ヴィラン、夢を観る (偏在読者)
しおりを挟む

第一話

処女作です。


 この世界に生まれて早十数年。

個性と呼ばれる超常能力が人間に発現する世界、「僕のヒーローアカデミア」の世界で、前世の記憶を持つ僕は、顔も名前もまったく広まっていない()()ヴィランとして個性の実験を行ってきた。

 

 本名「夢道(むどう)操治(そうじ)」個性は「悪夢(ナイトメア)」。

 他者の夢を自由に操り悪夢や淫夢を見せたり、自身が介入できるという正直言えば戦闘向けではない個性だ。

 

 しかし男性諸君には淫夢による夢精を、いじめられっ子には夢の中だけのヒーロー劇を、嫌いな人物には最愛の人物を殺す悪夢を見せ続けることによる精神攻撃は可能だった。

 

 その他にもいくつか実験をして分かったことがある。

 

 夢の中では意識の境が曖昧になるのか、普段は絶対他人に言わないような事でも訊ねるだけで即座に答えてくれる。

 この能力がかなり使い勝手が良く、弱みを握って詐欺や脅迫に使える。

 

 他には空から突き落とす夢を見せる事で強制的に叩き起こしたり、その日の現実を何度も繰り返させることで現実と夢の区別をつかなくさせていったのは面白かった。

 どちらが現実なのか分からなくなっていき、最終的に彼は個性を使って会社の上司を殺した。

夢の中でのストレス発散のつもりだったのだろうが、夢の内容は全て僕が固定させていた。

 

 街中で適当に選んだ女性を毎日夢の中で抱き続け、偶然を装って通りかかると運命だの何だと好意を示され、逆ナンにあったこともある。もちろん美味しく頂いた。

 

 毎日夢を見せ続けるのはなかなかしんどいが、ただの夢に人が左右されるのは見ていて飽きない。

 

 そんな個性を使って僕は、雄英の生徒諸君に些細な悪戯をしようと考えている。夢の中だけでもヤオヨロッパイをこの手に、梅雨ちゃんの舌フェラを現実?のものに、葉隠透に挿れた息子は消えるかの解明、麗日お茶子の無重力セックス、芦戸三奈の天然ローション。

 考えただけで夢が広がりますな!夢を広げる個性なんですけどね。

 

 

 

 ……え?耳郎ちゃん?

 三白眼可愛いよね。耳郎ちゃんとはラブラブしたいから、夢の中で少しずつ洗脳しようかと考えているところさ。

 

 具体的な計画はまだないけど、取りあえず一度顔を見せて、毎晩夢でOHANASHIして調きょ……意識させていこうかと考えてる。自然に顔を見せる手段が喫茶店やファミレスの店員しか思い浮かばないので、雄英の最寄駅に隣接している甘味屋でバイトを始めた。

 

 

 

 

 

 今日は雄英にマスコミが押し寄せて、一騒動起こる日だ。まぁお日様が出てる間僕は出来合いの団子や饅頭を売るだけだから関係ないんですけどね。

 

 そんなこんなで夕方になると雄英方向からポツリポツリと生徒やってくる。やっぱり漫画の世界だけあって美人多いな、人型じゃないのは勘弁してください。っとそんなこんなしていると耳郎ちゃんと芦戸三奈ちゃんがこっちへ向かってきているではないか。チャンスを逃す手はない!急いで店の外に出て声を出す。

 

「春限定、桜餅いかがですかー! 新入生の皆さん、疲れた体に甘じょっぱい桜餅はいかがですか!」

 

 初々しい制服に身を包んだ生徒が数人店に入っていくが、お前らは別にどうでもいいんだよ! 耳郎ちゃんのほうを見ると、三奈ちゃんが食べたがってるようで此方へ近づいてきた。

グッジョブエイリアンクイーン!

 

「すいませーん。桜餅2つ持ち帰りできますか?」

 

「ありがとうございます。320円になります。袋いりますか?」

 

「いえ、食べていくんで大丈夫です」

 

 ここ数日で頑張って身につけた拙い営業スマイルでお釣りと桜餅を渡してミッションコンプリート。桜餅を受け取った二人は話しながら駅のほうへ向かっていく。

 

 う~ん、三奈ちゃんの生脚、ピンク色でスベスベの膝裏が眩しい……見てるだけで我慢できなくなりそう。今日は耳郎ちゃんの夢に顔だけ見せてから、三奈ちゃんの生脚を貪る!

 

 今日の予定を妄想しながらバイトをこなし、欲棒を抑えつつ急いで家に帰った。

 

 

 

 現時刻は午前1時35分。

 夜型っぽい耳郎ちゃんも、寝ている時間だと思われる。やっと原作キャラに手を出せるかと思うと自然とニヤケてしまう……おちけつ、まずはペニスにコンドームをセッティング!

 そしてゴムイチでベッドIN! いい夢見るよ! あばよ!

 

 

***

 

 

 目を閉じて個性を発動するとやってくる不思議な浮遊感。暫くしてから目を開けるとシャボン玉が幾つも浮かぶ、黄昏色の世界がどこまでも広がっている。このシャボン玉1つ1つが僕が会った事がある誰かの夢で、外から眺めることも中に入って登場人物になることもできる。いつも見ている景色だが、何度見ても吸い込まれそうなほど美しい。おっと、景色よりも三奈ちゃんの脚を見に行かねば!

