渡物語 (UKIWA)
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ぽぷらホリデー


 楽しんでいただければ幸いです!

 どれではどうぞ!

 ※小説タイトル名を変えました。


   001

 

 

 北海道某所のファミレスで働く種島ぽぷらは背と胸以外に関して言えば、どこにでもいる平凡で、普通で、日常的で、ごくごくどこにでもいる女子高校生と言えるでしょう。楽しく働き、他の従業員と話しながら働く彼女の光景は可愛らしく、いじりやすいといった印象を私は受けてしまう。ただそう思うのは私以外も同じことでしょう。例えば仕事をしない人、男嫌いな人、家出をしている人、普通を追い求める人、人なら何でも知っている人、帯刀している人、ヘタレな人もそして、小さいもの好きな人も。

 

 彼女は私と同じように、吸血鬼を助けた阿良々木暦や私の親友である戦場ヶ原ひたぎと同じくらい個性的で不思議な同僚たちに囲まれて、彼女の青春の1ページの物語として今日も働く。

 

 私はその一つ一つの物語を簡潔に簡単に4コマでコミカルに描かれそうな漫画のような形で頭で描きながら、砂糖もミルクも銀のスプーンも、ましてやストローも入れずに、濃くて苦い何も入れていないブラックのコーヒーを、この寒いこの地でゆっくりとされど急いで彼らの働く日常を見ながらぼんやりと息をコーヒーで抜きながら楽しんでいるのだと思う。

 

 

 

  002

 

 「バイトしませんか!」

 

 北海道某所。私は今、忍野さんを探して沖縄から飛行機を使って最南端から最北端へと渡り、北海道内をヒッチハイクしながら渡り歩いてるところです。そんな中ヒッチハイクできそうな車を探していると、小学生?なのかな、でもバイトという単語から推測すると、高校生からだったような、そんなことは置いといてもバイト勧誘されています。

 

 「親御さんが働いている所のアルバイトかな?」

 

 確か労働基準法で満15歳だと働けなかったけど家の仕事のバイト勧誘だと労働基準法にはいるのかな。私ももっと勉強した方がいいかな。

 

 「は、この感じかたなしくんと同じ状況になってる!」

 

 何か困ってる顔になっちゃたけど私はどうしたらいいのでしょう。こういう時に

 A 素直にお断りする

 B とりあえずそのバイト先に行ってみる

 C 専門家に相談する

 D 相手に抱きつく

うーん最後の選択肢は阿良々木君ならやってしまいそうだけど、ハ九寺ちゃんみたいに。あれ私も少し寒気が何か別次元の過去でそれをやられたような感覚があるのだけど多分気のせいでしょう。

 

 「私高校2年生です!!」

 

 これは私でも少し驚いたかな。でも年齢と見た目ってかなり違うことが最近だとよくあるって聞くし、永遠を生きる吸血鬼も見た目は幼女だけど年齢は私たちの何百倍だったりするけど。

 

 「ごめんね、背が小さいからそうなのかと」

 

 「ちっちゃくないよ!!あ、」

 

 今の発言を止めるかのように口を手で隠してちょっと可愛いかなと阿良々木くんみたいなことを思ってしまったけど、これは彼女のお決まりのフレーズなのだろう。だとしたら皆からいじられちゃうタイプなのかな。

 

 「ふふっ、ええっとバイトの勧誘でしたよね。確かにバイトはやってみたかったけど、ごめんなさい私ここの町に来るのが初めてなので」

 

 「そうですか」

 

 残念そうに落ち込む彼女を見て心が傷むけど、阿良々木くんたちを助けるために少しでも急がないと。

 『くぅぅ~』私としたことがどうやらお腹がすいたらしい。実際には食後期収縮という現象が連続で起こって胃が空になった状態で収縮するとなることなんだけど、確かに最近はヒッチハイクでの移動でとろろ昆布おにぎりや味噌焼きおにぎりぐらい食べてなかったかな。

 

 「もしかしておなか減ってるんですか?」

 

 やっぱり聞かれていたかぁ、私も穴があったら入りたい気分でその中の壺に入って自分に蓋をしたい気分です。でもお腹がすくのは人間として当たり前のことだから鳴ったことは自分の中で水に流そうかな、でもどこに行けばいいんだろう私もここの地域はあまりしらないしなぁ。あ、そうだもしかしたら彼女に聞けばいいお店を知っているかもしれない。

 

 「もしよかったら私のバイト先行きませんか?バイトの勧誘は断られちゃったけど、私の働いているファミレスだったらすぐに案内できますよ」

 

 お腹が空いたのは事実だし、ここは彼女の言葉に甘えさせてもらおうかな。

 

 「ありがとう、それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな、私は羽川翼といいます」

 

 「私、種島ぽぷらっていいます。羽川さんは私より一つ上の先輩だったんですね、たちふるまいがすごく奇麗だったので大学生の人かと」

 

 私そんな大人びて見えるのかな?まあ、ここからかなり遠い高校で制服も着ていなかったらそう見えるのかもしない。確かに私もこの一年でかなり成長したと思うから私としてもそう見られるのはうれしいかな。

 

 「私学校だと大人びたとかはあまり言われないから少しうれしいかな。そういえばここの近くのファミレスといえばワグナリアだったけどもしかしてそこかな?」

 

 「えぇ!?羽川さんここに来るのが初めてなんじゃあ」

 

 「初めてだけど、ワグナリア自体は北海道に何店舗はあるし、さっきヒッチハイクで乗せてもらった車の窓からも何件か通り過ぎたしね」

 

 「凄いなぁ、私が知ってる所でも最近できたミラノ風ドリアが美味しかったあそこしかファミレスだと覚えていないですよ」

 

 「大丈夫私も全てを把握しているわけじゃないから、だいたいオーストラリア大陸のファミレスとかは知らないからね」

 

 「それはオースト大陸以外のファミレスは知っているということになるんじゃあ、あ、ここにいても風邪をひいちゃうので早速いきましょう羽川さん」

 

 私はそんなわけで種島ぽぷらちゃんに連れられて雪の中明りがともるワグナリアへと向かった。

 

 

 

  003

 

