレイザー、随分熱心だな。」

「勝手に見るな。見込みの可能性のある奴らを潰すことをするくらいならこうして可能性を排除するだけだ。」

「ふーん。」

 プレゼント・マイクはそう言うと相澤を見る。

「ん?なんだ?」

「いやさ、お前ちょっと変わったって思ってな。」

「俺がか?」

「ああ。大方緑谷のおかげかもな。」

「・・・・・・・さあな。というかそろそろ時間じゃないのか?時間を忘れるのは合理性に欠けるぞ。」

「おっとっと。そうだったそうだった。」

 プレゼント・マイクはマイクのスイッチを入れる。

「さぁー!リスナー共、待たせたな。準決勝第一試合!三つのメダルが俺の武器!緑谷出久!VS(ヴァーサス)!!爆破で何でも吹っ飛ばす!爆豪勝己!」

 プレゼント・マイクの言葉と共に二人は会場へ入ってくる。

「おいクソナード!てめぇ、自分の今の状況分かってんだろうな?」

「・・・・・・」

 爆豪の言葉に出久は無言を貫く。

「・・・・・・・無視すんのか。いい度胸じゃねーかクソデク!完膚無きまでにぶっ潰してやるよ!クソナード!」

 爆豪が一方的にしゃべる中、出久はメダルをセットする。

「変身!」

【ライオン!クジャク!バッタ!】

 出久はオーズ・ラジャバへ変身する。

「準決勝第一試合!STRAAAAAAAAAAAT!」

「ぶっ殺す!」

 爆豪は爆破で一気にオーズへ接近してくる。

「ライオネルフラッシュ!」

 ライオンヘッドのライオネルフラッシュが放たれ爆豪の視野を奪う。

「はぁっ!」

 その間にオーズは一気に爆豪まで接近するとバッタレッグを活かしたドロップキックを喰らわせる。

「がっ!」

 爆豪は吹っ飛ばされ地面に背中を付けてしまう。

「こんのクソナードが!」

「まだだ!」

 オーズは胸に手をかざすとオーズの左腕にタジャスピナーが装備される。タジャスピナーから火球が放たれる。しかしオーズは爆豪に当てるのではなく周りに当てる。

 爆豪の周りの熱が一気に急上昇する。

「てめぇ・・・・・・・」

「どうしたのかっちゃん?カルシウム足りなさ過ぎてイライラしてるの?」

「うるせぇ!」

 爆豪は手を爆破させながらオーズに迫ってくる。オーズはタジャスピナーを盾にしながら攻撃を防ぐと同時に受け流していた。

「攻め込んで来いやゴラァ!」

「う~ん、そんなに動いてその肺活量。結構走ってるんだね。でも個性も使ってるから大丈夫?特に右手。利き腕だから結構使っちゃうんでしょ?」

「っ!?」

 一見ふざけている口調ではあったが爆豪は驚いていた。出久はヒーローに憧れるがゆえに観察ノートを付けている。何度も動画を再生しては巻き戻すを繰り返して来た。短い時間でより多くの情報を引き出すことを身に着けた。

 そしてそれは一瞬で活躍したヒーローの情報を生で見ても出来るようになったのだ。

(こいつ・・・・・俺の状態を察しやがった!気持ち悪いほど観察ノートを付けていやがったがここまでとは・・・・・・・正直メダルだけに気を取られてた!)

 爆豪は出久から聞かされたコアメダルの方にだけ目を向けていた。しかしそれ以上にすごいのは出久の長年の経験で得た観察眼と判断応力であった。

 爆豪は焦りと熱によって汗をかいていた。

「緑谷の奴何やってんだ?爆豪に汗かかせたら逆に不利だろ。」

 試合を見ていた上鳴はそう呟いた。

 爆豪の個性は手からニトロのような汗を出すことで爆破を生む個性。

 出久の発言による怒りと火球による熱。この二つは爆豪の汗を加速させるには十分であった。

「もしかして爆豪さんの弱点を突くつもりではないのですか?」

「でもそうだとしたらなんで怒らせるの?一気に畳みかければええんちゃう?」

 八百万の予想に麗日が意見する。

「でもあんだけ汗かいてると服ベタベタになりそうだよねー。」

「そーだねー。思いっきりシャワー浴びたいよ。」

 芦戸の言葉に葉隠れが相槌を打つと八百万は出久の狙いに気づいた。

「なろほど!だから出久さんはあえて爆豪さんを怒らせたのですね!」

「え?どういうこと?」

 八百万の言葉に芦戸をはじめとしたA組は首を傾げた。

 その間にオーズは爆豪の汗で濡れたシャツを見る。

(もう十分汗を掻かせた。なら仕上げと行こうか!)

 オーズはバッタレッグで大きく距離を取るとメダルをセットする。

「変身!」

【シャチ!ウナギ!バッタ!】

 オーズはシャウバへ変身するとシャチヘッドとウナギアームのエンブレムが光りオーズの手から放水をする。

「はっ!」

「うわっ!ツメテェ!」

 オーズの放水を全身から浴びる爆豪。

「んぁ?んだこれ?ただのシャワーか?わざわざ俺にシャワーを浴びせるとは馬鹿な野郎だな!死ねや!」

 爆豪は爆破を使おうとする。しかし爆破は起きなかった。

「なんで・・・・・・・・はっ!」

 その時爆豪はオーズの狙いに気づいたのだ。

「これで決める!」

 オーズはタコメダルをセットする。オーズのコアメダルが光る。

「変身!」

【シャチ!ウナギ!タコ!シャ・シャ・シャウタ!シャ・シャ・シャウタ!!】

 オーズはシャウタコンボへ変身する。

「出たー!オーズのコンボ!これは水のコンボか!」

「資料によるとシャチ、ウナギ、タコの水色のコンボ。名前はシャウタコンボだ。陸でも活動できるが一番の売りは水中を自由自在に動き回れることと三匹の動物の最大の武器を活かせることだそうだ。」

 会場は一気に歓声で沸き上がる。

「クソデク・・・・・だからって最後まで勝ちを譲る気はねぇからな!」

「その言葉を言ってくれるかっちゃんは昔と変わらず、尊敬するよ!」

 オーズはオーズスキャナーでメダルを読み込む。

【スキャニングチャージ!】

 ウナギウィップで爆豪を捕まえると電撃を流しながら空中へ上げられる。

「はっ!」

 オーズは上へ身体を液体化させて上昇し、タコレッグを出すとタコレッグは高速回転する。

「はぁあああ!せいやー!」

 オーズのシャウタコンボの必殺技、オクトバニッシュが爆豪に炸裂し、爆豪を場外へ吹っ飛ばされる。

(畜生・・・・・・自分の弱点に気づけねぇなんて・・・・・完敗だ・・・・・・次戦う時はこうはいかねぇからな、オーズ。)

 オーズをにらむ様に見ながら爆豪は芝生に倒れて行った。

「爆豪君場外!緑谷君、決勝戦進出!」

 その瞬間会場が歓声で一気に揺れた。

「スゲーぞ緑谷!」

「普通科の希望だよ!」

「ああもう!緑谷スゲー!他になんて言っていいか言葉が出ねー!」

「スゲー!」

 普通科生徒たちは緑谷の勝利に喜びの声を上げる。

「スゲーな緑谷!でもなんで爆豪が急に個性使えなくなったんだ?」

「あのコンボの特殊能力か?相澤先生みたいな無効化の個性だったり?」

 上鳴と瀬呂が思ったことを言う中、蛙吹が否定する。

「それは無いわ。USJの時緑谷ちゃんの個性を峰田ちゃんと一緒に見たことあるけど無効化の個性じゃないわ。それに水中が売りの個性だって説明してたじゃない。」

「ああ、そっか。」

 誰もが頭を悩ませる中八百万が答えを出した。

「緑谷さんが水を掛けた瞬間、爆豪さんは個性を封じられたんです。」

「どういうこと、ヤオモモ?」

 耳郎が問いかける。

「爆豪さんの個性は汗腺からニトロのようなものを出して爆破させます。緑谷さんは熱と言葉によって汗腺を大きく広げました。

元々人間の汗というのは体温調節のためにでる物です。夏ならば冷やすために出ます。

ですが先ほど緑谷さんは水を掛けました。急激に体温が冷やされれば脳は体が冷やされたと思い汗腺を収縮させます。完全に汗腺を塞ぐことはできませんが腕の汗腺程度であれば十分です。塞がれた汗腺からは汗は出ません。攻撃の手段を失ってしまえば爆豪さんはいい標的という訳です。」

八百万の説明に理解する面々もいれば、理解していない面々もいた。

「えーっと・・・・・わかりやすく言うと水道のホースを折った状態になったって言えばわかるんじゃないかな?」

『ああ!』

 麗日のアシストで一同は納得した。

 



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27 ヒーローの定義

ふとヒロアカ見てて思ったんですよね。
社会に奉仕するのって本当にヒーローなのかって?
自己満足で活動しているからヒーローじゃないのかなーって。
純粋な気持ちで動く人たちがよくヒーローになりますし。
ステインの気持ちってなんかわかる気がしてしまうんですよねー。
導くとか活かすとか・・・それって普通自分で考えることじゃね?って思うんですよ。


 試合が終わった後の保健室。出久はリカバリーガールに強制的に保健室に来るように言われ診断を受けていた。

「・・・・・・・・・・・大分無茶して戦っているようだね。」

「・・・・・・・・・・・やっぱりわかってましたか。」

「当たり前だよ。あんたの無茶は学園の誰もが知っているからね。」

 リカバリーガールは溜息を吐くと書類にペンを走らせる。

「はっきり言ってあんたの体の中にあるメダル。紫と金色だっけ?そいつのおかげでどうにか今立っているけど本来なら死んでもおかしくないんだよ。」

「・・・・・・」

 出久はその言葉にうつむいてしまう。

「・・・・・・で、どうするつもりだい?あたしとしては出て欲しくないんだけどね。」

「・・・・・・出ます。」

 出久のその言葉を聞いてリカバリーガールはペンを止める。

「・・・・・・・・・・・どうしてだい?まだ二年の月日があるじゃないか。その間に体の調子を直したりしてチャレンジしたって問題ないし、何よりあんたはもうこの大会で十分に活躍したじゃないか。」

 リカバリーガールは出久の方を向いて話した。

 障害物競走で一位通過、続継騎馬戦でも一位通過し、ヒーロー科生徒に対して勝ち進んでいった。それだけでも十分な功績であった。

「確かに功績って面を見れば十分かもしれません。でも今は・・・・・僕がやりたいことがあるんです。轟君に、教えてあげないといけないんで。」

 出久はそう言うと立ち上がった。

「・・・・・・・あたしは忠告したよ。これでもしぶっ倒れたりされたらあたしの問題だよ。あんた分かってるのかい?」

「はい。」

「・・・・・・・・・・」

 出久の顔を見てリカバリーガールは溜息を吐いた。

「そんな目されてもうなんも言えないじゃないかい。行きな。少し休憩時間がるからしっかり休むんだよ。」

「はい!」

 出久はそう言うと保健室を後にした。

「・・・・・・・・・どうしてこうもバカってのは多いのかね?え?()()()()()()。」

 保健室のカーテンで仕切られたベッドからトゥルーフォームのオールマイトが姿を現した。

「あんたが仮眠しているタイミングで来るなんて緑谷も思ってなかったろうね。」

「はい・・・・・・」

「で?どう思ったんだい?」

「・・・・・・・・正直に申し上げますとあれはもう十分活躍しています。ですが彼は目先の勝利よりも轟少年の方に意識を向けています。なぜそうなのかはわかりませんが。」

「本当だね。けどアンタ、あの子に引き継いでもらいたいって思ってんだろ?」

「はい。彼ほどの人物、この現代社会にはもう存在すらしてないほどの存在です。」

「お前のいいところは個性で人を見ないところだね。それよりも、例の怪人一向に動きないね?」

「緑谷少年の話では様々なヤミーが存在しているようです。こうしている間にも小さく活動しているのかもしれません。」

「そうなると困ったね。例のアレも緑谷に特例で出させるつもりだろ?」

「お気づきでしたか。ええ、その通りです。今後彼がグリードやヤミーを倒すにはどうしても今の法律ではヴィジランテ扱いにされてしまいます。ですが彼がいた世界ではそんな仕切りなどはありませんでした。ですから彼にはあれを持たせたいと思っています。」

 ヒーローと敵。その違いは何だろうか?

 人に迷惑をかけること?人を傷つけること?活動してお金をもらうこと?人々から称賛されること?資格を持っていること?

 様々な違いがあるが、ヒーローも敵も大差はない。ただ力の使い方が人々が求める方向に使われているかどうか、ただそれだけの違いである。

 法を守ることが正義だとしても、しきたりやおきてを守ることが正義だとしても、それでも人の命を救うことが間違っているのだろうか?法律というルールがあるから安心するのかもしれないがヒーローは元々法律の下で人々に奉仕するものであっただろうか?

 少なくとも仮面ライダーたちは違う。目の前の笑顔を、命を、人の自由を助ける。そのためだけに動いているのである。正義の定義に差異はあれどそれが仮面ライダー全員に共通しているものである。

「法律を守ることによって救われる命と救われない命。もしかしたら緑谷少年はそんな現状を変えてくれるのかもしれません。」

 

 同時刻某所にて、あるグリードがテレビを見ていた。

「・・・・・・・・オーズ。王とは違う欲望を持った人間・・・・・・・・か。」

 グリードは椅子にもたれかかる。 

「人間は欲望の塊だ。ヒーローと名乗っている奴らも、自分を神かなんかだと間違いをしている。どう思う、ステイン?」

 グリードが顔を向けるとそこにはステインの姿があった。

「はぁ・・・・・同感だ。今時のヒーローは・・・・はぁ・・・・・・人気だなんだと気にし、個性には派手さを求めている。はぁ・・・・・・・・・さっきの爆破を使う個性の時だってそうだ・・・・はぁ・・・・・・だがあの少年は違う。貴様の言う・・・・・・・はぁ・・・・・・オーズという少年は”生きるに値する“・・・・・・・はぁ・・・・・・奴こそ真の英雄、オールマイトと肩を並べれるヒーローだ・・・・・!」

 ステインはそう言うと外へ出始める。

「また行くのか?」

「ああ・・・・・・・・誰かがこの世を正さねばならない・・・・・・そのために悪役がいるというのなら、俺は喜んでその悪になろう。明確な目的を持った悪に!」

 ステインはそう言うと外へ出た。

「・・・・・・あいつの欲望ではグリードは育たない。・・・・・いや、育てられないと言っていいな。さて、こいつもそろそろ潮時だな。」

 テレビの臨時ニュースには大手企業の社長に横領・脱税疑惑で家宅捜索に入ることが報じられていた。

「稼がってもらったぞ、人間。」

 

 拳籐と轟の試合は轟が拳籐の攻撃が来ると同時に氷の柱で手を固定しそのまま近づいて凍らせたことであっけなく幕を閉じた。

 



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28 決勝戦 出久VS轟

ようやく書けました
ここまでくるとああとはマジェプリの方も再開させたいと思っています


「雄英体育祭一年生の部。だれが予想しやがることが出来た?いいや誰も出来やしねぇ!

 こんな予想外な組み合わせ俺もマジで驚いたぜ!まずは一年A組ヒーロー科!No.2ヒーローの息子!半冷半熱の“個性”を持つ男!轟焦凍!

VS(ヴァーサス)!!

 これまで数々の偉業を成し遂げ勝ち上がってきたにも関わらず、その向上心は止むことのない無限の欲望を持つ男!普通科のホープ!一年C組緑谷出久!」

 二人が会場に入ると歓声が沸き上がった。

 激しい戦いを繰り広げ勝ち上がってきた出久に対し、氷結の“個性”だけで勝ち上がってきた轟。戦い方が真逆の二人がどう戦うのか観戦に来ている人たちは大きく期待していた。

「校長、こうなることは予想していましたか?」

「いいや、全くだ。それにこうして見るとヒーローの質の低下も見えてしまうのも現実だね。」

 校長の隣でマンサムが小声で話していた。

「彼の体の状態は?」

「リカバリーガールからだと無茶をしてでも彼と戦いたいそうだよ。夢のためではなく彼のためにって。」

「なるほど。彼らしいですね。」

 その言葉にマンサムは納得していた。

「んじゃまぁ早速!試合を始めようじゃねぇか!」

 出久と轟は対峙する。

(轟君の戦いはどれも一瞬で終わらせる戦い方だ。でもそれは目の前の相手を全く見ていないからだ。なら僕がすることは・・・・・・彼に本気を出して戦ってもらうことだ!)

 出久はオーズドライバーにメダルをセットする。

「BATTLE!STARRRRRRRRRRRRT!」

 プレゼント・マイクの掛け声とともに轟は氷結の個性を掛けて出久を氷で固めようとする。

【クワガタ!ゴリラ!ゾウ!】

 出久はクガゴリゾに変身するとクワガタヘッドから放電して氷にヒビを入れゴリラアームで氷を粉砕する。

「やっぱそう簡単にはいかねぇか。」

「そう簡単に負けるつもりはないからね!」

 オーズはそう言いながらメダルを交換する。

【サイ!カマキリ!ワニ!】

サキリワニに変身したオーズはサイヘッド、カマキリアーム、ワニレッグを駆使して再び来る氷を壊す。

「はっ!」

 オーズは一気に轟に接近し拳を入れよとする。

「ちぃ!」

 轟は氷の柱を作りオーズの攻撃を凌ごうとするがワニレッグの蹴りで粉砕されサイヘッドを顔面に叩き込まれようとしていた。

「クソッ!」

 轟は右手を突き出し最大限の氷を作り防御するが吹っ飛ばされてしまう。後ろに吹っ飛ばされた轟は場外に出ないように氷を作り壁にする。

「やっぱそのメダルの組み合わせが厄介だな。」

 今の轟の意識はオーズに向いていたが、どこか集中できていない節が見られた。

(まだ僕を見ていない・・・・・いい加減にしろよ!)

 オーズはメダルを交換し変身する。

【タカ!トラ!チーター!】

 オーズはタカトラータに変身すると一気に轟に近づきトラクローで襲い掛かろうとする。

「クソッ!こういう手はあんま使いたくねぇんだがな。」

 轟は右腕全体を氷で覆い氷の爪を作る。

「くっ!」

 トラクローを受け止める轟。互いにつばぜり合いになる。

「こいつは驚いた!氷をまさか装備武器にするなんて思ってもみなかったぜ!」

「確かに発想はいいかもしれないが人体への負担を考えているかはいささか疑問だな。」

 感心するプレゼント・マイクに対し相澤は冷静に分析する。 

「緑谷、お前には感謝している。」

「感謝?」

「ああ。お前と戦っているときだけだが、あのくそおやじのことを忘れられたからな。」

「っ!こんのっ!」

 オーズは思いっきり腕に力を入れ轟の氷の爪を破壊すると変身を解き、右腕を振りかぶる。

「っ!?」

 突然変身を解いたことに轟は驚くがその隙に出久の拳が轟の顔面に入った。

「ふざけるな!」

 出久の渾身の拳によって轟は吹っ飛ばされ、地面に倒れた。

「痛ってーな。」

「みんな・・・・・・・・みんな夢のために!自分の将来のために全力で挑んでるんだ!半分の力で勝とうとしている君を見て、ずっとふざけるなって僕は思ってるよ!」

 出久は轟に向かい走る。

「変身してれば避けられるのによ。」

 轟は左足から氷を張り出久を足止めしようとするが、出久はそれを跳んで回避すると氷を滑り轟の胸ぐらをつかみ持ち上げる。

「うぉらっ!」

 出久は轟を思いっきり投げた。

「ぐっ!」

「僕の知っている人で・・・・・・・二十代前半まで生きられない人がいる。その人は、ヒーローになるのが夢なんだ。でも自分の病気が治らないから、その夢をあきらめるしかないって思ってた。」

 轟が立ち上がったところに出久は腹に蹴りを入れ吹っ飛ばす。

「ぐふっ!?」

「でも捨てきれなかった!憧れたから、なりたいと思ったからその人は今も自分の運命に抗うように頑張ってる!」

 出久の魂の叫びが轟の耳に、胸に入ってきた。

 どんな拳よりも重く、どんな蹴りよりも鋭かった。

「それなのに、君は本気を出さない?ふざけるな!」

「うるせぇ・・・・・俺はあのクソオヤジの個性なんか・・・・・・・」

「うぉおおおお!」

 出久の拳が轟の腹に入った。

「君の個性だろ!だったら君は君で、戦えよ!」

 その時轟の脳裏に母の優しい声が聞こえた。

 

(いつから忘れてしまったんだろうな・・・・・あれはまだ俺がガキだったころ、お袋に対してクソ親父が暴力を振るっていたころだ。鍛錬だって言ってガキの俺に無茶なことしまくりやがって、いつも弱音をお袋に向かって吐いてた。お袋は俺に言った。)

『でも、ヒーローにはなりたいんでしょ?いいのよ、なりたい自分になったって。』

(忘れていた。昔オールマイトがテレビで言っていたあの時に聞いたあの言葉を・・・・・)

『―――ええ、確かに親から子へ個性は引き継がれます。ですが大事なのは血ではありません、その繋がりなのです。ですから私は自分に言い聞かせるようにいつも言ってます。

―――私が来た!―――

とね。』

 

 その時轟の何かが、縛っていた何かが解放された。左からは炎が徐々に吹き出し、そして一気に爆発するように噴出した。

(よかった・・・・・・・やっと頑固に閉じこもってた殻を破って・・・・・ぐっ!)

 出久は咄嗟に口を片手で塞いだ。少しではあるが血を吹いていた。

(・・・・・・・・・・ごめんなさいリカバリーガール。でも、もう少し我儘を聞かせてください。今の彼になら・・・・・全力で戦って負けてもいいと思えるから。)

 出久は自然と笑みを浮かべた。

「なに笑ってんだよ?お前バカじゃないのか?敵に塩送りやがって。」

「・・・・・・・・そうだね。でもそれでイイと僕は思ってる。余計なお世話ってのは、ヒーローの特権だからさ。だから・・・・・・・僕も本気を出せるよ。」

 出久はそう言うと三枚のメダルを手に取る。

「アンク、アンクのメダル使わせてもらうよ。」

 出久はオーズドライバーにメダルをセットする。セットされたメダルは光っていた。

「コンボか・・・・・だがどんなコンボでも勝ってやる。それにお前のコンボはもう知っているしな。」

「いいや、一つだけ知らないよ。変身!」

【タカ!】

 その少年が求めたのは、どこまでも見通し、遠くにいる助けを求める人を見つけられる目。

【クジャク!】

 その少年が求めたのは、どんなに遠くにいる人の元へと跳んでいける大きな翼。

【コンドル!】

 その少年が求めたのは、どんなに立ちふさがる敵をも一掃する蹴りを繰り出す足。

【タ~ジャ~ドル~!】

 出久は

オーズ・タジャドルコンボへと姿を変えた。

オーズのタカヘッドが形を変え、赤いバイザーが現れる。

「はぁ~・・・はっ!」

 オーズは羽を広げるように両手を広げるとオーズの背中にクジャクフェザーが現れた。

「・・・・・・・・綺麗。」

 誰かがそう言った。

「はっ!」

 クジャクフェザーはエネルギー弾となり轟に向かって飛ぶ。

「くっ!」

 轟は大きめの氷を盾代わりに展開するがその氷はすぐに粉々砕かれてしまう。

「はっ!」

 オーズは轟に接近すると抜き手を繰り出す。

「ふっ!はっはっ!はぁあっ!」

「ぐっ!」

 来る出される抜き手に対し轟は防戦一方であった。

「はぁっ!」

 繰り出された掌底が轟を吹っ飛ばす。

「くっ・・・・・・だったら!」

 轟は左手から一気に炎を吹きだした。オーズは左腕を胸の前にかざすとタジャスピナーが装備され、火球を放つ。炎と炎がぶつかり合い、互いに攻撃を相愛する。

「だったら!」

 轟は炎を出すのをやめてオーズに向け巨大な氷をぶつけようとする。

「危ない!」

「避け切れませんわ!」

 麗日と八百万が声を上げる。左右どちらに逃げ込もうとも大きすぎる氷に誰もが終わりと思った。

「はぁっ!」

 しかしその予想は大きく裏切られた。オーズの背中からクジャクウィングが出現し一気に上昇する。

「と、飛んだ!?!?」

 会場にいる人もテレビで試合を見ている人も驚きを隠せなかった。

(もうあまり長く持たない。一気に勝負を決めないと!)

 オーズはオースキャナーを手に取りメダルをスキャンする。

「はぁああああ!」

 オーズはコンドルレッグが変形しプロミネンスドロップが炸裂しようとしていた。

「うぉおおおおおおおおおお!」

 轟は氷の筒を形成するとその中に炎を噴射する。

「せいやぁあああああああ!」

「うぉおおおおおおおおお!」

 氷が吹き飛び、オーズは轟と対峙するように着地する。轟は何とか氷の壁で難を逃れていた。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・さっきのはかなりヤバかったな。だが今ので必殺技は分かった。」

 肩で息をしながら轟はオーズにそう言った。

「だれが一つだけって言った?まだ奥の手があるよ!」

 タジャスピナーのディスクの蓋を開け、ベルトからコアメダルを取り出すとタジャスピナーにコアメダルをセットする。

「これで最後っ!」

 その瞬間オーズの胸にだけでなく全身に激痛が走った。

(ヤバい・・・・・・・マジで死ぬかも・・・・・・)

 オーズは自分が死にそうなのにもかかわらず仮面の下で笑っていた。

「ミッドナイト!これ以上は!」

「彼の身が持たない!」

 セメントスは二人の間に壁を作りミッドナイトは全身タイツの腕の部分を破く。オーズは一気に急上昇しタジャスピナーにオースキャナーをかざす。

【タカ!クジャク!コンドル!ギ・ギ・ギ!ギガスキャン!】

 メダルの力が凝縮し不死鳥の形をしていた。

「はぁああああ!せいやぁああああああああああああああ!」

 出久はまさに命を燃やし轟へマグナブレイズを仕掛ける。

 轟は一気に左側から熱を放出し左手を前にかざす。

「ありがとな、緑谷。」

 セメントスが作った壁をぶち壊し、互いの最大の技がぶつかり一気に爆発と爆風が起きた。

「きゃぁあああああああ!」

「どうなってますの!」

「なにこれぇえええええええ!」

 突然起きた爆風にミッドナイトも吹っ飛ばされてしまう。

「なに・・・・・・・・・いまの?」

 あまりの衝撃にプレゼント・マイクもひっくり返っていた。

「今まで冷やされた空気が熱せられて一気に蒸発したんだ。」

「それでこの爆発・・・・・・・・・・・どんだけ熱いんだよ!たくなんも見えねぇぞ!勝負はどうなった?」

 ミッドナイトが起き上がり周りを確認する。するとそこには地面に尻もちをつき、熱のせいなのか左半身が見えている轟の姿があった。それに対して出久は突っ立っていた。

「まだ立っているのかよ、緑谷。・・・・・・・・・ん?」

 轟はゆっくり近づき顔の前で手を振り反応を見る。しかし何の反応も帰ってこなかった。

「・・・・・・・ミッドナイト、確認をお願いします。」

「え、ええ・・・・・・」

 ミッドナイトは出久の状態を確認する。

「・・・・・・・・緑谷君気絶。轟君、優勝!」

 ミッドナイトの宣言で歓声が・・・・・・・・・・・わかなかった。

 その場を支配したのは静寂であった。誰一人として声を上げようとはしない。

 パチパチパチ・・・・

 その静寂を破ったのは心操であった。ここまで戦った出久と轟に敬意を表し、拍手を送る。

 するとまた一人、また一人と拍手を送る。そして会場全体は拍手によって包まれた。

 その後出久はセメントスとミッドナイトに肩を担がれて保健室へと運ばれた。

 



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29 雄英体育祭、終了

本来ならマジェプリの方を渡航したかったんですけど実家に帰省した時にUSB忘れたのに後から気づいてしばらく先になります。
待っている人には本当にごめんなさい。


「全くお前は、すぐに無茶をしやがる。わかってるのか?」

 保健室のベッドで眠るその横でその男は文句を言っていた。

「貴重なメダルを使わせやがって。」

 男はそう言うと赤く変身した右腕を出久へと突っ込んだ。

「これで少しは体力が回復するはずだ。」

 男はそう言うとベッドから離れようとする。

「ちょっと待っておくれ。」

 リカバリーガールはその男を呼び止めた。

「なんか用か?」

「お前さん、緑谷のためにそのメダルを使ってやったんだろ?それならほれ。」

 リカバリーガールはそう言うとアイスを差し出した。

「緑谷から聞いているんでね。」

「・・・・・・・貰っておく。」

 ぶっきらぼうにその男はアイスを受け取り封を開けると食らいついた。

「せめて一言挨拶したらどうなんだい?」

「そうもいかねぇからな。過去を変えると未来にかかわる。まぁせいぜい俺が完全に蘇るまで生きてもらわねぇと困るからな。」

 男はそう言うとその場から姿を消した。

「・・・・・・・全く、どうして男って生き物はこうも不器用なんだろうねー。」

 リカバリーガールはそう言うと書類を書き始めた。

 

 ところ変わって轟は一人控室で着替えていた。

(緑谷は俺になんであの話をしたんだ?)

 ふと轟は手を止めて顎に手を当て考え始めた。

(なんで関係ねぇ赤の他人を・・・・・・・・いや待てよ、あいつはそんなことをしねぇ。だとしたら・・・・・・・まさか!)

 その時轟はあの話が誰を意味しているのかを気づいた。

「・・・・・・はぁ、完全に負けているじゃねぇか。勝負でも、生き方でも。」

 

 そして出久の意識が回復しいよいよ表彰式へと移ったのだが・・・・・・

「ふんぐぅううううううううううううう!」

 ・・・・・爆豪は手足、そして口を拘束されていた。

 なぜこうも抵抗しているかというと完膚なまでの勝利ももぎ取っていないのにメダルを受け取ることはできないと言っているのだが飯田が一身上の都合によって早退したため三位がいないのはさすがにマズいため強引に爆豪を席に着かせた。

 表彰台には一位の轟、二位の出久、そして三位の爆豪が表彰台に立っていた。

「緑谷、爆豪どうにかできないのか?」

「無茶言わないでよ。」

 轟も流石に爆豪に呆れていた。

「それではこれより表彰式に移ります。三位の爆豪君ともう一人の飯田君がいるんだけどちょっとお家の事情で早退になっちゃったのでご了承ください。」

 主審であるミッドナイトがそう告げた。

「メダル授与よ!!今年のメダルを贈呈するのはもちろんこの人!!われらがヒーロー、オールマイト!!」

「ハーッハッハッハー!わーたーしーがー!メダルを持ってきた!」

 ミッドナイトの紹介の後にオールマイトが登場する。

 実は意識を取り戻した出久が前もって打合せしておくように助言しておいたのだ。

「ではメダル授与へ移ります。」

 オールマイトはメダルを爆豪へ授与する。

「爆豪少年、三位という結果ではあったが自身の個性を使った良い戦い方をした。何より誰に対してでも本気で戦った。」

「オールマイト、俺はこんな何の価値もないメダルを受け取る気はねぇ!世間が認めても俺が認めなきゃゴミなんだよ!」

 言葉では言い表せない怖い顔になっていた。

「うむ、相対評価に晒され続けるこの世界で不変の絶対評価を持ち続けられる人間は多くない。受け取ってくれよ!今後の”傷“と”決意”をこめて!」

「要らねぇっつってんだろ!」

 爆豪は抵抗するがオールマイトが強引に爆豪にメダルを授与する。

「次は緑谷少年!君は自身の個性を理解し、なおかつ慢心せず限界を超えようとする姿勢は誇るべきものだ。今後もがんばりたまえ。」

「はい!」

「そして轟少年、おめでとう。」

 オールマイトは轟にメダルを授与する。

「・・・・・・・決勝で左を使ったのには何かわけがあるのかな?」

「・・・・緑谷がきっかけを作ってくれて、使いました。でも俺はこの優勝を自分で勝ち取ったものじゃないって思ってます。むしろあいつが俺に譲ってくれたようなもんです。ただ・・・・俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃないんです。ダメだと思ってた精算しなきゃならないモノがまだある。」

 轟がそう言うとオールマイトは静かに抱きしめた。

「・・・・・・・顔が以前と全然違う。深くは聞くまいよ。今の君なら清算できるよ。」

 そう言うとオールマイトは会場の方へ顔を向けた。

「さぁ!!今回は彼らだった!しかし皆さん!この場に立つ誰もがここに立つ可能性があった!!ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!さらに先へと上って行く姿が次世代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!てな感じで最後の一言!!皆さんご唱和ください!!せーのっ!」

 

『Plus Ultra!』

 

 



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30 いいお知らせと悪いお知らせ

 雄英高校体育祭から二日開け、出久はいつも通りに電車に乗って通学していた。

 外は雨が降り、窓を濡らしていた。

「ちょっと。雄英高校の緑谷出久君だよね?」

 急に電車の中で声を掛けられる出久。

「テレビで活躍見てたよ。すごいじゃないか。」

 その人は親指を立てる。

「あ、本当だ。」

「あの個性でヒーロー科じゃないってもったいないよね。」

「でもきっとヒーローになるよ。」

「ええ、今活躍しているどのヒーローよりもね。」

『頑張ってね、ヒーロー。』

「あ、ありがとうございます!」

 その車両に乗っている人たち全員からエールを送られて出久は照れ臭そうに返事をした。

 電車から降りた出久は雄英に向かって歩いていた。

「よう、緑谷。」

「おはよう心操君。」

 出久の後ろから心操が声を掛けて来た。

「お前どうだった?通学中。」

「声をたくさんかけられたよ。心操君は?」

「俺も似たようなもんだ。つっても俺の場合すぐに負けちまったけどな。」

「でも心操君は自分の出せる力を出してたじゃないか。その結果だよ。」

 出久にそう言われると心操は微笑んだ。

「お前は本当にすごいな。それよりヒーロー科の飯田って言ったか?あいつの兄が・・・・」

「・・・・・・・・うん、知ってる。」

 二人が話しているのは雄英体育祭開催中に起きた事件である。

 神出鬼没。過去17名のヒーローを殺害し23名ものヒーローを再起不能にしたヴィラン名・ステイン。別名“ヒーロー殺し”とも呼ばれていた。

「・・・・・・・・・大丈夫かな?」

「飯田のことか?」

「うん・・・・・・一番心配なのは自分を見失って復讐に走らないかってことだよ。」

「・・・・・・・・そうだな。俺も同じ境遇だったらきっと復讐に走っちまうな。」

 二人は飯田のことを心配しながら教室へと入った。

「おはよう緑谷!」

「雄英体育祭の活躍見なおしたけどやっぱお前スゲーわ!」

「頑張ってヒーロー科に編入してくれよ!」

「心操も!来年パワーアップして見返してやろうぜ!」

 教室に入ればクラスのみんなから称賛の声を掛けられた。

 そしてホームルームの時間になると担任があることを急に口にした。

「あー、皆にいいお知らせと悪いお知らせがある。どっちから聞きたい?」

『・・・・・・・・』

 一同急に言われて黙ってしまう。

「じゃあ俺が決めるな。まず悪いお知らせは・・・・・・・来学期にこのクラスから一人いなくなってしまう。」

 そのお言葉を聞いてみんなの脳裏によぎったのは自主退学であった。

 雄英高校は入ってからも努力を怠ってはならない名門校。それに付いて行けず自主退学をするものは少なくないのである。

「じゃあ次にいいお知らせだが・・・・・・・・・緑谷、起立。」

「え?・・・・・・・あ!はい!」

 担任に言われて出久は起立する。

「・・・・・・・・・おめでとう。」

「・・・・・・・え?」

 急におめでとうと言われて何のことかは出久にもクラス全員にもわからなかった。

「これは異例中の異例ではあるんだが、来学期からヒーロー科に編入だ。」

「・・・・・・・・・へ?」

 出久は突然のことに間抜けな声を上げてしまう。

「・・・・・・い・・・・・・」

 誰かがそう言うと周りは一斉に声を揃え叫んだ。

『よっしゃぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』

 迷惑この上ないほどの大きな声ではあるが担任も注意はしなかった。

「スゲーぜ緑谷!」

「ああ!まさか俺たちの中で本当に実現するなんてな!」

「俺たちのガチの希望じゃねぇか緑谷!」

「ヤベーよ!鳥肌マジでなってるよ!」

 一同興奮を抑えられなかった。

「あー、思いっきり喜んでるところ悪いが静かにしてくれ。これには多くのヒーローからの署名と緑谷の功績があってこそ実現したんだ。そしてこれから度々ではあるがヒーロー科の方の授業に出ることになる。それは理解しといてくれ。」

『はーい。』

「じゃあさっそくで悪いが緑谷、A組に行って授業を受けてくれ。緑谷だけないってのは困るからな。」

「わ、わかりました・・・・」

 出久は何のことかわからず教室を出る。

「なんの授業を受けるんだろう?」

 理由もわからずA組へ歩いているとミッドナイトと鉢合わせた。

「あら、緑谷君。君は担任に言われてこっちに?」

「はい。でもなんの授業なのかさっぱり・・・・・」

 出久がそう言うとミッドナイトは微笑んだ。

「彼もサプライズ大好きね。じゃあ特別に教えてあげるわね。今回ヒーロー科が受けるのはヒーロー名を決めることなの。」

「ヒーロー名を!」

 出久は突然のことに驚く。

「でもなんでですか?僕たち一年生にはまだ早いんじゃ・・・・・」

「そうね。でも君も関わったUSJの事件や先日の雄英体育祭。これらの要素があってヒーローから指名があったの。で、職場体験してもらおうって話になったわけ。」

「なるほど。」

 出久はその説明で理解した。

「じゃあ私が呼んだら入ってきてね。」

「わかりました。」

 そう言うとミッドナイトは教室に入って行った。A組全員にヒーロー名の重要性について話すとこう続けた。

「そしてもう一つ、今回はゲストとしてこの子に来てもらってるの。さあ、入ってきて。」

 ミッドナイトが手を叩き促す。そして出久はA組へと足を踏み入れた。

 



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31 ヒーロー名と美化活動

 ミッドナイトに促され出久はA組に入る。

「失礼します!」

『っ!?』

「あっ!出久君だ!」

「でもなんでだ?」

 出久の顔を見て声に出して驚く女子陣に対して麗日は声を上げて喜ぶ中、切島は疑問に思った。

「皆が疑問に思うのも無理ないわ。相澤君、もしかして話していなかったの?」

「別に今言わなくてもいいかと思いまして。」

「そういう身勝手な判断が減給を招くんでしょうが。去年だってそれで九か月の減給と示談金で問題になったでしょう。」

(((何をやったのかな・・・・・・・)))

 一同疑問に思った。

「緑谷君は来学期から君たちと同じクラスになるの。」

『っ!?』

 ミッドナイトの言葉に一部女子陣と爆豪、そして轟が反応した。

「それもあって緑谷君も一緒にヒーロー名を決めてもらうってわけ。」

「・・・・・・・・・へ?」

 出久は間抜けな声を出す。

「そんな授業の内容だったんですか!?」

「ええ、サプライズよ。」

「サプライズ過ぎて冷静を保てないです!」

 出久は焦っていた。

「まぁ一旦落ち着いて、ヒーロー名を考えてね。パイプ椅子で悪いんだけどそこで考えて授業受けてね。」

「あ、わかりました。」

 出久は一周回って冷静になり椅子に座る。

(ヒーロー名か・・・・・・)

 出久はオールマイトに憧れていたころを顧みていた。

(あの頃はただ単にオールマイトのようなカッコよさや強さに憧れてた。でも今は・・・・・手が延ばせる範囲を大きく伸ばして、そして多くの人を助けたい。人を助け、人間の自由と平和を守りたい。だから僕のヒーロー名は・・・・・)

 出久は自分のヒーロー名を書いた。

 そしてミッドナイトから自分のヒーロー名を発表するように言われみんな次々と発表していく中、出久の番になった。

「僕はこれです。仮面ライダーOOO(オーズ)。」

OOO(オーズ)?どういうこと?」

「えっと、僕の個性は使っていると顔が見えないので覆面じゃ恰好つかないので“仮面”を、バイクの免許を持って乗れるので“ライダー”、そして多くの人を助けたいって欲望が∞以上、OOO(Over ∞)って意味を込めて仮面ライダーOOO(オーズ)。」

「なるほど。自分の個性と持っている資格、そして欲望を言い表した名前ね。いいと思うわ。」

 こうして出久のヒーロー名は向こうと変わらず仮面ライダーOOOということになった。

 

 授業が終わり放課後になると出久はオールマイトと校長に呼ばれ執務室にいた。

「急に呼ぶなんてどうしたんですか?」

「ああ、君にこれを渡そうと思ってね。」

 ジュラルミンケースを取り出し開けてみるとそこには一枚の免許書が入っていた。

「これを君に持っていて欲しくってね。」

「これは?」

 出久の疑問いオールマイトが答える。

「これは“臨時ヒーロー免許”いわゆる緊急時における君専用に作られた免許だ。君の敵でもあるヤミー、今まではマスコミの目が君に向かっていなかったが先の雄英体育祭の活躍で注目が集まっている。免許もない時点で君が活躍してしまえば君のヒーローとしての活動にも支障をきたしてしまう。だからこそこれを持ってもらいたいのだ。」

「・・・・・・」

出久は無言でそれを手に取った。力を初めて手にしたあの時とは違い重みがあった。

責任、覚悟などと言ったものが込められていた。

「・・・・・・君にはわかっているようだね、その重みが。私たちからは何も言わないよ。」

 

 そしてヒーロー科が職場体験へ行く日、普通科の生徒はオールマイトが普通科生徒を引率してあることを課題とした。

「普通科生徒諸君!君達の生徒の中にヒーロー科へ編入する生徒がいるという話はもう耳に入っているだろう。しかし!君達にもチャンスはある!そんな君達にはヒーローの本質を学んでもらおうと思っている!」

 オールマイトの言っている意味が分からなかった。

「最近のヒーローは地味だの派手などと言った者が多いが、ヒーローの本質は奉仕活動。つまり!ボランティア精神が必要なのだ!ここは海流の影響があり不法投棄のゴミが多く捨てられている。そこで君達にはここ一体の浜辺を掃除してもらいたいと思っている!」

 オールマイトの発案による美化活動。一見地味と言われている個性も美化活動では大いに活躍していた。さらに美化活動に向いていない個性の子は体を鍛え上げる面でも大いに役に立って行った。

 



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思い付きネタ 3

今回は他のユーザーがキバをベースにした藩士を見て思いついたので書いてみました。
正直この思い付きネタを誰かが拾って書いてくれたらうれしいです。
と言うか作ってください


 子供のころに言われた”無個性“という残酷な現実に突き付けられても僕はヒーローになりたいという夢を捨てきれなかった。

 けど現実は美しくも残酷で、儚くも輝いていた。

 そんな思いで過ごしていた中学一年生の春、母さんが僕に話があると言ってきた。

 その時の顔は真剣な目であった。

 母さんはたから見ても二十代で通ってしまう程綺麗である。近所の方からはよく羨ましがられるほどであった。

「出久、あなたお医者さんから無個性って言われたあの日のことは覚えてる?」

 その言葉に僕は「うん。」と言いながら頷いた。

「・・・・・・・ごめんなさい。」

 そう言うと母さんは急に頭を下げた。なぜそうなのか僕にはよくわからなかった。もしかして無個性に生んでしまったことに後悔しているのではないかと思った。

 けど母さんから帰ってきた言葉は意外なものであった。

「実はあなたは本当は無個性じゃないの。」

 その言葉に僕は衝撃を受けた。じゃあなんで医者はあの時僕のことを無個性と言ったのか?僕はそれが疑問でならなかった。

「正確にはあなたの一部は人間じゃないの。」

「・・・・・・・・どういうこと?」

「あなたと私はね、昔じゃ妖怪やバケモノって言われた部類の、ファンガイアって種族なの。ファンガイアは人間のライフエナジー、つまり生命エネルギーを食べるわ。わかりやすく言うと吸血鬼に近いものね。でもほんのちょっと吸ってしまえば人間に問題は無いわ。でもすべてを吸ってしまうと吸われた人間は透明の個性のようになって死んでしまうの。

