人理修復に舞い降りし悪党共 (砂嵐に潜む昆虫)
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『組織連盟』各重要人物資料(ネタバレあり)
キャラの設定が分からなかった人は是非これを見てください。
※1月10日に一部オリキャラ説明を修正致しました。
12月22日タイトル修正
キャディ・マディル
別名『
身長 189㎝ 体重 79㎏ 年齢 不明
『組織連盟』の幹部統括の役職を担っていたのだが、ピエレルの死後、『組織連盟』のリーダー(仮)も兼任する事になった男。
通常人間の頭脳はおよそ10%しか働いていないと言うが、キャディの頭脳はおよそ78%も働いている。その頭脳を駆使して人界とは別の次元に存在する『
外見:カラフルなタキシードとシルクハットを着こなしている。頭部を覆い隠すほどの黄色いマスクをしており、そのマスクの中の顔は、左目辺りの皮膚以外は剥がれており、その所々からは骨が露出している。
武器:超小型爆弾『飴玉』、サーカスナイフ、仕込み杖。
技模倣(半永久的)
百鬼夜行『クリーチャーカード』
一人称「
三人称「
性格:普段は陽気さとおちゃらけた雰囲気を醸し出しておるが、頭の中は常に冷静で尚且つ狡猾で残忍な思考をしているマッドサイエンティスト。ピエレルの意思を汲み取り、合理性を求めようとしており、効率も忘れずにしっかりと考えている。大体の事は受け流したり、ポジティブに捉えたりするが、ピエレル関係の話になると感情的になる。
属性:悪
推定クラス:アルターエゴ
パラメーター
筋力:C 耐久:B++
敏捷:A 魔力:A+
幸運:E 宝具:A~E(対象によって変動)
宝具名『魑魅魍魎の晩餐(クリーチャーディナー)』
ランク:A~E 種別:対軍宝具
宝具開帳時
「これから始まるのは一方的な蹂躙....
備考:この宝具は、『裏世界』にしか生息しない多種多様の生物を一度に大量に召喚し、攻撃しながら行進する。その行進に呑まれた者は、誰一人生きては帰れないだろう。
デウス・エクス・マキナ
別名『
身長 192㎝ 体重 測定不能 年齢 58歳(機械化前)
『マシンナーズ』のボス。元々は天才兵器開発者で、世界各国に多くの顧客がいるほどの実績を持ってはいるが、彼はそんなことより自分自身が老いていく事に計り知れない不安を抱えていた。そんな時、偶々散歩中に知り合ったピエレルに励まされた彼は、自分が機械の体になれば、"老い"を心配する必要がなくなると思い至った。それから自分が持ちうるありとあらゆる技術力と財力の全てを注ぎ込み、自身の体を機械の体にする事に成功。更に、自身が兵器そのものになれば"死"と言う概念すらも無くなると考え、自分の保有する兵器を改良し、体内に独自開発した四次元空間装置を装着。その空間から好きな兵器を出現させたり出来る。その力を使い『マシンナーズ』を創立。ピエレルの『組織連盟』と合併する。マキナは、ピエレルの事を数少ない相談相手だと思っている。
外見:紳士服に帽子を着ており、露出している所は機械や歯車が見えている。手には杖を持っている。
武器:四次元空間に格納してある『
性格:機械化した当初は、仕事を冷静に、機械的に判断、処理したりしていたが、ピエレルから"もっと人間らしくしないと部下からの信用を失う"と忠告され、それ以降、紳士のような態度や口調、嗜みを覚え、人間らしくしようとしている。
一人称「
三人称「
属性:中立
推定クラス:ライダー
パラメーター
筋力:B+ 耐久:A++
敏捷:B 魔力:B
幸運:C 宝具:A+
宝具名『
ランク:B 種別:対城宝具
宝具開帳時
「御見せしよう。私の最高傑作を....
備考:この宝具は、最も歴史に名が残った英雄三体を一斉に発動する事が可能。この歯車の英雄が現れた時、全ては
別名『
身長 187㎝ 体重 88㎏ 年齢 28歳
『スカベンジャー』のボス。『組織連盟』の傘下に所属する前は有能な軍人であり、その実績と功績が認められ、とある人体実験の被験者に抜擢される。その研究内容は、自在に変形する事の出来る特殊な蟲の因子をDNAに組み込むというものだった。しかしその拒絶反応は大きく、因子を組み込まれた多くの被験者はそれに耐えられず死亡する者が殆どだった。しかし彼はなんとかその拒絶反応に耐えきり、無事に因子を取り込む事に成功。しかし体内に取り込んだ因子が突然変異を起こし、周囲にあった鋼を吸収、自在に変形する鋼の蟲の集合体になってしまった。しかし本人はこれ幸いにと思い、因子の影響で暴走していると装い研究所を破壊、脱走後は自らの組織『スカベンジャー』を設立。活動を始めて一年と8か月後に『組織連盟』を襲撃。しかしキャディの生み出す数多のクリーチャーとキャディによって訓練された構成員達の力に及ばず敗北。しかしキャディからその指揮力を見込まれ勧誘、そのまま部下共々『組織連盟』に加入。現在は『組織連盟』の構成員の指揮と訓練を主に担当している。
外見:特殊部隊のような装備しており、顔にはガスマスクを付けている。この装備の為、肌の露出が少ない。
武器:蟲を自在に操ったり、敵の体内に侵入させたり出来る。自身を蟲の大群にして闘う事も可能。銃火器の扱いにも長けている。
性格:軟派で、口調は軽いものの決して油断はせず、抜け目の無い切れ者。
一人称「
三人称「お
属性:中立
推定クラス:アーチャー
パラメーター
筋力:B 耐久:B++
敏捷:A 魔力:C+
幸運:D 宝具:B
宝具名『
ランクB 種別:対人宝具 捕捉人数:1~2人
宝具開帳時
「蟲を舐めたら痛い目見るぜ?
備考:この宝具は、自身の蟲達を大量に発生させ、台風のように対象を攻撃し続ける。この攻撃に耐えられたものは、身体的にも精神的にも多大な成長を遂げられるだろう。
--その攻撃から生き残れたらの話になるが。
フローレス
別名 『
身長 234㎝ 体重 不明 年齢 2100歳
『裏世界』とは別の次元空間で魔物・魔族達を統括している『
外見:頭部は球体で、首部分から着脱が可能になる。灰色の鎧のようなもので体部分を覆っている。鎧の中身は空洞で、本体は頭部の球体となっている。球体が非浮遊状態の時は頭蓋骨をモチーフにした仮面を被っている。
武器:あらゆる空間に干渉して戦う。頭部の着脱で空間攻撃のタイプが変化する。そこに手が加わると更に多彩な空間攻撃を可能とする。首部分が離れていると、遠距離の攻撃に特化し、首部分がくっついていると、近距離・中距離の攻撃に特化している。
性格:かつての『原初の魔皇』としての風格は失われていないものの、根本的な性格は戦闘狂である。だが、それとは別にある程度の寛容さを持ち合わせている。しかし自分が認めた相手、若しくは驕っている相手には、『原初の魔皇』としての冷徹さと残忍さが現れだす。
一人称「
三人称「
属性:混沌・悪
推定クラス:アヴェンジャー
パラメーター
筋力:B 耐久A+
敏捷:E 魔力:EX
幸運:B 宝具:A
宝具名『
ランク:A 種別:対軍宝具
宝具開帳時
「天を見ろ、地を這い回れ、今ある生に懺悔しろ....
備考:この宝具は、魔力を用いて人工的に作り出した暗黒空間から大量の暗黒物質で形成された流星群を、魔力が続く限り射出する事が出来る。この宝具から逃げられなかった者は、最期の時まで己が犯した罪を懺悔するべきだろう。
ナイフ・キーカー
別名『ナイフの魔術師』
身長 168㎝ 体重 65㎏ 年齢 不明
『スカベンジャー』の二大幹部の一人。特殊暗殺部隊『
外見:濃い緑色のローブを着ており、金具できつく締めており、露出が一切無い。目のぽっかり空いた仮面をしている。
武器:通常時:ローブの中に大量に仕舞っている多種多様のナイフ。(暗殺と戦闘との両立可能)
邪神時:体が巨大な鉄色の蜘蛛のような姿になる。そうなると通常よりも巨大なブレードを何本も形成出来たり、口から通常時の時のナイフを無限に射出して闘えるようになる。
性格:常に何を考えているのか分からず、時々意味不明な行動をとることが多い。しかし戦闘が始まるとそれも一転し、敵に一切の容赦もかけない。子供に優しく、子供も彼に懐きやすい。(但しロリコンだからではない)
一人称「ボク」
三人称「オマエ」
属性:混沌・善
推定クラス:アサシン
パラメーター
筋力:C 耐久:B
敏捷:A+ 魔力:B
幸運:E+ 宝具:A
パラメータ(邪神時)
筋力:A 耐久:B+++
敏捷:E 魔力:A
幸運:E 宝具:A+
宝具名『
ランク:A 種別:対人宝具 捕捉人数:2~3人
宝具開帳時
『イタミヲワスレタモノハ、マタイタミヲオモイダス....
備考:この宝具は、捕捉した対象を一時的に『裏世界』にある自らの巣へ引きずり込み、そこでナイフの雨あられを浴びせ、最後にはキーカー本体が対象を切り刻む。
痛みを忘れた者達は、混沌の鉄蜘蛛によって再び痛みと恐怖を思い出すだろう。
シャドウ・ウォーカー
別名『
身長 231㎝ 体重 86㎏ 年齢 不明
『スカベンジャー』の二大幹部の一人。かつては『
外見:白色のトレンチコートとソフト帽を着ており、霧状の頭部は内側にルーンを刺繍しているソフト帽で人型の頭のように固定している。手にも白色の手袋をしている。
武器:通常時:自らの影を様々な武器や平らな影の手『
邪神時:『裏世界』から引き剥がされた自身の肉体を呼び出し、命令したり、その肉体に憑依する事が出来るようになる(但し憑依出来るだけであってその肉体と融合することは出来ない)。尚肉体に憑依した場合、サイズは小さくなるが、自分自身の能力、及びステータスが大幅に強化される。
性格:見た目に反して気配りが(無自覚に)上手なアニキ気質。しかし仕事のモードに入ると、与えられた任務をきっちりとこなす仕事人気質になる。
一人称「
三人称「お
属性:中立・善
推定クラス:ルーラー
パラメーター
筋力:A 耐久:A
敏捷:B++ 魔力:EX
幸運:B 宝具:A+
パラメータ(邪神時)
筋力:EX 耐久:B+
敏捷:A 魔力:A++
幸運:D 宝具:A
宝具名『
ランクA 種別:対城宝具
宝具開帳時
「墜ちてこい、我が肉体....
備考:この宝具は、『裏世界』から切り離された肉体を人界に呼び出し、その肉体に命令をする事が出来るようになる。空から堕ちてきたかつて影全てをを支配した皇帝の残滓が、再び人界にその姿を晒すだろう。
ギルディア
別名『断罪王(だんざいおう)』
身長 216㎝ 体重 91㎏ 年齢 1900歳
フローレスの数少ない側近の一人。最初は野良魔神だったのだが、当時の『原初の魔皇』として活動していたフローレスにその能力と才能を買われて、長い交渉の末、ギルディアは最初の彼直属の臣下になる。その後フローレスの指示のもと多くの敵対魔族や魔物を次々と殺していき、その冷酷さと敵に慈悲を掛けない姿勢に、フローレス直々に『断罪王』の称号と七つの原初の大罪を保有する十字型の大矛『
外見:白色の神父服を着ており、首には髑髏を象ったロザリオと真っ赤な十字架が描かれた仮面をしている。
武器:十字架をモチーフにフローレス直々に作り上げた七つの大罪を保有している大矛『大罪の矛』を使いこなして戦う。この大矛には特殊なルーンが彫られており、『大罪の矛』に保有されている最古の大罪『
『大罪の矛』には七つの原初の大罪とそれらを凝縮した最古の大罪が保有されており、それぞれ『
性格:フローレスに出会った頃から物事をハッキリと淡々と言っており、どんな相手にも物怖じせず、面と向かって話す。キャディの事は毛嫌いしており、彼にだけ罵詈雑言を浴びせている。しかし彼以外にはそれなりに敬意を評している。戦闘では相手の力を認めると本気を出して戦う。丁寧な喋り方を心掛けているものの、中々上手くいっていないのが現在の彼の悩み。バルハァの事はお互い良き理解者だと思っている。
一人称「
三人称「お
属性:中立・悪
推定クラス:バーサーカー
パラメーター
筋力:A+ 耐久:B+++
敏捷:A 魔力:E++
幸運:B 宝具:D+
宝具名『
ランクD 種別:対軍宝具
宝具開帳時
「敬意を表し、本気で裁こう....
備考:この宝具は、身体能力を一定時間の間、通常の数十倍にまで強化する事が出来るようになるものである。この状態の彼を捉えられるものはほぼおらず、赤く光る眼光が一本の軌道のようにも見えるほどである。
バルハァ・ルーゲル
別名『
身長 176㎝ 体重 78㎏ 年齢 993歳
フローレス側近の宮廷魔術師。死霊術の開祖にして最初の
外見:ボロボロの焦げ茶色のフード付きの外套を着ており、外套の中には様々な道具や自作の
武器:死霊術を行使できる他にも、歪な形をした鉄製の杖から死霊術以外の魔法を出来る。鉄製の杖の先端に赤・青・緑・白・黒の球状の大きめの宝石が埋め込まれている。
性格:ご高齢だった影響もあり、基本何処か達観した雰囲気を醸し出している。フローレス以外の仲間を孫のように思っており、キャディ達の日常と化した喧嘩を見るたびに「仲が良いのぉ」の一言で片付けてしまうほど。フローレスの事は、この世の全ての真理を築き上げたお方と思っている。戦闘になれば、如何なる敵にも非常で残酷な死霊術師になる。
一人称「
三人称「お
属性:混沌・中立
推定クラス:キャスター
パラメーター
筋力:D+ 耐久:C++
敏捷:E+++ 魔力:EX
幸運:A++ 宝具:A+++
宝具名『
ランク:A 種別:対軍宝具
宝具開帳時
「儂も本領を見せるかのぉ....
備考:この宝具は、自身の死霊術と、杖に嵌め込まれている5つの宝石に同時に魔力を流し込み、一時的に冥界から死霊系の魔物を大量に召喚する事が可能になる。この宝具が発動されれば、死霊達による一方的な殺戮と蹂躙が訪れるであろう。
ドクター・スロッグ
別名『
身長 184㎝ 体重 76㎏ 年齢 43歳
『マシンナーズ』の幹部。様々な毒に関する薬学を極めたマッドサイエンティストであり元凄腕の医者。そのせいか周りの人間からは奇人扱いされていたが、唯一の理解者でもあり相談者でもある『デウス・エクス・マキナ』がいたため、周りからの非難や軽蔑を聞く気はなく、自分の欲求の赴くままに研究を進めていた。しかし彼は研究の過程で『裏世界』という次元空間に誤って転移。しかし彼はそれに関して特に動揺せず、逆に興味本位で邪神を研究。その後邪神に転生。邪神名『
外見:茶色のローブを着ており、ローブの中には試験管や様々な実験機材などを装備しており、左手には医療器具の入った鞄を持っている。顔にはペストマスクを付けている。
武器:通常時:毒で作った武器等を使いこなして戦う(但し耐久性は余り無い)。もしくはメス等に毒を塗って戦う。
邪神時:毒で作成した武器の他にも生物を作ることが可能になる。更に、彼がオリジナルで作った微粒子から肉眼で視認出来るほどの大きさに自在に変化する毒『
性格:根っからのマッドサイエンティスト気質で、殆どが自分基準。しかも毒に関しては完全に持論と暴論しか持ち合わせていない。仮にも科学者と医者も兼用しており、少しは利己的な判断も出来る。
一人称「
三人称「
属性:悪
推定クラス:キャスター
パラメーター
筋力:C+ 耐久:D++
敏捷:D+ 魔力:A+++
幸運:B+ 宝具:A+
宝具『
ランク:A+ 種別対人宝具 捕捉1~2人
宝具開帳時
「さぁ、絶望へのカウントダウンを...
--
備考:この宝具は、スロッグ特製のオリジナルの毒である『
ブラッド・ラスト
別名『
身長 258㎝ 体重 測定不可 年齢 不明
冥府に落ちたピエレルの前に現れた冥府の支配者にして魂の管理を担っている邪神。人界で死んだ者達の魂を冥府で裁き、そして裁いた人間の魂を輪廻転生に還す役目をしていた孤独の邪神。冥府に落ちてきたピエレルもいつも通りに裁き、輪廻転生に還すつもりだったが、ピエレルの冷静な態度と物怖じしない口調に、彼が他の人間とは違うと思ったブラッドは、彼に初めてここが冥府であることを教える。その際に、ピエレルと会話したブラッドは、ピエレルの無意識によるカリスマに魅せられ、孤独な邪神は彼に自身の力と命を捧げる事を決意し、その証としてピエレルの事を"
外見:本来の姿である死神の姿を隠す為に、実力を発揮する以外は、全身を血液で人型のようにして隠している。体を血液で覆っている時は、手の部分が平べったくなっている。顔は目の部分しか確認出来ず、意識すれば口を出現させられる。
性格:基本的にピエレルの意思や意見に忠実で、ピエレル以外の森羅万象はピエレルや自分より劣っていると思っている。しかしピエレルから「慢心しているだけだ」と指摘されてから、その考えを改めようと日々努力している。しかし、
武器:基本は素手や体を覆っている血液を様々な形状の物に変形させて闘う。記憶力が高く、刃物系ならば一度見れば完璧に再現する事が出来る。多種多様な動物や異形の生物にも変形でき、一定量の血液を消費するば、動物や異形の生物をその場に造り出す事が可能になる。他にも血液の一部を体から分離、それを武器に変形させてピエレル専用の武器にする事も可能。
一人称 「
三人称 「
属性:混沌・悪
推定クラス:???
パラメーター
筋力:?? 耐久:??
敏捷:?? 魔力:??
幸運:?? 宝具:??
宝具名『
ランク:?? 種別:対軍宝具
宝具開帳時
「貴様等を生の終着点へ導いてやろう...
--
備考:この宝具は、本体の姿である死神の姿に戻り、大鎌で対象を攻撃する。その赤い死神が目の前に現れた時、その者達は死を受け入れなければならなくなる。
ピエレル・ディーレ
別名『理想世界の絶対支配者』
身長 187㎝ 体重 67㎏ 年齢 享年34歳
『組織連盟』創始者にして、亡き後も絶大的な信頼と支持率から絶対支配者であり続けた男。たぐい稀なるカリスマ性と多くの部下を従える扇動力を持っており、それを駆使して世界中から傭兵や科学者、元軍人等の数多くの構成員を勧誘した。その際に武を極めたとされる三武帝も勧誘。常に合理性と効率を求めているが、無理はせず、部下にも出来る範囲で最善を尽くしてもらっている。そんな部下思いな所に構成員達も惹かれ、構成員の一部には彼を神聖視したり、中には彼を狂信する集団が現れ出す程に、彼は部下達から尊敬されていた。ピエレルも元は傭兵であり、この世の腐った統制や不条理に嫌気が差し、自分自身の手でこの世を変革しようと思い、『組織連盟』を創立。しかし、『組織連盟』の情報を運良く手に入れた各国首脳達はそれを良く思わず、権力を行使してピエレルを殺害。死後、冥府に落ちたピエレルは、そこで冥府の支配者にして魂の管理者である『ブラッド・ラスト』と相対、ブラッドの口からここは冥府だと聞かされる。ピエレルは冥府の支配者であるブラッドに興味を持ち、彼と少しだけ会話をし、その時にカリスマ性を無意識に発揮してしまい、ブラッドを魅了。ブラッドはピエレルに従順になり、彼の事を"
外見:黒のスーツ姿に表情は常に無表情。一度死んでいた為、腐敗が所々で進んでおり、顔の4/1も骨が露出している。手には露出した骨を隠す為に革手袋をしている。
性格:常に冷静でいかなる状況でも冷徹な判断を下せる度量を持っている。計算高く仕事に私情は一切挟まない合理主義者。しかし、それでも部下達の事は大事に思っており、自分の書類関係の仕事が終わり、暇が出来れば部下や幹部達の書類仕事を手伝うという一面が見られる。
武器:火器全般を扱う事ができ、接近戦闘も得意。現世に共に来たブラッドからの援護支援
人工邪神『■■』
一人称 「
三人称 「
属性:???
推定クラス:???
パラメーター
筋力:?? 耐久:??
敏捷:?? 魔力:??
幸運:?? 宝具:??
宝具名『■■』
ランク:??? 種別:???
宝具開帳時
「全てを無に還せ
--■■」
備考:この宝具に関しての情報は存在しません。
この宝具に関しての情報は削除済みです。
如何だったでしょうか?
作者はとてもノリノリな気分で書いてしました。その結果が、メチャクチャ文字数多くなる結果になりましたが...。それでも面白かったと思ってくれたら嬉しいです。
今回も閲覧して頂きありがとうございますm(__)m
評価・感想お待ちしております!
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番外編シリーズ 頑張れきーかーちゃん その①
注意!このシリーズには以下の項目が含まれます。
・パロディネタ
・昆虫の妄想が爆発したシリーズ
・キャラ崩壊の可能性
・ピエレル生存
以上の項目が大丈夫だ、問題ないと言う方はどうぞお楽しみ下さい。
キャディ「....え?なんですこれ?」
え?昆虫の昆虫による昆虫の為の番外編ですが何か?
キャディ「分かりました取り敢えず殺虫スプレーがご所望で?」
止めて下さいそれやられたら昆虫が死んでしまいます。
キャディ「知りませんよんな事」
インセクト「いや作者が死んだらこの作品投稿されなくなるぞ」
キャディ「...あぁ確かに」
あ、ご理解して頂けましたか?ではでは番外編始ま--
キャディ「じゃあ半殺しで妥協しますか」
...こんな所で死んでたまるか!!砂潜り!
インセクト「あ、逃げた」
キャディ「ちょっ、逃がすわけないでしょうが!待ちなさいコラァ!」
逃げるんだよぉ~~~!
インセクト「はぁ...改めて番外編始まるぞ」
ある生物について話をしよう。その生物の名はナイフ・キーカー。『
しかし、これにはデメリットも存在し、意思以外の感覚も本体と共有出来るようになってしまった。これによってキーカーは分離体を介して何度も擬似的な死を体験する事になってしまうことになる。そんなキーカーには
これはそんなキーカーの性別に関するお話...。
◇◇◇◇◇◇
『組織連盟』会議室。窓はなく、蛍光灯だけが円形のテーブルを照らしている。そのテーブルの周りにある席には、既に四つの組織連盟のリーダー達が集まっていた。
『スカベンジャー』リーダー
鋼蟲(スティール・インセクト)
『マシンナーズ』リーダー
デウス・エクス・マキナ
組織連盟の数少ない協力者
フローレス
そしてこの『組織連盟』の創始者にしてボス
ピエレル・ディーレ
その四人が席を埋め、お互いの顔を正面から見ている状態だった。しかし、本来話し合いをする為に開かれたこの会議室では現在話し合いが行われていない。
その理由は、主にピエレルの後ろにいるキャディ・マディルが、負のオーラ全開でピエレルの膝上を凝視していた。その視線の先には緑色のローブを着た美少女がやや頬を赤く染めた顔で座っていた。少女はピエレルの膝の上でもぞもぞ動き、自らの背をピエレルの体に更に密着させようと試みている。
瞬間キャディは無言で仕込み杖から得物を抜こうとしたが、近くにいたインセクトが寸での所で止めに入る。
「落ち着け!仲間攻撃しようとしてんじゃねよ!」
「止めない下さい!私には、私には殺らねばならぬ者がぁ!」
「んな物騒な事俺等が許すわけねぇだろ!」
「そこは皆様の寛大な対応で!」
「あるか馬鹿野郎!てかアイツ俺の部下なんだぞ!?知ってて攻撃させる馬鹿!」
「あぁ!馬鹿って二回も言いましたねインセクト!」
「言ったからなんだキャディ!まず大体二回位言わないとお前理解しないだろ!?」
「はぁ!それじゃあまるで私が難聴みたい物言いじゃないですか!?これでも毎月ある健康診断じゃオールAなんですよ!」
「身体的に健康でもお前の場合精神的に問題があるじゃねぇか!」
「そんなの意味ないし関係のない話の筈です!」
「大ありだわ!」
インセクトの高度な拘束術の中でひたすら藻掻き続けるキャディ。二人の不毛な口喧嘩を、我関わらずを貫きながら自らの頭部の球体を入念に手入れしているフローレス、それを見ながら湯呑みに注がれたオイルを啜っているデウス。
キャディの暴走のせいで、最早この空間で話し合いが出来るような状態が。キャディが何度も暴走する原因は十中八九ピエレルの膝元に乗っている少女なのは明確だった。
「はぁ...。取り敢えず拘束を解いてくださいインセクト。そろそろ疲れました」
「お前...変な事すんなよ」
「しませんしやる気も無くしました」
「....」
インセクトは、やや不審に思いながらもキャディを拘束から解放する。両腕の自由が戻ったキャディは腕を解すように回しながら大きく溜め息を漏らすとゆっくりと少女に向き直る。
キャディの気配を察知した少女はまるで楽しみに水を差されたかのようにキャディに向かって顰めっ面をする。その顔を見て再び殺意に駆られるキャディだったが、なんとかぐっと堪えて少女を見据える。
「それで?何があったんですか、キーカー。正直に話してください」
「...」
「なんで無言で無視するんですか!?聞こえたんですよね!でなきゃそんな露骨な無視出来ませんよね!そこは無視しないで必要最低限何か喋りましょうよ!」
真面目に聞いたきたキャディに、キーカーをそれを無言で無視する。キャディは再びキレ、キーカーに掴み掛かろうとした。当然他のメンバーによって阻止される。
そんな彼女を見かねたピエレルはそっと彼女の頭に手を置き、優しい口調で尋ねる。
「キーカー。何故そうなったのか私や他の皆に教えてはくれないか」
「...ボス」
この場で始めて喋ったキーカーの声は、ほんの一言ではあったものの、とても澄みきった綺麗な声だった。聞く者を聞き惚れさせることが出来るのではないかと疑われるほどに。
その証拠に、ピエレルを除く全員がほんの一瞬だが聞き惚れてしまった。そんな声を間近に聞いていたはずのピエレルはピクリとも反応せず、その微笑んだ表情を保ったまま、キーカーとの会話を続ける。
「私にも教えてくれないのか?」
「イエ!アノ、ソノ...」
ピエレルの言葉を片言で否定したキーカーだが、顔は浮かばれず、何かを言い淀んでいるように見える。それでも彼女は意を決し、顔をピエレルに向ける。
しかしピエレルの整った顔を直視した直後に顔を一瞬にして赤らめ、またモゴモゴとなってしまう。この間にキャディが憤怒のオーラを纏いながら刀を降り下ろそうとしているのだが、これもやはりインセクト達の手によって阻止される。
「ボスニ、コンナワタシノ、キミワルイ声ヲ、聞イテ欲シクナカッタカラ、デス。ゴメンナサイ」
「謝ることはない。寧ろ私はキーカーの可愛い声が聞けて嬉しいよ」
「カ、カワっ!」
ピエレルの言葉に、頭の上から蒸気が噴出したのではと錯覚されるほど顔を真っ赤にするキーカー。勿論ピエレルは口説く気で褒めた訳ではなく、ただ大切な部下を心配すると言う意味合いで褒めたのであった。
「それにお前が危惧してるほどお前の声はそんなに気味悪くもないぞ。なぁお前達」
「そうだぞキーカー。不意打ちで聞いたとはいえ、可愛い声だったじゃねぇか」
「確かに。それに可愛いの他にも君の声はとても澄んで聞こえた。出来ることならその美声をもう一度聞かして貰いたいものですね」
「いや、それは流石に気持ち悪いぞお前」
「おや、そうでしたか。それは失礼しました」
「...で?お前はどうなんだキャディ」
「えぇ。非常に、非ッッッ常に不本意ではありますが、とても可憐で澄んだ美声でしたよ」
「おいおい。素直じゃねぇなぁお前は」
「うるっさいですねぇ。私だって本当は認めたくありませんでしたよ。でも彼女の声をピエレル様が称賛したのですから、そこは素直に認めせざるおえません」
「オ前ニ、言ワレルト、キモチワルイ」
「はぁ!?何でですか!なんで皆揃いも揃って私にだけ毒吐くんですか!?あれですかいじめですか!?泣きますよ!私泣きますよ!大の大人が大人気なくここで泣き喚きますよ!!」
「それはそれで迷惑だから泣くな。泣いたら五回殺す」
「なら私は君を三回殺そう」
「ワタシ、十回」
「何その物騒で理不尽な脅迫!私そんなにいないんですど!てか何気にキーカーだけ多いんですけど!?」
「お前達、そろそろ止めないか」
全員から弄る中、流石にこの状態を見かねたピエレルが止めに入る。その言葉によって全員はキャディを弄る事を止める。クスンクスンと嘘泣きをしていたキャディも、また何時もの調子に戻ると、再びキーカーに問い掛けた。
「それでキーカー、大体予想出来ますけど結局誰のせいでそんな体になったんです?」
「スロッグ」
「ですよねぇスロォォォォォォォォッグ!!」
予想通りの人物の名前に、キャディは男の名前を叫びながら俊敏な動きで会議室から出ると、猛ダッシュで廊下を駆けて行った。その二分後、キャディとは別の叫び声が廊下から聞こえてくるのを聞き、ピエレルは苦笑、それ以外は大きな溜息を漏らすか、頭を押さえる動作をしていたのであった。
如何だったでしょうか?
