~If story~小さく咲いたこの恋が (リョウㄘんㄘん)
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~If story~小さく咲いたこの恋が

11巻のあたりからの小野寺ルートへの分岐を想像して書いてます。時系列や呼び名が若干違う可能性がありますがご了承ください。


「なぁ、楽」

「なんだよ、集」

話し掛けてきたのはオレの(一応)親友の舞子集である。今はちょうど夏のとある日の帰り道でオレはその集と一緒に帰宅しているところだ。

「お前ってさ、最近記憶無くしてたよな?」

「まぁな」

そう、オレはどうも最近あの一件(詳しくは87話ナンノヒを見てね☆ss作者より)で記憶を無くしてたらしい。その時の記憶も殆ど無いからオレには全くさっぱりなのだが...

「その時にさ、なんか昔のこととか思いだしたのとか覚えてないわけ?」

「どういうことだよ?」

「いやだからさ、記憶喪失中の自分なら記憶喪失した部分も出てくるかと思ってさ」

「そーだなー...ぶっちゃけ、あの時の記憶って全く...いや...ちょっと待てよ...」

「なんか思い出した?」

「...小さい手に...銀色の何か...ハートに...十字架の...?」

「うんうん?」

「ダメだなんだろ、モザイクがかかってる感じで上手く思い出せねぇ...」

「うーん、駄目かぁ...わんちゃんなんか思い出して運命の再開!ってなったら面白かったろうになぁw」

「そんな簡単に思い出せたらとうの昔に思い出してるわ」

「まぁ小さい手ってことは子供の頃だろ?ハートと十字架の何かが記憶の『鍵』だって思い出せただけでも進展じゃない?」

(ん?なんか今、一瞬違和感が...?)

「それもそうだな...」

その後は他愛も無い話をして普通に帰った。

 

(だぁぁぁあー!!!!!なんかやっぱもやもやする!!!)

就寝準備を済ませ寝床に入ったオレは1人寝付けず考え事をしていた。というのもあのモザイクがかかったような昔の記憶が気になって仕方ないからだ。やはり何か大切約束をした相手、気になるのも無理はないだろう。ずっとそのモザイクについて考えてた。

(銀色の...ハート...十字架...うーん...あの集の言葉に違和感があったのも気になる...うーん...)

その日はそのまま眠れずに一夜を過ごした。

 

次の日の朝、オレは寝不足だがいつも通りに家を出た。当然のことだがめちゃくちゃ眠い、が授業を受けないわけにはいかないので重い瞼を必死に持ち上げつつ学校に向かった。すると後ろから声を掛けられた。

「一条くん、おはよう」

「小野寺、おはよう」

こうして朝の挨拶をしてくれたのは俺の好きな...じゃなくてクラスメイトの小野寺小咲だ。今日も相変わらずかわいい。

「一条くん眠そうだね?寝不足?」

「そうなんだよ、昨日ちょっと考えてごとしてて...」

「大丈...わわ...っ!?」

と、言ったところでいきなり小野寺が道路の段差につまづいて転びかけてしまったところを腕で抱き寄せる。

「大丈夫か!?」

「うん、ごめんね、ちょっとぼーっとしてて...あの...もう大丈夫だよ...?///」

「?...あっ、えっ、あのそのっ、ごめん!(シュッ」

互いにそっぽを向き照れる。

(小野寺の身体、柔らかかったな...ってそうじゃなくて!!!)

「ほんとに大丈夫か?」

「うん、ちょっとびっくりしただけ。...一条くんが受けとめてくれたから...ね?///」

(真っ赤になってる...かわいい///)

そうして小野寺は少し乱れてしまった身だしなみを整えだした。俺は立ち止まってそれを待っていると、ふと道路に光った何かが落ちてることに気がついた。

「小野寺、あれ...」

「あっ...」

そこに落ちてたのは小野寺のバッグから落ちてしまった鍵だ。確か前に古い本棚の鍵とか言っていた様な気がする。銀色の頭の部分がハート型であり先端が十字架のマークで出来ている。

「あっ!これは!あのあの!また古い本棚の鍵間違えて持ってきちゃって!!!」

そこでオレは何かに気づいた。昨日からずっと持っていた違和感に。

(銀色の...ハート型...十字架...!!!)

「おっ、小野寺!!!」

「ひゃい!?」

「それ、見せてくれないか!?」

「あっ、えっと...ど、どうぞ...」

小野寺が俺の気迫に負けてその鍵を見してくれた。銀色のハート型の十字架マークの鍵。そう、それを見て俺は...一つ一つのピースがはまるのを感じてた。

(どうして小野寺を見た時、その笑顔を見た時、約束の女の子と重なったのか。どうして俺はこの鍵を知っていたのか。どうして集のあの言葉に引っかかりを覚えたのか、集はあの時言ってたじゃないか「記憶の『鍵』」と、どうして気づかなかった...!?)

(今なら分かる...!小野寺が俺とのこの鍵と鍵穴の約束の女の子なんだ...!それなら全て納得がいく...!)

「あの...どうしたの...一条くん...?ずっと考え込むように...」

「あっ、ごめん小野寺!これ...」

「なんかよく分からないけど...?とりあえず大丈夫かな?」

とりあえずずっと持って凝視してしまっていたその『鍵』を返す。

「あっ、あの!!!」

「?」

小首を傾げて本当に不思議そうにする小野寺。

(いや待てよ、これ本当に言っていいことなのか...?オレからすれば昔から好きな相手との再開だけど小野寺からしてみれば子供の頃の口約束だけのもので迷惑かもしれない...それに小野寺にもし今好きな人が居るなら罪悪感に押し潰されそうになって嫌々オレを選んでしまうかもしれない...)

「い、いやなんでもねぇ...早く学校行こうぜ」

「...?うん、そうだね」

(これは一度置いておいて、しっかり考えてみよう)

 

そして授業中、オレは授業そっちのけでずっとさっきのことを考えていた。

(小野寺だって好きなヤツくらい居るよな...可愛いのに告白されても全部断ってるって噂もあるくらいだし...)

言ってて凄く悲しくなってくる、こう自分が分かっていてそれを言えない、吐き出せないもどかしさや、1歩踏み出すことすら「一条〜」出来ない自分の情けなさった「一条〜!」らありゃしない。

(やっぱりこの想いとこの話は...)