 ファミレスといえば、私の場合最初に出てくるものとを上げるとするならば、ミラノ風ドリアが人気の所やチーズinハンバーグが第一位の所だったりするけれど、ここの地域の人たちに100人にあなたが最初に思いつくファミレスといえば?と街頭アンケートしたら90%の確率でここワグナリアと言うでしょう。なぜならワグナリア以外のお店はここの付近では珍しいといえるぐらい無いのである。そしてこのワグナリアの最大の魅力が他のチェーン店には中々真似のできない料理のバリエーションといえるでしょう。そんなわけで私羽川翼は、アルバイト勧誘をしていたとても胸以外高校生には見えない種島ぽぷらちゃんに連れられてここワグナリアに来ています。

 

 一つ目のドアが開くとテレレン~♪テレレン~♪という音が二回軽快になり、もう一つの扉が開くと奥からウエイターの一人が出てくるのが見えた。

 

 「いらっしゃいませ、二名様喫煙席か禁煙席かどちらにしますって先輩じゃないですか!?」

 

 「もう先輩じゃなくて今はお客様なんだからね」

 

 種島さんは腰に手を当てながら怒ったようなそぶりをしていたが、相手のほうはそれを見て和んだような顔をして種島さんの頭をなでていた。あれ?さっきの会話だと一応学校の後輩なのかな?でも今の状態だと、近所にいる高校生に仲良くしてもらっている小学生といった状態にしか見えないんだけどなぁ、もしかして他の従業員人もこんな感じなのではとよそくしたけどどうやら当たりのようでした。

 

 「あら、ぽぷらちゃんどうしたの、何か忘れもの?」   

 

 奥からもう一人のウェイターさんが来たけど、なんというか私も突っ込まずにはいられないぐらいひとが来ちゃったなぁ、あれって確か日本刀だと思うのだけど、私もあの時阿良々木君が持っていた『妖刀・心渡』ぐらいしか本物は見たことなかっけど、でもあれは確か臥煙伊豆湖さんが作ったレプリカだったから、あれは本物の正真正銘日本刀と言えるのかといわれるともしかしたら違うかもしれないのかな。

 

 「八千代さんも今は私はお客様なんだからね」

 

 「ごめなさいぽぷらちゃん、それと今の状況で聞きずらいのだけど彼女はお友達?」

 

 「ええっと、さっきバイト勧誘で出会った羽川翼さんです。」

 

 「種島、新しいバイトか?」

 

 奥からせんべいを食べながら来てる人もいるのだけど、しかも他の従業員と少し違う格好してるから多分それなりに上の人だと思うんだけどな。最初に入って5分もたたない内にかなり戦場ヶ原さんと同じくらいの個性的な人達が出てきちゃったなぁ、でもここに勧誘された=個性が強い人と認識した方がいいのかな。それだと私もというか、でもあながち間違えでないかもしれないなぁ。

 

 「違うよ、羽川さんはお腹をすかせてたから連れてきたの」

 

 「それって野良猫が可愛いから連れてきちゃったみたいな感じじゃないのか?」

 

 「店長それは彼女に失礼じゃないでしょうか」

 

 「そうだよ店長、ごめんね羽川さん」

 

 「ううん、私は別に気にしてないよ。それに猫って言う部分はあながち間違ってないしね」

 

 私の中にも二人の猫みたいな妹達がいるし、それに今は色々な所を回っているから野良という表現も間違ってないし、猫を助けるという話からしてみたら4月の時の自分自身のことを思い出しちゃうな。

 

 「もう、かたなし君私達は禁煙席だから案内をよろしくね」

 

 扉を二枚抜けた先、そこから始まる4コマ劇場、個性の飛び交うファミレスで私はあの時のこと、怪異と出会った少女達の今も続く物語を思い出しながら、ここでの波乱で、克服して、恋愛して、働く物語を私は自分の目で自分の脳に、体に焼きつけながら、小さい彼女とともに席を案内するウェイターに連れられて禁煙席の席に座るのでした。

 

 

 

  004

 

 「ご注文は何になさいますか?」

 

 そう聞かれ、私は数々の料理が写真で載っているメニュー表を見ると、イタリアンや中華料理、日本食、ステーキやハンバーグなど王道の肉料理がほかの店では出来ないであろうバリエーションを誇っていた私はここの料理人さんの腕はチェーン店どころかこのメニュー量をこなすのであればどこかの料亭の店の引き抜きが来るのではと今思っています。

 

 「じゃあ、この油淋鶏と回鍋肉と…コーヒーをブラックで」

 

 「じゃあ私はココアで」

 

 「油淋鶏と回鍋肉、ブラックコーヒーにココアで以上でよろしかったでしょうか」

 

 ここって以外にコアなものがそろっていてびっくりしちゃうなぁ、普通のファミレスに油淋鶏なんて置いてないしね。でも確か人気メニュー一位がこれだった所もあったような気もしたんだけど、でもこれだけ料理があるとどれを食べればいいか迷っちゃうなぁ、今度戦場ヶ原さんにもこのファミレスの事教えよ、もしかしたらあそこの付近で出来ちゃうかもしれないしね。

 

 「すごいですね羽川さん、油淋鶏と回鍋肉なんて食べようとすると私だと片方の半分ぐらいしか食べきれないですし」

 

 「私も普段は普通の量しか食べないけどちょっと今日はお腹すいちゃったしね。それによく動いて、よく食べて、よく寝れば子供は成長するしね」

 

 「羽川さんはまだ自分が子供だっていうことですか、私も羽川さんみたいな背があれば皆大人のようにみられると思ったんですけど」

 

 「私も世界一般的に見たら大人の部類に入るのだろうけど、種島さんのご両親や自分たちよりもう倍以上生きてる人からしてみればまだまだ私たちの事を子供にしか見れないし、それにまだ私たち高校生だよ?まだ大人からの援助がないと生きていけない歳なんだからまだまだ私たちは子供だよ」

 

 でも、私はまだ義理親の人のお金でこうして世界を回らしてもらえてるんだし、彼女みたいに私は働いてお金を稼いでといったことをまだやっていないから、彼女は私よりも何倍も世の中を知っている大人だと私は思う。背はちっちゃくてかわいらしいけどね。

 

 「わ、私羽川さんのような人になってみたいです!!羽川さんみたいにものごとを色々考えられる人間になりたいです!」

 

 「ええっと、種島さん?いやいや、私よりも今ここでバイトで働いている種島さんの方がずっと大人だよ」

 

 「大人!?」

 

 おーい種島さん?これっていったいどういった状態なのかな、どこか上の空みたいな顔になっちゃってるし、話しかけても返事がないんだけどなぁ。確かこういう時に言うセリフが『返事がない。ただの屍のようだ』だったけ、でも今の状態だと『返事がない。ただの背が小さい小学生のようだ』と変換されてしまいそうだけど。

 

 「惜しい、凄く惜しい一つメニューが足りないのがすごく惜しい、俺はあの料理をっく…!!」

 

 話し込んだり考えている間に料理が出てきたけど、ウェイターじゃなくってシェフが出てきちゃったんだけどしかも二人も、あれかな料理はお客様に出すまでが料理人の仕事だという感じなのかな?でも一人地面を叩きながら膝をついてるのだけど。しかもどことなく声が阿良々木くんと声が似ているのだけど気のせい…かな?