 

 自分が空を飛ぶ感覚を想像し、様々な風景が映し出されている夢の泡沫の合間を飛ぶ。まずは耳郎ちゃんの夢を探しに行こう。今日会ったばっかりだからこの周辺にあるはずなんだけど……。あれだ! 今日の耳郎ちゃんの夢は……夢の中でもベース演奏してら。可愛い。

 

 だけど楽器演奏中だと話しかけづらいから、場面を切り替えよう。場所は……そうだな、さっき会った甘味屋で一緒にお菓子を食べる夢でいいや初日だし。

 周囲の景色や耳郎ちゃんの服装、ベースをどけて手にはお菓子を持たせる。僕も向かいでお茶と草餅を楽しむことにしよう。

 

 「どう? ここの草餅が絶品なんだ。皮から香る蓬の香りと甘すぎない粒あんが絶妙にマッチしてこの世の物とは思えないおいしさなんだ!」

 

 「そ……そうなんだ……。確かに美味しい……ってウチなんでこんなとこにいr」

 

 「そうだ、高校生活はどう? ヒーロー科なんでしょ? やっぱり周りは凄い個性の人ばっかりで大変なんじゃない?」

 

 ちょっと改変が急過ぎたせいか少し違和感を覚えてか周囲を見回している。でもこれくらいなら無理やり会話で流れを変えられそうかな。

 

 「あー……確かに個性把握テストが20人中17位でちょっと周りとの差を感じたかな」

 

 僕の名前は伝えてないので、ちょっとだけ改変して名前に意識が向かないようにしている。夢の中で聞いた名前と現実の名前がリンクしてるとか、気味悪いよね。

 

 「でもヒーロー科って確か倍率300倍だったよね。それに入れてるだけでも凄い事だよ! もっと自信持って、耳郎ちゃん可愛いんだから!」

 

 「はぁ!? ちょっアンタ何言って!?」

 

 顔を赤くして立ち上がった耳郎ちゃんに微笑んで夢から退室する。照れていたが急に僕が消えて驚いて周りを見回す耳郎ちゃん。可愛い。いい顔を見せてもらったし、耳郎ちゃんにはライブハウスで満員のライブをしてもらおう。気分も弄ってメンバーにも違和感を持たせないようにしてと。楽しんでね、おやすみ。

 

 適当に設定してあげれば後は本人の記憶にある情報から夢の内容を補ってくれるのが便利なんだよね。あんまり矛盾させ過ぎたりすると悪夢としてトラウマを掘りだしたりするのが偶に傷かな。

 

 さて、気分を変えてまた黄昏色の世界に戻って来たわけだが、三奈ちゃんの夢は~……発見! 三奈ちゃんは見たことない人達と話してるな。見たことないブレザー来てるし恐らく中学時代の友人かな?

 これは好都合。場面を卒業式に持っていって三奈ちゃんを校舎裏に呼び出すしかないでしょ!

 

 

***

 

 

 時間軸は3月頃、空の青色に少しばかりの桃色が混ざる。学ランを着た僕は校舎裏に1人佇み、彼女が来るのを待つ。下駄箱に手紙なんて入れてないので、夢の記憶を少し弄って校舎裏へ呼び出していた。

 

 暫くして、桜と同じ肌の色をした女の子。芦戸三奈ちゃんが真面目な顔でこっちへ歩いてくる。やばい、予想以上にドキドキする。こんな漫画みたいな告白演技でも緊張してきたぞ……。

 三奈ちゃんは僕の前で止まると俯きがちに口を開いた。

 

 「ねぇ、○○……。その……用って何かな?」

 

 「実は……中学で同じクラスになってからずっと……芦戸の事が好きだったんだ! でもお前雄英行くって言うしよ、僕じゃついて行くのは無理だからさ。気持ちだけでも伝えておこうと思ってさ」

 

 「そ……そうなんだ。でもゴメンっ! アタシ恋よりヒーローへの思いの方が強いんだ!」

 

 我慢して青臭い演技をして断られる。そりゃさっき1回会ったばかりですからね。正直オイラのリトルソージが万歳行為なので、甘酸っぱい雰囲気を維持しつつ場面をホテルに切り替える。

 

 「っ!? あ……あれっ。アタシなんでこんなところんんっ!」

 

 場面転換が急すぎたせいで混乱している三奈ちゃんにこれ以上違和感を与えないため優しく唇を奪いながらベッドへ押し倒す。

 

 「三奈ちゃん……僕絶対君に釣り合う男になるから」

 

 適当に青臭い事を言って服を脱がせに掛かるも少し抵抗があったため、スカートだけ脱がす。残念ながら胸はお預けのようだ。

 

 「ちょ、ちょっと待って○○……。脚だけだって言ったじゃん!」

 

 夢の記憶を弄って都合の良いように改変して、おかしい事でも了承済みだ。

 

 「三奈ちゃん……綺麗だよ」

 

 「嬉しくないよー! ちょー恥ずかしいってばー!」

 

 そういって枕で顔を隠しつつも豹柄パンツがしっかり見えている。膝にキスをし、少しずつ上っていくと、三奈ちゃんのパンツにシミができていた。

 パンツの上から優しく指で擦るように動かすと、三奈ちゃんの体が反応するのが分かり興奮する。

 

 「待った待った! そこもう脚じゃないよー!」

 

 顔を枕に埋めてくぐもった声で抗議をしてくるが、無視してパンツ越しに秘処を舐め始めると荒い息遣いが聞こえてきて余計興奮する。

 

 「んっ……ふっ……ぁんっ……」

 

 どうしても枕を取ってこちらを見ようとしないので、パンツを横にずらしペニスを押し当てる。

 

 「あっちょっ! 待ってアタシ初めて……ングッ!」

 

 三奈ちゃんの言葉を遮るように腰を前に押し出す。あぁやっぱり夢の中でもセックスは気持ちいい。三奈ちゃんは個性の副作用か愛液が多いからきついけど気持ちいい。

 

 「三奈ちゃん凄く気持ちいいよ。中凄くぬるぬるのグチョグチョですぐイキそう」

 