 でもライフエナジーは必ずしも毎日取るわけじゃないの。一定の期間でいいのよ。でもファンガイアにとってライフエナジーは一種の依存性のある食事と言ってもいいわ。

 そして何より当時のファンガイアには決して破ってはならない掟があったの。それは人間を愛すること。ファンガイアにとって人間は餌。餌を愛してはいけなかったの。掟を破ったものは次々と消滅していったわ。

 けどひいおばあちゃんはひいおじいちゃんを愛したの。ひいおじいちゃんは人間で、ひいおばあちゃんはファンガイアのクイーンだったの。いわゆる不倫ね。当時のキングはそれを許そうとしないでひいおばあちゃんからファンガイアの力を奪ったの。ひいおばあちゃんは血こそファンガイアではあったけど人間と変わりなかったわ。そして当時キングに仕えていた従者が反旗を翻したの。ひいおばあちゃんを大事に思っていたからね。ひいおじいちゃんは人間でありながらファンガイアの力を身に着けてキングを倒したの。でも人間がファンガイアの力に耐えることはできず、ひいおばあちゃんとひいおじいちゃんの子を残して死んだわ。

 長い年月を経ておじいちゃんは王の鎧を使って人を襲うファンガイアとの戦いに身を投じたわ。色々あっておじいちゃんは王になって、もう一人の人と人間との共存を実現させたの。

 けれどその考えに皆が賛成したわけじゃないわ。反旗を翻しておじいちゃんに戦いを挑んだわ。結果は深手を負いながらもおじいちゃんが勝ったの。でもその時にはほとんどの種族が滅んでいたわ。そして私が生まれたんだけど・・・・・・・どうも結婚するまでの百二十年間、結婚したいって思う男性と巡り合わなかったの。」

「ちょ、ちょっと待って!母さん四十代とかそこいらじゃなかったの!?」

「いいえ、違うわ。けどこのことは一部のプロヒーローにオールマイトも知っているわ。」

「オールマイトも!?」

 出久はそのことに驚きを隠せなかった。

「ファンガイアは人間の力で倒すことは一応できる。けれどそれを使うに当たって個性が邪魔になるの。つまり無個性にしか使えない力ってことになるわ。けれどその力は個性を持つ人の脅威にもなるの。だからこの力は表立って使えない。それをわかってプロヒーローたちにはファンガイアと接触したら退けるくらいに戦うようにって言っているの。

 それでなぜあなたにこの話をするかというともう知っていい年齢になったからよ。小さい頃からあなたがヒーローになりたいのは知っていたわ。けど、貴方にこの話をしてしまえばもしかしたら他の逆恨みをしている一族に狙われる可能性があるの。でもそうも言ってられなくなってしまったのよ。奥底でうごめく強大な悪意が動こうとしているからね。貴方には本当は受け継いで欲しくないのだけど、キバット族の王としてキバになってもらうの。」

「・・・・・・・・・え?つまりどういうこと?」

「あなたはファンガイア、キバット族の第一王子。つまり治める民がいない王になるってことよ。」

「・・・・・・・・・・・・えぇええええええええええええええええええええええええ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!??!?!?!?!?!??!?!?」

 

 そして月日は流れUSJ事件当日。

 雄英高校に突如として現れた死柄木弔率いる敵連合。イレイザーヘッドが先陣を切り惹きつけ役を買い、13号が一年A組を引率して避難をしようとしていた。

「そうされてはこちらが困ります。それにこの方への食事も必要ですから。」

 黒霧の隣にいる男にファンタグラスのような模様が浮かび上がりホースファンガイアへと姿を変える。

「さあ、お好きな子をおた・・・・・・」

 黒霧が続きを言おうとした時、どこからかバイク音が聞こえ、USJの厚いドームを突き破り金の鎧を身に纏ったバイクが入ってきた。

「くっ!?」

「ぬぁっ!?」

 黒霧はワープで回避するがホースファンガイアは吹っ飛ばされる。

 バイクから降りヘルメットを取った人物の顔を見て爆豪は驚いた。

「デクっ!?」

「っ!かっちゃん!なんでここに・・・・・・・てここ雄英だからいて当然か。それにしてもその衣装・・・・・・性格や口調も敵よりなのにますます拍車がかかったね。」

 久々の再会にもかかわらず出久は辛口なことを言う。

「て、それどころじゃなかったね。」

 出久はホースファンガイアの方へ視線を戻す。

「貴様・・・・・・・同族か?ならなぜ人間に味方する!人間は我々ファンガイアにとって餌なんだぞ!」

「それは昔の話だ。他と交わることで新たな可能性を見出す。なぜそれをわかろうとしないんだ!」

「黙れ!しょせん人間とは相いれぬ運命(さだめ)!」

「なら僕は・・・・・・それを全力でぶち壊すまでだ!キバット!」

「おっしゃー!」

 出久の周りをキバットバット三世が飛ぶ。出久は左手でキバットを掴むとキバットは口を大きく開ける。

「がぶっ!?」

 キバットの犬歯からファンガイアの力が注ぎ込まれ、出久の顔にファンタグラスの模様が浮かび上がる。腰の辺りには何重もの鎖が巻かれるとそれは形を変えベルトとなった。

「変身。」

 出久は左手を突き出すとキバットをベルトへ装着する。

 深紅の肉体に銀の鎧を身に纏い、上腕部、左足には力を封印した鎖を身に纏った黄色いコウモリの目を持つ戦士、仮面ライダーキバがそこに降臨する。

「さあ出久、キバって行くぜ!」

 



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32 保須市事件、勃発

久しぶりにこっちの方を投稿します。
お待たせしてしまってすみません。


 美化活動を始めて三日が過ぎた。浜辺のゴミは雄英生の活躍によって大幅にゴミが片付けられていた。と言うのも出久の的確な指示と計画によるものである。

 しかし今日は違っていた。今日は出久がいないのだ。

 そして出久は今、ライドベンダーに乗って保須市に向かっていた。

 

 遡ること一日前。

「緑谷、少し時間貰えるか?」

「ええ、いいですけど・・・・・」

 雄英に戻って来た出久は下校しようと廊下を歩いていると突然相澤に止められた。

「緑谷、悪いが明日飯田のいる保須市に向かってくれないか?」

「え、でもどうして・・・・・」

「パラレルワールド。」

「っ!?」

 その言葉を聞いて出久は驚愕する。

「お前の身の上に起きた話はオールマイトと校長から聞いている。正直、信じられない話だがお前の戦い慣れをしたところを見て納得した。それでお前にしか頼めない頼みがある。飯田の家族の一件は耳に入っているな?」

「はい・・・・・」

「アイツの職場体験の事務所、保須市にある。おそらくあいつがそこを選んだのはヒーロー殺し目当てだ。お前の目から見てそう言うやつはどうなる?」

「・・・・・・恨みに向かった人は、大事なものを多く失ってしまいます。」

「そうだ。だからお前にしか頼めない。同年代であり、仮面ライダーであるお前に頼む。」

 教師としては放棄的かもしれないが一人の人間として託した。信頼をしているからこそである。

「わかりました。その前に少し時間をください。皆僕がいないときどう移動したらいいのかとかを資料に纏めておきたいので。」

「わかった。すまないな、無茶を頼んで。」

「無茶は得意ですから。」

 出久はお辞儀をすると帰って行った。

 

(こうして遠くに乗るのって久しぶりだな~。健康体になったらちょっとバイク旅もしてみたい。)

 純粋な一人の少年としての願望が出久にはあった。

(このままだと着くのは夕方あたりかな?向こうの担当ヒーローには連絡が言ってるって話だから問題ないとは思うけど・・・・・っ!?)

 その時出久は悪寒が走った。

(な、なんだ今の!とてつもない、何かが起ころうとしている!)

 出久はバイクを道の脇に止める。

「このままだと夕方だけど・・・・・この道を通れば何とかその直前にまで辿り着ける。でも一応念のため。」

 出久はライドベンダーをマシンベンダーモードへ変形させるとタカカンドロイドとバッタカンドロイドを出す。

「皆、お願い。」

 出久の言葉に答えるように鳴き、保須市へと向かった。

「急がないと。」

 マシンバイクモードへ再び変形させると出久は保須市へと急いだ。

 

 出久が保須市に着いたとき、中心部の方でボヤが発生していた。

「なにが起きているんだ?」

 出久はライドベンダーから降りるとその中心部へと向かう。

「これは・・・・・一体・・・・・」

 出久がつくとそこには驚くべき光景が広がっていた。

 燃える乗り物や建物、中には壊されているのもあった。しかしそれよりも驚くべきことがあった。それは大勢のヒーローをあしらうかのように戦っている二体の脳無の姿があった。

「なんで脳無が・・・・・・もしかして敵連合が動いたのか!」

「君!危ないから下がって!」

 出久が驚く中一人の女のヒーローが下がるように言う。

 その時出久の耳に泣き声が聞こえた。不意にその方向を見るとそこには泣いている女の子がそこにいた。

「っ!?」

 その瞬間あの光景と重なって見えた。

 そして気づいていない筋肉質の脳無が女の子の方へと向かった。

「っ!?」

 出久は迷うことなくオーズドライバーとメダルをセットする。

「変身!」

【サイ!ゴリラ!ゾウ!サゴーゾ!サゴーゾ!】

「うぉおおおお!」

 オーズはサゴーゾコンボに変身すると脳無を吹っ飛ばす。

「大丈夫?ケガしてない?」

「う、うん・・・・・」

「だったら振り返らずあそこにいる人たちの下まで走って!」

「わ、わかった!」

 女の子はオーズの指示に従い走り出す。すると脳無が後ろから攻めてくる。

「お前たちみたいな奴らに・・・・」

 オーズはゾウレッグで後ろ回し蹴りを繰り出しの脳無に一撃喰らわせる。

「誰の命も!」

 右、左とゴリラアームを繰り出し動きを止める。

「笑顔も!」

 サイヘッドの頭突きを繰り出し後ろに後退させるとオースキャナーを手に取りスキャンする。

【スキャニングチャージ!】

「奪わせるものかぁあああああああ!」

 オーズはサゴゾーインパクトを繰り出し脳無を再起不能にする。

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・」

 オーズは変身を解くと飯田の担当ヒーローであるマニュアルに駆け寄る。

「すみません。雄英から来た緑谷出久です!飯田君は!」

「え・・・あ、それが急にいなくなったんだ!」

「いなくなった!」

 出久は冷静に状況を分析する。

「飯田君の性格からしてこの状況で人命を優先しないわけがない。となると考えられる可能性はそれよりも重要なことに目が言っているということ。今の飯田君にとって一番優先したいのはヒーロー殺し。もし仮にヒーロー殺しを見つけたとしたら他のプロヒーローが被害にあっている可能性がある!」

 出久の冷静な分析に驚くもマニュアルは平静を保ち話す。

「じゃ、じゃあ飯田君は今!」

「その可能性が高いです。」

 するとタカカンドロイドが出久の下へ来る。

「飯田君を見つけた?」

 出久の問いにタカカンドロイドは頷く。

「すみません。ここが終わったらこの子が案内してくれるのでお願いします!僕は飯田君を人目の多いところに連れて逃がすように努力するので!」

 出久はそう言うとメダルをセットし変身する。

【タカ!カメ!バッタ!】

 オーズはタカメバに変身するとタカカンドロイドの後を追った。

 



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33 ヒーロー殺し、ステイン

どうも皆さんこんにちわ。夜に投稿しているけど。
最近なんかモチベーションが上がりません。
どこかにやる気スイッチがあるならだれか押してほしいものです。
なんだかやりたいんだけど身体が動かなかったり後回しにしちゃったりともうグダグダです。
何か刺激が欲しくても刺激が頭に浮かばないので当然ないです。
刺激的で斬新なものが欲しいですね。
楽しい方で


 路地裏。入り組んだビルの中ではそこは人目が付きづらい。

 飯田は現場へ向かう途中にステインに襲われているヒーローを見つけ、感情のままに行動した。結果としてステインの“個性”によって身動きできなくなっていた。

 ステインの使い古された刃こぼれしている刀で殺されそうになりかけた途端、タカカンドロイドが数体邪魔に入る。

「なんだこいつらは!」

 ステインは飯田から離れる。そこへオーズが壁をバッタレッグで跳び、ステインに一撃入れる。

「ぐっ!」

 後ろに後退し回避できない状態を狙ったオーズの一撃はステインに入り、地面を転がる。

「ビンゴ!!」

「緑谷君・・・・・何故!」

 飯田はなぜここにオーズがいるのかわからなかった。

「今までのステインの襲撃事件を徹底的に調べた。襲撃場所は路地裏で一人で活動しているヒーロー。ゲリラ戦法としては正しいよ。イヤホント。」

 オーズは皮肉を言う。

「はぁ・・・・・・・・・軽口を叩いて自分に意識を向ける・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・もっとも正しい方法だな・・・・・」

「っ!?」

 オーズは自分の意図に気づかれ少し動揺する。

「飯田君、動ける?大通りに出よう!少ししたらプロの応援が来るから!」

「それが・・・・動けないんだ・・・・・斬りつけられてから・・・・・恐らく、奴の“個性”だ!」

「ヤバい・・・・・正直そこで倒れている人を運んでもらおうと考えてたんだけど・・・・・」

「緑谷君・・・・・手を・・・・出すな・・・・君は関係ないだろ!」

「っ!?」

 飯田の言葉にオーズは驚く。

「なに言っているんだ!今の君の状況を見て関係ないわけないだろ!」

「だとしてもこれは僕の―――」

「ふざけるな!」

「っ!?」

「自分一人で解決する?冗談は寝て寝小便まき散らしてから言ってよ!一人で勝てる敵なんていない!一人で助けられる命なんてこの世界にもない!今の君は私怨で動いてる!そんな君を放っておけるわけないだろ!」

 その様子を見ていたステインが口を開いた。

「仲間が助けに来た・・・・・・・・いい仲間を持っているじゃないか、インゲニウム。だが俺にはこいつらを殺す義務がある。ぶつかり合えば当然弱いものが淘汰される。さぁ、どうする?」

「当然・・・・・・二人を守る!」

 オーズは構える。

「やめろ!君には関係―――」

「うっさい!」

「ぐべっ!」

 オーズは飯田の顔を蹴る。

「馬鹿言うのは終わった後にして!と言うか今の君を本当は素手で殴りたいんだから!」

 オーズはそう言うとステインに向かい正面から突っ込む。

「良い!」

 ステインはそう言いながら右手に持っていた刀を横一線に振るう。オーズは姿勢を低く滑り込むがステインは腰に備え付けていたナイフに左手を掛け、フックの要領で振るう。

 しかしオーズのカメアームの甲羅で防ぐと左手でステインの右足を掴み軸にして回転しステインの体勢を崩し転倒させる。

「ぬんっ!」

 ただでは倒れないステイン。体を反転させ背中から倒れるとナイフをオーズへ刺そうとする。しかしオーズは壁に向かって飛ぶと今度はステインに向かって飛び拳を顔に食らわせようとする。ステインは刀を盾にして防ぐ。

「くっ!」

「ぐっ!」

 オーズが後ろに弾き飛ばされる。

「雄英体育祭での活躍は見ていた・・・・・・はぁ・・・・・・・見事なものだ・・・・・あれほどの実力であれば将来プロで活躍することは間違いない。そしてお前は真の英雄になれる。」

「・・・・・・・・」

 敵にそう言わっるとは思っていなかったオーズ。

「お前は・・・・・生かす価値がある。こいつらとは違う。」

「・・・・・・・誰かがその人を生かすか殺すなんて、決めることはできない・・・・・・」

「ん?」

「誰だって人の命を奪っていいはずがない!いや無いんだ!誰にでも等しく生きる権利がある!なのにそれを誰かの勝手な価値観で殺すだなんて、おこがましいにもほどがある!」

「・・・・・・・・・・やはり、お前は真の英雄!オールマイトに並び立つに値する!」

 オーズの言葉を聞いてステインはどこか喜んでいた。そして一瞬で壁を蹴り、飯田に剣を突き刺そうとする。

「しまっ!」

 ステインの持つ刀の剣先が飯田を襲おうとした時であった。突如炎がステインを襲う。ステインは壁を蹴り回避する。すると今度は飯田とヒーローを救出するかのように地面を氷が這い、その発生源の下へと向かった。

「緑谷、なんでここにいるかは置いておいて、こういうサポートアイテムを使って状況を説明するのはいい判断だ。」

 そこにはバッタカンドロイドとタカカンドロイドを肩に乗せた轟の姿があった。

「今日はよく邪魔が入る。」

 



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思い付きネタ 4

本編そっちのけですみません。
思いついたので書きたくなりました。
ぶっちゃけこれ誰か作ってほしいです。
血界戦線×ヒロアカってあってもいいと思うんです。
前にPIXIVで見たんですけどいつの間にか消えていたんで誰か作ってほしいんです。


 あの日の後悔は、今でも記憶に残っている。

 無個性の僕が目を失っても何も変わらないのにも関わらず、母さんは自分を犠牲にした。

 その日から僕の目には、普通の目には見えないものが見えるようになった。

 けどその代わり母さんは光を失った。だから僕は・・・・・・母さんの目を取り戻すために辺境の地に足を踏み入れた。

 けど人生は思うように上手くいかないものだ。毎日がトラブル。

 異界の住人が死んで、殺されて、撃たれて、事故があって、毎日が死に満ちている。

 そしていつも世界の危機に直面している。

 そんなことが当たり前で、日本や世界がぬるま湯に浸かっているように見えて来た。

 けれど、それでも僕はヒーローになりたいという夢を抱き続けている。

 

 雄英高校ヒーロー科、A・B組が合同で戦闘訓練を行っていた時にそれは発生した。

 突如として現れた異世界の住人が空から現れるやいなや、襲ってきた。

「面白い能力のヒューマーがいるって話を聞いてな。いくらか貰って大儲けさせてもらうぜ!」

 異界の住人はそう言うと教師に攻撃を仕掛ける。

「ヤバいって!早く逃げて助けを呼ぼうよ!」

 拳籐のクラスメイトの一人がそう叫び逃げようとする。しかし行く手を阻むようにもう一人の異界の住人が立ちふさがった。

「あぶない!」

 拳籐は咄嗟に個性を発動させその子を離す。

「お嬢ちゃんが捕まるってか?健気だねー。」

 異世界の住人は拳籐に手を伸ばそうとする。

 拳籐はその時直感した。成す術なく捕まってしまうことを。

 

 

「ブレングリード流血闘術、推して参る!」

 

 

「ぐぎゃっ!」

 異世界の住人は突然吹っ飛ばされる。異世界の住人がいたところを見るとそこには右に十字のメリケンと左に小手を装備した緑色の髪の少年が立っていた。

「ケガはない?」

「え?あ、はい・・・・・」

「ならしばらくここにいて。」

 その人はそう言うともう一体の異界の住人の方へ向かう。

「ブレングリード流血闘術、111式十字殲滅槍(クロイツヴェルニクトランツェ)!」

 異界の住人に血のような真っ赤な十字の槍が異界の住人に突き刺さった。

「良いところに突き刺しましたね、出久君。」

 どこからか現れた半魚人のような人が来ると赤い糸を出し拘束する。

「斗流血法、刃身ノ弐・空斬糸!」

 異界の住人は動けなくなる。

「出久君、任務完了です。」

「そうですね。でもその前に・・・・・」

 出久と呼ばれた少年は私たちの方を見る。

「・・・・・・・・オールマイトも同席で事情説明しましょう。クラウス師匠には連絡しておくんで。」

「わかりました。」

 そんな話をしていた。でも私はさっきからずっと気になっていた。彼の力よりも、すべてを見通すような目をした彼の瞳が、不思議で仕方がなかった。

 



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34 ステイン戦、決着

皆さんお待たせしました。
ファンに言われて行動しないわけがないのが私。
てことでようやくステイン戦は一区切りつきます。
長く待たせたわりに短いですが楽しんでください。


「いろいろ言いたいことはあるけど、ありがとう轟君。」

「別に大したことはしてねぇよ。応援も呼んでおいた。数分もすれば――――」

 轟は右の氷結を使い足元を凍らせる。ステインは上に跳び回避するが轟はそれを狙い左の炎を放つ。

「―――プロも現着する。」

 ステインは体を回転させて攻撃を回避するとナイフを投げる。轟は顔を左に反らすが頬を斬ってしまう。

「気を付けて!ヒーロー殺しの”個性“は血を使ったものだ!」

 オーズはそう言うとメダジャリバーを取り出し構える・

「はっ!」

 壁をバッタレッグで蹴りステインに接近するとつばぜり合いになる。

「ぐっ・・・・・・」

「貴様に聞こう・・・・・・はぁ・・・・・なぜそこまでつけることに執着する?」

 互いに弾くと再び接近しカメアームで攻撃を防ぎながら蹴りと斬撃を繰り出す。

「手を伸ばせば助けられる命を見捨てたくないから!もうあんな思いはしたくないから!だから手を伸ばすんだ!」

 その言葉に轟とステインは驚いた。

(緑谷の奴、どんな経験してきたんだ?)

(今の言葉はその場面に直面したということが言葉だけでも伝わってくる!全く、捨てたものじゃないな、この世界は!)

 その時、倒れて動けなくなっている飯田は問いかけた。

「なぜ・・・・助けるんだ・・・・・二人とも、やめてくれよ・・・・・兄さんの名を継いだんだ・・・・・そいつは僕がやらないと・・・・!」

 そんな飯田に対しオーズは静かに言った。

「名を継ぐだけじゃ、ヒーローにはなれない。継ぐんだったら、思いも継がなきゃいけない。

飯田君、今君がなりたいのは何?家がどうとか、敵がどうとかじゃない!自分が何でヒーローになりたいのか、自分の欲望を開放しろよ!」

 その言葉を聞いた途端、飯田の心に有った何かが壊れた。

 それは重く、硬く、自分を縛り付けていた何かであった。

 それに応えるかのように飯田の指が動けるようになる。

「(緑谷君の言うとおりだ。僕は今まで、家がヒーローだからと言うことに囚われ続けていた。けど根源には、助ける姿に憧れたんだ。兄さんに、そしてオールマイトに!なら僕は・・・・・!)うぉおおおおおおおおおおおお!」

 飯田は雄叫びを上げて立ち上がる。

「立ち上がった!・・・・・・・・そうか。だから刃物を使うんだ。」

「どういうことだ緑谷?」

「アイツの個性は、血液型によって変わるんだ。同じように襲撃されたヒーローも動くことが出来ていないということは、ステインの血液型と同じってことと仮定する。なら飯田君は二番目に相性が良かったのかもしれない。」

「はぁ・・・・・・正解だ。だがインゲニウム、なぜ立ち上がった?貴様にヒーローを語る資格は・・・・・」

「僕はあると思うよ。」

 ステインの言葉をオーズが遮った。

「どんなに偉大な人でも、最初はみんな同じなんだ。無力でひ弱な一人の人間なんだ。誰でも間違いを犯し、道を踏み外してしまいそうになる。それでも、人を助けたいという気持ちがあるなら!その信念があるのなら!何度だって立ち上がれる!それがヒーローだ!」

 その言葉にステインは気押される。

「二人とも、いくよ!」

「ああ!」

「わかった!」

 オーズはバッタレッグを最大限の力で使い一気に前に出るとメダルジャリバーを叩き付けステインを後退させる。

「レシプロ、バースト!」

 飯田のレシプロバーストによる蹴りがステインを刀を蹴り折る。そしてさらに追撃をして蹴り飛ばす。

(速い!)

 飯田の速さにステインは驚いていた。

「轟君、飯田君の脚を冷やして!飯田君のレシプロがもう少し必要なんだ!」

「わかった!」

「させると思うか!」

 ステインが轟に向けナイフを投げる。しかしそれはクジャクカンドロイド数体によって防がれる。

「小さいながらも的確なサポートをするアイテム・・・・・・・中々だな。仮面のヒーロー、名を聞かせろ。」

「仮面ライダーオーズ!」

「仮面ライダー・・・・・・オーズ!いい名だ!」

 オーズはメダルを交換しオーキャナーを読み込ませる。

【タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!】

「はっ!」

 オーズはメダルジャリバーを投げ捨てるとトラクローを展開しステインへ接近する。

「甘い!」

 ステインは投げナイフを投げると腰に備え付けていたロングナイフを手に取り構える。しかしオーズのトラクローが投げナイフを斬り裂き、ロングナイフをも折った。

(なんという“個性”!いや、それだけじゃない。ここまでかなりの場数を踏んでいると見た!)

 オーズとすれ違いざまにステインは思った。

 オーズは体勢を整えると反転し、トラクローを収めると拳を構えバッタレッグで跳ぶ。

「レシプロ、エクステンド!」

 飯田は一気に上に上昇し蹴りを食らわせようとする。

 上から来るオーズと下から来る飯田。鵜足の攻撃を避ける術をステインは持ち合わせていなかった。

(ふっ・・・・・・いい仲間に巡り合えているじゃないか、インゲニウム。いいだろう、今のお前たちになら、倒されてもいい。だが忘れるな。ヒーロー気取りの偽善者を、俺は許さないぞ・・・・・)

 ステインは心なしか微笑み、そして二人の攻撃を受け気を失った。

 



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35 保須市事件、終結

ようやく完了です。
そして次回は少しばかりオリジナル要素をいろいろ加えたいので頑張ります。


 気絶したステインを轟の氷で受け止め、徐々に炎で溶かし降ろしていく。

「気を失っているみたいだね。」

 オーズは変身を解く。

「飯田君、何か縛れるもの探して。ビニールでも何でもいいから。」

「わ、わかった。」

「僕と轟君はステインの武器を全部回収しよう。ベルトの中にも仕込んでいるかもしれないから。」

「なんでだ?普通見えるところに装備してんだろ。」

「小さいナイフでも首の静脈を斬れば殺せるからね。それにこのベルト、バックルがおかしいから・・・・・」

 出久はステインのベルトのバックルを回し、両サイドを引くとそこには仕込まれたナイフがあった。

「ビンゴ!」

「スゲーな、緑谷。」

 轟は出久に感心する。

 そして飯田が持ってきたロープで腕と手を拘束する。

「ぐっ!」

 出久は突然膝をついた。

「どうしたんだ、緑谷君!」

「ごめん・・・・・・ちょっと無理したみたい。」

 出久は息を荒くしながら答える。

「俺が運ぶよ。助けられているしな。」

 ステインに襲撃されたネイティブが出久を背負う。

「悪かった。プロの俺が完全に足手まといだ。」

「いいえ、無理もないです。三人で相手のミスもあってようやく勝てた相手です。それにヒーローには決定的な弱点もありますし。」

「決定的な弱点?」

「メディアです。メディアに取り上げられるときに情報が漏洩します。どんな“個性”を持っているのか。そこから相手の手の内を予測し対策を立てる。頭のいい敵なら、そうするはずです。」

「なるほどな・・・・・それは盲点だった。」

 ネイティブは出久の言葉に納得する。

 ヒーローの活躍は何もメディアに取り上げられるだけじゃない。動画サイトにその活躍が投稿される。そこからかなりの情報が得られる。さらに声。声だけでもその人物の年齢や体重、身長などが分かるという話だ。

 そしてステインを連れて四人は大通りに出る。

「このサポートアイテムの場所だと・・・・・ここか?」

「あれ?」

 大通りに出るとそこには多くのプロヒーローが応援のために来ていた。

「エンデヴァーからの救援要請とこのサポートアイテムがあって来たんだけど・・・・・」

「子供・・・!?」

「酷い怪我だ!すぐに救急車を!」

「おい、こいつヒーロー殺し!?」

 駆け付けたプロヒーローたちは状況の変化に驚く。

「そう言えば脳無は・・・・・・」

「それについては大丈夫。君が先に倒した一体を除いてエンデヴァーが対応しているわ。」

 プロたちがステインをどうするか話している中、飯田が出久と轟に話しかける。

「二人とも・・・・・僕のせいでケガを負わせた。本当に済まない!」

 頭を下げる飯田に近づきデコピンを喰らわせる。

「いたっ!」

「何バカ言ってるの?まだ完全に道を踏み外していなかったんだよ。それに、飯田君は真面目過ぎる。謝るよりも先に言う言葉があるのに、全く・・・・・」

 出久は少しばかり呆れる。

 その時であった。突如空から負傷した脳無が翼を生やし脳無が出久を捕まえ、飛び立とうとした。

「なっ!?」

「緑谷!?」

「やられて逃げて来たの!」

 一人のヒーローに脳無の血が付着する。

 その時意識を取り戻したステインが手首に仕込んでいた折り畳みナイフをこっそりと出し、ロープを斬るとヒーローについた血を舐め、脳無の動きを止めると脳無に飛び乗り脳を一突きして完全に殺す。

「偽物がはびこるこの社会も、徒に“力”を振りまく犯罪者も、粛清対象だ・・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 ステインは出久を助けた。

「すべては、正しき社会のために!」

 その時エンデヴァーが来た。

「そっちに一人逃げたはずだが!?」

「エンデヴァー・・・」

 ステインはエンデヴァーの名を呟く。

「ヒーロー殺し!?」

 エンデヴァーは火を放とうとするが手を止める。下手に火を放てば出久に当たりかねないからだ。

「贋物・・・・正さねば・・・・―――誰かが血に染まらねば・・・・!“英雄(ヒーロー)”を取り戻さねば!!」

 ステインは一歩踏み出す。

「来い!来てみろ贋物ども!俺を殺していいのは、本物の英雄(オールマイト)だけだ!!」

 ステインから放たれる気迫に一人のヒーローは尻もちを付く。

 そんなステインの前に出久が立ち塞がる。

「誰かのために自分が犠牲になるのは立派でも、殺しをする理由にはなりません。ヒーロー殺しステイン、もしそうするつもりなら僕が・・・・・・」

 出久はそこで言葉を止める。

「緑谷、どうした?」

「・・・・・・・・気絶してる。敵として、最後まで信念を貫き通した点だけは、尊敬に値するよ。」

 こうして保須市の事件は終了した。

 一夜明け保須市の事件はステインの話題で持ちきりであった。

 出久に関しては臨時ヒーロー免許があったためお咎め無しとなったが、轟と飯田に関しては本来処分が下されるはずであったが公表しないということを条件に免責になった。

 しかし今回の一件で一つ大きな議題が世間に出るようになった。

 自己防衛や緊急時の“個性”の使用の有無についてである。

 現在の法律では非常時でも“個性”の許可なしの使用は法律で禁じられている。自己防衛でも処罰対象である。しかし何時もヒーローが駆けつけてくれるとは限らない。到着したときには既に最悪の結果を招いているということがある。

 そのため今回の議題は非常に世間の反応が大きい。

 



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36 それぞれの職場体験

今回は頑張って挑戦しました。


 ステイン事件から一夜明け、出久の下には麗日、百、三奈、一佳、透から心配のLINEが来ていた。

「あはは、やっぱみんな心配するよね。」

 出久は一人一人丁寧に返信をする。

 出久は気分転換に病院の屋上に出る。昨日まであんなことがあったとは思えないほど晴れ晴れとした空であった。

「昨日あんなことあったのに・・・・・・・世間は全く変わらないな。」

「そうだな。」

「っ!?」

 突如聞こえて来た声に出久は警戒する。後ろを振り向くとそこには白い鎧武者のようなグリードがいた。

「グリード!」

 出久はオーズドライバーを手にする。

「待て。ここで争う気はない。そもそも、今の貴様は万全の状態じゃない。そんな相手に勝っても真の勝利とは言えない。」

 その言葉を信じ出久はドライバーを収める。

「・・・・・・・なんでヤミーを生み出さない?」

「いや、生み出しているさ。目立たない程度にな。」

「・・・・・・」

「聞きたげな顔だな。いいだろう、答えてやろう。普通のグリードは自分の欲を満たすために行動を起こす。だが私は、欲と言う欲が無い。紫とは違う・・・・・・・いや、望んでいるものがあるとすれば死だ。」

「死?」

 出久はグリードの言いたいことがよくわからなかった。

「お前が今まで戦ってきたグリードは生への欲だ。しかし私はその逆、死への欲だ。終わりはすべての物に共通する。その死を望む欲望、それが俺の欲望だ。」

「なんでそんな・・・・・」

「俺は王の行いをただ傍観してきた。自分が望むままに、自分の欲だけを満たすために。それを見てなんと愚かなものかと思った。そんな王についてはいけないというと私は封印され、そしてなぜかこの世界にいた。それにな、私のメダルは何も描かれていないいわばプロトタイプ中のプロトタイプだ。」

 出久はただ聞くだけであった。いや、聞くしかなかった。

「この世界はおかしいものだ。力を持っていてもそれを禁じられている。たとえそれが守るためでもあってもだ。くだらない資格だのなんだと言っておきながら結局は自分たちが面倒ごとを回避したいだけだ。そんな姿を見ているとあの王を思い出す。オーズ、俺はこの世界で人間を見て、見定める。」

「もし君が人々を脅かすのなら、僕は全力で止めるよ。」

「ふ、やってみろ。それともう一つ、私の名は・・・・・そうだな、ゼロとでもしておこう。」

 そう言うとグリードは姿を消した。

「・・・・・・・」

 出久はその場をしばらく見るとその場を後にした。

 

 ガンヘッドの事務所の昼食時間、麗日は持ってきたおにぎりと事務所の人に分け与えられたおかずを口にしていたが、箸があまり進んでいなかった。

「どうかしたの、ウラビティちゃん?」

 ガンヘッドが麗日に声を掛ける。

「ガンヘッドさんは出久君のこと知ってますか?」

「出久君?確か雄英体育祭の普通科で、二位になったあの?」

 麗日は頷く。

「出久君は、入試の時にウチを助けてくれたんです。自分の体が限界だってわかっているのに、血まで吐いて助けてくれた。雄英が敵連合に襲撃された時だって、自分で危険だとわかっている力を使って、体中から血を出してまでウチ等を守ってくれた。あんな姿を見てたらウチ、ウチ・・・・・」

 下を向く麗日にガンヘッドが肩に手を置く。

「その気持ちを持っているなら、この短い期間だけで得られるものをすべて吸収しよう。大丈夫。誰かを思う気持ちは力になるから。」

「ガンヘッドさん・・・・・」

「でもどちらかと言うと、恋の力かな?」

「ちょっ!?そ、そんなんじゃないです//////////」

 麗日は顔を赤くする。

 

 ウワバミの事務所で百は一佳と話していた。

「昨日のヒーロー殺しの一件、多分巻き込まれたのではなく出久さんが助けに行ったと思われますね。」

「そうだね。きっと出久ならそうだもの。」

 二人はそう言うとしばらく黙ってしまう。

「・・・・・・・・出久さんは、いつもそうです。誰かのために自分の命を投げ出してしまう、自己犠牲の塊のような人です。だから・・・・」

「うん、助けないとね。無茶をしないためにも。」

 そんな二人を陰でウワバミは微笑ましく見ていた。

 

 蛙吹は一人甲板掃除をしていた。

「フロッピー、そっちはどう?」

「甲板掃除終わったわ、シリウスさん。」

 蛙吹がそう言うとシリウスはジュースを差し入れする。

「毎日船内掃除と訓練ばかり退屈でしょう?」

「ええ、少し。」

「私が職場体験した時と同じ。子供の時に思い描いていたヒーロー像と現実のギャップに戸惑ったわ。もっと華やかな日々を想像していたのに、実際は訓練とパトロールと掃除の日々。しかも船長のパンツの洗濯までやらされて、それのどこがヒーローなのよって。」

「いやになった?」

「最初はね。でも船長のサイドキックをしていてわかったの。ヒーローにとって本当に大切なものが何かを。」

「大切なもの・・・・・・・・・・そう言えば緑谷ちゃんが言っていたわ。」

 ふと蛙吹は緑谷から聞いた言葉を思い出した。

「緑谷ってもしかして体育祭で二位の?」

「ええ。緑谷ちゃんの個性はいろんなところで活躍できるわ。そんな緑谷ちゃんが言っていたの。“一番ヒーローにとって大切なことは自分たちが活躍しないこと。敵を倒すことでもない。ただそこに笑顔があって、笑って、時にケンカして、泣いて。そんな当たり前の日々を見られる。当たり前のように目の前に命が輝いている日常。それが一番なんだ”って。」

 その言葉を聞くなりシリウスは驚いた。

「・・・・・・・・・同い年なんでしょ、その子?」

「ええ。でもどこか私たちと違うの。経験豊富と言うよりも経験してしまったと言った方がいいのかしら?戦い慣れしているけど決して油断しない。命の重みを誰よりも重く受け止める、そんな感じがしたの。」

 そんな時プロヒーローのセルキーが声を掛ける。

「おいフロッピー、蛙だからって油を売っているんじゃねーぞ。シリウスも、監督係に任命したんだ。ちゃんと監督しろ。」

「掃除は終わったわ、船長。」

「私もちゃんと監督しています。」

「おお、そうだったか。俺の早とちりか。」

 セルキーは頭を掻く。

「そうかそうか悪かったな。ごめんね。」

 ぶりっこするように謝るセルキーに対しシリウスは頭を抱える。

「はっはっはっはっは!可愛すぎて声出ねーか?フロッピー。」

「呆れてるんです!いつも言ってますけど、顔だけ可愛くしてもダメです。首から下がマッチョなんですから。」

 シリウスは思ったことを口にする。

「顔も厳ついけど・・・・・」

「なんだと!こいつを子供にやるとバカ受けなんだぞ!」

「それ!単純にバカにされているんですよ!ぜんぜんかわいくないですから!」

 そんな中、蛙吹は思った。

(かわいいわ!)

 可愛いの基準は人それぞれである。

 その時であった。クルーから報告が入る。

「セルキー船長!海上保安庁から連絡が入りました!」

「わかった!すぐ行く!」

 セルキーは艦首へ向かう。

「フロッピー、ロープを外すのを手伝って。おそらく出向よ。」

 その言葉を聞いて蛙吹は気を引き締める。

 そして乗っている沖マリナーは出港する。

 

 海上保安庁から密航者がいるというタレコミがあったという話が来た。

 船をよくよく調べると貨物リストから積み荷が一つなくなっているという話だそうだ。

「これがどういうことかわかるか、フロッピー?」

「海上保安庁の調査が来る前に別の船に積み荷を移し替えた・・・・・・もしかしたら密輸ブローカなのかしら?あ、でも・・・・・」

「どうかしたの、フロッピー?」

 シリウスが水に問いかける。

「その話通りだと不可解な点があるわ。」

「不可解な点?」

「ええ。間抜けすぎるって話よ。緑谷ちゃんが言っていたの。密輸品は大きく三つに分けられる。関税がかかる物、違法に入手した骨董品、そして麻薬。どれも何かに隠して密輸するのが基本だって。もしリストから何か一つなくなっていたらそれはあからさますぎるって話。別の目的ってのも考えられるって。それにそのタレコミ自体が敵の作戦って可能性もあるって言っていたわ。」

 それを聞くなりセルキーは笑って答えた。

「正解!」

 そしてクルーは頭を抱える。

(かわいい!!)

 そして蛙吹はそれを可愛いと思った。

「今回俺たちの任務は、小型船で逃げたと思われる密航者を確保し、保安庁に引き渡すことだ!」

 そして任務は開始された。多くの海難担当のヒーローと海上保安庁の協力のもと行われた作戦は日が沈み、暗くなるまで続いた。

 蛙吹たちが乗っている船の方に密航者と思われる小型漁船が来るという情報を聞きつけ明かりを消し、巡視艇で航路を塞いで照明弾を発射。そして乗り込むという作戦であった。

「船長、これを。」

 蛙吹はそう言うとセルキーにガムを差し出す。

「これは?」

「緑谷ちゃんが言っていたの。魚を収めるところは監禁するには適した場所だからカギを掛けるところにこっそり仕込めばいいって。」

「なるほどな。そいつは確かにそうだ。」

 セルキーはそれを受け取る。

 そして作戦通り任務が行われる。魚を収める場所を除くセルキーたちは落とされ、船長も落とされた。

 しかしそれらすべては囮であった。別の場所で密航者の船は岩陰に隠れていた。

 蛙吹とシリウスはセルキーの指示に従いそちらの方へと向かった。

 情報通り小型船を発見した一同は見張りを拘束し、密航者を取り押さえようとした。

 だがその時、船室からタコ足が伸び、シリウスが捕まってしまう。

「敵!」

 タコの個性を持つ敵がシリウスを捉える。

「こいつはいい実験台が来てくれたもんだ。感謝するぜ、ヒーロー。」

 敵はLと書かれたUSBメモリを取り出すとボタンを押した。

「Lance!」

 そしてそれを自分に刺すと触手の先が槍へと変身する。

「おい、ガキ!こいつを殺されたくなかったらおとなしく言うことを聞け。」

 自分一人では何もできない状況に蛙吹は従うしかないと思っていた。

 その時であった。どこからかエンジン音が聞こえてくる。

「あ?なんだこの音?後ろ?」

 敵が後ろを振り向いたその瞬間、壊れかけていた船室を壊し、ヘルメットを被った青年が水陸両用推進バイク・アクアミライダーを敵にぶつける。

「ぐへぇ!」

 その攻撃によってシリウスが解放されると蛙吹は舌を伸ばし回収して近くの岩へと飛び移る。

「な、なんだてめぇは!」

 敵はアクアミライダーに乗っている青年を見る。

 青年はヘルメットを取ると蛙吹に投げ渡す。

「ケロ?」

「すみません、持っていてもらえませんか?」

「え、ええ・・・・・」

「さて・・・・」

 青年は敵の方を見る。

「あなたが手にしたその力、破壊させてもらいます。」

「あ?破壊するだ!?馬鹿言うな!これさえあれば神にもなれるんだ!」

「人が神になるのなら一回死んで蘇ってみてください。」

 青年はそう言うとベルトをあらわにする。

「ん・・・・」

 シリウスが目を覚ます。

「フロッピー・・・・彼は?」

「わからないわ。でもあの敵が持っている力について何か知っているみたいだったわ。」

 二人は青年の方を見る。

「変身!」

 ベルトから渦潮のように波紋が広がり青年の姿を変える。

「ケロっ!?」

 蛙吹は驚いていた。姿かたちは違えども、どこかオーズと似ていたからだ。

 輝くメタルブルーのボディに銀の仮面、金の瞳を持つ仮面の戦士、仮面ライダーアクアがそこにはいた。

「な、なんだお前は!」

「仮面ライダーアクア。俺の守る今日が、みんなの明日だ!」

「ほざけ!」

 敵は槍の触手を伸ばすがアクアはそれを飛んで回避すると両足から水を放出し、飛び回し蹴りの必殺技を喰らわせる。

「アクアヴォルテクス!」

「ぐぁあああああああ!」

 敵は吹っ飛ばされると同時にUSBが体外へ放出される。アクアはそれを回し蹴りで破壊する。

「任務完了。」

 アクアはアクアミライダーに乗りその場を去ろうとする。

「待って!貴方は、貴方は一体何者なの?」

 蛙吹が問いかけるとアクアは言った。

「僕はただの仮面ライダーだよ。オーズと同じ。」

「けろっ!?」

 アクアはそれだけ言うとその場を後にした。

 蛙吹は驚いていた。なぜ出久のヒーロー名を知っているのか。

そして疑問に思った。仮面ライダーとは何なのかを。

 



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37 財団X

 出久は病院を退院した。医師の間でも出久の症状のことは知れ渡っており、大きい病院では特別にカルテを取り寄せることが出来るのである。

「そう言えば心操君たちどうなんだろう?電話してみ・・・・・・ない方がいいか。LINEで聞いてみよう。」

 まだ作業中かもしれないと思い出久はLINEをした。

(そう言えば・・・・・・・最近こういったやり取りするようになったな。)

 ふと出久はそう思うことになった。

 自分の寿命のことを考え、他人とのやり取りは控えるようにしていた。

(こうやって普通の人のようにやり取りして、接して、同じように時間を過ごして・・・・・・・ちょっと、嬉しいけど悲しいな。)

 出久はそう言った時間を今まで過ごせることが少なかったため嬉しかったが、同時にこの時間が永遠でないということに悲しくなった。

 そんなことを頭の片隅に置き、思考を切り替え自宅へと戻る。

 

 帰ってくると出久は一人ベッドで横になる。

(・・・・・・・・色々あったなー。)

 出久はふと自分のこれまでの人生を振り返る。

 突然の不治の病の発症、無個性の診断、異世界へのトリップ、仮面ライダーの力を手に入れる、アンクとの別れ、元の世界への帰還、雄英への入学、USJ事件、雄英体育祭、そして先日のステイン事件。

 16歳の少年が経験するにはあまりにも多忙な人生である。

 そんなことを考えていると電話が鳴った。

「はい、もしもし?」

『久しぶりだね、出久君!』

「鴻上会長!?」

 電話してきたのは鴻上会長であった。

「どうしたんですか、会長?」

『ああ。実は君に報告しておかないといけないことがあるんだ。』

「僕にですか?」

『ああ。根津校長には既に伝えてあるのだが、どうやら財団Xの一部がそちらに出向いているようなんだ。』

「財団X!!」

 財団X、それはそれぞれの仮面ライダーの敵を生み出す技術を持つ闇の組織。

 たとえ頭を潰したとしてもまた別の頭が誕生するプラナリアのようにしぶとい組織である。

『すでに何人かそちらで活動している。最も、そちらの世界では自警団扱いになるだろうがね。』

「・・・・・・・・」

 その言葉を聞くとふと出久はこの世界がいかにおかしいか改めて考えさせられた。

 この世界は個性の使用自体を全面的に禁止している。それが人を助けるためでもあってもだ。

 それは秩序を守るためだという人もいるが本当は恐れているからではないだろうか?

