うちの姉様は過保護すぎる。 (律乃)
しおりを挟む

新ストーリー 【2.5期】 ep1ーメギンギョルズ

自分なりに勉強して1話目を書いたけど、内容が時々意味不明かもです……なので、考えずに感じて読んでもらえたら嬉しいデス!

かなり短めです!

それでは、本編をどうぞ!!


~ 壱 ~

 

僕の左胸に人工的に埋め込まれた聖遺物【メギンギョルズ】は"古来の女神《トール》"が身につけていた彼女の神力を倍増させる帯であり、特性は"神の力を倍増させる"こと。ならば、何故その聖遺物を僕へと埋め込んだかというと"神の力を倍増させる"を僕の姉様やねぇや逹を守りたい、力になりたいという想いによって変換し"適合係数の数値の倍増・個人の能力の倍増"として機能させようと目論み、僕はその目論見にまんまとハマり、その能力を手に入れてしまった。

 

個人では背負いきれないほどに膨大なその力を貰った僕はこれから何をすればいいのか?

その膨大な力を自分のものにするためにするべきこととはなんなんのか?

 

それは恐らく僕自身が強くなること、僕がこの力を自由に使えるように努力を惜しまないことだろう、例え、この身が朽ち果てようともーー。

 

 

 

 

 

~ 弍 ~

 

「すぅ……すぅ……」

 

すやすやとメディカルルームにあるベッドで眠る僕の頭を優しく触るのは白い白衣を着込み、明るい色合いの金髪を腰辺りまで伸ばした女性・櫻井 了子へと声をかけるのは僕の実姉である暁 切歌だ。

 

「こんにちはデス。了子さん? フィーネ? 「どっちでもいいわよ」 それじゃあ、了子さんで。歌兎のメディカル終わったデスか?」

「えぇ、先ほど終わったばかりよ」

 

了子お姉さんが身体を起こすとシーツを自分の方へと手繰り寄せて眠りについている僕の姿を視界に収めてから思わず頬を緩めた姉様は心配そうな表情を浮かべると上目遣いで了子お姉さんを見る。

 

「そうデスか。その……メギンギョルズとミョルミルの進行って……」

「その事はここではなんだし、お姉さんに少し付き合ってもらってもいいかしら?」

 

姉様の問いかけにベッドですやすや眠る僕をチラッと見た後にちょんちょんと右人差し指でドアを指差すのにコクリと首を縦に振る。

 

「はいデス」

 

重苦しく答えた姉様は前を歩く了子お姉さんの後に続き、通称《二課》こと《特異災害対策機動部》の待合室の緑色のソファに姉様を座らせた了子お姉さんは壁に映った動画に移してある僕のレントゲンを指差す。

 

「これが歌兎ちゃんのレントゲンね」

「……」

「切歌ちゃんにはこの白い箇所が見えるかしら?」

「…はい見えます。これが歌兎のミョルミルとメギンギョルズデスか? ん? でも、あたしが前に見せてもらった時は心臓の近くにこんな塊無かったデスよね? もしかして、歌兎は響さんよりも危ない状況なんデスか?」

 

少し垂れ目がちな黄緑色の瞳に映るレントゲンには肋骨に隠れるように右胸に埋め込まれている親指の一関節の破片・メギンギョルズ、6年前の事件で腹部へと突き刺さってしまったミョルミルの破片、そして心臓の近くに一関節くらいの塊があり、薄っすらと涙が浮かんでくる。

 

「この心臓の塊はメギンギョルズとミョルミルが歌兎ちゃんの血管を伝って身体中に広がる最中で心臓の所で融合したものと考えられるわ。そして、ここに入っているのがさっき歌兎ちゃんから取り出した融合した二つの聖遺物の破片ね」

「……ってことは、あたし達と戦っていた時の響さんと同じ状況……つまり、歌兎はもう助からないってことデスか」

 

ギュッと黄色のミニスカートの袖を掴んだ姉様の両手へと溢れ出してくる涙がポロリポロリと落ちるのを見ていた了子お姉さんはギュッと姉様を抱きしめる。

 

「助からない事はないわ。きっとどうにかしてあげる、お姉さんと大人達を頼りになさい」

「はい……よろしくお願いしますデス」

 

頭を下げる姉様へとニッコリと微笑んだ了子お姉さんと共にソファから立ち上がった姉様はメディカルルームですやすや眠り続ける僕を抱っこするともう一度頭を下げてから帰路に着くのだった。




新しいメインストーリーとなるこの章の目的は【LiNKERが必要とされない世界】を作ることと、やはり私は【大好きな切ちゃんに甘えたい】ので…過保護な切ちゃんシーンやらをふんだんに加えつつ、やや……いや、かなりダーク気味に話を進めていければと思います!

了子さん・フィーネが生きている理由と切ちゃん達が何故牢屋に入ってないかは後々明かしていこうと思います!(敬礼)



さて、昨日いよいよ【戦姫絶唱シンフォギアVX】が始まりましたね!!!!!!(うおおおおおおおおおおッ)
待ちに待った五期の放送、読者の皆様方のフォニックゲインが高まりまくりだと思います!!!
ここで1話目の感想を書ければいいのですが……私がアニメを観させてもらっているAmebaさんの放送はどうやら来週の土曜13日からなんですよね……(汗)
なので、1話遅れての追いかけとなりますが、フォニックゲインはずっと高めて、切ちゃん愛も今よりも高めていればと思います!

また、今開催しているWebくじを5回引いた所【缶バッチ"切ちゃん""セレナちゃん""奏さん"】【ミニ色紙"マリアさん""クリスちゃん"】当たりました!
そして、思いました…『あっ、よくうちの陣地に舞い降りてくださる方々だ』と(笑)
しかし、缶バッチ切ちゃんをゲット出来たのは嬉しい!!ここで切ちゃんが来なかったら私は間違いなくガン泣きしてるでしょうからね(笑)

そして、すごく関係ないんですが……そういえば、今日って七夕なんですよね……。やべーデスよ……奏者のみんなの七夕ボイス集めんと。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新ストーリーの漫談編 シュレンディンガーのキス -()-

更新遅くなりました……大変お待たせしました……(高速土下座)
6月の初めから高熱を出してぶっ倒れていましたが、体調もだいぶん良くなってきたので……亀のようにゆっくりですが、更新していこうと思っております。

今回から始まる【シュレンディンガーのキス】は【幾千のバットエンドを乗り越えて】の世界線での話となっています。
簡単にあらすじを書かせていただくと……本作の主人公・歌兎を含めた奏者達は"とある訓練"の為にS.O.N.G.が用意した訓練施設へと来ており、その訓練をしている最中にオートスコアラーの襲撃が起こり、交戦後にいつものように実姉である暁 切歌の背中でスヤスヤと眠りについている歌兎へと密かに想いを寄せているとある少女こと"その少女"とその少女が引き起こしてしまった"キス事件"がこの話のキーワードとなっております。

読者の皆様も歌兎と共に"その少女"とは誰なのか?を推理しつつ、シュレンディンガーのキスをご覧ください!

では、本編をどうぞ!!


その日、その少女(・・・・)彼女(・・)を含めた全奏者達はとある訓練の為に【S.O.N.G.】が用意した訓練施設へと来ていた。

しかし、訓練の最中に新しい敵…オートスコアラーが出現し、交戦後にいつものように姉の背中でスヤスヤと眠りについてしまった彼女の年相応の無垢(むく)な寝顔をチラッと見てしまったその少女の胸の底にひっそりと育んでいた恋心が急速に実っていくのを感じた。

 

訓練施設へと戻った奏者達は姉の背中でスヤスヤ眠りにつく彼女を労う声をかけるのを待ってから"うっこらしょ"とその場にピョンと飛んだ姉は左肩に顔を埋めて眠る彼女へと優しい眼差しを向けた後に奏者達へと視線を向けてからぺこりと頭を下げる。

 

「歌兎、疲れたようなので寝かせてくるデス」

 

と頭を下げたことでズレ落ちてしまった彼女を落とさないように器用に抱っこし直した姉はトコトコと寝室まで歩いていき、彼女を抱っこしながら、布団を敷くとゆっくりと布団へと横たわらせて、水色が掛かった銀色の伸ばしっぱなしである前髪を手櫛で掬うとそのおでこへと唇を寄せるとチュッとリップ音を暗闇の中へと響かせた。

そして、慈しむような眼差しをスヤスヤ寝息を立てている彼女へと向けた姉は微笑みながら、彼女のさらさらな髪へと手を差し込む。

 

「おやすみなさい、歌兎……しっかり休んでくださいね」

 

その一言だけ伝えるとスクッと立ち上がり、彼女が眠る寝室を後にした。

姉が寝室を後にした数時間後、彼女を取り囲むように部屋に集まっていた少女達が寝室を埋め尽くすように布団を敷き、其々何気ない会話の後に眠りについた。

全員が眠りにつき、まん丸お月さんが灰色の夜空を優雅に泳いでいっている中、その事件は起きたのだったーーーー。

 

 

 

今日の出動により、より一層彼女への想いを強めていったその少女は寝静まった寝室で一人起き上がると抜き足忍び足で彼女の布団へと歩み寄ると仰臥位(ぎょうがい)で健やかな眠りにつく彼女の下腹部へと跨がる。

 

「すぅ……すぅ……」

 

そして、穏やかな寝息を漏らす彼女の年相応に幼くも適度に整っている顔の挟み込むように両手をついたその少女は改めて彼女を見下ろす。

僅かな光を灯す電灯に照らし出されたサラサラな肌触りが気持ちいい水色の掛かった銀髪はシーツへと円を描くように広がっており、彼女が寝返りを打つ度に緩やかな波を立ててはその少女を魅入(みい)らせては吐息を漏らす。

 

「ーー」

 

暫し、銀髪に魅入っていたその少女は今度は彼女が身につけている寝間着へと視線を向ける。

彼女は普段から"自分の事は時の流れに任せる"と"姉には絶対服従(ふくじゅう)"という不思議な性格の上に"自分の事よりも他人(ひと)の事が第一"という自己犠牲が周りにいる人に比べて多く備わっていた、故に彼女が今のような状況に陥っているのは必然ともいえた。

 

「んぅ…っ……んーーっ、ん……」

 

ゴロンと寝返りを打とうとした彼女が今回身につけてもらった寝間着はどうやらいつものように彼女の姉が好んで着せている色んな動物がプリントアウトされた大きめなサイズのパーカーのようで、今回はレッサーパンダようだ。クリクリなまん丸な瞳の周りにはふわふわな真っ白と真っ黒、黄土色のボア生地で彼女の華奢な身体を包み込んでいる……そう、本来ならば包み込んでいるのだが……彼女はどうやら寝相というものが悪いらしく、彼女の臀部(でんぶ)の所まであるはずのダボっとしたパーカーはお臍の辺りまで捲れ上がっており、サイズが大きなせいで右肩からずり落ちた襟首からは小さな肩と鎖骨、膨らみかけの胸元が半分以上があらわになっており……その少女は自然と生唾を飲み込んでいた。

 

「……ごくり」

 

細身なのにしっかりと筋肉がついた小さな肢体……シミやシワひとつない真っ白できめ細やかな肌へと思わず手を伸ばしたその少女は自身の掌から伝わってくる感触についつい我慢ができなくなってしまった……。

今の今まで募らせていった彼女への小さな恋心はその少女が思っているよりも破裂しそうなほどに胸へと募っていたのだ。

 

 

 

 

ーーーー故にその少女は彼女の唇へと自分の唇をくっつけてしまったのだろう……。

 

 

 

 

「……んっ」

 

最初に唇をくっつけた時は触れるか触れているか分からないようなもの……そして、続けてくっついた時は最初よりも長くしっかりと……その次からはべったりと小さな唇の形や瑞々しい感触を味わい尽くすように上唇、下唇を引っ張っては摘み引っ張っては摘みを繰り返す。

 

「……はぁ……はぁ……」

 

ーー心が、身体が熱くなってくる……

 

彼女と唇をくっつけるたびに溢れんばかりの高揚感がその少女を襲うが……同時に多福感と罪悪感が溢れてくる。が、その少女は彼女の唇を奪うことをやめなかった。

彼女が眠っている時にもしかしたら初めてだったかもしれないファーストキスを奪ってしまったかもしれないという罪悪感よりも彼女とのキスで得られる多福感の方が優っていた。

 

「……んんっ、あむ、れろ…」

 

圧倒的な多福感を貪り尽くすためにその少女は彼女の唇を奪い、遂には小さく赤い舌へと自分の舌を絡めていく。上下に絡めるのを延々と続ける。その度に彼女の唇の端からは涎が垂れては下に引いてあるシーツへとシミを増やしていく。

 

「……れろれろ、あむ……はぁ……っ、ん……っ」

 

酸素が薄くなり、遂に唇を離したその少女は自分の唇から流れて汚れた頬を拭った後に涎で汚れる彼女の頬を慈しむように拭った後に今度ははだけた寝間着から覗く小さな膨らみへと唇を寄せるとパクリと滑らかな白い肌を咥え込み、続けて強い力で吸い付く……のを二箇所付けた後にジィーーーーとアニマルパーカーのチェックを下までさげた後に左右へとはだけさせたことにより、半裸になった彼女へとその少女は同じように"赤いアト"を付け続ける……頬を赤らめ、胸に溢れてくる多福感に導かれるままに。




ということで、"その少女"とは誰なのかでしょうか?

と言いながらも全然情報がないですものね……(汗)
少なくとも今回の犯人は"姉様"ではないので、容疑者リストから除外してください(笑)

因みに、容疑者リストに載っているのは……

◆立花 響 ちゃん
◆風鳴 翼 さん
◆雪音 クリス ちゃん
◆マリア・カデンツァヴナ・イヴ さん
◆月読 調 ちゃん
◆天羽 奏 さん
◆セレナ・カデンツァヴナ・イヴ ちゃん
◆珠紀 カルマ さん

となっております。

この中の誰が"その少女"なのでしょうか?
"その少女"……この表現だけでも数名は除外できますね(笑)




最後に、今始まっているイベントやガチャについて語りたいのですが……あまり長く書くと目星をつけていらっしゃる読者の皆さんの邪魔になるので、簡単に述べますと……ここ最近の出る出るパワーにより翼さんがより多くうちの陣地に舞い降りてくれます!
本当にありがたい……(手を合わせる)

続けて、お知らせなのですが……来週から"うちあね"こと"うちの姉様は過保護すぎる。"は【毎週火曜日】に更新しようと思っています。あくまで予定なので、一日早かったり遅かったりとなると思いますが、変わらずに応援していただけると嬉しく思います!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

シュレンディンガーのキス -(しょう) ~1~ -

火曜日の更新日には早めですが、お知らせしたいことがあり更新させてもらいました(敬礼)
お知らせは後書きの最後にて書かせてもらおうと思います!!

それでは、本編をどうぞ!!


「…ん?」

 

薄暗かった寝室へと陽の光が差し込み始めた頃、僕は寝苦しさを感じて、薄っすらと目を開けるといつもの如く捲れ上がっている寝間着がわりの動物を象ったパーカーの袖を気怠げに両手で掴むと下へと引き下げようとする。

 

(…? なんだろ、これ。お臍のところに赤いのがある)

 

体を起こし、ジィーーと赤い所を観察してみると分かったことがいくつかあった。一つ、大きさは僕の親指くらいということ…二つ、どうやらこの赤いのはお臍以外にも胸元や鎖骨辺りなど様々なところにあること…その二つが今の所分かっていることで、僕はもう一度よくよく見てみる。

 

(んー? 虫にでも刺されたのかな?)

 

この季節は汗をかいたりする事から外に出るとよく蚊や虻に刺されて、家に帰ってそれを告げると血相を変えた姉様が虫刺され薬を塗ってくれるというのが一連の流れとなっていた。つまり、この赤いのも虫刺されということだろう…と結論づけてからというもの、さっきまで痒くなかった赤い所が痒くなってきて、そっと赤い所に触れてから爪を肌へと突き立てようとした時だった。

 

「駄目デスっ!」

 

と大きな声が寝室に響き渡ったのは。

 

「…!?」

 

ビクッと肩を震わせてから声がした方へと視線を向けると緑と白のシマシマから黒いブラジャーを覗かせるという露出度が半端ない大胆な寝間着に身を包んだ明るめの金髪に✖︎(ばってん)印の髪飾りが特徴的な僕の実姉である暁 切歌が忙しい顔をして入り口に立っており、今まさに爪を立てようとしている僕を視界に収まるとズカズカと近づいてくる。

 

「歌兎、さっき何をしようとしてたの」

「…爪を立てて搔こうとしました」

 

特徴的な"デス口調"でも優しく諭してくれる"敬語口調"でもない"タメ口"でのお叱りときて、姉様が本気で怒っていることを感じた僕はそっと赤い所から手を退けるとシュンと肩を落とし、観念したように今しようとしていた事を言うと「…はぁ…」と小さな嘆息が聞こえてくる。

 

「歌兎、いつも言ってるよね? 虫に刺されても掻いてはいけないって。歌兎はお姉ちゃんとの約束が守れない悪い子になってしまったの?」

 

両肩へと手を置いて、塞ぎ込む僕の顔を覗き込むように怒声の中にも優しさを感じとり、僕のことを心配して本気で怒ってくれる姉様にこれ以上心配させてはいけないと素直に頭を下げる。

 

「…ごめんなさい…姉様…」

「分かればいいのデス。ほら、一緒に顔を洗いに行きましょう。その後に虫刺されに薬を塗ってあげるデスから」

「…ん」

 

片足をついて中腰になって両手を広げる姉様へとトコトコと近づくと首へと両手を回す僕のお尻へと両腕を回す。

 

「しっかりつかまるデスよ」

「…ん」

 

その場にピョンピョンと器用に飛ぶと僕を抱っこしやすいところへと微調整した姉様は朝に使う用にと小分けしている緑色の巾着袋を肩からかけるのを見て、その緑色の巾着袋に寄り添うように置かれていた桃色の巾着袋が無いことに気づいた僕は姉様へと尋ねてみる。

 

「…シラねぇ、もう起きてるの?」

「えぇ、セレナとマリア、未来さんに誘われて、少し外の空気を吸いに散歩してくるそうデスよ」

「…そっか」

 

今回のお泊まり合宿で僕は左胸に埋めれている【メギンギョルズ】の能力を自分のものとしないといけない。

 

(…僕はいつだって未成熟で未完成で頼りない…だから、オートスコアラーに勝てないんだ)

 

そんな事を考えているとギュッと急に抱きしめられて、いつの間にか下を向いていた顔を横に向けるとニコッと雲間から顔を覗かせているお日様のように暖かい笑顔を姉様が微笑んでいた。

 

「…姉様?」

「歌兎が居てくれるだけであたし達は助かっているんデス。だから、あまり無理しないでくださいね」

「…無理はするためにあるって前に姉様が言ってた」

「ありゃ〜、あたしってばそんな事を歌兎の前で言ってたデスか」

 

"しまったデスね"と苦笑いする姉様は目の前から歩いてくる桃色のフリルのついた白いゆったりしたTシャツに赤いホットパンツといった出で立ちのクリスお姉ちゃんの隣で大きな欠伸をしているお腹のところにひよこがプリントアウトされた橙のTシャツに短パンといった出で立ちの響師匠が並んで歩いていた。

 

「…ふわ〜〜ぁ」

「…ふわぁ……ちっ、バカの欠伸がうつっちまった」

「そんな〜ぁ。クリスちゃんが先に欠伸したのに!」

 

前から歩いてくる二人へと小走りで駆け寄った姉様は右手を元気よくあげて挨拶するので僕も右手を上げて挨拶をする。

 

「先輩方グッモーニングデス!」

「…クリスお姉ちゃん、響師匠、ぐっもーにんぐです」

「おはよう、切歌ちゃん、歌兎ちゃん。こんなに暑いのに相変わらずだね」

「えへへ、歌兎を守るのがあたしの役目デスからね。歌兎はさっき起きたばっかりなので寝ぼけて壁にぶつかってはいけないデスから。歌兎は抜けているところが沢山あるデスから、あたしが守ってあげないと」

「なるほど、寝ぼけているとついつい壁に行っちゃうよね。私も今日寝起きで壁に頭をぶつけちゃって、未来に手当てしてもらっちゃったよ」

「デスデス。あたしも今日壁にぶつかっちゃって、調とセレナに手当てしてもらったばかりデスよ」

 

「あはは」と今朝の失敗談を笑い話にする響師匠と姉様を見て、頭を抱えるのはクリスお姉ちゃんだ。

 

「バカが二人で話がミキサーになってやがる」

 

(話がミキサーってなんだろ……あっ、ミキサーのようにぐちゃぐちゃになってるってことか!)

 

"クリスお姉ちゃん語録"を自力で解明できたことが嬉しくて、クリスお姉ちゃんの方を見ると薄紫色の瞳の下に黒いものが化粧を塗ったようになっているのを見て小首を傾げる。

 

「…? クリスお姉ちゃん、眠れなかったの?」

「あ? どうして、そう思うんだ?」

「…だって目の下にクマが出来ているから」

「あっ、ほんとデス。クリス先輩、夜更かしは駄目デスよ」

 

"チッチッチ"と舌を鳴らしながら、リズミカルに右人差し指を横に振る姉様を見て「はぁ……」と深く溜息をついたクリスお姉ちゃんは右親指で隣に立つ響師匠を指差す。

 

「…あたしが寝れなかったのは隣のバカが原因だ。真夜中だってのに大声でピーチクパーチク喋りやがって」

「だって、奏者のみんなでお泊まりだよ!? うら若き乙女達が集まっているんだよ!? 折角なんだから夜遅くまでお話ししたいもの」

「ああそうかい。あたしはお前の中ではうら若くないんだな」

「そんなこと言ってないでしょう。ねぇーってば、クリスちゃ〜ん」

 

半泣きで抱きついて来ようとする響師匠をめんどくさそうに頬に手を置いて突っ張るクリスお姉ちゃんに頭を下げた僕と姉様はトコトコと洗面所に向かって歩き出す。

そして、洗面所に着くと僕用に姉様が家からわざわざ持ってきた幼稚な台を引っ張り出すと僕を下ろすと台に乗るように言う。

 

「朝から先輩方は仲良しさんデスね。はい、歌兎。気をつけて、台に登ってくださいね」

「…よいっしょっと」

 

台に乗り、両手を洗面台につくと後ろに回った姉様が巾着袋からやや乱暴に畳んで入れてあった防水エプロンをつけてもらってから姉様に髪の毛を結んでもらう。

 

「エプロンはこれで良しっと……あとは髪の毛が濡れないように髪の毛結びますね」

「…ん」

 

寝癖が付いていた髪の毛を櫛で付いてもらってから、器用に姉様が僕を髪を結んでいく。その手慣れた手つきは恐らく僕やシラねぇの髪の毛を結ぶことがあるからだろう。

 

「えへへ〜、歌兎だけに兎さんヘアーデス」

 

ジャジャーンと両手を僕の方へと向ける姉様の声に気づいて、櫛をといてもらう心地よさから半分寝ていた僕は目を擦ると鏡に映る左右に大きな団子が付いてある自分の姿を視界におさめると自然と頬が緩む。

 

「…可愛い」

「デスデス」

 

ニカッと得意げに笑う姉様が見ている前でバシャバシャと顔を洗う中、扉を隔てた廊下側から次のような話し声が聞こえてきた。

 

「雪音、立花、廊下まで騒ぎ声が響いていたぞ。まだ寝ているスタッフの人もいるのだ、ここにいるのは我々だけではないとくれぐれも肝に命じてくれ」

「ごめんなさい…」

「すまねぇ…」

「分かればいい。どれ、私も顔を洗うとするか」

 

クリスお姉ちゃんと響師匠に注意してから扉を開けたのは水色のカッターシャツに青いジャケット、白い短パンに身を包んだ翼お姉ちゃんで僕の顔をタオルで拭いている姉様に苦笑いを浮かべている。

 

「およ? 翼さん、グッモーニングデス」

「…翼お姉ちゃん、ぐっもーにんぐです」

「あぁ、おはよう、二人共。相変わらず仲がいいな」

「えへへ〜、歌兎はあたしがいないと駄目駄目デスからね」

「そうか? ま、切歌がそういうのならばそうなのか」

 

鼻の下を人差し指でなぞりながらそう言う姉様のセリフに首をかしげる翼お姉ちゃんに不思議そうな顔をする姉様だったがあまり深く考えないことにしたらしく、使ったタオルとエプロンを巾着袋へと入れると台から僕を下ろす。

 

「台をここに直して……歌兎、お姉ちゃんのところにおいで」

「…ん」

「よいっしょっと。それでは翼さん、あたし達はこれで」

 

ぺこりと頭を下げる姉様にタオルから顔を上げた翼お姉ちゃんがニッコリと微笑む。

 

「あぁ、朝ごはんの時に会おう」

 

洗面所を後にした僕達は再び寝室へときていて、僕と合同の緑色のスポーツバックから自分と僕の私服を取り出した姉様はさっさと着替え終わると虫刺され薬を片手に僕の目の前に腰を落とすと万歳するように言う。

 

「はい、歌兎。バンザイデス」

「…ばんざい」

 

両手を上に持ち上げるとすんなりとアニマルパーカーとその下に着ていたTシャツを脱がされて、上は花緑青色のブラジャーで下は短パンという姿になった僕の肌にある赤いところがどれくらいあるか数えてから困ったように眉をひそめる。

 

「ありゃ〜、これは前よりも酷いデスね。ここにも背中にもありますし…足のところにもあるってことはもしかしたら、下にもあるかもデスし…」

「…全部塗るの?」

「塗らないと痒いと思うデスからね…」

 

虫刺され薬のキャップを取って、いよいよお臍の赤いところへと塗ろうとした時だった、静かに寝室の扉が開いたのは。

 

「帰りました」

「あら? 歌兎着替え中だったかしら?」

「切ちゃん。歌兎、蚊に刺されたの?」

「赤いところが沢山あるね」

「うちのも貸そうか」

「あたしものあるぞ」

「にゃっにゃ!?」

「…わっわっ」

 

扉の向こうから現れたのは、廊下ですれ違った三人以外のこの合宿に参加している奏者達で姉様は口々に話しかけてくるのを聞いて目を丸くさせていて、僕は忽ちその人影に埋もれていったのだった。




ということで、次回は朝ごはんの場面と訓練、 そしてお風呂シーンを書かせてもらおうと思います。

さて、今回の話で絞り込めた読者の方はいらっしゃったでしょうか?
因みに、カルマと奏さんは散歩をしている四人に後で合流したそうで、響ちゃんのガールズトークには未来ちゃんはもちろんのこと、調ちゃんにセレナちゃん、マリアさんと奏さん…クリスちゃん渋々付き合ったそうですよ(微笑)
本当は切ちゃんもガールズトークに参加する予定だったのですが、歌兎ちゃんを寝かしつけるのに子守唄を歌い、次第に自分も眠くなり、歌兎ちゃんと一緒に眠りについたようです。

また、みんながどんな風に布団を並べていたかというとーー

上の列・・・翼さん / 奏さん / 響ちゃん /未来ちゃん / クリスちゃん

下の列・・・カルマさん / 調ちゃん / 切ちゃん / 歌兎 / マリアさん / セレナちゃん

ーーとなってます。




明日から7月に入るということで、いよいよ【シンフォギアVX】が放送開始ということで【第1話プレミア上映会】がありましたね! 私は行けませんでしたが、もしかすると読者のみなさんの中では行かれた方がいらっしゃるかもしれませんね。行かれた方、大変お疲れ様でした!(敬礼)

また、VXも響ちゃん、切ちゃんに引き続き調ちゃんのジャケットのイラストが解放されましたね!
今回のジャケットはみんながカッコいいですね!! 凛々しい顔つきの調ちゃん、カッコ可愛くて好きです…(ジーン)
そして、B面…カップリング曲の【君が泣かない世界に】ってタイトルだけで泣きそうになります…(涙)
私、きっときりしらのカップリング曲で号泣すると思います…




さて、前書きにてお知らせしたお知らせなのですが……メインストーリーの方を書き直した後に他の章も同じように書き直します。
書き直そうと思った理由は色んな世界線を書いてきて、私自身も読者の方も訳わからなくなってきていると思いますし、私自身が何を書きたいのかがよくわからなくなってきてしまいまして…なので、一旦白紙に戻して、私が書きたいものを見つけていこうと思いますので…どうか、ご理解頂けると嬉しいです(土下座)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

シュレンディンガーのキス -(しょう) ~2~ -

主筆の時間上、朝ごはんシーンしか書けませんでした…(大汗)

短いですが、楽しんでもらえると嬉しいです。

それでは、本編をどうぞ!!


沢山のねぇや、お姉ちゃんたちの手により、体の至る所にあった赤い所に虫刺され薬が塗られ、僕が感じていた痒みもすっかり直り、再び姉様の腕に抱かれて、食堂へと向かっていた。

ガシッとさっきよりも抱きしめてくるのはきっと恐らく数分間の間だけど僕を他のねぇやたちやお姉ちゃんたちに弄ばれたからだろう。

 

(僕は弄ばれたって思わないんだけど…)

 

だがしかし、それはあくまでも僕の気持ちであって、姉様の気持ちではない。

ドスンと勢いよく椅子に座り、頬をまん丸に膨らませている姉様の右隣に腰掛けるのは僕で左隣に座っているのがシラねぇだ。

 

「切ちゃん、ごめんね…。みんな、歌兎の事が心配で仕方ないんだよ…悪気があるわけじゃないの、分かってあげて」

 

そう言って、日替わり定食Aのメインのおかずが乗っけてある藍色の皿からハンバーグを一口サイズに箸で器用に切り分けたシラねぇは左手を受け皿に隣にいる姉様へと「あーん」と差し出すと口を開けてパクリと食べた姉様はまだ怒りが収まらないのか、口を動かしながらも愚痴を漏らす。

 

「もぐもぐ…分かってるデスが、歌兎はみんなの妹じゃなくて、あたしの妹なんデス。なのに、あたしの前であんな風に歌兎をーー」

「切ちゃん、そんなに掻き込んだらむせるよ」

 

いつものように姉様とシラねぇが仲むずましく食事を取っているのを横目で見ながら、僕も目の前にあるエビフライ定食へと手をつけていく。

まずは小皿に盛り付けてある微塵切りにされたキャベツと人参に甘酸っぱいドレッシングがかかっているのを平られた後にメインであるカリカリに揚がったエビフライを口に含むとじゅわ〜りと甘みと油が舌に広がり、唇は油によってテカテカになってしまうのを紙ナプキンで拭こうとした時に不意に尿意に襲われてしまった。

 

(…あっ、トイレ行きたくなっちゃった)

 

ジッとしてたら大丈夫かなって思ったけどこれトイレに行かないとダメみたい…と判断した僕は隣でまだ頬を膨らませている姉様の膝の部分を人差し指と親指で詰まるとくいくいと自分の方へと引っ張る。

 

「あむ? どうしたデスか、歌兎?」

 

まるでハムスターのようになっている姉様へと「トイレに行ってくる」とだけ伝えて、付いて来ようとするのを止めてからスタスタとお手洗いへと向かう。

 

「…ハンカチはここにあるから…」

 

このハンカチでしっかりと手を拭いてから、トイレを出ようとした時だった…ドッシン、と誰がにぶつかったのは。

ぶつかった衝撃で軽く弾かれてよろめいた僕は慌てて頭を下げる。

 

「…ごめんなさいっ。僕、しっかり前向いてなくてーーいった」

 

僕がぶつかってしまった人は怒っているのか、下を向いている僕を壁へと押し付けると前を向こうとする僕の顔へと何かを掛けた誰かは何回も深く息を吸い込んでから、僕の唇へと柔らかくハリのあるものを押し付けてきたのだった。

 

「…んっ!?」

 

突然の事に脳が状況を処理が追いつかない中、掛けられた布の隙間から見えたのは谷間に隠れるように並んでいる二つのホクロだった。




という事で、何者かにまたキスされている歌兎ですが……犯人はどうやら【谷間に隠れるように並んでいる二つのホクロ】がいる人らしいですね。

因みに、この特徴は私が原作を観ていて、この子にそんなホクロがあったらいいなぁ〜と思って書いたものなので、もしかしたら原作と違うかもしれません(大汗)

なので、後少ししたら書こうと思っている【お風呂シーンにて犯人はこの子か!】と目星をつけていただければ嬉しいです!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

シュレンディンガーのキス -(しょう) ~3~ -

ばんわー!

ギリギリ間に合った……(大汗)

案の定、文字数は少なめです。

それでは本編をどうぞ!!


目の前に人の気配を感じられなくなってから暫く経った頃、誰かに押し付けられた壁沿いにズルリとピンク色のタイルへと腰を落とした僕はさっきまで自分の身に起きていた事を受け入れられずに目の前の白い壁を茫然と見つめる。

 

(……プルってしてて……少し湿っていて……生暖かくて……そして、柔らかった……)

 

自分の唇をなぞり、さっきまで押し付けられていたものを思い出すとやっぱりあれは誰かの唇だったと考えられるだろう。

 

(でも、誰が僕に?)

 

自慢じゃないけど、僕は誰かに好意を抱かれるような立ち振る舞いをしてないし、台詞も言ってないように思い出せる限りではないように思える。思えるのだが、僕は数秒前までこの場所で壁に押し付けられた後に何かを顔にかけられて、軽く唇を押し付けられた後にペロリと上唇と下唇を舐められて、啄まれた。

 

(……初めて、あんなキスされた……)

 

その時の光景を思い浮かべるだけで顔が真っ赤になり、耳まで熱を帯びていく。

いつもは姉様に恥ずかしいけどおはようとおやすみにキスをおでこか頬にされたりしたりするくらいで誰かと唇でキスをした事ない。

 

(……そっか、さっきのが僕のファーストキスなんだ……)

 

ファーストキスという言葉自体に強いこだわりや思い出があるわけではないけど、言葉にすると何か込み上げてくるものがある反面、何故誰かがこんな事をしたのかが気になる。

 

「…!」

 

(そうだ! 僕の顔にかかっているこの布にさっきの人の名前が書いてあるかもしれない)

 

大急ぎで顔にかかっている布を手にとってみると薄い布生地の下の所に《暁 歌兎》と見知った名前が同じく見知った文字で書かれてあり、思わずガクと気を落としてしまう。

 

「……ってこれ。僕のじゃん」

 

折角誰かが反面すると思い期待していた分、呆気ない結果で終わってしまい、ついガッカリしてしまう。

恐らく、さっきの人とぶつかってしまった時に落としてしまったのを見ていて、拾ってくれたのだろう。

 

振り出しに戻ってしまった"僕にキスをした人探し"に他にヒントになるものはないかと首を捻って考えていると廊下の方から叫び声が聞こえてくる。

 

『……う〜ぅ! 歌兎! 何処デスか〜ぁ!!』

 

(姉様?)

 

常日頃から耳にしている特徴的な"デス口調"を壁越しに耳にして、眉をひそめているとギィ……とドアが開く音が聞こえ、ひょっこり顔を出すのは明るめの金髪に大きな✖️(ばってん)印の髪飾りを付けたうちの姉様で垂れ目がちな黄緑色の瞳を忙しなく動かした後に壁にすがって床に座っている僕を見て、みるみるうちにニコニコ笑顔が曇りだしていく。

 

「歌兎、発見デス! ってあれ? トイレの床に座ったりして具合でも悪いんデスか? ハンカチを握りしめたりして……」

「…ぁっ」

 

しまった、さっきまでの出来事を考えるのに夢中ですぐに立ち上がることが出来なかったと後悔しつつ、スクッと立ち上がった僕はポンポンとお尻を叩くと薄っすらと涙まで浮かべている姉様を納得させられるような言い訳を考える。

 

「…なっ! なんでもないの」

「なんでもないならなんで床に変わってるんデスか……っ」

 

声まで涙声になるのを聞いて、考えるよりも口から飛び出たのがーー

 

「…これはその…少し疲れちゃったから…休憩してたの」

 

ーーという苦しまみれの言い訳だったのだが、姉様は安堵の溜息をついてから、胸をなで下ろす。

 

「そんなんデスか。なら早くお姉ちゃんを呼んでくれたら良かったのに」

 

淡く微笑みながらそう言う姉様は僕に向けて両手を広げると近づいてくる僕を抱き上げてからそのままトイレを後にすると食堂へと舞い戻ると僕を椅子に座らせると隣に腰掛けてからエビフライ定食の器を触れてから僕を見る。

 

「すっかり冷めちゃったデスね、温めてもらいますか?」

「…んん。僕が早く食べなかったのが悪いんだからそのまま食べる」

 

零したから服が汚れるということでエプロンを付けてもらってからモグモグと冷めてしまった定食を食べていく中、僕はまだ食堂に残ってからご飯を食べているお姉ちゃん達とねぇや達を見ていく。

 

僕が食べている席の斜め前に腰掛けて、食事するのは未来お姉ちゃんと響お姉ちゃん、クリスお姉ちゃんでどうやら未来お姉ちゃんは既に食べ終わっており、まだ食べている響お姉ちゃんとクリスお姉ちゃんが食べるのを待っている様子だ。

 

「もう、響もクリスも早く食べないと訓練に遅刻しちゃうよ」

「うっぷ……クリスちゃんが帰ってくるのが遅いからっておかわりするんじゃなかった……」

「お前、どんだけおかわりしたんだよ」

「んーとね、確かこれで5杯目だったと思う」

「お前馬鹿だろ!? おかわりで富士山築いてどうすんだよ!? おかわりで世界遺産狙うつもりか!?

 

目の前で山盛りのご飯を片手に「えへへ」と笑う響お姉ちゃんに呆れ顔のクリスお姉ちゃんの二つ席空けてから向かい合うように座り、食事を取っているのがマリねぇとセレねぇだ。

 

「セレナ、大丈夫? トイレから帰ってきてから顔色が悪いわよ」

「え? そ、そんなことないよ。マリア姉さんの見間違いだよ」

「そうかしら? 頬が真っ赤よ。熱があるのかもしれないわ、おでこをどしてごらんなさい」

 

そう言って、マリねぇがセレねぇのおでこを触るところを見てから、僕も早く食べないと特訓に間に合わなくなると心早足で定食を掻きこむ。




さりげなくヒントは潜ませておくスタンツで今週の土日のどちらかでお風呂シーンを書ければと思います!

お待たせしてしまい、すいません……(大汗)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

シュレンディンガーのキス -(しょう) ~4~ -

今まで【転話】で表示していたのを全部【承話】に変更しました。
理由は【承話】を歌兎視点での話、【転話】を犯人の少女の視点にしようと思っているからです。

また、今回もお風呂までいけませんでした、次回こそは絶対いくのでもう暫くお待ちを。
お風呂までいっちゃったら、一万いきそうなんだ……


僕の左胸に人工的に埋め込まれた"聖遺物《メギンギョルズ》"は"神力の倍増"という特性を持っており、その特性を僕の願いによって変換させたのが、"触れたものの適合数の倍増と個人の力の倍増"だ。

しかし、この力も無限に使えるというわけではなく、どういう原理かは不明なのだが、僕が眠りに落ちてしまうと力が弱まってしまうのだ。その特性を見抜いた錬金術師やオートスコアラーはまずは僕の排除から入る節があり、僕が今回身につけないといけないのは能力の使いすぎによる疲労に慣れることと眠ってしまってもメギンギョルズの能力を維持することだ。

 

今日の訓練を終え、タオルで首筋や二の腕を拭いているとヘトヘトな様子で姉様が僕に近づいてくると身を屈めて心配そうに見上げてくるのを淡く微笑んでむかえる。

 

「ふぅ……今回もハードだったのデス……。……歌兎は大丈夫デスか?」

「…訓練が効いてるのか、まだ全然眠くないよ」

「そうデスか。頑張ってますね、歌兎」

「…へへ」

 

なでなでと優しい手つきで髪の毛を撫でてもらっているとその様子を遠くで見ていたカルねぇが髪の毛をタオルで拭きながら近づいてくると僕の左胸をチラッと見てから尋ねる。

 

「そういえばさ。ふと気になったんだが、歌兎のメギンギョルズは今纏っているギア以外にも纏う事が出来るのか?」

「…出来るよ」

 

ボソッとではあるが即答した僕の答えが聞こえなかったのか、カルねぇが否定的なことを言うのをただ黙って聞いているとカルねぇの顔が徐々に歪んでいき、僕を二度見した後に素っ頓狂な声を上げるのをクスクスと笑う。

 

「そうだよな。そんな簡単にホイホイ他のギアが纏えたらーーって出るのかよ!?」

「…やっぱりカルねぇのノリツッコミは面白いね」

「ぽわわんと笑ってないで説明をしてくれ」

 

顎に人差し指を添え、眉をひそめながらなんとか自分が体験していることを説明しようとするが僕はあまりこういう説明は向いてないようだ。

 

「…んー、僕自身も深いところまで理解しているわけじゃないけど。僕がメギンギョルズの力を使うときは触れた人の脈動、そして聖遺物から僅かに発せられる脈動を感じ取っているの」

「にゃ? にゃう?」

「…聖遺物の脈動とその人の脈を重ね合わせることによってギアを纏えているのだけど……それを具体的に説明しろと言われるとよく分からない。了子お姉さんは確か、アウフ……ヴァッヘン……波形……? を僕が無意識のうちに感じ取っているからそんな荒技使えるとかなんとか……。んん、アウフヴァッヘンは聖遺物か破片が歌の力に反応した時に発生させるエネルギーだから……ん? ならこの説明で合ってるのかな?」

「…ゔっぅっ……」

「…!?」

 

さっきまで隣で難しい顔をしていたと思っていた姉様がいつの間にか垂れ目がちな黄緑色の瞳に涙を溜めて、ワンワンと泣いていた。

その様子に壁際で桃色のタオルで全身拭いてスポーツドリンクを飲んでいたシラねぇが血相を変えて飛んでくる。

 

「切ちゃんっ!? どうしたの?」

「あたしが知らないうちに歌兎はこんなに立派に成長したんだなぁって思うと涙が止まらなくって」

 

飛んでくるシラねぇに抱きついた姉様はシクシクと鼻を鳴らすのを呆れ顔を浮かべて見下ろしたシラねぇはナデナデと姉様の頭を撫でる。

 

「えぇ、そうね……。立派になったものね、あんなに小さかった歌兎もすっかり大きくなって……いつお嫁に出しても大丈夫だわ」

「お嫁さん!? それは駄目デスッ。マリアが良くてもあたしが断固拒否させてもらいます! だって、歌兎はまだ小さくてあたしが守ってあげないといけないのデス! マリアだってセレナをお嫁さんに出すの嫌デスよね?」

「……。…………確かにそれは嫌ね」

「もう、マリア姉さんも暁さんもしっかり歌兎ちゃんの説明聞かないと駄目ですよ」

「セレナの言う通りだよ、二人とも」

 

(あはは……)

 

うちの姉様とマリねぇは通常運転の様子でカルねぇはカキカキと頭をかくと眉をひそめる。

 

「うちもだけど誰一人として分かってない感じだな。切歌に至ってはなんか泣いてるし……って、マリアもかよ!?」

 

キレキッレなカルねぇのツッコミが炸裂する中、僕は左胸をチラッと見てから僅かに目を瞑り、もう少し無理をしてみても大丈夫だと判断してから小首を傾げてから尋ねてみる。

 

「…僕は口下手だから。実際にやってみたほうがいいと思うの」

「おいおい、大丈夫なのか? さっきまでメギンギョルズを使用して眠たいんだろ」

「…カルねぇ、ありがとう。今は本当に全然眠くないから大丈夫だよ」

 

本人がそう言っても副作用となる眠り……その間、ギアが纏えなくなる装者達のことを考えると自分の疑問なんて些細なものだと思いはしたが、やはり気になるのか、風鳴司令を見るカルねぇに司令はニカッと笑う。

 

「ま、いいんじゃないか? 歌兎くんがやる気の様だし、我々もメギンギョルズの新たな能力を知ることができて助かるしな」

「でも、終わった後は私のところに来てちょうだいね、歌兎ちゃん。メギンギョルズの進行も気になるから」

「…わかりました」

 

ヒラヒラと白衣を翻して、シミュレータ室を後にする了子お姉さんの後を追うのは司令で恐らく外から今から行われる出来事を見守ってくれるのだろう。

 

(…なんか緊張してきた)

 

"出来るとは言ったものの実際にした事はないのだ、もし心配してしまったならばここにいるねぇや達やお姉ちゃん達をがっかりさせてしまうかもしれない"と顔が強張る僕を勇気付けようとしてくれたのか、ドッシンと体当たりしてくる響師匠をよろめきながら受け止めた僕へとニッコリ微笑む。

 

「歌兎ちゃんなら大丈夫だよ。なんたって私の自慢の弟子だからね」

「もう響。それだと歌兎ちゃんにもっとプレシャーを与えてどうするの!」

「あっ!? ごめんね、歌兎ちゃん。私はそんなつもりはなくてね」

 

アタフタと顔に薄っすらと汗を出しながら、なんとか弁解しようとする響師匠をジィと見ているとポンポンと頭を撫でられる感触を感じて見上げるとニカッと笑う奏お姉ちゃんの姿があり、今だに心配そうな顔していたのか、ぐしゃぐしゃと乱暴に頭を撫でる。

 

「歌兎は歌兎のいつもしていることをやればいいんだよ……って事を言いたかったんだろ? 響」

「そうです、奏さん! ありがとうございます!」

「あはは、いいっていいって。それで誰がするんだ?」

 

辺りを見渡す奏お姉ちゃんに両手を上げて、ぴょんぴょんとアピールするのがうちの過保護な姉様だ。

 

「はいはーい! それならあたしが一番目をやりたいデス! それでセレナのアガートラームを纏ってみたいデス!」

「え? 私のアガートラームをですか?」

「はいデス! 剣が宙を浮いて、ビューンって飛んでいくのカッコよくてずっとやってみたんデスよ!」

 

戸惑っているセレねぇの両手をギュッと握ってから身振り手振りでセレねぇの技のモノマネをする姉様の隣を通り過ぎて、何故か頬を赤く染めてさっきギュッと握られた手を見ているセレねぇへと近づくと両手を差し出す。

 

「…セレねぇ。少しだけアガートラーム貸してくれる?」

「え? はい、いいですよ」

「…ありがと」

 

ニッコリと微笑んで、アガートラームの破片が入っているペンダントを手のひらに置いてくれるのをぺこりと頭を下げてから姉様へと振り返る。

 

「…姉様、僕の身体のどこでもいいから触れてくれる?」

「デース!」

 

嬉しそうにドッシンと体当たりしてきた姉様のニコニコ笑顔を真横に感じながら、苦笑いを浮かべながら言う僕は姉様はチッチッチと指を横に振る。

 

「…えーと、普通に手を握るだけでもいいんだよ?」

「ノンノン。あたしにとっての普通はこれデスよ? 歌兎もお姉ちゃんを全身で感じられて嬉しいデスよね? お姉ちゃんは嬉しいデスよ」

「…あーうん、そうだね」

 

(どうしよ、姉様の愛が時々強すぎて……反応に困る)

 

とりあえず、答えにくい事を聞かれたらスルーしようと心に決めたから左手にアガートラームのペンダントを握りしめると右掌を姉様へと差し出す。

 

「じゃあ、姉様。僕の右手に掌を置いてくれる」

「こうデス?」

 

キョトンとしながら、僕の言う通りに掌を乗せてくれる細っそりした指へと自分の指を絡めてからギュッと握ると目を瞑ってからアガートラームから伝わってくる波動と姉様の鼓動を掌から感じ取ろうと必死に神経を研ぎ澄ませていく中、モジモジと小さな声が右耳から流れ込んでくる。

 

「…そんな……指と指を絡めるなんて……お姉ちゃん……嬉しいデスけど……反応に困るデスよ……あ、でも積極的な歌兎も……いいデス……」

 

(…どうしよ、姉様が煩くて集中出来ない)

 

苦笑いを思わず浮かべそうになり、ブンブンと首を横に振る。

駄目駄目、こうやってすぐに心を乱してしまうから、僕は未熟なままなんだ。しっかり集中すれば、僕はなんだって出来る。出来るようになるためにこれまで練習してきたのだから、だからもう一度集中しよう。

 

「すぅ……」

 

深く息を吸い込み、右手から伝わるドクンドクンと姉様の鼓動を覚え、続けて左から僅かに伝わるアガートラームの波動を左手から感じ取り、二つの鼓動で似ているところを探していくとそこからゆっくりと照合していく。

 

(…一つ目の照合クリア。二つ目もクリア、三つ目もクリア。四つ目はーー)

 

ひたいへと薄っすら汗を掻き、息を早めていく僕に姉様が心配そうな視線を送り、これ以上負担をかけるわけにはいかないと右手を抜き取ろうとした時だったーー僕が右手と左手を合わせるようにして、アガートラームのペンダントと姉様の右手をくっつけたは。

 

「……Seilien coffin airget-lamh tron」

 

小声でセレねぇが口にしているアガートラームの聖詠が無意識で姉様の口から流れると眩しい光が姉様を包み込み、忽ち真っ白いギアを纏った姉様が姿を現わす。

セレねぇと違うところを述べるならば、ティアラがあった場所にちょこんと乗っかっている大きな✖️(ばってん)印が印刷させている帽子と白というよりも淡い黄色の面積が多く、右腕を包み込む銀色の部品が禍々しく所々とんがっており、あと何故か両手にゆる〜くカーブした短剣を持っている事だろうか。確か、セレねぇは重そうに短剣を一本だけ持っていたと思うのだが……ってこれ以上頭を使ったら眠たくなってしまう。

 

「って、あれ? あたし、アガートラームを纏えちゃってるデスゥ!?」

 

垂れ目がちな黄緑色の瞳をまん丸にして、驚愕する姉様を見届けてから大きく息を吸い込んでからどこか壁に縋れる所を探そうと動こうとした時には脚がもつれ、そのままタイルへとダイブしようとした所をひょいと支えられ、そのまま抱っこさせる。

 

「…ふぅ……なんとか上手くいった。……あっ」

「おっと……お疲れさん、歌兎」

「よくやったわね、歌兎」

「…もうくすぐったいよ、奏お姉ちゃん、マリねぇ」

 

ゴシゴシと頭を乱暴に撫でられ、目を細めていると血相を変えた姉様が走ってくると奏お姉ちゃんに抱っこされている僕を心配そうに見上げる。

 

「歌兎!」

「…僕なら大丈夫だよ。姉様が剣をピューンってするまでは眠らずに頑張るから」

「あまり無理しちゃダメデスよ。あたしはアガートラームを纏えただけで満足デスから」

「切歌、歌兎の頑張りを無駄にするものではないぞ」

 

ポンと姉様の肩を叩くのは今まで事の成り行きを見守っていた翼お姉ちゃんで姉様は尚も食い下がろうとするが息を吸い込み、一旦落ち着いてから早く技を出す事で僕を解放することに決めたらしく、ギュッと両手に持っている短剣を握りしめるとその場でブンブンと短剣を振るうと手に持っているのをジッと見てからボソッと呟いた。

 

「ナイフデース」

 

ガクッと装者のみんながなるのを不思議そうに見ている姉様へと駆け寄るのはセレねぇで

 

「暁さん、それはナイフじゃなくて短剣ですっ」

 

と間違いを訂正すると姉様は頭を照れたように掻くと掌に握っている緩くカーブしている短剣を見下ろす。

 

「なるほど、ナイフではないんデスね。確かに大きさが違いますもんね」

「それで切歌。ギアの出力はどうだ?」

 

訪ねてくる翼お姉ちゃんに姉様は苦い顔をすると首を横に振ると自分の体を見下ろす。

 

「…少し重たいデスね。やはりあたしはイガリマじゃないとダメなようデス」

「…多分、それは僕があまりアガートラームの波動をインプット出来なかったからだと思います」

「インクがプッと飛んでいく?」

「バカは黙ってろ」

「酷いよ、クリスちゃ〜〜ん」

 

泣きそうな顔をする響師匠をクリスお姉ちゃんはフッと鼻を鳴らす。

その様子に淡く微笑んでから、さっきの説明の続きを言う。

 

「…インプットっていうのは記憶するってことなんです。セレねぇのアガートラーム、響師匠のガングニール、翼お姉ちゃんの天羽々斬、クリスお姉ちゃんのイチイバルは僕の力があまりなくても、弱点となっているところの倍増だけすれば良かったのであまり深く形を覚えてなくて……その事が姉様が感じているギアの重さだと思います」

「つまり、もう一度じっくりと私たちのギアから発せられる波動を覚えこむ事が出来れば、重さを感じる事なく纏う事が出来るということか?」

「…そういう事です」

コクリと首を縦に振ると得意げに鼻を鳴らす姉様にクリスお姉ちゃんがげんなりしている。

 

「えへへ」

「…なんで過保護が得意げなんだ」

「あたしの妹が宇宙一可愛くて賢いのが誇らしいのデスよ」

「ああ、そうだな。お前は残念だけどな」

「クリス先輩、それはあんまりデス! あたしだってやれば出来るんデスよ!」

 

プンプンと頬を膨らませて怒る姉様はその後、セレねぇに教えてもらったりしながら、念願だった剣をピューンとする技を出す事が出来て、僕はそれを見届けた後にゆっくりと瞼を閉じたのだった。




GXのラジオ9と10をリピートする中で『ナイフデース』の一言に大変惹かれまして、何としても切ちゃんにそのセリフを言って欲しかったので書いてみました(笑)






さて、ここから先はAmebaさんで13日に鑑賞させてもらったシンフォギアVX1話の感想を書かせてもらおうと思います!
早い方なら2話を見ているからネタバレがんがんしていいよね? もうガンガン、自分の思っている事書くからね!? なので、 途中で気分が悪くなった方は高速スクロールしてください!!
私は自分でいうのもアレですが、変態で視点が他の人とズレてますので……気分を害させる方がいらっしゃれないか心配です……(大汗)
心配なのですが、どうしてもエロに全力で走ってしまうのが律乃というこの私なのでどうか許してください!!


という事で、まずは初めから新キャラ登場の上に『すまない、フィーネ……』のセリフが意味深でしたよね……。
そのシーンで私が気になったのは『システム・オール・グリーン』でしたね……どうも『システム』というセリフを聞くとどうしてもSAOを思い出してしまう(笑)

続けて、一気に北極での話となりましたが……ヘリでの移動中に寒がっているのが元気印が似合う響ちゃんと切ちゃんだけだったのがなんだか可愛かったです。あと最初の「デース」を頂きましたッ、大変可愛くニヤニヤしてしまいました…ありがとうございます!!
このヘリのシーンで個人的好きなのは、髪の毛をかきあげている調ちゃんなんですよね……そして笑いがこみ上げてしまうのが、マリアさんの凛々しい立ち姿……なんで笑っちゃうんだろうな(笑) そういえば、一話鑑賞会の時にもマリアさん立ってたよね…あれは後ろの人には邪魔だよね(笑)

棺の事を話している時のシーンの切ちゃんが可愛すぎでしょう!? 前屈みで目がいつもよりもまん丸で…頭をカキカキしてるし……『常識人には酷な事聞かないでほしいのデス」ってまだ常識人設定を引っ張っているのか!? 切ちゃんっ!! 君はもう常識人じゃないだろ!!? もう色々と漏れ出ているんだよ!? というツッコミを入れてしまいそうにもなりますが、やはり切ちゃんは可愛い……ほんと可愛い、ハァーーッ、こんなカワイイ生き物が居ていいんでしょうか(悶え死)
あと、このシーンの調ちゃんって切ちゃんよりは少ないかもしれないけどペチャパイじゃなかったよね? あの影の入れ方はある方だよね?(たまに現れる変態)

あと、翼さんとマリアさんは最初から飛ばしすぎでしょうっ!? 名言と迷言のオンパレードでニヤニヤが止まらないですよ!!?

また、ヘリから飛び降りる時、みんなは顔からダイブしているのに切ちゃんだけで脚から飛び降りてましたよね!!(ハイテンション)
一瞬映る切ちゃんの顔のドアップが可愛すぎてテンションがマックスになりました!! 私はここまでたどり着くまでに何回も切ちゃんに可愛さでdeathされていることか……切ちゃんを推し続けてよかった…(喜びに打ちひしがれる)

その後は響ちゃんの変身バンクでしたよね!!!!
これ半端なくてヤバイですね!!!!!!
もう無印〜AZXの良さがここぞとばかりに入ってしましたよね!? ガングニールが作り出した空間(?)でカンフーをする響ちゃんがカッコよすぎました!!
私の小説を読んでいらっしゃる方なら知ってると思うのですが、私はマフラーが……マフラーを巻いている子が大好きなのです!! なので、口元にかかるマフラーを鬱陶しそうにクイッと下に下げる仕草にはテンションが上がり、悶えましたね!!

また、スケートシーンもいいですよね!!
響ちゃんの後ろを滑る調ちゃんと切ちゃんがクロスしてからの技をする時……んーと、ここの切ちゃんは『やっ』と言ってるのかな? それとも『にゃっ』? どっちを言ったのかな??

ともかく、ここの戦闘シーンは六人の連携がいい味を出してますよね……今までは二課チーム、F.I.Sチームでの連帯感は確かにあったけど、六人でここまで息のあったシーンはなかったよな……なので、かなり新鮮でしたね。

同じくスケートシーンでは、調ちゃんの後ろにいた切ちゃんがクルッとターンしてからの一連流れはいかんでしたね(興奮しすぎて鼻血を抑える)
調ちゃんを抱きかかえてのピョーンと自分の肩に乗せるんだよ!? ザババの二人の連携とイチャつきは大変いいです………(尊さを噛みしめる)

また、翼さんの技からの響ちゃんとマリアさんのあの名セリフを言ってから拳を棺へとたたきこむのはテンションが120%になりますね!!
しかしその後の棺からのビームに氷漬けになって倒れてしまう装者のみんなからの日常シーンからの未来ちゃんの『私が誰かを困られていたらどうするの』のシーンは意味深でしたね……(大汗)

北極に行く前のミーティングで『氷漬けにされた蠍』で思ったのが、オリオン座の事。
確か、オリオンはなんかの神様の息子で巨大で腕の立つ狩人でその事を自慢して回っていたらしく、その事で女神の怒りに触れたオリオンが巨大な蠍の毒に刺されて亡くなったという神話なのですが……オリオンというとAZXにて地面に書いた鏡写しのオリオン座が現れていましたよねってことは………と考えてしまいました。ま、私が直感で思った事なので外れる事の方が多いと思います(笑)

その後は現在の北極のシーンに戻り、氷漬けにされてイナバウアーしてる切ちゃんに笑っちゃいました。口を開けて気絶している姿は可愛いのに、仰け反っているせいでエロく感じる……いや、私の目が悪いのか(ゴシゴシ)
しかし、その後の戦闘シーンの鎌をブンブンしている切ちゃんはカッコよかった(余韻を噛みしめる)

また、エルフナインちゃんの「ぶん殴ってください」からの響ちゃんの「言っている事よく分かりません」のやり取りは新鮮でしたね…。
あの短時間でここまでのことをやってのけるエルフナインちゃんはほんとに成長しましたね…!!

また、水中戦の「だとしてもッ」からのクリスちゃんの「焦るな…焦るな…焦らせるな」からの棺を狙い撃ちは汗水流れましたねっ。流れているというのに、何故か切ちゃんの水着(?)のシマシマ部分に視線がいってしまう私はつくづく変態だなぁ……と(笑)

あと、狙い撃ちして撃破した後にマリアさんに抱きついている切ちゃんが可愛すぎて鼻血が出ました……だがしかし、切ちゃん……ここはマリアさんでなく調ちゃんでは? いや、切ちゃんって末っ子属性強そうだし……そういう面でのママリアさんなのか?(悩)

また、Cパートでミイラになっていた謎の人の名前がエンキさんという事が判明しましたね!!
恐らく、今後エンキさんが物語に関わっていくのでしょうね……いやー、二話が楽しみだな!! チラッと公式サイトの予告編見てきましたが切ちゃんが変顔してました……しかも、その変顔の画像押したら揺れるんですよ!? 他のは揺れないのに(笑)
その下はなんか鎌を構えてるし……切ちゃんって良くも悪くも先輩方の影響を受けてますよね…微笑ましい…。

最後に途中で流れた六人曲【六花繚乱】の中に気になるワードが入っていたので、早くフルで聴きたいですね(微笑)

では、中々と感想を書いてしまいすいませんでした(土下座)間を空けずに次回を更新しようと思っており、更新した後はその週の更新日はお休みしようと思います。ご理解の程をよろしくお願いします(敬礼)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

シュレンディンガーのキス -(しょう) ~5~ -

一話で終わらそうと思ったら、思ったよりも筆が乗ってしまった……(汗)

ということで、皆さんお待ちがねの……いいえ、お待たせしてしまったお風呂回の前半戦です!

作中にて登場する装者のみんなのホクロ場所は私のオリジナルとなっております。

それを踏まえた上で……本編をどうぞ!!


眠りの海原の上にプカプカと浮いている僕の身体を右、左、右、左、と心地よいリズムで波が揺らすのに任せ、身体に広がる優しい暖かさ……そう、まるで木漏れ日のような温もりへと縋るように自分の方へと手繰り寄せながら、僕はスヤスヤと深い眠りへと付いていた。

 

「……う、歌兎」

 

そんな眠りの中、上下の揺れと共に見知った声が聞こえ、ゆっくりと意識が覚醒していく。

 

「…ふぁ?」

 

まず目に入ったのは、襟首が黒く、肩が✖️(ばってん)型に露出している黄緑色の長袖でそこから顔を上げると寝起きの僕へと雲の隙間から優しい光を大地に注ぐ太陽のような優しい笑顔を浮かべている姉様が出迎えてくれる。

 

「おはようございます、歌兎。お風呂についたデスよ」

 

涎が垂れていたのか、僕の頬を拭った後にキョロキョロと辺りを見渡している僕へと小首を傾げる。

 

「…え……でも僕、了子お姉さんにメディカルルームへと顔を出せって」

「その用事ならさっき済んじゃったデスよ。了子さんの質問にしっかり答えていたのに、あの時からもう寝てたんデスか?」

 

"困った子"というようにクスクスと笑った姉様は僕を深い桃色の絨毯に静かに下ろした後に辺りを素早く見渡してから入り口付近の横に設置してある団欒コーナーに設置してある紙コップ式の自販機で水を押して、水が入った紙コップを僕へと差し出すのを素直に受けると紙コップへと唇を付けてからゴクゴクと程よく冷たい液体を体内へと取り込む。

 

「はい、さっきまで寝てましたからね」

「…ありがと、姉様。…ごくごく」

 

使った紙コップは自分でゴミ箱へと片付けてから、トコトコと豪快に私服を脱いでいる姉様の隣で僕もゆったりと私服であるパーカーのファスナーを下へと下ろしてから肩から外して、目の前にある籠へと入れると続けて、Tシャツを脱ごうとして、隣にいる姉様に話しかけられる。

 

「歌兎、一人で出来そうデスか?」

「…ん、できーー」

 

隣を向いて答えようとした時には既に上半身を脱ぎ終えていた姉様がいて、僕は半裸状態の姉様に絶句する。

 

「ーー歌兎?」

 

絶句する僕に心配そうな表情を浮かべる姉様の顔を見ることが僕には出来なかった。

理由は露わにされた上半身で……僕には似ても似つかぬ同い年の人よりも大きな実りをつけた双丘が織りなす谷間から視線を下に下ろすと細身なのに日頃の訓練や毎朝のランニングによりしっかりと縦線に割れた筋肉に同性で家族なのについ見惚れてしまう。

 

(だがしかし)

 

前々から思ってたけど、姉様って全然プニってなんていないよね。過去の姉様がやらかしてしまった数々が綴られ、イガリマによって歌にされたアレの一節には"プニったお腹も"的な事を言っていたものがあったけれども……。

 

(縦に線が入ってるんだよ!? しかもこんなに細っそりしている上に少し身動きするだけで揺れる大きな胸まで……)

 

なんかイラってしてきた……。

 

「ちょっ……歌兎っ!? なんでいきなり、あたしのお腹を突つくんデスかぁ!? やめっ……本当にやめて……擽ったいって……っ」

 

姉様のお腹に両手を添えて、摘んでみても僅かに肉が挟めるくらいでこれは脂肪ではなく皮ではないだろうか? こっそり僕のお腹も触ってみたけど僅かどころじゃなかった……。

 

「…摘んでもほんの少し。これでプニっているなんて可笑しい」

 

これでプニって太っているって認識されているのなら、僕なんて子ブタさんじゃないか。胸も成長期に入っているかすら分からないし、身体つきは華奢とか言われているけど……簡潔にいえばスットンだよ? 何も凹凸もないから病衣着た時に虚しくなるんだよ!? なのに、姉様ときたらーー。

 

「な、なんで怒ってるのっ? 歌兎」

「…怒ってなんてない。姉様が贅沢者だから戒めてるの」

 

そう言いながら、くびれの部分やお臍の辺りへと指先を這わせて、むにむにと姉様の皮を摘む。

 

「いまし……って本当に擽ったいのっ。やめっ……歌兎ってば」

「こら、歌兎。切歌が困ってるだろう、やめないか」

「…翼お姉ちゃん」

「珍しいな、姉妹喧嘩なんて」

 

右肩を後ろへと引かれて、トンと柔らかいものにぶつかり、凛々しい声が聞こえて上を見上げると普段はサイドテールにしている青い髪を下ろして、胸元にタオルで隠している翼お姉ちゃんが見下ろしており、その後ろから赤いロングヘアを揺らして僕たちへと近づいてくる奏お姉ちゃんがいる。翼お姉ちゃんの助けにより僕の擽り地獄から逃れられた姉様は息を整えながら、今だに怒っている様子の僕に困惑している様子だった。

 

「はぁ……はぁ……、あたしは喧嘩しているつもりはなくて……よく分からないデスが、歌兎がいきなり怒ってきたんデス」

 

そのセリフを聞いて、青い瞳と赤い瞳がこっちを見ているのを感じて、頬をプク〜と膨らませるとふて腐れたように理由を言う。

 

「…姉様が贅沢者だから戒めてたの。世の中には僕みたいなちんちくりんもいるんだから。安易にプニってるって言葉を使って欲しくない」

「にゃ?」

「…くっあははっ」

 

僕の動機に姉様は黄緑色の瞳をまん丸にし、奏お姉ちゃんに至っては数秒フリーズしてからお腹を抱えて笑い出す。

 

「奏っ。歌兎は真剣な話をしているんだから笑うべきではないわ」

「いやー、可愛いもんじゃないか。要は歌兎は切歌のプロポーションが羨ましくて嫉妬しているだけなんだろ? 歌兎の年頃なら誰だって悩む可愛らしい悩みじゃないか」

「そういうことなのか?」

「………」

 

プイと無言で横を向く僕に奏お姉ちゃんの言っていることが肯定である事を察した翼お姉ちゃんは微笑ましそうに僕の頭を撫でると奏お姉ちゃんと共に浴室へと颯爽と入っていた。

翼お姉ちゃんから預けられた僕の目の高さを合わせた姉様は今だに不機嫌な僕に頬をかくと優しい口調で話しかけてくれる。

 

「ねぇ、歌兎。お姉ちゃんは今の歌兎の身体つきでもいいと思うよ」

「…ちんちくりんなのに?」

「ちんちくりんなんてことないデスッ! 歌兎の小さくて腕の中に収まるサイズがあたしは大好きで毎日抱きしめてないと悪い夢見てしまうほどなんデスよ! それに小さいからなんだっていうんデスッ! 小さいなら小さいなりの良さがあるってもんデスッ! そう、例えば 自分の手でそだーー」

「ーー姉様、もういいっ。もういいからっ。姉様の熱意も愛も伝わったからそれ以上はやめよ」

「妹にドン引き気味に止められ、諭されたデスっ!?」

 

喚く姉様の目を真っ直ぐ見つめると騒いでいた声も小さくなっていく。

 

「…いつか、姉様のようになれるかな?」

「なれますとも! もしかしたら、あたしよりも素敵な女性になってるかもしれませんよ」

 

ニカッと笑う姉様につられるように薄く笑うと残りの私服を脱ぐと姉様に手を繋がれながら、浴室へと入っていく。途端、垂れ目がちな黄緑色の瞳と眠たそうに半開きしている黄緑色の瞳がだんだんと大きくなっていく。

 

「ふわぁ……」

「…大きい」

 

浴槽は温度毎に分かられているようで、恐らく右端にある小さな円が一番温度が低く、そこから左側に行くにつれて円も温度も上がっていくと仕様なのかもしれない。

 

「まずは身体を洗いますよ。椅子に座ってください」

「…ん」

 

ゴシゴシと前を洗っている間に背中を洗ってもらい、頭を洗ってもらった僕はさっき迷惑をかけてしまったお詫びとして姉様の背中をゴシゴシと誠意を込めて洗い、髪をザザッと洗った後に円が小さな浴槽に向かって歩き出す。

 

「タイルが濡れているんで騒いだりしたらメッデスよ」

「…ん」

 

手を引かれるように浴槽に近づいて分かったことは円周は椅子のようになっており、円の真ん中はその一段下がった場所にあるようだった。

 

「…シラねぇとセレねぇだ」

「あ、本当デスね」

小さな円に近づくとそこには既に先客がおり、一人は長い黒髪を後頭部でお団子にして白い肌をほんのり赤く染めているシラねぇで、もう一人はそのシラねぇの隣に座り、茶色の髪をシラねぇと同じくお団子にして肩へとお湯をかけているセレねぇだ。

 

「隣にお邪魔するデス」

「…おじゃまします」

 

と歩いてきた方向から近かったセレねぇの隣へと断りを入れてから腰を落とした姉様とその膝の上にちょこんと座る僕を交互に見てからセレねぇとシラねぇが話しかけてくる。

 

「暁さん、歌兎ちゃんのメディカル終わったんですか?」

「えぇ、さっき終わったのでお風呂に入りにきたんデスよ。でも、あまり長くお湯に浸からない方がいいかもしれないデスね……。歌兎、さっきまで寝てたので」

「そんなんだ。なら、あまり長湯しない方がいいかも」

「…さっきお水飲んだから大丈夫」

「大丈夫じゃないから言ってるデスよ」

 

トンッと頭へと手刀を落とされ、頭を抑えた僕はそこからは姉様へと身体を預けて、湯にゆっくりと浸かることで疲れを取っていく。

 

そんな僕をギュッと抱きしめながら、姉様は楽しくシラねぇとセレねぇと他愛ない会話を交わしていく中、僕はふと気になるワードを見つけてしまう。

 

「調の二の腕のところ、ホクロがあるんデスね」

「え? どこ?」

「ここだと思いますよ、月読さん」

 

(……ホクロ?)

 

その三つの文字がなんで、こんなにも気になるんだろう……。

 

考え事をしていく中、段々と顔が水面へと下がっていく僕に構うことなく、姉様達の話とスキンシップは続いていく。

 

シラねぇの左二の腕にホクロをつんつんと指で突くセレねぇによってホクロの存在に気づいたシラねぇは驚いたような顔をする。

 

「こんな所にあったんだ。気づかなかった」

「分かりにくい所にありますもんね」

「そういうセレねぇは鎖骨の下にあるんデスね。小さくて可愛いデス」

「ホクロが可愛いってなんだか複雑です」

「なっ!? そういう意味で言ったわけじゃなくてデスね……」

「なら、そういう切ちゃんにはホクロないの?」

「あたしデス? あたしはどこにあるんでしょうね?」

 

シラねぇに尋ねられ、自分の身体を見下ろす姉様と同じように僕も水面に映る僕自身の顔を……正確的には僅かに空いている桜色の唇越しに朝の出来事を思い出そうとしていた。

 

(あの時……トイレでハンカチを顔にかけられて、"誰か"にキスされた時……僕はキスをしていく際に身動きをして僅かに動いたハンカチの隙間から"胸元に隠れるように並んでいる二つのホクロ"を見たはずだ)

 

そう、ホクロ。

 

なんで今まで忘れていたのだろう、そのヒントをッ!

そして、今こそそのヒントを元に"僕にキスをした誰か"を探し出すベストタイミングじゃないかっ。

 

「…!」

 

"こうしては居られないッ"と姉様から突然立ち上がった僕に楽しく雑談していた仲良し三人娘はピタリと動きも会話も止めて、僕をまじまじと見上げてくる。

 

「歌兎? どうしたデスか」

 

と沈黙を破った姉様の質問に僕は頬をかくと二番目に大きい浴槽の方へと視線を向ける。

 

「…折角だから、全部の浴槽に入ってみたいなぁ〜って思って」

「そうなんデスか。でも、浴槽は逃げないんデスから……そんなにあわてなくてもいいのに」

 

クスクスと笑う姉様と"あまり長湯しない・姉様が呼びにきたら素直に上がる"の二つを約束してから、僕は真ん中に位置する浴槽へと近づいていく。




完全に銭湯感覚で書いちゃったけど……S.O.N.G.が用意した施設ならありそうだよね? いや無いのかな………(不安)

上の歌兎ちゃんが切ちゃんに襲いかかるというよりもプロポーションに嫉妬するシーンは私が歌兎ちゃんの立場なら間違いなく嫉妬するなぁと思い、書いたものです。
彼女も思春期の女の子ですからね……他人のプロポーションと自分のを比べて、もっと成長したいと思うことがあると思うのです。
なのでね、嫉妬歌兎と切ちゃんとのやりとりが思った以上に楽しすぎて筆が進んでしまい、二つに分けることになりましたが……思春期の女の子ならではの可愛い悩みを入れてみました(笑)


最後に、明日7/17にいよいよ切ちゃんのキャラソンと水樹奈々さんのXVのOPが発売されますね!!!!(うおおおおおおおおおッ)
どちらも是非ゲットして聴きまくりたいものです!! というよりも切ちゃんのキャラソンは予約しているので、色んなところで聴きまくろうと思います(ニヤニヤ)

また、遅くなっちゃいましたが……XVキャラソンのクリスちゃんとマリアさんのジャケットイラストがかなり前ですが発表されましたね!!!
クリスちゃんの横顔かっこよすぎで、凛々しい顔立ちのマリアさんもかっこよすぎでしょう……(ジーン)
そんなかっこいいお二人のカップリング曲がね……特にマリアさんのがヤバい……(既に涙目)

私、響ちゃんのカップリング曲【キミだけに】でも号泣したのに……(滝涙)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

旧ストーリー 1)僕の姉様は過保護すぎる。

シンフォギアはG、GXと見ています。AXZもニコニコの方でちょくちょく見ている程度の私ですが…

こんな私の小説でも見てみたいと思われた方、本編へどうぞ!



僕、暁 歌兎には姉がいる。

姉の名は、暁 切歌。三つ上の姉は、僕にとってとても頼りになる姉であり、僕の心の支えともなる大切な人だ。

性格はお気楽というか、物事をポジティブに考えることができる人だと思う。時に思い込みが激しく、一人で突っ張ってしまうこともあり、その度に、本人曰く黒歴史とやらが増えるらしいが、それも姉が僕や他の仲間たちを大事に思っているからこそだと思っている。

そのことをもっと掘り下げれば、姉は一段と仲間や家族に対する思い入れが強いのだ。そう、姉は他の皆よりも家族や仲間たちのことを“大切に思っている”。

それ故に、姉は僕に対してーー

 

 

 

ーー過保護すぎる、のだろう。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「起きるデス、歌兎。朝になったのデスよ」

 

ゆさゆさと身体を揺らす感覚と、おでこに広がる柔らかく程よい弾力性を持つ何かによって、ゆらゆらと眠りの海を漂っていた僕の意識が覚醒していく。

ゆっくりと目を開けると、まず最初に目に映るのが真っ白な天井、続けて視線を下にずらすとチャーミングな癖っ毛が特徴的な金髪の少女が僕を見下ろしていた。

 

(また、姉様に起こしてもらったんだ…)

 

自分の寝起きの悪さに嫌気をさしながらも、まだ眠たくて、瞑ろうとする目をこすりながら、身体を起こすと太陽のような明るい笑顔を浮かべる我が姉が僕へと声をかけてくる。

 

「おはようデス、歌兎」

「…ん、おはよ、姉様」

 

まだ寝ぼけ眼な僕の周りを慌ただしくバタバタと動くのが、姉様でーー。

僕の引き出しから着替えを取り出すと僕のパジャマへと手をかける。慣れた手つきでパジャマを脱がせると持ってきた洋服を着せてくれる。

 

「歌兎、こっちに右手を通すデスよ」

「…こう?」

「そうそう。それと左腕をこっちへ」

「…ん」

「二度寝はダメデスよ、歌兎」

「…ん…分かってる…」

「って、言ってるそばから寝てるじゃないデスか!!」

「…ね…てない…よ、ねえさ…スゥ……」

「ウ・タ・ウ!起きるデス!!二度寝はダメデス!!」

 

姉様の怒声と乱暴に体を揺すられて、ハッと目を覚ますと、僕はキョロキョロと辺りを見渡し、見慣れた黒髪がないことに気づく。僕は目の前で、僕の洋服のボタンを留めている姉様へと問いかける。

 

「…姉様。シラねぇは?」

「調なら朝ごはんを作ってるデスよ」

「…そっか。シラねぇが…」

「なんデスか?歌兎」

 

ジーと目の前で洋服を着せてくれてる姉様の適度に整った顔を見つめ、ふと思う。

 

(そういえば、姉様が料理してるとこ、あんま見ないな…。姉様も料理も僕、食べてみたいんだけどなぁ…)

 

そこまで考えたところで、リビングの方から白米の匂いとお味噌汁の匂いが漂ってくる。その香りたちに刺激されたのか、グーとお腹の虫が鳴り、姉様がクスッと笑う。

 

「お腹が空いたのデスか?歌兎」

「…ん、空いた」

『切ちゃん、歌兎、ご飯できたよ』

 

ドア越しから、聞き慣れた声が聞こえてきて、僕はベッドから立ち上がると姉様へと右手を差し出す。それを嬉しそうに握った姉様は意地悪な笑顔を浮かべると僕へと顔を近づける。

 

「…シラねぇが呼んでる。行こ、姉様」

「うん、いくデス。デスが、その前に歌兎、朝にお姉ちゃんにすることを何か忘れてないデスか?」

「…アレは恥ずかしい、姉様」

「姉妹なのデスから。恥ずかしがることなどないのデス。ほら、歌兎」

「…っ」

 

慣れた様子で右頬を僕の方へと突き出す姉様に、僕は覚悟を決めると羞恥心でやめたくなる衝動を抑え、突き出されている姉様の頬へと自身の唇を近づける。

 

「ちゅっ」

「えへへ〜、歌兎からおはようのキス貰ったデス〜」

「…」

「歌兎にもお返しするデス〜」

「…」

 

僕に抱きついて、ちゅっちゅっと頬へとキスする姉様を僕は不思議そうな顔で見つめる。

 

(なんで、姉様はこんなにも恥ずかしいことを毎朝したがるんだろ…)

 

物心つく頃からずっと疑問に思っていることだ。いくら姉妹とはいえ、おはようのキスとおやすみのキスは流石に恥ずかしすぎる。

だがーー嬉しそうに、にこにこと笑う姉様のこの笑顔を守るというのは大袈裟だけど、見る為ならば僕の些細な羞恥心など安いものだ。

姉様は心ゆくまで僕の頬へとキスを落とすと、僕の手を握る。そして、ドアへ向かって歩き出す。

 

「さて、朝の挨拶も終わったので、調のところへ行くデスよ」

「…ん」

 

差し出せる姉様の左手を握り、僕は姉様と共にリビングへと歩いていった…

 

 

◆◇◆◇◆

 

リビングには、既に自分の席へと腰掛けている三人の姿があった。その三人へと頭を下げていく。

 

「おはよう、歌兎」

「…おはよ、シラねぇ」

「おはよう、二人とも」

「おはようデス!マリア」

「…おはよ、マリねぇ」

「おはようございます、暁さん、歌兎ちゃん」

「おはようデス!セレナ」

「…おはよ、セレねぇ」

 

我が家のリビングに鎮座してあるテーブルは長方形で、右側に二つ、左側に三つの椅子が並べられている。

姉様は右側で、その横にはシラねぇが座ることになっている。だが、姉様は僕の手を掴んだまま、自分の席へと座ろうとする。

 

「歌兎、こっちにくるデスよ」

「…ん」

 

僕自身、姉のすることはいつも正しいと考えているのと、いつも自身のことは時の流れに任せていることからーー今日も姉様の言う通りにしようと、そちらへと向かった時だった。

姉様の真ん前の席へと腰掛けている腰まで伸びた桃髪が特徴的な女性・マリねぇが姉様を叱る。しかし、姉様は怒られたと言うのに、どこか自信満々で…。

 

「こら、切歌!そっちに歌兎が行ったら、貴女が座れなくなるでしょう」

「大丈夫デスよ!歌兎はあたしの膝の上に座るのデス」

「行儀が悪いでしょう。取り敢えず、その案は却下よ」

「むー、マリアがケチなのデス」

「ケチが悪かったわね。だから、歌兎。私の右隣に座りなさい」

「…ん、マリねぇのとこ行く」

 

マリねぇの正論にぐうの音も出ない姉様が頬を膨らませる中、僕はマリねぇが自分の右横の席を叩くのでそちらへと向かう。その際、後ろで何かが倒れこむ音が聞こえたが気のせいだろうか?

 

「なんデスと!?歌兎はお姉ちゃんが嫌いになったのデスか!?」

「歌兎に限ってそれはないよ、切ちゃん。だから、泣き止んで、ね?」

「うっ、やっぱり調は優しいのデス」

 

マリねぇに手伝ってもらい、自分の席へと座った時に見た光景に僕は言葉を失う。

まさにガーンと文字が浮かびそうなほど、落ち込んでいる我が姉の背中優しく撫でているシラねぇ。俗にいう百合百合しい雰囲気を漂わせる二人に、マリねぇの左横へと腰掛けるセレねぇが苦笑いを漏らす。

 

「……」

「…あはは」

「さて、ご飯を食べましょうか?歌兎、セレナ」

「…ん、マリねぇ」

「そうだね、姉さん」

 

マリねぇに声をかけられ、僕は目の前に並んでいる箸を掴む。すると、それを目敏く見ていた姉様が大きな声をあげる。そして、僕から箸を取り上げるとマリねぇへと注意が飛ぶ。

 

「あぁっ!歌兎、箸は持っちゃダメデスよ!マリア、歌兎に箸を持たせちゃあダメじゃないデスか!」

「切歌、今更だけど貴女は過保護すぎるわ。そんなにしなくても歌兎は大丈夫よ」

「マリアは何も分かってないデス!歌兎はマリアが思っているよりも繊細な子なのデス。箸を持っただけでも筋肉痛になる子なのデス!」

「そんなわけないでしょう!?切歌、話を盛るのは良くないことよ。それと歌兎はそこまでヤワじゃないわ。切歌のそれは度が過ぎてると私は思うの」

「歌兎を大切に思う気持ちの何が悪いんデスか!妹が危険へと足を踏みいれようとしてるのデス!それを守って何が悪いのデスか!それは姉として当然の権利だと思うのデス!」

「だから、それが貴方は普通よりも多いというの!」

「多い越したことはないと思うデス!」

 

白熱していく姉様とマリねぇの喧嘩に、堪らずセレねぇが仲裁役をかって出る。だが、見事に同期した動きで帰ってきた言葉にセレねぇは撃沈。

 

「まあまあ、姉さんも暁さんも落ち着いて」

「セレナは黙ってて!!」「セレナは黙っててください!!」

「…あ、うん、ごめんなさい…口出ししちゃって…」

 

しょんぼりするセレねぇの裾をくいくいと引っ張る。僕の方を向くセレねぇへと僕は自分の気持ちを言う。

 

「……」

「どうしたの?歌兎ちゃん」

「…お腹空いた」

「そうだね。私もお腹空いちゃったよ。そうだ、歌兎ちゃん、私の上に座ります?」

「…ん」

 

よいしょっとセレねぇの膝の上へと座った僕へと、前に座るシラねぇが箸を差し出す。それを大きな口を開けて、口の中に入れるともぐもぐと咀嚼する。

 

「歌兎。はい、これ」

「…あーん。もぐもぐ」

「美味しい?」

「…ん、美味しい」

 

首を傾げて聞いてくるシラねぇへと素直な感想を言い、箸を差し出してくるシラねぇに応じて、また大きな口を開ける。

 

「まだあるから、しっかり食べてね。セレナも食べよ」

「そうですね、月読さん。歌兎ちゃん、味噌汁は美味しい?」

「…ん、シラねぇのお味噌汁はいつでも美味しい」

「歌兎が褒めてくれると私も作った甲斐がある。いつも褒めてくれて、ありがとう」

 

頭を撫でてくれるシラねぇの暖かさに触れながら、僕はもぐもぐと朝ごはんを食べる。時々、セレねぇに頬を拭かれながら、僕は朝ごはんを終える。

そして、食べた食器を持っていこうと立ち上がる僕の手を掴むのはーーもちろん、姉様で…

 

「歌兎の食器はお姉ちゃんが持っていくデス」

「…ん」

 

素直に姉様へ渡そうとすると、そこへ割って入ってくるマリねぇの声。

 

「そこ、甘やかさないの!それくらい、歌兎なら出来るわ!」

「出来ないデス!それに出来たとしても、絶対させないデス!」

「させないと歌兎がダメ人間になるでしょう!」

「もしも、歌兎の持っていた皿が割れて、歌兎の綺麗な身体に傷がついたらどうするデスか!そんなの絶対、あたしが許せないのデス!」

「だから、過保護すぎるのよ!貴方は!」

「これが普通デス!」

 

いつもの如く、続く姉様とマリねぇの喧嘩を聴きながら思うことは、ただ一つーー

 

 

ーーーやはり、僕の姉様は過保護すぎる、と。

 




1話目から妄想全開ですいません…(汗)

これがずっと書きたかったんです。
だだだだ、大好き切ちゃんにこれでもかってくらい甘やかされたかったーーその欲求を満たすために書いたのがこの小説です。

ので、次回もこんな感じで進めていきます。
こんなでも読んでみたいと思われた方、次回もどうかよろしくお願いしますm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2)過保護な姉たちとおでかけ。

今回も作者の妄想全開です

ので、ついてこれる奴だけついて来い!みたいな感じです(笑)

そして、恐れ多くも【お気に入り登録が28名】に【評価者が二人の上に、10と8】という高評価…もう、これだけで手汗と震えが止まらないですよ…(ぶるぶる)
それに加え、【感想二件】という奇跡(?)ーー嬉しさと感動と、過保護な切ちゃんに大感謝デェース!!

これからも度を超える過保護を見せる切ちゃんとそんな切ちゃんに振り回せる歌兎を楽しんでいただけばと思います。

続けて、後書きへと本作の主人公《暁 歌兎》の簡単なプロフィールを載せようと思っているので、良ければご覧ください(礼)

では、長くなってしまいましたが…本編をどうぞ!


