仮面ライダーファング ─その牙の剥く先は (千石黒羽)
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禁断のF/不屈の戦士 Prologue

作者です。ずっと前からやりたかったやつです。
戦闘描写とかその他諸々苦手です。生暖かい目で見て下さると嬉しいです。


─暗闇に包まれたビルの中、懐中電灯の朧気な光が辺りを照らす。警備員の男二人が、周りを注意深く見渡しながら進んできた。ひそひそと、話し声が聞こえる。

 

「外部からの侵入者が来たそうだな」

「さっきから起こっている停電と関係があるのか?」

「いや、どうやら原因はまだ分かっていな─……っ!?」

「どうした…ぐあっ!」

 

()()は突然現れた様に思えた。

何も無い暗闇から、一つの物音も立てずに─何者かが警備中の二人を襲う。手刀が二人の首を的確に突いた。

「暫くおやすみなさい、ってところだな」

不意を突かれた二人の顔に、催眠スプレーを吹き掛ける。すると、男達は崩れ、その場で眠ってしまった。

「このフロアも制圧っと。やれやれ、秘密組織が聞いて呆れるなあ」

謎の男は、そのまま自分の目的とする方向へ進んでいく。その首尾の良さは、まるで忍者のようでもあった。

 

「ん、ここだな」

廊下の奥にある、こぢんまりとした何の飾り気もない扉。彼はそれをそっと開ける。真夜中の暗い建物内で、そこだけは煌々と明かりが灯っていた。

 

「─来ましたか、待ちくたびれてしまいましたよ」

 

部屋の内装はいかにも研究室、といったものである。少し大きめの机、椅子、そして折り畳み式のベッド。これはきっと仮眠用だろう。

椅子には、眼鏡をかけ白衣を身に纏った紫髪の若い女性が腰掛けていた。

「一応部外者なんだ、仕方が無いだろ。それで、約束の物は出来たのか?」

「ええ、勿論ですよ。脱出の手筈も整っています」

謎の男の問いかけに、白衣の女は頷いて答える。そして、机の上に置かれていたトランクを男に手渡し、立ち上がった。

「これが……そうなのか」

「はい。次世代型『ガイアドライバー』です。まだ完全では無いですが、後々調整は出来ますので。では、行きましょうか。早くしないと捕まってしまいますから」

「分かった。最短ルートで頼む」

再び扉を開け、二人は廊下に出る。しん、と静まり返ったそこに、扉の閉まる音だけが響いた。

「ふむ。でしたら、屋上に出ましょう。下に降りるのは、少し危険みたいですし」

そう言い、女性は下り階段の方を指差す。目を凝らすと、そこにはスーツ姿の男が立っていた。

「思っていたより早かったみたいだな、追っ手が来るのが」

「遅かれ早かれ。結局は私がここを出た為に見つかります。走って逃げましょう」

話し声に気付いたのか、男がこちらを見る。そうして、歪んだ笑みを浮かべた。まるで、獲物を見つけた、と言わんばかりに―。

「そこの二人。命が惜しければそこで止まれ」

男の声が暗い廊下に反響する。そして、ゆっくりと二人に近づいてくる。

二人は合わせるように、後ずさり。絶対に近付いてはいけないという確信があった。

「いいですか、階段に辿り着いたら屋上まで駆け上がって下さい。もしもの時の足止めは私がしますので」

女性は腰に提げてあったホルダーから、ゴツゴツとした銃を取り出す。どうやら普通の代物ではなさそうだ。

「あぁ。命が惜しくて止まっても、なんだか死にそうだからな」

彼が苦々しい声でそう呟くのには理由があった。スーツの男は、右手にUSBメモリの様な物を握っていたのである。

しかし、正確に言うのなら、あれは─

 

『ANOMALOCARIS』

 

─新型の、ガイアメモリだ。

 

男がボタンを押し込む。そしてガイアウィスパーが響き渡る。

メモリを手から離すと、それは弧を描いて男の体内に飲み込まれていった。

次の瞬間に男は、異形の化物へと姿を変えていた。アノマロカリス・ドーパントである。

 

