古城くんは基本けだるげ (トマボ)
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別枠
別枠 矢瀬くんは気だるげ


相変わらずの低クオリティでお送りしております。
酔っ払いの書きなぐりです。後日直すかもしれません。

不定期で間が空いてしまって申し訳ないですがぼちぼちよろしくお願いします。

声優さん的に今回は古城さんが世話係的なやつです。


 

 

「おーい、矢瀬起きろー。もう授業始まるぞ。」

 

 

 

「……なー古城ぉ〜、なんで休み時間ってこんな短けーの?」

 

 

 

「そもそもガッツリと休むための時間じゃないからだろうな。」

 

 

 

「あと5分は欲しい……。」

 

 

 

 

俺こと暁古城の友人、矢瀬基樹にはやる気というものが感じられない。

 

 

見た目はチャラい感じなのだが、本人の眠気を示すように逆立った髪も心なしか垂れているように見える。実際は染まった髪は硬い。

 

 

若干不良を連想させる風貌とだらけきった態度から引かれがちだったのは最初だけで、偶に弄られている。主に寝ている時の髪を。

 

 

また髪の話をしてしまった。話を戻そう。

 

 

 

とにかく矢瀬は年中気だるげそうにしているのでクラスメイトからは、まあ…小動物?いやいや、この外見でそれはねーわ。

馴染んではいるが、教師陣からすると授業中も偶に寝ているので呆れられている。

 

 

しかし、こいつは成績は悪くないのだ。俺以上に寝ているくせに若干納得がいかない。

 

こんなことを言うと、浅葱あたりに「そもそも寝るな!」と怒られそうなので言わないけどな。

 

 

 

せっかく起こしたのにまた夢の世界へ旅立ち始めた矢瀬を見て、またかこいつと、呆れた目で入ってきた先生が見ていたのでそのうちまたはたかれることになるだろう。

 

____委員長(彼女)に。

 

 

 

そう、こいつは先輩の彼女持ちなのだ。偶に見かけると眼鏡の中華服のコスプレをした奴とか巫女服のコスプレした人とかに、厨二病ネームで呼ばれてたりしたのだが、演劇部だったりするんだろうか?

 

見た目が三つ編みおさげで委員長っぽいのだが、性格も厳しいので、矢瀬は教師陣の異常な速度の伝達により、最低でもその次の時間の休みには先輩に起こされるか、呼び出しのメールか電話が来る。

 

 

 

あいつはそれを眠そうな表情から眉が若干つりあがった、眠くて不満気な表情で会いに行くのだが、相手の方はそれがお気にいりらしい。

 

 

まっっったく分からん。いや、男の俺が分かったらアウトなんだが。

 

 

 

要は、世話焼きな彼女さんがいるってことだ。

 

 

それと、教師陣もクラスメイトも踏み入ったことは聞かないが、色々と込み入った家事情を抱えているらしい。

 

 

だが、俺は知っている。

 

こいつが丸投げしたので、矢瀬の兄貴が泣き叫んでいたことに。

 

今はうちの近くに一人暮らししているのだが、下校途中に一度、「見つけたぞ基樹ィィィィィィィィ!!!!!!」と、人殺ししそうな勢いでお兄さんが走ってきたのを、矢瀬はなんといったか、過適応者(ハイパーアダプター)の能力みたいなもので、ふわふわと浮いて逃げた。お兄さんは普通の人間らしく、そして極度の疲れから崩れ落ちていたので、いたたまれなくなった俺は、矢瀬のお兄さんを招待してぼやかした職場の愚痴を聞いてあげた。この島の管理を裏から頑張ってくれているらしい。

 

若干スッキリとした顔で帰っていったが、社畜というのはあんな感じなんだろうなぁ。絃神島の闇は深い。

 

 

 

 

 

そんなこんなで、授業を終えて放課後になった。え?早いって?いや、普通に授業受けて、昼もまた夢うつつで、階段で寝てた矢瀬を抱えて戻ってきて、授業受けて終わりだぜ?

 

 

そう、もう一つ言うと、こいつは先輩の通い妻的な健診もあってか、健康体の筈なのだが、校門前や階段、屋上、廊下で倒れるようにそのまま眠りに入ったりすることで、病弱なイメージがある。

 

体育倉庫の跳び箱の上にもたれかかっていたらそのまま眠って次の日まで発見されなかったことを聞いたときは本気で心配になったと同時に実はアホなんじゃないだろかと思った。

 

 

矢瀬のお兄さん曰くとある任務を受けているらしいんだが、絶対サボってるだろ……。

(普段であれば、口は堅い人なんだろうが、あのときは平常ではなかったからぽろっと漏れた話かもしれん。本人も多分気づいてなさそうな感じもする。)

 

 

生活指導の先生にも頼まれて以来、良く俺は矢瀬の運搬をしている。

 

「ふわぁぁぁアアア⤴︎」と、今も謎の欠伸をしているのを見ると応援するような気がしないでもない。

 

そして、任務と言えば、もう一人いたなー、とか考えてたら正面から後輩が一人。

 

 

「矢瀬先輩!お帰りですか?暁先輩もお疲れ様です。そ、それで、も、もしご迷惑でなければ帰りにご一緒させて頂けませんか?」

 

 

「(私は先輩の監視役ですから!)」

 

 

 

「んー。良いぜー…_(:3」z)_」

 

 

「いつも言ってるけど矢瀬も俺も別に迷惑じゃないからそんなに畏まらんでも良いと思うぞ?見ろ、このだらけた姿を。」

 

 

「い、いえ、先輩は敬うべきですから。(それに、ふやけた表情が可愛いです…)」

 

 

 

俺にはがっつり聞こえてるんだよなぁ……。

 

 

 

本人曰く、第四真祖の監視役。後輩であり、凪沙の友達でもある姫柊雪菜嬢である。

 

 

第四真祖、つまり俺の監視役らしいんだが、ここにくる前に見せられた写真に、俺と一緒に写っていた矢瀬に一目惚れしたらしい。

 

 

矢瀬の彼女、つまり先輩は、姫柊の上司的な人だったらしく、今までは頭が地面につくんじゃないかと思うくらい頭を下げていたのが、恋する乙女はとても強かで、昼ドラの嫁と姑のごとく丁寧語のままで挑発しあっている。

 

霊能力者?っぽいので、キャットファイトにはならないが。

 

 

俺が矢瀬の世話係その2的な位置にいるので、監視役を建前に矢瀬との距離をもの凄い速度で縮めていった。

 

 

 

「先輩どうぞ!はい、あ〜ん。」

 

「…美味いmgmg」

 

「ふふっ、口元についてますよ」

 

(どっかで見た光景のような気もするが、気にしないでくれたまえ。)

 

 

ハッ!?変な電波を受信していた。疲れているようだ。帰ったら早めに休むとしよう。

 

さて、帰りに喫茶店な寄った訳だが、だるそうな矢瀬に嬉しそうに世話を焼く後輩。単純にいちゃついているように見える。

 

だが、店の外に先輩が居て、姫柊はそれに気づいた上で流し目を送っている。

 

 

割と修羅場だった。

 

 

 

 

「矢瀬。」

 

「なんだー?古城」

 

 

「頑張れ。密やかに応援しとくぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オチは無し。


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別枠 オ・ノーレ

更新出来なくて申し訳ありませぬ。

なかなか書けなかかったのでまたお茶濁し回なのです。すまない…。
キャラは例の通りぶれっぶれですのでキニシナーイの精神で頼んます。

PCを修理するので書けたところまでで終わったりますので凄く短いですか、後日書き足します。


私のお兄ちゃん、古城くんはいつも気だるそうにしている。

 

 

「zzz…(´-ω-`)スヤァ」

 

 

「古城くん遅刻するよー。」

 

 

うちは両親共にあんまり帰ってこないので古城くんとほぼ2人暮らしだ。

昔から古城くんは、低血圧で朝も弱い上に貧弱なもやしっ子だから私が率先して家事全般をしている。というか、私がやらないと家庭が壊滅してしまう。

 

私は部活動もしているので、古城くんの方が先に家に帰ってくる事が多いけれど、料理以外は家事下手なので戦力にはカウントしていない。

 

友達にはよくそのことを心配されるけれど、別に負担という程じゃないし、自分の体調管理はきちんと行なっている。だから、小さい頃は病気がちだった私も今は常に万全だ。

 

そうでなければ、私自身より、見ていても、見ていなくても心配になってくる古城くんが恐らく10日と保たずに永久に眠りについてしまう気がする。

 

 

本人は、この島は陽射しも強いし暑いのでずっと眠っていると聞いたら喜びそうな気もするけれど、流石に古城くんでも不老不死の吸血鬼でもないのだからそんなこと自分から言い出したりはしないと思うけどね。

 

 

冗談は置いておいて、それでもやっぱり古城くんは最新の家電の省エネモードよりも消費が少ない行動をとってる分、おつかいとかも微妙に間違えるくらい頭も働いていなかったりするんだよね。

 

 

そんな兄とやっぱり家事全般アレな深森ちゃん、神出鬼没な牙城くん、とくれば私も例に漏れず、最初は酷いレベルだった。卵焼きは黒かったし、掃除も洗濯も家計管理もザルだったけど、危機感は人を成長させるものなのだ。

 

 

目を瞑ってみればいつでも思い返せる数々のシーンが……

 

 

「_:(´ཀ`」 ∠):うう……」←連休で布団から動くのを嫌がって栄養失調になりかけた古城くんの図。

 

 

 

「(´・ω・)…(・ω・)?」←何処かで寝て起きたら交番で保護されていた時の古城くんの図。

 

 

 

「_(:3 」∠)_」←乾いた洗濯物の暖かさにやられてベランダで活動停止した古城くんの図。

 

 

 

 

(酷い有り様だけど、これでも深森ちゃんよりはマシだったりする。)

 

 

 

今もフラフラと玄関で頭を揺らしているせいか全然靴が履けていない。

 

「ほんとに遅刻するよ?今日日直なんでしょ。ほら、抑えてあげるからちゃんと履いて。一緒に行ってあげるから今日は倒れないでね!」

 

 

「うん…。今日も暑い……。はぁ〜〜…。」

 

 

ふふっ、まったく…何にも出来ないんだから。古城くんは私がいないとダメだなぁ。

 

もう、しょうがないお兄ちゃんだ。

 

 

 

 

そう、古城くんとはずっと一緒にいたし、私が世話をしてきた。

宿題すらまともに解こうとはしないから、ずっと先の範囲まで覚えて家庭教師だってしてきた。

 

古城くんも、「凪沙が居ないと俺は普通に暮らすことすら出来ないなぁ…いつもありがとう。これからも宜しくな…zzzZZ」と言っていた。

 

 

古城くんがうなされているときは私が膝枕をしてあげると、古城くんは安心したように眠りに就くし、

 

朝は目覚まし爆弾や牙城くんのカカト落としでも起きられない古城くんは、私が耳元で囁くと自然と起きてくれるし、

 

少し前までは一緒にお風呂に入っいたのも、着替えを手伝っていたのも、歯を磨いてあげていたのも私が一番多い。

 

 

だから。お兄ちゃんと一番仲が良いのは私だもん!

 

 

 

決してあのツンツン頭のヘッドフォンではない。

 

 

 

ふんだ、学校で近くにいるからって、古城くんと放課後遊んだりなんかしちゃって…。

 

甘党な古城くんとデザート食べに行ったり、カフェにお茶しに行ってるのだって私の方が多いもん。

 

 

「あ、凪沙。今日の帰りに矢瀬が隠れスポットのケーキバイキングを案内してくれるらしいから、夕飯は無しでいいや。土産にも買って帰る。」

 

 

 

 

うおおおおおのれええええ矢瀬ェェェェェェェェェェ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

心頭滅却すれば火もまた涼し

 

 

古城くんの前で取り乱してはいけない。私の沽券に関わってしまう。

 

 

 

今日は午前で学校が終わるので古城くんとまったりできる………筈だった。

 

つい先程までは。

 

玄関にやけに靴が多かったので嫌な予感はしていた。そもそも古城くんは人から嫌われるタイプではないけど、進んで世話を焼こうとして来る人は多くない。

 

だから、うちに来る古城くんの知り合いは限られて来る。

 

だから、非常に不本意ではあるけど、不良ヘッドフォン…もとい矢瀬が遊びに来たのは、決して良くは無いが考えられた。

 

 

浅葱ちゃんは良い人だ。

 

 

だけど、何故だ?何故お前がいる?

 

 

矢瀬兄!!!

 

 

仕事に徹する癖に優しく振る舞う渋いイケメンでエリート高時給でかつ世話好きとか古城くんの好みドストレートじゃない!

 

 

古城くんを養ってあげるのは私だもん。

 

 

 

楽しげに談笑しよったからに!

 

 

そして連れて来たのはやっぱり矢瀬!貴様だな!?

 

 

何がうちの弟と違って手がかかる分可愛げが有るなぁだ!

 

 

 

確かに古城くんは手がかかるけどうちの子だもん!

 

暁古城だもん!

 

 

 

 

…………こうなったら全面戦争だ。

 

 

全員甘党なのは知ってるんだからね?

 

ブラックで飲めるのは私と浅葱ちゃんだけ。

 

 

そして砂糖は朝古城くんが床にぶちまけたのをわざと帰りに買って来てない。

 

古城くんへのちょっとした罰を全員で味わうがいい。

 

 

 

 

 

 

手始めにこの激苦コーヒーをと無糖クッキーから始めよう。

 

 

 

 

古城くんには後で別のを出すとして…

 

 

 

「皆さん、お茶が入りましたよー。是非そのままでお味わいくださいね!」

 

 




