蒼き天使と女神達 (エルシオンガンダム)
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第1話:女神との出会い。
――どうして――
――どうして僕は――
――この世界に、生まれて来たんだろう?――
『キラ・ヤマト』
彼の心はもうボロボロだった。ジェネシスの余波によって彼は一度死に、別の世界で転生した。最初こそは何がなんだか解らなかったが、至大に慣れていき平和に暮らしていた。
しかし6歳になった次の日、一発のミサイルが彼の平和を壊した。
『キラ・・・強く生きて。そして何時までも優しい子でいて』
キラの両親は、そう言って彼を庇って死んだ。キラは二人が庇ってくれたおかげで軽症で済んだが、また心に大きな傷が刻まれた。
だが悲劇はこれだけではなかった。
インフィニット・ストラトス
篠ノ之束が作り出した、現存するあらゆる兵器を凌駕する存在。
だが、この兵器には欠点があった。
それは、女にしか反応できないこと。
その影響もあり世界は女尊男卑の風潮に染まっていったのだ。
キラもまた、その被害にあった。
政府はキラの両親のことを世間から抹消しててしまい、キラの両親を殺した白騎士事件の犯人である篠ノ之束と織斑千冬は世間から崇められる。
キラは学校に行けば、女子生徒や女教師達にいじめられた。
「屑の分際で生きているんじゃないわよ!」
「あんたなんか死んじゃえば良いのよ!」
罵倒されて、殴られて、蹴られ、果てにはバットで殴られ銃で撃たれたりすることもあった。
それでもキラは憎むことも、恨むこともしない。
前世での戦争と両親との約束もあり、そんなことをしてもなんの意味もないと自分に言い聞かせていた。
だからこそ、キラの心のダメージは増え続けたのだ。
そんなことが半年も続き、キラはどこかの森を彷徨っていた。家は女尊男卑の女たちが売り払ってしまい、キラは無一文になってしまったのだ。
「どうして・・・」
キラはどうして自分が転生したのかがわからなかった。大切な人達が目の前で殺されて、それなのに自分が生きているのはどうしてなのか解らないのだ。
「みんな・・・」
思い出して来るのは、前世で共に戦った仲間たちと愛する者達だった。
「僕・・・もう解らなくなっちゃった。何のために生きてきたのか、もう・・・」
涙を流しながらキラは呟く。もうどうすれば良いのか解らない。今までなんの為に生きてきたのかさえも・・・。
そんなことをしながら歩いていると、目の前に洞窟が見えてきた。
「洞窟?なんでこんなところに?」
洞窟を見つけたキラは、その中に入ることにした。なぜだか解らないが、此処に入ってくれと呼んでいるようだったのだ。
洞窟を抜けると、そこには遺跡の様な場所と、スマートフォンの様な物が浮いていたのだ。
「これは・・・」
カッ!
「うわぁ!?」
キラがスマホ?に手を触れた瞬間、突如スマホ?が光りだしキラを包み込んだ。
そして光が収まると、その場にキラは居なかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「・・・・・・?」
キラは頭に柔らかい感触があることで意識を覚醒する。
(あれ?僕、枕なんて持ってたっけ?)
そう思いキラは、ゆっくりと目を開けた。
最初に映ったのは、二つの大きな山だった。
「あら?お目覚めですの?」
「ふぇ?」
次に目にしたのは、銀にも白にも見える髪と翠色の瞳だった。そしてキラは次第に違和感に気付いた。
今自分が膝枕されていることに・・・。
「貴方は・・・?」
キラは身体を起こし、自分を膝枕していた彼女を見る。その姿は、まさに女神の様であった。
「はじめまして、私はガイアと申しますわ」
「ガイア?」
その名前はキラ自身も知っていた。ギリシャ神話においてあらゆる神を産み、創造の女神と呼ばれた存在である。
「もしかして、六つの神と合体したり、地球を爆発させる爆弾を背負い込んだ・・・」
「その御歳でよく○ーズを知っておりますわね?」
チョイスが古いことにガイアと呼ばれた女性は苦笑いする。
「その神様が、どうして僕に膝枕を?それに此処は?」
「それにはまず、順を追ってお話いたしますわ」
そう言ってガイアはキラに説明する。
「まず此処は、貴方が居た世界とはまた別の世界。貴方は、その手に持っておられるデバイスを使い、私達『神姫』を集める旅に出てもらいますわ」
「神姫?」
「神姫とは、私の様な神、あるいは神の力を持った者のことですわ。貴方様はそのデバイスを手にしたことで、神姫達と共に行く継承者になられたのですわ」
「僕が・・・」
ガイアに言われたキラは、あまり実感が湧かなかった。それはそうだ、急に神様が現れ継承者になったと言われても理解できないのだ。
「実感が湧かないのも無理はありませんわね。余りにも唐突ですから」
「はい・・・」
「ですが、これは事実なのですわ」
ガイアの真剣な目を見て、キラは彼女が嘘を付いていないということは理解できた。なによりも彼女から溢れ出る神秘的なオーラが、人間ではないと訴えているのだから。
「・・・貴方が嘘を付いていないのは解りました。だけど、その神姫を集めてどうするんですか?まさか・・・大きな戦いでも?」
「いえ。確かに昔、ラグナロクを阻止する為に神姫たちで戦いましたが、今はもうラグナロクはありません」
「じゃあ、どうして?」
「それは・・・」
『それは貴方のためです、継承者キラ・ヤマト』
「え?」
突如持っていたデバイスから、女性の声が聞こえて来た。
『優しき貴方は今まで、常人では耐えられない地獄の様な生活をしてきました。大切な人を何度も失い、罵倒され痛めつけられても尚、憎むことも恨むこともしなかった貴方には、継承者になる資格があります』
「そんな・・・」
そんな資格なんてない。キラはそう言おうとした。
『貴方にはあります。貴方だからこそ、私は貴方を継承者にしました』
「っ・・・・・・」
『幸せになってください、キラ・ヤマト。神姫達を集め、貴方だけのハーレムを作り、今まで以上に幸せになってください』
「えぇ!?」///
最後の言葉にキラは顔を赤くする。
「ということですわ、ご主人様」
「ふえ!?」///
突如女神からご主人様と呼ばれ、キラはさらに顔を赤くする。
「貴方は今日から、私達のご主人様ですわ」
「そ、そんな!?神様からご主人様呼ばわりなんて、恐れ多いですよ!?」///
「あらあら、お顔が赤いですわよ♪」
「・・・それに、僕みたいな人殺しが、幸せになる権利なんて・・・」
「え?」
キラの一言に、ガイアは一瞬理解できなかった。
「僕は・・・転生者なんです」
それからキラはガイアに、自分のことを話した。
自分が遺伝子操作されて生まれたこと。
ガンダムと呼ばれる機動兵器に乗って戦ったこと。
沢山の命を奪い、幼馴染と殺し合い、目の前で大切な人を沢山失ったこと。
転生して、両親が殺されたこと。
女尊男卑によって女たちから酷い苦痛を受けてきたこと。
その全てを、涙を流しながら彼女に話したのだ。
「・・・以上です」
「・・・・・・」
キラの話を聞いてガイアは、言葉が出なかった。目の前の小さな少年は、デバイスの言うとおり常人では耐えられない程の地獄を見てきたのだ。いくら神様といえど悲しくならないわけが無い。
「僕は、沢山の人を殺した大罪人なんです。こんな、最低な屑が幸せになる資格なんてないんです!」
「・・・・・・」
「だから・・・だから・・・」
「・・・そうですの」
ギュッ
「!?」
今だ涙を流し震えているキラを、ガイアは優しく抱きしめた。
「・・・よく・・・よく頑張りましたわね、ご主人様」
「・・・ぇ?」
「痛かったですわね?苦しかったですわね?誰も味方をしてくれず、ずっと一人で抱えていたのですわね」
「ガイア・・さん?」
何が起きているのか理解できないキラをよそに、ガイアはまるで聖母の如くキラの頭を撫でる。
「ご主人様、貴方は屑ではありませんわ。貴方は人の死を見るたび嘆き悲しみ、大きな罪を今まで背負って来ました。そのようなお優しい方が、最低な屑な訳がありませんわ」
キラの泣いている姿が見ていられなかったのか、ガイアは抱きしめる力を少し強くする。
「それに貴方の平和への思いと願い、そして祈りは決して間違っておりません。神である私が保障いたしますわ」
「っ!?」
「周りに味方がいないのでしたら、今日からはずっと私が貴方の味方でおりますわご主人様。ですから・・・」
ニコ
「もう、我慢しなくても大丈夫ですわ。私の胸で、沢山泣いてくださいまし」
彼女の笑顔は、まさに女神のようであり、キラは我慢していた何かが決壊した。
「・・・ぅぅ・・・ウゥアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーー!!」
そしてキラは、女神の胸の中で泣き叫んだ。自分の味方になると言ってくれたこと、自分のことを優しくしてくれたこと、いろんなことに感謝しながら。
(あぁ、なんて悲しい方なのでしょう・・・。平和に暮らしたいだけですのに、まるで拷問の様なことをされ続けてきたなんて・・・)
ガイアもまた、自分の胸の中で泣き叫ぶキラを見て涙を流す。
(・・・この方は絶対に、幸せにさせなくてはいけませんわ!)