こうなれば、一度ここから退散すべきだ。二人は目線を交わすと、一目散に階段を駆け上がっていく。アノマロカリス・ドーパントも二人の後を追った。

「屋上に着いたら、トランクの中身、使ってください」

「なっ!?いきなり使えって言うのか?」

「試運転です。どちらにせよ、争いは避けられませんし」

「─はぁ、分かった。いずれにしたって、いつかはやらなきゃだしな」

 

屋上に繋がるドアを蹴破り、二人は外に出た。都会の空には、星は一つも浮かんでいない。

代わりに、周りのビルから微かに漏れた光が屋上を照らしていた。

「もう逃げられる場所など無いぞ。さあ、大人しく降参しろ。それとも、無惨にここから落ちて死にたいか?」

アノマロカリスが距離を詰めてくる。彼は慣れた手付きでトランクを開けた。

 

「……なるほど、これは面白い」

 

中に入っていたのは、『F』『C』『H』『L』と書かれたガイアメモリ四本。

それと、恐竜の頭を模した形のガイアドライバーであった。その中からFのメモリと、ドライバーを手に取る。そして、アノマロカリスと対峙した。

「……なんだ、そのドライバーは!?」

アノマロカリスが警戒からか歩みを止める。その間に、彼は腰にドライバーを装着した。

「さぁ、なんだと思う?困った事に、俺もさっぱり分からないんだ」

ドライバーのレバーを引くと、ガコン、という音を立てて恐竜の顎が開く。彼はそれを確認してから、ゆっくりとボタンを押し込んだ。

 

『FANG』

 

ガイアウィスパーがそう叫んだ。そして、メモリをドライバーに勢いよく差し込む。

唸るような待機音声が鳴り始める。まるで─、そう、獲物をお預けされている間の獣のような。

 

「変身!」

『FANG』

 

レバーを元の位置に戻すと、もう一度ガイアウィスパーがメモリの名を叫ぶ。

恐竜の荒々しい咆哮と共に、男の足元から鎧が装着されていった。

煌めく様な白銀の鋭利なボディ、胸に黒色のライン。

頭部にVを彷彿とさせる鋭く尖ったアンテナ。そして深い蒼の眼。

そこにいたのは紛れも無く、『仮面ライダー』であった。

「貴様、何者だ!」

アノマロカリスが問う、彼は─。否、仮面ライダーは、こう答えた。

「俺の名は……白亜。仮面ライダー、ファング」

アンテナが月明かりに煌めく。青の双眼が光った。

「……仮面、ライダー」

アノマロカリスはその言葉を咀嚼する様に反復する。確かに自分の目に映ったそれは、自分が聞いていた仮面ライダーのそれであった。

 

─まさか、こいつが。

アノマロカリスの目がその後ろに立つ女に向く。先程は暗がりでよく見えなかったが、今はその顔を月光ではっきり捉えられた。彼女がガイアメモリの研究をしている事は組織内でも有名だったのだ。裏切ったということだろうか。

「貴様、寝返ったのか」

アノマロカリスはゆっくりと問う。彼女は無表情のまま、その問いをこう返した。

「私は、最初から貴方達の味方になったつもりはありません。微塵も、です」

「ならば。二人諸共地獄に送ってくれる!」

アノマロカリスが白亜に急接近する。しかし白亜は動じず、レバーをもう一度引いて戻した。

 

『Arm-Fang』

 

その音声と共に、両腕に鋭い刃が現れる。ファング第一の武器、アームセイバーである。

「下がってな、おーらッ!」

白亜は一言だけそう吐くと、向かってくるアノマロカリスに構えをとって、そのままアームセイバーで斬りかかった。

「ぐはッ?」

激しい斬撃音が響き、アノマロカリスは後方へと吹っ飛ぶ。白亜は容赦せずに攻撃を刻んでいく。

一発、二発、三発。斬撃のコンボに、アノマロカリスの足元は覚束無いものとなる。

「これ以上応援なんか呼ばれたら厄介だからな。次に会う時は戦闘訓練でもしておいた方がいいと思うぜ」

「その力……貴様、何故……!?」

息も絶え絶え、アノマロカリスは白亜に質問を投げようとする。しかし、彼の耳には届かない。

 

