うちの姉様は過保護すぎる。 (律乃)
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うちの姉様は過保護すぎる。 夏ッ!

うちの姉様は過保護すぎる。というタイトルにして、今まで過保護な場面は書きつつもシリアスな話ばかり書いてきたので…この『うちの姉様は過保護すぎる。』という名の章はただ、過保護すぎる話とほのぼのっとした日常を書ければと思っております(礼)

では、本編をどうぞ!!


夏--それは暑く、熱い季節。

 

夏--それはかき氷やアイスクリーム、西瓜が美味しい季節。

 

夏--それは課題は多いが、長い休暇が取れる季節。

 

夏--それは開放感、そしてどこか気怠く思う季節。

 

夏--それは(りょう)を求め、人々が青々と茂った山林や碧く澄んだ海へと集まる季節。

 

 

というわけで、僕達は今は海に来ていた。

 

 

「‥‥海っ!!」

「だーーぁ!!」

「デェーース!!」

 

前を見れば何処までも広がる青い空、サンサンと照りつる太陽に熱せられた白い砂浜。そして、何よりもその白い砂浜へとさざ波を打ち付けている青い海。

それらを視界に収めた途端、姉様とその腕に抱かれている僕が少し垂れ目と眠たそうに半開きした黄緑色の瞳をキラキラとさせる。

そんな僕たちの隣に立つ橙のビキニの上に白と水色のシマシマシャツへと身を包む響お姉ちゃんが今にも海に駆け出そうとしている中、後ろから物静かな声が聞こえてきた。

因みに呼び止められた僕達の服装は姉様から説明すると、黒と緑色を基調としたビキニの上から薄手の黒いパーカーを羽織っていて、僕は白と花青緑を基調としたビキニの上から黒いTシャツを着ている。

 

「切ちゃん、歌兎、はしゃぎすぎだよ」

「そうですよ、私達は遊びでここに来ているのではないんですから」

「響もはしゃぎ過ぎだらこけちゃうよ」

 

今にも駆け出そうとしている僕たちを追いかけてきたピンクのワンピース型水着の上に白い薄手のパーカーを身にまとったシラねぇとその隣にいる白いビキニの腰へとエメラルド色のパレオを巻き、頭の上に麦わら帽子を被ったセレねぇ、薄紫色のワンピース型の水着に白いフリをあしらった水着の上に白いカーディガンを羽織った未来お姉ちゃんが(たし)める。

そんな三人の注意を聞き、僕と姉様、響お姉ちゃんは目に見えて悔しそうな表情を浮かべる。

だって目の前にこんなに綺麗な涼しそうな海が待っているというのに、そこに向かっていけないなんて、まるで大好物を目の前に置かれて飼い主に待てと指示されている飼い犬のような気持ちだ。

 

「うぅ……そうデスけど……目の前の海が」

「私達を呼んでるんだよ」

「‥‥ん」

 

残念そうな顔をしてみても、やはりこればかりはどうにもならないようだ。

 

「なら、早くギアを水着ギアへと変化させるこったな」

「そうすれば、早く海にも入れるわよ」

「弥十郎のダンナがそう言ってたしな」

「私としてみれば、そのような時間も己が剣を鍛え上げるために使うべきだと思うのだが」

 

僕らを止めた三人の後ろから四人並んで歩いてくる右端から赤いビキニの端に白いフリをあしらい、その上から薄桃色の薄手のパーカーを羽織るクリスお姉ちゃん。

その隣が何故か大きめなサングラスを付けて、白と黒を基調としたビキニを身につけたマリねぇ。

その横を歩くのが、ニカッと片頬をあげた笑顔が眩しい橙と黄色を基調としたビキニに身を包む奏お姉ちゃん。

その奏お姉ちゃんの隣を歩くのが渋い顔をしている藍色の薄手のパーカーに水色のビキニを身につけた翼お姉ちゃん。

 

そんな翼お姉ちゃんのセリフに奏お姉ちゃんとマリねぇが失笑し、それぞれ好き勝手言っている。それを聞いた翼お姉ちゃんは忽ちに顔を真っ赤に染め、異論を唱えているがそこに戦場(いくさば)に立つ防人としての凛々しさはなく、ただからかわれたので言い返している子供のような愛らしさがあり、僕は心の中で最近の翼お姉ちゃんは本当に愛されるからかわれキャラになった気がすると思うのであった。

 

「翼は真面目すぎるんだよ。今からそんなんだと身が持たないぞ」

「奏の言う通りよ、翼。そんなにカチンカチンに鍛え上げてもいざという時に根元からポッキリ折れては使い物にならないわ。だから、今はカチンカチンに鍛え上げるよりもそこに柔軟(じゅうなん)さを備えるべきだわ」

「さ、防人の剣はそう簡単に折れはしない!ましてや、根元からなぞ……いくら、マリアでも言っていい事と悪いこーー」

「ーーはいはい。ほら、私達はこっちで待機組よ」

 

そんな翼お姉ちゃんもマリねぇによって水着ギアを変化させてない組を待つ待機組の陣地へと引っ張られていく。マリねぇに手首を掴まれ、連れていかれる翼お姉ちゃんを見ていた奏お姉ちゃんは振り返るとセレねぇ、シラねぇ、姉様へと声をかける。

 

「セレナ、調、切歌。あたしらもマリアと翼の後を追うぞ」

「はい、分かりました、天羽さん。月読さん、暁さん、私達も」

「うん、行こう、セレナ。というわけで、切ちゃんは私と一緒にこっち組」

 

セレねぇに声をかけられたシラねぇはコクリとうなづくとガシッと姉様の手首を掴むと暴れる姉様をズンズンと自分達の陣地へと引きずっていく。

 

「ふぇ?あぁ〜っ!歌兎がぁあああ!!歌兎があんな所にぃ!!!調、あと少しあと少しだけ待ってください!歌兎に最後の挨拶をぉおおお!!」

「ダメ。そう言って、歌兎に抱きついて離れようとしない切ちゃんを何度も見てきた。だから、絶対ダメ」

「うぅ……でも、でもぉ……今あの場所には激鬼怖いおっぱいおばけしか居ないんデスよ?あんなおっかない所に歌兎を置いておけないのデス」

 

引きずられている姉様はポカーンと立ち尽くす僕へと左手を伸ばし、バタバタとシラねぇへと抵抗しながら、何も関係ないクリスお姉ちゃんをディスる。

どうでだろうか、何故か最近姉様がクリスお姉ちゃんを集中攻撃する事が多くなった気がする。しかも、敵視しているような気がするし……学校での様子では仲良しな先輩後輩ってシラねぇや響ちゃん、未来ちゃんに聞いてるのになぁ……学校と今では何が違うと言うのだろうか?

そんな事を思っていると、ディスられたクリスお姉ちゃんの我慢の緒が切れたのか、首からかけていたイチイバルの赤い結晶を鷲掴みにすると聖詠を口にしようとする。

 

「こら!てめぇ、誰が激鬼怖いおっぱいおばけだぁ!!!

あの過保護ぉ!今度という今度は袋の蜂にして、もう二度とあの過保護な口が開かなくしてやる!!」

 

そんなクリスお姉ちゃんを宥めるのが未来お姉ちゃんと響お姉ちゃんである。

シラねぇに引きづられて去る姉様に向かい走っていこうとするクリスお姉ちゃんの右腕を自分の左腕を絡めているのが未来お姉ちゃんで、左腕は自分の右腕を絡めている響お姉ちゃんで二人ともあたふたと荒れ狂うクリスお姉ちゃんを静める言葉を掛けている。

 

「まぁまぁ、クリス。落ち着いて」

「そうだよ、今の私の先生は"頼れる"クリスちゃんしか居ないんだから」

「‥‥ん、クリス先生頼れる。だから、僕たちに水着ギアを変化させる方法を教えて欲しい」

 

念押しとばかりにそう言う僕達にさっきまで暴れていたクリスお姉ちゃんは頬を赤く染めるとそっぽを向いてぼそっとつぶやく。

 

「しゃ……しゃーねぇーな。お前達がそこまで言うんなら、あたしが直々に教えてやるよ」

 

(ちょろい)

 

つい、そう思ってしまったのは許してほしい。

前々から思っていたけど、クリスお姉ちゃんは人の甘言(かんげん)にフラフラッと泳がされすぎだと思う。ここまで掌で踊れやすい人となると、将来悪い人に捕まらないかと心配になってくる。

 

「……時々、クリスちゃんのちょろさが怖く感じるよ」

「……将来、悪い男の人に捕まらないように今からそのちょろさを直しておかないと」

「‥‥ん、これもクリスお姉ちゃんの為だもの。僕、お姉ちゃん達の言うとおりに行動する」

「……じゃあ」

 

響お姉ちゃん、未来お姉ちゃんと顔を合わせてボソボソと作戦会議をしていると、後ろを振り向いたクリスお姉ちゃんが怪訝そうに眉を潜める。

 

「お前らそこで何こそこそ話してやがる」

 

そんなクリスお姉ちゃんに三人してあたふたと慌てながら近づくと其々、クリスお姉ちゃんの身体を押して陣地に向かう。

響お姉ちゃんと未来お姉ちゃんが左右の手首を掴んでいるので僕は後ろからクリスお姉ちゃんの背中を押す。

 

「なんでもないよ、クリス先生」

「さぁ、私達は早い所自分の陣地行こう」

「‥‥ん、行こ、クリス先生」

「ん? あぁ……って、変なところを押してんじゃねぇーよ、チビ!!」

「‥‥? 僕、変なところ押してる?」

「お、押してるだろ!!あ、あたしのお、おし…っ」

 

だが、クリスお姉ちゃんは顔を赤く染めると背中を押している僕を睨んでくる。

なので、僕は自分の小さな両手が触っている所を見てみるすると二つの丘の間に隙間へとめり込んでいた赤い布に白いレースがあしらっている…う、うん…どうやら僕は思いっきりクリスお姉ちゃんのお尻を鷲掴みにしていたらしい。

 

「……あっ、ごめんなさい」

 

と謝罪してから、小さな手を僕は薄桃色のパーカーによって隠されているクリスお姉ちゃんの背中を押そうとして--後ろに引っ張れ、パフっと緑色と黒のトップスに覆われた双丘へと顔を押し付けられる。

 

「そんなおっぱいおばけよりもあたしの方が数倍頼りになるデス!だから、歌兎。あたしの事も先生と呼んでくださいのデスよ!!」

 

そうまくし立てる姉様の登場は僕を始めとした水着ギア補習組の面々が驚きのあまり固まってしまった。だって、姉様はついさっきシラねぇとセレねぇの手によって待機組の方へと連行された筈……なのに何故、僕の目の前に居るのだろうか?

 

(姉様、僕に黙って……緒川様に忍術習ったのかな?)

 

まさに神出鬼没な姉様の行動に驚きから復活したクリスお姉ちゃんのキッレキレなツッコミが炸裂(さくれつ)し、姉様はシラねぇとセレねぇに捕まり、またしても待機組へと舞い戻りするのであった。

 

「だから、おっぱいおばけおっぱいおばけ(うるさ)いんだよ、この過保護!!そもそもどこから湧いてでやがった!?お前は先輩達の所だろ!早い所行きやがれ!!」

「もう、切ちゃん。クリス先輩と響さん達の邪魔してはダメだって」

「これも歌兎ちゃんが水着ギアに変化するために必要なことなんですよ。さぁ、翼と姉さんの所に戻しましょう?暁さん」

「離してくださいぃいい!!!調ぇっ!!セレナぁあ!!歌兎ぅううう!!!!」

 

大暴れする姉様を見て、呆れ顔のクリスお姉ちゃんが僕の方を見るが……その表情かまたしても驚きで満たされる。

 

「お前、よくあんな暑苦しい奴と一緒に居て辛くならないな……って、え? へ? へ? 今、あいつらに……? へ? なんでここに居るんだよ、お前」

 

そう、クリスお姉ちゃんの前に居たのはにっこり笑顔で日焼け止めを手に持っている姉様であって、僕の前に腰を落とすと手に持った日焼け止めのキャップを取り、掌で馴染ませた日焼け止めを僕の身体へと塗りたぐる。

もちろん、その際に行うクリスお姉ちゃんへと集中攻撃も忘れてない…流石、姉様抜け目がない。

けど、塗る前に気付いて欲しい。今、凄いカオスな空間なんだよ? クリスお姉ちゃんは怒りで顔真っ赤だし、響お姉ちゃんと未来お姉ちゃんなんて両目が落ちそうなくらいに目が見開かれているんだよ? 僕はそれにハラハラなんだよ?

 

「何故って、歌兎に日焼け止めを塗る為デスよ。歌兎の綺麗な肌が黒く染まってしまったら、あたしがテンパりファイヤーデスからね。そんな簡単なことすら分からないとは、さてはクリス先輩は脳への栄養もその大きな胸に持っていかれたのではないデスか?」

「よぉーし、お前はあたしにボッコボコにされたいんだな?」

 

背後でポキポキと手を鳴らすクリスお姉ちゃんの存在や両目が落ちそうほど驚いている響お姉ちゃん・未来お姉ちゃんの存在など最早、過保護な姉様の前では意味を成さず…僕はハラハラしながらも姉様の言うとおりに両腕を単に伸ばす。

 

「はい。歌兎、ばんざーいデスよ。ばんさいをしてください」

「……ん」

「あたしの話をきけぇ!!!」

 

そして、遂にクリスお姉ちゃんの叫び声が炸裂していても、姉様のヌリヌリと僕の身体へと日焼け止めを塗る手は止まることなく、それを見ていたクリスお姉ちゃんは疲れたように右手で顔を覆うと首を横に振る。

 

「よし、これで前はOKデスね。次は後ろデス」

「……姉様、くすぐった、い……よ……っ」

「じっとしててくださいね?これも歌兎の綺麗な肌を太陽から守る為なんデスから」

 

誰も姉様の過保護節を止める人が居なくなった今、過保護な姉様は誰よりも最強であり、ヌリヌリと塗りたぐる日焼け止めの量がいつもよりも1.5増しになってる気がするのは僕のせいであって欲しい。

あって欲しい上にさっきから姉様のほっこりした掌がこんな公衆の面前で触ってはいけないところを触っている気がしてならない……というか、触ってるっ!今確実に触ってるぅっ!!

 

(僕のトップスの中に手を突っ込んでるし……今、丘の天辺を姉様の掌が通ってーー)

 

僕はそこで顔を真っ赤にして固まっていた顔を後ろに動かし、姉様を止めようと試みる。

 

「……ね、姉様!?そこは日が当たらない所だからっ、いいって……!!日焼け止めなんて塗らなくてもーー」

「ーーダメデス!そう言って油断していたら、痛い目に合うのデスよ?歌兎をあの日焼けの痛みを味あわせるわけにはいかないのデス!」

「だからって……っ!」

「あぁっ……歌兎、動いちゃあダメデスよ。いい子デスから、お姉ちゃんの言うことを聞いてください」

「……ゔぅっ……っ……」

 

ヌリヌリと僕のトップスの中を塗り終え、最終確認ということで片手でサワサワと触っている姉様は空いた右手を今度は下へと滑り込ませようとしている。

そんな暴走する姉様の後頭部を思いっきりしばくのはクリスお姉ちゃんである。

 

「い、い……いい加減にしろぉ!!この過保護バカっ!!!」

 

顔を茹でタコよりも赤く染めたクリスお姉ちゃんは"はぁ…はぁ…"と肩で息をしながら、自分をジト目で見てくる姉様を睨みつける。

 

「過保護バカとは心外(しんがい)デス。あたしは過保護バカなどではなく、トンデモ過保護なんデス!そんだそこいやの妹好きとはわけが違うんデスよ、トンデモ過保護は最強なのデス!」

 

僕ですら意味わからない基準を持っている姉様にクリスお姉ちゃんは呆れながらもご丁寧にツッコんでいく。

 

「どっちも変わんねぇーし、意味が分かんねぇーよ!!あと、そんなくだらない事でドヤ顔を浮かべて、胸を張るんじゃねぇ!良いからその妹のトップスの中に滑り込ませている手と下へ向かっている手を退けやがれ!いつも言ってるだろ、そう言うのは家でしろって!!」

 

クリスお姉ちゃんのツッコミにキョトンとした表情で答える姉様にクリスお姉ちゃんが反射的に聞き返している。

 

「家でもしてきたデスよ?」

「なら、何故今してるんだ!?」

「クリス先輩、備えあれば憂いなしという素晴らしい言葉があるのデス」

 

にっこりと悟った笑顔を浮かべる姉様にクリスお姉ちゃんは失笑した上で力無くその場にへたり込みそうになる。

 

「……はぁ……、頼む。誰か、この過保護をどうにかしてくれ。あたしはつっこむのが疲れた」

 

こうして、砂浜について1時間も経ってない間からうちの過保護な姉様に疲れ果ててしまうクリスお姉ちゃんであった----。




妹への愛さえあれば忍法なんてちょいのちょいなのデス!って感じで、始まった水着ギアの特訓ですが…正直セレナさんと奏さんのが決まってません!(笑)

なので、この続きは8月の後半か…9月頃になるかもです!

そして、うちの姉様が過保護すぎる。を評価、お気に入り、誤字報告してくださる多くの読者の皆さま、本当にありがとうございます(土下座)

これからもうちの過保護な姉様とその姉様に可愛がれ逞しく成長していく主人公をよろしくお願いします!


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夏ッ!!

大変、お待たせしました(土下座)
ここ暫く、体調が優れなくって…更新を休ませてもらっていました。

そして、今回の話は前の話からの続きですが…少し内容が安易で急展開かもしれませんが楽しんでもらえると嬉しいデス!

では、本編をどうぞ!!


「ーー」

 

真横を見れば、どこまでも広がる青い空と碧い海のコントラストが美しい地平線が広がっている。

真下を見れば、真っ白でサラサラな砂浜がサンサンと照りつけてくる真夏の太陽に熱せられている。

 

そして、そこから顔を上げて--

 

「…………補修組のみなさん、ご迷惑かけてごめんなさいデス」

「これは切ちゃんの暴走を止められなかった私の責任でもあるから。だから、クリス先輩、響さん、未来さん、本当にごめんなさい」

 

--真っ正面を見れば、ふて腐れた顔をした表情のままにシラねぇに後頭部を添えられ、共に頭をさせている姉様--

 

「私もちゃんと暁さんを監視しておくべきでした。ごめんなさい」

「あたしも調やセレナに任せっきりだったからな。反省してる、すまなかったな」

「私も一瞬切歌から目を離したことが悔やまれるわ。クリスにもあなた達にも迷惑かけちゃったわね。切歌は私が責任持って、もうあなた達の邪魔をさせないようにするから。歌兎の事、よろしくね」

「私からもよろしく頼む。切歌は我ら待機組全員が責任持って監視する」

 

--だけでなく、そんな姉様とシラねぇを基準に一直線に並んだ待機組の皆さんが一寸のくるいなく頭を下げてくる。

綺麗に並んだ皆さんに綺麗にお辞儀された補修組の皆さんもきっと僕と同じ気持ちだろう。

 

(まさか、うちの姉様が暴走した結果がこんな結末になるとは…)

 

と。

 

未来お姉ちゃんと響お姉ちゃんはまさかの総出の謝罪に苦笑いを浮かべつつ、顔を上げてくれるようにと逆に頼んでいる。

 

「いいですよ。切歌ちゃんも歌兎ちゃんが心配でしてしまった事でしょうから」

「そうですよ、だから切歌ちゃんと調ちゃん、マリアさん達も顔を上げてください。ほら、クリスちゃんも何か言ってあげて」

 

しかし、クリスお姉ちゃんは姉様に言いたい事があるようで、シラねぇに頭を下げられている姉様の方を見る。

 

「あたしはまだおっぱいおばけって言われたことを許したわけじゃね」

 

(あぁ…確かにそんな事を言われてたね、クリスお姉ちゃん…)

 

クリスお姉ちゃんのそのセリフを聞いても、姉様はそれを言ったことを悪いとは思ってないらしく、(たちま)ちにシラねぇからのお叱りを受ける。

 

「嫌デスよ、本当のこーーいだっ!?」

 

パチン、と軽く頭をはたかれ、姉様はシラねぇの方を涙目で見るが、こればかりはシラねぇの方が正しいだろう。

 

「切ちゃんが悪いの。悪いことをしたら、謝らないとダメ。ほら、クリス先輩にごめんなさいって言って」

「……」

 

"ジィーー"とシラねぇからの熱視線に姉様は観念したく、腕を組むクリスお姉ちゃんの方を向くとぺこりと頭を下げる。

 

「……クリス先輩、おっぱいおばけって言ってごめんなさいデス」

「まぁ、そこまで言われちゃ仕方ねぇーよな」

 

姉様から謝ってもらったクリスお姉ちゃんは恐らく自分では凛々しい顔つきをしていると思っているのだろう。

しかし、実際は口元はゆるゆるでなんだか嬉しすぎてか、ゆるゆるを通り越して、むにゅむにゅしている。

 

(クリスお姉ちゃん、チョロすぎだよ…)

 

やはり、クリスお姉ちゃんは安定のチョロインでした。

 

そんなむにゅむにゅしているクリスお姉ちゃんをチラッと見た姉様は横を向いて、すっごい悪い顔をして舌打ちする。

 

「……ちっ」

「切ちゃん?」

 

そんな姉様を(たしな)めるのがシラねぇで、嗜まれた姉様はしょんぼりしながら、もうクリスお姉ちゃんにつっかからないと誓うのだった。

 

「……分かってるデスよ、調。もう、あんなこと言わないデス」

「きっと、歌兎と最近仲良くなっているクリス先輩に嫉妬してあんなこと言っちゃったんだと思うんです。だからーー」

「ーーもう、いいって。分かってるからさ。まぁ、任せろ。このチビはあたしがちゃんと面倒見るからさ」

「よろしくお願いします」「デス」

 

シラねぇのおかげでクリスお姉ちゃんと姉様が仲直り(?)が出来たそんな出来事から数時間。

 

何故か僕は……ううん、僕達は--

 

「なんでお前ら、あたしが少し目を離した隙にびしょ濡れなんだよ!!?」

 

--そう、びしょ濡れになっていた。

 

クリスお姉ちゃんの悲鳴じみたツッコミが炸裂する砂浜へとポタポタ落ちる透明な雫。しかも、その雫もすぐ蒸発気へと化す。

 

そんな雫を垂らす僕達を疲れたように見ながら、クリスお姉ちゃんが目の前の出来事を整理しようとする。

 

「展開がいきなりすぎて、あたしも頭が付いていってないんだ。ひとまず、びしょ濡れは置いておいて…お前ら、いつの間に水着ギアに変わったんだ?それにその其々の腕に抱かれている子猫はなんなんだ?それなのか!?それが原因なのかっ!!?」

 

そう、クリスお姉ちゃんが指摘した通り、僕たちの腕の中には其々子猫が抱かれていて、その猫からも雫が滴り落ちていた。

そんな猫達へと視線を向けて、僕達は其々にうなづく。

 

「……えーと」

「……まぁ」

「……そうだね」

「お前らも大概(たいがい)にしろよな!!!」

 

そんなクリスお姉ちゃんのツッコミが炸裂(さくれつ)した後、僕らは水着ギアに変身した時の状況を説明していた。

 

「はぁ……海に溺れた三つ子の子猫とその両親猫を助ける為に必死になった結果と……」

「どうしたの?クリスちゃん、頭を抑えたりして」

「お前らも本当に人助けが好きだと思ってな。感心するよりも呆れてた所だ」

 

クリスお姉ちゃんのその言い草に同時に頬を膨らませる僕達はしょげたようにクリスお姉ちゃんを非難する。

 

「それはひどいよ〜、クリスちゃん〜」

「そうだよ、クリス」

「……ひどい、クリスお姉ちゃん」

「なんで、あたしが集中攻撃させれてるんだよ!?」

 

"もういい"とおさげにそう言ったクリスお姉ちゃんは改めて僕達の水着ギアを見ていく。そして、僕と隣に立つ未来お姉ちゃんを交互に見ると何か言いたそうに口元を動かそうとしていいどもる。

そんなクリスお姉ちゃんの行動に首をかしげる僕は自分の服装と未来お姉ちゃんを交互に見て、やっとその行動の答えを知ることになる。

 

(わかった…僕と未来お姉ちゃんのギアって何処と無くエロいんだ)

 

未来お姉ちゃんのギアは一見見ると、頭に乗っかっている白を基調にした帽子のつかや帯に紫をアクセントとしてあしらったものを被っていたり、白と紫のトップスや腰に巻いた紫色のスカートなど、未来お姉ちゃんらしい清楚(せいそ)大和撫子(やまとなでしこ)って感じの雰囲気の水着ギアとなっている。

だがしかし、よくよく見ると腰に巻いた紫色のスカートはスケスケの素材を使っており、そのスカートの奥にある水着が丸見えになってしまっている。

 

(たい)する僕もそんな感じで、黒いトップスを隠すように羽織っている花青緑色の薄手のジャケットはその本来の役割を果たせないくらいにズレ落ちており、黒いトップスの方も真ん中に一直線に未来お姉ちゃんのような半透明な布があしらわれている。そして、それは下の方も同じで白い短パンは履ききれておらず、その間から見える下着は丁度半透明な所できっと角度によっては、僕が隠しておきたいものが見えてしまっているのではないだろうか。

 

何を思って、ミョルニルが僕にこんな格好をさせたのか分からないが……こんな格好を姉様が見てしまったら、また暴走しかねない。

 

そう危惧(きぐ)する僕の耳元に砂浜を走ってくる音が複数聞こえ、クリスお姉ちゃん、響お姉ちゃん、未来お姉ちゃんの順に顔がこわばっていったのであった----。




というわけで、今回の話では未来ちゃんと歌兎しか水着ギアをちゃんと解説出来なかったので…次回はみんなの水着ギアを詳しく書いていければいいなぁと思ってます。

思っていますが、今回の説明文で未来ちゃんと歌兎の水着ギア分かったでしょうか?(不安)
未来ちゃんのはXDで登場された水着ギアをそのまま書かせてもらって、歌兎の水着ギアは彼女は私服や普段着が基本的に可愛い系統なので、敢えてエロくしようと思ってデザインさせてもらったんですが……読者の皆さんはこんな歌兎もありでしょうか?
ありならば良かったと肩を撫で下ろします…(微笑)

因みに、彼女の武器であるブーメランは小型のバナナボートへと変化を遂げました…(汗)

だって、ブーメランに似てるのって…バナナしか思い浮かばくって…(汗)
他になんか無いかなぁ…と思っても、やはりバナナしか………しかし、バナナボートにそんなエッチな姿の歌兎を跨がせるって……

…………………(思考)

やはり、いくら考えてもこの作品的にもアウトで、社会的にもアウトな気がしてならない!!!(大汗)

これは、今日にでも私は過保護な姉様に「デストローイッ!!!」されますね…(遠い目)
歌兎にエッチな格好させて、私は満足ですし…きっと読者の皆さんも喜んでいるはず!
どうやら、私の役割はここなのかもしれませんねぇ…(手紙を書き始める私)




と、この水着ギアの話はここまでにして…『ご注文は三姉妹ですか?』の後書きで書かせてもらった天神ビブレに行った時の話をさせてもらおうと思います。

まず、福岡に着くまでに新幹線に揺られながら、『かやのみ』を見てました。
丁度、最新話が三色団子編でして、オープニングでそれを表現する茅さん(私が勝手に茅野さんをそう呼ばせてもらってるんです)が可愛いかったです(微笑)
その後のトークも素晴らしく、南條さんと日笠さんの服装や髪型も素晴らしかった。


と天神ビブレに着き、その結果は…

・スタンドチャーム…切ちゃん×2。響ちゃん、翼さん、クリスちゃん、マリアさん、調ちゃん。

・ソフトキーチェーン…切ちゃん×2

・マフラータオル(調ちゃん&切ちゃん&マリアさん)

〜絶唱ガラポン〜

・ICカードケース…切ちゃん

・缶バッチ…切ちゃん、調ちゃん、翼さん

・ステッカー…切ちゃん(単独)

でした。

無事、目標となる切ちゃんグッズの確保が達成できたので胸を撫で下ろしております(安堵)





また、昨日から『シンフォギアライブ2018』のDVD&Blu-rayと『XDのキャラソンアルバム1』が発売されましたね!
ついさっきまで、ライブの方を見ていたのですが…改めて、シンフォギアって素敵な作品だなと思いました。
本当はもっともっと書きたいことがあるのですが…あまりこの後書きで書くと読まれる方が大変だと思うので、その感想はもしかしたら活動報告の方で投稿してるかもしれません。
時刻はお昼か夜くらいだと思うので…良ければ、遊びに来てください。

と、かなり長くなってしまいましたが…皆さん、夏も後少しとなりましたが、暑さに負けずに頑張りましょう!!


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秘密ッ!

響ちゃん、そして茅さんお誕生日おめでとうございますッ!!!

そして、今回の話はかなり短めです。あっという間に読み終えてしまうかもしれませんが…読者の皆さんに楽しく読んでもらえればと思います。

ーーーー

歌兎「…今回の話は姉様がやけ食いしてる話だよ」
切歌「なんデスとぉおお!!?」

って話。


「ごくんごくん」

 

右手に持ったジョッキの中に入っている薄茶色のしゅわしゅわっとした飲み物…コーラを(あお)るように飲んだあたしは勢いよく木で出来た机へとジョッキを叩きつける。

 

「ぷわぁー」

 

コーラの弾ける泡で僅かに汚れてしまった口元を乱暴に吹いたあたしを見て、にこにこ笑うのが真向かいに座る癖っ毛の多い短めの茶色の髪に琥珀色の瞳を持つ少女…響さんで、このふらわーに来る前に表を歩いていたのでほぼ強引に連れ込んだという経緯があったりする。

 

しかし、そんな経緯も無かったように響さんも楽しげにコーラで喉を潤したり、目の前でじゅうじゅうと美味しそうに焼けているお好み焼きを突いたりしているので、成り行きとはいえ響さんを捕まえられて良かったかもしれない。

 

(よぉーし!今日は飲んで!食って!忘れてやるのデス!調や歌兎の事なんて)

 

ふらわーのおばさんが注いでくれたコーラをまた一気飲みし、子コテでお好み焼きを切り取り、口に運ぶ。

 

「おぉ、すごい勢いで食べていくね、切歌ちゃん。私も負けたらないね!」

「おばさん、コーラもう一杯おかわりデス」

「はいよ」

 

熱々に熱したお好み焼きを冷まさずに口に含んだ為、火傷してしまった舌を氷の入ったコーラで冷やしながら、響さんとお好み焼きを突いていると、響さんが不思議そうな顔をして、あたしの短パンにあるポケットを見つめる。

 

「そういえば、切歌ちゃん。いつも大事そうに持ってるミニ歌兎ちゃんキーホルダーはどうしたの?無くしちゃった?」

 

響さんがいう"ミニ歌兎ちゃんキーホルダー"とは、今年のあたしの誕生日に歌兎から貰った誕生日プレゼントであって、歌兎を象ったぬいぐるみが付いたそのキーホルダーは歌兎の手作りらしく、他にも色んな服装を着た歌兎のぬいぐるみが腕に収まりきらないほどに贈られ、その歌兎たちはあたしのベットの上に綺麗に並んで座っている。

 

そんな歌兎ぬいぐるみを思い浮かべながら、あたしはキリッと響さんを睨み、ドンドンと机を叩く。

 

「そんなわけないデスッ!!あたしが歌兎を無くすなんて…!今日は…たまたま家に置いてきているだけなのデス」

「そうなんだ」

 

歯切れ悪くそう言うあたしにうなづいた響さんがごくんとコーラを一口含み、お好み焼きを子コテに乗せ、かぶりつく。

もぐもぐと頬を膨らませ、お好み焼きを食べる響さんに習い、あたしもお好み焼きにかぶりつく。

 

その会話から沈黙が降ってきて、無言でコーラを呷ぎ、お好み焼きを食べ尽くしたあたしと響さんはお腹を抑えながらもやけ食いへと街へ繰り出すのだった…




というわけで、突然始まった切ちゃんのやけ飲み食い。
彼女がこうなってしまったのには、ちゃんと訳があるのデス…その訳を次回は書ければと思います(礼)


今日から始まった『調べ歌う二重唱』の後半戦ですが…一言、感動しました(涙)
ネタバレになるといけないので、多くは語られませんが…ラストの挿し絵は卑怯デス…とだけ書かせてもらいます。

また、新たに追加された『ダイスキスキスギ』はきりしらファンには堪らん楽曲ですねっ(大興奮)
調ちゃんも切ちゃんの声がどこかしっとりしてるのも私的にはグッとでした!!
また、最後の歌詞がズルいですね……

あぁ、早くフルで聴きたいなぁ…(〃ω〃)


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秘密ッ!!

最速でッ!
最短でッ!
真っ直ぐにッ!


一直線にッ!!


フラグ(必愛デュオシャウトガチャ)を回収しちゃいましたね、私

可笑しいなぁ……

待ちに待っていた筈なのに、目の前が何かで霞む……(ごしごし)


※ものの数分で読めるような話を目指して書きました。
主に切ちゃんがボケ、響ちゃんがツッコミというレアケース(?)となっております、時々"クス"や"あはは"と楽しんで笑いながら読んでもらえればと嬉しいです(土下座)


「で、そろそろ聞かせてくれないかな?」

 

ふらわーから出てから至る所にある屋台に立ち寄っては買い込んだ食べ物をベンチに置き、ペットボトルのジュースを歩き疲れた身体に流し込み、癒した後に"まずは串焼きからトライデス!"と大きな口を開けて、噛み応えのある豚肉を噛んでいる時にそう尋ねられ、響さんへと小首を傾げる。

 

「ふらわーじゃあ聞きそびれちゃったんだけど、今の切歌ちゃんは落ち着いて見えるから」

 

その後に続く言葉はきっと"あたしが落ち込んでいる理由が知りたい"って事だろう。

やっぱり響さんには敵わない。

仕方ない、ここは白状しよう。

 

…歌兎が最近隠し事をしてるみたいなんデスよ。あたしには今日も内緒で調やクリス先輩、未来さんと会ったりして、キャッキャウフフしてるんデスっ、あたしはもういらない子になったんデスよ!!

 

嘆くあたしの告白に一瞬口をあんぐり、琥珀色の瞳をまん丸にして、暫しぽかーんとした響さんはおずおずとあたしへと尋ねてくる。

 

「切歌ちゃんのいらない子発言はまず置いておいて…あの歌兎ちゃんが切歌ちゃんに隠し事?本当に?」

 

あの歌兎がデス、本当にデス。この目で見たんデス

 

「切歌ちゃんのいう事ならなんでも聞くあの歌兎ちゃんが?見間違いとかじゃなくて?」

 

だからさっきからそうだと言ってるデスッ!!!

 

くどい響さんにプチ()れるあたしに響さんは両手を顔の前に重ねて謝る。

 

「あはは、ごめんね、切歌ちゃん」

 

"笑い事じゃないデス"とあたしは太ももに置いてある屋台で買った串焼きをやけ食いし、その横に置いてあるたこ焼きやたい焼きをガブガブと口に詰め込むあたしへとペットボトルの蓋を取り、差し出してくれる響さん。

 

「本当にごめん、切歌ちゃん。まさか、お姉ちゃん大好きっ子な歌兎ちゃんが切歌ちゃんに隠し事なんて珍しいなって思っちゃってね。その隠し事は今朝からなの?」

 

そんな響さんから乱暴に飲み物を受け取り

 

「…今朝じゃないデス。始まりはーー」

 

そっぽを向いて語り出すのは、この出来事の始まりであの日である。

 

『ーー』

 

その日、歌兎は熱心にソファに座って雑誌を読んでいて、あたしはその雑誌が気になった。

理由は、歌兎が本や絵本ではなく雑誌を熱心に読んでいたからで。

 

『歌兎、何読んでるデスか?』

『…!?』

 

そこであたしは考えた。いつものノリで後ろから抱きついてから、その雑誌の中身を一緒に見よう…後ろから抱きつくのが駄目なら、歌兎を太ももの上に乗せて、一緒に読めばいいじゃないか。そう思って、あたしは後ろから抱きつこうとして歌兎の後ろに忍び寄り、いざ抱きつこうとしたら思いっきり避けられ、手元にある雑誌へと手を伸ばそうとしたら怒鳴られた。

ショックだった、忽ちに頭が真っ白になった。

 

「そんな些細な事で---いいや、切歌ちゃんならあり得るのかな」

 

響さん、失礼デスね。凄く失礼な人デスね。あんなに可愛い歌兎に拒絶されたんデスよ?『姉様、それに触っちゃダメ!』ってキツく…ッ、キ…ツ、く言われたんデスよ。誰だって天地がひっくり返る気持ちになるデスよ?え、分からないデスって…いいデス、ここから歌兎講座に入りましょう。歌兎の可愛さを響さんに存分に教えてあげるデス!!

 

「あ、うん…話の腰を折ってごめんね。講座はまた後で受けるから、切歌ちゃんがグレちゃってる理由の続きどうぞ」

 

ごほん。

グレてはないデス、グレては…ただ、歌兎があたしに構ってくれないから…あれ?響さんが可哀想な子を見る目になってるデス、なんでデスかね?

と話を戻して、その後はつんつんと歌兎に頬を突かれて、意識を戻したのデス。

 

「…放心状態だったんだね、切歌ちゃん…」

 

響さんの可哀想な子を見る目が加速していってる!?意味がわからんデス!!

 

「…うん、分かったから話を進めて」

 

分かったのデス。

頬をつんつん突いていた歌兎がいったセリフが以下デス。

 

『…姉様、顔が真っ青だけど大丈夫?』

 

思わず、叫びそうになったデスよ、"あたしが顔が真っ青なのはあなたのせいデス!!"って。

 

「…う、うん…そう…だね…」

 

なんか、響さんの表情がだんだん悪くなってるデス、もう可哀想な子を通り越して、生暖かい眼差しになってるデス。しかし、あたしの怒りと悲しみはここでは終わらないのデス。

 

その次の日も次の日も、次の次の次の日も歌兎は自室にこもってばかりであたしのことを構ってくれないデス。

 

「そうなんだね…、それは辛いね」

 

なんだか投げやりな慰め方デスね、響さんっ!あたしはこんなにも悲しんでいるっていうのに!!

歌兎には部屋に入ろうとすると『姉様は入っちゃダメ!』って言われるし、調やマリア、セレナは良くて…なんであたしはダメなんデスぅ…?朝はいつものあたしよりも早く起きてるし、寝る時はあたしよりも早く寝るし…っ、ゔゔぅ…ぅ……、歌兎成分がぁ…歌兎成分が足りてないんデスよぉ…くすん。

 

「なんだかもう…どっちがお姉ちゃんか分からないな」

 

なんか言ったデスッ!!?

 

「ううん、何にも!!」

 

両手をブンブン横に振る響さんは不意に端末をいじると勢いよく立ち上がる。

 

「切歌ちゃん、そろそろ帰ろうよ。もう辛くなってきたしさ」

 

いやデス…あたしはあの家ではもういらない子なんデス…。歌兎には調にマリア、セレナがさえいればいいんデス。あたしはこのベンチに膝を抱えて座って、大きなキノコになるデス…。

 

「何故そこできのこぉ!?」

 

膝を抱え出すあたしを無理矢理立たせた響さんは爽やかに笑う。

 

「へいきへっちゃらだよ、切歌ちゃん!歌兎ちゃんはお姉ちゃんが世界一…ううん、宇宙一大好きな子なんだよ!そんな子が切歌ちゃんを大嫌いになるわけないじゃない。だから、今日は帰って歌兎ちゃんとよく話してみたらどうかな?」

 

もし帰って、へいきへっちゃらじゃなかったら、毎晩響さんの枕元に正座して、怨みの念を送り続けてやるデス。それでもあたしを帰らすデスか。

 

「怖ぁ!?切歌ちゃん、怖ぁ!!?」

 

そう言いながらも響さんはベンチに置いたままにしてあるやけ食い用のプラスチック容器をビニール袋に入れ直すと嫌がるあたしの手を握り、何故かルンルンと鼻息交じりにずるずるとあたしをマンションへと送ったのだった……




さてさて、切ちゃんは自宅に帰り、歌兎と仲直りが出るんでしょうか?
そもそもこれは喧嘩と言えるのか!?
それは読者の方のご判断にお任せ致します(笑)



さてさて、過保護な切ちゃんのことも気になるでしょうが…私の必愛ガチャの結果も気になりますよね。

結果は以下の通りデス。

11回の1回目、☆5は出たが『技属性のクリスちゃん』。

2回目、☆5全く出ず。

3回目、みんなの名言(?)がカッコいい文字で書かれているカットインが入り、"こ…これ、来ちゃったんじゃないデスかッ!?"とテンションがハイになり、来たのが☆5の『心属性のマリアさん』と『力属性の翼さん』の年長コンビ…嬉しい…震えるほどに嬉しいんですが…1回目のクリスちゃん同様、三人のファンの皆さん心からすいません(高速土下座)
思っちゃったんです…"あんた達じゃねぇー!!"って


今は4回目に向けて、ちょくちょくと石を貯め中デス。

恐らく、早くてこの更新後くらいにはガチャれているでしょうか…フレンドリストの方に"必愛切ちゃん"を載せていられることを願いつつ、必愛ガチャ報告を終わろうと思います。

秋も終わりに入り、冬になりつつある今日この頃寒い日々が続いているので、皆さまお身体を温めつつおやすみください、ではでは(。-_-。)


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妹恋(うたこい)ッ!

大変お待たせしました……(大汗)
サンタ切ちゃん復活ガチャに吊られたり、様々な用事が重なり…ここまで遅くなってしまいました。
はい、サンタ切ちゃんに吊られたのは私が悪いですね……ほんとすいません(土下座)

さて、今回の話はきっと2話構成か今回だけの話となるかもしれません。
内容はタイトル通りで【妹の恋】と書いて【歌兎の恋】となってます。
その恋のお相手は虎々絽(こころ)ちゃんではありません、彼女との恋路は【ハードラブ・ミッション】と【繋がる陰陽の太陽】にて書くので…今回は残念ですが、お引き取りいただきまして、ノーマルな恋路を書こうと思ってます。
つまり、歌兎ちゃんが恋するのは普通の男性ということで……と、ここまで書くと読者の皆さんはうちの姉様がどんな行動を取るのかはお分かりですよね?

って事で、そんな感じの話となると思います…では、本編をどうぞ!!



※あいにくの読みにくさ。そして、長めですので…切ちゃん・歌兎やみんなの可愛さに触れつつ、お楽しみくださいm(__)m

こっそり【きりしら】と【きりセレ】を文章に入れてみました(微笑)
皆さんは何個見つけられるでしょうか?

……なんだか、うちの姉様がだんだんと鈍感系ハーレム主人公と化してる(笑)


「‥‥姉様、あのね」

 

最近、歌兎(いもうと)がお小遣いをおねだりする事が多くなった。

値段は500〜700円程度なのだが、それがほぼ毎日となると姉ながらにそのお金が何に使われているのか、と気になってくる。

また、お小遣いを貰った後、真っ先に飛ば出して行って、帰ってきた時にいつも両手いっぱいに持っている駄菓子の袋はなんだろうか?

 

もしかして……これはもしかしてなのだが、歌兎が毎日お小遣いを貰うのは、外で遊んでいるときに良からぬ輩に捕まり、毎日嫌々ながら貰った小遣いで駄菓子を買わされているのではだろうか? もしくは、その500円や700円をカツアゲされているのでは…?

 

いいや、もうそれしかない!もう、それしか考えられないッ!!

 

「って、事で奏者のみんなで歌兎をびこ……じゃないデスーー」

 

因みに、あたし達がいるのは、マリアとセレナが暮らしているマンションでーー最初はあたしと調、歌兎で住んでいるマンションに集まろうとしていたが、学生ではない年長組を部屋へとあげるのはなかなかに難しいらしくーー都合よくみんなが住んでいる家の中央に位置していたマリアとセレナのマンションに集まったというわけだ。

 

そんなマンションの居間に鎮座(ちんざ)しているのは、シンプルな形なのだが、大型のテレビで……そのテレビを取り囲むように真っ白なソファが三つほど置かれている。

座り順なのだが、テレビ側から見て……右側に置かれているソファに座っているのが、右から未来さん・響さん・マリアとなっている。続けて、左側に置かれているソファに座っているのが、左側から奏さん・翼さん・クリス先輩となっている。そして、中央に置かれているソファに座っているのが、左側から調・あたし・セレナとなっている。

 

「ーー愛ある監視をするデスよ!!」

 

と、シャキーンとその大型のテレビを指差してドヤ顔するあたしに呆れ顔のみんな。

 

(あ、あれ…?温度差がおかしくないデスカ……)

 

「切ちゃん、それだ監視よりもさらに酷くなってる」

「愛ある監視って……なんだか、愛が重い気がしますね」

 

(うっ……うぐ、セレナに愛が重いって言われちゃったデス……)

 

ガックーン、と落ち込むあたしを見て、あたふたとセレナが弁解しているけど、その弁解の内容が更に落ち込みへと拍車をかける。

そして、そんな様子を見て、呆れた様子のクリス先輩は決めつけたような口調で吐き捨てる。

 

「毎日ちびちび500円から700円くらいを奪うか、その程度の駄菓子を買ってこいっていう不良がいるわけないだろーが。あたしがそいつらから一気に1万くらいぶんどる。つぅーことは、今回もお前の過剰な過保護だ。もういいか、あたしは帰ってから観たいものがあるんだ」

 

颯爽と立ち去ろうとするクリス先輩を邪魔するように先回りして、立ちふさがるあたしを退けようとするクリス先輩。

 

「待って欲しいのデス〜〜、クリス先輩!!!クリス先輩の言いたい事は1億歩譲るデスっ、デスが、もしもがあたしの頭から離れないデスよーーぉ!!」

「だから考えすぎだ過保護。こら、離せって!!」

 

なんとかかんとかクリス先輩を元の位置に座って貰って、あたしはテレビの前に進み出ると『フ』と不敵に笑うと正面へと右掌を差し出す。

 

「みんな呆れ顔をしているのも今のうちなのデスよっーー緒川さん!!」

「ここに」

 

あたしの呼びかけに音なく右手にビデオカメラを装着した緒川さんにみんなが目を丸くする。

 

ふふふ、もっとびっくりするがいいのデス!!

 

「…………得意げな切ちゃん可愛い」

「…………得意げな暁さん可愛いです」

 

なんか中央の二人はあたしを見て頬を染めてるデスが…….ハッ!? もしかして、二人して風邪を引いてしまったのデスか!?

 

「何故、切歌が得意げなのかが分からないわ……」

「まぁ、そこが切歌ちゃんの魅力ですから……」

「響。それフォローになってないよ……」

 

そして、何故か右側から生暖かい視線と共に酷いこと言われている気がするデスがいいデス……何故ながら、左側のお三方がいい感じでびっくりしてくれてるからデス!!

 

さぁ、あたしの切り札デスよ。もっと驚くがいいのデス!!

 

「緒川さん!?」

「何やってんだ!?」

 

フフ、奏さんと翼さん驚いてるデスね。

さてさて、クリス先輩はあたしの顔を見た後に安堵したように微笑む。

 

「そのアホ面見ているとなんか落ち着くな」

「それどういう意味デス!? 喧嘩デスか? 喧嘩を売ってるんデスか!アァン!!」

 

緩めの深緑色のニットを腕まくりしながら、クリス先輩にヅカヅカ歩いていくあたしを後ろから抱きしめて止めるのは調である。

 

「切ちゃん、どうどう。クリス先輩も悪意があるわけじゃないんだから」

「それ更にひどいデスよ!?」

「まあまあ」

「そのまあまあってなんデスか!?」

「切ちゃん、今日のおやつに取ってあるチョコプリン食べる?」

「……食べる」

 

(強引に話題をそらされたデスが……もうプリンで嫌なことを忘れてやるデスっ!!)

 

調にチョコプリンを手渡され、はぶてたようにパクパク食べるあたしの頭を撫でるセレナがあたしの代わりに緒川さんを呼んだ理由を説明してもらう。

お礼にチョコプリンを一口あげたのデスが、その時セレナの顔が真っ赤っかだったのはやはり風邪でも引いてしまったのだろうか?

 

「緒川さんならNINJAなので、動物的勘の鋭い歌兎ちゃんの警戒心を解けると暁さんは考えたみたいなんです。なので、明日は歌兎ちゃんの事よろしくお願いします、緒川さん」

「えぇ、任されました」

 

にっこり微笑む緒川さんがあたしを見て、爽やかに笑う。なんデスかその笑顔は、このチョコプリンはいくら緒川さんでもあげないデスよ。もう一つは調ので、三つ目のは歌兎のなんデスからっ。

 

「……動物的勘って、そういう所も姉妹なんだね」

「……そうだね。あの時の切歌ちゃんも歌兎ちゃんも凄かったもの」

 

響さんと未来さんが微笑ましそうにあたしを見てくるデス……だから、このチョコプリンはあげないデスよ、そんな目をしても。

 

もう二つのプリンを死守するあたしを何故かそんなの皆んなと緒川さんが暖かい笑みを浮かべつつ、呆れを8割加えるというなんとも不思議な笑顔を向けられながら、歌兎の監視作戦がこうして始まったのだった----。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

そんな作戦が立てられているとは知らない歌兎は実に言いにくそうにソファに座り、漫画を見ているあたしの横に立つとモジモジと身体を揺らしながらいつものようにおねだりする。

 

「‥‥ね、姉様。そ、の……今日は500円をちょうだい……ダメ、かな?」

「はいどうぞデス、歌兎」

「‥‥へ?」

 

あっさり渡された500円玉に歌兎は目をパチクリしてる。

 

「‥‥姉様?」

 

漫画を机に置き、自分へとにっこり微笑むあたしをマジマジと見てくる歌兎。

 

「500円が欲しかったんデスよね?」

「‥‥うん、そうなんだけど」

「歌兎が欲しいって言ってるものをあげないわけないじゃないデスか」

「‥‥そっか、ありがとう。姉様」

 

なんか歌兎が引いてるように思えるデスがいいのデス。

 

(これも歌兎の為なんデス。歌兎を魔の手から救い出す為にあたしは心を鬼さんにするのデスよっ!)

 

歌兎は心配そうにあたしを見た後に身を(ひるが)すとお気に入りの薄茶色のブーツを履く。

そして、振り返るとあたしへと小さく右手を振る。

 

「‥‥姉様、行ってきます」

「はい、行ってらっしゃい。暗くなる前に帰ってくるのデスよ」

「‥‥ん、分かってる」

 

ガチャンとドアが閉まる音ともに飛び出してくる奏者のみんなが素早く昨日と同じ席に腰掛けるとあたしは緒川さんへと話しかける。

 

「緒川さん。歌兎はマンションを出たデス、あとはお願いしますデス」

『分かりました』

 

そう言った途端、近くにある山を映していた画面が路地をトコトコと歩く冬服に身を包むようあたしの宇宙一可愛い最愛の歌兎(いもうと)が映し出される。

 

(画面に歌兎が……へへへへへ…)

 

画面いっぱいに映し出される歌兎に頬を緩ませるあたし。そんなあたしを見て、頬を緩ませる調とセレナ。

 

「切歌、そして、月読とセレナもみんなでここ集まっている意図は理解しているのだろうな?」

「分かってるデスよ、翼さん」

「本当なんでしょうね……」

 

翼さんもマリアも酷いのデスよ、こんなにも目を光らせて画面を見ているというのに。

 

「そのゆるゆるな顔が問題なんだよな」

 

(うぐ、奏さんに言われたなちゃったならば……ここは顔を引き締めて、しっかり歌兎を監視しなくては!!)

 

と思った矢先、画面から流れてきた歌兎のセリフは以下の通りだ。

 

『‥‥んー、姉様。変なの食べたのかな? それにどこか様子も白々しかったし……僕に内緒で何かしてる?」

 

「おい、いきなり怪しまれているじゃねーかよ、姉様」

 

あ、あれーぇ? おかしいデスね…、あたしの演技は完璧だったばすなのに。

 

『‥‥ううん、姉様が僕に隠し事なんかしないよね。なら、きっとテストの点数が悪かったんだ。何か元気になるものでもあげよう』

 

そう言って、徒歩を早める歌兎の姿からーー正しくは画面から視線を横にスライドしたあたしはクリス先輩へと"ホラ見たことか"とフンと鼻を鳴らす。

 

「いや妹にテストの点数で心配される姉は普通じゃねーからな」

 

呆れ顔のクリス先輩に何を言われても今のあたしには痛くも痒くも無いのデスよ。

 

「あっ、歌兎ちゃんが駄菓子屋さんに入って行くよ」

「本当だ。今の所誰にも会ってないのに」

「って事は結局は切歌の早とちりだったのね。歌兎ももう子供じゃないのだから、そんなに心配しなくても大丈夫よ」

 

アァーアアァー聞こえないのデース、特に右側の左が言ってることが一番聞こえないのデース。

 

「全く歌兎よりも切歌の方が子供よね。緒川さん、もう少しだけ歌兎の事映してくれるかしら?」

『分かりました』

 

そう言って、緒川さんが駄菓子屋さんに足を踏み入れ、歌兎を映し出した時にその場に居たみんなが絶句(ぜっく)した。

 

『‥‥ん』

 

所狭しと駄菓子が積まれ、薄暗くなったカウンターの上で両腕を組んで、うたた寝しているきっと翼さんと同い年くらいの青年の短めの黒髪から覗くおでこへと頬を赤く染めた歌兎がその小さな唇をくっつけている。

 

そう、歌兎は営業中だというのに居眠りしているこの駄菓子屋さんの店主であろう青年にキスしてるのである。

 

キスをしているのである。

 

スをしているのである。

 

をしているのである。

 

しているのである。

 

ているのである。

 

いるのであーー

 

(ーーアノ男、ブッ殺ス)

 

衝撃の事実から現実逃避していた思考が頭の中でこだまする"キスをしているのである"って言葉に否応なく覚醒させられ、続けて起こる出来事はあたしのおでこへと血管が浮き上がる。

 

素早く襟首から赤い結晶を取り出し、イガリマの聖詠を歌おうとするあたしを奏者のみんなが止めに入る。

 

「Zeios iglima razen tぉろーーむぐっ!?」

「こら過保護。一体全体何しようとしてやがる!?」

「ギアで一般市民を切り捨てるなど防人として以ての外だぞ、切歌」

「しかもイガリマは魂を両断する力を持ってる」

「尚更止めないとッ!!」

うぐなひぃふるえふが(このなにするデスか)

 

大暴れするあたしの視界の先にはいまだに駄菓子屋さんの青年へとキスしている歌兎が映っていた----。




アァー、やっぱりこうなった(大汗)
これはもう時に身を任せるしか無いのデス。

過保護な姉様が妹離れ出来る日が来ることを願って……暫し、更新を休憩させてもらいます(土下座)

そして、今回登場した冬服の歌兎ちゃんを【総数50話記念】として、描かせてもらいました。

テーマは『あったかいもの、どうぞ』デス。


【挿絵表示】


可愛らしく書くつもりが、なんだか大人っぽくなってしまった歌兎ちゃんでありました(笑)
眠そうな目って大きく描くとなると大変ですね……しかし、こんな可愛い子におでこキスしてるんデスよ?

…………うむ、わたしなら悶えるな。

と、これはお知らせなんですが…来年のどこかで【ハードラブ・ミッション】のオリジナルキャラである『虎々絽(こころ)』ちゃんも描いてみようと思います(笑)





ここからはちょっとした雑談コーナーで……中にはど変態な発言も含まれてますので、そういうのが嫌いな方は見たいで回れ右をしてください!



さて、クリスマス2018の☆5メモリアと☆4メモリア、やばいデスよね…?(大興奮)

まず、☆5メモリアの切ちゃん・調ちゃん・セレナちゃんの可愛さたるや……すいません、今こうしている間もあの可愛い三人を思い出しては悶えてます(ジタバタ)

切ちゃんは雪だるまコスが似合いすぎるし……マリアさんが倒れてしまったから、心配なんでしょうね、少し涙目なのがもう可愛すぎるッ!!大丈夫だよって抱きしめたい!!
っていうか、毎晩抱き枕にして眠りたいデスけど、雪だるま切ちゃん。もふもふしてそうですし…。

調ちゃんのサンタコスは猫のような耳が付いてますよね? ちょ…、調ちゃんに猫耳サンタが似合わないわけないじゃないデスかっ!!
くっ、こちらもお持ち帰りしたい!!

そんな二人とは対照的に清楚な感じに仕上がってるセレナちゃんにキュンキュンデスよ!!
しかも上目遣い…ぐぶっ、子猫みたいじゃないデスか……がはっ(三人の可愛いさに出血多用)


☆4の彼氏シャツしてる調ちゃんもヤバイ……胸元空きすぎッ!そして、あのどこかぽやーんとした顔……くっ、これはヤバイッーーと、これ以上は本当にみなさんのお目を汚す発言を書いてしまいそうなので……ここまでで雑談コーナーを終わります。

次回は年終わりか初めか、クリスちゃんの誕生日くらいに更新すると思います( ̄^ ̄)ゞ
寒い日が続くので、読者の皆さんお身体にお気をつけて…ではではm(__)m


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妹恋(うたこい)ッ‼︎

あけましておめでとうございます!

今年も【うちの姉様は過保護すぎる。】を宜しくお願い申し上げます(土下座)

そして、ここまで更新が遅くなった上に予定していた【重なる陰陽の太陽】の3話ではなくてごめんなさい。
内容や文字の色を変える作業が多すぎて、まだ更新出来そうありません(汗)

でも、約束していた着物の歌兎は下手っぴかもしれないけど描いたから許して……このとーりデスから(土下座)



※ちょっと長めです。

では、本編をどーぞっ!


「ーー」

「‥‥」

 

(え、え〜と……これはどんな状況なんだろうか?)

 

現在が僕がいるのは、マリねぇとセレねぇがS.O.N.G.の皆さんが日本で暮らす為にと用意してくれたマンションのリビング。

正面に大きめなテレビが置かれ、そのテレビを取り囲むように真っ白な皮のソファが三つ並び、その中央の間スペースには本来ならば(・・・・・)シックな造りのガラス張りのテーブルが鎮座(ちんざ)してある。

そう、それはあくまでも本来ならばの説明であって、今はマリねぇかセレねぇか分からないけどどちらかの私室の椅子が置かれ、その上にちょこんと僕は座らされている。

 

そして、そんな僕を取り囲むように奏者のお姉ちゃん達と未来お姉ちゃんが勢揃いというわけだ。

みんなを無口で僕の事を見てくるだけで、気まずい他ならない。

 

「‥‥」

 

(な、なんでこんなことに……)

 

家に帰ろうとしたら、緒川様が突然現れて、『切歌さんが呼んでいるので来てもらっていいですか?』と爽やかな笑顔で強引にお姫様だっこされて、連れてこられたこのマンションであれよあれよとこの位置に追いやられ、こんな状態になっているという……。

 

(意味が分からない)

 

いつもなら、姉様の行動全てが理解出来るのだが……今回のこの行動だけは理解出来ない上に真顔がなんだか怖い。

 

「歌兎。お姉ちゃんに言うことはありませんか?」

 

重い口を開く姉様の口調はいつもの砕けた感じではなく、怒りを全面に出している感じで、僕はそんな姉様に震え上がりながら、暫し考えた末に思い浮かぶことがないのでそのまま答える。

 

「‥‥お、思いつかないよ」

「白を切るつもりデス?」

「‥‥白なんてきってないよ」

「ほぉ〜〜、ならこれを見てもそんな事が言えるデスかね」

 

そう言い、姉様はテレビの電源を付ける。

 

そして、画面に表示されるのはつい先刻僕が行っていたこと。

もっと厳密にいうと、机の上でうたた寝をしている黒髪を短く切りそろえている青年のおでこへとキスをしている僕の姿だ。

 

(‥‥な、なんで……)

 

「緒川さんに付けてもらっていたんデス」

 

し、知らなかった……。

でも、言われてみれば、何処か視線を感じることが多かったし、見知った雰囲気を感じ取れることも多々あった。

それが緒川様だったということか。

 

(今度からもっと気を張って、外を歩かないと)

 

顎に右手を添え、緒川様や姉様達から逃げ切るためのルートを頭の中で組み立てる僕を見ていた姉様は普段垂れ目な黄緑色の瞳を吊り上げて、空気を吸い込む。

 

「歌兎ゥ!!!!」

「にゃい」

 

姉様の怒声に思わず噛みながら返事する僕は肩をビクつかせながら、姉様の方を見る。

すると、姉様はソファから立ち上がると僕の周りをぐるぐる回り始める。

 

「歌兎。お姉ちゃんは今凄く怒ってます。その理由は分かりますか?」

「‥‥わ、分かりません」

 

ボソッと答える僕に突然顔を近づける姉様。

 

「それは歌兎が知らない男性のおでこにキスをしているからデス!!

歌兎は普通にしていても可愛い子デス、そんな可愛い子にキスされてときめかない男性なんていないのデス!あんな事をしてあの男性が突然襲い掛かってきたらどうするつもりだったんデスかッ」

「‥‥そんな事しないよ。駄菓子屋のお兄ちゃんは優しい人だもーー」

「ーーだまらっしゃいデス!!」

「はいっ」

 

姉様の怒声に背筋を伸ばして、姉様の質問を答えていく。

 

「歌兎はあの男性が好きなんデスよね?」

「‥‥は、はい……好きです……」

 

(は、恥ずかしい……)

 

なんで僕。隠し撮りされて、誰にも知られたくない秘密を一番知られてはいけない姉様に見られた上に、親しくしてくれているお姉ちゃん達に囲まれて公開告白なんて恥ずかしいことしてるんだろ。

 

顔をうつむけ、頬を染める僕をビシッと指差した姉様は得意げにしたのセリフを口にするのだった。

 

「歌兎の気持ちはよく分かりました。なので、明日お姉ちゃんもその人に会いに行きます、歌兎を連れて」

「‥‥へ? だ、駄目ッ!お姉ちゃんとあの人を合わせちゃったら……。あの人がころさーー」

「ーー歌兎心配ないよ。切ちゃんが暴走しないように、当日は私とセレナが付いていくから」

「本当は私ではなくて、マリア姉さんや風鳴さんの方が力になれたと思うんですけど。任されたからには、精一杯頑張らせてもらいますね」

 

そんなこんなで僕は明日、姉様達と共に思い人に会いに行くことになったのだった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

当日。

姉様達と共に駄菓子屋に立ち寄った僕は姉様によって後ろに下げられていた。

そして、姉様は駄菓子をカウンターに置き、会計している店長であるお兄ちゃんへとズバッと切り込む。

 

「所で、貴方はあたしの妹のことどう思ってるんデス?」

「ハイ?」

 

(ね、姉様ぁああああ!? ダイレクトになんて事聞いてるの!?)

 

駄菓子を左手に持ち、右手はレジのボタンを押している柔らかい印象を受ける顔にはめ込まれている焦げ茶色の瞳をまん丸にしているお兄ちゃんの姿が見える。

そして、僕もズバッと本題を切り込んできた姉様に慌てはためき、姉様に近づこうとして、シラねぇとセレねぇに捕まえられる。

 

「歌兎、ここは切ちゃんに任せて」

「‥‥で、でも!」

「大丈夫ですよ、暁さんなら」

 

(全然任せられないし、大丈夫でもないっ!)

 

見た感じだとお兄ちゃん戸惑ってる様子だし、突然こんな事聞かれても迷惑なだけだと思うし、何よりも僕なんかお兄ちゃんの中では眼中にないのかもしれないし……こんな形でフラれるなんて悲しく辛い他ない。

 

「えー……と、君の妹さんというと? そっちの黒髪をツインテールにしてる子の事かな?」

「その子はあたしの親友デス。あたしの妹はまん丸にいる銀髪の子デスよ。あんな可愛い子が見えないなんて貴方の目は節穴デスか、そうデスか、そうなんデスか、そのまま病院行って入院しちゃえばいいんデスよ。この店番中居眠り男」

「ソノゴメンナサイ……………ってあれ? なんでこの子、俺が店番中に居眠りしてる事知ってるの?」

 

(それは盗撮されたからです……なんて言えないよね)

 

姉様の気迫に押されっぱなしのお兄ちゃんはシラねぇとセレねぇに取り押されられている僕を見て、ハッとした様子を見せる。

 

「あっ、その子って……いつも俺の店に来てくれてる」

「そうデス。いつも貴方の駄菓子屋に通い詰めてる子デスよ。その子のことをどう思ってるのかと聞いているのデス、あたしは」

 

トントンとカウンターを叩く姉様を怯えた様子で見ながら、お兄ちゃんは僕の方をチラチラ見ながら、不機嫌そうな姉様へと視線を戻す。

 

「いまいち君の言いたい事が俺分からないんだけど」

「チィッ」

 

(あっ、姉様。壮大に舌打ちした)

 

鈍い反応を見せるお兄ちゃんに苛立ちが募っていっているのか、姉様は眉間に皺を寄せると更にお兄ちゃんを睨む。

 

「だ〜〜か〜〜ら〜〜デスね。貴方は歌兎と手を繋いだり、キスしたり、デートしたり、一緒に大人の階段を駆け上がりたいのかとあたしは聞いているんデス、どうなんデス?」

「……き、ききすしたり、おおおおとなのかいだん!? って、その……いやらしい意味での?」

「それ以外に何があるデスか」

「それをそ、その子と?」

「えぇ、そうデス。したいんデスか? 歌兎と」

 

睨みを利かす姉様にお兄ちゃんはそっぽを向くとボソッと答える。

 

「……それは凄く可愛い子だし、そんな可愛い子と純潔(じゅんけつ)が捨てられるのならしたいけど」

「相手が可愛ければなんでもいいと…………このクズロリ男、万年ロリコン野郎」

「本当の事答えたのになんて言われよう!?」

 

お兄ちゃんが悲鳴をあげるのを身を引いて、変質者を見る目で見ていた姉様は大きなため息を吐くともう一度聞く。

 

「はぁ……もう一度聞くデス。貴方はあたしの大切な妹の事をどう思っているんデスか? 今までのあたしの質問からこの質問の意味は分かりますよね?」

「……っ、分かってる」

「なら答えてください。ほら早く」

「……す、好きだよ。俺だってその子の事が前から気になっていた!これでいいだろうっ」

 

顔を真っ赤に染め、そう答えるお兄ちゃんを見て、姉様は満足そうにうなづくと僕の背中を押すとお兄ちゃんの方へと近づける。

 

「ね、姉様っ!?」

「良かったじゃないデスか。両思いだそうデスよ」

 

いきなりの展開すぎてついていけない僕が姉様の方を振り返ると姉様は柔らかい笑顔を浮かべていた。いつもの太陽のような明るい笑顔ではなく、僕の恋路を、成長を祝福してくれているような暖かくも柔らかい……美しい笑顔。

その笑顔に背中を押されるように僕は前を向くと、まだ顔を赤くしているお兄ちゃんに向かってずっと胸に秘めていた思いを口にする。

 

「‥‥貴方の事がずっと前から好きでした。僕と付き合ってくれませんか?」

「……そ、その……はい……よろしくおねがいします」

 

カウンター越しに微笑み合う僕達を穏やかな笑顔で見ていた姉様はビシッとお兄ちゃんの方を指差すと声を荒げる。

 

「お付き合いを始めたからって、あたしの目が黒いうちは歌兎とキスやそれより先はさせないデスからねっ!手を繋いだりするだけデス!それ以上をしたら、あたしが貴方をぶった斬りにくるデスーー分かったかデス」

 

光の消えた瞳で見てくる姉様にお兄ちゃんは震え上がりながら、コクンコクンと高速で首を縦に振るのを見届けた姉様は僕へと声をかけてくる。

 

「歌兎。あまり遅くならないうちに帰ってくるのデスよ」

「‥‥ん、分かってる」

「それじゃあ、あたし達は帰るとするデス」

 

そうして、姉様はシラねぇとセレねぇを連れて、一足先に家に帰り、僕は暫くお兄ちゃんとお話しした後に家に帰ったのだったーー。




姉様の目が黒いうちはデートをしてもキスやその先は無しで、手を繋いだりするだけとなかなかに厳しい条件ながらも姉様は駄菓子屋のお兄ちゃんと付き合うことを認めてくれて、お兄ちゃんも歌兎が好きという事で……無事恋路が実って良かったね、歌兎!

まずはお兄ちゃんとのお付き合いおめでとう!歌兎っ!!
姉様からの圧力に負けないで!駄菓子屋のお兄ちゃんっ!!


二人のこれからに祝福を!!╰(*´︶`*)╯


さて、この回で【妹恋(うたこい)】は終わりますが、この世界線の続きは【姉恋(きりこい)】という話にて続きます。
まぁ、タイトル通りで今回は切ちゃんの恋ですね(微笑)
歌兎との絡み・過剰な過保護を加えつつ、乙女チックな切ちゃんを書いていければと思っておりますので……次回を楽しみにしててくださいっ!




おめでたい回となった今回に合うかどうかは分かりませんが、前書きに書いていた【着物姿の歌兎】デス。

テーマは【和】かなぁ……あんまり和らしくないけど(苦笑)あと、そんなに上手でもないから期待しないで見てくださいね(笑)



【挿絵表示】



これでも可愛く描こうとしたんだよ?
精一杯可愛くしようとして……何故か色っぽくなった、なんで(汗)
まぁ、偶にはこんな歌兎もいいよねっ。
姉様も凄い喜んでると思うし!!




さて、少しだけ雑談コーナーを入れさせてもらって……今日から始まった【夕暮れに舞う巫女】。

巫女ギアのF.I.S.のみんな可愛すぎるでしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!(絶叫)

和装大好きな私からして見たら夢あるシナリオです!!(目をキラキラさせる私)

そんなイベントのシナリオはまだ1話目しか進めてないので、私はこれを更新した後に速攻で進めます!!

そして、アイテムを集めて、巫女切ちゃんと交換しないとッ!!

この切ちゃんはいつもの切ちゃんと違い、いい感じでお淑やかな感じがして……いいのデス!!


という感じで雑談コーナーを終えます。


読者の皆様にとって、これから始まる一年がいい年となりますように(*´꒳`*)


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くしゃみッ!

土日か来週辺りに出来れば、連続更新で暗めの話(私の趣味で書く下の章の2つ)を更新しようとしているので、その前のウォーキングアップというか

ゆる〜い、しょーもない…ほんとしょーもない話を挟んでおきたかった。

ただそれだけの話ですので、会話文多め、説明文そこそこ多め、文字数は多めだがギャグばかりなのですらすら読める量で。
今回だけの話、続きはなし。

内容は歌兎が『ですです』『にゃっにゃっ』して、切ちゃんが可愛いを熱く語り、みんなは其々好き勝手する話デス。

本当しょーもないので、頭は出来る限りからっぽにした上で読んでください(礼)

では、本編をどうぞ!!


冬も深まり、マンションの窓から外を見ればチラホラと白い結晶がキラキラと冬の淡い光にあたり、美しい白銀の光を放つ。

そんな美しくもどこか肌寒さを感じる風景をマリアとセレナが住むマンションのリビングにある窓から外を覗くあたしは視線をゆっくりと前へと向ける。

真っ直ぐ見つめるあたしの視線の先には、白いソファに包まるもふもふな(かたまり)がある。

 

「‥‥でっすっ。‥‥でっすっ。‥‥にゃっくしゅんっ‥‥すんっ」

 

(かたまり)の主な色は花青緑色の毛布で、その毛布から覗くのはまん丸な黒い瞳が付いている焦げ茶色の布地に白い小さな角、ピンクのまん丸の鼻が付いたもの。

総合的に、"いのしし"のアニマルパーカーといった所だろうか。

 

今朝この"ひつじ"にしようか、"いのしし"にしようか、と悩みに悩み抜いたあたしだったけれどもーー

 

「結局いのししにしたあたし、グッジョブデェースッ!!!!」

 

ぐっ、と力強く両手を天井に突き出して喜び叫ぶあたし。

 

そんなあたしを見つめる、いいや見あげているのはーーソファに丸まっているもふもふな塊で、潤んだ半開きの眠たそうな黄緑の瞳、すんすんと鼻を鳴らし、たら〜んと透明な粘り気のある液体を垂らしながら、あたしが用意した最強最高トンデモの装備(ふく)に身を包むその正体はあたしの最愛の妹・歌兎である。

 

「潤んだ瞳……すんすん鳴ってるちんまりした鼻……赤らんだもちもちな頬……もふもふなトンデモ装備品……まん丸なシルエット……くっ、これがーー」

 

ーーこれこそが可愛い……可愛いなのデスね……っ!

 

 

 

可愛い。

 

人はその感情をどんな時に思い浮かべるのであろうか?

自分よりも小さいものを見た時?

それとも、まん丸なものを見た時?

はたまた、精一杯頑張っている者を見た時だろうか?

いや、上の案にはないのかもしれない。

 

 

可愛い。

その感情は実に直感的に、瞬発的に浮かんでくるもの。

 

 

そんな可愛いの文字を分解してみるとーー。

 

 

可。

その意味は、それでよいとすること。よいとして認めること。

 

愛。

その意味は、かわいがり、いつくしむ心。

 

総合して、よいとして認めて、かわいがり、いつくしむ心。

 

 

それこそが可愛いッ!!

 

 

故に可愛いは、全ての世界で、全ての属性において頂点に君臨(くんりん)するものだといえよう!

 

 

 

Kッ!

 

Aッ!

 

Wッ!

 

Aッ!

 

Iッ!

 

Iッ!

 

 

 

 

KAWAIIッ!!!!

 

 

 

 

そう、KAWAIIこそが人間が永遠に追い求めるテーマであり、この世界を生き抜くための(かて)ッ!!

 

 

 

 

「‥‥でっす。‥‥でっす。‥‥にゃっくっしゅん、にゃっくっしゅん」

 

 

 

 

あぁ……こんなKAWAII存在が今まで居たでしょうかっ。いいえ、居る筈がないのデスッ!!

 

 

ありがとう神様、ありがとう仏。ありがとう、歌兎……あたしの妹に産まれてきてくれて……。

 

 

 

「‥‥で、で‥‥ででで‥‥で、にゃっくっしゅん!」

「歌兎、鼻水が垂れてる。ほら、しゅーんしよ」

「‥‥ん、しゅーん」

 

 

 

ふふふ、でへへへ……鼻水をかんでる姿もKAWAIIデス……。

あらあら、鼻のてっぺんが真っ赤じゃないデスか……エヘヘヘヘ。

 

 

 

「‥‥でっす。‥‥でっす。‥‥にゃっ‥‥っ、にゃっくっしゅん!」

 

 

あぁ……どんな姿もKAWAII。

うちの妹がKAWAIIすぎるデス。

 

 

時折、KAWAIIは正義という言葉を耳にするけどもうなづけるデス。

 

 

そう、今の歌兎はーーううん、KAWAIIこそがーー

 

 

「ーー正義なんデスよぉおおおお!!!!」

「ちょせぇ!!」

「にゃっふっ!? い、痛いデスよ……クリス先輩、なんで本気で蹴飛ばすデスかぁ」

 

顔から床へとダイビングしたあたしを見下すのは、何故か両手いっぱいに毛布を持ったクリス先輩。

 

「自称トンデモ過保護がいつにも増して馬鹿な事を言ってるからだろーが!

たっく……妹が風邪をひいたみたいで死にそうだから助けてくれっていうから来てやったってのに……あたしやバカ、先輩たちに働かせて……お前はのうのうと妹見物か?」

「そういうわけじゃないデスけど……歌兎があたしが見えなくなったら心配するかと思ってデスね」

「言い訳はいいから、こっち待ちやがれ」

「ぐふっ!? こ、これ前が見えんデス」

「あと数歩だろ、我慢しろ」

 

そのクリス先輩に近づくのは、毛布に包まる歌兎の世話をしている調である。

 

「クリス先輩、毛布ありがとうございます。切ちゃんもありがとう」

「えへへ、こんくらいどってことないデスよ」

「なんでお前が偉そうにしてんだよ……あいつらの部屋から毛布を掻き集めたのはあたしでここまで運んだのもあたしだろーが」

 

肩を落とすクリス先輩。その隣にいる筈の翼さんにあたしは小首を傾げる。

 

「クリス先輩。翼さんは?」

 

その問いの瞬間、マリアとセレナの部屋の辺りからドッチャンガッチャンガッタンコと凄まじい騒音が渡り廊下に響く。

 

「あれで察してくれ。頼む」

 

あぁ……なるほど。そういうことデスか。

 

クリス先輩と翼さんで毛布を持ってくる係に任命され、二人で毛布を持ってくる時に翼さん立ち寄った部屋だけ不運に不運という名の押入れの中にある物の雪崩れが重なり、立ち寄った前と後ではすごい差が付いてしまったと。

翼さんは義理堅い性格デスから、なんとか不運が起こる前の状態に部屋を直そうとして、その度に不運が重なり続けていくと。

 

「クリス先輩、お疲れ様です」「デス」

 

頭を下げるあたしと調にクリス先輩はなんともいえない顔をしていた。

恐らく、翼さんがやらかしてしまった後始末に頭が痛いのだろう。

 

そして、歌兎はあたしたち三人の手により、更に毛布のぐるぐる巻きになってしまい、それを見たクリス先輩が言ったセリフは"毛布の雪だるまだな"であった。

 

「ここまでぐるぐる巻きにすれば、風邪も忽ち直るデスよ!」

「うん、そうだね」

「流石にやり過ぎだろ。身動きすら取れなさそうじゃねーかよ」

「歌兎には悪いデスが、これも風邪を治す為なんデス」

「でも、トイレ行きたくなったら言ってね、歌兎」

「‥‥で、すっ……すんっ」

 

うなづきにくそうにする毛布雪だるま状態の歌兎。

そんな歌兎を見たあたし達は毛布を肩や膝の部分だけにかけることにしたのだった。

 

「これで良しか。おい、他にすることあるか?」

「他はマリアとセレナの様子を見て来てもらっていいですか? 奏さん、未来さんが二人のおうえんをしに行ってくれたんですけど……時間が経っている様子なので」

「分かった。ほら、姉様も行くぞ」

「そんなセッションな!!」

「……お前、辛辣(しんらつ)とか文字数多い難しいのは覚えてんのに。なんで、セッショウをセッションって間違えてるんだよ……色々と残念なやつだな、ほんと」

「……へ? 何が違うんデス?」

「お前ってはやつは……あいも変わらず、妹が大好きなだけの成長しないただのバカだよな」

「それどういう意味デスか!?」

 

暴れるあたしの首根っこを掴んだクリス先輩はズルズルとキッチンへと向かって歩いて行き、絶句していた。

その理由は、マリアと奏さんコンビが高級そうな濃い緑色のガラスに入った紅い液体を鍋に投入して、ぐつぐつしていたから。

それにどちらも顔を赤くしているところを見るとぐつぐているものを一杯……ううん、数杯は味見と言い張って、ひっかけた様子。

 

「ヒック……お? クリスに切歌じゃねぇーか。お前らもどうよ、一杯飲んでく?」

「いやいや未成年だから飲めないですよ……っていうか、あんたら何楽しく断熱グラスで飲み交わしてるんだよ!? あのチビの世話に来たんだろ!? 違うか!?」

「固い事は言いっこなしだぜ、クリス。それに熱でアルコール飛ばしてんだ、普通のぶどうジュースと変わりしない」

「ぶどうジュースと赤ワインは大違いデスよ、奏さん……あと、あたしはクリス先輩じゃないデス」

「奏の言う通りよ。あまり眉間にシワを寄せると可愛い顔が台無しよ、クリス。切歌もお疲れ様さま、歌兎の様子はどうかしら?」

「マリア……そっちはクリス先輩で、あたしはこっちデス。

お酒に酔っていても間違えるなんて酷いデス、あたし達が一緒に暮らした数年はそんなに安いものだったんデスか……」

「あら、ごめんなさい。切歌、わざとじゃないのよ」

「だから、そっちはクリス先輩デスって言ってるでしょうぉおおおおおお!!!!」

 

酔っ払いの顔を無理やりあたしの方に向ける。

 

「あらほんとね、こっちが切歌だわ。あら? 切歌が二人? ここで分身の術を使うなんてお茶目さんね」

「何を言ってるデスか、この酔っ払いろくでなしマリアっ!

もうどんだけ飲んだんデスか、吐く息がお酒くさいのデスーーって、本当どんだけ飲んでるんデスか、この酔っ払い達ッ!?」

 

ろくでなしマリアから視線を流し台に向ければ、そこには一本二本三本どころじゃない七本のガラス瓶が置かれており、酔っ払い奏さんに絡まれているクリス先輩が絶句してる……いいえ、呆れてものが言えなくなっている。

 

「おいおいマジかよ……味見と評して、六本ひっかける奴が居るかよ……」

「これも歌兎の為なんだって……ヒック……、なぁ? マリア」

「えぇ、そうよ。私達は調から頼まれたの……そう究極のホットワインっていうのを。

究極というのは、これまでに類を見ないという事。即ち、歌兎の舌を唸らせるホットワインを作り出さねばならないということよっ!!

このマリア・カデンツァヴナ・イヴと天羽 奏に妥協の二文字はないわッ!!」

 

そう無駄にカッコいいセリフとキメ顔をして、温め終えた赤ワインを奏さんと自分の断熱グラスに注ぐ酔っ払い駄目駄目マリア。

 

その瞬間、あたしとクリス先輩からハイライトが消えた。

 

「クリス先輩、こいつらどうしようもない駄目駄目大人代表デス。もう手に負えないくらいの醜態(しゅうたい)を晒してるデス」

「あぁ、珍しく意見があったな、姉様。酔っ払いはここに置き捨てて、もう行くぞ」

「デスデス」

 

"か〜んぱぁい"と優雅に断熱グラスをぶつけ合い、グビグビとホットワインを飲んでいく駄目駄目酔っ払い達をキッチンに置き捨てたあたしとクリス先輩は今度はセレナと未来さんの様子を見に行く。

二人の担当は風邪の時に食べる胃に優しいもの……即ち、おかゆという事だ。

そんな二人はキッチンをあの酔っ払い達に手渡した為に、隣の部屋を大家さんに許可を貰って、貸してもらっている。

 

「フ。マンションの大家さんですら(とりこ)にしてしまう歌兎の可愛さはやはり偉大デスよ。前世が天使なだけあるデス」

「無駄口叩いてないで行くぞ、過保護バカ。前世がそんなファンタジーなわけあるか、バカ」

「そんなバカバカ言わなくてもいいじゃないデスかっ」

「バカにバカ言って何が悪いってんだ」

 

クリス先輩が軽口を叩きつつ、マンションの扉を開けて、隣の部屋に続く渡り廊下を向いた瞬間、疲れたように顔を覆った。

その理由をあたしもすぐ知ることになる。

 

「うぐっ、むぐっ、美味しい!ごはん&ごはん、美味しいっ!」

 

駄目駄目な人がここにも居ました。

 

癖っ毛の多い栗色の髪、輪郭を隠すように伸びている二つの房にパチリとはめているNマークの髪留め、美味しそうなお粥を見つめる瞳は琥珀ーーーーはぁ……響さん、貴女って人はもう……どんだけごはん好きなんデスか……。

 

さっきの残念酔っ払い年長チーム・ごはん大好きっ子響さんといい……もうなんなんデスか、うちの奏者達。

うちの奏者達、残念すぎるでしょう……。

あたしも含めて、マトモな人居ないんデスかぁ……。

 

「一応聞くデスか、響さん。何してるんデスか?」

「ぐっ!?」

「おっ、バカがむせた」

 

クリス先輩がそう言いつつも、バカビキ……げふんげふん、響さんへと水のペットボトルを部屋に戻り取ってきて渡す。

 

「お前、妹が関わると忽ちに辛口になるよな。普段はぽや〜んとアホ全開の喋り方なのに」

「歌兎の粥を盗み食いした響さんが悪いんデスっ。あたしは悪くないデス……って、クリス先輩あたしのことそんな風に思ってたデスか!? 酷いデス!!」

「ちょせぇ、顔近づけんな。しっしっ……さて、バカ言い訳は思いついたか?」

「すいませんでしたぁ!」

「素直でよろしいデス」

 

睨みをきかせ、見下ろすあたし達の迫力に恐れをなしたのか……コンマ0秒くらいの音速で綺麗な土下座を決める響さんを心が海のように広いあたしは許してあげることにした。

 

「いや、バカビキって言ってる時点で駄目だろ、色々と……」

「クリス先輩はバカビキさんとあたしのどっちの味方なんデスか!?」

「ほら、バカビキって言ってんじゃねーか。……はぁ、これだと話が進まれねぇーな。バカ、なんでつまり食いなんかしてた?」

「あ、美味しそうな匂いがしてからつい……ね?」

「ね? じゃねーよ!ね? じゃ!!」

 

今日も炸裂するクリス先輩の鮮やかなツッコミに聞き入っていると響さんが表情がいつもと違うのと手に持っているお粥から変な匂いが漂ってくるのに気付く。

 

「響さん、なんだか頬が赤くて目がいつもよりもとろ〜んとしているように見えるんデスけど……そのお粥、ちょっと貸してもらっていいデス?」

「へ? 別にいいよ。歌兎ちゃんに食べてもらう前に切歌ちゃんにも食べてもらってって言われたから」

「あ、あたしに? セレナがそう言ったデスか?」

「ううん、未来」

 

ん? んー??

ますます怪しい。

未来さんを疑うわけじゃないけど、あの人は響さんが物事に関わると関わらないとじゃあ危険度と要注意度が月とスッポンくらいに変わってくるデスからね。

 

ここは用心に用心を重ね、毒味はあたしではなくクリス先輩にーーーーここデスっ!!

 

「クリス先輩、あ〜んデス♪」

「むぐっ!? ごほんごほんっ……いきなり、なんてもん食べさせてやがる、この過保護っ!」

 

ペッペッとあのお粥を吐き出すクリス先輩を見て確信する犯人は未来さん(あのひと)だ、と。

 

「やはり、このお粥には怪しい薬が含まれているのデスね。響さん、解毒剤あるデス?」

「げどく? けとく? けっとく? 切歌ちゃん、まだ怒ってるの? 私がお粥食べたこと」

「響さん、あ〜んデス!」

「むぐっ!?」

可笑しな事を言い始めている響さんの口に問答無用で解毒剤をねじ込み、水を流し込む。

ごくんごくんと響さんの喉が鳴るのを見届けて、水のペットボトルを外すとキョトンとした様子の響さんが居た。

 

「あれれ? 私、なんで歌兎ちゃんのお粥を食べてたんだろ……?」

「バカの台詞に今日一の悪寒が走ったんだが……」

「あの二人は組んではいけなかったんデスね」

 

最近、怪しい行動が見られる二人を怪しい薬を近いうちに使ってくると踏み、あたしと響さん、みんな用に解毒剤を作って置いた歌兎の頑張りがこんな所で発揮されるなんて……なんだか、悲しいデス。

 

「これ、響さんに渡しておきますね」

「へ?」

「歌兎特製の解毒剤デス。お礼は後で言ってあげてください」

 

そっと響さんの掌に解毒剤が入ったケースを置き、握らせるあたしを見た響さんは何ともいえない顔をしていた……いいや、状況についていけてないのか、キョトンとしていた。

 

「響さん、未来さんに薬を盛られた時にでも使ってください」

「未来を酷く言わないで!未来は私にそんなことしないよ。未来はいつだって私の陽だまりなんだからっ」

「いや、同居人に怪しい薬盛る陽だまりがあってたまるかよ」

「でも、そこは未来だし。私はどんな未来でも……ううん、未来だからこそ側にーー」

「あーあー、末長く」

「お幸せに、デス」

 

恥じらいなく甘々なセリフを言ってのける響さんをおさがりにあしらったあたしとクリス先輩は追ってきた響さんと共に隣の扉のドアを開く。

 

「おかえり、響。あれ? クリスに切歌ちゃんもどうしたの?」

 

未来さんはきっとあたしとクリス先輩が乗り込んできた理由を知っているはずなのに……それなのに、こんな温かい笑顔を浮かべられる未来さんはーー。

 

「未来さんの笑顔に悪魔だって真っ青顔デス」

「お、お前な……」

「へ? へ? 何で未来の笑顔が悪魔だって真っ青顔なの?」

「はぁ……。今この場所にはバカしかいないのか」

 

疲れたようにそういうクリス先輩。

確かにここに辿り着くまでに、クリス先輩は至る所で律儀にツッコんでいたからそれは疲れてしまうだろう。

 

へ? 違うデス?

お前もバカと一緒に引っ込んでろ?

クリス先輩、何だが酷いデス。

 

「おい、こいつじゃ吐きそうにないからお前に聞くな。お粥に変な薬入れたの、お前達か?」

 

クリス先輩の問いにキッチンに立ち、あたふたしていたセレナが観念したように言う。

 

「は、はい……小日向さんに言われて……そのごめんなさい……」

 

おずおずと差し出される怪しい薬の瓶の量にあたしもクリス先輩もあの酔っ払い達よりも絶句して、未来さんをマジマジと見る。

そんな私たちの視線に未来さんは可愛らしくテヘッと舌を出していた。

 

「これぞまさに地獄からテヘペロちゃんデス」

「そ、そうだな」

 

クリス先輩はそういうと怪しい薬を回収した後に、お粥を作ると慎重に歌兎がいるリビングへと持っていこうとした時だった。

 

「見てくれ、雪音!私なりに整理整頓なるものを実行してみーーあっ」

「ひゃあ!?」

「……へ?」

 

突然、翼さんに声をかけられ、肩を叩かれたクリス先輩がびっくりして可愛い悲鳴をあげて、慎重に持っていたアッツアツなお粥がよそってあるお盆を勢いよくひっくり返してしまい、その中身は綺麗な円を描き、あたしへとーー。

 

「あっちちちっ、あっちちっデス」

 

頭から服にかけて、アッツアツの粥まみれになったあたしは大慌てで服を脱ごうと裾を掴もうする前に翼さんの手があたしの服を掴む。

 

「火傷してはいけない。服を脱がせるぞ、切歌」

「デデデっ!? 翼さんっ!? なっ、何を!!」

「元はというと、私の不始末が招いた事だ。それに切歌に火傷をさせたなのとなると、歌兎とマリア達に申し訳が立たないからな」

「いいい、いいデスっ。自分でするデスからっ」

 

翼さんの手を振りのけたあたしはリビングへと走っていき、もうすっかり出来上がった様子のマリアから服を借りることで火傷は低度ですみ、歌兎もみんなの……っていうよりもクリス先輩と調、あたしの頑張りによって風邪が治ったのだった––––。




ということで、約7000文字ちょいのしょーもない話どうだったでしょうか?

