ソードアート・オンライン ~幻想となった少年~ (紅風車)
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幻想の始まり

2作目となりますSAO小説です。
いつも通り内容は薄く駄文ですが読んでいただけると幸いです。

それでは、どうぞ!




ソードアート・オンライン。

通称SAOと言われるそれは世界初のフルダイブMMORPGだ。

βクローズテストでは1000人が抽選で当選され、かく言う俺もその一人だった。

 

そして2022年11月6日の13時。

βテストから正式サービス開始日となるこの日に俺はSAOにダイブした。

 

「リンク・スタート!」

 

それがデスゲームの始まりと知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮装世界へと入る前にβテストで使っていたアカウントを使うことにした俺は正式リリースでも同じく使った。

少しするとつぶっていた瞼から光が漏れる。

 

「・・・帰ってきた」

 

βテスト終了後待ち遠しかったSAOが今、始まった。

 

 

俺はとりあえず自分のステータスを確認した。

βテストと変わらないためかほとんど一緒だった。

 

「確認は出来たし・・・いっちょ出てみるか!」

 

そういってこの《始まりの街》を出ようとすると一人のプレイヤーが俺に向かってきた。

 

「お兄さん、βテスターだったりする?」

 

「ん、まぁそうだが」

 

「なら戦い方・・・教えてくれませんか!」

 

このプレイヤー・・・見た目は女性だが、そんなことを聞いてくる辺り初心者なのだろう。

適当に用事をこじつけて断る理由もないのでとりあえず承諾することにした。

 

「いいぞ。俺はソウタ」

 

「本当!?ありがとう!ボクはユウキだよ!」

 

女性プレイヤー・・・ユウキにSAOでのノウハウを教えることになった。

 

 

そして俺とユウキはフィールドに出てモンスターと相対している。

俺は倒し方がわかっているため手出しは極力していないが、ユウキの戦闘スタイルは目を見張る物があった。

 

「はぁぁぁぁあああ!」

 

とにかく早いのだ。

反応速度、攻撃速度どれを取ってもかなり早い。

ソードスキルを使ってもかなり早く俺より早いんじゃないかと思える。

 

「ふふん~、どうだった?」

 

「凄いな・・・早すぎて全然見えない」

 

「ほんと?やったね!」

 

ユウキは褒められて嬉しそうにしているがその笑顔が本当に眩しい。

ていうか太陽なんじゃないかってぐらいに。

それをずっと見続けるのは俺には厳しかったため、逃げる口実でログアウトしようと考えた。

 

「さて・・・一回ログアウトするよ」

 

「えー、もっと倒してたいー」

 

「ならソロでやってくれ」

 

「む~」

 

何故俺がログアウトしようとするとそこまでして止めたがるのかは分からなかったが右手を振って設定を押す。

そして1番下にあるログアウトを・・・って、どこにもない。

 

「ログアウトが・・・無いな」

 

「へっ?」

 

「ウィンドウ出して設定を押して見てくれないか?」

 

「う、うん」

 

ユウキは俺に言われた通りメニューを出して設定を俺に見せるが・・・ログアウトボタンがどこにもなかった。

 

「ログアウトが出来ないぞ、これは」

 

「えぇ!?どうしよう・・・」

 

「これは今後の運営に大きく関わる。ログアウト出来ないなんて言わば俺達はこの仮装世界に監禁されていると言っても良い」

 

これは俺の推測だが・・・GMコールをかけても対応が何一つ無かった。

だからこそこれは意図的に仕組まれた事なのだろう。

すると遠くから鐘の音が聞こえた。

 

「鐘?」

 

すると体が光り、気がつくと最初の場所《始まりの街》に居た。

 

「強制転移?何の真似だ?」

 

辺りを見回すがさっきまでいたユウキはいなかった。

大方さきほどの転移ではぐれたのだろう。

すると上空に赤く点滅するシステムアナウンスがあった。

 

「何だありゃ・・・GM関係だろうが」

 

それは血のような液体が宙に集まり、フードを被ったプレイヤーを形作る。

 

「ようこそ、私の世界へ」

 

「私の名は『茅場晶彦』。ソードアート・オンラインの創造者だ」

 

いきなりのゲームマスターの登場にその場に居たプレイヤー全員が茅場に視線を送っていた。

 

「さて、諸君らはもう恐らくメニュー画面からログアウトボタンが消えていることに気付いているだろう。だがこれはバグではない」

 

「あぁ?」

 

「もう一度言おう。これはバグなのではなくソードアート・オンライン本来の仕様である」

 

茅場が言った事は恐らく真実なのだろう。

でなければ冗談にしては少々過激なドッキリだ。

 

「今後諸君は如何なる自発的なログアウトは不可能だろう。無理矢理な取り外し及び2時間以上のネットワーク切断をするとナーヴギアに搭載されている強電磁パルスによる超高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊するだろう」

 

「今後如何なる蘇生手段は機能しない。諸君らのHPが0になればソードアート・オンラインから退場し、同時に現実世界からも永久退場するだろう。既に213名余りのプレイヤーがこの警告を無視し、退場している」

 

茅場の宣告に全プレイヤーは驚愕する。

そう、これは単なるゲームではなく仮装とは言え死ねば現実でも死ぬと分かった。

 

「では諸君に私からのプレゼントを用意した。受け取ってほしい」

 

俺はメニュー画面を操作しプレゼントボックスに入っているアイテムを取り出した。

 

「手鏡・・・?」

 

俺はそれを持つと手鏡から光が溢れ出した。

そして光が収まった後、手鏡を見るとそこには。

長い前髪によって隠れた自分の顔が覗き込んでいた。

そして前髪をあげると現実世界でも持っている金色の瞳が写る。

 

「諸君らは、今何故と思うだろう。何故茅場晶彦はこのような世界を作ったのか」

 

「私の目的は既に達せられている。ソードアート・オンラインというこの世界がもう一つの現実と認識させるために」

 

「それでは、ソードアート・オンラインの正式チュートリアルを終了する」

 

茅場はそう言い残すと何も無かったかのように空はいつもの景色に戻っていた。

するとプレイヤー達が一気に茅場が浮いていた空間に向かって批判の声などを挙げていた。

 

「・・・もう一つの現実か・・・」

 

茅場の言ったもう一つの現実。

それは俺が追い求めた幻想ではないか。

ならば生き抜いてやろう。

俺はこの世界で生き抜いてやる。

 

「生き抜いてやろうじゃねぇか・・・例え俺が独りになろうとどんな手を使ってでも生きてやる」

 

 

 

 

 

 

これはデスゲームとなったSAOで生き抜いた一人の少年の物語。

 

 

この日から少年は大きく運命を変えて行った。

 

 




内容はどうだったでしょうか?
1話で全然内容ありませんがこれからたくさん書けたらなーと思います。

よろしければ感想・評価お願いします。



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第一層の攻略

今回は第一層編です。




デスゲームが始まって一ヶ月。

俺はとにかくレベルを上げまくった。

SAOのようなレベル制RPGはとにかくレベルが命だと分かっている。

レベルを上げればその分自分が強化される。

強化されたら自分は強くなり死ににくい。

 

「これで・・・100頭目っと・・・もう15か・・・」

 

一ヶ月、俺はレベルだけを上げていたためLvが15になっていた。

武器もこの層では最強クラスの片手剣『アニールブレード』にしてある。

 

だが、俺は時々思う。

ここまでして意味はあるのだろうか・・・と。

デスゲーム勧告でもう数百は死んだ。

自分はそんなことにならないように強くなったが意味はあるのだろうかと。

しかしそんなことを考えていると遠くに人が見える。

人数は二人で男女プレイヤーだった。

 

ちなみに俺は姿がばれないようにフードを被っている。

理由は昼があまり好きではないのと人に見られるのが苦手だからだ。

そして男女プレイヤーが俺に気付くと近寄ってきた。

だが俺はあまり人と関わりたくなかった。

だから選択肢は一つ。

 

「逃げよう」

 

自分の持つ敏感を全開にして男女プレイヤーから逃走した。

さすがに怪しまれていたが俺は関わるのが嫌いだ、怪しまれようとも知らん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男女プレイヤーから逃走した俺は《トールバーナ》という街に来ていた。

ある意味ここに来るのは嬉しい誤算なので良かったが。

 

「さて・・・広場で待つか」

 

何故ここに意味があるかと言うと第一層攻略会議がここ《トールバーナ》で行われる。

俺も攻略には参加したかったため、情報を聞いたらすぐに何処かに行くつもりだ。

そしてしばらくすると一人のプレイヤーが前に出る。

 

「俺の名は『ディアベル』!職業は・・・気分的にナイトやってます」

 

ディアベルなるプレイヤーの言葉に参加していたプレイヤーの緊張が解けていたようだった。

こんなことを言うのもあれだが、あういうプレイヤーが居ると統率が取れる。

その分結束力も高まるし、攻略も安全に出来る可能性が出てくる。

 

「さて、今から第一層の攻略会議を始めたいと思う!みんなは《始まりの街》で無料配布されているガイドブックを持っているかな?」

 

ディアベルが手に持っているのは道具屋で無料配布されているガイドブックだった。

SAOでの最低知識や、軽いモンスター情報・・・色々なことが詳細に書かれている攻略本のようなものだ。

 

「つい先日、俺のパーティーがボスの部屋を見つけた!また、ガイドブックの新しい情報も出ている!ガイドブックによるとボスの名前は『イルファング・ザ・コボルド・ロード』。取り巻きが『ルイン・コボルド・センチネル』だ。そしてボスのHPが減ると武器の変更がされるとのことだ!」

 

ディアベルの続々の情報にプレイヤー達は驚くことばかりだ。

俺も実はボス部屋は知っているが時期が時期なだけに言いづらかった。

まず早くこの情報を出してしまうと推定レベル以下での攻略となる可能性が出る。

これは俺達が不利になるためレベルが全体的に上がる頃を見図っていた。

・・・まぁディアベルによって意味が無くなったが。

 

「じゃあみんな、パーティーを組んで1つのレイドを作ってくれ!」

 

ディアベルさん、それは無理です。

俺はお断りさせていただくぜ。

そう思い俺は会議から抜けようとすると一人のプレイヤーがディアベルに抗議する。

 

「ちょいと待ってんかい!」

 

「あなたは?」

 

「ワイの名は『キバオウ』ちゅーもんや!おい、お前ら!おるんやろ!この中に美味しい狩り場やクエストを知ってる奴が!」

 

「キバオウさん、それは元βテスターの人達の事かな?」

 

「そうや!β共はわいらビギナーを置いてどこかに行きよった!そんで効率の良い狩り場なんかの情報を独占しとるんや!」

 

キバオウの自分勝手な言動にいらっとした俺は帰る足を引き返してキバオウの元へと足を運ぶ。

 

「な、なんや自分」

 

「名前なんぞ言わなくて良いだろ、それよりお前さんはβテスターが美味しい狩り場を独占してると言ったな?」

 

「そ、そうや!」

 

「ならばそれは違うな。βテスターは確かに有利だが経験が物を言わせてる。初心者とは違ってその経験を活かしている。現にガイドブックも元βテスターが作った物だ」

 

「そ、それでも詫びってもんは必要やろ!」

 

「ならば俺が代表して謝ってやろうか?詫びの品を貰いたい等という考えは今の状態では攻略を落とすだけにしかならないと思うが」

 

俺がキバオウに対してどんどん言っていくと納得したのか不機嫌ながらもベンチに座る。

かくいう俺は会議から抜けようとしたのだが。

 

「おーい、君もあぶれ?」

 

「あぶれでは無いが」

 

「ならパーティー組んでくれないか?人数が足りないんだ」

 

「良いぞ」

 

パーティー申請が来たため承諾すると3人の名前が表示される。

『Kirito』『Asuna』『YuuKi』の3人だ。

 

「俺は『ソウタ』だ。よろしく」

 

「ああ、よろしく」

 

「・・・よろしく」

 

「じゃ俺は一度用事があるからここを離れるぞ」

 

「聞いていかないのか?」

 

「聞く内容は聞いたからな」

 

俺はそういうとキリト達から離れて用事の場所へと足を運ぶ。

その場所はある人物と会う為の待ち合わせ場所だ。

 

「来たぞ、ミヤビ」

 

「早いね」

 

「聞きたいことは聞いたしな・・・で、お前は行くのか?」

 

「ううん、行かない」

 

「ならボス攻略終わったら一緒に行動するか?」

 

「・・・うん」

 

俺はミヤビと話しているとサイン音がした。

それはメッセージ音でキリトからだった。

【宿屋で泊まることにした。ソウタの分もあるから《クルガヤの宿屋》に来てくれ】

 

「俺呼ばれたから行かないとだ」

 