「一条!!!」

「はっ、はい!?」

「授業聞いてなかったろ?」

「あっ...すいません、考え事をしてまして...」

「全くもう...じゃあ罰として教科書〇〇ページの部分から読んで」

「はい...これはーーー」

教科書の文を朗読しつつもやはり、オレはずっと考え事に耽っていた...。

 

「楽、どうしたのよ?普段は授業中は真面目に聞いてるのに今日はどっかうわの空で」

「そうだぞ、一条楽、休み時間もお嬢が話し掛けているというのにずっと空返事とはどういうことだ...!?(チャキン)」

こうして話しかけてきたのは恋人設定の千棘とそのボディガードの鶫なのだが...

「...えっ?すまん、なんの話だったっけ?」

オレの頭の中はあのことでいっぱいだった。

「はぁ...こんなに可愛いハニーが話してるのに聞いてないだなんて...」

「お嬢の話を聞かないだなんてどういうつもりだ?(ニッコリ)」

「いや、あの、本当に考え事をしてたんだ...すまん...」

「アンタ悩み事でもあるの?私で良ければ...」

「大丈夫、大丈夫、別にそんな悩みなんてない。ただ今日はちょっとほっといてくれないか?今はちょっと」

「そういう気分じゃないと、しょうがないわね。鶫、帰るわよ」

「え?でも、いいんですか?お嬢...あれ」

「いいのよ、たまには彼氏の言う事聞くのも彼女の役目でしょ?ほっといてあげましょ」

「すまん、助かる」

「ただーし!休み明けも同じ感じだったら何が何でも聞き出して解決してやるんだから覚悟しといてよね!」

「お、おう!それは大丈夫だ!」

そんなやりとりをして千棘と鶫は帰り支度をする。

(気を使ってくれた...んだよな?)

「千棘!」

「なによ?」

(だから今は出来る限りの感謝と笑顔で)

「ありがとう」

「ふんっ!バーカ///」

とだけ言い残して去っていってしまった。

「はぁ...」

一人になった教室でため息をつく。

(やっぱり、今のオレ、皆に気遣われるくらい重症なんだな...早くなんとかしないと...)

 

〜小咲side〜

「はぁ...」

一条くんがため息をついてるのを端っこあたりでこっそり眺めていた。

本当は私も声を掛けようと思っていたんだけど、千棘ちゃん達が先に声をかけてしまったので、出ていくタイミングを逃してしまってた。

(私、本当にダメダメだな...)

ほんとは休み時間も一条くんが元気が無いことがずっと気になってて話しかけるつもりだったのが、勇気が出ず話しかけられずじまいなところで千棘ちゃんが話しかけてくという同じパターン。今の状況もほぼ同じだ。

(でも一条くん...本当に何か悩んでるみたい...朝から様子が少しおかしいとは思っていたけど...やっぱりここは悩み事がないかだけでも聞いてみないとダメだ)

「一条くん」

「うわっ!?小野寺居たのか!」

「うん、一条くん、ずっと何か悩んでるみたいだったから気になっちゃって」

「いやいや、ほんとに大した話じゃないから!」

「本当に?顔色悪いけど大丈夫なの...?」

と言いながら顔の方に手を伸ばし

『パンッ』

私の伸ばした手は一条くんの手に払われてしまった。

「えっ...?」

「あっ、あの、えっと...その、ごめん!」

一目散に駆け出してしまう一条くん。追いかけることも出来ずに私は1人呆然と立ち尽くしていた。

それから少し経っただろうか?いつまでも教室で立ったままのわけにもいかないので私は考え事をしつつ帰路についていた。

(一条くん...私が手を伸ばした時怖い顔してた...嫌われちゃったかな...)

(千棘ちゃん、凄いな...私が出来ないことも全部出来ちゃう...沈んだ一条くんを笑顔にしたり、元気がない一条くん相手に話し掛けてたり...)

そしてふと思う。私が一条くんと付き合うより千棘ちゃんの方が幸せじゃないかと。

(私、ダメダメだし...千棘ちゃんに勝ってるところなんて無いし...)

そう、私はダメな人間だ。千棘ちゃんの後でなければきっと気になりつつも勇気が出ず、話し掛けることすら出来なかったと思う。一番最初に異変に気付いていたのに。姑息で卑怯だと自分でも思う。そんな女の子と付き合っても幸せにはなれないだろう。

(何よりも...一条くん、千棘ちゃんと居る時の方が幸せそう...)

さっき見た千棘ちゃんに向けた笑顔を思い出す。心からありがとうと思ってるのが伝わってきた。それに比べて私は問い詰めて一条くんにあんな顔をさせてしまった。

(やっぱり私、一条くんのことは...)

私だって勿論一条くんは大好きだ。しかし私は私自身が幸せになるより、自分が好きな人が幸せになってくれる未来を選びたい。

(だから...)

 

(うわあああああ...あんな顔で優しく手を伸ばしてくれたのに何やってんだよオレ...)

激しい後悔と罪悪感に襲われつつ、帰路についていた。

(絶対嫌われた...いや、違うだろこれで良かったんだ)

そう、オレが嫌われることで、小野寺は幸せになれる未来が待ってるかもしれない。というのも理由がある。オレと小野寺が万一両想いだったとしても付き合っていく以上いつか約束の事はバレてしまう。そうした時、もしオレに不満を感じて別れたいと思っても小野寺はいい奴だからきっと罪悪感で言い出せなくなってしまう。

(それはどっちにしてもオレが小野寺の幸せを奪ってしまうかもしれないってことだ。そもそもオレのことを好きじゃないなら尚更だ。)

オレだって勿論小野寺のことは大好きだ。しかしオレはオレ自身が幸せになるより、自分の好きな人が幸せになってくれる未来を選びたい。

(だから...)