シンフォギアらしいドタバタと騒がしい感じとスピード感が出せていたならば嬉しく思います。


さて、少しこの話について語らせてもらうとーー最初にこの話を書こうと思ったのは、私がくしゃみをしている時に【歌兎のくしゃみが『でっすっ』だったから可愛いだろうな】って思った事からでした。

そこから、戦姫絶笑RADIOを聴いたりして、話に糊付けをして……お披露目になったという感じデス。


切ちゃんに可愛いを熱く語ってもらったり、マリアさん&奏さん年長チームを酔っ払いにしたり、セレナちゃん&未来ちゃんチームを怪しい薬を使うやばい人扱いしたり、翼さん&クリスちゃんを最後の最後でドジっ子キャラにしたり、響ちゃんを『バカビキ』とか書いてしまったりしたけれども……まずは一つだけ、それぞれのキャラのファンの皆様すいません!!(汗)
偶にはこういうぶっ飛んだのもいいかなぁーと思い、書かせてもらいました!

機会があり、話のネタがあれば後々に……ではでは。


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《メインルート》兎は歌い、黄金に輝く水が世界を覆う 1)僕の姉様は過保護すぎる。

シンフォギアはG、GXと見ています。AXZもニコニコの方でちょくちょく見ている程度の私ですが…

こんな私の小説でも見てみたいと思われた方、本編へどうぞ!



僕、暁 歌兎には姉がいる。

姉の名は、暁 切歌。三つ上の姉は、僕にとってとても頼りになる姉であり、僕の心の支えともなる大切な人だ。

性格はお気楽というか、物事をポジティブに考えることができる人だと思う。時に思い込みが激しく、一人で突っ張ってしまうこともあり、その度に、本人曰く黒歴史とやらが増えるらしいが、それも姉が僕や他の仲間たちを大事に思っているからこそだと思っている。

そのことをもっと掘り下げれば、姉は一段と仲間や家族に対する思い入れが強いのだ。そう、姉は他の皆よりも家族や仲間たちのことを“大切に思っている”。

それ故に、姉は僕に対してーー

 

 

 

ーー過保護すぎる、のだろう。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「起きるデス、歌兎。朝になったのデスよ」

 

ゆさゆさと身体を揺らす感覚と、おでこに広がる柔らかく程よい弾力性を持つ何かによって、ゆらゆらと眠りの海を漂っていた僕の意識が覚醒していく。

ゆっくりと目を開けると、まず最初に目に映るのが真っ白な天井、続けて視線を下にずらすとチャーミングな癖っ毛が特徴的な金髪の少女が僕を見下ろしていた。

 

(また、姉様に起こしてもらったんだ…)

 

自分の寝起きの悪さに嫌気をさしながらも、まだ眠たくて、瞑ろうとする目をこすりながら、身体を起こすと太陽のような明るい笑顔を浮かべる我が姉が僕へと声をかけてくる。

 

「おはようデス、歌兎」

「…ん、おはよ、姉様」

 

まだ寝ぼけ眼な僕の周りを慌ただしくバタバタと動くのが、姉様でーー。

僕の引き出しから着替えを取り出すと僕のパジャマへと手をかける。慣れた手つきでパジャマを脱がせると持ってきた洋服を着せてくれる。

 

「歌兎、こっちに右手を通すデスよ」

「…こう?」

「そうそう。それと左腕をこっちへ」

「…ん」

「二度寝はダメデスよ、歌兎」

「…ん…分かってる…」

「って、言ってるそばから寝てるじゃないデスか!!」

「…ね…てない…よ、ねえさ…スゥ……」

「ウ・タ・ウ!起きるデス!!二度寝はダメデス!!」

 

姉様の怒声と乱暴に体を揺すられて、ハッと目を覚ますと、僕はキョロキョロと辺りを見渡し、見慣れた黒髪がないことに気づく。僕は目の前で、僕の洋服のボタンを留めている姉様へと問いかける。

 

「…姉様。シラねぇは?」

「調なら朝ごはんを作ってるデスよ」

「…そっか。シラねぇが…」

「なんデスか?歌兎」

 

ジーと目の前で洋服を着せてくれてる姉様の適度に整った顔を見つめ、ふと思う。

 

(そういえば、姉様が料理してるとこ、あんま見ないな…。姉様も料理も僕、食べてみたいんだけどなぁ…)

 

そこまで考えたところで、リビングの方から白米の匂いとお味噌汁の匂いが漂ってくる。その香りたちに刺激されたのか、グーとお腹の虫が鳴り、姉様がクスッと笑う。

 

「お腹が空いたのデスか?歌兎」

「…ん、空いた」

『切ちゃん、歌兎、ご飯できたよ』

 

ドア越しから、聞き慣れた声が聞こえてきて、僕はベッドから立ち上がると姉様へと右手を差し出す。それを嬉しそうに握った姉様は意地悪な笑顔を浮かべると僕へと顔を近づける。

 

「…シラねぇが呼んでる。行こ、姉様」

「うん、いくデス。デスが、その前に歌兎、朝にお姉ちゃんにすることを何か忘れてないデスか?」

「…アレは恥ずかしい、姉様」

「姉妹なのデスから。恥ずかしがることなどないのデス。ほら、歌兎」

「…っ」

 

慣れた様子で右頬を僕の方へと突き出す姉様に、僕は覚悟を決めると羞恥心でやめたくなる衝動を抑え、突き出されている姉様の頬へと自身の唇を近づける。

 

「ちゅっ」

「えへへ〜、歌兎からおはようのキス貰ったデス〜」

「…」

「歌兎にもお返しするデス〜」

「…」

 

僕に抱きついて、ちゅっちゅっと頬へとキスする姉様を僕は不思議そうな顔で見つめる。

 

(なんで、姉様はこんなにも恥ずかしいことを毎朝したがるんだろ…)

 

物心つく頃からずっと疑問に思っていることだ。いくら姉妹とはいえ、おはようのキスとおやすみのキスは流石に恥ずかしすぎる。

だがーー嬉しそうに、にこにこと笑う姉様のこの笑顔を守るというのは大袈裟だけど、見る為ならば僕の些細な羞恥心など安いものだ。

姉様は心ゆくまで僕の頬へとキスを落とすと、僕の手を握る。そして、ドアへ向かって歩き出す。

 

「さて、朝の挨拶も終わったので、調のところへ行くデスよ」

「…ん」

 

差し出せる姉様の左手を握り、僕は姉様と共にリビングへと歩いていった…

 

 

◆◇◆◇◆

 

リビングには、既に自分の席へと腰掛けている三人の姿があった。その三人へと頭を下げていく。

 

「おはよう、歌兎」

「…おはよ、シラねぇ」

「おはよう、二人とも」

「おはようデス!マリア」

「…おはよ、マリねぇ」

「おはようございます、暁さん、歌兎ちゃん」

「おはようデス!セレナ」

「…おはよ、セレねぇ」

 

我が家のリビングに鎮座してあるテーブルは長方形で、右側に二つ、左側に三つの椅子が並べられている。

姉様は右側で、その横にはシラねぇが座ることになっている。だが、姉様は僕の手を掴んだまま、自分の席へと座ろうとする。

 

「歌兎、こっちにくるデスよ」

「…ん」

 

僕自身、姉のすることはいつも正しいと考えているのと、いつも自身のことは時の流れに任せていることからーー今日も姉様の言う通りにしようと、そちらへと向かった時だった。

姉様の真ん前の席へと腰掛けている腰まで伸びた桃髪が特徴的な女性・マリねぇが姉様を叱る。しかし、姉様は怒られたと言うのに、どこか自信満々で…。

 

「こら、切歌!そっちに歌兎が行ったら、貴女が座れなくなるでしょう」

「大丈夫デスよ!歌兎はあたしの膝の上に座るのデス」

「行儀が悪いでしょう。取り敢えず、その案は却下よ」

「むー、マリアがケチなのデス」

「ケチが悪かったわね。だから、歌兎。私の右隣に座りなさい」

「…ん、マリねぇのとこ行く」

 

マリねぇの正論にぐうの音も出ない姉様が頬を膨らませる中、僕はマリねぇが自分の右横の席を叩くのでそちらへと向かう。その際、後ろで何かが倒れこむ音が聞こえたが気のせいだろうか?

 

「なんデスと!?歌兎はお姉ちゃんが嫌いになったのデスか!?」

「歌兎に限ってそれはないよ、切ちゃん。だから、泣き止んで、ね?」

「うっ、やっぱり調は優しいのデス」

 

マリねぇに手伝ってもらい、自分の席へと座った時に見た光景に僕は言葉を失う。

まさにガーンと文字が浮かびそうなほど、落ち込んでいる我が姉の背中優しく撫でているシラねぇ。俗にいう百合百合しい雰囲気を漂わせる二人に、マリねぇの左横へと腰掛けるセレねぇが苦笑いを漏らす。

 

「……」

「…あはは」

「さて、ご飯を食べましょうか?歌兎、セレナ」

「…ん、マリねぇ」

「そうだね、姉さん」

 

マリねぇに声をかけられ、僕は目の前に並んでいる箸を掴む。すると、それを目敏く見ていた姉様が大きな声をあげる。そして、僕から箸を取り上げるとマリねぇへと注意が飛ぶ。

 

「あぁっ!歌兎、箸は持っちゃダメデスよ!マリア、歌兎に箸を持たせちゃあダメじゃないデスか!」

「切歌、今更だけど貴女は過保護すぎるわ。そんなにしなくても歌兎は大丈夫よ」

「マリアは何も分かってないデス!歌兎はマリアが思っているよりも繊細な子なのデス。箸を持っただけでも筋肉痛になる子なのデス!」

「そんなわけないでしょう!?切歌、話を盛るのは良くないことよ。それと歌兎はそこまでヤワじゃないわ。切歌のそれは度が過ぎてると私は思うの」

「歌兎を大切に思う気持ちの何が悪いんデスか!妹が危険へと足を踏みいれようとしてるのデス!それを守って何が悪いのデスか!それは姉として当然の権利だと思うのデス!」

「だから、それが貴方は普通よりも多いというの!」

「多い越したことはないと思うデス!」

 

白熱していく姉様とマリねぇの喧嘩に、堪らずセレねぇが仲裁役をかって出る。だが、見事に同期した動きで帰ってきた言葉にセレねぇは撃沈。

 

「まあまあ、姉さんも暁さんも落ち着いて」

「セレナは黙ってて!!」「セレナは黙っててください!!」

「…あ、うん、ごめんなさい…口出ししちゃって…」

 

しょんぼりするセレねぇの裾をくいくいと引っ張る。僕の方を向くセレねぇへと僕は自分の気持ちを言う。

 

「……」

「どうしたの?歌兎ちゃん」

「…お腹空いた」

「そうだね。私もお腹空いちゃったよ。そうだ、歌兎ちゃん、私の上に座ります?」

「…ん」

 

よいしょっとセレねぇの膝の上へと座った僕へと、前に座るシラねぇが箸を差し出す。それを大きな口を開けて、口の中に入れるともぐもぐと咀嚼する。

 

「歌兎。はい、これ」

「…あーん。もぐもぐ」

「美味しい?」

「…ん、美味しい」

 

首を傾げて聞いてくるシラねぇへと素直な感想を言い、箸を差し出してくるシラねぇに応じて、また大きな口を開ける。

 

「まだあるから、しっかり食べてね。セレナも食べよ」

「そうですね、月読さん。歌兎ちゃん、味噌汁は美味しい?」

「…ん、シラねぇのお味噌汁はいつでも美味しい」

「歌兎が褒めてくれると私も作った甲斐がある。いつも褒めてくれて、ありがとう」

 

頭を撫でてくれるシラねぇの暖かさに触れながら、僕はもぐもぐと朝ごはんを食べる。時々、セレねぇに頬を拭かれながら、僕は朝ごはんを終える。

そして、食べた食器を持っていこうと立ち上がる僕の手を掴むのはーーもちろん、姉様で…

 

「歌兎の食器はお姉ちゃんが持っていくデス」

「…ん」

 

素直に姉様へ渡そうとすると、そこへ割って入ってくるマリねぇの声。

 

「そこ、甘やかさないの!それくらい、歌兎なら出来るわ!」

「出来ないデス!それに出来たとしても、絶対させないデス!」

「させないと歌兎がダメ人間になるでしょう!」

「もしも、歌兎の持っていた皿が割れて、歌兎の綺麗な身体に傷がついたらどうするデスか!そんなの絶対、あたしが許せないのデス!」

「だから、過保護すぎるのよ!貴方は!」

「これが普通デス!」

 

いつもの如く、続く姉様とマリねぇの喧嘩を聴きながら思うことは、ただ一つーー

 

 

ーーーやはり、僕の姉様は過保護すぎる、と。

 




1話目から妄想全開ですいません…(汗)

これがずっと書きたかったんです。
だだだだ、大好き切ちゃんにこれでもかってくらい甘やかされたかったーーその欲求を満たすために書いたのがこの小説です。

ので、次回もこんな感じで進めていきます。
こんなでも読んでみたいと思われた方、次回もどうかよろしくお願いしますm(_ _)m


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2)過保護な姉たちとおでかけ。

今回も作者の妄想全開です

ので、ついてこれる奴だけついて来い!みたいな感じです(笑)

そして、恐れ多くも【お気に入り登録が28名】に【評価者が二人の上に、10と8】という高評価…もう、これだけで手汗と震えが止まらないですよ…(ぶるぶる)
それに加え、【感想二件】という奇跡(?)ーー嬉しさと感動と、過保護な切ちゃんに大感謝デェース!!

これからも度を超える過保護を見せる切ちゃんとそんな切ちゃんに振り回せる歌兎を楽しんでいただけばと思います。

続けて、後書きへと本作の主人公《暁 歌兎》の簡単なプロフィールを載せようと思っているので、良ければご覧ください(礼)

では、長くなってしまいましたが…本編をどうぞ!


朝の大騒動、いや、大喧嘩から30分後。

僕と姉様、シラねぇにマリねぇとセレねぇの五人は猛スピードで街中を走っていた。何故、そんなに急いでいるのか?その理由は簡単だーー今日の朝、9時頃から奏者のみんなで買い物やカラオケなどと遊びに出かける約束をしていたのだ。

そんな約束をしていることもすっかり忘れて、白熱していたマリねぇと姉様の大喧嘩がやっと終わって、時計を見れば、約束時間の10分前となっており、みんなして大慌てで部屋を飛び出して。それからというもの、ずっと目的地まで走りぱなしというマラソン状態になっていた。

先頭を走るのがシラねぇとセレねぇで、その後を僕と姉様が追いかけている感じで、そのさらに後ろをマリねぇが走っている。

真っ直ぐ前を見つめ、走り続ける僕へと隣を走る姉様が話しかけてくる。そちらへと視線を向けると、僕と同色の黄緑色の瞳が少し伏せられ、心配そうに僕を見つめていた。

 

「歌兎、大丈夫デスか?疲れてないデス?」

「…ん、大丈夫だよ、姉様」

 

姉様へと心配かけないようにと微笑んでみせると、姉様は安心したように此方も微笑んでくれた。しかし、僕は一つだけミスをおかしたらしく、姉様が優しい声音で言ってくれたセリフに対する返答を掠れ声で言ってしまったらしい。

気付けば、嬉々した様子で僕の前へと腰を折る姉様の姿とそんな姉様へとツッコミを入れるセレねぇの姿があった。

 

「疲れたなら、いつでも言ってくださいね。お姉ちゃんがおぶってあげるデスから」

「…ん、わかっ…だ…」

「ハッ!?もしかして、疲れたのデスか、歌兎!」

「どうして、暁さんはそこで嬉しそうにしているの!?私にはそれが疑問ですよ!」

「セレナ、それが切ちゃんのいいところだよ」

「月読さんといい歌兎ちゃんといい、二人は暁さんのやる事なす事に全肯定は良くない傾向だと私思いますよ!?」

「大丈夫、歌兎も私も切ちゃんの事を信じてる」

「それはさっきの私の発言に対する答えなんですか!?」

 

セレねぇの隣にいるシラねぇに対して、キレキッレのツッコミを披露するセレねぇ。僕はそんな光景を見ながら、ふとも思うーーこの五人の中で一番苦労してるのは、セレねぇなのではないのか、と。

そんなセレねぇのツッコミ虚しく、姉様は僕へと促しの声をあげる。だが、そんな甘えを許すマリねぇではない。

姉様の背中へとおぶさろうとしていた僕と姉様を指差すと、大声を上げる。

 

「ささっ、歌兎。早くお姉ちゃんの背中におぶさって、身体を休めるといいデスよ」

「…ん」

「そこ!ごく自然におぶろうとしない!そして、歌兎は切歌におんぶしてもらわないの!」

「ちぇー、マリアは外でもケチんぼなのデス…」

「だから、これはケチんぼでもなんでもなくて。私は一般的に意見を言ってるだけなのよ」

「そんな意見など、あたしの辞書にはのってないのデス。ほら、歌兎、ガミガミうるさいマリアなどほっておいて。早くお姉ちゃんの背中に乗っかるデスよ。歌兎が筋肉痛で倒れたりしたら大変デスので」

「…ん、姉様」

 

皮肉を混ぜた姉様のその言葉を聞き、マリねぇのガミガミが更に強くなった気がするがーー。

姉様はどこ吹く風の様子で、その場でぴょんぴょんと跳ねると僕を器用に背負い直す。そして、歩き出す。そんな姉様へと僕は話しかける。

 

「…重くない?姉様」

「全然大丈夫デスよ、歌兎はもっとお肉をつけるべきデス。軽すぎるデスよ」

「…それは姉様にいう言葉」

「お姉ちゃんは歌兎よりも身長もありますし、肉もついてるんデスよ。なので、歌兎は気にしなくいいのデス。今晩は、いっぱい食べて、栄養を付けるデスよ。参考までに聞きますが、歌兎は晩御飯は何が食べたいデスか?」

 

チラッと、僕の方を向いて聞いてくる姉様の少し垂れ目な大きな瞳を見つめ、僕は朝に思ったことを言う。すると、姉様が泣き出す寸前みたいな顔をする。それを見て、少し焦った僕は首を傾げて、もう一度問いかける。

 

「…姉様の手料理が食べたい」

「!?」

「…ダメ?」

「もちろん、いいデスよ!!張り切って、美味しいもの作るデスよ!!歌兎の好物、いっぱい作るデスからね!」

「…ん。しゃのひみ…」

 

僕をガシッと抱きしめ、スリスリと頬をすり寄せてくる姉様の温もりを感じながら、姉様の背後を見てみるとーー。

僕ら二人を遥か先を走っている三人の姿があり、三人は走りながら、僕ら二人へと叫び声をあげる。

 

「切ちゃん、歌兎、行くよ。みんなが待ってる」

「暁さん、歌兎ちゃん〜!もうみんな待ってますよ〜」

「そこの二人、早くなさい」

 

今だに頬スリスリをしている姉様の背中をポンポンと叩き、顔を離した姉様へと僕は背後を見ながら言う。すると、姉様も僕のその仕草だけで状況を理解したらしく、僕を背負い直すと…

 

「…姉様。三人が呼んでる」

「分かってるのデス!歌兎、しっかりお姉ちゃんに捕まっててくださいね」

「…ん」

「猛スピードデスよ〜!三人へと追いつくデス!」

「…姉様、ファイト」

「任せてください。歌兎!」

 

僕を背負っているとは思えないほどのスピードで、約束場所へと向かう姉様。僕はその背中に揺られながら、姉様へとエールを送っていた…

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

約束場所へとついた僕と姉様を向かえたのは、先に着いていたシラねぇとセレねぇ、マリねぇの三人と。今日、一緒に遊ぶことになっていた四人の姿があった。その中の一人、白髪の髪を赤いシュシュで二つに結んでいる少女・クリスお姉ちゃんが横目で姉様を見ると、ため息をつきながら問いかけてくる。

 

「んで、お前はなんで妹を背負ってるんだよ」

「それがお姉ちゃんとしての責任だからデスよ!」

 

その問いかけに対して、誇らしそうに胸を張りながら答える姉様へと両手をポキポキと鳴らしながら、クリスお姉ちゃんが近づいてくる。しかし、姉様にそんな脅しなど通じるわけもなく、姉様はいつもの如くちんぷんかんぷんな方向へと真っしぐらに進んでいく。

 

「よぉーし、お前の言いたいことは分かった。だが、それが約束時間を一時間も遅れた理由だとしたら、あたしはお前をぶつぞ」

「歌兎が…あたしの可愛い妹が走り過ぎて倒れかけていたんデスよ!?それを助けて、何が悪いのデスか!?も、もしかして…そんな歌兎をほっておいて。あたしだけここへ向かえばよかったと言うデスか…?クリス先輩は鬼なのデス!!」

「お前はいつも過保護すぎんだよ!!それと、お前さっきあたしのことを鬼って言ったか!?」

「クリス先輩まで過保護とあたしを呼ぶデスか!?やっぱり、マリアとクリス先輩は鬼デス!鬼畜デスよ!!あんなに可愛い歌兎へと厳しく当たろうとするなんて!なんで、二人は歌兎を甘やかそうとしないデスか!?歌兎が可愛くなのデスか!」

「可愛いからこそだろーが!この過保護!!お前には、可愛い子には旅をさせようという諺はねぇーのか!?」

「そんな諺は既にあたしの辞書から削除したデスよ〜」

「お前な」

 

ベーと舌を出す姉様に対して、遂に堪忍の緒が切れたらしいクリスお姉ちゃんはグーで姉様の頭を殴ろうとする。そんなクリスお姉ちゃんの右手の裾を引っ張った僕は不機嫌そうにこちらを見てくるクリスお姉ちゃんの髪と同色の瞳をまっすぐ見つめて、お願いする。

 

「…クリスお姉ちゃん、姉様は悪くない。悪いのは僕だから、ぶつなら僕をぶって」

「チッ。そんな顔したガキを殴れるわけないだろ」

 

何故か頬を朱に染め、横を向いてポツンと呟くクリスお姉ちゃん。それに首をかしげる僕とその呟きを聞いたらしい明るい茶色の髪が特徴的な少女・響お姉ちゃんが不満そうに何かを呟く。そして、その響お姉ちゃんの愚痴を聞いたらしいクリスお姉ちゃんが響お姉ちゃんへの頭へと拳を埋める。

 

「……私のことはしょっちゅう、ぶつのに…。なんだかんだ言って、クリスちゃんが切歌ちゃんの次に歌兎ちゃんに甘い気がする」

「お前はいつも一言多いんだよ!」

「痛ぁあああ!?」

「響、大丈夫?」

「大丈夫じゃないよ〜、未来〜」

 

痛みで埋まる響お姉ちゃんへと優しく声をかけるのが、響お姉ちゃんの親友の未来お姉ちゃんだ。涙目で痛みを訴える響お姉ちゃんへと何かを応急処置をしている。

そんな二人を見ながら、僕と姉様へと視線を向けたクリスお姉ちゃんは吐き捨てるようにいう。

 

「たく。あのバカより遅刻するなんて、お前らが初だぞ」

「ちょっと、クリスちゃんそれはひどいよ〜。その言い方じゃ、いつも私が遅刻してるみたいじゃん」

「いつもしてるだろ!」

 

響お姉ちゃんへと怒声を飛ばすクリスお姉ちゃんの右手をくいくいと引っ張り、こっちを向けさせると僕はいつも思っていることを言う。

 

「…」

「んだよ」

「…クリスお姉ちゃん、あまりカリカリしないで。僕はクリスお姉ちゃんの笑った顔が好きだよ」

「〜〜ッ」

 

僕のセリフを聞いたクリスお姉ちゃんの顔がみるみるうちに赤くなっていく。それを見ていた響お姉ちゃんがクスクスと嘲笑うのように、ちょっかいをかけるようにクリスお姉ちゃんへと声をかける。そして、それを聞いたクリスお姉ちゃんはポキポキと両手を鳴らす。

 

「おや〜?さっきまでの怖いクリスちゃんはどこへ行ったのかな〜?」

「お前は本当にあたしに殴られたいらしいな」

 

だが、クリスお姉ちゃんへと近づいているのは響お姉ちゃんだけではない。我が姉様もクリスお姉ちゃんに近い場所に立っていた僕を自分の方へと引っ張ると、僕をクリスお姉ちゃんから守るように抱き締める。

 

「クリス先輩よりも歌兎は姉のあたしのことが好きなのデス。そこだけは誤解しないで欲しいのデス!それと、歌兎は何があってもクリス先輩に渡さないデスよ!!」

「お前は引っ込んでろ!話がややこしくなるだろ!!」

 

もう既におでこへと血管が浮き出るほど怒っているクリスお姉ちゃんへとセレねぇが声をかける。どうやら、この収集がつかなくなった喧嘩を仲裁してくれるらしく、割って入ったセレねぇは後ろに聳え立つショッピングセンターを指差す。そんなセレねぇのセリフに肯定する形で、未来お姉ちゃんが響お姉ちゃんを引っ張って。ショッピングセンターへと一番先に向かっていく。

 

「まあまあ、クリスさん落ち着いて。響さんも暁さんもこれ以上ここで言い争っていても時間の無駄なので、約束のショッピングへと行きましょう?」

「セレナちゃんのいい通りだよ。響もあまりクリスをからかわないの。ほら、行くよ」

「ちょっ、未来!?そんなにいきなり引っ張れたら、バランス取りにくいよ!?」

 

そんな二人に続く形で、クリスお姉ちゃんが向かい、僕と姉様、セレねぇとシラねぇも三人の後を追う。

その際に姉様が僕へと問いかけてくる。それに正直に答えると、何故かその場に崩れ落ちる姉様。

 

「切ちゃんと歌兎も行こ?」

「分かったのデス、調!そうデス、歌兎はこれから向かう道中、誰と手を繋ぎたいデスか?」

「…ん〜、とね。…シラねぇと繋ぎたい」

「私と?切ちゃんじゃなくていいの?」

「…ん」

「そっか。じゃあ、はい」

 

まるで某アニメの燃え尽きた後の感じになり、真っ白な灰へとなりかけている姉様へとセレねぇがツッコミを入れながらも優しく声をかける。

 

「なっ…ななな、なんデスとぉおおおぉおおおぉお!!?これが…これが俗に言う反抗期なのデスか…?歌兎はお姉ちゃんのことを嫌いに…?あたしが調みたいに大人じゃないからデスか…?」

「そんなわけあるはずないじゃないですか…。ほら立ってください、暁さん。ここに座っていたら、みんなに置いていかれちゃいますよ」

「離してください、セレナ!歌兎に必要とされないあたしなんて、この世に存在する価値すらないゴミクズのような存在なのデスからっ」

「…あぁ、どうしよ…、これはかなり重症だよ…。私じゃあ手に負えない奴だよ…。歌兎ちゃん…月読さん…助けてぇ…」

 

シラねぇに手を引かれながら歩く僕の後ろを歩く姉様とセレねぇ。そんな二人へと視線を向けると、大泣きして暴れている姉様とそんな我が姉を見て、げんなりしているセレねぇの姿があった。その光景に首を傾げて、前を向く僕はトボトボとショッピングセンターへと一歩、また一歩と近づいていく。

そんな騒がしい姉様とセレねぇの後ろを歩くのが、マリねぇと藍色の髪を結んでいる女性・翼お姉ちゃんである。

マリねぇと共に歩きながら、翼お姉ちゃんは暴れている我が姉を見て、苦笑いを浮かべる。

 

「いつもの如く賑やかだな、マリアの所は」

「賑やかすぎて、疲れるくらいよ…。出来ることなら、変わって欲しいくらいだわ」

 

マリねぇは疲れたように右手で顔半分を隠す。その様子を見ていた翼お姉ちゃんは、マリねぇのその仕草で今朝、部屋の中でどんなことが繰り広げられていたのかを安易に想像できてしまい、マリねぇへと問いかける。

 

「貴女がそんな弱音を吐くとは珍しい。もしかして、今朝既に?」

「えぇ、一戦交えてきたところよ。あの子の過保護は今に始まったことじゃないけど、そろそろどうにかしないと歌兎がダメ人間へとなってしまうわ。歌兎には歌兎の人生があるもの…死ぬまで、切歌が世話するなんて出来ないのよ」

 

マリねぇは、暴れ疲れたのか大人しくなり、セレねぇに支えられながら、トボトボと覇気なく歩く金髪の妹分を見て、ため息をつく。そんなマリねぇの様子を見ていた翼お姉ちゃんが口元を緩めると笑い声を出す。それを聞いて、翼お姉ちゃんへと向くマリねぇ。

 

「ふ」

「何がおかしいのよ」

「いや、済まない。今のマリアが本当にあの四人の母親みたいに見えてな」

「ちょっ、そんな歳じゃないし!そこまで母親ぶってないわよ」

「そんなにムキにならなくてもいいではないか。私は似合ってると思うぞ、マリアお母さん」

「か、からかわないでよ、翼」

「済まない済まない。さて、私たちも行くとしよう。皆と距離が開いてしまった」

「えぇ」

 

ショッピングセンターの入り口でマリねぇと翼お姉ちゃんを待っている僕たちの元へと、二人が近づいてくる……




私の妄想によって書かれた奏者の皆方、まるで別人みたいでしたね…(汗)
こればかりは、まだまだ勉強が必要なようですーー特に、響と未来のところとか、クリスのところとか、翼さんとマリアさんのところとか…もう全部ですね(笑)

そして、今回も妄想が爆発した上に5000文字を超えてしまった本作…。
本当は、この後に続く買い物のシーンも書いて、この話を終えようと思ったのですが…案の程、文字数オーバー。改めて、妄想の力って強いなぁ〜と思う、今日この頃デス(笑)



【本作のオリ主プロフィール】

《名前》暁 歌兎
《読み方》アカツキ ウタウ
《家族》 暁 切歌・・・姉

《年齢》13歳
《誕生日》姉と一緒で、4月13日
《血液型》O型
《身長》142㎝
《体重》34㎏
《3サイズ》B61・W45・H62

《外見》
水色が入った銀髪で、瞳は姉と一緒で黄緑。いつも寝たそうにしているため、瞳は半開き。顔立ちは姉と一緒で整っている方かつ童顔な為、年相応には思われない。胸元へと小さい頃にあった事故の傷跡が残っている。

《性格》
【姉の言うことにはなんでも従う】と【自分のことは時の流れに任せる】という方針から、他者のいうことや姉の言うことを鵜呑みにしてしまうことがある。それは逆に言うと素直ということであり、裏を返せば、騙されやすいことを示す。また、自分のことや家事、普段の生活でしなくてはいけないことは一通り出来る。だが、それは殆ど、姉がしてしまう為、ダメ人間へと階段を順調に登り始めている。


《使用ギア》

???(のちに出てきます)



以上、暁 歌兎の簡単なプロフィールでした。

9/14〜感想でのご指摘を受け、一部プロフィールを変えましたm(_ _)m


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3)過保護の姉たちとかいもの。

この小説を書き始めて思うのは…未来さんと翼さんのセリフが難しいです(実感)

そして、長らく待たせてしまってすいません(汗)

10と9という勿体無い評価、そして 数々の温かい感想、とても痛み入ります。これからも過保護な切ちゃんをよろしくお願いします!


翼お姉ちゃんとマリねぇを待って、ショッピングセンターへと入った僕と姉様たちは今後の予定について、再度確認し合う。

 

「さて、着いたわけだが…ここから何すんだ?」

「予定としては、みんなで服を見たり、アクセサリーを見て回るんでしたよね。その後は、みんなでお昼ご飯を食べて、カラオケでお終いって流れだった気がします」

「なら、早速そこの服屋から見て回るとするか」

「えぇ」

 

クリスお姉ちゃん、セレねぇと翼お姉ちゃんが今後の方針について、話をまとめると、翼お姉ちゃんが近くにある店を指差す。みんながそれに同意して、近くに店へと足を運ぶ中、姉様が僕へと左手を差し出す。

 

「歌兎、はぐれるといけないので。今度はお姉ちゃんと手を繋ぎましょう」

「…ん」

「おい、そこの二人、早くしないと置いてくぞ」

「はーいデス!さぁ、行きましょう、歌兎」

「…ん」

 

クリスお姉ちゃんに急かされ、姉様と一緒に店へと足を踏まれた瞬間、姉様の少し垂れ瞳が段々と大きくなっていく。そして、僕の両手をガシッと掴んで、ブンブンと上下に振る。

 

「わぁああ!歌兎歌兎、歌兎!!ナウい洋服がいっぱいデスよ!?」

「…ん、いっぱいある。それとそんなに呼ばなくても聞こえてるよ…姉様…」

「これとか、歌兎に似合ってると思うデスよ。これも可愛いデス!歌兎が着たら最高デスよ!今すぐ着てみましょう!ささっ!!」

「……」

 

いつも以上に元気MAXな姉様に気圧されながらも、僕は姉様に連れられて、近くの試着室へと入っていく。

本来なら試着室には僕一人が入り、僕が姉様の選んだ服を着て、カーテンの向こうにいる姉様へと見せるのがこの試着室の使い方なのだろう。そう、普通の姉妹または普通の姉であればーーだが、僕と“過保護すぎる”姉様は違う。

まず、最初から違うのだ、普通と。過保護な姉様は両手いっぱいの服を持ちながらも器用にカーテンを開け、僕を中へと招き入れると器用にカーテンを閉める。そして、当たり前のように僕の服を脱がし始めるのだ。脱いだ服は姉様が持ち、試着する服を着せてくれる。姉様が着せてくれた服を揺らしながら、その場で1回転。そして、姉様へと問いかけるがこの試着での一連となる。

で、決まって、姉様は僕の問いかけにこう答えるのだーー

 

「…どう?」

「最高デス!!やっぱり、お姉ちゃんの見立ては間違ってなかったんデスね!!もう、お姉ちゃんの目には、今の歌兎が天使に見えるデスよ」

 

組んだ両手を胸の前へと移動し、腰をおって僕を見上げる姉様。少し垂れ目な黄緑色の瞳には、歓喜の波が揺れている。それを見つめながら思い、喉から出ようとしている言葉は…

 

(それは流石に言いすぎたと思うよ、僕)

 

とは、太陽のように光り輝く笑顔の前では言えず、僕は曖昧な笑顔を浮かべたまま、その後も姉様が見立てた服を試着していった。試着し終わり、姉様が気に入った僕の服は姉様が購入していった。

こんな歳になっても、姉に服を買ってもらうというのはかなり恥ずかしいものではあるがーーこればかりは仕方がない。だって、僕のお給料は姉様がしっかりと握っているのだから、毎月お小遣いとして貰えるのは三千のみ。頼めば、姉様も出してはくれるが…やはり、全給料を僕へ預けようとはしない。その事について、姉様に前に聞いたことがある。すると、帰ってきた言葉は以下だーー『今から貯金しておく事に意味があるのデス。歌兎が将来、働かなくても暮らしていけるくらいは貯めるべきデス』との事。それを聞いて思ったのは、働かなくても暮らしていけるくらい貯めるってどこくらいなのだろうか?と…F.I.S.時代から姉様がそう言って貯めてるので、もう目標金額間近ではないのだろうか?果たして、姉様が僕の将来を思い貯めているお金は何万…何千万円となっているのか?謎は深まるばかりある。

 

「歌兎!これとか、調に似合いそうではないデスか?」

「…?」

「これデスよ」

 

そんな下らない事を考えている間、どうやら姉様は今度はシラねぇの為に服を選んでいる様子だった。満面の笑顔で問われ、姉様の視線を辿り、それを見ると首を縦に振る。

 

「…ん、似合う」

「デスよね!白とピンクのワンピースに少し黒が入ってるところが、清楚な調らしいデスよ!」

「…ん」

「そうと決まれば、調を探すデス!」

 

姉様はキョロキョロと辺りを見渡し、丁度近くを歩いていたシラねぇを発見、僕を居残りさせて、シラねぇの右手を掴むと僕の前まで連れてくる。連れてこられたシラねぇは少し困惑気味である。

そんなシラねぇへと姉様があのワンピースを指差す。

 

「調、こっちに来てください!」

「何?切ちゃん」

「この服、歌兎と一緒に調に似合いそうって話してたんデスよ!」

「…ん、シラねぇが着たらきっと似合う」

「二人が言うなら試着してみようかな…」

 

シラねぇのその言葉を聞き、ガシッとシラねぇと僕の手を掴んだ姉様は試着室へと突っ走る。周りで買い物していたマリねぇとクリスお姉ちゃんの注意が飛ぶが、姉様の耳には届かない。

 

「善は急げと言うデス、調!早速、試着室へ行きましょう!」

「ちょっ、切ちゃんあまり引っ張らないで」

「…姉様、嬉しそう」

「そこあまり騒がないの!他の人に迷惑でしょう」

「そうだぞ!お前ら」

「まぁ、いいではないか。暁もみんなでこれで浮かれているのさ」

「そうだといいんだけどね」

 

その後も姉様の溢れ出る好奇心は止むことなく、僕とシラねぇは姉様にひきづられる、といえば人聞きが悪いが、あちらこちらへと連れまわされた。そして、終いには、僕をシラねぇに任せて、単独で探索に駆り出す始末。

そんな姉様を見て、思わず僕とシラねぇが苦笑いを浮かべてしまったのは、どうか許してほしい。姉様に呆れてしまったというわけではない。ただ、いつもよりも元気2000倍くらいの姉様の行動力に疲れてしまっただけである。本当にそれだけである。

姉様が一人探索へと駆り出して、丁度30分後。シラねぇと一緒に服を見て回っている中、目の前を横切る金と黄緑色の疾風は、目を丸くしている僕とシラねぇの手をそれぞれ掴むと、まるで太陽のようなキラキラ輝く笑顔を浮かべる。

 

「調、歌兎。こっちに来るデスよ」

「どうしたの?切ちゃん」

「…」

 

姉様はジャジャーンと自分が注目している服へと両手を向けると、パタパタと指を動かしてみる。そこにかけられていたは、太陽と月、そしてうさぎのイラストが描かれたTシャツで僕はシラねぇと共に姉様を見やる。

 

「これ見てください!この服、とっても可愛いのデスよ」

「あっ、本当だね。それに色違いもある」

「デスデス。ので、この服を三人で一緒に買いませんか?」

「いいね。私は賛成だよ」

「歌兎はどうデス?」

「…姉様とシラねぇがいいなら、僕は何も言うことないよ」

 

僕のその言葉を聞き、姉様は瞬時に黄緑、桃、そして花青緑のTシャツを取り、猛ダッシュで合計へと向かう。

 

「なら、決まりデス!早速、買うデスよ!調と歌兎とお揃いの服、GOGOデェース!」

「あっ、切ちゃん、待って。まだ、見てないところがある…って、もうあんなところにいる」

「…」

「他のところは二人で見て回ろうか?」

「…ん」

 

そのTシャツを購入した後は、流石に、はしゃぎ疲れたのか、姉様は僕のペースで買い物に付き合ってくれた。そして、丁度、お昼の12時となる寸前、同時になる三つのお腹。

 

「お腹空いたよ〜」

「お腹空いたデスよ〜」

「…お腹空いた」

 

未来お姉ちゃんと手を繋いでいる響お姉ちゃんがお腹をさすり、僕と姉様も響お姉ちゃんと一緒な行動をとる。そんな僕たちを見ていたクリスお姉ちゃんがため息混じりに言う。

 

「こんな時だけ、お前らの腹時計って正確だな」

「だって、仕方ないじゃん〜。ご飯は生きていく上で必要な行動なんだよ〜」

 

そう言い、頬を膨らませる響お姉ちゃんを見て、笑う未来お姉ちゃん。僕は近くに立っていたセレねぇの裾を引っ張る。セレねぇは僕の頭を撫でながら、近くにある定食屋を指差す。

 

「なら、あそこで昼ご飯にしましょうか?」

「あぁ、それがいいな」

 

みんなで近くにある店へと向かおうとしたその時だった。僕たちの二課から貰ったデバイスがけたたましい音を鳴らす。そこから聞こえてくるのは、もうお馴染みとなっているOTONA集団こと二課の司令官・風鳴弦十郎様である。

 

『みんな、至急にそこから10キロ先の工事現場へと向かってくれ。いつもよりもノイズの群れが多いから、注意してくれ』

「毎度のことながら、間が悪いわね」

「愚痴を言っても仕方ない。さぁ、行こ」

「…ッ!」

 

真っ先に走り出そうとする僕の肩を掴むのは、いつものニコニコ笑顔ではなく、真面目な顔つきをした姉様でーー。

 

「歌兎はダメデス。ここで未来さんとお留守番デス」

 

そんな姉様へと僕は自分の意思を伝える。いつもよりも多いとなると、やはり一人くらい人手がいた方がいいと思う。だが、姉様は僕の名前を力強く静かに言うと、僕の肩へと両手を置く。

 

「…でも、姉様。司令様が数が普段よりも多いって!だから、今日ばかりは僕もーー」

「歌兎」

「…っ」

「心配しなくても大丈夫デスから。お姉ちゃんとみんなでノイズなんてけっちょんけっちょんの粉々にしてやるデスよ!なので、歌兎はここにいて欲しいデスよ」

 

姉様が僕を安心させようと微笑んで見せる。それを見て、僕は唇を軽く噛むと小さく首を縦に振る。

 

「…分かった」

「流石、歌兎デス。本当にいい子デスね」

 

ぐしゃぐしゃと僕の髪を撫でると、姉様は未来お姉ちゃんへと僕を引き渡す。

 

「未来さん、歌兎のことをよろしくお願いしますデス」

「うん、任せて。切歌ちゃんもみんなも頑張って」

「じゃあ、未来行ってくる」

「いってらっしゃい、響」

 

例の工事現場へと走っていく姉様たちをじっと見ている僕に、未来お姉ちゃんが僕の目の高さに腰を折って話しかけてくれる。

 

「歩き疲れちゃったね、歌兎ちゃん。あそこのベンチで少し休もうか?」

「…ん」

 

未来お姉ちゃんに連れられて、ベンチへと腰掛けると未来お姉ちゃんかポツンと話しかけてきた。

 

「切歌ちゃんはきっと歌兎ちゃんのことが心配なんだと思うよ」

「……」

「たった一人の家族だもの。居なくなって欲しくないし、傷ついても欲しくない…私が切歌ちゃんの立場ならそう思うよ」

「…分かってる。でも…」

「うん。歌兎ちゃんも同じくらい、切歌ちゃんのことが心配なんだよね。でも、歌兎ちゃん…時には信じて待つってことも必要なんだよ」

「…」

 

未来お姉ちゃんが言ってる意味が分からず、首をかしげる僕に未来お姉ちゃんが苦笑いを浮かべる。

 

「私の親友は切歌ちゃんよりも無茶して帰ってくるから、いつも心配なんだ。でも、私は響の事を信じてる。心から信じているからこそ通じ合える…ってらしくないこと言ってるのかな?あはは…ごめんね、なんだかちゃんと言えないんだけど…切歌ちゃんは歌兎ちゃんが悲しむことは絶対しないと思うんだ。だから、私とここで待っていよ?ね…?」

「…ん、未来お姉ちゃんと姉様たち待つ」

「うん、よく言えました」

 

優しく頭を撫でられ、くすぐったさから目を細めると未来お姉ちゃんと他愛のない話をしながら、姉様たちが帰ってくるのを待った…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

姉様たちがノイズ討伐へと向かって、数時間後。僕は未来お姉ちゃんと一緒にワッフル屋さんへと並んでいた。理由は僕が未来お姉ちゃんへとお腹が空いたと言って、デザートというか軽く食べれる物をねだったから。

未来お姉ちゃんは「みんなには内緒だよ」と微笑んで、座っていたベンチから歩いて3分くらいのところにあるワッフル屋さんへと連れてってくれた。順番が遂にきたというところで、ショッピングセンターの入り口付近から聞こえてくる悲鳴に、僕は未来お姉ちゃんと握っていた手を離し、その悲鳴が聞こえてくる場所へと走って向かう。

 

「…ッ!!」

「待って、歌兎ちゃん!ギアだけは纏わないで!」

 

後ろから聞こえてくる未来お姉ちゃんの制止の声を振り切り、僕は入り口を飛び出して、そこに広がっている光景に歯を噛みしめる。

 

「ギャアアア!?」

「助けてくれ!死にたくなーー」

 

突然、会われた半透明な生物によって、次々と真っ黒な灰へと姿を変えていく人々たち。僕はその人たちへ向かって走っていく。今まさに襲われそうになっている人たちの前に進み出るとーー

 

(行かなきゃ!僕がここにいる人たちを守るんだ!!)

 

ーー“生身の姿のまま”でノイズへと回し蹴りを食らわせる。

 

「…multitude despair mjolnir tron----はぁあああ!!」

 

びっくりしている人たちへと顔だけ振り返ると

 

「…死にたくないなら、必死に走って逃げて」

「あっ、あぁ!」

 

パタパタと複数の足音が聞こえ、ひとまず、彼らを助けられたことに安堵し、すぐに表情を引き締め、真っ直ぐ前を見据えると僕は肩に金槌を担ぐ。

 

「…ここにいる人たちには指一本触れされない。ここにいる人は僕が守る!」

 

群れをなして襲いかかってくるノイズが近づいてくる中、そんなノイズの集団へと金槌を振りかざした…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

二課でのミーティングルームでは、忙しなくキーボードを打つ音が聞こえくる。そんな中、一人の男性が赤いTシャツに赤い髪という男性へと声をかける。

 

「司令、響ちゃんたちが向かったところとは別にノイズが出現しました」

「なんだと!?場所はどこだ?」

「さっきまで響ちゃんたちがいたショッピングセンター前です。ん?これは!?」

「どうした?」

「ミョルニルが…戦闘中です。そのノイズたちと」

「くっ!よりにもやって…歌兎くんか…。翼たちが討伐完了次第、呼びかけよう」

 

そんなやりとりが、二課であったとは露とも思わない奏者たちは着実にノイズの数を減らしていき、遂に壊滅させた。

肩で息をしている切歌へと、調が声をかける。

 

「ふぅ…はぁ…やっと終わったのデス」

「切ちゃん、お疲れ様」

「調もお疲れ様デス」

互いに互いを労い、歌兎と未来が待っているショッピングセンターへと帰還しようとした時だった。デバイスがまたしても、けたたましい音を響かさせる。そして、そこから聞こえてくるのもその呼び出し音と同じくらいの声だった。どこか、切羽詰まった感じに聞こえるその声に、切歌は着々と嫌な予感が胸を埋めるのを感じる。だか、その嫌な予感は見事的中することになる。

 

『そこに皆いるか?一戦交えた後に済まないが…今から早急に、みんなが買い物していたショッピングセンターへと戻ってくれ』

「はぁ?なんでだよ、おっさん」

「…歌兎くんが一人でノイズと戦っている」

 

デバイスから聞こえる弦十郎の声に、切歌の頭を一瞬真っ白になる。そして、勢いよく後ろを振り返るとひたすら足を動かした。

 

「「「!?」」」

「…ッ!」

「あっ、切ちゃん!」

「待ちなさい、切歌!」

「おい!」

 

後ろから聞こえてくる仲間の声には耳を貸さず、切歌はがむしゃらに走る。目指すは、最愛の妹と別れたショッピングセンター。

 

(何してるデスか!歌兎!あんなに約束したじゃないデスか!ギアを纏わないでって!!)

 

「歌兎…どうか、無事でいてください」




最後のシーンが下手くそなのは…私の表現力といいますか、力不足故です…(汗)
ので、皆さんへと伝えたかったことが伝わっていればと思うのですがーー伝わって…ますよね?


補足として、歌兎のギアについて載せておきます。

◎暁 歌兎

・ミョルニル

聖詠/multitude despair mjolnir tron

メインカラー/花青緑

基本、金槌で攻撃。自由に形や大きさを変えられる


以上ですm(_ _)m


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4)過保護な姉たちとせんとう。

今回は長めの、私の妄想全開デス。
オリジナル設定や過去改変などがあるので、お楽しみデス!

そして、今回の話で苦労したのはマリアさんのギアでした…(汗)
だって、セレナ生きてるし、響にガングニール渡しちゃったら、マリアさんは何を纏えばいいの!?と(汗)

自分で考えた設定なのに、そんなに悩まされるなんて…思いもしなかったですよ(笑)


9/18〜一件の誤字報告、本当にありがとうございます!
間違っていた部分を直しました。


「ハッ!」

 

迫ってくるノイズの群れに向かい、金槌を振り下ろす。だが、それくらいで減るノイズではない。半透明な拳が此方へと振り下ろされるのを、寸前で交わし、そのノイズの腹へと蹴り入れる。そして、数歩後ろへと飛ぶと息を整える。

 

(次から次へ湧いてくる)

 

戦闘を始めて、もう一時間くらい過ぎたがノイズの群れは減るどころか、最初の頃よりも増えている気がする。息を整えている僕は背後にいるそいつへと注意を怠っていた。ドンと身体へと強い衝撃が走り、前屈みに倒れこむ。そして、真上から何かが迫っているのを感じて、横へと逸れる。

 

「…くっ、ガバァッ!?」

 

お腹をさすり、思った以上にダメージを食らったことに苛立つ。そして、その苛立った気持ちに反応したか、僕の心の奥に居座っているアレが僕へと声をかけてきた。

 

【我を解放しろ。そうすれば、この状況を打破出来るぞ】

 

(くっ…煩い、黙って。君はお呼びじゃない。僕だけでもこれくらい撃破出来る)

 

【そうか。精々、抗うといい。我はいつでも、其方の呼びかけを待っているぞ】

 

首を横に振り、アレを追い払うと僕はギュッと左腕を握りしめる。グルグルと真っ白な包帯で巻かれたその下には、その包帯とは正反対の色で変色した骨ばった醜い腕が広がっている。それを思い出し、僕は顔をしかめる。

 

(やばい。これ以上、ダメージを食らったら…アレが出てきてしまう。それだけはどうにかして避けないと…)

 

舌打ちして、金槌を担いだ僕へと見知った声が掛けられる。

 

「歌兎ちゃん、前!」

「…!?」

 

未来お姉ちゃんの叫び声で前を見れば、もう寸前までに絶対ノイズたちが居てーー大きく振られた腕や拳は僕のお腹や顔に殴り、僕は近くにあるビルへと叩きつけられる。その際、余りの衝撃に唾を吐くと、ドテっとその場へと崩れ落ちた。だが、これくらいで負けるわけにはいかない。

 

(ここで僕が倒れたら、ここにいる人たちが灰へと成り替わる。それだけは何としても避ける!例え、この身がアレに取り憑かれようともッ!!)

 

「歌兎ちゃん!!」

 

近寄って来ようとする未来お姉ちゃんを止めてから、僕は大きく息を吸い込み、心の中に居座るアレへと呼びかける。アレは僕の呼びかけに嬉々として受け入れ、僕へとその力を受け渡す。膨大な力の束が僕の心臓近くにある聖遺物へと流れ込み、僕の身体は沸騰しそうなほど熱くなる。僕から発せられる蒸気により、周りの風景が歪み、僕はガクッと倒れそうになるのを何とか耐えると、近くにある金槌へと手を伸ばす。だが、余りの熱さと暴走する力により、両膝を地面へと付けた僕は左腕を強く握りしめる。

 

(熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。身体が熱い、胸が…左腕が…左目が…全てがあつい、アツイ、熱い!

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。目の前のやつが憎い、僕を苦しめるやつらがにくい、ニクイ、憎い!

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。こいつらも、後ろでギャアギャアうるさい奴もすべて、スベテ、全て…この金槌でーー殺す!!)

 

「あっ…あぁああ…あぁあああァアアアア!!!」

「歌兎ぅうううう!!!」

 

最愛の姉の叫び声により僕の悲鳴が打ち消される。両膝をついて、俯き、左腕を指が食い込むほど握りしめている僕を見て、姉様は親の仇を見る目で目の前にいるノイズの群れを睨む。

 

「お前たちデスか!あたしの可愛い妹をいじめたのは!!」

 

手に持った大鎌を振り回し、次から次へとノイズを灰へと変えていく。そして、最後に鎌から緑色の刃を放ち、見事にフィニッシュを決めた姉様は息を整えながら、両手をだら〜んと垂らして、身動き一つしない僕へと近づこうとする。だが、そんな姉様の前へと金と黒のギアを纏ったマリねぇが進み出る。そして、キョトンとしている姉様へと指示する。

 

「はぁ…はぁ…、っ…。歌兎…大丈夫デーー」

「切歌、武器を構えなさい。アレが始まるわ」

「へ?」

 

姉様は今だに身動き一つしない僕を見て、マリねぇへと掠れ声で呟く。だが、姉様の声は最後まで続かない。何故なら、僕の叫び声がその言葉を遮ったから。

 

「……」

「…マリア、何を言ってるデスか。ほら、いつもの歌兎じゃないデスか…アレはきっと、もう起きないデーー」

「あぁあああ!!!」

 

叫び声を上げ、自分を取り囲む奏者たち見渡す僕の身体を段々と赤黒いオーラが纏わりつく。いつも眠そうに開かれている黄緑色の瞳は今やオーラと同色で、姉様はそんな僕の姿を見て凍りつく。

そんな姉様を憂慮な表情で見つめる。そんなシラねぇへと視線を向けずに、姉様は地面の一点を見つめ、ポツンポツンと胸の中にある気持ちを吐露する。その呟きを聞き、姉様の右隣にいたセレねぇも姉様を気掛かりな表現で見つめる。

 

「!?」

「切ちゃん…」

「…あたしはまた…間に合わなかったの…デスか…?」

「暁さん…」

「…また、あの子をこの手で痛めつけなくてはいけないのデスか…」

 

自身のアームドギアの緑色の刃を持つ大鎌を見つめ、心痛な表現を浮かべる姉様へと禍々しいオーラを纏った僕が攻撃を仕掛ける。それを響お姉ちゃんが受け止め、反撃とばかりに左拳が飛んでくるがそれは背後に飛んで、回避。

獣のような唸り声をあげ、周りにいる奏者たちを威嚇する僕。そんな僕へと武術の構えと剣術の構えを取りながら、間合いを取る響お姉ちゃんと翼お姉ちゃん。そんな二人の反対側には、同じく其々のアームドギア構えるマリねぇとセレねぇの姿があり、マリねぇとセレねぇへと攻撃を仕掛けようとした僕へと突然飛んでくるミサイルや銃弾の数々。其方の方へと向くと、クリスお姉ちゃんが姉様へと喝を入れながらも僕へと攻撃を仕掛けていた。

 

「シャアああ!!ガルルルル…」

「そんなこと言ってる場合か!今はこいつを止めて、周りへの被害を減らすことを考えるべきだろ!」

 

そんなクリスお姉ちゃんの頭上へと飛んだ僕は両手を組み、クリスお姉ちゃんの後頭部へと拳を埋めようとする。だが、それは今にも泣き出しそうな顔をした姉様の大鎌の一振りにより、邪魔された。後ろへと飛ぶ僕へと今度はシラねぇの回転する電鋸が襲いかかる。それを寸前で交わし、取り囲む奏者たちへと無作為に攻撃を繰り出す僕。

 

「ッ。分かってるデス!妹が悪いことをしようとしてるのデス!それを止めるのが姉の務めというものデス!」

「そのいきだ、暁。今の彼女を止められるのは暁しかいない」

「はいデス!翼さん」

 

翼さんにさとされ、僕へと攻撃を仕掛ける姉様とシラねぇのコンビネーションに徐々に隙を見せ出した僕へと多数から攻撃が仕掛けられるーー姉様の大鎌が。シラねぇの回転式ノコギリが。マリねぇの槍が。セレねぇの短剣が。

次々とクリティカルヒットし、僕は徐々に追い詰められる。唸り声を上げる僕へと、今度は響お姉ちゃんと翼お姉ちゃんが畳み掛けてくる。

 

「ガルルルル。グルルル」

「くそっ!毎度のことながら、なんでこいつはギアを纏うとこうなるんだ!」

「それは私も知りたいところだよ!ハァアアアッ!!!」

「雪音。今だ!!」

「出血大サービスだ!有り難く受け取れ!!」

 

見事な連携を見せて、クリスお姉ちゃんのミサイルが当たった僕は呻き声を上げながら、その場へと跪く。それをチャンスと捉えた翼お姉ちゃんは奏者一同へと呼びかける。

 

「ガルッ!?」

「今だ!皆、畳み掛けるぞ!」

「了解です!翼さん!」

 

その後、全員の技を喰らい、その場へと倒れた僕は意識を手放した…

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

バタンと歌兎がその場へと倒れると、あたしは堪らず、彼女へと駆け寄る。だが、又してもマリアの邪魔が入る。邪魔をするマリアへと鋭い視線を向けながら、最愛の妹へ近づこうと足掻く。だが、マリアの力は強く、ビクともしない。

 

「歌兎!!」

「切歌!まだダメよ、まだ熱いわ」

「マリア!デスが…あんな状態の歌兎をーー」

「歌兎を心配してるのは切歌、貴女だけじゃないわ。私も…あそこにいるみんなも心配なのよ」

「…」

「大丈夫よ。私が歌兎の体温を下げるわ」

 

そう言い、任せなさいと言わんばかりに不敵に笑うマリア。ぐしゃぐしゃとあたしの頭を撫でると、右手に持った黄金の槍を一振りする。

すると、槍の先から水が噴き出て、歌兎へと直撃する。そして、ジュッといった音が聞こえ、真っ白な湯気が歌兎の身体から吹き上がる。暫く、そんな感じでマリアが歌兎を水で冷やし、ある程度するとマリアがあたしへと微笑んだ。

 

「これで大丈夫よ、切歌」

「ありがとうデス!マリア」

「どういたしまして。歌兎の元へ行って上げなさい」

「はいデス!」

 

マリアへとお礼を言い、最愛の妹へと駆け寄る。後ろからバタバタと足音が聞こえたのを聞くと、みんなも歌兎が心配で駆けつけたと思う。

濡れるのも構わず、ぐったりしている歌兎を抱きかかえ、身体を揺らす。だが、歌兎の瞼が開くことはなくーーあたしは歌兎を抱きかかえるとみんなと共に二課へと走る。

 

「歌兎!しっかりしてください!歌兎!!」

 

その後、あたしに抱きかかえられ、二課へと運び込まれた歌兎はそのまま、緊急治療室へと運ばれ、大掛かりな検査と手術を受けることになった…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

歌兎の手術を待っている間、奏者たちは食堂へと集まっていた。諸々の騒動ですっかり日が暮れてしまったので、みんなでご飯を食べようとなったからだ。

あたしは歌兎が心配で、胃に物を入れようとは思わなかったが、クリス先輩や響さん、未来さんから誘われ、いつもお世話になっている手前、三人の誘いを無下に出来ず、食堂へと来てしまった。

そして、各々頼んだ物を口に入れている時、クリス先輩が不意に口を開く。白銀の瞳は目の前に座っているあたしや横に並んでいるマリア、セレナ、調を順々と見ていく。クリス先輩が口を開くと、向こう側に座る先輩方々が次々と口を開く。

 

「なぁ、そろそろ教えてくれてもいいじゃねぇーか?今まで、あいつはあのバカと同じ病状だと聞いていた。だが、毎度毎度暴走っておかしいだろ?あいつの身体に、今何が起こってる?」

「それは私も知りたいよ。だって、 歌兎ちゃんは私たちの大切な仲間で。その仲間が苦しんでるんだったら、私はその手を握ってあげたい!歌兎ちゃんの力に、そして切歌ちゃん。マリアさん、セレナちゃん、調ちゃんの力になりたいよ」

「私からも頼めないか?マリア、セレナ、月読。そして、暁。ここにいる皆が彼女のことを心配している。貴女たちの力になりたいと思っているんだ」

「私も知りたいです!私は戦えないし、話を聞いてあげるくらいしか出来ないかもだけど…それでも、歌兎ちゃんを心配している気持ちはここにいるみんなと同じだよ」

 

四人の気持ちを聞き、押し黙るあたしを気掛かりそうに見ているマリア、調、セレナ。あたしはみんなから集まる視線に覚悟を決めると「スゥ〜」と深く深呼吸する。

 

「……」

「切歌…」「切ちゃん…」「暁さん…」

「…分かったデス。歌兎の身に何が起こっているのか…あたしから皆さんへと話すデス」

 

あたしのその言葉に、向こう側の四人が息を飲むを感じる。あたしはゆっくりと顔を上げると、四人の顔を見ながらポツンポツンと自分と妹の過去を話す。

 

「あたしと歌兎は、貧しいところの出なのデス。あたしが5歳、歌兎が2歳の時に、あたしたちを生んでくれた両親からはお金の為に売り飛ばされ、奴隷になる前にF.I.S.…白い孤児院へと迎えられたデス。

その際に誕生日や名前を聞かれましたが、あたしたちが知るのは自身の名前だけ。誕生日など両親に捨てられたあの日から思い出しもしないデス」

 

捨てられた時の記憶が蘇り、ギュッと自分のズボンを握りしめるとあたしの左手へとほっそりした右手が優しく添えられる。そちらへと視線を向けると、調が優しく微笑んでくれていた。そんな彼女へと力なく微笑み返してから、話を進める。

 

「白い孤児院では、色んな人たちと出会ったのデス。調、マリア…そして、セレナ。あと、もう一人、カルマ…」

 

あたしは重たい口を開き、最後の一人を口にした時、正面に座るクリス先輩が眉をひそめる。

 

「おい待て、そいつは誰だ?今までお前らの口からそんな名前聞いたことないぞ」

 

クリス先輩の問いに、今度は四人で答える。歌兎の病状を語る上に彼女の存在は不可欠なのだから…。

 

珠紀(たまき)カルマ」

「私と同じで先天的な適合者だった。誰よりも懸命にマムの試練へと立ち向かっていました」

「そして、私たちの誰よりも強く、優しい人だった」

「初代ミョルニルの奏者デスよ」

「「「「!?」」」」

 

あたしのセリフに四人の瞳が大きく見開かれる。あたしは構わず、話を進める。

 

「あの日、あの炎の日に歌兎の運命が変わってしまったのデス。その日は、ネフィリムの起動を実験したあの日、カルマは暴走したネフィリムを止める役をかって出たのデス。デスが、カルマが犠牲になることを歌兎は許さなかったのデス」

「歌兎はカルマを…そして、私たちを守ろうとした。ここにいる私たちよりも当時は無力でひ弱だったのに」

「デスが、そこで予想してない出来事が起きた。ネフィリムは目の前のカルマではなく、乗り込んできた歌兎へと敵認証を乗り換えたのデス。恐らく、歌兎はそれを狙っていたんでしょうが、ネフィリムの余りにも禍々しい姿に尻餅をついてしまった。そして、怯えた歌兎を助けようとカルマは絶唱を歌い」

「カルマの全身全霊の攻撃はネフィリムを大人しくさせ、弾け飛んだカルマのギアの破片が近くにいた歌兎の胸元へと」

 

あたしの横並びに座っているマリアたちが顔をしかめ、当時のことを思い出して、悔しそうに唇を噛む。そして、それはあたしも同じでギュッと握った右手を勢いよく目の前の机へと叩きつける。

 

「その後は、響さんと同じような感じだったのデス。そして、融合症例の第2号になった歌兎をこぞって、多くの組織が買収しようとしたデス!くそっ!あいつら、歌兎のことをなんだと思ってやがるデスか!!」

 

バァンと鈍い音が響かせる机の上には、あたしが頼んだハンバーグ定食がある。あたしが叩いた振動で、味噌汁はお盆へと壮大に溢れ、お水を入れた透明なコップは音を立てて、机へと倒れた。自分の方へと水が落ちてくるのも構わずに、あたしは机へと叩きつけた右手を強く握りしめる。

あたしのただならぬ雰囲気に向こう側にいるメンバーが怖がっていることを気配から察し、隣に座る調があたしの肩を抱き、落ち着かせようとしてくれる。

 

「切ちゃん、落ち着いて。みんなが怖がってる」

「…ごめんなさいデス、調。おかげで落ち着いたデスよ」

 

落ち着きを取り戻したあたしへと、翼さんが話しかけてくる。あたしは翼さんへと視線をつけると答える。

 

「そして、どうなったのだ?彼女は」

「もちろん、マムやあたしたちで守ったデスよ。歌兎にそんな汚い仕事をさせるわけにはいきませんから。そして、そんな日が続いた日のこと、ある事を知ったのデス」

「極大災厄ーー遠くない未来に月が落下する事実。そして、その事実を知る米国政府が弱者を切り捨て、一部の特権階級の救済を優先させていること」

「私たちは米国政府へと反旗を翻しました。弱者を切り捨てる政府を許すことは出来なかった。そして、あの計画を実行することにしたんです」

「フロンティア計画か」

 

翼さんがそう呟くと、マリアが頷き、続きを口にする。マリアの続きを調が言い、あたしは響さんをまっすぐ見つめる。

 

「えぇ。あの時は私たちにはそれしか方法がなかった」

「だけど、それが歌兎の病状を悪化させるきっかけとなった。でも、私たちはやめるわけにはいかなかった。目的を果たすまでは絶対に」

 

あたしの問いかけに頷いた響さんへと頷き、あたしはあの後に歌兎に起きたことをみんなへと話す。

 

「響さんは覚えてるデスか?ネフィリムが襲いかかろうとしたときに歌兎が助けたことを」

「うん、覚えてるよ。私の代わりにノイズ倒してくれて、その後も私を襲うネフィリムを撃退してくれた」

 

当時のことを思い出し、あたしは自分自身を責める。あの男へと妹が呼ばれていることに、あたしは気付いていたーーでも、あの男の逆鱗に触れることを恐れ、愛する妹を犠牲にし続けていた。あの時へと戻れるのであれば、あのナヨナヨとした自分自身をぶん殴ってやりたい。そして、こう言ってやるんだーー『大切な妹一人守らずに、地球やそこに暮らす弱者全員を守ろうなんて思い上がるなッ!』と。

 

「その後、歌兎はウェル博士に呼び出されたデスよ。作戦が失敗したのはお前のせいだ、と。そして、その責任を取る形で歌兎はウェル博士の実験を手伝うことになったデス」

「余りにも酷いこともさせられていたわ。もちろん、助けたかった。でも…」

「…あの時の私たちはウェル博士をどうしても手元に置いておく必要があった」

「だから、ウェル博士の逆鱗に触れることは出来なかったんです」

 

みんなが下を向き、唇を噛みしめる中、あたしはまっすぐ前を見据え、それを口にした。マリアが向こう側にいるメンバーを見渡し、問いかける。

 

「そうこうしているうちに、あのメガネーーウェル博士が歌兎へとあるものを植え付けたデスよ」

「あなたたちも聞いたことはあるのではないかしら?完全聖遺物・ベルフェゴール」

 

マリアが口にしたソレに、翼さんは目を引き、クリス先輩は焦ったような表情を浮かべる。

ソレを否定しようとしているセリフに、調が静かに首を横に振り、事実を突きつける。

 

「なんだと!?」

「いや、待て。そんなこと出来るのかよ!?生身の人間に完全聖遺物を埋め込むとか」

「ウェル博士が実際やってくれた。右手へとネフィリムの心臓を植え付けていた」

 

その事実に未来さんは身体を震わせて、口元を両手で覆う。その隣にいる響さんはというと、琥珀色の瞳へと怒りの炎を滾らせ、両手を強く握っていた。

 

「…酷い。なら、それを応用して歌兎ちゃんへも同じことをしたというの?」

「そんなのって…無いよ!歌兎ちゃん、私を守ってくれたのに!」

 

未来さんと響さんのセリフに答えずに、あたしは妹が何故いつも左腕だけ包帯しているのかを話す。それを聞いた瞬間、向こう側のメンバーが鋭く反論する。

 

「…歌兎が左腕へと包帯を巻いてるのはそのせいデス。真っ黒に変色した腕を見て、響さんたちが気持ち悪がると…そう言ってたデスよ、悲しそうに…」

「そんなわけあるかよ!」

「暁のそれは仲間を守ろうとした防人の誇りのようなものだ!それを気持ち悪がるなど、私たちの中に一人もいない!」

「そうだよ!どんな姿をしていても歌兎ちゃんは歌兎ちゃんだもん!可愛くて優しい歌兎ちゃんだよ!!」

「私もみんなと一緒だよ!歌兎ちゃん、私たちのために頑張ってくれてるもの!」

 

最愛の妹へと向けられている暖かい言葉に、思わず胸が締め付けられ、ポロポロと涙が溢れ出る。そんなあたしの溢れ出る涙を拭いてくれてる調へと頷くと、あたしはぐっと唇を噛むと最後の結末を話す。

 

「皆さんみたいな人に会えて、歌兎は幸せ者デスよ、本当に」

「…切ちゃん」

「大丈夫デス、最後まで話さないといけませんから。

そして、ウェル博士の目論見通り、歌兎はベルフェゴールを見事取り込み、その力を自分の力として使うことができたデス」

 

あたしのセリフに、翼さんが頷き、思い当たる節を言う。その出来事に頷き、あたしはベルフェゴールの副作用を説明する。

 

「なるほど、時折、彼女の周りから禍々しいオーラを感じることができた。理由はそのベルフェゴールやらを使っていたからか」

「そういうことデス。デスが、そのベルフェゴールを使い続けるにはメリットがあったのデスよ。

ベルフェゴールは着用者を唆すのデス…。心の底から囁きかけ、自分を使うように仕向け、膨大な力と共に、着用者の理性を破壊して、目に付くものを攻撃し破壊するだけの獣へと変えさせる…」

 

あたしの言葉を聞き、クリス先輩は目を見開き、唖然としたように言う。クリス先輩に頷き、今の歌兎の状態を話す。

 

「…!?それであいつが暴走を引き起こすのか」

「ミョルニルの浸食が思った以上に進んでることが幸いして、ベルフェゴールの浸透はそこまで酷くはないんデス…デスが、少しずつデスがミョルニルをベルフェゴールが飲みかけているのデス。もし…歌兎がベルフェゴールに飲み込まれてしまったのならば…あたしはあの子をこの手でーー」

 

その先はとても言えず、あたしは俯く。

もし、そんな事になってしまったら、あたしはそれが出来るだろうか?あの子を自分の手で始末することをーー

 

(情けないデス…。覚悟はとっくに決めてたのに…今更、震えがくるなんて…)

 

震える手をギュッと優しく握ってくれる調の優しさに感謝して、あたしは今の自分たちの目的を語る。

 

「切ちゃん…」

「分かってるのデス、調。…そうならない為にも、あたしは…あたし達は、もう一つの神獣鏡のカケラを見つける必要があるのデス。そして、あたしは歌兎をーー大切な妹をモルモットのように扱ったあのメガネを見つけ出して、ぶん殴らないと気が済まないのデスよッ」

「…なるほどな。あいつのこと分かったぜ」

「辛いことを思い出させてしまったな、暁。そして、マリアたちにも」

「気にしないで欲しいのデス。近いうちに、歌兎の事は話さなくてはいけないと思っていたので」

 

眉をひそめて、申し訳なそうに謝る翼さんへと首を横に振ると、その後は静かな時間が流れた……




ということで、役9000文字近くまで書いたこの話ですが…ご覧になっていかがでしょうか?

切ちゃんが妹に過保護な理由が伝わればと思うのですが(笑)



新しく出た単語の補足です。

《マリアさんの新しいギア》

名前/ロンギヌス

メインカラー/金と黒

→これはセレナと正反対の色を使って、二人で一つって感じを出した方がいいなぁ〜と思い、設定したものです。

聖詠/shield Longinus defend tron

→原作とは全く意味ないです。自分のカッコいいと思う単語を入れて作りました。

基本武器/槍


《完全聖遺物・ベルフェゴール》

ベルフェゴールは、キリスト教における七つの大罪に比肩する悪魔の一柱で、『怠惰』『好色』を司る悪魔である。男性を魅了する妖艶な美女の姿で現れて、『好色の罪』をもたらす悪魔とされ、さらに占星術では性愛を司る金星の悪魔とみなされている。また、中世のグリモワールに発明を手助けする堕天使として紹介されて、便利な発明品を人間へと与え、堕落させるという『怠惰』の悪魔にふさわしい力を持つ。

→『人間に便利な発明品を与え、堕落させる』を独自に解明し、『人間』を『装着者』。『便利な発明品』を『膨大な力』。『堕落』を『暴走』、としました。
続けて書きますと、『ベルフェゴールを装着した者は、膨大な力を与えられ、暴走する』としました。心に囁きかけるのは、唆す…といいますか、ベルフェゴールの力を使わせるためには必要なことだと思い、私が考えたものです。


《歌兎の左腕》

完全聖遺物・ベルフェゴールと同化したその腕は真っ黒に変色し、骨ばっている。それを何も知らないものが見たならばこう言うだろうーー悪魔の腕、と。
故に、彼女はその醜い左腕を包帯で隠すことに決めた。

→ウェル博士の右手とベルフェゴールを見つけて、思いついた案です。まだまだ、勉強不足な上、この設定をどう生かせるがまだ分かりませんが、気に入っていただけたのであれば幸いです。


以上、新しく出たワードの補足でしたm(_ _)m


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5)過保護な姉様たちと不器用なぼく。

今回は、目が覚めた歌兎を過保護な姉様こと切ちゃん、その他の奏者一同がお見舞いに来るところデス。
そして、次の回から5話ほどお見舞いシリーズが続きます。第一弾はきりしら。第二弾はひびみく。第三弾がマリセレ。第四弾がつばクリ。そして、最後の弾がOTONAの皆さんデス。

そして、遅くなりましたが…私の小説のアレが赤に…(ブルブル)
続けて、お気に入りが100名突破!?(もっとブルブル)

これは感謝の意を皆さんへと伝える為にーー特別な話とか書いた方がいいのでしょうか?と本気で悩む作者でありました(笑)



ショッピングセンターの一件から一週間後に僕は目を覚ました。

目を覚まして、最初に見たのは自宅ではない真っ白な天井、続けて、自分の周りを取り囲む物々しい機械たち。自分の胸へと続いているペースメーカーを見ると、どうやら僕はかなりヤバイ状況だったらしい。

 

「…あぁ〜、黒いとこ多くなってる」

 

アレーー完全聖遺物・ベルフェゴールの心臓が埋め込まれている左腕は愛用している包帯が巻かれてなく、その禍々しくもおぞましい腕が広がっていた。骨ばり、漆黒へと変色した腕は光が当たってるところを紫色に輝かせている。その腕からスゥ〜と自分の胸元へと視線を向けると、まるでクモの巣のように心臓へと伸びている漆黒の線があった。

それを見つめながら、僕はふと思う。

 

(…このまま、黒いとこが増えていったら…僕はどうなるのかな?

僕の意識はそこにはなく、アレに身体を乗っ取られ、僕の姿をしたソレは破壊と惨殺を繰り返す獣と化す…んだろうか?そうなった後はどうなるんだろうか…?僕は…また、姉様を、姉様たちを悲しませてしまうのだろうか…)

 

湿っぽくそんな事を思っていると、ガチャンとドアが開く音が聞こえ、そちらへと視線を向けると、恐らく記憶が途切れた時にすごく迷惑をかけたであろう奏者の皆さんが勢揃いだった。

先頭はもちろん、我が姉様で起き上がっている僕の姿を見ると両目の端に涙を溜めて、両手を広げて僕へと近づくとガシッと抱きしめる。

 

「歌兎!起きてたデスか!!」

「…ん、また迷惑かけちゃった…ごめんなさい、姉様」

「気にしたくていいのデスよ、歌兎。歌兎が無事だと分かっただけでお姉ちゃんはとても嬉しいのデス」

「…ん、ありがと、姉様」

 

姉様の背中を右手でさすりながら、入り口へとまた視線を向ける。そこには、姉様と同じように両目の端に涙を溜めた奏者の皆さんが居て、僕は居た堪れない気持ちになる。段々と近づいてくる皆さんから視線を逸らしそうになって、だが迷惑をかけた以上、詫びを言わなくてはいけないと思い、ジッと皆さんを見つめる。そして、僕を取り囲むに並んだ奏者の皆さんは僕にがっしり抱きしめたまま、ビクとも動かない姉様へと視線を向けると、どこからとなく苦笑いが漏れ出る。

そして、姉様の横に立っているシラねぇが僕の方へと進み出るといつものように優しく頭を撫でてくれる。チラッとシラねぇを見ると透明な雫の跡が二筋出来ており、その横にいるセレねぇもマリねぇも涙を流しており、僕は胸が締め付けれる。僕はまた、この優しい人たちを泣かせてしまったらしい。

 

「歌兎ちゃん…良かった…。無事で…本当に…」

「とても心配したんだよ、歌兎ちゃん」

「歌兎、無事でよかったわ。今回ばかりはダメかもしれないって思ったのよ」

「…ん、ごめんね。シラねぇ、セレねぇ、マリねぇ。そして、ありがとう。…また、心配かけちゃったね…」

「バカね、心配なんていつもかけてるでしょう?そんなことを気にすることはないわ」

「…ん、マリねぇ。ありがと…」

 

シラねぇに変わり、優しく頭を撫でてくれるマリねぇへと力なくお礼を言いながら、目の前にいるクリスお姉ちゃんへと視線を向けると、何故かばつが悪そうな顔をして横を向いた。その横では、そんなクリスお姉ちゃんをみて、クスクスと笑う翼お姉ちゃんと響お姉ちゃんの姿がある。何故、二人が笑っているのか。分からず、首をかしげる僕へと響お姉ちゃんがその答えを教えてくれた。

 

「…おまえ、目が覚めたんだな」

「思ったよりも元気そうで良かった、暁」

「歌兎ちゃん、元気そうで良かったよ。なんかツンツンしてるクリスちゃんなんだけどね、歌兎ちゃんが目を覚ますまでは自分のミサイルのせいで目が覚めないんじゃないかって、ハラハラしてたんだから」

「確かにあれが決め手となり、我らは暁へと総攻撃を仕掛けることになったんだからな」

「なっ!二人揃ってあたしを非難か!それとそれは言うなって言ったろが!!」

「いったぁああ」

「もう、響がクリスをからかうからだよ。ほら、見せてみて」

「うん、ありがとう〜、未来」

「…」

 

隠しておきたい秘密を響お姉ちゃんに暴露され、その追加で翼お姉ちゃんからの援護攻撃を喰らい、クリスお姉ちゃんは顔を羞恥心と怒りで赤く染めると、ポカッと音がするほどに響お姉ちゃんの頭を殴る。そして、殴られた響お姉ちゃんはその場にうずくまり、隣に立っていた未来お姉ちゃんへと治療してもらう。

まるで、僕を気遣って、普段通りに振る舞おうとしてるように見える四人。僕の背中に回っている両手が僅かに震えていると見下ろした際に見た姉様の悲しそうな表情から僕は眠っている間にあった出来事を安易に想像出来てしまう。

 

(そっか…。この四人にもバレちゃったか…)

 

出来ることなら関わって欲しくなかった僕の問題。この四人もここにいる二課のOTONAの皆さんも他人思いすぎる。恐らく、必死になって、僕を助ける方法を探そうともがいてくれるだろう、うちの優しすぎる家族のように。

でも、そんなみんなへとこんないつ破裂してもおかしくない爆弾のような身体を持つ僕は何が出来る?答えは何も出来ない、だ。迷惑をかけ続けて、これからも迷惑をかけて…終いには、こんな優しすぎる人たちを泣かせてしまうかもしれないのに。だから、出来ることなら、もう僕に関わらないでほしいと思う。そうすれば、悲しい思いも何もしないのだから…。

ので、僕は四人を見つめながら、敬語で謝罪を口にする。

 

「…また、僕がご迷惑をかけたみたいですいません。嫌な思いを沢山させてしまいましたよね…。それとこんなお見苦しい物見せてごめんなさい…」

 

そう言って、毛布で左腕を隠そうとするとその左腕を掴むものがあった。それを辿ると琥珀色の瞳を強い意志を浮かばせて、僕をまっすぐ見ていた。

 

「そんな悲しいこと言わないでよ、歌兎ちゃん。私も未来も、もちろんクリスちゃんや翼さんもこの腕をそんな風には思ってないよ。だって、これは歌兎ちゃんが大切なお姉ちゃんを、そして家族を守る為に選ぶしかなったものでしょう?私だって、歌兎ちゃんの立場ならそれを選ぶよ」

「…響お姉ちゃん」

「だからさ、今まで自分が行ったことを恥じないで。この腕は歌兎ちゃんの優しさの結晶なんだよ。それをそんな風に言うなんて、余りにも悲しいよ…」

 

僕の醜い黒い左腕を自分の胸へと優しく抱いた響お姉ちゃんは静かに謝罪の言葉を口にする。

 

「…ごめんね、歌兎ちゃん」

「…なんで、響お姉ちゃんが謝るの?」

「…切歌ちゃんに頼んで、歌兎ちゃんの身に何が起こってるのか聞いたんだ」

「…」

 

(やっぱり、そうか…)

 

響お姉ちゃんのその言葉に僕は一瞬、放心状態になる。姉様の反応と仕草から分かってはいたが、改めて聞くとなかなかくるものがある。

俯きそうになる僕の黄緑色の瞳をジッと見つめ、響お姉ちゃんは自分の気持ちを伝えようと語りかけてくる。

 

「色んなことを聞いたんだ。歌兎ちゃんが誰よりも行動力があり、切歌ちゃんと同じで家族思いで優しい子って事。そして、歌兎ちゃんをこんな姿にしてしまったのは…私のせいってこと」

「違う!響お姉ちゃんのせいなんかじゃ、ない!!これは僕がッ!!僕自身の…弱さが引き起こしてしまったことだから…あの男から本気になれば、姉様やマム…ねぇやたちを連れて逃げることとか出来た。でも、出来なかった…あの男が僕たちの作戦に必要だったから…。だから、響お姉ちゃんのせいとか言わないで。お願いだから…」

「でも、元を辿れば、私のせいでしょう?ううん、“せい”とかじゃないよ。私はそんなことが言いたくて、歌兎ちゃんにこんな話をしたわけじゃないの」

「…へ?」

 

響お姉ちゃんを見て、ポカーンとする僕に響お姉ちゃんはニカッと明るく笑う。その笑顔を見ていると、心の奥が暖かくなっていく。

なるほど、最近姉様と響お姉ちゃんがなんか似てるな〜と思っていたが、もしかするとこの笑顔がそれの最大の理由かもしれない。

 

「今の私がいるのは、あの時助けてくれた歌兎ちゃんの“おかげ”だよ。その後も、敵だったはずの私たちを助けてくれたでしょう?その裏でウェル博士にひどいことされていたかもしれないのに」

「…買いかぶりすぎだよ、響お姉ちゃん。僕は、最後の最後で姉様達や響お姉ちゃん達を裏切り、あの男の逃亡の片棒を担いんだから…その罪はどんな事をしても消えない」

「…歌兎」

 

響お姉ちゃんのセリフに力無く首を振り、あの時に僕がしてしまった最大の罪を口にする。その罪を口にした瞬間、姉様が僕を心配そうに見つめる。そんな姉様から視線を逸らし、毛布の一点を見つめる僕へと鋭い声がかかる。

 

「そんなの罪でもなんでもないよ、歌兎ちゃん!!だって、仕方ないじゃん!歌兎ちゃんにはそれしか残ってなかったんだもん!それを言うなら、私は歌兎ちゃんが助かるはずだった方法を奪ってしまった!あの光を浴びれば、歌兎ちゃんも助かったかもしれないのに!」

「…」

「歌兎ちゃん!お願いだから、そんなに自分の責めないで。そして、少しでもいいから私たちを頼ってよ…ね?」

 

響お姉ちゃんのセリフに僕の頬が濡れていく。そして、響お姉ちゃんを見つめると僕は今まで誰にも黙っていた気持ちを吐露する。

 

「…ぅっ…ぼ、く…このまま生きてても…大切な人達に迷惑かけちゃう…、それだけならまだしも…もしかしたら、もっと酷い結末になってしまうかもしれない…。なら…そうなる結末しか運命が用意してないのなら…このまま、ギアを使い続けて…自分を殺そうと思った…。もう、大切な人達の悲しむ顔が見たくなかったから…」

「歌兎ちゃん。こんな時、きっと、師匠ならそう言うよ。『KODOMOを守るのがOTONAの務めだ』って!まぁ、私もその子供の一人な訳なんですが…」

「おい、話が逸れてるぞ」

 

大事なところでおちゃらける響お姉ちゃんをクリスお姉ちゃんがたしなめる。それに響お姉ちゃんはこくんも頷き、胸に抱いた僕の左腕を強く握りしめた。

 

「あっ、本当だね!えっとね、結局何が言いたいかと言うとね。私や切歌ちゃん、他の奏者のみんなが必ず、歌兎ちゃんを守るって言いたかったんだ。私たちって、歌兎ちゃんよりも年上だからね!だから、歌兎ちゃんから見れば、私たちはOTONAということですな」

「…ッ…いいの…?…お姉ちゃんたちに…ねぇやたち…に甘えても…」

「もちろんだよ!今までの歌兎ちゃんは大人になろうと背伸びしすぎたんだよ。だからね、ここら辺で荷の重りを下ろすのもいいことだよ」

「うっ…ぅぅ…うあぁあああああああぁああん!!!」

 

その後、大泣きする僕を見て、姉様が響お姉ちゃんを非難し、プチ喧嘩へと発展した。もちろん、姉様が一方的にちんぷんかんぷんな方面から逆走し、迷走に走った末の暴走であったが…。

ので、プチ喧嘩といいつつも、ものの十分で終了。結果としては、響お姉ちゃんの正論に姉様が言い返さなかったから…。その喧嘩に負けたことにグレた姉様は、今度は僕の部屋に泊まり、僕と一緒に寝るとタダを言い出した。そのタダが思った以上に激しく、結局みんなで二課泊まることになった。その後も姉様の過保護節は異端なく発揮され、極め付けは病み上がりの僕のために作った料理が麻婆豆腐と来た。それは流石の僕は苦笑いを浮かべ、クリスお姉ちゃんが呆れながらも姉様へとツッコんでいた。

 

「…おい、一応聞くが。なんで、病み上がりの妹の為に作った料理が麻婆豆腐なんだ?」

「それはもちろん。麻婆豆腐が歌兎の好物だからデスよ!はい、あーんデス、歌兎」

「病み上がりの妹に食わせる料理じゃねーよ!あと、食わせるんじゃねーよ!お前はアホか!!お粥とかうどんとか…身体に優しいものをだな…」

「あたしだけ豪華な晩御飯を口にして、歌兎にそんなに質素な食事…っ。あたしの歌兎を愛する気持ち、そして自尊心を傷つける行動デス!」

「あぁ、そういうのはいいからさ…取り敢えず、作り直してこい!この過保護!!その後の話はその後だ!!」

 

この姉様とクリスお姉ちゃんの会話は、僕の姉様過保護武勇伝の中に密かに追加された……




と言うことで、いい話を最後でぶち壊す過保護な切ちゃん(笑)

ですが、私はそんな過保護な切ちゃんが大好きデェース!!

そして、あわよくば、他のシンフォギアメンバーの過保護なSSが増えてくれることを願ってます。


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6)不器用な僕ときりしら。

遅くなりました。

お見舞い編の第一弾、過保護な姉こと切ちゃんと調のお二人がメインの話となります。

そして、今回も私の妄想爆発デス(笑)
なので、時折お見苦しい文章なだかあるかもです…では、本編をどうぞ。


姉様たちが帰った後、僕の病状を聞くと想像していた通りの答えが返って来た。

まず胸に埋まったミョルニルのギアの破片は着々と僕の中で大きくなっているらしく、新しく出来たその機関から僕の身体の隅々までミョルニルが移転しており、あと一回、もって二回しかギアは纏えないとのこと。まぁ、そのおかげでベルフェゴールが心臓へと迫ってきてないので、不幸中の幸いというものか…。

そして、毎度のことながら、無茶苦茶な戦いを行なったので一ヶ月程安静とのことだった。どうやら、彼方此方に無理が掛かってるらしく、歩いたりする走ったりすると激痛が走るらしい、それも涙がポロポロ出るくらい痛さと…緊急治療してくれたスタッフのOTONAの皆さんが口を揃えて言っていた。普通なら、これくらいの怪我はミョルニルが直してくれるのだが、今回ばかりはベルフェベールが攻めてきてるため、そちらに手が回ってしまい、僕の身体までは気が回らなかったらしい。

 

それら二つの理由から、僕は一ヶ月程緊急治療室での生活が始まろうとしていた。恐らく、する事が無いので食べては寝て、寝て起きてはまた食べての生活となる事だろう。そして、そんな生活を続けていたら、この痩せっこっちな

身体も姉様のように健康的な身体つきへとなるのだろうか?