「ん、わかった」

 

「また明日な」

 

「うん、明日」

 

俺はミヤビと別れたあと、キリト達と合流すべく《クルガヤの宿屋》へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程なくして到着したそこは隠れ家みたいな感じで宿泊料も80コルでありながら風呂付きでミルク飲み放題だった。

 

「すごい安いな」

 

「だろ?」

 

「ああ、良い宿屋だ」

 

「それで・・・用事って何してたんだ?」

 

「人と会ってただけだ、明日の攻略に参加するらしいがな」

 

「そうなのか・・・なあ、ソウタ」

 

「ん、なんだ?」

 

「・・・なんでもない」

 

「そうか」

 

その後、風呂に入っていたのであろうアスナとユウキは運悪くキリトが扉を開けてしまい正義の右ストレートをお見舞いされていた。

 

俺は椅子に持たれながら窓を見ていたから飛んでこなかったがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリト、あれはお前が悪い」

 

「だから不可抗力だ!」

 

「キリトのが悪い!」

 

「キリト君のが悪いね」

 

「諦めろ、この世界でも女性はこういうことには強いんだ」

 

「くそぉ・・・」

 

キリトが半分拗ねながらなのは昨日の除き事件のせいだった。

まぁキリトが確認もせず入るから吹き飛ばされたんだろうが。

 

「まぁそれまでにしとけ、一応ボス攻略を確認するぞ」

 

「まず俺達F隊は取り巻きの『ルイン・コボルド・センチネル』を本隊に近づけさせない事だ。恐らく何度も戦うことになるからスイッチしてポットローテをしよう」

 

「スイッチ?」

 

「ポットローテ?」

 

ユウキとアスナがキリトの単語に首を傾げる。

マジか・・・それ知らないって中々辛いぞ。

 

「スイッチは二人一組以上でやる。一人の隙をもう一人がカバーするんだ。ポットローテはスイッチで下がった時に回復、それの繰り返し」

 

「そうなんだ~」

 

「キリト、教えとけよ」

 

「悪い、忘れてた」

 

キリトのうっかりは今に始まった事では無いだろうから追求はしない。

どうせどっかでまたやらかすだろうし。

 

 

そんなことで俺達はボス部屋の前まで到着する。

ここで最後の確認をしてから突撃となる。

 

「それじゃあみんな、準備は良いかな!」

 

「大丈夫そうだね・・・じゃあ俺から言うことは一つ!勝とうぜ!」

 

「「「おぉー!!」」」

 

ディアベルの纏める力はかなり強力だな。

統率もありながら士気も上げている。

そしてディアベルが扉に手をかけて開くと大きな部屋に入る。

 

 

すると上からボスがおりてくる。

第一層ボス『イルファング・ザ・コボルド・ロード』が登場し、回りには『ルイン・コボルド・センチネル』が湧いて来る。

 

「全員、突撃ー!」

 

ディアベルの指揮によって俺達は各々の役割に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘を開始して10分程が経過している。

F隊は取り巻きを近づけさせないように攻撃し処理している。

 

「ソウタ、スイッチ!」

 

「あいよ!」

 

俺はキリトと交代すると片手剣スキル『ソニックリープ』でセンチネルに止めを刺した。

 

「よし、とりあえずは大丈夫だろ」

 

「強いな、ソウタは」

 

「そうでもしなきゃ生きれないからな」

 

「そうなのか・・・?」

 

キリトが俺の雰囲気が少し変わったのに気付いたのか怪しげに聞いてくる。

だが、俺は答える事はなかった。

本隊から唸り声が聞こえたから。

 

「グガァァァァアア!!」

 

「武器変更か!」

 

事前のガイドブックには体力が一定以下になると武器を投げ捨て『タルワール』に変えるとされている。

だがボスが取り出したのは曲刀『タルワール』ではなく刀カテゴリ『野太刀』だった。

 

「よし、俺が出る!」

 

「ディアベル、止まれぇぇぇぇぇ!!」

 

ディアベルが前に出ようとするが俺の咆哮によって動きを止める。

そしてボスは刀スキル『旋車』を構える。

あれは当たると確実に死ぬ攻撃だ。

攻撃によって飛ばれるとそのまま上段打ち下ろしを喰らう。

宙に飛ばされているから回避のしようもない。

 

「くそっ・・・!キリト、やるぞ!」

 

「・・・ああ!」

 

俺はキリトと一緒にボスを削っていく。

するとボスは『旋車』から『幻月』に切り替えた。

それに反応出来なかった俺達はそれを喰らい吹き飛ばされる。

 

「ぐおっ・・・」

 

「あぐっ・・・!」

 

そのままボスは俺達に『緋扇』を当てに来る。

だがそれは一人のプレイヤーによって攻撃はこなかった。

 

「ここは俺達が食い止める!いつまでもダメージディーラーに任せてたらタンクの名が泣くからな!」

 

「悪い!」

 

俺とキリトは防いでくれたプレイヤーに感謝しつつ、一度退いた。

防衛していてくれる間にポーションを飲んで体力を回復する。

 

「みんな、今のうちに攻撃だ!」

 

「よっしゃあ、やったるでー!」

 

「うおおー!」

 

タンクによって攻撃を防がれ隙が出来たため、ディアベルはチャンスと思い一斉攻撃をする。

俺達も回復仕切ると突撃する。

キリトは『バーチカル・アーク』で切り付ける。

俺は『ソニックリープ』で突進し、続けて『レイジスパイク』で突き刺す。

それが止めとなってボスの体がポリゴン状となって消え散る。

 

「よ、よっしゃぁぁああああ!!」

 

「やったぞ、クリアだー!」

 

画面にはCongratulationsと表示され、第一層が攻略された。

だが、一人だけ納得していないプレイヤーがいる。

 

「なんでや!」

 

「ど、どうしたんだい?キバオウさん」

 

「どうしたもこうしたもない!あんたらなんでボスの攻撃知っとったんや!」

 

「・・・ちっ」

 

「そのボスの攻撃をディアベルはんに教えとけば危険は無くなってたはずや!」

 

キバオウの反論に回りのプレイヤーが賛同し始める。

キリトは罰が悪そうな顔をする。

するとキリトは何かを思いついたのか俺に合図をする。

 

「ククク・・・あははは・・・あっはははは!」

 

「な、何がおかしいんや!」

 

「いや・・・可笑しすぎてね・・・ボスの攻撃?そんなもの俺が教えたからさ!俺はβテストの時、誰も到達出来なかった層にまで昇った!ボスの攻撃が分かってたのは上の層で散々刀を使うモンスターと戦ったからだ」

 

「な、なんやそれ・・・」

 

「他にも色々知ってるぜ?情報屋なんて目にならないくらいにな!」

 

「そ、そんなん・・・チートや!ただのチーターやろ!」

 

「こいつβテスターだ!だからビーターだ!」

 

「ビーター?良い呼び名だな。これからは元βテスター如きと一緒にしないでくれ」

 

キリトはこの場を収めるべく必要悪として打って出た。

 

「キリト、死ぬなよ」

 

「ああ、死なないさ」

 

俺とキリトはそれを交わすとキリトは第二層の扉を開けて先に進んだ。

俺はアスナとユウキに近付く。

 

「アスナさんにユウキさん・・・パーティーありがとう」

 

「ソウタ君!?」

 

「ソウタ!」

 

「・・・じゃあな」

 

俺はパーティーを抜けるとキリトの後を追うように先に進んだ。

そしてキリトを見つけるとあるものを渡す。

 

「キリト、これを」

 

「・・・これは?」

 

「さっきのボスのLAB。二つ出てな、好きな方を選んでくれ」

 

俺はキリトにLABを見せると二つのうち一つを渡す。

キリトが選んだのは『コート・オブ・ミッドナイト』。

 

「じゃあ・・・これを貰うよ」

 

「わかった。あとフレンド登録もしとこう。いつか役立つかも知れん」

 

「ああ」

 

キリトとフレンド登録し、二手に別れた。

俺はもう一つの装備である『スカイナイトクローク』を装備すると第二層の宿屋で宿泊した。

 

この日はいつもより疲れたな。

・・・あの二人には悪い事をしたが、大丈夫だろう。

ユウキは誰よりも速度がある。

アスナは細剣を活かした攻撃で目に見えないぐらい早い。

ソロ活動としても問題ないくらいの実力がある。

 

 

「・・・寝るか」

 

 

 



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竜使いの少女

第一層攻略から早数ヶ月が経った。

俺は目の前にいるオレンジプレイヤーに対して片手剣を向けていた。

 

「た、たすけてくれ!牢獄にも入るから!」

 

「・・・死ね」

 

命乞いをしようが俺は知らない。

俺はこの数ヶ月、オレンジ・レッドのプレイヤーを暗殺していた。

無差別に殺すわけでもなく、しっかりと裏付けによる暗殺だ。

嫌々でオレンジにさせられたプレイヤーは見逃している。

だが自分から好んで成っていくプレイヤーに慈悲なんて必要無いだろう。

 

「呆気ないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は基本、表と裏を別けている。

表はいつものソロ活動。

裏はPKK(プレイヤーキラーキラー)として。

だが、PKKの噂がかなり広がっていた。

 

「聞いたか?最近オレンジ減ったらしいんだ」

 

「なんでもPKKする奴がいるんだろ?」

 

「ああ・・・いつ俺達にも牙が向くか分かったもんじゃねぇよ」

 

自己満足でやっているから文句はないが言いようが失礼なものだ。

ちなみに俺は35層の迷いの森にいる。

目的はクエストの素材集めなのだが。

 

「せぇやぁああ!」

 

俺のレベルは90でデスゲームとなったSAOでは階層+10が安全なレベルとされている。

つまりここはLv45ほどで問題なく攻略は可能なのだが。迷いの森に関してはそうもいかない。

ここ迷いの森はマップが常に変化しており、地図が無ければ脱出がとても難しい。

 

すると遠くで戦闘に入っているプレイヤーがいた。

プレイヤーは一人だがモンスターは5体。

どう足掻いてもジリ貧だと思いプレイヤーの元に急いだ。

 

「ピナ!ピナぁぁ・・・!」

 

ピナと言ったプレイヤーである少女は恐らくビーストテイマーなのだろう。

そしてこの戦闘で死んでしまったと見るべきだ。

 

「くそっ・・・」

 

猿型モンスターを一気に俺は切り捨てると少女の元に駆け寄る。

 

「・・・悪い、仲間を助けれなかった・・・」

 

「い、いえ・・・」

 

「君は・・・ビーストテイマーか」

 

「はい・・・」

 

「ならば・・・何かアイテム設定がされていないか?」

 

「ちょっと待ってくださいね・・・」

 

少女は淡い光を放つ羽を拾うと指で突いた。

ウィンドウが出てきてそこには『ピナの心』と表示される。

 

「ピナ・・・ピナぁ・・・」

 

「・・・まだ諦めんな、方法がある」

 

「方法・・・ですか?」

 

「ここから上の・・・47層の深部にビースト蘇生アイテムがある」

 

「47層・・・あとLv13も上げないとです・・・」

 

少女は表情を暗くする。

その表情がどこか妹に似て嫌な気持ちになったから俺は少女にトレードを送る。

 

「一応こんだけの装備があれば47層には太刀打ち出来る」

 

「あ、あの・・・なんでこんなことを・・・?」

 

「・・・さっきの表情。妹に似てて嫌だったんだ・・・それだけ」

 

「ぷっ・・・くすくす・・・」

 

素直に教えるとこの女の子笑いやがったよ・・・。

まぁ良いけどさ。

とりあえずパーティーを組んで、一度迷いの森を脱出することにした。

 

「私はシリカっていいます」

 

「俺はソウタ。よろしく、竜使いさん」

 

「へっ、知ってたんですか!?」

 

「中層プレイヤーには有名だからな。攻略組でもある程度知ってる人は居るとは思う」

 

「ソウタさんは・・・攻略組なんですか?」

 

「攻略組ではない。俺はソロ専だから」

 

少女・・・竜使いシリカを連れて俺は迷いの森を脱出する。

《ミーシェ》の宿屋をシリカが教えてくれたため、俺はそこで宿泊することにした。

だが宿屋に行く途中赤い髪をした女性プレイヤーがこちらにやってきた。

 

「あら、シリカじゃない」

 

「っ・・・ロザリアさん」

 

「何とかあの森を抜けれたのね・・・でもあのドラゴンがいないみたいだけど?」

 

「ピナは死にました!でも絶対に復活させます!」

 

「へー、てことは47層に行くんだ。だけどあんた一人で行けるのかしら?」

 