 

 「おい種島、料理持ってきたぞ、いつまでボーとしてやがるんだ」

 

 金髪の料理人、いやファミレスだとシェフなのかな?その人が種島さんの髪の毛をいじって一つのみつあみにしちゃってるんだけど、でもこの髪型は私としては親近感が湧くんだけどね。でもあの髪形を一瞬でセットするのは美容院の人でもびっくりだよ。というか、世界の髪を扱う仕事をしている人全員が目から鱗だよ。

 

 「は!?佐藤さんまた私の髪をいじって、って相馬さんどうかしたの?」

 

 「ああ、さっきここの注文を受けたメニューを聞いた時からこの感じなんだよ」

 

 「いつもはこんな感じじゃないんですか?」

 

 「いつもはニヤニヤしながら人の弱みを握って喜ぶ奴なんだが」

 

 そんな人を置いておいて大丈夫なのだろうかこのお店。私としては面白いと思って済ませてしまうのだけど、他の人だと完全に変人のそうくつみたいになってるような、もしかしてこの金髪の人も何かやってしまったとかなのかな。

 

 「おい、俺はこいつみたいな変な趣味はしてないぞ」

 

 「まあ、佐藤君は恋愛に関してヘタレなところ以外は普通の人だけど、それより君見たところ高校生だけどここら辺の人なの?」

 

 「いえ、私はここに来ること自体が初めてなので、あと私ある人を探しているんですけど」

 

 「ある人?それって家族とか恋人とか何かかな」

 

 「人の事なら相馬さんに相談するのは正解だよ羽川さん。相馬さんは人の事ならだいたい知ってる人だから」

 

 「まあ、僕は身近な人には詳しいだけだからそんなに期待はできないけどね。」

 

 「それはどこまで知ってるんだ相馬」

 

 怒り口調の金髪シェフが阿良々木君似の声をしたシェフに頭を鷲掴みにしているんですが、ここの人たちはシェフも含めて個性的な人達だったようです。でも阿良々木君の周りにいる女の子たちもかなり個性的というか個性の溢れすぎている人達なんだけどね。

 

 「痛い痛い佐藤君、別に轟さんの情報なんか少ししか持ってないよ」

 

 人の事なら何でも知ってるか、なんだか臥煙さんみたいな感じなのかなでもどちらかといえば知っていることだけしか知らない私に近い人なのかもしれないなぁ。

 

 「ええっと、特徴としてはサイケデリックなアロハシャツ一枚を着ていてぼさぼさの金髪という格好で口によく煙草をくわえている人なんだけど」

 

 「「「え?」」」

 

 

 ある日、アルバイトが連れてきた猫のお客様は突拍子もない人探し、北にあるこの土地で彼女はアロハのシャツの男を探していました。それは、ここの日常ではない、もう一つの物語。そしてここのアルバイト種島ぽぷらは忘れない。あてのない人探し、委員長の中の委員長羽川翼を目標として見てしまったのだから。それは幸福で、不幸なのかもしれない。ただこれだけは言える彼女の休日も働く日もいつもどこまでも明るい一日であることを。

 

 

 

  005

 

 後日談と言うか、今回のオチ。

 やはり忍野さんの居場所は掴めず、私としてもなんとなく日本にはいないと思っていたからそこまで落ち込むことはありませんでしたが、次の行き先はどうしようかというのを今は考え中ですがとりあえずは日本から出て海外に探しに探しにいこうと思います。

 これからどうするかなど自分の中には色々な問題ややることが山積みだけれどそんなに焦ってもしかたがないと私ながら他人事のように自分事ように思いながら渡ろうと思います。

 そういえばさっき食べた料理が中華料理だったから、三大料理関連でフランスに行ってみようかな。そんなくだらなく当てずっぽうな事で見つかるかどうかはわからないけど卒業式までには必ず。

 外は雪景色そして行き先を決めた猫はまた旅をする。私の後ろには活気のあふれる日常と前には非日常が駆け巡っていた。

 

 

 





 次回予告をお伝えするのは私、羽川翼です。次回予告にするに当たって私が言える最大のネタバレは私が登場しないことです。

 次回「むうビター」

 あらすじは忘れました。


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むうビター


 この作品は「IQ探偵シリーズ」という小説ものです。これを機会に見てもらえると、お気に入りの小説なので幸いです。はやくアニメ化してくれないかなぁ

 それではどうぞ!!


 

 

 

 

 

  001

 

 僕たちの周りには陰ながら人を尾行し推理をして事件の紐を解く探偵という職業がある。例としてあげるのならば、白髪の忘却探偵や西の高校生探偵、「最後の切り札」ともいわれる探偵などだろう。

 彼女茜崎夢羽(あかねざきむう)は探偵でもなく、迷宮入り事件も解かない小学五年生である。それを言ってしまえば普通の小学生と思われがちだが、小学生であれど小学生ではない。彼女の頭脳はいわゆる天才というべきなのだろう、羽川翼ほどではないが彼女自身がこの町に転校してきて以来、彼女の天才的な頭脳と冷静沈着な性格によって、時にはクラスの事件、空き巣の犯人探し、大金持ちの挑戦など見事なまでな名推理によって解決している。そして彼女にはもう一つの特徴がある。それは容姿である、彼女が歩けばその周りのだれもが振り向くほどのいわば美少女、美少女の中の美少女といえるであろう。そんな完璧な少女でもやはり羽川翼のような天才より上の存在ではない。僕が言うとするならば彼女は忍野扇より下の謎であり、羽川翼より下の天才であること。彼女を例えるとするならば架空の天才シャーロック・ホームズと僕は思う。

 なぜなら彼女には大富豪のライバルらしい者がいて、推理小説と冒険もの好きなワトソン、サーバルキャットの愛猫がいるからだ。

 