自分で書いててキャディ不憫過ぎる。でも昆虫は書いていてとても楽しかったです。でも冒頭が自分の書きたかった感じにならなかったのが不思議でなりません(白目)
前書きでも書きましたが多分シリーズ化していきます。
今回も閲覧して頂きありがとうございます。
今後とも何卒宜しくお願いしますm(__)m
評価・感想お待ちしております!
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プロローグ
今回はリアルで作った別のオリキャラをぶちこんでみました。今回も生暖かい目で見守ってくれると幸いです。不束者ではありますが何卒宜しくお願いしますm(__)m
※3月10日文章を修正いたしました。
プロローグ
そこは真っ黒な部屋だ。そこを照らす唯一の明かりは円形のテーブルの上に備え付けられた二本の蛍光灯だけ。そしてそのテーブルの周りには4つの椅子が東西南北に向かい合うようにして設置されている。
椅子には既に四人の男が着席しており、北の椅子に座っている男を除き、他の三人の椅子の後ろに部下と思わしき者が一人ずつ待機している状態である。
「イヤァ~皆さまこのクソ忙しいなかよくぞ集まって下さいました!私嬉しくて涙が出ちゃいそうですよ~クスンクスン」
「君は一々反応が大袈裟過ぎる。こちらも反応に困るのですが」
「イヤンそんなこと言わないで下さいよ~。私と皆さんとの仲じゃないですか~」
「気持ち悪いぞキャディ。あとその伸ばしかた止めろ。それ前回の会合で一回もやってなかっだろ取って付けたかのように実践してんじゃねぇよ」
北の席に座る男"キャディ"と呼ばれた男は「それはすいません」と肩を竦めるだけで反省した様子一切見られず、指摘した東と西の席の二人は本日7、8回目の嘆息をもらす。
キャディと呼ばれるこの男は、カラフルなタキシードを着て、黄色のマスクで頭全体を覆っており、マスクの上にはこれまたカラフルなシルクハットを被っている。椅子の横にはキャデイが持参したと思われる杖があるだけだった。
「それはそうと…皆さん知ってますか?」
「なんだ突然、知ってるかって何がだ」
「あら?もしかして知らないんですか。だとしたら皆さんかなり時代遅れですよー?」
「...だからあれってなんだ?」
「あれですよー聖杯戦争ですよ。せ・い・は・い・せ・ん・そ・う!これを聞いて流石に知らないって人はいないでしょう」
「大変失礼なのですが、なんですその聖杯戦争とは?」
「.....えっ?もしかして本当に何も知らないんですか?
「...そう言われてもなぁ。俺らからしてみりゃ割とどうでもいいことだろ。後キャディ驚き過ぎだ」
「確かにそうですね。それに、いずれは何処かの誰かが勝手に解決するのです。一々慌てる必要もないでしょう」
「いやいやそうですけど!?もっとこう危機感持ちましょうよ!だって我々以外の生命体って言ったらもうカルデアって施設の連中しかいないでしょ!?ねぇ!?」
「チッ、だったらどうすればいいんだ?あぁ!!」
「なんで逆ギレされなきゃならないんですか!?だーかーらー!
「「...」」
「.....はぁ」
キャディの唐突な発言に東と西は『あぁ、またか』と呆れ返り、今まで沈黙を貫いてきた南からもため息が漏れるほどだった。
この男、"キャディ・マディル"が今まで提案してきた事は三人にとって百害あって一利なしなものばかりであり、当然ながら三人は気乗りしていない。
「お前気は確かかよ。その聖杯戦争に参加するってのは?」
「当たり前じゃないですかヤダなぁもう褒めないで下さいよ」
「いや褒めてねぇよ。てか今回は流石に静観でもいいだろうが」
「えー。だってそれだと面白くなくなるもん」
「もんじゃねぇよもんじゃ。てか無理があるだろお前がもんって」
「そういうのあまり言わないで下さいよ。それにこういう展開って中々ないじゃないですか。これは絶対楽しまなきゃ損ってやつですよ♪」
「...そうだったこいつこういう性分だったなチキショウ!」
「今更ですね。御愁傷様でーす」
「他人事だなオイ!」
「...いい加減にしたらどうだキャディ・マディルよ」
二人の言い争いに割って入ったのは意外にも南の席の男だった。彼は真正面のキャディを見据え、重々しい声でキャディに問い掛ける。
「キャディ。今回はどういうつもりだ」
「...何がです?」
彼の真剣な声色にキャディも態度を改め、真正面から彼を見る。
「今回のその聖杯戦争なるもの、お前がただ楽しみたいだけではなかろう」
「へぇ...なぜそう思うんです?"フローレス"」
「惚けるな道化。我輩とて聖杯がなんであるかは知っている。あれは人類という種が本来創るべき物でも使ってもいけない危険な代物だ。人間は欲深い、故に奴らは聖杯に手を出したのだ」
その時、フローレスはある考えが頭の中に
「...まさかとは思うが貴様--」
「さぁーて何の話ですかねー。私には分かりかねます」
その何かを察したフローレスはキャディにそれを聞こうとしたがキャデイはあからさまに話を反らす。
両者の僅かな睨み合いの末、先に折れたのはフローレスの方だった。フローレスは椅子に深く背を預け、今日最も大きな溜息をもらす。
「...まぁ良い。我輩は貴様に協力するだけだ。
「感謝しますよフローレス。やはり持つべきものは友とはよく言ったものです。それで?他のお二方はどうしますか?」
そう言ってキャディは残った二人の事を見る。キャディのどこか有無言わさず雰囲気に東は面倒くさそうに、西は渋々といった感じだった。
「どうせ言っても聞く気ねぇんだろ?ったく面倒くせぇなぁ」
「ハァ...君はいつも強引に話を進めていく、それも勝手に。こちらの身にもなってもらいたいものです」
「まぁまぁ二人ともここは一致団結頑張って行きましょう」
「てめぇがそれを言うな!」
「全くだ、君がそれを言わないで欲しいものだ」
「おうふ二人とも辛辣ゥ」
二人を宥めようとしてその二人に罵倒され、撃沈するキャディ。その様子を何処か悲しそうな雰囲気で見ていたフローレスは静かに席を立ち上がる。
「キャディ。そろそろ解散するぞ。もう話すべき事もなかろう。さっさとこの会合を閉めたらどうだ?」
「ん?あーそうですね。じゃあさっさと閉めますか。では皆さん!また会いましょう」
◇◇◇◇◇◇
4つの組織のリーダー達による定期会合が終わり、最後にはキャディだけがその場に残った。がらりと静まり返った会議室で一人椅子に座り込んでいる彼が、今見ているのは一つのデバイスだった。
デバイスの液晶には白い服を着た黒髪の少年が薄紫色の髪をした盾を持った少女と一緒にしゃがみこんでいる白髪の女性を守っている所の映像だった。彼はそれを見てマスクの中で邪悪な笑い声を上げる。
「ヒッヒッヒッヒッヒ。まぁ..精々楽しませて貰わないと此方が困りますからねぇ、もっともっと見せてくださいよ。あなた方人類最後の希望の可能性ってやつを」
キャディは一人呟きながらゆっくりと立ち上り、懐から一枚の写真を取り出す。
そこには自分を含めた先程の三人の姿と三人の部下と思われる者達も写っている。そのグループの真ん中には組織連盟の創始者にして
「あぁ"ピエレル様"、我らの敬愛するピエレル様。もうしばらく、もうしばらくお待ちください。必ず、必ずやあなた様を再びこの世に!そしてこの世界を必ずやあなた様の物に!!アハッアハハハハヒャーッハハハハハハ!イーヒャッハハハハ!」
狂人の如き笑い声を上げながら、これから人理焼却を阻止しようとする彼らの今後を考えるとキャデイは笑わずにはいられなかった。静かだった会議室はキャディの狂った笑い声で瞬く間に埋め尽くされていく。
この会合はほんの序章である。カルデアの人理修復の旅はイレギュラーな化物共の手によって更なる波乱に満ち溢れるものとなるだろう。
運命は回りだす。静かに、だが着々と。その運命の結末など誰にも分からぬまま...
如何だったでしょうか?オリキャラの紹介説明は次の投稿の際に書かせてもらいます。正直なところ作者はもう指が限界です(__)
この作品を閲覧していただきありがとうございました。次の投稿を楽しみにしてください。
誤字・脱字などありましたらご報告のほど宜しくお願いします。
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邪竜百年戦争オルアレン
邪竜百年戦争 1ー1
それでも構わないと言う方はどうぞ楽しんで下さいm(__)m
邪竜百年戦争
場所は西暦1431年のフランス。ちょうどこの時期は百年戦争の休止期間であり、比較的小さい戦争しか起こっていない。そんなフランスの土地にある森の中を二人の男が歩いている。
片方はカラフルなタキシードとシルクハットをした黄色いマスクを被った男キャディ。見た目だけ教えれば、例え人混みの中にいたとしても簡単に見つけられるような、そんな目立った格好をしているにも関わらずキャデイはどこか落ち込んだ様子で歩いていた。
そんな彼の隣には、身長二メートル以上もある大男が一緒に歩いていた。その大男の名は"ギルディア"と言い、神父服にも似た戦闘服を着て、首にはロザリオ、顔には十字架の描かれた仮面をしている。右手には十字架をモチーフにしたかのような大矛を持っており、杖として使っている傍ら時折視界の邪魔になる小枝などを大矛の刃で切断している。
「ハァ...ねぇ?なぜなんでしょうかねぇ。どうしてこんなこ事になったんでしょうかねぇ」
「...おまえ自身が勝手に取り決めた"ルール"に則って行われた結果、もしくはおまえ自身の運のなさ、としか言えませんね」
「確かにそうですそうなんですよ。そうなんですけど...なんでしょうこの訳の分からない敗北感は...」
「知りませんよそんなこと」
落ち込みながらも話しかけてくるキャディを冷たくあしらうギルディア。
なぜ彼がこんなにも落ち込んでいるのかは、この特異点突入前に彼がサプライズて作ったルールによるものが原因だった(尚この時、その場にいた大半がキャディに対してイラッとしたの余談である)。
キャディが作ったルールの内容は、まずルーレットでその特異点に行く人数(2~5人)を決めてから、今度はくじ引きで誰が行くのかを決めるという単純なものだった。
キャディは自分以外の誰かが行くだろうと期待していたらしく、自分が行く事になるとは想像もしておらず、この特異点に来てからというものずっとこの調子だ。
「キャディ・マディル。いつまで落ち込んでいるんですか。いい加減怒りますよ」
「いや、なぜに怒るんです!寧ろここは慰めるべきでしょ!大丈夫ですかって!なのに慰めるどころか怒るとか酷すぎません!一応これでも連盟のリーダーの一人なんですけど!?」
「知ったこっちゃないですよ」
「何故です!何故私相手にそんなに冷たくなれるんですか!あなたには血も涙も無いんですか!それとも私が嫌いなんで--」
「そうですよ」
「言い切る前に即答しやがったたよこの人は!出来れば最後まで私の話を聞いて欲しかった!」
「うるさいですね(ボソッ...。あ、因みにおまえの何処が嫌いかと言いますと...主に外面から内面までの全部てす」
「聞いてもいないのに嫌いな理由まで言っちゃったよ!てか外面から内面までってそれ私の存在自体否定してるじゃないですか!」
「事実ですから仕方がありませんよ」
「...あの、知ってますギルディア?いじめっていじめられた方がそう感じたらいじめになるんですよ?」
「おまえにいじめなんて言葉が該当する訳ないでしょう何言ってるんですか」
「理不尽すぎる!!」
などとそんな他愛ない話(?)をしている内にキャディの調子も元に戻り始め、キャディ達は森の少し開けた場所で足を止める。
「まぁ私が嫌われている云々はとりあえず置いておくとして、本当にこっちで大丈夫なんですかギルディア」
「問題ありません。順調に目的の場所に向かっていますよ」
「そうですか。それなら別になんともないのですが...」
歯切れが悪そうにそう言ってキャディは今来た道を見る。ギルディアも何かを察したのかキャディと同じ方向に視線を向ける。
「やはり...か」
「えぇ、
「...相手は分かりますか?」
「勿論。
「そんなこはどうでも良いです。ここで迎え討ちますか?」
「とんでもない。彼らの旅が二つ目の特異点の、ましてやこんな森の中で終わってしまったらあまりにも素っ気ないでしょう」
「...そうですか。ではどうするんです?我々が彼等と遭遇するのは時間の問題ですが」
「そに関しては問題ありません。ギルディアが魔力放出すればいいんですよ」
「...何故?それでは彼等に居場所を教えるようなものではありませんか?」
「何事にもリスクは付き物というものです、それにそっちの方が都合が良いので」
「まぁ、そう言うことなら...」
役者のように振る舞いながら説明するキャディ。そんなキャディを冷たい視線で見ていたギルディアは半信半疑だが言われた通りに魔力放出をする。
ギルディアの魔力放出の影響で周りにあった木々が大きく揺れ、枝に停まっていた鳥や近くにいた動物が次々と逃げ出していく。それと同時にギルディアの感知していた複数の魔力反応が一度だけ止まってからその内の一つがスピードをあげてこちらに向かってくる。
「そうですそうです上出来ですよ。流石ですギルディア」
「...おまえに褒められるのはひどく癪ですが、この程度造作もありません。それで?次はどうすればいいのですか?」
「いや、もう大丈夫ですよ。後は少し待つだけです。私の考えが間違っていなければ直ぐにでも...って、ほら言ったそばからもう来てくれた」
「こいつらは...ワイバーン?」
「ゾンビ兵もオマケで付いてきましたね。こればかりは予想外」
ギルディアが魔力放出してから僅か数分で何処からともなく現れたのは大量のワイバーンと追従する形でやってきたゾンビ兵達だった。
キャディにとってこんなに大量に来るとは思ってもおらず予想外の事態であったものの、作戦に支障はないのかどこか覇気のない口ぶりだった。
「こんなに来るとかえって面倒くさいですね...」
「私のせいではないですからね、指示したあなたに非があるのですからね」
「まぁそうかんですけど、てか敵の首魁もかなり臆病ですねぇこんなところにこんなに駒を投入して」
「そう言う話はどうでも良いのですが、要はこいつらを皆殺しにすれば良いのか?」
「そうですそうです。いやぁ流石はギルディア話が早くて助かります。こんな初歩的なことも分からない
「...そうですか、それは可哀相な...」
「おや、慰めてくれるんですか?さっきまで冷たかったのにどういう風の吹きまわしで「--その構成員が」…やっぱりそっちですか!?まぁ大体予想は出来てましたけどいざ言われてみるとかなり心に来るものがあるですが!」
「もしかして自分が慰められていると思ったのですか?だとしたらおこがましいにもほどがありますよこのクソ野郎」
「酷すぎる!!」
と会話しているにも関わらず、ワイバーン達は一向に攻撃してくる気配がない。
なぜならワイバーン達が、邪竜よりも濃密な魔力を纏っているギルディアを攻撃してはいけないと生存本能からそう理解しているからだ。しかし、知性も本能もないゾンビ兵達にそんなものは関係なく、唸りながら一斉に剣や槍を突きだしてギルディアに向かって突撃する。
「五月蠅い」
ギルディアが一言そう呟き、振り向き様に大矛を横に振る。ただそれだけで一瞬の内にゾンビ兵の六割が肉片へと成り果てた。
ゾンビ兵も流石にギルディアの実力に気づいたのか少しだけ距離をとる。ワイバーン達は更に警戒を強め、空からギルディアを見つめている。
「あらら、随分警戒されちゃってますね。まぁ仕方ありませんか、二人でちゃっちゃっと片付けちゃいましょう」
「--いや。おまえは先に行け。こいつらは私が相手します」
ギルディアの隣まで来て杖の中に隠していた刀を抜こうとする。しかしギルディアはそれを制し、先に行けと言ってきた。キャディもまさかここで先に行けと言うとは思わず、内心少し驚いていた。
「...良いのですか?」
「構いません。こんなの言うのも非常に癪ですが、おまえが相手するほどの脅威ではありませんよ」
「そうですか、ならここはおまかせしましょう。先に行っているので早く来てくださいね」
そう陽気に言ってキャディは、ギルディアに背を向けて再び森を進み始める。それを目で見送ったギルディアはワイバーン達に視線を戻す。
「さて、
ギルディアは片手でゆっくりと大矛を地面と平行に構える。その姿は正に、戦いに飢えた猛獣のようだった。
「さぁ、来るがいい蜥蜴と屍共。我が王フローレス様から授けられた称号『断罪王』の名に懸けて、貴様等を一撃で
『断罪王』ギルディアは、放たれた矢のようにワイバーンとゾンビ兵達に向かって走り出した。
如何だったでしょうか?面白いと思って頂けたら幸いです。閲覧ありがとうございます!厚かましいお願いではありますが評価・感想をお待ちしておりますm(__)m
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邪竜百年戦争 1ー2
戦闘描写が難しすぎる!
昆虫は戦闘描写で既に虫の息です。
ギルディアがワイバーン達との戦闘を始める十数分前、人理修復の為にフランスの地にレイシフトしてきたカルデアのマスター"藤丸立香"とそのサーヴァント達。
彼らは、ロマニが偶然レイシフトした場所から近い地点でギルディアの僅かな魔力痕の検知したため、それを追ってみてくれと指示され、現在森の中を
「しかし、こんな鬱蒼とした森の中、よく躓かずに歩いていけますね、魔力痕を残した人物は」
「そうだね。俺らと違って足腰を鍛えてるかも」
愚痴にも似た言葉を呟くのは、薄紫色の髪をした少々露出度の高い戦闘服を着た少女"マシュ・キリエライト"。まだデミサーヴァントに成り立ての彼女は凸凹とした道を、時折躓きそうになりながらもなんとか歩いている。彼女の言葉に反応した立香は苦笑しながらも
「全く、この程度で音を上げているようではこれから先が思いやられるぞマスターよ」
「全くだぜ、もうちっと気張れや坊主、嬢ちゃんも」
そう言う二人のサーヴァント。軍服と軍帽子をした美少女、クラスアーチャー"織田信長"と全身青タイツにも見える戦闘服を着ている男、クラスランサー"クー・フーリン"。
彼等はまるで普通の道を歩くかのようにスイスイと先に進んでしまっている。そしてジャンヌは立香達の身を案じ、同じ歩幅で歩いてる。
「大丈夫ですか、立香さん?ある程度は進みましたし、そろそろ休憩にしましょう」
「心配してくれてありがとうジャンヌ。でも俺が一々休んでるせいで接触対象との距離が中々縮まらないって思うとおちおち休めなくて」
「だからといって無理して倒れられてもこちらが困るだけじゃがの」
「確かに、ノブナガの言う通りだぜ」
「うっ...。あ、あと少ししたら休みます」
休憩しようと申し出たジャンヌに立香は断りを入れるが、信長とクーフーリンの鋭い指摘を食らい、立香は顔の表情筋が引き攣る。その時、カルデア"現"所長"ロマニ・アーキマン"から現状確認の通信が入る。
『あーもしもし?皆今のところ順調かい?』
「あ、ドクター。はい、今のところは順調に進んでます」
『それは良かった。しかし映像を見る限り随分凸凹した道だね...。僕なら直ぐにバテちゃいそうだよ』
「...それはドクターが運動をしたがらないからですよね」
『うぐッ。た、確かにそうだけれども。僕みたいな奴は運動する位なら色々学んだ方が得だし』
『それって完全に引きこもりたい人の言いそうな台詞じゃないかロマン』
『うわっ、びっくりしたぁ!後ろから突然話掛けないでよダヴィンチ!ビックリしたじゃないか』
『ふふん甘いよロマン、この天才たる私に不可能はないのだよ。故に君の背後に気づかれずに忍び寄る事なんて造作も無いことさ♪』
『それは天才に関係なく誰にでも出来る事じゃないかな!?後然り気無く僕のお菓子食べるの止めてくれない!』
『えーいいじゃん別にー。減るもんじゃないし』
『大いに減ってるよ!僕がマシュに黙って、後で食べる為にわざわざ隠してたお菓子を...あ』
「...ドクター今の話は本当ですか?」
『い、いや違うから!誤解しないでマシュ!それはそのぉ...』
『そだよーマシュ。ロマンの奴、山積みの資料の中に巧妙にお菓子隠してる』
『ちょっ!』
「...ドクターこの特異点が終わったら少しお話したいことがあります」
『ま、待ってくれマシュ!!これには深い事情が』
「い・い・で・す・ね!」
『うぅ...はい』
ダヴィンチが原因でお菓子を隠していた事がバレたロマニは、後でお説教されるんだろうなぁと思うとと大きな溜息を吐きながら大きく項垂れる。
なお、お菓子を隠している事をバラしたダヴィンチは、項垂れるロマニの後で静かに爆笑していた。
『と、とりあえずジャンヌと一緒に引き続きその魔力痕の人物を追いかけてみてくれ』
「了解」
『立香君。くれぐれも無茶だけはしないようにね』
「安心せい、ヒョロ男。マスターは儂とクーフーリンの二人で守ってやるわい」
「おうよ!坊主には指一本も触れさせはしねぇぜ」
「わ、私も先輩の為に頑張ります!」
『ヒョロ男って...。うん、そうだね。じゃあ皆頑張って--』
ロマニが挨拶して通信を切ろうとした瞬間、突然木々が風もなく揺れだし、鳥の群れが一斉に飛び立って行く。
立香は突然の事態に驚き、サーヴァント達は一斉に臨戦態勢をとる。サーヴァント達は感じとったのだ。
『な、なんだこの異常な魔力反応は!?場所は......距離およそ30メートル!魔力痕の後もちょうど接触対象のいるとおぼしき場所で途切れてる。まさかこれって...!』
「間違いなかろう。その接触対象が発したものじゃろうな。これほどまでに禍々しく、全身に突き刺さるような魔力は初めてじゃぞ」
「随分濃密なこった。こりゃオレんとこの師匠と五分五分つったところか?」
「...なんとおぞましい魔力でしょう、震えが止まりません」
「おめぇの反応が正しいぜ聖女さんよぉ。こんなの人間が間近で受けたらまず生きちゃいられねぇだろうよ」
「先輩!万が一の場合に備えて私の後ろに!」
「わ、分かった!」
『あぁ!オマケにワイバーンの大群の反応も検知した!も、もしかして接触対象がワイバーンと交戦してるのかもしれない!』
「恐らく戦っているのは確実じゃろうな」
『よし!位置をマークしておいた!マップに表示しておくよ!』
マシュの左手にあるデバイスの3D液晶に映った森全体のマップに青い点が表示される。その青い点の回りに夥しい数の赤い点が表示される。その数は数えるだけでざっと60個以上ある。誰から見てもそれは絶望的な状況だった。
「た、助けないと!その人が危ない!」
「あ、おい待てマスター!ったく面倒くせぇなぁ!」
「ええい!まったくあの小童は!自分一人で行きおって!」
「ま、待ってください先輩!二人とも!」
「み、皆さん待ってください!」
マシュの盾の後ろに隠れていた立香はマップの映像を見て、いてもたってもいられず一人でその地点まで走っていく。
クーフーリンは制止の声を掛けたものの、立香は聞く耳を持たずに行ってしまい、クーフーリンは呆れながら、信長は不機嫌そうに、マシュは二人と立香を追いかけ、出遅れたジャンヌも急いで四人の後を追いかけた。
◇◇◇◇◇◇
立香はマップに表示された地点に向かって我武者羅に走っていた。凸凹の道に何度も足を挫きながらも必死で走った。
何が彼をここまで駆り立てているのかは彼の所属しているカルデアの"前"所長"オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア"が大きな要因となっていた。
彼女は、最初の特異点冬木市の人理修復後に"レフ・ライノール"の手で殺されてしまっており、それを助けられなかった立香は心の何処かでそれを負い目に感じていたのだ。
「(まだ、行ける!ここで、止まってちゃいけないんだ!)」
その一心で足を動かしていた立香は、森の中の少し開けた場所に出た。その後直ぐに、クーフーリン達も立香に追い付いたのだが、彼等はそこで信じられないものを目撃する。
それは、接触対象がワイバーンの大群に悪戦苦闘しているのではなく、逆に接触対象がワイバーンの大群を一方的に蹂躙している光景だった。
その背後から別のワイバーンが噛みつかんと大きな口を開けて襲ってきたが、素早く大矛を一回転させ、その口の中に突き刺す。口の中を突き刺されたワイバーンは必死で藻掻くが、大矛の刃の向きを横から縦にし、そのまま上に斬り上げる。頭蓋骨ごと脳幹を切り裂かれたワイバーンは、口を開けた状態のまま地面に倒れると激しく痙攣を起こし、やがて動かなくなった。
この隙に彼の近くに降下してきたワイバーンが一際大きな声で鳴き、至近距離から翼で風を起こす。だがギルディアにダメージを受けた様子はなく、ワイバーンはもう一度風を起こそうと翼を大きく広げたが、大矛を逆手に持った状態で間合いを詰めてきたギルディアに、逆袈裟斬りの要領で斬りつけられる。斬られたワイバーンは少しの間翼を広げた状態を保ったまま、きれいにに真っ二つなる。
「な、なんですかあれはっ!」
「...坊主、さっさとオレ達の後ろに下がってろ。ありゃ相当ヤバイ相手だぜ」
「そうじゃマスター。
「う、うん...」
ジャンヌは異様な光景に驚愕し、クーフーリンに後ろに下がるよう言われた立香はマシュの元へ向かう。マシュも既に盾を構えて戦闘態勢を整えていた。しかしジャンヌは、旗を構えてマシュ達の前に出る。
「ジ、ジャンヌさん!何を...!」
「私も、微力ながらお手伝いさせていただきます。どれだけ弱くても、サーヴァントですからっ」
「おっ、威勢がいいじゃねぇか。なら盾の嬢ちゃんとマスターを守ってやってくれよ」
「まだまだ未熟な二人じゃからのぉ。後衛は任せるぞ、聖処女よ。」
「はいっ!任せてください!」
クーフーリン達の言葉にジャンヌが元気よく答えると同時に、ワイバーンの断末魔が辺り一面に響き渡る。
全員が視線を前方に向けると、此方に背を向けた
彼は、ワイバーンの胴体に足を乗せて、ゆっくりと大矛を引き抜くと、杖のように持ち直し、ゆっくりと立香達の方へと振り向いた。
如何でしたでしょうか。今回はやっとカルデアの面々とオリキャラを対面させる事に成功しました。正直とても指が痛いです(__)
今回も閲覧してくれてありがとうございます!