 そして国が認めたものに対してヒーロー。認めていないものに対して敵と区別する。それこそが死柄木弔のような歪んだ思想を持つ存在を生み出したのではないかと。

『・・・・・・・出久君、私は君が思っていると思うような疑問を今でも持っている。だがそんな世界だからこそ君の力が必要なのではないかと私は思うんだよ。』

「ありがとうございます、鴻上会長。」

『なに、気にしなくていい。それでは気を付けて。それと近い内に君のよく知る人物が合流する。それでは。』

 電話を切ると出久は一息つく。

「絶対に守って見せる。一人でも多く、この手が届く限り。」

 もう二度とあんな思いをしたくない出久の覚悟がそこにはあった。

 



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38 弱さ

昨日グリッドマンのミニプラをプレ版で注文しました。
しかし今年はすごいでしょバンダイ。
ガオガイガーにウルトラマンVSシリーズ、宇宙リオーにグリッドマン、そして今も悩んでいるウルトラマンネクサス。
何より当時ホビーで足真っすぐが限界であった技術が、今や完全変形合体まで可能となった。
そしてメガレンジャーロボまで登場予定。個人的にはゲットマシンやネオゲッター、プロとゲッターとか出て欲しいけど。
とまぁ今年はそんな感じですね。


 あれから時間は経ち、ヒーロー科の職場体験は終わった。

 普通科の美化活動によって浜辺は予想以上にきれいになった。

 サポート科もサポートアイテムのデータ集めに大幅に役に立った。

 そして通常の授業内容に戻るかと思われたがそうでもなかった。

 時期は既に夏休み前。期末試験のために勉強習慣に入っていた。

「緑谷はヒーロー科の実地試験受けるのか?」

「いや、そんな話は聞いていないよ。多分やらないのかもしれないよ。」

 休憩時間、心操は出久に尋ねた。

「それにしても、今年は異常だって先輩たちの方も言ってたぞ。一年で特にお前が。」

「あはは・・・・・」

 出久は苦笑いをする。

「・・・・・・・・なぁ、緑谷。」

「なに?」

「・・・・・・・・他の奴らも薄々気づいているんだが、お前どこか体悪いんじゃないか?」

「え・・・・・・・」

 その言葉に出久は衝撃を受けた。

「最初は個性の反動かって、皆思ってたんだ。けどな、個性の反動で血を何度も吐くってあり得ないだろ。それに時折お前が物陰に隠れて胸押さえてるの、クラスの奴らが何度か目撃しているぞ。」

「っ!?」

 出久はその言葉に驚いた。

 体育祭の時に心操に見られはしたがそれ以外でも見られているとは思わなかったのだ。

「・・・・・・・・俺だけにでも言ってくれないか?」

「・・・・・・・・人がいない屋上でいいかな?」

 出久の言葉に心操は頷いた。

 人気のない屋上で出久は自分の体のことを話した。

 心操は最初衝撃を受けたがどこか納得できてしまった。

「・・・・・・・・お前さ、なんで一人でそんなこと抱え込んじまうんだよ。」

「・・・・・・・・ごめん。」

「ごめんじゃないだろ。なんでなんだよ?」

「・・・・・・・・・・怖かった。自分のことを話してみんなが離れていくんじゃないかって。それに・・・・・・そのことを告げると僕も自分がみんなより早く死んでしまうってことをより近くで感じてしまうから。」

 そんな出久を見て心操は思った。

(こいつは・・・・・・“個性”が強いから強いんじゃない。むしろそんなことは関係ないんだ。こいつ自身は弱いんだ。誰よりも臆病で、死ぬのが怖くてたまらないんだ。それなのに無理をして平気なフリをしてる。弱いところを見せたらいけないと思ってやがる。けど・・・・・・)

 心操にはわかっていた。そんなことを自分が言ってもきっと届かないということに。

 自分の“個性”を始めて褒めてくれた。

 自分の存在を初めて認めてくれた。

 今までの自分を変えてくれた。

 みんなのために動いてくれた。

 そして常に、誰かのために動いていた。

 例えそれがおせっかいであろうと、頼まれていまいと、自分から率先して動いていた。

 だからこそ、皆から愛されるのだと。

 そうでなければ誰も彼のことを心配はしない。

 大事に思われていなければ一瞬だけの心配で終わる。

「緑谷、このことは先生は知っているのは当然だろうが・・・・・・・・・他に知ってる奴はいるのか?」

「かっちゃんだけ。」

「そうか・・・・・・・なぁ、緑谷。このことはお前がヒーロー科に編入したときに俺から先生に頼んで話してもいいか?」

「・・・・・・いいよ。ちょっと待って。」

 出久は生徒手帳のメモに使う部分にあることを書くと破り、心操に渡す。

「これを先生に渡してくれる?僕が許可したって証明だから。」

「・・・・・・・・・わかった。」

 心操はそれを受け取る。

「ヒーロー科の奴らにはどうするつもりだ?」

「・・・・・・・・・・話そうと思うよ。」

「・・・・・・・・・・こっちは今回逃げか?」

「そうなるね。」

 怒られるかと思った出久であったが反応は予想外の物であった。

「・・・・・・いんじゃないか。逃げても。」

「え・・・・・・」

「お前はいつも無茶し過ぎだ。たまにはそうしてろよ。」

 心操は出久の肩に手を置くと屋上を後にした。

「・・・・・・・・・・・ありがとう。」

 小さく、枯れるような声で礼を言った。

 目からは大粒の涙がポタポタと零れ落ちていた。

 



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39 オール・フォー・ワン

 心操へ心を打ち明けた後、出久は食堂で食事を取ろうとしていた。

「出久さん、こっちですわー!」

麗日と芦戸、葉隠と耳郎と共に食事をとっている八百万が出久を見かけると呼びかける。周りの生徒たちはクスクスと笑うが出久は気にすることなく席に座る。

「ありがとう、百ちゃん。」

「いえ、お気になさらずに。それよりも皆さん出久さんにお聞きしたいことがあるそうなので知っていれば答えてくれませんか?」

「僕に?なに?」

 最初に喋り出したのは麗日であった。

「梅雨ちゃんが職場体験の時にベルトで変身する自警団に出会ったんだって。でも名前が出久君のヒーロー名の仮面ライダーって名前だったから気になって。」

「(もしかして鴻上会長が言っていた・・・・・)その仮面ライダーの名前は?」

「アクアって言うらしいよ。」

「ウチのところは宇宙飛行士みたいなフォーゼだったよ。」

 麗日に続いてしゃべったのは耳郎であった。

「わたくしのところには緑と黒のWと言う方でしたわ。正直、あれほどの実力を持っていながら何故・・・・・・」

 八百万が考えていると出久は強引に押し通そうとした。

「もしかしたらステインみたいに正義の価値観が違うのかもしれないよ。」

「と、言いますと?」

「大抵のヒーローはお金がもらえるから活動してるって感じだよね。でも原動力が金がもらえることが前提ってのがステインが生まれた根本的原因だと僕は思うんだ。

 見返りを求めず、誰かのために全力で自分を犠牲にできる。それがステインが理想と掲げたヒーロー像なんだと僕は思うんだ。」

 ステインの行動は確かに過激ではあったが理解できないわけではなかった。

しかし、それを実現するために殺人を犯してしまったことは大きな間違いであった。

「・・・・・・・・・飯田さんには失礼かもしれませんが、そうなんでしょうね。」

「そうだね。」

 八百万の言葉に芦戸が納得する。

「ところでさ、出久。アタシたちと一緒に強化合宿に行くの?」

「うん。先生がヒーロー科に編入するから参加した方がいいって話してたし。」

「そっか!じゃああたちたちと一緒に参加するんだね!」

 芦戸の言葉に麗日、八百万、葉隠はうれしそうな顔をする。

「でもその前にヒーロー科って実技試験があるんじゃなかったっけ?」

 その言葉を聞くと一同一瞬で不安な顔になる。

「多分だけど僕は今回先生たちと戦うんだ。」

「どうしてそう思うの?」

 出久の考えに耳郎が問う。

「聞いた話だと今まではロボって話だったんだけどUSJでの事件やステインの事件を起爆剤ににして敵たちが活性化しているらしいんだ。そう考えるとより実戦的に各自の苦手分野をぶつけてくると思うんだ。」

「なるほど。」

 その言葉に一同納得する。

「それじゃあ僕は食べ終えたから教室に戻るね。」

 ごちそうさまを言って出久はその場を後にした。

 

 放課後の廊下を出久が歩いているとオールマイトに呼び止められた。

「緑谷少年、ちょっといいかな?」

「オールマイト、どうかしたんですか?」

「ちょっと。」

 オールマイトは視聴覚室に出久を招く。

「鴻上会長から話は聞いている。向こうの方からこっちに臨時助っ人のことも聞いてはいるが、もう一人来るという話は聞いている。」

「もう一人?」

「ああ。こちらの方ではあまり馴染みがないが戦場のような場所での応急処置となると必ずと言っていいほど道具が足りない。そんな状況でも治療できるように教えられる先生を呼んだのさ。」

「それが俺ってこと。」

 出久はその声を聴いて後ろを振り返る。そこには物陰から姿を現した伊達明の姿があった。

「伊達さん!」

「よっ!久しぶり、出久ちゃん。また血を吐いたって聞いたけど無茶し過ぎじゃねーの?」

 伊達は出久の体を触り出久の健康状態を確認する。

「今んところは大丈夫だな。だがあんま無茶するんじゃねーぞ。お前、無茶するたびに寿命を少しずつ削っているんだから。」

「気を付けます。」

 出久の簡単な診察を終えた伊達はオールマイトの方を見る。

「んで、オールマイトさん。わざわざ俺を紹介するためにこんな防音対策取れた部屋に招いた訳じゃないんだろ?」

「・・・・・・・・・・察しが良くて助かるよ。座ってくれ。」

 オールマイトに促され二人は対面する形で座る。

「君達には話しておかないといけないと思ってね。私の“個性”、ワン・フォー・オールは特別でね。この“個性”は()()()()()()()()()の“個性”から派生したものなんだ。

 オール・フォー・ワン。他者から“個性”を奪い己がものとし・・・・それを他者へ譲渡することができる“個性”だ。」

「皆は自分のために・・・・・・・直訳するとそうだが・・・・・」

「オールマイト。もしかして・・・・・脳無を生み出した奴ではないんですか?」

「その通りだ。超常黎明期、まだ社会が変化に対応しきれなかった頃の話だ。かつて、突如として”人間”と言う規格が崩れ去った・・・・・・たったそれだけで法は意味を失い、文明は歩みを止め荒廃した。」

「当然時代は混沌とするわな。」

「その通りだよ、伊達君。しかしその時代にいち早く人々をまとめ上げた人物がいた。」

「まさか・・・・・」

 出久はそれまでの話を聞いて察した。

「ワン・フォー・オール、それはオール・フォー・ワンから生まれた“個性”。皮肉なことに正義とは常に悪から生まれてくるものだ。」

 その言葉を聞いて二人は納得できてしまった。

 仮面ライダー1号、本郷武はショッカーによって生み出された改造人間。悪により生まれた正義の味方。それこそが仮面ライダーの誕生の秘密である。

「オールマイト、もしかしてその人は今も生きているんじゃないんですか?」

「・・・・・・察しがいいね、緑谷少年。奴は今は敵連合のブレーンとして再び動き出している。」

「つまりオールマイトのワン・フォー・オールは戦う宿命ってわけか。」

「・・・・・・・そうだ。酷な運命かもしれないが・・・・・」

「オールマイト。」

 謝罪の言葉を述べようとしたオールマイトの言葉を出久が遮った。

「僕たち仮面ライダーはいつだってそうです。人類を滅ぼすことが出来る敵を、仲間と共に戦い、そして倒してきました。その悪は何度も蘇りもします。それでも僕たちは戦います。」

「そうだな。なんのために戦うかはその仮面ライダーにとって変わるが、みんなに共通しているのは人間の自由と、平和のために戦うってことだな。だから安心しろ。それに・・・・・・なにもその力に一人で立ち向かうわけじゃないでしょ。だから安心しな。」

 その言葉にオールマイトは嬉しかった。決して一人ではないと、こんなにも頼りになる仲間が出久の周りに入るのだと。

「オールマイト、巨悪と立ち向かう時に貴方はいないかもしれません。けど、信じてください。僕たちを。」

 その言葉を聞くだけでオールマイトは救われた。

 



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40 一学期終了。そして・・・

はい、皆さんこんばんわ。ザルバです。
ようやく一学期を終えました。次は強化合宿・・・・・・・・とその前に映画の方を活動報告でも言った通りします!
映画を見てない人はネタバレする可能性があるので映画を見てからお願いします。
そして財団Xの布石はここにあったと言いましょう!


 オールマイトの話から日は経ってヒーロー科の期末試験が終わった。

 A組は芦戸さんを含めた五人、B組は物間君だけが補修と言う結果になった。

 と言っても強化合宿には参加できるらしい。その代わり他の生徒よりも補修の時間が設けられるそうだ。

 そして出久は今A組の生徒と共に県内最多店舗数を誇るナウでヤングな最先端である来椰区ショッピングモールに来ていた。

 理由は強化合宿に必要なものを買うためである。

 メンツは麗日、芦戸、八百万、葉隠、常闇、飯田、切島、峰田、そして出久の面々である。

 各々買う者の目的がばらけているため各自解散して動いていた。

「さて・・・・・・僕一人になりましたから用があるなら付き合いますよ。」

「・・・・・・・・へー、気づいてたんだ。」

 一般人を装って近づいてくる死柄木に出久は顔を向けないまま声を掛ける。

「んで、ヒーローに連絡するのか?」

「いいや。君ならその間に数人は殺しそうだ。そしてその騒ぎで大勢の人が恐怖で逃げるために個性を使って二次被害が出る。そんなリスクを僕は犯さないよ。腰を掛けて話そう。その方が互いにフェアだ。」

「いいね。」

 死柄木は微笑み出久の隣に腰を掛ける。

「言っとくけど五本の指で“個性”を発動させようとする行為を少しでもしたら君の両手首の関節を外して指を一本逆に曲げるよ。」

「・・・・・・・・・出来そうだな、お前。もしかしてこっち側の人間じゃないのか?」

「そんなわけないだろ。でもしなければ死ぬ。生きるためなら最低限度の努力で最大限の成果を出す。それが策を講じる上での基本だよ。」

「なるほど・・・・・んで、こっちとしては聞きたいんだよ。大体なんでも気に入らないんだけどさ、今一番腹立つのはヒーロー殺しさ。」

「世間は仲間って思われているけど違うんだろ?」

「ああ、そうだ。問題はそこだ。ほとんどの人間がヒーロー殺しに目が行っている。雄英襲撃も保須で放った脳無も・・・・全部奴に喰われた。誰も俺を見ないんだよ。何故だ?」

 誰も彼を見ようとしない注目しようともしないことに苛立っていた。

「いくら能書きを垂れようとも結局彼も気に入らないものを壊している。俺と何が違うと思う?緑谷。」

「・・・・・・・明確な目的が無い、信念が無い。ただ気に入らないから壊してる。やっていることが子供なんだ。欲望が無い悪意はただの我儘。正に今の君だ。」

「・・・・・・・まるで信念ある悪意にあったことがあるみたいだな。」

「・・・・・・・・・・否定も肯定もしない。」

 

「だがおかげで分かったよ。ああ・・・・スッキリした。点が線になった気がする。なんでヒーロー殺しがムカツクか・・・なんでお前が鬱陶しいか、わかった気がする。全部、オールマイトだ。」

 深くかぶったパーカーからは不敵な笑みを浮かべている死柄木弔の顔があった。

「そうかぁ・・・・そうだよなぁ。結局そこに辿り着くんだ。何を悶々と考えていたんだ、俺は。こいつ等がヘラヘラ笑って過ごしているのも、オールマイト(あのゴミ)がヘラヘラ笑っているからだよなぁ。救えなかった人間がいなかったかのようにヘラヘラ笑っているからだよなぁ!!」

 その時死柄木弔の中で明確な悪意が芽生えた。

「話せてよかったよ、緑谷出久。」

 死柄木がその場を立つと丁度麗日が来た。

「出久君、その人は?」

「ただの知り合いだよ、麗日さん。」

「連れがいたのか、ごめんごめん。」

 死柄木は一般人を装い明るい顔であいさつする。

「じゃあ行くわ。追ったりしたら・・・・・・わかるよな。」

「僕がそこまで阿呆に見える?最後に一つ、死柄木弔。オール・フォー・ワンは何が目的だ?」

「死柄木・・・!?」

 出久の言葉に麗日は驚く。

「・・・・しらないな。それより気を付けな。次会う時は殺すと決めた時だ。」

 死柄木はそう言うと人ごみに紛れその場から去った。

 そのあと麗日が警察に連絡をしてデパートは一時封鎖されたが死柄木は既にいなくなっていた。出久はその日のうちに事情聴取を受け、死柄木と話した内容を話した。

 出久が警察署から出ると引子ともに麗日、八百万、芦戸、葉隠が出迎えた。帰りは八百万のリムジンで送ってもらった。

 そして強化合宿は予定をすべてキャンセルし当日まで一部教師以外知らせないという判断が下った。

 そして夏休みに入る終業式の放課後、オールマイトが出久を視聴覚室に呼んだ。

「どうかしたんですか、オールマイト?」

「実は招待状が届いたんだ。君も知っているだろう?I・アイランド。」

「し・・・・・・・・知ってますとも!世界中の有能な科学者たちを一万人以上集めて住んでいる学術人工移動都市!でもなんでそんなことを?」

「実は古い友人の娘から招待状が届いてね。一般公開のプレオープンを記念してパーティーが開かれるんだ。だから君も正装を持ってきてくれ。」

「わかりました!」

 出久はこの時嬉しかった。科学者であれば無個性であろうと活躍できる。一時はそんなことを夢見ていた。科学者になる人は大抵ヒーローに不向きと言われる個性の人が多い。

 だがこの時誰も予想だにしなかった。

 もし唯一の友に打ち明けていれば、もし誰か止めていてくれれば、そしてもし時間を巻き戻せたら、あんな悲しい現実を見なくて済んでいるということに。

「この世界に仮面ライダーは一人。私の研究をもってすれば仮面ライダーなど・・・・・・・・・ふっふっふっふっふ、ふはははははははははははは!」

 そして異世界からの侵略の魔の手が伸びていることに、誰も気づけなかった。

 



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41 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~ ①

皆さん長らくお待たせしました!
ヒロアカ劇場版オリジナルSSを始めます!


 I・アイランドへ向かう飛行機の窓からそれを捉えると出久は寝ているオールマイトを起こす。

「オールマイト、起きてください。見えてきましたよ。」

 出久に起こされオールマイトは窓の外を見るとそこには世界的に有名であるI・アイランドが目に入った。

「へー、これがI・アイランド。結構でかいじゃん。」

 一緒に搭乗している伊達がI・アイランドを見て感心する。

 なぜ同席しているかと言うとリカバリーガールの代わりとしていくことを頼まれたのだ。

 本来であれば出久の体のこともあって同席する予定ではあったのだが雄英高校でけが人が出た時のためにと自ら残ったのだ。本当のところを言うと人が多いところは年寄りにはきついというのではあるのだが。

「大きさだけじゃなくて世界の有能な科学者が一万人以上住んでいる学術人工都市なんです!よく考えれば・・・・・こうして楽しく海外や外に行くって経験なかったな・・・・・・」

 不意に自分のことを思い出し暗い顔になる出久に二人は肩に手を置く。

「そう思っているのなら存分に楽しもうではないか、緑谷少年。」

「そうだぜ出久ちゃん。その分、今を楽しもうぜ。」

「オールマイト・・・・伊達さん・・・・・」

 出久はその言葉に嬉しくなる。

 その時機長のアナウンスが入る。

「当機は間もなくI・アイランドへの着陸態勢に入ります。」

「さて、なかなかしんどくなるな。何せ向こうでに着いたら…マッスルフォームでいなければいけなんだからね!」

 オールマイトはマッスルフォームへと姿を変える。

 いくらOFAを譲渡していないとはいえど内臓の損傷によって活動限界は来ていた。

「無茶し過ぎんなよ。婆さんからは見張り頼まれてるけどどうせ無理するんだろ?」

「あはは・・・・・・すまない。善処するよ。」

 マッスルフォームでの苦笑い姿は正にシュールであった。

 

―――――さて、いよいよこの時が来た。彼には悪いが、利用させてもらおう。私がこの世界の帝王として君臨するために、彼の発明は素晴らしい・・・・・が、この世界の人間はなんと愚かだろうか。持っている力を法律なんぞで抑え込み、ましてやそれを勝手に使うものを

敵などと言う線引きをする。私の力をもってすれば、この世界はおろか宇宙も支配することが出来る!ふははははははは!

 希望が溢れる都市で人知れず、着実に悪が暗躍をしていた。

 しかしそいつは知らなかった。この世界を救うために英雄(ヒーロー)たちがが来ていることを。



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42 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~ ②

やっぱりほぼ原作と変わらないってところが痛いですね。
でもところどころ変えて作ってます。
そしてグリッドマン、私少し遅れて二話連続で見ました。
面白かったです。
最初がブランク体、次が本気バージョン。
そして悲しいかな、ジャンクにはグリッドマンの武器が消えてしまってる。あの戦いによって。
そして何より敵キャラになってるあの女の子。
純粋な子供の歓声で動いているから結構ヤバい。殺すとかって概念が実感わかないのも原因だけど多分原因は仲間の方の女の子と何かあったからかもしれない。ED見てたらそう思う。
ミニプラでゲッターかったけど1は左腕付け根が悪くて2は頭部がある程度動かすと白色劣化で壊れて3は左腕が取れやすい。
低価格高クオリティーなのは分かるけど素材をよくしてほしい。
バンダイの食玩はお客様相談センターに電話したら栃木にある栃木修理配送センターに着払いで送ってくれって話でした。
ゲッター好きだけど素材の改良とかしてくれないと買った人が困る。
そして知らない人には朗報だけどワールドトリガーがSQの方で再連載するそうです。
完結しないで終わっちゃう作品にならなくてよかったですね。アニメは途中で終わ茶ったけど。


《これより、入管審査を開始します。》

 ヒーローコスチュームに着替えたオールマイトと出久と伊達は並びながら入管審査を受ける。

「そういや出久ちゃん、なんでここって作られたの?陸じゃいけない理由教えてよ。」

「それはですね、世界中の有能な科学者を集めて”個性”の研究やヒーローアイテムの開発を行うためです。移動式なのは特定の場所だと敵、特に大きな組織から狙われるからです。けどここの警備システムはタルタロスに匹敵するほど強固です。」

「ほ~!よく知っていらっしゃる!」

 出久の説明に伊達は感心する。

「出久ちゃんの細やかな知識・情報収集能力、医者としては欲しいくらいだよ。」

 伊達がそう言うと出久は苦笑いするが実際医者としては欲しいものである。

 医学と言うのは日々進歩している。昔では治療困難と言われた病気も今では直せる。そしてその情報は世界へと広まるがそれを手にし、自分の物にするというのは本当に難しい。

 また知るのは新しい情報だけではない。過去からの情報によってマニュアルにはない対処法を取るということもまた、医者に求められるものである。

 温故知新とは正にこのことである。

 そうこうしている内に入国審査が終わった。

《入国審査が完了しました。現在、このI・アイランドでは様々な研究、開発の成果を示した博覧会、I・エキスポがプレオープン中です。招待状をお持ちであればぜひお立ち寄りください。》

 ゲートが開くと出久は目を輝かせ声を上げる。

 目の前に広がる広大なエキスポ会場には、いくつものおもしろそうなパビリオンが立てられていた。そこは正に最先端科学による未来が広がっていた。一般公開前にも関わらず、多くの人々が笑顔で楽しんでいた。

「プレオープンなのにこんなに人が多いんだな。」

「実際に見ると、本当にすごいですね!」

 驚く二人をよそに伊達はあることを思っていた。

(そういやここって科学研究の一環で医学もやっているんだよな?だったら出久ちゃんの病気の研究も・・・・・・)

 伊達は顎に手を当て考えているとオールマイトに気づいた人々が徐々に集まり、二人とも巻き添えを喰らった。

 

「あそこまで足止めされるとは・・・・・・・約束の時間に遅れてしまうところだったよ。」

 ファンからの熱烈なキスマークを体中に付けられ、それを拭うオールマイトの横で出久と伊達はぐったりしていた。

「もう少し別の方法で入ればよかったですね。」

「だな。いきなりこっちが疲れちまった。ま、無理もないか。オールマイトは世界でも有名なんだしファンが一目見れば集まらないわけもないか。」

 伊達の言葉に出久も納得する。

「そう言えば約束ってなんなんですか?」

「ああ。久しぶりに古くからの親友と再会したいと思ったからなんだ。悪いが少し付き合ってもらえるかい?」

「構いませんよ。ね、伊達さん。」

「ああ。一緒に来させてもらったんだからそれくらい構わねぇって。」

 出久も伊達も了解するとオールマイトはあることを言った。

「彼にはワン・フォー・オールのことは話してないからそのつもりで。」

「なんでなんだ?」

「ワン・フォー・オールの秘密を知る者には危険が付きまとうからね。」

「だがそれって逆に信用してないんじゃないのか?」

「なに!?」

 伊達の言葉にオールマイトは反応する。

「大事な親友だからって秘密を教えないってことは信用してないと同じことだ。ましてや危険だからって・・・・・それじゃあ出久ちゃんはどうなるんだ?」

「そ、それは・・・・・」

「まぁ、他人の俺がとやかく言うようなことじゃないが後悔するかもしれねぇぞ。早めに決断しとけ。」

「・・・・・・・・・わかったよ。」

 厳しい言葉であるが伊達の言ったことがこの時ほど自分の弱さに気づかされるとは、この時オールマイトは知る由もなかった。

 そんな時であった。

 赤いホッピングに乗りながら一人の眼鏡をかけた女性が近づいてきた。

「マイトおじさま!」

「Oh!メリッサ!」

 あっという間にやって来たメリッサは嬉しそうにオールマイトの胸に飛び込む。

「お久しぶりです、おじさま。来てくださって嬉しいです。」

「こちらこそ招待ありがとう。しかし見違えたな、もうすっかり大人の女性だ。」

「17歳になりました、昔と違って重いでしょう?」

「なんのなんの!」

 そう言うとオールマイトはメリッサを持ち上げる。

「マイトおじさまは相変わらずお元気そうでよかった。」

(この人がオールマイトの古くからの友人・・・・・・・・・・・じゃないよね。おじさまって言ってる時点で親友の言い草じゃないから、娘さんかな?)

 出久はメリッサがオールマイトの親友でないことを確信した。

「それでデイヴは?」

「フフ・・・・研究所にいるわ。長年やって来た研究が一段落したらしくって、それでお祝いとサプライズを兼ねてマイトおじさまをこの島に招待したってわけ。」

 悪戯っぽく舌を出してほほ笑むメリッサ。オールマイトはその共犯になることを了承する笑みを浮かべる。

「そう言うことか。ちなみに今回デイヴはどんな研究を?」

「それが、守秘義務があるからって私にも教えてくれないの。」

「科学者も大変だな・・・・・」

 そんな話をしているとオールマイトは放っておいた二人のことをメリッサに紹介する。

「ああ、すまない二人とも。彼女は私の親友の娘の・・・・・・」

「メリッサ・シールドです。メリッサって呼んでください。」

 メリッサは人懐っこい笑みをしながら手を差しだす。

「ああ、こちらそどうも。」

「よろしくね、メリッサちゃん。」

 二人はメリッサと握手をする。

「ところでおじさま、この人たちは?」

「ああ、私が勤めている雄英高校に通っている緑谷少年と保険医の伊達君だ。」

「緑谷出久です。」

「伊達明だ。」

「雄英高校・・・・・じゃあマイトおじさまの!」

「ええ。と言っても僕は来学期から編入ですけど。」

「俺も来学期から正式にな。」

 互いに自己紹介を終えるとメリッサは二人の“個性”について聞く。

「お二人の“個性”は?」

「僕はその・・・・・・メダル、かな?」

「俺は無個性だ。」

「え、無個性・・・・・・」

 伊達の言葉にメリッサは驚く。

「おお。無個性だろうが医療には関係ないからな。個性で優劣付けられるもんじゃないしな。豊富な知識に経験に経験を積み重ね手術を行っていく。医者の基本だ。」

「おー!」

 メリッサは目を光らせる。

「ま、俺はいざと言う時の武器もあるしな。それはまた別の時にして、サプライズに行くんだろ?」

「そうでした!ではマイトおじさま、出久君、伊達さん。案内します。」

 メリッサがホッピングについているボタンを押すと光り、ひも状になるとメリッサが引っ張り腕に巻き付ける。

「おー!形状記憶っていう奴か。最先端科学を今正に目の前で見た。それだと救助用の担架とか非常用テントの柱とかに使えそうだな。」

「そうですね。それに日常だと傘にも使えそう。メリッサさんの腕に巻きつけられるってことは軽いでしょうし。」

「君たち本当にそう言う分析得意だね!」

 オールマイトはもっとも大勢が求めることを口にする。メリッサはそのことはすぐにメモしていた。

「なるほど、そういう使い方とかも・・・・・・考えてなかったわ。新しい研究に使えるわ!」

 



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43 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~ ③

ここでならと思って本編にはないものを書き足しました。


 タワーの中にある広くがらんとした研究施設の中で一人の男が若い頃のオールマイトが写っている写真を保存した携帯の画面を眺めていた。

「博士、デイヴィット博士。」

 助手のサムに呼ばれ我に返るデイヴィッド・シールド。

「こちらの片付けも終わりました。」

「そうか。ご苦労様、サム。」

 いつものような笑顔でそう言うと隣の施設に入る。そこには机などは一応あったが研究資料は片付けられていた。

「たまにはお嬢さんとランチに行ってはどうですか?」

「今日も学校に行ってるよ。」

「I・エキスポ中は休校では?」

「自主的に研究しているんだよ。」

 サムにそう答えるデイヴィッド。その時入り口からメリッサの声が聞こえて来た。

「だってパパの娘ですもの。」

「メリッサ。」

 肩をすくめて笑いながら近づいてくるメリッサにサムは挨拶をする。

「こんにちは、メリッサさん。」

「こんにちは、サムさん。いつも研究に明け暮れるパパの面倒を見てくれてありがとう。」

「まいったまいった。それよりどうしてここに?」

 デイヴィッドは不思議に思った。するとメリッサは悪戯らな笑みを浮かべる。

「私ね、パパの研究が一段落したお祝いにある人に招待状を送ったの。」

「ある人?」

 メリッサが招待状を送った相手にデイヴィッドは誰か予想できなかった。

「パパの大好きな人。」

 そう言ってメリッサは振り返り扉の陰に隠れている人物に入るように促す。

「私がぁぁぁ、再会の感動に震えながら来た!!」

 突然現れポーズを決めるオールマイトに二人は驚きのあまり固まってしまった。

「トシ・・・・・オールマイト・・・・・・!?」

「ほ、本物!?」

「HAHAHA!わざわざ会いに来てやったぞデイヴ!」

 唖然とするデイヴィッドを抱き上げるオールマイト。その後ろからメリッサがワクワクと顔を出す。

「どう、驚いた?」

「あ、ああ・・・・驚いたとも・・・・」

 デイヴィッド笑みを浮かべ息を吐いた。

「お互い、メリッサに感謝だな。しかし何年ぶりだ?」

「やめてくれ、お互い考えたくないだろ。年齢のことは。」

「HAHAHA、同感だ!」

 互いに笑い合うと静かな笑みを浮かべ見つめ合った。

「・・・・・会えて嬉しいよ、デイヴ。」

「私もだよ、オールマイト。」

 互いに拳を合わせる。そしてオールマイトは入り口にいる出久と伊達の方を振り向いた。

「緑谷少年、伊達君。彼の名はー――――」

「知ってます!デイヴィッド・シールド博士ですよね!ノーベル個性を受賞した“個性”研究のトップランナー!オールマイトのアメリカ時代からのコスチュームの天才発明家!まさか会えるなんて!」

 世界に知られている自分の経歴を話す出久に目を丸くするデイヴィッド。

「どうやら自己紹介の必要はないようだね。」

「す、すいません。こうして会えることなんてないと思ってたのでつい興奮してしまって。」

「かまわないよ。むしろそこまで私のことを知ってくれているなんてありがたいものだよ。」

 そんな二人を微笑ましく見ていたオールマイトだが眉間にしわを寄せ、咳をする。

「コホ・・・コホ・・・」

「「「!!」」」

 その咳に気づいたのは出久と伊達、そしてデイヴィッドであった。そんな状況を察し、一目散に行動に移ったのは伊達であった。

「さ、久々の親友同士の再開なんだ。邪魔しちゃ悪いから俺たちはせっかくのエキスポ周りに行こうぜ。メリッサちゃん、案内お願いできるかい?」

「はい、お任せください。さ、行きましょう。」

「はい。じゃあオールマイト、また後で。」

「ああ。伊達君、緑谷少年。楽しんできたまえ。」

 一同を見送るとオールマイトはトゥルーフォームへと戻った。

「おい、大丈夫か、トシ?」

「助かったよ、デイヴ。マッスルフォームを維持する時間が減っていたからね・・・・・」

「メールで症状が知ってはいたがそこまで悪化しているとは・・・・」

 

 エキスポ会場へ向かう途中で伊達は足を止めた。

「そうだった。ばーさんからある事頼まれてたんだ。」

「そうだったんですか?」

「あの、“バーサン”って誰ですか?」

「ああ、リカバリーガールだよ。」

 伊達がそう説明するとメリッサは驚いた。

「リカバリーガール!あの治癒の”個性“を持っている!?」

「ああ。つってもばーさんも医師免許持っているがな。」

 治癒の個性を持っている個性の人間は大抵医師免許を持っている。それはなぜか?

 話はまだ医療が確立されていなかったころの時代まで遡ろう。

 医療が確立されていなかったころの遺骨は皆変形していた。それはなぜか?今でこそ骨折したときは添え木をするようにと一般的に知られている。しかし当時は折れたとしてもそのままの状態にしておくことがあった。

 ではそれをすればどうなるのか?骨は正常な状態であろうとなかろうと治癒能力を働かせる。骨再形成が行われると曲がった状態でもくっ付く。しかし肉体は変形する。

 わかりやすく言えば折れた割りばしにボール状にした粘土を適当にぶっ刺したような状態である。今はそれの治療法が確立しているが当時は無い。

 治す個性を持っていたとしてもちゃんとした知識と技術が無ければ助けるどころか苦しめてしまうのだ。

「ま、どんな武器も使いようによっては人を殺すことも助けることもするってわけよ。とことでメリッサちゃん、医療系の会場はどこ?」

 伊達がパンフレットを手に尋ねるとメリッサは「ここです。」と目的の会場場所を指をさす。

「わかった。んじゃ俺は一人でここに行くからメリッサちゃん、出久ちゃんの事頼んだよ。あ、後これ。」

 行こうとして何かを思い出した伊達はポケットから薬が入った包みを一つメリッサに手渡す。

「これは?」

「今ちょっと話せないから待ってくれる?もしも出久ちゃんに何かあったらこれ飲ませて。」

 メリッサは深く追求せず、「わかりました。」と答えた。

 

「さーて、すみません。ここの責任者の方はいますか?」

 医療関係の会場に着いた伊達は職員に話しかける。

「私ですが、失礼ですが貴方は?」

「俺はこの人の紹介でここに来ると言われた伊達です。」

 伊達はそう言うとリカバリーガールから渡された招待状を見せる。

「拝見します・・・・・・・・・確かにあの人からのですね。こちらへ。」

 伊達は職員用の部屋に案内される。

「で、今日はどのような用件で?あの人からはある事について知りたいとしか言われていません。」

「この病気はご存知ですか?」

 伊達はメモ用紙にある病気を書く。

「これは・・・・・・・ええ、知っています。しかしなぜ?」

「・・・・・・・・・雄英高校にその症状を持っている生徒がいます。」

「まさか!」

 その人は驚いた。

「特効薬や治療法の方はどうなのですか?」

「・・・・・定期的にサンプルが送られてきて研究をしてはいますが依然として・・・・・・・それに新薬開発も出来ておらず今の薬が一番有効です。」

「ですが彼は長期間に渡りそれを服用しています。もうそろそろ薬にも限界が・・・・・・」

 伊達が言っているのは薬への耐性であった。薬は長期間服用すると体がそれに適応してしまうため同じくするは慣れが出てしまい薬としての効力を失うのだ。

「こちらとしても新薬の開発や治療法の確立を試みています。しかしどれも効果が無いのです。お察しください。」

 その人は頭を下げる。そんな光景に伊達は頭を抱えた。

「あー、畜生。どうして現実は思うように動いてくれねーんだ。」

 



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44 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~ ④

最近思うんですけど新人を潰す会社って多いって思うんです。
入って間もない新人をこき使って、心身ともに壊す。それが今の社会だって。
その上税金が上がる。
政治家たちが明確に分かる金の明細を持っているなら文句は言いません。
外国では税金が多い代わりに医療費がただだったりします。
しかし日本の場合は国民を守る法律が逆に苦しめているケースが多いです。
正直辛いです、毎日。定時で帰れるのは二か月に5~6程度。それ以外は毎日残業。
休日出勤当たり前。
もうこんな時代が嫌ですね。



「すごいな~。こうして見るとここが人工の島だなんて思えないや。」

メリッサと共にエキスポ会場に来た出久は、様々なパビリオンを見上げて歩きながらI・アイランドの広さを実感した。

(そういやあの時は部分的にだけど時代を入れ替えてたよな。)

 出久はふと向こうの世界で起きた事件の一つを思い出した。

 蘇った錬金術師によるあの日の出来事は時間を超えるということを成し遂げてしまったのだ。

「大都市にある施設は一通りそろっているわ。出来ないのは旅行くらいね。」

「ああ、狙われる危険性があるからですね。」

 メリッサが出久の言葉に頷く。

「ここの情報はほんの一欠けらでも持っているだけで誘拐される危険性があるもの。」

「確かに。」

 メリッサの言葉に出久は納得する。

 敵でもテロリストでも最新技術の一欠片は欲しい。

 そして情報はダイヤモンドよりも価値がある。たった一個のUSBでも国際的問題になることだってあるのだ。

「そう言えば出久君の”個性”ってなんだっけ?」

「メダルです。このドライバーとセットになってて、三枚組み合わせることによって変身できるんです。」

「変身?変わってるね。」

 メリッサは首を傾げてそう言った。

 普通個性と言えば自身の体から何らかの形で発現するものが多い。

 口他のような異形方や爆豪のような発動型、心操のような能力型。個性は様々である。

 ましてや出久はオーメダルによる変身を”個性”と言うことで通している。かなり無茶ではあるが仕方のないことだ。

「僕の場合、このメダルが力を持っているんだけど直接使おうとしたら人体に影響があるからこうして安全装置を使っているんだ。」

 出久の説明にメリッサは納得する。

 グリードは五感が無い。

 声も満足に聞こえず、味もわからず、感覚もマヒ、目に映るのは灰色の光景、匂いもわからない。人間がグリードになるということはそう言うことなのである。

「そう言えば結構ヒーローが来ていますね。」

「昼でもサイン会やサポートアイテムの実演、色々あるからね。夜には関係者を集めたパーティーも・・・・・って、出久君も伊達さんも出席するんだよね。マイトおじさまの同伴者なんだから。」

 その言葉を聞いて鴻上会長から送られたスーツを思い出す。

(毎度思うけどどうやって情報手に入れているんだろう・・・・・・・・・里中さん。)

 少なくとも仕事以上のスキルと、働きに見合った報酬を貰っているであろう秘書を出久は思い出した。

「あっ、出久君!あそこのパビリオンなんかもおすすめだよ!」

 メリッサが指さすパビリオンに入ると中には様々なサポートアイテムが展示されていた。

 メリッサは出久に自慢するように展示されているサポートアイテムを紹介する。

 そしてそれはすべてデイヴィッド博士の発明が元であることを出久に言うメリッサの顔はとてもうれしく、そして誇らしげであった。

「そう言えば出久君ってどんなヒーローになりたいの?やっぱりマイトおじさまのようなヒーロー?」

 メリッサの問いに出久は答えた。

「僕は・・・・・・・この手が届く距離を伸ばして、助けを求める人たちの手を握られるようなヒーローになりたいです。全てを救うことはできないけれど、できれば助けたい。それが僕の目指すヒーローです。」

 その言葉に重みがある事をメリッサは感じ取った。

 たいていのヒーローはオールマイトのようなヒーローになりたいと公言するが、実際は自分が活躍するためにしか活動しない。

 逆にオールマイトは自分が活躍するためではなく誰かのために動いている。しかしそれでも法に縛られてしまっている。

 それが本当にヒーローと言えるのだろうか?

 自分を犠牲にして他人を救い、かつ自分も生きて帰ろうとする。

 そんなヒーローがいなくなってしまっているのが今の時代である。

「楽しそうやね、出久君。」

「お茶子ちゃん!なんでここに!」

 突然現れた麗日に出久は驚く。

「楽しそうやね。」

 麗日は変わらない笑顔で言ってはいるがどこか怖いものを感じた出久。

(なんで二回も言ったのかな?)

「本当に楽しそうですわね。」

「百ちゃん!」

 なぜか一緒に八百万もいた。

「緑谷、聞いちゃった。」

 耳郎がイヤホンジャックを指で回しながら言う。

(う~む、耳郎さんのイヤホンジャック、上手くアイテムを使えば第三者に話の内容を伝えられそうだ。)

 驚きながらも冷静に分析をする出久は流石である。

「お友達?」

「え?ええ・・・・・来学期から一緒になる人たちで。でも確かに・・・・・・楽しいですね。」

 その言葉に二人はピクリと反応する。

「小さい頃から体が弱くって、お母さんにも外で遊んじゃダメだって言われて、それで外に出る機会も少なくて、だからなのかな?こうしてオールマイトにI・アイランドに招待されてこうしてあったばかりの人と意気投合できるのが。」

 出久が血を吐くところを目の当たりにしている麗日と八百万は出久を抱きしめる。

「あわわわわ!ふ、ふふふふふ二人とも!!あた!あた!当たってます!何やら未知のものが当たってます!」

 ダイレクトに伝わってくる四つの感触に出久は顔を真っ赤にして慌てふためく。

「二人ともストップ!それじゃ緑谷が別の意味で死んじゃう!」

 耳郎がその状況を見て止めに入る。

 そんな中メリッサは思った。

(小さい頃から運動も禁止されていた?出久君て、何か病気に掛っているのかな?)