スッと下を見てみると、そこに広がってるのはーーまるで、子供が大人の服を着ているような感じで、二課の人に借りている病衣がダボ〜と僕の華奢な身体に纏わりつく。

 

(…僕の身体って…こんなんだっけ…)

 

ダボ〜としてる服を着てるせいか、尚更、自分の幼児体型が目立つ気がする。それも病衣のせいで真っ平らである…これは見ていて、とても虚しくなる。

そして、思うのだ。なんで、僕は姉様と違うんだ、と。

 

(…ううん、今はそんなこと考えてる場合じゃない)

 

余計な事へと頭が回ろうとしたところを首を振って、本来考えようとしていたことへと切り替える。それとは、さっき聞かされた自分の病状である。

 

(ミョルニルとベルフェゴールは理解してたけど。ギアのことは考えてなかった、…あと…1.2回しか纏えないか…)

 

その間に、あの男か神獣鏡のカケラを探さないといけない。果たして、間に合うのだろうか?…ううん、間に合わせるんだ。そして、その間に僕はギアを纏わなくても姉様たちを援護できることを見つけなくてはーー。

毛布の一点をジィーと見つめ、考え込んでると僕の身体に強い衝撃が走る。ドッシーンと体当たりの如き、振動に驚きの声をあげるとその振動があった方へと向く。すると、嬉しそうなしかし悲しそうな、それでいて、僕を心配しているような…なんとも複雑な表情を浮かべている姉様の姿があった。そんな姉様の後ろには、薄桃色のキャミソールにデニムのスカートを着込んだシラねぇが居た。

 

「歌兎ぅううう!!!」

「…わぁ!?…って、姉様ぁ?」

「歌兎ぅ〜っ。お姉ちゃん…寂しかったのデスよぉ〜」

「切ちゃん、ここは医務室。静かにしないとダメ」

 

僕へと抱きついている姉様へと注意しながら、シラねぇが僕の近くへと歩いてくる。そんなシラねぇへと僕の胸元へと顔を埋めていた姉様が顔を上げると頬を膨らませる。どうやら、姉様はシラねぇの言い分に腹を立てているらしかった。

 

「だって、調。歌兎と別れてた時間が7時間を過ぎたのですよ!これはあたしが歌兎と別れて過ごした中で一番最長デスよ!」

「私たちが学校に行ってる時、それ以上の時間を離れて暮らしている。それと、ついさっきまで私たちはここに居た」

「それはそれ、これはこれなんデスよ!調には分かりませんかっ!?あたしのッ!この込み上げてくる気持ちがァッ!!」

「…ごめん、切ちゃん。全く分からないよ。それと、いつにも増して煩いから、静かにね」

「なんか調が辛辣デス!?」

 

呆れ顔のシラねぇは僕へと微笑むと、そっと頭を撫でてくれる。くすぐったさから撫でられている側にある右目を瞑ると、そこであることに気づき、二人へと問いかける。

 

「…姉様、シラねぇ。学校は?」

「今日はお休み。だから、切ちゃんが歌兎のお見舞いに来たいって。私は止めたんだけど…そんなに頻繁に行っても歌兎の迷惑だって。でも、聞かなくって…ごめんね、歌兎」

「…ううん、僕も姉様とシラねぇに会えて嬉しいよ。さっきまで賑やかったから…余計に寂しくって、ね」

「歌兎ぅううう!!そんなに寂しかったのデスか!!!お姉ちゃんも…お姉ちゃんも寂しかったのデスよ!!やっぱり、あたしたち姉妹は二人で一つなのデスね!!!!」

 

僕のベッドの上へと登った姉様は、左横からギュッと僕へと抱きつく。そして、スリスリといつにも増して、情熱的に頬ずりをしてきた。僕の頬へと自分の頬を擦り付けて、幸せそうな表情を浮かべる姉様に僕とシラねぇは困惑を通り越して、抛棄の気持ちとなる。

そして、僕は改めて思うのだったーーやはり僕の姉様は過保護だ、と。それに増して、ここんところの姉様は過保護以外にも何かの特殊な扉を開けてしまった気がしてならない…それが僕の勘違いならいいのだが、本当に…。

 

(…どうしよ、ウチの姉様。過保護の他に、何か特殊なスキル獲得していってないだろうか?僕は過保護だけでもお腹いっぱいなのに…)

 

そんなことを思いながら、姉様の好きなようにさせておくとシラねぇが話が進まないと判断したのか、僕から姉様を引き剥がす。姉様はシラねぇに頬をふくませていたが、シラねぇに僕のベットの下にひっそり置かれてある紙袋を指差され、思い出したようにその紙袋からある物を取り出した。

 

「これを三人で着たくて持ってきたのデスよ!」

 

ジャッジャーンと取り出されたのは、“太陽と月、そしてうさぎ”がプリントアウトされた黄緑、桃、そして花青緑という三枚のTシャツ。

それを見て、僕はシラねぇへと視線を向ける。僕の視線を受け頷いたシラねぇ。

 

「…これは。あの時の?」

「うん。切ちゃんがこれを着る時は三人同時がいいって言うから。だから、切ちゃんのワガママ叶えてあげて、歌兎」

「…ん、僕もずっとこのTシャツが着てみたかった」

 

僕の答えを聞き、太陽のような満面のピカピカ笑顔の姉様は当然のように僕の病衣の紐へと手を伸ばす。しゅるりと紐を引かれ、姉様に促されるままに病衣を脱いでいく。そして、バンザーイをするとスパッと花青緑色のTシャツを着せられる。

 

「歌兎ならそう言ってくれると思ったデスよ!はい、バンザーイしてください」

「…ん」

「歌兎、少し前かがみになれますか?」

「…ん、なれるよ」

 

前かがみになり、ここ最近で背中の真ん中くらいまで伸びた水色の入った銀髪をふさっと払うと、空中で銀髪が舞い、僕の背中へと振ってきた。それを見ていた姉様はウルウルと垂れ目な瞳を潤ませる。

 

「歌兎…とっても似合うデスよ…。その姿は天使…ううん、お姉ちゃんの目には女神様に見えるデス。歌兎は女神様の生まれ変わりだったのデスね…あたしの妹に生まれてきてくれてありがとうデス、女神様」

「はぁ…」

「……」

 

姉様のその発言にシラねぇはため息を一つ付いて、着ていたキャミソールの上から桃色のTシャツを着込む。そして、僕へと祈りを捧げ続ける姉様の肩出し黄緑Tシャツを脱がせるとすぽっとあのTシャツを着させる。その一連の流れを見ていたが、まさに神業だった。無駄な動き一つない見事な流れ技で姉様を忽ち着替えされたシラねぇに僕は心の中で拍手と御礼を言う。御礼することはただ一つである。

 

(ウチの姉様が迷惑かけます。そして、こんな姉様ですが、これからもよろしくお願いします)

 

に限る、実際いつの間にか着替えされられていた姉様の驚愕の顔たるやーーもう、僕と姉様は末期なのやもしれない。姉妹揃って、これはいよいよヤバイかもしれない。

 

(でも、僕にとって…姉様が全てだからな…)

 

やはり、僕は姉様の判断と時の流れに身を任す他ないらしい。

そんなことをじ〜んと思ってると、姉様がまた僕へと抱きつき、右側からシラねぇが抱きついてきた。ぴったりと頬をくっつけて、密着してくる二人に僕はびっくりする。すると、姉様が徐ろにデニムのショートパンツから黄緑色のスマートフォンを取り出すと、カメラモードへと切り替える。

 

「歌兎、写真とるデスよ!」

「三人で同じデザインの服着たの、初めてだから。記憶と記録に残しておきたいって、切ちゃんが」

「…ん、分かった」

「じゃあ、デデデースで押すデスよ」

 

姉様がスマートフォンを掲げ、僕は見上げると、姉様とシラねぇも僕へと近づいてくる。そして、姉様の“はいチーズ”に変わる“デデデース”が左耳から聞こえ、それと同時に両頬に柔らかい感触が広がる。くすぐったさから目を細める僕の耳には確かに、カシャンというカメラのシャッター音が聞こえた……

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

それから姉様とシラねぇは夕方まで居てくれて、明日は学校ということでマンションへと帰っていった。姉様はまた僕のところで寝泊まりすると暴れていたが、僕の次に姉様と一緒にいるシラねぇに掛かれば、“あら不思議”で頬を膨らませながらもシラねぇと仲良く手を繋ぎながら、帰路へと付く姉様の姿があった。

 

僕は一気に静かになった緊急治療室にて、姉様から新たに設定してくれた僕の花青緑色のスマートフォンを手に取る。そして、電源を入れると最初の壁紙を見て、思わずぽろりと笑みがこぼれる。

 

そこにはーー僕の頬へとキスを落とす姉様とシラねぇの姿、そして、そんな二人の口づけを困った顔をしながらもはにかんでいる僕の姿でーー

 

この写真を見ていると、とても暖かい気持ちになる。それは恐らく、二人の僕への思いがこの写真から伝わってくるからだろう。ギュッと胸へとスマートフォンを抱きしめ、暖かさをチャージすると

 

近くにある−−二課の皆さんが流石にこのまで殺風景は可哀想とのことで置いてくれた−−机の上へと無造作に置いてある二つの絵本へと視線を向ける。

いつの間にか、置かれていたその絵本の上には以下のおきてがみを添えられていた。

 

『背景、さいあいなるうたうへ。

うたうが退屈しないように、しらべと選んだえほん置いとく╰(*´︶`*)╯♡デス。たいくつな時、たいくつじゃない時でも、お姉ちゃんと思って絵本を読んでアゲてくださいo(^▽^)o

Biあなたの姉、きりか』

 

『拝啓、大好きな歌兎。

退屈な時に読んで欲しくて、切ちゃんと一緒に選んだよ。どっちも素敵な話だから、歌兎も気にいると思う。だから、それを読んで、早く元気になってね。切ちゃんと一緒に歌兎の帰りを待ってるよ』

 

二通のおきてがみと二冊の絵本を見て、僕は困ったように微笑む。そして、ボソッと呟いたのはちょっとした愚痴であった。

 

「…もう、姉様もシラねぇも僕を何歳だと思ってるのかな?僕、こう見えても13歳なんだよ…?まったく…困った姉様とシラねぇだよ…」

 

そこで一括りすると、スゥ〜と息を吸い込み、瞼の奥に二人を思い浮かべて、こう呟く…

 

「…でも、ありがと。僕も二人のこと、大好きだよ」




最後のおきてがみ…難しかったです…。調も切ちゃんのも…(笑)切ちゃんも調もそもそも、どんなおきてがみ書くかなぁ〜と。
切ちゃんはすぐ書けたんですが…調の方がなかなか思い浮かばなくって…(涙)
なので、延々と『手紙』『Draft folder』を聴きながら書きました、ここの部分だけ(笑)

そして、まだニコ動で10話を見れてないのデス(涙)
読者の皆様、我らが過保護な姉様に何があったのデスか…?
とても気になって、気になって…気が気じゃない私でありましたm(_ _)m


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7)不器用な僕とひびみく。

お待たせしました(礼)

今回の回はやらかしてしまった気がしてなりません…(汗)

なので、読み終わった後に…小石とか投げないでくださいね…(汗)


二課の皆さんが僕の為に置いてくれた机の上から姉様とシラねぇに貰った絵本の一冊を手に取ると、パラパラとページをめくる。僕の眠たそうな黄緑色の目は、絵本の字と絵の間をボゥ〜と見つめては、また次のページをめくる。

心ここに在らずの状態で、ずっと考えているのは…

 

ーーどうやったら、姉様たちと響お姉ちゃんたちの戦闘のサポートが出来るか?だ。

 

姉様とシラねぇがお見舞いに来てくれたその前から考えていることだが、なかなかいい案が浮かばない。ここはひとつ、頭を冷やす為にも最近の自分の行動を振り返ってみる価値あるかもしれない。

 

(かといって…最近変わったことって…、ん〜)

 

遂にはめくる手も止めて、胸の前に両手を組んでから悩む。その時、ガッチャンと軽やかな音が部屋の中へと木霊する。そちらへと視線を向けると、柔らかい微笑みを浮かべている未来お姉ちゃんとニコニコと満面の笑みを浮かべている響お姉ちゃんの二人の姿があった。二人とも、この上にある私立リディアン音楽院の制服を着ていることから、安易に放課後にわざわざここに寄ってくれたことが想像出来た。

ので、僕も二人と同じように笑顔を浮かべながら、二人が近づいてくるのを待つ。

 

「こんにちわ、歌兎ちゃん」

「切歌ちゃんと調ちゃんの言ってた通りだ!起き上がって、大丈夫なんだね〜、歌兎ちゃん」

「…こんにちわ、未来お姉ちゃん、響お姉ちゃん。お姉ちゃんたちは学校のあと?」

「うん、あの日以降お見舞いに来れてなかったから…」

「だからね。未来と話し合って、今日なら空いてるから。二人でお見舞いに来ようって」

「…わざわざ、僕のためにごめんなさい」

 

申し訳なそうに頭を下げる僕へと、未来お姉ちゃんは少し怒ったように頬を膨らませ、響お姉ちゃんは照れたように頭を撫でていた。

 

「もう、謙遜は無しだよ、歌兎ちゃん」

「そそ。私たちが好きでやってるんだからさ」

 

そこまで話して、右側にあるパイプ椅子へと腰を下ろした二人は、僕の顔をジィーと見つめる。

 

(…なっ、なんだろ…)

 

「…え…と?僕の顔に何か付いてます?響お姉ちゃん、未来お姉ちゃん」

 

困惑した表情で響お姉ちゃんと未来お姉ちゃんを見ると、二人がハッとしたように息を飲む。そして、僕へと詫びを入れながら、じっと見ていた理由を教えてくれた。

 

「ごめんね、歌兎ちゃん。そんなにじっと見るつもりはなかったんだけど…、歌兎ちゃんの顔を見れば見るほど」

「…見れば見るほど?」

「切歌ちゃんに似てないなぁ〜ってね。ごめんね、すごく失礼だよね」

 

二人揃って、似たようにバツの悪そうな顔をしてるのが面白く、クスクスと笑ってから首を横にふる。

その理由に関しては僕も思い当たる節がある為、二人が気にしても仕方ないと思う。実際、白い孤児院にいた頃から、よく聞かれていた質問だ。だから、二人にそんな顔される必要は全くない。

 

「…そんな顔しなくても大丈夫だよ、響お姉ちゃん、未来お姉ちゃん。それは僕も思っていた事だから」

 

僕がそう答えると、響お姉ちゃんが身を乗り出す。琥珀色の瞳の中で遺憾と好奇心がごっちゃ混ぜとなっている。未来お姉ちゃんの方を見ると、響お姉ちゃんと同じように表情をしていた。

 

「ヘぇ〜、そうなんだ〜。歌兎ちゃんも気にしてたんだね」

「…ん、当時はかなり気にしてたけど…今はそんなに。姉様がそんな事気にしなくていいって言ってくれたから」

「切歌ちゃんがそんなことを。どんなことを言われたの?」

「はいはーい!私も気になる」

「もう、響」

「あっ、ごめん…」

 

未来お姉ちゃんに嗜められ、頬をかく響お姉ちゃん。僕はそんな二人のやりとりを見ながら、ふと姉様とシラねぇを思い出す。あの二人もこんな感じで昔から仲良しだ。

 

「…『歌兎は歌兎、他の誰でもないんデス。ただ、確実なのは……歌兎はお姉ちゃんの世界一可愛くて、自慢の妹って事だけデスよ』って、そう言ってくれて、頭を撫でてくれました。それ以降、僕は何があっても姉様について行くって決めたんだ。そして、そんな姉様の役に立ちたいって…」

「へぇ〜、切歌ちゃんかっこいい」

「うん、かっこいいね。だから、歌兎ちゃんはお姉ちゃんが大好きなんだね」

 

響お姉ちゃんが感心したように目を輝かせる中、未来お姉ちゃんが柔らかく微笑むと僕へと問いかけるそれへと頷いて、僕は自分の素直な気持ちを伝える。

すると、響お姉ちゃんが照れたようにはにかみ、そして呟いたセリフに未来お姉ちゃんが反応。ガシッと響お姉ちゃんの肩を掴み、琥珀色の瞳をまっすぐ見つめて問いかける。その時の未来お姉ちゃんの目力だが、明らかに視線だけでノイズ…いや、それ以上を殺せるくらいの破壊力があった。普段から控えめというか、大和撫子な感じを漂わせている未来お姉ちゃんだけに僕も背中に電気が走る。この電気は本能が危険と知らせているのだろう、僕は静かに未来お姉ちゃんは姉様たちよりも響お姉ちゃん達も一番怖いかもしれないと認識を改めた。

 

「…ん、大好きだよ。姉様ももちろんだけど、響お姉ちゃん達もみんなみんな大好き」

「いっやぁ〜、そんなストレートに言われると照れますなぁ〜」

「へ?そうなの?響」

「うん?なんで、未来は私のその発言に、突然がっついてきたの?」

「いいから、答えて、響。響は好意はストレートに言われるのが好きなの?どうなの?」

「怖い怖い、怖いよ、未来。なんか怖い。一旦、落ち着こ、ね?歌兎ちゃんもいる事だしさ」

 

響お姉ちゃんにそう言われ、未来お姉ちゃんは思い出したかのように僕の方を見る。見つめられた僕は曖昧に笑う。その笑顔に未来お姉ちゃんは撃沈。どうやら、僕はとてもぎこちない笑顔を浮かべていたらしい、ベットへと顔を押し付けて、『怖がらせて、ごめんなさい…』をうわ言のように言う未来お姉ちゃんを響お姉ちゃんと僕とで、慰めて本来の話へと戻った。

 

「それで、歌兎ちゃんは誰似なの?」

「…それは姉様が言うには、僕はお母さんだって。姉様はお父さん」

「言われて見るとそうかも。歌兎ちゃんは美人なんだけど、可愛い系でもあるしね。ううん、可愛いの方が強いかな」

「うんうん、切歌ちゃんは綺麗系だもんね。少し中性が入ってるしね」

「…ん。姉様は昔からボーイッシュな格好が似合ってる」

 

僕のセリフにうんうんと頷いた二人は、当然僕の横腹を突いてくる。それがくすぐったく、身をよじると二人して擽りを強くしてくる。僕も反撃しようと響お姉ちゃんの横腹を撫でた時だった。響お姉ちゃんが突然、身をよじり、僕の方へと倒れてくる。僕はそれを避けるために、ベットへと寝転がり、響お姉ちゃんはベットへも両手をつく、そして運悪くガチャって音が聞こえてきて、もっとも見覚えのある明るい声が聞こえてくる。

 

「歌兎!お見舞いに来たデスよ!!」

 

勢いよく開かれた扉から出て来たのは、ついさっきまで話題に上がっていた我が姉である暁 切歌で、ベットに倒れている僕の上へと両手をついている響お姉ちゃんを交互に見てはフリーズしていた。そして、いつもの口癖を口にすると、響お姉ちゃんと僕の中へと割り込んでくる。

 

「デデデデ!?デデデース!?」

 

そして、僕を背に庇うと響お姉ちゃんへと頭を下げる。相変わらずのちんぷんかんぷんな言い分であったが、僕は姉様の言ってる言葉の意味が分からずに、首を傾げ続ける。激しく言い合いを繰り返す二人の側には、未来お姉ちゃんの姿があり、苦笑いを浮かべていた。

 

「響さん、歌兎を襲う気ならまず、姉であるあたしの純潔を奪ってからにするデス!そして、願わくば、そのままあたしを汚してください…。歌兎はまだ、そういう大人の階段を登るには幼すぎるのデス、デスから!」

「いやいや、何口走ってるの!?切歌ちゃん!!と言うか、どこからそんな言葉を覚えてきたのさ!?」

「調と特にマリアデス。あと、セレナはそういう話を聞くと顔を赤くするって、マリアが」

「マリアさぁ〜ん、調ちゃ〜ん!!二人して、切歌ちゃんに何教えてるの!?F.I.S.組はそういう話が日常茶飯事なの!?」

「な訳ないデス。ただ、早く大人になるためにはどうすればいいのかって、マリアに聞いたら言ってたデス。『大人の階段なんて登るのは簡単よ。相手に自分の純潔を渡せばいいのよ』って、あと『最初は痛いけど、そのうち気持ち良くなる』って…あれは、どういう意味デス?」

「マリアさぁ〜〜ん!!!間違えてる!何もかも間違えるよ!!大人の意味も、階段って意味も!貴女が登らせようとしてるのは、社会的にアウトな奴だから!もう、レッドカードな奴だから!!それよりも、未成年になんて事教えるの!?あの歌姫さん!?」

「何わけわからないこと言ってるデスか、響さん。それより、話の続きをするデス」

「いやね、このさっきのあの状況は事故であって、そういう気は微塵も…」

「そういう気は微塵も?それは歌兎に喧嘩を売ってるってことデス?それとも、あたしデス?」

「いや、えっと…そうじゃなくてね、確かに歌兎ちゃんは可愛くて魅力的な子だよ。でもね、私には未来っていうーー」

「あぁ、もう!じれったい人デスね!!何が言いたいんデスか!響さんはあたしと歌兎を襲う気はあるんデスか?ないんデスか?それだけ答えてください!」

「なんで、そうなるの!?もう、意味が分からないよ!切歌ちゃんは私に何を求めてるの!?私にどうしてほしいの!?分かんないよ〜、未来〜、助けてぇ〜」

 

ついさっきの未来お姉ちゃんと同格くらいの目力で、響お姉ちゃんへと近寄る姉様。響お姉ちゃんは未来お姉ちゃんへと助けを求めていたが、未来お姉ちゃんは運悪く僕の世話をしていて、そのヘルプに気づかないでいた。

 

「…未来お姉ちゃん」

「何?歌兎ちゃん」

「…響お姉ちゃんと姉様はさっきから何を言ってるの?『襲う』とか『純潔』とか『大人の階段』って…僕、意味が分からないよ」

「うん、歌兎ちゃんはそのまま知らないままでいいんだよ。まだ、歌兎ちゃんには早い言葉たちだからね。この騒動が終わるまで耳を塞いでようか?」

「…?」

 

未来お姉ちゃんに耳を塞ぐように指示され、程なくして姉様と響お姉ちゃんの言い合いが終わった。ドッと疲れた様子の響お姉ちゃんを労う未来お姉ちゃん。姉様は僕へと抱きつくと、身体を念入りに確認する。

姉様のその行動に首を傾げつつも受け入れた僕は、三人が帰る頃になるとある人へととあるお願いをする。その人は戸惑いつつも了承してくれた。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

約束の時間となり、ガチャンと扉を開けて入ってきたのは明るいショートヘアが特徴的な少女・響お姉ちゃんだ。響お姉ちゃんは困惑した表情を浮かべながらも僕の近くへとくると、パイプ椅子へと腰を下ろす。

 

「えっと、歌兎ちゃん。言われた通り来たけど…私に何か用かな?」

「…響お姉ちゃんに改まって、お願いがあります」

「うん、何かな?」

 

いつものタメ口ではなく、敬語で話す僕を見て、響お姉ちゃんも僕と同じように表情を引き締める。そんな響お姉ちゃんへと僕はここに呼び出した本題を言う。それに眉をひそめる響お姉ちゃん。

 

「…僕の身体が治った後から、僕に稽古をつけてくれませんか?もちろん、ギアは纏いません。生身でという意味です」

「??? どうして?」

「…響お姉ちゃんは、融合病例の時にギアを纏ってないのにノイズに触れられませんでしたか?」

「!? ………、そっか。うん、歌兎ちゃんも私と同じなんだもんね。それで、なんで私に稽古を習いたいの?」

「…ノイズに触れるためには素手じゃなくてはいけないという条件を満たす奏者の方、もしくは武道に長けた方といえば…僕の知り合いでは、響お姉ちゃんか司令様しか考えられなかったですから。それに、この方法なら、姉様たちと響お姉ちゃんたちを援護出来ると思ったから…です」

 

僕の理由を聞き、頷く響お姉ちゃんであったが同時に心配そうな表情を浮かべる。それに微笑みかけながら、僕は自分の覚悟を言う。

 

「…でも、ノイズに触られると灰になるんだよ?切歌ちゃんがそんなこと許すかな?私も出来ることなら、そんな危険なことをして欲しくないな」

「…いいえ、これは僕が決めたことなんです。あの時に犯してしまった罪、その他の罪も僕は姉様たちや響お姉ちゃんたちに返せてないですから。だから、お願いします、響お姉ちゃん…」

「歌兎ちゃん…。うん!そこまでの覚悟があるなら、私は全力で歌兎ちゃんをサポートするよ!大船に乗った気でいて!」

「…はい、とても頼りにしてます、響師匠」

「お!?なんか、その師匠って言葉はいいね!?やる気も五百倍くらいになるよ!!」

 

その後、響お姉ちゃんもとい響師匠は元気よく帰っていった……




というわけで、響お姉ちゃんが武道の師匠となりました(笑)

あのOTONAと比べれば、ハードじゃないと思いますが…基礎体力作りはすごくすると思うのです…。なので、主人公が倒れないことを祈ります…


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8)不器用な僕とまりせれ。

今回は前回の回で色々な問題になったマリアさんの登場です。

今回の回は、安心してください。いつものように、切ちゃんだけが暴走しますので…

………うん、暴走するのは切ちゃんだと思いますよ…(汗)


10/6〜誤字報告、本当にありがとうございます!


響お姉ちゃんもとい響師匠に治った後の特訓を申し込んでから、二週間が過ぎたある日のこと。

僕は、ベットの横にある机から本を手は取る。そして、チラッと机の上に視線を向けると、姉様とシラねぇが持ってきてくれた最初の絵本を埋め尽くすほどの絵本や本が積み重なっている、それに思わず苦笑いを浮かべるとゆっくりと瞼を閉じる。

思い浮かべるのは、毎日欠かさずにお見舞いに来てくれる我が姉の姿だ。僕が自分の選んだ絵本を楽しそうに読んでくれるのが、よっぽど嬉しかったのか、姉様は度々絵本や本を持ってきてくれるようになった。時折、幼稚といえば口が悪いがファンタジー感がたっぷり入っているものもあったが、殆どが泣けるまた考えさせれる絵本や本が多かった。ので、僕も姉様が来る時間になるとワクワクしながら待ってることが多い。どんな本を持ってきてくれるのかぁ〜と待ってる自分を側から見ると、かなり子供っぽい。

しかし、姉様のこの絵本または本の差し入れは嬉しい反面、心配な面もあった。

 

(姉様…お小遣いは足りてるのかな?絵本や本もバカにならないのに…)

 

そう、それは姉様の経済面にあった。僕の給料はもちろん、姉様管理となっている。そして、姉様やシラねぇ、セレねぇの三人の給料管理はマリねぇが一心に受け入れているとのこと。

なので、姉様も僕と同じでお小遣い制というわけだ、シラねぇにこっそり額を聞いたところ、お小遣いの金額は僕よりも10倍とのことなので、あまり衣服や遊びに出かける分には困らないだろう。だがしかし、僕のためと言って、買ってきてくれる絵本や本などは、ゆうに十冊は超えている。後ろに書いてある値段の部分を見ると、1400代とか780代とかなかなかお高めな値段設定となっている。故に、もし僕のこの差し入れのために、姉様が自分の好きなものを諦めているのだとしたら、どうにかして阻止しないといけない。姉様の生活を犠牲にしてまで、絵本や本が欲しいのか?と言われると、その答えは否だ。

だからと言って、あの姉様がこの差し入れをやめてくれるわけはないだろう、だからは僕はひとつ先手を打つまでおく必要があるだろう。

 

(ここはひとつ。僕からマリねぇに姉様のお小遣いを今月だけ多めにしてあげて、とお願いした方がいいかな…?)

 

と本気に考えてしまうほどに、僕は姉様のお小遣い事情が気になってならない。姉様に聞いても『歌兎は気にしなくていいのデスよ。お姉ちゃんに任せてください』と言って、はぶらかさせるに決まっている。

ならば、マリねぇの方に頼んだ方が確実だ。マリねぇもそういうことならと言って、姉様のお小遣いを増やしてくれることだろう。

そこまで思考をめぐらしていると、ガチャンと扉が開き、件のマリねぇとセレねぇが入ってきた。二人とも、両手に紙袋を携えていることから何かを持ってきてくれたのだろう。僕の視線を感じて、マリねぇがその中身を言ってくれる。

 

「おはよう、歌兎ちゃん」

「歌兎、着替え持ってきてあげたわよ」

「…ん、おはよ、セレねぇ、マリねぇ。着替え、わざわざ持ってきてくれてありがと」

 

マリねぇが右手は持っていた紙袋を僕の方へと渡すと、その中身は確かに僕の私服やパジャマが丁寧に畳まれて入っていた。なんで、ここに住んでるのに私服やパジャマが必要なのかというと、姉様が来るたびに僕を着替えさせようとしてくれるからだ。僕は動かずにここにいるわけだから、めったに汗もかいてないし、このままでいいと毎回も言ってるんだが、姉様はそれを許してくれることはなく、問答無用で着替えさせる。故に、このように着替えが必要というわけだ。

マリねぇにお礼をいい、紙袋を近くにある机へと置く。そんな僕の右横へと腰掛けた二人はごそごそと袋を漁り、中から果物を取り出す。ラインナップはバナナ、ブドウ、マスカット、りんごに梨という僕からいえば豪華と言わざるを得ないものだ。

目に見えて、ニコニコする僕を見て、セレねぇから果物ナイフを受け取ったマリねぇが膝の上に使い捨ての皿を取り、その上に綺麗に剥いた皮を置いていく。そんなマリねぇを見て、セレねぇは苦笑い。

 

「気にしなくていいのに、歌兎ちゃん。あっ、ここに来る途中でスーパーに寄ったんだよ。これ、食べる?」

「…ん、食べる!僕、果物大好き」

「ふふ、歌兎ちゃんならそういうと思って、姉さんと選んできたんだ。どれも歌兎ちゃんの好きなものでしょう?」

「…ん!僕、梨が一番好き」

「セレナ。なら、その梨と果物ナイフを貸して。私が剥いてあげるわ」

「はい、姉さん。でも、姉さんも過保護だよね〜。歌兎ちゃんには絶対鉄の包丁は握らせないし」

「仕方ないでしょう!歌兎にもしものことがあったらっても思うと、身体が自然と…ごほん、もしものことがあったら、切歌に怒られるでしょう?下手すれば、殺されかねないわ」

「流石の暁さんもそこまではしないと思うけど…。でも、マリア姉さんも暁さんと同格で過保護だよ。少なくても、私はそう思うよ?」

「私はあそこまで過保護じゃないわよ!?ちゃんと、歌兎のことを考えて、洗濯や料理などはさせてるわ!」

「はいはい、分かってるから。もう、皮は剥けてるよ」

 

セレねぇにそう言われ、気づいたらしいマリねぇは気を取り直すように、わざとらしく咳をこむと四等分に切ると、僕へとそれを差し出す。それを受け取り、口に含んだ僕は梨から溢れてくる甘い果汁に顔をほこばせる。

それを見たマリねぇとセレねぇが顔を合わせて、笑い合うと今度はりんごを剥いてくれる。

 

「どう?美味しい?」

「…ん!美味しいよ、マリねぇ、セレねぇ。ありがと」

「まだあるから、剥いてあげるわね」

「…ん」

 

マリねぇが果物を剥いてくれては、食べるを繰り返していると買って来てくれた果物もあっという間になくなってしまった。僕は改めて、二人へと礼を言う。

 

「…ごちそうさま、マリねぇ、セレねぇ。とっても美味しかった」

 

すると、マリねぇとセレねぇは慈愛に満ちた暖かい微笑みを浮かべてくれるんだった。僕の頭を撫でているセレねぇの足元にある紙袋からマリねぇがあるものを取り出す。

 

「歌兎ちゃんが喜んでくれてよかったよ」

「えぇ、選んだ甲斐があるってものだわ。そうそう、歌兎。もう一つ、渡すものあるのよ」

「…?」

 

それを首を傾げて見ている僕へとどこか得意げなマリねぇがそれを見せてくれる。

それとはーー全身真っ黒で、お腹の部分だけ白く象られていて、またフードのところには大きい垂れ耳が付いている。そして、クリクリの瞳が僕の方を見ている。

そう、簡単にいうともふもふな触り心地が気持ちいい黒ウサギのパジャマというわけだ。

嬉しくはあるが、何故に僕の家族たちはこうも幼稚なものを買ってくるのだろうか?

 

(…もしかして、マリねぇとセレねぇの中でも僕の年は流れてないんじゃないだろうか?)

 

そんなことを考えていると、マリねぇが僕のTシャツへと手をかけてくる。マリねぇを見ると、僕にバンザイしてくれたと指示を出す。

疑問には思うが、別に抵抗することでもないで、おとなしくバンザイの格好を取る。

 

「というわけで、歌兎。早速、着替えるわよ」

「…ん」

 

その後、マリねぇに着せてもらったこの黒ウサギのパジャマが思った以上に着心地が良くて、眠くなってしまったこと。そして、普段はクールというか、大人しい感じのセレねぇが僕のパジャマ姿を見て、マリねぇと手を取り合ってはしゃぎ回っていたことが続けて起こった出来事である。

眠たそうに目を擦る僕を二人して抱きしめて、写真撮影を行う。間近でニコニコと嬉しそうに笑う二人を見ていると、僕も嬉しくなってきて、眠たくなってきながらもカメラへと笑顔を浮かべる。

しかし、カオスというのは突然来るもので、勢いよくドアノブを回して入ってきた姉様は僕とそんな二人の姿にまたしてもフリーズ。

 

「歌兎、お邪魔するデース!!」

 

そして、何も感情を浮かべてない無表情で僕らの方へと歩いてきた。それには、マリねぇ、セレねぇと同じく僕も震え上がった。いつも、太陽のような笑顔が魅力的な姉様が無表情となると、ここまで恐ろしいものなのか。いや、だから怖いのかもしれない。僕だって、生まれてこの方、姉様の無表情を見たことはないのだから。

三人で姉様の到着を見届けて、マリねぇとセレねぇが僕からゆっくりと離れる。そして、姉様は僕たち三人を見て、まずセレねぇへと質問した。

 

「……歌兎が着てる。この服を選んだのはセレナデスか?」

 

その質問に速攻で答えたセレねぇは、隣で泣きそうな顔で抗議してくるマリねぇに軽く頭を下げて謝る。

 

「ううん、私じゃないよ。姉さんが」

「ちょっ、セレナぁ!あなたもこれがいいって言ったじゃない!」

 

セレねぇに売られてしまったマリねぇは、目の前にいる姉様の何もともしてない黄緑色の瞳を見て、どうにかして罪を減らそうと試みる。

 

「………」

「ちっ、違うのよ?切歌。これには訳があるのよ。ほら、歌兎って、いつも同じ服着てるでしょう?」

「………」

「切歌が着替えさせてくれるけど、バリエーションがあまりないと思ったのよ。ほら、歌兎の服って、殆ど私達や切歌のお古でしょう?あのショッピングセンターで買ったのが、この子にとって本当の意味の私服だった気がするのね」

「………」

「だっ、だから…私たちからこの子へと新しいパジャマを送りたかったのよ…」

 

弁解を試みようにも眉一つ動かさず、マリねぇを見下ろしている姉様は本当に怖かった。僕はそっとセレねぇの手を握ると、二人のやりとりの続きを見る。

すると、さっきまで沈黙を保っていた姉様がマリねぇの名前を呼ぶと、マリねぇはあまりの恐怖に声が裏返りながらも答える。そんなマリねぇの肩へと勢いよく両手を置いた姉様は興奮したように早口で言う。

 

「マリア」

「なっ何?」

「あなたは天才デスか!」

「はぁ!?」

 

姉様の言葉の意味が分からずに、眉をひそめるマリねぇに姉様は僕へと視線を向けて、鼻息を荒くするとマリねぇと近づく。困惑するマリねぇ、セレねぇ。僕はというと、力説している姉様のイキイキした顔を見て、胸をなでおろしていた。

 

「だって!だって!歌兎が黒ウサギのぬいぐるみを着てるんデスよ!!何デスか!この可愛さは!!くそっ!なんで、あたしは今までこれに気づかなかったのデスか…この衣装こそが歌兎の可愛さを最大限に引き出す服!装備品なのデスよ!!」

「……そ、そう…。喜んでもらえて良かったわ…」

 

そう言うマリねぇに姉様は満面の笑顔を浮かべたまま、こうしてはいられないって感じでドアの方へと走っていく。まさに疾風、目の止まらぬ速さであった。

 

「ということで、あたしも歌兎似合うぬいぐるみを買ってくるデス!歌兎、マリア、セレナ、行ってくるデス!」

「えぇ、いってらっしゃい…」

 

呆然とした様子で見送ったマリねぇはあることを思い出して、姉様を追いかける。

 

「ん?あの子、確か『今月はピンチだから。お小遣いを増やして欲しいデス』って言って、今日の朝に渡さなかったかしら?もしかして、もうそれを使う気!?

コラ!切歌待ちなさい!いくらなんでも、それは使いすぎよ!!」

 

二課の廊下を騒がしくドタドタと走り去っていく二つの足音をセレねぇと一緒に聞いて、お互いに苦笑いを浮かべると、セレねぇも立ち上がって二人の後を追いかけていった。僕も姉様とマリねぇの二人では不安なので、セレねぇが居てくれるととても嬉しく思う。

 

その後は、ニコニコ笑顔の姉様とやってしまった…と後悔の念を多く出しているマリねぇが次の日の朝に二人でやってきて、どっちの耳つきパジャマが僕に似合うのかを競い合っては帰っていった……




というわけで、結局のところ、たやマさんも歌兎には過保護だったって話デス。いえ、もうF.I.S.組全員が歌兎に甘々やもしれません…(笑)



そして、凄く遅くなりましたが…此方の二期と原作の二期の違いを簡単に書こうと思います。

①セレナ生存
原作ではネフィリムの暴走を食い止める為に犠牲になったセレナだが、此方では犠牲になったのがオリジナルなので彼女は生きてます。

②響がネフィリムに腕を噛み割かれてない
原作ではネフィリムに腕を噛み割かれ、それが原因で暴走してしまった響ですが、此方ではウェル博士の非人道なやり方に怒りを覚えた歌兎が単独で響、クリス、翼を救う為に乗り込んでます。
それが原因で、のちに彼女がその腕を噛み割かれてしまう役を勝手出ることになったり、その後もいいようにウェル博士に弄ばれるのですが…それはまたの話とします。

③最後の決戦で邪魔が入り、ウェル博士は今だに逃走中
原作では野望を打ち砕かれ、ソロモンの杖も未来によって、倉庫へと投げ捨てられたウェル博士ですが、此方では、ある条件を飲み込んだ歌兎によって逃がされてます。彼女もウェル博士を逃がす為に、この際に無茶苦茶暴れたので、そのことも原因で進行が早まったように思えます。

以上、三つの一番変わっている点でしたm(_ _)m


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漫談:切歌の不思議な夢

大変お待たせしました(汗)

思った以上に、翼さんとクリスちゃんの会話文が難しく…そして、文字数もかなり短くなりそうでしたので、予定では五弾目となっていたOTONA達のところまで書き進めているところと、一応最終話までのストーリーを一通り組み立ててみたのですが…何故か、みんなバットエンド…(汗)

…………………(大汗)

バットエンドの度に、切ちゃんが号泣してる姿が脳裏に浮かび、居た堪れない気持ちになります…(涙)
本当に、なんでバットエンドしか思いつかないんですかねぇ〜、本当、不思議デス(笑)


そして、そうこうしているうちに【評価者14名】、そして【お気に入り208名】だって!?(ブルブル)
…本当にありがとうございます、とても嬉しいデス!
また、暖かい感想の数々が私の原動力となりつつあります、そちらも本当にありがとうございます!

そんな皆さんへ感謝の気持ちを込めて、この漫談編を設けました。
漫談編第1弾となる今回の話は、あのショップセンターの日から三日前の話となってます。
切ちゃんが不思議な夢を見るーーただ、それだけの話なのですが、果たして、その夢はただの夢となるか。はたまた、正夢となるか…?それは誰もが分からないことなのです…


まず最初に思ったことは、冷たいだった。

 

(…なんで冷たいんデスか?あたしは確か、ぬくぬくの布団へともぐり、眠りについたはず…)

 

そこまで考えて、自分の目の前に透明な雫が落ちたことから、あたしの耳へとザァーザァーと絶え間なく降り注ぐ雨の音が聞こえてきた。そして、ポツンポツンという音と、頭の上に何かが乗っかっている感覚から、あたしはどうやらイガリマを身につけていることを知る。

 

(はぁ?なんでイガリマなんデス?)

 

不思議に思いながら、もっと情報が欲しいと視線を下へと向けると、そこには胸元から大量の血を流している水色が入った銀髪と眠たそうに黄緑色の瞳を開いている少女がおり、そんな彼女のそばへと無造作に放られているのは明らかにあたしのアームドギア・緑色の刃を持つ大鎌だった。緑色の刃を濡らす鮮やかな血色を見て、あたしは凍りつく。

 

(!?あたしが…やったのデスか…?あたしが…作ったのデスか…?この光景を…)

 

唖然とするあたしの方へと力なく瞼を震わせながら、黄緑色の瞳を向けてきた最愛なる妹へと今まで沈黙を保っていたあたしの唇がゆっくりと開き、悲痛な声音を響かせる。そんなあたしへと、力なくニッコリと笑った歌兎は掠れた声であたしを励ます。

 

「う、たう…」

「…そんな顔しないで、姉様。姉様は頑張ったよ…。ん、頑張った…ごめんね、こんな嫌な役割させちゃって…」

「そんな事ないデス!この役を嫌だなんて思ったこと…一度たりもないんデス!それに、あたしが望んでいたのは…こんな結末じゃないんデス!あたしが望んでいたのはこんなんじゃないんデス…こんなことになるのなら、あの時、カルマのギアが歌兎ではなく、あたしへとーー」

 

そこで、弱々しく伸びてきた人差し指で口元を塞がれ、ポロポロと意味がわからないまま、涙を流すあたしへと歌兎は淡く微笑む。

 

「…それ以上はダメだよ、姉様。姉様が居なくなったら、悲しむ人が多いんだから…だから、あたしの方がこうなったらよかったとか言わないで…。…姉様は僕よりもこの世界に必要な人なんだから…ね?」

 

聞いているこっちまでもが胸が苦しくなるようなセリフをあたしを励まそうと笑っていう妹のーー歌兎の伸びてきた手を握りしめて、あたしの口は…身体は、勝手に動き、話を進めていく。

 

「…ッ、なんでそんな悲しい事言うデス?歌兎。歌兎だって、この世界に…いいえ、あたしには必要な人デス!貴女が居なくなったら…あたしはどうすればいいのデスか…?」

「…姉様も分かってるでしょ?…僕は…嫌われ者だから…。姉様とは全然違う…。この手で…多くの人を傷つけ…多くの人の命を奪ってしまったから…。…その罪は…僕の命でも償いきれない…」

 

諦観の念を掠れた声へとひそませ、歌兎は顔を自責の念を多く含ませて悲しげに笑う。あたしはそんな歌兎へと大きな声を上がる。

 

「そんなわけないのデス!歌兎は…歌兎は…ッ」

「…ううん、これで良かったんだよ…これが裏切り者の僕に相応しい終わり方…。……人殺しって言われ続けた僕の…最後…」

「そんな悲しいこと言わないでください、うたう…。もっと、あたしはっ!貴女のお姉ちゃんで居たかったんデス…貴女のお姉ちゃんとして…もっとしたいこと…してあげたいことがあったのに…。なのに…なんで、こんな…」

 

ポロポロと涙を流すあたしへと歌兎は最後の力を振り絞り、あたしへと抱きつくと左肩へと顔を乗せる。そして、今にも消え入りそうな声であたしへと語りかける。あたしはそんな歌兎の声をイヤイヤと駄々こねる幼子のように首を振る。そんなあたしへと歌兎は優しく語りかける。

 

「…聞いて、姉様」

「嫌デス、生きるって言ってください…歌兎、お願いデスから…」

「…そんな駄々言わないで、“お姉ちゃん”」

「!?」

 

あたしは左耳から聞こえてきたその言葉に肩を震わせる。あたしのその反応に歌兎は弱い笑い声をあげると、あたしへと語りかける。

 

「…ふふ、久しぶりだね。この呼び方をするのって」

「はい…久しぶりデス」

「…お姉ちゃん。僕ね、もうダメだと思う。だから、今まで言えなかった事言うね」

「…嫌…嫌、嫌嫌嫌嫌嫌ぁ…」

「…お姉ちゃん。僕、お姉ちゃんの妹で生まれてきてよかった…」

「…嫌嫌嫌ぁ…聞きたくない聞きたくない聞きたくない…そんな言葉聞きたくないんデス…」

「…お姉ちゃんはもう少し自分のことも気にかけてあげて。お姉ちゃんはみんなに気を遣ってばかりだから…ね、僕。そこだけが心配なんだ…。あと、食べ過ぎはダメだよ…」

「分かったのデス…デスから…」

「…ありがと、大好き、愛してるよ…お姉ちゃん…」

 

そこまで呟き、あたしの胸の中で最愛なる妹は旅立っていった…

 

「歌兎ぅううう〜〜〜〜!!!」

 

その悲痛な叫びは、あたしの鼓膜を揺さぶり、あたしは今さっき息を引き取った歌兎だったものの華奢な身体を強く抱きしめ、大粒の涙を流し続けた…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

飛び起きたあたしは大きく深呼吸を繰り返す。べったりと張り付く黄緑色のパジャマの感触に眉をひそめながら、さっきまで見ていたリアルな夢を思い出す。

 

「ハァッ…ハァッ…はぁ…はぁ…」

 

(なんなんデスか?さっきの夢…)

 

「……ねえ…さま…、それは…はずかしいよ…」

「…歌兎」

 

あたしの左手をギュッと握り締めて、口をむにゃむにゃと動かしている最愛の妹。幸せそうなその寝顔に癒されながら、彼女の水色の入った銀髪を掬う。サラサラっと柔らかい感触をしたその髪はずっと触っていたいと思う。しばらくそうしていると、くすぐったかったのか、歌兎は身じろぎをするとあたしへとさらに身体を近づけてくる。

 

「…んっ。…ねえ、さま…だいすき…だ、よ…」

「あたしも大好きデスよ、歌兎」

 

前髪を上へと持ち上げ、歌兎のおでこへとキスを落とす。そして、左手をギュッと握りしめると、何故かそこでさっきの夢がカムバックしてくる。

 

...降りしきる雨

 

目の前が靄に覆われたようにぼやけて見える。荒くなっていく呼吸を落ち着かせようと思うが、次々と生々しい夢が蘇る。

 

...段々と冷たくなっていく歌兎の華奢な身体

 

無意識に左手を強く握りしめて、ぬくもりを確かめようとする。すると、歌兎は痛かったのか、あたしの手を離そうと抵抗するとスルリと繋いでた手を振りほどく。それに安堵するあたしだが、グネグネと熱を帯びたプラスチックのように歪む視界の中で自分の両手だけがはっきりと見えており、震える視線の先には

 

...べったりと生暖かい歌兎の血が絡みついた両手

 

があり、あたしはこみ上げてくる異物感に口元を両手で覆うと、バタバタとトイレへと駆け込む。勢いよく便座を上げると跪き、こみ上げてくる異物感を吐き出す。

 

「おぇええ…うっ…げ…。うおぉおお…」

 

全部を吐き出し、力なく流したあたしは立ち上がるとリビングへと歩いていく。そして、ジャーと勢いよく水を出すと口元を洗い、両手を何度も何度も何度も何度も何度も何度も洗う。両手が氷のように冷たくなるのも忘れ、両手にこびりついた歌兎の血を、生臭い匂いを消そうと何度も何度も手を擦る。

 

(消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろキエロ)

 

このまま、あの夢も嫌な感触も消えてしまえばいい。あんな結末にならないように、今みんなで頑張ってるんじゃないか。あの子が悲しまないように…あの子の幸せだけを願って、なのに…それなのに、これ以上頑張れというのか?あたしに、運命という奴はッ

 

段々と苛立ってきたあたしの背へと物静かな透き通った声がかけられた。あたしは驚きのあまり飛び上がると、くるりと身体をそちらへと向ける。すると、想像通り、薄桃色のパジャマを身に纏った調がいた。

 

「…切ちゃん、どうしたの?」

「あっ、調…起こしちゃったデスか?」

「……」

 

ジィーーーと調に見られている感覚、そして自分の手元を見れば大量の水でバシャバシャと両手を洗ったままのあたしの手があり、あたしはハッとすると、キュッと蛇口を閉めると水により冷たくなった両手を後ろへと隠して、いつものように笑う。

 

「えっとデスね、調。これは…デスね…」

「…」

「…しら…べ…?」

 

無言であたしへと近づいてきた調はギュッとあたしの両手を掴むと、あたしを見上げて微笑んでくる。

 

「切ちゃんの手、今日は私より冷たいね。いつも、切ちゃんが私の手を温めてくれるから、今日は私が切ちゃんの手を温めてあげるね」

「……」

「あったかい?」

 

そう言って、さらに強くギュッと握りしめくれる調の優しさに涙が溢れそうになり、グッと堪える。そして、いつものように笑うと、調もそれに答えるように微笑んでくれる。

 

「はい、とってもあったかいデスよ、調」

「良かった。まだ、朝まで時間があるけどどうする?」

「調にお任せするデス!」

「…じゃあ、一緒に将棋でもする?」

「そうデスね、しましょう!」

「うん、待ってて」

 

その後、調が持ってきた将棋たるものに苦戦しつつ、あっという間に朝を迎えたあたしたちは二人で仲良く朝ごはんの準備をした……




こんな感じの漫談編ですが…どうだったでしょうか?全然、漫談編じゃなかったような気がしてならないですが…間違いなく漫談編ですので(笑)
そして、次回の漫談編は暗いものじゃなくて…明るいものにしますので…。はい、明るいものになると思いますよ…(汗)

そして、この漫談編が今後、本編へと関わることはあるのか?お楽しみに、です。

そして、どうでもいいことなのですがーー
寝ていたら、夢の中にお互いのギアを交換した暁姉妹が現れたんですよ!!(歓喜)
得意げに金槌を担いでいる切ちゃんと、そんな姉に刺激されたのか、こちらも得意げに大鎌を担いでいる歌兎が二人並んでいて…思わず、絶唱してしまうところでした(笑)
いえ、余りの感動に絶唱顔になっていたことでしょう!!だって、夢とはいえ切ちゃんに会えたのですから…(ジーン)

以上、ちょっとした雑談でしたm(_ _)m


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9)不器用な僕とつばくり。

今回の話は、上の文が歌兎視点。もう一方が他の人からの視点となってます。
そして、残念なお知らせが…翼さんが翼さんじゃないかもしれないです…。本当、すいません…(汗)

ですが、たまには可愛い翼さんもいいんじゃないかなぁ〜と思い、書いてみました!では、どうぞ!


安静にしていた一ヶ月もあと六日で終わるとなった頃、やっと部屋から出ていいという許可が司令様から下り、僕は暇さえあれば、二課の探索と響師匠との訓練に備えて、姉様たちの戦闘中での癖や戦闘中に歌っている歌を覚えるのに精を出していた。

今、行おうとしているのは、どちらかというと後者の方で、司令様たちがいるミーティングルームへ歩いていこうとしたその時、ドアが開き、ベットから立ち上がろうとしている僕を見て、目を丸くしている。

 

「邪魔すっぞ」

「お邪魔する、暁」

「…こんにちわ、クリスお姉ちゃん、翼お姉ちゃん」

「お?もう、歩いていいのか?」

「…ん、そろそろ一ヶ月になるから。司令様と僕の緊急手術をしてくれた皆様がいいって」

「そうか。だが、だからと言って無理はするものではないぞ」

 

そう言って、頭を撫でてくれる翼お姉ちゃんへとクリスお姉ちゃんへと礼を言いながら、僕はベットから立ち上がる。

 

「…ん、ありがと、翼お姉ちゃん、クリスお姉ちゃん」

 

トボトボとぎこちなくも歩き出した僕の後を翼お姉ちゃんとクリスお姉ちゃんも付いてくる。それに振り返って首をかしげると、二人が揃って苦笑いを浮かべる。

 

「…翼お姉ちゃん?クリスお姉ちゃん?」

「お前が一人で出歩いてるところとか見たら、あいつが吹っ飛んでくるかもしれないからな」

「雪音のいう通りだ。こうしている間にも、そこの角から現れかねないからな、暁が」

「…」

 

苦笑いを浮かべている翼お姉ちゃんとクリスお姉ちゃんの表情を盗み見ると、どちらとも僕の心配が半分、もう半分はどうやら、このニ課では有名となっている過保護な我が姉の暴走を心配している様子…ううん、この顔は飽きられているようだった。

しかし、二人の予想は的中してるのかもしれない。

これは前の話となるが、司令様から許可が出たその日から廊下を手すりを伝って歩いていた僕を見つけた時の姉様の顔を見せてあげられるのなら見せてあげたい。それはそれは凄い顔をしていた。もう、僕でも言い表せないその顔は、瞬時に色んな顔へと変化しては、最終的にグシャッと今にも泣き出しそうな顔へと落ち着き、僕へと体当たりしてくるようなスピードで抱きかかえると、たちまちに緊急治療室へとトンボ帰りさせられてしまった。その後も、隙をみては歩いているのだが、その度にお姫様抱っこで連れ戻されてしまう。

それを思い出してしまい、僕も二人に習って苦笑いを浮かべる。それに敏感に気づいたクリスお姉ちゃんは僕へと話しかけてくる。

 

「…」

「その顔は見に覚えがあるって顔だな」

「…ん、姉様は僕が歩いてるって知ると、ベットへと連れ戻されちゃう」

「どんな時でも変わらぬな、暁は」

 

そう言って、より深く苦笑いを強める翼お姉ちゃんの袖口を引っ張る。振り返ってくる翼お姉ちゃんへと僕は問いかける。それを怪訝そうな顔をしてみてくる翼お姉ちゃん。

 

「…翼お姉ちゃんは」

「む?どうした、暁」

「…翼お姉ちゃんは僕と姉様のことを“暁”って呼ぶね」

「あぁ、確かにそうだな。センパイはなんで、こいつとあいつのことを名前で呼ばないんだ?ややこしいだろ」

 

クリスお姉ちゃんにも指摘され、翼お姉ちゃんは黙り込んでしまう。そして、僕とクリスお姉ちゃんをチラッと見るとそっぽを向いてしまう。

 

「…別に良いではないか、どちらも暁なのだから」

「「……」」

 

そこで気づいてしまう、この人は僕と姉様を呼び捨てにするのが恥ずかしいのだと。

クリスお姉ちゃんと顔を暫し、見合わせ…ニンヤリと笑う。今まで色んなところでお世話になっている翼お姉ちゃんを今からいじめようとしている僕はとんでもない奴かもしれない。だが、翼お姉ちゃんのレアな照れた顔を見るべく、クリスお姉ちゃんと翼お姉ちゃんを攻めていく。

 

「確かに暁だけどさ。折角、名前があるんだ。読んであげなよ、センパイ♪」

「…ん、僕も翼お姉ちゃんに名前で呼んでもらいたい」

「なっ!?だがしかし…私とて、こればかりは譲るわけには…」

「…ダメ…かな?翼お姉ちゃん」

「くっ…。そんな顔されてもダメなものはダメだ」

「けっ、案外ケチなんだな、センパイ」

「そういう雪音こそどうなんだ。暁たちのことをちゃんと呼んであげてるのか!?」

「あ、あたし!?今はセンパイのことだろ!あたしは関係なーー」

「…そういえば、クリスお姉ちゃんも聞いたことない。呼んでみて、クリスお姉ちゃん」

「早速、裏切ったか!お前!!」

 

その後、照れながらも僕と姉様の名前を呼んでくれたクリスお姉ちゃんから翼お姉ちゃんへと視線を向けると、この世の終わりという顔をしていた。僕と姉様の名前をそんな顔をされると流石に居た堪れない。だが、ここまで来てしまった上、僕は翼お姉ちゃんにも名前を呼んでもらうと話しかける。

 

「…姉様のことは?」

「くっ…これまでか…。切歌…、これで良いだーー」

 

僕の攻めに攻め負け、翼お姉ちゃんが姉様の名前を呼んだその時に運良く、ひょっこりと顔を出す姉様。姉様の声に普段の演じているような声も忘れ、可愛らしい声で飛び退く翼お姉ちゃんに姉様も驚く。それに呆れ顔でツッコムのはクリスお姉ちゃんである。

 

「なんデス?翼さん」

「きゃあ!?」

「翼さんが可愛い悲鳴あげてるデス!?」

「お前はそこを驚くのか…」

 

クリスお姉ちゃんのそのセリフに僕は静かに頷き、無意識とはいえ可愛らしい声を上げてしまった翼お姉ちゃんは羞恥心から立ち直れないらしく、その場へとしゃがみこむ。その後は、翼お姉ちゃんの復活を待ち、又しても僕は姉様にお姫様抱っこされて、緊急治療室へと帰っていったのだった……

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「…藤尭様」

「ん?」

 

くいくいと右袖口を内側へと引っ張られ、俺がそっちへと視線を向けると、何故かうさぎの垂れ耳がついたフードを被っている華奢な少女が立っていた。眠たそうな黄緑色の瞳が俺をジィーと見つめている。

彼女の名は暁 歌兎。今まさに、シミュレーション室にて相方となる調ちゃんと特訓に打ち込んでいる暁 切歌ちゃんの妹である。色んな意味で姉となる切歌ちゃんに染まっている彼女だが、こうして直接俺へと話しかけてくるとは珍しい。一体どうしたというのだろうか?

 

「歌兎ちゃんが俺に用とは珍しいね」

「…そうかな?僕、ここにいる方達の中でも藤尭様にはよく話しかけてると思うけど…」

「そうだよ。殆ど、友里越しに俺を呼ぶだろ?」

「…ん?そう…なの、かな?でも、僕は友里お姉さんより藤尭様の方が好きだよ。色々教えてくれるし、親切だし…」

「……」

 

恐らく、素なのだろう。だって、彼女の眠たそうな表情は一ミリたりとも動くことはない。故にOTONA、いやOTOKOの威厳の為にもここでデレるわけにはいかない。じゃないと、周りで何故かニヤニヤした以上に腹立つ笑顔を浮かべている奴らのいいように言われるに違いない、例えばロリコンとかロリコンとか。

 

「…藤尭様?僕の顔をジッと見てどうしたの?」

「ごほん。歌兎ちゃん、今日は何が見たいのかな?」

「…?」

「早く言わないと協力しないぞ」

「…ん、姉様たちの戦闘シーンをまた見せてほしくて。少しでも、姉様たちの戦闘での癖とか、戦闘曲を覚えておきたいから」

「そういうことなら。ほら、ここをクリックすれば見れるよ」

「…!ありがと、藤尭様」

 

俺へと礼を言い、なんのためらいもなく、俺の膝の上へと腰を下ろす歌兎ちゃん。

余りにも自然な身のこなしに座られた俺は唖然。そして、座られているというのに、余りに体重を感じない彼女に保護者として心配になる。そういえば、姉の切歌ちゃんもほっそり…華奢な感じだが、この姉妹はそういうところが似ているのだろうか?それ以外は、正反対な感じの姉妹なのに…。

そんなことを考えていると、くいくいと袖を引っ張られる。

 

「…藤尭様、このシーンとこれを比較したいんだけど」

「あぁ、それはここをこうすれば…」

「!!…凄いね、藤尭様は。僕、将来結婚するなら、藤尭様みたいな人がいいな」

 

恐らく、これも素。そう、素でそんなことを言ってしまう子なのだ、この暁 歌兎という子は。

時折、意味を分かっているのか?と問いただしたくなるが、それは後々お姉ちゃんに俺が倍返しされかねないからよそう。

そんな俺の葛藤をよそに、歌兎ちゃんは普段は眠たそうな瞳をキリッと細め、画面を食い入るように見つめる。

 

「…なるほど。翼お姉ちゃんはここで技を放つから、ああやって立ち回れば…邪魔せずに、ノイズを一角に集められる…。マリねぇはここを力強く歌うから、ここでサポートすれば…。姉様とシラねぇが攻撃してるときは僕は要らないかな…。二人のコンビネーションは完成されてるし…僕が余計なことしたら、それが壊れちゃう…」

 

などなど、ブツブツと独り言を呟きながら、歌兎ちゃんは真剣な眼差しで画面と手元になるメモ帳を睨めっこしては思いついたことをメモ帳へと書きとめていく。

そんな時の彼女の集中力たるや、凄いもので…俺が彼女を下ろして、席を立とうとも…彼女は一ミリも動かずにそのままの姿勢でいる。そして、これは響ちゃんから聞いた話だが、歌兎ちゃんは吸収力が凄いらしい。それに加え、こんな感じで勉強熱心。響ちゃんが頭をかきながら、『いっやぁ〜、参りましたよ〜。歌兎ちゃんってば、教えて、ちょっとで私を追い越そうとしてるんですから…。これは、私も師匠に習って、もっと力をつけないとです!』と気合いを入れながら、司令のところへと向かっていった。

それだけ、歌兎ちゃんの成長スピードは早いのだろう。今では、奏者のみんなのサポートを見事にこなしている。だが、それでも満足しないで…こうして、俺や友里のところに通い詰める彼女の努力は本当に見習わないといけないと思う。

そんなことを考えていると、キィーと扉が開く音が聞こえる。そこから顔を出すのは、黄緑色の肩出しTシャツを身にまとった少女だ。特徴的な口調で俺の膝の上の少女の名を呼ぶのは、紛れもなく彼女のーー

 

「歌兎!響さんと翼さんが呼んでるデスよ〜」

 

姉となる切歌ちゃんだ。最愛の姉が呼んでいるというのに俺の膝の上で絶賛勉強中の歌兎ちゃんは気付かずに、カチャカチャと慣れた手つきで画像を再生する。

一方の切歌ちゃんはというと、キョロキョロと少し垂れ目な黄緑色の瞳を忙しなく動かしては、妹の姿を探そうとしている。だが、肝心な妹の姿はなく、切歌ちゃんは困っている様子だ。

 

「あれぇ?歌兎ぅ〜。歌兎はどこデスかぁ〜?」

 

ここは名乗りを上げた方がいいだろう。

俺が右手を上がると、切歌ちゃんが満面の笑みをうかべる。

 

「切歌ちゃん、ここだよ。ここ」

「お!藤尭さんのとこでしたか!いつも歌兎がお世話になってるデス」

「いえいえ」

 

パタパタと俺へと近づいてきた切歌ちゃんは、俺の膝の上に座り、真剣な眼差しで画面とメモ帳を交互に見ている歌兎ちゃんの肩を揺さぶる。だがしかし、一度自分の世界に入ってしまった彼女をこちらへと連れ戻すことは誰も叶わない。

 

「歌兎、響さんと翼さんが呼んでるデスよ」

「…シラねぇ、ここで…」

「ありゃ〜、これはダメデスね。完全に自分の世界なのデス」

「あはは…」

 

普段は切歌ちゃんのいうことには、何があっても絶対服従な歌兎ちゃんだが、この勉強タイムだけは例外な様子だ。切歌ちゃんも参ったように笑うと、何を思ったか、後ろから俺へと抱きついてくる。

その際に、16歳とは思えない柔らかい胸元が背中へと押し付けられ、俺は素っ頓狂なら声を上げる。それを怪訝そうな顔で見る切歌ちゃん。

 

「というわけで、藤尭さん、あたしも歌兎と一緒に勉強するデスよ」

「うん、していくといいよ……ん?ねぇ、切歌ちゃん、さっきなんて?うっほぉ!?」

「抱きついただけで、なんでそんな素っ頓狂な声あげるデス?」

「驚くから!それと年頃なんだから、そんな無防備にだんせーー」

 

注意しようと切歌ちゃんの方を見るが、切歌ちゃんは歌兎ちゃんと共に画面に釘付け。終いには、グイグイと俺へと体重をかけると歌兎ちゃんと話し合いを始める。

 

「…姉様、ここは僕が打ち上げたほうがいいのかな?」

「ん〜、デスが…そうすると、タイムロスじゃないデスか?ここは、やっぱり…」

「ふ・た・り・と・も!!お願いだから聞いて!!大人の言うことを!!お願いだから!!これは今後の二人に深く関わる」

 

のしかかってくる切歌ちゃんを押しのけ、歌兎ちゃんへも視線を向けた俺は二人へと説教しようとくるが、少し垂れ目な、片や眠たそうな黄緑色の瞳を鋭く細められ、低い声で非難されたなら何も言えない。

 

「藤尭さん、うるさいデス」「…藤尭様、うるさい」

「…あ、ごめんね…。どうぞ、続けてください…」

 

その後、他の奏者のみんなが二人を呼びにくるまで、暁姉妹の議論は続いた……




というわけで、全部のお見舞い回終わりです。最後のは、お見舞いって感じじゃないですが…(笑)

次回からは、またハードな展開が続いていくのでよろしくお願いします。
そして、この『うちの姉様は過保護すぎる』ですが、本編は全部で13話を予定してます。
最終回はかなり中途半端な感じになりそうなのですが…私の力では、それくらいしか書けず、その13話以降の話は思いついたから書いていくというスタンスでいきたいです。思いつかなければ、そのままという感じで…(汗)

ですが、漫談編はこちらもゆっくりですが…書いていこうと思ってますので、よろしくお願いしますm(__)m


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漫談:みんなで出かけていたら眠っちゃった話。

お待たせしました(汗)

最終回までの話が書き終わるまでは、漫談編を更新していきます(笑)
そして、次回の話と違い、今回は切ちゃんの過保護度がMAXで進んでいきます。その過保護に巻き込まれていくみんなをどうか、暖かく見ていただければと思います…(笑)

また、今日の日間ランキングにて…ほんの少しほど本作がお邪魔しました。
多くの方に読んでいただいていることへの感謝と、めちゃくちゃな展開なのですが、暖かく見守っていただいている読者の皆さんへとお礼を。

本当にありがとうございます(礼)


※今回はかなり短めとなってます。


10/6〜誤字報告、本当にありがとうございます!


「マリアは本当に分からず屋デスね!この白うさぎの方が似合ってるに決まってるじゃないデスか!」

「切歌こそ分かってないわ!いつも同じ服装では見えてこないものがあるの。ここはそれに挑戦してみる価値があると私は思うわ!」

「それがこの黒猫というデスか?マリアは愚かデス、ポンコツデス!そんなに黒がいいんデスか!」

「ちょっと、切歌っ!あなた、私のことをポンコツって言ったわね!」

「言いましたよ〜。マリアはポンコツデス。このポンコツマリア!」

「あなたね…っ」

 

赤いレンガと青いレンガ、白いレンガによって綺麗な柄を作っている歩道のど真ん中、桃色の髪を背中まで伸ばした女性と明るい金髪をショートヘアにしている少女がすごい剣幕で言い争っている。

その女性と少女の喧嘩を野次馬たちが傍観している中、桃色の髪を持つ女性へと青い髪を結んでいる女性が歩み寄り、その肩を軽く叩いて止めに入る。そして、もう一方の金髪の少女の方も茶色を背中まで伸ばしている女性が肩を叩く。だが、そんな二人の仲裁も払いのけ、桃色の髪を持つ女性・マリねぇと金髪にバッテンの髪留めをつけている少女・姉様の口喧嘩は白熱していく。それに、頭を抱えて引き下がった青い髪を結んでいる女性・翼お姉ちゃんと茶色の髪を背中まで伸ばしている女性・セラねぇは同時にため息をつく。

 

「まあまあ、二人とも落ち着け。マリアも少し大人気ないぞ」

「翼の言う通りだよ。暁さんも落ち着いて、姉さんの意見も取り入れてみる価値と思いますよ」

「翼とセレナは黙ってて!」「翼さんとセレナは黙っててください!」

「…口出し無用だったか、すまない…」

「…もう思う存分、喧嘩してください…二人で…」

 

退散してきた二人を出迎えるのは、右側からクリスお姉ちゃん。シラねぇ、響師匠に未来お姉ちゃんの四人とシラねぇに手を握られている僕を合わせての五人だ。

顔を近づけて、至近距離で睨みきかせながら、互いの悪口を言い合う二人ははたから見ていると子供っぽい。

そんな二人を呆れ顔で見つめながら、クリスお姉ちゃんが呟く。それに深く頷くのはシラねぇで、それに続く響師匠はこの二人の喧嘩を見慣れたせいか、そんなに気にしてない様子だった。

 

「しっかし、相変わらずだよな、この二人は」

「ですね。マリアも切ちゃんも、二人とも歌兎のことを目に入れても痛くないくらい可愛がってますから」

「あはは。でも、いいんじゃないかな。喧嘩するほどなんとかっていうじゃない?」

「響、それをいうなら…喧嘩するほど仲良しだよ」

「あはは、そうともいう〜」

 

穴あきを未来お姉ちゃんに埋められ、響師匠は誤魔化すように明るい笑い声をあげる。そんな師匠を仕方ないなぁ〜みたいな顔で見ていた未来お姉ちゃんは、シラねぇと手を繋いでいる僕をみると腰を折って話しかけてくる。

そんな未来お姉ちゃんの声にぽや〜んと瞼を持ち上げながら見ると、今度はシラねぇが腰を折って話しかけてくる。

 

「…んぅ」

「歌兎ちゃん?」

「歌兎、眠たいの?」

「…ん…」

シラねぇの質問にこっくんと頷くと、 シラねぇと未来お姉ちゃんは顔を見合わせて笑い合う。未来お姉ちゃんが僕の顔を覗き込みながら問いかけてくる。それに頷き、答えた僕へとシラねぇが頭を撫でてくれる。

 

「また、夜遅くまで友里さんか藤尭さんのところにいたの?」

「…ん、早めに切り上げようって思ったけど、調べていくと歯止めが効かなくなっちゃって…」

「歌兎は本当に頑張り屋さんだね。マリアと切ちゃんの喧嘩はまだ続くから、それまで私の背中で寝る?」

「…いいの?シラねぇ」

 

とろ〜んとした目で見つめるとシラねぇが首を縦に振る。腰を折ってくれるシラねぇへと抱きつき、シラねぇの暖かさを背中から感じて、僕は瞬く間に目を閉じて、静かに寝息を立て始めた。

器用に僕をおぶりなおしたシラねぇへと僕の寝顔を見ていた未来お姉ちゃんが話しかける。そんな未来お姉ちゃんへとシラねぇが礼を言う。

そんな二人へと師匠たちが近づいてくる。

 

「…すぅ…すぅ…」

「本当に疲れていたんだね、歌兎ちゃん。調ちゃん、疲れたなら言ってね、私が変わってあげるから」

「ありがとうございます、未来さん。疲れた時はよろしくお願いします」

 

師匠がシラねぇの背中へと顔を押し付けて眠りこける僕を見ると、顔を綻ばせる。それは師匠だけではなく、他のねぇややお姉ちゃん達も一緒みたいでクリスお姉ちゃんに至ってはぷにぷにと僕の頬を突く。

 

「あれ〜?歌兎ちゃん、寝ちゃったの?」

「それは寝るだろ。こいつだって疲れてるんだしな」

「月読、疲れるだろ。私が変わろう」

「まだ大丈夫です、翼さん」

「そうか…」

「そんな残念そうな顔しなくても大丈夫ですよ、翼。月読さんなら翼の気持ちもわかってくれて、早く歌兎を抱っこさせてくれると思いますから。あっ、でも、余りにも可愛いからってお持ち帰りは禁止ですよ。私たちが暁さんに怒られちゃいますから」

「セ、セレナ!私はそんなこと企んでないわ。それにお持ち帰りって…」

「翼さん、素に戻ってますよ〜。素直に抱っこさせて貰えばいいじゃないですか〜」

「センパイも可愛いところがあるんだな〜」

「なっ…立花、雪音まで、私をそのように…なんという屈辱か…」

「………。翼さん、歌兎抱っこしてみます?」

「いいの?」

「はいどうぞ」

 

その後の話を師匠とシラねぇに聞いたところ、姉様とマリねぇの喧嘩は夕暮れまで続き、その間にも僕は眠り続けて、ねぇやたちやお姉ちゃん達が変わりばんこに背負いあってくれていたそうで、僕は申し訳なくなり、今度からはみんなで出かける時は夜更かしをしないと心に誓うのだった…

 

そして、もう一つセレねぇに聞いた話なんだが、翼お姉ちゃんが僕の抱っこ権をなかなか誰かに譲らなかったそう。それを聞いた僕はこう思ったーー翼お姉ちゃんにもかわいい一面があるのだなぁ〜と。




この漫談編で明るいのと可愛いのを補充しておかないと…これからの本編が辛くなるので…(汗)

そして、これはお知らせで最終回までの話は一気に更新出来ればと思っているので…それまでは、こんな感じで漫談編が続きますので、よろしくお願いします(礼)


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10)監禁とじんもん。

連続更新の第一弾目の最初になる10話ですが…いきなり、主人公と過保護な切ちゃんがピンチになります。展開が早いのと、簡潔に書いてるので分かりにくいかもしれませんが…最後まで読んでもらえたら、嬉しいデス!

それと、うちのウェル博士はかなりキャラが崩れており、原形をとどめてないやも知れません…。
なので、こんなものなんだと思って読んでいただければと思います(礼)


僕が奏者の皆様の援護へと回ってから、一ヶ月が過ぎた。毎日、友里お姉さんと藤尭様のところに通い詰めているおかげか、今では何となくだが、姉様たちや響師匠たちの考えていることが分かるようになってきた。なので、僕も奏者の皆さんと出動することが多くなり、今日はマリねぇ、翼お姉ちゃん、クリスお姉ちゃんのコンビが僕たちが向かっているところから100キロ離れたところに現れた大量のノイズを退治に向かい、セレねぇと響師匠の二人が僕たちから12キロ離れたところにある森林に現れたノイズ退治へと向かった。そして、残った僕と姉様、シラねぇは工場跡に現れたノイズ退治へと向かっていた。

 

「今日もサクッと終わらせるデスよ!」

「うん、頑張ろ。切ちゃん、歌兎」

「…ん」

 

はりきる姉様とシラねぇに頷きながら、僕は気になっていることに頭を回す。

それはここ最近のノイズの活動についてだ。僕が本格に姉様たちや師匠たちの援護に回ってから、ノイズの数と発現が多くなってきた。まるで、僕にギアを纏わせようとしているように見える、それに気づいてしまった時から嫌な予感がしてならない。

 

(…ここ最近、ノイズたちの動きが活発な気がしてならない…。数も多いし…何故か、現れる場所が極端に離れている…。まるで、助けが来れないようにしてるようにも…)

 

そこまで考えて、目を瞑り、首を横に振る。僕には力強い姉様たちや師匠たちがいると思うと安心出来るが、嫌な予感は顔を出しては引っ込んだりと忙しく、僕へと付きまとう。隣にいる姉様とシラねぇに悟られないように、顔を引き締めるとボソッと呟く。

 

「………もしかして、何者かに誘導される…の、か…?」

「歌兎?」

「…何でもないよ、シラねぇ」

 

呟きを聞かれてしまったかと焦った僕はシラねぇへと曖昧な笑顔を浮かべると、それと同時に目的地へと着いたのだった。

メインカラーが緑のイガリマを身につけた姉様がアームドギアの大鎌を構える。それにシラねぇは回転式ノコギリを回すことで答え、僕はそんな二人の前へと進み出るとゆっくりと響師匠に教えてもらった構えを取る。

 

「おっ!早速、敵さんの登場デスよ!調、歌兎、いいですか?」

「うん、私はいつでも」

「…僕もおっけーだよ、姉様」

こうして、僕と姉様、シラねぇの3人対ノイズ大量の乱闘が始まったのだった…

 

「はぁっ!姉様!」

「了解デス!歌兎っ」

 

まず、小手調べにノイズのお腹へと拳を埋めると右側から走ってくる姉様の方へと殴り飛ばす。それを大鎌で真っ二つに切り刻んだ姉様がこちらに向かって走ってくるので、それを横に転がって場所を変わる。すると、そこへとシラねぇが合流する。二人が奏でるメロディーにのりながら、僕は二人の援護へと性を出す。

姉様の飛んでくる緑色の刃に向けて、ノイズへとアッパーカットを打ち込むと上へと打ち上げる。それの際に、姉様が放った緑色の刃が僕が打ち上げたノイズを切り裂き、灰へと変えた。ツインテールの先に回転式ノコギリを付けているシラねぇが滑ってきたなら、シラねぇが通るであろう場所へとノイズを集める。その際に僕へと触れようとしてくるノイズは姉様が切り刻んでくれる。

 

(やっぱり、姉様とシラねぇと一緒に戦うと気持ちいいな)

 

長年、白い孤児院で一緒に暮らしてきた僕たち姉妹とシラねぇはもう家族というくらいの深い絆で結ばれている。故に、僕はシラねぇと姉様の動きを。姉様は僕とシラねぇの動きを。シラねぇは姉様と僕の動きを。オーラというか、感覚で分かるのだ。

だから、僕個人の感想だが、この3人のチームワークは他のみんなよりも上だと思う。だから、これくらいの量くらいお茶の子さいさいで終わると思っていた…いや、そう信じていたのだ。

だが、僕や姉様たちの予想を裏切り、一向にノイズの群れが減ることがなく、もう既に消耗戦と化したノイズとの戦闘でイライラしてきた姉様が一人ノイズの群れへと突っ込んで行く。

 

「こうなったら、殴り込みデスよ!」

「…姉様!そっちは危なーーがはっ」

 

僕が一人突っ走ろうとする姉様を呼び止めようとした時だった。ゴンと鈍い音が耳へと響き、僕の身体は前のめりに倒れる。

 

「いつも周りには注意しような、暁 歌兎」

 

(…姉様…シラねぇ…ごめんなさい…)

 

地面へと叩きつけられた僕はあまりの衝撃に意識を失う。そんな僕のウサギの耳がついたフードをつかんで、僕を持ち上げた“何者か”へと姉様とシラねぇが血相を変えて走り寄ろうとするが、その二人へと新たに現れたのは僕を掴み上げている少年と同じ服装をした青年や少女たちであった。

それぞれ、左脚や右脚、両腕を僕のように変色された彼らは姉様たちを囲むと僕から二人を遠ざける。取り囲む彼らへと闘争心をむき出しにする姉様へと隣にいるシラねぇが落ち着くように嗜める。それに悔しそうに唇を噛む姉様。

 

「歌兎!」

「おっと、そこの嬢さんたちの相手は俺たちだ」

「切ちゃん、落ち着いて。この数じゃあ、私たち二人では手に負えない」

「分かってるデスよ…調…」

「いい判断だ、嬢さんたち。おい、そこにある縄を取ってくれ」

「ほらよ。あんま、キツく縛んなよ」

「バァーカ。この金髪の子とか今にも飛びかかりそうじゃん。それにボスがあの作戦の仕上げには、この金髪の子が必要って言ってたじゃん。逃すと俺らがどうなるか…」

「それもそうだな」

 

ブツブツと何かを呟きながら、姉様とシラねぇを縛り上げた。二人は僕を物のように持ち上げている少年を親の仇みたいに睨みつけながら、青年たちに縄で手首をきつく結ばれる。

そして、二人が縛り終われると、今だに僕を掴み上げている藍色と灰色をメインに使ったフードを身につけた少年は背後へと振り返ると、僕をそちらへと放り投げる。

 

「ふん…ほら、ボスの欲しがってた奴だ」

「くくく、あはは。よくやってくれました、僕のチルドレンたち」

「「「「……」」」」

 

気を失う僕をお姫様抱っこして、得意げに笑うその人影に少年の仲間に取り押さえられた姉様とシラねぇが憎らしげに唇を噛みしめる。シラねぇはその人影を睨みつけ、姉様に至っては噛みつくように人影へと近づこうとする。

 

「あれは」

「ウェルゥ!!」

 

そんな二人の様子を愉快そうに笑った白衣を見つけた人影・ウェル博士は青年に地面へと押さえつけられている姉様を見ると挑発するように言う。

 

「おやおや、そんな怖い顔してどうしたんですか?」

「歌兎をどうする気デスか!ウェルっ。あたしの妹になんかしたら、あたしがお前をーー」

「おぉ、おぉ、怖い怖い。心配しなくてもいいですよ、こいつをどうかするのは僕ではなく…むしろ…くくくっ」

 

そこでニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべたウェル博士に姉様は嫌悪が増す。親の仇みたいに睨みつけ、今にも飛びかかろうとしている姉様にウェル博士は近くにある青年たちに呼びかける。

 

「そこの二人は例の場所へと閉じ込めておけ。僕はあの作戦の最後の準備を行う」

「はい、ファザー」

「最後の準備が終わるまで、適度に痛めつけとけ」

「あぁ、分かったよ」

「歌兎!歌兎!!」

 

僕の名を呼んだくれている姉様の声にも気付かずに、僕はウェル博士に運ばれていく。それに姉様は上に乗っかっている青年たちを振り下ろそうとするが、思うようにならずに、いつの間にか立たされていた。抵抗するが、足首や弁慶の泣き所へと鋭い蹴りが入り、姉様は悔しそうに唇を噛み締めながら歩いていく。

 

「おい、さっさと歩け」

 

後ろに縛られた腕を掴まれながら、姉様とシラねぇはある場所へと運ばれる。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

一方の僕は、ウェル博士に運ばれて、乱暴に床へと転がされると思いっきりお腹を踏みつけられる。それにより、口の端から唾液が下にあるコンクリートを濡らす。そんな僕の前髪を掴んだウェル博士はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべる。そして、僕の左腕に巻かれていた包帯を脱ぎ捨てるとうっとりしたように溜息をつく。さわさわと左腕を撫でられ、僕は嫌悪から毛が逆立つ。

 

「いい腕だ、いい腕だとも、暁 歌兎。よくここまでベルフェゴールを育ててくれた」

「…育てたくて育てたわけじゃない。仕方なくだ、今すぐにでもこんな腕切り捨てたい」

「くくく、つらないことを言う。僕と君の仲ではないか」

「…あんたこそ、僕に殴り飛ばされたくなければ…もうその臭い口を開くな」

 

僕が嫌悪を露わにすると、ウェル博士がニタニタと笑いながら、わざとらしい声を漏らす。それに僕は眉をひそめて、ウェル博士を睨むと次の瞬間に発せられたセリフに思わずウェル博士に飛びかかりそうになる。

 

「君もお姉ちゃんに似ておっかないな〜。だけど、そんな大好きで大好きで大好きで仕方ない姉様や君の仲間が大変なことになっていたらぁ〜、君はどうするかなぁ〜?」

「…!?」

「おっと、顔色が変わったな。僕の話を聞く気にもなったか?」

 

おどけた感じでそう言うウェル博士の顔を睨みつけながら、僕は低い声でウェル博士を威嚇する。だが、それくらいこの男を困らせられるわけがない。

 

「…姉様とシラねぇに指一本でも触れてみろ。その時には既に僕の右拳があんたの顔面に埋まると知れ」

「くくく、そんな言葉すぐに言えなくなるだろうな。これを見ちゃったらぁ〜」

 

くるくると回り、おどけた感じで下の階を指差すウェル博士に連れられて、下の階を見た僕は目を丸くする。そして、手すりを強く握りしめる。

僕が見た下の階には姉様とシラねぇがいて、そんな二人を取り囲むように大勢の少年や青年、少女たちがおり、手に持った棒で無抵抗な姉様たちを殴っていた。その光景は余りにも衝撃的で僕は言葉を失う。そんな僕の肩へと腕を回してきたウェル博士は僕の耳元に囁きかけてくる。

 

「大好きな姉様を救いたいだろ?だったら、今その力を使わずして、いつ使うっていうんだぁ〜、ん?」

 

また、気持ち悪い笑い声を漏らすウェル博士に僕は唇を噛みしめるとギュッと目を瞑る。そして、心にいる姉様とシラねぇ、ここまでお世話になった響師匠やお姉ちゃんたちへと詫びを入れてから、胸へと両手を添える。

 

「…すぅ…」

 

僕は大きく息を吸い込み、恐らく最後となるであろうミョルニルの聖詠を口にする。

 

「…multitude despair mjolnir tron」

 

久しぶりに展開したギアを纏うと、待ってましたと言わんばかりにそれが僕へと声をかけてくる。

嬉々として語りかけてくるそれに僕は頭を押させながら、なんとか抗おうとするが…近くに立っていたウェル博士がニンヤリと笑うとポケットから何かを取り出す。

 

「…っ、また…あいつが…」

「そうだ、頑張ってくれる歌兎君へとおみやげだよ。受け取りたまえ」

 

そう言うと、ウェル博士が僕の首筋へと何かを打ち込む。飛びのいて、ウェル博士を睨むがすぐにその感情も胸の奥から湧き上がってくる負の感情に飲み込まれていく。

 

「…!?…僕に何を打ち込んだッ」

「そんなに睨むな、君にとっていいものだよ、それは」

「…いいもの?ふざけるなッ!あんたが今までぼ…ガァッ、く…」

「早速、効いてきたか。まぁ、本来の10倍に薄めないといけないのだが…事は急ぐからな」

 

(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すころすコロス殺すっ!…誰を?

...目の前にある者、僕の邪魔する者

壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊すこわすコワス壊すっ!…何を?

...この世界にあふれている物、僕の行く手を塞ぐもの

......そう、ここに…この世界にあるありとあらゆるものを破壊し、殺戮するっ!!その為だけに僕はここに存在スル獣ダ!)

 

「…ァアアアァアアア!!!!!」

 

僕は頭を抱えると首を横に振る。

 

(違う違う違う違う、チガウ…っ!僕はそんなことがしたい為にギアを纏い、君を呼んだんじゃない…っ!僕は…僕がしたいのは…)

 

【どうした?主人よ。我を解放するのではないか?主人の望みはなんだ?】

 

(…僕の望み…)

 

【そう、主人の本当の望みはこの世界を破壊し、邪魔する者を殺戮することだ。ならば、その目的を果たす為に、存分に我の力を使うといい。主人の本当の望みを我と共にはたそうぞ】

 

「…ガァッ…熱い…身体が、熱い…っ」

 

だが、あいつの声は消えるどころか僕の心を染め始める。僕は左腕から絶え間なく流れ込む膨大な力を受け止めながら、全身から発せられる熱に朦朧とし、僕は床へと倒れこむ。

 

「さぁ、最後の仕上げとしよう。我がチルドレンたちよ。僕たちの神が今ここに降臨なさる!」

 

床へと倒れこむ僕を恍惚な表情で見ながら、ウェル博士は両手を大きく上に広げて、大声で笑う。それを最後に、僕の最後に残っていたなけなしの理性はそれに飲み込まれ、僕は禍々しいオーラを纏う獣へ成り果てた…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

そう高らかとウェル博士が発言していたそれと同じ頃、ウェルチルドレンたちとの戦闘で思った通りの動きが出来ずにコテンパンに打ちのめされたシラねぇと姉様は地面へと力なく肢体を投げ出していると、一人の青年が姉様の近くに倒れているシラねぇを抱きかかえる。乱暴に肩へと担がれたシラねぇへと姉様が右手を伸ばす。

 

「調!」

「切ちゃん!」

 

シラねぇも右手を伸ばして、暴れて抵抗するが満身創痍のシラねぇがまだまだ元気な青年に力で勝てるわけがなく、忽ちに近くにある鍵付きの檻の中へと放り込まれる。

 

「こらこら、暴れない。調ちゃんはこっちね〜。これが終わったら、俺らと遊ぼうや」

「…」

「おや、無言って事は俺らの誘いに肯定ってことかい?」

 

運んできた青年に下卑た視線を向けられ、シラねぇは厭忌な表情になると口を一文字に固く結ぶ。そんなシラねぇと青年たちを見た姉様は痛む身体に鞭を打って立ち上がると、その折に向かって走り出す。

だが、僕を持ち上げていた少年に横腹を思いっきり蹴られて、その衝撃でコロコロと地面を転がり、激しく咳き込む姉様へと近づいたその少年は姉様を見下ろすと、わざと姉様が深く傷ついているところを蹴飛ばしながら、ムカつく表情を浮かべていた。

 

「お前!!調に何するデスか!ガハッ」

「負け犬がっ!黙ってろよ…親友も大切な妹すら守れないお前が偉そうな口を開くな」

「…ッ!」

「悔しいか?悔しいのか?えぇ」

 

そんな少年の踏みつけている足首を指が食い込むほど握りしめた姉様は顔を怨嗟で歪めて、その少年を睨む。だが、少年は姉様のセリフを鼻で笑うと姉様のお腹を思いっきり蹴飛ばす。

 

「…くそっ!お前らなんか…お前らなんか…っ。必ず、あたしの手で…」

「ふん、くだらん」

 

蹴飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がった姉様は血が混ざり、赤くなった唾液をコンクリートへと吐き捨てる。そんな姉様の姿を見て、シラねぇが堪らずに駆け寄ろうとするが強靭な折により行く手を阻まれる。

 

「ガハッ…ゴホッ…ゴホッ…」

「切ちゃん!!」

「だから、ダメだって、調ちゃん。調ちゃんは俺らとこの後の展開を見てような」

「…」

 

ニタニタとやらしい笑みを親友へと向けられ、姉様は唇を噛みしめる。ふと、目に映るのは砂埃などで汚れたほっそりした掌だ。

 

(くそっ…あたしにもっと力があれば…。二人を苦しまずに済んだのに…)

 

そんな姉様に今、1番憎らしい声がかかる。声を聞いただけで、誰かわかった姉様は表情を心火で染め、視線を上へと向けて睨む。だが、そんな姉様に肩をすくめた白い白衣が似合うウェル博士は手に持った包みを姉様へと見せる。

 

「力が欲しいですか?暁 切歌よ」

「ウェルっ!!」

「そんな目で見ないでください。僕は貴女へ素敵なプレゼントを渡しにきたんのですから」

「今更、誰がお前なんかの話に乗るもんデスかっ」

「くくく。素直じゃない貴女なら、そう言うと思って、こう言うのも用意してみましたよ」

 

ウェル博士が指差したのは、シラねぇとの反対な檻でそこには赤紫色の禍々しいオーラに身を包む小柄な獣がいる。早く檻の外へと出して欲しいのだろう。檻の鉄を今にも真っ二つに折ろうとしているかのように、ガチャンガチャンと檻を揺らす。

 

「ガルルルゥ!グルルルっ!」

「…う、たう…?」

 

それの獣を見た姉様は唖然とした様子である名前を呟く。それを聞いたウェル博士はわざとらしくパチパチと拍手する。

 

「おぉ、流石ですね〜。そう、ここにいるのは間違いなく貴女の妹の暁 歌兎ですよ」

「オマエェエエエ!!!」

 

姉様はウェル博士の襟首をつかもうとするが、そこにわたって入ったウェルチルドレンによって妨害され、姉様は地面へと転がる。起き上がる姉様にウェル博士はニンヤリと笑う。

 

「貴女も学習しないですね、暁 切歌。僕に手を出そうとすれば、彼らが僕を守るに決まってるでしょう」

「だとしても!あたしはお前を許さないっ!二度もあたしの妹を弄んだお前を!!」

 

殴られて口の端を切った姉様の左唇から鮮やかな血色の液体が皮膚を伝う。それを乱暴に拭いた姉様は少し垂れ目の黄緑の瞳へと憤怒の炎で滾らせる。だが、ウェル博士は愉快そうに笑うと片眉をあげる。

 

「くくくっ。なら、どうします?無力な貴女が僕に勝てるとでも?」

「…」

「そんな力が欲しい貴女へとこれをプレゼントです。もちろん、使うか使わないかは貴女次第ですが…くくく…」

「…くそっ!くそっ、くそっ…」

 

ウェル博士は姉様の前へと包みを投げ捨てると、颯爽とその場を離れていく。姉様は自身の無力さに苛立ちを覚えて、地面へと拳を何度も埋める。

 

(あんな奴の力を借りるしないんデスか…。あたしは…。あたしという人間はこんなにも無力で何も救えないちっぽけなものだったのか…)

 

「グルルル」

「…歌兎…。お姉ちゃんは……どうすれば…」

「ガルッ!グオオオッ!!」

「…そうデスね…、貴女と調を救う為には…もうこれしか…」

 

そこで姉様はギュッと目を瞑ると、覚悟を決めたように目を細める。そして、自分の近くに投げ捨てられたそれを拾い上げる。丁寧に包まれたそれを開くと、グッと唇を噛み締めて、自分の左腕へと這わせ、自分の首筋へとLiNKERを注射する。すると、メキメキッと左腕へと置かれていたそれが姉様の腕へと同化していく。それを無限にしわを寄せて、耐える姉様。そんな姉様を見て、高らかな笑顔を浮かべるウェル博士。

 

「ッ!ガァアアア…くっ…」

「くくく。やっと始まりますよ」

「…切ちゃん…?」

 

僕とは違う折へと入れられているシラねぇは姉様の異変にいち早く気づく。しかし、時は既に遅し。姉様の身体を次第に赤紫色の禍々しいオーラが包み込む。それは、僕が纏っているもの同じものだった。

ついに、そのオーラに全身を覆われた姉様は立ち上がると天に向かって叫ぶ。

 

「ァアアアァアアア!!!!!」

 

空へと向かい大きく吠えた姉様へと檻から解き放たれた僕が走り寄る。そんな僕を視界に納めた姉様も僕へと走り寄る。

 

そんな二人が巻き起こした風に飛ばされて舞い上がった包みには、こう記されていたーー【完全聖遺物・ルシファー】と。




さてさて、これから先はどうなってしまうのでしょうか?