 痛みを堪える様な表情をしている三奈ちゃんに優しく声を掛ける。夢の中で痛みを感じるはずないのにね。でも気持ちよさとか味覚とかはあるんだよな。我が個性ながら不思議だ。

 

 「うぅ……イタ……くない?」

 

 不思議そうに結合部を覗き込む三奈ちゃん。姿勢を上げたところで背中に手を回し、対面座位で抽送を始める。

 

 「あっ、あんっ。ま、まって! あんっ、ちょっと待って○○! ひゃんっ!」

 

 三奈ちゃんの言葉を無視して、快楽を貪る。ペニスの先端で三奈ちゃんの最奥を突くたびに、艶がかった声を上げる。

 

 「はぁっ、あんっ。何っこれ、知らない! あぁっ、真っ白になる! あぁっ、待って、止まってっ! イッちゃうっ、アタシもうイッちゃうからあぁぁぁ!」

 

 そろそろ限界が近いようで、僕も腰の動きを速め、射精感を高めていく。

 

 「はぁ……三奈ちゃん……。膣内に出すよ三奈ちゃん!」

 

 「えっ、中はぁっ……あぁっ、イクっ! あぁぁっ、イクうぅぅぅぅぅ!」

 

 三奈ちゃんの膣内が収縮し痙攣する。爆発寸前だった僕のペニスが刺激され、背筋を快感が駆け上がると同時に唇を奪い、三奈ちゃんの最奥にペニスを叩きつけ大量の精液を子宮に流し込んだ。

 

 射精を終え、痙攣した膣内で余韻に浸っていると、三奈ちゃんの体から力が抜ける。夢の中だというのに寝息を立て始めた三奈ちゃんの唇にもう1度キスをして場面を変え、オルゴールを小さな音で流しながら三奈ちゃんの夢から退出する。

 

 夢と現実では流れる時間の速度が違い、その時間は個人の思考速度に依存するため残念ながら僕でも弄れない。

 体感で言うと2時間ほどしか夢の中に居ないが、恐らく現実では4時間ほど経っているだろう。

 

 

***

 

 

 夢の世界から帰還し、薄暗い部屋で目覚める。現時刻は午前5時48分。精液が詰まったゴムを括ってゴミ箱に投げ入れ、怠い体を引き摺ってシャワーに入り、泥のように眠る。

 

 夢の場面転換や設定改変は体力を奪う。だが夢の中とは言え美少女と好き放題セックスできるというのはかなりの贅沢だ。この世界に連れてきてくれた誰かに感謝しないとな。

 

 次二人に会ったらどんな反応をしてくれるだろうか。耳郎ちゃんは毎晩可愛がってあげよう。三奈ちゃんのほうは僕を意識していたら続ける、警戒されてたら暫く間を置こうかな。

 

 次は誰に手を出そうか、それを考えるだけでもワクワクしてくる。そうだな、もし個性が成長してもっと強い改変が行えるようになったらヒロアカハーレムを作るのも悪くないかもしれない。

 

 でも逮捕されて監獄生活は絶対嫌だから目立たないよう、個性がばれないように生きて行きたい。さて、明日も昼からバイトがあるし、適当な女性の夢に侵入して1発ヌいてから寝るとしようか。

 

 いい夢見ろよ。




これだけ書くのも大変でした。

文章がおかしくなってる部分があったらごめんなさい。

最初は耳郎ちゃん小説にする気だったのですが、三奈ちゃん熱が入ってしまいました。貧乳ファンの皆さんごめんなさい。

気分次第で続きを書くかもしれません。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話

 ――――遠くから電子音が聞こえる。

 深い水底から浮かび上がるような浮遊感と共に、少しずつ大きくなるアラームの音。まだ寝ていたいと反抗する重い瞼をなんとか開き、音のする方へと手を伸ばす。

 

 何度かの葛藤の末目覚まし時計を止め、ベッドから脚を投げ出して体を起こし大きな欠伸をする。ぼやけていた思考が少しずつクリアになっていくと、ふと股座に違和感と不快感を覚える。

 

 ――――ああ、まただ。

 

 履いているパジャマのズボンにはお漏らしをしたようなシミが出来ていて、ぺっとりと体に貼り付いている。パンツなんて少し触っただけで滲み出るほどだ。幸いなのか布団のほうは少し濡れてはいるが自然乾燥でどうにかなりそうなレベルで済んでいた。

 

 ここ数日、毎日のように夢を見る。学校の最寄駅近くのお店で働いている男の人とエッチなことをする夢。初めて見たときは特別記憶にも残らなかったし、街ですれ違う通行人と同じ程度としか認識していなかった。

 

 けれど彼は毎日のように夢の中に現れ、様々なシチュエーションで私に告白をしてエッチをする。まともに会話さえしたことがない相手なのに何故か私は強く拒むこともできず、夜眠る前には彼のことを考えながら一人エッチもするようになってしまった。

 

 もしかしたらこれが好きっていう気持ちなのかもしれない。そう考えるだけで夢で見た彼の顔がチラつき、顔が燃えそうなほどの熱と共にお腹の奥がズキズキと何かを訴えてくる。体の奥が求めている何かを探るように夢の中での出来事を思い出しながら、恐る恐る股間に手を伸ばす。

 

「三奈ー!? まだ寝てるのー? 早く起きなさーい!」

 

 一階から聞こえた母の声で熱くなっていた頭が冷水を浴びせられたように一瞬で冷え、自分が行おうとした行為を認識して桃色の肌が羞恥で赤く染まる。

 

 慌てて時計を確認すると、長針がいつもより30度以上も傾いている事実に驚愕し、急いでパジャマを――もちろん湿っている下着も併せて――脱いでいく。ベッドから起き上がり履いているズボンを下ろすとずっしりと重く、寝ている間にどれだけ濡らしてしまったかが分かってしまうのがとてつもなく恥ずかしい。