ロザリアはシリカよりレベルが高いのだろう。

だがあの蘇生アイテムは前線プレイヤーぐらいしか情報を知らないはずだ。

その道中が過酷で中層プレイヤーであるロザリアに知る術は無いはず。

 

「なんでその事を知ってるか気にはなるが、生憎俺も一緒に行くんだ。問題ない」

 

「見た感じ弱そうね・・・あんたもこの子にたらしこまれたのかしら?」

 

「勝手に言ってろ。シリカ行くぞ」

 

「へ、は、はい!」

 

あえて煽ってくるロザリアを相手するのが面倒になり、俺はシリカの手を引っ張って件の宿屋に向かう。

そこはチーズケーキが美味しい宿屋で中層プレイヤーにも人気があるようだ。

 

「なんであんなこと言うんでしょうか・・・」

 

「シリカはこの手のゲームは初か?」

 

「はい・・・」

 

「どんなゲームにもあんなのは居る。リアルとゲームで性格を変える奴は居るんだ・・・これからも相手には気をつけたのが良い。特に名のあるプレイヤー程狙われる」

 

「わ、分かりました」

 

そんなことを話しているとチーズケーキがやってきた。

見た目は普通のチーズケーキだが、ほんのりと甘い匂いがする。

 

「ほぅ・・・?」

 

「そ、ソウタさん?」

 

俺は一口、口の中に入れるとチーズケーキの味が広がっていった。

だがしつこくなく、程よい甘みが残る。

 

「・・・美味いな」

 

「ホントですか?」

 

「ああ、リアルでも甘いものには煩いと誇示するが・・・これは美味い」

 

「良かったです・・・」

 

「またここのチーズケーキを食べに来ても良いな」

 

それほどまでここのチーズケーキは美味しかった。

ちなみに追加で4つほど注文して全部食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個室に入ると俺はとりあえず寛いだ。

フレンドリストには数名ほどしか居ないが俺の場所が探られないように探知機能は切っている。

 

あの後、アスナは最強ギルドと言われる『血盟騎士団』に加入、副団長となった。

また、細剣の攻撃がまったく見えないことから『閃光』と呼ばれる程までになっている。

 

ユウキは持ち前の戦闘能力を活かして無類の強さと挑んでくる決闘に勝利している姿から『絶剣』と言われている。

絶剣は『空前絶後の剣』や『絶対無敗の剣』という意味があるらしい。

 

キリトは先程の二人と違い時々俺と会ったりはする。

第一層の件から『ビーター』や『黒の剣士』とも言われる。

 

オレンジ・レッドプレイヤーを俺は殺しているがそれはそれをするに至る悪行をしているからだった。

いつPKで攻略が止まるか分からない。

ならば俺はそのPKをPKしていけば攻略は進むと考えた。

結果的にオレンジギルドはほとんど死滅しているが一部がまだ消えていない。

その一つが『タイタンズ・ハンド』というギルドだ。

ある程度のメンバーは分かっているがリーダーが如何せん不明で後回しにしている。

 

「あ、あの・・・」

 

考え事をしていると扉を叩く音がする。

先程の声的にシリカだろう。

俺は扉を開けるとシリカを入れる。

 

「どうしたんだ?」

 

「・・・そ、その・・・」

 

俺はある事を考え、シリカの耳元で言う。

 

【俺の行動に合わせてくれ】

 

【は、はい】

 

「明日行く47層の説明を少しだけやっとく」

 

「分かりました」

 

俺はストレージから『ミラージュ・スフィア』というアイテムを出すとテーブルに置いて起動させる。

 

「わぁぁ・・・綺麗ですね」

 

「ミラージュ・スフィアっていう3Dマップだ。データは自分で探索した所ならどこでも映せる」

 

「自分で・・・」

 

「ま、それは良いとして。ここが47層なんだが、この奥の道を進む。道中は渡した装備でも太刀打ち出来る。それで奥に進むと一定の場所から湧く速度が上がるからそれまたその時に言う」

 

「は、はい」

 

俺はシリカに説明をしていると扉の向こうから気配を感じた。

大方誰かが盗み聞きしてるのだろうがそれは明日にでも処刑すれば良い。

 

「これで説明は終わり・・・あと一人が嫌ならそこのベット使っとけ。俺はまだ寝る気はないし」

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

「構わん。眠そうにしてるなら寝とけ」

 

そういうとシリカはベットに入って寝てしまった。

俺はその間にある人物にメッセージを送る。

 

【明日、予定あるか】

 

【無いよ、でもどうして?】

 

【無いなら少し付き合ってくれ、アスナとキリトにも予定が無ければ頼む。場所はリズベッドの店で】

 

【分かったよ】

 

俺は人物にメッセージを送り終えると、ストレージから記録結晶を取り出した。

 

「~♪~♪」

 

「・・・はぁ」

 

「君が~♪未来の世界は~♪」

 

この記録結晶はミヤビが録音して俺に渡してきた物だ。

疲れたとき、これを聞いている。

 

「・・・いい声だな」

 

何度も聞く度に俺は涙を流す。

この歌を聞く度にあの時の自分の無力さを思い出す。

 

「・・・ごめん・・・ごめんな・・・」

 

この歌を唄うのはミヤビだ。

今ミヤビはレッドギルド『笑う棺桶』に所属している。

それも創設者『PoH』の右腕と言われる程に。

俺を助けるために、ミヤビは自分を犠牲にしてラフコフに入った。

あの時俺が強くあればミヤビが入らなくても良かった。

俺はその日から、PKを殺すプレイヤーに成り果てた。

いつかミヤビに会えると信じて。

 

 

俺が死ぬのは何時になるのだろう。

 

 

 




文面で歌っている曲はSAOのマザーズ・ロザリオ編の曲です。
そのまんま書いてしまうと引っ掛かるので一部分だけの描写にしています。

評価・意見よろしくです。




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護衛は過剰戦力

俺は朝早くから起きる癖がある。

確かシリカが11時ごろでそこから2時間後に俺は寝たはずなのだが。

 

「3時って・・・まぁ良いか」

 

テーブルに置きっぱなしだった記録結晶を手に持つとストレージに入れた。

この記録結晶は俺の宝だ。

ミヤビがラフコフに入る前に録音して渡してくれた。

現実世界でミヤビが良く歌っていた曲が録音されている。

 

「ん・・・あぅ・・・ソウタ・・・さん?」

 

「・・・悪い、起こしたか」

 

「さっきの・・・」

 

「あぁ、記録結晶っていうアイテムだ。録音が出来る」

 

「何が・・・録音されてるんですか?」

 

「さーな、教えん・・・てか朝風呂とか入るのか?」

 

「へっ?は、はい」

 

「なら入ってこい、もうすぐ行くぞ」

 

俺がシリカを急かせると急いで脱衣所に入る。

中から音がする辺り慌ててるのだろうな。

 

「あー、ゆっくりしていいぞ。慌ててまでじゃない」

 

「は、はい!」

 

その間に俺はアイテムストレージを整理する。

SAOの世界では持ち切れる容量に限界がある。

これはアイテムやスキルによる容量拡張が可能だが出来るだけ容量は空けておきたい。

すると一つの武器が目に入る。

 

「『夢陽炎』・・・?PCメイドじゃないとなるとドロップか」

 

俺は気になりをそれをストレージから出すと一つの刀が現れた。

鞘には花びらと雪の結晶が描かれている。

そして刀を引き抜くと陽光に照らされる銀色の刀身。

 

「綺麗だな・・・」

 

「そうですね・・・」

 

俺が隣を見るとまだほんのりと顔を赤くしたシリカがいた。

さっき上がったばかりなのだろうか、所々濡れておりそれとなく髪の毛から女の子特有の良い匂いがする。

 

「・・・シリカ。風呂上がりに男に近付くのはいただけないな」

 

「ふぇ?」

 

「俺は何とも思わんが、他の男にそれをやると良くないってことだ」

 

「あ・・・ごめんなさい・・・」

 

「構わん・・・さて、朝食取って47層に向かうぞ。知り合いを待たせてるかも知れん」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿屋で朝食を取り終えると転移門で47層へと俺達は向かった。

 

「わぁぁ・・・!すごく綺麗ですね!」

 

「ここは有名なデートスポットだ。いつか相手が出来たら連れて来るといい」

 

「で、デートスポット・・・」

 

「さて、知り合いと合流するぞ」

 

「は、はい!」

 

俺は知り合いと合流すべく、先に進んだ。

すると中央広場にその人物がいたが、周りに男プレイヤーが纏わり付いていた。

 

「君ってユウキちゃんだよね?」

 

「そ、そうだけど」

 

「なら俺と一緒に組まない?これでも強いからさ!」

 

「ごめんね、待ってる人が居るんだ」

 

「じゃあその子も一緒に!」

 

「い、いや・・・それは・・・」

 

待ち合わせの人物はユウキだ。

無論キリトとアスナも来れそうなら来てもらうようユウキを伝って連絡はしてある。

 

「ソウタさん、あの女の人・・・」

 

「はぁ・・・名のある、特に二つ名付きはあういうのが多いんだ」

 

「そうなんですね・・・」

 

「しゃーない手助けするか」

 

俺は迷惑そうにしているユウキを放って置けず近付いた。

男プレイヤーは俺見るとあからさまに嫌そうな顔をした。

 

「ソウタ!」

 

「ん、お前がユウキちゃんの待ち合わせの人?」

 

「そうだが」

 

「へぇ・・・弱そうだね。俺のが絶対強いよ、ユウキちゃん」

 

「んなことはどうでもいい。ユウキは俺の貸し切りだ、他者が突っ込んで来るな」

 

男プレイヤーの言い分に少しイライラする俺だが何とか我慢して抑える。

元より俺が呼び出す場所をもう少し考えれば良かったな。

 

「ユウキ、行くぞ」

 

「ふぇっ、うん」

 

「待てやごらぁ!」

 

「だからなんだよ」

 

「ちょっと調子乗ってない?絶剣のユウキちゃんとどんな関係か知らないけどさぁ、俺が先にここで会ってるんだから俺との事が先でしょ?」

 

「はぁ・・・なら決闘で勝った方で良いだろ、強いなら俺は負けるはずだし」

 

「良いよ!それでやろうじゃんか!」

 

完全に頭に血が昇っている。

ユウキをシリカの所へ連れていくと心配そうに俺を見る。

問題は無いけど一応本気で相手をしてやろうじゃないか。

そうして決闘が始まると俺は片手剣をただ持つ。

 

「そおぉぉぉらぁぁぁ!」

 

「・・・読みやすい弾道だな」

 

男プレイヤーは同じ片手剣だが装飾が華美だった。

ソードスキルも発動せず突っ込んで来るため俺は『ソニックリープ』を発動させると男本体ではなく片手剣に狙いを定める。

 

「どーこねらってんの?」

 

「お前こそそんな状態でどうするんだ」

 

本当ならば男の攻撃が当たるはずだったが、俺が狙ったのは装飾が多い片手剣。

武器には耐久値があり、無くなると武器が壊れる。

そして装飾がある武器というのは総じて脆くなるという特性がある。

見た目としては最高だが能力は最低・・・と考えていい。

俺が狙ったのは一番脆い部分の装飾部分だ。

そこを一定の速度、一定の強さ、一定の角度という技術力が問われるが成功すると。

 

「お、俺の剣が・・・」

 

この男のように片手剣が折れる。

 

「メイン武器があるなら別だが、なさそうだな。負けたんだ、どっかに去りな」

 

「くそ、くそが!」

 

悪役の様に逃げ台詞を言うと走ってどこかに去っていく。

その入れ代わりで来るか怪しかった二人がやってきた。

 

「ソウタ」

 

「ソウタ君」

 

「・・・久しぶりだな、アスナ。キリトは度々会うけど」

 

「そうだな・・・で、用件は?」

 

「俺の予感が当たれば一人じゃ心許ないからな。過剰戦力と言われても構わんぐらいが良い」

 

俺がそういうとシリカを見やる。

シリカはやってきた人物に驚いているのだろう。

 

「俺とキリトは周囲警戒。アスナとユウキがシリカのサポートしてやってくれ」

 

「シリカってこの小さい子?」

 

「ち、小さくないです」

 

「間違ってない。こいつが用件のシリカだ。ビーストテイマーと言えば47層の用件がわかるだろ?」

 

「え、えとシリカって言います!一応ビーストテイマーです・・・」

 

いわずともこの3人は攻略組の筆頭に挙げられる。

47層の使い魔蘇生アイテムの話は知っているようだった。

 

「ここは宙吊りにするモンスター多いからそういう面でユウキとアスナを呼んだ訳だ」

 

「あー確かに、そういうモンスター多いね」

 

「なるほど・・・シリカちゃん、よろしくね?」

 

「は、はい!・・・あのお名前が・・・」

 

