緋弾のアリア TAKE YOUR HEART (Million01)
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一章
プロローグ


怪盗繋がりにアルセーヌ繋がりで書いてみたかっただけ。
一応、ペルソナは3は劇場版は見た。4はアニメはどっちも見た。
初ペルソナは5です。大丈夫だろうか……


>諦めるのか?

 

そうやって何度も仲間に問いかけていた。一体、何度目なのだろうか?

 

この世界に来て新たにやる事が出来た。

 

そう今も、目の前にいる怪物に首を掴まれているツインテールの金髪の少女に問いかける。

 

「そうだよね…………諦めてたまるか…………。ここまで来たのに諦めたら申し訳ないもんね…………」

 

目の前の少女が目を見開くといつの間にか白と黄色の仮面を被っていた。

 

「ァァーーーァァァーーーーーー!!」

 

すると突如、悲鳴のような声で少女は両手で仮面を掴んだ。

 

ーーーベリ!ベリベリッ!

 

まるで剥がれないようにされているものを無理矢理剥がそうとする音。そんな中、剥がしている所から血が吹き出していく。

そして…………

 

ーーーブシャ!

 

少女の顔から仮面が完全に引き剥がされた。

その光景を見た黒コートの男は少女を見て不敵に微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーprrrrr…………

 

太陽の日差しがカーテンの隙間から覗く中、来栖(くるす) (あきら)は耳に響く目覚し時計のアラームで目が覚める。

 

暁は目覚し時計のアラームを止めるとその横に置いてある黒縁伊達メガネをかけた。

二段ベッドから降りると暁に近づく一匹の黒猫がいた。

 

「よう、暁。今日はどうするんだ」

 

非常識にもその黒猫 モルガナは喋った。

 

>朝飯のカレーを作る

 

だが、モルガナという猫が喋っている事が当たり前かのように暁はそう答えるとキッチンに向かった。

 

……ピン、ポーン……

 

暁は冷蔵庫から食材を取り出すと、思わず手を止めてしまう。

 

暁の部屋のドアチャイムが鳴らされたのだ。

 

「どうする。出るのか?」

 

モルガナの問いに暁は無言で廊下に出る。

 

ーーーガチャ

 

暁がドアを開けるとそこには大和撫子がいた。純白のブラウスに臙脂色の襟とスカート。黒く長い髪が特徴な少女だった。

 

「あ、暁くん。おはようございます」

 

美しい大和撫子こと星伽 白雪はドアを開けた暁を見ると礼儀正しくお辞儀をする。

 

>おはよう、入ってどうぞ

 

思わず暁も軽く会釈をしてしまい、白雪をリビングに入れる。暁は先程、寝ていた寝室に入ると二段ベッドで寝ていた少年の肩を揺さぶる。

 

「……………………」

 

だが、少年は一切、起きようともする雰囲気は無く、目を閉じたままだった。

 

>……。

 

>モルガナ頼んだ

 

暁がモルガナを見てそう短く言うと、少年の目が大きく見開いた。

 

>早かったな

 

暁がベッドから体を起こす少年 遠山 金次にそう言い放つと、キンジは暁とモルガナを見て

 

「ああ、早く起きないと猫に引っ掻かれそうだったからな。大体、モルガナが暁の言うことをなんで理解しているのか分からないんだが」

 

トランス一丁で寝ていたキンジはせっせとワイシャツを着て、制服のズボンをはく。

 

「どうせ、大方白雪でも来たんだろ…………」

 

キンジはそう言いながら暁とともにリビングに顔を出す。

 

「キンちゃん!」

 

白雪がキンジの顔を見ると顔を明るくする。

 

「その呼び方、やめろって言ったろ」

 

「あ……ごっ、ごめんね。でも私……キンちゃんのこと考えてたから、キンちゃんを見たらつい、あっ、私またキンちゃんって……ご、ごめんね。ごめんねキンちゃん、あっ」

 

>……。

 

「毎回お馴染のが始まったぞ。どうすんだ?」

 

モルガナはもう見飽きたと言わんばかりの声で暁にそう言ってくる。

 

>カレーでも作るか

 

暁はキッチンに立つと先程、冷蔵庫から取り出した食材に手をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼……来栖 暁は元々、この世界の人間でない。彼自身もそれは認識している。

また、彼自身が知っている異世界 メメントスやパレスとも呼ばれる異世界とも違う並行線の異世界である。

 

だが、彼自身どうしてここにいるのか分からない。

悪神を打ち倒し、地元に帰った所までは思い出せる。だが、それ以降の記憶が一切ない。それにいつこの世界に来たのかも思い出せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

暁は鍋の中身をよくかき混ぜる。暁自身の得意料理であるカレーのいい匂いが部屋中に漂う。

 

「あっ、暁くん。ごめんね。何も用意してなくて……」

 

白雪がカレーの匂いで暁に気付き、朝食を用意してないことに謝る。

 

>別に気にしてない

 

「えっ、でも……」

 

>むしろ、カレーでいい

 

暁は皿にご飯をつけ、その上にカレーをかけるとテーブルに起き、食べ始める。

 

「ーーーごちそうさまっ」

 

暁が食べ始めるとキンジが何やら慌てた様子で食後の挨拶をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁はカレーを食べ終え、自室に戻り机の引き出しに入っていたフォールディングナイフとオートマチック拳銃のR.I.ピストルを懐にしまいリビングに顔を出す。

 

そこにはテーブルでパソコンを見ているキンジがいた。

 

>先に行く

 

「ん」

 

暁はキンジに近づきそう言うと部屋を後にした。

そのまま7時58分のバスに乗り学校へと向かう。

 

 

 

暁が通う高校は武偵高こと東京武偵高校は、レインボーブリッジの南に浮かぶ南北およそ2キロ・東西500メートルの長方形をした人工浮島の上にある。

 

学園島とも呼ばれ、この人工浮島は、武装探偵こと武偵を育成する総合教育機関だ。

武偵とは凶悪化する犯罪に対して新設された国家資格で、武装免許を持つ者は武装を許可され逮捕権を有するなど、警察に準ずる活動ができる。

ただし警察と違うのは金で動くことで、金さえもらえれば、武偵法が許す範囲ならどんな荒っぽい仕事でも下らない仕事をこなす。つまりは『便利屋』である。

 

 

 

暁が武偵高の2年A組に入ると、賑やかな話し声が耳に響く。

 

「アッキー、おっはよ〜!」

 

暁がそそくさと窓側の自分の席に座ると目の前の席に座った、金髪ツインテールの少女 峰 理子が暁に話しかけてくる

 

>帰ってどうぞ

 

「ひどーい!これでも理子成績優秀なんだからね〜!」

 

「にしても、アッキー1人だけ?」

 

すると、理子がもう一人を探すかのような視線をしている。

 

>奴は死んだ。もういない

 

「え〜、ウッソだ〜。キーくんあれでも元Sランク武偵なんだよ?」

 

「そういえば今日、なんか用事ある?」

 

>別に無い

 

理子が暁の言葉に顔を明るくし、身を乗り出してくる。

 

「じゃあ、学校終わったらアキバに行かない?」

 

さて、どうするか、暁はほんの数秒だけ迷いを見せた。

 

>構わない

 

別に放課後は暇だし、理子と時間を潰そう。

 

「やった!じゃあ、学校が終わったら一緒に行こう!」

 

なんでこんなにテンションが高いんだ、と思いながら暁は無言で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始業式も無事に終わり、教室に入る。それに少し遅れてキンジが学校に顔を出し、暁の右隣の席に座る。

 

「先生、あたしはあいつの隣に座りたい」

 

そんな中、HRが始まり新しくクラスの一人となる赤い髪のツインテールの少女 神崎・H・アリアはキンジを指差しそう言う。

 

「な、なんでだよ……!」

 

「よ……良かったなキンジ!なんか知らんがお前にも春が来たみたいだぞ!先生!オレ、転入生さんと席を変わりますよ!」

 

そう言って手を上げたのはキンジの隣にいた残念なイケメン 武藤 剛気。

 

「あらあら。最近の女子高生は積極的ねぇー。じゃあ武藤くん、席変わってあげて」

 

「キンジ、これ。さっきのベルト」

 

するとアリアがどこからかベルトを取り出し、キンジに投げ渡した。

 

「理子分かった!分かっちゃった!ーーーこれ、フラグバッキバキに立っているよ!」

 

>落ち着け

 

突如、目の前に座っていた理子が、ガタン!と席を立った。

 

「キーくん、ベルトしてない!そしてそのベルトをツインテールさんが持ってた!これ、謎でしょ謎でしょ!?でも理子には推理できた!できたゃった!」

 

「キーくんは彼女の前でベルトを取るような何らかの行為をした!そして、彼女の部屋にベルトを忘れてきた!つまり二人はーーー熱い熱い恋愛の真っ最中なんだよ!そうだよね、アッキー!?」

 

>急にこっちに話を振るな

 

「キ、キンジがこんなカワイイ子といつの間に!」「影の薄い奴だと思ったのに!」「女子どころか他人に興味なさそうなくせに、裏でそんなことを!?」「フケツ!」

 

教室がキンジを罵倒するような声で広まっていく中、暁は若干デジャブを感じ、思わず鼻で笑った。

 

ーーーパン、パァン!

 

突如として二つの銃声が鳴り響き、クラスの雰囲気が静かになる。

 

「れ、恋愛なんて……くっだらない! 」

 

発砲した本人であるアリアは顔を赤くしながら叫ぶ。

 

「全員覚えておきなさい!そういうバカなことを言うヤツは……」

 

「ーーー風穴あけるわよ!」

 

 

 

武偵高の授業は一般校とは違い、一限目から四限目までは一般科目の授業を行い、五限目以降からはそれぞれ専門科目に分かれて実習を行う事になっている。

 

暁の学科である強襲科(アサルト)では拳銃・刀剣その他の武器を用いた近接戦による強襲逮捕を習得する。また、日常的に激しい戦闘訓練があり、犯罪組織のアジトに突入する依頼が来るなど、他の学科と比較して、危険度は高い。卒業時の生存率が97.1パーセントと、約3%の生徒が死亡するため、『明日無き学科』とも呼ばれる。

 

 

 

放課後、学校も終わり暁と理子は秋葉原に赴いた。二人は並んでとある店に入る。

 

「「「ご主人様、お嬢様、お帰りなさいませー!」」」

 

そうーーーメイド喫茶だ。普通は女の子と一緒に入るのにそれなりの度胸がいるが、ライオンハートの度胸を持つ暁にとっては恐れることは無かった。

 

二人は奥の個室に案内され向かい合うように座る。

 

「理子はいつものパフェといちごオレ!ダーリンにはマリアージュ・フレールの春摘みダージリンでよろしく!」

 

理子がメイドにそう注文するとメイドは会釈をして個室を出た。

 

「みんな、可愛い子ばっかでしょ?」

 

>理子ほどではない

 

暁が理子の質問に対し、そう答えると理子の顔がほんの少し赤くなる。

 

「ダーリンったらお世辞がすぎるよ〜」

 

そして、突如、暁の顔が何かを聞きたそうな顔をする。

 

「どうしたの?」

 

>キンジの件

 

「……やっぱり、分かってたよね」

 

暁は理子の正体を知っているし、理子も暁の事を知っている。暁自身も理子自身も怪盗であることを。

だから、暁は理子のすべきだ事を知っている。それが自分のためであると。

だから、今は(・・)止めるべきではないと。

 

「お待たせしました〜パフェといちごオレ、そしてほっこりコーヒーでーす!」

 

「ちょっと待って……注文したのはマリアージュ・フレールの春摘みダージリンだったよ?」

 

「そ、そうでしたか!?クララ、うっかりしちゃいましたぁ〜!」

 

「でもでも、愛情いっぱいでつくったんですよぉ…ご主人様ぁ、代わりにこれじゃダメですかぁ?」

 

>許す

 

暁自身、飲めればなんでもいいのでわざわざ時間をかけて作り直す必要も無かった。

 

「わーいっ、やったぁ!優しいご主人様でよかったぁ!」

 

メイドはそう言ってそそくさと個室を出て行く。

 

「はい、ダーリン。あ〜ん」

 

理子はパフェをスプーンで掬ってこちらに向けてくる。

暁は身を乗り出して、それを口に入れた。

 

「どう?」

 

甘くて冷たいだけでなく、いちごの味が濃すぎず口の中で絶妙に広がってき、アイスクリームが溶けていく。

 

>美味しい

 

「良かったぁ。コレ理子のお気に入りだもん!」

 

暁は理子と二人きりの時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁が秋葉原から帰ってくると、何やら住居人が一人増えたが暁自身、どうでもよかった。

 

暁の晩御飯は今朝作ったカレーの余りものだを余りものでも温めて食べればそれなりに美味いものだ。夜に暇を持て余し、やる事がない。

暁は寝室とは別にある自室の机に座って、懐からとある物を出す。

「生糸の束」と「ブリキの留め金」だった。

 

「キーピックを作るんだな?」

 

>作る

 

モルガナの言葉に暁は頷き作業を始める。初心者ならば一個でも作るのにかなり時間がかかってしまう。

だが、暁にとってキーピックなんてお手の物。更には器用さが超魔術である暁にとっては造作もない事。

時間が許す限り作ると気が付けば6個も作っていた。

 

「じゃあ、もう今日は寝るとするか!」

 

モルガナは流石だ、と言わんばかりに暁に言い放つ。

暁は無言で頷き、そのまま寝室のベッドに入りそのまま眠りについた。




ペルソナ5アニメ化おめでとう!
嬉しいな……主人公の名前はやはり『来栖 暁』なのだろうか?ちなみに主人公の人間パラメータは全てMAXです。


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コープ『節制』

今回は少しばかり短めです
節制と言うけどその人のキャラ二合うアルカナがなく仕方なく『節制』にしました。


理子と秋葉原に行って数日が経った金曜日の朝。いつものように朝にカレーを食べ、弁当を作ると理子から通知が来てた。スマホの画面を開くと、

 

『今日は7時58分前のバスに乗ることをおすすめします!』

 

?と思わず小首を傾げる。

 

『何かあるのか?』

 

と暁がそう入力するとすぐさま返信が帰ってくる。

 

『7時58分着のバスにバスジャックを実行します』

 

!?暁は一瞬だけ目を疑った。とは言っても本人がそう言っているのだ。本気なのだろう。

 

『無関係の人を巻き込むな』

 

『大丈夫だよ。怪我はさせないしアリアとキーくんをくっつけたいだけ』

 

……。嘘はではなさそうだ。ここは理子を信じよう。

 

『分かった。信じよう』

 

『ありがとう!』

 

暁が自室に戻り、そそくさと学校に行く準備を始める。

 

「おいおい、どうしたんだ?お前にしては珍しいな」

 

モルガナが不思議そうな声で暁の前に立つ。暁は仕方なく理子の事をモルガナに話した。

 

「なるほどな。理子も大変だな……早く何とかしてヤツ(・・)を見つけ出して改心させないとな」

 

>改心できるのか?

