普通の魔法使いが行く!Fate/Grand Order (秋塚翔)
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第一節 メイガスマスター

お久しぶりです!半年ぶりの秋塚翔です。
復帰……と言うか、ようやく重い腰を上げてリハビリがてら書き上げた新作。ある方に提案され、脳細胞がトップギアになって書いた東方とfgoのクロスオーバーとなります。

fgoにかまけ、ドラクエ11をやり込み、最近ハマってる『転生したらスライムだった件』がアニメ化しないかな~と悠々自適にブランク積んでたリハビリ新作品、どうぞご覧くださいませ!


ビュウビュウと、防音ガラス越しでも聞こえてきそうなほど吹雪いている外の世界。元々変わり映えしない雪山の中だったが、激しい吹雪で真っ白に染まってしまった景色を一人の少女が窓際に腰掛け、ただただ何を思うでもなく眺めていた。

 

「──フォウ!」

 

「……?」

 

そこへ小さな足音を立てて白い小動物が近寄ってくる。

猫とも狐とも見える容姿にフワフワの毛。少女にとって見慣れたその小動物は近寄ったかと思いきや踵を返し、かと思えば少女の方に振り返る。まるで着いてこいと言わんばかりの仕草だ。少女は立ち上がるとその後を着いていった──

 

 

 

追い越さないよう遅い足取りで着いていくと、小動物は曲がり角で走り出し姿が見えなくなる。少女がその角を曲がると、すぐそこに小動物が居り、その下には……一人の少女が倒れていた。

どうやら眠っている様子の少女。この施設で支給される白い制服にウェーブがかった金髪が良く映える。そんな少女の顔を、飛び乗った小動物はペロペロと小さな舌で舐めていた。

 

「……ん、あ?燐、じゃあないか。何だコイツ?」

 

ほどなくして金髪の少女は目を覚ます。顔を舐めて起こしてきた小動物に対して眉をしかめ、状況が飲み込めていないようだ。

 

「あの、おはようございます。朝でも夜でもありませんから、起きてください、先パイ」

 

「ん、おお、何だって私はこんな所で寝てるんだ?」

 

「不明です。私も今来たところなので……」

 

そう話しながら金髪の少女は反動をつけて起き上がる。そして徐に頭を触って周囲を見渡すが、「そうだ。今は被ってないんだった」と一人で納得し、少女と向き合った。

 

「とりあえずおはようさん。ところでお前は何者だ?」

 

「はい、改めておはようございます。私は……えっと、すみません。名前が無い訳ではないのです。ただ自己紹介する機会が無かったもので……」

 

少女は申し訳なさそうに顔を暗くする。それに金髪の少女が首を傾げていると、対角の通路から足音が近付いてきた。

 

「そこにいたのか、マシュ。ダメじゃないか、断りも無しに移動するのは良くないと……おっと、先客がいたんだな」

 

どうやら少女──マシュを探しに来たらしいシルクハットにスーツの男は、親しげに笑顔を浮かべる。

 

「君は今日から配属された新人さんだね?私はレフ・ライノール。このカルデアで働かせてもらってる技師の一人だ……マシュとはもう名前を聞き合っているかな」

 

「いいえ、これからでした。遅れましたが、私はマシュ・キリエライトと申します。こちらの毛並みが魅了的な小動物はフォウ」

 

「フォウ!フォーウ!」

 

「あの、宜しければ先パイの名前を伺って宜しいですか?」

 

「ん?ああ、私は……」

 

言って金髪の少女はふと思い立ち、まるで被っていない帽子を押さえるように格好を付ける。そして不適な笑みを浮かべて名乗りを上げた。

 

「──私は、霧雨魔理沙。普通のマスター候補生だぜ!」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

「さて……と、シミュレートとやらでまだ頭が冴えないし、こう言う時は部屋でしっかり寝るに限るなっ」

 

一通り区画を確認し終えた金髪の少女──魔理沙は、ぐっと伸びをすると宛がわれた自室に向かい出した。その肩には白いフワフワの小動物──フォウが一緒だ。

因みに本来ならこの後、ここ『人理継続保証機関フィニス・カルデア』の所長による説明会があったのだが、

 

『あー、私はパス。眠いし、人の話は聞き流す質なんでな』

 

『良いのかい?遅刻でも、あの所長に一年は睨まれるぞ』

 

『そう言うのを気にしない質でもあるぜ。マシュ……だっけ?お前も一緒に昼寝でもどうだ?』

 

『とても魅了的なお誘いですが、後学のために説明会に立ち会わせていただきます。また機会があれば』

 

と、見事なバックレをこいていた。どうせ行っても何かしらのいざこざ起こして結局睨まれるだろうし、今回の目的やレイシフトなるものに関しては、()()()()に来る前に聞いているので、問題は無いのである。

 

「お、ココか」

 

そうこう経緯を話してる内に魔理沙は自室に着いた。自動扉と言う見慣れない設備に戸惑いつつ、魔理沙が部屋に入ると……そこには、ベッドでくつろぐ男の姿があった。

 

「──え、うぇえええええ!?だ、誰だ君は!?」

 

「アンタこそ何者だ。乙女の部屋に入り浸るとは太い野郎だ」

 

「あ、も、もしかして今日から配属されたマスター候補生?参ったな、このサボり部屋ともオサラバかぁ……」

 

ガックリと肩を落とす髪をポニーテールに纏めた男。どこか憎めない柔らかな雰囲気を感じる。男は気を取り直すと魔理沙に名を名乗った。

 

「僕は医療部門トップ、ロマニ・アーキマン。皆にはDr.ロマンと略称されてるから、君もそう呼んでくれ」

 

「そうか、私は霧雨魔理沙だ。皆には異変解決の専門家と呼ばれてるから宜しくな」

 

「ハハハ、異変解決の専門家と来たか。これは凄い逸材をスカウトしてきたものだね」

 

本気にしていないのか(事実、自称だし)男──ロマンは軽く笑って流す。

 

「ところで今は確か説明会の時間だろう?もう終わったのか、はたまた所長に叱られて追い出されでもしたのかい?」

 

「ああ、サボったぜ」

 

「な、何て正直かつ大胆な……!君は大物になれるよ。じゃあ同じサボり仲間として今後とも仲良く……」

 

《ロマン、あと少しでレイシフト開始だ。万が一に備えて来てくれないか?》

 

「…………」

 

「仕事だぜ、サボり仲間?」

 

ニヤける口に手を当て、意地悪そうに魔理沙は笑う。対して苦労人感を漂わすロマンはニヤける魔理沙を尻目に通信機を押し、通信相手のレフに応答した。

 

「分かったよレフ。そちらの現状は?」

 

《Aチームは安定、だがBチームの意識が乱れている》

 

「なら麻酔薬を打つとしよう。少し待っててくれ、すぐに行く」

 

《そこは医務室だろう?五分で着くと思うが》

 

ロマンはしまったと手で頭を押さえた。

この個室は中央管制室からかなり離れている。サボりの代償。五分以上遅れでもすれば、今頃マスター候補生の指揮に当たっている所長にまた叱られる事だろう。次は減給も免れない……!

 

「……はぁ、仕方ない。インドア派だがダメ元で走るとしよう。とりあえず行ってくるよ」

 

「送ってやろうか?私もレイシフトってのを見てみたいからな。ブレイジングスターでひとっ飛びだ」

 

「え、できるのかい?願わくばお願いした──」

 

と半信半疑でロマンが言いかけたその時、二人の視界が暗転。目の前が闇に包まれた。

 

「あれ?何だ、停電かな……?」

 

──ドガアァァァンッ!

 

《緊急事態発生。緊急事態発生。中央発電所及び中央管制室で火災が発生しました。中央区画の隔壁は90秒後に閉鎖されます。職員は速やかに第二ゲートから避難してください。繰り返します。中央発電所及び──》

 

直後、遠くからの爆発音とけたたましいサイレン、尋常ではない警報で白い室内は真っ赤に染まる。赤いライトに照らされるロマンの顔は、耳を疑っているように驚愕を表していた。

 

「火災!?それも中央管制室だって!?それじゃあ今の爆発音は……!」

 

(! 確か管制室じゃ説明会が……そこはマシュが……!)

 

「フォウ!」

 

思うが早いか、驚くロマンを放って魔理沙(とフォウ)は飛び出す。目指すは第二ゲート……ではなく中央管制室。場所はさっき区画の確認で覚えている。

 

「お、おい!一体どこへ……あぁもう、僕も行くよ!」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

辿り着いた中央管制室は、炎と瓦礫に包まれていた。その中には息絶えた職員たち、筒上の装置(コフィン)内で血を流しているマスター候補生たちの姿もある。唯一無傷な中心に座す真っ赤な太陽のような物体を囲う装置、あれが話に聞いたカルデアスだろうと魔理沙は判断した。

 

「くっ……こりゃ酷いな……」

 

魔理沙は袖で口を覆って火中に踏み入る。

そうしてすぐに少女は見付かった……頭に血を滲ませ、下半身は巨大な瓦礫に押し潰されたマシュが。

 

「……ぁ……良かった、無事、だったんですね、先パイ……」

 

「……そう言うお前は、不運だったな」

 

「みたい、です……私の事はいいので、先パイだけでも逃げ、て……」

 

医療に覚えのない魔理沙でも分かる。これは助からない。そして助からなかった人間なら何度も見ている魔理沙だからこそ、冷静かつ冷酷に死にゆくしかない者に『不運だった』と言えた。

ではこのまま放って自分は逃げるのか?

 

……否。そこまで冷酷にはなれなかった。

 

「っ?……先、パイ?」

 

黙り込んで立ち尽くす魔理沙に、マシュは顔を見上げる。すると魔理沙はポケットから八角形状の物を取り出す。魔術を知識程度しか知らないマシュにも何となく分かる。それはただの物ではなく、魔術道具だと。

 

「マシュ、ちょっと目が眩むが我慢しろよ。どうせ死ぬなら、こんな熱い場所じゃなくてベッドの上で死ぬ方がマシだろ?」

 

そう言って魔理沙は取り出した八角形の物体を、瓦礫に向けて突き出す。中心の穴に魔力らしき光が溜まっていき、凄まじいパワーを感じる。マシュは察した。一般人枠で入ったはずのこの少女、魔理沙は瓦礫を壊す気だ。

と、そんな燃え盛る管制室の中でアナウンスの機械的な音声が流れる。

 

《……確認しました。適正番号48 霧雨魔理沙 を マスターとして再設定します。

 

アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始します。

 

レイシフト開始まで あと3

 

 

 

全工程 完了(クリア)

ファーストオーダー実証を開始します》

 

魔理沙が何かするのが早いか、カルデアスが起動するのが早いか。どちらにせよ魔理沙とマシュの体は光の粒子に包まれ、何も分からなくなってしまった──




いかがだったでしょう?まだちょっと紙芝居形式が抜けきらなくて、だいぶ端所ってプロローグを詰め込んだので話が飛び飛びだったり分かりにくかったりなら申し訳ない。これから修正、精進していく所存です。

この作品における魔理沙や東方サイドですが、方向性としては原作遵守で行きます。今までの作品では二次創作寄りでしたがfgoサイドが真面目なので、クロスオーバー相手として郷に入らせようかなと。なのでカップリングや二次創作設定は申し訳程度やネタ的な感じになりますね。
タグにある『オリジナルサーヴァント』は東方サイドのものになります。どういう意味かは察してるでしょうが、次回辺り。fate側の新しい英霊を作ると言う意味のオリジナルではないのでご了承をば。

因みに魔理沙、説明会バックレたせいでチームから外されてた事については「こっそり忍び込んでレイシフトする」と言う思惑からロマンを送ろうとした模様。原作の魔理沙らしい行動を出せたかな。

それでは説明足らず感が否めませんが、長くなるのでまた次回。乞うご期待を!


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第二節 合流、そして召喚

どうも、無事に1000万ダウンロードでネロを手に入れたけど素材が足りなくて泣いてる秋塚翔です。
初期からある素材って、意外と長くやってるほど足りなくなったりしませんか?イベントで全部回収してる方は問題無いけど、使わないから大丈夫と油断したら必要な時に泣く。マスターなら誰もが通る道なはず。

今回かーなーり長いです。だいぶ削ったのに、二話目にしてこの長さはどうかなと……とりあえず『ラノベの一話はこれ以上だから』と自分に言い聞かせて投稿。どうぞご覧ください。


「人理焼却ぅ?」

 

突拍子も無く振られた、聞き慣れない言葉に魔理沙は団子を取る手を止める。しかし横取りはされぬよう皿に残った2本をガッチリキープするのだけは忘れない。

ここは霧雨魔法店。魔法の森の奥深くにある何でも屋で、魔理沙の住居だ。その店主であり家主の『普通の魔法使い』霧雨魔理沙は、向かい合って座る女性に訝しげに目をくれた。

 

「ええ、私の計算では近々それが確実に起こる。そこで貴女には、その異変の解決を依頼したいのですわ」

 

八雲紫。境界を操る大妖怪にして、ここ幻想郷の管理者。いつもなら神社に良く出没する彼女だが、今日は朝一から霧雨魔法店を訪ねてきていた。しかも手土産(団子)を手に、まさかの依頼ときている。魔理沙は訝しげに団子を再び口に運びながら問う。

 

「どういう風の吹き回しだ?お前が霊夢じゃなく私に異変解決の依頼なんて、明日は弾幕か妖精でも降るのか?」

 

「幻想郷の天気は、いつでも弾幕時々妖精ですわ。貴女だからこそこの異変には適任なのです。魔術回路……いえ、魔力を持つ魔法使いの貴女だからこそね」

 

いつもの人を食ったような、からかうような不敵さではなく神妙な面持ちの紫。それに魔理沙は気になる事を追及はせず、異変解決の専門家(自称)として本題に入る。

 

「なるほどな。それで?その人理焼却とか言う異変はどんなもんなんだ?」

 

「そうね、簡単に言うなら……放っておけば今から二年後、2017年を境に人類は消えて無くなってしまうわ」

 

「……そりゃまた、随分と穏やかじゃないな」

 

「穏やかじゃないのよ。人間が消えれば、妖怪や神の存在を支える恐怖や信仰は必然的に無くなる。そうなれば幻想郷は外の世界もろとも焼却されてしまいますわ」

 

言って紫は魔理沙の淹れた出涸らし茶を一口啜る。その様子は少し余裕が無く、不機嫌な雰囲気だ。付き合いは浅いが長い魔理沙にはそう見て取れた。

魔理沙は残り一本の団子を食い終わると、依頼に返答する。

 

「そう言う事なら、私の出番だな。お前が訪ねてきたって物珍しさと団子で引き受けてやろう。ちゃちゃっと解決して、霊夢を悔しがらせてやるぜ♪」

 

ニヒルな笑みを見せる魔理沙。それに紫も予想通りの返答だと見透かされていたかのような、いつもの妖しい笑みを浮かべる。

 

「期待してますわ♪私も今回は少し()()をして、貴女の異変解決をサポートするわ」

 

「ほう、どんな細工だ?永琳の何度もやり直せる薬みたいなか?」

 

「それは見てからのお楽しみ。代わりに私の分の団子を食べたから、もう少し話に付き合ってもらいましょう。まず貴女がこれから行くカルデアと言う場所についてですが──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

「──熱い場所から飛ばされたと思ったら、また熱い場所か。情緒が無いぜ」

 

「フォウ!」

 

フォウに顔を舐められて魔理沙が目覚めると、そこは燃え盛る管制室ではなく燃え盛る外の世界──都市伝説異変で行ったことがある──の街だった。

確かマシュを助けるため、瓦礫を吹き飛ばそうとしたら体が光の粒子になって……と最後の記憶を辿る魔理沙。そしてこれが紫から聞いたレイシフトか、と状況から考察する。

 

「面倒な時に来てしまったが……まぁ結果オーライって奴だな。さて、これからどうするか」

 

腕を組み考え込む魔理沙。足下にいるフォウは、それを興味津々に見上げる。と、その時。ガチャガチャと忙しなく音を立て、何かが正面と後ろから迫ってきた。

 

「! ……雑魚か。何すべきか分かりやすくて助かるぜ」

 

魔理沙を取り囲んで現れる異形の集団。暗色の骨だけで構成された竜牙兵の群れだ。まるで生きている者は皆殺しだ、と命令を受けているかのように剣や槍を魔理沙に向けている。そこにはもちろん情などない。