「わわ、ごめん。ボクはユウキだよ」

 

「私はアスナ。『血盟騎士団』副団長です」

 

「俺はキリト。ソロだ」

 

「んじゃキリト。俺らは警戒な」

 

「ああ、意味は分かってる」

 

俺らは先に進む。

俺とキリトは周囲警戒をするが前方はあまり見ないようにしている。

47層のモンスターにはプレイヤーの足を掴んで宙吊りにするものがいる。

シリカの装備はスカートがあるため、宙吊りになると仕方ないとはいえあれが見えてしまうのだ。

だから同性であるユウキとアスナを呼ばせてもらった。

 

 

前方から3つの悲鳴が聞こえた気もするが気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程なくして深部に到着し、奥には台座がある。

 

「あの台座に使い魔蘇生アイテムがある」

 

「は、はい」

 

使い魔蘇生アイテムはビーストテイマーがいなければ入手が不可能とされている。

台座には一輪の可愛らしい花が咲いている。

 

「それ、手に持ってみて」

 

「『プネウマの花』・・・これが蘇生アイテムなんですね」

 

「ああ・・・さて、いつまで覗き見てるつもりだ?」

 

「え?」

 

俺が言うと木の影から一人のプレイヤーがやってくる。

それは昨日会ったロザリアだった。

 

「あら、あたしの《隠蔽》を見破るなんて侮ったかしら?剣士サン」

 

「抜かせ、昨日の盗聴全部分かってたぞ。あえてこの場所に呼ぶために説明したんだ」

 

「そこまで分かってて・・・あんた馬鹿?」

 

「生憎俺以外にも用件があるらしい・・・だろ、キリト」

 

「ああ。ロザリアさん。あんた少し前に小規模ギルドを襲ったな?」

 

「あぁ、あの貧乏ギルド。それがどうかしたの?」

 

「あのギルドのリーダーは転移門で必死に懇願した。それがわかるか?自分のギルドの敵討ちで転移門でプレイヤーに懇願したリーダーの気持ちが」

 

「知らないわよ。どうせここでやったとしても現実じゃばれないのよ。それに現実の法律とか規律をいれないでくれる?」

 

「はぁ・・・キリト、お前が赤髪やってろ」

 

「ああ」

 

ロザリアが呼び出すと周りから20人ほどプレイヤーが出てくる。

その20名全員がオレンジプレイヤーだった。

 

「やっちまいな!」

 

「「「キリト(さん)(君)!」」」

 

「問題ない。あいつのHPをよーく観察してみろ」

 

シリカ達はキリトのHPを見続けた。

俺も一応確認したが少し減ってはいるがすぐに回復している。

 

「あれは『戦闘時回復』スキルだ。恐らくあいつらの10秒間の総ダメージよりキリトの自然回復のが多い」

 

「な、なんだこいつ!」

 

「しなねぇぞ!」

 

「あんた達何やってるんだい!」

 

「10秒間に800ってとこか。それがあんたらが俺に与えれる総ダメージ量だ。それに対して俺のレベルは86。HPは14620。『戦闘時回復』スキルによる回復量は1200だ。いつまでやっても俺を殺せない」

 

「そ、そんなのありかよ・・・」

 

「ありなんだ。これがレベル制MMOによる格差だ」

 

「だ、だからってなんだい!あたしを傷つければあんたがオレンジに・・・!?」

 

俺はキリトより先にロザリアの首に片手剣を押し当てた。

 

「・・・ここで死ぬか、牢獄で生きるか。どっちがいい」

 

「なっ・・・」

 

俺の威圧でロザリアは武器を落とす。

それの合図でキリトが回廊結晶でロザリア組を全員黒鉄宮という牢獄へ送還する。

ロザリアだけは足を進めなかったが足で蹴り飛ばして中に放り込んだ。

 

「・・・タイタンズ・ハンドのリーダーだよ、ロザリアは」

 

「なるほどな・・・さて、用件も済んだしシリカを宿屋に送るか」

 

「は、はい」

 

「復活させるなら安全な宿屋内でやっとけ。ここじゃまだ危険だからな」

 

「わかりました」

 

俺が今度先頭になり、湧いた瞬間モンスターを斬り飛ばしたため、ほとんどシリカ達は帰りの戦闘は無かった。

 

「ふー、ユウキ、アスナ。ありがとうな、手伝い」

 

「ううん、ボクがやりたかったから」

 

「私も久々に楽しかったから良いわ」

 

「んじゃ俺は用事があるからこれでおさらば」

 

俺はパーティーを解散するとまた一人で活動を始める。

今じゃオレンジの動きは減っている。

恐らく攻略組と関わりがあるとの噂でオレンジ自体減ったのだろう。

だが、ラフコフの状況は掴めていない。

いつになったらミヤビを救えるのだろうか。

 

「やはり、一人が心地好い。パーティーはどうにも俺がやりづらいな」

 

宿屋に入ると俺はすぐに部屋に入り、アイテム整理を少しして俺は眠りに付いた。

 

 

 



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孤独の天帝

タイトルを書いていなかったのを修正しました。


俺は今、とある所にいる。

まぁ場所は59層の草原なんだが。

何故このような場所にいるかと言うと俺は昼寝が好きだ。

現実でも素晴らしい昼寝が出来るポイントを持っている。

だがSAOではそれが無かったため、どうにかして探していた結果がこれだ。

今日はSAOで最高の気象設定で最高の温度設定となっている。

これは昼寝をしなければ損というものだ。

するとどこからか人がこちらにやってくる。

 

「・・・ん?先客がいるとはな」

 

「ソウタ、どうしたんだ?」

 

「お前とほとんど目的は一緒だ」

 

「なら俺も一緒に寝ようかな」

 

「木の上で俺は寝とくわ」

 

俺はキリトも同じ目的だと分かり木の上で寝ることにした。

木の上はなれると良い寝床となる。

時間は7時だったから18時ぐらいまで寝ることにした。

だが、それは他者によって防がれる。

 

「何してるの」

 

「・・・何って昼寝」

 

「あのね・・・!こうしてる間にも私達の現実での時間が少しずつ失われていくのよ?」

 

「だからってなんだ、今日は最高の気象設定に温度設定だ。こんな日に迷宮にもぐってっちゃ勿体ない」

 

「あなたね・・・!」

 

「あんたも一度寝そべってみればわかるさ・・・」

 

どうやら血盟騎士団の副団長アスナだった。

生憎俺は女性にたいしてそこまで興味はないので気にしない。

一応《隠蔽》は使っているからよほどの事が無いかぎりばれはしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼寝に嵌まっていると7時だった時間が17時まで過ぎていた。

もう少し寝ようか考えたがキリトは既に起きていたようでレンガ塀の上であぐらを作っていた。

 

「キリト、おはー」

 

「ああ、おはようソウタ」

 

「何してるのかと思えば・・・なるほどな」

 

キリトが何故移動していないかはすぐに理解した。

アスナが本当に寝てしまっていたのだ。

SAOの世界では睡眠PKという物がある。

寝ているプレイヤーを狙い『全損決着モード』でHPを全て削って殺す方法。

アスナにそんなことをする者は居ないだろうがキリトなりの配慮なのだろう。

 

「アスナ任せたぞ。俺は攻略でも行ってくる」

 

「・・・ああ」

 

「攻略組で先に死ぬのは俺かもな?」

 

「縁起でも無いことを言うなよ」

 

「良いじゃねぇか、そっちのが緊迫した戦闘が出来る」

 

「・・・生きろよ」

 

「片隅にでも留めておくさ」

 

俺はキリトと別れると前線である62層の迷宮区に向かった。

一応俺はソロで基本的に活動する。

理由は簡単でソロのが何かと行動がしやすい。

またソードスキルの熟練度上げも出来る。

SAOの世界では『ユニークスキル』という特別なスキルがある。

俺には《天帝剣》、キリトには《二刀流》が出ているらしく、まだ公表はしていない。

情報屋のスキル一覧にも載っていない辺りユニークスキルという物なのだろう。

現在俺が分かっている限りでは。

俺の《天帝剣》

キリトの《二刀流》

ヒースクリフの《神聖剣》

の3つだ。

出現条件が不明で時期も不明な点からユニークスキルだと思っている。

 

「誰もまだ居ないし・・・ボスやってみるか」

 

一応俺はボス部屋を見つけている。

マッピングデータを公表しているが攻略隊が集まらないためまだ倒していない。

危なくなれば転移結晶を使って脱出すれば些か問題はない。

 

「・・・《天帝剣》使ってみるか」

 

《天帝剣》には熟練度が無い変わりに制限がついている。

《天帝剣》スキルの発動条件にレア度20武器装備時のみという制限があった。

SAOの世界では階層が5上がる毎にレア度が1あがる様になっている。

レア度20の装備は100層近くじゃなければ入手が難しい。

だが俺のストレージにはそれをクリアする武器が一つだけあった。

いつの間にか入手していた一振りの刀『夢陽炎』。

 

「装備してみたが・・・本当に綺麗だな」

 

《天帝剣》スキルの『パッシブスキル』はかなり強力だ。

・全武器種熟練度1000固定

・全ソードスキル硬直時間短縮

・武器装備欄拡張

・攻撃力&敏捷力2倍

・《武器防御》スキルの防御率上昇

上記5つの常時発動スキルがある。

使用条件が難しい部分があるがその分を凌ぐスキル。

 

「武器装備欄拡張・・・ああ、なるほどな」

 

俺は説明文の疑問の一つである【武器装備欄拡張】の意味を理解した。

《天帝剣》スキルを習得すると装備画面に新たな部位が表示されていた。

『背中1』・『背中2』と表示されている装備欄があった。

このスキルは恐らく多種の武器を扱えるのだろう。

『夢陽炎』は刀カテゴリの武器なので残り二つの装備欄には刀が装備出来ない。

だが他の武器種・・・片手剣や細剣ならば装備出来る。

 

「こりゃチートスキルだな・・・しかも全武器種の熟練度最大だし」

 

他の武器種を装備出来るに従って熟練度も全て最大値になっていた。

熟練度の最大値は1000で、《天帝剣》スキルの効果により強制的に1000固定になっている。

だが生産スキルまでには効果が及んでいない。

 

「・・・レア20武器を2つも用意出来るのかねぇ・・・」

 

《天帝剣》を使いこなせるか不安になるも今はボス部屋の前。

ボスだけを倒すことを考え俺は扉に手を触れる。

 

「・・・やるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘を開始して5時間。

ボスのHPゲージは4本あり、内2本が削られていた。

俺の方は回復薬系をほとんど消費しており、残るは結晶アイテムのみだった。

 

「・・・一か八か使ってみるか」

 

俺は《天帝剣》スキルの『次元斬』を発動させた。

ボスに1発当てると一気にボスのHPが1割減る。

その減少量に驚くも俺はそのままボスを斬りまくる。

 

「はぁぁぁあぁぁあ!!」

 

「ゴガァァァ!」

 

しかしボスもやられているだけはなく抵抗してきた。

そこで『次元斬』をすぐに止めると今度はスキルの発動の構えをとる。

ボスの攻撃が当たると同時にスキル『飛燕』を発動、それによってボスの攻撃を反射する。

『飛燕』は相手の攻撃を反射スキルのようで猶予は0.5秒。

早すぎても遅すぎても成功しないスキルだが成功すれば相手に全てのダメージが反射され、尚且つ5秒の強制硬直を与える。

無論俺も硬直があるのだが《天帝剣》スキルの硬直短縮によりボスより素早く行動をした。

 

 

ボスのHPは残り3割。

俺はそれを一気に削るべく《天帝剣》上位スキル『無明剣』を発動。

刀を一度鞘に戻し、居合いの構えをとる。

そして一度後ろにステップを取ると一気にボスに突進する。

後ろのステップはフェイントでメインはそのあと。

ボスに突進すると一気に鞘から刀を引き抜き、斜めに切り上げる。

そこから一文字と斬って最後にまた斜め下に叩き斬った。

 

「グゴガァ・・ァァァ・・・」

 

「・・・」

 

最後の悲鳴を挙げるとボスはポリゴンとなって消える。

それと同時にボス部屋の扉が開いた。

 

「ソウタ君!?」

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

先程まで緊迫した戦いをしていたせいか終わると一気に疲れが襲う。

 

「アスナか・・・ここのボスはさっき・・・倒した・・・」

 

「そ、それよりHPが!?」

 

「ん・・・?あぁ・・・ポーションが切れて回復出来なかっただけだ」

 

アスナは俺のHPを確認すると驚愕していた。

一応パーティーじゃなくとも至近距離であれば見ることは可能だ。

俺のHPは1ドッドぐらしかのこっていない。

まぁ驚かせるのも無理はないな。

 

「どこだ・・・あぁ、あった。ヒール」

 

腰につけていた回復結晶を使うとHPを回復する。

そしてボスのLABを確認した。

 

「・・・『エリュシオン』・・・?」

 

俺は一度それをストレージから取り出して見てみる。

黒塗りの片手剣でキリトの片手剣と酷似していた。

だが一つ不思議な点があった。

装備が出来ない。

また説明文には【神話ノ楽園、封サレシ英雄ノ魂眠ル】と表示される。

 

「・・・とりあえず後にして、アスナはどうするんだ?」

 

「攻略が終わっちゃったし・・・一先ず団長に報告するわ」

 

「ん、そうか。んじゃ俺は帰る」

 

ボス攻略も終わったこの層に居続ける意味も無いので自分のホームへと向かう。

俺の家は48層にあり、近くに良い腕を持つ鍛冶屋がいる。

家に俺は戻るとLABの武器の意味を解読していた。

一応神話はすこしなら分かるためどうにかできないか考えていた。

 

まず、エリュシオンというのはギリシャ神話に出てくる死後の楽園だ。

神に愛された英雄の魂がエリュシオンにて暮らすとされている。

・・・英雄の魂?