田中さん妹と凪沙さんが合わねええええええ。

でも作者の妄想する限りでは拗ねた感じが似ているなーと思ったので採用。



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別枠 何ともない話1

毎度のごとくですがキャラと口調ぶれすぎててすみませぬ。
地の文とか視点とか?奴らは、古城さんを家に残して飛び出していってしまったのさ…。

かなり酷いです。ご容赦を。


ちなみに、古城さんが饒舌だったり会話文が多い時は放課後などの睡眠が十分に取れた後のわずかな時間だけという思いつき(後付け)です。



~~~ブラコン

 

 

 

 

 ある日、学校からの帰り道に矢瀬が変なことを言い出した。

 

 

「なあ、古城。ブラコンってどう思う?」

 

 

「いきなりどうした?まさか・・矢瀬、お前、彼女にフラれたショックでついにそっちに・・・・?」

 

 

「いやちげーよ!しかもフラれてねえっつの。いまもバリバリ付き合ってるわ!!」

 

 

「・・ああ。うん。きっとそうだな。悪い。諦めるにはまだ早かったな。いろいろと時間も必要だろうし、元気出せ。今日はおれがおごってやるからさ。(一一")」

 

 

「微妙な優しさからまったく信じてないのが伝わってきてるからな?おれは分かってるぞ?みたいな顔しないでくれる!?ホントだから。一昨日も先輩と会ってるから。」

 

 

「あぁ、分かった分かった。それじゃ、なんでそんなこと聞いてきたんだ?那月ちゃんの趣味話にでもつきあわされたのか?」

 

 

「強引に話戻しやがって・・。まぁ、ぶっちゃけそのとおりなんだがな。昼に捕まって、『意見を集めてこい(強制)』とのお達しで。前回抜けた分の補習無しにしてくれるっつーから、さっきまで(能力フルで)全力で聞き込みしてたんだよ。まーた、ヤバイもんを布教されないように当たり障りない健全そうなメモだけ渡してきたぜ。」

 

 

「へぇー、大変だったな。おつかれ。というかだから午後はいなかったのか。英語だったのに。」

 

 

「・・・・なん・・だと?」

 

 

「・・・まぁなんつーか、どんまい。」

 

 

「ちっくしょう、あのドSはめやがったな!どっちみち補修じゃねーか。はぁ…………。まぁしかたねーか。

それはそれとして、ちょっと気になったから聞いて見たんだが。

実際に凪沙ちゃんみたいな可愛い妹がいる兄としてはどんな感じなんだ?うちは、まぁ、特殊だし、歳離れすぎてっからな。」

 

 

「凪沙がいないと家庭が回らないあたり凄くできた妹とだと兄として誇りに思う。

呆れられてるとは思うが、仲が悪い訳じゃないからよく分かんねーなぁ。

昔は懐いててくれたけど。」

 

 

 

「今は立場も逆…と。」

 

 

 

「反論の余地もないぜ。」

 

 

「んー、まぁそうだな。話振っといてなんだが、凪沙ちゃんがあのロリッ娘みたいになるのは想像つかねーや。」

 

 

「ロリっ娘?犯罪は駄目だぞ。そして凪沙は渡さん。」

 

 

「ちげーよアホめ。むしろお前がシスコンじゃねーか。過保護になるのは分かるが程々にしとよ?」

 

 

「過保護……。過保護…か。最近凪沙が通信空手とか護身術指南の資料集めててな。」

 

 

「おー、えらく簡単に言われた事が予想できるな。

大方、「これで古城くんを護ってあげるね!」とかか?」

 

 

「妹が保護者すぎてヤバイ。」

 

 

「んー…否定できる要素がねーな、確かに。現に今も陽射しでぶっ倒れて俺が運んでるわけだが……お前はもうちょっと普段から動け。よし、ちょうど着いたしそんじゃ、またな。」

 

 

「おー、サンキュー。」(( _ _ ))ノシ

 

 

(ここまで送ってもらっておいてアレだが、優しいタクシーの運転手は、重そうな荷物を代わりに持って階段を登ってくれるらしいぞ。矢瀬よ(ドライバー)。)

 

 

「階段……長い……つらい…」

 

 

矢瀬と別れた後のこの万能感の喪失?みたいな感じは大きいなと適当な事を考えながら階段と戦う。

戦うんだが、ここの階段こんなに長かったっけ?

(←意識無いときは運んでもらってる人)

 

 

「ちょっと、古城くん。階段で休憩しないでよ!ほら、肩貸してあげるから頑張って歩く!」

 

 

「おー、凪沙。おかえり。ありがとな。あとなんかゴメン。」

 

 

「どうしたの?急に。疲れてる…のはいつものことだけど。」

 

 

「部活を頑張ってから帰ってきた妹に階段を登るのを手伝って貰ってるっていう現状に、兄として情けなくなってきてな…。」

 

 

「あはは。今更何言ってんだかなー、古城くんの馬鹿。どんなにダラけてても古城くんは古城くんだし、どんなに貧弱でも私のお兄ちゃんだよ。よっと、着きましたよ〜お兄様〜?」

 

 

「よく出来た妹で嬉しい限りだ…。」

 

 

(凪沙がブラコンだったら……か。無いな。うん。)

 

 

 

その日もまたいろいろと助けられながら寝た訳だが、

 

俺には、なんかしらんが、眷獣と一緒に訳の分からん血の記憶的なものが受け継がれたらしい。

 

それは、極稀に似たような経験があると目覚めたりして、俺に追体験のように記憶を見せてくる。

 

夢というのは脳の記憶の整理だったりとか聞いたことはあるだろうか?

 

その日にあった出来事や過去の記憶がごちゃ混ぜで出てきては妙なところで目が覚めた…なんて経験は珍しくないだろう?

 

だから、この日に俺があの変な夢を見たのはきっと矢瀬の言ったことが原因だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名前は、暁古城。至って平凡な高校生だ。両親は共働きで海外にいるので、今はしっかり者な妹と二人暮らしをしている。

 

兄としては情けない限りなのだが、俺はとても怠け者だ。学業、運動、家事、その他諸々を基本的に自発的に行おうとはしない。

 

実に救いようの無い社会のゴミであるわけだが、

 

青春?そんなことより睡眠の方が重要だ。

 

宝物?今この瞬間にも感じている微睡みのことだろう?

 

 

最高に良いシチュエーションでダラけ続けるために、俺はその時、その瞬間のみ、残り滓程度の俺の中の小宇宙をはじけさせる。

 

万難を排して挑む………のは疲れそうなので、適度に頑張りながら、今日もダラけようではないか。

 

 

さて、爽やかな朝日が差し込んできて、俺に目覚めを強要してきているのでそろそろ目を開けるとしよう。

 

 

「あっ!起きた?おはよう古城くん。今日の寝顔も可愛いかったよ♡。」

 

 

目を開けたら、どアップで逆さまな妹の顔が映った。◯トリのマイ枕は追いやられ、いつものごとく膝枕をされている状況だ。

 

 

「おはよう、凪沙。起きたから、どいてくれ。」

 

 

「おはようのチューは?」

 

 

「無しだ。」

 

 

「え〜、なんで!?小学生まではいつもしてくれてたのに!」

 

 

「歳を考えろ。そして、してきてたのはお前だし、小学生だって割とおかしかったことに気づけ。」

 

 

「ふーんだ。照れちゃって。じゃあ、どく代わりに今週末デートしてもらうからね。」

 

 

「へいへい。日用品の買い出しと荷物持ちな。付き合うからどいてくれ。」

 

 

 

 

これがうちの妹。暁凪沙である。俗にいうブラコンというやつだ。

あ?どこのギャルゲーだだと?寝ぼけてんじゃねーの?(盛大なブーメラン

 

 

「ほい、今日はパンケーキを焼いたよ!早く食べて!さ、ハリーアップ!速さが足らないよ!」

 

 

「甘そうで嬉しい限りだが、何も入ってないな?」

 

 

「私の愛情がタップリだよ!」

 

 

「はいはい。で?本音は?」

 

 

「睡眠薬を少しだけ!…ハッ⁉︎しまった。ついノリで。」

 

 

「正直でよろしい。よし、凪沙。お兄ちゃんがあーんしてやろう。ほら、口を開けろー」

 

 

「待って、古城くん、待って。凄く嬉しいんだけどあの、その…恥ずかしいなーなんて…。」

 

 

「遠慮するな。ほら、俺はお前の料理の腕を信用してるからな。美味しいに決まってる。ほら、あーん。」

 

 

「むもごっ!?………zzz」

 

 

 

即効性のある睡眠薬?誰からもらったんだ?

 

こんな風に若干変わった妹ではあるが、懐かれてると思えば兄冥利に尽きるというやつだ。

身の危険を感じつつも自分で自分を誤魔化して、適当に朝食を作り直して片付ける。

机に突っ伏したままだと身体を痛めるので凪沙はソファに寝かせておいて、出かけるとしよう。

 

ちなみに、倒れた凪沙のポケットから鎖が出てきたので下手人はロリ教師だと判明した。

 

 

さあ、休日出勤してるであろう犯人にお説教をしに行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(この後、他の先生の大勢居る職員室という手の出しにくい状況で生徒から常識を説かれつつお叱りを受けた見た目ロリな教師は泣いた。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




適当なところで終わってしまいましたが、これ以上は無理。

夢の中のシスコン古城さんにとっては何ともないのだ!


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別枠 え?アレ?マジで?な話1

現実逃避で迷走しております。あと、ネタバレになる?かなぁ?ってとこがあるので気にされる方はとばしてください。

そして関係ないですが、最近また感銘を受けた一言を聞きました。
''人はみんな変態なんだよ!!もし人でなくなっても人を超えた変態になるだけさ。''

無駄にカッケェようなそうでもないような。
犯罪はNGだからきちんと弁えてね?ってことだけ。

無駄話ばかりで申し訳ない。



突然ですまないな。俺はクラスメイトB…いや、Nくらいにしておこうか。

 

なんやかんや色々あったがやっと落ち着いて来たので今日も元気に登校している。

 

少し前までは普通の高校生だったんだが、どうやらここはストブラの世界らしい。と、気づいてしまった。

 

何故かと言われると、作者が困るのでツッコまないでほしい。アイツ、頭弱えんだ。

 

あれだろ?よくある前世が〜とか、転生だ〜みたいな。

そんな感じだ。

 

 

まぁ、理由はともかく、せっかくなので楽しむことにした。

 

 

登場キャラは濃い設定盛り盛りだし、島の謎とかを段々と紐解いて行ったり真祖絡みでラスボス風なのとかも割とホイホイ出て来て面白いよね。

あと、主人公の暁古城も結構人気よね。なんだろ、こうハーレム物ではないからかな。

おれはそれでも気にする方ではなかったけど、あまりヘイトを向けられるタイプの主人公じゃなかったよね。

1部から2部への移り変わりも良いけれど、恐らくこの話そこまで進まんからほっておこう。

 

ヒロインズも敵も魅力的なエピソード持ってたりするから良いよね。

 

 

 

そこでだ。

 

 

原作関わろっかなー。どうすっかなー。

 

つってもただの高校生だからできることなんもないだろうけどね。

 

 

そこはノリでいくとしても、おもろそうな奴がいたら話しかけるって感じで行きたいんだけども。

 

 

俺「こんにちわー。」

相手「こんにちわ、◾️ね!」

 

 

とかされないかが心配だよね。

この島結構な頻度で襲われてるし。

 

 

 

または、

 

 

俺「この後、テロリスト襲ってくるぞー。場所は学校」

相手「なんで知ってんだテメェ。裏こいや。」

テロ「末代まで祟るぞコラ」

 

 

 

うーん。適当だけどありえそうで怖い。

口軽いからなーぽろっと言っちゃいそう。

 

 

ま、そんときゃそん時かな。モブだって主人公だって死ぬときゃ死ぬんだし。

あんまし気にしすぎてると禿げるぞ?

 

 

 

気を取り直して今までと同じだけど、新しい教室へいざ参らん!

 

 

 

 

と、気合い入れて学校に来て、いざ、主人公はどこだ〜?と、教室を見渡してみれば、

 

 

 

 

 

アレは誰?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

うん。すまない。驚きすぎて日を跨いでしまった。

 

 

どうやら、アレ→_(:3 」∠)_が、暁古城らしい。

 

 

知ってるか?あれ、目を開けたまま寝てるんだぜ?

 

どこの◯中くんだよ!って心の中でツッコミ入れてたら、

隣のクラスから、

 

 

「このまま田中くんが起きなかったらどうしよう!」

「そ、そんな、ししょーー!!」

「おい!早く起きやがれ!」

「起きるよな?なぁ、太田どうにかならんのか?」

 

 

 

とか、聞こえて来た。

 

いや、なんで?

 

いるんかーい!そして隣のクラスかーい!

同姓同名の人かもしれんけど、声一緒なんだよなぁ…

 

太田さんと。

 

 

 

キャラ的には全然違うんだけどもね。

 

 

 

 

 

まあ、そんな感じで戸惑っていたんだが、確かに原作と同じ第四真祖の暁古城さんらしい。

 

いや、正確には暁古城ちゃんらしい。

 

 

 

いやいやいやいや、何で?いささか、髪長ーなーとか思ってたよ?

顔は男物のパーカーのフードすっぽり被ってて隠れてたけど、日差しよけかなーと思うじゃん?

んで、制服も普通にズボン履いてるね。うん。

 

 

そして、体育。寝ぼけ眼擦りながら、金髪のギャルさん(藍羽浅葱さんだった)に、女子更衣室に連行されていく古城ちゃん(♀)。

 

 

 

うーん。そうきたかー。

 

 

そんときゃまだ、実感?が湧かなかったんだが、体育館で半袖半ズボンの体育着見てさらにびっくり。

 

 

 

長めの銀髪に長身で顔整ってて眠そうな半目しかも赤眼。いやー、スラッとしてて、めっちゃ可愛いね。

 

バレーボール顔面にくらって倒れたのを保健室まで矢瀬くんが運んでて他の男子から嫉妬の念をぶつけられてたわ。

 

 

そして、かなりドジっ娘。

 

 

 

 

 

属性盛りすぎじゃね?

 

 

 

 

隣のクラスにいるであろう太田くんの妹さんのキャラまで持ってる気がしなくもない。

流石に乙女な少女マンガに影響されてはないだろうけど。

 

 

そんで、俺、もとい俺という意識になる前の俺は、あの3人とは偶に話す程度だった。

 

 

 

見た感じだと、藍羽さんは普通に友達。

矢瀬くんが苦労人ポジだけど、なんか偶に甘酸っぱい。けど気づいてない。主に暁さん(と呼んでいたのでそのまま)からのアピールに。

 

 

 

 

矢瀬くん何してんだ……。ちなみに、藍羽さんと矢瀬くんの(シリアスの)立ち位置はほぼ原作通りかな。耳はいい方なんだよね、俺。

 

 

 

 

とりあえず、普通におもろそうだからクラスメイトとして適度に突っついてみよっと。馬に蹴られん程度にな。

 

 

 

 

 

 

P.S ボイスは◯谷さんじゃなくて普通に女の子でした。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

それでは、少しずつちょっかい(愉悦)の内容をお伝えしよう。

 

 

「おはよ、暁さん。今日も眠そうだねー。」

 

「おはよう……zzz。」

 

 

 

矢瀬くんに、脇に抱えられた状態で眠る暁さん。手足は伸びきってて脱力しきってる。デリカシーとかカケラもないね君たち。

 

 

「せめて席に着いてから寝ろよ古城。」

 

「矢瀬くんもおはよう。今日も大変だね。また寝坊?」

 

「おう。てか呼び捨てでいいっつの。慣れねーよなお前も。んで、今日は普通の時間に起きたらしいんだが、古城が途中で野良猫見つけてな。

ふらっと触りに行ったんだが、猫に避けられて、また触りに行って避けられての繰り返しでバテたらしい。

めっちゃフラフラしてたから見かねてな。」

 

「それで、運んできたと。へー。ふーん。そっかー。これで何日目だっけ?途中でバテた暁さん運んでくるの。」

 

「あー、2週間くらいか?なんか、最近ずっとだなぁ。」

 

「そっかそっか。まあ、そういう時もあるさ。大変だねぇ、おかあさんも。」

 

「誰がおかあさんだ。ほれ、古城。席座っとけ。あー、寝癖ぐらい直してこいよ。しゃーねーな。」

 

 

 

小言を言いながらシレッと手櫛で寝癖を治す矢瀬くん。自然な流れでしたねー。

 

「いや、そういうとこね。」

 

 

そして、耳がほんのりと赤くなっている暁さん。うん。起きてるね。

 

 

「そろそろ、矢瀬くんも席ついた方が良いと思うよ。」

 

「ああ、そうだな。」

 

 

 

自分の席に戻った矢瀬くんを見送って、狸寝入りしてた暁さんにだけ聞こえる程度の小声で話しかける。

 

「野良猫ねぇ…。」

 

「…………。」

 

「そういえば、先輩から習ってた式神が猫型だったような気がするなー。気のせいだっけかなー。」

 

「…………。」

 

「そんで?どうしてまたスカート履いてこなかったの?」

 

「…………。」

 

「せっかく運んでくれてるのに、せっかくなら横抱きにでもしてもらえば良かったのに。」

 

「…………。」

 

「もー、ヘタレだなー。」

 

「うるさい……。」

 

「あんまり寝ぼけたままだと、すぐに終わっちまうぜ?(日常パート)」

 

「だって………恥ずかしいんだもん…。」

 

「そういうところを見せろよなぁ…。」

 

 

 

こんな感じで第三者視点から適度に2828しつつ後押しして楽しんだり、

 

 

 

 

 

 

「ね、古城。基樹。週末どっか行きましょーよ。」

 

「……パフェ食べたい。」

 

「お、良いな。久々に俺も甘いもん食いたいぜ。」

 

 

てなことを言っていたので、

 

 

 

「らっしゃーせー。」

 

「げっ…なんでいんのよ。」

 

「よー。バイトか?」

 

「…甘い匂い。」

 

「奥の席へどうぞ〜。ところでお客様方スペシャルメニューはいかがっすかー。今ならチャンピオンサイズDXパフェとラブラブパフェが半額になりますよー。」

 

「いや、メニューをm「ご注文承りましたー。少々お待ちくださいませー。」聞きなさいよ!」

 

「まぁ、そう怒るなよ浅葱。見てみろ、この甘党を。既に少年の目だぞ。」

 

「古城も基樹もなんであいつに寛容なのよ……。」

 

 

「「慣れた」」

 

「いや、無理でしょ。」

 

 

(だろうね。俺の煽りスキル無駄に高いだろうし。)

 

「お待たせしましたー。DXパフェとラブラブパフェになります。」

 

「いや、デカすぎでしょ。食べられるけど…。」

 

「はっ!?申し訳ございませんお客様。お一つでは足りなかったですね。すぐに追加致します。料金は私がお持ち致しますので。」

 

「い、要らないわよ…。」

 

「ちょっと迷いましたねー。」

 

「うっさい!それより、何よラブラブパフェって!しかも何でスプーン一つなのよ!」

 

「それはもちろん。カップル限定メニューだからでございます。

お二人で!交互に!お召し上がりくださいませ。矢瀬くん、暁さん。あーんですよ!あーん。 あ、藍羽さんは20分以内で完食してくださいねー。よーい、スタート。さ、ハリーアップ!」

 

「なんか、扱いちがうんですけど!?」

 

 

(冗談にきまってるじゃないですかー。)

「いじると光りますねー。」

 

「おい、本音出てんぞ。」

 

 

 

「ほれ、古城。あーん。」

 

「…あーん。甘い。矢瀬も…あ、あーん」

 

「お、サンキュー。美味いなこれ。」

 

「……間接…キス……///」(ボソッ

 

「どーかしたか?」

 

「…何でもない。腕疲れたから食べさせて矢瀬。」

 

「相変わらずだなぁ…ほれ、あーん。」

 

「あーん…甘い。」

 

 

 

 

「ねぇ……。」

 

「何ですか?」

 

「アイスコーヒー追加。ブラックで。」

 

「かしこまりましたー。2杯お持ちしますねー。俺の分も飲んでください。こっちはカフェインの錠剤噛み砕いてますんで。」

 

「ありがと…」

 

 

 

何で付き合ってないんだろうって不思議になるレベルのイチャつきを見せられて(本人達自覚なし)逆にダメージくらったりする時もある。

 

 

 

 

 

 

「みなみやせんせー!」

 

「なんだ、問題児。」

 

「これを読んでください。」

 

「? seven handred fifty three……おい、何が言いたい?」

 

「そしてこれを見てください!」子供用晴れ着特集

 

「……ほう。そんなに補習(物理)が受けたいのか。」

 

「いえいえ、そんなことはないですよー。それに、サイズがアレなので子供用の雑誌を見せましたけど、晴れ着は立派な正装ですよー。偶にしか着れませんし着てみませんか!大丈夫です、普段着がゴスロリの時点で既にイメージ的にコスプレには見えませんから!」

 

「仮にそうだとしても、貴様の提案に乗るメリットが見当たらん上に、教師を侮辱している事実は変わらんぞ?」

 

「まぁ、そうですね。ぶっちゃけ弄りたかっただけです。ちょろいですし。」

 

「開き直っただと?!ともかく、貴様は後で補習だ。みっちりとしごいてやるから覚悟しておけ。」

 

「はぁ……短気な先生ですねぇ、全く。コレだからロリっ子は。」

 

「死ね!!!!!今ここで!」

 

 

 

 

 

 

と、そんな感じで楽しい学園生活をお送りしております。

え?最後のは違う?

 

まぁいいっしょ。

 

 

 

なんか都合よく両親は海外らしいし、蓄えもある。概ね何の不満もない生活をしている訳だが、

しかしながら、不安が全く無いわけではない。

 

 

不安要素が一つ。

 

つい最近知ってしまった厄介な問題が一つ。

 

 

 

不安要素というのは、もう夏休みに入って少し経つ訳なんだが……。

 

姫柊さん居なくね?

 

 

っということで、原作が始まる気配があまり感じられない。

これは、まぁ俺がいることでバタフライエフェクト的に少し時期がずれただけかもしれんのでもう暫く様子見だ。

 

 

 

 

そして、厄介な問題というのは……。

 

 

 

矢瀬くんが彼女持ちということである。

 

もう一度言う。

 

矢瀬くんは彼女持ちである。

 

 

 

 

因みに、暁さんはそれを知らない。

 

いや、眼鏡委員長(先輩)が原作で矢瀬くんと付き合ってたのは知ってたよ?

 

でも、全く会ってる様子無かったし、実際そういう話題を振っても何ともない風にしてたし、先輩の方にも探りいれてみたけど本当に唯の先輩後輩というとの、仕事相手の関係でした。

 

 

 

それなのに、先週ナンパされてた所を助けられたという少女漫画的な展開の後速攻で告られたらしい。矢瀬くんもあっさりOK。

 

 

 

えー……。つまり、どういうことだってばよ?

 

 

 

え?暁さんと会う前から密かに惚れてた?マジで?

 

先輩は?あ、一目惚れ?初めてちゃんと顔見た?そうですか。

 

 

 

お、おう。やばい。日常パートだけですっげー疲れるんだけど。

 

も一つ補足すると、弄り続けた結果、暁さんからは恋愛相談を受けていたりする。

余計なおせっかいはしまいと決めてたんだけどね。最初は可愛いーなー、若くていーねーとか思ってたんだけど、ヘタレすぎてあっという間に学生終わるぞ?のレベルだったので見かねてしまった。

 

 

あん?俺?ほっとけよ。同窓会で当時のそういう話で盛り上がったことは無かったということだけ言っておこう。

 

 

話を戻すが、

見てて結構いい感じの二人だなと、原作どうこうはほっといて個人的に応援もしてた組みが、格上に一気にもってかれたね。

 

こればっかりはなー。外野が喚いてもなぁ…。

しかし、困ったぞ?

 

 

 

 

 

 

①暁さんに告げる←美少女が泣く。

 

②暁さんには隠し通しつつ徐々に誘導する。←まあ無難。

 

③先輩と矢瀬くんをどうにかする。←俺が死ぬ。

 

 

 

 

二人が両思いな間は正直どうしようもないので、これも青春の一幕だと割り切ってもらうしかないのではあるのだ。

 

高校生なんてそんなもんさ〜と思うわけなのだ。普通ならば。

 

 

しかし、ここで上に挙げた例に対していくつか要素をプラスする。

 

 

 

暁古城は第四真祖である。

 

暁古城(♀)は依存傾向の少し強い乙女である。

 

D種は負のエネルギーを持ち、己の中でそれらを増幅しやすい。

 

 

 

そうすると、

 

 

 

①を選ぶ。←暴走

 

②を選ぶ。←地雷撤去をミスれば終わり。

 

③を選ぶ。←死ぬ。

 

 

 

 

 

ふむ。

 

 

 

 

 

助けて〜。アサエモーン。

 

 

 

 

 

 

 

 




人物の特徴を捉えて魅力を描写する……むずかしくないですか?

酔っ払ってる場合じゃないぞ!


因みに補足。
今回語り部してたオリキャラのモブ君。
特に名前とか決めてないし問題児風にとだけ考えてましが、
中の人の一人称は俺なのですが、女子生徒です。


じゃないと、古城さん(♀)と打ち解けられないだろうし。

みたいな、後付けでした。



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別枠 一刻も早く休みたかっただけなのさ。1

現実逃避してる?
いえす。

またまた爆死しましたね。いろいろと…

はい。ごめんなさい。


普通に英霊剣豪とか映画とか資格試験とかあって遅れました。




眠くて意識飛びそうな時に色々と厄介なものを押し付けられたりして、逆にパワー出てきたみたいな時無いですか?

無いですか。そうですか。


いえ、何でもないです。


今回も思いつきです。
一秒でも早く布団に飛び込みたかった古城さん…というテーマで書き始めたのにいつものごとくグダッてしまったので、お茶濁しです。





眠い。

 

 

ただ、ただ、眠い。

 

 

何故、平時から寝ているような俺がこんなに睡眠不足になっているのか。

 

 

頭がうまく働かない……何も思い浮かばない………

 

 

ーーーああ。そうだ。吸血鬼に遭ったんだっけ。

 

 

凄く綺麗な、金髪で…、あの綺麗な紅い眼が……、俺と凪沙を見つめていて……。

 

 

ーー凪沙って誰だっけ?

 

 

何を言ってるんだ、妹を忘れる兄がいるか。

 

 

……兄……俺が?そうだ、俺は凪沙の兄だ。俺は………

 

 

ー俺の名前は………何だっけ…?

 

 

靄がかかってるみたいだ……

 

 

頭が痛い…目がくらんで……開けていられない……

 

 

眠い…そうだ、眠いんだ。……じゃあなんで、眠らないんだ?

 

 

こんなに眠くて気持ち悪いのに……周りも真っ暗で…、夜じゃないか。

 

 

そりゃあ、暗いわけだ。

 

 

それに……隣に何かが映ってる…………水だ。

 

 

ああ、水だ…。水が流れている。

 

 

透き通っていて………綺麗で…そして……何故だか、とても恐ろしい…。

 

 

凄く喉が乾いているのに……すぐに離れてしまいたい……

 

 

 

やっと、目が慣れてきた……。どうして視界が赤いんだ?

 

 

水も赤くて血みたいだ……

 

 

いや、違う……俺の目が赤いんだ。

 

 

 

嗚呼………痛い……目が痛い…………

 

 

 

開けているのがつらくて……………

 

 

 

もう、いっそ、閉じてしまおうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは、ヌシが慣れとらんからだ。その眼はじきに馴染む。色なぞ自由に変えられるようになる。」

 

 

 

俺と同じくらいの歳に見える子が凄く偉そうに何か言ってる。

 

 

 

「聞いとるのか?ふらふらとしおって。そこら中探し回ったわ!近くで寝とらとは思わんかったぞ?……否、むしろ何故この夜更けに寝ておるのだ、ヌシは。」

 

 

 

何か知ってるのか?さっきから何も思い出せない。俺が、自分が、分からない。

 

 

 

「おい…。」

 

 

 

こんなに眠くて、苦しいのに………

 

 

 

「おい…!」

 

 

 

俺は、なんだっけ……何かを……忘れて……いたような………

 

 

 

 

「ふざけるなよ、ヌシ!!しっかりせんか大馬鹿者が!!

 

 

なんだその腑抜けた面は!

 

 

忘れとるなら、思い出せ!今すぐに!!!!」

 

 

 

 

……でも、分からないんだ…思い出せないんだ………俺は……

 

 

 

 

「この私に説教なぞくれおった貴様が自分を見失っておいてどうするというのか!!

 

 

ヌシが言ったのだろう?自分を捨てるなと!!

 

 

ヌシが拾ったのだろう?崩れかけのこの体を!!

 

 

しっかりせんか!貴様は、'''暁古城'''であろうが!!!!!」

 

 

 

 

 

 

ああ、そうだ、そんな名前だったっけ……………

 

 

居たな、そんな奴……そんな、『俺』だった奴…………

 

 

 

 

 

「何だと?…ヌシ、まさか……」

 

 

 

 

いいじゃないか……ずっと、ずっと、やってきたんだから。

 

 

 

 

「やめんか!そこまでにしておけよヌシ!!」

 

 

 

 

疲れたんだよ、もう………俺だって人間なんだぜ…?

 

 

 

 

「知っておる…そんなことは知っておる!人は脆く、弱い。ヌシもそうであった。ヌシだけではない、私の前に来たものは皆ぼろぼろであった…。」

 

 

 

 

そうだよ……ああ、そうだ。あの時はもう足が動かなかったよ………。今もそうだ……心が重くて、体が動かない。

 

 

 

 

「ヌシが疲れてしまったというなら、今は休んで良い…。近くに生きているものなどもうおらん。それに、ここまで追いかけてこようものならば、同胞が放ってはおかん。今度は、私がヌシを守ろう…。ヌシも、ヌシの血族も、ヌシが大切にしておったものを()が守ろう。

 

 

だから、お願いじゃから、潰れんでくれ……また、きっと立ち上がって見せてくれ……ヌシはそうして助けてくれた………。打ちのめされても、飛ばされても、強く、強く、在り続けてくれた。ヌシはそれができる男じゃったろう?だから、頼む……また、私の前で消える心を見たくないのだ……。」

 

 

 

 

 

…………俺はそんなに強くないよ…。それに、休むだけだよ…。消えたりしない。だけどさ、暁古城は、そこにいる。だから、俺はもう、休ませてもらうよ。

 

 

 

 

「違う!違うぞ!!張りぼてに縋っていろというのか!?記憶に残っている、などと……死ぬ理由を私に押し付けた者共と同じことを言うな!!!ヌシは人の時間で生きていたのかもしれんが、私は違う!100や200の年で終われる訳ではないのだぞ…。もう、()()()()()()()()()()()()()。終わりにしようとしても簡単では無かった。ずっとずっと、終わらせ続けて……待つのをいつからだったか諦めた。悩み続けることを辞めた………それでもやはり、嫌だった………。それをヌシが止めてくれた。留めてくれた!人で無くなっても!!」

 

 

 

 

ああ、きっとそれに後悔はないよ。でも、ごめんな。やっと眠れそうなんだ。頭がふわふわしていて、まるでここも夢の中みたいで…、ここで眠ったら、どうなるんだろうな。

 

 

そして、そうだよ。暁古城は、一度終わったんだ。

 

 

もう十分に、役目は果たしただろう?

 

 

 

 

「お願いじゃ……起きてくれ……消えないでくれ…………頼む…頼む………。」

 

 

 

大丈夫だって。消えたりしないよ。

 

 

 

「嘘じゃ!……ヌシは……ヌシは………嘘つきだ!嘘つきなんて嫌いだ!」

 

 

 

悪かったよ…。でも、もう、ごめん。無理だ。

 

 

 

「待って!待ってくれ!お願い…お願いだから!」

 

 

 

 

おやすみ………◼️◼️◼️◼️◼️……。そして、暁古城…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早よ起きんか、たわけ」

 

 

 

せっかく、人が休み貰おうと思ったのに起こされた。

 

 

「……あと、15分…。」

 

 

 

「地味に長いわ!!そうか、起きんというのなら仕方ない……。」

 

 

 

ふん、何をしても無駄だ。このだらけることに関してはハイスペック古城さんには全てが無駄だ!

 

「……zzz」

 

 

 

「凪沙ー!古城が朝飯いらんそうだぞ!」

 

 

 

「さて、そろそろ起きようかな。」

 

 

 

 

 

 

 

それはずるい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




凄く短いですが、…ゆるしてくだしあ


シリアスなんて書けませんよ?


要約しなくてもわかると思いますが
(いや、クソ文章で分かんねーよという方は申し訳ないです)

モブ化して休みもらおうとしてる古城さんと、

作者がポンコツで口調忘れた上に原作どこにしまったか見つからないのでぶれっぶれな◯◯◯ーラさん。

でした。明晰夢とかは、見たら寝る派な古城さんです。


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別枠 ぶっちゃけた古城くん1

さらば諭吉ィィィィィ!
したけど駄目でしたねー…

そして作業が進まないので頭空っぽで書いてますがさらに時間がかかるという……。要領悪いだけなんですけどね

失礼しました。




 

 

その少年は隠し事が苦手だった。

 

それは、生来の気質からなのか、隠し事をしていることで周囲の者達に気遣われるのも、逆に気を遣い続けることも面倒に思えた。

 

彼の周囲の人々は人魔ひしめく世界でも、基本的に気だるげで無関心な少年の目から見ても比較的まともな部類の者達だった。

 

それだけに、やけに勘が鋭く、悟られまいとするのに労力を費やすことは彼にとっては厄介事でしかなかった。

 

この少年と、少年と一番長く時間を過ごした彼の妹も、生きてきた十数年間の間にいくつかの事件に遭遇する事もあり、時には命も危ぶまれることもあった。

 

そんな世界でも、もとい、そんな世界だからこそ、例えそれが綱渡りな均衡状態の上であっても、一度出来たから時が流れた平和の上で育った者からすれば、そんな出来事に多感な時期に出会ってしまえば、恐怖を抱き、トラウマになってしまったとしてもおかしくはない。

 

幼い少年少女が本能的な恐怖に怯える中で、一度深呼吸し、己を客観的に見て、心身ともに安定している状態に即座に戻す。

 

そんなことが出来る子供達だらけなのならば、将来が有望過ぎて逆に心配になるだろう。

 

しかし、その兄妹は飛び抜けて天才でも無ければ、両親のように特殊な環境に慣れてもいなかった。

 

そのため、事件をきっかけに魔族を恐れたし、同じ人間に恐怖した。

 

良い出会いもあればそれ以外もあったのだ。

 

 

だが、少年は妹にそんな暗い顔でいて欲しくなかった。

 

 

自分の怠惰な部分を自覚しつつもそれを押し殺して明るく振る舞った。

 

 

祖母の所でも霊的な術に触れる場で、少しでも妹の顔に影が射すようであれば、怖ろしくてたまらなかった祖母や式達に刃向かったし、シャレにならない悪戯をした。

 

 

ー男の子ならば冒険を。時には引けない戦いもあるのだと。

 

 

当然説教どころではなかったし、父と共に打ちのめされたりもした。

 

 

悟い少年は妹の成長を促す機会を奪ってしまっているのではないかと思ったが、兄が兄なら妹も妹だった。

 

幼いながらに己の兄が怠惰なことには気づいていたし、自分の為に無理をしている事も知っていた。

 

時間のほとんどを使って自分を楽しませようと、哀しませまいとしてくれた兄に感謝した。

 

感謝しながら、弱く、震えていた心を強く持ち直した。

 

言ってはあれだが、閉鎖的な場所に居るということを自覚した時には、足(父)を使って流行を取り入れ、学び、自然と話せるようにもなった。

 

兄の背中にくっついていただけの内気な頃からたった一年ほどで立場を入れ替え、横文字など使っていれば必ず眉間にしわを寄せてきた厳格な祖母や巫女達が、理論武装した上に崩れつつある母国語をさらに進化させてネットスラングも織り交ぜた、言葉の機関銃という名の暴力に、涙目になって退散する光景が度々見られたという。

 

 

そんな光景にあれ?自分の頑張りは?と、首を傾げつつもどうでもよくなった兄と大好きな兄の世話を焼けるようになってご満悦な妹御が出来上がった。

 

 

 

話を戻すが、彼はある秘密を抱えたが、それを隠そうとはあまり思えなかった。

 

何故なら彼は、なるようになると割り切っていたし、気だるさ転じて面倒くさがりな性格のため、そんなところは冷めていた。

 

そして、彼の周囲の人々はその程度のことを伝えた所で動揺するような者達ではなかったし、もし仮にそれで離れていこうがどうなろうが彼にとっては特にどうでもよかった。

 

友人、家族、恩人、知人、etc…指を曲げながら数えていったが、自分に関わった者達は人種や種族や善悪問わず、彼のぶれない在り方に一度呆れて吹っ切れた。

 

 

 

流行に負けじと、エコな時代なのだから、省エネモードを搭載せずなんとする!by古

 

 

お前はまず電源を入れろ。by一同

 

 

 

 

要はそんなところの問題だった。

 

積極的に言うつもりなどないが、どうしてもと聞かれて隠し通すのが面倒な相手ならばバラした所で変わらない。

 

 

例え、それが、世界を揺るがす問題だったとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、獅子王機関の剣巫、姫柊雪菜は任務を受け、監視対象である吸血鬼の第四真祖を探していた。

 

 

監視対象の名は暁古城

 

 

その者は、指定魔族特区絃神島にて、人に紛れて彩海学園という学び舎に通っているらしい。

 

 

対象の写真を見せられた時は、余りにも存在感が無く、隣に移る逆立った髪の少年の方かと誤解をした程である。

 

好みかどうかも聞かれたが、そんなものは些細なことだろう。

 

任務に私情を挟んではいられない。

 

相手がどんな容姿であれ、世界最強の吸血鬼であることに変わりはなく、場合によっては神秘を切り裂くその槍をもって対象の始末をつけなくてはならないのだから。

 

 

そして、絃神島まで足を運び、気を引き締めて対象の住む場所へと赴いた。

 

 

対象は基本的に温和だとも聞いているが、隠している凶暴な本性があるのかもしれない。それを探り、見極めることもまた彼女の任務の遂行のため、必要なことである。

 

 

人魔入り乱れる己の身を置く世界では、見た目など必ずしもあてになるものではない。

 

 

だからこそ、彼女は目の前の人物を疑わざるを得ないのだ。

 

 

 

「凪沙……重い……。もう少しゆっくり……」

 

 

「もー、古城くん……。私の方が倍は買い物袋持ってるんだよ?どうして妹が平気なのに兄が子鹿みたいになってるの。」

 

 

「人には…誰しも…得手不得手がある…ん…だ。」

 

 

「軽い方の荷物持ちも出来ないのはまず高校生としてどうかと思うんだけど。」

 

 

(私の見た限りだと、食器用スポンジとポケットティッシュ、それに雑巾でしょうか?それくらいしか入っていないように見えますが…)

 

 

 

 

 

疑わざるを得なかった。

 

 

 

「あう…ボールが…」

 

「すみませーん。そこのボール投げてもらませんかー?」

 

 

「古城くん。代わりに投げてあげよっか?」

 

 

「…今日は体調が良いから大丈夫だ。問題ない。」

 

 

「それはフラグなんだけどなぁ…」

 

 

「ていっ!」 \ブンッ!ボトッ…コロコロコロ…/

 

「……古城くん。せめて3メートルくらいは飛ばそうよ。」

 

「…えっと…その、ありがとございました。頑張ってくださいね。」

 

「お兄ちゃん…!負けないでね!」

 

(あんな小さい子に気を遣われて……)

 

 

 

 

疑わざるを……

 

 

 

 

 

\プシュー/

 

「その、お兄ちゃん?あたしはすぐ次の駅だから、ね?若いうちから無理ばっかりはいけないよ。この年寄りのお願いだよ。座っておくれ。お願いだから。」

 

「大…丈夫…です…」

 

「いやいや、婆さん。こういうんは儂の役目じゃ。ほら、坊主、ここ空いてっから座れ。な?!ほら。」

 

「おい、あんた顔色悪いぞ!一回座った方がええ!」

 

(ご年配の方含めて乗客が一斉にが立ち上がって…!?)

 

 

 

疑わ……

 

 

 

(疑えないですよこれ!!シケ様や三聖様に直接受けた任務ですけど、本当にこの人真祖なんですか!?)

 

 

 

彼女は、特殊な事情を抜きにしても雪花狼と呼ばれる攻魔槍、獅子王機関秘伝の武具を預けられる程には実力を認められた人物である。

 

閉鎖的な場所で育った故に世俗には疎いが、心技体揃っての実力だ。

 

黒い面から目を背けてきたりもせず、

己よりも上を知り、

世の中が善悪だけで定まっていると信じている訳ではない。

 

 

彼女と同年代の者達と比べても冷静で、その上冷徹に割り切るための訓練も受けている。

 

目の前の何かを見過ごすことの出来ない優しさと、彼女の師をもって言わせる思考の硬さを差し引いても、任務として己の役割に徹することのできる人物だ。

 

監視に徹し、接触しないのならきっと全力でそれを全うするであろう。

 

だが、それでも、

 

思考の切り替えを無理矢理解かれるほど疑いようもなく、

 

演技などとは到底思えない様を見せられて、

 

一個人として心配になってしまう青年を前に、

 

真面目でかつ正義感の強い少女がそれを見過ごせるはずもなく。

 

 

 

「……!……!!」

 

 

「大丈夫ですか!?しっかりしてください!」

 

 

なんでもないような段差で躓いてのたうちまわっている監視対象に駆け寄って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________________

 

 

 

 

 

ーー知り合ってから数週間後

 

 

「え!?なら、凪沙ちゃんやクラスの方も先輩が第四真祖だってこと知ってるんですか!?」

 

 

「…うーん、まぁそうなるなぁ。」

 

 

「えと、その、失礼なことを聞きますが……」

 

 

「?ああ、俺らが信じなかったりとか引かなかったのかーってことだろ?」

 

 

「!ええ…矢瀬先輩の仰る通りです。その、皆さん交流もあって魔族に寛容かもしれませんが、やはり、先輩は特殊な立場ですから。一般的には第四真祖という存在自体、あまり知られ渡ってはいないようではありますが…」

 

 

「ま、そうだな。それに関しちゃ俺も何にも言えん。ただ、古城が魔族として登録されてはいないのは確かだ。」

 

 

「そう…ですか。」

 

 

 

「……zzz」すぴー(-_-)zzz

 

 

「本人気にしてねーのが一番アレだよな。」

 

「ふふっ。そうですね…けれど。」

 

 

「おいおい、そんな顔すんなよ。ああ〜、まぁ、アレだ。姫柊ちゃんも古城の知り合いの奴らを知れば納得するだろうぜ。」

 

 

「それは…矢瀬先輩も、ですか?」

 

 

「おっと、痛いとこ突くな。まあ、このアホにはこっぱずかしいから言えねーけど、そうかもな。こいつと関わっちまったら悪いのはそいつの運がねえとしか言えねーんだよ。」

 

 

「…はい。まだなんとなくですが、分かります。きっと、先輩のご友人は奇特で良い方々なんだと思います。私もこれから知っていきたいと、そう思えましたから!」

 

 

「くははは!なかなか言うな姫柊ちゃんも。」

 

「あ、すみません!失礼なことを!」

 

「いや、その通りだからいんだよ。損得とか狙い持って近づいてきたやつもそうじゃないやつも、な。」

 

 

「…うう……俺が…悪かっ…」_:(´ཀ`」 ∠)。o○

 

 

「なんの夢を見てらっしゃるんでしょうか…?」

 

 

「!そうだな。そういえば、凪沙ちゃんも実は一時期魔族恐怖症だったりしたらしいぜ?」

 

 

「そうなんですか!?とてもそうは見えませんでしたけど。」

 

 

「トラブルメーカーな兄妹だからな。いろいろあんだよ。それに、普段アレだけどなんだかんだで、シスコンお兄ちゃんだからな。いろいろケアに走ったらしいぜ?そんで、同じ時期にこうなった…んだが、そういう時普通はシリアスになるだろ?」

 

 

「ええ、先輩の教えてくださった、ハートフルなドラマ?とかではそんなケースがあるそうです。」

 

 

「何教えてんだか……。それでだが、トラウマ増長させまいと距離置こうとしたらしんだが、くくっ…w。そのせいで、ブチ切れて完全に克服した凪沙ちゃんに追っかけ回されてな。偶々居た那月ちゃんに泣きついたら、ロリコンとして通報されてやんのw」

 

 

「それは、その…なんというか。」

 

 

「……うう……ピンクの…レース…」

 

「な!?先輩!!」

 

 

「くはは。なんだよ、またラッキースケベか?」

 

 

「忘れてくださ〜い!」

 

 

 

 





時系列的におかしいのですが、ちょいと、いろいろ悪戯という形の徹底抗戦してる時にいろいろやらかしたせいで、焔光の宴をフライングスタートさせてしまった古城くん。

そして、そんな古城くんの周りに集まるのは世間からしたらおかしな、気の良い人ばかりですということで。

この古城さんならジト目眷獣'sも全員どうにかしてくれんだろみたいな感じがしなくもない。



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メタ回 古城さんの表明&小ネタ(随時

古城さんがただの貧弱さんになってる気がしたりしつつ
けだるげ成分が足らない!

つーわけで、ただの成分補充プラスメタメタ。

読みたくない方は飛ばしてください。

書いてて途中分かんなくなったので名前付いてます。
ss式?



ある日、古城は言った。

 

 

古「俺、最近寝てばっかじゃん。」

 

 

矢「いつもそうだろ?」

 

 

古「いや、そうなんだけどさ。」

 

 

矢「なら、何を気にしてんだ?」

 

 

古「別枠含めてはぐらかしてるけどさ、俺大抵会話途中に 寝落ちしてるだけだよな。後貧弱だったり貧血だったりしておわってんじゃん。」

 

 

矢「仕方ないんじゃね?設定もガバガバだしよ。」

 

 

古「いや、でもなー。イメージはそうかもしれないけど、基本やる気ないのが俺なのにさ。いや、そういう話の時はそれがいいんだけどさ。たまにはこう初心に帰ってみるのも悪くないんじゃないかなと。」

 

 

浅「古城が初心に帰ったらけだるげじゃない頃に戻っちゃ

うんじゃない?」

 

 

矢「確かにそうだな。あれ?宴編って春休みだっけ?みた

いな感じがひしひしと伝わってきてるからな。」

 

 

古「クリティカルヒットした音がしたな。」

 

 

凪「関係ないんだけど私の名前一文字だと凧揚げの凧に見えるんだけど…。あと、私の立ち位置分からなくなってきてない?初期設定だとアヴローラちゃんは本編からシリアス成分を抜きにした感じでゆるーく登場させる感じだったんだよね?」

 

 

矢「それは俺も思うわ。独自設定とか妄想とか独自解釈と

か初めから注意書きしとかねーからぐだってんじゃねーか。それはそれとして、まあ、シリアス展開なんてねーからいいんだけどよ。学校内がメインのつもりなのに、街の人達優しすぎて泣けるぜ。」

 

 