 そんな疑問がメリッサの頭をよぎる中、I・アイランドではリーゼントの男が迷子になった子の母親を探すために肩車をして動いていた。

 



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45 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~⑤

 ちょっとしたハプニングの後、メリッサと麗日たちは仲良くなった。

(よかった、打ち解けてる。)

 メリッサたちと打ち解けている麗日たちを見て出久は微笑んでいた。

「お待たせしました。」

「その声・・・・・・上鳴君!」

 ウェイターの服を着ている上鳴に出久は驚く。

「オイラもいるぜ。」

「峰田君も!・・・・・・・・・二人とも、恰好だけは似合うね。」

「「それどういう意味だ!!」」

 出久の言葉に二人がツッコミを入れる。

「アンタらが普段からバカしてるからでしょ。てか、なんでここに?」

 耳郎が二人に痛烈なことを一言いい、疑問を投げかける。

「エキスポの間だけ臨時バイトの募集があったから応募したんだよ。」

「休み時間にエキスポ見学できるし、給料もらえるし、来場した可愛い女の子とも素敵な出会いがあるかもしれないしな!」

 欲望を包み隠さない峰田。そんな峰田は出久に疑問を持つ。

「てか緑谷はなんでここに?」

「オールマイトに呼ばれたんだ。」

「オールマイトに!?・・・・・・・・て、お前なら納得できるな。」

「だな。」

 二人は頷きながら納得する。

「なにをやっているんだ君たちは!バイトを引き受けた以上、労働に励みたまえ!」

 聞き覚えのある声でやって来たのは飯田であった。二人は悲鳴を上げながら退散する。

「飯田君!」

「やあ、緑谷君!君も来てたんだね!」

「うん。でも飯田君は・・・・・・・・・あ、ヒーロー一家だったね。」

「ああ。家族は予定があってこれなかったから僕が代表してね。」

 外でも平常運航の飯田。そんな飯田の頭に後ろから来た伊達が頭に手を置く。

「まじめなのはいいが少しは気を緩ませた方がいいぜ。」

「む!これは伊達先生、こんにちは。しかしヒーローたるもの人を助けることに専念せねばーーーーーー」

「それじゃぁダメだな。」

「どうしてですか!」

 伊達の言葉に飯田は喰いつく。

「お前は奴隷じゃないんだ。まぁ確かに、働くってことは社会の奴隷になることだ。しかしな、いっつも仕事ばかりに縛られたがちがちの生活をしてたんじゃ人間どっかで壊れちまう。それにこれは当たり前の中の当たり前なんだが・・・・・・・・ヒーローはヒーローである前に人間だ。」

 その言葉に飯田は衝撃を受ける。

「まじめなのは飯田君の欠点でもある。まじめすぎる生き方は時に自分を殺しちまうからな。スイッチチェンジはしておけ。」

 伊達は飯田の頭をポンポンと軽くたたく。

 飯田は全てにおいてまじめに対応しようとする。しかしそれは決して悪いわけではないが欠点でもある。

 困っている人がいればまじめに助けようとする、犯罪している人間がいれば捕まえようとする、理想像に縛られて自分を見失ってしまう。

 それが決して悪いわけではないが、この社会においてそれは奴隷に等しいのだ。

 確かに社会に出れば、生きるためにお金を稼がなければならない。そして国に税金を納めなければならない。正に社会の奴隷である。

 しかし現実、まじめに働いている人間にそれ相応の報酬が支払われていない。

 ハードな仕事なのに給料は安く、雇用すると約束していたのにもかかわらず当日休暇などあればその約束は無し、有給は理由を聞かなくても取れるというのに土曜日曜だからとか理由がどうだとかと言う理由で取れない。

 その上、質が悪いのは大した仕事をしていない人ほど高い給料をもらっているということだ。それが今の現実だ。

「ありがとうございます、伊達先生。」

 飯田は自分に自分の考えを教えてくれたことに感謝し、頭を下げる。

「んじゃ、どっか行こうじゃねぇか。」

 伊達がそう言った直後であった

 激しい爆発音と爆煙があるパビリオンで起きた。

 

 “個性”を使い仮想敵を倒していく『ヴィラン・アタック』。そこで爆豪が個性を使い空中移動、そして爆破する。

「死ねっ!」

「あはは・・・・・・・相変わらずだな、かっちゃんは。」

 敵思考な発言に苦笑いする出久。その後爆豪に気づかれ急遽出久も参加することになった。

「さて、飛び入り参加してくれたチャレンジャー!いったいどんなタイムを叩きだしてくれるのでしょうか!」

 MCが盛り上げる中、出久はオーズドラバーをセット。三枚のオーメダルを手にし、真ん中のメダルを指で弾く。弾いたメダルが宙を舞う中、両サイドのメダルをセットし、目の前に降りて来たメダルをキャッチすると真ん中にセット。そしてオースキャナーを手に取りスキャンする。

「変身!」

【タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タ・ト・バ!タ・ト・バ!】

 仮面ライダーオーズへと変身した出久の姿に会場に来ていた人たちは驚く。

「すごい個性ですね!それではヴィラン・アタック、スタート!」

 アイズと同時にバッタレッグを使い一気に跳躍、トラクローを展開し仮想敵を一体破壊。爆風を利用しバッタレッグで続く二体目を破壊し、上に跳ぶ。

(直線上に並んでいるなら使える!)

 メダルジャリバーに三枚のセルメダルを投入しレバーを動かすとメダルジャリバーに三枚セルメダルが装填される。オーズはオースキャナーを手に取りスキャンする。

【トリプル!スキャニングチャージ!】

「セイヤ――――――――――――!」

 一直線に並んだ仮想敵を空間ごと斬り、そして仮想敵のみ破壊される。

「おーーーーーーーっと!なんと驚異の10秒ジャスト!変身したかと思えばまさかの展開!さぁ、これを超える挑戦者は現れるのか!」

 会場が歓声に包まれる中出久はみんなの元へと戻る。

「すごいよ出久君!」

「うむ、流石だな!」

「すごかったですわ!」

 みんなが出久を誉める中、爆豪が突っかかってくる。

「おいデクっ!今回はたまたまうまくいったが調子に乗んじゃねぇぞ!」

「落ち着けって爆豪。でも実際緑谷の実力高いのはみんな知ってんだしよ。」

「うっせ!黙ってろクソ髪!」

 切島が爆豪を宥めるのはもはや定番の光景になっていた。

 そんな中出久は気づかれないように胸を押さえていたが、メリッサはそのことに気づいていた。

 

 その頃パビリオンのカフェでハーフボイルドの男がコーヒーを飲み、その相棒がI・アイランドの情報を分厚い無地の本を手に調べていた。

 



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46 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~⑥

〈本日のエキスポは18時で閉園になります。ご来場ありがとうございました。〉

 日隠夕日色に染まった時間、バイトをしていた上鳴と峰田は地面にへたり込んでいた。

 コンビニバイトと違ってウェイターと言う仕事は肉体労働が多い。

 注文を受け、完成した料理を運び、客が使い終わった食器を片付け、そして清掃をする。

 注文を間違えることはしてはならない。

 特定の商品だけを売りにするのならそんなに苦労はしないだろうが複数の商品がある場合はウェイターの負担は多い

ちなみに作者は711でバイトしたことありますが色々覚えないといけないことや分単位のスケジュールが織り込まれているので大変でした。

ちなみにこれ分かります?“2カートンを1カートン”わかった人は適当な活動報告にお返しください。

「二人とも、お疲れ様。」

 二人の下に来たのは伊達と合流した出久たちであった。爆豪は一緒にいる気は無いので切島と共にホテルに戻った。

「意外と大変だったろ、飲食店の仕事。」

 伊達と出久が二人に飲み物を差し出す。二人はそれを受け取り飲む。

「そんな二人にプレゼントだ。ほれ。」

 伊達はそう言うと二人にカードを差し出す。

「なにこれ?」

 二人は受け取り、峰田が尋ねる。

「レセプションパーティーへの招待状ですわ。」

「パーティー・・・・」

「おれらが・・・・」

 八百万の説明に二人は驚く。

「メリッサさんが用意してくれたの。」

「せめて今日くらいはって。」

「余っていたから・・・・・良かったら使って?」

 耳郎と麗日の言葉の後でメリッサが言うと二人は嬉しさのあまり目じりに涙をためる。

「上鳴・・・・」

「峰田・・・・」

「「俺たちの労働は報われたぁ!?」」

 上鳴たちの参加も決まったことで委員長である飯田が仕切る。

「パーティーには多数参加すると聞いている。雄英の名に恥じぬよう、正装に着替えて団体行動で行動しよう。18:30にセントラルビルの7番ロビーで待ち合わせだ!」

 その言葉を聞いてメリッサは腕時計を見る。

「轟君と爆豪君には俺からメールしておく。では各自、解散。」

 飯田の言葉を皮切りに出久も動こうとするがメリッサに腕を掴まれる。

「出久君、ちょっと来てくれない?」

「え?まぁいいですけど・・・・・・」

 

 出久はメリッサに連れられメリッサの部屋に来ていた。

「メリッサさん優秀なんですね。」

「実はね、私そんなに成績良くなかったの。だから一生懸命勉強したの。もともとプロヒーローを目指してたの。」

「ヒーローにですか?」

「ううん、でもすぐに諦めたの。私無個性だから。」

「・・・・・・・」

 出久はそれを聞くと何も言えなくなった。自分もメダルを取ってしまえばただの一人の人間なのだから。

「5歳になって”個性”が発現しなかったらお医者さんに調べてもらったの。そしたら発現しないタイプって診断されたの。」

(僕と同じだ。)

 当時の写真を見ながら言うメリッサに出久は思った。

「でも私にはすぐ近くに目標があったから立ち直れたわ。」

「お父さんのことですか?」

 メリッサはその言葉に頷く。

「パパはヒーローになれるような“個性”を持ち合わせていなかったけど、科学の力でマイトおじさまを、ヒーローたちをサポートしているの。間接的だけど平和のために戦っている。」

「ヒーローを助ける存在・・・・・ですね。」

「そう。それが私の目指す目標。」

 そんな彼女の姿に出久はまぶしく輝いているように思えた。

「・・・・・・メリッサさん、どうして僕にそのことを?」

「わかんない。けど君にそう伝えたいって思ったから。それとこれ。」

 メリッサは伊達からもらった薬を見せる。

「これが何なのか、最初は分からなかった。この処方薬は正直症例が少ない上に治療法が確立していない。だから最初に気づけなかったけどあの時胸を押さえている君の様子を見て気づいたの。出久君、もしかしてこの病気を患っているんじゃないの?」

 メリッサは口にするのが恐ろしく病名をメモに書く。

「・・・・・・・・・よく知ってましたね。」

「この薬品に関する研究がここ10年の間に急激に加速していたから知っていたの。でもそうだとしたら出久君は!」

 メリッサがそこから先を言おうとすると出久は彼女の唇に指を置いた。

「心配してくれるのはありがたいのですが、僕はそれでも止まりません。この手が届く限り、一人でも多く救いたいから。」

 出久の脳裏にはあの光景が焼き付いていた。

 そんな出久にメリッサは何も言えなくなる。その時出久のスマホに電話が入る。

 電話の主は飯田であった。

「どうしたの、飯田君?」

『それはこちらのセリフだ!もう集合時間はとっくに過ぎているんだぞ!』

 そう言われて出久は時計を見ると、予定の時間を過ぎていた。

 出久は急いで部屋に戻って行った。

 

 パーティーが行われるセントラルビルに一人の青年が入っていた。

「先輩に言われたとおりにして入りました。この後はどうしますか?」

『ここは奴らが行動するまで待とう。僕らのことは奴らに気づかれてはならないからね。』

「わかりました。」

 



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47 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~⑦

ようやく入りたいところに入れましたよ。
ここから先は思いっきり暴れるつもりですよ。


 セントラルビル7ロビーに出久が上がるとそこにはウェイター姿の上鳴と峰田、正装の飯田と轟、伊達の姿があった。

「ごめん、待たせて・・・・・・て、女子はまだなんだね。」

「ああ。団体行動を何だと思っているんだ!」

「まぁまぁ飯田ちゃん。女ってのは時間がかかるもんだよ。綺麗でありたいがゆえに時間がかかるのが女だ。大人になったらこういうこと経験するから今のうちに慣れときなって。」

 怒る飯田を伊達が宥める。年長者で経験豊富であるが故のことだ。

「ごめん、おくれても~たぁ。」

「申し訳ありません。耳郎さんが・・・・」

「ウチはこう言うの似合わんって・・・・・」

 大胆でかわいらしいドレスを着たお茶子の後から、大人っぽいエレガントなドレスの八百万の後ろに隠れているシックなドレスを着た耳郎が来た。

「馬子にも衣裳だな。」

「女の殺し屋みてぇ。」

 上鳴と峰田の言葉に耳郎はイヤホンジャックをする。

「二人とも、孫じゃなくて馬の子と書いて馬子(まご)だから。」

 よく勘違いされるがどんな人間も身なりを整えれば立派に見えるって意味である。

 ちなみに馬子とは馬を引く人の事である。

 そんな中、麗日と八百万が近づいて尋ねる。

「ね、ねぇ出久君。似合ってるかな?」

「わたくしも頑張りましたが・・・・・・・どうでしょうか?」

「うん!お茶子ちゃんは可愛らしくて百ちゃんは大人っぽくて綺麗だよ。」

 真正面から素直に言われ、二人は顔から湯気を出す。

「緑谷ってああいうところあるよな。」

「それが出久ちゃんなのよ。」

 呆れる耳郎に伊達が頷きながら言う。そんなことを言っているとメリッサが来た。

「出久君たちまだここにいたの?もうパーティー始まっているよ!」

 メガネを外し、大胆なドレスで来たメリッサ。

 その時、突如ロビーのシャッターが一斉に閉まった。

「な、なに!」

「伊達さん、これって・・・・」

「そうかもね、出久ちゃん。」

 焦るみんなに対し出久と伊達は冷静であった。

「エレベーターは動かないな。」

「ドアも開きませんね。テロ対策としては納得できるけど今回は・・・・・・」

 二人は冷静に分析する。

「ふ、二人ともどうしたんだ?」

「この状況を整理しよう。まず僕たちはここに取り残された。そして外部と通信しようにも妨害されている。これを考慮して乗っ取られたと仮定した方がいい。」

「乗っ取られた!」

「待てよ!ここにはオールマイトが来てんだぞ!」

 驚く上鳴と峰田。

「メリッサちゃん、ここにもし敵が侵入してきたときの防犯装置はある?」

「え、ええ・・・・・でもそれをするにはここのメインコンピューターから直接操作しないといけないわ。」

「と言うことは・・・・・・乗っ取られたな。」

『っ!?』

 一同その言葉に衝撃を受ける。

「でもどういう状況なのか僕たちは全く理解できていない。エレベーターも使えないとなると・・・・・・・・百ちゃん、女子全員分の運動靴を創造してくれる?」

「わかりました。ではみなさん、足のサイズを教えてください。」

 八百万が女子一同に足のサイズを聞くなか、飯田が尋ねる。

「どうするつもりだ、緑谷君?」

「行動しないとわからないから会場までは非常階段で行くしかない。幸い、ここは多くの職員を逃がすために通路が広いだろうけどヒールとかじゃ靴擦れを起こすし足に疲労が溜まる。運動靴にしてもらった方がいいってわけ。」

「ここにいても何が起こるかわかんねぇしな。団体で動いて安全を確保。この場で一番危険なのはメリッサちゃんだからな。」

 出久と伊達は冷静に状況を分析した。

 この場で戦闘訓練を受けていないのはメリッサであり、人質の価値としてあるのもメリッサである。

 デイヴィッド博士の娘である彼女は交渉の材料としては最高のカモである。

「準備できましたわ。」

 運動靴と靴下を履いた女子たちは行動可能である。

「じゃあ行こう。下手に足音を立てずに動こう。いいね?」

 その言葉に一同頷いた。

 

 出久たちはカメラのない非常階段で待機し、レセプション会場が見える階には出久は念のため持っていたバッタカンドロイドとバッタカンドロイドを起動し、伊達も持っていたバッタカンドロイドと連動して中の様子を探った。

 中はヒーローが拘束され、敵たちが武装して占領していた。

「マズい状況だな。オールマイトならすぐ動くのに動かないってことは人質はここの島全体にいる人間だな。メリッサちゃん、ここから出ることはできるかい?」

「ここの警備は敵を収容するタルタロスと同じレベル。脱出はできないわ。」

「だとよ。どうする、出久ちゃん?」

「・・・・・・・・ん~、飯田君。君ならどうする?」

 出久はふと飯田に問いかける。

「俺ならまず外部と通信できる手段を探す。」

「OK。じゃぁその手段が無かったらどうする?」

「脱出を試みる。」

「それが無かったら?」

「それは・・・・・」

 飯田はそこから先の答えが出なかった。

「メリッサさん、ここの制御室は?」

「最上階の階にいるわ。」

「なるほど。監視カメラの映像もそこに集中してる?」

「ええ・・・・・・・でもどうして?」

 出久は自分の考えを話す。

「ここにいる見張りは手練れじゃない。肩に担いでいる時点で隙だらけだ。それにここにいる見張りの数が多すぎる。二~三人がいい数だ。それなのに多いってことはここにいる人たちは捨て駒と仮定した方がいい。となると本命は上にいる敵たち。問題は人数だけど・・・・・・多分少数精鋭だ。そっちの方が作戦が成功しやすいし、連絡が取りやすい。

 機械関係はおそらく二人くらいかな?護衛が・・・・・最低でも二人いることを仮定しよう。リーダーを合わせて最低五人だ。ここを占領するのにこれだけの人数と言うことは多分内通者がいると思っておいた方がいい。そしてさっきの映像で確認していなかったのはデイヴィッド博士とサムさん。この二人がいないということはこの二人でなければ手に入れられない代物か、もしくは二人が目的だとする。」

 その言葉にメリッサが驚いた。

「パパが!どうして!」

「世界的に有名な博士の発明よりも博士の頭脳の方がものを盗むよりも価値がある。ここにいる人を人質にすることで無理やり協力させるってこともできる。

 結論から言おう。僕はここの奪還作戦を提案するよ。」

 その言葉に一同驚く。

「なにを考えているんだ緑谷君!僕たちはまだヒーローではないのだぞ!」

「そうですわ!”個性”を使うことだって・・・・」

「だからって、ここで何もしないわけにもいかないでしょ。それに・・・・ヒーローってのは誰かを助けるのにいちいち許可がいるのかい?俺にはわかんねぇな。」

 伊達はそう言うとネクタイとスーツを脱ぎ捨てる。

「出久ちゃん、俺は賛成だぜ。」

「俺もだ。」

 そう言ったのは轟であった。

「どの道出られねぇ状況なら、出られるようにした方がいい。それに、敵が目標を達成した後にここを爆破しねぇとも限らねぇしな。」

「・・・・・しゃーねー。イッチョ派手にやるか。」

 上鳴も立ち上がる。すると他の面々も立ち上がり決意を決める。

「出久ちゃんはここぞという時まで変身はするなよ。最後の切り札だ。」

 伊達の言葉に出久は頷く。

「んじゃイッチョ行きますか。」

 伊達はそう言うとミルク缶を背負う。

(どこから取り出した!?)

 出久以外の全員が今気にするべきではないと判断し、非常階段を進んだ。

 



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48 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~⑧

ジオウを見てやっぱり思ったことがあります。
あの石像は石造ではなく本当は医師で固められたライダーではないかと。
そしてあそこにいたオウマジオウは主人公ではないと。
別の第三者が彼の名を借りて魔王になり、彼はその濡れ衣を着せられた。
あの書物に書かれていたのは本物であるけれど贋物の歴史ではないかと。


 I・アイランドの奪還をするために出久たちは非常階段を上っていたがその道は険しいものであった。

「これで30階。メリッサさん、最上階は?」

「ハ・・・・・ハ・・・・・200階よ。」

 その言葉を聞いて上鳴はげっそしとした顔になる。

「マジかよ。」

「まだ敵と出くわす可能性を回避できる分いいって考えなよ。それよりそろそろかな?」

『?』

 上った階が60階に差し掛かったところでシャッターが閉められていた。

「シャッターが!」

「やっぱりな。」

「どういうことだよ!」

 先頭を歩いていた峰田が伊達に問う。

「仮にヒーローが解放されたとしてもオールマイトみたいなパワーを持っているヒーローは少ない。でも保険を掛けるとして最低限度の労力で最大限の効果を発揮する方がいいってわけだ」

 伊達がそう言うと峰田がある事に気づいた。

「なあ、それあるんだったらタコもあるんだろ?それ使って上までの通路作ればよかったんじゃねぇのか?」

 それを聞いて一同ナイスアイディアと思うがそれを出久が否定する。

「そうした方がいいかもしれないけど上行けば行くほど風は強くなって足場は悪くなるよ。最悪落ちて死んじゃうかもしれないからね。それに外のモニターで見つかったとしても逃げ場がないからどの道死んでしまうかもしれない。」

 そう言われて一同表情が一気に青くなった。

「んじゃ、こっちから行っちいまおうぜ。」

 そう言って峰田が非常口の扉に手を掛け開けてしまう。

「ダメッ!」

 メリッサが止めようとするが一足遅く開いてしまう。

「こんの馬鹿!」

 耳郎が峰田の頭を殴った。

「っ~~!なにすんだよ!」

「馬鹿!相手は最上階からここのシステム全てを掌握してんだぞ!敵にウチ等の場所をみすみす教えるようなもんじゃんか!」

「まぁまぁ、落ち着いて耳郎ちゃん。どのみち遅かれ早かれこの道を使うって選択肢しかなかったんだ。下手に壊しても気づかれる上に、こっちが消耗しちまう。もういっそ飛び込むしかねぇよ。」

 そう言うと伊達はバースバスターを手に取る。

「伊達先生、それは一体?」

「護身用の武器だ。いくぜ。」

 伊達を先頭に進んでいく一同。

「メリッサちゃん、反対側の非常階段以外に上に行く方法はある?」

「ええ、でもどうしてですか?」

「敵さんがカメラを経由してこっちを見張っているんだったらその裏を突く。っと、早速動いてきた!」

 出久たちの行く手のシャッターが閉まろうとする。

「確かにシャッターってのはかなりの圧力が加わるが同時に異物とか降ろすところが変形するとダメなんだよね!」

 伊達はそう言いバースバスターを放つ。撃ったところは溝。変形した溝にシャッターが引っかかる。

「ここを突っ切るぞ!」

 伊達を先頭に施設に入る。

「ここは・・・・・庭?」

「植物プラントよ。“個性”の影響を受けた・・・・・」

 出久が疑問に思うとメリッサが説明しよとするが耳郎が止める。

「待って!」

 中央に設置されているエレベーターが降りてくる。

「マズい!みんな隠れて!」

 一同木々などに身を隠す。

 エレベーターから出てきたのは会場にいた敵たちと同じ服装をしている二人組であった。

「ガキがこの中にいるらしい。」

「全く、面倒なことしやがって。」

 小さい男に対し大きい男はイライラしていた。

(どうする?変身してもいいがみんなを守れねぇ。何より俺も出久ちゃんもここで足止め喰らうわけにもいかねぇ。最悪俺一人でも特攻して・・・・・)

 伊達がそう考えていると敵たちが声を上げる。

「見つけたぞ、ガキども!」

「あぁ!?今なんつったテメー!」

 予想外の声が聞こえてきたことに一同驚いた。なんと声の主は爆豪であった。その隣には切島がいた。

「お前ら、ここで何をしている?」

「そんなことこっちが知りてーわ!」

「なぁ爆豪、落ち着けって。な?」

 けんか腰の爆豪を切島が宥める。

「あのう、俺たちに道に迷って・・・・・レセプション会場はどこに行けばいいですか・・・・?」

 どれほどの才能をもってすればここまで極点すぎる方向音痴をするのであろうか?

 どこぞのマリモ剣士レベルである。

「見え透いた嘘ついてんじゃねぇぞ!」

 小さい方の男が切島に向け”個性“を使おうとした瞬間であった。

 突如プラント内にロケット付けたバイクが壁を打ち破り、男二人を吹っ飛ばした。

「間一髪ってところだな。よっと!」

 そのバイクに乗っていた男はヘルメットを脱ぐと自慢のリーゼントを手で整える。

「え?なに?何が起こってんだ?」

 突然の出来事にわけがわからない切島と爆豪。そんな中耳郎は驚いていた。

「なんであの人がここに!?」

「おい耳郎、あの人知ってんのかよ?」

 上鳴が耳郎に問いかけるが、耳郎からの返事はなかった。

「てめぇ・・・・・・一体何者だ!」

 大きい男が言葉を投げかける。

「俺か?俺はすべてのヒーローと友達になる男!如月弦太朗だ!」

 胸を二回叩き、拳を突き出す弦太朗。その弦太郎を見て大きい男は変身する。

「てことは俺たちの敵ってことか?じゃあ遠慮はいらねぇな!」

 男たちは戦闘態勢に入る。すると爆豪と切島が隣に並び戦闘態勢に入る。

「なんかわかんないっすけど協力します!」

「すっこんでろテメェら!あいつは俺が一人でぶっ潰す!」

「お、熱いじゃねぇかお前ら!じゃあ俺も行くか!」

 弦太朗はそう言うとフォーゼドライバーを手に取り腰に装着する。

「あれは!」

「まさか!」

 出久と伊達はそれを見て驚いた。この世界には存在しないアイテム、そして自分達しか知らないはずの物を持っていたからだ。

 弦太朗は四つのスイッチを入れると大きく手を振り、右にあるレバーを手にする。

【3!】

【2!】

【1!】

「変身!」

 レバーを動かし右手を天に向けの伸ばすとリング状の物が出現し、弦太朗を照らす。そして晴れるとそこにはロケットを模したボディにオレンジの丸が右腕に、青のバツが右足に、黄色の三角が左足に、黒の四角が左腕に装飾されている戦士へと姿を変えた。

 その姿こそ平成13番目の仮面ライダー、仮面ライダーフォーゼである。

「宇宙、キタ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!」

 その声は成層圏を抜け、宇宙へ飛び出し、太陽系を超え、銀河を超え、遥かかなたにある別宇宙の地球にまで届いた。

「仮面ライダーフォーゼ!タイマンはらせてもらうぜ!」

 



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49 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~⑨

もう少しすればリア充共のイベント、そして大みそかからの元旦。
里帰りする人間は早めに土産買わないといけないという現実に直面します。
正直正月セールの市内とかって面倒なんですよね。特に人だかりが多くて福袋とか買い求めてくる人多いし。
そしてこういう時に限って欲しいのが人のぬくもり。一人暮らしにありがちですけど。


「仮面ライダーフォーゼ?」

「聞いたことが無いヒーローだな。」

「そりゃそうだ。こっちの世界にはいないからな!いくぜ!」

 フォーゼはエアーを吹かしながら飛ぶとスイッチを押す。

【ローケット、オン!】

 フォーゼの右腕に突如大きなオレンジ色のロケットが装備される。

「ライダーロケットパーンチ!」

「ぐあっ!」

 フォーゼは大男を殴り飛ばす。小柄な男がフォーゼに個性を使い攻撃しようとするがフォーゼはロケットを使い上に回避するともう一つスイッチを押す。

【ハンド、オン!】

「よっと!」

 左腕から赤いマジックハンドが出現すると小柄な男を投げ飛ばした。

「なんで弦太朗君が・・・・・」

 出久は驚いていた。

 実は出久は一度あっちの世界ですべてのコアメダルを手にしていた。

 財団Xの野望を阻止するためにフォーゼと協力したのである。

 しかしその時のコアメダルはワームホールによって未来へと戻って行った。

 その時のワームホールが出久が元の世界へと戻る手がかりであったことは鴻上会長と里中しか知らないことである。

「オーズ先輩!ここは俺に任せて先に行ってください!」

 物陰に隠れている出久たちにフォーゼが声を掛ける。

「わ、わかった!」

 出久は戸惑いながらもそれに答えた。

 すると轟が前に出て氷の壁を張る。

「緑谷、ここはあの人と俺たちに任せて先に行け。」

 轟は氷の柱を作り出久たちを上の通路まで運ぶ。

「サンキュ、轟ちゃん!」

 伊達が親指を立て出久たちは先へ進む。

「さて・・・・あの変身したヒーロー、かなりできるな。」

 轟はフォーゼの実力を理解した。初めてであって”個性”もわかっていない相手に対しその時その時に合わせた戦いをしているのだ。

「俺も戦わねぇとな。」

 轟は小柄な男に対し氷を張って足を捕まえる。

「甘い!」

 攻撃が来ることを予見していたのか小柄な男は“個性”を使い地面を削り回避する。

「これでどうだ!」

【レーダー、オン!】

【ランチャー、オン!】

 レーダーで小柄な男を捉え、ランチャーを放つフォーゼ。

「ちぃ!厄介なサポートアイテムだ!」

 小柄な男は“個性”を使いミサイルを一基爆発させる。すると他のミサイルも誘爆するがそれがフォーゼの狙いであった。

「おい、氷使うの!俺の後にもう一回それをしろよ!」

【ウォーター、オン!】

 フォーゼの左足に巨大な蛇口が出現すると高水圧の水が放たれる。

「なっ!みずぶっ!」

 小柄な男は高水圧の水を浴び、”個性”の発動もままならない。

「今だ!」

「そういうことか!」

 轟は放水が止んだのを皮切りに一気に接近し至近距離で凍らせる。

「こいつは一旦おいてアイツの方に行くぞ!」

 フォーゼは大男の方に顔を向ける。

 大男は爆豪と切島が応戦していた。しかし頑丈な体であるため中々攻撃が通らない。

「どんなに硬い奴でも、中身は同じ!だったらこいつだ!」

 フォーゼはスイッチを入れ替えスイッチを入れる。

【エレキスイッチ、オン!】

「ひん曲がったやつも受け入れる!」

 フォーゼの体がエレキスイッチによって変化する。

 体は金色になり、六つの蓄電装置が備え付けられた姿、フォーゼエレキステイッツへと変わった。

「時間がねぇから一気に決めてやるぜ!」

 フォーゼはビリーザロッドのプラグを指し直すと、ベルトのレバーを一回動かす。

【リミットブレイク!】

「お前らそこをどけ!うぉおおおおおお!」

 接近してくるフォーゼの言葉を信じ爆豪と切島は避ける。

「そんなちんけな武器で俺が倒せるとでも思ってるのか?」

「ああ、思うね!ライダー100億ボルトブレイク!」

 すれ違いざまに切りつけた瞬間、大男の体に大量の電気が流れる。

「ぬぉおおおおおおおおおお!」

 あまりの電流に耐えられなかった男は気絶する。すると自然と”個性”も解かれた。

「舐めるなっ!」

 小柄な男が氷の拘束を壊して無理やり“個性”を使い爆豪に仕掛けるが回避される。

「俺の”個性“は汗腺からニトロのようなもんを出すんだ。」

「じゃあこいつだ!」

 フォーゼはスイッチを入れ替えスイッチを入れる。

【ファイヤー、オン!】

 フォーゼの姿がまた変わる。

 全身は赤く炎のエンブレムが入ったエネルギーユニットが装備された姿、フォーゼ、ファイヤステイッツへと姿を変える。

「派手にいっくぜ!」

【ランチャー、オン!】

【ガトリング、オン!】

【リミットブレイク!】

「ライダー爆熱シュート!」

「喰らえ!」

 フォーゼのライダー爆熱シュートと轟の炎が組み合わさり小柄な男を気絶させる。

「よっと!」

 フォーゼはファイヤーステイッツをオフにする。

「アンタ一体・・・・・」

 切島が問おうとするがフォーゼは上を見ていた。

「さーって、ここのエレベーター使えねーからな。どーしたもんか。」

「おい!こっち向けよ!」

「ん?ああ、悪い。マジでヤベー状況だから気に留めてなかった。お前ら二人、今の状況分かってるのか?」

「い、いやそれは・・・・・」

 轟は二人に現状を教える。

「なぁ、お前ら。どっちがいい?手っ取り早くオーズ先輩たちと合流するか、時間かけて合流するか?」

「決まってんだろ、アホか!早く行った方があいつの体の心配もしなくていいだろ!」

「俺も賛成だ。どうであれ合流しねーとマズい。あいつらはここのシステムをすべて掌握しているんだ。手を打たれる前にやるぞ!」

「俺もみんなが頑張ってんのに何もしねぇなんて漢じゃねぇ!」

 三人は賛成する。

「よし分かった。」

 そう言うとフォーゼは大きなスイッチを手に取り差し込むとスイッチを押す。

【ロケット、オン!スーパー!】

 フォーゼの体がオレンジ色になり、両手にはロケットが装備される姿、スーパーロケットステイッツへと姿を変える。

「お前ら、俺に掴まれ!」

『・・・・・・・・』

 どうやって行くのか理解した三人。しかしもう後には引けないと悟りおとなしくしがみついた。

「行くぜ!」

 フォーゼスーパーロケットステイツは壁をぶち破り、出久たちが行くであろう風力発電の場所まで飛ぶ。

 



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50 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~⑩

恐らく今年最後の投稿ですね。
平成ジェネレーションFOR EVERを見に行きました。
平成の仮面ライダーを作ってくださった監督スタッフの皆々様、映画製作に携わってくださって皆々様、ありがとうございます!
そして今後も仮面ライダーを応援していきますので頑張ってください!
そしてこれを読んでいる皆様、良いお年を。


 爆豪たちが時間を稼ぎ、出久たちは上の階を目指していた。

 が、そこである問題が生じた。プラントより上に通じる階段が閉じられていた。しかし救いなことに照明システムに通じるハッチがあった。外から入ればなんとかなるがそれができるのは峰田だけであった。

 峰田は恐怖しながらも外壁をモギモギを使って登り、そして開けた。

 そして100階以降は扉が開きっぱなしであった。

「こらマズいな。こいつを俺が使わねぇとな。メリッサちゃん、この先メインサーバールームは?」

「もう少し先です、伊達さん。135階にありますが大丈夫です。」

「今は129か・・・・・・ここって警備システムに何使ってるの?」

「え?えっと・・・・・・耐電・耐打撃・耐貫通に優れた警備ロボットを採用しているわ。ある一定の威力が無いと壊せないようにしているわ。」

 伊達の質問にメリッサが答える。

「んじゃこっから先は俺が戦うよ。任せときな。」

 そして130階に到達した途端、警備ロボットがウヨウヨしていた。

「こりゃ、いい準備運動になるな。」

 伊達はそう言うとバースドライバーを腰に装着する。セルメダルを手に持つと親指で弾く。宙を舞ったセルメダルを左手でキャッチする。

「変身!」

装填する右のダイヤルを回す。真ん中のカプセルが開き、体中に体中にカプセルが展開され、仮面ライダーバースへと変身する。

『うそ!』

『変身した!』

 出久以外の皆が驚く中、バースは牛乳缶を側に起き、バースバスターを構える。

「おらおら!派手に行くぜ!」

 バースバスターが火を吹き次々と警備ロボを破壊していく。そしてメダルがなくなれば次のメダルを牛乳缶の中から補充し、装填、再び撃つ。

「時間が経つと別のとこから集まって来るな。一気に決めるか。」

 バースバスターのポッドを銃口に装着し、警備ロボに照準を合わせる。

【セルバースト!】

「喰らえ!」

 放たれたセルバーストが警備ロボットを一掃する。

「よし、先に行くぞ!」

『は、はい!』

 伊達の言葉に従って上の階へと目指す一同。

(出久ちゃんはこっから先で必要だ。メリッサちゃんと麗日ちゃん、この二人を選出するべきだな。)

 伊達は冷静に分散する戦力を考えた。

 戦闘経験豊富な出久、システム変更が可能なメリッサ。この二人の選出は絶対である。

 ではなぜ麗日を選んだか?

 その答えは先ほど建がメリッサに聞いたサーバーにあった。

 サーバーでは上鳴の放電は使えない。下手をすれば暴走する恐れがあるからだ。

 飯田の場合は自慢のスピードを活かせない。

 峰田の場合は戦力外。

 八百万は防衛線で必要。

 耳郎はイヤホンジャックによる情報収集が必要なため無理である。

 麗日の場合無重力(ゼログラヴィティ)で管理室までをショートカットできるからである。出久がタジャドルによって飛ぶことも出来るがその場合出久の負担が大きい。出久の負担をなるべく軽減するためにも麗日を選んだのだ。

「麗日ちゃん、出久ちゃんとメリッサちゃんを”個性“で浮かして上の階まで一気に運んで。」

「わ、わかりました!」

「他の皆は足止めだ。いいな?」

『はい!』

 そして135階に到達すると奥の扉から警備ロボが大量に出てくる。

 バースはセルメダルを装填するとダイヤルを回す。

【クレーンアーム!】

【ドリルアーム!】

【キャタピラレッグ!】

 バースのクレーンアーム、ドリルアーム、キャタピラレッグを展開する。

「すっげー!なんでもありかよそのサポートアイテム!」

 上鳴が感心する中バースは指示を出す。

「八百万ちゃんは砲台と弾を作って耳郎ちゃんが攻撃。峰田君はモギモギで捉えて。飯田ちゃんは可能な限りレシプロ使ってかく乱。上鳴ちゃんは八百万ちゃんに金属バットを作ってもらって近づく奴を壊せ!」

『はい!』

 バースの言葉に一同返事をする。

「出久ちゃん、おいしいとこもってって!」

「はい!行こう、お茶子ちゃん、メリッサさん!」

「うん!」

「ええ!」

 三人は上へ通じる通路を進む。

「いくぜ!」

 バースはキャタピラレッグで特攻するとクレーンアームとドリルアームを使い警備ロボットを壊していく。

「喰らえ―――!」

 峰田がモギモギで警備ロボットの足を止めていく。

「レシプロ、バースト!」

 飯田が自身の諸刃の剣であるレシプロバーストを使い警備ロボを破壊する。

「どーりゃ!」

 上鳴が別途を力任せに古い警備ロボに打撃を与える。

「はい!」

「喰らえ!」

 八百万の作った砲台ととりもち弾で警備ロボを捕縛していく。

「でや!うおりゃ!」

 バースは荒々しく力強く警備ロボットを破壊し続けていくが数があまりにも多すぎた。

「キリがねぇ!ぐっ!」

 肩で息をしていた瞬間に警備ロボットがワイヤーでバースを拘束する。

「先生!ぐっ!」

 レシプロの限界時間が来たため動けなくなった飯田を警備ロボットが拘束する。

「オイラの頭皮ももう限界・・・・・」

 “個性”の使い過ぎにより頭から血を出している峰田も拘束されてしまう。

「ぐぁっ!」

 “個性”以外の鍛錬をしていない上鳴は手が痛くなり緩めた所を拘束されてしまう。

「もう・・・・・・創造するだけの力が・・・・・・」

「畜生・・・・・」

 八百万も限界が来てしまい、耳郎と共に拘束されようとしていた。

(私は・・・・・・出久の力になりたい・・・・・・なのに・・・・・)

 俯く八百万に《ある二人》が声を掛ける。

「女に泣き顔は似合わねぇ。笑顔が一番のアクセサリーだ。」

「君たちはよく頑張った。後は僕たちに任せてくれ。」

 その声に八百万は顔を向ける。

 一人はハードボイルドを装った服装、もう一人は緑のコートと独特な服装をしていた。

「翔太郎、ルナトリガーだ。」

「わかった、フィリップ。」

 バードボイルドの男が腰にあるドライバーを装着するともう一人の相棒にも同じものが現れる。そして二人はUSBを手に取りスイッチを押す。

【トリガー!】

【ルナ!】

「「変身!」」

 相棒のUSBメモリがハードボイルドの方に転送されると相棒は倒れる。

【ルナ!】

【トリガー!】

 右が黄色、左が青の仮面ライダー、仮面ライダーW・ルナトリガーに変身する。

 Wはトリガーマグナムを手にすると警備ロボットに向け銃弾を放つ。

「馬鹿!こんなところでそんなものを撃ったら!」

 耳郎が声を上げるが放たれた銃弾は軌道を曲げ、警備ロボのみを破壊する。

「翔太朗、一気に決めよう。」

「わかった。」

 Wはダブルトリガーからトリガーメモリを引き抜くとトリガーマグナムに挿入しトリガーマグナムを変形させる。

【トリガー!マキシマムドライブ!】

「トリガー、フルバースト!」

 トリガーマグナムから放たれるいくつもの銃弾が軌道を曲げ、すべての警備ロボを破壊する。警備ロボが破壊されたことにより拘束されたバースたちは解放される。

「悪いけど僕の体を誰か担いでくれないかな?」

「行くぞ、フィリップ。」

 Wは上の階へと向かう。

「ちょ!待てよ!」

 バースは急いで追いかける。

「上鳴、飯田。頼んだ!」

 耳郎と八百万が先に向かい、二人は意識が無いフィリップを担いで上に向かった。

 



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思い付きネタ 5

新年最初に投稿します。
思い付きネタでごめんなさい。正直これずっと前から思いついていました。
出久がもし他とは少し違う思考でヒーローの活躍を見ていたらって思って作りました。
こういう作品を誰かが作ってもいいんじゃないかって思います。
ではみなさん、最後に新年あけましておめでとうございます。本年もザルバの作る作品をよろしくお願いします。


 小さい頃、僕はオールマイトに憧れていた。

 みんなを救うNo.1ヒーロー。誰もが憧れた。

 でもある日、僕はテレビに出るオールマイトを見て思った。

 

 

なんでオールマイトばかり活躍しているんだろう?

 

 ふとした疑問だった。皆はヒーローだからと言うが、それはおかしいと僕は思った。

 どんなに悪人を捕まえても、次から次へと悪人は出てくる。

 なんでだろうって思った。

 そしたら気づいたんだ。

 

「オールマイトがいれば大丈夫!」

「ヒーローがいれば大丈夫!」

 

 みんな他人任せだ。

 自分たちが生きているっていうのに、何もしない。

 この国で一番偉い人も何もしない。

 だから僕の夢は、王様になることだ。

 

 雄英高校USJ。イレイザーヘッドと13号が引率してレスキュー訓練をする予定であった。

 しかしそこへ突如として現れた敵連合。ぶつかり合うかと思われた時であった。

【ターイムマジーン!】

 突如現れた二台の大きな機械が敵連合の前に着地するとすぐにどこかへと飛び去った。

 飛び去った後には二人の男が立っていた。

 一人は黒い服に赤いラインが入った黒髪の男。

 もう一人は緑の髪にそばかすが特徴の男であった。

「あいつは!」

 爆豪は遠くからではあるがそのシルエットに気づいた。

「おいクソデク!なんでお前がここにいやがる!」

 爆豪は前に出て怒鳴る。

「あ、かっちゃん。」

「知り合いか、ジオウ?」

「うん。性格が最悪で才能マン。思考は敵寄り。力で何でもねじ伏せるけどみみっちいよ。」

「黙れやこら!」

(爆豪を平然とディスってる!?)

 出久の行動に驚きを隠せないA組一同。

「ま、気にしないでイイよ。邪魔してきたら殴り飛ばせばいいし。」

「いいのか?知り合いなんだろ?」

「昔っからよくいじめられたよ。自分に気に喰わないことあったら爆破の個性で脅して、それでも言うこと聞かなかったら直接手を出してけがを負わせて来るんだ。そのせいで体にやけどの跡が結構残っているんだ。」

「ああ。あいつがヒーロー志望ってのが疑わしくなるな。」

 爆豪に冷たい視線が向けられる。

「でも僕たちには関係ないよ。本来の歴史だと脳無は一体ってウォズから聞いたけど、二体いるよね?」

「そうだな。行くぞ。」

 二人は同じドライバーを手にする。

【ジクウドライバー!】

 ベルトが装着されると二人はライドウォッチのダイヤルを回転させてスイッチを押す。

【ジオウ!】

【ゲイツ!】

 ライドウォッチをジクウドライバーにセットし、ロックを外す。二人のバックに大きな時計が出現する。互いに変身ポーズを取るとベルトに手を掛け叫ぶ。

「変身!」

【ライダータイム!】

【仮面ライダー!ジオウ!】

【仮面ライダー!ゲイツ!】

 黒と白を基盤としたジオウと赤を基盤としたゲイツが雄英高校に降臨した。

 

 

 祝え!時空を超え!全ライダーの力を受け継ぐ究極の魔王!