 

「三奈ー!! いい加減にしなさーーい!!」

 

「起きてるって! 今着替えてるからちょっと待っててようるさいなー!」

 

 こうなってしまった初日は恥ずかしさが限界突破しなかなか一階へ降りることができなかったが、幸いと言っていいのかここ数日はほぼ毎日こんな状態なので母への言い訳も慣れてきているのが恐ろしい。

 

 そのうち何かしらの対策を取らないと毎日パジャマを洗濯していてはすぐダメになってしまいそうだ。……それにお漏らしが治ってないみたいで非常に恥ずかしい。

 

 ボーッとしすぎたせいで時計の長針がさらに進んでいる。このままではまずいと頭を切り替え、急いで新しいショーツを履いて学校の制服に着替えると、寝汗とは別の液でぐしょぐしょになったズボンとショーツをできるだけ小さく包んでカバンを手に取り急いで一階へ降りる。

 

 ドカドカと階段を飛ばし飛ばしに降りて洗面所へ向かうと、急いで歯を磨き、寝癖を整えてリビングへと向かう。机の上には好物の納豆と湯気の立つ白米に味噌汁が添えてあるが、今から食べ始めては電車の時間に間に合わないと誘惑を振り切り、台所にある食パンを1枚手に取ると適当にジャムを塗りたくって玄関へと向かう。パンを口に咥えながら鞄の中身を確認し終える頃に母が玄関まで見送りに来る。

 

「行儀悪いわよ三奈。一流のヒーローになるんだったら私生活からしっかりしなさい。朝はちゃんと起きて、しっかりと朝ご飯食べて……あとちゃんと個性もコントロールして」

 

 ここ数日毎朝言ってくる母の煩い小言を聞き流しながら靴を履いてたのだが揶揄うような声音で告げられた最後の言葉にビクリと体を硬直させる。途端部屋の温度が上がったかのように体中が熱を帯び、顔を背けながら母の声を塗りつぶすように言い訳を紡ぐ。

 

「わかってるってば!! 雄英で個性の練習したら出るようになっちゃったんだからしょうがないじゃん!! アタシだってヤだよ!!!」

 

 ――――そう。母への言い訳として個性が強化されまだ扱いきれてないということで誤魔化してはいるが、この言い訳を初めて口にした時のあの生暖かい全て分かってると言いたげなにやけた顔で見られるとどうしても面と向かって抗議することが出来なくなってしまった。

 

「いってきます!」

 

 怒りを露にしたような声音であいさつを済ますと、心の中で母に呪詛を吐いて振り返ることなく扉を開き、駅に続く道へと走り出した。

 

 

***

 

 

 家から全力疾走してギリギリ電車に飛び乗った三奈は、何とか遅刻しない時間に雄英高校前駅に到着することが出来た。ここまで来れたならばこれ以上急ぐ必要もないとゆっくりと雄英高校へ向かっていると、夢に出てくる彼が働いているお店が目に入る。まだ開店前なのかシャッターが下り、立て看板も仕舞われて閑散としている。

 

 彼の顔が見られなかったことに少しばかりの寂しさを感じつつも視線を前方に戻すと、見覚えのあるキューティクルが特徴的な黒のおかっぱが欠伸をしながら歩いているのを発見する。

 

 確か今日はヒーロー基礎学があったはずだと気合を入れなおし、同じクラスの友人のもとへ走り寄って声をかける。

 

「おはよう耳郎ちゃん! 眠そうだね、夜更かしでもしてたの?」

 

 後ろから三奈に声をかけられた響香は、目に涙を浮かべながら何かを誤魔化すかのように目を逸らした。

 

「ん、おはよ。いやちょっと音楽聴いてただけ! ホント!」

 

 三奈から見ても動揺しているのが手に取るように分かったが、この話を続けて自分にも追及の矛先が向くと良い結果にならないだろうと話の内容を変える。

 

「そっか、居眠りしないよう気を付けないとね! それよりも今日のヒーロー基礎学ってまた模擬戦かな? 前回はヒーロー側だったから今度はヴィラン側やってみたいなー!」

 

「うーん、次やるとしたら戦闘以外の訓練の可能性もあるよね。レスキューの訓練とかありえそうじゃない?」

 

 追及が無かったことに安堵した響香は夢の中で見た災害現場での訓練風景を思い出す。妙にリアルな夢だった気がする。確か山岳地帯で人質を取られて手も足も出なくなって、結局人質を救出する前に目が覚めてしまった。実際にあの場面に遭遇した場合、自分はどうするべきなのかをしっかり考えておくべきかもしれないと思索に耽る響香。

 

「レスキューかぁー……戦闘以上に難しそうでちょっと心配だなぁー」

 

 自分の個性で出来ることを考えながら難しい表情をする三奈。二人とも考えに沈んでしまいそうになった瞬間、彼が自転車に乗ってこちらへ向かってくるのに気付き思考を辞め無意識に目で追ってしまう。まるでシンクロしたかのように二人の首の動きは揃っていた。

 

「……ねぇ耳郎ちゃん! 帰りまたあのお店寄ってこ! 他の女子も連れて」

 

「いいよ。あそこのお菓子美味しいよね。」

 

 示し合わせたかのように視線を合わせ、放課後の約束を取り付けた二人であったが、この日雄英ヒーロー科1年A組はヒーロー基礎学の時間にヴィランの襲撃を受けることとなる。

 

 ヴィラン相手に苦戦しつつも勇敢に立ち向かう生徒が居た中、全てを知っていたかのように隠れて電波障害を起こしていたヴィランを拘束し、教員へ応援要請を行う貧乳の少女の姿があったとか。