創造神は、改めてキラと共に行くことを決意する。それは、キラが継承者だからではなく、キラだからこそであった。
―――――――――――――――――――――――――――――
「落ち着きましたか?」
「はい」
あれから数分後、キラはなんとか落ち着いた。
「ガイアさん。僕、幸せになっていいんですか?」
「えぇ」
「僕の、味方になってくれますか?」
「えぇ」
「・・・ずっと、一緒にいてくれますか?」
「勿論ですわ」
ガイアの微笑む姿を見て、キラはある決意をする。
「僕、その神姫を集める旅に出ます」
「ご主人様!」
「・・・今の僕に、何ができるか解りません。・・・・・・だから、それを確かめるためにも、色んな神姫に会ってみたいんです」
――やはり、マスターが彼でよかった――
デバイスの継承者は、決して一人ではない。中には神姫を道具のように扱う者もいれば、性的な奴隷にしようとする者もいるのだ。
しかし目の前の少年は違う。
それは彼のとの会話と目、そして流している涙で解る。
彼は優しい子なんだと。
だからこそガイアは、彼とずっといると決意したのだ。
彼の心の傷を、少しでも癒すために。
「そういえば、僕の名前を言ってませんでしたね?」
そう言ってキラは、目の前の女神に自分の名前を言う。
「僕の名前はキラ・ヤマト。前世の記憶を持った転生者です」
「はい、キラ様。これから先なにがあろうと、私は貴方と共におりますわ」
そう微笑むガイアにつられ、キラも微笑んだ。
「それでは、先ずは契約をいたしませんと」
「契約?」
初めて聞く言葉に、ガイアは説明する。
「はい、契約することにより、私の能力が上がりますの」
「そうなんですか。その契約は、どうすればいいんですか?」
キラがそう質問すると、ガイアは急に顔を赤くする。
「えっと・・・それは、ですね・・・」///
「?」
「わ、私と・・・・・・え・・・エッチを、して貰いますわ」///
「・・・・・・ふえ!?」///
彼女の言葉を理解すると、キラもトマトのように顔を赤くする。
「解っておりますわ。いきなりこのようなことを言われて、キラ様も驚きますわよね?」///
「・・・」///
ガイアの問いにキラは何も言わず、顔を上下に振る。
「ですが、契約としてエッチをするのは、理に適っているのですわ」///
「そ、それはどういう・・・?」
「男性の○液には、高濃度の魔力が凝縮されておりますの」
「・・・・・・」///
「それを私達女性の根源たる子宮に注ぎ込まれることによって、私とキラ様の間に『パス』が繋がり私は魔力を効率よく吸収できるようになりますの」
「そ・・・そんなことが」///
「他にも、キラ様の危険を察知できるようになりますし、良いことだらけでございます」
「・・・でも」///
良いことだらけなのは解った。しかしそれで彼女を傷つけてしまうのでは?
キラは内心そう思っていた。
「キラ様、私はキラ様に全てを捧げますわ。貴方とずっといるために・・・」
「・・・良いんですか?」
「先ほども申し上げましたわ。これから先なにがあろうと、私は貴方と共におりますと」
「・・・はい!」///
こうしてキラとガイアは、近くにあった宿で契約するのだった。
これから先に起こるのは、蒼き翼のガンダムで戦う一人の少年と、星を一つ二つ破壊することが出来る女神達との出会い。
天災の兎は思い知るだろう。
自分よりも上の存在がいることに。
表での最強は思い知るだろう。
自分の犯した過ちを。
その弟は思い知るだろう。
自分と少年との圧倒的な差に。
弟に恋をする者達は思い知るだろう。
自分達が敵に回してしまった者の恐ろしさに。
女神達は少年と共に歩む。
少年の心の傷を少しでも癒すために。
そして少年は飛ぶ。
自分を愛してくれる人達の為に・・・。
『OP:魂の慟哭』
『ED:季節は次々死んでいく』
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第2話:自然を守りし女神
2話目も投稿します。
その日ガイアは、悲しい夢を見た。
それは優しい少年の、悲しい夢だった。
大切な友達を守るため、嘗ての幼馴染とその仲間達と殺し合い、多くの命を奪った。
目の前では、大切な友人や初恋の少女、なんの罪も無い民間人達が殺されていく。
少年は何度も嘆き悲しみ、それでも『大切な物』を守るために戦う。
その思いは転生しても変わらず、今まで痛みに耐えてきた。
そんな悲しい夢の最後に映ったのは、何処までも続く蒼い空と海。
そして、その間にポツリと立っている優しい少年だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「・・・?」
目を覚ましたガイアは、ゆっくり起き上がりあたりを見回す。
窓からは日差しが刺し、周りには机やタンスと言った必要最低限の家具がある。
そして彼女の隣には、あの夢の少年よりも幼い少年が眠っていた。
「あぁ、なんて可愛らしい寝顔なのでしょうか。とても、人を殺したとは思えませんわ・・・」
キラの寝顔を見てガイアは少し悲しくなった。先ほど見た夢は間違いなく、キラの前世と自分に出会う前の夢だ。だからこそ尚更、目の前で眠っている彼を見て悲しくなってしまうのだ。
ガイアは彼の世界を見て理解したのだ。
(あの世界は、いくらなんでも狂い過ぎていましたわ・・・)
遺伝子操作によって生まれたコーディネーター、そこまではまだ良い。しかし、自分達でやっておいてそれを『化け物』と呼ぶのは、幾らなんでも酷すぎる。そしてどちらも憎み合い、核やそれ以上の殺戮兵器を使った虐殺など、余りにも狂気で満ちていた。
「キラ様は、元の世界での『被害者』でしたのね・・・」
実の父親に最高のコーディネーターにされ、狂った大人たちに利用され、目の前で沢山の人達が殺されて嘆き悲しむ。それがガイアから見れば彼は被害者なのである。
「キラ様・・・もう安心してくださいまし。これからは、ずっと私がおりますわ」
そう言ってガイアはキラの額にキスをした。
「・・・それにしても、キラ様のク○ニは気持ちよかったですわ。オッパイを吸ってる時も、まるで赤ちゃんの様に可愛かったですし」///
その後キラとやったことを思い出し、キラが起きるまで顔を赤くするガイアだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「それでガイアさん、神姫ってどうやって探すんですか?」
「そうですわね・・・とにかく旅をすれば、きっと見つかるとしか言い様がありませんわね」
とある道を歩きながら、キラとガイアはこれからのことを話し合っていた。
「異世界って、どうやって行けるんですか?」
「異世界への扉は、遺跡にありますの。扉を開けるには、キラ様の様な継承者でなければ開けることができませんの」
「はあ・・・」
そんなことを話し合いながら森を歩いていると、少し大きな滝壺が見えてきた。
「すごい・・・こんな綺麗な場所に来たのは初めてだ」
今までキラは、自然とは無縁な世界で生きてきた。だから目の前の光景には驚愕と感動が入り混じっているのだ。
「キラ様は自然を見るのは、初めてですの?」
「・・・そうですね。前世は月とヘリオポリスにいましたし、転生した後も街の方で暮らしていたので」
前世では地球に降りても、命を賭けた戦いばかりだったので、実際に自然と触れ合うのは今回がはじめてなのだ。