 その名は、仮面ライダージオウ!

 



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51 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~⑪

 全力で駆け上がり、180階まで到達した出久たちはメリッサの案内である扉の前に来た。

「変身!」

【タカ!ゴリラ!バッタ!】

 出久はタカゴリバに変身するとゴリラアームの力を使い扉を破壊する。

「ここは?」

「風力発電システムよ。普通に進めば警備ロボに捕まってしまうわ。ならこっちから進んで非常階段に辿り着けば一気に進めるわ。」

「なるほど。お茶子ちゃん、お願い。」

「わかった!」

 オーズはタトバコンボに変身するとメリッサを抱きしめる。

「いくよ!」

「わかった!」

 麗日が“個性”を使い、オーズとメリッサの重さを消すとオーズはバッタレッグを使い一気に跳ぶ。

「ぐっ!」

「大丈夫、メリッサさん?」

「大丈夫・・・・」

 オーズの問いかけにメリッサは答えた。

 お茶子は非常口に着いたときに解除できるように手を構える。

 しかしその時であった。遠くから扉が開く音がした。三人がその方向を向くとそこには警備ロボットがゆっくりとお茶子に向け近づいてきていた。

「危ない!」

「お茶子さん、逃げて!」

「できひん!そんなことしたら、みんなを助けられへん!」

 今か今かと迫りくる警備ロボ。早く辿り着いてほしいと思う時であった。

 どこからか波の音が聞こえて来た。

「オーシャニックカッター!」

 水の刃が警備ロボを破壊する。

「この声・・・・・ミハル君!」

 お茶子を助けたのは仮面ライダーアクアであった。

 すると今度はロケットの音が聞こえて来た。

「到着!お前ら降りろ!」

「弦太朗君!?」

 ロケットステイツのフォーゼから爆豪、轟、切島が降りる。

「一気に数を減らしてやる!」

【リミットブレイク!】

「ライダーきりもみクラッシャー!」

 フォーゼがきりもみ回転しながら警備ロボに突っ込み次々と破壊する。中には跳び上がった者もいるがそれを爆豪の爆破と轟の炎、そして切島の硬化で壊していく。

「遅れちまったな。こいつで行くぜ!」

【ヒート!】

【メタル!】

 階段から来たWはヒートメタルに変身しメタルシャフトを展開すると炎を纏い、警備ロボを破壊する。

「先輩!?」

 三人の仮面ライダーの登場に驚くオーズ。

「先に行け、オーズ。」

「頼んだよ。」

「先輩、ファイトです!」

「頑張ってください、オーズ。」

 四人から応援のエールを送られオーズは非常階段の前に到達する。

「解除!」

 麗日が“個性”を解除する。

「ここから入れば!」

 メリッサが非常階段の扉に手を掛ける。

 先走ったメリッサは待ち構えていた敵に襲われそうになる。敵は片腕をナイフに変えていた。敵はメリッサの腕を傷つける。

「このっ!」

 オーズはバッタレッグを使い敵の頭を掴むと階段に押し付ける。

「ふっ!」

 オーズはダメ押しに顎を殴り気絶させる。

「メリッサさん!」

 オーズはメリッサに駆け寄るとメリッサは腕にケガをしていた。オーズはハンカチを取り出し腕に巻き付ける。

「ごめんなさい、先走って。」

「謝らないでください。それに守るべきだった僕がけがを負わせてしまったんです。謝るのは僕の方です。」

「出久君・・・・・・」

 短い時間ではあるが出久と言う人間が分かった。

 どんな時も自分を優先としようとしない。誰かを助けるためであれば自分を犠牲にすることをいとわない。

「行きましょう。博士を助けに。」

「うん!」

 オーズはバッタレッグを巧みに使い警備の攻撃をかいくぐりトラクローで次々と敵を倒していく。そして二人は200階に到達した

「メリッサさん、制御ルームは?」

「中央エレベーターの前よ。」

 角までくるとオーズはメリッサに問いかける。

「あれ?メリッサさん、この開いている場所は?」

「確か発明品や資料を保管する保管室よ。どうして?」

「博士とサムさんがいる。でも・・・・・」

 オーズはある事に気づいた。

(さっきの警備もそうだが雑だ。それに、人質になっているはずのデイヴィッド博士たちが自由だ。これならいつだって外と連絡を取れる。なのに取っていない・・・・・・むしろ必死に何かを・・・・・まさか、そんなまさか!)

 その時オーズは気づいてしまった。

 この事件が仕込まれたものだと。

「パパ!」

「メリッサさん!」

 デイヴィッド博士が無事と知ってメリッサは保管室へと入る。

 



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52 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~⑫

物語もいよいよクライマックスへと近づいてきています。
この話を読んで大体予想できる人もいるかもしれませんが、どうか期待を。


 敵たちに連れてこられてずっと操作していたデイヴィッド博士とサムが明るくなった。

「解除出来たぞ!1147ブロックへ!」

 たくさんの四角いブロックがパズルのように動き、ある一角が光りその場で止まる。

 二人は短い階段を上り、そこへ向かうとその中を確認する。

「やったぞ・・・・・ついに取り戻したぞ!この装置と研究資料は誰にも渡さない!」

「やりましたね、博士。敵たちも上手くやっているようですし!」

「ああ!君が手配してくれた、サム!」

 喜ぶ二人に小さく強張った声が響いた。

「・・・・・・パパ・・・・・・・」

「メリッサ!」

「お嬢さん、どうしてここに!っ!?」

 メリッサに驚くデイヴィッド博士とサム。しかしサムは、《オーズの姿》にも驚いていた。

「手配したって何?」

 メリッサの問いにデイヴィッド博士は答えない。

「その装置を手に入れるためにやったの・・・・?答えて、パパ!」

 メリッサは声を上げて問いただす。

 できればそうでないと、脅されてやったと、そうであって欲しいと思っていたが、現実は残酷であった。

「・・・・・・そうだ。」

 その言葉にメリッサはショックを受ける。

「・・・・・・・・・なんで・・・・・・・・・どうして?」

 メリッサの問いに代わりにサムが答えた。

「博士は、奪われたものを取り返しただけです!機械的に”個性”を増幅させる、この画期的な発明を!」

「“個性”の増幅!」

 その言葉に出久は驚く。

「ええ。これはまだ試作段階ですが、この装置を使えば薬品などとは違い、人体に影響を与えずに”個性”を増幅させることが出来ます。しかしこの発明と研究データはスポンサーによって没収。研究そのものを凍結させられました。このことが世界に公表されれば、超人社会の構造は激変する。それを恐れた各国政府が圧力を掛けて来たのです。だから博士は・・・・」

 自分たちは正しいと言っているサム。

 その言葉にオーズは握りこぶしを作っていた。

「ウソでしょ、パパ?ウソだと言って!」

「ウソではない。」

「っ!そんな・・・・・・どうして?私の知っているパパは・・・・・・」

 メリッサの言葉にデイヴィッド博士は答えた。

「・・・・・オールマイトのためだ・・・・・・・」

「え?」

「彼の“個性”は、消えかかっている・・・・・・・・だが!これさえあれば!それ以上の能力を彼に与えることが――――」

「ふざけるな!」

 叫んだのは今まで黙っていたオーズであった。

「あなたがオールマイトの親友で、オールマイトのためにそれを開発したのは分かる。でも・・・・・・・間違ってる!なんで彼一人に、すべてを背負わそうとするんですか!」

 オーズは、出久はこっちに戻ってきてからずっと思っていた。

 みんなオールマイトばかりに頼っていた。

 どんなヒーローもオールマイトがいればと口をそろえてそう言った。

 誰一人として、オールマイトを助けようとなどとは言わなかった。

 たった一人に全てを背負わせて、頼っていた。

「たった一人の英雄よりも、何人ものヒーローを助けたり、何人もの人を助ける道具を作った方がいいんじゃないんですか?」

 オーズのその言葉に何も言えなくなる。

 その時であった、後ろから金属がオーズを襲う。

「出久君!」

 メリッサはオーズに駆け寄る。

「全く、余計なこと言いやがって。ま、いいか。こうなることくらい想定してなかったわけでもねぇからな。」

 後ろから敵たちのボスが姿を現した。

「サム、装置は?」

 サムはデイヴィッド博士から装置を奪うとボスの下へと持っていく。

「サム・・・・・私を騙したのか?」

「ええ、そうですよ。研究は凍結。手に入れるはずだった栄光も、名誉も、すべてを失った!お金を受け取らなければ割に合わないでしょう!」

 長年共に研究してきた仲間の裏切りにショックを受けるデイヴィッド博士。

「謝礼は?」

「ああ、そうだったな。」

 ボスはそう言うと拳銃の銃口をサムに向ける。

 そして破裂音が響き渡り、サムが倒れる音と空薬莢が落ちる音が響いた。

「どういうことだ・・・・・・・約束と違う!」

「約束、そんなのしたっけな?謝礼はこれだ。」

 ボスはサムに銃口を向け、引き金を引く。

「っ!!」

 サムを押し飛ばし、デイヴィッド博士が銃弾を受けた。肩からは血がにじみ出ていた。

「おいおい、今更なんのつもりだ?お前は悪事に手を染めた。俺たちが贋物だろうが本物だろうがアンタの悪事は消えない。俺たちと同類さ。もう科学者として生きていくことも出来やしない。敵の道に落ちていくだけさ。」

 その言葉にデイヴィッド博士の心は追い込まれていく。

「アンタはせいぜい俺たちの下でこの装置を量産するんだな。」

 高笑いするボス。

「・・・・・せない。」

「あ?」

「そんなこと、僕が、僕たちがさせない!」

 オーズは立ち上がり構える。

「メリッサさん、あなたはあなたにできることを。」

「っ!うん!」

 メリッサは制御室へ向かおうとするがボスが金属操作を行いメリッサを止めようとするがオーズが体を張って止める。

「行かせない・・・・・・・・守ってみせる!」

 オーズが体を張って止める中、メリッサは管理室に辿り着くと説操作盤を操作して警備システムを解除する。

「警備システムを解除されたか。おい、博士を連れて行く。ヘリは?」

「すでに到着しています。」

 ボスたちはオーズに見向きもせず進んでいく。

 ボスたちの後ろで出久は変身が解け、倒れていた。

「ぐ・・・・・・・・ごはっ!」

 無茶をしたため身体が悲鳴を上げ、血を吐いていた。

「約束したんだ・・・・・・・必ず助けるって・・・・・・」

 出久は自身の体に鞭を打ち、追いかけ始める。

 

 

 

 

 まだだ、まだ動くときじゃない。焦るな。その時はすぐに来る。

 



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53 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~⑬

本日二度目の投稿です。
映画にはなかった予想外の展開をご提供します。
気づいている人はいるかもしれませんが。


 屋上には敵たちが用意したヘリがいつでも飛び立てるようにプロペラを回して待機していた。

「すぐにここを去るぞ。」

「わかりました。」

 部下はボスの言葉に従いヘリへ移動しようとする。

「待て!」

 声がする方を向くとそこには服が血で汚れている出久の姿があった。

「そんな状態で何しに来た、小僧?」

「博士を返せ!」

 出久の言葉を聞いてデイヴィッド博士は驚く。

「ほぅ・・・・・・つまり君は捕まえに来たのか。この悪事を働いた男を?」

「違う!助けに来たんだ!」

 出久はタトバコンボに変身する。

「どうやって助けるんだ?ええ!!」

 ボスは足元から金属を操作しオーズに金属を向け攻撃を仕掛ける。

 オーズはオーズキャリバーを手にしバッタレッグの跳躍を活かしながら斬り、近づいていく。

「これでもか?」

「っ!」

 オーズは足を止めてしまう。デイヴィッド博士の後頭部に銃口が押し付けられていた。

「はっ!」

「がぁ!」

 オーズは金属によって地面に押さえつけられる。

「ヒーローってのはそんな存在だよな。こうでもされたら動けなくなっちまうんだからよう。」

 ボスがそう言うとヘリは浮上し、高く上がって行く。

「ま・・・・・・・・・・・・・て・・・・・・・・・・!」

 だんだん遠ざかって行くヘリ。オーズはメダルの交換ができず、ただ眺めているだけであった。

「出久君!」

 メリッサが近づき金属を退かそうとする。

「返せ・・・・・・・返せ!返せ!返せ!」

 出久は何度も叫ぶが、ヘリはどんどん遠ざかって行く。そんな出久をあざ笑うかのようにボスは笑みを浮かべる。

「こういう時こそ笑え!緑谷少年!・・・・・・・・いや、仮面ライダーオーズ!」

 聞き覚えのある声に出久とメリッサは反応する。

「何故かって?私が来た!」

 ヘリの下まで跳躍したのはオールマイトであった。

 オールマイトが来たことに二人は喜ぶ。

「親友を返してもらおうか、敵ども!」

 オールマイトはヘリの上から急降下し拳を振るう。ヘリは貫かれ爆発し、デイヴィッド博士はオールマイトに抱えられ救助されていた。

「パパ!」

「もう大丈夫だ。」

 オールマイトは優しくデイヴィッドを降ろす。

「オーズ、今助けるよ。」

 オールマイトは鉄柱を退け、オーズを助ける。

「大丈夫かい?」

「ありがとうございます。」

 オールマイトの手を取りオーズは立ち上がる。

「この・・・・・・サムの奴、オールマイトは”個性”が衰退して弱っている話は嘘じゃないか。」

 ボスは何とか無傷でいた。ボスはデイヴィッドが作った装置を頭に装着し、“個性”を発動させようとした。

 しかしその時であった。

「待っていたよ、この瞬間を。」

 デュシャリ・・・・・・

「・・・・・・・・・は?」

 そんな声を出したのはボスであった。胸には後ろから貫かれたナイフが血に染まって突き出ていた。

「ごほっ!・・・・・・・・・お、お前は・・・・・・!」

 ボスの胸からナイフが抜かれ、ボスは倒れる。

「ど、どういうことなの?」

「なぜ君が・・・・・・」

 メリッサもオールマイトも驚いていた。デイヴィッド博士ですらその光景に驚き目を見開いていた。

「なにをしているんですか、サムさん!」

 そこには肩を血で濡らしているサムの姿があった。

「全く、この血のりを仕込んでおいてよかったよ。」

 サムはゼラチンを下に敷いている血のりを両肩から取り出すと投げ捨て、ボスが頭に付けていた装置を手に取り頭に付ける。

「やっぱりそれが狙いだったか。」

 屋上へ通じる通路から三人のライダーと爆豪たちがいた。

「どういうことですか?」

 オーズが問いかけるとフィリップが説明する。

「ここにいるサムは正確にはサムじゃない。こっちの世界のサムではなく、僕たちの世界の財団Xのサムだ。」

 その言葉にライダーたちは驚く。

「わかっているようじゃないか。そう、私は財団Xのサム。まぁ、この世界には私しかサムはいないがね。」

「どういうことだ?」

 オールマイトが問うとサムは答えた。

「この世界のサムは私が殺したからだ。今頃魚のえさになってるだろうね。この広い、広い海の最中のエサにね。」

 その言葉に一同衝撃が走る。

「私は別世界へと通じるゲートの開発に数年前に成功させた。その影響かあちこちで行方不明事件が勃発したようだが、まぁ犠牲はつきものだ。そこはどうでもいいじゃないか。やっと安定したのを完成させたのはほんの二、三年前。が、その時丁度博士の研究が凍結された時期に来たわけだ。

 おかしいとは思わなかったのかい、博士?裏につながりのない人間がどうやって本物を引き入れたのか?あれは全部私が手引きしたのだよ。こっちの世界の私にこの計画をそそのかしたのも私だ。彼はどうにかして金が欲しかったようだからね。私が進めて私が用意して、後はこの研究成果であるこの装置を手に入れれば、全て上手くいくはずだった。

 だが・・・・・・あろうことかこの世界の私は本番の数か月前になって弱腰になった。しつこいから殺したんだよ。全く、バカな男だ。おとなしく私に従えば死ななかったものを。」

 サムはそう言うとガイアメモリを手に取りガイアドライバーを装着する。

【Steal!】

 サムはスティールドーパントに変身するとボスの傷口に手を突っ込む。

「君の”個性”を私が奪おう。」

「がぁ・・・・・・か・・・・・・はっ・・・・・!」

 ボスは白目をむき、そして息絶えた。

「さぁ、後はこれを使うだけだ。」

 サムの手にはアストロスイッチが握られていた。

「コズミックエナジーとガイアメモリ、そしてこの“個性”にデイヴィッド博士が開発した装置さえあれば!私はこの世界を支配する!」

 サムの周りを鉄柱や配線が纏わり付き、巨大な怪物へと変貌を遂げた。

「させねぇよ。この世界を救って見せる。」

【サイクロン!】

【ジョーカー!】

 Wはサイクロンジョーカーに変身する。

「今日一番のタイマンはらせてもらうぜ!」

 フォーゼが構える。

「この世界の未来を守る!」

 アクアが構える。

「みんなで行けば、勝てる!」

 オーズが構える。

 W、オーズ、フォーゼ、アクアの四人の仮面ライダーが最後の敵と対峙した。

 



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54 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~⑭

強引気味に決着を付けます。
そして映画を見て後から気づいた疑問を次のエピローグでぶつけます。


 各仮面ライダーがサムに向かって進む。

「俺たちも!」

 切島たちが出ようとしたがサムはボスから奪った”個性”を使い完全に隔離する。

「お前たちは後だ!仮面ライダーさえ倒してしまえば、後は有象無象の雑魚ばかりだからな!」

 サムにとっても、この世界のヒーローは敵ではなかった。

 実力のあるヒーローはわずかであり、後は見てくれだけの存在ばかりである。

「それは俺たちを倒してから言いな!」

【ロケット、オン!】

 フォーゼがロケットモジュールを使い上昇するとそのままサムに向かう。

「うぉおおおおおおおおお!」

「甘いわ!」

 サムは金属コードを使い捉えると地面に叩き付ける。

「いてて・・・・だったら!」

【クロウ、オン!】

 フォーゼはクロウモジュールを展開するとコードを斬り、サムに近づこうとする。

「こっちも行くぜ!」

 Wはサイクロンの力を使い旋回しながらキックを喰らわそうとする。

「ぬるいわ!」

 サムは鉄柱で拳を作ると投げ飛ばす。

「うぉおおおおおお!」

 Wは地面に打ち付けられる。

「翔太朗、サイクロンジョーカーじゃ威力が足りない。僕が交代しよう。」

「頼む。続けざまに戦っていたから結構きついんだ。」

 Wは変身を解くとフィリップの意識が戻る。

「すまない、今度は向こうにいる僕の相棒の体を頼む。」

 フィリップの下にファングメモリが来るとフィリップはそれを手に取り変形させる。

【ファング!】

 遮られている向こうで翔太朗がジョーカーメモリを手に取る。

【ジョーカー!】

「「変身!」」

 翔太朗がダブルドライバーにジョーカーメモリを差し込むとフィリップはファングジョーカーに変身する。Wはファングメモリのスイッチを一回押す。

【アームファング!】

 Wの左側にブレードが出現する。

「はっ!」

 Wは金属の柵を斬り裂くとサムに向かい走り出す。

「フィリップ、アイツにはどうしたら勝てる?」

「わからない。アストロスイッチの力で彼の力は強化されている。さらにデイヴィッド博士の発明も合わされば一筋縄じゃ行かない!」

「じゃあ解決策が見つかるまで戦うか!」

「安直だがそれが正解だ!」

 Wは再びサムに向かう。

「これでどうだ!」

 オーズはタカゴリワに変身するとゴリラアームのゴリバゴーンを放つが鉄柱の障壁によってさえぎられる。

「ぬるい!」

 鉄柱がオーズに向かって襲ってくるがワニレッグの力を使い鉄柱を砕く。

「そこだ!」

 オーズの後ろから鉄柱が出現しオーズを倒す。

「オーズ!この!」

 アクアが浮き上がった金属を足場にサムに接近し蹴りを喰らわそうとする。

 しかし地面から鉄柱がいくつも突き出しアクアを攻撃する。

「がっ!」

 アクアも弾き飛ばされ、Wの弾かれる。

「このままじゃ・・・・・・・っ!!」

 その時フォーゼはある事を思いついた。

「先輩方、アクア。俺に考えがある。あいつをもしかしたら倒すきっかけになるとっておきの策がな。」

 その言葉にフィリップが反応する。

「本当かい?」

「ああ!」

「・・・・・・わかった、君を信じよう。では君のその策に僕たちができることは?」

「アイツの意識を俺に向けさせないでくれ。」

「なるほど陽動か。いいだろう。」

「なんだか知らねぇがやるしかねぇな。」

「ですね。」

「いきますか。」

 全ライダーは立ち上がり、フォーゼを退いた全員が動き出す。

「割って!挿す!」

【N!】

【S!】

【【マグネット、オン!】】

「おっしゃ!」

 フォーゼはマグネットステイツに変身する。

 各仮面ライダーがフォーゼへ意識を反らす中、フォーゼはサムに狙いを定める。

「喰らいやがれ!」

【リミットブレイク!】

 両肩に備え付けられていた砲台が合体しU字型の砲台へ変形するとサムに方針を向ける。

「喰らいやがれ!ライダー超電磁ボンバー!」

 フォーゼのライダー超電磁ボンバーがサムに炸裂する。

 しかし煙が晴れてもサムは健在であった。

「おい!勝てるんじゃなかったのか!」

 翔太朗が声を上げる中、フィリップは気づいた。

「そうか。ガイアメモリもあの装置も、すべて機械だ!アストロスイッチは関係ないが、弦太朗君、君は天才かもしれない!」

 フィリップがフォーゼを誉めているときに三人のライダーは鉄柱によって吹っ飛ばされ、強制的に変身が解除される。

「みんな!くそ!」

 フォーゼはNSマグネットキャノンを放つがサムにはその攻撃が効かなかった。

 フォーゼはサムの攻撃を喰らい、変身が強制解除される。

「はっはっは!最後の悪あがきもここまでのようだな仮面ライダー!この世界は、私が・・・・・・・・・っ!?」

 その時であった。体を覆っていた金属が崩れ始める。

「なんだこれは?いったいお前は何をした?」

 状況が分からないサムは弦太朗に問う。

「簡単だ。お前が機械を使ったんだったらその大敵をぶっ放してやっただけだ。」

「大敵?」

 その答えが分からないサムにフィリップが答える。

「個性を増幅させる装置も、ガイアメモリも、ガイアドライバーもすべて機械だ。フォーゼにはNSマグネットスイッチがある。恐ろしいことに、最大必殺技は磁力砲だ。」

「っ!?磁力か!」

 そう、答えは磁力であった。

 機械に磁石を近づけると正常に機能しなくなる。時計の場合は各パーツが磁気を浴びてまともに機能しない。

 ガイアメモリがいくら強力な道具だとしても、USB型の機械に力を収めている。

 つまり機械である。

「くっ・・・・・・・・何故だ!なぜこんな世界のために戦う?お前たちはなんのために戦う!?」

 サムには理解できなかった。

 理不尽しかないこの世界に、救う価値は無いと思っていた。

「僕たちは別に、世界のためなんてもののために戦っているつもりはない。」

「なに?」

 出久の言葉にサムが反応する。

「そうだ。誰かの命を守るために。」

「誰かの家族を守るために。」

「世界中のダチのために!」

「この手で掴める人たちを救うために!」

「誰かの未来を守るために!」

『ただそれだけのために、戦うだけだ!』

 その言葉に状況を見ていた誰もが衝撃を受けた。

 大それたもののために戦うわけじゃない。ただ自分が守りたい者のために、必死になって戦う。人間の自由と平和のために、誰かの助けての声に応えるために、戦う。

 それこそがヒーロー、それこそが仮面ライダーである。

 爆豪たちにはその背中は大きく、輝いているように思えた。

 そしてその思いに応えるかのように、出久の胸から三枚のメダルが現れる。

 出久はそのメダルを手に取る。

「アンク・・・・・・・・使わせてもらうよ!」

 出久がオーズドライバーを装着しメダルをセット、弦太朗もフォーゼドライバーにコズミックスイッチを挿入して各スイッチを入れ、フィリップがエクストリームメモリに吸収され、翔太朗のダブルドライバーにセット、ミハルが構えると一斉に声を上げる。

『変身!』

【スーパー!スーパータカ!スーパートラ!スーパーバッタ!】

【スーパー!タ・ト・バ!タ・ト・バ!スーパー!】

 オーズはスーパータトバコンボへと変身する。

【コズミック!】

 フォーゼは変身スイッチを押すとコズミックスイッチの最終ロックを外し、スイッチを押す。

【コーズーミーック、オン!】

 フォーゼはコズミックステイッツに変身する。

「みんなの力で、明日を掴む!」

【エクストリーム!】

 Wはサイクロンジョーカーゴールドエクストリームに変身する。

 そしてミハルはボディ全体に金のラインが入った仮面ライダーアクア・ゴールドアップへと変身する。

「一気に決めます!」

 四人のライダーは一気に跳び上がると一斉に必殺技の体制に入る。

【スキャニングチャージ!】

【ドリル、オン!】

【リミットブレイク!】

【エクストリーム!マキシマムドライブ!】

【オーバードラーイブ!】

 オーズはスーパータトバキック、フォーゼはライダーキック、Wはゴールデンエクストリーム、アクアはオーバーアクアパニッシャーを繰り出す。

「グっ!この私が・・・・・・・・・この世界をすべて手にすることが出来るこのわたしがぁあああああああああああ!」

 サムは激しく爆発し、そして消えた。

 ガイアメモリ、アストロスイッチは跡形もなく破壊され、ガイアドライバーはほぼ壊れた状態で残った。

 各々変身を解くとフィリップがドライバーを拾上げる。

「これをこの世界に残しておくわけにはいかない。僕が責任を持って持ち帰るよ。」

「こんな形だったがまた会えてよかったぜ、オーズ。」

「オーズ先輩、こっちの世界は俺に任せてください!」

 弦太朗は出久と友情の握手を交わす。

「オーズ、僕も未来で頑張るよ。」

 各々出久に別れの言葉を言うと空に空いた穴から元の世界へと戻った。

 こうして長い戦いは終わった。

 ここまで頑張った彼らを祝福するかのように太陽が水平線から昇り、彼らを照らした。

 

 一方そのころ仮面ライダーたちの世界にある鴻上ファンデーションの社長室では鴻上会長が里中からある報告を受けていた。

「里中君、どうだったかね?」

「大変苦労しましたが証拠は掴めました。会長、その分給料上乗せでもいいですよね?」

「もちろんだとも!さて出久君、私からの贈り物、受け取ってくれたまえ!」

 



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55 劇場版僕のヒーローアカデミアOOO~集う英雄たち~⑮

これで劇場版は終わりになります。
今後の予定ですがマジェプリの方に行くかもしれません。
あれもう少しで終わるのに大分更新してないので。


 長い長い戦いが終わり、今回の事件に貢献した出久たちはオールマイトの奢りでバーベキューを楽しんでいた。

「なあ、オールマイト。俺が言ったことわかったか?」

「・・・・・・ああ。」

 みんなと離れたところで伊達とオールマイトは話していた。

「オールマイト、今回の原因は何だと思う?」

「・・・・・・・・私が過剰に秘密にしたからか?」

 その言葉に伊達は首を横に振った。

「信じてなかったんだ。仲間。」

「私が!?」

「そうだ。出久ちゃんの場合は、自分が弱いところを限界まで見せようとしない。オールマイト、それはお前さんの持つヒーローとしての意識とは違う。我慢して我慢して、これ以上無理って思ったときにぶちまけるんだ。

 一人の弱い人間としてな。そして誰よりも出久ちゃんは仲間を信じてる。仲間がいるから出久ちゃんは戦える。仲間がいるからこそ、俺たちも戦えるってわけだ。

 デイヴィッド博士はお前さんにとっての親友で、仲間じゃなかったのか?」

「・・・・・・・・・そうだ。だが私は彼が傷ついたりするのを見たくなかった。」

「だがよ、結局それはお前の勝手な思い込みだろ?どんなに危険でもよ、それを一緒に乗り越えるってのが仲間ってものじゃないのか?」

「ああ・・・・・・・・・・そうだな。出来ればそれをもう少し早く知りたかった。」

 暗い表情になるオールマイトに伊達は言った。

「そう諦めるのは早いんじゃないのか?向こうで鴻上会長がいいプレゼントくれたようだからな。」

「え?」

「それより早く食おうぜ。」

 伊達は出久たちの下へと戻る。戻った時に丁度鴻上会長から労いのケーキが届き、一緒に食べていたA組一同と食べていた。

 

 デイヴィッド博士は条件付きで執行猶予付きの釈放が認められた。

 そもそも今回の事件の発端はスポンサーによる研究の凍結。それは各国が協力してからの事である。

 だが考えてみよう。各国大手企業が国からの命令でそんなことをするだろうか?それが開発されればスポンサーとしては大きな収益となる。それをオールマイトが使えば自分たちの生活はより安心できるものとなるはずだ。

 じゃあ何で動かされたのか?もちろん金である。

 裏金を貰ったり、何かしらの条件を付きつけたりと表には決して出ないものを裏取引したからである。

 結局人間は欲望の化身である。

 幸いにも優秀な人材である里中の仕事の甲斐あってそのことが露見した。

 交換条件として、そのことを鴻上ファウンデーションが黙認する代わりにデヴィッド博士の情状酌量が許された。

 しかし条件としては執行猶予期間内に条件数のサポートアイテムの開発などと言った条件ではあったが、それほど無理な条件ではなかった。

 ちなみに国や企業のその不正は《何故か》内部告発された。その時に女性社員が前日に退社したと言う共通の情報があったが、その人物の情報はすべてに残っていない。

 

 友のためにと秘密にし、友の為にと外道に手を出しながらもその研究と開発をしようとした悲しく、苦い事件は幕を閉じた。

(僕もいつか、みんなにちゃんと話さないといけないよね。)

 この事件が、出久が自分のことについて話す意識を強めることになった。

 



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56 これまでを振り返って。

よくよく考えてみたら出久たちって濃い経験をしすぎな気がするのは気のせいでしょうか?
とても十代後半の少年少女たちが経験するような出来事ではないと私は思います。


 I・アイランドの事件から時間が過ぎた昼過ぎ、出久は一人部屋で物の整理をしていた。

 出久の体のこともあって荷物は整理してしまうのが習慣となっていた。

「ふぅ・・・・・・結構もの増えたな。」

 出久はそう思い椅子に背を預ける。

「思えば、今年はまだ少ししか過ごしてないのに色々あったな。」

 出久は少し振り返ってみる。

 思えば始まりは幼いころに吐血したことだ。

 不治の病と診断され、どこか空っぽになりかけていた。

 しばらくして診断された”無個性“。生きていくのでさえ困難になってしまったこの時代、絶望的であった。

 そんなことを思いながら過ごして中学1年生、人生の転機が訪れた。

 異世界への渡航だ。

 その時記憶を失い、そして大きな傷を負った。その後悔は今も出久をヒーローへと駆り立て、そして自分で自分を苦しめていた。

 そして日本でのアンクと出会い、グリードとのメダルを掛けた戦い。

 多くの人間の欲望を見た。だがそこから学ぶこともあった。許せない欲望もあった。

 時には怒りを、悲しみ、呆れた。

 けれどいつも側には相棒がいた。ぶつかり合い、騙し合い、一緒に食事をし、助けたこともあった。

 けれど、そんな日々は終わり終わりを迎えた。

 世界を掛けた大きな戦いの中で、相棒は自分を犠牲にした。そして遥かな未来で再開する約束をした。

「アンク・・・・・・ルウ・・・・・・」

 出久は机の上に置いてある割れたアンクのコアメダルと、ルウがくれた石を見る。

 鴻上会長のおかげで出久はこっちの世界に戻れてきた。

 そしてこの世界でも、多くの人間をこの手が届く限り救いたいと思うようになった。

 最初に救ったのは、()()()()だったな。まさか僕があのヒーローを救うとは思わなかった。

 そして次に救ったのがかっちゃん。助けてほしいと、そう願う目をしていたから僕は助けた。そして最初に僕の秘密を打ち明けた幼馴染だ。

 次に救ったのは三奈ちゃんだ。どうしてかこの世界にいたヤミーの事件に巻き込まれた。

 そういやマンサム所長、元気かな?しばらく顔合わせてないから気になるけど、仕事で忙しかったらいけないし今度メールしておこう。

 入学試験の時にお茶子ちゃん、入学初日に透ちゃんに峰田君。

 その次に百ちゃんと一佳ちゃん。

USJだとあの場にいた脳無を倒すために無茶しすぎちゃった。ほんと皆には悪いことしたって思ってる。

それからすぐに雄英体育祭。あの時は出せる力をすべて出した。無茶をして、轟君を縛っていた何かを解き放てた気がした。

ヒーロー殺しの時は何とか飯田君をヒーローの方へと引き戻すことが出来た。

でもあの時のヒーロー殺しのことは僕や伊達さんは分かる気がした。

この世界のヒーローは人気を気にして本業そっちのけでいろんな職業に手を出している。もちろん、すべてのヒーローがそう言うわけではないが、それでも理解できないところがある。

 法律でヒーローであることに資格を定めていること、ヒーローや敵やヴィジランテなどを細かく分けていること、“個性”を重視して人を見ていないこと、無個性に対する扱いがずさんすぎること。

 ヒーロー殺しがそうしたい気持ちは今でもわかってしまうけど、共感はできない。

 僕は彼に今でもいえる。それは間違っていると。

 そしてI・アイランド。オールマイトの計らいで招待され、そしてメリッサさんと出会った。そこでは、デイヴィッド博士がオールマイトのためにとある開発を行った。

 しかし世界は彼の発明を認めようとはせずに、研究自体を凍結させてしまった。

 間違ってはいなかった。しかしやり方が間違っていた。

 デイヴィッド博士も被害者なのだろう。この超常社会でオールマイトと言うビッグスターがいればすべての事件を解決してくれると思い込んでしまった。

 しかしその開発を狙っていたオールマイトの宿敵、オール・フォー・ワン。そしてそれすらも利用し世界を支配しようとした財団X。

 けど、先輩後輩、未来のライダーと共に野望を打ち砕いた。

「ホント、こんな経験する皆も厄年なんかもね。今度皆で厄払いのお参りでも言った方がいいのかな?」

 出久はふとそんなことを口にする。

「でも・・・・・・・・・あの日、屋上にいなかったら、今こうして思い吹けていなかったんだよね?」

 そう思い出久は立ち上がり窓を見る。

見える世界は狭く、小さいものだ。しかしそこには大勢の人が暮らし、それぞれの生活を送っている。誰しも簡単に人を殺せる力や手段、知識がある。それを善か悪に使うかは人それぞれだ。

「守っていかないとね。」

 そんなことを言うと引子が出久を呼ぶ。出久はそれに答えながら向かう。

 風が吹き、窓のカーテンを靡かせる。

 出久の机の上には、彼女たちと一緒に撮った写真が写真立てに飾られていた。

 



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57 林間学校、開始

お久しぶりに本編投稿です。
最近お気に入りに追加したユーザーがなかなか更新しなくて待ち遠しい今日、刺激が欲しいです。
そして、金が欲しい。
理由はFGO。二万課金したのにメルトもパッションも来ない。メインの方は徹夜してクリアしたかと思ったらまさかの延長!
呼符10と石20くれと言いたい!そしてCCCは急ぎ足で第一節クリアした人には無理なステージって思います。
一回クリアしていても苦戦しますから。


 夏休みのI・アイランドの事件から日時は経ち、いよいよ林間学校当日。

 雄英高校の校門前には送迎用のリムジンバスが停車していた。

「え?A組補修いるの!つまり赤点取った人がいるってこと?おっかしいなー!A組はB組よりも優秀なはずなのに!あれれれれ?」

 挑発する物間のセリフに苛立ちを覚えた出久は無言でマシンベンダーモードのライドベンダーからウナギカンドロイドを三体出すと起動させ、物間に投げつける。

「ん?ん?ん?なにこれ?」

 ウナギカンドロイドは連結して物間に電撃を喰らわせる。

「あばばばばばばばばばば!」

 物間は電気ショックで動けなくなる。

「なんかイラっとしたのでやりました。」

『いえ、気にしないでください。』

 B組一同揃って出久に気を使う。

「まあまあ出久ちゃん、あんな奴気にしないで先に進もうじゃない。」

「そうですね、伊達さん。」

 出久の後ろから伊達が肩を掴み声を掛ける。

「んじゃ俺たちも準備しますか。」

「はい。」

 出久と伊達はライドベンダーをマシンバイクモードに変形させるとヘルメットを装着する。

「え!なんあなそれ!」

 見ていた一同を代表してお茶子がツッコミを入れる。

「ああ、これ?僕たちの支給品。」

「あんま気にしないでよ。先に行って待ってるから。」

 二人は押す言うとエンジンを吹かし、ライドベンダーを走らせる。

 

 ライドベンダーでツーリングしながら伊達は出久に話しかける。

「なあ出久ちゃん、デイヴィッド博士の件、里中ちゃんが動いてくれたみたいじゃない。」

「ええ。鴻上会長に頼んでみたんです。鴻上会長も“たった一人の人間の欲望を止めるために大勢を使って止めるなんてことは私個人としても許せないことだ。人とは、生きているから欲望がある!純粋にそんな方法で止めるだなんて邪道だ!”っていってました。」

「あー、会長ならそう言うだろうなー。」

 伊達はその言葉を聞いて納得する。

「俺もあの方法は間違ってるって思うよ。」

「伊達さんもそう思うんですか?」

「ああ。だってオールマイトのために開発したってことは世界でたった一個しか作れないようにする方法なんかいくらでもあるじゃないか。なのに凍結するだなんて、鼬ごっこじゃん。」

「確かに。」

 伊達の言葉に出久も納得する。

 世界のいたるところで薬物による”個性”の強化、いわゆるドーピングは行われている。そのほとんどが違法ではある。しかしそうでもしなければ生き残れないものもある。

 世間一般的に言われる“凡個性”を扱う人たちは自分の個性を仕事で役立たせなければ捨てられてしまう。

 その個性を活かそうとせず、即戦力ばかりを求めてしまうのだ。

「けどよ、オールマイトばかりに頼っちゃうのもどうかって思うぜ。」

「そうですね。僕もオールマイトのようになりたいって思ってましたけど、オールマイトの生き方はその・・・・・・」

「昔の自分みたい、か?」

「ええ。」

 出久はその言葉を肯定する。

「でも今も出久ちゃんもあまり変わってないぜ。それに、病気のこと誰にも話していないんだろ?」

「・・・・・・」

 伊達の言葉に出久は沈黙する。

「やっぱりか。でも俺は出久ちゃんの気持ちは分からない、共感することも出来ない。でもな、生きて欲しいって思ってる。」

「伊達さん・・・・・・」

「俺は医者だがその前に一人の友人だ。だからこの言葉な友人としての言葉だ。生きて人生を楽しんでほしい。死ぬには早すぎる。」

「・・・・・・・・はい。」

 

 そして出久は指定された停留所でライドベンダーをマシンベンダーモードにして待つとA組のリムジンバスが来た。

「待たせたな、緑谷。」

「いえ、大丈夫です。」

「伊達先生もありがとうございます。」

「気にしないでよ。出久ちゃんの症状のこと知ってるの俺と婆さんだけだし。」 

 バスから降りてきた相澤は二人に声を掛ける。

「よーーーう、イレイザー!」

「ご無沙汰しております。」

 突然声を掛けてきた人物に相澤は頭を下げる。

「きらめく眼でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!」」

 二人の猫耳コスチュームを着たヒーローがポーズを取る。その隣で角突きの帽子をかぶった少年が呆然と見ていた。

「ワイプシ!」

「知ってるの、出久ちゃん?」

「はい!連盟事務者を構えて四人一組で活動するヒーローです!山岳救助はベテランです!」

「ほっほー。んで、相澤ちゃん。これってまさか・・・・・」

 伊達の言葉に相澤は鼻を吹く。

 するとマンダレイが説明をする。

「ここら辺一帯は私たちの所有地でね。あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね。」

 マンダレイが指をさす方向に一同『遠っ!』と声を上げる。

(なんとなく予想ついた。)

 出久はすぐにでも変身できるようにベルトとメダルをセットする。

「時間はAM9:30。早ければ12時前後かしら?」

 その言葉を聞くなり皆はバスに戻ろうとする。

「12:30までにたどり着けなかったキティはお昼抜きね。」

「悪い諸君。合宿はもう―――――」

 その瞬間、土砂が雪崩のように崩れ、A組一同は下へと降ろされる。

「―――――始まっている。」

「変身!」

【タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!】

 出久はオーズに変身すると着地する。

「みんな大丈夫?」

 出久はみんなに声をかける。どうやらみんな無事であった。

 そんな時トイレを我慢できなかった峰田が一目散に前に駆け出すが目の前にモンスターが現れる。

「静まりなさい獣よ!下がるのです!」

「口田!」

 突然喋った口田に三奈は驚くが口田の”個性“をモンスターは聞かない。

 オーズはタカヘッドの力を使い中を見るが心臓は無かった。

「贋物なら!」

 オーズはバッタレッグを活かして一気に跳躍し土人形をトラクローで斬り裂いた。

 こうして雄英高校個性強化林間学校が始まった。

 



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58 再会するヒーロー

PM5:20。

 合宿所の広場でマンダレイとピクシーボブ、そして相澤と伊達はA組一同を待っていた。

「やーーーーっと、到着にゃん。」

 ピクシーボブが腰に手を当てそう言うと森の方からボロボロのA組が出て来た。

「なにが三時間程度ですか・・・・・・」

 切島がそう口を開くとマンダレイが言った。

「ごめんね。それは私たちだったらって意味だったわ。」

 そう言うと砂糖が「実力差自慢のためか・・・・・」と愚痴をこぼした。

「ねこねこねこ、でも正直もっとかかるかと思ってた。私の土魔獣が思ったよりも簡単に攻略されちゃった。特に君らは・・・・・ね。」

 ピクシーボブが指さしたのは爆豪、轟、飯田の三人であった。

「とりわけすごかったのは君だけどね。」

 そう言って出久の方を向くピクシーボブ。出久はみんなに濡れタオルを手渡していた。

(何よりすごかったのは戦いの中で小さな花にすら気を使って戦ってたこと。並大抵の経験じゃできない芸当よね。)

 ピクシーボブも出久の戦闘力と状況把握能力に驚いていた。

 仮面ライダーは小さな花の命をも守る心を持っている。どのライダーにせよ、その思いは変わらない。

「三年後が楽しみ!ツバつけておこーーーーー!」

 ピクシーボブがそうしようとすると麗日、八百万、芦戸、葉隠が身を挺して出久を守る。

「出久君には手を出させるものか!」

「私たちが守りますわ!」

「汚させない!」

「絶対守るよ!」

 その光景にマンダレイはニヨニヨする。

「ちょっとイレイザー、あそこ初々しい光景が広がっているんだけど。」

「知らん。」

「まあ出久ちゃんは誰にでも優しすぎるからねー。それで本人無自覚。」

「末恐ろしいわね。」

 伊達の言葉にマンダレイがそう漏らすと出久がふと疑問に思っていたことを口にする。

「ところで聞いてもいいですか?」

「ん?なに?」

「そちらのお子さんは?」

 出久が視線を向けるとそこには角付きの帽子をかぶった少年がいた。

「この子は私の従甥よ。洸太、あいさつしな。一週間一緒に過ごすんだから。」

 マンダレイが手招きをすると洸太は近づいてくる。出久は自ら歩み寄り挨拶をする。

「はじめまして。雄英ヒーロー科の緑谷出久です。よろしくね。」

 その瞬間、洸汰の右ストレートが出久の股間目掛けて放たれるが出久はそれを右手で受け止めた。

「っ!?」

「ノーモーションからにしては悪くないけど腕の振りが甘いし、気づかれやすい動きだ。もっと基本を大事にした方がいい。」

 出久の手から離れると洸太は後ろを向き少し離れると言い放った。

「ヒーローを目指している奴らとつるむきはねぇ!」

 そう言うと洸太は宿泊施設の方へと走って行った。

「洸汰!」

 マンダレイが呼び止めるが洸汰は止まらなかった。

「すまないね、緑谷君。私の息子が。」

「ごめんなさいね。」

「っ!?」

 出久は二人の声に聞き覚えがあった。

「あ、あなたたちは!」

 そこには夫婦の姿があった。夫の方は片足が義足になっていた。

「ウォーターホース!」

「おいおい、今の私たちは引退した身だ。」

「もう昔の存在よ。」

「あ、すみません。」

 三人が話している光景を見てマンダレイは思った。

(二人が知っているってことは彼がそうなのかしら?)