「...楽?何してんのこんなとこで、ナンパ?」

「...お前と一緒にするな、集」

「なーんか、今日ずっと悩んでたみたいだけど大丈夫?」

「あー、うん...別に...いや」

「ん?」

(こいつには散々オレの恋愛相談に乗ってもらってたしな、一応ちゃんと話しとくか)

「実はーーー」

俺は約束の女の子が小野寺だって分かったこと。でもそのことは話さず、小野寺はもう諦めることについてざっくり話していった。終始無言で聞いてた集だが、話し終わると突然

「はぁぁぁぁぁぁ...なんというかそこまでいくと怒り通り越して呆れるしかねーわ...とりあえず男子代表で1発殴っていい?」

「なんでそうなるんだよ!?」

「とりあえず確認したいんだけど」

「なんだ?」

「小野寺のことが今もずっと好き?」

「勿論、約束の女の子って分かっても分からなくても、このまま卒業して会わなくてもずっと大好きだ」

「でも小野寺は諦めると」

「そういうこと、俺は小野寺の幸せを奪いたくはない」

「分かった、じゃーなー」

「お、おう唐突だな...じゃあな」

うだうだ悩んでても仕方ない。とりあえずもう今日は帰って寝よう。オレは少し重い足取りで家に帰った。

 

あの後、帰って次の日の準備をすませてすぐ寝てしまった。自分の中でちゃんと決めたからだろう。しかし昨日の寝不足もあってまだ少し眠い。オレは寝床から「らぁぁぁあ!!!」起き上がれずにいた。「くぅぅぅぅう!!!」朝っぱらから何か声が聞こえるが何かあったんだろうか。そしてケツに凄い衝撃を感じ思わず飛び上がり起き声の聞こえる向きに体を向けるとそこには膝があった。

(あっ、これ既視感ってや)

最後まで考えさせてもくれずに吹っ飛んでいくオレの身体。

「いっててて...朝からなんなんだいったい...!」

ぎりぎり鼻血が出る程度で済んだ...助かった...

「朝から何なんだじゃないわよ!いい加減にしなさい!!!」

そう怒鳴りつけてきたのは千棘だった。

「はぁ???なんのことだよ?」

「あーもう!なんでもいいからちょっと外来なさい!!!話があるわ!」

「わけわかんねぇよ!?とりあえず説明をだな!」

「い・い・か・ら!」

強引に引きづられ外に出るオレと千棘。いったいオレが何をしたっていうんだ...?

そうして引きづられ外に出ると千棘から話し初めた。

「アンタ舞子君から全部聞いたわよ」

「全部って...もしかしてあいつ、全部喋ったのか!?」

確かに口止めとかはしなかったが、そこまで喋るようなやつだとは思ってもみなかった…。

「それで私は怒ってるの?わかる?」

「いや...でもお前は関係な」

「ある!!!なんで昨日ちゃんと相談してくれなかったの!?」

「それは...」

「悩んでるならちゃんと相談しなさい!仮にもあんた私の彼氏なんでしょ!」

「...すまん」

「それと!!!相手の幸せのためにって!違うんでしょ!」

「う、嘘なんかじゃ」

「そうね、嘘ではないわね。だってそれもあるから。でも一番の理由は違う」

「な、何が...」

「アンタ、怖いんでしょ?これを小咲ちゃんに話して、それで断られるのが」

「なっ...!そんなんじゃ!!!」

「ほら、図星突かれたから凄く動揺してる。言い分があるなら言い返して見れば?」

「...っ!」

「ね?」

そう、オレはこれを言って1歩進んでしまうのが怖かった。もしこれで小野寺が俺と距離を取ってしまったらオレは話せなくなってしまう。それならいっそ諦めて朝の挨拶だけでもしてくれる今の関係の方がいいと自分で自分を納得させてたんだ...

「私はね、楽のことが好き」

「...えっ?はっ?」

「だーかーら、楽が好き、2度も言わせんなバカ///」

「は???だっ、おま、唐突、しかも、そんな素振り」

「結構見せてたけど楽は鈍感だったからね、唐突じゃないし好きになったのも結構前」

「はぁぁぁぁぁあ!!??!?」

千棘からの突然の告白、もう訳が分からないし頭が真っ白だしどうすればいいんだ。

「私はね、楽が一生懸命頑張ってる姿が好き。いつも楽しそうに笑ってる笑顔が好き。でも」

「でも?」

「自分が我慢すればいいってすました顔で言い張って無理してる楽は嫌い。一生懸命になろうとすらしない楽は大っ嫌い。」

「千棘...」

「だから...だからね、私の好きな人の格好いいところ最後まできっちり演じてほしいな?...私のダーリン♡」

(あぁ、ようやく千棘の言いたいことが分かった)

つまり、素直になれってことだ。オレの諦めかけてた背中を押してくれてるんだ...

今までなんでこんな単純なことに気づかなかったんだろう。オレは小野寺が好き、これだけで良いじゃないか。建前なんかいらない。そんなのじゃどうにもならない。それは千棘との『ニセモノのコイ』で散々学んだ事だったのに...

「千棘、ありがとう。嬉しいけど、ごめん。」

「分かってる」

「オレは小野寺が好きだ」

「うん」

「だからさ」

「うん」

「さいっこうに!格好いい彼氏ってヤツを見してやるぜ!マイハニー!!!」

「...っ!!! うん!!!」

「話は付いたようだな」

「鶫?どうしてここに」

「私も舞子集から聞いたんだ。これから小咲殿の場所への案内を務めてやる。」

「そっか、じゃあ連れてってくれ」

「あぁ」

「千棘は?」

「最近クロード様の動きが活発でな。刺激しないためにもここに残ってもらう。」

「わかった」

「こんなバカもやしに会わなくてもいいなんてせいせいするわね!バシッと決めてきなさい!」

「おう!」

...

......

.........

「本当について行かなくて良かったの?」

「今更ついてってちょっかいだして何になるのよ、私は残るってそう決めたじゃない、舞子君」

「そうだね...辛い役回りになってごめん。」

「アンタがそう素直に謝るのも珍しいわね?」

「そうでもないよ。とりあえず俺は向こうにでも行ってるから我慢しなくていいよ」

「気を使うなんて生意気よ、舞子君の癖に」

...

「う...ぐすっ...うぅ...ひっぐ...ぅぅぅっぅう...」

 

「それで鶫」

「なんだ?一条楽」

「舞子のやつはどこまでを誰に話したんだ?俺らは今いったいどこに向かってるんだ?」

「あぁ、どこに向かってるかは悪いがぎりぎりまで秘密だ」

「そうか、分かった」

(秘密にするってことはそれなりの訳があるんだろう)

「で、舞子集についてだが、昨日の夜私含めお嬢、橘万里花、宮本殿が呼び出された」

...

......

.........