「少し、休んでいきませんか」
「はい」
二人は靴を脱ぐと、滝壺に足を入れた。
「冷たい!」
「うふっ、気持ちいいですわ」
冷たいと言ったキラは、最初こそ驚いたがゆっくり足を入れていく。
「・・・自然って、こんなに気持ちが良いんですね」
「そうですわね・・・」
「ほう?自然の良さを解ってくれる人間がいるとはな」
「「え?」」
突如聞いたことの無い女性の声が聞こえて来た。その声は後ろから聞こえ、キラとガイアは振り向いた。
そこに居たのは、銀色の髪をした槍を持った女性だった。
「あなたは、シヴァさん!?」
「久しぶりだな、ガイア」
シヴァと呼ばれた女性を見て、ガイアは驚愕した。
「ガイアさん、あの人は?」
「彼女はシヴァさんですわ」
「えぇ!?シヴァって○Fとかメガ○ンとかシュ○トに出てきた、インドの神話でも最高クラスの神様ですよね!?」
「ふむ、どうやら私のことを知っているようだな?というよりもシュラ○を知ってるとはお前は何歳だ?」
「ふえ?6歳ですけど・・・」
シヴァからの指摘にキラは即答する。
「ガイアさん、シヴァさんを知ってるんですか?」
「はい。ラグナロクの際、彼女も世界の破滅を実行した破壊神ですわ」
「え!?」
キラは目の前の女性が、世界を破滅しようとした破壊神と言われて驚愕した。
「あの時は私以外にも神姫がおりましたので。被害は最小限に留められたのですわ。それでも彼女は、世界を破壊することなど簡単に出来る存在ですの」
「ど、どうしてそんなことを・・・」
「ふん、決まっている。自然を破壊する科学文明など、毒でしかない!だから私は世界を破壊しようとした」
「そんな・・・その為に、大勢の人を・・・」
「そうでもしなければ、自然は破壊されるだけだからな」
怒りと悲しみが入り混じったかのような表情のシヴァに、ガイアはとあることを問う。
「・・・もしや、また世界を破滅させるのですか?」
「見たところ、あれから自然は回復したらしいな。なら、今は何もする気はない」
「そうですの・・・」
「だがもしもまた、自然を破壊するものがいれば、私はこの世界を破壊する」
シヴァは二人に殺気を放ちながら宣言する。
「ところでガイア、その子供は?」
「・・・デバイスに選ばれたマスターですわ」
ガイアはキラを抱きしめながら、シヴァにキラの事と旅のことを話した。
「えっと・・・はじめまして、キラ・ヤマトです」
「そうか。私はシヴァ、世界を破壊し創造する神姫だ」
二人が自己紹介し終えると、キラはあることをシヴァに話した。
「・・・シヴァさんは、自然が好きなんですか?」
「キラ様?」
「・・・あぁ、私は自然が好きだ」
キラの問いに答えるシヴァは、先ほどとは違い穏やかな表情だった。
「自然という生態系は、生物が生きていく上で一番大切なものだ。空気も、水も、生物にとって大切な物を産んでいるのは自然だ」
「確かに・・・」
「私は使命だからではなく、本当に自然が大好きだ。・・・だから、私は自然を壊そうとする科学文明が許せない・・・」
そう言ってシヴァは拳を強く握り締める。
キラは彼女と会話して理解した。
目の前の女神は、悲しんでいるということに。
大好きな自然が破壊されていくのが嫌だったから、科学文明が発達したこの世界を破壊しようとしたのだとわかった。
昨日ガイアからこの世界のことを聞かされた。
キラが来たこの世界は、自分のいた世界よりも発達した世界であり、科学だけでなく『魔法』もあるだ。
しかしラグナロクの折、あらゆる世界の街が大打撃を受けてしまい、文明は衰退していったのである。
「・・・・・・優しいんですね」
「「え?」」
キラの言葉にガイアと当人であるシヴァは素っ頓狂な顔になった。
「な・・・何を言っているんだ!?私は、科学文明と共に人類を滅ぼそうとした破壊神なんだぞ!?」///
「でも・・・人類を滅ぼそうとしたのは、自然が壊されていくのに悲しんだからですよね?」
「「っ!」」
二人はキラの顔を見ると、キラの瞳から涙が流れていた。
「キラ様。泣いておられるのですか?」
ガイアの問いにキラは首を縦に振る。すると今度は、シヴァの前で土下座し始めた。
「ごめんなさい・・・僕達の所為で、こんなことになってしまって・・・・・」
「な・・・何故お前が謝る!?お前は別に・・・」
「そんなことない!」
大声で叫ぶキラにシヴァは最後まで言えなかった。
「僕達人間は、何度も命を奪う争いをして、その度に多くの自然を壊すから・・・」
「キラ様・・・」
「お前は・・・・・・」
シヴァはキラのことが不思議でならなかった。目の前に居るのはまだ幼い少年なのに、その言葉には子供とは思えないほどの重みがある。
「許してくれるとは・・思ってません・・・僕達が・・・やってきたことは・・・・それほど大きな罪なんですから・・・」
「キラ様・・・」
「でも・・・これだけは言わせてください!」
そこまで言うとキラは、シヴァに顔を向ける。
「少しだけで良いです・・・ほんの少しだけで良いから、科学文明を信じてください!」
「っ・・・!」
「お願い・・・します!」
瞳から大粒の涙を流しながら叫ぶキラに、シヴァもガイアも何も言えなかった。
ただ、
(・・・優しいな、キラは)
目の前で泣いている少年は、自然の為に泣いてくれているのは理解できた。
ギュ
「・・・良いだろう」
「ふぇ!?」///
「少しだけ、お前の言葉を信じよう」
「シヴァ・・・さん」
何を思ったのか、シヴァはキラを優しく抱きしめた。
「・・・ありがとう、自然の為に泣いてくれて」
「シヴァさん・・・」
それから数分間キラを抱きしめた後、シヴァは二人にある提案を述べた。
「キラ、私と契約してくれないか?」
「ふぇ!?」///
昨日ガイアと契約したキラにとって、契約の単語を聞いた途端顔を赤くする。
「私はお前が気に入った。お前の生涯が終わるまでは付き合ってやる」
「で・・・でも」///
「大丈夫ですわキラ様。シヴァさんは嘘は付きませんわ」
「・・・これから、よろしくお願いします」///
「あぁ」
キラは今だに顔を真っ赤にしながら、シヴァにお辞儀をする。
「ふむ・・・折角だ、此処で契約をするか」
「「えぇ!?」」///
突如シヴァが爆弾発言をし、キラとガイアは驚愕する。
「心配するな。誰も近づかないように結界を張る」
「それならシヴァさん、私も入りますわ」
「ガイアさん!?」///
「ほう?良いだろう、ならどちらが多く○けるか勝負するか?」
「望むところですわ!」
もはや神様が言う台詞ではない。キラはそう思った。
「というわけですわキラ様」///
「私達とエッチをしてもらうぞ」///
「も・・・もう趣旨変わっているんですけどおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!??」///
その日、とある滝壺では3人の喘ぎ声が聞こえてきたとさ・・・。
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第3話:海と英霊
キラの夢を見た。
その夢はおそらく、ガイアが言っていた前世のだろう。
だが・・・あれはいくらなんでも狂気に満ちていた。
生まれ方が違うというだけで彼らを化け物と呼び、追い出そうとするどころか抹殺しようとまでした。
核ミサイルどころか、あのような虐殺兵器まで・・・私が言うのもあれだが、人の命をなんだと思っているんだ?