確か俺はどこかで手に入れた用途不明の素材アイテムがあったはずだ。

 

「あった・・・」

 

それは『壊れた歯車』と『壊れた槍』。

どちらもギリシャ神話として考えれば関係性はある。

ギリシャ神話の大英雄『アキレウス』。

 

「・・・ならばやってみるか」

 

俺は顔見知りの鍛冶屋に足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入るぞー」

 

「ようこそ、リズベット武具店へ・・・ってソウタじゃない」

 

こいつは48層に店を持つ鍛冶プレイヤー『リズベット』。

アスナやユウキの武具メンテをやっており、また素晴らしい程の腕を持つ。

 

「今日は何のよう?」

 

「合成してくれ」

 

「素材は?」

 

「これだ」

 

俺はストレージから『エリュシオン』と『壊れた歯車』、『壊れた槍』をカウンターに置いた。

 

「な、なに?これ」

 

「まぁ良いから、やってみてくれ。失敗しても文句は言わん」

 

「まぁ良いけれども・・・」

 

リズは渋々それを受けて工房へと向かう。

俺もついていったが中はやはり暑い。

 

「ふー・・・」

 

リズが深呼吸するとハンマーを取り出し、エリュシオンの上に歯車と槍を置いた。

そして思いっきりそれらをたたき付けるようにハンマーを振る。

何度も、何度も。

 

そして数十回叩いて変化が起こる。

 

「出来たわよ・・・『神剣エリュシオン』?見たこと無いわね」

 

「やっぱりな」

 

「?」

 

「エリュシオンというのは元は神話の事で先程の素材も神話繋がりなら関係性が高かった。だから合成をやってほしかったんだよ」

 

「ふーん・・・じゃあこれ・・・って、おっも!?」

 

リズが持ち上げて俺に渡そうとしたのだろうが筋力不足で一ミリも微動だにしなかった。

まぁ俺は軽々と持ち上げたがな。

 

「重過ぎないな。どれでいて振りやすい」

 

「代金は要らないわ。そんだけ良い武器出来たの久しぶりだから」

 

「ん、そうか。ならばここを贔屓にしてやる」

 

俺はリズにトレードで今まで集めた金属を全て押し付・・・渡した。

 

「ちょ、ちょ!?あんたどんだけ持ってるのよ!」

 

「今までずっと使ってなかっただけだ、持ってても宝の持ち腐れ」

 

渡した金属には『ブラックパープルクリスタル』や『クリスタライトインゴット』も混じっていたが俺には扱えないし不要だ。

売っても良いが生憎金には困っていない。

 

「それじゃあな」

 

「え、ええ。これからもご贔屓にね!」

 

「ああ」

 

俺はリズの店を出ると新たな武器『神剣エリュシオン』を一度家で見ようと思い帰ろうとしたのだが、見たことのある人物がいた。

 

「ユウキ・・・?なんでまた」

 

一応俺の家は一部を除いて知られていない。

キリトは知っている。

だがユウキは知らないはずなのだ。

 

「まぁ良い、窓から入ろ」

 

ユウキに気づかれないように近付き家の窓から帰宅した。

ばれた気がしなくも無いが。

今日はもう疲れたし確認は明日にしてもう寝よう。

俺はベッドに入るとすぐに寝てしまった。

 

 



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関わりを隔てる距離

今、ボクはソウタの家の前にいる。

場所はとある情報屋に教えてもらったよ。

ソウタが中に居なかったから帰ってくるまで待ってるんだけど・・・。

 

「ふぁ・・・ふ・・・」

 

まったく帰ってこない。

場所違うのかなぁ・・・?

それに眠たくなってきた・・・。

 

「何してんだ」

 

「・・・ぁぅ?」

 

「・・・はぁ、コード押さないでくれよ」

 

誰かがボクを抱えていく。

眠気に負けてるボクはそれをほとんど認識出来ずに目をつぶった。

 

 

 

 

 

ずっと《索敵》スキルで家の近くの範囲を指定した瞬間反応するってどういうことだよ。

どうせユウキ辺りだろうし、追い返そう。

だが扉を開けると下には船を漕いでいるユウキがいた。

目はほとんど開いておらず呂律も回っていない。

 

「・・・はぁ、コード押さないでくれよ」

 

ユウキを抱えて家のベッドに寝かせる。

さすがに外に放って置くと色々とまずいからな。

 

「ったく・・・」

 

しかし俺も言ってしまうと眠い。

だがベッドはユウキに使わせてるので今日は頭をベッドに乗せて寝ることにした。

 

「・・・おやすみ、ユウキ」

 

 

 

 

 

俺が起きると時間帯は8時。

ユウキはまだ寝ていたが何故か俺の手がユウキに握られていた。

 

「・・・なぜに?」

 

「んむ・・・」

 

ユウキを起こさないように手を動かすと、とりあえず体を伸ばす。

現実での癖になってるからかこれをしないと動く気力がない。

 

「さて・・・どうすっかなぁ」

 

いつも通りやることがない俺は基本暇だ。

キリトとアスナが結構良い線行ってて相談に呼ばれるがそれ以外になると攻略しかない。

俺にはそういう相手が居ないし、そもそも俺より良い奴いっぱい居るしな。

そんなことを考えているとドアが叩かれる音がする。

《索敵》を使って人数を確認すると2人。

 

「あー、はいはい。出ますよーだ」

 

「ソウタ君、ユウキは!?」

 

「ユウキならそこだ。ついでに引き取って行ってくれ」

 

ドアを開けると慌てたようにアスナが入ってユウキを見つける。

なんかあったんだろうと思うが俺には関係が無いから触れないようにする。

 

「何もしてないでしょうね?」

 

「誰がするか。飢えてる訳じゃないし、昨日俺の家のドア前で寝られそうだったから寝かせたまでだ」

 

「そ、そう・・・なら良いわ」

 

俺の返答に求めていた言葉では無かったのかアスナは少し暗くする。

 

「早く引き取れ。早くどっか行きたいんだよ」

 

「う、うん」

 

「ソウタ、何もしてないのか?」

 

「しねぇよ、しても気まずくなるだけだろうが」

 

「そうか」

 

アスナが寝ているユウキを背負うとキリトと一緒に家を出た。

無論俺も迷宮に行くから同じく家を出て鍵を閉める。

 

「あー・・・一応言うけどな、ユウキとかにそういう感情は抱いてねぇから安心しろ」

 

「え、ええ・・・じゃあ私達もう行くね」

 

「ん、じゃあな」

 

俺は必要以上に関わりを持とうとは思わない。

SAOなんてクリアしてしまえばそれまでの関係。

例え俺にそんな感情があっても口にはしない。

 

「好意・・・ね、人殺しにそんな感情あるわけねぇだろ」

 

俺はもうその事を考えたくなかったのでさっさと迷宮へと潜りに向かった。

 

 

 

 

 

私はユウキを背負って自分のホームへと行った。

キリト君も一緒だったけど仕方ないかな。

 

「ユウキ、起きてる?」

 

「・・・うん」

 

ユウキは起きてたみたいだったけど声は震えていた。

どことなく泣き出しそうな感じも。

 

「ボクは・・・邪魔なのかな・・・」

 

「ユウキ・・・」

 

「ボクの気持ちは・・・ソウタにとって邪魔にしかならない・・・だったら・・・」

 

「ユウキは簡単に諦めるんだな」

 

「・・・」

 

「俺が知ってるユウキは負けず嫌いでそれでいて一途な所。今までにも告白されても断ってたのはどうしてだ?」

 

「ソウタが・・・好きだから」

 

「ソウタは俺らとの関係の間に壁を作ってる。深くまで関わりを持たないように。それを取り払ってからでも遅くは無いと思う」

 

今までキリト君がこういう話には入らなかったけど、真剣に言っているのは初めてみる。

ユウキもキリト君のおかげで自信を取り戻したのか元気が少しずつ戻っている。

 

「そう・・・だね。ありがとうキリト」

 

「良いよ、ユウキの為だから」

 

「よしっ!ボクもう一度ぶつかってみる!」

 

「うん、応援してるからねユウキ」

 

「俺からも。頑張れ」

 

「ありがとう、二人とも!それじゃ行ってきます!」

 

すっかり元気になったユウキは家を出るとソウタ君の元へと行ったのかな?

 

「さて、俺は迷宮攻略してくる。ボス戦でな」

 

「うん、気をつけてね」

 

キリト君も迷宮攻略でどっか行っちゃった。

私もお仕事しなくちゃだ。

 

 

 

 

 

俺は今63層の迷宮にいる。

今回はボスではなく新たな武器『神剣エリュシオン』の試し切りだ。

装備画面の『背中1』にエリュシオンを選択し装備する。

すると背中に重みが増える。

 

「キリトの《二刀流》を使えたりはしないか・・・」

 

武器種が違うが二本の武器を装備しているため《二刀流》スキルが使えるかと思ったがそんなに甘くは無かった。

まぁ使えても俺は使わんが。

 

「これ二刀流ならぬ三刀流が出来るのか?でも扱えない気がする」

 

とりあえず俺はさっそく二刀流で出来る攻撃をしてみる。

《武器防御》スキルを習得しているのでモンスターの攻撃を剣を交差させて防ぐ。

HPの減少量が微々たる物だったのでかなり防御率が上がっているみたいだ。

 

「《天帝剣》スキル自体まだ公表されていないスキルだからなぁ・・・迂闊に使えんな」

 

《天帝剣》スキルの事を考えていると《索敵》が引っ掛かった。

人数は50人で動きはバラバラだった。

《隠蔽》スキルで姿を隠して警戒をすることにした。

 

 

少しすると姿が見えてきたので見てみると見知った顔、アスナだ。

後ろには血盟騎士団の団員が見え、攻略組もいた。

 

「アスナじゃねぇか」

 

「ソウタ君!」

 

「ボス攻略か?」

 

「ええ、ソウタ君も参加してくれない?」

 

「悪い、パーティーは嫌いなんだ・・・その代わりこれをやるよ」

 

俺はトレードを開きアスナに63層迷宮のマップデータを送信する。

63層迷宮の行けるところ全てを踏破してあるのでボス部屋だけが残っている。

 

「良いの?」

 

「参加できないからな、ボスは任せた」

 

「分かったわ、それじゃあ」

 

「じゃあな」

 

エリュシオンの試し切りも出来て今日はやることを終えた俺は迷宮から出ることにした。

一応レベルあげも少しはしたし問題は無いだろ。

マップデータも街で公表する予定だったがアスナ達が討伐すればまた未知の64層を探検すりゃ良い。

 

 

そういや最近オレンジ共がまた動いてる。

あんだけ処理したのに懲りない奴らだ。

 

「ラフコフが動いてるからか・・・?」

 

「いい勘してるじゃねぇか・・・」

 

「・・・PoH」

 

PoH。

レッドギルド『笑う棺桶』のリーダー。

魔剣『友切包丁』を武器として使い、異常なカリスマ性や行動力で全プレイヤーから恐れられる。

 

「oh、覚えていてくれていたとはな・・・」

 

「当たり前だろ・・・で、何のようだ」

 

「交換条件だ、俺達と組まないか?」

 

「何度も言ってるだろ、断る。生憎人殺しを快楽として受けれないんでね」

 

「残念だ・・・」

 

「用が無いならどっか行け、お前と居るといらっとする」

 

PoHは俺がいらついていることに気付き、すぐに撤退した。

PoHは殺人プレイヤーだが実力は持っている。

自分と相手の実力を見抜けない奴はすぐさま死ぬだろう。

 