 

暁の一言にモルガナが思わず体を硬直させる。

 

「ワガハイにも分からん。なんせ相手が人では無いからな。にしても行かなくてもいいのか?」

 

その言葉に暁はスマホの時計を見て時間を確認した。そろそろバスが着く時間だったため暁は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスに乗ると案外、人が少なく気軽に座れた。

 

>何か読もう

 

そういえば、この前理子に雑誌を貰ったな。

 

『フォミ通 今週号はレトロゲームを紹介!』

 

レトロゲームか……前の世界ではやってたな。いつか寄ってみようか。

 

暁がペラペラとページを捲ると、思ったより時間が経っていた。

もうバス停が近いようだったので、暁は読み終わった雑誌を鞄の中にしまった。

 

 

 

 

 

 

 

放課後、暁は装備科(アムド)棟にむかった。

装備科(アムド)棟は地上一階・地下三階と、地下の部分が広く。セキュリティー管理が厳重である。

暁はそのせいかたまに怪盗心をくすぐられてしまう。

一階のセキュリティー管理を通り、地下に降りる。

無数に並ばれている銃器の中を通り、『ひらが あや』と表札のついたB201作業室をノックするとーーー

 

「はーい!開いてますのだ!」

 

中から子供みたいな声が聞こえてくる。

暁はその声を聞いて扉を開ける。そこには色んなな物が置かれており、大小様々な工具、古今東西の銃や部品……コイル、グリップ、プラスっチックのケースに収められた何百種類のものやネジやピンが雑然と天井まで積み重ねられている。

 

「あはっ!珍しいのだ!来栖くんは初めてだったはずなのだ!」

 

そんな中、奥の作業台から平賀 文が顔を出す。

 

>ああ

 

「ご注文は何なのだ?」

 

>銃を改造してほしい

 

威力を高くして、できるなら連射性も高くしてほしい、と暁は彼女に伝え、懐からR.I.ピストルを渡した。

 

「ほうほう。他には何かありますのだ?」

 

暁はそのセリフを聞いて一瞬だけ戸惑うが口を開いた。

 

>改造の仕方を教えてほしい

 

「おおっ!?それは高く付きますぞ!!」

 

その言葉に暁は黙った。

 

>取り引きがしたい

 

「?取り引き?」

 

そう言って、暁が鞄の中からとある物を取り出した。

 

「おおっ!?ものすごい部品が一杯あるのだ!?」

 

暁がそう言って取り出したのはロボットのアームやレーダーのアンテナ、壊れた装着型望遠鏡などであった。

 

>これあげる代わりに……

 

「改造を教えてあげるのだ!こっちへ来るのだ!」

 

 

 

 

我は汝…汝は我…

汝、ここに新たな契りを得たり

 

契りは即ち、

囚われを破らんとする反逆の翼なり

 

我、節制のペルソナの生誕の祝福の風を得たり

自由へと至る、更なる力とならん…

 

 

 

 

そう言って彼女は暁が出した様々な部品を両手に持ち、暁を案内され、空いている作業台に座る。

 

「威力と連射性どっちを先にカスタムしたいのだ?」

 

>威力

 

「銃弾の威力を上げたいのなら弾速を上げるのがおすすめするのです!」

 

「まず、弾速を上げるためには装薬のガス発生量と、燃焼速度を増やさないといけないのだ!だけど、銃身の圧力により破裂する場合があるのです!」

 

「その為、銃身を長くするのです!」

 

暁は文から様々な銃のカスタムに関することを教えてもらった。

 

ちなみにR.I.ピストルはR.I.ピストル改になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文に銃のカスタムについて色々教えてもらって二日後の日曜日の昼。

 

暁は理子と一緒に映画館に入った。分類はSF映画だった。

 

「理子も双葉と同じぐらいのいい趣味してるな」

 

暁と理子との席の間に置いてある暁のバックからモルガナが顔を出し、映画を見る。

 

 

 

「SFはね、ただの夢物語じゃないんだよ!」

 

上映が終わると理子は嬉しそうに歩きながらこちらを見てそう言ってくる。

 

「『いつか実現するかも知れない』夢物語…つまり『希望』なんだよ!…わかる?」

 

>知り合いも同じ事を言っていた

 

暁は理子の言葉にとある少女を思い出す。上手くやっているだろうか?そう思ってしまう。

 

「おお!その子と気が合いそう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、暁達は渋谷のバーガーショップに入る。

 

「そういえば、ダーリン。次の目標(ターゲット)は決まったの?」

 

>まだだ

 

「なら、もうそろそろ決めた方がいいんじゃない?」

 

「そうだな。早いとこ決めておこうぜ」

 

理子とモルガナの後押しに暁は頷き。そう言って、理子はスマホを取り出し、とあるサイトを開く。

 

『怪盗お願いチャンネル』だ。

 

ーーー心の怪盗団。この世界では少しだけ有名になっており、少しだけ武偵にも危険視されている。

 

「え〜と『最近、近所の子が悪ふざけをしています。改心して下さい』」

 

「なんか、悪戯っほいな……他には?」

 

暁は無言でジュースを飲みながら二人の話を聞く。

 

「他には……『三軒茶屋で暴力団を見かけます。改心して下さい』。これも微妙だな〜」

 

「けど、場所を指定してくれてるなんて珍しいな」

 

>見過ごせない

 

三軒茶屋となればだ。しかも場所を指定しているとなると本当かもしれない。

 

「おお!急にやる気になった!」

 

三軒茶屋は暁のいた世界に馴染みのある場所だ。名前は少し違うが。

 

「他は?」

 

「う〜ん……他は依頼じゃなくて怪盗団がいるかいないかのコメントばっかり」

 

「けど、三軒茶屋か……誰が偵察に行くんだ?」

 

>モルガナ

 

「モナ」

 

見た目が猫という特徴が偵察に使えてしまう。それに偵察の成功率も高い。

よってここはモルガナが適役となる。

 

「だよな……分かった。帰る前に三軒茶屋によって行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、三軒茶屋のとある空き地で複数の厳つい男達がゲラゲラと笑っている。

 

「にしても見たか?あのババァ。怯えた表情で必死に逃げてたぜ。アッハッハ!」

 

「流石ですよ。流堂さんは。サツもビビってちょっかいもかけてこないですし」

 

子分と思われる男達二人は流堂と呼ばれた三人の中でも頭だろうと思われる男の右手に持っていた拳銃を見る。

 

「いいだろう?欲しい欲しい、と思って金を貯めて中国から買ったんだ」

 

「へぇ〜。すごいっすね」

 

「まあ、これからは三茶の流堂 剛太って名乗ればいいんじゃないっか」

 

子分乃一人が『流堂 剛太』という名を言った瞬間、空き地の隅にいた黒猫が動いた。

 

「はっ、そうだな。今日から俺は『三茶の流堂 剛太』だ」

 

黒猫は空き地を出て通りを歩く。

 

「銃を持っている以外はただのチンピラじゃねぇか……」

 

黒猫がそう呟くが周りの人間にはただの鳴き声にしか聞こえていない。

黒猫ことモルガナが三軒茶屋まで行くと暁が電柱に背を向け立っていた。

 

「あの依頼、本当だった」

 

暁はモルガナをバックの中に入れながら目標(ターゲット)の名前を教えてもらう。

 

「決行はどうする?」

 

>明日だ

 

「随分と早いな」

 

もうすぐ雨が降る。濡れない内に帰りたい。それに明日も雨だ。

 

「そうか、雨だとメメントスのシャドウ達も居眠りするもんな。でも、どうして明日なんだ?今日でもいいだろ」

 

>理子に振り回されて疲れた

 

「なら、今日は帰ってやる事やって寝ようぜ」

 

暁は無言で頷き雨に濡られず無事に帰宅した。

 




次回から戦闘が入ります!
平賀さんのコープはあれでよかったのだろうな?
そして、活動報告にてアンケートを行いたいと思います!
内容は『緋弾のアリアのキャラのアルカナ』です!
今、決まっているのは理子→恋愛
キンジ→正義
アリア→星
白雪→女帝
レキ→隠者
平賀さん→節制
モルガナ→魔術師
となっています。アルカナに合うキャラを応募しています!よろしくお願いします


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『武偵殺し』と『ジョーカー』

 

 

月曜日の朝。気が付くと理子から通知が来ていた。

 

『今日、アリアとキーくんと戦います!』

 

『こっちも今日、ターゲットを改心させる』

 

『お互い頑張ろう!』

 

暁はスマホの画面を消して、学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、暁とモルガナは渋谷の地下鉄駅の入り口に来ていた。

 

「始めるぞ」

 

モルガナの声と共に暁はスマホの画面にある赤と黒で配色された目玉のようなアプリを開いた。

 

そして暁は躊躇わずに画面に『流堂 剛太』と入力し、その後にキーワードとして『メメントス』と入れた。

 

『入力確認。ナビゲートを開始します』

 

スマホから発せられた音声とともに景色が歪む。

それも、数秒。歪みが戻るとそこには暁とモルガナしかいなかった。

先程まで、多くの人が近くを素通りしていたのに今は誰一人いない。

 

「成功だな」

 

モルガナがそう言いながら地下鉄駅に入り階段を下る。改札口の前に着くと、そこは異様な世界だった。

 

 

 

 

 

辺りに異様な空気が流れ、改札口の奥には長く暗い道が続いている。

更にはそんな中、長く暗い道の奥には薄っすらと奇妙な化物までが見えてしまう。

 

 

 

 

 

異世界・メメントス。大衆の無意識の欲望によって形成された空間。

 

 

メメントスは大衆の欲望でありその底では大衆は怠惰を望み、考えることを放棄し、支配者によって作られた道をただ歩くことを望んだ場所。その現れである。

 

暁の世界ではこのメメントスを悪神が支配していたが、この世界ではまだ分かっていない。

 

 

 

 

 

それに不思議な事が起こったのは地下鉄駅だけではない。暁とモルガナもだ。

 

 

ふと、気が付けば暁の服装はいつもの武偵高の制服から黒のロングコートに変わっており、顔には黒縁伊達メガネがかかっておらず、代わりに白と黒のドミノマスクをかけていた。

 

モルガナの方に至っては猫ではなく猫に似た二頭身の二足歩行で歩く謎の生物となっていた。

 

二人の姿こそが『反逆の意思』のが具現化したものの一つである。この姿が現れるのは反逆の意思がある場合のみ具現される。

 

この場合、二人はメメントスというもの自体に反逆の意思を見せている。

大衆がは怠惰を望み、考えることを放棄し、支配者によって作られた道をただ歩くことを望んでいく中、暁はそれを拒む。

自分の意思で道を作り、いいように振り回されたくない反逆の意思が具現化したもの。

 

 

「んじゃ、行くぞ」

 

暁達には見慣れた光景であり、なんとも思わなかった。

更には一般人には思いもよらぬ光景が目に写った。二人が改札口を出るとモルガナが急に車に変わってしまった。暁に至ってもその光景に見慣れたかのように車に乗り、運転をし始める。

 

少しだけ進んでいくと目の前に黒い化物がいた。

 

人間の具現化した感情した化物……シャドウだ。そのシャドウがあちこちと徘徊しており、暁はエンジンを噴かせ、背後から思い切り体当たりをする。

 

ーーーグシャ!

 

体当たりを食らった化物は突如、溶けていき。カボチャの頭と手にはランタン持った化物に変化した。

 

「相手は一体。楽勝だなジョーカー」

 

ジョーカーと呼ばれた暁は無言で頷き、赤い手袋をはめた右手で仮面にそっと触れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーペルソナッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョーカーがそう叫ぶと背後から突如、巨大なモノが現れた。

仮面のような顔と、大きな黒い翼が特徴な赤い2mはあるかと思われる人形の何か。

 

これはペルソナ。誰しも持っている、心に秘めた「もう一人の自分」、あるいは人が事物と関わるとき、面に現れる「心の仮面」。もう一つの「反逆の意志」の現れとされるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奪え、アルセーヌ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルセーヌと言われたペルソナは翼を大きく羽ばたかせるとカボチャ頭のシャドウ、ジャックランタンにサッカーボールぐらいの氷解を出現させ、思い切り放った。

 

アルセーヌの攻撃をもろに喰らった、ジャックランタンは地面に倒れる。

 

「流石だ。ジョーカー!」

 

ジョーカーは不敵な笑みを浮かべるとモルガナに近づく。

 

ーーーパン!

 

そして、モルガナがその場でジャンプすると、二人はバトンタッチをしめす。

 

「ペルソナァ!」

 

モルガナがそう叫ぶと、今度はモルガナの背後からサーベルを持った黒いマッチョのペルソナが現れた。

 

「威を示せ、ゾロ!」

 

ゾロと呼ばれたペルソナはサーベルで『Z』を描くと、ジャックランタンの周囲に風が巻き起こり敵を切り刻む。

 

すると、ジャックランタンの姿が消滅し、辺りにお金や物が散らばる。

 

「この調子でどんどん行こうぜ」

 

散らばったお金を二人は集めると、車で移動をし始める。

 

 

「今日は雨だから居眠りしているシャドウも多いな」

 

モルガナはそういいながらシャドウの居眠りをしているシャドウの真横を通り過ぎる。

 

 

メメントスは大衆の無意識によって形成された世界。大衆の心理状況によって様々な事が起きるのだ。

 

 

行き止まりに壁に阻まれた道があるが車でぶち当たるなどとあり、更には宝箱を開けたりと色々なことがある。

 

二人は奥へ深くへ段々と潜っていき五回ぐらい降りたところにモルガナが異変を感じた。

 

「このエリアにターゲットの気配を感じるぞ!」

 

「くまなく探してみようぜ!」

 

ジョーカーがモルガナカーを動かしこのエリアをくまなく探していると奥にまるで空間が歪んだような場所かあった。

 

「むっ!?この気配…この先にターゲットがいるみたいだぞ!」

 

「どうする。入ってみるか?」

 

>行こう

 

ジョーカーがそう言うと歪んだ空間に車を突っ込ませる。

歪んだ空間を通り過ぎると若干、さっきより道の横幅が広い空間にでた。

 

その先には真っ黒い何かを纏った男がいた。

 

「あのシャドウがルドウだ。間違いない」

 

「三茶にいる拳銃を持った、チンピラだ。お年寄りなどをビビらせていい気になってるヤロウだ」

 

「準備はいいな?行くぞ」

 

ジョーカー達はシャドウ流堂に近づく。

 

「オラオラ!怖くて手も出せねぇか?」

 

「ハハッ!サツもザマァねぇな!」

 

「なんだお前は?ただのガキが俺様に何か用か?」

 

>お前が三茶のチンピラだな?