お久しぶりでございます。

コメントをくださった皆様、お待ちいただいた皆様ありがとうございます。
遅くなってごめんなさい!
なかなか文を書くのが難しくて書いては消しを繰り返した結果、えっちな部分がなくなりました。

短いですがこれ以上書くことが思い浮かばなかったのでこれで勘弁してください……
1話で何万文字も肉付けされる作者さんは凄いです。書いて読んで無駄な部分を消すとどうしてもスリムになってしまう……
そこらへんにコツがありそうなんですが、私が掴むのはかなり長い道になりそうです。

次こそは耳郎ちゃんを予定してるのでまた気長にお待ちいただけると幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話

次回は耳郎ちゃんだと言ったな?
アレは嘘だ

久しぶりすぎてキャラの口調覚えてないです。
違和感あったら教えてください。


 三奈ちゃんと夢の中で色々(えろえろ)するようになって数日が過ぎた。

 

 あの日以降毎日のように夢の中で三奈ちゃんとエッチ三昧なわけだが、現実では僕の顔を見ただけで頬を赤く染めて走り去ってしまうことが多い。三奈ちゃんが走り去った後、同じ甘味屋のバイト仲間から全ての事が思い通りに行ってるヴィランみたいな悪い顔してるとつっこまれたが、前世でも笑顔が詐欺師っぽいと言われていたのでこれが平常運転なのだ。多分。

 

 だが実際、計画は今のところ至極順調に進んでいる。毎夜耳郎ちゃんに愛を囁き、良い雰囲気になったところで夢を切り替えて昂ったムラムラを三奈ちゃんで発散しているのだが、現実でも二人が僕を意識してくれるようになった。まあ三奈ちゃんは初日以降ずっと意識してくれていたが。

 

 そしてなんと昨日夕方、雄英高校の下校時刻にヤオヨロッパ……八百万百ちゃんを連れて耳郎ちゃんが甘味屋に訪れてくれたのだ。バイト仲間を押しのけて僕が接客すると、耳郎ちゃんが頬を染めながら視線を彷徨わせてくれたのが凄くグッと来た。

 

 渾身の拙い営業スマイルでこれで百ちゃんにも顔見せをすることが出来たと内心踊り出しそうになるのを抑えながら接客を終えたが、裏へ戻った後はもう今夜どうするかで頭がいっぱいで皿を8枚くらい割ってしまい店長に締め出されてしまった。雄英高校の敷地よりも広い心を持ってる僕でもちょっとムカついたので、頭の天辺に花の生えた筋肉ダルマ店長にその夜トラウマレベルの悪夢を見せてやった。

 

 

***

 

 

 夜も更けヒーローを目指す良い子は眠る時間がやって来た。僕にとってはこれからが本領を発揮できる時間なわけだが。百ちゃんの夢を弄れるようになったわけだが事を急いで万が一僕の個性が露呈でもしたら目も当てられない。だから今日はちょっとだけ夢に登場する程度に抑えようと思う。

 

 いつものようにペニスにコンドームを装着し、逸る気持ちを抑えながらベッドに横たわり個性を発動させる。

 

 見慣れた黄昏の中を飛び回る事数秒、耳郎ちゃんと百ちゃんの夢玉を発見した。そういえば先日雄英にマスコミが押し寄せて騒ぎになっていたし、そろそろUSJのヴィラン襲撃事件が起きる頃か。今日は耳郎ちゃんに愛を囁くのはやめにして当日の上鳴君が人質に取られるシーンを少しだけ見せてあげよう。百ちゃんを連れてきてくれたお礼に特別だからね。

 

 そういえば上鳴君を人質に取ったあの電気ヴィランは何故エロい事を要求しなかったのだろうか。エロスーツのヤオヨロッパイと耳郎ちゃんが目の前に居て、人質を取ったら第一声は『脱げ!』に決まっているだろうに!

 

 ……待ってほしい諸君。これには正当な理由があるのだ。卵とは言えヒーローのスーツには大抵本人の個性を補助する機能が付いているうえに、武器を隠している可能性も考えられる。さらに初心な女子高生ともなれば羞恥によって行動を一瞬戸惑う可能性まであるのだ。イレイザーヘッドも納得する合理性じゃないか。

 

 ミッドナイトのような個性には逆効果だが、脱ぐほど強くなる変態個性は運が悪かったと諦めるしかないだろう。……ミッドナイト? もしかしてミッドナイトの個性と僕の個性って合わさったら相性やばいんじゃない? ……近いうちにミッドナイトを仲間に引き入れる計画を練ろう。細かいことは明日の僕が何とかしてくれるはずだ。

 

 まあそれはさておいて、今日は百ちゃんの夢にお邪魔しよう。今日は控えめに顔見せ程度で手早く終わらせて三奈ちゃんと酸でヌルヌルソープ嬢プレイをするって決めてたんだ!

 

 

***

 

 

 百ちゃんの夢は恐らく実家の書斎と思しき場所で本を読んでいた。夢の中でも勉強って凄いマジメ~って思うだろうけど、実はこの光景は結構頻繁に見かけるのだ。その日学んだ物事や記憶の整理が行われているのだと僕が勝手に予想しているが、学生に多いのであながち間違いでもなかったりして。

 

 流石にこんな状態で雰囲気も何もあったものじゃないので適当に思いついた電車に乗せることにしよう。

 

 周囲の景色が雄英高校前駅に変わっていく。突然制服姿になった百ちゃんが怪訝な顔をするが、素早く違和感を消して下校時の記憶を思い出させると大人しくホームのほうへ向かって行った。

 

 電車の中に先回りして車内をサラリーマンで埋め尽くして満員電車に仕立て上げて扉を開くと、百ちゃんが駅員さんに無理やり詰め込まれた。そして扉が閉じ電車が発車する。この電車は快楽特急本気イキです。