また11話で会いましょうm(__)m

そして、今回の話に全く関係ないんですが…
ドヤ顔でエレキギターを「デェェェェス」って弾いてる切ちゃんが何故か、この話を書いてる時に浮かんできてしまいまして…思わず、吹き出しちゃいました(笑)
いえ、切ちゃんがおかしいってわけじゃなくて…こんなシリアスなシーンを書いているのに、微笑ましい事を考えてしまった自分へと笑いがこみ上げてしまいまして…(笑)
本当、こんなシーンなのに…なんてこと考えてるんですかね、私は(笑)





今回の話で出た新しいワードの補足

◎ウェルチルドレン
ウェル博士の非人道的な改造と実験で、生身の人間以上の力を手に入れてしまった子供たち。
殆どの子供達は両腕や両脚(どちらか片方)に完全聖遺物が埋め込まれている。


◎完全聖遺物・ルシファー
ルシファーは明けの明星を指すラテン語であって、光をもたらすものという意味もある。また、堕天使の長であるサタンの別名ともされている。
果たして、この完全聖遺物は光をもたらすものとなるのであろうか?


◎DemonーLiNKER
堕天使や悪魔を司る完全聖遺物の力を最大限に引き出すLiNKER。
このLiNKERの開発のために多くのウェルチルドレンが犠牲となり、悍ましい姿と成り果てた。


◎禍々しい赤紫色のオーラ
【完全聖遺物・ベルフェゴール】【完全聖遺物・ルシファー】の力を限界まで引き出した暁姉妹が纏うオーラ。普段の暴走と違い、完全聖遺物に操られている形なため、本人たちの意識は僅かだがある。
だが、意識のほとんどと脳へと命令は完全聖遺物が行ってるために本人たちでは止められない。


以上、補足でしたm(__)m


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11)ベルフェゴールな僕とルシファーなねえさま。

連続更新の第一弾の2話目。そして、この第一弾の最後の話となる11話はグロデスクなシーンと描写があるかもしれません。ので、そういうのが嫌な方はザザッとセリフのみでも読んでいただければと思います(礼)


10話に比べて、かなり短いですので…どうかよろしくお願いします。


廃墟と化した工場地帯のど真ん中に大きく開かれている広

場みたいなところで、破壊と殺戮を好む獣と化した僕は姉様へと禍々しい赤紫色のオーラを纏う槍を振り回して、姉様の魂を刈り取ろうとする。器用に僕の槍の攻撃を避けた姉様は右手に持った炎の剣を僕へと突きつける。それを寸前で交わした僕は唸り声をあげながら、姉様へと左手に持った棍棒を振りかざす。

そんな二人の死闘を遠くで見てきたシラねぇは悲痛な叫び声をあげる。ガチャンガチャンと檻を抜け出そうとするが、頑丈なそれはビクともせずに、無常にも刻々と時間だけが過ぎていく。

 

「グルルルっ!」

「ガァアアアっ!」

「やめて!切ちゃん、歌兎!なんで、二人が殺しあわないといけないの」

 

だが、僕と姉様の攻撃はゆるむどころか、激しさを増していく。姉様は親指と中指で音を鳴らすとそこには『ゲイブ』と言われる使い魔が現れる。四つの顔と四つの翼、そして翼の下に人の腕を飾ったそいつは姉様と見事な連携を見せて、僕を追い詰めていく。

ゲイブが吹き出してくる炎を交わし、姉様の炎の剣を寸前のところで回避すると僕はカウンターを決める。棍棒を無防備に空いている姉様の背中へと振り降ろすと、地面へと打ち付けられる姉様の身体に向けて、右手持った槍を突き刺そうと振りかざす。だが、その攻撃は生身の人間では出来ないであろう動きで身体を起こした姉様によって失敗した。

 

(…くそっ、おしい…)

 

「…グル…っ?」

 

僕はそこで首をかしげる。

僕はさっきなにを思った?ーー“おしい”って?

姉様を仕留められなかったことを“おしい”と感じたのか?...僕は…。

 

僕は両手に持った槍と棍棒をコンクリートへと落とす。そして、静かに唸り声を上げている姉様を真っ直ぐ見つめる。

赤紫色のオーラに包まれた姉様は、僕の知っている姉様ではなく、全くの別人のようだった。少し垂れ目な大きな瞳は釣り上がり、いつもは太陽のような、見ているこっちが温かい気持ちになれる満面の笑顔を浮かべている口元からは真っ白な八重歯が剥き出しになっている。

今の姉様の表情を飾るのは、怨讐や相手を痛めつけることへと昂揚感で満ち溢れている。

そんな姉様に僕は唇を噛みしめる。

 

(…知ってる。僕が姉様をこんな感じにしちゃったんだ)

 

僕は両手を大きく横へと広がる。そんな僕の行動に、僕の中にいるそれが鋭い声を上げる。

 

「…ッ!」

 

【おい、主人!奴は弱ってる。ここで畳み掛けるべきだろ】

 

(…だまれ)

 

【ここで打ち取られねば、主人が死ぬぞ!死にたくないだろうのだろう?ならば、ここで奴をーー】

 

「黙れと言ってる!」

 

その広場に響き渡るほどの大きな声で叫んだ僕に、僕の中にいるそれは口を紡ぐ。そんな奴がいる左腕へと視線を向けながら、僕は眠たそうなに開かれている黄緑色の瞳へと強い意志をたぎらせる。

 

【…】

 

「言わせておけばペラペラと屁理屈を…。…僕は姉様を殺してまでも、自分が生き残ろうとは思わない。姉様を救えるなら喜んでこの命を差し出すよ、何にでも」

 

(だからね、姉様。いつものように笑ってよ、僕は姉様の笑顔が好きなんだ)

 

僕に向けて、闘争心を剥き出しにして突っ込んでくる姉様へと僕は両手を広げて出迎える。赤紫に染まってしまった少し垂れ目な瞳を真っ直ぐ見つめ、姉様が僕へと体当たりしてくる。

そして、姉様の突き出した左手は華奢な僕の身体をいとも簡単に貫くのだったーー

 

「ガルルルッ!!」

「ごぼっ」

 

僕の口元から大量の血が吹き出る。そして、僕の苦しそうな声に目を覚ました姉様は目の前の状況を見て硬直する。

それは固まるだろう。姉様の左腕が僕の胸の真ん中へと突き刺さり、吹き出す血液の中、姉様の左手に握られていた僕の心臓は姉様の手により破壊され、ベチャベチャとコンクリートへと無残な肉の塊として落ちていく。

力なく姉様へと倒れる僕を支える姉様。その顔は普段の、僕に対して過保護すぎる姉様で、そんな姉様の顔を最後に見れて、僕は満足そうに淡く微笑むと掠れ声で囁く。

 

「…へ?…う、た…う…」

「…姉様、意識が戻ったんだね…よ…かっ…た……」

「…うそぉ…なんで…こんな…。こんなのって…あの夢よりもひどい…結末じゃないデスか…っ。あたしは…なんで…こんな事を…して……」

「…だいすきだよ…ねえ…さ、ま。…ねえさま…どう?」

「そんなの大好きに決まってるじゃないデスか!なんで、そんな事聞くデス…歌兎…」

「…ふふ…うれしい…な…。ね、えさま…ぼくね…。…いいたいこと…があるんだ………」

「なんデスか?歌兎」

「…これからも…ずっと…あいして…る…よ……、ねえさま…」

 

そこで息を引き取った僕を抱きしめて、姉様は空に向かって大きな声で叫ぶ。

 

「嫌嫌嫌嫌ぁ…嫌デスっ…歌兎ぅうううう!!!」

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

自分の手によって亡き者にしてしまった歌兎だったものを抱きしめながら、あたしは大粒の涙を流す。ぐちゃぐちゃになるあたしの顔を見ながら、近寄ってきた足音に顔を上げるとあの憎らしい男が立っていた。

 

「あ…あぁ…ぁぁ…」

「いぃ〜やぁ〜、よくやってくれたよ、君は!まさか、こうも簡単に自分の妹へとトドメをさせるとは思いもしなかったですよ」

 

泣きじゃくるあたしから“歌兎だったもの”を引き取ったあの男はあたしへと追い討ちをかけてくる。それに両耳を塞ぎながらもバッチリと聞こえてしまったあたしは虚ろな目をして、地面の一点を見つめる。

 

「あぁ…うたう…」

「しかし、僕にあんな罵詈雑言を言っていた貴女が1番ひどい事をしてるじゃないですか?その赤く染まった左手を見てください。貴女はさっき、そうついさっき!その左手でっ!最愛なる妹の心臓を握りつぶしたんですよッ!!その時の貴女の顔を見せて上げるなら見せて上げたいなぁ〜、最高にいい笑顔でしたよぉ〜?ねぇ、教えてくださいよ!大好きで大好きで大好きでたまらない妹の心臓をその左手で握りつぶした感想っ。嬉しかったですか?それとも、楽しかったですか?」

「切ちゃん、ダメ!!博士の言葉に耳を貸さないで!!」

 

大親友の調の声が聞こえたが、頭の中でずっと流れるのはあの男のセリフだ。

 

(…あたしは…歌兎を殺したのに、笑ってた…?そもそも、なんでこんなことに…。あの夢よりもひどい結末をあたしはこの手で使ってしまった…。

あの子がいない世界なんて…もうーー。そもそも、あの子を殺してしまった…こんなあたしが生きている理由なんてーー)

 

「…ぁあああ…アァアア!!!」

「さぁ!全てを破壊する獣と成り変われ!暁 切歌」

 

ウェル博士のその言葉に応じるように、あたしの身体は赤紫のオーラから禍々しい青紫色のオーラへと成り替わる。そして、檻から解放された調へと襲いかかる。

 

「コワス、コロス、スベテヲ」

「そんな…切ちゃん…」

「マズハオマエカラ」

「あははっ!これで全てが揃った!さぁ、神よ。ここにいる器へと宿れ!そして、僕へとこの世界を支配する叡智を!!」

 

あの男が何か言って笑っているが、もう関係ない。あたしがこの理不尽な世界を壊し、破壊して生まれ変わらせるその為には、まずは邪魔となる目の前のこの桃色の奴から排除しようと手に持った炎の剣を振りかざそうとするが、うまいタイミングで橙の拳と白の拳によって阻止させる。

橙の拳にお腹を殴られ、その衝撃に後ろへと後退したあたしの目には二人の少女と女性の姿があった。

 

「ガルルルぅ…」

「ウェル博士…あなたという人はッ」

「歌兎ちゃんの仇…必ず、私たちがとってみせます!」

 

琥珀色の瞳に激怒の炎をたぎらせ、真っ白なマフラーを風にたなびかせている響さんが愉快そうに笑っているウェル博士を睨む。それは隣に立っているセレナも同じようで、響さんと同じような構えを取るとウェル博士を睨みつける。

 

「くくくっ…やっときたか。だが、もう遅い。僕らの作戦の邪魔を誰もできやしない。何故なら、今そこにいる獣が我らの神が宿る器を作ってくれたからな」

 

顎であたしを指差すウェル博士に響さんとセレナが同時に眉をひそめる。セレナが問いかける質問にも答えずに、ウェル博士は白衣を翻すと建物の中へと入っていく。

 

「…器?」

「気は確かなの?ウェル博士」

「…くくくっ。あと少しだから、それまでそこにいる獣と遊んでいるといい。僕のチルドレンだち、いくぞ」

「はい、ファザー」

 

元気よく返事した青年、少女、少年たちはウェル博士から歌兎の遺体を受け取るとウェル博士へと続く。その後に続こうとする響さんとセレナだが、そんな二人の前にあたしが立ちふさがる。

お互いに武道の構えを取る響さんとセレナに調も続く。

 

「っ!やるしかないってことかな、いける?セレナちゃん」

「はい、私はいつでも。こんな状態の暁さんをこの外に出すわけないはいきません!ですから、姉さんやクリスさん、翼がここに到着するまで私たちで持ちこたえましょう」

「響さん、セレナ!私も戦います」

 

足にあるローラーを展開させた調に響さんが心配そうな視線を向ける。だが、調はそれに対して首を横に振るとあたしへと回転式ノコギリを向けてくる。

 

「でも、調ちゃん大丈夫?」

「大丈夫ですよ、響さん。…私はここに居たのに。何も出来なかった…。だから、せめて、切ちゃんを元に戻す手助けをしたいって思ってます」

「うん、一緒に元に戻しましょう、暁さんを」

 

セレナに肩を叩かれ、調は強く頷く。

まずは最初に響さんがあたしへと距離を縮めて、拳を叩き込んでくる。その後ろから、調の回転式ノコギリに乗ったセレナが突っ込んでくる。見事な連携に追い詰められたあたしは地面を思いっきり壁を蹴ると破壊する。

それによって、あたしを見失った奏者三人から流れるようにぴょんぴょんと建物を飛び移っていく。

 

「グルルルぅぅ!!!」

「あっ、切ちゃん!」

 

最後に調の声が聞こえたが、あたしはその場から逃げ出す。

そして、この“最愛なる人”がいない世界を破滅させようと繰り出す。近づいてくる街を見て、あたしが思ったことは一つ

 

ーーあぁ、これでこの理不尽な世界を…そこに住む人をコロセル、と。




というわけで、連続更新の第一弾はこれでおしまいです。第二弾は12.13を連続更新しようと思ってるので…どうかよろしくお願いします。
その間はまた漫談編を書きますので、よろしくお願いします。



ここからは余談なんですが…
切ちゃんがウェル博士に脅されて同化せずに居れなかった【完全聖遺物・ルシファー】なのですが、【ルシファー】には対となる女神がいるそうです。それが【ディアーナ】という女神なのですが…なんとっ!狩猟、貞節と【月】の女神だそうですっ!
これを見た私は思いましたーーこれは、運命だったのではないかと。切ちゃんがこの【ルシファー】を使うというのが…(静かに確実)

残念ながら、この【ディアーナ】は私の小説には登場しないのですが…興味のある方は是非とも使ってみてください(笑)

以上、余談でしたm(__)m


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漫談:過保護な姉様のお泊まり、そして僕は…。

今回の漫談はとにかく楽しい話を書こうと思い、書いたものデス。
なので、この話を読んで、読者の皆さんが笑ってくださったらと思ってます。

まぁ、今回の切ちゃんも過保護度は安定の100パーセントですので…それに巻き込まれるみんなはとても大変だと思います(笑)

今回の話のあらすじは
学校で仲良くなった友達の家へとお泊まりに行こうとなった切歌と調だが…。そこで、切歌が歌兎を置いて、お泊まりにはいけないとタダをこねる。そこで、歌兎も切歌を説得しようとするが…、切歌は聞く耳を持たずに。終いには、切歌が泣き出してしまうといったところから、スタートとなっております。

過保護な姉様が織りなすハチャメチャなお泊まり劇をどうぞ!

*今回はかなり短いです。


二課にある休憩所の中。金髪に黒のバッテンの髪飾りが特徴的な少女が膝立ちになって、目の前にいる水色が混ざる銀髪を背中近くまで伸ばした少女へと抱きついて、ポロポロと涙を流している。

その様子に周りにあるものは唖然とし、ある者は苦笑いを浮かべ、またある者は申し訳なそうな表情を浮かべ、最後の一人に至って呆れ顔を浮かべている。

いつものことながら、この二人ーー暁姉妹は波乱の中を生きている。いや、姉の方が進んで、波乱を進んでいくのだ。故に、妹もその姉の背中を追いかけてしまってるため、もう誰もこの二人の暴走を止められないのだ。

 

「…うぅ…歌兎ぅ〜…」

「…姉様、泣かないで。明後日には会えるから」

 

年甲斐もなく、妹・歌兎の胸へと顔を押し付けて泣いている姉・切歌へと歌兎は姉の頭を撫でながら、優しく語りかける。しかし、歌兎の励ましの気持ちは肝心の姉には届かずに、またしても姉様お得意のちんぷんかんぷんな方向へと話が進んでいく。それには、流石の歌兎も困った表情になっていた。

 

「1日も離れ離れなんデスよ!明日、お姉ちゃんはどうすればいいのデス?」

「…姉様にはシラねぇがいるから。それに、僕は友達とも仲良くしてほしいって思ってる」

「なんデスと!!?歌兎はお姉ちゃんと離れ離れでも寂しくないと…そういうデスか…?」

「…ううん、そうじゃなくてね…。僕が言いたいのは…」

 

そんな二人の様子を遠くから見ていた明るい茶色の髪をしている少女・響が切歌を見てはポツンと呟く。 その隣にいる青い髪を結んでいる女性・翼は眉を潜めると、事の成り行きを見守っている。そして、そんな翼の横にいる白髪の髪を赤いシュシュで結んでいる少女・クリスが実に様々な表情を浮かべている元F.I.S.組へと問いかける。

 

「あらあら、随分荒れてますなぁ〜」

「むぅ?何故、切歌は歌兎に抱きついて泣いているのか?」

「…なぁ、なんだ?これ」

 

顎で目の前の光景を指され、元F.I.S.組は視線を下へと向けると揃って頭を下げる。それはまるで、うちのダメ娘がまたやんちゃを…とお詫びの品を持って回る親の姿によく似ており、この三人が普段からこの過保護な姉に手を焼いているのかがよく分かる反応であった。

 

「え…と…」

「三人ともお騒がせしてごめんなさいね」

「明日、私と切ちゃんが友達の家にお泊りに行くんです。何ですが、切ちゃんが歌兎を置いてはいけないって。私は皆の邪魔になるし、最も歌兎が居づらいだろうから。諦めようって言ったんですが…終始、こんな状態でして」

 

漆黒の髪をツインテールにしてる少女・調はチラッと切歌の方を見ると、まだ抱きつかれている歌兎へと視線を向ける。歌兎は調たちの方を見ており、その眠たそうな黄緑色の瞳には大きく“たすけて”の四文字が浮かんでいた。

基本、姉には絶対服従の妹すらもドン引きの駄々をこね続ける切歌。だが、ここに居る誰もが歌兎へと期待をしているのだが、この状態では切歌の勝ちとなってしまうかもしれない。

しかし、意外な人が発した言葉により、この話は終焉を迎える。

 

「あぁ、なるほど、そういうことか。でも、それって、たった1日だけなんでしょう?私や未来もよく遊びに行ってるし、切歌ちゃんも楽しんでくるといいよ。歌兎ちゃんはここにいるみんながしっかりお世話するからさ」

「そういう簡単な問題じゃないんデスよ!響さんっ」

 

響が何気に発したセリフに切歌がつっかかる。グイッと整った顔立ちを響へと近づけると、力強く肩を揺らす。それに、響は目を回す。

 

「おぉっ!?急に食いついてきたね、切歌ちゃん」

「響さんまでなんでそんなこというデスか!?そんなにあたしと歌兎を切り離して、何を企んでるんデスか!あたしが悲しむ姿を見て、みんなして笑ってるんデスか〜っ」

「肩を揺らさないで、切歌ちゃ〜ん〜」

 

高速で前後ろと響の肩を揺らすたびに、響の首がカクンカクンと良からぬ音を立てており、琥珀色の瞳はぐるぐると渦巻きを作っている。その様子に、今まで傍観していた翼が興奮している切歌の方を叩く。

 

「まあまあ。落ち着け、切歌。誰もそんなことは考えてない。ただ、切歌にも楽しんできて欲しいだけなんだ、友との思い出、とてもいいではないか。私は切歌にも…もちろん、月読にも心に残る思い出を作って欲しいと思っているぞ」

 

翼の暑いスピーチの後、目を回している響の肩を強く握りしめて、下を向いている切歌はポツンと呟く。それには眉をひそめるクリスに切歌は大きな声でちんぷんかんぷんな事を言う。

 

「…さい」

「はぁ?なんて言ったんだ?」

「じゃあ、今日だけは歌兎とずっと一緒にいさせてください!それで、明日を生き抜く為の歌兎成分を貯めるのデス!」

 

その時、ここにいる人たち誰もが思っただろうーー

 

(ーーいさせてくださいも何も毎日一緒にいるじゃないか)と。

 

それと、(歌兎成分ってなんだ?)とも。当事者である妹の歌兎までもが、普段は絶対服従の姉へと何言ってるんだ?こいつ、みたいな顔をしているのを周りにいる誰もが目撃していた…




というわけで、次回はお泊まり前日と当日の話を書こうと思います。

主人公が誰の家に泊まるかは…次回までのお楽しみということで(笑)


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漫談:過保護な姉様はお泊まりへ、そして僕もお泊まりへ。

遂に、お泊まりへと向かう切ちゃんと○○○お姉ちゃんの家へとお泊まりに行くことになった歌兎。

二人は果たして、無事にお泊まりを終えることができるでしょうか?


10/12〜誤字報告ありがとうございます!


大きな声でちんぷんかんぷんな事をおっしゃった姉様は、それ以降、僕を膝の上へと載せるとニコニコと満面の笑みを浮かべている。ギュッと抱きしめては、スリスリと頬を擦り付けてくるのが擽ったく、僕は身をよじる。だが、強く抱きしめられた両腕のせいで、僕は思ったように動かずに、姉様のなすがままになっていた。

そんなご機嫌な姉様へとマリねぇがため息混じりに聞いてくる。それは、僕のことであった。

 

「それで切歌。歌兎はどうするの?もちろん、私たちが見るのよね?」

「そうだね。歌兎ちゃんの家は私たちのところだし、他のみんなに迷惑はかけらーー」

 

マリねぇのセリフにセレねぇが頷き、勝手に話が進んでいく。だが、それを聞いていた姉様の少し垂れ目な瞳が一瞬修羅のようになる。それに驚く僕の方は見ずに、姉様は真っ直ぐにマリねぇとセレねぇを見つめる。

姉様のトレードマークとなっている“デス”口調も消えたマジ口調で淡々と二人をディスる姉様に、シラねぇと周りのお姉ちゃん達はぽかーんとしていた。そして、ディスられた二人は涙目になって、姉様へと抗議していた。

 

「マリアは今までの行いから信用出来ないので却下。絶対、あたしがいない間に歌兎へと鬼畜な事をしでかすに決まってる。大体、歌兎に料理を教える腕がマリアには無い。なのに、歌兎に料理や他のことを教えようなんてちゃんちゃらおかしい」

「ちょっと、切歌。それは流石に言い過ぎよ!私だって、料理くらい作れるわ」

「…ふっ」

「なによ、その深み笑いは!私だって出来るんだから…本当なんだから…」

「そして、セレナ。あなたもあなただよ」

「へ?」

「あなたの人生は流されてばかりだ。どうせ、今回もマリアに流されるに決まってる。そんなセレナには歌兎は預けられない」

「ちょっと暁さん、それは言い過ぎたよ!私の人生まで否定するなんて!」

 

抗議してくるカデンツァヴナ・イヴ姉妹が周りで騒いでいるにもかかわらず、姉様は真剣な表情でブツブツと独り言を呟いている。そんな姉様が怖く、僕は姉様の隣に立っているシラねぇへと視線を向ける。

 

「こんな二人は例外。クリス先輩も例外。あの人こそ、歌兎になにをしでかすかわからない」

「…シラねぇ。今の姉様、怖い。すごく怖いんだけど」

「奇遇だね、歌兎。私も怖いよ。こんなに真面目な切ちゃん、初めて見たかも」

「…そう言われるとそうだね」

 

僕とシラねぇは密かに思う。

この集中力をもっと他のことへと向けてくれたならば、他の人はもっと助かるのに…と。

そして、暫し、ブツブツ呟きていた姉様は突然、前を向くと僕を連れてある人のところまで歩いていく。その人の前に来ると、頭を下げる。

 

「翼さん。あした、歌兎のことお願い出来ないデスか?」

「私か?別に構わないが…マリアたちはいいのか?」

 

青い髪を揺らして、マリねぇとセレねぇのいるところへと視線を向ける翼お姉ちゃんにねぇやたちは頷く。

 

「えぇ、大丈夫よ。そうしないと、この子がまた駄々をこねそうだし」

「私からも歌兎のことよろしくお願い、翼」

「うむ。マリアたちがそこまで言うのであらば、この剣。責任持って、歌兎を預ろう。そして、無事に歌兎を切歌へと返すことを誓う」

「はいデス、翼さん。歌兎のことよろしくお願いします」

「…お願いします、翼お姉ちゃん」

「あぁ、こちらこそよろしく頼むぞ、歌兎」

 

自信満々に胸をはる翼お姉ちゃんを側から見ていたクリスお姉ちゃんと響師匠がポツンと呟く。

 

「…おい、本当に先輩で大丈夫とおもうか?」

「…んー、大丈夫なんじゃないかな。ほら、翼さん自信満々だし!きっと、大丈夫だよ」

「…はぁ…、お前もあそこにいるやつもお気楽だな」

 

クリスお姉ちゃんだけ、このお泊まり会に不安を感じていた……

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

今朝の今朝まで、僕にベッタベタだった姉様は泣きそうな顔をしながらもシラねぇの手を握り、愛用している黄緑色のショルダーバッグを担ぐ。そんな姉様の手を握っているシラねぇは桃色の手提げカバンを持つと、二人揃って振り返ってくる。

 

「うぅ…これで最後になるのデスね…」

「暁さんは大袈裟だよ。たった1日でこれなら、三日とかになるとどうなるんだろ?」

「明後日には会えるのだから、その為に歌兎は翼のところに泊まりに行くのでしょう。あなたたちも楽しんできなさい」

「セレナとマリアには、あたしのこの気持ちはわからないのデスよ!うぅ…歌兎ぅ…」

 

マリねぇとセレねぇの言葉にむくれた姉様が僕へと抱きついてくる。そんな姉様を受け入れながら、僕はゆっくりとシラねぇへと姉様を引き渡す。

 

「…姉様。僕なら大丈夫だよ。だから、シラねぇと楽しんで来て」

「…うっ…分かったのデスよ。歌兎も翼さんに迷惑かけちゃダメデスよ」

「…ん。任せて、翼お姉ちゃんには迷惑かけない。姉様たちが帰ってくるまでいい子にしてる」

「うん、約束デス」

 

姉様とゆびきりげんまんをした僕へと、まだまだ何が言いたそうな姉様の首根っこを掴んだシラねぇがずるずると姉様を引きずって、ずんずんと歩いていく。対する姉様は来ている服が首にしまって、苦しそうであったが…。

 

「そろそろ時間になる、切ちゃん。マリア、セレナ、歌兎、いってきます。切ちゃん、行くよ」

「わわっ!?調、いきなり引っ張ったらこけるデスよ!?こけるっ、こけるデスっ!あと、首が絞まって苦し…」

 

セレねぇと共にバイバイする僕たちへと、シラねぇと姉様がバイバイしてくれる。そんな二人へとマリねぇがお母さんみたいな発言をすると、セレねぇがそれをからかう。

 

「いってらっしゃい。月読さん、暁さん」

「泊まる人に迷惑をかけちゃダメよ。あと、調はちゃんとは歯磨きして…それから、切歌は…」

「姉さん、本当にお母さんになったよね」

「なっ!?セレナ。私、まだそんなに歳じゃないわよ!それにあなたまでそんな事を言うの!」

「歌兎ちゃんもそう思うよね」

「…ん、マリねぇは僕たちのお母さん」

「歌兎まで…そんな事を…。私、そんなに老けてるのかしら…?」

 

僕の発言にがくっと膝をつくマリねぇ。セレねぇはからかいすぎと思ったのか、マリねぇへと謝罪している。そんな二人から視線を逸らして、遠ざかっていく姉様の背中を見ているとあることを言うのを忘れていたことを思い出し、僕は駆け足で二人を追いかける。

 

一方、シラねぇに手を引かれている姉様はチラチラと後ろを振り返っては、寂しさと心配で顔を歪める。そんな姉様へとシラねぇが優しく話しかける。

 

「…うぅ…歌兎が遠くなってくデス…」

「そんな顔しないで、切ちゃん。これは歌兎に対して大事な事なんだよ。そろそろ、姉離れしないと…、このままじゃあ歌兎の為にならない。それに当てはまるのは切ちゃんもだよ。切ちゃんがいつまでもそうだと、歌兎も成長できない」

「そうデスが…調…。歌兎は普通の身体じゃないんデス…。いつ、ミョルニルが歌兎に牙を剥くかと思うと…あたしは…」

「うん、分かるよ。切ちゃんの気持ち。私も歌兎の事は心配だよ。本当なら、このお泊まりをやめて、あの子のそばに居てあげたい。でも、それはダメなの、あの子の将来のためにならない。だから、ここは心を鬼にするべき」

「うん…分かってるデス…。これも歌兎の為デス、心を鬼さんにするデスよ!」

「うん、そのいきだよ、切ちゃん」

 

繋いでいた手をさらにギュッと強く繋ぐと、二人の足取りが軽くなる。二人がどんどんとマンションから離れていく中、姉様は何を思ったのか、突然シラねぇへと抱きつく。じゃれついてくる姉様にシラねぇも嬉しそうな、困惑してるような表情を浮かべる。

 

「デスが、やっぱり、調は優しいのデス!そんな調があたしは大好きデスよ!」

「きゃあっ!?切ちゃん、歩きづらいよ。そんなに抱きつかれると」

「いいんデスよ。歌兎が側に居ない間、あたしは調といちゃいちゃするのデス」

「…いちゃいちゃするの?姉様。シラねぇと」

「はいするデス!…ん?」

 

僕の質問に元気よく答えた姉様は、不思議そう表情を浮かべると後ろを振り返ってくる。そして、真後ろにいる僕を見て、シラねぇと同期(シンクロ)した動きで飛び退くと上ずった声を上げる。それを聞いて、首を傾げる僕。

 

「…?」

「なぜ、歌兎が」「ここにいるデス!?」

「…そんなに驚いてどうしたの?姉様、シラねぇ」

「なんでも」「ないデスよ、歌兎」

「…?」

 

何故か、二人が顔を赤くしているのがまだ分からないが、僕は要件を言う。それを聞いた姉様は目を見開く。

 

「それで歌兎。どうしたデスか?」」

「…姉様に言う事を忘れて」

「あたしにデス?」

「…姉様。はっぴー」

「!! にゃっぴー」

「…頑張る」

「デデデース!」

「…魔法の言葉。姉様、シラねぇ、気をつけていってらっしゃい」

 

僕は背伸びして、姉様とシラねぇへとキスを落とすとバイバイする。それに嬉しそうに手を振る姉様、その隣にいるシラねぇへともう一度頭を下げる。

 

「えへへ…、じゃあ、行ってくるデス」

「…ん、いってらっしゃい、姉様。シラねぇ、姉様の事、よろしくお願いします」

「うん。歌兎も気をつけてね」

 

その後、姉様たちは無事に友達の家へと到着したらしい。僕も愛用してる花青緑色のリュックへとお泊まりの時に着るパジャマやらを入れると、マリねぇとセレねぇに連れられて、翼お姉ちゃんのマンションへと向かう。

ピンポーンとチャイムを押すと中から翼お姉ちゃんが出てくる。そして、マリねぇとセレねぇは翼お姉ちゃんへともう一度、頭を下げると自分のマンションへと帰っていったのだった…




と、かなり駆け足気味の前日と当日ですが…次回こそがこの話の本番ですので、お楽しみにm(__)m



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漫談編:お泊まり会の前半戦

大変、大変お待たせいたしました!(汗)
過保護な切ちゃんと歌兎の波乱に満ちたお泊まり会ですが…最初は前半戦をどうぞ。
理由は本編を見ていただけるとわかると思うんですが…切ちゃんの『手紙』が思った以上に長くって…(汗)
前半、後半で分けることなってしまいました…本当にすいません…。

そして、今回の話の流れですが…

最初が【歌兎】⇨【切歌】みたいな感じまで書ければと思ってます。

また、切ちゃんと調のクラスメイトは私が考えたオリジナルキャラですので…どうか、そちらもよろしくお願いします。


*また、翼さんの部屋の家具や飲み物は私のイメージですので、どうかよろしくお願いします。


青い髪を揺らして、僕を部屋の中へと招き入れてくれた翼

お姉ちゃんの後をリュックを揺らしながらついていくと、リビングが現れる。

 

(…あれ?クリスお姉ちゃんが翼お姉ちゃんの部屋は汚れてるって言ったけど…そうでもない?)

 

黒と青を基調とした家具が置かれている。小綺麗に整えられているそれの上に、ほこりまたはその他のゴミを見せることはかなり難しい。僕が不思議そうに部屋の中を見ていると翼お姉ちゃんが冷蔵庫を開きながら、僕へと話しかけてくる。

 

「歌兎。そこにでも荷物を置くといい。疲れたであろう、何か飲み物でも飲むか?何がいい?」

「…んー、苦いものじゃなければなんでも」

「ふっ。なら、茶でもたてようか?抹茶は飲めるか?」

「…ん。大丈夫…だと思うよ」

「ふふ、何も経験だ。少し待っていてくれ」

 

翼お姉ちゃんが何か道具を取りに奥の部屋へと向かった瞬間、僕の視界の端に白いものが映る。それを拾い上げてみると、そこにはこう書かれていた。

 

(…あっ、これ)

 

小さいメモ帳の切れ端には綺麗な字でこう書かれていたーー【歌兎さんが来るとの事でしたから、いつもよりも念入りに掃除しておきました。緒川より】

 

「………」

 

僕はそれをなんとも言えない顔をして、静かに戻すと同時に、奥の部屋で道具を取りに行っていた翼お姉ちゃん帰ってくると、その翼お姉ちゃんのところへとトテトテと走っていく。そして、翼お姉ちゃんが見事な腕前で立ててくれた抹茶を和菓子共に飲んで、一息いれるとそこで姉様に渡すように言われていたものを思い出す。

 

「…あっ、これ、姉様から翼お姉ちゃんへって」

「うむ?なんであろうか?」

 

翼お姉ちゃんは僕が猫耳がついたパーカーから出した手紙を受け取るとそれを開くとその形良い眉をひそめる。

それを抹茶をすすりながら見ていた僕は翼お姉ちゃんに近づくと、その手紙の内容を盗み見る。そして、そこに広がっていたは…僕のよく知る姉様の残念すぎる文章たちで、大真面目な顔で真剣に解読しようとしている翼お姉ちゃんへと僕にも見せて欲しいと頼む。

 

「むむ…これは切歌から私に対する暗号なのか?切歌は私を試そうとしてるのやもしれぬ。この私が歌兎を守りに値する防人かどうかを!これは何としても解かねば、民を守る防人としての誇りとして!」

「…そんな大げさなものじゃないよ、翼お姉ちゃん。ちょっと、僕にも見せてみて」

「ああ」

 

翼お姉ちゃんが僕にも見えるように傾けてくれたおかげで、残念すぎる手紙の内容が露わになる。以下が、その残念すぎる手紙の内容だ。

 

【拝啓、つばさサン。

 

歌うの事、アズかっていたダキありがとうござイマス( ̄^ ̄)ゞあたしも調といっしょに友達のいえでの音鞠貝たの死んでキマス!(*'▽'*)

着きましては、つばさサンにお願いしたいコトがあるデス(>_<)

 

それは、歌兎の事デシ手…歌うは姉のあたシがいうのも難ですが、とても千歳な子なのデス(>_<)

ナノで、以下のことを顔つけて上げてくだ材デスm(__)m

 

一つ、木が絵はてつだって揚げて下さい。お願いしマス。

二つ、漁リは辛いモノか宙カヲ棚であげください。二つとも、歌兎の鉱物デスのでよろ昆布と思うデス。

三つ、おふ炉は一緒に入って、身体やあた間を洗って揚げて下さい。また、アガった後はかみの毛をよく吹いてあげてくだ材デス。風を弾いたら、恐いデスから。

四つ、お風呂のあトハ、濱餓鬼を詩テ挙げて星いのデス。最後のシア気磨きは絶対お願いシますデス。貴重面に見えて、歌兎はザツなのデ…そういうとコロを見て欲しいとデスよ。

五つ、錬るトキはトナリで寝てあげて星いのデス!歌うはサミシ狩り屋デスから、手をギュっと二切手あげるとイイと思うデス。

 

以上の五つの事と歌兎の麺ダウ、どうかよろしくお願いしマスデスm(__)m

Biきりか】

 

(…もう、ツッコミどころしか見つからない…。見つからないよ、姉様…。なんで、姉様は普段は素敵で頼りになるのに…こういうところは残念すぎるんだろ…)

 

僕は翼お姉ちゃんの方をチラッと見ると、手紙の一箇所を指差す。

 

「…これは【濱餓鬼】って書いてあるけど、本当は【歯磨き】って書きたかったんだと思う」

「歌兎は読めるのか?この暗号が」

「…うん。姉様が無意識に築き上げてしまった黒歴史を隣で見てきたから…」

 

姉様とねぇやたちと共に、刑務所で捕まっている時に、二課の皆様から届いた包みの中にあった“あの手紙”の存在に気づいて、『それは!それだけは見てはダメデェース!!歌兎!!』と必死になってそれを取ろうした結果、その場に居たみんなへと“あの手紙”を見られてしまった姉様の顔は、羞恥心で真っ赤にして、涙目になって後ずさり、近くにあったドアへと弁慶の泣き所を思いっきりぶつけてしまった姉様は余りにも惨めというか…可哀想だった。そして、僕は姉様の隠れた趣味(?)に愕然としたものだ。

あの時から比べたら、姉様の文章力も上がったと思っていたのだが、そうではなかったようだ…。そっとため息をつく僕の頭を何を思ってか、翼お姉ちゃんがポンポンと優しく撫でててくれた…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

一方、妹に同情されてると知らない切歌は調と友達と共に、ジェンガなるものを楽しんでいた。勝負も終盤へと差し掛かり、わざとブロックをみだしておいた策士の活躍もあり、切歌の出番となった頃にはいつ崩れてもおかしくないとこまで来ていた。

緊張のあまりプルプルと震える切歌に隣座る調が声をかける。そんな調の声援に応えるように気合を入れ直した切歌は、何故か“勢いよく”グラグラしている中心部分を引き抜くーーそれには、調も周りにいるクラスメイトもぽかーんとしていた。

 

「…ここ、行くデスよ!」

「切ちゃん、落ち着いて。そんなに緊張しなくても大丈夫。切ちゃんなら出来るよ」

「はいデス!調の期待に応えるデスよ!うりゃー!!!」

 

ドヤ顔を浮かべる切歌めがけて、ジェンガが倒れてきて、ブロックに目やら頭やらを打った切歌は涙目で周りにいるメンバーを見つめる。だが、ルールはルールはそう簡単に曲げるわけにはいかないのだ。

 

「痛タァ…デース…。ぅぅ…あかねぇ…みずはぁ…はずきぃ…しらべぇ…嫌デスよ…」

「いや、そんな目してもダメだから、キーの負け。負けだから」

「ごめんね、切歌。私もこればっかりは助けられないかな」

「暁さん、どうしてドヤ顔でそんなところを抜いたんですか?まだ、勝ち目はあったのに」

「…切ちゃん、ごめんね。私もみんなと同じで力になれそうにないよ」

「…うゔぅ…嫌デス!もう、あのトンデモ飲みたくないデス!」

 

連敗が続く切歌は目の前に置かれた凄まじい色をした飲み物をみては顔をしかめて、隣の調へと助けを求める。だがしかし、調は静かに首を横に振り、それを見て、覚悟を決めた切歌は目をギュッと瞑るとその黄土色した飲み物を一気に喉へと流し込む。

そして、一気に弾け出す様々な味覚達。切歌はカップを机へと置くと苦しみ出す。

 

「辛!?苦!?甘!?いや…これは苦い…ウプッ、かと思ったら…激甘がきたデスよ…。ヴエェ…」

 

バタバタと苦しんだ切歌は水を持ってきた調に助けてもらいながら、なんとか一命をとりとめたのだった…。

そして、そんな切歌の様子を見て、ゲラゲラ笑うこのトンデモ飲み物を生み出した元凶を一瞥すると、その元凶に向けてもうひと勝負を挑む切歌。

その後の展開は、彼女達のみが知る…。だが一つだけ分かるのは、負けたものは毎度『デデデース!!?』と言っては床へと倒れていったそうだ…




次回はこの後半戦を書きたいと思います!

安定の過保護と残念な部分をいたんなく発揮する切ちゃんはお姉ちゃんの鏡なのデス。

歌兎ならそういうと思いますよ(笑)




◎オリジナルキャラクター説明

調、切歌のクラスメイト。

伊勢野 紅音《いせの あかね》
切歌が飲んだトンデモ飲み物を作り出した張本人。とある企業社長の一人娘で、その為料理などは全然出来ずに、誤って食べてしまったものは瞬時に気絶する。

幅井谷 水羽《はばいたに みずは》
紅音とはお隣同士の幼馴染で、暴走する紅音のストッパーである。だが、殆どが間に合わない為、紅音の犠牲者は後を絶たない。

皆之富 はずき《みなのとみ はずき》
紅音作のトンデモ料理の最初の犠牲者。それがきっかけで、二人と仲良くなったが、身をもって紅音のトンデモ料理の破壊力を知ってるので、水羽と共に紅音の暴走を止めるべく奮闘する。

以上、簡単な自己紹介でしたm(__)m


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☀︎new☀︎漫談編:お泊まり会の後半戦

大変、遅くなりました…

過保護な姉様こと切ちゃんと、姉様には基本絶対服従な妹こと歌兎のお泊まり会ですが…果たして、無事に終わる事が出来るのでしょうか…?

それは神のみぞ知る事でして…誰にも分からない事なのです…


翼お姉ちゃんの家にて、ゆっくりさせてもらっているとあ

っという間に、定期的に行なっている響師匠との訓練の時間となり、翼お姉ちゃんのバイクに乗せてもらって、約束場所に着くと橙のジャージを着た響師匠が軽くストレッチをしていた。翼お姉ちゃんにヘルメットを返していると、師匠が歩いてくる。

 

「あっ、歌兎ちゃん、翼さん、こんにちは」

「…こんにちは、師匠」

「こんにちは、立花」

 

自身のヘルメットも外し、バイクへとかけた翼お姉ちゃんに師匠は頬を照れたようにかきながら話しかけてくる。それに微笑みを浮かべながら、答えた翼お姉ちゃんは僕の方をチラリと見ると遠い目をする。

 

「いやぁ〜、びっくりですよ。翼さんまで来るなんて」

「いや、私も来るつもりはなかったのだが…歌兎をここまで、私が付いて行かずに歩かせて来たとなると…切歌がな」

 

その藍色の瞳にはここには居ない僕の過保護な姉様が映っており、それには師匠も僕も頷く。あの姉様が僕をここまで歩かせるわけがない…実際、毎日僕を半分以上の距離背負って歩いているし…。

そんな事情を知る師匠は苦笑いを深くすると頷く。

 

「あはは、そう言えば切歌ちゃんって毎日欠かさずに、歌兎ちゃんを近くまで送ってくれますし、帰りにはここまで迎えに来てくれるんですよ。本当、いいお姉ちゃんですよね〜。ねぇ、歌兎ちゃん」

「…ん。僕の姉様は世界一優しくて素敵な人」

「あはは!それは私と翼さんではなくて、切歌ちゃん本人に言ってあげて、泣いて喜ぶよ、きっと」

「…ん、そうする」

 

師匠と僕の回答に曖昧だったものが確信へと変わった翼お姉ちゃんは、心の中で何あっても僕を一人で行動させないようにしようと、心に決めたのだった。

しかし、そこでふと不思議に思う事があったらしく、僕と師匠へと視線を向けると問いかけてくる。

 

「うむ、やはりな。だが、何故、行きだけはここまで来ないのだろうか?」

「…それはシラねぇに怒られたから…じゃない、かな?」

 

僕が思い浮かぶ人物を上げると、それに師匠と翼お姉ちゃんも二人揃って意外そうな顔をする。だって、その人は僕の次…いいや、僕よりも姉様のことを理解して、信頼を寄せている人だったから。

 

「調ちゃん?なんで?」

「…姉様が余りにも僕を甘やかしすぎるから」

「あぁ…」「なるほど」

 

僕が理由を言うと、師匠と翼お姉ちゃんは同時に深く頷く。

当時の僕も姉様がシラねぇに怒られないようにと頑張ったものの、慣れというか…人というものはやらなくなったものに関して、どうも感覚が鈍ってしまうみたいだ。シラねぇ監督の元の一般生活の試験を行ったものの、掃除・料理・洗濯・買い物・着替えのどの項目は散々な結果となってしまった。

それをみたシラねぇ・マリねぇ・セレねぇの三人は事の重大さを重く受け止め、僕の一般生活スキルの上昇と姉様の妹離れへと勢力を向けているが…僕の方はまだしも、姉様の妹離れはもう手遅れかもしれない。だって、姉様の過保護が最近ではマリねぇにも移ってしまって、僕を二人して甘やかすのだから…。

でも、そんな過保護な姉様・マリねぇも僕のことを思い、敢えて厳しくしてくれるシラねぇ・セレねぇも僕はみんなみんな大好きだ。

だから、そんな四人の期待には答えたいと思っている。

 

「マリアさんだけじゃなかったんですね」

「あぁ、切歌の意識改革から始めようと、月読も頑張っているのだな」

 

師匠と翼お姉ちゃんが微笑み合うのを見て、僕も笑う。だがしかし、ある事を思い出して、苦笑い浮かべてしまう。

 

「…でも、姉様。シラねぇが居ないところでもいつもと変わらないから…」

「うん、まぁ…それこそ切歌ちゃんって気がするね」

「あぁ、切歌が過保護でなくなったならば…少し物足りない気がするかもしれないからな」

「…ん」

 

そのあと、三人で笑いあい、僕と翼お姉ちゃんも待っている間暇だからということで、師匠との特訓に精を出していった…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

空が暗くなり、あたしと調は紅音たちと共に、お風呂に入っていた。騒いでいる四人よりも一足早く上がったあたしは、自分の布団を引きながら、思うは妹のことだ。

ちゃんとお風呂に入ったのだろうか、着替えはちゃんと出来ているのだろうか、ご飯はしっかり食べたか、響さんとの訓練で期待に応えようと無理はしなかったのか、考え出せば何十個も上がる心配事に、思わずパジャマの中に右手を突っ込むと中から黄緑色の携帯端末を取り出す。

だが、この豪邸・伊勢野家へ向かう途中に調にしつこく、このお泊まり会が終わるまでは歌兎へと連絡しないと約束している。それを破るとどうなるか…だがしかし、歌兎のことが心配でならない。

あたしは決意を固めると携帯端末から【大好きな妹・歌兎】を電話帳から探し出すとビデオ通信を押す。

 

「うぅ…デスが、調には歌兎に電話をしてはいけないと言われたけど…凄く気になるデスよ…。ちゃんとご飯食べたのかとか、お風呂の入ったのかとか、歯磨きは隅々までしたのかとか…気になるとキリがないのデスよ!」

 

(これは…あたしの不安を取り除くためにするのデス。そう、決して歌兎のお泊まりを邪魔しようとか…そんな気はさらさらないのデスよ。良しっ、そうと決まれば、こっそり、歌兎に電話するデェース!)

 

プルプルプル…と三回コールが鳴った後、あたしが呼び出していた相手が出る。

眠たそうに半開きした黄緑色の瞳が画面に映るあたしを見ると、目をまん丸にする。水色が入った銀髪がしっとりとしているように見えるのは、数時間前にお風呂に入っていたからだろう。

久しぶりに見る妹の顔に、あたしはニコニコと満面の笑顔を浮かべる。それを見た画面の向こうの歌兎もニコリと笑うと頭を下げてくる。

 

『…こんばんは、姉様』

「こんばんはデス、歌兎!」

 

歌兎に挨拶に元気よく答えるあたしに、歌兎はキョロキョロとあたしの周りを見ると小首を傾げる。恐らく、調が居ないことを不思議に思っているのだろう。

 

『…こんな遅くにどうしたの?シラねぇとお友達は?』

「調は紅音たちとお風呂デスよ」

『…そうなんだ、姉様は?』

「はい、先にお邪魔させてもらったデスよ。ほら、この通りデス」

 

画面にいる歌兎へとまだ水気がある明るい金髪を見せると、クスリと笑った歌兎が注意してくる。その注意に関して、胸を叩いて答える。あたしの答えに納得した様子の歌兎は携帯端末を置くと、身振り手振りで翼さんのお風呂の話をしてくる。その嬉しそうで楽しそうな顔を見ていたら、胸へとなんとも言えない気持ちが湧き上がってきて、あたしは知らぬうちに、ぷくーと頬を膨らませていた。

 

『…ちゃんと髪の毛拭かないと風邪ひいちゃうよ?』

「それに関しては大丈夫デスよ!後で、調に乾かしてもらうデス」

『…なら、良かった。僕もさっき、翼お姉ちゃんと入ってきたんだよ。お風呂、すっごく大きかった!足を伸ばしても付かないんだよ!」

「へぇ〜、そんなんデスか」

『…姉様?…何か、怒ってる?』

「別に〜ぃ、歌兎が楽しそうならそれで良かったデスよっ」

『…?』

画面の向こう、キョトンとしている歌兎に頬を膨らませていると、後ろから物静かな声がかけられた。それにビクッと肩を震わせるあたし。

ゆっくりと振り返ると、薄桃色のパジャマを着ている調と紅音たち三人がタオルで頭を拭きながら、部屋へと入ってくるところだった。

それに、冷や汗が頬を流れるのを感じたあたしは手に持った黄緑色の携帯端末を背中へと隠す。それを眼ざとく見ていた紅音に茶化され、あたしは思わずそれを口にしてしまう。

 

「…切ちゃん、誰かと話してるの?」

「!?調!?」

「おっ!キーってば、浮気かぁ〜?これは、シーが怒るっしょ」

「ちちち、違うデスよ!これは妹デス!浮気なんて…っ」

「ジィーーーーーーーーーーーーー」

 

滑らせてしまったセリフをしっかりと聞き取った調は“ジィーー”と責めるように、あたしを見てくる。それに、焦ったあたしは言い訳じみた事をいい、それによって更に調の無言のプレッシャーがあたしへと降りかかってくる。

 

「…あっ、やば…っ。ちちち、違うんデスよ…調…。これはデスね…、その…訳がありましてね…。どうしても、歌兎が心配で心配で仕方なかったんデスよ…本当に…それだけ…デ…スから……うぅぅ…」

「ジィーーーーーーーーーーーーー」

「痛い…痛いデスよ、調。視線が…痛い…胸をえぐるデス…。…ごめんなさいデスから…許してほしいのデス…。約束を破る気は…これっぽっちも…」

「ジィーーーーーーー。本当にそう?あの時の切ちゃん、すごく不服そうな顔してたよ?」

「うぐっ…あたし、別にそんな顔してな…」

「してた。切ちゃんは分かりやすいから、すぐに分かるの」

「ごめんなさいデス、確かに調が居ないうちに歌兎に電話しようと思っていたデスよ…」

 

正座をして自白するあたしの右手首を掴んだ調は、あたしを連れて、廊下へと出ようとする。その際に、黄緑色の携帯端末を落としてしまって焦るあたしのことを気にせずに、ぐいぐいと引っ張ってくる調にあたしは涙目を浮かべる。

 

「はぁ…やっぱり。切ちゃん、ちょっとこっち来て」

「へぇ?あっ、ダメデスよ!?スマホっ!スマホが!?調!歌兎が…歌兎が晒し者になるデス!?」

「すぐに済ませるから、早く来て。ちょっとだけお説教」

「怖い!調のその言葉がすごく怖いのデス!!歌兎、助けてください!!」

『…姉様?姉様が居なくなっちゃった…それに姉様の悲鳴が聞こえたような…?』

 

あたしが落としていった携帯端末へと紅音たちが群がる。いきなり、知らない人が映し出され、びくっと肩を震わせる歌兎を見て、黄色い声を上げる紅音たち。

 

「これが噂の妹さん?本当に切歌に似てないっ!すっごくかわいいぃ〜」

「どれどれ、私も見せて!おぉっ!本当、かわいい!キーより小さいんだね〜」

「それは妹さんの方が年下なんだから…そうなんじゃ…」

「はずきも見て見なって。すっごく可愛いのよ」

 

紅音と水羽に促され、歌兎を見たはずきは頬を綻ばせる。確かに二人が言う通り、可愛らしい外見を持った少女がキョロキョロと三人を見つめていた。そして、ある事を思い出したのか、ゆっくりと頭を下げてくる。

 

『…僕の姉様と調お姉ちゃんがお世話になってます。僕、暁 切歌の妹の暁 歌兎というものです。僕の姉様が皆様へと迷惑かけてないですか?』

「「「……」」」

『…あれ?皆様?僕…変な事言いました?』

 

本当に画面に映るこの少女が、あの常識人を保てぬほどの非常識100倍の大大スマイルぜんかーい!なクラスメイトの妹と言うのだろうか?

それにしては、雰囲気や性格とかも正反対な子だ。ぽかーんと自分を見つめる六つの瞳に歌兎はあたふたとしている。

そんな軽いカオス空間を生み出す四人の中に、調からのお説教を終えたあたしが帰ってきた。ガラッと扉を開けて入ってくるあたしと調へと振り返ってきた三人は口を揃えて、失礼な事を言ってくる。

 

「うぅ…酷い目にあったデスよ〜。調もそんな怒らなくてもいいじゃないデスか…」

「私に怒られるような事をした切ちゃんが悪い。約束は

「…ごめんなさいデス…」

「「「ねぇ、本当にこの子。君の妹?」」」

 

その失礼な言い分にあたしは三人から黄緑色の携帯端末を取り上げると顔を真っ赤にして怒る。怒るあたしのセリフにシンクロした動きで右手を横に振る三人。

 

「帰ってきて、突然口を揃えて、なんて事言いやがるデスか!失礼デスよっ!みんなしてなんなんデスか!どっからどう見ても、あたしの妹デスよ!目元とか雰囲気とか似てるでしょう!」

「「「いやいや、正反対でしょ」」」

「むきぃー!誰がなんというと、歌兎はあたしの妹デス!大体、あたしと歌兎の何をあなた達が知ってるというデス!」

「いや、知らないけど。性格真反対に、姉がこれって…あっ、なるほど。この姉だから…」

「水羽、それ以上は言うもんじゃないわ。キーも薄々は気づいているのよ」

「なんデスか!!その言い分はっ!紅音と水羽の言いたい事はあたしには分からないデスよ!!」

 

顔をトマトのように真っ赤にしたあたしへと右手に持った端末から歌兎の声が聞こえてくる。その声は悲痛な響きを秘めており、あたしはあたふたと言い訳みたいな事を言うと笑う。

 

『…姉様、怒ってるの?僕、怒った姉様嫌いだよ…。笑った姉様が好きだから、笑って…ね?』

「「「……」」」(((何この子…可愛くて、健気…))

「うっ…歌兎、違うんデスよ…あたしは怒ってないデス。ないデスから…そんな顔しないでください…」

「私から見ても大丈夫だよ、歌兎。切ちゃんは怒ってない」

 

調のサポートもあり、なんとか機嫌を直したらしい歌兎へと見知った声がかけられる。芝居のかかった凛とした声と共に現れた藍色の髪を背中に流している女性・翼さんは歌兎が持っている端末へと視線を落とすと微笑む。

 

『…そう?なら良かった…』

『歌兎?誰かと話しているのか?』

『…あっ、翼お姉ちゃん。ごめんなさい…うるさかった?』

『いいや、私もちょうど起きて、水を飲もうと思っていたところだ。電話の主は切歌か?』

『…ん、友達の楽しそうにしてた。みんないい人みたいで、僕も安心してる』

『ふむ。それならよかった』

 

ほっそりした右手が歌兎の水色の入った銀髪を撫でている。それを目を細めて、受け入れている歌兎の嬉しそうな顔を見ているとあたしの顔が段々と険しくなっていく。それを隣で見ていた調が声をかけてくる。

 

「…」

「切ちゃん、顔が怖いよ。そんな顔しなくても大丈夫。翼さんがそんな事しない。それにそもそも、切ちゃんが一緒に寝てほしいって言ったんだよ?」

「…分かってるデスよ。デスが…なんて言うんデス、ここがモヤァ?…雲がかかったみたいですっきりしない感じなんデスよ…」

『こんばんは、切歌、月読。楽しんでいるか?』

 

そんなあたしへと翼さんが声をかけてくる。本当に寝ていたらしく、いつもは剣の如く鋭く尖った光を放つ藍色の瞳が普段以上に暖かい光を宿している。そんな翼さんへとあたしは頭を下げるとお礼を言う。それを軽く手を振って、気にしなくていいと笑う翼さんは本当にいい人だ。

 

「こんばんは、翼さん。はい、切ちゃんと一緒に楽しんでます」

「翼さん、歌兎のこと面倒見てくれてありがとうございますデス」

『いいや、気にしなくてもいい。私も普段は一人で寂しいが、歌兎が来てくれて、久しぶりに楽しい一日を楽しませてもらったよ』

「それならいいデスが…」

 

その後、翼さんも交えての雑談を2時間くらいして、あたしは調の横で眠りについたのだった…




そして、翌日は大雨が降る中、ずぶ濡れで帰ってきた切ちゃんはその後大風邪を引いたそう…。そして、歌兎は風邪が移るといけないので、ということでもう一泊翼さんのところにお泊まりをしたそうです。




今回出てきた用語説明

【月読 調、監督の元行われる一般生活試験】
月一か年一で行われる暁 歌兎をダメ人間にさせないために行うことになった試験。
その科目は《掃除》《洗濯》《料理》《買い物》《着替え》の五つで、一科目の合格ラインは8。
だが、今回行われた試験にて、歌兎は全ての科目を3か1という散々な結果を残してしまい、歌兎の一般生活スキルの低さに事の重大さを知った調・セレナ・マリアはそれぞれの方法で歌兎のスキル上げの手伝いをしている。

→なんで、試験官を調にしたのかというと…F.I.S.組の『おさんどん』担当という事と、私個人の感想ではあの四人の中で一番、家事をこなしてそうと思ったからです。

因み、10〜1の評価欄は下の通りです。
10・・・パーフェクト。最早、達人レベル。文句無し。
9・・・生活していける上に、細やかな気遣いができている。
8・・・普通に生活出来るレベル。
7・・・抜けているところはあるもの、生活は出来る。
6・・・手伝わなくても一人で出来るが、あっちこっちに汚れが溜まっており、一人前とはとても言えない。
5・・・手伝って、何とか時間内に全部が終わる程度。
4・・・手伝って、何とか二分の一が終わる程度。
3・・・手伝って、何とか三分の一が終わる程度。
2・・・一人で生活はやばいレベル。
1・・・動くだけで汚れ、片付けようとすれば逆に汚れる。

また、今回の歌兎の結果が
《掃除/3》《洗濯/3》《料理/1》《買い物/1》《着替え/1》
です。


以上、用語説明でしたm(_ _)m


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漫談:師匠と訓練

大変、お待たせしております…本当にすいません…(汗)

漫談編のお泊まり会が想像以上に思い浮かばず、また翼さんの私生活のイメージが全く思い浮かばないので…ここまで、時間が経ってしまいました…本当にすいません…(汗)

そのお泊まり会の話と、残りの12、13話が完成するまで…作者が終わるまでに書いておきたかったほのぼのな漫談編、少しシリアスな漫談編をお楽しみください…

*今回はかなり少ないです…


一ヶ月絶対安静から、やっと解放された僕は約束通り、響お姉ちゃんに稽古をつけてもらうために指定された公園へと来ていた。

ヨイショ、ヨイショっと背中に固いでいる花青緑のリュックサックを右左と揺らしながら、公園へとついた僕をニコニコ笑顔の響師匠が出迎えてくれた。そして、僕が背負っているリュックを見て、唖然。そんな響師匠を見つめながら、僕は首をかしげる。それに響師匠はツッコミを入れる。

 

「…お待たせしました、師匠」

「ううん、私もさっき来たところだから、大丈夫…って、えぇええええ!!!?」

「…?」

「いやいや、歌兎ちゃん。そこで頭をかしげるところじゃないからね!?」

「…そうなんですか?」

 

響師匠にツッコまれて、僕は改めて姉様にコーディネートされたうさ耳付きジャージと半強制的に持たされた中身が満タンのリュックを見て、また首をかしげる。

それに響師匠は呆れを通り越して、苦笑いを浮かべると僕へと話してくる。

 

「そうだよ!ツッコミどころが多すぎでびっくりだよ、私。もしかして、そのリュックを準備したのって…」

「…姉様です」

「だよねぇ〜。だと思った!想像通りすぎて、私はびっくりだよ。切歌ちゃんはブレないね」

 

そう言うと、「あはは」と明るい笑い声をあげると僕へとリュックの中身を問いかけてくる。

僕は地面へとリュックを下ろすと、師匠共に中身を確認していく。

 

「それで、そのリュックの中には何が入ってるのかな?」

「…僕も分からないんです。姉様に持っていくように言われただけですので」

「なんだろ。私だけかな?嫌な予感がするのは…」

 

顔が強張ってくる師匠と顔を見合わせた僕はリュックの中をガサゴソと下がると手に当たったものを引っ張り出す。僕の手に合う形のそれを見た師匠の頬を冷や汗が垂れ落ちる。

 

「…これは?」

「…なんで、スタンガンなんて入れてんだろ…切歌ちゃん」

「…師匠、これは知ってるの?」

「…うん、知ってるけど…歌兎ちゃんは知らなくていいかな。他には何が入ってる?」

「…?」

 

僕が握っていたそれは師匠の手によって回収され、僕は首を傾げつつもリュックからものを取り出す。

そして、出てくるわ出てくるわ、過保護な姉様による重すぎる愛が多く詰まったものたち。それには、僕も師匠も苦笑いしか出てこない。

 

「えっと…入れてあって分かるのは、汗拭きタオルと着替えの服かな?この際、1日だけの練習でタオル5枚は多すぎとか、着替えの服が何故ジャージとか動きやすいものじゃないの!?ってツッコミは無しとしよう」

「…はい、師匠。しかし、なんで、姉様。缶詰めとか果物ナイフとか入れてるのかな?他にも、一週間ぐらい遭難しても暮らしていけるくらいのものが揃ってる…」

「…歌兎ちゃんの上げてくれたもので、切歌ちゃんが抱いてる私へのイメージがひしひしと伝わってきたよ…」

 

項垂れる師匠はパチンと頬を叩くと、僕と共に練習へと性を出すのだった…




そして、そんな二人を木の陰から見ている三人の影があった…


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12)世界を包むは光とほのお。

連続更新第二弾、最初の12話ですが…私の妄想爆発の、めちゃくちゃ展開が続くので…

読者の皆さん!ついてこれる奴だけついてきてください!!

というわけで、12話をどうぞ…


鮮やか赤で描かれた魔法陣の中、胸の真ん中に大きな穴を

開けた少女が寝かされている。床へと散らばっている水色が入った銀髪はどす黒い血色で染められており、サラサラだった感触は重ね塗りされた血液のせいで、ガサガサになっていた。

そんな少女が寝かされている魔法陣の周りへと膝跨いだウェル博士とその他のチルドレンたちは、博士の命令により、ついにその作戦を開始する。

 

「さぁ、僕のチルドレンたちよ。今こそ始めようではないか!我らの作戦を!」

「イエス、ファザー」

 

号令により、パッと散らばったウェルチルドレンは床に描かれた魔法陣へと両手をつく。

そして、口を揃えて、呪文を言うと真っ赤な魔法陣が鮮やかな光をおびていく。光が強くなる一方、ウェルチルドレンたちは苦悶の表情を浮かべるが、呪文を止めようとはしない。苦しみで顔を歪め、全員が口を揃えて、下の文章を口にする。

 

「trocken himml heilen regen」

 

途端、魔法陣が眩い光を放ち、床へと両手をついているウェルチルドレンたちはその光に巻き込まれ、跡形もなく姿を消すーー彼らがついさっきまで着ていた服だけは無残に床の至る所に散らばり、それを見ていたウェル博士は身体をそらすと大声で狂ったように笑う。

 

「…ふふふ、ファーハハハハハ!!!遂に…遂に、この僕がこの世界を救う英雄に…いいや、神へとなるのだ!!」

 

魔法陣の周りにあるさっきまで自身の子供達が着ていた服を煩わしそうに蹴飛ばすと、ウェル博士は白衣を揺らしながら、魔法陣の中にいる少女へと視線を向ける。

すると、少女の胸に大きく開いた穴はみるみるうちに塞いでいき、自身の血痕で薄汚れていた水色の入った銀髪は眩い光を放つ金髪へと色を変えていく。

 

「おぉ…美しい…。美しいです、我が神」

 

ウェルは惚けたようにそう言うと、意識せずに腰をおると、今か今かと目の前で眠る少女の目覚めを待っていると、少女は瞼が僅かに揺れては、小さな唇が聞き逃しそうなほど小さい声を漏らす。

 

「…むぅ?」

 

身体を起こした少女は辺りを見渡す。

スゥーと細められた様々な色が混ざる瞳は強い意志と深い慈愛で満ちており、ウェル博士はその見るもの全てを魅了する魅力を持つ視線を恍惚とした表情を浮かべる。

そんなウェル博士の方へと視線を向けた少女はそこで、自分の横にひざまづいているウェル博士を見つけ、その唇をゆっくりと動かす。

 

「…余を呼んだのは主じゃな?」

「えぇ、その通りでございます、我が神」

 

大仰に頭を下がるウェル博士を見つめる少女は、ウェル博士のセリフを聞き、自虐的な笑みを浮かべる。そんな少女へとウェル博士は興奮したように血走った瞳で少女へと言い寄る。

少女はそんなウェル博士を品定めをするように見ると、床に散らばる服を見る。

 

「ふ、神じゃと…余はそんなたいそうな者ではないのじゃがな」

「いいえ、そんなことはありません。我が神は多くの能力を…人知を超えたものをお持ちではないですか!そんな力を持つ貴方様を神と言わずして、なんと呼びすれば良いか!」

「…そうか。主がそこまで言い、そう思うのであらば、そうすれば良い」

「有難きお言葉です、我が神」

「なぁ、主よ。聞くが、ここに散らばっている衣は主のか?」

「はい。こんな散らかった場所にお呼びしたこと、恥ずかしく存じます」

「…いいや、構わぬ。下らぬことを聞いたのじゃ、忘れてくれ」

 

そこで少女は目の前の男を興味無げに見ると、床へと手をついて立ち上がると、建物の外へと歩いていこうとする。そんな少女の前へと回り込んだウェル博士はまたしても、頭を下がると自身の望みを言う。

 

「お待ちください、我が神」

「どうしたのじゃ?」

「…大変、言いにくいのですが…貴方様をこの世界へと蘇らせた僕へと何かをご褒美を」

 

そう言うと、ウェル博士へと眉をひそめた少女はすぐにその表情を緩めると首を横に振る。

 

「いいや、済まぬ。余こそ忘れておった、すまぬな」

「いいえ、僕こそすみませんでした」

「ならば、言うといい。主は余へと何を願う?」

「叡智を。この世界を統べる叡智を、私|わたくし|へと」

「…そんなので良いのか?」

「えぇ、その為だけに。僕は生きてきたのですから」

 

少女はウェル博士は願いに深く頷く。そして、ひざまづくウェル博士へと右手を伸ばす。

 

「そうか。ならば、主へとは叡智を与えよう」

「ありがとうございます」

 

少女は目の前で腰おる男のおでこへと人差し指を置くと、小さく何かをつぶやく。

途端、恍惚した笑みを浮かべていたウェル博士の表情が歪む。

 

「…ッ!ガァッ」

 

地面へとひれ伏せ、頭を抑えて苦しむウェル博士は見るも無残な表情をしていた。血走る瞳は何かに慄くように小刻みに揺れ、整っていた顔は複数の血管を浮き上がらせ、口元からはよだれが顔を濡らし、地面へと垂れていく。

そんな哀れな姿を披露する男を一瞥した少女は神々しく光る瞳を細めると吐き捨てるように言う。

 

「余はほら吹きは嫌いでのぅ。それが主が奪ったものと同等の痛みじゃ、ありがたく受けとると良い」

 

煩わしそうにウェル博士を見た少女は窓へと歩み寄る。

そして、各所を燃やし尽くす業火を見るとその瞳へと愁いを浮かべる。

 

「これも紛い者な余の罪か…」

 

と寂しげに呟き、建物の外へと歩き出すのだった…

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「いやぁ!!」

「たすけて、中にまだ子供が!私の子供がいるんです!」

「退けろよ!」

「くそっ!足が動かねぇ!」

「死にたくない…死にたくない…。死にたくないよ!!」

 

禍々しい青紫色のオーラに支配された暁 切歌を止める為に追いかけてきた奏者三人が見たのは、まさに地獄であったーー街の至ることに上がるは、ほのお、ホノオ、焰。ひめい、ヒメイ、悲鳴。どせい、ドセイ、怒声。

紅い焰がそこに住まう人を燃やしては、崩壊している瓦礫が逃げまどう人たちの邪魔をしては、迫り来る焰が幼い子供までも焼き殺す。奏者三人の周りには、焰によって焼き殺され、墨のように真っ黒になった大中小様々な遺体が積み上がっている。その周りには衣服に燃え移り、紅い焰によって徐々に命を削られていく人々の姿があり、響はそれを見るとギュッと拳を握る。そんな響のセリフに続くのは、セレナと調でどちらも目の前の光景を作り出したのが、あの切歌とは信じられないでいた。

 

「…ッ!こんなことを切歌ちゃんが望んでるって言うの?」

「そんなわけないです!あの暁さんが!こんなことを望むわけがないっ!」

「だから、私たちが切ちゃんを止めないと」

 

其々が自身のアームドギアを握りしめると、奏者たちはまずは逃げ遅れている街の人たちを救助する。そして、街の人を救助した後は、今だにこの街を破壊するのに留まっているであろう暁 切歌を探す。

すると、そんな三人の前へと禍々しい青紫色のオーラに纏われた暁 切歌が姿をあらわす。崩れ落ちたビルの上に立っている切歌は真下にいる奏者達を一瞥すると低い声で威嚇する。

 

「居た!切歌ちゃん」

「探しましたよ、暁さん」

「ねぇ、やめよ、切ちゃん。こんなこと、切ちゃんは望んでないよ」

「…オマエタチニアタシノキモチガワカルトイウノカ?コノヒダリテデサイアイナルモノノイノチヲウバッタコトキモチガ…ワカルトイウノカァアアアア!!!!!」

 

少し垂れ目な瞳を極限まで吊り上げて、金切り声をあげた切歌は近くにいる響へと蹴りを食らわす。それを何とか受け止めた響は切歌の足首を掴むと、睨みつけてくる青紫色の瞳を真っ直ぐと見つめる。

 

「ねぇ、切歌ちゃんやめようよ。調ちゃんが心配してるよ、切歌ちゃんのこと。聞こえてるでしょう?調ちゃんの声」

「…シラナイ、キコエナイ、ソンナモノ」

「調ちゃんだけじゃない。私もセレナちゃんも他のみんなも心配してる。切歌ちゃんのこの力はこんなことをするために使う力じゃない」

「…ウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイィイイイイ!!!」

 

響が掴んでいる別の脚とは違う脚で回し蹴りした切歌は、攻撃を食らった響が後ずさるのを見ると、ぴょんぴょんと三人から距離を取ると、地面へと両脚、両手を付くとグルルルッ…と獣のようなうなり声を出す。

響は二人の前に進み出ると愛弟子と同じ構えを取る。それを見た切歌が尖った八重歯を見せると響へと飛びかかる。

 

「どうしてもやるっていうなら仕方ないね。私がぶん殴ってでも貴女を止めるよ!切歌ちゃんっ」

「ウルサイ!ダレモアタシノジャマハサセナイ」

「させませんよ、暁さん」

 

白銀に光る剣を引き抜いたセレナが突っ込んでくる切歌へと降り注ぐ短剣の雨を食らわせる。それの雨の中を合わぬスピードで駆け抜けた切歌は肩などから血を流しながらも、グルッとセレナの方へとふりかった切歌は青紫色にギラリと輝く瞳で睨みつける。

 

「くっ、なんて早いの!」

「セレナ、危ない!」

 

響から攻撃してきたセレナへと攻撃対象を変えた切歌からセレナを守る為に調が髪の先についている回転式ノコギリを二つ重ねると凄まじい形相で迫ってくる切歌の攻撃に備える。いつの間にか、手に持った炎の剣で調の回転式ノコギリを力づくで切り裂く切歌を調は苦悶の表情を浮かべながら、セレナと響を守る。

 

「シネェエエエエ」

 

崩れ始めた調の防御を見て、切歌はトドメとばかりに炎の剣を刃が桃色な回転式ノコギリへと振りかざす。そして、弾け飛んだ調へと剣を振りかざす瞬間、切歌をミサイルと銃弾が降り注ぐ。

びっくりする調を青い疾風が抱き抱えると響とセレナの所へと戻ると、ゆっくりと地面へと下ろすとキリッとした様子で前方を見つめると自身のアームドギアを構える。そして、そんな青い髪をなびかせている女性の横には同じく桃色の髪のなびかせている金色の槍を持つ女性が並ぶ。

響、セレナ、調はそんな頼もしい三人の名前を呼ぶ。

 

「翼さん!」「姉さん!」「クリス先輩!」

「ーー」

 

喜ぶ三人を遠くから見ている切歌の出方をジッと見ている赤いギアがよく似合う白銀の髪を赤いシュシュで括っている少女は切歌を睨むと低い声で呼びかける。

 

「あたしがいねぇー間に、ずいぶん物騒な事を言うようになったんだな、お前」

「雪音の言う通りだ、切歌。貴女にそのような乱暴な口調は似合わない。まぁ、雪音なら似合うかもしれぬがな」

「最近、先輩はさりげなくあたしをディスりにくるよな!?あたしがなんかしたかよ!?」

 

炎の剣を振りかざし、クリスへと攻撃を仕掛ける切歌を愛刀で受け止めた翼も暴走を止めようと切歌を呼びかけるが、切歌はその青紫色の瞳を厭忌と忿懣の炎で埋め尽くされており、マリアはそんな切歌へと攻撃を仕掛けながら、クリスへと呼びかける。

 

「クリス。切歌の攻撃はまだ続いてるわ。集中して」

「わーってるよ。くそっ!何がどうなってやがる…。おっさんに言われてきてみれば、あのチビはいねぇーし、こいつは暴走してるしで…なんか、胸くそ悪りぃな」

「…それは誰も同じだ、雪音。だが、こんな切歌を放っていれば、この街の二の舞になる街が必ず現れる」

「えぇ、そうね。必ず、私たちが止めないと…三人とも、まだ行けるかしら?」

 

後ろに振り返ったマリアに問われた三人は立ち上がると、響は拳を。セレナは白銀の剣を。調は髪の先に着いた回転式ノコギリを。それぞれ構え、切歌へと攻撃を仕掛ける。

クリスがミサイルをありったけ放つと、よろめく切歌へと特攻を仕掛ける響の後ろから翼が迫り、切歌へと愛刀を振るう。そんな三人が見せる見事なコンビネーションに思うように攻撃出来ずに苛立ちの表情を見せると切歌へと、今度は後ろから調が迫り、切歌から離れた三人がいた所へと白銀の雨が降り注ぎ、攻撃の手を緩めた切歌へと今度は金色の槍が迫る。

六人の攻撃にダメージを貯めていく切歌は、遂にその場へと肘をついてしまう。そんな切歌を取り囲む奏者たちへと不気味な笑い声が聞こえてくる。

 

「ふふふ、ファーハハハハ!!!」

「ウェル博士!?」

「何しに来やがった」

「何をしに?それはそこにいる獣の回収のためですよ!」

 

クリスの質問に答えたウェル博士は、一瞬で切歌の元へと降り立つと、その体へと触れては、また姿を消す。

驚く奏者たちの後ろに姿を合わしたウェル博士は、両手が酷い感じになっており、右手に掴まれている切歌は何かただならぬ気配を感じて、ウェル博士から逃げようとしている。だが、そんな切歌を掴んで離さないウェル博士は大きな声である者を呼ぶ。

 

「どこかにいるのだろう!神へのなりそこない!!僕は今ここにいる獣と合体して、この世界を火の海に変えてやる!それを阻止したいなら…僕の前へと姿を現してみろ!!」

 

喚くウェル博士に唖然とする奏者たちのすぐ近くへと、ウェル博士が呼び続けていた者が姿を現わす。

奏者たちはその者を驚愕の表情で見ている。何故なら、彼女らに知り合いによく似ていたからだ。そのものを見て、驚いていたのはウェル博士に捕まっている切歌も同じだった。

自分とウェル博士をキリッと睨むは、神々しく様々な色が混ざった瞳は少し眠たそうに開かれ、華奢な身体を包むは白と花青緑が入った和服であった。そして、小さな唇が紡ぐは切歌が最も聞き慣れた可愛らしい響きを持つ声音で、今はその声を堅苦しいものへと変えて喋っている。

 

「用は何じゃ?ほら吹きよ」

 

芝居のかかった声でそう言った和服姿の少女は、血走った目でこっちを見てくるウェル博士を煩わしそうに見ている。

 

「やと、お出ましか、なりそこない。お前のせいで、僕の計画は失敗だ!この責任、どう取ってくれる!!」

「はぁ…そんな愚痴を聞くために、余はここにきたのかのぅ。正直言って下らぬ。もう良いか?余はすべきことがあるのでな」

 

身を翻し、その場を去ろうとする少女へとウェル博士が右手に持った切歌を少女へと見せる。それに片眉をあげる少女。

 

「待て、お前はこれを取り戻しに来たんじゃないのか?」

「…何故、余がそんな者を欲しなくてはならぬ」

「お前の大好きな姉様だからだよ。その姉様をこうすると、貴様はどうな顔をするかなぁ〜」

「…言いたいことはそれだけか?」

 

切歌をわざと握りつぶすような仕草をするウェル博士に、少女が冷たい声を投げかける。それに確信したウェル博士は取引とばかりに、あることを少女へと提案する。

 

「…こいつをお前へと渡す代わりに、僕へとお前の力をすべて分け与えろ!」

「はぁ…、主はまだそんなことをほざいておるのか?そんなものを持っても事態は変わらぬ」

「…じゃあ、どうすればいい?」

「そんなのわかりきっているだろう?主の胸に両手を置いて考えてみるとよい。主は今まで多くの人を物のように扱い、痛めつけてきた。そんな主へと余でなくとも誰が力を貸すというのじゃ?

今まで痛めつけてきた者たちへの謝罪を聞いたら、力を貸すかもしれぬがな」

「舐めるなぁあああ!!!!!このなりそこないがぁあああ!!この僕が英雄へと…この世界の神になるのだ!お前ではなくて、この僕がァ!!」

「愚かじゃな。そんなくだらぬ望みの為に、そんなに早く死に急ぐと申すか?主は」

「言ってろ!僕にはこいつがいるんだ!こいつと一つとなり、僕はお前をも飲み込み、この世界の覇者となる!」

「下らぬな」

「強がってられるのも今のうちだ!僕にはこいつがいる!」

「…そんなもの、余の前では木で出来た盾に過ぎぬ。余には余計な感情など要らぬし、無いのじゃ」

 

そう言った少女は手にいつの間にか持っていた鉄扇を構えると、凄まじいスピードで迫ってくるウェル博士の攻撃を優雅に交わす。そして、隙を見せたウェル博士を地面へと落ちていた炎の剣を拾うと、右手持った“切歌”もろ共斬り捨てる。

バタンと鈍い音がした後、奏者たちの悲鳴が聞こえてくる。それを聴きながら、少女は無情にもまだ息しているウェル博士へもトドメを刺す。

 

「言ったであろう?そのような者、余の前では木で出来た盾にも等しいと」

「くっ…そ……、ぼくの…やぼう…が……」

「安らかに眠るとよい、ほら吹き」

 

振り返ってくる少女へとクリスが目を吊り上げながら、少女の胸ぐらを摘もうとするがそれをあっさりとかわされてしまう。

 

「…お前、自分の姉をあんな簡単に…」

「……」

「おい、聞いてるのかよ!」

「…此奴はあまりにも多くの命を奪った…。死しても、その罪は償えないやもしれぬ」

 

クリスの怒りの声を目をつぶって受け止めた少女は、地面に大きな血の水たまりを作って息耐えた黄緑の服に身を包み、明るい金髪をショートヘアーにしている少女を一瞥する。

 

「…だから、殺したっていうの?切歌ちゃんを!」

「そういう主らも此奴を攻撃しておったではないか?何故、余ばかりを責めるのじゃ?」

「……」

「黙るということは、主らも悪いことをしたと思っておるのではないか」

 

奏者たちから離れて行く少女の肩を響が掴む。

 

「だとしても!私はあなたのやり方は間違ってると思う!」

「ならば、どうする?余を殺すか?」

「…それは…」

 

少女の投げかけに固まる響を奏者たちの方へと放った少女は、空へと浮かぶと世界に響くほどの声で叫ぶ。

 

「ならば、そこで聞いておると良いのじゃ、人間たちよ!」

 

目を瞑り、両手を広げた少女はスゥーと息を吸い込むと、ゆっくりと目を開けると真下にいる奏者たちを見下ろす。

 

「これが余の歌じゃ。この世界を…ここに住まう者たちへと向けた余の、な」




さて、歌兎によく似た…といっても、彼女なわけですが(苦笑)
そんな彼女が歌うのは、この世界を壊す歌でしょうか?それともーー

それはこの後の最終話で…

また、戦闘シーンがショボくてごめんなさい…。また、相変わらずのめちゃくちゃ展開…なんど、頭を下げればいいか…


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完)歌ううさぎ。

最終話はいきなり歌うよ〜



10/20〜誤字報告、ありがとうございます!

10/21〜誤字報告、ありがとうございます!


「Ciel humain voir schatz lac,

mensch voir wasser,

fame ogre voir sang,

pesce vedere maison come」

 

風にたなびく金髪を揺らしながら、少女は歌う。

両手を広げて、目の前に広がる大地と海を。そこに連なる国を。国の中にある街や村を。街や村に住まう人類や動物をーーそれら全てを愛し、慈しむように歌う少女の歌声はまるで、その外見も相まって女神のようにも思えた。

少女が奏でる旋律に耳をすませる多くの者達は、その旋律に心を洗われ、自然と腰をおると宙に浮かび、歌い続ける女神へと祈りを捧げ続ける。

 

「trocken himml heilen regen」

 

少女が歌い終わると、それを合図に七色に輝く雲が空を覆い、その雲から一粒の雫が落ちてきた。先手をきって飛び出したその雫に促されるように、次々と透明な雫が雲から落ちては、大地とそこに住まう者たちを潤す。

ぽつんぽつんと雲から溢れ出る雨は、世界に広がる焰を消しては、そこへと生命を宿らせる。

 

「この雨って一体…」

「見てください。雨が降ったところから焰が…」

「何を考えてるっていうんだ、あいつ」

「…すごい。雨が当たったところから元通りに戻ってる」

「えぇ、すごいわね。この雨って」

「あぁ、生命を蘇らせる雨か…ん?」

 

奏者たちが宙に浮かぶ濃い金髪を腰近くまで伸ばした少女が次に起こす行動に警戒しつつ、アームドギアを構え直すが、次の瞬間それを下ろすことになる。

彼女たちの近くで地面へと倒れていた暁 切歌が瞼を震わせて、体を起こしたからだった。胸に大きく開いていた切り傷は跡形もなく塞いでおり、【完全聖遺物・ルシファー】が宿っていた左腕は、元の彼女本来の細っそりした腕へと姿を変えていた。

それを見た奏者たちは驚き、彼女の大親友たる月読 調は彼女へと感極まった様子で抱きつく。親友の熱い抱擁をびっくりつつも受け入れた切歌はまだ、何故自分がここにいるのか、わかっていない様子であった。

 

「…ん?ここは…」

「切ちゃんっ!!」

「うわぁ!?わわっ、調…そんなに抱きしめると苦しいデスよ」

「良かった!本当に…良かったよ…切ちゃん…」

 

切歌に背中を撫でられながら、普段は流さない涙をポロポロと流す調を見ては、切歌は困ったように頬をかく。

すると、そんな二人のそばへと、さっきまで宙に浮かんでいた暁 歌兎と瓜二つの少女が舞い降りてくる。

そんな少女へと奏者たちが調と切歌の二人を背に庇うと、とある者は拳を。ある者は刀を。また、ある者は銃弾やミサイルを。そんな者たちの隣に立つ二つの影は、一つは金の槍を。またもう一つは白銀の剣を構える。

そんな奏者たちへと両手を上にあげて、自身の武器たる鉄扇を地面へと投げる。

 

「良かったのぅ、桃色の」

「!?」

「そう構えるな。余は貴方方へと詫びにきたのじゃ」

 

そう言うと、少女は膝をおると近くに転がっていた炎の剣を奏者たちの方へと投げ捨てる。それを拾い上げた奏者たちへと少女は淡々と自分の目的を話す。

 

「一時的とはいえ、貴方方の大切な者を亡き者へとした余を許さぬのであれば、そこにある剣|つるぎ|で余を切ると良いのじゃ。赤いのや橙のから逃げたのは、あの膜を張るためじゃからのぅ…それを終えた今、余は思い残すことはないのじゃ」

「…本当にないんだな?」

「あぁ、好きにするとよい」

 

そう言って、奏者たちが自分を仕留めやすいようにと体制を変える少女の前へと切歌が進みでる。そんな切歌へとクリスが冷たい声をかける。

 

「…だ、ダメデス!」

「切歌。そいつはお前を何のためらいもなく殺したんだ。そんな奴を許すわけないは行かない」

「デスが!歌兎は仕方なく、そうしたに違いないのデス。この子は本当はそんなことしなくなかったんデスよ」

「緑の…。余は一時とはいえ、主を亡き者としたのじゃ。その者達の無念を晴らしたくないのかのぅ?」

「晴らしたくないのデス!あたしはそんなことを望まない!貴女とここにいる皆と仲良く暮らせたらいい、それだけでいいんデス!」

「…ふふ。余の半身の言っていた通りなのじゃ。姉上様はお優しく、少々変わったお方やもしれぬな」

「…へ?」

「なんでもないのじゃ、緑の。ほれ、余を縛るのであろう、主らは」

 

素直に両手を差し出す少女へと、奏者たちは呆気にとられたような顔をしながらも、その細っそりした手首を強く結びつける。

 

「余は逃げも隠れもしないのじゃ。貴方方の社へと案内すると良い」

 

二課に戻った奏者たちと少女は、二課の司令官たる風鳴弥十郎の元へと向かう。そして、少女は真っ赤な髪を上へと持ち上げた髪型にして、赤いTシャツを腕まくりしている自分の身長三倍くらいある男性の赤い瞳を真っ直ぐに見つめる。

そんな少女を見て、ニンヤリ笑った弥十郎へ少女もまた、ニンヤリと笑う。

 

「俺はまどろっこしいのが嫌いでな。率直に聞く。君は誰なんだ?歌兎君なのか?それとも敵なのか?」

「うむ、主が司令官殿か…。主のその率直な物言いは実に心地よいのじゃ。余もまどろっこしいのは苦手ゆえな。じゃから、その質問に素直に答えるのじゃ。答えは分からぬ、じゃな」

「どういう意味なんだ?」

「そのままの意味じゃ。余の中に暁 歌兎として、ここまで生きてきた記憶は無いんじゃ。そして、主らの目の前にいる余ももともと無たる者故、感情や記憶などは持たぬのじゃ。そんな空っぽな余の記憶の引き出しには、余を蘇られるために犠牲になった71もの尊き者たちの記憶のみがあるのじゃ」

「そんな…。ここまでのことを覚えてないと…いうデスか…?…うた…う…っ。なら、そこにいる人は…誰なのデス…?」

「切ちゃん」

 

掠れ声を漏らす切歌へと視線を向けた少女は、その何も浮かばぬ表情へと悲痛な色を浮かばせると、ゆっくりと語り出す。

 

「確かに余は選択をした。そこにいる緑の者妹君(いもうとぎみ)の記憶を全てなくすか、無くさずに、あの70にも及ぶ尊き者たちの生きた証を無かったことにするか?

