異世界召喚勇者太郎(修正前) (悪多千里)
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<序章>ある王国の話/第一話 心配事は猫を殺すが、好奇心は愚者を唆す。そして…(Care kills a cat,but curiosity abeted a fool. And to be…)

むかしむかし、あるところに、たくさんの「くに」がありました。

 

 

たくさんの「くに」の多くはにんげんの「くに」で、にんげん以外の「くに」は争いあううちに、いつの間にかなくなっていました。

 

たくさんの「にんげんのくに」は毎日のように争いあい、たくさんの人が死んでいきました。

 

 

 

しかし、ある時たくさんのくにのどこかで、フシギな力をあやつる技術ができました。

 

それは人の内に眠る力を使い、さまざまな「げんしょう」をひきおこすことができました。

 

人々はそれを「力法」と呼び、しだいに力法の強さが、あらそいの勝敗をにぎるようになりました。

 

 

 

そうして長い時がたち、ほとんどの国は滅びてしまいました。

 

もう争う力もなくなった人間たちは、とある一つの土地に集まり、

 

人間みんなで一丸となった王国を作りました。

 

 

 

王国は何事も力法の力で回っていました。

 

民はみんなで力法具を共有し、支えあって生きていきました。

 

国の研究者や力法師は力法の研究に明けくれ、力法によって国を守ってきました。

 

王国は、人間たちの楽園でした。

 

 

 

しかし、そのころの王国は、いろいろなものがていたいし始めていたのです。

 

長きにわたる平穏。力法具により開拓の最前線から離れ、交流する他国もなくなった王国は、自然、技術も停滞し始めていました。

 

その最たるものもまた、力法具でした。

 

生まれつきの力量が決まっていた中で、力法具が使える人と使えない人の格差は広がっていきました。

 

ごくつぶし、役立たず。そう言われ、国の隅っこで生きる人が増えていきました。

 

 

 彼女の友人、もう幼馴染ともいえるその子もまた、隅っこに追いやられる寸前でした。

その子の家系はちゃんと使える側の人間であったはずなのに、その子だけ、力法具を使うことが出来なかったのです。

 

 幸い捨て置かれるようなこともなく、周りの手を借りながらも、一緒に育つことが出来ました。

 

 だけどそれの限界も近いでしょう。何をするにも人の手を借りるようでは、この国では大人にはなれません。

 

 そうなれば「人間以下」の仲間入り。彼女だけでは、防ぎようもありません。

 

 もうすぐ来る期限、それまでは何とかその幼馴染に笑顔でいてもらいたいと、めったに来ない特別な花畑へと足を延ばしたのでした。

 

* *

 

「ったく、味を占めてやがんだよなぁ……」

 

 太郎は炎天下、廃れた商店街の割れたアスファルトを踏み踏みぼやく。

 

『お兄ちゃんも外に用事あるならついででしょ、つ、い、で。それともこのかわいい妹に灼熱地獄を歩けっていうの?』

 

 夏休み。ちょっと最寄りのコンビニでも行こうとした太郎にそんなことをのたまった妹のお使いを終え、帰り際の一言であった。

 

 妹である小春は最近調子こきだ。太郎の苦手な国語が得意とあって、言葉巧みに丸め込んで雑用を押し付けてくるようになった。難しい熟語だのことわざだのを引っ張り出して、どこで覚えてきたのかと親をもよく驚かせていた。

 

 世間一般では兄は妹に、弟は姉にかなわないとよくいう。本当かどうかはさておき、この兄妹においては真理であった。

 

 ふと寄り道がしたくなって、太郎は商店街の脇を抜け路地裏へと足を踏み入れた。なんてことはない、ただそのまままっすぐ帰るのが嫌になっただけの、いうなればただの暇つぶしだ。

 そのままふらふらと歩いていると、廃墟と化した元は店だっただろう建物の奥で何かがきらりと光ったような気がした。

 

思わず足を止め、中をのぞいてみる。

 

「誰かいるんですか~……?」

 

 返事はない。誰もいないようだ。

 

 少し考えて一歩踏み出す。そのあとは普通に店の奥まで歩いて行った。

 

その奥で太郎が見つけたのは、とても古い、今はどこにも売っていないだろうラジオらしき機械だった。

 一目で古いとわかる外見だというのに、よく見ればさびの一つ、汚れの一つさえない、新品のようなありさまだ。

 

 古いのに新しいとはこれいかに。

 

 太郎はそのラジオを手に取ると、ついつくかどうか試してみたくなり、普通にボタンを押してみるがつかなかったので、いろいろと弄り回した。

 

 どういじったかというと、持ち歩いている工具セットからねじ回しだのなんだのを取り出して、解体する勢いでいじっていた。

 

 太郎は理科が好きだ。自分のいるこの世界の仕組みを知るのがとても楽しい。だから、それと同じくらいには機械いじりが好きだった。

 仕組みを知ろうと解体してよく戻せなくなっては怒られる太郎は、戻せなくならないように気をつけてそっと外部を開けてみることにした。

 