 

 窮屈そうにしている百ちゃんを囲んでいるサラリーマンの手を百ちゃんのパンツの上からお尻に大胆に這わせる。一瞬ビクッとした百ちゃんが男の手を掴み睨みつけて今にも叫び出しそうだったので周囲の男達への恐怖心を植え付けると、吊り上がっていた眉が下がり小刻みに震えだしてしまった。痴漢ものはやっぱりこうじゃないとね。

 

 暫くお尻を撫でまわされた後、男の手がパンツの中に入ろうとしたところで百ちゃんは必死な抵抗を見せる。しかし別の方向から手が伸びてきて百ちゃんの両手が拘束されてしまい、焦りの表情が浮かぶ。

 

 結構強い恐怖を植え付けたんだけどやっぱり雄英生は凄いね。でも流石に目の縁に涙が浮かんできてるからそろそろ助けてあげよう。

 

「おい何やってるお前ら!」

 

 声を張り上げて男達と百ちゃんの間に強引に体を割り込ませて盾にすると、示し合わせたように電車の扉が開き百ちゃんの手を掴んで強引に電車から脱出する。

 

 そして扉が再度閉まるまで百ちゃんを庇うように背に隠し、電車が駅から離れてようやく百ちゃんと顔を合わせる。震えながら下を向いていてちょっとやりすぎたかもと罪悪感を覚えてしまう。

 

「大丈夫かい? どこか怪我したりしてない? まったく、寄ってたかって痴漢するなんて男の風上にも置けない奴らだね!」

 

 僕の優しいイケメンボイスで安心したのか、ようやくまともに視線を向けてくれる。そしてようやく事情が飲み込めた様子で口を開く。

 

「あ……あなたは確か甘味屋さんの店員さん。助けていただいて感謝しますわ。」

 

 流石にさっき会ったばかりだからちゃんと顔を覚えてくれているようだ。それに名札を付けてたから名前も教えちゃって大丈夫だろう。

 

「困ってる人を助けるのは当たり前さ。こんなに可愛いお嬢さんだったらなおさらね。僕の名前は夢道操治、これからも甘味屋をどうぞご贔屓に!」

 

「夢道さんは素晴らしいお考えをお持ちなのですね! 私は雄英学年ヒーロー科1年、八百万百ですわ。是非また寄らせていただきますわ」

 

 そう言って上品な笑顔を見せてくれる百ちゃんマジ天使。良い匂いする。可愛い。おっぱい大きい。オギャりたい。

 

「それでは夢道さん、助けていただいて本当にありがとうございました。迎えを呼んだので私はこれで失礼しますわ」

 

 僕が脳内でオギャっている間に携帯で連絡を取った百ちゃんが丁寧な所作で御辞儀をすると、改札のほうへ歩き出す。しかしまだ足が震えているのかその場で躓いて前のめりに倒れそうになる。もちろん僕の仕業だが。

 

 咄嗟に百ちゃんの横へ移動し横抱きに受け止めると、モニョンと音が聞こえてきそうな母性の塊が右の手いっぱいに押し付けられる。これは……デカい。

 

「す、すみません!!!」

 

 右手に掴んだ幸せを堪能していると、百ちゃんは顔を赤くして慌てて起き上がり視線を合わせることなく走り去ってしまった。

 

 心地よい手触りと重みが消えた右手をニギニギしながら、百ちゃんが走り去って行ったほうを眺める。痴漢にあった当日だし今日はこれ以上進めるのはやめておいた方がいいだろう。でも僕のムスコもそろそろフルカウルしそうだから三奈ちゃんの夢へと移動しよう。

 

 三奈ちゃんのおっぱい少し大きくしよう。

 

 

***

 

 

 ギシギシとベッドが軋む音と女性の艶やかな声が部屋に響く。桃色の素肌を晒している三奈ちゃんを膝に乗せ対面座位の態勢でペニスを挿入しいつもより2割増しのデカメロンに吸いつく。

 

「あんっ! そんなに吸ったらミルクじゃなくて溶解液出ちゃうってば!」

 

 その言葉に思わず真顔になり、ペニスが三奈ちゃんの中で硬度と大きさを増していく。

 

「乳首にだけ弱い溶解液出せる? 舐めても問題無さそうなくらいの」

 

 抗いがたい衝動に突き動かされるように先端を子宮口に擦り付け、願望を口に出す。こうして弱いところを擦ると三奈ちゃんはお願い聞いてくれる事を先日学んだ。

 

「あぁあああっ! わかったからそれダメっ! 出す! 出すから集中させて!!」

 

 ミッションコンプリート。口の端から涎を垂らしながら痙攣する三奈ちゃんのおっぱいを凝視していると、先端からほんのり白濁したトロッとした液体が垂れてくる。ドチャクソエロい。

 

「ママァ!!」

 

「ひゃぁあ!」

 

 自分の口からわけのわからない単語が発せられると、対面座位の体位から三奈ちゃんを押し倒し一心不乱に腰を突き出しながら両方のおっぱいに吸いつく。溶解液はほんのり舌がピリ付く程度で無味無臭だが、興奮が最高潮に達している僕にはハチミツのように甘く感じられた。

 

「あんっ! 落ち着いてってば! こ、腰とめてあんっ、おっぱいもおしまい! もう出してないから吸わないで! イっちゃう! イっちゃうからあああああああっ!!!」

 

 膣がキュッキュッと締まり射精を促してくるが、僕は両乳から口を放すことなくピストンを続ける。我慢してくれ三奈ちゃん、もう少しで世界の真理が分かりそうなんだ。

 

「イった! もうや、あんっ! またイクから! ダメダメダメ!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