『Fang Maximum-Drive』

 

レバーを三回引いて戻す。マキシマムドライブを告げる音声が鳴った。

両脚にマキシマムセイバーと呼ばれる刃が現れる。そして、防御が不可能になったアノマロカリスにその一蹴りを御見舞した。

 

「─ファング・クランチャー!」

 

夜の闇にFの残像が浮かび上がる。

アノマロカリスは爆発し、あとには先程の男が横たわっているだけだった。その手元には、壊れたガイアメモリが握られていた。

「メモリブレイク、か」

白亜はそのメモリを拾い上げ、誰に言うでもなくぽつりと呟く。そして、その場にいた彼女に向き直った。

 

「で、これから俺はどうすればいいんだ?」

「迎えは呼んであります、もうじき来るでしょう。問題は、ここからどう脱出するかでしたが、大丈夫そうですね」

彼女のその言葉に、白亜は首を傾げる。一方その彼女は、足元のトランクを拾い上げて言った。

「私を抱えて、ここから跳んでください」

「なっ!?あんた、正気か!?」

「至って。ファングスーツはビルから飛び降りたぐらいじゃ壊れませんので」

「骨折なんてしないよな?……まあ、ビルの中よりは安全か」

そう言って白亜は彼女を抱え上げる。そして、ビルの屋上から飛び降りた。

「よ─っと!」

着地は成功し、衝撃で周りのアスファルトが窪む。それからゆっくりと彼女を降ろすと、白亜はメモリを抜いて変身を解いた。

「ふふ、中々の威力の様ですね。私の発明品です、これぐらいは無いと困りますが。さて、そろそろ来る筈なのでお待ちください」

「は?いったい誰が来るんだ?」

白亜はここからどうするかをこの女性から全く聞いていなかった為、首を傾げた。彼女は、少し頭を抱えるような素振りを見せると、こう答えた。

「そうですね、少々騒がしい協力者です」

「協力者?」

白亜は辺りを見回してみるも、深夜の街は静かなものである。迎えに来る者の姿など……いや、遠くから微かな車の音が聞こえてきた。

「来ましたね。予定時刻より相当遅いですが」

「ピッタリだと思うんだけどなぁ」

しかし正直、この無表情の女性と二人きりと言うのは辛い。一刻も早く来て欲しいというのが白亜の心情であった。

「いえ、先程の戦闘ですが、少々時間が」

 

彼女がそこまで言いかけたところで、車が白亜達の前で止まる。窓が開き、中から運転手の男が顔を出した。よくいる中年男性。無精髭を生やし、真夜中だと言うのにサングラスをかけている。