 そこにはよくわからないとしか言えない、複雑な機械がこれでもかと詰まっていた。

 かといって、よくあるはんだや同線のようなものは見つからず、本当にこれはラジオなのかと疑うような結果となった。

 

よく見ると中央にまるい金属塊のようなものが埋まっており、そこからすべての部品がつながるようにされているのがわかった。

 

今度こそ解体する気でその内部の金属塊を触ると、まばゆい光とともに少しの脱力感が身を襲い、太郎はいったん意識を閉じることとなった。

 




 序章だけじゃ文字数足りませんでした(汗

 このサイトでオリジナル作品って需要あるのかなぁ…?私自身オリジナルはあまり読んだことないので恐々です。



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第二話 華のない花と会う。(Meet with the flower wihtout gorgeous.)

 

「ふむ。これはあれか、もしかしてもしかすると異世界召喚ってやつか」

 

 森の奥へと投げ出された状態で目を覚ました太郎はあたりを見渡すとそういいながら身を起こした。

 

 ちなみにあのラジオはここにはない、探してみれど見当たらないのだから、仕組みが知りたかった太郎としては残念なことだが、あきらめるほかないようだ。工具セットはそこらに散らばっていたので、立ち上がっていそいそと回収していく。

 

 続いてその場で飛んだり跳ねたりしてみた。体の感覚は以前と変わりない。チートはなしか、それともまだ使えないだけなのか。

 

 太郎の頭の中では、ずいぶん前に読んだライトノベルがページを広げていた。妹に進められて呼んだそれはよくある異世界召喚物で、世界の危機を救うために呼び出された勇者がなんやかんやでハーレムを築いていたり最強になったりと、まぁ、感想を言えば結構面白かった。

 

 妹に聞いてみたところ、どうやらいくつかのパターンがあるようで、その中にたしか突然知らない場所に飛ばされるようなものがあったはずだ。現実的に見れば誘拐だとかを考えるのかもしれないが、まだ若干混乱している、それも男子中学生に思い当たれというのも酷だろう。

 

 気分の高揚を抑えながら、とりあえずここにいては何もならないと、地面を見てみるが、何の変哲もない深い森である。山のように斜面になっているわけでもないし、背の高い木の葉の覆われた頭上からでは太陽から方角を察することもできない。そもそもどの方角に行けばいいのかなどわからないのでわかったところでどうにもなりはしないのだが。

 

 つまるところ、どこに向かえばいいのかさっぱりだった。

 

 こうしている間にも時間は過ぎる。さすがの中学生にも夜の森が危ないというのはわかる。まず視界と足元が悪いので移動が不可能になるし、ここが夜冷えるところだったりしたら致命的だ。

 

 わからないなら行動してみるしかないと、とりあえず今向いている正面に向かって進んでみる太郎だった。

 

 しばらく歩いていると、何やら芝生のような背の低い植物が多くなってきたように思える。このまま人のいるところに出てくれればいいと願いながら歩を進めると、そこには一面の花畑が広がっていた。

 

「おぉ……」

 

 都会とも田舎とも言えない生まれ育ちの太郎からしてみれば、ただの花畑というだけでもなんというか異世界感があふれる光景だと認識してしまう。妹といった日本の花畑も、ここまでのものではなかった。

 

 そもそも森の中にある花畑だ。日本にあったとしても「異世界みたいだ」という感想がよぎるのではないだろうかと思う。

 

 しゃがんでみてみれば小さな白い花がくっきりと見える。天然の絨毯のように敷き詰められたその植物は、意外に茎はしっかりしているようで、花の形は違えどシロツメクサのような印象を太郎に与えた。

 

 まだ日は高い。このまま歩きとおすのもいいが、せっかくのこの場所をもう少し見ていたかったので、植物でできたこの天然絨毯に少し寝転がってみた。

 

空が高い。今のところ日本との差異はほとんど感じられない。もしかしたら召喚なんてされていないんじゃないかとふとよぎるが、その時はその時。とりあえず誰かに会えるまでの行動は変わらないと思考を振り払う。

 

 物理的にも頭を振り、上半身を起こす。と、

 

「うぉあ!」「わぁあ!?」

 

 目の前に赤毛の女の子が立っていた。女の子も驚いたようで、というかこちらを警戒しているようで、棒のようなものを太郎に向け身構えた。

 先ほどの大声が恥ずかしかったのか、顔は若干赤く染まっていた。

 

 勝気そうな釣り目の美少女だ。髪はボブ、半ズボンをはいていて、だいぶボーイッシュな感じだ。

 口調と髪の編み込みも無ければ少年と間違えられそうだ。状況を放っておいて太郎は考える。

 

「何よあんた!どうやってきたの!?ここは町の人以外は許可取らないと入れない特別な……」

 

 あ、言葉はちゃんと通じるんだ。太郎はどこまでもマイペースだった。



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