To LOVEループ! (ヨーロイ)
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プロローグ 始めてのループ

超絶のろま更新+ただTo LOVEるの二次小説がないことに絶望を感じて書き始めただけのものですので、どうかご容赦を……
これを機にもっと増えろTo LOVEるの二次小説!


 自分は他人とは違う特殊な経験を、おかしな体験をしている。

 

 そのことに最初に気付いたのは、父親の仕事の都合上引っ越してから幾ばくかの年月が経ち、周りの環境の変化にもおよそ慣れてきたと感じてからだった。

 

  ×   ×   ×

 

 その日、いつもならば引っ越してから家が隣通しになった同学年の、幼馴染と言っても差支えない程度には親しい男と共に、学校へ向かうはずだった。

 

 しかし、その日の前日に意見の食い違い(どのような内容かは今はもう思い出せない)により喧嘩別れのようなものをしてしまい、自分がその時思春期真っただ中だったこともあり、素直に謝ることも出来ず――いや、これはただの言い訳か――ただヘンな意地を張ってしまい顔を合わせづらかったため、初めて一人で学校へと向かった。

 

 自分から行動したこととはいえ、謝罪もせず黙って行ってしまったことに罪悪感を感じ、結局後悔するような自分への嫌悪も抱えていた。

 

 そのため、若干下を向きながら一人で学校への通学路を歩いているときだった。

 

「はあ…………いてっ、あ、すみませ、ん――?」

 前を見ていなかったせいもあり、ドンっとした衝撃が身体全体に加わった。

 人にぶつかってしまったかと思い、あわてて謝ろうとしたが、何か胸のあたりに違和感を覚えた。

 一体なんだと思ってそこを見ると、ぎらりと鈍く光るナイフが突き刺さっていた。

 

「あ……え……?」

 あまりにも突然のことに、当然混乱した。

 胸に深く刺さっている箇所から、とても赤く熱いものが、まるでナイフ全体をその色で染めようとするかのようにそこから流れ落ちている。

 それを知覚した瞬間、心臓を直接火であぶり焼かれているかのような、激しい痛みが身体を襲った。もう自分は手遅れだと理解した。

 だんだんと薄れていく意識の中見えた景色は、全身の力が抜けへたり込むように尻もちをついているスーツを着た身に覚えのない中年の男と、遠くから俺の意識をつなぎとめるように名前を呼びながらこちらへ走ってくる隣に住んでいるあの少年――――

 

 

 

 

 そして、その日二度目の朝を迎えた。

 

 

 

 

   ×   ×   ×   

 

 当然とも言うべきか、二度目のあの日はすこし狂気染みた行動を取っていたかのように思える。

 詳しくは言わないが、俺の事情を知らない者の誰が見ても、気が狂ってしまっているとしか言いようがない行動をとってしまっていたはずだ。

 さすがに四度目あたりで自分に異変が起こっていると考えられるまでには精神が回復していたが。

 

 あの日の死に戻りが起こってから、何度も突然の理不尽な死亡を何度も経験した。

 しかしこう何度も死に戻りと精神的余裕が出てくるもので、このような理不尽な死亡、そしてループが起きる条件と言うものをまとめることが出来た。

 

 それは『隣の少年こと結城梨斗、またはその妹の結城美柑に関わらないように行動してしまうこと』である。

 

 しかしこの条件は未だに検証中で、二人と共に行動しなくとも理不尽な死亡が起きない場合もある。

 

 そもそもなぜこの二人なのか、死に戻りとは何なのか、それはもはや俺には想像すらできない。

 

 ただ現状で一つだけ言えるのは、いつか、この呪いにも近いループを彼らなしで起きる条件を見つけ出してみせる、ということだ。

 

 大学、社会と進むにつれ、確実に共にいる時間は少なくなってしまう、どころか会えなくなる時間のほうが多くなるだろう。それなのにこのループがまだ発生してしまっていれば、目も当てられない。

 

 例えばこんな死に戻りがあった。

 

 録画していたテレビ番組を早く見たいから適当に理由を付けて家に帰ろうとしたら槍が降ってきてループした。

 

 授業中いきなり教室の外に出た結城梨斗を追いかけずにいたら心臓麻痺が起きてループした。

 

 もう何もかもが嫌になって連絡入れずに学校をサボったら隕石が落ちてきて家ごと潰れてしまってループした……。

 

 もう嫌なんだ! こんな理不尽で不条理で非道理的な死に方は!