「・・・ちっ、そのうち潰してやるよ。レッドギルドを潰せばオレンジも静まんだろ」

 

ミヤビが生きている事は生命の碑で確認はしているがそれでも大丈夫なのかと思う。

あの時一緒に誘わなければ。

一緒にSAOをしようと言わなければこうはならなかったんだろうな。

 

「・・・善人は終わりだ。ここからは『暗躍者』の時間だ」

 

俺は顔が見えないようフードを被る。

武器は特別製の麻痺毒ナイフを装備する。

このナイフはLv10の麻痺が付与されていて、左腕及び頭の行動などの行動を妨害する最強クラスの麻痺。

 

「・・・行くか」

 

63層迷宮を出ると俺はオレンジとレッドを殺すべくまた殺人鬼へと変わっていった。

 

 

 



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『暗躍者』と《笑う棺桶》

63層攻略から2週間ほど経過したある日。

SAOの世界での街では人々がざわついていた。

掲示板に書かれている内容によるもの。

 

【ついにPKK『暗躍者』の情報を血盟騎士団、掴む】

 

という内容だった。

暗躍者はSAOで最も恐れられているプレイヤー。

正式なプレイヤーネームを知るものはおらず、影で動いていることから『暗躍者』という二つ名が付けられていた。

 

「ねぇ、キリト、アスナ。これって・・・」

 

「・・・ユウキ、来てくれ」

 

それを見たユウキは親友のキリトとアスナに聞いた。

この場で話せない内容なのかキリトは場所を移した。

 

 

 

 

 

 

俺は『暗躍者』をよくは知らない。

何でもPKKのプロだという情報しかまず流れていなかったから。

しかしそれは覆された。

アスナが所属するギルド『血盟騎士団』の団員情報で『暗躍者』がどこにいるかを突き止めた。

 

「・・・ユウキ、暗躍者自体は知ってるか?」

 

「うん・・・PKKが専門のプレイヤーなんでしょ?」

 

「ああ。ただ少し気掛かりなんだ。暗躍者が表に出てソウタの連絡が付かない」

 

「気のせいじゃないの?キリト君」

 

ソウタがここ最近姿を見せなくなっていた。

フレンドからの探知機能を切られ、情報屋にも依頼するが手がかり一つも掴めなかった。

 

「俺は・・・『暗躍者』がソウタなんじゃないかと思ってる。アルゴにも聞いたがその線が怪しいと言われたしな」

 

「ソウタ君が・・・?」

 

「ソウタはそんな事しないもん!」

 

「・・・二人とも、確証はあるのか?俺も確かにそうは思いたくないけど情報屋の中で結構噂されてる」

 

 

 

 

「・・・へぇ?おもしれぇ話だなぁ」

 

「「「!?」」」

 

「うわ、ひでぇ反応。まぁ良いけど」

 

俺達はすぐさま移動し、その声から距離をとった。

姿はローブで隠されており、人物の特定が出来なかった。

 

「誰だ!」

 

「誰でも良いだろ?」

 

「何の用だ」

 

「用件ねぇ・・・おめぇらPKK、暗躍者追ってるんだってなぁ?なら60層迷宮に来な。おもしれぇもん見れるかもなぁ」

 

そういうとローブのプレイヤーはどこかに去って行った。

《索敵》で探すも相手の《隠蔽》が高いからか探知が出来なかった。

 

「今の・・・」

 

「聞かれてたな、しかも60層?」

 

「キリト君・・・暗躍者の情報がね・・・60層に潜伏してるみたいなの」

 

「・・・アスナ達は行くのか?」

 

「うん、団長は参加しないけど他の団員を集めて60層迷宮に行くつもりだよ」

 

「ユウキはどうするんだ?」

 

「ボクも行くよ。もしソウタが暗躍者なら止めたいから・・・」

 

「なら俺も行くよ・・・って誰かからメッセージがきてる」

 

「ボクにも来てるよ」

 

「私にも」

 

ユウキとアスナも・・・?

俺はメッセージを見てみた。

ダイレクトメッセージのようで誰から来たのか分からなかった。

プレイヤー名は『Miyabi』と書かれている事。

【笑う棺桶は60層潜伏】

 

「・・・笑う棺桶(ラフィン・コフィン)。暗躍者はラフコフと繋がりがあるって噂だったな」

 

「ラフコフってあのレッドギルドの?」

 

「ああ、多分。でもなんで繋がりがあるんだ?」

 

「それを確認するために60層に行くんでしょ?」

 

「そうだね、私一度ギルドに戻るね」

 

「ああ、俺も準備があるから行くよ」

 

「一回解散だね、次はソウタを入れて集まろうね」

 

「ああ」

 

「うん」

 

俺達はパーティーを解散し、移動した。

俺はいざという時のために結晶アイテムなどを買い揃えた。

60層に向かうのは本日だったみたいで60層の街には血盟騎士団を初めに聖竜連合などや風林火山といったギルドが参加していた。

 

「クラインじゃないか」

 

「おー、キリト!おめぇも参加するのか」

 

「ああ、何でも笑う棺桶(ラフィン・コフィン)が居るっていう情報があるからな」

 

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)だぁ!?あのレッドギルドが60層に居るのかよ?!」

 

クラインの言葉で周りのプレイヤーが俺達を見る。

確か60層には暗躍者が居るという情報だけで笑う棺桶(ラフィン・コフィン)がいるという情報は無いんだったな。

 

「一応そういう情報があったんだ。警戒は必要だろ」

 

「だな・・・キリト、死ぬなよ」

 

「おまえもな」

 

俺はクラインと別れるともう一度装備などを確認した。

念入りにチェックをして準備が完了するとアスナが声をかけた。

 

「皆さん、準備は良いですか!」

 

アスナの声に皆は反応する。

それは準備が出来たという証だった。

 

「今回、PKKの『暗躍者』がいるという情報だけで集まってくれた皆さんに感謝します!・・・ですが、新たな情報が入りました」

 

「副団長様、それは何ですか?」

 

「レッドギルド・・・笑う棺桶(ラフィン・コフィン)が潜伏しているとの情報がありました」

 

「なぁ!?」

 

「嘘だろ・・・?」

 

いきなり笑う棺桶(ラフィン・コフィン)がいるという可能性を打ち出されて驚かない奴なんていないよな。

 

「なので皆さんにはここで離脱していただいても構いません。これはボス攻略などではなくプレイヤー同士の戦いとなります」

 

そう、これはボス攻略・・・SAOクリアの道ではなくプレイヤー同士の戦闘だ。

AIで動くモンスターと違い、複雑な動きをするプレイヤーは今までとは違うだろう。

モンスター以上に死亡するリスクが高い。

 

「俺は聖竜連合所属のタンクリーダーの『シュミット』と言う。アスナさんが言ったようにこれは攻略じゃない。相手はプレイヤー、AIのモンスターとは違う。死亡リスクはモンスター以上に高いと思ってもらって良い」

 

「そしてもし笑う棺桶(ラフィン・コフィン)が本当にいた場合、掃討する必要性はある。基本的には戦闘能力を奪い、牢獄へと送るのが良い・・・だがやむを得ない場合は俺達で殺さなければならない。それを受け入れられない場合は抜けてもらっても構わない」

 

タンクリーダーのシュミットの言葉はあっているだろうな。

相手は殺人ギルドで殺すことに関しては容赦をしない。

あまりの抵抗ならば殺さなければならないだろう。

 

「シュミットさんが言ったようにこれは強制参加ではありません。ここで離脱していただいても責めはしません」

 

シュミットとアスナの宣告に誰も離脱するプレイヤーはいなかった。

それだけの覚悟があるのだろうな。

 

「それでは皆さん、行きましょう!」

 

 

アスナがプレイヤーを見やると60層迷宮へと突入していった。

現在の戦線は70層でこの場にいるプレイヤーは安全マージンのLv80を超えている者が多い。

60モンスターに遅れを取ることもなく、潜伏場所へと足を進めていった。

 

 

 



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『暗躍者』の結末

ボク達は60層迷宮へと進んでいく。

道中のモンスターは全然相手にならないくらい弱かったからボクとキリトで一気に突き進む。

 

「やぁぁぁ!」

 

「はぁぁぁ!」

 

ボク達に続くようにアスナ達も追ってきた。

 

「ユウキ、キリト君ー!」

 

「アスナ?どうしたの?」

 

「もうすぐだよ、目的地」

 

「ん、そうか・・・なら一度警戒を入れて進もう」

 

キリトの考えにボクとアスナは頷く。

潜伏場所に近い場合は警戒をしつつ、襲撃を警戒しなければならない。

じゃないと全方位を囲まれる危険性がある。

そうして、目的地へと到着するとタンク隊を前に出し、強襲を警戒。

 

「随分と大人数な事だな」

 

「・・・!」

 

声がした方向を振り向くとあの時のローブのプレイヤーだった。

つまり『暗躍者』。

 

「人数から見て・・・俺の処刑か」

 

「暗躍者さん、全面降伏してもらえればこちらも助かります」

 

アスナが暗躍者に勧告するが暗躍者は首を横に振る。

そして背中から剣を引き抜いた。

 

「降伏?してやっても構わんが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら、ちと手伝ってくれよ」

 

暗躍者が言うといきなり大人数のプレイヤーが現れた。

カーソルは全て赤色やオレンジ。

そして中には《笑う棺桶》幹部のジョニーとザザそしてPoHがいた。

 

「黒の剣士じゃん!閃光に絶剣・・・暗躍者もいる!」

 

「これは、少し、分が、悪い」

 

「これはこれは・・・面白そうじゃねぇか・・・ブラザー!やるぞ!」

 

幹部プレイヤーによる号令で一気にその場は戦場となった。

するとボクに攻撃して来るローブのプレイヤーがいた。

 

「くぅぅ・・・」

 

「・・・たす・・・けて・・・」

 

「ふぇっ・・・?」

 

「お願い・・・」

 

ローブのプレイヤー・・・はいきなり助けてと言うためボクはどうすれば良いか考えた。

だけどボクにはそれをどうすれば良いのか分からなかった。

 

「さぁて・・・殺しは駄目だもんな。なら麻痺で少しばかり大人しくしててな」

 

そして高みの見物をしていた暗躍者の手元にはナイフがあった。

そしてソードスキルの構えを取った。

 

「あれは・・・《投擲》?」

 

《投擲》スキル『シングルシュート』で一人一人的確にナイフを当てて行った。

ナイフには麻痺が塗られているのか当たったプレイヤーはどんどん麻痺状態になる。

 

 

 

 

 

 

そして次の行動は誰も止めれなかった。

暗躍者が抜いていた剣はソードスキルによってとある人物へと向かっていく。

 

「てめぇらだけは死ね」

 

その人物は《笑う棺桶》リーダーのPoHだった。

いきなりの行動に反応が遅れるもPoHはそれをかわしたがその後の第二撃の追撃によりPoHの体に暗躍者の剣が刺さった。

 

「あ~・・・まぁ・・・良いかぁ・・・」

 

PoHはそう言い残すと体をポリゴンへと変えて消えた。

 

「ヘ、ヘッド・・・?」

 

「お前、許さない!」

 

ボク達が暗躍者を止めようにも《笑う棺桶》の監視をしなければならない。

目を離して逃げられでもしたらこの掃討は意味なくなってしまうから。

 

「ジョニー、ザザ。てめぇらも同じとこ行ってきな」

 

暗躍者は左手に構えていた麻痺ナイフで二人を切り付け、麻痺状態にすると首元に剣を当てた。

 

「ひっ・・・!」

 

「・・・」

 

「遺言はそれだけか・・・じゃあ死ね」

 

「ソウタぁ!」

 

ボクは・・・暗躍者をソウタと言ってしまった。

間違いかもしれないし、本当にソウタが暗躍者という可能性を捨てきれなかった。

 

「・・・ち、興が逸れた。てめぇらは牢獄にでも行ってろ」

 

暗躍者は回廊結晶を取り出し、開いた。

 

「生き残った《笑う棺桶》メンバー全員入るかここで惨殺されたいか・・・どっかにしろ。数秒以内に」

 

暗躍者の苛立った声色と目の前で自分達のリーダーが殺されたからか、レッドギルドと言えど自分達から中に入って行く。

ジョニーとザザは暗躍者によってほうり込まれた。

 

「・・・はぁ、で?おめぇらはどうすんだ」

 

「ふぇ?」

 

「何もねぇならそのローブの子、俺に渡してくんねぇかな」

 

暗躍者はボクに抱き着いているローブの子を指差した。

ボクとしては何か訳があると思ってこの子は牢獄へと投獄はしていない。

だが周りのプレイヤー達は暗躍者を警戒する。

ボクはそんなに警戒していないんだけどね。

 

「・・・警戒し過ぎだろ・・・まぁ良いけどさぁ」

 

「暗躍者・・・プレイヤーネームはなんだ?」

 

「ん?あぁローブ被ってたままか・・・」

 

キリトに尋ねられ暗躍者は身につけていたローブを外した。

その姿はボク達が良く知る人物・・・ソウタだった。

 

「やっぱりと思ったか?まぁ合ってんだけどな」

 

「ソウタ・・・」

 

「なんつー顔してんだ?別に俺が殺人者でも良いとは思うけど」

 

「ソウタ君・・・あなたが暗躍者なの?」

 

「ああ、俺がPKKの暗躍者・・・さて俺を殺すんだろ?」

 

「・・・っ」

 

「何を躊躇ってんだ?キリトでもアスナでもユウキでも良い、お前らが持ってる武器で俺を斬るだけじゃねぇか」

 

ソウタは何も分かってない。

ボク達・・・キリトやアスナはそんな事をするために来たんじゃないのに・・・。

なんで殺されるっていう状況を楽しめるの・・・?