誤字・脱字、評価・感想ありましたら気軽に報告してください。よろしくお願いします。
再度この作品を閲覧して下さり本当にありがとうございますm(__)m
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邪竜百年戦争 1ー3
今回も生暖かい目で見ていただいたら幸いです。
カルデアの面々は、警戒しながら目の前の男を見上げている。男は身長ニーメトル以上あり、神父服を着て、手には返り血だらけの大矛を持っている。
場違いともとれるその姿は、より一層彼等に違和感を与え続けた。サーヴァント達は、既にそれぞれ自分の武器を持ち、いつでも戦闘が開始できる体勢を整えていた。しかし男は、その間に攻撃してくる素振りもなく、ただただ無言で此方を見下ろしていた。
「あのぉ~....貴方は、一体誰...なんです?」
両者の間を沈黙が埋め尽くす中、その沈黙を破ったのはマスターの立香だった。何処か躊躇いがあるものの、必要最低限の情報だけでも欲しいと思い、勇気を出して話しかける。
すると男は何か考えるような仕草を見せる。しかしそれもほんの2、3分であり、男はゆっくりと顔だけを立香達に向ける。
「ギルディア。私の名はギルディアと言います。そう言うおまえは、
「えっ..あ、はい!そうです!」
「...そうですか」
ギルディアにマスターかと聞かれ、一瞬だけ呆けてしまった立香。しかし直ぐ様平静を取り戻し、それを肯定する。すると、ギルディアは何処か悲しそうな声色になる。
「なんだ、話してみれば案外普通のサーヴァントじゃないか。見た目怖いけど」
「...果たしてそうかのぉ」
「?どう言うこと、信長」
信長の何処か苦虫噛み砕いたかのような顔に、立香は疑問に思った。ギルディアの何処にそんなに危険な要素があるのか全く分からなかったから。しかしクーフーリンもどうやら信長と同意見らしくギルディアに視線を向けたまま、首を縦にふって肯定する。
「そうだぜ坊主。ありゃ明らかに友好的な奴なんかじゃねぇ。俺の戦士としての直感がそう言ってやがる」
「でも普通に喋れたし、ジャドウサーヴァントって訳でもなさそうだし」
「それが甘い考えなんだよ坊主。いいか?簡単で単純な話だ。まず、俺等はまだ誰もあいつに自己紹介してねぇ。だがあいつは、《《マスターが何処の誰なのかを知ってた》》。...ここまで言えば後はもう分かるよな」
「ッ!それってまさかっ!」
「あぁ。恐らくレフの野郎の仲間か、協力者って所か」
元所長のオルガマリーを殺害し、人類の焼却を目論んでいる男、レフ・ライノール。その男の仲間かもしれないと聞き、警戒する立香。マシュも盾を構えており、状況を察したジャンヌも旗を構えて臨戦態勢を整えていた。
しかしギルディアは得物を構えず、ただただ立香達の出方を伺っているようだった。しかしそんな状況にも関わらず、ギルディアは彼らに背を向け、森の中へ歩いていこうとする。
「おいっ!何処に行く気じゃ貴様!」
「...今、ここで戦う意味も必要もありません」
「はぁ?何言ってんだてめぇ」
「...来るべき時に、必ず私たちは戦うはずです。きっとあの狂人はそう仕向けるはずです。それまでにはそれ相応には強くなっていて下さい。でないと--」
そう区切ると、ギルディアはゆっくりと振り返る。それと同時に魔力を放出し、不意討ちを狙っていたサーヴァント達を牽制する。
「--あっと言う間に終わってしまいますから、それでは私が楽しめませんので」
仮面越しに嗤っているのが分かるほど邪悪な魔力を放ちながらそう言うギルディア。その言葉に呆気に取られる立香達を、ギルディアは鼻で笑い飛ばしながら森の中へ、
◇◇◇◇◇◇
「遅かったじゃないですかギルディア。何をそんなに手間取っていたのですかまさか貴方が苦戦したとかありえませんよね?」
カルデアの面々を置いて、その場を去ったギルディア。その後、森の中を歩いていると、その歩いた先でキャディが懐中時計を見ながら待機していた。キャディはいつものように何処か人を馬鹿にするかのような陽気な喋り方で話しかけてくる。
ギルディアは一瞬イラッとしたものの、事実時間が掛かっていたのでキャディに対する罵倒したい気持ちをぐっと堪える。そのかわりに小さな溜め息が零れた。
「すいませんね。少し彼等からの質疑に応答していたので遅くなりました」
「あら、罵倒しないんです?何時もならここで貴方の痛烈な罵倒が飛んで来ると思っていたのですが」
「実際かなり時間を掛けすぎましたからね。それとも罵倒され-」
「たくはないですからね!?私そんな超がつく程ドMじゃありませんから!」
「...そうですか。まぁそんなことどうでも良いんですけどね.....チッ」
「えぇ~..なんで若干キレるんですか意味分からないんですけど」
二人の会話が繰り広げられる中、ギルディアはこの場に来てからずっと気になっていた疑問を聞いてみた。
「ところでキャディ。おまえの周りの
ギルディアが指摘する通り、キャディの周りには
「あぁこれですか?ちょっとここで貴方のこと待ってたんですどね、なんか運悪くフランス兵の一個師団が通りかかりまして私のこと見た途端『不審者だ~!』とか言って襲ってきたもんですから皆殺しにしておいたんですよ。どうやって殺したのかは--」
「...」
さも喜劇のようにケラケラと笑いながら詳細を事細かく説明し出したキャディ。聞いてもいないのに喋り出したキャディを見ながら、内心どちらが運が悪かったのかと思うところはあったが、一々気にしていてもキリがないと理解し、適当に相槌を打っておく。
ペラペラと未だに語っているキャディを脇目に、ギルディアは死体の何体かを重ねてそこに座る。キャディも喋りながら器用に死体を重ね、そこに無駄に優雅に座る。
「それで?何か情報は得られたんですよね」
「えぇ。モチのロン!かなり有益な情報が得られましたと思いますよ」
「ほぉ。それはどんな情報なんですか?」
「...先程話していたんですが、ていうかもしかして聞いてなかったんですか?」
「.....あぁ、ある程度は聞いてたぞ」
「なんですか今の間は。まさか聞くの面倒くさくて聞いてないやつですか?もしかして無視してたんですか無視してたんですね!?」
「まぁ正直に言えば最初から殆ど聞いていなかった」
「聞いてなかったんかい!なんで毎回変な所で貴方って人は馬鹿正直なんですかね!?理解できないんですげど!?」
「耳元でギャーギャー五月蝿いですよキャディ。もう少し声を抑えたらどうです?著しく品位を損なっていますが?」
「誰のせいでこんなに叫んでると思ってるんですか!貴方の為に叫んでるんですけど!?」
「それよりもなんの情報を手に入れたんですか?」
「あれぇ!スルーですか!?ここに来てスルーですか!?流石にそりゃあ酷すぎやしませんか!?」
ギルディアの至近距離で叫ぶようにツッコむキャディ。しかしボケた(?)本人は、至って真面目な雰囲気の為、キャディは呆れた返りながらも、自分が積んだ死体の山に再度座り直した。
「なんか話が大きく脱線したようなので元に戻しましょう。私がフランス兵を皆殺しにした際、最後の一人を拷も.....尋問した時に手に入れた情報なんですけどね。なんと今回の特異点の首魁が、かの聖女ジャンヌ・ダルクらしいんですよ!」
「...?」
「あれ?分からなかったからですか?ほら、この百年戦争の際、神の御告を承けたジャンヌ・ダルクがフランスに勝利をもたらしたんですよ!まぁその後、異端審問にかけられて火刑に処されちゃたみたいですけど。可哀相ですねぇ」
「いや、分からなかった訳ではありません。勘違いしないで下さい。ただそのジャンヌ・ダルクらしき女性とは先程会いました。妙に神々しそうだったで印象に残っていました」
「それにジャンヌ・ダルクって中々美人....え!?もしかして会ってたんですか!?」
「えぇ。恐らく彼女はジャンヌ・ダルクだと思いますよ」
「...まぁじか、会えたらサイン欲しかったなぁ。彼女の、いや本当に」
「...気持ち悪いですね死んでください」
「いやいやなんでいきなり罵倒したんですか!いいじゃないですか私だって英雄譚とか偉人の逸話とか本で結構読みますよ!憧れるのは個人の自由じゃないですか!」
「おまえに読まれるなど、その英雄や偉人に大変失礼だと思うのですが」
「そこまで言っちゃうのかこの人は!」
またグダグダになりつつある状況に、キャディは激しいデジャヴを感じながらなんとか話を元に戻す。
「しかし、可笑しいですねぇ。本来ならジャンヌ・ダルクはオルレアンにいるはずなのですが、何故ジャンヌ・ダルクが二人もいるんですかね?」
「そこら辺までは流石に分からないか」
「まぁ、私にも限界はありますので。仮に私が英霊だったらある程度の知識は聖杯が与えてくれたかも知れないですが。後こっから先は憶測なのですが、
「ほぉ...。それが天才でもあるおまえの意見ですか」
キャディの言葉に感心を抱くギルディア。その言葉を無視して思考に耽るキャディの姿は、さながら複雑な暗号を解読する天才のようだった。
マスクの上から顎部分に手をあてて、様々な思案を巡らせる。ギルディアはただそんなキャディを尻目に、大矛の返り血を懐から取り出した布で拭き出した。
「まぁ、とどのつまりカルデアのマスターは『本物』のジャンヌ・ダルクと協力し、『偽者』のジャンヌ・ダルクを倒せば良い。そうすれば一応この特異点での人理焼却は阻止される。ここまでが彼らの筋書きと言ったところですかねぇ」
「でもそんな簡単に終わらせてしまっては面白味がない。余りにも味気ない。だからこそ我々が横槍を入れれば良い。それに筋書き通りに終わっては我々がここに来た理由が只の観光しになってしまう」
「確かに。そうなってしまいますね」
ギルディアの言葉を聞くとキャディはマスクの中で満足そうに嗤いながらゆっくりと立ち上り、視線を森の外にあるオルレアンに向ける。
「さぁ行きましょうギルディア。まだ始まったばかりのこの劇を、そして役者も揃いつつある、この愉快で最高のショーを。まだショーは始まったばかりですからねぇ」
役者のように振る舞いながら狂気を孕んだ声で喋るキャディ。そんなキャディの横に並んだギルディアも仮面で顔が隠れてはいるものの、邪悪そのものに満ちていた。
如何だったでしょうか?なんか書いている内にズルズルと長ったらしくなってしまいました。それでも楽しんで頂けたら幸いです。今回も閲覧ありがとうございますm(__)m
評価・感想お待ちしております!
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邪竜百年戦争 1ー4
今回も楽しんで頂けたら幸いです。
※一部文章を修正しました。
特異点フランスの都市オルレアン。その都市の中にあるマルトロワ広場でキャディは一人苦悩していた。
現在キャディの周りにいるのは、死人の様な顔をした、黒い外套に身を包み槍を持つ初老の男、頭から猫耳が生えている弓を持った美少女、レイピアを構えている顔つきが中性的な美少年、血管のような赤い線が浮き出た藍色の
彼等の視線を受けながらキャディは後ろに視線を向ける。キャディから少し離れた場所にはカルデアの魔術師とサーヴァントと思わしき集団と、その行く手を遮るように立っているギルディアの姿があった。それを確認したキャディは、視線を再び前に戻し、もう一度邪竜の上にいる魔女に目を向ける。
「...お家帰って良いですか?」
「はぁ?この状況で出た第一声がそれですか?本当に呆れたものですね。先ほどの非礼は寛大な心で許してあげますが、流石に自己紹介位したらどうです?あぁ、命乞いという意味で言ったのなら受け付ける気はありませんよ」
「は?誰が貴方相手になんかに命乞いなんてしなきゃいけないんですか?それこそあり得ませんよ。てか私そんなキャラじゃないので」
「なっ!?」
「キッサマァァァ!ジャンヌを!かの麗しきジャンヌを愚弄するかこの不埒者ガァァァァ!」
「あーもー五月蠅いですねぇ。そんなに叫ばれても鼓膜破れるだけですって。あれですか叫ばないと発作でも起こる持病持ちなんですかでしたらお体お大事にしてくださいね」
「.....そんなに死にたいのなら今すぐ叶えて差し上げましょう」
「ん?」
「バーサーク・サーヴァント達!そこにいるそのフザけた奴を!今すぐ!ここで!殺しなさい!」
魔女『ジャンヌダルク』が命令すると、キャディの周りにいたバーサーク・サーヴァント達が各々の武器を構え、一斉にキャディに襲いかかる。そんな状況にも関わらず彼は、大きく溜め息を漏らし、青い空を見上げた。
「(ナァンデコウナッタンデシタケ?)」
そう考えながら、キャディはほんの数時間前の自分を盛大に罵ってやりたい心境だった。
◇◇◇◇◇◇
事の始りはおよそ2~3時間前に遡る。キャディはギルディアと共に、道中で遭遇したワイバーンやらゾンビ兵やらを殺しつつやっと森を抜ける事が出来た。
おまけに抜けた先には運良く都市オルレアンがあり、これ幸いとそのままオルレアンに向かったのであった。都市の中には、森で遭遇したワイバーンやゾンビ兵がうじゃうじゃといた。その数は森で遭遇した数よりも多く、正直キャディとギルディアは辟易としていた。
何時まで経っても中々前に進めず、進めたとしても直ぐにワイバーンやゾンビ兵が襲ってくるのだ。何度も同じ敵を相手させられるのがこんなにキツいとは知らなかった二人は、身体的外傷は無いものの、精神的外傷が負う一方だった。そしてついには痺れを切らしたギルディアが、城の方角にある民家の壁を大矛でぶち抜き始め、キャディもそれに便乗し、超小型爆弾の『飴玉』を使ってギルディアと一緒に壁をぶち抜き始めたのであった。
しかし城の方へ向かって壁をぶち抜いてる途中で二人は、最悪のタイミングでその場面に現れてしまった。それは、この特異点での人理焼却を試みる『竜の魔女』ジャンヌオルタと『救国の聖女』ジャンヌダルクを連れてオルレアンにやって来たカルデアのメンバー達とが話し合っている場面に横から轟音と土煙を立てながら壁を破壊していた二人が現れしまったのだ。
「貴方は!」
「ほぉ...やはりか。また会ったな立香」
「やはりあの時感じたことのある魔力、貴様じゃったか!」
「こいつぁまためんどくせぇ野郎が来やがったぜ。つか壁から来るってどういう事だよ」
「ここに来るまでに民家の壁を破壊し続けただけだが」
「おいおいマジかよ、冗談キツいなお前。あの時は本気じゃ無かったって訳か?」
「であろうな。でなければあんな一方的な蹂躙そう易々と出来るものか」
壁を破壊して現れたギルディアの姿に立香は驚き、サーヴァント達は戦闘体勢を整えながらギルディアを警戒する。
カルデアと面識があるギルディアは彼等を見つけると期待の籠った声を漏らす。そして彼等の方へ行ってしった。
ギルディアがいなくなった事により手持ち無沙汰になったキャディは未だ晴れない土煙を利用して気配と魔力を遮断しつつ邪竜の背に乗ると、ジャンヌオルタとジル・ド・レェの背後にやって来た。どうやらジャンヌは突然の乱入者に動揺しているようだが、ジル・ド・レェは驚いたものの顎に手を添え冷静に乱入者を分析しようとしていた。
「なんなのよアイツ!突然現れて!」
「全くですな。礼儀と言うものがなっておらんのでしょう。しかし見たところ、奴等の仲間では無さそうですなぁ。このまま潰し合ってくれればこちらも幾分か楽にはなりますぞ」
「確かにそうね。流石ですねジル」
「この身に余るお言葉ですジャンヌ」
そんな会話をしている二人を余所に、キャディはその場から少し離れた場所でギルディアを観察していた。ギルディアはまだカルデアのマスターと話しているようで武器を構えようとしていない。カルデアのサーヴァント達は警戒をしつつ出方を窺っているようだ。
「へぇ~、あれがカルデアの。中々骨がありそうな面子が多いじゃないですか」
「ちょっと貴方!何処から来たのよ!」
その声を聞いたキャディは横に視線を向ける。そこには剣を向け、此方を睨んでいるジャンヌオルタとその横には、片手に本を持っているジル・ド・レェの姿があった。しかしキャディは、ジャンヌオルタの言葉を無視して再び視線をギルディアに戻す。
「無視するじゃないわよ!ジル!」
「おまかせあれ!行くのです海魔達よ!」
ジャンヌはジル・ド・レェに命令し、ジル・ド・レェは海魔を召喚し、キャディを攻撃させる。キャディはそれを避けながら邪竜から降り、そしてバーサーク・サーヴァント達に囲まれ
ジャンヌの命令でバーサーク・サーヴァント達はキャディを襲ってはいるが、襲われている本人のキャディは、四方八方からの猛攻をまるで軽業師のように避け続けている。
「メンドクサイですねぇホントに」
「ならば大人しく串刺しになるとこをお薦めるするが?」
「それはそれで嫌ですけど、貴方はそれで良いんですか串刺し公。貴方の意思とは思えませんけど」
「その名はあまり好まんな。それに、召喚された以上召喚者に従うしかあるまい。そこに私情は挟めん」
「あっそ。つまんないですねぇ」
独り言に反応したのは、槍で攻撃してくる初老の男--ウラド三世だっだ。彼は猛攻を仕掛けながら器用にキャディに話しかけてくる。
キャディはそれに答えつつ、逆にウラドに問い掛けた。バーサークになっても少なからず自分の意思はあるのか、彼はその問い掛けるにやや苦笑しながら答える。
キャディはそんなウラドの答えに素っ気なく答えると、背後から頭部めがけてレイピアを突き出してきた美少女--シュヴァリエ・デオンからの攻撃を首を捻って避ける。そこに弓を持った猫耳少女--アタランテの追撃が入るが、それもアクロバティックに回避する。
「避けるなァァァァァ!」
「んな無茶な」
「道化の生き血に興味など微塵もないけど、特別に私の
「いや結構です」
「いい加減..当たらないか!変態!」
「イヤ当たったら私死んじゃいますからねぇ!それに私変態じゃありませんよ!?」
「Arthurrrrrrrr!」
「誰ですかそれ!?私そんな名前じゃないんでけど!」
叫びながらレイピアで攻撃してくるデオンに呆れながら、キャディは杖を使いレイピアの突きをいなす。そこに、アタランテや
「あの道化師が血祭りにあげられるのも最早時間の問題ですな」
「そうね。私を馬鹿にしたんですもの、当然の報いよ」
未だファヴニールの上からその光景を見ていた二人は、邪悪な笑みを浮かべながらキャディを見下ろしている。
「もういい加減に諦めたら如何です?これ以上はもう意味のない事でしょ?」
「.......はい?」
「だってそうでしょう?この状況、何よりこの戦略的な差。勝利がどちらにあるのか位馬鹿な貴方でも分かるです。なのに貴方は反撃もせず避けに徹するばかりで、体力は徐々に奪われていく一方。潔く敗けを認めた方が楽なんじゃない?」
「...えぇ」
キャディが困惑していると思い込んだジャンヌオルタは、余裕の表情で堂々と勝利を宣言したのだ。当の本人は、何言ってるんだあのアバズレと思っているのだが。
「....なら、そろそろこの形勢を逆転する文字通りの
そう言うとキャディはそっと懐に手を入れ、何かを取り出そうとしている。ジャンヌオルタは、この状況で何を出そうとキャディに勝ち目はないと勝利を確信していたが、彼の近くにいたバーサーク・サーヴァント達は危険を察知し、即座に距離をとる。そしてキャディが懐から取り出したのは、見たことのない化け物の絵がリアルに描かれた一枚のトランプだった。
それを見て、ジャンヌオルタは鼻で笑おうとしたが、すぐ
「それでは行きますよ、簡単に死んでくれないでくださいね?--
キャディがトランプに書いてある文字を呪文のように呟き、地面にそのトランプを投げるように置くと、トランプに描かれていた化け物が徐々に消失していくと同時に、キャディの目の前に大きな魔方陣が展開された。その景色を見ていた彼は、マスク越しに愉悦に満ちた表情をしていたのであった。
如何だったでしょうか?