 

 出水流水と出水操水、そしてマンダレイとピクシーボブが作ってくれた料理を一同おいしく食べていた。

(こうやって大人数で食べるってのも新鮮だなー。そういや、いつもは母さんとしか食べていなかったっけ。)

 ふと過去を顧みた。

 入院生活が多かったためか遠足などの行事には行けないことが多かった。そのためいつも一緒に食べているのが母とだけであった。

 雄英に入ってからは同じクラスの面々や麗日たちと一緒に食べることが多くなったのが記憶に新しい。

 そして食後の入浴時間。今日一日の疲れを癒す思考の時間である。

 そんな中峰田は覗きを実行しようとしたが仕切りの上で警備をしていた洸太によってあっけなく打ち砕かれた。

 しかし洸汰も純粋な男の子であるため女子の裸に鼻血を吹き倒れ、男子の方に落ちそうになるがそこを出久が受け止め事なきを得た。

 ロビーで寝間着姿に着替えた出久がソファーに寝かされている洸汰の隣にいるマンダレイに声を掛ける。

「やっぱり洸汰君は、お父さんの怪我を見てヒーローを否定するようになったんですか?」

「ええ。世間一般じゃヒーローをよく思わない人も大勢いるわ。普通の子だったらヒーローに憧れたんでしょうけど・・・・・・・・緑谷君。」

「はい?」

「もしかしてだけど、二年前にウォーターホースの事件に関わった?」

「・・・・・・」

「沈黙は肯定とみるわ。年齢的にも個性の使用が認められないから言えないのも無理は無いわね。」

「・・・・・・・・・・ええ。」

 出久は二年前のある事件を思い出した。

 二年前のある日のことだ。

 出久がこの世界に戻ってまだ間もなく、芦戸と出会う少し前の事。

 長い間変わった街並みを知るために散歩をしていた出久は偶然にもウォーターホースが関わった事件に遭遇した。出久は敵に走って向かいウナギウィップで電気ショックを与え動けなくするとシャウタコンボに変身しウォーターホースに捕縛用の技を出すように要求した。

 結果として事件は解決したが無茶をしたため血を吐いてしまい、病院送りになった。

 その後警察からは厳重注意を受けた。本来であれば違法ではあるが危険な敵の逮捕に貢献、並びにウォーターホースが庇ってくれたおかげで何とかなったのだ。

「君のような子には理解―――――」

「できますよ。」

「・・・・・・・え?」

 マンダレイは出久の言葉に驚いた。

「自分を犠牲にして、人を守っても家族を守れない。なんでそんなのに憧れるんだろうって・・・・・・・・・そう思っているんだと思います。」

「そう・・・・・・・・・・じゃあ君はどうして?」

 その言葉に対し出久は答えた。

「憧れと後悔です。」

「後悔?」

「ええ。」

 そう言うと出久は自分の手を見る。

 何度振り払おうとしても消えない後悔。忘れられない惨劇。

 それが出久を縛り、自ら苦しめていた。

 そしてマンダレイには分からなかった。ヒーローに憧れるのは大抵オールマイトであろうと。しかし後悔は何なのか?

 自分たちよりも歳が離れた少年が一体何を後悔したのか彼女にはわからなかった。

 「失礼します。」と言って出久はその場を後にした。

 すると物陰からピクシーボブが出て来た。

「アチキが見る限り、あの子は私たちよりも残酷な経験をしているみたいだったね。」

「ええ、そうね。」

「なにがあの子をそんな風にしたのかしら?」

 二人が疑問に思う中、物陰で耳を立てていた伊達は溜息を吐いた。

「いい加減振り切れよ、出久ちゃん。」

 伊達がその場を去ろうとすると相澤が立ちはだかった。

「さっきの緑谷の話、あんたは知っているのか?」

「まぁね。本人から聞いたから。」

「教えてくれないか?」

「・・・・・・・・・キツイぜ。」

「構わん。緑谷には助けられてばかりだ。あいつの痛みを知ろうとしないのは、合理的以前に、個人的に嫌なんでな。」

 相澤がそう言うと肩をすくめる。

「仕方ねぇな。人気のないところで話そうや。」

 二人は人気のないところへと向かった。

 



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59 襲撃、敵連合

 林間学校の宿泊施設から少し離れた所でヒーロー科の生徒たちは己の個性強化に徹していた。

 能力上の負荷がかかるものはそれ以上の負荷を自分に与えて持続時間の強化を行っていた。

 そして肉体面に影響する“個性”を持つものはそれ以上の負荷をかけて訓練をしていた。

「いくよ!」

 切島と尾白に対し出久はタカゴリワで二人に攻撃を仕掛けていた。

 物理的攻撃とエネルギー上の攻撃。この二つが彼らに過負荷を掛けて伸ばしていた。

 そんな光景に洸太は嫌気がさしていた。

 

 夕方になると自炊する時間になった。

 火をおこすのに個性を使おうとしたがそこはキャンプ経験のある出久がツタと枝を使って見事に火を起こした。

 短くとも過酷な生活の中で培った経験と知識が役立ったのである。

 そんな中洸汰は「下らない。」と言葉を発し自分だけの場所へと一人座っていた。

「失礼するよ。」

 そんな洸汰へ声を掛けて来たのはカレーを持ってきた出久であった。

「なんでお前・・・・!」

「足跡たどってね。」

「なっ!・・・・・おれのひみつきちから出て行け!」

「ひみつきち・・・・・・・・・ね。」

 周りには何もなく、人からも見つかりにくい場所だ。特に何かを持ってきているわけでもなく、そこには何もなかった。

「隣、ごめん。」

 出久はそう言うと座る。

「洸汰君は、両親があんなケガしているのが嫌なの?」

「お前なんで・・・・・・マンダレイ!」

「違うよ。あの時、あの場にいたんだ。」

「え・・・・・・」

 洸汰は出久の言葉に驚いた。

「あの時の僕は、力を使うことにためらった。けど、結局は使った。」

「・・・・・・・」

 洸汰は出久の喋ることを黙って聞く。

「最初はね、助けたいって気持ちがあった。でもこの超人社会じゃ許可なく使えば逮捕される。自分の人生を壊してしまう。そんなことに気を取られて、すぐに助けなかった。」

「・・・・・・・・・・後悔しているのか?」

「・・・・・・・・してるね。でも、もしかもなんて世界は無い。あるのは現実。いつも残酷なんだ。」

 出久は黄昏る。そんな出久に対し洸汰はなんて言っていいかわからなかった。

「多分だけど、君は分からないんじゃないかな?」

「・・・・・・・・・なんのことだ。」

「なんでそんなに力を振るってまで、死ぬかもしれないのにヒーローなんてしているのかってこと。」

「・・・・・・・・・ああ。」

 言い当てられたことに驚きながらも洸汰は答えた。

「無理もないよ。自分の身を犠牲にするだなんてお人好しの馬鹿くらいだって思うんだろうから。でも・・・・・・」

「なんだよ?」

「誰しも最初は憧れているからなんだよ。憧れて、夢になって、苦労して、実現して、また苦労する。当たり前なんだけど、誰も教えてくれない。中には夢がかなわない時だってある。」

 そう言って出久自分の手を見る。

「本当に辛い思いをするのだけは嫌なんだ。」

「お前にはあんのかよ、そういうのが?」

「・・・・・・あるよ。今でも鮮明に覚えてる。あの時の光景も、あの時の悲しみも、あの時のあの子の顔も。」

 出久は爪が喰い込まんばかりに拳を作る。

「僕にとって、誰かを救うことは自己満足だ。ただ誰かの命を救ってあの日の後悔をしたくないっていう自己満足。でもそれが結果として人を救うことに繋がる。まぁ、全部その行動が正しいとは言えないのかもしれないんだけどね。」

 そう言うと出久は自分の手の力を緩める。

「カレーここに置いておくよ。それとあんまり両親を心配させないで。たとえ君が両親を理解できなくても、君のことを二人は思っているんだ。」

 出久はそう言うと持ってきたカレーを置いてその場を後にした。

 

 翌日、個性を伸ばす訓練は続いたが、補修組は眠気と葛藤していた。

 補修になったのは切島、芦戸、砂籐、瀬呂、上鳴であった。

 実技試験の時に不合格だったためそうなった。ちなみにB組は物間一人と言う残念な結果であった。

(“個性”を伸ばす・・・・・・・・・確かにそれはいいかもしれない。けど、これじゃあだめだな。)

 “個性”を伸ばすことに出久は気になるところがあった。

 自分の”個性”が伸びただけでは意味がない。

 確かにA組は他のクラスと違って濃い経験をしてきた。故に“個性”の伸ばすだけでは足りないと思った。これからの超人社会においてオールマイトの存在が消えるのは目に見えていた。

 どんなスーパーヒーローでも老いと言う物には勝てない。いずれは限界が来る。

 誰かがその代わりになることも不可能だ。

 ”個性”を伸ばせば戦える時間も長くなるがそれだけではだめだと出久は思った。

 そして夜になり、締めの肝試しが行われることにあった。

 しかし残念かな補修組は参加できないことにあってしまった。

 しかし出久はそこで気づいた。

 A組は出久を含めて20人しかいない。つまり補修に5人連れていかれたということは一人余ってしまうのだが・・・・・・

「安心しなって。出久ちゃんの場合は不安が多いから俺が付き添う。」

『お願いします!』

 そう言ったのは麗日、拳籐、八百万、葉隠であった。

「ちょっ!みんな!」

「だって出久君いっつも血を吐くもん!」

「不安になんない方がおかしいって!」

「そうですわ!もっと自分を大事にしてください!」

「以下同文!」

 彼女たちに言われて出久は言い返せなくなった。

 そして肝試しが始まって12分が経った時、その異変は起こった。

「っ!伊達さん!」

「ああ、出久ちゃん!」

 二人はベルトを装着する。

 出久も伊達も戦場を経験したからわかる有毒ガスの独特の匂い。そして森の方から上がる黒煙。

 ピクシーボブが謎の力によって引き寄せられる。

「なっ!」

「「変身!!」」

【タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!】

【キャタピラレッグ!ドリルアーム!】

 オーズはバッタレッグを活かしてピクシーボブを回収し、キャタピラレッグで移動したバースは謎の襲撃犯にドリルアームのドリルを喰らわせる。

「っ!さすが雄英の先生かしら?対応が早いわね。」

「生憎俺は保険医だ。と言っても、戦うドクターだけどな!」

 バースはキャタピラレッグを使い襲撃犯を蹴り飛ばす。

「出久ちゃんこれはマズいよ。」

「わかってます。」

 みんなの目の前には敵がいた。

 



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60 対決、マスキュラー

 突如襲ってきた敵たち。他の場所でも敵たちは行動を起こしていた。

「出久ちゃん、どうする?」

「戦うしかないですね。飯田君、ここにいるメンバーを牽引して相澤先生がいる宿舎まで戻って!振り返らず突っ走って!」

「なっ!」

 出久の提案に飯田は驚き、物申した。

「なにを言っているんだ緑谷君!それだったら君も・・・・・」

「今はそんな悠長なこと言ってる暇じゃない!」

 臨戦体勢に入るオーズとバース。敵も戦闘態勢に入っていた。するとトカゲのような敵が横槍を入れる。

「まあ待てマグ姉ぇ。お前たちもだ。確かオーズと言ったか?ステイン様が生かしただけのことはあるな。仲間を助けるために自ら戦いに挑む。その精神は気に入った!」

 そう言うとトカゲの敵はナイフが大量に合わさった大剣を構える。

「・・・・・・マンダレイ、洸汰君の居場所は分かってますか?」

 その言葉に対しマンダレイは首を横に振った。

「・・・・・・・伊達さん。」

「わかってるって。ここは俺に任せてあの小僧を助けに行きな。今度はちゃんと手を届かせろよ。」

「はい!」

 オーズはそう言うと洸汰がいるひみつきちまで跳ぶ。

「逃がさないわ!」

 マグ姉はオーズを攻撃しようとするがトカゲの敵がナイフを投げて阻止した。

「待て。あいつはステイン様が生かした人物。全てはステイン様の意思!それに戦わない相手を襲うなど名折れだ。」

「・・・・・そうね。今は目の前のヒーローを倒しましょう!」

 

 洸汰だけが知っているひみつきち。見晴らしが良く、一本道であるそこは追い詰められれば最悪の場所であった。

「見晴らしがいいとこ探してみればどうも、資料になかった顔だ。」

 全身をフードで覆い、仮面をかぶった男に洸汰は恐怖していた。

「なぁ、ところでセンスのいい帽子だな。俺のダセェマスクと交換してくれよ。新参は納期がどうとかでこんなおもちゃのマスクしかもらえてねぇの。」

 洸汰は後ろを振り返り逃げようとする。

「あ、おい!」

 敵は足に力を籠め一気に洸汰を追い抜くと壁を蹴り方向を修正する。「景気づけに一杯やらせろよ!」

 腕からあふれる筋肉。その瞬間洸汰の脳裏にはニュースで知った情報がよぎった。

「お前・・・・・!」

 フードが取れ、現れた顔は左の顔を大きく傷を負った、かつてウォーターホースが深手を負って捕まえたマスキュラーの顔であった。

「パパッ・・・・・ママッ・・・・」

 洸汰は恐怖する。自分の父と母に深い深い傷を負わせた相手を目の前にして恐怖した。

 マスキュラーの拳が洸汰に当たりそうになった瞬間であった。

「させるかぁああああああああああああああああ!」

 バッタレッグで跳んできたオーズメダジャリバーを振るいマスキュラーを吹っ飛ばした。マスキュラーの拳は洸汰に当たることはなかった。

(何とか回避できたけど次はそうはいかない。洸太君を無事に助けれるかどうかすら・・・・・・・)

 オーズは洸汰の姿を見た。その顔は、恐怖に怯え泣いていた。

(・・・・・出来るかどうかじゃない、やるんだ!たとえ求められていなくても!)

 オーズの脳裏にはあの時泣いていた彼女の姿が重ね合わさった。

(僕がそうしたいから!後悔したくないから!)

 身勝手な理由ではあるが、それが出久が戦う理由であった。

「洸汰君、必ず僕が助けるから!」

 オーズはメダルをチェンジする。

【サイ!ゴリラ!ゾウ!サゴーゾ!サゴーゾ!】

 サゴーゾコンボに変身したオーズは構える。

「はっ!姿が変わったところで俺に勝てるわけねぇだろ!」

 マスキュラーはオーズに向かいジャンプし、増量した筋肉で殴り掛かる。

「うぉおおおおおおおお!」

 ゾウレッグの脚で強く踏ん張り、ゴリラアームで力いっぱい殴る。

 互いの拳がぶつかり合うがオーズが押されていた。

(なんて力だ!)

 しかしそこでオーズは後ろには退かなかった。

「喰らえ!」

 片腕だけゴリバゴーンを放ち距離を取るともう片方のゴリバゴーンも放った。

「ぬおっ!」

(逃さない!)

 オーズは一気に接近しサイヘッドとゴリラアームのコンボで追撃にかかる。

 しかし、その攻撃はマスキュラーの増量された筋肉によって防がれてしまう。

「甘いんだよ!」

「がぁっ!」

 腹部へのアッパースイングがきれいに入りオーズは吹っ飛ばされてしまう。

「ぐ・・・・・・!」

 オーズは殴られた箇所を抑えながら片膝立ちになる。

 マスキュラーは不敵な笑みを浮かべながら近づいてくるが、その時小さな石が当てられた。

 当てたのは涙を流し、恐怖に怯えている洸汰であった。

「お前が・・・・・パパとママにあんな酷い怪我を・・・・・・」

「パパとママ?お前ウォーターホースの子供か!あっはっはっはっはっは!こいつは縁があるな!お前のパパとママは無謀なことをしてああなったんだ!自業自得だろ!」

 その瞬間、出久の中の何かがはじけ飛び、胸からは三枚のメダルが飛び出た。

「なんだ?こんな小さいの・・・・・」

 マスキュラーはあしらおうとした瞬間であった。三枚のメダルはマスキュラーを弾き飛ばした。

「うぉっ!」

 マスキュラーは後ろへ跳ばされるがなんとか着地する。

 三枚のメダルはオーズの周りを旋回していた。

「僕はこれまで、怒ることが嫌だった。感情的で周りが見えなくなって、取り返しのつかないことになるかもしれないから。・・・・・・でも今は違う!怒りがいる!お前を完膚なきまでに倒す怒りが!ウォーターホースを傷つけ、この子から笑顔を奪ったお前を僕は許さない!」

 三枚のメダルは自動的にオーズドライバーに装填される。オーズはオースキャナーを手に取り叫ぶ。

「変身!」

【プテラ!トリケラ!ティラノ!プ・ト・ティラ~ノザウルス!】

 オーズはプトティラコンボに変身した。

「へ~、その姿、制御できないんだろ?馬鹿じゃねーの?さっさと死んじまいな!」

 マスキュラーの拳がオーズに向け放たれる。しかしオーズはそこから動くこともなく片手でその攻撃を受け止める。

「なにっ!ぐ・・・・・・・・・・ぐぉおおおおおおおおおお!」

 更に筋肉を増量し力で押そうとするが1mmも動かなかった。

「僕は今すこぶるこの力を制御できてる。お前に感謝する・・・・・よ!」

 オーズは片手でマスキュラーを弾き飛ばした。マスキュラーは砂埃を上げながら倒れる。

「はぁあああああ!」

 オーズは地面に手を突っ込むとメダガブリューを手に取り、セルメダルを五枚投入する。

【ゴックン!】

【プ・ト・ティラーノ・ヒッサ~ツ!】

 メダガブリューをアックスモードにし、そのままマスキュラーへ振り下ろす。

「クソッたれ!」

 マスキュラーは両腕を組んで防ごうとする。しかしメダガブリューのエネルギーはマスキュラーの予想を大きく上回っていた。

「くっ・・・・・・・なんでだよ・・・・・・・せっかく脱獄して復讐できると思ったのに!」

「お前みたいなやつを、僕が許さないからだ!今度は永遠に投獄されてろ!このゴミ屑野郎!」

 その瞬間、メダガブリューが振り下ろされた。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 オーズの雄叫びが響き渡った。

 叫び終わり息を整えるオーズに洸汰は聞いた。

「なんで・・・・・・なにもしらないくせに・・・・・・・・」

「君が辛かったのは分かるよ。」

「っ!?」

「いつも元気な姿で帰ってきてくれるご両親が、あんなケガをしてまでヒーローするのを見るのが辛かったんだよね?でも、わかってほしい。たとえ誰か一人でも理解してくれれば、その人は救われるんだ。

 目の前自分の手が届くのだったら、僕たちは手を伸ばす。それが、ヒーローってものだから。」

 



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61 敵の目的

 オーズは倒れそうになるが踏みとどまった。

「お、おい!」

「大丈夫。(けどコンボはキツイ・・・・・・でも早く洸汰君を合宿場まで連れて行って保護してもらわないと・・・・・)」

 出久は平静を装っているがコンボは体に堪えていた

「この状況で君の”個性“が必要なんだ。ウォーターホースはケガの影響であまり動けない。君の力を貸して欲しいんだ。助けるために。出来る?」

「・・・・・うん。」

 オーズの言葉に洸汰は頷いた。オーズは出久を抱き上げ、合宿場の方へとエターナルフィンを展開して羽ばたく。

「おい、あそこ!」

 洸汰が何かに気づきオーズもその方向を見ると走っている相澤の姿があった。

「降りるよ!」

「うん!」

 オーズは相澤の前に降りる。

「緑谷、正気なのか!」

「大丈夫です。それよりも洸太君をお願いします。」

「わかった。それとマンダレイにこの二つを伝えろ。」

 オーズは相澤からある二つの言葉を伝えるように言われた。どちらの言葉にオーズとしてではなく、出久として驚いた。

「じゃあ行ってきます!」

 オーズは地面からメダガブリューを取り出しエターナルフィンを羽ばたかせマンダレイの下へと向かった。

「ぐっ!結構堪える・・・・・・・でも助けないと!」

 オーズは体の痛みに耐えマンダレイの下へと向かう。

 マンダレイたちが戦っている場所が見えて来た。

「喰らっとけ!」

 オーズのドロップキックがトカゲの敵に武器に炸裂し、くっ付いていた大剣をバラバラにする。

【ゴックン!】

【プ・ト・ティラーノ!ヒッサツ!!】

「吹っ飛べ!」

 メダガブリューをバズーカモードにしてストレインドゥームを放つ。

「なんだとぉおおおおおおおお!」

 敵は森の方へと吹っ飛ばされた。

「大丈夫なの、出久ちゃん!」

 バースがオーズ駆け寄ってくる。オーズは変身を解除する。

「何とか・・・・・・・でも流石に今はまだ無理できないんで。」

 出久の下にマンダレイが駆け寄ってくる。

「君、大丈夫?」

「ええ。それと洸汰君は相澤先生に預けてきました。」

 その言葉を聞いてマンダレイはホッとする。

「それと相澤先生からの伝言です。イレイザーヘッドの名のもとに戦闘を許可する。けどこれはあくまで無茶な戦闘を行わないという意味を履き違えないようにだと思います。そしてもう一つ、敵の目的はかっちゃん、爆豪くんです!」

 出久の言葉にマンダレイは「わかったわ!」と答えるとテレパスで全員に伝える。

(あの子が向かった方向には確か、マスキュラーがいたはず!あの暴れん坊を倒したというの!)

 マグネは出久に警戒し、倒そうと構える。

「そんなことはさせねーよ。」

「っ!?」

 マグネの心を読んでいたのかバースが答えた。

「出久ちゃんが無茶したんだ。俺もイッチョ無茶しますか!」

 バースはバースドライバーにセルメダルを投入しダイヤルを回す。

【クレーンアーム!】

【ショベルアーム!】

【ドリルアーム!】

【キャタピラレッグ!】

【カッターウィング!】

【バース・デイ!】

 バースは武装全展開状態のバース・デイになる。

「出久ちゃん、今の内に友達のところまで行きな!絶対戻ってくるんだぞ!」

「はい!」

 出久はタカカンドロイドを起動させ走り出す。

「ちょっと!彼はまだ子供なのよ!」

「大丈夫だよ。それに、いつまでも子供は子供じゃない。」

 そう言うバースの背中はどこか安心できるものがあった。

 



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62 救援の破壊者

 出久が爆豪を探しに行っている頃、爆豪は轟と一緒に負傷者を背負いながら突如現れた敵と交戦していた。

 轟が氷の壁を作り攻撃を防ぐ。

「どうやら敵の狙いはお前のようだぞ。」

「知るか!んなこと!」

 二人が交戦している敵はムーンフィッシュと言う死刑囚であった。相手を無慈悲に切り刻むことに快感を覚えた異常犯罪者である。

「あいつ、地形を上手く利用してやがる。」

「わかってる!んなこと!・・・・・・だがこっちは詰まれてるぞ。」

 爆豪も状況の分析は出来ていた。相手は歯を自在に変化させて攻撃する“個性”を持っている。そのため下手に近づけない上に近くの森にはガスが溜まっている。逃げようとしても呼吸が出来ずに死ぬ可能性がある。炎も爆破も使えない。敵に上手い具合に利用されている状況である。

「どうしたもんか・・・・・・」

 

 そのころ出久は森の中を走っていた。

(タカカンドロイドが向かっている場所は二つに一つ。かっちゃんのところか・・・・・

もしくは他のクラスメイトが危機的状況に陥っている状況だ。前者の方がいいんだけど・・・・・)

「避けろ、緑谷!」

「っ!?」

 突如聞こえてきた声に出久は反応するがそれよりも先に働いた直感が体を動かし、突如迫ってきた黒い手の攻撃を回避した。

「い、一体これは・・・・・・」

「無事か、緑谷!」

 声を掛けて来たのは片方の複製腕から血を垂れ流している障子であった。

「障子君、その腕・・・・・・」

「俺は大丈夫だ。だが今はそれどころじゃない。」

 障子はそう言うと出久を背負い走り始める。

「障子君、僕は大丈夫だから!」

「お前にはいつも助けてもらってばかりだ!それにお前が倒れたら俺たちにとっては大きな損害だ。轟や爆豪も実力があるのはみんな知っているが、お前は飛びぬけている。」

 まさかそんなに思われているとは出久も思っていなかった。

「それよりもあれって・・・・・・」

「マンダレイのテレパスがあって直後に周囲を索敵していた時に複製腕を切り落とされた。俺の複製腕は複製部位を複製できる。だがそれを常闇は知らなかった。そのせいでアイツのダークシャドウが暴走したんだ。」

(そう言えば常闇君の個性は闇がある場所では制御できないって言ってた。けど、本当にそうなのかな?もし僕の予想が当たってたら・・・・・・・)

 障子に背負われながら出久は考える。

「障子君、もしかっちゃんが襲われているとしたら常闇君の今の状態で敵にぶつけてみようと思う。確かかっちゃんは轟君と一緒にペアを組んでた。だったら光を使って黒影(ダークシャドウ)を抑え込める。この賭けに乗ってみる?」

「・・・・・・・・・いいだろう。悪乗りするのも悪くないかもな。」

 障子はそう言うとタカカンドロイドが示す方向に走り出した。

 

 一方その頃八百万は突如襲ってきた脳無によって頭から血を流していた。

(う、動けない・・・・・・・このままでは・・・・・・)

 脳無がチェーンソーを八百万に振り下ろす。

(すみません、出久さん・・・・・・)

 八百万は目を瞑る。

 その時エンジン音と何かがぶつかる音が聞こえて来た。チェーンソーとは違うエンジン音であった。

「諦める余裕があるなら早く立ち上がれ。」

 八百万が目を開けるとそこには一人の男がバイクから降りていた。マゼンダのシャツを下に黒いコートを羽織っている。

「あ、あなたは一体・・・・・・」

「俺か?俺は世界の破壊者だ。」

 男はそう言うと腰にベルトを装着し展開するとカードを一枚取り出す。

「変身!」

【KAMENRIDE!】

【DECADE!】

 九つの灰色の影が一つとなり、マゼンダとホワイトボディに黒のラインや装飾がある仮面ライダー、仮面ライダーディケイドに変身した。

「仮面、ライダー?」

「そう言うことだ。守ってやるからそこで見ていろ。」

 



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63 暴走する闇

 障子に背負われて出久は暴走状態の常闇から逃げていた。

「緑谷、さっきの作戦だが悪乗りするべきではなかったと後悔している!」

「頑張って、障子君!」

 背負われている出久は障子を応援するしか手段がなかった。

 すると何かが壊れるところが二人の耳に入った。

「障子君!あそこに行って!」

「わかった!」

 出久たちは音がする方へ行くとそこには敵と攻防している爆豪と轟の姿があった。

「爆豪、轟!どっちでもいいからこいつを止めてくれ!」

 出久を背負いながら障子を二人にそう言うと後ろから黒影(ダークシャドウ)を暴走させた常闇が来た。

「アイツの個性、暴走してるのか?仕方ねぇ・・・・・」

 轟が炎を出して常闇を止めようとするが爆豪が手を出す。

「待て。あいつをぶつけてみよう・・・・・」

 爆豪は自分たちが苦戦している相手に対し常闇がどう倒すか興味があった。

 ムーンフィッシュは歯を伸ばして黒影(ダークシャドウ)を襲うが襲っている場所は陰。本人にはダメージが無いため意味がなかった。

 黒影(ダークシャドウ)はムーンフィッシュの歯の刃を折り、そしてムーンフィッシュを掴むと木々をなぎ倒しながら遠くへと投げ飛ばす。

「まだ暴れたりない!」

 黒影(ダークシャドウ)は暴走が止まらず更に暴れようとする。

「変身!」

【ライオン!トラ!バッタ!】

 出久はラトラバに変身するとライオンヘッドのライオネルフラッシュ、爆豪の爆発、轟の炎を使って黒影(ダークシャドウ)を抑え込める。

「キャン!」

 ダークシャドウは可愛い悲鳴を上げて常闇の中へと戻る。

「すまない。障子の腕が飛ばされた瞬間、怒りに任せて黒影(ダークシャドウ)を解き放ってしまった。闇の深さ・・・・そして俺の怒りが影響して奴の凶暴性に拍車をかけた。が、今はそれどころじゃないって様子だな。」

「うん。」

 出久は変身を解除する。

「敵の狙いが勝っちゃんってのが分かった。」

「どういうことだ?なぜ爆豪を?」

「わからない。けどもしかしたら・・・・・・」

「もしかしたらなんだよ?」

 轟が尋ねると出久は答えた。

「かっちゃんを敵連合に引き込むつもりなのかもしれない。まだ敵の目的が分からない以上、憶測は一旦やめて施設に向かおう。マンダレイたちが広場の方で交戦中だから僕たちは迂回していこう。途中で他の人とも合流してね。」

「わかった。緑谷は大丈夫なのか?」

「うん、大丈夫。」

「そうか・・・・・・・・無理だけはするなよ。」

 みんなも轟の言葉に頷き爆豪を中心に置いて歩き始める。

 

 一方その頃ディケイドは脳無と交戦をしていた。

「流石にこれだけ木があると邪魔だな。」

 ディケイドはそう言うとディメンションオーラを発動させ自身と一緒に脳無を広い場所へと移動させる。

「な、なにっ!?」

 急に表れたディケイドと脳無に驚くマンダレイ達。しかしディケイドは気にすることなく対処する。

「この世界のヒーローか。ん?仮面ライダーもいるな。ま、別いいがな。」

 ディケイドはライドブッカーから一枚のカードを取り出す。

「変身!」

【KAMEN RIDE! KABUTO!】

 ディケイドはカブトに変身する。

「姿が変わった!出久ちゃんとは違う変身!」

 バースはディケイドの能力に驚く。

【ATTACK RIDE! CLOCK UP!】

 その瞬間、目にもとまらぬ速さで脳無に攻撃を与えていくディケイド。脳無は反撃しようとチェーンソーを持っている手を振るうがディケイドの今の状態にはかすりもしなかった。

「これで決めさせてもらうぞ。」

【FINAL ATTACK RIDE! KA・KA・KA・KABUTO!】

 ディケイドの左足にエネルギーがチャージされ、必殺のライダーキックが脳無に炸裂する。

 脳無は声にならない悲鳴を上げて遠くへと跳ばされる。木々をなぎ倒しながら吹っ飛ばされ、止まった時には再起不能状態になったまま動かなくなっていた。

「さて、うるさい奴は片づけた。」

 ディケイドはカブトからディケイドの姿へと戻る。

「どうする、マグ姉?」

「撤退した方がいいわね。あいつが倒された以上、あたしたちには勝てる見込みは無いわ。それにあいつらが仕事をやってくれてるでしょうし。」

 マグネはそう言うとスモークと閃光弾を使ってその場からスピナーと共に撤退した。

 

 その頃出久たちは麗日たちと合流して施設へと向かっていた。

 しかし麗日と梅雨ちゃんたちが爆豪と常闇がいないことに気づいた。

 油断なんてしていなかった。皆の意識が麗日たちに向いた瞬間を狙って仮面の敵は手元にビー玉上の何かを手にして木の上から出久たちを見下ろしていた。

「彼らなら、()()()()()()()()()()()。こいつらはヒーロー側(そっち)じゃなくてこっちで輝けるんだよ。」

「っ――――――!返せ!」

 



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64 奪還

長く待たせてしまってすみません。
なんと言うかギアが入らなかったって感じと言っていいのでしょうか?
しばらく別サイトで脱線して書いてたんですけど、それでも早く進めようと思って書きました。
というか・・・・・展開全く考えてないという現実。
しかし、頑張って考えようと思っています。
そして一番くじをしてきてラストワンのオーズ手に入れました。
一言・・・・・・・・デカイ。とにかくデカイ。


 気づけば木の上にいる仮面を被った敵が何らかの方法で爆豪と常闇を捉えていた。

 手には何か小さなビー玉のようなものが二つあった。

「返せよ!」

「返せ?妙な話だぜ。爆豪君は誰の物でもねぇ。彼は彼自身のモノだぞ!!エゴイストめ!!」

 出久は障子から降りると敵に向かう。

「緑谷、退け!」

 轟はそう言うと右の氷を使って捉えようとするが登っている木に到達する前に敵は跳んで回避する。

「それだけじゃないよ、と道を示してあげるだけ。今の子たちは価値観に道を選ばされている。」

 敵は空中を舞いながら悠長に喋る。

「戦いながら喋ることに慣れているってことは、エンターテイナーってところだろうね。」

「おや、君は観察眼が鋭いね。」

 敵は出久を誉める。

「常闇君はついでにもらっちゃったよ。ムーンフィッシュは「歯刃」の男でな、あれでも死刑判決控訴棄却されるような生粋の殺人鬼だ。それを一方的に蹂躙する暴力性、彼も良い

と判断した。」

 敵はそう言うと握りしめる。

そして通信を入れる。

「開闢行動隊!目標回収達成だ!短い間だったがこれにて幕引き!!予定道りこの通信後五分以内に“回収地点”へ向かえ!」

 敵はそう言うと出久たちの前から遠のいて行った。

 

 その頃八百万たちの方ではディケイドが脳無と戦っていた。

「改造されたとはいえ元は人間。もう戻れないなら俺が破壊してやる。」

 脳無のチェーンソーの攻撃をディケイドはかわしていた。

「俺は世界の破壊者だ。壊してやるよ。」

 ライドブッカーから一枚のカードを取り出す。

【ATTACK RIDE CLOCK UP!】

 八百万たちの目の前でディケイドは消えた。その直後、一瞬にして複数の残像が見え、脳無を攻撃する。

【FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!】

 エネルギー状のカードがいくつも脳無の方から出現し、そこを何かが目にも留まらぬ速さで擦り抜けるともう無に風穴を開けて爆発を起こす。

 脳無は体を貫かれて機能を停止する。

 クロックアップの効果が切れたディケイドは変身を解除する。

「お前たち、大丈夫か?」

 仮面ライダーディケイドである門矢士は八百万たちに近づく。

「あ、あんた一体何者だよ?」

 泡瀬洋雪は士に問いかける。

「俺か?世界の破壊者だ。」

「世界の・・・・・・・破壊者?」

 泡瀬は士の言っている意味が分からなかった。

「それより大丈夫かと聞いているんだ。どうなんだ?」

「あ、ああ・・・・・俺は大丈夫。八百万は?」

「だ、大丈夫です・・・・・」

 二人は戸惑いながらも士の問いに答える。

「じゃあ俺はここで失礼するぞ。」

 そう言うと士はディメンションオーラの向こうへと消えようとするが八百万が呼び止める。

「お待ちください!なぜ出久さんと同じような力をあなたも持っているのですか!」

 その問いに士は振り返ることなく答えた。

「なんで持っているのかは俺自身もよくわかっていない。無我夢中で気づいたら手にしていた。誰だってそうだ。だがな、力を持っていようが問題はそこじゃない。その力をどう使うかのよってそいつがどういう奴かは決まるものだ。誰かが決めた正義や悪なんかは、結果論でしかない。忘れるな。この世に正しい正義も悪もない。自分が信じる道、それがお前たちの正義だってことをな。」

 そう言うと士は差ディメンションオーラの向こうへと消えた。

 

 一方出久は消えて行った方を見るとベルトを装着し、プトティラコンボのメダルをセットする。

「逃がすものか!」

【プテラ!トリケラ!ティラノ!】

【プ・ト・ティラ~ノザウルス!】

 出久は変身するとエターナルフィンを展開して一気に飛翔する。

「緑谷!麗日、俺と障子をお前の個性で軽くして緑谷が飛んで行った方向へ蛙吹が投げてくれ!」

「わ、わかった。」

 麗日は自身の“個性”で二人を軽くする。そして二人を蛙吹が舌を使ってしっかりと固定する。

「二人とも、緑谷ちゃんたちをお願いね。」

 蛙吹の言葉に二人は頷くと投げ飛ばした。

 

 出久たちの前から姿を消した敵、Mr.コンプレスは後ろから来る音が気になって後ろを振り向いた。するとそこにはプトティラコンボで来ているオーズの姿があった。

「なっ!?(おいおいおい!あの姿って確か絶対遭遇するなって言われていた姿じゃねぇか!)」

 Mr.コンプレスは逃げようと考えるが時すでに遅く、オーズのティラノレッグで体をとらえられ、地面へと真っ逆さまに落ちていた。そして後ろから轟達が追撃し、仲良くMr.コンプレスを地面へと叩きつけた。

 オーズたちの目の前には既に集まっている敵連合の姿があった。

 



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65 敗北

 集合場所に集まって敵連合はオーズたちの登場に戸惑っていた。

「おい!こいつら知ってるぜ!誰だ!?」

「下がっていろ、Mr.」

「っ!わかった!」

 荼毘の言葉にMr.コンプレックスは答えた直後、炎が放たれる。

「うぅ・・・・うぉおおおおおおおおおお!」

 オーズはエターナルフェザーを大きく羽ばたかせ冷気をぶつける。荼毘の炎はオーズの冷気によって打ち消されてしまう。

「やるじゃねぇか!調子に乗るんじゃねぇ!」

 トゥワイスが接近しメジャーの武器で斬りにかかってくるがオーズのティラノディバイダ―で吹っ飛ばされる。

「ぐぁ!」

 すかさずトガが注射器上のナイフを投げつけてくるがオーズはそれを片手で掴むと振り回す。

「ちょっと!」

 流石の圧倒ぶりにトガも驚かずにはいられなかった。

(あいつは手品師って言ってた。だったら隠すのはポケットじゃない!)