ボクには分からないよ・・・。

 

「・・・なんだ誰も・・・殺してくれねぇのか・・・」

 

「暗躍者ソウタ。一時的に貴方を監視することにします。構いませんか?」

 

「アスナ。まずその行動の理由はなんだ?監視なんてせず牢獄にでも放り込めば良いじゃないか」

 

「ソウタ君本当にそんな事思ってるの?」

 

「そりゃあな。PKKをし始めた最初から殺されても牢獄行きになる覚悟はあった。そのローブの子を取り戻すためなら幾らでも俺は犠牲になれる」

 

ソウタはローブの子を見やる。

その表情はどこか優しげで見てて安心する顔。

その近くにいたボクを見たけどすぐに目を逸らされた、なんでだろう?

 

「・・・はぁ。良いよ。監視するならすれば良いが・・・付き人はキリト・ユウキ・アスナだけにしてくれ。知らん奴に監視されたくねぇ」

 

「副団長様、どうしますか?」

 

「キリト君とユウキは大丈夫かな?」

 

「俺は大丈夫」

 

「ボクも・・・良いよ」

 

「じゃあソウタ君。ユウキと居てくれる?色々あるだろうし」

 

「は、はぁ・・・相手が良いなら俺は構わん」

 

ぶらきっぼうにソウタは言うと武器を外し、ボクの元にやってくる。

 

「まぁそういうことらしい。しばらくよろしくなユウキ」

 

「う、うん!」

 

多分その時のボクは凄く嬉しかったけど顔は赤かった気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は一応負けた?事にされたのでとりあえずしばらくの監視の為ユウキと行動することになった。

まぁ当の目的であるミヤビの救出も出来たし俺は何でも良いんだが。

 

 

ユウキが俺をチラチラと見てきて何というか・・・落ち着かん。

自負してる訳じゃないが好意等の感情には鋭い。

ユウキが俺に向けてる感情も分かってはいるつもりなんだが・・・な。

 

「ユウキ、正直さ」

 

「へっ!?う、うん!」

 

「・・・監視役、キリトに頼んでも良かったぞ」

 

「・・・へ?」

 

「気付いてないと思ってんならあれだが俺のことチラチラと見すぎ。視線がわかりやすいし、目を合わせたらすぐに逸らす。正直こんなのが続くならキリトに監視頼んだのが良い」

 

「ぁ・・・ぅ・・・」

 

多分無意識なんだろうな。

チラチラと見てたってのはあれだが、逸らすのは恥ずかしいとかからか?

 

「ま、少しは考えて行動しろよ?俺はそこまで気にしなくとも来ないがユウキはモテるんだからな」

 

「う、うん」

 

「俺適当にその辺で寝るからな。あと絶対一緒に寝ないから」

 

「えー・・・」

 

「えーって馬鹿かお前は。そういうのは好きな相手にしろっての」

 

「・・・ソウタなら全然良いのに」

 

「何ほざいてんだ。俺なんかよりもっと良い奴探せっての。お前ならいけるだろう」

 

こんだけ言えばしばらくは静かになるだろ。

恋愛なんぞする気はない。

どうせしてもSAOの世界の中だけの関係だからな。

 

「・・・うん」

 

「んじゃ俺もう寝るわ。基本的に寝てることが多いからどこか行くとき起こしてくれていいからな」

 

「分かった。おやすみソウタ」

 

「ん、おやすみ。ユウキ」

 

俺はユウキに言うとユウキは自室へと入った。

俺はソファーで寝るか椅子で寝るかの二択しかほとんどないので今回は椅子で寝ようと思った。

だがユウキの部屋から泣き声がした。

 

「・・・俺のどこが良いんだよ・・・」

 

もう寝ているのだろうけれど泣き声は止まらない。

 

「今夜だけだぞ・・・ったく」

 

いくら俺でも泣いている女の子は苦手だ。

女の子には笑って居てほしい。

だから俺はユウキの部屋に入るとユウキが起きないようベッドに頭と肘を乗せて肘を枕にするとそこで寝た。

片手はユウキの左手と繋いでいるから少しは和らぐだろ。

 

「・・・好きだよ。ユウキ」

 

恐らく俺は起きてるこいつに言う事はない言葉。

人殺しで血に染まりきった俺に人を好きになることなど合ってはならない。

それは胸のうちに留めておくのが1番だろう。

 

「おやすみ・・・ユウキ」

 

「おやしゅみ・・・」

 

 

 




感想と評価を付けてくださった人ありがとうございます!
全然内容が薄いですがこれからも読んでくだされば幸いです。


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紺色少女は想う

俺が目を覚ました時間は9時。

ユウキはまだ寝てるようで気持ち良さそうに寝ている。

 

「ん~・・・」

 

「おはよう?ソウタ」

 

「んあ・・・?」

 

まだ寝ぼけている俺はその人物をしっかりと見据えるまでに少し時間がかかった。

まぁ少し考えればミヤビだと分かったんだろうけどな。

 

「ミヤビか・・・」

 

「うん」

 

「戻れて良かったか?」

 

「うん!」

 

「ん、そうか」

 

戻れて・・・というのは《笑う棺桶》の事。

ミヤビは俺の代わりに《笑う棺桶》に入った。

主だった殺人は一切していない。

ならば何をしていたかと言えば、偵察・潜入などのスパイや生産に回っていた。

いくら殺人ギルドと言われても武具は専門に任すのが1番良い。

 

「・・・ユウキを一発で見抜くとはさすがに驚いた」

 

「そう?ソウタに想いを寄せてるもん、大丈夫だと思っただけ」

 

「そういうことに関する事だけは圧倒的だな。お前に頭脳戦は勝てた事無いし」

 

「戦略ゲームは無理」

 

「はいはい」

 

ミヤビは俺の実の妹。

血も繋がってるし、仲は良い方だと思う。

自慢できる妹で頭が馬鹿見たいに良い。

それどころか頭脳戦は基本勝てん、心理戦とか論外。

だが戦略ゲームに関しては壊滅的だけどな。

 

「さて・・・俺は何すっかねー」

 

「ソウタは何もしないんだね」

 

「何を?」

 

「ユウキさんに」

 

ミヤビは寝ているユウキを見て俺に言う。

何をするんだか・・・確かにユウキが俺に好意を抱いてるのは知ってるけどよ。

 

「昔っからそう。一人でいっつも抱え込んでる。PKKの事・・・全部ユウキさんに話してないよね?」

 

「・・・そりゃあな。ユウキは純粋過ぎる。SAOの中・・・だけじゃないが裏を知るべきじゃねぇよ」

 

「それはソウタの考え。ユウキさんが本当に拒んでたらあの時来てなかった」

 

「ミヤビ。それは俺に告れと言ってるだろ」

 

「そうだよ?ユウキさんとソウタって仲良いもん。アスナさんとかシリカさんよりも。何か・・・ユウキさんにだけ距離があんまり無いよ」

 

ミヤビには見抜かれまくってんなぁ。

俺はユウキの事を嫌いじゃないし、好きなタイプだ。

今まで他の女子とかに告られてもピンと来なかったがユウキを見て・・・一目惚れってのを初めてした。

恥ずかしいから本人には言ってねぇけど。

 

「ユウキさんなら受け入れてくれるよ。だってこんなにソウタの事想ってるもん」

 

「ミヤビはお姉ちゃんが欲しいんだな」

 

「ふぇっ!?そ、そんなこと言ってないよ?!」

 

「その慌て方とユウキを引っ付けようとしてる考えがわかりやすい。あとお姉ちゃん欲しいって昔から言ってたろうが」

 

「うー・・・」

 

「まぁ・・・ありがとうな。おかげで少し頑張れそうだ」

 

「ユウキさんを泣かせたら怒るからね!」

 

「誰が泣かすか」

 

俺はミヤビの頭を撫でた。

ミヤビは嬉しそうに撫でられるがままにされ、満足すると部屋から出て行った。

 

「んぁ・・・」

 

「起きたか」

 

「んぅ・・・?」

 

まだ目が覚めていないのかぼーっとしている。

俺の事を見ているがまだ認識できないんだろう。

 

「おはよう、ユウキ」

 

「おはよぉ~・・・」

 

「・・・起きてるよな?」

 

「うにゅ~・・・」

 

「駄目だこれ」

 

まだ眠たそうにしていたのでユウキの瞼を指で下げるとまた寝息が聞こえた。

今日は攻略あろうが俺は行かん。

ノルマとか毎日決めてたら俺は攻略どころか寝てる。

 

「ソウタぁ~・・・ごはぁん~・・・」

 

「ゆ、ユウキ?・・・って寝言か」

 

起きてるんじゃねぇかと思う寝言に俺はビビる。

ユウキは多分食いしん坊なんだろう、夢の中にまで食べ物出てるし。

 

「しゃーねぇなぁ、適当に飯作るか。腹減ったし」

 

とりあえず空腹感があると気持ち悪いので悪いと思いつつ台所を借りた。

食材?ストレージにまだまだ残ってる分使った。

 

 

 

 

 

 

SAOの料理はかなり簡略化されてる。

現実だと食材毎に調理法が違ったりするけどSAOでは包丁で触れれば斬った材料に変わる。

ちなみにこれは《料理》スキルが無ければ出来なかったりする。

まぁ俺は普段から自分でしていたから熟練度は1000のコンプリート済み。

 

「とりあえずスープとパンとかでいいか。あとサラダも作って・・・っと」

 

一人でやってたから作業が慣れまくってる。

ていうか最適化されてるんじゃねぇかな。

そんな事を考えていたらいつの間にか料理が出来てた。

 

「時間は・・・8時か。ユウキ起きてるかな」

 

「良い匂い」

 

「まだ食べちゃ駄目だからな?あとユウキを見てきてくれ」

 

「はーい」

 

ミヤビは先程までいたユウキの部屋に入った。

なんか悲鳴が軽く聞こえたが俺は聞いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着替えをしているといきなり部屋の扉が開いた。

 

「へ・・・?」

 

「・・・」

 

「ひゃあぁぁぁぁ!?」

 

ボクが声をあげると女の子が入ってきてすぐに扉が閉められた。

 

「お着替えシーン。ソウタ呼ぶ?」

 

「だ、駄目!」

 

「じゃあ早く」

 

なんでボクは女の子の言いなりになっているのだろう・・・

ソウタに見られたらボク泣く自信があるよ。

 

 

 

 

 

そんな事がありながらもボクは女の子に見られつつ着替えも済ませたので部屋を出た。

すると台所から良い匂いがする。

 

「ソウタがご飯作ってるよ、早く食べよう?」

 

「う、うん」

 

ソウタが・・・?

とりあえずボクは女の子に着いて行った。

すると窓際で椅子に座って外を見ているソウタがいた。

 

「ソウタ、連れてきたよ」

 

「ん。おはようユウキ」

 

「お、おはよ・・・」

 

「適当に飯作ってあるから食っとけ」

 

「ソウタは食べないの?」

 

「俺の分は食った」

 

ソウタは食べたっていうけど女の子が疑いの目で見てる。

もしかして・・・食べてない?

 

「ソウタ食べて。ソウタが作ったんだから」

 

「・・・なんでばれてるんだか」

 

「ごめんね?ボクが早く起きてたら・・・」

 

「いや・・・可愛い寝言漏らしてたし起こすのは気が引けた」

 

「へ?」

 

可愛い寝言・・・?

もしかしてボクの部屋入ったのかな?