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邪竜百年戦争 1ー5
文構成やら戦闘描写やらに頭を捻っている内にいつの間にか一ヶ月位経っていました。
それでも構わないと言う方はどうぞ本編をお楽しみください。
大きな魔方陣からは、魔方陣特有の煙と眩い光りが発生し、その場にいた全員が目を瞑るなどして激しい光から目を保護する。そして煙と光りが止み、全員が魔方陣があった場所に目を向けると、そこにはこの世の者ではない異形の姿があった。
「フシゥゥゥゥゥゥ...」
そこには三メートルの体躯に、左肩から左腕は欠落しており、右手にはクレイモアを引きずるように持ったボロボロのみすぼらしい鎧を身につけた
召喚に成功したキャディは満足げに、しかし隠しきれない興奮に体を小刻みに震わせていた。
「スンバラシィィィィィ!これぞ、これぞ正に!殺戮を行う為に生まれてきたかのようなその造形!生者を憎み続けるその双眸!やはりこいつは素晴らしい出来だなぁ!ヒッヒヒヒヒヒッ!興奮が収まりませんよこいつぁアッハハハハ!」
キャディの異常な興奮と殺戮騎士に対する警戒を込めて、バーサーク・サーヴァント達は更に距離をとる。その動きに反応した
「さぁ、
「GAaaaaaaaaaaaaa!!!」
召喚者からの許可が下り、殺戮を許可された騎士は、一際大きな声で叫ぶと、まず自分の目の前にいたデオンに向かって肉薄する。
デオンは瞬時に体勢を整え、殺戮騎士を迎え撃つ。他のバーサーク・サーヴァント達もデオンに加勢するように殺戮騎士に向かって攻撃を始める。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
デオンは、標的をキャディから殺戮騎士に変更し、レイピアを左側から鎧の欠けた部分に向けて突きだす。しかしそれを察知した殺戮騎士は、体を捻る様にして避け、その勢いのままクレイモアを振り回す。
デオンもクレイモアを身を屈めて避ける。アタランタも弓でデオンを援護するが、いかんせん鎧が硬く、矢が鎧に当たると同時に砕ける。
「ほぉ...中々頑丈なようだな。ならばこれはどうかな?」
そう言うとヴラドは血で作った杭を地面から生やし、殺戮騎士を地面から鎧ごと串刺しにする。
「GYaaaaaaaaaa!」
しかし串刺しになった殺戮騎士は悲鳴のような咆哮を上げると体をよじり、血の杭を無理矢理砕いて脱出する。脱出した後、殺戮騎士はヴラドに、見た目に反した瞬発力で肉薄し、クレイモアの自重に全体重をかけて振り回す。ウラドはそれを槍を駆使して防御する。
「さぁて、私はここから高みの見物と洒落混みましょうかね」
そんな光景を見物していたキャディは、その辺の瓦礫を撤去し始めると、積み上げた瓦礫の上に座り込み、懐から魔法瓶を取り出すと、蓋を開けてその中に入っていた紅茶を蓋に注ぎ、マスクをずらして飲みながら、彼等の戦闘を遠目で傍観するのであった。
◇◇◇◇◇◇
所変わり、カルデアのマスターとそのサーヴァント達はギルディアと対面していた。マスターの藤丸立香とデミ・サーヴァントのマシュ、ランサーのクーフーリン、アーチャーの織田信長、そしてこの特異点で出会い協力しているサーヴァントジャンヌダルク、ジークフリート達だった。
立香達とギルディアとが初めて遭遇した後、彼等はギルディアを追いかけようとして、その道中で(本当はキャディが皆殺しにした)多くの兵士の死体を見つけていた。
その後出会った他のサーヴァント達にもギルディアとその事を話し、彼等は、ギルディアを危険な存在として認識していた。しかし当の本人であるギルディアはカルデアの面々を無視し、首だけ捻ってキャディのいる方向を見ていた。
「殺戮騎士を召喚したのか、道化め」
「英雄相手に余所見するたぁいい度胸してんじゃねぇか!」
「卑怯と文句を垂れるではないぞ。これは、戦なのじゃからな」
「マシュ・キリエライト、行きます!」
「神よ、どうか私達に加護を。ギルディア、貴方はもう一人の私以上の悪です。それを聖女として見過ごす訳にはいきません、覚悟してください!」
「この剣は竜殺しの為なのだが、貴様が害悪ならば、振るわん訳には行かんな」
その隙をサーヴァント達が見逃す筈がなく、全員が各々の武器を使い、ギルディアに向かって一斉に攻撃する。
「弱い、その程度か英霊共」
しかしギルディアは大矛を器用に振り回し、サーヴァント達の攻撃を悉く防ぎながら首を前に戻す。
「油断などするわけないでしょう。貴方達が相手なのですから」
「ケッ!相変わらず冗談じみた野郎だな」
「先のワイバーン戦で力の一端は見たが、やはりどこまでも出鱈目な力じゃのう...」
『皆!油断しないでくれ!そいつは今まで戦ってきた英霊達とは訳が違う!』
「分かってるよドクター!」
ロマニの警戒の言葉に立香は答え、ギルディアと目を合わせようとする。ギルディアは静かに立香を見据え、何かを期待するような、そんな感じのものを立香はギルディアから感じた。しかしそれもほんの数秒、ギルディアは立香から視界を外すと、全員を見渡すように見る。
「さぁ、存分に攻撃させたのです。今度は此方の番ですよ」
『来るぞ!』
ロマニが警告していると、ギルディアは大矛を低く構え、体勢もまた低くする。その姿は、まるで引き絞られた矢のようだった。サーヴァント達は如何なる攻撃にも対処できるよう体勢を整える。
「シッ!」
鋭い声と共にその場から跳躍したギルディアは、瞬く間にサーヴァント達に接近する。走っている最中に低く構えていた大矛を前方の地面に突き刺し、それを支点に半回転、その勢いのまま大矛を地面に叩きつける。
大矛が叩きつけられた中心から広範囲に大きな皹が入り、衝撃波が彼等を襲った。しかしサーヴァント達は寸でのところでその場から跳んで避ける中、ギルディアはすぐさま追い打ちをかける。
「先ずはおまえからだ、盾娘」
「ッ!ぐぅ!」
「マシュ!」
「マシュさん!」
立香を守っているマシュの前にジャンプで近づき、大矛で何度もマシュの盾を攻撃する。それを見たジャンヌは、自らが盾の前に出てマシュを庇おうとしたが、ギルディアの攻撃はそれすら許さないと言わんばかりの猛攻撃だった。
そんなギルディアの強烈な攻撃を何度も受けながらも、マシュは盾から伝わる衝撃で腕の感覚が無くなりかけても、歯を食い縛りながら猛攻に耐え続ける。
「これで終わりだ、潰れるがいい」
「させるか!」
「チッ、無駄な真似を」
ギルディアは一際大きく大矛を振り上げ、盾ごとマシュと立香を叩き斬ろうとしたが、ギルディアの視界の右側から迫ってきたジークフリートにそれを阻まれてしまい、ギルディアは一度後ろに跳び立香達から距離を取る。
そこからジークフリートはギルディアに反撃を行う。ジークフリートは巧みな剣術でギルディアを攻め立てる。
「ほれっ、儂からの些細な贈り物じゃ!受け取れぃ!」
「チィ、猪口才な!」
そこに信長の火縄銃による支援が入り、ギルディアはそれを大矛で防御しつつ、更に立香達から距離を取る羽目になった。
何度目かの攻防の末、ジークフリートが同時に剣を振り下ろした時を見計らい、ギルディアはそれを受け止め十字型の大矛で剣を引っ掛け、ジークフリートを後ろへ投げ飛ばす。
宙に投げ出されたジークフリートは投げられるとは思っていなかったのかものの、何とか空中で体勢を立て直して地面に着地する。その隙にまた立香達へと接近するが、今度はクーフーリンが行く手を阻んできた。
「ここは通さねぇぜ!」
「貴様ッ!」
クーフーリンに足止めされ、ギルディアはマスターの立香に辿り着けないでいた。おまけにケルトの大英雄であるクーフーリンの槍術を前に、ギルディアは中々攻めに転じられず四苦八苦していた。
対するクーフーリンは槍を巧みに使いこなし、時々フェイントを織り混ぜながらギルディアを翻弄していく。
「おらおらどしたぁ!それが限界かこの野郎!」
「...調子に、乗るなよ」
クーフーリンに煽られ、激昂したギルディアは、大矛に力を込め、クーフーリンの朱槍に叩き込む。
それを受け止めた朱槍は、衝撃に耐え切れず、クーフーリンごと建物の壁を突き破りながら吹き飛ばされ、クーフーリンは声を上げる暇もなく瓦礫の中に消えていった。
「クーフーリン!」
『大丈夫だよ立香!クーフーリンの魔力反応は消滅してないおそらく瓦礫の下に埋もれてるだけだ!』
「先輩!来ます!」
「ッ!」
吹き飛ばされたクーフーリンに向かって叫ぶ立香だが、ロマニからクーフーリンの無事を伝えられ、ほっと安堵する。しかしそれも束の間、マシュが大きな声で立香を呼んだ事によって、再び視線をクーフーリンが吹き飛んだ壁から前に戻し、気を引き締める。
立香の視線の先には立香達に向けて大矛を構えたギルディアが立っている。マシュが盾の取っ手を更に強く握りしめるのと同時にギルディアが駆け出し、徐々に立香達との距離を詰める。ジャンヌはマシュの横に立ち、旗を構えながら迫り来るギルディアに備える。しかしギルディアの進行方向の前に、今度はジークフリートが立ち塞がった。
「ここは、俺に任せてもらおうか」
「ジーク!無茶だ一人で戦うなんて!」
「犬死するだけじゃぞ馬鹿者!」
「そうです!ここはジャンヌさんや信長さんと協力しないと...!」
「安心して欲しい、オレはそう簡単には死にはしない。それに、俺は誰かと共に戦うより、一人で戦う方が性に合っている。だが決して、驕っている訳ではないと信じてくれ。ただこの体の性能上、一人で戦う方が何かと都合がいいんだ」
「そんな....!」
ジークフリートの言葉にジャンヌを含めたカルデアの面々は大きく目を見開く。そうこうしている内にもギルディアは着々と迫ってきており、十数秒後にはジークフリートと確実に戦闘になる。
それ以上何も言う事はないのか、ジークフリートは立香達に背を向けると、剣を構えて自らもギルディアに接近する。
「次から次えと鬱陶しい、そんなに死にたいのなら今すぐ殺して差し上げましょうか?」
「生憎、それは出来ない相談だ!」
ギルディアは大きく大矛を振り上げ、それを見たジークフリートは、即座に剣を両手で横に持ち、防御の体勢を取る。そしてギルディアの強力な一撃をジークフリートは、剣の腹で受け止める。
「ハァ!」
「ぐっ!」
しかし助走をつけた状態から大矛を繰り出したギルディアと停止して防御の体勢を取ったジークフリートでは勢いの差が大きく、ジークフリートの防御は呆気なく突破され、ジークフリートの肉体を切り裂いた。
「ぐはぁ!」
「ジーク!」
「ッ!」
「あぁそんな!」
「チィッ!あの阿呆めが!あれほど忠告したと言うのに」
大矛は左肩から心臓部分まで深く達しており、その激痛にジークフリートは口から吐血する。その光景を見た立香は思わず目を塞ぎ、マシュは盾を持っている反対の手で口を押さえ、ジャンヌは思わず旗を落として口元を両手で覆い、信長は火縄銃を構えながら顔を歪めた。しかしこの中で一番驚愕していたのは、攻撃したギルディアの方だった。
「お前、何故!?」
「ハァ.....ハァ.....ッ!言っただろギルディア、オレは、そう簡単に、くたばらないと」
「戯けが!たかが死ににくいだけの分際で!」
心臓部分にまで大矛が達しているにも関わらず、ジークフリートは口の端から血を流しながらも不敵な笑みを浮かべていた。
ギルディアは、背筋に冷や汗が流れるのを感じ、直ぐ様ジークフリートから離れようと大矛を引き抜こうとしたが、ジークフリートは剣を地面に捨て、素早く大矛の持ち手を両手で掴む。
「貴様、離せぇ!」
「ぐふっ!こ、断る...」
ギルディアは必死に離れようと腕に力を込め、ジークフリートから大矛を引き抜こうとするが、ジークフリートは負けじと更に両手に力を入れる。
大矛を強く握り締めていることで、傷口から止めどなく出血し、自分が立っている場所を中心に血の海が広がり続けるが、ジークフリートは気にも留めず大矛を掴み続ける。
「後は、頼んだぞ、クーフーリン」
「---おうよ。後は任せな!」
「クーフーリン!」
「おう、安心しな坊主!オレは至って元気だぜ!つか、あんなので死んでたらそれこそ師匠に殺されらぁ。しかしジーク、おめぇも中々考えつかねぇような捨て身の特攻なんぞしやがって」
「これしか、こいつの、足止めの、方法が、浮かばなくてな」
「そぉかよ。まぁなんにせよ、もう暫くはそうしといてくれや」
「了解した。だが、出来れば確実に仕留めてくれ」
「へっ、誰に物言ってやがる!おい、坊主!」
「は、はい!」
「令呪頼んまぁ!」
「ッ!!分かった!」
ジークフリートがそう言うと、瓦礫に埋もれていたクーフーリンが立香達の前にスライディングの要領で姿を現したのであった。そしてそのまま立香に宝具の使用を求める。
クーフーリンの言葉を理解した立香はすぐに左手の甲が正面に来るように持ち上げ、顔の所まで左手を上げる。
「令呪を持って命ずる!クーフーリン、宝具使用を許可する!」
「--呪いの朱槍をご所望かい?」
立香の言葉に反応して、左手にあった痣の様なものが発光し、その一部から色がなくなる。それと同時に、クーフーリンは自身の体に多量の魔力が供給されるのを感じ、野性的な笑みを浮かべ、その魔力を朱槍へと流すと、朱槍に彫ってあるルーンが鮮やかに発光する。
「その心臓、貰い受ける!--
そして宝具を開放したクーフーリンは、一気にギルディアに接近する。ギルディアも徐々に力が弱まってきたジークフリートを足で蹴り飛ばすと、大矛を振り上げ、接近してくるクーフーリンに叩きつけようとする。しかしそれも時すでに遅く、振り下ろした大矛がクーフーリンに当たることはなく空を切り、クーフーリンの宝具がギルディアの心臓がある左胸部分に直撃する。
「---!?」
宝具が直撃したギルディアは、声にもならない声を上げて、大きく空に打ち上げられる。そのまま十数メートル程宙を舞い、そのままキャディのすぐ横まで吹き飛んで行く。
『ギルディアの魔力反応が消失した。やった、勝ったんだ!』
「へへっ、やってやったぜ」
「ぐっ、かはッ!はぁ..、はぁ..、お、終わったのか」
「終わったぜ。お前が足止めしてくれなかったらまず間違いなくあいつには勝てなかった。とりあえず感謝するぜ」
「フッ、それは、良かった」
「どうやら、俺は、ここまでのようだ、後は、頼む」
「おう。安心して座に帰れや」
「あぁ、その言葉に甘んじよう」
ボロボロになったジークフリートは徐々に霊子となり、消滅するとそのまま座へと帰っていった。それを見届けたクーフーリンは、吹き飛んだギルディアに視線を向ける。
「ブッ!ちょっ、はぁ!え?待ってください何やられてるんですか貴方!?ちょちょ待ってください。どう言うことかですかこれは!?」
優雅に紅茶を啜っていたキャディは、吹き飛んで来たギルディアに驚き、思わず口に含んでいた紅茶を吹き出す。そして倒れ伏していたギルディアと彼を倒したカルデアの面々とを何度も交互に見る。
「...えーっと、あなた方が?」
「そうだけど、貴方は?」
「おっとこれはこれは。そう言えばお互い初対面でしかも自己紹介がまだでしたねぇ。なら、先ずは自己紹介から」
恐る恐るといった感じに確認してきたキャディの言葉を立香は肯定し、続けて誰なのかをキャディに問い掛ける。問い掛けられたキャディは、ゆっくりと瓦礫の上から降り、服に付いた砂や埃を払いながら一礼する。
「はじめましてカルデアの皆様。私、キャディ・マディルと申します、以後お見知りおきを」
「あっ、俺は藤丸立香って言います、宜しくお願いします」
「おい坊主、ありゃ敵だぞ。なんで敵に自分も自己紹介してんだ」
「えっ?だってそうしないと自己紹介してくれた相手に失礼かなって」
「気にする必要もなかろう。てか儂今始めて見たぞあやつの事」
「た、確かに。というかあの人、今アッサリ自分の真名明かしませんでしたか?」
『うん明かしてたね。しかし、キャディ・マディル...うーん、聞いたことのない名だね』
「あれ?私ってそんなに影薄かったっけ?」
自己紹介をしたキャディは、右手の親指と人差し指でシルクハットを挟むと、それを胸元に添えゆっくりとお辞儀する。
立香も同じように自己紹介しながら、やや緊張気味にお辞儀する。クーフーリンはジト目で立香を睨み、信長はそんな立香に呆れ、マシュは信長に同意すると同時に、キャディが真名を明かした事を確認し、ロマニはキャディの名前はどの史書にも載ってないと言う。
言われたい放題のキャディは、自分の存在自体が認識されていなかった事実に、お辞儀の姿勢のままがっくりと項垂れる。すぐにいつもの調子に戻ったが。
「まぁこの際どうでもいいか。それでは改めて.....ギルディアを倒したこと、先ずは素晴らしいと言わせておきます。しかし、次はこの私、キャディ・マディルと戦って---」
「待ちなさいこの道化男!」
役者のように振る舞うキャディの声は、背後から制止してきたジャンヌ・オルタの声とファブニールのブレスの轟音によって遮られる。ファブニールがブレスを吐いたことによって近くにいたバーサーク・サーヴァントと殺戮騎士はそのブレスに飲み込まれ、バーサーク・サーヴァントは消滅し、殺戮騎士は鎧だけを残し消し灰になっていた。声を遮られたキャディは、不自然な状態で固まっていた。
そしてその状態のまま錆び付いたブリキの人形のように首を動かし、ファブニールの上にいるジャンヌ・オルタに顔を向ける。そしてジャンヌ・オルタを確認すると再び前に戻す。
「あ、あのぉ...大丈夫ですか?」
「すいません、申し訳ないのですが少々お時間頂けますかすぐに終わらせますから」
「あっはい」
無言になったキャディを不自然に思い声を掛けた立香だが、唐突に話し掛けてきたキャディの有無いわさずの迫力に気圧され、立香は首を縦に振らざるおえなかった。
立香の反応を確認したキャディはくるりと体を反転し、ファブニールの上にいるジャンヌ・オルタを見上げる。心なしかその後ろ姿から漂ってくる雰囲気は不機嫌そうだった。
「あのですねぇ、普通人が話してる時にそれ遮りますか!あなた常識って言葉知らないでしょ!?知らないんでしたら辞書でも引いてご自分で調べることをオススメ致しますが?」
「はぁ!?貴方みたいなそんな場違いな格好した人に言われたくはありません!貴方こそ、突然現れたと思ったら好き勝手してくれて!」
「あぁ!今、今言っちゃいましたね!?私が嫌いなワード第二位言っちゃいましたね!?」
「何がですか!そのふざけた格好を場違いと言って何が悪いと言うのですか!」
「なぁ!一度ならず二度も同じワードを!もう怒りましたからね!後で泣いて謝ったってもう許しませんからね!」
怒りを露にしたキャディは、懐から一枚のカードを取り出す。そのカードには、とぐろを巻いた蛇がリアルに描かれていた。
『高出力の魔力反応を検出!キャディの持ってるあのカードからだ!あいつ、なにか召喚する気だ!』
ロマニがそう言うのと同時に、キャディが持っているカードからは抑えきれなくなった魔力が溢れだしており、立香はその魔力を肌で感じる程だった。それを感じたサーヴァント達も、再び各々の武器を構えて警戒する。
「地を喰らい、海を飲み干せ....
---
キャディが地面にカード投げて置くと同時に、カードを中心に巨大な魔術陣が展開され、その魔力陣から、ファブニールを優に越える程の巨大な蛇がその姿を現したのであった。
如何でしたでしょうか?
今回も楽しんで頂けたら幸いです。
評価・感想お待ちしております。
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邪竜百年戦争 1ー6
作者の虫はリアルで既に虫の息です
執筆の合間を縫いながら好きな動画等を見て元気を出して日々執筆頑張っていこうと思います。
※2月19日に大幅に修正をいたしました。
竜の魔女ジャンヌ・オルタは、驚愕と戦慄に震え、ジャンヌの側近たるジル・ド・レェはそれを憎々しげな表情で睨みつけていた。二人の視線の先には、キャディが召喚した蛇--
その大きさは、彼女が乗っているファブニールよりも圧倒的に大きく、その頭部はファブニールの胴体ほどの大きさを有していた。
左右二つずつの鋭い目が、二人と一匹をじっと見つめている。その目は、例えるなら獲物を狙う猛獣のような目だった。その目に気圧されたジャンヌ・オルタは小さな悲鳴を上げてその場から一歩、二歩と後ずさる。
「ジャンヌ、ここは一旦引き返すべきかと。恐らく、あの生物に邪竜も私の海魔も歯が立たない可能性が」
「ッ、ダメよジル!私がこんな所で尻尾を巻いて逃げたら、一生笑われ者だわ!そんなの、私が許す訳がないでしょ!?」
「時には逃げるも勇気と言います。ここの足止めはファブニールに任せて我々は撤退しましょう」
「....ッ!」
ジル・ド・レェに諭されたジャンヌ・オルタは憤怒の表情で世界蛇とジル・ド・レェを何度か交互に見た後、無言で一体のワイバーンを創造する。
ジャンヌ・オルタは何も言わずワイバーンに乗り、ジル・ド・レェもそれに追従するようにワイバーンに乗る。主の意思を理解したワイバーンはゆっくりと上昇すると、拠点たる本城に向かって飛んでいく。
世界蛇は一度ジャンヌ・オルタの乗っているワイバーンに視線を向けたが すぐにファブニールに視線を戻す。視線を向けられたファブニールは頭を上げて低く唸り、世界蛇を睨み付ける。
「ガァァァァァァァ!!」
ファブニールは大きな声で咆哮すると
「お久しぶりですね、蛇さん」
『.....その呼び方は止めろ道化、その頭を噛み千切るぞ』
キャディが軽い調子で話しかけると、世界蛇は睨み付けていたファブニールから視線を外し、頭を横に曲げてキャディを睨むと、恨めしそうにキャディに超音波を発して答える。
その超音波はキャディにしか聞こえていないのか、睨まれたと思った立香達は一瞬だけ身構えてしまう。
「酷いですねぇ、私と貴方の仲じゃないですかぁ」
『自惚れるな、こんな狭い"かぁーど"の中に押し込んでおいてよく言うわい』
「だって貴方図体デカイんですもん、その姿のままじゃまず間違いなく施設が崩壊しますよ」
『ふん!儂の大きさに耐えられぬ建造物が悪い』
「んな我が儘なぁ」
『まぁ、そんな事はどうでも良い。道化よ、儂を召喚した理由はなんじゃ?まさかこの為だけに呼んだ訳ではなかろう』
「そりゃ勿論、そこにいる竜種を貴方に倒して欲しいんですよ」
『なんと、こやつ竜種であったか。道理で先程から竜独特の気配がすると思ったが、こんな小さいのがのぉ。てっきり竜種が隠れておるのかと思ったわい』
「まぁ『あっち側』の竜種が大きいだけなんですけどね、お気持ちお察しいたします。それで、返答の方は?」
『無論、儂も長い間かぁーどの中に閉じ込められていたのじゃ。久し振りのご馳走をみすみす逃す気はない。余すとこなく全て喰ってやろう』
「あっ、可能であれば心臓だけは残して頂けると非常に有難いのですが」
『...何?』
キャディの注文に世界蛇は疑問詞を浮かべる。世界蛇にとって竜種は一番の好物であり、自身がどれだけ傷付こうとも食べたいと思う程に世界蛇は竜種が好きだった。
特に心臓が好物なのだが、それを食べずに残せと言われ、おあずけをくらった世界蛇は露骨に不機嫌になる。
「いやぁ例の計画には竜種の心臓がどうしても必要なんですよ、それが貴方の大好物と理解した上で重々お願いします」
『その計画の重要性次第で心臓を喰らわないでおいてやろう。それで?どれだけその計画は重要なのだ?』
「.....ピエレル様の復活計画の為にも本当に竜種の心臓が必要なんですよ」
『ほぉ、やっとあの人間を甦させる所まで来たのか。長い道のりだったようじゃな』
「えぇ、実際、とてつもない時間と労力と人手を費やしましたがね。それだけこの計画には価値があるのです、失敗なんて許されないんですよ」
『そう言うことなら、まぁ心臓は喰わないでおいてやろう。しかしそれ以外は全て貰うからな』
「それはご自由に」
『さて、長々しい話はここまでにして....そろそろご馳走にありつくとしようかの』
世界蛇は頭を前に戻し、こちらを警戒しているファブニールに視線を向ける。ファブニールは低く唸り声を上げ、世界蛇を睨み上げる。
『ありとあらゆる生命に感謝し....いただきます』
世界蛇は口を大きく開けると、ファブニールを頭から飲み込もうとと勢い良く迫る。ファブニールは迫りくる口に向かって大火力の
前両足まで飲み込まれたファブニールは、唯一動かせる後ろ両足と尻尾を必死に動かして抵抗する。
『なかなか活きが良いのぉ。じゃが、暴れすぎじゃよ』
世界蛇はファブニールを咥えたまま頭部を持ち上げ、勢いよく地面に、民家等を破壊しながらファブニールを叩きつける。
横っ腹にきた衝撃に、ファブニールは世界蛇の口の中で苦悶の声を上げる。しかし世界蛇は、それだけで終わせず、再び頭部を持ち上げ、反対側の地面に、民家を破壊しながら叩きつける。それを何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も----
そうして何度も地面に叩きつけられたファブニールは、ピクリとも動かず、後ろ両足と尻尾はダラリと垂れ下がっていた。それを口の中で感じ取った世界蛇は、頭部を上に向け、ファブニールを丸呑みにしていく。
『どれ、儂はやるべき事はやった。また用があれば呼ぶが良い。じゃが、次に儂を呼ぶときはあの人間が甦った時にしとくれ』
「えぇ必ず、お約束しますよ」
キャディが言い終わるやいなや、世界蛇は自信が召喚された魔方陣の中に戻っていき、魔方陣は一瞬にして消失する。
そして、魔方陣があった場所の中央には、世界蛇の絵が描かれたカードと、そのすぐ傍には青白く発光する心臓らしき物が転がっているだけだった。
◇◇◇◇◇◇
『あ、ありえない、あの生物はもう存在することのない神話の化け物じゃないか!?それを、それをあの男は召喚したって?そんなの不可能に近い。いやそもそもあれは召喚することなんて出来ない筈だ!?ど、どうして....』
「ドクター!ドクターしっかりしてください!」
『っ!ご、ごめん、余りにも現実離れすぎる光景だったからつい...』
「確かにのぉ、あのような大蛇をポンと召喚するような奴じゃ、狼狽えるのも無理はない」