 

「俺はただのチンピラじゃねぇ!俺は『三茶の流堂 剛太』だ!!」

 

男がそう言うと体が溶けハンマーを持った一本足のシャドウとなる。

 

「ハハッ!喰らえ!」

 

シャドウ流堂がそう叫びながら手に持ったハンマーをジョーカーに向かって投げてくる。

 

「ーーーペルソナ!アラハバキ!!」

 

ジョーカーがペルソナを顕現させると背後に大きな影が出現する。それはアルセーヌより小さいが土偶のような姿をしたペルソナだった。

 

「何っ!?」

 

ジョーカーに迫られるハンマーは当たる直前に見えない何かに当たって、シャドウ流堂に反射し、シャドウ流堂が吹き飛ぶ。

 

「やるな。ジョーカー!」

 

「チェンジ!」

 

更には暁がそう叫ぶとアラハバキのペルソナが消え、アルセーヌが出現する。

 

「やれ、アルセーヌ!」

 

アルセーヌが翼を羽ばたかせるとシャドウの足元に禍々しい渦が出現する。

 

「グァッ!」

 

禍々しい渦が収束し、敵を包み込むように赤と黒の柱がはっせいする。

 

「クソッ!なんでこんな目に!」

 

>観念しろ

 

「観念しろか……ハハッ、今思えばなんでこんな事をやってんだろな……」

 

「最初はチャカが格好良くてただ、買ってみただけなのに。今じゃあチャカ持ってるからってバカみてぇに自慢してよ……」

 

>警察にでもなればよかった

 

「サツか……。悪くは無かったかもな……。俺、もう一度、人生をやり直そうかな」

 

男が少しだけ寂しそうに、満足そうに言いながら光の粒子となって消えていき、光の球体が現れる。

 

パシッ!とジョーカーがそれを掴むと漆黒のガバメントに形成される。

 

「これで事件解決だな!どうする?」

 

>入口まで戻ろう

 

ジョーカーは漆黒のガバメントとなったオタカラを懐にしまうとメメントスの入口まで戻る。

 

 

「もう終わるか?」

 

>ああ

 

 

暁が異世界から帰ってくると雷も激しくなり、外もすっかり遅くなっていた。

 

「そう言えば理子はどうなったんだ?」

 

暁もそれが気になり通知があるかどうかが気になった。

 

……。

 

通知が来ていない。暁は不思議に思い、チャット画面を開いた。

 

『理子?』

 

……。

 

反応がない。まだ、取り込み中なのだろうか?暁が首を傾げていると渋谷の大型ビジョンにとある単語が耳に入った。

 

『先程、東京湾上空で『武偵殺し』の仕業とされる、ハイジャックにあったANA600便が『空き地島』に不時着しました』

 

『未だに犯人は見つかっておりません。警察、武偵は引き続き捜査に当たっています』

 

!?と暁が思わず顔を上げ、大型ビジョンを見た。

 

「おい!理子……」

 

同じく大型に写っていたニュースを聞いていたモルガナが叫ぶ。

 

「どうすんだよ!?」

 

>理子を探す

 

「探すったって宛てはあるのか?」

 

>……。

 

「お、おい!」

 

モルガナが暁の反応に慌てまくる。

 

>三茶だ

 

暁はそう言うと全速力で電車に乗り、三軒茶屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

三軒茶屋のとある公園。

 

「……ひっく……ひんぅ……ひっ……」

 

雨が降る中、濡れたベンチに傘も刺さずに座っている理子がいた。

 

>理子

 

「あ……あ、アッキー……」

 

理子はふと、後ろから声をかけられ濡れた髪を振りながら振り返った。

 

その瞳には涙を浮かべ、理子泣いていた。暁はただ、無言で理子に近づき手に待っていた傘を理子に被せる。

 

「うわぁあ……あぁ……!」

 

理子は近づいてきた暁に抱きつき、胸に顔を埋める。

 

>……。

 

「……」

 

暁もモルガナも理子の状態に何も言わずただただ泣き止むのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリアとキーくんを倒せなかった……」

 

暁は泣き止んだ理子の話を黙って聞いた。

 

「あんなに頑張ってアリアとキーくんをくっつけたのに……」

 

「ごめんね……こんな話をしても仕方ないよね」

 

>俺がブラドを改心させる

 

「!……ありがとう。だけど、アッキーが無理しなくてもいいのに」

 

>理子を見過ごせない

 

「……。本当はね。助けてほしいんだ。けど、ブラドには勝てない。たとえ、アッキーが特殊な力を持っても……」

 

>関係ない

 

「……。関係なくないよ。私はアッキーに死んでほしくない。私が『武偵殺し』だと知っても優しく接してくれた。そんなアッキーに死んでほしくない」

 

理子が追い詰められた顔をし、俯いた。

このままじゃあ、理子はブラドに囚われたままだ。 何か気の利いた事は言えないだろうか……と暁は思い、口を開く。

 

>俺は怪盗だ

 

「……え?」

 

>怪盗らしくブラドから理子を頂いていく

 

暁が真っ直ぐな瞳で理子を見る。理子は一瞬、目を白黒させた後、顔を赤らめ視線を暁から逸らす。

 

「……アッキーの女たらし……」

 

理子がボソッとそう呟く。

 

>自覚はある

 

「サイテー。バーカ」

 

暁がそう返すと理子が更に悪口を言い放つ。

 

「……でも、ありがとう」

 

理子がそう言うと暁の顔に顔を近づけチュ、と口づけをした。

その行動に今度は暁が目を白黒させる。

 

バイバイ(Au revoir.)愛しき人(Ma cherie.)待ってるからね(J'attends.)

 

 

 

我は汝…汝は我…

汝、ここに新たな契りを得たり

 

契りは即ち、

囚われを破らんとする反逆の翼なり

 

我、恋愛のペルソナの生誕の祝福の風を得たり

自由へと至る、更なる力とならん…

 

 

 

理子は去り際に少しだけ悲しい顔をした。なんとなく理由は分かる。あの顔は自分でもしていた顔だ。

そう警察に出頭する顔だった。

 

「……いいのか。止めなくて?」

 

>理子が決めたことだ

 

警察に出頭して少しでもブラドの手から逃れるのならそれでいい。

 

「これで、ますます ブラドを見つけないといけなくなったな!」

 

暁が無言で頷くとその場を後にした。

 

 

 

 




ここで、少しお知らせします。次の投稿からタイトル名を『緋弾のアリア 心の仮面』から『緋弾のアリア TAKe YOuR heaRT』に変えたいと思いますご注意を。
理由としては『心の仮面』にしてしまうと他のペルソナシリーズと思ってしまう方がいるかもしれないのでそうしようかなと思います。
アンケートの方は殆ど期限がありません。
では、またお会いしましょう。


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二章
魔剣と巫女


タイトル名を変えました。
『緋弾のアリア TAKe YOuR heaRT』に変える予定でしたが小文字だとなんか合わないので『緋弾のアリア TAKE YOUR HEART』全て大文字にしました。


あの一件から、理子が学校に顔を出すことはなかった。

 

 

 

 

 

学校が終わると暁は装備科(アムド)棟に向かった。

「おおー!来栖くん。今日は何を持ってきたのだ?」

 

文はそういいながら目を輝かせる。暁は少しばかり気を引きながら様々な物を出す。

 

「今度は銃器の交換?」

 

>こんなのしかなくてすまない……

 

「こっちとしては予備パーツが増えて嬉しいのだ!」

 

「今回は何を教えてほしいのだ?」

 

弾倉排出(マガジン・エフェクト)を速くしたい

 

「おお!また、それは難しいことを注文してくるのだ!付いてくるのだ!!」

 

文がそう言って暁を作業台に案内され、暁は座る。

 

暁は文にカスタムの仕方を教えてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

装備科(アムド)棟から出ると外はかなりと暗くなっていた。

 

暁は男子寮に向かいながらスマホの画面を付けると通知が一つ来ていた。

 

『唐突でごめんね。聞きたいことがあって……暁くん。キンちゃんが女の子と同棲しているってホント?』

 

……。暁が一瞬、その場に立ち止まった。

白雪からとは珍しいとは思ったが開いて内容を見れば少し危険な内容だった。

別に暁の命に関わることではない。むしろ、同じ同僚のキンジの命に関わることだった。

 

『ああ、本当だ』

 

暁は少しだけ心の中でキンジに謝る。どうせ、近い将来バレるのだ。

暁はそれを少し早くしただけにすぎない。

 

『ありがとう』

 

暁は白雪の返信を見て、スマホをポケットにしまった。

 

「ーーー動くな」

 

暁が足を一歩踏み出そうとした時、首筋に冷たいものを押し当てられ、男喋りの女の声が聞こえ、思わず足を止める。

 

「お前が来栖 暁だな」

 

>知らない名だ

 

暁が平然とした表情でそう言うと押し当てられた刃物に力が篭もる。

周りには誰一人いない。人は謎の人物と暁だけだ。

 

「とぼけても無駄だ。調べは付いている」

 

調べているなら聞かなければいいじゃないか、と暁は思ったが口には出さなかった。

 

>何者だ?

 

「……魔剣(デュランダル)。貴様も知っているだろう」

 

聞き覚えのない単語に暁は困惑する。

 

「理子から何も聞かされていないのか?」

 

理子?と暁が不審に思い、頭をフル回転させる。

 

>イー・ウーが何の用だ?

 

「!?そうだ、よく知っているな……」

 

「私に協力しろ」

 

その言葉に暁が顔を顰める。

 

>断る

 

「自分がどういう状況か分かっているのか?」

 

魔剣(デュランダル)が首筋に傷がつきそうなくらいに刃物を持っていた手に力を込めた。

 

次に間違えたら命がなさそうだ、と思いながら暁は口を開いた。

 

>モルガナ

 

「分かってる!」

 

「っ!?」

 

暁がモルガナの名を呟くと暁も謎の人物との間にあった暁のバックからモルガナが顔を出し、シャー!と威嚇をさせた。

その威嚇は見事に成功し謎の人物は暁から距離を取った。

 

その好機を逃さず暁は思い切り走った。

 

「ッ!待てっ!!」

 

このままバス停の方に走ってもバスが来てないから捕まる可能性がある……。

 

「どうすんだよ?」

 

モルガナの言葉を聞きながら建物と建物の小道に入っていく。路地裏に入った。暁は途中で足を止め、振り返る。

 

見ると、銀髪の女性がこちらに追ってきている。先程の謎の人物と同一人物だろう。

 

>仕方ない……

 

暁の体のあちこちに若干、青白い炎が見えてくる。

 

 

 

 

 

 

「ーーーペルソナ!」

 

 

 

 

 

暁がペルソナを呼び出す。青く透明な羽を背に四枚生やし、暁よりも一回りも二回りも小さいペルソナが姿を表す。

 

 

 

「ピクシー!!」

 

 

 

ピクシーが目の前の光景に呆然としている女性に電撃を放った。

 

「ーーー!?」

 

それをもろに受けた女性はその場に倒れてしまう。

 

>手加減はした

 

暁のピクシーの力はそれほど強くなく、相手を感電状態にさせる程度ぐらいの威力だった。

 

「なる……ほど……理子がお前に夢中になる理由も分かる。だが……爪が甘い」

 

ーーーパキ!パキッ!

 

暁が変な音を聞き、足元を見た。いつの間にか足元を氷漬けにされ、その場から動けない状態にされていた。

 

「にしても、バックに猫を入れているとはな……銃器も入っていたくせに、よくそんなに入るな」

 

「ま、居心地が悪かったがな」

 

謎の女性の声を聞き、モルガナが愚痴りながらバックから姿を見せる。

 

>これを解け

 

「それはお前の行動次第だ」

 

暁が少しだけ間を開け、考えた。

 

>話は聞こう

 

「……理子がお前に夢中となってると聞いてな。どんな奴か気になったんだ」

 

「いざ、接触すれば、面白い力を持っているではないか」

 

暁は黙って女性の話を聞いた。モルガナも同じだった。

 

「まあ、そこはいい。なぜ、お前は理子に協力する?」

 

>ブラドから理子を頂くためだ

 

ここでイー・ウー相手に隠し事しても意味はない。イー・ウーは能力を教え合う場所であり、奴らの前では法律は意味をなさない。

 

「何?正気か?」

 

>……。

 

「その沈黙、肯定と取っておこう。だが、仮にブラドと会えたとしても、たとえ、その力があっても、お前ではブラドを倒せない」

 

>ペルソナを甘く見るな

 

「ーーーチェンジ」

 

ピクシーの姿が消えると次にジャックランタンが姿を表した。

 

「ジャックランタン」

 

暁がジャックランタンの名を呼ぶと手に持っていたランタンから火が放出され、足元の氷が溶ける。

 

「っ!?」

 

女性が驚いた表情でこちらを見開く。それに対して暁は銃を突きつけた。

だが、それと同時に女性が足払いをかけてきた。

恐らく、感電状態が解けたのだろう

 

暁は思わず反射的に跳躍し、足払いを避ける。女性は足払いが外れるとすぐさま起き上がり、背から洋剣を取り出し構えてくる。

 

「ふっ、面白い男だ。お前の発言はブラドを倒すと言っているようなもの」

 

「ならば、取り引きをしよう」

 

女性の言葉に暁は眉を寄せるが、暁の心情とはお構いなしに話を続ける。

 

「ブラドの弱点を知っているか?」

 

>弱点?

 

「やはり、理子に教えてもらっていないのか」

 

理子に?と暁が首を傾げる。

 

「弱点を潰さないと奴は死なない。それを教えてやる。その代わり私に協力しろ」

 

確かにその話が本当だと奴とそのまま戦っても勝ち目が薄くなる。

信じるか悩ましいことだが、理子もこの前言っていた。『ブラドには勝てない』と。

理子の発言を元に、女性の発言も確証が高いだろう。

しかも、理子に話を聞けない今、ブラドと対峙しても勝てないかもしれない。

 

>いいだろう

 

 

 

我は汝…汝は我…

汝、ここに新たな契りを得たり

 

契りは即ち、

囚われを破らんとする反逆の翼なり

 

我、月のペルソナの生誕の祝福の風を得たり

自由へと至る、更なる力とならん…

 

 

 

暁がそう言うとジャンヌが剣を下ろし、暁に近づいた。

 

「お前にやってもらうことはただ一つ。ホームズ、遠山、星伽の監視だ」

 

>白雪も?