朝の大騒動、いや、大喧嘩から30分後。

僕と姉様、シラねぇにマリねぇとセレねぇの五人は猛スピードで街中を走っていた。何故、そんなに急いでいるのか?その理由は簡単だーー今日の朝、9時頃から奏者のみんなで買い物やカラオケなどと遊びに出かける約束をしていたのだ。

そんな約束をしていることもすっかり忘れて、白熱していたマリねぇと姉様の大喧嘩がやっと終わって、時計を見れば、約束時間の10分前となっており、みんなして大慌てで部屋を飛び出して。それからというもの、ずっと目的地まで走りぱなしというマラソン状態になっていた。

先頭を走るのがシラねぇとセレねぇで、その後を僕と姉様が追いかけている感じで、そのさらに後ろをマリねぇが走っている。

真っ直ぐ前を見つめ、走り続ける僕へと隣を走る姉様が話しかけてくる。そちらへと視線を向けると、僕と同色の黄緑色の瞳が少し伏せられ、心配そうに僕を見つめていた。

 

「歌兎、大丈夫デスか?疲れてないデス?」

「…ん、大丈夫だよ、姉様」

 

姉様へと心配かけないようにと微笑んでみせると、姉様は安心したように此方も微笑んでくれた。しかし、僕は一つだけミスをおかしたらしく、姉様が優しい声音で言ってくれたセリフに対する返答を掠れ声で言ってしまったらしい。

気付けば、嬉々した様子で僕の前へと腰を折る姉様の姿とそんな姉様へとツッコミを入れるセレねぇの姿があった。

 

「疲れたなら、いつでも言ってくださいね。お姉ちゃんがおぶってあげるデスから」

「…ん、わかっ…だ…」

「ハッ!?もしかして、疲れたのデスか、歌兎!」

「どうして、暁さんはそこで嬉しそうにしているの!?私にはそれが疑問ですよ!」

「セレナ、それが切ちゃんのいいところだよ」

「月読さんといい歌兎ちゃんといい、二人は暁さんのやる事なす事に全肯定は良くない傾向だと私思いますよ!?」

「大丈夫、歌兎も私も切ちゃんの事を信じてる」

「それはさっきの私の発言に対する答えなんですか!?」

 

セレねぇの隣にいるシラねぇに対して、キレキッレのツッコミを披露するセレねぇ。僕はそんな光景を見ながら、ふとも思うーーこの五人の中で一番苦労してるのは、セレねぇなのではないのか、と。

そんなセレねぇのツッコミ虚しく、姉様は僕へと促しの声をあげる。だが、そんな甘えを許すマリねぇではない。

姉様の背中へとおぶさろうとしていた僕と姉様を指差すと、大声を上げる。

 

「ささっ、歌兎。早くお姉ちゃんの背中におぶさって、身体を休めるといいデスよ」

「…ん」

「そこ!ごく自然におぶろうとしない!そして、歌兎は切歌におんぶしてもらわないの!」

「ちぇー、マリアは外でもケチんぼなのデス…」

「だから、これはケチんぼでもなんでもなくて。私は一般的に意見を言ってるだけなのよ」

「そんな意見など、あたしの辞書にはのってないのデス。ほら、歌兎、ガミガミうるさいマリアなどほっておいて。早くお姉ちゃんの背中に乗っかるデスよ。歌兎が筋肉痛で倒れたりしたら大変デスので」

「…ん、姉様」

 

皮肉を混ぜた姉様のその言葉を聞き、マリねぇのガミガミが更に強くなった気がするがーー。

姉様はどこ吹く風の様子で、その場でぴょんぴょんと跳ねると僕を器用に背負い直す。そして、歩き出す。そんな姉様へと僕は話しかける。

 

「…重くない?姉様」

「全然大丈夫デスよ、歌兎はもっとお肉をつけるべきデス。軽すぎるデスよ」

「…それは姉様にいう言葉」

「お姉ちゃんは歌兎よりも身長もありますし、肉もついてるんデスよ。なので、歌兎は気にしなくいいのデス。今晩は、いっぱい食べて、栄養を付けるデスよ。参考までに聞きますが、歌兎は晩御飯は何が食べたいデスか?」

 

チラッと、僕の方を向いて聞いてくる姉様の少し垂れ目な大きな瞳を見つめ、僕は朝に思ったことを言う。すると、姉様が泣き出す寸前みたいな顔をする。それを見て、少し焦った僕は首を傾げて、もう一度問いかける。

 

「…姉様の手料理が食べたい」

「!?」

「…ダメ?」

「もちろん、いいデスよ!!張り切って、美味しいもの作るデスよ!!歌兎の好物、いっぱい作るデスからね!」

「…ん。しゃのひみ…」

 

僕をガシッと抱きしめ、スリスリと頬をすり寄せてくる姉様の温もりを感じながら、姉様の背後を見てみるとーー。

僕ら二人を遥か先を走っている三人の姿があり、三人は走りながら、僕ら二人へと叫び声をあげる。

 

「切ちゃん、歌兎、行くよ。みんなが待ってる」

「暁さん、歌兎ちゃん〜!もうみんな待ってますよ〜」

「そこの二人、早くなさい」

 

今だに頬スリスリをしている姉様の背中をポンポンと叩き、顔を離した姉様へと僕は背後を見ながら言う。すると、姉様も僕のその仕草だけで状況を理解したらしく、僕を背負い直すと…

 

「…姉様。三人が呼んでる」

「分かってるのデス!歌兎、しっかりお姉ちゃんに捕まっててくださいね」

「…ん」

「猛スピードデスよ〜!三人へと追いつくデス!」

「…姉様、ファイト」

「任せてください。歌兎!」

 

僕を背負っているとは思えないほどのスピードで、約束場所へと向かう姉様。僕はその背中に揺られながら、姉様へとエールを送っていた…

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

約束場所へとついた僕と姉様を向かえたのは、先に着いていたシラねぇとセレねぇ、マリねぇの三人と。今日、一緒に遊ぶことになっていた四人の姿があった。その中の一人、白髪の髪を赤いシュシュで二つに結んでいる少女・クリスお姉ちゃんが横目で姉様を見ると、ため息をつきながら問いかけてくる。

 

「んで、お前はなんで妹を背負ってるんだよ」

「それがお姉ちゃんとしての責任だからデスよ!」

 

その問いかけに対して、誇らしそうに胸を張りながら答える姉様へと両手をポキポキと鳴らしながら、クリスお姉ちゃんが近づいてくる。しかし、姉様にそんな脅しなど通じるわけもなく、姉様はいつもの如くちんぷんかんぷんな方向へと真っしぐらに進んでいく。

 

「よぉーし、お前の言いたいことは分かった。だが、それが約束時間を一時間も遅れた理由だとしたら、あたしはお前をぶつぞ」

「歌兎が…あたしの可愛い妹が走り過ぎて倒れかけていたんデスよ!?それを助けて、何が悪いのデスか!?も、もしかして…そんな歌兎をほっておいて。あたしだけここへ向かえばよかったと言うデスか…?クリス先輩は鬼なのデス!!」

「お前はいつも過保護すぎんだよ!!それと、お前さっきあたしのことを鬼って言ったか!?」

「クリス先輩まで過保護とあたしを呼ぶデスか!?やっぱり、マリアとクリス先輩は鬼デス!鬼畜デスよ!!あんなに可愛い歌兎へと厳しく当たろうとするなんて!なんで、二人は歌兎を甘やかそうとしないデスか!?歌兎が可愛くなのデスか!」

「可愛いからこそだろーが!この過保護!!お前には、可愛い子には旅をさせようという諺はねぇーのか!?」

「そんな諺は既にあたしの辞書から削除したデスよ〜」

「お前な」

 

ベーと舌を出す姉様に対して、遂に堪忍の緒が切れたらしいクリスお姉ちゃんはグーで姉様の頭を殴ろうとする。そんなクリスお姉ちゃんの右手の裾を引っ張った僕は不機嫌そうにこちらを見てくるクリスお姉ちゃんの髪と同色の瞳をまっすぐ見つめて、お願いする。

 

「…クリスお姉ちゃん、姉様は悪くない。悪いのは僕だから、ぶつなら僕をぶって」

「チッ。そんな顔したガキを殴れるわけないだろ」

 

何故か頬を朱に染め、横を向いてポツンと呟くクリスお姉ちゃん。それに首をかしげる僕とその呟きを聞いたらしい明るい茶色の髪が特徴的な少女・響お姉ちゃんが不満そうに何かを呟く。そして、その響お姉ちゃんの愚痴を聞いたらしいクリスお姉ちゃんが響お姉ちゃんへの頭へと拳を埋める。

 

「……私のことはしょっちゅう、ぶつのに…。なんだかんだ言って、クリスちゃんが切歌ちゃんの次に歌兎ちゃんに甘い気がする」

「お前はいつも一言多いんだよ!」

「痛ぁあああ!?」

「響、大丈夫?」

「大丈夫じゃないよ〜、未来〜」

 

痛みで埋まる響お姉ちゃんへと優しく声をかけるのが、響お姉ちゃんの親友の未来お姉ちゃんだ。涙目で痛みを訴える響お姉ちゃんへと何かを応急処置をしている。

そんな二人を見ながら、僕と姉様へと視線を向けたクリスお姉ちゃんは吐き捨てるようにいう。

 

「たく。あのバカより遅刻するなんて、お前らが初だぞ」

「ちょっと、クリスちゃんそれはひどいよ〜。その言い方じゃ、いつも私が遅刻してるみたいじゃん」

「いつもしてるだろ!」

 

響お姉ちゃんへと怒声を飛ばすクリスお姉ちゃんの右手をくいくいと引っ張り、こっちを向けさせると僕はいつも思っていることを言う。

 

「…」

「んだよ」

「…クリスお姉ちゃん、あまりカリカリしないで。僕はクリスお姉ちゃんの笑った顔が好きだよ」

「〜〜ッ」

 

僕のセリフを聞いたクリスお姉ちゃんの顔がみるみるうちに赤くなっていく。それを見ていた響お姉ちゃんがクスクスと嘲笑うのように、ちょっかいをかけるようにクリスお姉ちゃんへと声をかける。そして、それを聞いたクリスお姉ちゃんはポキポキと両手を鳴らす。

 

「おや〜?さっきまでの怖いクリスちゃんはどこへ行ったのかな〜?」

「お前は本当にあたしに殴られたいらしいな」

 

だが、クリスお姉ちゃんへと近づいているのは響お姉ちゃんだけではない。我が姉様もクリスお姉ちゃんに近い場所に立っていた僕を自分の方へと引っ張ると、僕をクリスお姉ちゃんから守るように抱き締める。

 

「クリス先輩よりも歌兎は姉のあたしのことが好きなのデス。そこだけは誤解しないで欲しいのデス!それと、歌兎は何があってもクリス先輩に渡さないデスよ!!」

「お前は引っ込んでろ!話がややこしくなるだろ!!」

 

もう既におでこへと血管が浮き出るほど怒っているクリスお姉ちゃんへとセレねぇが声をかける。どうやら、この収集がつかなくなった喧嘩を仲裁してくれるらしく、割って入ったセレねぇは後ろに聳え立つショッピングセンターを指差す。そんなセレねぇのセリフに肯定する形で、未来お姉ちゃんが響お姉ちゃんを引っ張って。ショッピングセンターへと一番先に向かっていく。

 

「まあまあ、クリスさん落ち着いて。響さんも暁さんもこれ以上ここで言い争っていても時間の無駄なので、約束のショッピングへと行きましょう?」

「セレナちゃんのいい通りだよ。響もあまりクリスをからかわないの。ほら、行くよ」

「ちょっ、未来!?そんなにいきなり引っ張れたら、バランス取りにくいよ!?」

 

そんな二人に続く形で、クリスお姉ちゃんが向かい、僕と姉様、セレねぇとシラねぇも三人の後を追う。

その際に姉様が僕へと問いかけてくる。それに正直に答えると、何故かその場に崩れ落ちる姉様。

 

「切ちゃんと歌兎も行こ?」

「分かったのデス、調!そうデス、歌兎はこれから向かう道中、誰と手を繋ぎたいデスか?」

「…ん〜、とね。…シラねぇと繋ぎたい」

「私と?切ちゃんじゃなくていいの?」

「…ん」

「そっか。じゃあ、はい」

 

まるで某アニメの燃え尽きた後の感じになり、真っ白な灰へとなりかけている姉様へとセレねぇがツッコミを入れながらも優しく声をかける。

 

「なっ…ななな、なんデスとぉおおおぉおおおぉお!!?これが…これが俗に言う反抗期なのデスか…?歌兎はお姉ちゃんのことを嫌いに…?あたしが調みたいに大人じゃないからデスか…?」

「そんなわけあるはずないじゃないですか…。ほら立ってください、暁さん。ここに座っていたら、みんなに置いていかれちゃいますよ」

「離してください、セレナ!歌兎に必要とされないあたしなんて、この世に存在する価値すらないゴミクズのような存在なのデスからっ」

「…あぁ、どうしよ…、これはかなり重症だよ…。私じゃあ手に負えない奴だよ…。歌兎ちゃん…月読さん…助けてぇ…」

 

シラねぇに手を引かれながら歩く僕の後ろを歩く姉様とセレねぇ。そんな二人へと視線を向けると、大泣きして暴れている姉様とそんな我が姉を見て、げんなりしているセレねぇの姿があった。その光景に首を傾げて、前を向く僕はトボトボとショッピングセンターへと一歩、また一歩と近づいていく。

そんな騒がしい姉様とセレねぇの後ろを歩くのが、マリねぇと藍色の髪を結んでいる女性・翼お姉ちゃんである。

マリねぇと共に歩きながら、翼お姉ちゃんは暴れている我が姉を見て、苦笑いを浮かべる。

 

「いつもの如く賑やかだな、マリアの所は」

「賑やかすぎて、疲れるくらいよ…。出来ることなら、変わって欲しいくらいだわ」

 

マリねぇは疲れたように右手で顔半分を隠す。その様子を見ていた翼お姉ちゃんは、マリねぇのその仕草で今朝、部屋の中でどんなことが繰り広げられていたのかを安易に想像できてしまい、マリねぇへと問いかける。

 

「貴女がそんな弱音を吐くとは珍しい。もしかして、今朝既に?」

「えぇ、一戦交えてきたところよ。あの子の過保護は今に始まったことじゃないけど、そろそろどうにかしないと歌兎がダメ人間へとなってしまうわ。歌兎には歌兎の人生があるもの…死ぬまで、切歌が世話するなんて出来ないのよ」

 

マリねぇは、暴れ疲れたのか大人しくなり、セレねぇに支えられながら、トボトボと覇気なく歩く金髪の妹分を見て、ため息をつく。そんなマリねぇの様子を見ていた翼お姉ちゃんが口元を緩めると笑い声を出す。それを聞いて、翼お姉ちゃんへと向くマリねぇ。

 

「ふ」

「何がおかしいのよ」

「いや、済まない。今のマリアが本当にあの四人の母親みたいに見えてな」

「ちょっ、そんな歳じゃないし!そこまで母親ぶってないわよ」

「そんなにムキにならなくてもいいではないか。私は似合ってると思うぞ、マリアお母さん」

「か、からかわないでよ、翼」

「済まない済まない。さて、私たちも行くとしよう。皆と距離が開いてしまった」

「えぇ」

 

ショッピングセンターの入り口でマリねぇと翼お姉ちゃんを待っている僕たちの元へと、二人が近づいてくる……




私の妄想によって書かれた奏者の皆方、まるで別人みたいでしたね…(汗)
こればかりは、まだまだ勉強が必要なようですーー特に、響と未来のところとか、クリスのところとか、翼さんとマリアさんのところとか…もう全部ですね(笑)

そして、今回も妄想が爆発した上に5000文字を超えてしまった本作…。
本当は、この後に続く買い物のシーンも書いて、この話を終えようと思ったのですが…案の程、文字数オーバー。改めて、妄想の力って強いなぁ〜と思う、今日この頃デス(笑)



【本作のオリ主プロフィール】

《名前》暁 歌兎
《読み方》アカツキ ウタウ
《家族》 暁 切歌・・・姉

《年齢》13歳
《誕生日》姉と一緒で、4月13日
《血液型》O型
《身長》142㎝
《体重》34㎏
《3サイズ》B61・W45・H62

《外見》
水色が入った銀髪で、瞳は姉と一緒で黄緑。いつも寝たそうにしているため、瞳は半開き。顔立ちは姉と一緒で整っている方かつ童顔な為、年相応には思われない。胸元へと小さい頃にあった事故の傷跡が残っている。

《性格》
【姉の言うことにはなんでも従う】と【自分のことは時の流れに任せる】という方針から、他者のいうことや姉の言うことを鵜呑みにしてしまうことがある。それは逆に言うと素直ということであり、裏を返せば、騙されやすいことを示す。また、自分のことや家事、普段の生活でしなくてはいけないことは一通り出来る。だが、それは殆ど、姉がしてしまう為、ダメ人間へと階段を順調に登り始めている。


《使用ギア》

???(のちに出てきます)



以上、暁 歌兎の簡単なプロフィールでした。

9/14〜感想でのご指摘を受け、一部プロフィールを変えましたm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3)過保護の姉たちとかいもの。

この小説を書き始めて思うのは…未来さんと翼さんのセリフが難しいです(実感)

そして、長らく待たせてしまってすいません(汗)

10と9という勿体無い評価、そして 数々の温かい感想、とても痛み入ります。これからも過保護な切ちゃんをよろしくお願いします!


翼お姉ちゃんとマリねぇを待って、ショッピングセンターへと入った僕と姉様たちは今後の予定について、再度確認し合う。

 

「さて、着いたわけだが…ここから何すんだ?」

「予定としては、みんなで服を見たり、アクセサリーを見て回るんでしたよね。その後は、みんなでお昼ご飯を食べて、カラオケでお終いって流れだった気がします」

「なら、早速そこの服屋から見て回るとするか」

「えぇ」

 

クリスお姉ちゃん、セレねぇと翼お姉ちゃんが今後の方針について、話をまとめると、翼お姉ちゃんが近くにある店を指差す。みんながそれに同意して、近くに店へと足を運ぶ中、姉様が僕へと左手を差し出す。

 

「歌兎、はぐれるといけないので。今度はお姉ちゃんと手を繋ぎましょう」

「…ん」

「おい、そこの二人、早くしないと置いてくぞ」

「はーいデス!さぁ、行きましょう、歌兎」

「…ん」

 

クリスお姉ちゃんに急かされ、姉様と一緒に店へと足を踏まれた瞬間、姉様の少し垂れ瞳が段々と大きくなっていく。そして、僕の両手をガシッと掴んで、ブンブンと上下に振る。

 

「わぁああ!歌兎歌兎、歌兎!!ナウい洋服がいっぱいデスよ!?」

「…ん、いっぱいある。それとそんなに呼ばなくても聞こえてるよ…姉様…」

「これとか、歌兎に似合ってると思うデスよ。これも可愛いデス!歌兎が着たら最高デスよ!今すぐ着てみましょう!ささっ!!」

「……」

 

いつも以上に元気MAXな姉様に気圧されながらも、僕は姉様に連れられて、近くの試着室へと入っていく。

本来なら試着室には僕一人が入り、僕が姉様の選んだ服を着て、カーテンの向こうにいる姉様へと見せるのがこの試着室の使い方なのだろう。そう、普通の姉妹または普通の姉であればーーだが、僕と“過保護すぎる”姉様は違う。

まず、最初から違うのだ、普通と。過保護な姉様は両手いっぱいの服を持ちながらも器用にカーテンを開け、僕を中へと招き入れると器用にカーテンを閉める。そして、当たり前のように僕の服を脱がし始めるのだ。脱いだ服は姉様が持ち、試着する服を着せてくれる。姉様が着せてくれた服を揺らしながら、その場で1回転。そして、姉様へと問いかけるがこの試着での一連となる。

で、決まって、姉様は僕の問いかけにこう答えるのだーー

 

「…どう?」

「最高デス!!やっぱり、お姉ちゃんの見立ては間違ってなかったんデスね!!もう、お姉ちゃんの目には、今の歌兎が天使に見えるデスよ」

 

組んだ両手を胸の前へと移動し、腰をおって僕を見上げる姉様。少し垂れ目な黄緑色の瞳には、歓喜の波が揺れている。それを見つめながら思い、喉から出ようとしている言葉は…

 

(それは流石に言いすぎたと思うよ、僕)

 

とは、太陽のように光り輝く笑顔の前では言えず、僕は曖昧な笑顔を浮かべたまま、その後も姉様が見立てた服を試着していった。試着し終わり、姉様が気に入った僕の服は姉様が購入していった。

こんな歳になっても、姉に服を買ってもらうというのはかなり恥ずかしいものではあるがーーこればかりは仕方がない。だって、僕のお給料は姉様がしっかりと握っているのだから、毎月お小遣いとして貰えるのは三千のみ。頼めば、姉様も出してはくれるが…やはり、全給料を僕へ預けようとはしない。その事について、姉様に前に聞いたことがある。すると、帰ってきた言葉は以下だーー『今から貯金しておく事に意味があるのデス。歌兎が将来、働かなくても暮らしていけるくらいは貯めるべきデス』との事。それを聞いて思ったのは、働かなくても暮らしていけるくらい貯めるってどこくらいなのだろうか?と…F.I.S.時代から姉様がそう言って貯めてるので、もう目標金額間近ではないのだろうか?果たして、姉様が僕の将来を思い貯めているお金は何万…何千万円となっているのか?謎は深まるばかりある。

 

「歌兎!これとか、調に似合いそうではないデスか?」

「…?」

「これデスよ」

 

そんな下らない事を考えている間、どうやら姉様は今度はシラねぇの為に服を選んでいる様子だった。満面の笑顔で問われ、姉様の視線を辿り、それを見ると首を縦に振る。

 

「…ん、似合う」

「デスよね!白とピンクのワンピースに少し黒が入ってるところが、清楚な調らしいデスよ!」

「…ん」

「そうと決まれば、調を探すデス!」

 

姉様はキョロキョロと辺りを見渡し、丁度近くを歩いていたシラねぇを発見、僕を居残りさせて、シラねぇの右手を掴むと僕の前まで連れてくる。連れてこられたシラねぇは少し困惑気味である。

そんなシラねぇへと姉様があのワンピースを指差す。

 

「調、こっちに来てください!」

「何?切ちゃん」

「この服、歌兎と一緒に調に似合いそうって話してたんデスよ!」

「…ん、シラねぇが着たらきっと似合う」

「二人が言うなら試着してみようかな…」

 

シラねぇのその言葉を聞き、ガシッとシラねぇと僕の手を掴んだ姉様は試着室へと突っ走る。周りで買い物していたマリねぇとクリスお姉ちゃんの注意が飛ぶが、姉様の耳には届かない。

 

「善は急げと言うデス、調!早速、試着室へ行きましょう!」

「ちょっ、切ちゃんあまり引っ張らないで」

「…姉様、嬉しそう」

「そこあまり騒がないの!他の人に迷惑でしょう」

「そうだぞ!お前ら」

「まぁ、いいではないか。暁もみんなでこれで浮かれているのさ」

「そうだといいんだけどね」

 

その後も姉様の溢れ出る好奇心は止むことなく、僕とシラねぇは姉様にひきづられる、といえば人聞きが悪いが、あちらこちらへと連れまわされた。そして、終いには、僕をシラねぇに任せて、単独で探索に駆り出す始末。

そんな姉様を見て、思わず僕とシラねぇが苦笑いを浮かべてしまったのは、どうか許してほしい。姉様に呆れてしまったというわけではない。ただ、いつもよりも元気2000倍くらいの姉様の行動力に疲れてしまっただけである。本当にそれだけである。

姉様が一人探索へと駆り出して、丁度30分後。シラねぇと一緒に服を見て回っている中、目の前を横切る金と黄緑色の疾風は、目を丸くしている僕とシラねぇの手をそれぞれ掴むと、まるで太陽のようなキラキラ輝く笑顔を浮かべる。

 

「調、歌兎。こっちに来るデスよ」

「どうしたの?切ちゃん」

「…」

 

姉様はジャジャーンと自分が注目している服へと両手を向けると、パタパタと指を動かしてみる。そこにかけられていたは、太陽と月、そしてうさぎのイラストが描かれたTシャツで僕はシラねぇと共に姉様を見やる。

 

「これ見てください!この服、とっても可愛いのデスよ」

「あっ、本当だね。それに色違いもある」

「デスデス。ので、この服を三人で一緒に買いませんか?」

「いいね。私は賛成だよ」

「歌兎はどうデス?」

「…姉様とシラねぇがいいなら、僕は何も言うことないよ」

 

僕のその言葉を聞き、姉様は瞬時に黄緑、桃、そして花青緑のTシャツを取り、猛ダッシュで合計へと向かう。

 

「なら、決まりデス!早速、買うデスよ!調と歌兎とお揃いの服、GOGOデェース!」

「あっ、切ちゃん、待って。まだ、見てないところがある…って、もうあんなところにいる」

「…」

「他のところは二人で見て回ろうか?」

「…ん」

 

そのTシャツを購入した後は、流石に、はしゃぎ疲れたのか、姉様は僕のペースで買い物に付き合ってくれた。そして、丁度、お昼の12時となる寸前、同時になる三つのお腹。

 

「お腹空いたよ〜」

「お腹空いたデスよ〜」

「…お腹空いた」

 

未来お姉ちゃんと手を繋いでいる響お姉ちゃんがお腹をさすり、僕と姉様も響お姉ちゃんと一緒な行動をとる。そんな僕たちを見ていたクリスお姉ちゃんがため息混じりに言う。

 

「こんな時だけ、お前らの腹時計って正確だな」

「だって、仕方ないじゃん〜。ご飯は生きていく上で必要な行動なんだよ〜」

 

そう言い、頬を膨らませる響お姉ちゃんを見て、笑う未来お姉ちゃん。僕は近くに立っていたセレねぇの裾を引っ張る。セレねぇは僕の頭を撫でながら、近くにある定食屋を指差す。

 

「なら、あそこで昼ご飯にしましょうか?」

「あぁ、それがいいな」

 

みんなで近くにある店へと向かおうとしたその時だった。僕たちの二課から貰ったデバイスがけたたましい音を鳴らす。そこから聞こえてくるのは、もうお馴染みとなっているOTONA集団こと二課の司令官・風鳴弦十郎様である。

 

『みんな、至急にそこから10キロ先の工事現場へと向かってくれ。いつもよりもノイズの群れが多いから、注意してくれ』

「毎度のことながら、間が悪いわね」

「愚痴を言っても仕方ない。さぁ、行こ」

「…ッ!」

 

真っ先に走り出そうとする僕の肩を掴むのは、いつものニコニコ笑顔ではなく、真面目な顔つきをした姉様でーー。

 

「歌兎はダメデス。ここで未来さんとお留守番デス」

 

そんな姉様へと僕は自分の意思を伝える。いつもよりも多いとなると、やはり一人くらい人手がいた方がいいと思う。だが、姉様は僕の名前を力強く静かに言うと、僕の肩へと両手を置く。

 

「…でも、姉様。司令様が数が普段よりも多いって!だから、今日ばかりは僕もーー」

「歌兎」

「…っ」

「心配しなくても大丈夫デスから。お姉ちゃんとみんなでノイズなんてけっちょんけっちょんの粉々にしてやるデスよ!なので、歌兎はここにいて欲しいデスよ」

 

姉様が僕を安心させようと微笑んで見せる。それを見て、僕は唇を軽く噛むと小さく首を縦に振る。

 

「…分かった」

「流石、歌兎デス。本当にいい子デスね」

 

ぐしゃぐしゃと僕の髪を撫でると、姉様は未来お姉ちゃんへと僕を引き渡す。

 

「未来さん、歌兎のことをよろしくお願いしますデス」

「うん、任せて。切歌ちゃんもみんなも頑張って」

「じゃあ、未来行ってくる」

「いってらっしゃい、響」

 

例の工事現場へと走っていく姉様たちをじっと見ている僕に、未来お姉ちゃんが僕の目の高さに腰を折って話しかけてくれる。

 

「歩き疲れちゃったね、歌兎ちゃん。あそこのベンチで少し休もうか?」

「…ん」

 

未来お姉ちゃんに連れられて、ベンチへと腰掛けると未来お姉ちゃんかポツンと話しかけてきた。

 

「切歌ちゃんはきっと歌兎ちゃんのことが心配なんだと思うよ」

「……」

「たった一人の家族だもの。居なくなって欲しくないし、傷ついても欲しくない…私が切歌ちゃんの立場ならそう思うよ」

「…分かってる。でも…」

「うん。歌兎ちゃんも同じくらい、切歌ちゃんのことが心配なんだよね。でも、歌兎ちゃん…時には信じて待つってことも必要なんだよ」

「…」

 

未来お姉ちゃんが言ってる意味が分からず、首をかしげる僕に未来お姉ちゃんが苦笑いを浮かべる。

 

「私の親友は切歌ちゃんよりも無茶して帰ってくるから、いつも心配なんだ。でも、私は響の事を信じてる。心から信じているからこそ通じ合える…ってらしくないこと言ってるのかな?あはは…ごめんね、なんだかちゃんと言えないんだけど…切歌ちゃんは歌兎ちゃんが悲しむことは絶対しないと思うんだ。だから、私とここで待っていよ?ね…?」

「…ん、未来お姉ちゃんと姉様たち待つ」

「うん、よく言えました」

 

優しく頭を撫でられ、くすぐったさから目を細めると未来お姉ちゃんと他愛のない話をしながら、姉様たちが帰ってくるのを待った…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

姉様たちがノイズ討伐へと向かって、数時間後。僕は未来お姉ちゃんと一緒にワッフル屋さんへと並んでいた。理由は僕が未来お姉ちゃんへとお腹が空いたと言って、デザートというか軽く食べれる物をねだったから。

未来お姉ちゃんは「みんなには内緒だよ」と微笑んで、座っていたベンチから歩いて3分くらいのところにあるワッフル屋さんへと連れてってくれた。順番が遂にきたというところで、ショッピングセンターの入り口付近から聞こえてくる悲鳴に、僕は未来お姉ちゃんと握っていた手を離し、その悲鳴が聞こえてくる場所へと走って向かう。

 

「…ッ!!」

「待って、歌兎ちゃん!ギアだけは纏わないで!」

 

後ろから聞こえてくる未来お姉ちゃんの制止の声を振り切り、僕は入り口を飛び出して、そこに広がっている光景に歯を噛みしめる。

 

「ギャアアア!?」

「助けてくれ!死にたくなーー」

 

突然、会われた半透明な生物によって、次々と真っ黒な灰へと姿を変えていく人々たち。僕はその人たちへ向かって走っていく。今まさに襲われそうになっている人たちの前に進み出るとーー

 

(行かなきゃ!僕がここにいる人たちを守るんだ!!)

 

ーー“生身の姿のまま”でノイズへと回し蹴りを食らわせる。

 

「…multitude despair mjolnir tron----はぁあああ!!」

 

びっくりしている人たちへと顔だけ振り返ると

 

「…死にたくないなら、必死に走って逃げて」

「あっ、あぁ!」

 

パタパタと複数の足音が聞こえ、ひとまず、彼らを助けられたことに安堵し、すぐに表情を引き締め、真っ直ぐ前を見据えると僕は肩に金槌を担ぐ。

 

「…ここにいる人たちには指一本触れされない。ここにいる人は僕が守る!」

 

群れをなして襲いかかってくるノイズが近づいてくる中、そんなノイズの集団へと金槌を振りかざした…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

二課でのミーティングルームでは、忙しなくキーボードを打つ音が聞こえくる。そんな中、一人の男性が赤いTシャツに赤い髪という男性へと声をかける。

 

「司令、響ちゃんたちが向かったところとは別にノイズが出現しました」

「なんだと!?場所はどこだ?」

「さっきまで響ちゃんたちがいたショッピングセンター前です。ん?これは!?」

「どうした?」

「ミョルニルが…戦闘中です。そのノイズたちと」

「くっ!よりにもやって…歌兎くんか…。翼たちが討伐完了次第、呼びかけよう」

 

そんなやりとりが、二課であったとは露とも思わない奏者たちは着実にノイズの数を減らしていき、遂に壊滅させた。

肩で息をしている切歌へと、調が声をかける。

 

「ふぅ…はぁ…やっと終わったのデス」

「切ちゃん、お疲れ様」

「調もお疲れ様デス」

互いに互いを労い、歌兎と未来が待っているショッピングセンターへと帰還しようとした時だった。デバイスがまたしても、けたたましい音を響かさせる。そして、そこから聞こえてくるのもその呼び出し音と同じくらいの声だった。どこか、切羽詰まった感じに聞こえるその声に、切歌は着々と嫌な予感が胸を埋めるのを感じる。だか、その嫌な予感は見事的中することになる。

 

『そこに皆いるか?一戦交えた後に済まないが…今から早急に、みんなが買い物していたショッピングセンターへと戻ってくれ』

「はぁ?なんでだよ、おっさん」

「…歌兎くんが一人でノイズと戦っている」

 

デバイスから聞こえる弦十郎の声に、切歌の頭を一瞬真っ白になる。そして、勢いよく後ろを振り返るとひたすら足を動かした。

 

「「「!?」」」

「…ッ!」

「あっ、切ちゃん!」

「待ちなさい、切歌!」

「おい!」

 

後ろから聞こえてくる仲間の声には耳を貸さず、切歌はがむしゃらに走る。目指すは、最愛の妹と別れたショッピングセンター。

 

(何してるデスか!歌兎!あんなに約束したじゃないデスか!ギアを纏わないでって!!)

 

「歌兎…どうか、無事でいてください」




最後のシーンが下手くそなのは…私の表現力といいますか、力不足故です…(汗)
ので、皆さんへと伝えたかったことが伝わっていればと思うのですがーー伝わって…ますよね?


補足として、歌兎のギアについて載せておきます。

◎暁 歌兎

・ミョルニル

聖詠/multitude despair mjolnir tron

メインカラー/花青緑

基本、金槌で攻撃。自由に形や大きさを変えられる


以上ですm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4)過保護な姉たちとせんとう。

今回は長めの、私の妄想全開デス。
オリジナル設定や過去改変などがあるので、お楽しみデス!

そして、今回の話で苦労したのはマリアさんのギアでした…(汗)
だって、セレナ生きてるし、響にガングニール渡しちゃったら、マリアさんは何を纏えばいいの!?と(汗)

自分で考えた設定なのに、そんなに悩まされるなんて…思いもしなかったですよ(笑)


9/18〜一件の誤字報告、本当にありがとうございます!
間違っていた部分を直しました。


「ハッ!」

 

迫ってくるノイズの群れに向かい、金槌を振り下ろす。だが、それくらいで減るノイズではない。半透明な拳が此方へと振り下ろされるのを、寸前で交わし、そのノイズの腹へと蹴り入れる。そして、数歩後ろへと飛ぶと息を整える。

 

(次から次へ湧いてくる)

 

戦闘を始めて、もう一時間くらい過ぎたがノイズの群れは減るどころか、最初の頃よりも増えている気がする。息を整えている僕は背後にいるそいつへと注意を怠っていた。ドンと身体へと強い衝撃が走り、前屈みに倒れこむ。そして、真上から何かが迫っているのを感じて、横へと逸れる。

 

「…くっ、ガバァッ!?」

 

お腹をさすり、思った以上にダメージを食らったことに苛立つ。そして、その苛立った気持ちに反応したか、僕の心の奥に居座っているアレが僕へと声をかけてきた。

 

【我を解放しろ。そうすれば、この状況を打破出来るぞ】

 

(くっ…煩い、黙って。君はお呼びじゃない。僕だけでもこれくらい撃破出来る)

 

【そうか。精々、抗うといい。我はいつでも、其方の呼びかけを待っているぞ】

 

首を横に振り、アレを追い払うと僕はギュッと左腕を握りしめる。グルグルと真っ白な包帯で巻かれたその下には、その包帯とは正反対の色で変色した骨ばった醜い腕が広がっている。それを思い出し、僕は顔をしかめる。

 

(やばい。これ以上、ダメージを食らったら…アレが出てきてしまう。それだけはどうにかして避けないと…)

 

舌打ちして、金槌を担いだ僕へと見知った声が掛けられる。

 

「歌兎ちゃん、前!」

「…!?」

 

未来お姉ちゃんの叫び声で前を見れば、もう寸前までに絶対ノイズたちが居てーー大きく振られた腕や拳は僕のお腹や顔に殴り、僕は近くにあるビルへと叩きつけられる。その際、余りの衝撃に唾を吐くと、ドテっとその場へと崩れ落ちた。だが、これくらいで負けるわけにはいかない。

 

(ここで僕が倒れたら、ここにいる人たちが灰へと成り替わる。それだけは何としても避ける!例え、この身がアレに取り憑かれようともッ!!)

 

「歌兎ちゃん!!」

 

近寄って来ようとする未来お姉ちゃんを止めてから、僕は大きく息を吸い込み、心の中に居座るアレへと呼びかける。アレは僕の呼びかけに嬉々として受け入れ、僕へとその力を受け渡す。膨大な力の束が僕の心臓近くにある聖遺物へと流れ込み、僕の身体は沸騰しそうなほど熱くなる。僕から発せられる蒸気により、周りの風景が歪み、僕はガクッと倒れそうになるのを何とか耐えると、近くにある金槌へと手を伸ばす。だが、余りの熱さと暴走する力により、両膝を地面へと付けた僕は左腕を強く握りしめる。

 

(熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。身体が熱い、胸が…左腕が…左目が…全てがあつい、アツイ、熱い!

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。目の前のやつが憎い、僕を苦しめるやつらがにくい、ニクイ、憎い!

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。こいつらも、後ろでギャアギャアうるさい奴もすべて、スベテ、全て…この金槌でーー殺す!!)

 

「あっ…あぁああ…あぁあああァアアアア!!!」

「歌兎ぅうううう!!!」

 

最愛の姉の叫び声により僕の悲鳴が打ち消される。両膝をついて、俯き、左腕を指が食い込むほど握りしめている僕を見て、姉様は親の仇を見る目で目の前にいるノイズの群れを睨む。

 

「お前たちデスか!あたしの可愛い妹をいじめたのは!!」

 

手に持った大鎌を振り回し、次から次へとノイズを灰へと変えていく。そして、最後に鎌から緑色の刃を放ち、見事にフィニッシュを決めた姉様は息を整えながら、両手をだら〜んと垂らして、身動き一つしない僕へと近づこうとする。だが、そんな姉様の前へと金と黒のギアを纏ったマリねぇが進み出る。そして、キョトンとしている姉様へと指示する。

 

「はぁ…はぁ…、っ…。歌兎…大丈夫デーー」

「切歌、武器を構えなさい。アレが始まるわ」

「へ?」

 

姉様は今だに身動き一つしない僕を見て、マリねぇへと掠れ声で呟く。だが、姉様の声は最後まで続かない。何故なら、僕の叫び声がその言葉を遮ったから。

 

「……」

「…マリア、何を言ってるデスか。ほら、いつもの歌兎じゃないデスか…アレはきっと、もう起きないデーー」

「あぁあああ!!!」

 

叫び声を上げ、自分を取り囲む奏者たち見渡す僕の身体を段々と赤黒いオーラが纏わりつく。いつも眠そうに開かれている黄緑色の瞳は今やオーラと同色で、姉様はそんな僕の姿を見て凍りつく。

そんな姉様を憂慮な表情で見つめる。そんなシラねぇへと視線を向けずに、姉様は地面の一点を見つめ、ポツンポツンと胸の中にある気持ちを吐露する。その呟きを聞き、姉様の右隣にいたセレねぇも姉様を気掛かりな表現で見つめる。

 

「!?」

「切ちゃん…」

「…あたしはまた…間に合わなかったの…デスか…?」

「暁さん…」

「…また、あの子をこの手で痛めつけなくてはいけないのデスか…」

 

自身のアームドギアの緑色の刃を持つ大鎌を見つめ、心痛な表現を浮かべる姉様へと禍々しいオーラを纏った僕が攻撃を仕掛ける。それを響お姉ちゃんが受け止め、反撃とばかりに左拳が飛んでくるがそれは背後に飛んで、回避。

獣のような唸り声をあげ、周りにいる奏者たちを威嚇する僕。そんな僕へと武術の構えと剣術の構えを取りながら、間合いを取る響お姉ちゃんと翼お姉ちゃん。そんな二人の反対側には、同じく其々のアームドギア構えるマリねぇとセレねぇの姿があり、マリねぇとセレねぇへと攻撃を仕掛けようとした僕へと突然飛んでくるミサイルや銃弾の数々。其方の方へと向くと、クリスお姉ちゃんが姉様へと喝を入れながらも僕へと攻撃を仕掛けていた。

 

「シャアああ!!ガルルルル…」

「そんなこと言ってる場合か!今はこいつを止めて、周りへの被害を減らすことを考えるべきだろ!」

 

そんなクリスお姉ちゃんの頭上へと飛んだ僕は両手を組み、クリスお姉ちゃんの後頭部へと拳を埋めようとする。だが、それは今にも泣き出しそうな顔をした姉様の大鎌の一振りにより、邪魔された。後ろへと飛ぶ僕へと今度はシラねぇの回転する電鋸が襲いかかる。それを寸前で交わし、取り囲む奏者たちへと無作為に攻撃を繰り出す僕。

 

「ッ。分かってるデス!妹が悪いことをしようとしてるのデス!それを止めるのが姉の務めというものデス!」

「そのいきだ、暁。今の彼女を止められるのは暁しかいない」

「はいデス!翼さん」

 

翼さんにさとされ、僕へと攻撃を仕掛ける姉様とシラねぇのコンビネーションに徐々に隙を見せ出した僕へと多数から攻撃が仕掛けられるーー姉様の大鎌が。シラねぇの回転式ノコギリが。マリねぇの槍が。セレねぇの短剣が。

次々とクリティカルヒットし、僕は徐々に追い詰められる。唸り声を上げる僕へと、今度は響お姉ちゃんと翼お姉ちゃんが畳み掛けてくる。

 

「ガルルルル。グルルル」

「くそっ!毎度のことながら、なんでこいつはギアを纏うとこうなるんだ!」

「それは私も知りたいところだよ!ハァアアアッ!!!」

「雪音。今だ!!」

「出血大サービスだ!有り難く受け取れ!!」

 

見事な連携を見せて、クリスお姉ちゃんのミサイルが当たった僕は呻き声を上げながら、その場へと跪く。それをチャンスと捉えた翼お姉ちゃんは奏者一同へと呼びかける。

 

「ガルッ!?」

「今だ!皆、畳み掛けるぞ!」

「了解です!翼さん!」

 

その後、全員の技を喰らい、その場へと倒れた僕は意識を手放した…

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

バタンと歌兎がその場へと倒れると、あたしは堪らず、彼女へと駆け寄る。だが、又してもマリアの邪魔が入る。邪魔をするマリアへと鋭い視線を向けながら、最愛の妹へ近づこうと足掻く。だが、マリアの力は強く、ビクともしない。

 

「歌兎!!」

「切歌!まだダメよ、まだ熱いわ」

「マリア!デスが…あんな状態の歌兎をーー」

「歌兎を心配してるのは切歌、貴女だけじゃないわ。私も…あそこにいるみんなも心配なのよ」

「…」

「大丈夫よ。私が歌兎の体温を下げるわ」

 

そう言い、任せなさいと言わんばかりに不敵に笑うマリア。ぐしゃぐしゃとあたしの頭を撫でると、右手に持った黄金の槍を一振りする。

すると、槍の先から水が噴き出て、歌兎へと直撃する。そして、ジュッといった音が聞こえ、真っ白な湯気が歌兎の身体から吹き上がる。暫く、そんな感じでマリアが歌兎を水で冷やし、ある程度するとマリアがあたしへと微笑んだ。

 

「これで大丈夫よ、切歌」

「ありがとうデス!マリア」

「どういたしまして。歌兎の元へ行って上げなさい」

「はいデス!」

 

マリアへとお礼を言い、最愛の妹へと駆け寄る。後ろからバタバタと足音が聞こえたのを聞くと、みんなも歌兎が心配で駆けつけたと思う。

濡れるのも構わず、ぐったりしている歌兎を抱きかかえ、身体を揺らす。だが、歌兎の瞼が開くことはなくーーあたしは歌兎を抱きかかえるとみんなと共に二課へと走る。

 

「歌兎!しっかりしてください!歌兎!!」

 

その後、あたしに抱きかかえられ、二課へと運び込まれた歌兎はそのまま、緊急治療室へと運ばれ、大掛かりな検査と手術を受けることになった…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

歌兎の手術を待っている間、奏者たちは食堂へと集まっていた。諸々の騒動ですっかり日が暮れてしまったので、みんなでご飯を食べようとなったからだ。

あたしは歌兎が心配で、胃に物を入れようとは思わなかったが、クリス先輩や響さん、未来さんから誘われ、いつもお世話になっている手前、三人の誘いを無下に出来ず、食堂へと来てしまった。

そして、各々頼んだ物を口に入れている時、クリス先輩が不意に口を開く。白銀の瞳は目の前に座っているあたしや横に並んでいるマリア、セレナ、調を順々と見ていく。クリス先輩が口を開くと、向こう側に座る先輩方々が次々と口を開く。

 

「なぁ、そろそろ教えてくれてもいいじゃねぇーか?今まで、あいつはあのバカと同じ病状だと聞いていた。だが、毎度毎度暴走っておかしいだろ?あいつの身体に、今何が起こってる?」

「それは私も知りたいよ。だって、 歌兎ちゃんは私たちの大切な仲間で。その仲間が苦しんでるんだったら、私はその手を握ってあげたい!歌兎ちゃんの力に、そして切歌ちゃん。マリアさん、セレナちゃん、調ちゃんの力になりたいよ」

「私からも頼めないか?マリア、セレナ、月読。そして、暁。ここにいる皆が彼女のことを心配している。貴女たちの力になりたいと思っているんだ」

「私も知りたいです!私は戦えないし、話を聞いてあげるくらいしか出来ないかもだけど…それでも、歌兎ちゃんを心配している気持ちはここにいるみんなと同じだよ」

 

四人の気持ちを聞き、押し黙るあたしを気掛かりそうに見ているマリア、調、セレナ。あたしはみんなから集まる視線に覚悟を決めると「スゥ〜」と深く深呼吸する。

 

「……」

「切歌…」「切ちゃん…」「暁さん…」

「…分かったデス。歌兎の身に何が起こっているのか…あたしから皆さんへと話すデス」

 

あたしのその言葉に、向こう側の四人が息を飲むを感じる。あたしはゆっくりと顔を上げると、四人の顔を見ながらポツンポツンと自分と妹の過去を話す。

 

「あたしと歌兎は、貧しいところの出なのデス。あたしが5歳、歌兎が2歳の時に、あたしたちを生んでくれた両親からはお金の為に売り飛ばされ、奴隷になる前にF.I.S.…白い孤児院へと迎えられたデス。

その際に誕生日や名前を聞かれましたが、あたしたちが知るのは自身の名前だけ。誕生日など両親に捨てられたあの日から思い出しもしないデス」

 

捨てられた時の記憶が蘇り、ギュッと自分のズボンを握りしめるとあたしの左手へとほっそりした右手が優しく添えられる。そちらへと視線を向けると、調が優しく微笑んでくれていた。そんな彼女へと力なく微笑み返してから、話を進める。

 

「白い孤児院では、色んな人たちと出会ったのデス。調、マリア…そして、セレナ。あと、もう一人、カルマ…」

 

あたしは重たい口を開き、最後の一人を口にした時、正面に座るクリス先輩が眉をひそめる。

 

「おい待て、そいつは誰だ?今までお前らの口からそんな名前聞いたことないぞ」

 

クリス先輩の問いに、今度は四人で答える。歌兎の病状を語る上に彼女の存在は不可欠なのだから…。

 

珠紀(たまき)カルマ」

「私と同じで先天的な適合者だった。誰よりも懸命にマムの試練へと立ち向かっていました」

「そして、私たちの誰よりも強く、優しい人だった」

「初代ミョルニルの奏者デスよ」

「「「「!?」」」」

 

あたしのセリフに四人の瞳が大きく見開かれる。あたしは構わず、話を進める。

 

「あの日、あの炎の日に歌兎の運命が変わってしまったのデス。その日は、ネフィリムの起動を実験したあの日、カルマは暴走したネフィリムを止める役をかって出たのデス。デスが、カルマが犠牲になることを歌兎は許さなかったのデス」

「歌兎はカルマを…そして、私たちを守ろうとした。ここにいる私たちよりも当時は無力でひ弱だったのに」

「デスが、そこで予想してない出来事が起きた。ネフィリムは目の前のカルマではなく、乗り込んできた歌兎へと敵認証を乗り換えたのデス。恐らく、歌兎はそれを狙っていたんでしょうが、ネフィリムの余りにも禍々しい姿に尻餅をついてしまった。そして、怯えた歌兎を助けようとカルマは絶唱を歌い」

「カルマの全身全霊の攻撃はネフィリムを大人しくさせ、弾け飛んだカルマのギアの破片が近くにいた歌兎の胸元へと」

 

あたしの横並びに座っているマリアたちが顔をしかめ、当時のことを思い出して、悔しそうに唇を噛む。そして、それはあたしも同じでギュッと握った右手を勢いよく目の前の机へと叩きつける。

 

「その後は、響さんと同じような感じだったのデス。そして、融合症例の第2号になった歌兎をこぞって、多くの組織が買収しようとしたデス!くそっ!あいつら、歌兎のことをなんだと思ってやがるデスか!!」

 

バァンと鈍い音が響かせる机の上には、あたしが頼んだハンバーグ定食がある。あたしが叩いた振動で、味噌汁はお盆へと壮大に溢れ、お水を入れた透明なコップは音を立てて、机へと倒れた。自分の方へと水が落ちてくるのも構わずに、あたしは机へと叩きつけた右手を強く握りしめる。

あたしのただならぬ雰囲気に向こう側にいるメンバーが怖がっていることを気配から察し、隣に座る調があたしの肩を抱き、落ち着かせようとしてくれる。

 

「切ちゃん、落ち着いて。みんなが怖がってる」

「…ごめんなさいデス、調。おかげで落ち着いたデスよ」

 

落ち着きを取り戻したあたしへと、翼さんが話しかけてくる。あたしは翼さんへと視線をつけると答える。

 

「そして、どうなったのだ?彼女は」

「もちろん、マムやあたしたちで守ったデスよ。歌兎にそんな汚い仕事をさせるわけにはいきませんから。そして、そんな日が続いた日のこと、ある事を知ったのデス」

「極大災厄ーー遠くない未来に月が落下する事実。そして、その事実を知る米国政府が弱者を切り捨て、一部の特権階級の救済を優先させていること」

「私たちは米国政府へと反旗を翻しました。弱者を切り捨てる政府を許すことは出来なかった。そして、あの計画を実行することにしたんです」

「フロンティア計画か」

 

翼さんがそう呟くと、マリアが頷き、続きを口にする。マリアの続きを調が言い、あたしは響さんをまっすぐ見つめる。

 

「えぇ。あの時は私たちにはそれしか方法がなかった」

「だけど、それが歌兎の病状を悪化させるきっかけとなった。でも、私たちはやめるわけにはいかなかった。目的を果たすまでは絶対に」

 

あたしの問いかけに頷いた響さんへと頷き、あたしはあの後に歌兎に起きたことをみんなへと話す。

 

「響さんは覚えてるデスか?ネフィリムが襲いかかろうとしたときに歌兎が助けたことを」

「うん、覚えてるよ。私の代わりにノイズ倒してくれて、その後も私を襲うネフィリムを撃退してくれた」

 

当時のことを思い出し、あたしは自分自身を責める。あの男へと妹が呼ばれていることに、あたしは気付いていたーーでも、あの男の逆鱗に触れることを恐れ、愛する妹を犠牲にし続けていた。あの時へと戻れるのであれば、あのナヨナヨとした自分自身をぶん殴ってやりたい。そして、こう言ってやるんだーー『大切な妹一人守らずに、地球やそこに暮らす弱者全員を守ろうなんて思い上がるなッ!』と。

 

「その後、歌兎はウェル博士に呼び出されたデスよ。作戦が失敗したのはお前のせいだ、と。そして、その責任を取る形で歌兎はウェル博士の実験を手伝うことになったデス」

「余りにも酷いこともさせられていたわ。もちろん、助けたかった。でも…」

「…あの時の私たちはウェル博士をどうしても手元に置いておく必要があった」

「だから、ウェル博士の逆鱗に触れることは出来なかったんです」

 

みんなが下を向き、唇を噛みしめる中、あたしはまっすぐ前を見据え、それを口にした。マリアが向こう側にいるメンバーを見渡し、問いかける。

 

「そうこうしているうちに、あのメガネーーウェル博士が歌兎へとあるものを植え付けたデスよ」

「あなたたちも聞いたことはあるのではないかしら?完全聖遺物・ベルフェゴール」

 

マリアが口にしたソレに、翼さんは目を引き、クリス先輩は焦ったような表情を浮かべる。

ソレを否定しようとしているセリフに、調が静かに首を横に振り、事実を突きつける。

 

「なんだと!?」

「いや、待て。そんなこと出来るのかよ!?生身の人間に完全聖遺物を埋め込むとか」

「ウェル博士が実際やってくれた。右手へとネフィリムの心臓を植え付けていた」

 

その事実に未来さんは身体を震わせて、口元を両手で覆う。その隣にいる響さんはというと、琥珀色の瞳へと怒りの炎を滾らせ、両手を強く握っていた。

 

「…酷い。なら、それを応用して歌兎ちゃんへも同じことをしたというの?」

「そんなのって…無いよ!歌兎ちゃん、私を守ってくれたのに!」

 

未来さんと響さんのセリフに答えずに、あたしは妹が何故いつも左腕だけ包帯しているのかを話す。それを聞いた瞬間、向こう側のメンバーが鋭く反論する。

 

「…歌兎が左腕へと包帯を巻いてるのはそのせいデス。真っ黒に変色した腕を見て、響さんたちが気持ち悪がると…そう言ってたデスよ、悲しそうに…」

「そんなわけあるかよ!」

「暁のそれは仲間を守ろうとした防人の誇りのようなものだ!それを気持ち悪がるなど、私たちの中に一人もいない!」

「そうだよ!どんな姿をしていても歌兎ちゃんは歌兎ちゃんだもん!可愛くて優しい歌兎ちゃんだよ!!」

「私もみんなと一緒だよ!歌兎ちゃん、私たちのために頑張ってくれてるもの!」

 

最愛の妹へと向けられている暖かい言葉に、思わず胸が締め付けられ、ポロポロと涙が溢れ出る。そんなあたしの溢れ出る涙を拭いてくれてる調へと頷くと、あたしはぐっと唇を噛むと最後の結末を話す。

 

「皆さんみたいな人に会えて、歌兎は幸せ者デスよ、本当に」

「…切ちゃん」

「大丈夫デス、最後まで話さないといけませんから。

そして、ウェル博士の目論見通り、歌兎はベルフェゴールを見事取り込み、その力を自分の力として使うことができたデス」

 

あたしのセリフに、翼さんが頷き、思い当たる節を言う。その出来事に頷き、あたしはベルフェゴールの副作用を説明する。

 

「なるほど、時折、彼女の周りから禍々しいオーラを感じることができた。理由はそのベルフェゴールやらを使っていたからか」

「そういうことデス。デスが、そのベルフェゴールを使い続けるにはメリットがあったのデスよ。

ベルフェゴールは着用者を唆すのデス…。心の底から囁きかけ、自分を使うように仕向け、膨大な力と共に、着用者の理性を破壊して、目に付くものを攻撃し破壊するだけの獣へと変えさせる…」

 

あたしの言葉を聞き、クリス先輩は目を見開き、唖然としたように言う。クリス先輩に頷き、今の歌兎の状態を話す。

 

「…!?それであいつが暴走を引き起こすのか」

「ミョルニルの浸食が思った以上に進んでることが幸いして、ベルフェゴールの浸透はそこまで酷くはないんデス…デスが、少しずつデスがミョルニルをベルフェゴールが飲みかけているのデス。もし…歌兎がベルフェゴールに飲み込まれてしまったのならば…あたしはあの子をこの手でーー」

 

その先はとても言えず、あたしは俯く。

もし、そんな事になってしまったら、あたしはそれが出来るだろうか?あの子を自分の手で始末することをーー

 

(情けないデス…。覚悟はとっくに決めてたのに…今更、震えがくるなんて…)

 

震える手をギュッと優しく握ってくれる調の優しさに感謝して、あたしは今の自分たちの目的を語る。

 

「切ちゃん…」

「分かってるのデス、調。…そうならない為にも、あたしは…あたし達は、もう一つの神獣鏡のカケラを見つける必要があるのデス。そして、あたしは歌兎をーー大切な妹をモルモットのように扱ったあのメガネを見つけ出して、ぶん殴らないと気が済まないのデスよッ」

「…なるほどな。あいつのこと分かったぜ」

「辛いことを思い出させてしまったな、暁。そして、マリアたちにも」

「気にしないで欲しいのデス。近いうちに、歌兎の事は話さなくてはいけないと思っていたので」

 

眉をひそめて、申し訳なそうに謝る翼さんへと首を横に振ると、その後は静かな時間が流れた……




ということで、役9000文字近くまで書いたこの話ですが…ご覧になっていかがでしょうか?

切ちゃんが妹に過保護な理由が伝わればと思うのですが(笑)



新しく出た単語の補足です。

《マリアさんの新しいギア》

名前/ロンギヌス

メインカラー/金と黒

→これはセレナと正反対の色を使って、二人で一つって感じを出した方がいいなぁ〜と思い、設定したものです。

聖詠/shield Longinus defend tron

→原作とは全く意味ないです。自分のカッコいいと思う単語を入れて作りました。

基本武器/槍


《完全聖遺物・ベルフェゴール》

ベルフェゴールは、キリスト教における七つの大罪に比肩する悪魔の一柱で、『怠惰』『好色』を司る悪魔である。男性を魅了する妖艶な美女の姿で現れて、『好色の罪』をもたらす悪魔とされ、さらに占星術では性愛を司る金星の悪魔とみなされている。また、中世のグリモワールに発明を手助けする堕天使として紹介されて、便利な発明品を人間へと与え、堕落させるという『怠惰』の悪魔にふさわしい力を持つ。

→『人間に便利な発明品を与え、堕落させる』を独自に解明し、『人間』を『装着者』。『便利な発明品』を『膨大な力』。『堕落』を『暴走』、としました。
続けて書きますと、『ベルフェゴールを装着した者は、膨大な力を与えられ、暴走する』としました。心に囁きかけるのは、唆す…といいますか、ベルフェゴールの力を使わせるためには必要なことだと思い、私が考えたものです。


《歌兎の左腕》

完全聖遺物・ベルフェゴールと同化したその腕は真っ黒に変色し、骨ばっている。それを何も知らないものが見たならばこう言うだろうーー悪魔の腕、と。
故に、彼女はその醜い左腕を包帯で隠すことに決めた。

→ウェル博士の右手とベルフェゴールを見つけて、思いついた案です。まだまだ、勉強不足な上、この設定をどう生かせるがまだ分かりませんが、気に入っていただけたのであれば幸いです。


以上、新しく出たワードの補足でしたm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5)過保護な姉様たちと不器用なぼく。

今回は、目が覚めた歌兎を過保護な姉様こと切ちゃん、その他の奏者一同がお見舞いに来るところデス。
そして、次の回から5話ほどお見舞いシリーズが続きます。第一弾はきりしら。第二弾はひびみく。第三弾がマリセレ。第四弾がつばクリ。そして、最後の弾がOTONAの皆さんデス。

そして、遅くなりましたが…私の小説のアレが赤に…(ブルブル)
続けて、お気に入りが100名突破!?(もっとブルブル)

これは感謝の意を皆さんへと伝える為にーー特別な話とか書いた方がいいのでしょうか?と本気で悩む作者でありました(笑)



ショッピングセンターの一件から一週間後に僕は目を覚ました。

目を覚まして、最初に見たのは自宅ではない真っ白な天井、続けて、自分の周りを取り囲む物々しい機械たち。自分の胸へと続いているペースメーカーを見ると、どうやら僕はかなりヤバイ状況だったらしい。

 

「…あぁ〜、黒いとこ多くなってる」

 

アレーー完全聖遺物・ベルフェゴールの心臓が埋め込まれている左腕は愛用している包帯が巻かれてなく、その禍々しくもおぞましい腕が広がっていた。骨ばり、漆黒へと変色した腕は光が当たってるところを紫色に輝かせている。その腕からスゥ〜と自分の胸元へと視線を向けると、まるでクモの巣のように心臓へと伸びている漆黒の線があった。

それを見つめながら、僕はふと思う。

 

(…このまま、黒いとこが増えていったら…僕はどうなるのかな?

僕の意識はそこにはなく、アレに身体を乗っ取られ、僕の姿をしたソレは破壊と惨殺を繰り返す獣と化す…んだろうか?そうなった後はどうなるんだろうか…?僕は…また、姉様を、姉様たちを悲しませてしまうのだろうか…)

 

湿っぽくそんな事を思っていると、ガチャンとドアが開く音が聞こえ、そちらへと視線を向けると、恐らく記憶が途切れた時にすごく迷惑をかけたであろう奏者の皆さんが勢揃いだった。

先頭はもちろん、我が姉様で起き上がっている僕の姿を見ると両目の端に涙を溜めて、両手を広げて僕へと近づくとガシッと抱きしめる。

 

「歌兎!起きてたデスか!!」

「…ん、また迷惑かけちゃった…ごめんなさい、姉様」

「気にしたくていいのデスよ、歌兎。歌兎が無事だと分かっただけでお姉ちゃんはとても嬉しいのデス」

「…ん、ありがと、姉様」

 

姉様の背中を右手でさすりながら、入り口へとまた視線を向ける。そこには、姉様と同じように両目の端に涙を溜めた奏者の皆さんが居て、僕は居た堪れない気持ちになる。段々と近づいてくる皆さんから視線を逸らしそうになって、だが迷惑をかけた以上、詫びを言わなくてはいけないと思い、ジッと皆さんを見つめる。そして、僕を取り囲むに並んだ奏者の皆さんは僕にがっしり抱きしめたまま、ビクとも動かない姉様へと視線を向けると、どこからとなく苦笑いが漏れ出る。

そして、姉様の横に立っているシラねぇが僕の方へと進み出るといつものように優しく頭を撫でてくれる。チラッとシラねぇを見ると透明な雫の跡が二筋出来ており、その横にいるセレねぇもマリねぇも涙を流しており、僕は胸が締め付けれる。僕はまた、この優しい人たちを泣かせてしまったらしい。

 

「歌兎ちゃん…良かった…。無事で…本当に…」

「とても心配したんだよ、歌兎ちゃん」

「歌兎、無事でよかったわ。今回ばかりはダメかもしれないって思ったのよ」

「…ん、ごめんね。シラねぇ、セレねぇ、マリねぇ。そして、ありがとう。…また、心配かけちゃったね…」

「バカね、心配なんていつもかけてるでしょう?そんなことを気にすることはないわ」

「…ん、マリねぇ。ありがと…」

 

シラねぇに変わり、優しく頭を撫でてくれるマリねぇへと力なくお礼を言いながら、目の前にいるクリスお姉ちゃんへと視線を向けると、何故かばつが悪そうな顔をして横を向いた。その横では、そんなクリスお姉ちゃんをみて、クスクスと笑う翼お姉ちゃんと響お姉ちゃんの姿がある。何故、二人が笑っているのか。分からず、首をかしげる僕へと響お姉ちゃんがその答えを教えてくれた。

 

「…おまえ、目が覚めたんだな」

「思ったよりも元気そうで良かった、暁」

「歌兎ちゃん、元気そうで良かったよ。なんかツンツンしてるクリスちゃんなんだけどね、歌兎ちゃんが目を覚ますまでは自分のミサイルのせいで目が覚めないんじゃないかって、ハラハラしてたんだから」

「確かにあれが決め手となり、我らは暁へと総攻撃を仕掛けることになったんだからな」

「なっ!二人揃ってあたしを非難か!それとそれは言うなって言ったろが!!」

「いったぁああ」

「もう、響がクリスをからかうからだよ。ほら、見せてみて」

「うん、ありがとう〜、未来」

「…」

 

隠しておきたい秘密を響お姉ちゃんに暴露され、その追加で翼お姉ちゃんからの援護攻撃を喰らい、クリスお姉ちゃんは顔を羞恥心と怒りで赤く染めると、ポカッと音がするほどに響お姉ちゃんの頭を殴る。そして、殴られた響お姉ちゃんはその場にうずくまり、隣に立っていた未来お姉ちゃんへと治療してもらう。

まるで、僕を気遣って、普段通りに振る舞おうとしてるように見える四人。僕の背中に回っている両手が僅かに震えていると見下ろした際に見た姉様の悲しそうな表情から僕は眠っている間にあった出来事を安易に想像出来てしまう。

 

(そっか…。この四人にもバレちゃったか…)

 

出来ることなら関わって欲しくなかった僕の問題。この四人もここにいる二課のOTONAの皆さんも他人思いすぎる。恐らく、必死になって、僕を助ける方法を探そうともがいてくれるだろう、うちの優しすぎる家族のように。

でも、そんなみんなへとこんないつ破裂してもおかしくない爆弾のような身体を持つ僕は何が出来る?答えは何も出来ない、だ。迷惑をかけ続けて、これからも迷惑をかけて…終いには、こんな優しすぎる人たちを泣かせてしまうかもしれないのに。だから、出来ることなら、もう僕に関わらないでほしいと思う。そうすれば、悲しい思いも何もしないのだから…。

ので、僕は四人を見つめながら、敬語で謝罪を口にする。

 

「…また、僕がご迷惑をかけたみたいですいません。嫌な思いを沢山させてしまいましたよね…。それとこんなお見苦しい物見せてごめんなさい…」

 

そう言って、毛布で左腕を隠そうとするとその左腕を掴むものがあった。それを辿ると琥珀色の瞳を強い意志を浮かばせて、僕をまっすぐ見ていた。

 

「そんな悲しいこと言わないでよ、歌兎ちゃん。私も未来も、もちろんクリスちゃんや翼さんもこの腕をそんな風には思ってないよ。だって、これは歌兎ちゃんが大切なお姉ちゃんを、そして家族を守る為に選ぶしかなったものでしょう?私だって、歌兎ちゃんの立場ならそれを選ぶよ」

「…響お姉ちゃん」

「だからさ、今まで自分が行ったことを恥じないで。この腕は歌兎ちゃんの優しさの結晶なんだよ。それをそんな風に言うなんて、余りにも悲しいよ…」

 

僕の醜い黒い左腕を自分の胸へと優しく抱いた響お姉ちゃんは静かに謝罪の言葉を口にする。

 

「…ごめんね、歌兎ちゃん」

「…なんで、響お姉ちゃんが謝るの?」

「…切歌ちゃんに頼んで、歌兎ちゃんの身に何が起こってるのか聞いたんだ」

「…」

 

(やっぱり、そうか…)

 

響お姉ちゃんのその言葉に僕は一瞬、放心状態になる。姉様の反応と仕草から分かってはいたが、改めて聞くとなかなかくるものがある。

俯きそうになる僕の黄緑色の瞳をジッと見つめ、響お姉ちゃんは自分の気持ちを伝えようと語りかけてくる。

 

「色んなことを聞いたんだ。歌兎ちゃんが誰よりも行動力があり、切歌ちゃんと同じで家族思いで優しい子って事。そして、歌兎ちゃんをこんな姿にしてしまったのは…私のせいってこと」

「違う!響お姉ちゃんのせいなんかじゃ、ない!!これは僕がッ!!僕自身の…弱さが引き起こしてしまったことだから…あの男から本気になれば、姉様やマム…ねぇやたちを連れて逃げることとか出来た。でも、出来なかった…あの男が僕たちの作戦に必要だったから…。だから、響お姉ちゃんのせいとか言わないで。お願いだから…」

「でも、元を辿れば、私のせいでしょう?ううん、“せい”とかじゃないよ。私はそんなことが言いたくて、歌兎ちゃんにこんな話をしたわけじゃないの」

「…へ?」

 

響お姉ちゃんを見て、ポカーンとする僕に響お姉ちゃんはニカッと明るく笑う。その笑顔を見ていると、心の奥が暖かくなっていく。

なるほど、最近姉様と響お姉ちゃんがなんか似てるな〜と思っていたが、もしかするとこの笑顔がそれの最大の理由かもしれない。

 

「今の私がいるのは、あの時助けてくれた歌兎ちゃんの“おかげ”だよ。その後も、敵だったはずの私たちを助けてくれたでしょう?その裏でウェル博士にひどいことされていたかもしれないのに」

「…買いかぶりすぎだよ、響お姉ちゃん。僕は、最後の最後で姉様達や響お姉ちゃん達を裏切り、あの男の逃亡の片棒を担いんだから…その罪はどんな事をしても消えない」

「…歌兎」

 

響お姉ちゃんのセリフに力無く首を振り、あの時に僕がしてしまった最大の罪を口にする。その罪を口にした瞬間、姉様が僕を心配そうに見つめる。そんな姉様から視線を逸らし、毛布の一点を見つめる僕へと鋭い声がかかる。

 

「そんなの罪でもなんでもないよ、歌兎ちゃん!!だって、仕方ないじゃん!歌兎ちゃんにはそれしか残ってなかったんだもん!それを言うなら、私は歌兎ちゃんが助かるはずだった方法を奪ってしまった!あの光を浴びれば、歌兎ちゃんも助かったかもしれないのに!」

「…」

「歌兎ちゃん!お願いだから、そんなに自分の責めないで。そして、少しでもいいから私たちを頼ってよ…ね?」

 

響お姉ちゃんのセリフに僕の頬が濡れていく。そして、響お姉ちゃんを見つめると僕は今まで誰にも黙っていた気持ちを吐露する。

 

「…ぅっ…ぼ、く…このまま生きてても…大切な人達に迷惑かけちゃう…、それだけならまだしも…もしかしたら、もっと酷い結末になってしまうかもしれない…。なら…そうなる結末しか運命が用意してないのなら…このまま、ギアを使い続けて…自分を殺そうと思った…。もう、大切な人達の悲しむ顔が見たくなかったから…」

「歌兎ちゃん。こんな時、きっと、師匠ならそう言うよ。『KODOMOを守るのがOTONAの務めだ』って!まぁ、私もその子供の一人な訳なんですが…」

「おい、話が逸れてるぞ」

 

大事なところでおちゃらける響お姉ちゃんをクリスお姉ちゃんがたしなめる。それに響お姉ちゃんはこくんも頷き、胸に抱いた僕の左腕を強く握りしめた。

 

「あっ、本当だね!えっとね、結局何が言いたいかと言うとね。私や切歌ちゃん、他の奏者のみんなが必ず、歌兎ちゃんを守るって言いたかったんだ。私たちって、歌兎ちゃんよりも年上だからね!だから、歌兎ちゃんから見れば、私たちはOTONAということですな」

「…ッ…いいの…?…お姉ちゃんたちに…ねぇやたち…に甘えても…」

「もちろんだよ!今までの歌兎ちゃんは大人になろうと背伸びしすぎたんだよ。だからね、ここら辺で荷の重りを下ろすのもいいことだよ」

「うっ…ぅぅ…うあぁあああああああぁああん!!!」

 

その後、大泣きする僕を見て、姉様が響お姉ちゃんを非難し、プチ喧嘩へと発展した。もちろん、姉様が一方的にちんぷんかんぷんな方面から逆走し、迷走に走った末の暴走であったが…。

ので、プチ喧嘩といいつつも、ものの十分で終了。結果としては、響お姉ちゃんの正論に姉様が言い返さなかったから…。その喧嘩に負けたことにグレた姉様は、今度は僕の部屋に泊まり、僕と一緒に寝るとタダを言い出した。そのタダが思った以上に激しく、結局みんなで二課泊まることになった。その後も姉様の過保護節は異端なく発揮され、極め付けは病み上がりの僕のために作った料理が麻婆豆腐と来た。それは流石の僕は苦笑いを浮かべ、クリスお姉ちゃんが呆れながらも姉様へとツッコんでいた。

 

「…おい、一応聞くが。なんで、病み上がりの妹の為に作った料理が麻婆豆腐なんだ?」

「それはもちろん。麻婆豆腐が歌兎の好物だからデスよ!はい、あーんデス、歌兎」

「病み上がりの妹に食わせる料理じゃねーよ!あと、食わせるんじゃねーよ!お前はアホか!!お粥とかうどんとか…身体に優しいものをだな…」

「あたしだけ豪華な晩御飯を口にして、歌兎にそんなに質素な食事…っ。あたしの歌兎を愛する気持ち、そして自尊心を傷つける行動デス!」

「あぁ、そういうのはいいからさ…取り敢えず、作り直してこい!この過保護!!その後の話はその後だ!!」

 

この姉様とクリスお姉ちゃんの会話は、僕の姉様過保護武勇伝の中に密かに追加された……




と言うことで、いい話を最後でぶち壊す過保護な切ちゃん(笑)

ですが、私はそんな過保護な切ちゃんが大好きデェース!!

そして、あわよくば、他のシンフォギアメンバーの過保護なSSが増えてくれることを願ってます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6)不器用な僕ときりしら。

遅くなりました。

お見舞い編の第一弾、過保護な姉こと切ちゃんと調のお二人がメインの話となります。

そして、今回も私の妄想爆発デス(笑)
なので、時折お見苦しい文章なだかあるかもです…では、本編をどうぞ。


姉様たちが帰った後、僕の病状を聞くと想像していた通りの答えが返って来た。

まず胸に埋まったミョルニルのギアの破片は着々と僕の中で大きくなっているらしく、新しく出来たその機関から僕の身体の隅々までミョルニルが移転しており、あと一回、もって二回しかギアは纏えないとのこと。まぁ、そのおかげでベルフェゴールが心臓へと迫ってきてないので、不幸中の幸いというものか…。

そして、毎度のことながら、無茶苦茶な戦いを行なったので一ヶ月程安静とのことだった。どうやら、彼方此方に無理が掛かってるらしく、歩いたりする走ったりすると激痛が走るらしい、それも涙がポロポロ出るくらい痛さと…緊急治療してくれたスタッフのOTONAの皆さんが口を揃えて言っていた。普通なら、これくらいの怪我はミョルニルが直してくれるのだが、今回ばかりはベルフェベールが攻めてきてるため、そちらに手が回ってしまい、僕の身体までは気が回らなかったらしい。

 

それら二つの理由から、僕は一ヶ月程緊急治療室での生活が始まろうとしていた。恐らく、する事が無いので食べては寝て、寝て起きてはまた食べての生活となる事だろう。そして、そんな生活を続けていたら、この痩せっこっちな

身体も姉様のように健康的な身体つきへとなるのだろうか?

スッと下を見てみると、そこに広がってるのはーーまるで、子供が大人の服を着ているような感じで、二課の人に借りている病衣がダボ〜と僕の華奢な身体に纏わりつく。

 

(…僕の身体って…こんなんだっけ…)

 

ダボ〜としてる服を着てるせいか、尚更、自分の幼児体型が目立つ気がする。それも病衣のせいで真っ平らである…これは見ていて、とても虚しくなる。

そして、思うのだ。なんで、僕は姉様と違うんだ、と。

 

(…ううん、今はそんなこと考えてる場合じゃない)

 

余計な事へと頭が回ろうとしたところを首を振って、本来考えようとしていたことへと切り替える。それとは、さっき聞かされた自分の病状である。

 

(ミョルニルとベルフェゴールは理解してたけど。ギアのことは考えてなかった、…あと…1.2回しか纏えないか…)

 

その間に、あの男か神獣鏡のカケラを探さないといけない。果たして、間に合うのだろうか?…ううん、間に合わせるんだ。そして、その間に僕はギアを纏わなくても姉様たちを援護できることを見つけなくてはーー。

毛布の一点をジィーと見つめ、考え込んでると僕の身体に強い衝撃が走る。ドッシーンと体当たりの如き、振動に驚きの声をあげるとその振動があった方へと向く。すると、嬉しそうなしかし悲しそうな、それでいて、僕を心配しているような…なんとも複雑な表情を浮かべている姉様の姿があった。そんな姉様の後ろには、薄桃色のキャミソールにデニムのスカートを着込んだシラねぇが居た。

 

「歌兎ぅううう!!!」

「…わぁ!?…って、姉様ぁ?」

「歌兎ぅ〜っ。お姉ちゃん…寂しかったのデスよぉ〜」

「切ちゃん、ここは医務室。静かにしないとダメ」

 

僕へと抱きついている姉様へと注意しながら、シラねぇが僕の近くへと歩いてくる。そんなシラねぇへと僕の胸元へと顔を埋めていた姉様が顔を上げると頬を膨らませる。どうやら、姉様はシラねぇの言い分に腹を立てているらしかった。

 

「だって、調。歌兎と別れてた時間が7時間を過ぎたのですよ!これはあたしが歌兎と別れて過ごした中で一番最長デスよ!」

「私たちが学校に行ってる時、それ以上の時間を離れて暮らしている。それと、ついさっきまで私たちはここに居た」

「それはそれ、これはこれなんデスよ!調には分かりませんかっ!?あたしのッ!この込み上げてくる気持ちがァッ!!」

「…ごめん、切ちゃん。全く分からないよ。それと、いつにも増して煩いから、静かにね」

「なんか調が辛辣デス!?」

 

呆れ顔のシラねぇは僕へと微笑むと、そっと頭を撫でてくれる。くすぐったさから撫でられている側にある右目を瞑ると、そこであることに気づき、二人へと問いかける。

 

「…姉様、シラねぇ。学校は?」

「今日はお休み。だから、切ちゃんが歌兎のお見舞いに来たいって。私は止めたんだけど…そんなに頻繁に行っても歌兎の迷惑だって。でも、聞かなくって…ごめんね、歌兎」

「…ううん、僕も姉様とシラねぇに会えて嬉しいよ。さっきまで賑やかったから…余計に寂しくって、ね」

「歌兎ぅううう!!そんなに寂しかったのデスか!!!お姉ちゃんも…お姉ちゃんも寂しかったのデスよ!!やっぱり、あたしたち姉妹は二人で一つなのデスね!!!!」

 

僕のベッドの上へと登った姉様は、左横からギュッと僕へと抱きつく。そして、スリスリといつにも増して、情熱的に頬ずりをしてきた。僕の頬へと自分の頬を擦り付けて、幸せそうな表情を浮かべる姉様に僕とシラねぇは困惑を通り越して、抛棄の気持ちとなる。

そして、僕は改めて思うのだったーーやはり僕の姉様は過保護だ、と。それに増して、ここんところの姉様は過保護以外にも何かの特殊な扉を開けてしまった気がしてならない…それが僕の勘違いならいいのだが、本当に…。

 

(…どうしよ、ウチの姉様。過保護の他に、何か特殊なスキル獲得していってないだろうか?僕は過保護だけでもお腹いっぱいなのに…)

 

そんなことを思いながら、姉様の好きなようにさせておくとシラねぇが話が進まないと判断したのか、僕から姉様を引き剥がす。姉様はシラねぇに頬をふくませていたが、シラねぇに僕のベットの下にひっそり置かれてある紙袋を指差され、思い出したようにその紙袋からある物を取り出した。

 

「これを三人で着たくて持ってきたのデスよ!」

 

ジャッジャーンと取り出されたのは、“太陽と月、そしてうさぎ”がプリントアウトされた黄緑、桃、そして花青緑という三枚のTシャツ。

それを見て、僕はシラねぇへと視線を向ける。僕の視線を受け頷いたシラねぇ。

 

「…これは。あの時の?」

「うん。切ちゃんがこれを着る時は三人同時がいいって言うから。だから、切ちゃんのワガママ叶えてあげて、歌兎」

「…ん、僕もずっとこのTシャツが着てみたかった」

 

僕の答えを聞き、太陽のような満面のピカピカ笑顔の姉様は当然のように僕の病衣の紐へと手を伸ばす。しゅるりと紐を引かれ、姉様に促されるままに病衣を脱いでいく。そして、バンザーイをするとスパッと花青緑色のTシャツを着せられる。

 

「歌兎ならそう言ってくれると思ったデスよ!はい、バンザーイしてください」

「…ん」

「歌兎、少し前かがみになれますか?」

「…ん、なれるよ」

 

前かがみになり、ここ最近で背中の真ん中くらいまで伸びた水色の入った銀髪をふさっと払うと、空中で銀髪が舞い、僕の背中へと振ってきた。それを見ていた姉様はウルウルと垂れ目な瞳を潤ませる。

 

「歌兎…とっても似合うデスよ…。その姿は天使…ううん、お姉ちゃんの目には女神様に見えるデス。歌兎は女神様の生まれ変わりだったのデスね…あたしの妹に生まれてきてくれてありがとうデス、女神様」

「はぁ…」

「……」

 

姉様のその発言にシラねぇはため息を一つ付いて、着ていたキャミソールの上から桃色のTシャツを着込む。そして、僕へと祈りを捧げ続ける姉様の肩出し黄緑Tシャツを脱がせるとすぽっとあのTシャツを着させる。その一連の流れを見ていたが、まさに神業だった。無駄な動き一つない見事な流れ技で姉様を忽ち着替えされたシラねぇに僕は心の中で拍手と御礼を言う。御礼することはただ一つである。

 

(ウチの姉様が迷惑かけます。そして、こんな姉様ですが、これからもよろしくお願いします)

 

に限る、実際いつの間にか着替えされられていた姉様の驚愕の顔たるやーーもう、僕と姉様は末期なのやもしれない。姉妹揃って、これはいよいよヤバイかもしれない。

 

(でも、僕にとって…姉様が全てだからな…)

 

やはり、僕は姉様の判断と時の流れに身を任す他ないらしい。

そんなことをじ〜んと思ってると、姉様がまた僕へと抱きつき、右側からシラねぇが抱きついてきた。ぴったりと頬をくっつけて、密着してくる二人に僕はびっくりする。すると、姉様が徐ろにデニムのショートパンツから黄緑色のスマートフォンを取り出すと、カメラモードへと切り替える。

 

「歌兎、写真とるデスよ!」

「三人で同じデザインの服着たの、初めてだから。記憶と記録に残しておきたいって、切ちゃんが」

「…ん、分かった」

「じゃあ、デデデースで押すデスよ」

 

姉様がスマートフォンを掲げ、僕は見上げると、姉様とシラねぇも僕へと近づいてくる。そして、姉様の“はいチーズ”に変わる“デデデース”が左耳から聞こえ、それと同時に両頬に柔らかい感触が広がる。くすぐったさから目を細める僕の耳には確かに、カシャンというカメラのシャッター音が聞こえた……

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

それから姉様とシラねぇは夕方まで居てくれて、明日は学校ということでマンションへと帰っていった。姉様はまた僕のところで寝泊まりすると暴れていたが、僕の次に姉様と一緒にいるシラねぇに掛かれば、“あら不思議”で頬を膨らませながらもシラねぇと仲良く手を繋ぎながら、帰路へと付く姉様の姿があった。

 

僕は一気に静かになった緊急治療室にて、姉様から新たに設定してくれた僕の花青緑色のスマートフォンを手に取る。そして、電源を入れると最初の壁紙を見て、思わずぽろりと笑みがこぼれる。

 

そこにはーー僕の頬へとキスを落とす姉様とシラねぇの姿、そして、そんな二人の口づけを困った顔をしながらもはにかんでいる僕の姿でーー

 

この写真を見ていると、とても暖かい気持ちになる。それは恐らく、二人の僕への思いがこの写真から伝わってくるからだろう。ギュッと胸へとスマートフォンを抱きしめ、暖かさをチャージすると

 

近くにある−−二課の皆さんが流石にこのまで殺風景は可哀想とのことで置いてくれた−−机の上へと無造作に置いてある二つの絵本へと視線を向ける。

いつの間にか、置かれていたその絵本の上には以下のおきてがみを添えられていた。

 

『背景、さいあいなるうたうへ。

うたうが退屈しないように、しらべと選んだえほん置いとく╰(*´︶`*)╯♡デス。たいくつな時、たいくつじゃない時でも、お姉ちゃんと思って絵本を読んでアゲてくださいo(^▽^)o

Biあなたの姉、きりか』

 

『拝啓、大好きな歌兎。

退屈な時に読んで欲しくて、切ちゃんと一緒に選んだよ。どっちも素敵な話だから、歌兎も気にいると思う。だから、それを読んで、早く元気になってね。切ちゃんと一緒に歌兎の帰りを待ってるよ』

 

二通のおきてがみと二冊の絵本を見て、僕は困ったように微笑む。そして、ボソッと呟いたのはちょっとした愚痴であった。

 

「…もう、姉様もシラねぇも僕を何歳だと思ってるのかな?僕、こう見えても13歳なんだよ…?まったく…困った姉様とシラねぇだよ…」

 

そこで一括りすると、スゥ〜と息を吸い込み、瞼の奥に二人を思い浮かべて、こう呟く…

 

「…でも、ありがと。僕も二人のこと、大好きだよ」




最後のおきてがみ…難しかったです…。調も切ちゃんのも…(笑)切ちゃんも調もそもそも、どんなおきてがみ書くかなぁ〜と。
切ちゃんはすぐ書けたんですが…調の方がなかなか思い浮かばなくって…(涙)
なので、延々と『手紙』『Draft folder』を聴きながら書きました、ここの部分だけ(笑)

そして、まだニコ動で10話を見れてないのデス(涙)
読者の皆様、我らが過保護な姉様に何があったのデスか…?
とても気になって、気になって…気が気じゃない私でありましたm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7)不器用な僕とひびみく。

お待たせしました(礼)

今回の回はやらかしてしまった気がしてなりません…(汗)

なので、読み終わった後に…小石とか投げないでくださいね…(汗)


二課の皆さんが僕の為に置いてくれた机の上から姉様とシラねぇに貰った絵本の一冊を手に取ると、パラパラとページをめくる。僕の眠たそうな黄緑色の目は、絵本の字と絵の間をボゥ〜と見つめては、また次のページをめくる。

心ここに在らずの状態で、ずっと考えているのは…

 

ーーどうやったら、姉様たちと響お姉ちゃんたちの戦闘のサポートが出来るか?だ。

 

姉様とシラねぇがお見舞いに来てくれたその前から考えていることだが、なかなかいい案が浮かばない。ここはひとつ、頭を冷やす為にも最近の自分の行動を振り返ってみる価値あるかもしれない。

 

(かといって…最近変わったことって…、ん〜)

 

遂にはめくる手も止めて、胸の前に両手を組んでから悩む。その時、ガッチャンと軽やかな音が部屋の中へと木霊する。そちらへと視線を向けると、柔らかい微笑みを浮かべている未来お姉ちゃんとニコニコと満面の笑みを浮かべている響お姉ちゃんの二人の姿があった。二人とも、この上にある私立リディアン音楽院の制服を着ていることから、安易に放課後にわざわざここに寄ってくれたことが想像出来た。

ので、僕も二人と同じように笑顔を浮かべながら、二人が近づいてくるのを待つ。

 

「こんにちわ、歌兎ちゃん」

「切歌ちゃんと調ちゃんの言ってた通りだ!起き上がって、大丈夫なんだね〜、歌兎ちゃん」

「…こんにちわ、未来お姉ちゃん、響お姉ちゃん。お姉ちゃんたちは学校のあと?」

「うん、あの日以降お見舞いに来れてなかったから…」

「だからね。未来と話し合って、今日なら空いてるから。二人でお見舞いに来ようって」

「…わざわざ、僕のためにごめんなさい」

 

申し訳なそうに頭を下げる僕へと、未来お姉ちゃんは少し怒ったように頬を膨らませ、響お姉ちゃんは照れたように頭を撫でていた。

 

「もう、謙遜は無しだよ、歌兎ちゃん」

「そそ。私たちが好きでやってるんだからさ」

 

そこまで話して、右側にあるパイプ椅子へと腰を下ろした二人は、僕の顔をジィーと見つめる。

 

(…なっ、なんだろ…)

 

「…え…と?僕の顔に何か付いてます?響お姉ちゃん、未来お姉ちゃん」

 

困惑した表情で響お姉ちゃんと未来お姉ちゃんを見ると、二人がハッとしたように息を飲む。そして、僕へと詫びを入れながら、じっと見ていた理由を教えてくれた。

 

「ごめんね、歌兎ちゃん。そんなにじっと見るつもりはなかったんだけど…、歌兎ちゃんの顔を見れば見るほど」

「…見れば見るほど?」

「切歌ちゃんに似てないなぁ〜ってね。ごめんね、すごく失礼だよね」

 

二人揃って、似たようにバツの悪そうな顔をしてるのが面白く、クスクスと笑ってから首を横にふる。

その理由に関しては僕も思い当たる節がある為、二人が気にしても仕方ないと思う。実際、白い孤児院にいた頃から、よく聞かれていた質問だ。だから、二人にそんな顔される必要は全くない。

 

「…そんな顔しなくても大丈夫だよ、響お姉ちゃん、未来お姉ちゃん。それは僕も思っていた事だから」

 

僕がそう答えると、響お姉ちゃんが身を乗り出す。琥珀色の瞳の中で遺憾と好奇心がごっちゃ混ぜとなっている。未来お姉ちゃんの方を見ると、響お姉ちゃんと同じように表情をしていた。

 

「ヘぇ〜、そうなんだ〜。歌兎ちゃんも気にしてたんだね」

「…ん、当時はかなり気にしてたけど…今はそんなに。姉様がそんな事気にしなくていいって言ってくれたから」

「切歌ちゃんがそんなことを。どんなことを言われたの?」

「はいはーい!私も気になる」

「もう、響」

「あっ、ごめん…」

 

未来お姉ちゃんに嗜められ、頬をかく響お姉ちゃん。僕はそんな二人のやりとりを見ながら、ふと姉様とシラねぇを思い出す。あの二人もこんな感じで昔から仲良しだ。

 

「…『歌兎は歌兎、他の誰でもないんデス。ただ、確実なのは……歌兎はお姉ちゃんの世界一可愛くて、自慢の妹って事だけデスよ』って、そう言ってくれて、頭を撫でてくれました。それ以降、僕は何があっても姉様について行くって決めたんだ。そして、そんな姉様の役に立ちたいって…」

「へぇ〜、切歌ちゃんかっこいい」

「うん、かっこいいね。だから、歌兎ちゃんはお姉ちゃんが大好きなんだね」

 

響お姉ちゃんが感心したように目を輝かせる中、未来お姉ちゃんが柔らかく微笑むと僕へと問いかけるそれへと頷いて、僕は自分の素直な気持ちを伝える。

すると、響お姉ちゃんが照れたようにはにかみ、そして呟いたセリフに未来お姉ちゃんが反応。ガシッと響お姉ちゃんの肩を掴み、琥珀色の瞳をまっすぐ見つめて問いかける。その時の未来お姉ちゃんの目力だが、明らかに視線だけでノイズ…いや、それ以上を殺せるくらいの破壊力があった。普段から控えめというか、大和撫子な感じを漂わせている未来お姉ちゃんだけに僕も背中に電気が走る。この電気は本能が危険と知らせているのだろう、僕は静かに未来お姉ちゃんは姉様たちよりも響お姉ちゃん達も一番怖いかもしれないと認識を改めた。

 

「…ん、大好きだよ。姉様ももちろんだけど、響お姉ちゃん達もみんなみんな大好き」

「いっやぁ〜、そんなストレートに言われると照れますなぁ〜」

「へ?そうなの?響」

「うん?なんで、未来は私のその発言に、突然がっついてきたの?」

「いいから、答えて、響。響は好意はストレートに言われるのが好きなの?どうなの?」

「怖い怖い、怖いよ、未来。なんか怖い。一旦、落ち着こ、ね?歌兎ちゃんもいる事だしさ」

 

響お姉ちゃんにそう言われ、未来お姉ちゃんは思い出したかのように僕の方を見る。見つめられた僕は曖昧に笑う。その笑顔に未来お姉ちゃんは撃沈。どうやら、僕はとてもぎこちない笑顔を浮かべていたらしい、ベットへと顔を押し付けて、『怖がらせて、ごめんなさい…』をうわ言のように言う未来お姉ちゃんを響お姉ちゃんと僕とで、慰めて本来の話へと戻った。

 

「それで、歌兎ちゃんは誰似なの?」

「…それは姉様が言うには、僕はお母さんだって。姉様はお父さん」

「言われて見るとそうかも。歌兎ちゃんは美人なんだけど、可愛い系でもあるしね。ううん、可愛いの方が強いかな」

「うんうん、切歌ちゃんは綺麗系だもんね。少し中性が入ってるしね」

「…ん。姉様は昔からボーイッシュな格好が似合ってる」

 

僕のセリフにうんうんと頷いた二人は、当然僕の横腹を突いてくる。それがくすぐったく、身をよじると二人して擽りを強くしてくる。僕も反撃しようと響お姉ちゃんの横腹を撫でた時だった。響お姉ちゃんが突然、身をよじり、僕の方へと倒れてくる。僕はそれを避けるために、ベットへと寝転がり、響お姉ちゃんはベットへも両手をつく、そして運悪くガチャって音が聞こえてきて、もっとも見覚えのある明るい声が聞こえてくる。

 

「歌兎!お見舞いに来たデスよ!!」

 

勢いよく開かれた扉から出て来たのは、ついさっきまで話題に上がっていた我が姉である暁 切歌で、ベットに倒れている僕の上へと両手をついている響お姉ちゃんを交互に見てはフリーズしていた。そして、いつもの口癖を口にすると、響お姉ちゃんと僕の中へと割り込んでくる。

 

「デデデデ!?デデデース!?」

 

そして、僕を背に庇うと響お姉ちゃんへと頭を下げる。相変わらずのちんぷんかんぷんな言い分であったが、僕は姉様の言ってる言葉の意味が分からずに、首を傾げ続ける。激しく言い合いを繰り返す二人の側には、未来お姉ちゃんの姿があり、苦笑いを浮かべていた。

 

「響さん、歌兎を襲う気ならまず、姉であるあたしの純潔を奪ってからにするデス!そして、願わくば、そのままあたしを汚してください…。歌兎はまだ、そういう大人の階段を登るには幼すぎるのデス、デスから!」

「いやいや、何口走ってるの!?切歌ちゃん!!と言うか、どこからそんな言葉を覚えてきたのさ!?」

「調と特にマリアデス。あと、セレナはそういう話を聞くと顔を赤くするって、マリアが」

「マリアさぁ〜ん、調ちゃ〜ん!!二人して、切歌ちゃんに何教えてるの!?F.I.S.組はそういう話が日常茶飯事なの!?」

「な訳ないデス。ただ、早く大人になるためにはどうすればいいのかって、マリアに聞いたら言ってたデス。『大人の階段なんて登るのは簡単よ。相手に自分の純潔を渡せばいいのよ』って、あと『最初は痛いけど、そのうち気持ち良くなる』って…あれは、どういう意味デス?」

「マリアさぁ〜〜ん!!!間違えてる!何もかも間違えるよ!!大人の意味も、階段って意味も!貴女が登らせようとしてるのは、社会的にアウトな奴だから!もう、レッドカードな奴だから!!それよりも、未成年になんて事教えるの!?あの歌姫さん!?」

「何わけわからないこと言ってるデスか、響さん。それより、話の続きをするデス」

「いやね、このさっきのあの状況は事故であって、そういう気は微塵も…」

「そういう気は微塵も?それは歌兎に喧嘩を売ってるってことデス?それとも、あたしデス?」

「いや、えっと…そうじゃなくてね、確かに歌兎ちゃんは可愛くて魅力的な子だよ。でもね、私には未来っていうーー」

「あぁ、もう!じれったい人デスね!!何が言いたいんデスか!響さんはあたしと歌兎を襲う気はあるんデスか?ないんデスか?それだけ答えてください!」

「なんで、そうなるの!?もう、意味が分からないよ!切歌ちゃんは私に何を求めてるの!?私にどうしてほしいの!?分かんないよ〜、未来〜、助けてぇ〜」

 

ついさっきの未来お姉ちゃんと同格くらいの目力で、響お姉ちゃんへと近寄る姉様。響お姉ちゃんは未来お姉ちゃんへと助けを求めていたが、未来お姉ちゃんは運悪く僕の世話をしていて、そのヘルプに気づかないでいた。

 

「…未来お姉ちゃん」

「何?歌兎ちゃん」

「…響お姉ちゃんと姉様はさっきから何を言ってるの?『襲う』とか『純潔』とか『大人の階段』って…僕、意味が分からないよ」

「うん、歌兎ちゃんはそのまま知らないままでいいんだよ。まだ、歌兎ちゃんには早い言葉たちだからね。この騒動が終わるまで耳を塞いでようか?」

「…?」

 

未来お姉ちゃんに耳を塞ぐように指示され、程なくして姉様と響お姉ちゃんの言い合いが終わった。ドッと疲れた様子の響お姉ちゃんを労う未来お姉ちゃん。姉様は僕へと抱きつくと、身体を念入りに確認する。

姉様のその行動に首を傾げつつも受け入れた僕は、三人が帰る頃になるとある人へととあるお願いをする。その人は戸惑いつつも了承してくれた。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

約束の時間となり、ガチャンと扉を開けて入ってきたのは明るいショートヘアが特徴的な少女・響お姉ちゃんだ。響お姉ちゃんは困惑した表情を浮かべながらも僕の近くへとくると、パイプ椅子へと腰を下ろす。

 

「えっと、歌兎ちゃん。言われた通り来たけど…私に何か用かな?」

「…響お姉ちゃんに改まって、お願いがあります」

「うん、何かな?」

 

いつものタメ口ではなく、敬語で話す僕を見て、響お姉ちゃんも僕と同じように表情を引き締める。そんな響お姉ちゃんへと僕はここに呼び出した本題を言う。それに眉をひそめる響お姉ちゃん。

 

「…僕の身体が治った後から、僕に稽古をつけてくれませんか?もちろん、ギアは纏いません。生身でという意味です」

「??? どうして?」

「…響お姉ちゃんは、融合病例の時にギアを纏ってないのにノイズに触れられませんでしたか?」

「!? ………、そっか。うん、歌兎ちゃんも私と同じなんだもんね。それで、なんで私に稽古を習いたいの?」

「…ノイズに触れるためには素手じゃなくてはいけないという条件を満たす奏者の方、もしくは武道に長けた方といえば…僕の知り合いでは、響お姉ちゃんか司令様しか考えられなかったですから。それに、この方法なら、姉様たちと響お姉ちゃんたちを援護出来ると思ったから…です」

 

僕の理由を聞き、頷く響お姉ちゃんであったが同時に心配そうな表情を浮かべる。それに微笑みかけながら、僕は自分の覚悟を言う。

 

「…でも、ノイズに触られると灰になるんだよ?切歌ちゃんがそんなこと許すかな?私も出来ることなら、そんな危険なことをして欲しくないな」

「…いいえ、これは僕が決めたことなんです。あの時に犯してしまった罪、その他の罪も僕は姉様たちや響お姉ちゃんたちに返せてないですから。だから、お願いします、響お姉ちゃん…」

「歌兎ちゃん…。うん!そこまでの覚悟があるなら、私は全力で歌兎ちゃんをサポートするよ!大船に乗った気でいて!」

「…はい、とても頼りにしてます、響師匠」

「お!?なんか、その師匠って言葉はいいね!?やる気も五百倍くらいになるよ!!」

 

その後、響お姉ちゃんもとい響師匠は元気よく帰っていった……




というわけで、響お姉ちゃんが武道の師匠となりました(笑)

あのOTONAと比べれば、ハードじゃないと思いますが…基礎体力作りはすごくすると思うのです…。なので、主人公が倒れないことを祈ります…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8)不器用な僕とまりせれ。

今回は前回の回で色々な問題になったマリアさんの登場です。

今回の回は、安心してください。いつものように、切ちゃんだけが暴走しますので…

………うん、暴走するのは切ちゃんだと思いますよ…(汗)


10/6〜誤字報告、本当にありがとうございます!


響お姉ちゃんもとい響師匠に治った後の特訓を申し込んでから、二週間が過ぎたある日のこと。

僕は、ベットの横にある机から本を手は取る。そして、チラッと机の上に視線を向けると、姉様とシラねぇが持ってきてくれた最初の絵本を埋め尽くすほどの絵本や本が積み重なっている、それに思わず苦笑いを浮かべるとゆっくりと瞼を閉じる。

思い浮かべるのは、毎日欠かさずにお見舞いに来てくれる我が姉の姿だ。僕が自分の選んだ絵本を楽しそうに読んでくれるのが、よっぽど嬉しかったのか、姉様は度々絵本や本を持ってきてくれるようになった。時折、幼稚といえば口が悪いがファンタジー感がたっぷり入っているものもあったが、殆どが泣けるまた考えさせれる絵本や本が多かった。ので、僕も姉様が来る時間になるとワクワクしながら待ってることが多い。どんな本を持ってきてくれるのかぁ〜と待ってる自分を側から見ると、かなり子供っぽい。

しかし、姉様のこの絵本または本の差し入れは嬉しい反面、心配な面もあった。

 

(姉様…お小遣いは足りてるのかな?絵本や本もバカにならないのに…)

 

そう、それは姉様の経済面にあった。僕の給料はもちろん、姉様管理となっている。そして、姉様やシラねぇ、セレねぇの三人の給料管理はマリねぇが一心に受け入れているとのこと。

なので、姉様も僕と同じでお小遣い制というわけだ、シラねぇにこっそり額を聞いたところ、お小遣いの金額は僕よりも10倍とのことなので、あまり衣服や遊びに出かける分には困らないだろう。だがしかし、僕のためと言って、買ってきてくれる絵本や本などは、ゆうに十冊は超えている。後ろに書いてある値段の部分を見ると、1400代とか780代とかなかなかお高めな値段設定となっている。故に、もし僕のこの差し入れのために、姉様が自分の好きなものを諦めているのだとしたら、どうにかして阻止しないといけない。姉様の生活を犠牲にしてまで、絵本や本が欲しいのか?と言われると、その答えは否だ。

だからと言って、あの姉様がこの差し入れをやめてくれるわけはないだろう、だからは僕はひとつ先手を打つまでおく必要があるだろう。

 

(ここはひとつ。僕からマリねぇに姉様のお小遣いを今月だけ多めにしてあげて、とお願いした方がいいかな…?)