「こんな時間に集めてなんの用よ」

「お嬢に変なことをしようとしたら容赦しないからな?」

「寝不足はお肌の敵ですから早目に要件を言って頂いても?」

舞子集がそれぞれを確認し立ち上がると

「俺が頼むのは皆に頼むのも間違ってると思う。けど、頼む。俺の親友の為に協力してほしいんだ」

舞子集のいつもとは違う真剣さに思わず気圧されてしまった。とりあえず話だけでも聞こうということになり舞子集が一条楽のことについて話し出した。

「ーーーてなわけで俺の親友が後悔しそうな選択をしようとしてるんだ...俺は前に自分の後悔しそうな状況でアイツにケツ蹴っ飛ばしてもらって後悔せずに済んだんだ。だから...俺もアイツの後悔する選択肢は絶対に取らせたくない」

「「「...」」」

「だから頼む!!!」

真摯に頭を下げる舞子集はいつもとは違う真剣さを感じた。

「全くしょうがないわね...」

「お嬢?でも」

「私ね、楽のことも好きだけど、小咲ちゃんのことも好きなの。勿論友達としてだけど。だからその2人が両想いって言ってて片方が諦めようとしてるなら、どうにかしなくちゃ。それが私のダーリンっていうなら尚更よ」

「私はお嬢がそういうのでしたら...」

(わたくし)はいっこうに構いませんよ?」

「あれ?アンタは反対するかと思ったのに、意外ね」

「だって付き合いだしたらきっと倦怠期が来るじゃないですか!そこで横からかっさらえばいいだけの事!」

「アンタほんとブレないわね...尊敬するわ...」

...

......

.........

「といった感じだったぞ」

「相変わらずだな万里花...にしても集のやつそこまで必死に頼んでくれたのか...」

(後で感謝しとかないとな)

それで今気付かされて後悔しない選択を取れてるんだから。

「ちなみにだが朝一番で『蹴飛ばし返してくる!』と意気揚々に行ったのも舞子集だ」

「あれ集だったのか!...全然気づかなかった」

正直、あの起こされた時のケツの痛みは痔にでもなったレベルで痛かった。多分あの時のお返しも兼ねて全力で蹴ったんだろう。

(訂正、感謝した上でたこ焼き奢ってもらう、しかも高いやつ)

「お陰で目が覚めただろ?」

「そう...だな...色んな意味で目が覚めたよ」

「それは良かったな」

「あれ?でも今の話だと宮本がいないような?」

「舞子集が先に話をつけといたらしい」

「そっか」

...

......

.........

「協力するまでは良いんだが小咲殿はどうするんだ?」

「そこに関しては私がなんとかするわ」

とそこに現れたのは宮本殿だった。

「るりちゃぁん、遅いよぉー、俺を差し置いて彼氏?」

「遅れたことは謝るわ。ただ舞子君?調子に乗ってるとその眼鏡かち割るわよ」

「スイマセンデシタ」

「ただ、こっちもこっちで嫌な状況になってきちゃってるのよね…」

「「「「嫌な状況?」」」」

「小咲が一条君をあきらめるとか言い出したのよ。なんか自分は相応しくないだろうから。だって」

「それは困るわね...小咲ちゃんも絶対楽が好きなのは間違いないから意地張っちゃってるのかも?」

「そうね、多分意地張っちゃってるだけだから一条くんの前に出せば素直になるわ。そしてその仕事は私がなんとかするから安心して」

...

......

.........

「一条楽、そろそろ着くぞ」

「で、ここはいったいどこなんだ...?」

「駅を出れば恐らくすぐに分かる。あとそこに小咲殿もいるからそこからは2人で頑張ってくれ。私は駅で待っている」

「分かった。」

「私はな格好いいという感性がイマイチわからん」

「どうしたんだいきなり」

「自分が言われ続けたからだろうな。どうすれば格好いいと感じるかが自分ではよく分からんのだ。でもさっきお嬢にタンカを切って行く姿は凄く格好いいと思った。」

「...」

「だから、私にも見せて、教えてくれ。お前の格好いいところ」

「...! あぁ!」

「着いたぞ、ほら行ってこい」

「ありがとうな!鶫!」

俺は駅の外に向かって走り出した。もう迷ってなんかいられない。鶫に桐崎に万里花に集に宮本に、こんなにも応援されてるんだから。俺は駅のホームを抜けてーーー

 

~小咲side~

朝、お母さんから呼び出されると家の前にるりちゃんが来てるらしいので私は玄関に行った。

(どうしたんだろ、るりちゃん。まさか昨日のこと...)

ダメだ、私また優柔不断になってる。決めた事なんだから。

意を決して扉を開ける。

「る、るりちゃんどうしt」

「小咲、出掛けるわよ。準備しなさい」

「えっ?えっ!?いきなりどうしたの?」

「良いから早くして。謝罪ならあとできちんとするから」

「う、うん...?」

るりちゃんの理由の分からない行動を不思議に思いつつも、外に出る準備を済ませる。

「おまたせ」

「それじゃ、行くわよ」

「ちょ、ちょっと待って〜」

そうしてそのまま何個かの電車を乗り継いだ。

(るりちゃんどうしたんだろ...怒ってるのかな...?)

無言の電車内で考える。るりちゃんはいっこうに喋る気配がない。あんなことを相談相手に言い出したら怒るのも無理はない。当然だ。私は勇気を出してそれについて聞いてみた。

「るりちゃん」

「なに?」

「もしかして...怒ってる?昨日の」

「正直これまでで一番怒ってる」

「そっか...」

(決めたことだからしょうがないけど...どうしよう...)

「でも」

「?」

「私は何も言わない。それを言うのはこれから行くところにいる人がする事だから」

どういう事だろう。だいたいこの電車、今どこに居てどこに向かってるのかも分からない。

「これ、どこに向かってるの?」

「着いてみれば分かるわよ」

それ以上は何も聞けなかった。考えても考えても分からないるりちゃんの真意をずっと考えてるだけだった。

そうして何時間経ったのだろうか。とある駅に着いた。名前も知らないような田舎の駅だけど、どこか懐かしいようなものを感じた。

「小咲、ここから先は1人で行きなさい。私はここで待ってるわ」

「えっ?どういう」

「出ればきっと分かるわ。そこからどうするかは小咲次第」

そういうとるりちゃんはどこかにいってしまった。追いかけるにも足が結構早いので追いつけるわけもなく、仕方なく外に出るとーーー

 

そこは小さな野原だった、なんの変哲もないただの一面の緑。奥の方に寺の跡地のようなものが見える。それだけで私は全てを思い出していた。

(ここ...!あの約束の場所...!)