 

 

  002

 

 高校生の阿良々木暦の青春はもう当然の如く終わっており、そして大学生の阿良々木暦の青春も終わってしまい、今僕は警察官としての技術の地方研修をしている。なぜそんなことをしているかと言えば、上司でありうちの親である二人に可愛い子には旅させろの如く色々な場所へと飛ばされている。親の権限は仕事場でも使われるとは中々の苦悩である。されどあの高校3年生の一年間に比べれば全くもって造作もない、つまらないものである。そして今の状況と言えば、今の研修先である都心から典型的な郊外の町銀杏が丘市の街中を眉毛警官のように自転車で絶賛パトロール中である。自転車とは、高校時代におさらばかと思っていたが、まさか大学を卒業してからまた自転車に乗ろうとなるとは自分ながら滑稽である。

 そんなことを言っている間にも、駅前にある警察署から商店街を抜け、その場所からもっと奥に行ったところの大きな池の辺りまで来ていた。

 

 「おい、お前様、そろそろ戻ってもいいくらいじゃないかの?わしは早く帰ってドーナツを食べたいのじゃ」

 

 自身の影から金髪の幼女の吸血鬼である忍が目の高さまで顔をだして自分に帰還命令を下した。おもにドーナツが食べたいという理由だけである。まあ、かなり奥に来たことだし戻ってもいい頃合いだろう。そう思った時だった。突如として先ほどまで無風だったこの場所から強い突風が自分の体を包み込んだ。何かを予兆するように謎が自分を呼ぶように、その謎に選ばれたかのように、自分の前に可憐で淡い桜色をした長いストレート髪をなびかせた西洋版小野小町といえばいいのだろうか、誰もが街中で会えば思わず見いってしまいそうなその容姿は誰もを圧倒しそうなオーラを放っている茶色いランドセルを背負った少女がそこにいた。

 

 「こんにちは」

 

 俺は下げなく、一般的に、いつもしているごくごく普通のあいさつを交わしたが向こうからの返事はない。手元を見ると何やらメモを見ながらあごに手を置き悩んでいる様子だった。身長からしてここら辺の小学生なのだろう、しかし何か探しているのだろうか、そして先程の返事が変えてこないということはかなり集中しているのだろう、さすがにあのままだともしもの時危ないな、気づくまで声をかけて見るか。

 

 「元にも連絡した方がいいのか、この手の問題は元に相談した方が解決できるかもしれないな、ん?」

 

 声をかける前にどうやら僕の存在に気がついたようだ。だが少女は何やらまた考え出し黙り込んでしまった。どうすればいいのか自分としてもよくわからない状況になってしまったのだが、帰っていいんだよな?だけど少しぐらい注意をしておいた方がいいんじゃないのか。一応警察官で巡回中なのだから。

 

 「あのすいません、実はこんなものを探しているんですがここら辺で見たことはありますか?」

 

 少女はしなやかな髪をなびかせながら近づきこちらへ近づいてきた。

 うわ、自分でも声が漏れてしまいそうなほどその風景に一致し、精巧に描かれた絵画のように美しく可憐だと改めておってしまうほどだった。

 

 「うーん見たことがないな。ごめんね、僕は最近ここに来たばかりなんだ」

 「確か、瑠香の話だと弱そうな若い警察官が峰岸刑事の所に研修に来ているって聞いていたけどあなただったんですね」

 

 小学生に色々噂されてるんだなぁ、でも意外に小学生って言うことがストレートなんだよなぁ、もう少しオブラートに包み込んでくれないのかな、こうひたぎが遠まわしにけなしてくるように、あれ?そっちのほうがひどいんじゃ...

 

 「でもその話は嘘だな、こう本人を見ると肩幅と手の形からして何かで鍛えたようにしか見えないんだがな」

 

 人の体を観察するんじゃない、この娘どこか羽川みたいなところがあるな。いや、人の動作から相手の心理を読めるほどではないだろう、さすがにそうであったら僕はこの娘から今すぐにでも逃げだしたい。

 

 「そういえば君は何でこんなところにいるんだい?」

 

 「実は自称宿敵からこんな挑戦状がが届いてきて、その挑戦状の謎を解くためにヒントを集めているんです」

 

 最近の子供は意外に凝った遊びをするんだなと自分の小学生や中学生時代にこんな遊びがあったらと平凡に過ごした九年間を思い出した。いや待てよ?今なら彼女と問題を解けば少なからずあの時経験できなかった心揺さぶられる冒険感、脳をフル活用として解けた達成感が味わえるのではないだろうか。いや待て、僕は正真正銘戸籍上でも大人で今も仕事中なのだから、さすがに男心をくすぐられる冒険ロマンがそこにあったとしても仕事があるからやれないな。

 

 「君、その問題僕も考えていいかな?」

 

 「ん?ああ、どうぞ」

 

 彼女自身僕の発言に驚いていたが、すぐに反応した後に説明をしてくれた。もちろん僕はこういう謎解きは扇ちゃんやファイヤーシスターズからいまでもよく出されるので得意な方である。まだ僕みたいな少し経験ある人間だったらなぞ解きの邪魔にならないだろう、まあ僕の今の立場がもし羽川や臥煙さんだった場合はたった小説2ページで起承転結が終わってしまうだろうけど。

 

 「そういえばまだ名前を言ってなかったね、僕の名前は阿良々木暦、阿修羅の阿に良好の良を二つ繋げて植物を表す木と書いて名前は西暦の暦でこよみと読むよ、君の名前は?」

 

 小学生にかなり難しい言い方をしてしまったが、大丈夫だったのだろうか。自分の発言が通じるのは高校時代に知り合ったあいつらだけだと大学に行ってわかったことだし、ここにきて自分より半分ぐらいしかまだ生きていないだろう彼女にコミュニケーション能力が低い人間という認識を持たせてしまう発言をしてしまったことに僕は全力の笑顔で彼女を見るしかなかった。

 

 「私は...茜崎夢羽です。茜色の茜に長崎の崎、夢という漢字に羽子板の羽と書きます」

 

 なんか乗ってくれたんだけど、これは気を利かせてくれたのか、それとものりでこういうことやることのできる八九寺みたいな性格なのか?まあ、そんなことは置いておこう、さっそく彼女の問題を解いていこう。

 

 

 

  003

 