 プトティラの力のかろうじて制御しながらも、オーズは冷静に考えてていた。

 自らを元手品師と称した彼だからこそだ。

 超人社会であるからこそ昔の手品は廃れてしまっているが、まだ発言して間もなかったころは手品で通せていた話である。

「ふっ!」

 オーズはメダガブリューを地面から引き抜くと一気に地面へ叩き付ける。

「ぬぉっ!」

 Mr.コンプレックスは体勢を崩す。

「障子君!」

「任せろ!」

 障子はMr.コンプレックスに近づきポケットの中にあるビー玉を回収する。

「回収したぞ!」

「そっちじゃない!」

 オーズの言葉に轟と障子は困惑する。

「お見通しってわけだね。どうも性分でね。見せたいものがあるときは―――――」

 Mr.コンプレックスはマスクを外し口の中から二つのビー玉を見せる。

「見せたくないものがあるときでね。」

【ゴックン!】

 その直後であった。オーズがメダガブリューにセルメダルを投入しバズーカモードに切り替える。

【プ・ト・ティラーノ・ヒッサツ!】

「そこだ!」

 オーズはMr.コンプレックスの足元にストレイトドゥームを放つ。

「おいおい!正気かよ!」

 Mr.コンプレックスは驚き口から二つのビー玉を出してしまう。

 そこへ轟が駆け出し回収しようとする。

 しかし、回収できたのは片方だけであった。

 黒霧のワープによって敵連合は撤退をはじめ、二つの内の一つは荼毘の手にあった。

「悲しいな、轟焦凍。」

 荼毘は轟を見下ろしながらそう言った。

「確認だ。“解除”しろ。」

「たく、なんだよ今の攻撃。俺のショーが台無しだ。」

 Mr.コンプレックスが指を鳴らすと個性によって囚われていた二人が解放される。

 轟が手にしたのは常闇の方であった。

 そして敵連合の手には爆豪がいた。

「問題無し。」

「かっちゃん!」

 ワープに引きずり込まれ、首を掴まれている爆豪に駆け寄ろうとするがコンボの負荷によって動けなくなっていた。

「来んな、デク!」

 その直後、爆豪はワープの先に消えていった。

「ちく・・・・・・・・しょう・・・・・・・」

 オーズは倒れると共に強制的に変身を解除され、口から血を流していた。

 この日、出久たちは敗北した。

 

「さて、この世界の馬鹿どもにお灸を添える時のセリフでも考えておくか。」

 燃える森を見下ろしながら士はカメラにその光景を収める。

 



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66 反撃への思い

えー、個人的なことをここで。
今月二日から再就職をしました。
決まってよかったです。
新しい分野なので頑張らないといけませんね。
入った会社はすごく良心的って思いました。
そのおかげで小説の進みが早くなってます。
何もしないだらけた生活よりかはこっちの方がいいですね。
社会人として再び頑張ります。



 林間学校襲撃事件の翌日、ニュースでは大々的に報道されていた。

 雄英高校への二度にわたる襲撃にマスコミはヤジを飛ばしていた。雄英を責め立てる。

 マスコミと言うのはいざ大きな事件を目に付けるとそこからさらに過去を探り掘り下げる。

 人のことなんて考えず攻め立て、高視聴率や取り高のためだけにやる。マナーを守らないこともあり、迷惑をこうむる。

 聞くところによれば北海道では取材の車が道路を占拠、食事を媚びる、宿の占領、規制線を突破、さらに取材陣の過度な取材によって助けられると言った不祥事が多く取り上げられている。

 またマスコミが原因で立てこもり犯に情報が伝わり、人の命が奪われそうになった危機もある。

 迷惑ばかりを掛けるとは言わないが、良心で配慮して欲しいものもある。

 更にその翌日、出久は医者から注意されていた。

「緑谷君、今回君の“個性”のコンボ?か何かよくわからないけど聞いたよ。肉体への負担が君の場合大きすぎる。普通の人間でも相当なものだ。これ以上は正直医者としてはオススメできない。出来れば乱用しない方がいい。それとこれは医者としてではなく、私個人としての意見なのだが、家族以外に君の病気のことは知っている人はいるかい?」

「伊達さんと幼馴染と同級生で一人、あとは先生たちです。」

「そうか・・・・・・・・君のお見舞いに来た彼女たちを見たのだが、もう少し周りに心を許してはどうかな?」

「え?」

「君は一人で何でも背負い込みすぎている傾向がある。そう言う人間は真面目な反面、責任感を感じやすい。背負うのは一人じゃなくてもいい。私も医者と言う仕事をしている以上、人の命を背負うことがある。誰かがミスをしたから誰かを責めるというのは違うと言える。だから君ももう少しその背中に背負っているのを下ろしてもいい。私はそう思うんだ。後は君が決めることだ。」

 医者はそう言うと出久の肩をポンポンと叩いた。

 

 出久が病室に戻ると爆豪たちと麗日たちが病室にいた。

「緑谷、大丈夫か?」

 切島が心配して声を掛ける。

「うん、検査上は異常ないって。」

「そっか、良かったな。」

 切島はそう言うと出久の肩に手を置く。

「なぁ、緑谷。ちょっと聞いてもいいか?」

「なに?」

 切島が話しを急に切り出す。

「もし爆豪を助けられるって言ったら、お前はどうする?」

 その言葉にその場にいた全員が驚いた。

「待て切島、どういうことだ?」

 常闇が代表して聞く。

「実はよ、八百万がピンクのヒーローに助けてもらったんだよ。その時の敵がUSJを襲撃した脳無って言ったか?そいつに襲われたんだ。そいつは倒された後敵連合に回収されたんだがよ、発信機を取り付けたそうなんだよ。警察やオールマイトの方には追跡装置を渡したんだ。それで八百万が同じのを作ってくれたんだ。」

 切島はそう言うとポケットから追跡装置を取り出す。

「だからよ、助けに行かないか?」

 切島の衝撃な提案に最初に声を上げたのは飯田であった。

「ふ、ふざけるんじゃない!オールマイトやプロに任せるべきだ!俺たちが出る場面じゃない、バカ者!」

「んなの分かってんだよ!けどな、USJのときでも、俺たちはやられっぱなしだったじゃねぇか!頭でわかっていてもよ!」

 切島はそう言うと自分の胸を抑える。

「ココがよ、助けてーって言ってんだよ!」

 どちらも正しかった。

 出久はそう思った。

 自分にも助けられなかったあの日があるからこそ、切島の気持ちは分かる。

「切島君も飯田君も、どっちも正しいよ。けど、僕はそれに正しい答えを出せない。」

「緑谷・・・・・・」

 上鳴が声を出す。

「人ってさ、自分が正しいと思ったらどこまでも残酷になれちゃうんだよ。正義と言っても、どこまでも残酷に。だからこそ切島君の意見には間違いがあると言える。」

「なら―――」

「でもね、飯田君の方にもそれは言えるんだ。」

 飯田は出久の発言に驚いた。

「な、なぜそう言えるんだ!規律を重んじることが正しいのではないのか!」

「そうとも言える。けど決められたルールに縛られて、目の前の命を助けないとその人はきっと後悔する。そんなに規律を守りたいんだったらロボットにでも守らせればいい。ヒーローなんていらない。人間は不完全で、あいまいで、おかしい存在だ。

 けど不完全だからこそ、誰かの助けを必要とし、誰かを助けることが出来るともいえるんだ。」

 出久がそう話すと伊達が入って来た。

「おーい、ガキども。大声出しすぎだ。」

 伊達はそう言うと切島の頭に手を置く。

「ま、お前さんたちが何を言ってたかはよく聞こえてねーからわかんねーけどよ、一回家に帰って落ち着け。夜はおせーから出るんじゃねーぞ。じゃ、解散解散!」

 伊達が手を叩き病室から出るように促し、一同解散した。

「んで、どうするよ出久ちゃん?」

「・・・・・・・わかっている癖に聞くんですね。」

「まぁな。てか本気かよ?」

 伊達は出久の方を向く。

「昔っから医者の忠告を聞かねーよな、出久ちゃんはよ。」

「伊達さんがそれを言いますか?脳に銃弾が入った状態で戦っておいて。」

「こりゃまた一本取られたわ!・・・・・・・・・・けどわかってんのかよ。いくら紫のメダルやアンコのメダルのおかげとはいえど、病気が治ったわけじゃねぇんだぞ。」

「ええ。それとアンコじゃなくてアンクです。」

「今はいいじゃねぇかよ。本気なんだな?」

「はい。」

 出久はまっすぐ伊達を見て言った。

「・・・・・・・・・・はぁー。」

 伊達は下を向きながら溜息を吐く。

「仕方ねぇな。こうなったらクレーンアーム使っても曲げねーのが出久ちゃんだ。いいぜ、俺も動いてやるよ。医者としてな。」

 伊達はそう言うと出久の頭に手を置いた。

(もしもの時は、俺が助けてやらねーとな。)

 出久が自ら死んでいく行動に伊達は不安があった。

 



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67 反撃に向かう

 夜、病院から出久と伊達は抜け出そうとしていた。

「ま、こうなるのは分かってたな。」

 二人の目の前には轟と切島、そして八百万の姿があった。

「ごめんね、百ちゃん。それを渡して帰ってもらえる。」

「それはできませんわ、出久さん。どうして、お二人だけで行こうとしているんですか!」

「そうだぜ!俺も一緒に行くぜ!」

「緑谷、お前の気持ちはありがたいが、俺たちもヒーローのはしくれだ。一緒に行かせてくれ。」

 三人の意志は固かった。しかしその言葉に対し伊達は言った。

「それはダメだよ、皆。君たちはまだ資格を持っていない。人を救うためとはいえどマスコミとかはそこに付け入る。何より、激しい戦いに入ったら死ぬかもしれない。だから連れていけない。どれと飯田ちゃん、そこに隠れてないで出てきたらどうだい?」

 伊達が病院の入り口の方に隠れている飯田に声を掛ける。

「気づいてたんですか?」

「うん。出る前からこの子たちが見てくれていたからね。」

 出久の手の平にバッタカンドロイドが乗る。

「なるほど。伊達宣氏の言い分はわかります。けど緑谷君、なんで君まで動こうとしているんだ!」

 飯田は出久に近づく。

「僕が道を踏み外しそうになった時、君は止めてくれたじゃないか!なのに僕の気持ちはどうでもいいって言うのか!」

「飯田君、僕はーーー」

 そこから先を言おうとすると飯田は出久を殴った。

「僕だって悔しいさ!だが僕が君たちを心配するのはどうだっていいって言うのか!僕は学級院長だ!クラスメイトを心配するんだ!」

 感情を爆発させる飯田に伊達は肩に手を置く。

「飯田ちゃん、言いたいことは分かるがよ、やりすぎだ!」

 そう言って伊達は飯田を殴った。

「がっ!」

 飯田は地面に倒れる。

「体罰とかっていうんじゃねーぞ。出久ちゃんは手を出してねーのに殴ったんだから御相子ってことにしてくれや。それにな、お前たちと出久ちゃんとじゃいろいろ違うんだよ。里中ちゃん、後頼むわ。」

「わかりました。」

 その直後、切島達三人はその場に倒れる。

「っ!何をしたんですか!」

「眠ってもらっているだけです。」

 そう言って闇から姿を現したのは鴻上会長に秘書の里中であった。

「飯田さん、あなたのまっすぐな心は誇るべき者なのかもしれませんが、ルールに従順すぎるのは問題があります。正義感が強すぎれば自然と敵を作ります。少しは自分の行動を顧みてください。世の中、正しいことが全て報われるわけではないので。」

 里中はそう言うと麻酔銃を撃ち、飯田を眠らせる。

「緑谷・・・・・・・君・・・・・・・」

 薄れゆく意識の中、飯田は起き上がろうとしている出久を見ていた。

 そして飯田の意識はそこで途絶えた。

「大丈夫ですか、緑谷さん?」

「ありがとうございます、里中さん。」

 出久は里中の手を取り立ち上がる。

「しかし、まぁなんとも面倒な人ですね、彼。伊達さんが一発入れなかったら私が入れてました。」

「里中ちゃんの一発は俺より鋭そうだから幸運かもな。んじゃあとの事よろしく頼むわ。」

「わかりました。会長からは出張の特別給料をもらっているので。それと緑谷さん、伊達さん。気を付けてください。」

 そう言うと里中は伊達に八百万が作り出した追跡装置を投げ渡す。

「おう。」

「行ってきます。」

 二人はそう言うと病院を後にした。

「・・・・・・・・・・・やっぱり一発入れましょうか。個人的に。」

 里中はそう言うと飯田の股間に目掛けて鋭い蹴りを喰らわした。

 しばらくして目が覚めた飯田が声にならない悲鳴を上げたかは定かではないが、幸いなことに潰れなかったとだけ言っておこう。

 



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68 雄英記者会見

 出久と伊達は神奈川県横浜市神野区に向かっていた。

「出久ちゃん、仮に自分が敵のボスだとして最強の人形を手元に置いておくか?」

「それは難しいですね。作るところと本拠地は別にしておきます。それに敵にはワープの個性を持っている敵がいます。」

「そりゃそうだな。まず出久ちゃんだったらどうする?制圧するとして。」

「だったらまずは移動に使う手段を破壊して次にボスを制圧、次に一番高い戦力を有している敵を倒します。」

「それが定石だろうね。それじゃぁ出久ちゃんはそっちに向かうかい?」

「そっちはプロにお任せします。僕たちは敵の戦力を大きく削ぎます。脳無のいいところは命令が無ければ動かないということです。」

「けど出久ちゃん、わかっていると思うけど相手は元は人間だよ。」

「・・・・・・・・・・・・」

 伊達の言葉に出久は黙ってしまう。

「・・・・・・・無理に背負おうとはしなくてもいい。それにどうするつもりだい?」

「施設自体を破壊します。そうすれば脳無の生産は止まります。」

「確かにそうだな。じゃあその作戦で行こう。」

 出久たちは新幹線から降りると人目を避けて目的地に向かっていた。

 

 一方その頃雄英の校長、ブラド、相澤は記者会見を行っていた。

「この度、我々の不備からヒーロー科生徒一年生27名に被害を及んでしまったこと、ヒーロー育成の場でありながら敵意への防衛を怠り、社会に不安を与えた事、謹んでお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。」

 相澤が代表して発言する。

「NHAです。雄英高校は今年に入って四回、生徒が敵に接触していますが、今回、生徒に被害が出るまで各ご家庭にどのような説明をされたのか、また具体的にどのような対策を行ってきたのかお聞かせください。」

 記者の問いに対して根津が答えた。

「周辺地域の警備強化、校内防犯システムの再検討、”強い姿勢“で生徒の安全を保障する・・・・・・と説明しております。」

「生徒の安全・・・・・・と仰りましたが、イレイザーヘッドさん。事件の最中に生徒に戦うように促したそうですね。意図をお聞かせください。」

「わたくし共が状況を把握出来なかったが為、最悪の事態を避けるべくそう判断しました。」

「最悪の事態とは?26名もの被害者と1名の拉致は最悪とは言えませんか?」

「・・・・・・・・・・・・私が想定した”最悪”の事態とは、生徒がなすすべもなく殺されることです。」

 そう言われると記者は何も言えなくなる。

「被害の大半を占めたガス攻撃。敵の”個性“から催眠ガスの類だと判明しております。拳籐さん鉄哲さんの迅速な行動によって全員命に別状なく、また生徒のメンタルケアも行っていますが、深刻な心理的外傷は今のところ見受けられません。」

「不幸中の幸いだとしても?」

「未来を侵されることが“最悪”だと考えております。」

「攫われた爆豪君についても同じことが言えますか?」

 その言葉で場の空気が動き始める。

「雄英体育祭での活躍、ヘドロ事件では強力な敵に単身抵抗を続けて、経歴こそタフなヒーロー性と感じさせますが、反面大会で見せた粗暴などの精神面の不安定さも散見されています。もしそこに目を付けた上での拉致だとしたら?言葉巧みに彼をかどわかして悪の道に染まったら?未来があると言い切れる根拠をお聞かせください。」

 記者がそう質問を投げかけた途端、上からお茶が掛けられた。

「っ!誰だ!」

 記茶が振り返るとそこには門矢士がいた。士はカメラを構えて写真を一枚撮る。

「お前は馬鹿か?」

 士は移動しながら相澤たちの前に移動する。

「馬鹿とはなんだ!バカとは!大体私はまっとうな質問を・・・・・・」

「まっとうな質問?じゃあ聞くが世間では生徒一名が誘拐されたと報道されているのにどうやって知ったんだ?もしかして病院の看護婦からでも聞いたのか?いや聞けないはずだ。看護婦にも守秘義務がある。それに病院は警察が厳重に警備しているのにまさか病人のフリをして入って調べたのか?未成年で学生のプライバシーを侵害したってことだよな?

 いや、仮に病院にいなくてどうやって突き止めた?病院にいる生徒を考慮しても絞り切れないはずだ。もしかしてお前は敵連合から流された情報でそう質問をしているのか?

それに、お前たちは忘れている。人間は、みんな弱い。

 どんなに強靭な肉体を作り上げたとしても結局は人間だ。弱いところもある、未熟なところもある。お前たちはヒーローは完全無欠の存在だと思っているだろうがそうじゃない。

 ヒーローはヒーローである前に人間だ。どんな人間にも生活や欲望、夢がある。なのにお前たちは助けてもらっている立場でありながらいざ問題が起きれば責め立てるばかりじゃないか?本当は困っている姿を見て楽しんじゃないのか?自分たちが優位に立っていることを快感と思っているんじゃないのか?報道するという立場であれば何をしてもいいという考えに行きつくんじゃないのか?どんなにお前たちに報道の自由があるとはいえど、そこまで責め立てる権利もない。ましてや未成年だ。顔を大々的に報道して、敵になるのではないかと言う発言自体間違っている。

 どんな力も使い方によっては善にも悪にもなる。ダイナマイトだってそうだ。掘削だったら役立つが、戦争に使えば武器だ。」

 士の発言に誰も反論できなかった。

「お前、もしかして敵連合からの情報を勝手に報道しているんだろ?じゃなかったら攫われたのが爆豪だと知らないはずだ。」

 士の指摘で皆がその記者を見る。

「な、何を根拠に言っているのだ!証拠を見せろ!」

「証拠ならあります。」

 里中が記者会見の場に現れる。

「あなたが敵連合の人物と接触して情報を貰っているフィルム写真がここにあります。」

 里中が見せたのは密会している写真であった。

 その瞬間記者は青ざめると急いで逃げようと走り出す。

「させません。」

 里中は手に持っていたペンを投げ記者を気絶させる。

 

 



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69 悪の根源

中々更新できなくて済みません。
新しい仕事でもうまくいかずに腰を痛めたり、ずっと昔のトラウマがぶり返したりとまぁ気分が乗らなかったりして、結果としてずっとかけていない状態が続きました。
今年も残すところ半月にあり枚s多が私のところは関係なく仕事をするんですよね。
出もちゃんと正月休みもあって社長がとにかくいい人で先輩も俺のために意見を言ってアドバイスをくれるいい人たちで、涙でそうです(マジで)
前の職場と比べたら今の職場はすっごく良心的で人の温かさを感じる仕事です。
その分気遣いや技術や体力と色々と必要になります。
前の職場で培った癖がなかなか抜けないところもありますが、そこは頑張るほかありません。
でも、一つだけ自分の問題を上げるとすれば向上心が無いことです。どうもそこに対して熱意とかやる気が起きない自分が嫌になるのですが、それに大して変わろうともせずただ目の前の仕事をこなすばかりの人間になってしまっている。
こんなことを愚痴ったところで何かが変わるわけでもなく、結局は自分で解決しないといけないのですけれど、正直今でもリハビリ中です。
直さないといけないところは直し、習う所は習う。新入社員だったあの頃に戻りたいとつくづく思ってしまいますね。

では、お待たせしましたが、内容は短いのでどうかご了承を。


 まばらに人気のある道の片隅で出久と伊達は発信機の先を見つめていた。

「確かにベタって言ったらベタだな、出久ちゃん。」

「でも怪しまれないと言ったら怪しまれませんね。この子たちを使いましょう。」

 そう言うと出久はバッタカンドロイドを起動させ中の様子を裏道で見る。

「おいおい、こいつは・・・・・・・」

「・・・・・・予想以上の展開ですね。」

 二人の目の前に映されていたのはいくつもの部材などが散らばりながらも管理されている脳無が何体もいた。

「どうするよ、出久ちゃん?」

「その必要ないみたいですよ。」

 出久が別視点のカメラを向けるとそこにはMt.レディが片手に軽トラックをもって振りかざそうとしていた。

「おお・・・ジャイアントスイングとは正にこのことだな。」

「せめて周りの人の避難を穏便にしてからにしてほしいですね。」

 悠長に二人がそんなことを言っていると、Mt.レディは振り下ろし、脳無の工場を破壊する。そして次々とヒーローたちが制圧するために一斉に押し掛ける。

「これで終わり、見たいかな?」

「だといいんですけどね。」

 二人はそう言いながら互いにベルトを準備する。

 その直後であった。

 一瞬、一瞬であった。

 二人の側にあった道が一瞬にしてなくなった。道だけではない、脳無の工場も更地となった。周りのビルも巻き込み、更地となった。

 その場にいたMt.レディ、ギャングオルカ、虎ですらも気を失い、かろうじてベストジーニストだけが意識を保っていた。

「流石No.4!!ベストジーニスト。僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだけどね。みんなの衣服をいじり瞬時に端に寄せた。判断力・技術・・・・・・並の神経じゃない!!」

 倒れているベストジーニストに対しその人物は拍手を送る。

「・・・・・こいつ・・・・」

 ベストジーニストは必死に立ち上がり反撃しようとする。

 ベストジーニストもその人物については事前に知らされていた。

 並大抵の敵ではないと、勝てる見込みなどないと。

(だからどうしたというのだ!一流は、そんなものを失敗の理由に----)

 立ち上がろうとすると、その一瞬でその人物はベストジーニストに攻撃を喰らわそうとした。

 ギンッ!

「「っ!?」」

 ベストジー二ストも、その人物も驚いていた。

 ベストジーニストに攻撃が届く前に、出久がメダルジャリバーを手にその攻撃を防いだのだ。

「驚いたよ。まさか君が私の前に出てくるだなんて。君の力はぜひとも興味があるんだがね。」

「それは死柄木弔にとってもって意味ですか?生憎ですが、この力は誰にも譲る気はないです。最悪、国一つ滅ぼすものですから。」

 そう言うと出久はオーズドライバーにメダルをセットし、オースキャナーを手に取り読み込ませる。

「変身!」

【タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タ・ト・バ!タ・ト・バ!】

 出久はオーズに変身する。

「ベストジーニストさん、あんたは早く下がって。一流でも今の自分でなにが最善か判断しろよ。変身。」

 伊達はバースドライバーのダイヤルを回してバースに変身する。

「素晴らしい力を持っているようだね。俄然、興味が湧いたよ。」

「「嬉しくない。」」

 二人はその人物に向かってそう口を開いた。

 目の前にいる人物こそ、かつてオールマイトが倒すに倒せなかった相手であり、師匠の仇、そしてワン・フォー・オールの原点である存在。

 オール・フォー・ワン。

 



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70 変わる戦場

 オーズはバッタレッグで一気に跳躍し、オール・フォー・ワンにトラクローを突き立てる。オール・フォー・ワンは衝撃波を放ちオーズを退ける。

「こっちを見やがれ!」

 バースはバースバスターを連射する。

しかしオール・フォー・ワンは電磁気を身に纏い、弾を反らしていく。

「近・中距離でも対応可能かよ!」

 バースはセルメダルをドライバーに装填しダイヤルを回す。

【ドリルアーム!キャタピラレッグ!】

 バースにキャタピラレッグとドリルアームが装備される。

 キャタピラを一気に回し、オール・フォー・ワンに向かい走り出す。

「おらっ!」

 ドリルアームを突き出し一撃を喰らわせようとするが、オール・フォー・ワンは片腕を大きくし、硬質化させて攻撃を防ぐ。

「こんな弱っちぃ防御じゃ貫いちまうぜ!」

 その言葉通りバースのドリルアームが腕を大きく削る。

「なかなかやるようだね。だけどまだ・・・・・」

「硬化してるってことは体の鉄分を使ってるってことでイイんだよね!」

 クワガタヘッドに換装したオーズはオール・フォー・ワンに電撃を喰らわせる。

「ぐぅっ!?」

 オール・フォー・ワンは電撃を受け苦しむが腕を豪快に振るい二人を弾き飛ばす。

「出久ちゃん、敵について何かわかったか?」

「アイツは目が見えないって考えた方がいいですね。それともしかしたら・・・・・・」

 オーズはある事を考えていた。

(あえて口にしない方がいいのかもしれない。予想通りだとしたら少しだけ本気を・・・・・3割と言ったところか。)

 オーズはメダルをセットする。

「これで少しやってみるか!」

【シャチ!クジャク!チーター!】

 オーズはシャジャーターに変身すると旋回しながら火球を放つ。

 バースはキャタピラレッグで移動を行いながらバースバスターを放つ。

 オール・フォー・ワンは衝撃波を周囲に放ち火球と銃弾をかき消そうとする。

「これでどうだ!」

 シャチヘッドから超音波を放ち相殺する。

「なんだと!」

「ふっ!」

 オーズは旋回しながら石を蹴る。

 オール・フォー・ワンはその石に反応して粉砕する。

(なるほどね、そういうことか。)

(やっぱりか!でもまだ力が足りない!)

 二人はオール・フォー・ワンから距離を取る。

 その直後であった。

「こちらも戦力の増員が必要だからね。呼ばせてもらうよ。」

 その直後、爆豪を連れて死柄木と共に敵連合がオール・フォー・ワンの個性により呼び出される。

「伊達さん!」

「待ってました!」

【カッターウィング!】

 伊達は爆豪に向かい一気に飛行移動をする。

「させるとでも思うのかい?」

「させてもらう!」

 オーズがそう言葉を発した直後、プテラカンドロイド、タカカンドロイド、タコカンドロイドの大群がオール・フォー・ワンと敵連合の周りを飛ぶ。

「なんだスッゲーな!邪魔だぜ!」

「こいつらちょこちょこ動くから邪魔で掴めねぇ!」

「いたい!いたい!ツンツンしないでください!後なんか変な音が聞こえて頭が痛いです!」

「なんなのよこいつら!」

「くっ!」

 誰も手を出せない状況。その間にバースは爆豪を抱きしめ一気に上昇する。

「後は頼んだぜ。」

「わかっているとも!」

 バースとすれ違いに一人の人物が戦場に降り立った。

「久しぶりだね、オールマイト。」

「ああ、本当に久しぶりだな!オール・フォー・ワン!」

 宿命の二人が対峙する。

「敢えて言わせてもらおう!私が来た!」

 



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71 晒される本当の姿

「やぁ、久しぶりだねオールマイト。」

「オール・フォー・ワン!」

 オールマイトはオール・フォー・ワンを睨み付ける。

「俊則!」

「遅いですよ、師匠!」

「お前が速すぎるんじゃ!」

 グラントリノが少し遅れて現着する。

(ありがとう、伊達君。これで心置きなく戦える!)

 爆豪を連れて離れて行ったバースに心の中で感謝する。

連合(こっち)の方は俺と小僧で対処する!」

 グラントリノはオーズと共に敵連合を片付けようとするがオール・フォー・ワンは先に行動を映した。

 手から触手上の何かをマグネに向け伸ばすと個性を強制発動させ、同時に黒霧の個性を発動させてワープゲートの側にいたトガを中心に他の敵連合が引き寄せられていく。

「なんだと!」

 突然の行動に驚くグラントリノ。

「待って・・・・ダメだ、先生!」

 オール・フォー・ワンの行動に死柄木は意見を言うがオール・フォー・ワンはそれでも決行する。

「《その身体じゃ》・・・・・あんたは!」

 死柄木弔には幼いころに手を差し伸べてくれた時の記憶がフラッシュバックした。

「俺はまだ――――――」

 黒霧のゲートが消える間際にオール・フォー・ワンは言った。

「弔、君は戦い続けろ。」

 その言葉を言った直後、ワープゲートは消えた。

 その瞬間はまるでアイズ化のようであった。

 オールマイトはオール・フォー・ワンの下まで一気に接近し左の拳を振る。

「戦うと言うなら、受けて立つよ。」

 しかしオール・フォー・ワンは転送の個性をグラントリノに発生させると自分の前に出した。

「させない!」

 オーズはシャウーターに変身しウナギウィップでグラントリノを確保すると自分の方へと引き寄せる。

「すまん!」

「気にしないでください!」

 オーズはオール・フォー・ワンの側を通りスライディングしながらウナギウィップを足に巻き付け電気を流す。

 しかしオール・フォー・ワンは巻きつけられた足だけをゴムに変え攻撃を防ぐ。それと同時に衝撃反転の個性を発動させてオールマイトの拳をはじき返す。

「何せ僕は君が憎い。」

「ぐあっ!」

 オールマイトは片足を軸に大きく足を上げて回転する。

 オーズは耐え切れず遠くに投げ飛ばされてしまう。

「かつてその拳で僕の仲間を次々と潰し回り、お前は平和の象徴と謳われた。僕の犠牲の上で成り立つその景色、さぞやいい眺めだろう。」

 回転してオールマイトの方へ向き直ると同時に遠心力と螺旋の個性を片腕に発動させてオール・フォー・ワンは攻撃をぶつけようとする。

「DETROIT SMASH!!!」

 オールマイトの技とオール・フォー・ワンの技がぶつかり合う。

 互いの攻撃により衝撃波が生まれ、周りの建物に被害が出る。

「ヒーローは多いよな。守るものが。」

「黙れ。」

 オールマイトはオール・フォー・ワンの片腕を左手で掴むと骨を握り折る。

「お前はそうやって人を誑かし、弄ぶ!奪い!壊し!付け入り支配する!」

(マズい、転送を・・・・)

 離れようと転送を発動させようとするがその前にオールマイトの拳がオール・フォー・ワンの顔に炸裂する。オール・フォー・ワンのマスクがその攻撃によって破壊される。

「日々暮らす方々を!理不尽に嘲り笑う!私はそれが!許せない!」

 その直後であった。グラントリノの方から見えてしまった。右半分がトゥルーフォームのオールマイトの顔が。

「俊則!」

(マズい・・・・・・・活動限界が・・・・・!)

「嫌に感情的じゃないか、オールマイト。」

「っ!?」

 至近距離でなおオールマイトの攻撃を受けても喋ることが出来ていた。

 そして思い出したかのように口を開く。

「同じようなセリフを前にも聞いたな。ワン・フォー・オールの先代後継者、志村奈々から。」

「貴様の穢れた口で、お師匠の名を口にするな!」

 オールマイトは怒りで体を震わせる。

「理想ばかり先行して実力が伴わない女だった。ワン・フォー・オールの生みの親として恥ずかしくなったよ。実にみっともない死にざまだった。・・・・・・・・・そこから話そうか・・・・・」

「Enough!」

 オールマイトは黙らせようと左の拳を振る王うとするが、話している間にオール・フォー・ワンは右腕に螺旋の個性を発動させてオールマイトを上空へと弾き飛ばす。

 この時オールマイトは気づいていなかった。

 この戦いを報道しようと報道用のヘリが上空を飛んでいた。

 オールマイトのマッスルフォームの方がカメラに移り、もう半分のトゥルーフォームが映し出されそうになった時であった。グラントリノが間一髪で覆い隠した。

「俊則!」

「師匠!」

「六年前と同じだ!落ち着け!!そうやって挑発に乗って、奴を捕り損ねた!腹に穴を空けられた!」

 グラントリノはオールマイトを地面へ降ろす。

「ゴホッ!すみません・・・・・・」

「お前の悪いところだ。奴と言葉を交わすな!」

 オール・フォー・ワンはゆらりとしながら立ち上がる。

「前とは個性も、戦法も違う!前からは有効打にならん!虚をつくしかねぇ!まだ動けるな!?正念場だ、限界を超えろ!!」

「・・・・・・はい!」

 グラントリノはオールマイトを奮い立たせる。

「弔がせっせと崩してきたヒーローへの信頼、決定打を僕が打ってしまってもよいものか・・・・」

 オール・フォー・ワンは自問するが、すぐに自分お考えをオールマイトへと話す。

「でもね、オールマイト。君が僕を憎むように、僕も君が憎いんだ。僕は君の師を殺したが、君も僕の築いてきたものを奪っただろう?だから君にはなるべく醜く、惨い死を迎えて欲しいんだ。」

 オール・フォー・ワンは左腕に個性を発動させて二人に放とうとする。

「マズい!でかいのが来る!ここは避けて反撃を!」

 グラントリノは飛んでオールマイトに避けるように促す。

「避けていいのかい?」

「っ!?」

 しかしオールマイトは後ろの瓦礫の中にいる人に気づき、その場を動かない。

「俊則!」

 その直後、オール・フォー・ワンからの攻撃が放たれる。

 オールマイトは左拳を突き出し攻撃を拡散させようとする。

「マズい!」

【コブラ!カメ!ワニ!ブラ・カー・ワニ!】

 オーズはブラカワコンボに変身するとコウラガードナーを展開してオールマイトとほぼ同じ位置で攻撃を受ける。

 攻撃が止み、景色がはっきりする。

 オールマイトとオーズがいた場所は大きく地面が抉られ、扇形になっていた。

 オールマイトの後ろでは出久が血を流しながら倒れ、今にも立ち上がろうとしている。

 そしてすべての国民が衝撃的な事実に驚かされていた。

 平和の象徴、ムキムキボディのオールマイトが、ガリガリにやせ細り骨と皮だけのような骸骨のような姿に。

「まずはケガをして通し続けてその矜持、みじめな姿を世間に曝せ、平和の象徴。」

 



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72 巨悪との決着

待っている人も待ってない人もお待たせしました。
最近なぜか筆が乗らなかったんですよ。
マンネリと言うかだらけと言うかなんと言うか・・・・・・・よくわかんないですね。
2月にクビになってそこから再就職しようも失敗してコロナの影響でバイトに切り替えて働こうにも落ち続ける日々。
面接の際には必要以上の情報はしゃべらず、求められる答えと自己アピールをしたのですが、それでも落ちていた日々。
しかし先日ようやくバイトが決まって嬉しいです。
バイトはやったことが無い職業なのでまた一から頑張りたいです。
コロナの影響で色々と嫌なニュースやアメリカでの問題とか取り上げられています。
自粛警察とかが特にって思いました。
普通に犯罪をしていますよね、あの手の人たち。
私はそんなことに使うならもっと他の時間に使ったらいいのにと常々思います。
もちろんいじめに関してもです。
こんな暗い時期でありまっすが、皆さん頑張って行きましょう。
PIXIVの方でも同じハンドルネームでR18SSを投稿していますのでよければ検索してみてください。https://www.pixiv.net/users/17584978
それでは神野区事件、ラストストーリーどうぞ。


 世間はオールマイトの姿に驚きを隠せなかった。

「なんだよ・・・・・・あのガイコツみたいな姿・・・・・・・」

 誰が言ったのかわからなかった。

 町に映し出されるライブ映像で誰かが言った。

 ネットの動画愛との中で誰かが書き込みをした。

 そこかの家で誰かがそう口にした。

 日本だけではなく、世界中の誰もが驚きを隠せなかった。

 

「頬をこけ、目は窪み、貧相なトップヒーローだ!恥じるなよ。それが本当の姿なんだろう?」

 オールマイトはあざ笑うオール・フォー・ワンを睨み付ける。

「・・・・・・そっか。」

 オール・フォー・ワンはつまらなそうにそう言葉を発した。

「体が朽ち衰えようとも・・・・・その姿がさらされようとも・・・・私の心は平和の象徴!一欠けらとして奪えるものじゃない!」

 オールマイトは拳を強く握り言い放った。

 そんなオールマイトに対してオール・フォー・ワンは称賛し、そして絶望を与えた。

「素晴らしい!まいった。強情で聞かん坊なことを忘れていたよ。

 でも、君の心を折ることを私は知っている。〈〈これ〉〉は君の心を支障しかねない・・・・あのね・・・死柄木弔は志村奈々の孫だ。」

「――――――――――――――――――――――!」

 その言葉にオールマイトは絶句した。

 奴は今なんと言った?

 誰が?

死柄木弔が

誰の孫だ?

志村奈々、師匠の孫

嘘だ

 

嘘だ

 

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘ダウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだ

 

 オールマイトは信じたくなかった。信じきれなかった。

 しかし目の前にいる奴はこんな状況でそんなことを言わないのは戦ったからこそわかっていた。

 故に、それは紛れもない真実であることを。

「僕はずっと考えていた、君が嫌がることを。君と弔が出会う機会を作った。君は弔に下したね、何も知らず、勝ち誇った笑顔で。

「嘘だ・・・・・」

 オールマイトの口からその言葉が出た。

「どうしたんだい、オールマイト。笑顔は?」

 いつも笑っているオールマイトの顔から笑顔が消えていた。

「き・・・・さ・・・・・ま・・・・・」

 オールマイトの口調もいつもと違い怒りが籠っていた。

「・・・・・・おおおおおおおおおおおおおおおお!」

 オールマイトが怒りの雄叫びを上げる。

 だがその時であった。

「だったら・・・・・・・助けるほかないじゃないですか。」

「「っ!?」」

 その声を発したのは出久であった。

 先ほどの攻撃で変身が解け、ボロボロで血を多く出しているのにもかかわらず立っていた。

「手が延ばせるなら、その手を差し伸べればいい。例え・・・・・・誰にも理解されなくても、その思いは嘘じゃないんだから・・・・・・・」

「緑谷少年・・・・・・」

 オールマイトには眩しく見えた。

 今の自分は怒りに満ちていたのに、その怒りはどこか抜けてしまっていた。

「全くもってその通りだ。」

 第三者の声がしてその方を振り向くとそこには士と里中がいた。

 士は瓦礫の中にいる女性を救い出し、里中に渡す。

「頼むぞ。」

「はい。あなたも与えられた仕事をきっちりこなしてください。」

「わかっている。」

 里中は救助された女性に肩を貸し、その場を離れていく。

「絶望を与えると言ったな。だがお前は何もわかっていない。

 絶望を与え、世界が絶望に染まろうとしても必ずは向かおうとする輩がいる。

 たとえどんなに惨めな姿で戦ってもだ。

 それに、出久と同じように俺たちは人のために戦うんじゃない。

 誰かが言った。

 人間の、自由と、平和のために戦うんだ。」

 士はそう言うとディケイドライバーを取り出し装着すると両サイドを引っ張り、ライドブッカーからディケイドのカードを手に取り自分の左肩にまで手を持ってくる。

 出久もオーズドライバーを取り出し装着すると両手で両サイドにメダルをセットし、最後の一枚を真ん中にセットするとオースキャナーを手に取ると同時に本体を傾ける。

「「変身!」」

【KAMEN RIDE!】

【DECADE!】

【タカ!トラ!バッタ!】

【タ!ト!バ!タ・ト・バ!タ!ト!バ!】

 ディケイドとオーズが変身するとディケイドはライドブッカーから新たにできた一枚のカードを取り出す。

 そこに描かれているカードを見てディケイドは察した。

「なるほどな。オーズ、お前の力を借りるぞ。」

 ディケイドはディケイドライバーの両サイドを引っ張りカードをセットする。

【FAINAL ATACK RIDE!】

【O・O・O・OOO!】

「ちょっとくすぐったいぞ。」

 ディケイドがオーズの背中の突起に触れる。

 するとそこから出てくるかのように全コンボのオーズが姿を現した。

「言っとくがこれは長く使えない。やるなら・・・・・・わかってるな?」

「はい!」

 ディケイドの問いにオーズは答えた。

「オールマイト。」

「っ!」

「お前の知合いのことは今は後回しだ。目の前の敵を倒す、それだけに今は集中しろ。それでもヒーローなのか?」

「・・・・・・・・・・・全く、情けないな。」

 オールマイトは自然と笑みを浮かべていた。

「君たちが頑張っているのに、私が頑張らないわけにはいかないじゃないか。」

「お前は頑張りすぎだがな。」

 ディケイドに痛いところを突かれてオールマイトは苦笑いをする。

「・・・・・・・・・・いいだろう。そこまで本気ならば僕も君たちに敬意を表して立ち向かわせてもらう。

 筋骨発条化、瞬発力×4、膂力荘経×3、増殖、肥大化、錨、エアウィーク、槍骨。

 今までのような衝撃波では体力を削るだけで確実性が無い。確実に君たちを殺すために、今の僕の最高・最適の“個性”たちで君を殴る。」

 オール・フォー・ワンの右腕は異様なまでに変形していた。

 ところどころに突起した物や鉱石のようなものが腕に出ているのではなく、あまりにもアンバランスであったからだ。

「正真正銘、最初で最後だ。行くぞ!」

「はい!」

【FAINAL ATACK RIDE!】

【DECADE!】

【【【【【【【【スキャニングチャージ!】】】】】】】

 オーズとディケイドは一斉に跳び上がり、オール・フォー・ワンに向け必殺技を繰り出す。

『はぁあああああああああああああああああ!』

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「ふっ!」

 二人の仮面ライダーのライダーキックとオール・フォー・ワンの拳がぶつかる。

(衝撃反転・・・・・・・を使ってるのにもかかわらずこの威力!一人一人の威力が大きすぎる!なんなんだこの力は!全く理解できない!)

「理解できないようだな。」

「っ!?」

 オール・フォー・ワンは自分の心が見透かされていると思い驚く。

「俺たちは、背負っている。世界中じゃない、この背中を押している大事な奴らの思いをな。小さいと思うが、それが俺たちの背中を押し、前に進ませてくれている。」

「僕たちはすべてを背負ってはいけない。だから自分の手が延ばせて背負える分だけ背負って戦う!」

「それがヒーロー!」

「それが仮面ライダーだ!」

 オーズたちはオール・フォー・ワンから飛び退ける。

「後は!」

「お願いします!」

「ああ!」

 オール・フォー・ワンに向けオールマイトは持てる限りの力で走り、そして左の拳を突き出した。

 全力の腰の入った一撃が、オール・フォー・ワンの拳を弾き、そして顔を捉えた。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 さらばだ、オール・フォー・ワン!

 

「UNITED STATES OF SMASH!」

 さらばだ、ワン・フォー・オール!

 

 オールマイトの最後の一撃がオール・フォー・ワンを完膚なきまでに倒した。

 静寂がその場を、世界を包み込む。

 オールマイトは満身創痍であった。

 しかし、最後の最後までヒーローとして立ち、そして左の拳を高く上げた。

『『『オールマイト!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』』

 世界中がその名を口にした。

 感動し涙を流す者、勝利を喜ぶ者、ただただ泣く者と様々であったが、皆同じ気持ちであった。

 オールマイトが敵に勝った。

 その事実を世界は受け入れた。

 オールマイトは最後に力を振り絞り、マッスルフォームでその場での勝利を飾った。

 平和の象徴、No.1ヒーローとしての最後の活躍であった。

 

「どうやら、ここでの仕事は一回終わったみたいだな。」

「え?」

 出久は変身を解き、士の方を向く。

「それってど――――」

 そこから先を言おうとすると出久は血を吐き倒れた。

「・・・・・・・・・こうなることは分かっていても、心境はいいもんじゃねぇな。」

士はオーロラカーテンを使い出久を病院へと運んだ。

 出久の治療が行われている外で、手術室の外にいた士に里中が声を掛ける。

「お疲れさまでした、ディケイド。」

「ああ。今度からアイツに無理をしすぎるなと言っておけ。」

「それは無理です。」

「ならあいつは――――」

「私には。」

「・・・・・・・・・なに?」

 里中の言葉に士は首を傾げる。

「彼の側には、彼を大事に思っている人がいます。世界が違う私たちではない、この世界の人たちが。」

「・・・・・・・・・・嫉妬してしまいそうだな。」

 士は彼女の顔は見てないが、なんとなく彼女の顔を察した。

「ええ。私たち大人って、なんて無力なんだって思います。戦いでは技術的なことでしかバックアップできない。心に関しても、どこか一線を敷かれてしまう立場。情けないです。」

 里中は顔を手で覆う。

「でも、私はプロです。自分にできる最大限で最低限のバックアップをします。」

「そうか。じゃあ送るぞ。」

「よろしくお願いします。」

 里中は士の出したオーロラカーテンで元の世界に戻った。

 

 



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73 事件後の病院

神野区の事件が一夜明け、世間に大きな波紋が生じた。

 オールマイトの引退、オールマイトの正体、神野区半壊。

 ワイドショーでもニュースでもその情報が出回っていた。

 政府上層部はこれに対してどうするべきかを話していた。

 しかし、ヒーローの質の低下は隠し通せるものではなかった。

 誰もが気付いていた。

 オールマイトはすべてを背負いすぎて戦った。

 それにゆえに誰しもが思っていた。

 

―――オールマイトがいれば大丈夫だ、と。

 

 ヒーローですらそう思ってしまっていた。

 だからこそヒーロー社会に大きな影響を与えていたのだ。

「ほんで、オールマイト。今どんな気分だ?」

 病院の一室で体中に包帯を巻いてベッドに座っているオールマイトはグラントリノと塚内、そして伊達がいた。

「・・・・・・・・・・・私は間違っていたのだろうか?」

 不意にオールマイトの口からそんな言葉が漏れた。

「そんなことは――――」

「そうじゃな。」

 塚内がフォローしようとするとグラントリノがそれを認めた。

「伊達、お前さんもそう思ってんじゃろ?」

「まぁな。オールマイト、お前さんはデイヴィッド博士の時もそうだが、一人で抱えすぎだ。確かにお前さんの“個性”に関しては知る人は少ない方がいい。だがな、本当に信じられる人ってのはそんなに少ないのか?」

「・・・・・・・・・」

 オールマイトは伊達の言葉に黙ってしまう。

「・・・・・・・・・・なんか言えよ!」

 伊達は声を荒げて立ち上がる。

 医者であるにもかかわらず、病院内と言うことも本人は重々わかっているにもかかわらず声を荒げていた。

 そしてオールマイトの胸ぐらをつかんだ。

「出久はな!お前のように大事な人を失って痛みも辛さも知ってんだよ!お前は自分が世界のすべてを救えるとでも思ってるのか!あ!ふざけんな!」

 伊達は乱暴にオールマイトをベッドに叩き付ける。

「・・・・・・・・・俺は俺のいた世界で出久や後藤ちゃんたちに助けられて今こうして立っていられるんだよ。そんな出久ちゃんたちを支えたいって思うんだよ!でもな、お前はどうなんだよ!一人で抱えてすべてを解決しようとして、弱さを見せようともしねー。出久ちゃんだってな、たまに俺に弱み見せるんだよ。自分の病気が徐々に死に向かってるのわかってるから!今は紫のメダルとアンクのくれたメダルがあるから生きているけどな、あいつはいっつも泣いているんだよ。」

「緑谷少年が!」

「当たり前だ!死ぬってわかっているんだよ!なのにヒーローになりたいって思いも強いんだよ!」

 そこまで言うと伊達は荒げた息を整えて話す。

「出久ちゃんはな、いっつも俺に死にたくないって言ってるんだ。死ぬのが怖い、失うのが怖いってな。でもそれを知ってるのは爆豪や心操って奴だけだ。出久ちゃん、新学期に担任の先生から話すって聞いているよ。それでも・・・・・・・・今でも俺は情けないんだよ。I・アイランドでも出久ちゃんの治療薬の研究はされてても症状を抑えることしかできないってことが分かっちまった時に、自分がちっぽけな人間だって改めて思ったよ。」

 伊達は窓まで行くと拳を握る。

「情けねーよ。何にもできない自分がよ。」

 外の天気とは違い、伊達の表情は暗かった。

 

 一方その頃出久のいる病室では引子が側で座っていた。

「出久・・・・・・・」

 寝ている出久は何もなかったかのように穏やかに寝ている。

 けど昨日の戦いをテレビで引子は見た。

 そして知った。

 出久は本当に命を燃やして戦っているのだと。

 すると扉を叩く音が聞こえ、返事をしながらその方を振り向く。

「どうぞ。」

「邪魔するぞ。」

 入ってきたのはアンクであった。

「あなたは・・・・・・」

「・・・・・・・・アンクだ。」

 アンクはバツが悪そうな顔でぶっきらぼうにそう答えた。

「あなたが・・・・・・・」

 アンクは何も言わず出久に近づくとセルメダルを出久に与え治療する。

 そして何も言わずに去ろうとするが引子が腕を掴みアンクを引き止る。

「なんだ?」

「あなたが出久が言っていたアンクね。少しだけお話し合させてもらえるかしら?」

「・・・・・・・・・・少しだぞ。あいつが目を覚ます前に帰らないといけないからな。」

「ええ、いいわよ。」

 アンクは椅子に座り引子と向き合う。

「まずはあなたに感謝しないとね。」

「感謝?はっ!恨んでるの間違いじゃないのか?」

 アンクがそう言うとインコは首を横に振って否定する。

「いいえ、違うわ。あの子にヒーローになる夢を持たせてくれた、そこには感謝しているの。それに今だってあの子を助けようとしてくれていたじゃない。」

「それは大きな勘違いだ。俺は自分のためにこいつを利用しているだけに過ぎない。」

「じゃあ、なんで向こうの世界で暴走しかけたこの子を殴ってくれたの?」

「っ!?」

 アンクは目を見開いた。

 徐々にグリードとしての力を覚醒させ、暴走してもおかしくない状態の出久に対しアンクは持てる力を使って出久を引き戻した。

 それだけじゃない。

 いろんな戦いの中でアンクは助けることをした。

 その言葉にアンクはそっぽを向く。

「私はね、あなたが思っている以上にやさしいと思ってるわ。人間じゃないってのは出久から聞いているけど、そうは思えないわね。どちらかと言えば出久があなたの変えたのかしら?」