 

「ああ、と言ってもこの監視は星伽がお前達の部屋に住むようになってからでいい」

 

>分かった

 

こういう事は余りやりたくないが理子のためだすまない……、と暁は心の中でキンジ達に謝る。

 

「ブラドの弱点は話すと長いのでな、お前のスマホに送ろう」

 

「改めて、私はイー・ウーの魔剣(デュランダル) ジャンヌ・ダルク30世だ。よろしく頼む、来栖 暁」

 

その言葉に暁が思わず顔を上げる。

 

「驚いたか?本当のジャンヌ・ダルクの子孫だ。ほら、スマホを出せ」

 

暁はジャンヌと連絡先を交換して男子寮に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁は男子寮に戻り、早速、夕食のカレーを作っていると……

 

「ア、アリア、に、に、にに、ににに逃げろッ!」

 

「か、何よ。なに急にガクガク震えてんのよ。キ、キモいわよキンジ……」

へ、

「ぶ、ぶ、『武装巫女』がーーーうッ。マズい……来た……!」

 

キンジが慌てているとドドドドドド、と何かがこちらに近づいてくる足音が聞こえてくる。

 

「白雪!」

 

キンジは部屋に入ってきた人物の名を叫ぶと、白雪はアリアを見て手に持った刀を構える。

 

「やっぱりーーーいた!!神崎!H!アリア!!」

 

「ま、待て!落ち着け白雪!」

 

「キンちゃんは悪くない!キンちゃんは騙されたに決まっている!」

 

「この泥棒ネコ!き、き、キンちゃんをたぶらかして汚した罪、死んで償え!!」

 

「やっ、やめろ白雪!俺はどっこも汚れてない」

 

「キンちゃんどいて!どいてくれないと、そいつを!そいつを殺せない!」

 

「き、キンジぃ!なんとかしなさいよ!な、なんなのよこの展開!」

 

その関係ない騒動にあってしまうこっちが聞きたい、と暁が心の中でそう思いながらカレーのルーを混ぜ始める。

 

「ア、ア、アリアを殺して私も死にますぅー!」

 

「だから何であたしなのっ!人違いよ!」

 

「白雪!お前、なに勘違いしてんだっうおっ!?」

 

キンジが白雪を落ち着かせようとするとアリアに思い切り背中を蹴られ壁にぶつかり転倒してしまう。

 

「キンジ、なんとかしなさいよ!あんたのせいでヘンなのがわいたじゃない!」

 

「お、俺のせいじゃねえよ!」

 

「そう!キンちゃんのせいじゃない!キンちゃんは悪くない!悪いのはーーーアリア!アリアが悪いにに決まってる!アリアなんか、いなくなれぇーっ!」

 

「天誅ぅーーーッ!!」

 

白雪が金切り声を上げながら下駄を鳴らしブン!といきなり、アリアの脳天めがけて刀を振り下ろす。

 

「み゛ゃっ!」

 

アリアは謎の悲鳴を上げながらパシッ!と日本刀を左右の手で挟んで止める真剣白羽取りを見せる。

おお、と暁が心の中で感心しながらその様子をしかと見る。

 

「この、バカ女!」

 

アリアが刀をホールドさせたままジャンプして、両脚で白雪の右腕を挟んだ。

そして、その腕をねじり上げにかかる。

 

バーリ・トゥード(バリツ)ねーーー!?」

 

白雪がアリアの流派を見抜くとその場でバックドロップを決め込んだ。

 

「う〜〜〜いなくなれ!いなくなれ泥棒ネコっ!キンちゃんの前から消えろっ!」

 

アリアを両脚で蹴り飛ばすとアリアが吹き飛びソファが壊れてしまう。

 

「や、やめろっ!やめるんだ二人ともうぉっ!」

 

パン!パン!

 

キンジがそう叫んでいるのにも関わらずアリアが白雪の方に銃弾が飛んでいく。

 

ーーーギギンッ!

 

白雪はその銃弾を、当たり前かのように刀で弾き返した。

 

「キレた!も〜〜〜キレたっ!ーーー風穴あけてやる!」

 

壊れたソファの下からアリアが飛び出し二丁拳銃を連射するが白雪乃刀によって全て弾く。

そんな中、その流れ弾は暁の方にも飛んでくる。

 

ーーーギンッ!

 

と暁が鉄製の鍋の蓋で銃弾を弾きながらカレーのルーを混ぜる。

 

「おいおい、よくこんな乱戦の中、平然としているな……」

 

そんな中、モルガナが銃弾が飛んてこないように物陰に隠れながら暁の行動に呆れる。

 

>技のオンパレードだ

 

「って、さっきの技を盗むのかよ!」

 

モルガナが暁のやりたいことがすぐに見抜かれ、驚いたか声を上げる。

 

アリアと白雪の乱戦はしばらく続いた……。

 

 

 

 

 

暁とキンジ、アリアは白雪が帰った後、カレーを食べる。

 

 

 

 

 

 

カレーを食べ終えるとスマホに通知が来ていた。

 

ジャンヌからだ。開いてみると……

 

『ブラドの弱点についてだ』

 

暁はその文章を見ると二人に怪しまれないように自室に入り込む。

 

『ブラドを倒すには、全身四ヶ所にある弱点を同時に破壊しなければならないらしい』

 

『四ヶ所の弱点のうち、三ヶ所までは判明している右肩・左肩・右脇腹だ……ヤツは昔、ヴャチカンから送り込まれた聖騎士(パラディン)に秘術をかけられて、自分の弱点に一生落ちない『目』の紋様をかけられてしまったのだ』

 

「四ヶ所同時攻撃か……でも、その内に三ヶ所までしか分かってないんだろ。どうするんだ?」

 

『あと一つは?』

 

『それについては私も分からん。済まないが自分で探してくれないか?』

 

ほしい情報が完全ではなかったな、と暁は思ってしまう。それでも、弱点は分かった。最後の一つは自分で探そう。

 

 

 




ジャンヌとのコープも入れました。
次回からAAのキャラを少し出そうかなと思います。コープアリで。

それでは、またお会いしましょう


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太陽少女

今回はAAの主人公のコープ発生イベです。
更にジョーカーの凄さを発揮もします。


五月に入る少し前、強襲科(アサルト)での戦闘訓練は強襲科(アサルト)の教論・蘭豹に目を付けられた暁は蘭豹のお気に入り・火野 ライカと徒手格闘訓練を行うことになった。

 

>本気で来い

 

ライカと戦ってる中、暁はそう呟いた。

 

ライカが暁に近づきながら拳を前に突き出す。顔を狙う拳に対して暁は左手を盾のようにして構え、拳の軌道を逸らした。

 

暁自身、アリアのバーリ・トゥード(バリツ)やライカのようなクローズ・クォーターズ・コンバット(CQC)のような正式な流派でもなんでもない。だが、前の世界のジムトレーニングで木人を使って鍛えていたのでそれなりの動きはできる。

 

逸らされながらもライカは次の行動に移す。左手の掌で顎を狙ってくる。

それに対し、暁が右手で左手首を掴むと更に、左手でも掴む。

 

「ーーーバーリ・トゥード(バリツ)っ!?」

 

ライカの驚きにを他所にジャンプして、両脚を挟みねじりにかかる。

 

それに対してライカがこの前、白雪が見せたバックドロップをしようと体を後ろに倒れ込ませようとする。

それに対し、暁が両脚をライカの左手挟むのをやめ、ライカの体を土台にして跳躍し距離を取る。

 

「そこまでや!」

 

暁がライカの様子を伺い距離を取っていると、蘭豹の終わりの合図とともに緊張が解ける。

 

「どうやった?」

 

蘭豹が大きな声で

 

>いい訓練相手だった

 

「そうだろぉ〜!」

 

蘭豹がニカッ、と笑いながら暁の背中をバンバンと叩く。

 

 

 

 

 

 

 

「ライカ、大丈夫?」

 

赤毛の少女がライカの左手を掴む。

 

「ヘイキ、ヘイキっと!」

 

「キャッ!」

 

ライカは軽くそういいながら開いている右手で赤毛の少女のスカートを捲り上げる。

 

その状況に暁は思わず顔を別の方向に向け、見ていないふりをする。

 

「あ、私のナイフ!」

 

少女の声が聞こえると暁は視線を戻す。そこには少女の所有物と思われるタクティカルナイフを火野が持っていた。

 

「ほら、あかり。これを取ってみろよ。この前みたいに!」

 

ライカがそういいながらあかりと呼ばれた少女に右拳を突き出す。あかりに迫る拳を冷静に左に躱す。

 

「おお、やっぱすげぇな。それは」

 

ライカは拳が空振るといつの間にかあかりが持っていたタクティカルナイフを見て驚く。

 

「もう、あんまり使いたくないんだからやめてよ!」

 

「まあ、また後でな」

 

ライカがそう言うとあかりに手を振りながらその場を去る。

あかりはライカが去っていくのを見送ると暁の方に振り返った。

 

そして、何か決心したかのようにこちらに近づいてくる。

 

「あ、あの、初めまして。私、間宮 あかりと言います。アリア先輩の戦妹(アミカ)をやってます!」

 

>よろしく

 

「よろしくお願いします。それで、さっきライカにしていたバーリ・トゥード(バリツ)ってアリア先輩の……」

 

>見様見真似だ

 

暁があかりの言いたいことに気付き言い終わる前にそういった。

 

「み、見様見真似であの完成度ですか!?凄いです!」

 

「そ、それで、そのもしよろしければコツ、みたいなのを教えてほしいかなと思ったんですけど……」

 

コツ……?と思わず暁が首を傾げてしまう。暁自身、コツなんて意識をしたことがない。

 

>コツ、という訳ではない

 

「え、違うんですか?」

 

あかりがその言葉を聞き思わず困惑する。その様子に暁がどういった感じに技を盗むか説明をした。

 

 

まず、一つ目に知識。技をよく見て、どういった感じで動かしているのかを頭の中で理解する知識が必要だ。

暁自身の知識が『知恵の泉』であるからこそ理解できる。

 

二つ目は度胸。頭の中で理解してもそれを実行に移すか移さないかの度胸が必要だ。

これも暁自身が『ライオンハート』の度胸を持っているからこそ出来たこと。

 

最後の一つは器用さだ。度胸があっても成功しなければ意味がない。巧みに体を動かすことで成功させる。

また、これも暁自身が『超魔術』級の器用さを持っているからこそ成功できたもの。

 

 

と、暁はあかりに三つの重要な事を話す。

 

「私もできますか?」

 

その言葉に暁が頷く。

 

「どうやって鍛えるんですか?」

 

あかりの質問に少しだけ戸惑う。

 

「あ、すみません。質問しすぎました」

 

あかりが暁の様子に気付きすぐに謝るが暁が首を横に振る。

 

>取り引きをしよう

 

「へ?と、取り引き?」

 

毎回同じことを言っているな、と思いながら暁はあかりの戸惑いに頷いた。

 

>技を教えてほしい

 

「…………」

 

暁の一言により、あかりの表情が凍り付く。

 

「な、何のことですか?」

 

>さっきの相手の物を奪う技

 

あかりの顔が青ざめる。

暁は先程、角度的にあかりがナイフを奪うところをライカと重なっていたため見ることができなく、盜もうにも盗めなかった。

だから、こうして取り引きとして出してみた。

 

>無理ならいい

 

「わ、わかりました!アリア先輩に近づくためです!!」

 

若干、あかりがやけくそに言いながら取り引きを受ける。

 

 

 

我は汝…汝は我…

汝、ここに新たな契りを得たり

 

契りは即ち、

囚われを破らんとする反逆の翼なり

 

我、太陽のペルソナの生誕の祝福の風を得たり

自由へと至る、更なる力とならん…

 

 

 

>放課後空いているか?

 

「へ、あ、はい……一応」

 

>渋谷に行こう

 

 

 

 

 

 

 

学校が終わり、暁はあかりと一緒に渋谷のセントラル街に向かった。

 

「えっと……どこに行くんですか?」

 

あかりが黙々と歩く暁に対して少しだけ不安になる。

とりあえずあかりは付いていくと本屋の前で止まった。

 

「え?」

 

あかりの戸惑いを無視して暁が店内に入ると、本を探し始める。

 

探し始めて、数分。暁がとある本を買い、あかりに手渡した。

 

「……『凄訳・賢人たちの言葉』……?」

 

>あげる

 

「あ、ありがとうございます……?」

 

あかりが困惑の表情をしながらそう言った。

そして、次に二人が向かった場所はファミレスだった。

 

>見られてる……

 

ファミレスに入ってみると何か悪寒を感じる。前の世界でも周りの視線には嫌といった程、感じていた。それも全て負の感情を持って見てくる視線ばかりだった。

今、感じている視線はそれだ。

 

「どうかしましたか?」

 

あかりの無邪気さに暁は首を振る。暁が向かい合って席に座ると『ほっとコーヒー』を注文した。

 

「えっと……なんでこんな所に?」

 

>取り引きの話

 

暁が聞く態勢を取りながらそう言うと、あかりも何の話か察する。

 

「分かりました。けど、この話は他言はしないで下さい」

 

「あれは日本武道の歩法と構えをベースにした動きで相手の物をスリ取る技です」

 

「まあ、私の場合は相手が攻撃した時だけに使っていますけど……」

 

なるほど……、と暁が関心をしていると突如、暁達に誰かが近づいてきた。

 

「あかりちゃん!その男は誰ですか!?」

 

長い黒髪が特徴の少女だ。黒髪の少女はあかりに詰め寄り、暁を指差して問い詰める。

 

「し、志乃ちゃん?ただの先輩だよ?」

 

>そうだ

 

あかりが志乃を落ち着かせながらそう言うと、志乃の顔が青ざめる。

 

「嘘です!ただの先輩なら本を買ってあげることなんてしません!!」

 

「え?そうなの?」

 

あかりが不思議そうに暁の方を見た。暁もそんな事は知らない。

 

「フフフフ……大丈夫ですよ。あかりちゃんに付いてる邪魔な虫は私が駆除すればいいんですよ!」

 

志乃と呼ばれた少女は暁を見ながら手に持っていた長刀を抜いた。

 

「天誅ゥーーー!!」

 

何処かで聞いたセリフを言いながら志乃が暁の頭部に刀を振り下ろす。

 

パシッ!と暁が志乃の行動に驚きながらも刀を左右の手で挟んで受け止める。

 

「し、真剣白羽取り!?」

 

暁は内心、冷や汗を掻きながらやってみるものだな、と思う。

 

「し、志乃ちゃん。落ち着いて!」

 

あかりが志乃を落ち着かせるために志乃を抑えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

暁達はファミレスの店員や客に謝りながらも店を出て、志乃の誤解を解く。

 

「うぅ……あかりちゃんに嫌われた……」

 

「だから、大丈夫だよ」

 

>もうあの店には入れなくなった

 

「す、すみません。私が誤解したばかりに……」

 

「あ、あかりちゃんは何を貰ったんですか?」

 

志乃がそう言うと、あかりがバックから一冊の本を取り出し、志乃に見せた。

 

「す、『凄訳・賢人たちの言葉』……?」

 

>知識が身に付く

 

「よ、読んだ事があるのですか?」

 

>昔に

 

「む、昔?」

 

三人はいつの間にか暗くなってきた事に気付いた。

 

>今日はもう帰ろう

 

暁の一言で三人は解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁が男子寮に帰っていると、白雪が中華料理を作ったらしい。

白雪がとある人物に狙われており、白雪が暁達の部屋に居座る代わりにキンジとアリアをボディーガードに付けることになっていた。

見るとテーブルではキンジが中華料理を食べ、アリアは何やら丼に入った白飯を食べていた。

 

「あ、アキラ。カレー作って」

 

アリアが帰ってきた暁を見るなりカレーを要求してきた。

 

>分かった

 

暁自身も好物のカレーを食べたかったため、アリアの要求を呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁はカレーを食べるとそそくさと自室に篭もり、作業机に座った。

そして、バックから「厚手の羊皮紙」と「植物の香油」を二つずつ取り出した。

 

「お、煙幕を作るんだな?」

 

暁が無言で頷くと早速作業を始める。

 

 

暁が作るものの全ては戦闘に使う物だ。キーピックでは宝箱の鍵を開けたり、煙幕では敵の視界を奪うことができる。

また、こういうものを作っていると次第と器用さが磨かれる。

磨ききった器用さは今や『超魔術』とも言われるほど、今やこれは暁の趣味の一つでもある。

 

 

暁がふと、集中力を切らすと10時少し前になっていた。

 

そこで、ジャンヌから通知が来た。

 

『定時報告を頼む』

 

暁がリビングに少し顔を出し、状況を確認してジャンヌに送る。

 

『白雪はリビングで掃除、キンジは風呂、アリアは外出中』

 

暁がそう入力した後、しばらくしてから廊下が騒がしくなった。

 

「キンジ!そ、そそ、それはボディーガードの禁止事項(タブー)よ!」

 

「な、仲良しぐらいならまだ大目に見るけど!く、依頼人(クライアント)と、そ、そ、そういう関係になるなんてーーー武偵失格!失格!大失格ゥーーーーーーっ!!」

 

「風穴祭り!」

 

パパパパァン!!