対して魔理沙、余裕な様子。その手に八角形のアイテム、魔法で出した箒を持ち骨の群れを迎え撃つ。

刹那、その骨の群れを蹴散らしながら何者かが魔理沙めがけて駆け寄ってきた。

 

「──先輩!大丈夫ですか!?」

 

「ん……おお、お前マシュか。どうしたその格好?」

 

それは武装している差異こそあるが紛れもない、マシュ。深い紫色の装甲を纏い、巨大な盾を掲げて敵と相対する姿は全くの無傷に見える。マシュは盾で守るようにして魔理沙に言う。

 

「話は後ほど。まずは敵の掃討を。指示をください、()()()()

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 

火炎と瓦礫が散乱する町通りを、一人の少女がひた走る。その後を追うのは十数の竜牙兵。動くものは疲れ知らずの体でどこまでも追いかけ、無機質に始末せんと迫る。

 

「このッ……!」

 

振り向き様に、少女は竜牙兵を一体一体返り討つ。魔力を込めた小石を投げ放ち、銃弾に劣らないスピードで竜牙兵の体を撃ち抜き倒した。しかし焼け石に水。恐れを知らず数のある竜牙兵らは、一体倒されても怯まず標的を追い詰めんとする。

 

「なんで、なんで私ばっかりこんな目に遭わなくちゃいけないの!?もうイヤ、来て、助けてよレフ……!」

 

虚勢は長く持たず、訳の分からない事態に少女は信頼する者へ届かない助けを求める。しかして声は届いた。だが、それは彼女の求める者ではなく……箒に跨がる金髪の少女だった。

 

──魔符『ミルキーウェイ』──

 

燃え盛る街にそぐわない目映い星が降り注がれる。色とりどりの星は骨の群れに悉く炸裂し、その数を減らしていく。

一方、それを呆然と見やる少女の元には、大盾を持った鎧の少女──マシュが駆け付ける。

 

「オルガマリー所長!」

 

「あ、貴女、まさかマシュ!?」

 

驚く少女──オルガマリーの盾になり、マシュは星の弾幕から逃れて尚も襲い掛かる竜牙兵を叩き潰す。巨大な盾で防ぎ、押し返し、縁で砕く。弾幕に大半が撃破されたのも手伝い、竜牙兵の群れはすぐに壊滅させられた。

 

「……敵の駆逐を確認しました。戦闘を終了します」

 

「取りこぼしの片付け、お疲れさん。助かったぜマシュ」

 

「いえ、むしろ私の方こそ助けられました。ありがとうございます、マスター」

 

辺りにもう敵はいない事を確認し、盾を下ろすマシュと地上に降りる金髪の少女こと魔理沙。二人が和気藹々に労いの言葉を交わすのに対し、オルガマリーはその二人に眉をひそめて独りごちるように呟く。

 

「…………どういう事?」

 

「所長?……ああ、私の状況ですね。信じがたい事だと思いますが、実は……」

 

「サーヴァントとの融合、デミ・サーヴァントでしょ。そんなの見れば分かるわ。私が聞きたいのは、どうして今になって成功したのかよ!」

 

一安心したせいか、調子が戻って声を荒げるオルガマリー。その意味不明から来る怒りの矛先はマシュの隣、魔理沙へと向く。

 

「いえ、それ以上に貴女よ!私の演説を遅刻どころかバックレた一般人!なんでマスターになってるの!?サーヴァントと契約できるのは一流の魔術師だけなのに!」

 

「つまり私がその一流だったんじゃないか?逸材ってのは、意外な場所で発掘されるもんだ」

 

「そんな訳ないでしょう!一体どう脅してマシュを言いなりにしたの!?」

 

「と言うか、お前が所長か。私は霧雨魔理沙、以後宜しく。これ差し入れのキノコだぜ」

 

「ああ、これはご丁寧に。私はオルガマリー・アニムスフィアで……って違あああああぁうッ!」

 

「あの……落ち着いてください、所長。私が無理に契約してもらったんです」

 

ペースに飲まれかけたのを怒りから振り切り、荒ぶるオルガマリーをマシュが宥める。その甲斐あってか、少しして気を取り戻したオルガマリーは深く溜め息を吐く。

 

「まぁ良いわ。とりあえず霧雨、貴女をマシュのマスターとして認めます。以後、私の指示に従ってもらうわ。まずはベースキャンプの作成ね」

 

「それでしたら先ほど通信で伺いました。霊脈は所長の足元にあります」

 

「へっ!?あ、ああ、そうよね。それならマシュ、貴女の盾を地面に置きなさい。宝具を触媒に召喚サークルを開くから」

 

「は、はい……よろしいですかマスター?」

 

「あの程度の雑魚なら私一人でも捌けるからな。ボス級が来る前に済ませようぜ」

 

「はい、了解しました。それでは始めます」

 

魔理沙(マスター)からの承諾も受けて盾を地面に置く。すると盾から光が発せられ、幾何学的な空間が出現した。

 

「これは……カルデアにある召喚実験場と同じ……」

 

《シーキュー、シーキュー!もしもーし!よし、通信が戻った!》

 

そこへホログラムでロマンの姿が映り出す。オルガマリーと合流する少し前に、魔理沙の持つ通信端末で交信したので魔理沙とマシュは知っていた。しかし、初見のオルガマリーはまた声を上げる。

 

「はぁ!?ロマニ!?医療部門のトップなんかが何で出るのよ!」

 

《うひゃあああっ!?しょ、所長!?生きていらしたので!?あの爆発なのに!?実は化け物だったのか!?》

 

「失礼ね!それよりレフは、レフはどこ!」

 

《……大変申し上げにくいですが、あの爆発で生きていたスタッフは二十人程度。離れていたスタッフでもそれだけなのに、レフはレイシフトの指揮をしていたから生存は絶望的だ》

 

「そ、そんな……!じゃあ、マスター候補生たちは?」

 

《47人が危篤状態だ。医療器具は足りない。何人か助けられても残る大半は……》

 

「冗談じゃないわよ!すぐ冷凍保存に切り換えて!治療は後回し、まずは生存させる事が最優先よ!」

 

《ああっ、そうか!コフィンにはその機能がありました!》

 

ロマンは慌てて通信席から離れ、生き残ったスタッフに指示を送りながら通信の裏でマスター候補生の冷凍睡眠措置にかかる。その間、オルガマリーは爪を噛んで焦りぎみだ。

 

「……良いのですか?冷凍保存は本人の許可なく行えば犯罪行為なのに……」

 

「良くないわよ!ただ、生きてさえすれば後で幾らでも弁明できる。47人の命なんて私に背負える訳ないわ……!」

 

暫くしてロマンが戻ってきた。どうやら無事に冷凍保存を完了したようだ。流石に初めて実用する機能に難儀したか、一息吐きながら席に着いたロマンは引き続きカルデアの現状をオルガマリーに伝える。

 

『──報告は以上です。今のカルデアはシステムの八割を失っています。残ったスタッフではできる事が限られてるので、こちらの判断でレイシフトの修理、カルデアス及びシバの現状維持に人員を割いています』

 

「結構よ。ロマニ・アーキマン、貴方には引き続き私が戻るまでカルデアを任せます。私達はこれから……この特異点Fの調査をするわ」

 

『ええっ!所長自ら!?チキンの癖に!?』

 

「黙らっしゃいゆるふわドルオタ!この状況で何の成果も得られなければ、いよいよカルデアは破滅よ!これより霧雨魔理沙、マシュ・キリエライト両名を探索員として特異点Fの原因を調査、発見し次第退却します」

 

「見付けるだけなのか?」

 

と、ロマニとオルガマリーの話に着いていけてなかった魔理沙が口を挟む。

 

「当たり前でしょう。本来なら47人体制で行うミッションなんだから。残った人員がマスターもどきとなりたてのデミ・サーヴァントでは、調査も一苦労だわ」

 

『それについてなんですが、所長。マシュは恐らく防御特化のサーヴァントと融合していて、ましてや所長の言う通り融合定着から間もありません。ここは魔理沙ちゃんに召喚を試させてみては?』

 

「……それもそうね。不本意だけど、戦力を補強して損は無いわ」

 

「可能なんですか?確かシステム・フェイトはまだ不完全のはずでは……?」

 

「物は試しよ。このまま行って全滅じゃ洒落にならない。デミ・サーヴァント化した貴女を基点に、上手く機能してくれるかもしれないわ」

 

「良く分からんが、召喚か。魔法使いらしいな。それなら形から入るとしよう」

 

そう言うと魔理沙はふと手を服に翳す。

するとどうだろう。『ボワンッ☆』と軽快な音を立て、カルデア支給の白い魔術礼装は一瞬にして白と黒のエプロンドレスに早変わりした。

更に大きな帽子を出して被り、まるで古典的な魔女のような装いとなってマシュ、オルガマリー、ロマンの目を丸くさせた。

 

「よし、やっぱこの方が動きやすいぜ」

 

「す、凄い……詠唱も無しに、お伽噺の魔法使いみたいです!」

 

「まさしくその通りだ。カボチャを馬車に、ネズミを馬に、恵まれない少女を一晩だけのお姫さまに変える。それがこの私だぜ」

 

「…………貴女、一体何者?一般人じゃないわよね?」

 

「秘密だぜ。乙女には秘密があった方が良いだろ。まぁ、紫みたいにだと胡散臭くなるがな」

 

「……はぁ、もう問い詰めるのも埒が明かないわ……とりあえず召喚してみなさい」

 

分からない事だらけに疲れたか、オルガマリーは大人しく魔理沙に複数個の石を手渡す。七色に輝く魔力の石──聖晶石だ。

 

「おお、まるでこれに何十万も使い果たして破滅しそうな人間の欲望を感じる輝きだぜ」

 

「それは……何とも言えませんが、否定もできません……」

 

貰った石を召喚サークルの光にかざしつつ、魔理沙はそれらを召喚陣に投げ込む。そうする事で複雑な光の回転が置き、バチバチと火花を散らす。

 

「えーっと、そうだな。ここは魔法使いらしく呪文を……なんでも良いか。なんか出てこい!」

 

「そんな適当な!?」

 

元々このシステムに詠唱は必要無いが、それでも適当すぎた召喚文句にオルガマリーは堪らず突っ込む。勿論そんなのは関係無しに()()の光が収束、召喚陣の中心に人影が現れた。

 

「──新免武蔵守藤原玄……ごめん、やり直し!サーヴァントセイバー、新免武蔵。ここに推参!面白おかしく過ごさせてね、マスター」

 

出で立つ姿は侍。しかしその容姿は可憐な少女。刀を携えた勝ち気そうな少女は快活に笑いながら名乗る。新免武蔵……宮本武蔵と。

 

「お見事です、マスター。サーヴァント召喚成功しました」

 

「初めてにしちゃ上出来だな、私。よろしくな武蔵」

 

「こちらこそ。いやー、しっかし召喚されたのがこんな大火事の中とは思わなかった。もっと一段落ついた正月の場所だと思ってたわ」

 

「……ウソ……」

 

親しげに会話する武蔵と魔理沙、マシュの一方でオルガマリーはその結果に唖然としていた。実は余り期待しすぎてもなかった召喚システムが機能したのもそうだが、魔理沙が──召喚の光から察するに──強力なサーヴァントを呼び出した事にもだ。失敗してスカ、成功しても大した英霊は呼べないと踏んでいただけに開いた口が塞がらない。

更に、

 

「! マスター!今度は金色の光が!」

 

マシュの声に一同が振り向くと、召喚サークルの光が金色に輝いて収束している。そうして出現した二つの影に……今度は魔理沙が唖然とした風に呟く。

 

「…………なるほど、紫が言ってた細工ってのは、こう言う事か。こりゃ面白くなってきた」

 

 

 

「アサシン、魂魄妖夢。この刀は主と貴方のために振るいましょう」

 

「フランドール・スカーレット、バーサーカーよ。貴方が私の遊び相手?すぐに壊れたりしないでね」

 

 

 




魔理沙が説明会バックレて出番を削られたオルガマリー所長、初登場。原作で「あなた達(マスター候補生)は私達の道具」と言ってたけど、リヨぐだ子と二次創作界隈では貴女が玩具だよね。そんな所長が可愛いです……弄り要員として(ボソッ

魔理沙がカルデアに来たのは紫の差し向けでした。いくら紫でも人理焼却は察知できないかな?まぁ、そこはカルデアの資料を盗み読んだとでも別の解釈を。
そして紫の細工で妖夢、フランドール召喚!フランはバーサーカーで納得だけど、なんか妖夢がアサシンです、刀だからセイバーっぽいのに。そこの理由は次回で。宇宙にいるセイバー(殺)と仲良くなれそう。

因みに武蔵ちゃん召喚したのはfateサイドとのバランス取りです。あと強いし好きだから。ウチのカルデアにはストーリーに絡む予定だったり、この時点での召喚に難があったり、嫁だったり水着だったりで無理がある鯖だかりなので、無難な武蔵ちゃんが何とか選ばれました。妖夢、フランドール共々活躍に期待。

これでもマシュの初戦闘やカルデアのシステム説明とかを削ったのにこの長さ。やはり一節だけでも中々の質量です。次回は精進して気安く読みやすい長さを目指して書き上げる所存。


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第三節 明かされた真実

早苗「この変なTシャツヤロー!」

水着ノッブ「何でじゃ!イカしてるじゃろう!」

レベル90スキルマ目前のバニヤンを持つマスター、秋塚翔です。
少々お待たせしました。前回もっと長く書いても良いと言う免罪符を貰い、自重せず書きたい事を書いて、しかし長すぎて乱れてきたので書き直しまくり、やはり長く書いてこぎ着けた第三節。どうぞご覧くださいませ。


金色の光を放った召喚サークルに現れた二騎のサーヴァント。それは魔理沙が良く見知った知り合い、魂魄妖夢とフランドール・スカーレットだった。

 

「──って、どうして私がアサシンなんですか!?」

 

と、素に戻った途端に妖夢は不満を口にする。

 

「私に聞かれてもな。あれじゃないか?冥界に住んでるし、半分霊だからだろ」

 

「だけど暗殺者って!私は幽々子様の剣の指南役で、白玉楼を守護する剣士ですよ!?」

 

「庭師だろ。そういや萃香の異変(萃夢想異変)の時に会うやつ会うやつ斬りかかってたよな。辻斬りっぽいぜ」

 

「うっ……そ、それは師匠の教えで……!」

 

「ちょ、ちょっと。なに良く分からないやり取りしてるのよ?貴女たち知り合いなの?」

 

問答を始めた魔理沙と妖夢に、堪らずオルガマリーが口を挟む。たった今召喚したばかりのサーヴァントと一般人(なのか?とオルガマリーは疑い気味)が、何故知り合いの様に会話を交わしてる?マシュと、先に召喚した武蔵も同じ疑問を抱いてる様子だ。

 

「顔見知りの縁起が悪いもんだ。それにしてもお前らが召喚されるなんてな」

 

「私もビックリ。いつの間にか眠ってて、魔理沙の声が聞こえたから来てみたら変な知識が頭に入ってきたんだもの」

 

「だから形式に則って名乗りました。今の私達はサーヴァントと言う存在で、クラスやスキル、聖杯戦争がどういったものなのかは理解しています」

 

フランドールと妖夢がそれぞれ語る。どうやら紫が言っていた『細工』とは彼女達の召喚と見て違いないだろう。事前に紫からサーヴァントの成り立ちなどは教わっている魔理沙はそう推察した。

 

《何はともあれ、召喚は無事成功したね。初めて会った時から只者じゃないとは思ってたけど、三騎もサーヴァントを呼び出すなんて凄いじゃないか魔理沙ちゃん》

 

「まぁな。もっと褒めて良いんだぜ?」

 

「ふ、ふんッ、たまたまよ、たまたま。システム・フェイトは誰でも英霊召喚を可能にする技術。運さえあれば三流マスターでもサーヴァントを呼べるわ」

 

オルガマリーは毒づく。そこにはちょっと自分に言い聞かせてる部分があった。

 

「とにかく!これで準備は整ったわ。現時点より特異点Fの調査を開始します。原因を発見し次第、カルデアの復旧を待って退却。どんな事態であろうと()()()()()()帰ること、それが今回の目的よ!」