「悠長に分析してる場合かノブナガ、あんなでけぇバケモンが、今度は俺達に襲いかかったらたまったもんじゃねぇんだぞ」
「分かっておる、奴があの大蛇を召喚したら、まず先に奴を始末すれば良いだけの事じゃよ」
「簡単に言うなぁ、まっ!俺も手伝うの前提の話だろ?」
「無論、それともなんじゃ?お主はあれと一戦殺り合いたくないのか?」
「殺りたいに決まってんだろ、お前にだけ楽しい思いはさせねぇよ」
竜種がいとも容易く殺される光景を見ていた立香とジャンヌは絶句、モニター越しにそれを見ていたロマニは、その光景を受け入れられず、思わず現実から目を背けようとして、マシュに呼ばれて正気を取り戻す。
クーフーリンと織田は、先程の大蛇が召喚された時の対策を話し合っていた。そんな彼等をおいて、腰に仕込み杖を帯刀したキャディは、軽い足取りでカードに近づき、右手にカード拾い上げ、左手に心臓を持つ。
右手に持ったカードを懐にしまい、心臓を左手で弄びながら、ゆっくりと体を反転させ、カルデアに体を向ける。それにいち早く気付いたクーフーリンと信長は武器を構え、マシュとジャンヌも遅れて武器を構える。しかしキャディは右手を前に突きだし制止する。
「失礼、何度もお時間を頂くようで大変失礼なのですが、後もうちょっとだけお時間頂けませんか?あともうちょっとだけでいいので!」
「えっ!あ、えっと........ど、どうぞ?」
「先輩!?」
「いや、ほら?あの邪竜を倒してくれたんだし、もう少し位は....ね?」
「ね?じゃねーよマスター。あついがホラ吹いてんのかもしれねぇんだぞ?それを信じるのかよ、オレは怪しいと思うがな。胡散臭そうだし」
「そうじゃマスター、お主はお人好しが過ぎる。それがお主の美徳だとしてもそれにも限度があるぞ。奴胡散臭そうじゃし」
「私は先輩がそう言うのであれば、それを無理矢理変える気はありません。しかし、クーフーリンさんの言う通りあの人物が嘘をついて私達を欺いている可能性も捨てきれません。胡散臭そうですし」
「私は特に言うことは無いのですが、強いて言うなら....なんと言いましょうか、胡散臭そうな印象がありますね」
「そうかもしれないけど、それでももう少しだけ様子を見ようよ。もしかしたら本当は優しい人なのかもしれないし。胡散臭いけど」
「....なんで初対面の人にそんな胡散臭いとかバンバン言えるのかはさておき、それでは早速お言葉に甘えて」
そう言うと、キャディは地面に刺さっていたギルディアの大矛を片手で引き抜くと右肩に担ぎ、大の字で倒れ込んでいるギルディアの傍で屈み、顔をギルディアに近づける。
「もしもし~、生きてますかーギルディア?生きてますよね?貴方があれ喰らっただけで死ぬわけないですし、どうせ負けたのがショックで立ち直れないだけでしょ?困るんですよぉ今ここで落ち込まれても。貴方分かってます、今仕事中なんですよ?落ち込むなら基地に帰ってから死ぬほど落ち込んで下さい」
「......」
「...無視ですか、もしかして説教してる相手が私だから、反省する価値もないとか思ってるんですか?だとしたら貴方、それ凄く私の事馬鹿にしてるでしょ、まぁ今に始まった事ではないので何も言いませんが」
「.....」
「で?貴方このままずっとここで落ち込み続ける気ですか?私が言うのもなんですがそんなんで良いんですか?例えば名誉挽回するとか、今度からは油断しないとかすればいいじゃ無いですか。落ち込んでる暇なんて今の我々には無いんですよ理解してますか?」
「....」
「...なんか言ったらどうですかギルディア。あの五月蝿くて貴方が心底毛嫌いしてるこの私が、貴方に説教してるんですよ?それなのに貴方は何時ものように毒舌の一つも吐かない。そんなんだとこちらも調子狂うんてすけど?」
「...」
「まぁ貴方がここで、彼らに負けるなら、
「--貴様のような奴が、気安く我が王を侮辱するな」
いつの間にかキャディの首は、ギルディアの手によって強く握られており、ギルディアは上体を起こすと、仮面越しにキャディを怒りと殺意を込めた目で睨みつける。
しかしキャディはそんなの気にしないと言わんばかりに笑い声を漏らす。そんなキャディの態度が気に入らないのかギルディアは不機嫌そうに舌打ちをすると、ゆっくりと立ち上がる。身長差の関係でキャディが宙ぶらりんの状態になるが、彼は一向に気にした様子はなかった。
「おはようございますギルディア。よく眠れましたか、貴方が深~い眠りについている間こっちは大変だったんですよ?」
「...その矛は私が王から下賜して頂いた大切な物だ。返して貰いましょうか」
「あり?まさかの無視?」
「一々相手にしていたらこっちが疲れますし、何よりお前のボケはいまいち理解に苦しむんですよ」
「あれま辛辣」
宙ぶらりんのままおちゃらけるキャディを無視し、ギルディアはキャディの右手に握られている大矛を奪い取るとキャディの首を掴んでいる手を放す。
ギルディアが手を放した事によって、キャディの体は重力に従って地面に落下し、地面に激突した際に情けない苦悶の声を上げる。
「アイタタタ.....あのぉ、酷くないですか。仮にも私貴方の上司にあたるんですよ?もうちょっと態度ってものがあるでしょうに」
「だったらそれ相応の態度を示してもらわねばなりませんね。最も、お前が態度を改めたらそれはそれで気持ち悪いですけど」
「ひどすぎる!」
「...さて、まずは貴方達カルデアに、一つだけ謝罪することがあります」
「あれ?まさかのスルーですか」
ギルディアは、キャディのツッコミを無視して、立香達を見据える。目の前で復活したギルディアを前に、カルデアの全員は驚きを隠せなかった。
そんな中ギルディアに見つめられている立香は、仮面越しにこちらを見てくるギルディアの目が、その雰囲気が憤怒に満ちているのを感じとり、思わず唾を飲み込む。
「謝罪する事は、貴方達に期待しておきながら、私が貴方達に実力を見せなかったこと、すまないと思っています。そして、ここからは誠意を込めて本気でお相手いたしましょう」
『ギ、ギルディアから高魔力反応!この魔力量、さっきまでとはまるで違う、違いすぎる!』
「そんな事分かっておるわ、戯け!」
「全くだ。アイツから漏れ出る魔力量、どうやらオレたちに倒されるまで全く本気じゃなったって訳かよ」
全身から漏れ出るほどの大量の魔力を発生させるギルディアは、ゆっくりと大矛を構えると、十字型の刃の真ん中にある八つの、それぞれ色・模様の違う部分に左手を翳す。
すると、翳していた部分の一つが淡く黒色に発光すると、それに反応してギルディアから漏れ出ている魔力も黒色に変色する。
「我、司る大罪は『虚無』、七つ全ての大罪の始まりにして終わり......この大罪をもってお前等に対する誠意としましょう」
黒い魔力を纏ったギルディアは、大矛を上段で構えるとゆっくりと体勢を低くし、足に力を込め---
「ちょーーっと待って下さいギルディア!ストップストップ!」
「.....何ですかキャディ、これからだと言うのに」
---て立香達に襲いかかろうとしたギルディアをキャディがその間に入って間一髪で止めに入る。キャディが突然割り込んできた事によってギルディアは思わず前のめりになって危うく転倒しそうになったが、超人的な身体能力と純粋な脚力で何とか転倒を回避する。
そこから体勢を整えたギルディアは、鋭い視線を目の前の道化師に向け、怒りを露わにする。
「まぁまぁ落ち着いて、私だって時間があったら死ぬほど殺り合ってくれても一向に構わなかったのですが、もう手に入れるもの手に入れたのでこれにて任務は終了。もう本部へ帰還しますよ」
「何、どういうことだ?」
「えぇ、今回の特異点で欲しかった物が手に入りましてね。因みにそれがこれです」
キャディは左手で弄んでいた竜種の心臓をギルディアに見せびらかす。見せびらかされたギルディアは、若干イラッとしながらもそれを見て納得する。
「確か人界の竜種の心臓には高い自己再生機能があると聞きましたが、もしやこれは...」
「...無論『ピエレル様』蘇生の為の重要な素材の一つですよ。『裏』にも竜種はいるにはいますが、自己再生を持ってる竜種は一匹もいないんですよねぇ...なんでいないんでしょう?」
「知りませんよそんなこと、ウォーカーに聞いたらどうです?」
「いやぁそれはそれで聞きずらいと言うか、それにウォーカーは『裏』を作っただけなのでそう言う細かい事は知らないと思いますしー」
「じゃあ尚更知りませんよ」
「ですよねぇ」
「...先輩、彼等は何の話をしてるのでしょうか」
「俺が知りたいよ」
いつの間にかギルディアが纏っていた黒い魔力も消滅しており、カルデアそっちのけで話し始める二人。それを見ていたカルデアの面々は呆れた雰囲気でそれを見ていた。
「しかし、だからと言って私が戦ってはいけない理由にはならない、そうでしょう」
「それ暴論ですってば!?いいから戻りますよギルディア!?...ちょっ、聞いてます!?」
「少し時間を貰うだけです、いいから邪魔しないで下さい」
ギルディアはそう言ってキャディの横を通り、再び大矛を構えようとしたが、大矛を構えようとしたギルディアの右腕はキャディによって
ギルディアがキャディに顔を向ければ、そこには濃厚な殺意を発するキャディの姿があった。
「......いいからさっさと俺の指示に従えやこのウスノロ野郎が。フローレスの加護がなけりゃ死んでた死に損ないの分際で、俺に口答えしてんじゃねぇよ。なんなら俺がアイツ等に代わってお前の息の根止めてやろうかぁ?あ?」
今までの性格が嘘の様にまるで別人のように豹変したキャディは、ギルディアの腕を掴んでいる手の力を強めながら乱暴な口調でギルディアに言う。
「お前のそのどうでもいい俺にとってはくだらいプライドの為だけにこちとら時間かけられねぇんだよ。それが原因で俺の『予測』が1ミリでも狂ったら、お前どう落とし前つけるだコラ」
「...本性を出したか道化」
「あ?そりゃ足手まといがいればこうなるわな」
キャディとギルディアは数秒間の睨み合った末、ギルディアは大きくため息を吐くと、構えようとしていた大矛を杖のように持ちかえる。
「ぶちギレたお前とは出来れば殺り合いたくはないので、今回はお前の指示に従い撤退しますが、次はお前が何と言おうと彼等と戦いますからね」
「......えぇ、分かってくれれば良いんですよ分かってくれれば♪」
キャディの雰囲気を察したギルディアは、心底嫌そうにしながらもキャディの指示に従う事にした。それを聞いたキャディは、いつもの陽気な口調に戻り、ギルディアの腕から手を放す。あの濃密な殺意もいつの間にか消失していた。
「そうと分かればギルディアは先に撤退していてください。私はもう少しやることがあるので」
「別に構いませんが、返り討ちにあわないことですね」
「いや彼等と戦いませんからね!?戦っても勝てないですし、何をしようと思ったんですか!?」
「そんなことはどうでもいいので早く撤退用のカードを渡して下さい」
「聞いたのに無視ですか!?...まぁ慣れましたけども、それでもこう、ちゃんと答える位はあっても良いじゃないですか......」
ギルディアに聞こえるか聞こえないかの声で愚痴るキャディは、愚痴りながら懐からカードを一枚出すと、それを慣れた手つきでギルディアに渡す。
それを奪い取るように受け取ったギルディアは地面にカードを置くと、地面に置いたカードは消滅し、かわりにカードを置いた場所の上の空間が割れ、ギルディア一人が通り抜けられる程の大きさの空間の歪みから生まれたゲートが出現する。
「それではお先に失礼しますよキャディ」
「えぇまた本部で。...あぁ先程の件ですが、しっかりと貴方の王フローレスに、貴方自身がしっかりと報告するように」
「...分かってますよ」
背中越しにキャディから掛けられた言葉に、ギルディアは一拍遅れて答える。その背中からは後悔ややり場のない怒りなどが透けて見えるようだった。
ギルディアはゲートの中へ入ろうする前に後ろに顔を向ける。視線の先には立香とクーフーリンがおり、不意に視線を向けられた立香は思わずビクリと肩を震わせ、クーフーリンは不敵な笑みを浮かべながら朱槍を弄んでいた。
「次こそは必ず決着をつけるとしましょう...ケルトの大戦士」
「おう、それまでお互いくたばらねぇようにな」
「...フッ、そうですね」
クーフーリンの思いがけない言葉に、ギルディアは思わず小さく笑うと、再び彼等に背を向け、穴の中へと消えていったのであった。
如何でしたでしょうか?
楽しんで頂ければ幸いです。
評価・感想お待ちしております!
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邪竜百年戦争 1ー7
出来れば1月中に投稿したかったのに色々用事がありすぎて全然執筆に手が回りませんでした。
べ、別にゲームとかゲームとかやってないんだからね(自白)!
それでは最新話をどうぞお楽しみに下さい!
※2月19日に修正致しました
「さて、行きましたか」
ギルディアを組織連盟本部へと送り返し、一人になったキャディはそんな事を呟くと、ゆっくりと体の向きを変える。その様子を見ていたカルデアのサーヴァント達は、何時でも攻撃出来るように武器を構えておく。
「嫌だなぁ、そんな物騒な物私に向けないで下さいよぉ、別に貴方方と殺り合おうなんて気は毛頭ないのに」
「それが本当だって証拠もねぇだろ、そんな奴相手に武器を下げる方がどうかしてるぜ」
「左様、貴様が我々の目を欺いてマスターを殺す機会を探ってる可能性も捨てきれぬ」
「こりゃとことん信用されてませんねぇ私」
「逆にあの状況でどう私達から信頼を得ていると思ったのか疑問ですよ」
キャディはおちゃらけた雰囲気でおどけるが、サーヴァント達は警戒を解くことなく数メートル離れた場所にいるキャディを観察する。腰には杖を帯刀し、左手で竜種の心臓を弄び、右手はぶらりと自然体を保っていた。
敵意や殺意は感じられないものの、サーヴァント達は一切警戒を緩ませず、キャディの挙動を見ていた。そんな様子にキャディは肩を竦めるとため息を漏らす。
「はぁ...分かりましたよ、そんなに私が危険そうに見えるならもう単刀直入に本題説明しますよ?説明したら私もさっさと撤収するので、分かりましたか!?」
「えっ!あ、はい分かりました」
若干キレ気味に問いかけてきたキャディに気圧された立香は、思わず首を縦に振ってしまう。それを確認したキャディは、咳払いをすると、大袈裟に腕を広げると声高らかに語り出す。
「改めて...初めましてカルデア人理修復チームの皆さま!我々、今この場には私しかいませんが、名を『組織連盟』と申します!今回はこの特異点にやって来たのかは、諸事情あり話せません。しかし!この特異点ではこれ以上皆さま方の人理修復の邪魔はしないと私が、この場で約束させていただきます」
「...『組織連盟』?聞いた事の無い組織名じゃな」
「他に良い名前無かったのかよ」
『...ま、まさか、あれは空想上の存在じゃなかったのか!』
「ど、どうしたんですかドクターいきなり!」
『ご、ごめん。でも思い出したんだ!組織連盟の名前を聞いて!彼等が一体何者なのか!』
「ほお、我々の事を知っているとは随分と物知りなお方がいるものですね。この場にいないと考えると、別の場所から君達をバックアップしてると考えられますね」
「それで、その『組織連盟』とは一体何なんですか?」
『風の噂でしか聞いたことはなかったんだけど、なんでも
「「「!?」」」
「おいおいマジかよ」
「それは真か?」
『う、うん。僕の記憶が間違ってなければこれで合ってると思うけど...』
「何か私の言葉がさらりと無視された気がするのですが、そこまで覚えているとは素晴らしい!ここにはいらっしゃらないのが悔やまれますね。もし彼がここにいたら彼の記憶力に称賛を送りたかったのですが」
『えっ、そ、そうかな。あまりそう言うの言われたことあまり無かったから嬉しく思うよ』
「ドクター?」
『うっ、ご、ごめんマシュ』
「おいピエロ野郎。話を聞く限り、恐らくだけどおめぇもその
「然り、先程邪竜を丸呑みした大蛇から察するに、他にもあれ位の化け物をカードにして持っておるのじゃろ?」
「......これはこれは驚きました。いやはや、たかが召喚されただけのサーヴァント風情だと過小評価していましたが、まさか史書通りの方々だったとは、これは評価を再度改める必要がありますね」
「戯れ言は良い。それで、儂らの言は合っておるのか?」
「正解ドンピシャその通りですよ。流石はかの第六天魔王織田信長、そしてケルトの大戦士クーフーリン。えぇ持ってますよ、あの
「ほう、逆に聞くが何故持ってきておらん?それさえ持ってくれば儂らなど容易く殺せよう」
「だから、私達は別に貴方達殺しにここに来たわけでは無いってさっきも言ったでしょう?それにそんなにカード持ってきたら嵩張るし何より邪魔くさい」
「最もな意見だな」
へらへらとした調子で喋るキャディに対し、カルデアの面々は、ロマニから説明された『組織連盟』の事を聞いて絶句し、おまけにキャディも単身で人類を滅ぼせる力を持っているとキャディ本人から何の惜しげもなく告げられ、最大限の警戒体勢をとる。
「だからもう警戒する必要ないってあれほど...あーもうそれで良いですよ勝手にして下さい私はもうやることやって言うこと言ったのでこれにておいとまさせて貰いますよ」
「んだよ逃げんのか?」
「逃げる?何を馬鹿な事言ってるんですか、私がここにいる理由もう何も無いので本部に戻るんですよ。私こう見えて『組織連盟』の参謀の位に就いているので、色々と本部でやることがあるんですよ」
そこまで言うと、キャディはくるりと体を反転させ、カルデアの面々に背を向けて軽い足取りでゲートに向かって歩いていく。
それを見た信長はすかさず右手に一丁の火縄銃を具現化、それをキャディの背中、心臓のある場所に向けて発射する。しかしキャディは、
受け止めた右腕は、弾丸が掌から皮膚を貫き、右腕を内側から抉っていく。めり込んだ弾丸は、肩まで行くとそこで止まり、弾丸に込められた魔力の衝撃で、肩から腕が内側から炸裂、右腕を失うという結果となる。
自身の血や肉片が服やマスク、地面に飛び散るが、キャディは痛がろうともせず、地面を真っ赤に染めた自身の飛び散った血や肉片を見た後、血が付着した服を確認すると、信長に顔を向け、残った左肩だけで肩を竦める。
絶句する立香とマシュ、モニター越しにそれを見たロマニは思わず吐き気をおぼえ、同じくロマニのモニターからそれを見たダ・ヴィンチは気持ち悪そうに顔を歪める、あまりの光景に両手で口を塞ぐジャンヌ、痛々しそうに顔を歪めるクーフーリン、それぞれが反応を見せる中、信長だけはキャディが右肩から腕を失っても痛がらない事よりも、
「そんなに驚きます?別に問題ないでしょ、たかが右腕が肩から無くなった程度で」
「いや、どう考えても人間からしたら致命傷ですよ!?よくそんなんなのに平気そうですね...」
「まぁ慣れましたから。それに、慣れちゃえば一々驚かなくて済みますしね」
「まずその光景自体そうそうあるようなものではないので、慣れられる訳ありません」
左腕が無くなっているにも関わらず平然と話すキャディ。立香も思わず大きな声でツッコミを入れ、マシュは呆れ返っていた。
「じゃ、私も本当にここから失礼しますね。皆様もこれからあるであろう特異点での人理修復頑張って下さいね」
深々とお辞儀をしたキャディは、立香達の視線を受けながらゲートの中へと消えていき、ゲートも、キャディが完全に入ったのと同時に消えていき、その場には呆然と立ち尽くす立香達しか残らなかった。
◇◇◇◇◇
組織連盟のとある部屋の一室。その部屋には対称的に備え付けられている簡素なテーブルと椅子があり、その片方には、つい先程フランスから帰還したキャディが足を組んで座っていた。
彼は、片腕が無くなっている状態でも優雅に紅茶を楽しんでいた。その反対の椅子にはフローレスが座っていた。フローレスの手前のテーブルには、キャディが飲んでいるのと同じ紅茶が置かれており、まだ湯気がたちこめている。
しかしフローレスはそれに一切手をつける気配が無い。球体のような頭を前に向けたまま、ただじっとキャディを見ていた。
「あの...なんです帰ってきて早々私の事呼びつけて、こちとらやることいっぱいあるんですけど」
「...」
痺れを切らしたキャディは、かれこれ十数分も無言でこちらを見続けているフローレスに問いかける。
その問いにも答えようとしないフローレスに、キャディはマスクの上から頭をかく動作をする。そこでふと、思い出したかのようにキャディはフローレスに別の質問を投げ掛ける。
「あ、因みにギルディアから聞きましたか?今回の特異点での事」
「...あぁ、我が臣下ギルディアから聞いている。慢心して負けたのはギルディアの方だ、少し部屋で反省するよう言っておいた」
「おやおや、相変わらずの手厳しさですねぇ」
「...キャディ、貴様に聞かねばならぬ事がある」
「はい?なんですかそんな改まって」
「とぼけるのはやめろ。どうせ分かっているのだろ、我輩が言いたいことなど」
「まぁ貴方が二人きりで話したい事なんて言ったら大体察しはつきますけどね。ピエレル様の件でしょ?あの二人がいると集中して話出来ませんからね。あの二人どっちかっていうと保守派ですし」
「...マキナとインセクトがいてもあの場で貴様がまともに話を聞くようには思えんが、一応分かってはいるのだな。そうでなければ組織連盟参謀は務まらん」
「当然♪ピエレル様に仕えるにはこれ位有能じゃないと」
少しだけ機嫌が良くなったキャディは、紅茶を一口飲む。フローレスもまだほんのり温かい紅茶を手に取り、紅茶の中にストローを入れる。
すると頭部の本来口がある部分に、ストロー一本が入るほどの穴が開き、その穴にストローを入れて紅茶を飲む。
「あの...前々から気になってたんですけど、貴方って飲食しなくても平気じゃありませんでしたっけ、なんで紅茶飲んでるんです?」
「ピエレルから教えてもらった。出されたものは必ず食さねばならぬと」
「そうですか」
聞かなきゃよかったと思ったキャディは、空になったカップをテーブルに置き、フローレスに顔を向ける。それと同時にフローレスも紅茶をテーブルに置くと、キャディを見る。
「この際だからはっきり言っておきますけど、私は本当に聖杯なんて物に微塵も興味ありませんよ?だってあの聖杯って名ばかりの魔力増幅装置じゃないですか。そんな程度の知れたもの無くても我々魔力無尽蔵に持ってますし」
「...ならば何故この聖杯戦争に乱入しようなどと言った」
「この大規模な聖杯戦争で、もしかしたらピエレル様を復活させるにあたって必要な素材が手に入れられるからと答えたら、貴方はどうします?」
「ムゥ...」
キャディがそこまで言うとフローレスは黙り込み、腕を組むと深く考え込み始める。その様子を見ていたキャディは、飲み干したカップをテーブルの上に置くと、立ち上がって部屋を出る為に扉の方へと向かう。
「別に考えるのは貴方の自由ですが、出来ることなら自室で考えて下さいな。もうこの話って終わりで良いんですよね?私は他の業務があるのでこれで失礼しますよ」
そう言いながら扉を開けたキャディだが、扉の前に立っている人物に思わず足を止める。
「おや、キーカーどうされたんです?この部屋に何か用でも...ってあぁなるほどそう言えば彼女が監禁されてる場所ってここでしたっけ、すっかり忘れてました」
「……」
金具できつく固定されている濃い緑色のローブ、顔には鉄仮面をつけている組織連盟最小幹部--ナイフ・キーカー--が銀のトレイを持って扉の前に立っていた。
トレイの上には、作りたてなのか油が弾ける音を立てるステーキと湯気が出ているオニオンスープ、そして山盛りのサラダとホカホカのパンが乗せられていた。
それを見たキャディは、色々と察し、開けた扉の横に移動し、キーカーに道をゆずる。キーカーは軽く頭を下げると、部屋に入り、部屋の奥にある黒いカーテンの中へと入っていく。
キャディは好奇心から、フローレスは前を通り過ぎたキーカーが目に入ったと言う理由から、それぞれキーカーに付いて行き、黒いカーテンを少しだけ開け、中を覗いてみる。
カーテンの向こうには、鳥かごのような牢屋が一つあるだけで、牢屋の中にはベッドやテーブル、椅子と言った生活に必要なものが一通り揃っていた。キーカーは、既に牢屋の中にあるテーブルに食事の乗ったトレイを置いており、ベッドの前で少し前屈みになり、ベッドの中で小さい寝息を立てている少女をまるで小動物を観察でもするかのようにじっと見ていた。
数分ほど少女を見ていたキーカーは、気が済んだのか牢屋から出てると、覗いていたキャディ達の脇を通り抜けて部屋から出ていった。
「...構成員達の間で、キーカーが食事の乗ったトレイを持って誰もいない筈の部屋に入って行くと言う噂があったらしいのですが、彼女の為だったんですね...と言うよりなんで彼女がここにいるんですか?」
「...貴様が聖杯戦争に参加しようと言った後に、我々に見せた冬木市の特異点の映像見せたのが原因だろうが」
「あれ、そうでしたっけ?」
「そうだ、それを見たウォーカーが、彼女の人間性に興味を抱いみたいでな、貴様とギルディアが特異点に行っている間にわざわざカルデアにまで赴いて
「えーっと、確か彼女の名前って...」
「あぁ、ウォーカーから聞いたのだが、
牢屋の中にあるベッドで小さい寝息を立てる白髪の少女--オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア--は、時折苦悶の表情を浮かべたりしながらも、ベッドの中で深い眠りについていた。
如何でしたでしょうか!
久しぶりの投稿なので色々誤字脱字があるかもしれません。見つけた方は是非報告してください。報告して下されば直ぐに修正したいと思います!
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永続狂気帝国セプテム
永続狂気帝国 2-1
それではどうぞお楽しみ下さい!
※読者様からのご指摘があり、「魔法」の部分を「魔術」修正させて頂きます。ご指摘してくださいましたアドナイ・エロヒムさんありがとうございます!