浅「モグワイの時もそうなんだけど、なんか古城の監視ツ

ール'sとかチョロチョロ出てきてるけどあれどうするの?無意識的な行動なの?やっちゃえ◯ーサーカーじゃ怒られるわよ?」

 

 

古「……ツッコミどころが多すぎてめんどくさくなってき たからネタに走ってきたな。」

 

 

矢「モグワイに聞くか。」

 

 

モ「いや、オレに聞くなよ…。正体は出さねーけどAIだぞ

いちよう。」

 

 

凪「じゃあ、ほんとの先生に聞こうよ!」

 

 

矢「よし、それだな!浅葱、パス」

 

 

浅「露骨な文字数稼ぎするな!!」

 

 

古「…ちなみに本気で文字数稼ごうと思ったら三点リーダ

ーで5行じゃ済まないくらい埋めるらしいぞ。」

 

 

矢「流石にやらせないように気をつけさすからな。那月ち

ゃーん。頼むぜ。」

 

 

那「なんだこれは。そして那月先生だ!馬鹿者。」

 

 

アス「出番を所望します。」

 

 

叶「私もそう思うのでした。」

 

小「私もです!って、なんで私だけ小!?小学生だからで

すか!?それとも小さいから⁈」

 

 

矢「収拾つかないから古城、締めてくれ。」

 

 

古「適度にダラけつつ、もっとこう日常的な会話とかふわ

ふわとした気だるさとかを目指して行こうと思う。

…………もう、解散でいいんじゃない?」

 

 

 

一同「「「「おつかれー。これからもよろしくお願いしま

ー す。」」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

小ネタ

 

 

古「矢瀬。」

矢「なんだよ?」

古「なんか矢瀬のこと見てると舞茸が食べたくなる」

矢「おい、髪のことか。髪のことだな?」

古「怒んないでくれよ。自然と浮かぶんだから。」

矢「怒ってはねーけどよ。キノコ頭って言われた時の気分

だぞ」

古「なんか、ごめん。」

矢「分かってくれればいい。」

古「じゃあ、俺はなんのイメージに見える?」

矢「……そうだな。色的にはしらたきとかか?」

古「いや、歯ごたえがあるから俺らしくないと思う」

矢「難しいな。んー…。」

(豆腐…だと、色付きやすいから俺はぶれないぞとか言いそうだし、溶けやすいソフトクリームとかか?)

 

古「そこまで悩まれるとは思わなかった。すまん。」

矢「デザート系から連想して柔らかくて後味がスッキリと

した杏仁豆腐とかでどうだ!」

古「イメージ合うとこもあるけど…」

浅「いや、どう考えても餃子の皮でしょ。焼いてる途中に

片栗粉で蓋しても剥がれたりするし。」

 

古矢「「それだ!!」」

 

浅「ちなみに、私は?」

古「んー…ナスとか?」

矢「名前から連想して漬け物しか出ねーよな。」

浅「うっさい!なんでナスなのよ。腹黒だってか?!」

古「元黒髪だったし。美味しいじゃん…」

浅「何言ってんのよ!」///

矢「いきなりいちゃつくんじゃねーよ…やっぱ寒天ゼリー

とかに変えてやる。」

 

 

 

 

 

9巻のネタ

 

古「秋刀魚とかカボチャとか美味しいよな。」

矢「時期的にな。」

古「でもさ、実は時期外れの出世魚が美味しい季節でもあ

るらしい。」

矢「ほー、そうなのか。あんまり聞かねーな。」

古「それにさ、そろそろ寒くなってきて鮭も季節じゃ

ん?」

矢「どれも美味いよな。それで?旬の食材がどうした?」

古「いや、どれも必死に身をつけたり知恵を使ったり外敵

から身を守る為に固くなったり死ぬリスク負ってまで

移動してきたり大変そうだからさ…。」

矢「自然界の中厳しさが分かるな。」

古「なのに、最後は俺みたいなやる気ないやつに食われた

りしたら、やってらんないだろうなって。」

矢「……きちんと感謝して食べような。」

古「……うん。」

 




冷静になってみたら、これ短編なのよね。
気にしないで頂けるとありがたい。
これからもどうぞぼちぼちよろしくお願いします。


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別枠 如何なる時でも平常運転1


まずは遅れ気味で申し訳ない。
そして、空いた時間にちょこちょこと書き上げたのでひたすら勢いだけです。
分割です。


 

 

人生を賭けて挑んだ儀式に失敗した者がいた。

 

他の全てを捨て去っても夢を叶えようとした者がいた。

 

初めから狂っていたがそれに気づかなかった者がいた。

 

望まぬ結末を受け入れられなかった者がいた。

 

 

時代も場所も生きてきた環境も各々違っていたが、皆一様に永きを生きる圧倒的な存在に潰された者達であったという。

 

ただ死んだ者、ただ殺された者、力を喰われた者、終わり方は違ったが、真祖などと呼ばれ、怖れられる者達により散らされた運命のほのかな残滓。

 

漂って忘れ去られて消え去るだけの者達の話である。

 

 

だが、幸か不幸か、この世界には言葉を伝える術が有った。言葉に力を載せることのできる技が有った。神事に携わる血筋に多く、大きな力を伝えるには支えが足らない事が多かった為、命を落とす巫女や術師は少なくはなかった。

 

 

そんな時、別れた血筋をほんの少しだけ受け継いだ術師が居た。

 

 

その術師はまさしく運の悪い事に、全ての真祖の通った道に、3度居合せてしまった。災害の通った場に居合わせて生きていたことが幸運と言えば幸運なのであろう。しかし、居合わせてしまった側からしたらたまったものではない。

 

真祖と呼ばれる者達の価値観は違ったが、常人ではない速度で、ただその場所を通っただけであり、その術師の顔すら見ては居ない。

 

術師ははぐれ者で有ったが、それ故に才を遊ばせていたため、格上に認知すらされなかった事実に打ちのめされ、己を妬み、腐っていった。

 

 

酒に溺れている際に、ふと噂話を耳にした。

 

酒の席での法螺話として聞かされたソレは、術師にとっては耐えられないものだった。

 

曰く、相入れることのない真祖達が新たな真祖を作った

 

曰く、災厄の化身たる十二の眷獣を持ち

 

曰く、その魂自体が呪われている

 

曰く、世界最強の吸血鬼たる第四真祖が居るらしい、と。

 

 

 

それはつまらない意地で、子供の癇癪よりもなお性質の悪い、他人にしてみれば馬鹿らしく、本人にしてみてもくだらないと思い返せる悪足掻き。

 

ーー自身が勝てない怪物が、最強であるはずなのだ。

 

ーーそれを超えるモノなど、あるはずが無い。

 

 

 

類は友を呼び、暗い怨念は寄せ集めの力を引き寄せた。

 

足らない分を賄って、欠けた想いを募らせた。

 

いつしかそれは言霊となり、たった一夜だけしかもたない怨恨となり、異境の島へと運ばれた。

 

 

 

第四真祖に災いを。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ある魔女が言っていたことがある。

 

島に関わる機関の持つ、神秘を消し去るその槍は、世界を元の形に戻しているだけなのではないか?

 

魔女の推測した世界では、神秘など残っては居なかった。しかし、世界は5分前に作られた物であるにしろ、そうではないにしろ、複数有る可能性という話。推測に過ぎない与太話。

 

そして、言霊は世界の法則に変換されて、干渉を起こし、偽の世界を一部だけ呼び寄せた。

 

偶然にしろ必然にしろ、出来上がったものは、誰にも知覚は出来ない波で、島の神秘とぶつかり合った。

 

 

向かう先だけを残して、残りかすだけが燃え尽きながらも辿り着く。

 

 

 

 

 

 

 

第四真祖に……………を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





シリアスなんてないので大丈夫です。
シリアル最近食べてない。


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別枠 如何なる時でも平常運転2

うーん。導入だけで不況を買ってしまったようですね。
それとも駄洒落が寒すぎて怒らせてしまったのか!?

両方ですか…そうですか。さーせんでした。

気を取り直して続きです。


10月某日。本土ではハロウィンフェスタが開催され、それに伴いこの絃神島でも、その恩恵にあやかり観光客でごったがえしになるイベントの最中である。

 

何故ここまで客が集まるのかというと、島をあげてのお祭り騒ぎとするべく企業がここぞとばかりに手を取り合って大きなイベントとして盛り上げているのもあるが、ここは正真正銘の魔族特区なのだ。言い方は悪いが、本物が普通に暮らしている場でそれに類似したイベントを行えばそれは盛り上がるであろう。

 

観光客は仮装を楽しみ、売り子はロウソクやお菓子を配り、紙コップで血の色に染めた飲み物を提供している。本来の行事からは遠く離れた様子だが、珍しくもない光景であろう。

 

この時期には、監獄事件やらなんやらと忙しくなってきたりした気もするが、時間を気にしたら負けだ。

 

例え島で事件が起こったとしても、我らが主人公…と呼んでいいのか不安になる様子の古城くんは恐らく事件が起こったことにすら気づかず普通に寝ている時間だからである。

 

前にも誰かしらが語っていたかもしれないが、夜行性の性質を獲得している筈の古城くんは夜は夜で普通に熟睡している。

 

昼と夜ではまた別寝らしい。きっと、甘いものは別腹のような話であろう。

 

そもそものところ、古城くんがこの島で事件に巻き込まれるような事態になったならば、とても冷静に警察やアイランドガードと呼ばれる優秀な部隊の人々に任せるであろう。

 

どれだけ偉い称号を持っていたとしても、周知されていない限りは意味もなく、どこまでも彼は一般市民でかつ高校生であるのだ。

 

積極的に首をつっこみたがる者の気は知れないので、枕に顔を埋めたくなるお年頃なのだ。

 

 

 

さて、話が変わるようで申し訳ないのだが、普段人混みを嫌い、満員電車でも席を譲られる側の人間がとても混んでいる場所に来たらどうなるだろうか。

 

普通に人酔いするだろう。

 

 

そんな訳で現在ごった返しの人混みに揉まれて死にかけになっている古城は、一緒にきた妹や友人達とはぐれてしまっていた。

 

 

「気持ち…悪っ……。」

 

 

ベンチで横になっていたが、いっこうに悪寒が引く気配がない為ヘルプを求めたのだが、あいにくと皆丁度始まったパレードに夢中で古城に気づく様子は無い。

 

携帯で場所を伝えたいが、回線が混雑しすぎているのか繋がらない為、手詰まりとなっていた。ちなみに、イベントを楽しみにしていた藍羽さんはこの混雑を見越してバイトに駆り出されているのでここにはいない。

 

現在発生している回線の混雑による電波障害とは別の謎のノイズに対して罵詈雑言を浴びせながらも必死に対応していたりする。

 

現在古城が体を預けているベンチだが、もちろん街路樹が並ぶ大通りからもすぐ見える位置にある。街中でそんな場所は多くはない為、密かに、健全にイチャつくカップルが周りのベンチを占拠していた。

 

古城が来るまでは。

 

普段なら、見るからに体調不良で、街で見かけたら誰でも心配するようなひ弱そうな学生の古城は、自分達だけの世界にいる恋人達ですらも雰囲気云々など後でと、心配されるのであるが、今発生している謎のノイズにより、負のオーラとでも言うべきだろうか。人を思いやれる人々の心に少しだけ靄をかけてしまっていた。

 

その為、カップルが並ぶベンチ軍の真ん中に一人寝そべって唸っていた古城の周りから段々と人が居なくなるまで時間はかからなかった。

 

 

その為現在ひさびさにぼっち状態の古城くんの完成であり、なんとなくそれを察した妹と友人は冷や汗を浮かべて古城を全力で探し始めた。

 

誰かが見ていないと心配で仕方の無いある意味赤児よりも目が離せない古城くんだった。

 

 

「軽く鬱になってきた………。このまま寝ちまおうかな……」

 

暫くの間そうして唸っていたが、よくよく考えてみれば、早寝早起きのご老人よりも早く寝て遅く起きる古城は、もう寝ていもおかしくはない時間帯であり、律儀にお化けの行進に付き合っている義理もなかった。

 

 

「いやいや、流石に俺でも家に帰ってから……zzz」

 

 

一瞬、常識のようなにかがまともなことを囁いたのだが、眠気には勝てずそのまま寝始めてしまった古城。気温は低くない為凍死することは無いがあまりに無防備な状態であることに変わりはない。

 

 

 

さて、ここで謎のノイズと化し、届けられた怨念(笑)の登場だが、実はもうその影響を一帯に広めていた。

 

第四真祖である少年に重なる不幸の連続や仮装に紛れ込んでいた本物の妖物、島の管理公社に与える電波障害や機器への干渉、そのどれもが微々たるものであった為、ギリギリ騒ぎにはなっていない。

 

島の社畜…もとい巡回兵達の頑張りや能力持ちの矢瀬さんなどは見かける度に密かに始末に動いていた。霊的素質を持った凪沙さんなどはそもそも今現れているモノとはレベルが違うため気付いてすらいないが、彼女が兄を探して動き回るほど近くに寄られた怪異達は軒並み消え去っている。

 

 

島が平和で結構なことであるが、元凶からすればこんな筈では無いと、叫びたくなる状況だった。

 

ここにたどり着くまでに言われた言葉が思い出される。

 

 

ーー実体となれるだけ力が集まったのだからもう満足であろう?寄せ集めにしてはよくやったものよ。

 

 

自分達を終わらせた相手に舐められたままで、一矢も報いれず終わることが出来るのであればそもそも未練としてこんなモノにはなっていないのだ。

 

後戻りなど出来ようもなく、一晩しか持たないその身をもって、その抗いに意味を持たせよう。

 

 

スヤスヤと眠っている少年だけに、全てを差し向けることで、街の現象は消え去った。

 

後に残るのは大いに盛り上がりを見せたハロウィンフェスタである。

 

 

ノイズが消え去った為に、通信も少しだけ復旧し、後は時間の問題となったが、『今どこにいる?』と打とうとして、『居間床にいる!』と打った古城のメールも妹や友人達に遅れて届いた為、先に家に帰ったという旨の誤解を与えていた。

 

 

邪魔はもう来ない。

 

 

だが、散々四方に力を使い、再び集まり人払いをし終え、第四真祖を逃さないための空間を作った時点で既に尽きていた。

 

後はもう誰が見てもイベントの一部にしか見えない百鬼夜行のそれである。

 

不死身の真祖に絶望を与えられるほど、身を焦がすこともできないであろう。

 

最後にできることと言えば、寝たままの少年を力尽くで起こすことぐらいである。また気づかれないままに終わることは許されない。

 

カボチャの頭に火を灯し、流した血の涙を手形にし、西洋も東洋も入り混じったカルチャーショックと恐怖で2度驚愕できるお化け屋敷(屋外)は、やがて古城に襲い掛かる。

 

殺しきることはできないのが確定された凶刃が長い旅の最後に振り落とされる。

 

 

しかし、その刹那、ごろんと寝返りを打ってベンチから落ちる少年と、ベンチに突き刺さる血塗れの刃物。

 

「…うー…zzz」

 

普段ベットから落ちても目覚めない彼が今も目覚めないのは通常であるが、怨念どもは怒り狂って再び刃を向けた。

 

すると、突然スッと立ち上がり首を項垂れたまま歩み始める古城。

 

少しだけ戸惑ったが、ここぞとばかりに振られる刄や火の粉に降りかかる黒い靄

 

起きていれば鈍い反応の古城には避けられる筈もない……のだが、何故か全く当たらない。

 

ふらりと揺れて斧を躱し、掴かむ腕は払われる。炎がまえば風を切られ、黒い靄には腰の入った回し蹴りが決められて払われてしまう。

 

 

軽快に動くことなど考えられない様子の少年が、何故ここまで強いのか。

 

薄れる思考ではもう考えられず、怨念は誰にも知られず消え去った。

 

ーーああ、それでもやはり、最後はきちんと向き合ってくれた。

 

相手にもされなかった者どもの残り滓は少しだけ暖かい気持ちを持って自壊していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元凶は消え去り、残りは残党であるのだが、さて、どうして古城くんがここまで予測できない動きをしているのか。

 

 

 

 

「…zzz……ひっく…」

 

 

 

 

端的に言えば、酔っていた。

 

 

 

街で配っていたお菓子の詰め合わせに、入ったアルコールの入ったチョコ菓子やほぼ完全に飛んでいる筈の無料の試飲サービスの飲み物を飲み、人に揉まれてここにきた古城。

 

同じものを口にした人にはまったく影響はない。

 

当然、妹や友人達、クラスメイト他も含む。

 

 

 

気分が悪くなり、すぐに眠気が来て、酔うほど強くなる

 

 

なんて、武術もあるらしいが、これはそんな類のものだが我流である。動き回って外気に触れていれば当然すぐ冷めてしまうほどの酔いであったので、自然と目も覚めてきた。

 

 

ふと目を覚ませば、目の前には仮装の倒れたお化け達。

 

しかし、やけにリアルで倒れたものは徐々に消えていっている。

 

 

…………?

 

 

 

そこまで考えて、古城は白目を向いて気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、家に向かう途中で偶然発見され、矢瀬に運ばれた古城はなんとかことなきを得たのだが、それから暫くの間、家でも学校でも、妹や友人達の腰に抱きついて離れない古城が目撃されたという。

 

 

 

 

 




ホラーには弱かった。
寝ていた時は瞼を閉じていた古城さんでした。



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別枠 どこだ!?1

日が空いて申し訳ない(毎回の挨拶
お久しぶりです?

サブタイトルですが、じいじではありません。

今回は、いえ、今回も、うーわ、にわかがネタだけ使ってるよとご不快にさせてしまったら申し訳ないですが、適当にネタ突っ込んで喋ってもらいました。

現実逃避気味にぐびぐびっとな。



やっはろー☆!

 

 

とか言うとファンの皆さまに怒られるから謝っとこう。申し訳ございませんでした。

っと、悪りぃな。オレの中のゴースト的なやつが囁いてきちまってな。

反省はここら辺に(してない)して、自己紹介しようか。

 

 

ひさびさに会ったな!また懲りずにやってきたぞ。

 

そうだ。オレが、オレ達が、一般人だ!!

 

 

………一人しか居ないけどな。

 

え?初めて会ったって?何言ってんだよ、当たり前じゃん。初対面なんだから。

……いやいや、独り言なんだから無粋なツッコミはよせよ、照れるじゃねーか\(//∇//)\

 

ふぅ…。

 

ハハッ☆よーし、一人で騒いでんのも飽きてきたから、話進めようか。

 

初めまして、俺は、大倉(おおくら)だ。下の名前は大臣じゃないよ?

 

ありがちな話なんだが、体験したことのない筈の記憶が俺にはある。

と言っても、前世の記憶とかじゃあない。前世、前前々世からも特に何も探してない。

見たことの無い作品の知識がぼんやりと浮かんでくる程度だ。

 

 

例えば、世界を大いに盛り上げるためになんやかんやする部活動とか、帰宅部なのに帰らない部活動がある。

 

 

例えば、異世界に呼ばれて使い魔やってるイケメンと魔法使いやら人生相談から始まって駆け落ちしたりする兄妹が居た。

 

 

例えば、悪魔や天使と籠手と煩悩で戦ったりする街が有ったり、過去の偉人を召喚して争い合う戦争をする地方が有ったりだとか。

 

 

でっかいロボット乗ったり、それがパチンコになっていたり、歌姫や格闘家が活躍していたり、それがゲームでコラボしていたりだとか。

 

 

他にも色々あるが、こんな感じでそれが作品として有ったという知識が有るんだが、それが放送されていた記録が無い。

 

つまるところ、妄言の類ですね分かります。だって、この妄想が過去だろうが別のところのお話に在ろうが、ここに無いんだもの。俺の妄想と断じられたって反論できまい?

 

似たようなコンテンツは有るんですけどもね?いえいえ、私共と致しましても今回このような結果となってしまい誠に遺憾です。

 

 

なんつって(イケボ

 

 

ならば、オラの世界にも主人公みたいなのがいるんじゃねーか?wkwkすっぞ!と思ってしまうのは当然ではなかろうか。

 

…… 現実見ろよ?うっせ、バーカ。

 

あーでもでも、聞き覚えあるような無いような気もするんだわ。うちの学校変わってるからさ。

学園モノとかにありそうだよね〜。彩海学園って名前とかさ。カッコよくね?

 

頭に浮かぶ作品の中にそんなんいっぱい有りそうな気はするけど、ほんとぼんやりなんだよね。

 

 

あ、私は魔族特区に住んでますけど何か?生まれた時から住んでるんだから魔族の人が居たって別に驚かないさ。

 

 

あん?…いえ、何でも無いです。ごめんなさい調子こいてました。喧嘩とか弱いんでやめてくだちい。

 

いやいや、でも突然頭の中に辞書の内容ぶち込まれてもスラスラ言葉がでるわけじゃないでゲソ?

 

んん〜wwwwwwさいですかさいですか。そりゃ頭よろしいこって。

 

ところがガッテン目が点。あくまでも私はポンコツですから(キリッ

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

俺の学力の低さは置いといて、現在は登校中である。俺の趣味というか癖になってることなんだが、人に属性付けるのと似たようなものかもしれない。

 

あ、あいつこういう作品にいそうだな〜と、妄想することだ。

 

 

凄く失礼なのは承知してるよ?でもさ、キャラ濃いやつとか似たような見た目の奴とか居たら、若干思うじゃん?

コスプレ見て完成度たかーなオイとか思うじゃん?ジャンキルシュタインじゃん?

 

 

駆逐してやる!!ナノデス!!!◯ーストストリーム!!!

 

 

混ぜすぎ注意報てか、いい加減くどいか。

 

それでは、そこそこに自重しないで(しねーのかよ)教室に向かうかな。

 

 

 

ところで、話変わるんだけど、主人公って色んなタイプがいるよね。

 

熱血系、クール系、やれやれ系、オラオラ系、鈍感系、難聴系、ショタ系、無双系、燃焼系、etc…

 

最後だけ健康補助食品な気もするけどまぁいいや。

 

そんな風に、昨今の主人公達は本当にいろんな人がいるし、いろんな所に出張してたりするよね。初めて買って読んだ漫画もアニメ化したり実写化したりゲーム化したりしてて、嬉しいような寂しいような。

 

中には、とある宇宙で闘うタイプのエンジニアの人とかさ。ほんと、引っぱりダコ過ぎて、休んでくださいお願いしますっ!って思っちゃうわ。

 

 

それでなんだけどさ、キャラ濃くてかつ問題起こしたり巻き込まれたりしてる奴って物語の登場人物っぽくね?とか思うわけよ。

 

うちのクラスメイトキャラ濃いからさ。主人公いたりしてな(笑笑

 

 

そんなわけないのはわかってるんだけどさ。いや、だいたいにして、もし仮にここがなんかのタイトルの作品の世界だとしても、宇宙舞台じゃなくてもこの国だけでもめちゃめちゃ人多いんだぜ?

 

偶然同じ世界で、同じ地球上で、同じ国で、同じ学校にいて、同じ年代の同じクラスとか確率どんだけって言うねww

 

 

ないない(笑)

 

 

と、歩いてるうちに教室着いたし今日も頑張ってオベンキョしようじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

常夏の島だからと言っても冬になると吹き抜ける風が冷たく感じるので教室着いたらホッとするよな?

 

冬の時期でも設備が整ってるので教室が暖かくて助かるわ〜。

とか、思いつつ授業を受けて既に3限分。次の時間割をど忘れしていたらツンツン頭の矢瀬君が教えてくれた。

 

 

「うーわ、マジか。次の時間マラソンだってよ。」

 

「え〜…。武畑(たけばたけ)先生なら寒いから体育館でやるって言ってくれると思ったんだけどなぁー。」

 

 

俺の学年の体育を受け持つ武畑先生はとても良い先生で、優しく、熱いところもあり、かなり人気の先生だ。

だが、生徒の体調を考えすぎるところもあって、もう一人のテニスが好きな熱血体育教師の松谷(まつだに)先生とよく意見が割れたりする。

そのため交代制で、今週は武畑先生の筈だったので少し意外だった。

 

 

「実は、武畑先生も松谷先生も出張だから那月ちゃんが受け持ったんだとさ。」

 

「うっ……腹痛が。……保健室行ってくる。」

 

「おい、待て古城。頭抑えて逃げようとするな。腹痛ならせめて腹に手を置いとけ。」

 

 

那月ちゃん、というのは南谷先生のことで、合法r…いや、ちゃんと大人で美人な人だが、見た目が小学生中学生ぐらいに見える不思議な先生である。

 

実際容姿もそうだが、性格も可愛いところがあって男女問わず人気の先生なのだが、かなり厳しい先生だ。

 

英語教諭なのに何でだろうね。生活指導だから?

 

そして、その話を聞いて、朝からずっとスヤァ(´-ω-`)していた古城君が逃げ出そうと画策していたが、すぐに呼び止められていた。

 

 

「………矢瀬、大倉。俺、実は隠してたことが有るんだ。」

 

「ほう?誤魔化してんのはバレバレだが聞いてやろうか。」

 

「うはは。場合によっては那月先生に言い訳手伝ったげよう。俺と矢瀬君で。」

 

「うおい!?シレッと何言ってんだ!」

 

悪戯心が湧いたので矢瀬君を勝手に巻き込みつつそう言うと古城君がキラッと目を光らせたが、純粋にこの状況で何と言って切り抜けるのか気になったので、面白ければ本当に口添えを手伝ってあげても良いかなと思う。

 

南谷先生からの俺と矢瀬君への信頼があるかは知らないけどね(最低

 

古城君が首を鳴らしながら深呼吸しつつ、シリアスな雰囲気を作り出そうとしているのを尻目に、割と甘やかしてはくれない我らがクラスメイト達も聞き耳を立てていた。

 

ところで古城君は良く寝ているけどテスト大丈夫なのか? と思ったが、まぁ、浅葱さんが付いてるから大丈夫か。

 

浅葱さんは、めっちゃ頭良いが恋愛ポンコツなのでどう見ても古城くんにゾッコンなのに気付かれていない上に、周りにはバレていないと思っているイケイケ系ガールだ。

 

元は黒髪なんだけど、古城君がアドバイス(本人無自覚)して変わったみたいなんだよね?ね?後ろで見てる浅葱さん。

 

てか、実は彼女持ちの矢瀬くんとか少し鈍感入ってる古城君とかうちのクラスメイト面白すぎワロタ。

古城君の眠そうな顔を見てると、作者の好きな某擬人化怪獣の娘を思い出してなんか嬉しいと言うかなんというか。

 

そして、十分に貯めていたが、いよいよ、深呼吸を終えた古城君が真剣な面持ちで切り出した。

 

 

 

 

「………実はさ、今度引っ越すんだ…。急な話で、皆んなには黙っていたんだ…。こんな時期だから、湿っぽくしたくはなくてさ。」

 

ぐすりと、鼻をすすって下を向く古城君。

 

チラリと様子を伺うと、浅葱さんや委員長(眼鏡の子)は驚き、矢瀬君も意外そうな顔をし、入り口に身を隠してシレッと聞いている南谷先生はにやにやとしていた。

 

これは、(もう既に)ダメみたいですね。

 

俺は、必死のポーカーフェイスを気取って笑いをこらえつつ、古城君の話の続きを促す。

 

 

「そっか……。そうだったのか、古城君。…くっ」

 

「それ、ホントなの…?古城…。」

 

少し悲しそうにするが、やはり笑いを堪えるのが辛い。すると、真面目に受け取った浅葱さんが聞き直す。

それにつられるように、他の人達も、「え、まじかよ暁…」「そんな…。」と、少しざわめく。

 

だけど、初めから冷静に見ていた矢瀬君だけは俺の視線を追っていたのか、那月先生に気付いて吹き出しそうになっていた。

 

「ッ…ッ…。そ、そうか。切り出し辛いことをキチンと伝えてくれてありがとよ古城。でも、水臭いぜ?んなもん落ち込んでるよりもバァーっと最後まで笑ってるのがうちの馬鹿なクラスメイトだろうが。」

 

 

悪ノリを始めた矢瀬君とアイコンタクトしつつ、それに気付いたクラスメイトの一部も、一瞬疑問符をうかべていたが、「ああ、だよな!」「そうだぜ!今更何言ってんだよ暁!」「ヘヘッ!誰が馬鹿だ馬鹿筆頭どもが!」とのってきた。

 

仲良いですね君たち。てか、察し良すぎない?

 

いや、やっぱこいつら面白いわ。何故なら、下の方でグッとサムズアップするとほぼ全員から帰ってきたので気付いてないのは浅葱さんと古城くん本人だけである。

 

でも、浅葱さんが涙目になってきたので、矢瀬くんがこっそりネタバラシしている間に古城くんと茶番とかした芝居に付き合う。

 

 

 

「……ああ。俺、このクラス大好きだよ。」

 

「……俺もだよ古城くん。だけど、俺も君もこのクラスなんだぜ?」

 

「……そうだよな。ははっ。…いつも寝てばかりの俺だけど、らしくなかったな。しみったれたこと言ってたら、凪沙に怒られちゃうか…。ありがとな大倉。」

 

「いや、俺は何もしてないさ。……迷いは無くなったみたいだね?」

 

「……うん。もう大丈夫。」

 

 

 

ソレっぽい話にしつつ誘導すると、割と簡単に引っかかってくれるから楽しいよね。

 

ーー行くのか?と聞くと、

 

「ああ。俺が行かなきゃならないんだ…!」

 

と、ドアの方へと緩やかに歩み出す古城君。ドアはいつの間にか閉められていたが、もちろん、その先には待ち構えている那月先生が居る。

 

 

いや、周りも周りで流石だわ。最初に、後ろのドアから出ようとしてたから後ろのドアの方へ避けるから、自然とできた道が前のドアになってるんだもの。

 

ネタバラシの内容を先に言うと、引っしはするんだよ。古城君……の、お母さんがね?

 

古城くんと凪沙ちゃんの母、暁深森さん曰く、今度職場の建て直しがあるらしい。職場に泊まり込みが多い人だし、暁家に稀に帰ったりもするんだが、職場近くにも同僚の勧めで余っている社宅の部屋を(半強制で)あてがわれているらしい。

 

あの人ちゃんと休まないからね。

 

なんやかんやで、暁家の人達との交流があったりしたので、俺は聞いてたりした。というか、凪沙ちゃんがマシンガントークしてきた。

 

ちなみに、その同僚というのがウチの母であったりするので、牙城さんをとっ捕まえる作戦にも協力させられた経験があったりするんだが、それはまた別の話なので置いておこう。

なかなか業の深い暁家に興味は尽きないが、裏稼業をしているっぽい矢瀬君とか謎のバイトをしている浅葱さん達の方が気になって仕方ない。

 

年頃だからさ。勘弁してよ。そういうの気になる年頃なんだ。

 

 

 

 

ドアを開ける前にクルリと振り向いて、

 

「…ありがとう。俺は行かなきゃならないけど、宜しく伝えといてくれ。」

 

と、晴れやかに言い残してドアを開けた教室から出て行った古城君だが、クラスメイト一同、フッ、みたいな感じで明後日の方向を向いていたから生活指導室に拉致られて行った彼の姿は俺以外見ていないので、知らないけれど、去り際に恐ろしいほどにこやかに、

 

「男子は20周、女子は15周しておけ。イイな?」

 

と、那月先生に言われたので皆んな自然と敬礼していた。

 

 

 

「あっはっは。残念だったわね古城。騙そうとするからよ!………はぁ。」

 

「安心した?」

 

「それはもう!…って、違うわよ!?してないから!古城が引っ越ししたって、べつに…?!」

 

 

「あらやだ、ちょっと聞きました?矢瀬さん。冷たいわねぇ。」

「そうだな。少し涙目だったもんな。」

「そうねぇ、浅葱かーわい!」

 

 

着替え終えてグラウンドでストレッチしつつ、浅葱さんが強がっていたので、俺、矢瀬君、委員長で弄って走り出す。

 

「ちょっと、聞いてんの!?違うからね!?」と、足はとても早いのに動揺して言い訳しているせいか追いついてこないのをクラスでホッコリしながら、ノルマを達成するために、クラス一同グラウンドを走り始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久々の別枠かな?
また空きますが、ご容赦を(挨拶
おやすみなさい。


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別枠 普段通りが一番だ(by古 1


読み直すと、無理矢理感のある配役に泣きたくなっております。申し訳ねぇ…

そして、ユッキーが別枠話にしか出ていないといつ事実に今更ながら気づき始めました。あれ?


いや、そのですね、田中さんは漫画だからすぐ読めるんですけどね、最近小説の新刊がめっちゃ積み上がってまして……まとめて読み漁るまでちょっとですね…

さーせん。ただの言い訳ですが何か?(土下座


とりあえず……一狩り行こうぜェ!!(せめて目の前のpdf作り終えてからにしろよ)







 

 

 

それは、何気ないクラスメイトの一言から始まった。

 

 

「雪菜ちゃんはかったいなぁ〜。」

 

 

会話途中の軽いノリで発せられたその一言は、色々なところで散々と同じことを言われ続け、悩み続けた結果、限界まで伸びた輪ゴムの如く心が張り詰めていた少女の糸を断ち切るのに、充分な威力を持っていた。

 

 

「……固い…ですか……そうですか…。」

 

「えっと、雪菜さん?」

 

「…姫柊、さん?大丈夫?」

 

 

突然俯いた少女の不審な様子に、複数名で盛り上がっていた会話の参加者たちは会話を止め、訝しげに様子を伺う。

 

 

「……ですよね……ふふ……ええ……ふふふ」

 

 

いつもの如くマシンガントークをしている妹属性を持った彼女の友人以外は、俯いたまま笑い出した彼女の席から思わず一歩後ずさってしまう。

 

何故か?彼女の背後から思わず可視化されているのでは?と思ってしまうほどの陰鬱なオーラが漏れ出しているからだ。

 

 

効果音をつけるならズモモモモ〜ッと、黒いオーラが噴出しているかのような錯覚に、何人かは目をこすり出す。

 

彼女は、美人で転校生で真面目なクラスのアイドル的なイメージを持たれているが、その実、裏の世界のことも知っている、プロの方である。

 

マジモンの黒服さんたちも逃げ出すかもしれない気迫をお持ちのこの方は、普段は隠すように訓練されているので、学園にも溶け込んでいるが、今は制御が出来ていないので、割と本気で怖い。

 

前髪で目元がいい感じに隠れているのも相まってすごく怖い。真面目で誰にでも優しく接するいつもの様子しか知らない関わりの薄い男子生徒などは、ギャップの大きさに処理が追いついていない者もいる様子である。

 

 

実際、魔力的な何かも混ざっているのかもしれないので、それを肌で感じ取って引き下がりはじめたクラスメイト達は、案外魔導犯罪に常に狙われ続けて居るこの島の均衡が崩れ去っても逞しく逃げ延びるかもしれない。

 

 

何時ぞやの奴さんは、どんな場所に居るのかも自覚していない平和ボケした住人どもめ!などと言っていたかもしれないが、この魔族特区の住人は、別の意味でもその通りの意味でもかなりのハングリー精神の持ち主だと思われる。

 

 

どんだけ壊滅の危機迎えてんの?マジで。

 

 

否、どちらかというと言及すべきは、(魔族特区の脅威とタメ張れるんじゃねーの?) と、その様子を能力で感じ取った我らが矢瀬さんに、冷や汗をかきながらそんな感想を抱かせるほど、溜め込んでいたストレス他を溢れさせている姫柊雪菜嬢の方である。

 

 

(そういうところだよ、全く…)と、木の上から眺めていた通りすがりの黒猫が呆れていたりもするが、今は置いておこう。

 

 

「それでね〜、その時の雪菜ちゃんすっごい慌てちゃってね〜。」

 

知らぬが仏か、相変わらず話し続けている少女は、指を立てて得意げな顔で眼を閉じたままであるので、周りの様子に気付かない。

 

 

「あっはは。可笑しくってさ〜。」

 

「ええ、ええ、そうですね…ふふふ。」

 

 

やめろ、やめてくれ。これ以上はいけない!自覚ないんだろうけど、これ以上刺激しないで!!

 

 

あわわわわ、といった様子で、口を挟めずに見守るクラスメイトの心は多分今一つになっていた。

 

「あはははははは。」

 

「ふふふふふふふふふふふ………。」

 

 

そして、二人揃って笑い出したのだが、直ぐに片方は、唐突に笑いを止めた。

 

 

ごくり…。気付かない妹殿の笑い以外の物音が聞こえなくなった教室には、誰かが、唾を飲んだ音がよく響く。

 

ゆらりと、まさにその表現が相応しいほどに、人形の様に立ち上がった彼女は、怯えるクラスメイトの方へと歩みを進め出す。正確には、その先の出口へと。

 

 

今、彼女の邪魔をしてはいけない、と本能的に感じ取ったクラスメイトは速やかに道を開け、担任の教師は、黙って出席簿に早退の文字を記入をした。

 

 

「そうですよ……私の周りには、良い見本があるじゃないですか…。」

 

姿が廊下に消える瞬間に呟かれたその一言で、ゾワりと震えた人物がいたかどうかは、矢瀬さんぐらいしか知らないことだ。

 

 

 

 

 

 

 





続く


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別枠 普段通りが一番だ(by古 2

寒い!!!


 

 

私こと、姫柊雪菜はある悩みを抱えています。

 

固い、融通が効かない、面倒くさい性格してるわね、etc…

 

剣巫としての修行を途中で切り上げて第四真祖の監視任務に就いた未熟な私では有りますが、それでも三聖様直々に指名を受け、手を抜くことなく研鑽を重ねてきた自負があります。

 

自らを律し常に最善を尽くす様に心掛け、私はこの任務に就いているのです。

 

ですので、これは決して勢いで行動しているわけではありません。自身を抑えきれずに午後の授業をサボってしまったなどということは無く、先輩の監視役としての任務を遂行するために、仕様のないことだったのです。

 

避けることのできない、どうしようもないことというのは誰にでもあるでしょう?

 

ええ、確かに個々人によって問題の大きさは違いますが、私にとっても大変遺憾な事態だと認識しています。

 

 

………そう、ですね。怒り狂ってなどいませんが、確かに何気ない言葉が琴線に触れた事実は認めましょう。

 

ですが、私は堪え性のない人間ではありませんので、例え図星で痛いところをつかれたところで、感情に任せて暴挙に出たりなどしませんとも。

 

今も任務の為に、そして、伸び悩んでいる自覚のある今の自分を越える為に、こうしてある人物に師事を仰ぐために前へと進んでいるのです。

 

 

 

あの人の前では、誰も肩肘を張らない。

 

 

高校生という思春期真っ盛りの時期であっても…、いえ、若者に限らず、老若男女問わずに、安心させられてしまう。

 

そんな不思議な魅力を持った人。

 

正確には、人間では無いのですが、心を持ったヒトであることには変わりません。

 

逆に心配させられてしまうことの方が多くとも、そこはご愛嬌というものでしょう。

 

 

思い返して見れば、最初からそうでした。

 

 

世界最強の吸血鬼を監視せよ、そんな任務を受けた時、言ってはなんですが、その、うちの組織の心配をしました。

 

監視任務だけならまだ分かります。しかし、秘密兵器を用意して頂いたのは有難い限りでしたが、私の様な小娘1人で災害を倒しきれ、などという無茶を仰る組織のトップ。

 

>ロケットランチャー渡すから台風止めてきてね☆

 

 

言わばこんな感じでしょうか。いえ、この槍はもっと強力なものでしょうが、しかし、それでも槍ですよ?

 

訓練も積みました。厳しい修行にも耐えました。そんな兵士がいたとします。

 

確かに、戦場やその他諸々で活躍はできるでしょう。はたまた英雄視されることもあるかも知れません。

 

しかし、そんな兵士にとても強い槍を渡して、隕石をどうにかしろと?

 

どないせいっちゅうねん。

 

 

こほん。失礼しました。少し熱くなりすぎましたね。しかしながら、的を得ている例えだと思います。

 

それでも、魔王が人の生活に溶け込んでいるという無理のある状況を先ずは見てから確認しようと、覚悟を決めてこの島へと来ました。

 

しかし、そこに居たのは、魔王の名札を付けたチワワさんでした。

 

はっ!?ごめんなさい!違うんです。物の例えです。ですので、落ち込まないでください!

 

…はい。続けさせて頂きます。

 

そうして、私は、監視対象の人となりを探るために普段の生活を追いました。接触すべきか否かは迷っていたので、今思えば、無理のある変装をして近づいたこともあります。

 

世間知らずでしたからね…。ふふ…。凪沙ちゃんと言う通りです…。

 

 

 

百均のマスクに眼鏡、帽子で、怪しさ満点のままついていきましたが、それでも、気付かれませんでした。

 

街の方々に会うと心配されるその人は、不思議と慕われています。きっと、その人を見ると、毒気を抜かれてしまうからだと思います。

 

 

 

妹さんと一緒に買い物に行く所も見ました。

 

重そうな買い物袋を妹さんだけが持っている光景に、少しだけむっとした覚えが有ります。今でこそ疑問に思うこともありませんが、適材適所、などと仰るその人は、悪知恵が働く者だと思っていました。

 

 

 

勉学よりも大切なことがある。そう言って、ご友人の方々から逃走し、昼寝に勤しんでいる所を見ました。

 

普段はその場所で喧嘩ばかりしている小さい子が、自分から相手を思い遣る事を覚えていました。公園で干からびかけていたその人を放っておけなかったのだと思います。

 

 

 

……あれ?知恵の回る人だというエピソードを挙げようとしたのですが。

 

 

あ、有りました。そうです、この島で初めて出会った悲しい問題です。詳細とは違いますが、後から得た教訓は、このような話だと思います。

 

先祖の遺品を取り返すために、止まることのできなかった優しい宣教師。

殺生を好まなかった信徒は、異国の地を壊してでも取り返さなければならないものがあった。

 

人の命と、矜持とを測りにかけているうちに、怨讐に取り憑かれた神父の言い分も最もで、始めに悪いのは、こちら側だったのです。

 

島の人間からすれば、それでも黙って殺されてたまるか、と言った話でしょうか。

 

向こうの怒りも最もで、こちらの怒りも最もで。

 

感情同士でぶつかり合って、話し合いも出来なくて、後は……。

 

 

そんな時に、その年中眠そうな人は、ズルをなさいました。

 

何気なく話をしてしまった神父の話を聞いて、共感し、泣きました。

 

そして、それだけでも周りのこわ〜い方々が勝手に解決してくれるのですが、その人は、普通なら取り次いでもらえないその電話を、絃神島のこれまたえら〜い方々に。

 

借りたものはちゃんと返さないと駄目。

 

言ってしまえばそれだけで、後は行き場のない怒りだけでした。

 

サブフロートに住人を避難させ、柱の建設を急ピッチで進め、差し替える。

 

大掛かりなそれは、大問題になる筈でした。けれど、サンドバックを進んで選んび、殴れなかった神父の代わりにロリビンタをくらってボロボロのその人と、その人を慕う小さな子達からのビデオメッセージには、無言の圧力が有りました。

 

 

汚い意地を張って、この顔を歪めるか?

 

 

後はお察しの通りで、細かい問題はこわ〜い方々が時間短縮です。

 

 

ですので、私は、そんな先輩の人を安心させる不思議な魅力と、いつでも周りを和ませる気だるげさ、暗い面を知ってもなお変わらないその純粋で柔軟なその心に憧れました。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

丁度昼休みに差しあたり、一番良い風が窓から吹き込む絶好の睡眠タイムにやってきた後輩が、なんか色々言っている。

 

そんな時には、どうするべきか。

 

 

「先輩、いえ…師匠!!どうか私を弟子に!!」

「え…嫌だ。」

 

 

「っ!いえ、諦めませんよ師匠!」

 

 

 

結論、寝る。

 

 

 

 

「寝ないでください!師匠!ししょーー!!」

 

 

 

よくお世話になっている後輩に無視を決め込むのはあんまらりしたくはないのだが、ハイライトが仕事を再開するまでは、関わるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「矢瀬、助けてくれ。」

 

「無理。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





古「勝手にうまく話が進んだだけで、ダラっとしたいだけなんだが……。」



そのうち続くかも、ということで思いつかなかったオチを放り投げて、投稿です。

また寒い。体調には気をつけてください、




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別枠 誰かしらの奮闘

駄文注意報

後書きは酔っ払いおじさんの愚痴なので読み飛ばしてくださいな。
いつも以上に支離★滅裂の為。

さて、いろんな作者様のバレンタイン話が投稿されるのが楽しみです。



 

「はい、古城。ハッピーバレンタイン!」

 

「ありがと…う……ぐっ。」

 

「ちょっ!?いきなりどうしたのよ」

 

「朝から…チョコレートフォンデュで……凪沙にも…お袋にも…那月ちゃんにも、来る途中に食べさせられて……鼻血が…。」

 

「え、大丈夫なの⁈なら、無理に受け取らなくて良いわよ?」

 

「…せっかくの甘味、貰わないことは無い。サンキュー浅葱。ブハッ…。」

 

「…いちよう、保健室連れてくか。」

 

「そうね…。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ほれ、小僧。ありがたく受け取るがよい。」

 

「お兄さん!是非食べて欲しかった、です!」

 

 

 

「ふっ…ありがたく…貰うぜ……カフッ。」

 

「無理すんなよ…。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「先輩!そ、その、受け取って頂きたい…ものが…ですね…。いえ、やっぱり何でも無いです!」

 

 

「…?分かった。」

 

 

「あ!その……。」

 

 

「こいつには、はっきり言わんと伝わらないぞ?」

 

 

 

 

 

「…はい。では…先輩!チョコレート、受け取ってください!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「…矢瀬。」

 

「何だ?」

 

「俺、もしかしたら、割とモテるのかもしれん。」

 

「そうだな。その鼻血を止めればイケメンの部類だろうよ。」

 

「ほれほれ古城くん!義理チョコの山に苦戦してるようだから、手伝いに来てあげたよ!だから、この可愛い妹にもチョコレート頂戴!」

 

「ん…。」

 

「ありがとねー。」

 

 

 

「……うん、やっぱり気のせいだったわ。」

 

「んなことはねーだろ。本命もかなり混ざってると思うぞ俺は。」

 

「…気持ちだけでも嬉しいよ。」

 

 

(嘘は言ってねえぞ?俺が渡した奴以外は本命しか無いだろうけどな。)

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日は二月十四日。バレンタインデーである。

 

魔術が普及する世の中で呑気にイベントと称して、過去の偉人を取り立てていて良いのかという野暮な質問はもはや意味も無く、製菓会社の競売祭りとでも思っておけば良いのであろうか。

 

いくら本土から多少離れた位置に浮かぶ人工島の魔族特区だとしても、そこは流石に大元が日本であることだ。

 

古城達の通う彩海学園の生徒たちも例に漏れず、比較的自由な校則に感謝しながら、生徒間でのチョコレートの受け渡しを行う風景が朝から各所で見受けられる。

 