 

「アタマひやしてきなさいっ!浮き輪はあげない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、暁はキンジを海から引き上げる手伝いをしに行き、その後、風呂に入った。

 

「今日はもう寝ようぜ」

 

モルガナの一言とともに暁はベッドに入るとそのまま目を閉じた。

 




今、思えばジョーカーって結構な努力家だよね。
ジムトレーニングで鍛えたり、人間パラメータをMAXにすると周りの反応もめちゃくちゃ変わるし。
ジョーカー並に周りに嫌われたペルソナ主人公っていたのかな?
今回はジョーカーがアリアの技を盗む回でもありました。

『ワイルド』に『女人望』の組み合わせって案外(色んな意味で)危ない……。
次回はどうしようかな?まあ、この二章、戦闘はないと思います。

それではまた、お会いしましょう


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魔女と怪盗

なんか、今回は凄く短めになってしまいました。
まあ、戦闘ないから…………。


ーーー5月5日

 

「あ、暁先輩!」

 

暁が学校の校門から出ようとすると、あかりが呼び止めてきた。

暁が普通に振り向くと、あかりが嬉しそうにこちらを見てくる。

 

「あの本、凄く為になりました!アリア先輩にも『アンタ、そんな本も読めるのね。見直したわ』って褒められました!」

 

「あの、今日、予定がなければまた何か鍛えさせて下さい!」

 

>別に構わない

 

 

 

 

 

 

 

 

暁がそう言うと二人は三軒茶屋のバッティングセンターに向かった。

 

「えっと……これは?」

 

暁はあかりの度胸を磨こうと思ったが噂に聞いた話だとかなりの無茶振りをしているらしく、度胸を磨く必要は無いと判断した。

 

そして、更に三軒茶屋のバッティングセンターを選んだのは人が少ないからだ。暁のおすすめであり、ホームランを取ると『ホームラン賞』として何か貰えるのだ。また、5球全てヒットさせると『猛打賞』が貰える。

 

暁が五百円玉を取出し、お店の人に払った。

そして、あかり二バッティングをする場所を教えた。

 

70km/h。初心者でも気軽に打てるコースだ。

あかりが中に入り立てかけられてあった金属バットを手に握る。

 

「う……」

 

金属バットを握る手が少し震え、歩くたび足がふらついている。

 

>大丈夫か?

 

暁があかりにそう問いかけるとあかりが若干、顔を赤くしながら振り返る。

 

「だ、大丈夫、です」

 

あかりが少しだけ震える人差し指でスタートボタンを押した。

ガコッ、という音がしたすぐあとピッチングマシンからボールが放たれた。

 

「えいっ!」

 

スカッ、とバットが空振った音と共に片足立ちをしていたあかりの体が回転しドテッ、倒れてしまう。あかりが倒れている間も球が放たれる。

 

「たぁっ!」

 

スカッ

 

「えいっ!」

 

スカッ

 

「やぁっ!」

 

スカッ、と見事に全球空振り。暁が少しばかり呆れながら見ていた。

 

「う……打てなかったです」

 

暁はそれを聞いて今度はお店の人に千円札を三枚取り出す。

 

そして暁も中に入った。金属バットを持つと130km/hのスタートボタンを押し、構えた。

 

ガコッとピッチングマシンからボールが放たれる。

暁の視界ではボールが放たれた瞬間、スローモーションの世界に変わった。

そして、……

 

カキン!

 

振りかぶったバットがボールを見事に捉え、上空に飛んでいった。

 

ガコッ

 

カキン!

 

更に二球目も。

 

ガコッ

 

カキン!

 

三球目も。

 

ガコッ

 

カキン!

 

四球目も。

 

ガコッ

 

カキンッ!

 

バコッ!

 

更に五球目はバットが甲高い音をあげ、ボールを遥か上空に飛んでいき、奥に掛けられている『ホームラン』と書かれた的に当たった。

「す、凄い……」

 

暁が『ホームラン賞』のマントの布と『猛打賞』の手鏡を貰った。

暁はそれを受け取るとあかりのところに行き、その2つを手渡す。

 

「えっと……く、くれるんですか?」

 

暁が無言で頷いた。現に暁の部屋にはこのマントの布や手鏡がある。なんとなく成り行きでこれを取ってしまったのであかりに上げたほうがいいと思った。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

暁はあかりと共にバッティングセンターで時間を費やした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう8時が過ぎ、キンジと白雪が家を出たすぐ。暁がカレーを食べていると誰かから通知が来た。

ジャンヌだ。

 

『白雪達に気付かれないよう、尾行してくれ。私も付いていく』

 

暁が手を止める。一瞬、そこまでする必要があるのか、と思ったが取り引きの条件を思い出す。『監視』であった。なら二人の様子を見に行くのも『監視』ではないかと思った。

 

『分かった』

 

『今、二人はモノレールに乗って台場に向かってる』

 

暁はすぐさま家を出て、モノレールに向かった。モノレールに乗り台場へ。そこからゆりかもめで有明、更にりんかい線で新木場。最後に京葉線にのりかえた葛西臨海公園駅で降りた。

 

「来たか」

 

暁が駅を降りて公園に出るとジャンヌが話しかけてきた。どこから調達したのか武偵高の制服を着ていた。

 

「尾行するぞ。私に付いてこい(フォロ・ミー)

 

ジャンヌがそそくさと公園の道を通りに行く。暁は無言でジャンヌに付いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

公園の道を歩いているとバックから、モルガナが顔をだす。

 

「にしても、こんな夜遅くに尾行だなんて悪い事してんな〜」

 

>いつものこと

 

暁がジャンヌに聞こえない程度にモルガナの話に応答する。

 

「まぁ、俺ら怪盗団だもんな」

 

「にしても、なんで暁も付いていかないと行けないんだ?」

 

暁が分からないと言わんばかりに首を傾げた。

暁達が暫く歩いてると人工の砂浜『人工なぎさ』が見えた。

 

「ここに隠れよう」

 

ジャンヌが公園の道から外れ茂みの近くにしゃがんで隠れた。

ジャンヌは隠れて砂浜の方にいる二つの人影の方を見た。

暁も目を凝らして人影を見た。人影の輪郭がはっきりと見えその二つの人影の正体は暁の予想通り、キンジと白雪だった。

 

「お前を呼んだのは他でもない。あの力のことだ」

 

ジャンヌは二人が見えるように木に背中を任せた。暁もジャンヌと向かい合うように木に背中を預ける。

 

「勿論、タダで聞くという事はしない。何か、聞きたいことはないか?」

 

>ブラドの事

 

「……。すまないな。あまり、ヤツの事はあまり聞かない。強いて言うならイー・ウーのナンバー2の実力だ」

 

この情報だと、ペルソナの話と釣り合わないなと思っていたが暁が聞きたいことを思い出した。

 

>ジャンヌの事

 

「っ!?わ、私か?」

 

ジャンヌが一瞬、硬直し少しばかり恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 

「私の話か……。そうだな、まずは祖先の話をしよう。勿論、私の先祖の事を知っているな?」

 

 

 

暁が無言で頷く。ジャンヌ・ダルク。フランスのドンレミ村で生まれた女性。

ただの村人であったが突如、神の声が聞こえ神の教えの通り、とある人物を皇帝にするため100年戦争を勝利に導いた。

だが、後に敵国に捕まり異端審問官の裁判により、有罪と判決され19歳という若さで火刑に処された聖女。

 

 

 

「私の先祖は19歳という若さで火刑に処されたとされているがあれは嘘だ」

 

嘘?と暁が首を傾げた。

 

「火刑に処された人物はただの影武者だ」

 

暁はその言葉を聞いて目を見開く。

 

「我が一族は、策の一族。聖女を装うも、その正体は魔女。私たちはその正体を、歴史の闇に隠しながらーーー誇りと、名と、知略を子々孫々に伝えてきたのだ」

 

「私はその30代目。30代目ーーージャンヌ・ダルクだ」

 

なるほど、暁は思わず納得する。暁自身も死を装った事があったため、生きていたとしてもあり得なくはないと思ってしまう。

 

「こんな所だ……」

 

>まだジャンヌ自身の話を聞いていない

 

「わ、私、じ、自身の、か……?」

 

ジャンヌが先程よりも恥ずかしそうに顔を紅潮させる。

 

「ダメだ。それはまた、いつか話すッ!」

 

>言動は取った

 

「……。私もそうだが、お前も中々の策士だな」

 

ジャンヌの言葉に暁は少しばかり不敵に笑う。とある棋士からは策を学び、更にはとある元国会議員から交渉術を学んだおかげだ。

 

「次はお前の番だ」

 

 

暁がジャンヌの言葉に頷くと掻い摘んで話をする。

パレスやメメントスの事は話すと長くなるので取り除いてペルソナという力だけを話した。

 

 

「『もう一つの自分』……『心の仮面』……そして、『反逆の意思』か……よく分からないな」

 

それに関しては暁も同じだった。人の心なんて分からない。それは自分でも同じだ。

自分でも気付かないうちに出てくる感情というのはある。

 

暁自身もペルソナという力とは別に『ワイルド』という力もよく分かっていない。

 

「ん?」

 

すると、ジャンヌが不思議そうに砂浜の方を眺めた。

暁も木から背中を離し、目を凝らしながらジャンヌと同じ場所を見た。

 

 

『サードアイ』とも呼ばれる暁が持つ第三の目は暁に様々な情報を教えてくれる。

暗闇の中でも生物がはっきり見え、相手の強さが自分よりも上か下かも分かり、赤外線センサーさえも見える万能な目だ。

 

 

暁が目を凝らす中、二人に変化があった。片方、キンジがこちらの方に走ってくる。

 

暁達はこちらの方に来るキンジを見て、茂みの所にしゃがんで身を隠す。

 

一瞬、バレたか、と思ってしまうがそんな様子ではなかった。

 

バレたのなら走って近づく必要もない。

 

キンジが暁達が隠れた茂みを通り過ぎると二人は顔を出す。

 

「遠山があっちへ行ったか……好都合だ」

 

白雪の方では砂浜を歩いていた。暁達は木々の中で白雪を追った。

白雪が砂浜から少し離れたベンチに座るとジャンヌがスマホを取りだす。

少しだけスマホをいじるとすぐにしまった。

 

>なんて入力したんだ?

 

「何、星伽がこちらに来るような指示だ」

 

>こちら?

 

「ああ、イー・ウーにな」

 

暁が身を見開いてジャンヌを見る。顔が本気だ。

 

「今日はもう解散しよう」

 

暁はジャンヌの一言でその場を去った。

 

 




次回からが本編みたいなものです。これまでのはプロローグ。

それと、次回からはあの長鼻のお方も多分出ます。

それではまたお会いしましょう


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三章
ようこそ我がベルベットルームへ


ふう、やっと書けました…


あれからかなりの日数が経ち。

ゴールデンウィークが終わり、アドアシードと呼ばれる行事も終わる。

 

アドアシードの閉会式が無事に終わり学校を出ると暁はスマホを開く。

 

『アッキー……女子寮の1011号室に会いに来て』

 

暁の手が止まった。理子からだった。文面ではどこか悲しさを感じさせてしまう。

 

暁は久しぶりに理子の顔を見に行こうと思い、女子寮に赴いた。

 

 

 

 

 

女子寮に行き1011号室の前に立つ。三回、ノックをしてからドアノブに手を掛けた。

 

暁が恐る恐る扉を開くと、鍵も掛かっておらず開いていた。入れって意味なのかと思いながら顔を出す。廊下の奥へ進みリビングへと入る。

 

キャンドルポットで桃色に照らし出された部屋は

 

様々な衣服が床に散らばる中、理子がいた。

 

「アッキー……私ね、イー・ウーを退学にされちゃったんだ」

 

「それだけじゃないんだ……理子のお母様がくれた十字架も取られちゃったんだ……ブラドに」

 

理子が目に涙を浮かべて暁の制服を握る。

 

「ねぇ……アッキー」

 

理子が上目遣いでこちらを見上げる。そしてこう口を開いたら。

 

「ーーー助けて」

 

 

 

理子の十字架ーーー理子から聞いた事がある。なんでも特殊な金属でできており、謎の力を理子に与えてくれるらしい。

 

理子はそれをブラドに奪われ、今は横浜郊外の紅鳴館の地下にあるらしい。

 

 

 

「アッキーには紅鳴館にいる管理人を探ってほしいの……」

 

「一応、聞いておくが誰なんだ?そいつは」

 

「……それが、分かんないの……あまり、顔を出さなくて」

 

さて、どうしたものか……と暁は悩んでしまう。紅鳴館の管理人となる人物を探ろうにも相手の名前も知らない。

それに下手して紅鳴館に近づいて勘付かれたら危険だ。

 

>モルガナ頼めるか?

 

暁は少し申し訳なさそうな顔でモルガナに話しかける。

 

「仕方ない……任せろ」

 

「……ありがとう」

 

モルガナが頷くと理子がそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横浜郊外の近くのとある建物の前に暁が立っていた。その背中のバックからモルガナが飛び出す。

 

「相手の名前を探るのに時間が掛かるかもしれんが行ってくる」

 

暁が頷くとモルガナは迷わず横浜郊外の森の中に入っていく。

 

「にしても、薄気味悪ィ場所だな……」

 

モルガナがスタスタと森の中を進みながらそう呟いている。

 

「にしてもブラドはなんでこんな所に置いておくんだ?」

 

モルガナが森の中に入ってく理由を今一度、思い出しふと、疑問に思った。

 

「盗られるとは思わないのか?盗られない自信があるのか、ここにはないのか、それとも……」

 

ーーーウォォォォォォォン!

 

モルガナがブツブツと呟いていると、それは聞こえた。

何か、生物の鳴き声。まるでそれは何かを呼ぶような鳴き声。

 

「な、なんだ!?」

 

モルガナば警戒をし、五感を澄ませた。

モルガナの五感で一番反応したのは耳だった。

 

ザッ、ザッ、と何かが地面を踏みながら走る音。それは人のような二足歩行の生物のリズムではない。四足歩行の生物のリズムだった。

それだけではない。しかもそれは複数。更には徐々に少しずつ大きくなっている。

 

「ち、近づいてきてる!?なんでだ!?」

 

モルガナは身の危険を感じ、来た道を引き返す。

 

「くっ、速ぇ!」

 

モルガナ自身も走っているのに、音が遠ざからない。むしろ近付いてくる。

 

「くっ、仕方ねぇ!」

 

モルガナは走るのを諦め、近づいてくる方向見つめながら待つ。

 

モルガナがその行動に移したから数秒しか経たなかった。モルガナに近づく者達が姿を現す。

が姿を表す。

 

「狼!?」

 

白銀の毛を持つ狼達が睨みつけてくる。猫一匹対狼三匹。傍からどうやっても猫は勝てないだろう。

 

そう普通の(・・・)猫ならば。

 

 

 

 

 

 

「ーーーペルソナ!」

 

 

 

 

 

 

モルガナが猫の体から所々に青白い炎を発生させながら叫んだ。

 

「やれ、ゾロ!」

 

モルガナの背後から現れたゾロは右手サーベルを動かした。

 

フッ、と狼達の体を中心に小さな竜巻が起こり、同時に敵を吹き飛ばす。

 

「これは少しばかり無理そうだな……」

 

モルガナは倒れた狼達を見て引き返す。このまま、奥に進んでもまた、狼達出くわすだけだ。

このまま、ペルソナを使ってもおそらくスタミナが持たない。

 

 

 

 

 

 

 

 

>どうだった?