永続狂気帝国
カルデアによって新たに観測された特異点は、第五代皇帝ネロ・クラウディウスによって統治されていた西暦60年の古代ローマ。
そこに突如出現した『連合ローマ帝国』と本来のローマ帝国との激しい戦争が繰り広げていた。そんなローマにある広大な荒野にその場に不釣り合いな服を着た一人の男が歩いていた。
「全く、第一特異点で大人しく死んでいれば良かったものを、とことん哀れで馬鹿な男だな藤丸立香」
そう悪態をつきながら荒野を歩く男--レフ・ライノール--は、第一特異点で死ななかった藤丸立香を罵る。
至高なる『あのお方』からの命令によってこのローマに赴いたレフだったが、きっとこの特異点にやってくるであろう人間の立香に負けるとは微塵も思っておらず、ましてやその立香に召喚されたサーヴァント達にすら負けないと強い自信がレフにはあった。
「フッ、まぁこの私自らが戦闘に赴くのだ。その時は確実に奴らを始末できる。最も、あのゴミとサーヴァント風情に負けなどあり得ない話だがな」
「--お前がキャディの言ってたレフ・ライノールっつう奴か?確かにアイツの言った通り、酷いくらい慢心してるみたいだな、アイツらしい変な言い回しだと思ったが、なるほど本人見るとそんな実感湧いてくるな」
「ッ!!」
不意に後ろから誰かに声をかけられたレフは、自分が立っていた場所から勢いよく前に飛ぶと、後ろにいた人物から距離を取り、その人物と向き合う。
「誰だ貴様、いや、まずいつから私の後ろに立っていた」
「あぁ、そりゃついさっきたが?お前が独り言ぶつぶつ呟いて不敵な笑み浮かべてた辺りから」
「…そうか」
レフは、改めて自分の後ろに音も気配も無く立った男を観察する。
男は、特殊部隊のような服装をしており、顔はガスマスクで隠されていた。腰にはハンティングナイフをつけ、太もものホルスターには銃が入っていた。それ以外に特に注意するような武器は見られなかった。
「(何だこの
「おい、どうした黙り込んで」
「いきなり会って早々で失礼だが、私の存在を知った以上貴様にはここで死んで貰う」
「…あ?」
レフは片手に魔術を展開すると、その手を男に向ける。そしてその手から強力な魔力弾を男めがけて放たれる。
男は何かを言おうとしたが、その前に攻撃魔法が被弾し、轟音を立てながら男のいた場所を中心に半径5メートルが爆発する。
「全く無駄な時間を使わせおって、迷惑な話だ」
未だ男がいた場所の土煙は晴れないが、恐らく見るも無残な姿になった男を思い浮かべ、レフは小さく笑い声を上げる。
「…おい、何もう勝った気でいるんだこの野郎、調子こいてんじゃねぇぞ。ったく綺麗にしたばかりの戦闘服に土つけやがって」
「ッ!」
土煙の中から唐突にかけられた声に、勝利を確信していたレフは驚愕を隠せなかった。晴れ始めた土煙の中から、先程と同じ姿の男が服についた土を払いながら堂々と歩いてきた。その体には傷一つなく、本人もダメージを受けた様子は見られなかった。
「き、貴様、どうやって私の攻撃をっ!」
「あんなもん俺にとってはかすり傷にもならねぇぞ。それにしても今の魔術、随分弱かったな。今のがてめぇの全力か?」
「…何?」
男の言い放った一言にレフは初めて怒りを露わにした。自身に対する侮辱は、レフにとっては敬愛する『あのお方』を侮辱することと同義だった。
「このゴミクズが、たかが一撃防げたからといって調子に乗りやがって。そんなに死にたいのなら今すぐ殺してやろう」
「お、やっとその気なったか。いいねぇ俺もやる気の無い奴を痛めつける趣味は無いからよ、楽しませてくれよ?」
「ほざけこの劣等種風情が!」
今度は両手に攻撃魔術を展開し、それを男に向けて発射する。先程の攻撃魔法よりもスピードも威力も段違いになったその魔力弾を、男は俊敏な動きで回避する。
避けた魔力弾が男の背後で凄まじい爆音を立てるが、男は気にせずに腰のハンティングナイフを抜くと、それを逆手に持ってレフに接近する。レフも、近づかれまいと両手に加え、自身の周りにも10個もの攻撃魔術を展開して男を迎え撃つ。
流石に厳しいと判断した男は、魔力弾を回避しつつ、レフから距離をとる。その瞬間男の足元に魔法陣が浮かび上がり、男はその場から一歩も動けなくなってしまった。
「拘束魔術か。こりゃ一本取られたな」
「はっ!罠に掛かったのに随分と冷静だな。こうなった以上もう貴様に勝ち目は無い。命乞いをしても良いんだぞ?まぁ命乞いをしても生かす気は毛頭無いがな」
「だったら最初から聞くなよバーカ」
拘束魔術に掛かり、動けなくなった男をレフは嘲笑う。男はその嘲笑を見ても声色変えずに、逆にレフを煽る。
その態度が気に食わなかったレフは、顔を大きく歪めると男の顔の前に掌をかざし、最大火力の攻撃魔術を展開する。
「死ねこのゴミクズが。私を侮辱したこと、あの世で後悔するが良い」
「だったらその一撃絶対外さずにしっかり俺の頭に当てろよな。でないとお前が後悔するぞ」
「負け犬の最後の悪あがきか?この状況で言うと逆に滑稽だな」
レフは身動きが取れない男に零距離から魔力弾を射出する。しかし、男は
「グッ!き、貴様ァ!」
「おいおい、いつ誰が拘束魔術の中で動けないって言ったよ?変に勘違いして不意打ち喰らったのはお前だろ」
レフは鼻をおさえながら男を睨み付ける。睨み付けられた男は、呆れたようにため息を吐きながら頭を振り、冷静に指摘する。
「貴様、もう許さんぞ!ここから先はもう手加減無しだ!俺の本気を以て貴様に恐怖と絶望を刻みこんでから殺してやろう」
「…熱くなってるところ悪いんだけどよ、もう時間切れみたいだぞ」
男の忠告を無視して、レフは自身の全ての魔力を解放する。レフの体から莫大な量の魔力が放出され、それがレフを隠すように覆い尽くす。その魔力がお互いに吸着し、レフがいた場所から姿を現したのは、赤い眼の生えた大樹ような怪物だった。
『見たか、この私の真の姿を!正直貴様は取るに足らぬ人間だと思っていたが、この私を本気にさせたのだ。素直に称賛を送ろう。まぁ、今から死ぬ貴様に称賛を送っても無意味か』
「…お前の本当の姿って、言い方悪いけど木みたいだな」
『……』
男はレフの言葉を聞き流しながら、レフの本来の姿に対して率直な意見を述べる。木と言われたレフは無視されただけではなく、自身の本来の姿を馬鹿にされたことに静かに青筋を立てる。
『貴様ァ!散々この私を馬鹿にしたこと、今に後悔させてやるぞ!』
レフは、十本の触腕を動かし、触腕の先端に魔力を溜めるとそれを一斉に男に向けて放つ、レフの放った魔力弾は予想以上に速く、直ぐに反応出来なかった男に全弾直撃する。
『フンッ、私を馬鹿にした相応の罰だな。やはり所詮は只の人間、私の本気には勝てるわけが無い』
「何を勝ち誇っているのだ、貴様」
『ッ!』
その声で我に帰ったレフは、声の出所を探そうと全ての眼を動かして探す。そしてその声の出所が、土煙の中からしているのを理解した。
土煙が晴れるとそこには男の前で手をかざしている骸骨の仮面をつけた鎧を着た別の男とボロボロの外套を着た両目を包帯で覆っている老人が立っていた。
「インセクト、貴様何を雑魚と遊んでいるのだ。貴様に言い渡された任務はこの特異点の地理地形及びサーヴァントに関する情報収集では無かったのか」
「その情報収集が終わったからそいつと遊んでるんですよフローレスの旦那。俺だって何もしないで遊び呆ける程堕落しちゃいませんから」
男--フローレス--は後ろに眼だけを向け、男に問いかける。インセクトと呼ばれた男は肩をすくめ、フローレスの問いかけに答える。そこへ、フローレスの他にもう一人沈黙を貫いていたローブを着込んだ老人が口を開く。
「まぁまぁフローレス様、インセクト殿もあぁ言っている訳ですし、ここはインセクト殿を信じましょうぞ」
「…バルファ、我輩はもしインセクトが仕事をサボっているのなら貴様に頼もうと思っていたのだぞ。その前にインセクトは折檻するがな」
「おやおや、それは嬉しいですな」
「ちょっ!本人の前で凄い事言うなフローレスの旦那」
『き、貴様等ぁ!いい加減私を無視して勝手に話を進めるなぁ!』
蚊帳の外だったレフは、無視され続けられていた事にぶちギレ、三人に向けて先程の倍の数の魔力弾を発射する。
「五月蝿いぞ貴様、少し黙らないか」
しかし、魔力弾はフローレスの前で停止すると、
『ーーーーーー』
突如腹に襲い掛かる激痛にレフは言葉にならない声を上げ、全ての触腕を振るまわす。
その衝撃と余波は凄まじく、触腕が地面とぶつかる度に地面が抉れ、フローレス達のいる所までひび割れが出来る。
「おいおい随分な暴れようだな。たかが腹に穴空いた程度で大袈裟だなあいつ、あれって一応魔神だろ?」
「正確にはあれは魔神柱だ。分かりやすく言えば魔神の成り損ないといった所だ。故に痛覚は人間と同様に存在する。我輩達とはベクトルが違うだけだ」
「どうされますかフローレス様、ご指示とあらば儂が黙らせますが」
「よいバルファ、我輩がやる。お前は一切手を出すな。奴のようなタイプは追い討ちが効果的だ」
フローレスは能力で宙に浮き、未だ暴れているレフに近づいていく。空いた穴を修復させていたレフは、フローレスの魔力を察知し、フローレスを複眼で睨みつける。
「どうした魔神柱、まさか今ので降参とは言うまい。貴様まさかその程度の存在なのか?もしそうならばもうこれ以上お互いに争う理由は無い。インセクトが貴様に失礼を働いたのなら我輩が謝罪しよう。すまなかったな」
『貴様、どうやって私に攻撃を…』
「そんな事は今はどうでもいい。それよりも貴様には手伝って欲しい事があるのだ」
『なんだと?』
「何、簡単な事だ」
フローレスは更にレフに近づき、囁くように呟く。
「我輩達に協力しろ。この特異点でカルデアの連中を始末する」
◆◆◆◆◆◆
『カルデアの連中、つまり藤丸立香を始末すると言うことか』
「逆に聞くがそいつ以外にカルデアの魔術師はいるのか?」
『…貴様等、本当の目的は一体なんだ?』
「敗者にそんなことを教える程我輩が優しいと思うか?それに知った所で貴様にそれを理解出来るとは到底思えん。それでも知りたければ我輩を倒してからにして欲しいものだな」
『…良いだろうさっさと貴様に勝って貴様等の目的を聞かせて貰おうか!』
レフは触腕から魔力弾を放ちながら、他の触腕を鞭のように振り回す。フローレスは空中で器用に避け続けながら、指先に魔力を集め、魔力弾を放つ。その魔力弾がレフの魔力弾と衝突し、相殺される。
『馬鹿な!私の攻撃を相殺するなど!』
「いささか我輩の事を弱く見すぎではないか?今放った魔力弾は元々貴様のだぞ?」
『何!?』
「先程我輩達に向けて魔力弾を撃っただろ?あれは消滅したのではなく我輩を守っている
さも当然のようにフローレスは話すが、相手は魔神柱の姿となったレフ。その魔力弾に込められた魔力は測り知れず、唯の魔術師がこれを受けたり仮に吸収出来たとしても、その膨大な魔力に体が木っ端微塵に吹き飛ぶ事だろう。しかしフローレスはそれを吸収し、あまつさえそれをそのまま撃ち返すという芸当を見せたのだった。
「どうした?我輩はまだ傷ひとつすら受けていないぞ」
『調子に乗るなぁ!』
レフは触腕から一斉に魔力弾を放つ。しかし、それらの魔力弾はフローレスに向かって撃たれたのではなく、全弾がフローレスの手前で爆発したのだった。
これにはフローレスも警戒し、動きを止め次のレフの動向を待つ。その瞬間、爆風の中から不意に二本の触腕が飛び出し、レフに体に巻き付く。
『捕まえたぞ!』
「ほぉ、魔神柱にしてはなかなか考えたものだな、褒めてやろう」
『フンッ、その余裕がどこまで続くか見物だな』
フローレスに巻き付けた触腕の力を徐々に強めながら、レフは勝利を確信した。
『さぁ、私は貴様に勝った。さっさと貴様等の本当の目的を教えて貰おうか』
「まだ勝利を宣言するには早くはないかね?」
『なんだ負け惜しみか?さっき私の事を雑魚とか言っておいて負けたのがそんなに悔しいか。負け惜しみも大概にして負けを認めてはどうかな?』
「……」
『ん、どうした?私に負けたのがそんなにショックだったのか?』
「…つけあがるな魔神柱風情が」
瞬間フローレスに巻き付いていた触腕が破裂し、フローレス触腕による拘束から解放される。
顔を上げたフローレスの髑髏の仮面の目からは青色の焔が灯っていた。そして触腕が破裂した事に動揺しているレフの方へ、ゆっくりと掌を向ける。
『ガァァァァァァァァァァ!!?』
掌を向けられたレフは、突然苦悶の叫び声を上げながら触腕で複眼を押さえ始めた。
押さえている幾つかの眼球が異常なまでに膨張していたのだ。やがて膨張していた眼球は限界を越え、水風船が割れるように破裂した。眼球を構成していた体液や組織、そして眼球の一部が辺り一面に飛び散る。
「何故我輩が
『アアアアアァァァァァ…』
フローレスが話している間にも、レフは激痛に悶えながらこれ以上肉体を維持出来なかったのか巨体は徐々に収縮していき、ついには人の姿に戻っていった。
フローレスはそれを見届けるとゆっくりと地面に降下する。片膝を付いた状態で左目を押さえていたレフは、顔に脂汗を流しながら地面に降り立ったフローレスを見上げる。
「さて、いい加減見栄を張るのは止めて我輩達に協力してもらおうか。無論拒否するのは貴様の自由たが、その時は今の苦痛を更に長い時間味わうことになるが構わないかね?」
「ッ!」
レフは理解していた、今の自分の実力ではこの者はおろか後ろで待っている二人にすら勝てないと。
しかしだからといって本能から素直に従う事は魔神柱としてのプライドが傷つくと考え、口が中々開かない。ここでこの男の言うことに従ったなら『あのお方』への忠誠を裏切ることになってしまうと理性が告げ、レフは今その二つの意思の間で葛藤していた。そんなレフの心中を知ってか知らずかフローレスはそっと右手をレフの前に出す。
「別に我輩と共に戦えとは一言も言っていない。貴様は貴様の仕事に集中すれば良い。我輩達もこの特異点で我輩達の仕事に集中する。ただお互いの最終的な目的が藤丸立香の始末だと言うのを覚えて貰いたいだけだ。その為にはお互いの情報交換しない事には始まらない。もしこの手を取るのであれば、我輩達の手が空いている間、貴様が望むのであれば貴様の支援もしよう。どうだ、悪い話では無いだろう?」
「……」
レフは暫く無言でフローレスの手を見続けると、ゆっくりとフローレスの手を掴み、その場に立ち上がる。未だ疑心の目を向けてはいるが、もうフローレス達に対する敵意はなかった。
「私を裏切るつもりは無いんだな」
「今は無い、と言いたい所だがそれも貴様の努力次第だろう。さっきも言った通り我輩達は協力するのであって貴様の仕事の手伝いを一緒にするつもりは無い。それは貴様も同じことだろ?ならばお互い深く干渉し合わない方が良い」
「…理解した。なら精々私の仕事の邪魔をしないでもらおう」
「無論そのつもりだ。さて、お互い時間が惜しい、話し合いはここまでにしようじゃないか。また会おう魔神柱」
「その呼称で私を呼ぶのは止めろ。私の名はレフ、レフ・ライノール・フラウロスだ」
「分かったライノール。我輩の名はフローレスだ」
お互い簡単な自己紹介だけ済ますと、レフは『連合ローマ帝国』の
「どうやら話し合いは終わったみてぇだな」
「あぁ、お陰で便利な情報源が出来た。良い収穫と言えるだろう」
「それではフローレス様、次にこの特異点での我々の仮拠点探しでしょうかな」
「それなのだがバルファ、確か『裏』に我輩の使っていない別の城があったはずだ、可能ならばここにコンパクトなサイズの城を持ってこれないか?」
「可能ではありますが、少々お時間を頂けないでしょうか」
「構わぬ。出来るのであれば直ぐに取りかかってくれ」
「畏まりました」
命令を受けたバルファは魔法を行使する為の準備に取り掛かる。その間フローレスは視線をバルファから外し、別の場所に視線を向ける。視線を向けた先には、ネロ・クラウディウスの統治するローマ帝国の町並みがうっすらと見えていた。
「…なんか見えるんすかフローレスの旦那」
「いや、見えない。だが感じるのだよ、我輩が能力を発揮するに相応しい何かが。間違いなくカルデアの
「へぇ~、それって旦那のライバル位ですか?」
「戯け、そんな筈なかろう。奴と同等の存在などサーヴァントの中にいるわけがあるまい。奴は今も尚生きる伝説のような男なのでぞ?我輩の全力に全力で答えてくれる、そんな奴だ」
「…すまん、いささか軽率だった」
「分かればいい、分かればな」
インセクトの言葉を食いぎみに否定したフローレスは、右手で何かを握り込むような仕草を見せるながらインセクトを睨む。
睨まれたインセクトは失言だったと後悔し、直ぐ様謝罪する。フローレスは謝罪を聞くと、握り込んでいた手を開き、再び視線をローマ帝国に戻す。その佇まいと全身から滲みでているオーラは、正しく魔王のようであった。
如何でしたでしょうか?少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
評価・感想お待ちしております!
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永続狂気帝国 2-2
サーヴァント(特に三蔵法師)の口調が分からない…
フローレス達が仮拠点の作成に取りかかっているのと同時刻、ネロ・クラウディウスとの接触を図った藤丸立香とサーヴァント達は、現在ネロと共にローマの町を歩いていた。時折ネロはお店の店主等に励ましや激励の言葉を掛けながら歩いていた。
「皇帝陛下はとても国民の事を大事になさっているんですね」
「ウム!これは余にとって当然の事、余はこの5代目ローマ帝国皇帝、民草達の事は常に気を配らねばならぬ。もし苦しんでいる民がいるのであれば余はその者に必ず手を差しのばす必要があるのだ」
「そりゃ御立派な考えだことで。ま、ワタシにはこれっぽっちも関係の無い話だがな」
「コラー!立派な考えだと思ってるならもうちょっと相手に敬意を表しなさーい!じゃないと御仏から嫌われちゃうからね」
「そうです両儀式さん、御仏はともかく相手は皇帝陛下なんですよ。お願いですからもう少し言葉を選んで下さい」
「アタシがそんなことする奴だとでも思ってんのか?それに敬語なんてアタシらしくないしなにより使う気にもならなぇよ。さっきもそこの皇帝がここでは敬語じゃなくて良いって言ってたし、なぁ皇帝」
「ウム、余は一度言ったことを変える気はない。それにお主の男勝りの口調は聞いていてもそれほど不快にはならぬ。それは本心から余の事を嫌ってはいない証拠だ」
「勝手に決めつけんなよ皇帝。つかさりげに両ちゃんって呼ぶんじゃねぇ三蔵」
「いいじゃない別に減るもんじゃないんだし。そんなにそんな短気じゃ愛想尽かされちゃうわよ。私ぐらい寛容な性格じゃなきゃね」
立香がネロの行動を素直に称賛するのに対し、今回の特異点修復こ為に召喚されたサーヴァント--両儀式は、その行動を一蹴する。そこにすかさずマシュと同じく召喚された三蔵法師が注意する。三蔵の言葉に両儀式は額に血管を浮かべる。
「少なくともお前みたいな仏大好き人間にはなりたかねぇな」
「ちょっと、それってどういう意味よ。言って良いことと悪いことがあるでしょうが!」
両儀式は隣にいる三蔵を睨みながら嫌味を吐き捨てる。その嫌味を聞いた三蔵は自ら寛容と言ったにも関わらずキレる。
お互いが睨み合い口喧嘩を始める光景を、止めるべきかどうか判断出来ずオロオロするマシュ、カルデアでも見た光景に口喧嘩を止めるのを半ば諦めかけている立香、「仲が良いな!」と大笑いするネロ、そこだけ見れば中々カオスな状況であった。
そして口論から戦闘になるのは避けるべきかと考えた立香は二人を止めようと近づこうと足を踏み出し、何か柔らかいものが胴に当たる感触に思わず足を止め、ぶつかったものを確認する。
「し、師匠!」
「さ、三蔵法師さん!」
「うぇ~ん、弟子ー!両ちゃんが私を馬鹿にするよぉ~何とかしてぇ~!」
「あ、てめぇ!マスターに助け求めてんじゃねぇぞ!」
「へっへーん!日頃の行いが悪い奴に仏も誰も味方しないもんね~!」
ぶつかってきたのは口喧嘩をしていた筈の三蔵で、目元に涙を溜めながら立香に抱きついてきた。
両儀式の方を見れば、鋭い目をさらに鋭くして怒りを露にしている。そんな両儀式を小馬鹿にするかのように三蔵は舌を出して挑発する。
「ねぇねぇ弟子~?この場合私と両ちゃんどっちが悪いと思う?」
「え、えっと…その前に離れてもらっても良いですか?色々問題が…」
「嫌ー!弟子が答えるまで師匠離れないから!」
「三蔵さん!マスターが困ってますから本当に離れて下さい!」
三蔵は腕の力を強めながら立香に問い掛ける。腕の力が強まるにつれ、胴の柔らかい感触が一層服越しに伝わってくるのを感じた立香は、三蔵を引き剥がそう懸命に頑張るが、三蔵は立香を離さない。
最終的にはマシュと両儀式の二人がかりで三蔵を引き剥がす。その際両儀式は複雑な顔をしていたがそこに触れたら今度こそ両儀式が本気でキレると察した立香は何も言わなかった。
「奏者達はいつも仲が良いな。余も混ぜて欲しいものだ」
「…皇帝陛下がこれに混ざると最早俺たちではもう止めに入れなくなると言いますか」
「出来るのなら参加しないでもらえたら嬉しいです」
「ム、そうか。それは残念だ」
立香とマシュが疲れ切った目でやんわりとネロに断りを入れる。そんな二人の心情を知らないネロは、残念そうな顔をする。
ふと、ネロは両儀式の方を見やると、彼女は立ち止まって何処か一点をじっと見つめていた。
「どうしたのだ両儀式、何を見ておる?」
「…いや、何でもねぇよ。気にするな」
ネロから声を掛けられた両儀式は、一度鋭い目のままネロ見ると、すぐにいつもの目に戻ると何でもないと言ってさっさと歩き出していった。
「(何だ、さっきの気配。今まで感じた事のないもんだったが…誰かが俺たちを監視してる?まさかアーチャークラスの野良サーヴァントか?だとしてもここから距離があり過ぎる。そんな超遠距離から俺たちを監視できるサーヴァントなんているわけない)」
両儀式は、ついさっき感じた気配について考え、他のサーヴァント達は気づいたのか疑問に思い、首を後ろに向け、サーヴァント達を確認するが、今後の特異点についてマシュや立香は話し合っていたのだが、ネロや三蔵は自分が感じた気配に気づいていたような気配が無かった。
「…考えすぎか」
とりあえずそう結論付けた両儀式は、前を向き今現在自分たちが向かっている森林地帯に設置された駐屯地に向かって足を進めるのであった。
◆◆◆◆◆◆
「……フム、これ位の魔力放出ならどうやらあのサーヴァントだけが気づくようだな」
フローレスは、机に置かれている水晶を見ながら、水晶玉の中に映っている立香達を観察していた。
フローレスはバルファが発動した転移魔法によってローマの荒野に転移させた城の自室で、自身の能力と連動させられる水晶玉を使用し、超遠距離から彼らを観察していた。
「おいフローレス。いつまでその水晶と睨めっこしているつもりだ。いい加減私を呼びつけた理由を話して貰おうか私も暇じゃないんだよ」
しかし、彼らの観察とサーヴァントに対する見解は、レフの不機嫌な声によって中断される。フローレスは仕方なく水晶玉から視線を切り替え、自身の座るソファの反対がのソファに偉そうに座ってこちらを睨んであるレフに視線を向ける。
「まぁそう不機嫌になるな。何、一つ貴様に保険をくれてやるのだ」
「保険?」
レフを呼びつけたのは他ならぬフローレス自身なので、あまりどうこう言うと後々が面倒だと思ったフローレスは、早々に本題に入る。
まず、部屋の片隅で待機していたバルファを呼び、レフの近くに近づいたバルファがレフに何かを差し出す。それは魔術文字やルーンが描かれた薄汚れた藁人形だった
「その人形は、ありとあらゆる攻撃から己を守ってくれる、所謂身代わり人形と言った所だ。因みに製作者はバルファ自身の手作り。但し、身代わりになってくれるのは一回までだ。故によく考えて使うのだぞ」
「ほう…」
藁人形を受け取ったレフは、人形全体をくまなく見回してからバルファを見る。バルファは微笑みながらお辞儀をして、再び部屋の片隅へと戻っていく。
「…貴様からの厚意として受け取っておこう、感謝する。話はこれで終わりか?そうならば失礼する」
懐に人形をしまったレフは、さっさと部屋から出ていってしまい、部屋にはフローレスとバルファだけが残された状態になった。
フローレスは再び水晶玉に視線を落とすと、手招きでバルファを呼ぶ。呼ばれたバルファは素早くフローレスの傍らに近づき、片膝を付き頭を垂れる。
「バルファ、貴様に任務を与える。今カルデアの魔術師のいる場所まで赴き、奴らの威力偵察を行ってこい。もし、
「はい、畏まりました」
バルファは深々と頭を下げた後、素早く立ち上がり壁に立て掛けていた杖を片手に部屋から退出する。フローレスはその間水晶玉に映っている立香達の観察を再開した。
しかし、飽きたのか途中で止めると、水晶玉の手入れを始める。すると部屋の扉がノックされる。フローレスは、一瞬扉に意識を向けるが、扉の向こう側にいる人物の魔力を感じ、ノックを無視して手入れを再開する。
「いや、流石に無視はひどくねぇか?普通っつうか一般常識的にノックしたら一言言ってくれよ。入りずらかったしこの部屋誰もいねぇのかと思ったぞ」
そう言いながら扉を開けてきたインセクトは、開口一番にフローレスを非難する。何故避難されなければならないと思ったフローレスは、呆れたためいきを漏らす。
「貴様は普段からノックも何もせずに入室してくるだろう」
「そりゃ知り合いだけならそうしたが、来客が来てる時は話が別だ。俺の他人からの第一印象が一般常識に欠ける奴だって思われたくねぇし」
「確かになそんな非常識な奴がいたら我々の組織の評価が落ちてしまうな……一人を除けば」
「……あー」
フローレスの最後の意味深な言葉を聞き、インセクトは一拍遅れてフローレスの言っている事を理解して苦笑する。おそらく今二人の頭の中には、黄色いマスクを被ったカラフルなタキシードの男が笑い声を上げている姿が浮かび上がる。
「…あれは非常識が服着て歩いてるような奴だし」
「それはそうだが…奴の狡猾な思考によって編み出された策略や戦略は、奴がたった一人で考え抜いた物だ。今この瞬間にも自身の頭脳を回転させているのやも知れぬ」
その直後、フローレスが手に持っていた水晶玉が虹色に輝き出す。二人は思わず会話を中断し、水晶玉に視線を向ける。水晶玉にはフローレスにしか理解できない文字が浮かび上がっており、文字は『キャディ・マディル』と表記されていた。
「噂をすればなんとやらだな…」
フローレスは、片手を水晶玉の前に翳し、手を横にスライドする。すると水晶玉の中の景色が変わり、水晶一杯に黄色い何かが映りこむ。
『これはこれはどうもフローレス、元気そうで何よりです』
「…キャディ、いつも言っているが顔の距離が近い。毎回貴様の黄色のマスクをドアップで見せられるのはそろそろ辟易してきたぞ」
『ちょっと!通信していきなり私のマスクディスるの止めてくださいよ!だってこれどん位の距離が丁度良いのかまだ分からないんですから』
「そうかなら慣れろ、今すぐに」
『いきなりの無茶ぶり!?流石に今すぐは無理ですからね!?』
「無能め」
『何でそれだけで私無能扱いなんですか!』
「おいお前ら、アホみてぇな漫才やってんじゃねぇよ。キャディ、通信入れたって事は俺らに用でもあるんじゃねぇか?」
『おぉインセクト!貴方なら私を助けてくれると信じていましたよ!』
「いいからさっさと用件話せ、じゃねぇよ通信切るぞ!」
『待って切らないで話します!話しますから!』
キャディは水晶玉越しに慌てると、水晶玉から距離を取り咳払いを一つ。
『実はですね、今特異点にいる貴方方にお願いしたいことがありまして』
「お願い?」
『はい、ピエレル様蘇生の際に、どうやら莫大な人間の魂が必要でして、その魂を集めて貰いたいのですよ。後、可能であれば魔神かそれと似た生物の魂も一つだけ回収してきて欲しいのですよ』
「なるほど、人間の魂ならともかく
『えぇ構いませんよ。丁度その特異点に一匹いるでしょ?』
「……貴様まさかこの事を『予測』していただろ?」
『さぁそればっかりは貴方に教えることは出来ませんねぇ』
「……」
『まぁお願いと言うのは以下の通りです。それでは特異点でのお仕事頑張って下さいね。後、本部でちょっと面白い事があったので、帰って来たら一度キーカーの部屋の前まで来てくださいよ』
キャディはそれだけ言うとさっさと通信を切る。それを見届けた二人は互いに顔を見あい、ため息を漏らす。
「なんか…いつも通りだな、あいつ。一体あいつの何処から狡猾な思考なんて思いつくんだよ」
「我輩にももう分からぬ。だが今は先に仕事を済ませるとするか」
「了解」
キャディはやはり非常識人だと結論付けた二人は、とりあえずキャディから頼まれたお願いを含めた仕事を達成するために行動を開始するのであった。
如何でしたでしょうか?