そもそも購買にも食堂にも、チョコレートフェアなのか、在庫処分なのかはさておき、カカオ臭満載のメニューや商品が並んでいるので、学校側、つまりは不要な持ち物を取り締まる側の教師陣としても持ち込みや受け渡しを容認しているということに近いのである。

 

色恋沙汰に飢えている年頃の男女、または同性、友達、同僚、家族、などなど、種類や用途は多いわけだが、既製品や手作りのチョコレート、またはチョコを使った料理などを親しい相手などから渡してもらえると、ほとんどの者は喜びを感じる。

 

渡す側もイベント特有の雰囲気という後押しによって、踏み出せない一歩を詰めることが出来たり、日頃の言いづらい感謝を伝えることが出来たり、と、季節的にもなかなかに悪くないイベントだったりもしなくもないわけなのではあるが。

 

妙な言い回しになってしまったのを先に詫びておこう。

 

ちなみに、貰えない、貰う相手が居ない者達についたら言うまでもないことである。普通につまむものとして友人にあげたり、特殊な趣味や事情の者を除けば、野郎同士で慰め合う為に渡し合っても虚しいだけであろう。成人している者ならば酒のつまみになるかもしれんが、学生にしてみれば虚しくやけ食いが関の山なのではなかろうか。

 

誰のこととは明言してはいないので、あまり深くは掘り下げたくはないところである。

 

 

それはさておき、本題の方々の様子はどうなのだろうか。

 

さて、先ずは、この際面倒なので始めから明言しておくが、古城に恋する乙女達(一部除く)もしっかりと今日の為に準備を進めていた。

 

メタい話で申し訳ないのだが、番外編なのだから細かいことは言いっこなしである。

 

と、話がズレたが、容姿はそのまま、しかし何処から漏れ出ているのか分からないが、老若男女問わず庇護欲を誘う雰囲気を常時醸し出している暁古城。

 

彼が、今日のようなイベント毎において何事もなく一日を終えられることはまずあり得ない。

 

何故ならば、古城を狙う乙女という名の愛の獣達は虎視眈々とその機会を狙っているからである。

 

何の? 勿論のこと、他を出し抜いて古城をお持ち帰りする為の、だ。

 

メンツはまぁ、察してほしいところだが、きっとオールスターとか全員集合というサブタイトルが付くのであろう。

 

真祖、魔族、魔女、霊能力者、一般人、友人、知人に、果ては肉親まで。

 

種族は問わず、なんでもござれな人外魔境の絃神島においてもなかなかに濃い面々がこの日のために手を回す。

 

無自覚にフラグをばらまいていると、こうなるぞ?と、世の主人公達に教えてやろうと言わんばかりの光景が見られるかもしれない。

 

それはそれで見て見たい気がするが、今は置いておこう。

 

そして、勘違いを招くので、言っておくが、当然のごとく物騒な者達も多い訳だが、危害を加えようなどとは誰も思ってはいない。よくある、ブラッディなバレンタインイベントなどは起こさないし、周りがそれを許さないので、悪しからずというものである。

 

まあ、だが、本人が甘いものや惰眠グッズで誘えばほいほいと付いて行ってしまいそうな予感はぬぐいきれないのが実際のところではあるが。

 

 

要は、お持ち帰りして、愛でるか甘やかすか。その点に尽きる。食べてしまう(物理)、またはお持ち帰り(意味深)という発想は、控えて頂こう。

 

一日経てば、自重できるくらいには落ち着ける筈のことであるために、今日特有の悪い魔素が空気感染(世界規模)しているのだ。(適当

 

 

 

さて、ならば、なぜ例年も含み、古城が持ち去られることもなく、この日を普通に過ごせているのだろうか。

 

 

 

それは、勿論、苦労人達のおかげである。

 

その中の一人、付き合っている彼女に当日会うことは難しい為に、既に前日までに一通りの恋人ののやりとりを終えた矢瀬。

男女の立ち位置は逆かもしれないが、仕事の合間を縫って作った無骨ながらも丁寧に作られた手作りチョコレートケーキを渡し、短い時間ながらも共に時間を過ごしたのはこの男のマメなところであろう。

 

 

海外から力業で押し寄せようとする者達に対する牽制やプレゼントと称する劇物の検閲、暴走する一部の乙女(笑)の笑い話で済まされないであろう兵器(手作り)の処理、メンタルケアも含めて、休む暇もなく働く面々の多くは、矢瀬と同じような状況の者か、イベントには無縁でありながらも血涙を流すことなく事に当たれる立場の人間である。

 

 

島の住人の期待を背負い、誰も知らないところで奮闘するその姿。

 

どうか、いつの日か報われることを密かに願っているゾ!

 

 

 

 

 

 

いい加減にくどいようだが、何度でも言おう。

 

 

ここは、人魔入り乱れる魔族特区の絃神島。

 

世界最強の吸血鬼、第四真祖が滞在する場所なのだ。

 

 

暦に書かれていないようなイベントでさえも一歩間違えれば島の危機になることぐらいは、特に珍しくもないことなのである。

 

 

 

 




甘くてワクワクするお話やイラストが楽しみなこの日。

心がぴょんぴょんするようなお話を思い浮かべながらも、書けないで寝落ちする駄目な作者はほっといて…(泣

いつもお読みくださってる皆様には感謝しかない限りですが、偶にはちゃんとコレジャナイ感の浮かばない話をきちんと書き上げたい、酔っ払いの戯言後書きでございます。

バレンタインの楽しみ方はそれぞれですが、絵師さんや作家様方が素晴らしい特別編を投稿してくださるのを心待ちにしております(期待の眼差し。

…文章力の無さはもはや言うまでもないけれど、書きたいネタがつまらないってのは致命傷過ぎますなぁ…。


さーせん。寝ます。

さーて、起きてからの更新一覧が楽しみだなぁ!(おい


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別枠 メイドin暁家 ver1ぱーとわん


ドリームタンクマッチとモンハンが止まらないのです……やべーんす……

はい、すみません。また、ぼちぼちよろしくお願いします。


 

 

 

「古城君、お昼何食べる?」

 

「今日も暑いし…お茶漬けが良いなぁ〜。」

 

「私も今日はそれに賛成かなぁ。」

 

 

「「はぁ〜…休み最高〜〜。」」

 

 

 

 

昨日から兄と妹揃って、唐突な連休を迎えた暁家。中高一貫のため、双方とも現在は壊れた校舎の改修工事が行われている彩海学園に通っているため、こうして家族水入らず(両親除き)でくつろいでいた。

 

 

老朽化が原因とされている……が、屋上のベンチで寝返りをうって落ちそうだった主人を助けるために暴走してスパークした金色のネコ科や音の膜のトランポリンによって優雅に助けようとしたは良いが、思った以上に軽かった為に一切の抵抗無く眠ったまま吹っ飛んだ主人に焦って校舎の窓ガラスやら配管やらをもれなく破裂された馬やらがいたかどうかは謎である。

 

夢の中で、何故かショボーンとしていた、いつもよく会う動物達の様子に首を傾げていた真祖の少年は、これまたいつも通りにふかふかの毛並みの中で眠り直したり、それを受けて変わらない主人の様子に思うところがあった毛玉達がのんびりしていたり。

 

 

それはさておき。

 

 

真面目でしっかり者の妹も、特に課題も無しに唐突に迎えることとなった手離しの休日という名の魔力の前には抗うことが出来ず、兄の隣で柔らかいソファに身を沈めている様子。

 

ほんにゃり、という表現がしっくりとくる表情で仲良く垂れているあたりやはり兄妹なのだと認識できる。何故ならば、既に家具と同化して自我は溶けかけ、存在が薄れかけている兄に釣られてか、妹も風景の一部に溶け込むように薄っすらと色がなくなりかけているからだ。

 

このままではいつか行方不明の兄妹として迷宮入りの事件とされてしまう。

 

 

……流石に冗談…であるが…、本当に消えそうなイメージが拭いきれないあたりさすがと言わざるを得ない。

 

 

 

だが、そんな日常の一幕なのか実は危機だったのか分からない暁家の平穏は、大概何者かの来訪によって容易く崩れ去る。

 

 

 

ピンポーン!ピピピピンポーン!!

 

 

此度もその例に漏れず、チャイムを連打しながら、唐突にソレは現れた。

 

 

 

「はぁ……暁古城。本当にすまん。今回ばかりは私の手には負えん。どうか…頼む。」

 

 

 

とても疲れた表情で頭を抑えているゴスロリ服のちびっ子英語教師と。

 

 

 

「命令受諾。これよりマスターにご奉仕を開始します。何なりとご命令を」

 

 

 

どこかで見たことのある、というか見覚えしかない無表情の青い髪の美少女ホムンクルス。

 

 

ジャンケンで負けた為に玄関先まで這ってでてきた古城の瞳を真っ直ぐに見つめながら、メイド姿の厄介事は、今日も元気にトチ狂っていた。

 

 

 

……………………?

 

 

 

ぼーっとした頭でさえも一瞬固まるほどの衝撃を受けながらも、とりあえず古城は、喋ってもいないのに電波の命令を受諾しているメイドさんに、一言だけ伝える事にした。

 

 

「命令……なら、とりあえず帰って?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






続く(大嘘

さーせん。加筆するか続けるかは気分


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別枠 酔い酔い古城くん 1

別名中の人ネタ。
グラブルやっていたら衝動が…。
思い付きでやってるのでネタ切れは無いのですがね…。気だるげとはなんなのかという命題に打ちのめされる。

いや、しかしですね… ''基本'' 気だるげなのですよ(ボソッ

はい、いつもの言い訳でした。すいやせん。




それは、お年頃の少女の僅かな冒険心から始まった。

 

両親はなかなか帰宅しないために、兄妹二人分とはいえ、中学生には負担ともなりうる暁家の家事をほぼ一人でこなす健気な少女。

 

 

兄は特殊なタイプの人間である。その事実を、幼い頃からずっと近くで見ていた彼女はよく知っている。そして、放っておくと際限なく堕ちて行くであろう兄の為、立ち上がったのがこの女神。暁凪沙嬢である。(矢瀬談)

 

そんな彼女は今日も兄の朝食を作ろうとしていた。

 

 

料理を覚えてから、毎日の健康バランスを考えて、食の細い兄の…否、食事は摂取するが結構な割合で睡眠欲に置換されたり、動き回ることの少なさから3食の合間に消費されないカロリーやら満腹感に振り回されながらも、負けじと栄養を摂らせようと奮闘している。

 

 

そして、今朝も日差しの強いこの島での一日に負けないようにと、食べ易くかつ適度に栄養を補給できるメニューを作ろうと思いついた訳なのだが…。

 

 

彼女がいくら大人びていても、中学生の好奇心は留まることを知らない。普段の責任感が強く、自制心のある彼女は、昨夜の料理番組で見かけたばかりの試したことの無い調理法を思い付きで試そうとは思わなかったのだろう。

 

 

火を扱う以上は、考えた上で行わなければならない。後から後悔しても遅いのだ。

 

 

しっかりとした環境と監修のもとで行わなければならない。

 

 

しかし、それ以前に料理スキルとは少しずつ試して磨いてゆくものではないだろうか。

 

ふと思いつきで試してみた結果、ゲテモノと化すか新しい美味しさに巡り合うかは運次第かもしれないが。

 

 

まぁ、そんなわけで、安売りしていた良い感じのお肉と、母が置いて行った赤いラベルのぶどうから作ったお酒。

 

サラダはそのままに、手に取った卵とベーコンと、目に入ってしまった新調したフライパン。

 

 

 

 

手元と冷蔵庫の中身を幾度となく見比べる。

 

 

 

簡単な話だ。朝に弱い兄のことを考えれば、どちらを選べば良いかなど分かりきっている。

 

 

朝からガッツリとしたメニューなど兄に限らず低血圧の者には拷問でしか無いだろう。

 

 

それに、試したいのならば夕飯にしたって良いのだ。簡単とは言え、朝食はまさに今作りかけだったのだから。そのまま作ってしまえばいい。

 

 

朝練が無いために幾分か余裕があるとは言えども、自分も兄も駅から通学しているのだ。そこまで時間に余裕は無いし、愚図る兄を起こさなければならない。

 

 

ならば、悩むこともないだろう。さて、と自身の煩悩を打ちはらい、賢い彼女は答えを出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の頭の上には幻のコック帽が乗っていた。

 

 

 

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

 

 

結果的に言えば、本日の暁家には朝から香ばしい香りが昇り、作った本人はとても満足していた。

 

そして、いつも通りに妹に起こして貰った古城。

 

テンションが高いのはいつものことだが、何故かご機嫌な妹はニコニコと華やかな笑顔を浮かべながら正面に座っている。

いつも丁寧で古城の体調を慮った朝食を作ってくれている凪沙。最初は勿論失敗し、真っ黒だった。

 

そして、テーブルに並べられたいつも以上にオシャレで豪勢な食事。

 

 

「さ、食べよ。古城くん。」

 

 

勧められるがままに、良く火の通った柔らかい肉を口に運び、回らない口で感想を告げる。

 

 

「えっへへ〜。そうかな。良かったよ。なんとなく魔が差して、昨日見たフランベを真似してみたんだよね。ちゃんと火が通るようには気をつけたんだけど、焼き過ぎちゃったかなって思って心配だったんだよね。上手くできて良かった〜。」

 

 

はにかむように笑顔を浮かべ、そして自身でも良く焼けた肉の旨味に目を輝かせている様子の凪沙を見て、古城は思う。

 

ーーうちの妹がこんなにk(略

 

 

 

量は少なめで、サラダなどの副菜も丁度良いが、いくら美味しくとも確かに胃にくることに変わりはない。が、兄の意地にかけて、喜ぶ妹のためになんとか食べきった古城。

頭に響く鈍痛がいつも以上に強いのは、きっと今日もカーテンから覗く日差しが強いせいなのだろう。

 

酒精は確かに飛んだ筈のものを食べ、幾分か上がった体温を感じながら、古城の意識は薄れていった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

朝食を終えたあと、突っ伏すように寝始めた兄を置いて、後片付けを始めた凪沙。

 

兄がふとした瞬間に睡魔に負けるはいつものことである。

 

料理を口に運ぶ途中で寝られるよりはマシなので、もう少しだけ寝かせておいてあげようと思いながらも、慣れたもので、直ぐに皿を洗い終え、流し台の水気を取り終える。

 

 

「さて、それじゃあ古城くんを着替えさせて学校行こっか!」

 

 

今日も一日がんばるぞいっと、手を握って気合いを入れ、まだ眠りこけている兄を起こしに向かう。

 

 

リビングのドアを開け放ち、勢いよく起こしにかかる。

 

 

「さー、起きろー!寝坊助さんめー!」

 

「おいおい、凪沙。誰が寝坊助さんだって?」

 

「ぇっ!?!?」

 

 

だが、大きく一歩進んだところで、誰かにぶつかって抱きとめられた。

 

今朝は矢瀬も浅葱も来ていないので、言うまでもなく古城しかいない。逆に古城以外だとすれば怖い。大穴で、所在不明の父か母だが、声からして両方違う。

 

恐る恐る目を開けると、いつの間にか制服に着替えた古城がおり、寝ぼけ眼がデフォルトの兄にしては珍しくニヒルな笑みを浮かべていた。

 

 

「えっ…と、古城くん起きてたんだ?」

 

「ああ、可愛いらしい妹が胸に飛び込んで来てくれたとあっては、眠ってる場合じゃないだろう?」

 

「!!と、とりあえず離して!//」

 

歯に着せたような台詞を吐く兄。元々低めの声だったが、今日はどこか落ち着いたような声音をしており、無性に渋い。

似合っていると思ったが、さっきまで二度寝をしていた人物が何をくさいセリフをほざくのか。

 

だが、何か言い返そうという思考が働くよりもまず、古城の台詞から、自分が抱きとめられていたことを思い出し、羞恥心が働く。

 

 

 

整った容姿の銀髪が無性に似合う声音で、甘い台詞を吐きながら自分を抱きとめている。

 

 

キャ、キャー。ナンテハズカシイシチュエーションナノカシラー(棒

 

 

胸の前にあった手を突き出すように、思わず強めに押してしまい、すぐにハッとなった。

 

自分よりも非力で、元はスポーツマンのために体格は良いのに何故かヒョロヒョロな古城を突き飛ばしてしまった。

 

 

のだが、背に回されていた手が離れることはなく、突き飛ばした筈の手は対して距離を離せていなかった。

 

 

「ハッハ。恥ずかしがらなくても良いだろ。ほら、安心して力を抜け。」

 

 

右手は頭に置かれて、優しく髪をすくように撫でられ、片手になった筈なのに先よりも力強く胸元に引き寄せられる。

 

「え、ちょっと!どうしたの!?」

 

制服の上に着られたいつものパーカー。

 

鼻先に広がる柔軟剤の香りとは別に嗅ぎ慣れた古城の香り。

 

そして、久しぶりに兄に頭を撫でられ、その優しい手付きに思考がふわっと飛びかける。

 

どうしたのは、自分の方かもしれない。

 

 

 

 

早くトチ狂った兄をどうにかして、学校に行かねばならないのだが、日差し以上に自分の顔が熱い。鏡を見ずとも真っ赤であるのは分かりきっている。

 

 

「緊張してんのか?大丈夫だ。俺たちは兄妹だろ。だから、いつも頑張ってる可愛い妹にお礼がてら……。」

「ひうっ!?」

そこで台詞を止めて、肩に抱く様に頭を引き寄せられる。うなじに回された手の感触のこそばゆさに思わず変な声を上げてしまう。

 

 

そして、優しい表情のまま耳元に顔を寄せられ…

 

 

 

'''お兄ちゃんが可愛がってやるよ'''

 

 

 

 

 

 

雪菜ちゃん、ごめんね。朝に本を貸す約束をしてたけど、今日は遅刻するかもしれない。

 

腰が抜けてしまったのを兄に支えられながら、心の中で仲の良いクラスメイトに謝罪を送った。

 

 

 

 

 

 

 




ん?古城くんと凪沙さん?その後頭を撫でられながら少しだけ休んで、仲良く普通に登校しましたよ?


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別枠 古城くんがやってきたら1

……SU MI MA SE NN DE SI TA ☆



古城くんと本編の暁古城少年とが大変分かりづらいと思いますが、ご容赦を。
次回とか?



 

 

早帰りの日。うっとおしい日差しが丁度天辺に登ってきた時間帯。部活がある生徒以外は、とても喜び我先にと帰っていく中、パーカーを着た少年はだるそうに歩いていた。

 

木陰から木陰へと移動を繰り返しながら、強い日差しをなるべく避けるように帰ろうとするが、周りに隠れる場所もない校門付近ではどうしようもなく、フードを目深に被ることが精一杯の抵抗だった。

 

しかし、余計に暑かった。

 

そんなトボトボと歩く少年に、背後から近づく制服姿の人影。

 

足音を殺しながら、背後から一気に抱きついた。

 

「やっほー。古城君。あ、間違えた。せ〜んぱい!お元気ですか!」

 

「うおっ!?(姫柊よりも高い声、そしてこの呼び方。凪沙の声じゃない。それに、明らかに大きい…どことは言わないが柔らかい感触)………零奈か?」

 

「おお〜〜!さっすが古城君だね。分かっちゃうんだ。でも、ふっふっふ〜?今、どこで判断したのかな〜?」

 

 

うりうり〜、と身体をよじって楽しそうに体重をかけてくる零奈。言うまでもなく、未来から来た吸血鬼の少女だ。

 

ある事件の折に、姫柊雪菜の未来を変えるために過去の時間に飛び、古城の顔見知りの錬金術師や過能力者の母などに協力をして貰いながら、雪霞狼という槍を強化する手伝いをしたのが彼女である。

 

吸血鬼であるためか、歳相応の溌剌とした性格を持ちながらも、容姿もスタイルも歳相応とは言い難いレベルであるため、少年心を前面に押し出して行動する中で、一体何人の同年代の少年達の心に傷を負わせてきたのだろうか。

 

そして、大人びてはいても歳相応の感性を捨てきれない暁古城。多少は慣れてはきていても、心拍数は上がるに上がり、鼻からは熱いものが込み上げていた。

 

 

「重いから離れてくれ。」

 

「ちょっと!女の子に重いなんて失礼だよ?はい、ティッシュ。」

 

「おう、あんがと。」

 

 

年齢的には上の筈なのだが、あえて触れない少女の対応の方が紳士だったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きつかったら…言ってね?」

 

「言えるか!!!?」

 

 

訂正、悪戯好きなだけかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、暁家。そのリビングで、古城と零奈は麦茶を飲んで寛いでいた。

 

実はあれ以来、術式結構複雑だったんちゃうの?とか、あんまり過去に影響与え過ぎちゃまずいんじゃなかったん?とか、ツッコミを入れられるほど、普通に過去に遊びに来ていた。

 

美人に目がない妹による甘やかしと餌付けの賜物とも言える。

 

世話になっていた人物の若い時から変わらない猫可愛がりに対してすぐに心を持っていかれた零奈。

 

ソファに沈み込んで、ダラっとしている姿に、流石の古城も苦笑しか浮かばなかった。

 

 

そのままではどこかの誰かとキャラが被るぞ?シャキッとしなさい。シャキッと。

 

 

「それで?今日はなんかあってきたのか、それとも遊びに来ただけか?」

 

「あ!そうだった。ん〜、半分正解かな。遊び半分でドクが酔っ払った時の発明品を持ってきたんだ〜。」

 

若い時の古城君が懐かしいんだってさ〜、と嫌な台詞を言う零奈。

 

古城は、藪蛇だったかと若干後悔した。

 

未だに未来の人物関係はあやふやにしか教えてもらっていないため、誰が誰なのかは分からない。

 

そのため、余計に不安しかない。

 

 

「じゃーん!名付けて、1日だけ未来コレールだよ!ちなみに、試作品のテストのアルバイト兼乗り気になっちゃった萌葱ちゃんのお願い兼ドクからの個人的なお小遣い稼ぎだから、古城君に拒否権は無いよ!」

 

そう言ってオモチャの銃のような何かを取り出した。

 

「いや、酔っ払っいが作ったもの俺で試そうとすんなよ!?」

 

「えー、可愛い美少女の頼みだよ?ま、安心してよ。危険は無いらしいから……たぶん。」

 

「おい!そこはちゃんと言ってくれ。物凄い不安しかないんだが。」

 

「まあまあ、時間も押してるしね。それじゃあ、私もすぐ戻るからさ。それに、明日休みでしょ?書き置きもしといたから平気平気。最悪何か起きても安全装置が働いてこの時間に帰ってこれるから大丈夫ダヨ…きっと。」

 

 

「じゃ、行くよー。バーン!」

 

「ちょっ、待っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、新鮮な反応が見たいから若干催眠術式かけて記憶弄るね?って言い忘れた。まあ、いっか。私の説明が抜きになるくらいだし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、暁古城は未来へ跳ん……だ筈なのだが、まあ、試作品だからネ。仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁古城は現在過去最大の難関に立ち向かっていた。

 

彼は、今までに幾度も、それこそ一般人であれば数秒に1回は死んでいてもおかしくはないような修羅場をくぐり抜けてきた経験がある。

 

比喩ではなく世界を滅ぼしかけた原因を、しかも暴走しているソレを、一介の高校生だった少年が、泡を食いながらもなんとか食い止めてきたのだ。

 

原因の一部を背負っていないとも言い切れないわけではあるが、それでも多くのものを救ってきたことは事実だ。

 

 

別段少年はそれを誇るつもりも無いし、止められるだけの力があったから、当たり前のことをしてきただけ。

 

 

彼は、そう考える。

 

過去、ただの高校生だった彼はそう考える。

 

現在、ただの真祖である彼はそう考える。

 

未来、ただの王となった彼はそう考える。

 

 

( だが、あくまでこれは、あり得たかもしれない世界の一つだ。 彼がどんな歩みを進めていくのかは、まだ分からない。)→メタ発言

 

 

力に伴う責任なぞ、周りが騒がなければ別段意識することもないように、彼はこの先もずっとゆったりと暮らしていたであろう。

 

だが、場所も因果も時もそれを許しはしないのは言うまでもなかった。

 

そして、受け取っただけのただの短い間の記憶を、儚いだけの僅かな時間を、もう無くしたくないと、そう思う限りずっと、彼はこの先も厄介な事に関わり続けていくのだろう。

 

例え、不死身の己がいつか思い悩む日が来ようとも、この先の選択が理不尽なものであっても、自分で選んだものだから。

 

日差しに弱いただの真祖な高校生は、今日もそうして朝を迎えたのだ。

 

 

 

だから、と、少年は現実逃避気味に考える。

 

俺は今日も頑張って起きた。明日からもそのつもりだ。

 

 

 

ツッコミを入れたやつには普通の低血圧の何百倍辛いか教えてやりたいものだ。

 

 

 

 

だから、な?

 

 

世界よ、もう少し俺に優しくしてもいいんじゃないか?

 

 

 

同じベットで自分の腹に抱きついて寝ている自分そっくりの物体を見ながら、暁古城は大きな溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 





古城君の場合。


「やっほー!古城くん!ってうわああ!?」

「ごふっ…」

「大丈夫!?ごめんね古城君。つい、古城くんが歩いてる姿を見たら嬉しくって。」

「大丈夫だ。良いんだよ。それが、俺だ。」

「コールドカプセルで昼寝なんてするから……うう…ぐすっ…」

「泣かないでくれ。そして、上から退いてくれ…うう…助けて…矢瀬……がふっ…」








ほんの少し後、駆けつけた矢瀬が見たのは、泣き疲れて抱きついたまま愚図る少女と、潰される少年の姿だった。

片手はどこかへ助けを求め、もう片方の手を背中に抱きつく少女の頭に乗せて、泣きやませようとしていたことが分かり、目頭が熱くなった。


ああ、この友人の気遣いが無駄にならないことがこの世にもあったのだな、と男泣きするヘッドホン少年。
久々の暖かい背中に甘える少女。





初めて、直接的に人への気遣いが無駄にならなかったことに、安堵した下敷きのままの少年は、とても安らかな顔をしていた。



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別枠 古城くんがやってきたら2

あれ?サブタイと内容逆じゃね?

……まあ、いっか。

今回も途中投げたので後で直す可能性大でする。


「おーい、起きてくれ〜〜。」

 

 

試作品の1日だけ未来コレールという銃に撃たれて時間を跳ばされた筈の暁古城は、目覚めてから直ぐに朧げな記憶を頼りに現状を把握しようとしていた。

 

見覚えのある部屋。まさに自分の部屋である。今朝も同じ光景を見ていたのだから間違えようもない。

若干家具、というか寝具が増えている程度の違いはあるが、見渡す限りは間取りも同じであった。

 

特にこれといった特徴も無い部屋だが、机の上に飾ってある写真とトロフィーだけは間違えようも無い。苦い思い出と共に、かつての記憶が頭に浮かんでくる。

 

そして、確かにその中に写っているのは紛れも無い自分の姿だ。

 

ならば、確かにここは暁古城の部屋なのだろう。

 

 

 

うむ、では次だ。霞がかった記憶は都合よく掠れ、慌てて転げ回るであろう自分を冷静にさせていた。

 

 

なぜか。

 

少しだけ…否、かなりイラっとするドヤ顔。それは古城が思い出せる一番近い記憶。

 

 

しゃくれ顔に口元の笑み、サングラスをかけた吸血鬼の少女が、「ヘイ、メーンww」とでも言いたげに中指を立て、もう片方の手でこちらに謎の機械の銃を向けていたからである。

 

 

完全にイメージでしか無いのだが、やけに鮮烈にその光景が刻まれ、古城は静かにその怒りに蓋をした。

 

( 帰ったら覚えてろよ?)

 

古城、激おこである。記憶改竄の術式バグったんじゃねーか。仕事ちゃんとしろよドク…。

 

酔っ払いに何を言っても無駄なのはいうまでも無いが。

 

 

 

 

 

 

原因が分かったところで、古城は考える。

 

また、変な実験に巻き込まれたということは、そのうち迎えがくるか、効果が切れたら戻れるのだろう。

 

両手の指より多い回数やられていれば、流石に慣れる。この少年は割りかし苦労性であった。

 

 

 

 

そうと決まればついでに現状把握を兼ねて行動あるのみなのだが、先程から視界から消していた物体の重みを感じる。

 

ベッドの上。腹に抱きつく自分よりも一回りほど小さい自分そっくりの物体。服は着ている。乱れはないので事案では無い。

 

同じ寝巻きを着ている。俗にいうペアルックだが、特にそういった関係ではない。故に事案では無い。大事なことなので(ry

 

 

ふむ、ならば。

 

きっと、この部屋の主人であろう、()()がこの時間だか、次元だか、の暁古城なのであろう。

 

タイムパラなんちゃら、バタフライなんちゃら、そんなものは知らない。他所でやれ。

 

 

 

なぜここまで冷静にそんな発想に至るのかは、前述の通りに既に慣れたからだ。

 

まあなんにせよ、二度寝をする気分でも無い。腹に抱きつかれていては動けないし、一先ずは起こそうとして、冒頭にいたる。

 

そして何よりも、恐らくここにもいるであろう妹の存在を危惧すれば、早く離れなければなるまい。

 

跳ばされてきたのが自分とは言え、ある意味完全に被害者な古城は、この家の自分の対面にまで気を遣っていた。

流石は古城さん。そういう気遣いのせいで更にこの先もモテるのだ。

 

 

 

 

 

「起きてくれよ、多分俺ー?」

 

古城が肩を揺すると、「うう〜」やら、「あ〜」と、唸る古城。面倒なので、眠っている方を、コジョーとしよう。決して調味料では無い。

 

 

古城が何度か呼びかけるがなかなかに愚図り、起きないコジョー。コジョーが自分と同じ体質であれば、起きるのが辛いのは分かる。痛いほどに分かる。

 

 

だが、今は時計の針を見るにいつ妹が起こしに来てもおかしくは無い。

古城的には朝はキツイので、妹に頼み、昼や夜は大概自分で作るので、コジョーも同じであろうと推測できる。

 

とはいえ、いくらなんでも愚図りすぎではなかろうか。

 

 

 

「おーい、いい加減に起きてくれ。でないとあらぬ誤解を生んじまう。」

 

 

かなり強めにゆすりながら、ガッチリとホールドされた腕を無理やり引き剥がそうとする。

 

今一番聞きたくない声、それは、妹からの、蔑みの視線を合わせた上で、

 

「お兄ちゃん、最ッ低」である。

 

もしくは、「不潔。古城君ってそういう趣味だったんだ、へぇ。」だ。

 

 

聞きたくない。絶対に聞きたくない。妹はノーマルなのだ。凪沙に軽蔑されたら、シスコンお兄ちゃんの古城のメンタルは死んでしまう。

 

徐々に焦り始める古城。急がねば。なんとしても。

 

 

だが、現実は無情だった。

 

 

「あれ?古城…くん?」

 

足音はしなかったのに、部屋の鍵は開いていて、今まで忘れていたかのように、ようやくキィっと鳴いたドアの音。

 

ああ…、眠るもう一人の自分を気遣うばかりに、古城とコジョー、両方の尊厳を殺してしまった。

 

続く言葉を聞きたくなくて、耳を塞ごうと手を上にもちあげたところで、

 

 

「えー、古城君また増えたの?まいったなぁ。1人分しか作ってないんだけど。私そろそろ朝練だから作る時間がぁ〜…あーもう!古城君、増えるなら増えるって言っといてよ!!」

 

 

「……うーん。ごめん。」

 

 

「はぁ、まあいいや。今日はどっちが行くのか分かんないけど、あんまり時間ないからちゃんと起きてね?」

 

 

「…あい。」

 

 

「うん。よろしい。じゃ、お先に。いってきまーす。」

 

 

「うい……。あー、起きるか。」

 

 

 

という、反応に困る会話を繰り広げる、妹と、妹が来た瞬間に条件反射で身体が起き上がったコジョー。

 

一部始終を聞いていた古城は、増えるってなんだ?とか、寝起きなのに何故か若干高いもう一人の自分の声とか、どっちが行くとか、色々とツッコミが追いつかず。

 

 

ただ呆然とし、

 

 

「…………は?」

 

 

という、間の抜けた声を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コジョーは、目の前で元気に慌てふためきながらも自分よりも幾分か理知的な暁古城を前にしながら、トーストを齧っていた。

 

妹の作ってくれたバランスの良い朝食を古城に自然に渡してスルーさせつつ、監視の目が無いのをいい事に練乳をたっぷりとかけたトーストである。

 

甘いものは得意では無いのだろうか。何かを言いたげに見ていたが、それを飲み込んだようにして質問を投げて来た。

 

「えーと、多分俺、だよな?」

 

「…そだなぁ。とりあえず、食わないのか?」

 

「いや、それどころじゃ。」

 

「凪沙の手作りの朝飯、残すのか?」

 

「…くっ。頂きます!」

 

「ふっ……甘いぜ。」

 

 

という感じに、元はお前のだろ、というツッコミを牽制しながら、素早く(古城だけ)朝食を食べ、(古城が)食器を洗い、ようやくコジョーがトーストを食べ終えたところで、唐突にジャンケンが始まった。

 

訳がわからない。

 

朝食を食べながらも、何かと質問をしようとする古城だったが、

 

「食べてからなぁ…mgmg」

 

「そういえば、食洗器を新調したんだっけか(チラッ」

 

と、はぐらかすコジョー。

 

 

洗い終え、そして、その間に制服を持ってきたコジョー。

 

何かを聞こうとする古城に対し、コジョーが「とりあえずジャンケンだ。」と言い張るために、仕方なく付き合わざるを得なくなった古城。

 

 

「なら、ジャンケンに俺が勝ったら質問に答えてもらうぞ?」

 

「…ああ。なら、こっちは代わりに今日学校に行ってもらう。」

 

 

ここまでくればもはや、コジョーの手の内であった。

 

 

過去、どうしても学校に行くのがだるかったコジョーは、妹の監視や出席日数がヤバめなことを誤魔化すために思い付いた。

 

 

もう一人自分がいればいいのでは?、と。

 

 

そして、使われる憐れな血の記憶。

 

 

痛みなど一瞬。この眠気に比べれば、なんということはない。

 

 

 

なんとも大胆に眷獣を召喚したコジョー。霧の魔力で無理矢理姿を変えさせた。憐れ、蟹。

 

 

だが、この作戦は失敗した。

 

 

 

どうしても長時間姿を保てないのである。元のサイズが違いすぎる上に、人型を模しても結局コジョーとは似ても似つかない。

いっそ、幻術で、と思ったが、英語教諭には一瞬でバレる。

 

 

そして、次に考え出されたのが、自分の再生能力を活用した方法である。

 

ナミウズムシ、もしくはプラナリアという生物がいる。

 

矢印のような姿のその生き物を縦に真っ二つにすると、どうなるかご存知だろうか?

 

正解は、分裂する。

 

 

粉微塵にされ、血の塊からも蘇生したことのある真祖ならば、もしかすれば。ワンチャン。

 

 

 

だが、もちろん痛いので、魔力やら指から出た血液を垂らし、そして若干の髪の毛で代用した。

 

 

 

その日は貧血で大変な事になったのは言うまでも無い。

 

 

が、しかし、それは成功した。

自我は無かったので、外に散歩に行きたがっていたライオンを突っ込んでみた。

 

 

 

 

 

 

 

その日学校では猫のごとく甘える男子生徒が一名。

自宅で意識不明となった男子生徒が一名。

 

 

 

 

 

頭を抱えて、現実逃避に走ったヘッドフォンを掛けた男子生徒が一名。

 

 

 

読んで字のごとく猫可愛がりした金髪の女子生徒が一名。

 

 

 

出会いがしらに頭を擦り付けられて授業を自習として悶えていた女性教諭が一名。

 

 

 

放課後に、飼っている野良猫の中に一際大きいのが混ざっていたので、ミルクをあげた優しい女子生徒が一名。とても懐かれた。

 

 

話題が伝わって来ず、特に何も知らなかった自称監視役の女子生徒が一名。別にハブられていた訳ではない。校舎が離れていただけである。

 

 

 

友人と共に小動物を愛でに来たらなんか見覚えあるのが混ざっていたのでとりあえず連れて帰った妹が一名。

 

 

 

クラスメイトは、ああ、いつもの寝ぼけか、と受け止めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで、今日はなんかもう勝手にもう一人自分が増えていたので、代わりに登校してもらおうと思い付いたコジョー。

 

どこまでも強かに、ただ、眠りたいのである。

 

 

「…は?いや、でも…。おまっ…いや、俺なんだから、良いのか?」

 

「ええんやで。(にっこり)」

 

「お、おう。そうか。なら、いくぞ!」

 

 

「「じゃ〜んけ〜ん!!ぽん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は色々とあったが、無事に夕方には元の時間に、元の世界へ帰って行った古城。

特に事件のない(?)そんな絃神島もあるのだな、と少しだけ和んだそんな1日。

 

そそくさと帰ろうとしていた吸血鬼の少女を見つけて、そっと心の蓋を取り、ゲンコツを二つ構え、背後に行き、こめかみに近づけていったとさ。

 

 

 

 




コジョー、が勝っていた場合。

質問は時間がないので帰ってからということにして、伸びる素材の制服を着て古城が学校へ行くことに。

登校する

矢瀬に会って驚く。

なんかいろいろとおかしいクラスメイトやら教師やらに驚きながらも普通に授業を受け、委員長の機嫌が良くなる。

妹と共に下校。違和感がない事に逆に違和感を覚えながらも買い物をする。荷物は古城が持った。

目が綺麗な神父や白衣の爽やかなオッさんやらアロハ服の元テロリストに出会うって苦笑する。

帰宅する。




古城君が勝っていた場合。

色々と質問責めに会うが、コジョーの認識と古城の常識との差に頭を抱える古城。

顔文字みたいな顔に何故かほんわかとし、自然と頭を撫でる。うとうとし始めるコジョー。

矢瀬が迎えにきて驚く。

矢瀬といくつか言葉を交わしたところで時間がないのでとりあえず着替えを!と思ったが、話している間に完全に寝たので、結局古城が制服を着る。

後はだいたい同じ。




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別枠 ぐぉ〜〜るでェん・暁ィィ!

なんとなく今更見始めましたが杉本さん…ヤバくね?ってことで、テンションに任せて。
無理矢理なのはいつものごとく…と言い訳は置いといて。

時代の流れ的なものはめっちゃ適当なんで気にしないでください。

そしてまた特にオチが無いっす。

最初はゴールデン(ウィークにだらける)・暁(古城くん)を書き始めたんですが、それはまた別で。
田中さん100パーセントも偶には良いかな…なんて。













第1話「殺してみろよぉぉぉ!!!?俺は不死身の暁だあああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

その島は、人魔が入り乱れる修羅の()()であった。だが、時代は流れ、一昔前の戦争はナリを潜めていた。

永き時を生きる者、もしくは真祖を知る者達は、仮初めの平和だと口を揃えて今の世を詰る。

だが、確かにそれは否定しきれない。

 

例えば、歴史を学んでいる学生が、ミサイルを傍らに置きながら3つの巨大な国が条約を結んでいるのを、テレビか何かで見たところで、平和とは?と首を傾げるだろう。

 

しかし、力あるものがソレを目指して頑張って落ち着いた現状だろうが、戦争や天変地異で何もかも真っさらになってから、永い時を経てまた繁栄した場所だろうが、ぶっちゃけた話、今現在が落ち着いているならそれでも良かろうと思うのが、そこに生きる者達だ。

 

実情を知って頑張る者も何も知らぬ者もまた、そこで生きている同じクニの者に、変わりはないのだから。

 

 

さて、一昔前とは言ったものの実際に魔族特区なる島が出来る前から続いていた諍いに、一区切りがついたのは割と最近の出来事だったりする。

 

真祖達による争いとその余波により荒れていた世界。

 

そこに終止符を打ったのは、第四真祖なるものの登場であった。

 

その実態は霧に包まれているものの、出会ってしまった者達からすれば、とても噂話などと笑い飛ばすことはできないだろう。

 

 

それは、此処が絃神島と名付けられたほんの少しだけ前のお話。

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

いくつものギガフロートと呼ばれる区画により出来ている人工島。

太平洋のど真ん中に近く、そこへ大量の資材を運ぶために拠点として占拠された列島があったという。

 

先住民はそこで静かに暮らして居た。自然との調和を愛し、無駄諍いもない穏やかな暮らしであった。

 

神秘とも呼ぶべきか、赤道に近い位置にありながらもその島は、常夏の島でありながら、冬には何故か雪が積もった。

 

島の外で太古から行われていた、寿命の無い人外達による戦争を隠れるようにやり過ごし、人は狩に生き、魔族とも棲み分けにより争いもなかった。

 

そんな、穏やかで、美しい、島だったのだ。

 

 

多少ヤンチャな、その島が好きな、後に兵隊として駆り出され、命を落としていった、心優しい青年が生まれてくる。

 

 

そんな素敵な島だった。

 

 

 

 

 

……………………………………

 

 

 

 

 

絃神島が、本国から多少離れていても争いに巻き込まれることは仕方ない。そもそもその島の成り立ちには、知られていない厄災の歴史があったし、やはりというか、ただただ、時代がそうであったから。

 

理由にならかい理由とはそんなものだ。

優秀な兵を遊ばせておくわけにも行かない各国のお偉いは、種族問わずこの島の者達を戦争に駆り出さんとした。

 

しかし、島に来たものの多くは外に縛られないために新しく出来た人工島に移り込んだきた者達であり、当然反発は起きる。

 

占拠された周辺の島々や戦争に嫌気がさして移り住んできた者、仕組みも出来上がっていく途中。そんな微妙なタイミングのこと。

 

味方同士敵同士でややこしい争いが起き、当初のまだ何も無い平穏な島は、その住人たちからさえも忌み嫌われる寸前まで行った。

 

度重なる争いに、その島は呪われているのだと、そこに住む者達は手遅れなのだと、不安を隠すためだけに、不満の矛先を島そのものへと向けるぐらいには、住人たちはお互い傷ついて、疲弊していた。

 

呪われた島の代名詞たる存在が草場の影で、否、電子の海の影で泣いていたりもしたという。

 

 

しかし、そんな争いを、そんな場所で起こしておく訳にもいかない裏事情を知る者達が頭を抱え、手をこまねいている間に、唐突に奴は目覚めた。

 

 

 

曰く、「よくも俺の睡眠を邪魔しやがったな◯◯供がァ!」

 

 

その者は、単騎で争う者全てを地に伏せ、後からやってきた世界中の怪物達でさえ打倒する事敵わず、この世のものならざる獣達を差し向ければたちまち呑み込まれて配下にされてしまう。

 

そんなやつには構ってはいられない!と、決断をする頃には、もう遅く、差しむけた者達は帰ってはこなかった。

 

結局、無視することでほかの勢力に自軍の疲弊を見抜かれるぐらいなら、たった1匹沈める方が楽なはず。

 

そう考えてしまうのは、仕方のないことだった。

 

打つ手の無かった怪物達、人間達は、このままではマズイと理解し、真祖の如き化け物には、同じ化け物の真祖をぶつけようと考える。

 

取り入ろうとする事自体が不遜な事にも気付かなかった愚物は、即座に自ら散っていく羽目になったが、ソレを作るのに関与していたであろう冷酷無比な真祖達は、珍しく気まずそうな表情で反逆者達を安らかに逝かせてあげたとかそうでないとか。

 

 

 

間も無く和平は結ばれたが、今日もまた一人、人を見かけで判断してしまった犯罪に手を染める者が、和平の結ばれた原因たる妙な奴を攫おうとしてしまった。

 

 

争いの最中、ソレを見た者は怯えた様に語り継ぐ。

 

'''豆鉄砲では歯が立たないが、目覚まし時計に怯え、

 

どんなに傷を負っても止まらない鬼神の如き暴れ様だが、羽毛に包まれ眠る姿は赤子と見間違う程に。

 

そんな見た目に惑わされるな。奴はホンモノのバケモンだ。

 

どんなに腕に自慢があっても関わるな。眠りを邪魔しなければ、奴は自ら目覚めたりはしないのだから。'''

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地裏の日陰に設置されたベンチに寝転がっていた攫いやすそうな少年を脇に抱えて古びた建物まで運んできた男は、ナイフを片手に笑い声をあげる。

 

 

「ひゃっひゃっひゃっひゃ!あ〜んなところで寝てたらアブナィだろぉ〜う?俺みたいな奴にこ〜んなことされちまウゼェ?お坊っちゃんヨォ!?」

 

「………zzz」

 

「こ〜えも出ないカァ?怯えなくたってイ〜んだぜ?優しいだロ〜?痛くしてやるか〜ラヨォ!」

 

 

口の端から泡を吹きながら今にもナイフを振り落とさんと目を血走らせた男はヤクを決めており、少年の様子にも気付かない。

 

かつては、争いの中でのし上がっていき、味方を支えた英雄だったが、もはや見る影はない。

 

その為であろうか、軍の中で教え込まれた、禁句ですらも大声で叫んでしまう。

 

 

 

「さぁ!ぶっ()()てやるヨォ!!?お坊っチャ〜ん!!?」

 

 

 

「…………あぁ?…テメェも邪魔すんのかよ。俺の眠りを。」

 

 

 

「ひゃっひゃっ!!ぶつぶつ言ってンナぁ!?チビッちまったかなぁ〜ア?」

 

 

 

 

 

 

 

ナイフを目に移しながら、明らかに人相の変わった少年は、口角を上げて狂ったように嗤う。

 

 

真祖達が犯した失敗、それは血の記憶なるモノに垂らした一滴の危険物(キチガイの記憶)

 

 

 

第四真祖が()()()()()時、その言葉を口にして生き残った者は居ない。

 

 

 

 

 

 

「そろそろヨォ〜〜?死ィ〜〜ネ!!」

 

 

「……んだと?」

 

 

 

男が冷静であったのなら、攫ってきた少年のなんとも奇妙な様子に気づくことができたのかもしれない。

 

まるで、暴れたがっているかのように、少年の背後に踊る影は、月明かりの遮られたこの場所でさえ、黒くハッキリと写っていたのだから。

 

しかしながら、正気を手放した男にとって、ソレと目を合わせないことが、唯一の救いになったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺してみろよぉぉ!!!?俺は不死身の暁だぁア!!!!」

 

 

 

「…え?」

 

 

 

 

男は、振り抜いたナイフをいつものごとく引き抜いて、血を浴びようと考えていた。

 

しかし、唯の裏拳によって半身が消し飛ばされ、少年の気迫に色を付けるように一拍遅れて迫った雷光や衝撃波。

 

その男がナイフを突き刺した感触を実感することは無く、その後も彼が何かをその手に感じることは二度と無かったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて、平和な島から無理矢理に駆り出された一人の兵隊。

 

歩兵一人の命など軽い戦場において、生き残る為にただ全力で抗うだけ。