 

と本気に考えてしまうほどに、僕は姉様のお小遣い事情が気になってならない。姉様に聞いても『歌兎は気にしなくていいのデスよ。お姉ちゃんに任せてください』と言って、はぶらかさせるに決まっている。

ならば、マリねぇの方に頼んだ方が確実だ。マリねぇもそういうことならと言って、姉様のお小遣いを増やしてくれることだろう。

そこまで思考をめぐらしていると、ガチャンと扉が開き、件のマリねぇとセレねぇが入ってきた。二人とも、両手に紙袋を携えていることから何かを持ってきてくれたのだろう。僕の視線を感じて、マリねぇがその中身を言ってくれる。

 

「おはよう、歌兎ちゃん」

「歌兎、着替え持ってきてあげたわよ」

「…ん、おはよ、セレねぇ、マリねぇ。着替え、わざわざ持ってきてくれてありがと」

 

マリねぇが右手は持っていた紙袋を僕の方へと渡すと、その中身は確かに僕の私服やパジャマが丁寧に畳まれて入っていた。なんで、ここに住んでるのに私服やパジャマが必要なのかというと、姉様が来るたびに僕を着替えさせようとしてくれるからだ。僕は動かずにここにいるわけだから、めったに汗もかいてないし、このままでいいと毎回も言ってるんだが、姉様はそれを許してくれることはなく、問答無用で着替えさせる。故に、このように着替えが必要というわけだ。

マリねぇにお礼をいい、紙袋を近くにある机へと置く。そんな僕の右横へと腰掛けた二人はごそごそと袋を漁り、中から果物を取り出す。ラインナップはバナナ、ブドウ、マスカット、りんごに梨という僕からいえば豪華と言わざるを得ないものだ。

目に見えて、ニコニコする僕を見て、セレねぇから果物ナイフを受け取ったマリねぇが膝の上に使い捨ての皿を取り、その上に綺麗に剥いた皮を置いていく。そんなマリねぇを見て、セレねぇは苦笑い。

 

「気にしなくていいのに、歌兎ちゃん。あっ、ここに来る途中でスーパーに寄ったんだよ。これ、食べる?」

「…ん、食べる!僕、果物大好き」

「ふふ、歌兎ちゃんならそういうと思って、姉さんと選んできたんだ。どれも歌兎ちゃんの好きなものでしょう?」

「…ん!僕、梨が一番好き」

「セレナ。なら、その梨と果物ナイフを貸して。私が剥いてあげるわ」

「はい、姉さん。でも、姉さんも過保護だよね〜。歌兎ちゃんには絶対鉄の包丁は握らせないし」

「仕方ないでしょう!歌兎にもしものことがあったらっても思うと、身体が自然と…ごほん、もしものことがあったら、切歌に怒られるでしょう?下手すれば、殺されかねないわ」

「流石の暁さんもそこまではしないと思うけど…。でも、マリア姉さんも暁さんと同格で過保護だよ。少なくても、私はそう思うよ?」

「私はあそこまで過保護じゃないわよ!?ちゃんと、歌兎のことを考えて、洗濯や料理などはさせてるわ!」

「はいはい、分かってるから。もう、皮は剥けてるよ」

 

セレねぇにそう言われ、気づいたらしいマリねぇは気を取り直すように、わざとらしく咳をこむと四等分に切ると、僕へとそれを差し出す。それを受け取り、口に含んだ僕は梨から溢れてくる甘い果汁に顔をほこばせる。

それを見たマリねぇとセレねぇが顔を合わせて、笑い合うと今度はりんごを剥いてくれる。

 

「どう?美味しい?」

「…ん!美味しいよ、マリねぇ、セレねぇ。ありがと」

「まだあるから、剥いてあげるわね」

「…ん」

 

マリねぇが果物を剥いてくれては、食べるを繰り返していると買って来てくれた果物もあっという間になくなってしまった。僕は改めて、二人へと礼を言う。

 

「…ごちそうさま、マリねぇ、セレねぇ。とっても美味しかった」

 

すると、マリねぇとセレねぇは慈愛に満ちた暖かい微笑みを浮かべてくれるんだった。僕の頭を撫でているセレねぇの足元にある紙袋からマリねぇがあるものを取り出す。

 

「歌兎ちゃんが喜んでくれてよかったよ」

「えぇ、選んだ甲斐があるってものだわ。そうそう、歌兎。もう一つ、渡すものあるのよ」

「…?」

 

それを首を傾げて見ている僕へとどこか得意げなマリねぇがそれを見せてくれる。

それとはーー全身真っ黒で、お腹の部分だけ白く象られていて、またフードのところには大きい垂れ耳が付いている。そして、クリクリの瞳が僕の方を見ている。

そう、簡単にいうともふもふな触り心地が気持ちいい黒ウサギのパジャマというわけだ。

嬉しくはあるが、何故に僕の家族たちはこうも幼稚なものを買ってくるのだろうか?

 

(…もしかして、マリねぇとセレねぇの中でも僕の年は流れてないんじゃないだろうか?)

 

そんなことを考えていると、マリねぇが僕のTシャツへと手をかけてくる。マリねぇを見ると、僕にバンザイしてくれたと指示を出す。

疑問には思うが、別に抵抗することでもないで、おとなしくバンザイの格好を取る。

 

「というわけで、歌兎。早速、着替えるわよ」

「…ん」

 

その後、マリねぇに着せてもらったこの黒ウサギのパジャマが思った以上に着心地が良くて、眠くなってしまったこと。そして、普段はクールというか、大人しい感じのセレねぇが僕のパジャマ姿を見て、マリねぇと手を取り合ってはしゃぎ回っていたことが続けて起こった出来事である。

眠たそうに目を擦る僕を二人して抱きしめて、写真撮影を行う。間近でニコニコと嬉しそうに笑う二人を見ていると、僕も嬉しくなってきて、眠たくなってきながらもカメラへと笑顔を浮かべる。

しかし、カオスというのは突然来るもので、勢いよくドアノブを回して入ってきた姉様は僕とそんな二人の姿にまたしてもフリーズ。

 

「歌兎、お邪魔するデース!!」

 

そして、何も感情を浮かべてない無表情で僕らの方へと歩いてきた。それには、マリねぇ、セレねぇと同じく僕も震え上がった。いつも、太陽のような笑顔が魅力的な姉様が無表情となると、ここまで恐ろしいものなのか。いや、だから怖いのかもしれない。僕だって、生まれてこの方、姉様の無表情を見たことはないのだから。

三人で姉様の到着を見届けて、マリねぇとセレねぇが僕からゆっくりと離れる。そして、姉様は僕たち三人を見て、まずセレねぇへと質問した。

 

「……歌兎が着てる。この服を選んだのはセレナデスか?」

 

その質問に速攻で答えたセレねぇは、隣で泣きそうな顔で抗議してくるマリねぇに軽く頭を下げて謝る。

 

「ううん、私じゃないよ。姉さんが」

「ちょっ、セレナぁ!あなたもこれがいいって言ったじゃない!」

 

セレねぇに売られてしまったマリねぇは、目の前にいる姉様の何もともしてない黄緑色の瞳を見て、どうにかして罪を減らそうと試みる。

 

「………」

「ちっ、違うのよ?切歌。これには訳があるのよ。ほら、歌兎って、いつも同じ服着てるでしょう?」

「………」

「切歌が着替えさせてくれるけど、バリエーションがあまりないと思ったのよ。ほら、歌兎の服って、殆ど私達や切歌のお古でしょう?あのショッピングセンターで買ったのが、この子にとって本当の意味の私服だった気がするのね」

「………」

「だっ、だから…私たちからこの子へと新しいパジャマを送りたかったのよ…」

 

弁解を試みようにも眉一つ動かさず、マリねぇを見下ろしている姉様は本当に怖かった。僕はそっとセレねぇの手を握ると、二人のやりとりの続きを見る。

すると、さっきまで沈黙を保っていた姉様がマリねぇの名前を呼ぶと、マリねぇはあまりの恐怖に声が裏返りながらも答える。そんなマリねぇの肩へと勢いよく両手を置いた姉様は興奮したように早口で言う。

 

「マリア」

「なっ何?」

「あなたは天才デスか!」

「はぁ!?」

 

姉様の言葉の意味が分からずに、眉をひそめるマリねぇに姉様は僕へと視線を向けて、鼻息を荒くするとマリねぇと近づく。困惑するマリねぇ、セレねぇ。僕はというと、力説している姉様のイキイキした顔を見て、胸をなでおろしていた。

 

「だって!だって!歌兎が黒ウサギのぬいぐるみを着てるんデスよ!!何デスか!この可愛さは!!くそっ!なんで、あたしは今までこれに気づかなかったのデスか…この衣装こそが歌兎の可愛さを最大限に引き出す服!装備品なのデスよ!!」

「……そ、そう…。喜んでもらえて良かったわ…」

 

そう言うマリねぇに姉様は満面の笑顔を浮かべたまま、こうしてはいられないって感じでドアの方へと走っていく。まさに疾風、目の止まらぬ速さであった。

 

「ということで、あたしも歌兎似合うぬいぐるみを買ってくるデス!歌兎、マリア、セレナ、行ってくるデス!」

「えぇ、いってらっしゃい…」

 

呆然とした様子で見送ったマリねぇはあることを思い出して、姉様を追いかける。

 

「ん?あの子、確か『今月はピンチだから。お小遣いを増やして欲しいデス』って言って、今日の朝に渡さなかったかしら?もしかして、もうそれを使う気!?

コラ!切歌待ちなさい!いくらなんでも、それは使いすぎよ!!」

 

二課の廊下を騒がしくドタドタと走り去っていく二つの足音をセレねぇと一緒に聞いて、お互いに苦笑いを浮かべると、セレねぇも立ち上がって二人の後を追いかけていった。僕も姉様とマリねぇの二人では不安なので、セレねぇが居てくれるととても嬉しく思う。

 

その後は、ニコニコ笑顔の姉様とやってしまった…と後悔の念を多く出しているマリねぇが次の日の朝に二人でやってきて、どっちの耳つきパジャマが僕に似合うのかを競い合っては帰っていった……




というわけで、結局のところ、たやマさんも歌兎には過保護だったって話デス。いえ、もうF.I.S.組全員が歌兎に甘々やもしれません…(笑)



そして、凄く遅くなりましたが…此方の二期と原作の二期の違いを簡単に書こうと思います。

①セレナ生存
原作ではネフィリムの暴走を食い止める為に犠牲になったセレナだが、此方では犠牲になったのがオリジナルなので彼女は生きてます。

②響がネフィリムに腕を噛み割かれてない
原作ではネフィリムに腕を噛み割かれ、それが原因で暴走してしまった響ですが、此方ではウェル博士の非人道なやり方に怒りを覚えた歌兎が単独で響、クリス、翼を救う為に乗り込んでます。
それが原因で、のちに彼女がその腕を噛み割かれてしまう役を勝手出ることになったり、その後もいいようにウェル博士に弄ばれるのですが…それはまたの話とします。

③最後の決戦で邪魔が入り、ウェル博士は今だに逃走中
原作では野望を打ち砕かれ、ソロモンの杖も未来によって、倉庫へと投げ捨てられたウェル博士ですが、此方では、ある条件を飲み込んだ歌兎によって逃がされてます。彼女もウェル博士を逃がす為に、この際に無茶苦茶暴れたので、そのことも原因で進行が早まったように思えます。

以上、三つの一番変わっている点でしたm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

漫談:切歌の不思議な夢

大変お待たせしました(汗)

思った以上に、翼さんとクリスちゃんの会話文が難しく…そして、文字数もかなり短くなりそうでしたので、予定では五弾目となっていたOTONA達のところまで書き進めているところと、一応最終話までのストーリーを一通り組み立ててみたのですが…何故か、みんなバットエンド…(汗)

…………………(大汗)

バットエンドの度に、切ちゃんが号泣してる姿が脳裏に浮かび、居た堪れない気持ちになります…(涙)
本当に、なんでバットエンドしか思いつかないんですかねぇ〜、本当、不思議デス(笑)


そして、そうこうしているうちに【評価者14名】、そして【お気に入り208名】だって!?(ブルブル)
…本当にありがとうございます、とても嬉しいデス!
また、暖かい感想の数々が私の原動力となりつつあります、そちらも本当にありがとうございます!

そんな皆さんへ感謝の気持ちを込めて、この漫談編を設けました。
漫談編第1弾となる今回の話は、あのショップセンターの日から三日前の話となってます。
切ちゃんが不思議な夢を見るーーただ、それだけの話なのですが、果たして、その夢はただの夢となるか。はたまた、正夢となるか…?それは誰もが分からないことなのです…


まず最初に思ったことは、冷たいだった。

 

(…なんで冷たいんデスか?あたしは確か、ぬくぬくの布団へともぐり、眠りについたはず…)

 

そこまで考えて、自分の目の前に透明な雫が落ちたことから、あたしの耳へとザァーザァーと絶え間なく降り注ぐ雨の音が聞こえてきた。そして、ポツンポツンという音と、頭の上に何かが乗っかっている感覚から、あたしはどうやらイガリマを身につけていることを知る。

 

(はぁ?なんでイガリマなんデス?)

 

不思議に思いながら、もっと情報が欲しいと視線を下へと向けると、そこには胸元から大量の血を流している水色が入った銀髪と眠たそうに黄緑色の瞳を開いている少女がおり、そんな彼女のそばへと無造作に放られているのは明らかにあたしのアームドギア・緑色の刃を持つ大鎌だった。緑色の刃を濡らす鮮やかな血色を見て、あたしは凍りつく。

 

(!?あたしが…やったのデスか…?あたしが…作ったのデスか…?この光景を…)

 

唖然とするあたしの方へと力なく瞼を震わせながら、黄緑色の瞳を向けてきた最愛なる妹へと今まで沈黙を保っていたあたしの唇がゆっくりと開き、悲痛な声音を響かせる。そんなあたしへと、力なくニッコリと笑った歌兎は掠れた声であたしを励ます。

 

「う、たう…」

「…そんな顔しないで、姉様。姉様は頑張ったよ…。ん、頑張った…ごめんね、こんな嫌な役割させちゃって…」

「そんな事ないデス!この役を嫌だなんて思ったこと…一度たりもないんデス!それに、あたしが望んでいたのは…こんな結末じゃないんデス!あたしが望んでいたのはこんなんじゃないんデス…こんなことになるのなら、あの時、カルマのギアが歌兎ではなく、あたしへとーー」

 

そこで、弱々しく伸びてきた人差し指で口元を塞がれ、ポロポロと意味がわからないまま、涙を流すあたしへと歌兎は淡く微笑む。

 

「…それ以上はダメだよ、姉様。姉様が居なくなったら、悲しむ人が多いんだから…だから、あたしの方がこうなったらよかったとか言わないで…。…姉様は僕よりもこの世界に必要な人なんだから…ね?」

 

聞いているこっちまでもが胸が苦しくなるようなセリフをあたしを励まそうと笑っていう妹のーー歌兎の伸びてきた手を握りしめて、あたしの口は…身体は、勝手に動き、話を進めていく。

 

「…ッ、なんでそんな悲しい事言うデス?歌兎。歌兎だって、この世界に…いいえ、あたしには必要な人デス!貴女が居なくなったら…あたしはどうすればいいのデスか…?」

「…姉様も分かってるでしょ?…僕は…嫌われ者だから…。姉様とは全然違う…。この手で…多くの人を傷つけ…多くの人の命を奪ってしまったから…。…その罪は…僕の命でも償いきれない…」

 

諦観の念を掠れた声へとひそませ、歌兎は顔を自責の念を多く含ませて悲しげに笑う。あたしはそんな歌兎へと大きな声を上がる。

 

「そんなわけないのデス!歌兎は…歌兎は…ッ」

「…ううん、これで良かったんだよ…これが裏切り者の僕に相応しい終わり方…。……人殺しって言われ続けた僕の…最後…」

「そんな悲しいこと言わないでください、うたう…。もっと、あたしはっ!貴女のお姉ちゃんで居たかったんデス…貴女のお姉ちゃんとして…もっとしたいこと…してあげたいことがあったのに…。なのに…なんで、こんな…」

 

ポロポロと涙を流すあたしへと歌兎は最後の力を振り絞り、あたしへと抱きつくと左肩へと顔を乗せる。そして、今にも消え入りそうな声であたしへと語りかける。あたしはそんな歌兎の声をイヤイヤと駄々こねる幼子のように首を振る。そんなあたしへと歌兎は優しく語りかける。

 

「…聞いて、姉様」

「嫌デス、生きるって言ってください…歌兎、お願いデスから…」

「…そんな駄々言わないで、“お姉ちゃん”」

「!?」

 

あたしは左耳から聞こえてきたその言葉に肩を震わせる。あたしのその反応に歌兎は弱い笑い声をあげると、あたしへと語りかける。

 

「…ふふ、久しぶりだね。この呼び方をするのって」

「はい…久しぶりデス」

「…お姉ちゃん。僕ね、もうダメだと思う。だから、今まで言えなかった事言うね」

「…嫌…嫌、嫌嫌嫌嫌嫌ぁ…」

「…お姉ちゃん。僕、お姉ちゃんの妹で生まれてきてよかった…」

「…嫌嫌嫌ぁ…聞きたくない聞きたくない聞きたくない…そんな言葉聞きたくないんデス…」

「…お姉ちゃんはもう少し自分のことも気にかけてあげて。お姉ちゃんはみんなに気を遣ってばかりだから…ね、僕。そこだけが心配なんだ…。あと、食べ過ぎはダメだよ…」

「分かったのデス…デスから…」

「…ありがと、大好き、愛してるよ…お姉ちゃん…」

 

そこまで呟き、あたしの胸の中で最愛なる妹は旅立っていった…

 

「歌兎ぅううう〜〜〜〜!!!」

 

その悲痛な叫びは、あたしの鼓膜を揺さぶり、あたしは今さっき息を引き取った歌兎だったものの華奢な身体を強く抱きしめ、大粒の涙を流し続けた…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

飛び起きたあたしは大きく深呼吸を繰り返す。べったりと張り付く黄緑色のパジャマの感触に眉をひそめながら、さっきまで見ていたリアルな夢を思い出す。

 

「ハァッ…ハァッ…はぁ…はぁ…」

 

(なんなんデスか?さっきの夢…)

 

「……ねえ…さま…、それは…はずかしいよ…」

「…歌兎」

 

あたしの左手をギュッと握り締めて、口をむにゃむにゃと動かしている最愛の妹。幸せそうなその寝顔に癒されながら、彼女の水色の入った銀髪を掬う。サラサラっと柔らかい感触をしたその髪はずっと触っていたいと思う。しばらくそうしていると、くすぐったかったのか、歌兎は身じろぎをするとあたしへとさらに身体を近づけてくる。

 

「…んっ。…ねえ、さま…だいすき…だ、よ…」

「あたしも大好きデスよ、歌兎」

 

前髪を上へと持ち上げ、歌兎のおでこへとキスを落とす。そして、左手をギュッと握りしめると、何故かそこでさっきの夢がカムバックしてくる。

 

...降りしきる雨

 

目の前が靄に覆われたようにぼやけて見える。荒くなっていく呼吸を落ち着かせようと思うが、次々と生々しい夢が蘇る。

 

...段々と冷たくなっていく歌兎の華奢な身体

 

無意識に左手を強く握りしめて、ぬくもりを確かめようとする。すると、歌兎は痛かったのか、あたしの手を離そうと抵抗するとスルリと繋いでた手を振りほどく。それに安堵するあたしだが、グネグネと熱を帯びたプラスチックのように歪む視界の中で自分の両手だけがはっきりと見えており、震える視線の先には

 

...べったりと生暖かい歌兎の血が絡みついた両手

 

があり、あたしはこみ上げてくる異物感に口元を両手で覆うと、バタバタとトイレへと駆け込む。勢いよく便座を上げると跪き、こみ上げてくる異物感を吐き出す。

 

「おぇええ…うっ…げ…。うおぉおお…」

 

全部を吐き出し、力なく流したあたしは立ち上がるとリビングへと歩いていく。そして、ジャーと勢いよく水を出すと口元を洗い、両手を何度も何度も何度も何度も何度も何度も洗う。両手が氷のように冷たくなるのも忘れ、両手にこびりついた歌兎の血を、生臭い匂いを消そうと何度も何度も手を擦る。

 

(消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろキエロ)

 

このまま、あの夢も嫌な感触も消えてしまえばいい。あんな結末にならないように、今みんなで頑張ってるんじゃないか。あの子が悲しまないように…あの子の幸せだけを願って、なのに…それなのに、これ以上頑張れというのか?あたしに、運命という奴はッ

 

段々と苛立ってきたあたしの背へと物静かな透き通った声がかけられた。あたしは驚きのあまり飛び上がると、くるりと身体をそちらへと向ける。すると、想像通り、薄桃色のパジャマを身に纏った調がいた。

 

「…切ちゃん、どうしたの?」

「あっ、調…起こしちゃったデスか?」

「……」

 

ジィーーーと調に見られている感覚、そして自分の手元を見れば大量の水でバシャバシャと両手を洗ったままのあたしの手があり、あたしはハッとすると、キュッと蛇口を閉めると水により冷たくなった両手を後ろへと隠して、いつものように笑う。

 

「えっとデスね、調。これは…デスね…」

「…」

「…しら…べ…?」

 

無言であたしへと近づいてきた調はギュッとあたしの両手を掴むと、あたしを見上げて微笑んでくる。

 

「切ちゃんの手、今日は私より冷たいね。いつも、切ちゃんが私の手を温めてくれるから、今日は私が切ちゃんの手を温めてあげるね」

「……」

「あったかい?」

 

そう言って、さらに強くギュッと握りしめくれる調の優しさに涙が溢れそうになり、グッと堪える。そして、いつものように笑うと、調もそれに答えるように微笑んでくれる。

 

「はい、とってもあったかいデスよ、調」

「良かった。まだ、朝まで時間があるけどどうする?」

「調にお任せするデス!」

「…じゃあ、一緒に将棋でもする?」

「そうデスね、しましょう!」

「うん、待ってて」

 

その後、調が持ってきた将棋たるものに苦戦しつつ、あっという間に朝を迎えたあたしたちは二人で仲良く朝ごはんの準備をした……




こんな感じの漫談編ですが…どうだったでしょうか?全然、漫談編じゃなかったような気がしてならないですが…間違いなく漫談編ですので(笑)
そして、次回の漫談編は暗いものじゃなくて…明るいものにしますので…。はい、明るいものになると思いますよ…(汗)

そして、この漫談編が今後、本編へと関わることはあるのか?お楽しみに、です。

そして、どうでもいいことなのですがーー
寝ていたら、夢の中にお互いのギアを交換した暁姉妹が現れたんですよ!!(歓喜)
得意げに金槌を担いでいる切ちゃんと、そんな姉に刺激されたのか、こちらも得意げに大鎌を担いでいる歌兎が二人並んでいて…思わず、絶唱してしまうところでした(笑)
いえ、余りの感動に絶唱顔になっていたことでしょう!!だって、夢とはいえ切ちゃんに会えたのですから…(ジーン)

以上、ちょっとした雑談でしたm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9)不器用な僕とつばくり。

今回の話は、上の文が歌兎視点。もう一方が他の人からの視点となってます。
そして、残念なお知らせが…翼さんが翼さんじゃないかもしれないです…。本当、すいません…(汗)

ですが、たまには可愛い翼さんもいいんじゃないかなぁ〜と思い、書いてみました!では、どうぞ!


安静にしていた一ヶ月もあと六日で終わるとなった頃、やっと部屋から出ていいという許可が司令様から下り、僕は暇さえあれば、二課の探索と響師匠との訓練に備えて、姉様たちの戦闘中での癖や戦闘中に歌っている歌を覚えるのに精を出していた。

今、行おうとしているのは、どちらかというと後者の方で、司令様たちがいるミーティングルームへ歩いていこうとしたその時、ドアが開き、ベットから立ち上がろうとしている僕を見て、目を丸くしている。

 

「邪魔すっぞ」

「お邪魔する、暁」

「…こんにちわ、クリスお姉ちゃん、翼お姉ちゃん」

「お?もう、歩いていいのか?」

「…ん、そろそろ一ヶ月になるから。司令様と僕の緊急手術をしてくれた皆様がいいって」

「そうか。だが、だからと言って無理はするものではないぞ」

 

そう言って、頭を撫でてくれる翼お姉ちゃんへとクリスお姉ちゃんへと礼を言いながら、僕はベットから立ち上がる。

 

「…ん、ありがと、翼お姉ちゃん、クリスお姉ちゃん」

 

トボトボとぎこちなくも歩き出した僕の後を翼お姉ちゃんとクリスお姉ちゃんも付いてくる。それに振り返って首をかしげると、二人が揃って苦笑いを浮かべる。

 

「…翼お姉ちゃん?クリスお姉ちゃん?」

「お前が一人で出歩いてるところとか見たら、あいつが吹っ飛んでくるかもしれないからな」

「雪音のいう通りだ。こうしている間にも、そこの角から現れかねないからな、暁が」

「…」

 

苦笑いを浮かべている翼お姉ちゃんとクリスお姉ちゃんの表情を盗み見ると、どちらとも僕の心配が半分、もう半分はどうやら、このニ課では有名となっている過保護な我が姉の暴走を心配している様子…ううん、この顔は飽きられているようだった。

しかし、二人の予想は的中してるのかもしれない。

これは前の話となるが、司令様から許可が出たその日から廊下を手すりを伝って歩いていた僕を見つけた時の姉様の顔を見せてあげられるのなら見せてあげたい。それはそれは凄い顔をしていた。もう、僕でも言い表せないその顔は、瞬時に色んな顔へと変化しては、最終的にグシャッと今にも泣き出しそうな顔へと落ち着き、僕へと体当たりしてくるようなスピードで抱きかかえると、たちまちに緊急治療室へとトンボ帰りさせられてしまった。その後も、隙をみては歩いているのだが、その度にお姫様抱っこで連れ戻されてしまう。

それを思い出してしまい、僕も二人に習って苦笑いを浮かべる。それに敏感に気づいたクリスお姉ちゃんは僕へと話しかけてくる。

 

「…」

「その顔は見に覚えがあるって顔だな」

「…ん、姉様は僕が歩いてるって知ると、ベットへと連れ戻されちゃう」

「どんな時でも変わらぬな、暁は」

 

そう言って、より深く苦笑いを強める翼お姉ちゃんの袖口を引っ張る。振り返ってくる翼お姉ちゃんへと僕は問いかける。それを怪訝そうな顔をしてみてくる翼お姉ちゃん。

 

「…翼お姉ちゃんは」

「む?どうした、暁」

「…翼お姉ちゃんは僕と姉様のことを“暁”って呼ぶね」

「あぁ、確かにそうだな。センパイはなんで、こいつとあいつのことを名前で呼ばないんだ?ややこしいだろ」

 

クリスお姉ちゃんにも指摘され、翼お姉ちゃんは黙り込んでしまう。そして、僕とクリスお姉ちゃんをチラッと見るとそっぽを向いてしまう。

 

「…別に良いではないか、どちらも暁なのだから」

「「……」」

 

そこで気づいてしまう、この人は僕と姉様を呼び捨てにするのが恥ずかしいのだと。

クリスお姉ちゃんと顔を暫し、見合わせ…ニンヤリと笑う。今まで色んなところでお世話になっている翼お姉ちゃんを今からいじめようとしている僕はとんでもない奴かもしれない。だが、翼お姉ちゃんのレアな照れた顔を見るべく、クリスお姉ちゃんと翼お姉ちゃんを攻めていく。

 

「確かに暁だけどさ。折角、名前があるんだ。読んであげなよ、センパイ♪」

「…ん、僕も翼お姉ちゃんに名前で呼んでもらいたい」

「なっ!?だがしかし…私とて、こればかりは譲るわけには…」

「…ダメ…かな?翼お姉ちゃん」

「くっ…。そんな顔されてもダメなものはダメだ」

「けっ、案外ケチなんだな、センパイ」

「そういう雪音こそどうなんだ。暁たちのことをちゃんと呼んであげてるのか!?」

「あ、あたし!?今はセンパイのことだろ!あたしは関係なーー」

「…そういえば、クリスお姉ちゃんも聞いたことない。呼んでみて、クリスお姉ちゃん」

「早速、裏切ったか!お前!!」

 

その後、照れながらも僕と姉様の名前を呼んでくれたクリスお姉ちゃんから翼お姉ちゃんへと視線を向けると、この世の終わりという顔をしていた。僕と姉様の名前をそんな顔をされると流石に居た堪れない。だが、ここまで来てしまった上、僕は翼お姉ちゃんにも名前を呼んでもらうと話しかける。

 

「…姉様のことは?」

「くっ…これまでか…。切歌…、これで良いだーー」

 

僕の攻めに攻め負け、翼お姉ちゃんが姉様の名前を呼んだその時に運良く、ひょっこりと顔を出す姉様。姉様の声に普段の演じているような声も忘れ、可愛らしい声で飛び退く翼お姉ちゃんに姉様も驚く。それに呆れ顔でツッコムのはクリスお姉ちゃんである。

 

「なんデス?翼さん」

「きゃあ!?」

「翼さんが可愛い悲鳴あげてるデス!?」

「お前はそこを驚くのか…」

 

クリスお姉ちゃんのそのセリフに僕は静かに頷き、無意識とはいえ可愛らしい声を上げてしまった翼お姉ちゃんは羞恥心から立ち直れないらしく、その場へとしゃがみこむ。その後は、翼お姉ちゃんの復活を待ち、又しても僕は姉様にお姫様抱っこされて、緊急治療室へと帰っていったのだった……

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「…藤尭様」

「ん?」

 

くいくいと右袖口を内側へと引っ張られ、俺がそっちへと視線を向けると、何故かうさぎの垂れ耳がついたフードを被っている華奢な少女が立っていた。眠たそうな黄緑色の瞳が俺をジィーと見つめている。

彼女の名は暁 歌兎。今まさに、シミュレーション室にて相方となる調ちゃんと特訓に打ち込んでいる暁 切歌ちゃんの妹である。色んな意味で姉となる切歌ちゃんに染まっている彼女だが、こうして直接俺へと話しかけてくるとは珍しい。一体どうしたというのだろうか?

 

「歌兎ちゃんが俺に用とは珍しいね」

「…そうかな?僕、ここにいる方達の中でも藤尭様にはよく話しかけてると思うけど…」

「そうだよ。殆ど、友里越しに俺を呼ぶだろ?」

「…ん?そう…なの、かな?でも、僕は友里お姉さんより藤尭様の方が好きだよ。色々教えてくれるし、親切だし…」

「……」

 

恐らく、素なのだろう。だって、彼女の眠たそうな表情は一ミリたりとも動くことはない。故にOTONA、いやOTOKOの威厳の為にもここでデレるわけにはいかない。じゃないと、周りで何故かニヤニヤした以上に腹立つ笑顔を浮かべている奴らのいいように言われるに違いない、例えばロリコンとかロリコンとか。

 

「…藤尭様?僕の顔をジッと見てどうしたの?」

「ごほん。歌兎ちゃん、今日は何が見たいのかな?」

「…?」

「早く言わないと協力しないぞ」

「…ん、姉様たちの戦闘シーンをまた見せてほしくて。少しでも、姉様たちの戦闘での癖とか、戦闘曲を覚えておきたいから」

「そういうことなら。ほら、ここをクリックすれば見れるよ」

「…!ありがと、藤尭様」

 

俺へと礼を言い、なんのためらいもなく、俺の膝の上へと腰を下ろす歌兎ちゃん。

余りにも自然な身のこなしに座られた俺は唖然。そして、座られているというのに、余りに体重を感じない彼女に保護者として心配になる。そういえば、姉の切歌ちゃんもほっそり…華奢な感じだが、この姉妹はそういうところが似ているのだろうか?それ以外は、正反対な感じの姉妹なのに…。

そんなことを考えていると、くいくいと袖を引っ張られる。

 

「…藤尭様、このシーンとこれを比較したいんだけど」

「あぁ、それはここをこうすれば…」

「!!…凄いね、藤尭様は。僕、将来結婚するなら、藤尭様みたいな人がいいな」

 

恐らく、これも素。そう、素でそんなことを言ってしまう子なのだ、この暁 歌兎という子は。

時折、意味を分かっているのか?と問いただしたくなるが、それは後々お姉ちゃんに俺が倍返しされかねないからよそう。

そんな俺の葛藤をよそに、歌兎ちゃんは普段は眠たそうな瞳をキリッと細め、画面を食い入るように見つめる。

 

「…なるほど。翼お姉ちゃんはここで技を放つから、ああやって立ち回れば…邪魔せずに、ノイズを一角に集められる…。マリねぇはここを力強く歌うから、ここでサポートすれば…。姉様とシラねぇが攻撃してるときは僕は要らないかな…。二人のコンビネーションは完成されてるし…僕が余計なことしたら、それが壊れちゃう…」

 

などなど、ブツブツと独り言を呟きながら、歌兎ちゃんは真剣な眼差しで画面と手元になるメモ帳を睨めっこしては思いついたことをメモ帳へと書きとめていく。

そんな時の彼女の集中力たるや、凄いもので…俺が彼女を下ろして、席を立とうとも…彼女は一ミリも動かずにそのままの姿勢でいる。そして、これは響ちゃんから聞いた話だが、歌兎ちゃんは吸収力が凄いらしい。それに加え、こんな感じで勉強熱心。響ちゃんが頭をかきながら、『いっやぁ〜、参りましたよ〜。歌兎ちゃんってば、教えて、ちょっとで私を追い越そうとしてるんですから…。これは、私も師匠に習って、もっと力をつけないとです!』と気合いを入れながら、司令のところへと向かっていった。

それだけ、歌兎ちゃんの成長スピードは早いのだろう。今では、奏者のみんなのサポートを見事にこなしている。だが、それでも満足しないで…こうして、俺や友里のところに通い詰める彼女の努力は本当に見習わないといけないと思う。

そんなことを考えていると、キィーと扉が開く音が聞こえる。そこから顔を出すのは、黄緑色の肩出しTシャツを身にまとった少女だ。特徴的な口調で俺の膝の上の少女の名を呼ぶのは、紛れもなく彼女のーー

 

「歌兎!響さんと翼さんが呼んでるデスよ〜」

 

姉となる切歌ちゃんだ。最愛の姉が呼んでいるというのに俺の膝の上で絶賛勉強中の歌兎ちゃんは気付かずに、カチャカチャと慣れた手つきで画像を再生する。

一方の切歌ちゃんはというと、キョロキョロと少し垂れ目な黄緑色の瞳を忙しなく動かしては、妹の姿を探そうとしている。だが、肝心な妹の姿はなく、切歌ちゃんは困っている様子だ。

 

「あれぇ?歌兎ぅ〜。歌兎はどこデスかぁ〜?」

 

ここは名乗りを上げた方がいいだろう。

俺が右手を上がると、切歌ちゃんが満面の笑みをうかべる。

 

「切歌ちゃん、ここだよ。ここ」

「お!藤尭さんのとこでしたか!いつも歌兎がお世話になってるデス」

「いえいえ」

 

パタパタと俺へと近づいてきた切歌ちゃんは、俺の膝の上に座り、真剣な眼差しで画面とメモ帳を交互に見ている歌兎ちゃんの肩を揺さぶる。だがしかし、一度自分の世界に入ってしまった彼女をこちらへと連れ戻すことは誰も叶わない。

 

「歌兎、響さんと翼さんが呼んでるデスよ」

「…シラねぇ、ここで…」

「ありゃ〜、これはダメデスね。完全に自分の世界なのデス」

「あはは…」

 

普段は切歌ちゃんのいうことには、何があっても絶対服従な歌兎ちゃんだが、この勉強タイムだけは例外な様子だ。切歌ちゃんも参ったように笑うと、何を思ったか、後ろから俺へと抱きついてくる。

その際に、16歳とは思えない柔らかい胸元が背中へと押し付けられ、俺は素っ頓狂なら声を上げる。それを怪訝そうな顔で見る切歌ちゃん。

 

「というわけで、藤尭さん、あたしも歌兎と一緒に勉強するデスよ」

「うん、していくといいよ……ん?ねぇ、切歌ちゃん、さっきなんて?うっほぉ!?」

「抱きついただけで、なんでそんな素っ頓狂な声あげるデス?」

「驚くから!それと年頃なんだから、そんな無防備にだんせーー」

 

注意しようと切歌ちゃんの方を見るが、切歌ちゃんは歌兎ちゃんと共に画面に釘付け。終いには、グイグイと俺へと体重をかけると歌兎ちゃんと話し合いを始める。

 

「…姉様、ここは僕が打ち上げたほうがいいのかな?」

「ん〜、デスが…そうすると、タイムロスじゃないデスか?ここは、やっぱり…」

「ふ・た・り・と・も!!お願いだから聞いて!!大人の言うことを!!お願いだから!!これは今後の二人に深く関わる」

 

のしかかってくる切歌ちゃんを押しのけ、歌兎ちゃんへも視線を向けた俺は二人へと説教しようとくるが、少し垂れ目な、片や眠たそうな黄緑色の瞳を鋭く細められ、低い声で非難されたなら何も言えない。

 

「藤尭さん、うるさいデス」「…藤尭様、うるさい」

「…あ、ごめんね…。どうぞ、続けてください…」

 

その後、他の奏者のみんなが二人を呼びにくるまで、暁姉妹の議論は続いた……




というわけで、全部のお見舞い回終わりです。最後のは、お見舞いって感じじゃないですが…(笑)

次回からは、またハードな展開が続いていくのでよろしくお願いします。
そして、この『うちの姉様は過保護すぎる』ですが、本編は全部で13話を予定してます。
最終回はかなり中途半端な感じになりそうなのですが…私の力では、それくらいしか書けず、その13話以降の話は思いついたから書いていくというスタンスでいきたいです。思いつかなければ、そのままという感じで…(汗)

ですが、漫談編はこちらもゆっくりですが…書いていこうと思ってますので、よろしくお願いしますm(__)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

漫談:みんなで出かけていたら眠っちゃった話。

お待たせしました(汗)

最終回までの話が書き終わるまでは、漫談編を更新していきます(笑)
そして、次回の話と違い、今回は切ちゃんの過保護度がMAXで進んでいきます。その過保護に巻き込まれていくみんなをどうか、暖かく見ていただければと思います…(笑)

また、今日の日間ランキングにて…ほんの少しほど本作がお邪魔しました。
多くの方に読んでいただいていることへの感謝と、めちゃくちゃな展開なのですが、暖かく見守っていただいている読者の皆さんへとお礼を。

本当にありがとうございます(礼)


※今回はかなり短めとなってます。


10/6〜誤字報告、本当にありがとうございます!


「マリアは本当に分からず屋デスね!この白うさぎの方が似合ってるに決まってるじゃないデスか!」

「切歌こそ分かってないわ!いつも同じ服装では見えてこないものがあるの。ここはそれに挑戦してみる価値があると私は思うわ!」

「それがこの黒猫というデスか?マリアは愚かデス、ポンコツデス!そんなに黒がいいんデスか!」

「ちょっと、切歌っ!あなた、私のことをポンコツって言ったわね!」

「言いましたよ〜。マリアはポンコツデス。このポンコツマリア!」

「あなたね…っ」

 

赤いレンガと青いレンガ、白いレンガによって綺麗な柄を作っている歩道のど真ん中、桃色の髪を背中まで伸ばした女性と明るい金髪をショートヘアにしている少女がすごい剣幕で言い争っている。

その女性と少女の喧嘩を野次馬たちが傍観している中、桃色の髪を持つ女性へと青い髪を結んでいる女性が歩み寄り、その肩を軽く叩いて止めに入る。そして、もう一方の金髪の少女の方も茶色を背中まで伸ばしている女性が肩を叩く。だが、そんな二人の仲裁も払いのけ、桃色の髪を持つ女性・マリねぇと金髪にバッテンの髪留めをつけている少女・姉様の口喧嘩は白熱していく。それに、頭を抱えて引き下がった青い髪を結んでいる女性・翼お姉ちゃんと茶色の髪を背中まで伸ばしている女性・セラねぇは同時にため息をつく。

 

「まあまあ、二人とも落ち着け。マリアも少し大人気ないぞ」

「翼の言う通りだよ。暁さんも落ち着いて、姉さんの意見も取り入れてみる価値と思いますよ」

「翼とセレナは黙ってて!」「翼さんとセレナは黙っててください!」

「…口出し無用だったか、すまない…」

「…もう思う存分、喧嘩してください…二人で…」

 

退散してきた二人を出迎えるのは、右側からクリスお姉ちゃん。シラねぇ、響師匠に未来お姉ちゃんの四人とシラねぇに手を握られている僕を合わせての五人だ。

顔を近づけて、至近距離で睨みきかせながら、互いの悪口を言い合う二人ははたから見ていると子供っぽい。

そんな二人を呆れ顔で見つめながら、クリスお姉ちゃんが呟く。それに深く頷くのはシラねぇで、それに続く響師匠はこの二人の喧嘩を見慣れたせいか、そんなに気にしてない様子だった。

 

「しっかし、相変わらずだよな、この二人は」

「ですね。マリアも切ちゃんも、二人とも歌兎のことを目に入れても痛くないくらい可愛がってますから」

「あはは。でも、いいんじゃないかな。喧嘩するほどなんとかっていうじゃない?」

「響、それをいうなら…喧嘩するほど仲良しだよ」

「あはは、そうともいう〜」

 

穴あきを未来お姉ちゃんに埋められ、響師匠は誤魔化すように明るい笑い声をあげる。そんな師匠を仕方ないなぁ〜みたいな顔で見ていた未来お姉ちゃんは、シラねぇと手を繋いでいる僕をみると腰を折って話しかけてくる。

そんな未来お姉ちゃんの声にぽや〜んと瞼を持ち上げながら見ると、今度はシラねぇが腰を折って話しかけてくる。

 

「…んぅ」

「歌兎ちゃん?」

「歌兎、眠たいの?」

「…ん…」

シラねぇの質問にこっくんと頷くと、 シラねぇと未来お姉ちゃんは顔を見合わせて笑い合う。未来お姉ちゃんが僕の顔を覗き込みながら問いかけてくる。それに頷き、答えた僕へとシラねぇが頭を撫でてくれる。

 

「また、夜遅くまで友里さんか藤尭さんのところにいたの?」

「…ん、早めに切り上げようって思ったけど、調べていくと歯止めが効かなくなっちゃって…」

「歌兎は本当に頑張り屋さんだね。マリアと切ちゃんの喧嘩はまだ続くから、それまで私の背中で寝る?」

「…いいの?シラねぇ」

 

とろ〜んとした目で見つめるとシラねぇが首を縦に振る。腰を折ってくれるシラねぇへと抱きつき、シラねぇの暖かさを背中から感じて、僕は瞬く間に目を閉じて、静かに寝息を立て始めた。

器用に僕をおぶりなおしたシラねぇへと僕の寝顔を見ていた未来お姉ちゃんが話しかける。そんな未来お姉ちゃんへとシラねぇが礼を言う。

そんな二人へと師匠たちが近づいてくる。

 

「…すぅ…すぅ…」

「本当に疲れていたんだね、歌兎ちゃん。調ちゃん、疲れたなら言ってね、私が変わってあげるから」

「ありがとうございます、未来さん。疲れた時はよろしくお願いします」

 

師匠がシラねぇの背中へと顔を押し付けて眠りこける僕を見ると、顔を綻ばせる。それは師匠だけではなく、他のねぇややお姉ちゃん達も一緒みたいでクリスお姉ちゃんに至ってはぷにぷにと僕の頬を突く。

 

「あれ〜?歌兎ちゃん、寝ちゃったの?」

「それは寝るだろ。こいつだって疲れてるんだしな」

「月読、疲れるだろ。私が変わろう」

「まだ大丈夫です、翼さん」

「そうか…」

「そんな残念そうな顔しなくても大丈夫ですよ、翼。月読さんなら翼の気持ちもわかってくれて、早く歌兎を抱っこさせてくれると思いますから。あっ、でも、余りにも可愛いからってお持ち帰りは禁止ですよ。私たちが暁さんに怒られちゃいますから」

「セ、セレナ!私はそんなこと企んでないわ。それにお持ち帰りって…」

「翼さん、素に戻ってますよ〜。素直に抱っこさせて貰えばいいじゃないですか〜」

「センパイも可愛いところがあるんだな〜」

「なっ…立花、雪音まで、私をそのように…なんという屈辱か…」

「………。翼さん、歌兎抱っこしてみます?」

「いいの?」

「はいどうぞ」

 

その後の話を師匠とシラねぇに聞いたところ、姉様とマリねぇの喧嘩は夕暮れまで続き、その間にも僕は眠り続けて、ねぇやたちやお姉ちゃん達が変わりばんこに背負いあってくれていたそうで、僕は申し訳なくなり、今度からはみんなで出かける時は夜更かしをしないと心に誓うのだった…

 

そして、もう一つセレねぇに聞いた話なんだが、翼お姉ちゃんが僕の抱っこ権をなかなか誰かに譲らなかったそう。それを聞いた僕はこう思ったーー翼お姉ちゃんにもかわいい一面があるのだなぁ〜と。




この漫談編で明るいのと可愛いのを補充しておかないと…これからの本編が辛くなるので…(汗)

そして、これはお知らせで最終回までの話は一気に更新出来ればと思っているので…それまでは、こんな感じで漫談編が続きますので、よろしくお願いします(礼)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10)監禁とじんもん。

連続更新の第一弾目の最初になる10話ですが…いきなり、主人公と過保護な切ちゃんがピンチになります。展開が早いのと、簡潔に書いてるので分かりにくいかもしれませんが…最後まで読んでもらえたら、嬉しいデス!

それと、うちのウェル博士はかなりキャラが崩れており、原形をとどめてないやも知れません…。
なので、こんなものなんだと思って読んでいただければと思います(礼)


僕が奏者の皆様の援護へと回ってから、一ヶ月が過ぎた。毎日、友里お姉さんと藤尭様のところに通い詰めているおかげか、今では何となくだが、姉様たちや響師匠たちの考えていることが分かるようになってきた。なので、僕も奏者の皆さんと出動することが多くなり、今日はマリねぇ、翼お姉ちゃん、クリスお姉ちゃんのコンビが僕たちが向かっているところから100キロ離れたところに現れた大量のノイズを退治に向かい、セレねぇと響師匠の二人が僕たちから12キロ離れたところにある森林に現れたノイズ退治へと向かった。そして、残った僕と姉様、シラねぇは工場跡に現れたノイズ退治へと向かっていた。

 

「今日もサクッと終わらせるデスよ!」

「うん、頑張ろ。切ちゃん、歌兎」

「…ん」

 

はりきる姉様とシラねぇに頷きながら、僕は気になっていることに頭を回す。

それはここ最近のノイズの活動についてだ。僕が本格に姉様たちや師匠たちの援護に回ってから、ノイズの数と発現が多くなってきた。まるで、僕にギアを纏わせようとしているように見える、それに気づいてしまった時から嫌な予感がしてならない。

 

(…ここ最近、ノイズたちの動きが活発な気がしてならない…。数も多いし…何故か、現れる場所が極端に離れている…。まるで、助けが来れないようにしてるようにも…)

 

そこまで考えて、目を瞑り、首を横に振る。僕には力強い姉様たちや師匠たちがいると思うと安心出来るが、嫌な予感は顔を出しては引っ込んだりと忙しく、僕へと付きまとう。隣にいる姉様とシラねぇに悟られないように、顔を引き締めるとボソッと呟く。

 

「………もしかして、何者かに誘導される…の、か…?」

「歌兎?」

「…何でもないよ、シラねぇ」

 

呟きを聞かれてしまったかと焦った僕はシラねぇへと曖昧な笑顔を浮かべると、それと同時に目的地へと着いたのだった。

メインカラーが緑のイガリマを身につけた姉様がアームドギアの大鎌を構える。それにシラねぇは回転式ノコギリを回すことで答え、僕はそんな二人の前へと進み出るとゆっくりと響師匠に教えてもらった構えを取る。

 

「おっ!早速、敵さんの登場デスよ!調、歌兎、いいですか?」

「うん、私はいつでも」

「…僕もおっけーだよ、姉様」

こうして、僕と姉様、シラねぇの3人対ノイズ大量の乱闘が始まったのだった…

 

「はぁっ!姉様!」

「了解デス!歌兎っ」

 

まず、小手調べにノイズのお腹へと拳を埋めると右側から走ってくる姉様の方へと殴り飛ばす。それを大鎌で真っ二つに切り刻んだ姉様がこちらに向かって走ってくるので、それを横に転がって場所を変わる。すると、そこへとシラねぇが合流する。二人が奏でるメロディーにのりながら、僕は二人の援護へと性を出す。

姉様の飛んでくる緑色の刃に向けて、ノイズへとアッパーカットを打ち込むと上へと打ち上げる。それの際に、姉様が放った緑色の刃が僕が打ち上げたノイズを切り裂き、灰へと変えた。ツインテールの先に回転式ノコギリを付けているシラねぇが滑ってきたなら、シラねぇが通るであろう場所へとノイズを集める。その際に僕へと触れようとしてくるノイズは姉様が切り刻んでくれる。

 

(やっぱり、姉様とシラねぇと一緒に戦うと気持ちいいな)

 

長年、白い孤児院で一緒に暮らしてきた僕たち姉妹とシラねぇはもう家族というくらいの深い絆で結ばれている。故に、僕はシラねぇと姉様の動きを。姉様は僕とシラねぇの動きを。シラねぇは姉様と僕の動きを。オーラというか、感覚で分かるのだ。

だから、僕個人の感想だが、この3人のチームワークは他のみんなよりも上だと思う。だから、これくらいの量くらいお茶の子さいさいで終わると思っていた…いや、そう信じていたのだ。

だが、僕や姉様たちの予想を裏切り、一向にノイズの群れが減ることがなく、もう既に消耗戦と化したノイズとの戦闘でイライラしてきた姉様が一人ノイズの群れへと突っ込んで行く。

 

「こうなったら、殴り込みデスよ!」

「…姉様!そっちは危なーーがはっ」

 

僕が一人突っ走ろうとする姉様を呼び止めようとした時だった。ゴンと鈍い音が耳へと響き、僕の身体は前のめりに倒れる。

 

「いつも周りには注意しような、暁 歌兎」

 

(…姉様…シラねぇ…ごめんなさい…)

 

地面へと叩きつけられた僕はあまりの衝撃に意識を失う。そんな僕のウサギの耳がついたフードをつかんで、僕を持ち上げた“何者か”へと姉様とシラねぇが血相を変えて走り寄ろうとするが、その二人へと新たに現れたのは僕を掴み上げている少年と同じ服装をした青年や少女たちであった。

それぞれ、左脚や右脚、両腕を僕のように変色された彼らは姉様たちを囲むと僕から二人を遠ざける。取り囲む彼らへと闘争心をむき出しにする姉様へと隣にいるシラねぇが落ち着くように嗜める。それに悔しそうに唇を噛む姉様。

 

「歌兎!」

「おっと、そこの嬢さんたちの相手は俺たちだ」

「切ちゃん、落ち着いて。この数じゃあ、私たち二人では手に負えない」

「分かってるデスよ…調…」

「いい判断だ、嬢さんたち。おい、そこにある縄を取ってくれ」

「ほらよ。あんま、キツく縛んなよ」

「バァーカ。この金髪の子とか今にも飛びかかりそうじゃん。それにボスがあの作戦の仕上げには、この金髪の子が必要って言ってたじゃん。逃すと俺らがどうなるか…」

「それもそうだな」

 

ブツブツと何かを呟きながら、姉様とシラねぇを縛り上げた。二人は僕を物のように持ち上げている少年を親の仇みたいに睨みつけながら、青年たちに縄で手首をきつく結ばれる。

そして、二人が縛り終われると、今だに僕を掴み上げている藍色と灰色をメインに使ったフードを身につけた少年は背後へと振り返ると、僕をそちらへと放り投げる。

 

「ふん…ほら、ボスの欲しがってた奴だ」

「くくく、あはは。よくやってくれました、僕のチルドレンたち」

「「「「……」」」」

 

気を失う僕をお姫様抱っこして、得意げに笑うその人影に少年の仲間に取り押さえられた姉様とシラねぇが憎らしげに唇を噛みしめる。シラねぇはその人影を睨みつけ、姉様に至っては噛みつくように人影へと近づこうとする。

 

「あれは」

「ウェルゥ!!」

 

そんな二人の様子を愉快そうに笑った白衣を見つけた人影・ウェル博士は青年に地面へと押さえつけられている姉様を見ると挑発するように言う。

 

「おやおや、そんな怖い顔してどうしたんですか?」

「歌兎をどうする気デスか!ウェルっ。あたしの妹になんかしたら、あたしがお前をーー」

「おぉ、おぉ、怖い怖い。心配しなくてもいいですよ、こいつをどうかするのは僕ではなく…むしろ…くくくっ」

 

そこでニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべたウェル博士に姉様は嫌悪が増す。親の仇みたいに睨みつけ、今にも飛びかかろうとしている姉様にウェル博士は近くにある青年たちに呼びかける。

 

「そこの二人は例の場所へと閉じ込めておけ。僕はあの作戦の最後の準備を行う」

「はい、ファザー」

「最後の準備が終わるまで、適度に痛めつけとけ」

「あぁ、分かったよ」

「歌兎!歌兎!!」

 

僕の名を呼んだくれている姉様の声にも気付かずに、僕はウェル博士に運ばれていく。それに姉様は上に乗っかっている青年たちを振り下ろそうとするが、思うようにならずに、いつの間にか立たされていた。抵抗するが、足首や弁慶の泣き所へと鋭い蹴りが入り、姉様は悔しそうに唇を噛み締めながら歩いていく。

 

「おい、さっさと歩け」

 

後ろに縛られた腕を掴まれながら、姉様とシラねぇはある場所へと運ばれる。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

一方の僕は、ウェル博士に運ばれて、乱暴に床へと転がされると思いっきりお腹を踏みつけられる。それにより、口の端から唾液が下にあるコンクリートを濡らす。そんな僕の前髪を掴んだウェル博士はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべる。そして、僕の左腕に巻かれていた包帯を脱ぎ捨てるとうっとりしたように溜息をつく。さわさわと左腕を撫でられ、僕は嫌悪から毛が逆立つ。

 

「いい腕だ、いい腕だとも、暁 歌兎。よくここまでベルフェゴールを育ててくれた」

「…育てたくて育てたわけじゃない。仕方なくだ、今すぐにでもこんな腕切り捨てたい」

「くくく、つらないことを言う。僕と君の仲ではないか」

「…あんたこそ、僕に殴り飛ばされたくなければ…もうその臭い口を開くな」

 

僕が嫌悪を露わにすると、ウェル博士がニタニタと笑いながら、わざとらしい声を漏らす。それに僕は眉をひそめて、ウェル博士を睨むと次の瞬間に発せられたセリフに思わずウェル博士に飛びかかりそうになる。

 

「君もお姉ちゃんに似ておっかないな〜。だけど、そんな大好きで大好きで大好きで仕方ない姉様や君の仲間が大変なことになっていたらぁ〜、君はどうするかなぁ〜?」

「…!?」

「おっと、顔色が変わったな。僕の話を聞く気にもなったか?」

 

おどけた感じでそう言うウェル博士の顔を睨みつけながら、僕は低い声でウェル博士を威嚇する。だが、それくらいこの男を困らせられるわけがない。

 

「…姉様とシラねぇに指一本でも触れてみろ。その時には既に僕の右拳があんたの顔面に埋まると知れ」

「くくく、そんな言葉すぐに言えなくなるだろうな。これを見ちゃったらぁ〜」

 

くるくると回り、おどけた感じで下の階を指差すウェル博士に連れられて、下の階を見た僕は目を丸くする。そして、手すりを強く握りしめる。

僕が見た下の階には姉様とシラねぇがいて、そんな二人を取り囲むように大勢の少年や青年、少女たちがおり、手に持った棒で無抵抗な姉様たちを殴っていた。その光景は余りにも衝撃的で僕は言葉を失う。そんな僕の肩へと腕を回してきたウェル博士は僕の耳元に囁きかけてくる。

 

「大好きな姉様を救いたいだろ?だったら、今その力を使わずして、いつ使うっていうんだぁ〜、ん?」

 

また、気持ち悪い笑い声を漏らすウェル博士に僕は唇を噛みしめるとギュッと目を瞑る。そして、心にいる姉様とシラねぇ、ここまでお世話になった響師匠やお姉ちゃんたちへと詫びを入れてから、胸へと両手を添える。

 

「…すぅ…」

 

僕は大きく息を吸い込み、恐らく最後となるであろうミョルニルの聖詠を口にする。

 

「…multitude despair mjolnir tron」

 

久しぶりに展開したギアを纏うと、待ってましたと言わんばかりにそれが僕へと声をかけてくる。

嬉々として語りかけてくるそれに僕は頭を押させながら、なんとか抗おうとするが…近くに立っていたウェル博士がニンヤリと笑うとポケットから何かを取り出す。

 

「…っ、また…あいつが…」

「そうだ、頑張ってくれる歌兎君へとおみやげだよ。受け取りたまえ」

 

そう言うと、ウェル博士が僕の首筋へと何かを打ち込む。飛びのいて、ウェル博士を睨むがすぐにその感情も胸の奥から湧き上がってくる負の感情に飲み込まれていく。

 

「…!?…僕に何を打ち込んだッ」

「そんなに睨むな、君にとっていいものだよ、それは」

「…いいもの?ふざけるなッ!あんたが今までぼ…ガァッ、く…」

「早速、効いてきたか。まぁ、本来の10倍に薄めないといけないのだが…事は急ぐからな」

 

(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すころすコロス殺すっ!…誰を?

...目の前にある者、僕の邪魔する者

壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊すこわすコワス壊すっ!…何を?

...この世界にあふれている物、僕の行く手を塞ぐもの

......そう、ここに…この世界にあるありとあらゆるものを破壊し、殺戮するっ!!その為だけに僕はここに存在スル獣ダ!)

 

「…ァアアアァアアア!!!!!」

 

僕は頭を抱えると首を横に振る。

 

(違う違う違う違う、チガウ…っ!僕はそんなことがしたい為にギアを纏い、君を呼んだんじゃない…っ!僕は…僕がしたいのは…)

 

【どうした?主人よ。我を解放するのではないか?主人の望みはなんだ?】

 

(…僕の望み…)

 

【そう、主人の本当の望みはこの世界を破壊し、邪魔する者を殺戮することだ。ならば、その目的を果たす為に、存分に我の力を使うといい。主人の本当の望みを我と共にはたそうぞ】

 

「…ガァッ…熱い…身体が、熱い…っ」

 

だが、あいつの声は消えるどころか僕の心を染め始める。僕は左腕から絶え間なく流れ込む膨大な力を受け止めながら、全身から発せられる熱に朦朧とし、僕は床へと倒れこむ。

 

「さぁ、最後の仕上げとしよう。我がチルドレンたちよ。僕たちの神が今ここに降臨なさる!」

 

床へと倒れこむ僕を恍惚な表情で見ながら、ウェル博士は両手を大きく上に広げて、大声で笑う。それを最後に、僕の最後に残っていたなけなしの理性はそれに飲み込まれ、僕は禍々しいオーラを纏う獣へ成り果てた…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

そう高らかとウェル博士が発言していたそれと同じ頃、ウェルチルドレンたちとの戦闘で思った通りの動きが出来ずにコテンパンに打ちのめされたシラねぇと姉様は地面へと力なく肢体を投げ出していると、一人の青年が姉様の近くに倒れているシラねぇを抱きかかえる。乱暴に肩へと担がれたシラねぇへと姉様が右手を伸ばす。

 

「調!」

「切ちゃん!」

 

シラねぇも右手を伸ばして、暴れて抵抗するが満身創痍のシラねぇがまだまだ元気な青年に力で勝てるわけがなく、忽ちに近くにある鍵付きの檻の中へと放り込まれる。

 

「こらこら、暴れない。調ちゃんはこっちね〜。これが終わったら、俺らと遊ぼうや」

「…」

「おや、無言って事は俺らの誘いに肯定ってことかい?」

 

運んできた青年に下卑た視線を向けられ、シラねぇは厭忌な表情になると口を一文字に固く結ぶ。そんなシラねぇと青年たちを見た姉様は痛む身体に鞭を打って立ち上がると、その折に向かって走り出す。

だが、僕を持ち上げていた少年に横腹を思いっきり蹴られて、その衝撃でコロコロと地面を転がり、激しく咳き込む姉様へと近づいたその少年は姉様を見下ろすと、わざと姉様が深く傷ついているところを蹴飛ばしながら、ムカつく表情を浮かべていた。

 

「お前!!調に何するデスか!ガハッ」

「負け犬がっ!黙ってろよ…親友も大切な妹すら守れないお前が偉そうな口を開くな」

「…ッ!」

「悔しいか?悔しいのか?えぇ」

 

そんな少年の踏みつけている足首を指が食い込むほど握りしめた姉様は顔を怨嗟で歪めて、その少年を睨む。だが、少年は姉様のセリフを鼻で笑うと姉様のお腹を思いっきり蹴飛ばす。

 

「…くそっ!お前らなんか…お前らなんか…っ。必ず、あたしの手で…」

「ふん、くだらん」

 

蹴飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がった姉様は血が混ざり、赤くなった唾液をコンクリートへと吐き捨てる。そんな姉様の姿を見て、シラねぇが堪らずに駆け寄ろうとするが強靭な折により行く手を阻まれる。

 

「ガハッ…ゴホッ…ゴホッ…」

「切ちゃん!!」

「だから、ダメだって、調ちゃん。調ちゃんは俺らとこの後の展開を見てような」

「…」

 

ニタニタとやらしい笑みを親友へと向けられ、姉様は唇を噛みしめる。ふと、目に映るのは砂埃などで汚れたほっそりした掌だ。

 

(くそっ…あたしにもっと力があれば…。二人を苦しまずに済んだのに…)

 

そんな姉様に今、1番憎らしい声がかかる。声を聞いただけで、誰かわかった姉様は表情を心火で染め、視線を上へと向けて睨む。だが、そんな姉様に肩をすくめた白い白衣が似合うウェル博士は手に持った包みを姉様へと見せる。

 

「力が欲しいですか?暁 切歌よ」

「ウェルっ!!」

「そんな目で見ないでください。僕は貴女へ素敵なプレゼントを渡しにきたんのですから」

「今更、誰がお前なんかの話に乗るもんデスかっ」

「くくく。素直じゃない貴女なら、そう言うと思って、こう言うのも用意してみましたよ」

 

ウェル博士が指差したのは、シラねぇとの反対な檻でそこには赤紫色の禍々しいオーラに身を包む小柄な獣がいる。早く檻の外へと出して欲しいのだろう。檻の鉄を今にも真っ二つに折ろうとしているかのように、ガチャンガチャンと檻を揺らす。

 

「ガルルルゥ!グルルルっ!」

「…う、たう…?」

 

それの獣を見た姉様は唖然とした様子である名前を呟く。それを聞いたウェル博士はわざとらしくパチパチと拍手する。

 

「おぉ、流石ですね〜。そう、ここにいるのは間違いなく貴女の妹の暁 歌兎ですよ」

「オマエェエエエ!!!」

 

姉様はウェル博士の襟首をつかもうとするが、そこにわたって入ったウェルチルドレンによって妨害され、姉様は地面へと転がる。起き上がる姉様にウェル博士はニンヤリと笑う。

 

「貴女も学習しないですね、暁 切歌。僕に手を出そうとすれば、彼らが僕を守るに決まってるでしょう」

「だとしても!あたしはお前を許さないっ!二度もあたしの妹を弄んだお前を!!」

 

殴られて口の端を切った姉様の左唇から鮮やかな血色の液体が皮膚を伝う。それを乱暴に拭いた姉様は少し垂れ目の黄緑の瞳へと憤怒の炎で滾らせる。だが、ウェル博士は愉快そうに笑うと片眉をあげる。

 

「くくくっ。なら、どうします?無力な貴女が僕に勝てるとでも?」

「…」

「そんな力が欲しい貴女へとこれをプレゼントです。もちろん、使うか使わないかは貴女次第ですが…くくく…」

「…くそっ!くそっ、くそっ…」

 

ウェル博士は姉様の前へと包みを投げ捨てると、颯爽とその場を離れていく。姉様は自身の無力さに苛立ちを覚えて、地面へと拳を何度も埋める。

 

(あんな奴の力を借りるしないんデスか…。あたしは…。あたしという人間はこんなにも無力で何も救えないちっぽけなものだったのか…)

 

「グルルル」

「…歌兎…。お姉ちゃんは……どうすれば…」

「ガルッ!グオオオッ!!」

「…そうデスね…、貴女と調を救う為には…もうこれしか…」

 

そこで姉様はギュッと目を瞑ると、覚悟を決めたように目を細める。そして、自分の近くに投げ捨てられたそれを拾い上げる。丁寧に包まれたそれを開くと、グッと唇を噛み締めて、自分の左腕へと這わせ、自分の首筋へとLiNKERを注射する。すると、メキメキッと左腕へと置かれていたそれが姉様の腕へと同化していく。それを無限にしわを寄せて、耐える姉様。そんな姉様を見て、高らかな笑顔を浮かべるウェル博士。

 

「ッ!ガァアアア…くっ…」

「くくく。やっと始まりますよ」

「…切ちゃん…?」

 

僕とは違う折へと入れられているシラねぇは姉様の異変にいち早く気づく。しかし、時は既に遅し。姉様の身体を次第に赤紫色の禍々しいオーラが包み込む。それは、僕が纏っているもの同じものだった。

ついに、そのオーラに全身を覆われた姉様は立ち上がると天に向かって叫ぶ。

 

「ァアアアァアアア!!!!!」

 

空へと向かい大きく吠えた姉様へと檻から解き放たれた僕が走り寄る。そんな僕を視界に納めた姉様も僕へと走り寄る。

 

そんな二人が巻き起こした風に飛ばされて舞い上がった包みには、こう記されていたーー【完全聖遺物・ルシファー】と。




さてさて、これから先はどうなってしまうのでしょうか?

また11話で会いましょうm(__)m

そして、今回の話に全く関係ないんですが…
ドヤ顔でエレキギターを「デェェェェス」って弾いてる切ちゃんが何故か、この話を書いてる時に浮かんできてしまいまして…思わず、吹き出しちゃいました(笑)
いえ、切ちゃんがおかしいってわけじゃなくて…こんなシリアスなシーンを書いているのに、微笑ましい事を考えてしまった自分へと笑いがこみ上げてしまいまして…(笑)
本当、こんなシーンなのに…なんてこと考えてるんですかね、私は(笑)





今回の話で出た新しいワードの補足

◎ウェルチルドレン
ウェル博士の非人道的な改造と実験で、生身の人間以上の力を手に入れてしまった子供たち。
殆どの子供達は両腕や両脚(どちらか片方)に完全聖遺物が埋め込まれている。


◎完全聖遺物・ルシファー
ルシファーは明けの明星を指すラテン語であって、光をもたらすものという意味もある。また、堕天使の長であるサタンの別名ともされている。
果たして、この完全聖遺物は光をもたらすものとなるのであろうか?


◎DemonーLiNKER
堕天使や悪魔を司る完全聖遺物の力を最大限に引き出すLiNKER。
このLiNKERの開発のために多くのウェルチルドレンが犠牲となり、悍ましい姿と成り果てた。


◎禍々しい赤紫色のオーラ
【完全聖遺物・ベルフェゴール】【完全聖遺物・ルシファー】の力を限界まで引き出した暁姉妹が纏うオーラ。普段の暴走と違い、完全聖遺物に操られている形なため、本人たちの意識は僅かだがある。
だが、意識のほとんどと脳へと命令は完全聖遺物が行ってるために本人たちでは止められない。


以上、補足でしたm(__)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【10)bad endルート】 歪な笑顔 ~切歌side~

【10)監禁とじんもん。】のbad endルートです。

この作品を見てくださっている方はほのぼのとした日常系とバッドエンドを見たいと思われていると思うので‥‥書かせていただいたメインストーリーからの分岐するバッドエンドの第一弾。

手探りで書いたので、バッドエンドと言えないかもですが‥‥ちょっとした歯車の違いから最悪の運命を辿ることになってしまった暁姉妹の物語を読んでもらえたら幸いです。

本編をどーぞ。


その日、調とセレナと共に商店街に出たノイズ討伐を終え、本部に帰ってきたあたし達へと暗い表情をしたマリアに連れられて、司令の元に向かい、奏者が全員揃ったことを確認した司令は深く息を吸い込むとその重い口を開いたのだった。

 

「歌兎くんがノイズと交戦中。何者かによって攫われ、今だに行方が分からない」

 

正直、何を言ってるのか分からなかった。

 

(ウタウクンガノイズトコウセンチュウ。ナニモノカニヨッテサラワレ、イマダ二ユクエガワカラナイ‥‥?)

 

なんデスかそれ。

まるで歌兎が行方不明みたいな言い方‥‥。

う、歌兎は強い子なんデス。そう簡単に誰かに捕まるようなことーーしかし、周りを見渡しても見知った水色の掛かった銀髪は無く、あたしは耳を塞ぐと小さく"嘘"と呟いて、自分へと暗示をかける。

そうしないと今にも取り乱してしまいそうな気がしたから‥‥ううん、それは正確じゃない。

もう乱れてしまっている気持ちをこうして暗示をかけて落ち着かせないとあたしは今にも周りにいる奏者のみんなへと暴力を振るってしまいそうだったから‥‥。

 

「う‥‥‥そ、嘘嘘噓嘘嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘噓嘘

「切ちゃん‥‥‥」

 

そんなあたしの肩を抱いてくれる調の細っそりした手の甲へと掌を添えたあたしは叫ぶ。

 

「そんなん嘘に決まっているんデス!!あの子は出掛ける前にあたしと‥‥あたしとッ!約束してくれたんデス、必ず無事に帰ってくるって!!あの子が今まで約束を破った事はないんデス!だから、さっきの司令の報告も嘘なんデスよね?歌兎が行方不明なんて‥‥みんなして、あたしを騙しているだけなんデスよね?た、タチが悪いデスよ、全く」

 

調の手に添えた手を震わせて叫ぶあたしをまっすぐ見て、司令は表情を更に曇らせるとはっきりとした口調で言い放つ。

はっきりと言い放たれたセリフの端々が掠れているのは、司令自身も自分の無力さを感じているからなのかもしれない。

 

「信じたくないのは分かるが切歌くん、歌兎くんはこの本部のどこにもいないんだよ。歌兎くんは忽然と姿を消してしまったんだ。今、スタッフが総出で手掛かりを見つけてくれているが‥‥今だに見つかってない」

 

しかし、そんな司令の気持ちも汲み取れないほどに心を乱し、かけた暗示もとけてしまいそうなあたしは唇を噛みしめると隅に静かに肩を並べて立つ響さんとクリス先輩を指差す。

 

「なら‥‥ならなんで、歌兎と一緒に居た響さんとクリス先輩が無事なんデスか!!歌兎は‥‥歌兎はここにいないのにっ!!」

 

心の中では分かっていた、二人のせいではない、と。

二人のせいにしたところで起きてしまった事をやり直し出来るわけでもない。

そもそも、あたしが二人のどちらでも歌兎を見失っていたと思う。

だって、戦いながら、避難しきれてない町民を助けながら、サポートをしている歌兎まで気を回せるほどあたしは器用でもない。

きっと二人もいっぱいいっぱいだったんだと思う。

 

 

そう分かっている。

 

 

 

分かっているのに‥‥

 

 

 

(なのに、なんでこの口は勝手に動いちゃうデスか‥‥ッ)

 

 

「こんな事になるのなら、歌兎じゃなくて二人のどちらかが行方不明にならばよかったのにッ!!!

そうすれば、あたしもこんなおもーー」

「ーーいい加減になさい、切歌!」

 

左頬が焼けるように痛く、次第にヒリヒリとした痛みが広がってくる。

目にかかる前髪越しに右手を振りかぶっているマリアを見て‥‥あたしは察した。

 

(そうデスか‥‥あたしはマリアにビンタされたんデスか‥‥)

 

されたって仕方ない事をしたし、言った。

 

 

(なのに、なんでこの心は勝手に反抗心を募らせていくデスか‥‥ッ)

 

 

「‥‥歌兎の事が心配にしても流石に言い過ぎよ。響もクリスも精一杯町に残された人達を避難しながら、戦っていたの。歌兎はそんな二人の手助けをしている最中に姿をくらませてしまったの。今回の事は二人のせいではないわ、もちろん歌兎のせいでも。仕方がなかったことなのよ‥‥」

「‥‥この!」

 

あたしはマリアを突き飛ばすと声を荒げて叫ぶ。

 

「マリアも!司令も!響さんも!クリス先輩もみんなみーんな大嫌い!!大嫌いデスッ!!!

あたしに嘘ばっかりついて‥‥歌兎が行方不明なんて嘘っぱちデス。信じてやるもんかデス!!

みんなのバカ、アホォオオオオオオオオオオオオ」

「切ちゃんっ」

 

本部から駆け抜けていくあたしを追いかけていく調の背中を見送った後、尻餅をついているマリアを抱き起こした翼さんは下を向き続けているマリアを心配そうに見つめる。

 

「マリア‥‥」

「姉さん‥‥」

 

セレナの呼び方に顔を上げたマリアは溢れそうになる涙を堪えているような表情で響さんとクリス先輩へと謝る。

 

「ごめんなさいね、二人共。あの子も悪気があったわけじゃないのよ、ただあの子は昔から歌兎‥‥妹の事になると血が上りすぎちゃうのよ。

きっと、今頃家に帰って、ベットの上で膝を抱えて‥‥後悔してると思うの。

だから、明日切歌が謝りに来たら、許してあげて頂戴ね」

 

淡く微笑むマリアに響さんは首を横に振ると

 

「いいんです。切歌ちゃんが私達を責める気持ちも分かりますし‥‥」

「クッソたれッ!!」

 

響さんのセリフを遮るように叫んだクリス先輩はガツンとタイルを蹴飛ばすと吐き捨てる。

 

「バカが悪いんじゃねぇーよ。あたしが全て悪いんだ。チビはあたしと一緒に民間人を避難させてたんだ。そして、あたしが目を離した瞬間、あのチビがーー」

 

唇を噛み締め、込み上げてくる自分自身への怒りと情けなさから肩を震わせるクリス先輩に響さんは首を横に振ると

 

「そんな事ないよ。私がもっと早くノイズを片付けて、二人の手伝いに行っていたならば」

「いいや、あたしが悪いんだよ。あたしが全て‥‥」

 

悔やみ続けるクリス先輩の肩を叩くのは翼さんで

 

「起きてしまった事をいつまでも悔やんでも仕方ない。今は私達が出来ることは歌兎の無事を祈る事と早く見つけ出す事だ」

「えぇ、そうね。翼のいう通りよ」

「はい、風鳴さんのいう通りです」

 

翌日、あたしは響さんとクリス先輩に謝りに行き、マリアへと湿布を渡したら

 

「私、まだそんな歳じゃないわよ!!」

 

と怒られたのだった。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

歌兎が行方不明になって、半年後。

歌兎が姿を消した町の外れに誰も使ってない古びた病院がある事が分かり、そこを調査していた翼さんとマリア、クリス先輩から"歌兎を見つけた"と連絡があったのは、響さんとセレナ、あたしと調の四人で近くに現れたノイズを討伐して帰ってきた直後だった。

 

三人の手によって、保護させた歌兎は弱り、微かに脈打つ状態ですぐさまメディカルルームに連れ込まれた。

そして、様々な検査を終えた歌兎は今までの彼女と明らかに変わっていた(・・・・・・・・・・・・・・)

 

その変貌っぷりはあたしの次に彼女と交流があったマリアとセレナ、調の三人を絶句させるほどで、あたしが歌兎が帰ってきてから一ヶ月間会えなかった理由でもある。

 

三人は心配してくれていたのだ。

あたしがそんな彼女を見て、正気を保っていられるか、と。

 

そこまでの変貌を遂げてしまったのだ、あたしの最愛の妹はーーーー。

 

でも、あたしはどうしても会いたかった。

ここ半年後と一ヶ月、彼女の事を忘れたことはない。

早くこの両腕で抱きしめてあげたかった。

そして言いたかった、守ってあげなくてごめんなさい、と。

 

だから、あたしはニッコリと笑いながら、三人に言う。

 

「歌兎がどんなになっていてもあたしの可愛い妹デスよ。それは変わりはしないデス」

 

その決意を聞き入れてくれたマリアが重たい足を動かして、ここまで連れてきてくれたのだ。

もう、後戻りは出来ない。

 

「‥‥切歌、本当にいいのね?」

 

そう悲しげに微笑み、【暁 歌兎】というネームプレートがかけられたドアノブを握るマリアにあたしはニッコリと笑う。

 

「やっと歌兎に会えるのデスよ?これ程嬉しいことはないデスよッ!きっとあたしも半年で変わりましたから、歌兎びっくり仰天しちゃうデスよ」

「そう‥‥ね。そうよ、ね‥‥歌兎に元気な笑顔見せてあげなさい」

「はいデス!」

 

マリアの手によって開けた放った扉の向こう。

意気揚々と踏み越えた鉄のレールの向こうにはーー

 

 

「ひひひひ、っ‥‥えっへ‥‥へへへへへ‥‥ふへ」

 

 

ーー別世界が広がっていた。

 

大きめなベットの上に横たわる少女のサイズにあった診察着から覗く鎖骨や両腕は骨ばっており、肉という肉がなく、きっと痛々しく右腕に突き刺さっている点滴によってなんとか生き長らえているのだろう。

なのに、そんな痛々しい状態なのに‥‥少女・歌兎は笑い続けているのだ。

年相応の膨らみをなくし、凹んだ頬と乾ききった桜色の唇を微かに開き、不気味な笑い声を部屋に響かせながら‥‥唇の端から垂れる涎が首の周りに巻かれたタオルに染み込んでいく。

 

(‥‥くっ)

 

今思えば、あたしは常に歌兎の笑顔を守りたいと思ってきた。

それが先に産まれてきた‥‥お姉ちゃんと呼ばれる者の務めと思ってきたし、純粋にあたし自身が彼女の笑顔をずっと見ていたいと思っていたこともある。

 

(ならば‥‥この笑顔はあたしの守りたいものなんデスか?)

 

「‥‥ゔぅっ‥‥」

 

込み上げてくる熱い気持ちへと無理矢理蓋をする。

 

(泣くな、暁 切歌。

貴女はお姉ちゃんでしょう?

それにどんな歌兎でも受け止めるってみんなに約束したじゃない。

だから、泣くんじゃない)

 

溢れてくる涙を無理矢理飲み込み、あたしはニッコリと笑いながら、管に繋がれた痩せこけた骨ばった左手を優しく両手で包み込むと光を無くした虚ろな黄緑色の瞳を覗き込む。

 

「こんにちは、歌兎」

「‥‥ふひひひひ‥‥へへへへ‥‥」

「こんにちは、歌兎。あたしが見えてますか?」

 

すると、光を灯してない黄緑色の瞳が数回あたしの顔を見ると笑い声が止み、代わりに微かな声が聞こえてくる。

 

「‥‥ごしゅ‥‥じん‥‥さま‥‥‥? ‥‥くすりの、じかん‥‥です、か‥‥‥‥?」

「いいえ、あたしは貴女のご主人様ではないデス。貴女のお姉ちゃんデス」

「‥‥おねえ‥‥ちゃ、ん‥‥? わたし(・・・)の?」

 

(僕ではなく私、デスか‥…)

 

ひょっとしたらと期待していた気持ちをへし折られ、また込み上げてくる気持ちに蓋をしきれずに声を潤ませながら答える。

 

「えぇ、貴女の」

「‥‥そう‥‥なん、ですか‥‥、わたしの‥‥」

 

あたしから天井へと視線を向けた歌兎は震える瞼を閉じるとゆっくりと目を開ける。

 

「‥‥ごめんなさ、い‥‥わたし、あなたのこと‥‥」

「覚えてないんデスよね。わかってますよ」

 

自分で言ってて泣きそうになる。

 

そう、覚えてないのだ、彼女は。

 

あたしという実姉がいた事、自分にはマリアとセレナ、調の三人の他に一緒に苦楽を共にし過ごしてきた家族達がいた事、自分が奏者として強敵と戦ってきた事、その中で響さんやクリス先輩、翼さんという素敵な仲間と出会えた事を。

暁 歌兎として生きてきた13年の記憶を覚えていないのだ。

 

いいや、覚えてないという表現は正しくない。

 

正しくは彼女が言うご主人様たちによって、記憶を弄られ、消され、偽の記憶をはめ込まれたのだ。

 

「‥‥そう、です、か‥‥、ごめんなさ、い‥‥めには、みえないけど‥‥あなたが、かなしんで‥‥いるようにおもえますから‥‥」

「そうデスか?あたしは歌兎と話せて楽しいデスよ」

「‥‥そう、ですか‥‥なら、よかっ‥‥た、です‥‥」

 

そう言い、淡く微笑む彼女は昔の彼女でーーーー。

あたしは抑えきれなくなった涙を乱暴に緑色のパーカーの袖で拭うと明るい声を出す。

 

「‥‥ッ。ちょっくら、ジュースでも買ってくるデス。歌兎、何か飲みたいものはありますか?」

「‥‥いいえ、おかまい、なく‥‥」

「遠慮しなくてもいいんデスよ。お姉ちゃんが好きやつ帰ってあげるデス」

「‥‥でしたら‥‥ここ、あ‥‥が、のみたい、で‥‥す‥‥」

「了解デス!」

 

そう言い、彼女へと背中を向けたあたしは部屋の外へと歩いて行ったのだった‥‥‥。

 

 

 

 

後に捕まった歌兎を誘拐した男性達が聖遺物との融合体を秘密裏に研究している闇グループだった事が判明し、そのグループの一人がおしゃべりだった為、誘拐された歌兎に何がされていたのかが判明された。

 

まず、捕まえた歌兎の両手両足を鎖で繋ぎ、身動きが取れなくなったところで服を破り捨て、融合体であることを確認後、自分達が今まで開発してきた様々な薬を歌兎へとうていったとの事。

様々な薬の副作用で歌兎の感覚が麻痺してきたならば、その身体へとメスを入れ、様々な臓器を調べていき、自分達の都合のいい人形に歌兎をするために脳までも弄ったとニヤニヤしながら楽しげに笑いながら言っていた。

そして、最後にその男はあたしをチラッと見て、ニタァと笑うと『なかなかにいい女だったぜぇ。俺が小突く度に喘いでなぁ‥‥クククッ』と言い、誇らしげに自分が歌兎を蹂躙した話を話すその男を気づけば、あたしは殴っており、響さんと翼さんが力づくで引き剥がしてくれるまで馬乗りになって交互に頬へと拳を埋め続けた。

 

しかし、男達がいくら自分達の行いを白状しても歌兎を元に戻す方法は見つからずに時間だけが残酷に過ぎていき、歌兎は眠るように14歳という短い生涯の幕を閉じたのだった‥‥。




ということで、切ちゃんの視点から書いたこのバッドエンドですが‥‥如何だったでしょうか?

何回も書き直したこの話は【髪の毛拭きの輪】の後書きにて書いた『笑顔の三文字が歪』からイメージして書いたストーリーです。
ボツにした話の中には、歌兎の歪な笑顔と彼女を守りきれなかった自分自身に罪悪感を覚え、彼女へとナイフを突きつけ、続けて自分の首筋を切り裂く切ちゃんというなかなかにグロい話もあったりします。
バッドエンドなのですから、そこまでした方がいいのかなぁ‥‥とも思いましたが、そのストーリーでは二人が亡くなる姿を調ちゃんが見てしまうのでボツにして、なるべく柔らかい感じに仕上げました。

因みに、最後に13歳→14歳になったのは‥‥その歳になった途端、息を引き取ったからです。





と、今回の話は暗めでしたので‥‥雑談コーナーは明るめにいきましょうッ!!


最初に、ここ最近のガチャの結果ですが‥‥すっごく良いです!
この前はユニゾン切ちゃんと共に新必殺技の切ちゃんがゲット出来なかったのですが‥‥最初の10連で当たりました!すっごく嬉しいですっ!!!(大興奮)

この切ちゃんの必殺技、カッコイイですし‥‥何よりも完全覚醒した後の姿がーーってここから先は変態な事言いそうですので、やめときます(笑)

しかし、順調な反面、不安なことも‥‥というのも、今日予告された【銀弾の軌跡】に書かれていたあらすじにはヴァンパイアの病に倒れて決まった三人を救うために一人で戦う切ちゃんってあって‥‥『切ちゃん単独イベント!?なにそれッ!?最高の誕生日プレゼントじゃん!!?』と大喜びな私もいれば、『ん‥‥?しかし、単独ということは‥‥☆5も必ずくるってことだよ、な‥‥』と冷静になり青ざめる私もいたりします(笑)

まだ、どうなるかは分かりませんが‥‥なるべく最初の10連でッ!!
そうじゃなかったら、誕生日までには‥‥ッ、私の誕生日までには‥‥当たってくれるようにッ!と祈らざる終えない私です(笑)


また、新しく追加されたプレイヤーアイコンは実にきりしららしいものでしたね♪
もう、あのアイコン見てから‥ニヤニヤが取らないですよ、私(ニヤニヤ)
出来れば、二人揃ってゲットしてあげたいと思います、あのアイコンッ!!(ぐっ)

だって、エプロン姿でチョコレートを作り得意げな調ちゃんも可愛いですが、『だいすき』と書かれたチョコ貰って嬉しそうにハートマーク飛ばす切ちゃんも可愛いですよ‥‥もう、どんだけお互いがダイスキスキスギなの‥‥尊‥‥(二人の可愛さを噛みしめる私)



そんな二人のアイコンは2月14日のバレンタインをイメージしており、その2日後の16日は調ちゃんの誕生日。
そして、その日から二月の終わりまで池袋のpop up shopにて期間限定のチャイナ姿のみんなのグッズが発売させますね(微笑)

私は残念行けませんが、画像はバッチリ見てきましたッ!!

イイッ!!きりしらくりイイッ!!(大興奮)

もちろん、きっちりカンフーポーズを決める響ちゃんの勇ましい顔つきや翼さんの深く入ったスレットから覗く細っそりした脚、全体的に露出度が高いというのにお淑やかなマリアさん‥‥三人ともいうにも素晴らしいのですが、クリスちゃんの恥ずかしそうに袖を引っ張る姿‥‥きりしらの和風っぽい花が描かれた黒いスカート‥‥そして、得意げに右手をあげる切ちゃんにもう興奮しっぱなしですよッ!

はぁ‥‥やはり、切ちゃんにはキリッとした顔も似合いますが、ここいった子供っぽい顔もよく似合うッ!


とと、かなり長く雑談してしまいましたね‥…(失笑)



最後の最後にお知らせなのですが‥‥無期限でこの【うちの姉様は過保護すぎる。】の更新を休もうと思ってます。
理由は大変自分勝手なものなのですが‥‥こうした方が他の作品に集中出来ると思いまして‥‥。
自分勝手な事は重々承知していますが、どうか寛大なお心で理解して頂けると嬉しいです(土下座)

また、こちらで行なっていたガチャの結果などはR指定の作品ですが、【歌切れる暁の悲劇〜暁切歌が様々な人に○○させる話〜】にてご報告させてもらおうと思います(土下座)

そして、暫く経ってからですが‥‥この話に【総数60話記念】である挿絵を挿入させてもらおうと思います。
デザインはまだ決めかねてますので、挿入までに時間はかなり掛かると思いますが‥‥楽しみにして貰えると嬉しそうです!


最後となりましたが、読書の皆さん風邪などはひかれない様に身体をしっかり温めてから‥‥お休み下さい。

ではでは〜(*´꒳`*)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11)ベルフェゴールな僕とルシファーなねえさま。

連続更新の第一弾の2話目。そして、この第一弾の最後の話となる11話はグロデスクなシーンと描写があるかもしれません。ので、そういうのが嫌な方はザザッとセリフのみでも読んでいただければと思います(礼)


10話に比べて、かなり短いですので…どうかよろしくお願いします。


廃墟と化した工場地帯のど真ん中に大きく開かれている広

場みたいなところで、破壊と殺戮を好む獣と化した僕は姉様へと禍々しい赤紫色のオーラを纏う槍を振り回して、姉様の魂を刈り取ろうとする。器用に僕の槍の攻撃を避けた姉様は右手に持った炎の剣を僕へと突きつける。それを寸前で交わした僕は唸り声をあげながら、姉様へと左手に持った棍棒を振りかざす。

そんな二人の死闘を遠くで見てきたシラねぇは悲痛な叫び声をあげる。ガチャンガチャンと檻を抜け出そうとするが、頑丈なそれはビクともせずに、無常にも刻々と時間だけが過ぎていく。

 

「グルルルっ!」

「ガァアアアっ!」

「やめて!切ちゃん、歌兎!なんで、二人が殺しあわないといけないの」

 

だが、僕と姉様の攻撃はゆるむどころか、激しさを増していく。姉様は親指と中指で音を鳴らすとそこには『ゲイブ』と言われる使い魔が現れる。四つの顔と四つの翼、そして翼の下に人の腕を飾ったそいつは姉様と見事な連携を見せて、僕を追い詰めていく。

ゲイブが吹き出してくる炎を交わし、姉様の炎の剣を寸前のところで回避すると僕はカウンターを決める。棍棒を無防備に空いている姉様の背中へと振り降ろすと、地面へと打ち付けられる姉様の身体に向けて、右手持った槍を突き刺そうと振りかざす。だが、その攻撃は生身の人間では出来ないであろう動きで身体を起こした姉様によって失敗した。

 

(…くそっ、おしい…)

 

「…グル…っ?」

 

僕はそこで首をかしげる。

僕はさっきなにを思った?ーー“おしい”って?