余は迷わずに、後者選んだのじゃ。あの者たちの記憶を…この世界に生きていたという証拠を誰が残しておけるのじゃ?答えは簡単じゃ、それは余しかおらぬ。余しかおらぬのじゃ…。あの者たちの命を奪ったのは、他の誰でもない、紛い者たらしめる余であるのじゃからな。

じゃから、余はあの者たちの記憶を覚えおくことが必要がある。余がこの世に生まれ出て、最初におかしてしまった罪である故にじゃな」

「……」

 

小さな掌を見つめて、外見年齢6歳の少女が周りにいるものを見上げながら、淡く微笑む。

 

「案ずるでない。余には、あの者たちの願いを叶える責務があるからのぅ。それまで死することは許されぬ。

じゃから、皆してそんな目で見るんじゃないのじゃ。それに、紛いにも余は神と呼ばれておる。そんな者を害する輩がおるとは思えぬがな」

「ふ、確かに君のいう通りではあるな。暫く、俺たちと行動するといい」

「あぁ、そうしてもらえると嬉しい。余も行くところはないゆえな」

「それと。君のことはなんと呼べばいい?」

「…歌兎、と。余の名前は、暁 歌兎なのじゃ。余の半身がそう呼んでもらえ、とうるさいんじゃ」

「そうか。なら、これからも歌兎君と呼ばせてもらう」

「あぁ」

弥十郎へと頭を下げた歌兎は、切歌の前へと進み出て、膝を床へと付けると頭を下げる。そんな歌兎をジッと見つめる切歌。

 

「……」

「貴方様の妹君を身体と家屋をこのようにしてしまいすまないのじゃ。貴方様がその者に深く愛しているのは知っておるが…余にはこの選択しかーー!?」

「…構わないのデスよ。貴女がここに居てくれること、貴女が元気に過ごしてくれることがあたしの望みデスから」

「…姉上様…」

「それに記憶がないのなら、あたしが貴女へと今までの貴女を教えてあげるのデス!」

「うむ、よろしく頼むのじゃ、姉上様」

 

その後、歌兎は二課へとあの膜は何であるのか?を説明したあと、切歌たちとともにマンションへと帰る。

そして、次の朝には変わらない日常がスタートしていた。調作ってくれた味噌汁を飲もうとしていた歌兎から汁茶碗を奪った切歌はふぅーふぅーと汁を冷ました後、ぽかーんとしている歌兎へとスプーンを差し出す。そんな切歌へといつものようにマリアの注意が飛ぶ。その注意を舌を出して、いつものように無視する切歌に、遂に堪忍の緒が切れたのか、マリアが立ち上がり、切歌を怒鳴ると切歌も対抗するように立ち上がるとマリアを睨みつける。

そんな二人にびっくりしている歌兎の瞳には、喧嘩する二人の向こう側にやれやれと肩をすくめる調とセレナの姿があったりした。

故に、歌兎は自分に体を譲ってくれたあの少女が言っていた“僕の姉様は過保護すぎるから気をつけて”の意味がわかった気がした。

 

「なるほど、確かに余の…いいや、“余たち”の姉上様は過保護すぎるんじゃ」

 

賑やかな朝ごはんの時間、そう微笑みながら、歌兎は自身の姉へと苦笑い浮かべる…。

そして、思うーーこの幸せな時間を…大切な姉と過ごしていく毎日をこれからも守っていこう、と。

 

 

 

 

 

 

〜うちの姉様は過保護すぎる、完結〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○●○オマケ○●○

 

 

【モヤがむねむねデスよ…】

 

「〜♪」

 

ゆらゆぅ〜らと揺れる椅子に腰掛けて、目を瞑る金髪の少女へと切歌は複雑そうな表情を浮かべる。そんな切歌へと調が近づいてきて問いかける。

 

「切ちゃん、どうしたの?」

「…あっ、調。最近、歌兎を見てるとここがむねむねするデスよ」

「?むねむね?」

「恐らく、モヤモヤじゃねーか?お前、幼稚園児じゃねぇーだから、自分の気持ちくらい間違えずに言えるようになれよ」

「しっ、失礼デスよ!クリス先輩!」

 

頬をプクーと膨らませる切歌を見て、「すまんすまん」と謝ったクリスの声に、椅子に揺られていた歌兎の瞼が開く。そして、眠たそうにひかれたそれは自分の横に立つ三人へと向けられる。向けられた三人は歌兎へと挨拶する。

 

「…むぅ?おぉ、これは姉上様とクリス殿に調殿じゃ。皆して、どうしたのじゃ?」

「こんにちわ、歌兎」

「よっ。何してたんだ?」

「…うむ。膜を通して、下の世界を見ておった。絶えず、戦が続いておるようじゃ。全く…あの雨によって、命や時間が元に戻るからといって、再々あのような事をさせると余の身体が持たぬ」

 

愚痴りながら、椅子から飛び降りた歌兎はトテトテと三人の前へと歩いてくる。そんな歌兎を見ながら、切歌は複雑な表情を浮かべる。そんな切歌に眉をひそめながら、クリスは近寄ってきた歌兎の頭を撫でる。

 

「しっかし、本当に小さくなったよな、お前」

「クリス殿。そんなに撫でられると前が見えないんじゃが…」

「あぁ、すまねぇ。撫でやすい位置に頭があるんでついな」

 

クリスによって乱暴に撫でれた金髪を直しながら、歌兎は自身を見つめている少し垂れ目な黄緑色の瞳へと小首を傾げる。

 

「姉上様?どうなされたのじゃ。余をそんなにジッと見つめて…」

「…悔しいデスが、こっちの歌兎の方があたしに似てる気がするデスよ。それに可愛いデスし…」

「…む?こっちの余の方が?余は余じゃぞ」

 

切歌の呟きを聞いた歌兎がそういうのを聞いて、調、クリスは切歌が胸をモヤモヤしている訳を知った。

切歌は水色が混ざった銀髪の歌兎と金髪になった歌兎を比べてみて、今ここにいる歌兎の方が前の歌兎よりも自分に似ていることを複雑に思っているらしかった。

 

「…お前、本当にくだらないことで悩むんだな」

「…切ちゃん」

「しっ、調までそんな顔であたしを見ないでください!あたしには大事な問題なんデスよ!?」

 

ジローと自分を見てくるクリスと調に、切歌は頬を膨らませて怒る。そんな切歌を見て、歌兎は眉をひそめると自分の金髪へと視線を落とした…

 

 

 

 

 

【これがあなたが守ってくれた世界デスよ】

 

「ここにおられたか、姉上様よ。用とはなんじゃ?」

「歌兎、ここに来てください」

 

切歌は近くに来た歌兎をお姫様抱っこすると、手すりの

近くに歩み寄るとすっかり暗くなった街並みを見つめながら、ボソッと呟く。

 

「…綺麗デスね、歌兎」

「ふむ、そうじゃな、姉上様よ」

 

そう答える歌兎に微笑むと切歌はギュッと強く抱きしめると、耳元で囁く。その囁きに歌兎は眉をひそめる。

 

「…ありがとうデス、歌兎」

「?姉上様、いきなりどうしたのじゃ?余に礼など」

 

歌兎の質問に切歌は歌兎の頭を撫でながら、その答えを言う。

 

「あのまま、あたしが世界を破壊していたら…この綺麗な夜景は見れなかったんデスよ。だから、ありがとうデス」

「余こそありがとうなのじゃ。こんな余を貴女様の妹君と迎えてくれて…」

「言ったじゃないデスか!そんな姿をしていても、歌兎は歌兎だって…だから、貴女は間違いなく、あたしの世界一可愛い妹デスよ」

 

そう言って、頬にキスしてくる切歌に歌兎は目を細めながらも照れたようにはにかんだ…




というわけで、以上でお終いデス…

変わらずのハチャメチャ展開に読者の皆さんには大きな迷惑をかけたと思いますが、ここまで呆れずに読んでいただきありがとうございます!

この後の話は、書きたいと思えば書こうと思います。また、まだ終わってないお泊まり会編は終わった後も書きたいと思ってます。

こんな駄作へと評価してくれた17名の皆様、お気に入りしてくれた290名もの読者の皆様、またこの作品へと感想と誤字報告をしてくださった皆様、本当にありがとうございましたm(_ _)m

※作者名を変更したのは、活動報告の方に説明文を更新することにしたからです。本当は、こっちに更新したかったのですが…セリフばかりで、読みづらいかなぁ〜と思い、そちらへと変更しましたm(_ _)m
⇒11/4〜【生まれ変わった暁 歌兎】を更新しました。

お待たせしてすいませんm(_ _)m

※また、この本編の後に【IFストーリー】と題して、原作で亡くなった方が生存して、幸せになる為に主人公が頑張る話を更新しようと思います。
私自身、本編の最後は急ぎすぎてしまった気がしてならないので…こちらは、読者の皆さんに分かりやすいように。また、時折、質問させてもらいながら…完結させていこうと思ってます。
長くなってしまいました、以上で。お知らせ、お終いですm(_ _)m


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《メインストーリー分岐ルート》ハードラブ・ミッション 10) はめられた罠ととうそう。

お久しぶりです(土下座)

今回の話は、メインストーリーからの分岐で新キャラも参戦すると思います。
そして、メインストーリーよりもハードなものになるやもしれませんがどうかよろしくお願いします(礼)

では、本編をどうぞ!


鉄独特のひんやりとした感触と後頭部に広がる痛みから深く沈んでいた眠りの海から覚醒する。

 

パチパチ

 

まだ寝ぼけ眼でボヤける視線をぱちくりと瞬きしてから辺りを見渡すと見覚えのないところにいた。

 

(ここは…?)

 

天井と床共にコンクリート製で良く見ると壁には黒々とした鉄が埋め込まれており、そこから視線を下に何か液体が染み込んだような黒いシミ…恐らく、血なのだろう。人が腰掛けている感じに広がっており、それがそこいらに点々とあるのだ。

 

(…さしずめ、拷問部屋ってことかな?)

 

「…っ」

 

どうやら、両手両足共に硬くロープ…いいや、これは手錠かな?ひんやりしてるし、ロープに比べて力強く引いた時に感じる隙間もない。そして、左下に感じるコンクリート独特の冷たさから僕は寝転がされているのかな。

それ以前になんで僕はここに?

確か、今日は姉様と師匠、クリスお姉ちゃんの援護に回れとの指令を大師匠様から受けて……ゔぅ、だめだここから先がどうしても思い出せない。

 

「…参ったな、これ」

 

(あぁ、なんかこういう展開、響師匠とと共に大師匠様の修行の際に見た映画にこんなにシーンあった気がする)

 

場違いにもそんな事を思っているも目の前にある鉄で出来ている扉が開いて、そこから入ってきた数名の青年と少女は目を開けている僕を見る。

そして、一番最初に入ってきた青年がリーダー格なのだろう。彼を取り囲む青年少女へと素早く指示を出している。

 

「ファザーに報告。ターゲットが目を覚ましたとな」

「了解!」

青年に一糸乱れぬ敬礼をした青年少女たちがその場を後にするのを静かに見送った僕は最後に残った青年を睨む。

 

「ーー」

「その顔はどういう顔と受け取ればいいのかな?暁歌兎」

「…お好きなようにどうぞ」

「ならば、敵対していると取ろう。ふん!」

 

素っ気なくそう言った僕のお腹を思いっきり蹴飛ばす青年の力は思ったよりも強く僕の身体はゴロゴロとコンクリートを転げ回り、止まったところで僕は蹴飛ばされた時に吐き出した空気を吸い込む。

 

「がはっ…ごほんごほん。はあーはぁー」

「あんまり、反抗的な態度は控える事だな。ファザーは優しい方だが短気なところもあるからな、あまり刺激しない方が身の為だぞ」

 

青年が言ってくる言葉を聞き流し、青年以外誰も居ない事を気配で確認すると静かな声で聞く。

 

「…ところで、今ここにいるのは君だけ?」

「なぜそんな事を聞く?」

「なぜってーー」

 

不敵に勝ち誇ったように笑っているのだろう、堪えきれぬ慢心をその声音に添えてそう答える青年の答えを聞いて、援軍はまだきてない事を知ると僕はポケットの中に隠しておいたクリップによって外しておいた両手両足の手錠を勢いよく外すと振り向き際にカッターシャツを脱ぐと青年の顔へと投げ捨てる。

 

「ーーこうするために決まってるでしょうっ!」

「なっ!?前が見えーーゔえ、がぁ」

 

顔にかかる僕のカッターシャツを取ろうとして慌てている青年の股間へと強烈な一撃を入れ、地面に悶絶して沈む青年に追い討ちとばかりに顔や横腹を踏みつける。

 

「…両手両足が塞がってるからって油断した?あんなの1分とあれば解けるし、何よりも慢心は何よりも敵だよ、お兄さん」

 

青年が起き上がらないようにもう一度、溝打ちへと強い蹴りを入れ、何か使えるものはないかと青年の身体を弄る。

 

「…んー」

 

青年の身体を弄って手に入れた報酬は以下の通りだ。

青年が耳にかけていた通信機らしきもの…黒メインに白いボタンみたいながデザインしてある。

青年が腰に吊るしてあった黒のポーチからは折りたたみ式のサバイバルナイフに警棒、他は発光する藤色の液体で満たされた針なしの注射器に絆創膏や怪我した時に使えるであろうちょっとしたものが入っている。

 

(まぁ、これくらいあれば、何とかなるかな?)

 

僕の携帯は奪われたようだし、逃げる為と言ってニョルミルを纏えばまた暴走しかねない。なので、ここから先は自力で逃げ延びるしか手はないのだろう。

 

「…まずは敵がどこにいるか確認しないと」

 

右耳につけている通信機から流れてくる情報へと耳を傾けていると怒鳴り散らしている若い男性の声が聞こえてくる。

聞き慣れた…聞くたびに嫌な思い出が湧き上がってくるその声は明らかにウェル博士のものだった。

なるほど、ここに倒れている青年の右腕が僕と同じく黒々と変色しているのはあの男のせいだったか。

 

(こりもせず、こんな事を…っ)

 

湧き上がってくる怒りへと無理矢理蓋を閉めた僕はウェル博士が怒っている事を知る。

 

○○(ザーザー)を確保しろ!あいつは僕の○○(ザーザー)なコレクションを奪いやがった!!あいつ、ここまで○○(ザーザー)やった僕の恩も忘れやがって!!』

 

どうやら、この施設に住んでいる何者かがウェル博士を裏切り、彼が持っていたコレクションを盗み、逃走中らしい。

 

(きっと今、この施設はその何者かによって混乱中のはず)

 

なら、それを利用しない手はないということか。

 

「…と決まれば、ここには用はもうない」

 

僕は鍵が閉まってない鉄の扉から外に人の気配がない事を確認すると扉から近くにある角へと走り抜ける。そして、近くを通るウェル博士の配下の人たちを警棒で気絶させてからひたすら走り、この施設の出口を目指して走る。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

歌兎が去って、数分後の拷問室に一人の少女が居た。

 

「…うさちゃん?」

 

部屋の中をキョロキョロと顔を動かす度に揺れるさらさらの薄藤色の髪、部屋のすみずみまで視線を送る紫色の瞳。そして、少女は目的となるものがなかったのか、その部屋を後にするのだった…




というわけで、ウェル博士の研究所から逃走する歌兎は無事逃げることができるのでしょうか?謎の少女の目的とはなんなんでしょうか?そして、『うさちゃん』とは?
様々な思惑が交差していきます。

※謎の少女
『うさちゃん』なる人を探す

※暁 歌兎
ウェル博士の配下となるリーダー格であろう青年から武器諸々を奪い、研究所から逃走中




さて、ここ先暗くなる展開が多くなってくるので読むのが辛くなるかもしれないので、そんな読者の皆さんの癒しにならばと思い書いたのと、思えばこの小説の一周年記念を祝ってなかったなぁ〜と思い、描かせてもらった本作主人公の暁歌兎とそんな彼女の過保護な姉様である切ちゃんを書かせてもらいました。
読者の皆さんが描かれている歌兎のイメージと原作の切ちゃんの可愛さを少しは再現出来ていると思うので、よろしければご覧ください(土下座)



【挿絵表示】



というわけでいかがだったでしょうか?
シンフォギアXDのブログ風に書かせてもらった今回の絵ですが…簡単なる説明を加えると、歌兎は動物に懐かれる子でして…よく一人で遊びに出掛けては、こうやって動物を撫でています。そして、そんな歌兎を影から見守る姉様というのが彼女たちの日常です。因みに、姉様の顔が歪んでいるのは、兎と戯れる妹の可愛さに歪んでしまったというわけです。
本当は…本当はカメラも持たせるつもりだったんですが、私の腕ではこれが精一杯(汗)
次書かせてもらう時は、歌兎と切ちゃんの誕生日か二周年目に披露させてもらうと思うので、それまでにもう少し上手くなろうと奮起してます!

また、今回の絵はアナログかつ色ぬりで使っているのが時間上蛍光ペンと鉛筆、油性ペンとなっております。
ので、歌兎のズボンが橙だったりと少し違和感を感じる仕上がりとなっていると思いますが、どうかご容赦してください(土下座)
歌兎や適当な色となってしまった背景などは皆さんの頭の中で変換していただき、次回までには改善しておきたいと思います!

と、最後に上の絵でだらしない顔を晒してしまった姉様にもいいところがあるということで…私がこのシンフォギアにハマった時に書いた姉様こと切ちゃんの絵を披露したいと思います。



【挿絵表示】



この『うちの姉様は過保護すぎる。』も一周年という節目を通り過ぎた中でもクロスオーバーや様々な分岐ルートを楽しく書かせてもらっているのは、感想や評価、お気に入りにしてください多くの読者の皆さんの力あってこそです。
上の絵共々、文章もまだまだですがこれからもよろしくお願いします(土下座)


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11)混乱とこうせん。

昨日から続けての更新となるこの話は、ウェル博士の研究所から逃げようとしている歌兎と同刻のS.O.N.G.を書いたものです。
まぁ…読者の皆さんの想像通りかもですが、楽しんで読んでもらえたら嬉しいです(笑)

では、本編をどうぞ!!

※相変わらずの読みにくさで、みんなは一部を除いて、下の名前で統一してます。
また、かなり簡潔に書いてます。


歌兎が拷問部屋にて一人のリーダー格の青年との戦闘の末、彼の持ち物を奪い、決心の逃走を続けている同刻のS.O.N.G.内にて一人の少女が荒れ狂っていた。

その少女を取り押さえている二人の少女はどうにか落ち着かせようとして、そんな三人を取り囲む者たちは荒れ狂う少女に呆れ顔を浮かべている。

 

「離してください!!クリス先輩、響さん!!歌兎がぁ!!歌兎がァア!!!」

 

そう、荒れ狂う少女とは暁歌兎の実姉こと暁切歌である。垂れ気味の黄緑色の瞳を吊り上げ、両腕をがっしりホールドされているからか、両脚をばたつかせて、その上抵抗の為かなんなのか、首を激しく横に振っているので

 

バシバシ

 

と少なからず、横に垂らしている金髪が切歌を押さえつけているクリスや響に当たり、地味に二人へと精神攻撃を加えていた。

しかし、二人がホールドの力を緩める様子はなく、更に強く力を込めると抵抗する切歌をズルズルと引きずりながら、なんとか呆れ顔の奏者のみんなの輪へと帰ってくることができた。

 

「いいから落ち着きやがれ!この過保護っ!」

「クリスちゃんのいう通りだよ、切歌ちゃん。歌兎ちゃんならきっと大丈夫だから、ね?」

 

宥める響とクリスの言葉には耳を傾けず、一層に暴れる切歌に近づくのは彼女の大親友の月読調で諭すように声をかけるその姿は大親友というよりも我儘娘を優しく躾ける母親のように見えてしまう。

 

「大丈夫じゃないデス!!きっと大丈夫じゃないんデス!!今、歌兎が泣いてるのかもしれないのデス!!悪い人に捕まってあんなことやそんなことをーー」

「ーー切ちゃん、とりあえず落ち着こ?落ち着いたら、そんな悪い考えも浮かばなくなるから」

「調は落ち着き過ぎデス!調は歌兎の事が心配じゃないんデスか!」

「心配だからこそ落ち着いて、救出する為に作戦を練るべき」

 

調の正論に手も足も出なくなってしまった切歌は渋い顔をした後に顔をパァアっと輝かせると名案とばかりに自分の携帯をポケットから取り出して、取り押さえられているのに器用に指を動かし、歌兎へと電話を掛けようとするのを寸前で止めに入るのは今まで四人を見守っていた年長組ことマリア・翼・セレナであった。

 

「そうデスがっ、そうなんデスが…うゔっ、そうデス!歌兎に電話すれば」

「何してるのよ!」

「暁さんダメです!」

「暁耐えろ!」

 

翼に携帯を取り上げられた切歌は恨めしそうに翼を見る。

 

「何するんデスか、三人揃って…翼さん、あたしの端末をどうするつもりデス」

 

いつもはキラキラと溢れんばかりの好奇心で満たされている黄緑色の瞳がどんよりと沈んでいくのを見て、翼や周りの奏者のみんながなんとも言えぬ威圧感を切歌からひしひしとぶつけられているそんな時

 

ぷるる、ぷるるる

 

と誰かの端末が音を立てて鳴る。

そして、その端末を手に取るのが、真っ赤なワイシャツにピンクのネクタイが似合うこのS.O.N.G.司令官こと風鳴弥十郎であった。

 

「…歌兎くんからだな」

 

実に取りにくそうにしているのは、切歌から漂うどんよりした雰囲気が弥十郎にもひしひしと伝わってくるからだろう。

 

「…ソンナ…ナンデ…ウタウ…」

 

ガク

 

と音なく崩れ落ちる過保護な姉に奏者のみんなのみならず、S.O.N.G.のみんなが苦笑いを浮かべたところで弥十郎が歌兎から電話を取る。

 

「もしもし、歌兎くんか?」

『…はい、大師匠様。一人はぐれてしまいすいません』

 

取った瞬間、S.O.N.G.内に響く歌兎の声から弥十郎はどうやらハンズフリーモードにしたのだろう。 しかし、そうなると一つ疑問が浮かぶ。

 

「いいや、歌兎くんが悪くないのは響くんたちから聞かされている。それより、歌兎くん何故S.O.N.G.本部への電話ではなく、俺個人に電話を?」

 

そう、何故歌兎はS.O.N.G.本部ではなく、弥十郎個人の端末へと電話をしたのだろうか?

不思議に思う弥十郎に歌兎が申し訳なそうな声音に変えるとその理由を答える。

 

『…本当はそうしたかったんですが…どうやら、S.O.N.G.に直接電話をかけさせないように僕の端末が初期化されてまして…姉様の携帯番号以外に覚えていたのが大司令様のだったので…』

 

どうやら、覚えているその二つの連絡先をどちらに先に連絡するべきかと天秤にかけた上で切歌ではなく、弥十郎へとかけるべきとそう結論づけたらしい。

最もと言えば最もなのだが、こういう非常事態だからこそ頼って欲しい姉心を一蹴されたようで切歌の頬がみるみるうちに膨らんでいく。

 

「…むぅ」

「切ちゃん…」

 

それを近くで見ていた調がより一層呆れたような憐れんでいるような表情を浮かべる中、歌兎と弥十郎の会話は続いていく。

 

「そうか。さすが、歌兎くんだな」

『…いえ、これも愛ある特訓を僕へとしてくれた響師匠と大司令様のおかげです』

「いいや、歌兎くんがどれだけ努力してきたのか、俺と響くんは知っている。あまり謙遜は良くないぞ」

『…はい。ありがとうございます』

 

照れくさそうにそういう歌兎へと弥十郎が本題を振る。

 

「さて早速だが、歌兎くん。君は今どこにいる?」

『…僕は今、ウェル博士の研究所…みたいなところにいます』

「ウェル博士だ、と!!?」

 

その名前はここ数週間、追っていた者の名前のはずだ。なのに何故、歌兎がそのウェル博士の元に?

そこから導かれる答えはただ一つだ。

 

「…なるほど、これまでの極端なノイズ出現は奴の仕業というわけか」

「…翼さん?」

「立花は不思議に思わなかったか?ここ最近のノイズ出現のパターンはまるで其々がサポートできないようにするように極端に離れたところに現れることが多かった」

「それに数も多かったものね…。翼の言いたいことが分かったわ」

「最初からウェル博士の目的は歌兎ちゃん一人だけだったというわけですね」

 

翼の意見に付け加えるようにマリアとセレナが意見する中、響のみがポカーンとしていた、どうやら三人が納得していることに納得できないらしい。それを見ていたクリスはため息一つ落とすと

 

「はぁ…お前って本当にバカだよな」

 

と響に言い、言われた響は傷ついたような顔をする。

 

「それはひどいよ!!クリスちゃん」

「うるせぇー、本当のことだろ」

 

吐き捨てるクリスの視界の端には今まで床にへたり込んでいた切歌が夜叉の如くぬらりと起き上がる姿とそれに合わせて一緒に起き上がる調の姿であった。

 

「あの…トンデモ眼鏡、どこまで人の道を外れればいいんデスか…っ!許さないのデス!許してたまるかデス!!」

「切ちゃん、どうどう」

「これが落ち着いてられるデスか!!」

 

ウェル博士への怒りを爆発させる切歌の声が歌兎にも聞こえたらしい。失笑している声がS.O.N.G.内に響いた後、歌兎の穏やかな声が聞こえてくる。

 

『…姉様が元気そうでよかった、心配だったから』

「歌兎!歌兎も無事なんデスよね!?」

 

切歌の質問に長らく沈黙した後

 

『…無事だから、心配しないで、姉様』

 

そう答える歌兎の長い沈黙の意味に気付かないのは恐らく切歌、ただ一人だろう。

他の人はその沈黙が語る意味を受け取り、こう解釈した…無事ではあるが、切り傷やかすり傷は複数あるけど命はあるから無事と言ってもいいだろう、といったところだろう。

 

切歌がひとまず安心したところで話が続く。

 

「歌兎くん、その研究所はどこに位置するのか分かるか?」

『…いいえ、僕も見たことないところですし…風景という風景がなくて…』

「そっか…。他に気づいたところはあるか?」

『…そうですね、なんだかさっきから天井が揺れたり車が通っている音が聞こえてきたりするので、ここはもしかすると地下なのかもしれません』

 

そう言われるとそういった音が消える気がする。だが、その音よりも気になる音がさっきから聞こえており、弥十郎は意を決して聞く。

 

「ところで歌兎くん、さっきから鉄と鉄がぶつかる音や若い少年少女達の苦しげな悲鳴が聞こえるのだが…」

『…あぁ、ごめんなさい。聞こえてましたか…。今方、追っ手に見つかってしまって、戦闘中なんですが…さっき終わりましたから、安心してください。着ていたワイシャツはナイフによってボロボロにされちゃいましたが、肌には傷を付けてないので…姉様にも安心してと伝えてください』

「あぁ…」

 

ギギギっと弥十郎が振り向く先に居たのは

 

「…歌兎のワイシャツが破かれた…?なら、歌兎は今柔肌を敵に見せて…?」

 

と放心状態でそういう切歌の姿で、弥十郎は視線を元に戻すと何事もなかったかのように歌兎へと話しかける。

 

「なら、歌兎くん。その研究所がどこにあるかわかったならば知らせてくれ。こちらも引き続き、歌兎くんの位置を判明するために努力しよう」

『…はい、了解しました…!』

 

その言葉を置きに通信は切れるのだった……




その後の姉様は読者の皆さんのご想像にお任せします(笑)
さて、次回は今回でなかった謎の少女を主となる話となる予定ですので、楽しみにしててください!
それと同時に覚悟もよろしくお願いします、予定では原作キャラが無惨な死を迎えると思うので…

と、折角なので…今日から始まった『機械仕掛けの奇跡』について話します。

これから先はネタバレが含まれていますので、まだやってない方は読まずにスルーしてください。











さて、まず声を大にしていいたいのがシャロンちゃんが可愛い!!!可愛すぎます!!
話さないけど仕草の一つ一つが可愛いです…そして、そのシャロンちゃんを懸命にお世話する響ちゃんの面倒見の良さに圧巻でしたね!
響ちゃん×母性は考えたことなかったな…いいですねぇ、少しうちの姉様に被るところがありましたが、響ちゃんの方がちゃんとお母さんしてます(笑)

そんなシャロンちゃんと響ちゃんで記憶に残っているのは、響ちゃんがシャロンちゃんに文字を教えるシーンで『お姉ちゃんとお勉強しようか?』からの翼さんとクリスちゃんの驚きようでしょうか(笑)
雷が背後に落ちてましたからね…翼さんとクリスちゃんの驚きに傷ついたような響ちゃんも大変可愛かった。

その他は、クリスちゃんに買い物を付き合ってもらうきりしらがかわいかった…。彼女達は浮いたお金でおニューな服を買っているのですね…うん、尊い…。
しかし、本当のところは『サービス券を150枚集めると商店街の食べ物さんで〜』からのセリフを聞いた後のクリスちゃんの『こいつら、たかがクレープになんつー涙ぐましい努力を…』ってセリフに笑い、そしてこの話の最後はほのぼのしちゃいました(笑)

ですが、今回のイベントはかなり暗いものになりそうですね…シャロンちゃん、助かるといいなぁ…(切望)


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12)虎々絽という名の精霊つかい。

お久しぶりです(礼)

シンフォギアXDもイベント『機械仕掛けの奇跡』の後半戦が終わり、新しく『ハロウィン型ギアイベント』が始まりましたね(笑)
その二つについては、のちに後書きにて詳しく感想を書かせてもらうとして…

私、秋が季節の中で一番好きなんですよね(微笑)
理由は『○○の秋』とつく程になにをしても程よい季節ですし、何よりも!梨が美味しいッ!!そこが重要なんです!!!
私、林檎と梨では梨の方が好きなんですよね〜。林檎のサクサク感も捨てがたいのですが…やはり、私は梨の甘い果汁が好きでして、ついつい店先で梨を見かけたら買い求めてしまいます(笑)

と、とりとめない話をしてしまい、すいません。
これからのストーリーのグロさをこの話で緩和出来ればと思い、させて頂いた次第です。
では、くどいですが…この先の文章にはかなりのグロさが含まれていますので、読む際はご注意しつつお読みください(礼)

では、『12)破壊者ととうぼうしゃ。』の開演です!


※相変わらずの読みにくさと長いのゆっくりとお読みください。


『…どうしたの?みんなのところにいかないの?』

 

彼女はそう言い、恐ろしい程に真っ白な部屋の隅っこに膝を抱えて座る私と同じ目の高さに腰を下ろすと不思議そうに私を見てくる。

 

(綺麗な目…)

 

私が最初に彼女を見て思った第一印象はそれだった気がする。

 

どんよりくぐもった私の紫色した目と違い、私をまっすぐ見つめてくる彼女の瞳は黄緑色で…まるで、そこだけマムに見せてもらった本にあったエメラルドとようだと思った。それだけに無垢で純粋な彼女が眩く見え、眩いからこそ忌み嫌った。

 

『わたしにちかよるとみんなにきらわれるよ、いいの?』

 

キラキラ光る黄緑色の瞳から避けるように顔を壁へと向け、素っ気なく言う私の横へと腰を下ろしたのだろう、彼女は。

真横から人が座る音が聞こえ、右耳から何処か悲しげな声が聞こえてくる。

 

『…きにしないよ、きみがひとりでここにいるりゆうのほうがきになるし…なによりも---』

 

ふさぎ込んでいた顔を上げ、彼女の方を向くとそこには薄く笑う彼女の顔があって…

 

『---ちがういみでぼくとおねえちゃんはこのこじいんでういたそんざいだから』

 

そう言う彼女の言葉と態度にやっと彼女が私に執着するのか分かった。

そうか…彼女も私と同じなのだ。

憐れみとか同情とか格上と勝手に決めつけた者がまた勝手に決めつけた格下へと向けるあの醜い…冷めたような視線ではなく、彼女も私と同じ立ち位置に勝手に決めつけられた者で…なら、私は彼女となら---

 

『---歌兎ぅーー!どこに言ったデスかぁーーー!』

 

部屋の外…廊下から元気いっぱいな叫び声が聞こえて、私と隣にいる彼女が苦笑いを浮かべる。

 

『切歌ちゃん、廊下は走っちゃダメって…それにそんなに大きな声は他の人迷惑だから』

『でも、調!歌兎があたしになにも言わずにいなくなったんデスよ?これは誘拐デス!そうに決まっているのデス!いくら、あたしの妹が可愛いからってやっていいことと悪いことがあるのデス!誘拐した奴はDeathDeathDeathした上にDeathDeathして、終いにDeathしてやるのデスよ!!』

『ですですが多くて意味が分からないよ。って、あぁ…そこは入っちゃダメって、マムが。その部屋は鍵が掛かってるから入らないからって、切歌ちゃんなにをしてるの?』

『開かないなら開けるのみデス!こうして、体当たりしていればいつしか開けるはずデス!子供だからって舐めるんじゃねぇーデス』

『ダメダメ、そんな事したらまたここにいる人に怒られるよ?』

『あんな奴らに怒られるよりも歌兎に万が一がある方が大事デスよっ!えい…やー!!』

『だからダメだって』

ドンドン

 

とこの部屋にまで聞こえてくるその音はどうやら、"歌兎"という名の少女を探している姉がドアに体当たりしている音らしい。

そして、その姉の付き添いであろう少女がその姉の暴走を止めようとしていると…あれ?姉妹でこの孤児院にいるのって…二組しか…。

その二組を思い出そうとしている私の隣から立ち上がる音が聞こえ、私がそちらを見ると彼女が苦笑いを浮かべている。

 

『あはは…おねえちゃんがまた、しらべおねえちゃんをこまらせる。ぼくそろそろいかないと…じゃあね、"こころ"おねえちゃん』

 

パタパタと私の方は右手を振るう彼女に私は目をまん丸にする。

だって、彼女に私は名前を教えてないのだから。

 

『…ねぇ、なんであなた。わたしのなまえ…』

『…ここ。虎々絽ってかいてあったから…まちがえてた?』

 

尋ねる私に彼女は自分の右胸にある白い布を指差す。そこには彼女の名前であろう"暁 歌兎"という漢字が書いてある。

なるほど、彼女はどうやら私の名札から名前を呼んだらしい…って、そもそもそれしかないじゃないか。

周りから距離を置くことに熱中しすぎて、根本的なところを忘れてしまうとは…。

 

『ううん、よみかた。それであってるよ、うたうちゃん』

 

私はそう微笑み、彼女も淡く笑い、肩甲骨(けんこうこう)まで伸びた水色の入った銀髪を揺らすと姉が待つ廊下へと歩いていった。

 

その出会いから彼女…うさちゃんとはよく話をするようになって、次第にうさちゃんの存在が私の中で大きくなっていき、次第にうさちゃんの全てが欲しくなった。

が、その気持ちに気付く前にうさちゃんは私の前から居なくなってしまったのだった。

 

ううん、居なくなったのではなく、私とは別世界の住人となってしまったのだ。

うさちゃんは珠紀カルマのギアであるミョルミルをその身に宿す融合者となり、私は---

 

 

 

---精霊使いになってしまったのだから。

 

 

 

まず、精霊というのは…草木、動物、人、無生物、人工物などにひとつひとつに宿るとされている超自然的な存在であると共に、万物の根源をなしている不思議な気のことや肉体から解放された自由な霊という説もある。そして、その精霊を操れるのが私がなった精霊使いというものだ。

 

そんな精霊使いがどうやって、精霊を仲間とするかは簡単だ…創り出すのだ。浮遊する霊と草木や無生物に宿る精気を重ね合わせて、この者は私のであるという紋章を身体のどこかに刻むことによって、その精霊と正式に(パートナー)となる。

パートナーとなった精霊とはその精霊の力を借りたり、憑依(トランス)をする事が出来る。

 

トランスとは、その文字の通りで私にその精霊が憑依するのだ。

憑依することによって、精気が高まり、その精霊の力を最大限引き上げる事が出来る。しかし、それを使った後は全身に激しい痛みが走る。

精霊と人は元は同じといえど、彼らは人と違い一脱した存在なのだ、そんな人ならざる者が人の身体を動かすのだ。彼らは限界という言葉を知らない故に私の身体は悲鳴をあげて……ってこんな感じである。

 

と、精霊についてもう少しだけ補足をすると…彼らは魂と呼ばれるものと花鳥風月や無生物から取り出した精気を組み合わせて創り出した存在であるのは上で述べた通りである。

そんな彼らだが、魂と呼ばれる時は生存の記憶が残っているようなのだが、精霊と呼ばれる存在になった途端、生存の記憶を失うそうだ。

なぜかは分からない、だがもしかすると創り出した精霊使いに反抗するのを防ぐ為なのかもしれないと私は思っている。

 

 

〜*

 

 

「…ん」

 

どうやら知らぬ間に寝てしまったらしい。

 

目を開けた私が最初に目にしたのは、真っ白な天井。続けて、黄緑色の癖っ毛の所々に草を生やした幼い少女がひっこりと顔を覗かれるとニタニタと笑い出す。

 

 

「おきたおきた〜たきおたきお〜」

 

特徴的なしゃべり口調でケタケタ笑う幼女に続けて、顔を覗かせるのは半透明な水色の髪を背中に流し、適度に整った顔立ちを悲痛に歪ませている女性である。

 

「良かったですか?主様(あるじさま)。突然、倒れられたのでびっくりしたんですよ』

「ちっ、起きたんならさっさと人間どもを潰しに行こうぜ」

 

常に不機嫌そうな声はこの声は、磐土(イワツチ)だろう。彼は髪の毛が岩になっていて、凛々しい顔立ちにもヒビのような線が入っている青年である。

 

「こら、磐土(イワツチ)。主様になんて乱暴な口調ですか!」

「うるせーんだよ、水虬(ミツチ)。いい子ぶるんじゃねー」

「なんですって!」

 

喧嘩を始めたイワツチとミツチを止めようと起き上がる私に後ろにいた燃える炎が髪でいかつい顔をした男性が呆れたような声を漏らす。

 

「こらこら」

「逃走中に居眠りとは我らの主人は随分、余裕があるようだな」

軻偶突智(カグツチ)…」

「カグツチもなんたる言い草ですか、主様に!」

「ミツチいい」

「ですが…」

 

尚も言い下がるミツチに私は鋭い視線を向ける。

それで押し黙ったミツチを見て、私は彼らへと笑いかける。

 

「みんな心配掛けたようだね」

「そう自覚してんなら倒れるじゃねー」

 

不機嫌そうにイワツチがいうのを聞いて、手厳しい、とは苦笑いする私は近くに転がっているものを見て、頭を抱える。

 

「ね、これ誰がやったの?」

 

顔を金槌のような鈍器も複数回殴られたのだろう、頭蓋骨はひび割れ、中から生々しい血色した脳みそが冷たいコンクリートへと垂れており、小さな身体は所々に灼け爛れ、若々しくきめ細かい肌が黒くなっている。よく見れば、幼い顔も灼け爛れているし、黒い髪はびしょびしょ、そして二の腕のところには切り傷で…下腹部のところに大きな切り傷があり、中から臓器が溢れる…って、これ全員でヤったぽいな。

 

案の定、全員でヤったらしく、私から目をそらす四人に深くため息をつく。

 

「確かに多くの魂は集めるとは言ったけど…ここまで酷くしなくてもいいんじゃないかな?」

「ですが、この者は主様を殺そうと…」

「分かったから落ち着いて、ミツチ」

 

ミツチはこの四人の中で一番の服従心が強く、私に害をなすものには容赦なく鉄槌を下す。故に扱い困る精霊だったりする。

 

「それより野椎(ノツチ)は?」

 

白熱していくミツチを置いておいて、ハツチへと話しかける私の後ろからチャラい口調が聞こえてくる。

 

「おー、起きたんスね、主」

「うわ!?って…ノツチ、いつからそこに?」

「そうスね。主が目を覚まして、ノツチがケタケタ笑ってる所からスね」

「…そっか」

 

どうやら最初から居たらしい。

居たなら居たと言って欲しい…と頭を抱える私へとノツチは芝生の髪を揺らすと私へと話しかける。

 

「とりあえず、主が狙っていたうさちゃんって子はここをもう後にしてるス。最初にヤったあの眼鏡の片目が無かったスから、どうやらその目を使って外から出たっぽいスね」

「そっか」

 

この地下研究所があの眼鏡…ウェル博士の目で無くては出入りできないセキュリティを搭載しているからと油断していたが、まさかあのミンチ肉と化したあの眼鏡をウェル博士と判断し、うさちゃんは転がっていたウェル博士の目を使用して、外に出たと。

 

「なら、ここにもう用はないけど…折角だからね」

 

電球が不自然に点滅し、私の周りを半透明な白い浮遊する球を無造作に鷲掴みにし、その球へとキスを落とす。

 

「私の駒となる魂を回収させてもらおう」

 

薄暗い部屋の中、赤い唇と白い歯だけが輝いていた…




本当は逃走までの歌兎視点も書きたかったんですが、あまりダラダラ書くのも読者の方にとっては苦痛かなと思い、この話のオリジナルキャラ・虎々絽の視点のみとさせてもらいました。

まず、この章のオリジナルキャラである虎々絽という名前は本作の主人公が歌"兎"と動物の名前が入っているので、彼女にも動物の名前を入れてあげたいと思い、この名前にさせてもらいました。
彼女はこの作品始まって以来の歌兎にとっては忘れさせし親友であり、姉様とは違い他者であり、もしかすると姉様以上に歌兎へと好意を寄せている子ですからね。

と、折角なのでこの章を書いた理由を述べるとこの作品は『ガールズラブ』というタグはあるが、姉様との絡みが多く、これはガールズラブでなくシスターラブだよなぁ…と思い、折角なので歌兎にも恋愛されてあげたいなぁと思い書いたのがこの章というわけです。
章のタイトル通り、普通の恋愛とは違い、かなり重い恋愛となると思いますが…これからも虎々絽と歌兎の二人が繰り出す恋愛模様を楽しんでもらえればと思います。
私も未熟ですが、頑張って二人の感情を書かせてもらいますので…ハードラブ・ミッションをよろしくお願いします(礼)

また、調ちゃんが切ちゃんのことを『切歌ちゃん』と言ってるのは、最初から『切ちゃん』では無かったのではないか?という私の勝手な憶測からです。
徐々に仲良くなり、『切歌ちゃん』→『切ちゃん』になったと。
切ちゃんは私のイメージでは誰とでも分け隔てなく接することが出来る子と思うので、調ちゃんの呼び方はそのまま『調』としました。



と、ここからは雑談コーナーと題して…イベント『機械仕掛けの奇跡』と『ハロウィン型ギアイベント』の二つの感想を書かせてもらいます。


まずは『機械仕掛けの奇跡』ですが…
ひとまず、キャロンちゃんの父親であるオズワルドに怒りを覚えましたね。
確かに多くの人の命と一人の少女の命では一人の方を取るでしょう。だがしかし…だからこそ、オズワルドにはキャロンちゃんの味方であって欲しかった。
彼の立場上仕方ないといえど、彼は彼女の父親なのだから、娘を『道具』と言わず…そして、娘を兵器の鍵にするようなことはして欲しくは無かったですね(涙)

と、今回のイベントで新しく流れたオリジナル曲『KNOCK OUTッ!』は響ちゃんらしいカッコいい曲でしたね!
響ちゃんらしい真っ直ぐな想いとシャロンちゃんへの気持ちがうまく書かれていると思いました。
前の『エンドレス☆サマータイム』と可愛らしく好きでしたが、私はこっちのかっこいい響ちゃんの方が好きですね…ってかなり個人的な意見なのですが(笑)

しかし、今回のイベントも良かったな…お母さんとして頑張る響ちゃんは魅力的でしたし、キャロンちゃんも可愛かったし…最後の挿絵の響ちゃんがカッコ良すぎた(照)
あれは憧れますよ、誰だって。




続けて、『ハロウィン型ギアイベント』ですが…こちらはギアの感想が主ですね。

ギアの感想を書く前にガチャの結果なのですが…最初の一回で調ちゃんの方を入手することができまして、後は大大大大大本命たる切ちゃんなのですが…かすりともしない(涙)しかし、諦めるのはまだ早い!
何故なら心の中で奏さんが『(ガチャを)回すのを諦めるなッ!』って私に言ってるから!!
ってハイ、ふざけました。すいません(土下座)

と、ふざけてないで…ギアの感想ですが、今回のギアも大変可愛らしい!
調ちゃんは魔女っ子でフリルのついた衣装が可愛いですし、何よりもツインテールがくるくるってカールしているのがいいッ!!可愛いなぁ〜と戦闘中ニヤニヤしながら見てます。
そして、切ちゃんですが…こちらも可愛いっ!!
しかもフードですし…トレードマークのバッテンが大きくプリントされてますし…。他にも何故か悪魔のツノっぽいものが生えてたり、蜘蛛の巣がプリントされているマントだったりと衣装は私のどストライクゾーンですよ!モーションのお化けっぽくベロベロしてるところがなんとも…(可愛すぎてジタバタ)

しかし、調ちゃんは魔女っ子…で、切ちゃんはなんなのか?
悪魔なのかな?紫のツノ生えてるし…でも、鎌持ってるしな…死神?いやいや、必殺技な感じから吸血鬼な可能性も…って、そんなことよりもここ二人のシンフォギアカードは覚醒する前も完全覚醒した後も手は重なったままってーー尊すぎるでしょおおおおああ(絶叫)

これは断然切ちゃんを入手せれば!!





と、こんな感じで雑談コーナーを終わりにします。
長らくお付き合い頂きありがとうございまするm(_ _)m


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13)違和感とはんこうき。

こんばんわー、いや…おはようございます、なのかな…?

と、今回の話は切ちゃんと歌兎の姉妹喧嘩が主となる話だと思います。
個人的には一番書きたかったことが書けたと思うこの話…姉妹喧嘩の行く末を見守って頂けばと思います!

では、『13)違和感とはんこうき。』の開演です!!

※上が切ちゃんからの視点、下が歌兎の視点となっております。


暖かいお日様の光が差し込むリビングの五つの席の中、左側の一番左端の席は今日も(・・・)ぽつんと空いたままで、その代わりに"うたうのへや"というネームプレートが掛けられた部屋の前に無造作に置かれた持ち手付きのお盆の上に置かれたサランラップが掛けられた卵焼きに焼き鮭、白ご飯に味噌汁というオーソドックスな朝ご飯は手付かずのまま、あたしがその部屋の(ぬし)に話しかけたままの状態で置かれている。

 

(…歌兎…、もう一週間デス…)

 

一切何も口に含む事もなく、一切何か液体を体内へと流し込む事もなく、あたしが溺愛する妹はあの日からカーテンも締め切り、ドアの鍵も締め切り、自室から出てこようとしてこない。

 

そう、あの日確かに歌兎は帰ってきた。帰ってきたのだが---あの時感じた違和感をあたしは今も忘れない。

 

司令に電話をかけた時間から六時間後、歌兎は自力でこのS.O.N.G.の本部へと帰ってきた。

服装は行方不明になった時のものと違い、迷彩柄の短パンの上に深緑色をしたTシャツの上に迷彩柄のフード付きのベストとかなりラフな格好をしてたり、慌てふためくあたしを落ち着かせつつ、歌兎が説明したのは着ていた服装は防御などに使って使い物にならなくなり、あのまま帰ってきたら姉様が心配しちゃうだろうから、気絶させた敵から拝借したものが今身につけているものらしい。

そう説明する歌兎の眠さそうに開かれた黄緑色の瞳は奏者のみんなやあたしを見ているようで見ていなく、焦点の合ってない視線に違和感を覚え、不自然に淡く笑っているところも何かを握りしめているかのように膨れ上がったままの右拳…そして、普段よりも血の気の引いたその顔色が明白に逃走中に歌兎の身に何かがあった事を証明していた。

 

メディカルチェックの時に右拳に握られていたものを差し出した歌兎からそれを受け取ったS.O.N.G.の医療スタッフは何気無く掌に置かれたものを唖然と見つめ、そして悲鳴を上げた。

自分の掌に転がっていたのは人の眼球だったからだ。

白銀色の虹彩に黒い眼孔がこちらを向いており、悲鳴を上げたスタッフはそれを床へと落とし、腰を抜かしたように小刻みに下半身を揺らして、床へと座り込む。そんなスタッフを見つめる歌兎はただ不思議そうに眺めていたそう。

 

その後、結果が出たのだが、問題があったのは精神の方らしく…司令は歌兎に自宅での療養を勧め、歌兎はそれに従い、自宅に帰ってくると共に自室へと篭ってしまったというわけだ。

 

(…歌兎、あなたはあの日なにを見てきたっていうんデスか?それに何故ウェル博士の左眼球をあなたは握っていたのデスか…あの場所でなにがあったんデスか?それはお姉ちゃんにも言えない事なんデスか?)

 

歌兎の部屋を見つめながら、あたしは調が作ってくれた朝ご飯を食べながら…考え事をする。

どうすれば、歌兎が部屋から篭らないようになるのか?どうすれば、出てきてくれるのか?

 

パクパク

 

次は味噌汁を飲もうとお椀を持ち上げた時に右側からハンカチが迫ってきて、頬を拭かれる。

 

「…んぅっ。し、調?」

 

あたしの頬を拭いているのが調と知り、そっちを向いて眉をひそめると、調が小さくため息をつく。

 

「切ちゃん、歌兎が心配なのは分かるけど…よそ見しながらご飯を食べちゃダメ」

「あはは、ごめんなさいデス」

 

スゥ…とあたしの太もも辺りを見る調に習い見て見ると見事に白いご飯粒が落ちており、あたしは笑いながらご飯粒を拾うとそれを口に含む。

そして、食べ終えたあたしは歌兎の部屋の前に行き、手付かずの朝ご飯を見つめ、その朝ご飯に添えられている何かの紙切れのようなメモを手に取る。

 

《ごめんなさい。今は何も食べたくないんです。歌兎》

 

簡単に書かれたそのメッセージをあたし越しに見ていたマリアとセレナ、そして調が苦い顔を浮かべる。それはあたしも同じだ。

 

「このまま何も食べないと餓死してしまうわ」

「…それに暗い部屋の中に閉じこもっていると身体にも悪いです」

「…今日は歌兎の好物沢山入れてみたんだけど…ダメだったみたい」

「……」

 

もう、これは以上黙って見ることは出来ない。

司令やクリス先輩、翼さんにも歌兎が打ち上げてくれるまで待つべきだという言葉の意味は痛い程分かる。だけども、これ以上待っていたら、歌兎が本当に餓死してしまう。

 

(…歌兎の嫌われてもあたしはやるデス)

 

覚悟を決め、マリアと調に今日は学校を休みたいと告げようとした時には言葉を遮れていた。

 

「調、今日は---」

「---分かってるよ。歌兎の事宜しくね、切ちゃん」

「私から連絡しておくから、

「暁さん、歌兎ちゃんのことお願いします」

 

トントン

 

と、励ますように肩を叩いて、重たい足取りで出ていた三人の気持ちに答える為にもあたしはこの部屋から歌兎を連れ出さなくてはいけない。

 

「…よし!やるデス!!」

 

パシン

 

と頬を叩き、気合いを入れ直すとあたしは歌兎の部屋の前に立ち、遠慮がちにドアをノックする。

 

コンコン

 

『……』

 

いつもの如く、沈黙が続く。だがしかし、今日はこれで終わるわけにはいかない。

 

コンコン

 

『……』

 

コンコンコンコン

 

『……』

 

コンコンコンコンコンコンッ!

 

尚も無視し続ける歌兎にも聞こえるようにドアをノックすると余りにも煩かったのか、今まで反応がなかった部屋から身動ぐ音が聞こえる。

 

『…なに?』

 

今まで聞いたことがない歌兎の不機嫌そうな声。

 

「…お姉ちゃんデス。少し話がしたいんデス、ここを開けてくれませんか?歌兎」

 

柔らかい声音で語りかけるように言うあたしに歌兎は不機嫌な声のままで質問してくる。

 

『…姉様、学校は?今は行ってる時間帯でしょう?』

「休みました。こんな状態の歌兎をほっておかないデスから」

『……てよ』

 

いつものように明るい声でそう言うあたしの耳に届くのは歌兎の掠れ声である。

 

「へ?」

 

バッシン

 

とドアに衝撃が走り、怒鳴り声が部屋に響く。

 

『ほっておいてって言ってるじゃん!お姉ちゃんのそういうお節介なところ本当に嫌い!!』

「…歌兎?」

 

"姉様"でなく"お姉ちゃん"という呼び方で綴られる言の葉は歌兎の偽りのない本音らしくて…キライのたた三文字がここまで凄まじい切れ味だとは知らなかった。

見えざるナイフで心臓を八つ裂きにされているようで、息苦しさが加速していく。

 

(…でも、こんな事であたしはやめないんデス!あたしはマリア、セレナ、調との約束を守るんデス!!)

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

---止まらない。

涙が…思ってもない言葉の暴虐が止まらない。

 

『いつもいつも僕の為とか言って、本当は自己満足なんでしょう!』

 

---止まらナイ。

自己満足…なんて思ったことないよ、お姉ちゃんは僕のたった一人の肉親で僕の心の拠り所で。

 

『僕は世話してなんて一度も言ってないのに勝手にしていって…自分の価値観に僕を巻き込まないでよ!!!』

 

---止マラナイ。

人見知りであまり人と関わらない僕に色んな人を紹介してくれて、友達にしてくれた太陽のように暖かい人。

 

『僕はそういうお姉ちゃんの勝手なところ大嫌い!!」

 

---トマラナイ。

なのに…それなのに……なんで、こんなコトバばかり出てきてしまうんだろ…。

 

僕は毛布を固く握り締め、頬を濡らす涙を乱暴に拭う。

 

「…自己満足…?そんなわけ、ないじゃないデスか…っ、あたしは昔も今も貴女の事だけを思ってッ---」

「---貴女の事を思っているのなら…ほっておいて…。それが今の僕が一番望んでいる事だよ」

 

(あぁ…もう完全にお姉ちゃんにも愛想つかされちゃった…)

 

心配してきてくれたのに…我儘な僕の為に学校を休んでくれたのに…。僕は…っ、ぼく、は……そんなお姉ちゃんの好意を一蹴してしまった…。

 

止めどなく溢れる涙を拭う僕へと当たる明るい光。

 

「一番に望んでいる事ならなんで毛布に包まって泣いてるデスか、歌兎」

 

(そんな…そんな事あるわけ…、だって僕はあんなに酷いことをお姉ちゃんに---)

 

顔にかかる光に導けるように上を向いた僕が見たのは

 

「一週間ぶりに歌兎の可愛い顔が見れて、お姉ちゃんはハッピーニャッピーな気持ちデス」

 

ニッコリと僕の大好きな太陽のような笑みを浮かべるお姉ちゃんの姿だった……




もしかしたら、この作品始まって以来、初のちゃっとお姉ちゃんしてる切ちゃん(笑)
書けてよかった心から思う反面、姉様の悪口を言う歌兎は書いてて辛くなりまして…私もですが、思ってる事と言いたい事が真逆なることというのは良くあることなのですが…彼女の場合、本来ならば取り返しのつかない言葉の暴言を大好きな姉様へとぶつけてしまったわけですからね…きっと、彼女の心の中も痛みが走っていたと思います…。

そして、今回の歌兎が何故"姉様"でなく"お姉ちゃん"なのかというと……切ちゃんが違和感を覚えたという歌兎の姿と今の歌兎の精神状態によるものでして。

次回はその精神状態と一週間何も食べてこなかった歌兎に何か食べさせようとする切ちゃんの話となると思います。ちょっと、普通のお姉ちゃんでは取らないような方法を取ると思いますが…まぁ、そこがうちの過保護な姉様なので(苦笑)






と、ここからは雑談コーナーで、シンフォギアと全く関係ないのですが…私の推している声優さん、茅さんがアニメ化が決定された『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』の『大好真々子』さん役でご出演され…尚且つ、その真々子さんは息子を溺愛するお母さん役だそうで…もう、衝動のままにCMを聞き、そのCMを聞いて、ハイテンションのままに小説を書かせてもらいました…

この小説にも、シンフォギアにも関係なのですが…

一言、ほんの一言だけ…言わせてください…





お母さんーーーー!!!!!(絶唱)






と。
私…いい子して待ってます、アニメが始まるのを(正座)




と、こんな感じで雑談コーナーを終わります、ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m


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14)そんな事しなくても…。

今回は話は短い上にただ暁姉妹がイチャついてる話です。

苦手な方はそのまま回れ右が高速スクロールしてください…では、『14)そんな事しなくても…。』の開演です!

どうぞ!!


「えへへ〜、一週間ぶりの歌兎を抱っこしたのデスぅ〜」

 

僕を太ももの上に座らせ、お姉ちゃんはすりすりと僕の頬へと自分の頬を擦り付ける。

因みに、僕の部屋は締め切っていたカーテンはお姉ちゃんの手によって開けられ、窓も換気との事で開けられ、僕の拳くらいに開けられた隙間からそよぐ風が頬を掠める。

 

「…あ、あの…お姉ちゃん…」

「んー?なんデスか?歌兎」

 

擦り付けていた頬をはなして、お姉ちゃんが僕を見下ろす。僕はそんなどこかキョトンとしているお姉ちゃんの幼さを残りつつも美人という系統に入る顔つきを見上げるとおずおずと意見を言う。

 

「…僕、口移しじゃ、なくても…自分で食べれる、から…」

 

そう、お姉ちゃんは僕の部屋に入り込みや僕を抱きしめると無理矢理唇を奪い、ミネラルウォーターを流し込んできたのだ。それ以降もシラねぇが作ってくれたという朝ご飯を口に含み、強引に僕の口をあけて食べさせるという…絶対普通の姉妹ではしない介護を受け続ける僕もこれ以上は羞恥心に胸が押しつぶされそうなので、やめてくれるように申し出を出したというわけだけども、お姉ちゃんは穏やかな口調ながらも有無を言わさぬ凄みをオーラに潜ませ、僕にいう。

 

「だめデス!そう言って、食べないつもりなんでしょう?あたしはマリアやセレナ、調から歌兎の事を元気にしてほしいって頼まれたのデス。だから、無理矢理にでも水分や食べ物を飲んだり、食べたりしてもらうデス」

「だからって、こんなやり方しなくても…」

「こんなやり方じゃないと歌兎が飲んだり食べたりしないからデス」

 

お姉ちゃんはベットに横に鎮座してある勉強机の上に置いていたミネラルウォーターを口に含むと僕の頬を添えて、自分の方を向けさせるとゆっくりとお姉ちゃんの整った顔が僕へと近づいてくる。

 

「ま、待って…っ!早まらないで、お姉ちゃ---んぅっ、んぐんぐ…っ」

 

抵抗する僕の手を頬に添えてない方…右掌で抑え込み、お姉ちゃんは僕の唇に自分のそれを重ねると僕の固く閉ざされた唇を舌で開けさせると口に含んだミネラルウォーターを流し込む。

流し込まれたミネラルウォーターは重力に従い、僕の喉へと流れていき、ごくんごくんと喉を鳴らす僕を見て、唇を外したお姉ちゃんが得意げに笑う。

 

「んっ…ほら、こうしたら飲んでくれたでしょう?」

「だからって…こんなの」

 

顔を赤くする僕に心底不思議そうなお姉ちゃん。

いやいや、お姉ちゃん。なんで、そんな不思議そうな顔してるの?僕はその意味が変わらないよ。

 

「…お姉ちゃんには羞恥心ってものがないの?」

「いきなり何を言い出すデスか、歌兎」

 

だって、羞恥心が無いから…こんな恥ずかしい方法を取るだろうから。

 

「あたしはただ歌兎に元気になって欲しいだけなんデスよ。それに…歌兎、まだ食べ物や飲み物を見るだけで気持ち悪くなるんでしょう?」

 

僕の両手を抑え込んでいる右掌に僅かに力が篭り、僕はハッとし、お姉ちゃんを見上げる。

 

「…あの日、歌兎に何があったのか、あたしは知りません。でも、こんなに震えてるんデス…きっと怖い事があったんデスよね?」

 

そう言いながら、今度はナスの煮しめを口に含んだお姉ちゃんの顔が近づいてくるのを僕は静かに受けいれるのだった…

 




変な終わり方になってしまいましたね(笑)

今回の話ですが、文字数少ないのに…シスターラブ要素がふんだんに詰まっていたと思うこの話。
読書の皆様的には有りだったでしょうか?

私は少しやりすぎたかな…と思っております(笑)
これは過保護では無いような気がしまいまして…しかし、うちの姉様ならやりそうかなぁ…と思ってみたりします(笑)







と、ここからは雑談コーナーで…今日からAXZの中盤ストーリーが登場しましたね。
まず、感動したのは『デンジャラス・サンシャイン』が聞けた事でして…やはり、この曲は可愛い…っ!!可愛いと思うのですっ!!
最初聴いた時は正直、なんだこりゃ…と思いましたが、聴けば聴くほど良さが分かる曲だと私は思っております。
特に『にゃっにゃー』は私の癒しであり、元気をもらう言葉です(*´∀`*)

作中で流れたということは…後編で曲追加ってなるのかな?もしそうなったならば、私は速攻で『デンジャラス・サンシャイン』をミュージックルームに追加する為に頑張ります!

と、そのお祝いで歌唱石を一回回せるくらいに溜まったので…今度こそと思い、切ちゃんこい!と回したのですが…出てきたのは、☆5メモリアが二つでシンフォギアカードは切ちゃんは居たのですが…もうすでに限界突破したものでして……泣きたくなりました(涙)

まだ期間がありますからね…また、ぼちぼちと歌唱石を貯めていこうと思います。


と、いうことで雑談コーナー終わりです。
ここまで読んでいただきありがとうございます(礼)






また、明日の更新は恐らくずっと書きたくて、うずうずしていた『きりセレ』…『切ちゃん×セレナちゃん』の話を更新しようと思います。

この章は歌兎は登場しますが、ストーリーに関わることはありませんかつ新たな世界線での話ですので…読書の方が混乱しないように前書きが長めとなるかもですが、説明文を入れようと思います。

完全なる趣味ですので、更新はクロスオーバーの下に新しい章を作り、更新していこうと思います(土下座)


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《パラレルルート》トゥルーエンドを目指して 1)天は鳴り、翼奏でて、兎は歌う 前夜

お久しぶりデス…長らく更新出来なく申し訳ありません…。

さて、改めて始まったトゥルールートですが…こちらの歌兎は少し…いいえ、本編に比べると物をハッキリ言うことが出来る子となっております。
また、『姉様の言うことには絶対服従』なので、お姉ちゃん好きが加速して、お姉ちゃんの方も過保護が加速しているかもですが…そこもこのトゥルールートの楽しみポイントというところで…どうか、よろしくお願いします!

久しぶりに書いたので、視点があっちこっちになっているかもしれませんが…どうぞ、お楽しみ下さい!


大きな草原にポツンと置かれたライブ会場。

羽を広げたような七色の点滅する器具、左右にはトゲトゲしい黒を基調とした青色と桃色の点滅する器具がある。それを背景にだだ広い白いタイルが貼られたステージは真ん中から真っ直ぐに会場の中央部に向かって伸びている道があり、それを左右に隔てて、思い思いに手に持ったペンライトを振り回しながら、観客たちが蠢いていた。

 

「フォニックゲイン、想定内の伸び率を示してます」

盛り上がりを見せる観客たちの様子を大きめのモニターで見ている多くの大人たちの一人がそう言うと、焦げ茶色の髪へと薄ピンク色の蝶々の髪飾りを付けている白衣姿に赤縁眼鏡の女性が即座に反応する。

 

「どうやら、成功みたいね」

 

両翼を持つ二人の歌姫がステージの上を滑っていく…多くの大人と多くの者たちの思惑を乗せてーー

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

【逆光のフリューゲル】

 

何度も聞き流してきたBGMが流れ、僕は目を輝かせ、姉様と僕は手に持ったペンライトを片手にステージの上を滑るように動いていく二人に見えるように振り続ける。

しかし、周りは大人で僕はまだちっぽけな七歳である子供であって…

 

(んーっ!見えない…)

 

小さな脚を使って、一生懸命背伸びしても見えなくって…でも、近くに居る姉様とシラねぇは何とか隙間から見えているらしくて、見上げる姉様の垂れ目の黄緑色の瞳がだんだんと大きくなっていく。

 

「おぉー!!調、歌兎!ツヴァイウィングデス、やべーデスよ!!」

「もう、切ちゃん、はしゃぎすぎ」

 

ペンライトと左腕をブンブンと振り回して、大はしゃぎする姉様に終始呆れ顔のシラねぇ。でも、あれは呆れているというよりも一緒になって喜んでいるって感じなのかもしれない。

そう思うと、自然と頬が緩んでくる。

 

「およ?歌兎、今日はなんだか機嫌がいいデスね?ツヴァイウィングに会えたからデスか?」

「…それもあるけど、姉様とシラねぇと来れたことが何よりも嬉しい」

 

そう言って、姉様とシラねぇに抱きつこうとする前に泣き出す寸前の顔に崩しながら、姉様が僕へと抱きついてくる。

 

「あぁ、もう!歌兎が可愛すぎるのデス!!お姉ちゃんがスリスリしてあげるのデス!!」

「…もう、姉様。暑いよ」

「暑さなんて関係なのデス!すりすりすりすり」

「…くすぐったいから」

 

そのまま持ち上げられると頬ズリされながら、僕は姉様を押し返しながら、ツヴァイウィングがいる方を見る。

腰まで伸びた赤い髪に桃色のワンピースを着ているのが、天羽奏さん。青色の髪をサイドテールに結び、お腹のところが空いている水色のワンピースを着ているのが、風鳴翼さん。

二人が奏で唄う曲はどれも力強いものもあるが…時折、切ない物もある。その異なる歌を見事に歌い上げる二人に僕は憧れ、いつかはこの二人を超える歌を歌ってみたいと思うようになった。

 

僕も仕事柄…うーん?あれは仕事というのだろうか?人助け柄って言った方がしっくりくる気がする。

その人助け柄で歌を歌わせてもらうことがある。その時に僕が唄う曲は自分で言うのもなんだけど…どこか暗い感じがする。その歌詞が僕の心境を表わしていることは分かる…僕はあの人からこの力を受け継いだ時に、沢山のものを貰った。だから、今度は僕があの人に貰ったものを周りに振りまいていく番だ。

だからこそ、僕はあの歌詞に含まれているあの出来事をちょっとずつ乗り越えていかなくてはいけないんだ…。

 

一人、しんみりとそんな事を思っていると大きく湧き上がる叫び声に紛れて、小さな呟き声が聞こえてきた。

 

「ドキドキして、目が離せない……。すごいよッ!これがライブなんだッ!」

「…?」

 

聞こえてきた呟き声を探していると僕がいる側でなく、白い通路を隔てた向こう側に見つけた。

 

(あのお姉ちゃんかな…?)

 

ピンクのワイシャツに白いカーディガンを着た明るめの茶色の髪を癖っ毛にしている少女。

琥珀色の瞳を正面に向け、大人達にもみくちゃにされながらも嬉しそうにペンライトを振っている女の子…恐らく、年はうちの姉様くらいか一個上くらいだろうか。

 

(あのお姉ちゃんは一人で来てるんだ…。あんなに嬉しそうに振って…きっと、奏さんと翼さんが好きなんだろうな…)

 

どこかうちの姉様に雰囲気が似ている少女が何故か気になり、暫し見ていると、ツンツンと僕の肩を突く人が居る。

誰かな?と振り返ってみると桃色の少し吊り目な瞳がジィーーと僕を見つめていた。

その瞳の中に心配の色が滲んでいるのを見て、僕はパタパタと両手を振ると慌てて弁解しようとして、手遅れとなった。

 

「歌兎、どうしたの?」

「…ん?」

「ずっと、あっち側見て動かないから…。誰か気になる人でも?」

「なんデスとぉおお!!?どいつデス!どこの馬の油デスか!あたしの妹を誑かす奴ッ!出てこいなのデス!!」

 

シラねぇの声を目敏く聞いていた姉様が表情を険しくさせて、手当たり次第色んな人をものすっごい形相で睨みつけている。

 

(あぁ、もうこれだから…過保護な姉様は…)

 

呆れ顔のシラねぇと僕は周りの人が既に居なくなりつつある周囲に頭を下げつつ、姉様の暴走…いいや、過保護節を止めようと試みる。

 

「切ちゃん、落ち着いて。それだとただのお馬さんの油だから…それに、万が一にもこんな大勢の中から見つけられるわけないでしょう」

「…シラねぇの言う通りだよ、姉様。姉様が気にしているような人居ないし、あっち側見てたのも何気なしだから」

「調、歌兎がそう言うなら…落ち着くデス」

 

シラねぇと僕の言い分を聞き入れた姉様だが、まだ思うところがあるのか…プクーっと頬を膨らませて、周囲をキョロキョロする姉様に僕とシラねぇは顔を見合わせて苦笑いする。

それを見計らったように、ステージから奏さんの叫び声が聞こえて、僕は盛り上がりを見せる観客に負けないように声を張り上げるのだった。

 

「まだまだ行くぞーッ!」

 

(凄い!凄いよっ!)

 

「「うわーッ!」」

 

僕の叫び声とあの少女の声が重なり合い、そしてーー

 

バァアアアン

 

と、大きな爆裂音が聞こえて、そちらを見ると今まで見たことがないくらい多いノイズの群れが姿を現していた。

それに目を見張り、僕は服の上からソレをなぞるとギュッと胸元を掴む。

 

(僕がやるしかないんだ…!この国の奏者が応援に来るまで…僕が持ちこたえるしか…ナインダ!!)

 

僕は唖然としている姉様から身体を揺らして飛び降りると、姉様とシラねぇへと声をかける。だが、それよりも先にシラねぇと姉様は僕の言いたい事を汲み取ってくれたらしく、微笑んでくれるシラねぇにうなづき、飛び出そうとした時だった。

 

「…姉様、シラねぇ!」

「観客の避難は任せて」

「…ん。それじゃあ、僕いっーー」

 

僕の手をギュッと掴み、何かを言うと口をもごもごさせている姉様へと僕は小首を傾げる。そんな僕を見つめ、やがて諦めたかのような顔をした姉様は念押しといつも言ってくるセリフを口にする。

 

「…姉様?」

「…っ、いいえ、なんでもないデス。歌兎、怪我だけはしてはダメですよ」

「…少しならしちゃう、人助けだから」

「本当は少しもして欲しくないデスがね…でも、それで歌兎が満足なら…お姉ちゃんは特に言うことはないデス」

 

そう静かに言う姉様の垂れ目な黄緑色の瞳に影が差している気がして…僕は戦いに向かう事を躊躇してしまう、姉様が悲しい思いをするのであれば…ならば、僕はこのままーー

 

「…姉様…」

 

そこまで、考えたところで姉様はブンブンと顔を振るといつものようにニコッと笑う。

 

「と!湿っぽくなのは無しデスねっ!ご武運を、デス!歌兎。歌兎からなんでも出来ます、あたしの自慢の妹デスから」

 

そう言って、僕を勇気づけるように背中を押す姉様に力強くうなづきながら、僕は走り出す。

 

「…ん!ノイズなんて蹴散らしてくる」

 

襟首から赤い結晶を取り出し、強く握りしめる。

 

(さぁ…いこう、ミョルミル。僕たちがここにいる人たちを守るんだ。カルねぇから貰ったこの力でーー)

 

目瞑り、胸に浮かんでくる胸に浮かんだ聖詠を口にすると…僕を眩い光が包み込む。

 

「…multitude despair mjolnir tron」

 

僕の着ていた姉様や家族からもらったお古が強い光の元へと溶けていき、変わりとばかりに僕の幼児体形へとぺったり張り付く薄手の布は薄い花青緑色で僕のおへそが見えちゃっている。その薄い布の上からパチンパチンと細っこい肢体に絡みついてくる黒と花青緑色の鉄で出来た防具。最後に耳元を覆うようにヘッドホンが装着され、首元に緑色の三角巾を巻いたらーーミョルミルのギアの装着完了だ。

ブンと横に振った右手に携えたブーメランを思いっきり振りかぶると今まさに姉様とシラねぇや観客に触れようとしているノイズ目掛けて投げつける。

 

効気(こうき)鳥飛兎走(うひとそう)

 

「…ふん!」

 

僕がぶん投げたブーメランにあたり、次々と灰になっていくノイズと今だに心配そうにこっちを見ている姉様へと微笑み、大丈夫だよという意味で手を振っていると両耳から流れている戦闘曲の伴奏が丁度終わる。

そして、小さく息を吸い込むと帰ってきたブーメランを受け取りざまに左側に固まっているノイズの群れへと投球するとまだ避難出来てない観客の救済へと向かう。

 

【灼鎚・ミョルミル】

 

〜♪

閉ざされた世界に 小さな兎

一人迷い込んだ 森の中

大きな穴から拾い上げた 一つの宿命(カルマ)

〜♪

 

両耳から聞き慣れたBGMが流れるのを聴きながら、迫り来るノイズの攻撃をひょいひょいと避けながら、左から帰ってきたブーメランの取っ手を持ち、くるっと身体を一回転させながら、その勢いのままに目の前にいるノイズを回し斬りする。

 

(ちっ、これじゃあラチがない。何処からこんなにも湧いてくるの)

 

忽ち、黒い灰と成り果てるノイズの壁から押し寄せてくるわくるわ…ノイズのダブル層に思わず苦笑いを浮かべながら、もう一度勢いよく振りかぶるとぶん投げるブーメランを受け取ると辺りを見渡し、ライブ会場に誰も残ってないか確認する。

 

(んー、こっち側は大丈夫。今度はあっちに行こう)

 

爆発やノイズの襲来でボロボロになった瓦礫をぴょんぴょんと飛び越え、取り敢えず目に見えたノイズへと二つに分裂したブーメランをぶん投げる。

 

分気(ぶんき)鳥兎匆匆(うとそうそう)

 

♪〜

閉ざされた世界に 轟々と燃え広がる焔

兎は叫び やがて 憧れは燃え尽き 灰と化す

抱き上げ零れ落ちた腕から 大きな宿命-カルマ-

♪〜

 

両耳から流れてくる音色の載せながら、曲を歌い上げる。

もう二度とあんな思いを、あんな出来事を起こさない為に僕はこの力と思いを受け継いだんだ…。

だから、その信念を踏みにじるものがいるのであれば、僕は許さない。

 

だから、そこにいるノイズさん、チリに帰りたくなければ…そこをどけて。どけないのであればーー

 

「…もう容赦しない」

 

帰ってきたブーメランを受け取り、キリッと前を向いた僕は行く手を塞ぐノイズへと斬りかかった…




【補足】

◎暁 歌兎

※ミョルミル
→首に巻いた三角巾がアクセントな花青緑色のギアで、それ以外は何もまだ考えません。なので、ちゃんとしたデザインが浮かぶまで、読者の方思い思いに歌兎のギアを思い浮かべてみて下さい。もしかしたら、そのギアデザインになるかもしれませんし…全く違うものになるやもしれません。

※ブーメラン
→ブーメラン片手にノイズをぶった斬り小さな女の子ってカッコいいなぁ〜と思い、設定したものです。


その他足りない解説は明日以降に書き足していきます。


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《パラレルルート》もう離さない 1)ここは…?

何ヶ月ぶりかの更新、書き方とかおかしいところが多いと思いますが…よろしくお願いします(礼)

さて、まずこの章のあらすじを少し紹介いたします。
この章での話は、主人公がある人に連れ去られてきたところから始まります。なので、この話は本編と違う世界線…本編の【漫談:切歌の不思議な夢】で切ちゃんが擬似体験した方の切ちゃんが居る世界線なので、大変暗い話になると予想できます。
ので、そういうのが嫌いな方は回れ右をよろしくお願いします(礼)


「んぅ…?」

 

最初に見たのは眩ゆい程に真っ白な天井で続けて、視線を下に向けるとこちらも力を入れて掃除をしているのだろう、ここに住んでいる人が真っ白なタイルがベッドに座る僕の姿を映し出している。

水色が掛かった銀色の髪の毛は腰に当たるくらいまで伸びており、眠たそうに見開かれた瞳は最愛なる姉と同じ黄緑色で、そして身につけている服装は最近姉様やその姉様の大親友のシラねぇと一緒に行ったショッピングモールで買ったお気に入りの花青緑色のパーカーに白いTシャツ、その下にはダボっと緩い感じの濃い藍色の短パンを着込んでいる。

 

(ん、やっぱり普段の僕の服装だ)

 

だとすれば、尚更ここがどこなのか、謎が深まる。

僕の記憶の限り、僕と姉様がお世話になっている二課…S.O.N.Gにはこんなところがなったように思える。確かに、シュミレーター室や診察室などはこのように白を基調としているが、ここまで何も置いてないことはないと思うのだ。もっと、色々な専用機器が所狭しと置かれているはず…なのに、ここは僕が腰掛けている安易なベッドとそのベッドの横にある窓、そしてベッドの対局線には真っ白なドアが一つ。それ以外には何もなく、ただ恐ろしいほどにまっ白い空間が続くのみだった。

 

(ん〜っ、やっはり分かんないや)

 

キョロキョロと辺りを見渡した後、僕はベッドから「んしょ」っと立ち上がる。

とりあえず、ここなのかをこの部屋から出て、人に聞くべきだろう。じゃないと、僕はS.O.N.Gに帰れないし、今日中になんとか帰らないとうちの過保護な姉様が何をしでかすか分かったもんじゃない。

 

(よしっ!そうと決まれば、まず行動!)

 

早速ドアノブを捻り、外に出ようとした時だった。

そのドアノブが逆に開き、僕は思わず前のめりに倒れそうになり、思わず部屋に入ってきたその人へと抱きついてしまった。勢いのままに、その人の双丘へとぱふっと顔を埋めてしまう。

 

(あれ?この感触…)

 

僕、知ってる気がする…というより、いつも触れているといったほうがいいかもしれない。その謎の安心感が気になり、暫く、その人に抱きついていた僕はハッとして、その人から弾かれたように離れる。

そして、上を見上げて、その人に謝ろうとして…僕は固まる。だって、そこには予想もしていない人の姿があったから。

 

「あ、ごめんなーー」

「……」

 

根深く被っている深緑色のパーカーから少しだけ覗く少し長めの金髪の前髪、そしてその前髪の奥にあるのは少し吊り上ってはいるが黄緑色の光を放つそれは間違いなく僕と血が繋がっているこの世界でただ一人の人のものだった。

 

「…ねえ、さ…ま…?」

 

驚きのあまりに掠れた声でそう言う僕にその人は姉様によく似た声音でボソッと呟く。

 

「君は君の世界ではアタシのことをそう呼ぶんだね」

「…え?」

 

そう聞き直す僕にその人はその底なし沼のように感情が読み取れない黄緑色の瞳でまっすぐに見つめてくると、今度ははっきりした声音で言う。

 

「アタシは確かに暁切歌で、君のお姉ちゃんその人だよ。でも、一つだけ違うことがある。それは…君はこの世界の人じゃないということ」

「それってどういう…」

「アタシが元の世界から君を攫ってきたから」

 

淡々となんでもないことのようにそう言う目の前のその人が僕の知る姉様と違うことはすぐに分かった。だって、あの自分のことよりも周りの人のことを誰よりも思い、思いやりに溢れる行動を取る心優しい姉様が人が悲しむと分かることをするとは思えない。

 

(それに…)

 

この人は僕を見ているようで他の誰かを見ているような気がする。

まっすぐ見つめてくる淀んだ黄緑色の瞳は僕を視界に収めつつも僕のさらに奥の方を見ているような気がする。それがなんなのか判断出来ずに困り果てていると話を切ったその人が無造作にポケットへと手を突っ込む。

 

「それと君の所有物は預かったから」

「…え?それって、どういう…」

 

ポケットに入っているものを取り出す前に僕をチラッと見て、そう言うその人のセリフの意味が変わらず、僕は聞き返す。そして、僕の問いの答えはポケットから取り出され、ひらひらと動かすその人によって判明する。

僕のギアのイメージカラーと同じ色の花青緑色のスマートフォン。そして、真っ赤な結晶を吊るしている真っ白な紐を視界に収めた途端、僕はそれを取ろうと手を伸ばす。

だがしかし、その人の方が上手(うわて)だったらしく、僕の手が届かないところへと腕を伸ばす。それでも、諦めようとせずに腕を伸ばし続ける僕を不思議そうな顔で見つめると問いかけてくる。

 

「そんなにこれが大事?」

 

これとは、赤い結晶を吊るしている白い紐のことだろう。いや、吊るしてある赤い結晶のことなのかもしれない。その赤い結晶の中にはニョルミルという聖遺物の欠片が入っており、僕がある人から受け継いだ大切なものでもあるのだ。僕はその人から想いと共に、この力を受け継いだ。だから、それを奪われるというのは僕に託してくれたその人の気持ちも裏切るということ。

 

(絶対、取り返さないと!それはカルねぇが僕に託してくれたものなんだから!)

 

「返して!返してください!それはカルねぇから受け継いだ大切なものなんです!」

「…珠紀カルマ、か。そっちの世界でも余計なことをしてくれる」

 

飛び跳ねて、取り返そうとする僕を右手で跳ね除けたその人は跳ね除けられた勢いで尻餅をついている僕を一瞥すると底冷えするような声で

 

「君は二度とこの部屋から出ることは許されない。だから、早く元の世界のことなんか忘れて、ここの生活に慣れることに専念した方がいい」

 

と告げるとバタンとドアを閉める。

取り残された僕はドアノブを捻ってもビクともしないドアノブにすがり、暫し静かに涙を流したのだった…




前書きでご紹介させて頂いた通り、この章の主な登場人物はグレてしまった切ちゃんと主人公の二人となっています。
そして、ニョルミルのギアが何故あるかは後々紹介出来ればと思います(礼)


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2)呼び名

並行世界の姉様に攫われてしまった主人公。果たして、彼女は元の世界に戻れるのか?それとも、並行世界の姉様と共に過ごすのか?

本編をどうぞ!


ひとしきり、泣きじゃくった僕は乱暴に袖で頬を拭うと立ち上がる。そして、自分の頬を力強く叩く。

そうしないと、いつまでも沈んでしまった心を立て直すことが出来そうになかったからだ。

 

(いつまでもくよくよなんかしてらんない!少しでもここの情報とか、あの人の事とか知らないと)

 

僕を見つめるあの人は…並行世界の姉様は何か嬉しい色を含ませながらも何故か悲しそうだった、それにあの変わりようが今の僕に降りかかっている出来事よりも気になる。

 

だって、そうでしょう?

この世に生まれ出て、この日まで僕の側に常に立ち、僕を支えて、ここまで育ててくれたのは他でもない姉様なのだから。

そんな大好きな姉様があんなに悲しそうな顔をしているんだ、力になってあげたい。それが僕を攫ってきた誘拐犯でも並行世界でも…僕の姉様に変わりはないのだから。

 

そこまで考え、僕はふっと口元を緩ませる。

もし、この場にあの過保護な姉様が居たら、自分相手にでも牙を剥くのだろうか?

 

「…愚問かな?あの姉様だもんね」

 

きっと相手が誰であろうが、姉様は僕を傷つけるものには容赦しないだろう。そんな姉様が大好きでもあり、危うく感じたのが遠い昔のようだ。

 

(って、ここに来てからそんなに時間経ってないのに変なの)

 

クスクスと自分のへんてこな考えに笑い、僕はこの何も置かれてない真っ白な世界の探索に出かけた。

 

◆◇◆◇◆

 

 

何も置かれてない真っ白な世界を探索して得たものは、僕の手のひらに収まるくらいのトランプと幼い子供が好きそうな古ぼけた絵本。

その中から古ぼけた絵本を選んで、僕はベッドに腰掛けると絵本を開く。そして、膝の上に乗っけるとただ静かにページをめくる。表紙やページの端はぼろぼろになっていたが、その他は新品同様に綺麗であり、僕は前の持ち主がこの絵本をよっぽど大切にしていたのだと思う。

それにこの絵本のストーリーも僕好みで、僕は夢中になり、時間を忘れて絵本を読んでいた。

 

それからどれくらい時間が経っただろうのだろうか?

絵本も読み終わり、一休憩しようと顔を上げた瞬間にバッチリと視線が重なり合うどんよりくぐもった黄緑色の瞳と眠たそうに半開きしている黄緑色の瞳。

 

(…へ?いつからあそこに居たんだろう、並行世界(こっち)の姉様…)

 

「ーー」

「……」

 

まぁ、いつから入り口付近の壁にすがっていたかはこの際置いてこう。そんな些細なことを掘り下げていたら、きりがなさそうだし…そんなことよりもなんで、こっちの姉様は僕のことをジィーーーっと見ているのだろうか?

熱視線である。姉様の相方たるシラねぇに匹敵するほどの熱視線を真顔で送ってくるのだ。もう怖いってもんじゃない。だって、真っ直ぐ見つめくる瞳はどんよりくぐもっているし、その瞳が前髪の奥から向けられているのである。僕は重なり合った視線を逸らすとそっと膝の上に置いたままにしてある絵本へと視線を落とす。

きっとこうしていれば、こっちの姉様も僕を見つめるのも諦めてくれるだろう。

 

「ーー」

「…っ」

 

(き、気まずい…)

 

諦めてくれるだろうと思い、膝の上の絵本を何回リピートしただろうか?軽く2桁までいきそうになったところで僕の限界がMAXに達した。

 

(もう、こうなった直接聞こう!なんで見てくるのかを!)

 

僕は膝の上に置いてる絵本から顔を上げるとまっすぐ見つめてくるこっちの姉様へと視線を向ける。

僕が絵本を読んでいる最中に入ってきたあの人…並行世界の姉様は入り口付近の壁に背中を預けると何をするでもなくただジィーと僕を眺めていた。深く被った深緑色のフードから覗くのは目にかかるほどに伸びた金色の前髪でそのさらに奥にはなんの感情も伺えないほどにくぐもった黄緑色の瞳がある。そんな並行世界の姉様の服装は深緑色のパーカーに緑色のダメージジーンズ。

(こっちの姉様も服の趣味は似通ったらもんなんだな。って、今はそんなことはどうでもよくて)

 

僕は息を吸い込むと思いっきって、こっちの姉様に話しかける。

 

「あ、あの…」

「何?」

 

あの太陽のように明るい姉様とは思えないどんより曇った低い声。掠れたその声はまるでこっちの姉様の心の中を表しているようで、僕は押し黙ると暫し考える。

 

(やっぱり、この世界の姉様に何かあったんだ…。でも、今は聞くべき時じゃないよね…)

 

そう結論づけ、本来聞きたかった質問をぶつける。

 

「その…暇ではないですか?」

「なんで?」

「…だって、僕は本を読んでますし…姉さ」

 

僕はそこで首を振ると言い直す。

 

「…切歌さんはその何もしないでそこにいるじゃないですか」

「気にしなくていい」

 

前と同じく素っ気なく答えるこっちの姉様に僕は苦笑いを浮かべる。素っ気なく答える様がうちの姉様と天と地の差だったからだ。うちの姉様なら僕が話しかければ、嬉しそうに頬を緩ませるし、必ず…いいや、絶対に僕へと抱きついてくるだろう。

 

(こっちの姉様の落ち着きがうちの姉様にもあったらな…)

 

そんなことを思いながら、僕はこっちの姉様へと話しかける。

 

「…気になりますよ、誰だって。そんなにジィーと見られたら」

「…ごめん。そんなにずっと見るつもりはなかったんだけど…君が余りにもおとなしいから」

 

申し訳なそうに頬をかくこっちの姉様のセリフに僕は頬を膨らませる。

 

「…この部屋は簡単に脱走できるようには出来てませんし、それにここに慣れろと言ったのはそもそも切歌さんじゃないですか」

「そうだけど…もう少し抵抗とかしないの?君には大好き家族が待っているんでしょう?」

「…抵抗してほしいんですか?」

 

意地悪ににんやりと笑ってそういう僕にこっちの姉様は首を横に振ると

 

「ううん、して欲しくはないけど…その、拍子抜けというか…今までと反応が違いすぎて、扱いに困るというか…なんのためにこの部屋を改造したり、君からギアを取り上げた意味がないっていうか…うーん」

 

自分の伸びきった金髪を掻き毟るとこっちの姉様は僕を見る。

 

「そもそも、君…歌兎から切歌さんと言われるのがむず痒いからやめてくれるかな」

 

(んー、そんなことを言われてもなぁ)

 

姉様はうちの姉様のだし、だからと言っていきなりお姉ちゃんは馴れ馴れしくないだろうか?そう考えるとやはりこういう時は切歌さんとこっちの姉様を呼ぶのが適切ではないだろうか?しかし、こっちの姉様はやめてほしいんだよね?それを。…うーん、でもそうすると…

 

「…それをやめると貴方を呼べなくなりますよ」

「姉様は?君はあっちの世界でアタシをそう呼んでいたんでしょう?アタシは姉様って呼ばれてもーー」

「ーーその提案は丁重にお断りします」

「え?」

 

腰をおり、即答する僕にこっちの姉様は目をパチクリさせている。その姿と即答してしまったセリフに僕はしまったと冷や汗を流す。

元の世界では常にありとあらゆる人たちに言ってきた僕の口癖だが、こっちの姉様には逆効果だったらしい。パチクリさせていた目を次第に潤ませ、終いには膝を抱えてブツブツと独り言を呟き始めてしまった。

 

(や、やべーデスよ…この状況…)

 

思わず、うちの姉様みたいな口調になりながら、おっかなびっくりに膝を抱えているこっちの姉様の側に腰を落として、思いっきって体重を預ける。その動作によって、こっちの姉様は僕が隣にきたことに気づいたらしく、涙に濡れた黄緑色の瞳を向けてきた。その瞳をまっすぐ見つめ、ぼくはにっこりと笑う。

 

「う、たう…?」

「…僕の姉様の代わりも貴方の歌兎さんの代わりも居ないと思います。でも、今の僕には貴方が必要です、貴方が居ないと生きてはいけません。だから、これからよろしくお願いします…えっと…キーねぇ」

「…なんで、そこでキーねぇなの?」

 

ちょっと不服そうなこっちの姉様に今度は意地悪な笑みを送りながら、僕は理由を話す。

 

「…んー、僕がそう呼びたかったからといきなりお姉ちゃんは失礼かと」

「失礼って誰に対してだよ。もう…確かに君はアタシの妹に比べると意地悪で悪い子みたいだ」

「…この世界、善だけでは生きていけませんから」

「…そう」

 

僕のセリフに悲しそうにそう答えたこっちの姉様は仕返しとばかりに僕へととある提案をする。

 

「わかった、アタシのことはキーねぇでいいよ。その代わり、アタシは君のことをウーって呼ぶから」

「…ご自由にどうぞ。キーねぇ」

「あぁ、自由にするよ」

 

そう言って、立ち上がったこっちの姉様もといキーねぇは僕の方を向くと淡く微笑んで尋ねる。

 

「お腹すいたでしょう。ご飯持って来てあげる」

 

そう言って、扉へと消えていくキーねぇの背中を僕は見つめながら思う。

 

(いつか、キーねぇが僕にその理由を話してくれる日が来るのかな…?」




暁歌兎が並行世界の暁切歌に連れ去られたその日。

切歌「話してください!翼さん、奏さん!あたしにはこの先に行かなくてはいけない理由があるのデス!」

翼「だからとて、なんの対策もなしに突っ込んでも歌兎は助けられまい。相手はかなりのやり手だ、私たちの上を遥かに超えてくる。それは歌兎が連れ去られた方法を見ても分かるだろう?」

切歌「なんデス?翼さん。それはあたしに喧嘩をうってるんデス?あたしがあんな奴の足元にも及ばない下等生物だと?バカでお調子者で騒ぐしか能がないお気楽者とでも言いたいんデスか!?」

翼「誰もそんなことは言ってないだろう!とりあえず、落ち着くのだ、切歌」

切歌「これが落ち着いてられますか!歌兎を連れ去ったのは、如何にも怪しげなフードを被った奴だったんデスよ?今頃きっと歌兎はそいつにあんなことやこんなことを無理矢理やられているに違いないのデス!」

翼「ちょっと待ってくれ。確か歌兎を連れ去ったのは、並行世界の切歌であろう?並行世界とはいえど、姉妹。姉妹にそんな不埒な真似は…」

切歌「あたし、歌兎にそういった気持ち抱いたことあるデスよ?」

翼「ーーー」

切歌「だから、並行世界のあたしもきっと同じ気持ちに駆られて、歌兎あんなことやそんなことをしてしまっているに違いないのデス!」

翼「お前はどれだけ妹が好きすぎるのだ!!!」

クリス「おぉ…先輩があたしの迷言を言ってる…」

奏「意外と言いたかったのかもな?」

クリス「そんなもんですか?」

奏「ああ、そんなもんさ」

翼「お前たち!そんなところで傍観してないで、この愚か者を止める手伝いをしてくれ」

奏「って、あたしはしてるんだけどな」

翼「奏はまた少し押さえつける力を強めて。私一人でこの愚か者を押さえられ…あっ」

切歌「隙ありデス!このまま、イガリマを纏って、並行世界に入っちゃえば、こっちのもーーぐはぁっ!?」

調「切ちゃん、あまり先輩たちを困らせるのは駄目」

その後、調に手刀を落とされ、気絶した切歌は暫しメディカルルームの中でクールダウンを強いられたのだった。





*【《パラレルルート》トゥルーエンドを目指して】ですが、内容を変えます。
内容を変えた話を更新した後に今までの話は削除します。

そして、上に書いてある主人公の元の世界での奏者たちのやりとりはノリデス。なので、翼さんが翼さんじゃなかったりするので…どうか、そこは目をつぶってください…、あと石は投げないで…


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クロスオーバー ご注文は迷子ですか?

ifストーリーの方じゃないんデス…、本当に申し訳ない…。

ただただ、私の中にある私欲を抑えられなかったのデス…。どうしても、あのアニメとクロスオーバーさせたいッ!とうずうずしてしまいまして…、ほぼ勢いだけで書きました(汗)

クロスオーバーしたアニメは『ご注文はうさぎですか?』です。
なんで、クロスオーバーしたかったのかは本編でも、後書きでも書きたいと思ってます( ̄^ ̄)ゞ


※今回の歌兎は、甘えん坊な要素を多く含んでおります。本編と比べると、五割増しくらいになってます(笑)


よく晴れたある日、僕は姉様と二人で商店街を歩いていた。

僕の歩幅に合わせて、ゆっくりと歩いてくれる姉様の方へと向くと、にっこりと微笑んでくれる。太陽に明るい笑顔を向けられ、僕も自然に口元に笑みを浮かべると、つい先ほど姉様から貰った緑色のパーカーを見つめる。

そして、姉様の方を向くと僕は眉をひそめて、恐る恐る姉様の方へと問いかける。

 

「…姉様、本当にいいの?これ、とっても気に入ってたでしょう?」

「いいんデスよ。歌兎の服には、上着なかったデスからね〜」

 

そう言って、僕の頭をくしゃくしゃと撫でてくれる姉様は本当に気にしてないように思えるが、僕だって馬鹿ではない。この服を姉様がどれくらい大事に着てきたか、そして愛着を持っているかくらいは知っている。

なので、眠たそうに開いている瞳へと心配そうな色を浮かばさせていると姉様はニッコリと笑うとクルクルと指を回しながら答えてくれる。

その答えと態度から嘘とは判断出来たが、これ以上姉様を困られるのはかなり忍びない。

 

「ーー」

「そんな顔しなくても大丈夫デスよ。そのパーカーは、もう一着あるのデス。だから、お姉ちゃんとお揃いデスよ、歌兎」

「…ん」

 

(…僕が知ってる限りじゃあ、もう一着なかった気がするけどな…。

でもーー)

 

「えへへ〜、歌兎とお揃いって嬉しいデスねぇ〜。ねぇ、歌兎?」

「…ん。僕も嬉しいよ」

「えへへ〜、歌兎もお姉ちゃんとお揃いは嬉しいんデスね」

「…ん。僕は姉様のことを尊敬してるから」

「もう、歌兎ってば、可愛いのデス!!」

 

ーー僕へと抱きつき、こんな幸せそうな笑顔を浮かべる姉様の善意を裏切るなんて、僕には到底出来ない。なので、僕は姉様がすりすりと頬をすり寄せてくるのを自分からもすると小さく呟く。

 

「……お姉ちゃん、ありがと」

「ん?歌兎、なんか言ったデスか?」

「…ううん、言ってないよ。それより、姉様あそこに美味しそうなものがある」

 

眉をひそめる姉様の背後へと指差す僕の視線を追った姉様の少し垂れ目な瞳が段々と大きくなっていく。

 

「うわぁああああ!!!」

「…寄って帰るの?姉様」

「デスデス!」

僕の問いかけに元気よく答えた姉様は、僕の手を引くと屋台へと繰り出していく。

屋台で思う存分食べた後というのに、姉様はコンビニによるとお菓子やらを買っていこうと僕を引き連れて、コンビニの中を探索する。

ポテトチップスやジュース、時折僕の方を見て、どれがいいかと問いかける姉様に指差して欲しいものを伝えていく。

お菓子やらが沢山入ったビニール袋を空いている手で店員さんから受け取った姉様はその中からあるものを取り出すとパクッとかぶり付く。

もぐもぐと幸せそうに食べる姉様を見ていると、なんだか僕も幸せな気持ちになってくる。見上げてくる僕の方を見た姉様はパクパクと食べているそれを僕の方へと差し出す。

真っ白でふかふかな生地が包む焦げ茶色のものは、美味しそうな肉汁を溢れ出しており、僕は思わずゴクリと生唾を飲み込むとそれへと齧り付こうとするが、そうする前に姉様の注意する声がかかる。

 

「歌兎。これ、食べるデスか?美味しいデスよ」

「…ん。欲しい」

「暑いデスからね。ふぅーふぅーしてから食べるのデスよ?」

「…ん。ふぅーふぅー」

「あーんデス、歌兎」

「…あーん」

 

姉様から肉まんなるものをもらおうと思い、ふぅーふぅーと息を吹きかけてから食べようと大きな口を開けた僕の目の前を薄灰色の物体が横切り、「パック」と姉様が持っている肉まんを咥えていってしまう。

それを見て、唖然とする僕と姉様。

 

「…!」

「デス!?」

 

だが、その後の僕と姉様の行動は大きく違っていた。ぼくは姉様の肉まんを取り戻そうと薄灰色の物体(それ)を追いかけて、姉様は取られてしまったショックと僕の行動の速さにびっくりしているようだった。

 

「歌兎、待つデス!」

 

薄灰色の物体を追いかけるのに、必死な僕は姉様の停止の声を聞こえず、建物の細い路地へと足を踏み入れて…そこから先からの記憶はない…

 

 

 

 

 

ⅰ,

 

「…ん?ここは…」

 

僕は頭を抑えると、首を横に振るとゆっくりと立ち上がる。

 

(…うーん、ここは…何処だろ?)