 

 早く、早く条件を……見つけ出さねばならない……!

 

 さもないと、いつか心がポキンと折れてしまう!

 



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1話 セーブ

注意! 主人公は厨二病です!
そういうのに嫌悪感、忌避感をお持ちの方は退避なさってください!


 ――ピンポーン。

 季節も冬に差し掛かろうかとしている早朝に、結城家のインターホンが軽快な音を響かせた。

 

 待ち人が出てくる間、暇つぶしに空を見上げる。

 朝特有の気だるげな眠気が抜けるほど晴れやかな青空に浮かぶ、目も冴えるほどの白い雲が、若干冷やかな風によりゆっくりと形を変えながら流されている。

 

 しかし、こうして穏やかな空気に身を任せていられるのも今この瞬間だけだ。

 

 学校へ行けば、そこは私にとって死と隣り合わせの戦場と化す。

 気を抜いた瞬間、暗闇には不似合いなほど絢爛と眼を輝かせている何者か(・・・)が、私をあちらの世界へ引き摺り落とさんと虎視眈々と狙っている……。

 少しでも油断した隙に私を終わりなき死の世界へ導かんと、眼には見えない奴ら(・・)はいつも手ぐすねを引いて待ち構えているのだ……!

 くっ、私は一体いつまで地獄を彷徨わなければならんのだ……。

 

「悪い! 待たせた!」

 そんな事を考えていると、玄関から慌てた様子で結城(ゆうき)梨斗(りと)ことリトが出てきた。

 

 瞬間的に顔に手をあて、ポーズを決めながら言う。

 

「言うほど待ってないから気にするな。それにこの程度の時間など、幾度も同じ時空を彷徨い続けた私にとっては一秒にも満たない……」

「朝から厨二全開だなぁ」

「なっ! ばっ……! ちゅ、厨二などではない! 私が語っているのは全て事実だ! 嘘は言わん!」

 

 容赦のない無慈悲なリトの突っ込みに思わずうろたえてしまい、地が出てしまった。

 

 ふ、ふふ……。言いたければ勝手に言っていればいい。

 俺、もとい私の気持ちなど、そもそも常人には理解されない。

 永遠に時間の概念に囚われ続ける孤独な旅人。それが私、霖堂(りんどう)十貴(とき)という人間だ。

 

「ふふ、おいリトよ―――」

 

 より深く理解させようと言葉を連ねかけた時、リトの後ろに人影が現れた。

 

「おはよー! 今日もいい天気だね!」

 

 声を張り上げ元気よく玄関から出てきたのは、この世の全てを魅了するかのような美しい容貌をしている女性だった。

 

 彼女の名前はララ・サタリン・デビルーク。とある事件からリトの自宅に住み着いている宇宙人であり、リトの婚約者(自称)だ。

 

 彼女は容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能の「ほぼ」完璧美少女なのだ。

 ほぼ、というのは、その魅力的な美貌とは裏腹に性格は無邪気な子供そのものだということ。

 かなりのアクティブさをお持ちで、実際何度か彼女(やその関係者)が起こす騒動に巻き込まれてなんどか死を体験している。

 回数積めば回避できるだけまだましではあるが、出来れば死ぬ危険など無いようにしてもらいたいものだ。

 

 おはよう、と返事をしちらりと腕時計を見ると、登校時刻がかなり迫っていた。

 

「もうこんな時間か。少し急ごうか、リト、ララ」

「あ、ホントだ。そういえば、昨日やっと私の研究室が完成したんだ。トキ、学校終わったら見に来ない? リトも、さっきは時間がなかったからしっかり見れてないでしょ?」

 