姉様を仕留められなかったことを“おしい”と感じたのか?...僕は…。

 

僕は両手に持った槍と棍棒をコンクリートへと落とす。そして、静かに唸り声を上げている姉様を真っ直ぐ見つめる。

赤紫色のオーラに包まれた姉様は、僕の知っている姉様ではなく、全くの別人のようだった。少し垂れ目な大きな瞳は釣り上がり、いつもは太陽のような、見ているこっちが温かい気持ちになれる満面の笑顔を浮かべている口元からは真っ白な八重歯が剥き出しになっている。

今の姉様の表情を飾るのは、怨讐や相手を痛めつけることへと昂揚感で満ち溢れている。

そんな姉様に僕は唇を噛みしめる。

 

(…知ってる。僕が姉様をこんな感じにしちゃったんだ)

 

僕は両手を大きく横へと広がる。そんな僕の行動に、僕の中にいるそれが鋭い声を上げる。

 

「…ッ!」

 

【おい、主人!奴は弱ってる。ここで畳み掛けるべきだろ】

 

(…だまれ)

 

【ここで打ち取られねば、主人が死ぬぞ!死にたくないだろうのだろう?ならば、ここで奴をーー】

 

「黙れと言ってる!」

 

その広場に響き渡るほどの大きな声で叫んだ僕に、僕の中にいるそれは口を紡ぐ。そんな奴がいる左腕へと視線を向けながら、僕は眠たそうなに開かれている黄緑色の瞳へと強い意志をたぎらせる。

 

【…】

 

「言わせておけばペラペラと屁理屈を…。…僕は姉様を殺してまでも、自分が生き残ろうとは思わない。姉様を救えるなら喜んでこの命を差し出すよ、何にでも」

 

(だからね、姉様。いつものように笑ってよ、僕は姉様の笑顔が好きなんだ)

 

僕に向けて、闘争心を剥き出しにして突っ込んでくる姉様へと僕は両手を広げて出迎える。赤紫に染まってしまった少し垂れ目な瞳を真っ直ぐ見つめ、姉様が僕へと体当たりしてくる。

そして、姉様の突き出した左手は華奢な僕の身体をいとも簡単に貫くのだったーー

 

「ガルルルッ!!」

「ごぼっ」

 

僕の口元から大量の血が吹き出る。そして、僕の苦しそうな声に目を覚ました姉様は目の前の状況を見て硬直する。

それは固まるだろう。姉様の左腕が僕の胸の真ん中へと突き刺さり、吹き出す血液の中、姉様の左手に握られていた僕の心臓は姉様の手により破壊され、ベチャベチャとコンクリートへと無残な肉の塊として落ちていく。

力なく姉様へと倒れる僕を支える姉様。その顔は普段の、僕に対して過保護すぎる姉様で、そんな姉様の顔を最後に見れて、僕は満足そうに淡く微笑むと掠れ声で囁く。

 

「…へ?…う、た…う…」

「…姉様、意識が戻ったんだね…よ…かっ…た……」

「…うそぉ…なんで…こんな…。こんなのって…あの夢よりもひどい…結末じゃないデスか…っ。あたしは…なんで…こんな事を…して……」

「…だいすきだよ…ねえ…さ、ま。…ねえさま…どう?」

「そんなの大好きに決まってるじゃないデスか!なんで、そんな事聞くデス…歌兎…」

「…ふふ…うれしい…な…。ね、えさま…ぼくね…。…いいたいこと…があるんだ………」

「なんデスか?歌兎」

「…これからも…ずっと…あいして…る…よ……、ねえさま…」

 

そこで息を引き取った僕を抱きしめて、姉様は空に向かって大きな声で叫ぶ。

 

「嫌嫌嫌嫌ぁ…嫌デスっ…歌兎ぅうううう!!!」

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

自分の手によって亡き者にしてしまった歌兎だったものを抱きしめながら、あたしは大粒の涙を流す。ぐちゃぐちゃになるあたしの顔を見ながら、近寄ってきた足音に顔を上げるとあの憎らしい男が立っていた。

 

「あ…あぁ…ぁぁ…」

「いぃ〜やぁ〜、よくやってくれたよ、君は!まさか、こうも簡単に自分の妹へとトドメをさせるとは思いもしなかったですよ」

 

泣きじゃくるあたしから“歌兎だったもの”を引き取ったあの男はあたしへと追い討ちをかけてくる。それに両耳を塞ぎながらもバッチリと聞こえてしまったあたしは虚ろな目をして、地面の一点を見つめる。

 

「あぁ…うたう…」

「しかし、僕にあんな罵詈雑言を言っていた貴女が1番ひどい事をしてるじゃないですか?その赤く染まった左手を見てください。貴女はさっき、そうついさっき!その左手でっ!最愛なる妹の心臓を握りつぶしたんですよッ!!その時の貴女の顔を見せて上げるなら見せて上げたいなぁ〜、最高にいい笑顔でしたよぉ〜?ねぇ、教えてくださいよ!大好きで大好きで大好きでたまらない妹の心臓をその左手で握りつぶした感想っ。嬉しかったですか?それとも、楽しかったですか?」

「切ちゃん、ダメ!!博士の言葉に耳を貸さないで!!」

 

大親友の調の声が聞こえたが、頭の中でずっと流れるのはあの男のセリフだ。

 

(…あたしは…歌兎を殺したのに、笑ってた…?そもそも、なんでこんなことに…。あの夢よりもひどい結末をあたしはこの手で使ってしまった…。

あの子がいない世界なんて…もうーー。そもそも、あの子を殺してしまった…こんなあたしが生きている理由なんてーー)

 

「…ぁあああ…アァアア!!!」

「さぁ!全てを破壊する獣と成り変われ!暁 切歌」

 

ウェル博士のその言葉に応じるように、あたしの身体は赤紫のオーラから禍々しい青紫色のオーラへと成り替わる。そして、檻から解放された調へと襲いかかる。

 

「コワス、コロス、スベテヲ」

「そんな…切ちゃん…」

「マズハオマエカラ」

「あははっ!これで全てが揃った!さぁ、神よ。ここにいる器へと宿れ!そして、僕へとこの世界を支配する叡智を!!」

 

あの男が何か言って笑っているが、もう関係ない。あたしがこの理不尽な世界を壊し、破壊して生まれ変わらせるその為には、まずは邪魔となる目の前のこの桃色の奴から排除しようと手に持った炎の剣を振りかざそうとするが、うまいタイミングで橙の拳と白の拳によって阻止させる。

橙の拳にお腹を殴られ、その衝撃に後ろへと後退したあたしの目には二人の少女と女性の姿があった。

 

「ガルルルぅ…」

「ウェル博士…あなたという人はッ」

「歌兎ちゃんの仇…必ず、私たちがとってみせます!」

 

琥珀色の瞳に激怒の炎をたぎらせ、真っ白なマフラーを風にたなびかせている響さんが愉快そうに笑っているウェル博士を睨む。それは隣に立っているセレナも同じようで、響さんと同じような構えを取るとウェル博士を睨みつける。

 

「くくくっ…やっときたか。だが、もう遅い。僕らの作戦の邪魔を誰もできやしない。何故なら、今そこにいる獣が我らの神が宿る器を作ってくれたからな」

 

顎であたしを指差すウェル博士に響さんとセレナが同時に眉をひそめる。セレナが問いかける質問にも答えずに、ウェル博士は白衣を翻すと建物の中へと入っていく。

 

「…器?」

「気は確かなの?ウェル博士」

「…くくくっ。あと少しだから、それまでそこにいる獣と遊んでいるといい。僕のチルドレンだち、いくぞ」

「はい、ファザー」

 

元気よく返事した青年、少女、少年たちはウェル博士から歌兎の遺体を受け取るとウェル博士へと続く。その後に続こうとする響さんとセレナだが、そんな二人の前にあたしが立ちふさがる。

お互いに武道の構えを取る響さんとセレナに調も続く。

 

「っ!やるしかないってことかな、いける?セレナちゃん」

「はい、私はいつでも。こんな状態の暁さんをこの外に出すわけないはいきません!ですから、姉さんやクリスさん、翼がここに到着するまで私たちで持ちこたえましょう」

「響さん、セレナ!私も戦います」

 

足にあるローラーを展開させた調に響さんが心配そうな視線を向ける。だが、調はそれに対して首を横に振るとあたしへと回転式ノコギリを向けてくる。

 

「でも、調ちゃん大丈夫?」

「大丈夫ですよ、響さん。…私はここに居たのに。何も出来なかった…。だから、せめて、切ちゃんを元に戻す手助けをしたいって思ってます」

「うん、一緒に元に戻しましょう、暁さんを」

 

セレナに肩を叩かれ、調は強く頷く。

まずは最初に響さんがあたしへと距離を縮めて、拳を叩き込んでくる。その後ろから、調の回転式ノコギリに乗ったセレナが突っ込んでくる。見事な連携に追い詰められたあたしは地面を思いっきり壁を蹴ると破壊する。

それによって、あたしを見失った奏者三人から流れるようにぴょんぴょんと建物を飛び移っていく。

 

「グルルルぅぅ!!!」

「あっ、切ちゃん!」

 

最後に調の声が聞こえたが、あたしはその場から逃げ出す。

そして、この“最愛なる人”がいない世界を破滅させようと繰り出す。近づいてくる街を見て、あたしが思ったことは一つ

 

ーーあぁ、これでこの理不尽な世界を…そこに住む人をコロセル、と。




というわけで、連続更新の第一弾はこれでおしまいです。第二弾は12.13を連続更新しようと思ってるので…どうかよろしくお願いします。
その間はまた漫談編を書きますので、よろしくお願いします。



ここからは余談なんですが…
切ちゃんがウェル博士に脅されて同化せずに居れなかった【完全聖遺物・ルシファー】なのですが、【ルシファー】には対となる女神がいるそうです。それが【ディアーナ】という女神なのですが…なんとっ!狩猟、貞節と【月】の女神だそうですっ!
これを見た私は思いましたーーこれは、運命だったのではないかと。切ちゃんがこの【ルシファー】を使うというのが…(静かに確実)

残念ながら、この【ディアーナ】は私の小説には登場しないのですが…興味のある方は是非とも使ってみてください(笑)

以上、余談でしたm(__)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

漫談:過保護な姉様のお泊まり、そして僕は…。

今回の漫談はとにかく楽しい話を書こうと思い、書いたものデス。
なので、この話を読んで、読者の皆さんが笑ってくださったらと思ってます。

まぁ、今回の切ちゃんも過保護度は安定の100パーセントですので…それに巻き込まれるみんなはとても大変だと思います(笑)

今回の話のあらすじは
学校で仲良くなった友達の家へとお泊まりに行こうとなった切歌と調だが…。そこで、切歌が歌兎を置いて、お泊まりにはいけないとタダをこねる。そこで、歌兎も切歌を説得しようとするが…、切歌は聞く耳を持たずに。終いには、切歌が泣き出してしまうといったところから、スタートとなっております。

過保護な姉様が織りなすハチャメチャなお泊まり劇をどうぞ!

*今回はかなり短いです。


二課にある休憩所の中。金髪に黒のバッテンの髪飾りが特徴的な少女が膝立ちになって、目の前にいる水色が混ざる銀髪を背中近くまで伸ばした少女へと抱きついて、ポロポロと涙を流している。

その様子に周りにあるものは唖然とし、ある者は苦笑いを浮かべ、またある者は申し訳なそうな表情を浮かべ、最後の一人に至って呆れ顔を浮かべている。

いつものことながら、この二人ーー暁姉妹は波乱の中を生きている。いや、姉の方が進んで、波乱を進んでいくのだ。故に、妹もその姉の背中を追いかけてしまってるため、もう誰もこの二人の暴走を止められないのだ。

 

「…うぅ…歌兎ぅ〜…」

「…姉様、泣かないで。明後日には会えるから」

 

年甲斐もなく、妹・歌兎の胸へと顔を押し付けて泣いている姉・切歌へと歌兎は姉の頭を撫でながら、優しく語りかける。しかし、歌兎の励ましの気持ちは肝心の姉には届かずに、またしても姉様お得意のちんぷんかんぷんな方向へと話が進んでいく。それには、流石の歌兎も困った表情になっていた。

 

「1日も離れ離れなんデスよ!明日、お姉ちゃんはどうすればいいのデス?」

「…姉様にはシラねぇがいるから。それに、僕は友達とも仲良くしてほしいって思ってる」

「なんデスと!!?歌兎はお姉ちゃんと離れ離れでも寂しくないと…そういうデスか…?」

「…ううん、そうじゃなくてね…。僕が言いたいのは…」

 

そんな二人の様子を遠くから見ていた明るい茶色の髪をしている少女・響が切歌を見てはポツンと呟く。 その隣にいる青い髪を結んでいる女性・翼は眉を潜めると、事の成り行きを見守っている。そして、そんな翼の横にいる白髪の髪を赤いシュシュで結んでいる少女・クリスが実に様々な表情を浮かべている元F.I.S.組へと問いかける。

 

「あらあら、随分荒れてますなぁ〜」

「むぅ?何故、切歌は歌兎に抱きついて泣いているのか?」

「…なぁ、なんだ?これ」

 

顎で目の前の光景を指され、元F.I.S.組は視線を下へと向けると揃って頭を下げる。それはまるで、うちのダメ娘がまたやんちゃを…とお詫びの品を持って回る親の姿によく似ており、この三人が普段からこの過保護な姉に手を焼いているのかがよく分かる反応であった。

 

「え…と…」

「三人ともお騒がせしてごめんなさいね」

「明日、私と切ちゃんが友達の家にお泊りに行くんです。何ですが、切ちゃんが歌兎を置いてはいけないって。私は皆の邪魔になるし、最も歌兎が居づらいだろうから。諦めようって言ったんですが…終始、こんな状態でして」

 

漆黒の髪をツインテールにしてる少女・調はチラッと切歌の方を見ると、まだ抱きつかれている歌兎へと視線を向ける。歌兎は調たちの方を見ており、その眠たそうな黄緑色の瞳には大きく“たすけて”の四文字が浮かんでいた。

基本、姉には絶対服従の妹すらもドン引きの駄々をこね続ける切歌。だが、ここに居る誰もが歌兎へと期待をしているのだが、この状態では切歌の勝ちとなってしまうかもしれない。

しかし、意外な人が発した言葉により、この話は終焉を迎える。

 

「あぁ、なるほど、そういうことか。でも、それって、たった1日だけなんでしょう?私や未来もよく遊びに行ってるし、切歌ちゃんも楽しんでくるといいよ。歌兎ちゃんはここにいるみんながしっかりお世話するからさ」

「そういう簡単な問題じゃないんデスよ!響さんっ」

 

響が何気に発したセリフに切歌がつっかかる。グイッと整った顔立ちを響へと近づけると、力強く肩を揺らす。それに、響は目を回す。

 

「おぉっ!?急に食いついてきたね、切歌ちゃん」

「響さんまでなんでそんなこというデスか!?そんなにあたしと歌兎を切り離して、何を企んでるんデスか!あたしが悲しむ姿を見て、みんなして笑ってるんデスか〜っ」

「肩を揺らさないで、切歌ちゃ〜ん〜」

 

高速で前後ろと響の肩を揺らすたびに、響の首がカクンカクンと良からぬ音を立てており、琥珀色の瞳はぐるぐると渦巻きを作っている。その様子に、今まで傍観していた翼が興奮している切歌の方を叩く。

 

「まあまあ。落ち着け、切歌。誰もそんなことは考えてない。ただ、切歌にも楽しんできて欲しいだけなんだ、友との思い出、とてもいいではないか。私は切歌にも…もちろん、月読にも心に残る思い出を作って欲しいと思っているぞ」

 

翼の暑いスピーチの後、目を回している響の肩を強く握りしめて、下を向いている切歌はポツンと呟く。それには眉をひそめるクリスに切歌は大きな声でちんぷんかんぷんな事を言う。

 

「…さい」

「はぁ?なんて言ったんだ?」

「じゃあ、今日だけは歌兎とずっと一緒にいさせてください!それで、明日を生き抜く為の歌兎成分を貯めるのデス!」

 

その時、ここにいる人たち誰もが思っただろうーー

 

(ーーいさせてくださいも何も毎日一緒にいるじゃないか)と。

 

それと、(歌兎成分ってなんだ?)とも。当事者である妹の歌兎までもが、普段は絶対服従の姉へと何言ってるんだ?こいつ、みたいな顔をしているのを周りにいる誰もが目撃していた…




というわけで、次回はお泊まり前日と当日の話を書こうと思います。

主人公が誰の家に泊まるかは…次回までのお楽しみということで(笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

漫談:過保護な姉様はお泊まりへ、そして僕もお泊まりへ。

遂に、お泊まりへと向かう切ちゃんと○○○お姉ちゃんの家へとお泊まりに行くことになった歌兎。

二人は果たして、無事にお泊まりを終えることができるでしょうか?


10/12〜誤字報告ありがとうございます!


大きな声でちんぷんかんぷんな事をおっしゃった姉様は、それ以降、僕を膝の上へと載せるとニコニコと満面の笑みを浮かべている。ギュッと抱きしめては、スリスリと頬を擦り付けてくるのが擽ったく、僕は身をよじる。だが、強く抱きしめられた両腕のせいで、僕は思ったように動かずに、姉様のなすがままになっていた。

そんなご機嫌な姉様へとマリねぇがため息混じりに聞いてくる。それは、僕のことであった。

 

「それで切歌。歌兎はどうするの?もちろん、私たちが見るのよね?」

「そうだね。歌兎ちゃんの家は私たちのところだし、他のみんなに迷惑はかけらーー」

 

マリねぇのセリフにセレねぇが頷き、勝手に話が進んでいく。だが、それを聞いていた姉様の少し垂れ目な瞳が一瞬修羅のようになる。それに驚く僕の方は見ずに、姉様は真っ直ぐにマリねぇとセレねぇを見つめる。

姉様のトレードマークとなっている“デス”口調も消えたマジ口調で淡々と二人をディスる姉様に、シラねぇと周りのお姉ちゃん達はぽかーんとしていた。そして、ディスられた二人は涙目になって、姉様へと抗議していた。

 

「マリアは今までの行いから信用出来ないので却下。絶対、あたしがいない間に歌兎へと鬼畜な事をしでかすに決まってる。大体、歌兎に料理を教える腕がマリアには無い。なのに、歌兎に料理や他のことを教えようなんてちゃんちゃらおかしい」

「ちょっと、切歌。それは流石に言い過ぎよ!私だって、料理くらい作れるわ」

「…ふっ」

「なによ、その深み笑いは!私だって出来るんだから…本当なんだから…」

「そして、セレナ。あなたもあなただよ」

「へ?」

「あなたの人生は流されてばかりだ。どうせ、今回もマリアに流されるに決まってる。そんなセレナには歌兎は預けられない」

「ちょっと暁さん、それは言い過ぎたよ!私の人生まで否定するなんて!」

 

抗議してくるカデンツァヴナ・イヴ姉妹が周りで騒いでいるにもかかわらず、姉様は真剣な表情でブツブツと独り言を呟いている。そんな姉様が怖く、僕は姉様の隣に立っているシラねぇへと視線を向ける。

 

「こんな二人は例外。クリス先輩も例外。あの人こそ、歌兎になにをしでかすかわからない」

「…シラねぇ。今の姉様、怖い。すごく怖いんだけど」

「奇遇だね、歌兎。私も怖いよ。こんなに真面目な切ちゃん、初めて見たかも」

「…そう言われるとそうだね」

 

僕とシラねぇは密かに思う。

この集中力をもっと他のことへと向けてくれたならば、他の人はもっと助かるのに…と。

そして、暫し、ブツブツ呟きていた姉様は突然、前を向くと僕を連れてある人のところまで歩いていく。その人の前に来ると、頭を下げる。

 

「翼さん。あした、歌兎のことお願い出来ないデスか?」

「私か?別に構わないが…マリアたちはいいのか?」

 

青い髪を揺らして、マリねぇとセレねぇのいるところへと視線を向ける翼お姉ちゃんにねぇやたちは頷く。

 

「えぇ、大丈夫よ。そうしないと、この子がまた駄々をこねそうだし」

「私からも歌兎のことよろしくお願い、翼」

「うむ。マリアたちがそこまで言うのであらば、この剣。責任持って、歌兎を預ろう。そして、無事に歌兎を切歌へと返すことを誓う」

「はいデス、翼さん。歌兎のことよろしくお願いします」

「…お願いします、翼お姉ちゃん」

「あぁ、こちらこそよろしく頼むぞ、歌兎」

 

自信満々に胸をはる翼お姉ちゃんを側から見ていたクリスお姉ちゃんと響師匠がポツンと呟く。

 

「…おい、本当に先輩で大丈夫とおもうか?」

「…んー、大丈夫なんじゃないかな。ほら、翼さん自信満々だし!きっと、大丈夫だよ」

「…はぁ…、お前もあそこにいるやつもお気楽だな」

 

クリスお姉ちゃんだけ、このお泊まり会に不安を感じていた……

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

今朝の今朝まで、僕にベッタベタだった姉様は泣きそうな顔をしながらもシラねぇの手を握り、愛用している黄緑色のショルダーバッグを担ぐ。そんな姉様の手を握っているシラねぇは桃色の手提げカバンを持つと、二人揃って振り返ってくる。

 

「うぅ…これで最後になるのデスね…」

「暁さんは大袈裟だよ。たった1日でこれなら、三日とかになるとどうなるんだろ?」

「明後日には会えるのだから、その為に歌兎は翼のところに泊まりに行くのでしょう。あなたたちも楽しんできなさい」

「セレナとマリアには、あたしのこの気持ちはわからないのデスよ!うぅ…歌兎ぅ…」

 

マリねぇとセレねぇの言葉にむくれた姉様が僕へと抱きついてくる。そんな姉様を受け入れながら、僕はゆっくりとシラねぇへと姉様を引き渡す。

 

「…姉様。僕なら大丈夫だよ。だから、シラねぇと楽しんで来て」

「…うっ…分かったのデスよ。歌兎も翼さんに迷惑かけちゃダメデスよ」

「…ん。任せて、翼お姉ちゃんには迷惑かけない。姉様たちが帰ってくるまでいい子にしてる」

「うん、約束デス」

 

姉様とゆびきりげんまんをした僕へと、まだまだ何が言いたそうな姉様の首根っこを掴んだシラねぇがずるずると姉様を引きずって、ずんずんと歩いていく。対する姉様は来ている服が首にしまって、苦しそうであったが…。

 

「そろそろ時間になる、切ちゃん。マリア、セレナ、歌兎、いってきます。切ちゃん、行くよ」

「わわっ!?調、いきなり引っ張ったらこけるデスよ!?こけるっ、こけるデスっ!あと、首が絞まって苦し…」

 

セレねぇと共にバイバイする僕たちへと、シラねぇと姉様がバイバイしてくれる。そんな二人へとマリねぇがお母さんみたいな発言をすると、セレねぇがそれをからかう。

 

「いってらっしゃい。月読さん、暁さん」

「泊まる人に迷惑をかけちゃダメよ。あと、調はちゃんとは歯磨きして…それから、切歌は…」

「姉さん、本当にお母さんになったよね」

「なっ!?セレナ。私、まだそんなに歳じゃないわよ!それにあなたまでそんな事を言うの!」

「歌兎ちゃんもそう思うよね」

「…ん、マリねぇは僕たちのお母さん」

「歌兎まで…そんな事を…。私、そんなに老けてるのかしら…?」

 

僕の発言にがくっと膝をつくマリねぇ。セレねぇはからかいすぎと思ったのか、マリねぇへと謝罪している。そんな二人から視線を逸らして、遠ざかっていく姉様の背中を見ているとあることを言うのを忘れていたことを思い出し、僕は駆け足で二人を追いかける。

 

一方、シラねぇに手を引かれている姉様はチラチラと後ろを振り返っては、寂しさと心配で顔を歪める。そんな姉様へとシラねぇが優しく話しかける。

 

「…うぅ…歌兎が遠くなってくデス…」

「そんな顔しないで、切ちゃん。これは歌兎に対して大事な事なんだよ。そろそろ、姉離れしないと…、このままじゃあ歌兎の為にならない。それに当てはまるのは切ちゃんもだよ。切ちゃんがいつまでもそうだと、歌兎も成長できない」

「そうデスが…調…。歌兎は普通の身体じゃないんデス…。いつ、ミョルニルが歌兎に牙を剥くかと思うと…あたしは…」

「うん、分かるよ。切ちゃんの気持ち。私も歌兎の事は心配だよ。本当なら、このお泊まりをやめて、あの子のそばに居てあげたい。でも、それはダメなの、あの子の将来のためにならない。だから、ここは心を鬼にするべき」

「うん…分かってるデス…。これも歌兎の為デス、心を鬼さんにするデスよ!」

「うん、そのいきだよ、切ちゃん」

 

繋いでいた手をさらにギュッと強く繋ぐと、二人の足取りが軽くなる。二人がどんどんとマンションから離れていく中、姉様は何を思ったのか、突然シラねぇへと抱きつく。じゃれついてくる姉様にシラねぇも嬉しそうな、困惑してるような表情を浮かべる。

 

「デスが、やっぱり、調は優しいのデス!そんな調があたしは大好きデスよ!」

「きゃあっ!?切ちゃん、歩きづらいよ。そんなに抱きつかれると」

「いいんデスよ。歌兎が側に居ない間、あたしは調といちゃいちゃするのデス」

「…いちゃいちゃするの?姉様。シラねぇと」

「はいするデス!…ん?」

 

僕の質問に元気よく答えた姉様は、不思議そう表情を浮かべると後ろを振り返ってくる。そして、真後ろにいる僕を見て、シラねぇと同期(シンクロ)した動きで飛び退くと上ずった声を上げる。それを聞いて、首を傾げる僕。

 

「…?」

「なぜ、歌兎が」「ここにいるデス!?」

「…そんなに驚いてどうしたの?姉様、シラねぇ」

「なんでも」「ないデスよ、歌兎」

「…?」

 

何故か、二人が顔を赤くしているのがまだ分からないが、僕は要件を言う。それを聞いた姉様は目を見開く。

 

「それで歌兎。どうしたデスか?」」

「…姉様に言う事を忘れて」

「あたしにデス?」

「…姉様。はっぴー」

「!! にゃっぴー」

「…頑張る」

「デデデース!」

「…魔法の言葉。姉様、シラねぇ、気をつけていってらっしゃい」

 

僕は背伸びして、姉様とシラねぇへとキスを落とすとバイバイする。それに嬉しそうに手を振る姉様、その隣にいるシラねぇへともう一度頭を下げる。

 

「えへへ…、じゃあ、行ってくるデス」

「…ん、いってらっしゃい、姉様。シラねぇ、姉様の事、よろしくお願いします」

「うん。歌兎も気をつけてね」

 

その後、姉様たちは無事に友達の家へと到着したらしい。僕も愛用してる花青緑色のリュックへとお泊まりの時に着るパジャマやらを入れると、マリねぇとセレねぇに連れられて、翼お姉ちゃんのマンションへと向かう。

ピンポーンとチャイムを押すと中から翼お姉ちゃんが出てくる。そして、マリねぇとセレねぇは翼お姉ちゃんへともう一度、頭を下げると自分のマンションへと帰っていったのだった…




と、かなり駆け足気味の前日と当日ですが…次回こそがこの話の本番ですので、お楽しみにm(__)m



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

漫談編:お泊まり会の前半戦

大変、大変お待たせいたしました!(汗)
過保護な切ちゃんと歌兎の波乱に満ちたお泊まり会ですが…最初は前半戦をどうぞ。
理由は本編を見ていただけるとわかると思うんですが…切ちゃんの『手紙』が思った以上に長くって…(汗)
前半、後半で分けることなってしまいました…本当にすいません…。

そして、今回の話の流れですが…

最初が【歌兎】⇨【切歌】みたいな感じまで書ければと思ってます。

また、切ちゃんと調のクラスメイトは私が考えたオリジナルキャラですので…どうか、そちらもよろしくお願いします。


*また、翼さんの部屋の家具や飲み物は私のイメージですので、どうかよろしくお願いします。


青い髪を揺らして、僕を部屋の中へと招き入れてくれた翼

お姉ちゃんの後をリュックを揺らしながらついていくと、リビングが現れる。

 

(…あれ?クリスお姉ちゃんが翼お姉ちゃんの部屋は汚れてるって言ったけど…そうでもない?)

 

黒と青を基調とした家具が置かれている。小綺麗に整えられているそれの上に、ほこりまたはその他のゴミを見せることはかなり難しい。僕が不思議そうに部屋の中を見ていると翼お姉ちゃんが冷蔵庫を開きながら、僕へと話しかけてくる。

 

「歌兎。そこにでも荷物を置くといい。疲れたであろう、何か飲み物でも飲むか?何がいい?」

「…んー、苦いものじゃなければなんでも」

「ふっ。なら、茶でもたてようか?抹茶は飲めるか?」

「…ん。大丈夫…だと思うよ」

「ふふ、何も経験だ。少し待っていてくれ」

 

翼お姉ちゃんが何か道具を取りに奥の部屋へと向かった瞬間、僕の視界の端に白いものが映る。それを拾い上げてみると、そこにはこう書かれていた。

 

(…あっ、これ)

 

小さいメモ帳の切れ端には綺麗な字でこう書かれていたーー【歌兎さんが来るとの事でしたから、いつもよりも念入りに掃除しておきました。緒川より】

 

「………」

 

僕はそれをなんとも言えない顔をして、静かに戻すと同時に、奥の部屋で道具を取りに行っていた翼お姉ちゃん帰ってくると、その翼お姉ちゃんのところへとトテトテと走っていく。そして、翼お姉ちゃんが見事な腕前で立ててくれた抹茶を和菓子共に飲んで、一息いれるとそこで姉様に渡すように言われていたものを思い出す。

 

「…あっ、これ、姉様から翼お姉ちゃんへって」

「うむ?なんであろうか?」

 

翼お姉ちゃんは僕が猫耳がついたパーカーから出した手紙を受け取るとそれを開くとその形良い眉をひそめる。

それを抹茶をすすりながら見ていた僕は翼お姉ちゃんに近づくと、その手紙の内容を盗み見る。そして、そこに広がっていたは…僕のよく知る姉様の残念すぎる文章たちで、大真面目な顔で真剣に解読しようとしている翼お姉ちゃんへと僕にも見せて欲しいと頼む。

 

「むむ…これは切歌から私に対する暗号なのか?切歌は私を試そうとしてるのやもしれぬ。この私が歌兎を守りに値する防人かどうかを!これは何としても解かねば、民を守る防人としての誇りとして!」

「…そんな大げさなものじゃないよ、翼お姉ちゃん。ちょっと、僕にも見せてみて」

「ああ」

 

翼お姉ちゃんが僕にも見えるように傾けてくれたおかげで、残念すぎる手紙の内容が露わになる。以下が、その残念すぎる手紙の内容だ。

 

【拝啓、つばさサン。

 

歌うの事、アズかっていたダキありがとうござイマス( ̄^ ̄)ゞあたしも調といっしょに友達のいえでの音鞠貝たの死んでキマス!(*'▽'*)

着きましては、つばさサンにお願いしたいコトがあるデス(>_<)

 

それは、歌兎の事デシ手…歌うは姉のあたシがいうのも難ですが、とても千歳な子なのデス(>_<)

ナノで、以下のことを顔つけて上げてくだ材デスm(__)m

 

一つ、木が絵はてつだって揚げて下さい。お願いしマス。

二つ、漁リは辛いモノか宙カヲ棚であげください。二つとも、歌兎の鉱物デスのでよろ昆布と思うデス。

三つ、おふ炉は一緒に入って、身体やあた間を洗って揚げて下さい。また、アガった後はかみの毛をよく吹いてあげてくだ材デス。風を弾いたら、恐いデスから。

四つ、お風呂のあトハ、濱餓鬼を詩テ挙げて星いのデス。最後のシア気磨きは絶対お願いシますデス。貴重面に見えて、歌兎はザツなのデ…そういうとコロを見て欲しいとデスよ。

五つ、錬るトキはトナリで寝てあげて星いのデス!歌うはサミシ狩り屋デスから、手をギュっと二切手あげるとイイと思うデス。

 

以上の五つの事と歌兎の麺ダウ、どうかよろしくお願いしマスデスm(__)m

Biきりか】

 

(…もう、ツッコミどころしか見つからない…。見つからないよ、姉様…。なんで、姉様は普段は素敵で頼りになるのに…こういうところは残念すぎるんだろ…)

 

僕は翼お姉ちゃんの方をチラッと見ると、手紙の一箇所を指差す。

 

「…これは【濱餓鬼】って書いてあるけど、本当は【歯磨き】って書きたかったんだと思う」

「歌兎は読めるのか?この暗号が」

「…うん。姉様が無意識に築き上げてしまった黒歴史を隣で見てきたから…」

 

姉様とねぇやたちと共に、刑務所で捕まっている時に、二課の皆様から届いた包みの中にあった“あの手紙”の存在に気づいて、『それは!それだけは見てはダメデェース!!歌兎!!』と必死になってそれを取ろうした結果、その場に居たみんなへと“あの手紙”を見られてしまった姉様の顔は、羞恥心で真っ赤にして、涙目になって後ずさり、近くにあったドアへと弁慶の泣き所を思いっきりぶつけてしまった姉様は余りにも惨めというか…可哀想だった。そして、僕は姉様の隠れた趣味(?)に愕然としたものだ。

あの時から比べたら、姉様の文章力も上がったと思っていたのだが、そうではなかったようだ…。そっとため息をつく僕の頭を何を思ってか、翼お姉ちゃんがポンポンと優しく撫でててくれた…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

一方、妹に同情されてると知らない切歌は調と友達と共に、ジェンガなるものを楽しんでいた。勝負も終盤へと差し掛かり、わざとブロックをみだしておいた策士の活躍もあり、切歌の出番となった頃にはいつ崩れてもおかしくないとこまで来ていた。

緊張のあまりプルプルと震える切歌に隣座る調が声をかける。そんな調の声援に応えるように気合を入れ直した切歌は、何故か“勢いよく”グラグラしている中心部分を引き抜くーーそれには、調も周りにいるクラスメイトもぽかーんとしていた。

 

「…ここ、行くデスよ!」

「切ちゃん、落ち着いて。そんなに緊張しなくても大丈夫。切ちゃんなら出来るよ」

「はいデス!調の期待に応えるデスよ!うりゃー!!!」

 

ドヤ顔を浮かべる切歌めがけて、ジェンガが倒れてきて、ブロックに目やら頭やらを打った切歌は涙目で周りにいるメンバーを見つめる。だが、ルールはルールはそう簡単に曲げるわけにはいかないのだ。

 

「痛タァ…デース…。ぅぅ…あかねぇ…みずはぁ…はずきぃ…しらべぇ…嫌デスよ…」

「いや、そんな目してもダメだから、キーの負け。負けだから」

「ごめんね、切歌。私もこればっかりは助けられないかな」

「暁さん、どうしてドヤ顔でそんなところを抜いたんですか?まだ、勝ち目はあったのに」

「…切ちゃん、ごめんね。私もみんなと同じで力になれそうにないよ」

「…うゔぅ…嫌デス!もう、あのトンデモ飲みたくないデス!」

 

連敗が続く切歌は目の前に置かれた凄まじい色をした飲み物をみては顔をしかめて、隣の調へと助けを求める。だがしかし、調は静かに首を横に振り、それを見て、覚悟を決めた切歌は目をギュッと瞑るとその黄土色した飲み物を一気に喉へと流し込む。

そして、一気に弾け出す様々な味覚達。切歌はカップを机へと置くと苦しみ出す。

 

「辛!?苦!?甘!?いや…これは苦い…ウプッ、かと思ったら…激甘がきたデスよ…。ヴエェ…」

 

バタバタと苦しんだ切歌は水を持ってきた調に助けてもらいながら、なんとか一命をとりとめたのだった…。

そして、そんな切歌の様子を見て、ゲラゲラ笑うこのトンデモ飲み物を生み出した元凶を一瞥すると、その元凶に向けてもうひと勝負を挑む切歌。

その後の展開は、彼女達のみが知る…。だが一つだけ分かるのは、負けたものは毎度『デデデース!!?』と言っては床へと倒れていったそうだ…




次回はこの後半戦を書きたいと思います!

安定の過保護と残念な部分をいたんなく発揮する切ちゃんはお姉ちゃんの鏡なのデス。

歌兎ならそういうと思いますよ(笑)




◎オリジナルキャラクター説明

調、切歌のクラスメイト。

伊勢野 紅音《いせの あかね》
切歌が飲んだトンデモ飲み物を作り出した張本人。とある企業社長の一人娘で、その為料理などは全然出来ずに、誤って食べてしまったものは瞬時に気絶する。

幅井谷 水羽《はばいたに みずは》
紅音とはお隣同士の幼馴染で、暴走する紅音のストッパーである。だが、殆どが間に合わない為、紅音の犠牲者は後を絶たない。

皆之富 はずき《みなのとみ はずき》
紅音作のトンデモ料理の最初の犠牲者。それがきっかけで、二人と仲良くなったが、身をもって紅音のトンデモ料理の破壊力を知ってるので、水羽と共に紅音の暴走を止めるべく奮闘する。

以上、簡単な自己紹介でしたm(__)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

☀︎new☀︎漫談編:お泊まり会の後半戦

大変、遅くなりました…

過保護な姉様こと切ちゃんと、姉様には基本絶対服従な妹こと歌兎のお泊まり会ですが…果たして、無事に終わる事が出来るのでしょうか…?

それは神のみぞ知る事でして…誰にも分からない事なのです…


翼お姉ちゃんの家にて、ゆっくりさせてもらっているとあ

っという間に、定期的に行なっている響師匠との訓練の時間となり、翼お姉ちゃんのバイクに乗せてもらって、約束場所に着くと橙のジャージを着た響師匠が軽くストレッチをしていた。翼お姉ちゃんにヘルメットを返していると、師匠が歩いてくる。

 

「あっ、歌兎ちゃん、翼さん、こんにちは」

「…こんにちは、師匠」

「こんにちは、立花」

 

自身のヘルメットも外し、バイクへとかけた翼お姉ちゃんに師匠は頬を照れたようにかきながら話しかけてくる。それに微笑みを浮かべながら、答えた翼お姉ちゃんは僕の方をチラリと見ると遠い目をする。

 

「いやぁ〜、びっくりですよ。翼さんまで来るなんて」

「いや、私も来るつもりはなかったのだが…歌兎をここまで、私が付いて行かずに歩かせて来たとなると…切歌がな」

 

その藍色の瞳にはここには居ない僕の過保護な姉様が映っており、それには師匠も僕も頷く。あの姉様が僕をここまで歩かせるわけがない…実際、毎日僕を半分以上の距離背負って歩いているし…。

そんな事情を知る師匠は苦笑いを深くすると頷く。

 

「あはは、そう言えば切歌ちゃんって毎日欠かさずに、歌兎ちゃんを近くまで送ってくれますし、帰りにはここまで迎えに来てくれるんですよ。本当、いいお姉ちゃんですよね〜。ねぇ、歌兎ちゃん」

「…ん。僕の姉様は世界一優しくて素敵な人」

「あはは!それは私と翼さんではなくて、切歌ちゃん本人に言ってあげて、泣いて喜ぶよ、きっと」

「…ん、そうする」

 

師匠と僕の回答に曖昧だったものが確信へと変わった翼お姉ちゃんは、心の中で何あっても僕を一人で行動させないようにしようと、心に決めたのだった。

しかし、そこでふと不思議に思う事があったらしく、僕と師匠へと視線を向けると問いかけてくる。

 

「うむ、やはりな。だが、何故、行きだけはここまで来ないのだろうか?」

「…それはシラねぇに怒られたから…じゃない、かな?」

 

僕が思い浮かぶ人物を上げると、それに師匠と翼お姉ちゃんも二人揃って意外そうな顔をする。だって、その人は僕の次…いいや、僕よりも姉様のことを理解して、信頼を寄せている人だったから。

 

「調ちゃん?なんで?」

「…姉様が余りにも僕を甘やかしすぎるから」

「あぁ…」「なるほど」

 

僕が理由を言うと、師匠と翼お姉ちゃんは同時に深く頷く。

当時の僕も姉様がシラねぇに怒られないようにと頑張ったものの、慣れというか…人というものはやらなくなったものに関して、どうも感覚が鈍ってしまうみたいだ。シラねぇ監督の元の一般生活の試験を行ったものの、掃除・料理・洗濯・買い物・着替えのどの項目は散々な結果となってしまった。

それをみたシラねぇ・マリねぇ・セレねぇの三人は事の重大さを重く受け止め、僕の一般生活スキルの上昇と姉様の妹離れへと勢力を向けているが…僕の方はまだしも、姉様の妹離れはもう手遅れかもしれない。だって、姉様の過保護が最近ではマリねぇにも移ってしまって、僕を二人して甘やかすのだから…。

でも、そんな過保護な姉様・マリねぇも僕のことを思い、敢えて厳しくしてくれるシラねぇ・セレねぇも僕はみんなみんな大好きだ。

だから、そんな四人の期待には答えたいと思っている。

 

「マリアさんだけじゃなかったんですね」

「あぁ、切歌の意識改革から始めようと、月読も頑張っているのだな」

 

師匠と翼お姉ちゃんが微笑み合うのを見て、僕も笑う。だがしかし、ある事を思い出して、苦笑い浮かべてしまう。

 

「…でも、姉様。シラねぇが居ないところでもいつもと変わらないから…」

「うん、まぁ…それこそ切歌ちゃんって気がするね」

「あぁ、切歌が過保護でなくなったならば…少し物足りない気がするかもしれないからな」

「…ん」

 

そのあと、三人で笑いあい、僕と翼お姉ちゃんも待っている間暇だからということで、師匠との特訓に精を出していった…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

空が暗くなり、あたしと調は紅音たちと共に、お風呂に入っていた。騒いでいる四人よりも一足早く上がったあたしは、自分の布団を引きながら、思うは妹のことだ。

ちゃんとお風呂に入ったのだろうか、着替えはちゃんと出来ているのだろうか、ご飯はしっかり食べたか、響さんとの訓練で期待に応えようと無理はしなかったのか、考え出せば何十個も上がる心配事に、思わずパジャマの中に右手を突っ込むと中から黄緑色の携帯端末を取り出す。

だが、この豪邸・伊勢野家へ向かう途中に調にしつこく、このお泊まり会が終わるまでは歌兎へと連絡しないと約束している。それを破るとどうなるか…だがしかし、歌兎のことが心配でならない。

あたしは決意を固めると携帯端末から【大好きな妹・歌兎】を電話帳から探し出すとビデオ通信を押す。

 

「うぅ…デスが、調には歌兎に電話をしてはいけないと言われたけど…凄く気になるデスよ…。ちゃんとご飯食べたのかとか、お風呂の入ったのかとか、歯磨きは隅々までしたのかとか…気になるとキリがないのデスよ!」

 

(これは…あたしの不安を取り除くためにするのデス。そう、決して歌兎のお泊まりを邪魔しようとか…そんな気はさらさらないのデスよ。良しっ、そうと決まれば、こっそり、歌兎に電話するデェース!)

 

プルプルプル…と三回コールが鳴った後、あたしが呼び出していた相手が出る。

眠たそうに半開きした黄緑色の瞳が画面に映るあたしを見ると、目をまん丸にする。水色が入った銀髪がしっとりとしているように見えるのは、数時間前にお風呂に入っていたからだろう。

久しぶりに見る妹の顔に、あたしはニコニコと満面の笑顔を浮かべる。それを見た画面の向こうの歌兎もニコリと笑うと頭を下げてくる。

 

『…こんばんは、姉様』

「こんばんはデス、歌兎!」

 

歌兎に挨拶に元気よく答えるあたしに、歌兎はキョロキョロとあたしの周りを見ると小首を傾げる。恐らく、調が居ないことを不思議に思っているのだろう。

 

『…こんな遅くにどうしたの?シラねぇとお友達は?』

「調は紅音たちとお風呂デスよ」

『…そうなんだ、姉様は?』

「はい、先にお邪魔させてもらったデスよ。ほら、この通りデス」

 

画面にいる歌兎へとまだ水気がある明るい金髪を見せると、クスリと笑った歌兎が注意してくる。その注意に関して、胸を叩いて答える。あたしの答えに納得した様子の歌兎は携帯端末を置くと、身振り手振りで翼さんのお風呂の話をしてくる。その嬉しそうで楽しそうな顔を見ていたら、胸へとなんとも言えない気持ちが湧き上がってきて、あたしは知らぬうちに、ぷくーと頬を膨らませていた。

 

『…ちゃんと髪の毛拭かないと風邪ひいちゃうよ?』

「それに関しては大丈夫デスよ!後で、調に乾かしてもらうデス」

『…なら、良かった。僕もさっき、翼お姉ちゃんと入ってきたんだよ。お風呂、すっごく大きかった!足を伸ばしても付かないんだよ!」

「へぇ〜、そんなんデスか」

『…姉様?…何か、怒ってる?』

「別に〜ぃ、歌兎が楽しそうならそれで良かったデスよっ」

『…?』

画面の向こう、キョトンとしている歌兎に頬を膨らませていると、後ろから物静かな声がかけられた。それにビクッと肩を震わせるあたし。

ゆっくりと振り返ると、薄桃色のパジャマを着ている調と紅音たち三人がタオルで頭を拭きながら、部屋へと入ってくるところだった。

それに、冷や汗が頬を流れるのを感じたあたしは手に持った黄緑色の携帯端末を背中へと隠す。それを眼ざとく見ていた紅音に茶化され、あたしは思わずそれを口にしてしまう。

 

「…切ちゃん、誰かと話してるの?」

「!?調!?」

「おっ!キーってば、浮気かぁ〜?これは、シーが怒るっしょ」

「ちちち、違うデスよ!これは妹デス!浮気なんて…っ」

「ジィーーーーーーーーーーーーー」

 

滑らせてしまったセリフをしっかりと聞き取った調は“ジィーー”と責めるように、あたしを見てくる。それに、焦ったあたしは言い訳じみた事をいい、それによって更に調の無言のプレッシャーがあたしへと降りかかってくる。

 

「…あっ、やば…っ。ちちち、違うんデスよ…調…。これはデスね…、その…訳がありましてね…。どうしても、歌兎が心配で心配で仕方なかったんデスよ…本当に…それだけ…デ…スから……うぅぅ…」

「ジィーーーーーーーーーーーーー」

「痛い…痛いデスよ、調。視線が…痛い…胸をえぐるデス…。…ごめんなさいデスから…許してほしいのデス…。約束を破る気は…これっぽっちも…」

「ジィーーーーーーー。本当にそう?あの時の切ちゃん、すごく不服そうな顔してたよ?」

「うぐっ…あたし、別にそんな顔してな…」

「してた。切ちゃんは分かりやすいから、すぐに分かるの」

「ごめんなさいデス、確かに調が居ないうちに歌兎に電話しようと思っていたデスよ…」

 

正座をして自白するあたしの右手首を掴んだ調は、あたしを連れて、廊下へと出ようとする。その際に、黄緑色の携帯端末を落としてしまって焦るあたしのことを気にせずに、ぐいぐいと引っ張ってくる調にあたしは涙目を浮かべる。

 

「はぁ…やっぱり。切ちゃん、ちょっとこっち来て」

「へぇ?あっ、ダメデスよ!?スマホっ!スマホが!?調!歌兎が…歌兎が晒し者になるデス!?」

「すぐに済ませるから、早く来て。ちょっとだけお説教」

「怖い!調のその言葉がすごく怖いのデス!!歌兎、助けてください!!」

『…姉様?姉様が居なくなっちゃった…それに姉様の悲鳴が聞こえたような…?』

 

あたしが落としていった携帯端末へと紅音たちが群がる。いきなり、知らない人が映し出され、びくっと肩を震わせる歌兎を見て、黄色い声を上げる紅音たち。

 

「これが噂の妹さん?本当に切歌に似てないっ!すっごくかわいいぃ〜」

「どれどれ、私も見せて!おぉっ!本当、かわいい!キーより小さいんだね〜」

「それは妹さんの方が年下なんだから…そうなんじゃ…」

「はずきも見て見なって。すっごく可愛いのよ」

 

紅音と水羽に促され、歌兎を見たはずきは頬を綻ばせる。確かに二人が言う通り、可愛らしい外見を持った少女がキョロキョロと三人を見つめていた。そして、ある事を思い出したのか、ゆっくりと頭を下げてくる。

 

『…僕の姉様と調お姉ちゃんがお世話になってます。僕、暁 切歌の妹の暁 歌兎というものです。僕の姉様が皆様へと迷惑かけてないですか?』

「「「……」」」

『…あれ?皆様?僕…変な事言いました?』

 

本当に画面に映るこの少女が、あの常識人を保てぬほどの非常識100倍の大大スマイルぜんかーい!なクラスメイトの妹と言うのだろうか?

それにしては、雰囲気や性格とかも正反対な子だ。ぽかーんと自分を見つめる六つの瞳に歌兎はあたふたとしている。

そんな軽いカオス空間を生み出す四人の中に、調からのお説教を終えたあたしが帰ってきた。ガラッと扉を開けて入ってくるあたしと調へと振り返ってきた三人は口を揃えて、失礼な事を言ってくる。

 

「うぅ…酷い目にあったデスよ〜。調もそんな怒らなくてもいいじゃないデスか…」

「私に怒られるような事をした切ちゃんが悪い。約束は

「…ごめんなさいデス…」

「「「ねぇ、本当にこの子。君の妹?」」」

 

その失礼な言い分にあたしは三人から黄緑色の携帯端末を取り上げると顔を真っ赤にして怒る。怒るあたしのセリフにシンクロした動きで右手を横に振る三人。

 

「帰ってきて、突然口を揃えて、なんて事言いやがるデスか!失礼デスよっ!みんなしてなんなんデスか!どっからどう見ても、あたしの妹デスよ!目元とか雰囲気とか似てるでしょう!」

「「「いやいや、正反対でしょ」」」

「むきぃー!誰がなんというと、歌兎はあたしの妹デス!大体、あたしと歌兎の何をあなた達が知ってるというデス!」

「いや、知らないけど。性格真反対に、姉がこれって…あっ、なるほど。この姉だから…」

「水羽、それ以上は言うもんじゃないわ。キーも薄々は気づいているのよ」

「なんデスか!!その言い分はっ!紅音と水羽の言いたい事はあたしには分からないデスよ!!」

 

顔をトマトのように真っ赤にしたあたしへと右手に持った端末から歌兎の声が聞こえてくる。その声は悲痛な響きを秘めており、あたしはあたふたと言い訳みたいな事を言うと笑う。

 

『…姉様、怒ってるの?僕、怒った姉様嫌いだよ…。笑った姉様が好きだから、笑って…ね?』

「「「……」」」(((何この子…可愛くて、健気…))

「うっ…歌兎、違うんデスよ…あたしは怒ってないデス。ないデスから…そんな顔しないでください…」

「私から見ても大丈夫だよ、歌兎。切ちゃんは怒ってない」

 

調のサポートもあり、なんとか機嫌を直したらしい歌兎へと見知った声がかけられる。芝居のかかった凛とした声と共に現れた藍色の髪を背中に流している女性・翼さんは歌兎が持っている端末へと視線を落とすと微笑む。

 

『…そう?なら良かった…』

『歌兎?誰かと話しているのか?』

『…あっ、翼お姉ちゃん。ごめんなさい…うるさかった?』

『いいや、私もちょうど起きて、水を飲もうと思っていたところだ。電話の主は切歌か?』

『…ん、友達の楽しそうにしてた。みんないい人みたいで、僕も安心してる』

『ふむ。それならよかった』

 

ほっそりした右手が歌兎の水色の入った銀髪を撫でている。それを目を細めて、受け入れている歌兎の嬉しそうな顔を見ているとあたしの顔が段々と険しくなっていく。それを隣で見ていた調が声をかけてくる。

 

「…」

「切ちゃん、顔が怖いよ。そんな顔しなくても大丈夫。翼さんがそんな事しない。それにそもそも、切ちゃんが一緒に寝てほしいって言ったんだよ?」

「…分かってるデスよ。デスが…なんて言うんデス、ここがモヤァ?…雲がかかったみたいですっきりしない感じなんデスよ…」

『こんばんは、切歌、月読。楽しんでいるか?』

 

そんなあたしへと翼さんが声をかけてくる。本当に寝ていたらしく、いつもは剣の如く鋭く尖った光を放つ藍色の瞳が普段以上に暖かい光を宿している。そんな翼さんへとあたしは頭を下げるとお礼を言う。それを軽く手を振って、気にしなくていいと笑う翼さんは本当にいい人だ。

 

「こんばんは、翼さん。はい、切ちゃんと一緒に楽しんでます」

「翼さん、歌兎のこと面倒見てくれてありがとうございますデス」

『いいや、気にしなくてもいい。私も普段は一人で寂しいが、歌兎が来てくれて、久しぶりに楽しい一日を楽しませてもらったよ』

「それならいいデスが…」

 

その後、翼さんも交えての雑談を2時間くらいして、あたしは調の横で眠りについたのだった…




そして、翌日は大雨が降る中、ずぶ濡れで帰ってきた切ちゃんはその後大風邪を引いたそう…。そして、歌兎は風邪が移るといけないので、ということでもう一泊翼さんのところにお泊まりをしたそうです。




今回出てきた用語説明

【月読 調、監督の元行われる一般生活試験】
月一か年一で行われる暁 歌兎をダメ人間にさせないために行うことになった試験。
その科目は《掃除》《洗濯》《料理》《買い物》《着替え》の五つで、一科目の合格ラインは8。
だが、今回行われた試験にて、歌兎は全ての科目を3か1という散々な結果を残してしまい、歌兎の一般生活スキルの低さに事の重大さを知った調・セレナ・マリアはそれぞれの方法で歌兎のスキル上げの手伝いをしている。

→なんで、試験官を調にしたのかというと…F.I.S.組の『おさんどん』担当という事と、私個人の感想ではあの四人の中で一番、家事をこなしてそうと思ったからです。

因み、10〜1の評価欄は下の通りです。
10・・・パーフェクト。最早、達人レベル。文句無し。
9・・・生活していける上に、細やかな気遣いができている。
8・・・普通に生活出来るレベル。
7・・・抜けているところはあるもの、生活は出来る。
6・・・手伝わなくても一人で出来るが、あっちこっちに汚れが溜まっており、一人前とはとても言えない。
5・・・手伝って、何とか時間内に全部が終わる程度。
4・・・手伝って、何とか二分の一が終わる程度。
3・・・手伝って、何とか三分の一が終わる程度。
2・・・一人で生活はやばいレベル。
1・・・動くだけで汚れ、片付けようとすれば逆に汚れる。

また、今回の歌兎の結果が
《掃除/3》《洗濯/3》《料理/1》《買い物/1》《着替え/1》
です。


以上、用語説明でしたm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

漫談:師匠と訓練

大変、お待たせしております…本当にすいません…(汗)

漫談編のお泊まり会が想像以上に思い浮かばず、また翼さんの私生活のイメージが全く思い浮かばないので…ここまで、時間が経ってしまいました…本当にすいません…(汗)

そのお泊まり会の話と、残りの12、13話が完成するまで…作者が終わるまでに書いておきたかったほのぼのな漫談編、少しシリアスな漫談編をお楽しみください…

*今回はかなり少ないです…


一ヶ月絶対安静から、やっと解放された僕は約束通り、響お姉ちゃんに稽古をつけてもらうために指定された公園へと来ていた。

ヨイショ、ヨイショっと背中に固いでいる花青緑のリュックサックを右左と揺らしながら、公園へとついた僕をニコニコ笑顔の響師匠が出迎えてくれた。そして、僕が背負っているリュックを見て、唖然。そんな響師匠を見つめながら、僕は首をかしげる。それに響師匠はツッコミを入れる。

 

「…お待たせしました、師匠」

「ううん、私もさっき来たところだから、大丈夫…って、えぇええええ!!!?」

「…?」

「いやいや、歌兎ちゃん。そこで頭をかしげるところじゃないからね!?」

「…そうなんですか?」

 

響師匠にツッコまれて、僕は改めて姉様にコーディネートされたうさ耳付きジャージと半強制的に持たされた中身が満タンのリュックを見て、また首をかしげる。

それに響師匠は呆れを通り越して、苦笑いを浮かべると僕へと話してくる。

 

「そうだよ!ツッコミどころが多すぎでびっくりだよ、私。もしかして、そのリュックを準備したのって…」

「…姉様です」

「だよねぇ〜。だと思った!想像通りすぎて、私はびっくりだよ。切歌ちゃんはブレないね」

 

そう言うと、「あはは」と明るい笑い声をあげると僕へとリュックの中身を問いかけてくる。

僕は地面へとリュックを下ろすと、師匠共に中身を確認していく。

 

「それで、そのリュックの中には何が入ってるのかな?」

「…僕も分からないんです。姉様に持っていくように言われただけですので」

「なんだろ。私だけかな?嫌な予感がするのは…」

 

顔が強張ってくる師匠と顔を見合わせた僕はリュックの中をガサゴソと下がると手に当たったものを引っ張り出す。僕の手に合う形のそれを見た師匠の頬を冷や汗が垂れ落ちる。

 

「…これは?」

「…なんで、スタンガンなんて入れてんだろ…切歌ちゃん」

「…師匠、これは知ってるの?」

「…うん、知ってるけど…歌兎ちゃんは知らなくていいかな。他には何が入ってる?」

「…?」

 

僕が握っていたそれは師匠の手によって回収され、僕は首を傾げつつもリュックからものを取り出す。

そして、出てくるわ出てくるわ、過保護な姉様による重すぎる愛が多く詰まったものたち。それには、僕も師匠も苦笑いしか出てこない。

 

「えっと…入れてあって分かるのは、汗拭きタオルと着替えの服かな?この際、1日だけの練習でタオル5枚は多すぎとか、着替えの服が何故ジャージとか動きやすいものじゃないの!?ってツッコミは無しとしよう」

「…はい、師匠。しかし、なんで、姉様。缶詰めとか果物ナイフとか入れてるのかな?他にも、一週間ぐらい遭難しても暮らしていけるくらいのものが揃ってる…」

「…歌兎ちゃんの上げてくれたもので、切歌ちゃんが抱いてる私へのイメージがひしひしと伝わってきたよ…」

 

項垂れる師匠はパチンと頬を叩くと、僕と共に練習へと性を出すのだった…




そして、そんな二人を木の陰から見ている三人の影があった…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12)世界を包むは光とほのお。

連続更新第二弾、最初の12話ですが…私の妄想爆発の、めちゃくちゃ展開が続くので…

読者の皆さん!ついてこれる奴だけついてきてください!!

というわけで、12話をどうぞ…


鮮やか赤で描かれた魔法陣の中、胸の真ん中に大きな穴を

開けた少女が寝かされている。床へと散らばっている水色が入った銀髪はどす黒い血色で染められており、サラサラだった感触は重ね塗りされた血液のせいで、ガサガサになっていた。

そんな少女が寝かされている魔法陣の周りへと膝跨いだウェル博士とその他のチルドレンたちは、博士の命令により、ついにその作戦を開始する。

 

「さぁ、僕のチルドレンたちよ。今こそ始めようではないか!我らの作戦を!」

「イエス、ファザー」

 

号令により、パッと散らばったウェルチルドレンは床に描かれた魔法陣へと両手をつく。

そして、口を揃えて、呪文を言うと真っ赤な魔法陣が鮮やかな光をおびていく。光が強くなる一方、ウェルチルドレンたちは苦悶の表情を浮かべるが、呪文を止めようとはしない。苦しみで顔を歪め、全員が口を揃えて、下の文章を口にする。

 

「trocken himml heilen regen」

 

途端、魔法陣が眩い光を放ち、床へと両手をついているウェルチルドレンたちはその光に巻き込まれ、跡形もなく姿を消すーー彼らがついさっきまで着ていた服だけは無残に床の至る所に散らばり、それを見ていたウェル博士は身体をそらすと大声で狂ったように笑う。

 

「…ふふふ、ファーハハハハハ!!!遂に…遂に、この僕がこの世界を救う英雄に…いいや、神へとなるのだ!!」

 

魔法陣の周りにあるさっきまで自身の子供達が着ていた服を煩わしそうに蹴飛ばすと、ウェル博士は白衣を揺らしながら、魔法陣の中にいる少女へと視線を向ける。

すると、少女の胸に大きく開いた穴はみるみるうちに塞いでいき、自身の血痕で薄汚れていた水色の入った銀髪は眩い光を放つ金髪へと色を変えていく。

 

「おぉ…美しい…。美しいです、我が神」

 

ウェルは惚けたようにそう言うと、意識せずに腰をおると、今か今かと目の前で眠る少女の目覚めを待っていると、少女は瞼が僅かに揺れては、小さな唇が聞き逃しそうなほど小さい声を漏らす。

 

「…むぅ?」

 

身体を起こした少女は辺りを見渡す。

スゥーと細められた様々な色が混ざる瞳は強い意志と深い慈愛で満ちており、ウェル博士はその見るもの全てを魅了する魅力を持つ視線を恍惚とした表情を浮かべる。

そんなウェル博士の方へと視線を向けた少女はそこで、自分の横にひざまづいているウェル博士を見つけ、その唇をゆっくりと動かす。

 

「…余を呼んだのは主じゃな?」

「えぇ、その通りでございます、我が神」

 

大仰に頭を下がるウェル博士を見つめる少女は、ウェル博士のセリフを聞き、自虐的な笑みを浮かべる。そんな少女へとウェル博士は興奮したように血走った瞳で少女へと言い寄る。

少女はそんなウェル博士を品定めをするように見ると、床に散らばる服を見る。

 

「ふ、神じゃと…余はそんなたいそうな者ではないのじゃがな」

「いいえ、そんなことはありません。我が神は多くの能力を…人知を超えたものをお持ちではないですか!そんな力を持つ貴方様を神と言わずして、なんと呼びすれば良いか!」

「…そうか。主がそこまで言い、そう思うのであらば、そうすれば良い」

「有難きお言葉です、我が神」

「なぁ、主よ。聞くが、ここに散らばっている衣は主のか?」

「はい。こんな散らかった場所にお呼びしたこと、恥ずかしく存じます」

「…いいや、構わぬ。下らぬことを聞いたのじゃ、忘れてくれ」

 

そこで少女は目の前の男を興味無げに見ると、床へと手をついて立ち上がると、建物の外へと歩いていこうとする。そんな少女の前へと回り込んだウェル博士はまたしても、頭を下がると自身の望みを言う。

 

「お待ちください、我が神」

「どうしたのじゃ?」

「…大変、言いにくいのですが…貴方様をこの世界へと蘇らせた僕へと何かをご褒美を」

 

そう言うと、ウェル博士へと眉をひそめた少女はすぐにその表情を緩めると首を横に振る。

 

「いいや、済まぬ。余こそ忘れておった、すまぬな」

「いいえ、僕こそすみませんでした」

「ならば、言うといい。主は余へと何を願う?」

「叡智を。この世界を統べる叡智を、私|わたくし|へと」

「…そんなので良いのか?」

「えぇ、その為だけに。僕は生きてきたのですから」

 

少女はウェル博士は願いに深く頷く。そして、ひざまづくウェル博士へと右手を伸ばす。

 

「そうか。ならば、主へとは叡智を与えよう」

「ありがとうございます」

 

少女は目の前で腰おる男のおでこへと人差し指を置くと、小さく何かをつぶやく。

途端、恍惚した笑みを浮かべていたウェル博士の表情が歪む。

 

「…ッ!ガァッ」

 

地面へとひれ伏せ、頭を抑えて苦しむウェル博士は見るも無残な表情をしていた。血走る瞳は何かに慄くように小刻みに揺れ、整っていた顔は複数の血管を浮き上がらせ、口元からはよだれが顔を濡らし、地面へと垂れていく。

そんな哀れな姿を披露する男を一瞥した少女は神々しく光る瞳を細めると吐き捨てるように言う。

 

「余はほら吹きは嫌いでのぅ。それが主が奪ったものと同等の痛みじゃ、ありがたく受けとると良い」

 

煩わしそうにウェル博士を見た少女は窓へと歩み寄る。

そして、各所を燃やし尽くす業火を見るとその瞳へと愁いを浮かべる。

 

「これも紛い者な余の罪か…」

 

と寂しげに呟き、建物の外へと歩き出すのだった…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「いやぁ!!」

「たすけて、中にまだ子供が!私の子供がいるんです!」

「退けろよ!」

「くそっ!足が動かねぇ!」

「死にたくない…死にたくない…。死にたくないよ!!」

 

禍々しい青紫色のオーラに支配された暁 切歌を止める為に追いかけてきた奏者三人が見たのは、まさに地獄であったーー街の至ることに上がるは、ほのお、ホノオ、焰。ひめい、ヒメイ、悲鳴。どせい、ドセイ、怒声。

紅い焰がそこに住まう人を燃やしては、崩壊している瓦礫が逃げまどう人たちの邪魔をしては、迫り来る焰が幼い子供までも焼き殺す。奏者三人の周りには、焰によって焼き殺され、墨のように真っ黒になった大中小様々な遺体が積み上がっている。その周りには衣服に燃え移り、紅い焰によって徐々に命を削られていく人々の姿があり、響はそれを見るとギュッと拳を握る。そんな響のセリフに続くのは、セレナと調でどちらも目の前の光景を作り出したのが、あの切歌とは信じられないでいた。

 

「…ッ!こんなことを切歌ちゃんが望んでるって言うの?」

「そんなわけないです!あの暁さんが!こんなことを望むわけがないっ!」

「だから、私たちが切ちゃんを止めないと」

 

其々が自身のアームドギアを握りしめると、奏者たちはまずは逃げ遅れている街の人たちを救助する。そして、街の人を救助した後は、今だにこの街を破壊するのに留まっているであろう暁 切歌を探す。

すると、そんな三人の前へと禍々しい青紫色のオーラに纏われた暁 切歌が姿をあらわす。崩れ落ちたビルの上に立っている切歌は真下にいる奏者達を一瞥すると低い声で威嚇する。

 

「居た!切歌ちゃん」

「探しましたよ、暁さん」

「ねぇ、やめよ、切ちゃん。こんなこと、切ちゃんは望んでないよ」

「…オマエタチニアタシノキモチガワカルトイウノカ?コノヒダリテデサイアイナルモノノイノチヲウバッタコトキモチガ…ワカルトイウノカァアアアア!!!!!」

 

少し垂れ目な瞳を極限まで吊り上げて、金切り声をあげた切歌は近くにいる響へと蹴りを食らわす。それを何とか受け止めた響は切歌の足首を掴むと、睨みつけてくる青紫色の瞳を真っ直ぐと見つめる。

 

「ねぇ、切歌ちゃんやめようよ。調ちゃんが心配してるよ、切歌ちゃんのこと。聞こえてるでしょう?調ちゃんの声」

「…シラナイ、キコエナイ、ソンナモノ」

「調ちゃんだけじゃない。私もセレナちゃんも他のみんなも心配してる。切歌ちゃんのこの力はこんなことをするために使う力じゃない」

「…ウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイィイイイイ!!!」

 

響が掴んでいる別の脚とは違う脚で回し蹴りした切歌は、攻撃を食らった響が後ずさるのを見ると、ぴょんぴょんと三人から距離を取ると、地面へと両脚、両手を付くとグルルルッ…と獣のようなうなり声を出す。

響は二人の前に進み出ると愛弟子と同じ構えを取る。それを見た切歌が尖った八重歯を見せると響へと飛びかかる。

 

「どうしてもやるっていうなら仕方ないね。私がぶん殴ってでも貴女を止めるよ!切歌ちゃんっ」

「ウルサイ!ダレモアタシノジャマハサセナイ」

「させませんよ、暁さん」

 

白銀に光る剣を引き抜いたセレナが突っ込んでくる切歌へと降り注ぐ短剣の雨を食らわせる。それの雨の中を合わぬスピードで駆け抜けた切歌は肩などから血を流しながらも、グルッとセレナの方へとふりかった切歌は青紫色にギラリと輝く瞳で睨みつける。

 

「くっ、なんて早いの!」

「セレナ、危ない!」

 

響から攻撃してきたセレナへと攻撃対象を変えた切歌からセレナを守る為に調が髪の先についている回転式ノコギリを二つ重ねると凄まじい形相で迫ってくる切歌の攻撃に備える。いつの間にか、手に持った炎の剣で調の回転式ノコギリを力づくで切り裂く切歌を調は苦悶の表情を浮かべながら、セレナと響を守る。

 

「シネェエエエエ」

 

崩れ始めた調の防御を見て、切歌はトドメとばかりに炎の剣を刃が桃色な回転式ノコギリへと振りかざす。そして、弾け飛んだ調へと剣を振りかざす瞬間、切歌をミサイルと銃弾が降り注ぐ。

びっくりする調を青い疾風が抱き抱えると響とセレナの所へと戻ると、ゆっくりと地面へと下ろすとキリッとした様子で前方を見つめると自身のアームドギアを構える。そして、そんな青い髪をなびかせている女性の横には同じく桃色の髪のなびかせている金色の槍を持つ女性が並ぶ。

響、セレナ、調はそんな頼もしい三人の名前を呼ぶ。

 

「翼さん!」「姉さん!」「クリス先輩!」

「ーー」

 

喜ぶ三人を遠くから見ている切歌の出方をジッと見ている赤いギアがよく似合う白銀の髪を赤いシュシュで括っている少女は切歌を睨むと低い声で呼びかける。

 

「あたしがいねぇー間に、ずいぶん物騒な事を言うようになったんだな、お前」

「雪音の言う通りだ、切歌。貴女にそのような乱暴な口調は似合わない。まぁ、雪音なら似合うかもしれぬがな」

「最近、先輩はさりげなくあたしをディスりにくるよな!?あたしがなんかしたかよ!?」

 

炎の剣を振りかざし、クリスへと攻撃を仕掛ける切歌を愛刀で受け止めた翼も暴走を止めようと切歌を呼びかけるが、切歌はその青紫色の瞳を厭忌と忿懣の炎で埋め尽くされており、マリアはそんな切歌へと攻撃を仕掛けながら、クリスへと呼びかける。

 

「クリス。切歌の攻撃はまだ続いてるわ。集中して」

「わーってるよ。くそっ!何がどうなってやがる…。おっさんに言われてきてみれば、あのチビはいねぇーし、こいつは暴走してるしで…なんか、胸くそ悪りぃな」

「…それは誰も同じだ、雪音。だが、こんな切歌を放っていれば、この街の二の舞になる街が必ず現れる」

「えぇ、そうね。必ず、私たちが止めないと…三人とも、まだ行けるかしら?」

 

後ろに振り返ったマリアに問われた三人は立ち上がると、響は拳を。セレナは白銀の剣を。調は髪の先に着いた回転式ノコギリを。それぞれ構え、切歌へと攻撃を仕掛ける。

クリスがミサイルをありったけ放つと、よろめく切歌へと特攻を仕掛ける響の後ろから翼が迫り、切歌へと愛刀を振るう。そんな三人が見せる見事なコンビネーションに思うように攻撃出来ずに苛立ちの表情を見せると切歌へと、今度は後ろから調が迫り、切歌から離れた三人がいた所へと白銀の雨が降り注ぎ、攻撃の手を緩めた切歌へと今度は金色の槍が迫る。

六人の攻撃にダメージを貯めていく切歌は、遂にその場へと肘をついてしまう。そんな切歌を取り囲む奏者たちへと不気味な笑い声が聞こえてくる。

 

「ふふふ、ファーハハハハ!!!」

「ウェル博士!?」

「何しに来やがった」

「何をしに?それはそこにいる獣の回収のためですよ!」

 

クリスの質問に答えたウェル博士は、一瞬で切歌の元へと降り立つと、その体へと触れては、また姿を消す。

驚く奏者たちの後ろに姿を合わしたウェル博士は、両手が酷い感じになっており、右手に掴まれている切歌は何かただならぬ気配を感じて、ウェル博士から逃げようとしている。だが、そんな切歌を掴んで離さないウェル博士は大きな声である者を呼ぶ。

 

「どこかにいるのだろう!神へのなりそこない!!僕は今ここにいる獣と合体して、この世界を火の海に変えてやる!それを阻止したいなら…僕の前へと姿を現してみろ!!」

 

喚くウェル博士に唖然とする奏者たちのすぐ近くへと、ウェル博士が呼び続けていた者が姿を現わす。

奏者たちはその者を驚愕の表情で見ている。何故なら、彼女らに知り合いによく似ていたからだ。そのものを見て、驚いていたのはウェル博士に捕まっている切歌も同じだった。

自分とウェル博士をキリッと睨むは、神々しく様々な色が混ざった瞳は少し眠たそうに開かれ、華奢な身体を包むは白と花青緑が入った和服であった。そして、小さな唇が紡ぐは切歌が最も聞き慣れた可愛らしい響きを持つ声音で、今はその声を堅苦しいものへと変えて喋っている。

 

「用は何じゃ?ほら吹きよ」

 

芝居のかかった声でそう言った和服姿の少女は、血走った目でこっちを見てくるウェル博士を煩わしそうに見ている。

 

「やと、お出ましか、なりそこない。お前のせいで、僕の計画は失敗だ!この責任、どう取ってくれる!!」

「はぁ…そんな愚痴を聞くために、余はここにきたのかのぅ。正直言って下らぬ。もう良いか?余はすべきことがあるのでな」

 

身を翻し、その場を去ろうとする少女へとウェル博士が右手に持った切歌を少女へと見せる。それに片眉をあげる少女。

 

「待て、お前はこれを取り戻しに来たんじゃないのか?」

「…何故、余がそんな者を欲しなくてはならぬ」

「お前の大好きな姉様だからだよ。その姉様をこうすると、貴様はどうな顔をするかなぁ〜」

「…言いたいことはそれだけか?」

 

切歌をわざと握りつぶすような仕草をするウェル博士に、少女が冷たい声を投げかける。それに確信したウェル博士は取引とばかりに、あることを少女へと提案する。

 

「…こいつをお前へと渡す代わりに、僕へとお前の力をすべて分け与えろ!」

「はぁ…、主はまだそんなことをほざいておるのか?そんなものを持っても事態は変わらぬ」

「…じゃあ、どうすればいい?」

「そんなのわかりきっているだろう?主の胸に両手を置いて考えてみるとよい。主は今まで多くの人を物のように扱い、痛めつけてきた。そんな主へと余でなくとも誰が力を貸すというのじゃ?

今まで痛めつけてきた者たちへの謝罪を聞いたら、力を貸すかもしれぬがな」

「舐めるなぁあああ!!!!!このなりそこないがぁあああ!!この僕が英雄へと…この世界の神になるのだ!お前ではなくて、この僕がァ!!」

「愚かじゃな。そんなくだらぬ望みの為に、そんなに早く死に急ぐと申すか?主は」

「言ってろ!僕にはこいつがいるんだ!こいつと一つとなり、僕はお前をも飲み込み、この世界の覇者となる!」

「下らぬな」

「強がってられるのも今のうちだ!僕にはこいつがいる!」

「…そんなもの、余の前では木で出来た盾に過ぎぬ。余には余計な感情など要らぬし、無いのじゃ」

 

そう言った少女は手にいつの間にか持っていた鉄扇を構えると、凄まじいスピードで迫ってくるウェル博士の攻撃を優雅に交わす。そして、隙を見せたウェル博士を地面へと落ちていた炎の剣を拾うと、右手持った“切歌”もろ共斬り捨てる。

バタンと鈍い音がした後、奏者たちの悲鳴が聞こえてくる。それを聴きながら、少女は無情にもまだ息しているウェル博士へもトドメを刺す。

 

「言ったであろう?そのような者、余の前では木で出来た盾にも等しいと」

「くっ…そ……、ぼくの…やぼう…が……」

「安らかに眠るとよい、ほら吹き」

 

振り返ってくる少女へとクリスが目を吊り上げながら、少女の胸ぐらを摘もうとするがそれをあっさりとかわされてしまう。

 

「…お前、自分の姉をあんな簡単に…」

「……」

「おい、聞いてるのかよ!」

「…此奴はあまりにも多くの命を奪った…。死しても、その罪は償えないやもしれぬ」

 

クリスの怒りの声を目をつぶって受け止めた少女は、地面に大きな血の水たまりを作って息耐えた黄緑の服に身を包み、明るい金髪をショートヘアーにしている少女を一瞥する。

 

「…だから、殺したっていうの?切歌ちゃんを!」

「そういう主らも此奴を攻撃しておったではないか?何故、余ばかりを責めるのじゃ?」

「……」

「黙るということは、主らも悪いことをしたと思っておるのではないか」

 

奏者たちから離れて行く少女の肩を響が掴む。

 

「だとしても!私はあなたのやり方は間違ってると思う!」

「ならば、どうする?余を殺すか?」

「…それは…」

 

少女の投げかけに固まる響を奏者たちの方へと放った少女は、空へと浮かぶと世界に響くほどの声で叫ぶ。

 

「ならば、そこで聞いておると良いのじゃ、人間たちよ!」

 

目を瞑り、両手を広げた少女はスゥーと息を吸い込むと、ゆっくりと目を開けると真下にいる奏者たちを見下ろす。

 

「これが余の歌じゃ。この世界を…ここに住まう者たちへと向けた余の、な」




さて、歌兎によく似た…といっても、彼女なわけですが(苦笑)
そんな彼女が歌うのは、この世界を壊す歌でしょうか?それともーー

それはこの後の最終話で…

また、戦闘シーンがショボくてごめんなさい…。また、相変わらずのめちゃくちゃ展開…なんど、頭を下げればいいか…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

完)歌ううさぎ。

最終話はいきなり歌うよ〜



10/20〜誤字報告、ありがとうございます!

10/21〜誤字報告、ありがとうございます!


「Ciel humain voir schatz lac,

mensch voir wasser,

fame ogre voir sang,

pesce vedere maison come」

 

風にたなびく金髪を揺らしながら、少女は歌う。

両手を広げて、目の前に広がる大地と海を。そこに連なる国を。国の中にある街や村を。街や村に住まう人類や動物をーーそれら全てを愛し、慈しむように歌う少女の歌声はまるで、その外見も相まって女神のようにも思えた。

少女が奏でる旋律に耳をすませる多くの者達は、その旋律に心を洗われ、自然と腰をおると宙に浮かび、歌い続ける女神へと祈りを捧げ続ける。

 

「trocken himml heilen regen」

 

少女が歌い終わると、それを合図に七色に輝く雲が空を覆い、その雲から一粒の雫が落ちてきた。先手をきって飛び出したその雫に促されるように、次々と透明な雫が雲から落ちては、大地とそこに住まう者たちを潤す。

ぽつんぽつんと雲から溢れ出る雨は、世界に広がる焰を消しては、そこへと生命を宿らせる。

 

「この雨って一体…」

「見てください。雨が降ったところから焰が…」

「何を考えてるっていうんだ、あいつ」

「…すごい。雨が当たったところから元通りに戻ってる」

「えぇ、すごいわね。この雨って」

「あぁ、生命を蘇らせる雨か…ん?」

 

奏者たちが宙に浮かぶ濃い金髪を腰近くまで伸ばした少女が次に起こす行動に警戒しつつ、アームドギアを構え直すが、次の瞬間それを下ろすことになる。

彼女たちの近くで地面へと倒れていた暁 切歌が瞼を震わせて、体を起こしたからだった。胸に大きく開いていた切り傷は跡形もなく塞いでおり、【完全聖遺物・ルシファー】が宿っていた左腕は、元の彼女本来の細っそりした腕へと姿を変えていた。

それを見た奏者たちは驚き、彼女の大親友たる月読 調は彼女へと感極まった様子で抱きつく。親友の熱い抱擁をびっくりつつも受け入れた切歌はまだ、何故自分がここにいるのか、わかっていない様子であった。

 

「…ん?ここは…」

「切ちゃんっ!!」

「うわぁ!?わわっ、調…そんなに抱きしめると苦しいデスよ」

「良かった!本当に…良かったよ…切ちゃん…」

 

切歌に背中を撫でられながら、普段は流さない涙をポロポロと流す調を見ては、切歌は困ったように頬をかく。

すると、そんな二人のそばへと、さっきまで宙に浮かんでいた暁 歌兎と瓜二つの少女が舞い降りてくる。

そんな少女へと奏者たちが調と切歌の二人を背に庇うと、とある者は拳を。ある者は刀を。また、ある者は銃弾やミサイルを。そんな者たちの隣に立つ二つの影は、一つは金の槍を。またもう一つは白銀の剣を構える。

そんな奏者たちへと両手を上にあげて、自身の武器たる鉄扇を地面へと投げる。

 

「良かったのぅ、桃色の」

「!?」

「そう構えるな。余は貴方方へと詫びにきたのじゃ」

 

そう言うと、少女は膝をおると近くに転がっていた炎の剣を奏者たちの方へと投げ捨てる。それを拾い上げた奏者たちへと少女は淡々と自分の目的を話す。

 

「一時的とはいえ、貴方方の大切な者を亡き者へとした余を許さぬのであれば、そこにある剣|つるぎ|で余を切ると良いのじゃ。赤いのや橙のから逃げたのは、あの膜を張るためじゃからのぅ…それを終えた今、余は思い残すことはないのじゃ」

「…本当にないんだな?」

「あぁ、好きにするとよい」

 

そう言って、奏者たちが自分を仕留めやすいようにと体制を変える少女の前へと切歌が進みでる。そんな切歌へとクリスが冷たい声をかける。

 

「…だ、ダメデス!」

「切歌。そいつはお前を何のためらいもなく殺したんだ。そんな奴を許すわけないは行かない」

「デスが!歌兎は仕方なく、そうしたに違いないのデス。この子は本当はそんなことしなくなかったんデスよ」

「緑の…。余は一時とはいえ、主を亡き者としたのじゃ。その者達の無念を晴らしたくないのかのぅ?」

「晴らしたくないのデス!あたしはそんなことを望まない!貴女とここにいる皆と仲良く暮らせたらいい、それだけでいいんデス!」

「…ふふ。余の半身の言っていた通りなのじゃ。姉上様はお優しく、少々変わったお方やもしれぬな」

「…へ?」

「なんでもないのじゃ、緑の。ほれ、余を縛るのであろう、主らは」

 

素直に両手を差し出す少女へと、奏者たちは呆気にとられたような顔をしながらも、その細っそりした手首を強く結びつける。

 

「余は逃げも隠れもしないのじゃ。貴方方の社へと案内すると良い」

 

二課に戻った奏者たちと少女は、二課の司令官たる風鳴弥十郎の元へと向かう。そして、少女は真っ赤な髪を上へと持ち上げた髪型にして、赤いTシャツを腕まくりしている自分の身長三倍くらいある男性の赤い瞳を真っ直ぐに見つめる。

そんな少女を見て、ニンヤリ笑った弥十郎へ少女もまた、ニンヤリと笑う。

 

「俺はまどろっこしいのが嫌いでな。率直に聞く。君は誰なんだ?歌兎君なのか?それとも敵なのか?」

「うむ、主が司令官殿か…。主のその率直な物言いは実に心地よいのじゃ。余もまどろっこしいのは苦手ゆえな。じゃから、その質問に素直に答えるのじゃ。答えは分からぬ、じゃな」

「どういう意味なんだ?」

「そのままの意味じゃ。余の中に暁 歌兎として、ここまで生きてきた記憶は無いんじゃ。そして、主らの目の前にいる余ももともと無たる者故、感情や記憶などは持たぬのじゃ。そんな空っぽな余の記憶の引き出しには、余を蘇られるために犠牲になった71もの尊き者たちの記憶のみがあるのじゃ」

「そんな…。ここまでのことを覚えてないと…いうデスか…?…うた…う…っ。なら、そこにいる人は…誰なのデス…?」

「切ちゃん」

 

掠れ声を漏らす切歌へと視線を向けた少女は、その何も浮かばぬ表情へと悲痛な色を浮かばせると、ゆっくりと語り出す。

 

「確かに余は選択をした。そこにいる緑の者妹君(いもうとぎみ)の記憶を全てなくすか、無くさずに、あの70にも及ぶ尊き者たちの生きた証を無かったことにするか?

余は迷わずに、後者選んだのじゃ。あの者たちの記憶を…この世界に生きていたという証拠を誰が残しておけるのじゃ?答えは簡単じゃ、それは余しかおらぬ。余しかおらぬのじゃ…。あの者たちの命を奪ったのは、他の誰でもない、紛い者たらしめる余であるのじゃからな。

じゃから、余はあの者たちの記憶を覚えおくことが必要がある。余がこの世に生まれ出て、最初におかしてしまった罪である故にじゃな」

「……」

 

小さな掌を見つめて、外見年齢6歳の少女が周りにいるものを見上げながら、淡く微笑む。

 

「案ずるでない。余には、あの者たちの願いを叶える責務があるからのぅ。それまで死することは許されぬ。

じゃから、皆してそんな目で見るんじゃないのじゃ。それに、紛いにも余は神と呼ばれておる。そんな者を害する輩がおるとは思えぬがな」

「ふ、確かに君のいう通りではあるな。暫く、俺たちと行動するといい」

「あぁ、そうしてもらえると嬉しい。余も行くところはないゆえな」

「それと。君のことはなんと呼べばいい?」

「…歌兎、と。余の名前は、暁 歌兎なのじゃ。余の半身がそう呼んでもらえ、とうるさいんじゃ」

「そうか。なら、これからも歌兎君と呼ばせてもらう」

「あぁ」

弥十郎へと頭を下げた歌兎は、切歌の前へと進み出て、膝を床へと付けると頭を下げる。そんな歌兎をジッと見つめる切歌。

 

「……」

「貴方様の妹君を身体と家屋をこのようにしてしまいすまないのじゃ。貴方様がその者に深く愛しているのは知っておるが…余にはこの選択しかーー!?」

「…構わないのデスよ。貴女がここに居てくれること、貴女が元気に過ごしてくれることがあたしの望みデスから」

「…姉上様…」

「それに記憶がないのなら、あたしが貴女へと今までの貴女を教えてあげるのデス!」

「うむ、よろしく頼むのじゃ、姉上様」

 

その後、歌兎は二課へとあの膜は何であるのか?を説明したあと、切歌たちとともにマンションへと帰る。

そして、次の朝には変わらない日常がスタートしていた。調作ってくれた味噌汁を飲もうとしていた歌兎から汁茶碗を奪った切歌はふぅーふぅーと汁を冷ました後、ぽかーんとしている歌兎へとスプーンを差し出す。そんな切歌へといつものようにマリアの注意が飛ぶ。その注意を舌を出して、いつものように無視する切歌に、遂に堪忍の緒が切れたのか、マリアが立ち上がり、切歌を怒鳴ると切歌も対抗するように立ち上がるとマリアを睨みつける。

そんな二人にびっくりしている歌兎の瞳には、喧嘩する二人の向こう側にやれやれと肩をすくめる調とセレナの姿があったりした。

故に、歌兎は自分に体を譲ってくれたあの少女が言っていた“僕の姉様は過保護すぎるから気をつけて”の意味がわかった気がした。

 

「なるほど、確かに余の…いいや、“余たち”の姉上様は過保護すぎるんじゃ」

 

賑やかな朝ごはんの時間、そう微笑みながら、歌兎は自身の姉へと苦笑い浮かべる…。

そして、思うーーこの幸せな時間を…大切な姉と過ごしていく毎日をこれからも守っていこう、と。

 

 

 

 

 

 

〜うちの姉様は過保護すぎる、完結〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○●○オマケ○●○

 

 

【モヤがむねむねデスよ…】

 

「〜♪」

 

ゆらゆぅ〜らと揺れる椅子に腰掛けて、目を瞑る金髪の少女へと切歌は複雑そうな表情を浮かべる。そんな切歌へと調が近づいてきて問いかける。

 

「切ちゃん、どうしたの?」

「…あっ、調。最近、歌兎を見てるとここがむねむねするデスよ」

「?むねむね?」

「恐らく、モヤモヤじゃねーか?お前、幼稚園児じゃねぇーだから、自分の気持ちくらい間違えずに言えるようになれよ」

「しっ、失礼デスよ!クリス先輩!」

 

頬をプクーと膨らませる切歌を見て、「すまんすまん」と謝ったクリスの声に、椅子に揺られていた歌兎の瞼が開く。そして、眠たそうにひかれたそれは自分の横に立つ三人へと向けられる。向けられた三人は歌兎へと挨拶する。

 

「…むぅ?おぉ、これは姉上様とクリス殿に調殿じゃ。皆して、どうしたのじゃ?」

「こんにちわ、歌兎」

「よっ。何してたんだ?」

「…うむ。膜を通して、下の世界を見ておった。絶えず、戦が続いておるようじゃ。全く…あの雨によって、命や時間が元に戻るからといって、再々あのような事をさせると余の身体が持たぬ」

 

愚痴りながら、椅子から飛び降りた歌兎はトテトテと三人の前へと歩いてくる。そんな歌兎を見ながら、切歌は複雑な表情を浮かべる。そんな切歌に眉をひそめながら、クリスは近寄ってきた歌兎の頭を撫でる。

 

「しっかし、本当に小さくなったよな、お前」

「クリス殿。そんなに撫でられると前が見えないんじゃが…」

「あぁ、すまねぇ。撫でやすい位置に頭があるんでついな」

 

クリスによって乱暴に撫でれた金髪を直しながら、歌兎は自身を見つめている少し垂れ目な黄緑色の瞳へと小首を傾げる。

 

「姉上様?どうなされたのじゃ。余をそんなにジッと見つめて…」

「…悔しいデスが、こっちの歌兎の方があたしに似てる気がするデスよ。それに可愛いデスし…」

「…む?こっちの余の方が?余は余じゃぞ」

 

切歌の呟きを聞いた歌兎がそういうのを聞いて、調、クリスは切歌が胸をモヤモヤしている訳を知った。

切歌は水色が混ざった銀髪の歌兎と金髪になった歌兎を比べてみて、今ここにいる歌兎の方が前の歌兎よりも自分に似ていることを複雑に思っているらしかった。

 

「…お前、本当にくだらないことで悩むんだな」

「…切ちゃん」

「しっ、調までそんな顔であたしを見ないでください!あたしには大事な問題なんデスよ!?」

 

ジローと自分を見てくるクリスと調に、切歌は頬を膨らませて怒る。そんな切歌を見て、歌兎は眉をひそめると自分の金髪へと視線を落とした…

 

 

 

 

 

【これがあなたが守ってくれた世界デスよ】

 

「ここにおられたか、姉上様よ。用とはなんじゃ?」

「歌兎、ここに来てください」

 

切歌は近くに来た歌兎をお姫様抱っこすると、手すりの

近くに歩み寄るとすっかり暗くなった街並みを見つめながら、ボソッと呟く。

 

「…綺麗デスね、歌兎」

「ふむ、そうじゃな、姉上様よ」

 

そう答える歌兎に微笑むと切歌はギュッと強く抱きしめると、耳元で囁く。その囁きに歌兎は眉をひそめる。

 

「…ありがとうデス、歌兎」

「?姉上様、いきなりどうしたのじゃ?余に礼など」

 

歌兎の質問に切歌は歌兎の頭を撫でながら、その答えを言う。

 

「あのまま、あたしが世界を破壊していたら…この綺麗な夜景は見れなかったんデスよ。だから、ありがとうデス」

「余こそありがとうなのじゃ。こんな余を貴女様の妹君と迎えてくれて…」

「言ったじゃないデスか!そんな姿をしていても、歌兎は歌兎だって…だから、貴女は間違いなく、あたしの世界一可愛い妹デスよ」

 

そう言って、頬にキスしてくる切歌に歌兎は目を細めながらも照れたようにはにかんだ…




というわけで、以上でお終いデス…

変わらずのハチャメチャ展開に読者の皆さんには大きな迷惑をかけたと思いますが、ここまで呆れずに読んでいただきありがとうございます!

この後の話は、書きたいと思えば書こうと思います。また、まだ終わってないお泊まり会編は終わった後も書きたいと思ってます。

こんな駄作へと評価してくれた17名の皆様、お気に入りしてくれた290名もの読者の皆様、またこの作品へと感想と誤字報告をしてくださった皆様、本当にありがとうございましたm(_ _)m

※作者名を変更したのは、活動報告の方に説明文を更新することにしたからです。本当は、こっちに更新したかったのですが…セリフばかりで、読みづらいかなぁ〜と思い、そちらへと変更しましたm(_ _)m
⇒11/4〜【生まれ変わった暁 歌兎】を更新しました。

お待たせしてすいませんm(_ _)m

※また、この本編の後に【IFストーリー】と題して、原作で亡くなった方が生存して、幸せになる為に主人公が頑張る話を更新しようと思います。
私自身、本編の最後は急ぎすぎてしまった気がしてならないので…こちらは、読者の皆さんに分かりやすいように。また、時折、質問させてもらいながら…完結させていこうと思ってます。
長くなってしまいました、以上で。お知らせ、お終いですm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

《旧ストーリー分岐ルート》ハードラブ・ミッション 10) はめられた罠ととうそう。

お久しぶりです(土下座)

今回の話は、メインストーリーからの分岐で新キャラも参戦すると思います。
そして、メインストーリーよりもハードなものになるやもしれませんがどうかよろしくお願いします(礼)

では、本編をどうぞ!


鉄独特のひんやりとした感触と後頭部に広がる痛みから深く沈んでいた眠りの海から覚醒する。

 

パチパチ

 

まだ寝ぼけ眼でボヤける視線をぱちくりと瞬きしてから辺りを見渡すと見覚えのないところにいた。

 

(ここは…?)

 

天井と床共にコンクリート製で良く見ると壁には黒々とした鉄が埋め込まれており、そこから視線を下に何か液体が染み込んだような黒いシミ…恐らく、血なのだろう。人が腰掛けている感じに広がっており、それがそこいらに点々とあるのだ。

 

(…さしずめ、拷問部屋ってことかな?)

 

「…っ」

 

どうやら、両手両足共に硬くロープ…いいや、これは手錠かな?ひんやりしてるし、ロープに比べて力強く引いた時に感じる隙間もない。そして、左下に感じるコンクリート独特の冷たさから僕は寝転がされているのかな。

それ以前になんで僕はここに?

確か、今日は姉様と師匠、クリスお姉ちゃんの援護に回れとの指令を大師匠様から受けて……ゔぅ、だめだここから先がどうしても思い出せない。

 

「…参ったな、これ」

 

(あぁ、なんかこういう展開、響師匠とと共に大師匠様の修行の際に見た映画にこんなにシーンあった気がする)

 

場違いにもそんな事を思っているも目の前にある鉄で出来ている扉が開いて、そこから入ってきた数名の青年と少女は目を開けている僕を見る。

そして、一番最初に入ってきた青年がリーダー格なのだろう。彼を取り囲む青年少女へと素早く指示を出している。

 

「ファザーに報告。ターゲットが目を覚ましたとな」

「了解!」

青年に一糸乱れぬ敬礼をした青年少女たちがその場を後にするのを静かに見送った僕は最後に残った青年を睨む。

 

「ーー」

「その顔はどういう顔と受け取ればいいのかな?暁歌兎」

「…お好きなようにどうぞ」

「ならば、敵対していると取ろう。ふん!」

 

素っ気なくそう言った僕のお腹を思いっきり蹴飛ばす青年の力は思ったよりも強く僕の身体はゴロゴロとコンクリートを転げ回り、止まったところで僕は蹴飛ばされた時に吐き出した空気を吸い込む。

 

「がはっ…ごほんごほん。はあーはぁー」

「あんまり、反抗的な態度は控える事だな。ファザーは優しい方だが短気なところもあるからな、あまり刺激しない方が身の為だぞ」

 

青年が言ってくる言葉を聞き流し、青年以外誰も居ない事を気配で確認すると静かな声で聞く。

 

「…ところで、今ここにいるのは君だけ?」

「なぜそんな事を聞く?」

「なぜってーー」

 

不敵に勝ち誇ったように笑っているのだろう、堪えきれぬ慢心をその声音に添えてそう答える青年の答えを聞いて、援軍はまだきてない事を知ると僕はポケットの中に隠しておいたクリップによって外しておいた両手両足の手錠を勢いよく外すと振り向き際にカッターシャツを脱ぐと青年の顔へと投げ捨てる。

 

「ーーこうするために決まってるでしょうっ!」

「なっ!?前が見えーーゔえ、がぁ」

 

顔にかかる僕のカッターシャツを取ろうとして慌てている青年の股間へと強烈な一撃を入れ、地面に悶絶して沈む青年に追い討ちとばかりに顔や横腹を踏みつける。

 

「…両手両足が塞がってるからって油断した?あんなの1分とあれば解けるし、何よりも慢心は何よりも敵だよ、お兄さん」

 

青年が起き上がらないようにもう一度、溝打ちへと強い蹴りを入れ、何か使えるものはないかと青年の身体を弄る。

 

「…んー」

 

青年の身体を弄って手に入れた報酬は以下の通りだ。

青年が耳にかけていた通信機らしきもの…黒メインに白いボタンみたいながデザインしてある。

青年が腰に吊るしてあった黒のポーチからは折りたたみ式のサバイバルナイフに警棒、他は発光する藤色の液体で満たされた針なしの注射器に絆創膏や怪我した時に使えるであろうちょっとしたものが入っている。

 

(まぁ、これくらいあれば、何とかなるかな?)