 先程の言ってしまえば002の問題、謎解きは結果として僕にはまったくわからなかった。あんなものを小学生相手に出す奴がいるのかと思うとかなり鬼畜な思考をしているだろう。そうその時は思っていたが、彼女は数十分でその問題を解いてしまったのである、訂正しておこう茜崎夢羽は小学生版羽川翼だった。確かに知識量においては羽川の方が何倍も上なのだろうけど、謎解きや閃きに関して言えばほぼ互角と言えるだろう。

 そんなことを言いつつ、今僕は昨日と同じように自転車でこの町を巡回中なのだが、昨日彼女茜崎夢羽からまだあの謎解きは終わってないと言っていたのだが、彼女の名推理だとあの謎を解かれるの時間の問題だろう。

 

 「あ、どうも」

 

 なんという事だろうか、偶然というのだろうか必然というのだろうか、自分でもその後どうなったのか気になってはいたが商店街の方を回っていたらまたもや顎に手を当てて紙を見つめている昨日であった少女がそこにいた。昨日と違うとするならばもう一人同級生であろう帽子を被った男子小学生と一緒にいた。

 

 「茜崎、もしかして昨日一緒に謎解きをしてくれた人ってこの人だったの?」

 

 「ああ、この人は最近ここの警察署の研修に来た阿良々木さんだ」

 

 「あ、江口が言ってた峰岸刑事の所に男の刑事さんが入ったて聞いていたけどこの人だったんだ」

 

 最近の子供は警察に入ってくる人も知ってるのか、いや怖いんだよね子供の情報網ってなんかSNS並みに広がっていくから。でも彼らはどこまで僕たちのを知っているのだろうか、もしかしてファイヤーシスターズの新着情報も知っていたりするのではないだろうか。まあそんなバカなことはないだろうけど。

 

 「また謎解きかい?」

 

 「はい、ただ今回はこの場所で行き詰ってしまって、別の視点から見てくれる元に来てもらったんです」

 

 ほう、ようするに天才ホームズにもやはり違う視点からのことからヒントが欲しいわけなんだ。良かったまだ彼女は羽川ではない。いや別に羽川を悪く言っているわけではない、しいて言えば僕なりの羽川への褒め言葉なのだが、僕から見て彼女を表現をするなら、99%の努力と99%のひらめきでホームズなどは足元にも及ばないだろう。

 

 「期待してるよ元」

 

 「お、おう任せてくれ」

 

 何だろう、決して僕は妬みそねみを持つ人間ではないのだけれど、彼女から少年に向けられた笑顔で少年いや、元君だったかな、もう灼熱地獄にでもいったかのように顔は真っ赤になっている。これは彼女はどうかわからないが、元君は意識しているのであろう。小学生の青春している姿を温かい目で僕はそれを眺めていた。

 

 「そういえば刑事さんは仕事は大丈夫何ですか?巡回中で遅くなると怒られるのでは?」

 

 「いや、そこら辺は峰岸っていう刑事さんから街の人の交流も仕事の一貫だと言うことで大した問題じゃないさ」

 

 僕よりも警察署の方が問題として取り上げられそうだけどな。というか仕事をほったらかして遊ぶということを考えなかったのだろうか。いや、若手の息抜きという形で上も了承しているのだろうか、僕としてもそれならそれでこの仕事も悪くないと思う。

 

 「それで君達はどこまで解けたんだい?」

 

 「そうですね具体的に言うと、物語の第三部構成で言ったら第三部の最後ぐらいですね。もう結論に近いものがでているけど、そのアイテムらしきものがこの場所で見当たらないんです」

 

 そこまで行っていたのかと内心驚いたのと、ここはあんななぞ解きを解けるなんてすごいと褒めるべきなのか、それとももしかしたら子供ながらこの謎を解くために三月の受験生バリに頑張ったのかと考え、子供はちゃんと寝ないとだめだぞ的なことを言った方がいいのだろうか、いや小学生版羽川の彼女だったら一時間もかからずに解けてしまうだろう。

 

 「ところでその無かったアイテムっていうのは?」

 

 「えっと、その実は...コショウなんです」

 

 「コショウ?」

 

 

 

  004

 

 今の現状といえば、天才少女茜崎夢羽と帽子をかぶった少年杉下元と僕と三人で最後のアイテムというか今回の問題から導き出された答えであるもののコショウを今探しているのである。なぜ謎解きの答えが、いや、結末がコショウなのかは、怪盗ゴディバや銃やチョコレートで教えてくれるだろうけど。まあ、その話は本のある場所でゆっくりと自分達のペースで、好きなことをしながら読むといいだろう。

 普通の人間ならコショウなんてそこらへんのスーパーに行けば売っているのではないかと思うかもしれないが、天才少女が持っていた最後の紙には『猫の形をもしたガラスの容器が赤い袋入っているのでそれを確認してもらえれば君には分かるだろう。では、頑張りたまえ。  森亜亭』と書かれていた。というか、この書かれている森亜亭という人物はこの小学生に謎を解いた証として報酬があるのかと金持ちだろうその人物に好敵手と言われている彼女がうらやましく思えた。くそ、こんな楽しそうなことを小学校の時にやれていればよかったなと今までの人生を悔やんだ。前々からというかずっと悔やんでいるというか悔やみすぎているというか、苦やんでいるというか、まあ自分の話はこの際関係ないので聞き流してほしい。

 

 「それで本当にここで合ってるのか?もしかしたら別の場所でしたということも謎解きならざらにあるんじゃないのか?」

 

 「いや、それは5%もないぐらいです。もう一度解きなおしてみましたが、やはりこの場所にあるはずです。もし私がこれで間違えているのならそれはお手上げといったところでしょうか」

 

 「元君はどう思う?」

 

 僕のフリに少し戸惑っていたが、少し考えるような顔をしていた。まあ、初対面でこう話されるのは確かに気不味いことがあるよな、それもよりによって気になる人と二人きりの状態を邪魔されたのだから

 

 「茜崎がもし間違えているのならもう僕の方もお手上げです。でも僕は茜崎が間違えてないと信じているから、もしかしたらたまたま赤い袋を持っていた人が何かのはずみで持って行ってしまったかだと思います」

 

 確かに彼女の推理がこの場所にあるとしたら、それはまぎれもなく誰かが盗んだのか、または近所の人がごみとして回収してしまったのかのどちらかだと考えるべきだろう。盗まれたとするならば僕が見つけて犯人を捕まえなければならないし、近所の人に回収されてしまった場合はしかたがないし、彼らにもあきらめてもらうしかないだろう。