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永続狂気帝国 2ー3
「いやぁ助かるね。こうして色々手伝って貰っちゃって」
「いえ、俺達がこうしたいって思ってやっている事なので、お気になさらず」
「そうですよ、こういう力仕事は中々体験出来るものではありませんから、この際沢山体験しておかないと」
「へー、立香君やマシュは偉いねぇ。陛下が連れて来るだけはあるわ。それに二人とも真面目で優しいし、さぞかし沢山の異性を落としてきたんでしょうね」
「えっ!いや、そんなことは無いかと」
「またまた謙遜しちゃって」
立香達カルデアは、現在ネロに連れられて辿り着いた駐屯地で、クラスライダーのサーヴァントブーティカとクラスバーサーカーのスパルタクスに会い、親睦を深めあっていた。と言っても、基本的にブーティカの仕事の手伝いがほとんで、スパルタクスに至ってはまず意志疎通が出来ないのだが。
それでもブーティカからはかなりの好印象を得られ、最初の頃は『藤丸君』と呼ばれていたが、共に作業をしていくにつれ、今では『立香君』と呼ぶようになっていた。立香にとってはあまり呼び慣れない呼び方のため、呼ばれる度に狼狽えてしまう。
両儀式達はと言うと、この駐屯地に付近にローマ連合の伏兵がいないかを調査するためにネロとローマ兵と共に巡回に向かってしまった。
「それで、立香君達はこの戦争で私たちに協力してくれるけど、正直な話私たちと協力したとして勝算はあるの?」
「それはまだ分かりません。でも、少なくとも相手はサーヴァントの可能性があるので、勝てない訳ではないです。僕もこれでも魔術師の端くれです。それに自惚れではありませんが、僕のサーヴァントは強いですから」
「あら、頼もしいわね。お姉さんそういうの好きよ。期待してるから」
「私もそう思います!実際先輩は前の特異点でも聖杯を無事回収出来ましたし、何よりジャンヌ・オルタとの戦闘で、先輩はとても勇敢に戦ってました!」
「ありがとうマシュ、それにブーティカさんも」
「…あ~なるほど」
「?どうしたんですかブーティカさん」
「いや、マシュちゃんは前途多難だな~って」
「ブ、ブーティカさん!」
「マスター、見回り戻ったぞー」
ブーティカの言葉で顔を真っ赤にするマシュ。そのタイミングで、丁度両儀式達が見回りから帰ってくた。
マシュは顔が赤いまま少し火照った体を冷やしてくるといい、早足にその場から立ち去っていった。
「どうしたマスター、マシュになんかしたのか?」
「何もしてないよ。それよりもマシュ、顔赤かったけどどうしたんだろ?」
「…立香君、それはちょっと鈍感過ぎやしない?お姉さんちょっとビックリだよ」
「え、なんですかいきなり」
「はぁ…これは道のりは遠そうね。マシュちゃんも苦労しそうだわ」
「?」
「弟子、この特異点終わってカルデアに帰ったらちょっと恋愛観についてあたしと一緒に勉強しようか」
「え、それって別に勉強しなくても「い い か ら !」は、はい!」
「もう、弟子がまさかそんなに鈍感だったなんて、師匠としてはしっかりとそういうのも少しは学んでもらわないと」
「楽しい談話中の所大変申し訳ないが、敵襲でございますぞ」
「「「「!?」」」」
不意にかけられた声に、同は一斉に声のした方に振り向く。
何時からそこいたのか、木の幹の上にローブを着た老人が立っていたのだった。立香達の視線の中、老人はゆっくりと木の幹から降りると、ローブに付いた葉っぱなどを払い落としてから、ゆっくりと立香達に一礼する。
「はじめまして、儂の名はバルファ、バルファ・ルーゲルと申します。『組織連盟』のしがない
丁寧に自己紹介をしたバルファは、優しい雰囲気に、声も人を安心させる声色でこちらに微笑み続けていた。立香は一瞬親切心から自分も自己紹介しようとしたが、『組織連盟』の名前を聞いて身構える。
「あなたも組織連盟の人...なんですね」
「えぇ、と言っても儂は組織連盟幹部が一人、名前は言えませぬから、『王』とだけ言わせておきましょう。その『王』の部下でしかありませぬ。儂自身それほど強くはありゃせんよ」
「じゃあなんでお前はこんな敵地のど真ん中にノコノコ姿を表したんだよ。その『王』とか言う奴に命令されたのか、それとも年食い過ぎたせいで頭朦朧としてんか?」
「はっは、面白いこと言うのうお嬢さん、じゃが儂の頭はまだ正常じゃよ。なに、『王』から命令を与えられてのう。それを果たしに来たまでじゃ……………主らを殺してこいという命令をな」
先ほどまでの温和な雰囲気から一転、底冷えするほどの殺気と無機質な声になったバルファに、一同は各々の武器を構える。
バルファが杖を掲げると、体から魔力が溢れ出し、バルファが持っている杖に集まると拡散し、バルファの左右に二メートルの魔法陣が出現する。
「どれ、まずは小手調べじゃ。死後も騎士であれ---
バルファの言葉に反応し、魔法陣は激しく発光する。そして、左右の魔法陣からそれぞれ一体ずつ怪物がその姿を現した。
右の魔法陣からは、一メート八十センチの全身にボロボロの漆黒のローブを着た化け物が六体出現する。その体は半透明で、今にも消えてしまいそうだった。
反対の魔方陣からは、一メートル七十センチ程の、純銀の
「どれ、お前達存分楽しむが良い」
バルファの合図を皮切りに、体六体は一斉に立香達に襲いかかる。死霊騎士達は、自身の姿を完全に消し、グレートソードだけが宙を浮いた状態から、五体は兵を集めたネロに襲いかかり、残った一体は立香に襲いかかる。
「この私の前で弟子に手を出すなんていい度胸ね!」
しかし、それは三蔵の杖によって弾かれ阻止される。攻撃を阻止されたグレートソードは、剣先を三蔵に向ける。三蔵は片足をあげるような構えを取る。
「さぁ、どこからでもかかって来なさい!」
グレートソードは、三蔵に向けて飛翔する。三蔵は杖でこれを弾くが、弾かれても弾かれた瞬間に、その場から再び三蔵の方向に飛翔する。
「まだまだぁ!」
しかし三蔵は、杖で弾く他にも、如意棒や
すると、宙に浮いていたグレートソードが唐突に地面に突き刺さる。そして、突き刺さったグレートソードの後ろから死霊騎士が姿を現し、地面に刺さっているグレートソードを抜くと、今度は真正面から三蔵に斬りかかる。
「へぇ!正々堂々やる気になったって訳ね!」
「……」
死霊騎士は何も言わず、再び三蔵とお互いの武器を交える。もう片方の殺戮聖騎士は、獣のような声を上げながら、本能の赴くままに、自分に最も近かった両儀式を攻撃する。
「ガァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「はっ、単調で品が無ねぇ。見え見えの攻撃がアタシに当たるかってんだよ」
両儀式は、余裕の表情で殺戮聖騎士の攻撃を避け続ける。殺戮聖騎士がメイスを振る度に、メイスが接触した木々や地面がズタズタになる。更に声を上げながら出鱈目にメイスを振るが、全く当たる気配が無い。
しかし、時折両儀式からのナイフによる攻撃に対しては、左手腕の盾でしっかりと防御する。
「(こいつ…攻撃は当たらない割に、アタシの攻撃はしっかりと防御してやがる。成る程そう易々とは殺らせてくれねぇみたいだな)」
頭の中で冷静に殺戮聖騎士を分析する両儀式だが、攻撃を中断し、その場に停止した殺戮聖騎士を見て動きを止める。
殺戮聖騎士は、盾を構え、メイスを自身の顔の前に構える。するとメイスが淡く発光し、そのまま淡い光がメイスを包み込んだ。
「おいおい、一体何するってんだぁ?」
両儀式の疑問を余所に、淡く発光したままのメイスを再び両儀式に叩き込もうとする。両儀式は、先程と同じように回避しようとしたが、一瞬だけ背筋に寒気が走り、一気にバックステップを踏む。
その直感が的中し、殺戮聖騎士の振り下ろしたメイスが、地面と接触した瞬間爆発したのであった。
「おいおいそんなのありかよ」
思わず呆れ返る両儀式を余所に、殺戮聖騎士は再び両儀式に向かってメイスを振り回す。爆発効果も付与されたとなり、両儀式は先程より更に殺戮聖騎士から距離をあけざる負えなかった。
「あぁもうメンドクセェ!」
そろそろこの泥仕合に嫌気がさした両儀式は、ナイフを逆手に持ち、自分から殺戮騎士に肉薄する。その両目に蒼い光が灯しながら接近してくる両儀式の、その目を見た殺戮騎士は生存本能から防御態勢を取るが、両儀式はそれを無視して殺戮騎士を斬りつけながら跳躍し、殺戮騎士の背後に降り立つ。
「悪ぃな、あんたはもうとっくに斬られてるよ」
殺戮聖騎士がその言葉を理解するよりも早く、殺戮聖騎士は口から吐血するとそのまま地面に跪く。殺戮聖騎士は何をされたのかまるで理解できずに、自分が吐いた血を見つめる。
「アタシはあんたの死を視て、それを斬った。あんたには理解出来ないだろうけどな」
冷ややかに事実を口にする両儀式。その言葉を聞いた殺戮聖騎士は、吐血しながら後ろにいる両儀式に一度目を向けた後、今度は天を見上げ、両手を広げる。
「神ヨ…我ガ死ニ祝福ガアラン事ヲ。感謝スル、オマエノオ陰デ、私ハ死ネル…仲間達ニ会ウ事ガ出来ル。アリガトウ、名モ知ラヌ暗殺者ヨ」
殺戮聖騎士は、その言葉だけ残すと両手を広げたまま地面に倒れこみ、そのまま灰色の炎に包まれながら消滅していった。
「……なんで、殺した相手に感謝すんだよ。意味分かんねぇよ」
「両ちゃん!そっちはもう終わった?」
「あぁ終わったよ。つか、その呼び方止めろって言ってんだろ」
「えぇー」
「えぇー、じゃねぇよ」
「…何故お主等は顔を合わせれば口論しておるのだ」
「あぁネロ、そっちは終わったのか?」
「ウム!数は多く苦戦はしたが、なんとか勝利する事は出来たぞ。しかし、少なからず我が兵達に負傷者が出てしまった」
「それって大丈夫なのか?」
「ウム、被害が少なかったのが幸いであった。なんせあの化け物共、一度戦い始めた奴を執拗に攻撃し続けるのだ。お陰で此方は十分数の利を活かす事が出来た」
「そうか、それじゃ後は…あの爺だけか」
戦闘を終えた三人は、視線を動かしバルファを視界に捉える。三人が戦闘の最中でも立香達に襲い掛からず、静観していたバルファ。その目は何処か無機質で、こちらを見定めているように見えた。
「フム、この程度であれば英霊一人でも簡単に撃破可能か。やはりもう少しハードルを上げてみるべきかのぉ。いやしかし儂の目的はカルデアの排除を視野に入れた威力偵察じゃから…あまり本気になりすぎて一緒にいる現ローマ皇帝を殺すことは命令に含まれておらんから殺してしまったら儂が『王』に叱咤を受けてしまう。それは不味いしのぉ」
先程の二人の戦闘を見ていたバルファは、先程までの戦闘の結果と自分に課せられた命令を冷静に見極めており、立香等から視線を外し、深く考え込んでいる。
「おい、一人で考えこんでる所悪いんだけどよ、お前の召喚したモンスター、始末したぞ」
「ん?あぁこれは申し訳ない。少し考え事をしていたようじゃ。さて、次は何を出そうかのぉ」
「両儀式!師匠!バルファから杖を!」
「分かってるよ!」
バルファは、再び杖を掲げ、召喚の態勢を取る。それよりも早く立香は二人に指示し、両儀式と三蔵はバルファに肉薄する。三蔵はバルファから杖を奪い、両儀式はバルファの背後に回ると、両手を素早く拘束して地面に押さえつける。
「また面倒な事しようとすんじゃねぇよ」
「…やはり二回目は許されませんか」
地面に押さえつけられたバルファは、両儀式に顔を向けると、朗らかな笑顔と声色で降参した雰囲気だった。両儀式は、自分達サーヴァントを前にしてよくそんなことが言えたものだと内心呆れ果てた。
「当たり前だろ。おいマスター、捕まえたぞ!三蔵、何か縛れる物持ってないか」
「それならさっき兵士さん達を手伝った時に貰った縄があるからこれを使って」
両儀式は、三蔵から縄を貰うとバルファの両手首を縛り、バルファを連れて立香の元に戻る。その間バルファは、一切抵抗せず、なすがままだ。
「えっと…まずは、ご老体に無理させてすいません。僕たちもまだ殺される訳にはいかないですから」
「…マスター、こいつは敵だぞ?敵に情なんていらねぇだろうが」
「そうじゃよ小僧。儂は一応お主らを殺す為にやってきた敵じゃぞ?情をかけてくれるのは嬉しいが、情けは人の為ならずと言うじゃろう?最も、儂が情をかけられるに値する者ではないがのう、ホッホッホッホ!」
「黙ってろよ爺。マスターこいつの処遇をどうする、殺すか?」
バルファが自虐ネタで軽快に笑い、それを両儀式がバルファの縄を引っ張り黙らせる。三蔵とマシュ、立香は苦笑いを浮かべる。
「いや、流石に殺すことはないよ。それに、彼の言う『王』のいる拠点を聞き出せれば、こちらに有利に働くかもしれないし」
「なるほど!確かにそれなら、こちらはいくらでも対策を講じれますね!」
「さすが私の認めた弟子ね!」
「そういうことだ。おら、その『王』とか言う奴のいる場所吐けよ爺」
「いや、それはおそらくそれは難しいじゃろうなぁ。後もう少し聞くのが早かったら、もしかしたら儂は拠点の場所を吐いておったかもな」
立香の提案にサーヴァント三人は納得し、両儀式はバルファに命令するが、バルファはそれを拒む。全員の視線を浴びたバルファは、涼しげな顔で、余裕の表情をしていた。
「…どういう事ですか?」
マシュは、バルファの発言の意図が掴めず、聞き返す。バルファはマシュに顔を向けると、老人特有の優しげな微笑みを浮かべる。
「じゃから、もう少し早く聞いておれば、拠点の場所を吐いたかもしれんぞ?」
「だからそれがどういう事だって聞いて---ッ!?」
バルファの言い方に痺れを切らした両儀式は、強くバルファに聞き出そうとして、背後から突如感じた異様な魔力に、素早く後ろに振り向き、ナイフを構えて迎撃態勢を取る。
しかし、他のサーヴァントはおろか、マスターの立香でさえ両儀式がどうして武器を構えたのか分からず、両儀式の唐突な行動に、只々困惑していた。そんな中、バルファだけが、両儀式を興味深く観察していた。
「ほぉ…お主、分かるのか?『王』が放つこの魔力に」
「おいバルファ、この魔力の奔流はなんだ?こんな魔力を発せられる奴、いままで感じたこともねぇぞ」
「ど、どうしたんですか両儀式さん突然!?」
「マシュ、三蔵、マスターを守れ、何か来るぞ。今までの敵とは比べ物にならねぇ何かが!」
両儀式の警戒と同時に、両儀式の視線の先にあった空間が内側に吸い込まれるように徐々に歪みだし、そこから、金属の擦れ合う様な不快な音がその場に響き渡る。その音に、ようやく両儀式の行動の意味を理解した面々は、各々の武器を構え、歪みが進行している場所を見つめていた。
そして、歪んでいた空間が唐突に元に戻ると、その場所がボール等による衝撃で割れたガラス窓のように崩壊し始める。
「----バルファ、迎えに来てやったぞ」
そして、崩壊した空間の中から身の毛もよだつおぞまし魔力を発しながら、正しく『王』の風格を醸し出しているバルファの言う『王』なる者が、その姿を現した。
如何でしたでしょうか?
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永続狂気帝国 2ー4
ローマ帝国駐屯地、いつもであれば兵士達が次の戦闘に備えてテント等で休息を取っている筈なのだが、今現在兵士達は誰一人として休んでおらず、皆が武器を持ち、現皇帝の指示を待っていた。
現皇帝ネロ・クラウディウスは、冷や汗をかきながら目の前に現れた招かれざる客を注視する。突如何もない所から姿を現した二メートル半以上の髑髏の鉄仮面を付け、灰色の鎧を着た大男は、目線だけを動かし、皇帝を守ろうと前に出ていたローマ兵達を見やる。
「貴様等、我輩に対して頭が高いぞ。下がれ」
「な、何を…」
「我輩は、聞き分けが悪い人間が一番嫌いなんだ。もう一度言うぞ…下がれ」
「ふ、ふざけるな!」
「突然現れて、我らに下がれだと?馬鹿にするのも大概にしろ貴様ぁ!」
「やめろ馬鹿者共!」
フローレスの発言が癪に触り、2~3人のローマ兵達が、槍を構えフローレスに突進する。ネロは直ぐ様制止したが、時既に遅く、槍は全てフローレスに直撃する
……筈だったが、突き出された槍はフローレスの手前で、見えない壁に当たるように不自然な距離で止まっていた。
「…全く、これだから人間は度し難い」
「…ッ!おいお前ら、早くそいつから離れろ!」
フローレスさ呆れたような口調で、槍に必死に力を込めているローマ兵達に右手を向ける。それを見ていた両儀式は背筋に悪寒が走り、急いで兵士達に逃げるように叫ぶ。
その直後、何の前触れもなくフローレスの前にいたローマ兵達の上半身が持っていた槍ごと消え去り、残った下半身から血を噴き出しながら倒れる。その間、血を噴き出していた下半身の最も近くにいフローレスには返り血は一滴も付かなかった。
「…え?」
盾を構えていたマシュは、目の前で起こった出来事を理解出来ず、思わず呆けた声を上げる。両儀式は苦虫を噛み潰したような顔をしながら静かにナイフを構える。
「ヒィィィィィ!?」
「なんだあれは、一体何が起こったんだ!」
「ば、化け物だ!化け物だぁ!」
突如目の前で起こった惨殺に、ネロの後ろで控えていたローマ兵達の三割が恐慌状態に陥り、恐怖が他のローマ兵達に伝染したのか徐々に隊列が崩れ始める。
「落ち着けお前達!敵は一人!たかが目に見えぬ力を使う相手に、我らローマがそう簡単に恐れをなしてはならぬぞ!それにこちらには奏者達がいる!まだ希望を捨てるな!くずれた隊列を直ちに直せ!槍兵達は余の後ろに!突撃兵達は後詰めとして、弓兵達は後方支援の為に後ろで待機!なるべく敵より離れて指示を待て!」
『ッ!…了解!』
しかし、ネロはローマ兵達に激を飛ばし、ローマ兵達を正気に戻す。そのまま、兵士達に指示を送り、兵士達はその指示に従い、槍兵と突撃兵達がネロの後ろに控え、その更に後ろでは弓兵達が弓に矢をつがえ、いつでも射撃出来る待機している。
「ほぉ…流石は現ローマ皇帝。瞬く間に兵を纏め上げたな。その手腕は素直に称賛しようではないか」
「…得体の知れぬ化け物から称賛されても余は嬉しくも何ともないぞ」
「それは残念だ。心の底からそう思っていたのだがな」
フローレスは、そんなネロ達を尻目に拘束されているバルファと立香達の方に向く。立香もサーヴァント達も直ぐ様臨戦態勢を取る。
「さてバルファ、威力偵察ご苦労であった。我輩の見立てでは、
「えぇ、彼女はフローレス様が来るのをいち早く察知しておりました。恐らくは、フローレス様と似た能力をお持ちだからなのかと思われます」
「ほぉ…それはますます期待できるではないか」
「おい、アタシ達を差し置いて部下の心配とは随分余裕みたいだな」
二人は、間にいる立香達をまるでいないかのように無視して話を進めるが、そこに両儀式が割って入る。そこでようやくフローレスの視線は割って入ってきた両儀式に向けられ、両儀式も、青い目でフローレスにナイフを構え続ける。
「貴様が我輩の出現にいち早く感ずいた者か。なるほど……貴様先程から我輩の"死"の概念を見ようとしているが、見えないだろ?」
「…なに言ってやがる」
「なに、隠さずとも良い。我輩の"死"の概念が見えないその理由は
「ッ!」
両儀式は、フローレスの口から告げられた事実に思わず言葉を失った。自分にしか見えていないと思っていた"死"の概念が、今目の前にいるこの得体の知れない化け物も持っていることに心の中で衝撃を隠せなかった。
「…だからどうした、オルレアンでもお前と同じ『組織連盟』の奴がでっかい蛇を召喚して邪竜に食わせたとか聞いたぞ。そんな奴がいる組織なんだお前みたいな奴がいても不思議じゃないって考えるのは当たり前だろ」
「ほぉ…」
しかし、それを聞いても両儀式はなんとか表情だけは変えずにフローレスを睨みながら吠える。
フローレスも、両儀式の予想外の反応に驚きと興味を抱いたのかバルファとの会話を一旦中断して両儀式を真正面から見据える。フローレスの鉄仮面の空虚な目と両儀式の淡く光る鋭い目とが交差する。
「--はぁっ!」
フローレスが僅かに指を動かした刹那、両儀式はフローレスめがけて疾走した。手に持つナイフを逆手に持ち、フローレスの首の頸動脈目掛け最速でナイフを振るう。しかし、振るったナイフは殺されたローマ兵達同様見えない壁に阻まれる。
「フム、悪くない一撃だ。
「チッ!」
そう褒めるフローレスはそっと右手を両儀式に翳そうとし、それを見た両儀式はすぐさま距離を取る。
「フフッ、良いぞ良いぞ。それでこそ闘争のしがいがあると言うものだ」
「こっちは闘争もクソもねぇけどな!」
両儀式はアサシンとしての特性をフルに活かし、様々な方向からフローレスにヒット&アウェイで攻撃を仕掛ける。しかし、フローレスはその場から微動だにせず、両儀式の攻撃も先程と同様に障壁に阻まれる。
「フム…ここで貴様を殺すは惜しい。一先ずはバルファを回収て撤退だな」
「それをみすみす見逃すと思ってんのか!?」
「思ってなどいないとも…だからこうするのだ」
フローレスは、背後から攻撃してきた両儀式に、振り向き様に彼女の腕を掴むと勢いよく地面に叩きつけ、仰向けになった両儀式の腹を踏みつける。
「カハッ!」
「両儀式!」
「そこを動くなカルデアのマスター。動けばこの娘の体に大きな風穴が空くことになるぞ?」
「ッ!」
「人質を取るなんて卑怯よ!」
「1つ良いことを教えてやろう。闘争の世界ではな、こういった手段は卑怯ではなく兵法と言うんだ」
両儀式を助けようとする立香達。しかし、それよりも早く踏みつけた両儀式に手を翳し、フローレスは警告する。その場に踏み留まった立香達を確認してから、フローレスは手を翳したまま顔を両儀式に向ける。
「さて娘よ…もし我輩との再戦を
フローレスは両儀式に言葉を残すと、左手で何もない空間の次元を歪め、もう片手をバルファに向けると、拘束されていたバルファがひとりでに宙に浮くと、そのまま歪みの中へと吸い込まれていく。
「今だ、師匠!」
「任せて、絶対逃がさないわ!」
バルファの手が両儀式から外れた瞬間、バルファに続き歪みの中に入ろうとしたフローレスの後頭部に、三蔵は如意棒を振り回しながら突撃する。
「まずそんな攻撃が我輩に入るとでも?」
「うわわわ!」
フローレスはあたかもそれを予想していたかのように、後頭部に振り下ろされた如意棒を後ろ向きのまま掴むと大きく上に持ち上げ、如意棒ごと三蔵を後方に投げ捨てる。しかし三蔵もサーヴァントとしてのステータスを活かして転倒を回避する。
「よっと!まだまだこれからっ…!?」
地面に着地した三蔵は、再度フローレスに突撃しようとするが、体が金縛りにあったかのように身動き一つ取れなくなる。フローレスを見れば、三蔵に向けられた左手が淡く発光していた。
「流石にこれ以上長引くのは面倒だ、ここで失礼する。サラバだカルデアの者達、現ローマ皇帝よ、願わくば再び我輩の前に立つことを願っているぞ」
左手を三蔵に向けたまま、フローレスは歪みの中へと消えていき、それと同時に歪みは跡形もなく消失し、カルデアのマスターとサーヴァント、皇帝ネロとその兵士達が残されたのであった。
◆◆◆◆◆◆
駐屯地から自らの拠点へと帰還したフローレスは、出迎えたインセクトとバルファ以外の来客相手に、一切不機嫌さを隠そうとせずソファに腰かけていた。
「ちょっとちょっとどうしたんですかフローレス。そんな如何にも自分不機嫌ですみたいなオーラ出しちゃってぇ~」
「…実際貴様を最初に目にした瞬間仕事へのやる気が6割削げたが、今の発言でこの不快感は明確な殺意に変わったな」
「いや私見ただけでやる気半減以上とか酷すぎません!?後さらっと物騒な発言と共にこっちに手向けないでくださいよ!」
「フローレスの旦那、流石にここで能力使うのは危ねぇんじゃねぇですかね。そこの糞道化以外にもお客さんいることですし」
インセクトの言葉で、フローレスは大きなため息を一つつくと、回避体勢をとっていたキャディに向けていた手を下げ、視線を反対側のソファに座っている面々に向ける。
「それでウォーカー、貴様の隣のその二人は一体どうした」
「…それはだね」
ウォーカーと呼ばれた白色のトレンチコートにソフト帽を被った男は、フローレスの質問に言い淀みながら、隣の二人に視線を向ける。連れてフローレスもウォーカーと同じく視線を左に移す。
「ーーねぇキーカー、このマカロンとても美味しいわよ。ほら食べてみて、あーん」
片方は白髪に高級そうな服を着た少女で、その手にはマカロンが摘ままれており、それを反対にいる濃緑色のローブを着たキーカーと呼んだ男の口元にマカロンを近づけている。
キーカーは差し出されたマカロンを食べ、美味しそうに咀嚼する。それだけでも少女の顔はとても幸せそうになった。
「アリガトウ、マリー。コレモオイシイヨ」
「ちょっ、わ、私がしたいだけだからキーカーもしなくていいのよ!?」
「マリーハボクノハタベテクレナイノ?」
「べ、別にそういう訳じゃ…なによこれじゃまるでバカップルみたいだし恥ずかしじゃない」
「ナニカイッタ?」
「な、何でもないわ!ありがとうキーカー!」
マリーと呼ばれた少女は、慌てた様子でキーカーの差し出してきたプチケーキを食べ、食べてから両手で両頬を抑えて美味しそうに味わっている。
「…と言う訳だよ」
「待て、胸焼けしそうなシーンだけ見て理解しろと言うのは無理が過ぎるぞ。というかキーカーの旧友である貴様はそれを止めんのか」
「別にキーカーが嫌がっている訳ではないし、何より私はキーカーが幸せなら別に止めさせる気はないよ」
「…そうか。後バルファ、いい加減追加の菓子を持ってくるのをやめろ。これ以上はテーブルに置ききれん」
気がつけばテーブルの上はバルファが持ってきたお菓子で埋め尽くされていた。流石のフローレスもバルファに静止の声をかける。
「おぉ、これはこれは申し訳ありませんフローレス様。お二人がとても美味しそうに儂めの作った菓子を召し上がるものですから嬉しくて嬉しくて…年甲斐もなく張り切って大量に作ってしまいました。因みに後二品ほどあるので、宜しければフローレス様もお召し上がりください」
「……善処しよう」
フローレスはどこか諦めた様子でスティックチョコの皿にのっているストロベリーとラズベリーの果肉が混ざったスティックチョコを手にとって食べる。
「上手いな。このスティックチョコ」
「恐縮でございます。後、そちらのキウイの果肉が入ったスティックチョコとマンゴーの果肉が入ったスティックチョコは今回一番の自信作ですので是非食べてみて下さいませ」