 

僕の携帯は奪われたようだし、逃げる為と言ってニョルミルを纏えばまた暴走しかねない。なので、ここから先は自力で逃げ延びるしか手はないのだろう。

 

「…まずは敵がどこにいるか確認しないと」

 

右耳につけている通信機から流れてくる情報へと耳を傾けていると怒鳴り散らしている若い男性の声が聞こえてくる。

聞き慣れた…聞くたびに嫌な思い出が湧き上がってくるその声は明らかにウェル博士のものだった。

なるほど、ここに倒れている青年の右腕が僕と同じく黒々と変色しているのはあの男のせいだったか。

 

(こりもせず、こんな事を…っ)

 

湧き上がってくる怒りへと無理矢理蓋を閉めた僕はウェル博士が怒っている事を知る。

 

○○(ザーザー)を確保しろ!あいつは僕の○○(ザーザー)なコレクションを奪いやがった!!あいつ、ここまで○○(ザーザー)やった僕の恩も忘れやがって!!』

 

どうやら、この施設に住んでいる何者かがウェル博士を裏切り、彼が持っていたコレクションを盗み、逃走中らしい。

 

(きっと今、この施設はその何者かによって混乱中のはず)

 

なら、それを利用しない手はないということか。

 

「…と決まれば、ここには用はもうない」

 

僕は鍵が閉まってない鉄の扉から外に人の気配がない事を確認すると扉から近くにある角へと走り抜ける。そして、近くを通るウェル博士の配下の人たちを警棒で気絶させてからひたすら走り、この施設の出口を目指して走る。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

歌兎が去って、数分後の拷問室に一人の少女が居た。

 

「…うさちゃん?」

 

部屋の中をキョロキョロと顔を動かす度に揺れるさらさらの薄藤色の髪、部屋のすみずみまで視線を送る紫色の瞳。そして、少女は目的となるものがなかったのか、その部屋を後にするのだった…




というわけで、ウェル博士の研究所から逃走する歌兎は無事逃げることができるのでしょうか?謎の少女の目的とはなんなんでしょうか?そして、『うさちゃん』とは?
様々な思惑が交差していきます。

※謎の少女
『うさちゃん』なる人を探す

※暁 歌兎
ウェル博士の配下となるリーダー格であろう青年から武器諸々を奪い、研究所から逃走中




さて、ここ先暗くなる展開が多くなってくるので読むのが辛くなるかもしれないので、そんな読者の皆さんの癒しにならばと思い書いたのと、思えばこの小説の一周年記念を祝ってなかったなぁ〜と思い、描かせてもらった本作主人公の暁歌兎とそんな彼女の過保護な姉様である切ちゃんを書かせてもらいました。
読者の皆さんが描かれている歌兎のイメージと原作の切ちゃんの可愛さを少しは再現出来ていると思うので、よろしければご覧ください(土下座)



【挿絵表示】



というわけでいかがだったでしょうか?
シンフォギアXDのブログ風に書かせてもらった今回の絵ですが…簡単なる説明を加えると、歌兎は動物に懐かれる子でして…よく一人で遊びに出掛けては、こうやって動物を撫でています。そして、そんな歌兎を影から見守る姉様というのが彼女たちの日常です。因みに、姉様の顔が歪んでいるのは、兎と戯れる妹の可愛さに歪んでしまったというわけです。
本当は…本当はカメラも持たせるつもりだったんですが、私の腕ではこれが精一杯(汗)
次書かせてもらう時は、歌兎と切ちゃんの誕生日か二周年目に披露させてもらうと思うので、それまでにもう少し上手くなろうと奮起してます!

また、今回の絵はアナログかつ色ぬりで使っているのが時間上蛍光ペンと鉛筆、油性ペンとなっております。
ので、歌兎のズボンが橙だったりと少し違和感を感じる仕上がりとなっていると思いますが、どうかご容赦してください(土下座)
歌兎や適当な色となってしまった背景などは皆さんの頭の中で変換していただき、次回までには改善しておきたいと思います!

と、最後に上の絵でだらしない顔を晒してしまった姉様にもいいところがあるということで…私がこのシンフォギアにハマった時に書いた姉様こと切ちゃんの絵を披露したいと思います。



【挿絵表示】



この『うちの姉様は過保護すぎる。』も一周年という節目を通り過ぎた中でもクロスオーバーや様々な分岐ルートを楽しく書かせてもらっているのは、感想や評価、お気に入りにしてください多くの読者の皆さんの力あってこそです。
上の絵共々、文章もまだまだですがこれからもよろしくお願いします(土下座)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11)混乱とこうせん。

昨日から続けての更新となるこの話は、ウェル博士の研究所から逃げようとしている歌兎と同刻のS.O.N.G.を書いたものです。
まぁ…読者の皆さんの想像通りかもですが、楽しんで読んでもらえたら嬉しいです(笑)

では、本編をどうぞ!!

※相変わらずの読みにくさで、みんなは一部を除いて、下の名前で統一してます。
また、かなり簡潔に書いてます。


歌兎が拷問部屋にて一人のリーダー格の青年との戦闘の末、彼の持ち物を奪い、決心の逃走を続けている同刻のS.O.N.G.内にて一人の少女が荒れ狂っていた。

その少女を取り押さえている二人の少女はどうにか落ち着かせようとして、そんな三人を取り囲む者たちは荒れ狂う少女に呆れ顔を浮かべている。

 

「離してください!!クリス先輩、響さん!!歌兎がぁ!!歌兎がァア!!!」

 

そう、荒れ狂う少女とは暁歌兎の実姉こと暁切歌である。垂れ気味の黄緑色の瞳を吊り上げ、両腕をがっしりホールドされているからか、両脚をばたつかせて、その上抵抗の為かなんなのか、首を激しく横に振っているので

 

バシバシ

 

と少なからず、横に垂らしている金髪が切歌を押さえつけているクリスや響に当たり、地味に二人へと精神攻撃を加えていた。

しかし、二人がホールドの力を緩める様子はなく、更に強く力を込めると抵抗する切歌をズルズルと引きずりながら、なんとか呆れ顔の奏者のみんなの輪へと帰ってくることができた。

 

「いいから落ち着きやがれ!この過保護っ!」

「クリスちゃんのいう通りだよ、切歌ちゃん。歌兎ちゃんならきっと大丈夫だから、ね?」

 

宥める響とクリスの言葉には耳を傾けず、一層に暴れる切歌に近づくのは彼女の大親友の月読調で諭すように声をかけるその姿は大親友というよりも我儘娘を優しく躾ける母親のように見えてしまう。

 

「大丈夫じゃないデス!!きっと大丈夫じゃないんデス!!今、歌兎が泣いてるのかもしれないのデス!!悪い人に捕まってあんなことやそんなことをーー」

「ーー切ちゃん、とりあえず落ち着こ?落ち着いたら、そんな悪い考えも浮かばなくなるから」

「調は落ち着き過ぎデス!調は歌兎の事が心配じゃないんデスか!」

「心配だからこそ落ち着いて、救出する為に作戦を練るべき」

 

調の正論に手も足も出なくなってしまった切歌は渋い顔をした後に顔をパァアっと輝かせると名案とばかりに自分の携帯をポケットから取り出して、取り押さえられているのに器用に指を動かし、歌兎へと電話を掛けようとするのを寸前で止めに入るのは今まで四人を見守っていた年長組ことマリア・翼・セレナであった。

 

「そうデスがっ、そうなんデスが…うゔっ、そうデス!歌兎に電話すれば」

「何してるのよ!」

「暁さんダメです!」

「暁耐えろ!」

 

翼に携帯を取り上げられた切歌は恨めしそうに翼を見る。

 

「何するんデスか、三人揃って…翼さん、あたしの端末をどうするつもりデス」

 

いつもはキラキラと溢れんばかりの好奇心で満たされている黄緑色の瞳がどんよりと沈んでいくのを見て、翼や周りの奏者のみんながなんとも言えぬ威圧感を切歌からひしひしとぶつけられているそんな時

 

ぷるる、ぷるるる

 

と誰かの端末が音を立てて鳴る。

そして、その端末を手に取るのが、真っ赤なワイシャツにピンクのネクタイが似合うこのS.O.N.G.司令官こと風鳴弥十郎であった。

 

「…歌兎くんからだな」

 

実に取りにくそうにしているのは、切歌から漂うどんよりした雰囲気が弥十郎にもひしひしと伝わってくるからだろう。

 

「…ソンナ…ナンデ…ウタウ…」

 

ガク

 

と音なく崩れ落ちる過保護な姉に奏者のみんなのみならず、S.O.N.G.のみんなが苦笑いを浮かべたところで弥十郎が歌兎から電話を取る。

 

「もしもし、歌兎くんか?」

『…はい、大師匠様。一人はぐれてしまいすいません』

 

取った瞬間、S.O.N.G.内に響く歌兎の声から弥十郎はどうやらハンズフリーモードにしたのだろう。 しかし、そうなると一つ疑問が浮かぶ。

 

「いいや、歌兎くんが悪くないのは響くんたちから聞かされている。それより、歌兎くん何故S.O.N.G.本部への電話ではなく、俺個人に電話を?」

 

そう、何故歌兎はS.O.N.G.本部ではなく、弥十郎個人の端末へと電話をしたのだろうか?

不思議に思う弥十郎に歌兎が申し訳なそうな声音に変えるとその理由を答える。

 

『…本当はそうしたかったんですが…どうやら、S.O.N.G.に直接電話をかけさせないように僕の端末が初期化されてまして…姉様の携帯番号以外に覚えていたのが大司令様のだったので…』

 

どうやら、覚えているその二つの連絡先をどちらに先に連絡するべきかと天秤にかけた上で切歌ではなく、弥十郎へとかけるべきとそう結論づけたらしい。

最もと言えば最もなのだが、こういう非常事態だからこそ頼って欲しい姉心を一蹴されたようで切歌の頬がみるみるうちに膨らんでいく。

 

「…むぅ」

「切ちゃん…」

 

それを近くで見ていた調がより一層呆れたような憐れんでいるような表情を浮かべる中、歌兎と弥十郎の会話は続いていく。

 

「そうか。さすが、歌兎くんだな」

『…いえ、これも愛ある特訓を僕へとしてくれた響師匠と大司令様のおかげです』

「いいや、歌兎くんがどれだけ努力してきたのか、俺と響くんは知っている。あまり謙遜は良くないぞ」

『…はい。ありがとうございます』

 

照れくさそうにそういう歌兎へと弥十郎が本題を振る。

 

「さて早速だが、歌兎くん。君は今どこにいる?」

『…僕は今、ウェル博士の研究所…みたいなところにいます』

「ウェル博士だ、と!!?」

 

その名前はここ数週間、追っていた者の名前のはずだ。なのに何故、歌兎がそのウェル博士の元に?

そこから導かれる答えはただ一つだ。

 

「…なるほど、これまでの極端なノイズ出現は奴の仕業というわけか」

「…翼さん?」

「立花は不思議に思わなかったか?ここ最近のノイズ出現のパターンはまるで其々がサポートできないようにするように極端に離れたところに現れることが多かった」

「それに数も多かったものね…。翼の言いたいことが分かったわ」

「最初からウェル博士の目的は歌兎ちゃん一人だけだったというわけですね」

 

翼の意見に付け加えるようにマリアとセレナが意見する中、響のみがポカーンとしていた、どうやら三人が納得していることに納得できないらしい。それを見ていたクリスはため息一つ落とすと

 

「はぁ…お前って本当にバカだよな」

 

と響に言い、言われた響は傷ついたような顔をする。

 

「それはひどいよ!!クリスちゃん」

「うるせぇー、本当のことだろ」

 

吐き捨てるクリスの視界の端には今まで床にへたり込んでいた切歌が夜叉の如くぬらりと起き上がる姿とそれに合わせて一緒に起き上がる調の姿であった。

 

「あの…トンデモ眼鏡、どこまで人の道を外れればいいんデスか…っ!許さないのデス!許してたまるかデス!!」

「切ちゃん、どうどう」

「これが落ち着いてられるデスか!!」

 

ウェル博士への怒りを爆発させる切歌の声が歌兎にも聞こえたらしい。失笑している声がS.O.N.G.内に響いた後、歌兎の穏やかな声が聞こえてくる。

 

『…姉様が元気そうでよかった、心配だったから』

「歌兎!歌兎も無事なんデスよね!?」

 

切歌の質問に長らく沈黙した後

 

『…無事だから、心配しないで、姉様』

 

そう答える歌兎の長い沈黙の意味に気付かないのは恐らく切歌、ただ一人だろう。

他の人はその沈黙が語る意味を受け取り、こう解釈した…無事ではあるが、切り傷やかすり傷は複数あるけど命はあるから無事と言ってもいいだろう、といったところだろう。

 

切歌がひとまず安心したところで話が続く。

 

「歌兎くん、その研究所はどこに位置するのか分かるか?」

『…いいえ、僕も見たことないところですし…風景という風景がなくて…』

「そっか…。他に気づいたところはあるか?」

『…そうですね、なんだかさっきから天井が揺れたり車が通っている音が聞こえてきたりするので、ここはもしかすると地下なのかもしれません』

 

そう言われるとそういった音が消える気がする。だが、その音よりも気になる音がさっきから聞こえており、弥十郎は意を決して聞く。

 

「ところで歌兎くん、さっきから鉄と鉄がぶつかる音や若い少年少女達の苦しげな悲鳴が聞こえるのだが…」

『…あぁ、ごめんなさい。聞こえてましたか…。今方、追っ手に見つかってしまって、戦闘中なんですが…さっき終わりましたから、安心してください。着ていたワイシャツはナイフによってボロボロにされちゃいましたが、肌には傷を付けてないので…姉様にも安心してと伝えてください』

「あぁ…」

 

ギギギっと弥十郎が振り向く先に居たのは

 

「…歌兎のワイシャツが破かれた…?なら、歌兎は今柔肌を敵に見せて…?」

 

と放心状態でそういう切歌の姿で、弥十郎は視線を元に戻すと何事もなかったかのように歌兎へと話しかける。

 

「なら、歌兎くん。その研究所がどこにあるかわかったならば知らせてくれ。こちらも引き続き、歌兎くんの位置を判明するために努力しよう」

『…はい、了解しました…!』

 

その言葉を置きに通信は切れるのだった……




その後の姉様は読者の皆さんのご想像にお任せします(笑)
さて、次回は今回でなかった謎の少女を主となる話となる予定ですので、楽しみにしててください!
それと同時に覚悟もよろしくお願いします、予定では原作キャラが無惨な死を迎えると思うので…

と、折角なので…今日から始まった『機械仕掛けの奇跡』について話します。

これから先はネタバレが含まれていますので、まだやってない方は読まずにスルーしてください。











さて、まず声を大にしていいたいのがシャロンちゃんが可愛い!!!可愛すぎます!!
話さないけど仕草の一つ一つが可愛いです…そして、そのシャロンちゃんを懸命にお世話する響ちゃんの面倒見の良さに圧巻でしたね!
響ちゃん×母性は考えたことなかったな…いいですねぇ、少しうちの姉様に被るところがありましたが、響ちゃんの方がちゃんとお母さんしてます(笑)

そんなシャロンちゃんと響ちゃんで記憶に残っているのは、響ちゃんがシャロンちゃんに文字を教えるシーンで『お姉ちゃんとお勉強しようか?』からの翼さんとクリスちゃんの驚きようでしょうか(笑)
雷が背後に落ちてましたからね…翼さんとクリスちゃんの驚きに傷ついたような響ちゃんも大変可愛かった。

その他は、クリスちゃんに買い物を付き合ってもらうきりしらがかわいかった…。彼女達は浮いたお金でおニューな服を買っているのですね…うん、尊い…。
しかし、本当のところは『サービス券を150枚集めると商店街の食べ物さんで〜』からのセリフを聞いた後のクリスちゃんの『こいつら、たかがクレープになんつー涙ぐましい努力を…』ってセリフに笑い、そしてこの話の最後はほのぼのしちゃいました(笑)

ですが、今回のイベントはかなり暗いものになりそうですね…シャロンちゃん、助かるといいなぁ…(切望)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12)虎々絽という名の精霊つかい。

お久しぶりです(礼)

シンフォギアXDもイベント『機械仕掛けの奇跡』の後半戦が終わり、新しく『ハロウィン型ギアイベント』が始まりましたね(笑)
その二つについては、のちに後書きにて詳しく感想を書かせてもらうとして…

私、秋が季節の中で一番好きなんですよね(微笑)
理由は『○○の秋』とつく程になにをしても程よい季節ですし、何よりも!梨が美味しいッ!!そこが重要なんです!!!
私、林檎と梨では梨の方が好きなんですよね〜。林檎のサクサク感も捨てがたいのですが…やはり、私は梨の甘い果汁が好きでして、ついつい店先で梨を見かけたら買い求めてしまいます(笑)

と、とりとめない話をしてしまい、すいません。
これからのストーリーのグロさをこの話で緩和出来ればと思い、させて頂いた次第です。
では、くどいですが…この先の文章にはかなりのグロさが含まれていますので、読む際はご注意しつつお読みください(礼)

では、『12)破壊者ととうぼうしゃ。』の開演です!


※相変わらずの読みにくさと長いのゆっくりとお読みください。


『…どうしたの?みんなのところにいかないの?』

 

彼女はそう言い、恐ろしい程に真っ白な部屋の隅っこに膝を抱えて座る私と同じ目の高さに腰を下ろすと不思議そうに私を見てくる。

 

(綺麗な目…)

 

私が最初に彼女を見て思った第一印象はそれだった気がする。

 

どんよりくぐもった私の紫色した目と違い、私をまっすぐ見つめてくる彼女の瞳は黄緑色で…まるで、そこだけマムに見せてもらった本にあったエメラルドとようだと思った。それだけに無垢で純粋な彼女が眩く見え、眩いからこそ忌み嫌った。

 

『わたしにちかよるとみんなにきらわれるよ、いいの?』

 

キラキラ光る黄緑色の瞳から避けるように顔を壁へと向け、素っ気なく言う私の横へと腰を下ろしたのだろう、彼女は。

真横から人が座る音が聞こえ、右耳から何処か悲しげな声が聞こえてくる。

 

『…きにしないよ、きみがひとりでここにいるりゆうのほうがきになるし…なによりも---』

 

ふさぎ込んでいた顔を上げ、彼女の方を向くとそこには薄く笑う彼女の顔があって…

 

『---ちがういみでぼくとおねえちゃんはこのこじいんでういたそんざいだから』

 

そう言う彼女の言葉と態度にやっと彼女が私に執着するのか分かった。

そうか…彼女も私と同じなのだ。

憐れみとか同情とか格上と勝手に決めつけた者がまた勝手に決めつけた格下へと向けるあの醜い…冷めたような視線ではなく、彼女も私と同じ立ち位置に勝手に決めつけられた者で…なら、私は彼女となら---

 

『---歌兎ぅーー!どこに言ったデスかぁーーー!』

 

部屋の外…廊下から元気いっぱいな叫び声が聞こえて、私と隣にいる彼女が苦笑いを浮かべる。

 

『切歌ちゃん、廊下は走っちゃダメって…それにそんなに大きな声は他の人迷惑だから』

『でも、調!歌兎があたしになにも言わずにいなくなったんデスよ?これは誘拐デス!そうに決まっているのデス!いくら、あたしの妹が可愛いからってやっていいことと悪いことがあるのデス!誘拐した奴はDeathDeathDeathした上にDeathDeathして、終いにDeathしてやるのデスよ!!』

『ですですが多くて意味が分からないよ。って、あぁ…そこは入っちゃダメって、マムが。その部屋は鍵が掛かってるから入らないからって、切歌ちゃんなにをしてるの?』

『開かないなら開けるのみデス!こうして、体当たりしていればいつしか開けるはずデス!子供だからって舐めるんじゃねぇーデス』

『ダメダメ、そんな事したらまたここにいる人に怒られるよ?』

『あんな奴らに怒られるよりも歌兎に万が一がある方が大事デスよっ!えい…やー!!』

『だからダメだって』

ドンドン

 

とこの部屋にまで聞こえてくるその音はどうやら、"歌兎"という名の少女を探している姉がドアに体当たりしている音らしい。

そして、その姉の付き添いであろう少女がその姉の暴走を止めようとしていると…あれ?姉妹でこの孤児院にいるのって…二組しか…。

その二組を思い出そうとしている私の隣から立ち上がる音が聞こえ、私がそちらを見ると彼女が苦笑いを浮かべている。

 

『あはは…おねえちゃんがまた、しらべおねえちゃんをこまらせる。ぼくそろそろいかないと…じゃあね、"こころ"おねえちゃん』

 

パタパタと私の方は右手を振るう彼女に私は目をまん丸にする。

だって、彼女に私は名前を教えてないのだから。

 

『…ねぇ、なんであなた。わたしのなまえ…』

『…ここ。虎々絽ってかいてあったから…まちがえてた?』

 

尋ねる私に彼女は自分の右胸にある白い布を指差す。そこには彼女の名前であろう"暁 歌兎"という漢字が書いてある。

なるほど、彼女はどうやら私の名札から名前を呼んだらしい…って、そもそもそれしかないじゃないか。

周りから距離を置くことに熱中しすぎて、根本的なところを忘れてしまうとは…。

 

『ううん、よみかた。それであってるよ、うたうちゃん』

 

私はそう微笑み、彼女も淡く笑い、肩甲骨(けんこうこう)まで伸びた水色の入った銀髪を揺らすと姉が待つ廊下へと歩いていった。

 

その出会いから彼女…うさちゃんとはよく話をするようになって、次第にうさちゃんの存在が私の中で大きくなっていき、次第にうさちゃんの全てが欲しくなった。

が、その気持ちに気付く前にうさちゃんは私の前から居なくなってしまったのだった。

 

ううん、居なくなったのではなく、私とは別世界の住人となってしまったのだ。

うさちゃんは珠紀カルマのギアであるミョルミルをその身に宿す融合者となり、私は---

 

 

 

---精霊使いになってしまったのだから。

 

 

 

まず、精霊というのは…草木、動物、人、無生物、人工物などにひとつひとつに宿るとされている超自然的な存在であると共に、万物の根源をなしている不思議な気のことや肉体から解放された自由な霊という説もある。そして、その精霊を操れるのが私がなった精霊使いというものだ。

 

そんな精霊使いがどうやって、精霊を仲間とするかは簡単だ…創り出すのだ。浮遊する霊と草木や無生物に宿る精気を重ね合わせて、この者は私のであるという紋章を身体のどこかに刻むことによって、その精霊と正式に(パートナー)となる。

パートナーとなった精霊とはその精霊の力を借りたり、憑依(トランス)をする事が出来る。

 

トランスとは、その文字の通りで私にその精霊が憑依するのだ。

憑依することによって、精気が高まり、その精霊の力を最大限引き上げる事が出来る。しかし、それを使った後は全身に激しい痛みが走る。

精霊と人は元は同じといえど、彼らは人と違い一脱した存在なのだ、そんな人ならざる者が人の身体を動かすのだ。彼らは限界という言葉を知らない故に私の身体は悲鳴をあげて……ってこんな感じである。

 

と、精霊についてもう少しだけ補足をすると…彼らは魂と呼ばれるものと花鳥風月や無生物から取り出した精気を組み合わせて創り出した存在であるのは上で述べた通りである。

そんな彼らだが、魂と呼ばれる時は生存の記憶が残っているようなのだが、精霊と呼ばれる存在になった途端、生存の記憶を失うそうだ。

なぜかは分からない、だがもしかすると創り出した精霊使いに反抗するのを防ぐ為なのかもしれないと私は思っている。

 

 

〜*

 

 

「…ん」

 

どうやら知らぬ間に寝てしまったらしい。

 

目を開けた私が最初に目にしたのは、真っ白な天井。続けて、黄緑色の癖っ毛の所々に草を生やした幼い少女がひっこりと顔を覗かれるとニタニタと笑い出す。

 

 

「おきたおきた〜たきおたきお〜」

 

特徴的なしゃべり口調でケタケタ笑う幼女に続けて、顔を覗かせるのは半透明な水色の髪を背中に流し、適度に整った顔立ちを悲痛に歪ませている女性である。

 

「良かったですか?主様(あるじさま)。突然、倒れられたのでびっくりしたんですよ』

「ちっ、起きたんならさっさと人間どもを潰しに行こうぜ」

 

常に不機嫌そうな声はこの声は、磐土(イワツチ)だろう。彼は髪の毛が岩になっていて、凛々しい顔立ちにもヒビのような線が入っている青年である。

 

「こら、磐土(イワツチ)。主様になんて乱暴な口調ですか!」

「うるせーんだよ、水虬(ミツチ)。いい子ぶるんじゃねー」

「なんですって!」

 

喧嘩を始めたイワツチとミツチを止めようと起き上がる私に後ろにいた燃える炎が髪でいかつい顔をした男性が呆れたような声を漏らす。

 

「こらこら」

「逃走中に居眠りとは我らの主人は随分、余裕があるようだな」

軻偶突智(カグツチ)…」

「カグツチもなんたる言い草ですか、主様に!」

「ミツチいい」

「ですが…」

 

尚も言い下がるミツチに私は鋭い視線を向ける。

それで押し黙ったミツチを見て、私は彼らへと笑いかける。

 

「みんな心配掛けたようだね」

「そう自覚してんなら倒れるじゃねー」

 

不機嫌そうにイワツチがいうのを聞いて、手厳しい、とは苦笑いする私は近くに転がっているものを見て、頭を抱える。

 

「ね、これ誰がやったの?」

 

顔を金槌のような鈍器も複数回殴られたのだろう、頭蓋骨はひび割れ、中から生々しい血色した脳みそが冷たいコンクリートへと垂れており、小さな身体は所々に灼け爛れ、若々しくきめ細かい肌が黒くなっている。よく見れば、幼い顔も灼け爛れているし、黒い髪はびしょびしょ、そして二の腕のところには切り傷で…下腹部のところに大きな切り傷があり、中から臓器が溢れる…って、これ全員でヤったぽいな。

 

案の定、全員でヤったらしく、私から目をそらす四人に深くため息をつく。

 

「確かに多くの魂は集めるとは言ったけど…ここまで酷くしなくてもいいんじゃないかな?」

「ですが、この者は主様を殺そうと…」

「分かったから落ち着いて、ミツチ」

 

ミツチはこの四人の中で一番の服従心が強く、私に害をなすものには容赦なく鉄槌を下す。故に扱い困る精霊だったりする。

 

「それより野椎(ノツチ)は?」

 

白熱していくミツチを置いておいて、ハツチへと話しかける私の後ろからチャラい口調が聞こえてくる。

 

「おー、起きたんスね、主」

「うわ!?って…ノツチ、いつからそこに?」

「そうスね。主が目を覚まして、ノツチがケタケタ笑ってる所からスね」

「…そっか」

 

どうやら最初から居たらしい。

居たなら居たと言って欲しい…と頭を抱える私へとノツチは芝生の髪を揺らすと私へと話しかける。

 

「とりあえず、主が狙っていたうさちゃんって子はここをもう後にしてるス。最初にヤったあの眼鏡の片目が無かったスから、どうやらその目を使って外から出たっぽいスね」

「そっか」

 

この地下研究所があの眼鏡…ウェル博士の目で無くては出入りできないセキュリティを搭載しているからと油断していたが、まさかあのミンチ肉と化したあの眼鏡をウェル博士と判断し、うさちゃんは転がっていたウェル博士の目を使用して、外に出たと。

 

「なら、ここにもう用はないけど…折角だからね」

 

電球が不自然に点滅し、私の周りを半透明な白い浮遊する球を無造作に鷲掴みにし、その球へとキスを落とす。

 

「私の駒となる魂を回収させてもらおう」

 

薄暗い部屋の中、赤い唇と白い歯だけが輝いていた…




本当は逃走までの歌兎視点も書きたかったんですが、あまりダラダラ書くのも読者の方にとっては苦痛かなと思い、この話のオリジナルキャラ・虎々絽の視点のみとさせてもらいました。

まず、この章のオリジナルキャラである虎々絽という名前は本作の主人公が歌"兎"と動物の名前が入っているので、彼女にも動物の名前を入れてあげたいと思い、この名前にさせてもらいました。
彼女はこの作品始まって以来の歌兎にとっては忘れさせし親友であり、姉様とは違い他者であり、もしかすると姉様以上に歌兎へと好意を寄せている子ですからね。

と、折角なのでこの章を書いた理由を述べるとこの作品は『ガールズラブ』というタグはあるが、姉様との絡みが多く、これはガールズラブでなくシスターラブだよなぁ…と思い、折角なので歌兎にも恋愛されてあげたいなぁと思い書いたのがこの章というわけです。
章のタイトル通り、普通の恋愛とは違い、かなり重い恋愛となると思いますが…これからも虎々絽と歌兎の二人が繰り出す恋愛模様を楽しんでもらえればと思います。
私も未熟ですが、頑張って二人の感情を書かせてもらいますので…ハードラブ・ミッションをよろしくお願いします(礼)

また、調ちゃんが切ちゃんのことを『切歌ちゃん』と言ってるのは、最初から『切ちゃん』では無かったのではないか?という私の勝手な憶測からです。
徐々に仲良くなり、『切歌ちゃん』→『切ちゃん』になったと。
切ちゃんは私のイメージでは誰とでも分け隔てなく接することが出来る子と思うので、調ちゃんの呼び方はそのまま『調』としました。



と、ここからは雑談コーナーと題して…イベント『機械仕掛けの奇跡』と『ハロウィン型ギアイベント』の二つの感想を書かせてもらいます。


まずは『機械仕掛けの奇跡』ですが…
ひとまず、キャロンちゃんの父親であるオズワルドに怒りを覚えましたね。
確かに多くの人の命と一人の少女の命では一人の方を取るでしょう。だがしかし…だからこそ、オズワルドにはキャロンちゃんの味方であって欲しかった。
彼の立場上仕方ないといえど、彼は彼女の父親なのだから、娘を『道具』と言わず…そして、娘を兵器の鍵にするようなことはして欲しくは無かったですね(涙)

と、今回のイベントで新しく流れたオリジナル曲『KNOCK OUTッ!』は響ちゃんらしいカッコいい曲でしたね!
響ちゃんらしい真っ直ぐな想いとシャロンちゃんへの気持ちがうまく書かれていると思いました。
前の『エンドレス☆サマータイム』と可愛らしく好きでしたが、私はこっちのかっこいい響ちゃんの方が好きですね…ってかなり個人的な意見なのですが(笑)

しかし、今回のイベントも良かったな…お母さんとして頑張る響ちゃんは魅力的でしたし、キャロンちゃんも可愛かったし…最後の挿絵の響ちゃんがカッコ良すぎた(照)
あれは憧れますよ、誰だって。




続けて、『ハロウィン型ギアイベント』ですが…こちらはギアの感想が主ですね。

ギアの感想を書く前にガチャの結果なのですが…最初の一回で調ちゃんの方を入手することができまして、後は大大大大大本命たる切ちゃんなのですが…かすりともしない(涙)しかし、諦めるのはまだ早い!
何故なら心の中で奏さんが『(ガチャを)回すのを諦めるなッ!』って私に言ってるから!!
ってハイ、ふざけました。すいません(土下座)

と、ふざけてないで…ギアの感想ですが、今回のギアも大変可愛らしい!
調ちゃんは魔女っ子でフリルのついた衣装が可愛いですし、何よりもツインテールがくるくるってカールしているのがいいッ!!可愛いなぁ〜と戦闘中ニヤニヤしながら見てます。
そして、切ちゃんですが…こちらも可愛いっ!!
しかもフードですし…トレードマークのバッテンが大きくプリントされてますし…。他にも何故か悪魔のツノっぽいものが生えてたり、蜘蛛の巣がプリントされているマントだったりと衣装は私のどストライクゾーンですよ!モーションのお化けっぽくベロベロしてるところがなんとも…(可愛すぎてジタバタ)

しかし、調ちゃんは魔女っ子…で、切ちゃんはなんなのか?
悪魔なのかな?紫のツノ生えてるし…でも、鎌持ってるしな…死神?いやいや、必殺技な感じから吸血鬼な可能性も…って、そんなことよりもここ二人のシンフォギアカードは覚醒する前も完全覚醒した後も手は重なったままってーー尊すぎるでしょおおおおああ(絶叫)

これは断然切ちゃんを入手せれば!!





と、こんな感じで雑談コーナーを終わりにします。
長らくお付き合い頂きありがとうございまするm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

13)違和感とはんこうき。

こんばんわー、いや…おはようございます、なのかな…?

と、今回の話は切ちゃんと歌兎の姉妹喧嘩が主となる話だと思います。
個人的には一番書きたかったことが書けたと思うこの話…姉妹喧嘩の行く末を見守って頂けばと思います!

では、『13)違和感とはんこうき。』の開演です!!

※上が切ちゃんからの視点、下が歌兎の視点となっております。


暖かいお日様の光が差し込むリビングの五つの席の中、左側の一番左端の席は今日も(・・・)ぽつんと空いたままで、その代わりに"うたうのへや"というネームプレートが掛けられた部屋の前に無造作に置かれた持ち手付きのお盆の上に置かれたサランラップが掛けられた卵焼きに焼き鮭、白ご飯に味噌汁というオーソドックスな朝ご飯は手付かずのまま、あたしがその部屋の(ぬし)に話しかけたままの状態で置かれている。

 

(…歌兎…、もう一週間デス…)

 

一切何も口に含む事もなく、一切何か液体を体内へと流し込む事もなく、あたしが溺愛する妹はあの日からカーテンも締め切り、ドアの鍵も締め切り、自室から出てこようとしてこない。

 

そう、あの日確かに歌兎は帰ってきた。帰ってきたのだが---あの時感じた違和感をあたしは今も忘れない。

 

司令に電話をかけた時間から六時間後、歌兎は自力でこのS.O.N.G.の本部へと帰ってきた。

服装は行方不明になった時のものと違い、迷彩柄の短パンの上に深緑色をしたTシャツの上に迷彩柄のフード付きのベストとかなりラフな格好をしてたり、慌てふためくあたしを落ち着かせつつ、歌兎が説明したのは着ていた服装は防御などに使って使い物にならなくなり、あのまま帰ってきたら姉様が心配しちゃうだろうから、気絶させた敵から拝借したものが今身につけているものらしい。

そう説明する歌兎の眠さそうに開かれた黄緑色の瞳は奏者のみんなやあたしを見ているようで見ていなく、焦点の合ってない視線に違和感を覚え、不自然に淡く笑っているところも何かを握りしめているかのように膨れ上がったままの右拳…そして、普段よりも血の気の引いたその顔色が明白に逃走中に歌兎の身に何かがあった事を証明していた。

 

メディカルチェックの時に右拳に握られていたものを差し出した歌兎からそれを受け取ったS.O.N.G.の医療スタッフは何気無く掌に置かれたものを唖然と見つめ、そして悲鳴を上げた。

自分の掌に転がっていたのは人の眼球だったからだ。

白銀色の虹彩に黒い眼孔がこちらを向いており、悲鳴を上げたスタッフはそれを床へと落とし、腰を抜かしたように小刻みに下半身を揺らして、床へと座り込む。そんなスタッフを見つめる歌兎はただ不思議そうに眺めていたそう。

 

その後、結果が出たのだが、問題があったのは精神の方らしく…司令は歌兎に自宅での療養を勧め、歌兎はそれに従い、自宅に帰ってくると共に自室へと篭ってしまったというわけだ。

 

(…歌兎、あなたはあの日なにを見てきたっていうんデスか?それに何故ウェル博士の左眼球をあなたは握っていたのデスか…あの場所でなにがあったんデスか?それはお姉ちゃんにも言えない事なんデスか?)

 

歌兎の部屋を見つめながら、あたしは調が作ってくれた朝ご飯を食べながら…考え事をする。

どうすれば、歌兎が部屋から篭らないようになるのか?どうすれば、出てきてくれるのか?

 

パクパク

 

次は味噌汁を飲もうとお椀を持ち上げた時に右側からハンカチが迫ってきて、頬を拭かれる。

 

「…んぅっ。し、調?」

 

あたしの頬を拭いているのが調と知り、そっちを向いて眉をひそめると、調が小さくため息をつく。

 

「切ちゃん、歌兎が心配なのは分かるけど…よそ見しながらご飯を食べちゃダメ」

「あはは、ごめんなさいデス」

 

スゥ…とあたしの太もも辺りを見る調に習い見て見ると見事に白いご飯粒が落ちており、あたしは笑いながらご飯粒を拾うとそれを口に含む。

そして、食べ終えたあたしは歌兎の部屋の前に行き、手付かずの朝ご飯を見つめ、その朝ご飯に添えられている何かの紙切れのようなメモを手に取る。

 

《ごめんなさい。今は何も食べたくないんです。歌兎》

 

簡単に書かれたそのメッセージをあたし越しに見ていたマリアとセレナ、そして調が苦い顔を浮かべる。それはあたしも同じだ。

 

「このまま何も食べないと餓死してしまうわ」

「…それに暗い部屋の中に閉じこもっていると身体にも悪いです」

「…今日は歌兎の好物沢山入れてみたんだけど…ダメだったみたい」

「……」

 

もう、これは以上黙って見ることは出来ない。

司令やクリス先輩、翼さんにも歌兎が打ち上げてくれるまで待つべきだという言葉の意味は痛い程分かる。だけども、これ以上待っていたら、歌兎が本当に餓死してしまう。

 

(…歌兎の嫌われてもあたしはやるデス)

 

覚悟を決め、マリアと調に今日は学校を休みたいと告げようとした時には言葉を遮れていた。

 

「調、今日は---」

「---分かってるよ。歌兎の事宜しくね、切ちゃん」

「私から連絡しておくから、

「暁さん、歌兎ちゃんのことお願いします」

 

トントン

 

と、励ますように肩を叩いて、重たい足取りで出ていた三人の気持ちに答える為にもあたしはこの部屋から歌兎を連れ出さなくてはいけない。

 

「…よし!やるデス!!」

 

パシン

 

と頬を叩き、気合いを入れ直すとあたしは歌兎の部屋の前に立ち、遠慮がちにドアをノックする。

 

コンコン

 

『……』

 

いつもの如く、沈黙が続く。だがしかし、今日はこれで終わるわけにはいかない。

 

コンコン

 

『……』

 

コンコンコンコン

 

『……』

 

コンコンコンコンコンコンッ!

 

尚も無視し続ける歌兎にも聞こえるようにドアをノックすると余りにも煩かったのか、今まで反応がなかった部屋から身動ぐ音が聞こえる。

 

『…なに?』

 

今まで聞いたことがない歌兎の不機嫌そうな声。

 

「…お姉ちゃんデス。少し話がしたいんデス、ここを開けてくれませんか?歌兎」

 

柔らかい声音で語りかけるように言うあたしに歌兎は不機嫌な声のままで質問してくる。

 

『…姉様、学校は?今は行ってる時間帯でしょう?』

「休みました。こんな状態の歌兎をほっておかないデスから」

『……てよ』

 

いつものように明るい声でそう言うあたしの耳に届くのは歌兎の掠れ声である。

 

「へ?」

 

バッシン

 

とドアに衝撃が走り、怒鳴り声が部屋に響く。

 

『ほっておいてって言ってるじゃん!お姉ちゃんのそういうお節介なところ本当に嫌い!!』

「…歌兎?」

 

"姉様"でなく"お姉ちゃん"という呼び方で綴られる言の葉は歌兎の偽りのない本音らしくて…キライのたた三文字がここまで凄まじい切れ味だとは知らなかった。

見えざるナイフで心臓を八つ裂きにされているようで、息苦しさが加速していく。

 

(…でも、こんな事であたしはやめないんデス!あたしはマリア、セレナ、調との約束を守るんデス!!)

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

---止まらない。

涙が…思ってもない言葉の暴虐が止まらない。

 

『いつもいつも僕の為とか言って、本当は自己満足なんでしょう!』

 

---止まらナイ。

自己満足…なんて思ったことないよ、お姉ちゃんは僕のたった一人の肉親で僕の心の拠り所で。

 

『僕は世話してなんて一度も言ってないのに勝手にしていって…自分の価値観に僕を巻き込まないでよ!!!』

 

---止マラナイ。

人見知りであまり人と関わらない僕に色んな人を紹介してくれて、友達にしてくれた太陽のように暖かい人。

 

『僕はそういうお姉ちゃんの勝手なところ大嫌い!!」

 

---トマラナイ。

なのに…それなのに……なんで、こんなコトバばかり出てきてしまうんだろ…。

 

僕は毛布を固く握り締め、頬を濡らす涙を乱暴に拭う。

 

「…自己満足…?そんなわけ、ないじゃないデスか…っ、あたしは昔も今も貴女の事だけを思ってッ---」

「---貴女の事を思っているのなら…ほっておいて…。それが今の僕が一番望んでいる事だよ」

 

(あぁ…もう完全にお姉ちゃんにも愛想つかされちゃった…)

 

心配してきてくれたのに…我儘な僕の為に学校を休んでくれたのに…。僕は…っ、ぼく、は……そんなお姉ちゃんの好意を一蹴してしまった…。

 

止めどなく溢れる涙を拭う僕へと当たる明るい光。

 

「一番に望んでいる事ならなんで毛布に包まって泣いてるデスか、歌兎」

 

(そんな…そんな事あるわけ…、だって僕はあんなに酷いことをお姉ちゃんに---)

 

顔にかかる光に導けるように上を向いた僕が見たのは

 

「一週間ぶりに歌兎の可愛い顔が見れて、お姉ちゃんはハッピーニャッピーな気持ちデス」

 

ニッコリと僕の大好きな太陽のような笑みを浮かべるお姉ちゃんの姿だった……




もしかしたら、この作品始まって以来、初のちゃっとお姉ちゃんしてる切ちゃん(笑)
書けてよかった心から思う反面、姉様の悪口を言う歌兎は書いてて辛くなりまして…私もですが、思ってる事と言いたい事が真逆なることというのは良くあることなのですが…彼女の場合、本来ならば取り返しのつかない言葉の暴言を大好きな姉様へとぶつけてしまったわけですからね…きっと、彼女の心の中も痛みが走っていたと思います…。

そして、今回の歌兎が何故"姉様"でなく"お姉ちゃん"なのかというと……切ちゃんが違和感を覚えたという歌兎の姿と今の歌兎の精神状態によるものでして。

次回はその精神状態と一週間何も食べてこなかった歌兎に何か食べさせようとする切ちゃんの話となると思います。ちょっと、普通のお姉ちゃんでは取らないような方法を取ると思いますが…まぁ、そこがうちの過保護な姉様なので(苦笑)






と、ここからは雑談コーナーで、シンフォギアと全く関係ないのですが…私の推している声優さん、茅さんがアニメ化が決定された『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』の『大好真々子』さん役でご出演され…尚且つ、その真々子さんは息子を溺愛するお母さん役だそうで…もう、衝動のままにCMを聞き、そのCMを聞いて、ハイテンションのままに小説を書かせてもらいました…

この小説にも、シンフォギアにも関係なのですが…

一言、ほんの一言だけ…言わせてください…





お母さんーーーー!!!!!(絶唱)






と。
私…いい子して待ってます、アニメが始まるのを(正座)




と、こんな感じで雑談コーナーを終わります、ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14)そんな事しなくても…。

今回は話は短い上にただ暁姉妹がイチャついてる話です。

苦手な方はそのまま回れ右が高速スクロールしてください…では、『14)そんな事しなくても…。』の開演です!

どうぞ!!


「えへへ〜、一週間ぶりの歌兎を抱っこしたのデスぅ〜」

 

僕を太ももの上に座らせ、お姉ちゃんはすりすりと僕の頬へと自分の頬を擦り付ける。

因みに、僕の部屋は締め切っていたカーテンはお姉ちゃんの手によって開けられ、窓も換気との事で開けられ、僕の拳くらいに開けられた隙間からそよぐ風が頬を掠める。

 

「…あ、あの…お姉ちゃん…」

「んー?なんデスか?歌兎」

 

擦り付けていた頬をはなして、お姉ちゃんが僕を見下ろす。僕はそんなどこかキョトンとしているお姉ちゃんの幼さを残りつつも美人という系統に入る顔つきを見上げるとおずおずと意見を言う。

 

「…僕、口移しじゃ、なくても…自分で食べれる、から…」

 

そう、お姉ちゃんは僕の部屋に入り込みや僕を抱きしめると無理矢理唇を奪い、ミネラルウォーターを流し込んできたのだ。それ以降もシラねぇが作ってくれたという朝ご飯を口に含み、強引に僕の口をあけて食べさせるという…絶対普通の姉妹ではしない介護を受け続ける僕もこれ以上は羞恥心に胸が押しつぶされそうなので、やめてくれるように申し出を出したというわけだけども、お姉ちゃんは穏やかな口調ながらも有無を言わさぬ凄みをオーラに潜ませ、僕にいう。

 

「だめデス!そう言って、食べないつもりなんでしょう?あたしはマリアやセレナ、調から歌兎の事を元気にしてほしいって頼まれたのデス。だから、無理矢理にでも水分や食べ物を飲んだり、食べたりしてもらうデス」

「だからって、こんなやり方しなくても…」

「こんなやり方じゃないと歌兎が飲んだり食べたりしないからデス」

 

お姉ちゃんはベットに横に鎮座してある勉強机の上に置いていたミネラルウォーターを口に含むと僕の頬を添えて、自分の方を向けさせるとゆっくりとお姉ちゃんの整った顔が僕へと近づいてくる。

 

「ま、待って…っ!早まらないで、お姉ちゃ---んぅっ、んぐんぐ…っ」

 

抵抗する僕の手を頬に添えてない方…右掌で抑え込み、お姉ちゃんは僕の唇に自分のそれを重ねると僕の固く閉ざされた唇を舌で開けさせると口に含んだミネラルウォーターを流し込む。

流し込まれたミネラルウォーターは重力に従い、僕の喉へと流れていき、ごくんごくんと喉を鳴らす僕を見て、唇を外したお姉ちゃんが得意げに笑う。

 

「んっ…ほら、こうしたら飲んでくれたでしょう?」

「だからって…こんなの」

 

顔を赤くする僕に心底不思議そうなお姉ちゃん。

いやいや、お姉ちゃん。なんで、そんな不思議そうな顔してるの?僕はその意味が変わらないよ。

 

「…お姉ちゃんには羞恥心ってものがないの?」

「いきなり何を言い出すデスか、歌兎」

 

だって、羞恥心が無いから…こんな恥ずかしい方法を取るだろうから。

 

「あたしはただ歌兎に元気になって欲しいだけなんデスよ。それに…歌兎、まだ食べ物や飲み物を見るだけで気持ち悪くなるんでしょう?」

 

僕の両手を抑え込んでいる右掌に僅かに力が篭り、僕はハッとし、お姉ちゃんを見上げる。

 

「…あの日、歌兎に何があったのか、あたしは知りません。でも、こんなに震えてるんデス…きっと怖い事があったんデスよね?」

 

そう言いながら、今度はナスの煮しめを口に含んだお姉ちゃんの顔が近づいてくるのを僕は静かに受けいれるのだった…

 




変な終わり方になってしまいましたね(笑)

今回の話ですが、文字数少ないのに…シスターラブ要素がふんだんに詰まっていたと思うこの話。
読書の皆様的には有りだったでしょうか?

私は少しやりすぎたかな…と思っております(笑)
これは過保護では無いような気がしまいまして…しかし、うちの姉様ならやりそうかなぁ…と思ってみたりします(笑)







と、ここからは雑談コーナーで…今日からAXZの中盤ストーリーが登場しましたね。
まず、感動したのは『デンジャラス・サンシャイン』が聞けた事でして…やはり、この曲は可愛い…っ!!可愛いと思うのですっ!!
最初聴いた時は正直、なんだこりゃ…と思いましたが、聴けば聴くほど良さが分かる曲だと私は思っております。
特に『にゃっにゃー』は私の癒しであり、元気をもらう言葉です(*´∀`*)

作中で流れたということは…後編で曲追加ってなるのかな?もしそうなったならば、私は速攻で『デンジャラス・サンシャイン』をミュージックルームに追加する為に頑張ります!

と、そのお祝いで歌唱石を一回回せるくらいに溜まったので…今度こそと思い、切ちゃんこい!と回したのですが…出てきたのは、☆5メモリアが二つでシンフォギアカードは切ちゃんは居たのですが…もうすでに限界突破したものでして……泣きたくなりました(涙)

まだ期間がありますからね…また、ぼちぼちと歌唱石を貯めていこうと思います。


と、いうことで雑談コーナー終わりです。
ここまで読んでいただきありがとうございます(礼)






また、明日の更新は恐らくずっと書きたくて、うずうずしていた『きりセレ』…『切ちゃん×セレナちゃん』の話を更新しようと思います。

この章は歌兎は登場しますが、ストーリーに関わることはありませんかつ新たな世界線での話ですので…読書の方が混乱しないように前書きが長めとなるかもですが、説明文を入れようと思います。

完全なる趣味ですので、更新はクロスオーバーの下に新しい章を作り、更新していこうと思います(土下座)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

《パラレルルート》トゥルーエンドを目指して 1)天は鳴り、翼奏でて、兎は歌う 前夜

お久しぶりデス…長らく更新出来なく申し訳ありません…。

さて、改めて始まったトゥルールートですが…こちらの歌兎は少し…いいえ、本編に比べると物をハッキリ言うことが出来る子となっております。
また、『姉様の言うことには絶対服従』なので、お姉ちゃん好きが加速して、お姉ちゃんの方も過保護が加速しているかもですが…そこもこのトゥルールートの楽しみポイントというところで…どうか、よろしくお願いします!

久しぶりに書いたので、視点があっちこっちになっているかもしれませんが…どうぞ、お楽しみ下さい!


大きな草原にポツンと置かれたライブ会場。

羽を広げたような七色の点滅する器具、左右にはトゲトゲしい黒を基調とした青色と桃色の点滅する器具がある。それを背景にだだ広い白いタイルが貼られたステージは真ん中から真っ直ぐに会場の中央部に向かって伸びている道があり、それを左右に隔てて、思い思いに手に持ったペンライトを振り回しながら、観客たちが蠢いていた。

 

「フォニックゲイン、想定内の伸び率を示してます」

盛り上がりを見せる観客たちの様子を大きめのモニターで見ている多くの大人たちの一人がそう言うと、焦げ茶色の髪へと薄ピンク色の蝶々の髪飾りを付けている白衣姿に赤縁眼鏡の女性が即座に反応する。

 

「どうやら、成功みたいね」

 

両翼を持つ二人の歌姫がステージの上を滑っていく…多くの大人と多くの者たちの思惑を乗せてーー

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

【逆光のフリューゲル】

 

何度も聞き流してきたBGMが流れ、僕は目を輝かせ、姉様と僕は手に持ったペンライトを片手にステージの上を滑るように動いていく二人に見えるように振り続ける。

しかし、周りは大人で僕はまだちっぽけな七歳である子供であって…

 

(んーっ!見えない…)

 

小さな脚を使って、一生懸命背伸びしても見えなくって…でも、近くに居る姉様とシラねぇは何とか隙間から見えているらしくて、見上げる姉様の垂れ目の黄緑色の瞳がだんだんと大きくなっていく。

 

「おぉー!!調、歌兎!ツヴァイウィングデス、やべーデスよ!!」

「もう、切ちゃん、はしゃぎすぎ」

 

ペンライトと左腕をブンブンと振り回して、大はしゃぎする姉様に終始呆れ顔のシラねぇ。でも、あれは呆れているというよりも一緒になって喜んでいるって感じなのかもしれない。

そう思うと、自然と頬が緩んでくる。

 

「およ?歌兎、今日はなんだか機嫌がいいデスね?ツヴァイウィングに会えたからデスか?」

「…それもあるけど、姉様とシラねぇと来れたことが何よりも嬉しい」

 

そう言って、姉様とシラねぇに抱きつこうとする前に泣き出す寸前の顔に崩しながら、姉様が僕へと抱きついてくる。

 

「あぁ、もう!歌兎が可愛すぎるのデス!!お姉ちゃんがスリスリしてあげるのデス!!」

「…もう、姉様。暑いよ」

「暑さなんて関係なのデス!すりすりすりすり」

「…くすぐったいから」

 

そのまま持ち上げられると頬ズリされながら、僕は姉様を押し返しながら、ツヴァイウィングがいる方を見る。

腰まで伸びた赤い髪に桃色のワンピースを着ているのが、天羽奏さん。青色の髪をサイドテールに結び、お腹のところが空いている水色のワンピースを着ているのが、風鳴翼さん。

二人が奏で唄う曲はどれも力強いものもあるが…時折、切ない物もある。その異なる歌を見事に歌い上げる二人に僕は憧れ、いつかはこの二人を超える歌を歌ってみたいと思うようになった。

 

僕も仕事柄…うーん?あれは仕事というのだろうか?人助け柄って言った方がしっくりくる気がする。

その人助け柄で歌を歌わせてもらうことがある。その時に僕が唄う曲は自分で言うのもなんだけど…どこか暗い感じがする。その歌詞が僕の心境を表わしていることは分かる…僕はあの人からこの力を受け継いだ時に、沢山のものを貰った。だから、今度は僕があの人に貰ったものを周りに振りまいていく番だ。

だからこそ、僕はあの歌詞に含まれているあの出来事をちょっとずつ乗り越えていかなくてはいけないんだ…。

 

一人、しんみりとそんな事を思っていると大きく湧き上がる叫び声に紛れて、小さな呟き声が聞こえてきた。

 

「ドキドキして、目が離せない……。すごいよッ!これがライブなんだッ!」

「…?」

 

聞こえてきた呟き声を探していると僕がいる側でなく、白い通路を隔てた向こう側に見つけた。

 

(あのお姉ちゃんかな…?)

 

ピンクのワイシャツに白いカーディガンを着た明るめの茶色の髪を癖っ毛にしている少女。

琥珀色の瞳を正面に向け、大人達にもみくちゃにされながらも嬉しそうにペンライトを振っている女の子…恐らく、年はうちの姉様くらいか一個上くらいだろうか。

 

(あのお姉ちゃんは一人で来てるんだ…。あんなに嬉しそうに振って…きっと、奏さんと翼さんが好きなんだろうな…)

 

どこかうちの姉様に雰囲気が似ている少女が何故か気になり、暫し見ていると、ツンツンと僕の肩を突く人が居る。

誰かな?と振り返ってみると桃色の少し吊り目な瞳がジィーーと僕を見つめていた。

その瞳の中に心配の色が滲んでいるのを見て、僕はパタパタと両手を振ると慌てて弁解しようとして、手遅れとなった。

 

「歌兎、どうしたの?」

「…ん?」

「ずっと、あっち側見て動かないから…。誰か気になる人でも?」

「なんデスとぉおお!!?どいつデス!どこの馬の油デスか!あたしの妹を誑かす奴ッ!出てこいなのデス!!」

 

シラねぇの声を目敏く聞いていた姉様が表情を険しくさせて、手当たり次第色んな人をものすっごい形相で睨みつけている。

 

(あぁ、もうこれだから…過保護な姉様は…)

 

呆れ顔のシラねぇと僕は周りの人が既に居なくなりつつある周囲に頭を下げつつ、姉様の暴走…いいや、過保護節を止めようと試みる。

 

「切ちゃん、落ち着いて。それだとただのお馬さんの油だから…それに、万が一にもこんな大勢の中から見つけられるわけないでしょう」

「…シラねぇの言う通りだよ、姉様。姉様が気にしているような人居ないし、あっち側見てたのも何気なしだから」

「調、歌兎がそう言うなら…落ち着くデス」

 

シラねぇと僕の言い分を聞き入れた姉様だが、まだ思うところがあるのか…プクーっと頬を膨らませて、周囲をキョロキョロする姉様に僕とシラねぇは顔を見合わせて苦笑いする。

それを見計らったように、ステージから奏さんの叫び声が聞こえて、僕は盛り上がりを見せる観客に負けないように声を張り上げるのだった。

 

「まだまだ行くぞーッ!」

 

(凄い!凄いよっ!)

 

「「うわーッ!」」

 

僕の叫び声とあの少女の声が重なり合い、そしてーー

 

バァアアアン

 

と、大きな爆裂音が聞こえて、そちらを見ると今まで見たことがないくらい多いノイズの群れが姿を現していた。

それに目を見張り、僕は服の上からソレをなぞるとギュッと胸元を掴む。

 

(僕がやるしかないんだ…!この国の奏者が応援に来るまで…僕が持ちこたえるしか…ナインダ!!)

 

僕は唖然としている姉様から身体を揺らして飛び降りると、姉様とシラねぇへと声をかける。だが、それよりも先にシラねぇと姉様は僕の言いたい事を汲み取ってくれたらしく、微笑んでくれるシラねぇにうなづき、飛び出そうとした時だった。

 

「…姉様、シラねぇ!」

「観客の避難は任せて」

「…ん。それじゃあ、僕いっーー」

 

僕の手をギュッと掴み、何かを言うと口をもごもごさせている姉様へと僕は小首を傾げる。そんな僕を見つめ、やがて諦めたかのような顔をした姉様は念押しといつも言ってくるセリフを口にする。

 

「…姉様?」

「…っ、いいえ、なんでもないデス。歌兎、怪我だけはしてはダメですよ」

「…少しならしちゃう、人助けだから」

「本当は少しもして欲しくないデスがね…でも、それで歌兎が満足なら…お姉ちゃんは特に言うことはないデス」

 

そう静かに言う姉様の垂れ目な黄緑色の瞳に影が差している気がして…僕は戦いに向かう事を躊躇してしまう、姉様が悲しい思いをするのであれば…ならば、僕はこのままーー

 

「…姉様…」

 

そこまで、考えたところで姉様はブンブンと顔を振るといつものようにニコッと笑う。

 

「と!湿っぽくなのは無しデスねっ!ご武運を、デス!歌兎。歌兎からなんでも出来ます、あたしの自慢の妹デスから」

 

そう言って、僕を勇気づけるように背中を押す姉様に力強くうなづきながら、僕は走り出す。

 

「…ん!ノイズなんて蹴散らしてくる」

 

襟首から赤い結晶を取り出し、強く握りしめる。

 

(さぁ…いこう、ミョルミル。僕たちがここにいる人たちを守るんだ。カルねぇから貰ったこの力でーー)

 

目瞑り、胸に浮かんでくる胸に浮かんだ聖詠を口にすると…僕を眩い光が包み込む。

 

「…multitude despair mjolnir tron」

 

僕の着ていた姉様や家族からもらったお古が強い光の元へと溶けていき、変わりとばかりに僕の幼児体形へとぺったり張り付く薄手の布は薄い花青緑色で僕のおへそが見えちゃっている。その薄い布の上からパチンパチンと細っこい肢体に絡みついてくる黒と花青緑色の鉄で出来た防具。最後に耳元を覆うようにヘッドホンが装着され、首元に緑色の三角巾を巻いたらーーミョルミルのギアの装着完了だ。

ブンと横に振った右手に携えたブーメランを思いっきり振りかぶると今まさに姉様とシラねぇや観客に触れようとしているノイズ目掛けて投げつける。

 

効気(こうき)鳥飛兎走(うひとそう)

 

「…ふん!」

 

僕がぶん投げたブーメランにあたり、次々と灰になっていくノイズと今だに心配そうにこっちを見ている姉様へと微笑み、大丈夫だよという意味で手を振っていると両耳から流れている戦闘曲の伴奏が丁度終わる。

そして、小さく息を吸い込むと帰ってきたブーメランを受け取りざまに左側に固まっているノイズの群れへと投球するとまだ避難出来てない観客の救済へと向かう。

 

【灼鎚・ミョルミル】

 

〜♪

閉ざされた世界に 小さな兎

一人迷い込んだ 森の中

大きな穴から拾い上げた 一つの宿命(カルマ)

〜♪

 

両耳から聞き慣れたBGMが流れるのを聴きながら、迫り来るノイズの攻撃をひょいひょいと避けながら、左から帰ってきたブーメランの取っ手を持ち、くるっと身体を一回転させながら、その勢いのままに目の前にいるノイズを回し斬りする。

 

(ちっ、これじゃあラチがない。何処からこんなにも湧いてくるの)

 

忽ち、黒い灰と成り果てるノイズの壁から押し寄せてくるわくるわ…ノイズのダブル層に思わず苦笑いを浮かべながら、もう一度勢いよく振りかぶるとぶん投げるブーメランを受け取ると辺りを見渡し、ライブ会場に誰も残ってないか確認する。

 

(んー、こっち側は大丈夫。今度はあっちに行こう)

 

爆発やノイズの襲来でボロボロになった瓦礫をぴょんぴょんと飛び越え、取り敢えず目に見えたノイズへと二つに分裂したブーメランをぶん投げる。

 

分気(ぶんき)鳥兎匆匆(うとそうそう)

 

♪〜

閉ざされた世界に 轟々と燃え広がる焔

兎は叫び やがて 憧れは燃え尽き 灰と化す

抱き上げ零れ落ちた腕から 大きな宿命-カルマ-

♪〜

 

両耳から流れてくる音色の載せながら、曲を歌い上げる。

もう二度とあんな思いを、あんな出来事を起こさない為に僕はこの力と思いを受け継いだんだ…。

だから、その信念を踏みにじるものがいるのであれば、僕は許さない。

 

だから、そこにいるノイズさん、チリに帰りたくなければ…そこをどけて。どけないのであればーー

 

「…もう容赦しない」

 

帰ってきたブーメランを受け取り、キリッと前を向いた僕は行く手を塞ぐノイズへと斬りかかった…




【補足】

◎暁 歌兎

※ミョルミル
→首に巻いた三角巾がアクセントな花青緑色のギアで、それ以外は何もまだ考えません。なので、ちゃんとしたデザインが浮かぶまで、読者の方思い思いに歌兎のギアを思い浮かべてみて下さい。もしかしたら、そのギアデザインになるかもしれませんし…全く違うものになるやもしれません。

※ブーメラン
→ブーメラン片手にノイズをぶった斬り小さな女の子ってカッコいいなぁ〜と思い、設定したものです。


その他足りない解説は明日以降に書き足していきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

《パラレルワールド》幾千のバットエンドを乗り越えて 1)その日、あたしの妹はーー。

目標は【トゥルーエンド】ということで……歌兎が多くの死線を乗り越えて、大好きな人達と平和に暮らしていくために奮闘する話となっています!!

XDオリジナルストーリーにてうちの歌兎が纏うギア【ミョルミル】が登場しました!!
私事ですが、歌兎が一時とはいえ奏者のみんなと共戦しているようで胸が熱くなりました(涙)
また、XDのミョルミルからも今回の話を書くためのヒントを頂きました!

余談を挟んでしまいましたが……歌兎が歩んでいく山だらけのストーリーを暖かく見守っていただければと嬉しく思います!

では、本編をどうぞ!!


1.

 

Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl––

 

(歌が聞こえる……)

 

Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl ……

 

(悲しい音色なのに、どこか暖かく思えるそんな旋律……)

 

その旋律を奏でているのは僕なのか、はたまたーーーー。

 

(まあ、もういいか、そんな事を……)

 

自分でも分かる、ゆっくりと命の灯火が消えかかっていることがーー。

 

「……」

 

(死ぬときは身体が冷たくなるって聞いたことあるけど……)

 

"何故か、身体が暖かいなぁ……"と思い、やけに重い瞼をゆっくりと開いてみると目の前まで炎が迫ってきており、ポロポロとまるで積み木のように淡く脆く崩れ落ちてくる瓦礫をただただ小さな身体で受け止める。

 

「……(つぅ)

 

落ちてくる大中小の瓦礫に肢体のあちらこちらへと容赦なく叩きつけては打撲や鋭利な角で切り傷をつけてはズシっとした重みを与えてくる。その上、四方は赤々と燃え盛る焔の壁がジリジリと距離を詰めてきている。

絶体絶命を絵に描いたような状況……いや、そのものなのかもしれない。

 

(って……僕、変になってるのかな)

 

死ぬかもしれない……ううん、もうじきに死ぬと思う状況なのに冷静に物事を考えられている。

ふと、ボロボロに破けた安易なワンピースの襟首から覗く左胸の所に出来た人工的な縫い傷(・・・・・・・・・・・・・・・)と新たに出来た右腰の傷(・・・・)を思い出して、思えば僕は生まれたその時からいつも死に脅かされていた。

 

(……だからかな……全然、怖くないや……)

 

焔の壁によりいよいよ酸素が薄くなり、意識も遠のいてきた時に聞こえてきたのはーー

 

「ーーう!歌兎!!!!」

 

ーー僕の名前を呼ぶ世界一……ううん、宇宙一大好きな姉様の声だった。

物事をつく頃からこの声を聞いて、この声に導かられて、この声に守られて……僕はここまで大きくなれた。

 

(そっか、死ぬって事はもう姉様に会えない事なんだ……)

 

"それは悲しいな……"と思い、ポロリと頬を涙が伝う。

 

「ダメだよ、切ちゃん!!」

「でも!調!!歌兎が!!歌兎があそこにいるんデス!!瓦礫に埋もれて……助けてあげないと!!あたしはお姉ちゃんだから!!」

「だからって今行っても切ちゃんが巻き込まれるだけだよ。だから、今は落ち着いて…!!」

「落ち着いてられないデスよ!!今すぐにでも歌兎を助けてあげないと!!」

 

真っ赤に燃え上がる焔の壁の向こうで"僕を助ける"と言って大暴れしている姉様をシラねぇが後ろからホールドすることによって何とか止めているようだ。そうしないときっと姉様は焔の壁を飛び越えてまでも僕のところに来てしまうだろうから……。

 

(……姉様、泣いてる…)

 

シラねぇにホールドされ、大暴れする姉様の頬を流れる透明な雫の線を轟々と燃える焔が赤や橙に照らしている。

 

そして、その雫を流されているのはきっとーー

 

(ーー僕のせいなのかな? せいだよね……)

 

姉様がやめろって言ったのに言うことを聞かずに飛び出して行って、こんな事になっているだから……。

 

「……ッ」

自分の上に覆いかぶさるようになっている瓦礫を身動きして払い落としてから露わになった右手をグーパーしてみる。

 

(……なんとか右手は動かせるみたい)

 

もうボヤけてきて曇ったステンドガラスのようになっている視界の中なのにポロポロと泣いている姉様の姿だけははっきりと目視出来て、その方向に向けてゆっくりと右手を持ち上げては伸ばす。

 

「…ね……え、さま…………いいつけやぶって……ごめんなさい……」

「……う、たう…?なに、言ってるデスか……そんな言い方……まるで……」

「……ぼく……ねえさまの……えがおが……だいすきだよ……」

「な、何言って……こんな時に何言ってるデスか!!バカ言わないで!!!!お姉ちゃんよりも早く逝くなんて絶対許さないデスから!!!!だから、意識をしっかり持って!!今すぐにお姉ちゃんが助けに行きますからね!!」

「…………ねえさま、ずっとだいすき……だよ……」

 

そう、姉様に言った後に僕の視界を塞いだのは瓦礫の山で右目から流れてくる光景が赤く染まっていることからきっと瓦礫の山の一部が頭に当たったのかもしれない。

いよいよ冷たくなっていき、動かなくなっていく身体にポロポロと涙を流しながら、目をゆっくりと閉じていく中、僕の耳に聞こえたのは姉様の悲鳴じみた叫び声だった。

 

「歌兎ぅうううううううううううう!!!!!!」

 

 

 

 

2.

 

ネフィリムの起動実験を行ったその日、あたしの妹は絶唱のバックファイアによって崩れ落ちた施設の瓦礫に埋もれて、9年という短い生涯に終わりを迎えた。

そんな歌兎の為にあたしが出来たことはおままごとのような小さな墓を建ててあげれることだけ。

半壊した施設の庭の片隅に小さく盛られた土の下には歌兎がその日に身につけていたワンピースの端が埋められていて、小さな石にはあたしが掘った歌兎の名前があり、その名前を見る度にあたしはその場に崩れ落ちては地面を力強く叩きつける。

 

「…くっそ!くっ……そ…………っ」

 

この湧き上がってくる感情は……怒りは……みんなを守る為に犠牲になったカルマ・セレナ・歌兎の事を『実験例』と吐き捨てた研究員へか、はたまた崩れてくる瓦礫の下敷きになっていく妹をただ見ているだけしか出来なかった自分自身へのものかは今だに判断できない。

 

「切ちゃん……」

「くそっ!くそっ!!くそっ!!!くそっ!!!!」

「切ちゃん、そんなに両手を土に叩きつけてたら血が出ちゃうよ」

 

ギュッと両手を握ってくれる漆黒の髪をゴムでツインテールにしている親友・調のつり目がちな桃色の瞳を見つめながら思うのはいつだって妹のことだ。

 

(ねぇ、歌兎……なんであたしが生き残っちゃったのかな?)

 

あたしがお姉ちゃんなのにーーお姉ちゃんは妹を守らなくちゃいけないのに……。あたし、いっつもあなたに守られてばかりの不甲斐ないお姉ちゃんでーー。

 

銃音と人の悲鳴が朝から夜まで響くあの街で強く思ったのに、この腕にあるぬくもりだけは何があっても守り抜こうと。

 

(なのに、それなのに……)

 

「……し、らべ……ぇ……あたし……あたし……っ」

「うん、分かってるよ。何も言わなくていいから……今は好きなだけ泣こ?私しか見てないから……」

「うゔっ……あぁああああん」

 

あたしは調に抱きついてから思いっきり涙を流した、そうすればこの後悔を少しだけ柔られると思えてーーーー。

 

 

 

 

焔の夜と評されたその日、あたしの妹は齢9歳の命を散らした、みんなを守ろうと、ネフィリムから不甲斐ないあたしを守ろうとしてーー。

 

 

 

 

 

 

 


 

オマケ ーその後の二人の会話ー

 


 

 

号泣しすぎて、調の服が濡れたのを見てから、あたしはゴシゴシと袖で乱暴に涙を拭う。

そんなあたしをしばし見守ってから調が小首を傾げながら問いかけてくる。

 

「……っ」

「もういいの?」

 

その問いかけにニッコリといつも通りに微笑んで答える。

 

「ええ、大丈夫デス。やっぱり、調は優しいデスね」

「そんな事ないよ。私は切ちゃんがいつも私にしてくれている事をしているだけ」

 

そう言いながら、ポケットから取り出したハンカチであたしの泥がついた両手の小指側を抜き取り、血が染み出しているところをどこから持ってきたのか、ガーゼを当てている。

 

「へ?あたしってそんなに優しいデス?」

「ふふ。切ちゃんのそういう無自覚なところも大好きだよ」

「なっ、調のそういうの……ほんとズルイ……」

「ズルイってどういう事?」

「わざわざ聞かなくてよろしいデス!」

 

ズイッと顔を近づけてくる調を直視出来ずに勢いよくそっぽを向くと咳払いをしてから、あたしの決意を口にする。

 

「あたし、いつかあいつらに復讐してやるんデス」

「復讐…?」

「歌兎が味わった苦しみを……あたし達が今まで味わった苦しみをあいつらにも味わらせてやる。あたし達を……あたしの歌兎(いもうと)の事を実験動物にしか見てないあいつらに天罰を与えてやる……ただそれだけが今のあたしの目標なんデス」

「私も付き合うよ」

「い、いいデスよ。あたしのに付き合ったら、調が大変な目にあうデスよ」

「ううん、いいの。私の居場所は切ちゃんの隣だから」

 

そう淡く微笑む調の笑顔をまた直視出来ずに耳まで真っ赤に染めてから横を向いてからボソッと呟く。

 

「…………そういうところがズルイんデス……」

 

 


 

オマケ ー完ー

 





いやー、やっぱりきりしらっていいなー(現実逃避)
でも、わたしはきりせれもだいすきだなー(更に現実逃避)
しかし、きりうたもさくしゃとしてのわたしてきにもえるくみあわせなんですよねー(振り返るな!全力疾走 な現実逃避)

って、一話目からダークを入れてみたので……オマケと後書きの最初をふざけてみました(笑)
と書きつつ、オマケの最後も少しダークだったですかね……切ちゃんは復讐を自分の目標にしてしまいましたからね(苦笑)

さて、次回は正直ないだろうと思われている方も多いと思いますが……安心してください!続きますよッ!!

はい、早速ふざけました……ふざけないとね、こういうダークを書くときはやってられないですよ。しかし、ダークものは大好きなのでこれからも書き続けますし、切ちゃんをいじり続けますよ!(笑)
切ちゃんはいじられてこそ輝く子だと勝手ながら思っているので……(笑)



また、5/31から【SSSS.GRIDMAN】とのコラボイベントが始まりましたね!!
前編に引き続き、後編も今日更新となり、読者の皆様のフォニックゲインも高まりまくりだと思います!!
そんな皆様は見事お目当てのコラボギアをゲットなされたでしょうか???

私はイベントは後回しに【限定解放ギアのセレナちゃん】の上限解放のために必要な素材集めに奮闘しているので……イベントはまだ楽しめてないので、熱く語れないのが悔しいのですが……素材も後少しで集まりきれそうなので、そこからはひたすらイベントのストーリーを進めていこうと思います! って、早く進めないとな……(大汗)

また、コラボを記念して……10連無料ガチャがありましたが、私は最初の10連は未獲得の☆4の【アラビアンギアの調ちゃん】をゲットしました!!!(ガッツポーズ!)
この調ちゃんは確か技属性の中で唯一の回復スキルを持ったギアと紹介を受けていたので……密かに欲しかったギアだったりしたので飛び上がるほど嬉しいです!
あと、アラビアンギアのセレナちゃんやクリスちゃん、調ちゃんもどこから服装がエローーげぶんげふん、危ない危ないいけないコメント書きそうになった(大汗)
気を取り直して、今日の10連は未獲得の☆5ギアの技属性の翼さん……【蒼ノ刹閃斬】をゲットしました!!(ガッツポーズ!)
うん、未獲得の安定の翼さん……しかもスキルを見るとすごい強そうな翼さん……ほんと、うちの陣地に沢山来てくれてありがとうございます!!!!
よしよし、この翼さんも大事に育てていこう……(微笑)





今YouTubeで放送している【シンフォギアG】は私が初めてシンフォギアを見たシリーズとなっています(懐)
当時の私はこの作品を見た時に思ったことは『女の子達がめっちゃ裸になってる……ヤベー(いかがわしい)アニメだ……』でしたね(笑)
まー、今ではそういうアニメもガンガン見ますし、グログロはこの時から既に見てましたからね(笑)
と、このアニメを初めて見て衝撃的だったのは『響ちゃんがネフィリムに左腕を噛みちぎれるところ』ですね。私の腕じゃないのに……ゾクっとしましたし……鳥肌が立ちました……。
鳥肌が立ったといえば、クリスちゃんの学園祭の【教室モノクローム】の歌詞と演出がすごく良かったですね……このシーンのクリスちゃんってすっごい可愛いですよね(デレデレ)
すっごい可愛いといえば、切ちゃんのセリフと行動の全てが可愛いですね!!(大興奮)
特にウェル博士に怒る時にいった『にゃ!』に悶えました……しかし、この『にゃ』ってウェル博士の襟首を離す時も言ってたような気がするだよな……DVDの時にその時に聞いて、シンフォギアラジオで茅さんが言ってたのは『ここかぁ!!』ってテンションが上がったことを覚えてますから……んー、でもまた私の思い込みだけかもしれませんね(笑)

また、このシンフォギアGのOPのあるシーンで私つい笑っちゃうんですよね(笑)
それは『♪〜 この胸 落ちた(歌詞間違えていたらすいません)』のところでクリスちゃんの胸がプルンとタイミングよく揺れるところなんですよ!
『反応しちゃダメ反応しちゃダメ』って思えば思うほどに笑いがこみ上げてくるっていう…(なぜ笑ってしまうのかは分からない)




最後に、今はシンフォギア公式ツイッターにて【シンフォギアAXZのベストシーン】の投票を行ってますね!
私はまだ投票してないんですけど……締め切りの前までには投票しようと思ってます!
候補は『切ちゃんの絶唱シーン』か『響ちゃんに手を握られて、照れているところを調ちゃんにジト目で見られるシーン】か【調ちゃんに頭を乾かしてもらってほっこり笑顔の切ちゃん】か【調神社の祀り兎を見て、兎のモノマネしている切ちゃん】の4つですかね…。
全体を通せば、素敵なシーンが多いのですが……切ちゃん関連となるとこの4つが共に好きなものですね(微笑)


では、長くなってしまいましたが……ここで後書きを終えたいと思います!
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございます!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

《パラレルルート》もう離さない 1)ここは…?

何ヶ月ぶりかの更新、書き方とかおかしいところが多いと思いますが…よろしくお願いします(礼)

さて、まずこの章のあらすじを少し紹介いたします。
この章での話は、主人公がある人に連れ去られてきたところから始まります。なので、この話は本編と違う世界線…本編の【漫談:切歌の不思議な夢】で切ちゃんが擬似体験した方の切ちゃんが居る世界線なので、大変暗い話になると予想できます。
ので、そういうのが嫌いな方は回れ右をよろしくお願いします(礼)


「んぅ…?」

 

最初に見たのは眩ゆい程に真っ白な天井で続けて、視線を下に向けるとこちらも力を入れて掃除をしているのだろう、ここに住んでいる人が真っ白なタイルがベッドに座る僕の姿を映し出している。

水色が掛かった銀色の髪の毛は腰に当たるくらいまで伸びており、眠たそうに見開かれた瞳は最愛なる姉と同じ黄緑色で、そして身につけている服装は最近姉様やその姉様の大親友のシラねぇと一緒に行ったショッピングモールで買ったお気に入りの花青緑色のパーカーに白いTシャツ、その下にはダボっと緩い感じの濃い藍色の短パンを着込んでいる。

 

(ん、やっぱり普段の僕の服装だ)

 

だとすれば、尚更ここがどこなのか、謎が深まる。

僕の記憶の限り、僕と姉様がお世話になっている二課…S.O.N.Gにはこんなところがなったように思える。確かに、シュミレーター室や診察室などはこのように白を基調としているが、ここまで何も置いてないことはないと思うのだ。もっと、色々な専用機器が所狭しと置かれているはず…なのに、ここは僕が腰掛けている安易なベッドとそのベッドの横にある窓、そしてベッドの対局線には真っ白なドアが一つ。それ以外には何もなく、ただ恐ろしいほどにまっ白い空間が続くのみだった。

 

(ん〜っ、やっはり分かんないや)

 

キョロキョロと辺りを見渡した後、僕はベッドから「んしょ」っと立ち上がる。

とりあえず、ここなのかをこの部屋から出て、人に聞くべきだろう。じゃないと、僕はS.O.N.Gに帰れないし、今日中になんとか帰らないとうちの過保護な姉様が何をしでかすか分かったもんじゃない。

 

(よしっ!そうと決まれば、まず行動!)

 

早速ドアノブを捻り、外に出ようとした時だった。

そのドアノブが逆に開き、僕は思わず前のめりに倒れそうになり、思わず部屋に入ってきたその人へと抱きついてしまった。勢いのままに、その人の双丘へとぱふっと顔を埋めてしまう。

 

(あれ?この感触…)

 

僕、知ってる気がする…というより、いつも触れているといったほうがいいかもしれない。その謎の安心感が気になり、暫く、その人に抱きついていた僕はハッとして、その人から弾かれたように離れる。

そして、上を見上げて、その人に謝ろうとして…僕は固まる。だって、そこには予想もしていない人の姿があったから。

 

「あ、ごめんなーー」

「……」

 

根深く被っている深緑色のパーカーから少しだけ覗く少し長めの金髪の前髪、そしてその前髪の奥にあるのは少し吊り上ってはいるが黄緑色の光を放つそれは間違いなく僕と血が繋がっているこの世界でただ一人の人のものだった。

 

「…ねえ、さ…ま…?」

 

驚きのあまりに掠れた声でそう言う僕にその人は姉様によく似た声音でボソッと呟く。

 

「君は君の世界ではアタシのことをそう呼ぶんだね」

「…え?」

 

そう聞き直す僕にその人はその底なし沼のように感情が読み取れない黄緑色の瞳でまっすぐに見つめてくると、今度ははっきりした声音で言う。

 

「アタシは確かに暁切歌で、君のお姉ちゃんその人だよ。でも、一つだけ違うことがある。それは…君はこの世界の人じゃないということ」

「それってどういう…」

「アタシが元の世界から君を攫ってきたから」

 

淡々となんでもないことのようにそう言う目の前のその人が僕の知る姉様と違うことはすぐに分かった。だって、あの自分のことよりも周りの人のことを誰よりも思い、思いやりに溢れる行動を取る心優しい姉様が人が悲しむと分かることをするとは思えない。

 

(それに…)

 

この人は僕を見ているようで他の誰かを見ているような気がする。

まっすぐ見つめてくる淀んだ黄緑色の瞳は僕を視界に収めつつも僕のさらに奥の方を見ているような気がする。それがなんなのか判断出来ずに困り果てていると話を切ったその人が無造作にポケットへと手を突っ込む。

 

「それと君の所有物は預かったから」

「…え?それって、どういう…」

 

ポケットに入っているものを取り出す前に僕をチラッと見て、そう言うその人のセリフの意味が変わらず、僕は聞き返す。そして、僕の問いの答えはポケットから取り出され、ひらひらと動かすその人によって判明する。

僕のギアのイメージカラーと同じ色の花青緑色のスマートフォン。そして、真っ赤な結晶を吊るしている真っ白な紐を視界に収めた途端、僕はそれを取ろうと手を伸ばす。

だがしかし、その人の方が上手(うわて)だったらしく、僕の手が届かないところへと腕を伸ばす。それでも、諦めようとせずに腕を伸ばし続ける僕を不思議そうな顔で見つめると問いかけてくる。

 

「そんなにこれが大事?」

 

これとは、赤い結晶を吊るしている白い紐のことだろう。いや、吊るしてある赤い結晶のことなのかもしれない。その赤い結晶の中にはニョルミルという聖遺物の欠片が入っており、僕がある人から受け継いだ大切なものでもあるのだ。僕はその人から想いと共に、この力を受け継いだ。だから、それを奪われるというのは僕に託してくれたその人の気持ちも裏切るということ。

 

(絶対、取り返さないと!それはカルねぇが僕に託してくれたものなんだから!)

 

「返して!返してください!それはカルねぇから受け継いだ大切なものなんです!」

「…珠紀カルマ、か。そっちの世界でも余計なことをしてくれる」

 

飛び跳ねて、取り返そうとする僕を右手で跳ね除けたその人は跳ね除けられた勢いで尻餅をついている僕を一瞥すると底冷えするような声で

 

「君は二度とこの部屋から出ることは許されない。だから、早く元の世界のことなんか忘れて、ここの生活に慣れることに専念した方がいい」

 

と告げるとバタンとドアを閉める。

取り残された僕はドアノブを捻ってもビクともしないドアノブにすがり、暫し静かに涙を流したのだった…




前書きでご紹介させて頂いた通り、この章の主な登場人物はグレてしまった切ちゃんと主人公の二人となっています。
そして、ニョルミルのギアが何故あるかは後々紹介出来ればと思います(礼)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2)呼び名

並行世界の姉様に攫われてしまった主人公。果たして、彼女は元の世界に戻れるのか?それとも、並行世界の姉様と共に過ごすのか?

本編をどうぞ!


ひとしきり、泣きじゃくった僕は乱暴に袖で頬を拭うと立ち上がる。そして、自分の頬を力強く叩く。

そうしないと、いつまでも沈んでしまった心を立て直すことが出来そうになかったからだ。

 

(いつまでもくよくよなんかしてらんない!少しでもここの情報とか、あの人の事とか知らないと)

 

僕を見つめるあの人は…並行世界の姉様は何か嬉しい色を含ませながらも何故か悲しそうだった、それにあの変わりようが今の僕に降りかかっている出来事よりも気になる。

 

だって、そうでしょう?

この世に生まれ出て、この日まで僕の側に常に立ち、僕を支えて、ここまで育ててくれたのは他でもない姉様なのだから。

そんな大好きな姉様があんなに悲しそうな顔をしているんだ、力になってあげたい。それが僕を攫ってきた誘拐犯でも並行世界でも…僕の姉様に変わりはないのだから。

 

そこまで考え、僕はふっと口元を緩ませる。

もし、この場にあの過保護な姉様が居たら、自分相手にでも牙を剥くのだろうか?

 

「…愚問かな?あの姉様だもんね」

 

きっと相手が誰であろうが、姉様は僕を傷つけるものには容赦しないだろう。そんな姉様が大好きでもあり、危うく感じたのが遠い昔のようだ。

 

(って、ここに来てからそんなに時間経ってないのに変なの)

 

クスクスと自分のへんてこな考えに笑い、僕はこの何も置かれてない真っ白な世界の探索に出かけた。

 

◆◇◆◇◆

 

 

何も置かれてない真っ白な世界を探索して得たものは、僕の手のひらに収まるくらいのトランプと幼い子供が好きそうな古ぼけた絵本。

その中から古ぼけた絵本を選んで、僕はベッドに腰掛けると絵本を開く。そして、膝の上に乗っけるとただ静かにページをめくる。表紙やページの端はぼろぼろになっていたが、その他は新品同様に綺麗であり、僕は前の持ち主がこの絵本をよっぽど大切にしていたのだと思う。

それにこの絵本のストーリーも僕好みで、僕は夢中になり、時間を忘れて絵本を読んでいた。

 

それからどれくらい時間が経っただろうのだろうか?

絵本も読み終わり、一休憩しようと顔を上げた瞬間にバッチリと視線が重なり合うどんよりくぐもった黄緑色の瞳と眠たそうに半開きしている黄緑色の瞳。

 

(…へ?いつからあそこに居たんだろう、並行世界(こっち)の姉様…)

 

「ーー」

「……」

 

まぁ、いつから入り口付近の壁にすがっていたかはこの際置いてこう。そんな些細なことを掘り下げていたら、きりがなさそうだし…そんなことよりもなんで、こっちの姉様は僕のことをジィーーーっと見ているのだろうか?

熱視線である。姉様の相方たるシラねぇに匹敵するほどの熱視線を真顔で送ってくるのだ。もう怖いってもんじゃない。だって、真っ直ぐ見つめくる瞳はどんよりくぐもっているし、その瞳が前髪の奥から向けられているのである。僕は重なり合った視線を逸らすとそっと膝の上に置いたままにしてある絵本へと視線を落とす。

きっとこうしていれば、こっちの姉様も僕を見つめるのも諦めてくれるだろう。

 

「ーー」

「…っ」

 

(き、気まずい…)

 

諦めてくれるだろうと思い、膝の上の絵本を何回リピートしただろうか?軽く2桁までいきそうになったところで僕の限界がMAXに達した。

 

(もう、こうなった直接聞こう!なんで見てくるのかを!)

 

僕は膝の上に置いてる絵本から顔を上げるとまっすぐ見つめてくるこっちの姉様へと視線を向ける。

僕が絵本を読んでいる最中に入ってきたあの人…並行世界の姉様は入り口付近の壁に背中を預けると何をするでもなくただジィーと僕を眺めていた。深く被った深緑色のフードから覗くのは目にかかるほどに伸びた金色の前髪でそのさらに奥にはなんの感情も伺えないほどにくぐもった黄緑色の瞳がある。そんな並行世界の姉様の服装は深緑色のパーカーに緑色のダメージジーンズ。

(こっちの姉様も服の趣味は似通ったらもんなんだな。って、今はそんなことはどうでもよくて)

 

僕は息を吸い込むと思いっきって、こっちの姉様に話しかける。

 

「あ、あの…」

「何?」

 

あの太陽のように明るい姉様とは思えないどんより曇った低い声。掠れたその声はまるでこっちの姉様の心の中を表しているようで、僕は押し黙ると暫し考える。

 

(やっぱり、この世界の姉様に何かあったんだ…。でも、今は聞くべき時じゃないよね…)

 

そう結論づけ、本来聞きたかった質問をぶつける。

 

「その…暇ではないですか?」

「なんで?」

「…だって、僕は本を読んでますし…姉さ」

 

僕はそこで首を振ると言い直す。

 

「…切歌さんはその何もしないでそこにいるじゃないですか」

「気にしなくていい」

 

前と同じく素っ気なく答えるこっちの姉様に僕は苦笑いを浮かべる。素っ気なく答える様がうちの姉様と天と地の差だったからだ。うちの姉様なら僕が話しかければ、嬉しそうに頬を緩ませるし、必ず…いいや、絶対に僕へと抱きついてくるだろう。

 

(こっちの姉様の落ち着きがうちの姉様にもあったらな…)

 

そんなことを思いながら、僕はこっちの姉様へと話しかける。

 

「…気になりますよ、誰だって。そんなにジィーと見られたら」

「…ごめん。そんなにずっと見るつもりはなかったんだけど…君が余りにもおとなしいから」

 

申し訳なそうに頬をかくこっちの姉様のセリフに僕は頬を膨らませる。

 

「…この部屋は簡単に脱走できるようには出来てませんし、それにここに慣れろと言ったのはそもそも切歌さんじゃないですか」

「そうだけど…もう少し抵抗とかしないの?君には大好き家族が待っているんでしょう?」

「…抵抗してほしいんですか?」

 

意地悪ににんやりと笑ってそういう僕にこっちの姉様は首を横に振ると

 

「ううん、して欲しくはないけど…その、拍子抜けというか…今までと反応が違いすぎて、扱いに困るというか…なんのためにこの部屋を改造したり、君からギアを取り上げた意味がないっていうか…うーん」

 

自分の伸びきった金髪を掻き毟るとこっちの姉様は僕を見る。

 

「そもそも、君…歌兎から切歌さんと言われるのがむず痒いからやめてくれるかな」

 

(んー、そんなことを言われてもなぁ)

 

姉様はうちの姉様のだし、だからと言っていきなりお姉ちゃんは馴れ馴れしくないだろうか?そう考えるとやはりこういう時は切歌さんとこっちの姉様を呼ぶのが適切ではないだろうか?しかし、こっちの姉様はやめてほしいんだよね?それを。…うーん、でもそうすると…

 

「…それをやめると貴方を呼べなくなりますよ」

「姉様は?君はあっちの世界でアタシをそう呼んでいたんでしょう?アタシは姉様って呼ばれてもーー」

「ーーその提案は丁重にお断りします」

「え?」

 

腰をおり、即答する僕にこっちの姉様は目をパチクリさせている。その姿と即答してしまったセリフに僕はしまったと冷や汗を流す。

元の世界では常にありとあらゆる人たちに言ってきた僕の口癖だが、こっちの姉様には逆効果だったらしい。パチクリさせていた目を次第に潤ませ、終いには膝を抱えてブツブツと独り言を呟き始めてしまった。

 

(や、やべーデスよ…この状況…)

 

思わず、うちの姉様みたいな口調になりながら、おっかなびっくりに膝を抱えているこっちの姉様の側に腰を落として、思いっきって体重を預ける。その動作によって、こっちの姉様は僕が隣にきたことに気づいたらしく、涙に濡れた黄緑色の瞳を向けてきた。その瞳をまっすぐ見つめ、ぼくはにっこりと笑う。

 

「う、たう…?」

「…僕の姉様の代わりも貴方の歌兎さんの代わりも居ないと思います。でも、今の僕には貴方が必要です、貴方が居ないと生きてはいけません。だから、これからよろしくお願いします…えっと…キーねぇ」

「…なんで、そこでキーねぇなの?」

 

ちょっと不服そうなこっちの姉様に今度は意地悪な笑みを送りながら、僕は理由を話す。

 

「…んー、僕がそう呼びたかったからといきなりお姉ちゃんは失礼かと」

「失礼って誰に対してだよ。もう…確かに君はアタシの妹に比べると意地悪で悪い子みたいだ」

「…この世界、善だけでは生きていけませんから」

「…そう」

 

僕のセリフに悲しそうにそう答えたこっちの姉様は仕返しとばかりに僕へととある提案をする。

 

「わかった、アタシのことはキーねぇでいいよ。その代わり、アタシは君のことをウーって呼ぶから」

「…ご自由にどうぞ。キーねぇ」

「あぁ、自由にするよ」

 

そう言って、立ち上がったこっちの姉様もといキーねぇは僕の方を向くと淡く微笑んで尋ねる。

 

「お腹すいたでしょう。ご飯持って来てあげる」

 

そう言って、扉へと消えていくキーねぇの背中を僕は見つめながら思う。

 

(いつか、キーねぇが僕にその理由を話してくれる日が来るのかな…?」




暁歌兎が並行世界の暁切歌に連れ去られたその日。

切歌「話してください!翼さん、奏さん!あたしにはこの先に行かなくてはいけない理由があるのデス!」

翼「だからとて、なんの対策もなしに突っ込んでも歌兎は助けられまい。相手はかなりのやり手だ、私たちの上を遥かに超えてくる。それは歌兎が連れ去られた方法を見ても分かるだろう?」

切歌「なんデス?翼さん。それはあたしに喧嘩をうってるんデス?あたしがあんな奴の足元にも及ばない下等生物だと?バカでお調子者で騒ぐしか能がないお気楽者とでも言いたいんデスか!?」

翼「誰もそんなことは言ってないだろう!とりあえず、落ち着くのだ、切歌」

切歌「これが落ち着いてられますか!歌兎を連れ去ったのは、如何にも怪しげなフードを被った奴だったんデスよ?今頃きっと歌兎はそいつにあんなことやこんなことを無理矢理やられているに違いないのデス!」

翼「ちょっと待ってくれ。確か歌兎を連れ去ったのは、並行世界の切歌であろう?並行世界とはいえど、姉妹。姉妹にそんな不埒な真似は…」

切歌「あたし、歌兎にそういった気持ち抱いたことあるデスよ?」

翼「ーーー」

切歌「だから、並行世界のあたしもきっと同じ気持ちに駆られて、歌兎あんなことやそんなことをしてしまっているに違いないのデス!」

翼「お前はどれだけ妹が好きすぎるのだ!!!」

クリス「おぉ…先輩があたしの迷言を言ってる…」

奏「意外と言いたかったのかもな?」

クリス「そんなもんですか?」

奏「ああ、そんなもんさ」

翼「お前たち!そんなところで傍観してないで、この愚か者を止める手伝いをしてくれ」

奏「って、あたしはしてるんだけどな」

翼「奏はまた少し押さえつける力を強めて。私一人でこの愚か者を押さえられ…あっ」

切歌「隙ありデス!このまま、イガリマを纏って、並行世界に入っちゃえば、こっちのもーーぐはぁっ!?」

調「切ちゃん、あまり先輩たちを困らせるのは駄目」

その後、調に手刀を落とされ、気絶した切歌は暫しメディカルルームの中でクールダウンを強いられたのだった。





*【《パラレルルート》トゥルーエンドを目指して】ですが、内容を変えます。
内容を変えた話を更新した後に今までの話は削除します。

そして、上に書いてある主人公の元の世界での奏者たちのやりとりはノリデス。なので、翼さんが翼さんじゃなかったりするので…どうか、そこは目をつぶってください…、あと石は投げないで…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

旧ストーリーの漫談編 夏ッ!