「・・・・・・・・・さあな。俺は自分の欲望のままに生きてる。それだけだ。」

「そうね。確かにあなたたちはグリード、欲望を意味するわ。名を体と行動で示しているわ。それでも私は思うの。あなたは優しい。出久のことを気に掛けてくれていた。理由はどうであれ、ね。」

 引子は微笑みながらアンクを見る。

「・・・・・・・・・・こいつはいつも一人で解決しようとする傾向があるのは、周りも知ってるはずだ。もしこいつが心を許せるヤツがどこかにいたら、いいと思ってる。俺じゃない、誰かだ。」

 アンクはそう言うと立ち上がり、扉に手を掛ける。

「邪魔したな。」

「構わないわ。いつか未来でこの子にまた会えた時に、思いっきり怒ってあげて。私は・・・・・・ちょっとできないから。」

「・・・・・・・・覚えてたらな。」

 アンクはそう言うと病室を後にした。

「・・・・・・・・・出久、あなたは本当にすごいわね。でも・・・・・・・」

 引子は出久のおでこにまで顔を近づけると額にキスをする。

「命を大事にしてね。母さんはそれが今の望みよ。」

 引子はそう言うと病室を出た。

「じゃあまた明日も来るからね、出久。」

 引子が廊下を歩いていると向こう側から麗日たちが来ていた。

 



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74 打ち明ける真実と思い

「ん・・・・・・」

 ぼやけた視界を数回瞬きさせて出久は目を覚ました。

「・・・・・・・ふぅー。」

 片腕で目を覆い、溜息を吐く出久。

「また倒れたんだ。」

 出久はそう言うと上半身を起こすと自分の胸に触れる。

「・・・・・・・・・・こんな病気なかったらよかったのにな。」

 そんなことを出久が溢すと扉をノックする音が聞こえて来た。

「母さんかな?どうぞ。」

 出久が許可を出すと麗日たちが入って来た。

「お茶子ちゃん、百ちゃん、三奈ちゃん、透ちゃん、一佳ちゃん!」

 入って来た人全員の名を口にする。

「出久さん、体調はどうですか?」

「うん、今は大丈夫だよ。」

「そうですか。」

 出久の言葉に安心した八百万は胸を撫で下ろす。

 麗日たちは出久を囲むように座る。

「出久さん、あの時は申し訳ございませんでした。」

 頭を下げたのは八百万であった。

「気にしないでイイよ、百ちゃん。それに――――」

 そこから先を言おうとすると麗日が口を開いた。

「出久君どうしてそんなに無理をするの?」

「・・・・・・・・え?」

 出久は突然のことに間抜けな声を出す。

「そうだよ・・・・・・・あたし達だって心配してるんだよ。」

「いっつも自分を犠牲にしてるけど、出久君自信を守ってないじゃん。」

 拳籐と芦戸が口を続けて開く。

「それに・・・・・・・無茶しすぎてるよ。」

 葉隠の最後の言葉に出久の心に鋭い何かが刺さったようであった。

(ああ・・・・・・僕は母さんやかっちゃん以外にも、こんなにも多くの人を心配させてしまっているんだね。)

 出久は自分が情けなく思えてしまった。

 仮面ライダーの力を持っているとはいえど、所詮は人間だ。

 誰かを支えて、誰かに支えられて生きていくものなのに、自分が頼ろうとしていないのではないかと改めて気づかされた。

「・・・・・・・・・・ごめんね、みんな。心配させて。それとーーーーー」

『???』

「―――――――聞いてほしいんだ。僕のことを。」

 出久は怖かった。

 死ぬよりも、離れていてしまうのではないのかを。

 自分のことを思い、一緒にいられないと思って離れて行ってしまうのではないのかと言うことを。

 自分を苦しめているこの病が、いつ自分に牙を剥くのか。

 出久はただただ怖かったのだ。

 決して強くはなかった。

 決して勇気があるわけではなかった。

 背中を誰かが少し押して、後は勢いに任せていた。

 無我夢中で走っていた。

 それしかできることが無かった。

 それが今の自分なのだ。

 

 出久はすべて話した。

 自分の病気を、自分の力を。

 幻滅されると思っていた。

「ねぇ、出久君。」

 誰よりも先に口を開いたのは麗日であった。

「私たちがそれを知って、離れると思っとるん?」

「・・・・・・・」

 無言は肯定を意味していた。

「あたし達、そんなことで嫌いになったりしないよ。」

 次に口を開いたのは芦戸であった。

「そうですわ。何より出久さんは猫を被るような人でないのはみんな知っていますわ。」

「誰よりも先に動いて助けてくれたのも出久君だもん!」

「だからそんな悲しいこと言わないでよ。」

 八百万、葉隠、拳籐が続けて口を開くと、出久は自然と涙を流していた。

「・・・・・・・・・あれ?なんで僕泣いてるのかな?あれ?あれ?」

 出久はなんで泣いているのか自分でもわかっていなかった。

 そんな出久に対して彼女たちは抱きしめた。

「いんだよ、今は泣いても」

「そうだよ、いんだよ。」

「ええ、いいんですわ。」

「うん、泣いていいんだから。」

「頼っていいんだから。」

 出久はポロポロと涙を流す。

 初めてなんだろう、こうして涙を流すのは。

 誰かにこうやって、すごく弱みをさらすのは。

「どうやら、大丈夫みたいだな。」

 病室の外で伊達は聞き耳を立てていた。

「もう一押しだぜ、お嬢ちゃんたち。」

 伊達は押す言うとその場を後にした。

 

 しばらく出久は泣き崩れていた。

 そして涙が枯れ、目が赤くなっていた。

「ごめんね、みんな。」

「いいんだよ。うち等出久君のこと好きだし。」

「え?」

「あ・・・・・・・・」

 麗日は口を滑らしてしまい顔を赤くする。

 周りも同じように顔を赤くしているので確信へと変わった。

「///////////」

 出久もまさかそう思われているとは知らずに顔を赤くする。

「ええと・・・・・・・その・・・・・・私たちと付き合ってくれますか?」

 そう口をしたのは麗日であった。

 しかしそこで出久は疑問が生じた。

 いま彼女は〈〈私たち〉〉と言ったからだ。

「それってどういうこと?」

「え?意味が分からんかったの!」

「そっちじゃない!私たちってところが!」

 出久がそう言うとそっちかって反応を皆がする。

「出久さんはこちらの法律をご存じないのですか?」

 そう言って八百万がスマホの画面を見せて来た。

 スマホには一夫多妻方の法案が制定された記事が掲載されていた。

「あの・・・・・・えっと・・・・・・・・」

 突然のことに頭が回らない出久。

 しかし出す答えは既に決まっていた。

「こ、こんな僕ですがよろしくお願いします///////////」

 出久は顔を赤くしながら頭を下げた。

『こちらこそ、お願いします!』

 一同笑顔でそう言うと最初に動いたのは麗日であった。

 出久の顔に手を添えて一気に口づけをした。

「っ!?」

『あっ!?』

 少しして離れると麗日は顔をにやけさえていた。

「えへへ、キスしちゃった。」

「ずるいですわ!」

「一人だけ抜け駆け禁止!」

「私たちもする!」

「以下同文!」

「ちょ、ちょっと!」

 出久は結局彼女たち全員とキスをした。

 



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75 謝罪と約束

 出久が晴れてお茶子たちと彼女の関係になった日から数日。

 出久は医者の許可が下りて退院していた。

 マスコミがこぞって自宅を訪問しようと試みたが先の敵連合との癒着問題があったため下手に近づこうとすれば地元住民が邪魔をしていた。

 そんな騒動があるとも知らず、出久と引子はトゥル-フォームのオールマイトと対面していた。

「この度はお子さんに多大な迷惑をおかけして申し訳ございませんでした!」

 元No.1の姿はそこにはなく、土下座をしていた。

「・・・・・・・・頭を上げてください。」

 引子は静かにそう告げ、オールマイトはその言葉に従った。

「オールマイトさん、私は貴方が巻き込んだとは思いません。出久は生まれつき無個性で、その上病気で長生き出来ないと言われています。出久の中にある力で寿命を一時的に伸ばしていると本人からも聞いています。」

「・・・・・・・・・・」

「けど、私は正直後悔をしています。雄英に通ってからはいつも血を吐くことばかりが多く、心配しない日が無かったです。それでも、我が子を雄英に通わせると決断したあの時から、私は今更その決断を私の身勝手で撤回するつもりはありません。おそらく今日来たのは謝罪ともう一つ、全寮制の話もあって来たのではないのですか?」

「っ!?」

 オールマイトは引子の言葉に驚いた。

「気づいてないとでも思いましたか?先日の事件でのマスコミの個人情報の流失を見て考えない親はいません。私もこの事件を機会にそうなるのではないかと思ってました。」

「その通りです。私たちは今後の対策として生徒たちを全員全寮制にしてもらおうと思っています。もちろんこれは保護者と本人の同意が無ければできないことになっています。」

オールマイトは一通り説明する。

「でしたら、よろしくお願いします。」

 引子は頭を下げた。

「私たち親は見守る事しかできません。だからこそそこはあなた達ヒーローに任せます。ですが、これだけは約束してください。」

「なんでしょうか?」

 どんな無理難題を言われるかオールマイトは不安であったが、引子から出されたのは意外な提案であった。

「決して、死ぬ覚悟を持って戦わないでください。子供たちにとって一番辛いのは、自分のために大人が死んだと言うことです。」

 引子のその言葉に対しオールマイトは深々と頭を下げた。

「・・・・・・・・・・・わかりました。」

 そう言ってその話は終わった。

 

 そして雄英高校での新たな生活が幕を開けるのであった。

 



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76 入寮生活開始

今年は仮面ライダーOOO十周年、一番くじではダブルとコラボで新しいの出ますよね。
私30回分引こうかと思ってます。
大体20400円を使えば、目当てのE賞の三頭身フィギアコンプできるかもしれないから!
ぶっちゃけ狙いはそこだけに絞っているんですよね。大きいフィギアだと部屋に困るから。


そして今更ながら投稿が長引いてゴメンなさい。
実はなんか刺激を受けなくなってきているこのご時世、色々と新しい漫画に興味持ったりしてテンションを上げてました。
コロナでいろいろと自粛しないといけないですからね。
最近では十字の交差点で右折待ちしているときにクラクション鳴らされましたよ。
参っちゃいますよね
皆さんも運転する時は気を付けて運転してください
煽るより譲ろう、無謀な勇気より賢明な判断が大事ですよ


 雄英高校寮生活が始まろうとした初日、寮の前では相澤の前に一年A組全員が整列していた。

「まずお前らに言っておくことがある。爆豪と飯田と蛙吹、緑谷以外の全員を俺は退学処分にするつもりだった。」

『っ!?』

 その言葉に一同衝撃を受ける。

「当たり前だろ。止めるべきなのに止めなかったんだ。オールマイトが引退する話が無ければ俺は除籍にする予定だった。」

 そんな飯田に側で聞いていた伊達が話しかける。

「待ってよ、相澤ちゃん。」

「気色悪い言い方で話しかけるな。俺はこいつらに・・・・」

「俺さ、この世界に来て思うんだけど、正しい人間の在り方ってあるの?」

「・・・・・・・・・・・は?」

 相澤は何が言いたいのかわからなかった。

 この場で唯一分かっているのは出久の彼女になった者たちと、出久だけであった。

「ヒーローはこうあるべきだ、こうでなくてはってみんなの押し付けがさ、オールマイトを追い込んで活動させていたんじゃないのか?」

「なにをバカなことを・・・・・」

「だってそうじゃない。実際オールマイトは周りの多大な信頼と実績を残した。するとみんなは“オールマイトなら”って考えに至った。そして次第にオールマイト比べるようになった。結果何を生んだ?」

「それは・・・・・」

 相澤は言葉が詰まった。

 結果として生まれたのはヒーロー社会の衰退。こんな状況だからこそ求められるものを、多くのヒーローが持ち合わせていなかった。

「それに助けに行く行かないってのはさ、結局のところヒーローとしてあるべき姿だと思うよ。自分達たちが原因だから自分たちで解決する、自分たちじゃできないから他人に頼る。どっちが正しいかって言うと、どっちも正しくて間違ってる。」

「だが法律で!」

「それがおかしいんだよ!」

 その言葉に一同驚く。

「俺さ、“個性”をわざわざ使わなくてもいい人とそうじゃない人を見て来た。わざわざ使わないといけない人に関してはさ、サポートアイテムを支給もされない。なのに使えば逮捕。おかしくないか?」

 相澤が言っているのは所謂“他人にも害を与えてしまう個性”の人たちである。

 有毒や有害物質の個性を持っている人たちは時折発散しなくてはならないが、法律でそれを禁止されている。

 だがそれを我慢すれば使用する本人が死んでしまう。

 しかし“個性”の使用を許されてるのはヒーロー免許を持っている人たち、もしくは専門職で活用できる人と限られている。

(最近、個性の免許を持っている人が限定的に使えるようにって法案ニュースが入院しているときにあったけど、もしかして伊達さんが?)

不意に出久はそう思った。

伊達はこれまでこっちの世界で過ごしてきて思っていた。

“個性”による優劣、“個性”が使える人間と使えない人間。

抑圧による犯罪。

ヒーローと言う職業は結果として差別を生み、優劣を生んだ。

法律は国民を守るべき者なのに、守ろうとしていない。上に立つ者の目先の安心しか見ていないことに、伊達は苛立ちを覚えていた。

「相澤ちゃん、合理的に考えるのは間違ってない。けど合理的で行動して、後悔するよ。その考えを否定する気はないんだけどさ、俺には理解できない。災害時にトリアージするんならまだしも、子供に対しても情をささげられない、ただの機械のように動く人間にするくらいなら、俺は相澤ちゃんを軽蔑するよ。」

「・・・・・・・・・」

 相澤は言いたかった。

しかし、それが出来なかった。

 過去にプレゼントマイクに自分のヒーロー名を頼んだことがあった。

 自分で考えることをあの頃から放棄して、自分の考えと言うものをシステムとして組み込むことで解決をしていた。

 時折自分の考えを見せるが、機械でしかないように見えるのは相澤の欠点であった。

「俺から皆に言えるのは、悩めってことだ。何が正しくて間違っているか、自分だけの考えで押し通そうとしないで悩みまくれ。そうでもしないとただの社会の歯車として生きていくだけの悲しい人間になっちまうからさ。」

 伊達の言葉でその場は解散した。

 

 少し離れたところで相沢は伊達に尋ねた。

「おい、なんであんなこと言いやがった?」

「なにが?」

「とぼけるな!」

 相澤は柄にもなく怒鳴った。

「あの法案に関しても関与しているってことか?合理的じゃねぇ。」

「合理的合理的ってうるさいよ、相澤ちゃん。」

「お前!」

 相澤は伊達の胸ぐらをつかむ。

「わかってるのか!あいつらがやったのは立派な犯罪行為に等しいんだぞ!」

「・・・・・・相澤ちゃんは、助けられる命を助けられなかった瞬間を知ってる?」

「・・・・・・何を言っている?」

「多くのヒーローはそれを経験しているだろうけどさ、あの子たちはまだそれを知らない。雄英高校の訓練を見させてもらっているけど、ちゃんとしたものじゃない。身体能力と“個性”の重点的強化に点は置いている。けど救助に関しては甘い。これが何を意味しているか?」

 伊達はそっと手を相澤の手に重ねる。

「相澤ちゃんも、出久ちゃんと戦った当初から変わってなくて、影響されている。“個性”って言う虚栄に。」

「!?」

 その言葉に相澤は衝撃を受ける。

 救助訓練。

 ヒーロー活動は何も敵を倒すことだけではない。

 人命救助も立派なヒーロー活動である。

 だが雄英高校の授業ではそれが少なかった。

「出久ちゃんはそれを知っている。誰よりも残酷な現実を、誰よりも力が無いことのむなしさを。」

 その言葉を聞くと相澤の手は次第に弱くなっていった。

「俺も戦場の軍医で多くの命を見て来た。多かったのが理不尽に奪われる命だ。なのに、相澤ちゃんは子供に最初から突きつける。間違ってない、それは現実だ。紛れもないね。

 けど、相澤ちゃんはちゃんとあの子たちを見ていたのか?強化合宿の時にも出久ちゃんを含めれば七人、たった七人だ。“個性”を考慮してもアレだと無理があった。敵の情報も事前に知っていたのに、それを怠った。会見の時のあのたたずまいはカッコよく思えてたよ。でもね、それだけなんだよ。俺が知っている相澤ちゃんがちゃんとやってるって思ったのは。何より、説得力が無いんだ。」

「説得力が無い?」

「いつも寝袋で移動して芋虫みたいに、髪も洗ってないから少し匂うし。」

 痛いところを突かれる相澤は反論できなかった。

 あの時彼らに対し相澤は信頼を裏切ったと言おうとしていた。

 しかしどうだろう?彼は普段から少し問題があった。

 強引すぎる単独判断、身だしなみの悪さ、食生活、移動手段。

 寝袋に関しては何度警察に厄介になって始末書を書かされたのか忘れるほどの量であった。

 伊達は、相澤を途中から知っているからこそ言った。

 今の相澤しか知らない伊達にとって、人のことは言えないと。

「・・・・・・・・・・」

「ショックか?でも俺は、いや俺たちはこの世界の在り方に疑問を抱いてる。ヒーローの在り方についてな。」

「さっきから気になったがこの世界とはどういう意味だ?お前は、いやお前と緑谷は一体・・・・・・・」

「そろそろ、教えてもいい頃だな。校長とオールマイトと一緒に話してあげるよ。出久ちゃんも、そろそろみんなに話すだろうからさ。」

 



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77 部屋王決定戦

 出久たちが入寮するところはロビーが広く、部屋も一人暮らしをするには問題ない広さであった。

 その時百は「我が家のクローゼットと同じくらいですわ。」と言っていた。

「出久さん、教えていただきありがとうございます。」

「いやいや、なんとなく予想していたから。」

 出久が前もって教えていたのは部屋の広さに関することだ。

 お茶子が住んでいる家の広さを参考にして家具などを考えるようにと助言をしていた。

 実際入れようと思ってたベッドの大きさがお茶子が住んでいた部屋ではギリギリであった。

 

 そして荷解きが終わり部屋の模様替えが終わったのは午後六時を過ぎた段階であった。

 男子はロビーでくつろいでいた。

 すると部屋の模様替えが終わった女子たちが来た。

「男子部屋で来たー?」

「おう、今終わったところだ。」

 三奈の問いに答えたのは切島であった。

「あのね、今話してて提案なんだけどさ!お部屋お披露目対決しませんか?」

 その言葉に一同唖然とした。

 

 出久の部屋の場合、これと言って特に特徴的ではない部屋ではあるが、写真が多かった。

 向こうの世界で撮った写真やいろんな国々を回っていた時に撮った写真、そして一つのガラスケースに入っている綺麗な白い石があった。

「結構いろんな国の写真があるね。」

「いろんな国を回ったからね。」

「・・・・・・・・」

 その言葉に飯田は少し気になったが今聞くときではないと思い黙った。

 

 それからは各々の部屋を見ることになった。

 常闇の部屋は黒一色で染め上げられて中学生が好きそうなネックレスや剣とかが飾られている。一種の黒魔術的なものもあったりと個性が強い。

 次に青山の部屋はミラーボールがあって壁から家具に至るまでキラキラしていた。

 流石に目が痛くなるのと女子からの受けは悪かった。

 次の部屋は尾白。これと言って特徴的なものは無くて言うならば普通であった。

 飯田の部屋の場合は部屋の本棚に収まりきらないほどの量の本が置かれ、そしてメガネが大量にあった。

(ケースに入れて保管しておけばいいのに・・・・・・)

 地震があった時を想定した出久はそう思った。

 次に上鳴の部屋だが、手あたり次第チャラ男のおモノを飾っている感じの部屋であった。

 口田の部屋は尾白と似たり寄ったりしているが可愛いぬいぐるみと二羽のウサギがいた。

 ここまで男子ばかり評価されていたことに対し峰田が女子の部屋もと言うこととなった。

 そんなわけで女子の部屋も含めた部屋の評論会が始まった。

 切島の部屋の場合漢気感が満載の部屋で会って女性には理解できない。

 障子の部屋の場合最低限必要なものを置いているだけのミニマリストの部屋であったがこれはこれで印象が強かった。

 瀬呂の部屋の場合はエイジアンな部屋で統一されている分センスがあった。

 轟は一番のインパクトがあった。実家が和風なのでDIYをしたのであった。

 ある意味努力家である。

 最後に砂籐の部屋は部屋こそ普通でこれと言った特徴はなかったが“個性”の関係上砂糖が必要なためシフォンケーキを焼いていた。

 女子からも高評価なので轟とはまた別のギャップがあった。

 続いては女子の部屋。

 一番手は響香。部屋にはロックなポスターや楽器があった。

 上鳴と青山が女子らしくないと言ってたが出久がプテラカンドロイドで二人を撃退した。

 続いては葉隠の部屋。女子力があって可愛い部屋で男子は普通にドキドキした。峰田が行動を起こす前に出久がウナギカンドロイドを使って電撃拘束をした。

 三奈の部屋の場合は独特の色合いの部屋なので男子は反応に困った。

 そして最後に百の部屋になった。

 お嬢様感満載の部屋で轟とは真逆の洋室の部屋であった。

 

 そして談話室で部屋王になったのは砂籐であった。

 理由はシフォンケーキがおいしかったと全く部屋に関係なかった。

 そして出久は一人外で黄昏ていた。

(こうしてバカ騒ぎできてるってなんか嬉しいな。)

 自然に笑ってしまう。

 そんな出久に蛙吹が近づいてくる。

「緑谷ちゃん。」

「どうしたの、梅雨ちゃん?」

「私ね、思ったことなんでも言っちゃうの。あの時飯田ちゃんたちを止めてくれたのはとっても感謝しているわ。でも伊達先生と緑谷ちゃんが一緒に戦っているのをテレビで見てとても心配したわ。」

「・・・・・・」

「私はね、緑谷ちゃんが何時も無茶して戦っているのに心痛めてたの。他の皆も同じよ。いつも誰よりも頑張って戦って傷ついているけど、結局自分を大事にしていない戦いをしているわ。そんな姿を見ていると不意に“ヒーローを目指さないで”って気持ちになってしまうわ。」

「っ!?」

 出久は衝撃を受ける。

 無理もなかった。そう思われるほどの行動を彼は今までしてきたのだから。

「・・・・・・でもね、なって欲しいとも思ってしまうの。私のお父さんが緑谷ちゃんを見てまるで昔のヒーローだなって言ってたの。今と違って昔は本当に緑谷ちゃんのような人が多かったって。

 その言葉に納得できる自分もいるわ。だから・・・・・・・・自分も大事にしてね。」

 蛙吹は涙を流しながらそう言った。

 出久はハンカチを取り出すと蛙吹の涙を拭きながらこう言った。

「ごめんね。そして、ありがとう。」

 しばらくして蛙吹は泣き止む。

すると今度は出久がある事を頼んだ。

「梅雨ちゃん、少しお願いいいかな?」

「なにかしら、緑谷ちゃん?」

「皆を談話室に集めてくれない?話したいことがあるから。」

 



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78 打ち明ける時

結構強引な感じですけど描き上げました


 出久に頼まれた蛙吹は全員をA組をロビーに集めた。

「それで緑谷君、どうして僕たちを集めたんだ?」

 飯田が代表して質問をする。

「うん、実はみんなに秘密にしていたことがあるから今話すべきだと思ってね。」

「話すべきこと?」

 皆が疑問に思う中、出久は告げた。

「僕はね、無個性なんだ。」

 その言葉に衝撃を受ける一同。

「ちょ、ちょっと待てよ緑谷・・・・・・・お前が無個性ってことないだろ!」

 上鳴が声を荒げて言うと出久は首を横に振る。

「本当に無個性なんだよ。僕は生まれてこの方、ずっとね。」

 出久は机の上にドライバーとメダルケースを置く。

「このドライバーとメダルのおかげなんだ。」

「どういうことだよ?」

 峰田が問う。

「この二つはココとは違う、別世界のものなんだ。」

「おいおい緑谷待てって。急に異世界って言われてもそんなものあるわけないだろ!」

 上鳴の言葉に周りは頷くが爆豪が口を開いた。

「アホかお前らは!そもそも、俺たちが使っている“個性”ってのは昔の人からすれば異世界の能力みてーなもんだろうが。それにアホ面、お前が雄英に入ってない可能性もあっただろうが!」

「おい爆豪!いくら俺がバカだからってそれは無いだろ!」

「事実を言ったまでだ!いろんな可能性があるのがこの世界だ。デクの場合別の世界に行って戻って来た。そんだけの話だろうが。」

 その時であった。

《その通りだ!爆豪勝己君!》

 突然モニターがつくと同時に鴻上会長が映し出され、声を上げる。

《初めまして雄英高校一年A組諸君!君達との出会いに、Happy Birthday!》

「は、はっぴーばーすでい?」

 砂藤がひらがなで復唱する。

「鴻上会長、いつもながら驚くんですけど。」

《まぁ君は慣れているから問題はないね。君が自分から打ち明ける機会を私は待っていた!そして今!君は自分から打ち明けた!ならば私も協力しよう!》

 全部説明するつもりだった出久からしたら助かる事であった。

《君たちは出久君がなぜヒーロー名を仮面ライダーと名乗っているか、わかっているかね?》

「それってあの時話した理由じゃないのか?」

 切島がヒーロー名を決める時に話した理由を持ち出したが鴻上会長はNo!と言った。

《仮面ライダー。これは一言では語りきれないほど重く、責任ある言葉だ。

 どんな正義も悪がいてこそ成り立ち、存在する。

 初代仮面ライダーは当時、世界征服をもくろむ悪の組織から生まれた怪人だ。》

「なんでだよ・・・・・ヒーローは・・・・・」

「峰田ちゃん、ヒーローが存在しない世界なのよ。ましてやいきなり警察に悪の組織って言われても誰も信じはしないわ。」

《その通りだ!各地であらゆる事件は起きるが誰もそれに辿り着けることはなかった。

 そんな組織に立ち向かったのは当時たった一人!それが初代仮面ライダーにしてショッカーが生んだ最高傑作!仮面ライダー1号!そこから歴史は始まった!》

「待ってください!」

 百が手を上げて発言をする。

「今歴史は始まったと言いましたが、そこで終わったわけではないのですか?」

《その通りだ!時には宇宙、時には地底、時には異世界からの侵略が我々の世界ではあった。しかし!その度に立ち上がった戦士たちがいた!それが仮面ライダーだ!

 そして出久君は私たちの世代で生まれた平成12番目のライダーだ!》

「12番目?」

 お茶子が首を傾げる。

《君たちも一度会っているはずだ。アクア、フォーゼ、そしてWに。》

「あ、あの時の!」

 三奈がI・アイランドでのことを思い出す。

《あの時にもこちらの方で潰そうとはしているのだが、なかなかつぶせない組織が関係していたんだ。》

「ある組織?」

 葉隠が問うと鴻上会長は答えた。

《その名は財団X。いわば死の商人だ。あらゆる武器や兵器を売って世界に混沌を招いている。今も仮面ライダーやインターポールが協力しているが、トカゲのしっぽ切りの状態だ。》

 異世界とはいえど自分たちと同じ、いやそれ以上の状況になっているとは思わなかった。

 そこから出久の力の根源について語り始めた。

 800年前、ある王が世界征服を目論んでいた。それもただの世界征服ではなく新たな世界の神として世界に君臨するという欲望の大きい王であった。

 王は錬金術師で動物の力を取り込んだメダルを作った。

 王はベルトとメダルを使って逆らう者をすべて倒し、世界を掌握する一歩手前まで行っていた。

 しかしコアメダルから生まれた怪物グリードがいずれ自分たちも殺されると思い反旗を翻した。しかし中に一人裏切り者がいた。

 それが出久を助けたグリード、アンクであった。

 アンクは王を利用しようとしたが、王はアンクを裏切り、コアメダルをすべて取り込み自分のモノにしようとした。

 しかし王一人の器の中に抑え込むことが出来ず、暴走した。

 コアメダルの有り余るエネルギーは周りを巻き込んだ。

 王は石化して棺となってその場にいたすべてのグリードとメダルを封印し、そして国は一夜にして滅んだ。

 それから約800年の月日が流れた。

 異世界の穴に巻き込まれた出久は記憶を失い世界を旅していた。

 ある事情で日本に来た出久は日雇いの警備の仕事をして偶然にもその場に居合わせた。

 そこから出久の運命は流転した。

 蘇ったグリードから生まれたヤミー。

 800年の人間の進化に驚きながらも順応していくグリード。

 自分の欲望のためにグリードと手を組むドクター真木。

 戦いは激しさと複雑性を増していった。

 そしてある日出久の体に取り込まれた紫のメダル。

 そこから始まる暴走。

 そして知らされなかった出久の過去の後悔。

 徐々に人間でなくなっていく日々。

 そしてアンクの離脱。

 様々な事情が絡み合った。

 語るには到底難しかった。

 そしてドクターが一体のグリードを暴走させ、世界に終焉をもたらそうとした。

 出久たちはそれを全力で阻止すために戦った。

 しかしドクターは人間とグリードを超越した力を手にし、出久の渾身の一撃をモロともせずに立っていた。

 成す術ないかと思われた時、アンクが最後のコアメダルを渡した。

 しかしそれはアンクの人格を構成するコアメダル。

 ヒビが入っていた。下手に使えば割れる物であった。

 出久はアンクがやりたいことと理解し、それを使い変身をした。

 そして渾身の技を繰り出し、ドクターを倒した。

だが同時にそれは分かれを意味していた。

 ドクターの崩壊によりコアメダルが次々と穴の中へと吸い込まれていった。

 そのメダルの中には出久が使っていたアンクの人格以外のコアも吸い込まれた。

 そして空から落ちるところを後藤に救われ、今に至る。

「・・・・・・・・・・」

 その話を聞いて一同何も言えなくなった。

 出久の経験してきたことは一年とは言えど色濃く、濃密で激しい物だった。

 またヒーローの在り方に対して今起きている運動にも納得できてしまっていた。

 助けるはずの者が助けようとしない、自己犠牲の精神で戦おうともしない。

 正義の定義に正しいとかはないのだが、ふとこの世界のヒーローの在り方について疑問に思ってしまうのであった。

 



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79 秘める決意

皆さん長らくお待たせしてしまってお申し訳ございません
しばらくの間読みに徹していたのと他の作品を色々と投稿しているのもありましたがやはり一番の原因としては刺激がなくなってきたことにあります
仕事で今も忙しくなり時期があったりします。

ヒロアカの映画を見てきました
最近別サイトでFGOコラボの話を書いているのですがそちらの方との連想を先に考えていました。
こちらの方の作品でもする予定ですのでご安心してください。
そして映画を見て個人の感想としてはヒーロー協会からあの国絶対指導や勧告を受けるのが見えますね。あの国は今後色々と立て直しをしなければならない国ですね。


「・・・・・・・・」

 飯田は一人自分の部屋の椅子に座り考えていた。

(僕の家は、規律と礼節を重んじるヒーローの家系だ。それに恥じないようにここで学んでいたつもりだった。だが実際は違った。)

 今日聞いた出久の話に飯田は衝撃を受けた。

(彼と最初に会ってから何かが違うと思ったが、そうじゃなかった。根本的に違ってたんだ。力だけじゃない、経験も。人生も。)

 濃い人生を送ってきた出久に対して飯田は自分と同じと思っていたことを恥じていた。

(だが彼はそれに大して決してマウントを取るとはしない。むしろ前に前にと進もうとする姿勢を俺に見せてくれている!)

 出久の生き方は本来あるべきヒーローの姿なのかもしれない。

 悲しい話ではあるが日本ほどのヒーローは世界にはいない。

 理由としては国によっては儲けにならない仕事をしないヒーローもいるのだ。

 慈善活動やイベントなどでも金になる方にしか働かないヒーローもいる。

 また汚職に手を染めているヒーローも少なくない。

 日本でもいるが世間の目もありすぐに見つかる。

 出久のいた世界において仮面ライダーを金儲けとして使っているところはない。

 むしろ本物の正義で戦っているようにも見えてしまう。

「・・・・・・・・・僕は一体、何を学んできたのだろうか?」

 ヒーローに関する法律も、この世界において必要な法律や知識も学んでいる。

 しかし本来ヒーローは国に縛られるのではなく困っている人を助ける物であるため、国に管理される存在ではない。

 しかしいつしかこの世界において秩序と言うよりも脅威になりえないための抑止の首輪としてその職業を与えたのかもしれない。

 そう考えれば自分たちは踊らされているのかもしれないのではないのかと飯田は思ってしまった。

 だが今更どう変えればいいのかも答えは分からない上に、出久も教えてはくれない。

 正しい正義などないのは飯田も少しは分かっていた。

 ステインの思想は過激ではあるが筋は通っていた。

 人気や地位や名誉ばかりを求めて自分が信じる正義を貫こうとはしなかった。

手のひらを二転三転と返す正義ばかりを通していた。

 彼の行動を正しいとは言わないが、理解は出来てしまったのだ。

「・・・・・・・何も学んでなかったな。」

 ふと飯田はそう呟いた。

「学んでないなら、学んでいこう。これからの僕の正義のためにも。」

 飯田はそう言うとカーテンを開けて月を眺める。

 同じことを考えてかA組B組一同も見ていた。

 戦う理由は皆違えども、考えることは皆同じであった。

 



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80 仮免訓練と大人の事情

皆さん大変待たせてしまって申し訳ございません
正直言えばモチベ上がらなかったのと
今まで仕事が忙しかったのと
パソコンが動き遅くてまともに執筆できなかった上に止まりまくってたのと
最近シンフォギア(今さらかよ)にはまってたのと
続きが思いつかなかったのでなが~~~~~~~~~く止まってました

今回は一部ストーリーを飛ばしています
理由は出久が回りより経験豊富すぎるから
だいぶ久しぶりなのでクオリティ低いので須吾ご勘弁下さい


 出久の打ち明けから日が経ち、ヒーロー科生徒は一層気を引き締めた。

 本来であれば三年生の頃から取得するヒーロー仮免許。それを一年生の段階で取得するためにも必殺技の開発に勤しんでいた。

(皆必殺技もいいけどこの学校、救命活動方面を教えてないんだよなー。)

 出久が懸念していたのは救助活動方面である。

 現代のヒーローは敵を倒すことばかりに着眼点を置いているが本来は人助けにボランティアに救助活動とするべきことが多いのだがどうしてもそこばかりは疎い点が多い。

 派手さを求めるあまり被害を考えず、人名よりも活躍を優先。メディアにはそっちばかり目が行ってしまいがちになっている。

「相澤ちゃん、もうちょっと計画性とか考えなかったわけ?」

「俺は合理的に動いてるだけだ。計画性とかは・・・・・・」

「そういうけど計画性も合理的考えよ。何より救命技術は出久ちゃん以外ダメだよ。百ちゃんはまだ知識あるけど経験が浅すぎる。それにみんな話術が無い。」

「・・・・・・・・・」

「目をそらさない。現実を見なさい。」

 伊達の指摘は尤もである。

 治療をするだけなら機械でもできる。しかし直るかどうかに関しては患者の意思にもよる。

 病は気からと言うが,正にそれである。どんなに高度で最先端で完璧な医療を施しても、結局患者の直る意思が無ければ意味がない。

 特に災害時などの被災者の精神状態は非常に不安定である。

 緒との情報だけでも不安にさせてしまい肥大化して患者や被災者の精神を病んでしまう事も少なくない。

 現実問題、精神面のケアはその後も続く。

 人間は肉体よりも精神が一番弱い。そしてそれは伝染病よりも伝染してしまうのだ。

 過呼吸などもそういったほうに分類される。

 雄英高校で過ごした日々の中で多かったのは敵との遭遇、及び戦いばかりである。しかし救助活動のほうに関しては全くと言っていいほどに経験がない。

 それ故ヒーロー仮免試験では大きく引き離されてしまう。

「しゃーない。俺が付け焼刃程度だけど使える知識とか渡してくるよ。」

「そのほうが合理的だな。」

 相澤は生徒一同に一旦訓練を中止させて伊達に任せることにした。

 

「え?僕は免除なんですか?」

 その日の放課後、出久は校長室に呼び出されていた。

「そうなんだよ。君の経験を考慮すればむしろ試験自体に支障が出る。それに君には既に臨時ヒーロー免許は発行されているが試験終了後に正式にヒーロー免許が発行される。」

「受け取っていいのですか?」

「委員会の皆さんには鴻上会長の説得もあって承諾してもらっているからね。問題ないのさ。」

 それを聞くと出久は安心する。

 正直に言えば苦学生からのねたまれることを出久は心配していた。

 一部の人間をひいきすればそれにより嫉妬が生まれる。それによる各学校との関係悪化が心配された。

 オール・フォー・ワンとの戦いが終わったからといってもまだ死柄木弔の敵連合が捕まっていないのと、協力者もまだ特定できていないため今後のことを考えれば各機関との連携の必要があったのだ。

「校長、正直言えば僕は危惧してます。オール・フォー・ワンの個性に関することで。」

「どういうことだい?」

「個性は一種の科学の延長線上です。一人で複数を扱う個性のオール・フォー・ワンは疑似的に再現は可能ではないのでしょうか?」

「それは無い・・・・・・・・・と言いたいところだが現状轟焦凍君の二つの個性の例もあるから否定できない。だがなぜそう思うのか意見を聞かせてもらえないかい?」

「きっかけは伊達さんです。」

 根津は首をかしげる。

「バースはセルメダルを使って変身します。コアメダルでは使用者によっては800年前の王の惨劇を繰り返してしまうから安定性が高いセルメダルのほうがいい。こちらの世界であることをほかの世界でないとも言い切れない。」

「・・・・・・・・・・実はこれは非公式なのだがね、オール・フォー・ワンがそういった研究をしていたと思われる資料が脳無の生産工場跡地で発見された。」

「っ!?」

 出久は目を見開く。

「君がその結論に至ったのは正直驚かされたよ。そして今その場所は目下捜査中だ。けど君の力は今回は借りようとは思えない。」

「・・・・・・・・・・なぜですか?」

「私たちは君に頼りすぎてしまうからだ。我々は大人で、君は子供だ。だからこそ今君には学んでおけることを学んでもらい、良きヒーローになってほしいと思っている。それにこれは秘匿性が重視される。君の周りを危険に巻き込むわけにはいかない。」

「・・・・・・・・・・・・なるほど、わかりました。」

 出久は理解した。

  ヒーロー委員会としても威厳を取り戻したいという意図も見えていたからだ。

 

 ヒーロー仮免試験は轟と爆轟を除いた全員が合格をした。

 



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81 ビッグ3

皆さんお待たせしすぎて申し訳ない
最近刺激がなさ過ぎて停滞してやる気も減退
そして何よりいろいろショックもありました
主に減点が痛い!7000円!
原付も乗らないから手放すけど価値が0で引き取り3000円
仕方ない

楽しいこと思い浮かべようにも暗い人生しか見えない悲しい27成人男性の愚痴
まぁ転スラとかのフィギアゲットしたりアニメ見まくったりとしていろんな方向にベクトル向いてます

仮面ライダーとグリッドマンは良かったです
ビースト覚醒も期待が高い
そんで今更撮りダメして未だ見てないリコリスにSSで興味持ってコラボを考えてしまっている自分がいる
ガンアクションに合いそうなの考えに考えて、そんで思いついたのがトランスフォーマー
戦うときに出した息吹が結構あるのと、やっぱあの変形児の機械音がマッチしそうでって思ってますが実行にはまだ移せない
アニメ見てないから
でも面白いのは伝わってきますね

長々となりましたが徐々に連載は再開しようかと思います

後これは個人的な願望
恋は世界征服の後で第二期来てくれ!


 仮免試験が終わって数日後。1-Aの面々は朝のホームルームで相澤からインターンについて説明を受けていた。

「これからインターンについて本格的な話をしておこう。入っておいで。」

 廊下の外で待機していた生徒に声をかけると先輩たち三人が入ってくる。

「職場体験と同違いがあるのか、直に経験している人間から話してもらう。多忙な中、都合を合わせれくれたんだ。心して聞くように。現雄英生の中でもトップに君臨する三年生三名。――――通称、ビッグ3の皆だ。」

 相澤の言葉を聞いて出久は冷静に分析する。

(真ん中の女性は結構足さばきや重心の掛け方が違うな。常に動ける。右の黒髪の人はなんか・・・・・・頑張ってみてるけど根暗な感じが。一番の実力は左の人。重心が安定していてあの筋肉の付き方、実戦だ。二年先の先輩・・・・・・・どんな実力を持っているのかな?)

 出久がそんな子を考えている中、相澤が自己紹介を促す。

「手短に自己紹介よろしいか?天喰から。」

 その瞬間、目に威圧感が増す。

 空気が圧迫される中、出久だけは違った。

 そして彼の目にはみんなの頭がジャガイモのように見えていた。

「・・・・・・・・だめだミリオ、波動さん・・・・・・じゃがいもと思って臨んでも・・・・頭部以外が人間のままじゃ自然に人間にしか見えない。どうしたらいいか・・・・言葉が出ない・・・・」

 カタカタと震えながらしゃべり出す天喰。

「やっぱり・・・・・・」

 出久は呆れていた。

「頭が真っ白だ・・・・・・辛い・・・・・・帰りたい!」

 天喰は一同に背中を向けて頭を黒板にこすりつける。

「あー・・・・・・先輩。人間とかかわるのはヒーローとしては必需です。まず人間じゃないということを意識から外しましょう。友人関係を結んでいる二人と話せるのなら迷惑かけまくってもいいから少しずつ慣れていいと思いますよ。」

 出久がアドバイスを言う。

「でも迷惑は・・・・・・二人の時間を・・・・・・」

「そう思ってしまうのは当事者だけですから。それにいつまでもそれだったら二人が心配になって結婚できないって言われてしまいますよ。」

「それは困る!二人には二人なりの幸せになってほしい!」

 出久に詰め寄るように天喰は近寄る。

「まずは一歩踏み出しましょう。苦手なら少し逃げてもいいから。」

「うん・・・・・・」

 どっちが先輩で後輩なのかわからない光景になってしまっていた。

「あ、聞いて天喰君。そういうの蚤の心臓って言うだって!ね!人間なのにね!不思議!」

「いや、ものの例えですよ。ストレートに言ったら結構傷つきますから!」

 出久はツッコミを入れる。

「彼はノミの“天喰環”。それで私が“波動ねじれ”。今日は校外活動について皆にお話をしてほしいと頼まれてきました。」

「さらっとディスるのやめてあげて!かわいそうだから!」

 それから波動はいろいろ気になっては質問するがすぐに興味が移ってしまう。

 どうしたものかと悩んでいると伊達が止めに入る。

「はいはい、興味持つはいいけど時と場合を考えなさい。それと無暗に人の奥底に入るのは危ないから気を付けましょう。」

「・・・・・はーい。」

 ねじれはしぶしぶ承諾した。

「はぁ・・・・・・ミリオ、最後頼む。」

「イレイザーヘッド、安心してください!!大トリは俺が何とかします!」

 最後に残ったミリオが頑張ろうとする。

「前途――――!!?」

「「多難?」」

「よーし!二人だけ反応したけどオッケー!」

 出久と伊達が反応して結果オーライ。

「そう言うのは認知されてること前提でしなさいよ。」

「ハッハッハッ!これは失礼しました。」

 伊達の言葉にミリオは頭を下げる。

 クラスの面々も少しばかり不安になった。

 この人たち大丈夫か、と。

「まぁ何が何やらわからない顔しているよね。必須ってわけでもない校外活動の説明に突如現れた三年生だ。そりゃわけもないよね。」

 いきなり冷静なトーンに戸惑う一同。

「一年から仮免取得だよね・・・・・・ふむ。今年の一年生ってすごく元気があるよね?そだねぇ・・・・何から何まで滑り倒してしまったし・・・・・お詫びとして君たちまとめて俺と戦ってみようよ!」

 突然の提案に一同は驚きの声を上げる。

『え・・・・えええええ~~~~~~~~~~~~~~~~~!』

 



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