 

そんな自分の予想をことごとく裏切り、腹立たしく感じる魔理沙から視線を外して高らかに宣言する。落ち着き払ったその姿は、まさにカルデアを仕切るトップの貫禄だ。

と、そこへ手を上げて発言を求める者が一騎……妖夢だった。

 

「? 何よ」

 

「あ、はい。あの……余計な物言いなら申し訳ないですが『私達が生きて帰る』って、

 

──貴女、もう死んでますよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………(ZUーN)」

 

「気をしっかり持ってください、所長……」

 

自分は死んでいて霊体になっている──露とも思わなかった事実に、オルガマリーは茫然自失としていた。ふらつく足取りをマシュが支えて何とか立っていられている。

言われてみれば思い出す、カルデアを襲った爆発が自分の足元で起きた事を。一瞬の出来事だが確かな記憶。信じがたい事だが、嫌が応でも自覚せざるを得なかった……自分は、もう死んでいると。

 

「す、すみません。気付いてないようなのでつい……」

 

「……フ、フフフ、フフフフフ……そうね、お笑いね。まさか死んでるのに気付かないなんて。そう言えば体が軽いわ。これ、レイシフトできて嬉しいんじゃなくて肉体が無いからなのね!笑えるわ。笑えるわよね?……いっそ笑いなさいよぉぉぉぉぉッ!」

 

「所長!大丈夫です、誰も笑いませんから!」

 

「うううっ、マシュ~……」

 

「はい、私はここに居ますよ」

 

さながら泣きじゃくる子供をあやすように、抱き付くオルガマリーをマシュは優しく撫でる。

一方、オルガマリー達の先を行く魔理沙らはお気楽に言う。

 

「死んだのは残念だが、落ち込んでばかりじゃ何も始まらないぜ?今日の運が悪かったんだ」

 

「そうそう。私が元いた世界では殺し殺されなんてザラよ?そんなの気にしてたら、楽しく過ごせないわ」

 

「と言うか人間と幽霊って違いある?飛べるようになるだけ、人間にとって得じゃない」

 

「武蔵さんはともかく、先輩とフランドールさんはどうしてそれほど達観してるんですか……」

 

感心すべきかどうするべきか、マシュは迷う(因みに戦闘時以外では呼び方を先輩に戻した)。そうした所で魔理沙はフォローのつもりだろうか。マシュに胸を借りるオルガマリーに言葉を投げ掛ける。

 

「まぁ、あれだ。生きてりゃ良い事あるって」

 

「だから死んでるのよぉぉぉぉぉっ!」

 

「ああっ、先輩の無意識か故意か分からない一言に、所長の精神が崩壊寸前です!」

 

いよいよワンワン泣き出したオルガマリー。それをマシュがお母さんばりになだめて、とりあえず一人で歩けるようになるまで暫く掛かったと言う……

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

生きている人の気配はなく、動くものは燃え盛る炎と、骨や手といった人ならざるものと言う特異点F──2004年の冬木市。そこを流れる川に面した土手を魔理沙一行は通りがかっていた。

 

 

 

「降ろしてぇぇぇぇぇっ!?」

 

「情けないなぁ。小鈴でも、こんな高さはへっちゃらだったぜ?」

 

 

 

……空を飛んで。

 

「大体、何で調査で空を飛ぶのよ!それにどうして私も道連れ!?」

 

「異変調査は飛んで探すもんだ、私はな。お前は落ち込んでいられるのも鬱陶しいから、ショック療法って奴だ」

 

「ショックにショックが重なってトラウマになるわよ!とにかく降ろして!落ちるぅ!」

 

「そんだけ騒げれば大丈夫だろ。さーて、もう一段上げていくぜ!」

 

「やぁぁぁめぇぇぇてぇぇぇっ!?」

 

凄惨な街の空に姦ましい声が響き渡る。箒に跨がって空を行き、声高らかにはしゃぐ女の子達と言う構図は傍目から見れば微笑ましいものだが、実際は落ちないように必死でしがみつくオルガマリーからすれば決して微笑ましくない。

その眼下ではマシュ、武蔵、妖夢、フランドールが地上から二人についていっている。

 

「先輩、破天荒すぎます……」

 

「人間ってあんなに高くまで飛べるもんなんだねー。私もできれば、剣術の幅が広がりそう」

 

「できると思いますよ?魔力や霊力が強い人間でああですし、霊体なら尚更です」

 

「本当に?なら、これが終わったらご教示願おうかしらっ♪」

 

そこそこの速度で先を行く魔理沙達だが、サーヴァントであるマシュらならついていくのは難しくない。高さの関係で離れてしまってはいるものの、この特異点に存在する敵性存在(エネミー)は魔理沙達に危害を加えられる遠距離手段が無いので、マシュ達は安心して同行していた。

 

《──先輩、何か見えますか?》

 

《いや、相変わらず焼け野原……もとい焼け街だ。ただ上の方が涼しいな。マシュも来るか?》

 

《断りがたいお誘いですが、所長の精神安定上では危険かと。相乗りをしたら恐怖で所長がご臨終です》

 

《私が行っても良い?熱くて溶けそうだわ》

 

《つまらなくて弾幕勝負を仕掛けてこなければ構わないぜ》

 

《ちぇー》

 

見通しの良い空を飛んでいる魔理沙に、マシュが念話を行う(入ってきたのはフランドール)。オルガマリーをなだめた後、魔理沙はマシュからサーヴァントと離れても会話ができるこの方法の手解きを受けたのだ。その際、

 

『先輩にも知らない事があるのですね、少し安心しました』

 

『知識欲の塊だからな。知ってる事もあれば、もちろん知らない事もあるぜ』

 

『……シンダシンダシンダシンダシンダ……』

 

『例えば、こんなのに活を入れるやり方は知ってる。ちょっくら調査がてら空の旅と行こうぜ、所長!』

 

『は?え、なに、待っ、待てぇぇぇっ!?』

 

『せ、先輩と所長が飛んだ……!』

 

と言う具合に、オルガマリーは魔理沙に空へ連れ去られて今に至る。確実に彼女の中で今日は、人生最悪の日断トツトップに殿堂入りした事だろう。

 

《とにかく注意してください、いつ思わぬ襲撃があるか分かりませんので。できれば傍にいてくださると有り難いですが……》

 

《大丈夫だって。私に任せ──》

 

答えかけたその時、ジャラララッ!と下方から金属の擦れ合う音を立てて鎖の束が飛んでくる。鎖は魔理沙達が跨がる箒に絡まり、力強く引き寄せてきた!

 

「うおっ!?」

 

「ちょ、今度は何ーーーッ!」

 

絡まれた鎖に引っ張られ、大きく揺らされる。そうしてバランスを崩した魔理沙とオルガマリーは箒から転落。魔理沙は難なく地面に着地するが、オルガマリーは辛うじても川に落ちた。

 

「先輩!大丈夫ですか!」

 

「ったく、出鼻を挫かれた。一体何だ……っとぉ!?」

 

事態にマシュ達が駆け付けて魔理沙が立ち上がろうとした瞬間、嫌な予感から魔理沙は前のめりに転がる。直後に鎌らしき武器が魔理沙の首があった場所を、空を切るように通り過ぎた。

マシュ達の元に転げた魔理沙がそちらを見やると、そこには鎌を携えるフードの女がいた。

 

「残念。新鮮な獲物を仕留め損ねました」

 

「サーヴァント……!?」

 

「いきなり襲ってくるとは不躾な奴だな……そして、趣味の悪い奴でもあるか」

 

黒いドレスに身を包む、槍のような鎌を持つ女にマシュは盾を構え、武蔵と妖夢も刀を抜く。

一方、魔理沙は苦々しげに女の周りを見る。不気味な雰囲気を醸す女だが、それを更に増させるのは周りに佇む無数の石像……どれも顔が苦痛に歪んだそれらは、()()だった。

魔理沙の言葉に女は妖艶な笑みを浮かべる。

 

「何か?私の狩り場に迷い込んだ獲物をどうしようと、私の自由ではないですか」

 

そう返しながら、女は徐に『ワカメみたいな髪型の男』の石像に手を這わせて……一息に首をねじ切った。

首を失った体から噴水のように鮮血が吹き上がり、女に返り血を浴びせる。

 

「これで一体減ってしまいましたが……問題ありません。新たに貴女達が加わるんですから」

 

「っ!マスター、指示を!」

 

「ああ、そこの妖怪みたいな奴を懲らしめろ!」

 

顔に浴びた血を舐め取り、魔力を行使して拭い去りつつ得物を一振りする女。それに魔理沙の号令の下、マシュ達は身構えた。対する女は嗜虐的に笑う。

 

「懲らしめる?私を?見たところサーヴァントやマスターになったのは初めてなのに、できるものでしょうか……ねッ!」

 

ダンッ!と地面を蹴って女は真っ直ぐ突撃。その手に握る鎌を勢い良く突き出す。

それを防御するのはマシュ。大きな盾を目一杯踏ん張り、ロケットスタートで繰り出してきた女の刺突を受け止める。武器と武器の激突に火花が飛び散り、地面が衝撃波で軽く抉れた。

 

「くっ……!」

 

「良く防ぎました。しかし気を付けなさい?これは『不死殺しの槍』。少しでも傷を負えばどんな奇跡でも癒えず、貴女はサーヴァントとして一生不出来になる!」

 

勢いそのまま、女は更に連撃を繰り出す。華奢な体に細い鎌……改め槍にも関わらずマシュを吹き飛ばさん威力だ。しかし防戦一方ではない。マシュの脇から武蔵と妖夢が飛び出し、二振りの刀で斬りかかる。

が、それらをバックステップで回避。少し下がった女は反撃とばかりに鎖の束を放つ。

 

「なんの!」

 

生き物のようにうねる鎖に対峙した武蔵は、刀を上段から振り下ろす。放たれた波濤で鎖は吹き飛ばされる。その波濤に乗じて駆け出したのは妖夢。右手に持つカードを高く掲げた。

 

──魂符「幽明の苦輪」──

 

「はあぁッ!」

 

「!?」

 

そうして突如分身した妖夢に、女は思わず驚く。半霊を実体化し、動きをトレースさせた妖夢は二連撃を叩き込む。不意を突かれて太刀を喰らった女は高く跳び、マシュ達と距離を取った。

 

「ふ……少しはやりますか。ならばお遊びはここまで。纏めて戴くとしましょう」

 

負傷を再生させた女は忌々しげに言うと、再び鎖を射出する。それは辺りに撒き散らされ、電柱や街灯に巻き付いて魔理沙達を囲う。さながら特設リングのように鎖が四方を取り囲んだ。

 

「に、逃げ場がありません!」

 

「元より逃がすつもりはないですよ?ああ、なんと瑞々しい……新鮮な内に殺してあげます……♪」

 

「っ……!」

 

リングを形作る鎖のロープに乗って、女は上から獲物たる魔理沙達を見下ろす。ここから攻撃されれば、上への不利と限られた空間で劣勢になるのは見えている。それを分かっている上で女は笑み、マシュ達は戦慄していた。

だが一人、落ち着いて状況を見る者がいた。

 

「さぁ、終わりです!」

 

「……ああ、そうだな、終わりだ──出番だぜ、フラン」

 

《はーい》

 

魔理沙だ。

自分のエリアに囲い勝利を確信する女を余所に、魔理沙の声に金髪の少女が霊体化を解く。現れた少女……フランドールは徐に右手を女に向けて突き出すと、呟きと共に何かを握り込む。

 

「きゅっとしてドカーン」

 

──バキャアッ!

 

「うあっ!?」

 

同時、まるで連動するかのように女の槍は粉々に砕け散った。突然弾けた得物に女は怯む。

『破壊の目EX』──フランドールの『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』が変化したスキル。エネミー本体を対象にできない制限が設けられてるものの、不死や破壊不能でない限り、宝具すら破壊の目を捉えて壊す事ができるものだ。

得物を壊され、怯んだ女に大きな隙ができた。その逆転を見逃す訳はない。妖夢が刀を伴い、スペルカードを宣言する。

 

「もらった!」

 

「! しまっ……!」

 

──断迷剣『迷津慈航斬』──

 

咄嗟に回避なり鎖なりで応対しようとする女だが、妖夢の瞬間的に上がる天狗すら見極められぬ敏捷にはついてこれない。青白い波濤が刀から立ち上り、力一杯叩き付ける。波濤は鎖すらぶったぎり、当然狙いの女は外さず、まともに喰らわせた。

凄まじい轟音が川のほとりで響き、やがて舞い上がった土埃が晴れる。そこにいたのは……満身創痍の女だった。

 

「く、っ……この、私が、こんな……!」

 

「チッ、しぶといぜ。一面ボスの割に固いな」

 

立っているのもやっとな様子だが、未だ憎悪に満ちて戦意充分な女。まだ育て切れてない妖夢の火力不足、そしてクラス相性の結果だ。それでもトドメを指さんと身構えたその時、

 

《やるな嬢ちゃん達。トリは俺に任せな》

 

「!」

 

何処からともなく声が聞こえ、何もない場所に男が現れる。魔術で姿を隠してたのだろうか。杖を持って見るからに魔術師と言う様相の男は、フードを下ろして女と相対する。対して女は、その男に見覚えあるようで憎たらしそうに言う。

 

「お前は、キャスター……!」

 

「よもや卑怯なんて言うなよ、ランサー。お前さんは嬢ちゃん達に喧嘩を売って負けた。俺には与り知らねぇ話だ」

 

「ぬぅ……!おのれぇぇぇっ!」

 

渾身の力を振り絞り、女……ランサーは男……キャスターに向かう。しかしサーヴァント同士でも満身創痍と全快。たとえ両者に元から力差があったとしても勝負は見えていた。

キャスターが空に描いた文字から火炎が放たれ、ランサーに着弾すると爆発。だめ押しの一撃を喰らったランサーは、虚空を見詰めながら消滅したのだった──

 

 

 

 

 

「悪いな。美味しいとこを持っていっちまってよ」

 

「いや、お陰で楽できたぜ。ありがとさん」

 

戦闘が終わり、騒ぎを聞き付けて他のエネミーが寄ってきていないのを確認すると魔理沙達はキャスターとコンタクトを取った。どうやら向こうもそのつもりだったようで、フレンドリーに話し掛けてくる。

 

「しかしお前さん、中々できた采配だな。油断させといて隠してたサーヴァントで武器を失わせるとは」

 

「別に隠してた訳じゃない。戦闘は三騎が基本だろう?それにフランは共闘に向かないからな。控えさせていざって時にだ」

 

「三騎って意味は分からねぇが、割かし考えた戦法だ。そんなお前さんなら俺を上手く使ってくれそうだねぇ」

 

「? どういう事ですか?」

 

マシュが尋ねる。

 

「つまり仮契約しようって話だ。俺はこの世界がおかしくなっちまったんで、聖杯の泥に侵されたサーヴァントを倒してたんだ。とは言え、まだランサーとアサシンだがな」

 

答えるキャスターはそこまで語って一拍置き、続ける。

 

「しかし問題はセイバーだ。奴はこのおかしな世界で水を得た魚のように暴れ出した。さっきのランサーや他のサーヴァントがあんななのはそのせいだ。奴は俺一人じゃ太刀打ちできねぇ。そこでアンタらのランサーを追い詰めた腕を見込んで、協力してくれないかって話だ……どうだ?お前さん達は俺の話に乗れば、この異変を止められる。悪くねぇ提案だと思うが」

 

川の欄干にもたれ、キャスターは真っ直ぐ魔理沙に問う。対する魔理沙は少し思案すると、言い淀む事なく答えた。

 

「お前があのランサーやセイバーってのと組んでて、私達を担ごうって可能性は捨てきれないぜ?状況として有り得なくない話だ」

 

「おいおい、そいつを疑われちゃ俺に信じてもらう手は無ぇぞ?ランサーの時も危なくなりゃ助太刀しようとしたが、嬢ちゃん達が思った以上でタイミング逃したんだ」

 

「冗談だぜ。宜しくな、キャスター」

 

「んだよ、大人をからかうなんざ大した度胸だ。ますます気に入ったぜ、嬢ちゃん」

 