その中でもキラは、大切な者達を守るために戦って来た。
なのに、キラの目の前で大切な者達が殺されていく。
・・・なるほど、あのガイアが生涯共にいると言ったわけだ。
それにキラが謝罪した理由も解った。
・・・・・・彼は強いのだな・・・。
一人では背負いきれない罪だとしても、『それでも』と言い続けてきた。
ならば私も、キラを守るとしよう。
もう、一人にさせないためにも・・・。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ここが遺跡ですか?」
「そうですわ」
シヴァと契約(という名のセックス)を終わらせて2時間が経ち、キラ達は目的地の一つである遺跡にたどり着いた。
「遺跡ってもっと古いものだと思っていましたけど・・・」
「この世界は私達から見れば過去の文明ですが、キラ様からみれば未来の文明ですわ」
「なんかエ○シャダイみたいですけど?」
「そういう世界なんだ」
3人は話し合いながらも、遺跡の中に入る。そこには、見たことも無い機械と鏡の様な物が鎮座していた。
「これは?」
「ゲートだな」
「キラ様、デバイスをゲートの前に翳してくださいまし」
「こ、こうですか?」
キラはガイアの言うとおりに、デバイスをゲートに翳した。すると、突如ゲートが光りだした。
「それでは、行きましょうか」
「そうだな」
「は、はい!」
そして3人は、光るゲートの中に入るのだった。
「えっと・・・ここは?」
「海・・・みたいですわね?」
次にキラ達が目をあけると、そこは海と砂浜だった。後を見ると、先ほどみたいな遺跡の残骸がちらほら見える。
「・・・ってアッツ!?」
「南国みたいな暑さだな?」
「えぇ」
そう、なんといっても此処は南の島の様な暑さなのだ。雲ひとつない青空に、青い海。まさしくハワイそのものである。
「それにしても、綺麗な海ですね・・・」
「そうですわね」
「何処までも続く青い海、本当に綺麗だ」
キラに同意するように、ガイアとシヴァも感想を述べる。
「キラ様、折角ですし泳ぎませんか?」
「え?でも僕、水着なんて持ってませんよ?」
「それなら心配いりませんわ♪」
そう言ってガイアはキラの前に、男の子用の水着を出現させた。蒼いラインが入った白いハーフパンツタイプである。
「私は創造神、水着の一つや二つ無から作ることなど造作もありませんわ」
「すごい・・・でも」
「やっていることがショボイな?」
「ショボイとは失礼な!」
シヴァの直球な感想にガイアは怒り出した。それをよそにキラはガイアが作った水着を手に取り、色んな場所を調べた。
「・・・本当に凄い。生地の材質も、何から何まで水着だ」
「ふふっ、驚きましたか?」
「はい!」
満面の笑顔で返事をしたキラ。それを見たガイアとシヴァはズキューンと来たらしい。
「それじゃあ、僕あっちで着替えてきます!」
そんな二人などお構いなしと言わんばかりに、キラは遺跡の一部に向かって行った。
「・・・私達も、着替えましょうか?」///
「・・・そうだな」///
二人も別の場所で水着に着替えるのだった。
数分後
「う~ん、そろそろかな?」
水着に着替えたキラは、時間のかかっている二人を待っていた。
「お待たせいたしましたわ、キラ様」
「待たせたな」
「あ、ガイアさん、シヴァさ・・・」
やって来た二人の方に振り向いたキラは、最後まで言うことができなかった。
まずガイアは白と緑のパレオタイプで、シヴァは青いマイクロビキニである。さらにガイアは髪型をポニーテールに、シヴァはストレートにしているので、何時もとは違う魅力がある。
そんな彼女達を見て、本来なら思春期真っ盛りなキラは顔をトマトの様に顔を赤くしたのである。
「ど、どうだ私達は?」///
「すごく・・・綺麗です」///
「あらあらキラ様ったら、お顔を赤くしちゃって♪」
キラの反応が可愛かったのか、ガイアは顔を赤くしているキラを見て笑った。だがキラの反応は間違っていなかった。神秘を帯びた女神二人が、水着を着れば誰だって顔を赤くするであろう。男性だけでなく、女性でも少なからず見惚れてしまう程だ。
「所で、キラ様は泳ぎは?」
「プールで数回泳いだ程度です」
前世と今世、どちらもキラは家にいる方が多かったので、余り外に出て泳ぐことはなかったのである。
「それならば、私が泳ぎを教えよう」
「シヴァさんが?」
「私の属性は水だ、泳ぎくらい簡単だ」
「勿論私もできますわ」
「・・・それじゃあ、お願いします」
キラは少し考えると、シヴァに泳ぎを教わることにしたのだった。
「うわ!?しょっぱい!?」
初めて海で泳ぐキラは、海の水がしょっぱいことに驚いた。
「どうだ海は?」
「初めてのことがいっぱいあって凄いです」
「あらあら♪」
「そうか」
楽しそうに遊ぶキラを見て、ガイアとシヴァは微笑んだ。
「・・・元気でよかったですわね」
「そうだな」
今まで辛い思いをしてきたキラが楽しそうにしているのに、二人共安心したのである。
「前世から何度も嘆き悲しみ、転生しても尚泣き叫ぶだなんて・・・」
「辛かっただろうな・・・・・・憎んでしまえば楽だろうに、恨んでしまえば楽だろうに。戦争を見てしまった為に、それすらもできずに我慢していたのだな」
戦争を見たからこそ、憎み合うことがどれだけ愚かな行為なのかを知っている。
「・・・強いな」
「えぇ・・・」
だから二人は、キラが強いと称した。絶望しても尚憎もうとしない、それは普通では到底できないことだ。
だがそれは同時に、自分を追い込んでしまっているのだ。
「それなら私たちが、キラ様の心のよりどころにならなくては」
「そうだな」
二人は改めて、キラの傍に居ることを誓う。
「おーいガイアさん!シヴァさん!こっちにサザエとか美味しそうな貝がありますよ!?」
「解りましたわ!」
「すぐそっちに行く!」
二人はキラの元に泳いで向かった。
―――――――――――――――――――――――――――
「英霊・・・ですか?」
「そうですわ」
あれから遊んだり食べたりし、キラ達は色々満喫した。少し休憩をすると、ガイア達から英霊を召喚してみようと言うことになった。
「でも、どうやって召喚するんですか?」
「方法は色々あるが、今回はデバイスの力を借りて召喚してみるか」
「デバイスですか?」
キラがそう質問すると、ガイアとシヴァがさらに説明した。
「デバイスには、英霊や幻獣を召喚する機能も有しておりますの」
「さらには英霊をチェンジ出来たり、英霊たちの装備を購入することも出来る」
「なんかやってることがRPGのそれですよね?」
キラは苦笑いしながら言う。ガイアとシヴァもキラの言うとおりなのであまり突っ込まない。
「まずはそうだな・・・・・・キラ、デバイスを前に掲げて召喚と叫んでみろ」
「多分デバイスを経由して英霊が応えてくれますわ」
「わかりました」
キラは二人に言われたとおり、両手でデバイスを前に掲げる。
そして深呼吸をして、その言葉を叫ぶ。
「英霊・・・召喚!」
カッ!