 

さっきまで、姉様と居た街とは建っている建物が違う。

赤と白が織りなす石畳の道の横には、どうやら川が流れているようだった。太陽の光を反射し、キラキラ光る水面をゆったりと流れていく小舟まで見たところで、僕はいよいよここが何処なのかわからなくなった。

 

(どうしよ…。姉様ともはぐれちゃったし…)

 

姉様と合流するのが一番なんだけど…、ここが何処かわからないのに勝手に動き回るのはかえって迷子になってしまう気がしてならない。

 

「…お姉ちゃん…っ」

 

姉様から貰ったパーカーを握りしめ、泣き出しそうになる気持ちを抑え、僕はこの街の探索に出ることに決めると路地から顔を出すとゆっくりと歩き出す。

年季の入った建物の間に埋まっている木や、この街の中を流れる雰囲気を感じているととても健やかな気持ちになれる。

ゆったりと流れる時間と、早く姉様と合流しなくてはと焦る気持ちにより、この街の探索は思った以上に捗ったが、それによってわかったのは、この街は一度も来たことのない街であること。そして、今絶賛迷子中ということだった。

近くにあるベンチへと腰掛け、僕は背もたれへと縋ると上を向くと目を瞑る。そして、小さく呟く。

 

「…あぁ、疲れた…。…どうしよ、ここから…」と。

 

 

 

 

 

 

 

ⅱ,

 

私は今、親友の宇治松 千夜(うじまつ ちや)ちゃんと一緒に帰っている。

帰路の時に通る公園の差し掛かった時だった。見知った人物がベンチに腰掛けて、空を疲れた様子で見つめている。

その時、さらっと水色が入った銀髪が風に遊ばれ、その人物が着込んでいる悪魔をイメージしたような緑色のパーカーがふわりと揺れる。

私と千夜ちゃんは顔を見合われると、その人物へと近づくとその華奢な身体へと抱きつく。

 

「あっ!チノちゃんだ!」

「あら、本当に。あんなところでどうしたのかしら?」

「チーノちゃん♪こんなところでどうしたの?」

「…うわ!?」

 

抱きつき、問いかけてくる私の顔をジィーと見て、キョロキョロと辺りを見渡すチノちゃんに私は眉をひそめる。

 

「チノちゃん?」

「…そのチノちゃんって、僕のことですか?」

「「ーー」」

 

チノちゃんのそこの言葉に私と千夜ちゃんは絶句し、勢いよく顔を見合わせるとアタフタとする。そんな私たちに囲まれて、チノちゃんもしどろもどろに声を漏らす。

だが、絶賛混乱中の私たちにはその小さな声は聞こえない。

 

「千夜ちゃん、どうしよう!チノちゃん、記憶喪失みたいだよ!」

「…えっと…僕、そのチノちゃんって子じゃないんです。だから、人違いだと…」

「何処か、頭を打ってしまったのかもしれないわね!ここからだと…」

「…あっあの、僕はチノちゃんじゃないんです」

「フルール・ド・ラパンだね!ほら、チノちゃん立って」

「…あっ、あの…僕は…」

「大丈夫よ、チノちゃんッ!私たちが直してあげるわ」

「…だから、違うんです。僕はーー」

 

私と千夜ちゃんはチノちゃんの手を掴むと、頼りになる友達がいるフルール・ド・ラパンへと走っていった…

 

 

 

 

 

 

 

ⅲ,

 

「で、その子をチノと間違えて連れ回してしまったというわけか」

 

私はカウンター席に大人しく座る悪魔をイメージしたような緑色のパーカーを着込む水色が入った銀髪を持つ少女へと視線を向けると、その少女の目の前にいるチノへも視線を向けると、目の前にいる三人が間違えてしまったのもうなづける。

肩にかかる水色入った髪の長さも色合いも目の前にいるチノと全く同じだし、身体つきや雰囲気などもチノと全く同じだ。恐らくだが、年も同年代くらいなのではないかと私はよんでいる。そんな瓜二つな外見を持つ二人の違うところというと、目の色くらいだろうか?

カウンターの向こうにいるチノの瞳は髪と同色で大きいのに対して、カウンターに座る少女の瞳は黄緑で半開きである。

 

「ごめんなさい、先輩。私もついていながら…」

「いいさ。シャロがあの子の名前を聞いてくれなかったら、今ごろ大騒ぎになっていただろうからな」

申し訳なそうにしている学校での後輩へと声をかけると、四人で少女の近くへと歩いていく。何故なら、迷子だと判明した彼女自身の情報がもっと欲しいからだ。

シャロが聞き出してくれた彼女の名前は、暁 歌兎(あかつき うたう)。彼女の情報は今のところ、それだけだ。

 

その歌兎はというと、チノが淹れてくれたミルクとお砂糖多めのカプチーノを前にして固まっている。そんな歌兎に、チノが申し訳なそうに声をかける。それに歌兎はパタパタと手を振る。

 

「ごめんなさい。コーヒー、嫌いでしたか?」

「…あっ、違うんです。ただ、姉様とねぇやたちが居ないのに…こんな美味しそうなコーヒーを飲んでいいのかなぁ…って思って」

 

コーヒーに映る自分を見つめて、そうぽつんと話す歌兎の様子から“姉様とねぇやたち”という人達との絆の深さが読み取れる。恐らく、その絆の深さは私たちには想像できないくらいものなのだろう。

ならば、尚更その人達へと歌兎を返す義務が私たちにはあるだろう。

それにチノに似てる歌兎をこのまま置いておくとは、かなり後味が悪い。

 

チノがカップを拭きながら、歌兎へと問いかける。チノの質問にうなづいた歌兎は“姉様”を思い浮かべているのだろう。乏しい表情を穏やかなものへと変える。

 

「歌兎さんはお姉ちゃんがいるんですか?」

「…はい、とっても素敵な人なんです。そこにいてくれるだけで、周りの人を明るくしてくるというか…まるで太陽みたいな人なんです。僕はそんな姉様が大好きで…」

「歌兎さん?」

 

穏やかなだった表情を歪めて、ぽろりと強く握って、膝の上に置いている両手へと透明な雫が落ちる。

 

「おい、泣いてるのか?」

「…姉様に迷惑をかけちゃったって思うと…自分が不甲斐なくて…。姉様、きっとすごく心配してる…」

「大丈夫だよ!歌兎ちゃん。ココアお姉ちゃんが絶対、お姉ちゃんに会わせてあげるからね!」

 

ガシッと歌兎に抱きつくココアを見て、やれやれと思う私とチノ、シャロと違い、千夜はココアとは違う位置から歌兎に抱きつくとココアとうなづき合う。

 

「えぇ、私たちに任せて!早く会わせてあげるからね」

「…ん、ありがと。ココアお姉ちゃん、千夜お姉ちゃん」

 

そう言って、涙を拭いた歌兎はその後ラビットハウスで暮らすことになり、ただで泊まるのは嫌だと言う本人の意見からラビットハウスで暫く働くことになった…




というわけで、姉様が迎えにきてくれる。ココアたちが姉様を探し出すまで…ラビットハウスで働くなった歌兎ですが…

姉様が迎えにきてくれるのは、いつのことになるでしょうか…?




前書きで触れたこのクロスオーバーを書こうと思った理由ですが…

本作の主人公・歌兎が、このごちうさで登場するチノちゃんに似ている事でした。

姉となる切ちゃんと正反対となる性格と色にしたいなぁ〜と考えてしまった結果、無意識に似てしまったわけなんですが…

ここまで似ていると、それをネタにごちうさとコラボしてみたいなぁ〜と思い、今回の話を書いてみました(笑)

少しでも、読者の皆様にこのコラボが気に入っていただけたのであれば、いいと思ってます…m(_ _)m


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ご注文は姉妹ですか?

すごく遅くなってしまいました。本当にすいませんm(_ _)m

今回の話は、切ちゃんの側の話が多くなっています。そして、かなり簡潔に書いてるので…読者の皆様が楽しんでくださればと思います。

今回のあらすじを簡単に説明すると、歌兎と別れてしまった切ちゃんは家へと戻り、その翌日から他の奏者のたちと歌兎の捜索に精を出すが、成果は出ず。
考えた切ちゃんは、歌兎が居なくなった状況を再現しようとしてーー

では、本編をどうぞ!

*今回はかなり長めとなってます。


「…」

「月読さん、どうしたの?」

「切ちゃんと歌兎の帰りが遅いって思って」

「そうだね。どうしたんだろ…」

 

マンションの台所に立ち、晩御飯をおさんどんしていた調とセレナが顔を見合わせて、余りにも帰りが遅い切歌と歌兎の心配をしていた。

調に至っては、二人が交通事故やらにあったのではないか?と思考回路がマイナスの方へといってしまうらしく、セレナはそんな調の不安を取り除こうとわざと明るい声を出して、調を励ます。

 

「大丈夫ですよ、月読さん。きっと暁さんが歌兎ちゃんを連れて、近くのコンビニとかを回ってるんに決まってるんだから」

「…そうかな?」

「そうだよ。そのうち、ひょっこり元気な顔して帰ってくるよ、きっと」

「うん、きっとそうだよね」

 

調がセレナの励ましにうなづくと、目の前にある野菜を切っていく。

その際、小さい声だが見知った声が聞こえた気がして、動き始めた右手を止めると…再度耳をすませると、どうやらその泣き声みたいなものは玄関から聞こえてくる気がする。

調は包丁を置くと、近くにあるコンロの火を止めると玄関へと走り出す。

 

『ーーゥゥ…』

「…!」

「どうしたんですか?月読さん」

「何か聞こえる…。玄関の方からだ」

「月読さん!?」

 

調のその行動にびっくりしつつも、只ならぬ雰囲気を感じ取ったセレナも調の後を追う。

すると、玄関を開けたままの状態で止まっている調の背後から覗き込むようなことをすると

 

ーーそこには、玄関の近くに蹲り、両膝を抱えて大泣きしている明るい金髪に✖︎マークがトレードマークの少女がいたーー

 

「うぅ…ぅ…」

「え、暁さん!?」「どうしたの?切ちゃんっ」

 

セレナと調は大泣きしている少女がさっきまで心配していた姉妹の姉の方だと気付いた瞬間、声をかける。

声をかけた瞬間、ビクッと肩を震わせた少女・切歌は涙でぐちゃぐちゃになった顔のまま、セレナと調へと抱きつく。

 

「しらべぇ…せれなぁ…」

 

そんな切歌を抱きとめた二人は、キョロキョロと辺りを見渡すと見慣れた水色の入った銀髪がないことに眉をひそめる。

目の前で大泣きしている切歌と、彼女と行動を共にしていた妹の姿がないことが何かに共通点があるのか?と思ったセレナは切歌に問いかける。

すると、セレナのそのセリフに切歌は分かりやすいほど反応すると、顔をグシャッと歪める。そして、更に大きな声を上げて泣く切歌を見て、隣にいる調の視線が鋭くなる。そんな調に頭を下げるセレナ。

 

「暁さん。歌兎ちゃんは?」

「うぅっ…歌兎ぅぅ…」

「セレナ」

「月読さん、そんなに睨まないでください…。私が悪かったですから…」

「切ちゃん、泣かないで」

「うぅ…調、セレナもありがとうデス…。やっと落ち着いたんデス」

 

調の励ましに落ち着いてきた切歌が、事の成り行きを説明する。

 

「二人で祭りに行って…その後、コンビニに寄ったんデス。そこで肉まんを買って、歌兎にあげようとしたら、灰色の何かに肉まんを取られて…それで歌兎がそれを追いかけて、どっか行っちゃったんデス…。慌てて、後を追いかけても…そこに歌兎は居なくて…」

 

その光景を思い出してしまったのか、また垂れ目気味の黄緑色の瞳を潤ませる切歌に調が優しく語りかける。

 

「切ちゃん、マリアたちにも相談してみよ。歌兎なら大丈夫だよ」

「そうですね!歌兎ちゃんは暁さんよりもしっかりしてますから」

「そうデスね!…って、セレナのはどういう意味デスか!」

「あはは、それくらい元気なら大丈夫だよ」

「む…セレナがいじわるデス…」

 

翌日、二課と他の奏者のみんなへと状況を説明した切歌たちはノイズを討伐する傍ら、今だに行方不明の歌兎の手掛かりを掴もうと、手分けして彼方此方を調べ回った。

だが、一向に成果は無く…気付くと、行方不明になった日から一週間が過ぎていた…

 

 

 

 

 

ⅰ,

 

一方、奏者のみんなが総出で捜索してるとは知る由もない歌兎はお世話になっているラビットハウスのお手伝いに精を出して居た。

まだ作りかけだった緑色の制服を、自分のサイズに合うようにリメイクしてもらい、それを着用して下にある喫茶店のお仕事を精一杯頑張る。

ちなみに緑色の制服にしたのは、歌兎の姉のイメージカラーからということであった。

 

「…リゼお姉ちゃん、このパスタはブルーマウンテンを注文したお客様であってる?」

 

鉄でできたお盆にチノから受け取ったブルーマウンテンを載せた歌兎はちょこちょこと無駄のない動きでパスタやサンドイッチを仕上げていくリゼの元へと歩いていく。

ちょうど出来上がったナポリタンをお盆に載せた歌兎は、忙しそうなリゼを見つめると問いかける。

 

「あぁ。あと、このサンドイッチもな。多くなっちゃったけど、歌兎、運べるか?」

「…ん、出来る」

 

リゼは歌兎の質問にうなづくと、近くにあったサンドイッチも載せる。心配するリゼへと力強くうなづいた歌兎は、両手で慎重に目的地となる白いTシャツが似合うお客様へと向かうと、零さないように三つの注文の品を置くと頭を下げる。

 

「…お待たせいたしました、お客様。ご注文のブルーマウンテン、ナポリタン、サンドイッチでございます。ご注文の品は以上でよろしかったでしょうか?」

「あぁ、ありがとう」

「…ゆっくりお楽しみください」

 

働き始めて、一週間とは思えない見事な接客にチノとリゼ、ココアが歌兎に感心していると、その話の途中に帰って来た歌兎が三人が自分の方を見ていることを不思議に思ったらしくこてんと小首を傾げる。

そんな歌兎の様子が面白かったのか、三人がクスクスと笑うとおいでおいでと右手を振る。

 

「歌兎ちゃん、すごいね〜」

「あぁ、ココアにも見習ってもらいたいくらいだ」

「そうですね。ココアさんも歌兎さんくらい働けたら、言うないんですけど…」

 

話の続きと言わんばかりにココアを見て、ため息をつくチノとリゼの姿にココアは涙を浮かべながら、歌兎へと抱きつく。そんなココアを抱きとめた歌兎は背中を撫でながら、ココアを慰める。

 

「うぁん、歌兎ちゃんっ!二人がいじめる!」

「…わぁ!?僕はそんなココアお姉ちゃんのことが好きだよ。だから、気にしないで…自分のペースで頑張って」

「うん、お姉ちゃん頑張るね」

「…ん、頑張って」

 

颯爽と入ってきたお客様の接客に精を出すココアを見て、肩をすくめるチノとリゼ。そんな三人を見て、自分ももっと頑張らねばッと意気込むのが今のラビットハウスでの歌兎の生活でもあり、未来(これから)になりかけているものであった…

 

 

 

 

 

ⅱ,

 

 

行方不明となった暁 歌兎を奏者のみんな、二課の人たち総出で捜索し始めて、早くも一ヶ月が過ぎた頃…二課にあるミーティングルームでは重い空気が流れていた。

それは隈なく探しても、手掛かりどころが目撃情報もない歌兎のことをここにいるみんなが心の片隅で既に亡くなっている(マイナス方面)に考えていることであった。

 

「…以上。私とマリアが調べた結果だが、立花たちは?」

 

重苦しい雰囲気の中、先陣をきって活動報告をした翼は近くにいる響と未来へと視線を向けるが、二人の表情も翼と同じで悲痛な表情を浮かべながら、自分たちの結果を話していく。

 

「私と未来も翼さんたちと同じです。歌兎ちゃんの姿を見た人も居ないらしくて…」

「クリスとセレナちゃんのところは?」

 

未来に話を振られ、渋い顔をしたクリスは小さく首を振ると舌打ちをする。

 

「チッ。あたしたちのとこも同じだ」

「聞いてみた人全員に知らないって言われちゃって…」

「クソッ!どこいちまったんだ、あのチビ!」

「もう一ヶ月ですもんね。…調べるところもなくなってしましたし…。やっぱり、もう…歌兎ちゃんは…」

 

セレナのその一言で、みんな心の中にあった最悪な考えが浮かんできて、揃って下を向いては唇を噛みしめる。クリスに至っては、ブーツで悔しそうにタイルを蹴飛ばす。

そんな重苦しい沈黙を絶ったのは、今まで口を一文字に結んでいた切歌であった。

垂れ目気味な黄緑色の瞳に強い意志をたぎらせ、まっすぐ前を見ると大きな声で叫ぶ。

 

「そんなわけあるわけないデス!!」

「切ちゃん…」

「調も言ってあげてください!そんなことないって!」

「…」

「なんで黙るデスか、調…」

 

まっすぐ見つめてくる切歌から視線を逸らす調に、切歌は服の裾をギュッと掴むと下を向いているみんなへと視線を向ける。

 

「あの歌兎が亡くなってるわけないんデス!あの子はああ見えて、逞しい子なんデス!それはマリア、セレナ、調も知ってるデスよね!?」

「ーー」

「みんなして、タチが悪いんデスよ!歌兎が…歌兎が亡くなってるわけ…ないんデス…ッ」

 

そこまで言って、溢れ出る涙が我慢できなかったのか…切歌が泣き出してしまう。そんな切歌をマリアが抱きしめ、調とセレナが背中を撫でる。

暁 歌兎がもう既に亡くなっているーーそれは、暁 切歌にとって認めたくない事実であり、しかし ここまで手掛かりをないとなると認めざるおえない事実でもあった…

 

 

~*

 

 

翌日、切歌は一人あの日妹の姿を見失ってしまった路地へと来ていた。

まっすぐ前を見つめ、どこか薄暗く何か出て来そうなその路地へと一歩、また一歩と足を踏み入れていく。

 

「やっぱり、ここに何あると思うデスよ」

 

薄暗い路地の中、しっかりした足取りで進んでいく切歌はギュッと裾を掴むと空気を吸い込み、さらに暗くなっているところへと視線を向ける。

 

「待っていてください、歌兎。お姉ちゃんが迎えに行きますから」

 

真っ暗闇の中、切歌は知らぬ間に意識を手放していた…

 

 

~*

 

 

「うぅ…ここはどこデスか…?」

 

切歌は右手で抑えて、軽く頭を横に振りながら立ち上がると衣服についた砂を落とす。

辺りを見渡してみると、美しい深緑と緑、黄緑のコントラストが美しい山や森林が広がっていた。そう遠くないところに川が流れているらしく、ザァーザァーという音が聞こえてくる。

 

(…すぅ…。空気が美味しいデス…)

 

そこまで思った時には、既に遅く。

グゥー、と可愛らしいお腹の音が聞こえてきた。

そう言えば、妹探しに精を出しすぎて、朝ごはんもそこそこに夕方まで走り回っていた気がする。

 

(それはお腹すくはずデス…)

 

だからと言って、財布などは持ってない。買い食いに使いすぎてしまい、持っていても仕方ないと持ってこなかったことをここまで後悔したことはない。

困り果てる切歌の鼻腔へと香ばしい香りが漂ってきた。くんくんと鼻を鳴らすと、その香りが目の前にある【Hot Bakery】という看板がかかってある家から漂ってくるのに気づき、お腹がぐーぐーへりこファイアーな切歌はその匂いにつられるようにその家へと足を踏み入れていた。

足を踏み入れた先には、白い三角巾とエプロンが似合う茶色い髪を後ろでゆったりと結んでいる、優しいそうな雰囲気を醸し出している女性が居て、丁度出来上がったパンを並べている最中らしく、ケース越しに入ってきた切歌に視線を向けては微笑んでいる。

 

「あら、いらっしゃい、可愛いお客さん」

「あっ、こんにちわデス」

「こんにちわ。ごめんなさいね、今準備中なのよ。だから、もう少しだけ待ってね」

「…はい、デス…」

 

お腹を抑えて、もじもじしている切歌に女性は何かを察したらしく、切歌を手招きするとにっこり微笑んで店裏を指差す。

 

「少し作りすぎてしまったパンがあるの。一緒に食べてくれる?」

「…へ?」

 

戸惑う切歌の右手を掴んだ女性は店裏に歩いていくと、リビングみたいなところへ着くと切歌を座らせる。そして、ジュースと複数のパンを切歌の前におくと椅子に腰掛ける。

 

「どうぞ。お腹を空いてるんでしょう?」

「…デスが、あたしお金…」

「ふふふ、良いのよ。言ったでしょう、作りすぎてしまったパンだから。私とお母さんの二人じゃあ、とても食べきれないから。是非、あなたが食べてあげて」

「そういうことでしたから…いただきますデス」

目の前に置いてあったクロワッサンへと手を伸ばし、一口噛り付いた切歌の黄緑色の瞳を大きくする。そんな切歌の様子ににこにこ笑う女性は切歌にジュースを差し出しながら、もぐもぐとハムスターのようにほっぺを膨らませている切歌に話しかける。

 

「美味しい?」

「はい、すっごく美味しいデス!こんなにふわふわもちもちなパン食べたことないデス!」

「ありがとう。私の名前は保登 モカ(ほと もか)っていうの。あなたは?」

暁 切歌(あかつき きりか)デス。モカさん、本当にありがとうございますデス。助けてもらったお礼に、このお店のお手伝いをするデスよ」

「いいのよ、切歌ちゃん。お手伝いさんだっているんだから」

「いいえ、働かせてください!そうしないと、あたしの気がすまないのデス」

「そこまでいうのなら、手伝ってもらおうかしら」

 

パンを平らげ、親切な女性もといモカに三角巾とエプロンを付けてもらった切歌はHot Bakeryのお仕事に精を出した。

最初こそ戸惑ったが慣れてみると楽しく、お手伝いといってもただひたすらパンを袋に詰める作業だった為、切歌でも安心してできた。その後、町まで配達するモカに付き添い、夜にモカの妹から届いた手紙の中に入っていた写真にずっと探して居た最愛の妹・歌兎の姿を見つけ、切歌ははしゃぎ、モカへと抱きつく。

 

はしゃぎ、モカに抱きついた日から数週間前、その町に行く予定があるモカに連れられて、電車に乗っていた。嬉しそうにパタパタと足を動かしている切歌にモカが話しかける。

 

「良かったね、切歌ちゃん。妹さんに会えて」

「はいデス!これもモカさんのおかげデス。本当にありがとうございます」

「いいのよ。切歌ちゃんのサプライズに妹さん、喜んでくれるといいね」

「はい!歌兎をびっくりさせるのデス」

 

意気込む切歌にモカは微笑むと、丁度電車が目的地に着いたらしく、切歌は旅行ケースを引くモカの手を引っ張る。

 

「モカさん、早く!早くデスよっ!」

「ちょっと待ってっ、切歌ちゃん」

 

元気よく走り出す切歌の後を追いかけるモカの表情も明るく、二人はうさぎとカップがデザインされている喫茶店へと向かった…

 

 

 

 

ⅲ,

 

一方、二人が向かっている喫茶店の中、四人の店員さんがそれぞれの仕事に精を出していた。

食べ終わり、飲み終わったお皿やカップをお盆に乗せ、机を拭いていた緑色の制服をしている水色が入った銀髪の店員・歌兎が何かが聞こえた様子でふと窓の外へと視線を向ける。そんな歌兎に桃色の制服を着ている店員・ココアが声をかける。

 

「…ん?」

「どうしたの?歌兎ちゃん」

「…姉様の声が聞こえた気がしたんです」

「姉様って…。あっ、切歌ちゃん?」

「…はい。でも、そんなわけないですよね…」

 

淡く微笑み、そんなことはないと首を横に振った歌兎は今日の仕事へと精を出す。

 

 

 

 

ⅳ,

 

 

目的地に着いた切歌は勢いよく扉を開けると、キョロキョロと辺りを見渡してーーびっくりした表情を浮かべている“水色の制服”を着ている水色が入った銀髪の店員へと顔を歪めると勢いよく抱きつく。

 

「歌兎ぅうううう!!!!!」

「きゃあ!?」

 

そんな切歌の奇行に店内いたお客さんや店員全員が固まり、後から入ってきたモカは切歌が抱きついている店員が誰か知るとあらら…と苦笑いを浮かべる。

そんな店内のすべての人から視線を向けられているとは知らずに、切歌は目の前の店員ーーずっと探していた最愛の妹へと語りかける。

 

「歌兎歌兎歌兎歌兎歌兎歌兎歌兎歌兎ぅうう〜〜。どこに行ったデスか!とても心配してたんデスよ」

「あっ、あの!」

 

がっしり抱きついてくる切歌におどおどしながら、“水色の制服”を着ている店員さんが小さい声だが、はっきりした口調で切歌がおかしている間違いを指摘する。

 

「どうしたデスか?歌兎。ハァ!?もしかして、長らく会わなかったので…お姉ちゃんの顔を忘れてしまったデスか?」

「その…私、歌兎さんではないです」

「へ?」

「私、ここのオーナーの孫の香風 智乃(かふう ちの)です。なので、私は歌兎さんでは…」

「へ?え?ってことは…歌兎は?」

「歌兎さんはあそこに居ます」

「…」

 

ずっと最愛の妹と思っていた店員が赤の他人と分かると、切歌は唖然としながらも自分の妹を探す。そんな切歌の問いにチノは切歌の背後へと視線を向ける。振り返った先には、眠さそうに黄緑色の瞳をあげている“緑色の制服”を着ている店員の姿があり、切歌は両目に涙をためるとその店員に向かって走り出す。

 

「歌兎!お姉ちゃんが迎えにきたデスよっ!」

 

だが、そんな切歌を一瞥した緑色の制服を着た店員・歌兎は尊敬する姉がチノと自分を見分けられなかったのが気に入らなかったのか、プイとそっぽを向くとスタスタと切歌と反対方向へ歩いていってしまう。

 

「…チノお姉ちゃんと僕を間違えるなんて…。姉様なんて嫌い」プイ

「あぁ…っ…歌兎ぅ…」

 

感動の再会どころか、最悪の再会となってしまった歌兎との再会に切歌は涙をポロポロと流す。

目に入れても痛くないくらい可愛がっている妹の口から放たれた『きらい』の三文字は切歌の胸に深く突き刺さっており、糸の切れた操り人形のように喫茶店から出ていった切歌は出入り口の片隅に膝を抱えるとズーンという文字が出てきそうなほどに落ち込む。

 

「そんなつもりはなかったんデスよ…。ただ、歌兎に会えたのが嬉しくてっ…舞い上がっちゃって…もう、ダメデス…。あんなに歌兎に嫌われてしまったあたしは生きていける気がしないのデス…あたしはどうすればいいデスか…?どうすれば、歌兎は機嫌を直してくれるデスか…?そっか、あそこに流れる川に飛び込めば…」

「死んじゃダメだよ、切歌ちゃん!ほら、まだ完全に嫌われたとは限らないでしょう?」

 

優しく話しかけてくれるモカに光を宿してない瞳を向けた切歌はぽつんと呟く。

 

「あたしに嫌いなんていう子じゃなかったのデス…。そんな子があたしに…姉様、嫌いって…うゔ…ッ。やっぱり、あの川に飛び込むしか…」

「ダメダメダメ!ダメだから!まだ、歌兎ちゃんにあれも渡してないでしょう?」

「…?」

 

本気で川に飛び込もうとしていた切歌をなんとか、あの手この手で引き止めたモカは切歌と二人で暫く、ラビットハウスで暮らすことになった…




本当は詳しく書きたいところがたくさんあったんデスが…文字数により簡潔に書かせてもらいました。

切ちゃん以外の奏者メンバーの追加は考え中デス(。-_-。)

この後の話は、ごちうさの原作で大好きなエピソードを暁姉妹と共に追体験したいと思ってますm(_ _)m


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ご注文はプニプニですか?

久しぶりに再開したコラボの話がこれでいいのか…と思う私ですが…

今回の話にモカさんは現れません!
何故なら帰ってるからです!えぇ、展開が早いですよね……なので、モカさんが在中している所はまだ途中更新となってしまいますが、書いていこうと思ってます(礼)

では、久しぶりのコラボの話…視点がバラバラとなっているかもですが、本編をどうぞ!


紅と白のタイルが作り出す鮮やかなデザインが素敵な通りを抜け、白い壁や紅いレンガで作られた家が所狭しと並んだ小道の先にその店はあった。

兎がカップを持っている看板が吊るされている扉を開けて、入っていった二人を出迎えるのは《緑》の制服を着た明るめの金髪に黒い✖️(バッテン)マークの髪飾りをつけた少女・暁 切歌と《黄緑》の制服を着た水色の入った銀髪を小さな✖︎(バッテン)が付いているヘアゴムでポニーテールにしている少女・暁 歌兎である。

この二人は姉妹であり、その仲の良さと姉・切歌による妹・歌兎への過保護はこのラビットハウスにしかない名物となっており、実際この二人目当てに店に通うお客さんやリピーターが数名と出来ていた。

二人のリピーター曰く切歌ちゃんの姉らしかぬ所がツボ。子犬のような切歌ちゃんと子猫のような歌兎ちゃんに癒せるとの事。

 

そんな二人が揃って、お客さんをお出迎えというのはここ最近珍しく、ラビットハウスに入った二人は今日は偶々暇な日にお邪魔したんだと思い、そんな二人へとニコニコと元気一杯に頭を下げる切歌と違い、ボソボソっと挨拶した歌兎は入ってきた二人組が自分たちの知っている顔見知りだと気付くと驚いたような声を上げる。

 

「いらっしゃいデェース!」

「…いらっしゃいませ…と、千夜お姉ちゃんとシャロお姉ちゃん?」

「なんデスとぉ!?」

「ふふ、こんにちは、切歌ちゃん、歌兎ちゃん」

「すっかり慣れたみたいね、二人とも」

「…ん、ラビットハウスのお姉ちゃん達が僕と姉様に優しく教えてくれるから」

 

歌兎の驚きの声より数倍大きな声で叫び、ブンッと音がしそうなほどに顔を上げた切歌はそこに並ぶ二人組…白い緩やかなシャツに深緑色の薄手のロングスカートを着用した宇治松 千夜とレモン色のカッターシャツの下に濃いオレンジ色の短パンを着込んだ桐間 紗路を見て、ニコニコ笑顔がまるで太陽のように明るい笑顔へと変わると二人の手を掴んで、四人テーブルへと案内する。

 

「さぁ、ここで立ち話もなんデスから…席に案内するデスよ」

 

そんな切歌の行く先へと先回りして、千夜とシャロが座る席を引くのが歌兎の役目となっているのだがーー

 

「あぁっ!?そんな重いもの持っちゃあダメデスよ!!歌兎!歌兎がそれで筋肉痛になったらどうするデスか!お姉ちゃんが椅子を引く役割をしますから、歌兎は千夜さんとシャロさんを」

「…ん、分かった」

 

ーーこの通り、歌兎が落ち着いた雰囲気が素敵な椅子の背もたれへと小さな両手を添えただけで切歌の慌てたような声が掛かるのだ。

それは椅子だけにあらず、鉄のお盆やコーヒーカップも持ってはダメときつく言われ、今の歌兎の仕事は注文を取るのとお皿洗いとなっている。本当は料理が空いているのだが、そちらは油が歌兎の綺麗な肌にかかるといけないからと切歌がやらせない。しかし、歌兎がそういった雑用係に回れるのは、妹が関わることによって普段の数倍の力を発揮している切歌の働きによるものだった。

 

そんな過保護な切歌が椅子を引く係に回るのをカウンター越しに見ていた《水色》の制服を着ていた水色の銀髪を腰のあたりまで伸ばした少女・香風 智乃とその隣にいる《紫》の制服を着用して、紫の掛かった黒髪をツインテールにしている少女・天々座 理世は同時にやれやれと呆れたように首を横にふる。二人ともこの過保護な姉に常日頃から振り回され、疲れが溜まってしまっているのだ。

 

「…千夜お姉ちゃん、シャロお姉ちゃん。後少しだけど、ここから先は僕がご案内するね」

「えぇ、よろしくね、歌兎ちゃん」

 

尊敬する姉から託された仕事を全うしようと歌兎は千夜とシャロへと両手を差し出す。その歌兎の両手を掴んだ二人は歌兎の案内により、着実に席に近づいているのだが…

 

「…千夜お姉ちゃん…っ、そんなに手をふにふにされるとくすぐったいよ」

 

そう、千夜が何故か歌兎の左手をプニプニと触っているのだ。その際に千夜の指先が手の甲に当たり、歌兎はくすぐったそうに千夜を見つめる。そして、見つめられた千夜は申し訳なそうにしつつもその手の動きを止めようとしはしない。

そして、千夜のその発言に寄ってくるのが《桃》の制服を着て、明るい栗色の肩まで伸びた髪を揺らしながら、歌兎に近づく少女・保登 心愛で千夜が触っている左手をモミモミと感触を確かめようと触っている。

 

「あら、ごめんなさい。歌兎ちゃんの手って小さくて可愛い上にプニプニで触り心地がよくってつい」

「本当?私も触ってもいい?」

 

千夜とココアによって、左右からモミモミと掌を触られる歌兎はくすぐっそうに身をよじり、その白い頬へと朱が混ざる。

 

「なななっ!?千夜さん!ココアさん!二人して何してるデスか!」

 

椅子を引きつつ、二人にくすぐれ、頬を赤く染める歌兎を視界に収めた切歌はあたふたと歌兎の助けに入ろうか、しかしまだ椅子を引き終えてないことに迷っているらしく…しかし、その二つよりも切歌はとある事が羨ましかったらしい。

 

「歌兎の頬と手をプニプニするのは姉であるあたしだけの権利デスーっ!!」

「そんなわけないだろ!!」

「そんなわけないでしょ!!」

「もしそうなら歌兎さんが可哀想です」

「チノちゃん、それどう意味デス!?」

 

嫉妬のあまり意味わからないことを言ってのける切歌へとリゼとシャロの鋭いツッコミとチノの憐れみを含んだツッコミに切歌が不本意そうにカウンターへと振り返る。振り返る切歌へとチノは手元にあるミルを回しながらボソッと答える。

 

「そのままの意味ですよ」

「歌兎だってあたしにプニプニされるの嬉しそうなんデス!だから、あたしの言ってることは正しいのデス!はい、椅子を引き終えました!そこの二人、あたしの可愛い妹から離れるデス!」

 

頬をパクーと膨らませ、ブンブンと両手を振り回しながら突進してくる切歌を見て、千夜とココアは二人揃って歌兎を解放し、前へと差し出す。そして、忽ちに歌兎は切歌の熱い抱擁に会うのだった。

緑と黒のエプロン型の制服の上からでもわかる双丘へと顔を押し付けられ、歌兎は苦しそうに姉の背中を叩くが、一方の切歌はそれどころではないらしく、「ごめんね」と謝る千夜とココアを拗ねたように睨むとより一層歌兎を抱きしめるのだった。

 

「…ね、姉様ぐるじい…」

「もう、絶対千夜さんとココアさんの近くを通らせないデス」

 

そして、その抱擁は切歌の背中を叩いていた歌兎の手が力無く下に落ちるまで続くのだった……




歌兎の手を千夜ちゃんとココアちゃんにプニプニされ続け、嫉妬してしまう切ちゃんというしょーもない話です(笑)

と、次回の話ですが…実はシャロちゃんが切ちゃんをどう呼ぶかで悩んでます(笑)
普通に「切歌」か「切歌ちゃん」はたまた別の呼び名か(思考)

私の記憶が正しければ…確か、切ちゃんとシャロちゃん・ココアちゃん・千夜ちゃんは同い年の16歳だった筈と思うんです。そして、リゼちゃんが一個上の17歳だった筈…んー、シャロちゃんって同級生は基本呼び捨てなんですよね、だからやっぱり「切歌」かなぁ…(笑)
同い年といえば、歌兎とチマメ隊も同い年の13歳なんですよね…改めて思うと、チノちゃんって本当しっかりしてますよね…(感心)
私が13歳の時なんて、流行りのアイドルか声優さんにハマりつつ、FF13か零式をコーヒー飲みながら夜更かししてゲームクリアするまでやってた記憶しかない(苦笑)
しかし、そんなだめだめだった私よりもうちの歌兎が駄目人間へとなりつつある…しかし、私は切ちゃんを過保護にしたことを悔やんでません!だって、大好きな切ちゃんに甘えたかったんだもの!!

と、話が逸れましたね(笑)

次回は容姿が何処と無く似ている切歌ちゃん・シャロちゃん…あと、歌兎がメインとなる話となってます!そちらの話もしょーもないものとなるかもですが…楽しんでもらえればと思います(礼)


此処まで読んでくださった読者のみなさま、去年よりも熱い夏にも負けず!新たに現れた台風にも負けず!この夏を乗り切りましょう!

私は夏バテ気味ですが…XDで大好きな切ちゃんに癒されたり、かやのみで癒されつつ、この夏を乗り切ろうと思います!!

そういえば、この前念願だった☆5怪盗セレナちゃんをゲットしまして、奏者のみんなの☆5は揃ったかなぁ〜と思ったのですが…まだ、未来ちゃんを当てておりませんでした…(汗)
んー、今やってるXDフェスガチャ回そうかなぁ…と思いながら、しかしこのXDフェス、切ちゃんのXDも来ますよね、当然ながら…なので、まだゲットしてないXD切ちゃんの為に歌唱石を残しておこうかと迷ってます(笑)
また、海賊までガチャがありましたからね!あれは…復興ガチャっていうのかな?(あやふや)
きっと、近いうちにアリス切ちゃんとバイクギアの調ちゃんが来るはず!アリス切ちゃんは課金をしたんですが…当たらなくってゲット出来なかったものなので、是非とも欲しいですし…バイクギアの調ちゃんも可愛いんですよねぇ…(微笑)

しかし、『片翼の奏者』の続編『双翼のシリウス』があったということは…『翳り裂く閃光』『イノセント・シスター』の続編もありそうな気がしますし…ここはまだ見ぬ切ちゃんの為と思い、確実に10回回せるくらい貯めとくべきか…

んー、悩みますね(笑)


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ご注文は三姉妹ですか?

前に紹介していただいた通り、今回の話も前と同じようにしょーもないものとなってます。
ですが、歌兎と切ちゃんの可愛さが読者の皆さんに伝わればいいなぁ〜と思っております。

では、本編をお楽しみください!!

※前の話でみんなの本名を書いたので、この話はみんなの下の名前で統一して書いております。


「はい、シャロお姉ちゃん。ご注文のアイスココアです」

「ありがとう、歌兎ちゃん」

「ゆっくり楽しんでいってね」

 

そう言って、落ち着いた色合いの椅子に座るシャロの前にアイスココアを差し出す歌兎。

歌兎から受け取ったアイスココアを除くシャロを映し出すのは、薄茶色の液体で満たされた白い陶器で作られたコーヒーカップだ。丁寧に磨かれているのだろうスベスベとした肌触りが実に気持ちいい。

 

「こちらは千夜さんのデス」

「ありがとう、切歌ちゃん」

「…どういたしましてデス」

 

そう言って、千夜に注文の品、カプチーノで満たされたコーヒーカップを差し出すのは切歌である。まだ、歌兎の手をプニプニした事を怒っているのか、千夜を見る目に怒りの炎が僅かに灯る。

それ見てをやり過ぎたかもと後悔する千夜はカプチーノを一口含み、正面に座るシャロと真横でプクーと頬を膨らませている切歌を見て、とある事を思いつく。

 

(これなら切歌ちゃんも機嫌を直してくれるかもしれないわ)

 

そんな千夜の思惑を知ってか知らずか、シャロが自分と切歌を交互に見つめている千夜を睨む。

 

「な、何よ。さっきから私の顔と切歌の顔を交互に見たりして」

「いえ、改めて見ると切歌ちゃんとシャロちゃんって似てるわよね」

「突然、何を言い出すのよ」

「瞳も水色に黄緑色でしょ?それに髪の毛も金髪に癖っ毛なところなんかも似てると思うだけどどうかしら?」

「どうかしらもなにも他人の空似でしょう?大袈裟にしすぎ」

 

そう言い、シャロは優雅にアイスココアを口に含む。そんなシャロの言い分に千夜は異論があるようで、顔をキリッとさせる。

 

「いいえ、これは大袈裟なんかじゃないわ!きっと、切歌ちゃんとシャロちゃんは生き別れた姉妹なのよ!」

 

ブゥーッ!!?

 

千夜の発言に飲んでいたアイスココアを吐き出してしまうシャロ。

幾ら何でも飛躍しすぎだろう、何がどうならばそんな発想になのだろう。

シャロは千夜に呆れつつ、千夜の勘違いを解いていこうとする。

 

「そんなわけないでしょう…そもそも、私と切歌は同い年なのよ?流石に無理があるでしょう」

「いいえ、ここは切歌ちゃんにとっては異世界。前の世界との流れも異なっているはずよ」

「もう、なに言ってるのか分からないわよ…。異世界なら尚更、姉妹ってことあるはずないじゃない」

 

呆れた表情を浮かべたシャロが一口アイスココアを口に含むと視界の端には少し垂れ目の黄緑色の瞳をまん丸にした切歌と眠たそうに半開きした黄緑色の瞳をまん丸にした歌兎がいた。

 

(もしかしてだけど…切歌と歌兎ちゃん、千夜の妄言を信じている…?)

 

そう危惧するシャロの考えは当たることになる。

 

「ななな…シャロさんがあたし達のお姉ちゃん?」

「…シャロお姉ちゃんが僕と姉様のお姉ちゃん?」

 

そう呟く暁姉妹を見て、シャロは唖然とする。

そして、二人がこんなことになってしまった主犯を文句の一つでもいってやろうと正面を見るが、そこはものけのからでシャロはキョロキョロと周りを見渡す。

すると、カウンターに腰掛けている白いカッターシャツに薄い緑のロングスカートを身に纏っている少女を見つけ、シャロの怒鳴り声がラビットハウスに響く。

 

「ちょっと千夜ぁ!!なにやっちゃってくれてるのよ!二人ともあなたのデタラメを信じきっちゃてるじゃない!!」

 

喚くシャロに千夜は舌を出してごめんなさいとジェスチャーする。

それを見て、苦虫を噛むような表情を浮かべるシャロの右手を両手でギュッと握るのが緑と黒の制服を着ていることから切歌だろう。

シャロがそちらを見ると垂れ目の黄緑色の瞳がキラキラと宝石のように輝いていた。その純粋な尊敬の眼差しを前にして、シャロが一歩後ろに下がる。

 

「シャロさ…いいえ、シャロお姉様!」

「お、おねさ?」

 

一歩下がったシャロの左手を両手でギュッと握るのは黄緑と黒の制服を着ていることから歌兎あろう。

歌兎も切歌と同じように眠たそうに開かれた黄緑色の瞳へと敬愛の色を多く含ませて、シャロを見つめる。

シャロはその敬愛の眼差しから逃げようとまた一歩後ろへと下がる。

 

「シャロ姉上様」

「あねうえさ?」

 

そんなシャロに二人は嬉し涙を浮かべると同時に抱きつく。

 

「「会いたかった「のデス」

 

二人している甘えたように抱きついてきて、シャロは苦笑いを浮かべる。

幾ら何でも信じすぎだろう。

シャロはこの二人の相手を疑わない純粋無垢さに慄き、同時に二人揃って悪い人に捕まらないか心配になるのだった。

その思考こそがまるでお姉ちゃんらしいとは知らずに。

 

「ちょっと待ちなさい二人共。流石にそれは信じすぎでしょう!そもそも私と切歌は同い年じゃない!

「…シャロお姉様はあたし達のお姉ちゃんじゃないんデスぅ…?」

「…そうなの、姉上様ぁ…?」

「ゔぅ…」

 

抱きついていた二人して泣きそうな瞳で上を向く。

まるで捨てられた子犬のような瞳にシャロは喉を詰められせるとギュッと目を瞑るとヤケになったように叫ぶ。

 

「分かったわよ!二人のお姉ちゃんって認めればいいんでしょう!!」

 

その後、シャロはじゃれつく二匹の子犬…切歌と歌兎の頭を優しく撫で続けていたのだった。




というわけで、暁三姉妹爆誕デスッ!
時折、このネタは挟んでいこうと思っているので…楽しみにしててください!!



また、今日から天神ビブレ(福岡)のキャラポップストアが開店されましたね!!
実を言うと行きたかったんですけど…色々立て込んでて、行けなかったんですよね…(微笑)
もしかしたら、この小説を読まれている読者の皆様は行かれた方はいらっしゃるかもしれませんね(笑)

なので、明日はその天神ビブレに行って、楽しみでこようと思います!!
第一目標は切ちゃんグッズの確保ッ!これはすごく重要です!!
第二目標は調ちゃんグッズの確保ッ!こちらも大事ですからね!
第三目標は翼さんとクリスちゃんグッズの確保ッ!この二人も好きですからね!

あとは、キーホルダーを奏者全員買えたらいいなぁ〜って思ってます。あと、手提げ鞄かなぁ…。しかし、マグカップやガラポンも当てたいなぁ…切ちゃんのカードケースとかバッチとか…(願望)

と、明日はもし可能なら更新した際にその成果をご報告するかもです!
では、ここまで読んでくださった方ありがとうございますm(_ _)m


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ご注文はお泊まりですか?

TAIHENッ!
OMATASESHIMASHITAッ!!

お待たせした上に、今回の話は三つに区切らせてもらって…割と簡単に書かせてもらってます。
なので、内容が読者の皆さんに伝わるといいのですが…(汗)

というわけで、本編をDOUZOッ!

※この話の何処かに珍しい事が起こります。
その珍しい事を見つける事ができた人は明日いいことがあるかもデス!

では、そちらの方も楽しみにしつつ、ゆっくりとご覧ください!


切歌と歌兎の二人が千夜の妄言(デタラメ)を信じきり、シャロを実の姉と認識してしまってから数時間後、すっかり茜雲が空を覆い始めるのを見たシャロは椅子から立ち上がると店を仕舞う為に掃除をしているチノ、ココア、リゼに習い、モップで床の掃除を始めていた切歌、歌兎へと声をかける。

 

「それじゃあ、私たちはもう帰ります。二人はちゃんとチノちゃんのいうことを聞くのよ」

「ふふふ、すっかりお姉ちゃんね。シャロちゃん」

「茶化すな!」

 

ぽこん、と千夜の頭を軽く叩いてからシャロは千夜と共にラビットハウスのドアへと向かう。

その後ろ姿を見て、寂しそうにしているのが言わずもがな、切歌と歌兎である。

 

「…お姉様、帰っちゃうんデスかぁ…?」

「…姉上様ぁ…」

 

遠のいていくシャロの背中を見つめながら、潤んでいく少し垂れ目と眠たそうに半開きした黄緑色の瞳からの視線を感じとり、シャロは顔を苦渋で歪める。

しかし、そんなシャロの顔に負けずに視線を送り続ける二人にシャロは後ろを振り返ると大きな声で叫ぶのだった。

 

「あぁ、もう!分かったわよ!二人とも私の家に来ればいいじゃない!そうしたら、いつまでも一緒に居られるでしょう!!」

 

半ヤケ気味に叫ぶシャロの言葉を聞いて、二人は顔を見合わせると嬉しそうにその幼さが残る輪郭を笑みで歪める。

 

「ん、泊まる!」

「デスデス!!」

 

モップを持ったまま、嬉しそうにその場に利き手をあげてぴょんぴょんと飛び跳ねる二人にシャロは片手を見せる。

 

「じゃあ、五分だけ待ってあげる。だから、着替えとか準備してきなさい」

「…ん、分かった」

「30秒で充分なのデス!行こう、歌兎」

 

モップをその場に放り投げ、切歌は歌兎の右手を握りしめると階段を駆け登る。

二人の姿がいなくなってから、シャロは二人が放り投げたモップを床から持ち上げるとチノ達の方へと持っていく。

 

「はい、これ」

「ありがとう、シャロちゃん」

「別にココアのためじゃないから」

 

そう言って、ココアに渡したところでバタバタと階段を降りてくる足音が聞こえ、続けて現れるのが緑色と花青緑色のリュックを背負った切歌と歌兎であって、二人はニッコリと笑うとシャロへと敬礼する。

 

「準備」

「…終わった」

「のデス!!」

 

何故か、ハイテンションな二人を見て、呆然としていたシャロがひたいを抑えると切歌へと声をかける。

 

「……そう、で…切歌はなんで歌兎ちゃんを抱っこしてるの?」

 

そう、中に着替えやその他諸々入っているであろう緑と花青緑のリュックを歌兎が大事そうに持ち、その歌兎を切歌が背負っているのだ。

一体何があれば、そうなるのだろうか?

シャロが呆れながら聞く中、切歌は自信満々に胸を張ると当たり前のようにそれを答えるのだった。

 

「それはもちろん!歌兎が階段から足を踏み外さないようにデスよ!もし階段で転んだりしたら危ないデスからね」

「そう…」

 

(確かにこれは過保護ね)

 

時々、リゼと帰り道を共にする時に聞こえてくる"切歌の過保護"がここまで酷いものとは思わなかった。

シャロはひとまず、切歌から歌兎を降ろすと歌兎の手を握るともう一度、チノ・ココア・リゼへと頭を下げるとドアに向かって歩いていく。

 

「それじゃあ行くわよ、二人とも」

「はーいデス。リゼさん、ココアさん、チノちゃん。お疲れ様デス」

「…また、明日お願いします」

「あぁ、お疲れ様」

「お疲れ様〜。切歌ちゃん、歌兎ちゃん」

「お疲れ様です、お二人共」

三人にぺこり、と頭を下げた切歌・歌兎がドアから外へと出ていくと残された三人に妙な沈黙が降りてきて、気まずくさを感じてきた頃

 

がちゃん

 

とドアが開く音が聞こえ、人一人顔を出せるくらいに開いたドアの隙間からひょこっと顔を出すのが、さっきシャロと切歌に両手を繋がれ、この店を後にした歌兎であった。

 

「あれ?歌兎、どうしーー」

 

眠たそうに開かれた黄緑色の瞳を忙しなくキョロキョロと動かす歌兎にリゼが問いかける。

そんなリゼのセリフを遮った歌兎は小さく息を吸い込み、ぎゅっと唇を噛む。

 

「ーーこれだけは言っておかないとって思ったから…」

「「「?」」」

 

三人が首を傾げる中、歌兎はもう一度空気を吸い込み、チラッとチノの方を見ると蚊が鳴くような声で呟く。

 

「………おやすみなさい、チノ」

 

チノの方をジィーーと見つめたまま、頬から耳にかけてを真っ赤に染める歌兎にチノも同じように頬を染めながら、返事をする。

 

「はい、おやすみなさい。歌兎さ…歌兎」

 

チノの返事を聞いた歌兎は淡く微笑むとぱたぱたとチノに向かって右手を振り、目が合ったココアとリザにもう一度頭を下げると姉達の後を追うのだった…

 

 

 

ⅰ.

 

切歌と歌兎を家に招いたシャロは困っていた。

その理由はこの二人が喜びそうな晩御飯が材料的に作らない事だった。

 

(さーて、どうしたものかしら…)

 

冷蔵庫を見つめたまま、晩御飯の献立を立てるシャロの耳に届くのは、リビングではしゃぐ暁姉妹の笑い声である。

 

「…わぁー、このうさちゃん、もふもふっ」

「歌兎、見て見てください。このうささん、葉っぱ咥えてるデスよ!」

「…本当だ、じゃあ君はワイルドうさちゃんだね」

「デスね!」

 

という話し声から恐らく、部屋に入ってきたワイルドギースを二人が見つけて、ワイルドギースを抱っこする歌兎を切歌が抱っこしているって感じだろうか。

この短期間でここまで具体的に状況が浮かぶということは、シャロも切歌の過保護節が痛いほど感じ取っているということだろう。

 

「…ぁっ…」

「…逃げちゃったデスね…」

 

二人が残念そうな声を漏らす中、シャロは冷蔵庫から材料を取り出すと早速、晩御飯を作り始めるのだった…

 

 

 

ⅱ.

 

作り終えた料理を切歌と歌兎に手伝ってもらって、盛り付けたシャロはリビングにあるこじんまりした机を囲んで、料理を口に含む。

 

しゃきしゃき

 

と白く細長いものを噛み砕くたびに広がる食感に歌兎は左隣に腰掛け、静かに食べるシャロへと声をかける。

 

「…姉上様、これってもやし様?」

「様?」

 

確かに、目の前に広がる料理にはふんだんにもやしを使用しているが…何故、歌兎はもやしの事を様づけしているのだろうか?

首を傾げるシャロの左隣にいた切歌がその垂れ目を大きく見開く。

 

「あぁ、何処かで食べた事がある食感だと思ったら、もやし様でしたか!お久しぶりデス、もやし様」

「…もやし様のおかげで、僕らはここまで大きなったんだよ」

 

それぞれ、大事そうに箸で一本のもやしを味噌汁から摘まみ取り、恭しく頭を下げる切歌と歌兎。

 

「こら、やめなさい!二人共。食べ物を粗末にするじゃないの!」

 

シャロが二人の箸を下ろそうとするもすかさず、切歌が抵抗する。

 

「これは粗末にしてるんじゃないんデス!」

「…あの頃、お世話になったもやし様との再会を噛みしめている」

「意味が分からないわよ…」

 

普段は、シャロのいうことや周りのいう事を素直に聞く歌兎もこのもやし様との邂逅の時間だけは邪魔されたくなったらしい。

眠たそうな瞳を不機嫌そうに細めながら、シャロを睨む歌兎や切歌の突然の奇行に頭を抱えるシャロ。

 

しかし、それくらいで二人の奇行は止まらず、エスカレートしていくのだった。

箸でつまむ事さえも拝ましいと思い始めたのか、二人はもやし…いいや、もやし様を両手に乗せると天に向かって持ち上げると深々と頭を下げる。

 

「…もやし。それは最早僕らの命の恩人とも言える白いお方。…そう、あのお方で僕らは出来ている」

「もやし。それはあたし達のお財布が絶唱をしてしまっても何処からか現れて、S2CAであたしと調を救ってくれたあの時の響さんのように、もやし様はあたし達のお財布を忽ちにエクスドライブさせてくれるのデス」

「意味がわからないけど、取り敢えずその響さんって子には謝るべきだと思うわよ、私。あのもやしと同じ扱いなんてあまりにも不憫すぎるわ…と、それよりも歌兎ちゃんのさっきのセリフは何?もやしで出来てるって」

「…もやし、と呼び捨てするのも拝ましい程にお世話になったあの方。あの白くて凛と天に向かって伸びるあの姿に僕らは勇気付けられ、あのシャキシャキとした食感に明日を生きていく為の(かて)を貰った」

「デスデス。あの三文字を耳にしたり口にする度につい様って付けないと身体がむず痒くなっちゃうデス」

「そこまでなの!?そこまでもやしを崇めてちゃってるの!あなた達!!?」

 

突然始まった語りに果敢に突っ込むシャロはほっておいて、暁姉妹は心ゆくまでもやし様と感動の再会を堪能するともやし様とのエピソードを話しつつ、シャロが作ってくれた料理を口に含んであったのだった……




今回もしょーもない話となりましたが…次回から割とちゃんとした話になる予定です。
回想回とかも含めるので、皆さんも見たことあるシーンも登場すると思いますッ!

と、今週の木曜日は響ちゃんの誕生日と切ちゃんの中の人こと茅さんの誕生日デスね〜♪
折角なので、この二人…響ちゃんと切ちゃんが絡む話でも書こうかなぁ〜…と思ってみたりするのですが、間に合うかなぁ…(苦笑)
間に合わなければ、また翌日書かせてもらうかもです。

また、こちらもしてみたいなぁ〜と思っていることなんですが、ごちうさとのコラボが終わった後に他の作品ともコラボしてみたいなぁ〜と考えております。
私のただの願望なので…実行しないかもですが…、実行出来るように本編の方も進められたらと思います(土下座)


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ご注文は呼び捨てですか?

こんばんわー、どうも律乃デス!

久しぶりの続けての更新ですが…この話は前の話の答え合わせとなっております。
さて、前の回にて皆さんは珍しい事を見つけることができたのでしょうか?そして、その珍しい事はあっているのでしょうか?

それでは…本編をどうぞ!

※毎度のことながら、読みにくいかもです…(ぺこり)


「お姉様、スポンジどこデス?」

 

流し台に置いてある食器やお椀に僅かに残る汚れを水で流しながら、切歌はキョロキョロと辺りを見渡す。

 

「スポンジならそこね」

「…ありがとうデース」

「どういたしまして」

 

切歌に問われたシャロは流し台の近くに置かれている小物入れからスポンジを取り出すと切歌へと差し出す。

それを受け取った切歌がお礼を言う中、とてとてと両手に盛りつけ皿を持った歌兎が歩いてくる。

 

「…姉上様、お皿持ってきた」

「ありがとう、歌兎ちゃん」

「…へへ」

 

歌兎から皿を受け取ったシャロがさりげなく頭を撫でる中、ぷくーっと頬を膨らませている者が一人。

 

「…お姉様も歌兎もばっかりずるいのデス」

 

成長すればきっと美人になるであろう整った顔立ちの原型をとどめてない程に膨らむ切歌の頬を見て、シャロは小さくため息をつくと

 

「切歌もお皿洗いありがとうね」

「はいデス!」

 

なでりなでり、とシャロに明るめの金髪を撫でられながら、切歌は嬉しそうに顔を綻ばせる。

その笑顔を見て、思わず可愛いわね…と思ってしまったシャロはもうすっかり二人のお姉ちゃんであろう。

 

しかし、そんなほっこりした話で終わることがないこの二人のお泊まりはやはり切歌の日頃の行いが悪いからなのであろうか?いいや、恐らく常に波乱の道を歩いてきた暁姉妹だからこそだろう…そして、その暁姉妹に加わってしまったシャロもその波乱から逃れることはできないだろう。

 

「…姉上様、お風呂の湯出ない」

「へ!?うそっ!?」

 

一人、お風呂の湯をためようとお風呂場に行っていた歌兎が戻り、そう言うとシャロが血相を変えて、蛇口をひねるが全くもって湯が出る様子はない。

 

「…はぁ、困ったわね…。いつも通っている銭湯は今日は運悪く定休日だったと思うし…これは千夜にお風呂借りるしかないわね」

 

頭を抱えたシャロは切歌がお皿を洗い終えるのを待って、隣の《甘兎庵》へと向かうのであった……

 

 

 

 

ⅰ.

 

「え、えっと…ココアさん…?リゼさん…?どうして、私を見たまま黙ってるんですか?」

 

チノはコーヒーカップをふきんで拭きながら、自分を見つめたまま黙ったままのココア・リゼを見て、困惑している。

 

「びっくりするよ!!だって、歌兎ちゃんとチノちゃん、お互いを呼び捨てにしてたんだもの!」

「いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」

 

興奮が冷めらないのか、前のめりで問い詰めてくるココアと純粋に疑問なのか、リゼも僅かながらに前のめりになって問いかける中、チノが言いにくそうにその訳を話すのであった。

 

「実は…」

 

それは珍しくチノが忘れ物をした時のことだった。

取りに帰ろうか、隣の席の人に借りようかで迷っているチノの耳へと聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

『…チ…!…て』

 

振り返るチノが見たのは、チノが忘れた数学の教科書を持って走ってくる腰の辺りまで伸びている水色の入った銀髪を風に遊ばせ、悪魔を象った半袖パーカーを揺らしながら、華奢な足を懸命に動かしているチノの家に実の姉と暮らしている少女で、チノの目の前に止まった少女…歌兎は肩で息をしながら、チノへと数学の教科書を差し出す。

 

『はぁ…はぁ…、良かった…。間に合って…』

『ごめんなさい、歌兎さん』

『…いいよ。僕と姉様はチノお姉ちゃん達の家に居候させてもらってるんだから』

 

淡く微笑み、そう言った歌兎はチノと並んでいる二つの人影に気付く。

歌兎の視線に気づいたのか、チノと並んでいる二つの人影…マヤ、メグの方へと手を向けたチノが二人を紹介する。

そして、紹介された歌兎も自己紹介をして、そこで話が終わるものだと思っていた。

 

だがしかし、マヤの何気無い一言がいつまでも歌兎の心に残ってしまうのだった。

 

『そういえばさ、なんで歌兎って私達のことを"お姉ちゃん"って言うんだ?』

 

腕を後ろに組み、八重歯をのぞかせながらそう問うマヤに歌兎は右手の人差し指と親指を顎に添えて、暫し考えた後

 

『…んー、癖だと思う。僕は産まれた時から周りは年上ばかりだったから』

『ふーん、ならこれからは私らが同い年だからお姉ちゃんつけなくても良くなるな』

 

ニコッと笑うマヤに歌兎は顔を固くしたところで、チノの回想は終わり

 

「というわけで、歌兎さんは頑張って、私とマヤさん、メグちゃんを呼び捨てにする為に密かに二人で特訓してたんです」

 

チノが言う特訓というのが、歌兎が戻ってきて言った『おやすみ、チノ』というものだろう。

確かに、恥ずかしがり屋である歌兎やチノにはそういうちょっとした事から慣れていくのが一番いいかもしれない。

 

「じゃあ、チノちゃん。私のこともお姉ちゃんってーー」

「ーーココアさんはココアさんですよ」

 

ココアのセリフを遮り、そう言うチノにココアがいつものようなリアクションを取って、ラビットハウスでの一波乱が終わりを迎えたのであった……





というわけで、マヤちゃんの一言で歌兎がチマメ隊の名前を呼び捨てする為に毎晩、チノちゃんのへと『…おやすみ、チノ』と練習する歌兎の話でしたが…次回は、千夜ちゃんの風呂場を借りに行った暁姉妹三姉妹の話となると思います。



と余談なんですが…今回のイベントが可愛すぎてつらい…。
切ちゃんが可愛いのは痛いほど分かるのですが、切ちゃんロボと調ちゃんロボの可愛さたるや…それに、昔の自分を象ったロボに鬼神の形相となるマリアさんが面白すぎるっ!私、今回のイベントのマリアさん好きですよ!

さて、後半戦はどんな話となるのか…楽しみに待っていようと思います!

そして、まだロボギアの切ちゃんをお迎え出来てないです……。
しかし、新しいアイコン…白衣を着た切ちゃんが調ちゃんロボを頭に乗せているものをゲット出来たので、嬉しいのですが…やはり、ロボ切ちゃんが欲しいなぁ…(切望)


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ご注文はお風呂ですか?

お久しぶりです(土下座)

昨日シンフォギアラジオ40回と金子さんのツイッターを聴き見てきました。

あぁ…、これはクリスちゃん、XVで『ダジャレを学ぶ旅』行っちゃうのかなぁ…(遠い目)

もし、行くのだとしたら…翼さんも行くのかなぁ…?
シンフォギアライブで、『私たちは運命共同体』と言ってましたし…(苦笑)


と、話が逸れたが今回の話はほのぼのした話となっています。
ほのぼのとした癒しを読者の皆さんへと提供できればと思っております(礼)

では、ご注文はお風呂ですか?開演デェース!!

*今回は久しぶりに歌兎だけの視線となっております。


「悪いわね、千夜」

「いいのいいの、一人で入るよりもみんなで入った方がきっと楽しいわ」

 

姉上様が千夜お姉ちゃんにお風呂を借りて欲しいと頼んで、許可をもらってから数分後。

お礼を述べる姉上様に右手を頬を添えて、心なしが嬉しそうに微笑む千夜お姉ちゃんの後ろに続くのが、僕と姉様となっている。

姉様は自分と僕の着替えを小脇に抱えると僕を率いて、我先にと千夜お姉ちゃんが案内してくれた脱服室に続く、半透明なガラスの扉を勢いよく開けた姉様にすかざす、姉上様の「こら!行儀が悪いでしょう!」という注意が飛ぶが、もう姉様の垂れ目な黄緑色の瞳には目の前に広がる脱服室の広さとそこから続く僅かに見える和風な造りのお風呂場に夢中な様子だった。

 

「ふわぁあああ!!!千夜さんの家のお風呂、広いのでデスっ!!まるで温泉みたいデェース!」

 

と言い、僕をも小脇に抱えて、そのお風呂場に向かって駆け出しそうになる姉様の黒いパーカーをむぎゅ、と掴んだのはどうやら姉上様のようだ。

 

「だから、言った矢先から走りだそうとしないの。それ以前に服を脱がないとお風呂に入らないでしょうが」

「ぐえ」

 

(あっ、さっき姉様から乙女らしからぬ声が聞こえたような…)

 

チラッと上を見れば、見事に緑色のゆったりしたTシャツが首にめり込んでいる。

しかもあそこは喉仏辺りではないだろうか?

 

(あ、あれは苦しいよ…)

 

僕と着替えによって、両手を塞がれており、空いた手で首にめり込んでいる服を引っ張ることができないのだろう。そんな事を考えている間に姉様の顔がだんだん青白くなっていってる。

 

(これは本格的にやばい)

 

そう思った僕は姉上様へと声をかける。

 

「…姉上様、姉様の首にTシャツがめり込んでる」

「へ?」

 

きょとんとした様子の姉上様に僕は視線で姉様の方を見ると、姉上様はパッと掴んでいた手を離す。

 

「ごごめんなさい、切歌」

「ぃぃ…の、デス…ょ…」

 

流石に僕を下ろし、首をさすりながら姉様が謝る姉上様に気にしなくていいといっている。青白かった顔へとだんだん赤みが戻る。

 

「ふぅ…」

 

大きく息を吸い込んだ姉様は僕を引きつけると僕の服へと手をかける。

そんな僕たちの近くには姉上様と千夜お姉ちゃんがいて、こちらも服へと手をかけると脱いで、近くにある籠へと入れる。

 

「はい、歌兎。ばんざいデス」

「…ん」

 

腰をおり、僕の目線に立ち、慣れた手つきで白いパーカーを肩からズラし、ストンと落ちたパーカーを籠に入れ、今度は花青緑色のTシャツを持ち上げて、脱がせると姉様が僕の胸元を見て、目を丸くしている。

 

「おぉ…歌兎、身長と同じようにこっちも成長期デスね」

「…そう、かな?」

「デスデス、常に歌兎を些細な変化も見逃さないようにこの目と両手に覚えこませている『お姉ちゃんによる愛する歌兎成長期日記』を信じてください!」

 

へ?お姉ちゃんによる愛する歌兎成長期日記ってなに?

 

初耳だよ?僕?

もしかして、最近よくスキンシップしてくるなぁ〜って思うのはそういう事をやってるから?スキンシップが激しい時があるのはそういう事なの?そういう事だからなの?姉様。

 

(もう、うちの姉様かなりヤバイところまで来てるんじゃあ…)

 

もしかしなくても、一般的には充分悪いところまで来ているのだが、僕や姉様がそれに気づくとかはないだろう。それだけ僕と姉様は共依存してるのだから。

 

そんな事を考えていると、姉様が突然顔を覆い泣き出した。

 

「ゔぅ…ぅ…っ」

「ね、姉様…?」

 

ガチ泣きされてるんだけど、姉様が。

 

(こ、困った…)

 

まるで万華鏡のように目まぐるしく変わる姉様の表情やオーバーリアクションは見ていて飽きないものがあるが、そこまで両極端だと反応に困る。

 

「あんなに小さかった歌兎がこんなにも大きくなって、いつしかあたしのことを『姉様なんてウザい』とか『姉様なんて嫌い』とか言って、反抗期になってあたしを遠ざけるようになり、最終的にはあたしの手の届かないとこに行ったり遊びに行ったり友達を作ったりして、どこの馬とも知らぬ男に恋をして、その男と身体を重ねるんでしょうね………許さない、ユルサナイのデス…もし、そんな事になってしまった場合は相手は速やかに闇に葬らないと…。あたしの歌兎に手を出したのが悪いんデス…万死に値するのデス…万死、そう万死デス。マストダーイだけじゃなくて、木っ端微塵にもしてやるデス…っ、跡形も残さないのデスよ…」

 

泣いていた黄緑の瞳が忙しなくくぐもっていき、光も失っていく上に口元へと僅かな笑みを浮かべる。

 

(怖い怖い怖い、怖い!!)

 

呟かれるセリフもアレだけど、言ってる時の顔もアレだよ、姉様。

 

「ーー」

 

どうやら、この世界に来た時に僕が嫉妬に任せて言ってしまった『姉様なんて嫌い』というセリフがあまりにも衝撃的だったらしい。もっというと、『姉様なんて嫌い』は姉様が来てからは毎日とは言わないが、一週間に1、2回は言っていた気がする。

だから、姉様の心がここまで歪んでしまったのは僕のせいということに…

 

(今度からは発見には気をつけよう…)

 

そう心に決め、すでに危ない顔をしている姉様をどうにかしないと声をかけようとした時だった。

 

「大袈裟よ、切歌」

「あだ」

 

ぽすん、と手刀を姉様の頭へと落とした姉上様は呆れたように溜息をつく。

 

「いいから早く服を脱ぎなさい。私たちは先に入ってくるから、あなた達も早く来なさいね」

 

最後は穏やかにそう言った姉上様は千夜お姉ちゃんと共にお風呂場へと入っていく。

残された僕と姉様はというとーー

 

「…早く脱いで、行きましょうか?歌兎」

「…ん」

 

 

 

ⅰ.

 

姉様に身体と髪の毛を洗ってもらい、僕もお返しに姉様の髪の毛と背中を洗うと四人並んで湯船に浸かる。

 

「…ふぅ…、いい湯なのデス…」

「…ん」

「やっぱり、四人となると狭いわね」

「そうね」

 

並び順は右から姉様、僕、姉上様、千夜お姉ちゃんという並びで僕は横で気持ちよさそうに背伸びする姉様と左端にいる千夜お姉ちゃんの湯船に浮かんでいるそれを交互に見るとさっき成長期と言われた胸元へと視線を落とす。

 

じぃーーーー。キョロキョロ、じぃーーーーー。すぅ……ガクっ

 

(やっぱり、大きいなぁ…姉様も千夜お姉ちゃんも)

 

千夜お姉ちゃんは言わずもがな、姉様のも湯船に浮かんでいて、さっき背伸びをしていたので僅かに上下に揺れている気がする。

そして、スゥーと横を見ると同じように姉様と千夜お姉ちゃんの一部を交互に見ている姉上様の姿があって、僕はコソッと姉上様に聞く。

 

「…ねぇ、姉上様」

「なに?歌兎ちゃん」

「…どうしたら、あんなに大きくなれるのかな?」

 

純粋な質問は時に人を傷つける、それも悪意がないほどに。

 

「それを私に聞くの?歌兎ちゃん」

 

そういう姉上様の胸元を見つめ、僕は顔を僅かに曇らせると

 

「…ごめんなさい」

「やめて!謝れると更に虚しくなるでしょう!」

「…ごめんなさい、姉上様。僕、どんな姉上様でも大好きだよ」

「だから、やめなさいって言ってるでしょう!!」

 

そんなシャロの悲鳴が風呂場に響く中、穏やかに時は過ぎて、僕たち三人は千夜お姉ちゃんの部屋に泊まることになり、思い出話に花を咲かせたのだった……

 




というわけで、千夜ちゃんのお風呂場を借りに行った暁三姉妹の話でしたが…どうだったでしょうか?
ほのぼのと出来たのならば嬉しいです(笑)


と、随分遅くなった上に今更感が半端ないんですが…

なんと!!うちにメカニカル切ちゃんをお迎えすることができました!!
もうぉ〜、感激デス!!
可愛すぎるでしょう!!特にモーションが!!モーションが可愛すぎて…つらい、私は萌え死そうですよ…。
腰を折って、前のめりで左手をパタパタ振るとか……もう、いかんいかんこれはいかんですよ!!(あまりの可愛さにジタバタする私)

そんな切ちゃんと違い、メカニカル調ちゃんはクールなモーションとなっているんですね〜♪
左手を腰に当てて、右手を下に下ろしている調ちゃんはかなり新鮮なように思えます。
しかし、固定技でピョーンと飛んで攻撃するところとか、右手を胸に当たるモーションとか可愛いところもあり…こちらもイベント同様、大満足でした!!


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ご注文はおつかいですか?

お久しぶりです(土下座)

また、すごく今更感ありますが…『ご注文はうさぎですか??キャラクターソロシリーズ』ココアちゃん・シャロちゃん・モカさん・青山ブルーマウンテンさんの四人のCD発売、大変おめでとうございます!!
思えば、モカさんの曲の発売日にこの小説も二年目へと突入し、更新速度も少しずつですが上昇すればと思っていますが…なかなかなんですよね、忙しくて(汗)

また、『ご注文はうさぎですか?』も新たに2019年に新作OVA、2020年に三期決定と嬉しい事尽くめな情報が多く…心がドキドキするのと、公式サイトにて描かれているみんな自身のカラーをしたひし形が描かれたセーターとベレー帽をちょこんと被ったみんなの可愛さたるや……あぁ〜、心がぴょんぴょんするじゃ〜

と、話が壮大に逸れてしまいましたが…今回の話で注目して欲しいのは歌兎とチノちゃんの絡みだったりします。二人の可愛さが伝わるように書ければと思うので、どうかよろしくお願いします。

では、本編をどうぞ!!

*この話は歌兎視点で、回想となっています。
なので、チノちゃんの事を『チノ』で統一していこうと思います。しかし、会話文は『チノお姉ちゃん』です。


僕の純粋な質問が姉上様の心を抉ってしまってから数分後、僕は姉様がこの世界に来てから何処からか入手したもふもふのうさ耳がついたパジャマを姉様に着せてもらい、今はその姉様の膝の上にちょこんと座り、僕たち用の布団を引いてくれている姉上様と千夜お姉ちゃんを見ている。

何故手伝わないのか?と思う人がいると思うけど…僕と姉様も手伝おうとしたのだけど、千夜お姉ちゃんと姉上様によって手伝わなくていいと強く言われてしまったかつ千夜お姉ちゃんに姉上様が長女としてやってあげたいと言っていたと言わられてしまったらもう何も言えなくなってしまう。

 

というわけで、せっせと布団を引いてくれている姉上様の前で僕ら年少チームは畳に座り、姉様に至っては僕を後ろから抱きしめて、自分の頬を僕の頬へと擦り付けていた。

 

「あぁ〜、歌兎がもこもそのもふもふで抱き心地が気持ちいいのデス〜」

 

それは僕じゃなくてこのパジャマの性能が高いのでは?という意見は姉様の心を傷つけしまうと思い、グッと飲み込み、なすがままになっている僕と姉様の頭を撫でるのは今方布団を引き終えた姉上様だったりする。

 

「さて、引き終えたから寝るわよ、あなた達」

「…はい」「デース」

 

そして、その後どの布団に誰が寝てるかという話になり、姉様の「あたしと歌兎はお姉様と千夜お姉ちゃんの間デース!!」というセリフから僕と姉様は真ん中、そして姉様の隣が千夜お姉ちゃんで僕の隣が姉上様ということになった。

それぞれ、決まった布団に寝転がり、あとは寝るだけとなった時に千夜お姉ちゃんが不思議そうな顔をして、僕と姉様の携帯端末に着いてあるキーホルダーを見ている。それに気づいたのか、姉様が千夜お姉ちゃんに聞いている。因みに姉様のパジャマは緑のタンクトップに黄色いふわふわした短パンとかなりな露出度をほこっている。千夜お姉ちゃんは薄黄緑色の緩やかなワンピースだし、姉上様はダボっとしたTシャツに黄色いゴム入りの短パンとかなりラフな格好だが姉様に比べるとそこまでではない。

 

(ん、やっぱりうちの姉様はすごい)

 

身動きするたびに緑色のタンクトップに包まれた双丘が揺れ、姉上様が渋い顔をされるが敢えてそこはスルーとしよう。僕は失敗から学ぶ子だからね、人が触れてほしくないことには触れないに限る。

それより、何故千夜お姉ちゃんが僕と姉様のキーホルダーに興味を持ったのかが知りたい。

 

「千夜さん、あたし達のキーホルダーに興味があるんデスか?」

「えぇ、そのキーホルダーって手作りだったりする?」

「……」

 

千夜お姉ちゃんの質問に固まる姉様。

 

「あぁ、もしかして間違えていたのならいいのよ。私の見間違いかもしれないから」

 

そして、慌てる千夜お姉ちゃんの肩へと思いっきり両手を置いた姉様が心底驚いたように口を開く。

 

「千夜さん、あなたは天才デスか!何故、このキーホルダーが歌兎の手作りだと思ったデスか!」

「えっと、市販に比べては縫い目が少し荒いかなぁ〜って思って…」

「流石、お姉様の幼馴染さんデス!これからお師匠と呼んでもいいデスか?」

「えぇ、良いわよ。一人前に私がしてあげる」

「ありがとうございますデーー」

「ーーやめんかい!」「あだ」「いた」

 

真剣に千夜お姉ちゃんを尊敬する姉様、そんな姉様のキラキラした視線に心をよくしたのか悪ノリへと走りつつある千夜お姉ちゃんの暴走を未然に防いでくれたのは今まで傍観者を決め込んでいた姉上様だった。

ぽかぽかと姉様と千夜お姉ちゃんの頭をリズミカルに叩いた姉上様は呆れたように千夜お姉ちゃんを見る。

 

「全く…あまりうちの妹をいじめないでくれる?」

「まあ、あんなに渋っていたのに…もう、すっかりいいお姉ちゃんね、シャロちゃん」

「別に良いでしょう!!」

 

千夜お姉ちゃんのからかいに顔を赤くして抗議した姉上様は僕を見ると尋ねてくる。

 

「それよりも切歌がそのキーホルダーが歌兎ちゃんの手作りだと言ってるけど本当なの?」

「…ん、本当。僕のこの姉様の形をしたキーホルダーはお誕生日にお返しにもらった」

 

そういって、僕の端末についている姉様の形をしたキーホルダーを見せる。それを手に取り、眺める姉上様は感心したように姉様を見る。

 

「確かに縫い目が荒いわね。それにしてもこれを切歌が作ったの?しっかり作れてるじゃない」

「えへへ〜、あたしもやるときはやるのデス」

 

姉上様に褒めれたのが嬉しかったのか、頬を染めて照れている姉様を見ながら、僕はこんなやり取りをしたあの日のことを思い出していた。

 

 

 

ⅰ.

 

そう、それはまだモカお姉ちゃんがラビットハウスに暮らしていた時のことであった。

 

「いいデスよ、それは歌兎のデス」

「…ううん、やっぱり緑色は姉様の色だよ」

「ここは違う世界なんですから、そういうのは関係ないデスよ」

「…ダメ、姉様といえばイガリマと緑が似合うと相場が決まってる」

「いやいや、あたしだって他の世界では違うギアを……って、今はそういう話じゃなくてデスね」

「…姉様が緑の制服着てくれるまで僕はここを一歩も動かない」

「えぇえええ!!?なんで、そんな妙なところで頑固なんデスか、歌兎…」

「ぷく…」

「へ?もしかして、話も聞いてくれないって感じデスか!?」

 

そういって、姉様は僕が渡そうとする緑色の制服を受け取ろうとしてくれなく、僕もこればかりは譲るわけにはいかないと僕はその場に立ち、頬を膨らませる。

そんな僕の様子に困ったように頭をかく姉様を今まで見ていたモカお姉ちゃんがパチンと手を叩くと僕たちに近づいてくる。

 

「じゃあ、歌兎の制服を切歌ちゃんが手作りで縫うっていうのはどうかしら?」

 

モカお姉ちゃんの提案に反論する姉様と僕にモカお姉ちゃんはにこにことした笑みを崩すことなく、姉様へと更にとある提案を持ちかける。

 

「なんの解決にもなってないデスよ、モカさん」

「ぷく…」

「いいえ、よく考えて見て、切歌ちゃん。歌兎ちゃんの制服を手作り出来るということは自分の趣味も加えられるってことよ。切歌ちゃんも出ることなら可愛い歌兎ちゃんを見たいでしょう?」

「可愛い…歌兎…」

 

ごくんと喉を鳴らす姉様にモカお姉ちゃんはもう一息と押してくる。

 

「そう可愛い歌兎ちゃん、私も見たいなって思って」

「やるのデス!可愛くてみんなが仰天天外するような歌兎の制服を作るデス!!」

「…あ、あの…あまり原型から逸れるものは…」

 

気合い十分な姉様に弱々しく原型をとどめて欲しいと願うチノの言葉は当然、姉様の耳には届いていない。ブツブツ呟かれる言葉から想像する制服は本来の制服の原型は既に失われていた。

 

(これはそこはかとなくフォローしないとラビットハウスのお姉ちゃん達やタカヒロ様に迷惑かかるな…)

 

そんな事をそっと思っている僕にモカお姉ちゃんは近づくと腰を折って笑いかけてくる。

 

「というわけだけどいいかな?歌兎ちゃん」

「…ん、姉様がそれでいいなら僕からいうことはないよ」

「そっか。なら、早速だけどお使い頼まれてもいいかな?」

「…ん、いいよ」

 

即答する僕の頭を「いい子です」と撫でたモカお姉ちゃんから頼まれたのは僕の制服を作る前に必要となる布で、心配してついて来ようとする姉様はリゼお姉ちゃんにラビットハウスでの接客などを教えてもらうために残ってもらう必要があり、姉様の代わりに僕の買い物の相手として白羽の矢が立ったのがチノだった。

 

 

 

 

ⅱ.

 

「歌兎さんとこうして二人で街を歩くのは初めてですね」

「…ん、そうだね」

 

そよぐ風に水色が入った銀髪を遊ばせながら、肩を並べて歩く。

そして感じるチノからの視線に僕は横を見ると眉をひそめる。

 

「…どうしたの?チノお姉ちゃん」

「その…歌兎さんのパーカーから覗くそのキーホルダーって手作りなんですか?」

 

遠慮がちに聞くチノに僕は淡く微笑むと答える。

 

「…ん、僕の姉様と大切な人たちから誕生日に貰ったんだ」

 

そう言って、端末をポケットから取り出すとチノに見えるように持ち上げる。

そこには姉様の形を用いた小さなぬいぐるみやシラねぇ、セレねぇ、マリねぇだけでなく、響お姉ちゃんや翼お姉ちゃん、クリスお姉ちゃんを用いた小さなぬいぐるみが左右に揺れている。

 

「大切にしてるんですね、あまり汚れてないです」

 

左右に揺れるミニ姉様達を見ながら微笑むチノに僕はこくんとうなづく。

 

「…ん、姉様はもちろん大好きだけど…他のお姉ちゃん達も大好きだから。もちろん、チノお姉ちゃん達も好きだよ」

「…そ、そうですか…あり、がとうござい、ます…」

 

何故か頬を染めて、横を向くチノに眉をひそめる僕の前を野うさぎが通るのであった……




どうだったでしょうか?
二人のこのおつかいはもう暫し続くと思います。その間に少しでもキュンキュン出来る出来事を加えられればと思います(笑)


と、今やってる戦国ギアですが…私の趣味どストレートなんですよね(キラキラ)
マリアさんの必殺技がかっこいいのは言わずもがな…なんですが、必殺技といえば翼さんの方がずるいんですよねっ!『常在戦場』と書かれた旗が迫ってくるんですよ?私だったら、翼さんに切られる前に笑い死んでるかと(笑)

また、新たに始まる『機械仕掛けの奇跡』にて現れる新たなオリジナルキャラクターの『シャロン』ちゃんですが…いかんですね、この子。
大きめのパーカーに大人しそうな外見…私のどストレートです!!
和服も好きなんですが、パーカーとかラフな格好も私好物なので…果たして、この子がどのようにストーリーに関わっていくのか?楽しみにしてます!(ワクワク)


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ご注文はもふもふなウサギとトンデモ可愛い妹たち、どっちですか?

本編とクロスオーバーのUAを見て、思った事は…皆さん、本編よりもこっち(クロスオーバー)の方が見たいのかなぁ〜って事です(笑)

本編はそこそこに、クロスオーバー中心に更新していこうかなぁ…まだ、決めかねてない展開も本編であるので…ということで、再来週はクロスオーバーの方が更新が多めとなると思います!!

と、お久しぶりとなる今回は…歌兎とチノちゃんがモカさんに頼まれて、新しい制服を作るための布を買いに向かうとこですね(笑)

今回は出来る限り二人の可愛さをつめのんでみました!!二人の冒険模様、ぜひご覧ください…では、本編をどうぞ!!