うちの姉様は過保護すぎる。というタイトルにして、今まで過保護な場面は書きつつもシリアスな話ばかり書いてきたので…この『うちの姉様は過保護すぎる。』という名の章はただ、過保護すぎる話とほのぼのっとした日常を書ければと思っております(礼)

では、本編をどうぞ!!


夏--それは暑く、熱い季節。

 

夏--それはかき氷やアイスクリーム、西瓜が美味しい季節。

 

夏--それは課題は多いが、長い休暇が取れる季節。

 

夏--それは開放感、そしてどこか気怠く思う季節。

 

夏--それは(りょう)を求め、人々が青々と茂った山林や碧く澄んだ海へと集まる季節。

 

 

というわけで、僕達は今は海に来ていた。

 

 

「‥‥海っ!!」

「だーーぁ!!」

「デェーース!!」

 

前を見れば何処までも広がる青い空、サンサンと照りつる太陽に熱せられた白い砂浜。そして、何よりもその白い砂浜へとさざ波を打ち付けている青い海。

それらを視界に収めた途端、姉様とその腕に抱かれている僕が少し垂れ目と眠たそうに半開きした黄緑色の瞳をキラキラとさせる。

そんな僕たちの隣に立つ橙のビキニの上に白と水色のシマシマシャツへと身を包む響お姉ちゃんが今にも海に駆け出そうとしている中、後ろから物静かな声が聞こえてきた。

因みに呼び止められた僕達の服装は姉様から説明すると、黒と緑色を基調としたビキニの上から薄手の黒いパーカーを羽織っていて、僕は白と花青緑を基調としたビキニの上から黒いTシャツを着ている。

 

「切ちゃん、歌兎、はしゃぎすぎだよ」

「そうですよ、私達は遊びでここに来ているのではないんですから」

「響もはしゃぎ過ぎだらこけちゃうよ」

 

今にも駆け出そうとしている僕たちを追いかけてきたピンクのワンピース型水着の上に白い薄手のパーカーを身にまとったシラねぇとその隣にいる白いビキニの腰へとエメラルド色のパレオを巻き、頭の上に麦わら帽子を被ったセレねぇ、薄紫色のワンピース型の水着に白いフリをあしらった水着の上に白いカーディガンを羽織った未来お姉ちゃんが(たし)める。

そんな三人の注意を聞き、僕と姉様、響お姉ちゃんは目に見えて悔しそうな表情を浮かべる。

だって目の前にこんなに綺麗な涼しそうな海が待っているというのに、そこに向かっていけないなんて、まるで大好物を目の前に置かれて飼い主に待てと指示されている飼い犬のような気持ちだ。

 

「うぅ……そうデスけど……目の前の海が」

「私達を呼んでるんだよ」

「‥‥ん」

 

残念そうな顔をしてみても、やはりこればかりはどうにもならないようだ。

 

「なら、早くギアを水着ギアへと変化させるこったな」

「そうすれば、早く海にも入れるわよ」

「弥十郎のダンナがそう言ってたしな」

「私としてみれば、そのような時間も己が剣を鍛え上げるために使うべきだと思うのだが」

 

僕らを止めた三人の後ろから四人並んで歩いてくる右端から赤いビキニの端に白いフリをあしらい、その上から薄桃色の薄手のパーカーを羽織るクリスお姉ちゃん。

その隣が何故か大きめなサングラスを付けて、白と黒を基調としたビキニを身につけたマリねぇ。

その横を歩くのが、ニカッと片頬をあげた笑顔が眩しい橙と黄色を基調としたビキニに身を包む奏お姉ちゃん。

その奏お姉ちゃんの隣を歩くのが渋い顔をしている藍色の薄手のパーカーに水色のビキニを身につけた翼お姉ちゃん。

 

そんな翼お姉ちゃんのセリフに奏お姉ちゃんとマリねぇが失笑し、それぞれ好き勝手言っている。それを聞いた翼お姉ちゃんは忽ちに顔を真っ赤に染め、異論を唱えているがそこに戦場(いくさば)に立つ防人としての凛々しさはなく、ただからかわれたので言い返している子供のような愛らしさがあり、僕は心の中で最近の翼お姉ちゃんは本当に愛されるからかわれキャラになった気がすると思うのであった。

 

「翼は真面目すぎるんだよ。今からそんなんだと身が持たないぞ」

「奏の言う通りよ、翼。そんなにカチンカチンに鍛え上げてもいざという時に根元からポッキリ折れては使い物にならないわ。だから、今はカチンカチンに鍛え上げるよりもそこに柔軟(じゅうなん)さを備えるべきだわ」

「さ、防人の剣はそう簡単に折れはしない!ましてや、根元からなぞ……いくら、マリアでも言っていい事と悪いこーー」

「ーーはいはい。ほら、私達はこっちで待機組よ」

 

そんな翼お姉ちゃんもマリねぇによって水着ギアを変化させてない組を待つ待機組の陣地へと引っ張られていく。マリねぇに手首を掴まれ、連れていかれる翼お姉ちゃんを見ていた奏お姉ちゃんは振り返るとセレねぇ、シラねぇ、姉様へと声をかける。

 

「セレナ、調、切歌。あたしらもマリアと翼の後を追うぞ」

「はい、分かりました、天羽さん。月読さん、暁さん、私達も」

「うん、行こう、セレナ。というわけで、切ちゃんは私と一緒にこっち組」

 

セレねぇに声をかけられたシラねぇはコクリとうなづくとガシッと姉様の手首を掴むと暴れる姉様をズンズンと自分達の陣地へと引きずっていく。

 

「ふぇ?あぁ〜っ!歌兎がぁあああ!!歌兎があんな所にぃ!!!調、あと少しあと少しだけ待ってください!歌兎に最後の挨拶をぉおおお!!」

「ダメ。そう言って、歌兎に抱きついて離れようとしない切ちゃんを何度も見てきた。だから、絶対ダメ」

「うぅ……でも、でもぉ……今あの場所には激鬼怖いおっぱいおばけしか居ないんデスよ?あんなおっかない所に歌兎を置いておけないのデス」

 

引きずられている姉様はポカーンと立ち尽くす僕へと左手を伸ばし、バタバタとシラねぇへと抵抗しながら、何も関係ないクリスお姉ちゃんをディスる。

どうでだろうか、何故か最近姉様がクリスお姉ちゃんを集中攻撃する事が多くなった気がする。しかも、敵視しているような気がするし……学校での様子では仲良しな先輩後輩ってシラねぇや響ちゃん、未来ちゃんに聞いてるのになぁ……学校と今では何が違うと言うのだろうか?

そんな事を思っていると、ディスられたクリスお姉ちゃんの我慢の緒が切れたのか、首からかけていたイチイバルの赤い結晶を鷲掴みにすると聖詠を口にしようとする。

 

「こら!てめぇ、誰が激鬼怖いおっぱいおばけだぁ!!!

あの過保護ぉ!今度という今度は袋の蜂にして、もう二度とあの過保護な口が開かなくしてやる!!」

 

そんなクリスお姉ちゃんを宥めるのが未来お姉ちゃんと響お姉ちゃんである。

シラねぇに引きづられて去る姉様に向かい走っていこうとするクリスお姉ちゃんの右腕を自分の左腕を絡めているのが未来お姉ちゃんで、左腕は自分の右腕を絡めている響お姉ちゃんで二人ともあたふたと荒れ狂うクリスお姉ちゃんを静める言葉を掛けている。

 

「まぁまぁ、クリス。落ち着いて」

「そうだよ、今の私の先生は"頼れる"クリスちゃんしか居ないんだから」

「‥‥ん、クリス先生頼れる。だから、僕たちに水着ギアを変化させる方法を教えて欲しい」

 

念押しとばかりにそう言う僕達にさっきまで暴れていたクリスお姉ちゃんは頬を赤く染めるとそっぽを向いてぼそっとつぶやく。

 

「しゃ……しゃーねぇーな。お前達がそこまで言うんなら、あたしが直々に教えてやるよ」

 

(ちょろい)

 

つい、そう思ってしまったのは許してほしい。

前々から思っていたけど、クリスお姉ちゃんは人の甘言(かんげん)にフラフラッと泳がされすぎだと思う。ここまで掌で踊れやすい人となると、将来悪い人に捕まらないかと心配になってくる。

 

「……時々、クリスちゃんのちょろさが怖く感じるよ」

「……将来、悪い男の人に捕まらないように今からそのちょろさを直しておかないと」

「‥‥ん、これもクリスお姉ちゃんの為だもの。僕、お姉ちゃん達の言うとおりに行動する」

「……じゃあ」

 

響お姉ちゃん、未来お姉ちゃんと顔を合わせてボソボソと作戦会議をしていると、後ろを振り向いたクリスお姉ちゃんが怪訝そうに眉を潜める。

 

「お前らそこで何こそこそ話してやがる」

 

そんなクリスお姉ちゃんに三人してあたふたと慌てながら近づくと其々、クリスお姉ちゃんの身体を押して陣地に向かう。

響お姉ちゃんと未来お姉ちゃんが左右の手首を掴んでいるので僕は後ろからクリスお姉ちゃんの背中を押す。

 

「なんでもないよ、クリス先生」

「さぁ、私達は早い所自分の陣地行こう」

「‥‥ん、行こ、クリス先生」

「ん? あぁ……って、変なところを押してんじゃねぇーよ、チビ!!」

「‥‥? 僕、変なところ押してる?」

「お、押してるだろ!!あ、あたしのお、おし…っ」

 

だが、クリスお姉ちゃんは顔を赤く染めると背中を押している僕を睨んでくる。

なので、僕は自分の小さな両手が触っている所を見てみるすると二つの丘の間に隙間へとめり込んでいた赤い布に白いレースがあしらっている…う、うん…どうやら僕は思いっきりクリスお姉ちゃんのお尻を鷲掴みにしていたらしい。

 

「……あっ、ごめんなさい」

 

と謝罪してから、小さな手を僕は薄桃色のパーカーによって隠されているクリスお姉ちゃんの背中を押そうとして--後ろに引っ張れ、パフっと緑色と黒のトップスに覆われた双丘へと顔を押し付けられる。

 

「そんなおっぱいおばけよりもあたしの方が数倍頼りになるデス!だから、歌兎。あたしの事も先生と呼んでくださいのデスよ!!」

 

そうまくし立てる姉様の登場は僕を始めとした水着ギア補習組の面々が驚きのあまり固まってしまった。だって、姉様はついさっきシラねぇとセレねぇの手によって待機組の方へと連行された筈……なのに何故、僕の目の前に居るのだろうか?

 

(姉様、僕に黙って……緒川様に忍術習ったのかな?)

 

まさに神出鬼没な姉様の行動に驚きから復活したクリスお姉ちゃんのキッレキレなツッコミが炸裂(さくれつ)し、姉様はシラねぇとセレねぇに捕まり、またしても待機組へと舞い戻りするのであった。

 

「だから、おっぱいおばけおっぱいおばけ(うるさ)いんだよ、この過保護!!そもそもどこから湧いてでやがった!?お前は先輩達の所だろ!早い所行きやがれ!!」

「もう、切ちゃん。クリス先輩と響さん達の邪魔してはダメだって」

「これも歌兎ちゃんが水着ギアに変化するために必要なことなんですよ。さぁ、翼と姉さんの所に戻しましょう?暁さん」

「離してくださいぃいい!!!調ぇっ!!セレナぁあ!!歌兎ぅううう!!!!」

 

大暴れする姉様を見て、呆れ顔のクリスお姉ちゃんが僕の方を見るが……その表情かまたしても驚きで満たされる。

 

「お前、よくあんな暑苦しい奴と一緒に居て辛くならないな……って、え? へ? へ? 今、あいつらに……? へ? なんでここに居るんだよ、お前」

 

そう、クリスお姉ちゃんの前に居たのはにっこり笑顔で日焼け止めを手に持っている姉様であって、僕の前に腰を落とすと手に持った日焼け止めのキャップを取り、掌で馴染ませた日焼け止めを僕の身体へと塗りたぐる。

もちろん、その際に行うクリスお姉ちゃんへと集中攻撃も忘れてない…流石、姉様抜け目がない。

けど、塗る前に気付いて欲しい。今、凄いカオスな空間なんだよ? クリスお姉ちゃんは怒りで顔真っ赤だし、響お姉ちゃんと未来お姉ちゃんなんて両目が落ちそうなくらいに目が見開かれているんだよ? 僕はそれにハラハラなんだよ?

 

「何故って、歌兎に日焼け止めを塗る為デスよ。歌兎の綺麗な肌が黒く染まってしまったら、あたしがテンパりファイヤーデスからね。そんな簡単なことすら分からないとは、さてはクリス先輩は脳への栄養もその大きな胸に持っていかれたのではないデスか?」

「よぉーし、お前はあたしにボッコボコにされたいんだな?」

 

背後でポキポキと手を鳴らすクリスお姉ちゃんの存在や両目が落ちそうほど驚いている響お姉ちゃん・未来お姉ちゃんの存在など最早、過保護な姉様の前では意味を成さず…僕はハラハラしながらも姉様の言うとおりに両腕を単に伸ばす。

 

「はい。歌兎、ばんざーいデスよ。ばんさいをしてください」

「……ん」

「あたしの話をきけぇ!!!」

 

そして、遂にクリスお姉ちゃんの叫び声が炸裂していても、姉様のヌリヌリと僕の身体へと日焼け止めを塗る手は止まることなく、それを見ていたクリスお姉ちゃんは疲れたように右手で顔を覆うと首を横に振る。

 

「よし、これで前はOKデスね。次は後ろデス」

「……姉様、くすぐった、い……よ……っ」

「じっとしててくださいね?これも歌兎の綺麗な肌を太陽から守る為なんデスから」

 

誰も姉様の過保護節を止める人が居なくなった今、過保護な姉様は誰よりも最強であり、ヌリヌリと塗りたぐる日焼け止めの量がいつもよりも1.5増しになってる気がするのは僕のせいであって欲しい。

あって欲しい上にさっきから姉様のほっこりした掌がこんな公衆の面前で触ってはいけないところを触っている気がしてならない……というか、触ってるっ!今確実に触ってるぅっ!!

 

(僕のトップスの中に手を突っ込んでるし……今、丘の天辺を姉様の掌が通ってーー)

 

僕はそこで顔を真っ赤にして固まっていた顔を後ろに動かし、姉様を止めようと試みる。

 

「……ね、姉様!?そこは日が当たらない所だからっ、いいって……!!日焼け止めなんて塗らなくてもーー」

「ーーダメデス!そう言って油断していたら、痛い目に合うのデスよ?歌兎をあの日焼けの痛みを味あわせるわけにはいかないのデス!」

「だからって……っ!」

「あぁっ……歌兎、動いちゃあダメデスよ。いい子デスから、お姉ちゃんの言うことを聞いてください」

「……ゔぅっ……っ……」

 

ヌリヌリと僕のトップスの中を塗り終え、最終確認ということで片手でサワサワと触っている姉様は空いた右手を今度は下へと滑り込ませようとしている。

そんな暴走する姉様の後頭部を思いっきりしばくのはクリスお姉ちゃんである。

 

「い、い……いい加減にしろぉ!!この過保護バカっ!!!」

 

顔を茹でタコよりも赤く染めたクリスお姉ちゃんは"はぁ…はぁ…"と肩で息をしながら、自分をジト目で見てくる姉様を睨みつける。

 

「過保護バカとは心外(しんがい)デス。あたしは過保護バカなどではなく、トンデモ過保護なんデス!そんだそこいやの妹好きとはわけが違うんデスよ、トンデモ過保護は最強なのデス!」

 

僕ですら意味わからない基準を持っている姉様にクリスお姉ちゃんは呆れながらもご丁寧にツッコんでいく。

 

「どっちも変わんねぇーし、意味が分かんねぇーよ!!あと、そんなくだらない事でドヤ顔を浮かべて、胸を張るんじゃねぇ!良いからその妹のトップスの中に滑り込ませている手と下へ向かっている手を退けやがれ!いつも言ってるだろ、そう言うのは家でしろって!!」

 

クリスお姉ちゃんのツッコミにキョトンとした表情で答える姉様にクリスお姉ちゃんが反射的に聞き返している。

 

「家でもしてきたデスよ?」

「なら、何故今してるんだ!?」

「クリス先輩、備えあれば憂いなしという素晴らしい言葉があるのデス」

 

にっこりと悟った笑顔を浮かべる姉様にクリスお姉ちゃんは失笑した上で力無くその場にへたり込みそうになる。

 

「……はぁ……、頼む。誰か、この過保護をどうにかしてくれ。あたしはつっこむのが疲れた」

 

こうして、砂浜について1時間も経ってない間からうちの過保護な姉様に疲れ果ててしまうクリスお姉ちゃんであった----。




妹への愛さえあれば忍法なんてちょいのちょいなのデス!って感じで、始まった水着ギアの特訓ですが…正直セレナさんと奏さんのが決まってません!(笑)

なので、この続きは8月の後半か…9月頃になるかもです!

そして、うちの姉様が過保護すぎる。を評価、お気に入り、誤字報告してくださる多くの読者の皆さま、本当にありがとうございます(土下座)

これからもうちの過保護な姉様とその姉様に可愛がれ逞しく成長していく主人公をよろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夏ッ!!

大変、お待たせしました(土下座)
ここ暫く、体調が優れなくって…更新を休ませてもらっていました。

そして、今回の話は前の話からの続きですが…少し内容が安易で急展開かもしれませんが楽しんでもらえると嬉しいデス!

では、本編をどうぞ!!


「ーー」

 

真横を見れば、どこまでも広がる青い空と碧い海のコントラストが美しい地平線が広がっている。

真下を見れば、真っ白でサラサラな砂浜がサンサンと照りつけてくる真夏の太陽に熱せられている。

 

そして、そこから顔を上げて--

 

「…………補修組のみなさん、ご迷惑かけてごめんなさいデス」

「これは切ちゃんの暴走を止められなかった私の責任でもあるから。だから、クリス先輩、響さん、未来さん、本当にごめんなさい」

 

--真っ正面を見れば、ふて腐れた顔をした表情のままにシラねぇに後頭部を添えられ、共に頭をさせている姉様--

 

「私もちゃんと暁さんを監視しておくべきでした。ごめんなさい」

「あたしも調やセレナに任せっきりだったからな。反省してる、すまなかったな」

「私も一瞬切歌から目を離したことが悔やまれるわ。クリスにもあなた達にも迷惑かけちゃったわね。切歌は私が責任持って、もうあなた達の邪魔をさせないようにするから。歌兎の事、よろしくね」

「私からもよろしく頼む。切歌は我ら待機組全員が責任持って監視する」

 

--だけでなく、そんな姉様とシラねぇを基準に一直線に並んだ待機組の皆さんが一寸のくるいなく頭を下げてくる。

綺麗に並んだ皆さんに綺麗にお辞儀された補修組の皆さんもきっと僕と同じ気持ちだろう。

 

(まさか、うちの姉様が暴走した結果がこんな結末になるとは…)

 

と。

 

未来お姉ちゃんと響お姉ちゃんはまさかの総出の謝罪に苦笑いを浮かべつつ、顔を上げてくれるようにと逆に頼んでいる。

 

「いいですよ。切歌ちゃんも歌兎ちゃんが心配でしてしまった事でしょうから」

「そうですよ、だから切歌ちゃんと調ちゃん、マリアさん達も顔を上げてください。ほら、クリスちゃんも何か言ってあげて」

 

しかし、クリスお姉ちゃんは姉様に言いたい事があるようで、シラねぇに頭を下げられている姉様の方を見る。

 

「あたしはまだおっぱいおばけって言われたことを許したわけじゃね」

 

(あぁ…確かにそんな事を言われてたね、クリスお姉ちゃん…)

 

クリスお姉ちゃんのそのセリフを聞いても、姉様はそれを言ったことを悪いとは思ってないらしく、(たちま)ちにシラねぇからのお叱りを受ける。

 

「嫌デスよ、本当のこーーいだっ!?」

 

パチン、と軽く頭をはたかれ、姉様はシラねぇの方を涙目で見るが、こればかりはシラねぇの方が正しいだろう。

 

「切ちゃんが悪いの。悪いことをしたら、謝らないとダメ。ほら、クリス先輩にごめんなさいって言って」

「……」

 

"ジィーー"とシラねぇからの熱視線に姉様は観念したく、腕を組むクリスお姉ちゃんの方を向くとぺこりと頭を下げる。

 

「……クリス先輩、おっぱいおばけって言ってごめんなさいデス」

「まぁ、そこまで言われちゃ仕方ねぇーよな」

 

姉様から謝ってもらったクリスお姉ちゃんは恐らく自分では凛々しい顔つきをしていると思っているのだろう。

しかし、実際は口元はゆるゆるでなんだか嬉しすぎてか、ゆるゆるを通り越して、むにゅむにゅしている。

 

(クリスお姉ちゃん、チョロすぎだよ…)

 

やはり、クリスお姉ちゃんは安定のチョロインでした。

 

そんなむにゅむにゅしているクリスお姉ちゃんをチラッと見た姉様は横を向いて、すっごい悪い顔をして舌打ちする。

 

「……ちっ」

「切ちゃん?」

 

そんな姉様を(たしな)めるのがシラねぇで、嗜まれた姉様はしょんぼりしながら、もうクリスお姉ちゃんにつっかからないと誓うのだった。

 

「……分かってるデスよ、調。もう、あんなこと言わないデス」

「きっと、歌兎と最近仲良くなっているクリス先輩に嫉妬してあんなこと言っちゃったんだと思うんです。だからーー」

「ーーもう、いいって。分かってるからさ。まぁ、任せろ。このチビはあたしがちゃんと面倒見るからさ」

「よろしくお願いします」「デス」

 

シラねぇのおかげでクリスお姉ちゃんと姉様が仲直り(?)が出来たそんな出来事から数時間。

 

何故か僕は……ううん、僕達は--

 

「なんでお前ら、あたしが少し目を離した隙にびしょ濡れなんだよ!!?」

 

--そう、びしょ濡れになっていた。

 

クリスお姉ちゃんの悲鳴じみたツッコミが炸裂する砂浜へとポタポタ落ちる透明な雫。しかも、その雫もすぐ蒸発気へと化す。

 

そんな雫を垂らす僕達を疲れたように見ながら、クリスお姉ちゃんが目の前の出来事を整理しようとする。

 

「展開がいきなりすぎて、あたしも頭が付いていってないんだ。ひとまず、びしょ濡れは置いておいて…お前ら、いつの間に水着ギアに変わったんだ?それにその其々の腕に抱かれている子猫はなんなんだ?それなのか!?それが原因なのかっ!!?」

 

そう、クリスお姉ちゃんが指摘した通り、僕たちの腕の中には其々子猫が抱かれていて、その猫からも雫が滴り落ちていた。

そんな猫達へと視線を向けて、僕達は其々にうなづく。

 

「……えーと」

「……まぁ」

「……そうだね」

「お前らも大概(たいがい)にしろよな!!!」

 

そんなクリスお姉ちゃんのツッコミが炸裂(さくれつ)した後、僕らは水着ギアに変身した時の状況を説明していた。

 

「はぁ……海に溺れた三つ子の子猫とその両親猫を助ける為に必死になった結果と……」

「どうしたの?クリスちゃん、頭を抑えたりして」

「お前らも本当に人助けが好きだと思ってな。感心するよりも呆れてた所だ」

 

クリスお姉ちゃんのその言い草に同時に頬を膨らませる僕達はしょげたようにクリスお姉ちゃんを非難する。

 

「それはひどいよ〜、クリスちゃん〜」

「そうだよ、クリス」

「……ひどい、クリスお姉ちゃん」

「なんで、あたしが集中攻撃させれてるんだよ!?」

 

"もういい"とおさげにそう言ったクリスお姉ちゃんは改めて僕達の水着ギアを見ていく。そして、僕と隣に立つ未来お姉ちゃんを交互に見ると何か言いたそうに口元を動かそうとしていいどもる。

そんなクリスお姉ちゃんの行動に首をかしげる僕は自分の服装と未来お姉ちゃんを交互に見て、やっとその行動の答えを知ることになる。

 

(わかった…僕と未来お姉ちゃんのギアって何処と無くエロいんだ)

 

未来お姉ちゃんのギアは一見見ると、頭に乗っかっている白を基調にした帽子のつかや帯に紫をアクセントとしてあしらったものを被っていたり、白と紫のトップスや腰に巻いた紫色のスカートなど、未来お姉ちゃんらしい清楚(せいそ)大和撫子(やまとなでしこ)って感じの雰囲気の水着ギアとなっている。

だがしかし、よくよく見ると腰に巻いた紫色のスカートはスケスケの素材を使っており、そのスカートの奥にある水着が丸見えになってしまっている。

 

(たい)する僕もそんな感じで、黒いトップスを隠すように羽織っている花青緑色の薄手のジャケットはその本来の役割を果たせないくらいにズレ落ちており、黒いトップスの方も真ん中に一直線に未来お姉ちゃんのような半透明な布があしらわれている。そして、それは下の方も同じで白い短パンは履ききれておらず、その間から見える下着は丁度半透明な所できっと角度によっては、僕が隠しておきたいものが見えてしまっているのではないだろうか。

 

何を思って、ミョルニルが僕にこんな格好をさせたのか分からないが……こんな格好を姉様が見てしまったら、また暴走しかねない。

 

そう危惧(きぐ)する僕の耳元に砂浜を走ってくる音が複数聞こえ、クリスお姉ちゃん、響お姉ちゃん、未来お姉ちゃんの順に顔がこわばっていったのであった----。




というわけで、今回の話では未来ちゃんと歌兎しか水着ギアをちゃんと解説出来なかったので…次回はみんなの水着ギアを詳しく書いていければいいなぁと思ってます。

思っていますが、今回の説明文で未来ちゃんと歌兎の水着ギア分かったでしょうか?(不安)
未来ちゃんのはXDで登場された水着ギアをそのまま書かせてもらって、歌兎の水着ギアは彼女は私服や普段着が基本的に可愛い系統なので、敢えてエロくしようと思ってデザインさせてもらったんですが……読者の皆さんはこんな歌兎もありでしょうか?
ありならば良かったと肩を撫で下ろします…(微笑)

因みに、彼女の武器であるブーメランは小型のバナナボートへと変化を遂げました…(汗)

だって、ブーメランに似てるのって…バナナしか思い浮かばくって…(汗)
他になんか無いかなぁ…と思っても、やはりバナナしか………しかし、バナナボートにそんなエッチな姿の歌兎を跨がせるって……

…………………(思考)

やはり、いくら考えてもこの作品的にもアウトで、社会的にもアウトな気がしてならない!!!(大汗)

これは、今日にでも私は過保護な姉様に「デストローイッ!!!」されますね…(遠い目)
歌兎にエッチな格好させて、私は満足ですし…きっと読者の皆さんも喜んでいるはず!
どうやら、私の役割はここなのかもしれませんねぇ…(手紙を書き始める私)




と、この水着ギアの話はここまでにして…『ご注文は三姉妹ですか?』の後書きで書かせてもらった天神ビブレに行った時の話をさせてもらおうと思います。

まず、福岡に着くまでに新幹線に揺られながら、『かやのみ』を見てました。
丁度、最新話が三色団子編でして、オープニングでそれを表現する茅さん(私が勝手に茅野さんをそう呼ばせてもらってるんです)が可愛いかったです(微笑)
その後のトークも素晴らしく、南條さんと日笠さんの服装や髪型も素晴らしかった。


と天神ビブレに着き、その結果は…

・スタンドチャーム…切ちゃん×2。響ちゃん、翼さん、クリスちゃん、マリアさん、調ちゃん。

・ソフトキーチェーン…切ちゃん×2

・マフラータオル(調ちゃん&切ちゃん&マリアさん)

〜絶唱ガラポン〜

・ICカードケース…切ちゃん

・缶バッチ…切ちゃん、調ちゃん、翼さん

・ステッカー…切ちゃん(単独)

でした。

無事、目標となる切ちゃんグッズの確保が達成できたので胸を撫で下ろしております(安堵)





また、昨日から『シンフォギアライブ2018』のDVD&Blu-rayと『XDのキャラソンアルバム1』が発売されましたね!
ついさっきまで、ライブの方を見ていたのですが…改めて、シンフォギアって素敵な作品だなと思いました。
本当はもっともっと書きたいことがあるのですが…あまりこの後書きで書くと読まれる方が大変だと思うので、その感想はもしかしたら活動報告の方で投稿してるかもしれません。
時刻はお昼か夜くらいだと思うので…良ければ、遊びに来てください。

と、かなり長くなってしまいましたが…皆さん、夏も後少しとなりましたが、暑さに負けずに頑張りましょう!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

秘密ッ!

響ちゃん、そして茅さんお誕生日おめでとうございますッ!!!

そして、今回の話はかなり短めです。あっという間に読み終えてしまうかもしれませんが…読者の皆さんに楽しく読んでもらえればと思います。

ーーーー

歌兎「…今回の話は姉様がやけ食いしてる話だよ」
切歌「なんデスとぉおお!!?」

って話。


「ごくんごくん」

 

右手に持ったジョッキの中に入っている薄茶色のしゅわしゅわっとした飲み物…コーラを(あお)るように飲んだあたしは勢いよく木で出来た机へとジョッキを叩きつける。

 

「ぷわぁー」

 

コーラの弾ける泡で僅かに汚れてしまった口元を乱暴に吹いたあたしを見て、にこにこ笑うのが真向かいに座る癖っ毛の多い短めの茶色の髪に琥珀色の瞳を持つ少女…響さんで、このふらわーに来る前に表を歩いていたのでほぼ強引に連れ込んだという経緯があったりする。

 

しかし、そんな経緯も無かったように響さんも楽しげにコーラで喉を潤したり、目の前でじゅうじゅうと美味しそうに焼けているお好み焼きを突いたりしているので、成り行きとはいえ響さんを捕まえられて良かったかもしれない。

 

(よぉーし!今日は飲んで!食って!忘れてやるのデス!調や歌兎の事なんて)

 

ふらわーのおばさんが注いでくれたコーラをまた一気飲みし、子コテでお好み焼きを切り取り、口に運ぶ。

 

「おぉ、すごい勢いで食べていくね、切歌ちゃん。私も負けたらないね!」

「おばさん、コーラもう一杯おかわりデス」

「はいよ」

 

熱々に熱したお好み焼きを冷まさずに口に含んだ為、火傷してしまった舌を氷の入ったコーラで冷やしながら、響さんとお好み焼きを突いていると、響さんが不思議そうな顔をして、あたしの短パンにあるポケットを見つめる。

 

「そういえば、切歌ちゃん。いつも大事そうに持ってるミニ歌兎ちゃんキーホルダーはどうしたの?無くしちゃった?」

 

響さんがいう"ミニ歌兎ちゃんキーホルダー"とは、今年のあたしの誕生日に歌兎から貰った誕生日プレゼントであって、歌兎を象ったぬいぐるみが付いたそのキーホルダーは歌兎の手作りらしく、他にも色んな服装を着た歌兎のぬいぐるみが腕に収まりきらないほどに贈られ、その歌兎たちはあたしのベットの上に綺麗に並んで座っている。

 

そんな歌兎ぬいぐるみを思い浮かべながら、あたしはキリッと響さんを睨み、ドンドンと机を叩く。

 

「そんなわけないデスッ!!あたしが歌兎を無くすなんて…!今日は…たまたま家に置いてきているだけなのデス」

「そうなんだ」

 

歯切れ悪くそう言うあたしにうなづいた響さんがごくんとコーラを一口含み、お好み焼きを子コテに乗せ、かぶりつく。

もぐもぐと頬を膨らませ、お好み焼きを食べる響さんに習い、あたしもお好み焼きにかぶりつく。

 

その会話から沈黙が降ってきて、無言でコーラを呷ぎ、お好み焼きを食べ尽くしたあたしと響さんはお腹を抑えながらもやけ食いへと街へ繰り出すのだった…




というわけで、突然始まった切ちゃんのやけ飲み食い。
彼女がこうなってしまったのには、ちゃんと訳があるのデス…その訳を次回は書ければと思います(礼)


今日から始まった『調べ歌う二重唱』の後半戦ですが…一言、感動しました(涙)
ネタバレになるといけないので、多くは語られませんが…ラストの挿し絵は卑怯デス…とだけ書かせてもらいます。

また、新たに追加された『ダイスキスキスギ』はきりしらファンには堪らん楽曲ですねっ(大興奮)
調ちゃんも切ちゃんの声がどこかしっとりしてるのも私的にはグッとでした!!
また、最後の歌詞がズルいですね……

あぁ、早くフルで聴きたいなぁ…(〃ω〃)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

秘密ッ!!

最速でッ!
最短でッ!
真っ直ぐにッ!


一直線にッ!!


フラグ(必愛デュオシャウトガチャ)を回収しちゃいましたね、私

可笑しいなぁ……

待ちに待っていた筈なのに、目の前が何かで霞む……(ごしごし)


※ものの数分で読めるような話を目指して書きました。
主に切ちゃんがボケ、響ちゃんがツッコミというレアケース(?)となっております、時々"クス"や"あはは"と楽しんで笑いながら読んでもらえればと嬉しいです(土下座)


「で、そろそろ聞かせてくれないかな?」

 

ふらわーから出てから至る所にある屋台に立ち寄っては買い込んだ食べ物をベンチに置き、ペットボトルのジュースを歩き疲れた身体に流し込み、癒した後に"まずは串焼きからトライデス!"と大きな口を開けて、噛み応えのある豚肉を噛んでいる時にそう尋ねられ、響さんへと小首を傾げる。

 

「ふらわーじゃあ聞きそびれちゃったんだけど、今の切歌ちゃんは落ち着いて見えるから」

 

その後に続く言葉はきっと"あたしが落ち込んでいる理由が知りたい"って事だろう。

やっぱり響さんには敵わない。

仕方ない、ここは白状しよう。

 

…歌兎が最近隠し事をしてるみたいなんデスよ。あたしには今日も内緒で調やクリス先輩、未来さんと会ったりして、キャッキャウフフしてるんデスっ、あたしはもういらない子になったんデスよ!!

 

嘆くあたしの告白に一瞬口をあんぐり、琥珀色の瞳をまん丸にして、暫しぽかーんとした響さんはおずおずとあたしへと尋ねてくる。

 

「切歌ちゃんのいらない子発言はまず置いておいて…あの歌兎ちゃんが切歌ちゃんに隠し事?本当に?」

 

あの歌兎がデス、本当にデス。この目で見たんデス

 

「切歌ちゃんのいう事ならなんでも聞くあの歌兎ちゃんが?見間違いとかじゃなくて?」

 

だからさっきからそうだと言ってるデスッ!!!

 

くどい響さんにプチ()れるあたしに響さんは両手を顔の前に重ねて謝る。

 

「あはは、ごめんね、切歌ちゃん」

 

"笑い事じゃないデス"とあたしは太ももに置いてある屋台で買った串焼きをやけ食いし、その横に置いてあるたこ焼きやたい焼きをガブガブと口に詰め込むあたしへとペットボトルの蓋を取り、差し出してくれる響さん。

 

「本当にごめん、切歌ちゃん。まさか、お姉ちゃん大好きっ子な歌兎ちゃんが切歌ちゃんに隠し事なんて珍しいなって思っちゃってね。その隠し事は今朝からなの?」

 

そんな響さんから乱暴に飲み物を受け取り

 

「…今朝じゃないデス。始まりはーー」

 

そっぽを向いて語り出すのは、この出来事の始まりであの日である。

 

『ーー』

 

その日、歌兎は熱心にソファに座って雑誌を読んでいて、あたしはその雑誌が気になった。

理由は、歌兎が本や絵本ではなく雑誌を熱心に読んでいたからで。

 

『歌兎、何読んでるデスか?』

『…!?』

 

そこであたしは考えた。いつものノリで後ろから抱きついてから、その雑誌の中身を一緒に見よう…後ろから抱きつくのが駄目なら、歌兎を太ももの上に乗せて、一緒に読めばいいじゃないか。そう思って、あたしは後ろから抱きつこうとして歌兎の後ろに忍び寄り、いざ抱きつこうとしたら思いっきり避けられ、手元にある雑誌へと手を伸ばそうとしたら怒鳴られた。

ショックだった、忽ちに頭が真っ白になった。

 

「そんな些細な事で---いいや、切歌ちゃんならあり得るのかな」

 

響さん、失礼デスね。凄く失礼な人デスね。あんなに可愛い歌兎に拒絶されたんデスよ?『姉様、それに触っちゃダメ!』ってキツく…ッ、キ…ツ、く言われたんデスよ。誰だって天地がひっくり返る気持ちになるデスよ?え、分からないデスって…いいデス、ここから歌兎講座に入りましょう。歌兎の可愛さを響さんに存分に教えてあげるデス!!

 

「あ、うん…話の腰を折ってごめんね。講座はまた後で受けるから、切歌ちゃんがグレちゃってる理由の続きどうぞ」

 

ごほん。

グレてはないデス、グレては…ただ、歌兎があたしに構ってくれないから…あれ?響さんが可哀想な子を見る目になってるデス、なんでデスかね?

と話を戻して、その後はつんつんと歌兎に頬を突かれて、意識を戻したのデス。

 

「…放心状態だったんだね、切歌ちゃん…」

 

響さんの可哀想な子を見る目が加速していってる!?意味がわからんデス!!

 

「…うん、分かったから話を進めて」

 

分かったのデス。

頬をつんつん突いていた歌兎がいったセリフが以下デス。

 

『…姉様、顔が真っ青だけど大丈夫?』

 

思わず、叫びそうになったデスよ、"あたしが顔が真っ青なのはあなたのせいデス!!"って。

 

「…う、うん…そう…だね…」

 

なんか、響さんの表情がだんだん悪くなってるデス、もう可哀想な子を通り越して、生暖かい眼差しになってるデス。しかし、あたしの怒りと悲しみはここでは終わらないのデス。

 

その次の日も次の日も、次の次の次の日も歌兎は自室にこもってばかりであたしのことを構ってくれないデス。

 

「そうなんだね…、それは辛いね」

 

なんだか投げやりな慰め方デスね、響さんっ!あたしはこんなにも悲しんでいるっていうのに!!

歌兎には部屋に入ろうとすると『姉様は入っちゃダメ!』って言われるし、調やマリア、セレナは良くて…なんであたしはダメなんデスぅ…?朝はいつものあたしよりも早く起きてるし、寝る時はあたしよりも早く寝るし…っ、ゔゔぅ…ぅ……、歌兎成分がぁ…歌兎成分が足りてないんデスよぉ…くすん。

 

「なんだかもう…どっちがお姉ちゃんか分からないな」

 

なんか言ったデスッ!!?

 

「ううん、何にも!!」

 

両手をブンブン横に振る響さんは不意に端末をいじると勢いよく立ち上がる。

 

「切歌ちゃん、そろそろ帰ろうよ。もう辛くなってきたしさ」

 

いやデス…あたしはあの家ではもういらない子なんデス…。歌兎には調にマリア、セレナがさえいればいいんデス。あたしはこのベンチに膝を抱えて座って、大きなキノコになるデス…。

 

「何故そこできのこぉ!?」

 

膝を抱え出すあたしを無理矢理立たせた響さんは爽やかに笑う。

 

「へいきへっちゃらだよ、切歌ちゃん!歌兎ちゃんはお姉ちゃんが世界一…ううん、宇宙一大好きな子なんだよ!そんな子が切歌ちゃんを大嫌いになるわけないじゃない。だから、今日は帰って歌兎ちゃんとよく話してみたらどうかな?」

 

もし帰って、へいきへっちゃらじゃなかったら、毎晩響さんの枕元に正座して、怨みの念を送り続けてやるデス。それでもあたしを帰らすデスか。

 

「怖ぁ!?切歌ちゃん、怖ぁ!!?」

 

そう言いながらも響さんはベンチに置いたままにしてあるやけ食い用のプラスチック容器をビニール袋に入れ直すと嫌がるあたしの手を握り、何故かルンルンと鼻息交じりにずるずるとあたしをマンションへと送ったのだった……




さてさて、切ちゃんは自宅に帰り、歌兎と仲直りが出るんでしょうか?
そもそもこれは喧嘩と言えるのか!?
それは読者の方のご判断にお任せ致します(笑)



さてさて、過保護な切ちゃんのことも気になるでしょうが…私の必愛ガチャの結果も気になりますよね。

結果は以下の通りデス。

11回の1回目、☆5は出たが『技属性のクリスちゃん』。

2回目、☆5全く出ず。

3回目、みんなの名言(?)がカッコいい文字で書かれているカットインが入り、"こ…これ、来ちゃったんじゃないデスかッ!?"とテンションがハイになり、来たのが☆5の『心属性のマリアさん』と『力属性の翼さん』の年長コンビ…嬉しい…震えるほどに嬉しいんですが…1回目のクリスちゃん同様、三人のファンの皆さん心からすいません(高速土下座)
思っちゃったんです…"あんた達じゃねぇー!!"って


今は4回目に向けて、ちょくちょくと石を貯め中デス。

恐らく、早くてこの更新後くらいにはガチャれているでしょうか…フレンドリストの方に"必愛切ちゃん"を載せていられることを願いつつ、必愛ガチャ報告を終わろうと思います。

秋も終わりに入り、冬になりつつある今日この頃寒い日々が続いているので、皆さまお身体を温めつつおやすみください、ではでは(。-_-。)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

妹恋(うたこい)ッ!

大変お待たせしました……(大汗)
サンタ切ちゃん復活ガチャに吊られたり、様々な用事が重なり…ここまで遅くなってしまいました。
はい、サンタ切ちゃんに吊られたのは私が悪いですね……ほんとすいません(土下座)

さて、今回の話はきっと2話構成か今回だけの話となるかもしれません。
内容はタイトル通りで【妹の恋】と書いて【歌兎の恋】となってます。
その恋のお相手は虎々絽(こころ)ちゃんではありません、彼女との恋路は【ハードラブ・ミッション】と【繋がる陰陽の太陽】にて書くので…今回は残念ですが、お引き取りいただきまして、ノーマルな恋路を書こうと思ってます。
つまり、歌兎ちゃんが恋するのは普通の男性ということで……と、ここまで書くと読者の皆さんはうちの姉様がどんな行動を取るのかはお分かりですよね?

って事で、そんな感じの話となると思います…では、本編をどうぞ!!



※あいにくの読みにくさ。そして、長めですので…切ちゃん・歌兎やみんなの可愛さに触れつつ、お楽しみくださいm(__)m

こっそり【きりしら】と【きりセレ】を文章に入れてみました(微笑)
皆さんは何個見つけられるでしょうか?

……なんだか、うちの姉様がだんだんと鈍感系ハーレム主人公と化してる(笑)


「‥‥姉様、あのね」

 

最近、歌兎(いもうと)がお小遣いをおねだりする事が多くなった。

値段は500〜700円程度なのだが、それがほぼ毎日となると姉ながらにそのお金が何に使われているのか、と気になってくる。

また、お小遣いを貰った後、真っ先に飛ば出して行って、帰ってきた時にいつも両手いっぱいに持っている駄菓子の袋はなんだろうか?

 

もしかして……これはもしかしてなのだが、歌兎が毎日お小遣いを貰うのは、外で遊んでいるときに良からぬ輩に捕まり、毎日嫌々ながら貰った小遣いで駄菓子を買わされているのではだろうか? もしくは、その500円や700円をカツアゲされているのでは…?

 

いいや、もうそれしかない!もう、それしか考えられないッ!!

 

「って、事で奏者のみんなで歌兎をびこ……じゃないデスーー」

 

因みに、あたし達がいるのは、マリアとセレナが暮らしているマンションでーー最初はあたしと調、歌兎で住んでいるマンションに集まろうとしていたが、学生ではない年長組を部屋へとあげるのはなかなかに難しいらしくーー都合よくみんなが住んでいる家の中央に位置していたマリアとセレナのマンションに集まったというわけだ。

 

そんなマンションの居間に鎮座(ちんざ)しているのは、シンプルな形なのだが、大型のテレビで……そのテレビを取り囲むように真っ白なソファが三つほど置かれている。

座り順なのだが、テレビ側から見て……右側に置かれているソファに座っているのが、右から未来さん・響さん・マリアとなっている。続けて、左側に置かれているソファに座っているのが、左側から奏さん・翼さん・クリス先輩となっている。そして、中央に置かれているソファに座っているのが、左側から調・あたし・セレナとなっている。

 

「ーー愛ある監視をするデスよ!!」

 

と、シャキーンとその大型のテレビを指差してドヤ顔するあたしに呆れ顔のみんな。

 

(あ、あれ…?温度差がおかしくないデスカ……)

 

「切ちゃん、それだ監視よりもさらに酷くなってる」

「愛ある監視って……なんだか、愛が重い気がしますね」

 

(うっ……うぐ、セレナに愛が重いって言われちゃったデス……)

 

ガックーン、と落ち込むあたしを見て、あたふたとセレナが弁解しているけど、その弁解の内容が更に落ち込みへと拍車をかける。

そして、そんな様子を見て、呆れた様子のクリス先輩は決めつけたような口調で吐き捨てる。

 

「毎日ちびちび500円から700円くらいを奪うか、その程度の駄菓子を買ってこいっていう不良がいるわけないだろーが。あたしがそいつらから一気に1万くらいぶんどる。つぅーことは、今回もお前の過剰な過保護だ。もういいか、あたしは帰ってから観たいものがあるんだ」

 

颯爽と立ち去ろうとするクリス先輩を邪魔するように先回りして、立ちふさがるあたしを退けようとするクリス先輩。

 

「待って欲しいのデス〜〜、クリス先輩!!!クリス先輩の言いたい事は1億歩譲るデスっ、デスが、もしもがあたしの頭から離れないデスよーーぉ!!」

「だから考えすぎだ過保護。こら、離せって!!」

 

なんとかかんとかクリス先輩を元の位置に座って貰って、あたしはテレビの前に進み出ると『フ』と不敵に笑うと正面へと右掌を差し出す。

 

「みんな呆れ顔をしているのも今のうちなのデスよっーー緒川さん!!」

「ここに」

 

あたしの呼びかけに音なく右手にビデオカメラを装着した緒川さんにみんなが目を丸くする。

 

ふふふ、もっとびっくりするがいいのデス!!

 

「…………得意げな切ちゃん可愛い」

「…………得意げな暁さん可愛いです」

 

なんか中央の二人はあたしを見て頬を染めてるデスが…….ハッ!? もしかして、二人して風邪を引いてしまったのデスか!?

 

「何故、切歌が得意げなのかが分からないわ……」

「まぁ、そこが切歌ちゃんの魅力ですから……」

「響。それフォローになってないよ……」

 

そして、何故か右側から生暖かい視線と共に酷いこと言われている気がするデスがいいデス……何故ながら、左側のお三方がいい感じでびっくりしてくれてるからデス!!

 

さぁ、あたしの切り札デスよ。もっと驚くがいいのデス!!

 

「緒川さん!?」

「何やってんだ!?」

 

フフ、奏さんと翼さん驚いてるデスね。

さてさて、クリス先輩はあたしの顔を見た後に安堵したように微笑む。

 

「そのアホ面見ているとなんか落ち着くな」

「それどういう意味デス!? 喧嘩デスか? 喧嘩を売ってるんデスか!アァン!!」

 

緩めの深緑色のニットを腕まくりしながら、クリス先輩にヅカヅカ歩いていくあたしを後ろから抱きしめて止めるのは調である。

 

「切ちゃん、どうどう。クリス先輩も悪意があるわけじゃないんだから」

「それ更にひどいデスよ!?」

「まあまあ」

「そのまあまあってなんデスか!?」

「切ちゃん、今日のおやつに取ってあるチョコプリン食べる?」

「……食べる」

 

(強引に話題をそらされたデスが……もうプリンで嫌なことを忘れてやるデスっ!!)

 

調にチョコプリンを手渡され、はぶてたようにパクパク食べるあたしの頭を撫でるセレナがあたしの代わりに緒川さんを呼んだ理由を説明してもらう。

お礼にチョコプリンを一口あげたのデスが、その時セレナの顔が真っ赤っかだったのはやはり風邪でも引いてしまったのだろうか?

 

「緒川さんならNINJAなので、動物的勘の鋭い歌兎ちゃんの警戒心を解けると暁さんは考えたみたいなんです。なので、明日は歌兎ちゃんの事よろしくお願いします、緒川さん」

「えぇ、任されました」

 

にっこり微笑む緒川さんがあたしを見て、爽やかに笑う。なんデスかその笑顔は、このチョコプリンはいくら緒川さんでもあげないデスよ。もう一つは調ので、三つ目のは歌兎のなんデスからっ。

 

「……動物的勘って、そういう所も姉妹なんだね」

「……そうだね。あの時の切歌ちゃんも歌兎ちゃんも凄かったもの」

 

響さんと未来さんが微笑ましそうにあたしを見てくるデス……だから、このチョコプリンはあげないデスよ、そんな目をしても。

 

もう二つのプリンを死守するあたしを何故かそんなの皆んなと緒川さんが暖かい笑みを浮かべつつ、呆れを8割加えるというなんとも不思議な笑顔を向けられながら、歌兎の監視作戦がこうして始まったのだった----。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

そんな作戦が立てられているとは知らない歌兎は実に言いにくそうにソファに座り、漫画を見ているあたしの横に立つとモジモジと身体を揺らしながらいつものようにおねだりする。

 

「‥‥ね、姉様。そ、の……今日は500円をちょうだい……ダメ、かな?」

「はいどうぞデス、歌兎」

「‥‥へ?」

 

あっさり渡された500円玉に歌兎は目をパチクリしてる。

 

「‥‥姉様?」

 

漫画を机に置き、自分へとにっこり微笑むあたしをマジマジと見てくる歌兎。

 

「500円が欲しかったんデスよね?」

「‥‥うん、そうなんだけど」

「歌兎が欲しいって言ってるものをあげないわけないじゃないデスか」

「‥‥そっか、ありがとう。姉様」

 

なんか歌兎が引いてるように思えるデスがいいのデス。

 

(これも歌兎の為なんデス。歌兎を魔の手から救い出す為にあたしは心を鬼さんにするのデスよっ!)

 

歌兎は心配そうにあたしを見た後に身を(ひるが)すとお気に入りの薄茶色のブーツを履く。

そして、振り返るとあたしへと小さく右手を振る。

 

「‥‥姉様、行ってきます」

「はい、行ってらっしゃい。暗くなる前に帰ってくるのデスよ」

「‥‥ん、分かってる」

 

ガチャンとドアが閉まる音ともに飛び出してくる奏者のみんなが素早く昨日と同じ席に腰掛けるとあたしは緒川さんへと話しかける。

 

「緒川さん。歌兎はマンションを出たデス、あとはお願いしますデス」

『分かりました』

 

そう言った途端、近くにある山を映していた画面が路地をトコトコと歩く冬服に身を包むようあたしの宇宙一可愛い最愛の歌兎(いもうと)が映し出される。

 

(画面に歌兎が……へへへへへ…)

 

画面いっぱいに映し出される歌兎に頬を緩ませるあたし。そんなあたしを見て、頬を緩ませる調とセレナ。

 

「切歌、そして、月読とセレナもみんなでここ集まっている意図は理解しているのだろうな?」

「分かってるデスよ、翼さん」

「本当なんでしょうね……」

 

翼さんもマリアも酷いのデスよ、こんなにも目を光らせて画面を見ているというのに。

 

「そのゆるゆるな顔が問題なんだよな」

 

(うぐ、奏さんに言われたなちゃったならば……ここは顔を引き締めて、しっかり歌兎を監視しなくては!!)

 

と思った矢先、画面から流れてきた歌兎のセリフは以下の通りだ。

 

『‥‥んー、姉様。変なの食べたのかな? それにどこか様子も白々しかったし……僕に内緒で何かしてる?」

 

「おい、いきなり怪しまれているじゃねーかよ、姉様」

 

あ、あれーぇ? おかしいデスね…、あたしの演技は完璧だったばすなのに。

 

『‥‥ううん、姉様が僕に隠し事なんかしないよね。なら、きっとテストの点数が悪かったんだ。何か元気になるものでもあげよう』

 

そう言って、徒歩を早める歌兎の姿からーー正しくは画面から視線を横にスライドしたあたしはクリス先輩へと"ホラ見たことか"とフンと鼻を鳴らす。

 

「いや妹にテストの点数で心配される姉は普通じゃねーからな」

 

呆れ顔のクリス先輩に何を言われても今のあたしには痛くも痒くも無いのデスよ。

 

「あっ、歌兎ちゃんが駄菓子屋さんに入って行くよ」

「本当だ。今の所誰にも会ってないのに」

「って事は結局は切歌の早とちりだったのね。歌兎ももう子供じゃないのだから、そんなに心配しなくても大丈夫よ」

 

アァーアアァー聞こえないのデース、特に右側の左が言ってることが一番聞こえないのデース。

 

「全く歌兎よりも切歌の方が子供よね。緒川さん、もう少しだけ歌兎の事映してくれるかしら?」

『分かりました』

 

そう言って、緒川さんが駄菓子屋さんに足を踏み入れ、歌兎を映し出した時にその場に居たみんなが絶句(ぜっく)した。

 

『‥‥ん』

 

所狭しと駄菓子が積まれ、薄暗くなったカウンターの上で両腕を組んで、うたた寝しているきっと翼さんと同い年くらいの青年の短めの黒髪から覗くおでこへと頬を赤く染めた歌兎がその小さな唇をくっつけている。

 

そう、歌兎は営業中だというのに居眠りしているこの駄菓子屋さんの店主であろう青年にキスしてるのである。

 

キスをしているのである。

 

スをしているのである。

 

をしているのである。

 

しているのである。

 

ているのである。

 

いるのであーー

 

(ーーアノ男、ブッ殺ス)

 

衝撃の事実から現実逃避していた思考が頭の中でこだまする"キスをしているのである"って言葉に否応なく覚醒させられ、続けて起こる出来事はあたしのおでこへと血管が浮き上がる。

 

素早く襟首から赤い結晶を取り出し、イガリマの聖詠を歌おうとするあたしを奏者のみんなが止めに入る。

 

「Zeios iglima razen tぉろーーむぐっ!?」

「こら過保護。一体全体何しようとしてやがる!?」

「ギアで一般市民を切り捨てるなど防人として以ての外だぞ、切歌」

「しかもイガリマは魂を両断する力を持ってる」

「尚更止めないとッ!!」

うぐなひぃふるえふが(このなにするデスか)

 

大暴れするあたしの視界の先にはいまだに駄菓子屋さんの青年へとキスしている歌兎が映っていた----。




アァー、やっぱりこうなった(大汗)
これはもう時に身を任せるしか無いのデス。

過保護な姉様が妹離れ出来る日が来ることを願って……暫し、更新を休憩させてもらいます(土下座)

そして、今回登場した冬服の歌兎ちゃんを【総数50話記念】として、描かせてもらいました。

テーマは『あったかいもの、どうぞ』デス。


【挿絵表示】


可愛らしく書くつもりが、なんだか大人っぽくなってしまった歌兎ちゃんでありました(笑)
眠そうな目って大きく描くとなると大変ですね……しかし、こんな可愛い子におでこキスしてるんデスよ?

…………うむ、わたしなら悶えるな。

と、これはお知らせなんですが…来年のどこかで【ハードラブ・ミッション】のオリジナルキャラである『虎々絽(こころ)』ちゃんも描いてみようと思います(笑)





ここからはちょっとした雑談コーナーで……中にはど変態な発言も含まれてますので、そういうのが嫌いな方は見たいで回れ右をしてください!



さて、クリスマス2018の☆5メモリアと☆4メモリア、やばいデスよね…?(大興奮)

まず、☆5メモリアの切ちゃん・調ちゃん・セレナちゃんの可愛さたるや……すいません、今こうしている間もあの可愛い三人を思い出しては悶えてます(ジタバタ)

切ちゃんは雪だるまコスが似合いすぎるし……マリアさんが倒れてしまったから、心配なんでしょうね、少し涙目なのがもう可愛すぎるッ!!大丈夫だよって抱きしめたい!!
っていうか、毎晩抱き枕にして眠りたいデスけど、雪だるま切ちゃん。もふもふしてそうですし…。

調ちゃんのサンタコスは猫のような耳が付いてますよね? ちょ…、調ちゃんに猫耳サンタが似合わないわけないじゃないデスかっ!!
くっ、こちらもお持ち帰りしたい!!

そんな二人とは対照的に清楚な感じに仕上がってるセレナちゃんにキュンキュンデスよ!!
しかも上目遣い…ぐぶっ、子猫みたいじゃないデスか……がはっ(三人の可愛いさに出血多用)


☆4の彼氏シャツしてる調ちゃんもヤバイ……胸元空きすぎッ!そして、あのどこかぽやーんとした顔……くっ、これはヤバイッーーと、これ以上は本当にみなさんのお目を汚す発言を書いてしまいそうなので……ここまでで雑談コーナーを終わります。

次回は年終わりか初めか、クリスちゃんの誕生日くらいに更新すると思います( ̄^ ̄)ゞ
寒い日が続くので、読者の皆さんお身体にお気をつけて…ではではm(__)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

妹恋(うたこい)ッ‼︎

あけましておめでとうございます!

今年も【うちの姉様は過保護すぎる。】を宜しくお願い申し上げます(土下座)

そして、ここまで更新が遅くなった上に予定していた【重なる陰陽の太陽】の3話ではなくてごめんなさい。
内容や文字の色を変える作業が多すぎて、まだ更新出来そうありません(汗)

でも、約束していた着物の歌兎は下手っぴかもしれないけど描いたから許して……このとーりデスから(土下座)



※ちょっと長めです。

では、本編をどーぞっ!


「ーー」

「‥‥」

 

(え、え〜と……これはどんな状況なんだろうか?)

 

現在が僕がいるのは、マリねぇとセレねぇがS.O.N.G.の皆さんが日本で暮らす為にと用意してくれたマンションのリビング。

正面に大きめなテレビが置かれ、そのテレビを取り囲むように真っ白な皮のソファが三つ並び、その中央の間スペースには本来ならば(・・・・・)シックな造りのガラス張りのテーブルが鎮座(ちんざ)してある。

そう、それはあくまでも本来ならばの説明であって、今はマリねぇかセレねぇか分からないけどどちらかの私室の椅子が置かれ、その上にちょこんと僕は座らされている。

 

そして、そんな僕を取り囲むように奏者のお姉ちゃん達と未来お姉ちゃんが勢揃いというわけだ。

みんなを無口で僕の事を見てくるだけで、気まずい他ならない。

 

「‥‥」

 

(な、なんでこんなことに……)

 

家に帰ろうとしたら、緒川様が突然現れて、『切歌さんが呼んでいるので来てもらっていいですか?』と爽やかな笑顔で強引にお姫様だっこされて、連れてこられたこのマンションであれよあれよとこの位置に追いやられ、こんな状態になっているという……。

 

(意味が分からない)

 

いつもなら、姉様の行動全てが理解出来るのだが……今回のこの行動だけは理解出来ない上に真顔がなんだか怖い。

 

「歌兎。お姉ちゃんに言うことはありませんか?」

 

重い口を開く姉様の口調はいつもの砕けた感じではなく、怒りを全面に出している感じで、僕はそんな姉様に震え上がりながら、暫し考えた末に思い浮かぶことがないのでそのまま答える。

 

「‥‥お、思いつかないよ」

「白を切るつもりデス?」

「‥‥白なんてきってないよ」

「ほぉ〜〜、ならこれを見てもそんな事が言えるデスかね」

 

そう言い、姉様はテレビの電源を付ける。

 

そして、画面に表示されるのはつい先刻僕が行っていたこと。

もっと厳密にいうと、机の上でうたた寝をしている黒髪を短く切りそろえている青年のおでこへとキスをしている僕の姿だ。

 

(‥‥な、なんで……)

 

「緒川さんに付けてもらっていたんデス」

 

し、知らなかった……。

でも、言われてみれば、何処か視線を感じることが多かったし、見知った雰囲気を感じ取れることも多々あった。

それが緒川様だったということか。

 

(今度からもっと気を張って、外を歩かないと)

 

顎に右手を添え、緒川様や姉様達から逃げ切るためのルートを頭の中で組み立てる僕を見ていた姉様は普段垂れ目な黄緑色の瞳を吊り上げて、空気を吸い込む。

 

「歌兎ゥ!!!!」

「にゃい」

 

姉様の怒声に思わず噛みながら返事する僕は肩をビクつかせながら、姉様の方を見る。

すると、姉様はソファから立ち上がると僕の周りをぐるぐる回り始める。

 

「歌兎。お姉ちゃんは今凄く怒ってます。その理由は分かりますか?」

「‥‥わ、分かりません」

 

ボソッと答える僕に突然顔を近づける姉様。

 

「それは歌兎が知らない男性のおでこにキスをしているからデス!!

歌兎は普通にしていても可愛い子デス、そんな可愛い子にキスされてときめかない男性なんていないのデス!あんな事をしてあの男性が突然襲い掛かってきたらどうするつもりだったんデスかッ」

「‥‥そんな事しないよ。駄菓子屋のお兄ちゃんは優しい人だもーー」

「ーーだまらっしゃいデス!!」

「はいっ」

 

姉様の怒声に背筋を伸ばして、姉様の質問を答えていく。

 

「歌兎はあの男性が好きなんデスよね?」

「‥‥は、はい……好きです……」

 

(は、恥ずかしい……)

 

なんで僕。隠し撮りされて、誰にも知られたくない秘密を一番知られてはいけない姉様に見られた上に、親しくしてくれているお姉ちゃん達に囲まれて公開告白なんて恥ずかしいことしてるんだろ。

 

顔をうつむけ、頬を染める僕をビシッと指差した姉様は得意げにしたのセリフを口にするのだった。

 

「歌兎の気持ちはよく分かりました。なので、明日お姉ちゃんもその人に会いに行きます、歌兎を連れて」

「‥‥へ? だ、駄目ッ!お姉ちゃんとあの人を合わせちゃったら……。あの人がころさーー」

「ーー歌兎心配ないよ。切ちゃんが暴走しないように、当日は私とセレナが付いていくから」

「本当は私ではなくて、マリア姉さんや風鳴さんの方が力になれたと思うんですけど。任されたからには、精一杯頑張らせてもらいますね」

 

そんなこんなで僕は明日、姉様達と共に思い人に会いに行くことになったのだった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

当日。

姉様達と共に駄菓子屋に立ち寄った僕は姉様によって後ろに下げられていた。

そして、姉様は駄菓子をカウンターに置き、会計している店長であるお兄ちゃんへとズバッと切り込む。

 

「所で、貴方はあたしの妹のことどう思ってるんデス?」

「ハイ?」

 

(ね、姉様ぁああああ!? ダイレクトになんて事聞いてるの!?)

 

駄菓子を左手に持ち、右手はレジのボタンを押している柔らかい印象を受ける顔にはめ込まれている焦げ茶色の瞳をまん丸にしているお兄ちゃんの姿が見える。

そして、僕もズバッと本題を切り込んできた姉様に慌てはためき、姉様に近づこうとして、シラねぇとセレねぇに捕まえられる。

 

「歌兎、ここは切ちゃんに任せて」

「‥‥で、でも!」

「大丈夫ですよ、暁さんなら」

 

(全然任せられないし、大丈夫でもないっ!)

 

見た感じだとお兄ちゃん戸惑ってる様子だし、突然こんな事聞かれても迷惑なだけだと思うし、何よりも僕なんかお兄ちゃんの中では眼中にないのかもしれないし……こんな形でフラれるなんて悲しく辛い他ない。

 

「えー……と、君の妹さんというと? そっちの黒髪をツインテールにしてる子の事かな?」

「その子はあたしの親友デス。あたしの妹はまん丸にいる銀髪の子デスよ。あんな可愛い子が見えないなんて貴方の目は節穴デスか、そうデスか、そうなんデスか、そのまま病院行って入院しちゃえばいいんデスよ。この店番中居眠り男」

「ソノゴメンナサイ……………ってあれ? なんでこの子、俺が店番中に居眠りしてる事知ってるの?」

 

(それは盗撮されたからです……なんて言えないよね)

 

姉様の気迫に押されっぱなしのお兄ちゃんはシラねぇとセレねぇに取り押されられている僕を見て、ハッとした様子を見せる。

 

「あっ、その子って……いつも俺の店に来てくれてる」

「そうデス。いつも貴方の駄菓子屋に通い詰めてる子デスよ。その子のことをどう思ってるのかと聞いているのデス、あたしは」

 

トントンとカウンターを叩く姉様を怯えた様子で見ながら、お兄ちゃんは僕の方をチラチラ見ながら、不機嫌そうな姉様へと視線を戻す。

 

「いまいち君の言いたい事が俺分からないんだけど」

「チィッ」

 

(あっ、姉様。壮大に舌打ちした)

 

鈍い反応を見せるお兄ちゃんに苛立ちが募っていっているのか、姉様は眉間に皺を寄せると更にお兄ちゃんを睨む。

 

「だ〜〜か〜〜ら〜〜デスね。貴方は歌兎と手を繋いだり、キスしたり、デートしたり、一緒に大人の階段を駆け上がりたいのかとあたしは聞いているんデス、どうなんデス?」

「……き、ききすしたり、おおおおとなのかいだん!? って、その……いやらしい意味での?」

「それ以外に何があるデスか」

「それをそ、その子と?」

「えぇ、そうデス。したいんデスか? 歌兎と」

 

睨みを利かす姉様にお兄ちゃんはそっぽを向くとボソッと答える。

 

「……それは凄く可愛い子だし、そんな可愛い子と純潔(じゅんけつ)が捨てられるのならしたいけど」

「相手が可愛ければなんでもいいと…………このクズロリ男、万年ロリコン野郎」

「本当の事答えたのになんて言われよう!?」

 

お兄ちゃんが悲鳴をあげるのを身を引いて、変質者を見る目で見ていた姉様は大きなため息を吐くともう一度聞く。

 

「はぁ……もう一度聞くデス。貴方はあたしの大切な妹の事をどう思っているんデスか? 今までのあたしの質問からこの質問の意味は分かりますよね?」

「……っ、分かってる」

「なら答えてください。ほら早く」

「……す、好きだよ。俺だってその子の事が前から気になっていた!これでいいだろうっ」

 

顔を真っ赤に染め、そう答えるお兄ちゃんを見て、姉様は満足そうにうなづくと僕の背中を押すとお兄ちゃんの方へと近づける。

 

「ね、姉様っ!?」

「良かったじゃないデスか。両思いだそうデスよ」

 

いきなりの展開すぎてついていけない僕が姉様の方を振り返ると姉様は柔らかい笑顔を浮かべていた。いつもの太陽のような明るい笑顔ではなく、僕の恋路を、成長を祝福してくれているような暖かくも柔らかい……美しい笑顔。

その笑顔に背中を押されるように僕は前を向くと、まだ顔を赤くしているお兄ちゃんに向かってずっと胸に秘めていた思いを口にする。

 

「‥‥貴方の事がずっと前から好きでした。僕と付き合ってくれませんか?」

「……そ、その……はい……よろしくおねがいします」

 

カウンター越しに微笑み合う僕達を穏やかな笑顔で見ていた姉様はビシッとお兄ちゃんの方を指差すと声を荒げる。

 

「お付き合いを始めたからって、あたしの目が黒いうちは歌兎とキスやそれより先はさせないデスからねっ!手を繋いだりするだけデス!それ以上をしたら、あたしが貴方をぶった斬りにくるデスーー分かったかデス」

 

光の消えた瞳で見てくる姉様にお兄ちゃんは震え上がりながら、コクンコクンと高速で首を縦に振るのを見届けた姉様は僕へと声をかけてくる。

 

「歌兎。あまり遅くならないうちに帰ってくるのデスよ」

「‥‥ん、分かってる」

「それじゃあ、あたし達は帰るとするデス」

 

そうして、姉様はシラねぇとセレねぇを連れて、一足先に家に帰り、僕は暫くお兄ちゃんとお話しした後に家に帰ったのだったーー。




姉様の目が黒いうちはデートをしてもキスやその先は無しで、手を繋いだりするだけとなかなかに厳しい条件ながらも姉様は駄菓子屋のお兄ちゃんと付き合うことを認めてくれて、お兄ちゃんも歌兎が好きという事で……無事恋路が実って良かったね、歌兎!

まずはお兄ちゃんとのお付き合いおめでとう!歌兎っ!!
姉様からの圧力に負けないで!駄菓子屋のお兄ちゃんっ!!


二人のこれからに祝福を!!╰(*´︶`*)╯


さて、この回で【妹恋(うたこい)】は終わりますが、この世界線の続きは【姉恋(きりこい)】という話にて続きます。
まぁ、タイトル通りで今回は切ちゃんの恋ですね(微笑)
歌兎との絡み・過剰な過保護を加えつつ、乙女チックな切ちゃんを書いていければと思っておりますので……次回を楽しみにしててくださいっ!




おめでたい回となった今回に合うかどうかは分かりませんが、前書きに書いていた【着物姿の歌兎】デス。

テーマは【和】かなぁ……あんまり和らしくないけど(苦笑)あと、そんなに上手でもないから期待しないで見てくださいね(笑)



【挿絵表示】



これでも可愛く描こうとしたんだよ?
精一杯可愛くしようとして……何故か色っぽくなった、なんで(汗)
まぁ、偶にはこんな歌兎もいいよねっ。
姉様も凄い喜んでると思うし!!




さて、少しだけ雑談コーナーを入れさせてもらって……今日から始まった【夕暮れに舞う巫女】。

巫女ギアのF.I.S.のみんな可愛すぎるでしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!(絶叫)

和装大好きな私からして見たら夢あるシナリオです!!(目をキラキラさせる私)

そんなイベントのシナリオはまだ1話目しか進めてないので、私はこれを更新した後に速攻で進めます!!

そして、アイテムを集めて、巫女切ちゃんと交換しないとッ!!

この切ちゃんはいつもの切ちゃんと違い、いい感じでお淑やかな感じがして……いいのデス!!


という感じで雑談コーナーを終えます。


読者の皆様にとって、これから始まる一年がいい年となりますように(*´꒳`*)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

くしゃみッ!

土日か来週辺りに出来れば、連続更新で暗めの話(私の趣味で書く下の章の2つ)を更新しようとしているので、その前のウォーキングアップというか

ゆる〜い、しょーもない…ほんとしょーもない話を挟んでおきたかった。

ただそれだけの話ですので、会話文多め、説明文そこそこ多め、文字数は多めだがギャグばかりなのですらすら読める量で。
今回だけの話、続きはなし。

内容は歌兎が『ですです』『にゃっにゃっ』して、切ちゃんが可愛いを熱く語り、みんなは其々好き勝手する話デス。

本当しょーもないので、頭は出来る限りからっぽにした上で読んでください(礼)

では、本編をどうぞ!!


冬も深まり、マンションの窓から外を見ればチラホラと白い結晶がキラキラと冬の淡い光にあたり、美しい白銀の光を放つ。

そんな美しくもどこか肌寒さを感じる風景をマリアとセレナが住むマンションのリビングにある窓から外を覗くあたしは視線をゆっくりと前へと向ける。

真っ直ぐ見つめるあたしの視線の先には、白いソファに包まるもふもふな(かたまり)がある。

 

「‥‥でっすっ。‥‥でっすっ。‥‥にゃっくしゅんっ‥‥すんっ」

 

(かたまり)の主な色は花青緑色の毛布で、その毛布から覗くのはまん丸な黒い瞳が付いている焦げ茶色の布地に白い小さな角、ピンクのまん丸の鼻が付いたもの。

総合的に、"いのしし"のアニマルパーカーといった所だろうか。

 

今朝この"ひつじ"にしようか、"いのしし"にしようか、と悩みに悩み抜いたあたしだったけれどもーー

 

「結局いのししにしたあたし、グッジョブデェースッ!!!!」

 

ぐっ、と力強く両手を天井に突き出して喜び叫ぶあたし。

 

そんなあたしを見つめる、いいや見あげているのはーーソファに丸まっているもふもふな塊で、潤んだ半開きの眠たそうな黄緑の瞳、すんすんと鼻を鳴らし、たら〜んと透明な粘り気のある液体を垂らしながら、あたしが用意した最強最高トンデモの装備(ふく)に身を包むその正体はあたしの最愛の妹・歌兎である。

 

「潤んだ瞳……すんすん鳴ってるちんまりした鼻……赤らんだもちもちな頬……もふもふなトンデモ装備品……まん丸なシルエット……くっ、これがーー」

 

ーーこれこそが可愛い……可愛いなのデスね……っ!

 

 

 

可愛い。

 

人はその感情をどんな時に思い浮かべるのであろうか?

自分よりも小さいものを見た時?

それとも、まん丸なものを見た時?

はたまた、精一杯頑張っている者を見た時だろうか?

いや、上の案にはないのかもしれない。

 

 

可愛い。

その感情は実に直感的に、瞬発的に浮かんでくるもの。

 

 

そんな可愛いの文字を分解してみるとーー。

 

 

可。

その意味は、それでよいとすること。よいとして認めること。

 

愛。

その意味は、かわいがり、いつくしむ心。

 

総合して、よいとして認めて、かわいがり、いつくしむ心。

 

 

それこそが可愛いッ!!

 

 

故に可愛いは、全ての世界で、全ての属性において頂点に君臨(くんりん)するものだといえよう!

 

 

 

Kッ!

 

Aッ!

 

Wッ!

 

Aッ!

 

Iッ!

 

Iッ!

 

 

 

 

KAWAIIッ!!!!

 

 

 

 

そう、KAWAIIこそが人間が永遠に追い求めるテーマであり、この世界を生き抜くための(かて)ッ!!

 

 

 

 

「‥‥でっす。‥‥でっす。‥‥にゃっくっしゅん、にゃっくっしゅん」

 

 

 

 

あぁ……こんなKAWAII存在が今まで居たでしょうかっ。いいえ、居る筈がないのデスッ!!

 

 

ありがとう神様、ありがとう仏。ありがとう、歌兎……あたしの妹に産まれてきてくれて……。

 

 

 

「‥‥で、で‥‥ででで‥‥で、にゃっくっしゅん!」

「歌兎、鼻水が垂れてる。ほら、しゅーんしよ」

「‥‥ん、しゅーん」

 

 

 

ふふふ、でへへへ……鼻水をかんでる姿もKAWAIIデス……。

あらあら、鼻のてっぺんが真っ赤じゃないデスか……エヘヘヘヘ。

 

 

 

「‥‥でっす。‥‥でっす。‥‥にゃっ‥‥っ、にゃっくっしゅん!」

 

 

あぁ……どんな姿もKAWAII。

うちの妹がKAWAIIすぎるデス。

 

 

時折、KAWAIIは正義という言葉を耳にするけどもうなづけるデス。

 

 

そう、今の歌兎はーーううん、KAWAIIこそがーー

 

 

「ーー正義なんデスよぉおおおお!!!!」

「ちょせぇ!!」

「にゃっふっ!? い、痛いデスよ……クリス先輩、なんで本気で蹴飛ばすデスかぁ」

 

顔から床へとダイビングしたあたしを見下すのは、何故か両手いっぱいに毛布を持ったクリス先輩。

 

「自称トンデモ過保護がいつにも増して馬鹿な事を言ってるからだろーが!

たっく……妹が風邪をひいたみたいで死にそうだから助けてくれっていうから来てやったってのに……あたしやバカ、先輩たちに働かせて……お前はのうのうと妹見物か?」

「そういうわけじゃないデスけど……歌兎があたしが見えなくなったら心配するかと思ってデスね」

「言い訳はいいから、こっち待ちやがれ」

「ぐふっ!? こ、これ前が見えんデス」

「あと数歩だろ、我慢しろ」

 

そのクリス先輩に近づくのは、毛布に包まる歌兎の世話をしている調である。

 

「クリス先輩、毛布ありがとうございます。切ちゃんもありがとう」

「えへへ、こんくらいどってことないデスよ」

「なんでお前が偉そうにしてんだよ……あいつらの部屋から毛布を掻き集めたのはあたしでここまで運んだのもあたしだろーが」

 

肩を落とすクリス先輩。その隣にいる筈の翼さんにあたしは小首を傾げる。

 

「クリス先輩。翼さんは?」

 

その問いの瞬間、マリアとセレナの部屋の辺りからドッチャンガッチャンガッタンコと凄まじい騒音が渡り廊下に響く。

 

「あれで察してくれ。頼む」

 

あぁ……なるほど。そういうことデスか。

 

クリス先輩と翼さんで毛布を持ってくる係に任命され、二人で毛布を持ってくる時に翼さん立ち寄った部屋だけ不運に不運という名の押入れの中にある物の雪崩れが重なり、立ち寄った前と後ではすごい差が付いてしまったと。

翼さんは義理堅い性格デスから、なんとか不運が起こる前の状態に部屋を直そうとして、その度に不運が重なり続けていくと。

 

「クリス先輩、お疲れ様です」「デス」

 

頭を下げるあたしと調にクリス先輩はなんともいえない顔をしていた。

恐らく、翼さんがやらかしてしまった後始末に頭が痛いのだろう。

 

そして、歌兎はあたしたち三人の手により、更に毛布のぐるぐる巻きになってしまい、それを見たクリス先輩が言ったセリフは"毛布の雪だるまだな"であった。

 

「ここまでぐるぐる巻きにすれば、風邪も忽ち直るデスよ!」

「うん、そうだね」

「流石にやり過ぎだろ。身動きすら取れなさそうじゃねーかよ」

「歌兎には悪いデスが、これも風邪を治す為なんデス」

「でも、トイレ行きたくなったら言ってね、歌兎」

「‥‥で、すっ……すんっ」

 

うなづきにくそうにする毛布雪だるま状態の歌兎。

そんな歌兎を見たあたし達は毛布を肩や膝の部分だけにかけることにしたのだった。

 

「これで良しか。おい、他にすることあるか?」

「他はマリアとセレナの様子を見て来てもらっていいですか? 奏さん、未来さんが二人のおうえんをしに行ってくれたんですけど……時間が経っている様子なので」

「分かった。ほら、姉様も行くぞ」

「そんなセッションな!!」

「……お前、辛辣(しんらつ)とか文字数多い難しいのは覚えてんのに。なんで、セッショウをセッションって間違えてるんだよ……色々と残念なやつだな、ほんと」

「……へ? 何が違うんデス?」

「お前ってはやつは……あいも変わらず、妹が大好きなだけの成長しないただのバカだよな」

「それどういう意味デスか!?」

 

暴れるあたしの首根っこを掴んだクリス先輩はズルズルとキッチンへと向かって歩いて行き、絶句していた。

その理由は、マリアと奏さんコンビが高級そうな濃い緑色のガラスに入った紅い液体を鍋に投入して、ぐつぐつしていたから。

それにどちらも顔を赤くしているところを見るとぐつぐているものを一杯……ううん、数杯は味見と言い張って、ひっかけた様子。

 

「ヒック……お? クリスに切歌じゃねぇーか。お前らもどうよ、一杯飲んでく?」

「いやいや未成年だから飲めないですよ……っていうか、あんたら何楽しく断熱グラスで飲み交わしてるんだよ!? あのチビの世話に来たんだろ!? 違うか!?」

「固い事は言いっこなしだぜ、クリス。それに熱でアルコール飛ばしてんだ、普通のぶどうジュースと変わりしない」

「ぶどうジュースと赤ワインは大違いデスよ、奏さん……あと、あたしはクリス先輩じゃないデス」

「奏の言う通りよ。あまり眉間にシワを寄せると可愛い顔が台無しよ、クリス。切歌もお疲れ様さま、歌兎の様子はどうかしら?」

「マリア……そっちはクリス先輩で、あたしはこっちデス。

お酒に酔っていても間違えるなんて酷いデス、あたし達が一緒に暮らした数年はそんなに安いものだったんデスか……」

「あら、ごめんなさい。切歌、わざとじゃないのよ」

「だから、そっちはクリス先輩デスって言ってるでしょうぉおおおおおお!!!!」

 

酔っ払いの顔を無理やりあたしの方に向ける。

 

「あらほんとね、こっちが切歌だわ。あら? 切歌が二人? ここで分身の術を使うなんてお茶目さんね」

「何を言ってるデスか、この酔っ払いろくでなしマリアっ!

もうどんだけ飲んだんデスか、吐く息がお酒くさいのデスーーって、本当どんだけ飲んでるんデスか、この酔っ払い達ッ!?」

 

ろくでなしマリアから視線を流し台に向ければ、そこには一本二本三本どころじゃない七本のガラス瓶が置かれており、酔っ払い奏さんに絡まれているクリス先輩が絶句してる……いいえ、呆れてものが言えなくなっている。

 

「おいおいマジかよ……味見と評して、六本ひっかける奴が居るかよ……」

「これも歌兎の為なんだって……ヒック……、なぁ? マリア」

「えぇ、そうよ。私達は調から頼まれたの……そう究極のホットワインっていうのを。

究極というのは、これまでに類を見ないという事。即ち、歌兎の舌を唸らせるホットワインを作り出さねばならないということよっ!!

このマリア・カデンツァヴナ・イヴと天羽 奏に妥協の二文字はないわッ!!」

 

そう無駄にカッコいいセリフとキメ顔をして、温め終えた赤ワインを奏さんと自分の断熱グラスに注ぐ酔っ払い駄目駄目マリア。

 

その瞬間、あたしとクリス先輩からハイライトが消えた。

 

「クリス先輩、こいつらどうしようもない駄目駄目大人代表デス。もう手に負えないくらいの醜態(しゅうたい)を晒してるデス」

「あぁ、珍しく意見があったな、姉様。酔っ払いはここに置き捨てて、もう行くぞ」

「デスデス」

 

"か〜んぱぁい"と優雅に断熱グラスをぶつけ合い、グビグビとホットワインを飲んでいく駄目駄目酔っ払い達をキッチンに置き捨てたあたしとクリス先輩は今度はセレナと未来さんの様子を見に行く。

二人の担当は風邪の時に食べる胃に優しいもの……即ち、おかゆという事だ。

そんな二人はキッチンをあの酔っ払い達に手渡した為に、隣の部屋を大家さんに許可を貰って、貸してもらっている。

 

「フ。マンションの大家さんですら(とりこ)にしてしまう歌兎の可愛さはやはり偉大デスよ。前世が天使なだけあるデス」

「無駄口叩いてないで行くぞ、過保護バカ。前世がそんなファンタジーなわけあるか、バカ」

「そんなバカバカ言わなくてもいいじゃないデスかっ」

「バカにバカ言って何が悪いってんだ」

 

クリス先輩が軽口を叩きつつ、マンションの扉を開けて、隣の部屋に続く渡り廊下を向いた瞬間、疲れたように顔を覆った。

その理由をあたしもすぐ知ることになる。

 

「うぐっ、むぐっ、美味しい!ごはん&ごはん、美味しいっ!」

 

駄目駄目な人がここにも居ました。

 

癖っ毛の多い栗色の髪、輪郭を隠すように伸びている二つの房にパチリとはめているNマークの髪留め、美味しそうなお粥を見つめる瞳は琥珀ーーーーはぁ……響さん、貴女って人はもう……どんだけごはん好きなんデスか……。

 

さっきの残念酔っ払い年長チーム・ごはん大好きっ子響さんといい……もうなんなんデスか、うちの奏者達。

うちの奏者達、残念すぎるでしょう……。

あたしも含めて、マトモな人居ないんデスかぁ……。

 

「一応聞くデスか、響さん。何してるんデスか?」

「ぐっ!?」

「おっ、バカがむせた」

 

クリス先輩がそう言いつつも、バカビキ……げふんげふん、響さんへと水のペットボトルを部屋に戻り取ってきて渡す。

 

「お前、妹が関わると忽ちに辛口になるよな。普段はぽや〜んとアホ全開の喋り方なのに」

「歌兎の粥を盗み食いした響さんが悪いんデスっ。あたしは悪くないデス……って、クリス先輩あたしのことそんな風に思ってたデスか!? 酷いデス!!」

「ちょせぇ、顔近づけんな。しっしっ……さて、バカ言い訳は思いついたか?」

「すいませんでしたぁ!」

「素直でよろしいデス」

 

睨みをきかせ、見下ろすあたし達の迫力に恐れをなしたのか……コンマ0秒くらいの音速で綺麗な土下座を決める響さんを心が海のように広いあたしは許してあげることにした。

 

「いや、バカビキって言ってる時点で駄目だろ、色々と……」

「クリス先輩はバカビキさんとあたしのどっちの味方なんデスか!?」

「ほら、バカビキって言ってんじゃねーか。……はぁ、これだと話が進まれねぇーな。バカ、なんでつまり食いなんかしてた?」

「あ、美味しそうな匂いがしてからつい……ね?」

「ね? じゃねーよ!ね? じゃ!!」

 

今日も炸裂するクリス先輩の鮮やかなツッコミに聞き入っていると響さんが表情がいつもと違うのと手に持っているお粥から変な匂いが漂ってくるのに気付く。

 

「響さん、なんだか頬が赤くて目がいつもよりもとろ〜んとしているように見えるんデスけど……そのお粥、ちょっと貸してもらっていいデス?」

「へ? 別にいいよ。歌兎ちゃんに食べてもらう前に切歌ちゃんにも食べてもらってって言われたから」

「あ、あたしに? セレナがそう言ったデスか?」

「ううん、未来」

 

ん? んー??

ますます怪しい。

未来さんを疑うわけじゃないけど、あの人は響さんが物事に関わると関わらないとじゃあ危険度と要注意度が月とスッポンくらいに変わってくるデスからね。

 

ここは用心に用心を重ね、毒味はあたしではなくクリス先輩にーーーーここデスっ!!

 

「クリス先輩、あ〜んデス♪」

「むぐっ!? ごほんごほんっ……いきなり、なんてもん食べさせてやがる、この過保護っ!」

 

ペッペッとあのお粥を吐き出すクリス先輩を見て確信する犯人は未来さん(あのひと)だ、と。

 

「やはり、このお粥には怪しい薬が含まれているのデスね。響さん、解毒剤あるデス?」

「げどく? けとく? けっとく? 切歌ちゃん、まだ怒ってるの? 私がお粥食べたこと」

「響さん、あ〜んデス!」

「むぐっ!?」

可笑しな事を言い始めている響さんの口に問答無用で解毒剤をねじ込み、水を流し込む。

ごくんごくんと響さんの喉が鳴るのを見届けて、水のペットボトルを外すとキョトンとした様子の響さんが居た。

 

「あれれ? 私、なんで歌兎ちゃんのお粥を食べてたんだろ……?」

「バカの台詞に今日一の悪寒が走ったんだが……」

「あの二人は組んではいけなかったんデスね」

 

最近、怪しい行動が見られる二人を怪しい薬を近いうちに使ってくると踏み、あたしと響さん、みんな用に解毒剤を作って置いた歌兎の頑張りがこんな所で発揮されるなんて……なんだか、悲しいデス。

 

「これ、響さんに渡しておきますね」

「へ?」

「歌兎特製の解毒剤デス。お礼は後で言ってあげてください」

 

そっと響さんの掌に解毒剤が入ったケースを置き、握らせるあたしを見た響さんは何ともいえない顔をしていた……いいや、状況についていけてないのか、キョトンとしていた。

 

「響さん、未来さんに薬を盛られた時にでも使ってください」

「未来を酷く言わないで!未来は私にそんなことしないよ。未来はいつだって私の陽だまりなんだからっ」

「いや、同居人に怪しい薬盛る陽だまりがあってたまるかよ」

「でも、そこは未来だし。私はどんな未来でも……ううん、未来だからこそ側にーー」

「あーあー、末長く」

「お幸せに、デス」

 

恥じらいなく甘々なセリフを言ってのける響さんをおさがりにあしらったあたしとクリス先輩は追ってきた響さんと共に隣の扉のドアを開く。

 

「おかえり、響。あれ? クリスに切歌ちゃんもどうしたの?」

 

未来さんはきっとあたしとクリス先輩が乗り込んできた理由を知っているはずなのに……それなのに、こんな温かい笑顔を浮かべられる未来さんはーー。

 

「未来さんの笑顔に悪魔だって真っ青顔デス」

「お、お前な……」

「へ? へ? 何で未来の笑顔が悪魔だって真っ青顔なの?」

「はぁ……。今この場所にはバカしかいないのか」

 

疲れたようにそういうクリス先輩。

確かにここに辿り着くまでに、クリス先輩は至る所で律儀にツッコんでいたからそれは疲れてしまうだろう。

 

へ? 違うデス?

お前もバカと一緒に引っ込んでろ?

クリス先輩、何だが酷いデス。

 

「おい、こいつじゃ吐きそうにないからお前に聞くな。お粥に変な薬入れたの、お前達か?」

 

クリス先輩の問いにキッチンに立ち、あたふたしていたセレナが観念したように言う。

 

「は、はい……小日向さんに言われて……そのごめんなさい……」

 

おずおずと差し出される怪しい薬の瓶の量にあたしもクリス先輩もあの酔っ払い達よりも絶句して、未来さんをマジマジと見る。

そんな私たちの視線に未来さんは可愛らしくテヘッと舌を出していた。

 

「これぞまさに地獄からテヘペロちゃんデス」

「そ、そうだな」

 

クリス先輩はそういうと怪しい薬を回収した後に、お粥を作ると慎重に歌兎がいるリビングへと持っていこうとした時だった。

 

「見てくれ、雪音!私なりに整理整頓なるものを実行してみーーあっ」

「ひゃあ!?」

「……へ?」

 

突然、翼さんに声をかけられ、肩を叩かれたクリス先輩がびっくりして可愛い悲鳴をあげて、慎重に持っていたアッツアツなお粥がよそってあるお盆を勢いよくひっくり返してしまい、その中身は綺麗な円を描き、あたしへとーー。

 

「あっちちちっ、あっちちっデス」

 

頭から服にかけて、アッツアツの粥まみれになったあたしは大慌てで服を脱ごうと裾を掴もうする前に翼さんの手があたしの服を掴む。

 

「火傷してはいけない。服を脱がせるぞ、切歌」

「デデデっ!? 翼さんっ!? なっ、何を!!」

「元はというと、私の不始末が招いた事だ。それに切歌に火傷をさせたなのとなると、歌兎とマリア達に申し訳が立たないからな」

「いいい、いいデスっ。自分でするデスからっ」

 

翼さんの手を振りのけたあたしはリビングへと走っていき、もうすっかり出来上がった様子のマリアから服を借りることで火傷は低度ですみ、歌兎もみんなの……っていうよりもクリス先輩と調、あたしの頑張りによって風邪が治ったのだった––––。




ということで、約7000文字ちょいのしょーもない話どうだったでしょうか?

シンフォギアらしいドタバタと騒がしい感じとスピード感が出せていたならば嬉しく思います。


さて、少しこの話について語らせてもらうとーー最初にこの話を書こうと思ったのは、私がくしゃみをしている時に【歌兎のくしゃみが『でっすっ』だったから可愛いだろうな】って思った事からでした。

そこから、戦姫絶笑RADIOを聴いたりして、話に糊付けをして……お披露目になったという感じデス。


切ちゃんに可愛いを熱く語ってもらったり、マリアさん&奏さん年長チームを酔っ払いにしたり、セレナちゃん&未来ちゃんチームを怪しい薬を使うやばい人扱いしたり、翼さん&クリスちゃんを最後の最後でドジっ子キャラにしたり、響ちゃんを『バカビキ』とか書いてしまったりしたけれども……まずは一つだけ、それぞれのキャラのファンの皆様すいません!!(汗)
偶にはこういうぶっ飛んだのもいいかなぁーと思い、書かせてもらいました!

機会があり、話のネタがあれば後々に……ではでは。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

友達ッ!

歌兎ちゃんが友達を家に招き入れる、それだけの話となってます。

それだけの話なのですが、一番に私好みの話となりました!!

その理由は本編にて‥‥では、どーぞ!!

※気になった部分を直しました(土下座)


「なっ‥‥このっ!!HP少ないのに‥‥こういう時に限って‥‥連続ドロップ‥‥って、あぁーーッ!!シラベがーーぁ!!シラベがあたしを庇って‥‥くっ、あの鉄ミミズ許すまじデスッ」

 

マリアから貰っているお小遣いをちょっとずつ残していってやっと買えた○layStat○on4と共に購入した緑色のコントローラーを操作しながら、テレビの画面を喜怒哀楽の表情で見つめながら、自分でカスタマイズしたあたしっぽい主人公が茜色に染まった砂漠フィールドを駆ける。

 

(むぅ‥‥銃って操作するの難しいんデスね。クリス先輩はあんなに簡単に操ってるのに‥‥)

 

「だからって、光剣って柄でもないデスからね、あたし‥‥」

 

このゲームを始める頃、翼さんのようにかっこよく剣を扱ってみたいと思い、光剣という名のピンク色の光を放つ剣を片手にフィールドに現る敵を倒そうと奮闘したのだが‥‥振るタイミングが早いのか、空振りを繰り返してしまい、パーティに迷惑をかけたという実績があり、あたしはあれ以降光剣は使わないと決め、メニューの一番奥に仕舞ってある。

 

しかし、このまま全滅して、街に強制的に送られるのもごめんだ。

ここまで来るのに他のフィールドで何回も全滅させられ、諦めようとしたその回でなんだかストーリーを進めるためのクエストをクリア出来て、何度も死にかけてここまで来たというのに‥‥ここで全滅してしまったならば、またここまで来るのに一苦労というものだ。

 

(ここは倒れてしまったみんなを助けて‥‥総攻撃デス)

 

あたしにはそれしかないと決め、砂に潜っては背後に現るを繰り返す鉄ミミズの攻撃を掻い潜りながら、砂漠に倒れるみんなを順を追って助け出す。

 

「‥‥んま、このポテトチップス美味しいデス」

 

パリパリとソファに座り、テーブルの上にあるバターにはちみつを合わせた味のポテトチップスを頬張りながら、なんとかさ鉄ミミズを倒した後、次に現れたエネミーに全滅させられ、そのエネミーよりもレベルを上げるためにフィールドを巡回して順調にパーティのレベルを上げていっていると玄関の扉が開き、聞こえてくるのは小さな呟き声だ。

 

「‥‥あれ? 姉様、帰ってきてる。今日、早く授業が終わったのかな?」

 

(にゃっ? 歌兎が帰ってきたデスね)

 

そういえば、今日、調はメディカルルームに寄った後、晩御飯の買い物をしてから帰るといっていたので、その間は歌兎と二人きり‥‥つまり調が帰ってくるまで歌兎を膝の上に座らせ、抱っこしてモフモフしながらこのゲームが楽しめるというあたしにとってのパラダイス。

 

帰ってきた調に怒られるでしょうが、その間だけはこのパラダイスを心ゆくまで楽しまないといけないだろう。

 

早く歌兎がリビングに入ってこないかと慌ててソファに横たえていた身体を起こして座り、ドアを見つめているとひょっこり顔を出す見慣れた水色の入った銀髪。

 

「‥‥姉様、ただいま」

「おかえりなさいデス、歌ーーうぅ?」

 

んんっ?