 

 「ん?何だこれ?」

 

 帽子の少年の元くんが何かに気付いたようなので見てみると、何やら切れたタイヤの形を模したストラップがそこに落ちていた。何かの拍子に誰かが落してしまったものだろうか。そうしていると、ふと近くで話している近所の奥様方の話が聞こえてきた。

 

 「そういえば最近ひったくり事件が多くなってるわよね?」

 

 「そうそう隣の家の人もこの前バックを盗られそうになったって」

 

 「たしか特徴が大きなバックにたくさんのストラップがついていてるって噂よ」

 

 「気をつけないわねぇ」

 

 「「「あ!!」」」

 

 このストラップってまさかという言葉が僕の頭によぎった。このふたりもそうなのであろう。ただ、このストラップが盗んだ犯人のものとは限らないし、仮にそうだとしても犯人探しなんて彼らにはさせられないな。

 

 「もしかしたら最近出没しているひったくり犯のものかもしれないな。よかったらそのストラップを預からせてもらえるかな?」

 

 「そうですね。もしそうだとしたら私達がどうにかできるものでもありませんし、もし見つかったら連絡してください。これが私の家の住所です」

 

 彼女の家の住所が書かれたメモと落ちていたタイヤの形をしたストラップをポケットにいれた。さて、何か怪しいものが出てきたし、警察署に戻るか、そう思った時だった。

 

 「ひったくりよ!!」

 

 奥の方から声が聞こえ振り返ると、地面に倒れている女性とマスクとサングラス、背中に大きめのリュックと帽子を深く被った男がバックを持ちながらこちらの方へ走ってきていた。まさしく犯人といわんばかりの格好だなぁ、もし僕が仮にひったくりをしようとするなら、ザ・犯人と思わせるあの格好だけはしないだろうな。まあそんなことを言っている間にもひったくり犯が近づいているのだけど、誰か警察を呼ばないとって僕は警察官じゃないか、まあまだ新米の新米、ニューニューライスライスポリスだけどそれでもれっきとしたリアルポリスなのだから。

 

 「どけどけどけ!!」

 

 犯人は前方にいた人や物を払いながら走り、ついに僕の正面近くまで来た。よし僕はここで火憐ちゃんや忍から教えてもらった秘策を使うとしよう。これは僕がひそかに地道に汗水をたらしながら努力した肉体だからできる奥義。

 

 「どぅっはぁっ!?」

 

 まっすぐ伸びた右腕のこぶしがひったくり犯の鼻に直撃した。これが奥義『ただの右ストレート』だ。まあ吸血鬼パンチやアンリミデッドヴァンパイヤブックなんて名前にしてもいいんじゃないかとまえは思っていたが、普通に奥義を言うだけでも時間の無駄なだけなのでその名前なのだが。

 ひったくり犯は大きく後ろに跳び、顔を見ると着けていたマスクが赤く染まり、地面に倒れこんだ。まあ、僕のパンチはある意味で常人の人間に比べれば僕のパンチはただのパンチではなく吸血鬼パンチに近い、吸血鬼もどきパンチといった中パンチと強パンチの間ぐらいだろう。短めに言えばそこそこ強いパンチだ。

 

 「...ちぃ!!」

 

 「あ..。」

 

 そんなことを思っている間にも時間は有限というべきなのだろう、犯人は狭い路地の方向へとバックを置きざりにして全力疾走で去っていった。

 

 

 「阿良々木さん二件のお店の奥の抜け道を抜けてください、犯人の方向からそこから出れば距離が短縮できます!!」

 

 後ろから茜崎夢羽の声が聞こえ、とっさに彼女の指示に動いてしまった。いや、必然なのかもしれない、自分の中の第六感がその言葉は正しいと瞬間的に、本能的に否定する思考が停止するように彼女の言葉に動かされた。そして僕はその指示に従い、犯人を追いかけるのであった。

 

 

 

  005

 

後日談と言うか、今回のオチ。

 

彼女の指示どおり、二件目の抜け道を抜けると逃げていた犯人と鉢合わせると言った丁度良いタイミングで遭遇でき、火憐直伝の『他人を逃がさない寝技~危険注意伝~』で覚えた寝技で犯人を捕まえ、現行犯逮捕となった。そしてひったくり犯の持っていたバックからは大量のストラップがはいっておりどれもひったくりにあった人のものと判明した。そして、彼ら茜崎夢羽と杉下元が探していた例のコショウもバックの中に入っていた。コショウのはいっていた赤い袋の中には一通の手紙と二人分の大きくしなやかな猫の形を模しており、両目には緑色の石のようなものが埋め込まれ、全体は金属でおおわれたストップがあった。僕はその手紙は彼女宛てだろうと中身は見ずに彼女に渡した。もちろんストラップととともに。まあそんな雰囲気で謎解きも事件もあっさりと簡単に、悩んでも無いように静かに終わって言った。僕はまた今日も仮の自転車で町を走りぬけるそして、またぼくはまた他人のように、今も普通に朝学校に向かっているシャーロックホームズとその友達に手を振りながら、僕はまたビターな怪盗が残しそうな謎を仕事をしながらまた自転車を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 次回は誰が語るって?おいおい阿良々木君、そんなにとり乱しちゃって何かいいことでもあったのかい?お、何かいい怪異談を話せそうだね、聞かせてもらおうじゃないか。

 僕は阿良々木という名字ではないですし、それに怪異ではなく妖怪談と言っておいた方がいいだろう、なぜならそれは僕が受ける祖母とのつながりの話なのだから。

 次回、「なつめアイズ」

 さあ、話をしよう僕の祖母の友人の話を...


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なつめアイズ

 
遅くなってすいません!!