「あっ、子うさぎです…」

「…ん?」

 

チノと姉様達特製の手作り携帯ストラップの話をしている最中、僕らの足元を通り過ぎるお尻の辺りに黒い縞模様がある子ウサギが何かに引き寄せられるように、立ち止まると僕の方をちらりと見上げて、ぴょんぴょんと僕の足元へと舞い戻ってくる。

スリスリともふもふと触り心地のいい毛並みを擦り付ける子ウサギを腰を折って抱き上げた僕は赤子を抱くように子ウサギを抱き直すと淡く微笑み、問いかける。

 

「…おいで。君は迷子なの?ママやパパは?」

 

くんくん、とピンクの鼻をひくつかせる子ウサギの頭を撫でながら、僕はチノの方を向く。

すると、チノは驚いたような顔をしながら僕と子ウサギを交互に見つめて、やがてそわそわと落ち着かなくなる。

 

「…触ってみる?この子は毛並みが細くて柔らかいからいいもふもふだよ」

 

持ち上げては下がる小さな手、チラチラと好奇心が入り混じった眼差しが子ウサギに向けられているのを知った僕はチノが子ウサギを触りたいのだと思って、そう提案する。だが、チノは力なく首を横に振る。

 

「私、ティッピー以外のウサギに懐かれないんです。私が触ろうとしたら、みんな逃げていってしまうんです」

 

そう言って、悲しそうな表情をした後で上げたようとした右手を下ろすので、僕はその右手首を掴むとやや強引に子ウサギへと触れさせる。

 

「う、歌兎さん!?」

 

驚くチノの右手の甲へと自分の右手を添えて、チノの手を動かすとチノの水色が入った銀色の瞳がみるみるうちに丸くなる。

 

「…ほら、この子もふもふ気持ちいいでしょう?」

 

そう問いかける僕にさわさわと子ウサギに触れながら、年相応の可愛らしい笑顔を浮かべて答えるチノ。その笑顔を見て、淡く微笑む僕は添えていた右手を退けると今度は左手で触る。

 

「はい、こんなにももふもふな毛並み知らないです。ティッピーとも違うんですね」

「…ん。こっちの方がふわふわでしょう?」

「はい」

 

二人して、腕の中にいる子ウサギを思う存分撫で回していると子ウサギが僕の腕から飛び降りる。それを見てガッカリ顔のチノと僕の顔を交互に見て、前を向き、ぴょんぴょんと飛んだ後にまた振り返り、僕らを見た後でまた進むを繰り返す子ウサギ。

一瞬、何をしているんだろう?と思うけど、この子ウサギが行なっている行動は前に一回見たことがある。

 

「…どうやら、付いてきてって言ってるみたいだね」

「そうなんですか?」

 

不思議そうに僕をみるチノにコクリとうなずく。

 

「…ん、前にもこういったことがあったから」

 

僕らが付いてきているのを確認しながら、進んでくれているのか?

子ウサギは立ち止まっては振り向く、立ち止まっては振り向くを続けてくれているので、歩いてでも余裕を持って付いていけた。

 

「…前にもって、歌兎さんはウサギに好かれる人なんですか?」

 

とてとてと肩を並べながら、何処か羨望の眼差しで見つめ尋ねてくるチノ。僕はチノに小首を傾げる。

 

「…んー、どうかな?…警戒して来てくれない子も居るけど…多分、嫌われているってことはないと思うよ」

 

思えば、前の世界でもよく動物が近づいてくることがあった。姉様やシラねぇが学校、マリねぇとセレねぇが仕事の時はよく一人出掛けては、動物達を撫でていたものだ。

しかし、思えばなんで彼らは僕に近づいてくるのだろうか?餌をあげたりとか傷を直してあげたりしたのはほんの数回でしかないというのに…あ、そういえば、前の未来お姉ちゃんに言われたな、『歌兎ちゃんって、名前に"(うさぎ)"って入ってるでしょう?だから、動物に好かれるのかもしれないよ』といつものように白熱する姉様とマリねぇの僕の洋服選びに付き合ってくれた時に、並んでクレープを齧りながら話したのが、そういう話題だった。なんで、そんな話題になったのか?はペットの出入りもOKな飲食店で偶々お隣さんとなった女性がラブラドールを飼っていて、そのラブラドールがじゃれ付くように僕に身体を擦り付けてきたからだと思う。

 

そんな出来事を思い出しつつ、僕は心配そうに振り返ってくる子ウサギを見つめながら、答える。

 

「…多分、僕の名前にウサギが入ってるからだよ」

「そういうものなんでしょうか?」

「…そういうものだよ」

 

納得できなさそうなチノに淡く微笑みながら、僕達は子ウサギの後を追った。

 

 

 

 

ⅰ.

 

「…っ」

 

カツンカツン、と忙しなく踏みつけられるラビットハウスのタイル。

そのタイルを踏み続ける明るい金髪をショートヘアーにし、左側の前髪に大きな✖︎(ばってん)マークの髪飾りをつけている少女に隣にいるリゼが相変わらずの過保護を発揮する少女に呆れつつ話しかける。

 

「切歌、落ち着いたらどうだ?」

 

話しかけられた金髪の少女こと切歌は貧乏揺すりしていた右脚を止めるとリゼをチラッとみる。

垂れ目がちの黄緑の瞳に溢れんばかりの憂慮を貯めて、桜色の唇は珍しく一文字に結ばれている。

 

「あたしはただ心配なだけデス。一時間前にチノちゃんと出掛けたっきり、歌兎は帰ってこないのデス…。うゔぅー、心配デス…あの子、動物に何故か懐かれるデスし…あの子自身も動物が好きですからね。この街は野うさぎがよく街に現れるって…ココアさんも言ってましたし…ハッ!?もしかして、野ウサギを追って野、へ…?」

 

今度は貧乏揺すり出なく、組んだ腕の左肘を右人差し指でトントン、と叩きながら、思考に思考を重ねていく切歌ハ段々と良くない方へと思考を働かせていき、その表情がだんだんと青ざめていく。

 

(それは無いだろう)

 

ブツブツと呟かれる切歌の独り言を聞いて、リゼがツッコミを入れる。

 

「イヤイヤ、切歌。流石にそれは無いだろう、おんぶにだっこな赤子では無い。怪しいところには行かないだろ」

「いいえ!あの子は純粋な子なんデス!それにあたしがいないと何も出来ない子なんデス…今頃、野に一人膝を抱えているに違いなのデス!!歌兎、今お姉ちゃんが行くデスからね!待ってください!!」

「だからって、店を放り出すな!ココア、お前もだぞ!!」

 

駆け出そうとする切歌の暴走を抑え込みつつ、リゼはこっそりと出て行こうとしているココアへも注意を飛ばす。

 

「あはは、バレちゃった?」

「あはは、バレちゃった?じゃない!!お前と切歌がいなくなったら、わたし一人でどうやってこのを切り盛りするんだ?」

 

リゼのその質問に二人は

 

「リゼちゃんなら出来るよ〜」「リゼさんなら出来るデス〜」

 

笑顔を浮かべて、そう答える二人に呆れて何も言えなくなったリゼの耳に軽やかな音が聞こえる。

 

「あ、歌兎からデス」「私はチノちゃんからだ」

 

心配していた張本人達からのメールに目に見えて喜びの表情を浮かべる過保護な姉と自称姉。

二人は同時にメールを開き、メールに添付されていた写真を見て固まる姉二人。

そんな姉達が固まるメールを盗み見たリゼは二人が固まった理由を知る。

 

添付されていた写真には---仲むすましく右手と左手を繋ぎあい、瓜二つと言われるほどによく似通った顔立ちをしている少女達が多くのウサギに囲まれている写真だった。それぞれ膝の上に子ウサギを載せていて、手前に移る眠たそうに黄緑色の瞳を眠さそうに開けている少女の頭にもちょこんと子ウサギを乗っかっている--ということは、その姉達が喜びそうな要素がこれでもかというくらいに盛り込まれているのだ。

 

「チノちゃんが抱っこしている子ウサギ可愛い」

 

しかし、二人とも見つめている箇所は違うらしく…ココアは大事そうに膝の上にいる子ウサギを抱き寄せる髪と同色の水色の入った銀色の大きい瞳を持つ少女よりも抱っこしている子ウサギに興味があるみたいで、一方の切歌は---

 

「…うちの妹がトンデモ可愛すぎるのデス。なんなんデスか…白や黒、茶色のもふもふウサギに囲まれ、そのウサギ達に微笑を浮かべる歌兎…絵になるデス。本当にこんなに可愛い子があたしの妹なんデス?本当は女神さまなのでは…?そうデス、女神さまなのデスよ!あぁ、女神さま、あたしの妹に生まれてきてくれてありがとうございますデス」

 

---カメラを気にかけながらも膝の上に乗っけた子ウサギや周りのウサギへと薄い微笑を浮かべている血を分けた肉親へも試験が向いているようで、もうよくわからない事を言いながら、ボロ泣きしながら天に向かって祈りを捧げている。

 

「…なに、ガチ泣きしながら天に祈りを捧げているんだよ」

 

そうボソッとつっこむリゼの呟きはやがて床へと沈んでいった…




と、二人の可愛さにキュンキュンしていただけたでしょうか!
少しでもキュンキュンしていただけたのならば、嬉しい限りです。



また、今週の木曜日、10月25日はクリスちゃんの中の人・高垣彩陽さんのお誕生日だったんですね!
改めまして、お誕生日おめでとうございます!高垣さん!!
クリスちゃんの『ばぁん』は何度聞いてもドキッとしてしまいます。

そして、今日クリスちゃんのユニゾン必殺技ギアガチャと『Change the Future』も楽曲に追加されましたね!
ということは、『風月ノ疾双』『必愛デュオシャウト」もいつかは追加されるのでしょうね…楽しみだなぁ。
どの曲も私は好きなユニゾン曲なので、追加させるのは嬉しいです!!


また、随分遅れましたが…かやのみの最新ですが、私は最初のヨーグルト甘酒に興味をそそられました!甘酒は私好きなものなので。
私はあまり、お酒が得意ではないので、また日本酒も実を言うと飲んだことがないんです…ですが、かやのみが紹介される日本酒はどれも美味しそうなんですよね〜…飲んでみたい!しかし、飲み酔った後に大暴れして、物とか壊したら…と思うと踏ん切りが付かず、手を出さずにいる日本酒…。
いつかは一口は飲んで見たいなぁ…と思う律乃でした(礼)


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ご注文は売り場ですか?

更新は本当は来週にしようと思ったのですが…あの情報を見てしまってからはどうしても書きたくなってしまいまして、書かせて貰った次第です。

文字数はいつも通りで、今回の話で歌兎とチノちゃんのおつかいは終わりを迎えます。
ここまで、二人のおつかいを見守っていただいた読者の皆様ありがとうございます(礼)

二人の冒険で少しでも皆様が癒されたのならば嬉しく思います、では最後となる冒険をご覧ください!


子うさぎに連れられて、向かった先にあったのはまさかの野うさぎたちの村みたいなものだったらしく…僕もチノも最初こそ戸惑ってしまったけど、クリクリのまん丸で見上げてくる野うさぎ達の可愛らしい仕草に我慢できなくなり、蹲ってスリスリと身体をすり寄せてくる子うさぎを抱っこしたときにはその気持ちいい感触に頬が思わず緩んでしまった。

その後、どんどん集まってくる野うさぎたちに囲まれながら、彼らをもふもふしていたら、いつの間にか空の色がだんだんと暗い方に向かっていっていて…膝の上に乗せている子うさぎを名残惜しそうに地面に置いて、僕らはその場所を後にした。

 

「…もふもふ暖かくて気持ちよかった」

 

まだ掌に残っているそれぞれ違う野うさぎ達の毛並みを思い出しながら、左隣にいるチノに話しかける。

すると、興奮気味の様子で僕の方を見ると、髪と同色の水色の入った銀色の瞳をキラキラをさせながら、早口で話し出す。

 

「はい、どの子達もそれぞれ違っていて…あんなにもふもふ出来たのは初めてです」

「…それなら良かった。また、一緒にもふもふしようね」

「はい」

 

暫くの間、あの野うさぎ達の村は僕らの秘密基地のようになるのだろう。

野うさぎ達に貰ったもふもふパワーで歩くスピードが上がる中、空を見上げて、花青緑色の端末へと視線を落とすと時刻は13:05となっていて、チノと出掛けたのは11:00だった気がするので…きっと今頃、うちの姉様が暴走するかしないかのギリギリのラインではないかと思う。

姉様曰く僕と長い時間離れてしまうと"歌兎エキス"がだんだんと減っていき、尽きると身体が重くなったり、気分を害したり、ひどい時にはめまいに続いて、嘔吐と…かなりヤバイ状態となるらしい。らしいというのは、シラねぇ越しから聞かされたからで、僕自身そこまで弱っている姉様を見たことない…いや、僕が《嫌い》と言ってしまった時は号泣しちゃって、弱々しかったか…。

しかし、その弱々しかった姉様も僕に抱きつき、頬をスリスリするだけで"歌兎エキス"が補給出来るそうで、忽ちに元気になる。

強く抱きしめてくる時は苦しいけど、その分姉様が元気になってくれるのならばそれでいい。姉様には笑顔が似合うし、シラねぇや他のお姉ちゃん達もどんよりしてる姉様よりも明るい方が好きだろうから。

 

しかし、元気すぎるというのも考えもので…これは、リゼお姉ちゃん。明日げっそりしてるんじゃあ……。

 

(…明日、リゼお姉ちゃんにお礼言っとこ)

 

「ココアさんも切歌さんも心配してるでしょうね」

「…ん、でもココアお姉ちゃんよりも姉様の方が心配」

「そう、ですね…。リゼさん、大丈夫でしょうか」

 

僕の台詞に苦笑いを浮かべるチノも姉様が大暴れして、それを取り押さえるリゼお姉ちゃんのことを心配しているようだった。

取り敢えず、これ以上リゼお姉ちゃんの負担にならないようにするには---

 

「---…姉様が心配して、ラビットハウスを飛び出す前に帰らないと」

「そうですね」

 

チノとうなづきあい、僕はラビットハウスから徒歩50分程度の所にあるスーパーみたいな建物へとチノに連れられて入っていく。

 

 

 

 

ⅰ.

 

「…えーと、モカお姉ちゃんに貰ったメモに書いてあるものは揃ったかな」

 

そう言って、僕は繋いでない方の手に摘んでいるメモへと視線を通す。

因みに、なんで手を繋いでいるのかというと、夕方言えど人が多くてはぐれてはいけないというわけで…深い意味はないのだが、何故か道行く人に《まぁ、仲のいい姉妹ね。どちらがお姉ちゃんなの?》や《よく似てること、初めてのおつかいなのかしらね。微笑ましいわ》、《そこの双子のお嬢さん達、これおじさんからのサービスね》と目的地に向かう前に屋台のお兄さんやお姉さん達につかまり、駄菓子やたい焼きを貰う始末。

 

(そんなに僕とチノお姉ちゃんって似てる…?)

 

よくうちの姉様やココアお姉ちゃんは間違って、声をかけてくるけど、他のお姉ちゃん達やお客さん達は間違えずに呼んでくれるから…あの二人だけが特別だと思っていたのだが、ここまで見知らぬ人に声をかけられるのはそれだけ似ているということなのだろう。

 

(…着ている服は真反対って感じなんだけどな)

 

僕の服装は、姉様が何処からか入手した可愛らしいしろくまさんの顔がプリントアウトされているフード付きのダボダボっとした真っ白なパーカーから僅かに覗くのは、丈の短い花青緑色のショートパンツ。そして、僕の脚を包み込むのは真っ白なニーソックスである。

一方のチノは、長い水色が入った銀髪をポニーテールにして、真っ白なカーディガンに腰のところにアクセントとして大きなリボンが付いているワンピースを着用している。

 

ボーイッシュな服装で固めている僕と女の子らしくキュートな服装で固めているチノ。

明らかに違うのだが…思えば、上に羽織っているパーカーとカーディガンの色が"白"という面は一致しているため、つい双子に見えてしまうのかもしれない。

 

(そもそもうちの姉様、本当にどこからこんな服買ってくるのかな)

 

姉様のアニマルフード好きは今に始まったわけじゃないけど、僕は姉様が何処からか大量のアニマルフードを入手してくるのかが不思議でたまらない。

と、余計なことに思考を割いていると、チノが身を寄せてから僕の手元にあるメモをのぞいてくる。僕はチノに見やすいようにメモを向けると

 

「えっと…無地のシャツと黒いスカートは手に入れましたね。あとは---」

 

---僕の制服の色となる"黄緑"の生地をこの膨大な布の海から探し出すだけなのだが…ひとまず、緑色系統が積み上がられている布地のコーナーに二人で向かう。

 

「この黄緑とかどうですか?」

 

目の前にある黄緑の布を取り出すチノが僕にその布を当てる。それを見て、僕は渋い顔をすると

 

「…んー、もう少し薄い方が好き」

「そうですか、ならこれは」

 

その後もチノに見立ててもらい、気に入った黄緑色を見つけた僕とチノは無事、ラビットハウスに帰った瞬間にそれぞれの姉に抱きつかれたのだった…




ということで、無事おつかいを終えた二人に抱きつく姉達…そして、その姉達を取り押さえていたリゼお姉ちゃんとモカさん、お疲れ様です(礼)
…へ?モカさんは本編に出てなかった?
あはは、いやですね、皆さん〜。モカさんは文字には出ていませんでしたが、ちゃんとそこには居ましたよ(皆さんから視線をそらす私)


さて、話を返させてもらいまして…私がどうしてこの話を書いたのかというと、私がXDと一緒にプレイされて貰っている『きららファンタジア』の方にごうちさの『チノちゃん』と『ココアちゃん』の二人の参戦が決まりまして、嬉しすぎて、テンションがおかしい方に向かう前に文字に残そうと書かせてもらった次第です。
待ちに待った二人の参戦、これは是非ともゲットしたい!!と意気込む中---

---XDで、今日から始まった『絆結ぶ赤き宝石』で登場した『カーバンクル』が可愛いのと…響ちゃんと未来ちゃんのイチャイチャ。そして、さりげなく優しいクリスちゃんにニヤニヤがとまりません!
まだ、イベントをされてない方がいらっしゃると思うので多くは語れませんが…ひびみくの絡みはヤバイとだけ伝えておきます。また、マリアさんも可愛かった…(*´Д`*)

また、今回のイベントで井口さんと高垣さんがラジオで書かれたメモリアが実装されるんですね。
二人が演じられているキャラでのイベントでしたので、まさかと思いましたが…まさかここでくるとは…!?と驚きが隠せませんでした。
二人のメモリア、是非ともMAXまで鍛えたいものです(微笑)

ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
夜風がだんだんと寒くなっていきますが、風邪などひかれないようにお気をつけ下さい、ではでは〜(о´∀`о)


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ご注文は再会ですか?【未来ちゃん誕生日記念】

お久しぶりです(土下座)

今回の話はそのまんまの話です。
なので、未来ちゃんとごちうさのみんなとの絡みを楽しんで見ていただけると嬉しいです。

では、本編をどうぞ!!

※ものの数分で読めるように簡単に書かせてもらいました。読者の皆様が楽しんで読んでもらえれば幸いです。

※※長めです


ちゅるるちゅるる

 

と、のどかな小鳥のさえずりが何処からか聞こえてきて、私は目をゆっくりと開ける。

 

そして、私は目を見開くことになるのだった。

 

(ここってどこなの?)

 

私がいるのは落ち着いた雰囲気が漂う石畳みの家が立ち並んだことによって出来た小道で、そこから前に向くと赤煉瓦が敷き詰められた歩道があり、その先には緩やかに流れている川があり、その上をスイスイとゆったりと進んでいく小舟。

 

明らかに私が住んでいる街ではない光景に辺りをキョロキョロと見渡す。

 

「…どうしよ。ここって並行世界、なのかな…?」

 

しかし、並行世界に繋がる聖遺物や出来事に巻き込まれてしまったという覚えはない。

 

ならここは何処なのだろうか?

 

悶々と並行世界に来てしまった経緯を思い出していると

 

「…未来お姉ちゃん」

 

小さな声で名前を呼ばれた後、ちょんちょんと背中を突かれる。

 

「きゃあ!?」

 

周りが見えなくなるくらいに考えていた時につんつんと背中を突かれたことに飛び退ける勢いで驚愕し、振り返った先に居たのは---

 

「…?」

 

---眠たそうに半開きしている黄緑色の瞳に映る私の目は円を見事までに描いていて、可愛らしい系統に整った顔立ちは不思議そうに首を横にしていて、(くちばし)を閉じているひよこがプリントアウトされたフードを浅く被り、そこからはみ出いる水色が入った銀色の髪の毛は胸元まで垂れ下がっていて、卵のポケットが付いたダブダブのパーカーから覗く手脚は細っそりと肉が付いてないように思えて、今に倒れそうな感じに思える。

 

それらの容姿が該当する人物は私は一人しか知らない。

そう、彼女は私の世界では数ヶ月前に行方不明になったままになっていた暁歌兎ちゃんだった。

 

「…うた、う…ちゃ、…ん?」

 

一人探しに出かけた彼女のお姉ちゃんと共に行方不明になって、もう一年とちょっと。

私達は二人が生きているとは思えなくて、捜索隊も打ち切られて、調ちゃんもセレナちゃんもマリアさんもみんなも二人を失った悲しみを乗り越えて、ここまで生活してきた…なのに、どうして…ここで歌兎ちゃんに…。

 

元気そうな様子の歌兎ちゃんを見ていたら、涙が溢れてきて、歌兎ちゃんが私の涙を見てアタフタしていた。

 

「…み、未来お姉ちゃん?どうして泣いてるの?僕悪いことした?」

「…んん、歌兎ちゃんは悪くないよ。ただ」

 

ただ、元気そうな姿が見れて嬉しい。今まで亡くなってしまったと思っていたから、と言おうとした私の声を遮るのは聞き覚えのある元気一杯の声で。

 

「あっ、歌兎!コラ、知らない人に声をかけちゃ誘拐されま---あれ?未来さんデス」

 

私達の方に掛けてくるその声の主は私の思った通りの人だった。

赤煉瓦を蹴るのは緑色のスニーカーで妹と同じように細っそりとした素足を包むのは薄紫色のニーソックスで、その上を身体のラインを隠すようにダボっとした橙のパーカーから覗くのは緑色の短パンのダメージデニム。

走るたびにバサバサと揺れる明るめの金髪はショートで、妹と話している私を見て、垂れ目がちの黄緑色の瞳は丸くなり、綺麗系統に整った顔立ちを驚きに染めている。そして、何よりも彼女のトレードマークとなっている特徴的な《デス口調》と前髪の左側に大きな✖︎(ばってん)マークがあしらっている髪飾り。

 

歌兎ちゃんがいるということは彼女といることは安易に想像出来るそんな人物、歌兎ちゃんの実姉である暁切歌ちゃん。

 

彼女も私達が探していた人物で。

 

「切歌ちゃんも無事だったんだね…」

 

(本当に良かった…)

 

二人が無事だったこと、そして二人を見つけられたことに安堵して涙が止まらない。

響もみんなにもいい知らせができる。

 

「あわわわ!?未来さんが泣いてるデス!?」

「…どどどどどうしよう!?」

 

わんわんと泣く私の周りをあたふたしていた切歌ちゃんと歌兎ちゃんは私を連れて、お世話になっているというラビットハウスという喫茶店へと案内してくれた。

 

 

 

 

ⅰ.

 

「ただいま」

「…デース」

 

兎がカップを持っている看板が掛かっている喫茶店へと意気揚々とは入っていく二人の後に続く私を見るのは喫茶店にいた白いワイシャツに黒いロングスカートの上に紫色・水色・桃色の黒いフリルが可愛いベストを着用した私や切歌ちゃん、歌兎ちゃんと同じ年頃の女の子たちだった。

 

「遅いぞ、二人共」

「どこで道草うってたんですか」

「…あれ?切歌ちゃん達の後ろにいる人って?」

 

不思議そうな顔をする三人に「ふっふふ」ともったいぶるように笑う切歌ちゃん。

 

「この人はデスね」

 

ニヤリと笑い、私を紹介しようと両手を広げた切歌ちゃんの声を遮るのは歌兎ちゃんである。

 

「…この世界に迷い込む前にお世話になっていた小日向未来お姉ちゃんだよ」

「…デデデース…」

 

バタンと倒れこむのは切歌ちゃんでもったいぶるつもりがあっさりと歌兎ちゃんに紹介されたのがショックだったのか、薄っすらと涙が見える。

そんな切歌ちゃんの様子には目もくれず、歌兎ちゃんは入り口付近で立ち止まったままの私を三人の前まで連れていくと今度は三人の紹介をしてくれた。

 

「…水色の制服を着ている人がこのラビットハウスのマスターのお孫さんであるチノお姉ちゃん」

「香風智乃です。切歌さんと歌兎さんにはいつもお世話になってます」

 

私へとぺこりと頭を下げる水色の制服を着た子はチノちゃんという名前だそう。

会釈したことによってふわりと揺れるのは水色が混ざった銀色の髪の毛には両サイドに✖︎(ばってん)マークがあしらっている髪飾りを付けていて、私をまっすぐ見つめる垂れ目がちな瞳は髪の毛同色。年相応の幼さを残りつつも整った顔立ち。全体的な華奢な身体付きを水色の制服で包み、そして私が目を引いたのは頭の上はちょこんと乗っかっている真っ白な毛玉で---

 

(なんだか…切歌ちゃんと歌兎ちゃんを足して割ったような子だな)

 

---私の視線に気づいたのか、チノちゃんが頭の上に乗っけていた毛玉を抱きかかえると歌兎ちゃんへと差し出す。

 

「アンゴラウサギのティッピーです」

「…もふもふで気持ちいい。未来お姉ちゃんも触ってみて」

「そ、そうなんだ…」

 

チノちゃんから差し出されたアンゴラウサギを私へと差し出す歌兎ちゃんから受け取った私は一回手元にある白い手玉もといアンゴラウサギを見つめ、恐る恐るそのフサフサな毛並みへと両手を沈める。

すると、そのフサフサな毛並みにびっくりした後ともふもふとティッピーを撫でる。

 

「そんなにくしゃくしゃにするでない。擽ったいではないか」

「…へ?」

 

(このウサギ喋った?)

 

目をぱちくりする私にすかざすチノちゃんが有無を言わさぬ勢いで言う。

 

「さっきのは私の腹話術です」

「…チノちゃんの?」

「はい」

「…ん、本当」

 

チノちゃんから横にスライドすると、私の視線の意味を汲み取った歌兎ちゃんがコクリとうなづいていた。

そのあと、ティッピーをチノちゃんに返した後に次は隣にいる紫色の制服を着ているツインテールの子の紹介にうつる。

 

「…紫色の制服の人がリゼお姉ちゃん。絵も料理も上手」

「天々座理世だ。よろしく頼む」

 

紫が入った黒髪をツインテールにして、つり目がちの髪の毛同色の瞳は私を見ていて、淡く微笑む口元も合わせて顔立ちは整っている。紫色の制服が隠れている身体のラインは出るところは出て引っ込んでいるところは引っ込んでいるという同じ女性でも一目見て綺麗と思ってしまうくらいに顔立ちと合わせて整っている。そして、男勝りのような口調と何処か鋭い雰囲気の中に隠れている優しさに。

 

(リゼちゃんは翼さんとクリスを足して割った感じかも)

 

そして、最後は桃色の制服に身を包んだ子の紹介をしてくれるんはずなのだが---

 

「…ピンクの制服の人はココアお姉ちゃん。僕のこっちのお姉ちゃんでパン作りのお師匠さん」

「歌兎のお姉ちゃんはあたしだけデス!!」

 

---歌兎ちゃんのココアちゃんの紹介文の一部に過剰反応を示した切歌ちゃんが銀色のお盆を持ったココアちゃんの肩を強く揺さぶる。

 

「どういうことデスか!ココアさん!!あたしを裏切ったんデスかっ!!」

「きりかぁーちゃーんー、めがーぁーまぁーるよー」

 

強く揺さぶる切歌ちゃんの両手首を掴むココアちゃんは明るめの栗色の髪の左がに桜の髪飾りを付けていて、顔立ちは可愛いと人懐っこい雰囲気が滲み出でいるような感じで、桃色の制服に隠れている身体は年相応な感じに出ているところは出て、引っ込んでいるところは引っ込んでいるって感じだろうか。

 

(この子は響と切歌ちゃんを足して割ったような子かも)

 

人懐っこい雰囲気といい、何処か犬を連想させる仕草も含めて、彼女は二人に似ているような気がする。

 

(それよりも)

 

もうココアちゃんの瞳が渦巻きを作っているのにいまだに揺さぶっている切歌ちゃんの過保護は私の知っている時と同じで苦笑いを浮かべる。

 

「…未来お姉ちゃん、こっち来て」

 

苦笑いを浮かべる私をカウンター席に座らせた歌兎ちゃんが焼いてくれたパンとチノちゃんが入れてくれたカプチーノを飲みながら、私は切歌ちゃんとココアちゃんの喧嘩(?)が終わるのを待った……




ということで、未来ちゃんとごちうさのみんなとの会話でした。
シャロちゃんと千夜ちゃんの紹介は後々に更新します!そちらも楽しみに待っていただけると幸いです。






と、ここから雑談コーナーとなりますが…そこそこ長めとなるので、読んでる最中に眠たくなった時は我慢せずに寝てくださいね。
それでは、そこそこ長めですが…雑談コーナーの始まりです。


今日、11月7日は様々なものがありますが---まず小日向未来ちゃんの誕生日ですね!
未来ちゃん、お誕生日おめでとうございますっ!!!(๑>◡<๑)

誕生日限定メモリア、もうニヤニヤが止まらなかったです(ニヤニヤ)
特に最後のあのシーンが好きなのですが…ネタバレとなるといけないので、気になる方は是非ともメモリア獲得頑張ってください!

と、そのメモリア獲得のミッションが未来ちゃんに因んだ《39》だったのもつい笑みがこぼれましたね。
スタッフの皆さんの未来ちゃん愛が眩しいです(о´∀`о)

また、XD公式サイドに載せてあるスペシャルの四コママンガですが…こちらも可愛かったっ!
あの人をかたどった遊園地で遊ぶ未来ちゃんが幸せそうで…そして、なんだかんだ言いつつ、未来ちゃんに付き合ってあげるクリスちゃんはいい子だと思いました(微笑)



そしてそして、11月7日といえば…《ココアの日》だそうで、ある企業とコラボしたグッズ---私はゲット出来なかったんですが---もあり、本編も本当はココアちゃんと未来ちゃんの会話文で埋め尽くしたかったんですが…私の腕ではこれが精一杯でした(苦笑)

また、私はココアを飲みそびれてしまったんですが…皆さんはココア飲みましたか?

ココアって美味しいですよね〜♪
寒い季節になると、ココア・コーヒー・抹茶ラテ・コンポタージュの四点セットが無いと生きていけない律乃であったりします(笑)



ココアちゃんといえば、今日はご注文はうさぎですか?最新刊と千夜ちゃんソロキャラソン発売日ッ!!だったのですが、私はまだどちらも獲得できてないです(汗)

本屋さんに立ち寄ってみたのですが、置いてなかったですね、最新刊。売り切れていのか、はたまた置き忘れていたのか…恐らく前者だと思うので、もうしばらく経ってから最新刊は買い求めようと思います!

そして、ソロキャラソンといえば、どのCDにも収録されている《わーいわーいトライ!》って曲が私は好きなんですっ!
理由は歌詞の一部である『くるりと一回転』の『いっかいてん』の部分の『か↑』と跳ね上がるところが好きなんです。贔屓とかそんなんじゃなくて、モカさんの『か↑』の伸ばしが美しいのと『かぁ』ってなる所も好きでして…なので、《わーいわーいトライ!》では、みんなの『か↑』の所を全神経集中して聴いているっていうしょうもない話です、すいません(土下座)



しょうもない話で終わってしまいましたが、これで雑談コーナーお終いです。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m


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ご注文はノーパンですか?

断じて、如何わしい内容じゃないデスよ!

本当に如何わしくなんかないんデスよっ!

では、本編をどうぞ!


「…未来お姉ちゃん、どうぞ」

「ありがとう、歌兎ちゃん」

 

私の視界の端で今だに続く切歌ちゃんとココアちゃんの喧嘩が終わるまでにと出された歌兎ちゃん特製の食パンを使ったハニートーストとチノちゃん特製のコーヒーを見る。

綺麗なキツネ色に焼かれたトーストの上にはバニラアイスと蜂蜜がふんだんに使われており、バニラアイスの上にはちょこんとミントが乗っかっている。

本来、ハニートーストは食パン丸々一個を使用して、バターと蜂蜜を沢山かけるといったシンプルな食べ物なのだが、年頃の女の子がそのハニートーストに挑むとなると話が変わってくる。まずは食パン丸々一個という量、そして一番の問題は食パン一個とバターが沢山入っているというカロリー摂取量である。

 

(でも、響なら美味しそうに食べちゃうんだろうな…)

 

ふらわーのお好み焼きや白米をぱくぱくと頬を膨らませながら食べる彼女の事だ。

普通のハニートーストはもちろんのこと、歌兎ちゃんが作ったトーストを使用して作ったものとなるといつもよりも張り切って食べてしまうかもしれない。

 

(…響)

 

確かに行方知らずだった切歌ちゃんと歌兎ちゃんが見つかったのは嬉しい。しかし、わがままを言うと響が居ないのは寂しい。

 

(一緒にハニートースト食べたかったな…)

 

今こうしている時でも隣に座って、美味しそうにぱくぱくとハニートーストを口にいっぱいに含んで、『未来、美味しいね!』と笑う響の姿が目に浮かぶ。

 

「もしかして、コーヒー嫌いでしたか?」

 

おずおずといった感じでカウンターの向こうにいたチノちゃんにそう言われ、私に首を横に振る。

 

「あっ、違うの。ただ…」

「ただ?」

「…未来お姉ちゃん、あーん」

「っ!?」

 

ちょんちょんと肩を突かれ、私は歌兎ちゃんの声がした方に向くと突然放り込まれるハニートースト。

バニラアイスがサクサクのトーストが熱に溶かされて染み込み、トーストを包み込むように優しい甘さを加えてくれている蜂蜜…うまく言えないけど、美味しい。歌兎ちゃんが作ったと言っていたトーストは外はサクサクなのに中はしっとりした舌触りで本当に美味しい。

 

「…どう?」

 

不安げにそう聞いてくる歌兎ちゃんに笑顔で答える。

 

「うん、美味しいよ」

「…良かった。チノお姉ちゃんのも美味しいよ」

「いただきます」

 

歌兎ちゃんは嬉しそうに淡く微笑むと右手に持っていたフォークを私が持ちやすいように置くとチノちゃんが淹れてくれたブルーマウンテンをふぅーふぅーと冷ましつつ飲んでみる。

 

(美味しい!)

 

ハニートースト自体が甘めなので、ブルーマウンテンは苦いのだが…さっぱりとした味なのでしつこくなく、どちらかとなるとしつこい甘さのハニートーストとの相性がいい。

なので、ついつい手が動いてしまう。

フォークで抑えながら、トーストにナイフを入れる。ナイフを動かすたびにサクサクっという音が辺りに響いて、ブルーマウンテンでさっぱりした口内へと蜂蜜の優しい甘さが広がる。

 

「…喜んでもらえたようで良かった」

 

美味しそうに食べる私をみて、嬉しそうな歌兎ちゃんにリゼちゃんの注意が飛ぶ。それはどうやら、歌兎ちゃんが着ているひよこパーカーだそうで

 

「なぁ、歌兎」

「…?なに、リゼお姉ちゃん」

「お前、そのパーカーの下に何か履いてるのか?」

 

(…確かに履いてるのかな?)

 

私の隣に立つ歌兎はダボダボのひよこパーカーは大きすぎるのか、太ももの半分を隠してはいるが…それ以外はニーソックスもレギンスなども履いてないのだ。もし…もし、そのパーカーの下に何も履いてないのでないのでなければ、危険な状態で外を歩いていたということになる。

 

(ま、まさかね。切歌ちゃんがそんなことするとは思えないけど…)

 

だけれども、そんな私の心配が届いたのか、歌兎は暫しキョトンとした後にひよこパーカーの裾を握ると---

 

「…ちゃんと着てるよ、ほら」

 

---なんの躊躇いもなく上へとたくし上げる。

 

 

 

「…へ?」

「…なっ」

「…え?」

「…あっ」

「…デっ」

 

 

 

 

其々が間の抜けた声を漏らした後、辺りは静寂に包まれた------。

 

 

 

 

 

 

 

まさかの口答でなく行動にて返答した歌兎ちゃんの行動に私や質問した本人であるリゼちゃん、チノちゃん達が驚愕で固まる中、私たちの視線は不可抗力でバッチリと歌兎ちゃんのひよこパーカーの下に履いてあった花青緑色の短パンをおさめる。

 

「うううううううた、うたたたたた、歌兎ぅうううううううっっっ!!なななななにに、ににになななに、ししししててててる、デデデデスかぁーー!!!」

 

(凄く切歌ちゃんが動揺してる)

 

身動きが取れない私たちと違い、流石というべきか、誰もよりも早く驚きの硬直から立ち直った切歌ちゃんは顔を林檎のように真っ赤にすると勢いよく歌兎ちゃんがたくし上げているひよこパーカーを引きおろすと赤顔(せきがん)のまま歌兎ちゃんへと説教している。

 

「皆さんがいる前でいきなりパーカーの裾をたくし上げるなんて何を考えてるんデスか、歌兎!!」

「…リゼお姉ちゃんがパーカーの下に何か履いてるのかって聞くから」

 

何処かふてくされたように言う歌兎ちゃんの肩に手を置いた切歌ちゃんは興奮気味にまくし立てる。

 

「聞くからじゃないデス!!ここは店の中でありますが、人の目がある外なんデス!自室とはワケが違うんデスよ!お客様がいきなり入ってしたりしたらどうするデスか!」

「…入ってきても下に履いてるから別に見られても気にしない」

「気にしないと駄目デスっ!!」

「…なんで?」

 

私たちに見られたと言うのに全然気にしてない様子の歌兎ちゃんに切歌ちゃんの説教が熱を増していく。

 

「なんでって恥ずかしいからデスよ!」

「…花青緑の短パン見られるだけだよ?いつも姉様やリゼお姉ちゃん達に見せてるのに、なんで今は駄目なの?一緒じゃないの?」

「歌兎、少しこっちくるデス」

 

そのあと、切歌ちゃんの手によって店の隅に連れていかれた歌兎ちゃんは椅子に座らされ、切歌ちゃんはその歌兎ちゃんの両手を掴んで視線を合わせるように膝を折ると"なんで、人目がある前でパーカーの裾をたくし上げては駄目なのか?"を一生懸命説明していた。

 

そんな二人の様子を見て思うのは、切歌ちゃんもちゃんとお姉ちゃんしてる時もあるんだなぁ…だった。

過保護の場面が強すぎて、彼女のお姉ちゃんらしいところは掠れてしまうが、悪いことは悪いと説明しているところを見るといいお姉ちゃんだとおもう。

しかし、そんなお姉ちゃんの説明に終始首を傾げている歌兎ちゃんも私の印象に残るのだった……




というわけで、人目(未来ちゃん、姉様やチノちゃん達)の前でひよこパーカーをたくし上げた歌兎ちゃんの話でした(笑)
切ちゃんが大慌てになるのも分かりますよね…人目でそんな行動されたら…(大汗)
歌兎ちゃんですが、切ちゃんの必死の説得によって、人目でたくし上げてはいけないことが分かったそうです(笑)








と、ここからはかなり長めの雑談コーナーでして…読み疲れたときは飛ばしてください(礼)


口いっぱいにハニートーストを口に含み、『うまうま』する響ちゃんと切ちゃんがみたいデス。そして、口元を汚す二人をハンカチで拭く未来ちゃんと調ちゃんがみたいんデス(切実)
『なら書けばいいじゃん!』と意気込んでネタを考えていたら何故か、ギアの色の食べ物しか食べたくなくなる聖遺物(そんなのあったらすごいですけど)によって…切ちゃんは緑色の野菜をむしゃむしゃ食べて、調ちゃんはハムをぱくぱくと食べて、マリアさんは白米をぱくぱくと食べて、翼さんは青魚をぱくぱく食べて、歌兎ちゃんはかき氷を食べるって話が浮かびました(笑)
歌兎ちゃんと未来ちゃんはかき氷同盟を組んで、マリアさんとクリスちゃんは二人で日の丸弁当《説明:マリアさんは"白米"、クリスちゃんは"梅干し"から》になったり、切ちゃんと調ちゃんはほうれん草だから二人で一つってことになる《説明:ほうれん草は茹でると根っこのところが鮮やかな"桃"になり、葉っぱは濃い"緑"》って話なんですが…意味わからんですよね、はっきりいって(笑)
ボツネタかなこれは…きゅうりをうまうましてる切ちゃん、リスっぽくて地味に可愛いと思うんですけど…この話を分かりやすく書けるくらいの力がないんですよね…(汗)
気が向いたら書くかもですし、書かないでお蔵入りかもです。


そしてそして、先日から『アニマルギア』が登場しましたねッ!
いやぁーっ、響ちゃんも奏さんもカッコ可愛いッ!
響ちゃんのツインテール可愛いですし、必殺技の暗闇の中赤い目が動くところとか『ヤベェ、カッコいい…』ってなりましたし、奏さんのポニーテール姿が可愛いですし、必殺技の狐火を登場させるところとか『これ…私の好みだ…』ってなりました!

アニマルギアっていいですよね…(微笑)

私が響ちゃんと奏さん以外の奏者のアニマルギアを勝手に考えてみると以下の通りになります。

○切ちゃんは奏さんと一緒で狐。
理由は、切ちゃんと狐耳尻尾って相性いいと思ったからのと、私の趣味です!趣味の方が割合が多いですね(笑)

○調ちゃんはウサギ。
理由は、四コマのバニーガールの『1人だと寂しくて死んじゃう』にズキューンってしたから。

○クリスちゃんは猫。
ツンデレなところとか、シャム猫とか似合いそうだなぁ〜と思ったから。

○マリアさんはアライグマ。
テレビでお世話好きなアライグマが居たので、奏者のみんなの世話をついつい焼いてしまうマリアさんにぴったりかと。

○翼さんはペンギン。
『ファーストペンギン』とは天敵がいるかもしれない海の中に果敢に乗り込んでいくペンギンの事で、そこから転じて、リスクを恐れず初めての事に挑戦していく勇敢な人例えだそうです。なんだか、翼さんの為にある様な言葉のように私は思えたので、ペンギンとなりました。

○未来ちゃんは犬。
未来ちゃんが付けたら、可愛いかなぁ〜と。人当たりもいいですし、犬っぽいと思ったから。

○セレナちゃんはシロクマかウサギ。
どちらも似合いそうですし、シロクマで『がおー』ってやってるのを想像すると萌えたから。

因みに歌兎は九尾狐です。
銀色の毛並みを揺らす九尾ってなんか萌えません!?って…そんな感じで、私の趣味です。


とここまで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
次回は恐らく、金曜日か土日となります!


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ご注文は決闘ですか?

すいません……大変、お待たせ致しました(大汗)
最近色々と忙しく、文が進まず、週の最後の更新となってしまいました(汗)

先に『ユニゾン切ちゃん』ガチャの結果を報告させてもらいますね…………読まれている方でフレンドの方はご存知だと思いますが、結果は爆死でした(滝涙)
結果として、☆5メモリア数枚は限界突破出来ましたし、マリアさんやクリスちゃん、調ちゃんも二回限界突破出来ましたので正直嬉しかったデス(●´ω`●)
でも、なんか酷くないデスか……ガチャの間は☆5奏者は"必愛組"だけは絶対当たらず、他のメンバーだけ当たるんデスよ?(震え声)
私、切ちゃんと響ちゃんに悪いことしたかな………アッ、でもあの話は……と、私のことはこのまでにしまして。

必愛切ちゃんをゲットされた方、おめでとうございます!!!

あの切ちゃん、倒されても一回復活するので欲しかったんですが……仕方ない!!
また、復活ガチャが来た時に当てましょうっ!!

というので、長くガチャ報告をしてしまいすいません……内容をタイトル通りです。では、本編をどうぞ!!


「歌兎成分が足りないデェェェェス!!!!」

 

未来お姉ちゃんもこの世界に慣れてきて、一緒に働き出してからのとある朝のラビットハウス。

未来お姉ちゃんと一緒に階段を下りてみると、開店準備に追われる最中、うちの姉様が体を折った大声を出して駄々をこねていた。

 

その様子に僕と未来お姉ちゃんは苦笑いを浮かべ、リゼお姉ちゃんはやれやれと呆れ顔を浮かべて、ココアお姉ちゃんは何故か分かる分かると首を動かしていた。そして、駄々をこねる姉様の近くの机を拭いていたチノがボソッと注意する。

 

「切歌さん、今はお仕事してください。開店まで時間がないんですよ」

「そんなの関係なんデス!!あたしにはこっちの方が重要な問題なんデス!!」

 

がっついてくる姉様にびっくりしたのか、チノが引き気味に苦渋を提示する。

 

「どう考えても開店の方が重要ですよ……。そもそも切歌さんはずっと歌兎さんといるじゃないですか……何が足りないんです?」

「何もかもが、全てが足りないんデスよぉ。このままお仕事したら、あたし絶対倒れるデスよ、いいんデスか!? だから、チノちゃ----」

「----いいからお仕事してください」

 

これ以上姉様の意見を聞いても仕方ないと判断したらしいチノは机拭きを再開する。

遂に誰も相手してくれないと悟った姉様は遂に両手に持っていたモップを床へと投げ捨てると地団駄を踏みはじめる。

 

「今がいいんデ〜スよ〜、今じゃないと嫌なんデ〜〜スよぉ〜〜」

 

地団駄が次第に大きくなり、次第に姉様は身体を折っていき、最終的には頬を膨らませてながらその場に腰を落としてしまった。

 

(これはもう)

 

"幼子のようだな"と思ってしまったのは僕だけじゃないはずだ。

(げん)に未来お姉ちゃんは元の世界でもこの光景を見飽きられるくらい見てきたから、もう苦笑いを通り越して呆れ顔を浮かべている。

 

(ともかく、姉様を止めないと)

 

"そうしないとお世話になってるラビットハウスに迷惑がかかってしまう"と思って、膝を抱えて涙目になっている姉様に近づこうとしてーー

 

「話は聞かせてもらったわ!」

 

ーー凄く凛々しいキメ顔をして、ラビットハウスの扉を開け放った千夜お姉ちゃんによって、制止させられた。

 

僕の方に右掌を見せて、姉様に近づいた千夜お姉ちゃんに続くように入ってきたのは見知った癖っ毛が多い明るめの金髪をショートにしている少女であって、彼女は店内を見渡して、千夜お姉ちゃんが近づいている先にいるはぶてたように床に膝を抱えて座る姉様を見て、一瞬で状況を把握(はあく)したようだった。

 

「こら千夜!そんな大きな声をあげたら、チノちゃん達にめいわ----あぁ、そういうこと」

 

千夜お姉ちゃんに止められている僕の方をチラッと見て優しく微笑み、ラビットハウスのみんなへと静かに頭を下げている。

流石、姉上様である。姉様の扱いに慣れている。

最近、一緒に暮らしている間に過保護な姉様扱いスキルを不可抗力で習得してしまったらしい。

 

「もういいわよ、歌兎」

 

因みに、姉上様が僕のことを名前呼びし始めたのは、未来お姉ちゃんと顔合わせした時に"あれ? シャロちゃんは歌兎ちゃんを名前で呼ばないんですね"と言われたからで、まだぎこちない気がするのは慣れてないからだろう。

 

「‥‥ん、分かった。姉上様」

 

姉上様に動いていいと言われたので、ぴったり止めていた動きを再開するとチノ達が驚愕(きょうがく)で目をまん丸していた。

 

(あれ? 僕何か変なことしたかな?)

 

小首を傾げる僕に未来お姉ちゃんの呟き声が聞こえる。

 

「……そう言えば、歌兎ちゃんって緒川さんに忍術習ってたものね」

 

(ん? 確かに僕は緒川様に忍術を習っているけれども……それとこれと何か関係があるのだろうか?)

 

「……こういう所が切歌ちゃんと似ているよね」

 

(ん?? ますます、未来お姉ちゃんの呟きにうなづいているお姉ちゃん達が分からない)

 

僕が小首を傾げている中、千夜お姉ちゃんが姉様へと手を差し伸べてから身体を抱き起こすとにっこりは微笑みかける。

 

「切歌ちゃん、これから勝負をしましょう」

「勝負……デス?」

 

こて、と不安げに千夜お姉ちゃんを見上げる姉様に千夜お姉ちゃんは両手を壮大に広がるとその勝負の内容を説明するのであった。

 

「勝負というのは制限時間までに歌兎ちゃんに切歌ちゃんがタッチすることが出来れば、歌兎ちゃんを一日中好きにしていいことにしましょう」

 

(え、え〜〜)

 

どうやら、僕はその勝負にて参加が絶対条件で勝利賞品にも絶対参加らしい。

しかし、それで姉様がラビットハウスのお仕事に精を出してくれるのなら参加することも(いと)わない。

 

(ん〜〜、それに姉様がその勝負を勝って、一日中一緒に居られるのだとしたら……それは僕にとっても嬉しい事だ)

 

あっ、でも姉様の事だから。

朝を起きる時から夜寝るまで僕に抱きついて離れないかもしれない。となると、もしかしたら、僕はその日は抱き枕のような扱いになるのかもしれない。

 

(そ、それは流石に……ね)

 

服を脱がせてもらって着替えさせてもらっている時点で既に手遅れ気がするが、一人でトイレやその他諸々少しずつでもできることを増やしていかないと姉様が用事の時で出掛けている時に何にも出来なくなるし、分からなくなる。

 

(なら、姉様になんとか勝たないと)

 

小さく意気込む僕を見て、この勝負は開催することは決定らしい。

姉様の方を見るといつもの調子が戻った様子で不敵に笑っている。

 

「時間は夕方までね。他に説明はいるかしら?」

「‥‥はい」

「何かしら、歌兎ちゃん?」

 

先を促す千夜お姉ちゃんに僕はラビットハウスに集まっている人からとある条件に合う人を探し出そうと視線を走らせる。

そして、見つけ出すとその人を指差しながら尋ねる。

 

「‥‥逃げきる為の助っ人としてリゼお姉ちゃんを借りてもいいですか?」

 

リゼお姉ちゃんが"私かぁ!? "と驚いているが、リゼお姉ちゃんにしか頼めないことなのだ。

千夜お姉ちゃんは僕に向けていた視線を姉様に向けると小首を傾げる。

それの仕草に姉様は鼻を鳴らす。

 

「リゼさんが相手だろうがなんだろうが、あたしと歌兎の姉妹愛の前には単なるコソ泥に過ぎないのデス!!」

「いやいや待て待て。何故私が怪盗のような立場になっている。私は助っ人であって、泥棒とは----」

「----やはりリゼさんはあたしから歌兎を奪う怪盗でしたか!?」

「お前は少し他人(ひと)の話を聞けぇええええ!!!!」

 

リゼお姉ちゃんが渾身のツッコミを姉様へと炸裂(さくれつ)したところで、始まっても終わっても僕への負担が多い勝負が幕を開けたのだった------。




というわけで、姉様の我儘によってから始まった鬼ごっこですが、どちらに勝利の女神は微笑むのでしょうか?

因みに、リゼちゃんが歌兎ちゃんを守りきった時は"一日中歌兎を好きに出来る券"はリゼちゃんの物になります。(やはり、歌兎への負担が大きい……しかし、あの姉様には歌兎が一番の勝利賞品でしょうからね(笑)

と、話を戻しまして‥…それを知ったリゼちゃんの反応は以下の通りです。
「私には必要ないことじゃないかぁ!?」
確かに、一日中歌兎を好きにしてもいいと言われても、どうしたらいいのか……困りますよね、リゼちゃんの反応はごもっともです。

私がもし、リゼちゃんの立場で歌兎を一日中好きに出来るだとしたら……一緒にパンとか、ホットケーキとか作りたいですね(微笑)
それ以外は一緒に寝るとかかなぁ…(笑)



ここからは雑談コーナーです。
ネタバレは避けつつ、書いていこうと思います。

【アルケミックオーダー】
前半から後半まで感動でした。
サンジェルマンさん、カリオストロさん、プレラーティちゃん三人の絆に感涙(かんるい)ッ!!
響ちゃんのどの世界の人にも手を差し伸べ続ける理由と熱意に感涙ッ!!
カリオストロさんに『おチビちゃん』と言われて、プリプリする切ちゃんに萌え死にそうになったり
あの名言が画面に出た時は一緒に叫んだり
あの人がこの世界線では善人だったり
と、最後の最後まで驚きと感動に包まれた素晴らしいシナリオでした!

また、追加された『永輝ーエィヴィガーブントー』はその名の通り、希望に溢れた明るい曲調に歌詞でしたねっ!
私はまだゲットしてないので……早くゲットしたいものです。

そして、早くフルが聴きたいという気持ちに駆られます。まさか、この三人の新曲を聴けるとは思ってなかったので……シナリオを考えてくださった方には敬意しかありませんッ。


【雪上のクリスマス】
復刻となるこのストーリーは私よりも読者の方の方が詳しいと思います!
何故かというと、私がXDを始めたのは『戦姫海賊団』からなので(微笑)

と、話を戻しまして……もう、このシナリオーー私を萌え死にさせる気ですかッ!?(鼻と口を抑える)
ガチャでは☆5切ちゃんが当たらない、しかしこのシナリオの切ちゃんは普段の数割り増しで可愛すぎるッ!!‥…なんだか、飴と鞭を貰ってる気持ちになります(笑)

しかし、まだストーリーの触りしか触れてないので……まだ、可愛すぎる切ちゃんを堪能できてないんですよね。
そして、今日も忙しくて……可愛すぎる切ちゃんはどうやら、来週にお預けのようです。
ですがですが、用事さえ終わればストーリーを堪能することが……これ頑張るしかないなぁ!!(単純)




そんな雪上のクリスマスでは"サンタさんはいると信じていた切ちゃん"の妹でこの作品の主人公である暁歌兎をここまで更新を送らせてしまったお詫びとして描かせていただきました。
また、前に彼女をお披露目した時はかなり雑に書いてしまい、落胆された読者の方も多いと思うので……それに対してのお詫びも含めています。

シチュエーションは、ラビットハウスでの接客中に呼び止められて、振り返った様子となっております。

では、前振りが長くなりましたが……どうぞ!!



【挿絵表示】



どうだったでしょうか?

接客中に両手に何も持ってないのと、背景が変なのは……私の未熟ゆえです。
また、この歌兎を描かせていただく際に注意されて頂いたのは、凹凸のない身体つき。切ちゃんと似ているところを加えつつ、チノちゃんに似せることでした。
その点が皆さんに伝わっていたら、嬉しいです(●´ω`●)

また、歌兎ちゃんが左側に留めていた髪留めのエピソードは後々『うちの姉様は過保護すぎる』章にて、更新しますので楽しみにしててください。
そして、髪留めに着いている兎の飾りは絵の右上と左下に大きく描いてますので、その飾りが付いているのだなと思っていただけると嬉しいです(笑)



ここからはお知らせとなります。
早ければ今日、遅ければ来週の火曜で更新させていただく総数は50話で一旦この『うちの姉様は過保護すぎる。』の更新を休ませてもらうと思います。
理由は更新出来ずに溜めてある作品の更新もしたいと考えているからです。
また、再開は年初めかその前の週から更新させてもらいます(。-_-。)


では、長くなってしまいましたが……風邪を引かれないようにお身体にお気をつけて、ではでは〜( ´ ▽ ` )ノ”


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ご注文は衝突ですか?【クリスちゃん誕生日記念】

クリスちゃん、誕生日おめでと~~ぉ!!!!

ツンツンしつつもなんだかんだみんなに優しく世話好きなクリスちゃんが私は大好きデス!!

さて、今回の話はそんなクリスちゃんを登場させつつも----大暴れするのは我らが過保護な姉様だと思います(笑)

では、本編をどうぞー!!

※すいません、タイトル間違えてました(大汗)
なので、『うたずきん』から『衝突』へと変わってます。


「はぁっ…はぁっ…なんだだよ!あいつ!!」

 

そう悪態をつきながら、路地を駆け抜けるのは僕をお姫様抱っこするリゼお姉ちゃんである。

 

「隙ありデス!リゼさん!!」

「って、あぶなっ!?」

 

上から降ってきた姉様の指先が僕に触れそうになり、クルッと回り自分の身体を盾にすることで回避したリゼお姉ちゃんにタイルに片足をつけて立ち上がった姉様が不敵に笑う。

 

「リゼさん、なかなかやるデスね」

「歌兎を時間まで守るって約束したからな。そう簡単に切歌に歌兎触れさせるわけにはいかないからな」

 

リゼお姉ちゃんも挑発とばかり不敵に姉様へと笑いかける。

その笑顔が、そのセリフが、ギュッと抱きしめられて感じるリゼお姉ちゃんの体温についドキドキしてしまう。

 

「‥‥リゼお姉ちゃん」

 

リゼお姉ちゃんを見上げ、惚ける僕を見て、唇を噛みしめる姉様は悔しそうに地団駄を踏むとビシッとリゼお姉ちゃんを指差す。

その時の顔は今にも泣き出しそうな、それでいて湧き上がってくる他の気持ちにも翻弄されているような、なんともいえない顔をしていた。

 

「なっ、なななな……ぐぅうううぅ〜〜ぅ……。もういいデス!リゼさんの事なんか大っ嫌いになったデス!!あたしから歌兎を攫ったばかりか、歌兎の心すら攫おうするリゼさんなんか大っ嫌いデス!!この悪魔ッ!怪盗ッ!コソ泥ッ!!」

「だからなんでそうなる!?」

 

リゼお姉ちゃんの悲鳴じみたツッコミからまた再開する千夜お姉ちゃんの『よーい、スタート』というなんとも間の抜けた合図から始まったこの【歌兎ちゃんにわんつーたっち】という名の逃走劇は、果敢に攻めてくる姉様に勝敗が傾いているように思えた。

 

(それにさっきの挑発から攻めもやけっぱちになっているような気するし)

 

このままでは姉様に触られるのも時間の問題と考えた僕はリゼお姉ちゃんへとお願いごとをする。

 

「リゼお姉ちゃん、そっちの角を右へお願い」

「分かった」

 

リゼお姉ちゃんが方向転換し、レンガの家とレンガの家に挟まれて作られた小道へと足を踏み入れるのを見届けた僕はごそごそとポケットを探る。

 

「姉様、ごめんなさい」

 

と、姉様に詫びを入れてから僕は勢いよく"ソレ"を地面に転がせた。

そして、ソレを勢いよく踏みしめてしまった姉様はバランスを崩して尻餅をついてしまう。

 

「ふふ、そんなところに逃げ込んでもあたしには––デデッ!? 何でこんなところにビー玉がぁああ!!?」

 

ドッスーン、と大きな音が聞こえてきたから、きっとかなりの勢いで尻餅をついたのでないだろうか?

そう思い、リゼお姉ちゃんの左肩越しに後ろを見てみるとーー

 

「ふふふ……フフフフ……歌兎ってば、お茶目ちゃんデスね……こんなところにビー玉なんて投げ捨てるなんて……そんなに、そんなにもリゼさんがいいんデスか? あたしという姉が居ながら……もう手加減しないのデスよ……」

 

ーーそこには、ゆら〜りゆら〜りと不自然な起き方をして、光が灯ってない淀んだ黄緑色の瞳は笑ってないのに、桜色の口元は笑っているという不気味かつ底冷えする笑い方をしている姉様がいた。

 

(怖いコワイこわいッ!追いかけてくる姉様の顔がマジすぎて怖い!!)

 

「歌兎、リゼさんッ!!」

 

何処かのマラソンランナーのように背筋を伸ばし、両手を振りながらも迫ってくる姉様の顔は真顔ときた。これが怖い以外のなんだというのだろう。

リゼお姉ちゃんも後ろを見てから怯え出した僕を見て、チラッと後ろを見た瞬間、逃げるスピードが加速した。やはりリゼお姉ちゃんの目から見てもマラソンランナーのように背筋を伸ばし、真顔で迫ってくる姉様は恐怖の対象の何者でもないらしい。

 

少しでも姉様の脚を緩ませようとクネクネと小道を通るが、そこは元の世界での出動や特訓で鍛えている姉様にとっては苦でもなんでもない。

どんどん迫ってくる真顔姉様にリゼお姉ちゃんが小さく「ひぃ…」と悲鳴を言った時だった。

 

ドッシーン、と誰かとぶつかったのはーー。

 

「てて……なんだってんだ」

「すまない。私が前を見てなかったばっかしに……」

「いいや。こんなところにつったてたあたしも悪いんだから、気にするな……って、なんでこんなとこ居るんだよ、チビ」

 

そう言って、リゼお姉ちゃんの腕に抱かれている僕を見て目をパチクリさせているのは、薄紫色が入った白銀の髪を赤いシュシュでお下げにして、赤を基調とした服に身を包む少女・クリスお姉ちゃんだった。

 

「‥‥クリスお姉ちゃん?」

 

と、唖然と呟く僕にリゼお姉ちゃんが耳打ちしてくる。

 

「クリスお姉ちゃん? もしかして、この子歌兎の知り合いの子なのか?」

「‥‥うん、元の世界で未来お姉ちゃんと共にお世話になっていたお姉ちゃん」

「そうなのか」

 

未来お姉ちゃんの時もそうだったけれども、こうも突然に知り合いに出会ってしまうと何を話したらいいのか分からなくなる。

未来お姉ちゃんによるとあっちの世界では僕と姉様が行方不明になって結構な時間が経ってしまっているとのこと、故に捜索隊も解散し、自然と僕と姉様は最悪の結果になったというのが大師匠様が出した決断だったとの事。

その決断に多くのお姉ちゃん達が、ねぇや達が、S.O.N.G.のスタッフの皆様が心痛めたのだろうか。それは僕では想像もできない。

だからこそ、目の前で複雑な感情を持て余しているクリスお姉ちゃんには叱られてもいいと思っている。

 

「歌兎、ギューーッ、デス」

 

クリスお姉ちゃんの重たかった口が開き、何か言われると思い、目を瞑る僕は突然横からかっさられるように奪われると鼻腔を擽ぐるのはいつも嗅いでいる匂いだった。

それにびっくりして、目を開けるとデレデレと頬を緩ませる姉様の顔がすぐ近くにあった。

 

「‥‥へ?」

「えへへへ……やっとリゼ泥棒から歌兎を取り戻してみせたデスよ。あぁーっ、数時間ぶりの歌兎デス!!スリスリスリスリ」

「‥‥ちょっ、姉様っ。くすぐったから……って、そんなところ触っちゃやだよっ」

「いいじゃないデスか、姉妹なんデスから」

 

僕の頬へと自分の頬をくっつけ、ウリウリウリッと擦り付ける姉様の行動がくすぐったく、離れようとする僕を姉様は離してくれないどころか、変なところまで触れてくるし、撫でてくる。

 

(姉様…っ、そこはーー)

 

「ーーいい加減にしやがれ、この過保護ッ!!いつも言ってるだろ、そういうのは家でやれって!!」

 

そう言って、姉様から僕を剥ぎはがしてくれたクリスお姉ちゃんを見て、やっと姉様はクリスお姉ちゃんの存在に気づいたらしく、キョトンとした様子でクリスお姉ちゃんを見ていた––––––。




クリスちゃんの口調、優しくなっちゃったかも(笑)
っていうか、クリスちゃんの出番少なかったですね……これはあかんな(汗)
次回はバァ〜ンと活躍してもらいましょう!!(笑)

そして、勝利の女神は姉様に微笑んでしまったらしいです。
これで歌兎の抱き枕生活は確定ですね(苦笑)

しかし、リゼちゃんとの絡みも書きたかったんですけどね……仕方ない、ここはルート式にして『姉様Winバージョン』『リゼちゃんWinバージョン』を書くとしましょう!
しかし、一旦は参戦したクリスちゃんとの絡みを書きたいので……リゼちゃんWinバージョンはもう少しだけお待ちを(礼)



また、ここから先は予告と題した私なりの目標でして……12月31日に【繋がる陽陰の太陽】の第2話の更新、1月1日に第3話の更新と新年を記念した着物の姿の歌兎を後書きにて掲載出来ればと思います。
なので、それまで挿絵となる歌兎を描いたり、第2話と第3話を書き進めるのに時間を取られて、更新出来ないかもです(笑)

繋がる陽陰の太陽の第2話と第3話は色んな意味で衝撃的なものとなる予定ですので、楽しみにしててくださいッ!




さて、最後にここ最近の私のガチャですが……クリスマスセレナちゃん。限定解除切ちゃん(技属性と体属性)を其々のガチャ、10回目でゲット出来たのまでは良かったのですが……今行われている新必殺技バージョン・イグナイト切ちゃんはからっきしダメでして…(涙)
最近、切ちゃんのガチャの飴と鞭の落差が激しくて、泣きそう……


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ご注文は遠出ですか?【切ちゃんWinルート①】

大変遅くなりましたがーー巫女ギア切ちゃんの上限解放を手伝ってくださったフレンドの方、救援してくださった方本当にありがとうございますッ!!(土下座)

この切ちゃんは是が非でもレベル70にしてあげたかったので…ほんと嬉しかったです…。


改めて、救援ありがとうございました!


そして、ほんの些細な物なのですが…お礼として、歌兎のミニキャラを描いてみました。
テーマはプレイヤーアイコン風の【毛布だるま】と【九尾狐】です。



【挿絵表示】



どちらもイマイチな出来となってしまった…(大汗)
ミニキャラって難しい……まだまだ精進あるのみですね…(微笑)

其々の注目してほしいポイントは【毛布だるま】は歌兎の鼻水を吸い込もうとしている顔と色とりどりの毛布ですね。実はこの毛布の色…読者の皆さんにも私にも馴染みのものから色を塗っているんですよ(微笑)
きっと皆さんならピンと来るはずです…あと、毛布の色分けの意味も分かってくるかも…あっ、でも一つだけ色分けでわからないものがあるかもですね(微笑)

続けて、【九尾狐】は歌兎の表情と髪型、そして服装です。
表情は泣きそう感じみえますが…本当は上目遣いに服装と九尾狐の耳と尻尾が似合っているのか、と皆さんに聞いているんですよ、歌兎が(微笑)
なので、九尾狐歌兎に服装の感想などを言ってやってください(笑)
続けまして、髪型は分かりにくいのですが…ポニーテールにしてあります。理由は九尾狐耳にポニーテールって似合いそうという私の趣味ですね(笑)
服装は未来ちゃんが加入する際に着ていたダボダボのひよこパーカーです。『ご注文はノーパンですか?』ではバッチリ下を履かせてもらっていた歌兎ですが……今回に限って、姉様のうっかり(短パンの履かせ忘れ)が発動したらしく、そのパーカーの下はーーーーとなっているわけですね(笑)


そして、最後に何故私がそこまでしてこの巫女切ちゃんをレベル70にしたかったのかと申しますと…この切ちゃんの必殺技【圧殺・覇iンRい火】は本作の主人公・暁 歌兎(メインストーリー)の技に似ている…そう私が想像していたものだったんですよ(微笑)
メインストーリーの彼女のメインアームは大槌ですからね(笑)

なので、私には……あくまでも。あくまでも、私個人としての視点でいうと……まるで作品の枠を超えて、歌兎が姉様を助けているように見えたわけなんです(微笑)

そんな姉妹ユニゾン必殺技(私個人の視点)があるこの巫女切ちゃんをレベル70まで上げなくてはッ!!歌兎に顔向け出来ないッ!!!

という具合で、必死にこの巫女切ちゃんのレベルを上げていたというわけです。

やってみてわかったのですが、この上限解放って地味に疲れる…(膝をつく)
しかし、私がフレンドされていただいている方々はフレンド枠を両方レベル70まで上げていらっしゃったり……とキャラクターへの愛、またシンフォギアへの愛がヒシヒシと伝わってきます(微笑)

私もフレンドの皆さんを見習って、もう一人ほど上限解放を……んー、誰にしようかな…(悩)
切ちゃんもいいけど…調ちゃん、クリスちゃんも捨てがたいんですよね……まぁ、ボチボチ上げていこうと思います(微笑)


さて、本編を読む前から長々とすいませんでした…(大汗)

今回の話はクリスちゃんが加入時にリゼちゃんとの勝負…まぁ、姉様が一方的に駄々をこねて、千夜ちゃんが面白半分で作った勝負なんですけど…その勝負に勝った姉様と勝負の勝利品・歌兎の話です。
内容はタイトル通りで…今回は珍しく奏者チームだけの話になるかもです(微笑)


コトンコットン

 

と汽車が線路を走っていく中、大きめの窓から外の景色を見れば、遠ざかっていく‥‥すっかり見慣れた木組みの家と石畳の街のシルエット。

横を見れば、赤や橙、黄色に緑に色づく葉っぱの形が見えれば、掠れて、窓枠の外へと消えていく。

 

そして、窓に映るのは景色だけでなく、もう一つあり、それはーー

 

「えへへ〜〜っ、歌兎〜〜ぅ」

 

ーー窓の外を見つめる僕の右頬へとスリスリと自身の左頬を擦り付ける癖っ毛が多い明るい金髪のショート、垂れ目がちの黄緑色の瞳、ゆるゆるな頬に可愛らしくも美しい顔立ちが残念な方に緩みに緩みきっている少女・暁 切歌‥‥僕と血が繋がった実の姉であり、その過保護さは凄まじく、一度暴走モードに入ってしまうと誰も彼女を止められない。

 

「ーー」

 

そんな姉様と膝の上に座る僕のやりとりをにこにこと穏やかな笑顔を浮かべて見つめるのは……ショートヘアの黒髪を白い大きなリボンでくくり、大きな水色の瞳に穏やか笑みと相まって柔らかい物腰はまさに大和撫子といえるだろうその少女の名前は小日向 未来お姉ちゃん。

 

「ーー」

 

姉様と僕、未来お姉ちゃんの目の前の席にドカンと座り、脚を組んで時折僕と姉様のやりとりを見て、疲れたように頭を抱えるのは……薄紫色の銀髪をお下げにして赤いシュシュで結び、髪と同色の少しつり目がちの瞳を不機嫌そうに細める少女の名前は雪音 クリスお姉ちゃん。

 

未来お姉ちゃんとクリスお姉ちゃんはこの世界に迷い込む前に知り合い、苦楽を共にしたかけがえのない仲間……ううん、家族のようなものだと僕は思っている。

 

そんなお姉ちゃん達と僕、そして姉様が何故か汽車に揺られているのか?

その答えを知るには数時間前まで時を巻き戻されねばならない。

のだが、その前にリゼお姉ちゃんとの勝負の結果と僕はどちらの手に渡ったのかを明確にしないといけないだろう。まず、勝負の勝ち負けは上の文章を見ての通りで姉様が勝ち、リゼお姉ちゃんが負けてしまったというわけだ。なので、その勝負の賞品として絶対参加だった《僕を一日中好きに出来る券》は必然的に勝った姉様の手に渡ったというわけだ。

そして、姉様はその券を欲張りなことに翌日に使うことにしたらしく……その日、姉上様の家に姉様と共に泊まっていた僕を寝る前から起きてからも抱き締め続け、姉上様が作ってくれた朝ご飯の時も僕を後ろから抱きしめ、僕の頬をスリスリしながら、朝ご飯を食べさせてくれるわけでもなくイチャつくのみだったので……姉上様の観念の尾が切れてしまったというわけだ。

パクパク食べていた茶碗を卓袱台(ちゃぶたい)へと叩きつけ、僕と姉様を指差すと

 

『切歌、歌兎。私、メロンパンが食べたいわ』

 

静かにそう言う姉上様の水色の瞳を見つめ返す僕達に姉上様は静かも怒りを含んだ声音ではっきりとこう仰せになったのだ。

 

『今日はココアの実家までいって、メロンパンを買ってきなさい。分かったわね?』

 

その有無を言わさない口調に僕と姉様は顔を見合わせた後にコクリと頷いたのだった。

そして、姉様に服を着せてもらい、久しぶりに会うモカお姉ちゃんに出会えるのを密かに楽しみにしつつ、姉様に手を引かれながら、汽車の乗り場まで歩いている時に未来お姉ちゃんとクリスお姉ちゃんに出会い、二人はモカお姉ちゃんに出会ったことがないとのことで……二人も僕達と共にココアお姉ちゃんの実家まで向かう事になったということだ。

 

 

そして、時を戻して今現在。

 

僕は姉様の膝の上に座り、頬を常にスリスリされ、ナデリナデリと服越しに身体や頭を撫でられながら、汽車に揺られながら……ボゥーと外の景色を見つめている。

 

その時に背後から呼びかける甘い声に僕は後ろへと振り返る。

 

「歌兎っ、歌兎っ」

「‥‥なに? 姉様」

「えへへ〜、呼んでみただけデス」

「‥‥そう?」

 

小首を傾げる僕に心底嬉しそうに上機嫌な満面の笑みを浮かべる姉様、まるで仔犬のしっぽのように姉様の気持ちを表しているぱたぱたと動く脚がソファに当たる度に、未来お姉ちゃんの注意が飛ぶ。

 

「切歌ちゃん、あまり物音立てちゃあダメだよ。周りの人には寝ている人もいるからね」

「あ、あう……。ごめんなさいデス……」

 

未来お姉ちゃんに注意され、しゅーんと下がった脚を見て呆れたようなため息をつくクリスお姉ちゃん。

 

「はぁ……、あとそのイチャイチャもどうにかしろよな」

「ふぇ? なんでデス?」

「なんでデスって……そりゃあ、その……」

「クリスは目のやり場に困るっていいたいんだよね」

「なっ、ばっ……馬鹿ってんじゃねぇーーッ!!」

「クリスも大きな声出しちゃあダメだって」

「くっ……これはお前が変なことをーー」

「ーーさぁ、歌兎。今度はお姉ちゃんの方を向いてください」

「‥‥ん」

 

姉様のそう言われ、一旦太ももから降りると姉様の方を向き、抱き上げられる。

 

「んぅーーっ、歌兎の体温がダイクレクトンに伝わってくるデス。歌兎、もっと顔をお姉ちゃんによく見せてください」

「‥‥ん」

 

なんだか向かい合うように抱っこされているせいか、顔が普通よりも近い……いいや、姉様から距離を縮めていってるのか。

ど、どうしよ……姉様の吐く息が頬に当たるんだけど……。

唇もあと少しでーー

 

「ーーい……いい加減にしやがれぇ!!そういうのは家でやれって言ってるだろぉおおおお!!!!」

「クリス、しぃー、だよ」

「お前はなんで冷静なんだよ!?あの過保護馬鹿をどうにかしないとチビにとって大事なものが無くなりそうだぞ!?」

「そう? このやりとりはいつもの事でしょう」

「お前までボケるな

 

その後、キョトンとする未来お姉ちゃんとその隣でイチャイチャを再開する僕達を見て、"もういいや"と壮大な溜息をつくクリスお姉ちゃん。

その後、三人でモカお姉ちゃん似合いに、ココアのお姉ちゃん実家のパン屋さんまで歩いていったのだった……




というので、次回はモカさんのところで姉上様の好きなメロンパンを買い、未来ちゃんとクリスちゃんを紹介する話デス。

きっとモカさんによって、未来ちゃんとクリスちゃんはもふもふされちゃうんでしょうね(微笑)
また、折角なのでクリスちゃんとリゼちゃんの銃対決とかしたいと思ってます…未来ちゃんは誰とのイベントがいいかなぁ……誰とでも良さそうな気がしますね…(微笑)

それでは、出来れば…今日中にもう一話更新する予定ですので…楽しみにしててくださいね(*´ー`*)


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狂愛 見てしまったそれは衝撃的で《しらうたエピソード》

すいません……(大大汗)

予定していた『きりセレ』はまだ時間が掛かりそうで…金曜日か再来週にはお披露目出来そうです。
それまでどうかお待ちいただければ幸いです。

というわけで、急遽埋め合わせに更新するのは…前にお遊びで書いたものです。
ほぼおふざけで書いたので…余り期待しないで読んでください(礼)

それでは、本編をどうぞ!!

*相変わらずの読みにくさです。


僕、暁歌兎には姉と三人家族がいる。

姉、暁切歌は過保護が度を過ぎるところがあるけど、基本は誰にでも優しく思いやりのある人。そして、僕が心から尊敬し頼りにしている人でもある。

 

そんな姉と肩を並べ、戦場と書いて“いくさば”と読むノイズ討伐に勤しむのが月読調、通称シラねぇと呼ぶその人は姉と同じくらい他の家族よりも側に居て、僕を見守ってくれた人である。

だがしかし、最近そのシラねぇの様子がおかしいのだ。

何がおかしいのかはまだ分からないけど、僕を見守ってくれていた昔のシラねぇと今のシラねぇは明らかに何が違うのだ。

 

無性にお風呂に一緒に入りたがるとか常に僕の隣に居たがるなどといったスキンシップが多くなったというか、ゾクリッと背筋に悪寒が走るような怪しげな視線を送ってくるようになった…とでもいうべきか、その視線を感じるのは主にシラねぇ以外の奏者のお姉ちゃん達と話している時で…シラねぇの姿が見えない時でも感じるので、少し怖く思う。

 

でも、僕といる時は違うのだ、いつもの厳しくも優しいシラねぇであって、しかし他の奏者のお姉ちゃん達と話していると送られてくるあの怪しげな視線はなんなんのか気になり、シラねぇがお風呂に入っている間にシラねぇの部屋を覗いてみたら…そこには僕の想像を遥かに超えるものが並べられてあった。

 

 

所変わって、僕の部屋。

ベッドに腰掛ける僕と違い、呼び出された姉様は硬い表情のまま、カーペットへと腰掛けている。

 

「…姉様」

 

僕が名前を呼ぶとビクッとして、硬い表情のまま乾いた笑い声をあげる姉様。

 

「そ、そんなに顔をおこりんこファイヤーしてどうしたんデスか?歌兎。可愛い顔が台無しデスよ」

「姉様」

「そ、それともお腹がへりんこファイヤーだからそんなにおっかない顔をしてるのデスか?ダメデスよ、お昼ご飯はしっかり食べなくちゃ。歌兎はあたしたちの中でも一番、小さくて小柄なんデスから」

「ネぇ〜エぇ〜サぁ〜マぁ〜?」

 

僕の知りたい情報から興味を逸らそうとする姉様に僕は今まで浮かべた事ないような表情を浮かべる。

それをみた姉様は硬い表情を瞬時に青ざめさせ、小さく悲鳴をあげる。

 

「ひぃいい!?わ、分かったのデス。あたしの知ってること全部話すデスから…その目はやめて欲しいデス…」

 

弱々しくそう言う姉様に免じて、表情をいつものような眠たそうな表情に戻した僕に姉様は安堵の吐息を漏らすと訪ねてくる。

 

「……」

「えっと、歌兎はまず何から聞きたいのデス?」

「…姉様はいつからシラねぇが僕に好意を持っていたことに気づいていたの?」

 

そう、僕が覗き見てしまったシラねぇの部屋の壁には所狭しに僕を隠し撮りしたと思われる写真が何故かハート型に飾られ…もうこれだけでも僕には衝撃的だったのだが、勉強机の上に丁寧に置かれた"ペットボトルの飲み口だけ"切り取られ、ネックレス状に繋がれた不思議なアクセサリー…しかし、僕はそのアクセサリーから視線を横に晒して、背筋を凍らせることになる。

何故なら、昨日僕が飲んで、確かにゴミ箱へと捨てたはずの梨果汁が入った炭酸ジュースのペットボトルが置かれていたのだから…。その他にも、これから飲み口だけ切り取るのであろうペットボトルのメーカーは何故か僕が飲んだものばかり…つまり、それが意味するのは---

 

---あのペットボトルの飲み口だけネックレスは…僕が口を付けた飲み口(・・・・・・・・・)だけで出来ている…?

 

そう結論づいてしまってからは、シラねぇと顔を合わせるのも気まずくなり、真相を知っているであろう姉様を呼び出したと言うわけだ。

 

「F.I.S…デス」

 

そ、そんな前から?シラねぇは僕に好意を寄せてたの…?

ということは、あの謎のペットボトル飲み口だけネックレスはその頃から既に作り始めていた、と?

思わず、背筋に悪寒が走る。

僕はそんないつ愛情が爆発してもおかしくない人の前で無邪気に振舞ってしまっていたのだろうか。今思い返せば、シラねぇに抱きついたりも一緒にお風呂に入ったりもしてた気がする…だって、僕の前では普段のシラねぇだったから!なのに…。

 

だんだん顔が曇っていく僕を見て、姉様は何を勘違いしたのか、わたわたと両手を振りながらまくしたてる。

 

「あ、あたしが検索したんじゃないんデスよ!?調から言っていたのデス、「切ちゃん…私、歌兎が好きみたい」って」

「…そう言われ、姉様はどうしたの?」

「その頃はまだ歌兎の病状も良くなかったデスし、響さんっていうトンデモとの戦闘も控えてたので…気持ちがてんやわんやだったのデス。デスから、その場の勢いで、調の好きにするといいデスよ…って…」

「……。はぁ…」

 

姉様の僕の事を何も考えてないその場しのぎの答えに溜息しか出ない。

いつもの過保護をそう言う時こそ出して欲しかった。

 

「そのマジもんのため息はお姉ちゃんの胸をえぐるデスよ…歌兎ぅ…」

 

呆れたように溜息をつく僕に姉様は垂れ目な黄緑色の瞳を潤ませる。

ウルウルと表面が揺れていることから、マジ泣きらしい。

 

「…姉様が悪い。僕だって姉様にこんな態度を取るのは心が痛いんだよ?でも、姉様が真実を隠そうするからこうなる事で…」

「でも、調が気持ちをオープンにし始めたのは先週からなのデス。それまでは歌兎に嫌われたくないからって、そういう事は隠れてしていたのデス。デスから、被害は最小限に…………歌兎、もしかして先週、調に聞かれたのデスか?私と切ちゃん、どっちが好きかって」

「…ん、聞かれたよ」

 

青ざめる姉様に僕はコクリとうなづく。

 

「もしかして、調に聞かれて答えちゃったんデスか?シラねぇの方が姉様よりも好きだって」

「……ゔっ」

「歌兎!?」

 

姉様ばかりを責めていたけど、やはり一番に迂闊だったのはどうやら僕自身のようだ。

 

「…ねぇ、姉様…僕これからどうなるの…?13歳という若さで大人の階段駆け上っちゃうの?」

「あ、あの調デスよ!そんな事は……、………するデスね。アピールが酷くなってきてるデスし、何よりも最近あたしが歌兎と一緒にいると目が笑ってないことが多くなってきたデスよ」

 

もう完全にそういうフラグが立ってしまってる!というか、姉様にすら容赦無く視線の刃を突きつけるシラねぇって…想像すると怖いけど、シラねぇはつり目だからそういう視線を向けていても綺麗かも…。

あれ…?あ、れ……?

僕、もうシラねぇに篭略(ろうらく)されてる…?攻略済みなの…?あと、同意の上で美味しく僕はシラねぇに頂かれてしまうの…?

 

「歌兎?さっきから顔を赤くさせたり青くさせたりと大丈夫デスか?」

「……っ」

 

(うぅ…あぁああああああん)

 

心配して、僕に近づいてきてくれる姉様に勢いよく抱きつき、そのままわんわんと泣く。

 

「泣かないでください、歌兎。お姉ちゃんがなんとかしてみせるデス!任せてください!!」

「…ほんと?」

 

姉様の胸から顔を外し、心配そうに見上げる僕の頭を撫でて、にんやりと笑う姉様。

 

 

 

そうして、颯爽とシラねぇの部屋へと向かっていった姉様はいつまで経っても帰ってこない。

 

(ね、姉様…大丈夫かな…)

 

心配になり、あの問題となるシラねぇの部屋をゆっくりと開けて中を見るとそこには---一糸纏わぬ姉様がベッドの上に寝転がらせ、際どい黒い下着の上にスケスケの薄桃色のネグリジェを着たシラねぇが右手に持った鞭で姉様を叩いていた。

 

(う…うわぁー……、完全にR-18ものだ。僕が見るべきものではない。だからね、姉様。そんな顔で僕を見ないで)

 

叩かれている姉様は助けるを求める視線を僕へと向けてくるが、僕はそんな姉様から視線をそっと晒し、ドアを閉めようとして…そこで違和感を気付いた。

明るかったはずの隙間が何故か真っ暗になっているのだ…まるで、誰かが立っているような感じに。

恐る恐る晒した視線を共ある場所に戻すと、僕をまっすぐ見つめてくる薄桃色のつり目。

 

(…へ?)

 

パチクリする黄緑色の眠たそうに半開きした瞳をまっすぐ見つめていた薄桃色のつり目はやがて、笑みの形になると可愛らしくも凛々しく思う見知った声…今だけは聞きたくなかった声が聞こえてきて、僕はあまりの恐怖に後ろに尻餅をつく。

 

「歌兎、みぃーつけた♡」

「ひぃ!?」

 

尻餅をつく僕が見たのは、自分の部屋を開け、妖しく微笑むシラねぇの姿で---そのあとは、シラねぇに導かれるままに部屋に連れ込まれ、シラねぇのネグリジェと色違いのものを着せられた僕は姉様の隣に寝転がらさせれ、そんな僕の上に跨るシラねぇ。

 

「ねぇ、歌兎」

 

シラねぇの小さくもほっそりした掌が僕の頬をなぞる。

 

「は、はい…」

「歌兎は言ってくれたよね?私の方が好きだって」

「……い、言いました」

「だよね?なら、今から私がする事も歌兎なら受け入れてくれるよね…?だって、私たち---」

 

頬をなぞっていた指先が段々と下へとざかっていき、ぎゅっと目を瞑る僕の耳元で囁かれるシラねぇの声音は今まで聞いたものの中で一番甘やかで妖艶だった。

 

「---相思相愛だもんね」

 

その後、僕がシラねぇに美味しく頂かれ、姉様もその毒牙にかかってしまったのは想像するのも容易いだろう。




というわけで、『きりしら』でなく『しらうた』でしたが…どうだったでしょうか?

少しでもヤンでる調ちゃんにゾクッとしていただけたならば幸いです。



また、今回の夕方ごろ…10連をした際に、遂に…遂にッ!!
ハロウィン切ちゃんが……キタぁああああああああああああーーーーーっ!!!!!

もう、嬉しすぎて…感無量ですし、感涙が止まらんですよ…(ポロポロ)

これもハロウィン切ちゃんが来てくれるようにと連続更新を願掛けにしたからでしょうか…。

とにかく、嬉しい!育てたい!!

ということで、明日は更新お休みします。
また、このヤン調ちゃんと歌兎の話が気に入った方がいらっしゃるなら続きも書こうかなぁ…と思ってます。しかし、ヤンデレはまだまだ勉強中ですので…ゾクってするシーンは書けないと思いますが(笑)

夜が寒くなりましたが、皆様体調にお気をつけて…ここまでお付き合いありがとうございました!


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縛って囁いて愛されたい。《きりうたエピソード》

禁断の愛に目覚め、開けてはいけない扉を開け放ってしまった切ちゃんの話デス。

前回と引き続き、この話も私の単なる趣味であります。なので、見たくない人は回れ右か高速スライドをオススメ致します。
ですが、狂った切ちゃんが見たいッ!又は、読みたいッ!ヤンデレ好きッ!危ない人が好きッ!という方は伝い文章で御座いますが、読んでいただけると嬉しいですっ!

さて、ここから先は狂った切ちゃんが現れます。そして、この作品の主人公・歌兎が酷い目にあいます。
それでも…それでもいいという方、もう止めはしません!

この先に進むといいデスよ!(なんで上から目線なのだろう私は…)

という事で…タイトル的にもアレですが、『縛って囁いて愛されたい。』開演デース!!


※本編は3話構成で、1・2話は切ちゃんの視点の話でして、3話は歌兎の話となってます。
また、この話は初の試みをしてみた話ですので…そういう面も含めて、感想を頂けると嬉しいです(土下座)


一.

 

(あたしは病気なんデス。妹にこんな感情を抱いちゃうなんて病気に違いないんデス)

 

心の奥深くから『好き。歌兎が好き』と囁きかけてくるもう一人あたしの声に無理やり蓋をして、《病気なんだ》と思い込むように自己暗示をかけてから、色んな意味で最愛の妹の自室へと一応ノックしてから立ち入る。

 

「…すぅ…すぅ……」

 

落ち着いた色で統一されている妹・歌兎の部屋はほとんど家具が置かれてない…のだが、以前に比べるとまだ人間味が溢れる部屋になったと思う。

歌兎自身が時に身を任せすぎているという特殊な性格からか、物欲があまりなく、あたしやマリア達が世話を焼いてあげて、買い揃えた勉強机や本棚はきっと何と無く置いているのだろう、この間取り図は。

 

(まぁ、歌兎らしいといえばらしいデス)

 

因みに、その間取り図は入って真っ正面に素っ気なく鎮座されているシングルベットの頭側にあたしとマリアが送った本や絵本が丁寧に整列してある本棚が並べて二つあり、ベットの脚側の右端には綺麗に整理整頓された勉強机、左端にはあたしがいつも下着や服を出し入れしているタンスがある。

 

「すぅ…すぅ…すぅ……」

 

あたしが入ってきたというのに、いまだに気持ち良さげに眠りこける歌兎は暑かったのか、毛布を蹴飛ばしており、パジャマも毛布につられて捲り上がってしまったようでお臍が見えてしまっている。

響さんと司令の二人に鍛え上げれ、ただ細いだけでなくなった適度に引き締まったお臍が歌兎が寝息を漏らすたびに僅かに凹み、空気を吸い込むたびに膨れ上がる。

 

「…っ」

 

ごくり、と生唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえてくる。

『実妹のお臍になに興奮してるデスか!?こんなのただの変態デスッ!!』と喚くあたしも居れば、『もっと近くで見つめていたいデス』『上下するお臍に走る縦縞を舐めたいデス』と私欲に忠実なあたしも居る。

そして、心のあたし達が激論している中、あたしがとった行動というのは---

 

「すぅ…っ、んっ…っ」

 

---上下するお臍に走る縦縞を指でなぞる、だった。

 

つぅー、と右中指で触れた歌兎の肌はシルクのように滑らかだった。確かに、日頃からお世話という名目で歌兎の肌や身体を触っている。しかし、今回のように歌兎の意識がはっきりしてない…無防備という状況で触れた事は歌兎を意識してしまってからは無かったため、ついドギマギしてしまう。

 

(…無防備な時に触れてるって思うと胸がドキドキするデス)

 

病気だと自己暗示をかけていたというのに、あっさりと解けてしまったあたしは続けて無意識で視界に収めたのは、寝息を漏らし、時折むにゃむにゃと緩ませる桜色の唇で。

 

「…すぅ…すぅ…っ、むにゃ…」

 

カーテンからもれている朝日に照らされて光る歌兎の桜色の唇は艶っぽく…あたしはそのどこか色っぽい唇に引き寄せられるように、ギィ……とベッドを軋ませて、両手を歌兎の寝顔を跨ぐように付くとゆっくりとあたしの唇が歌兎のへと近づいていく。

 

熱に侵されたようにぼやける視界の中でも艶っぽい歌兎の唇だけはハッキリと見えて…もうお互いの吐く息が頬にかかっている。

 

(こんな近くに歌兎の顔が…っ)

 

もう3センチ…きっとこの線を超えてしまったならば、あたしはもう戻れないだろう。

それでも…そうだとしてもっ、あたしは歌兎と------。

 

「…んぅっ…、ねえ、さ…ま?」

 

1センチのところで唇が触れ合うというところでぼやぁとまだ眠たそうに半開きされる黄緑の瞳と至近距離で見つめ返す少し垂れ目の黄緑の瞳。

パチクリと瞬きを繰り返すあたしの目をただ黙ってみつめる歌兎…そして、あたしは放心状態から立ち直ると、勢いよく飛び退ける。

 

「デデデッ!?」

 

飛び退いたあたしは秘めた想いを気付かれたのではないかと不安になり顔を青ざめさせ、続けて無自覚であんな事をしでかそうとしていたあたし自身に怒りやら羞恥心やらが溢れ出て、顔が真っ赤になる。

そんなあたしを暫し不思議そうに見つめる歌兎はんーっ、と大きく背伸びするとポンポンとあたしの肩を叩く。

 

「…姉様、具合悪いの?顔赤いよ」

 

振り返るあたしに心配そうに声を掛けてくる歌兎。そんな歌兎にあたしは首を横に振るといつものように答える。

 

「心配しなくても大丈夫デスよ、歌兎。歌兎がなかなか起きないからイタズラしようと思っただけで」

「…そう、なの?姉様のイタズラか…どんなだろう」

 

その後、歌兎の着替えをいつものように手伝い、あたしは調と一緒に学校に行き、その夜に改めて歌兎への想いを再認識してしまったあたしにとっては衝撃的な出来事が待っていた。

 

 

 

 

 

二.