叫んだ瞬間、キラの前に魔方陣が現れ、大きな光が現れた。
「!? この感覚はまさか!?」
その光が現れた途端、何かを感じたのかガイアが驚いた。
少しして光が収まると、そこには一人の男が佇んでいた。
「やれやれ、私の様なハズレを呼んだのが、まさか君の様な幼い少年だとはな」
紅い外套を纏い、浅黒い肌に白髪の男の最初に開いた口から発せられたのは、なんとも皮肉めいた言葉だった。
「ふむ・・・どうやら聖杯戦争というわけではないらしいな」
男はなにかを確認するかのように片手で頭を抑えた。
「あの・・・あなたは?」
「おっとすまない、召喚早々色々考え事をしていたものでな?」
「いえ・・・」
「そうだな・・・私のことはアーチャーと呼んでくれ」
「弓兵・・・ですか?」
キラの問いにアーチャーと名乗った男は「そうだ」と言った。
「僕はキラ、キラ・ヤマトです。信じてくれるとは思いませんけど、転生者です」
「ほう・・・」
アーチャーは少し驚いた顔をすると、なにやら納得したような表情になった。
「なるほど。幼い少年にしてはかなり『経験』している目をしていると思えば、転生者だったとは・・・」
「わかるんですか?」
「あいにく、私もそれなりに経験しているのでね。・・・・・ところで君達・・・いや、あなた達は何者だ?」
そう言ってアーチャーは、キラの後にいたシヴァとガイアに顔を向ける。そのアーチャーの顔は真剣そのものだった。
「魔力の量からして人間ではないな?それに強大な神秘を帯びている」
「さすがだな、会って早々見破るとは」
シヴァはそう言いながらアーチャーを興味深そうに見つめる。
「私の名はシヴァだ。英霊であるなら、その名くらい聞いたことはあるだろう?」
「・・・やれやれ。まさかヒンドゥー教の最高神に会うとは夢にも思わなかったな」
「私としては、久方ぶりに『男』の英霊に会うとは思わなかったさ」
「それはつまり、この世界には『男の英霊』が少ないということかね?」
そんなアーチャーの問いに、シヴァは「ご想像に任せよう」とはぐらかした。
「・・・・・・そして貴方は?」
「はじめまして、私はガイアですわ」
「!?」
ガイアの名前を聞いた瞬間、アーチャーは彼女を警戒しだした。
「まさか・・・抑止力かね?」
「その名前を知っていると言うことは、貴方はやはりあの世界のものですね?」
「質問をしているのはこちらなのだがな」
そう言うアーチャーを見て、ガイアはため息を吐いた。横を見ると焦りだしているキラが見えた。
「・・・・・・私は抑止力ではありませんわ。正真正銘、ギリシャの創造神ガイアです」
ガイアがそう言うと、アーチャーは警戒を解いた。
「まったく、今回の召喚は異常すぎるな。説明してくれないか?」
「解りましたわ」
「はう~・・・びっくりした」
「驚かせてすまない」
「いえ、見ず知らずの人に警戒するのは仕方ないですから」
「くくっ、どうやら今回のマスターは物分りが良いらしいな」
それからアーチャーは、二人の女神と一人の少年と話し合った。
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第4話:教会騎士
スマホを最新のエクスペリアに変えたり、FGOをやり始めたり、スパクロでヘボットの回で爆笑したエルシオンガンダムです。
最近ネタが浮かんでもまったく進まずじまいで、大変皆様にはご迷惑をおかけしました。
それでは、本編どうぞ。
「なるほど、大体理解した」
あれからキラ達は、アーチャーにこの世界のことと神姫のことをはなした。
「まさか今回のマスターがこの様な幼く、転生者とはな。それも神様を集めてハーレムを作るなど・・・」
「僕自身も抵抗はありますよ。そんなことをして、女神様たちを傷つけるんじゃないかって、怖いんですよ・・・」
「・・・・・・君は優しいな」
キラの言葉を聞いて、アーチャーは優しいと呟いた。目の前の少年が嘘を付いていないことぐらい、英霊となった彼には理解できた。
アーチャー自身は恋に関してはかなり鈍感なのだが・・・。
「・・・そんなことないです」
しかしアーチャーの言葉を、キラは否定した。
「僕は優しくなんかないですよ。ただ、目の前で沢山の理不尽を見たから、目の前で起きる理不尽だけは無くしたい、それだけなんです・・・」
キラは前世で、沢山の死を見てきた。初恋の少女に大切な親友、何の罪も無い民間人、そして戦いの中で自分が殺して来た人達。今でもキラはそれを忘れない、忘れてはならないと思っている。
「・・・マスター、一つ聞きたい」
「なんでしょうか?」
「もしもの話だが、一つだけ願いが叶えられると言われたら、君はどうする?」
「いりません」
「「「即答!?」」」
余りにも早すぎる答え。これには二人の神様も、英霊と呼ばれた彼も驚愕せざるを得ない。
「な、なにかないのですかキラ様!?例えば不老不死だとか?」
「変わった古墳の前で生き埋めにされたり、誰も居ない世界に一人ぼっちになっては生命を復活させろって言われたり、好きな人達と永遠に別れてしまったり、有機物が無機物に見えて逆に無機物が有機物に見えたり、流刑の星に飛ばされてメタモルフォーゼしたり、エジプトで殺されてギリシャで殺されてローマまで来たり、自分のクローン人間を大量生産されて殺害番組の標的にされるのがオチじゃないですか?」
「君は何故火の○を知っている!?」
「というよりも、一部不老不死ではないような気が・・・・・・」
キラが出した例えが全て有名な漫画のオチだということに、アーチャーがツッコミを入れる。
「では世界征服は?」
「悪役がやるようなことをしてなんになるんですか?」
「世界中の女とセックスしたいとかは?」
「そんな鬼畜になりたくないです」
「星ひとつ欲しいとか・・・」
「太陽系のバランスが崩れるので却下です」
「ギャルのパンティは?」
「どこの豚ですか!?」///
「そもそも女性が言うことではないのだが・・・」
ガイアの例えにキラはそう的確に答える。すると今度はシヴァが口を開いた。
「なら死者蘇生はどうだ?世界平和もあるぞ?人生をやり直すことも可能だが?」
「・・・・・・」
そのシヴァの例えには、キラもすぐには答えられなかった。というよりもシヴァは、アーチャーがキラに一番聞きたかった事を、代わりに言っただけである。アーチャーがどんな願いも一つだけ叶うという、もしもの話を出した時シヴァは今言った三つの例えを言うだろうと推測したのだ。
結果は正解。アーチャーは「流石だ」と呟いているのが解る。
「お前は目の前で、沢山の人が殺されるところを見たのだろ?沢山の人を殺したのだろ?ならば、蘇生を願えば失った人達は生き返るし、平和を願えば戦争はなくなる。そして人生をやり直せば、戦争とは無縁の世界で生きることもできる」
「シヴァさん!」
「ガイア、お前がキラのために今の3つを伏せたのは理解している。だがそれでは、アーチャーが何のためにこのようなことを言ったのか理解できないままなのだぞ?」
「ですが・・・・・・」
「大丈夫ですよガイアさん」
理解はしていても納得できないガイアに、口を閉ざしていたキラが喋った。
「僕も、アーチャーさん達が言おうとしていたことはわかります」
「・・・つまり、それを含めていらないと即答したのかね?」
アーチャーの問いにキラは静かに首を縦に振る。
「改めて考えましたが、やっぱりそれはできません」
「それは何故なのですかキラ様?」
「確かに人生をやり直せば、戦争とは離れた生活を送ることが出来るかもしれません・・・・・・だけど、僕が背負っている罪が消えるわけじゃないですから」