この男が協力者、と呼ばれた人のようだ。サングラスを上に押し上げ、窓から顔を出す。

「やぁ、レイちゃん。遅れちゃったけど大丈夫だったかい?」

「丁度戦闘が終わった所ですが。時間は厳守でお願いします」

男が気さくにそう聞くと、彼女─どうやら名前はレイと言うらしい─は、真面目にそう返した。

「はは、まだそんな喋り方してんのか。硬いのは疲れるからやめて欲しーとこだが……よ、お兄ちゃん。選ばれたのはあんたなんだな。名前はなんて言うんだい?」

「俺は白亜っていいます」

「はっはっはっ。別に畏まって敬語なんて使わなくてもいいさ。さ、乗れ乗れ。今からあんたらの新しい住処に案内してやるからな」

男は快活にそう笑い飛ばすと、後部座席を親指で差した。

「えーっと、貴方の名前は?」

ドアを開け、車に乗り込んでから白亜が聞く。すると、男は少し考えてからこう言った。

「……名乗る程のモンじゃねーさ。そーだな、『オッサン』とでも呼んでくれ。そっちの方が気が楽でな」

「お、オッサンって」

白亜は見た目そのままの安直なあだ名に思わず苦笑してしまう。だって、オッサンの見た目はそのままおっさんだったわけだからだ。

「オッサンはオッサンなので。この人、私にもちゃんと名乗ってませんから。車、早く出してください」

彼に続いて後部座席にレイが乗り込む。助手席に座ると思っていたので正直驚いてしまった。

「はいはい、レイちゃんはそー急かすなって。すぐ追っ手が来る訳じゃねーんだからさ」

「相変わらずの能天気ぶりですね。激しく爆発させたので今に来ますよ」

「最高の褒め言葉だっての、それじゃあ急がないとな、はっはっは」

そう言うと、オッサンはアクセルを踏み抜いて車を急発進させる。先程まで戦っていたビルが小さくなるまで見送ってから、白亜はゆっくりと前を向いた。

 

夜は、もうすぐ明ける。



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Sが舞い踊る/復讐、開始 0_0_1

……この悲鳴は、誰のだろう。ずっと、ずっと、忘れていた。

「──、ここから、絶対に出るんじゃないぞ。息を殺せ。物音を立てるな。絶対に」

 

ちがう、忘れていたんじゃない。本当はずっと、覚えているんだ。

忘れたいのに、忘れられない。結局、記憶の引き出しにしまって鍵を掛けたのだ。忘れてしまわないように、そのままの状態で。

「お父さんが、アイツを追い払うまで、絶対に出るな。兄ちゃんとの約束だ。いいな?」

 

俺は、あの日の俺は素直に頷く。その時の兄の顔は、俺にはちゃんと見えなかった。押し入れの二段目に這い上がった俺は、布団を被ってただ震えていた。

 

何が起こっているんだろう?皆、別人みたいだった。

 

あの日。突然、帽子を深く被った男が訪ねてきたと思ったら──、父の様子は豹変した。すぐ様兄に俺を二階に連れていくように命じて、どうやら居間へと男を招待したようだった。男の正体は、今でも分からない。

 

最初は、ガラスの砕ける音が聞こえてきた。まるで何かが弾けるような音だった。耳を塞ぎたくなったが、それでも我慢して階下の状況を少しでも分かっておこうと、歯を食いしばって耳をすませ続けた。

 

その先は──

 

──駄目だ。分からない。

思い出そうとする度に、記憶にノイズが走る。

これはきっと呪いだ。俺が今からやろうとしている事に対しての。

壊れたのは、鍵か。それとも鍵穴か。

 

あの日、俺の家族は化け物(ドーパント)に殺された。

それから俺は、奴を生み出した組織を潰す為だけに生きる、復讐を成し遂げる為だけの人間になったのだ。

 

 

■ ■

 

水を愛し、そしてそれに愛される街──水都。

 

そのビル街から少し離れたところに、その一軒家はあった。オッサンから紹介された、俺達の新しい住処である。俺は常に住所不定みたいなところがあるので、こうして一点に留まるのは数年ぶりのことだ。

「……で、どうして一階が書店なんだ……?」

 

あの後、後ろから追っ手が来てる事を察知したオッサンは、散々ぐるぐるとビル街で迂回路を取った後、高速道路に乗り、ここまで送ってくれた。

奴らも何故ここまで必死になって追い掛けるのかと思ったが、どうやら俺やオッサンより、レイに問題があるらしく──多分これは組織の関係だ、彼女はガイアメモリの研究をしていたわけなのだし──結果として念入りに追っ手を撒くハメになったわけだ。

そして連れてこられた場所は、目立つとも目立たないとも言えない、一昔前の住宅街にありそうな書店だった。どうやら、二階が居住スペースになっているみたいだ。

いやいや、身を隠すんだったら山の中の小屋など、もっと目立たない場所の方がいいんじゃないのか?とにかく、そういう場所を想像していた俺は、この状況にクエスチョンマークしか浮かばなかった。で、連れてきた当人のオッサンは、