 

暁はモルガナにそう問いかけると首を振った。

 

「奥に進めるには進めるんだが狼達が邪魔でな……」

 

狼?と暁が首を傾げた。

 

「ああ、白銀の狼だ。何匹いるか分からん」

 

「調べるのはもう少し後にしよう」

 

モルガナはそう言うと暁のバックの中に入る。

暁はモルガナがバックに入ったのを確認し、男子寮に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

暁は帰るとそそくさと夕飯を食べ、風呂に

入ると、暁に眠気が襲ってきた。

 

「疲れてるようだな。今日はもう寝ようぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体が何処かに沈むかのような感覚が暁を襲う。

暁の意識が覚醒し、体を起こす。

 

目の前には牢屋のような青い部屋が目に写った。

 

「お久しぶりです。マイトリックスター」

 

牢屋の出口から声が聞こえ、暁は振り向いた。

そこにはアリアと同じぐらいの背の高さを持つ青いドレスを着た金髪の少女 ラヴェンツァが静かに佇んでいた。

 

「再会を喜びたいのですが今は主のお言葉があります」

 

ラヴェンツァがその場で一礼をすると、すぐさまに横に移動した。

 

「ようこそ。我がベルベットルームへ」

 

そこには青い机に座っている、耳と鼻の長い老人が暁を見ていた。

 

「ここは、夢と現実、精神と物質の狭間にある場所」

 

長鼻が特徴の老人 イゴールは暁を見て不敵に笑う。

 

「色々とお客人に説明したいのですがあまり、時間が残されていないようです」

 

「これは極めて理不尽なゲーム」

 

ラヴェンツァが言っていた同じセリフをイゴールが行ってくる。

 

「不可能を可能にする男、恋と闘争の女神、緋の巫女、神出鬼没の泥棒、一発の銃弾」

 

「そして世界の変革者」

 

「これだけのカードを切っても勝機はほぼ無いに等しい」

 

イゴールはそう言って暁を見つめた。

 

「それでもお客人には勝ってもらわねばなりません。お客人自身のために……」

 

>ブラドの事か?

 

「おや、お時間のようですな……」

 

暁の問いにイゴールは何も答えなかった。

 

「どうかご無事で、マイトリックスター」

 

ラヴェンツァの言葉を背景に視界が歪んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしのベルベットルームを見てから数日が経った。

イゴールの言っていた『ゲーム』に暁は悪神を思い浮かべたが、あまり考えたくはなかった。

 

そんな中、暁は理子からとある通知を受け、今、救護科(アンビュラス)棟一階、第七保健室のロッカーに潜入していた。

 

しかも、一人ではない。先客として同じ学年の車輌科(ロジ)の武藤 剛気がいた。そして……

 

「……で、なんでお前達もいるんだ?」

 

「そいつぁヤボな質問だぜキンジ」

 

>同じく

 

「さーて本日のメニューは……おー大漁大漁。平賀 文に、峰 理子に、諜報科(レザド)のふぅかぁ。あっレキがいる。しかし……星伽さんはいねぇなぁ。おっ。お前のアリアも来たぞ」

 

武藤の話を聞いていた、暁が額に汗を浮かべる。今、武藤が言っていた中に親しい関係を築いた者が数人いた。

理子は置いといて、一人いた。平賀 文だった。

 

暁が逃走の仕方を考えていると、キンジがケータイが振動した。

暁がキンジの背後からそっと内容を覗いた。

 

『アッキー、キーくん☆そこのロッカー、昨日カラにしといたから快適でしょ?んで、アッキーとキーくんがちゃんと見てるか確認!「10秒以内にアッキーは理子の、キーくんはアリアの下着の色を自身の端末で返信せよ!」正確に正解できない場合、ロッカー大開放のペナルティーが与えられまーす!』

 

あまりにも長い長い内容を読み終えた二人は驚きながも一瞬で顔を見合わせた。

 

「ど、どけ武藤っ!」

 

キンジが武藤を押しのけつつ、暁達は扉のスリットから覗き込む。

暁は素早い目の動きでわざと体重計に肘を付いている理子を視界に捉えた。

 

『ハニーゴールド』

 

暁は素早くスマホの画面を開いて着信させた。

暁自身、なぜか磨ききれないはずの度胸が磨かれたような気がした。

 

キンジも同じく返信し終えたらしく。安堵の息をついた。

 

「どうだった?」

 

「…………」

 

>堪能した

 

武藤の質問にキンジは答えなかったが暁は少しふざけるように答えた。

 

「にしても、お前も案外、むっつりだな」

 

武藤が少しだけ嬉しそうに暁を見てそう言った。

 

「お前とは中々、気が合いそうだ」

 

 

 

我は汝…汝は我…

汝、ここに新たな契りを得たり

 

契りは即ち、

囚われを破らんとする反逆の翼なり

 

我、戦車のペルソナの生誕の祝福の風を得たり

自由へと至る、更なる力とならん…

 

 

 

ーーーがら

 

保健室の扉が開く音がして、武藤が少しばかり顔を顰めた。

 

「……誰か入ってきたのか?」

 

「ああ。講師の小夜鳴だぜ」

 

救護科(アンビュラス)の非常講師 小夜鳴 徹。海外の大学を飛び級で卒業した天才。

 

「アイツよ、善人面して……女子に手ぇ出すとか、そういうウワサがあんだぜ?小夜鳴な間借りした研究室から、フラフラになって出てきた女子生徒がいたとかよ」

 

武藤の話に暁は頭に様々な人物の顔がよぎった。暁が前の世界で通っていた学校の体育教師、世界的に有名な画家、野党議員などの暁自身が思い出したくない顔だった。

 

「お、おおっ!?」

 

暁の耳に届いた武藤の焦った声に我に返る。

 

ばん!とロッカーの扉が開かれ、レキが右手で武藤のネクタイを、左手で暁とキンジのネクタイを掴み巴投げするような動きで引っ張った。

 

「ま、まて!謝る!あやーーー」

 

武藤が謝罪を試みようとする中、その場にいた女子生徒悲鳴をあげようとする。

 

ーーーパリィィィィン!!

 

だが、悲鳴が上がるよりも早くガラスが割れる音が響いた。

ドオンッ!という衝撃がロッカーを襲う。圧力をかけられ先程、三人がいたロッカーがひしゃげた。

 

暁の目がそいつの姿を捉えた。銀色の毛並みを持つ100キロはあろう巨体を持つ狼。

暁の知識でその名前を引き出すのは簡単だった。

絶滅危惧種・コーカサスハクギンオオカミの成獣だった。

暁はこの状況でどうすればいいか少しだけ迷った。

 

銃で威嚇しようにも跳弾の危険性がある。それだけではない。まだ女子が防弾制服を着ておらず、当たれば死ぬ危険性があるのだ。

 

暁は仕方なく、懐にあるナイフを取り出し、狼に投げた。

暁の持つナイフは投擲用(スローイング)ナイフではないためただ、狼の注意を引くためのものでしかなかった。狼は冷静に横に避けた。

 

だが、狼から少しだけ女子たちとの距離を離すことができた。

 

「……お前ら、早く逃げろ!」

 

キンジはそう言いつつ狼に飛びついた。剣山のような毛皮を掴み、薬品棚のガラスに突っ込ませる。

くるるおうんっ!

狼は吠えながらキンジの胸を狙って爪を立てる。

防弾ではあるものの衝撃を全て受け流しきれなかったがキンジは後ろにジャンプした。

 

その時、暁達は一つだけ見落とした点があった。それは小夜鳴だった。

 

近くで立ちすくんでいた小夜鳴を狼が体当たりで跳ね飛ばした。

小夜鳴は一般人だ。一瞬だけ安堵していた二人だったがそれを狼は虚を付いて小夜鳴を吹き飛ばしたのだ。

 

狼は自分が割った窓から外に出て、逃げていく。

 

「くっ!」

 

そんな中、キンジが歯ぎしりをする。多分、自分を責めているのだろう。

 

>先生を頼んだ

 

暁はキンジの肩を叩きながら窓を飛び出す。

 

「使え暁!その茂みの向こうに俺のバイクがある!」

 

武藤が窓の向こうからこっちにバイクのキーを投げてきた。

 

 

 

暁が『サードアイ』を使用してバイクを即座に見つけた。キーを挿して電源をONにし、キックスターターを踏み台にしてエンジンをかける。

 

すると、ドラグノフ狙撃銃を背負ったレキが、下着姿のまま暁の後ろに二人乗りしてきた。

 

「あなたでは、あの狼を探せない」

 

レキの言葉を聞いて暁は少しばかり驚く。そうレキが言っている事は私には狼を探せる、と言ってるようなもの。

だが、暁はその言葉を信じるしかなかった。

暁はロールに入れるとアクセルを引いた。

 

 

 

暁はあまりオートバイになったことがない。あるとすれば強襲科(アサルト)で習ったオートバイでの戦闘などだった。

オートバイに乗っているととある人物が暁の頭に浮かび思わずニヤけてしまう。

 

「人工浮島の南端、工事現場です」

 

オートバイで走る中、暁とレキが無言で走り続ける中、先に沈黙を破ったのはレキだった。

 

レキはそう言いながら狙撃銃を胸の前に持ち直す。

暁が無人の工事現場に侵入すると土嚢か幾つか食い破られ、散らばった砂に狼の足跡がついていた。

 

暁はギアをローにして狼の足跡を追跡するがバイクのバックミラーに銀狼が写っていた。

 

賢いヤツだ、と暁は心の中で思いがらバイクをスピンさせた。

 

「ーーー私は一発の銃弾ーーー」

 

スピンをさせ砂が舞う中、レキが狙撃銃を構えた。

 

「銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない」

 

狙撃銃じゃなくても拳銃でも命中する距離をレキは狙撃銃でやる。

 

「ただ、目的に向かって飛ぶだけーーー」

 

ーーータンッーーー

 

こちらに走ってくる銀狼に向かって銃弾を放った。その銃弾は背中を掠め、そのまま背後の鉄骨に着弾した。

一瞬、外したと思った暁の目に予想外の光景を目の当たりする。

 

ドサッ、と狼がその場に倒れ込んだ。

 

>何をしたんだ?

 

今まで黙っていた暁がレキに問いかけた。

暁達はバイクを停めて降りる。

 

「ーーー脊髄と胸椎の中間、その上部を銃弾で掠めて瞬間的に圧迫しました」

 

そして、狼のそばにいき、

 

「今、あなたは脊髄神経が麻痺し、首から下が動かない。ですかーーー五分ほどすればまた動けるようになるでしょう。元のように」

 

「逃げたければ逃げなさい。ただし次はーーー二キロ四方どこに逃げても、私の矢があなたを射抜く」

 

「ーーー主を変えなさい。今から、私に」

 

レキがそう言うと銀狼は荒い息をしながらヨロヨロと立ち上がり、レキのふくらはぎに頬ずりをした。

暁はレキの手際に関心をする。暁自身、似たようなことをしたことがある。

敵のシャドウを追い詰めて会話に持ち込み、お金や物をもらったり、仲間にしたこともあった。

暁はレキと頬ずりしてい銀狼を見たあと、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更にあれから数日が経った。

 

「そういや、今日なんだっけ?あの二人が潜入するの?」

 

そう、今日は理子のお願いでアリアとキンジが二週間、あの紅鳴館にメイドと執事として潜入を開始するのだ。

横浜郊外の森の近くにいると、理子から通知が来た。

 

『紅鳴館の管理人が小夜鳴先生!』

 

「小夜鳴?」

 

モルガナが首を傾げたので暁が掻い摘んで小夜鳴の説明を行った。

 

「ん?それだと色々とおかしくないか?」

 

モルガナの言葉に暁が頷いた。

 

「狼のいる森の館の管理人が小夜鳴。もし、それが本当だったらあの森にどうやって入ってるんだ?」

 

「しかも、噂とやらも気になるな。少し調べてみようぜ」

 

モルガナの言葉に暁が頷き、スマホを起動させ目玉模様のアプリを起動した。

 

そして、暁はスマホに向かって『小夜鳴 徹』と発言する。

 

『パレスを確認しました』

 

「ビンゴ!あとは『場所』と『どう思ってる』かだな」

 

暁は頷き『紅鳴館』と発言した。

 

「うーん、だがアイツが紅鳴館をどう思ってるんだ?」

 

「とりあえず、思いつくものを言っていこうぜ」

 

>城

 

『…………』

 

>研究所

 

『…………』

 

「反応しねぇな。そういえばブラドもこれ、やんないといけねぇんだろ?」

 

「まあ、理子のことを考えると十中八九、牢獄とか監獄だろうけど。先が長いぜ……」

 

『入力確認。ナビゲートを開始します』

 

「おいおい!嘘だろ!?」

 

モルガナの叫び声が聞こえる中、暁達の景色が歪んだ。




バイクというと真さんが出てきてしまう。
バイクのペルソナを見た時は「ありなの……!ありなのか!?」という感じでした。
次回からサヨナキパレス攻略です。
それではまたお会いしましょう


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サヨナキ·パレス

大変長らくお待たせしました。
この小説、若干スランプ状態でした。(-_-;)


二人の視界の歪みが収まると先程まで森だった場所は血に塗られたような赤い監獄だった。

 

「おいおい、どうなってんだこりぁ……」

 

モルガナの言う通り驚くのも無理もない。

 

ここ異世界 パレスはメメントスの支配への反逆の意思を持つ脱走した特に強い欲望を持つ人間が独自に形成した空間である。

現実の施設がベースとなっており、パレスの主がその施設をどう認識しているかで内装が決まるだが、この場合、小夜鳴は紅鳴館という館を監獄として見ているのだ。

 

 

「アイツ、ただの管理人だろ?なら、どうしてここを監獄として捉えられているんだ?」

 

モルガナの問いにジョーカーは答えられなかった。

 

「まあ、分からないもんは分からねぇか」

 

「さて、この監獄どうやって侵入する?」

 

ジョーカーはモルガナの言葉を聞き、侵入口を探すように促す。

 

とりあえず二人は監獄の外を一周した。

 

「ダメだな、侵入口がない。門から入るか?」

 

暁はモルガナの言葉に首を振る。流石に真正面から入るのは捕まりに行くようなものだ。

 

「今、シャドウは監獄の門の前に一体、外をグルグル徘徊しているのが一体、計二体か…」

 

二人はシャドウに見つからないようにしながらまた、監獄の周りを探索する。

 

「このままだと入ることもできないぞ?」

 