そう掛け合い、協力の証とばかりに握手を交わす二人。快活な辺り結構似ているのかもしれない。

と、和気藹々とした一同に後ろから忍び寄る影があった。それはゆらりゆらりと近付き、一息吸うと……怒鳴りを上げる。

 

「わ、た、し、を……忘れるんじゃないわよぉぉぉぉぉっ!」

 

「あっ!?しょ、所長!?」

 

しまった、とマシュは息を飲む。川に落ちたのを確認したが、まずは魔理沙の身の安全と後回しにし、不覚にも忘れていたオルガマリー。濡れ鼠の彼女にマシュとは反対に、魔理沙はあっさりとした反応だ。

 

「よう、やっぱり無事だったか所長」

 

「アンタ良く言えたわね、それ!?無事だったか?無事じゃないわよ!落ちるわ濡れるわ冷たいわ!せめてサーヴァント倒したらすぐ助けに来なさいよ!?」

 

「すまん、忘れてた。けど生きてたんだから怒るなよ」

 

「もうとっくに死んでるのよ私はッ!」

 

「冷たいと感じられるって事は生きてるようなもんだ。それに頭が覚めたろ?死んだの気にしてる暇があったら先に進もうぜ」

 

「■■■■■■■■■■──!」

 

「先輩、とりあえず謝っといた方が良いかと……そろそろ所長が怒りを通り越してバーサーカーになりそうです」

 

「ハッ、賑やかだねぇ。こりゃ退屈しなさそうだ」

 

「同感だわ。はちゃめちゃだけど、面白いマスターに恵まれたわ」

 

「ただ自分勝手なだけですがね……」

 

「ねぇ、そんな事より早く行きましょう?熱くて堪らないわ」

 

新たなサーヴァントを迎え入れ、方向性も決まった魔理沙一行。彼女達を待ち受けるのは恐ろしい敵。しかし一行は賑やかかつ騒がしく、異変解決に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふっ、キャスターが漂流者に取り入ったか。じきにセイバーの元に向かおう。私の役目が近いな」

 

その光景を遥か遠くから眺める弓を持つ男。彼はいずれやって来るだろう彼女達の様子を見て、好戦的に口角を上げた──




即バレしていくスタイル。シリアス展開を見事ブレイクしてみました。
この為に妖夢を……と言いたいですが、ほとんど思い付きで妖夢とフランにしたので「あ、妖夢なら幽霊見分けられるしバラさせちゃうか!」と成り行きでこうなりました。お陰でウチのオルガマリーは立派にシリアスが無くなってコミカルキャラ路線を歩み出してます。

ランサーメデューサ撃破とキャスニキ参入。キャスニキ以外クラスを知らないから終盤まで『女』と呼称させてしまった、すまないメデューサさん。願わくば実装してください。
もう後半はアニメやゲームのシナリオを見て書いてなかったので、何かおかしな点があればご指摘を。特にキャスニキの口調がこんなんだっけなと。もうね、長く書くと急ぎすぎて自分クオリティになるから困る。

今回登場したフランのスキルなどに関しては、次回投稿後にプロフィール欄を公開するのでそこで詳しく。次回はvs黒アーチャー。魔理沙とキャスニキのタッグ戦で繰り広げます。

コメントや評価をくださると有り難いです。執筆を頑張る活力になるので。


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第四節 大聖杯へ

「ネロレッド!」

「アンデルセン(仕事で)ブルー」

「……ロビングリーン」

「ガウェインイエロー!」

「キアラ(規制的な意味で)ピンク」

「ドレイク(BBAだから)シルバー!」

「ギルゴールド!」

「「「「「7人揃って、EXTRA戦隊CCC!」」」」」

「なんでアイドルのアタシが敵サイドなのよー!」

「みこーん!?せめて規制的な意味でもピンクが良かったですー!」

「はーい、文句垂れずこちら側にいましょうねー?」



ふと降りてきました。反省してる、だが後悔はしてない。何人かいないのはCCC未プレイかつ長くなるので割愛と言う事で(苦笑)
今回はかなり筆が乗りました。乗りすぎて短くなったので加筆。なので後半はちょっと文章に乱れが見えますが、読めないほどでは多分ないのでご安心をば。ではご覧くださいまし。


「ぬぅおおおおおおおおおおッ!」

 

野太い雄叫びが、焼き払われた街をビリビリと震わせる。

それに呼応するように叫ぶ男──ライダーのサーヴァントの取り巻きかの如く、竜牙兵や腕の数々が大挙して眼前の少女達に迫っていた。

 

「こんなに相手するの、吉岡の連中以来ね!」

 

「遊び道具がたくさん!さっき遊べなかった分、壊してあげるわ!」

 

相対するは武蔵とフランドール。地上から武蔵、上空からフランドールが大挙しているエネミーを掃討する。

一方、その後方に控えるのはマシュ、妖夢、キャスター(クー・フーリン)魔理沙(マスター)とオルガマリーを守るため、迫り来るエネミーを片付けている。

何故前線の武蔵達が二騎きりで、後衛が三騎と多いか。それには理由があった。

 

──禁弾「カタディオプトリック」──

 

「! 来ます!皆さん注意して!」

 

「アハハハハハーッ!」

 

フランドールがスペルカードを出したのにマシュがいち早く反応し、盾をより踏ん張って構える。妖夢とキャスターも得物やスキル『矢避けの加護』を用い、高笑いを上げるフランドールから放たれる弾幕に備えた。

そう、後衛が多いのはフランドールがいるから。ランサー戦後にも魔理沙が言ったが、フランドールは共闘に向かない。それは弾幕が凶悪だからだ。なのでマシュたち防御や回避、弾幕処理に長けた三騎が後衛で魔理沙達を守っている。

もちろんそうするだけの弾幕、エネミーには一堪りも無い。壁や柱に反射して暴れる弾幕に、エネミーの大群は壊滅的に一掃されていった。

 

「いやー、話には聞いてたがバーサーカーって扱いづらいんだな」

 

「当たり前よ。一流の魔術師でも自力じゃ魔力消費や制御でデメリットが大きい。しかもあれだけのサーヴァント、この時代の冬木にいたアインツベルンや遠坂の家でも扱い切れるかどうか……」

 

「ま、扱いづらくても使い方は知ってるがな。フラン!そろそろ宝具開放して良いぞ!」

 

「はっ!?ちょ、貴女そんな躊躇なく……!」

 

その号令はフランドールに聞き届き、オルガマリーの制止は間に合わずしてフランドールはスペルカードを掲げた。

するとその手に持つ奇妙な形の杖から炎が舞い上がり、一つの巨大な剣として形成。それを振り上げたフランドールは、眼下のエネミーの大群めがけて繰り出す。

 

「もうあなたはコインいっこ分もコンテニューできない!──壊れちゃえ、『禁忌の炎剣(レーヴァテイン)』!」

 

──ズッバアアアアアアアアアアン!

 

天を衝くほどの炎剣が、火炎弾を撒き散らしながら大群に叩き込まれる。より破壊的な火力は大地すら灰塵と化させ、竜牙兵や腕を堪える余裕すら与えず消滅させていく。下手しなくても素材なんて焼き尽くしてしまっただろう。

 

「ぐぅぅぅッ!?」

 

その中で、ライダーだけは耐え抜く。冬木の街より燃え盛るそこで身を焼かれつつも、上空のフランドールを撃墜せんと攻撃しようとした……が、切り分かれた炎の隙間から人影が飛び込んでくる。武蔵だ。

 

「斬り捨て御免、ってね。南無、天満大自在天神──」

 

ライダーめがけて駆けながら宝具開放の詠唱を始める。その背後に不動明王が顕現し、4本の腕にある剣でライダーを襲った。

 

「仁王倶利伽羅仰天象!……ゆくぞ、剣豪抜刀!伊舎那大天象!」

 

「ぬがあああああーーーッッッ!!!」

 

続けざまに武蔵が自らの刀に波濤を纏わせ、ライダーに喰らわせる。凄まじい五連撃に、いかなフランドールの宝具を耐えたライダーも断末魔を上げ、そのまま消滅したのだった──

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

ライダーを撃破した後、一行は新たに加わったキャスターを先頭に、特異点の原因たるセイバーのサーヴァントがいる地点を目指して林道を歩いていた。

 

「──じゃあバーサーカーのサーヴァントとは無理に戦う必要は無いのね?」

 

「ああ、どういう訳か奴は森にある城跡から全く動こうとしない。こちらからつっかからなきゃ、敵の駒として数えなくて良いだろう。相手が相手だけに放っておくに越した事ァねぇしな」

 

「それもそうね……さっきの戦闘が良い例だわ」

 

キャスターとの話からオルガマリーはフランドールを見やる。

戦闘前の方がマシだったほど地形を変えさせたライダーとの戦いでの暴れぶりには、バーサーカークラスの恐ろしさの片鱗を見た。そして、それだけの力があるのを知っててなおフランドールに宝具を使わせた魔理沙の恐ろしさも。

因みにいつもの調子に戻っているオルガマリーだが、魔理沙やフランドールのドライな反応に落ち込んでるのが『馬鹿馬鹿しくなった』らしい。それでも先のショックは軽いトラウマとなっているので、マシュ達は極力『オルガマリーが死んでる件について』は触れない方向で接しているのだ。

 

「おっ、着いたぜ。この先がセイバーの居座る大聖杯のある地だ」

 

と、目的地に来たキャスターは足を止める。

そこは横に掘られた洞窟。流れる空気や響き渡る音から、相当広大な空間が広がっているのが推察できる。

 

「これは……天然の洞窟ですか?」

 

「半分天然、半分人工よ。魔術師が長い年月をかけて拡げた地下工房ね」

 

「まるで地底に続いてそうだな」

 

魔理沙はいつか解決した間欠泉が噴き出し、悪霊が湧いた異変を思い出す。それを余所に、オルガマリーがキャスターに問い掛けた。

 

「大事な事を確認してなかったけど、セイバーのサーヴァントの真名は知っているの?何度か戦ったような口振りだったけど」

 

「そりゃな。セイバーの真名は宝具を見れば嬢ちゃん達だって嫌でも分かる。他のサーヴァントがやられたのも、奴の代名詞ともなる宝具によるものだ」

 

「一体それは……」

 

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)。騎士の王と誉れ高い、アーサー王の持つ剣だ」

 

 

 

「「「!」」」

 

後方からの男の声に、一行が振り返る。少し小高い崖のそこに弓を持った男が一人。全体的に黒い印象を受ける白髪の男に、キャスターは皮肉っぽく言い放つ。

 

「おう、言ってる傍から信奉者の登場だ。相変わらず聖剣使いを護ってんのか、テメェは」

 

「……ふん、信奉者になった覚えは無いがね。招かれざる客を追い返す程度の仕事はするさ」

 

「要は門番じゃねぇか。何からセイバーを守ってるのか知らねぇが、ここらで決着をつけようや」

 

杖の先を向け、いつでも攻撃できるよう構えるキャスター。同じくマシュや妖夢達も、目の前の敵──恐らくアーチャーのサーヴァントに各々武器を抜く。

と、その時……

 

「ちょっと待ったー!」

 

「! マスター?」

 

まさかのちょっと待ったコール。突然割り込んだ魔理沙は、帽子の鍔を下げつつ前に出る。キャスターより前、アーチャーの真ん前に。

 

「そろそろ私にも暴れさせな。後ろで指示するばかりも少し飽きてきたところだ」

 

「は……はあぁっ!?何言ってるのよこの白黒マスター!いくら出鱈目な貴女でも、生身でサーヴァントに敵う訳ないでしょう!」

 

余りにブッ飛んだ発言に、オルガマリーが代表して声を荒げる。マシュも同意見と言った面持ちだが、妖夢は結構普通。フランドールは不満げに口を挟む。

 

「独り占めしないでよ、魔理沙。私もやる!」

 

「令呪を以て命じる。『私の言うことを聞け、フランドール』」

 

「あっ!?……ズルい!」

 

「お前の味方も巻き込む危なさは良く知ってるんでな。セイバーの方はくれてやるから、こっちは寄越せ」

 

令呪を一画使い、魔理沙はおどけながらフランドールを制する。そんな魔理沙にアーチャーは呆れ気味な様子だ。

 

「サーヴァントを引かせて、マスター自らが出るか。とても正気の沙汰とは思えんな」

 

「狂気の沙汰でも楽しむのが私だ。スリルの後に飲む酒が旨いんだ、これが」

 

箒とミニ八卦炉を手にし、有無を言わせず臨戦態勢を取る魔理沙。オルガマリーの言う通り、生身の人間が尋常ならざる力を持つサーヴァントに立ち向かうのは常識的に無謀と言えた……少なくとも、マシュとオルガマリーの中では。

 

「安心しろ。伊達に私も修羅場(ルナティックモード)を掻い潜ってない。お前らは異変の黒幕を頼んだぜ」

 

しかし魔理沙に、その常識は通用しない。いつだって彼女は自分の思うままに動く。常識とか理屈とか、魔理沙には関係無かった。

それを、彼女のサーヴァントであるマシュは言葉から感じ取る。

 

「……分かりました。こちらも任せてください、マスター」

 

「ちょ、マシュっ!?」

 

「大丈夫です所長。まだ知り合って短いですが……マスターの、先輩の言葉は信頼できます。何故か分かりませんが、そうだと分かるのです。だから私もマスターの信頼に応えます」

 

耳を疑うような様子のオルガマリーに、マシュは凛として語る。そこに不信や不安と言った一分の迷いは無かった。

 

「…………~~~っ!あぁ!もう何で神様はこんな滅茶苦茶な奴を生き残らせたのよッ!」

 

唯一残ったマスター候補の暴挙、自分と同じ価値観があると思っていたマシュの真っ直ぐなマスターへの信頼。思う通りにならない状況を、オルガマリーは神に恨む。そして納得いかないと顔に出したまま魔理沙に向く。

 

「分かった!自信があるなら任せるわ!その代わり、セイバーは私達が倒すわよ!私の采配で!大元を倒せなくて、後で後悔しても知りませんからね!」

 

「ああ、期待半分で任せるぜ。早く行って倒さなきゃ、私が総取りしちまうぞ?」

 

「ぐっ……!い、言われなくても!」

 

「それではマスター。ご武運をお祈りしています!」

 

ふんっ!と文字通りそっぽを向き、オルガマリーは洞窟に踏み入る。彼女に続くように武蔵と妖夢、やはり不満げなフランドール、最後にマシュが魔理沙の身を案じながら先へ進む。残ったのは魔理沙と……魔理沙と並び立つキャスターだけとなった。

 

「まだ成り立ての新米マスターかと思いきや、マスターどころか一端の戦士じゃねぇか、嬢ちゃん。俺もご相伴に与って良いか?(アーチャー)とは因縁があるもんでよ」

 

「仕方ないな。特別だぜ?言った手前なんだが……一人じゃ手に余る相手だ」

 

「……やれやれ、果たして良い度胸だと褒めるべきか蛮勇だと笑うべきか、迷うものだ」

 

「どう思おうが勝手だ。だが、良かろうと悪かろうと最後は評価を変えてやるぜ」

 

「大した自信だな。ならば見せてもらおうか、その元となる実力を!」

 

言って、アーチャーは剣を投影(トレース)。弓に装填すると矢に変換して並び立つ魔理沙とキャスターに放つ。しかし初手を読んでいたキャスターは即座に迎え撃った。

 

「『eihwaz(エイワズ)』!」

 

詠唱と共に矢は消滅。と同時に、魔理沙がミニ八卦炉から星型の弾幕を撃ち返す。それをアーチャーが上に跳んで避けると、続いて箒に乗り追い掛ける。

 

「隙ありだ!」

 

「む……!」

 

追い掛けたスピードのまま、箒をアーチャーに繰り出す。魔力で強化した箒の穂は、鈍器のような威力を持っている。

が、アーチャーはそれも仰け反って回避。そしてムーンサルトでもするかのように、魔理沙に蹴りを見舞い返す。即座にガードした魔理沙だが、重い一撃に弾き飛ばされた。

 

「そちらがな!」

 

「! うおっと!?」

 

弾き飛ばした魔理沙にアーチャーは弦を引き絞り、矢を三本纏めて撃つ。空を切り急所めがけて飛んでくる矢を、魔理沙は少し慌てながら態勢を立て直すついでに掠る(グレイズ)。その間にアーチャーが地上に降りると今度はキャスターの火炎がアーチャーを襲い、剣を投影して切り飛ばした。