前よりかは短くなってしまっています。

ご了承を、それではどうぞ。


 

 

  001

 

 妖怪、それは日本古来より伝承として伝えられている自分達の理解を上回る現象、もしくはそれらを操る不可解極まりな無いもの、あるいはそれらを起こす不可思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在。あやかし、物の怪、魔物と呼ばれる者たちのことである。あるものは人に天地の災いを起こし、またあるものは人を救い恵みを与える。消えない存在、見えない存在、恐怖の存在。人々には見えない、触れらえない、だけど彼らはそこにいる、そこに確かに存在している。だけど僕らには何も感じない、ただ存在し続ける彼ら、僕たち人間より遥か前から、いや僕たちという存在が出来たころからだろうか。

 

 妖怪を見れる少年夏目貴志は妖怪が見えるという時点で類稀なる妖力の持ち主といえるのだろう。物静か、いつも怯えている少年は妖怪と人間との関わりを深く誰よりも深く考えながら生きている、そして成長している。彼の祖母の遺産である『友人帳』には多くの妖怪の名前を刻まれており、彼はその遺産を引き継ぎ、その名前を妖怪に返すために。

 

 今の僕にとって彼の話は過去であり、知らない話でもある。ではなぜこの話が出来るのかといえば、この話のメインが、語り手が、僕阿良々木暦の話ではなく、神出鬼没妖怪変化のオーソリティーのアロハの怪異の専門家忍野メメが語る怪異談、いや夏目貴志との妖怪談であるのだから。

 

 

 

 

 

  002

 

 妖怪とは、という言葉に対して僕から言えるとするならば、人間と似て非なる存在といえてしまう存在、同じであり同じじゃない。人間と違うとするならば、あえて挙げると言うんなら寿命と見ためぐらいだろう。まあ、妖怪も怪異も同じように似た存在、人間=怪異=妖怪みたいなものというだけで臥煙先輩から無理やり来させられたというか、依頼を受けてしまったというか、僕としては今回の依頼を受ける気はさらさらなかったけどね。まあ今回の件は、世界のバランスを変えてしまう可能性があるものだったから誰かがやらざるおえなかった。別に僕じゃなくて暴力陰陽師でもよかった……いや、やっぱり今回の事は僕が適任なのかな、あの暴力陰陽師に任せると今回の元凶が消滅しかねないからね。そういえば、臥煙先輩から伝言を預かってたな、あの人は僕の事をヤマトや日本郵便なんかと勘違いしてるんじゃないかとつくづく思うんだけどね。というかこんな感じだと僕の肩書きである神出鬼没で出会えたら奇跡っていうものが、完全に人為的で意図的で出会えて当然みたいな感じになっちゃうじゃないか。後輩をぱしる嫌な先輩を持つと苦労するよ。

 ん?結界は貼ったつもりだったけど、まいったなぁこの感じはとんでもない妖がはいてっきたもんだな。

 

 「先生、どうしたんですか!?ここに何があるって言うんですか」

 

 「夏目その場所を動く出ないぞ、そこのおぬし何をやっておるのじゃ?」

 

 「にゃんこ先生、この人は?もしかして名取さんや的場さん達と同じ…!?」

 

 「いや、こやつは祓い屋などといったけったいなものじゃない、こやつらは専門家じゃ」

 

 「いやいや、そんなに僕の事を恨めしそうにギラギラしちゃって何かいいことでもあったのかい?」

 

 いつものように僕の決め文句のような言い回しでこの言葉を投げかけた。

 

 「専門家とはなんですか先生」

 

 あの少年誰かに似てるような、どっかで見たかなぁ、声は僕の友人にそっくりなんだけどね。

 

 「妖怪という概念にとらわれない都市伝説や風の噂なんぞを引き起こす存在、怪異を扱うもの達の事じゃ。それでお主は何の専門家じゃ、妖専門のものなら容赦はせぬぞ」

 

 「まあまあ僕はあんたみたいな上位の妖を捕まえたり、あれやこれやする専門家じゃないんでね。僕は中立でいたいんだよ世界的なバランサーとしてね。それにここはもうあんたが住み着いてるおかげでバランスがとれてるしね。おっと自己紹介が遅れたね、僕の名前は忍野メメ、あんたが言うとおり怪異の専門家だよ」

 

 「忍野さん、あなたは今先程バランサーと言いましたよね?そしてここのバランスも取れてるとも言った。ならあなたはこのバランスがとれている状態のこの場所ならあなたがいる意味がないのでは?」

 

 「あー、ん~、そうだ思い出した。夏目って言う名字とその顔だち何処かで会ったようなと思ったけど、もしかするけどもレイコさんのお孫さんだったりしてね」

 

 「祖母を知っているのですか!?」

 

 「お?その反応じゃあビンゴかな?まあ、昔大学のサークルで君のおばあさんの所に訪ねたことがあってね、色々な怪異談、いや妖怪談を聞かせてもらったよ」

 

 ということはこの子が夏目貴志本人で間違いなさそうだね。今回の事は夏目君の協力がないと出来ないことだしね。いやぁこんなに早く見つけられて良かったよ。こんなグッドタイミングで来てくれるなんて僕も神様に愛されてるんじゃないかと思うぐらいだよ

 

 「おい、夏目こやつに話をはぐらかされておるぞ!!」

 

 「侵害だなぁ、僕は生まれてこのかたこれっぽっちも話をはぐらかしたことがないよ?」

 

 「その言い方からして絶対はぐらかした事があるのではないか!!」

 

 猫の妖は兎のようにずんぐりとした体を怒った口調で跳ねながらばたついていた。

 

 「いやぁ、探す手間が省けてよかったよ、臥煙先輩から君と協力するようにって言われたんでね。今回の依頼は僕だけの力だけじゃあどうにもならないからね。協力してくれるかな夏目貴志くん」

 

 まあ事実今回の依頼は僕一人でも解決できるんだけどね、夏目くんの登場はうれしい誤算だった。これで駒は揃った。これで正真正銘全員がハッピーエンドを迎えられる終わり方が出来る。まあそれをダメにするのも彼自身なんだけどね。

 

 「夏目こんな奴にかかわるでないぞ。専門家にはろくなやつがいないからの」

 

 妖側からしたら、僕たち専門家には死ぬほど関わりたくないだろうけど、まあここで夏目くんが関わらないのもまたそれもそれで運命かな。

 

 「忍野さん、僕は何をすればいいんですか?まずなぜぼくが必要になってくるのですか」 

 

 「おっ?協力的的なのはうれしいね、それじゃあ説明と言いたいところだけど話は後だ…来るよつむじ風が」

 

 自分が予想していたポイントの場所やや斜め25度と0.5cmぐらいの誤差地点に小さい竜巻、つむじ風が落ちた葉を蹴散らし宙へと散らした 

 

 

 

 

 

  003

 

 

 

 「夏目気をつけるのじゃ!よからん気配が来ておるぞ」

 

 風は秋風から突風へと変わり、あたり一面の葉は飛び、木からは枝と枝とがぶつかりあい、きしむ音が鳴り響き、泣き響いていた。風は数分経つと、つむじ風を起こし、その中心には小さく黒髪の和服を着た少女がしゃがんでいた。