そう、私はここで男の子と約束を交わした。とてもとても、大切な約束。そうして少しぼーっとしていると後ろから声が、今いる訳が無い人の声がした。そうまるで昔のようにーーー

 

ホームを抜けるとそこには小さな野原と奥に寺の跡地、そして1人の綺麗な女の子が立っていた。その光景を見てオレは全てを思い出していた。約束の女の子とその想い出。気付けば後先考えず、その女の子の名前を呼んでいた。

 

「小野寺!」

「...い、一条...くん?」

小野寺はオレがここに来ることを知らなかったみたいだ。

「ど、どうして...」

「オレ、どうしても伝えたいことがあるんだ。だから、来た」

「...」

まだ少し困惑してるようだ。

「小野寺、少し向こうまで歩かないか?」

「...うん」

 

「「...」」

2人で、ただ無言で野原を歩いた。でもオレは思い出していた。小さな頃、この野原で小野寺と走り回ったこと。オレが転んだこと。2人で歌を歌ったこと。そんな些細な思い出が走馬灯のようにオレの頭の中で駆け巡った。

 

そうして寺の跡地に着いた。オレは覚悟を決めて小野寺に話しだした。

「オレ、分かってたんだ。小野寺が約束の女の子だって」

「えっ?」

「古い本棚の鍵...あれ、嘘だよな。ちゃんと見返して思い出した。アレは俺が約束の時にあげた鍵だ」

「うん...」

「そしてこの鍵のペンダントに絵本のおまじないをかけて、寺の跡地で書いた結婚届けを入れた」

「うん...思い出したよ、私もどうしてもって花を一つ入れた」

今思えば相当拙い結婚届けだったなと思う。小さな紙切れに汚い字で名前だけ書いて約束をした。それだけの子供の笑い話のような出来事。

「鍵、貸してくれ」

「うん...」

『カチャリ』

予想通り、鍵は小気味よい音を立てて開いた。

中からはちょっと茶色がかった汚い結婚届けと一輪の枯れた花が出てきた。

「...汚いな」

「10年も前の話だからね」

「くくっ」「ふふっ」

お互いに昔の思い出の品を見ながら笑っていた。

「ちなみに小野寺、それなんて花なんだ?」

「これはね、キキョウ、花言葉は『永遠の愛』」

「...約束にピッタリな花だな」

「私ね、この花と同じなの」

「?」

「永遠の愛、でも私にはその愛の相手に見合ってなかった...」

「そんなこt」

「あるよ!!!私は卑怯で姑息で勇気が出なくて話し掛けられなくて、笑顔には出来ないし、勝てるところが一つもないし...」

小野寺は涙を流していた。凄く辛そうな顔で、小野寺の口から一つまた一つと本音が零れだした。

「私はダメな女の子なの...でも好きな人には幸せになってほしくて、それで1人で思い出が枯れるのをずっと待ってるつもりだった。だから、私はこの花」

小野寺が胸に枯れ果ててしまったキキョウの花を抱え込む。

「...小野寺も同じこと考えてたんだな」

「.........小野寺『も』?」

「あぁ、俺も同じだ。約束の女の子の話をすれば小野寺はオレのことが例え好きでも違ってても罪悪感を覚えちまう。オレは自分の好きな人が幸せになっていて欲しかったんだ」

「...!でも、だって私さっきも言ったけど本当に卑怯で姑息で」「違う!!!」

「オレが聞きたいのは、そこじゃないんだ。オレさ千棘とニセのコイビトやってて学んだんだよ。建前なんかじゃ何も伝わらないって、本当の想いは言わないと、言葉に出さないと伝わらないって、千棘に教わった。なぁ...小野寺、小野寺はどうしたいか聞かしてくれよ」

「...! わ、私は...私は...!!!」

涙が雨のように落ちていく。オレはその間も小野寺の本音を待っていた。...どうしても聞きたかったから。

「私...うぅ...嘘ついてた...ひぐっ...この想いを枯らすことなんて出来るわけなかった...!進むのが怖かった!1歩進んだら、近付いたら壊れそうで...!」

もう我慢の限界だった。好きな人の涙を見て何もしないまま突っ立っていることなんて出来るわけなかった。勢いのままそっと胸に抱き寄せた。

「オレも...オレも怖かったんだ、相手の幸せとか色々理由を付けて結局、自分の本音を晒して断られるのが怖かっただけなんだ...」

「ぐすっ...へへっ、私達ニタモノ同士なんだね」

「そうだな...小野寺」

「なに?」

「俺は勇気を出せない小野寺が可愛いと思う。不器用でも、それでも頑張って自分の出来ることをしようとする小野寺が可愛いと思う。一生懸命になれる、そんな小野寺が凄いと思うし尊敬してる」

「ありがとう...凄く嬉しい」

「卑怯な小野寺だって頑張る小野寺だって一生懸命な小野寺だって皆小野寺なんだ、それら全部まとめて小野寺小咲っていう女の子なんだ、だから」

「...」

しっかりとこっちを見つめてくる、こっちもしっかり見つめ返す。あ、なんかこれ凄い恥ずかしい...

「1回しか言わないからちゃんと聞いててくれよ?」

「うん...」

 

「そんな小野寺が、10年前からずっと」

 

「好きです」

 

もうすっかり夕方だ。オレンジが差し込み、俺たちの影を写す。風が少し吹いて草の音が聞こえる。

 

「...うっぐ...うぅ...ありがとう...!...凄く...凄く嬉しい...!私も...私も...!」

 

「私も10年前からずっと好きです...!」

 

髪の毛が揺れて、笑顔で、しっかりとこちらを見つめながら言うその姿は...どんな芸術家の作品よりも綺麗だと感じてしまった。

「...!ありがとう、めっちゃ嬉しい...!」

小野寺と両想いとかめちゃくちゃ嬉しい。それこそ天にも上る気分だ。

「ねぇ、一条くん。これからは私、楽くんって呼んでもいい?」

「じゃあ...俺も小咲って呼ぶ」

「楽くん」

「小咲」

...シュボッ

蒸気機関車に負けない勢いで赤く頬を染めた俺たちはまだまだ恋人同士と呼ぶには初々しい感じが強すぎるように思えた。

 

少し時間が経ち俺たちはペンダントに入れる為に新しいキキョウの花を探していた。

「あっ、い...楽くん、これ、そうじゃない?」

「どれどれ?そうだな、流石お...小咲だぜ」

「...まだ少し慣れないね」

「これはこれからゆっくり...な?それにしても結婚届けの方はそのままで良かったのか?本物は無いけど汚くなっちゃったし、もう少ししっかり書いたやつでも」

「それは私と楽くんの一緒の想い出だから、ペンダントの中に大切にしまっておこう?」

「そうだな」

「楽くん...」

「どうしt...」

言葉を失ってしまった。小咲の顔が凄く近くにあって、唇からはとても柔らかい感触が、心地よかった。俺はただその感触を心ゆくまで堪能した。

「楽くんが悪いんだよ、そんなに無防備だから」

「小咲...!」

(ダメだもう我慢出来ない。いっぱいキスしたい。我慢してきた分、愛を込めてもっといっぱいしたい)