リビングに続く扉を開けた歌兎の後ろから入ってくるのは、見慣れない歌兎と同世代の子達。

爽やかな青いカッターシャツに真っ黒なセーラー服のワンピース型の制服を着て、お好みでその上にカーディガンを着込める様子で‥‥現に4人とも今日が肌寒かったのか、色とりどりのカーディガンを羽織っている。

また、4人が身動きするたびにワンピースと同色の帽子が揺れる。

そんな4人が着ている制服が歌兎が司令の配慮で通わせてもらうようになった中学校のものである。

 

ということは、彼女達は同級生ってことなのだろうか?

 

「おぉー、ここがウタの家?学生寮って言ったけどひろ〜〜ぉ」

 

と、最後に入ってきた癖っ毛の多い栗色の髪を襟首の後ろで軽く結んだ少女が幼いながらも将来美人へと成長する面影を見せている丸みを帯びた輪郭を笑みで変えて、キョロキョロと忙しなく空のように蒼い瞳が辺りを見渡す。

 

陽菜荼(ひなた)さん、行儀が悪いでございますよ」

 

そんな陽菜荼と呼ばれた子を嗜めるのは、(うぐいす)色の腰の近くまで伸ばし、年相応の幼さを残しつつも凛とした威厳溢れる美貌を遺憾なく見せつけている少女で琥珀色の大きな瞳は呆れを主に浮かべている。

 

そんな少女に対してニカッと悪ガキのように笑った陽菜荼と呼ばれた子は反省の色がない口調で、恐ろしいほどに綺麗な子をいじろうとするのだが、すぐに鋭いカウンターを受けてしまい、撃沈していた。

 

「そういう固いことは言いっこなしだよ、コウ。ウタも気楽にしてって言ってたじゃん」

「それは家族の方がいらっしゃらない場合ですよ。それにいいこなしも何もあそこに歌兎さんのお姉さまがいらっしゃってます、まだ気づきませんか、陽菜荼さん」

「‥‥へ? マジ」

 

そんなやりとりを繰り返す二人の真横、歌兎の袖をギュッと掴み、その背後からチラチラと顔を出す少女は肩まで伸びたサラサラな水色の入った銀髪に同色の垂れ目をしており、常にピクピクと震えているので小リスのような‥‥小動物のような気配を感じる。

 

「歌兎‥‥」

「‥‥美留(みる)、大丈夫だよ。ソファの上に座っているのが僕の姉様なんだ。見た目通りの人で全然怖くなくない優しい姉様なんだ」

「そうなの‥‥?」

「‥‥ん。世界一優しくて素敵なお姉ちゃん」

「歌兎がそういうなら信じてみる‥‥」

そう言って、歌兎は他の二人にも声をかけて、あたしの近くまで歩いてくる。

 

(なっ‥‥なんなんデスか!?このチビチビパラダイス!?)

 

あたしの前で立ち止まった歌兎はまずあたしの方を紹介することにしたのか、くるっと体を翻すとあたしへと右手を差し出す前にこそっとあたしへと謝罪する。

 

「‥‥姉様、いきなりごめんね。後ろの三人は僕の友達なんだ」

「そうなんデスか」

 

謝罪を終えた歌兎はあたしの方を右手を向けると

 

「‥‥まずは僕の姉様から三人に紹介にするね。

僕の隣にいる人が僕の姉様で名前はーー」

「ーー暁 切歌デス。歌兎といつも遊んでくれてありがとうデス」

「‥‥この通り、居てくれるだけで辺りを明るくてくれるような太陽のような人なんだ。‥‥笑顔も素敵なんだけど、いざって時はいつも僕を助けてくれる僕の心の支えのような人。‥‥でもよく似てないって言われる」

「あはは、確かによく似てないって言われるデスよね?」

「‥‥似てなくても血は繋がってる。‥‥姉様はいつだって僕の中で世界一のお姉ちゃんで唯一の肉親に変わりはないから」

「歌兎ぅうう‥‥っ!!」

 

ヒシッ、と歌兎を抱きしめようとした瞬間、おずおずとあのトンデモ綺麗な子が歌兎へと話しかける。

 

「その、そろそろ姉妹だけでイチャイチャされてないで‥‥コウ達の紹介をして頂けませんか?」

「‥‥あぁごめんね、紅里(コウリ)

 

歌兎はあたしから離れると今度は友達の三人の方へと向くと今度は手前の子から右手を差し出して、その都度其々の子があたしへと自己紹介してくれる。

 

「‥‥まずは」

「はいはーいっ!あたしからね!あたしの名前は香水 陽菜荼(かすい ひなた)。まぁ、この中ではメードメーカーかな」

「‥‥続けて、隣が」

紅里(こうり)でございます。苗字は白谷(しらたに)で、続けますと白谷 紅里でございます。この中ではお姉さんという立ち位置でしょうか」

「‥‥最後に」

香風 美留(かふう みる)‥‥。今日はよろしくお願いします‥‥。えっと‥‥この中での立ち位置は‥‥」

「‥‥そうだね、美留の立ち位置は僕達の妹なのかもしれないね」

「歌兎がそう言うなら‥‥そうです‥‥」

 

なるほどなるほどデス。

栗色の癖っ毛の子が陽菜荼ちゃん。

あのトンデモ綺麗な子が紅里ちゃん。

歌兎から離れないあの子が美留ちゃん。

デスか。

 

みんな、歌兎に負けず劣らずに可愛いデスねぇ‥‥って、何思ってるデスか!?

あたしには世界‥‥宇宙一可愛い妹がいるのデスっ。

他の子に惑わされるなんてーー

 

「‥‥僕、ジュースとお菓子を用意してくるね。姉様、みんなの事お願い」

 

そう言って、トコトコとキッチンへと歩いていく歌兎の背中を見つめながら、あたしは周りにいる歌兎の同級生達を見渡して困ったように眉をひそめる。

そんなあたしの緩めの深緑色のニットをツンツンと引っ張るのは、3つの手で

 

「ウタのお姉ちゃん、椅子に座らないの?」

「コウは歌兎のお手伝いをしてきますね」

「‥‥ぅっ‥」

 

あたしの手首を元気よく引っ張るのは陽菜荼ちゃん、歌兎の後を追いかける紅里ちゃん、あたしの後ろに隠れてプルプルと震えながらニットを握りしめる美留ちゃん。

 

ーーそんな事はあってはいけない、そう思えば思うほどに周りの子達が可愛く思えてしまう。

 

「陽菜荼ちゃん、引っ張りすぎデスよ。ほら、美留ちゃん、あたしに捕まるといいデス」

「だって、あっちからいい匂いがしてさぁ」

「うん、お姉ちゃん‥‥」

 

こうして、あたしの少ない時間ながらも慌ただしくも充実した時の始まったのだったーーーー。




と、今回の話は今まで一番私の趣味にまみれた話だと思います(微笑)
なんせ、切ちゃんが作中でプレイしているのは【SAO FB】ですかねっ。
また、切ちゃんのアファシスの名前は【シラベ】です。
セレナにしようかなぁ〜とも思いましたが、やはりここはきりしらファンとして調ちゃんの名前をアファシスちゃんにつけさせてもらいました(微笑)

今回、初登場の登場人物‥‥歌兎の同級生達は私が他の小説で作り出したオリジナルキャラであって、見覚えのある方はいらっしゃると思うのですが‥‥簡単に説明するとーー

■香風 美留 / かふう みる
『ご注文はにゃんこですか?』のオリジナルキャラ。
作中ではチノちゃんの妹で、この話でもチノちゃんの妹です。しかし、話にチノちゃんは現れません。

■香水 陽菜荼 / かすい ひなた
『sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜』のオリジナルキャラ。
作中では無自覚天然たらしですが、小さくなったこちらでもその力は健在となってます。

■白谷 紅里 / しらたに こうり
『うたわれるもの 紅き者の切望』のオリジナルキャラ。
作中ではコウリですが、この作品に登場人物させるにあたって‥‥苗字と名前を付けてみました。
因みに、白谷にはお父さんが『ハク』という名前なので‥‥そこから取らせてもらいました。

ーーというようになってます。

また、歌兎達の制服はごちうさのチノちゃん達が着ているものの色違いのようなイメージさせてもらいました‥‥前にフードといったラフな格好が好きと言いましたが、チノちゃん達の制服の帽子‥‥えっと、あれはベレー帽なのかな?
あぁいったちょこんと乗っかってる帽子も好きなんですよ、私♪



と、ここからまたいつもの長々と雑談をしようと思います(笑)
読み疲れた方は高速スライドをどうかよろしくお願い致します(土下座)

早速ですが‥‥2月16日には調ちゃんの誕生日、2月27日にはシンフォギアGのボックスが発売されますね(微笑)
また、私事ですが‥‥私の誕生日も2月なんですよ(笑)
なので、調ちゃんの誕生日ケーキとボックスは自分への誕生日プレゼントとして買いたかったんですけど‥‥2月は色々とありましてね、どちらもゲットとは要らないのです‥‥(無念)

と、そんな調ちゃんの誕生日記念ケーキのイラストはまだご覧になってない方がいらっしゃっるかもなので‥‥多くは言えませんが、"あのイベントで大活躍した子"と可愛らしい笑顔を浮かべた調ちゃんが特徴的な絵でしたね(微笑)
また‥‥って、これは書いていいのかなぁ‥‥?
んーーーっ、やっぱ、やめよ‥‥。
調ちゃんの誕生日記念ケーキ、気になった方はチェックしてみてくださいね(微笑)

きりしらファンとしてみたら‥‥欲しいんですけどね、この調ちゃんのケーキ‥‥しかし、経済的に‥‥(無念)

と、そんな調ちゃんは『夕暮れ舞う巫女』にて大活躍でしたねっ!
また、調ちゃんの過去にも触れる(?)事もでき‥‥ファンとしては大満足のイベントでした!!
個人的には、みんなに意地悪しようとする切ちゃんの悪ガキっぽい可愛さに悶えてしました…(悶)


また、シンフォギアXD公式攻略サイトにて『わたしが選んだ好きなオリジナルギアランキング』という記事(?)を見かけまして‥‥皆さんはどのようなランキング付けられたでしょうか?

私はですね‥‥めっちゃ悩んでます‥‥(笑)

切ちゃんだけランキングならばーー
1位は虚激・威Sゥん暴uシ
2位は圧殺・覇iンRい火
3位は即馘・Aるu薇イDあ or 殲狩・Tぅ璢Uでe
ーーとなりますね。
やはり私にとって"和"はかけがえないもので‥‥一位の切ちゃんの着崩しが好きなんですよね(笑)

しかし、尊さを優先したランキングならば‥‥ハロウィン切ちゃんと調ちゃんは欠かせないですし、ウェデイングの響ちゃんと未来ちゃんも欠かせません。
そして、メカニカル切ちゃんと調ちゃんも欠かせんですよね‥‥(悩)

他のランキングにしても全く違う形になってしまう‥‥どのオリジナルギアも魅力的で困ってしまう。


と、ここで雑談コーナーを終わろうと思います(土下座)

インフルエンザが流行り、風邪も流行るこの季節‥‥どうか、お身体にお気をつけてくださいね(微笑)
私は何故か両肩がずっと痛いので‥‥ゆったりと休養しようと思います。

ではでは〜(礼)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

友達ッ!!

こちらの話は、おそらく今日の夕方17時に来るであろうユニゾン切ちゃんがわが陣地に来てくれるように祈願の念を込めた話デス。

来てくれ‥‥頼むからぁ‥‥この通りだから‥‥切ちゃん‥‥(高速土下座を繰り返す私)

と、祈願の念はここまでにして‥‥今回の話の説明をします。
今回の話のサブタイトルは『陽菜荼の誘惑』ってなっていまして‥‥私なりにドキドキ、キュンキュン出来るように話をなるべく詰め込みましたっ!!

なので、読書の方も切ちゃん共に小悪魔・陽菜荼にキュンキュンしてくださると嬉しいです!!

では、本編をどーぞ!!


「‥‥姉様、陽菜荼。留守番よろしくね」

 

と歌兎が友達の紅里ちゃんと美留ちゃんの二人を伴い、丁度きれていたお菓子を買いに近くのスーパーに買い物に出かけている間、あたしと陽菜荼ちゃんはやりかけのままにしてあったテレビゲームを一緒にプレイしていた。

そう、プレイしていたはずなのにーー

 

「キリねぇ‥‥はやく‥‥咥えてよ‥‥」

 

ーー何でそんな事になっているんデスかぁ‥‥

 

年相応の幼さを残しつつも色っぽさを感じさせるアルト寄りの声‥‥

上目遣いに見つめてくる空のように澄んだ蒼い‥‥何か期待を含んだ潤んだ瞳‥‥

将来美人と言われる事が決まっているかのように適度に整った顔立ち‥‥

薄くスライドしたジャガイモをはちみつとバターを混ぜたスパイスで味付けしたものを若々しくぷるんぷるんと彼女が喋るたびに揺れる桜色の唇‥‥

13歳とは思えないくらいにサラッと細身ながらに引き締まった制服に包まれた幼い肢体‥‥

 

そのどれもが幼く、触れれば壊れてしまうくらい細い‥‥華奢だからこそ強く拒否することもできずに、あたしは3歳下の子に攻められていた。

陽菜荼ちゃんの左手があたしの肩に置かれ、右手はあたしの左手首を上から押さえつけて、右太ももに座った陽菜荼ちゃんが軽く咥えたお菓子をあたしへと突き出している。

 

「どうしたの、キリねぇ‥‥?」

 

そう言い、小首を傾げる陽菜荼ちゃんは年相応に可愛い。

しかし、その彼女が作ったポッキーゲームならぬポテトチップスゲームにあたしは冷や汗‥‥脂汗がだらだらと背中を伝っていた。

 

あんな小さなポテトチップスの両脇を咥えるなんて‥‥それだけでも顔が近くて、お互いに吐き出す息すらも肌で感じてしまうだろう。

 

危険と犯罪の匂いしか漂わないポテトチップスゲームをする気満々な陽菜荼ちゃんにあたしは冷や汗を流しながら掠れた声で尋ねる。

 

「そ、その本当にするデスか?このゲーム」

「ん、だって面白そうじゃん」

 

そう無邪気に笑う陽菜荼ちゃんは可愛い、だがしかしそんな天真爛漫な子と二人きりでソファの上に密着して座り唇が触れてしまうかもしれないゲームをしようとしている。

 

(こんなのあかんデス)

 

そう、あかん。

あかんの三つ文字にかかる。

 

もしも、限りなくゼロに近いもしもなのだが、唇が触れてしまって‥‥歯止めが効かなくなり、その先に行ってしまったならば、あたしは歌兎にも調にも顔向けできない。

 

(ということで、絶対やめさせるデス)

 

「ほ、他のことしませんか?陽菜荼ちゃん。この遊びはお終いにして‥‥あたし、陽菜荼ちゃんに手伝ってほしい、エネミーがいるんデスよ」

 

目の前の期待を含む蒼い瞳から視線を逸らしたあたしの視界の端で口に咥えたポテトチップスを開いた右手で取った陽菜荼ちゃんは安堵するあたしの耳元でやけに色っぽい声で誘惑してくる。

 

「キリねぇ‥‥もしかして、事故で唇が触れちゃったことのことを気にしてるの‥‥?そんなの気にしないでいいよ、これは単なるゲームをなんだよ。だから、気楽な気持ちであたしと遊んで欲しい。

それにーー」

 

(ごくん‥‥)

 

気付くとそう生唾を飲み込み、あたしは視線を横へと向けて、そして息が止まった。

そこには大きめの瞳を細めて、妖艶に笑う一人の少女が居たのだから‥‥。

彼女から囁かれるセリフは蜜のように甘く、どろりと粘っこくあたしの中へと入り込んでいく。

 

「ーーキリねぇになら、あたしの初めてあげても‥‥いいよ」

 

幼い少女が放った色香に当てられたあたしはただただ彼女が再び咥えなおした唇で軽く挟むくらいにしているポテトチップスに釘付けになっていた。

 

間近にある蒼い瞳があたしの顔を見た後にポテトチップスの端を見る。

 

その仕草に誘われるようにふらふらっとあたしはパクパクと空気を吸い込むだけだった震える唇をゆっくりとあげると小さくポテトチップスの端へと齧り付く。

 

「‥‥パク」

 

カリッと怖いほどに静まった部屋の中へと響き渡る。

 

ドクンドクンと馬鹿みたいに煩い心臓音の中、交互に齧っていくあたしと陽菜荼ちゃんの咀嚼音だけがハッキリと聞こえ、あたしの視線は若々しく咀嚼する度にぷるんぷるんと揺れる唇にくぎつけになっていた。

 

いつの間にか小さくなっていたポテトチップスにだんだんと焦ってくるあたし。

 

(こ、これ‥‥本当に唇触れちゃうデスよっ!?)

 

本当にこれは遊び‥‥ゲームなのだろうか?

こんなにバクバクと煩い心臓音は‥‥ゲームによるものなんだろうか?

 

もう何が何だかわからなくなり、テンパり出すあたしを目の前に迫った蒼い瞳が先を促す‥‥

 

そして、あたしは暫し躊躇した後に数センチとなったポテトチップスに齧り付き、遂に唇がふれあーー

 

「ーー」

 

ーーう前に何者かによって後頭部をおもっきり叩かれた陽菜荼ちゃんがあたしの方へと倒れ込んでくる。

 

「あだっ!?」

 

その際、僅かに触れてしまった陽菜荼ちゃんの唇の感触‥‥小さいのにしっかり柔らかくぷるんと瑞々しい感触にあたしの目を回してる間に陽菜荼ちゃんは後頭部を抑えながら、身体を起こすと勢いよく後ろを向く。

 

「いった‥‥あと少しでいいところだったのに‥‥誰だよ、邪魔したの!‥‥あっ」

「いいところ?ふぅーん、そんなにいいところだったんだ。ごめんね、邪魔しちゃって‥‥いいよ、ここでジィーーっと見ててあげるから。続きして」

 

何処から持ってきたのか、分からないハリセンをパンパンと小刻みにテンポよく左掌に叩きつけながら、歌兎は眠たそうに見開かれた黄緑色の瞳へと絶対零度のような冷たさを持つ光を放ちながら、あたしの上に座っている陽菜荼ちゃんを見下ろしている。

 

「‥‥そこに立っておられるのは歌兎さんであらせられますか?」

「へぇー、僕は陽菜荼には暁歌兎にすら見えないんだ?」

 

絶対零度がマイナス50℃くらいになった時には陽菜荼ちゃんはあたしから飛び降りると歌兎の目の前で美しい土下座を繰り返していた。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。ウタのお姉ちゃんのいじめがいがありそうって思うっていじめているといい反応してくれるから、楽しくなっちゃってーー」

「ーー誰が"僕の"姉様に手を出していいって言ったの?ねぇ、陽菜荼」

「ひぃ‥‥」

 

その後、歌兎にこびっとく怒られた陽菜荼ちゃんはあたしから一番離れた席に座らされ、首から《あたしはドスケベ泥棒猫です》っていうプレートを下げられ、チビチビとお菓子を意気消沈した様子で食べていた。

 

そして、被害者であろうあたしの頬へとキスを落とした歌兎は拗ねたような顔を浮かべると

 

「‥‥これは浮気した姉様へのお仕置き」

 

と呟いて、友達の所へと歩いて行ったのだった。そして、残されたあたしはボッと頬を赤くすると五人分の食器を無心で洗い続けたのだった‥‥‥




いつも姉様が嫉妬するので、偶には歌兎から嫉妬をしてもいいかなぁ〜と思って書いた話ですが‥‥どうだったでしょうか?

私が作中の中で好きなシーンは、ポテトチップスゲームの時の切ちゃんと陽菜荼のところが好きです。
きっとドキドキが止まらなかった切ちゃんと違い、陽菜荼は平然としていたと思います(笑)
彼女の目的は切ちゃんをいじり、反応を楽しむ事ですので‥‥多少、唇が触れてしまっても狼狽する切ちゃんと違い、『あはは、キスしちゃったね、キリねぇ』と無邪気笑うだけかと(笑)

また、次回はお泊まり会となっており‥‥切ちゃんは違う子にドキドキさせられることにーー気が休まらない!(笑)



気が休まらないといえば、明日の夕方17時は私は気が休まらないですね。
なんとか20回は回せるくらいはあるので‥‥その間に当たってくれると嬉しいのですが、こればかりは運を信じるしかないですねっ‥‥


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

髪の毛吹きの輪

ユニゾン切ちゃんガチャの結果デスが‥‥もう、フレンドの方はお分かりの方もいらっしゃると思いますが、一応ご報告をさせてもらいます(礼)

さて、私、律乃ですが‥‥ユニゾン切ちゃんを無事ーー


ゲットしましたぁ!!!(ガッツポーズ)


いやぁ〜っ、テンションがうなぎのぼりになりましたねっ!!(大興奮)

しかも今まで当たらなかったのが嘘のように初めの10連で‥‥黄金の輝きを纏って、うちの陣地へと舞い降りてきてくれましたぁ!!!
もう、切ちゃんもお人が悪いだから‥っ。
周りもすっかり黄金の輝きだから、『あぁ‥‥今回もまたスカか』って飛ばしちゃったじゃないですか。
そしたら、左側にちゃっかりいるんですもの‥‥思わず二度見してから、『キタァーーーーァ!!!?』って叫んじゃったじゃないですか(笑)

因みに、限界突破を目指したの20連は‥‥奏者のみんなの名言カットが入った後からの安定のマリアさん(☆5体)でした。
『うん‥‥だよねー』って思ってしまった私が心の中にいる(笑)
マリアさんもお人が悪いんですよね‥‥こういう時には来てくれるのに、麻呂ギアは来てくれないんだから(笑)


と、ガチャ報告でかなり長くなってしまいましたね(微笑)


今回の話は短い上に純粋にのほほ〜んとした話を書きたかった。
読書の皆さんの癒しになるかは分かりませんが、読んでもらえると嬉しいデス!

では、本編をどーぞ!!


その日、僕は姉様、奏者のお姉ちゃん、ねぇやたちに連れられ、S.O.N.G.に備え付けられているシャワールームに足を踏み入れていた。

姉様が左隣、右隣がシラねぇという大の仲良しザババコンビに囲まれた僕は時々姉様の過保護、シラねぇの世話を受けつつもゆっくりと自分の身体や頭をボディーソープやシャンプーで訓練の疲れと汚れを下のタイルへと流していった。

 

(‥‥ふぅーー、訓練の後のシャワーって最高)

 

そんな事を思い、顔へと生ぬるいお湯をかけている僕と同じことを思ったらしい姉様が金髪へと湯をかけていく。

 

「ふぅーー、訓練の後のシャワー最高デスよぉ」

 

シャンプーを両手に伸ばし、ワシャワシャとやや乱暴に髪の毛を洗った後にブンブンとまるで水をかけられた子犬のように首を横に振るう。

その仕草によって被害を被ったのは、薄紫色の銀髪を柔肌へと伝わらせているクリスお姉ちゃんであって、文句を言われた姉様は何故かキョトンとしている。

 

「こら、過保護っ!髪の毛に泡が付いている状態で髪を振るんじゃねぇ」

「そんなことでケチケチするなんて‥‥クリス先輩はもっと広い心を持った方がいいと思うのデス」

 

やれやれと肩をすぼめる姉様のセリフにおでこへと怒りの血管を浮かばせたクリスお姉ちゃんは"ふぅ〜、ふぅ〜"と深呼吸することで怒りを爆発させずに済んだらしく、その後は姉様の事は構ってもろくな目に合わないと思い、とことん無視を決め込んでいた。

 

そんな姉様と異なり、右側のシラねぇは隣にいるセレねぇと楽しくお話ししながら‥‥身体を洗っているようだった。

漆黒の腰まで伸びた髪が対照的な色の肌へと張り付き、湯気やぬるま湯によって火照った赤い肌が何処か色っぽい。

 

「セレナの髪、とてもサラサラで綺麗」

「それなら月読さんの方がサラサラで綺麗ですよ」

 

お互いの髪質を褒め合い、肌を褒め合うシラねぇとセレねぇを微笑ましい表情で見守るのはセレねぇの隣にいるマリねぇで‥‥髪の毛を洗い終えた後、首を横に振るうと背中へと艶やかなピンク色の髪から流れる雫が腰のラインへと流れていく。

 

〜数十分後〜

 

ポタポタと落ちていく雫がタイルに落ちていく中、僕の背中へと体当たりしてくるのがうちの過保護な姉様である。

その両手には黄緑色なもふもふのタオルが握られ、そのタオルは忽ちにポフッと頭へと乗っけされる。

 

「おりゃ〜おりゃ〜ッ!!歌兎の髪の毛はしっかりお姉ちゃんが拭いてあげますねっ」

「‥‥わわっ!?姉様、くすぐったいよ」

「動いちゃ駄目デスよ」

 

ニコニコ笑いながら、僕の髪の毛をゴシゴシとタオルで擦ってくるのは姉様で

 

「もう。切ちゃん、ポタポタって水滴が落ちてる。そのままじゃあ風邪引いちゃうよ」

「わわっ!?調くすぐったいデスよぉ」

「動いちゃダメ」

 

その姉様の髪の毛をゴシゴシとタオルで擦ってくるのはシラねぇで

 

「月読さんも髪の毛が濡れてますよ」

「あっ‥‥ありがとう、セレナ」

「いえいえ、これくらいどってことないですよ」

 

そのシラねぇの髪の毛をゴシゴシとタオルで擦ってくるのはセレねぇで

 

「セレナ。貴女も髪の毛がしっかり拭けてないわよ」

「マリアお姉さん、ありがとう」

「こら、動いてはダメよ。しっかり拭けないわ」

 

そのセレねぇの髪の毛をゴシゴシとタオルで擦ってくるのはマリねぇで

 

「そういうマリアも髪が湿っているぞ。どれ、私が拭いてやろう」

「なななッ!?つつ翼、私なら大丈夫よ!自分で拭けるわ」

「そんなに慌てなくてもいいではないか」

 

そのマリねぇの髪の毛をゴシゴシとタオルで擦ってくるのは翼お姉ちゃんで

 

「じゃあ、あたしは翼の髪の毛拭くぞ」

「奏!?いい、いいわ。一人で拭けるもの」

「あはは、顔真っ赤にして照れてるのか?可愛い奴め、おりゃおりゃ〜ッ」

 

その翼お姉ちゃんの髪の毛をゴシゴシとタオルで擦ってくるのは奏お姉ちゃんで

 

「奏さん。私、奏さんの髪の毛拭いていいですか?」

「おっ、いいよ。ガシガシって乱暴にやってもいいからな」

「ガシガシってですねっ!分かりました!!」

 

その奏お姉ちゃんの髪の毛をゴシゴシとタオルで擦ってくるのは響師匠で

 

「響、まだ先の方拭ききれてないよ」

「ふふふ、タオルの端が首筋に当たってくすぐったいよぉ、未来」

「じっとしてないとダメでしょう」

 

その響師匠の髪の毛をゴシゴシとタオルで擦ってくるのは未来お姉ちゃんで

 

「そういうお前も先の方拭ききれてねぇーじゃねぇーか。しゃーない、あたしが拭いてやる」

「ありがとう、クリス」

「バッ、こんくらいの事でいちいちお礼言ってんじゃねぇ」

 

その未来お姉ちゃんの髪の毛をゴシゴシとタオルで擦ってくるのはクリスお姉ちゃんで

 

「クリスお姉ちゃんの髪の毛、水が掛かると色が濃くなるんだ」

「こら、チビ。どこ触ってやがる!?」

「? ‥‥クリスお姉ちゃんの髪の毛の先だよ」

 

そのクリスお姉ちゃんの髪の毛をゴシゴシとタオルで擦ってくるのは僕

 

という事で、いつの間にかシャワールームの中で髪の毛拭き輪が完成していたのだった‥‥




ということで、最初は少しだけシャワーシーンを加えて、ちょっとエロくしてみて、最後はタイトル通りの話にしてみました(笑)

ずっと前からこの話を書きたかったのですが、ストーリーの構成に手間取ってしまいまして‥‥遅くなってしまいましたが、ここでお披露目させてもらうことになりました(土下座)


さて、ここから雑談コーナーで‥‥かつシンフォギアにも関係ないのですが、新しく始まったアニメの話を一つしてみたいなぁ〜と思いまして‥‥

新しく始まったアニメはどのアニメも面白いですよねっ!!
【五等分の花嫁】【ブギーポップは笑わない】【私に天使が舞い降りてきた!】【えんどろ〜!】などなど素敵なアニメが多い中‥‥

私は【エガオノダイカ】ってアニメが気になってます‥‥いいえ、ハマってますッ!

理由は一話と二話を見た後での衝撃がいい意味で激しかったんですよね(微笑)
また、『笑顔』っていう三文字がこのアニメを見た後だとなんだか歪なものに見えてきてしまって‥‥あと、『無垢』の二文字がどんだけ罪深いことかと‥‥(汗)

また、その上の意味を考えさせられるのはOPとDPなんですよね‥‥。
OPの最初の歌い出しは『蝶の羽 毟る 少女は 村の大人に 無垢に笑いかける 「綺麗だよ」と』
『夜の街を舞う 過去の傷を えくぼで覆う』
と他にも気になる点が多いOPの歌詞。
また、DPの最初の歌い出しは『笑った私は綺麗でしょう?』というのがあって‥‥この歌詞の一部は三話を見た後にぞくってしてしまいましたね。
しかし、ステねぇの狂った笑みは違う意味でぞくってしてしまいました(ここで突然飛び出す変態な私)

と、上の感想はあくまでも私の個人的なものですので‥‥見当違いな事もあると思いますし、それぞれ考え方も違うと思いますが‥‥気になった方がいらっしゃっれば、チェックしてみてくださいね(微笑)



そして、最後に2019年3月に吉井ダン先生の新規書き下ろし切ちゃんの抱き枕、アンリミアクリルキーホルダー2の予約が始まりましたねッ!!
正直、切ちゃんの抱き枕ですが‥‥エロい(真顔)
おんな切ちゃんを抱きしめて寝るなんて‥‥逆に興奮して寝れないですよっ、私!(大興奮)


と、最後にここまで雑談コーナーを読んでいただきありがとうございます(土下座)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

録音ッ!

数ヶ月ぶりデスッ!
更新出来る環境になったので、更新させていただきました!!
しかし、前みたいに頻繁には更新が出来ないと思いますが、自分のペースでゆったりと他の章も書いていけたら嬉しいと思っていますっ。

さて、久しぶりに更新となる今回の話は今、更新させてもらっている【トゥルーエンド】とは別に【ダークなシーンを沢山入れたトゥルーエンド】での世界線で暮らしている主人公・歌兎(うたう)姉様(ねえさま)達の日常を書いたものとなっております。
また、作中にて《クリスちゃん》のことを歌兎が《姉様(あねさま)》と呼んでいるのは、今日の9時からYouTubeにて毎日更新となっている【戦姫絶唱シンフォギアG】のストーリーにて一時期、クリスちゃんと姉妹だった時期が歌兎にありまして、その名残となっております。

それでは説明が長くなってしまいましたが……本編をお楽しみください!
では、どーぞ!!


「ーー」

 

僕はぽっつーんとだだぴろっい部屋の中央部に突っ立っていた。

 

(ほんと、なんだろ、これ……)

 

綺麗に磨き抜かれた黄緑色のタイルの上には何も鎮座しておらず、だからといってこれから何かが出てくるのは僕の目の前でがっちゃんこがっちゃんこ何か線を繋げていっている三人を見ていれば安易に想像できるので、僕はそんな必死な三人から視線を逸らすと"今自分が置かれている状況の確認"と"何故、こうなってしまったのか?"を思い出していくことにする。

 

まずは"今自分が置かれている状況の確認"を順にしていくことにしよう。

ひとまず、今の僕の服装は《私立リディアン音楽院中等部》の制服でデザインと色合いは目の前にいる三人のお姉ちゃん達––といっても、若干一名高校を卒業しているので、性格には二人––が来ている高等部と同じで、違いを述べるならば上着がセーラー服のようになっており、線やネクタイが青いということだろうか……あっ、あと何故かベレー帽みたいな帽子を登校するときに着用しないといけないことかな。

と、制服のことはひとまず置いておいて……今、僕が置かれている状況の確認だが、僕は学校の教室のような部屋の中にいる。無駄に広い空間の中には黄緑色のタイルが所狭しと並んでおり、中央部に立つ僕を取り囲むように真っ白な壁が四方を取り囲んでいる。その取り囲んでいる壁の一つは3分の2をガラスで出ていて、ガラスの向こうには色んなボタンやレバーがある大きな機械が置いてあるようだ。

 

「おいバカ、そっちじゃねーぇ」

「へ?でも、説明書にはこの線とあの線を繋がってーー」

「ーー切歌。その線ではなく、こちらの線ではないか?繋ぐ形が似通っている」

「なるほどデース!流石、翼さんデスっ。なら早速あたしがつなーー」

「ーーいやいや全然違うから。貸せ!あたしがする」

 

次に"何故、こんなことになったのか?"だが、それは10分前に僕の実姉・暁 切歌から送られてきたメールにあるだろう。

実物の文面は僕の中では伝説となった"手紙"や"おきてがみ"のような暗号めいたものとなっているので、僕なりに解読した事を簡潔に書くと"早く帰ってきてくれないと大変な事になってしまう"といったもので、血相を変えた僕は友人に別れをいうと猛スピードで家に帰った途端、姉様(ねえさま)が体当たりしてくるような勢いで抱きついてきて、みるみるうちにこの部屋の真ん中へと立たされていた。

 

(ん……やっぱり、なんでこんな事になっているのか、分からない……)

 

やはり考えてみても僕がここにいる理由が見当たらない。三人の作業が終わるまでジッとしておこうと思ったけど、そろそろ制服から私服に着替えたいし……その、と、トイレにも行きたいし……動いてもいいかな?

そう思い、目の前にしゃがんでいる三人へと視線を向けると丁度作業が終わったらしい。

 

「歌兎!お待たせしたデース!」

「…ううん。そんなに待ってないからいいよ」

 

目の前に人の頭部が付いているマイクがニコニコ笑顔の姉様の手によって置かれるのを見てから"このマイクは何?"という意味を込めてから姉様を見ると得意げに鼻をフンと鳴らす。

 

「このマイクはデスね。バイトアールと言いましてね。それはそれはすごーー」

「ーー早速間違えてどうすんだ!バイトアールじゃなくてバイノーラルだろ!」

 

スパーンと姉様の明るめのショートヘアな金髪を叩くのは、薄紫色が混ざった銀髪をお下げにしているクリス姉様(あねさま)で叩いた衝撃でアホ毛が左右に微かに揺れている。

 

「…姉様(あねさま)。バイノーラルってなに?」

「ア?あぁ、ステレオ録音の方法の一つらしくてな。この頭部の音響効果を再現するダミー・ヘッドやシミュレータを利用して鼓膜に届く状況で聞く事によってあたかもそこに誰かいるかのように聞こえる技法らしい」

「続き。その収録した後はヘッドホンかイヤフォンで聞かないと効果がないそうデスよ」

「…そうなんだ」

 

この何処かの銅像みたいな頭部が付いたマイクにそんな凄い機能が備わってるんだ。

感心の眼差しでマイクの周りをグルグルする僕を優しい眼差しで見守っていた姉様が鼻を突然擦る。

 

「ふふふ。偶然、動画でバイトアールマイーー」

「ーーだから、バイノーラルな。お前の相方の苦労が今分かるな」

「げぶんげふん。バイノーラルで撮った動画を見てから、お小遣いを貯めていたんデスよ!全てはバイノーラルで撮った歌兎の声で気持ちよく起きる為に!!」

「そっか。良かったな」

 

素っ気なく返事するクリス姉様(あねさま)に姉様がニンヤリと意地悪な笑みを浮かべるとツンツンと横腹をつつく。

 

「大丈夫デスよ、クリス先輩!歌兎に頼んで、クリス先輩用にも声を取りますデスから。今日から毎日、歌兎と一緒で寂しくないデスね!」

「な、バッ……あたしは今の生活で充分だ!チビの声なんていらねぇーよ」

「とか言いながら、一昨日歌兎が泊まりに行った時、夜一緒に寝た時に抱きついてきて可愛かったって歌兎が言ってたデスよ」

「〜〜ッ!?あ、あのチビの口を今から塞いでやる!!」

「まあまあ、雪音。歌兎の口を塞いだら、録音が出来ないじゃないか」

 

僕に掴みかかろうとしていた真っ赤な顔をしたクリス姉様(あねさま)を暖かい穏やか笑顔を浮かべた翼お姉ちゃんが姉様とともに出て行ってしまった。

と思ったら、ボタンとかがいっぱいある機械の前に三人で腰をかけている。

 

(それで僕はなにをすれば……って、ボード?)

 

「…えーと、これからボードに書くセリフを囁いてほしい?これに?」

 

あ、姉様が首を縦に振りながら『デスデス』言ってる。って事は横にスタンバイしていたらいいのかな?

クリス姉様(あねさま)、姉様、翼お姉ちゃんが身を寄せ合って、セリフを考えているのを僕はバイノーラルマイクの横でただジッと見ていた。




次回はバイトアール……げぶんげふん、バイノーラルマイクでの録音シーンとなっております。
因みに、この話を思いついたのはニコニコ動画で放送している【五等分の花嫁】の最終回目前での生放送のラストでこのマイクが登場して、本当にその場に居るという感覚を味わえたのでーー妹大大大好きな姉様ならきっとそのマイクで撮った歌兎の声を毎日聞いていたいだろうな〜ぁと思ったのがこの話を書こうと思ったキッカケです。

もし、バイノーラルマイクで各キャラが耳元で囁いてくれるならば……クリスちゃんは間違いなく『ばぁん♡』だな。あれに私はハートを撃ち抜かれたもの…(赤顔)
切ちゃんは……切ちゃんはどうしようかな〜ぁ(激悩)
どのセリフも好きだしな…天使可愛いしな……くっ、本当どうしよ……悩みすぎて、セリフが思いつかない!!(大汗)
強いて…強いて言うならば『小さな事を気にする事はよくないデス。考えてもどうしようもない事なら考えるだけエネルギーも無駄デス。どーんと構えてやるデスよ!』かな〜♪時々聴いては勇気もらってますもの…。
響ちゃんは『ご飯の時間の邪魔はさせない』で翼さんは『常在戦場』、マリアさんは『何故そこで愛ッ!』かな……いや、かなり大きいだろうから…鼓膜壊れちゃうかな…?(笑)
調ちゃんはおさんどんの歌を歌って欲しいです!!いや!調ちゃんも切ちゃんと同じでどのセリフも激かわですからね!どんなセリフでも私はオーライです!!

ここまで更新をサボっちゃったので、書きたい事は山ほどあるのですが……あまり長々書くのは宜しくないと思うので、ずっと前に約束していた【60話記念画】を載せたいと思っています。

テーマは、私は横顔が好きなので……【横顔】です。


【挿絵表示】


今までの作品の中で自信を持って、発表できる作品です!!
歌兎の眠たそうな目も可愛く描けましたし、何よりも歌兎の横顔が描けたので…充分ですッ!!



今 私のフレンドリストは【翼さんの誕生日ウィーク】となっており、シンフォギアカードからメモリアまで翼さんで固めております。本当は奏さんかマリアさんをメモリアに入れようと思ったんですが……偶には、誕生日の主役のみでもいいかなぁ〜と思い、翼さんのみとさせてもらいました。
期間は今週の金曜日までとなっております、イベント的には全然お役に立てないと思いますが…使ってやってくださいませ(土下座)


また、五月の末から【SSSS.GRIDMAN】のコラボイベントが始まりますね!
今、公開されている響ちゃんと翼さんのギア、カッコいいですね!!
敵や内容はどんなものになるのか、ドキドキワクワクが止まりません!


最後に、これまでのガチャは配信公開ガチャでメダルとガチャにて【限界解放ギアのセレナちゃん】をMAXまで上げることができました!!(ガッツポーズ)
後は、素材を集めてから上限突破させるのみ!!
ふぅーー、これでなんとかまともにチャレンジカップを勝ち抜けていけるはず…(安堵)
あと、これで【きりせれ】のみの構成も可能になります!!(笑みが思わず溢れる)

とチャレンジカップといえば、達成ポイント5000Pにてゲット出来る☆5シンフォギアチケットでゲットしたのは【アラビアンギアのクリスちゃん】でした!
こちらは未獲得でしたので、ハイテンションとなりました!!


かなり長々と書いてしまい、すいませんでした…(大汗)
朝昼晩の温度差が大きいので、どうかお身体に気をつけてください!
私は風邪気味でして…頭痛や節々の痛み、鼻水などが酷くて…ヤバイです…(苦笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

肝試しッ!

今回はネタに全力疾走したものとなってます。
歌兎がすごいツッコんでます……この子は私の心のダーク部分のせいで【"死んでしまう話数"と"ヤンデレ奏者のみんなに愛される話数"】でUA伸びがいい主人公となってますからね(笑)

私の笑いのツボは他の人に比べると可笑しいと思いますが、楽しんで読んでもらえると嬉しいです!

では、本編をどうぞ!!


7月6日。

暦の上ではすっかり夏となり、外国での仕事が早めに終わったとのことで日本に帰国したマリねぇとセレねぇ、そして何故かクリスお姉ちゃんの提案により《TIKITIKI 奏者勢揃い肝試し大会》というのが半強制的に開かれたのだった。

本当になんでそんなにノリノリなのか分からないクリスお姉ちゃんが肝試しを行う場所として提案したのはこれまた大定番のその地域で何かが出ると噂に上がる廃墟であった。そんな時にそんなベタなところでしなくてもいいのに……怖がりではうちの姉様とどっこいどっこいであるクリスお姉ちゃんは何故ここまで乗り気なのだろうか? 何か変なものでもマリねぇとセレねぇに飲まされたのかな?

 

そんなこんなで現時刻 23:00。

 

良い子は既に夢の世界へと旅立っている時刻にマリねぇの『狼狽えるなッ!』と『セレナぁあああああ!!!!』という雄叫びで叩き起こされた……ううん、ツッコまされた僕達はうとうとしている間にパジャマから私服へと着替えさせられ、意気揚々とマリねぇ、セレねぇの手に引かれて、後部座席へと押し込まれてから点々と散らばっている奏者のお姉ちゃん達を拾っていったのだった。

というか、起こしに行くマリねぇってなんで『狼狽えるなッ!』と『セレナぁあああああ!!!!』という雄叫びしかあげないんだろ……ここまでその声が聞こえてくるし……助手席で待ってるセレねぇが顔真っ赤にしてる理由が僕にも分かるからやめてあげてほしい。後、さっきから姉様が僕を抱き枕か何かと勘違いしているのかギュッとして離してくれないのをどうかしてほしいし、さっきからブツブツと小声でお経唱えるのもやめてほしいというよりやめて! こんな深夜に聞くと本当に怖いからっ。

 

「あァッ! 歌兎なんで離れちゃうデスかっ」

 

なんで離れるって今この瞬間の姉様が一番怖いからだよ! だって、僕の顔を"この世の終わりだ"みたいな青白い真顔で見つめてくるだけじゃなくてボソボソお経唱えてるんだよ? この状況が怖くない人が居たら挙手してほしい。

 

「…姉様、暑い」

「あたしは暑くないデス。むしろ寒いデス……これはきっとトリハタってもんデス」

「…鳥さんが旗を振ってるの? ともかく僕が暑いから少しあっちに行って」

「ゔぅあぁあああああん」

 

泣いたっ!? どうして!?

垂れ目がちな黄緑色の瞳から大粒の涙をポロポロと流しながらワンワンと赤子のように泣く。

そんな姉様に抱きしめられながら、僕はワタワタと助手席に座るセレねぇや姉様の左肩にちょこんと頭を乗せて眠りについていたシラねぇへと視線を向けると丁度シラねぇが姉様の鳴き声で浅い眠りから起きたところだった。

とろ〜んとした薄桃色の瞳をパチクリとした後に隣でガン泣きしている姉様にギョッとしている。

 

「…! あれ? 切ちゃん、なんで泣いてるの?」

「歌兎があたしのことを要らないって……ゔっぅっ……あっちに行けっていうんデス……」

「ーー」

 

ゔっ……シラねぇの"ジィーー攻撃"が胸に痛い。

で、でも 僕の言い分だって聞いてほしい……だってこの車に乗った時から青ざめた顔を間近で見ながらお経だよ? これが怖くないわけないでしょう? 今、真夜中だよ? いくら大好きな姉様でも怖いものは怖いんだもん……仕方ないでしょう……。

 

シラねぇのジィーー攻撃から視線を逸らしたその時だった勢いよくスライド式の扉が開き、向こう側からドヤ顔のマリねぇが眠たそうな響お姉ちゃんと未来お姉ちゃん、そして後で分かるマリねぇとセレねぇの協力者であるクリスお姉ちゃんを連れてから大泣きしている姉様へと雄叫びを上げたのはーーーー。

 

「切歌、狼狽えるなッ!」

「うっさいんデスよ!!!!! こっちは妹に拒絶されたんデスよ!!!!!! 狼狽えるよりもこっちの方が一大事デスよ!!!!」

 

今度はキれたッ!?

しかもあんだけ『狼狽えるなッ!』って言ってマリねぇが姉様の怒声に狼狽えちゃってるよ……姉様って太陽のような明るい性格な上にあまりマリねぇに怒ることってないもんね……。

 

「うろうろうろうろうろうろ……狼狽えるなッ!」

「マリア、いい加減にしないと頭かち割りますよ」

 

うわーーお、砕けた"デス"無しのマジ口調での脅しがきたよ。あっ、マリアからドヤ顔が消えて、代わりに悲しそうな顔をしてる。

 

「ちくしょう……かなわないわけだ」

 

へ? は? ねぇ、何がッ!? 何がかなわないのっ!? やめて、閉めないで!! 今、この小さな空間にカオスが充満してるんだよ!?

ほら、響お姉ちゃんも未来お姉ちゃんもクリスお姉ちゃんだって姉様とシラねぇの向こう側座りにくそうにしてるよ!?

 

(セレねぇ……)

 

あぁ、セレねぇでもこのカオスをどうにかすることはできないと……本当にどうするの……このカオス。

 

「それじゃあ、出発するわよ」

「…マリねぇ。翼お姉ちゃんと奏お姉ちゃん、カルねぇは?」

 

今この場所にいるのは、今だにワンワンと泣いている"姉様"に"僕"、"シラねぇ"の向こう側に涎を垂らしながら"未来お姉ちゃん"の肩で眠りにつく"響師匠"に両腕を組んで不敵に笑う"クリスお姉ちゃん"。そして、この車を運転している"マリねぇ"と助手席に座っている"セレねぇ"の8人だ。

今、S.O.N.G.に所属している奏者は11名ーーなのだが、確実にいうとカルねぇはマリねぇへとギアを渡しているので奏者ではないのーーだが、ここには8名と3名も居ない。

 

「フ。歌兎、横を見てみなさい」

 

(へ?)

 

って何アレ!?

僕らが走っている車の横に青い線が走る銀色の巨大な壁みたいなものがある。いやちょっと待ってこの展開ってーー

 

「ーーいや、剣だ! 歌兎」

 

そんな声と共に大きな壁……剣からかっこよく宙返りしながら降りて来た三人の人影は僕がさっきマリねぇに訪ねたその本人達だった。

 

「私の車では8名が限界だから、翼に奏とカルマをお願いしたのよ」

 

『お願いしたのよ』って……翼お姉ちゃんが運転出来るバイクって最低でも二人乗りだった気がーー

 

「ーーフ。問題はないさ、歌兎。奏には私の右側の剣に乗ってもらい、左側の剣にはカルマに乗ってもらって、私の肩にしっかりつかまってもらっていたからな」

 

何その芸術乗りっ!? 普通に危ないよ。

でも僕の○ギン○ョル○も危ないし……二人を助けたくてもガン泣き姉様が僕を離してくれない。

そんな中、マリねぇの車から降りたシラねぇがちょんちょんとカルねぇの横腹を突く。

 

「カルマ、私の禁月輪に乗る?」

「翼のバイクも良かったけどあまり邪魔するのもあまりスリリングすぎるのもな……調、頼んでもいいか?」

「うん、いいよ。ーーVarious shul shagana tron」

 

ピンクと白……そして、何よりも今僕に抱きついてガン泣きしている姉様が身につけているイガリマと対となるギア・シュルシャガナの技である【禁月輪】にて運ばれることになったカルねぇを見届けた後、目の前でガン泣きしている姉様をどうにかして泣き止ませる方法を考える。

そして、姉様のガン泣きも僕の必死の呼びかけにてすっかりよくなり、僕は姉様をまた泣かせしまわないように今度は僕から姉様に抱きつき、僕のすっと〜んな胸元とは比べ物にならないほどに女性らしい曲線美を描く胸元へと顔を埋めて眠りにつくことにした。寝ていればきっと姉様のお経も聞こえないはずだから……うん、絶対聞こえないからっ。そう思い込むことで眠りにつくことに成功した僕はスヤスヤと寝息を立てていたのだがーー

 

「ーー……う、……たう……、歌兎っ」

 

という姉様の必死な呼びかけに目を覚ました僕はいつの間にかおんぶの状態になっていることに気づく。

 

「…ん?」

「歌兎、起きたデスか……?よかった……ひぐっ……本当によかったデス……ゔぅあぁあああああん」

「…ね、姉様……?」

 

なんでまた泣いてるの? というよりもここどこ!? 意識が途切れる前にマリねぇが説明していた話ではこんな森林の中ではなかったはずだけど……?

 

「みんなとはぐれて……迷子になっちゃったんデスぅううううう」

 

そう泣きわめく姉様に僕は絶句するのだった。




あんまり面白くなかったデスかね(笑)
でもハチャメチャな方が私は書きやすいのデス!(何故か得意げ)
因みに、この話の時間軸はメインストーリーのパラレルワールドとなっており、歌兎が【ミョルミル】とは別のギアを纏うようになってます。そのギアは今後登場させる予定なので伏せ字でのお披露目とさせてもらいました(礼)
ということで、切ちゃんと歌兎は無事奏者のみんなのところへと帰ることが出来るのでしょうか?
次回をお楽しみにです!



ここから余談に入ろうと思うのですが……その前に前の更新ですっ飛ばしてしまったガチャのご報告をさせて頂こうと思うのですが……定期的に☆5は翼さんは舞い降りてくれまして、翼さん以外は奏さん・マリアさん・クリスちゃんといった年上組となっております。
思えばこの小説を書き始めてから、年上組が来てくれるようになったんですよね……溢れ出る"甘やかされたい"という念が年上組を引き寄せてしまうのか……?よくわかりませんが、【シンフォギア1〜4期放送記念ガチャ】の100枚メダルにてあと一枚で切ちゃんの【終曲・バN堕ァァSuナッ血イ】が上限解放できるところまで来ました!!(ガッツポーズ)
また、驚くことにAXZ配信ガチャの最初の10連にて☆6ギアのマリアさん……【Vitalization】が当たりました……(放心)

今後する切ちゃんのギアもこんな風に来てくれるとありがたいんですけどね……こればっかりはもう運しかないですよね……(笑)




さて、皆さんは既に知っていると思われますが……なんとッ!XVのキャラソンのジャケットが響ちゃんに引き続き、切ちゃんが解禁されましたッ!!!(うおおおおおおおおおおお)

響ちゃんのジャケットデザインはもうカッコいいの一言に尽きると勝手ながら思っていまして…切ちゃんのジャケットも最初に拝見した時は『カッケー』でしたね!!
そういえば、今回の切ちゃんの構えって珍しいデザインデザインですよね…【G/AZX】では脇が見えるような感じで鎌を構えていて、【GX】では下から刈り上げるように構えているんですよね。
それが今回はなんていうんですかね………うまく言えないんですけど、違う構えとなっているので……気になった方は是非是非チェックしてみてくださいね!

また、切ちゃんの戦闘曲とB面も発表されたんですが……思わずつっこんじゃいました、『いやいや、真っ二つにしちゃあダメでしょ!?』って……まー、ザババは二人で一つだからねっ。きっと調ちゃんの戦闘曲で切ちゃんに足りないものを補ってくれてるバス!


そして、B面の『はっぴーばーすでーのうた』は見るからに涙が溢れてくる(涙)
確か公式のツイッターにて『切歌はこれからも本当の誕生日を知らないまま生活していきますが、この誕生日(4/13)をこれからも大事にしていきます』的なメッセージが公開されたと思うんですが……そのメッセージはここの歌のフラグでしたか……(勘違い?)
はっぴーばーすでーのうたということはXVの本編にて切ちゃんの本当の誕生日……過去が明かされるってことでしょうか???

んー分からぬ(悩)
今回の話はキャッチコピーから明らかに響ちゃんと未来ちゃんの話となるでしょうからね……その上に切ちゃんの過去まで触れてたら、話数が足りなくなりそう(笑)

だがしかし、公開さんが本当の誕生日を知らないままって書いてるんですから……知らないままなのかな……なんか悲しいけど……(涙)

ともかくこのはっぴーばーすでーのうたって前のB面のはっぴーにゃっぴーばけーしょんと似てて可愛いですよね〜(ニヤニヤ)
どんな曲になるかは分かりませんが、私は切ちゃんのCD発売を心待ちにするばかりです!!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

+α 調べ歌う二重唱+α ep1

この【+α】章はゲームアプリのイベントシナリオに名通り"+α"で本作の主人公である暁 歌兎を加えてのシナリオの追体験となってます。
故にあまり違いが見れないかもしれませんが、暇潰し感覚で読んでもらえると嬉しいです!

記念すべき最初のイベントは登場するロボ達の可愛さと二人の絆とロボ達との絆にほっこりさせられた【調べ歌う二重唱】となっております。では、本編のどうぞ!!


part1『小さな分身たち』

 

1.

 

ピロロン…という音が聞こえたかと思うとS.O.N.G.の倉庫にて管理させている"金色に光る林檎"から青白い稲妻が走り、その稲妻が電流を伝い、辿り着いたのは大量の資料の山の中で机に伏せて眠りについている小柄な肢体を大きめな白衣で隠して、薄い色合いの金髪をしている少女の側でメンテナンスという名目で持ち主から預かっている桃色の塗装と緑色の塗装、花緑青の塗装で塗られたロボット達でーー

 

「……ッ!」

「再起動完了」

「システムチェック、オールグリーン」

 

ーーロボット達の中へと入っていった青白い稲妻はロボット達の電源と共に言語を司る部分を弄り、人工知能を搭載させるとひとりでにロボット達が目を覚まして、小さな肢体をギコ…ギコ…と動かすと邪悪な雰囲気が漂う赤い瞳へと闘志をたぎられながら、其々の武器を手にこう宣言するのだった。

 

「人類は……」

「…一人残らず」

「デストローーイ!!」

 

 

2.

 

その日、僕は姉様、そして装者のねぇや、お姉ちゃん達と共にシミュレータ室にて訓練に勤しんでいた。

シュミレータによって映し出されるアルカノイズの攻撃を寸前で避けた僕は両手に持っている棒を思いっきり横に振るうとピョ〜ンと宙返りしながら後ろに飛ぶ。

「…ふん! よっ……ト」

 

そのすぐ後をピンク色のヨーヨーがビューーと飛んできて、アルカノイズを足止めする間に走り寄ってくる緑色の疾風を見下ろしながら、両脚に備え付けられている花緑青色のボールを両手に取る。

 

「切ちゃん、今ッ!」

「了解デースッ! はあああーーッ!」

 

姉様の緑色の刃をした大鎌に切り捨てられて、赤紫色の灰になるアルカノイズの後ろから更に迫ってくる団体さんに向かってボールを投げつけるのを後ろ目で見た姉様は鎌へと紐を巻きつけると僕に向かって親指を立てる。

 

「歌兎、いつでもバッチコイデスよ。今こそあたし達姉妹の超絶カッコいい連携を見せつける時デス」

「…ん、分かったよ、姉様」

 

その言葉の後に姉様はグッと自分の方へと紐を引っ張るとその力によって近づいてくる僕を鎌の刃の面に乗せると思いっきりアルカノイズの方に向かってフルスイングする。そして、敵に向かって飛んでいく僕は片手に持った棒を横一文字にスイングしながら叫ぶのはとある装者の名言で当本人は忘れたいと言っているのだが、僕達がどうしてもその名言の衝撃を忘れられずに時折姉様と真似しながら訓練している時に偶然生み出してしまったこの技でその名言を言わないというとは失礼と言えるだろう。

 

「僕も飛ぶんかーーい」

 

という事で大きな声で真似をしながら、見事アルカノイズを一発で倒した僕はグイッと引っ張られる糸に導かれるままにストンと姉様の腕の中に着地して、ゆっくりと地面へと下ろさせるの見てから、僕と同じミョルミルを纏ったマリねぇが僕達へと声をかけてくれる。

 

「3人とも、そこまでにしなさい」

「ふう……」

「お疲れ様デースっ! 調も歌兎もいい感じに決まったデスねッ!」

「…姉様とシラねぇお疲れ様。前よりも上手く連携が取れたね」

「うん、上手く連携がとれたと思う」

「…友里お姉さん、どう?」

 

とお互いを労わり合いながら、シュミレーター室にてスコアとデータを取ってくれていた友里お姉さんへと三人同時に視線を向けると優しく微笑んでくれた。

 

「ええ、良いデータがとれたわ」

「…そうなんだ。なら、スコアも上がったってこと?」

「個々のスコアは正直課題の残るものだけど……」

 

その言葉に目に見えて残念そうな顔をする姉様へと友里お姉さんは横並びに並んでいる僕達を見渡してからにっこりと微笑む。

 

「だけど、連携戦闘になると格段に撃破効率が上がるわね。すごいスコアだわ」

「本当デスかッ!?」

「ええ」

 

嬉しそうに僕とシラねぇへと飛びついてくる姉様へと暖かい眼差しを向けながら、マリねぇがクスクスと笑う。

 

「フフ。お互いの得手不得手をよく把握して、上手く立ち回っているみたいね」

「はい、攻撃の呼吸やその後の隙までよく見て動けてます。流石、暁さんと月読さん、歌兎ちゃんですね」

「…へへ」

「やったね、切ちゃん、歌兎」

「へっへーんッ! それほどでもあるデースッ!」

「少しは謙遜しろっての……たく」

 

マリねぇとセレねぇに褒められて、僅かに口元を緩めるのを見た姉様は僕を抱き寄せながら、頭を撫でるのを受け入れていると僕達の方へと真っ赤な顔をした翼お姉ちゃんが青い髪を揺らしながら近づいてくるのを小首を傾げながら出迎えると凄い形相で指をさされる。

 

「…どうしたの、翼お姉ちゃん」

「どうしたもこうしたもないわ! あの言葉は忘れてって言ったじゃない」

 

僕に向かって涙目で激怒する翼お姉ちゃんの後ろでは僕の渾身モノマネが面白かったのか、奏お姉ちゃんとカルねぇが腹を抱えて笑っている。

 

「そもそも、これは立派な訓練であってお遊び半分でするものではないのよ! 切歌も分かっているわね」

「デ! デース……」

 

まさか自分にもお怒りが向くとは思ってなかったらしく完全に油断していた姉様はこってりとシュミレーター室の隅に連行され、翼お姉ちゃんのいつになく熱のこもった説教を頂戴したのだった。




とりあえず、きりのいいココまでを更新します!
この【+α】はのんびりと書いていくつもりなので更新日とは関係なく書き終えたら、更新していくスタンツでいこうと思います! なので、知らぬまでに更新してるってことはあるかもしれません(笑)

余談ですが、翼さんの『私も飛ぶんかーーい』って凄く好きなんですよね、私。
あの翼さんが真面目な顔をして、そんなことを言っていると思うとジワリと笑いがこみ上げてくるというか…(笑)
なので、XVの二話目の感想を書かせていただく前に笑いを取り入れらせてもらいました!





さーーて、二話目の感想いっちゃいますよ!!
三話目をご覧になられた方もいらっしゃるので、ガンガンネタバレと変態コメント満載でいこうと思います!
故に、そういうのが嫌な方は迷わず回れ右か高速スクロールをお願いいたします!!







まず、冒頭からですが……これは一話目の総集編的な感じなので触れるところは前に触れたので飛ばして、OPですが……みなさん、びっくりされませんでしたか? 初っ端から幼少期のマリアさんとセレナちゃんが登場したの。ちょ、ちょい待てよ……え? へ? まさかのここでセレナちゃん!? セレナちゃんが回想でも復活してくれるのは【きりセレ広め隊】である私からすればこの上なく嬉しいことだけど……つまり、マリアさんのCDリリースが遅いのってそういうこと? どういうこと?(絶賛混乱中)

ま、いいや……そのことについては後々明かされていくと思うので、それを楽しみにしつつ、配信日を待つとして……

クリスちゃんの「えっくしぶ」やあの高垣さんがデザインなされた流行りのキーホルダーが映るカットを『すっごい……クリスちゃんがダジャレ言ってる!?』や『うわぁ〜、なつぃわ〜』と思いながら観ていると画面に突然、サングラスかけたマリアさんが現れて、口に含んでいた茶を吹きかけました(笑) いかん、アレは反則デスよ(口元を押さえて笑う)

その後のシーンですが……ふぅ……初っ端ならやってくれましたね、何がってきりしらシーンですよ!!
やべーデスね、これ……(何度見返しても頬がにやける)
ヘリから……というよりもロケット(?)から飛び降りる際に抱きしめ合いながら、互いの首へとリンカーを……くっ、鼻血が出るッ。

その後、切ちゃんの戦闘曲である【未完成愛Mapptatsu!】が流れましたねッ! いやー、CDで聞いてもいいけど本編で聴くのもいいですね!! あ、この戦闘曲で一つだけつっこみたいところがあるんだった……切ちゃん、戦闘中にあんたさんは『肉が食べたい』と思っているのかい? そんなことを言われてもアルカノイズさんはどうにも出来ないでしょう……だから、戦闘中は戦闘に集中を。終わったら、私がお肉をたらふく食べさせてあげるからっ! 私の小説の中で(笑)

と、戦闘曲よりも前にもっとやべーシーンがありましたね……切ちゃんの変身バンク……これは変態と自負している私でも目のやり場に困る(が、結局はガン見する私)
大鎌に足を開けてからのポールダンスっていうのかな……? これ??? 兎も角、どのシーンを取ってもエロの塊だったけども……私が好きなシーンは切ちゃんが自身の下腹部辺りから太ももを撫でてニーソックスを弾くシーンとバッテンを描いてニカッと笑うシーンにズキューンとなりました。やっぱ、切ちゃんは可愛いですが、かっこいいですね。

さて、その後は贅沢にも調ちゃんの戦闘曲も流してくれるという大盤振る舞い……はぁ……やっぱり調ちゃんの戦闘曲好きですわ……時々物騒な単語とかあったけど可愛い調ちゃんの前では些細な事なのですっ!

と、先週触れた切ちゃんの変顔シーンですが……あぁ〜ぁ、なるほど……アルカノイズが迫ってくるのに狭い通路で大鎌振るうから引っかかっちゃってのだったのね。それはあんな顔になりますわ(納得納得)

しっかし……今回の切ちゃんって鎌で波乗りサーフィンしてたり、調ちゃんとの合体技にていきなりヨーヨーをホームラン待ったなしのバッキングを決めたり、鎌から駒の飛び出たりとか戦い方が"天真+ 爛漫×"じゃなくて、"破+ 天荒×"なような……ま、そういう所も含めて、切ちゃんはカッコ可愛くて大好きなんですが(照)

そんな二人によって撃退されてしまったエルザちゃんがヴァネッサさんに帰投を命じられる際に「可愛い」で頬を染めるシーンに悶絶しました。やっぱり、この子が今回の敵の中での私の一押しですわ……可愛い……けど、恐らくこの子がOPから察するにきりしらに何かを仕掛けてくるのだろうからな……果たして、私はその時もこうして『エルザちゃん可愛いッ!?』とはしゃいでられるのか……? ま、これもその時になってみないと分からないことですね(笑)


よーーし、後半戦にいきましょうかね……いきたくないけど(滝汗)

まずは、翼さんとマリアさんのライブシーンのお二人の衣装、すっごい私好みです!!
翼さんのポリスっぽい服装もさながら、マリアさんの大人びたドレス姿に数分前にサングラスをかけていた人とは思えませんでした!

しかし、その後からはまさに地獄のような光景でしたね……あれは翼さんじゃなくても『やめてくれ!!』ってなるよ……。
だがしかし、翼さんとマリアさんが頑張りって守ろうするうちから散っていく命……特に翼さんのシーンが切なくって……。

そして、ミラアルクさんが登場してからのあのシーンだよ……
ミラアルクさん、いくら弱くて他に捨てるものが無いからって、あんな小さい子を吊るし上げてから心臓貫く必要なくない? なんで、あんなとこを……。
確かに、色んな錬金術師の方が多くの民衆の命を奪ってきました……来ましたが、ここまで残忍じゃなかったと思う……

その後は翼さんがミラアルクさんに「こくいん」という名の何かをかけれてましたね。しかし、このシーンで今後の展開が読めた気がしました。

最後にDPですが……これまた、他のシリーズにはない新たなDP映像でしたね! シルエットじゃないみんなが見えることにテンションが上がる一方、未来ちゃんがシルエットなのが引っかかる……

ということで、長くなってしまいましたが……二話目の感想を終えたいと思います。






最後に、これは切ちゃんのカップリング曲である【はっぴーばーすでーのうた】についてのちょっとした感想とお知らせなのですが……

まずは、"はっぴーばーすでーのうた"はジワジワ泣けてくる曲ですね(涙)

もうね、この曲を何十回聞いた後にクリスちゃんが手を合わせていた仏壇の近くに置かれていた写真で響ちゃんに寄りかかって"1・8"の旗を持ってはしゃいでいる切ちゃんと【Lasting Song】のアニメ盤で頬にクリーム付けている切ちゃんをみていると泣けてきてね……裏では"風邪の鼻詰まりに似たような感覚"だったり、トイレに行ってくるって抜けて"誰にも見せない顔"してたのかなぁ〜と思うと……ね………(涙)

極め付けは『誕生日を勉強したんデス』と『みんなが笑っていたから真似して』だよ。
誕生日は勉強するものでもないし……みんなが笑っていたから"一緒になって"じゃなくて"真似して"だよ。無理してるんじゃん。

でも、『あたしは毎日がバースデー 笑って毎日バースデー』ってことは装者のみんなや調ちゃんと日々過ごしている何気ない日常があたしにとってはバースデーのようにハッピーで幸せな事だから毎日バースデーなんだよってことなんでしょうね。

しかし、この曲を聞いても胸が苦しくなった私は【はっびーにゃっぴーのうた(仮)】という章を作り、原作の切ちゃんと歌兎を会わせたいと考えてます。
こちらはじっくり考えたら更新したいと思うので、8月に入ってしまうかもしれないですし、9月になってしまうかもしれません。


また、これも予定なのですが……ミョルミルを纏った歌兎と歌兎ロボのイラストを描いて載せようと思ってます。
そして、時間が空いた時にあらすじと章を整理したいと思ってます。



最後にここまで読んで頂きありがとうございます(礼)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

はっぴーにゃっぴーのうた(仮) ep1ー罠と強がり

きりのいい所まで書こうと思ったら1万近くまでいってしまい、もうどうせなら1万文字書こうと書き進めていたら、結局は1万三千ちょいとなってしまいました。

かなり長めですので、傍らに飲み物やお菓子を置いて、摘んだり飲んだりしつつ、好きなBGMを流しながら、ゆったりと読んでください。

最初からかなりハードな話となっていますが、最終的にはハッピー……いいえ、にゃっぴーえんどを迎えようと思ってますので、【はっぴーにゃっぴーのうた(仮)】を最後までどうかよろしくお願いします!

では、本編をどうぞ!!


※【1.】の最後のシーンは【XV 3話】を視聴して、急遽入れたシーンとなってます。

因みに【1.】は歌兎視点、【2.〜 5.】は原作の切ちゃん視点となってます。

また、この作品を書く際は延々と【はっぴーばーすでーのうた】と【君が泣かない世界に】を聞きながら書いてます。

時間軸は4期〜5期の間【4.5期】となってます。


1.

 

今思えば、その状況は良く出来ており、罠だったと早めに気付くべきだっただろう…いいや、僕自身もうとっくに気づいていたのかもしれない。

だって、僕が作ったシールドの向こうでその子達は不審な動きと不自然な笑みを一瞬だけ浮かべていたから……。

 

でも、その子達を背後に庇い、無限にも思えるほどに溢れてくるアルカノイズと戦い続けていたのはきっと幼い彼女達が幼い頃の僕と姉様に酷似(こくし)していたのと僕が犯してしまった大きな罪と状況が似ていたこともあったのだろう。あの時僕のせいで失ってしまった多くの人たちをこの子達を救うことで償えるかもしれないというそんな願望にも似た浅はかな考えーー。

でも、そんな浅はかな考えで僕の罪は償える小さいものではなかったということだろう。

 

ギアを解除して、ビルとビルの間に出来た窪みに避難してもらっていた二人の前に万が一のことを考えて設置していたシールドを解除してから二人の目線に合わせるように腰を落とすと二人を怯えさせないように淡く微笑む。

 

「ーー」

 

だが、彼女達が僕に向けてくれたのは微笑みではなくキラリと光る無機質な刃物だった。

グシャと肉が裂ける嫌な音が聞こえたかと思うと

 

「……エ?」

 

ポタポタと地面に赤い血液が落ちていき、着ていた白いTシャツが真っ赤に染まっていくのを唖然と見つめながら、膝をつく。

血液と共にこぼれ落ち、流れ落ちていく命に目の前が霞み、思わず出てしまった掠れた疑問にこの場には誰も答える人はいない。

 

「…なん……で………」

 

ゆったりと前のめりに倒れこむ僕を避けるように窪んだ壁沿いに逃げた彼女達は辺りを見渡すと何かを見つけたのか、タッタと狭い通路を駆けていきーー

 

「……」

 

ーーそして、先頭を走っていた子が不意にアルカノイズの一撃を受けて、赤紫色の灰へと形を変えていくのを間近で見ていたその子の妹であろう子は自分の手をギュッと握ってくれていた小さな手が忽ちに赤紫色の灰と変わり、自分の掌からこぼれおちていくのを茫然とした様子で見ているのを無表情で見下ろすのはさっき彼女の姉を斬撃した武士型アルカノイズで両手の尖った刃先を今度は彼女へと振りかぶるのを見て、僕の中の何かがブチ切れた。

 

「やめろ……やめろぉおおおおおおおお!!!!

 

叫び声と共にもう力が入らない両手足へと力を入れ、無理矢理にでも立ち上がるといつも肌身離さずに着用している深緑色のポーチの中から体に悪そうな黄色に発光している液体が入っている針なし注射器を首元へと抑えつけると指先にグッと力入れて、液体を体内へと入れると霞んでいた視界がクリアになる。

 

「…multitude despair mjolnir tron」

 

クリアになった途端、両脚にメギンギョルズの力を集中させてから一気に解放すると両手に持った棒で今まさに彼女へと振りかぶろうとしている刃先へと叩きつけてから彼女を守るように抱き寄せてから後ろ足で武士型アルカノイズを蹴飛ばす。

 

「はっ……はっ……」

 

さっきの一発で武士型アルカノイズは倒せたようだが、ビルの周りにはまだ武士型やぶどう型、バナナ型アルカノイズがおり、汗が顎を伝い、コンクリートへと落ちていく。

 

(あんなに倒したのに…まだこんなにも居たの…)

 

覚せい剤を打ったとしても、僕が活動出来るのは恐らく5分か10分程度だろう。本来ならば、効果は5時間か7時間程度なのだが、どうやら右胸を刺されたのとメギンギョルズの力と共にミョルミルの力も使いすぎてしまったようで消耗が激しい。こうしている間もクリアだった視界が炎に溶けていくプラスチックのようにふやけている。

 

(だからってこの場を逃げる理由にはならないっ)

 

腕の中にいるこの子もこの付近に暮らしている人達も僕が守るべき人達なのだから。そうあの時守れなかった人達の分まで僕は人助けをするって決めたんだから。

そう考えはするも実際どうすればいいのか分からないままに腕の中にいる子に攻撃が当たらないように立ち回りながら、アルカノイズに蹴りを加えているとギュッと紅葉のように小さな手が僕の襟首を握る。びっくりして下へと視線を向けるとぐしゃぐしゃに顔を歪めてからポロポロと涙を溢れせている彼女がいて、僕はキュッと胸が締め付けられる。

 

「…おねえちゃん、…おねえちゃ…んっ、…どこにいるのっ? わたしをおいていかないでよ、ねぇ」

 

と泣きじゃくりながら、赤紫色の灰となってしまった姉を呼び続ける彼女は遠い昔の僕の姿を想起(そうき)させ、キュッとなる気持ちのままにギュッと彼女を抱きしめる。

 

「…大丈夫だよ、僕が……お姉ちゃんが必ず貴女を守ってあげるから」

 

あの時、泣きじゃくる僕を抱き寄せて言ってくれたこのセリフと木漏れ日のような暖かいぬくもりに救われ、導かれ、育てられたこそ今の僕がいる。

 

「………おねえちゃん?」

 

光を反射する無機質な焦げ茶色の瞳を見つめ返してから淡く微笑む。

 

「…だから、ギュッと捕まっていてね。振り落とされないように」

 

そう告げてから両脚へとメギンギョルズとエネルギーを集中させると四方を囲んでから距離を詰めてきていたアルカノイズの攻撃をさせるように真上に飛び上がってから左足を天高く蹴り上げてからエネルギーを左足へと集中させる。

 

「…師匠直伝【空鎚脚】ッ!」

 

メギンギョルズの力により威力を底上げしてから思いっきり溜めていたエネルギーをアルカノイズへと叩きつけるとボコっと地面がひび割れ、その場にいたアルカノイズ達は忽ちに灰へと変わるのを見てから、無理矢理に引き伸ばした活動時間が終わりを迎えたこともあり、ギアが強制的に解除され、胸に抱き寄せた彼女と共にビルの屋上へと叩きつけれる。

叩きつけられた衝撃で僕と彼女は気絶し、そんな僕達の周りを囲むように三つの影が現れ、力なく投げ出されている僕の腕へと針を突き刺すと血を抜いていくのだった。

 

 

 

 

2.

 

この世界に遊びにきていた"暁 歌兎が単独でアルカノイズと戦闘中"といった連絡を受けたのは丁度あたしと調であの子…歌兎を迎えに行こうとしていた時だった。

簡単な状況と戦闘している場所を聞いている最中から止めどなく湧き上がってくる嫌な予感を拭うようにビルの屋上の端を蹴飛ばしては次の屋上へと飛び移る。

 

「……ッ」

 

(なんデスか、なんなんデスかッ。この嫌な予感は!)

 

早くいかないとあの子を失ってしまうような気がする。もし、この予感が的中してあの子を失ってしまうようなことがあったら……あってしまったならば、あたしはーー

 

「切ちゃん、突っ走りすぎだよ」

「ごめんなさい、調。分かっているのデスが嫌な予感がするんデスよ」

 

(ーーあたしはっ……あたしは向こうのあたしに顔向け出来ないデスよ)

 

調の言いたいことは分かっている、今のあたしはきっと冷静を失っていると思う。けれど、冷静なれる状況じゃなかった。

あの子と出会ったのは鎌倉のトマト畑で、そこから様々な出来事の中であたしはあの子と向き合えるようになってきて、やっと"かぞく"という意味が分かりかけていたのに……。

"やっぱりあたしも一緒に行くべきだった"という後悔の念と溢れそうになる涙をグッと堪え、表情を引き締める事で隠すとまずはあの子を助ける事に集中しようとビルの屋上の床を蹴ろうとした時だった。

 

「やめろ」

 

と小さいけれども聞き覚えるがある声に思わず調と顔を見合わせる。

 

「切ちゃん、さっきの声って……」

「あの子デス! あの子デスよ、調!」

「声がしたのは方向からして南南西。あの区画かな」

 

調が指差す区画からは土煙のようなものが上がっており、恐らく今現在もあの子は一人で大量のアルカノイズと対峙しているのだろう。

 

(なら早く行って助けてあげないとデス)

 

あの子にはあの子が帰るべき世界がある、その帰るべき世界へと無事に帰してあげるのがこの世界に暮らすあたしの使命なんだ。

 

(そうなのに、なんなんデスか……この状況)

 

「……なんデスか、これ……」

 

思わず絶句する。それくらい目の前に広がる光景は目を瞑りたくなるほどに壮絶なものだった。

意識を失っている小さな女の子を守るように仰向けに倒れているあの子は左腕を女の子へと回して、力なく右腕を投げ出しており、出掛ける前は真っ白いTシャツだったそれはドス黒い血色に染まっていて、投げ出されている腕や血の気のない青白い顔に視線を逸らしてしまいたくなる。

 

「……歌兎………歌兎…………うそ、デスよね………………」

「……ひどい」

 

その後、S.O.N.G.の救護班により回収されたあの子は直ちに集中治療室へと運び込まれて、長時間の手術を受ける事になるのだった。

 

 

 

 

 

3.

 

S.O.N.G.の制服に調と共に着替えたあたしはあの子の状況を聞いて駆けつけたマリアと翼さん、クリス先輩と響さん、未来さんと共にあの子の手術が上手くいくことを願い続けて、数時間後集中治療室から姿を現した救護班のスタッフの一人が風鳴司令へと一礼してからあの子の手術の結果と今の状況を説明する。

 

「一命は取り留めましたが、地面へ叩きつけらた際に鎖骨など骨を折れてしまっている上に血液が圧倒的に不足しています。なので、まだ油断は許されない状況です」

「ご苦労。歌兎の事は我々が交互に見回る事にしよう。君らも長時間手術で疲れただろう、ゆっくり休んでくれたまえ」

「いえ、私達も司令の見回りに同行しましょう。患者がいつ体調を崩してもいいように」

「そうか、ならよろしく頼む」

 

風鳴司令に頭を下げたスタッフの人はミーティングルームを後にするのを見届けた後に司令はあたしと調の方を見ると心配そうな顔を浮かべる。

 

「話を始める前に切歌くん、調くん、二人は休んだ方がいいと判断するのだが。二人とも昨日から眠ってないだろう」

「あたしは大丈夫デスよ、よく夜更かししてるデスから。それよりも調の方が心配デスよ」

「切ちゃん、心配してくれてありがとう。でも、私なら大丈夫だよ」

「……呉々も無理はしないようにな。お前達までもが倒れてしまったならば、我々は深手を負ってしまう事になるからな」

「ガッテン承知の助デス」

「分かりました」

 

敬礼するあたしと力強く返事をする調を交互に見てから司令は腕を組むと横並びする装者達を見渡してから話を始める。

 

「まずは歌兎くんの身に起きた事だが、歌兎くんと共に意識を失っていた子の事情聴取から大体の事が分かった。

歌兎くんは切歌くんと調くんが迎えに来るまで近くの公園にて遊んでいたところ、物音を耳にしてからその子達がいる細道へと足を踏み入れたと考えられ、その子達がアルカノイズに襲われているところに遭遇し、そのまま戦闘に入ったそうだ」

「師匠、その子達ってどういうことですか? 歌兎ちゃんが助けた子って一人しか居なかったような」

「それはだな……」

「保護された子には四歳上のお姉ちゃんが居たそうよ」

 

顎に人差し指を添えて眉をひそめる響さんの質問に重苦しく口を紡ぐ司令の代わりに友里さんが説明してくれる内容に今度はクリス先輩が険しい顔をする。

 

「居たそうよってなんか含みがある言い方だな」

「……その子のお姉ちゃんは歌兎ちゃんとその子の前でアルカノイズによって……」

 

自然と紡がれる言葉によってそのお姉ちゃんがアルカノイズによって命を落とした事は安易に想像できたが、そこで一つ疑問があたしの中に生まれた。

 

「え……でも、待って欲しいのデス。だって、あの子……歌兎のシールドは絶対防御でアルカノイズや錬金術師、あたし達の攻撃でも壊さないデスよ……? なのに、どうして……」

「そこは我々も不思議に思っている箇所なんだ。歌兎くんのこれまで記録さている戦闘スタイルならシールドを張り、民間人の安全を確保した上で戦闘に入る事は必須だ。だがしかし、歌兎くんは何故かシールドを解除し、その後にその子のお姉ちゃんがアルカノイズの襲撃にあっている。それにもう一つ気になる箇所があるんだ」

「右胸の刺し傷……」

 

調はそれだけ言うと顔を伏せる。きっと救護班によって運ばれていくあの子の赤黒く染まったTシャツを切り裂くように空いていた穴からドクンドクンと溢れ出している血を思い出しているのだろう……あたしはそっと隣に立っている調の震えている手をギュッと握り、見上げてくる調へと微笑む。

 

「そう、調くんの言う通りで歌兎くんの右胸の刺し傷も気になっている箇所なんだ。

ここからは俺の憶測で話させてもらう。まず、歌兎くんが刺されたのはシールドを解除した瞬間で、歌兎くんを襲った犯人は恐らく彼女とそのお姉ちゃんだ」

「……はぁ? おっさん、ボケるにはまだ早いぞ。なんで、自分を襲った犯人をチビが助けているんだよ。そもそも、チビが倒れていたのはビルの屋上なんだろ?」

「歌兎が助かるか助けないかはまず置いておいて。なんで、襲ったのが彼女とそのお姉ちゃんって断言出来るのかの理由が知りたいわね」

 

腕を組むマリアと一気に不機嫌顔になるクリス先輩に司令は正面の画面へとあの子が戦っていた場所と倒れていたのは箇所の写真を映す。

 

「歌兎くんはここの窪みに彼女とお姉ちゃんを避難させた後にシールドを貼り、複数のアルカノイズと対峙したと思われる。恐らく長い戦いだったのだろう、細い通路の中の彼方此方に針なし注射器の殻が散乱してあった」

「注射器の散乱って……歌兎ちゃんはあの時の私やマリアさん、切歌ちゃんや調ちゃんのようにLiNKERを使っていたの?」

「あの子……歌兎はLiNKERは使ってないわ。あの子が使っていたのはメギンギョルズの力の使いすぎにより眠たくなってしまう特性を改善するための薬、覚せい剤よ」

 

マリアが未来さんに説明している内容も耳から耳へと流れていき、あたしはただ茫然と映し出されている写真を見上げてはあの子がどんな戦い方をしていたのか想像が付き、それだけに後悔が止まらない。

薄暗い細道であの子は何時間、何十時間戦い続けていたのだろうか?

散乱している殻は写真で確認できるだけでも10本はある気がする、前に一緒に戦った時に黄色の液体で満たされた注射器を打っているところを目にしたことがある。"その液体はなんデスか?"と聞いてみると"目を覚ますための薬だよ"とほわわんと笑って答えてくれた。

 

(なら、あの散乱している注射器の中に入っていたものはきっと……)

 

あの黄色い液体なのだろう。

 

「歌兎くんは無事アルカノイズを退けた後にシールドを解除してから彼女とお姉ちゃんを保護しようとして、そこで襲撃を受けた。暗くて見えにくいが、窪みの前に血痕の跡があり、そこから点々と細い通路へと落ちている」

「なるほど、叔父様の推理は一理ありますね、窪みの前にある血痕の跡から何故あちらの暁が屋上の上で彼女を守るように倒れていたかの」

「だがしかし、これはあくまでも俺の憶測だ。真実は歌兎くんが目を覚ました時に聞いてみるとしよう」

 

そこで話を切った司令は"すぅ……"と息を吸い込むともう一度装者のみんなを見渡す。

 

「そこでこの事をあちらの世界に知らせた方がいいと思うんだ。理由はともあれ、あちらの世界の大切な装者を、歌兎くんを酷い目に合わせてしまった……。本当は俺が謝りに行かねばならないのだが、あちらの世界にはーー」

「ーーそういうことならば、司令と同じ風鳴の名を継ぐ者として私があちらの世界へと説明と謝罪に行きましょう」

 

司令の言葉を遮るように翼さんが声を上げるのを見て、司令は頼もしそうな顔をするとうなづく。

 

「翼、頼めるか」

「無論です。私にもこの状況を引き起こしてしまった原因があるのですから」

「つ、翼さんが行くならあたしにも行かせてほしいのデス!」

「切ちゃん……?」

 

繋いだ掌越しに震えが、不安が伝わってないことを祈りつつ、あたしはまっすぐ司令を見つめる。

 

「……あっちのあたしに頼まれたのに、あの子を酷い目に合わせてしまったのはあたしの責任デス。だから、あたしも翼さんと謝りに……あっちのあたしに謝りに行かせてほしいのデス」

「切歌。このことは全部切歌の責任ではーー」

 

マリアがあたしを庇うように言ってくれるのを手で制した司令はあたしの目をまっすぐ見つめる。

 

「あちらの切歌くんは歌兎くんのことを目に入れても痛くない程に可愛がっていると聞いている。恐らく、すっごく怒られ、責められるだろう、それに耐えることは出来るのか?」

「出来るデス。これがあたしのケジメの付け方なんデス」

「なら、あちらの世界にはーー」

 

あたしの決意を感じ取った司令はその覚悟を無下にすまいとあちらの世界に謝りに行くメンバーを発表しようとするのを今度はあたしの横顔をジィーーと見ていた調が遮る。

 

「待ってください、司令。私も翼さん、切ちゃんと一緒にあちらの世界に謝りにいきたいです」

「調くんもか?」

「あっちの切ちゃんに歌兎の事を頼まれたのは私もだから……。謝りに行きたいです、歌兎をあんな目に合わせてしまってごめんなさいって」

 

調の瞳を暫し見た後に司令は深くうなづくとあたしと調、翼さんの三人を見渡す。

 

「なら、あちらの世界に行くのは翼、切歌くん、調くんの三人に任せることにしよう。三人は疲れているところ悪いが準備が出来次第、あちらの世界に渡って貰いたい」

「分かってます。あちらの暁の容態が安定しないということはいつどうなるかは分からない。早くあちらの世界に知らせるのは義務でしょう」

「なら、今すぐ行くデスよ! あたしと調なら大丈夫デスから」

「本当にそうか?」

 

尚も心配そうな翼さんと共に強引にあちらの世界に向かったあたしと調、翼さんを出迎えたのは偶然というべきか、はたまた神様の悪戯か、美味しそうにアイスクリームを舐めているあちらのあたしだった。

 

 

 

 

 

4.

 

「およ? あっちのあたし、調、翼さんデス。三人ともどうしたんデスか?」

 

突然現れたあたし達に最初こそはびっくりしていた様子だったが、すぐニコニコ笑顔に表情を戻すとトテトテと悪魔をモチーフにした緑色の半袖パーカーを揺らしながら駆け寄ってきたあっちのあたしはピョンピョンとその場を飛んで、三人の後ろを覗こうとしている。恐らく、愛する妹の姿を探そうとしているのだろう。

 

「あれ? 歌兎は皆さんと一緒じゃないんデスね。やれやれ…困った子なのデス……。また駄々こねて、あっちの皆さんの足を焼いているのデスね」

「あっちの切ちゃん、それ言うなら足じゃなくて手だよ」

「ありゃ? そうでしたっけ?」

 

ケラケラと照れたように頭をかきながら笑うあっちのあたしは知らない。

あたしの世界で自分の愛する妹が敵の襲撃に遭い、いつ命を落としてもおかしくないくらいの重傷を負って、今も頑丈に管理された病室で管をつけて寝ているということをーー。

 

(…ごめんなさい、ごめんなさい…貴女の大切な妹をあんな目に合わせてしまって……)

 

自分の姿を見た途端、表情が曇る翼さんと調、あたしにニコニコ笑顔だったあっちのあたしも何か良くない雰囲気を感じ取ったのか、ニコニコ笑顔をひそめてから静かに微笑むと優しい口調で問いかける。

 

「……もしかして、歌兎に何かあったんデスか?」

 

誰も責める気はないといった風に怒りをまるで感じさせない慈愛に満ち満ちた口調にあたしと調は口ごもり、翼さんは僅かに声を潤ませながらあっちのあたしへと言う。

 

「そのことはこちらの司令を踏まえて話させてほしい」

「それもそうデスね。それならあたしが皆さんを案内するデスよ!」

 

アイスクリームをパクパクと食べて、キーンと痛む頭を抑えながらもあたし達を連れて、こちらのS.O.N.G.へと案内してくれる。

その後、翼さんが簡単な事情をあちらの風鳴司令へと説明した後にこの世界にいる装者達を集合してもらった。

あたし達三人の前に並ぶ装者のみんなは総勢10名という大所帯で殆どは顔見切りとはいえどここまで装者が、世界の変動が起きなかった、回避した世界は今まで見たことがなく思わず目を見開く。

 

「………あたし達の世界も6名で装者は多いと思ってましたが、こちらの世界もすごいデスね……10名って」

「………そうだね。こんなにも沢山の装者が揃っている世界は初めて見た」

 

調とコソコソ話をしているとあっちの司令が集まった装者のみんなへと声をかける。

 

「みんな、急な呼び出しによく答えてくれた」

「なんだよ。弥十郎の旦那、今更じゃないか、水臭いな」

「そうそう。うちらはアルカノイズや敵の襲撃から市民を守るためにあるんだからね」

「それで今日はどんな敵が現れたんですか?」

 

ニカッとあちらの翼さんの隣で笑う長い赤毛の女性は恐らく天羽 奏さんで、翼さんの左隣にいる同じくらい明るめの髪を持つ女性はあたしの世界にもこれまで見てきた世界にも見たことがなく、マリアの隣でひっそりと佇む茶色髪にピンクの花の髪飾りをつけている少女、セレナ・カデンツァヴナ・イヴに懐かしい気持ちになる。

 

「今日は集まってもらったのは新しい敵のことではないのだが、お前達の耳にも入れておいたほうがいいと思い、集まってもらった。それじゃあ、あっちの翼、説明頼めるか?」

「はい」

 

あっちの司令に名前を呼ばれた翼さんは一歩前に出ると勢いよく頭を下げる。

 

「話をさてもらう前に皆さんへと謝罪させて欲しい。本当にすまない」

「え? へ? あっちの翼さん、やめてくださいよ。謝れることなんて何もないんですから」

「響のいう通りですよ。翼さんが謝るなんてこと何一つありませんよ」

 

突然、頭を下げた翼さんにあっちの響さんと未来さんがあたふたしながら言うのを聞いて、翼さんは顔を上げると寂しそうに微笑んだ後にあたし達の世界にて敵の襲撃を受けてあの子が意識不明の重傷であること、そうなってしまった経緯を説明する。

 

翼さんの説明を聞き終わったあちらの装者のみんなは其々心配そうな表情をしてはいるものの誰一人としてあたし達へと怒りを浮かべている者は居なかった。

 

「もう一度謝らせて欲しい。貴女達の世界の大切な人を危険な目に合わせた上に命に関わる危険な状況にしてしまってすまない」

「ごめんなさいデス」

「ごめんなさい」

 

三人で頭を下げた後にあたしと調は説明の時、一言も発さずに黙って話を聞いていたあっちのあたしの前まで来ると同時に頭を下げる。

 

「貴女の大切な妹を危険な目に合わせてしまってごめんなさい」

「あたしが貴女の妹を守るって言ったのに、守れなくてごめんなさい」

 

頭を下げるあたし達を暫し見た後にあっちのあたしはカキカキと頭をかきながら、ニコニコと笑いを浮かべると困ったような声音を出す。

 

「い嫌デスよ、あっちのあたしも調も〜。そんな風に謝らないで欲しいのデス。きっと今回もあの子がいつものように無茶に無茶を重ねてから大変な事になっているだけなのデスから。だから、二人が……もちろん、あっちの翼さんやあっちの皆さんが謝る必要なんてこれっぽっちもないんデスよ! 全く歌兎はいけない子デスねっ。あっちの皆さんをこんなに心配させるなんて、これは意識が戻ったらあたしがガツンと説教してやるのデス!」

 

そこまで言った後にあっちのあたしはあっちの司令の方へと近づくとにこやかにお願いを口にする。

 

「ということで、風鳴司令。あたし、暫くの間あっちの世界にお邪魔してもいいデスか?」

「そうだな。歌兎くんが目を覚ました時に切歌くんが居てくれる方が心強いだろう」

「やったのデス! そうと決まれば、早速あっちに行く準備をするデスよっ!! 調、セレナ 手伝って欲しいのデス!!」

 

あっちの司令からあたし達の世界に滞在する許可を得たあっちのあたしはあっちの調とセレナの手を握るとバタバタと慌ただしくミーティングルームを後にして行く。

その背中を見送ったあたしと調はまだ不安そうな顔をしていたのか、近くにいたあっちのクリス先輩が微笑みながら声をかけてくれる。

 

「ま、あの過保護が気にすんなって言ってんだ。お前らも先輩も気にすることはない。大体、あのチビは自分を大事にしなさすぎるんだ。これもそれもあそこにいるバカ師匠の影響を受けた所為だな」

「酷いよ、クリスちゃ〜〜ん。私は至極真っ当に歌兎ちゃんに技を教えているつもりなんだよ!」

「つもりってことは響も歌兎ちゃんが師匠の悪い影響を受けているってことを認めてるんじゃないかな」

「も〜〜、未来まで酷い〜〜」

 

ポカポカと隣にいる未来さんを叩く響さんはあたし達の世界にでも広がっている日常でついさっきまで張り詰めていた緊張が一気に解けていくのを感じると思わず口元が緩み、笑い声が漏れ出る。

 

「…ふふふ」

「…あはは」

 

それを見て、未来さんをポカポカしていた響さんも、響さんにポカポカされていた未来さん、そして暫くの様子を見守っていたあっちの翼さんや奏さん、マリアと名前を知らない女性も口元に笑みを浮かべる。

どうやら、さっきの響さんイジメはあたし達の緊張をほぐそうとしてしてくれたことだったのかもしれない。

 

「そうだ。お前らに一つだけ頼みたいことがあるんだった」

 

そう言って、あたし達に近づくと両手を出すように言ってからポンとあたしの掌へとあるものを置いた。

クリス先輩の手がのけた先にあったのはたら〜んと垂れた水色の耳の端に藍色のリボンをつけて、眠たそうに目を見開いているウサギのぬいぐるみがついたキーホルダーで。

どこかで見たことがあるデザインだと思ったら、このうさちゃんキーホルダーはクリス先輩のスクールバッグにいつもの付けているものでどうやらあたしの掌にあるのはあのキーホルダーの色違い……青バージョンのようだった。

 

「これでクリス先輩がスクールバッグに付けているうさちゃんデスか?」

 

とあたしが尋ねるとあっちのクリス先輩は僅かに頬を赤く染めるとそっぽを向く。

 

「ああ、あのチビが前に欲しいって言ってたから色違いのものを用意していたんだ。本当はこっちに帰ってきたら、直接あたしが渡そうと思ってたんだが、そうも言ってられない状況だからな」

「……」

「このキーホルダーは出来ればチビの手に握らせて……いいや、別に握らせなくてもいいからっ! あのチビの近くに置いておいてくれ! 頼んだからな!!」

 

早口で頼み事を言ったクリス先輩の顔がますます真っ赤に染まっていくのを見つめながら、掌に乗っかっている色違いのうさちゃんキーホルダーを見てからコソッと隣にいる調に耳打ちする。

 

「…………調、調」

「…………なに? 切ちゃん」

「…………これって、そういうことなんデスかね? あの子とこっちのクリス先輩が……っていう」

「…………どうなんだろ? 色違いのものなら私と切ちゃんもシュシュとかお揃いしてるから。特別に仲のいい友達っていう可能性もあるよ」

「…………でも、こっちのクリス先輩、顔真っ赤かデスよ。特別に仲のいい友達にキーホルダーを送るだけでここまで真っ赤になるデスか?」

「…………切ちゃん、よく考えて。クリス先輩なら友達にも顔を真っ赤にするはず」

「…………デスね。でも、もしそうなら嬉しいデス」

「…………うん、あの子とこっちのクリス先輩、お似合いだもの」

 

そう結論づけて、二人して生暖かい視線をあっちのクリス先輩に送ると耳まで真っ赤にしてから怒鳴り声をあげる。

 

「んだよ、その生暖かい目はっ!? なんか言いたいことがあるから言ってみろっ!!」

「いいえ、特になにもないデスよ」

「はい、特に何もないです」

「特になにもないって顔じゃないだろ!?」

 

尚も突っかかって来ようとするあっちのクリス先輩はあっちの響さんと未来さんによって抑えられてから三人はあっちのあたし達のように廊下へと姿を消すのを見届けてからあっちの翼さんと奏さん、マリアと名前を知らない装者があたし達へと近寄ってくる。

 

「いやー、びっくりするほどうちの世界の切歌、調、翼に似ているんだな」

「当たり前でしょう、カルマ。並行世界なんだから」

「並行世界って言われてもな……ピンともこないわ」

 

あっちのマリアにつっこまれながらもヘラヘラと笑う女性を見て、眉をひそめるあたしと調、翼さんに女性は笑いを引っ込めると自己紹介してからぺこりと頭を下がる。

 

「うちの名前は珠紀カルマ。元ミョルニル装者で今は装者というよりかはサポート専門でやらせてもらっている。よろしくな」

 

カルマと名乗った女性の自己紹介文の中で気になる文があり、あたし達は顔を見合わせる。

 

「ミョルニルとはあかつ……歌兎のギアか?」

「えぇ、歌兎が身につけているものは元々はカルマの、そして私のだったのよ」

「マリアのデスか!?」

「こっちのマリアのギアはガングニールでもアガートラームでもないんだ……」

「並行世界というのは面白いものだな」

 

三者三様で驚いてみせるあたし達にあっちのマリアは"ふふふ"と得意げに笑う。そんなマリアの側から顔をのぞけてから声をかけてくれるのはあっちの翼さんだ。

 

「こちらの切歌達が準備を終えるまでまだ時間が掛かるだろう。どうだろう、その間S.O.N.G.の客間にて一休みしてきたら」

「そうだな。あっちの翼はともかくお二人さんは目の下にくっきりクマをつけてるからな。そんな調子であっちに帰ってから戦闘なんてなったら大変だぞ」

 

あたし達の疲労を感じて純粋に心配してくれているあっちの翼さんに合わせるようにニカッと笑ってから遠慮しているあたし達が休息しやすいように冗談交じりに声をかけてくれる奏さんの言葉に甘えるようにあたし達はこっちのあたし達が準備を終えるまでという期間を決めてたから客間にて一眠りするのだった。

 

 

 

 

 

5.