「「「!?」」」
「それに・・・そんなことをしたら、今までのことから逃げることになる。それどころか、もっと多くの人の命が奪われる。それじゃあ僕は、絶対に後悔すると思います」
「キラ様・・・・・」
「死者蘇生だってそうだ。そもそも此処は異世界なんだから生き返らせること自体出来るとは思えません。仮に生き返ることが出来たとしても、きっと・・・いや絶対に託された物が失ってしまう。それが嫌なんです」
「キラ・・・・・・」
「それに・・・」
「それに?」
「そんなことをしなくたって、きっと平和な世界に出来ると思います」
そのキラの自信に満ちた言葉に、3人は唖然とした。
「確かに人は、愚かな存在です。自らの欲望のために、多くの人の命を殺めたりするし、戦争どころか無抵抗な人を虐殺する様な、救いようの無い存在かもしれません・・・・・・でも・・・それでも僕は信じています!どんなに酷い存在でも、分かり合えるって、お互いが手を取り合うことが出来るって!」
キラのその言葉は、ガイアとシヴァの心に響いた。
そもそもキラが戦ってこれたのは、色んな人達から色んな物を託されて、手を取り合ったからこそなのだ。同じ平和の為に、終わらない明日のために戦って来たからこそ、死んでしまったが今のキラがいるのである。
そしてその言葉が心に響いたのは、彼もだった。
「・・・そうか」
ポン
「ふぇ?」
何かを察したのか、アーチャーはキラの頭を優しく撫でる。
「・・・マスター、君は強いな」
「アーチャーさん?」
キラの頭を撫でるアーチャーは、どこか羨ましそうにキラを見ていた。
「君の様な強くて優しい少年に召喚されて、私は嬉しいよ」
「・・・えへへ、ありがとうございます」///
英霊と呼ばれた存在であるアーチャーに褒められたのが嬉しかったのか、キラは久しぶりに照れ笑いをする。その光景を、二人の女神はほほえましく思うのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
その後アーチャーも自分のいた世界のことと自分の使える『魔術』を話した。本来彼の世界では魔術は秘匿されているのだが、キラやガイア達神なら信頼できると思ったのだろう。
「固有結界ですか、また久しぶりに聞いた大魔術ですわね?」
「それを英霊が使うんだ、いくら神でも驚くさ」
「その気になれば星一つ破壊することが出来る神様に、そこまで言ってもらえるとは光栄だな」
「よかったですねアーチャーさん」
皮肉を込めて言ったアーチャーだが、キラにまで言われて少し苦笑いした。とはいえ、神である彼女達にまで言われて少し嬉しかったのは確かである。
「それにしても、とんでもない世界に召喚されたものだ」
「驚きましたか?」
「そうだな。ヘラクレスやメデューサには会ったことはあるが、本当の神様に会えるとは思いもしなかった」
驚いた風に言ったアーチャーの顔は、そんなに驚いてはいなかった。
「私としては、貴方の使う魔術に興味がありますわ」
「あの、見せてくれますか?」
「・・・・・・良いだろう」
キラにお願いされて、少し考えたアーチャーは右手を突き出し何かを唱えた。
「――――
アーチャーが唱えると、右手には血の様に紅い槍が握られていた。
その槍から発せられる魔力に、ガイアとシヴァには心当たりがあった。
「その槍は・・・?」
「この槍は
「なんだと!?」
「さすがは異世界ですわね。私たちの知っているゲイ・ボルグとは、見た目が違いますわね」
「と言いますと?」
「神姫にもクー・フーリンは居る。勿論師匠であるスカサハもだ」
「ゲイボルグもそのような紅い槍ではありませんでしたわね」
それを聞いたアーチャーは、興味深そうに質問した。
「クー・フーリンに会ったことがあるのか?」
「まあな」
「彼女は今も、師からの修行の課題を行っている途中らしいですわ」
「・・・此処でのランサーは女なのだな」
呟いたアーチャーは、なにやら苦笑いしていた。というのも、彼が会ったクー・フーリンは全身青タイツなのだから。
「とにかく、アーチャーさんの力はわかりました。改めて、キラ・ヤマトって言います。できれば名前で呼んでください」
「了解したキラ。こちらこそ私の様なハズレでよければ、宜しく頼む」
キラは嬉しそうに、アーチャーは皮肉を込めながらそう言って握手をした。その後アーチャーはシヴァとガイアとも握手をするが、二人が「私達も名前で呼んでください」と言ったため、アーチャーは名前で呼ぶことになった。
「さてと、挨拶も済んだことだ。神姫を集める旅を再開するか」
「神姫が何処に居るのかは?」
「強大な魔力が感じ取れればすぐに解るのですけど、魔力を抑えている者もいるので・・・」
「なるほど、理に適ってる」
ガイアの言葉にアーチャーは納得する。
「でも、色んなところを旅すれば、きっと会えますよ」
「要するに行き当たりバッタリか・・・」
「私は良いですわ」
「・・・・・・まあそれも良いか」
アーチャーは少し考えると、キラ達に同意した。
「とりあえず、あそこに道があるので行ってみましょう」
「そうだな」
キラ達は先ほど見つけた道を歩き、奥の方に向かうのだった。周りには見たこともない植物や木の実等があり、キラ達は辺りを見回しながら歩く。
「本当に異世界なのだな・・・」
「そうですね」
自分達の居た世界には無い物がある。それだけでも英霊となったアーチャーも、転生して来たキラも興味はある。
「みなさん、あれを見てくださいまし」
「「「?」」」
突如ガイアが指を指した方向にキラ達は顔を向けた。そこには、少し大きな教会が建っていた。よく見ると、なにやら鎧を纏った者もいた。
「あれは教会か?だがなぜ教会にあのような者が?」
「おそらくあれは、教会騎士だな」
「教会騎士ってなんですか?」
質問をするキラにガイアとシヴァが二人に説明する。
「教会騎士とは、その名の通り教会に仕えている魔導騎士達のことですわ」
「彼らは主に、遺跡などを管理しており、そこらの魔導師や騎士よりも腕は立つ」
「なるほどな。・・・まったく、私は教会に縁でもあるのか?」
そう言ってアーチャーはなにやら遠くを見る様な顔になる。
「それにしても、なにやら様子が可笑しいですわね?」
「なにかあったのか?」
「僕、ちょっと聞いてきます!」
「キラ様!?」
キラは教会騎士がいる場所に向かって走っていった。
「すみません!」
「ん?誰だ君は?」
「えっと・・・旅の者です!」
キラは近くに居た教会騎士に向かって声をかけた。
「その歳で旅の者?」
「えっと、仲間と一緒に旅をしてる途中です」
証拠と言わんばかりにキラはガイアたちの方に顔を向けて、旅の仲間ということを説明した。
「それで皆さんの様子が可笑しくて・・・・・・ここでなにかあったんですか?」
「いや実は、この辺りで巨大な『古龍』が出現したとの情報が入ってな?我々は上司の指令でこちらに派遣されて来た」
「こ・・・古龍ですか?」
『古龍』
そのワードはキラも知ってる。キラは前世でアスランとよくゲームをしていた。その中にはF○の様な有名なRPGなども含まれている為、古龍というのがどういう存在なのかも解るのである。
「その古龍はどんな特徴がありますか?」
恐る恐るキラはそう騎士に尋ねる。
「私も見たことないが、なんでも銀色の鱗に角や翼、尾先等にかけて翡翠色の結晶の様な甲殻があり、蒼色に輝く飛膜のドラゴンらしい」
「ドラゴン!?」
「・・・・・・なに?」
ドラゴンと聞いて、キラだけでなく離れていたアーチャーまでもが驚いた。
「君達も、此処は危険だ。すぐに離れた方が良い」