「はっはっは、僕はここの店主でな。こういう怪しい研究者と手を組むだけじゃあ、生計ってのは立てられないんだよ。あと、なんだ、木を隠すなら森の中とも言うだろう?」

などと言って、俺の疑問を適当に躱してしまった。山の中じゃなくて、森の中。何も無い場所にある小屋の方がかえって怪しい……ってことか。言い得て妙だ。

 

時刻ももう午前四時を過ぎた頃。前述の通り、適当な説明をされた俺は隣に立っていたレイと顔を見合わせて、少々困惑気味に書店のドアを押した。

紙独特の匂いが室内に立ち込めていた。まるで学校の図書館に入った時みたいな、そんな懐かしさを感じる。

まあしかし、俺はあまり本を読まない。活字には興味がまるでないのだ。読み始めると途端に眠気が襲ってくる。それらの本を全て素通りし、レジカウンターの奥にある扉を開ける。オッサンから言われたとおり、そこには二階に向かって階段が伸びていた。ぎし、ぎし、と軋ませながら階段を上がっていく。

二階のスペースは、机がひとつ置いてある以外は、何も無いがらんとした場所だった。彼が言うには好きに使っていいらしい。二人が住むには、問題ない空間だ。

「ふむ……私の研究室から折り畳みのベッドを持ってくるべきでしたかね」

俺の後に付いてきたレイが部屋を見回しながらぽつりと言う。床にそのまま寝るのは嫌らしい。俺はというと、公園のベンチ以上に寝るのに困難な場所は無いと思っているから、床に寝転がるのでも結構だ。

「そういえばあんたさ、あの研究室からなんも持ってこなくてよかったのか?」

「……レイと呼んでください。ドタバタしていて名乗る時間がありませんでしたが、これが一応私の名前ですので。それと、研究室のものですが。あれは元々借り物だったので、持ってきたら私は泥棒になってしまいます」

「って事は、あのベッドだけ私物だったのかよ……」

「そうなりますね。ご名答です」

ご名答、じゃなくて。何故だか睡眠欲がべらぼうに高い女だった。そういえば、さっきもオッサンがカーチェイス中にゲームセンターにあるようなレースゲームばりのカーブを見せていた時、レイは俺の肩に寄っかかって寝ていた。なるほど、助手席に乗らなかったのも賢明な判断と言える。頭ががくがくなってたら左右確認の邪魔だ。特に、周りを用心深く確認しなければならない程速度を出す時には、な。

「研究道具は、私が昔いた建物の中から引っ張ってきますから。……そこは今では廃墟になっていますが、盗みに入られてなければ道具達はきちんと保存されているはずです」

「そういう所は科学者っぽいな。抜け目がないというか」

「っぽい、ではなく。科学者ですから」

ふん、と鼻息をつくとそっぽを向かれてしまった。やっぱり気まずい。俺だって普通に男ではあるし、無愛想なやつとは言え、女と二人きりでこれから寝起きを共にするっていうのは、なんとも落ち着かないわけだ。だったらオッサンの隣で寝る方がマシである。その彼も俺達を送り届けた後、また車でどこかに行ってしまったんだからどうしようもない。

「あ、もしかしてこの中に何かあんのか?」

「いきなりどうしたんですか?」

部屋をぐるりと見渡した俺は、押し入れがある事に気付いた。ぽつんと置かれた机に目を奪われ、背後を注視しなかったわけだ。手をかけて開くと、綺麗に畳まれた布団が2セット、そこには入っていた。

「布団だけか。二つひけるか?」

「ふむ、私はこっちで寝ることにしますか」

俺が布団の設置の仕方を考えていると、隣に立っていたレイが突然押し入れの上の段に上り始めた。俺が驚く間もなく、布団一式が投げて寄越されると、彼女は押し入れをパタンと閉めてしまった。当然のごとく、彼女は中にいるままである。

 

「あ、ありがたいけど複雑だ……!」

 

俺は国民的アニメの主人公の様な気持ちになったような心持ちで、ぼーっとしながら布団をひくと、その上に寝転がった。先程戦った身体だ、睡魔はすぐに訪れて、俺の両目を閉じさせた。



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