 

「ふっ、良い攻防と連携だ。口先ばかりでなくて安心したよ」

 

「お前もな。相手に取って不足なしだ」

 

「場所を変えようや。ここじゃお互い満足に戦えねぇだろ」

 

「上等だ……!」

 

また投影した矢を撃ち放ち、キャスターを動かさせるアーチャー。三者は戦いながら拓けた場所に移動するのだった──

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

「あー、もう!腹立たしい!何なのよあの白黒は!」

 

洞窟を進むオルガマリー一行。その中核をなすオルガマリーは、怒り収まらぬ様子でズンズンと歩いている。もちろんその原因は彼女が白黒と罵る少女、魔理沙だ。

 

《バイタルチェックする必要ないくらいお怒りなのが分かりますね、オルガマリー所長》

 

「どうも所長と先輩の相性は最悪のようです。まるで以前に文化として視聴した、仲良く喧嘩する猫と鼠のように」

 

《それはむしろ仲良い気が……》

 

「誰とどこの白黒が仲良いですって!?」

 

《うひゃあっ!?ま、全くそんな事は言ってないけど、ごめんなさいッ!》

 

聞く耳を持たないくらい苛立つオルガマリー。基本的な何でも指示通りに進ませてきた彼女としては、常識外れの魔理沙は度しがたい苛立ちの対象だろう(次点でロマンも)。振り回されたのも乗じて、オルガマリーにとって魔理沙は天敵だった。

 

「でもあのくらい滅茶苦茶な方が、面白くって良いと思うけどなー。ほら、何でも思い通りだと味気無いじゃない?」

 

「魔理沙さんの場合、思い通りにならなすぎて厄介なんですよ。前なんて霊夢さんと幽霊捕まえて涼んでて、いくら言っても満足するまで解放しないんだから……」

 

「パチュリーがいつも頭痛そうにしてたわ」

 

「私も非常食用のドライフルーツだけじゃなく、頭痛止めの薬を常備したくなるわよ……」

 

三者三様。魔理沙について色んな意見が飛び交う。それにマシュとロマンは仕方なく見守るしかなかった……

そんなこんなしている内に元が広い洞窟の視界が突然拓けて、より広い空間に行き着く。人が何万、何十万入るかと言う広大な空間。その中心に大聖杯が鎮座していた。

 

「これが大聖杯……超抜級の魔術炉心じゃない……なんで極東の島国にこんなものがあるのよ……」

 

余りの規模の代物にオルガマリーは先程での怒りはどこへやら、呆然とする。と、武蔵と妖夢が何かに感付いた。

 

「……驚いてるところすみません。どうやら現れたようです」

 

刀を抜き、それぞれの構えを取る二騎。マシュ達が見れば大聖杯の根本、高い断崖の上に()()がいた。見るからに凄まじいオーラを放つ剣士が。

 

「なんて魔力放出……あれが、本当にアーサー王なのですか……?」

 

《間違いない。何か変質しているようだけど、彼女こそブリテンの聖剣の使い手、アーサーだ。伝説とは性別が違うけど、何らかの事情で男装していたんだろう。お家事情で。宮廷魔術士(マーリン)の悪知恵だろうね》

 

モニターに示される霊基反応から、ロマンはその剣士をアーサー王と断じる。するとそのアーサー、セイバーのサーヴァントは感情の見えない顔を笑みに歪めた。

 

「──ほう。面白いサーヴァントがいるな。面白い、その宝具。構えるがいい、名も知れぬ娘よ。その守りが真実かどうか、この剣で確かめてやろう!」

 

「来ます!所長、指示を!」

 

「ええ、見てなさい白黒っ!貴女のサーヴァントに完璧な指示をして悔しがらせてやるわ!」

 

一層魔力の放出が強くなったセイバーに、マシュを始めとしたサーヴァント達は身構える。オルガマリーも意気は充分に、セイバーを撃破しようと指示を下そうとした。

だが、その時。

 

 

 

「っ!?あ、貴女は……!」

 

「え……?」

 

 

 

「…………」

 

「! もう一騎サーヴァントが!?」

 

セイバーの後方から別の、キャスターの話なら撃破した4騎と魔理沙とキャスターが相対しているアーチャー、城から離れないバーサーカーの計6騎いる敵サーヴァントとは明らかに違うサーヴァントが現れたのだ。

そのサーヴァントはセイバーに視線を送り何か話しかけると、構えていたセイバーが下がり、新たに現れたそのサーヴァントが前に立った。

 

 

 

瞬間、マシュ達の目の前は光に包まれ、反応する隙も無く爆発に飲まれてしまうのであった──

 

 

 




謎のサーヴァント登場。まぁ、コラボ先見れば『謎』じゃなく大体お察しかと思いますが……正体については気付いた方もコメントでは言わない方向で願います。匂わせる程度ならOK。

フランドールの宝具が炸裂。スペルカードを宝具とするのも良いけど、やはり最大の一撃みたいな宝具然としたのも欲しいなと思い変えてみました。そのキャラの象徴となるスペルカードを宝具、それ以外を通常攻撃扱いにしたって形です。もちろん宝具化してるスペルカードを通常攻撃として使う事も可。その場合、威力も他のスペルカードレベルに落ちますけどね。
分かりにくければ以後改めて。

アニメでライダーのサーヴァントって誰!?と思ったら誰も何もダレイオス三世だったと後で気付いたのは俺だけじゃないはず。俺だけ?

アーチャー戦は魔理沙とキャスニキのタッグが相手となりました。魔理沙ならアーチャー戦辺りで戦いたくなるかなと。「マスター自らが出るか」って言うけどアーチャーさん、第五次はマスターがサーヴァントと戦って、なおかつ勝ってますよね?まぁ、この歴史がおかしくなった冬木では知らぬ事でしょうが。

次回はアーチャー戦決着。そしてマシュ達の命運やいかに。

宜しければコメントや評価をどうぞ!我が執筆の糧としてくれよう!(訳:執筆の励みになります)


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第五節 染まった陰陽

アーチャーエリちゃん「エリちゃんが四騎実装されたようだな……」

ライダーエリちゃん「フフフ……奴らはエリちゃんの中でも序の口……」

アサシンエリちゃん「あの程度で『何度も出てきて恥ずかしくないんですか?』は豚共の早合点よ……」

バーサーカーエリちゃん「ハロウィンイベントが本当に今年で最後だと誰が言った……?」

ルーラーエリちゃん「終わりとは始まりの事よ……」

アヴェンジャーエリちゃん「来年のハロウィンは今から始まっている……」

エリちゃんヴォイド「さぁ、真のエリちゃんライブをお見せしよう……」

アルトリアも残すはキャスターで七クラス揃うんだから、エリちゃんがこのくらい出てきてもおかしくない(多分有り得ない)



そんな茶番は置いといて、大変長らくお待たせしました!斜め上を行くハロウィンイベはとっくに終わり、クリスマス復刻が今日から始まる丸々一ヶ月。お待ちいただいてた方は本当に申し訳ない!前置きはこれまでにして、待たせといて出来映え65点の第5話をご覧あれ!


(花の魔術師め、まさかこれも仕込みの内か……!?)

 

人気が無く、静寂に包まれていた山の上の寺。その屋根に立つアーチャーはここに居ない誰かに向けて悪態を吐く。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

──魔符「スターダストレヴァリエ」──

 

「……!」

 

そんなアーチャーの更に頭上、箒に跨がり夜空を飛ぶ魔理沙が弾幕を繰り出す。寺と言う場にはそぐわない色鮮やかな星々が降り注ぎ、アーチャーは屋根の上を駆けて掻い潜る。

 

「俺の事も忘れんなよ!『ansuz(アンサズ)』!」

 

「! チィッ!」

 

更に地上のキャスターが援護射撃を行う。宙に描いたルーン文字が幾つもの火球となり、アーチャーを強襲。舌打ちするアーチャーは屋根瓦を踏み砕く勢いで跳躍しかわした。が、そうして空中に移ったのを魔理沙は見逃さない。

 

「がら空きだぜ!」

 

──星符「サテライトイリュージョン」──

 

スペルカードを切り替え、自分の周りに七色の魔法玉を浮かばせて魔理沙は猛然と突っ込む。彼女と違い、空中を満足に動けないアーチャーは回避行動を取れない。それを狙って魔理沙は一気に詰め寄る。

 

「──甘いッ!」

 

が、一方的にやられてばかりのアーチャーでは無かった。手にある弓を霧散させると、新たに黒と白の双剣『陽剣・干将』『陰剣・莫耶』を投影。自分の攻撃だけを考えて突っ込んできた魔理沙に、一瞬腕が消えるほどの神速で振るい、その周りに浮かぶ魔法玉を叩き割る。

 

「なっ……!?」

 

バキャアッ!と、派手な音を立て魔法玉を破壊(スペルブレイク)された魔理沙は目を剥く。アーチャーはそうして呆けた魔理沙に、容赦なく蹴りを見舞った。

反応が遅れガード間に合わず、魔理沙は牽制代わりの蹴りをまともに喰らって吹き飛ぶ。更にアーチャーは追撃とばかりに手の夫婦剣を投げようと腕を交差させた。

 

「させるかよ!」

 

「!」

 

しかしキャスターがそれを阻む。杖を地面に突き立て、炎と共に木組みの巨大な腕を召喚。捕らえんと襲ってきたのに、アーチャーは標的を変更し剣を投擲する。そして宝具の神秘を解放する『壊れた幻想(ブロークンファンタズム)』で以て、腕を爆破相殺した。その起こった爆風に乗り、アーチャーは離れた位置に着地する。

 

「痛ててて……助かったぜ、キャスター」

 

「気を付けな。そう簡単に仕留められりゃ苦労しねえよ」

 

「ああ、1ミスでも痛いからな。もう油断しないぜ」

 

言って魔理沙は、墜落し倒れていた石畳から軽い調子で起き上がる。伊達に入道のパンチや居眠り門番の拳法などを喰らっていない。あの程度は大したダメージになってないようだ。

それを見て、アーチャーは観念した風に口を開く。

 

「……やれやれ、正直見くびっていた。存外やってくれる」

 

「お前さんこそ中々やるな、私の次ぐらいには。私が勝ったらその剣を作る魔術を教えてくれても良いぞ?」

 

「ふん、考えておこう」

 

適当に答え、アーチャーは再び──魔理沙が目をつけた──投影魔術を行使する。

認めたくはないが、魔理沙(あのマスター)を遠距離の撃ち合いで相手取るのは悪手だ。たかがマスターと侮り、先に潰れるか結局はキャスター頼りになるだろうと踏んでいたのが読み違いで、むしろキャスター無くしてアーチャークラスの自分と渡り合う上、矢すら見切ってかわす(グレイズする)のだから、自分の常識内に収まらない一人の敵だと改めざるを得ない。加えてキャスターがいる現状、弓や剣と言った同じ手に拘っていては最悪押し負ける。

ならば、とアーチャーはこの状況下に適した武器をイメージ、形にする。両の手に投影し終えた今までと毛色の異なる()()に、キャスターが眉をひそめた。

 

それは──銃。先ほど投影して見せた黒と白の夫婦剣の面影を持つ二丁拳銃が、ほの暗い中で鈍く光っている。

 

「使い慣れてない類いの得物だが、今は(これ)が丁度良い。さぁ、再開だッ!」

 

「!!」

 

と、二丁拳銃をアーチャーが向けてきたのに、魔理沙とキャスターは即座に反応、二手に散った。引き金が引かれ、火を噴いたのをやり過ごした一人と一騎は、それぞれアーチャーに攻撃を仕掛けんとする。

 

「ハアッ!」

 

アーチャーが二丁拳銃の利から、その二丁を分担し魔理沙達を狙い撃つ。それをスキル『矢避けの加護』で防いだアーチャーが、今は手元に無い愛用の槍のように杖を握り直し、鋭い刺突を繰り出した。

空を切るほどの速さで打ち込まれる刺突を、アーチャーは刀身でもある銃身で受け止める。更にそのまま銃口をキャスターに合わせて発砲。キャスターは、それを辛うじて掠った程度に済ます。

 

「これでどうだ!」

 

──魔廃「ディープエコロジカルボム」──

 

一方、遅れて魔理沙は何かを投げ付ける。

それは小瓶。アーチャーとキャスターの間に転がった小瓶は、内包している魔力を膨れ上がらせて光を放ち出す。

 

「ッ……!」

 

「おいおいマジか!?」

 

鍔迫り合っていたサーヴァント二騎が驚いた瞬間、チュドーンッ!と破裂音を上げて小瓶は魔法爆弾としての機能を発揮し、大きく爆ぜた。

幸いにもキャスター、そして残念にもアーチャーはその爆発から逃れて離れる。

 

「──あっぶねぇな!もろともかよ!?」

 

「言ったら奴さん(アーチャー)にも避けられるだろ。それにお前って、こう言うのがお家芸な気がしたんだが」

 

「何の話だ!?」

 

それはランサーの時である。この人でなし。

 

「ったく……まぁ、チャラにしてやるか──引っ掛かったぜ」

 

「! なんだとっ……!?」

 

驚いたのは、再び距離を取ったアーチャーだった。キャスターがニヤリと笑い杖を一振りすると、アーチャーが降り立った地面に()()()()()()ルーン文字が出現。気付いたアーチャーが何かアクションを起こすより早く、地面から樹木が急成長し捕獲する。

 

「森の賢者を舐めるなよ。こんな事もあろうかとトラップを仕掛けといたのさ。獣を狩るのと同じもんさね」

 

「おお……やるじゃないかキャスター。そして私もナイスプレー」

 

「ハッ、その傲慢さはいっそ清々しいぜ。さーて嬢ちゃん、ここはトドメを譲ってやる。デカいのぶちかましてやりな」

 

「うぐっ……!」

 

樹木に絡み取られ、身動きが取れないアーチャー。かくなる上は二丁拳銃の神秘を解放して自爆覚悟で抜け出すか……そう考えていた時、外が覗き見れる木々の隙間から目映い光をアーチャーが見る。それこそは魔理沙が構えたミニ八卦炉から発する光。見るからにマズいと思える魔力が集まっていた。

 

「行くぜ!しかと目に焼き付けな!」

 

放たれるは魔理沙お得意の一撃。『弾幕は火力だぜ』と豪語する彼女の代名詞とも言える光と熱の魔砲。パワーの体現。その名も……

 

──魔砲「マスタースパーク」──

 

撃ち放たれ、樹木に囚われるアーチャーが漏らす苦悶の声すら掻き消える魔力の波動が寺をも飲み込む。しかし寺は破壊されない。あくまでも狙ったもののみを、その力の限り吹き飛ばす。キャスターが生み出した巨大な樹木も熱が焼き尽くし、宝具かと思わせる程の火力は数秒して収束した。

 

「……やったか?」

 

余りに手加減なく吹き飛ばしてしまい、確認が取れない事をつい魔理沙が滑らせる。

しかし、いつだってその一言はお約束とばかりに逆の結果を生む。煙を上げる焼け残った樹木から何かが飛び出し、その刃で魔理沙の首を狙った!