 

あっちのあたし達の準備が終わったことを知らせてくれたのはあっちのマリアと翼さんで僅かとはいえ休息できた事で感じていた気だるさが消えていることに後になって気づいて、無理はしてないと強がっていてもやはり心の何処かで無理や疲労を感じていたことを思い知らされる。無理もない、一睡する前に様々なことが起こりすぎてしまった……それにあの子のあんな姿を見てしまったんだ、悠長に自分だけ寝ているなんて出来るわけない。

 

(はぁ……あたしって、本当に未熟なんデスね……)

 

そんな事を考えているとギュッと左手を握られる感触を感じて、ハッと横を見てみると調が微笑みながらあたしの手を握っていた。

 

「……調?」

「……未熟なのは私も一緒。だから、二人で強くなって行こう」

「……そうデスね、二人で強くなっていくデスよ」

 

調の手を握り返しているとドタバタと慌ただしい足音共に大量の荷物を背負い、持ったあっちのあたしが姿を現して、その後からピンクのリュックと白いリュックを背負ったあっちの調とセレナが駆け込んでくる。

 

息を切らしている二人と違い、あっちのあたしはニコリとあたし達へと笑うとビシッと敬礼する。

 

「お待たせしたのデス!」

「いいや、待ってなんていないさ。それよりもーー」

 

あっちのあたしから視線を逸らした翼さんはその後ろで息を整えているあっちの調とセレナへと視線を向ける。その視線に気づいた二人は姿勢を正すと同伴することになった理由をかわりばんこに話す。

 

「ーー切ちゃんだけじゃ不安だから、私とセレナも一緒に行かせてほしいって司令にお願いしたんです」

「最初は渋い顔をしていたんですけど、マリア姉さんとカルマさんが説得してくれて……私達も行かせてもらうことが出来るようになったんです」

「そういう事なら大歓迎」

「三人も来てくれたら、鬼に小判デスよ!」

「切ちゃん、それをいうなら鬼に金棒だよ」

「あはは、そうデスか」

 

調に間違えを正され、あっちの調とセレナにクスクス笑われるのを照れ笑いを浮かべていると近くから翼さんとあっちのあたしの話し声が聞こえてきた。

 

「所であっちの暁、その荷物の量はなんだ?」

「にゃっ? この荷物は歌兎とあたしの着替えや必要なものを詰め込んだものデスよ」

「……そうか? だが、私の目からは右手に持っているケースなどは要らないと思うのだが……」

「翼さんっ!! このケースこそ必要なものなんデスよ!?」

「そ、そうなのか?」

 

前のめりで食いついてくるあっちのあたしに翼さんもタジタジであの凛々しい雰囲気を崩さない翼さんの新たな一面が見れて嬉しく思う。

 

「このケースの中には歌兎のポーチへと常に装備されているものが入っているのデス」

「ポーチ? あぁ、あの子が常に腰から下げているものか。ふむふむ、様々なものがあの小さな所に入っているのだな」

「そうなんデスよ! あたしのお気に入りはなんといってもこれデス! これはあたしが歌兎の為を思ってーー」

 

その後、あっちのあたしが考えたという結晶のボールの説明を聞きながら、あたし達には元の世界へと戻ったのだった。




という事でどうだったでしょうか?

歌兎はまだ目を覚ましてない危険な状態ですが、大好きな姉様がやってきてくれる。切ちゃん達が病室に訪れてくれるだけでも嬉しく感じ、目をあっさりと覚ましてくれそうな気がします(笑)
彼女は本当に姉様な事が、切ちゃんの事が、装者のみんなのことが大好きですからね(微笑)

改めて、この【はっぴーにゃっぴーのうた】の目的を書かせていただくと……最大の目的は《"かぞく"とはなんなのか?》を解き明かしていく事。
本当は完全に原作の切ちゃんを救おうと思ったのですが【君が泣かない世界に】を聴かせていただいて、余計な事をして二人の絆を壊してしまうよりもそこに歌兎や本作の切ちゃん達を加えていくことによって起きる化学反応によって、原作の切ちゃんが《"かぞく"》という事を知っていく話を、個人的に切ちゃんが心からはっぴーにゃっぴーになれる世界を……話を作りたいなぁと切に、切にそう思いました。

あと、この話が終わった後でいいから、切ちゃんと歌兎に思いっきりお肉を食べさせてあげたいと思います(固く誓う)




続けまして、XVの第3話の感想を書かせてもらうと思うのですが……前からテンションが上がりすぎて、ついつい長文になってしまうので、今回からあまり長文にならないように心掛けながら書いていこうと思います! 特に今回は本編が長文だったのであまり長いと読むのが疲れると思うので……。

注意喚起。これ先は第3話はネタバレかつ作者の変態コメントが連なっていきます。そういうのが嫌な方は迷うことなく、回れ右か高速スクロールをお願いします!!





今回は最初から最後まで乗り沢山のストーリーでしたね!!
エルザちゃん、ミラアルクさん、ヴァネッサさんが名乗っている【ノーブルレッド】の目的やその三人の絆、そしてその三人を裏から支援しているのが【風鳴 訃堂さん】だったりとかその訃堂さんが意味深な事を言ったりなどなど。

また、変態バンクは今回はクリスちゃんと調ちゃんの二人でしたね!!
まず、クリスちゃんの変身バンクですが……可愛いというよりもかっこいい系だなと思ったのと最後の最後に『ばぁん』が聴けたのに感涙しました! が、胸元に埋まっている銃弾をバウンドさせてから銃に挿入するのがカッコいいと思う反面、『あの銃弾になりたいなぁ』と思ってしまいましたブレない変態)
続けて、調ちゃんの変身バンクですが……今回はエロいというよりも可愛い系でしたね!! リンクをスイスイと滑っていく調ちゃんは可愛らしく、途中でイナバウアー(?)した際に身体を駆けていくヨーヨーに『あっ、ヨーヨーになりたいなぁ』と思いましたが、ハートマークの後に『キリ』というのは狡いなぁ…と思い、『ヨシ』とガッツポーズ(?)をするところは同じくガッツポーズしました!やはり調ちゃんは可愛いです!

可愛いといえば、切ちゃんが『常識的に考えて』で推理した病院の予想があった時の二人の『あ……あぁああああ』の顔は頬が緩んでしまうほどに可愛かったですね!

そして、ミラアルクさんへの目的などを質問してから攻撃するシーンは二人が響ちゃんと考え方に似てきているなぁ〜と思いました。先輩のいいところを真似していって強くなっていってほしい…。

その響ちゃんはクリスちゃんとの戦闘シーン、すっごいカッコよかったですね!!
クリスちゃんが銃を上と下でゆっくり動かすシーンやクリスちゃんの見事に援護した響ちゃんとクロスした歩き出すシーンとか『え? え? これって映画!?』と思ってしまいました(笑)

最後に気になるシーンは月とイガリマがピカーンと光るシーンがね……なんか気になるんデスよね……。
私の思い違いとかなら良いけど……





調ちゃんのCDが24日に発売されましたね〜♪
早速【君が泣かない世界に】を聴いたところ、涙が溢れてきました……。
この曲は【はっぴーばーすでーのうた】のアフターソングでもあるのですね……。
また、『私が君を離さない』など、切ちゃんへの愛がふんだんに詰まっており、もう涙がね……切ちゃん、調ちゃんにこんなに思ってもらえてよかったね……と純粋に思いました。
しかしそれだけに『私を信じて』の歌詞に引っかかってしまう、何がこんなに引っかかるのかはよく分からないけど(汗)






ここからはXDのご報告なのですが、先日海賊ギア切ちゃんの極MAXまで解放することができ、早速ボイス2を聴いたのですが……うん、良かったです……切ちゃんの可愛さに一気に私は天に召されました……。
また、極イベントも実に切ちゃんらしいもので、終始ニヤニヤしながらプレイさせてもらいました!








また、今日は奏さんの誕生日という事で、フレンドサポート欄を恒例で誕生日の主役の人、その人と仲のいい人で埋め尽くそうと思います!
今回の誕生日の主役は奏さん。奏さんといえば翼さんという事でツヴァイウィングのお二人のシンフォギアカード・メモリアで埋め尽くそうと思います!!
シンフォギアカードは今丁度【片翼の奏者】が復興しているので、イベントのアイテムが多く入る限定解除したお二人を並べようと思います。
お二人を育てたり、覚醒するのに時間が掛かるので更新してすぐにお二人にとは出来ないと思いますが、なるべく早くお二人に出来るように頑張ります!

お二人を並べている期間はイベントが終わる期間まで置いておいても良いかなぁ〜と思ったのですが、1週間がいいと思うので、来週の日曜日までしようと思います!

最後に、奏さん誕生日記念のブログでの翼さん、めっちゃ可愛いかったですね!! もうニヤニヤが止まらなかったです(ニヤニヤ)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ep2ー不安と空元気

二話目です。

ここ最近、書くのに難しいと思うのは切ちゃんが笑うシーンです。
"ニコニコ"や"満面"などなど笑顔を指す言葉はあれど、それを適切にかける文章力が私にはないように思えて……なので、本編でも適切ではない文章があるかもしれません(大汗)

それでは、本編をどうぞ!!


※すいません……今回の2話も総文字数"1万ちょい"となってしまいました……。溢れ出る気持ちを抑えきれなかったんだ………(大汗)


6.

 

「うっわ〜〜ぁ!! ここがあっちの世界なんデスね〜!! 歌兎の言ってた通りデス! 街並みも全部あたし達の住んでいる世界に似ているデスよ!!」

 

キョロキョロと辺りを見渡しながら、大量の荷物が重そうに揺らしながら大はしゃぎしているあっちのあたしへと右手を差し出す。

 

「荷物どれか持つデスよ、あっちのあたし」

「へ? い、いいデスよ〜。これはあたしのなんデスから。あたしが持つのが義務ってもんデス」

「いいから、あたしに任せるデスよ」

 

ポンと胸を叩いてない側の手に持っていた手提げをやや強引に奪うあたしを見て、あっちのあたしは暫し目をパチクリさせてから頬を僅かに膨らませる。

柔らかそうな頬がだんだんと丸みを帯びていくのをみながら、ついついクスクスと笑ってしまう……どうやら、あっちのあたしは時と場所によって大人っぽい表情や子供っぽい表情を見せてくれる不思議な魅力を持っている人らしい。

 

「むぅ……こっちのあたしは意外と強引なんデスね……。分かったのデス、その手提げだけ頼めるデスか」

「任せてほしいデスよ」

 

ポンっと胸を叩いてから、あっちの調の荷物も預かってからトコトコと六人でS.O.N.G.の本部へと歩いていく。

その道中、調があっちの調が着ているS.O.N.G.の制服と自分が今現在身につけている制服を交互に見て、僅かに眉をひそめていらのを見て、あっちの調が調へと問いかける。

 

「どうしたの? こっちの私」

「その……同じS.O.N.G.の制服でも色合いが違うと思って」

「確かに私達は水色が中心的だけど、こっちは青色が中心的なんだね」

 

言われてみて、隣を歩くあっちのあたしの制服とあたしの制服を交互に見てみると確かにあたしの世界の制服はジャケットが青中心に水色が僅かに入っていて、短パンも青なのだが……あっちの制服はジャケットが水色中心に青が僅かに入っていて、短パンも水色の一色だ。

 

(簡単に纏めるとあっちの制服はこっちの制服の色が逆転したものってことデスかね)

 

調とあっちの調の会話にあっちのセレナと共に先頭を歩いていた翼さんが興味深そうに腕を組むと隣のセレナと自分の制服を交互に見て深くうなづく。

 

「ふむ。同じような時間軸を進んできたというのに僅かに制服に違いが出るとは面白いものだな」

「そうですね。私、こちらの制服のデザイン好きです。青が中心だとグッと大人っぽくなるんですね」

「私もそちらの制服のデザインも好きだぞ、水色を中心にすることで爽やかな……そうだな、清楚な雰囲気になるのだな」

 

お互いの制服を褒め合う翼さんとあっちのセレナを見て、あっちのあたしは何かを思いついたのか、褒め合う二人の間に割って入ると右手を上に上がる。

 

「そうデス! 折角なので、こっちのあたしと調も一目でわかるようにしませんか?」

「分かるようにとは具体的にどうするのだ? あっちの暁」

「それを決める前に翼さんッ!!」

 

あっちのあたしにビシッと指をさされる翼さんは勢いに押され、一歩後ろへと後退りする。

あの凛々しい翼さんが後退りするということはよっぽどあっちのあたしの熱意があついということだろうか?

 

「な、なんなのだ、あっちの暁……」

「こっちのあたしに聞きました。翼さんはあたしの妹である歌兎を呼ぶ時も今のあたしのような呼び方をしていると」

「あ、あぁ……それがーー」

「ーーどうしたじゃないデス! 歌兎が目を覚ました時に同じ呼び方だと色々不憫じゃないデスか!」

 

翼さんのセリフを遮ったあっちのあたしはブンブンと両手を振りながら、翼さんにのしかかる勢いでつっかかってくるのを頬へと僅かに汗をかきながら両肩へと手を置いて抑えようとする。

 

「あ、あぁ……そうだな……。それで私にどう改善しろというのだ?」

「そんなの簡単デスよ! どちらも下の名前で呼んでほしいデスよ、あたしは切歌、妹は歌兎って」

「暁姉や暁妹では駄目なのか……?」

 

翼さんとしてみたら呼びなれた方を僅かに変えるくらいがいいと思っての提案なのだろうがあっちのあたしはチッチッチと右人差し指をリズミカルに横に振るとその提案に反論する。

 

「切歌や歌兎に比べて暁妹や暁妹は文字数が多いじゃないデスか。戦闘中やもしもの時に噛んじゃったりしたら大変デス」

「いや、呼び慣れれば特に支障はーー」

「ーー万が一も無いと言えますか? 本当の本当に? あたしの提案にのらなかったことに後悔しませんか?」

 

やけに意味深にそういうあっちのあたしについつい折れてしまった翼さんはしぶしぶと言った風にあっちのあたしの提案を飲む。

 

「……あいわかった。あっちの暁……いいや、切歌のいう通りにするとしよう」

「ありがとうございます、翼さん! ということで、こっちのあたしも調もあたしのことは"切歌"や"切歌ちゃん"って呼んでほしいデスよ!」

 

そう言って自分の事を指差すあっちのあたしはトテトテとあたしの元に駆け寄るとニッコリ笑顔を辺りへと振りまく。

 

「 あたしもこっちのあたしの事を切歌って呼びますし、調の事はどうしましょう……"調ちゃん"……デスかね?」

「ふふふ。あっちの切ちゃんでも"ちゃん付け"はなんだか擽ったい」

 

クスクスと笑う調にあっちのあたし……切歌も同じように擽ったそうに微笑みながら頭をかくと身振り手振りで調と話をしている。

 

「あはは、あたしも慣れないデスけど……調達だけ呼び方を変えないのは不公平デスし、何よりもいちいち"あっちの"って付けるのはめんどくさいデスからね。それとも違う呼び方にしますか?」

「んー、違う呼び方っていうと……切ちゃんからヒントをもらって"しらちゃん"とか?」

「うっわぁあああ!? しらちゃん、可愛いデスね!!」

 

調の両手をガシッと掴んで、嬉しそうに上下にブンブンへと動かす切歌の様子に嬉しそうに微笑んだ調は切歌に関する呼び方も提案する。

 

「気に入ってもらえたようで良かった。なら、私はあっちの切ちゃんの事を"きーちゃん"って呼んでいい?」

「もちろん、いいデスよ!! あたしもこっちといっても調から"切歌ちゃん"は照れ臭かったデスから」

 

どうやら、切歌と調がこちらで呼ぶ呼び方が決まった様子であたしはあっちの調へと視線を向けると同時にあっちの調が話しかけてくる。

 

「私達はどうする? 切ちゃん」

「そうデスね……あたしも切歌と調と同じ呼び方でいいと思うデスよ」

「うん、どっちも可愛い呼び方だもんね」

「改めて、しらちゃん、よろしくお願いするデス」

「うん、こちらこそよろしくね、きーちゃん」

 

其々改めて固い握手を交わした後にパチンと両手を叩いた切歌がやっと本題に入れるといった様子で"やれやれ"と見えない汗を拭った後にトテトテとあたしの側に寄ると自分とあたしを交互に指差す。

 

「さて、呼び方が決まったところで次は外見デスね」

「でも、切ちゃん。私達とこっちの世界の制服は違うんだよ。こんなに大きな変化なら見分けるのも簡単だと思うけど……」

「デスが、それは制服を着ているときの見分け方デス。私服を着ている時はきっと見分けがつかないデスよ」

「そうだね……」

 

困った様子で腕を組むしらちゃんに切歌は"フッフッフ〜"と得意げに笑うと腰に巻いていたポーチからある物を取り出すとあたし達に見えるように掌に乗せるとニコニコと満面の笑顔を浮かべる。

 

「という事で……ジャジャーーン!!! あたしはこっちにいる時はトレードマークの✖️(ばってん)マークの髪留めからこのうさちゃん髪留めにしようと思うデスよ! 切歌、どうデス? 似合ってるデスか?」

 

✖️(ばってん)マークの髪留めからうさちゃん髪留めに早速変えた切歌はあたしへと顔をグイッと近づけると軽く顔を横に振っている。恐らく、揺らすことによってうさちゃん髪留めへとあたしの視線を向かわせようとしているのだろう。

 

(よく見るとこのうさちゃん髪留めって、うさちゃんの右耳のところに小さな✖️(ばってん)が付いているんデスね)

 

小さな✖️(ばってん)マークが付いたピンク色のうさちゃんの髪留めはいつもは大きな✖️(ばってん)がある所にあっても、あたしの目からしても充分可愛らしく似合っていると思えた。

なので、切歌と同じように笑うと思った通りの感想を述べる。

 

「うん、似合ってるデスよ、切歌」

「えへへ〜、切歌がいうのなら間違いはないのデス!」

 

あたしの意見を聞いた後、切歌は快晴の空に浮かぶ太陽のように辺りを忽ちに明るくしてしまうような笑顔を浮かべるとその場をピョンピョンと跳ねたり、クルクルと回ったりと幼子のようにはしゃぐ。

そのはしゃいでいる様子を穏やかな表情で見守るが翼さんとセレナで、調としらちゃんは切歌が足元を見ずにはしゃぎ回るので石に(つまず)かないかと心配している様子で、あたしはというと切歌がはしゃぐ度に上下に揺れるうさちゃん髪留めへと視線を向けては遠い記憶を引っ張り出そうとしていた。

 

(あれ? でも、あのうさちゃん髪留めって……)

 

切歌に見せてもらう前に誰かが付けているのを無意識に見ていた気がする。それが誰なのかは記憶の引き出しを引っ張り出しているのだがどうにも見つからずにいたところ、隣にいたしらちゃんが戻ってきた切歌へと向き直るとツインテールを解く。

 

「なら、私はここにいる時はツインテールからポニーテールにしようかな」

 

サラサラッと風に遊ばれる漆黒の髪を慣れた手つきで一つにまとめたしらちゃんはしっかり結んだことを確認した後に様子へとブンブンと振る。

 

「ふむ、確かにこれなら制服の時も私服の時も見分けがつくな」

 

隣同士で並ぶ"暁 切歌"と"月読 調"に翼さんとセレナがうなづく中、切歌はしらちゃんとセレナへと抱きつくと翼さんへと屈託ない笑顔を浮かべる。

 

「そうデス! 翼さん、あたし達の調も下の名前で呼んでほしいデスよ」

「そうだな。月読も二人いるのだから、そちらの世界の月読を切歌と同じように下の名前で呼ぶのは(どお)りかもしれない」

「それなら、セレナもセレナって呼んでほしいデスよ。カデンツァヴナ・イヴって長いと思いますから」

「ふ、ふむ……あいわかった。そちらの世界は全員、下の名前で呼ぶのだな」

「よろしくお願いしますデス」

 

ぺこりと頭を下げた切歌達と共にS.O.N.G.本部へと辿り着いたのはそこから数十分後だった。

翼さんが前もって司令に"あっちの世界から暁 歌兎の容態を心配し、姉である暁 切歌と月読 調、セレナ・カデンツァヴナ・イヴの三名が我々と同行"という報告をしてくれていた為、港に止まっている潜水艦に辿り着いた時には三人の部屋が割り振られており、三人は礼儀正しくお礼を言った後に其々の部屋に荷物を置くと司令とあたし達の世界の装者達が待つミィーティングルームへと足を踏み入れたのだった。

 

「今日からお世話になるデス」

「お世話になります」

「お世話になります」

 

そして、三人揃ってまずは司令に礼をした後に、何処か暗い表情を浮かべているこの世界の装者とS.O.N.G.のスタッフへと頭を下げる。

三人の礼が終わるのを見た後に司令が三人へと声をかけるのをただ黙って聞いている。

 

「三人ともよく来てくれた。事情は翼から聞いている。きっと歌兎くんも三人が来てくれて嬉しく思っている事だろう」

 

そこでセリフを切った司令は表情を渋くすると勢いよく三人へと頭を下げる。

 

「……今回の件は全部この組織を預かっている私の責任だ。申し訳ない。こんな言葉では君たち三人、そしてあっち側で歌兎くんの無事と帰りを待っていた皆の気持ちに比べれればこのような言葉では足りないと思うが、受け取ってほしい」

「顔をあげてほしいデスよ、こっちの風鳴司令。こっちのあたしや調、翼さんにも言いましたが、今回のことは全部あの子の……歌兎の責任なんデス。昔からあの子は一人で物事を抱え込んでは、一人突っ張ってしまうんデスから……本当に困った子なんデスよ。そして、歌兎のことをそんな性格に育ててしまったあたしにも責任はあるんデス。あたしの方こそごめんなさいデス。うちの妹が皆さんに心配をかけてしまって」

 

その後も司令と切歌が頭を下げあう光景が続き、最終的に根気が折れたのは司令の方で頭を下げたままの切歌に苦笑いをすると三人の今後の予定を尋ねる。

 

「これから三人は歌兎くんのお見舞いに行く予定なのかな?」

「はい、そうさせてもらう予定です」

「歌兎の部屋から歌兎が喜びそうなもの沢山持ってきたから……」

「あんなものやこんなもの、歌兎が起きたらびっくり仰天してベッドから落ちちゃうデスよ!?」

 

身振り手振りでどれだけすごいものを持っていたのかを説明する切歌はハッと何か思い出したような顔をすると司令を見つめる。

 

「その……こっちの司令、あたし達がここに来るまでに歌兎の容態って変わり ありましたか?」

「そうだな。あちらの切歌くん達はさっき此方に着いたばかりだからな。エルフナインくん、歌兎くんの容態について説明を頼めるか?」

「はい、分かりました」

 

司令に呼ばれたエルフナインは自分の席から立ち上がってから切歌達の前まで進み出ると手に持っているタブレットを操作して、前のスクリーンにあの子のレントゲンと何故か右腕だけを写した写真を映し出す。

 

「まず、右側の写真が歌兎さんのレントゲンで、右胸の刺し傷は思っていたよりも深かったのですが、歌兎さんのメギンギョルズの特性"個人の能力の倍増"により歌兎さんの治癒力が倍増され、右胸の刺し傷はもう既に綺麗に塞がりつつあります」

「流石、歌兎のメギンギョルズデス。…………そうデス、あの子はそんなに弱くないんだから……あの子は強い子なんだから……こんなところで死んじゃったりするわけないんデス

 

スクリーンに映し出されているレントゲンを睨みながら、ボソッと切歌が何かを呟いている気がして、そちらを見るとあちらの世界で出会った時のような穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「ですが、傷は塞がっていても血液は足りない状態で今は輸血を常に歌兎さんへと刺している状態です」

 

そこでセリフを切ったエルフナインは続けて、左側のあの子の右胸だけを写している写真をドアップにすると膝のところについてある"赤い二つの小さな穴"を映し出すと説明を続ける。

 

「歌兎さんは右胸を刺されていましたが、その刺し傷は救護班の皆さんに運ばれる前にはもうメギンギョルズの力で塞ぎかけていたと思います。恐らく、屋上に叩きつけられた時からゆっくりと塞いでいたと思います。

なのに、圧倒的に血液が不足している……窪みの前、細い通路の点々としたものやシャツに染み付いたものから計算しても不足してい分が説明がつきません。

そこでボクが着目したのは右腕に残されているこの二つの小さな穴です」

「……小さな穴」

 

青白い肌に浮き上がる二つに分かれた脈絡の其々に何ミリ程度の小さな穴が空いており、僅かに赤らんでいる。

 

(それに小さな穴が綺麗に横に並んでいる?)

 

あれ? この横に並んでいる小さな穴は何処かで見たことがあるような………そう、ごくごく最近にあの子とあたし、調の三人でソファに座って、そんな話を見ていたようなーーあぁああああ!!!!

 

「……っ!? も、もしかして、あの子を襲ったのって吸血鬼っていうんデスか!?」

「デッ!?」

 

見事に同期した動きで隣にいる調としらちゃんの背へと隠れそうになるあたしと切歌を見て、周りにいた装者達がクスクスと笑う。

そんなあたし達を見渡したエルフナインは首を縦に振るとあの子の右胸についた小さな穴を丸く囲む。

 

「こちらの切歌さんが言ったように……歌兎さんを襲ったのは吸血鬼というのが現状では一番可能性が高いと思います」

「うへぇ……マジデスか」

「切ちゃん。顔、顔」

「デッ!?」

 

目に見えて切歌の顔が歪んでいくのを見て、あっちの世界でも過去に"吸血鬼にまつわる事案"が起きていたのは安易に想像が出来て、あたしも知らずに表情が歪んでいく。

 

「まだ可能性ということなので。ボクは引き続き、歌兎さんの血が少なかったことについて調べていこうと思います」

「あぁ、よろしく頼む」

 

司令に頼まれたエルフナインはぺこりとあたし達に頭を下げてから切歌達の方を向くとある提案をする。

 

「これから、あちらの切歌さん達はこれから歌兎さんの病室に向かうのですか?」

「えぇ、これから歌兎に三人で会いに行こうと思っているデスけど……」

「それならボクがあちらの切歌さん達を案内します。丁度、研究室に帰ろうと思っていたので」

 

三人はお互いの顔を見渡してから"折角ならエルフナインの提案にのろう"ということになったらしく、代表として切歌が返事を返すことになり、一歩前に出ると膝を折ってからニッコリとエルフナインへと微笑みかける。

 

「こっちのエルフナイン、案内よろしくお願いできますか?」

「はいっ、任せてください」

 

そう答えてから、エルフナインは早速三人をあの子の病室に連れていくことにしたらしく、タブレットを胸に抱いてからミーティングルームを出ていく小さな背を追いかけるように、ぺこりと司令へと最後に頭を下げてから三人がルームを出ていくのを見ていたあたしは三人の最後に出ていく前だった切歌へと走っていって声をかける。

 

「あっ、待ってほしいのデス! 切歌」

「ふぇ? なんデスか? 切歌」

 

呼び止められた切歌は垂れ目がちな黄緑色の瞳をまん丸にして走ってくるあたしを見つめてくるのに薄く笑ってから、両手を差し出すように言ってからあっちの世界で預かったあのキーホルダーを掌へと乗っける。

 

「……これはクリス先輩のキーホルダー……色違いデスね」

 

あたしの手が退けた後に自分の掌に乗っかっていたのは、垂れ目な瞳が可愛らしく、藍色のリボンを垂れている水色の耳を巻いている水色の兎が付いているキーホルダーを暫し見つめている切歌へと頬をかきながら、あちらの世界のクリス先輩に頼まれたことを告げる。

 

「はい、貴女の世界のクリス先輩に頼まれたんデスよ。"あのチビの手に握らせるか、近くに置いてほしい"って」

「……………クリス先輩」

 

一瞬、掌に置いてあるクリス先輩と色違いのうさちゃんキーホルダーを胸に抱きしめた切歌の雰囲気が一瞬変わった気がして、目をジタバタさせるがすぐに雰囲気が元に戻ったことから見間違いだと判断してから話を続ける。

 

「これから切歌があの子の所に行くなら、あたしじゃなくて切歌に任せた方がいいとおもーー」

「ーーいいえ、これは君が持って行ってほしいデスよ」

 

あたしのセリフを遮った切歌は静かに微笑むとあたしの掌へと色違いのうさちゃんキーホルダーを静かに握らせる。

 

「……え? で、でも、あたし これから訓練があるデスからきっと遅くなるはずデスよ」

「それでもこのキーホルダーはあたしじゃなくて君がクリス先輩に頼まれたものデスから。きっとクリス先輩もあたしよりも切歌の方がいいって判断しての事だと思うので」

「……そういう事なら」

 

静かに微笑む切歌がさっきまで騒いでいた人物と同一人物と思えないくらいに大人びていて、思わずキーホルダーと切歌を交互に見ていると廊下付近から大きな声が聞こえてくる。

 

「切ちゃん〜!!」

「暁さん〜!!」

「はーーい、今行くデスよ〜〜! って事で切歌、そのキーホルダーの事よろしくお願いするデスね」

 

しらちゃんとセレナに呼ばれたこともあり、切歌はもう一度あたしに念を押すとタッタッと廊下へと駆けていった。

 

 

 

 

 

7.

 

「……うぅ……すっかり遅くなっちゃったデス……」

 

今日の訓練を終えたあたしはあちらの世界のクリス先輩、そして切歌との約束である色違いの水色のうさちゃんキーホルダーを胸に抱くと調に"先に帰っててほしいデスよ"と告げてから、早足であの子の病室へと向かい、中に入ろうとした瞬間に中に誰かいる気配と話し声が聞こえて、ドアノブを握ろうとしていた右手をピタっと止まり、止まった右手を自分の方に引き寄せてから隙間へと顔を近づけると病室内を盗み見る。

 

(話し声が聞こえてくるデス……)

 

僅かに空いている隙間から中を覗き見てみるとベッドの上で静かに瞼を閉じているあの子がまず最初に目が入った。

胸元までかけられた毛布からは骨ばった青白い細っそりした両腕が力無くシーツの上に転がっており、左腕には輸血が繋がっている針が刺さっていて、右腕には病室に備えてある小さなパイプ椅子に腰掛けている人影の両手が添えられていた。

その人影は肩のところが✖️(ばってん)に切られて、肩が大胆に露出している黄緑色の長袖と明るめで後頭部がぴょんぴょんと癖っ毛が二つある金髪、その前髪の左側に付いている小さな✖️(ばってん)マークが付いているうさちゃん髪留めが夕焼けが差し込んでくる病室に浮かび上がることからどうやら、あの子の病室にいるのは切歌ということで間違いはないだろう。

 

(……入っていいデスかね……でも、ーー)

 

夕焼けに照らされながら、ベットの上で浅い呼吸を繰り返すあの子を見つめる黄緑の瞳があたしにキーホルダーを頼んだ時のような違う雰囲気に似ていて、今ここで自分が彼女達の間を割って入っていくのは正しくないと何かが告げている。

 

(……でも、だからってこのキーホルダーをあの子に渡さないのはーー)

 

あっちのクリス先輩と切歌の二人から頼まれたことだ、きっとこのキーホルダーはあの子にとっても大切なものであるに違いない。ならば、ここで引き返して、後日あの子に渡すというのは間違えているとあたしは思い、切歌の会話が終わるのをその場に留まって待つ事に決めたのだがーーすぐに後悔した、だって僅かな隙間から耳へと流れ込んでくる物静かな声音は"暁 歌兎の姉として生きてきた暁 切歌"の今この瞬間まで無邪気な笑顔の下に隠してきた本音だったから……。

 

「………歌兎。あたしが貴女の所に駆けつけるといつも寝ている気がするデスよ……」

 

そう言って、切歌は右腕に添えていた両手を離すと力無く転がっている右手へと左手を絡めるとギュッと繋いでから自分のおでこをくっつける。

 

「……っ。……なんで、いつも貴女はあたしが駆けつけると寝ているんデスか……? なんで、どの世界も貴女にこんな酷い仕打ちをするんデスか……? 貴女は充分苦しんで、自分を殺して……あたしやみんなの為に辛いことを沢山してきたのに……な、んで……っ。……ううん、一番言いたいのは……なんで、お姉ちゃんは貴女が一番辛い時に隣に居てあげられないんでしょうか……いつも、タイミング悪くてごめんね、歌兎……」

 

だんだんと涙ぐんでいくセリフにキュッと胸が締め付けられると共に自分は切歌がここまで大切に思っているあの子をあんな状態にしてしまったのだと痛感し、不甲斐ない自分に苛立ちを覚える。

 

「……でも、今回は早く貴女の所に駆けつけたよ」

 

空いた右掌で愛おしそうに瞼を閉じるあの子の頬を撫でた切歌の黄緑色の瞳からはポロポロと溢れんばかりの涙が流れ出しており、夕焼けに赤く照らされながら、シーツへと落ちていく。

 

「だからね……うた、うっ……。あの時みたいに、一回心臓が止まったりは……しない、よね……? なんだか、あの時と状況が似ているんデス……嫌デスよ……、また あの時みたいな……おも、い……するの……っ」

 

言の葉を綴る際に押し殺していた気持ちが溢れてきてしまったのだろう……涙声に時々嗚咽が混じっている。

 

「……あたしはっ……お姉ちゃんは貴女が居ないと……駄目駄目なんデス……貴女が居ないとハピれない……っ、強くならない……デスよ……っ、だから……っ、だからね……」

 

幼子のようにポロポロと涙を溢れさせながら、切歌はギュッとあの子へとしがみつくと毛布にシミができるまで泣き続けた。

 

「……早く目を開けて……お願いだから……っ。目を開けてくれたら、歌兎の好きな麻婆豆腐を沢山作らますし、今まで忙しくて一緒に出来なかった事もしてあげるから……っ」

 

その後、暫くあの子にしがみついて泣いていた切歌はスクッと体を起こすと思いっきり自分の頬を叩く。

 

「……ッ! いくら歌兎が寝ているからって弱い所見せちゃったデス。あたしはお姉ちゃんなんだから……いつもニコニコ笑って強く居ないと……じゃないと歌兎にもみんなにも弱虫って笑われちゃうデス!! よしっ!!」

 

バシッと頬を叩いて、気合を入れ直した切歌はあの子の右手を自分の前髪の左側へと動かすとそこに付いているうさちゃん髪留めを撫でさせる。

 

「このうさちゃんの髪留め覚えてますか? あたしの誕生日に貴女がくれたものデスよ……。

あの時……貴女にこの髪留めを貰った時に今まで何の意味もなかった4月13日っていう日があたしにとって特別なものになったんデス。

あたしのために、クリス先輩のアルバイトを手伝ったりして貯めたお金で買ってくれたって聞いた時はすごく嬉しかったんデスよ……なのに、今まで付けてあげられなくてごめんね、なんだかもったいなかったんデスよ。歌兎が初めて汗水流して働いたお金であたしに送ってくれた最初のプレゼントデスから……」

 

照れくさそうに笑った後にゆっくりとベッドへと右腕を置いた切歌はパイプ椅子から立ち上がるとあの子へと身を乗り出す。

 

「歌兎……。お姉ちゃん、少し外の空気を吸ってくるデスね、すぐに戻ってくるのでしっかり休んでてほしいデスよ」

 

右手の甲にキスし、あの子の頬とおでこにキスした切歌は少しだけ寂しそうに笑うと目元を乱暴に袖でゴシゴシしながらこっちへと歩いてくる。

 

(にゃっ!? どどどどど、どうするデスか!?)

 

あんな話を、切歌の本音、あの子への気持ちをを聞いてしまった……確実にいうと盗み聞いてしまった後に、まともに切歌の顔を見れる自信なんて無かった。

 

「ッ!」

 

なので、あたしはその場から逃げた。がむしゃらに足を動かした、足を止めてしまうと抱えきれないほどの罪悪感や自己嫌悪に押しつぶされそうになったから……。

そして、息を切らして、調が待つ部屋についた頃にはもうあたしはあの子の病室から投げかけるまでは右手に握りしめていた約束の色違いのキーホルダーを持ってないことすらも忘れていた……。




作中で切ちゃんにうさちゃん髪留め、調ちゃんをポニーテールにしたのは私の趣味だ。後悔? そんなのないさ、むしろ清々しい気持ちさ……ふっ……(達成感に浸る作者)

というおふさげは程々にして、今回は前の回で会話文ではない点で絡んでいた切ちゃん達や調ちゃん達を絡めてみました。折角、同じ場所に同じ子達が集まっているのでね、前の回から絡ませたいと思っていたんですよ(笑)

あと、エルフナインちゃんの登場遅くなってしまってすいません(大汗)



ここからは裏話コーナーです(敬礼)

一つ目、最後の昏睡状態の歌兎に姉様が語りかけるシーンは切ちゃんが盗み聞く前から続いており、切ちゃんが聞く前はあっちの世界のみんなが心配している事やあっちの世界での事などを話してました。

二つ目、姉様達がS.O.N.G.の制服を着用しているのは、マリアさんに『あちらの世界で装者として活動するのならば、あちらのS.O.N.G.のイメージを壊してはいけないわ。制服を着ていきなさい』と言われ、翼さんに『どのような世界に居ようと我々は無辜(むこ)の民を守る防人であることを忘れないように』と言われたからで、もちろん歌兎の制服も姉様が厳重に保管してこの世界に持ってきてます(笑)
因みに、あちらの世界("うちあね"の世界)のS.O.N.G.の制服の色が逆転しているのは私のオリジナルです。

三つ目、あっちの世界のクリスちゃんは三人と切ちゃん達が去った後もそわそわしていたそうですよ(笑)
響ちゃん曰く"なんでそわそわしているの?"と尋ねたところ、"うっせぇ!!"と靴を投げられたそうです。

以上が裏話コーナーでした。


最後に、どうでもいいかもしれないけど……改めて、本作の切ちゃんいえ姉様ですね。
切ちゃんに比べると落ち着かないですね……私の理想の切ちゃんを思いのままに書いた結果というべきか……(汗)




また、今日はクリスちゃんのキャラソンの発売日ですね!!(ギリギリ間に合った!!)
戦闘曲とカップリング曲の感想は次回に回ろうと思います!!
まだ、聞いてない皆様……クリスちゃんの曲も最高でした……軽く泣きました……、こんな風に思えるようになったんだなぁ……と(涙)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ep3ー姉様(ねえさま)姉様(あねさま)

3話です。

総文字数は約八千文字です。なんとか5千文字で収めようと思ってもどうも気持ちが溢れてきてしまう……。

今回はタイトル通りで二つの世界の切ちゃんが会話するシーンが主なのですが……私のイメージでは切ちゃんは相手が自分ということで表情を偽ったりとか無理に笑ったりしたいと思うのです。それに姉様(ねえさま)は大好きな妹のこととなると少々ダークになりがちなので、そういう面も踏まえつつ読んでください!

では、本編をどうぞ!!

※この話の視点は本作(うちあね)の世界線の切ちゃん即ち姉様(ねえさま)です。
ほんとは切ちゃん(こちらの世界)で話を書いていく予定だったのですが、姉様の気持ちも書いておいた方がいいかなぁと判断いたしまして、書かせていただいた次第です。


8.

 

「あなた方の世界の暁 歌兎が私達の世界で戦闘の末、意識不明の重体に陥ってしまった」

 

そう、こっちの翼さんに説明される前からひしひしと嫌な予感はしていた。だからこそ、あたしは一人朝早くからあの公園で妹……歌兎の帰りをずっと待っていたし、歌兎の姿が無くて三人があたしの顔を見るなり暗い顔をした時はこう思った"あぁ……また歌兎が無茶をしたんデスね……"と。

だから、こっち来てくれた切歌、しらちゃん、翼さんに言ったセリフ、あっちの世界に渡ってからあっちの司令や装者のみんなに言ったセリフに嘘偽りなどない。

 

無いのだがーーーー。

 

「すぅ……すぅ……」

 

薄暗い病室の中、胸元まで毛布をかけられて、浅い息をしている妹のシーツの上へと力無く投げ出されている痛ましいほどに骨ばった青白い両腕や色気がない青白くも頬が凹んだ顔ーー確かに妹は普段から肢体や顔が細ばっており凹んでいて、抱きしめた時や抱っことおんぶをした時に"軽い"と感じることは沢山あるが、今目の前にいる妹の姿は今まで見た時よりも……いいや、"あの時"も同じような姿をしていた………。

 

(……ゔぅっ)

 

そういえば、あの時も今回のような状況でこんな目にあってしまって………

 

(また、あの時のように心臓が一回止まってしまったならば……そして、そのまま心臓が止まったままになって……永遠に目を開けないならば……)

 

「くっ」

 

痛ましい妹の姿から思わず視線を逸らすが"やめよう、考えるな"と思っているような最悪の結末やあの時の事、嫌な事が奥から奥から溢れ出しては止めどなくあたしの感情を蝕んでいく。

 

(ここで泣いてしまったら、みんなに迷惑かけちゃうデス)

 

グッと両手を握りしめてから、先に歌兎の病室へと入っていった調とセレナへと恐らく悲しみで歪んでいるであろう顔を見せないようにして外へと駆けていく。

 

「切ちゃんっ!?」

「暁さんっ!?」

 

後ろから驚いている二人の声が聞こえてきて、俯きながら後ろを向くと出来る限り明るい声を出す。

 

「ちょっくら外の空気を吸ってくるデスよ。すぐ帰ってくるので歌兎の事よろしくお願いします」

 

その後にも二人の声が聞こえてきたけど振り切るようにただがむしゃらに足を動かして、潜水艦の近くにある公園へと走り込んだあたしはブランコへと力無く腰をかけると小さく嘆息する。

 

「……はぁ…」

 

(……逃げちゃった…。……ついあの時の事が頭に浮かんじゃって……)

 

ギコギコとブランコを揺らしながら、何処までも青い空を見上げていると視界の端に明るい茶色の髪にピンク色の花飾りが見えて、ゆっくりと視線を下へと向けるとニッコリとその花飾りのように花が咲き誇るような笑顔をあたしへと向けてくれるのでお返しとして静かに笑いかえす。

 

「見つけましたよ、暁さん」

「……セレナ」

 

"隣いいですか?"と断りを入れてから、隣のブランコへと腰を落としてからあたしと同じようにブランコを漕ぎながら、下を向くあたしへと再度笑いかけてくれるセレナへと小さく謝る。

 

「びっくりしちゃいましたよ、突然飛び出して行っちゃうんですか」

「……ごめんなさい」

「謝る事じゃないですよ」

 

ジジッと靴が土を蹴る音が聞こえ、続けてギュッと左手へと両手を添えられたぬくもりにさっきまで包み込んでいた我慢の殻がゆっくりと解されていくのを感じて、ゆっくりと顔を上げていく。

 

「本当にどうしたんですか? さっきとても悲しそうな顔をしてました……」

「……あの時の事が頭に浮かんじゃったんデス」

「……あの時の事ですか…」

 

重なっていた両手をギュッと力が強くなるのを感じて、あたしを見上げるようにして腰を折っているセレナへと涙声で訪ねていく。

 

「……また、心臓が止まる事なんてありませんよね…」

「はい、絶対止まりません」

「……そのまま心臓が止まったままってこともありませんよね…」

「はい、絶対止まりません」

「……瞼が永遠に閉じたままってこともありませんよね…」

「はい、絶対止まりません」

 

あたしの弱りきった性根を叩いてくれる力強い否定の言葉に、水色の瞳へと縋るように弱音を吐くあたしの暗い気持ちや弱音を洗い流すような透き通った声音に元気づけれていく。

 

「……絶対ってあるのかな…。絶対って言葉を信じていいのかな…」

「絶対はあります。歌兎ちゃんの左胸に埋まっているメギンギョルズは歌兎ちゃんの願いを、私達の願いを叶えてくれる力があります。それに信じて待ってさえいれば、歌兎ちゃんは私達の願いを叶えてくれます。歌兎ちゃんは本当に優しい子ですから…私達が悲しいことはしないはずです」

「セレナ……」

 

手の甲へと重ねていた手へと自分の掌を重ねると指と指を絡めて、ギュッと握りしめると同じように優しいぬくもりが掌へと押し付けられるのを感じて淡く微笑むが垂れ目がちな黄緑色の瞳から見える光景は透明な雫によってぼやけていた。

 

「それは私達よりも貴女の方が強く信じているはずです、ねぇ?切歌……さん」

「セレナ…ぁっ……ゔぅっ……あぁああああッ!!」

 

地面に押し倒してしまう勢いで自分へと抱きついてくるあたしを抱きとめたセレナは尻餅をついてから目の前の光景と自分に起きている光景に暫く顔を驚きに満ちていたが自分の右肩に顔を埋めて泣き噦るあたしへと慈愛に満ちた視線を向けるとなでなでと優しく髪の毛を撫でてくれる。

 

「切歌さんはここまでよく頑張りました。今は私しか見てないのでしっかり泣きましょう。そして、泣いた分笑いましょう。歌兎ちゃんもきっと笑っている切歌さんに会いたいと思っているはずですから」

 

その後、セレナに手を引かれて、歌兎の病室へと戻って、三人で歌兎の周りであっちの世界での話を沢山して、話し合いで決まった担当順に自分の部屋へと帰っていく調とセレナを見送った後、傍にあるパイプ椅子をベッドで浅い呼吸を繰り返している歌兎へと近づくとポツポツと色んな話を語った。語っているうちにセレナの前で散々泣いたというのに枯れてなかった涙を溢れさせながら、歌兎へとしがみついてしまって、お姉ちゃんなのに妹に抱きついて幼子のように号泣してしまったことの気恥ずかしさからジュースを買ってこようと廊下を出た瞬間、タッタッと廊下を誰かが駆けていく音が聞こえて、首を傾げると一緒にスライド式のドアの右壁あたりにポツンと落ちている垂れた耳に青色のリボンをつけている水色のうさちゃんキーホルダーが落ちていることに気づいてしまったあたしは困ったように頭をかく。

 

「あっちゃ……デース」

 

このうさちゃんキーホルダーはあたし達の世界のクリス先輩が、あたしが"歌兎へと渡してほしい"と切歌……こっちのあたしに手渡したものだ。そのキーホルダーがここに落ちているということは今この瞬間まで切歌がここに居た、そしてあたしが乱暴に閉めた際で僅かに空いた隙間からあたしが歌兎へと話していた内容が切歌にも聞こえていたはずだ、どこからどこまでを聞かれていたかは分からないけど、確実に最後の会話は聞かれていたはずだ。

 

(まずいデスよ……)

 

一番聞かれてはいけない人に聞かれてしまった……。

切歌はあたし達の世界でも常に笑顔の裏に何か影のようなものを浮かばせていて、その影の正体が"あたしとの約束・歌兎の容態"っていうのは早めに気づいていた。切歌は初めて顔を合わせた時から責任感が強い子で他人思いだと思っていた。故にあたしの本心を切歌に聞かれてしまうときっと自分を責め続けるとよんだ。

 

(あたしが切歌の立場ならベッドに篭って膝を抱えてずっと自分を責めてるでしょうし……)

 

世界は違えど同じ"暁 切歌"なんだ。あたしのことはあたしが一番分かる。今すごく悩んでいることも。

 

「……これは切歌に一度会って話さないとデスね」

 

あたしが思っていることを考えていることを分かってもらえるまで話す。

じゃないと、切歌が罪悪感から歌兎の病室にこれから先も訪れなくなってしまい、その事を恐らく歌兎も悲しむだろうから……。

 

僅かに開いた窓から流れ込むそよ風に遊ばれる夕焼けの光によって茜色に染まっている銀髪と今だに眠りについている歌兎へと視線を向けるとニカッと笑う。

 

「歌兎、待っててくださいね。お姉ちゃんがもう一人のお姉ちゃんを連れてきてあげるデスから」

 

 

 

 

 

9.

 

歌兎の病室の前に水色のうさちゃんキーホルダーが置いていた日から丁度一週間後、色んな都合によってのらりくらりとかわされていた切歌との対面を果たすことができ、あたしの顔を見た瞬間に逃げ出す切歌の右手首をガシッと掴むとゆっくりと振り返ってくる影のある笑顔を浮かべる切歌へとニッコリと笑いかける。

 

「……ッ!」

「やっと捕まえたデス」

 

あたしを見た途端に覇気を感じられない垂れ目がちな黄緑色の瞳へと変わる様子をまっすぐに見つめながら、あたしはちょんちょんと潜水艦の外を指差す。

 

「ジュース奢るので近所まで少し付き合ってくれませんか?」

「……」

 

あたしの顔とガシッと掴まれている右手首を交互に見てから小さく"はぁ……"と嘆息する。どうやらあたしに捕まってしまえば、もう逃げることは出来ないと悟ったらしい切歌は力無くコクンとうなづくとあたしに連れられて、近くの公園のベンチへと腰掛けるとジュースを受け取ると共に"なぜここに呼び出したのか?"を訪ねてくる。

 

「……それで切歌はあたしになんの用デスか?」

「……これ落としてましたよ」

 

ジュースを持ってない方の掌へと水色のうさちゃんキーホルダーを手渡すと目に見えて切歌の表情が曇るが気にしてないようにケラケラと照れくさそうに笑うあたしのセリフを遮るように切歌は顔を俯けると蚊が鳴くような声でボソリボソリと謝罪言葉を口にする。

 

「あの時の会話聞かれちゃってたんデスね」

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

うわ言のように呟かれる"ごめんなさい"を遮るようにわざと笑い声をあげて、切歌の罪悪感を減らそうと試みるがやはりそういう事では切歌の沈みに沈みきってしまった気持ちも元に戻せるわけはないのだろう。

 

「あはは……やっぱり聞かれちゃってたんデスね。流石に切歌に聞かれたとしても恥ずかしいものデスね。こっちのみんなにも調やセレナにも内緒デスからね」

「……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

あたしのセリフを聞いてないようにずっと呟かれる"ごめんなさい"に一つ溜息をつくと顔を俯け続ける切歌の前へとしゃがみこみ、顔を上目遣いで見つめると声を低めてから問いかける。

 

「はぁ……。なら、君の言う通りにするとします」

「ーー」

「あたしの気持ちのままに君を責めて、怒鳴り散らしてーーそしたら、あの子は……歌兎は今すぐ目を覚ますデスか?」

「……へ?」

 

あたしの問いかけにキョトンとした顔をする切歌をまっすぐと見つめてから再度問い掛ける。

 

「歌兎は今すぐ目を覚ますデスかって聞いてるんデス、君を責めたり怒鳴り散らしたら今すぐ目を覚ましてくれてあたしのことをあの可愛い声で"姉様"って呼んで、ギュッてしてくれるのデスかって」

「そ、それは……」

 

鋭い口調でまくし立てるあたしに切歌がいいどもるのを見て、スクッと立ち上がると嘲笑うように、吐き捨てるように言う。

 

「ほらね。誰かを荒ぶった気持ちのままに責めたり怒鳴り散らかしたとしても意味なんて無いんデスよ。その時にモヤモヤしている気持ちを相手にも与えているだけ……そんな八つ当たり、なんの意味もないデスよ」

 

セリフの途中に空を仰ぐあたしを見つめる切歌は今だに表情が暗く、チラッと見たあたしは切歌に近づいて、身体を乗り出す。

 

「そうだ。君に聞いてみたいことがあるんでした」

「……」

 

ピクッと肩を震わせる切歌にニッコリと微笑みかけながら問い掛ける。

 

「君はこの世界の事が好きデスか? ここに暮らしている人達が」

「……なんで」

 

恐らく、その先に続く言葉は"そんな事を聞くの?"だろう。それはそうだろう、突然"自分の暮らしている世界は好きか?"と尋ねられても咄嗟に答えが出るようなものではない。ものではないのだが、あたしは常日頃から考えているーー

 

「あたしはね……この世界もあっちの世界も正直好きじゃないんデスよ」

 

ーーこの世界が好きじゃない、と。

 

その理由は沢山あるが一纏めには出来る。だって、あたしが感情を震わされるのは装者のみんなの事もだけど一番はーー

 

「……ーーもしかして、あの子のことデス?」

 

あたしの表情から汲み取ったのだろう、切歌の呟きに首を縦に振るとボゥーーと空を見つめる。

 

「そうデス。どの世界もあの子が幸せに暮らして生きていく事を許してくれない……ただ、普通の女の子として生きていきたいって願って何が悪いっていうんデスか? あの子はこれまでいろんな事を我慢してきたのに………。………だから、時々ね。時々デスね、世界を壊したくなるんデスよ。あの子が苦しむ泣くような世界……神様って人が許してもあたしが許さない」

「ーー」

「でも、壊したところで何が残るってんデス? あたしの大切な妹も調もセレナもみんなだって同じように壊れちゃう……きっとあたしが想像できないくらいの悲しみが生まれる。それが分からないほど、あたしは我が儘になれないデスよ」

 

疲れたようにベンチへと腰掛けるあたしを見つめるとは寂しそうに笑う切歌だ。

 

「……なんだか同じ暁 切歌とは思えないデスよ、貴女は大人デスね」

「あはは、何をいうデスかっ! あたしがそう思っているって事は君だってそう思っているって事デスよ」

 

同じ"暁 切歌"に思わないところで褒められてしまい、照れ隠しからペシペシと切歌の背中を叩くと付け加えのようにボソリと呟く。

 

「それにあたしはただみんな平等にある生きるエネルギーを悲しみや憎しみっていう黒い感情で使っちゃうよりも喜びや楽しみっていう白い感情に使いたい……使わせてあげたいって思ってるだけデスから」

 

静かに瞳を閉じて、瞼の裏に浮かんでいる妹の笑顔を思い浮かべてから目を上げると切歌の掌へと乗っかっている水色のうさちゃんキーホルダーを見つめてから隣に座る切歌へと笑いかける。

 

「だから、このキーホルダーは約束通り。君が歌兎に届けて欲しいデスよ」

「……いいの?」

「いいに決まってるじゃないデスか!」

「……でも」

 

尚もモジモジと否定の言葉を言う切歌にイラっとしたあたしは近くにある木の棒を拾うと地面に生えている草を靴の底で擦るようにしてから土を見せる。

 

「あぁ、もうっ! あの子が君の事をなんて呼ぶか覚えてますか?」

「え? "姉様(あねさま)"……デスよ」

「それであたしのことは"姉様(ねえさま)"デス」

 

地面に"姉様"と手に持った木の棒でくっきりと見えるように書くとトントンと木の棒でその文字を突きながら、隣の切歌を見る。

 

「この二文字で二つの呼び方が出来るデス。全く同じ文字なのに」

 

"全く"の所を強めて言ってみても切歌にはピンとこないらしくあたしは地団駄を踏むと何故かこっちの世界から帰ってきた後に妹が嬉しそうに話してくれる姉様(あねさま)話を思い出して、眉間へと皺が寄ってしまう。別世界の自分自身に、今目の前にいる自分自身へと嫉妬してしまうのは大人げないと思うが、大好きな妹の口から別の自分の活躍を聞かされても嬉しくもなんともない。いや、それは流石に言いすぎだと思うけど……なんだか妹を別の自分に取られてしまったようで心が落ち着かないのだ。

 

「だ・か・ら! 歌兎にとってあたしも切歌も同じ"姉様"って事デスよっ。それにあの子は君が思っているよりも精神が弱くないデスし、相手をネチネチと恨むような心が狭い子でもないんデス」

 

それだけ歌兎に思われているというのに、この世界のあたしは今でもウジウジと……込み上げてくる怒りと嫉妬、割合的に2対8の気持ちのままに両肩へと手を置いて、おでことおでこがくっつくくらいに顔を寄せると思っ切り不機嫌な顔で目の前にある切歌の驚きでまん丸になっている黄緑色の瞳を睨む。

 

「ちょっ、ちょっと……切歌、顔が近いデス」

「近いからなんだってんデス。歌兎の病室にあたしといくのか、いかないのか、はっきりしてください!」

「え!? なんでいきなりあの子の病室に行くか行かないかって事に……」

 

不機嫌顔を更に近づけると切歌は僅かに背もたれの方へと座り直して、あたしとの距離を開くと悲鳴じみた声を出す。

 

「……わ、わかった! 分かったデス! 切歌とあの子の病室に行くデスから顔を離して欲しいデスよ!」

「よし、なら今すぐいきましょう」

 

切歌の許可がようやく取れて、身体を起こすとニッコリと微笑んでから意気揚々と歌兎の病室へと向かう。向かうが、ドアを開けた向こう側へはなかなか脚を踏み入れられないらしい切歌の背をグイグイと押す。

 

「ーー」

「ほらっ、さっさと進むデス」

「いたたっ、そんなに押さないでほしいのデスよ、切歌」

 

グイグイと押されてもドアに両手をついて抵抗する切歌の背中をポンと軽く押すとしぶしぶと言った様子で切歌が歌兎の病室へと入っていく。

 

「ほら、早く」

「分かったデスよ……」

 

ベッドの上に寝転がっている歌兎の毛布から投げ出されている両腕は今だに青白く、左腕に突き刺さっている輸血用の針は痛ましい。

そんな歌兎の様子から顔を一瞬背けた切歌は掌に握っていた水色のうさちゃんキーホルダーを力無く毛布の上に乗っかったままの歌兎の右掌へと静かに置いてから両手で包むようにしてからキーホルダーを握らせるのを見てから、切歌の側に腰を落とすとギュッと切歌の両手ごと包み込むように歌兎の右手を握りしめる。

 

「にゃっ、き、切歌!?」

 

ボッと頬を赤く染める切歌へと笑いかけながら、僅かに掌から伝わってくる歌兎の鼓動に身を委ねる。

 

「ほら、こうするとあの子の鼓動が聞こえてくるでしょう? ドクンドクンって」

「確かに聞こえてるんデスけど、なんであたしの手まで……」

「この音を聞いているとね、安心しますし、和むんデスよ」

「切歌は……この子の事をどんな目で見ているんデスか……。鼓動で和むって危ない人デスよ」

「どんな目も何も普通の視線で見てますよ? 姉妹ってお互いの鼓動を聞いて落ち着くものじゃないデスか? あたしは他の姉妹や兄弟がスキンシップを取るたびにそういう理由かと……」

「そんな姉妹や兄弟、あたしの知っている中で切歌とこの子だけデスよ……。今になってあの子が"うちのお姉ちゃんは過保護なんです"って言葉が分かった気がするデスよ……」

 

どうしよう、妹への溢れてくる愛や思いを語れば語るほどに自分自身にドン引きされていく気がする。そんなにドン引きされるような事をしているのだろうか? あたしって。

「その……切歌、この体勢はいつまで続くんデスか?」

「んー、歌兎が目を覚ますまで」

「冗談デスよね!? 」

 

喚く切歌の両手を更にギュッと握りしめながら、騒いでいたあたしと切歌は気づくことが出来なかったーーーーずっと瞑ったままだった瞼が僅かに揺れた後にゆっくりと開いていき、眠たそうで虚ろな黄緑色の瞳が自分の右手を握りしめながら大声で騒いでいる容姿も着ている服も瓜二つな明るめの金髪をショートヘアーにしているあたし達の其々の髪留めを見つめて、片方にうさちゃんの耳に小さな✖️(ばってん)マークがついている髪留めを見て、口元を僅かに笑みの形に変えると数回パクパクと空気を吸い込んでから物静かな声音を病室へと響かせる。

 

「……………そんなにギュッってさせると流石に痛いよ……姉様(ねえさま)……姉様(あねさま)……」

 

その物静かな声音を耳へと入った瞬間、大声で騒いでいたあたしと切歌はハッとした表情を浮かべるとオイル切れのロボットのような動きでギギッとその声がした方をまじまじと見つめるとそこには薄く笑う最愛の妹の姿があった。




んー、姉様の愛があいも変わらず重いッ(笑)
あと、さりげなくきりセレ入れちゃってすいません……普段から呼び捨てやニックネームで呼び合える仲もいいですが、二人っきりの時に呼び名が変わる関係もいいものですよね(微笑)




さて、早速XV4話の感想を書こうと思います!
注意喚起、これから先はXV4話のネタバレと作者の変態コメントが連なります。そういうのが苦手な方は迷わずに回れ右か高速スクロールをお願いいたします!!




4話もあんな出来事がふんだんに詰まった内容でしたね!!

そんな内容の中で一番心震えたのやはり"響ちゃんとサンジェルマンさんの【花咲く勇気】"のデュエットでしょう!!(大興奮) 今思い出しただけでもいい意味でゾクゾクしてしまいます。
まさか武蔵野の森でのあの感動をアニメでも味わえるなんて……しかも響ちゃんの名言『だとしてもッ!』も二人で言ってくれるなんて……はぁ……神作画に神シナリオをありがとうございます……(感涙)

その他は初めてマリアさんの戦闘曲と変身バンクが初登場しましたね!!
変身バンクはマリアさんらしい凛々しくも少々エロいいいバンクでしたねっ。
アガートラームをリボンにして、新体操のようなしなやかな動きをしながらギアを纏っていく中のリボンで全身を巻かれた後に胸でそのリボンを弾くシーンにはこの変態ついニヤケてしまいました。

あと、戦闘曲についての感想ですが……私の勘違いかもですが、今回は荒々しい……スピード感が溢れる出だしでなくて、炎は炎でも見る者を癒やす焚き火のような……そう、まるで聖母のような優しい出だしなのですね。ですが、歌詞はマリアさんらしい自分に挑み続けるカッコいい女性もので、やはりマリアさんはかっこいいなぁ〜と思いました!

しかし、最後の最後にS.O.N.G.が日本政府に占領されてしまうなんて……あと、マリアさんも意味深な事を言ってたような……故に、OPの最初のカットが今後に左右してくる気もする……ま、勘だけど(笑)
にしても、まだ4話(早い方なら5話)なのに、ストーリーの展開が早すぎる……どうなっちゃうだろうな………五話のタイトル【かばんの隠し事】だもんな……遂に未来ちゃんが動き出すのかな……はぁ……不安だ……。

最後に、今週の切ちゃんも安定の可愛さでしたね!! セリフ数は少なめだった思いますが、サンジェルマンさん達の力を解放したギア(?)……いやあれは変身前なのかな? その時の切ちゃんは黄緑色のワンピースのような形で頭の三角帽子が小さくなっており、すっごい可愛いかったです………あと、チラリと見てきた五話のあらすじの画像で調ちゃんに"冬旅行"のパンフレットを見せている姿が可愛かった……(しみじみ)





次回に感想を書くといっていたクリスちゃんの戦闘曲とカップリング曲ですが……

まず、戦闘曲【Take this! "All loaded"】は最初に聴いた感想は『はっちゃけてるなぁ……』でした。ですが、歌詞はクリスちゃんらしいですし……時々入る掛け声の『ファイア!』可愛いですし、テンションが上がりますね!! そんな私が好きな所は間奏で『ぃやっはぁーー!!』の伸ばしのところが好きなんですよ……分は"2:56"くらいのところだと思います。気になった方はスマホがCDをかけて、そこをリピートしてみてください。めっちゃいいですけぇ、あの伸ばし。

続きまして、カップリング曲【あしたのあたし】は泣きました……前にも書きましたが、無印でグレていたクリスちゃんがこんな事を思えるようになったんだなぁ……と思うとポロポロと涙が……。あと、クリスちゃんは両親の夢を追うにしたんですね……両親への気持ちが溢れていて、涙が……。
そんなカップリング曲で私が気になったのは『太陽に負けない 煌めきを』ですね、私の勝手な思い込みだとそのフレーズって主に切ちゃんが歌っていたようが気がするんですよね……なので、まさかクリスちゃんがそのフレーズを歌ってくれるとは……ッ!? と感動と共に驚愕しています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ep4ー懐かしい音とぬくもり

最初の回想シーンで描かれる切ちゃん過去のシーンはあくまで私のオリジナルとなっております。

今回はかなり少なめの約4千文字です、スラスラと読まれるのも良し! ゆったりと読まれるのも良し! となってます、今回は久しぶりの緩やかな日常系ですからな……書いてて、楽しかったです(微笑)

では、本編をどうぞ!!


10.

 

長くてどこか懐かしく思えるそんな夢を見ていたような気がするーーーー。

 

その夢での出来事は恐らく僕がこの世に生を受けて間もない頃だろう。

生まれ出た世界は薄暗く、わんわんと泣く僕の顔を映し出すのは安易なベッドの横に添えられた小さなランプの今にも消えかかりそうな光のみだったが、僕を大事そうにギュッと抱きしめてくれる……もう、名前も容姿も声音も思い出せなくなってしまった"その人"の素肌のあたたかいぬくもりを、匂いを、口元の僅かな微笑みは今でも僕の心の一番奥へと大事にしまってある、一番落ち着けるものとして。

 

『ーー』

 

薄っすらとしか生えてない僕の水色の掛かった銀髪を優しく撫でてくれる細っそりとしていても大きな手の主に縋るように紅葉のような小さな手を一生懸命動かして乱れているワンピースの裾を握ると俯いていた顔を上げると僅かに口角を上げている桜色の唇が見え、その先を見ようと思った瞬間、裾を掴んでいる手をツンツンと小さな人差し指によって突かれて、その手を伝っていくとそこにはまん丸な黄緑色の瞳へと溢れんばかりの好奇心を浮かばせている癖っ毛の多い明るめの金髪の幼女が居て、僕は後々この人こそ僕の姉様であることを知るのだった。

 

その後の事は幼かったからなのか、点々としか覚えてない。

泣きじゃくる僕と姉様を抱きしめてくれたその人……恐らく僕のママの身体を銃弾が貫き、噴き出る血に呆然とする顔や服が染めた事。ママの亡骸に抱きつき、泣きじゃくるばかりの僕を姉様がギュッと抱き寄せてくれて『大丈夫だよ、お姉ちゃんが必ず貴女を守ってあげるからね』と言ってくれた事。瓦礫や息絶えてしまった人達を盾にしながら、朝昼晩と止まない銃弾を寄せる日々の事。目を覚ました時に姉様の姿が居なくて、置いていかれたと思って、"絶対に一人で出歩いてはダメ"という約束を破って街をトコトコと『おねえちゃん…っ、ぼくをおいていかないで…っ』と泣きじゃくりながら歩いている僕へと外れた銃弾が飛んできて、その銃弾を血相を変えて飛んできてくれた姉様が助けてくれた事。その出来事の所為で伸びていた金髪が肩のところまでになったことを泣いて謝ったり、飛んできた銃弾が怖かったとわんわんと泣く僕の髪を掬いながら『大丈夫だよ、お姉ちゃんが必ず貴女を守ってあげるから』と繰り返し、繰り返し耳元で囁いてくれた事。その後はよくわからない人に姉様と一緒に保護されて、そのまま恐ろしいほどに真っ白な部屋に連れていかれた事。

 

でも、その部屋に連れていかれても僕と姉様の生活に変化はなくて、僕は嫌がる姉様やねぇや達を取り押さえて薬を打ち付ける大人達が、何も出来ない自分にやるせなさと怒りを覚えたからこそ、そのプランに飛びついたのだろう。

 

(でも、僕はそれに手を伸ばしてよかったのかな……)

 

それ……僕の左胸に人工的に埋め込まれたメギンギョルズは僕の願いを叶えてくれた姉様やねぇや達を苦しめていたあの薬……"LiNKER"が無くても僕が触れたら、ギアを纏えるようになった。でも、その分僕の力が敵に狙われることが多くなって、狙われた分生傷が増えて、意識が無くなる事が多くなって、その度に姉様が悲しそうな顔をすることが多くなって"その顔を見る度に僕は選択を間違えてしまったのかな……"と思うようになった。

 

 

ドクン…ドクン……ドクン………

 

 

薄暗い……まるで深海のような記憶の海の中、プカプカと全身の力を抜いて浮かび、僕の周りをグルグルと回り出す記憶へと視線を向けながら、藍色の向こうにある光をぼんやりを見つめながら、思うのは姉様の顔でーー。

 

(きっと、姉様……泣いているんだろうな……)

 

つい数ヶ月前にも同じような出来事があって、その時は姉様曰く僕の心臓は一回停止してなんとか動き出しても、壮絶な光景の上に一番仲の良かった友達に言われた『あんたなんかと仲良くするんじゃなかった……この死神ッ! ここにいるみんなを返してよッ!!』というセリフに深くショックを受けていた僕はなかなか目覚めようとしなかったらしい。

 

(でもね、"あの時"よりも酷い結果にならなかったよ)

 

一人だけど僕はしっかりと守れたんだよ、だからそれだけは褒めて欲しいな………。

 

 

 

ドクン…ドクン……ドクン………

 

 

 

さっきから懐かしい音が波音にまみれて聞こえてくる……それに右掌に広がるこのぬくもりは僕が一番安心できるもの……。

 

(そっか……もう起きないとなんだ)

 

そうだよね、これ以上ここに閉じこもっていても何も解決出来ないし、僕はまだ永遠に眠る事も許されてないだろうから……あの時僕が守れなかった命達の分まで僕はこの理不尽な世界に抗い続けると決めたんだから。

そう意気込むと藍色の向こうに広がる光に向かって泳ぎ出し、がむしゃらに手足を動かして、なんとか浮上した水面の向こうにある光に手を伸ばした瞬間、僕はゆっくりと目を開ける。

 

「う……」

 

ボヤける視界のピントを合わせるために数回瞬きしてから懐かしいぬくもりを感じる右手へと視線を向けると明るい癖っ毛の多い金髪をショートにした瓜二つの少女が和気藹々と僕の右手をギュッと力強く握りしめているところだった。

大声で騒ぐ二人の違いを述べるとすれば、右側にいる少女の右側に止まっている髪留めが✖️(ばってん)なのに対して、左側にいる少女の髪留めはうさぎの耳に小さな✖️(ばってん)がついているものというところだろうか。

 

(……あの髪飾りって僕が姉様にあげたもの)

 

って事は、うさちゃん髪留めを付けている方が姉様で、トレードマークの✖️(ばってん)の髪留めをしている方が姉様(あねさま)なんだ。

 

(姉様……わざわざ来てくれたんだ)

 

きっとこの世界に来るまで心配で胸が張り裂けそうだったんだろうな……静かに瞳を閉じると瞼の裏に張り付くのはあの時、目を覚ました僕の頬をパチンと叩いた今まで見た事がないような……泣き笑いみたいな顔をした姉様の顔でーー。

 

(……もうあんな顔させたくないって思ったのに)

 

今回の出来事でさせてしまったかもしれない……ごめんなさいって言わなくちゃな……ううん、まずはごめんなさいよりも来てくれてありがとうって伝えたい。だから、僕は掠れた声で呼びかける最愛の姉へと……姉達へと。

 

「……………そんなにギュッってさせると流石に痛いよ……姉様……姉様(あねさま)……」

 

すると、二人は見事にシンクロした動きで振り返ってから同時に垂れ目がちな黄緑色の瞳をまん丸へと変えた途端、素っ頓狂な声を出す。

 

「ぅうううう、うた……うたたたた、歌兎ぅうううううう!!!?」

「良かった……良かったのデスぅ……歌兎……っ、歌兎ゔぅ……」

 

ガシっと抱きしめてくれて、わんわんと赤子のように泣く二人の背中をポンポンと叩いていると姉様の素っ頓狂な声に導かれたシラねぇとセレねぇがひょっこりと顔を出してくれるのでポンポンしている手を二人へとひらひらと動かすと二人は忽ちパニックに陥り、慌ててミーティングルームへと駆けていく。

 

 

 

 

11.

 

目を覚ましたその日にたくさんの質問するのは酷だろうとの事で、今現在もベッドの上へと身を寄せているのだが、ただ僕一人というわけではない。

右側へと視線を向けると"どうしたの?"と首をかしげる姉様の姿があり、僕は"なんでもないよ"と首を横に振ると毛布の上に広がっているお気に入りの絵本へと視線を向ける。その絵本はわざわざ姉様とシラねぇ、セレねぇが持ってきてくれたらしくて、もう一つ僕が大事そうに抱きしめている水色の肢体に垂れた耳へと藍色のリボンをつけているうさぎのぬいぐるみがついたキーホルダーはあっちのクリスお姉ちゃんが僕に渡してくれと 姉様(あねさま)へと頼んだものらしい。

 

(すごくもふもふで気持ちいい……。ありがとう……クリスお姉ちゃん……)

 

もふもふとした肌触りを右掌で感じていると背中越しにむにゅと形を変える二つの膨らみの柔らかさを感じていると絵本のページへと添えていた両手が近づいてきて、キュッと抱きしめられるままに後ろへと引き寄せられる。とん……と頭の上へと顎を乗せた姉様は唇を笑みの形へと変える。

 

「でも、びっくりしちゃったデスよ。歌兎があたしに甘えてくれるんデスもの」

「…甘えちゃ……ダメだった?」

 

ぬいぐるみを撫でてない手を抱き寄せてくれる両手へと添えてから上目遣いで尋ねると"ううん"と首を横に振ると僕の髪の毛へと顔を埋める。

 

「嬉しかったデス……。歌兎から甘えてくれたのは何年ぶりでしたから……。でも、本当にどうしたんデスか? 今だってすごく甘えてくれる。姉冥利に尽きるデスが、少し心配になっちゃいますよ」

 

埋めていた顔を上げた後に自分の両手へと重ねている僕の左手へと右手を重ねてから指と指を絡めるとなでなでと優しく撫でてくれる。

 

「…寝ている時にママさんの夢を見てたの」

「ママさんの?」

 

コクリとうなづいてから、深い眠りの中で思い出した遠い記憶の事を話すと姉様が懐かしそうに淡く微笑んでくれる。

 

「…もう顔も名前も声も思い出せないけど……姉様から伝わってくれるぬくもりだけはママさんと同じですごく安心するの」

「それはあたしだって同じデスよ。歌兎はあたしの宝物デス」

「…宝物ってなんだか恥ずかしい」

「恥ずかしがらなくてもいいんデスよ」

 

ほわわんと笑いかけてくれる姉様へと絵本を読んでもらっている時に考えていた事を耳打ちするとニッコリと笑って"手伝ってあげる"と言ってくれた。

その返事に満足したのか、はたまた体力がまだ完全に戻りきってないのか、うとうとと船をこぐ僕をゆっくりと横たわらせた姉様は横に身体を滑り込ませると右腕で腕枕を作って、スヤスヤと既に眠っている僕の頬とおでこにキスを落としてから自分のゆっくりと瞼を閉じたのだった。




歌兎がデレた……だとっ!?(驚愕)

はい、ふざけました(笑)
歌兎は姉様みたいに態度や表情には出さないですが、姉様には常にデレデレですからな……うん、微笑ましい。
ふざけた理由は文字数多くてのシリアスが多かったので、たまのゆったりとした日常回くらいふざけてもいいでしょう!と思いまして(笑)

しかし、ゆるやかな日常というのはあっという間に終わってしまうものなのです……という事で次回からまたシリアスに戻りまーす! シリアス様のお帰り早かったですな……



さて、今日はマリアさんの誕生日かつマリアさんのキャラソンが発売された日ですが……皆様は記念メモリアと四コマはご覧になられたでしょうか???
私はキャラソンは確認したのですが、メモリアと四コマはまだ見てないので後々感想を書かせてもらおうと思います!

という事でキャラソンの感想なのですが……皆様、マリアさんのキャラソンも名曲でしたよね……(感涙)
やはりマリアさんはカッコいい……ポンコツっぷりや運転者っぷりを披露するマリアさんですが"敵に負けても自分には負けたくない"と自分自身に常に挑み続ける姿勢は一人の人間として見習いと常に思っております。

さて、話を戻しまして……キャラソンの感想は聞かれてない方がいらっしゃると思いますので、戦闘曲もカップリング曲も一番好きなフレーズのみを紹介しようと思います!!
注意喚起。作者はCDは切ちゃんのみ購入で、スマホでは装者のみんなを購入しております。故に耳で聞いたままに歌詞を書いていますので、間違えているところが多々あると思いますが予めご了承下さいますようお願い申し上げます。

戦闘曲【白銀の炎 ーkeep the faithー】で一番好きなフレーズは《"ちくしょう"と また吠える空が 私にあるならば》です。その後の歌詞も好きななのですが、この歌詞が今の私に響くのです……最近、気だるさや憂鬱さからよく自分に負けてしまうので(笑)

カップリング曲【此の今を生きるヒカリ】で一番好きなフレーズは《君を殺した歌 いえ、そうじゃなく…君も好きだったこの歌 大好きと心から言えるように》です。
このカップリング曲自体がマリアさんのセレナちゃんへの想いが溢れているんですが、その中でも個人的にこの歌詞が個人的に一番溢れていると思っているんです。




さて、今日は【マリアさん】の誕生日なので……恒例(?)の誕生日の主役どその主役と仲がいい人のシンフォギアカードとメモリアでフレンド欄を埋め尽くそうと思います!!
私の陣地には【☆5MAXの心属性のマリアさんとセレナちゃん】がいるので【8/7 〜8/14】までその二人と二人が映ったメモリアで揃えようと思います!
一部のイベントなどではお役に立てないと思いますが、どうか使ってやってくださると嬉しいです!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ep5ー二つの穴と切り傷

すいません、本編に出てくる私服の歌兎を描いていたら思った以上に時間が経ってしまいました……。本当はミョルニルの通常ギアも載せようと思っていたのですが、もう少し構想を練ろうと思っているので…公開まで時間がかかりそうです、本当にごめんなさい(土下座)

下の画像が【暁 歌兎 私服 (四期ver)】です。
彼女はギアを纏う前からかなり動く子なので、私服は動きやすくオーバーオールにしようとしたら、すっごいボーイッシュになっちゃった……(大汗)
私自身はボーイッシュな子大好物なので、この私服でも大満足なんですが……歌兎の女の子ですからね……私の好物だけでなく、女の子らしい可愛いのをいつかは着せてあげたいです。
注意喚起。作者の画力は大したことないので、イメージ作りとして活用してもらえると嬉しいです。
本来の歌兎は私の絵の200%可愛い子なので…(笑)


【挿絵表示】


今回の五話は総文字数は1万五千ちょいです。
はっびーにゃっぴーのうた(仮)の中で最長の話となっておりますので、ゆったりと読んでもらえると嬉しいです!!

それでは、本編をどうぞ!!


12.

 

「…暁 歌兎、今復帰しました」

 

メギンギョルズの影響でいつも眠たそうに見開いている黄緑色の瞳をキリッとして、姉様が頑丈すぎるほどに幾つもの鍵がついたケースへとしまってこちらの世界に持ってきてくれたS.O.N.G.の制服を昨日のうちにアイロンをかけてシワひとつないようにしてからハンガーにかけていた制服へと袖を通した僕はビシッと右手をおでこへと押し付ける。

 

「デース!」

 

そんな凛々しく振舞う僕に満面デレデレ笑顔で抱きつくのはうちの過保護な姉様でスリスリと僕の左頬へとだらしなく緩みに緩み切った自分の右頬を押し付けているのを黙って受け止めていると今の状況をしっかり理解してくれているシラねぇとセレねぇが今の状況が分かっていなく暴走する姉様を引き剥がして、小声で状況説明をしてくれた。

 

「……切ちゃん、嬉しいのは分かるけど今から歌兎は風鳴司令やこっちの装者のみんなと難しい話をするから」

「……そうですよ、暁さん。私たちはこっちで皆さんの話を聞いていましょう、ね?」

「そんな……歌兎っ、歌兎ぅ〜〜!! あたしは歌兎と10秒離れちゃったら、不思議な発作が起こっちゃって死んじゃうんデスよ」

「そんな見え透いた嘘をついてもダメなものはダメ。それに不思議って自分で言っちゃってるし、10秒ならもうとっくに経ってる」

「むぅ……今日の調はいつにも増して強気さんの意地悪さんなのデス……」

「暁さん、文句言わないで足を動かしましょう。私達はこっちの世界の事情は分かりませんから話し合いの邪魔は絶対してはいけません」

「セレナも調に習って意地悪さんなんデス〜!! うわーん、歌兎ぅ〜〜!! お姉ちゃんのところにカムバックデース!!」

「カムバックしたら話が出来ないから……」

「暁さんは本当に歌兎ちゃんが好きなんですね……」

 

(あはは……姉様が今日も元気そうで何よりだ)

 

二人に両腕を絡まらせて、ズルズルと大暴れしている姉様が引きずられていくのを苦笑いを浮かべて小さく手を振って見送った後にクルッと回れ右してから正面を向くと心配そうな表情を浮かべているこっちの風鳴司令に淡く微笑む。

 

「歌兎くん、本当に身体の具合はいいのか?」

「…はい、救護班の皆さんにもエルフナインお姉ちゃんにもよくしてもらいましたから。それよりも僕はこっちの世界の人じゃないのにこんなにもよくしてもらって、僕の方こそ申し訳ない気分でいっぱいです。輸血も色んな人にお世話になっちゃいましたから」

「そんなの気にする事ない。歌兎くんは既に大切な我々の仲間なのだからな」

「…ありがとうございます」

 

ぺこりと風鳴司令に頭を下げてから、僕の隣に横並びで待機している装者のお姉ちゃん逹へとぺこりと頭を下げてからお見舞いのお礼を口にする。

 

「…装者の皆さんもお見舞いありがとうございます。姉様やねぇや逹から聞きました、僕の部屋に置いてあるぬいぐるみや飾ってある花や贈り物は皆さんから貰ったものだと」

「気に入ってもらえたならば良かった。正直歌兎の年頃の子がどんなものに興味を持っているのか、私では想像がつかなかったからな。私本位で考えてしまったからな、歌兎に喜んでもらえるか心配だったんだ」

 

そう言う翼お姉ちゃんがくれたのは僕のベッドから起き上がってから見える位置に飾ってある額に飾ってある達筆な"常在戦場"という四字熟語ですごくピカピカしている画用紙(?)……いや、和紙っていうのかな? あの紙? 兎も角、すごく高価な贈り物を頂いてしまって、僕は目を覚まして、その額を見た瞬間、暫く身震いをしてしてしまって、止まった頃にそこに書かれている常在戦場に小首を傾げた。そういえば、あっちの翼お姉ちゃんもボゥーとした目をして『常在戦場…』と唐突に言ったりしてるから、翼お姉ちゃんの中のある種の座右の銘、モットーってところなのかな? しかし、常在戦場ってそもそもどういう意味なんだろ? 常に普通に生活していても常に戦場に身を置いているように振る舞え……的な感じなのかな? よく分からないけど……。でも、翼お姉ちゃんが僕の為に書いてくれたものを馬鹿にすることは出来ない、大事に飾られせてもらって、僕も常に戦場に身を置いているという気持ちで気を引き締めていこう。

 

(……そうすれば、生傷や誘拐未遂も減って、姉様やねぇや逹、お姉ちゃん逹の心配も減ると思うから)

 

そっと後ろを振り向いてみると、シラねぇとセレねぇにがっしりホールドされていつものようにジタバタしている姉様の姿があり、淡く微笑んでから翼お姉ちゃんに向き合う。

 

「…翼お姉ちゃんの字は力強くて見ていると元気をもらえるから僕好き。僕も翼お姉ちゃんみたいに綺麗な字が書けたらいいんだけど……」

「そうか? ならば、今度教えてあげよう。書道道具ならば私の部屋に揃っているから歌兎の好きな時に尋ねてくれればいい」

「…本当? ありがとう、翼お姉ちゃんっ! でも、こっちの翼お姉ちゃんの部屋にお邪魔するのは初めてだから……すごく緊張するな」

「なあに、あっちの私とそう大差はないさ。気楽に訪れてもらって構わない、もちろん切歌や調、セレナも一緒で構わないからな。みんなで訪ねておいで」

「…うん」

 

凛々しい顔つきを微笑みへと崩した翼お姉ちゃんはポンポンと僕の頭を撫でてくれるのを擽ったさから目を細めて受け入れてから、次は隣にいる響お姉ちゃんと未来お姉ちゃんへとぺこりと頭を下げる。

 

「…響お姉ちゃんは可愛いひよこのマグカップセット、未来お姉ちゃんは造花をありがとうございます。どっちもとっても可愛くて、味気ない僕の部屋を可愛くしてくれてます」

 

僕のベッドの横にある細長い箪笥の上には様々な可愛らしいひよこがプリントアウトされている色違いのマグカップと僕の両手を重ねたくらいのバスケットの中に色とりどりの造花と小物が飾られている贈り物が隣りあって飾られていて、目を覚ました時に視界に入れると元気を貰える。

 

「気に入ってもらえて良かった。未来とすごく悩んで決めたんだよ」

「うん、響なんて店の前で何時間もうんうん唸るもんだから、通行人の人に変な目で見られていたっけ」

「もう、未来。それは内緒って言ったじゃん」

「あはは、ごめんごめんって」

 

隠しておきたかった秘密をあっさり未来お姉ちゃんに暴露され、響お姉ちゃんが頬を膨らませてポカポカと未来お姉ちゃんの二の腕を叩くのを身終えてから申し訳なさそうに眉をひそめると上目遣いで二人を見上げる。

 

「…でも、マグカップも造花も高価でしょう? 僕なんかにそんな高価な贈り物して良かったの?」

 

その事は翼お姉ちゃんや他のお姉ちゃん逹にも言えるのだけど……。

 

「もう、歌兎ちゃんったら他人行儀なんだからっ。私たちはもう友達でもあり仲間なんだから」

「うん、響のいう通りだよ。歌兎ちゃんは私たちの仲間でもあり、みんなの妹みたいな感じだから」

「そうそう、みんなの妹」

 

そう言ってケラケラと笑いあう響お姉ちゃんと未来お姉ちゃんの発言を耳聡く聞いたうちの姉様は二人に取り押さえられながら、その頬を風船のように膨らませる。

 

「………むぅ〜ぅ、響さんと未来さんがさっき聞き捨てならない事いったのデス……歌兎はあたしの妹なのに……こっちのみんなじゃないデス、あたしのデス」

「………切ちゃん、しぃーーだよ。今、いいところだから」

「………分かってるのデス。でも、あんなに仲良い姿を見せ付けられちゃうと少しシンパシーを感じちゃうデスよ…」

「………切ちゃん、それだと通じ合っちゃってる。嫉妬してるならジェラシーって言わないと」

「………あっ、間違えちゃったデス」

 

どうやら響お姉ちゃんと未来お姉ちゃんに感じていたシンパシーじゃなくジェラシーはシラねぇのなだめに寄り落ち着いたようで、安堵のため息をついてからその隣にいるクリスお姉ちゃんとマリアお姉ちゃんへと頭を下げる。

 

「…クリスお姉ちゃん、マリアお姉ちゃんもお見舞いありがとうございます」

 

ぺこりと頭を下げてから体を起こした僕の左胸ポケットから顔を出しているたれ耳へと藍色のリボンをつけている水色のうさぎのぬいぐるみへと腰を折ってから見てから、横に視線をスライドしてから尋ねてくる。

 

「あら? 歌兎、その胸ポケットのぬいぐるみって……」

「…これはあっちの世界のクリスお姉ちゃんからの贈り物なの」

 

左胸ポケットへと顔を出しているうさぎへと視線を向けてから淡く微笑む僕を間近で見たマリアお姉ちゃんは慈愛に満ちた……まるでお母さんのような穏やかな微笑みを浮かべるともう一度うさぎへと視線を向ける。

 

「とても気に入っているのね」

「…うん、僕うさぎさんが動物の中で一番大好きだし、僕の名前にも"(うさぎ)"って文字が入ってるし。それに……」

「それに?」

「…兎みたいな人だから……僕の大好きな人」

 

言った後に頬をボッと赤く染め、僅かに俯く僕にマリアお姉ちゃんは"あらあら"と微笑んでから、隣にいるクリスお姉ちゃんの肩を叩く。

 

「ふふふ。だって、クリス。良かったわね」

「なっ!? バッ、バカ言ってんじゃねぇーっ!! それはあっちのあたしの事だろ!? あたしは関係ねぇーじゃねぇか!」

 

まさか自分に流れ弾が当たるとは思わなかったクリスお姉ちゃんも瞬時に頬を真っ赤に染めてから隣で意味深に微笑むマリアお姉ちゃんへと睨みを効かせながら、声を荒げる……のだが、僕から見てもクリスお姉ちゃんの瞳が僅かに潤んでいるのでそんな瞳で睨まれてもそんなに怖くない印象を感じるし、怖いというよりもどちらかというと可愛いと思えてしまう。その感想を得たのは僕だけではなくマリアお姉ちゃんもだそうで、クスクス笑いながらいじわるな口調でクリスお姉ちゃんをからかっている。

 

「そうかしら? 貴女、ずっとうさぎのぬいぐるみにしようか、くまのぬいぐるみにしようか悩んでいたじゃない」

「…あっ、あの大きなうさぎのぬいぐるみはクリスお姉ちゃんからだったんだ」

 

マリアお姉ちゃんのからかいから得た情報から僕はベッドの両脇にある僕の背丈よりも数十センチ小さいくらいの薄ピンク色の可愛らしい垂れ目のうさぎのぬいぐるみと真っ白いテディベアが置いてあるのだが、まさかあのぬいぐるみのうさぎの方をクリスお姉ちゃんが買ってきてくれたなんて初耳だ。姉様やねぇや逹に聞いても"いつの間にか置いてあった"の一点張りで有力な情報が得られなくてお礼出来ないと困っていたところだったから。

 

「そうよ。私の方はクリスが迷っていった方のクマのぬいぐるみにしたの」

「…あのぬいぐるみ、ギュッとすると