 

あたしの部屋へと心なしが緊張した様子で足を踏み入れてきた歌兎はあたしの隣へと腰を下ろすとソレをボソッと呟いた。

 

「歌兎…さっきなんていったんデス……?」

 

心なしが震える声でもう一度尋ねるあたしに歌兎ははっきりとソレを口にした。

きっと聞き間違いだ。歌兎に限ってそんな事は。だって、歌兎が好きなのはあたしで間違いないのだから。

でも、そんな想いとは裏腹に歌兎がハッキリとあたしの目を見て言ってきた愛の告白(ソレ)はあたしの深いところへと泥水のように流れ込んでくる。

 

僕、好きな人出来たんだ。

 

照れるようにそう言う歌兎。

その幸せそうな顔に何の感情も浮かばなくなる、あたしの中にあるのはただ、裏切れたという真っ黒な感情と好きな人が出来た事を姉として祝ってあげたいという真っ白な感情だった。

 

真っ黒と真っ白は混ざり合わないままに、歌兎は話し続ける。自分の想い人の事を、ほんのりと頬を赤で染めて。

 

そんな歌兎を横目で見るあたしはきっと驚くほど冷めた目をしていたのだと思う。

 

歌兎の口から想い人の名前が漏れる度に、混ざり合わないままであった真っ黒と真っ白は真っ黒が真っ白を飲み込んでいき…------そして、あたしの心の中は泥水のようにドロドロな真っ黒い水で満たされたのだった。

 

そして、思う。

 

なんで、歌兎はあたしが…あたしがッ、こんなにも想っているというのに、どこぞの骨ともわからない男に現を抜かすのだろう。こんなにも…こんなにもッ、あたしは貴女だけを見ているというのに。

 

あぁ、ワカった。愛の告白(コレ)はあタしへのサプライズなんデスね

 

歌兎はイイ子なんデス。あたしか悲シムことはしないハズ。

それに、歌兎ならあたしのキモちにキヅイテくれてイルんですヨね?きづいテテ、そんナいじワルするんデスよネ?

 

あぁ、そっカ。そウにちガイないンデス。

 

歌兎は想い人(ソイツ)にオドさレテルんデスね?よわミをにぎラレて、そんなココろにもナいこトヲいってルんデスヨね?

 

「…姉様?突然、抱きついてきてどうしたの?」

「歌兎、大好きデス」

 

歌兎を後ろから抱き寄せ、耳元で囁く。

 

「…ふふふ、擽ったいよ、姉様。ん、僕も姉様の事を大好きだよ」

 

擽ったそうに身を捩りながら、あたしの方を振り返って、歌兎は明るい笑顔を向けて、あたしへと好きって言ってくれてる。

 

「…ありがと、姉様。話を聞いてもらって、気持ちが楽になったよ」

 

そう淡く微笑み、あたしの部屋を去っていく歌兎の背中を見つめながら、あたしが思うのは----歌兎の想い人(ソイツ)からどうやって、歌兎を解放するか、だった。

 

ソイツの魔の手が届かないところへと避難させて、運命の赤い糸であたしと歌兎を縛って、もう二度と悪い奴に騙されないようにあたしの愛を永遠に耳元で囁き続ける。

 

だって、歌兎もそレヲのゾンでいるんデスかラ…

 

 

 

 

 

 

 

 

三.

 

「…んぅっ、あれ…?僕…」

 

(なんで、眠っていたんだっけ…?)

と、頭を悩ました後に徐々に思い出したことがあった。

そう。確か、姉様に明日彼に初めて誘われたデートにどんな服を着ていけばいいのか、と相談しようと思って、部屋を訪ねてからの記憶がごっそり無くなっているのだ。

 

きっとその原因を知っているであろう姉様の姿も見当たらない。

立ち上がって探そうにも何かが僕の身体に巻きついて自由を奪っている。

 

(待って…何が僕の身体に巻きついてるの?)

 

視線を胸元へと向ける。そこで浮かび上がるのは何故か薄暗い部屋の中に---僕の肢体へと絡みつくのは、真っ赤な縄だった。

 

待って待って待って、なんで僕赤い縄なんてものに縛られてるの?

何か悪いことした?ううん、してない。

してないのに、なんで姉様は僕にこんな事を…。

 

「…ぐっ、だ…め、かたい…」

 

そう簡単に逃げられないように縛られているのだろう。後ろに回された両手も思うままに動かさないままに…辺りを見渡すと、僕を取り囲むように姉様の誕生日に僕が手作りして作った僕を象ったぬいぐるみ達が僕と同じように縛られた。いいや、縛られているのは同じだけど…縛り方が一体一体違う。

 

それに気づいてしまった瞬間悪寒が背中を掛けた。

 

ここ最近、シラねぇが姉様が自室から出てこないと嘆いていた…学校と訓練以外はずっと自室にこもり続ける姉様と僕の周りを取り囲む、赤い縄で縛り上げられた僕を象ったぬいぐるみ達…それもゆうに30体か50体はあると思う。

そのぬいぐるみ達をこの短時間で縛られるわけがない、中にはよく見ると何度も縛り直した跡があるのもあった。

 

それらを合わせると---まるで、姉様が僕を赤い縄で縛り上げる為に練習したようじゃないか

 

「ひぃいい」

 

もう、異様だった。異様としか思えなかった。

 

この薄暗い空間次第も。きっとこのぬいぐるみ達と僕をお揃いの赤い縄で縛り上げたのであろう姉様も。

 

「あっ、歌兎。起きたんデスね」

「…姉様、これとどういう---」

 

---事なの?とキツく尋ねようとして、言葉を失った。

僕を見つめる姉様の瞳に何の感情も浮かんでないのだ、底なし沼のように澱みどんな光も反射しない黄緑の瞳。

鏡のように反射する姉様の瞳に映る僕は眠たそうに見開いている瞳を開けていて、その表情には驚愕と恐怖で埋め尽くされていた。

 

そんな僕の様子など気にとめてない様子で姉様は僕の頬を撫でると笑いかけてくる。

 

「…ふふ、やっぱり歌兎は後手胸縄縛りがよく似合ってるデス。本当は後頭両手縛りも試したかったんデスけれども、あれは長時間続けるのには腕がだるくなるデスからね」

 

まるで世間話をするかのように、日常の一コマを訪ねるかのように、この異様な光景を言ってのける姉様をまじまじと見つめる。

 

可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しいおかし---…

 

(可笑しいよ、こんなの…)

誰なの、僕の目の前にいるこの人は?本当にあの姉様なの?

 

僕が好きだった姉様はこんな何も宿してない瞳をしてなかったし、こんな不気味な笑みを浮かべなかった。

姉様…元に戻ってよ。

僕の願いは叶う事はなく、僕を取り囲んでいたぬいぐるみ達を脇によけると姉様はベッドへと横たわると僕へと身を寄せてくる。

 

「…やっと二人っきりデスね、歌兎」

 

慈しむように僕を抱き寄せ、愛おしそうに僕の水色がかかった髪の毛へと手櫛を入れ、頬を赤らめて姉様は僕へと呟く。

 

「やっと言えるデス…歌兎好きデス…大好きデスよ…一人の女性として、愛しているデス…」

「…何言ってるの、姉様。僕達は姉妹なんだよ?血が繋がってるんだよ?」

「関係ないデスよ。歌兎とあたしは愛し合ってるんデス、愛し合っている二人の間を誰が踏みにじれるデスか?歌兎があたしを求めて、あたしも歌兎を求めて…それ以外に何がいるんデスか?何もいらないデスよね…?ねぇ、歌兎」

 

澱んだ黄緑の瞳を笑みの形へと変え、僕の髪を梳きながら言う姉様。

そんな絵空事のような事、信じているの?姉様。

 

「…可笑しい、可笑しいよ…姉様…。どうしちゃったの…?…あの人との事も応援してくれるって言ってくれたのに…どうして?なんでなの、姉様ぁ…」

「------」

 

ギュッ…っ、と赤い縄の結び目をワザときつく縛る姉様。僕は手首に食い込み、上の皮がむけ、血を流す手首の染みるような痛みに顔を歪める。

 

「…ぐぅ…ッ」

 

そんな僕のことを見つめるのは、氷のように冷たい目をした姉様で。

 

「まだ、そんな妄言を言うんデスか、歌兎。まだ、脅されているんデスね…?脅されているからそんな心にもないことを…大丈夫デスよ、あたしは分かっているデスから。歌兎が世界一好きなのはあたしデスもんね。そんな歌兎の優しい心を弄んだアイツが許せないデスよ…可哀想に…あたしがすぐに始末してきてあげるデスからね。だから、それまでこの目隠しとヘッドホンをしていてくださいね」

 

そう言って、姉様は歪んだ笑顔のまま、僕に目隠しをして…僕の視界は真っ黒になった。

そして、続けてヘッドホンをつけられるのだが…そこから流れてくるのは『歌兎、好きデス。大好き大好き大好き、愛している愛している愛している』と一定の安定と音量で息継ぎもなく喋り続ける姉様の声で---普段とは全く正反対の暗く湿ったその声をこんな暗闇で聞きづけると思うと気が狂ってきてしまう。

 

「…姉様ッ!お願い、このヘッドホンのを止めて!止めたくはないと」

 

僕の気持ちが通じたのか、右側のヘッドホンが外され、流れ込んでくる姉様の声。

 

「あたしの気持ちを沢山詰め込みましたから…じっくり聞いて、あたしのこともっともっと好きになってほしいんデス」

 

そう照れたように言われ、ヘッドホンを再度耳かけられ----僕は絶望した。

 

待って、姉様。待ってお願い、僕が悪かったから…僕が悪いから、お願い。

 

お願いだから…僕を一人にしないで----

 

それを最後に僕は真っ暗闇の中に閉じ込められ、『好き』『大好き』『愛している』の海へと沈んで行くのだった……




というわけで、禁断の愛に走った上に狂ってしまった切ちゃんの話でした。
感情とか表現とかちゃんと書けたかは不安でしかありませんが、楽しんでもらえたならば嬉しいです!

また、初の試みをついてですが…皆さんもご覧の通りで、文章の色や大きさを変えてみました。
少しでも切ちゃんの狂っていく感じや歌兎の絶望感を表現出来たのであれば、嬉しく思います。


今回の話で使った"縛り"なんですが…ずっと前に電子漫画でそれを題材にした漫画がありまして、それを一時真剣に読んでいたなぁ〜と思い出しまして、今回の話に取り入れさせてもらった次第です。
その電子漫画は今やタイトルも思い出せないのですが…兎に角おもしろかったです!


ということで、ここまで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m


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真似だけじゃ足りない《ひびうたエピソード》

響ちゃんファンの方々本当に申し訳ありません(高速土下座)

何故私が土下座をしているのかというと…それは内容がアレだからデス。えぇ、前回の切ちゃん回もアレでしたが、今回はあのアレとは違う分類なんデスが…もうやばいアレデス。故に、響ちゃんファンの方々には不快な思いをさせてしまうと思います。

と、アレアレばかりでは分からんデスよね…(大汗)

今回のアレは変態な分類の方なんデス…。
時々、目を塞ぎたくなる変態な響ちゃんが現れると思いますが…この世界線の響ちゃんにとって、それは歌兎への愛情なんデス。
だから引かないであげてください。
この世界線の響ちゃんに引いた気持ちは私が受け止めますからっ!
どうか原作の響ちゃんとこの世界線の響ちゃんを引いてあげないでください(礼)

というわけで、ここまでこの先に進むことを引きとめようとしましたが…それでもこの先にある話を読みたいという勇敢な読者さん。

そんなにもこの先にあるアレをみたいのデスか、仕方ないデスね…千円札ならぬ、僭越ながら私が力づくで引き止めされてもらいましょう!

さぁ、何処からでもかかってこいデース!(薙刀ブンブン)

…って、おふさげがすぎましたね(笑)
それでは、今度こそ本編をどーぞ!!

※かなり長めです。ゆったりとご覧ください。


一.

 

最近、僕の下着が盗まれることが多くなった。

特に盗まれる率が多いのは、S.O.N.G.での練習後と師匠に稽古をつけてもらった後の二つの場面が最も多くて、盗まれるものはブラジャーにショーツはもちろんのこと、ごくごく最近では汗拭きタオルに姉様がいつも多めに入れてくれている代えのアニマルパーカー、無地のTシャツまで盗まれる始末。

代えのアニマルパーカーや無地のTシャツは洗っているからまだいいとして、何故僕の汗が染み込んでいる汗拭きタオルやブラジャー、ショーツを盗む必要があるのか?臭うだろうし、幼児体型な僕の物を盗んで何の得が…、そもそも盗んだ人の身体にヒットするとは思えないけど…と考えると共に、ここまで多発してくると流石に気持ち悪い。

 

(早く犯人が見つかるといいけど…)

 

と思い、シャワー室から出て、服を着替えようと僕の着替えが入っている籠を見た姉様の年相応な幼さを残している整った顔立ちが曇り、癖っ毛な明るめの金髪を掻く。

 

「ありゃー、また盗まれてるデスね」

「うん、下着だけじゃなくて練習着まで盗まれるなんて…司令に言った方がいいかな?」

「んー、しかしあんまり大袈裟にしたくないデスからね」

「でもこのままっていうのは良くない」

「デスよな…うーん」

 

姉様の隣に立ち、同じく幼さを残りつつも整った顔立ちを曇らせるのは黒髪をピンクのリボンでツインテールにしている少女・シラねぇである。

並んでいる2人の間から僕の籠を覗いてみるとそこには本来なら姉様がやや乱暴に脱ぎ捨てた僕の練習着や下着が重なっているはずだ。しかし、現実は無機質な光を反射する底が見えてしまっている。

僕が姉様に服を脱がせてもらって、一緒にシャワーを浴びていた時間はトータルで10分か20分程度。果たして、短い時間で僕の籠から盗みとることなんて出来るのだろうか?

 

そんな事を籠の底を見ながら考えているとふと視線を感じる。

身体の隅々を舐め回すように見られている感覚…ねっとりと背筋がゾクっとする嫌な視線。

 

「…っ」

 

キョロキョロと辺りを見渡すが、そこにあるのは普段の風景。早めに上がった僕と姉様、シラねぇと違い、まだシャワーを浴びているのはマリねぇと翼お姉ちゃん、クリスお姉ちゃんに響師匠、未来お姉ちゃんとセレねぇという順番でセレねぇとマリねぇは早く着替えない僕たちが気になるのか早めに切り上げて胸元を隠しながら、僕たちのところへと歩いてくる。

 

「早く着替えないと風邪をひくわよ」

「あっ、マリア。そうしたいのは山が二つなんデスが…」

「もしかして、また歌兎ちゃんの下着が盗まれてしまったんですか?」

「そうなの。今回は練習着まで綺麗に無くなっている」

「そう、困ったわね。切歌。ちゃんと歌兎の着替えは二つ持ってきてるわね?」

「…あっ…はい、ちゃんと持ってきてるデスよ…」

 

(あっ、姉様。顔がショックな感じになってる)

 

渾身のシャレをスルーされてしまったのが恥ずかし悲しかったらしい。頬を赤くしながら、なんかプルプル震えている。

穴があったら、今の姉様は飛び入りたいんだろうな…。

そんな事を思いつつ、プルプル震えている姉様の手を握り、見下ろしてくる姉様に淡く微笑んでいるとまたさっきのねっとりした視線を感じる。

素早く視線が感じた方を見てみるとばっちり重なるまん丸な琥珀色の瞳と眠たそうに半開きされた黄緑色の瞳。

 

(…師匠?)

 

髪の毛をワシワシと洗いながら、チラチラと僕の方を見てくる師匠に戸惑いを隠せない。

もしかして、さっき視線も師匠からだったのだろうか?

ううん、師匠と個人訓練をしてもらっている時には何も感じた事ないし、そもそも師匠に未来お姉ちゃんという人が---

 

「---う?歌兎?」

「…!」

 

姉様の声と顔が間近に迫り、僕は驚きから目を見開く。

 

「どうかしたデスか?」

 

間近にある心配そうに眉をひそめた姉様の顔に僕は首を横に振る。

 

「…ううん、なんでないよ」

「そうデスか。なら、もう少しシャワーを浴びてきていいデスよ」

「…?」

 

なんで?という意味を込めて小首を傾げると途端に言いにくそうに視線を逸らす姉様。

 

「そ、それがデスね…出る時にちゃんと入れたはずの歌兎の盗まれた用の着替えが無くなっていましてね…。今から取りに行かないとデスから…その…デスね…」

 

なるほど。マンションまで取りに行ってる際に僕を全裸でここに置いておくわけにいかないから、シャワーを浴びながら身体を温めつつ待っていて欲しいと…しかし、そうすると姉様の方はどうなるのだろうか?きっと全力疾走で走って帰ってくるんだろうから、また汗をかいてしまうんじゃないだろうか。

そんな僕の不安を感じ取ったのか、姉様が苦笑いを浮かべつつも胸を叩く。

 

「大丈夫デスよ!家でも入るデスから、それに歌兎を1人でこんなところで置いておけないデスからねっ!」

「そう思うならしっかりしてほしい、切ちゃんは肝心なところで天然ドジっ子。私が出る時にちゃんと確認してって言ったのに…」

「うぐ…胸がッ、胸が痛いのデス…ッ」

 

姉様がシラねぇからの"ジィーー"攻撃に胸を押さえていた。

そんな姉様のことを仕方ないな…といった感じで見てから、シラねぇは自分の手元にあるピンク色の手提げ袋の中に手を差し込むとカサコソと中を探ると僕の方へと何かを差し出す。

 

「はいこれ、歌兎にあげる」

 

シラねぇの掌の上にあったのはお古と思える下着で…それとシラねぇの顔を交互に見てから、両手を横に振る。

 

「…いい、いいよ…」

 

断ったのは断じて使用したのが嫌だからってわけじゃない。ただ、シラねぇの下着が1着とはいえ、僕なんかのために無くなると思うとなんか申し訳なくなってしまう。

 

「…僕は凹凸のない身体だし、最悪の場合は分厚めのパーカーをこの上に羽織って、帰れば全裸で歩いているとはバレな---」

「---駄目デス!!!!!」

 

更衣室に反響する姉様の叫び声。

 

「調、ありがとうデス!」

「うん」

 

シラねぇにお礼を言いながら、お古の下着を受け取った姉様は僕の肩に両手を添えると諭すように声をかけてくる。

 

「歌兎…お願いデスから、あまりお姉ちゃんを困らせないでください。全裸パーカーなんてハンカチな格好---」

 

あっ、さっきシラねぇが「切ちゃん、それを言うならハレンチ」って言ってるけど、姉様は僕しか見えてないのかスルーしてる。

 

「---で、歌兎をマンションまで歩かせるなんて出来るわけないじゃないデスかっ!!道歩く人に歌兎のうら若き肌を見せつけるなんてっ!そんなの駄目デス!!」

 

その後も延々と続く過剰な被害妄想を加えた説教に僕は苦笑いを浮かべながら、そんな僕らを取り囲む三人は終いには呆れた顔をしていた。

結局、その後はセレねぇに多めに持ってきていた代えの服を貰い、僕は無事マンションに帰ることが出来たのだった…

 

 

 

 

 

二.

 

そんな更衣室とシャワールームでの出来事があってから一週間後、僕は何故か響師匠に茂みに押し倒されていた。

生い茂るスズキによって周りと隔離されたその小さな空間の中、僕は怯えたように真っ正面を見上げる。

 

「…歌兎ちゃん」

 

逆光によって見えない師匠の顔は恐らく笑みを象っているのだろう。

師匠ならこんな事しないと信じていた、なのに真実は逃げ出さないように万力で地面に押さえつけられている師匠と両手と恋人繋ぎしている僕の両手、下腹部のところに腰を落とされ、師匠の両脚が僕の両脚に絡み…僕はこの異様な空間から逃げられずにいた。

逃げようとは試みているしかし逃げようと暴れれば暴れる程に両手両脚は絡み合い、がっしりとホールドされる。

 

「ーー」

 

安易に奪われた唇はぴったりと重なり合うと、強引に閉じていた口を開けさせられると途端にズズッと唾液を吸い取られる。そして、代わりに流し込まれるのは師匠の唾液である。師匠の舌によって直接喉の近くに流し込まれる唾液を不可抗力で飲みくだしながら、舌を絡めてくる師匠になすべなく舌を絡め合う。

 

「…んっ、んんぅん、っんぅ…」

 

くちゅくちゃ、と粘り気のある水音が辺りに響き、返ってくるのは虫の鳴き声である。

誰も助けは来ない、そう遠回りし言われているようで僕は逃げようと力を込めていた両手両脚の力を諦めたように緩める。

それを感じ取ったのか、師匠は更に前のめりになると僕の唇を啄ばむように動かすと溢れ出してくる唾液を啜る。

 

「…っんう…うんっ…んんっ…」

 

もう何分間、唇を重ねあっているのだろうか…。

酸素が欲しいと脳が警告音を鳴らす、それは師匠も同じなようで物音立てずに身体を起こすと肩で息をしている。

 

「…はぁ…はぁ……っ…」

 

乱れた呼吸を整える。

師匠は先に呼吸を整え終えたらしく、どこか恍惚とした様子の師匠が僕へと囁きかける。

 

「私、好きだよ、歌兎ちゃんの事」

「…す、き?」

 

好き?

好きとはどの好きな事のことなのだろう?

師弟の仲を表す時に使う好き(like)?それとも、恋人に対して抱くと言うあの好き(love)

こういう場面でいう好きはきっと後者…だと思う。

 

後者ならば、師匠は僕の事を弟子でなく、ただ一人の女の子として好きという事に。

しかし、そうなると未来お姉ちゃんとの事はどうなるのだろう?

 

「…でも、師匠に未来お姉ちゃんが…」

「未来は親友だよ。確かに普通の友達に比べると距離感が近いかもしれないけど、親友なんだから、それは普通でしょう?」

 

親友ならあれくらいの触れ合いは当たり前…なのだろうな、うちの姉様とシラねぇもあれくらい普通だし、僕と姉様もあれくらいは普通に触れ合ってる。

 

「歌兎ちゃんって本当可愛いね」

「…ッ」

 

考え込んでいると不意に頬を舐め取られ、僕はギュッと目を瞑り、押さえつけられている両手を握る。

 

「本当可愛い。可愛くて愛おしいからこそ私は……歌兎ちゃんになりたくなった

「…へ?」

 

師匠がサラリと言ったセリフに引っかかるものがあった。しかし、師匠は頬から耳元に移動するとすんすんと僕の首裏の匂いを嗅ぎながら、甘く囁く。

 

「歌兎ちゃんが好きで大好きでたまらなくなって、溢れてくる気持ちを埋めるために歌兎ちゃんを感じる物を悪いことと知りながらも盗んで、身につけて、嗅いで、集めた…歌兎ちゃんを感じることさえできれば良かった。良かったはずなのに…いつからか、物足りなくなった。歌兎ちゃんに下着に締め付けられるだけじゃ、歌兎ちゃんの体臭を嗅ぐだけじゃ足りなくなったんだ」

 

そこで言葉を切った師匠は橙と黄色の練習着をたくし上げると僕はと笑いかけてくる。

 

「ほら、これ歌兎ちゃんのでしょう?」

 

確かにそれはあのシャワー室で無くした僕の下着だった。師匠の年相応に実った双丘を押さえつけている水色のブラジャーが食い込む師匠の柔肌から視線を逸らし、横を向くと僕は師匠を睨む。

 

「…僕なりたいってどういう事なんですか?」

「そのままの意味だよ。歌兎ちゃんになりたいんだ、私」

「…意味がわかりません」

 

きっぱりそういう僕に師匠の歪んだ笑みが深みを増していく。

 

「歌兎ちゃんが着ているものを身につけることによって、私の心は満たされた。でも忽ちに物足りなくなった。歌兎ちゃんの服装で全身を染めてみたこともあったでも足りない、何かが足りないって…それで思ったんだ、あぁ私が欲しているのは完全系なんだって」

「…完全系?」

「うん、完全系…それは歌兎ちゃん自身だよ。歌兎ちゃんを形作るものが欲しいんだ、眠たそうに開かれた黄緑の瞳にさらさらな水色の入った銀髪。凹凸のない身体、細っそりした手脚…みんなみんな欲しいんだ。血液も唾液も私のと交換したい」

「…僕をどうする気ですか…」

 

搾り出すようにそう言うと師匠はんー、と考え込むと

 

「実を言うとね、ここで歌兎ちゃんを殺してしまいたいって思うんだ。そうしたら、私は愛おしい歌兎ちゃんと一体化することができる。でも、きっとまた私はそれだけじゃ足りなくなる…歌兎ちゃんの全てって気持ちも入ってるはずだから。だから、私は---」

 

セリフを切った師匠はカブリと僕の首筋へと噛み付く。

 

(いっだ…)

 

僕の首を覆う肌を噛み切るみたいな勢いで突き刺さってくる犬歯という名の白い槍は血管まで貫通し、傷つけるとそこから溢れ出る血を啜り始める。

スゥーと血の気が引く感覚と鋭い痛みと混ざって微かに快感が脳を震わせる。

 

二つの小さな穴から溢れてくる僕の血は師匠の口内を通り、師匠の一部になっていく。

そう考えると何故かドクンっと心臓が大きな音を立てる。

 

(なんで僕こんなにも興奮してるの…?)

 

身体を押さえつけられ、逃げるに逃げられずの状態で無理矢理キスされた上に首筋に犬歯を立てられて、終いには血を吸われている。

僕は被害者のはずなのに…なのに何故か、僕の血を吸い上げ、飲み込む師匠の白い首筋を見ていると通常だった心拍数が波立つ。

 

そんな僕の心境を知らずか知ったか、師匠は僕の首筋から顔を上げると自分の首筋を僕へと見せつける。

 

「…歌兎ちゃんも私のを飲んでもいいんだよ」

 

そういって差し出される師匠の白い首筋を見た僕がとった行動は---

 

「…がぶ」

「…ッ」

 

---師匠の首筋へと噛みつき、溢れてくる師匠の血を吸い、飲み込むだった。

血は決して美味しいものじゃない、鉄の味がするし、甘味なんて無いはずなのに…師匠の血は僅かに甘くて、僕はその僅かな甘味を求めるように師匠の首筋へとしゃぶりつく。

 

 

 

 

 

三.

 

チュパチュパ、と互いの血を無心で吸う音だけが狭い空間の中に響く。

 

(…視界がぼんやりしてきた)

 

師匠と互いの血を吸いあっているという非日常的な光景に脳の処理が間に合ってないのかもしれない。

ギュッと両手を握りしめ合いながら、無心でお互いの首筋へと顔を近づけ、血を吸う10代など僕と師匠しか居ないだろう。

 

(…もっともっと師匠の血が欲しい)

 

僅かに感じていた甘味は吸い続けているうちに、花の蜜のような確かな甘さに変わっており、僕はそれを求める蜂や蝶々のようにひたすら血を吸い上げ続ける。

 

『歌兎ーー!!』

 

僕の首筋に顔を埋めていた師匠がピクリと身動きする。

僕はその仕草に師匠の首筋から顔を離すと間近にある師匠の顔をボヤァとした表情で見つめる。

 

『あれ?どこに行ったんデスかね…?荷物も響さんも見当たらないデスし…。2人でランニング…?いいえ、もう夕方デスし、響さんもこんな遅くからしないはずデス。なら、二人はどこに?うーん、あたしの中にあるお姉ちゃんレーザー的にはあの茂みが怪しい気がするんデスよね…行ってみるデスか』

 

特徴的な《デス口調》に砕けた口調…僕はその二つが一致する人は一人しか知らない。

 

(ねえ、さま…?)

 

なんで、姉様がここに?と不思議に思い、師匠越しに見た空は茜色が混ざっており、もう結構な時間が経っていたことを知らせる。

 

「…チッ。あと少しで歌兎ちゃんになれたのに」

 

師匠はどこから出しているのって思うくらいに低い声で悪態をつくと僕の首筋から顔を上げる。そして、今だに出ている首筋の血を舐め取り、そのまま耳の近くに顔を上げると

 

「この事はお姉ちゃんに内緒ね。それと---」

「…?」

 

師匠の妖艶な声音、僕を見つめる普段はまん丸な琥珀色の瞳は鋭く細められ、紅く光ったように思えた。

 

「---マタ、シヨウネ」

 

シヨウネとはどの行為のことを指しているのだろうか?

酸素不足になるくらいに唇を重ねあったディープキス、それとも今さっきまで行っていた互いの血を吸い取り、なんでいくといったものだろうか。

 

「…」

 

きっとどっちもなのだろう。

間近にある紅く光る瞳は挟まり、笑みの形になる。その紅く光る瞳を見ていると視界がぐるぐると渦巻きのように目を回し、まるで熱に侵されたようなぽわんぽわんと視点が定まらない中

 

「…はい、師匠」

 

僕は師匠の両手を掴むと首筋をスゥーと垂れ流れる血を舐めたり、僕はぽわんぽわんと宙に浮いた気持ちの中、それを口にする。

 

「…師匠、好きです」

「うん、私も好きだよ」

 

首筋に埋めていた唇が磁石のSMのように近づき、流れこんでくる唾液を飲み込み、絡まってくる舌へと絡めていった……

 

 

 

 

その後、茂みに近づいてきた姉様を師匠と二人で"ワァアアア"と両手を広げて茂みからいきなり立ち上がり脅かしてみたところ、姉様は腰を抜かすほどに驚いてくれ、地面に倒れこみながら「デデデ…デ…」と怯えたような声を漏らしながら、少し垂れ目な黄緑色の瞳へと涙の層を張っており、僕も師匠も可愛いと思ってしまった。

しかし、そう思ったのは束の間、驚きの表紙を憤怒に変えた姉様は僕と師匠はお説教を頂戴することになった。師匠は地べたに直接正座して、僕は姉様が胡座をかいているからその上に座らされ、怒りで興奮気味の姉様に延々と叱られたのだった……




というわけで、途中吸血鬼っぽくなってしまった響ちゃんとその吸血鬼(響ちゃん)に魅入られ、最後は堕ちてしまった歌兎の話でした(笑)

思えば、この話が初めましてですね。
おかしくなってしまった原作キャラと歌兎が話の最後で実るのって(笑)
狂愛の1話目は純潔を奪われ、2話目はベッドの上に縛られ寝転がされて、重たい愛を聴かさせ続けるといった感じでしたからね…(笑)

と、次回の話はクリスちゃんか翼さんとなっております。そのあとは、案が浮かんでないので、休憩って感じですね…(笑)
案が浮かんだら、更新しようと思ってます(礼)






ここから雑談コーナーでして…


皆様は"ブルーメナス"のプレラーティちゃんは無事ゲットされたでしょうか?

私はですね……まだ手を出しておりません!(なら何故話題に出したのか(大汗)

理由は、いつかくるであろう切ちゃんと響ちゃんのユニゾン必殺技のシンフォギアカード"必愛デュオシャウト"でして……今は何とか33回は回せるくらいは貯めたんですけど、途中で和装切ちゃんに22連つぎ込んでしまいまして…後悔しているところです。しかし、私に『"和"装"切ちゃん"』を我慢しろなんて無理だったんデス!!(顔を覆う)
私の好きな"和"を切ちゃんが纏ってくれるんです…大好きコラボにもう我慢できませんでした…っ

というわけで、必愛がくるまで絶対ガチャらないって心に決めているんデスが…最近、私の目に毒なガチャが多いっ!!

チャイナ切ちゃん…レインボーガチャのエクスドライブの切ちゃん2枚とも持ってないカードですし…(欲)
それに、エクスドライブの技属性の切ちゃんの必殺技って『冥劫・"兎"ぅr逢アN弩ぉTォ』ですよね…この作品の主人公の名前は『歌"兎"』。私のプレイヤー名が『律"兎"』なんデスよね…。
兎好きとして、ここはゲットを!!
って、ダメダメ。今は我慢しないと…ッ!(11回を押しかけていた人差し指を元に戻す)

ってな感じで、必愛までガチャらないって気持ちがゆらりゆらりと揺らぐ今日この頃。

シンフォギアラジオの44回を聴いて、大爆笑しました。
特に『MEGA DETH DAJARE』で笑いましたね…高垣さんのあのキャラは安定の面白さでしたし、日高さんのあのキャラたちは可愛かったデス!しかし、その可愛さも高垣さんのあのキャラの『僕だよ』に持っていかれるっていう…いいラジオを聴かせてもらいました。

と、ここで雑談コーナーを終わります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m


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チビへの贈り物(gift)《クリうたエピソード》

悪ノPさんの【眠らせ姫からの贈り物 -gift(ギフト)-】からヒントを得て、今回の話を書かせてもらいました。

この曲を聴いたことがおありの方はタイトルから大体察知がついていらっしゃると思いますが…まぁ、そんな感じの話となると思います…(微笑)

ですが、参考にさせて貰った曲とは違い、人は死にません!そこだけは保証します!!

しかし、それ以外のことはーーと、そろそろ本編へのコールをしないといけないようですので…ここで話を切らせてもらおうと思います。

では、最後の最後にゾクリッとする話の開幕デス。

本編をどーぞ!!


って、こんなゆる〜く始めちゃったけど…振り返るのなら今だからね!
あとこの話を読んだ後にクリスちゃんを嫌いにならないでくださいね!

※今回の話はR-15をギリギリまで攻めたものとなってます…。
最後か中盤はエロスが入ります。
故に15歳以上の方は回れ右をよろしくお願い致します(土下座)

また、書きたい事を詰めに詰め込んだので…かなり長めです。
どうか、ゆったりとお楽しみください。


1,

 

食堂に入った僕は食券を買う前に姉様が座る指定の席の隣に座られてもらい、ほんの少し届かない椅子の高さにジレンマを感じつつ、姉様が僕の頼んだ麻婆豆腐定食を持ってきてくれるのを足をパタパタさせて待っていると左隣にドカッと腰掛ける人の気配を感じる。

 

(‥‥? 誰だろ?)

 

チラッと横目で見て見ると見慣れた薄紫色が入った銀髪から生えたアホ毛に紅いシュシュによって括られたお下げが目に入る。

そして、一見すると不機嫌そうに見える幼い顔つきをして、彼女のギアのイメージカラーである赤を基調とした服を身に纏っている少女の知り合いは僕は一人しか知らない。

 

なので、僕は思い当たる人物の名前を隣に座った人へと問いかけてみる。

 

「‥‥クリスお姉ちゃん?」

「あぁ、そうだけど……あたしじゃあいけなかったか?」

「‥‥うんん、いけないことないよ。クリスお姉ちゃん、いつも僕に優しくしてくれるから‥‥僕、クリスお姉ちゃんの事好きだもん」

「そっ、そっか……ま、まぁー、チビを可愛がるのは年上の役目みたいなものだからな」

 

顔を真っ赤に染め、膝の上に置いてあるピンク色の手提げから二つの包みを取り出したクリスお姉ちゃんはそれを食堂の机に置くともう一方を僕へと差し出す。

 

「ほら、チビ、今日も多く作ったらこれやる」

「‥‥いいの?」

 

差し出された水色の包みのへと僕は視線を落として、もう既に自分用に作ってきたのであろう赤色の包みを解いているクリスお姉ちゃんの横顔へと尋ねる。

すると、クリスお姉ちゃんはチラッと僕の方を見て、頬を染めるとボソッと言う。

 

「……さっきも言っただろ。多く作りすぎてしまったし、それにお前はいつまでもチビだからな。あの過保護の事だから、お前の好きなものしか食わさないと思うし……あたしが見てやらないとお前がチビなままだろ」

 

(いいやそんな事クリスお姉ちゃん言ってなかった)

 

"それに僕はそこまでチビじゃない。姉様にも大きくなってきたデスねぇ〜って言われたばかりだから……僕がこのままチビである可能性はない"とむすっとした気持ちで喉まで出かかった言葉を飲み込んだ僕は薄く笑うとクリスお姉ちゃんにお礼を言う。

 

「‥‥ありがと、クリスお姉ちゃん。‥‥食べてもいい?」

「あぁ、好きにしろ」

 

そういえば、ここ最近こうしてクリスお姉ちゃんに弁当をもらうことが多くなった。

渡される理由は"多く作りすぎたから"がダントツ一位で、次が"僕がチビだから"というものだ。

 

水色の包みを外し、中から出てきた藍色の小判型の弁当箱の上に置いてあった箸箱から箸を取り出すと、弁当箱の蓋をあける。

 

(そんなに僕小さいのかなぁ‥‥?)

 

クリスお姉ちゃんは純粋に僕の成長と老婆心からそう言ってくれているのだと思うのだけれども……ここ最近いつもそう言われ、弁当を差し出されると暗い気持ちになってくる。

僕はそんなに小さく、奏者のお姉ちゃん達から頼りなく思われているのか、と。

 

パカっと開けた可愛らしい弁当箱に綺麗に盛り付けられたおかずは、真ん中におむすびとオムにぎが置かれており、おむすびの方には海苔で羽とまん丸な目が付いていて、頭の上には赤ウインナーで器用に鶏冠(とさか)が作られている。隣のオムにぎにもおむすびと同じように羽とまん丸な目が付いていて、頬には人参でまん丸な頬と唇が付いている。

そして、空いた隙間にはミニトマトやブロッコリー、カリフラワーに唐揚げ、半分にしたハンバーグなど彩りよく入れられている。

しかし、その美味しそうな見た目と裏腹に真ん中にドカーンと居座っているのは、おにぎりで出来た鶏とひよこだ。

 

(これって俗に言うキャラ弁だよね‥‥つまり、僕はクリスお姉ちゃん‥‥ううん、奏者のお姉ちゃん達からそう見えるっていう‥‥)

 

ガクーンとなる気持ちを持ち直し、両手を口元の前に重ねてから小さく"いただきます"と言ってから、箸でまず唐揚げを掴み、パクリと一口齧り、途端に溢れ出してくる鶏肉本来の旨味に舌が唸る。

 

「‥‥あむっ。‥‥んまい」

 

パクパクと弁当のおかずとひよこオムにぎを食べているとパタパタと慌ただしい足音が聞こえてくる。

続けて聞こえてくるのは、特徴的な《デス口調》に砕けた幼さが残る声音……これはひょっとしなくても、うちの過保護な姉様に違いない。

 

「あぁーっ!!クリス先輩、何歌兎に弁当あげてるデスかぁ!!今から麻婆豆腐定食を食べるっていうのに!!」

「切ちゃん、食堂ではしぃーだよ」

「デスが、調。クリス先輩がぁっ!!」

「静かにしないと駄目」

「……ごめんなさいデス」

 

弁当に向けていた視線を横に向けるとそこには右手に自分が頼んだデラックス定食、左手に僕が頼んだ麻婆豆腐定食を持った姉様が隣で焼き魚定食を頼んだシラねぇに注意され、しょんぼりしていた。

流石、シラねぇである。伊達に数年うちの過保護な姉様と一緒に行動を共にしているだけあり、姉様の扱いに慣れてる。

因みに姉様がデラックス定食を頼んだ理由は"なんだかデラックスって大きくて強そうデェース!"という独特の価値観からだそう。

 

しょんぼりしつつ、僕の隣に腰掛けた姉様はゆっくりとお盆をテーブルに置くと小言で尋ねてくる。

 

「歌兎、麻婆豆腐定食食べれますか?」

「‥‥頑張って食べる」

「よしよし、歌兎はいい子デス」

 

僕の頭をぽんぽんと優しく撫でた姉様へと口元いっぱいにご飯粒を付けたクリスお姉ちゃんが目の前にある弁当を傾け、小首を傾げる。

 

「お前らも良かったら食うか?」

「いいデス。敵に情けは貰わない主義なんデス」

「お前はいったい何と戦っているんだ……」

 

プスーッと頬を膨らませた姉様は両手を口元の近くに添えると小さく"いただきます"と言ってから目の前のデラックス定食を食べていく姉様にため息を漏らすクリスお姉ちゃん。

 

(しかし、何がデラックスなんだろ?)

 

姉様が頼んだ定食のおかずの量は僕の麻婆豆腐定食と同じように思える。

青い線が走る大皿にハンバーグ、オムレツ、唐揚げといった子どもから大人までもを魅了し続けるラインナップが色どりよく飾られ、小鉢にはきんぴらが添えられている。

 

今の所おかしな所はない。

しかし、視線が持っている茶碗へと向けた瞬間、僕の目はまん丸になった。

 

(へ‥‥? 何それ?)

 

とんぶり茶碗に山盛りによそわれた白米、そしてとんぶりに注がれている豚汁。

まさか、デラックスって……そういうデラックス?

おかずではなく主食を引き立たせる方のデラックス?

明らかにおかずとご飯や味噌汁の量が不似合いな気がするけど……姉様が美味しそうに食べているのなら、まぁ……いっか。

 

「クリス先輩。私、唐揚げ食べたいです」

「分かった。ほらよ」

「ありがとうございます」

 

そんな姉様と違い、シラねぇはクリスお姉ちゃんからおかずを貰うことにしたらしい。

小さくお礼を言うシラねぇを見て、口をあんぐりと開けている姉様は恐らくシラねぇがクリスお姉ちゃんからおかずを貰うとは思っていなかったのだろう。

 

「調に裏切られたのデス……」

「裏切ってないよ、切ちゃん」

「だって、それ……クリス先輩のおかずデス」

「このおかずはこうする為に貰ったんだよ」

 

そう言って、お箸で器用に唐揚げを半分にしたシラねぇが姉様の大皿へとちょこんと片方を乗せるのを見てキョトンとする姉様にシラねぇがは淡く微笑む。

 

「クリス先輩の弁当に残っていた唐揚げを切ちゃんがジィーと見てたから。欲しいのかなって思って貰ったんだけど……迷惑だった?」

「全然迷惑なんかじゃないデス!そうデス。はい、これどうぞデス」

 

お返しとばかりに自分の唐揚げを半分にした姉様がシラねぇの皿に置く。

 

「ありがとう、切ちゃん。焼き魚いる?」

「欲しいデス。じゃあ、あたしからはハンバーグあげるデスね」

「うん」

 

姉様とシラねぇが其々のおかずをはんぶんこにし始めるのを見て、クリスお姉ちゃんがやれやれと溜息をつく。

 

「たく。こいつらはいつでもどこでもだな」

「‥‥そこが姉様とシラねぇのいい所」

「あぁ、そうだな。たく、頬にソースが付いてるじゃないか。喋りながら食うからだ」

 

ごしごしとクリスお姉ちゃんに頬を拭かれ、僕はお礼を言う。

弁当箱に残ったカリフラワーを口を含むと弁当箱を終い、クリスお姉ちゃんに手渡すのだった。

 

 

 

2,

 

クリスお姉ちゃんの手作りの弁当を食べた事によってその美味しさに危機感を覚えた姉様が競う形で作り始めた手作りの弁当を毎日貰う日々の中、ほんの少しだが僕の体重が増えていっているらしい。

嬉しいけど、毎日あの量は流石に胃がもたれてくる。

 

(でも、二人とも僕の為と思って作ってくれてるんだもの。頑張って食べなくちゃっ)

 

そう思い、僕が今日も二人の弁当を完食したそんなある日の夜、僕達は海外のチャリティーライブから帰ってきたマリねぇとセレねぇと共に食卓を囲んでいた。

マリねぇとセレねぇを向かい側に隣にいる姉様がふぅーふぅーと息を吐き、ポトフを僕へと差し出す。

 

「はい、歌兎。あーん、デス」

「‥‥あーん。うむ…ぐむ

 

スプーンの上に乗っかったウインナーを口に含み、噛み締めた瞬間僕は小首を傾げる。

 

(あれ?)

 

パリッとする皮から溢れ出すウインナーの肉汁が舌を濡らしてみても僕の舌はその甘味を感じることが出来ない。

 

(味がしない‥‥?)

 

な、なんで?

う、そっ……嘘だよね?

嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘

う、そっ……だよね……こんな事ってありえないっ。

だって、お昼は美味しく食べれていたのに……。

 

「美味しいデスか?歌兎」

「‥‥」

「歌兎?」

 

味の感想を問う姉様の声はパニック状態に陥っていた僕には聞こえなくて、僕はただだだひたすら噛みしめ、噛み砕いていく。

まるでグミやガムを味がなくなるまで噛み続けるみたいにウインナーを噛み続ける僕に姉様は困惑した表情を浮かべ、他のねぇや達も僕の奇行にびっくりしている様子だった。

 

それから数十分後にも噛み続ける僕に姉様が恐る恐る声をかけてくれる。

 

「歌兎、流石に噛みすぎデスよ」

 

僕はゴクリと喉を鳴らして、もう既に形あるものが無くなったそれが胃へと落ちていく中……僕はある事実に打ちのめされていた。

 

「‥‥姉様。僕、味を感じなくなっちゃった」

 

顔面蒼白。

青白い表情をした僕は前を向くとそうボソッと呟き、姉様はその垂れ目がちな黄緑色の瞳をまん丸にする。

 

「へ?」

 

その後の事は何も覚えてない。

気づいたら、姉様とマリねぇ達に抱きかかえられ、S.O.N.G.に駆け込まれ、僕はみるみるうちにメディカルルームに入室され、様々な診察が行われたのだった。

僕はそれを放心状態で受けて、今はベットの上に座って、目の前にいるクリスお姉ちゃんの顔を見ている。

 

「ほら、これやるよ」

「‥‥でも、僕は」

「食べてみないと分からないだろ。ほら、あーんしてやるから」

「‥‥うん、ありがと、クリスお姉ちゃん」

 

こんな異常な時でもクリスお姉ちゃんの弁当だけは暖かくて、美味しくて、泣きそうになる僕の心を癒してくれるのだった。

 

 

 

3,

 

結局、原因不明という結果を受けた僕は暫くS.O.N.G.のメディカルルームに通いながらなら退院していいという許可が出て、僕は退院祝いである贈り物(gift)をあげると言われ、クリスお姉ちゃんの家に来ていた。

ソファに腰掛け、ボゥーとした様子の僕の隣に腰掛けたクリスお姉ちゃんが差し出す。

 

「ほら、これお前の好きなやつだろ?」

 

差し出された大皿の上には僕の好物の麻婆豆腐がなみなみと入れられていた。

 

「‥‥頂きます」

「どうぞ」

 

麻婆豆腐を一口口に含み、その舌をつく辛味に涙する。

 

(僕はもう‥‥この辛味を感じることも出来なくなってしまった‥‥。姉様‥‥泣いてた‥‥)

 

シラねぇ、マリねぇ、セレねぇに背中を撫でられながら、姉様は人目も気にせず泣いていた。

"なんで歌兎が味覚を失われなければならないんデスかぁ!あの子が何をしたっていうんデスっ!!あの子ばっかり……どうしてこんな目に"

ねぇや達に囲まれ、わんわん泣く姉様の柱に隠れて見ていたその時の僕は胸が締め付けれるのを感じた。

 

(僕が姉様を泣かしてしまった‥‥)

 

大好きな姉様を、敬愛する姉様を泣かしてしまった。

その事が何よりも僕には辛かった。

やっと姉様に迷惑をかけなくても生活出来るように……戦闘でも立ち回れるようになったっていうのに……。

 

それを思い出しながら、食べていたからだろう。

気づくと僕はポロポロと涙を溢れ出しながら、麻婆豆腐をかけこんでいた。

 

クリスお姉ちゃんはわざわざ立ち上がってまで水を汲んできてくれたらしく、涙しながら麻婆豆腐を食べていく僕の前へと水が注がれた透明なコップを置く。

 

「泣くほど美味しかったのかよ。ほら、水ここに置いとくな」

「‥‥ありがとう、クリスお姉ちゃんっ」

 

クリスお姉ちゃんが入れてくれた水を口に含み、麻婆豆腐を食べ進めている最中だった。

 

その異変が起こったのはーーーー。

 

「ーービ? おい?」

 

すぐ近くにいる筈のクリスお姉ちゃんの声が遠のき、目の前が高熱に侵されたように目の前が霞む。

 

「おい!どうしたっていうんだよ、大丈夫か?」

 

火の中でドロドロとプラスチックの様に溶けていく視界の中でも目の前でぷるんぷるんと揺れるその年に不似合いな二つの果実だけはバッチリの目が捉えていて、その果実が揺れる度に僕は身体の奥から湧き上がってくる性的興奮を押さえつけない。

 

(この果実にしゃぶりついたら美味しそう‥‥)

 

生唾と共にそう思った瞬間、僕はクリスお姉ちゃんをソファへと押し倒す。

 

「何やってるんだよ…チビ…」

 

肩を押さえつけられ、忽ち自分へと跨ってくる僕を見上げて、唖然とした様子で呟くクリスお姉ちゃん。

そんなクリスお姉ちゃんの赤いセーターに覆われた二つの果実の一つへと掌を添えながら、僕は怪しげに笑う。

 

「‥‥僕の前にこんなものチラつかせたのはクリスお姉ちゃんでしょう?こんなもので挑発して‥‥僕に触って欲しかった?」

「お、お前誰だよ……本当にあのチビなのか?」

 

僕の変貌ぶりが恐ろしいのか、小刻みに震えるクリスお姉ちゃんが次第に愛おしく思えてくる。

 

「‥‥僕は僕だよ、クリスお姉ちゃん。それよりさっきから僕が胸に触るたびにピクピクしてるね? 気持ちいいの?」

「チッ、違っ!」

 

ニヤニヤと不気味嗤う僕がセーター越しに触れる度にピクピク震える事を指摘してみると、クリスお姉ちゃんの顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。

 

(可愛いな‥‥)

 

年上に思えない童顔を不似合いな大きな果実越しに見ているとさらなる性欲駆られる。

この人の全てにしゃぶりつき、味わい尽くしたいという性欲に。

 

(そうだ‥‥このまま、クリスお姉ちゃんを僕のものにしちゃえばいいんだ‥‥)

 

そうすれば、クリスお姉ちゃんの全てが僕のものになる。

 

ここはクリスお姉ちゃんの家だから、誰も助けに来れないし、僕が部屋に入る時に鍵を閉めていたから……行為の最中に乱入者が入るっていう事もないだろう。

 

(じゃあ、決まりだね)

 

僕はクリスお姉ちゃんの両手を両膝で押さえつけると赤いセーターを上へとたぐり上げる時、同時にブラジャーも上に持ち上げる。

 

「ちょっ、馬鹿っ!何やってーーんぅん……っ」

 

つぅーー、と舌でクリスお姉ちゃんのお臍にかけて走っている縦線をなぞりながら、ゆっくりと重力に押しつぶされることなく綺麗な形を保っている双丘の片方へと向かっていってる僕を止めようと身動きするクリスお姉ちゃんは震える声で僕を止めようとする。

 

「や、やめ……ろっ……!チビ……っ。あたしとお前がそんな仲になったって知ったら、あの過保護がーー」

「ーー‥‥今は姉様のことは関係ないでしょう? 」

「関係あるだろ!あいつはお前の事を何よりも大切にしているだろ!?」

「‥‥そうだね、僕の姉様の事が大切で大事にしているよ」

「だったら……ッ」

「‥‥クリスお姉ちゃんは何か誤解をしているよ」

「……へ?」

 

目をまん丸にするクリスお姉ちゃんの顔近くに自分の顔を近づけると、髪と同色の少し吊り目を間近で見つめながら、ハッキリと

 

「僕はただクリスお姉ちゃんからの退院祝いの贈り物(gift)を頂いているだけなんだから」

 

そう言い怪しげに嗤う僕にクリスお姉ちゃんの表情は一気に恐怖で染まる。

そんなクリスお姉ちゃんの唇を奪った僕はゆっくりと開いた掌を下へと向かわせるのだった。

 

(さぁ、目の前のクリスお姉ちゃん(gift)をありがたく頂こう)

 

その後、忽ちに甘い声や如何わしい水音やソファが軋む音がリビングへと響くのだった。

 

 

 

 

エピロ,

 

翌日の朝、静まり返ったリビングのソファには折り重なる様に眠りに落ちている少女達がいた。

ソファに寝そべる薄紫色が入った銀髪の少女の胸元へと顔を押し付け、気持ちよさそうに寝息を立てている水色が入った銀髪の少女。

二人の銀髪は絡み合いながら、ソファからカーペットへと垂れ下がっており、ソファの上に折り重なる両手も髪と同じ様に絡み合っていた。

 

そんな二人から離れた場所にあるキッチンの上に無造作に置かれた大学ノートにはこう書かれていた《愛するチビの為のgift》と。

 

その時、悪戯な隙間風がその大学ノートをパラパラとまくり始める。

どのページにもびっしりと文字と写真が貼り付けられており、その文字や写真から連想するのはどうやらこの大学ノートは薬の配合を書いたものらしい。

時々、グラム数、数字の記号や数式が見え隠れするのだからそういう事だろう。

 

そして、隙間風は飽きた様に付箋が貼られているページを開くと何処かへと消えていってしまい、その不意に開かれたページを照らすのは窓から差し込む陽の光である。

 

その陽の光に照らされているそのページに書かれていたものはーー《味覚を失わせる薬の配合》《媚薬の配合》というタイトルで赤いマジックペンでデカデカと書かれていて、その下にはその薬を使う日にちと時刻が書かれていた。

 

その時、カーテンから差し込む陽の光によって一足先に目を覚ました薄紫色が入った銀髪の少女は穏やかな表情を浮かべると自分の胸元に顔を押し付けて眠りこける水色が入った銀髪の少女の汗よっておでこにへばりついた前髪を指先で横によけるとキスを落とし、そして

 

「……あたしからの(gift)、喜んでくれたか?チビ」

 

こう呟いたのだったーーーー。




ぎ…ギリギリ、R-15だよね?多分(汗)
肌は見せてないし、直接的な言い回しはしてないからね……多分大丈夫だと思うけど、R-18だと思う人は後でこっそり教えてくださいね(微笑)

今回の話は作中にてよく登場した【gift】の四文字がキーワードとなってます。
【gift/ギフト】は《英語では贈り物》の意味、《ドイツ語では毒》の意味という事があり、最後のセリフを《毒でなく薬》にしたのは、諺の中に【薬も過ぎれば毒となる】というものがあり……今回の話ではまさにその状況でしたからね、歌兎は(汗)

タイトルにある【贈り物(gift)】はクリスちゃんが歌兎に送ったもの……そう、お弁当のことを意味しています。
薬に塗れていたお弁当を毎日食べ続けていれば、それは味覚も失われてしまいますよね…(大汗)
また、歌兎が気づかなかったのは、ほんの少しずつ薬を入れられていたからです。



と内容が中々にゾクッとしたものだったと思うので、少々私の事を書くのですが、内容が中に変態じみてるので……そういうのは嫌な方はご覧にならないでくださいね(微笑)




この小説を読まれている方は私が切ちゃんの中の人…茅野愛衣さんを推していることは知っているといらっしゃると思います。

その茅野さん…私は茅さんと呼ばせてもらっているのですが、その茅さんに関する話をさせてもらおうと思います。

私、基本アニメはAbemaにて観させてもらっているのですが…お正月に【ノーゲームノーライフ ゼロ】【ご注文はうさぎですか?? 〜Dear My Sister〜】を観たんですが、その中に登場するシュヴィちゃんとモカさんの「この分からず屋」「ココアの寝坊助」を延々とリピートしていたって話です。
淡々と、クールに罵倒されるのも好きなんですが…ロリ声・可愛い声で罵倒されるのもいいなぁ〜と…もう駄目だな、私(笑)

私は基本茅さんが演じていらっしゃるキャラのセリフはついつい数回リピートしてしまうんですよ…【とある魔術の禁忌目録Ⅲ】の五和ちゃんの『あわわ…』とか可愛すぎて、ついリピートしすぎてしまうんですよね…(笑)


という茅さん話がしたかった私の雑談コーナーをここまで読んでいただきありがとうございます!
寒い日が続き、インフルエンザも流行っているので…どうか、お身体にお気をつけてください(土下座)


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繋がる陰陽の太陽 -1-

大変…大変お待たせしました。
『きりセレ』こと『切ちゃん×セレナちゃん』の話です。今回の話は私の小説ではあまりない『きりしら』要素も加えてみました。

この話はメインストーリーの分岐ルートである『ハードラブ・ミッション』を読まれた後に読まれた方がより一層楽しまれると思います。
また、この章は『ハードラブ・ミッション』のネタバレも含まれているので、ご注意ください(礼)


また、この章は文字の色によって、世界線の話を変えてます。

例は
○黒➖ナレーションのようなもの
青緑➖『ハードラブ・ミッション』の世界線
黄緑➖原作(XD)の世界線
となっております。

では、拙い文章ですが…完結まで応援いただけると嬉しいです!

本編どうぞー!!


※この話は『ハードラブ・ミッション』の世界線の方では、原作の世界線との差を付けるために多くの原作キャラが亡くなっております。そして、回想シーンは絶望的なものしかありません。
なので、そういう『辛い話でもOK!』又は『好きな原作キャラが亡くなっているかもしれないけど大丈夫だよ』という方以外は回れ右か高速スライドをオススメします(土下座)


その世界はただ不運としかいえなかった。

この世界を形成する何かによって差し出された二つの選択肢のどちらを選んでも悪い方で、その選択肢を良い方へと変えるピースは揃ってはいたが、どのピースもどのルートにも待ち受けているバットエンドを打ち消すほどの力を養えていなかった。

故に、その世界は本当に不運だった。

世界を変えるピースを育て上げる時間すらも用意されず…その世界は一歩、また一歩と終わりへと近づいていくのだった。

 

 

「ガァッ!?」

 

あたしの身体は背中から思いっきり地面へと叩きつけられ、身体を折ると肺に溜まった空気を吐き出す。

 

(…っ、油断しちゃったデス…)

 

地面に叩きつけられた時に緑の刃を持つ大鎌へと手を伸ばす。そんなあたしの右手首を踏みつけ、見上げるあたしを冷めた目で見るのは"漆黒のツインテールの先をピンクに染め、つり目がちなピンクの瞳を持ち、小柄な肢体を持つ同年代の少女"で…あたしはその少女を見つめながら、顔をしかめて、歯ぎしりする。

 

(…何度見てもこの精霊って奴は悪趣味デス)

 

『精霊ってね。便利なんだよ、お義姉さん。同じ属性の奴を複数作れるし、その場に浮遊する魂さえあれば、このとーり。あっという間に完成しちゃうんだから』

 

かつて、挑発じみた仕草をしながら、薄紫色の髪を結んだ精霊使いに目の前で親友を精霊というものへと作り変えたことがあった。

その時、あたしは内側から湧き上がる怒りを押さえつけることができず、暴走してしまい、そんなあたしを救う為に妹がギアを纏ってしまって、妹の容態を悪化させてしまった。

あの日から常にこの花の妖精を見ても冷静でいるように努めていたのだけども---

 

「これも主人様の為。悪く思わないでくださいね」

 

---ふとした仕草に、言葉遣いにかつての親友(調)の面影が重なってしまって…攻撃行動を躊躇してしまう。その妖精が調と呼ばれた時の記憶を失っていたとしても、彼女が調に違いないのだ。

あたしは花の妖精(調)が武器となる扇を振りかぶるのを黙って諦めたように見る。

 

(…ここまでデスか)

 

調に敗れるのなら、それもあたしの運命だったのかもしれない。うん、きっとそうだ。

 

(調にならあたし殺されてもいいデスよ…)

 

しかし、心配なのは、一人となってしまうあの子の事。

あたしが敗れ、調と同じようにあの精霊使いに精霊へと変化されるのは運命だと受け入れよう。だけど、せめて…せめてもの、あの子には人並みの幸せを与えてあげてほしい。あの子は優しすぎるのだ、優しすぎて自分や他人の全ての不運をその小さな身体に受け止めて、今もその不運に運命を弄ばれて…悲しい思いをしている。

 

(…歌兎、幸せに…なる、んデスよ)

 

「おやすみなさい」

 

扇が振り下ろされる寸前に飛び込んでくる疾風にあたしは目を見開く。

 

「…姉様は殺させないッ!」

「…うた、う…なんで…」

 

あたしと花の妖精の間に飛び込んで来た疾風こと妹・歌兎はそこいらに落ちている木の棒で器用に花の妖精の扇の動きを止める。驚きの表情を浮かべる花の妖精から距離を取った歌兎はイガリマのギアが解除されたあたしを庇うように立ち、右手に持った木の棒を花の妖精へと向けながら、鋭い口調で花の妖精へと問いかける。

 

「…どうしたの?攻撃しないの?相手は丸腰なんだよ」

 

敵意を隠すことなく、眠たそうに見開かれた黄緑色の瞳へと剣呑な色を浮かばせる歌兎へと困ったような表情を浮かべて、扇を下ろした花の妖精は弱ったような声を漏らす。

 

「貴女は攻撃するなと主人様からきつく言われてますから」

「…そう。なら、僕はここから…この人から離れるつもりはないから。そこ、どけてくれない?」

「それは無理な相談だよ、うさちゃん」

 

いつの間にそこに居たのだろう、あたし…いいや、S.O.N.G.の奏者やスタッフにとっての敵となる薄藤色のロングヘアーに紫の瞳を持つ妖精使いが花の妖精の肩に手を置きながら、一歩後ろに下がられせると歌兎へと笑みを浮かべながら、話しかけている。

話しかけられた歌兎は僅かに表情を曇らせながらもギュッと木の棒を握りしめると応える。

 

「…ここちゃん。何しに来たの」

「何をしにって…かなり無愛想だね、うさちゃん。まぁ、そんな無愛想なところも私は好きなんだけど」

 

デレデレと頬を緩ませる精霊使いの顔をまじまじ見ながら、歌兎は悲しそうに尋ねる。

 

「…僕のことを好きって言うなら…好きって言うのなら、なんで…こんな酷いことを平気な顔をして出来るの?ここちゃん…」

「なんでって…私にとってうさちゃん以外の生き物はそこいらに転がってる小石くらいだもの…あっ、でもお義姉さんは石か岩かな」

 

キョトンとした様子で答える精霊使いの言い分にあたしは素早くツッコむ。

 

「大きさが違うだけじゃないデスか!根本的なところが変わらないデスよ!」

「あはは、やっぱりお義姉さんは面白いね」

 

あたしのツッコミにけたけた笑う精霊使いは歌兎へと左手を差し出す。まるでフラダンスに誘うように優雅な仕草で差し出された手と精霊使いの顔を交互に見る歌兎へとニッコリと爽やかに笑った精霊使いはいつものように決まったセリフを口にする。

 

「さぁ、うさちゃん一緒に行こう。二人だけの世界を私と作ろうよ」

「…」

「もう、これ以上抵抗しても犠牲者が増えるだけだって…そろそろわかってきたでしょう?うさちゃんは私と来るしか選択肢が残ってないんだよ

 

ニコニコと笑う精霊使いを一瞥した歌兎は左手でまだ身体へと埋め込まれているミョルミルのギアをなぞるとギュッと唇を噛みしめる。そして、顔を上げると精霊使いの目をまっすぐ見て答える。

 

「僕は他人を犠牲にした上に成り立つ仮初めの幸せなんて欲しくない。だから、みんなが幸せになれる道の方を選ばせてもらうね」

 

チラッとあたしの方見て淡く微笑む歌兎の意図を知ったあたしは力が入らない身体を起こそうと腕を突っ張る。

 

「歌兎、駄目デス!!それは…それでは貴女が…っ!」

 

しかし、上手く突っ張らずに地面へと倒れこむを数回繰り返すあたしから視線を正面に戻した歌兎はミョルミルの聖詠を歌う。

 

「…multitude despair mjolnir tron」

 

ミョルミルのギアを纏った歌兎は最後にあたしへと振り返ると

 

「…この世界のこと頼んだね、お姉ちゃん」

 

とびっきりの笑顔とそのお願い事をしたのだった…

 

 

その世界は不運としかいえなかった。

その世界を形作る二つの選択肢は常にどちらを選んでも悪い結果しか待っておらず、その悪い結果を覆すピースも本来の力を発揮する前に世界の不運に飲み込まれ…その世界の終わりは徐々に近づいていた。

 

そんな不運な世界と正反対なその世界は幸運で満ち満ちていた。

幸運と優しさに満ち足りたその世界はどんな困難も乗り越えられるピースたちが揃っていた。其々が其々の運命の歯車としての役割を果たし、奇跡という名の幸運を引き寄せる。運命が意地悪し、悪い結果しか用意しなくてもピースたちはそれを乗り越え、良い結果を出す。そう、良い結果を出せる程にピースたちは力を蓄えていたのだ。

 

黒と白。不運と幸運。

 

 

そんな対なる世界は一人の少女によって繋がることになる。

これは二人の少女が其々の世界を救う為に立ち上がる物語である---

 

 

 

「いたたたデース…」

「痛いのは私も同じだよ」

「…うゔ…ごめんなさいデス…」

 

おでこを抑えるあたしに正面に座る調がジト目を向けてくる。原因は起こしに来てくれた調へと突然叫び声をあげて飛び起きたあたしがどつきしたからである。

あたしのおでこと調のおでこにはシンプルな方の絆創膏が貼ってある。

 

「ねえ、切ちゃん。聞いてもいい?」

「…むぐもぐ。なんふぇふは?

 

調の朝ごはんおいしいデース!とご飯やおかずをかきこむあたしはもごもごと頬を子リスのように頬を膨らませて小首を傾げる。そんなあたしに忽ち調の小言が飛んでくる。

 

「切ちゃん、ご飯を口に入れてお喋りははしたないよ。ちゃんと飲み込んでからお喋りしないと」

「…ごくん。ごめんなさいデス…」

 

ジィーーーと見てくる調に頭を下げてから、調が聞きたいと言っていたことを聞いてみる。

 

「それで調は何を聞きたいんデ---」

 

訪ねようとしてけたたましい呼び出し音によって掻き消させれる声に若干ガッカリするあたしに苦笑いしながら、調は電話を取る。

漏れていた会話からどうやら、近くの廃棄マンションにアルカ・ノイズが現れたのと…

 

「正体不明の敵、デス?」

 

マンシャンから飛び出て、アルカ・ノイズが現れたという廃棄マンションに全力疾走している中、先に着いた翼さんとクリス先輩からの通信を受け取った司令からの電話によると現れた数体のアルカ・ノイズは翼さんとクリス先輩によって撃破。しかし、その後アルカ・ノイズでもカルマ・ノイズでもない正体不明の敵が現れたらしい。

 

『あぁ、先に向かった翼とクリス君によると攻撃は通じない。通り抜けるそうだ』

「それはイグナイトでも通じないんですか?」

『その様だな』

 

そんな敵、どうやって対処すればいいんデスか?と恐らく調も思っているだろう。司令もエルフナインも困っているようですし。

 

『…ん?なんだとッ!?』

 

と司令の驚きの声が聞こえてきたと思った時にはあたしと調の前に"ソレ"は立っていた。

水色のロングヘアーは小川のように水が流れていて、少し切れ長の紫の瞳。細身の肢体を安易な薄い空色のワンピースで隠しているソレは流れる川のように物音立てずにあたしの前に立つとジィーーとあたしを見てくる。

様々な色が混ざる青い瞳は人間でないような無機質な感じを思わせて、あたしは体を震わせる。

 

「…貴女は似ていますが、彼女ではない様ですね」

 

心底ガッカリしたようにそう言ったソレは体を地面へと染み込ませるとその場を立ち去る。残されたあたしはへたり込む。

 

「…にゃっ」

「切ちゃん!?」

 

さっきの女性はなんなんだったんだろうか?

ノイズもなくて、錬金術師でもなくて、それでも人間でもなくて…あの女性が翼さんとクリス先輩が追撃していた正体不明な敵だったのだろうか?

その自問自答に答えは出ずに調に手を借りて、S.O.N.G.の本部へと向かう前に見つけたのは---

 

「…っ」

 

---苦しそうに胸を押さえながら、今にも倒れそうな感じでふらふらと危なっかしい足取りで歩いてくる"腰近くまで伸びた水色が入った銀色の髪に眠たそうに半開きした黄緑色の瞳、小柄な肢体を白いパーカーと短ジーパンで隠した少女だった。

 

その姿はまるで、最近夢の中に現れる謎の妹の容姿に合致しており、あたしは驚愕のあまり立ち止まり、少女を直視し続けて、調はそんなあたしを不思議そうに見ていて…その矢先、その件の少女があたしたちの目の前で倒れたのなった…




というわけで、ー1ーでしたが…どうだったでしょうか?

ちゃんと其々の世界線での状況が分かってもらえれば嬉しいのですが…私はまだまだですので、ちょっとほど補足をさせてもらいます。


◆原作(XD)の切ちゃんの夢
ハードラブ・ミッションの切ちゃんが体験していることを一緒に体験。『翳り裂く閃光』での響ちゃんのような現象です。

◆ハードラブ・ミッションの調ちゃん
精霊使いとの戦いで亡くなってしまい、切ちゃんやS.O.N.Gへの挑発に使うために精霊化。
花の精と重なり、花の精霊と成り代わった調ちゃんは容姿はそのままにツインテールの先にピンク色が付いている。花の精霊なので、攻撃は様々な香りを用いるので、扇となってます。

以上が補足となってます。
他にも分からないところがあれば、感想に書いていただければ答えいたします。

それでは、長くなってしまいましたが…『繋がる陰陽の太陽』をよろしくお願いします。


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ー2ー

お久しぶりとなる今回の話は、少々心苦しい話となっております。
その理由は本編を見ていただければ、自ずと答えが見えてくると思います。

この話を書くのは心苦しかったです……涙が数回ポロポロと出ちゃいましたし、ほんと最近涙もろくて……恥ずかしい(笑)

それでは、辛いストーリーかもしれませんが、本編をどうぞ…!


今から語られる物語は誰にも看取られることなく散った少女の話。

その小さな身体に抱えきれないほどの不幸を背負い込み、誰かと共に乗り越えることすらも困難だった……産まれ落ちた世界がそれを許さなかった少女の話。

それ故に少女は一人、誰に看取られることなく、大好きな姉に最後の言葉を言うことがすら出来ずに散っていったそんな少女が最後の力を振り絞り、余生を駆け抜けた物語である。

 

 

「…multitude despair mjolnir tron」

 

あの日、姉様に全てを託した僕はミョルミルを纏うと両手に持った金槌で周りにいる精霊と戦闘を繰り広げていた。

 

きっと、僕がミョルミルを纏えるのはこれが最後となるだろう。

そう思う理由はいつになく蒸気が上がる身体だった。

左腕に植えつけられた完全聖遺物・ベルフェゴールは一時期、ウェル博士に拉致された時に神獣鏡の光によって外されているのだが、その光は微々たるもので僕の命をベルフェゴールと同じく蝕んでいるミョルミルまでも排除する事はできなかった。

暴走する事はなくなったとはいえ、幾度もミョルミルを纏えば、その命が少なくなっていくのは安易に想像がつく。

 

しかし、だからこそ。

 

僕はその残りすくない命を姉様達やこの世界に生きる人達が明日を生き抜くために使い、ここちゃん達精霊から人類を救う、対抗出来るだけの力を準備する為に使おうと思う。

 

(僕の攻撃も姉様達奏者のみんなの攻撃もその身に傷つく事はなかった)

 

いや……待って。

精霊達はやけに姉様から……いいや、その攻撃を受けないように慎重になっていなかったか?

 

(成る程。分かった、突破口)

 

そろそろ姉様達もこの戦場から離脱した頃だろう。ならば、僕もこの戦場にいる意味もない。

しかし、そう思っているのは僕だけのようでミョルミルを纏う僕の周りには何層にも重なり、精霊達が押し寄せてくる。

 

「つよいつよい〜いよついよつ〜」

「あらあら、これは俺らやばい感じじゃないスか?」

「手負いといえど奴は獣。そんな獣を相手にするのも大変だと言うのに、主人は傷つける事なく連れ帰れという。あいも変わらず無茶苦茶な主人だな」

「そうね」

 

慌てた様子もなくそう言う精霊達に僕は唇を噛みしめる、やっと見つけた突破口となる物を集めきるだけはッ!僕がするべき役目を果たしきるまではッ!!

 

「‥‥負けるわけにはいかない」

 

そう、精霊に屈することも。ここちゃんに屈することも許されないのだ、僕は。

僕は負けられない。負けるを認めることも、勝利を諦めることも許されないのだから。

 

だから僕は歌う。

この危機を打破する為に戦闘曲(うた)を。

 

 

【灼鎚・ミョルミル】

 

〜♪

閉ざされた世界に 小さな兎

一人 迷い込んだ 森の中

大きな穴から拾い上げた 一つの宿命-カルマ-

 

閉ざされた世界に 轟々と燃え広がる焔

兎は叫び やがて 憧れは燃え尽き 灰と化す

抱き上げ零れ落ちた腕から 大きな宿命-カルマ-

 

思い出す 思い出す 過去

思い出して 思い出して 涙が一つ

 

繰り返す 繰り返す 悪夢

繰り返して 繰り返して 後悔が一つ

 

小さいままじゃあ 救えない 報われない 守らないと 分かった

だから今こそ Scorchihg sun

痛む間もなく 打ち砕いてあげましょう こんな輪廻

〜♪

 

 

「うおおおおお!!」

 

僕は吼える。

身体の底から吼え、振り下ろした鎚をもう一度振り下ろし、身体を軸にし、遠心力で僕を囲む敵を排除する。

 

(負けられないッ!!)

 

しかし、僕が技を繰り出し、精霊を押しつぶす事も彼らを倒すことは出来ない。

何故なら、彼らの身体は実体化はしていても、元となる二つに肉体はない超自然な存在なのだから、故に僕の物理攻撃はすり抜けていく。

 

「はぁっ……はぁっ…く……ッ」

 

心臓辺りにあるミョルミルのコアが破裂し、身体から花青緑色の結晶が突き出し、灼熱で目の前がくらむ。

 

「‥‥だ、め。まだ……ぼくは、こんなところで……負けるわけない」

 

(‥‥姉様達のために、この世界の明日のために!)

 

膝をつきそうになる両脚に力を入れ、踏ん張る。

悪あがきをする僕を嘲笑うように、半透明な水の髪を腰のあたりまで伸ばした女性の精霊が馬鹿にしたように話しかけてくる。

 

「そろそろ捕まっては如何です?主様は貴女を望まれているのです。そして、(わたくし)は主様に貴女の回収を頼まれているのです。…………はぁ、主様はこんなお子様のどこにそんなに惚れ込んでいるのでしょうか」

「‥‥お断りする。僕にはまだやる事があるから」

「貴女の我儘に付き合っている時間は主様にも私達にも無いのですよ」

「‥‥だとしてもッ!!」

 

迫ってくる精霊達というよりも……地面へとメインアームである鎚をたたきつけ、わざと砂埃を起こす。

その砂埃で僕の姿を感知できなくなっている精霊達から、戦場から離脱する。

 

全力疾走で近くの人気(ひとけ)がなくなった街へと逃げ込む。

近くにあるヒビが入り、朽ちたビルへと寄りかかり、息をつく。

 

「‥‥ここまで来れば大丈夫かな」

 

(……もう、右側はだめか)

 

ミョルミルの結晶に覆われ、動こうにも動かせない。

 

「‥‥あと、もう一回……ううん、もう一回すらも纏えないかな」

 

自分でも分かる。少しずつ命の灯火が小さくなっていくのが分かる。

身体はこんなにも熱いのに、ゆっくりと死んでいく……凍えていく魂。

 

(僕、このまま消えちゃうのかな……)

 

ギュッと左手を握りしめ、唇を噛みしめ、ビルのコンクリートを叩く。

 

「‥‥死にたくないっ、死なないっ。……死にたくないよっ……」

 

僕にする事があるんだ。

もういつ消えてもいい命ならばもう少しだけ姉様達の……ううん、姉様のために使いたい。

そうは思ってももう限界らしい、意識が遠のいてくる。

 

そんな僕の耳にカランコロンと音が響き、僕はそちらを見上げるように見て笑ってしまう。

《ウェル研究室》

何処までも、何処からでも、神出鬼没で出てくるその三つの名前は僕を苦しめ、僕を助けてくれる。

 

(……本当に、もう……)

 

壁に左手をついて、立ち上がると右脚を引きずるようにしながら朽ちた階段を降りていく。

辿り着いた先にあったのはこの前拉致られた時に発射された神獣鏡の装置、その装置の横にはあの時ウェル博士が使用していた研究机、その上には複数の針なし注射器と半透明の筒を中を満たす発光色である水色の液体。

 

「‥‥この液体は……何もかもお見通しってことか。あの人、本当怖いな」

 

乱暴な文字で書かれた置き手紙の中にはウェル博士らしい言葉で、上から目線な説明が書かれていた。

この液体はウェル博士が研究を続ける中で作り上げた、小時間だけ聖遺物との融合を抑える薬らしい。

 

その薬を作り上げた張本人とはついさっき顔合わせをしていた。

 

「‥‥そういえば、ここちゃんが連れた精霊の中に居たよね」

 

つまり、そういう事なのだろう。

あの悪趣味な研究をしている最中に、それとも外を歩いている時なのか……精霊の襲撃に遭い、命を落とし、ここちゃんの手によって、精霊へと作り変えられたとーーまぁ、ともかくこの薬は正直助かる。

 

「‥‥これで少しは身体を動かせる。姉様達に何を残せる」

 

僕は一個を手に取ると首筋に突きつける。そして、中にある液体を注ぎ込んだのだった。

そして、突き出ていた花青緑色の結晶が身体の中に引っ込んでいくのを見て、僕はふぅ……と息を吐くと唇を噛みしめる。

 

これから僕が行う事は単なる悪あがきなのかもしれない。ここちゃん達を止めることすらも出来ずに、僕は命を落としてしまうかもしれない。

しかし、これから僕が集まるものはこの世界にも、姉様達の未来(これから)に必要なものなのだ。

 

「‥‥だから、もう少しだけ僕に力を貸して、ミョルミル」

 

 

 

その後、少女・暁 歌兎は人知れず、残された彼女ら……奏者達が反撃出来るように少しずつ、限りなく少しずつ人物や道具を集めていく。

それらが奏者達の力になるように、この世界をいい方へと導けるように、と信じて。

 

そんな暁 歌兎の少しずつの行動は破壊の道を辿りつつある世界をいい方へと導いていた。

そして、もう少しで反撃の武器が揃うと思った矢先の事だった。

 

暁 歌兎が何者かの襲撃を受けたのだった。

力無く地面に倒れこむ華奢な身体に深々と突き刺さる刀、そして地面に溢れ出るドロドロと粘り気のある赤い液体。

 

それが指すのは、暁 歌兎の命が消えかかっているという事だった。

 

 

 

「はぁ…っ、…はぁっ……はぁっ……」

 

朦朧とする。意識がはっきりしない。

吐き出した血が地面に染み込むのを見ながら、僕は力が入らなくなった身体をなんとか微かに動かす。

 

(あはは……博士が作ってくれた薬もきれちゃったみたい……)

 

右太ももに括り付けていたポーチから薬を出そうとして、中身が空っぽなことに気づき、苦笑いを浮かべる。

 

「‥‥できるかぎりのことはした。あのひとたちがねえさまたちのちからになってくれるのなら……もう、ぼくのやくめはーー」

 

力無く開いている……光なく濁った黄緑色の瞳から溢れてくるポロポロと透明な雫が頬を濡らす。

 

「ーーない。でも……し……にたくない、な……。……ねえ、さまにもういちど、あいたか……った……。うた、う……がんばった、ですねって……だきしめて……あの、たいようのように……あた、た……かい……えがおで……でむかえてほし……かっ、た……」

 

力が無く濁った黄緑色の瞳がゆっくりと閉じていく。

 

「………………ね……えさ、ま………あいたい………よ………………」

 

そして、完全に閉じきった瞳はもう二度と開く事はなかった。

 

 

 

これは残りすくない余命を大切な人達へ、世界へと捧げた幼い少女の誰も知らない物語。

 

最後の最後に少女が何を思い、何を考え、何をこの世界に残したのか。

その残したものはこの世界の不運を幸運に変えるだけに力があるのかーーそれはその世界に生きている者しか分からないことだ。

 

そして、少女・暁 歌兎が静かに息を引き取った数十分後、その場所に駆けつけた歌兎の姉・暁 切歌や奏者達・雪音 クリスとセレナ・カデンツァヴナ・イヴはその壮絶な死に様を晒す歌兎の姿に腰を抜かすように地面へと倒れこむか立ち尽くす。

 

 

 

「……なんで、どうして……っ、どうしてなの、歌兎ぅ……。あたしは……貴女が遠い何処かでも生きていてくれれば、それだけでいいのに……なんで…こんな……あんまりデスよ……」

 

のろのろと地面に放り投げられている小さな手を胸抱く切歌。

胸に抱くその手は僅かに温もりが残っていて、ほんの数分前まで妹が生きていたことを示している。

 

「ゔうっアアアアアアアアアアーーーーッ!!!!」

 

もう少し早く着いていれば、自分にもっと力があれば、妹一人だけに負担を掛けずにいられたのに。

妹の優しさに甘すぎていた自分自身に嫌気がさす。

 

気づくと切歌は地面に自分のおでこをぶつけていた。

ゴツンゴツンと何度も何度も、慌てて止めに入るクリスやセレナを押しのけて、ただだだ未熟な自分を罰する為に地面におでこをぶつける。

 

「なんでッ!どうしてッ!あたしはこんなにも無力なんデスかッ!!ちっぽけなんデスかッ!!どうして、こんなにも……役立たずなんデスかぁああああ!!!!」

「おいやめろって、このままじゃあお前だって死んじまう」

「死んだって構いませんッ!歌兎を救えなかったちっぽけなあたしなんか居なくなっーー」

 

泣き喚く切歌の頬に鋭い痛みが走る。

唖然とした様子の切歌の黄緑色の瞳には泣き出しそうな顔で右手を振り上げるセレナの姿ある。

即ち、切歌の頬をビンタしたのはセレナということだろう。

 

「ーー居なくなってもいいなんて、簡単に言わないでください、暁さん。そんな悲しい事言わないでください」

「……セレナ」

 

切歌の両手を掴んだセレナは歌兎に視線を向けながら語りかける。

 

「暁さんが後を追うことを歌兎ちゃんは望んでません。歌兎ちゃんはきっと暁さんに生きて欲しいって願ってるんです」

「……でも、あたしは……」

「生きる力が湧かないというのなら、私が暁さんの生きる意味になります」

「……意味が分からないデスよ、セレナ……」

「貴女が好きです、暁さん。ずっと前からお慕いしてました」

「……へ?」

 

切歌ははっきりと告げられた愛の告白に目を丸くし、マジマジとセレナの顔を見つめる。

そんな切歌から離れたセレナは無線に向かって話しかける。

 

「シャロルさん、聞こえますか?」

『ん? あぁ、聞こえている。用件はなんだ』

「歌兎ちゃんのミョルミルを私達のギアにくり込む事って可能ですか?」

『どういう意味だ?』

 

さっきまであくび混じりに答えていたキャロルの声が一気に鋭さを増す。

その無線越しにも発せられる圧力に負けずにセレナは続ける。

 

「歌兎ちゃんのミョルミルは"あらゆるものを砕く力""必ず手元に戻ってくる力"を持っています。この力を暁さん、雪音さん、私のギアに……アームドギアにくり込む事さえ出来れば幅広い攻撃が展開できると思うんです」

『無茶苦茶言ってくれる』

『しかし、セレナさんの言うことも一事ありますね。歌兎さんが集めてくれた物の他にももう一手打っておくべきかと……だから、キャロル』

『ハッ、好きにしろ。俺は出来る限りのことしかしないからな』

『良いそうですよ、セレナさん』

「ありがとうございます、シャロルさん、エルフナインさん」

 

 

 

不運しか用意されていなかった世界はゆっくりと幸運を掴もうとしていた。

少女がゆっくりと集めていた反撃の品がやっとその力を発揮する時が来たのだった。




今回の話は、ハードラブ・ミッションの歌兎ちゃんの最期とこれからの切ちゃん達の事を接点を当てて書いてみました。
前書きにも書いたと思うんですが、今回の話も前回の話でも書いている最中に泣きました(涙)
やはり、人一人が亡くなるというのは、文章の世界とはいえ心にくるものがあります、歌兎は自分が生み出した子でもありますしね(大涙)
また、最後の最後でセレナちゃんが切ちゃんに告白するシーンはもっと後にしようかなぁ〜と思って、考え抜いた末に追加したものです。
地面におでこをぶつけ続ける切ちゃんが見てられなく、助けてあげたくて……貴女にはこんなにも思ってくれている人が居るんだよって(微笑)

さて、間に合えば1月1日、間に合わなければその週のどれかに更新しようとしている『ー3ー』は今回がハードラブ・ミッションの世界での出来事を書いたので、原作の方の切ちゃん達の話を書こうと思ってます。

なので、ハードラブ・ミッションでの切ちゃんとセレナちゃんがこの後どうなったかは、読者の皆さんの頭の中でご想像を膨らませてください(微笑)
ー4ーから本格的にイチャイチャ出来ると思うので!!といいますか、するので!!(やる気満々の私)




折角今年最後の日なのに、暗い気持ちで終わってはいけませんよねっ!
全体的に暗い話でしたので……(汗)

ということで、久しぶりの雑談コーナーです!

XDの神運営様から【アプリを解析を行い、未公開となる情報をブログ等に掲載する。取得した音声データ等を公開する】といった行為は個別に対応させてもらうとお知らせにて書かれていたので……雑談コーナーと言いつつも、私自身、何処まで書いていいのか、分からず手探りなのですが、ネタバレにならない程度に書いていこうと思います。

ひとまず、もうクリスマスは終わってしまったんですが、クリスマスに関する二つのイベントについての感想です。
私が言うことはただ一つです、もう切ちゃん可愛すぎかよ(デレデレ)
イベントシナリオが始まって終わるまでずっと私ニヤニヤしてましたよ(笑)
切ちゃんの為を思って、翼さんが失敗する前提で聖唱を行い、クリスマスギアを纏ってしまうところとかもう……って感じでしたね。
やはり可愛いは正義デス!!

と、そのシナリオで気になるセリフがあったんですよ、それが調ちゃんの『切ちゃんの動物的勘、侮れない』なんですけど……切ちゃんだけの所でエルフナインちゃんからの情報を計算している切ちゃんや探偵的な推理を立てていく切ちゃんが見られたと思うんですけど……あれ全てを動物的勘で切ちゃんは行なっていたの!?っていう驚き(笑)

このシナリオの切ちゃんには驚かされたり、ニヤニヤさせられたりばっかりですよ(笑)


【双翼のシリウス Ver.wing beat】はもう前よりも格段にパワーアップしたシナリオ、そして途中で流れたあの映像と共にクライマックスはテンションがうなぎ登りでした!!(大興奮)
また、新しく追加された【双翼のウィングビート】は今の奏さんと翼さんだからこそ唄えた曲、歌詞だと思いました。多くは語れないですけど、本編でこの曲が流れた時は泣いてしまいました(涙)
……6年って早い。


また、皆さんは【年末記念ユニゾンレインボーガチャ】は引かれたでしょうか?
私は新イグナイト切ちゃんにほぼつぎ込んでしまったので、掻き集めて一回だけ回したんですけど……何故ここでマリアさんッ!?(嘆)
マリアさんの性格や情熱、キャラクター共々大好きだけど……ここはユニゾン切ちゃんに来て欲しかった(涙)

まぁ、来てくれたのは甲冑マリアさん、私が愛してやまない"和"ですからね……大切に育てていこう、うん。
しかし、ここ最近マリアさんとクリスちゃんの当たる率が多いんですよ、私(笑)
なので、うちの陣地は切ちゃん・マリアさん・クリスちゃんが多いという……そういえば、思わぬ所で和を纏うマリアさんを集めきってしまった……ほんと有難い事です(微笑)

来年のイベントはどんな切ちゃん、セレナちゃん。みんなに会えるのでしょうか?
また、いつかまた復活してくれるユニゾンガチャで今度こそ切ちゃんをゲットしたいと意気込む私でした。



さて、長々と雑談を申し訳ありません(礼)
来年も更新がまだらとなる思いますが、【うちの姉様は過保護すぎる。】の応援をよろしくお願い致します(土下座)

過保護な姉様は来年も妹大好きっ!元気いっぱいっ!で物語を引っ張ってくれ、歌兎はそんな姉様に振り回されながらも幸せな日々を過ごしていくと思いますので……私は二人の可愛さが読書の皆様に伝わるように文章を書いていこうと思います。


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【うちの姉様は過保護すぎる】をお気に入りしてくださった方、評価してくださった方、感想を書いてくださった方ありがとうございます(土下座)


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