 

「あー・・・まぁ入ったよ。泣かれたら流石に困る」

 

「う・・・」

 

「とりあえず食べな。俺も食うから」

 

この話を早く終わらせてボクと女の子を席に座らせる。

ソウタもボクの左に座って料理を分けていく。

 

「足りなかったらおかわりしていいが・・・美味いか分からんからな」

 

「う、うん・・・それじゃあいただきまーす」

 

「いただきます」

 

ボクに続いて女の子も手を合わせると食べはじめる。

口の中に入れると天国にいるような気分になった。

それぐらい美味しいよ!

 

「美味しい!」

 

「ん、おいしぃ」

 

「ならいい」

 

今まで食べた料理で一番美味しい!

どうやってこんなの作ったんだろう?

 

「作り方は気が向いたら教えてやるよ。アスナも釣れそうだけど」

 

「?分かった」

 

釣れそうってどういうことだろう?

《料理》スキルを全然あげていないボクには分からないや。

 

「食べ終わったらどっか行くか。適当に70層・・・ユウキが良かったらでいいけど」

 

「ん・・・良いよ?それと・・・この子は?」

 

ボクはずっと疑問の女の子を見る。

ソウタは知り合いみたいだけどボクは初めてだから分からない。

 

「ん、あぁ。忘れてた。こいつはミヤビで俺の妹」

 

「ミヤビです。お兄ちゃんの妹で・・・元《笑う棺桶》の幹部・・・です」

 

「え・・・?」

 

「あー、まぁ・・・詳しく言えば長いから置いとくがミヤビは本当にラフコフの幹部クラスだ。PoHの右腕と言われてたが実際には殺しは間接的にも直接的にもしていない。生産プレイヤーだったしな」

 

ソウタがそういうとミヤビの頭に手を乗せて撫でてる。

その表情はあの時ボクにも向けていた優しげな表情。

ソウタにとってミヤビちゃんは大切なんだね・・・。

 

「そっか・・・」

 

「好意を向けられようが俺はミヤビを救うまで応えるつもりはなかった。ユウキが俺に何か特別な感情を抱いているのは分かってたけどその時はミヤビの事を取り戻すのが優先だった」

 

「そうなんだ・・・」

 

「でも嬉しかった」

 

「ぇ?」

 

「その・・・まぁ好意を向けてくれてたのは嬉しかったよ。初めてだったし・・・」

 

なんだか今日のソウタは今までと違って普通な感じ。

それを見せてくれる事がボクには堪らなく嬉しい。

今まで怖い表情とか暗い表情ばかり見てたからかな・・・。

 

「う、うん」

 

「・・・よ、よし!ぱぱっと前線行くぞー!」

 

「うぇっ!?待ってぇ~!」

 

「ユウキさん、お兄ちゃんをお願いします」

 

ミヤビちゃんはボクに頭を下げてお願いして来る。

ボクとしても当然今までみたいにソウタを支えるつもり。

でも・・・本当の意味で支えれてると言われれば・・・どうなんだろう。

 

「ボクに・・・出来るのかな?」

 

「はい。ユウキさんなら任せれます」

 

「・・・ありがとう」

 

「いいえ・・・それじゃあ行きましょうか?お兄ちゃん行っちゃいましたから」

 

「うん、そうだね」

 

ボクもミヤビちゃんと共に先に行ったソウタを追う。

ミヤビちゃんはソウタの事を理解してる。

ボクなんかより全然。

でも・・・ボクはソウタの事が好き。

だからいつかこの想いをしっかり口に出せたら・・・言いな。

 

 

 




感想・ご意見募集中です。
また誤字などはあっても多分治さない気がします。


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74層での出来事

俺は74層の主街区にいる。

ここは前線で俺達が監視という名の怠けによって攻略が少し進んでいた。

ボス部屋がまだ見つかっていないらしいが生憎俺はソロでボス討伐するほどの実力はもってる。

当然ボス部屋は見つけてあるし、相手がどんなものなのかもわかっている。

ボスは牡牛のような角と巨大な剣。

そして口からは青い炎のブレスを出して来る。

 

 

ちなみに何故迷宮に行かないといえばユウキとミヤビ待ちだ。

普通ならばもう来ていておかしくはないんだが一向に来ない。

すると転移門が光りだした。

 

「どいてくださぁぁぁいぃ!」

 

「はぁ!?」

 

「うわっぷ・・・」

 

転移光から出てきたのはユウキ。

だがどこか怯えたような表情を浮かべていた。

ミヤビはユウキに引っ付いてた、しっかりと。

 

「・・・?ソウタにユウキじゃないか」

 

「んあ?キリトにアスナか。おっす」

 

「ど、どうしたの?ユウキもソウタ君も」

 

「知らん、いきなり飛び込んできたこいつに聞け」

 

俺はユウキをとりあえず引っぺがそうとするが謎の力で引きはがせなかった。

その時、また転移門が光りだす。

中からは長身で少し痩せた男。

服装的に《血盟騎士団》のようだった。

 

「ユウキ様!どこにお行かれのご用ですか!」

 

「ひっ!」

 

「・・・」

 

「ク、クラディール!?」

 

クラディールというこの男。

ユウキに様付けとか信仰者かよ、気持ち悪いな。

それにこいつが来てから俺に抱き着くユウキの手が震えていた。

 

「ユウキ様、もう一度ご再考お願いします。我が血盟騎士団に加入してはいただけませんか?」

 

「ボ、ボク言ったよね?!入らないって!」

 

「体験入部でも構いません、一度体験すればその考えも変わるかと・・・?」

 

クラディールのしつこさに俺が逆にイライラしてきた。

こいつ嫌がってんのに引かねぇなぁ。

 

「おい、おっさん」

 

「あぁ・・・?」

 

「何しようと勝手だが、こいつは今後貸し切りなんでな。連れていくなら俺を通してからにしてもらおうか」

 

「貴様、血盟騎士団に盾突くというのか?」

 

「血盟騎士団?ギルドに用はねぇ。あんたに用があるんだよ」

 

「この・・・」

 

俺の挑発にまんまと引っ掛かってくれるこの馬鹿をどうしようかね。

一応、血盟騎士団らしいし実力はあるんだろうが・・・正直首撥ねてやりたいがもうPKはする気はねぇしなぁ。

 

「アスナ、こいつどうすりゃいい?」

 

「えっ?・・・」

 

おい、考えなしかよ!

・・・はぁ、仕方ない決闘で良いや。

 

「ユウキ。少しの間キリトんとこ行ってこい」

 

「・・・うん」

 

なんか涙声だったな。

どんだけ嫌だったんだよ・・・まぁ斬り飛ばすけどさ。

 

「クラディールとか言ったっけ?決闘で決めようじゃねぇか。あんたが勝てばギルドの事には口はださないが俺が勝ったらユウキの前から失せろ」

 

「貴様ぁ・・・」

 

恨めしそうにこっちを見るのは構わんがユウキにぶつけられると不快だ。

さっさと半殺しにしてやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボクはソウタに言われてキリト達のところにいる。

アスナがボクの手を握ってくれるから少しは・・・震えが止まった。

 

「めんどくせぇなぁ、動くの嫌だってのに」

 

ソウタは本当に面倒臭そうにしているからかな。

表情からも動きからもやる気が出てない。

でも・・・殺気?はすごい出てる。

 

「ご覧下さいアスナ様、ユウキ様!この剣でこの男より上回っていると実証しましょう!」

 

「あれは・・・式典用の武器だな。あういう武器は総じて脆いんだ」

 

「そうなの?」

 

「ああ、シンプルなものは頑丈だから壊れにくい・・・まぁ見てたらわかるよ」

 

キリトがあの男の武器を観察してた。

確かに見た目は華美だけど・・・ボクにはソウタやアスナとかの剣のが好きだな。

 

「さぁてぇ・・・てめぇは何分持ってくれるよ?」

 

決闘が始まった瞬間ソウタの姿が消えた。

ボクの目にもキリト、アスナ、そしてあの男も見つけれなかった。

 

「くそっ、どこだ!」

 

「・・・とりあえず消し飛べ」

 

男が探しているとソウタは背中に回り込んでた。

後ろから出てきたことに驚いたのか剣を乱暴に振り回す。

 

「なんだその使い方。玩具じゃねぇんだからよ」

 

「くそっ、くそっ!」

 

「ユウキ、良いもん見せてやる」

 

「へ・・・?」

 

良いものって何だろう?

ソウタはソードスキルを発動させると男の剣に当てた。

詳しくいえば柄の部分。

宝石とかが嵌まってた部分にソードスキルを当てると柄から上が折れてボクの方に飛んでくる。

 

「《武器破壊》。武器と武器が鎚迫り合った時に起きる現象だが、こういう装飾が多い武器は脆弱な部分がある。その場所に一定の角度、一定の速度で攻撃すればこんな感じに折れるわけだ・・・・・・で、まだやんのか?武器それだけっぽいけど」

 

「・・・くそ」

 

ソウタが行った攻撃にキリト以外驚いてた。

ボクもだけどあんなことを平然とやり遂げちゃうんだもん。

ちなみに男はリザインしたみたいで転移門で帰って行ったよ。

 

「さーて、ゴミは掃除したし行くぞー」

 

「ん・・・?ソウタとユウキも74層迷宮に行くのか?」

 

「そうだよ?」

 

「私たちも同じなの。パーティー一緒に組まない?」

 

「・・・ユウキに任せる。ていうかお前らとならパーティーは構わん」

 

ソウタはそう言うと先に行っちゃった。

パーティーリーダーがボクだから統合しないとだ。

 

「・・・変わったねソウタ君」

 

「ああ、昔は一匹狼みたいな感じだったのにな」

 

「早く行こうよ!置いてかれちゃう!」

 

先に行ったソウタを追うべくボク達は迷宮区へと急ぐ。

ミヤビちゃんはソウタにおぶられて行ったからソウタと一緒なのかな?

とりあえず行ってみようっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウキ達を置いて俺は迷宮区へと進んでいた。

理由はミヤビのレベルあげだ。

一応、レベルはマージン内だが上げれるときにあげてやりたい。

 

「ミヤビ、スイッチ」

 

「はーい」

 

ミヤビの扱う武器は槍。

特殊効果付きらしく、効果は【《投擲》スキルによる投げ槍攻撃必中】というもの。

どこぞの狂犬の槍ぽいが気のせいだろう、蒼い色してるし。

 

「とぉ!」

 

なんともやる気がない声だがしっかりとモンスターのHPを削る。

槍は他の武器と違い、リーチがあるためそれを利用した立ち回りができる。

またミヤビの槍は手元に戻る引力があるらしく遠くから投げているだけでもかなりのダメージを稼げる。

しかしミヤビの筋力が低いせいか投げる力が死んでいる。

 

「・・・ミヤビ、お前の筋力悲しすぎだろ」

 

「うー、言うなぁ」

 

「じゃあもう少し遠くに投げろよ、なんだよこの距離」

 

ミヤビが投げた距離、2m。

俺が剣を投げても8mぐらいは出せるぞ、スキルなしで。

 

「まぁ、とりあえず安全エリアに到達したしユウキ達待つぞ」

 

「ん、わかった」

 

安全エリアに到達すると俺はストレージから大きな肉をだす。

次に鉄の棒と燃える木を出した。

この燃える木はユニークアイテムで自在に火の燃焼を操作できる。

もっぱら料理道具として使ってるが扱いやすいことこの上ない。

俺は取り出した肉に棒を突き刺して火にかけた。

 

「あとは焼こう。美味しくなるまで焼こう」

 

「お肉好きだね、お兄ちゃん」

 

「肉は美味い。まぁ食い過ぎは良くないが」

 

「だね・・・ねえ、お兄ちゃん」

 

「ん?なんだ?」

 

「・・・ユウキさんに言わないの?」

 

「何をだよ」

 

「ユウキさんが好きなの分かってるんだよ?言っちゃえば良いのに」

 

こいつはいきなり何を言い出すんだ。

・・・ユウキの事が好きなのは否定しないが。

 

「お兄ちゃんが殺人者とか関係ないよ。私はユウキさんじゃないから分からないけど・・・お兄ちゃん事をちゃんと見てくれてる」

 

「お前・・・本気で言ってんのか」

 

「本気。お兄ちゃんの事考えて言った」

 

「・・・俺の整理が付くまでは言えねぇ・・・だけど付いたら言うよ」

 

「ん、分かった・・・あともう焼けてるよ?」

 

ミヤビが俺の肉を取ると俺に渡す。

こういう面ではミヤビのが良いんだよな、《料理》スキル完全習得してるし、リアルでも飯美味いし。

ユウキの飯は食ったことねぇけど。

 

「とりあえず食うか。ユウキ達待ってる間」

 

「うん、そうだね」

 

・・・あのボスを倒したらユウキに言うか。

ちゃんと思ってる事いわないとな。

昔から迷惑と心配かけたし。

 

 

・・・肉美味い。

 

 



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