不死身と言われたそんな兵士は、真祖を殺す為の軍に連れられ、他の人間なら動けない傷を負いながらも、眷獣と真祖本人達へと最後まで襲い掛かった。

 

気まぐれで逃がされては、何度も何度も挑まされ、島から遠く離れた場所では、人質が既に雇い主の手にはいない事も分からず。

 

苦しくも青年の牙は後一歩、本物の不死身の存在には届かなかったが、そのヒトらしからぬ姿を見た真祖は、青年を気に入り、その存在を喰らった。

 

 

それが、真祖達に作られた、第四真祖の血の記憶にどう混ざったのかは分からない。

 

 

 

だが、実際の不死身の怪物が、不死身と呼ばれた兵士の生き残る為の強さを持ったらどうなるのか。

 

不死身同士の泥試合を経験した化け物達でさえ、そんな奴に関わりたくは無いと言うだろう

 

 

目を覚ましてから家に帰り、埃だらけなことを注意された少年の名前は、暁古城。

 

子供の頃からよく眠り、静かな場所が好きだった。

 

 

記憶も名前も既に無く、その存在すら不確かで、真祖をもって、不死身の化け物と呼ばれたナニカを宿す、極々普通の第四真祖である。

 

 

本人達でさえ、きっとそんな自覚など、無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

第2話 「先輩、眠ったら駄目です。」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

いつもフラッとどこかへ行ってしまう古城を心配して、第四真祖の監視役として遣わされた獅子王機関の剣巫たる姫柊雪菜、通称ユッキーは、任務を抜きにしてもなるべく古城の側に居ようとしていた。

 

 

そこに青春の1ページのような甘酸っぱい雰囲気はまぁ、無いと言って良いだろう。

 

時に妹の凪沙の様に、親しみを込めて、

 

時に心優しき猫好きの少女の様に、真心を込めて、

 

彼女自身も嫌いでは無い、心に生まれた謎の介護心と言うべきか母性と表現すべきか、自然と世話係のようになっていった。

 

 

その日も、連休に差し当たってテンションが上がったせいなのか、充分に睡眠が取れたことで活発化したせいなのかは不明だが、

 

 

『なんか行かなきゃならない気がするから、自然に囲まれた所に昼寝旅行してくる。』

 

 

とだけ、書き残して突如家を飛び出してきたのだ。そんな古城の気配を追って急いで駆け付ける影が2つ。

 

毎度お馴染みの苦労人コンビと化しているユッキーと矢瀬である。

 

普段の運動能力は皆無のくせに、そんな時だけ脚は第四真祖に恥じない動きをし、デフォルトで持っているステルス能力によって気配を消し、追跡を掻い潜りながら島の端、つまりは海に面した場所までやってきた。

 

そして数分遅れてそこへ、なんとか追いついてきた矢瀬とユッキーが到着。

 

 

海に飛び込もうとする古城となんとか冷静に会話をし、突然すぎることで島の外へ行く手続きと飛行機などの手段も無いため、それでも止まらない様子の古城の為に、矢瀬は泣く泣くコネを使って手配した小型のクルーザーを駆り出したのだった。

 

 

 

 

 

そんな経緯で、古城は現在とある島へと来ていた。

 

来たことは無いはずなのだが、どこか懐かしいような気がする、自然豊かなその島で、目的を果たすために。

 

 

「頼むぞ?マジで動くなよ?ほんの少しだけ連絡してくるだけだ。なんなら、ここで今寝ていても構わねえから、ほんの少しだけ大人しくしててくれよ?姫柊ちゃんもいるから問題ねえと思うが…。フリじゃねえからな!?」

 

 

 

そんなフラグを建てて、携帯の電波では届かないために、船に付いている衛星を利用した無線機で、現状を伝えに行った矢瀬の期待を見事に裏切るように、砂浜で昼寝を始めた古城は、木々が生い茂る森の中から突然現れた白銀の狼に連れさらわれて行った。

 

敵意も無く、まるでじゃれつくように古城の首根っこを咥えていった狼に、流石のユッキーも対応が遅れ、古城に式神を付ける事が精一杯だった。

 

彼女が霊的素質を探る能力に長けているが故に、未だに豊かな自然に溶け込むように衰えない神秘の島で育った生物達は、その気配が霞の様に見分けられない。

襲いかかられたのならば、自然体で迎撃できたであろうが、相手は嬉しそうに戯れているだけであり、古城もグデっとしたままなすがままに連れさらわれていったのだから、仕方ないと言えるだろう。

 

 

「矢瀬先p…!」

 

 

助力を求めようと後ろを振り向くと、

 

「うわっ!?なんだテメーら!!?おい!多すぎだろ!?」

 

 

何故か船の上の矢瀬へと飛びかかってじゃれつくイルカやら気候的にあり得ない筈のアザラシやらが纏わり付いている様子を見て、姫柊雪菜は、単身、古城を追い掛けて行った。

 

 

 

 

「待っててください!先輩!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その島は、かつてのように、寒暖の差が激しく、そして運の無いことに、丁度今は季節の変わり目であった。

 

陽気な日差し、海の音と潮の香り、すぐ後ろには適度に広がる海側の森の気配。

人の生活圏内での喧騒とは違い、耳に優しい程度の生命の音。

 

目的でもあった静かな場所での優雅に昼寝を楽しんでいた古城は、突然変わり始めた天候と風に少しだけ嫌な予感を感じていた。

 

 

何故か友好的な狼に連れられ、運ばれてながら移り変わる景色に「おお〜〜…絶景じゃん…」などと、口にしていたが、どんどん進むに連れて、気温が下がり始める。

 

視界の端に白い粒が見え始めたと思うと、狼の移動速度が上がる。

 

そして、あっという間に本来その毛皮の色にふさわしい白銀の世界へと景色は見事に変わっていた。

 

薄着にはなかなか辛い気温だが、開けた場所に来ると降ろされ、周りを嬉しそうにぐるぐると廻る狼の様子に和む。

 

だが、寒いものは寒く、丁度座っている切り株の上には雪は無いが、床一面、目に広がる景色は真っ白である。

 

 

「……あぁ。寒い……ねむぃ…」

 

 

そして、眠気を感じてきたところでふと、思い至る。今寝たら死ぬのでは?と。

 

 

いや、自分の正体を思い出してみろと言いたいが、残念ながら必死に向かってきているユッキーがそこへ到着するまでまだ時間がかかる。

 

 

故に、古城は生存本能に従って必死に身体を震わせてながら、やはり普通に眠気に負けて、意識をカクンと落とした。

 

 

「……さみぃ…死ぬ。ぁぁ…あああ……うォああああああ!!!」

 

 

死にたくない。ただその一心に従い、彼は叫ぶ。呼応するように、狼が遠吠えを上げる姿はとてもも映えた。

 

 

 

 

 

 

「…し、死んでたまるか!!俺は不死身の暁だぁああぁああぁああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

節々が固まり始めた身体を必死に動かし、古城は、ただひたすらに生き残るべく行動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くして、身につけていたサバイバル知識を総動員しながら古城の元へと辿り着いた姫柊雪菜は、その光景を見て、ただただ後悔した。

 

 

 

 

一時でも、古城から離れてしまった事実に関して…?

 

 

 

否、手元に撮影機材を持ってきていなかったことにである。

 

 

 

 

少しだけ斜面となっている場所にある切り株の下に空いた、少しだけ大きめの穴に身を寄せ合うようにして、動物達が暖かそうに眠っていた。

 

古城の背もたれになるように、本来の凶暴さを全く感じさせない大きなヒグマが丸まり、その上等な毛皮のソファに身を預ける古城。

膝の上には狼が顎を乗せ、古城の腕の中にはすっぽりと収まるように子熊が鼻提灯を膨らませ、後からあつまってきたのか、大きな暖炉を囲むようにリスやネズミ、何処から顔を出したのか、半分埋まったままの土竜や飛び出た木の根に捕まるように目を閉じている梟など。

 

 

そこだけ童話から切り取られたような景色に、友人の影響で猫が好きになった少女は、ただ立ち尽くし、起こさないようにゆっくりとその暖かそうな毛玉の近くへと寄り添っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えへへ。暖かいです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、雪が止むまでの間そこには穏やかな寝息だけが聞こえ、その柔らかな音の様子から2名の無事を船を動かしながら確認していた矢瀬は、じゃれつく海南動物達に癒されながら、偶の静寂を味わったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





アシリパさん「おい、暁!寝るな!死ぬぞ!?………いや待て!そこはヒグマの巣だ!!!……え、冬眠!?」

古「…zzz」

アシリパさん「アイヌの教えが通じなさすぎてツライ…」




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眠い章
あなたはだんだん眠くなる


思いつきです。

古城くん視点で書いたり、周りの人視点で書いたりしながら基本まとまらなくて消してます。

くだらないけど、クスッと自分が笑えるようなネタを思い返す用みたいなものなので、誰か書いてくれてもええんやで?


前書きですら日本語がおかしくて失礼しました!!!


ここは海に浮かぶ島、そして魔族と人が共に存在する魔族特区である。

 

ここには、様々な人や魔族や機関や宗教などなど、複雑な事情が絡み合っている。

 

その中でも特に重要な事件に関わった少年も、この島に住んでいる。

 

本来ならば、第4真祖になったその少年 暁 古城 は、普段はクールなスポーツマンであり、割とピンチで死にかけながらも時に熱い一面を見せ、目の前に助けが必要な状況の何かがあったのなら悪態をつきながらも助けようとする優しき心の持ち主であった。

 

そう、本来であれば、彼は監視役の降魔師が来てから、様々な事件に巻き込まれていく筈であり、本人が望まずとも事件や策略が悪意を伴って向こうからやってくる運命の下にいた。

 

そして、彼の性格上関わってしまった事件から目をそらしたままでいることなどありえない。

 

 

それは、何故なのか?

 

 

理由としたらただ単純に、()()()()()()()()()()だ。

 

 

 

 

しかし、この彼は吸血鬼特有の日光に弱い、朝に弱いという、体質となってから、すぐにあることに気づいてしまった。

 

 

それは、本来の彼も持っていた性質の1つ。否、人間であれば、そしてそれ以外の生き物であろうと少なからず持っているもの。

 

 

朝のまどろみ。倦怠感。気だるさ。慢性的な五月病。

 

 

言い方は違えど、それは睡眠という一点で交わる物達。数多くの人々の救いであり時に敵であり、社会問題の一つにも取り上げられることもある。起きなければならない。しかし、ほんのあと5分。照りつける太陽がカーテンにより遮られ、丁度良い光となって我々を2度目の睡眠へと誘うもの。

 

しかし、それは、そよ風を浴びながら爽やかな目覚めへと繋げることでその日を快適な一日へと変えることもできる魔法のようなもの。

 

 

それを毎日のように最悪な体調で迎えることで彼の中に生まれた一つの考え方。

 

大きく育つことはなかった筈であるそれは、第4真祖の彼女から受け継がれる際に見た記憶に混ざっていたノイズの一部。

 

 

睡眠をこよなく愛する者が掲げる称号。

 

_____それすなわち、睡眠至高主義

 

 

 

ただ寝たいが為だけか?と言われれば、それは半分正解であるが、もう半分は人により全く違う。本人であってもその日の気分や体調によって異なる。

 

 

昼下がりの教室で、喧騒から離れてカーテンの隙間から入る木漏れ日を浴びながら決めた時間だけ昼寝をする為だけに、他生徒の用事を全て把握しきってだれにも邪魔されないで微睡みを享受する一生徒のような眠りのための心構え。

 

 

 

彼の通う彩海学園にも、そんな人物が居たり居なかったりする訳だが、それはまた別の機会としよう。

 

 

 

これは、ほんの数ヶ月で変わり果ててしまった主人公?のような何かがひたすら気怠く、ゆるく、時に眠ったまま、彼を取り巻く環境や事件を解決したりしなかったりするお話である!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたいきなり何言ってんの?高性能AIの癖してバグってんじゃないわよ」

 

 

「そりゃねえぜ、嬢ちゃん。せっかくお前さんが気になって仕方のない想い人のことを面白おかしく脚色して語ってやろうってのによぉ。」

 

 

「アホなこと言ってないで早くサポートしなさいよ!お、想い人なんてそ、そんな……。大体にして古城がそんなだら〜っとした態度取る訳ないじゃない……………確かに朝は弱いみたいだけど………。」

 

 

 

「へいへい、顔真っ赤にしちまって。ツンデレ乙ってか?せいぜいヒデーことにならねーように支えてやるこったな。」

 

 

 

その後、キーボードを叩いていた少女の手が画面を叩くそれに変わったが、AIは当然のごとく物理的なダメージを受けないので、いつもならウイルスでも作って送っていたであろう少女のテンパり具合にニヤニヤと笑っていただけであったという。

 

 

 

 




主人公空気だったどころか一言も喋らせらんなかったので、ダイジェスト?


古「行くぞ〜〜ライオン丸…れぐるす・あうるむー…はぁ…眠い……。」

神父「ばんなそかなぁあああああああ!」






ショタ古「ししょー。ライオンさんのことモフってていいから、ししょーのいるところに連れてって欲しいんだ………。眠ってるといつの間にか周りに息を荒くしたお姉ちゃん達が居て困るんだよ……。」

那「何故それを知っている!?それに私がいる場所だと?お前は封印されたいのか?馬鹿を言うな!」

ショタ古「だれにも邪魔されずぐっすりと眠れるのなら、真祖だって殺してみせる………。永遠に一人で封印される??静かな場所で、夢を見ているのが現実だって?素晴らしいじゃないか!!!」

黒魔女さん「え?…え?」






雪「先輩!!先輩!!!起きてください!!!」
古「zzz……zzz……あと…5ふん…。」

浅「古代の兵器がなんだってのよ!5分で良いわ……。古城が起きる前に、そんなもの私がぶっ壊してやるわ!!」





ラ「私が王族ですわー。うちの妹かわいいですわー。」
パイロット「襲撃だと!?」
テロリスト「ふははは。もう少しで………何だと!?」

古「トマトジュース飲んでたら出てきた剣が飛行機こわしちゃったけど、まあいっか…寝よ…」






眼鏡「うちの娘天使ィィィィィィ!」
妹「古城くん!」
妹2「お兄さん!逃げて!」

古「お馬さん…ライオンさん…最近暑くて寝づらい…。浮き輪で浮いて寝たい…。◯メルゴン!君に決めた!」

眼鏡「次元喰いだとおおおお?イワァァァァァァァク」





幼「ねえ、眠そうなお兄ちゃん…。私といたら食べられちゃうよ?」

古「……眷属解放。あのでっかい蛇うるさい…。やっちゃえ…。」

蛇「え、出落ちとか…ヘビィィィィィ!」



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古城さんの主な1日

設定?なにそれ食えんの?


もう、どうにでもなーれ。

のAAを頭に思い浮かべながら読んで頂けたら幸いです。
作者が酔った時に勢いのまま書いたりしております。誠に申し訳ございません。

若干キャラ崩壊してますが、ご勘弁ください。






高校生、暁古城にとって朝はとても辛いものである。

 

魘されながら陽の光を遮るように布団を被ろうとした古城の手は、既にたたまれてしまっていた掛け布団の合った位置をそのまま通過する。

2台の鳴り響く目覚ましと開け放たれたカーテンを見る限り、妹は既に起こしに来た後のようである。

 

 

「朝…………なんて…………滅びればいいのに………」

 

 

ある事情で吸血鬼となってしまった彼にとって、太陽の光と朝という時間はとても眠気が増している時間である。そのため、5割ほど本気で呪詛の言葉を吐き出した。

 

 

 

「アホな事言ってないで早く起きろー。遅刻すんぞ古城。」

 

 

 

そこで、友人である矢瀬 基樹が呆れたように言う。何故朝から古城の部屋に彼がいるのかといえば、彼のクラスでの役職だからとも言える。

 

古城が朝起きられず、妹の凪沙からも相談を受けたことでいつからだったか、肩を貸し、徐々にもたれかかり、やがては引き摺る形で古城をクラスまで運搬し始めた。

 

古城がダラけているのは、というよりほぼ寝ているのは朝だけではなく、日中はもちろん、本来活発になるはずの夜もである。つまり、一日中であるわけだが、そんなことをしていれば勿論のこと、教師陣からは目をつけられ、クラスメイトも困惑する。

 

遅刻と居眠り、早退(これは違う理由)を繰り返せば、当然成績も危うく、

それを見かねた彼、矢瀬ともう一人のクラスメイト兼友人 藍羽 浅葱が何かと世話を焼くようになった。

 

それは、なんやかんやで吸血鬼の体質となってしまう前からのことであるが、担任や他のクラスメイト達はこれ幸いとほぼ土下座に近い形で古城の世話係を頼み込んだ。担任にまで頭を下げられた二人は苦笑いのまま引き受けた。

 

 

 

「おはよう、矢瀬。いつもごめんな……迷惑かけt…zzz…」

 

「だから、寝るなっつの!ほら、凪沙ちゃん待ってっから早く行くぞ。」

 

「うー…」

 

話しながら寝かける古城を引きずったまま部屋を出てリビングへ行くと、古城の妹 暁 凪沙が料理を作り終えたところだった。

 

 

「あ、矢瀬さん!古城くんのこと連れてきてくれてありがとうございます。ほら、古城くんしっかりして!早く食べて行かないとまた遅刻しちゃうよ!そうそう!今日は目玉焼き焼こうと思って卵を割ったら双子だったんだよ!思わず写真撮って◯イッターに挙げちゃったよ〜。そうだ!矢瀬さんもコーヒーを飲んでいってもらえませんか?一昨日買ったドリップが結構美味しいんですよ。古城くんは甘党だからガムシロップ3個入れるんですけど矢瀬さんはブラックで飲む派ですか?それともミルクだけ?ちなみち、私は両方1つずつ入れる派です!」

 

 

「お、おう。相変わらずのマシンガントークだな…、有り難く貰うよ。何もいれなくていいぜ。」

 

「了解です!ちょっと待っててください!古城くんは顔洗って来てね!」

 

 

「朝から…元気だな……凪沙。」

 

 

若干、圧倒されて引き気味に答える矢瀬と寝ぼけ眼でノソノソと行動する古城。顔を洗ってもフラフラとしている古城に対して、矢瀬はまるで執事のようにタオルを渡し、自然な流れで寝間着のままの古城の着替えを手伝う。

 

普段古城は、制服に日差しよけのパーカーという格好をしている。万歳の格好の古城から上着を剥ぎ取り制服とパーカーを着せ、紐を緩めたことで落ちたズボンを回収し上着と共にカゴへ。そして、履きかけで止まりかけているズボンを引き上げてベルトを締めてやったところで、矢瀬はふと思う。

 

(嫌な慣れだなぁ…(泣)何やってんだ俺……何で朝から野郎の着替え手伝ってんだろ…)

 

 

第三者からしたら割と本気で出来ているのかと疑われることすらなくそっと引かれるレベルの光景である。

 

 

「お待たせしました!さあさあ、古城くんは早く食べて!矢瀬さんもどうぞ!着替えまで手伝ってもらってどうすんの!全く古城くんは…」

 

(凪沙ちゃんマジ天使)

 

疎遠気味の彼女ならば、無言で写真を撮られ、ウス=異本のネタにされるであろうし、天才ハッカーの友人ならば恐らく戦車がトレードマークの同僚の餌として動画を撮ろうとするであろう。彼のクラスメイトの手遅れな一部ならば、その場で鼻血を出している。その為、ノーマルな目の前の少女はとても眩しく見えた。

 

 

ロリっ子な英語教師?彼女の趣味に触れてはいけない。

 

 

「どう?今日はうまく出来た?」

 

「…美味い。」

 

「ちょっと!古城くんそれラップ剥がしてから食べなよ」

 

 

「はは……これが最強の第4真祖ねぇ………。信じらんねえよなぁ。」

 

 

目の前で未だに寝ぼけている古城を見て呆れたように矢瀬はつぶやく。

 

 

 

 

「?何か言いました?矢瀬さん」

 

「いんや、何でもないさ。確かにこのコーヒー美味いな。」

 

 

 

 

明るく元気な凪沙と寝ぼけたままの古城。矢瀬か浅葱のどちらか、または二人ともがそこに加わり登校のサポートをする。

 

もはや見慣れた朝の光景となった食卓から古城の1日はスタートする。

 

 

 

 

 

 

 

________________________

 

 

 

 

 

ーーーー電車内

 

 

 

(キャー!やっぱりあの2人!)ヒソヒソ

 

(世話焼き系×銀髪誘い受けよ!)ヒソヒソ

 

 

(勘弁してくれよ…)

 

 

 

 

 

________________

 

 

 

 

 

 

引きずられながら運ばれる古城と矢瀬が教室に着くと、浅葱や遠巻きに見るクラスメイト以外の稀有な人物達が話し掛けてくる。

 

 

「おはよ、古城。今日も眠そうね。基樹もお疲れ様。」

 

「矢瀬くんいつもありがとうね。」

 

「おう。おはようさん、浅葱と委員長。まぁ、慣れたもんだしな。」

 

「おはよぅ……」

 

「だから委員長じゃないっての。もう、2人して。」

 

「確かに委員長っぽいわよねー。委員長よりも。」

 

「浅葱まで!」

 

 

委員長よりも委員長然とした見た目と態度から委員長と呼ばれている彼女は委員長ではないが、委員長と呼ばれていたりする。それをこのクラスの委員長は気にしていたりするが、委員長の独白は割愛する。

 

「おーい、早く席につけー。矢瀬、暁を席まで頼むぞー。」

 

「「「はーい。」」」

 

「うぃーす。」

 

 

朝のじゃれ合いもそこそこにHRが始まり、古城のクラスの1日が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

ーー1限目 国語

 

 

「じゃあ、次のページを…暁。音読してくれー。」

 

 

「はい……トムは、彼の……クラスメイトに対して………zzz」

 

 

「読みながら寝るな!!!」

 

 

 

 

 

ーー二限目 数学

 

 

 

「次の問題、おい、暁。寝てるからには解けてるんだろうなー?見せてみろ」

 

 

「zzz…(( _ _ ))..zzzZZすぴー」

 

 

「お、正解。頭は良いんだけどなぁ…」

 

 

(((今、謎の中等部制服のの女子が窓から出て行かなかったか!?)))

 

 

(おい、何で筆跡まで一緒なんだよ……そしてどっから入ってきた…)

 

 

 

ーー三限目 体育 ドッヂボール

 

 

「くらえ暁ィ!」

 

「( ˘ω˘ )スヤァ…」サッ

 

「寝たまま避けるな!」

 

 

 

 

(*体操服への着替え等は矢瀬さんが頑張りました。)

 

 

 

 

ーー四限目 英語

 

 

スパァァァァァァァァァァァン!!!!!

 

 

「おい、起きろ暁古城。」

 

 

「痛いっす…(T ^ T)那月先生」

 

 

「私の授業で寝とるからだ馬鹿者」

 

 

「うわっ、痛そ。鉄製の扇子のフレーム曲がってるし。」

 

 

 

 

 

 

ーー昼休み

 

 

 

「はい、あーん」

 

 

「……うまひ。(_ _).。o」mgmg

 

 

「ンフフ〜。」

 

 

 

「「頼む、矢瀬……どうにかしてくれ。口の中から砂糖が止まらん。」」

 

 

「無理」

 

 

 

 

 

 

ーー五、六限目 家庭科 調理実習

 

 

「…もう食べられない。」

 

 

「おい!浅葱!なんでクレープ焼くのにフランベみてーに炎あがってんだ!?!?ストップ!ストップ!!今だけはマジで止まれ!見ろ、古城に餌付けし過ぎたせいで材料ほぼなくなってんじゃねーか!?」

 

 

 

((((''あの班にだけは近づきたくない''))))

 

 

 

 

 

 

 

________________

 

 

 

 

「んで、放課後になった訳だが、おい、古城。今日は流石に寝すぎだろ。どうした?」

 

 

「…あー、最近ストーカーっぽい子に……追いかけられる夢ばっかり見たせいで眠りが浅いんだ」

 

 

「ストーカー?…それ、もしかして中等部の制服着てる短髪の子の夢だったりしねーか?」

 

 

「あー…そうかもしれん。まぁ、でもただの夢だしな。部屋の中にいても偶に視線とかも感じたりするんだけど気のせいなんだろうな。俺のことなんて見たってつまんないだけだろうし。これじゃ、ただの、自意識過剰じゃん。気をつけよぅ。ちょっと神経質なんかなー。」

 

 

「oh…マジか。お前も大変だなぁ…(泣)」

 

 

 

 

悲しいことに、裏事情で第4真祖の真の監視者という立場にいる矢瀬は、自分の能力で貼った結界内に、しかも教室にかなり近い位置に複数人居る人物達に思い当たる節があった。

 

 

 

(俺の音響結界内に居るのに集中しないと気配を逃しそうになるとかほんと何なんだよ……こえーよ。えーと、中等部の2人と那月ちゃんか?仕事しろよ………。それに、浅葱の端末にチラッと見えたのが古城の部屋でないことを祈りつつ、よく見ると古城の制服に…盗聴器かこれ。)

 

 

 

____触らぬ神に祟り無し。

 

 

 

(すまん、古城。)

 

 

 

内心泣きたくなったところで、常識人なAIから矢瀬の携帯にメールが届く。

 

 

 

#######################

 

ーーーーfrom モグワイ

 

 

助けてくれ。嬢ちゃんの暴走がとまらn

 

眠そうな小僧、すまねぇ……すまねぇ………

 

 

#######################

 

 

 

 

 

(すまねえ……すまねぇ……。モグワイ、古城…!)

 

 

 

 

信用ならない筈のAIは矢瀬と共に貴重な常識枠であり、進んでプライベートを暴くような存在ではなかった筈であったが、古城の顔を眺めながらも後ろ手に隠した端末を凄まじい指さばきで操作する金髪の悪魔には逆らえないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

「と、とりあえず帰ろうぜ古城。どっか寄ってくか?少しは気分転換すれば夜も眠れるかもしれねーしよ。」

 

 

「そうするか…いや、やっぱいいや。食べ過ぎだし…歩いて真っ直ぐ帰ろう。」

 

 

気温も下がり、十分眠ったおかげか、朝よりもクマのとれた古城は朝に比べるといささか活発に動く。

 

本来彼は日中寝ている分、夜は活発な筈なのだが、この友人は何故か夜はかなり早く眠りにつく。

 

つまり、日が沈む夕方にしかほぼ行動して居ないことになるのだが、眠りすぎのせいで病気になったりするような気配も見られないため謎は深まる。

 

 

「放課後なら多少は動けるんだよなぁ。浅葱は?帰るか?」

 

 

「私はこのままバイト行くわ。じゃあね。古城、基樹」

 

 

「了解っと。気をつけてなー。」

 

「またな〜。」

 

 

 

そして、帰路につく為歩き始める2人は、更に増えた追跡者を引き連れて校舎を後にする。

 

 

((何故?帰ったのは2人の筈なのに気配がたくさん減った気が))

 

 

 

そんな放課後のクラスの風景もまたいつもの一日であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

 

 

その後、特に寄り道もせず談笑しながら真っ直ぐに帰った2人は古城の自宅前で別れた。

 

 

 

「そんじゃ、またな古城。あんだけ寝といて寝れるかは分からんが、早めに寝ろよー。明日起きれるようにな。」

 

 

「おー。送ってくれてあんがとなー。いくらでも寝れるから大丈夫だー。」

 

 

 

矢瀬を見送った後、古城はマンションを登り自室へと戻る。

 

 

 

「あー…階段長い……疲れた。ただいまー。」

 

 

「おかえりー。我が息子」

 

 

 

自宅であるマンションの一室へと戻り、くつろぎ始めたところで職場から戻ってきたのであろう母 暁 深森が抱きついてくる。

 

 

「あちぃから離れてくれ…」

 

「触診してるからちょいと待ってなさい。」

 

 

持ち前の接触感応能力により、古城を診る深森。本来彼女の能力は、触れることで対象の身体情報や性質などを読み解くものだが、彼女が現在触れることで確認しているのは別のもの。近日中に古城の体表に触れてきた人物達の情報を読み解く。

 

 

(あー…また増えてんのねー、うちの子大変だわー。)

 

「ま、寝不足くらいかな。気をつけなさい。」

 

 

「あんがとなーお袋。気をつけるわ。でも、今日はなんか疲れたからもう寝るわ。凪沙によろしく。」

 

 

「シャワーぐらい浴びときなさいな。(疲れた…か。)」

 

 

「あいよー。」

 

 

その後シャワー浴びて自室に戻り直ぐに眠りについた古城。

 

 

 

そんな風に朝から大抵眠っているのが大概のまま彼の一日は過ぎていき、終わる……。夜中に彼の部屋の大量のセキュリティに何故か引っかからずに侵入者がいたりするが、知らないものは知らない。古城の意識あるうちの1日はこうして過ぎていく。

 

母と友人の心配も虚しく、彼の周りには常に多くの異常者が付いて回っている。

 

しかし、この島においてはある意味ではそんな非日常もまた、通常の日常の一ページなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「おやすみなさい。古城(先輩)(お兄さん)♪」」」」」

 

 




なんでこうなるの?

まずはまともな文章を書け!みたいなツッコミは自分自身でしてますが、酔っ払いには意味が無い。素面でもなんですけどね。


追記 ご指摘いただきましたので矢瀬さんの名前を直しました。ありがとうございます!




没ネタも何も無いけれど、書いてる途中で思いついたもの。



放課後の別バージョン


「(略)ストーカーっぽい子の夢で最近眠りが浅いんだ。」

「ストーカーですって!?大丈夫なの古城!いいえ、大丈夫よ。待ってなさい、古城に寄り付くストーカーなんて直ぐに見つけ出して取っ捕まえてあげるわ!」


(いや、お前もだよ…自覚ねえのか全員?)



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気だるげなクラスメイトの古城くん。1

田中くんから受け継がれる微睡みの意思!ってわけでもないんですが、中の人的に古城さんが世話を焼く方ではなかろうか?とふと思ったので別枠ネタとして書いてみることにしました。

今回は普通にクラスメイトのモブくんの視点。影山さんではないですよ?


 

うちのクラスの暁 古城くんは良く寝ている。

 

 

それは、授業中であろうとも休み時間であろうとも変わらない。

 

まず、朝はとても弱いようなので、友人の矢瀬くんが彼を抱えて連れてきている。身長は古城くんの方が大きいのに何故か矢瀬くんは彼を上手く背負ったり脇に抱えられている。まるで、風で少し浮かんでる様な…いや、気のせいだろう。

 

 

この島は魔族と人間が共存している場所、魔族特区なのだから、多少の不思議なことは日常の1ページに溶け込んでいくものだ。

 

 

思い返してみると、僕は古城くんとは中学から同じだ。矢瀬くんや藍葉さんは高校からのクラスメイトだったりするけれど、3人ともクラスには上手く馴染みつつも少し遠巻きに見られているという謎の立ち位置にいるので、そこまで親しくはない。

 

 

かくいう僕も偶に挨拶をする程度の関係だ。おっと、モブである僕のことはさておき、古城くんはいったいいつからあんな風に眠そうな感じになったのだろうか……。

 

 

中学…?バスケ部期待の選手だったみたい。一時期学校を休んだり、事件があって巻き込まれた〜なんてことを小耳に挟んだりしたけれど、活発的な印象だったなぁ

 

高校………高校?あれ?去年は普通に……なんか寝てたような……あれ?記憶が曖昧だ。

 

なら、今年か?うん。今年は新学期が始まってからもう夏真っ盛りな気温だけれど、今年は古城くん寝てたねー。それはもう寝ていたねー。

 

 

外見的な問題はさておき、かなり厳しいことで有名な南宮先生の英語のテスト中にも寝てたせいで呼び出された補修の間も寝ていたせいで、叩き起こされた時の衝撃で再度眠りに落ちてたなー。

 

 

 

 

そんな彼は今日も寝ているんだけれど、当然起きてる時間が無いわけではない。選択科目の家庭科では結構張り切って作ったりしていた。どうやら甘い物好きらしい。

 

 

そして、生徒にとっては嬉しい昼の休み時間では、今でこそクラスメイトはブラックコーヒーが必須な風景が見られるけれど、少し前、古城くんが昼食を忘れたことがあった。

 

規模は大きく、充実した学食を利用する生徒が多いうちの学校だけれど、中等部もあることでわかる通りかなり混み合う時間帯がある。そのため、購買を利用するか弁当を持参する生徒もいるのだけれど、その日古城くんは運の悪いことに財布も忘れてしまったらしかった。

 

世話係という共通認識の矢瀬くんは用事があって生徒会室へ。藍葉さんはその日は用事で欠席していた。その十数分後に古城くんの妹さんが、何故か欠席しているはずの藍葉さんからの連絡を受けてパンを買って持ってきてくれていた。

 

その十数分間、彼はお腹を鳴らしながら席でうな垂れていたので、見かねた委員長(クラス委員長は別にいる)が救援を出そうとしたのだけれど、古城くんはやんわりと断った。

 

 

それでも、余りに腹の虫は正直者らしかったので委員長は彼に理由を聞いてみた。すると、その時初めて知ったことだけれど、彼には矜持があるらしく、それを聞いて以来クラスメイトは彼に対して空けていたの距離を別の要因が現れるまでの間戻していた。

 

 

彼の語った微睡みの法則(というらしい。)にはかなり力があって、それはその日の一食を取りにいくよりも、あの日のそよ風と適度な気温、程々な喧騒、眩しすぎない日光という好条件の中、ウトウトとするその微睡みを楽しむ方が良い…と、同じことを妹さんにも語ってパンを口にねじ込まれていた。

 

__曰く、栄養くらいはきちんと取りなさい!

 

 

とても正論だった。

 

 

 

 

 

 

そんな彼は今年に入ってかなり眠気が増したようだけれど、彼の語った人生観の達観具合は、とても長い年月を感じた。

 

 

 

もう直ぐで夏休みなのだけれど、彼は学校行事や補習でもそうであったように、休日も似たような感じらしい。

 

これは、今学期に始まったことではないのだけれど、運が悪い。何かしら事件などに巻き込まれやすいのだろうか。友人には恵まれたようなのだけれど、彼の周りには少し変わった人が集まりやすい。類友というやつだろうか。

 

宗教勧誘にあっさりと引っかかってしまうイメージが湧いて少し心配だ。駅前のティッシュ配りや勧誘を見てわかるように押しに弱いタイプのようだ。(実際はガードが固い。主に藍葉さんによる。)

 

 

変わっているけれど、全員に遅刻と欠席の心配をされ、担任含めて頭を抱えて、矢瀬くんや藍葉さんに頼み込んだように、なんだかんだで親しみの持てる人物である。

 

押し付けてるのはどうなのだって?適材適所ってやつさ。

矢瀬くんはともかく、藍葉さんはまあ、その、一目で分かる。

髪を染めてから印象も変わり、積極的になった彼女のことは、クラス一同暖かい目で見守ることにしていたのだけれど、古城くんは何故かあまり考えたくは無いのだけれど、矢瀬くんが本命という噂が…。

 

 

 

ーー異様に似合うエプロンを着けて仕事帰りの矢瀬くんを出迎える古城くん。

 

 

⁇違和感が無いぞ⁇

 

 

まあ冗談だろうと思うけれど、無粋な一部による問いに対しての彼の返答もそんな噂に拍車をかけたのだろう。

 

 

____今は居ないけど、俺を養ってくれる人を好きになりそうだ。

 

 

 

何人もいそうな気がするから恐ろしい。あー。きっと、今寒気が走ったのは僕だけじゃ無いんだろうなー。

 

 

しかし、当の本人は何も考えていないみたいだけれど。

 

眠っている時の安らかな寝顔を見ると、きっと怒る気にもならないからなのだろうと思う。小動物のような、ほにゃっとした寝顔は反則だ。高校生男子なのに…。

 

2頭身くらいのフード付き古城くんの幻なんて見えない…。

 

 

 

けれど、最近では浮いていた彼もクラスにすっかりと馴染み、そしてまた近寄り難い要因が増えたりしている。

 

古城くんに関わる人物についてはまた今度考察することにしよう。

 

 

 

 

 

 




無駄に長い?そうでもないですかね?

夜中に飲んで書くと寝落ちしそうになりまs…zzz


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古城さんの日記1 (幼少期)

またも試し書き。時系列とかキニシナーイ。

4年前事件に巻き込まれて、3ヶ月前に宴…つまり、12歳⁇
つまり、速攻魔法発動 早すぎた厨二病!ってことだな?


今回あとがきに補足っぽく書きました。



◯ 月 なかなか暑い 日

 

妹に押し付けられたので日記を書くことにした。

この日記、手帳型なのに謎技術で音声入力もできるらしい。魔法陣っぽいのが浮かんでたのでめっちゃテンション上がる。あまり乗り気ではなかったけどこれなら続けられそうだ。

 

今日もこの島は暑い。けど、俺は日光が好きだ。暖かい日差しを浴びるのも、干した布団が乾くとその日は気分良く眠れるところも最高だぜ。

 

 

 

P.S. 親父に呼び出されたっぽいので凪沙と向かう羽目になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

◯ 月 絃神島より涼しいZE☆ 日

 

 

飛行機酔いが激しい………。吐きそうだ…

 

 

 

 

 

 

 

◯ 月 スリ多くね?日

 

 

昨日は酔いが酷かったらあまり書かなかった。

 

それより、空港から五度もも引ったくりが来たんだが。多すぎねーか?凪沙が噴水とかを見かける度に写真撮ろうっつーからカメラを構える度に襲ってきやがって、まったく…。

そんなに狙いやすそうに見えるかね?

バスケで鍛えたキープ力で、「フッ残像だ」ごっこ出来てたから退屈はしなかったが、そろそろ面倒だ。

 

そもそも2回目以降の奴らは重そうな服装で来るから悪いんじゃねーのか?と思ったね。小学生にかわされるとは情けないぜ。

 

とりあえず、一旦親父達を探す前に落ち着きたいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯ 月 遺跡探検ってテンション上がるよな 日

 

 

クソ親父との合流からはハプニングの連続だった。

凪沙は結構力の強い巫女っぽいことが出来るらしいから呼ばれたみたいなんだが、楽しみにしてた遺跡探索を邪魔にしに来た物騒な連中に絡まれた。

マシンガンなんて本当に持ち出すんだなぁ…。いきなりブッパしてくるとは、地元の自然愛護団体ってやつだな!

それとも親父がそんなに恨まれてんのか?

同行した貴族っぽい美人なお姉さん(おばさんっつったらスゲ〜怒られた)とも仲良かったみたいだし。

凪沙がお袋に報告するだろーから、また怒られるな!!

 

フハハハハ!俺には偉大な◯サン先生から教わった暗殺者ダンスがある!下手な鉄砲など当たらんのだよ!他愛なし!他愛ナシィィ!!

 

 

……親父と凪沙やオネーサン、ついでに相手の人達にもドン引きされたが、気にしないことにする。

 

 

ちくしょう、若干服が破けちまったぜ……( ;∀;)

やはりまだ修行が足らんな。

 

 

 

そんなことより、今から凪沙が霊圧を感知したっぽいので、洞窟の中見て来るぜー。

イィィィィィィィヤッッホオオオオオオ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大分はしゃいでしまったが、遺跡の奥には金髪っ子が眠っていただけだった。

近づいた時に、守護霊が襲いかかってきたけど、俺のソルトスプラッシュエクストリームアタックと凪沙の除霊攻撃のコンボには敵わなかったようだ。

 

金髪っ子は光とともに消えたのできっと尸魂界に帰ったのだろう。こんな暗い場所にいるよりも成仏した方が良い。

 

 

今日は穏やかに眠れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

◯ 月 やっぱ飛行機無理ィィィ 日

 

 

時差ボケと吐き気がひどい………

 

 

 

 

 

 

 

◯ 月 旅行って終わった頃になんか起こるよな 日

 

 

少し日が空いたぞよ…。

なんだかんだで俺も気を張ってたらしい。眠りすぎたせいか記憶が若干あやふやだ。

凪沙もあの後疲れて眠ってしまい、次の日も大分眠っていた。一度起きた後もぼーっとしていたので、親父の知り合いの医者に見てもらったんだが極度の疲れだろうと言っていた。

 

洞窟が崩落した時にオネーサンとははぐれてしまい心配だったが、後から合流した黒服のおっちゃん達に任せた。俺たちに出来ることはもう無い。歯がゆかったが、あのオネーサンは強かったし、おっちゃん達は良い人達だった。きっと大丈夫だと思う。

 

あのクソオヤジはその後お袋からの電話に青ざめた顔して消えたので、凪沙を背負って帰ってきた。今はお袋に念の為診てもらっている。早く元気になってほしい。

ついでに、俺もお袋が感応能力?とやらで診察してくれたんだが、変なことを言ってた。骨に違和感あるとか。カルシウムなら足りてると思うんだが……はて?骨折した覚えもないし。

 

 

まさか、俺にも血継限界が!?

 

 

 

 

 

 

 

追記 さわらびの舞を練習していたが無理だった。むしろ、冷めた目がとても辛かった。

 

 

 

 

 

 

 

△月 月が変わった 日

 

 

 

 

【悲報】うちの妹がグレた

 

 

 

お、落ち着けぇ、俺。だ、大丈夫、大丈夫だ。まだ、間に合うかもしれん。先ずは落ち着いて話を聞かねばばばば。

 

 

話を聞く前に俺が落ち着かねば…落ち着けェェ!!! 《バキッ》

 

よ、よし。ちょっと強く殴りすぎたせいで涙目だが、落ち着いた。

 

 

◯ィロ・フィナーレ!される前に考え直すように兄としてここは間違えられん。

 

 

整理しよう。

 

 

珍しくお袋も帰って来た後、目を覚ました凪沙と一緒に夕飯を作って食べた。そして雑談をして、普通に眠った。

 

ふむ。おかしなことはない。

 

それなのに、今朝起きたらリビングでテレビ見ながらソファに座っている妹が金髪になっていた。

 

なんでだ!?

 

心なしか表情まで違う。いったいどうすれば………いや、ここはお兄ちゃんとして、逃げちゃだめだ。正面から向き合うまで!

 

 

 

古城、行っきまーす!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー。そういうね。あの金髪っ子ね。なるほど、成る程。

 

つまり、金髪っ子は◯タンドで、凪沙が宿主に選ばれたということだな?

 

 

アヴローラというらしい。アヴローラが引っ込むとスーパーなサイヤ人化も解けて髪の色も戻るみたいなので問題ない。

 

 

本当にグレてなくて良かった…。

 

 

 

 

安心したので、お袋とか自覚があんまり無いっぽい凪沙への細かい説明とかは後日に回して今日はご馳走だ。

 

 

 

 

 

 

 

 




4年前の古城さんはまだ活発な少年だったってことで。



この古城さんは小学生らしくないっていう作者の偏見も混ざってますが、漢字とかは音声入力(自動魔法的な)です。
アレですよ。アレ。皆んなジャンプとかアニメに影響を受けて技の練習とかしたことあるでしょ?(偏見
たまたまそれがかみ合っちゃったみたいな。


さーせん適当で。

ノリに任せて書いてみましたが、シリアス風味なとこほとんどがご都合主義とネタにより変わってます。

終わり方とかも唐突すぎて酷いので後日まとめて直すかもです。

なんとなく日記風にチャレンジしてみたのですがなかなか楽しいので、続きをいろいろ考えてます。

宴編とかまではネタでかわしていって、本編開始からはだる〜く行こうかなと。

休日とかになるかもしれませんがよろしくお願いします。


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なんでもない話 1

誤字報告ありがとうございます!
そして投稿遅くて申し訳有りません。

相変わらず勢いだけの癖に駄文で申し訳ないですが、ぼちぼち投下していきたいなーとふざけ倒しております作者です。
どうぞよろしくお願いシマス


新しく出たコーヒー牛乳美味しい……



◯パート1 打ち切り風

 

 

「おーい、古城。昼飯どうするよ?学食行くか?」

 

「んー…あんまり(お腹が)減ってない。購買で済ませる。」

 

いつもどうりにいつの間にか午前授業が終わっていたところで、矢瀬が心なしか良い表情で誘ってきた。

 

今日は寝坊したせいで矢瀬に抱えられて登校したので、ほぼ動いていない。

当然あんまり食欲も湧かないので軽食で済ませて寝るに限る。皆のように活動的でないので俺は低燃費なのだ。

 

まったく……時代はエコだというのに一般的な高校生というのは消費が激しくて大変だn「今日はシチューだぜ?」

 

 

「何してるんだ矢瀬!急ぐぞ!」

 

「おお。目まで輝いて、別人に見えるな。」

 

「当たり前だろ!?あのクリームシチューは逃せない!」

 

「誘っといてあれだがそんなにか。」

 

 

ここ、彩海学園では不定期に普段には買えないメニューが追加される。今日のシチューには絃神島周辺の海域である時期にしか獲れない海産物が使われており、その時期に丁度重なるようにして本土からこの島に渡ってきては、魔族にも人間にも合う料理を研究している料理人達が各々の持ち込んだレアな食材とこの島の特産物とを組み合わせて、それぞれが自由に調理した料理を振る舞っている。

 

公共の施設や会社の食堂、学園、レストラン、果てに至っては個人の屋台等も気まぐれな料理人達が飛び入りで来ても文句なく受け入れており、名物とかしているとか。

 

 

海産物たっぷりの濃厚クリームシチューを振舞ってくれるのは、素顔を仮面で隠した謎の料理人D・B・タイガー。

 

貴族のようなオーラを纏い、コック帽から僅かに見える金髪。凄まじい速度で人で溢れる食堂を捌ききり、調理を終えた後爽やかな様子で女子生徒に礼を贈り、高笑いとともに去って行く。

 

 

そんな謎の人物ではあるが、料理の腕は本物だ。

濃厚な牛乳と海の幸から取れるダシがお互いを消し合うことなく見事にマッチし合い、彩り豊かな野菜はじっくりと煮込まれており、口の中に入れた瞬間にスープとともに蕩けだす。

 

本当に見事なものなのだ。

 

 

こればかりは逃せない。逃すわけには行かない!

 

例えどれだけ人が多くとも、ごった返しの人混みにもまれようとも、俺は今日絶対にシチューを食してみせる!

 

 

「さあ、行くぞ矢瀬。準備はいいか?俺はできている。」

 

 

俺たちの戦いはこれからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯パート2 いつもの

 

 

 

「おーい、古城。昼飯どうするよ?偶には学食でもどうだ?まあ、そんな元気なさそうだが。どしたよ。気だるさ2倍デーか?(笑)」

 

 

「行きたくない……ここから一歩も動きたくない。」

 

 

「冗談で言ったんだが、割とマジで死んでんな……。」

 

 

「俺は動かない…絶対に動かないぞ。」

 

 

 

 