 細かく痙攣し顔を左右に振る三奈ちゃんの1番深いところにペニスを突き刺して精液を解き放つと、今まで感じたことのない幸福感と快楽によって目の前がチカチカと明滅する。

 

 頤をあげて舌を突き出し、獣のような咆哮を上げた三奈ちゃんは暫く足をブルブル振るわせた後、糸が切れた人形のようにパタリと気を失った。涎まみれの顔で両手足を投げ出し、腹筋をピクピクと痙攣させる三奈ちゃんを横目に、小さく萎んだ相棒を三奈ちゃんの中から抜いた後、触れるだけのキスを眠っている三奈ちゃんに落として夢から退出する。

 

 

***

 

 

 目を開き携帯で時間を確認すると午前5時を過ぎ、もうすぐ6時になりそうだ。ふとメールアプリに新着メールの通知が来ているのが目に入った。開いてみると甘味屋の店長のアドレスで、件名は空白で受信時刻は4時44分。内容は本日休業とだけ書いてあった。

 

 どうやら夢見が悪かったようだ。

 

 今日一日寝て過ごすことが決定してしまったので、ゆっくりと朝食を食べながらテレビをつける。今日も今日とて雄英の周辺でオールマイトに関するインタビューの映像が流れる。

 

「あぁ、USJ襲撃がそろそろなら体育祭も近いってことだな。確か甘味屋も出張屋台出すはずだから、何としても僕が行けるように店長とお話しないとだな」

 

 朝食を食べ終え軽くシャワーを浴び、もう1度コンドームを付けなおしてベッドにダイブする。もう1発適当にヌいてから寝るとしよう。

 

 もう1回オギャろうと心に決めて。




アレレ~おかしいぞ~……
新大陸の調査してたら時渡の力を手に入れてしまったようです。

遅くなってごめんなさい!
年末に8割書けていたんですけど、エロ要素が峰田君がゲイのヴィランに掘られるシーンしか無かったので書き直してたら埃被ってました!

ヒロアカ4期はもう全部凄かった……
オーバーホールとのクライマックスも、ラブラバがジェントルに愛を囁くシーンも
そして何と言っても耳郎ちゃんのHero tooがさいっこーでした!!
それこそ劣情が湧かないくらいにカッコよかったです……

強引な展開でストーリー無視するのも違う気がするのでどうかこれでご納得いただけるとありがたい……

次回こそは耳郎ちゃんかヤオモモのえちえち回を……

読んでくれてありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話

 あの日から私の体はおかしくなってしまいました。

 

 普段は使わない電車に乗って登校するようになり、()()()()初めて見る駅構内や行き交う人々に日々驚かされています。

 

 駅構内は様々な個性に対応しているせいか広く大きく作られており、夢で見たほど人の密度は高くないようでした。

 それに伴ってか電車内も広々としていて、痴漢被害にあうことは一度もありませんでした。もしかしたら雄英の制服を着ていることも関係があったのかもしれません。

 

 そんな中で私はついあの方を探してしまいます。現実では一度しかお会いしてないのに、夢では毎日のように会いに来てくださってどんなピンチからも私を救ってくださるあの方を――――。

 

 

 そして今日も八百万家の執事であり送迎車の運転手でもあるセバス・ティアヌスに一言断りを入れて、一列に並び頭を下げるお手伝いさん達に挨拶を返して駅へと足を向けた。

 

 

***

 

 

 徒歩で最寄りの駅へ到着し、教えて貰った通りにスマートフォンを改札の読み取り部に当てたところでチャイム音が鳴り響き、改札の扉が勢いよく閉ざされる。突然の事でどうしたらいいか分からずに立ち尽くしていると、そんな姿を見兼ねた駅員に残高が足りていないことを教えられる。

 

 初めて電車に乗ろうとしてからは券売機で切符を買うことを教えてもらい事なきを得たが、昨日クラスメイトに教えてもらったばかりの電子マネーアプリの使い方が未だ分からず悪戦苦闘しながらも何とかチャージを済ませる頃には乗るはずだった電車の発車時刻をとうに過ぎていた――――

 

 

 ―――今日は朝からツイてないと意気消沈しつつも次の電車に乗り込むと、いつも利用してる時間より格段に空いていることが見て取れる。頭の中で登校時間を計算して明日からはこの電車を利用するか迷いながら座席へ座ったところで、向かいに座っている男性の事が視界に入る。

 

「あっ!!」

 

 突然大声を出した女性――八百万百――に周囲の視線が集まると、自身の行為を恥じるように頬を染めながら一言周囲への謝罪の言葉を口にして大人しく座り込む。

 

 それでも百の内心はまるで、初めて憧れているヒーローに会った子供のような高揚感が渦巻いていた。

 

 目の前の男性は大声を上げた際は驚いた様子で百へと視線を向けていたが、その後はまるで興味が失せたとばかりにスマートフォンを弄っている。

 

 自分を知ってもらえてないことに一抹の寂寥感を覚えるも、ようやく会えた嬉しさでそれを塗りつぶし、意を決して声を掛ける。

 

「あ、あの!」

 

 男性は声を掛けられた事に酷く驚いた様子で、しかしスマートフォンを仕舞い百へと視線を向けた。

 

 

***

 

 

 ……びっくりした。

 

 今日もいつも通りバイトへ行くためにいつもの時間にいつもの電車に乗っていつもガラガラの車内でニュースアプリを流し読みしていたはず……だったんだが、どうしてこうなったのか絶賛実験中の白馬の王子様作戦を行っている八百万百ちゃんが目の前で僕を見つめていた。

 

 かなり大きい声で叫んだせいか周囲の目が彼女へ向けられている事に気づいて、真っ赤になりながら謝罪の言葉を口にすると縮こまるように座席へと座り直す。……かわいいかよ。