 

「! 嬢ちゃん!」

 

「うおっ、とぉ!?」

 

が、幾多の弾幕──弾に限らずナイフや刀まで──を避けてきた魔理沙。類い稀な回避能力で、振るわれた刃を屈んでかわす。それでも冷や汗が魔理沙の体温を一瞬下げるほど、反射的に避けれたのは幸運のほか無かった。

一矢報いる反撃も失敗に終わった()()()()()は、霊基を消滅させながら薄い笑みを浮かべる。

 

「今のもかわすか……とんだマスターが来たものだ。負けたよ」

 

「……お前こそ大したガッツだぜ。運が味方しなけりゃ結果は逆だったかもな」

 

「だが勝者はキミだ。敗者は大人しく去るとしよう……願わくば、縁あって召喚される事を祈る」

 

魔理沙の一撃が決定打になるも、それでも最後に魔理沙を試して限界を迎えたアーチャーは姿が薄れゆく。今にも消えようとしながら、ふとアーチャーは思い出す。勝者である彼女達に伝えるべき事を。

 

「ああ……大聖杯に向かうなら急いだ方が良い。あそこにはセイバーの他に、もう一騎アーチャーのサーヴァントが居る。先に行かせたお仲間を心配すべきだろう」

 

「別のアーチャーだと?俺は知らねえぞ、そんなの」

 

「私も先程知ったからな。あの英霊は只者ではない様だ。精々用心して先を行くと良い──」

 

伝えて、アーチャーの霊基は完全に消滅した。守護者として後の事を規格外過ぎる、だからこそ引っくり返してくれそうな異邦者(マスター)に託して……

 

 

 

《──よしっ、漸く繋がった!聞こえるかい魔理沙ちゃん!?》

 

 

 

と、そこへ丁度良いタイミングで通信が入る。魔理沙が慣れない手付きで腕の機器に触れると、ホログラムが現れて慌てた様子のロマニが映し出された。

 

「ロマン?どうした、そんな愉快な顔して」

 

《愉快!?って、それはそれとしてだ!早く大聖杯に向かってくれ!正体不明のサーヴァントの攻撃を受けて所長達がピンチだ!》

 

「! 何だと?」

 

ただ事ではないロマン。その報告に魔理沙は、今しがた忠告してきたアーチャーの言葉を思い出す。ロマンの言う正体不明のサーヴァント。それがアーチャーの言葉と合致して信憑性を生んだ。

伊達に異変解決をこなしてきてない魔理沙、そこからの行動は早かった。

 

「……キャスター!乗れ!マシュ達の所に行くぞ!」

 

「お、おぉ!」

 

箒に跨がる魔理沙。急ぐならサーヴァントの脚力に頼るより、こっちの方が断然早く着く。ただ一つの問題は安全性だが、考えるよりまずは動く質の魔理沙には関係無く、後は度胸だけだった。

 

「なぁ嬢ちゃん、大丈夫なのか?こんな箒なんかで」

 

「全くの無問題だぜ。少なくとも曲がれなくて死ぬアホみたいな真似はしないから、箒に乗ったつもりで安心しろ」

 

「なんか良く分からんが引っ掛かる言い方だなぁ、オイ!」

 

「気のせいだろ。さぁ、善は急げだっ!」

 

──彗星「ブレイジングスター」──

 

「う、うおおおぉぉぉッ!?」

 

魔理沙は浮かび上がると共にスペルカードを宣言。箒の穂に取り付けたミニ八卦炉からマスタースパークが噴射、その推進力で一気に凄まじいスピードで魔理沙達はかっ飛ぶ。後ろに乗り込んだキャスターが空気抵抗に持ってかれそうになるのを堪えているのに気を配らず、魔理沙は一直線にマシュ達の元へ向かうのだった──

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

洞窟を最速で突っ切り、程無くして大聖杯に辿り着く。

広い空洞の中に一際大きな物体が淡い光を放っているのが目立ち、魔理沙はそれを大聖杯だと認識し、目を見張った。外の魔術に関する知識は聞いた程度にしか知らないが、魔理沙とて魔術の使い手。それがどんな魔力を有していて、何たるかは察せられる。故に思わずコレクター魂の火が点きかける……が、

 

「遅いのよぉぉぉぉぉっ!!」

 

全体に響き渡るほどの悲鳴に似た怒声で、現実に引き戻される。見れば声の主はオルガマリー。魔術で張った防壁に身を隠しているが、既にボロボロだ。

更にボロボロの彼女の足元には、更にボロボロ……霊基が消滅してもおかしくないほど手酷くやられたらしき妖夢とフランドールが気絶して転がっている。どうやらオルガマリーは、戦闘不能に陥った二騎を庇いつつ自分を守っていた様だ。

 

「おう、所長。ソイツらはどうしたんだ?」

 

「どうしたもこうしたも無い!セイバーは私の采配で倒すって宣言しといて恥も外聞もカルデアスにぶち込むけど、早く来なさいよ!もう大変なんだからぁ!」

 

今にも泣きそう、と言うか既に泣きが入っているオルガマリー。そこに爆発を避けて一人の少女が近くに滑り込んできた。武蔵だ。

 

「あれ、マスター?こりゃ都合が良いや。つかぬ事を聞くけどあの子はマスター達の知り合い?妖夢ちゃんとフランちゃんが真っ先にやられちゃって分からないんだけど……」

 

こちらもまたダメージを負っている様子の武蔵が、魔理沙に向けて問い掛ける。魔理沙は武蔵が立ち向かう方向、何やら空に浮かんでいる敵らしき影を見やった。

その姿に魔理沙は息を呑んだ。自分の色合いに似た黒い容姿は新鮮。しかしほぼ毎日縁側で茶を飲んでるか、境内で掃除のふりをしているのを見てきた姿は見間違えようがない。むしろ見違えて目を疑う始末だ。

魔理沙は、その良く見知った敵の名を呆れ混じりで口に乗せて発する。

 

「おいおい冗談だろ?お前がそっち行くか──霊夢」

 

「……魔理沙か。久し振りね、と言っても大して日は開いても無いか」

 

博麗霊夢──楽園の素敵な巫女。結界の守護者。もう一人の異変解決専門家。本当なら、こう言った異変には一番に乗り出す少女が敵として魔理沙達の前に立ちはだかっていた。

魔理沙を視認し、いつもの口振りな霊夢。しかし口調とは裏腹に表情は冷ややか過ぎるほど冷ややかだった。まるで妖怪を退治する時のような、慈悲も情も無い冷たい目。敵を見る目が魔理沙達に突き刺さる。

その視線から目を反らすと、遠くにマシュと別の黒いサーヴァント──あれこそセイバーのサーヴァントだと分かる──が一騎討ちで戦っているのに気付いた。マシュはセイバーの繰り出す攻撃に防戦一方で劣勢のようだ。

 

「嬢ちゃん、あれはお前の知り合いか?空を飛ぶ巫女の英霊なんざ聞いた事ねえぞ」

 

「…………キャスター、武蔵と一緒にマシュの援護しろ。所長はとりあえず使えなくなった妖夢とフラン抱えて隠れてな」

 

「あ、貴女はどうするのよ!?」

 

「なーに、ちょっと手に余る奴の目を醒まさせにな。アイツは私が良く知ってる本気になれば洒落にならん妖怪巫女だ。私が相手するに限る」

 

言って、魔理沙は霊夢と同じ目線へと飛び行く。地上に置いていかれたキャスターと武蔵は、そうした魔理沙の指示に従おうと無言で頷き合いセイバーとマシュが戦う場に駆け出した。

 

「よう霊夢、一体どうしたんだ?何か悪いモンでも拾い食いしたか」

 

一方、空を飛び上がった魔理沙は霊夢と向かい合う。

 

「別に。どうもしないわ。それより退いてくれる?私は仕事しなきゃならないのよ」

 

「珍しいな?グータラなお前が仕事とは」

 

「ここは人間じゃない奴が多いからね。妖怪退治が私の仕事よ」

 

平淡な顔付きで答えた霊夢は魔理沙の後ろ、オルガマリーと妖夢やフランドール、セイバーと交戦するマシュや武蔵やキャスターに視線を配らせる。つまり妖怪退治とはそう言うこと……魔理沙は察した。

 

「確かにサーヴァントや所長は生きてる人間じゃないな……だが、今は私のみたいなモンだぜ?横取りする気か?」

 

「ええ、寄越しなさい。妖怪は退治するもの。それを邪魔するならアンタを蹴散らすまでよ」

 

「やれやれ、どうやら本当に悪いモンを食ったようだな。どれ、一つこの魔理沙さんが治してやるとするか!」

 

おどけながら魔法陣を展開する魔理沙。それを見て霊夢も陰陽玉を出現させる。わざわざ布告しなくても分かる、シンプルな弾幕勝負の開始だ。

霧雨魔理沙と博麗霊夢(オルタ)。かつての夜が明けない異変の時の、今回は善と悪がはっきりした対決が、鮮やかな弾幕で大空洞が彩られると同時に始まった……!




今話で最も手こずって一ヶ月かけたアーチャー戦。シャドウアーチャーは泥をかぶってるから、形は違えどエミヤ・オルタだよなと夫婦剣の改造拳銃使わせてみた。
遠距離戦得意なアーチャーだから魔理沙との弾幕勝負にピッタリと思いきや、意外と使いにくかったのは失敗。そこで変化球をつけてみまして何とか決着に持ち込めましたがどうだったでしょう?思い付きレベルの展開なので、エミヤ・オルタの銃はエミヤ・オルタだから使えるんだろ!って批判が怖い。CCCイベやった後だとエミヤ・オルタはオンリーワン感が強いから尚更です。

そして謎のサーヴァント、正体は霊夢オルタでした。二騎目のアーチャーって、奇しくもギルガメッシュポジションだなぁ。
正確にはシャドウサーヴァントみたいな見た目ですが、セイバーに倒されてないのでオルタと言う事で。妖怪もといサーヴァント退治に拘ってるのも、霊夢が里の人間に抱かれてる「妖怪を退治する巫女」ってイメージが反映した反転存在みたいなものとしてそうなってます。
そんな霊夢と魔理沙のタイマン勝負。次回も必見でしょう(多分)

もう次話は着手してるので、少なくともまた一ヶ月に投稿なんてのはありません。早く一手間加えたオリジナル展開のフランス編を書きたい。

宜しければ感想、評価をお願いします!


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第六節 決着(KNOCKOUT)

清姫「ふふふ、嘘はいけませんよ、ま・す・た・ぁ……?」

一ヶ月かからない(大嘘)
きよひーに焼かれても仕方無いこの体たらく。クリスマスプレゼントです!と誤魔化そうにも少し過ぎましたね……大変長らくお待たせしました(土下座)

何だかんだ手こずってたらUA10000突破、お気に入り登録は200人の大台間近。何かイベントで砂集めてたの優先してたが申し訳ない。こんな不甲斐なさはこれっきりにしたい所存です。

長いお詫びと言い訳はこの程度にして、どうぞご覧くださいませ。今回ちょっとだけ短か目。書きたい事書き切ったんだがなぁ。


「うわっと!?」

 

追い込まれ、思わず地上に不時着した魔理沙へと大量の御札が降り注ぐ。それらを慌てて掻い潜り再び箒に飛び乗った魔理沙は、頭上で浮かぶ霊夢に向けて憤慨した。

 

「何するんだ!今のは反則だろ!?」

 

「関係無いわ。私は妖怪退治を邪魔するアンタを蹴散らす。遊びに付き合う暇は無いのよ」

 

「ったく、遊びの無い奴め……それを言うんなら、もっと退治すべき奴を遊ばせてるのはどうなんだ?」

 

呆れ気味に言って指で指し示す魔理沙。そちらを見ると、マシュ達三騎がかりで尚も圧倒するセイバー──セイバーオルタの姿があった。

キャスターの火球、武蔵の剣技、そしてマシュの必死の守りも押し返し、オーラの如く赤黒い魔力を噴出させるセイバーオルタ。それは騎士王の名に相応しい強さと言えた。だが、異変の中心である彼女は妖怪退治と謳う今の霊夢からすれば真っ先な対象なはずだ。

それを一瞥した霊夢は、しかし事も無げに答える。

 

セイバーオルタ(あれ)は一旦見逃してるだけ。アンタ達を片付けたら、その後で退治して私の役目は終わりよ」

 

「……お前、おかしくなったついでにつまらなくなったな」

 

「どう思おうが勝手。これが私の在り方よ」

 

「なるほど。だったらお前こそ退治しなきゃな。面白おかしくピチュってやる!」

 

──黒魔「イベントホライズン」──

 

言いながらスペルカードを宣言。渦を描くように魔方陣が回り、色とりどりの星をばら蒔く。

大空洞を彩る、場違いにも芸術的な星の弾幕。しかし霊夢はそれに気も留めず、流れるように合間を縫ってすり抜ける。飛んでくる矢を目視で避ける魔理沙も大概だが、霊夢はそれ以上だ。

そして掠りもしないで、お返しとばかりにスペカを掲げた。

 

──霊符「夢想封印」──

 

「! くッ!」

 

宣言し、両手を広げた霊夢から大きな光弾が放たれる。物理法則を無視した軌道を描くそれらを魔理沙は咄嗟にガードで防ぐ。

バキィンッ!──受けて分かる、常よりも馬鹿みたいな霊力(魔力)が籠められた数発きりの光弾に、派手な音を上げてガードが解かれた。それでも魔理沙自身は無傷で済む。と、ガードの解かれた直後を狙って死角から霊夢の直接攻撃が襲った。

再びのガード間に合わず、まともに喰らう魔理沙。弾き飛ばされて態勢を立て直し、霊夢の方に向き直ると……

 

「……おいおい、私はただの邪魔者だろ?嫌に容赦無いな」

 

「抜け目無いアンタを甘く見るほど馬鹿じゃない。宝具(これ)で終わらせるわ」

 

「そりゃ有り難迷惑な評価だぜ……」

 

目を離した隙に七つもの陰陽玉を出現させ、その内の一つが先程の攻撃をカウントするように発光させている霊夢の姿を魔理沙は苦々しく見上げた。

()()()()である魔理沙は良く知っている。それは霊夢天性の究極奥義、その準備段階だ。恐らくあと六回の攻撃を許したら手が付けられなくなる……魔理沙は怖さ半分スリル半分で笑みを浮かべ、ならばと右手を突き出した。

 

「そっちがそう来るなら、私もマスターとしての力を使うか。令呪を以て命じる──『そろそろ起きてこい、妖夢』!」

 

そう述べると、手の甲にある紋様──二画残る令呪が赤く光り、魔理沙の前に一つの影が突如現れる。それは長刀を一振りして溜め息混じりに口を開く。

 

「……サーヴァント使いが荒いですよ、()()()()?」

 

「出番を作ってやるんだ。寝込むのは後にしな」

 

皮肉っぽく言う影改め妖夢に、魔理沙は無遠慮に返す。妖夢は先の霊夢との戦闘でダメージを受けているが、怪我を気遣う心優しい人種は幻想郷でも中々いない。それを重々承知する彼女は、魔理沙をサポートするため霊夢に刀を向けた。

 

「反則なんて今更言うなよ?最初にズルしたのはお前だからな」

 

「構わないわ、纏めて片付けられるから」

 

短く受け入れた霊夢、言うが早いか巨大な御札(ホーミングアミュレット)を繰り出す。対して魔理沙と妖夢は二手に分かれ回避、それぞれに攻撃を仕掛けた。

 

「ッハアァ!」

 

「ふッ!」

 

接近した妖夢の刀の一閃。それを霊夢は霊力で強化したお祓い棒で弾き、返す刀より早く昇天脚──言わばサマーソルトキックを炸裂させる。そうしてまた一つ陰陽玉を光らす。

入れ替わる形で魔理沙がイリュージョンレーザーを射出し、霊夢を狙い撃つ。だが光の速さで迫る光線すら霊夢は華麗にグレイズ。空間移動で魔理沙の背後に回り込み、強烈な一撃を見舞ってきた。立て続き陰陽玉の輝きが増える。

 

「チッ、あの強さも反則だぜ……!」

 

「これならどうだッ!」

 

──人鬼「未来永劫斬」──

 

魔理沙が舌打った端で、妖夢が空を滑るように駆け出す。刀を構え、目にも留まらぬ神速で斬りかかった。

それを霊夢はあっさりと喰らう。ズバッ!と衣を裂く音を立てて妖夢の刀が霊夢を斬る……が、その攻撃を甘んじて受けたはずの霊夢は、バラリと御札の塊に崩壊。バラけた御札が妖夢を襲った。

 

「!? 変わり身……!」

 

「──フッ!」

 

迫る御札の奇襲を慌ててかわす妖夢。そうするのを誘ったのか本物の霊夢が急接近、お祓い棒を繰り出した。妖夢は殴り飛ばされ、次いで飛ばした先に霊夢が先回り。更なる追撃で打撃数を稼いだ。

 

「こんのォ……!」

 

──魔砲「ファイナルマスタースパーク」──

 

それを目の当たりにし、業を煮やした魔理沙はミニ八卦炉を構えて極大のマスタースパークを解き放つ。広域を覆う魔砲に霊夢の姿は飲み込まれたように見えた。

「……やったか?」──ふと呟く魔理沙。しかし、いつだってその一言は逆の結果に終わる。背後にまた現れた無傷の霊夢が魔理沙を蹴り飛ばしたのだ。

こうして六つの陰陽玉が輝く。あと一つで発動する宝具で魔理沙も妖夢も纏めて片付け、それから地上の奴らも退治。これで霊夢の役目は終わりだ。決してそれが人間のためでなくても、黒く染まった彼女は気にしない。たとえ人類が滅ぼうと今の霊夢は妖怪退治と言う目的に"囚われて"いた。