「そうか、では早速頂くよ」
バルファの薦めで他のスティックチョコも味わうフローレス。前で座っているウォーカーも、一度紅茶で喉を潤してからミルククッキーやアップルパイ等を食べている。
「そういえばウォーカーさん、少し聞きたいことがあるのだけれども」
マリーはキーカーとの会話を中断し、隣でアップルパイを食べているウォーカーに話しかける。ウォーカーも彼女の真剣な眼差しを見て、手に持っていたフォークをテーブルに置く。
「私、あの部屋で目覚める前の記憶がまだ全く思い出せないのだけれども…何か私の事に関して分かった事はありましたか?」
ウォーカーによって模擬天体から霊子と残留思念を回収されて蘇生された彼女は、目が覚めた時から、模擬天体に取り込まれた後遺症の影響で記憶の全てを失ってしまっていたのだ。
目覚めてから酷く動揺していた彼女は、そこに現れたウォーカーが自分の名前はマリーと教えくれて、自分の記憶が戻るまでキーカーと行動を共にしてくれと指示されていた。それから彼女は、よく頻繁にウォーカーに進捗状況を聞いてくるのである。
「…すまないね、私も最善は尽くしているのだが、まだ君の事に関しての情報は何も分かっていない」
「……そう…ですか」
「…マリー」
ウォーカーの答えに、マリーは悲しそうな表情で僅かに俯く。キーカーはそんなマリーを見て不安になったのか、そっと彼女の左手に自分の右手を重ねる。マリーも俯いた顔を上げてキーカーを見てからキーカーの右手の上に自分の左手を更に重ねて少しだけはにかむ。
「大丈夫よ。例え自分の記憶を全て取り戻しても、私はキーカーを見捨てたりしないから。逆に、キーカーが記憶を取り戻した私を見捨てないでよね?ずっと傍にいて、私の事大切にしてよね?」
「…ウン!」
「……お取り込み中所大変失礼なのですが、温度差が激しいですぞお二人とも。そういった事は本部に帰還してからして頂けますかな?」
「えっ!あ、ご、ごめんなさい!」
バルファの躊躇うような言葉で我に帰ったマリーは、顔をリンゴの如く真っ赤にすると勢いよく立ち上がり謝罪する。フローレスは呆れ顔で、ウォーカーは苦笑い、キャディは無視してアップルパイを両手に持って爆食していた。
「……いや、構わんよ。バルファ、インセクト、貴様等も席を外して二人を連れて別の部屋に行け。このお茶会の続きはそこでしてくれて結構」
「あいよ」
「畏まりました。さてお二人とも、もし良かったらこのまま別の部屋で二人水入らずでお茶会を楽しみませぬか?このバルファ、更に腕を振るってお二人をもてなしますぞ」
「ぜ、是非お願いします!行きましょバルファ!」
「ウ、ウン、ワカッタカラヒッパラナイデヨマリー」
「おいおい二人とも、先行くならドア開けといてくれよー」
「では皆様、失礼します」
マリーは頬を朱に染めたまま、キーカーの手を掴んで急いで部屋から出ていく。その後に続いて菓子の皿を両手に持った持ったインセクトが、最後にバルファも、3人が出ていった後に扉の前でフローレス達に一礼してからお菓子をのせたカートを押して退出していく。
「さてキャディ、貴様は結局ここに何しに来たのだ」
「ん、
バルファ達が部屋からいなくなってから、フローレスは事の元凶である道化師に質問を投げ掛けるが、当の本人は口一杯にバルファ特製お菓子を頬張っていた。
「…キャディ、用は済んだだろ?君が見せたがっていものはフローレスに見せれたんだし早く帰ろう」
「待て、あの二人を我輩見せるためだけにここまで来たと言うのかキャディ?」
「はい、貴方方の帰りを待ちきれなくてウォーカー同伴で来ちゃいました♪」
「殺す」
「明確な殺害予告ってあぶなぁ!」
語尾に音符を付けてテヘペロポーズをとったキャディに、フローレスは流れる動作でテーブルのナイフをキャディ目掛けて豪速球で投げる。
時速180kmで投げられたナイフをキャディは素早くしゃがみ回避する。標的を失ったナイフはそのまま壁に激突、大きな亀裂を残した。
「あっぶねぇ!あれ当たったら絶対頭と首が引き千切れるタイプの威力じゃないですか!?」
「そのつもりで投げたからな」
「一切悪びれてないだと!」
「まぁまぁ落ち着きたまえ二人とも」
オーバーリアクションでツッコミをするキャディとそんなキャディに再び投擲せんとナイフをやフォークを携えるフローレス。
それを見たウォーカーは素早く2人の間に割り込みフローレスからナイフとフォークを奪い、キャディには後ろ蹴りを放って部屋の端に吹き飛ばす。
「フローレス、この後も仕事があるんだろ?無駄に魔力と体力を消耗するのはあまり得策ではないと思うのだが」
「…そうだな、止めてくれて感謝するぞウォーカー」
「感謝されることの程でもないよ」
「私を蹴り飛ばした事に関しては何かないんですか!?」
ウォーカーの意見に、フローレスさ一旦は殺意を抑えソファに座り直すが、蹴り飛ばされたキャディは抗議の声を上げながらウォーカーに詰め寄る。
「…いいかいキャディ、もしあのまま乱闘が始まっていればこの城は10分も持たずに崩壊するかも知れないのだよ?オマケに君がフローレスの逆鱗に触れていたから君に変わって私が彼の怒りを沈めたんだ。文句より先に感謝してもらいたい所だ」
「……けっ、ありがとうございます」
「そう言う素直な所は君の少ない長所だと思うよ」
小声で正論を述べるウォーカーに、キャディは納得いかない様子でウォーカーに感謝する。ウォーカーはそんなキャディに少し微笑んでからフローレスの様子を確認するため後ろに視線を向ける。
フローレスは、ソファに座ってからはずっと水晶玉で誰かを観察していた。しかし、不意に水晶玉から視線を外し、天井を仰いだ。
「やはり奴では勝てなかったか。まぁある程度予想出来ていたが、何故あの局面でさえ驕っていられるのやら」
「どうしたのかねフローレス」
「レフ・ライノールが負けた」
独り言を呟いたフローレスは、ウォーカーの問いかけに、一応は利害の一致で協力関係にあったレフが敗北したと言う旨を淡々と伝える。
「あれ?レフなんたらって確か…」
「…貴様が回収対象に指定した魔神柱の一柱だ」
「あぁそれだ。興味が微塵も無いから忘れてました」
キャディはレフが誰だか分からず疑問を覚え、フローレスは呆れながら簡単に説明した。だと言うのに、キャディはまるで興味無かったかのか名前を聞くまで忘れていたようだ。
「それで、そのレフ・ライノールは死んだのか?」
「いや、運良くバルファの作った身代わり人形のお陰で九死に一生を得たようだ。今現在真っ直ぐ此方に向かっている」
「いや何ちゃっかり身代わり人形なんて高価な物あげちゃってるんですか!?」
「一応ここでは協力関係にあるからな。ある程度の事はしてやらないと」
キャディのツッコミを軽くあしらって、フローレスは再度水晶玉へと目を向ける。水晶玉には、必死にこの城を目指して走っているレフ・ライノールの後ろ姿が写っていた。水晶玉に手を翳して上にスクロールすると、視点が変わり、その十数キロ後ろには立香達の姿があった。
「只、生き残ったは良いものの、運悪くカルデアに勘づかれて追われているな」
「あれま、それは御愁傷様って言うかなんと言うか」
「どうするフローレス、レフ・ライノールを協力関係のもと手助けするのか、それとも目的達成の為に殺すか?」
「……もう奴には利用価値も存在価値も無い。大広間で我輩自らが始末する。そのままカルデアのサーヴァント共と少し遊ぶとしよう」
話ながらソファから立ち上がり、ドアの前に立ったフローレスは、後ろにいるキャディに顔を向ける。
「無論、貴様の指図は受けんぞキャディ」
「…構いませんよ。但し、目的の物が手に入ったらウォーカーに渡す事です。良いですね?」
「了解した。ウォーカー、一度別室にいるバルファ達を本部に帰してやってくれないか?」
「分かった。彼らを帰し次第、また来るよ」
「あぁ、頼んだ」
フローレスは扉を開け、大広間へと通じる廊下を歩いていく。両手を何度か開いたり閉じたりした後、ゆっくりと左腰に差したクレイモアを抜刀し、大広間へと向かっていった。歩くフローレスの耳に、大広間から叫ぶ協力者の声が聞こえてきた。
オルガマリーの口調良く分からないだけど上手に出来てると良いな
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永続狂気帝国 2ー5
投稿遅くなって申し訳ないです。
来年から大学生なもので受験とか受験とか受験とかが忙しくて(吐血)
「クソッ、クソッ!おのれ藤丸立香ァ!この私に、この私によくもあんな生き恥を晒さやがってぇ!」
この特異点の黒幕、レフ・ライノールは協力者のある居城まで必死に走っていた。『あの方』からの命令に従い、最後の人類の生き残りにして最後の三流魔術師である藤丸立香に絶望と恐怖の中で死を与えるために、ローマの開祖であるロムルス撃破後に姿現した。
しかし、彼の思い描いていた理想が実現することはなく、現実は自身の敗北と、苦し紛れに呼んだ破壊神であるアルテラに背後から消し飛ばされる結果だった。だが、ここでレフが消滅しなかったのは彼の少ない運が彼に味方したからであった。フローレスの厚意により、バルファから渡された身代り人形によってローマより離れた場所に転移して九死に一生を得たレフは、今の状況では勝ち目がないと自覚、フローレスに助力を求めようと行動を開始したのも束の間、両儀式に生きていると勘づかれ、そこから彼等に捕まるまいと逃亡、冒頭に戻る。
「クソッ、一体どれだけ走れば奴の居城に辿り着けるんだ!」
かれこれ数十分も走り続けいるレフは、未だ辿り着けない事に苛立ち悪態をつく。すると、何か薄い膜を通り抜ける感覚と共に、突如目の前にフローレスの居城が現れる。
「こ、これは…特殊な隠蔽魔法で隠していたのか」
僅かばかり驚いたレフは、後ろから迫る気配に追い付かれる前に奴に会わなければと、居城の扉を開け放ち、大広間に辿り着く。
「フローレス、フローレス!どこにいるフローレス!!いる筈なのだろう、出てこい!」
大広間で大声を上げ、レフはフローレスの名前を大声で連呼する。そこには最早余裕や慢心は無く、只敗北を払拭する為に焦る敗者のごとき姿だけだった。しかし、呼ばれている居城の主は一向にその姿を現さない。
「くそくそ!奴め一体何をしていやがる!さっさと来ないと奴等が「奴等ってのは私達の事か?」…ヒッ!」
レフが後ろに振り返れば、そこには今追いついたのか息を切らした両儀式と三蔵法師、遅れてマシュと立香が現れる。
「まさかお前がこんな所に隠れ家作ってたとはな」
「もう逃げられないわよ!これ以上の非道、仏が許してもこの私が許さないんだから!」
「大人しく観念してくださいレフ・ライノール!」
ジリジリと距離を詰めてくる両儀式と三蔵法師に、レフは二人を警戒しながら後退する。マシュも後ろの立香を守りながら二人より少し後ろからレフとの距離を詰める。
「くっ、黙れ黙れ!貴様らなぞ、奴の手に掛かれば赤子の手をひねるかのように惨殺されるだけだ!」
「その奴ってのは、今お前の後ろにいる奴の事か?」
「何?」
言われて後ろに振り返れば、そこには灰色の鎧を身に纏う巨漢、フローレスが右手に既にクレイモアを握りしめ立っていた。
「おぉフローレス来るのが遅かったじゃないか!」
「…すまない、少し手の離せない用事があったものでな」
「そんなことはどうだって良い!手伝えフローレス、あそこにいる貴様の居城の侵入者を俺と二人でさっさと始末するぞ!」
フローレスの姿を確認するや否や、レフは安堵の表情とため息をする。すると先程まで後退りしていたのが打って変わり、足を前進させ、逆に両儀式達に詰め寄る。
「残念だったな藤丸立香!私をここに着く前に殺せていたら、貴様らはこの化け物と対峙せずに済んだものを!」
「チッ、こいつはまた面倒くせぇ相手がお出ましなこった。つかてめぇ、魔神柱としての誇りとかねぇのかよ。こんな所まで必死に逃げやがって、協力者が姿見せた途端強がりやがって」
「どうとでも言うが良い、結果的に勝てば良いのだよ勝てば!勝って貴様らを殺してしまえば、私の敗北という汚点は無かったことになるんだからな!」
「貴方、本当に姑息で卑怯な奴ね!」
「ハッ!負け犬の遠吠えか?見苦しいぞ英霊共が!さて、これで形勢逆転だな藤丸立香!先の戦いでは遅れを取ったがもう手加減せん!この男が一緒ならば、例え破壊神であろうとも必ずほふ―」
そこまで言いかけたレフの言葉は、フローレスから頭を後ろからクレイモアで深々と貫かれることによって永遠に遮られる。
「……これ以上は聞くに耐えん」
クレイモアを引き抜き、糸の切れた人形のように倒れ伏したレフわ大広間の端まで蹴り飛ばす。立香達は、フローレスの突然の行動に驚きを隠せず、ポカンとした表情だった。
「な、仲間じゃ無かったんですか?」
「仲間?貴様らに負けてノコノコここまで逃げ帰ってくるような弱者を、我輩は仲間にしたことなど一度も無い。正確に言えば、奴は仲間ではなく利害の一致からこの特異点で協力していた協力者だ。最も、お互いに協力し合った事など全く無かったがな」
レフを貫いた際にこびりついた鮮血を布で拭きながら、レフを毒ずくフローレス。そんなフローレスの態度に両儀式と三蔵法師はお互い目線を合わせた後二人で後ろに顔を向け、立香を見る。立香は二人の意図を理解し、無言で力強く頷く。
「そうだ、我輩という敵を恐れずに立ち向かい戦おうとするその姿勢…素晴らしい!その姿勢は我輩にとってとても好印象だ」
「「ッ!」」
各々の武器を握る手を強めながらフローレスに攻撃を仕掛けようとした矢先、フローレスが音もなく2人と距離を詰めてきたので、直ぐ様距離を取る。
「何故距離を取る?貴様らは只眼前の敵を打ち倒すべく我輩に挑みかかれば良いだけの話であろう?」
「生憎と、てめぇからは気味が悪い感覚しか感じ取れねぇんだよ。そんな奴と真正面から殺り合う程アタシらは馬鹿じゃねぇ。それに、今も駐屯地で見せた"見えない壁"か何かで自分を守ってんだろ?」
「その通りだ。理解しているようで嬉しく思うよ」
「やっぱりか…」
両儀式の指摘をあっさりと認め、フローレスは人差し指で何もない空を触ると、そこから硬質な音が響く。
「だが、今回"これ"は使わんよ。我輩は闘争は直に楽しみたいタイプだから。滅多な事ではこれを介して戦うことは無い。それに、こんなものを使って戦うほどの小心者でもないしな」
そう言いフローレスが手を空中に翳すと、フローレスを取り囲むように空中に罅が入り、そのまま砕け散る。
「これで貴様らの攻撃は我輩に当たるようになった。もし、まだ疑心的ならば、ナイフの2、3本投げてみたらよい」
「あっそ、ならお言葉に甘えて」
フローレスの提案に両儀式は素っ気なく答え、赤いジャンパーの内側からナイフを数本取り出すと、そのままフローレス目掛けて投擲。フローレスは避けずに全て全身で受け止める。ナイフはフローレスに当たった後、一本残らず根本から真っ二つに折れる。
「これで信じて貰えたかね?」
「…そうみたいだな」
「やれやれ、まだ信じきれないようだな。だが安心しろ、貴様らは―」
そこまで言い、フローレスはゆっくりと両手を広げながら立香達に接近する。両儀式はナイフを、三蔵法師は如意棒、マシュは盾をそれぞれ構える。
「―我輩と是が非でも殺し合うのだからな。そこで確かめるが良い」
フローレスは嗤いながら、クレイモア片手に4人に肉薄する。
以下がでしたでしょうか?誤字・脱字ありましたらご報告よろしくお願いします!
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永続狂気帝国 2ー6
二人に肉薄したフローレスは、まずは小手調べに横薙ぎにクレイモアを振るう。単調で鈍重な一撃ではあるが、その一撃の威力は計り知れず、危機感を覚えた二人はそれを間一髪で回避する。
そのままクレイモアは大理石の柱に直撃し、凄まじい破壊音と衝撃波を引き起こす。
「貴様は我輩にとって実に興味深い。是非ともその力を我輩にもっと見せてくれ」
「クソッ!」
クレイモアを振り抜いたフローレスは、振るった勢いそのままに、標的を両儀式に切り替えるとそのまま両儀式に接近し猛攻を仕掛ける。
「我輩は疑問に思うのだ。貴様の体から感じる魔力の全ては貴様の物の筈なのに、その魔力の何処かに僅かな違和感を感じる」
「どういう意味だよ!?」
「つまりこう言う意味だ。
「はぁ?」
「貴様の体の中に、もう一人別の貴様がいるということだ」
「生憎と何の話かさっぱり分からねぇな!」
クレイモアの一撃一撃を避け、ナイフでいなしながら両儀式は隙を見て魔眼を用いてフローレスの鎧を切り裂かんと反撃する。
「(硬ぇ…)」
しかし、鎧の装甲は両儀式が思っていた以上に頑丈で、斬りつけている両儀式の腕が痺れを感じる程だ。
それでも魔眼を使い、彼女はフローレスから浮かび上がっている筈の死の線を探すが、フローレスから死の線は全く浮かび上がっておらず、彼女は攻めあぐねていた。
「もう一人の自分がいるのに何故そいつは体の危険に反応しないのか…。貴様が単に出てきて欲しくないと命令しているのか、はたまた本当にそれを自覚していないのかの二択になるな」
「だから本当に何の話なんだよ!」
両儀式をクレイモア片手で、そして背後から攻撃を仕掛けてくる三蔵を素手でいなしながらフローレスは考えを巡らせる。両儀式の口振りから察するに、彼女自身は本当にそれを自覚していない。ではどうすれば彼女はその力を発揮してくれるのか。
「ではもう一人の貴様を引き出すために、貴様の生存本能を刺激してみよう」
「グゥ…!」
「両ちゃ…きゃあ!」
両儀式への何度目かの攻撃の後、フローレスはクレイモアを振ると見せかけ回避しようとした両儀式の腹部に蹴り飛ばす。その光景を見て思わず彼女を助けようと動いた三蔵を、フローレスがすかさず魔力弾で吹き飛ばす。
柱を2、3本巻き込みながら吹き飛んでいく彼女を一瞥した後、腹を抱えて悶絶する両儀式に近づき、首を掴むと自分と同じ目線になるように持ち上げる。
「どうだ?これで少しは貴様の生存本能が刺激されたのではないか?」
「ハッ!この…程度で…刺激される訳…ねぇだろうが…クソッ……タレの…髑髏野郎が!」
「…そうか、つまらんな」
フローレスの問いかけを罵倒で返す両儀式。その様子にフローレスが落胆を見せた瞬間、クレイモアが両儀式の腹を深々と貫いた。他ならぬフローレスの手によって。
「ガァァァァっ!」
「最早貴様に興味は無い。敗者は敗者らしく地を這いつくばっていろ」
激痛に絶叫する両儀式に淡々と言い放ちながら、フローレスは最後の最後に彼女自身に何か起こらないかと一縷の望みを抱きながら彼女の顔を覗き込み、全身の魔力の流れを隅々まで観察する。
だが、それでも両儀式自身に何らかの変化はなく、肩を落としたフローレスは、両儀式からクレイモアを引き抜くとぞんざいに彼女を地面に投げ捨てる。
「せっかく楽しい闘争になりそうだったのにとんだ興醒めだな。酷く不愉快だ…
…気晴らしに奴を軽く血祭りにあげておくか」
「ッ!」
両手で傷口を押さえながら両儀式は、フローレスの言葉に反応し、フローレスの視線の先にいるマシュと藤丸の姿に、目を鋭くして彼を睨む。
「もしそれが嫌なら今貴様が持ちうる全力でかかって来い。そうすれば我輩の気に留まるやもしれんぞ」
「テ…メェ!」
両儀式は出血をものともせずに駆け出し、上段から力一杯ナイフを振り下ろすが、それは素手でいとも容易く受け止められてしまう。
「弱い、あまりにも弱い一撃だな。ここまで我輩が闘争の為に殺さず手加減してやったのにその程度とは片腹痛い。雑魚は大人しく己が殺されるのを黙って待っているがよい」
彼女の持っているナイフを握り砕くと、両儀式を近くの柱まで殴り飛ばす。しかし、いつの間にか両儀式の後ろに回りこんでいた三蔵が両儀式を受け止めたことによって、柱に衝突せずに済んだ。
「大丈夫両ちゃん!」
「うっ…せぇ……なぁ…。後、両ちゃん…言うな。安心…しろよ、この程度で…死ぬかってんだ。」
「お腹刺されたのに安心なんて出来る訳ないじゃない…!」
両儀式の腹部の傷を服の布を引き裂いて手当てする三蔵に、両儀式が目を向ければ、彼女の体も所々に擦り傷や火傷が残っているかなり酷い状態だった。そんな体なのに助けに来てくれた三蔵に、両儀式は思わず破顔する。
「三蔵、頼む手を貸してくれ」
「手を貸してって、無理よ両ちゃん。だってその傷じゃあもうこれ以上戦闘は…」
「いいから!オレを信じろ、まだあいつに一泡吹かせるだけの作戦がある。それに、この作戦が上手くいけば皆助かるかもしれねぇんだよ」
傷を抑えながらなんとか立ち上がった両儀式は、三蔵に協力を乞う。彼女からの突然のお願いに、三蔵は困惑したものの、ボロボロの両儀式の体を見て、冷静に両儀式を諭そうとする。
しかし、両儀式の覚悟を決めた目に見つめられ、彼女は諦めたかのような一つ溜め息を吐く。
「…分かったわ。因みに、それってどんな作戦なの?」
「それはーー」
両儀式からの簡単な作戦の詳細を聞いた三蔵は、途中で一度険しい顔をして両儀式を見つめたものの、何も言わず最後まで両儀式の作戦を聞き続けた。
◆◆◆◆◆◆
投擲された複数のナイフは、フローレスの頭部や首に吸い込まれるように接近し、フローレスの振り向きざまの一撃によって全てが粉砕される。
「ほう、その体でまだ動けるとはな。しぶとさだけならそこいらの雑魚よりかは幾ばくか上か」
「黙れよ髑髏野郎」
「減らず口が良くほざく」
後ろに振り返ったフローレスの視線の先には、如意棒を構えた三蔵と、傷口を抑えながらナイフを構える両儀式の姿があった。
「今更その体で我輩とどう戦う気だ小娘共。これ以上は時間の無駄だと何故分からない」
「生憎とオレは往生際が悪くてな。負けっぱなしは性に合わねぇんだよ!」
両儀式の言葉を皮切りに二人は走り出し、先に三蔵がフローレスの頭部目掛けて如意棒を突きだす。フローレスはそれを当然のように左手で受け止め、強引に投げ飛ばそうとするが、それよりも早く両儀式のナイフがフローレスの眼の部分を深々と突き刺す。
「…そこにナイフを刺したからと言って、我輩を殺せる訳ではない。それが分からない程馬鹿では無いだろう?」
「当たり前だ。それに、オレの狙いはそこじゃねぇ!」
フローレスの眼に深々と突き刺したナイフを手放した両儀式は、如意棒を掴んでいるフローレスの左腕に手を伸ばしながら、魔眼を極限まで集中させ、
「なんと…!」
フローレスは初めて驚きの声を上げた。両儀式が掴んだナイフによって、左腕は引き千切れ、引き千切れた腕はそのまま地面に落下し、辺りに硬質な音を響かせたのであった。
「へっ、どうだよ」
「…貴様、何時からそのナイフを我輩の腕に…」
「やっぱり気付いてなかったんだな。最初だよ最初」
両儀式はナイフをフローレスに突きつけながら睨み付ける。睨まれたフローレスは眼に刺さったナイフを右手で引き抜きながら無言で両儀式を見つめ返す。
「これはテメェが障壁を解除したって言ったとき、オレが投げたナイフの一本さ。自分の鎧に余程自信を持ってたのか知らねぇが、投げた後に鎧の状態を確認しなかったのが仇になったな。まぁオレも、テメェに首掴まれてなきゃ気付かなかったけどな」
「……フッ、フフ…ハッハハハハハ!!そうかそうか、つまり我輩は、わざわざ貴様に勝機を与えてしまったと言うことか!これは我輩が一泡吹かされてしまったようだ!愉快、実に愉快であるぞ両儀式!」
両儀式の解説を聞いたフローレスは大きな声で笑い声を上げ、とても楽しそうに両儀式を称賛する。フローレスの予想とは別の反応に、両儀式と三蔵は若干困惑する。
「故に残念だ。本当に残念でならない」
「はぁ?どういう意――」
両儀式が言葉を続けようとした瞬間、フローレスがその場から消え、両儀式と三蔵は腹部への衝撃で吹き飛ばされる。三蔵は近くの柱に激しく打ち付けられ、両儀式は床を滑るように減速する。両儀式と三蔵が立っていた場所の少し手前に、片足を上げた状態のフローレスが立っていた。
「こんな形での幕引きなど、我輩は微塵も望んでいなかったのだがな」
「待っ……ぐぅ!」
「貴様はそこから動くな」
足を下げ、そのまま両儀式へと近づくフローレス。右手に持っていたナイフは、ふらつきながら立ち上がろうとする三蔵の手の甲に深々と突き刺し、柱と縫い合わせる。
「正直、この特異点に来てからある程度貴様には期待していた。ここでの戦闘で一度貴様に失望したが、貴様は我輩に一泡吹かせる為に短時間で作戦を練り上げ、見事我輩に一泡吹かせた。誇るが良い」
「…そいつぁどうも」
跪くような体勢の両儀式の真正面に立ったフローレスは、静かに両儀式に言葉をかける。両儀式も、それが心からの称賛だと理解すると、ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、自然と口元が緩んでしまう。
「貴様は我輩と言う強敵を相手にここまで食い下がった。我輩も貴様の粘り強さに敬意を表し、貴様をここで倒す事でこの戦いを終わりにしよう」
「そいつは願ったり叶ったりだ。オレを倒したら、他の仲間には手出しすんなよな」
「我輩は嘘は言わん。必ず守ろう」
フローレスが右腕を上げると、先程までフローレスのいた場所の床に刺さっていたクレイモアがひとりでに宙に浮かび、フローレスの手元に戻ってくる。
「さらばだ両儀式。また、戦おうではないか」
「テメェの相手なんてもう金輪際したくねぇよ」
フローレスがクレイモアを高々と振り上げるのを見た両儀式は、ゆっくりと瞼を閉じ、頭を垂れる。そして、振り下ろされたクレイモアは、無情にも両儀式を頭から切り裂き――
「…ん?」
しかし、クレイモアを振り下ろした先にいつの間にか両儀式の姿はなく、フローレスは辺りを見回し、自身の背後にいる少女が目に映る。そこには、長髪に白を基調とした着物を着た、両手に刀を持つ両儀式と同じ顔をした少女の姿があった。
「…そうか、両儀式貴様。今になってやっと『反転』したのか」
「……」
両儀式と呼ばれた少女は、フローレスの問いに何も答えず、無言で刀を構える。フローレスも、それに答えるようにクレイモアを構える。
「面白い。ならば延長戦と洒落こもうではないか、両儀式!」
フローレスはとても愉快そうに、仮面越しに嗤いながら両儀式に突撃する。
如何でしたでしょうか?
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