そうして小咲を押し倒した。

「楽くん...」

「小咲...」

互いに目を瞑り、顔を近づけてあと数センチというところで

 

「あー!!!何やってんのよあんたら!!!遅いと思ったらこんなとこで押し倒してるなんて!変態!!!」

「一条楽...不順異性交友は流石に看過出来んぞ...!」

「楽様に押し倒されるなんてズルイですわ!!!なんて羨ま...羨ましい!!!」

「おー、楽もついに卒業しちゃったかな?w」

「小咲ったら大胆ね」

 

目を開き互いに見つめ合うと

「「はぁ...」」

もはやテンプレか何かだ。結局、誰かとくっついたところでラブコメの神様はそう簡単に許してはくれないってことだろう。

「まぁこれも」

「私達らしくて良い、でしょ?」

「あぁ」

そうしてうるさい皆がいる所に俺たち2人は戻っていった。

 

2人で手を繋ぎながら。

 

この新たな関係になれた、女の子と共にこれから歩いて行こう。1歩ずつでも。2人なら、怖くないからーーー

 

これは

ニセモノのコイから

ホンモノのコイを知る

素直になれないそんな一途な2人の

ただソレダケの物語

 

〜Fin〜




くっそ後書きスペースちゃんとあるんかぁぁぁあい!←分からずに1回本文に書き込んでしまった人

というわけで如何だったでしょうか?「〜IF story〜小さく咲いたこの恋が」
まずはこのながったるいうえに稚拙な文章を読んでいただきありがとうございました。自分はこれが初ssなので上手くやれたか不安で不安でしょうがないのですが、なんとか書ききることができました。なので、ある程度下手くそだなとかここ文章おかしくね?とか誤字あるやんwとか思っても初めてなんだなと、生暖かい目で読んでいただけると幸いです。蔑みの目で見られてしまいますと私、(目が涙で)濡れてしまいます…///
それはさておき、まずは注意事項を。まず呼び方や時系列、なるべく原作遵守で単行本11巻あたりからルート分岐をイメージしてるのですが『かなり間違いがある恐れがあります』というのもニセコイ読んでたのが数年前なので...そこら辺は間違っていたら申し訳ございません...   
そしてどう考えても原作遵守じゃない部分があります。そうです、約束の場所についてです。これは私がどうしても仕込みたいものがあって、それで少しだけ改変しました。
ヒントは『小』さな頃、『野』原の『寺』の跡地で『小』さな恋の花が『咲』く、そんな話にしたかったからです。(読んでて気づいた人いるんかな?)
後はこの話を書く経緯をば。
まずこのssを書こうと思った経緯は私が小咲が好きで千棘ルートに納得がいってなかったっていうのがあります。私にとって小咲は初恋だったので、なんで小咲ルートじゃないのか、こんなんだったら良いのにって想像してたのをssっていう媒体を知り書こうと思いました。小咲ちゃん推しに伝われ!
ニセコイは遠回し遠回りが有名だったのでこのssではなるべく短くなるように必要な部分だけにしたつもりがいつの間にか1万字ちょい書いてました...。長くなって本当に申し訳ない...。あとエロゲとかラノベとかに影響されて微妙に似てる部分がありますがそこはご愛嬌ということで。
はい、というわけでこのあとがきもそろそろ終わろうと思います。眠いし!(午前3時半)もしこの話が良いなとか少しでも思ってくれた人が多ければ幸いです。感想待ってます、感想!!!待ってます!!!!!(大事な事なので二回言いました)

次回はオリジナルか艦これか(変わるかも)きままに書いていきたいなって思ってます。今回長かったから今度は短めでいきたいなぁ...(多分無理)

(*´∇`)ノシ ではでは、次の機会があれば


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ソノアト〜後日談〜

後日小野寺と楽のストーリーもへったくれもなくただイチャイチャしまくる話を糖分高めのゲロ甘至高で書きました。
キャラがブレまくってるきがしつつ書いた自己満足作品なので深くは追求しないでくだしい。


先日小野寺...じゃなかった小咲に告白してからというものの学校生活は少し変わったものになっていた。なんとなく小咲と話す回数が増えた気がする。朝の挨拶はもちろん登校してから放課後まで小咲と過ごす時間が圧倒的に増えた。学校のやつらからは嫉妬やらなんやらで追いかけ回されたりしたのだが、まぁそれは別の話である。

そうして過ごしてるオレには一つの願いが出来ていた。

(小咲とデートしてみたい...!)

そう、デートである。付き合って暫く経った彼氏としてはやはりデートでイチャイチャ過ごす時間を楽しみたい、っていうか可愛い小咲を見たい。

というわけで直球勝負、小咲をデートに誘ってみることにした。

(帰宅途中、オレと小咲以外は誰もいない。邪魔される心配もないし誘うならここしかない!)

 

「小咲」「楽くん」

 

「あっ...」「あっ...」

 

(小咲とタイミング被っちまった...!こんなことでちょっと嬉しくなってるオレはやっぱ小咲にぞっこんなのかなぁ...)

 

「あっ、あの...楽くんから言って」

 

「んじゃ…明日って休みだよな?」

 

「創立記念日で平日だけど休みだね」

 

「そこで提案なんだけど...あっ、明日オレとデートしてください!!!」

 

「...ふふっ」

 

「...?」

 

小野寺はオレを見て少し笑っていた。

 

「ごめんごめん。楽くんも同じことを考えてたんだなってちょっと可笑しく思えちゃって」

 

「『も』ってことは小咲も?」

 

「うん。だからね、私からもお願いします。私とデートしてください。」

 

「もちろん!」

 

それから顔を見合わせ2人で笑ってしまった。2人してなにやってんだろうと、ただ内心はこんなにも想い逢えてる彼女と出会えたことを心から嬉しくなっていた。

 

ーーーデート当日ーーー

(ああああああ!どう考えても早すぎたぁぁぁぁぁあ!!!)