さて、古城がくたばりかかっているので、ここからは俺が引き継ごう。

 

今朝は相変わらず寝坊して、俺が抱えて学校まで連れて来た訳だが、遅刻ギリギリの時間に駅に着いちまったせいで、当然満員で潰された訳だ。

 

いつもはそうならんように時間をずらしたり別手段で登校したりする訳だが、今日は本当にギリギリだったし、貴族の道楽なのかは知らんが、島に料理を振る舞いに来る料理人に混ざって厄介な金髪吸血鬼やらグルメな麺好きな王子やらが素顔を隠して来たせいで、交通網が限られちまった。

 

災難なことだが、流石にあの狭い空間で古城の周りにだけ能力で空間を作る訳にも行かなかったんで、人混み嫌いなもやしである古城にとっては相当な負荷になったらしく、ご覧の有様という訳だ。

 

そして、いつも垂れている?というか溶けている顔が明らかに不機嫌を放ち、負のオーラで満ちている。

 

吸血鬼的には間違いじゃないんだが、いささか普段とのギャップが大きすぎるせいか誰も朝から近寄って来ず、教師陣もまた同様に、あの那月ちゃんですら、ハイライトの消えたまま半目で食いしばった口元に般若を背負ったまま机に突っ伏すというその方が疲れるんじゃねえか?と思う様子で授業をボイコットする古城に何も言わなかった。

 

 

 

「まあ、そんな邪険にすんなよ。今日はシチューらしいぜ?」

 

 

「……ふーん。」

 

 

「うーわ、今日この話題で食いつかねーやつお前ぐらいだわ。」

 

 

「おれさ、思うんだよ。」

 

 

「何をだ?」

 

 

「ほら、よく変わったキャラクターとかにいるだろ?あんまり動かなければ消費カロリーも少ないから食費が浮くって言ってる奴。実際動いてない日はお腹空かないし。俺は毎日そうなんだけどさ。」

 

 

「確かに活動的な人間とそうでない奴を比べたらその差は分かりやすいかもしれないけどな。古城。お前の腹はひたすら空腹を訴えてるからな?」

 

 

「身体は正直って奴か……ふっ…人間というものは不便だな…」

 

 

「引っかかる言い方するなよ…また奴らが湧くぞ?そして、ご先祖が獲得してきた人体の仕組みにケチをつけてないで、何か腹に入れてやらないと午後から辛いと思うぜ?主に周りの席が。」

 

 

「そこをだしにするのはズルい……。」

 

 

 

ふぅ…と、2分近くかかってやっとめんどくさがる古城を食堂に連れてきたのにはほんの少しだけ狙いがあったりする。食堂でありえないスピードで調理している仮面吸血鬼はそのうちこの島と第四真祖にちょっかいをかけにくるのは想像に難くない。

 

その時に少しでも悪い関係にならんようにお互いに顔見せ程度しておいた方が……いや、古城は気付かないだろうから相手側から一方的に毒気を抜かせてもらおう!

 

クックック。わーはっはっはー!戦闘狂がなんぼのもんじゃい!ってやつだ。この小動物にすら警戒心を抱かれない存在を前にして呆気にとられるがよいわ!

 

 

「…なんか楽しそうだな。まぁいいや。とりあえず予想以上に混んでるから帰っていい?」

 

 

「待て待て。せっかくだから食っていこうぜ。ほら、食券買っといたから。少し並ぶだけだ。幸いにも席は無駄に有るからな。」

 

 

「……仕方ない。この良い匂いに免じて並んでやろう。」

 

 

「そこはかとなく偉そうだなオイ。」

 

 

 

そんなこんなで行列に並ぶこと5分。改めて見ると顔を完全に隠した仮面で料理してるとかマジ不審者だな。

 

 

「Aランチ2人…パンで。矢瀬は?」

 

 

「俺も同じで。」

 

 

「かしこまりました。少々お待ちください。愛しの…おっと、今ばかりは私は別人でした。忘れてください。」

 

 

 

顔隠してるあたりだいたい予想ついたけどやっぱお忍び的なやつなんだな。

 

 

そんでまた、食い始めてからずっとこっちを見られてる訳なんだが。こいつは俺の腹筋を破壊しにきてるのか?

 

 

 

「ぐぬぬ…( *`ω´)」←フランスパンを噛みきれてない

 

 

 

子供か!見ろ、珍しく調理の腕止まっちゃってるぞ。

 

 

 

「ズズッ……美味い。(*´ω`*)でも、熱い……。」

 

 

「そうだな。おれも良いもん見してもらったわ。」

 

 

「(´∀`)?」

 

 

「何でもねーよ。てか、それどうやってんだよ」

 

 

 

さーて、どうなることやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ディミトリエ バ トラー

D.B.タイガー

なんちゃって。


つまらなくてすんません。


〜〜謎の料理人


「なんてことだ!愛しの第四真祖がさらにキュートになっているじゃないか!」



なんてことになってないと良いですよね。(腐




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少しリッチな古城くん

最近気だるげ成分が足りない!!!

と思ったので。


書いてたらちょっと長くて回りくどくなってしまったので、
適度に読み飛ばしてください。


もっと流れをスムーズに、分かりやすく読みやすくかつ丁寧にしたいですね……


その日、古城くんは少しだけリッチな気分で、珍しく自分から外に出かけていた。

 

 

いつもなら部屋で寝ている所を起こされて追い出されたり、妹の友人である中学生達が集まったりするためにやはり追い出されたり、古城の友人達の心配やら気遣いやらで部屋で永眠する前に連れ出されたりするのが、普段の休日である。

 

 

古城がしっかりと休日を過ごすことができる(本人の希望や意思に沿うような過ごし方かどうかは定かではない)のは、ひとえに友人達の頑張りによるものである。

 

主に、試験勉強、授業に関するものなどの最低限の手伝いやら遅刻早退サボり改善のための奔走。

 

 

彼らが居なければ厳しい厳しい英語教諭によって長期休暇はおろか、毎週のように高校生にとっての週末という名の休日は無くなっていたであろう。

 

 

そのため、友人達へは感謝しつつもやはりダラけたいがために生活改善の意思はあまり見られない。

 

 

 

しかし、その日は、前日の試験で珍しくやまが当たり、高得点を取ったため、暁家のルール(全ては妹の意思である)により、褒美として増額された小遣いを手渡されたのである。

 

 

節約プロの世界に足を踏み入れている妹からの追加支給は、アルバイトもとある事情によって行うことのできない古城にとっては天の恵みのように感じられた。

 

 

 

 

 

そして最初に思いついた使い道は、安眠枕の購入であった。

 

携帯でのメールのやりとりすら面倒なものとなっている彼にとって、携帯電話はあまり多用されるものではない。

 

おつかいのメモやアラーム機能が一番使用頻度が高い機能である。

 

しかし、つい先日に彼はネットでの買い物という文化に触れ、とある大手の家具メーカーから出ている寝具のページに目が止まった。

 

 

'''どんな場所でも瞬時に安眠できる低反発COOL枕 〜身体のあちこちがこる貴方へ。もう寝違えたりしない〜'''

 

 

古城は一瞬で心を奪われた。

 

 

慣れない操作でwebページを開き、購入操作を進めていく。

友人から来た連絡をメールで返す時の倍以上の速度であることからも分かる通り、かなりの情熱であった。

 

 

 

寝苦しい夜に俺はもう困らない!

朝起きても首や腕が痛くない!!

最高の安眠は約束されている!!!

 

 

 

が、しかし、ここで暁家の良心(妹)によってストップがかかる。

 

 

「また()()を繰り返すようだったら許さないよ古城くん。」

 

 

「………。」

 

 

ここで、彼女の言うアレとは、過去の事件のことを指す。

 

 

ある時は人をダメにするという広告のクッション

 

またある時は着るタイプの毛布

 

そして、前回購入して一月で悲しい別れをすることとなった一年コタツ

 

 

いずれもいつも以上にだらけきった様子を見せ、解決に向けて動く周りの者たちとの虚しい死闘を繰り広げることとなった。

 

 

 

 

 

◯奥義 一体化

 

 

効果 : 某メーカーの大きいサイズのクッションと一体化する。その状態で床に張り付くことにより撤去を防ぐ。

 

 

デメリット : 呼吸がしずらい

 

 

 

 

 

◯特殊スキル 2重布団

 

 

効果 : 着るタイプの毛布を装備した状態で自身の元布団とカバーの中に入り込むことにより発動。とても掴みづらい。

 

 

デメリット : とても暑い

 

 

 

 

◯自滅技 コタツムリ

 

 

効果 : コタツの中に引きこもって全力で抵抗する事で近寄らせない。割と誰でもできる技だが、だらけることに命を賭ける者が使用するとマジでうざい。かなり強い技である。

 

 

 

デメリット : 空腹や尿意、脱水症状、その他諸々の活動が制限されるので死にかける。副次効果として対抗した相手にしばらく口を聞いてもらえなくなる。

 

 

 

 

 

 

いずれも全力で使った。

 

 

 

 

 

結果は言うまでもなく一方的な撤去であったが。

 

 

 

 

過去の自分を振り返って、恐らく今回も同じ轍を踏むことになるのは簡単に想像できる。

 

 

それでも、眠さには敵わないのだから仕方ないではないか。

 

 

古城はそんな逆ギレを起こしかけ………ものの数秒で引っ込めた。

 

 

笑顔の裏に般若を背負った妹御に敵うことなどないのだ。

 

 

 

 

 

「凪沙。」

 

 

「なあに?古城くん。」

 

 

「……俺、明日から早起き頑張ってみる。」

 

 

「そっか。応援してるよ♪」

 

 

「……何か欲しいものとかある?」

 

 

「特に無いかなぁ。」

 

 

「そっか。」

 

 

「うん。」

 

 

「………凪沙。」

 

 

「なあに?古城くん。」

 

 

「おねがい……します」

 

 

「駄目♡」

 

 

 

慈悲など無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

あくまでも、あくまでも余談なのだが、

 

○古城くんはお金持ちに憧れていたりする。

 

○彼はダラけたいので、自分を養ってくれたり、世話を焼いてくれる相手に好意を向けやすい傾向にある。

 

 

これはあくまでも余談である。

彼の人生経験からすれば、自分からは縁遠いものであるし、意識に登ることのない程度のものだからだ。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

そんな訳で、気分転換がてらにどこかの静かな店で豪遊でもしようと思いついた訳だ。

 

 

「大事に使うんだよ〜。」と、田舎のおばあちゃんみたいに小遣いを渡された訳なんだが、実は姉だったりするんだろうか?

 

いや、流石にあり得ないな。

 

 

 

ーー兄が際限無くだらけるので、結構な頻度で心を鬼にしている妹であったが、滅多に見られない兄の真面目に頑張った(と思われる)姿に、心打たれ、多めな額を渡してしまったあたり、やはり古城には甘いのだろう。

 

 

 

 

 

あいかわらず陽射しの強い街中をゆっくりと歩いて行く。

 

特に目的地を下調べしていた訳でもなく、当てもなく歩いていたのだが、休日の街というのは存外混み合うものだ。

 

 

半刻も経ってはいないが、普段からあまり活動的でない古城からすれば、良い運動のレベルを通り越すことになる。

 

 

 

ーーお前元運動部だったんだろ?などと言ってはいけない。

 

 

 

だんだんと足取りが重くなっていく。

 

 

疲労による疲れというよりも散歩に飽きてきたといった感じではあるが、それは普段は近くで事故が起ころうとも無関心でいられる周囲の人々の疲れきった心でさえも、心配を抱かせてしまうようなやさぐれたオーラである。

 

 

泥酔した人や元気な幼児のように右へ左へと動く様により

すれ違う人々は常にハラハラとしている。

 

 

 

そして、フラフラとしていた様子も、だんだんと遅くなり、今やナメクジでももう少し速いのでは?というスピードである。

 

(ちなみに亀はイメージよりもかなり速い)

 

 

 

上半身は項垂れて、膝はダンスしつつ足取りは重い。

 

 

ただ、歩いていただけでなぜこんな有様になっているのか。

 

それは、神秘に溢れた魔族特区の研究者にも分からない。

 

きっと、本人にも分からない。

 

 

 

 

 

 

見ただけ、それも彼を知らないものからしたらかなり深刻そうに思えるのだ。

 

 

すれ違ううちの何人かはすわ病人か⁈と疑い、様子を見て救急車を呼ぶまいかと悩んでいたりする。

 

 

そのせいか、目立つのが好きではない性格なのに視線を集めやすいと悩んでいるのはただの自業自得である。

 

 

 

 

長々と無駄に語ったが、ただ、歩くのが面倒になってきただけである。

 

 

 

 

きっと彼を知る者達がいたら、「「「ちゃんと歩け!!」」」とツッコミを入れていただろう。

 

 

(その後、結局見てられずに肩を貸してあげたりするのだが、それはまた別の話である。)

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、幸か不幸か今日に限ってはいつもとは違う時間に出かけた彼を見かけたのは、残念ながら彼の知人ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーそれは本当に偶然それを見かけた心優しい中学生の目に止まった。

 

 

白髪の彼女は捨て猫を見かけたら放っておくことのできないような優しい少女だが、彼女はとても芯の強い心の持ち主だ。

 

彼女は何かの助けになりたいと思ったならば、怯えながら、震えながら、それでも足を止めることはない。

 

 

(そんなところのほんの一部でも彼に見習って欲しいと思うのは無粋かもしれない。)

 

 

 

ーー目に、とまってしまったからこそなのだろう。

 

 

 

 

よく事件が起こるこの島で、作為的で無い偶然など珍しいことではあるのだが、この時だけは本当にただタイミングが合ってしまっただけなのだ。

 

 

どうしようもなく目が離せなく(ある意味そうかも?)て

 

 

今にも倒れそう(平常時でもそんな感じ)で

 

 

放っておいたら今にも消えてしまいそうな……

 

 

 

不安そうな目をした色素の薄い髪の人。

 

 

 

そんな青年を見過ごすことが出来なくて、彼女は駆け寄って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー全くの同じタイミングで偶然その島に来ていた特殊な事情を持つ大人びた小学生の目にもその貧弱そうな男は止まっていた。

 

自分はおおよそ普通の人間とは違う事情を抱えている。同年代の子供と同じようには過ごせない。

 

今だって偶々この島に、研究成果の実験を行う下見に同行しているだけだ。

 

退屈な日々、自由な時間は少なく、自問自答を繰り返す中で、自分の心が徐々に荒んでいくのをずっとずっと自覚している。

 

 

 

 

少女の血筋は特殊ではあったが、ただそれだけだった。最初は普通に家族とともに暮らしていた。

 

けれど、ある時から変わってしまい、それからずっと人の悪意に触れ続けてきた。

 

 

それでも、歪むことなく、やさぐれることなく、自分を保っていた。

 

 

黒々としたそれを、外側に向けることが出来たのなら、きっと、とても楽であったのだ。

 

 

 

けれど、自身の経歴が異常であり、他人と違うことを嘆いてもなお、彼女は他人の不幸を望むことが出来なかった。

 

 

 

 

それは、その責任転嫁が無意味であると知っている賢さゆえなのか、

それとも、良い巡り合わせでは無かった人生の中で僅かに触れた優しさの温かさを尊いと感じたゆえなのか。

 

 

 

だが、例えば、そんな似たような境遇の人間が同じ立場にいたとして、その人がどれだけ温和であったとしても、それでも落ち着く時間が少なければ、ストレスというものは溜まってしまうものだ。

 

 

周囲へのあたりが強くなることは無かったが、誰かに心を開くことも無くなった。

 

 

 

それが本心でなくとも、世界の広さを知識としては知っていて、自身の抱える問題がたった一幕の事だと理解はしていても、心のほんの片隅から、黒いものが溢れて、こぼれてしまうくらいには、すりきれ、疲れきってしまっていた。

 

 

 

ーどうして私ばっかりが。

 

 

ーのうノウト生きているヤツらなンかより……。

 

 

ーツライ?キツイ?それハ本当二?私ヨリも………?

 

 

ーーソンナハズハナイヨネ?ドレダケカンガエナオシタッテ、ワタシノホウガ………………!

 

 

 

 

 

嫌な気分だ。

 

 

視界がボヤけそうだったから、袖で拭った。

 

 

今は何にも見たくない。

今は誰にも会いたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも何故なのか。

 

 

 

ネガティヴな考えが止まらなくて、抑えきれなくなりそうなのに、

 

 

 

全く進まないからずっと視界の端に映っていた、ふらつくそのポンコツを目で追っていて……

 

 

 

辺りを見渡し肩を落とす、そんな行き場のない姿に自分を重ね…

 

 

 

気付けば、少女も同様に、その震えた背中を追っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

家で一悶着あったが、滅多に手に出来無い資金を手に入れたのでほくほく気分で出かけてみたんだが、

 

 

近所の公園では、移動販売のアイスクリームを見てorzしていた幼児があまりにも不憫だったので一つ奢ってあげたら、周りにいたちびっ子全員にたかられてしまった。

 

 

人通りの多い場所を散歩していると、普段はスカスカなので盗られてもなんとも思わない財布にお金が入っていることを思い出し、疑心暗鬼で人の少ない方へ自然と意識が向いた為、無駄に遠回りして疲れてしまった。

 

 

まぁ、結構な時間サクサクと歩いたし、遠くまで来たか?(自覚無し)

 

なんか通学路で見覚えあるような店も多いけど、チェーン店の並びなんてどこもそんなもんだよな。

 

普段矢瀬に運んで貰ってるから道とか見渡すことあんまり無いんだよね。

 

それはそれとして、知らない場所とか初めてくる場所ってワクワクする反面、不安になったりするよな。

 

また迷子か?って思って冷や汗かいてしまった。

 

 

だが、陽射しがいい加減ヤバくてそろそろ視界が暗転しそうな気がしたので休憩しつつ、当初の目的を果たそうと、辺りを見渡して見ると、ファミリー向けのレストランが目に入ったのでそこに決めた。

 

 

やけに段差が多くて何回か躓いてしまったが、辿り着いたので冷房を期待しつつ店に入る。

 

 

 

 

「いらっしゃいませー!3名様で宜しいですか?」

 

「3名?」

 

 

 

元気な店員さんの言葉に疑問を抱いたので後ろを見たら見たことない女の子が2人いた。

 

片方は白髪で中学生くらいの身長

 

もう一人は茶髪で賢そうな感じの恐らく小学生

 

 

その両方から心配そうなどこか慈愛に満ちた暖かい目を向けられていた。

そう、優しい若者がご老人を労わるようなそんな視線を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、元気な店員さんの「お連れ様もどうぞ!お席へ!」とグイグイくるタイプの接客により、初対面の二人と向かいあう形で座席に着いた。

 

 

知らない人と相席になったことへの不安など二秒ほどで消えた。

いやだって、冷房効いてて快適だし、椅子がフカフカして座りやすい上にさっきまでの疲れも僅かにあったんで、ついぐでっとしてしまったんだが、この妙に優しい視線を向けてくる子達は誰なんだ?

 

多分こっちの方が年上だろうし、俺から切り出した方が良いよな。

 

 

 

「えっと……初対面だと思うんだけど、とりあえず俺なんかと相席になっちゃってごめんね。俺のことは気にしないでくれて良いから。」

 

 

「!いえ、そのこちらこそ勝手についてきてしまって…ごめんなさいでした。でも、お兄さんが、(倒れそうになっていて)心配で…。」

 

 

「わ、私も、その、お兄さんが…(寂しそうで)気になってしまって…。」

 

 

 

なんか凄く心配をかけてしまったみたいなんだが、こんないたいけな子達にまで迷惑かけてしまって罪悪感が半端じゃ無いな。

 

どうやら俺がフラフラしてたのが悪いみたいだし、知らない人間をここまで心配してくれるとは……ええ子やなぁ( ´∀`)

 

でも、凪沙にも浅葱にも口酸っぱく言われてるし…あんまり疑いたくは無いんだけど、俺みたいな奴に声をかけてくれる人って、経験上騙しやすそうって判断して近寄ってきた割合が高いんだよな。

 

仕方無いか。

 

 

 

「ちょっとごめんね。」

 

 

 

と、一言断って、2人に目を合わせるようにジッと見つめる。

 

……………。

 

……………………よし、大丈夫そうだ。

 

これは、特技とも呼べるかもしれんが、普段から周りの助けがあって生活が成り立ってる俺は、目を見たらそこに浮かんでる保護度?愛護心?みたいなものが大体分かるようになった。

 

それのおかげで、じっくりと見れば完全に心を閉じてたり隠してる人じゃ無い限りは悪意有りとか何かしらの感情、敵対心とかも判断できる。

 

もちろん、俺に対して限定ではあるけれど。

 

 

 

白髪の子は94 天使なの??

 

茶髪の子は75 凄く優しい子だけど抱えてるね。色々と。

 

 

本当にめっちゃ良い子じゃん。疑ってすまんかった。

 

ちなみに、矢瀬が85で凪沙が90だ。

 

 

 

かなり長い付き合いがあってこれだからな?知らない人で周りから優しいって印象持たれてる奴とかでも10や20ぐらいが平均だ。

 

だって、顔も名前もそもそもあったことすらない赤の他人に慈愛の心を向けられるって、宗教とか聖人とか医者の一部とかそんな特殊な人だけだと思うんだが。

 

 

この二人本当に会ったことないんだよな?ってレベルで高いんだけど……。

 

むしろ逆にこの子らが騙されてないか心配になってくるんだが。

 

まぁ、何かしらの事情は誰だって持ってる訳だし、疑ってばかりじゃ心配してくれた相手にも失礼だ。それに、勘だけど信用しても大丈夫そうだな。

 

 

 

######補足ですが個人差はあるってことで。動物愛護の精神だったり、同情だったり、友愛だったりと、まぁいろいろだから深くは考えるだけ無駄なので、やだ、あいつらやっぱりできてるの?とか言わないように!じゃないと古城君以外が泣いてしまうぞ!!!######

 

 

 

 

 

「お兄さん、その、あんまり、見られると……。」//

 

「流石に……恥ずかしいです……。」//

 

 

 

「あ、ごめんな。ジロジロ見たりして。悪気はなかったんだ。すまん!」

 

 

言われてすぐ、首を戻して再度背もたれに沈み込む。

 

またやってしまった。だから、この特技あんまり使えないんだよ。

じっくり見ないと分からんから凄く失礼だし。

 

 

 

「いえ、その、嫌では、無かったのでした…。(不思議な感覚でした)」

 

「…大丈夫です。(紅い目…綺麗だったな)」

 

 

あー…顔真っ赤だし。怒らせてしまったらしい。優しい子だから気を遣ってくれたけど、初対面の奴に顔見られたら嫌だよな。

 

 

周りの席からの視線も心なしか刺さって居心地悪いし、元気な店員さんも「早く頼めよ、あ?両手に華ってか?ええ??おい。当てつけですかァ?」…小声だから何言ってるかは分からんけどかなり怖い。

 

 

うん、お詫びも兼ねてここは俺が奢ろう。

 

 

そして、早く頼もう。

 

 

 

だって、あの店員さんがジワジワこっち来てる。

 

働いてる人って凄いな〜。あんな活動的に動くの俺には無理だな〜っていつも眺めてダラけてる俺でも分かる。

 

あの人働き詰めで疲れてるね。

そして、何故か俺が原因で怒ってるね。

 

 

 

 

 

「…とりあえず、何か頼もっか。俺が出すからさ。遠慮しないでいいから……早く決めよう。」

 

 

真後ろからのプレッシャーが凄いからさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が払うのを断ってむしろ私が!みたいな二人を説得……するスキルは無かったから普通に頭下げてお願いしつつ、

 

料理とドリンクバーとか頼んだ他にも無駄遣いしようと思ったんだけど、俺少食だったわ。

 

だから、デザートでも無いかなってメニューを開いてたら、浅葱が喜びそうな少しお高いジャンボパフェを見て(量的に胸焼け的な意味で)ウエッとしたけど、目の前の二人の視線がキラキラしてたので追加注文。

 

売り上げに貢献したので、後ろの店員さんも業務に戻ってくれた。

 

 

 

そして、適度にダラけつつ、3人とも自分から話すタイプじゃなさそうだったから、無言でも良かったんだけど、カノちゃん(自己紹介した。小学生はユメちゃんというらしい。)がオロオロしてたので空気を読んで俺が話すことにした。

 

(というか、この二人も初対面どうしだった)

 

いつもボーッとしてるし、基本任せっきりな俺でも、それくらいの空気は読める。

 

読めるだけで、基本は何もしないんだけど、泣かれそうになってたら動かないわけにもいかんよね、年齢的にも。

 

 

話題なんて無かったから、適当に、

 

 

「いつも(休日は追い出されるから)……居場所が無くてさ…。でも、(出かけたは良いけど)当てもなくて、彷徨ってたんだ。」

 

 

「そういえば、(珍しく今日は)ずっと一人で歩いてたな。この島は、(暑くて)辛いねぇ…。」

 

 

「あれから、結構考えたんだけど、どうしたら(枕を買っても)許されるのか分からないんだ…。」

 

 

 

「頑張って(睡魔とも)闘ったんだけどさ。結局、俺のせいで(撤去されちゃってさ。)…はぁ。失ってから改めて失くしたものの大きさって実感するんだねぇ…。」

 

 

 

「(コタツの時は)誰にも(口を)聞いてもらえなくなっちまってさ。ははっ。」

 

 

 

 

ああ……思い出したら少し目頭が……。俺に安眠をくれてありがとう。

 

 

 

 

 

「古城さん…!もう、良いんです…!もう大丈夫です。今は、私も……ここに居ますから。」

 

 

 

 

「お兄さん…。悲しそう…でした…。お兄さんは、一人じゃ無いです!だから、泣かないでください…!」

 

 

 

 

目を瞑って寝具達へ黙祷を捧げていたら、なんかまた心配させてしまったような?

 

なんか、変な事言ったかな…?いや、今日のことと寝具の話しかしてないし…。

 

話つまらなかったか…謝ろう。

 

 

「⁇ 俺は大丈夫だよ。心配しないで。それに、つまんない話してごめんね。」

 

 

「「そんなこと無いです/でした!」」

 

 

「あ、ハイ。」

 

 

「つまらなくなんて…ないでしたから……。」

 

「ちゃんと、聞こえてますから…!」

 

 

ーーーだから、そんな悲しそうな顔で笑わないで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?その後普通に食べて適度に休憩してから店出たよ?

 

勘違い? ああ、顔のことか?眠い時って瞼下がるよね。

寂しそう、とも言われたけど確かに布団達との別れは寂しかった。顔に出てたかな?

 

なんか、凄く気を遣わせちゃったみたいで、飲み物とか料理とか食べさせてくれた。

 

流石に断ればよかったと思ったけど、いつもの癖でつい……。

 

いやー、可愛い子で、しかも優しくて世話好きとは、二人とも将来有望だね。

 

 

あ、ちゃんと俺が払ったよ?

恐縮そうにしてた上に、ちゃんとお礼まで言ってくれた。

 

近所のちびっ子はたかるだけたかって、ボールぶつけて帰っていったのにね。

 

 

本当に出来た子だねぇ…。

 

 

 

 

 

 

 

でもさ、そんな良い気分で帰って来たんだけど。

 

 

 

 

「ねぇ、古城くん?」

 

 

「はい…。」

 

 

「連絡も無しにどっか行って、しかもほとんど使いきってきたの?」

 

 

「はい…。」

 

 

 

「私、大事に使うんだよって言ったよね。」

 

 

 

「…はい。」

 

 

 

「まぁ古城くんにあげたものだし、どう使っても良いんだけどさぁ。

 

で?その後ろに隠してるアイマスクはなあに?

 

完全に暗くして寝たら朝起きないよね?」

 

 

 

「……はい。」

 

 

 

「没収。」

 

 

 

「…………はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お金って大事だね。

 

 

 

 

 




口調が古城さんなのか田中くんなのか……イメージ的にどっちにもひっぱられるせいでぶれぶれしてるので中間という言い訳で気にしないことにした今日この頃。
もちろん、作者の方が酷い社会のゴミですがね?
ダメ人間な自覚のあるということで、若干控えめな口調が板についた古城さんだとこんなもんかな。

とか、ダラダラ〜〜っとしてるけど、偶にやさぐれたりすることもある田中さんは内心結構強めな感じかなー

みたいな感じです。


起きてる時は、内心も強めな口調。眠気が来てる時は丁寧なほにゃっと口調。を意識はしてるんですが、やっぱりぶれてますね。

無理あるんですが、適当に補完しといてくだちい。



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雨の日

すぐに調子に乗るアホなのです。
ほんとすんません。

気を取り直して、雨が続いておりますね。そして風も強いです。
体調管理には気をつけてください
私は雨も結構好きです。


古「新品の傘買ってきた。」
凪「飛ばされないように気をつけてね〜。」
雪「先輩?どうして傘を構えているんですか!?」
古「歩くより飛んだ方が早そうだし…」
雪「いや、流石に台風でも傘では飛べませんよ!?ちょっ、先輩!?浮いてる!?浮いてますよ?!」
古「あ、やばい。助け…あっ」
雪「ああっ!?」



 

絃神島は季節外れの台風接近により、連日雨続きとなっていた。この島が浮かんでる場所って台風こないんじゃね?というツッコミは控えて貰いたい。

 

どこの誰とは言わないが、猛暑の中の登校ににウンザリとした学生が一人神社ではなく何故か町外れの教会(跡地)に御百度参りをするという珍行動を繰り返していた結果であろう。

 

本人もまさか叶うとはつゆにも思っていなかった。

 

神秘の潜むこの島にて、どこぞの錬金術師が毎日積み上がっていく小銭の山を見て、哀れに思ったりなどしたに過ぎないのだ。

 

少しばかり張りきり過ぎたようだが、生憎被害は乾燥機の無い家庭ぐらいである。

 

 

 

「台風が来たから休みになるとでも思ったのか?」

 

 

「……通うのが余計大変になっただけじゃないか…!」

 

 

昨晩の天気予報を見て、久々に午前は寝ていられると、wkwkしながら眠りについた古城だったが、彩海学園の判断は無情だった。

 

ある意味自業自得な現実に項垂れる古城を見て呆れ気味の矢瀬だが、友人の遅刻を見越して早めに迎えに来た辺り既に慣れているようだ。

 

 

「雨の日ってさ、傘を持っている分手が塞がるし、すれ違うときぶつからないように気を遣うし、風吹いたら引っ張られるから凄く疲れる…。」

 

 

「なら、雨合羽を着たらどうだ?」

 

 

「……凪沙が許してくれなかった。」

 

 

「思わぬ伏兵がいたな。理由は?」

 

 

「見た目的な問題らしい。」

 

 

言われて想像してみるとすぐに納得した矢瀬。

小さい古城が合羽を着ているところから身長だけ伸ばしていく。すると、とても残念な高校生が出来上がった。

 

 

「合羽の種類にもよるんじゃねーかそれ。」

 

 

「…あと、重り代わりになるから少しでも鍛えろって。」

 

 

「あー、傘持ってて腕筋肉痛になるやつもなかなかいねーだろうな。」

 

 

既に特注の軽量で丈夫な傘を持っている筈なのに肩が震えてきた古城を見つつ登校後保健室で湿布を貰うことを頭に入れた。

 

震えているのが寒さに弱いからなのでは、ということも考慮して既に自分の上着を羽織らせてあげている辺りにオカン力を感じる。

 

 

「それにさ、そんなに苦労して持ち歩いてても、コンビニとか学校とか駅とかで普通に盗まれちゃったりした時のあの徒労感は泣きたくなる。」

 

 

「使い捨てみたいな間違ったイメージついちまってるからなぁ、傘。あと、似たような柄ばっかで間違えやすいってのが大きいんじゃねーか?」

 

 

「……前に自分の名前を大文字でプリントした傘と幼児向けの柄物の傘も持っていかれたから奇抜な傘にするのは諦めた。」

 

 

「割とがんばって対策してたのか。そういう感じ嫌いじゃないぜ。」

 

 

「ピンクのペンキ塗りたくった時とかからはどこまでいけるか楽しくなってたのは否定しない。」

 

 

「それでも持ってかれたのな……」

 

 

頑張る方向が偶にトチ狂っているよなコイツと感想を抱く世話役と、

おかしい自覚はあるのでそれを理解している辺りこの友人も己のせいで毒されてきたなと少し反省する古城だった。

 

 

 

「それとさ、基本出掛けたくないと思ってる俺でもやっぱり台風はテンション上がる。」

 

 

「そうなのか?てっきり、ウンザリするかと思ったんだが。」

 

 

「冷んやりしすぎて逆に寝づらいっていうのも確かにある。けど、普段から俺たちを押し戻そうと頑張る向かい風に少しイラっとすることはあるけど、ここまで強いともう逆方向に押されてあげても良いかなって思う。」

 

 

「だから今日反対に歩こうとしてたのか…」

 

 

矢瀬は、相変わらずだなと古城の眠そうな顔を見て思っていたが、

 

 

「矢瀬は?雨、好きか?」

 

 

唐突に真剣な表情になって聞いてきた古城に、内心驚く。なかなか見れないレアな表情に、思わず身構える矢瀬。

 

(古城が目をきっちり開いてまで聞いてきたってことは、こいつにとっては大事な問題なのかもしねーな。)

 

もしかすると、重要な場面なのかもしれないと思い、こちらも誠意を持って応えんとしていた。

 

 

「俺は雨、嫌いじゃないぜ。」

 

 

すると、そっか…と言って元の眠そうな顔に戻った古城。何かしらのリアクションを想像していた矢瀬は肩透かしをくらった気分になった。

 

(恐らく間違えた選択肢ではなかったようだと信じたいが…。)

 

 

やはり、友人であり、味方でありたいと思う以前に自分の監視役という立場が何かを訴える。

 

 

 

 

…もし、その悩みが重要なものだったなら。

 

…もし、血の記憶にまつわるエピソードだったのならば。

 

 

…取り返しのつかないことに

 

 

 

 

(いや、ねーよ。)

 

 

 

と、余計な勘繰りを頭を振って振り払った矢瀬。

 

古城に限ってはそんなことは起こりえないのだ。

 

 

楽観視?否、それは経験則である。

 

 

己含めて、もしもこのぬぼ〜っとした顔に悩みがあるのなら、きっと見かけた者がそばによっていくだろう。

 

 

その日は優しく、

次の日は厳しく、

 

日を跨ぐのなら、問い詰めよう。

 

 

そんなクラスメイトの認識は、全く間違ってはいない。

 

 

寝れば治る。

 

 

 

それが彼である。

 

どこか放っておけないこの友人は、もしかせずとも出会いには恵まれているのかもしれない。

 

その巡り合わせは、仕組まれたものなのか、それとも彼自身の不思議な魅力によるものなのか。

 

それは真祖であろう分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

面倒だから直接聞いてみた。

 

 

 

「雨粒目に入ってさ。」

 

 

「……そうかい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




適当なオチですんません。


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3人のおじさんと古城くん1

ノリでしかないので本当に立ち位置とか気にしないでください。

マジでダンディなオっさん、略してry


時間的に言えば金曜日の放課後にあたる学生にとってはある意味至福の時間。

土曜の授業が無い生徒の大半は土日の予定を決め、休日に胸を膨らませ、部活動に加入している者は練習や試合に精を出すであろう。

 

授業が終了し、担任からのありがたいお小言をHRで貰い終えた後、やや浮き足立った様子で皆帰宅や移動を始めていた。

 

そんな中ヘッドフォンを首に掛けた尖った髪質の少年、矢瀬基樹は額に冷や汗を浮かべながら廊下を全力で走っていた。

すれ違う教諭の注意する声を煩わしいと感じながら叫び気味に謝罪しつつ、止まることなく駆けてぬけていく。

 

不自然にならない程度に生徒の間をすり抜け、能力を使っているのをバレないように気を遣いながらも加速して階段をひとっ飛びで降って行き、今まさに靴を履き替えて下校しようとしていた友人兼監視対象である暁古城を呼び止めた。

 

 

「待て古城!」

 

 

急に叫んだせいか周りの生徒からの視線が集まってしまったが、そんなものは今どうでもいい。息を整えながらも、呼び止めた途端に肩をビクッとさせ、背中を向けたままこちらを見ようとしない古城を見て、疑念が当たっていたことを確信する。

 

 

「おい古城。お前、今からどこへ行くつもりだ?」

 

 

「…………矢瀬。」

 

 

いつもの眠そうな表情とは違い、この友人にしては珍しい焦ったような様子で首だけで振り向く古城。

 

基本的に睡眠が優先のためにバツの悪そうな顔はするが居眠りや運搬してもらっていることなどの怠惰が原因の事柄に関してはもはや本人が諦めているレベルの為に気に掛けない古城は、自分に非があると自覚しているので謝罪までのスピードが迅速である。

 

それでもまぁ御察しの通り悪びれることなく反省も虚しく眠気には勝てないので変わらないのだが。

 

しかし、ネガティブな様子もなく問いかけに対しては答えずに俯いたまま言い訳を考えているのがばればれな古城はある意味レアな為矢瀬も少しだけ驚きつつも逃さない為に古城から意識を外さない。

 

仮にも現役で、裏の組織に所属し、能力や家柄故に世界最強の吸血鬼の影の監視役を任されている人物であり、どんなに気を抜いている状況だったとしても平均男子高校生よりも貧弱な古城に勝ち目は無い。

 

上手い言い訳が浮かばずにジリジリと下がりつつある分の距離を埋めながら矢瀬は確保に向けて前進する。

 

しかし古城もここで捕まるわけにはいかないと抵抗を見せる。

 

 

「確か役員会の会議があったはずじゃなかったか?急がないと遅刻するぞ矢瀬。俺は真っ直ぐ帰って寝るだけだ。」

 

「それは昨日のうちに終わってるぜ古城。真っ直ぐ帰る…ね。このクソ暑い気温の中一人で帰れんのか?」

 

 

「ぐ…。浅葱に借りてる日傘があるから大丈夫だ。」

 

 

「そんなこと言いつつこの前照り返しの熱で茹ってたじゃねーか。いい加減白状しろよ。もうネタはあがってんだぜ。」

 

「……黙秘権を行使する。」

 

 

「なら反撃するまでだ。凪沙ちゃんからのお願いでな。ちゃんと馬鹿兄貴を連れ帰ってほしいってよ。」

 

 

「…うぐ。」

 

 

一番突かれて痛いところを挙げると黙り込み、もはや手が無くなったのか正面に向かい駆け出す古城。

 

しかし、それを読んでいた矢瀬が逃すはずもなく校門を出るまでもなくすぐに追い着いてしまった。だが、何故か捕まえることなく少しの間後ろにぴったりと着いて並走する矢瀬。

 

 

(……ふむ。いい運動になるかもな。)

 

 

オカン的思考で逃げようとする古城をしばらく走らせ、案の定すぐにへばったのを支えて倒れないようにする。

 

 

「ほい、いっちょあがりっと。とりあえず水分補給がてらそこのカフェで吐いてもらうぞ古城。正直に答えれば一杯奢ってやる。」

 

 

「………無念…だ。」

 

 

やはりいつもの光景になってしまったようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

喫茶店に入って一息ついたところで本題に切り込む。

 

「それで?今回は誰に目をつけたんだ?」

 

 

「……公園にいたオジさん。」

 

 

「……またか。もう見ず知らずの相手に目ぇつけんのやめろよ。」

 

 

というのも、古城の困った悪癖の再発のことを指す。怠惰メーターが振り切れた時に突然思い出したように再発するこの癖は、始末に負えないことに予測がつかないので、その度に後手に回って対処するしかないのだ。

 

それというのも、古城の怠惰メーター(気分次第)が振り切れた状態で対象に出会うと、言葉にすると難しいが、庇護されようと企むのだ。

 

 

過去の事例で言えば、壁に寄りかかって寝ていたのを通りかかって介抱してくれた富豪の老人に、お礼がてら毎朝の散歩中の話し相手として(信じられないことに早朝に起きて)同行し、仲を深め、好感度を巧みに稼ぎつつまるで孫のように違和感なく快適な豪邸に招待され、いつの間にやら快適な空間で惰眠を貪る環境を整え、怠惰な将来を送ろうと画策していたり。

(その後苦労人達の奔走により解決。)

 

 

また、別の日には学校帰りの心優しき少女に干上がっているのを発見、救護され、その後給食のデザートの話から意気投合し、甘いものを分けて貰ったりしているうちに光源氏計画を練りかける。

(即座に頓挫させた。少女にはその後強くダメな男に貢がないように言い聞かせた。)

 

 

前回で言えば唐突に英語の授業終了後、見た目は完全に年下な英語教諭を母と呼ぶなどして怒り狂わせていた。

 

 

 

勘違いしないで頂きたいのだが、古城に悪気はない。むしろ相手に対して恩返しをしようと善意のみで親身になろうとするのだ。しかし、いつのまにか世話を焼かれているうちに恐ろしい事件になりかけているだけである。

 

……常識が無いわけでもないので知人達によるブレーキが無かったとしても手遅れの一歩手前で考え直していたであろうが。

 

 

「俺も一緒に謝ってやるから、今度は何したか言ってみろよ。」

 

 

「…確か花畑の近くで寝てたら白衣で眼鏡掛けたオッサンが来て飲み物をくれたんだ。教会跡に用があるからって言ってて……よく会うようになって……研究の愚痴とか聞いたりしてた。」

 

 

「どっかの研究者か…。それで?」

 

 

「…同僚に危険だとかで否定されて自棄酒してるとこに付き合って、娘さんの為の研究なのにどうして…って感じだったから不器用だなって俺でも思ったから、娘さんの想いをきちんと聞いてくださいって言ったら、なんか納得してくれた。」

 

 

「うわぁ…ひでえなオチが読めたぞ。」

 

 

「それで疎遠になりがちだった娘さんと仲直りできて自分も目が覚めたからって、お礼に甘いものを奢ってくれてな。難しい話聞いてるうちに眠くなってきて、娘さんが中学生とか話してた辺りで意識落ちてた。それで、起きてからこれからも空いてる場所を是非昼寝に使っていいと言われて部屋とかいろいろ譲られそうになったから流石に断ったら、限定メロンパンの開発をするから娘さんと一緒に味見役を頼まれた。妹さんとかもゆくゆくは連れてきてくれって。」

 

 

「外堀を埋める準備始まってんじゃねーか!何気にいい話だったからツッコミ辛いわ!」

 

 

余りにもテンプレな展開にすこし聴き入ってしまっていた矢瀬だったが、明らかにキナ臭い。危険な研究とやらを止めたのは喜ばしいことだが、ここで黙っているとおそらくマズイことになるのは想像に難くないので、楽天的に友人に春が来た〜などと構えてはいられない。

 

そして甘いものに釣られて疑いなく返事をしたであろう古城の姿を想像して、目を瞑りたくなった。

 

どうするか、と考えていると、古城から耳を疑う一言が。

 

 

「もう一人は…」

 

 

「ちょっと待て!!他にもいたのか!?」

 

 

「ああ、うん。厳ついオッサンと神父のオッサン。」

 

 

「……そのおっさん達の話も一応聞かせてくれ。」

 

 

ここまでの話でもインパクトがあったが、まだ続きがあるという事実に、はぁ〜とため息をついた矢瀬は、頭を抑えながらも古城の話の続きを促した。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

厳ついオッサンの方は、仕事の下見で来てたらしいんだけど俺が昼寝してたベンチの隣に黒い防犯ブザーみたいのが落ちてたんだ。

 

それで黒服の人達がバタバタ走ってたのを見かけたんだけど寝起きでボーッとしてたから見逃しちゃってさ。

 

落とし物っぽかったから渡せば良かったかなーと思い直して立ち上がったとこに獣人の人が近くの屋上から飛び移って来て、着地した時の風圧で俺が倒れたのを起こしてもらったんだっけか。

 

 

「悪ぃーな坊主。ちっとばかし急いでてよ。部下がやらかして無くしたもん探してたら狗どもに見つかっちまってな。許してくれや。」

 

 

んで、その獣人が厳ついオッサンで、急いでたのにきちんと謝ってくれたから気の良いオッサンだなぁって思ったんだ。そこでもしかしたらと思ってオッサンに聞いてみたら、見事にその防犯ブザーを探してたらしくて感謝された。

 

その後は厳ついオッサンとは偶然バラバラの場所で行きあったりして、なんだっけか。カモ?カム?フラージ?とか言って私服のオッサンと政治っぽい話も聞いたりした。

 

ぶっちゃけあんまり難しい話はよく分からんかったし、そん時昼寝にいい風が吹いてたからそのままの気分で答えたりしてた。失礼だったんだが、やる気ない日だったからグダッとしたまま。

 

そしたら、

 

「分かるぜ坊主。だよなぁ…俺もそうだった。ああ、いつのまにか変わっちまったんだよなぁ。あっという間でよぉ。それにもなんとか慣れたと思ったら今みてぇになっちまって。戦争屋の俺みてーのがこんな中で生きられるかってんだよなぁ……たくよぉ。」

 

 

多分オッサンも惰眠が好きだったんだなって共感したから、嬉しくなってな。もう少しだけ話したくて凪沙が朝飯にホットケーキ焼いてくれたのを思い出して、オッサンの朝飯はなんだった?って聞いたら、笑ってたんだ。

 

甘いもの好きかって聞かれたから大好きだ、けどそれ以上にだらける時間が至福だっつったら、酒が飲めるようになったら奢ってやるから今はこれでも食ってろって海外の高めのチョコをくれてな。お返しに変わった駄菓子なんかを会った時は交換するようになった。

 

 

なんかしらんが吹っ切れたらしくて無駄に溜めてた給料を投資したり宝クジとか買って散財しようとしたら当たりまくって、仕方ないから募金に回してるらしくてな。いたずらがわりに打ってみるか!ってタクシーで連行されて目隠しした状態で黒か赤って聞かれたから適当に答えてたらいつのまにか寝ててな。起きたらニヤニヤしてたオッサンが今度から全部飯奢ってやるって。礼もあるし部下の人のためにも遠慮すんなってことで偶に美味しいものごちそうになってる。

 

 

 

んで、神父のオッサンは、連れの子とはぐれてたみたいで、俺も凪沙とはぐれてたからなんとなく一緒に探してたら凪沙もその連れの外人の女の子と偶々会ってたみたいで合流したら、難しい言い回しでお礼を言われたんだ。

 