「・・・・・・解りました」
騎士からの忠告を最後に、キラはその場から離れアーチャー達の元に戻る。
「古龍ですか、懐かしいワードですわね」
「まさかまだ生きていたとはな・・・」
先ほどの話を聞いていたガイアとシヴァは、懐かしむように呟く。神様なのだから古龍の1体や2体会ったことがあるのだろう。
「私の世界では、幻想種は存在しなかったのでね。それもドラゴンとは驚いた」
「こちらでもいまだに生きているとは思いもしなかった。彼らはかなり昔に滅んだと思われているからな・・・」
「因みにどのくらいですか?」
「10世紀くらい前だ」
「・・・・・・それ本気で言ってるんですよね?」
「勿論ですわ」
ガイアに言われてキラは改めて目の前の女性たちが神なのだと理解した。
10世紀、つまりは1000年も前ということである。
「とりあえずここから離れましょうか?巻き込まれるわけにも行きませんし」
「賛成だ。いくら契約したといえど、今の状態では古龍と相手は無理だ」
「そうですわね。普通のドラゴンならまだしも、古龍のドラゴンとなると今の力では難しいですわ」
「私も同様だ。というよりも、私の場合はドラゴンを倒せるほどの宝具がない」
「龍殺しの武器はないのか?」
「あるにはあるが所詮は紛い物だ。ランクが下がっているし、使えたとしても私ではドラゴンを倒すことは出来ない」
「やっぱり何処の世界でもドラゴンは強いんですね・・・・・・あれ?」
どこの世界でもドラゴンは最強なのだと理解したキラは、ふと先ほどの騎士達の言葉に疑問に思った。
「どうかしたのですかキラ様?」
「・・・さっきの騎士さん達が言った古龍の特徴に、心当たりがあるんですよ」
「それは本当かねキラ?」
アーチャーからの問いにキラは「はい」と言って首を縦に振る。
「実は前世で戦争に巻き込まれる前、『モンスターハンター』て言うゲームをやってたんですけど・・・」
「名前は私も生前聞いたことがあるな?」
「よほど最近の英霊なのだな?」
「そのモンスターハンターの中で出てくる、『シャンティエン』と言うドラゴンに特徴が似てるんですよ」
「し・・・シャンティエン!?」
「ガイア?」
キラの説明を聞いて、ガイアが一番驚いた。
「キラ様、それは真ですか!?」
「え?はい」
「ガイア、お前は知ってるのか?」
「・・・えぇ」
静かにそう答えながら、ガイアは首を縦に振る。しかしなにやら恐怖心を抱いているようで、少し体が震えている。
「・・・・・・おそらく別の世界では、ゲームに出てくるドラゴンとして知られていると思いますが、シャンティエンは本当におられますわ。それも、最上位の幻獣ですわ」
「えぇ!?」
ゲームの中の存在だと思っていたキラは、ガイアの言葉に驚愕する。それはそうだ、ゲームのモンスターが本当に存在し、あまつさえ最上位の幻獣と呼ばれれば驚かない方が可笑しいのだ。
「私は一度出会ったことがありますが、とてつもない程の力を有しておりました」
「・・・・・・ということは拙いですね?僕の記憶どおりだったら、確かシャンティエンは霊気で空を浮遊していて、嵐を起こすことが出来て、雷と水、火の属性が備わっていたはずです」
「それは合ってますが、まだ一つあります」
「一つ?」
「・・・その古龍は、光属性の光線も放つことができますわ」
「光線!?」
まさかゲームでも備わっていない物があったことにキラは驚愕する。
「聞いてるだけで益々勝てる気がなくなって来るな」
「確かにな・・・」
「やっぱり離れた方が良いですね」
今の状態では出会うこと自体が拙いと思い、キラ達はこの場から離れることにした。
すると、
「そこの貴方達!」
『!?』
教会の方から自分達を呼ぶ声が聞こえて来た。振り向いてみると、そこには他の騎士達とは雰囲気が違う女性がこちらにやってきた。
「えっと、貴方は?」
「はじめまして、私は『エレミア』と言います」
それが後に、何度もキラ達を助ける『人間兵器エレミア』と呼ばれる女性との出会いであった。
少し文章が可笑しいところもあるかも。
次回アーチャーのストレスが溜まるの回です(嘘)。
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第5話:聖職者には碌な人間が居ないと思っていたbyアーチャー
最近マクロスのリアクティブアーマーなどに興味をそそられ、こっちのフリーダムにも装備させようかなと思っています。
今回はちょっと急展開になってるかもしれません。
それでは本編どうぞ。
「はじめまして、私は『エレミア』と言います」
突如現れたエレミアと呼ばれる女性に、キラ達は少し警戒しだした。
「エレミア・・・・・・ということは、貴方が今噂の『人間兵器エレミア』なのですね?」
「・・・そうです」
ガイアに言われてエレミアは少し睨みながら答える。その後キラに顔を向けて、とある事を尋ねる。
「貴方、お名前は?」
「えっと・・・キラ・ヤマトです」
「・・・もしや貴方は、デバイスの継承者ですか?」
「・・・はい」
警戒しながらもキラは、エレミアの質問に答えていく。
「・・・・・・実は、折り入ってお願いがあります」
「お願い?」
キラの後にいる3人は、なにか嫌な予感がすると思い警戒する。
「私達と一緒に、とある幻獣を討伐して欲しいのです」
「その幻獣は、シャンティエンのことですか?」
「!?・・・ご存知なのですね?」
「一応・・・」
ゲームで知ったと言うわけにもいかず、キラは目を逸らしながら誤魔化す。
するとアーチャーたちがキラの前に立つ。
「すまないが、こちらは古龍と戦えるほどの力は無い。他を当たってくれないか?」
「えっと、実はそうなんです。すみませんが・・・」
「強大な力を持った神姫と英霊が居るのにですか?」
「私を瞬時に英霊と理解してくれたのは嬉しいが、あいにく下っ端な英霊でね?」
「私達も、今はまだ本来の力が出せませんわ」
「右に同じだ」
そう言いながらもアーチャーとガイア、シヴァはエレミアを睨みながらも話す。
「そうですか・・・でしたら」
エレミアが脇に携えた剣を取ろうとしたその瞬間、
ドクン
『!?』
「え?」
エレミアとアーチャー、ガイアとシヴァは極寒に居るような寒気に襲われ、キラもなにか強大な力が迫ってくることに感付いた。
「な・・・・・・なんですかこの魔力は?」
「まさか・・・!?」
「気をつけろ、なにか空から来るぞ!?」
アーチャーの掛け声に、その場にいた全員が空を見上げた。
「ギャオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーー!!」
そこには、空を翔ける巨大な龍がいた。
「間違いない、シャンティエンだ!?」
「あれがかね・・・?」
「はい・・・・・・ただ・・・」
「そうですね・・・」
「あぁ・・・」
「そうだな、見れば解る」
『いくらなんでもでか過ぎ(だ)(です)!?』
余りのでかさにキラ達は驚愕した。
それはそうだ。キラがゲームで見たシャンティエンより、何倍ものでかさなのだ。
「凄い!ラオシャンロン並の大きさだ!?」
「キラ・ヤマト、感激してる場合ですか!?」
「見てるだけで勝てるイメージがなくなったな。下手をすれば、ヘラクレスよりも恐ろしいぞ?」
「これでは古龍というよりも『神龍』ではないか?」
「とにかく、今は逃げないと行けませんわ!!」
ガイアの言葉に、その場にいた者達全員逃げる態勢を取る。
「ギャオォォォォォーーーーーー!!」
「まずい!?」
全員が逃げようとした瞬間、シャンティエンはキラに目掛けて向かってきた。
「ええぇ!?」