待ち合わせの駅前、待ち合わせ時間は10時だが、目の前にある時計の短い針はその待ち合わせ時間より一つ前の数字を示している。もっと言ってしまえば今日オレはこの駅前でもう二つの数字が過ぎるのをこの目で見ている。何故そんなに早くから来てしまったのか。それは明日のことを念入りに考えてると(もし小咲が先に来て変な事故に巻き込まれたらどうしよう)や(もしオレが何かの間違いで遅刻してしまったらどうしよう)と不安になってしまったからだ。

(普通に落ち着いて来れば良かった...)

考えれば考えるほど当然だ。変な事故なんてある訳もないし、もし不安ならある程度早目に来ればよかったのだ。それこそ3時間前行動は無い。むしろバレたら引かれそう。

まぁ、ここまで来てしまったのなら仕方がない、あと1時間オレは頭の中で再び今日のデートのシュミレーションをしようと思ったその時だ。

 

「ごめん楽くん。待った?」

 

「いや、今来たと...こ...だ」

 

そこに紛うことなき天使が舞い降りていた。

 

天使もとい小咲は白いワンピース、肩にバッグというとてもシンプルな格好だったがシンプルだからこそ素材がものすごい活きている。俗に言うシンプルイズベストという奴だ。白のワンピースは小野寺の眩しい笑顔を際立たせ、天使っぽさを増していた。

正直なとこ、今少しこの世から飛び立ちかけた気がする。この天使にだったらあの世に連れてってもらっても構わないと思えるくらいに小咲は可愛かった。

 

「どうかな?その...変だったり...する?」

 

「変なわけない!すっごく!可愛い!」

 

小咲はボフッと頭から湯気が出たみたいに真っ赤になった。

 

「えっと...あの...その...ありがと///」

 

恥ずかしがりつつ照れる小咲はこの世の他の何もかも森羅万象どうでもよくなるくらいは可愛いかった。

そんな小咲を見てるとこっちも気恥ずかしくなってきた。

傍から見たら『幸せに爆発しろ』と言われそうなくらいとんだバカップルだった。

 

「じゃあ...行くか」

 

「うん」

 

駅から電車に乗り、遊園地まで少し歩いてるところで俺はとあることを思っていた。

(手...繋ぎたいなぁ...)

出来たてほやほやのカップルの彼氏としてはやはり思うものである。だがタイミングが掴めない。握ってもいいのか、相手は嫌がるのではないだろうか。負の連鎖が重なり結果として手も掴めない。

それでもなんとか勇気を出してそーっと手を近づけようとすると...

トッ

手に手が当たってしまい思わず手を引っ込めてしまう。何だか気恥ずかしい感じがして顔が赤くなる。

(あれ?今俺が近づけたのもあるけどあっちからも近づいてきたような...?)

ふとそんなことを思い小咲の顔を見るとあっちも顔が真っ赤だった。

(もしかして今、小咲も手を繋ごうとしてた...?ってことはまた小咲と同じこと考えてたのか...やっば...めちゃくちゃ嬉しい...)

相手もその気なら大丈夫だ。少しの勇気を絞り出して

 

「こっ、小咲!」

 

「なっ、何かな?楽くん」

 

「てっ、手を繋ぎませんか…?」

 

「...(ぱああっ)うん!」

 

やっぱり小咲は感情が顔に出やすい。凄く嬉しそうな顔してた。

 

「じゃあ...」

 

一応1回ズボンで軽く拭いて右手を差し出す。

 

「失礼します...」

 

小咲も左手をおずおずと前に出してきた。

右手と左手が触れ合う。触れ合った場所からお互いの体温が伝わってくる感覚を覚えた。

(小咲の手、小さいけど温かくて女の子の手って感じがする)

千棘とニセの恋人をしてた時も手を繋いだことはあったが、こんなに意識して繋ぐのは初めてだったので新鮮だった。

意識していると少し恥ずかしくなり赤くなりそっぽを向いてしまう。小咲の方をチラッと見てみると赤くなりつつそっぽを向いていた。

だけどお互いにどれだけ恥ずかしくても手を離すことは無かった。

 

ーーー遊園地ーーー

 

「着いた〜」

 

「遊園地なんて久々だな」

 

「私もだよ、何から乗ろうか?」

 

「小咲は何から乗りたい?」

 

「私は絶叫系とか怖い系じゃないなら良いかな。でも楽くんがどうしてもっていうなら...」

 

「いやいや、小咲の乗りたいのだけでいいよ。じゃあまずはぐるっと1周回ってみるか」

 

俺達は手をつないでアトラクションを見て回った。他愛もない話をしながらただ歩く、それだけのことだったのだが小咲がいるとそれだけのことがとても楽しい時間に思えた。

 

「見て見て楽くん!メリーゴーランドだよ!」

 

「懐かしいな。高校生にもなると滅多に乗らなくなったし」

 

「なら乗ってみよう!ね?」

 

「おう」

 

手を引っ張られ小咲とメリーゴーランドに乗る。

 

「それで、どこに乗るんだ?」

 

「えっと...その...楽くんさえよければなんだけど...」

 

「ん?」

 

「アレがいいの」

 

そういって示した指の向こうには白い白馬があった。

 

「分かった。それじゃ俺は...」

 

「そうじゃなくて...私と一緒に...アレに乗ってほしいの///」

 

つまり小咲が求めてるのは所謂2人乗りというやつだ。しかも白馬。顔が真っ赤になってるところを察するにつまりそういう事なのだろう。役になりきるため一つ咳払いをし

 

「ジュリエット、参りましょう。こんなところからは逃げ出してしまいましょう。そのために白馬で迎えに上がりました。さぁ」

 

と言って跪き右手を差し出した。

 

「はい。ロミオ。こんなくだらない現実など捨てて逃げ出してしまいましょう。貴方とならどこへだって怖くない。私を連れ去って、ロミオ」

 

差し出した右手を小咲が受け取り2人で白馬に乗った。

と、ここまでは良かったのだが…

ここで致命的なミスに気づいた。否、気づいてしまった。俺が前に乗って後ろの小咲が手を腰に回して乗る。この時点で勘の良い人は気がつくだろう。そう小咲の豊満な感触を背負ってしまったのである。これはまずい。何がまずいかって少しでも気を抜けば俺のロミオが愛の化身と化してしまう。それだけは何としても避けなければならない。

気を逸らすため、俺は小咲に話を振った。

 

「即興で考えた台詞だったけどこれで良かったのか?」

 

「うん、ありがと。楽くんがその役で私を白馬に乗せてくれたの、凄く嬉しい」

 

「なら良かった」

 

「楽くんは私の王子様だよ...///」

 