日本語苦手っぽいみたいで、イムベキシマの中にも一筋の…とか言ってたから絃神島ですよーとか答えて、愛国心じゃないけどなんとなく観光なら良い場所案内してみたら、困った顔で悩んでたんだけど、相談された。

 

盗まれたものを取り返すためにきたらしいけど、それの周りにもそれに頼って暮らしてる人がいてどうとか。

 

話聞いてたら小学生の時にお小遣いを貯めて買った枕をフリーマーケットに出されて同年代の子が大事に使ってたのをみて妙な気分になったのを思い出してな。

 

子供の時って理不尽に思うだろ?冷静に考えてみたら馬鹿らしいと思うけどさ。

 

でも、その時って許せないーとか思ってたりしたんだよな。でもだったらこっちも正当に意思を伝えたら良いって答えたんだ。

結局、子供の言うことって論理立てて言っても流されちまったりしたから笑えねーなってオチがあったんだけどな。

 

連れの子を見てオッサン外国語でいろいろ言いながら帰ってったんだよ。

 

偶にこっちに観光で来た時はお土産貰ったりしてる。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「いや、ツッコミどころが多くて無理だわ。お前と話してそのオッサン達に何が起こったんだろうな?」

 

 

「…俺にも分かんない。」

 

 

「だよなぁ…。後始末…いや、後調べか。はぁ…」

 

 

「そろそろ帰ろう、矢瀬。足が攣ったから連れてってくれ。」

 

 

「……やれやれだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




〜〜入れようとしてやめたラスト

後日、ロタリンギアの宣教師や黒死皇派のトップ、メイガスクラフトの研究者の名前を見て矢瀬は泣きたくなったという。


あくまでも知らないダンディなオッサン達の事ですヨ?




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ポリポリする古城くん


遅れて申し訳ありません。

ごちうさの映画見たテンションで書きました。
あとガルパンの番宣の歌めっちゃいいですね。

いつもどうりの低クオリティでお送りしております。


 

 

本日はカレンダーの日付に則り棒状のお菓子がよく売れる日である。

 

相方のいる諸君であれば友人、知人、家族、恋人、兄妹などで分け合って食べるとそれだけで盛り上がることもあるだろう。

一人を好む同士であれば、音と味を楽しみながら独り占めの快楽に酔いしれるのも良しだ。

 

 

 

では、そんな日においての古城の様子はどうなのだろうか。

 

 

 

いつもどうり怠惰に過ごすのだろうと?それも間違いではない。というよりかはむしろ正解なのだが…。

 

しかしイベント事に疎いことに定評のある古城はともあれ、事あるごとに盛り上がりたい年頃の者たちはそんな製菓会社のイベントを逃しはしないのである。

 

そのため、前日までに買い溜めした者や当日の朝にふと寄ってみた店のレジ横に並ぶ一箱を買ってしまった者も含めて、見渡してみれば皆それぞれ持ち寄ったお菓子をポリポリと小気味良い音を立てて齧っていた。

 

 

そんな朝、テンションの上がった妹殿によって口の中にそれを突っ込まれて起こされるというやや危険な起こされ方をした古城は現在モノレールに乗って登校していた。

 

運搬役の友人は所用により席を外しているため現在は珍しく一人………ではなく、通う方向が違う筈の友人とクラスメイトが複数人集まっている。

 

 

というのも、寝ぼけ眼を擦りながら先に出発した妹を追いかけていた古城だったのだが、通勤ラッシュの朝の時間帯の人の波に弾き出され妹とはぐれてしまったために、次発の列車を待っていた古城。

 

そこで、偶然…?偶然…ということにしておこう。偶然にもまさかの友人である藍羽浅葱嬢に声をかけられ、流れるように餌付けが始まった。

 

浅葱嬢にとっては、あーんなど当然であるので人が集まっていようと問題ではない。

古城も古城で、箸を動かすよりも雛鳥のごとく口を開けていた方が楽であると思っているので気にもしない。

 

そもそも頭が働いていないのだが、口の中に好みの甘味を感じて本日の栄養補給はこれで充分だなぁという感想は湧いてきていたので成されるがままになっていた。

 

 

こんな状況であれば周りからの舌打ちの一つも聞こえそうなものである。

 

が、当人達からすれば日常な一幕。

 

周りから見れば、守りたくなるような笑顔で1本ずつチョコ菓子を与える少女の幸せそうな雰囲気と、生命活動に積極的ではない少年の好みの味によって引き出されたほんやりとした幸せそうな表情。

 

 

ーーどうしてなのか、邪気が起きないのは。

 

 

独り身の者たちからしても邪魔できないのはきっと、背後に餌付けする親鳥と餌を待つ雛鳥を幻視したからであろうか?

 

 

 

それはさておき、僅かな時間とはいえ目立っている二人組を目にした彼らのクラスメイトは当然寄ってくる訳だ。

 

男子生徒達は、知人に向けて挨拶をしようとは思ったが、女子が3人寄れば姦しいと言うが倍以上集まれば近寄りがたいので遠目に。

 

もはや見慣れてはいるが、その手の話に飢えている女子生徒達は黄色い声をあげながら二人を包囲しつつちょうど来た次の車両にのりこんで、現在に至る。

 

 

「はい、暁くんこれも食べてー。」

 

 

ポリポリ。

 

 

「こっちも新しい味だよ!どうぞ!」

 

 

モグモグ。

 

 

「暁さん、塩っぽいのも食べてみる?」

 

 

カリカリカリカリ。

 

 

 

 

「「「……なんか、◯スっぽい」」」

 

 

 

「……美味しかった。」

 

 

 

散々されるがままだと嫌がる性格の者もいる難しい年頃のはずの古城であるが、楽しそうで何よりである。

 

 

そうした様子で会話は弾み、周りからの視線も集まるが、僅かな時間なので許して欲しいところだ。

 

 

「ねえ、浅葱さん!アレしないの?アレ!」

 

 

「あ、アレって何よ?」

 

 

「わかってるくせに〜。両側から咥えて食べ進めるアレだよー。」

 

 

「な!?そ、そんなことする訳!!………あ、後で…。

 

 

 

 

「「「藍羽さん可愛い〜!!!♡」

 

 

 

ほおを染めながら答える少女はまさしくな感じであったが、それに応えるべき相手はというと、

 

 

 

「暁くんちゃんと答えなきゃダメだよ!」

 

 

「??うん、ご馳走さま。」

 

 

 

ボルテージの上がっていない周りは、その返答に((あ、こいつ分かってないな))と感想を抱いたが、テンションの上がっていた少女達の会話は最高潮に盛り上がったという。

 

 

 

そんな一幕であった。

 

 

 

 





短いですが、そんな話です。ちなみに作者は最後までチョコたっぷりの方が好きだったりします。



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古城くんは(冬)眠りについた1

最近布団から出るのが辛いですね。
サブタイからネタバレしていくスタイル。
凄く短いですがご容赦を


さて、どこから話したものか。

 

そもそもこの物語は、人工的に造られた第四真祖と魔術と機械技術によって浮かぶ人工島にまつわるお話である。

 

当の本人がアレな為に忘れがちになってしまうが、魔族特区というだけで何かを企む者達で溢れかえっているのは言うまでもない。

 

大抵は本人の気付かぬうちに事件としてとりだたされる前に終わってしまうことも多々あるが…。

 

 

 

友人兼監視役の能力者は悪態をつきながらもそのフォローに走る。

 

任務に就いた当初であれば、信じられるかそんなもん!と

 

現在であれば、毎度毎度懲りねえなぁ、と

 

 

 

だがしかし、いかに目立たずとも、その怠惰さを呆れられていたとしても、第四真祖が生きているということが重要なのである、

不死身の吸血鬼に対してその表現が当てはまるかどうかはこの際置いておこう。

もっと正確に言えば、他の真祖を含めて、第四真祖が意思を持ち、その象徴たる眷獣を十全に使いこなす、という点が重要だ。

 

なぜなら、それだけで世界の危機には十分だからである。

 

もう一つの島自体ににまつわるエピソードについてはもはや挙げる必要はないだろう。

封印なり過去の事件なり未来の空白なりと、多々残ってはいるものの、どこかのAIはため息を吐きながら一人寂しそうにデータを吐き出す。

〜〜知ってるぜ?どうせもう出番無いんだろ?

そんなことはない、と信じたいところだが、高性能である故に気づいてしまっている。

事件が事件足り得ないままに終わらされてしまうならば、存在自体が誰かの事件になりうるような大きな存在は企みも何もすること自体がもはや無意味なのではないか、と。

 

それ故に残っているのは、魔族特区としての看板、誘蛾灯の役割だけである。

 

 

島を街灯に例えたが、ならば抑止力たる第四真祖は虫取り用の装置とでも言えば良いのだろうか。

 

それが撤去されればこぞって集まってくる虫達が島の内外に存在する者達だとしよう。

 

あくまでも果たしたいそれらの願いは欲求であり、本能ではないので、直ぐに装置を付け直されたり纏めて殺虫剤たる島の守り手達の手にかかりたくはないので慎重に行動するのだが。

 

けれど、強力ながらも後手に回ってしまう警備隊や組織群らだけでは集まってくることを押しとどめるには足らない。

 

やはり、活躍せずとも公には知られていない第四真祖は必要とされているのだろう。多分。きっと。

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、()()()()()()()()()という現状に、立場は違えど皆それぞれ頭を悩ませ、悲嘆にくれていた。

 

 

 

 




シリアス風味な引きをしつつシリアスなんてないんだぜ?と、ネタバレしていくスタイルを貫きたい今日この頃。
続きはそのうち。


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古城くんは眠りについた2

日が空いて申し訳ないですが、ご容赦を。


暁家の母、暁深森は過能力者であり、その能力故かどうかは本人しか与り知らないところではあるが、医療に携わっている人間である。

 

その為、息子や娘の健康を維持しようという想いはありつつも、仕事兼趣味に比重がよりすぎている故に、生活能力が乏しいのだが、そこはご愛嬌だ。

 

しかし、家に帰る機会が少なくとも、自身を含めてトラブルや厄介事に事欠かない暁家の住人である子供達の為に、自身の持ち得る能力を活かして、よく、診ては、悩みを聞き、聞いては、見守っている。

自身が関わってきた患者や相手は少なくなどなく、一般的な人の縁とは異なるような人生経験を積んできているとも自覚している。

 

その為、大抵のことでは彼女を驚かせるには値しないのだが…。

 

何故か、眠りから目を覚まさない古城に対して己の無力さを感じていた。

ただ、眠っているだけならば珍しくもないが、呼吸も少なく、体温も低下し、心拍など偶に思い出したようにする程度まで下がっているのだ。

 

植物状態に近いかもしれないが、微かにではあるが脳は機能し、非常に僅かだが身体は反応を返す。

 

いつも通りに叩き起こそうとした妹や友人が苦心していたが、あまりにも起きなかった上に安らかな寝顔を浮かべていたので、割とまずい音のする一撃を入れてしまったのだが、それでも起こすことは叶わなかった。

 

通常の医師ならば匙を投げるか、患者だということを忘れて肘打ちでもくらわせているところである。

 

しかし、彼女はその優秀な能力と読み取った情報を読み解く頭脳、ある種の霊的な共鳴にまで及ぶその感覚から、最先端の技術よりも深いところまで、古城の状態を確認できてしまった。

 

 

結論として言うのならば、冬眠である。

 

 

餌も少なく、厳しい寒さの冬を越すために、秋の間に巣穴を準備して長い期間眠りに就き、春を待つ。

小動物やクマのイメージが強いだろうか。リスなどは木や土の中に巣穴を作り、木の実を溜め込んで冬の間はじっとしていると聞く。

 

冬眠中の動物達ですら、身に危険が迫っていたり危害を加えられたりすればすぐさま、逃げるか反撃するかを選ぶのだが、いちようとはいえ動物であるところの彼は野性をゴミ箱にシュートしてしまっているので危機感知能力が一切無い。

 

故に、年中暑いこの島で冬眠などと言う暴挙に出られるのだろう。

 

脱水症状にならないように、何度も点滴を取り替えられているのだが、血に眠る眷獣達が、『お、スポドリじゃん!ゴチになりやーす』とばかりに、吸収していくので追加が追いついていない。

 

ーーー 不死身なんだからほっとけばいいのでは?

 

……などと言われようとも、放っておけない優しい母なのである。多分。恐らく。きっと。メイビー。

 

だから、部屋の隅に放置されていたりはしない。きっと寝返りうったんだろ。(スッとぼけ

 

微動だにしていないけれど、無意識に床擦れを起こさぬようにしているのだろう。そういうことにしておいてもらいたい。

 

 

 

ならば、 結局のところ、一番心配しているのはどこなのか?

 

 

「はぁ……。うちの息子、卒業できるのかなぁ…?」

 

 

 

留年……出来るのだろうか?やはりまだまだ問題は多いらしい。

 

 

ただし、それを心配しているのは周りの人間達だけである。本人にも気にしろと言いたいところであった。

 

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

所変わって彩海学園では、友人である矢瀬も溜息をついていた。

 

 

「浅葱〜?」

 

「古城……古城ぅ……。」

 

「あはは〜、ダメだこりゃ。矢瀬くんどうにかならへん?」

 

(俺が助けてほしいところなんだが。)

 

クラスメイトが古城成分不足で机で潰れている中、矢瀬は学校中から拾える同じような状態の者達の声を拾いながらウンザリしていた。

 

古城成分って何だよ…。もっともなツッコミをしながら全体を探っていく。

妹である凪沙は既に心を無にしているので何も聞こえない。

 

これだけならば、日常モノの一部で済まされるのだが、良くも悪くも有名な魔族特区なこの島である。

 

外からも中からもこぞって動き出すのだ。良くない者達が。

 

 

今なら、島でも世界でも獲れるぞ!!頑張れ悪役共!

 

 

 

もちろんそんなことを許すわけにも行かないので今日もキーストーンゲートでは、ポンコツと化したアルバイトの天才ハッカーに代わって、様々な人々やAIが涙目になり、魔導犯罪を取り締まる側では主戦力の魔女がコーヒー片手に古城くん人形に話しかけている為、こちらもピンチであった。

 

 

 

「まーじで、勘弁してくれよ。」

 

 

 

諜報活動が山積みになっていく冬の間は、結界を増やすために、能力を引き上げる化学薬品と共に胃薬を噛み砕いている矢瀬と島の守り手たる警備隊の一同であった。

 

 

頑張れ能力者と住人達よ!妹殿がコタツを出す許可をするまでの辛抱である!

 

 

 

 

 

 

 





結構また空きます。

皆さんは……、コタツを出すのはいつですか?
私は、出られないのでだしませぬ。


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気だるげ補充回 1(随時加筆



思ってたのと違う!!という感想を持たれた方。(←いつもだろ。)
安心してください?私もです。

そんな戯れ言はさておいて、ガルパンはいいぞ。




 

季節は冬。いかに常夏の島であろうとも夜になり日が沈めばいささか吐いた息が白くなる程度には冷え込む時期である。

 

 

 

一部の意見ではあるが、外国から引っ越してきた者は声を大にして言っていた。

 

 

「雪綺麗だけど、寒すぎワロタ。薄着のオシャレとか日本人頭湧いてんちゃうの?」

 

 

聞いていた周りの人々は思っただろう。

 

 

(タンクトップ一枚で外出てるお前の方が湧いてんだろ)

 

 

 

 

まぁつまり何が言いたいかと言うと、常夏の島の住人であるところの、環境の変化に対して一般人のレベルよりもかなり低い耐性しか持たない人物。(正確には人間ではないが)

 

 

 

本話のメインである人物、暁古城は冬のこの時期は動けないということである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ実際のところは、動きたくないだけであるが。

 

もちろんのことだが、そんな愚行が許されるほど暁家の纏め役(妹)は甘くはないんだぜ? …という訳で、いつも通りやっちまってくだせぇ凪沙の姉御!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、話を戻すが、妹の英断により大きめな炬燵に放り込まられてから暫くして意識の戻った古城は、めでたくコタツムリへとジョブチェンジした訳ではあるが、意識がある状態でしっかりものの妹に逆らおうものならば、兄としても、第四真祖としてであろうとも、決して勝てないのである。

 

 

 

頭の良い眷獣一同は、仕えるべき主人を決して間違えたりはしないのだが、逆らってはいけない存在に対しては手のひらはドリルのように回るし、尻尾は引きちぎらんばかりに振られている。

 

 

そんなところは主人に似ているとも言えるが、その原因が主人の威厳が無さすぎるのか、妹のカリスマがあり過ぎるせいなのかは分からない。

 

 

 

……一体一体が世界を滅ぼすに足る力を持ち、顕現するだけで甚大な被害を出すという、制御できないほどの力を持つ眷獣達が、懐柔されるという選択肢がある時点で既に、怠惰な主人の影響が出ているなんて事実は認められない。

 

無いったら無い。

 

 

 

 

そんな訳で学生であるのだから登校しろよ、とツッコミを躱しながら、古城は意識が戻ったばかりのための念の為、という自宅療養を名目にして冬の休業までズルズルと持ち込む作戦を画策していたりする訳なのだが、

 

そんな声を聞いた友人の矢瀬は苦笑しながらも、意識が戻らなかった間、割と心配をしていたので、家にいるのならば一日ぐらいは休ませてやるか…。と、情けと優しさから玄関先に見舞い品を置いて、登校して行った。

 

 

…矢瀬よ、少しぐらいは怒ってもいいんだぞ。

 

 

友人の為、暴走して家に押しかけようとする狂人達への対応も含めて、優しい能力者は今日もいろいろと頑張っている。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

所変わって、絃神島の周辺の海ではさかんに漁が行われている。季節柄、沖で冷やされた海水が寒流として流れ込み、普段の暖かな水と混ざり合うことで魚種も増え、掻き入れ時となるこの時期なのだが、だが、それは通常時であればの話である。

 

 

昨日までは漁師達の熱い陣取りゲームが繰り広げられていたが(鮪漁感)、今現在は閑散としており、船の一隻も見られない。

 

 

その代わりと言ってはなんだが、海を一望できる監視塔の人員は増え、衛星や魔術による監視網は非常に警戒レベルの高い状態で敷かれていた。

 

 

 

警戒網を敷いて忙しく連絡を取り合っているのはもちろんだが、アイランドガードの面々とと派遣された海自のメンバー、そして、黒スーツを着た役人や白衣を着ている企業からの研究員などである。

 

 

本土であれば、熊でも眠りにつくこんな日に一体何を警戒し、動き回っているというのか。

 

 

 

 

……漁船と言えば、某ワンサマーな主人公さんなどは作戦中に紛れ込んでた密漁船を庇って結果的に死にかけたりしていた訳なのだが、この島の付近に…否、恐らくはこの人魔ひしめく世界で警戒網を潜り抜け、危険を承知で漁に出るものは居ないだろう。

 

 

若干オツムの弱い者達が船に乗っていたとしても、視界に入らなくとも分かるほどの脅威がゴロゴロと転がり込むのが日常茶飯事な魔族特区の住人たちがすぐさまどかしに行き、時間も取らせず排除するであろうことは想像に難くない。

 

 

海の男達や島の住人の彼らからしたらもはや慣れたものである。

 

新入りが言う。それでも成果をあげねば死んでしまう、と。

 

ーーそうか。ならば一瞬で死ぬか、苦しくとも死ねず、肉体が消し飛んだ後も苦しみ続けるような魔術や儀式に巻き込まれてこい。安心しろよ、きちんとど真ん中に送り出してやるからよ。

 

 

(漁師達のツンデレ誤訳 : おめえ、おっかねえこといってんじゃねえぞ?悪りぃことは言わねえから、専門家さんに任しとき。命あっての物種なんだから、若いうちから無茶すんのはいいが、無謀はやめとくがええぞ。)

 

 

 

 

 

海面からせり出す謎の海魔達を目にしながらも、漁師や住人達は、自主的に避難誘導を手伝い、厄介払いを引き受ける。

 

 

連絡など取らずともアイコンタクトで通じる闘う者達の信頼がそこにはあった。

 

 

 

 

 

海の男達は今日も非常事態と闘っている。古城が、炬燵でみかんを食べている間にも、異常は日常へと置き替わり、何でもない1ページに記されていくのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






島の皆んなが頑張っている中、古城くんは部屋でぬくぬくしているよ。というだけの話。

まとまってないのでそのうち修正します。


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登校がんばる古城くん

遅れてすんません。法事やら講演会やらなんやらあってと言い訳しつつ、ぼちぼち不定期ですがまたどうかよろしくお願いします。がっつり空くこともありますが何卒ご容赦を(おい






息を吐けば白く、吸い込めば眉をしかめる朝の冷えた空気に嫌気が指し、今日も二度寝を決め込もうとしたが、始業の鐘は待ってはくれない。

 

社畜では無いが、学生である古城にサボりなど許されず(主に妹に)、布団を剥がされ、逃げ込んだ先の大きめのコタツをひっくり返され、最終手段のトイレに籠城を決め込もうとしたが、家庭内ヒエラルキーの最下層にいる古城にはプライバシーも人権もあったものではなく、昔ながらの硬貨で鍵を捻じ上げるやり方で扉は開かれ、用を足した後の下着姿のままで放り出されてしまった。

 

冷たい玄関先で、口にトーストを突っ込まれている間に、ボタン式の上着と降ろされたままだったズボンを回収され、素早く制服姿に換装される。

 

健気にも無言でひたすら毎日兄の身支度を代わりに行う凪沙さんは天使である。

 

島のどこかでは、作者と同じくそんな電波を受信しながら何名かの過能力者達が幸せな気持ちになっていたりしたかはさておき、凪沙は襟の内側にカイロを挟み、古城の首に長めのマフラーを巻く。

 

朝の状態の古城が一動作をする間に、妹は3〜5倍程度作業が進んでいる。もしかしたら、どちらかが時間制御でも習得していたりするのだろうかと思う光景だった。

 

 

待ったをかける間も無く無言で鞄を持って来てくれた妹に対し、靴を履かされながら古城は哀愁を漂わせながら思う。

 

(凪沙…最近朝は無言だな……。).

 

兄としては兄妹としての会話が無いなと、寂しく思いながらも、ほぼほぼ自業自得であるので何も言えない。

 

 

実際最初の頃は反論していた気も……いや、記憶には無いが、きっとあったと思う。

 

 

「あの、凪s」

「遅刻するよ?ほら、早く行った行った!気をつけてね」

 

 

「よr」

「夕飯の買い物は特に無いから大丈夫だよ。煮込みハンバーグね。」

 

 

「かz」

「起きる直前の体温でも平熱だったから大丈夫。」

 

 

「………。」

「浅葱ちゃんもう少しで来てくれるみたいだよ。」

 

 

「…行って来ます。」

「行ってらっしゃい古城くん。」

 

 

訂正、会話が必要無いだけだった。もしかして怒っているのではないかと勘ぐったが、呆れられててはいても怒っているならばこの妹ならば真っ直ぐに伝えて来てくれるか、と思い返す。

 

この優しく、暁家自慢の妹に逆らうなどという選択肢は存在しないし、最近魔王みたいに言われているけれど、やはり可愛く、愛らしい、笑顔が素敵な自慢の妹に嫌われたりしたらお兄ちゃんは立ち直れないので、さっさと学校で休もうと決めた古城。

 

いつもならば扉の前でもう一悶着ぐらいはあるのだが、素直に歩み始める。

 

(早めに折れた方が労力少ないしな(ボソっ))

 

ドアを開けた瞬間から感じている冷気に負けたわけじゃない。戻れないから進むだけである。ほんの少しだけ生まれた黒い反骨心など数秒で消し去っていつもの調子に切り替えると、本人からすれば早歩き、周りからすれば錆びたベルトコンベアー並みのスピードで通路を歩く。

 

 

意気込んでも学校までは遠いもので、何度心が折れそうになっただろうか。何度その歩みを止めそうになるだろうか。何故朝は来るのか、どうしてそんなに眠いのか。もしもし亀よ、亀さんや。いやいや、兎さん。それチートすぎひんか?…さよか。

 

自分の心を一番知っている自分自身に聞いてみてもその答えは帰ってこなかった。だから、これはきっと世界の誰にも分からない。だって、(俺/古城くん)にも分からないのだから。

 

毎朝通学にそんなに考え込むやつ居ねーよなどと突っ込んではいけない。通勤するのに目のハイライトを犠牲にしなければならない会社員だっているのだ。

 

だが、結局は行かねばならないのだ。腹をくくろうではないか。

 

仕方ない、と、冷たい空気を吸い込んで、今日も元気にダラけよう。

 

 

 

 

 

 

 

________

 

 

 

 

 

 

 

心の中で格好つけたは良いが、階段を下りながら吸い込んだ息が思っていたよりも冷たかったためか、「ヒュー、カフッ…」と、呼吸が荒ぶる古城。

 

早くも若干きつくなってきたのか思考がネガティブ側に戻り始めたのもそこそこに、ふと思い返す。自分の兄としての威厳というものは、いったい何時頃から消えてしまったのだろうか。凪沙は何時頃から真祖の眷獣を従えるようになってしまったのか。

 

昔からかもしれないが、一縷の望みにかけて思考の海へと潜ってみる。

 

 

思い返す。

 

 

幼い頃……兄の背中を追いかける可愛らしい妹だった。

 

 

思い返す。

 

 

小学生……やんちゃをしていた。心配そうにしながらも自分の背中に顔を隠していた人見知りする方の子だった。

 

 

思い返す。

 

 

中学生……同時期に運動部に入った。…バスケが…したいです。

 

 

思い返……うん?何かを受信したような…気のせいか。

 

 

高校生……というか今だが。今…よりも少し前、何かがあった…ような。それこそ、忘れてはいけないような大事な、大切にしなければならない何かが「おっはよー!古城!」

 

そこで、思考を遮るように誰かが登場する。

 

''寒い時こそギュッとたい''などと書いてある乙女な雑誌の記事を間に受けて勇気を出して抱きついてきた藍羽浅葱嬢である。

 

後ろから抱きつかれた為に、背は高いが猫背で項垂れている古城よりも浅葱の方が頭は上に来るため、古城の視界には染めた色だがしっかりと手入れの行き届いたさらさらとした金髪が広がる。

 

何気に羨ましいシチュエーションに通りがかりの男子学生は目元に涙を浮かべながら走り去っていった。

 

視界いっぱいに広がる金髪を見て、何かが浮かびかける。

 

 

そう、確かこんな透き通るような金色の……

 

 

そこまで考えて、テンパったせいでいつも以上に力が入っている浅葱さんによって古城くんの膝の方が先にガックリと折れてしまい、今度こそ没頭していた記憶漁りから引き戻された。

 

 

「浅葱……重い…。」

 

「なっ!?違うわよ!正月食べすぎたりなんかしてないわよ!?

 

「…言ってない。」

 

「違うのよ、温かいものが美味しいなんて珍しいのがいけないのよ。財布の減りが早いことに気付いた時には遅かっただけで、その後はちゃんと戻したわよ?だから、増えてななんてないから。大丈夫だから。そうよ、大丈夫、大丈夫。」

 

「…聞いてないな。」

 

 

 

 

何を考えていたのか忘れたので歩み始めた古城の居ない方向へ顔を向けて言い訳しながら隣を歩く浅葱とともにゆっくりと登校していく。

 

本土ならば、季節柄何も不思議ではないこの季節。だが、常夏の島に発生したとあれば、嫌な予感が溢れ出すような、真冬の寒さ。

 

絃神島は今日も不思議であふれています。まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり、凪沙。」

 

「ただいま!古城君。今日は寒かったねぇ〜。お互いにお疲れ様。」

「風呂沸いてるから入っちまえよ。」

 

「お、気がきくね。ありがとお兄ちゃん。」

 

「偶にはね」

 

「じゃあ、先に貰っちゃうね。」

 

「あいよ。……あっ!」

 

「どうしたの?」

 

「…金のエンゼル。交換してなかった。」

 

「え!?出たの!?」

 




寒さの理由ですか?きっとしまい忘れた眷獣とかじゃないっすかね(すっとぼけ

⚠︎スタッフ一同(矢瀬さん他)が頑張って元に戻しました


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ある日の補習(強制)の風景

馬油ラーメンが気になって食べてみました。

びゃあああうまぃぃぃぃ。゚(゚´Д`゚)゚

ラララ ルァ〜メン 大好き フーフフフさん
いつものルァ〜メェン 味噌が食べたい〜


は置いといて、駄文注意です。





「おい、暁古城。土曜の午後から補習だ。それまでにこれを読み込んでおけ。」

 

 

学生にとっての週の真ん中の昼休み、午前中からうたた寝をしていた古城を呼び出したその人物は、開口一番、分厚いプリントの束を差し出しながらそう言った。

 

 

「……む「無理などとは言わせんぞ?試験中に爆睡していた貴様の自業自得なのだから。」…はい。」

 

 

彩海学園高等部の英語教諭を務める南谷那月。年齢とは裏腹に中等部の制服を着ていても何の疑いももたれないであろう容姿を持っているその人。裏の顔は魔導犯罪を取り締まってる凄い人である。

 

 

「せいぜいありがたく思うがいい。貴様のせいで休日が潰された私の怒りを理不尽にぶつけられないだけな。」

 

言いつつ、鉄製の扇子で座っている古城の頭をペシペシと叩く。若干力が強い。

 

 

「…悪いとは思ってますよ。那月先生。」

 

「南谷先生と呼べ、たわけ。」

 

 

古城にとっては会話のテンポが早く頭の回転が速い人物は基本的には苦手とする部類である。妹を筆頭として。そしてかつ、目の前の人物には過去何度も助けられており、頭も上がらない相手であるうえに、今回の英語の試験は古城にしては珍しく、しっかりと勉強をして臨んだが、午後の良い風の威力には勝てずに眠ってしまうという結果であったため、何も言い返すことはなかった。

 

 

未だにちゃん付けをして怒られている古城の世話係と違い、会話するごとに叩かれる方が労力を使うと学んだ古城くんは、敬意を持って先生と呼んでいる。

 

まぁ、怒られるのを承知でそう呼んでいる者達も親愛の現れなのだろうが、そんか感覚に疎い古城からすれば、叩かれるのが好きなのだろうかとぼんやりと思っていたりもする。

 

 

 

もっと厨二チックな部分を言えば、彼女は監獄結界なる世に放つととんでもないことになる者達、それも捕まえておくことの難しいレベルの犯罪者などを閉じ込めているところの主人をしている。

 

 

ここに居る彼女は現し身であり、本人の見る夢である。本体の彼女は、ずっとその場で眠り続けており、第四真祖に対する隠し球とも言える役割を持っている。

 

 

その人となりは謎に包まれ、あらゆる凶悪な魔導犯罪者達からも恐れられている畏れ多き空隙の魔女様である。

 

 

という、中々にややこしい事情をもっている上に、かなりの重要人物な訳であるのだが、意外なことにそのフットワークはかなり軽い。

 

というよりかは、彼女の得意とする魔術式の一つが空間転移、空間跳躍などの類であるため、止められる者が居ない。

 

そのため、一部の彼女の素顔を知っている者達からは、その容姿と関連付けて、暴走特急魔女っ子なつきちゃん、宙を馳ける合法ロリ、などと揶揄されている。

 

……口に出したものは即刻恐ろしい目にあっているが。

 

 

本人にその気があるかは不明だが、婚期はまだまだ先であるだろう…。

 

 

ちなみに、学内の生徒からはかなり人気が高い。整った美貌は言わずもがな、その人気の理由の多くは彼女の性格によるものである。

 

男子生徒は言うまでもなく、女子生徒、また、教員達からも、その隠しきれない人柄の良さにより多くの人気が集まっていた。

 

決して甘い人物では無い、むしろ厳しい。

 

当然であるが、今も最前線で闘っているプロの気質、雰囲気が甘いはずがない。

 

軍人の如き厳格さと言葉遣い、信賞必罰を体現するかのごとく、校内での持ち物や校則違反の取り締まり率も高い。生徒指導を任される前からである。そのため、しがらみも生徒からのヘイトも溜めやすい立場なのだが、しかし、どこか暖かい、面倒見の良いとても優しい人物として周知され、荒れている生徒の厚生も彼女にとってはお手の物であった。

 

 

 

そんな男女問わず人気が高く、カリスマ性を持つ彼女だが、その素顔を知る者達でも彼女の表沙汰には出来ない趣味を知るものはいない。

 

 

ほんの一部を除いて、だが。

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

さて、そんな一部の人物に不幸にも当てはまってしまっている古城が、2日間で覚えきれる量ではないプリントに恨みをぶつけながらも目を通し、迎えた土曜日。

 

補習当日。午睡の眠気と日差しにも負けず健気に登校した古城だったのだが、それだけでも割と体力は使い果たしていた。

 

 

「何故試験前からヘトヘトなんだ貴様は…?」

 

「…あつ…い……。」

 

正午の日差しを浴び、アスファルトの上のミミズの様に干からびかけている古城を見て呆れる南谷先生。

 

冷房を入れてやろうとするも、そもそも今日は部活動も含めて休養日であった。単位的に受けざるを得ない補習者を除いて、校舎に人の気配は無い。

 

職員も生徒も居ない状況で空調設備も動いておらず、省エネ、節電の時代に無駄に使うことも憚られたのだろう。

 

「はぁ……。仕方がないか。行くぞ。」

 

「…?」

 

 

古城が疑問を浮かべている間に、スッと周りの景色が様変わりする。

 

ファンシーなぬいぐるみが並ぶ優雅な一室。高価な家具類に涼しげな室内。偶に垣間見えるムチや鎖、開けたくないオーラを発する室内に不釣り合いなダンボールから目を晒せば、眺めの良く誰もが羨む高層マンションの最上階。

 

南谷先生のご自宅であった。

 

 

「これで多少は集中できるでだろう?落ち着いたらそこのテーブルで解き始めるがいい。」

 

戸惑うのを見越していたのか、色の濃いめな冷たい飲み物を渡しながら、声のあがらない古城を尻目に正面の席でくつろぎ始める那月。

 

彼女が座ると同時にピコン!と、恐らく携帯の着信音が響く。

 

 

 

はて、この場合は、どちらなのだろうか。

 

 

女性、しかも教諭の自宅に図らずも訪問してしまった高校男子か。

 

魔術行使により誘拐された憐れな子羊か。

 

 

だが、高級感のあるソファの座り心地と室内の適度に保たれた温度。

少し多めに焚かれたリラックスできるお香

 

一気に場所が変わり、何かを言おうとした古城だったが、直ぐに試験問題に取り掛かった。

 

とりあえずは、速攻で解き終わって、ふかふかのソファで少しでもくつろぐために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「zzz……」

 

「…採点が終わるまでは多めに見てやろう。」

 

 

授業も眠って居て、大切な試験を寝て過ごしたせいで補習を受けている生徒なのか怪しくなる程の集中力で問題と、オマケとして出された課題までものの数分で片付けた古城は、快適な空間でそのままくつろぎ始め、いつもどうりに眠り始めた。

 

その様子を見ていた那月は、呆れながらもそのまま採点を始め、そして、ものの見事に全問正解。思うところもあり、怒りを通り越して呆れ、ため息と共にもう少し寝かせてやるか、と、邪気のない寝顔を携帯でパシャり。

 

 

「これだけ出来るのならば普段から発揮せんか馬鹿者め。」

 

実に厄介な問題児である。教諭としてはどうするべきなのか、と目頭を押さえてため息をつき、ついでにカメラでパシャり。

 

 

まったく呆れたものである。

 

正面のこれが自分の警戒しなければならない、もしかすると自身が最後の砦とならねばならない第四真祖なのだから。

 

このアホ面でキュートな寝顔の一枚や十枚、写真に収めて馬鹿にしてやらねばなるまい。

 

本当に呆れた生徒である。

とりあえずは教育方針を考えるべく、大きめのビデオカメラで録画を開始するか。

 

 

「そういえば、私が眠れない時用に持っていた睡眠薬をどこかのコップに入れていたような気もするが、さて…。いかん、忘れた。気を使うなど慣れんことはするものではないな。」

 

 

ソファに仕込んだカメラの録画は一旦止めて無ければな。

 

こんなに凛々しい面も出来るのだから、普段からもう少し気を引き締めておけというものだ。

 

タイトルはそうだな……真剣な仔犬とでも書いておこう。

 

 

「…zzz……クシュッ……zzz…。」

 

「む?冷えすぎたか?はぁ、手間のかかるやつだ。」

 

 

吸血鬼が風邪なんぞひくのか疑問だが、唯でさえ頻繁に体調を崩す奴に風邪なんぞひかれても困るからな。

 

布団ぐらいは被せてやろう。

 

 

と、内心の微妙な変化により優しさが垣間見えたたのだが、途中で気づいた。

 

 

こいつは、最初に少量の汗をかいていた。つまり、そのせいで冷えてしまったのではないか?

 

だとすれば、眠っている間は比較的に体温は保たれるが、細かな体温調整ができず、寝汗でさらに冷えてしまうのではないか?

 

 

空調は切ったがそれでも汗を拭いて着替えさせてやらねばなるまい。

 

 

まったく、ガキのごとく手のかかる奴だ。

 

 

ああ、まったく仕方のない奴だ。

 

 

着替えは、メイド服か燕尾服しかなかったが、サイズが合えばなんでも良かろう。

 

 

まったく気は進まんが、脱がしてやるか。

 

 

 

さあ!

 

 

 

 

「うん…?あれ、寝てたか?あ、すいません。那月先生。」

 

 

「ふん。丁度採点が終わったところだ。見事に寝落ちしおって。普段からこれぐらいの点数を取るようにせんか馬鹿者。」

 

 

「…うっす。ところで、このメモリーカードは?」

 

 

「次のリスニングの試験問題の録音用だが?ククッ。せいぜい、励めよ」

 

 

「うえ…。了解です。」

 

 

 

その後、同じように学校へと戻り、そのまま荷物とともに下校する頃には、辺りも若干の夕涼みな気温となり、古城の静かな補習の一日は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 





途中で視点なのか地の文なのかわからなくなってきましたが、眠気があかんのでしゅーりょー。
気になったら直します。

若干ピンチだったって?いやいや、真面目な南谷先生に限ってそんなことあるわけないでしょうよ。
記録内容も第四真祖の調査の一環としてきちんと彼女の自室にプリントされて保管されていますから。





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衝動の行方

更新遅くて申し訳ねっす。
そして、誤字報告ありがとうございます。感謝の極み。

評価やら感想やら誤字報告やらも含めて…有難や。

まあ、お読み頂いた皆様ならいつもながらの低クオリティかつ亀更新にも慣れてくださってると思われますが(ボソッ

酔っ払いの現実逃避と妄想全開(寝落ち有り)ですが、ぼちぼちよろしくお願いします。



と、いう前書きは置いといて。

気合い!入れて!行きますよ〜スヤァ(-_-)zzz



 

どんな生物にも欲求というものがある。

 

それは人間に限った話ではなく、なおかつ、種類も様々だ。

 

人間も含め動物は勿論のことだが、植物であろうとも、思考があるかは不明であるが、(多分無いと思われる。だって、思考能力って脳機能らしいし…)呼吸や光合成を生命活動と捉えるのならば、それは、生存本能に近しいものは無いだろうか。

 

 

先ず、肉体…つまり、臓器から生じる欲求と心理的な欲求に分類される。

 

呼気、飲水、食物、性的、排泄、感性、傷害回避…etc

 

 

獲得、保存、秩序、保持、優越、承認、顕示…etc

 

簡単に例を挙げだが、肉体面から生じるもの、心理学で聞く様なもの。

細かく分かればまだ数は多く、社会的目線から見るとさらに細分化できるらしい。

 

 

この様に、人間の中でもかなり多いこれらは、普段は理性と共に有るものである。………偶の暴走は今は置いておこう。

 

だが、理性的に活動している中、日常生活の中からも欲求が生まれているのが常である。

 

…間違っていると断言されきることはない筈なので、深くは掘り下げないでいただきたいところである。

 

 

そんな中、これまた人それぞれで比率は違う訳ではあるが、時に抑えきれないほどの欲求が表面に現れ、衝動的に行動を成してしまうことがある。

 

衝動買いなどが最たる例であろうか。

 

だが、衝動とは、本能から生じることもある訳であり、欲求から衝動が〜とは、断言出来ないのが本音の部分である訳なのだが…。

 

 

なぜかと言われれば…、そも、理性とはなんぞや?と聞かれて答えられるだろうか。

 

 

厨二病を嗜んだものならば、誰しも胸のソウルが高鳴ったんだよ。だから、今こうしてここにいるんだ!と、言ってくれるかもしれないが、もう少し待って欲しいと切に願う…。

 

 

 

では改めて。

 

理性とは、感覚能力に対して概念的に思考するものであり、道理によって物事を判断する心の働き。

 

ならば、その心の働きは、脳の働きによるものであり、肉体に依存していることになる。

が、肉体自体はただの物質であり、神経による反射活動や遺伝子の情報などに近しいものが本能と見なせば、理性は、精神活動として独立して機能しているのではないだろうか。

論点がずれている?深くは触れるなと言った筈だが?

 

文句があっても飲み込んで欲しい。なぜならば、作者には理解できないからである。まる。

 

 

さて、結局のところ、何が言いたいのかと言えば、理性も本能も、卵か鶏か、どちらが先かを考えるように、相互作用を持っている。

 

 

ぶっちゃけて言えば、似たようなものであると思う。

 

 

 

話を進めよう。

 

 

 

 

 

それでは、人以外、例えば、魔族はどうであろうか。

 

 

人よりも肉体的に優れている種族が多いが、獣人であれば、本能で行動するものが多いであろう。人の特性を持ちながらも、彼らは、野性味が溢れている。

 

 

獣人以外、例えば、天魔という種族。

 

彼らは、肉体面でも、精神面でも、人間よりもはるか昔から高度な文明ないしは、歴史を作ってきた。

精神活動がさかん…もとい、複雑なのは確かだが、なまじ寿命が長いせいなのか、異能を持っているゆえなのか、彼らもまた個による武力行使、闘争本能、破壊衝動…といったそれらが過ぎたために、現在はその数が数える程にしか残っていない。

 

人間と比べるようで不謹慎なのだが、どちらが良いとはいえないので勘弁して欲しい。

 

実際、今残っている人間だろうが、滅びかけている天魔だろうが、化け物に喧嘩をふっかけて騒ぐという点においては否定できまい。

 

 

また、吸血鬼、D種もそんな例に漏れず、真祖のような例外を除けば、永く生きているものほど、力が強いものほど、吸血鬼としてのプライドが高く、衝動で暴れていはしないだろうか。

 

長生き故に知識はあるが、死に辛いが故に、慢心もすれば、沸点も低い。ましてや、肉体が強ければその分、要求される理性の桁も上がる訳で…

 

 

人魔含めて、厄介なところである。

 

 

 

うむ。それでは、というかやっとだが、本題に入ろう。

 

吸血鬼であり、人であった、そして現在は真祖と成った、暁古城はどうなのか?

 

本来であれば、彼は…否、彼らは、島を、身近な誰かを助けるために、悩みながらも、ソレによって力を目覚めさせていた。

 

そして、献身的な仲間達との絆、ほのかに香る青春。

 

と言った話だったであろうか。

 

 

 

 

はい。では、うちの古城くんはどうか?

 

 

先ず、理性と本能云々の話だが………。

 

三大欲求が全て一つに絞られている辺りで察していただきたい。

 

次に、暁古城が悩んでいた原因……第四真祖の力の由縁たる眷獣達を目覚めさせるためのトリガー。

 

すなわち、吸血衝動だが。

 

……吸血行為をする理由は、霊的な素質を持つ巫女の血を媒介として、眷獣達に相応しい主人と認められることが必要であるからだ。

 

 

相応しい…主人……?

 

 

まぁ置いておこう。では、普通の高校生であった暁古城が、第四真祖と成ってしまった件について。

 

(そのことに関しては、是非、原作を読んで欲しい。泣ける。)

 

だが、古城は魔族として登録されておらず、その後も人間の高校生として生活を送っていた。

 

しかし、彼を巡って襲ってくる敵がおり、また、島を巡って襲ってくる敵がいたため、否応無しに、彼は闘う選択肢を選んだ。……彼にしか分からない、約束を守る為に。

 

 

 

だが、ここでよく考えて欲しい。

 

 

 

そんな苦労性な人物は、果たして件の吸血鬼であっただろうか?

 

 

もしくは、そんな大層な事件が、起きていただろうか?

 

 

起きていたとしても、彼は直接その問題の解決に尽力…ないしは、関わっていただろうか?

 

 

………。

 

…………………。

 

…………………………………。

 

 

 

まぁきっと、古城くんにも吸血衝動の原因の性的欲求ぐらいあると思う。

 

食欲だって無い訳じゃ無いのだから。ただ、睡眠の方が優先されるだけで。

 

 

そして、苦労性な人達には黙祷を捧げつつ、彼と共に過ごす、可憐で健気な少女達(一部年齢が違うが)。

 

降りかかる厄災を物ともせず、古城が知る前に消し去っていく理不尽の権化。

 

真祖?だからどうした、と言わんばかりに寧ろ彼を襲…否、肉体的に不安の残る彼を優しくお待ち帰……、手助けする優しい心の誠実な彼女達。

 

 

……真祖とは到底思えないのは内緒である。多分関係無い。

 

 

そしてその行動のうち、無意識な面も多々あってなまら恐ろしい。

 

 

具体的には、いつの間にか終わってたテロとか、暴かれていく個人情報とか、彼の衣服はいつも新品の様に綺麗であるとか。

 

 

まあ、どうとは言わないが。

 

 

衝動とは、時に恐ろしいものである。まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この物語は、どんな話であるだろう?

 

もし、思い浮かべようとするならば、 傷つきやすい年頃の少年少女の心に配慮して言葉を選んで欲しいものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

「え?ちょっと、大丈夫古城!?」

 

「うん…何時ものことだ…。」

 

「あー、前から鼻血出やすいんだっけか?ほい、ティッシュ。」

 

「ありがとう…。」

 

 

 

 

 

 

朝のホームルーム前、少年が血を拭いたティッシュをゴミ箱に捨てたらしいが、収集所にそれは見当たらなかったらしい。

 

 

 

 

ちり紙は紛れやすいので、大した話では無いだろう。

 

 

 

 

それだけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ」

 

 

 

 

 

 

 





伏線風味!(特に何も無い)


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なんちゃらシーワールドにて

お久しぶりです。
いつもどうりの亀更新とグダグダ感満載です。

どうでもよい言い訳と私事はさておき、なんとなくやってたので見てきたパシフィック・りむるん うp雷神によってめちゃくちゃテンション上がりました。

おつまみ片手にこのなんとも言えぬロボ萌(燃)えをユニコーンを見ながら解消する今日この頃


…自分で書いといてなんだけど、パシフィック+転スラってなんか合いそうな希ガス。



追記 運営が矢瀬家も噛んでるってことにしといてください。じゃないと、何で小学生1人でここにおんねんってことになるんで。

ではまた。






 

 

 

 

 

 

 

「おお〜!なかなか広いじゃねーか。」

 

「そだな…」

 

 

真っさらな青空と程良く照りつける太陽。絃神島の住人にとっては珍しくもない光景なのかもしれないが、普段と場所が違うだけでも、感じられるものが変わってくるのが人間である。

 

 

「なはは。古城が一人で来たら速攻迷子だったかもな!」

 

「そだな…。」

 

 

普段住んでいる居住区は幾つものギガフロートが繋がる絃神島の中心寄りに位置している。その為、この島の住人の多くは海に浮かぶ人工島に住んでいる言えども案外潮風や大きな水辺というものは見慣れていなかったりもする。

 

 

 

「チラホラと出店も多いな。……匂い嗅いでると腹減ってくるわコレ。」

 

「そだな……。」

 

 

 

用事もなければ進んで出歩かないような人物、先程から気の無い返事を返している者のようにヒから始まりリで終わる五文字の単語に当てはまる方々は特にそうなのかもしれない。

 

 

「そだな…。」

 

「おい、古城。俺まだ言ってねーよ?どこに同意した?」

 

 

とは言っても行動力のある学生か妙な用事のある関係の者達を除けば、大概の学生はそんなものかもしれない。

せいぜいが、本土に渡るために船や飛行機に乗る際に見かけることがあるくらいだろう。

 

海側は工場や発電所などが多く、他は漁師や職人たちの縄張りである。釣り好きの者であってもなかなかあの熱気には入って行こうとは思うまい。

 

一部が腐ってようがいまいが、ここは魔族特区。

 

そこで暮らす人間が、(特にソレに触れ合う一部)強かでない筈もなく、あいつらは怒らせたらあかんというのがこの島で住む者の暗黙の了解であったりなかったり。

 

 

「セミオープンでこの量の人っつーのもなかなか凄ぇもんだよな。客に運営に警備にも魔族もかなり多いか?」

 

登録証の腕輪を見ながら内心で、(面倒ごとが起きなきゃ良いが…)と心配する苦労人。いつもお疲れ様です。

 

「そだなぁ……。」

 

が、そんな平穏無事を祈りながらも何故かかなりテンションが低い上に目のハイライトが消えかかっている隣の相方の様子を見る。

 

 

先程からの生返事にどこか哀愁を感じ、何も起こらない素敵な休日は今回もパスかな、と苦労人の彼は何かを察していた。

 

 

「……なぁ、古城。クエン酸と重曹と砂糖と水で作れる飲み物は?」

 

「そーだなぁ……。」

 

「くくっ…正解だ。」

 

 

元凶を生み出す元となることの多い(尚本人に自覚無し)ただ静かに眠りたいだけの第四真祖は、そんな友人の気遣いに、光の死んだ目の焦点を合わせて今出来る最大限の感謝をしながら、恐怖に震えている。

 

滅多にとれない貴重な休日(監視役は除く)にテンションが高めだった矢瀬も、考えないようにしていた、これから訪れるであろう厄介事の処理に少しだけ憂鬱になる。

 

返事が変わらない古城に振ったボケもどこか虚しい。

 

 

「「はぁ………」」

 

 

 

古城の目のハイライトの死んだ理由たる人物を遠くに見つけた二人。

 

行き交う人々も心なしかこちらから距離を置き始めている気がする。

 

世間は冷たいが、まあそんなものである。

 

 

 

「 お待たせ〜。悪いわねあんたら。」

 

「ごめんね、古城君、矢瀬さん。結構混んでまして。」

 

 

そんな肩を落とす野郎二人組に、着替え終えた女性組も合流する。

高校生ならば水着で喜ぶ場面でも、生憎そんな感性をお持ちの方は、チラチラと流し目を送る金髪の乙女だけであった。

 

綺麗どころの少女達が合流した事で、逸らされていた周りの視線も戻ってきたが、落ちた気分は戻らない。

 

むしろ、嫉妬の目線で肩が落ちるぐらいである。

 

 

「おお、華があるな。」

 

「そだな…キレイキレイだ。」

 

「それは、ハンドソープだぞ?古城。」

 

「ははっ…はぁ…」

 

「悪い…流石に…」

 

「いいよ……」

 

 

 

 

「いやいやいや!なんであんたらそんな落ち込んでんのよ!?もうちょっと他に言うことあるでしょ!?」

 

「あはは〜。浅葱ちゃん。これはダメだよ。ほっとけば治るやつだけど聞こえてないから。」

 

「え〜…」

 

 

何故か着替えに行く前にはまだ、眠たげな片方とはしゃいでいるもう片方だったというのに、両方とも沈んでいるのか。

 

色々といいたいことはあったが、古城ソムリエ(妹)の言葉は絶対である。

 

しかし、せっかく羽を伸ばしにきたというのに、これは頂けない。

 

恋する乙女、藍羽浅葱としてどうこうはともかく、遊びに来たのだから楽しまなければなるまい。

 

 

「ま、いいわ。ほら、いつまでも落ち込んでないで行くわよ。私と凪沙ちゃんが先に行っちゃって、迷子呼び出しとか聞きたくないから。」

 

 

膝を抱え出した古城の腕を掴んで立ち上がらせ…ようとしたが、立ちくらみなのか力が入っていないので抱きかかえるようにして腕を組む。

 

 

「ちょっと、ほんとに大丈夫?」

 

「…あぁ。ごめん。ダイジョブ。ダイジョブ。」

 

「はぁ〜。目に光が無いわよ…。」

 

 

若干羨ましい状態の古城に周りの視線が集まるが、笑顔のままの妹による凪沙セキュリティが発動。

 

「ん?」

 

「「「ヒッッッ!?!?」」」

 

野次馬達がは中学生の少女とは思えない迫力に急いでそれぞれの目的地へ動き始めた。

 

ーーーん?ウチの兄に何か御用ですか?

 

命が惜しくば、副音声は聞かないことをオススメする。

 

 

そんな中、古城の気に当てられて隣で落ち込んでいた矢瀬もいい加減に気を持ち直して立ち上がる。

もちろん一人で立つ。矢瀬さんは強い子だから。

 

「俺だけ扱い酷くね?」

 

若干隣がラブコメってんだが介護してるんだか分からないが、少しだけ甘酸っぱくもある展開故にそう見えるだけどある。眼鏡の彼女がここにはいないので仕方のないことなのだ。

 

そしてセキュリティは厳しいが、色恋にも目がない凪沙はガッチリとした腕抱きを見逃さない。

 

「おおー!浅葱ちゃん攻めるねぇ〜。」

 

「そんなんじゃないわよ〜。こうでもしないと来た意味なくなっちゃうでしょ?さって、じゃあ最初どこ行く?」

 

「…外のベンチで横になりたい。」

 

「アホか!何言ってんのよ、まったく。泊まりこみとは言っても広いんだから今日も動かないと回りきれないわよ?」

 

「そうだよ古城君。古城君の運動も兼ねてるんだからちゃんと回らないとダメだからね?私はカノちゃん達と合流してまわってくるから。…浅葱ちゃんと矢瀬さんが居るから大丈夫だと思うけど、ホテルに引きこもったりなんかしないでよ?」

 

 

「…うぃ。」

 

 

「うん。じゃあ、また後でね。」

 

そう言ってスキップで歩み出す凪沙。水着の上にパーカーを羽織っている古城と同じ格好の背中を見ながら兄として思う。

 

( 人混みで迷子にならないようにな?)

 

…この兄と妹で迷子になる確率が高いのがどちらなのかは言うまでも無い。

 

 

それはともかく、そろそろここを離れて優雅に眠りたがったが流石に妹には逆らえない。そして物理的にも腕を確保されて居るので逃げられない。そんな現実また気分が下がりかけるが、ループは良くないので、歩き出そうと決意。

 

こういう場合は、流れる水のごとく逆らわずに進んだ方が良いのだ。

 

 

テンション高めの友人達と共に偶にはちゃんと学生らしく元気に遊ぼうではないか。

 

 

「…とりあえず、なんか食べるか。浅葱も限界近いみたいだし。」

 

「人のことを腹ペコキャラみたいに言うんじゃ無いっての!」

 

「でも、目が屋台から離せてないぜ?」

 

「元樹もうっさい!」

 

「あ、すまん。浅葱。テストの分お返しに奢るって言ったけど、俺だと失くすから凪沙に預けたままだ。」

 

「む〜。なら一回合流する?」

 

何が何でも、は言い過ぎであるが、古城に奢らせるというのは、古城の知り合い達にはほぼ無いに等しい事である。

 

それ故に、普段なら寧ろ自然と古城を甘やかしてしまう乙女達やなんだかんだと世話を焼いてしまう友人達は、古城に餌付けを無意識で行おうとする。

 

無論、覚えていようがいまいが、領収書なり貰い物なりはなるべく覚えるように言い含められている古城。財布を握る妹の手でお返しを用意され、届けに行って倒れかけてまた世話になるまでが一サイクルだ。

 

しかし、この日の浅葱嬢は古城から言いだした事であり、かつ、苦労人のAIに取って来させた電子媒体の雑誌により、黒いところを封印した乙女思考故に、普段ならば全力で欲望全ツッパなところなどなく、想いを寄せる相手から贈り物ならばなんでも嬉しいのだ。

 

健啖家な自身を分かってくれている点についても喜ばしいと思っている。

 

そう思いつつ、なんとなしにご満悦な浅葱はどうせなら合流してから全員で交流しようと思い立つ。2人きりもよいが、学生らしく遊びたいのも本音である。

 

 

「…とりあえず、ここから離れよう。」

ソワソワし始めた古城に対し、

 

「待って古城。元樹は動けるわよね?」

 

首にかけたヘッドホンを指して矢瀬に確認を取る。すると、すぐに意図に気づく矢瀬。

 

「ん?…ああ、そういうことか。オッケーだ。」

 

携帯で連絡を取るのも手段だが、全員が防水の高性能の端末ではなく、人混みの中を歩いているならば直ぐに連絡が取れるとは思えないため、向かった方角に矢瀬の能力で範囲内を探りながら進んだ方が早く出会えるという考えだ。

 

 

最悪、監視カメラやらGPSやらから位置を割り出すことも出来るが、まぁそこは適材適所である。凪沙達が直ぐに連絡に気づかない可能性とそして体調の悪そうな古城を少し休ませようという判断をする。

 

 

「凪沙ちゃん達を呼んでくるから少しここで休んなさい。元樹が頑張ればすぐだから。」

 

「俺をフル活用する気満々だな?」

 

「あんたの分のツケはチャラにしてあげるわよ。」

 

「お、いいねぇ。ならオーケーだ。」

 

「え、ちょ…」

 

「じゃ、行ってくわね。」

 

「待っ…」

 

「まあ、そう時間はかからんだろうから安心しろよ。最悪、荷物場か部屋で会えるだろ?」

 

「お、おう?」

 

 

迷子を心配しているのは自分自身もそうであるので納得しているうちに進んで行ってしまう2人。

 

そして取り残された古城。

 

「…もういい加減に逃げy」

 

と、歩みを始めたところで、

 

 

「あ、お兄さん。み〜つけた!」

 

 

「…あっ」

 

 

今一番聞きたくなかった小学生の声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ…」

 

「どうしたのよ元樹」

 

「いや、なんでもねぇ…」

 

(やべぇ…結瞳の字のことをすっかり忘れた!古城今1人じゃねーか!?……まぁ、まだ来ねーだろ…。来ねーよな?さっきまで敷地内にそれらしい反応も無かったし。俺の感知をくぐり抜けたりはまだ出来ない…はず…。)

 

 

 

矢瀬が心配した通りに、今日も久しぶりに出会うお兄さんに興奮して種族特性が暴走して理性のタガがぶっ飛んでいる小学生にどこぞの真祖が絡まれたりしていたが、

 

 

今日も絃神島は平常運転である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぇ、お兄さん。

 

覚えていますか?

 

ーーいいえ、きっとお兄さんは眠っていたから知らないと言うのでしょう。

 

でも、喫茶店で一度話しただけの私に、いけないことをしようとしていた私に、止まる勇気をくれたのはお兄さんなんですよ?

 

 

 

 

社長さんはきっと悪い人でした。私を使って悪魔を、いえ、兵器を呼ぼうとしていたのですから。

 

けれど、私も…もう一人の私も、社長さんを利用して、騙して、裏切ったんです。

 

 

リリスって、私って、そういう生き方しかできないんだって、そう言われてきました。私もそう思っていました。

 

 

両親からそう言われて、あの人達を眠らせてしまって、もう戻れなくなってしまった時から、消えたい、と思いました。

 

 

邪魔が入らないようにコッソリと。

 

社長さんがそう言った潜水艦に乗って、もう一度この島に来た時、ああ、もう終わりなんだって思ってじつはすこしだけ寂しかったんです。

 

 

コッソリと私と同じ、孤独な目をしたお兄さんのことを思い出したりなんかして、この島に迷惑をかけたくないなって思ったんですけど、もう私は止まれませんでした。

 

丁度その時には、大きなフラスコみたいなところに入っていましたしね。

 

でも、お兄さんもズルいんですよ?

 

私と同じ、寂しそうな目をしていたのに、お兄さんの周りには人がたくさん居るんですから。

 

どうして第四真祖なんて私よりも厄介な立場なのに、そんな風に居られるんですか…。

 

なのに、迷子になってるなんて。

 

まったくもう、しょうがない人です。

 

 

 

 

 

 

何故あの時お兄さんが海に居たのかは私には分かりません。

 

 

でも、最後の最後に私の臆病を読み取った莉琉と私との間で反発が起きて、飲み込まれる直前にレヴィアタンの魅了が解けてしまって…。

 

 

噛み砕かれて、船は沈んでしまって、私は一番外側に居たので、そのまま海に落ちていきました。

 

消えたかった筈なのに、それでも怖くて、どうしようもなくて。

 

海は冷たいだろうなぁ、なんて思いながら。

 

ああ、でも、終われるのかな、なんて思っていたんです。

 

 

 

 

 

 

 

でも、丁度ボートで寝ていたお兄さんの上に落下した私は生きてました。

 

呻いてたお兄さんは、驚いたような顔をしていました。

 

当たり前ですよね。

 

でも、レヴィアタンは怒ったままでしたから、すぐに大波にでも攫われてしまうか、はたまた直接沈められてしまうのは当然でした。

私はお兄さんの身の心配をする余裕もなかったので、ただ、ただ、呆然と目の前の光景を見ていました。

 

どうしよう…なんて、呟いても答えは出てこなくて、思考は止まっていました。

 

 

でも、お兄さんは、キョロキョロと周りを見て、しばらくぼ〜っとしてから、もう一度寝る体制に入りました。

 

 

現実逃避なのかなぁ、なんてそれを見て思っていたら、

 

 

 

「……難しく考えないで、眠らせて。」

 

 

そう言ってくれました。

 

 

ほにゃっと、幸せそうに眠る顔を見ていたら、私もなんだか眠くなって来て、ずっとずっと何かに怯えていた私も、久方ぶりに安心して眠ることができました。

 

レヴィアタンもそもそも無理やり起こされて怒っていたのですから、また眠りにつきたいのかな、なんて、思ったら、その時だけ、冷たい兵器の心と繋がった気がしました。

 

私は夢うつつでしたけど、元がAIである莉琉は眠りません。けれど、私に付き合ってくれた私。莉琉もきっと、眠りたかったのかもしれません。

 

2人でレヴィアタンに届けたのは、無理な魅了ではなく、この暖かい気持ちでした。

 

 

その時丁度、私が来たことで少し狭くなったボートで寝苦しかったのか、お兄さんは、私を抱き締めて枕がわりにしました。

 

異性に抱き締められていることとか、また暴走してこの人も不幸にしてしまう、なんて思えるほど頭も回っておらず、ただ、

 

ここに居ていいんだって、そう言われているような気持ちになって、嬉しかっんです。

 

 

お兄さんの腕の中はとっても暖かくて

 

お兄さんの眠る顔がとても優しくて

 

お兄さんと一緒に眠っているのが安らかで

 

 

 

 

レヴィアタンは、帰っていきました。

 

無理矢理起こして、ごめんなさい。

 

 

今度は一緒に皆んなでお昼寝したいね。

 

 

 

ふふ。波に揺られながらレヴィアタンとお兄さんと私で日向ぼっこしながらお昼寝できたら良いですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、お兄さんを探していた管理公社の人がすぐに迎えに来て、ボートで眠る私とお兄さんを回収してくれました。

 

 

 

助けに来てくれた管理公社のおじさんにおばさん、お兄さんの妹さん、私を引き取ってくれた矢瀬家、子供扱いする元樹のお兄さんには不本意ですけど感謝しています。

 

能力の使い方のアドバイスを貰いながら、学校を平穏に過ごし、お兄さんに何度も会いに行きました。

 

凪沙さん、凪沙お姉ちゃんにも可愛がって貰いながら、お兄さんのお世話を学びました。

 

 

通い詰めすぎて、怒られたりもしましたが…。

 

 

ただ、私と同じく莉琉もお兄さんに懐いてしまい、度々私と身体の取り合いをしていたりなんかして。

 

 

 

 

いろいろとありましたが、私はお兄さん、古城さんのおかげで、今日も元気です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ、お兄さん?私とイイコトし……ちょっと莉琉何言ってんの!?あ、ごめんなさいお兄さん。皆さんがくるまで少しここで……2人きりになりましょう?悪いことはしな……だーかーら!!邪魔しないでって!!…うるさいわね、ウブな小学生は黙ってなさい!…いや、莉琉も小学生だからね!?」

 

 

時は戻って現在、元気すぎて、ややこしいことになっている小学生に組みつかれている古城。

 

なんか懐かれてんな〜と思いつつも、結瞳の事情は居眠りして聞き逃していたのであんまり知らないために、情緒不安定なのかな?ぐらいに捉えている。

 

一緒に昼寝する時もあれば、偶にとても怖い時もあり、蛇に睨まれたカエルとはこんな気持ちかもしれない、なんて思いながら視線を辿ってもそこにいるのは小学生。

 

最近では凪沙と協力して外に連れだされ、小学生故の元気と、小学生にも劣る自身の体力の差に悩んでいた。

 

 

本日震えていたのは、

 

レジャー施設、連れまわされる、いつもの3倍マシな気力

 

=死ぬほど疲れる。

 

 

とか、どことなく狙われているような不安が今朝からずっと付きまとい、ここについてから更に増えたからであったりなかったり。

 

だが、苦手としているのはその点だけで、それも自身の体力のせいでもあるし、それ以外では古城は好意的に受け止めていた。

 

古城にとって昼寝仲間が増えるのはとても喜ばしいことなのだ。

 

妹からの圧が分散する狙いもあるが…。

 

 

「…落ち着いてな?」

 

 

「はい!ごめんなさいお兄さん。すぐに黙らせますk…この前は譲ったんだから今日はいいじゃないの!チャンスなのよ!?…いや、でも…ふっふっふ。あんたもなんだかんだで…いや、違うからね!?何なのそのしたり顔!…あんたの顔でしょうが。いーのよ、分かってるから。…違うから!違うから!?」

 

 

「はぁ…めんどくさい。」

 

 

 

未だにギャーギャーやっている自分の年齢的にアウトではあるが、丁度抱き締めやすい枕…もとい、丁度良い身長の相手を見て、今朝からの精神的な疲れもあったので、落ち着かせる意味も含めて、とりあえず抱き締めてベンチに横になってみる。

 

 

 

 

「え、ちょっとお兄さん!?やめ、今抱きしめられたら昨日興奮して眠れなかったのもあって…あっ…やめて、頭撫でられたら……zzz」

 

 

 

 

「…すやぁ。」

 

 

 

 

 

 

それから暫く、一行が戻ってくるまでの間、ベンチでぐっすりと眠っている仲睦まじい兄妹らしき者たちがおり、非常に無防備であったのだが、あまりにも幸せそうに眠っているので、起こすに起こせなかった優しい警備員のおじさんは、ただ隣で見守ってくれていたらしい。

 

 

 

 




はい、グタグダ過ぎました。さーせん。

眠気が限界…



元 管理公社のおじさんの家族もどこぞの第四真祖が間接的に島ごと救って恩返しする未来とかあんのかな…





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新話
別枠 つまりミュータントってヤツだな!?1


おひさです。遅くてすまねぇ…
またノリと勢いと現実逃避でハッチャケたヤツです

そして最近になってしおり機能に気付いたアホな作者です。マジかー。あったのかー。いや、そりゃあるわな…。


また空くかもしれないので申し訳ナス。(いつもの

今回もいつものごとく細かいところは目を瞑ってくりゃれ。
矢瀬さん語りとか口調違和感しかなくて書きながらぞわぞわするんでそこは頑張って脳内補完する練習をして頂く方向で。(丸投げ





最近、住んでいるマンションの上の階が騒がしい。

 

 

 

 

 

私はこの魔族特区の一企業に勤める研究者の端くれだ。

 

まあ、実際研究者というのも名ばかりで、普段の業務は外部から回ってきた情報の事実確認やら照合をしているだけなのだが…。要は雑用だ。

 

ん?ああ、勘違いはしないで欲しい。特に現状に不満がある訳ではないのだ。

 

 

そもそも僕の研究は…否、これは趣味と言っていいだろう。

 

 

本土からわざわざ魔族特区に来たのも知的好奇心を満たすためであるし、今の雑用業務に進んで就こうという物好きが居なかったために、食堂で興味のある素振りをしたら偶々上司にそれを聞かれ、なかば強制的に飛ばされたようなものである。

 

そこはどうでもいい。いや、良くはないが…。

 

が、結果的に外を歩けばいろんな種族を見かけることが出来る環境になったのだ。文句を言える筋合いはないだろう。

 

しかし、いくら魔族特区とはいえ、表立っての魔族という種族に関して(多種族含む)の私の研究は、各方面への配慮に欠けるということであまり受けが良くないらしい。

 

ニュアンスって難しいよなぁ〜。そんな重たい話でも成り立ち(に付随する歴史)に首突っ込むようなモンでも無いんだけどな〜。

 

私はマッドじゃないしそこらへんは人並みに配慮するゾ?

 

人並み(私の裁量)に、ね。

 

 

言うなれば夏休みの自由研究の延長のようなものだ。

 

 

あるだろ?人の脳波を測って、通常時の行動と(緊張時の時との違いとか適当なこと)の関連を計測したりだとか、そんな感じの話。

 

それの種族別バージョンで脳波と霊力を測る。

 

という建前で、直接いろんな奴の話を聞きたいだけだったんだがなぁ…。

丁度、そんな題目で研究内容を送って、検討しても良いんじゃね?ってなった手前で、種族差別の事件が起こった。

 

なんでこのタイミングだよコンチクショウ。

 

まあ、後は察しはつくよな?

 

 

権利団体やら保護団体にも顔向け出来ないから駄目で御座います。まる。

 

 

そんな訳で、検討は先送りという名のサヨナラバイバイ。

 

分かってはいたけど、センシティブな話ってのは慎重に行かねばならんのよねって話だ。

 

 

 

 

話を戻すが、プライベート大好きヒューマンの俺は、あんまり近所の付き合いとかはしていない。

というか、両隣に人は住んではいない。

 

苦手というほどではないが、休みの時はこもって考えているのが好きなタイプであるため、今の静かなマンションに越してきたのだ。

 

 

なんでもこのマンションは大家が気まぐれでかつ奇特な人のため、趣味で賃貸経営をしていたりするらしいとの噂である。

 

不動産屋によると、緊急時のために知り合いの何でも屋と契約を結んでいるが、年中大家の副業(という名のメイン業務)に駆り出されている可哀想な方々なので、ほぼ居ない。

 

そのためか、家賃は安いが、基本対応は全て住人が各々でしているとのこと。

 

時折身元不明な者や強面なお兄さん(意味深)な方々が短い期間住んでは、大家からの誘いが来て出て行ったりすることもあるらしく、全くもって大家さんが謎の存在である。

 

 

む?ということは、そんな場所に住んでいる私も変人という認識をされている?

 

いやいや、ちげーし?

 

とある事情で閉鎖的な空間で育ったから若干世間知らずなだけだし?

 

うっせーし?変人って言った方が変人なんじゃボケェ!

 

 

 

てなわけで、元々部屋数は多いが、空き部屋ばかりの謎マンションだったので、偶々この時期に入居者が集中して、上の階に人が増えたというだけの話だと思っていた。

 

上の階ばかりに集まってきたのは上の階が人気なのだろう。

眺めが良いんじゃね?多分

 

それに、新生活にいきなり慣れろというのも無理がある。だから、暫くは様子見だ。

バタバタしているのも引っ越してから暫くすれば落ち着くだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思っていたのだが、大分人数が増えてから数ヶ月。

 

「全然落ち着かねーんじゃが?」

 

 

そう、いつまで経っても落ち着かない。というか、騒がしい。

 

業務内容的に、書類として纏めれば良いだけの時は自宅で終わらせる時もある(上司は割とそうしている。)ので、夜だけでなく、日中も騒がれると少しだけ困る。

 

ああ、勿論このマンションの壁は厚い。

 

が、困るのは音や振動ではない。

 

 

霊力とか魔力とかが、騒がしい。というか、漏れているのだ。

 

 

隠蔽術式的なものが外への対策に貼られているのは分かるのだが、いかんせん天井で接しているせいか自分のせいなのか…。

 

研究(泣)の話とは関係は無いが、まあ、なんだ。

 

私は生まれた時からそういうものに敏感な体質なのだ。

 

幼い頃に世話になった医者曰く、ひたすらに感受性が高い、らしい。

 

適切な言葉が無いため、カルテにそう書かれた。ボキャ貧な私と同じくらい適当である。

クソ長い病名(笑)をつけられるよりはマシかもしれんけど。

 

だが、今でこそ笑い話として言えるが、当時はかなり手を焼かされたものだ。

 

ひどい時には周りが人体模型の集団に見えたりする程であったため、一時期は対人恐怖症になった。

 

そんな折に獣人のカウンセラーに出会い、心的ショックで落ち着かない私に、人とは違う力の流れに触れさせることで新たな発見をくれたり、組成の異なる生物に興味が移り、それが今の自分に影響を与えていたりだとかは、今はおいておこう。

 

ピンと来なければ図鑑を片手にワクワクしていたかつてを思い出そう。生物学者なんて基本皆んなそんなものだ(偏見

 

 

 

しかし、実際問題どうしたものか。

 

 

「すみませーん。下の階の者なんですが、霊力とか魔力が漏れてるんで、ちょっと抑えてくれませんか?」

 

とでも言いに行けば良いのだろうか。

 

いやー………うーん。

 

 

相手が一般人ならまだね?(私を見て)あ、こいつ電波さんだ。

 

で、済むんだが。

 

しかしなぁ、ここに住んでる人ってことは、大抵がワケありな人らってことでしょう?

 

偶然安いから越して来たってことも無きにしもあらずだけど…。

 

魔力ダダ漏れ、結界張ってる専門家が居る、やべー集団

 

 

か、関わりたくねぇ〜……。

 

 

純粋に研究の為ならば色んなヤツと話してみたいと思うが、面倒ごとはちょっとなぁ。

荒事なんかに巻き込まれたらほぼ確実に詰むぞ?

 

貧弱な研究職(仮)を舐めるなよ?思ってる以上に貧弱だぞ。

 

む?いや、待てよ?

 

上の階で荒事が起きたら私も既に危険な位置にいるのでは?

 

 

………うん。諦めよう。引っ越すのもなんか癪だし。

 

 

しかし、ほっておこうにも今も何か巨大な魔力の塊でも出現したみたいにゾワゾワして落ち着かない。

 

 

 

……はぁ、しゃーない。様子見に行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

俺は矢瀬基樹。過能力者で絃神島の裏組織に関わる一族で第四真祖の影の監視役なんかをやってるただの高校生だ。

 

なんつってな。

 

 

確かに初めはその為に接触したかもしれんが、そんなもんはどうでもいい。それにんな大層な肩書き名乗るのなんざ俺らしくもない。

 

 

 

 

 

俺はこの暁古城(ナマケモノ)の友人兼世話役ってだけで十分だ。

 

 

 

俺は面倒ごとは嫌いだが、古城が引っ張ってくるトラブルは退屈しない。それに、もう諦めてるしな…(遠い目

 

放っておいても真祖の端くれなんだから死ななそうではあるんだが、そこいらの石に躓いてポックリと逝っちまう気がしてならない古城から目を離すことなんてできねえよなぁ…ホント。

 

おかげで監視対象といつの間にか四六時中一緒にいるわけだ。

 

俺自身でも意外なことに案外世話焼きが性にっていたらしい。

 

 

しっかり者とはいえども中学生の凪沙ちゃんには、思うところもあったんだろうが、まさか土下座で住み込んで欲しいとまで頼まれるとは思わなかったわ。

 

流石にそれは問題しかねーから隣に引っ越して来た訳なんだがな。今更ながら、もう少ししっかりしろよ…。妹にそこまでさせる兄貴が居てたまるか。

 

そんなことを思いながら、アラームが鳴り響く中平然と眷獣による音のバリアを張りつつスヤスヤと眠る古城を叩き起こす為に俺は踵を振り上げていった。

 

 

「いい加減に起きろ!古城ォ!!」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「何も蹴ること無いじゃん…。」

 

「起きないのが悪い。それにどうせ無傷だろうがお前。」

 

「いや、そうなんだけどさ…」

 

 

アラームで起きない古城を蹴りで起こした矢瀬。暁家ではもはや見慣れた光景である。

 

時刻は正午前。臨時休校故に平日ではあるがのんびりとしていたが、放っておくとこの友人は際限なく眠っているのでこうして起こしに来た次第だ。

 

妹の部活前のクロスチョップ目覚ましの数分後に、行われている矢瀬のスヌーズ(蹴り起こし)は、凪沙の矢瀬への敬意と、矢瀬から凪沙への気遣いにより、日毎に順序が変わったりしている。

 

矢瀬も当初は自室で朝食を済ませていたのだが、多忙故に追い込まれて自身に土下座までして来た後輩の中学生女の子を放っておけず、家事と家計の手伝いを申し出たのだ。

 

矢瀬が引っ越してから、否、現状が始まったのは割と最近、古城が第四真祖(ナマケモノ)に成ってからのことであるが、青春真っ盛りの中学生が、部活と家事をこなし、兄の世話を焼き、家計に頭を悩ませ、不定期に訪れる疲れて帰って来た両親のどちらかを労わり、また送り出す。

 

時期的に半年程だが、一人で全てこなしていたのだ。

 

「えへへ…私は大丈夫ですよ?元気だけが取り柄ですから。」

 

と、疲れた様子で語った暁家の良心。

 

周りの友人が遊びに行く中、年頃の中学生が兄の世話の為に誘いを断っていたのだ。

(古城本人がそれを咎めて逆に怒られたりもしていたが)

 

家庭的に早熟な矢瀬は、その話を聞いた後、涙ぐんで背負っていた古城を床に落としたりしていた。

 

そんなこんなでドタバタとしつつも、魔族恐怖症(自力で克服)を抱えた妹、第四真祖の兄(古城は隠そうとしていたがまあ、バレるわな)、影の監視役の友人から始まった生活。

 

ほんわかと助け合いながらのんびりと始まった共同生活(お隣さん)だった……のだが…

 

 

古城が休日にぐーたらとしていて家を追い出されて繁華街へと出かけ、戻って来てみれば、ギターケースからはみ出た明らかにゴツい槍を背負ったバンド少女(剣凪兼監視役)を引っ付けて帰って来たり。

 

学校からの帰りが遅く、連絡も無いので何処かで寝落ちしているのでは?と、心配になって探しに行ってみれば、ランドセルでは無い方の立派な天使の羽に包まれて眠る後輩女子と古城(裏山ナマケモノ)を発見したり。

 

浜辺でで小学生(行き場無し身寄り無し)をナンパしてきたり。

 

空き地で眠っていた時にいつの間にか鞄にはぐれメタル(錬金術師)を入れて持ち帰ってきたり。

涼しさを求めて入り込んだ何処ぞの祠でワープ現象を引き起こして、氷漬けの吸血鬼に遭遇し、取り敢えず連絡して持って帰り、風呂場で解凍したら何処かで見覚えがある少女になったり。

 

 

徐々に隣人が増え、奇妙なご近所付き合いが始まっていた。

 

前半はともかく後半は少なくとも悪気は無かった古城に対して恨み言をぶつけるわけにもいかず、矢瀬は、自身の幼馴染でもある藍葉浅葱に久しぶりに愚痴を聞いて貰った。

 

そして、古城を好いているがとても出遅れている友人のことを想い、矢瀬は密かに涙した。

 

 

男装してた娘と魔女?メル友ですが何か?

 

 

 

さて、時間は戻って平日の正午前。(皆合鍵で勝手に入ってくる為に)久しぶりに使われた気がするインターホンの音が響いた。

 

「あ?誰だ?知り合いならチャイム押さねえし、裏の荷物なら正面から来ねえし、宅配でも誰かが頼んだのか…。古城は心当たりあるか?」

 

「いや、分かんねぇ。」

 

「んー、まぁとりあえず出るか。」

 

 

今出まーすと、返事をして扉を開ける矢瀬と後ろからついてくる古城。

 

扉を開くと見覚えの無い白衣の男性が立っていた。痩せ型に眼鏡、手には何かの紙袋、それ以外に特徴の無い姿。矢瀬のお仕事モードのセンサーにも特に引っかかりはしないため、普通に訪ねて来た一般人に見える。

 

が、逆に人避けの術式もある中、暁家に訪ねてくる知り合い以外の人間が一般人と呼べるだろうか。

 

そんな疑問を抱いた矢瀬は、少しだけ緊張を隠すように警戒のレベルを上げた。

一方の古城は、見覚えのあるようなないようなあやふやな記憶を探りながらも相変わらずぼーっとしているのでこの場の緊張感はないに等しい。

シリアスの値に音が付くならば随分とコミカルな不協和音であろう。

 

思わず古城を下がらせたくなったがいちようは家主である。そして、相手の素性が知れない以上は、警戒を解くこともできない。

 

たとえ不死身であろうと古城を放っては置けないし、この場は妹の凪沙の帰る家であり、古城の寝床がある場所なのだ。もしも目の前の人物が自爆特攻しにきたとすれば、黙って見ているわけは無い。

 

わざわざ第四真祖のいる場所へ訪ねてくる人物がどんな要件で来たというのか。

 

 

考えが浮かんでは消え、なんと切りだそうか迷っていると男性の方が話し始めた。

 

 

 

「どうも初めまして。私、下の階の部屋に住んでいる者です。突然訪ねて申し訳ありません。手短に伝えますので聞いていただきたく存じます。

 

えー、非常に申し上げずらいことなんですが、色々とこの階から漏れていますので、お気をつけ願えないでしょうか?

 

あ、これは手土産のお菓子です。どうぞ食べてください。」

 

 

 

「…は、はい?」

 

 

っと、結局そのまま伝えることにした男と、割と近くにいた予想外の要件の相手に固まる矢瀬。

 

 

(あ、階段で一回助けて貰った人だ。)

 

 

見覚えのある相手を思い出した古城は割と置いていかれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ぐーだぐーだねー。

ぼちぼちヨロです


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別枠 つまりミュータントってヤツだな!?2


お久しぶりです。
かなり空いて申し訳ないです。

思いつくたびに書くのでスローペースなのはほんと申し訳。

少し忙しいのでゴタゴタが片付いたら連投するぜ〜みたいな感じ今後もぼちぼちよろしくお願いします。












 

 

ずっと会いたいと願っていたモノにふとした時に巡り合うことなんてのは結構あったりするものだ。

 

 

 

 

特に、同じ国で更に同じく狭い魔族特区に住んでいたのならば、そりゃあすれ違うことぐらいはあるだろう。

 

そこから更に関われるかはそいつ次第だけれどもね。

 

少なくとも私には無理だったよ。

 

 

それはそうだろう?魔族や能力者は基本生命力に溢れている分見た目は若々しいからね。こんか見も知らないオッさんと話なんてしたくないだろう。

 

それこそポリスメンのお世話だよ…ふふ。

 

 

まあ、会える逢えないの話は逆もまた然りだが、それはそれで良い時もある。余裕があればな。

 

 

 

 

 

 

さて、しがない一研究者、しかも引きこもり気味のおっさんのつまらない身の上話なぞさぞ退屈だったであろう。

 

すまないね。なかなか人と話すこともないものだから時間を忘れてしまったようだ。

 

ヘッドホンをした…あ、よろしくね。矢瀬少年。君が熱心に食い下がってくれるものだからついつい熱く語ってしまった。

はぁ、いい年こいて恥ずかしいことを……。

 

 

そして、こんな私の話を聞いてくれてありがとうとこちらから伝えたいところだけれど、なんならもう一つだけ聞いてくれるかな?

 

 

暁少年、矢瀬少年。君達も()()なのはまあ、この際置いて考えてほしい。

 

うん、そうだねぇ。君達テレビゲームは好きかい?

 

忙しくてほとんどしない?

 

寝落ちしてしまうから初めから睡眠時間に当てた方が良い?

 

 

はっはっは。それほ今時珍しいね。いやはや、青春時代が忙しいのは良い事だよ、君達の年代なら尚更だ。

 

…まあ、睡眠も程よくね。…え?私かい?はっはっは。放っておいてくれるとありがたいかな。

 

 

うむ。じゃあ話を戻すけれど、例えば、王道的RPGという触れ込みで発売されたゲームがあるとしよう。

 

 

私達はそれを楽しみにしながら買ったんだ。

 

 

でもね……スタート直後の始まりの町付近にラスボス手前のレベルのモンスターが居たんだよ。たくさんね。

 

ベタベタな展開…例えば魔王軍が姫を〜とかね。そんなものすら無く、始まりの町付近から普通の雑魚敵なのにレベル的に倒せるわけもない強敵ばっかりという斬新なマゾゲーだったりしたら、白目を向いてしまうだろう?

 

 

うん。そうさ。つまり、何が言いたいかって言うとね?

 

レベル1のモブ村人(私)にとってはね。

 

 

…ここは魔王城並みだったりするんだよ。(副音声

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー魔族特区であろうとも、通常であれば絶対に会えない種族の者もいる。

または、同じヒト種であろうとも様々で、付いて回る偏見やしがらみがある。

 

 

そんな巡り合わせのもとに私は居ないのだと思う。

 

気にも留めない些細なことだ。今さらセンチになったりもしない。

 

 

 

しかし、いざ階段を一つ上ってみると、

 

 

真祖、過能力者、剣巫、伝説の錬金術師、天使、リリス、金属生命体、巫女、眷獣etc…

 

 

 

ほほう?ふん…なるほどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、おそらきれい(血涙

 

 

 

ーーーそこには、私にとってのパラダイスな光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

「おい!?おっさん大丈夫か!?昇天しかかってんぞ!?」

 

 

「なんか最近見てなかったから矢瀬が焦ってんの珍しいな。」

 

 

「お前のせいだよ馬鹿古城ォ!!?(泣」

 

 

 

 

大抵の理不尽には耐性のある矢瀬さんでも目の前で幽体離脱(一方通行)もとい、真っ白になって昇天しかけている人間がいれば流石に取り乱すこともあるのだろう。

 

呑気な魔王城の主(というか姫?)は、そんな友人の珍しいくなってきた驚く姿に呑気にほっこりしていた。

 

大抵の矢瀬へと降りかかる理不尽の元凶が余りにも呑気すぎるために若干涙目でツッコミを返す矢瀬。

 

 

ツッコミ以外の会話の進行役が欲しいことこの上ないのが暁家の平常運行である。

 

 

 

 

 

(くそ…()()感じ普通に善人だから良かったが、古城にはもう少し気をつけさせねえとな…はぁ。)

 

 

そんな苦労人、ヘッドフォン少年、というか矢瀬基樹は油断していたことを反省して居た。

 

騒がしい毎日だからこそ忘れがちであるが、世界中に敵がいてもおかしくはない第四真祖と愉快仲間達がここに住んでいるのだ。

 

僅かな漏れが、やがて大惨事へとなる可能性は無視できない。

 

 

とは言え、暗部のスパイもこなす矢瀬が目の前の研究員、つまるところ同じマンションの住人の名簿を洗っておかないわけもなかった。

 

多少特殊な事情を抱える場所でかつ大家も中々にイかれているからこそ逆に安定している地雷原のような建物である。

 

だが、厳重な結界と対策を逆手に取るような体質の持ち主が偶々下の階に住んでいて、しかも田舎のガバガバな診察履歴(とうの昔に葬り去られていた)と本人も表に出なさ過ぎるせいで記録が少ないという倍プッシュである。

 

無害な引きこもりと判定されてもおかしくはなく、矢瀬と同じく過能力者などなら分かるが、表に出ない体質までは分かるはずもない。

それこそ、暁深森のような反則級の能力者でかつ、しかも直接接触しなければならないのだ。

 

矢瀬に落ち度はないといえよう。

 

だが、古城の危機管理能力の無さには流石に呆れるしかない。

 

 

矢瀬は最初話を聞いてから、嘘と本音を混ぜつつ適度に誤魔化そうと考えていた。

 

いくら無害な相手でも、住んでいる顔ぶれは特殊にすぎるからだ。

 

 

多少触れた程度のまだまだ一般人の側の人間を巻き込むわけには行かない。

 

 

と、思考を回し、返事を返そうとしたところ、

 

 

 

「…zzz…?んあ?話終わったか?あ、ごめんなさい。寝落ちしてしまって…」

 

 

と、起き出した古城。話を始めたのも矢瀬なので問題ではないが、失礼をしたか?と顔を向けても特に気に触った様子はなくホッとする。

むしろ、目の前の研究員は苦笑いを浮かべている分、普通に良い人の部類であろう。

 

 

 

「お邪魔しました〜」と、家主(仮)の割に変な挨拶を残してのそのそと去ろうとする古城。

 

逆に落ち着いて話ができるので矢瀬もありがたいと言えばありがたいと思っていたのだが…

 

 

 

「はぁ…吸血鬼にこの日差しはつらい。第四真祖になってもクーラーにはほんと頭が上がらないんだなぁ…。ニーナに涼しくなる錬金術でも習おうかな…。いや、安眠法でも聞くか。」

 

 

とか、去り際にシレッと言ったせいで口に含んだ麦茶を盛大に吐き出す野郎2名がお見合いをすることとなった。

 

 

「…えと、噂の第四真祖、なのかい?」

 

「ッ!?いやいや、まさか、そんなわけないじゃねえっすか。古城の妄言ですy」

 

 

「お、凪沙とアヴローラじゃん。おーい。ちょっとかき氷食いたいんだが、眷獣出して氷らせてくれねーかな。あとついでに氷枕欲しい。」

 

 

 

「えー…古城くん起きたばっかりじゃん。それにお腹壊すんだから食べるなら外に散歩でも行くこと!」

 

「お主、儂らをくだらんことに使い過ぎではないか?…かき氷に罪はないから許すが…」

 

 

「ん。じゃあ公園行って一緒に食べようぜ〜…あ、そうだ。姫柊と叶瀬はいるか?丁度◯んじろう先生の実験やってみたかったんだよな。天使の羽と剣凪の魔力ならいけるはずだ…!」

 

 

 

「お兄さーん!私も行く〜!」

 

「あ、結瞳ちゃん。ちゃおー。」

 

「凪沙お姉ちゃん!アヴローラお姉ちゃん!ちゃおー!」

 

「…ふん!やらんぞ?やらんからな!……ちゃお。」

 

「おお、行くか〜。あり?でも、結瞳って今日検査じゃなかったっけ?」

 

 

「…えへへ。」

 

 

「また、魅了かけたのか…。後で怒られるぞ?」

 

 

「だいじょーぶでーす。リリスの魅了かからないのなんてお兄さん達ぐらいだもん!」

 

 

「はぁ…今回だけな?矢瀬には黙っといてやる。」

 

 

「はーい!」

 

 

 

 

 

 

 

「……ず、随分と色々な方がいらっしゃるようだね…もしや、矢瀬少年も?」

 

 

「……いや、違うんすよ。俺は一般人でs」

 

 

 

「矢瀬〜。後で音響結界貼ってくれ〜?って、あ、まだ続いてた?すみません。」

 

 

 

 

「はぁ…なるほどね。大変だね矢瀬少年。」

 

 

「…はぁ…古城この野郎おおおお!!!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________そんなこんなで後日からちょくちょく顔を合わせることが多くなり、気心の知れた仲として、カウンセラーの真似事をすることでお互いにwinwinな関係となった下の階と上の階のご近所づきあいがあったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究員の感応現象(仮)のイメージ

 

 

ーー天使の羽

 

 

「なんかフワフワしてるね。」

 

「えへへ。ありがとうございます。」

 

「もしかして元は4枚…だったのかな?今は大丈夫かい?」

 

「はい。大丈夫…でした。それに…」

 

「それに?」

 

「お兄さんを包むのに、この2枚が丁度良い…のでした!」

 

「ふふ。そうかい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー妹&眷獣's&アヴちゃん(昼寝している古城を膝枕中)

 

 

「番犬かな?」

 

「知ってるかい?そいつら、第四真祖の眷獣なんだぜ?」

 

「おや、矢瀬少年。君もネタがわかるんだねぇ。」

 

「嫌でも聞こえちまうんで…」

 

「それは失敬。」

 

 

 

「zzz…zzz…」

 

「ふふ…眠っておるうちはまだまだガキじゃなぁ。」

 

 

 

「お、おう。アヴローラ少女?だったかな。物凄い乙女空間でおじさんには辛いんだけど。あとよく眠れるね暁少年。」

 

「いやいや、まだまだここからですよ。ね、矢瀬さん。」

 

「ああ、確かにそうだなぁ。ちょっとコーヒー持ってくるわ。全員分。ブラックをお勧めするぜ。」

 

「おや、暁少女。あ、ありがとう矢瀬少年。出来れば砂糖を少し欲しいかな。…ここから?」

 

「凪沙で良いですよ。まあ、見ててください。すぐ分かりますから。」

 

 

 

「ふん…撫で心地だけは悪くない。……!?こら、抱きつくでない!……まぁ良いか。儂から返せるものなど無いのだから。」

 

「zzz…りんごがぁ……zzz…」

 

「なんの夢を見とるんじゃ戯けめ。というか本当によく眠る奴じゃな…ふふ。ならば、貴様があの長い夢の中で語ったお伽話の如く、目覚めの接吻でもしてやろうか。」

 

「zzz…いかな…でくれ…」

 

「……どこにも行かんよ。お主が手を離さん限りな…

 

ん…。ふむ。なかなか悪くない心地じゃ。」

 

 

 

 

 

 

「砂糖…いらないかな。」

 

「だと思って入れてませんよ。」

 

「はぁ…我が兄ながら泣かせてくれるねぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








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