ジョーカーが何かを見つけたかのように足を止めた。

 

そうとある塀に接しられている一つの木箱だった。

 

「どうした?」

 

>何度もずらした跡がある

 

ジョーカーがサードアイを使って探索をしていたらこの木箱に違和感を感じていた。

そしてよく見ていると木箱をずらしたかのように地面が少し削れていたのだ。

 

「何!?早速ずらしてみようぜ!」

 

ジョーカーが頷きながら木箱をずらした。

木箱をずらしてみるとそこには人一人がぎりぎり入れそうな穴があった。

 

「穴?なんでこんな所に?」

 

「けど、これはいい侵入口になるかもしれないぜ!ワガハイは今から穴の様子を調べてくる。見張りは頼んだぞ!」

 

ジョーカーが頷くとモルガナが即座に穴に入った。それを見たジョーカーはこの穴がバレないように木箱を戻した。

 

そして、待つこと数秒木箱からモルガナの声が聞こえた。

 

「ビンゴだ、ジョーカー!中に繋がってる!」

 

ジョーカーがその声を聞き素早く木箱をずらし、穴に入り、木箱をなんとか戻した。

ジョーカーがサードアイを使用しながらモルガナの後を追うと少しだけ明るい所に出た。

明るいと言っても先程の暗闇よりは少しだけ明るいだけだ。近くに敵がいても殆ど気付かないだろう。

 

「多分、朽ちてもう使われてない牢屋だせ」

 

ーーーギギギィィィィ

 

錆びてあまり開かない鉄の扉をジョーカーがなるべく音を出さないようにゆっくりと開ける。

開けるとちゃんと明るい場所に出た。赤い石畳、赤い煉瓦の壁、長い通路の先には石の螺旋階段。

 

「シャドウがいない?」

 

モルガナが不審に思う。よく見れば通路にある牢屋の扉か錆びており、中には誰もいなかった。

 

「警備する必要がないって事か…。まあ、こっちとしては好都合だ。行こうぜ」

 

ジョーカーが頷くと長い牢屋を進み、石の螺旋階段を上る。上っていくとどこかへ続く通路が見えた。

 

ジョーカーは聞き耳を立て外に誰かいるか確かめる。

 

タッタッタッ、と足音が聞こえるが音の大きさからして遠ざかっていた。

 

ジョーカーがゆっくりと扉を開けた。開けた少し先には警備員みたいな服を着たシャドウがジョーカーに背を向けていた。

 

ジョーカーは不敵に笑い敵の背後からシャドウの肩の上に乗る。

 

 

 

ーーーグシャ!

 

ジョーカーがシャドウの上空から仮面を剥ぎ取る。

ジョーカーが飛び降りるとシャドウの体が解け、別の体となった。

勾玉のような形をした黒い化物 クシミタマだ。

 

 

「ペルソナ! 」

 

 

暁が叫ぶと背後に二つの頭を持つ狗が現れた。

 

「燃やせ!オルトロス!!」

 

オルトロスと呼ばれたペルソナは二つの頭の口から火の玉をクシミタマに放った。

 

ーーーボウッ!

 

クシミタマは難なくオルトロスの火の玉に吹き飛ばされた。

 

「よし、どうする?」

 

>総攻撃

 

即座に答えると素早い動きでジョーカーがナイフで、モルガナがブレードで幾度となく斬りつけた。

 

The show's over.(ショーは終わりだ)

 

ジョーカーがそう言うとクシミタマが黒い霧を体から噴き出しながら消えていった。

 

「次、行こうぜ」

 

モルガナがそう促すとジョーカーが奥へ進む。

少しだけ長い廊下を進むと、ジョーカーとモルガナの耳に突如、犬のような鳴き声が聞こえた。

 

「な、なんだ!?」

 

モルガナが驚きながらあたりを見渡す。ジョーカーもそれに気になり、声のした方向に向かった。

鉄の扉、恐らくここの囚人だろうと思われた。

ジョーカーが恐る恐る鉄の扉の覗き口を覗いた。

 

「!?」

 

暁が目を疑った。ワンワン、と犬のように鳴いている人の姿だった。

 

「お、おい……どうしたんだ?」

 

少しの間、体を硬直させているジョーカーを不審に思い、モルガナが問いかける。

ジョーカーが意識を取り戻し、モルガナに今見た光景を説明した。

 

「……てことはサヨナキとか言うやつは人を犬としか見てないってことになるぞ?」

 

この世界は認知によって作られた空間。このように人が犬のように吠えているのが当たり前となっているとそれは本人が本心では人を犬としか見てないということになる。

また、この犬のように吠えている人は認知の人間であり、本当の人間ではない。

 

確かにこれが本当ならモルガナの言っていた事が本当になる。

ここは理子に連絡しようかと思ったが、ジョーカーはその考えを止めた。

ここで理子に連絡して下手に何かしてブラドを呼ばれるとまずい。

 

「先に進もうぜ。そうだな……セーフルームを見つけるまで」

 

ジョーカーは頷くと長い石畳の通路を歩いた。

 

「にしてもこの通路、いつまで続くんだ?」

 

ジョーカー達はこの長い廊下の中、凸部分を利用して隠れなんとかシャドウを倒しながらも先へ進むがそれも時間の問題だった。

 

ジョーカー達が歩いていると広間に出た。広間からは四方の通路があり、その一つのジョーカー達が来た通路だった。

 

「4つの通路……上へと続く階段に地下へ続く階段か」

 

「この感じ……セーフルームだぞ!」

 

モルガナが広間の一つにあるとある扉を指差してそう言った。

セーフルームとはパレス本人の認知が低い場所をさし、認知が低いためシャドウもおらず安全圏である休憩所みたいなものだ。

 

ジョーカーが扉を開けて中に入る。そこは認知が薄いため、現実の空間と重なっているようにも見える。

 

「なんの部屋だ?」

 

よく見ると現実の方では壁に執事服がかけてある。恐らく執事の部屋だろうと思われる。

 

「ここの世界に来て、初めてのパレスだぜ」

 

「けど、人間を犬としか見ていないサヨナキのオタカラか……気になるな」

 

確かに、とジョーカーはそう思いながら少し考えた。

 

だが、あまりにもサヨナキという人物が分からなくなっていき思いつかなかった。

 

「さて、どこから行く?」

 

>上へと続く階段

 

モルガナにそう言われまずはそう答えた。他の通路にも行きたいのは山々だったがジョーカーの考えでは恐らく何も無いと考えてしまう。

そして、地下となるとあまりいい感じはしないと思ってしまい、消去法で上へと選んだ。

 

「じゃあ、そろそろ行こうぜ」

 

モルガナに促され、ジョーカーは扉を開き、階段を上る。

上ると、恐らく二階へ続く扉があった。

その扉は見る限り鍵穴がついており鍵が掛かっている様子だった。

 

「キーピックで開けられるか?」

 

モルガナにそう言われ、ジョーカーは鍵穴を覗く。

中の構造としてはキーピックで扉を開けるのは無理であった。中の構図では普通の鍵穴よりも少しばかり奥行きが長かった。

 

「鍵を探すしかねぇか……」

 

モルガナの言葉に頷きジョーカーは階段へと降りる。

 

「にしても看守長も面倒なことをするな……」

 

降りる途中、広場の入り口から声が聞こえ、ジョーカーは足を止める。

 

「だよなぁ。この通路から鍵を四つとって、地下の扉を開けて、そこからまた鍵を取って、上の扉を開けるんだろ?」

 

話し声からして数は二体だった。

なるほど、とジョーカーは今の言葉を聞いた。

シャドウ達は話し終えるとどこかへ行った。

 

「やることは決まったな」

 

ジョーカーが頷くとまずは最初に四つの通路にある鍵を目指した。

 

 

それほど四つの鍵は全て突き当りの所で見つかり難なく手に入った

ジョーカー達は広場に戻ると早速、地下の扉を開けて中に入った。

奥へ奥へと進み、最下層。そこは薄暗く空間が歪んでいるような感じを醸し出す不気味さがあった。

 

「あれが鍵か……」

 

モルガナが遠くでっ立っているシャドウ達四体を遠目で見た。

 

「四体か……分が悪いな。どうする?」

 

>行ってみよう

 

ジョーカーがそう言いながら敵に近づいた。

 

ーーーグシャ!

 

ジョーカーが近づくと四体のシャドウはそれぞれ別の化物と変わった。棍棒を持った一本角のオニ、二本の槍の柄が連結された得物を持った青い化物 フウキ、こちらは二本の棍棒を連結させた化物 スイキ、そして金色の化物 キンキだ。 その中で鍵を持っているのはキンキであった。

 

「コイツラ……厄介だぞ!」

 

モルガナがそう言いながら武器を構えた。

 

「ペルソナ!」

 

ジョーカーは女性とも思わせる桃色の髪のペルソナを呼び出した。

 

「パールヴァティ!」

 

パールヴァティが腕を広げると謎の力が発生しキンキを吹き飛ばし、オニ、フウキ、スイキは一歩、後退った。

 

「モルガナ!」

 

「おう!ペルソナ!!」

 

ジョーカーがすかさずモルガナにバトンタッチすると、モルガナがゾロを呼び出した。

 

「やれ!ゾロ!!」

 

ゾロはオニの目の前に人間大の拳を具現させるとそのまま殴りつけた。

 

どっ、とあたりどころが良かったのかオニも吹き飛ばされた。

 

 

「くっ…流石に二対四は分が悪いか…!」

 

モルガナはそう言いつつスイキが振り下ろす攻撃を躱してみせる。

 

>逃げるぞ

 

ジョーカーはそう言うと懐から煙幕を取り出しその場で放った。

ボウッ、と地面に着弾すると中から煙が噴き出し、辺りの視界を奪った。

 

「ジョーカー!アレはあるか!?」

 

モルガナの言葉にジョーカーは頷きながら懐からとある物を取り出した。

カエレール。名前の通りここから帰れるという意味を持つアイテムだ。

ジョーカーが頭上に掲げるとカエレールが輝き、あたりを閃光に包んだ。

 

「なんとか帰ってこられたな……」

 

モルガナが少しだけ息を荒くしながら隣の暁に呟いた。

 

「ヤツの鍵をどうにかして手に入れないと…」

 

「普通に近づこうとしても他の敵に邪魔されるし」

 

「かと言って倒そうとしても苦戦を強いられる…何か方法はないのか?」

 

>あてはある

 

暁の頭の中からとある一人の少女が思い浮かぶ。

 

「あてがあるんなら、問題ないな……」

 

 

 

 

 

その二日後、暁は強襲科(アサルト)棟の屋上に来ていた。

 

「今、来ました!」

 

屋上の扉が開きそこから現れたの暁より一回り背が低いあかりだった。

 

 

「にしても、珍しいですね。暁先輩から私を呼び出すなんて」

 

「今日は何をするんですか?」

 

幼さが残る顔でキョトンと首を傾げるあかり。

その顔は少し赤くなっていたが暁にとって今は関係なかった。

 

>今日は技を教えて欲しい

 

「……ええっ!?」

 

何かと勘違いしたのだろうか一瞬だけあかりの顔が固まった。

 

「……分かりました。鳶穿(とびうがち)を先輩に教えます」

 

あかりから『鳶穿(とびうがち)』を教えてもらった。

 

 

>今日はすまない

 

「いえ、私も先輩と一緒に入れてよかったです」

 

ニコッと天使の微笑みかのように笑みを見せるあかり

 

>ありがとう

 

と、暁がそう答えた。

 

>何か困ったことがあれば連絡しろ

 

「はい!」

 

暁がそう言うとあかりが嬉しそうな顔をしながら返事をした。

 

あとは、サヨナキ・パレスを攻略するのみ……と暁が不適な笑みを浮かべた。

 




とある短編小説を書いていてペルソナ5のキャラをカルデアに召喚させたらどうなるか考えてみたんですが……こいつら、どうやって呼ぶんだ?

あ、ちなみにこの小説ほとんど出来ていましたがあかりの登場らへんで手が止まりました。m(_ _)m
次回の話は頭の中でできているので案外早く出来上がると思います。時間があれば……
では、またお会いしましょう


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我は汝、汝は我(ペルソナ)

ふぅ〜色々と疲れた。

理由:就職試験
でも今日内定貰えたから一安心。




「ん、だんだんオタカラの気配がしてきたな!」

 

>長い

 

モルガナの言葉にジョーカーはそう言った。

そう、あかりから「鳶穿(とびうがち)」を教えてもらってから13日間もずっと潜っていた。

だがその間、全然オタカラに近づけていなかった。

 

何しろ警備が厳重過ぎだった。シャドウの強さも最初の方とは違いまるで別人のパレスかのように強い。

 

「にしても長いなこの塔」

 

あかりから教えてもらった「鳶穿(とびうがち)」で鍵を奪ったあと上へと続く階段に登ると塔となっており、今は高層ビルぐらいの高さなのだろうか?そう考えてしまう。

モルガナが言っていたオタカラまではあとどれくらいなのだろうか?

ジョーカーはモルガナに聞いた。

 

「う〜ん、この様子だとあと四、五階ぐらいだな」

 

ジョーカーはその言葉を聞いて再び塔を登り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよ、オタカラだな」

 

モルガナは目の前の扉の前で待機をしながらジョーカーに言った。

 

>行こう

 

ジョーカーは頷くとそう言って静かに、ゆっくりと扉を開けた。

 

扉を開けるとそこは液晶画面が広がっていた。

監視カメラの映像かと思ったがジョーカーは頭の中で否定した。液晶画面に映る映像はジョーカーの記憶にない。

じゃあ、この映像はなんだ?

 

「とうとうここまで来やがったかネズミ共」

 

そんなジョーカーの考えを遮るように背後から声が響いた。

 

「!?」

 

二人はその声に反応し、振り返った。

 

絶句しかなかった。

 

白く入れ墨のようなものが浮き出ている巨体。今まで見たことのない巨体だった。

巨体、そう言い表すしかなかった。人間ではなくどちらかといえばシャドウに近い化け物だった。

だが、シャドウではない。

今までジョーカーが見てきたシャドウの殆どが他の人のシャドウやメメントスで見かけたシャドウと同じ姿形をしている。

パレスの主などの異例がある。むしろそれなのではないか?とジョーカーは思ってしまう。

 

「まさかここに入ってくるなんて意外だな」

 

エコーがかかったような声でジョーカー達を見て呟く。

 

「お前は誰だ!」

 

モルガナが目の前に現れた化け物を睨みつける。

 

「俺が誰かだって?サヨナキ(・・・・)のここに入れたから分かってるんじゃねぇのか?」

 

ジョーカーは一瞬、サヨナキ本人かと思ったがすぐさま否定した。

 

>まさか『無限罪のブラド』?

 

ジョーカーはとあることに思い至った。

先程のセリフ、サヨナキ本人なら自分の事を「サヨナキ」とは言わない。

だが、これでは決定的ではない。決定的になったものはパレスに入ったキーワードだ。

 

『反応しねぇな。そういえばブラドもこれ、やんないといけねぇんだろ?』

 

『まあ、理子のことを考えると十中八九、牢獄とか監獄だろうけど。先が長いぜ……』

 

たまたま、ブラドのキーワードの事に話題が切り替わり、偶然にも(・・・・)ヒットした。

少しだけ、小夜鳴とブラドは同一人物かという可能性が頭のスミに残っていた。

 

「その通りだ小僧」

 

ジョーカーがまさかとは思って口にした。それが当たってしまった。

だけど、どういうことだ。小夜鳴とブラドが同一人物になのか……二重人格か?