そう言って小咲はそっと体重を乗せてきた。普段なら全力で喜びを噛み締めるところだが、今はまずい。攻撃力を持った豊満なそれが2つ、背後から攻めてきた。結果俺は回ってる間、色即是空空即是色を頭の中でループさせることだけを考えた。悲しいかな、高校生で色即是空を唱えつつメリーゴーランドを回るという奇妙な体験をしたのは世界広しといえど、なかなか稀に見る体験だったと思う。

 

「そろそろお昼だな」

 

「そうだね、何食べよっか?」

 

「普通にレストランに入ればいいんじゃないか?ほらちょうどそこに」

 

「ほんとだ、じゃあ入ろっか」

 

遊園地内にあるレストランに入る。そこはまぁ、凄くよくある、遊園地のレストランだった。そして小咲と席につき適当に注文を済ませ、その注文の物が届いた。

俺は注文したものを食べている途中、小咲がこっちをジッと見てることに気付いた。

 

「ん?俺の顔になんか付いてる?」

 

「ううん、そうじゃなくて...///」

 

なんだかもじもじして顔を赤くしてる。本当にどうしたんだろう...?

 

「うん?」

 

そうして小咲は自分の料理をスプーンで掬い上げるとスッとこっちに寄せてきた。

 

「あっ、あーん///」

 

「!?」

 

これは古来より伝わりし初心な男子高校生を殺す秘技「あーん」...っ!?

とっ、とりあえずこれでこのあーんを受け取らないわけにはいかない。口を開け食事を食べる。

 

「どっ、どう?」

 

「美味しいよ、急でびっくりしたけど」

 

「ごめんねもしかして引いちゃったかな...?」

 

「まさか、でも今日はなんだか積極的だなって」

 

そう。今日の小咲はやたら積極的な気がする。恋人ならまぁ当たり前のような気もしなくもないが、それにしたって今までの感じから比べるとちょっとした違和感を覚えていた。

 

「だってやっと楽くんの恋人になれたから...今まではずっと想像の中だけでしかこんなこと出来なかったけど...もしかしたらちょっと浮かれてるのかもね...えへへ...」

 

そんな恥ずかしいことを嬉しそうな笑顔で語ってくれた。嬉しかった。積極的なのも。浮かれてくれてるのも。俺と同じだったから。

 

「嬉しいよ、小咲も同じこと思っててくれて。」

 

「ふふっ、そっか。私達やっぱり似たもの同士なんだね」

 

「くくっ、そうだな」

 

2人で顔を見合わせてやっぱりなんだか可笑しくって、2人して笑いあってた。楽しそうに食事するその姿はどこから見ても紛うことなき幸せそうなカップルだった。

 

ーーーーーーーーーーー

楽しい時間はあっという間にすぎる、まさにその通りだと思う。もう日は傾き始め、俺達は最後にと観覧車の列に並んでた。雰囲気の通りと言うべきなのだろうか、俺達以外は家族連れかカップルかといった感じだった。

 

「お次のお客様どうぞ〜」

 

「「...」」

 

先程までの楽しげな雰囲気はどこへやら。緊張で手が汗ばみ息が苦しい、胸はこれでもかというほど高鳴っていてもうどうにかなってしまいそうだった。

 

2人で乗り込み微妙に距離のある位置に座る。その距離感が2人して緊張しまくってるのを如実に表していた。

 

そして観覧車は動き出す。外の景色が小さくなる。

(やっぱりここは俺から喋らないと...っ)

 

「「あのっ」」

 

「「...」」

 

「「っ」」

 

同時に吹き出した。お互いに緊張しまくってたのは分かってて、お互いに自分からと思って、お互いに同じこと考えて。今日はこんなこと続きだったのにまたやってしまったことが可笑しくてしょうがなかったのだ。

ひとしきり笑ったあと

 

「楽くん」

 

「ん?」

 

顔を見上げると

 

小咲の顔が目の前にあった。何が起こったか分からなくなる。口には柔らかい感触。暖かくて甘い、そんな何かに俺は夢中になった。

 

「ふふっ、2回目...だね?」

 

「...ぅぁ」

 

「楽くん顔真っ赤だよ」

 

「そういう小咲こそ」

 

やっぱりなんだかんだで俺達はどこまでも似たもの同士だった。

でもやられっぱなしじゃ居られないから

 

「大好きだぞ小咲」

 

「...っ///」

 

キスをし返す。外の景色なんてもうどうでもよかった。小咲の柔らかい唇の感触をただ楽しんだ。

 

「ずるいよ楽くん...そうやって私にもっと好きにさせるの」

 

「俺にとっては小咲の方が可愛すぎてずるいけどな」

 

「〜〜〜っ///」

 

もう観覧車はほぼ地面のところに来ていた。俺が出ようとすると小咲が出る前に耳元に近付いて

 

「でも、そういう貴方が大好き」

 

差し掛かる茜色の光が俺達の頬の赤を誤魔化して。




6月15日、小咲の誕生日でっせ。おやっさん!
何かしら書こうかなと思ったら昔書きかけてた後日談がまだ残ってたので書き上げて今に至ります。
というわけで後日談です。いかがだったでしょうか
正直今回の出来はかなりイマイチです(震え声)自分で読み返したくないくらいキャラがブレまくってるからです。小咲は大胆なとこもあったから恋人になったらってことを考えるとまぁわかるんですけど、楽が楽じゃない気しかしない。まぁ許してくだしぃ...
中身は前のと違い中身もへったくれもないただいちゃいちゃするお話です。需要あるかな...?wいやないな(確信)今回は俺がちょっと書きたくなったっていう気まぐれで書きましたので完全に自己満足なんですよ。
と、それはさておき色々と話したいことがあるのでちょっとだらだらと駄文書きます。
まずモンスト、禁忌作ったやつ絶対許さん殺す(11止まり)
エロゲ、ワガハイ終わらせて恋愛ルセットやってます。最近はBGM聞くのも趣味になりました。ワガハイも恋愛ルセットもいいゲームなのはさることながら曲も素晴らしいです。
大学忙しくて書きたいことはいっぱいあるにもかかわらず脳が回ってないのが辛い。とりあえず次はアズレンでなるべく早くあげる予定です。がむばります。
ぶっちゃけこの後書きとか本文とかも講義中に講義片耳に仕上げてます☆
と支離滅裂な駄文を書いたからもういいですかね、そろそろ終わります。これは投稿するけど先程も言った通り自己満足でしかないので見直したりしない!めんどいから!

それでは次は多分綾波のアズレン話で
(*´∇`)ノ ではでは~


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