 

結果、陰陽玉を粉砕した一撃を()()ではない霊夢は避けるどころか砕け散った陰陽玉を見るまで反応する事すら叶わなかった──

 

「…………なっ……!?」

 

「……ふぅ、アサシンらしく上手く行った。これでチャラですよ、霊夢さん」

 

いつの間にか前方にいた妖夢が後ろ向きで言う。何が起こったのかは分からない。ただ一つ分かるのは、自分と同じランクの敏捷と踏んでいた妖夢が、反応できない速度で陰陽玉を破壊(スペルブレイク)してきたと言う事だ。

『従者』──主の無茶ぶりをも遂行すべく、自身のステータスを上昇させる妖夢のスキル。妖夢はこれを用いて敏捷のランクをBからA+へと瞬間的に上げ、霊夢の虚を突いたのだ。

この手を考えたのは魔理沙。交戦の最中、念話で妖夢に指示したのだ。本来の霊夢なら得意の勘により何か企んでると感付いていただろう……が、それはできなかった。逆にそれを感付いていた人物が霊夢に迫ってくる。

 

「やっぱおかしくなって、つまらなくなった上に勘も鈍ってるな、霊夢!」

 

──「サングレイザー」──

 

「──!」

 

妖夢の方に意識を向け過ぎたせいで、霊夢は魔理沙の接近を許してしまう。黒化し、妖怪退治に囚われ、結果本来の彼女たらしめる力を失った今の霊夢を見抜いていた魔理沙は、スペカ宣言と共に凄まじいスピードで特攻。霊夢が何か言うよりも早く、霊夢を撥ね飛ばした。

間髪入れず箒の上に立ち、打ち上げた霊夢めがけて再び突撃、箒の柄で突き上げる。

 

「く、あッ……!?」

 

「私のイメージカラー(白黒)をパクったのが運の尽きだ。大人しくいつものめでたい色(紅白)に戻ってな」

 

そのまま打ち抜き、爆散。大空洞を明るく照らす爆発に呑まれ、霊夢はあえなく墜落する。地面へと落ちながら、その体は光の粒子へと変換された。

 

──後は頼んだわよ、魔理沙……

 

口に乗せたか否か、正気に戻ったように霊夢は笑い、消滅する。そこに残された『緑色のアイテム』を手に取り、魔理沙はもう届かないだろう声で呟く。

 

「次会う時は、勝った暁にお茶一杯淹れてもらうぞ?」

 

「──霧雨!」

 

と、そこへ下から良く通る声が届く。未だ一回休みのフランドールを背負ったオルガマリーだ。魔理沙と妖夢は地上に降りる。

 

「おう、所長。忙しくて悪いが、私はマシュ達の方に行くからな」

 

「勝手になさい。こちとら引き受けといて返り討ちで格好つかないったら無いわ……」

 

バツが悪そうに、あるいは不満そうに口を尖らせるオルガマリー。しかし先の戦いを見て認めざるを得ないのだろう。魔理沙に託す。

 

「妖夢はご苦労さん。まだ万全じゃないだろ?後は任せろ」

 

「あ、一応気遣ってくれるんですね」

 

「一応お前らのマスターだからな。ホワイトなマスターに恵まれた事を感謝しな。それじゃあ一丁解決してくるぜ!」

 

言って魔理沙は飛び立つ。目指すは激戦の音が依然響くマシュ達の元。星の光を撒き散らし、魔理沙は決戦の場に急ぐ。

その姿を見、先の戦いを思い返しながらオルガマリーはふと独りごちる。

 

「……弾幕、良いなぁ……」

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

「脆い。数で来ようとこんなものか」

 

「なんて、強さ……!」

 

「クソッ……伊達にアーチャーやバーサーカーを倒してねえってか……!」

 

一方でそのマシュ達の方。こちらも決着が近い。

余りある魔力を惜しみなく噴き出し、いかんなく力を発揮するセイバーオルタ。キャスターや武蔵の猛攻、マシュの必死の守りもものともせず、とうとう膝をつくマシュ達の前で毅然と立つ。

 

「終わりだ。失せるが良い」

 

ドウッッッ!と、言いながらセイバーオルタの掲げた黒い聖剣が魔力を上乗せし、空気を震わせる。天を貫かんばかりの黒い光。その威圧感は宝具であると嫌でも分からされた。

それを見上げて息を呑むマシュ達。必ず勝利をもたらす聖剣の光は、さしものキャスターも戦慄する。

 

だが、それでもなお立ち上がり身構える少女がいた──マシュだ。

 

「マシュちゃん!?」

 

「おい、どうするつもりだ!」

 

「っ……大丈夫です、武蔵さん、キャスターさん……お二人は、私が守ります……!」

 

積み重なったダメージで満足に動かない体に力を込め、巨大な盾を支えるマシュ。宿る英雄も、宝具の真名も分からない身で余りにも無謀な行動だ。しかし、マシュは決して退かない……魔理沙(マスター)なら、そうしないから。

先輩(魔理沙)のサーヴァントとして、仲間を守らず恥ずかしい姿は見せられなかった。

 

「良い覚悟だ。その宝具の力で、我が宝具を受けてみろ──『卑王鉄槌、極光は反転する……

 

光を呑め!約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガ)ァァァン!!』

 

──ドンッッッッッ!!!

 

放たれた聖剣の光。全てを呑まんとする黒い光が一点、マシュと正面衝突する。

 

「うあぁぁぁぁッ……!!!」

 

悲痛さにも似た、力みの声をマシュが漏らし、盾をあらんばかりの力で踏ん張る。少しでも気を緩めれば消し飛ばされる、最早キャスターや武蔵の介入も叶わないエネルギーの奔流。だからこそマシュは仲間を守るため、魔理沙にあの時(爆破事故)の礼を言うため死力を尽くす。

だが、いかな気の持ちようで何とかなるほど黒き騎士王の力は容易くない。際限ない高エネルギーの光線は容赦なくマシュを食らわんと力を叩きつけてくる。もう、駄目だ……!──そうマシュの頭に弱音が過った時、

 

魔理沙の手が盾を握るマシュの手に重ねられた。

 

「……!先、輩……?」

 

「まだまだ気張れよマシュ!大トリの私のために!」

 

マシュはもちろん、後方の武蔵達も驚く中、駆け付けてきた魔理沙は快活にニッと笑いかける。

それを見て、マシュは不思議な力が込み上げてきた。実質的なものではなく、気持ち的なもの。自信に満ち溢れた魔理沙の笑みに、マシュも活力が湧いてくる。

今なら何でも出来る気がする──そう思えた時、魔理沙の残り一画の令呪が独りでに魔力を受け渡し、マシュは溢れん限りの力に任せて叫んだ。

 

──それは全ての■、

 

        全ての■■を癒す、

 

               我らが■■……

 

 

 

顕現せよ、『■■■・■■■■■■』──!

 

 

 

「! なにッ!?」

 

驚愕の声を上げたのはセイバーオルタだった。

マシュのところどころ霧がかった詠唱と共に現れた半透明の城壁。それが聖剣の一撃を受け止め、防ぐ。

そしてその防壁に遮られたエネルギーは行き場を失い逆流。宝具の正体に動じたセイバーオルタに轟音を立てて打ち返された。

 

「……ぐうッ……!」

 

しかし、セイバーオルタは倒れない。放たれる方と返される方のエネルギーがぶつかり、最小限のダメージに抑えられたのだ。

が、そのダメージが決定的な隙を生み、反撃を許す事となる。

 

「──大した火力だが、幻想郷じゃ二番目だぜ!」

 

「!」

 

煙が晴れ、最初に姿を見せたのは魔理沙。その傍から気力尽きかけながらも身構えるマシュ、立ち上がった武蔵とキャスターが続いて現れる。先頭の魔理沙はミニ八卦炉を突き出し、既に発射寸前まで整えていた。

実は霊夢との戦いで魔理沙は魔力をほぼ使い果たしている。そこで取り出されたるは霊夢から託された緑色のアイテム──『ボム』。それを燃料に魔理沙は放つ。霊夢が託し、マシュが守り、武蔵達が繋いでくれた極大の一発を。

 

──恋符「マスタースパーク」──

 

「マスタァァァァァ……スパァァァーーークッ!!」

 

「ッ!『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!!」

 

咄嗟にセイバーオルタも宝具を再発動。白と黒。一瞬すら無い間を置いて光線と光線がぶつかり合い、形容しがたい衝突音を響かせる。

 

片や光を呑む反転した極光。片や光と熱の魔砲。

 

片や人間である事を捨てた騎士王。片や人間のまま成り上がった魔法使い。

 

全く逆の拮抗。伝説と幻想、力の差は誰が見ても圧倒的だろう。しかし、その衝突にある勝機は何かが違った。

 

「ぬうぅッ……!」

 

「吹っ飛べぇぇぇぇぇッ!」

 

それは何なのか。上手く言えないが、果たして神が定めたろう結果を裏切り、力が全ての眩い光が勝利を約束されたはずの黒い光を逆に飲み、セイバーオルタをも巻き込む。

あらゆるものを吹き飛ばす魔砲の一撃。黒すらも染める白い光に包まれ、セイバーオルタは耐える。耐えて、耐えて……そして呟く。

 

「……そう、か……穢れなきあの者らしい。良きマスターを得たな、■■■■■■──」

 

言って、セイバーオルタはその耐えた力を緩める。その無表情を貫いていた顔には笑みを浮かべて光を甘んじて受け止め、自身の敗北を受け入れたのだった──




霊夢とセイバーオルタ、ダブル決着(KNOCKOUT)
実は書き始め当初、今回は霊夢だけにしてセイバーオルタは次回に回す予定でした。でも次回の展開的に纏めた方が良いかなと、試行錯誤してダブル決着に持ち込んだ。結果削り過ぎて、書き足しても6000文字越えなかったけどペースはどうだったでしょう?個人的には書きたい事も書けて満足ですが……投稿に一ヶ月以上かけてしまったのが反省点。

霊夢は最初宝具を使わせるつもりでした。ですが、いかんせん描写が難しい。霊夢が無闇に強いのもネックでしたが貴重なアドバイスをもらいまして阻止する形で失敗に。妖夢のスキルを活用できたので行幸です。

そしてセイバーオルタも、結局魔理沙の手柄総取りで撃破。ボムって原作ではチートアイテムですよね。fgo風に例えれば『無敵付与+敵単体に超強力な攻撃』……うん、宝具クラス。なので使う機会は今回限りか、今回の使い方通りただのブーストアイテムになりますね。原作通りの性能で使わせたら六章や終局なんかがヌルゲーと化します。

次回は満を持してあのエセスピードワゴン登場。作者はそう呼んでます。ただで帰すと思うなよ……?(黒笑)


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第七節 少女は裏切りに疵を残す

リヨぐだ子ちゃんはAP100%+の金リンゴとAP50%+の銀リンゴを握り潰してこう言いました。

「次はお前がこうなる番だ」



新年明けましておめでとうございますm(_ _)m
今年は戌年、つまりアニキの年です。しかし拙作のキャスニキは今回退場と言う……アニキらしい(オイ
前回一ヶ月以上かけといて、実は今回二日で書き上げてる事実。ムラがあり過ぎますが、そのため今回深く考えずはっちゃけまくりました。シリアス?何それQPに換金したら幾ら?なレベルです。

では新年初投稿、初笑いだと期待しつつ、ご覧ください。


「してやられたな……」

 

尚も毅然と立つが、その身体は消滅を始めているセイバーオルタ。よもやこの期に及んで戦いを続行する意味も無い。騎士らしく武器を霧散し、代わりに予想外の結末から自嘲する。

 

「聖杯を守り通すつもりでいたが、まさかマスターに敗北を喫しようとは……結局、私一人では同じ末路を迎えると言う事か」

 

「? どういう意味だ、そりゃ?」

 

口振りに気を留めた魔理沙が問い掛けるも、セイバーオルタは自身の消滅が近い事を悟り、答えにならない言葉を返した。

 

「いずれ貴様も分かるだろう。グランドオーダー──聖杯を巡る戦いは、まだ始まったばかりだとな」

 

そう言い残し、セイバーオルタの霊基は完全に消滅。その場には水晶体──セイバーオルタの所持していた聖杯が現れる。

と、同時にキャスターの身体も光の粒子に包まれた。

 

「……!やべぇ、ここで強制帰還か」

 

「キャスターさん!?一体……!」

 

「この事態を維持してたセイバーが消えて、俺も漸くお役御免ってこった。最後の最後みっともなかったのは心残りだが仕方無え……後の事は宜しくな」

 

やれやれ、と杖を担ぎ退去を受け入れるキャスター。そうして仮とは言え契約し気に入ったマスター、魔理沙の方へと向き直った。

 

「そんな訳で次があったら、そん時はランサーとして喚んでくれや。きっと力になってやるぜ」

 

「本当か?何度も死なれたら世話無いぞ」

 

「口の減らねえ奴だな、おい……」

 

「半分冗談だ。こっちこそ、その時はルーン魔術とやらを教えてくれよ?」

 

根は結構似てる二人、そう言い合って笑うとキャスターは消え去る。召喚されても別人でしかなくても、再会を誓って……

そこへ入れ替わるかのように、フランドールをおぶり妖夢を引き連れたオルガマリーがやって来た。先のセイバーオルタの言葉を聞いていたらしく、真剣な面持ちで呟く。

 

「……冠位指定(グランドオーダー)……あのサーヴァントがどうしてそおほひょふほ(の呼称を)

 

しかし、それは突如小さな手に頬を引っ張られて形無しにされた。

 

「ってちょっと!人が真面目な時になに!?」

 

「だってもう起きたんだもの。降ろしてくれなきゃ困るわ」

 

怒るオルガマリーが背後に振り向く。ちょっかいを出したのは今しがた目覚めたフランドール。不機嫌そうに言う彼女に、オルガマリーは怒鳴り声を上げる。

 

「誰が背負ってあげたりしたと思ってるのよ!さっきまで伸されてた役立たずの癖に!」

 

「あら、生意気な人間ね。血を吸って下僕にしてやろうかしら」

 

「ひぃッ!?ま、待ちなさい!霧雨!このサーヴァントを令呪でまた止めて!」

 

「あー、それは無理だ。この通り品切れだぜ」

 

「なぁぁぁッ!?」

 

「ぎゃおー、食べちゃうぞー!」

 

「待って待って待ってぇぇぇっ!?お菓子!お菓子あげるから!だからやめてぇぇぇっ!?」

 

すぐさま威勢を失い、フランドールを放り投げ涙目で逃げ出すオルガマリー。それをフランドールは牙を剥き、襲う真似をしながら追い掛ける。魔理沙はおかしそうに高見の見物。つられてマシュ達も笑みが溢れた。

激戦から一転、和やかな雰囲気に包まれる一同。異変は解決した。後は聖杯を回収してカルデアに帰還すれば終わり。カルデアの被害やオルガマリーの件もあるが、ひとまず一段落だ──誰もがそう思う。

直後、大空洞に響き渡る拍手と聞き覚えある声で魔理沙、マシュ、そして何よりオルガマリーは各々驚きを表した。

 

 

 

「──いや、まさか君達がここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容の許容外だ」

 

 

 

「……!レフ、教授……!?」

 

大聖杯の前、発せられる光を後光に現れた人影にマシュは目を疑う。

紳士然としたスーツにシルクハット、人の良さそうな笑顔を貼り付けたその人物はレフ・ライノール。爆破事故で行方知れずとなっていたカルデアの技師だ。

それがこのタイミングで、有り得ない場所に立っている。マシュ達に違和感が募る。

 

《レフ……!?レフ教授だって!?彼がそこにいるのか!?》

 

そこへロマンから声だけの通信が入る。どうやらカメラ機能が不具合を起こしたのか、こちらの影像は映っていない様子だ。

レフはそのロマンの声に親しげに話し掛ける。

 

「ロマニ君か。君も生き残ってしまったんだね。すぐ管制室へと言ったのに、全く……どいつもこいつも統率の取れないクズばかりで吐き気が止まらないな」

 