 

 こちらをチラチラ見ているけどここで僕から声を掛けたら事案になってしまうのですぐに視線を外し、敢えて興味がないフリをする。

 

 ふむふむ、『またも東京で凶悪ヴィラン出現! 少年を狙った卑劣な犯行相次ぐ』か。

 

 何々……『昨夜未明、繁華街の裏通りで下腹部が肥大化した少年(12)が裸で倒れていると通報がありました。少年は下半身から血を流しており重傷。すぐに病院へ搬送されるも命に別状はないとのこと。ここ数ヶ月で同様の事件が東京だけで3件起きているも犯人の足取りは未だ掴めず。警察はより一層の警戒を呼び掛け、プロヒーローへの協力を要請しています。』

 

 ……何とも恐ろしい事件だこと。少年の詳しい容態は書かれていないけど、まぁ十中八九肛門裂傷だろうなぁ。

 あまりに凄惨な事件だからか、内容が内容だからかマスコミはあまりヴィランの名前や犯行内容、特徴を世間に公表したくはないようだ。

 

 だが実はこのヴィランは、既にそれなりにディープなネットニュースや掲示板に目を通す人達の間ではちょっとした有名人になっているのである。

 

 

 ヴィラン名『ゲイパレス』

 子供が真上を見上げないといけない程の巨漢に筋骨隆々の鋼のような肉体をピッチリとしたワンショルダー式ビキニ一枚で飾り、目と口元に穴の開いたフルフェイスマスクを被った生粋のショタコンを自称する年齢不詳のヴィランだ。

 海外の違法動画投稿サイトに自らの犯行動画を投稿し続けていて、三日と経たず消されるも、アカウントを変えた上に動画を1つ追加して全動画再アップを繰り返している。

 

 その内容は自己紹介から始まり、攫ってきた子供に無理やり前戯をさせ、泣きながら懇願させたところにナニをぶち込み個性を使って滅茶苦茶にケツを掘る。簡ケツに言えばそんな感じの動画だ。SAN値が下がるので子細は割愛。

 体の一部を肥大化させる個性を持っているみたいで、徐々に太くなっていくイチモツと許しを乞いながら泣き叫ぶショタに思わずいつの時代の拷問だとつっこみたくなったよ。

 

 いや突っ込むのも突っ込まれるのも死んでも嫌なんだけどさ。

 

 彼奴なりの拘りなのか1度の射精の後、子供をその場に残して逃走するシーンで動画が終わるのだが、それだけで腹が膨らむほど出るって本当に人間なのか疑いたくなる。

 正直何が目的なのかは分からないが、僕は歳も見た目もショタじゃないので狙われる心配はないはずだ。多分、きっと、maybe……。

 

 

 そんなことを考えていると、今度はちゃんと声のトーンを落とした百ちゃんに再度声を掛けられる。

 

「あ、あのっ! 先日は助けていただいてありがとうございました!」

 

 そう言って頭を下げる百ちゃんだが、はて夢の中以外で何かした覚えがない僕はただ首を傾げることしかできない。

 

 怪訝そうな表情をしていた百ちゃんだったが、そのことに気づいたのかアセアセという擬音がぴったりなくらい動揺しながら人違いだった、勘違いだったと言い訳の言葉を並べ始める。

 そんな様子が面白くてつい笑ってしまった僕を責められる人はいないだろう。

 

 笑われたことで冷静になったのか、再び頬を染めて縮こまってしまった百ちゃんに助け船を出してあげるとしよう。

 

「その制服、雄英だよね。残念ながら僕は雄英生を助けられるほど秀でた人間じゃないよ。 あ、僕は夢道操治。駅前の甘味屋でバイトしてるからもし良ければ帰りにでも寄ってね」

 

 せっかく僕と会話しようと頑張ってくれたのだからこれは応えてあげなくちゃいけないよね。これで夢の中で名前を呼ばれても大丈夫だし、そろそろ手を出したいと思ってたんだよね。

 

「は、はいっ! 私は雄英高校1年A組、八百万百です! 是非行かせて頂ましゅわ!」

 

 ガチガチになって噛んでしまった百ちゃんの自己紹介が面白くてまた笑みがこぼれる。再度クスクス笑う僕を見て百ちゃんは下を向いて分かりやすいほどに落ち込んでしまう。

 

 あんまり弄りすぎて顔を合わせづらくなるのも困るし、そろそろ許してあげよう。確かバッグの中に割引券があったはずだし、これで機嫌を直してくれると良いんだけど。

 

「笑っちゃってごめんよ。お詫びと言っては何だけど、甘味屋の割引券をあげるから食べにおいでよ。丁度季節のお菓子が入れ替わったところだからお友達も誘ってさ」

 

 そう言って割引券を6枚渡す。確かA組の女子も6人だったはずだから、丁度枚数が揃っていてよかった。

 

「よろしいのですか? ではクラスメイトの皆さんを誘って伺わせていただきますわ。ありがとうございます!」

 

 百ちゃんが受け取った割引券を大切な物のようにカバンの中に仕舞ったところで丁度雄英高校駅前に到着する。楽しい時間はあっという間に過ぎて行くな。

 

 改札を出たところで未だ恥ずかしそうにモジモジしている百ちゃんと別れ、バイト先へ向かう。

 

 あぁ朝っぱらからムラムラしてきた。今夜は楽しくなりそうだ。




ここまでは前回の投稿から数日でほぼ書けていたんですが、私はどうもエッチな描写が苦手なようで、ずっと書いては消してを繰り返して最終的に投げてました。

ただR18物を漠然と読むのではなく、書き方や表現方法を意識して読むべきですね……

次がいつになるか分かりませんが、皆さんの記憶が消えたあたりで投稿できると良いですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。