 

 「妖の子供?」

 

 「『精霊風』、他の言い方をすれば『死霊風』、『生霊風』、『魔風』とも言ってね、元々は長崎県の五島地方に伝わる伝承なんだが、そこの地方で昔は病気を風の仕業と思う民間信仰があってね。これはだいたい盆の十六日の朝の吹くんだけどね。彼女はいわゆる『風の子』ってやつさ」

 

 [助けて…苦しいよ、お母さん…お父さん…]

 

 「あの子かなり苦しがってる!!助けなきゃ!!」

 

 「待つのじゃ夏目!!」

 

 「どうしてですか先生!!」

 

 「どうしたんだい夏目くんそんなに急いで何かいいことでもあったのかい?君は彼女に何がしてあげられるんだい?彼女の知識を知らない君が近づいたら今の君じゃあ次に待つのは『死』だよ?」

 

 「それじゃあどうすればいいんですか忍野さん」

 

 夏目くんも阿良々木くんに似たように正義感の塊のような人間じゃないか、いいねぇ青春だねぇ、僕も数年若かったらあれぐらいやんちゃしようとしたもんだけどね

 

 「夏目今回のはやめておけ、あの専門家はともかく精霊風は関わるとこの町ごと不治の病で倒れるやもしれぬぞ?あれは厄災じゃ、下手に触らん方がいい」

 

 「でもそれじゃああの子は!?」

 

 「まあまあ落ち着いて何事にも順序があるだろ?君は彼女を助けたいかい?見ず知らずの彼女を、不幸を厄災を呼ぶ少女を」

 

 

 さあ、決めるのは君自身だ夏目貴志くん

 

 「僕は…みんなを危険には巻き込みたくはない…でも目の前にいるあの子も僕は助けたい。忍野さん、あの子を助けて下さい!!」

 

 「夏目くん、人も妖も僕は助けないよ。僕は助けるわけじゃなく、人も妖も一人で勝手に助かるだけだからね。夏目くんの気持ちはわかった。じゃあ、教えようあの子もこの町もどちらとも幸せにする方法をね」

 

 僕は夏目貴志にそう告げると、にやりとした顔で話をする。妖も人も全てを幸せにする方法、全てが自分だけで助かり、なにも自然に、妖のように、人のように成仏させる方法を

 

 

 

 

  004

 

 (この作戦は一度きりだ、夏目くん君がうまくいけば晴れてハッピーエンドだ。ただしもし失敗した場合は僕が出るその時はもうあの子は助からない、いいね?)

 

 「とはいったものの、僕はあの子がやれるかどうか、彼自身とも自分自身との戦いになるだろうからね」

 

 「お主は何も分かっておらぬな、あやつは自分のしたいと思ったことは必ずやり遂げるやつじゃ。まあその代わりわしが苦労するのじゃがな」

 

 「やっぱり化け猫はやっぱりいうことが違うねぇ、いやこの見た目だと狸猫かな?でもそれじゃあ猫型ロボットになってしまうしなぁ」

 

 「誰が狸猫じゃぁー!!」

 

 僕は腕を組みながら見つめ、彼は向かっていく。いつしか風は強くなっていた、やれるだけの準備はやったさ。後は任せるよ夏目くん。

 

 

 

 

 

 

 忍野さんに言われたとおり、でもこれが本当にあの子は成仏できるのか?

 

 「君どうしたの?」

 

 [エッグ一人はさびしい、ひとりにしないで、なんでみんな言っちゃうの?]

 

 「君一人なのかい?お友達と一緒にいたりとかしなかったの?」

 

 [みんな私の事を近づくなって…気味が悪いとかって…]

 

 「どうしてみんなそんなことを言うのかな?」

 

 [私…見えるの…お化けが]

 

 この子って僕と同じ、もしかして忍野さんはこのことを

 

 (あの子を助けるには自分と向き合うことだ。ぼくはそれ以上もそれ以下言わないし、答えないよ。後は君もあの子も正面から向き合うんだ。そしてあの子に君の気持をぶつければ万事解決だ)

 

 「君友達がいなくてさびしい?」

 

 [……うん]

 

 「僕もね、小さい頃は君と同じで、僕も見えるんだお化けが、そのことで僕もよくいじめられた」

 

 […?]

 

 「でもね、今僕には大切な友達がいるんだ。君にももしかしたらいるのかもしれないよ」

 

 […でもそんなこと言ってる子なんて]

 

 「それじゃあこうしよう、僕が君の友達になってあげる。辛かったらいつでも僕が相談に乗るから」

 

 […でも、私もう…人間じゃ…]

 

 「人間も妖も関係ない、それに君は妖じゃない、どこにでもいる普通の女の子じゃないか、ほら君の帰りを待つお父さんやお母さんが待ってるよ」

 

 [ありがとう、お兄さん、また…遊びに来るね]

 

 こうしてあの子は天へと帰った。だれも不幸になることない、幸せのエンディングを。それをつなげてくれたのはほかでもない専門家忍野さんのおかげだろう。そう思いながら、僕の横を冷たい秋風が吹いてきた。

 

 

 

 

  005

 

 後日談というか、今回のオチって言えばいいのかな。

 

 いやいや、さすがは夏目レイコの孫といったところ、彼は阿良々木君と同じで良い心も持ち主だよ。ただ欠点とすれば、あの体力と運動神経かな、まああの狸猫がなんとかしてくれるんじゃいかな。おっと、話がそれてしまったね、まあ実際の所僕が行かなくても彼だけでも何とでもなっただろう、僕が手出しする必要も、介入する必要も、この依頼も何もかもが無駄足だったかな。いや、そうでもないか。あのぐらいの年を見てると僕も生き生きできるし、エネルギーをもらえるからね。まあ今回は不幸なんてない綺麗な物語、いや綺麗な怪異談、妖怪談とでも言っておこうか。次は、何処かぶらぶらして、依頼場所に向かおうかな?

 

 




 火憐だぜ~、次回予告は私がやっちゃうぜ!!

 次の話はこう、ドカン、やらアチョーてきな感じでやっていくぜ!

 といっても今時の先生って、こぶしで語れないのは残念だぜ、こうこぶしとこぶしの熱きなんとかっていうのを火憐もやってみたいぜ!

 それでは次回「川島ティーチ」

 夢にときめけ明日にきらめけだぜ!


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