「っ!マスター、私の後ろへ!あのレフ教授は危険です!」

 

ニヤァ、と歯を剥いて凶暴な笑みを見せたレフに、マシュは魔理沙の前に立ちはだかる。武蔵、妖夢、フランドールもまたマシュと同じく危険を感じ取り身構えた。

だが一人だけ、そんなレフに歩み寄ろうとする者がいた──オルガマリーだ。

 

「所長!?」

 

「レフ……ああ、レフ、レフ、生きていたのねレフ!」

 

熱に浮かされたようにオルガマリーは一歩一歩近付く。マシュの声など届いていない。

カルデアの最高責任者として気苦労の絶えぬオルガマリーにとって、レフはかけがえのない人物だ。故に訝しむより無事を喜び、今回の件で積もり積もった感情を慰めてもらうべくレフの元に向かう。当のレフはそれを良く分かり、優しく言葉を掛けてきた。

 

「やあオルガ、君も来ていたのか。()()()()()嬉しいよ」

 

瞬間、何とか今まで保てていたオルガマリーの心はポッキリ折れた。

 

「……ごめん、レフ、生きてるとか言わないで……無理、泣く、もう泣くぅ……」

 

「む?」

 

足から崩れ落ち、地面に突っ伏すオルガマリー。さしものレフへの盲信も、魔理沙らに培われた生死に触れたトラウマには勝れなかったようだ。

それでも気力で立ち上がり、

 

「で、でも!貴方なら何とかしてくれるわよね!?私の事も、カルデアの事も!いつだって貴方が何とかしてくれた!だから──」

 

「はいストップだ、所長」

 

「ぐふぅ!?」

 

一縷の救いを求める一心で駆け出したオルガマリーの襟元を、いつの間にか近寄った魔理沙は無情にも掴む。自重に首を絞められるオルガマリーは後ろにすっ転んだ。

 

「な、何を──」

 

「まだ蹲ってたままを奨めるぜ?()()()()()()()は何をやらかすか分かったもんじゃないからな」

 

「ほう?」

 

マシュとオルガマリー、通信越しのロマニは魔理沙の言葉に驚愕。一方でレフは若干感心したように声を漏らす。

 

「何を根拠に私を人間じゃないと?妄想にせよ確信にせよ、参考に聞いておきたいね、48番目のマスター君?」

 

「妖怪と縁の無い人間相手なら騙せるだろうが、私にはおざなりな変装だ。最初に会った時から気付いてたぜ」

 

「ならば、何故その時に言わなかったんだい?」

 

「人間じゃない奴も採用してんのかと思ったからな。それでももしかしたらって名乗っといた。私は、敵に対しては格好つけて名乗る事にしてるんだ」

 

『──私は、霧雨魔理沙。普通のマスターだぜ!』

確かに魔理沙はレフの前で名乗る際、格好つけながら自己紹介していた。逆にロマニには普通に名乗っている。

ほんの些細な事。しかし、騙せていると嘲笑っていたレフはその事実に眉を潜めた。

 

「……なるほど。何の利用価値も無いと泳がせていたが、矮小な人間にしては見所がある。正直、この世界と心中させるより直々に殺してやりたいほどだ」

 

「妖怪退治の専門家である私に挑戦状とは良い度胸だな。受けて立つぜ?」

 

殺気を滲ませるレフに、魔理沙は好戦的にミニ八卦炉を構える。先程の連戦で魔力切れではあるが、それでも関係無い。喧嘩を売られたら買うまでだ。

が、レフは何か気づいたように余裕な笑みを浮かべた。

 

「おっと、けれど時間も時間だ。君みたいな虫一匹に付き合ってるほど私は暇じゃない。それよりもオルガ、君に見せてあげよう。君が人生を費やした愛しいカルデアの現状をね」

 

「え……?」

 

言って、レフはその手にある水晶体を掲げる。それはまさしくセイバーオルタが残した聖杯。レフは手元に手繰り寄せていたそれを輝かせ、背後に空間の穴を開く。その中にあるものにオルガマリーは愕然とした。

 

「こ、これって……!?」

 

「そう、これこそ君達アムニスフィアの愚行の末路だ」

 

それは──カルデアス。

しかしその様子は本来のものと全く異なる。まるで太陽のように真っ赤な輝きで燃えていた。

 

「人類の生存を示す青色は一片も無い。すなわち、あれは人類の痕跡が無いと言う事。これが今回のミッションが引き起こした結果だ」

 

「そんな……嘘……こんな、事……!」

 

「良かったねぇマリー?君のいたらなさが悲劇を呼び起こした訳だ」

 

加虐的な、暴力的な笑顔でレフは絶望するオルガマリーに言う……君のせいで人類は滅んだのだと。

余りにも現実味の無い、人一人が背負うには重大過ぎる事実。「有り得ない、私は失敗してない」とオルガマリーは事態を認め切れない。それを煩わしく思うのは、レフだ。

 

「全く、相変わらず苛立たせる天才だな、君は。そんな君に最後の望みを叶えてやろう」

 

と、徐にレフは聖杯を持っていない方の手をオルガマリーへと翳す。するとオルガマリーは謎の力によって体が浮き上がり、そしてカルデアスに引き寄せられた。

 

「な、何が……起きて……!?」

 

「どうせ私が足下に仕掛けた爆破装置で肉体は消し飛んでて、カルデアに戻ればその意識だけの存在は消滅するんだ。最期の記念に君の宝物(カルデアス)に触れるといい。私からの慈悲に喜びたまえ」

 

その処理できない真実、言葉にオルガマリーは狼狽える。

 

「なに、言ってるの?や、やめて、お願い。だってカルデアスよ?高密度の情報体よ?次元が異なる領域なのよ?」

 

「ブラックホールと変わりない。それとも太陽か。ともかく人間なら分子レベルに分解される地獄の具現だ。生きたまま無限の死を味わえるよ」

 

「……いや……いや、いや!助けて!助けてよレフ!本当に、本当に私をっ!?」

 

「今更頭の悪い確認をしないでくれ。死に際は美しくありたいものだろう?まぁ、散々私を苦労させてきた君が苦しんで死ぬ様を見れたら楽しいだろうがねぇ」

 

もう隠しも誤魔化しもしないレフの本性。信じていたものの理不尽なほどの裏切り。それを目の当たりにしたオルガマリーの感情は、恥も外聞も無く決壊する。

 

「いッ……いやぁぁぁぁぁッ!!誰か、誰か、誰か助けてェッ!こんな、こんな所で死にたくない!……だって、まだ、褒められてない……!誰も、誰も私を認めてくれてないッ!やだ、やめて、誰か、誰か私を助けてぇ……!私を褒めてよぉ……!」

 

「オルガマリー所長……!」

 

子供のように泣き喚いて、感情を吐露するオルガマリー。だが誰も助けない、誰も助けにいけない。行けば彼女もろとも巻き込まれて一貫の終わり。マシュ達もただ無力に見届ける事しかできない、泣きじゃくる少女が無惨に死ぬ様を……誰も……

 

「──所長!私が渡したもんをぶつけろッ!」

 

「ッ!」

 

その時、魔理沙が声を上げた。

オルガマリーはその声の指示に従い、死に物狂いでポケットからある物を取り出し、力一杯眼下のレフへと投げ付ける。

 

──ボフッ!

 

「うぶっ!?」

 

それは──キノコ。まさしく魔理沙がオルガマリーと合流した時に渡した代物だ。オルガマリーはあの時、怒鳴りながらも捨てずにポケットに仕舞いっぱなしだったのである。

そのキノコはレフの顔に当たると多量の胞子を散布、視界を奪う。だが、そんな程度でどうにかなるものでは無い。事実レフは胞子を振り払い呆れたように笑った。

 

「……フッ、無駄な抵抗だな。たかが目眩まし如きで君の運命は変わりは──」

 

直後、彼は今まで感じた事の無い感覚に襲われた。

レフは思考を巡らせる──何だ?まさか、毒?いや、我らが王に寵愛されしこの体が毒なんて易い手で脅かされる訳がない……では何だ?この目と鼻を擽るかゆ、かゆ、かゆ……うま……じゃなくて!?

 

「魔法の森には色んな毒キノコがあってな。大抵は胞子に幻覚作用があるものばかりなんだが……

 

 

 

そいつは胞子を吸うと酷い花粉症になるレア種だぜ」

 

 

 

「ぶわあああァァァァァッ!?!?!?」

 

魔理沙の説明が終わった途端、凄まじい痒みと共にレフの顔は涙と鼻水で溢れ返った。まるで滝の如く流れ出る体液と、顔の内部から攻めてくるような痒さからレフは絶叫する。

醜い、と言うか見にくい。絵面的に。

 

「馬鹿なっ!?何だこの痒みは……あ、洗いたい!目玉を取って洗いたいくらい痒いッ!鼻も、息が、口で呼吸を……ガアァァァッ!」

 

かつてない方向からの攻撃に慌てふためくレフ。「有り得ない、この私が何故……!」と、先程煩わしく思っていたオルガマリーと同じような呟きを吐く。

結果、余裕を失った彼は失態をした。自身の異常対処に気を回したせいで力を緩め、丁度自分の頭上にいたもの──オルガマリーが浮力を失った事を忘れる。

 

「……レェェェェェフゥゥゥゥゥッ!!!」

 

「! し、しまっ……ぐぶおぉッ!?」

 

怒りのまま急降下してきたオルガマリーの渾身の蹴りが、一瞬遅く気付いて上を向いたレフにクリーンヒットする。某ゴールデンなライダーも顔負けのラ○ダーキック。その威力に脱力させて開けたレフの口から素敵な白い歯が一本、抜け落ちた。

それだけでも凄い。しかし驚くべき事は留まらず、なんとレフを蹴り飛ばしたオルガマリーは、()()()()()魔理沙達の元に戻る。魔理沙や妖夢らの使う飛ぶ能力を、この土壇場で会得したのだ。

 

「おお、中々やるな所長」

 

「ええっ!人間やろうと思えば何でも出来ちゃうもんねっ!」

 

「よっしゃ、その何でも出来るついでだ。あの憎たらしい野郎に一杯でも十杯でも喰わせてやろうぜ」

 

「もちろん!……こんな感じ!?」

 

言って、ドドドドォン!とオルガマリーはばら蒔いた小石を一斉射撃で放った。弾幕だ。

魔理沙らに弄られて威厳を損ない、レフに掌を返されて信用する者を失い、死を目前にしてを感情を爆発させた彼女に最早迷いも躊躇いも無い。自分のやりたい事、自分のしたい事をやる。故に飛べたし弾幕も撃てたのだ。

涙と鼻水、更に口から血も垂れ流した見るも無惨なレフにオルガマリーの弾幕が襲い掛かる。密度は妖精程度。それでも今のレフには充分な反撃だ。数打ちゃ当たるの一発が、彼が奪った聖杯を弾き飛ばした。

 

「締めはコレだ。ぶちかましてやれ」

 

「オーケー……!」

 

魔理沙が手渡してきたものをオルガマリーが受け取る。四尺マジックボム──かの指名手配された天邪鬼が魔理沙から盗んだ反則アイテム。それを抱えたオルガマリーは、弾幕を放つ要領で放った。人間の力では有り得ない飛距離でレフに投げ込まれ、そして爆発する。

 

──ドパァァァァァンッ!!

 

「ぬわーーーーっっ!!」

 

「よしっ!」

 

花火のような派手な爆発が巻き起こり、オルガマリーはまるでボーリングのストライクを取ったかの如くガッツポーズ、更に魔理沙にハイタッチ。そこにいるのはもう責務に追われるオルガマリー所長ではない。色々吹っ切れまくった、オルガマリー・アースミレイト・アムニスフィアと言う一人の少女だった。

 

「貴様らァァァァァッ!!」

 

と、爆煙を吹き飛ばしボロボロのレフが姿を現す。最早紳士の面影は無く、今に人外の姿を明かしそうなほど激昂している。牙を剥くように開いた口は、歯抜けで迫力に欠けていた。

 

「良くも、良くも、良くもクズの分際で私をコケにしてくれたなァ!殺してやるッ……!生きて帰すものかァッ!」

 

歯も冷静さも欠いて、怒り狂うレフに魔理沙達は迎え撃つ姿勢を取る。いかにみっともない姿でも確かに感じ取れる尋常ならざる力。激戦で疲弊する魔理沙達だが、それでも後に退けない以上、立ち向かうまでだった。

しかしその時、世界が揺れた。

 

「……!ぐっ、このまま続ければ私も巻き添えか……まぁ、良い。私はまだ職務があるのでね。去らせてもらおう。憂さ晴らしに諸君はこの世界ごと時空の歪みに呑み込まれてくれたまえよ」

 

事態に余裕を取り戻したレフは、また醜悪に笑む。そして更に絶望へと叩き込むべく言い放った。

 

「もはや誰にもこの結末は変えられない。何故ならこれは人類史による人類の否定だからだ。お前達は進化の行き止まりで衰退するでも、異種族との交戦で滅びるのでも無い……自らの無意味さに!自らの無能さに!我らが王の寵愛を失ったが故に!何の価値も無い紙屑の様に、跡形もなく燃え尽きるのさッ!無様になァァァ!」

 

果てしなく人類全てを蹂躙した一言一句。一縷の希望も無いと断言しながらレフは最高に笑って宣う。いかな間違った文言だとしても、その言葉は常人なら絶望に陥っていた。

が、実際それを聞き届けた魔理沙達はあっさりと言う。

 

「……いや、その面で言われてもな。説得力無いぜ」

 

「なんか何とか出来そうな気がします」

 

「貴方みたいのに滅ぼされるのは嫌だなぁ……だから圧し通るわよ?」

 

「一応言わせてもらうけど、今は貴方の方がよっぽど無様よ?見るに耐えないわね、レフ」

 

「レフ教授、汚いです」

 

「きたなーい♪」

 

「ぐうううううッッッ!!」

 

全く堪えてない少女達の集中砲火、主に顔について。マシュにすら言われて怒りに震える涙と鼻水と血でまみれたレフだが、そうしながらもこの世界から消え去る。もう世界の崩壊が間近だからだ。

レフが消えたと同時、大空洞が目に見えて震えた。

 

「地下空洞が崩れます……!いえ、それ以前に空間が安定していません!ドクター!至急レイシフトを実行してください!」

 

マシュの声に、ロマニは悠長ではない口振りで答える。

 

《今やってるよ!でもゴメン、そっちの崩壊の方が早いかもだ!その時はそちらで何とかしてほしい!ほら、宇宙空間では数十秒なら生身でも平気らしいし!》

 

「黙っていてくださいドクター!私、怒りで手が出そうです!」

 

「宇宙で息できたがなぁ」と言う魔理沙は置いといて、マシュの急かしにドクターは出来るだけ懸命を尽くす。

一方、神妙な出で立ちのオルガマリーに、妖夢が一番気にしてるだろう事を切り込む。

 

「あの、良いんですか?あの人(レフ)の言葉が真実なら、戻ったら貴女は……」

 

「……構わないわ、最後にやる事やれたし。悔いは無い」

 

迷い無く答えて微笑むオルガマリー。その顔は満ち足りていた。吹っ切れた彼女にもう死への躊躇も無い。

かくして異変を解決された世界は、空間の歪みに全てを呑まれる。

 

刹那、魔理沙は何やらフォウが飛び出してきたのを見たが、何事か考える暇なく、すぐ何も分からなくなってしまうのだった──

 




これでもかってくらいレフをメタメタにしてみた。反省も後悔もしていない、今は満足している。
もっと花粉症らしく、滅茶苦茶くしゃみと鼻づまりさせて喋りすらもままならなくしようとしましたが、ペースがアレなんで断念。だけどローマと言う次の機会がある。その為に今こうして畳み掛けてやったところもあります(黒笑)

弄られ、裏切られ、死にかけて吹っ切れたオルガマリー。勢いに乗じて飛行能力と弾幕を会得しました。もう誰おま状態ですね。高飛車で小心者って何だっけ……でもここまで弄るといっそ清々しくありません?俺だけ?(苦笑)

次回はとうとう特異点F最終回。漸く来れた。新年明けて心機一転、まだまだこの調子で魔理沙中心にfgo世界を染めていきますぜ。

皆さん、今年も拙作を宜しくお願いします!


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