 

「だがよぉ、俺は二重人格でもなんでもねぇ」

 

「何!?」

 

「小夜鳴は俺の擬態、俺が作り出した人格だ」

 

「人格だと!そんなもんどうやって……まさか!?」

 

>ここでか

 

「そうだ、すげぇよなここは。小夜鳴の人格を簡単に作れるんだからよ」

 

>表は小夜鳴を任せて自分はここで高みの見物か

 

「悪いか?」

 

>……。

 

ジョーカーはニヤリと笑う目の前のブラドを睨みつける。

 

「お前たちをここで始末してもいいが生憎、俺はもうすぐ表に出ないといけないからな」

 

>何?

 

「あの三人を捕獲しないといけないからな」

 

ゲバババババ!と笑いながらその場を去っていく。

 

「三人……だと?」

 

まさか……!?とジョーカーは焦り始めた。

 

「三人ってまさか……」

 

>キンジ、アリア、そして理子だ

 

「ジョーカー!カエレールはあるか!?」

 

ジョーカーは頷きながらカエレールを使った。

 

 

―――――――――――――――

 

 

暁が現実世界に戻るとランドマークタワーに向かった。

今日はキンジとアリアが十字架を取り返す日。そしてランドマークタワーで理子と決闘する日でもある。

 

ランドマークタワーに入るとエレベーターに駆け込み屋上へ向かう。

 

「おい、暁!キンジ達に姿がバレるのはヤバイ!」

 

モルガナに言われ、姿を制服から怪盗服に切り替えた。

 

元の世界でメメントスと現実世界が混ざりあった事件があった。その中でペルソナを使ったせいか、以後現実世界でも使えるようになったのだ。

 

エレベーターが屋上に着き、扉が開くとすぐに外に出る。

 

 

バッ!と屋上の扉が開くと……

 

「あ、アッ……ジョーカー?」

 

理子がブラドに捕まっていた。一瞬だけ『アッキー』と呼びそうだったが『ジョーカー』に戻した。

更には複数の白銀の狼にも囲まれており、一部の狼はジョーカーを囲った。

 

「よう、また会ったなネズミ共」

 

理子の頭部を掴んでいるブラドはジョーカー達を見て言い放った。

 

「だ、誰?」

 

ジョーカーの事を知らないキンジとアリアは不思議そうに首を傾げた。

 

「ごめんね。私、失敗しちゃった……」

 

>……。

 

「ジョーカーの足を引っ張って……手を煩わせて」

 

>そんな事はない

 

「でも、実際こうして捕まっているのに」

 

>今から助ける

 

「無理だよ!たとえアッキーでも!」

 

その声に暁は大きく息を吸った。そして……

 

 

「―――諦めるのか?」

 

そう問いかけた。

そうやって何度も仲間に問いかけていた。一体、何度目なのだろうか?

 

この世界に来て新たにやる事が出来た。

 

そう今も、目の前にいるブラドに首を掴まれている理子に問いかける。

 

「そうだよね…………諦めてたまるか…………。ここまで来たのに諦めたら申し訳ないもんね…………」

 

理子が目を見開くといつの間にか白と黄色の仮面を被っていた。

 

「ァァーーーァァァーーーーーー!!」

 

すると突如、悲鳴のような声で理子は両手で仮面を掴んだ。

 

ーーーベリ!ベリベリッ!

 

まるで剥がれないようにされているものを無理矢理剥がそうとする音。そんな中、剥がしている所から血が吹き出していく。

そして…………

 

ーーーブシャ!

 

理子の顔から仮面が完全に引き剥がされた。

その光景を見た暁は理子を見て不敵に微笑む。

 

「な、なんだぁ!?」

 

理子を中心に謎の力の奔流が起き、理子を掴んでいたブラドの手が弾かれた。

 

ーーーようやく覚悟が出来たわね

 

「私は……」

 

ーーー情けないわね

 

 

「ッ!?」

 

ーーーたかが『繁殖用牝犬(ブルード・ビッチ)』って呼ばれただけじゃない

 

「この声は……」

 

ーーー貴方は過去を変えることができる

 

「ああ……お母様」

 

ーーー今こそ契約の時よ

 

「私は……私は……」

 

ーーー我は汝、汝は我

 

「理子・峰・リュパン4世……人間だ!!」

 

ーーーさあ、私の名を叫びなさい!

 

 

 

「ペルソナっ!!」

 

 

 

 

 

理子の背後からソレ(・・)は現れた。体のラインがはっきり見えるような紅いスーツ、右手には細長い口紅を左手には鞭を持っていた。

 

 

 

 

 

「ーーーフジコ!!」

 

 

 

 

 

フジコと呼ばれたペルソナは右手の口紅で横一文字を描いた。

 

「な、なんなのよ……」

 

直後、狼達の目前で謎の爆発が起こった。

流石に不可解なことの連続にアリア達は唖然としていた。

 

「アリア、これも超能力(ステルス)なのかい?」

 

キンジの方は割りと冷静だが少しだけ焦っているようにも見えた。

 

「た、多分ね。けど、こんな超能力(ステルス)、見たことないわ」

 

「4世、テメェ!何をしやがった!?」

 

「そんなの、お前には関係ない。そうでしょう、ジョーカー?」

 

いつの間にか理子の顔に付いていた血が消え、代りにハニーゴールドと赤の仮面が付いていた。

 

>ああ

 

ジョーカーが理子の傍まで歩いていき、そう答えた。

 

「何が目的だ!?」

 

>……。

 

「チィ!」

 

ブラドが舌打ちをしながら殴りかかってくる。だが……

 

『っ!?』

 

バキャ!という音ともにブラドの拳が弾けた。

その場にいたキンジとアリア、ブラドが目を疑った。

 

『ギリメカラ』……物理反射を持つ強力なペルソナだ。

 

「ペルソナ……カーリー!!」

 

六本の腕で六本の剣を持つ赤いペルソナがジョーカーの背後から現れた。

 

ザシュ!

 

刹那、ブラドの体が引き裂かれた。『空間殺法(くうかんさっぽう)』。その名の通り空間で相手を殺す技だ。

 

だが、バラバラに引き裂かれた体が形を形成していき、何事も無かったかのように再生する。

 

ジョーカーは思わず心の中で舌打ちをしてしまう。

 

 

『ブラドを倒すには、全身四ヶ所にある弱点を同時に破壊しなければならないらしい』

 

『四ヶ所の弱点のうち、三ヶ所までは判明している右肩・左肩・右脇腹だ……ヤツは昔、ヴャチカンから送り込まれた聖騎士(パラディン)に秘術をかけられて、自分の弱点に一生落ちない『目』の紋様をかけられてしまったのだ』

 

 

ジャンヌから教えて貰った弱点を見た。右肩・左肩・右脇腹の三箇所だ。

目視できる限り三箇所だけで、最後の一箇所は見つからない。

 

「仕方ないわね……とりあえず加勢するわよ!!」

 

呆然と見ていたアリアがブラドの注意を引きつけ始めた。そしてキンジはジョーカーを見て何かに気付いた。

 

「ジョーカー、今のは……」

 

今の攻撃で何かを察したらしい理子は何か言いたそうな顔をした。

 

>どうした?

 

「ジョーカー……知ってるかと思うけどブラドには4箇所、弱点があるの」

 

>ジャンヌから聞いた

 

「その4箇所には魔蔵っていう―――人間には無い、小さな心臓があるの。それが吸血鬼こ無限回復を支える臓器なんだよ。魔蔵はよくできてる。1個でも残っていれば他の3個をほんの一秒もかからず直せる。だから、4つ同時に機能不全に陥れなきゃダメなの」

 

ジョーカーも何かそんな気がしていた。昔、聖杯と戦ったときに聖杯はチューブから力を貰い、回復していたのだ。

 

「視線でバレないようにするために、場所は言わないでおくけど―――理子は……4つめの魔蔵の位置を知ってる。アイツと……暮らしてたから」

 

>4つとも撃ったら、どうなるんだ?

 

「元々吸血鬼が持っていた弱点が復活するんだよ。ブラドは弱点を克服できてない(・・・・・・・)。魔蔵を進化させて、治せるようにしただけなの」

 

>『克服できてない』ということは……

 

「うん、有名な弱点が全部、ホントに弱点になる。銀はブラドにとって強力な猛毒に変わる。紫外線に火傷するようになる。大蒜(ニンニク)に含まれるスルホキシドにも、、強烈なアレルギーを起こす」

 

理子がジョーカーを見つめてそういった。

 

「ねぇ、アッキー。あたしの名前を呼んで」

 

>理子

 

「もう一度、呼んで」

 

>理子

 

「呼んで」

 

 

「理子!」

 

 

暁が理子の名を叫ぶと頬にキスをした。

 

「アッキーのお陰で元気出てきた。ジョーカー、最後の魔蔵は理子に任せて」

 

ジョーカーは頷き、ブラドの方を向いた。

 

「ペルソナ―――チェンジ」

 

直後、背後のカーリーが消え、青白い炎が別のものを形作る。

 

「ヨシツネ―――ヒートライザ」

 

キンジとアリアの間を通り過ぎ段々とブラドに近づく。

そして、背後の炎が侍の姿をしたペルソナとなった。

 

ジョーカーがブラドに近づくのに警戒し、白銀の狼達が跳躍し爪を振り下ろす。

だが、見えない壁に阻まれたかのように防がれた。

 

「ジオダイン」

 

ジョーカーがそう呟いた直後、白銀の狼達の上空から無数の雷が発生し後方に吹き飛ばす。

 

>……。

 

そして、ブラドの目の前で立ち止まる。

 

「グッ……!」

 

ブラドは今の光景を見てさすがに手を出せなった。

 

物理無効―――物理が全く効かないのだ。ジョーカーは巨体のブラドを見上げる。

そして、深く息を吸って……

 

 

 

八搜飛び(はっそうとび)!!」

 

 

 

―――ザザザザザザザサッ!

 

ヨシツネが素早く八回もの跳躍し、ブラドの魔蔵を斬りつける。

 

「グッ!?」

 

そして、それと全く同時にジョーカーの背後、理子のペルソナ『フジコ』が右手で小銃を構えていた。

 

「―――4世!!」

 

 

「ぶわぁーか」

 

 

パァン!と乾いた音が響く中、フジコの小銃から放たれた銃弾がブラドの頭部を捉え、貫いた。

 

ジョーカーはブラドが撃たれた時に気付いた。最後の魔蔵は頭部の舌にあるのだと。

 

ブラドの力を失い、ガツン、と手にした金棒を地面に落とした。

落とし方がマズかったのか、電柱みたいな金棒が斜めに傾きブラドにのしかかる。

 

「う、ぐぅ……!?」

 

それを押し返そうとするが力を失っているブラドは数トンある金属製の基地局アンテナがブラドの巨体と十字に重なるように……ズシン……と、倒れた。

 

「う、ァう……」

 

「や、やったね……」

 

苦しそうに声をあげているブラドを見て理子が足をふらつかせながら暁に言った。

 

>ああ

 

暁はおぼつかない足どり出歩いている理子を見て……

 

「えっ?」

 

お姫様抱っこをしたのだ。理子は一瞬だけ呆然としたが次の瞬間、顔を赤くさせた。

 

「待て」

 

チャキ、と暁の後頭部に銃が突き付けられた。キンジが右手に持つベレッタの銃口を暁に向けたのだ。

 

「どこへ行くつもりだ?」

 

>……。

 

「見たところ理子はお疲れのようだね」

 

キンジがチラッと理子を見たあと、アリアを見た。

 

「話は聞かせてもらうわよ」

 

そう言ってアリアも二丁のガバメントを構えた。

 

「この件に無縁だと思っていたがまさか理子の共犯者だったとはな、暁」

 

「アッキー……」

 

>……。

 

理子がそう呟くのと同時だった。暁の手から丸い何かが落下していくのだ。

 

「くっ!?」

 

「しまった!」

 

直後、その球体から煙が噴き出しその場にいる四人の視界を遮った。

 

>飛び込む

 

「え、えっ!?」

 

理子に聞こえるように呟き、前を走り出す。パパァン!という音と共に銃弾が飛んでくるがヨシツネの力によって阻まれた。

 

ダッ、という音とともにビルの屋上から飛び降りた。

高高度からの自由落下によってありえない速度で下に落ちていく。

 

>怖いなら目を閉じていろ

 

「……ううん。大丈夫だよ」

 

理子が嬉しそうに言いながら暁に抱きついた。

 

「ペルソナ―――バアル」

 

背後から大きな茶色い兜を被ったペルソナ『バアル』が現れた。

 

 

万物流転(ばんぶつりゅうてん)!」

 

直後、暁の真下から暴風が吹き荒れ自由落下をしている暁の体を少しだけ押し返す。

ありえない速度で自由落下していた暁の体は押し返されたことで水滴が落ちるかのような速さで自由落下をし、地面に着地した。

 

「む、無茶しやがる」

 

暁がビルから落ちる寸前にしがみついたモルガナは息を切らしながらそう言った。

 

>なんとかなった

 

「『なんとかなった』……じゃねぇよ!下手したら死ぬところだったぞ!!」

 

「フフフフ……」

 

二人のやり取りを見ていた理子が笑いだした。

 

>立てるか?

 

「少し……無理そう。だからアッキー送ってって?」

 

それはそうだろう。むしろ初めてペルソナの能力に目覚めてピンピンとしていたらそれはそれで困る。

上目遣いでそう言い放ち、まるで捨て犬のような目だった。

 

>ああ

 

「送ってくのはいいが。これからどうすんだ?キンジにバレたろ?」

 

暁が思い出したかのように冷や汗を垂らす。考えていなかったのだ。

 

「じゃあ、理子の家に泊まってってよ!!」

 

その言葉に暁の顔が凍りついた。女の子の家に泊まりに行くのだ。

暁にはそのような経験がない。なので、どうしたらいいか分からなかった。

 

>でも……

 

「いいの?キーくんとアリアに何されるか分かんないよ?」

 

どうやら逃げられないらしい。

 

 

 




皆さんどうもお久しぶりです。
お気に入りが100を超えていて嬉しいです。
小説を楽しく見させている方からも評価をもらえて嬉しいです。

あと、サヨナキ・パレスのストーリーは飛ばしました。全部なんて思いつかないのだ……原作と同等の仕掛けとかね……m(_ _)m
今回、書いてて思ったこと……物理無効と物理反射って……キンジ勝てなくね?

今後の予定は暁と理子の日常を一話。そこから4巻に入ろうかと思っています。

女神転生やペルソナってこういう所に出したら誰も勝てないな〜

そして言うのが遅いけど『真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEY』発売おめでとう!

COJをやっていてコラボした時は嬉しかったよ!!
『死んでくれる?』まで取らなきゃと思ったけど色々あったから『冥界波』一枚しか獲得できなかった……orz

あとがきはここらへんにしといて……それでは皆さんまたお会いしましょう。


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