「キラ!?」
「キラ・ヤマト!?」
「キラ様!?」
「キラ!?」
自分に目掛けて向かってくるシャンティエンに驚くキラ。
「うわアアアアァァァァァァァーーーーー!!」
「キラ様ァァァァァァァァーーーーーーーー!!」
キラは食べられると思い、目を閉じて痛みを覚悟する。
「・・・・・・あれ?」
『!?』
しかし何時まで経っても衝撃は来なかった。疑問に思いながらキラは目を開けると、寸でのところでシャンティエンが止まっていた。
「とまっ・・・た?」
「どういうことですか?」
「私に言われても困る」
「一体どうして?」
その光景を見た者達もまた疑問に思っていた。
ガイア達のことを無視し、キラは目の前で自分を見つめている古龍の瞳を見つめ返した。
その瞬間、
「・・・え?」
キラは目の前の龍が、何かに悲しんでいるように見えたのである。
ふとキラは、シャンティエンの顔を優しく撫で始めた。
「キラ様?」
「・・・皆。このシャンティエン、悲しんでる」
「なに?」
「シャンティエンの瞳を見た瞬間、何故かは解らないけど、伝わって来たんです。目の前にいる龍が、悲しんでるって」
今にも泣きそうなキラを見て、ガイア達は目の前の少年の言っていることが本当だと理解した。それは勿論、初めて会ったエレミアでさえも解るほどに。
「・・・・・・もしそれが本当だとして、貴方はその古龍をどうする気ですか?」
だからこそ彼女はキラに問いただした。
それこそ当然だった。なにせエレミアは、目の前の古龍を討伐するためにこの世界に来たのだから。
そんな彼女の問いに、
「・・・助けたいです」
キラはそう答えた。
「どうしてシャンティエンが、僕に向かって来たのか解りません。・・・でも、なにかきっと理由があると思うんです」
「キラ様・・・」
「僕にしか出来ないことなら、僕はやります。でなきゃ、きっと後悔すると思うから」
キラはガイア達に微笑みながら、思ったことを言い放つ。
その姿にエレミアは、唖然としていた。見た目まだ10歳もいかない少年が、子供とは思えない言葉を言い放っていれば、唖然としてしまうだろう。それだけではない。
(この少年、ただ平和な世界に居た者では到底出来ない目をしている?)
教会騎士でも、それなりの地位にいる彼女だからこそ、キラの眼差しを見て内心驚いていた。
(・・・知りたい。デバイスに選ばれたことと言い、古龍に会っても助けたいと思える精神と言い、キラ・ヤマト、私は貴方を知りたい)
エレミアはキラを見ながらそう決意した。
(この女、まさか・・・)
その隣でシヴァは、エレミアを見ながら彼女がなにを考えているのか理解した。
「あの、シャンティエンさん。なにか困っているなら、僕は貴方を助けたいです!」
キラは大声でシャンティエンにむかって助けたいと言った。そんなキラの思いが届いたのか、シャンティエンは少し縦に頷くと、自分の頭に向かって手を刺す。
「えっと・・・乗れってことですか?」
「グルゥ」
キラの問いにシャンティエンはまた首を縦に振る。
「まさかキラ様、行くのですか?」
「はい」
「・・・なら私も行きます」
「エレミアさん?」
キラに付いていくと言ったのは、意外なことにエレミアだった。
「どういうつもりだ?」
「どうもこうも、私はあの古龍を討伐するためにここに派遣されました。それでしたら、何故この古龍が今になって現れたのかを調査するためにも、彼に同行するのです」
「・・・本音は?」
「キラ・ヤマトを知りたいからです・・・・・・ハッ!?」///
「ふぇ!?」///
「なっ!?」///
「はぁ・・・」
一体どこのショートコントだろうか?
建前(半分本当だが)を言ったエレミアだが、シヴァが呟いた言葉に反応してついつい本音が出てしまった。
彼女の本音を聞いたキラとガイアは顔を赤くしながら驚き、アーチャーは呆れ果てていた。端から見ればショタコンにしか思えないからである。
「・・・まあ何にせよ、今のうちに教会の方に恩を売っておくのも手だからな?キラ、この騎士を連れて行くか?」
「ふぇ!?えっと・・・・・・一緒に行きますか?」///
「・・・・・・はい」///
本音を聞かれて恥ずかしがったエレミアは、顔を赤くしながら首を縦に振る。
因みにそのエレミアの姿を見たアーチャーは、どこか安心したかのような顔だった。
「勿論私も行きますわ!」
「右に同じだ」
「無論、私も同行しよう」
「皆さん、ありがとうございます」
自分で勝手に決めたことなのに、同行してくれると言ってくれたガイア達に、キラはお礼を述べる。
「あの、シャンティエンさん!ガイアさん達も連れて行ってくれませんか?」
キラの問いにシャンティエンは頷き、キラ達に向かって頭を下げた。キラ達はシャンティエンの頭に乗り、落ちないようにしがみ付く。
するとエレミアは、近くにいた(というよりも忘れられていた)部下達に顔を向ける。
「あなた達、私は今から少し出かけます!後のことは頼みましたよ?」
「は・・・は!了解しました!」
呆けていた騎士達は、エレミアの言葉を聞いて我に返り、彼女の指示に従う。
「ギャオオオオォォォォォォォーーーーーーーー!!」
全員乗ったのを確認したシャンティエンは、自らに宿る霊気を発動し空に浮く。
そして一気に大空へ飛び立った。
「すごーい!風が気持ち良い!こんなこと初めてだ!♪」
「き、キラ・ヤマト?なんで楽しそうにしているのですか!?」
「へ?だってシャンティエンに乗って風を感じることなんて、滅多に無いじゃないですか?」
「そもそも幻想種に乗れること自体異常なのだがな?」
「「「確かに・・・」」」
アーチャーの一言にキラ以外の者達が同意する。心なしか、自分の頭の上ではしゃいでいるキラの声を聞いたシャンティエンも、少し嬉しそうである。
「よし!このままスピードアップだ!」
「ちょっ、キラ様!?」
「馬鹿か!!今の私達は高い高度を飛んでいる、ジャンボジェット機の外でしがみ付いて居るような状態なんだぞ?!」
「常人では絶対耐えられないというのに、どうして貴方は普通にはしゃげるのですか!?」
「え?こんなの殺す気で撃ってくる弾幕を避けるよりも百倍マシですよ?」
「君は一体どんな世界で戦いをしてきたんだ!?」
目の前の少年は改めて異常すぎることに全員が驚愕する(内二人は知っているが)。今日会ったばっかしの二人は、目の前の少年が一体どんな世界で生まれたのか疑問に思いっぱなしだった。
本来ならこの程度、ガイアやシヴァならばどうってことないのだが、力を大幅に封印されているため、しがみ付くのがやっとの状態なのである。
「む~・・・それじゃあ曲でも聴いて落ち着きますか?」ピッピッ
「この状況でよくデバイスを操作できますわね?」
キラは片手でデバイスを操作し、とある曲を流した。
『坊や~良い子だ寝んねしな♪』
「確かに龍に乗っているが、この状況で流す曲ではない!!」
某昔話のOPだと理解し、シヴァがツッコミを入れる。
「それじゃあスピードアップ!」
「ギャオオオォォォォォーーーーーー!!」
『ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーー!?』
キラの指示にシャンティエンは応えるようにスピードを上げ、キラ以外の者達は絶叫したのだった。
「あれが新しい継承者、『キラ・ヤマト』ですわね・・・」
その光景を遠くから、機械の羽を広げた眼鏡の女性が見ていることに誰も気付いてはいなかった。
次回、ドMな神様登場です。
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