 ほう、研究室か。彼女は持ち前の頭脳を駆使しメカを作成しているのだが、それがまたいろいろ問題起こしたりして……。

 よし、迂闊にその研究室内にある物は触らないようにしよう。絶対ロクなことにならない。

 

 ララの提案に私は乗ったのだが、リトはげんなりとした顔をしている。

 

「そうだなー、でも俺はもうこりごりなんだが」

「こりごり? なにかあったのか?」

 

 どうやら、今朝その完成したという研究室内に入ると、ある箇所に大量のメカが置いてあり。

 リトはそれらが作りかけであることを知らずに触ってしまい、結果誤作動が起きてそれらが発する電流を浴びてしまったらしい。

 

 ……なんというか、それでよく生存しているな、リトよ。

 

 

  ×   ×   ×

 

 

「しまった、シャンプー切れてるんだった……」

 

 それに気付いたのは放課後、ララと下校している時だった。

 今日はリトが今朝浴びた電流のせいで小人のようになってしまい、学校中探す羽目になってしまったが、特に問題なく過ごせた一日だった。

 

 ……感覚が狂っているような気もするが、学校と言う監獄で一度も死なず、と言うのは精神的に楽なものなのだ。

 

 ちなみにリトはというと、あの事件の後心ここにあらずといった様子で一人で帰ってしまっていた。

 

 あいつがあんな状態になるのは、毎回の如く西連寺が関係している。

 この西連寺……西連寺(さいれんじ)春菜(はるな)という女性は、リトが中学のころから好いている女性だ。

 顔も良く性格も優しく器量よく、学級委員長という役割もきちんとこなしている。

 リトが好きになるのも当然と言えよう。

 

 まあ、何があったのかは知らないがあいつは大丈夫だろう。あんな程度でへこたれるような男ではないし。

 

 というか今はそんなことよりシャンプーだ。

 切れているものは仕方ないし買いに行かない限りどうしようもない。

 

「悪いが、今日は研究室には行けないようだ。生活必需品を購入しに行かねばならんのでな。よくよく考えたら冷蔵庫の中身も少なくなっているし」

「えー! 来れないの!? ……うーん、でも仕方ないかぁ」

「ふっ、安心しろララよ。この選択が間違っていれば、即座に世界が私を修正しに掛かるだろうさ」

 

 間違いなく修正(ころ)しに掛かるだろうな、これが間違いだと。今までの経験上。

 

「ここでお別れだ。ではさらばだ、また明日」

「うん、また明日ねー! バイバーイ!」

 

 満面の笑みで手を振って別れを告げるララに手を振り返し、その姿が見えなくなると背を向け歩き出し、角地を折れ曲がった。

 

 

 ―――瞬間、世界が私を書き記し、この身体をこの空間に縫いつけ縛るような、形容しがたい何かを振り払いきれないどことなく気色悪い感覚が襲った。

 

 

「…………セーブ」

 

 このおぞましい感覚を、私はセーブと名付けている。

 通常セーブは私の意識がない、睡眠時にされるものである。

 こんな時間に普通されるものではない。

 

 ところで、私が今まで体験した理不尽な死、以外は大抵午前中に起きるものだ。

 ララの発明の誤作動であったり、他の宇宙人に殺されたり。

 午後からはそんなことが起きかけても、死にはせずいつもギリギリのところで助かる。

 

 それはおそらく私の精神が摩耗しないための措置だと思う。

 午後からそう何度もループしていれば、また朝からやり直さねばならず、さらに死に近づく時間がじわじわと迫ってくるから、精神の消耗も激しいだろう。

 

 その理論で行けば、今ここでセーブされたその理由がおのずと分かってくるはずだ。

 

 

 ……結論を言おう。

 

 

 私はこれから行く商店街で、何度も理不尽ではない死に至る可能性がある。

 さらにそれは発生を回避できないだろう。

 無理に回避しようとすれば、次は理不尽でリセットされるはずだ。

 

 くそぅ、何が起きるのかは知らないが、シャンプーくらい落ち着いて買いたいよ……。

 



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